1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
抵當證券法案(政府提出)
不動産登記法中改正法律案(政府提出)
民事訴訟法中改正法律案(政府提出)
競賣法中改正法律案(政府提出)
民事訴訟用印紙法中改正法律案(政府提出)
日本勸業銀行法中改正法律案(政府提出)
農工銀行法中改正法律案(政府提出)
北海道拓殖銀行法中改正法律案(政府提出)
國税徴収法中改正法律案(政府提出)
貯蓄銀行法中改正法律案(政府提出)
無盡業法改正法律案(政府提出)
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會議
昭和六年三月二日(月曜日)午前十時五十九分開議
出席委員左の如し
委員長 荒川五郎君
理事 小峰滿男君
理事 篠原陸朗君
理事 勝田永吉君
理事 大崎清作君
理事 板谷順助君
小村俊一君 佐藤謙之輔君
藍川清成君 本多眞喜雄君
關口志行君 山田又司君
磯部清吉君 名川侃市君
石崎敏行君 中田ろく郎君
出席政府委員左の如し
大藏政務次官 小川郷太郎君
大藏省銀行局長 大久保偵次君
司法政務次官 川崎克君
司法參與官 井本常作君
委員長の許可を得て出席したる者左の如し
議員 植原悦二郎君
司法書記官 森田豐次郎君
本日の會議に上りたる議案左の如し
抵當證券法案(政府提出)
不動産登記法中改正法律案(政府提出)
民事訴訟法中改正法律案(政府提出)
競賣法中改正法律案(政府提出)
民事訴訟用印紙法中改正法律案(政府提出)
日本勸業銀行法中改正法律案(政府提出)
農工銀行法中改正法律案(政府提出)
北海道拓殖銀行法中改正法律案(政府提出)
國税徴収法中改正法律案(政府提出)
貯蓄銀行法中改正法律案(政府提出)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912563X00719310302&spkNum=0
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001・荒川五郎
○荒川委員長 是ヨリ抵當證劵法外十
件ノ委員會ヲ續行致シマス、前囘ニ於
テ皆サンノ御承諾ヲ得マシタ通リ、本
日ハ抵當證劵法外九件ノ討議ヲ致シテ
本日決定ノ上、明日ノ本會ニ報告シタ
イト思ヒマスガ、ソレニ先立ッテ多少
ノ御質問等ハ此際御許シ致スコトニ致
シテアリマス、併シ大分時間モ過ギマ
シタカラ、成ベク簡單ニ御願ヒ申シタ
イト思ヒマス、政府委員ハ大藏政務
次官ハ只今出席ニナリマシタガ、貴族
院ノ方デ呼ビニ參リマシテ、其方ニ今
行ッテ不在デアリマス、併シ大久保銀
行局長ガ御出席デアリマス、ソレカラ
司法ノ方ハ川崎政務次官ガ出席デアリ
やく、ソレカラ長島局長ガ常ニ應酬ニ
當ラレタノデアリマスガ、昨日來風邪
デ發熱致シマシテ、今日ハ休養デ出院
ガアリマセヌ、其代リ說明ニハ司法書
記官森田豐次郞君ガ御出席下サイマシ
タ、說明員トシテドウゾ御聽キヲ願ヒ
タイト思ヒマス、此段豫メ御願ヒ致シ
テ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912563X00719310302&spkNum=1
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002・板谷順助
○板谷委員 此法案ハ不動產ノ金融ヲ
圓滑ニスルト云フ趣意カラ出テ居ルノ
デアリマシテ、吾々ハ此點ニ對シテハ
決シテ反對スル者デハアリマセヌ、併
ナガラ債權者債務者兩方面カラ觀察ヲ
シテ成ベク公平ナルモノニシタイ、又
政府ノ申サレマスル通リニ、初メテ試
ミル新シイ法律デアリマスルカラシ
テ、成ベク愼重ニ愼重ヲ重ネテ出來ル
ダケ〓究ヲシタイ、斯ウ云フ趣意ニ於
キマシテ、質問應答致シテ居ル次第デ
アリマス、併ナガラ委員長ハ只今成ベ
ク早ク之ヲ完結スル、勿論吾々モ其點
ニ付テハ同感デアリマスルケレドモ、
新シイ試デアリマスルカラ、質疑ノア
リマスル所ハ、十分ニ一ツ御許シヲ願
ヒタイ、旣ニ本日決定シテ、明日ハ本
會議ニ上程スルト云フ御話デアリマス
ルケレドモ、併ナガラ只今御話ニ依レ
バ長島民事局長或ハ大藏政務次官ハ御
出席ニナラヌ、今私ガ質問セントスル
事柄ハ、最モ重要ナ問題デアリマス、
只今御出席ニナッテ居ル政府委員ヲ、
私ハ不十分ト申ス意味デハナイノデア
リマスケレドモ、若シ此質問ニ對スル
御答辯ガ不滿足デアルト致シマシタ
ナラバ重ネテ最モ責任アル所ノ政府
委員ノ御出席ヲ願ヒタイト思ッテ居リ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912563X00719310302&spkNum=2
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003・荒川五郎
○荒川委員長 御答致シマス、御意見
ノ通リ、最初ノ試ミデ又重要ナ法案デ
アリマスカラ、十分ニ審議ヲシテ諒解
ヲ願フト云フコトハ、豫ネテ希望致シ
テ居リマスシ、滿場委員諸君モ亦眞摯
熱心ニ之ヲ審議シテ下サッタコトハ前
六囘ニ亙ッテノ會議ノ模樣ニ於テモ、
深ク委員長トシテモ感謝シテ居ルノ
デアリマス、尙ホ質疑殘リモアルカト
云フヤウナコトハ致シマセヌ積リデア
リマス、唯併シ成ベク進行スル積リデ
御審議ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912563X00719310302&spkNum=3
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004・板谷順助
○板谷委員 私ハ先ヅ第一ニ伺ヒタイ
ト思ヒマスコトハ、先般來カラ色々質
疑應答ヲ重ネテ居ルノデアリマスガ、
マダ私ハ腑ニ落チマセヌノデ、重ネテ
此點ニ付テ能ク伺ッテ見タイト思フノ
デアリマス、其點ハ從來土地所有者ガ
金ヲ借リタ場合、例ヘバ個人カラ一割
二分デ借リテ居ッタ、ソレヲ更ニ此抵
當證劵ノ發行ニ依ヲテ其個人ガ普通銀
行カラ一割デ借リタ、又普通銀行ガ金
融ノ關係ニ於テ、勸業銀行カラ八分デ
借リ2.此場合ニ於キマシテ、段々利
子ハ安クナッテ行ク、安クナッテ參リマ
スケレドモ、併ナガラ債務者ニ於キマ
シテハ、依然トシテ一割二分ノ利子ヲ
拂ハナケレバナラヌト云フコトデア
ル、此點カラ考ヘテ見マスト云フト、
抵當證劵ヲ發行シタガ爲ニ、債權者側
ハ相當ノ利益ヲ得マスケレドモ、債務
者卽チ土地所有者ニ於テハ何等益スル
所ガナイノデアリマスカラ、之ヲ緩和
スル意味ニ於キマシテ-私ハ獨逸、
瑞西ニ於ケル外國ノ例ノ抵當證劵ノ條
文ヲ讀ンデ見マスルト、此瑞西、獨逸
ハ大體ニ於テ抵當證劵ハ土地所有者ニ
交付スルト云フ原則ニナッテ居リマス
ケレドモ、但シ債務者及土地所有者ノ
同意アルトキハ債權者、又ハ其代理人
ニ之ヲ交付スルコトガ出來ル、卽チ土
地所有者竝債權者兩者ニ對シテ此證劵
ト云フモノハ交付サレルト云フコト
ニナッテ居ルノデアリマスガ、今私ノ
申上ゲマシタ債務者ガ長期ニシテ低利
ノ資金ヲ借替スルト云フ便宜ヲ得ル上
ニ於キマシテハ、ドウシテモ此土地所
有者ニ對シテモ債權者竝利害關係者ノ
同意ノアッタ場合ニハ、之ヲ交付スル
ト云フコトデアルナラバ最モ公平ノ
ヤウニ考ヘルノデアリマスルガ、此點
ニ對シテ大藏當局、竝司法當局ハドウ
云フ風ニ御考ニナッテ居リマスカ、先
ヅ此點ヲモウ一遍確メテ置キタイト思
ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912563X00719310302&spkNum=4
