1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
抵當證劵法案（政府提出）
不動産登記法中改正法律案（政府提出）
民事訴訟法中改正法律案（政府提出）
競賣法中改正法律案（政府提出）
民事訴訟用印紙法中改正法律案（政府提出）
日本勸業銀行法中改正法律案（政府提出）
農工銀行法中改正法律案（政府提出）
北海道拓殖銀行法中改正法律案（政府提出）
國税徴收法中改正法律案（政府提出）
貯蓄銀行法中改正法律案（政府提出）
無盡業法改正法律案（政府提出）
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會議
昭和六年三月五日（木曜日）午前十時五十分開議
出席委員左の如し
委員長 荒川五郎君
理事 小峰滿男君
理事 篠原陸朗君
理事 勝田永吉君
理事 大崎清作君
理事 板谷順助君
小村俊一君 佐藤謙之輔君
藍川清成君 松田正一君
本多眞喜雄君 關口志行君
牧野賤男君 瀬川嘉助君
横川重次君 名川侃市君
磯部清吉君 中田ろく郎君
同月四日委員中谷貞頼君及磯部清吉君辭任に付其の補闕として石崎敏行君及横川重次君を議長に於て選定せり
同月五日石崎敏行君辭任に付其の補闕として磯部清吉君を議長に於て選定せり
出席政府委員左の如し
大藏政務次官 小川郷太郎君
大藏省銀行局長 大久保偵次君
司法政務次官 川崎克君
司法參與官 井本常作君
司法書記官 森田豐次郎君
本日の會議に上りたる議案左の如し
抵當證劵法案（政府提出）
不動産登記法中改正法律案（政府提出）
民事訴訟法中改正法律案（政府提出）
競賣法中改正法律案（政府提出）
民事訴訟用印紙法中改正法律案（政府提出）
日本勸業銀行法中改正法律案（政府提出）
農工銀行法中改正法律案（政府提出）
北海道拓殖銀行法中改正法律案（政府提出）
國税徴收法中改正法律案（政府提出）
貯蓄銀行法中改正法律案（政府提出）発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912563X01019310305&spkNum=0
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001・荒川五郎
○荒川委員長 是ヨリ抵當證劵法案外
九件ノ委員會ヲ續行致シマス、委員會ハ
委員諸君ノ熱心ナ御〓究デ、練リニ練ツ
テ愈〓昨日ヲ以テ質疑ヲ終結致シマシ
タ、本案ハ重要法案デアリマシテ、關
係大臣ノ出席ヲ求メラレタノデアリマ
スガ、折惡シク他ノ方ニ掛ッテ、只今此
時間ニ一寸出席セラレヌコトヲ遺憾ト
致シマス、御諒承ヲ願ヒマス、尙ホ委
員中谷貞賴君辭任ニ付石崎敏行君ガ補
闕セラレマシタ、又磯部〓吉君辭任ニ
付橫川重次君ガ補闘セラレマシタ、此
際御報告致シテ置キマス、是ヨリ直ニ
討論ニ入リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912563X01019310305&spkNum=1
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002・牧野賤男
○牧野委員 私ハ吾々同志ヲ代表致シ
マシテ修正意見ヲ提出致シタイト思ヒ
マス、ソレハ第十五條ニ「抵當證劵ノ讓
渡ハ裏書ニ依リテ之ヲ爲ス」斯ウナッテ
居リマスガ、政府委員ノ御答辯ニ依リ
マスト、讓渡ニ付テハ登記ヲシナイト
云フコトデアリマス、斯樣ニ致シマス
ト證劵ノ流通ノ方面カラハ便宜ガア
リマスケレドモ、債務者ノ方面カラ幾
多ノ不便ガアルコトハ明カデアリマ
ス、仍テ第二項ニ「前項ノ讓渡ハ之ヲ登
記スルコトヲ要ス」斯ウ云フ項ヲ設ケ
タイト考ヘルノデアリマス、從テ其次ノ
項ノ「前項」トアルヲ「第一項」ト致シマ
ス、ソレカラ第二十四條デアリマスガ、
是ハ民法ノ滌除ニ關スル規定ヲ、證劵
發行ノ場合ニ於ケル抵當權ニハ適用シ
ナイト云フ規定デアリマス、斯樣ニ致
シマシテハ債務者ガ土地ヲ處分スル上
ニ於テ、又第三取得者ガ民法ニ依ッテ與
ヘラレタル權利ヲ證劵發行ノ爲ニ殺ガ
レルト云フ不合理ガアリマスカラ、此
二十四條ハ全然削除致シタイト考ヘテ
居リマス、隨ヲテ第二十五條ヲ二十四條
ニ致シ、以下四十一條ニ至ル間一條ヅ
ツ訂正シテ最後ノ四十一條ヲ四十條ト
致シタイノデアリマス、而シテ舊二十
五條卽チ私ノ改正ニ依ル新二十四條ニ
第二項ヲ加ヘタイ、卽チ二十五條ニハ
「抵當證劵ノ所持人ハ元本ノ一部又ハ
利息ノ支拂アリタルトキハ證劵ニ其ノ
金額及受領ノ年月日ヲ記載シ且之ニ記
名捺印スルコトヲ要ス」トアル、足足
證劵ニハ記載スルケレドモ、根本ノ登
記ニハ其コトガ不明デアル、是ハ第三
者ノ表示主義ヲ採ッテ居リマス我國ノ
登記制度ノ上ニ於テハ頗ル不合理デ
アルト考ヘル、仍テ第二項ヲ加ヘテ前
項ノ元本ノ支拂アリタルトキハ之ヲ登
記スルコトヲ要ス」トスル利息ノ支拂
登記ト云フコトハ、現行登記制度ニハ
採用致シテ居リマセヌ、隨ッテ利息ニ付
テノ登記ハ現行制度ニ於テハ不可能デ
アリマス、故ニ遺憾ナガラ利息ノ登記
ハ諦メマシテ、元本ノ支拂ノアッタ時ハ
一部デモ之ヲ登記スルト云フコトニシ
テ置ケバ、第三者方面ニ於テ多少ノ便
宜ガ得ラレルト思ヒマス、斯ウ云フ考
デアリマス、仍テ「前項ノ元本ノ支拂ア
リタルトキハ之ヲ登記スルコトヲ要
ス」斯ウ云フ第二項ヲ加へタイ、次へ
舊二十六條、卽チ私ノ修正ノ二十五條
ニ「債務者ガ利息ノ支拂ヲ怠リタル場
合ニ於テ其ノ延滯ガ二年ニ達シタルト
キハ云々」トアリマス此二年ヲ三年ニ
訂正致シタイノデアリマス、是ハ政府
委員ノ御說明ニ依リマスト、抵當權ハ
通ジテ二箇年間ヲ負擔スルノデアルカ
ラ、ソレ以上ハ債權者ニ我慢シロト云
フコトハ無理デアル、隨ッテ二年ト云フ
コトハソレヲ見テ決メタノデアルト云
フ御說明デアリマシタガ、一面ニ於テ
ハ其通リデアリマス、併ナガラ此抵當
證劵法ニ於テハ、第一次所持人カラ漸
次裏書ヲシテ、
擔シテ居ルノデアリマスガ、三年位ハ
少シモ差支ナイ、例ヘバ十年ノ期限ノ
アルモノヲ、僅カ二年ノ利子ノ延滯ニ
依ッテ全部ノ期限ヲ失ハセルト云フコ
トハ如何ニモ殘酷デアル、隨ッテ之ヲ三
年ニ改メル、三年間モ滯フタモノハ全ク
債務履行ノ誠意ガナイコトヲ認メテ、
期限ノ到來ヲ認メテモ差支ナイ、併ナ
ガラ定期的ニ元本ヲ辨濟スベキ場合、
卽チ月賦辨濟、年賦辨濟ト云フコトニ
付テハ二年デモ宜シイト云フコトデ、
二年ヲ三年ニ改メルコトニ致シタノデ
アリマスガ、後者ノ二年ハ訂正シナイ
ノデアリマス
ソレカラ原案ノ二十九條、私ノ修正
ニ依ル二十八條デ、「第二十七條第一項
ノ場合ニ於テ」トアルヲ、「第二十六條
第一項ノ場合ニ於テ云々」ト改メル、
是ハ條文ヲ繰上ゲタ結果デアリマス、
ソレカラ舊ノ三十條、修正案ノ二十九
條ノ「抵當證劵ノ所持人ハ債務者ガ元本
ノ支拂ヲ爲サザルトキハ辨濟期ヨリ三
月內ニ抵當權ノ目的タル土地、建物又
ハ地上權ニ付競賣ノ申立ヲ爲スコトヲ
要ス」トアル中ノ三月ヲ六月ニ修正致
シタイ、御承知ノ通リ不動產ノ融通ハ
大抵一箇年若クハ二箇年ノ期間デアリ
マス、之ヲ直チニ辨濟ガ出來レバ無論
論ハナイ、所ガ多クノ場合ニ於テハ、
卽チ裏書人ガ債務ヲ負有利ナ條件ヲ以テソレヲ借換ル、若シ
其間ニ事情ノ變更等ガアッテ、借替難イ
場合モアリマス、ソレヲ三箇月デヤッテ
シマヘト云フコトニナルト、詰リ債務
者ガ苦シムバカリデ、少シモ債務者ノ
保護ニハナラナイ、而シテ是非競賣シ
ナケレバイカヌ、卽チ前者ニ對スル償
還請求ニ於テ、大變法律關係ガ異ッテ來
ルト云フ建前デアリマスカラ、實ハ競
賣ヲスルコトヲ自由ニ致シタイ、吾々
ノ希望トシテハ自由ニ致シタイノデア
リマスルケレドモ、自由ニ致シテ置ク
ト云フト、後ノ條文ニ依ッテ、前者ニ對
スル償還請求ハ非常ニ變ッテ來マス、ソ
コデ競賣スルコトヲ要スト云フ原案ノ
御趣意ヲ尊重シテ、申請ヲ半年待ッテヤ
ル、半年待ッタナラバ、借換トカ辨債ト
カ、色々工夫ガ付キマセウ、卽チ債務者
ノ保護ノ宜シキヲ得ル爲ニ、三箇月ヲ
六箇月ニ修正スル、斯ウ云フ意見デア
リマス、其他ハ第三十二條卽チ修正第
三十一條「第三十條第二項ノ規定ハ」云
云ト云フノヲ「第二十九條ノ規定ハ」云