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005・大久保偵次
○大久保政府委員 先般來板谷サンノ
其點ニ關シマスル御質問ハ、私能ク諒
解致シマシタ次第デスガ、今日改メテ
土地所有者ノ方ニモ交付スルヤウニシ
タラバドウカ、斯ウ云フ風ナ御意見ノ
ヤウニ今承リマシタ、此抵當證劵ノ法
制上ノ建前ニ付キマシテハ、大分長イ
間〓究ヲ致シテ見マシタガ、各國ノ例
ノ中ニ付キマシテモ、今御擧ゲニナリ
マシタヤウナ點ハ、割合ニ直接ノ御參
考ニナルカト思ッテ御手許ニ差上ゲマ
シタ次第デアリマスガ、色々調ベテ見
マスト、中々是ハ法制上色々難問ガア
リマスシ、吾々ノ方デハ今仰セノヤウ
ナ例ハ、ドウシテモ採リ惡イ、現在ノ
日本ノ法制ニ大體ニ於テ手取早ク採用
シ得ル點ヲ究メマシテ、此案ガ出來タ
ノデアリマス、更ニ仰セノヤウナ根本
的ノ問題ニナリマスト、今ノトコロド
ウモ現在ノ法制デハ、非常ニ困難デア
ルト云フヤウナ趣旨カラ、ソコマデハ
考ヘナカッタ次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912563X00719310302&spkNum=5
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006・板谷順助
○板谷委員 ドウモ段々質疑應答ヲ重
ネテ居ル間ニ、私ハ一層疑義ガ深クナ
ルヤウナ感ジガ起ルノデアリマスガ、
要スルニ此法案ガ從來普通銀行ガ不動
產ヲ擔保ニシテ金ヲ貸シテ居ッタ、ソ
レガ固定シテ洵ニ困ッテ居ル、其銀行
ガ例ヘバ勸銀、或ハ農工、拓殖銀行ニ
持ッテ來タ場合ニ於キマシテハ、此法
制デ宜シイト思フガ、併ナガラ個人ニ
モ之ヲ廣ク流用スルト云フノガ第一ノ
目的デアルト云フコトヲ、屢〓答辯セ
ラレテ居リマスケレドモ、今御話スル
ヤウニ個人、卽チ債務者竝所有者ノ立
場カラ行キマシタナラバ、成ベク長期
ニシテ安イ金ニ借換ヘスル機會ヲ與ヘ
テヤラナケレバナラヌ、其點ニ於テ私
ハ寔ニ缺ケテ居ルト思フ、今大久保サ
ンノ御答辯ハ法制上困難デアルト云フ
ヤウナ御話デアリマスケレドモ、是一
政府ノ御都合デアル、要スルニ國民經
濟ヲ立テル上ニ於キマシテ、先ヅ第一
ニ土地ノ所有者及債權者、此兩方面ヲ
保護スル上ニ於キマシテ、土地所有者
ガ借換ヘスル便宜ノ上ニ於テ抵當證劵
ノ發行ヲスルト云フコトハ、都合ガ好
イト云フコトデアリマスナラバ、其
趣意ニ於テ案ヲ御立テニナルノガ當然
ヂヤナイカト私ハ思フ、此點ヲモウ一
遍伺ヲテ置キタイ、法制上困難ト云フ
ノハソレハアナタ方ノ御都合デアッ
テ、吾々ノ主張スル所謂土地ノ所有者
債權者ト云フ兩方面カラ觀察シテ、案
ノ立テ變ヘヲシテ貰ヒタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912563X00719310302&spkNum=6
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007・大久保偵次
○大久保政府委員 法制上ノ事柄ニ付
キマシテハ、私ガ進ンデ是以上ニ說明
申上ゲマスコトハドウカト、實ハ考ヘ
テ居リマスガ、法制上ノ都合ハ是ハ重
大ナ困難ナノデアリマス、打明ケテ總
テ私ハ申上ゲテ居ル次第デアリマス
ガ、獨逸ノ民法、瑞西ノ民法ト日本ノ
民法トハ大體ニ於テ違ヲテ居ル點モ可
ナリアリマスコトハ、此間民事局長カ
ラ御說明申上ゲタ通リデアリマシテ、
ソレ等ノ點ニ付キマシテハ吾々司法省
大藏省關係者ガ長イ間審議ヲ致シタ次
第デアリマス、無論吾々ノ方ノ都合ト
云フ意味合ハ、吾々名案ヲ考ヘルニ於
テ頗ル不十分ダト云フ點ニ於テハドウ
モ已ムヲ得マセヌケレドモ、吾々出來
ルダケ能ク〓究ヲ致シマシタ、仰セノ
趣旨ハ出來ルダケ此不動產ノ利用ヲ圓
滑ニシテ行キタイト云フ御趣旨ニ於テ
ハ御尤モナコトデアリマス、斯ウ云フ
風ナ案ハドノ程度迄ウマイ案ヲ出セ
ルカト云フコトニ付テハ、及バズナガ
ラ關係者ニ於テ非常ニ練リニ練ッテ注
意ヲシマシタ次第デアリマスガ、如何
ニシテモ法制上ノ立前ハ中々難儀デア
リマシテ、今日ノ所迄行キマスニモ、
相當〓究致シタ次第デアリマス、今仰
セノヤウニ根本的ノ案ニ付キマシテ
ハ法制上ノ立前ガ餘程難儀ニナリマ
スカラ、只今ノ所登記制度、銀行制度
ノ根本ニ付テハ、獨逸及瑞西ト必シモ
同一デナイモノヲ、ソコ迄進ンデ同一
ニシテ行クト云フ程ニハ、マダ考ヘテ
居ラヌ次第デアリマス、現在ノ法制上
如何ニ不動產金融ガウマク行ハレテ行
クカ、ソレニ付テハ此程度ノ改正ヲヤ
ラウト云フコトニ結局ナリマシタ次第
デアリマス、只今御言葉ノ中ニ債權者
ト債務者ヲ、出來ルダケ便宜ニシテ行
カフト云フヤウナ御趣旨デアリマシタ
ガ、ソレハ吾々モサウ致シタイト思ヒ
マスガ、今日ノ法制ニ付テハ債權者バ
カリノ便利デアルデ、債務者ニ便利デ
ハナイト云フ御趣意デハナイト、無論
拜察致シマスガ、私等ノ方ニ於テモ結
局此不動產金融ト云フモノハ良ク行
ハレルト云フコトハ、土地所有者換言
スレバ債務者ニナルベキ人間、此方面
ノ人達ノ利益ニナル、債權債務ノ關係
ハ度々今迄ニ繰返シテ申上ゲマシタ如
ク債權者バカリヲ便利ニシテ債務者
ノ關係ガ圓滑ニ行カフトハ思ヒマセ
ヌ又債務者ノ方バカリ優越ナル地位
ヲ占メテ居テハ、是亦ウマク行クモノ
ヂヤナイト思フ、債權債務ト云フモノ
ハ見方ハ無論違ヒマスガ、要スルニ是
ガ圓滑ニ行クト云フコトハ、債權者債
務者兩方ノ立前カラ參ルコトデアリマ
シテ、今日ノ此立前ガ現今ノ民法及登
記法ノ關係カラシテ、斯ウ云フ制度ガ
立テ易イ、此程度デ行クノガ今ノ日本
ノ法ノ上カラモ、理窟付ケ易イト云フ
風ナ趣旨カラ出發シテ居リマス、敢テ
債務者ノ方ニドウ斯ウト云フ趣旨デハ
ナカッタノデアリマス、出來ルダケソチ
ラノ方モ便宜ニ行クヤウニ、要スルニ
不動產金融ハ全體ニ圓滑ニ行クヤウニ
シタイ、斯ウ云フ風ナ趣旨カラ出テ居
リマス、其點ハ度々ノ機會デ申上ゲマ
シタカラ、其事情ヲ御諒承願ヒタイト
思フノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912563X00719310302&spkNum=7
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008・板谷委員
○板谷委員 遺憾ナガラ御答辯ガ不明
瞭デアリマス、私ノ申上ゲルノハ不動
產金融ヲ圓滑ニスルト云フ趣旨カラシ
テ、此法案ガ出來テ居リマスカラ、卽
チ債權者債務者兩方面カラ觀察シナケ
レバナラヌ、其點ニ付テ私ガ力說致シ
テ居リマスコトハ、此證劵ガ發行サレ
テ將來ニ於テハ輾轉ヲスルト云フ點
ニ付テ、土地所有者ノ幾部分ハ低利ヲ
借リル機會モアリ、多少利益モアラウ
ガ、現在今非常ニ困ッテ居ル六十二億
ノ不動產抵當債務ノ中ノ十二億ハ勸
銀農工、拓殖デアル、アト五十億ヲ
今ノ長期ニシテ低利資金ヲ借入レナケ
レバナラヌト云フ、是ガ重大ナル問題
デアル、此重大ナル問題ノ解決ト云フ
コトニ付テハ、今私ノ御話シタ土地ノ
所有者ガ、長期ニシテ低利資金ヲ借入
レル機會ヲ與ヘルト云フコトハ、ドウ
シテモ所有者ニ對シテモ、債務者ノ同
意ノアッタ場合ニ於テハ、抵當證劵ヲ
交付スルト云フ此條件ガ必要ダト思
フ、今法制上困難デアルト云フ御話ガ
縷々アリマシタガ、之ヲ所有者ニ交付
スルト云フコトニ付テ、ドウ云フ不便
ガアリ、ドウ云フ不都合ガアルカ、其點
ヲ能クハッキリ御答辯ヲ願ハヌト、私ハ
了解シ兼ネルノデアリマスカラシテ、