云ト改メ、ソレカラ修正三十二條舊三
十三條ノ「第三十條第二項」トアルヲ
「第二十九條第二項」ト改メル、ソレカ
ラ舊三十五條修正三十四條ノ「抵當證
劵ノ所持人ガ第三十一條又ハ第三十二
條ノ規定」云々トアリマスル此條文ノ中
ノ「第三十一條」ヲ「第三十條」ニ改メ、
「第三十二條」ヲ「第三十一條」ニ改メ、
ソレカラ舊三十七條修正三十六條ノ
「抵當證劵ノ所持人ガ第二十九條第一
項又ハ第三十五條ニ規定スル」云々ト
アル「第二十九條」ヲ「第二十八條」ニ改
メ「第三十五條」ヲ「第三十四條」ニ改メ
ル、ソレカラ舊三十八條修正三十七條
ノ第一項ノ第三號ノ「第一一十七條」トア
リマスルヲ「第二十六條」ニ改メマス、
ソレカラ修正三十八條、卽チ舊三十九條
ノ條文中ニ「抵當證劵ノ所持人ノ其ノ
前者ニ對スル償還請求權ハ競賣代金ヲ
受取リタル日又ハ第三十二條第一項」
云々トアルヲ「第三十一條第一項」ト改
メマス、其他ハ前ニ申上ゲタル通リ條
文ノ繰上デアリマス
修正ノ箇條ハ其通リデアリマスルガ、
根本的ニ於テ吾々ハ此抵當證劵法ノ著
眼ヲ致シマシタル、抵當權ヲ證劵化ス
ルト云フコトニ於テ、吾々ハ不贊成デ
ハナイノデアリマス、併ナガラ此法案
ハ、如何ニモ抵當權者ヲ保護シ、抵當權
者ニ便利ヲ與ヘルコトニ急ニシテ、債
務者ノ不便、債務者ノ不利益ト云フモ
ノハ全ク閑却致シテ居ル(「ヒヤ〓〓」)
甚ダ卑近デアリマシテ申上ゲルモ如何
カト思ヒマスガ、例へバ此證劵法ニ依ツ
テ見マスルト、債務者ト云フモノハ恰
度賣ラレテ行ク女郞ノヤウナモノデ、
一遍拘束ヲ受ケルトモウ足ガ洗ヘナイ
併ナガラ女郞デアレバ、住替ト云フ方
法ガアル、愈〓借金ガ重ナッテ困ル時ニ
ハ住替ガ出來ルガ、抵當證劵ニ於テハ、
債務者ハ住替ガ出來ナイ、借替ガ出來
ナイ、而シテ滌除ノ規定ガ民法ノ中ニ
在リマス以上ハ、卽チ債務者ハ抵當附
ノ不動產ヲ處分スル第三取得者ガ之ヲ
買受ケル、サウシテ民法ノ規定ニ依ッテ
適當ナリト云フ價格ニ依ッテ債權者ニ
委セル、ソレデ債權者ニ不服ガアリマ
スナラバ、增價競賣デモ何デモ致シテ、
ソレデ振合ヲ附ケルト云フ現行制度ガ
アル、之ニ依ッテ第三取得者ガ、卽チ自
分ノ經濟的見地ニ依ッテ其抵當附ノ不
動產ヲ買取ル、斯ウ云フコトガ出來テ、
債務者ノ財產的處分ニ大變效果ガアリ
便益ガアルト云フコトニナッテ居ル、此
規定ヲ本法案ニ於テハ全ク適用シナイ
ト云フノデアリマスカラ、是ハ住替禁
止、卽チ女郞ノ住替ヲ禁止シタル制限
ト見テ差支ナイ、成程强ヒテ申セバソ
ンナモノヲ削ッテモ、抵當附ノ財產デモ
處分出來ルデハナイカト云フコトハ、
ソレハ言ヘマス、併ナガラ是ハ机上ノ
空論デ、實際ニ於テハ足搔ノ取レナイ
モノデ、賣ルト言ッタッテ買手モナイ、
隨テ一遍證劵ヲ發行セラレタラ、當一
債務者ガ甚ダ不經濟不利益ニ沈淪スル
ト、斯ウ云フ趣意ノ建前デ成ッテ居ル、
此建前ノ不便不利益ヲ、幾分ナリトモ
緩和シタイト云フノガ今申上ゲタ趣意
ノ修正ニ現ハレテ參フテ居ル、其他ノ詳
細ノコトハ何レ本會議ニ於テ討論致シ
マスルガ、修正意見ノ大要ハ右ノ通リ
デアリマス
ソレカラ最後ニ是ハ條文ニハ現ハレ
テ居リマセヌガ、希望條件ト致シテ、
本法ノ施行スル區域ヲ人口一萬以上ノ
市町村竝借地法施行ノ區域ト、斯ウ云
フコトニ致シテ之ヲ實施スルヤウニ願
ヒタイ、此場合申上ゲ兼ネルノデスガ、
此法案ニ付テハ、私共ハ後デ委員ニナツ
テ來テ制限ヲ受ケタ結果トシテ、御質
問ヲ申上ゲル自由ヲ頗ル束縛セラレテ
居リマシタカラ、遠慮致シテ居ッタノ
デアリマスルガ、一體此法案ハ、大藏
省ノ發意カ、司法省ノ發意カ、ドッチノ
發意カ知ラヌケレドモ、出來上ッタモノ
ヲ拜見スルト、私共ガ平生司法省ヲ見、
大藏省ヲ見タ觀念カラ申上ゲマスル
ト、一方ニ於テハ司法省ノ立法的功名
心卽チ立法癖、年中司法省デハ法律ヲ
睨ンデ居ヲテ、ドッカ法律ヲ改正スル所
ハナカラウカ、何カ立法スルモノハナ
カラウカト、一生懸命ニ睨ンデ居ッテ、
アッタラ一ツ立法ヲヤラウト云フ其立
法癖、立法ノ功名心、之ガ司法省ノ通
弊デアリマス、ソレニ井上大藏大臣ノ
金融資本家ノ保護、之ガ合致シテー
大藏省ノ金融資本家ノ擁護ト、司法省
ノ立法ノ功名心ト合致シテ出來タモノ
ト私共ハ睨ンデ居ル、ソレハ兎モ角ト
シテ、私共ハ趣意ニ於テハ贊成デアリ
マスカラ、幾分ナリトモ民衆ニ利益ニ
ナル修正ヲ致シテ、サウシテ其理想ニ
近イヤウニ致シタイト云フノガ吾々ノ
考デアル、故ニ其施行區域モ、政府委
員ノ御意見ノヤウデナク、セメテ人口
一萬以上ノ都市位ニ擴張シテ行キタイ
ト考ヘマス
ソレカラモウ一ツハ第一條ノ證劵ヲ
債務者ノ爲ニ發行スルト云フコトヲ何
トカ考ヘテ戴キタイ、是ハ成程法理的
ニ考ヘルト、抵當證劵ト云フ債權證書
ヲ債務者ニ持タセルト云フコトハ、法
律的ニハ矛盾デアル、併シ是ハ法律ノ
規定ニ依ッテハ、或ル程度マデ調和ガ
出來マス、例ヘバ倉庫證劵ノ數通ノ發
行ト云フコトハ法律ガ認メテ居ル、債
務者ノ爲ニ何等カ一ツノ證劵的便宜ヲ
與ヘルト云フコトモ、所謂法律ノ萬能
デナクテモ、此法律ノ規定ニ依ッテハ
出來ナイコトモナイ、公正證書ノ謄本
ハ、債務者ガ之ヲ持ツコトガ出來ヌト
云フヤウナ觀念モアリマシテ、卽チ債
權者ニ債權ノ證明證劵ヲヤレバ、一ガ
ニ於テ債務者ニ債務ノ證明ノ證劵ト云
フモノガアッテモ差支ナイ、是ハ融通ノ
上ニ於テ何等カノ便宜ヲ來スト云フ法
益ガアリ、卽チ法律上ノ利益ガアルナ
ラバ、其規定ト云フモノハ法律ニハ矛
盾致サナイト云フノガ吾々ノ著眼デア
リマス、併ナガラ一方ニハ、民法ノ登
記ニ關スル觀念モアリ、直チニ此條文
ヲ改正致シマスルト云フト、此法律全
部ヲ建直サナケレバナリマセヌカラ、
卽チ此點ノ修正ニハ手ヲ付ケナイコト
ニ致シタノデアルガ、政府ニ於カレテ
ハ債務者ノ爲ニモ、此種ノ便宜ヲ圖ル
ト云フコトヲ、マア他日ノ機會ニ於テ
修正セラレルヤウニ希望ヲ致シテ置キ
タイ、是ダケヲ申上ゲマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912563X01019310305&spkNum=2
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003・小峰滿男
○小峰委員 私ハ牧野君ノ修正意見ニ
反對ヲ致シマス、卽チ原案ヲ支持スル
者デアリマス、而シテ其反對ノ理由ニ
付キマシテハ、本會議ニ於テ申上ゲル
コトニ致シマシテ、今日之ヲ申上ゲマ
セヌ、委員長ニ於テ直チニ採決ニ入ラ
レンコトヲ望ミマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912563X01019310305&spkNum=3
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004・中田ろく郎
○中田委員 極ク簡易ニ、私共ノ意見
ヲ、本會議ニ於テ述ベル前ニ申上ゲテ
置キタイト思ヒマス、私モ此不動產證
劵ヲ作ッテ、金融ヲ圓滑ナラシムルト云
フ、此趣旨ニ對シテハ、異存ヲ有ッテ居
ル者デハゴザイマセヌケレドモ、今囘
御提出ニナリマシタ此成案ニ對シマシ
テハ、遺憾ナガラ此儘デアリマスト、
反對ヲシナケレバナラヌト存ジマス、
其理由ヲ大體申上ゲテ置イテ、後ノ御
參考ニ供シタイト思ヒマス
前カラ申上ゲタ通リ、不動產ニ對ス
ル國民ノ信念ト云フタヤウナモノ、財
產トシテ最モ不動產ヲ愛護シテ居リマ
スノハ、是ガ長ク自己ノ家ニ傳ハリ、
ソレカラ之ニ依ッテ財產ガ固定サレテ
容易ニ散逸シナイト云フコトガ、不動
產ノ持フテ居ル特質デアリマス、不動產
ヲシテ金融ノ爲ニ好イ働キヲナサシメ
ナイト云フ點モ、或ル意味ニ於テ、大
變ニ財產保護ノ上ニハ宜シカッタノデ
アリマスガ、斯ウ云フ證劵法ガ出來マ
スルト云フト、勢ヒ其不動產ノ輾轉ヲ
速カナラシムルコトニナル、ソレモ仕
方ナイノデアリマスガ、現行法規ノ保
護ヲシテ居ル所ノ債務者ノ利益ヨリ
モ利益ガ減殺サレルト云フ傾ニナル
ナラバ、本抵當證劵法案ト云フモノ
成果ト云フモノハ、餘程考慮シナケレ
バナラヌモノダト思フノデアリマス、
現行法ニ依ッテ保護サレテ居ル所ノ債
務者ノ利益ヲ保存シ、且ツソレ以上ニ
債務者ガ保護サレルコトニ依ッテ、金融