司法當局モ居ラルヽコトデアルカラ、
之ヲ若シ所有者ノ請求ニ依ッテ交付ス
ルト云フコトガ出來ナイト云フ理由、
ソレヲ一ツ明瞭ニ仰シヤッテ戴キタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912563X00719310302&spkNum=8
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009・森田司法書記官
○森田司法書記官 私ハ獨逸ノ制度ハ
餘リ詳シク存ジマセヌガ、日本ノ抵當
權制度ヲ其儘置キマシテ、サウシテ證
劵化スルナラバ、今法案ニ出來上ッタ方
法ヨリ他ニ穩當ナ方法ハナイノデアリ
ショ、勿論抵當證劵其モノヽ制度ヲ改
正スト云フコトナラバ、獨逸ノト同ジ
ヤウニスルコトガ出來ルカモ知レマセ
ヌガ、日本ハ抵當權ノ制度ニ於キマシ
テ獨逸ノ民法ヨリモ離レタ制度デ、今
マデヤッテ居ルノデアリマス、之ヲ俄
ニ獨逸ノ制度ニ變ヘテシマフト云フコ
トハ是ハ非常ニ〓究スベキ問題デア
リマス、將來ニ又サウ云フコトニナル
カモ知レマセヌガ、只今急ニ抵當證劵
法ヲ出スト云フコトニスレバ、日本ノ
抵當權制度ノ上デハ是レダケヨリ出來
ナイノデアリマス、ソレニ付テ考ヘマ
シタ結果、獨逸デ抵當證劵ヲ所有者ニ
出スノハ、日本ト抵當權ノ根本ノ觀念
ガ違ッテ居ルヤウニ記憶シテ居ルノデ
アリマス、日本デハ債權債務ガ確定致
シマシテ、サウシテ抵當權ノ登記ヲス
ルノデアリマスカラ、其登記ノアル證
劵ヲ出シマス場合ハ、必ズ是ハ債權者
ニ渡サナケレバナラヌ、債務者デアル
所ノ土地ノ所有者ニ渡サナイト云フコ
トニナッテ居ルノデアリマス、ソレハ
旣ニ債權債務ガアリマシテ、債權者ト
云フモノガ茲ニアリマシテ、抵當權ガ
設定サレテ居リマスカラ、此抵當權ニ
付テ證劵ヲ出スヤウニスルノニハ必
ズ債權者ノ申請ニ依ッテ、債權者ニ渡サ
ナケレバナラナイコトニナルノデアリ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912563X00719310302&spkNum=9
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010・板谷順助
○板谷委員 ドウモ分ラヌ、甚ダ失禮
ナ申分デアルケレドモ、私ノ質問ノ要
點ニ觸レテ居ラヌト思フ、ナゼ其所有
者ニ出スコトニ付テ不都合デアルカ、
ドウ云フ缺陷ガアルカ、之ニ付テ私ハ
御尋シテ居ルノデアル、要スルニ現在
ノ債務者ヲ保護スル長期ノ低利資金ニ
借換ヲスルト云フコトニ付テ、債務者
卽チ土地所有者ヲ保護スル上ニ於テ、
私ハヤハリ所有者ニ對シテモ發行スル
ノガ當然デハナイカト思フ、獨逸ハ私
ハ唯例ヲ申上ゲタニ過ギナイ、獨逸ニ
於テハ所有者ニ出スト云フコトガ原則
ニナッテ居ルケレドモ、場合ニ依ッテハ
債權者ニ出スコトモ出來ルト云フ兩
方面ニナッテ居ル、デアルカラ日本ニ
於キマシテモ、原則トシテ、土地所有
者ニハ發行スル、又場合ニ依ッテハ債
權者ニ發行スルト云フ兩方面ノ取扱ニ
シテ宜イ譯デアル、然ルニ土地所有者
ニ對シテ出スコトガ出來ナイト云フ
コトエ付テノ御答辯ハ、私一向ニ要領
ヲ得ナイノデアリマスガ、司法次官モ
御イデニナリマスガ、司法次官ハドウ
御考ニナリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912563X00719310302&spkNum=10
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011・川崎克
○川崎政府委員 私今ノ質問應答ヲ承
ッテ居リマシタガ、獨逸ノ法制ト、日本
ノ民法等ノ建前ガキマッテ居ル、建前
ガキマッテ居ル爲ニ、此抵當法ダケヲ
特ニ獨逸ノ法制ノヤウニヤレナイト云
フコトガ、今說明員ノ申上ゲテ居ル點
デアル、私ハ此質問ノ御趣旨ヲ途中カ
ラ承ッタノデ、能ク分ラヌノデアリマ
スガ、是ハ專門的ノコトデアリマスカ
ラ、此專門的ノ問題ハ森田君ガ此法ヲ
專門的ニ起案ヲシタ一人デアリマスカ
ラ、細カイコトハ私ヨリ森田君ニ御問
ニナル方ガ、御分リニナル譯デアリマ
ス、勿論其責任ハ私ガ負ヒマスガ、細
カイ法制ノコトニ付テハ、私ヨリモ專
門ノ森田君ノ說明ヲ御聽キ下サルコト
ニ御願ヒシタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912563X00719310302&spkNum=11
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012・板谷順助
○板谷委員 司法次官ガ御分リニナラ
ヌナラバクドイヤウデアリマスガ、
又之ヲ重ネテ申上ゲナケレバナラヌ、
吾々ガ本案ヲ修正シナケレバナラヌ重
點ハコヽニアルノデアリマスカラ、之
ヲモットハッキリ質問應答ヲ御許シ願
ヒタイト思ヒマス、卽チ此法案ガ債權
者竝ニ債務者兩方面ヲ保護スルト云フ
趣意デアルト云フコトニ付テハ、先日
來政府委員モ度々此質問應答中ニ言明
セラレテ居ルノデアリマスガ、今我國
ニ於ケル重大ナ問題ハ、舊債ガ短期デ
アッテ高利デアル、之ヲ如何ニシテ長
期ノ低利資金ニ借換ヘスルカト云フコ
トデアル、此趣意カラ申シマスナラ
バ、例ヘバ從來土地所有者ガ、個人カ
ラ一割二分デ借リテ居ッタ、ソレヲ更ニ
其個人ガ所謂債權者ガ金融ノ都合デ、
普通銀行ノ一割ノ低利資金ニ借換ヘ
タ、其又普通銀行ガ資金ニ困ヲテ、更ニ
勸業銀行カラ八分デ借リル、債權者ノ
立場ハ段々低利ニ借換ガ出來マスケレ
ドモ、債務者側ニ於テハ依然トシテ、
個人カラ借リタ一割二分ノ利子ヲ拂ツ
テ行カナケレバナラヌ、又抵當證劵ヲ
一旦發行シタル以上ハ、土地所有者ガ、
抵當證劵發行ニ同意シテ居ル以上ハ、
低利ニ借換ヘル機會ガナイ、是ヂヤ不
公平デアル、ダカラ土地所有者ガ債權
者ノ同意ガアッタ場合ニ於テハ、所有
者ニ於テモ申請スルコトガ出來ル、是
ガ最モ公平ナヤリ方デハナイカト、斯
ウ云フ意味ニ於テ質問ヲシテ居ルノデ
アリマス、所ガ獨逸ノ例ハ成程、獨逸
ハ或ハ債權者、所有者ニ發行シテ居ル
關係モアリ、獨逸ノ法律ガサウナッテ
居ルカドウカト云フコトハ是ハ外國
ノ關係デアルガ、日本ハ日本ノ建前ト
シテ所有者ヲ保護スル上ニ於キマシ
テ、サウ云フ方法ヲ執ルベキ筋合ノモ
ノデハナイカ、之ヲ執ラヌト云フコト
ニ付テ、ドウ云フ不便ガアリ、ドウ云
フ不都合ガアルノデアルカ、ソレヲ私
ハ伺ッテ居ルノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912563X00719310302&spkNum=12
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013・川崎克
○川崎政府委員 板谷君ノ御質問ニ對
シテ私カラ御答辯申上ゲマス、只今ノ
御質問ノ御趣意ハ二點ニ分レテ居ルト
思ヒマス、第一點ノ方ハ、大藏省ノ政
府委員カラ答辯セラレタト思ヒマスケ
レドモ、更ニ其意味ヲ私ハ敷衍シテ申
上ゲテ見タイト思ビマス、只今板谷君
ノ御質問ノ御趣意ハ、個人ガ一割二分
ノ金利デ金ヲ借リテ居ッタ、其金ヲ今度
ハ抵當證劵ヲ發行シタガ爲ニ、抵當證
劵化シタル結果トシテ、勸業銀行ナリ
農工銀行ナリガ其抵當證劵ニ依ッテ又
一割デ他カラ金ヲ借リタ、ソレカラ又
第三番目ノ抵當證劵所有者ハ八分デ金
ヲ借リタ、斯ウ云フ場合ガアルトスル
ナラバ、成程債權者側ノ方ハ利益ヲ得
ルケレドモ、債務者ハ依然トシテ一割
二分ノ高利ヲ拂ハナケレバナラヌト云
フノデ、何等利益ヲ受ケナイノデアル