狀態モ圓滑ニナル、斯ウ云フコトデ、
初メテ此證劵ノ價値ガ出テ來ルノデア
リマス、其理由ハ、此證劵法ガ出來マ
スト、今マデ債務者ガ保護サレテ居ツ
タ所ノ長期ノ金融ト云フモノハ、少ク
トモ今ヨリ長ク借リルコトガ出來ルト
ハ言ヘナイ、今ヨリ短クナルコトハ疑
ヲ持タナイノデアリマス、サウシマス
ト、此證劵法ノ施行ニ依リマシテ、不
動產ハ長期ノ金融ガ出來ルモノデアル
ト云フコトヲ考ヘテ居,タ所ノ便宜ト
信念ヲ、之ニ依ッテ破壞セラレ、サウシ
テ證劵發行ヲ特約スル期日ニ至ッテ競
賣ヲ强要サレテ、ツマリ非常ナ窮境ニ
陷ル虞ガアルト云フコトヲ債務者ニ
考ヘシメルト云フコトニナリマシテ、
其結果ガ、出來ルダケ證劵發行ノ特約
ヲシナイト云フコトニナルデアラウト
思ヒマス、併シ金ヲ貸ス方カラ言ヒマ
スト、責道具ガ多イ方ガ宜シイノデア
リマスカラ、民間金融業者トシテハ、
出來ルダケ證劵ノ發行ヲサセテ、サウ
シテ期日ニ至ッテ、法律ノ命ズル所ニ
依ッテ、不渡リ證明ヲ爲シ、又法定期間
內ニ競賣ヲ强要スルト云フコトニ相
10/27,之ヲ逆用スル、斯ウシタ機會ヲ
多カラシムコトニナルノデアリマス、
サウ云フコトガ必ズ多カラウト思ヒマ
ス、少クナルトハ考ヘラレマセヌ、隨
テ政府ニ於テ御考ヘニナルヤウニ、餘
リ今日ト違ハナイト云フコトハ、ソレ
ハ御考違ヒト思ヒマス、是ガ今日ヨリ
事端ヲ繁カラシムル、債務者ノ不利益
ヲ增大セシムルト云フコトニ考ヘテ行
ク方ガ間違ヒナイト思ヒマス、サウ云
フ意味ニ於テ、私ハ金融ガ出來テ金利
ガ幾ラカ下ルト云フヤウナ利益ヨリ
モ、長期ノ金融ガ出來ナクナル爲ニ生
ズル脅威、ソレカラ此證劵ニ依ヲテ競
賣ヲ强要サレテ來ル所ノ不利益トカ、
長期金融ト云フモノヽ便宜ヲ失フ爲ニ
生ズル不利益ト比ベテ見マシテ、取返
シノ附カナイ結果ヲ惹起シハシナイカ
ト考ヘマス、是ハ私本證劵法案ノ非常
ナ缺點デアルト思ヒマス、惡辣ナ金融
業者ノ利用ヲ滋カラシムル虞ガアル
唯抵當證劵法ニ依ッテ、不動產ノ金融
ガ簡單ニ出來ルヤウニナルト御考ニ
ナッテ居ル點ニ於テ一言致シテ置キマ
スガ、此證劵ガ發行サレマシテモ、ヤ
ハリ勸業銀行、農工銀行、北海道拓殖
銀行ト云フヤウナ諸銀行ハ、證劵ガア
ルカラ、現地ヲ見ナクテモ、調査シナ
クテモ宜イ、證劵ヲ擔保ニシテ金ヲ貸
セル、或ハ證劵ヲ割引シテ金ヲ貸セル
ト云フヤウニ簡單ニハイカナイノデア
リマス、ヤハリ金ヲ借リニ行キマシテ
モ現地ヲ見タリ、或ハ價格ヲ調査シタ
リ、相當綿密ナル調査ヲシナケレバ、
私ハヤハリ金ヲ貸セヌモノデアラウト
思ヒマス、隨テ證劵化スルコトガ非常
ニ便宜デアルト云フコトヲ、机上ノ論
カラ言ヒマスト考ヘラレマスケレドモ、
實際上カラ言フト、ヤハリ現地ヲ調ベ
事實ヲ調査シテ、嚴密ナル〓究ヲ遂ゲ
ナケレバ、容易ニ金ヲ貸スコトガ出來
ナイ結果ニ陷ルノデアリマスカラ、隨
テ證劵化シタ爲ニ、特別ナル政府ノ豫
期スルヤウナ融通ノ敏速ヲ期シ難イト
云フコトハ明カデアルノデアリマス、
唯證劵化ス爲ニ金融ガ圓滑ニナルト云
フコトハ、幾ラカアラウト思ヒマスケ
レドモ、ソレハ證劵化サレタ所ノ利益
デハナクシテ、寧ロ農工銀行、勸業銀
行、北海道拓殖銀行等ノ貸出制限ヲ緩
和スル、承ル所ニ依リマスト農工ト勸
業ト兩銀行ニ依リマシテ十一億乃至十
二億ノ餘力ガ出來ルト云フコトデアリ
マスガ、其十一億若クハ十二億ノ餘力
ヲ作ルト云フコトハ、ソレハ金融ヲ緩
和スルト云フコトニナルダラウト思ヒ
マスガ、ソレハ證劵法ノ制定トハ別ニ
考ヘテモ宜シイノデアリマス、證劵法
ヲ制定シナイデモ、各銀行ノ貸出餘力
ヲ增大スレバ、金融ハ圓滑ニナルコト
ガ出來ルト思フノデアリマス、隨テ本
抵當證劵法案ハ大體ニ於テ長期金融
ノ利益ヲ失ハシメ、ソレニ代ルベキ所
ノ利益ヲ大シテ期待ガ出來ナイト云フ
コトニ相成ルモノデアルト思ヒマスカ
ラ、其點ニ於テ修正ヲシナケレバナラ
ナイト存ジマス
或ハ此證劵法ニ依フテ現在ノ各銀行
ノ不良貸ヲ整理スルト云ヲタヤウナ弊
害ガ續出シハシナイカト云ッタヤウナ
コトヲ吾々ハ憂ヘテ居ル、總テノ點カ
ラ〓觀致シマシテ、本抵當證劵法案ハ
特ニ債權者ノ方面ニ利益多クシテ、債