斯ウ云フ御質問ノ御趣意ダッタト思ヒ
マス、成程サウデアルト思ヒマスガ、
結論カラ申シマスト、抵當證劵ト云フ
モノガ發行セラレタコトニ依ッテ、金融
ガ圓滑ニナッテ、サウシテ今迄固定シ
テ居ッタ不動產金融ガ、證劵化セラレ
ルコトニ依ッテ融通ガ滑カニナル結果、
債權者ハ安イ金利ノ金ヲ借リルコトガ
出來ルノデアリマスカラ、其結論カラ
遡ッテ、ヤハリ債務者ニ對シテモ今度
ハ金利ヲ負ケル場合モ私ハ出來テ來ル
ダラウト思ヒマス、サウ云フ場合ガ生
ジテ來ルコトガ、此抵當證劵ノ趣意ヂ
ヤナイカト思ヒマス、今迄ナラバ抵當
權ハ固定シテシマッテ、融通ノ途ガナイ
カラ、ソレハ高イ金利デナケレバ仕方
ガナカッタノガ、今度ハ安イ金利デ輾轉
シテ行ク結果ハ、遡ッテヤハリ債務者
ノ利益ニナルヤウナ方法モ私ハ付クダ
ラウト思ヒマス、ソコガ此證劵發行ノ
狙イ所ヂヤナイカト思ヒマス
ソレカラ第二ノ御問ノ御趣旨ハ土地
所有者ニ對シテハ、私ハ獨逸ノ民法ハ
能ク承知シマセヌガ、今ノ說明ニ依ツ
テモ建前ガ違フノデアル、ト云フノハ
日本ノ行キ方ハ豫メ抵當權ヲ設定スル
前ニ、債權債務ノ關係ガ明カニナッテ
居ッテ、サウシテ抵當權ヲ設定スル、
サウスルト、今度ハ抵當權ヲ設定シタ
結果、債權者ニ抵當權ヲ設定シタ證書
ガ渡サレル、斯ウ云フコトニナッテ居
3)、土地所有者ノ方ニハ渡サナイ·ヤ
ウニナッテ居ルカラ、其處ノ點ハ建前
ガ違フカラ、ドウモ土地所有者ニ對シ
テ特ニ便利ナ法制ノ布カレテ居ル獨逸
ノヤウニハ行カナイト云フノガ、說明
員ガ申上ゲタ趣意デアラウト思ヒマ
ス、ソレハドウ云フ風ニスレバ土地所
有者卽チ債務者ノ爲ニ利益ニナル仕組
ニ、法制ガ出來ルカト云フコトハーツ
〓究スベキコトデアリマスガ、其處ニ
不便不利ガアルト云フノデ、此法制ノ
ヤリ方ガイケナイト云フノテラバソ
レハドウ云フ風ニスレバ宜イト云フコ
トハ私ニハ今直グ其案ガ立チマセヌ
ガ、其趣意デアラウト存ジマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912563X00719310302&spkNum=13
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014・板谷順助
○板谷委員 司法政務次官ガ、ドウモ
〓究シテ見ナケレバ案ガ立タヌト云フ
コトデアリマスレバ、吾々ハドウシテ
モ債務者モ或ル程度マデ保護スルト
云フ意味ニ於テ、低利資金ヲ借換ヘル
機會ヲ與ヘルト云フコトハ當然デアラ
ウト思ヒマスカラ、更ニ御尋シテ見タ
イト思ヒマスガ、此點ハ植原君ガ關聯
シテ御發言ニナルサウデアリマスカ
ラ、私ハ一寸止メテ置キマスガ、御〓
究ニナッテ御答辯ヲ願ヒタイト思ヒマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912563X00719310302&spkNum=14
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015・植原悦二郎
○植原悅二郎君 關聯シテ居リマスカ
ラ委員長ノ御許シヲ願ヒタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912563X00719310302&spkNum=15
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016・荒川五郎
○荒川委員長 之ニ關聯シテ急グ方ハ
アリマセヌカ-ソレデハ委員外ノ植
原悅二郞君ニ、之ニ關聯シタ範圍ニ於
テ質疑ヲ許シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912563X00719310302&spkNum=16
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017・植原悦二郎
○植原悅二郎君 是ハドウカ政府當局
ニ於テモ、議論スル積リデナク、政府
ヲ信ジテ、苦メルト云フ趣意デナイコ
トヲ能ク御諒解ヲ願ッテ御答辯ヲ願ヒ
タイト思ヒマス
先刻カラ同僚板谷君ガ御質問ニナッ
タ事ハ債務者ニ證劵ヲ發行スルコト
ヲ申請スルコトヲ許スコトガ、何故我
國ノ法制上出來ナイカ、斯ウ云フ簡單
ナ質問デアッタノデス、獨逸ノ例ハ唯
例ニ出シタダケデアリ、獨逸ハドウデ
アラウト、サウ云フ事ハ構ハナイ、此
法制ノ建前ニ依リマスレバ、金融業者
ノ利益ノアルコトハ明瞭デアル、ソレ
カラ不動產ガ證劵化シテ、金融市場ニ
出ルコトモ、之モ明瞭デアル、併シ不動
產抵當品デアルニ拘ラズ、抵當品ノ有
無ヲ問ハズ、不動產全體ヲ證劵化スル
ト云フコトナラバ別ノ問題デアリマ
ス、我國ノ不動產全部ヲ證劵化スルコ
トナラバ是ハ問題ハナイケレドモ、此
法律ハ、抵當品ダケヲ商品化スルコト
ニナッテ居リマスカラ、ソコニ非常ニ問
題ガ起ッテ來ル、サウスルト抵當品ダケ
ヲ商品化スルコトニナッテ、唯債權者
ノミガ之ヲ證劵化スルト云フコトニナ
リマスレバ、債權者ハ、成程勸業銀行
ヘ持ッテ行ッテ、一分ノ安イ低利ヲ借リ
ルコトモアル、場合ニ依ッテハ其債務
者ガ借リテ居ルヨリモ二分三分ノ安イ
金ヲ借リルコトガ出來マセウ、ソレハ
其便利ハ認メマス、併シ假ニ債權者ガ
承知シテ、宜シイ、アナタハ何處カラ
デモ金ヲ借リテ來テ、私ノ方へ返シテ
吳レルナラバ宜シイカラ、何處カ安イ
金ガアッタラ借リテ私ノ方ヘ持ッテ來テ
御返シナサイト云フ、斯ウ云フ場合モ
世ノ中ニハアルコトデアル、其場合ニ
債務者ガ債權者ノ承諾ヲ得テ肩換リ
ヲスル間證劵ヲ發行シテ、サウシテソ
レヲ持フテ行ッテ返シテシマヘバ濟ムヤ
ウナ場合モ起キナイトハ限ラナイ、ソ
レダカラ之ハ我國ノ法制ノ建前トシテ
モ、出來ナイコトハナカラウ、デアル
カラ若シ債務者ガ證劵ヲ發行スルコト
ヲ申請スル場合モ、債務者ノ持ツ證劵
ハドウ云フ證劵カト云ヘバ、債務者ニ
取ッテハ其抵當物權「マイナス」債權額
ダケノ證劵ト同ジ性質ニナリマス、併
シ證劵其モノトシテハ、或ル場合ニ於
テハ債權者ノ承知ニ依リテ債權ガ含マ
レテ居ルカラ、全部ノ物件ヲ證劵化ス
ルコトニナリマス、サウシテ債權者ガ
持ッテ居ルモノハドウ云フ價値ノモノ
ニナルカト言ヘバサウ云フ價値ノモ
ノニナッテ、事實ハ不動產全部ヲ證劵
化サレテ居リマスケレドモ、債務者ガ
持ッテ居ル間ハドウ云フモノニナルカ
ト云ヘバ、サウ云フ形ノモノニナリマ
セウ、債務者ガ持ッテ居レバ債權額「プ
ラス」其擔保額ニナル、若シ債務者ガ
持ッテ居ル場合ニハ、其設備ヲ拂ハナ
イデ、持ッテ居ルコトニナリマスガ故
ニ、債務者ガ證劵ヲ持ッテ居ル權利ハ
ドレダケアルカト云ヘバ、其物權「マ
イナス」證劵ト云フコトニナリマス、
勿論其證劵ハ不動產全體ニ對スル證劵
デアルコトハ明カデアリマス、ソレヲ
債務者ノ申請ニ依ッテ發行スルコトニ
スレバ、極メテ兩者ノ便宜ニナルヂヤ
ナイカ、此問題ヲ御〓究爲スッタカ、爲
サラナケレバ爲サラナイデ宜シイ、若
シ爲スッタトスレバ、故障ガドウ云フ所
ニアッテ、是ガ出來ナカッタカ、爲サラ
ナカッタモノトスルナラバ、之ヲスル方
ガ兩者ノ爲ニ便宜チヤナイカ、又一般
ニ對シテ、債權者金融業者バカリノ保
護ダト云ハレルコトモナク、サウスレ
バ實際ノ、眞ニ不動產ヲ證劵化スルヤ
ウナ意味ニモナルカラ、是ハ如何デア
リマスカ、決シテ政府ヲ非難攻擊スル
譯デハナク、私共ハ事ノ眞相ヲ質シ
テ、行ケルカ行ケナイカ行ケルナラバ
此途ヲ開イタラ宜イト思フ、此點ニ付
テハ、民政黨ノ方モ御異存ハナカラウ
ト思フ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912563X00719310302&spkNum=17
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018・篠原陸朗
○篠原委員 前囘ニ私ハ大體ノ質問
ヲ、「システム」ノ上カラシタノデアリ
マスケレドモ、私共ハ遠慮シタラ宜イ
ダラウト云フコトデアッタカラ遠慮シ
タノデスガ其點ハ日本ノ抵當權ノ根
本ノ考ヲ變ヘルノガ宜イカ、惡イカト
云フコトハ、司法省ノ法制ノ立場カ
ラ、抵當權ノ成立ノ登記ヲスルガ宜イ
カドウカト云フ、從タル觀念ヲ變ヘタ
ラドウカト云フ、其處マデ法制上行ク
考デセウガ、今ノ政府委員ノ說明ヲ承
ッテ居ルト、債權ニシテ讓渡シヲ圓滿
ニシタラ宜イ、言換ヘレバ物權ノ賣買
ニ依ッテ、植原サンノ御話ノヤウニ、士
地ノ價額カラ債權額ヲ引イタモノヽ證
書ヲ發行スルト云フ御話デアリマスケ
レドモ、獨逸ノ所謂「ヒポテーケン·ブ
リーフ」ノ方ハ、土地全體ノ價額ヲ證
劵ニシテ、其抵當權デ金ヲ借ルト云フ
譯デナク、抵當權ノ賣買ニ依ッテ金融
ヲ付ケルト云フ「システム」ト、債權ニ
抵當權ヲ付ケタ制度ニシテ、サウシテ
其債權ノ完全サヲ保タシテ流通サスガ
宜イト云フ「システム」ノ二ツガアリマ
スガ、其二ツノ何方ガ宜イカト言フ
ト現狀ノ日本ノ抵當權ノ制度ヲ餘リ
動カサナイデヤラウト云フノデスカ
ラ、債權ヲ擔保スルコトニ依ッテ、-
遍安全ニシタ債權ヲ輾轉サセヨウ、ソ
レニ抵當權ハ食ッ付モノニナッテ、寧ロ
抵當權ノ方ガ從タルモノデ行カウ、從
來ノ從タル物權ノ觀念デ行カウト云フ
考デ立案ニナッタモノト私ハ想像シタ
カラ質問ハ廢メタノデスガ、抵當權ノ
本質ニ關スル日本ノ從來ノ從タル物權
ノ本質論カラ、日本ノ登記主義トノ間
ニ調和ガ取レナイカト云フ御議論デア
ルト思フガ、其議論ヲ此處デスルヨリ
モ、板谷サンノ御質問ニナッタヤウナ
事柄ガ債務者ノ利ニナル、低利金融ガ
抵當證劵デ出來ルノダト云フ御說明ニ
ナレバ、卽チ自由ニ、後デ一旦ハ成立
スル、一旦ハ所有者ガ、債權債務ガ出
來テ、抵當權ヲ付ケテ、其抵當權デ「ブ
リーフ」ヲ出ス、其後ノ利益、言換ヘ
レバ、第一次ノ債務者ガ、金利ガ段々
下ッテ來タ時分ニ利益ヲ受ケルコトガ
出來ルカ、出來ナイカト云フ問題ノ解
決ガ付ケバ、板谷サンノ御質問ハ解決
ガ付クト思フ、ソレデ、抵當權ノ制度
ノ論議モ、是ハ御議論トシテ立派ナ御
議論ガ立チマセウガ、其次ノ債務者モ、
利益ヲ受ケルコトガ甚ダ薄イト云フ論
議ニ付テハ、此處デ大藏省ノ政府委員
ニ御尋ネ致シマスガ、債務者ガ輾轉シ
テモ、抵當證劵ヲ第一次ニ抵當權ノ證
書ヲ出サセラレタ人ガ證劵ヲ買取ッタ
場合、言換ヘレバ讓渡狀ヲ讓受ケタ場
合デモ、其證劵ハ消滅シナイノダカラ、
ソレヲモウ一遍質問シタラ、其利益ガ
第一次ノ債務者ニ歸屬スルコトガ出來
ルカ、出來ナイカト云フ問題ハ決ル発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912563X00719310302&spkNum=18
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019・大久保偵次
○大久保政府委員 只今板谷サンノ御
質問ニ關聯シテ植原サン、篠原サンカ
ラ御質問ガ出マシタガ、或ハ御答申上
ゲルニ多少區々ニナルカモ知レマセス
ガ其點ハ御了承ヲ願ヒタイト思ヒマ
ス、抵當證劵ノ法制ヲ編ミ出シマシタ
關係ニ付テハ、今マデノ質問應答ノ間
ニ度々申上ゲテ置キマシタノデ、或ハ
諄イコトニナルカモ知レマセヌシ、御
質問ノ要點デナイカモ知レマセヌガ、
此點ニ付テ質問ガ續キマシタ以上ハ、
或ハモウ少シ申上ゲテ見タラト思ヒマ
スガ、其點ハ御許シヲ願ヒタイト思ヒ
やっ、板谷サンノ御質問ノ大體ハ、土
地所有者又ハ債務者ト云フ風ナモノニ
之ヲ許シタラドウカト云フヤウナ、御
趣旨ノヤウニ御見受致シマスガ、今マ
デ度々申上ゲテ居ル通リニ、債劵ノ發
行ト云フコトニ付テハ色々考ヘテ見ル
ト、勿論サウ云フ風ナ方面モ考ヘラレ
ナイコトハナイノデアリマス、端的ニ
之ヲ申上ゲルト、不動產ニ對スル所謂
地劵ミタヤウナモノヲ想像致シマスレ
バ是ハ土地所有者自身ガ常ニ出ス譯
デス、ソレハソレヲ賣ルナリ、或ハ其
他ノ用途ニ供スルナリ、容易ニ行ケル
制度デアラウト思ヒマスケレドモ、其
地劵制度ハ今日餘程重大問題デ、吾々
其處マデ考ヘテ居ラヌト云フコトハ
先般來申上ゲテ居ル次第デアリマス、
其點ハ御了承ヲ得テ居ルモノト思ッテ
居リマシタガ、或ハ植原サンノ御質問
ノ趣意ガ、サウ云フ風ナ趣旨ニ關聯シ
テ居ルモノデアルナラバ、要スルニ土
地所有者、又ハソレガ金ヲ借リテ居ル
場合、債務者ガソレニ對シテハ自分ノ
土地ヲ表示スル證劵、或ハ今ノ例カラ
言ヘバ、其表示シテ居ル證劵カラ、負
擔シテ居ル所ノ債務額ヲ差引イタ殘リ
ノヤウナモノヲ、何カノ形デ出シ得ル
ナラバ、非常ニ便利デアルト云フヤウ
ナ御話デアリマスガ、サウモ考ヘラレ
ナイコトハナイト思ヒマスケレドモ、
ヤハリ地劵制度ト似タヤウナ精神ノヤ
ウニ推測致シマスガ、曾テハ地券制度
ト云フモノガ行ハレタ時代ガ勿論アリ
マスガ、今日ハ法制ノ建前ガ御承知ノ
通リ、總テノ登記制度デ第三者ニ對抗
スルト云フコトニナッテ居リマスカラ、
根本ヲ動カサナケレバ其制度ハ中々ム
ヅカシイノデアリマス、隨テ吾々ノ所
デハサウ云フ風ナ所ハ只今考ヘテ居
ラスト云フコトヲ、從前度々申シテ置
イタ次第デアリマス、モウ一ツ此處ニ
殘リマス場合ヲ、私共ノ頭デ想像致シ
マスト、債務者又ハ土地所有者、サウ
云フ風ナ方面ガ何時デモ利用ニ供シ得
ル爲ニ、一ツノ抵當證劵ミタヤウナモ
ノヲ拵ヘテ置イタラドウカ、ソレハ宜
イ實例デスケレドモ、諄ク法律的ニ申
シマスト、先般此處デ問題ガ出マシタ
ヤウニ、ソレハ外國ニモサウ云フ例ガ
アルト云フコトヲ申シマシタガ、抵當
權ト云フモノヲ一ツノ獨立シタル物權
ト想像致シマシテ、サウ云フ風ナモノ
ニ對シテ土地所有者、若クハ將來債務
者ニナラウト云フ人間ガサウ云フ風ナ
案ヲ頭ニ置キマシテ、其抵當權ヲ將來
活用シタイト云フ趣旨ニ於テ、之ヲ以
テ行ケバ、是モ一ツノ想像シ得ル案デ
アリマス、併ナガラ今日ノ日本ノ法制
ハ擔保物權、要スルニ抵當權ト云フモ
ノニ付キマシテ、從タル物權ト云フ規
定以外ニ、今ノ便利ダト經濟上想像サ
レル法制ヲ認メテ居ラナイノデアリマ
ス、必ラズ抵當權ノ存在ニハ、ソレニ
主タル債權ガナケレバナラスノデアリ
一く、ソレデ想像的ノ債權ヲ將來ニ假
設致シマシテ、ソレノ目標ニ此債權ノ
抵當權ヲ設定シテ行クト云フコトハ、
不可能デアリマス、ドウシテモ債權ト
云フモノニ附隨スル一ツノ物權デアリ
マスカラ、債權無シニハ從タル物權ト
云フモノハ存在ノ餘地ガナイ、隨テ其
抵當權ト云フモノハドウシテモ債權ニ
附隨シテ考ヘナケレバ出來マセズ、證
劵ト云フモノモ、其關係カラ起ッテ來
マスカラ、前ニ考ヘマシタヤウナ案ノ
ヤウニナルノデアリマス、此處ハ一ツ
能ク其點ヲ御諒承ヲ願ヒマス、吾々
モ御趣旨ノアル所ハ能ク分リマス、色
色ノ外國ノ例モ考へ、又英米ノ法系ノ
方ニモ及バズナガラ多少攻究致シテ見
マシタ、此處ニ至ルニハ簡單ニ至ッタ
ノデハナク、餘程長イ間練リマシタ積
リデアリマス、其關係ハサウ御諒承ヲ
願ヒタイト思ヒマス、先程板谷サンノ
仰セ、及ビ植原サンノ次ノ仰セガ多分
其處ニ關係ガアルヤウニ想像致シマス
ガ、全體ノ債務者ヲ、如何ニシテ早ク
負擔ヲ輕クスルカト云フヤウナ御趣
旨ニ付キマシテハ、私共モ頗ル同感デ
アリマシテ、先程御擧ゲニナリマシタ
通リ、六十二億ノ現在ニモ存在シテ