務者ノ方面ニハ絕對ニ利益ナシトハ申
サレマセヌケレドモ、現行法ニ於ケル
保護ヲ薄カラシメテ不利益ナル結果ヲ
來シ、延イテ餘リ抵當證劵法ノ效果ヲ
期待スルコトハ出來ナイ結果ニ陷ルデ
アラウト云フコトヲ心配スルノデアリ
やべ、大體ソレダケノ事ヲ申上ゲテ置
キマス(「反對カ贊成カ」ト呼フ者アリ)
修正意見ニ贊成致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912563X01019310305&spkNum=4
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005・名川侃市
○名川委員 詳細ハ本會議ニ於テ申上
ゲルコトニ致シマシテ、簡單ニ牧野君ノ
修正案ニ贊成ノ意見ヲ述ベヤウト思フ
ノデアリマス、其前ニ申上ゲテ置キタ
イノハ、此法案ハ決シテ政策ニ利用サ
レベキ法律ニアラズシテ、黨派關係ヲ
以テ彼是レスベキモノデナイト云フコ
トヲ先ヅ第一ニ申上ゲテ置キタイト思
フ、之ヲ黨派的ニ考ヘレバ、此法案ハ
非常ニ根本的ニ不備ナモノデアルノデ
アリマスカラ、根本的ニ之ヲ改正シテ
ヨリ以上ニ出直シテ、立派ナル法案ヲ
出サレンコトヲ希望シテ、之ニ反對ス
ベキデアリマスケレドモ、サウ云フ事
ハ致サズシテ、折角ノ當局ノ苦心ニ對
シテ敬意ヲ表シテ、ドウシテモ此點ハ
修正ヲシナケレバ、此法案ノ目的ヲ逹
スルコトガ出來ヌ、國家ノ不利益デア
ルト思フ小部分ニ付テ修正ノ案ヲ出シ
タ次第デアリマス、此點ニ付テハ察ス
ルニ民政黨ノ委員各位ニ於テモ、內心
ニ於テ御反對ハナカラウ、衷心ハ御贊
成下スッテ居ラレルモノデアルト私ハ
思フノデアリマス、唯茲ニ何カ黨派的
體面トカ云フヤウナコトニ於テ、成
私ノ敬愛スル小峰君カラ反對ノ御意見
ガ出テ居ルデハナイカト思フ、サウ云
フ次第デ、大體ノコトハ與黨諸君ニ於
カレテモ、事情ハ御分リニナッテ居ル
コトヽ思ヒマスカラ、詳シイコトヲ申
上ゲル必要ハナイト思フ
土地建物、卽チ不動產ガ今日固定シ
テ、流通ガ容易デナク、金融其モノモ
手續ガ非常ニ面倒デアッテ、之ニ金ヲ貸
サレタ人モ、是ガ固定致シマシテ、非
常ニ困ッテ居ルト云フコトニ付テハ申
スマデモナク明瞭ナコトデアリマス、
隨テ此土地ノ證劵化ト云フコトハ、ド
ウシテモヤラナケレバナラヌコトデア
ル、卽チ土地ノ證劵化ト云フコトハ
ヤラナケレバナラヌコトデアリマスカ
ラ、之ヲ唯擔保ニスル抵當ノ證劵ト云
フ一小部分ニ止メズニ、更ニ土地其モ
ノガ證劵ニ依ッテ移轉モ何モ出來ルト
云フ手續ガ、簡略ニ出來ルヤウニスル
ト云フコトガ、目下焦眉ノ急務デア
リ且又其適用ハ全國津々浦々ニ至ル
マン、全部行フヤウニスルコトガ最モ
必要ナコトデアルト吾々ハ考ヘル、其
點ニ於テ本法案ガ、唯土地ノ抵當ノミ
ニ限ラレ、而モ其施行區域ガ一少部分
ノ都市ニ限ラレルト云フコトニ付テ、
吾々ハ遺憾ニ思ッテ居ルノデアリマス
是ハ今言フ通リ根本的ニ建直シヲ希望
スルノデアリマスガ、ソレハ申シマセ
ヌ唯此法案ニ付テ申シマスト、土地
ノ金融ト云フモノト、手形ニ依ル金融
ト云フモノトヲ、殆ド同ジニ見テ居ラ
レルト云フ根本ノ誤リガアリハセヌカ
ト云フコトヲ吾々ハ第一ニ考ヘルノデ
アリマス、申スマデモナク土地ノ金融
ト云フモノハ其金融スル資金ト云フ
モノハ、多クハ營業ノ資金ニ致シ、或
ハ何カノ基本的ノ財源ニスルトカ云フ
ヤウニ流用スルモノガ多イノデアリマ
シテ、普通ノ商業取引ノ流通ヲ圖ル爲
メノ手形ト云フモノトハ、金融ノ根本
ニ於テ違フノデアリマス、隨テ手形デ
アリマスレバ六十日トカ九十日トカ云
フ期日ニ於テ其支拂ガ出來、又切替ガ
出來、借替ガ出來、流通モ容易ニ行フノ
デアリマスケレドモ、土地ノ金融ト云
フモノハサウハ行カナイ、期限モ長期
デアリマスシ、又其期限ニ必ズ手形ガ
落チルヤウニ、辨濟ガ容易ニ出來ルモ
ノデハナイ、此點ハ第一ニ御考ヲ願ハ
ナケレバナラヌ點デアラウト思フ、凡
ソ借金ト云フモノハ、必ズ濟スト云フ
コトガ借金ノ要件デアリマスガ、言フ
ハ易ク行フハ難イノデアリマシテ、借
リテモ中々拂ヘルモノデハナイ、ソレ
ハ國家ノ國債デモサウデアル、外債デ
モ、內地發行ノ公債デモ、期限ニハ拂
ヘナイデ借替ヲ致ス、現內閣ハ外債ガ
拂ヘナイ爲ニ、其借替ノ便利ノ爲ニ金
解禁ヲヤッタト云フヤウナコトデアツ
テ、中々借金ト云フモノハ國家デモ拂
ヘナイ、況ヤ個人、而モ其人ニ對人的
信用ガナクシテ、不動產ヲ擔保ニシテ
借リタ金、卽チ其金額ハ其人ノ信用狀
態.其人ノ資產狀態カラ言ヘバ、多額
ノ金ヲ借リルノデアル、然ラバ其者ガ
期日ニ於テ普通ノ手形ノ如ク支拂ガ出
來ヌト云フコトハ是ハ申スマデモナイ
ノデアリマス、其期日ノ支拂ノ方法ニ
付テハ、相當債權者ニ於テモ、債務者ニ
便宜ヲ圖ッテヤラナケレバナラヌ、又法
律ニ於テモ、其運用ニ於テ相當其處ニ
融通ノ利クヤウナ法律ニシテ置クト云
フコトガ必要ナコトナノデアリマス、
而シテ今マデノ債權債務ノ法律ノ規定
ト云フモノハ、期限ガ來レバ履行シナ
ケレバナラヌ、又債權者ニ實行スル權
利ガアル、併ナガラ債權者ニハ義務ヲ
負ハセテ居ル、スルトセヌトハ權利デ
アルカラ勝手デアル、然ルニ本法案デ
ハ義務ヲ負ハセテ、必ズ三月內ニ競賣
ヲセヨ、利息ガ二年滯レバ期限ガ到來
シタモノトセヨ、必ズサウ云フコトニ
ナッテ、又期限ガ來タト云ヘバ三月內ニ
競賣シナケレバナラヌ、ソレヲシナケ
レバ債權者ニ於テ手形ノ裏書ニ對スル
償還請求ノ權利ヲ失フト云フ、非常ニ
不利益ナコトニナッテ居ル、卽チ債權者
ニ對シテ權利ノ行使ニ付テ必ズソレヲ
厲行セヨト云フコトヲ法律ガ命ジテ居
ル、私ハ是ハ不動產金融ニ對スル法律
制度トシテ如何ナモノデアラウカト思
フ
申スマデモナク今マデハ不動產ニ付
テノ抵當證劵法ハナカッタノデアリマ
ガ、中々面倒ナ手續ヲシテ、手一パイ
借リテ居フテ、又貸シタ金融業者ノ方ニ
於テモ是ガ固定シテ居ル、隨テ之ヲ債
務者ガ借替ヘルト云フコトハ容易ナコ
トデハナイ、抵當證劵ヲ發行シテ、期
限ガ來タラ三月內ニ借替ヘレバ宜イト
云フ先般大藏大臣ノ說明デアリマシタ
ガ、ソレハ實行不能ノコトデアリマス、
先ヅ第一ニ抵當證劵ノ所持人ガ何人デ
アルカ分ラナイ、再ビ借替ヘルト云フ
時、先ヅ現在ノ抵當權ナラバ、一ツ期
限ヲ延バシテ吳レヌカ、モウ遍貸シ
テ吳レヌカト交涉スルノガ第一ノ早道
デアル、之ニ付テモ債權者ガ何處ニ居
ルカ分ラヌノデ、之ヲ調ベルノニ時日
ヲ要スル、漸ク其人ヲ調べ當テヽ引續
イテ一年ナリ三年ナリ五年ナリ借シテ
吳レヌカト云フテ其ノ承諾ヲ得ラレ
バ宜イガ、其承諾ヲ得ラレヌ際ニハ
更ニ他ノ債權者ヲ探サナケレバナラヌ、
是モ一日ヤ二日デハ探セヌ、相當ノ手
數ヲ掛ケテ探シ出シテ、物ニ依ッテハ
貸シテモ宜イ、一ツ其不動產ヲ評價シ
テ見テ吳レト云フコトニナルト、其評
價ニ付テモ三月ヤ四月ハ掛ル、翌日直
グ飛ンデ來テ吳レヽバ宜イガ、銀行ニ
シテモ、金融業者個人ニシテモ、ソレ
ダケニ掛ッテ居ルノデハナイカラ、順ヲ
逐フテヤルト云フコトニナレバ、評價
シテ愈〓其金額ヲ決メルマデニハ四月
ヤ五月ハ掛ル、現在農工銀行、勸業銀
行デ特別ナ手續ヲ以テヤッテモ一月ヤ
二月ハ掛ルノダカラ、普通ニヤッテ居レ
バ半年位ハ掛ルト云フ次第デアリマス
カラ、期限ガ來タラ三月內ニ借替ヘル
ト云フコトハ容易デハアリマセヌ、殆
ド絕對ニ出來ヌコトデアル、サウシテ
見ルト、是ハ必ズ競賣ニシナケレバナ
ラヌコトニナル、而シテ其競賣ト云フ
モノハ、法律ノ規定カラ言ヘバ結構ナ
コトデアル、一人々々ノ相對デ賣ルノ
デハナイカラ、公平ニ賣レテ宜イト言
フ、理窟カラ言ヘバサウデアルガ、實
際カラ言ヘバ競賣位不經濟ナモノハ
ナイ、ウント安ク買フノガ競賣デアル、
決シテ實價ニ賣レルモノデハナイ、實
價ニ賣レルモノナラ競賣ナドニシハシ
ナイ、サウシテ競賣人ガ仲ニ這入ッテ、
色々不正ナコト、惡辣ナコトヲヤル、
ソレデ正シキ者ハ競賣ニハ手ヲ出サナ
イ、兎角人カラ指彈ヲ受ケテ居ル事件
屋ト云フヤウナ者デナケレバ競賣ニハ
行カナイ、隨テ競賣値段ハ非常ニ安イ、
捨賣、或ハ物ニ依ッテハ半分値、三分ノ
一ノ値デ賣ラレルノデアリマスカラ、
土地ノ所有者ハ競賣セラレルト云フコ
トハ非常ナ不利益デアル
是ハ債權者トシテモ亦不利益デス、