居リマス其中カラ、無論抵當證劵等ハ
想像シテ規定シテ居リマセス、財團ト
カ云フヤウナモノモゴザイマスカラ、
ソレ等ノモノヲ差引イテ見マシテモ、
尙且是ハ此間差上ゲマシタヤウニ、
五十億近クノモノガアル譯デアリマ
ス、ソレガ先程言ハレマシタ通リ、抵
當權ノ利用サレル部分ト、サレナイ部
分ト約半々ニナッテ居リマスカラ、此
半分ノ方面ニ付テモ、餘程考ヘナケレ
ドナラスト云フコトヲ、申上ゲタ次第
デアリマス、現在旣ニ出テ居ルモノニ
付テ、如何ニシテ之ヲヤッテ行ッタラ宜
イカト云フヤウナコトニ付テモ、吾々
ハ頭ヲ惱マシテ居ル次第デアリマス、
是ハドウシテモ、將來不動產金融機關
ト云フモノハ、益〓改善ノ途ヲ遂ゲテ
行カナケレバナラヌト云フ風ノ御趣旨
ニ付テハ、全ク私ハ同感デアリマス、如
何セン直ニ今此問題ヲ此處ヘ提供致シ
マシテ、何十億ト云フモノヲ一氣呵成
ニ片付ケルト云フガ如キコトハ、事務
當局ノ側カラ見マシテハ、中々サウ云
フ名案ガ出ナイノデアリマス、併ナガ
ラ是モ是非片付ケルヤウニシナケレバ
ナラヌト云フコトデ、勸業銀行法ニ改
正ヲ加ヘマシタ、ソレハ抵當證劵法ニ
相竝ンデ、言葉ヲ換ヘテ言ヘバ事 口
是ヨリ手取早ク、サウ云フ風ナ方法ニ
依ッテヤリ得ルト云フコトヲ認メマシ
タ次第デアリマス、ソレニ致シマシテ
モ、先程板谷サンノ仰セノ通リ、元ノ
債務者ヲ何故早ク救濟シナイカト云フ
御議論、勿論ソレハ漸次ニ色々ナ經濟
上ノ働キデ以テ、其處マデ行キ得ルコ
トヲ希望シ、サウサセタイト思ッテ居
リマスガ、今此法案ヲ前ニ置イテ、何
故其モノヽ利息ヲ下ゲルヤウニシナイ
カト云フコトニ付テハ、ドウモ今直ニ
元々ノ元債務者ノ利息マデモ、直ニ變
へ得ルト云フヤウナ案ニハナッテ居リ
マセヌ、其點ハ一面カラ見マスレバ
洵ニ遺憾デアリマスケレドモ、總テ成
立シテ居リマス、債權、債務ノ狀態ヲ、
而モ斯ノ如キ巨額ノモノヲ一寸ノ考ヘ
方デ直グニ之ヲ改メルト云フコトハ
如何ニシテモ私ノ方ノ案カラ出マセヌ
カラ、御希望ノ點ニ付テハ、十分吾々
モ同ジヤウナ目標デ居リマスケレド
モ、如何センソレハ出來マセヌト云フ
コトデ、漸次ニサウ云フ風ノ方向ニ向
ケタイト云フコトデ御答スルヨリ外
ニ途ガアリマセヌ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912563X00719310302&spkNum=19
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020・植原悦二郎
○植原悅二郎君 能ク御趣意ノコトハ
分リマシタ、私共モ全體ノ不動產ヲ證
劵化スルト云フコトハ、今中々行ハレ
ナイカラ、ソレハ考慮ノ中ニ入レナカ
ツタ、隨テ次ニ考慮シタ問題ハ、ドウシ
テモ債權ト云フモノガ存在シナイ以上
ハ抵當證劵ト云フモノハ成立タナ
イ其爲ニ此案ガ出タノダ、御苦心ノ
程ハ能ク分リマシタ、唯私共ノ問題ト
シテ居ル點ニ、ソレダケデハマダ御答
ニナラナイノデアリマス、何故カナラ
バ旣ニ債權ヲ負ウテ居ル不動產デア
ルナラバ、抵當證劵ノ發行ガ出來ル性
質ヲ帶ビテ居ルモノダト云フ、ソレナ
ラバ債權者ガ同意シサヘスレバ、債務
者ガ申請シテ之ヲ發行シテイケナイト
云フ理由ニハナラナイヂヤナイカト云
フノデス、旣ニ其物權其モノハ債權
ヲ負ウテ、抵當證劵ヲ發行スベキ性質
ヲ帶ビテ居ルモノダト云フ、ソレヲ此
法案ニ依レバ、債權者ノミガ申請シ
テ、其證劵ヲ發行シ得ルコトニナッテ
居ル、然ルニ債務者ガ債權者ノ同意ヲ
得テ申請スル場合、債務者デモ之ヲ發
行スルコトハ、此抵當證劵ノ根本ノ性
質ヲ害スルコトハナイヂヤナイカ、ソ
レガ何故出來ナイカ、其出來ナイト云
フ理由ガアルナラバ伺ヒタイト云フノ
デス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912563X00719310302&spkNum=20
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021・大久保偵次
○大久保政府委員 其點ニ付テ、先程
御答申上ゲタ積リデハ居リマシタガ、
モウ一遍申上ゲマセウ、要スルニ債權
ト、從タル擔保物權トハ相關聯シテ居
リマスカラ、ソレデ債權者ハ出セル
ト斯ウ申上ゲタ譯デアリマス、所ガ
債務者ハ、何ガ故ニ債權者ト相談シテ
出セナイカト云フ仰セデスケレドモ、
債務者ハ既ニ持ッテ居ル抵當權ト云フ
モノハ債權者ノ擔保ニナッテ居ル譯デ
スカラ、債務者ガ出サウート思ッテモ、
抵當權ト云フモノハ債權者ノ附隨ニナ
ッテ居リマスカラ、今ノ仰セノヤウナ
コトハ二番抵當ヲ拵ヘルカ、若クハ
地劵ト云フヤウナモノヲ想像シナケレ
バ、私共トシテハ理論上、直チニ此抵
當證劵ノ問題ハ出テ來ナイヤウニ思ヒ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912563X00719310302&spkNum=21
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022・植原悦二郎
○植原悅二郎君 ソレ故ニ債權者ノ同
意ト云フコトガアル、債權者ノ同意ヲ
經ナイデ發行スルノハイケナイガ、債
權者ノ同意ヲ經レバ、宜イデハナイ
カ、ソレニ依ッテ一ツノ物權ガ證劵化
スルコトニナル、債權者ガ同意スレバ
ソレハ法制上ドウアラウトモ、根
本ノ觀念トシテハ其方ガ債權、債務兩
者ノ便宜ヲ得ル爲ニナルヂヤナイカ、
政治的ニ之ヲ考ヘルナラバ、私共ハ今
迄ドウ云フ法制ガアラウトモ、獨逸デ
ドウ云フコトガアラウトモ、サウ云フ
コトハ問題デナイ、今新シイ法律ヲ作
ル場合デアル、債權債務ノ兩者ガアッ
テ、初メテ茲ニ問題ガ起ルノダカラ、
債權債務ノ兩者ニ對シテ公平ナ、而モ
兩者ニ便宜ナコトヲ考ヘナケレバイケ
ナイヂヤナイカ、サウスレバ、債權者
ノミノ申請ニ依ッテ發行ガ出來ルモノ
トセズシテ、債務者ト雖モ、債權者ノ
同意ヲ得レバ發行出來ルト云フコト
ガ、極メテ兩者ニ使宜デアリ、金融ノ
問題ノ根本ニモチヨットモ影響スルコ
トハナイヂヤナイカ、却ッテ金融ヲ圓
滑ナラシメル社會上ノ便宜ガアルヂヤ
ナイカ、斯ウ云フ御質問ナンデス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912563X00719310302&spkNum=22
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023・大久保偵次
○大久保政府委員 今ノ御趣旨ノ事柄
ヲ私ガ諒解致シマス點ニ於テ、成程債
權債務ト云フ點カラ、サウ仰シヤル
ナラバ、償權者債務者均等ト云フコト
カラ、兩者トモ出シ得ルト云フノガ公
平ノヤウニ見エマスケレドモ、先程申
シマシタ通リ、法律ノ建前ガ、抵當權
ト云フモノハ債權ニ附隨シタル物權ナ
ンデアリマシテ、其點ニ付テ債務者ト
云フモノハ、一旦抵當權ヲ債權者ノ爲
ニ設定致シマシタ以上ハ、債務者トシ
テハ、幾ラ債權者ノ同意ヲ得テモ持合
セガナイ譯ナンデゴザイマス、アナタ
ノ御想像ノ事ハ、他ノ地劵トカ、色々
經濟上ノ問題ガアリマスカラ、アナタ
ノ御想像ニ付テハ私モ無理カラヌ點ハ
認メマス、併ナガラ如何ニシテモ法制
上ノ建前ガ、旣ニ抵當權ト云フコトニ
ナッテ居リマスカラ、ソレハ持合セガ
ナイ譯デアリマス、ソレデ遺憾ナガラ
是ハ前申上ゲタヤウナ答辯デ、ヨリ以
上ニ私實ハ案ガナイノデアリマス、併
シ一步進ンデ經濟上ノ御議論トシテハ
地劵ヲ考ヘルトカ、何トカ云フコトニ
ナレバ、又考ヘラレスコトモナイカモ
知レマセヌガ、先程カラ申ス通リ、地
劵トカ云フ風ナコトニナリマスレバ、
事頗ル重大デアリマシテ、今日デハソ
コマデ改正スルト云フヤウナ意思ハゴ
ザイマセヌ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912563X00719310302&spkNum=23
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024・板谷順助
○板谷委員 只今大久保政府委員ハ、
想像シタル債權ニ依ッテ、所有者ニ抵
當證劵ヲ發行スルト云フコトニ付テ御
話ニナリマシタケレドモ、私ノ方ハサ
ウ云フ意味デハアリマセヌ、旣ニ現在
債權ノ附イテ居ル其モノニ對シテ、土
地所有者ニ對シテ、ツマリ肩替リノ便
宜ヲ與ヘルト云フコトニ付テ、債權者
ノ同意ガアッタナラバ所有者ニモ許シ
タラ宜イヂヤナイカ、斯ウ云フ意見デ
ス、併ナガラ此問題ハ重大ナ問題デア
リマシテ、政府當局ニ於カレマシテモ、
今一遍御考慮ヲ願ヒタイ、吾々ノ方デ
モ又更ニ〓究シテ見マスカラ、是ハ暫
ク保留シテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912563X00719310302&spkNum=24
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025・荒川五郎
○荒川委員長 保留スルト云フノハド
ウ云フ事ヲ保留スルノデスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912563X00719310302&spkNum=25
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026・板谷委員
○板谷委員 政府ニ於テモ案ガ多イト
言ハレル、吾々ノ言フ事ハ尤モデアル
ケレドモ、案ガ無イト云フ御話デスカ
フ····発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912563X00719310302&spkNum=26
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027・大久保政府委員
○大久保政府委員 其點ダケニ付テ一
寸御答ヲ許シテ戴キタイト思ヒマス
抵當證劵ノ關スル限リニ於キマシテ
ハ今申上ゲマシタ通リノ趣旨デ吾々
ハ進行致ス積リデアリマスカラ、其他
ノ植原サシノ御話ニナッタ事、或ハ板谷
サンノ御話ノ事ニ付テハ-私或ハ間
違ッテ居ルカモ知レマセヌケレドモ、今
日抵當證劵法ノ關スル限リニ於テハ
其他ノ案-例ヘバ地劵トカ云フ風ナ
モノガ想像サレルヤウニ思ヒマスガ、
サウ云フヤウナ事ニ付テハ、モウ考慮
スル餘地ハ今ノ所ハゴザイマセヌト云
フコトヲ申上ゲテ居ルノデアリマス、
是ハ留保ヲ御希望下サッテモ、此法案
トシテハソレヲ考慮スル立場デゴザ
イマセヌカラ、其點ヲ明ニ致シテ置キ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912563X00719310302&spkNum=27
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028・篠原委員
○篠原委員 一寸先程私ノ質問シタ事
ニ關聯シテ······元ノ債務者ガ證劵ヲ取
得シタ場合ニハ、其證劵ハ消滅シマス
カ、モウ一遍裏書ニ依ッテ讓渡ガ出來
マスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912563X00719310302&spkNum=28
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029・大久保政府委員
○大久保政府委員 原債務者ガソレヲ
買取リマシタ場合ハ、是ハ登記ヲ抹消
シテ宜カラウト思ッテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912563X00719310302&spkNum=29
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030・篠原委員
○篠原委員 抹消シナイデモウ一遍ソ
レヲ裏書シテ讓渡ガ出來マスカ詰リ
手形ノヤウニ行キマスカ、手形ハ申ス
迄モナク振出人ガ買取ッタモノヲ、モ
ウ一遍ソレヲ裏書シテ流通スルコトヲ
認メテ居リマスサウ云フ風ニ用ヒル
コトガ出來レバ其證劵ハ一遍安イ利
子ニナッタ證劵デアリマスカラ、其安
イ利子ノ利益ト云フモノヲ債務者ガ受
ケルコトガ出來ルト思ヒマス、例ヘバ
勸業銀行カラ其證劵ヲ債務者ガ買ッテ
來タ場合ニ、此擔保物ナラモウ一遍勸
業銀行ガ此利子デヤッテ吳レルト云フ
コトハ、後デハ判リマセウガ、ソレニ
ハモウ一遍證劵發行ノ手續ヲシナケレ
バナラヌ、其場合ニ其證劵ガ債務者ノ
手ニ戾ッタナラバモウ一遍流通スル
コトガ出來レバ、債務者ガ其利益ヲ受
ケルコトガ出來ルト思ヒマスガ、其點
ハドウデスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912563X00719310302&spkNum=30
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031・森田司法書記官
○森田司法書記官 只今ノ御話デアリ
マスガ、證劵ニハ債權額、利息額ト云
フモノガ書イテアリマシテ、其證劵ガ
生命ノアル限リハ、其利息ハ債務者ノ
負擔ニナッテ居ルノデアリマス、債務者
ガ辨濟ヲ致シマシテ-詰リ證劵ノ所
持人ノ方カラ言ヘバ辨濟シタコトニナ
リマスカラ、ソコデ證劵ヲ取戾シマス
レバ、關係債務ガ無クナリマスカラ、
ソレヲ持ッテ行ッテ登記ヲ消ス、サウシ
テ又新ニ借リルナラバ借リル、斯ウ云
フ關係ニナラウト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912563X00719310302&spkNum=31
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032・篠原委員
○篠原委員 現實ノ問題トシテハ利子
ヲ下ゲタ抵當證劵ガ出シ得ルカモ知レ
ナイガ、モウ一遍發行手續ヲシナケレ
バナラヌ、債務者ハ現實ニ利息ノ安ク
ナッタ利益ヲ享有スルニハ其抵當證
劵ヲ一遍消滅サシテ、サウシテヤラナ
ケレバイカヌ、期限ノ問題ガアル場合
ニハ期限前ノ返濟カ何カシナケレバ
其手續ハ出來ナイト云フコトニナリマ
スカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912563X00719310302&spkNum=32
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033・森田司法書記官
○森田司法書記官 勿論デス、證劵ノ
所持人ト裏書人ト同意スレパ其證劵
ノ登記ヲ變更ヲ願ヒマシテ、サウシテ
證劵ノ記載變更ヲ致セバ、安イ利息ニ
ナルコトハアリマスケレドモ、ソレハ
關係人全員ノ同意ガ要リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912563X00719310302&spkNum=33
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034・篠原委員
○篠原委員 抵當證劵ノ流通ニ依ッテ、
段々其證劵自身カラ言ヘバ、安イ利子
負擔ヲシテ居ル證劵ニナリ得タ場合ニ
ハ第一ノ、最初ノ債務者ガ其利益ヲ
享有スベキ資格ハアリマスネ、實際問
題トシテソレダケノ擔保物デアッテ、
サウシテソレノ讓渡ヲ受ケル人間ガ、
サウ云フ利子負擔デ宜シイト云フヤウ
ニナリ得タ場合デアリマスカラ、其時
分ニハ、全然新シク全員ノ同意ヲ得テ、
ソレヲヤッテ行クカ、全員ノ同意デ登
記ヲ直シテ行キマスカ、サウシナケレ
バ新發行ノ方法ハナイト思ヒマス、期
限前ノ返濟ノ場合ニ全員ノ同意ガナイ
トキニハドウシテモ債務者ガ拘束ヲ
サレルコトニナリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912563X00719310302&spkNum=34
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035・森田司法書記官
○森田司法書記官 期限前ノ返濟ヲ債
權者ガ承諾スレバ出來ル、承諾シナイ
場合ニハ期限前ノヤハリ利息ノ關係
上、返濟ガ出來マセヌカラ、已ムヲ得
ナイコトニナリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912563X00719310302&spkNum=35
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036・藍川委員
○藍川委員 今ノ問題ハ、ヤハリ債務
者ハ期限前ノモノデモ返濟シナクテ
モ、證劵ノ讓渡ヲ受ケレバ宜イノデセ
ウ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912563X00719310302&spkNum=36
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037・森田司法書記官
○森田司法書記官 讓渡ヲ受ケレバ勿
論宜シウゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912563X00719310302&spkNum=37
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038・藍川委員
○藍川委員 尙ホ其場合ニ安イ利息デ
借リラレル場合ニハ今ノ御話ノ通リ
二、利害關係者ノ同意ヲ得テ、利息ノ
安イ變更登記ヲ受ケレバ出來ル譯デス
ネ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912563X00719310302&spkNum=38
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039・森田司法書記官
○森田司法書記官 其通リデゴザイマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912563X00719310302&spkNum=39
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040・藍川委員
○藍川委員 サウスルト板谷サンノ質
問ハ、ソレデ解決シヤシマセヌカ
〔「イヤシマセヌ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912563X00719310302&spkNum=40
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041・篠原委員
○篠原委員 不動產銀行ガ其場合ニ、
大體サウ云フ貸付ニ應ジテ吳レナケレ
バ資金ガナイ譯デスネ、債務者ガモウ
一遍金ヲ貸シテ吳レロト云ッテモ、實際
ノ預リ人ニナラナケレバ、運轉資金ガ
出テ來ナイ、其場合ニ不動產銀行ハド
ウ云フ立場ヲ取ルノデアリマスカ、證
劵デ輾轉シテ、裏書シテアリマスカラ、
新シイ證劵デモウ一遍來テモ、融通シ
ナイト云フコトニナリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912563X00719310302&spkNum=41
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042・大久保偵次
○大久保政府委員 只今ノハ個々ノ問
題デアリマスカラ、此處デ〓括的ニ申
上兼ネマス、〓括トシテハ今日負擔ヲ
背負ッテ居ル七地デモ、現在ノ法律デ
モ其借替ノ場合ハ出來ルコトニナッテ
居リマス、漸次サウ云フモノニシテ行
クベキ筈ト考ヘマス箇々ノ問題ニ付
テ此處デ申上ゲルコトハ出來マセヌ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912563X00719310302&spkNum=42
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043・板谷順助
○板谷委員 吾々ノ質問ニ對シテ、政
府ノ御答辯ガ不滿足デアリマシテ、之
ニ關聯シタ質疑ハモウ暫ク保留ノ御許
シヲ願ッテ置キタイト思フノデアリマ
ス、尙ホ重要ナ問題ニ付テ三四點質問
シタイト思フノデアリマスガ、モウ時
間モアリマセヌガ、午後ニ致シマスカ、
マダ三四點最モ重大ナ問題ニ付テ御尋
シタイ、デ審議ハ出來ルダケ吾々モ誠
意ヲ以テ、熱心ニ早メルコトニ努力致
シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912563X00719310302&spkNum=43
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044・荒川五郎
○荒川委員長 只今ノ問題ハ、根本的
ニ此證劵制度ヲ認メルカ否カト云フコ
トニナルノデス(「イヤサウヂヤアリマ
セヌ」ト呼フ者アリ)ソレナラバ抵當權
ト云フモノヲ本トシテ、サウシテ其抵
當債權者カラ働イテ行クノガ當リ前
デ、ソレヲ根本ガ債務者エアルト云フ
コトニナレバ、此抵當證券法ノ根本ヲ
變ヘテ行カナケレバナラヌ、其處ハ別
ノ議論デス、-所デソレデハマダモ
ウ二三ハ重要ナル御質疑ガアルサウデ
アリマスカラ午後一時カラ委員會ヲ
續行スルコトニシテ、是デ休憩致シマ
ス、ドウゾ一時ニハ皆サン御來會ヲ願
ヒマス
午後零時十分休憩
午後一時四十九分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912563X00719310302&spkNum=44
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045・荒川五郎
○荒川委員長 是ヨリ休憩前ニ引續キ
委員會ヲ續行シマス、本日ノ會議ハ此
程度ニ止メテ置キマス、而シテ明三日
午前十時ヨリ質疑ノ殘ヲ續行致シテ質
問ヲ終了致シ、次デ無盡業法改正案ノ
質疑ヲ致シマス、越エテ四日午後一時
開會本委員會ノ繫屬各案ノ討議決定ヲ
致シ五日ノ本會議ニ報告スルコトニ皆
樣ノ申合セニ依ッテ決定致シマス、今
日ハ之ニテ散會致シマス
午後一時五十分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912563X00719310302&spkNum=45
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