競賣ヲシテ安ク賣ッテ、ソレデ全部ノ返
濟ガ出來レバ宜シイノデアリマスケレ
ドモ、殊ニ依ルト返濟セラレヌモノガ
多イ、多クハ利息モ取レナイノガ多イ、
或ハ元金モ完全ニ取レナイ、已ムヲ得
ズ其土地ヲ抱イテ、自分ガ非常ニ困ル
ト云フコトニナルノデアリマシテ、此
競賣ト云フモノハ、債權者モサウ利益
デナイ、債務者ノ不利益是レ以上ノコ
トハナイ、兎ニ角ドチラモサウ云フ經
濟的不利益ガアル、又今日ノ日本ノ民
情カラ言ヘバ、競賣ト云フコトハ、非
常ニ信用ヲ失墜スル、アノ家ハ土地ガ
競賣セラレタサウナ、役場ノ前ノ揭示
板ニ出テ居。ッタト云フコトニナルト、其
家ハ最早村デモ相手ニスル者ハナイ、
アノ家ハ倒レカヽッタ、サウ云フコトニ
ナルト其人ノ信用ハ失墜シテ、事業ヲ
スルモ何ヲスルニモ出來ナクナッテシ
マウ、今日地方ノ大地主ト云フモノハ
多クハ銀行ノ重役トカ、或ハ地方ノ事
業ノ出資者、又ハ會社ノ重役等ニナツ
テ居ルノデアリマスガ、是ガ段々競賣
ヲヤラレテ、土地ガ競賣ヲセラレルト
云フコトニナリマスト、其銀行ノ預金
者ハソレアノ重役ハ競賣ニナッタサ
ウダ、預金ハシテ置ケヌ、又信用組合
ノ理事長ヲヤッテ居ルガ、アノ家デハ
段々競賣ニナッタカラ、金ヲ預ケテ置
ケヌカラ引出サウヂヤナイカト云フコ
トニナッテ、銀行ニシテモ、信用組合ニ
シテモ、非常ニ信用ヲ失墜スル、又サ
ウ云フ人ガ其他ノ事業ヲ持ッテ居リ、重
役ヲシテ居ル會社マデ、延イテ信用ヲ
失墜スルト云フコトニナルノデアリマ
スカラ、此競賣ヲスルト云フコトノ影
響ト云フモノハ、非常ナモノナノデア
ル、隨ッテ此競賣ト云フモノハ、成ベク
避ケナケレバナラヌト云フコトハ私
ハ論ヲ俟タヌノデアリマス、ソレデア
リマスカラ、競賣ヲスル權利ハ債權
者ニ與ヘテ置クト云フコトノ、法律上
當然ノコトデアリマスガ、債務者ガ拂
ハヌト云フノデ、是ハ已ムヲ得ナイ、
最後ノ手段トシテノ所謂刀ヲ拔クト
云フコトハ容易ニ拔クベキモノデハナ
イ、ソレヲ本法案ニ於テハ三月內ニ必
ズ刀ヲ拔ケヨト云フ規定ヲ設ケタト云
フコトハ、非常ニ惡法デアルト私ハ言
ハナケレバナラヌノデアリマス、殊
現今ノ財界ハ如何デアルカト申シマス
ルト、財界ハ金解禁後ト云フモノハ非
常ニ金ノ價値ガ上ッテ、安イ金ヲ借リタ
者ガ高イ金ヲ拂ハナケレバナラスト云
フ、是ハ非常ニ債務者トシテハ不利益
デアル、物價ハ非常ニ下ッテ居ッテ、中々
今債務ヲ拂ウト思ッテモ拂フコトハ出
來ナイ、殊ニ本法施行地區デアル市街
地ナドニ於キマシテハ、家主ト云フモ
ノハ大抵皆家ヲ建テル時分ニ、其家ヲ
抵當ニシテ又家ヲ建築ヲスル、サウシ
テ建テヽカラ又直グ抵當ニ入レテ金ヲ
借リテ請負金ヲ拂フ、又貸シテ更ニ其
次ノ家ヲ建ルト云フコトニ致シテ居ル
ノデアリマス、今日ニ於テハ、家賃ヲ
拂フ人ハ居リマセヌ、東京ノ「ビルヂ
ング」協會ナドノ御話ヲ聽キマスノニ
部屋代等ハ約七割ハ這入ラヌト云フ御
話デアル、隨ッテ建築助成會社其他カラ
金ヲ借リテ、順々ニ「ビルヂング」ヲ
建テヽ居ルケレドモ、今日ニ於テハ殆
ド家賃ヲ拂ッテ居ナイ、拂ハントスレ
ドモ不可能ナノデアル、皆家ヲ建テヽ
其家賃ニ依ッテ、借リタ金ヲ拂ッテ行カ
ウト思ッテ居ルガ、今日ハ家賃ハ一ツモ
這入ラヌ、百軒、二百軒ノ貸家ヲ持ツ
テ居ル人ハ却ッテ困フテ居ル、眞面目ニ
引續イテ家賃ヲキチン〓〓ト拂フテ居
ルノニ、家賃ヲ下ゲテ吳レヌト云フノ
デ引越ス、引越ス度ニ預ッテ居フタ敷金
ヲ戾サネバナラヌ、又引越サズニ住ン
デ居ル者ハ家賃ヲ一向拂ッテ吳レヌ、
斯ウ云フヤウナ狀況デアリマシテ、卽
チ家主ノ今日ノ疲弊困憊ト云フモノハ
非常ナルモノデアル、隨ノテ建物ヲ擔保
ニシテ居ル、債務ヲ拂フコトハ出來ナ
イ土地モ亦同ジデアル、地代ノ値上
ト云フコトハ絕對今日出來ナイ、値下
運動モ非常ニ起ヲテ居ル、ソレデ土地擔
保ノ債務ヲ辨濟スルコトガ出來ヌト云
フ今日ノ狀態デアル、ソコデ國家ノ政
治ヲ行ヒ、又ハ法律ヲ拵ヘル人ハ、借
金ヲ成ベク延バシテヤル法律ヲ拵ヘル
ト云フノガ當然デアルノニ、今日競賣
ノ値段ガ段々安クナッタモノヲ取レト
云フ法律ヲ拵ヘルコトハ、時代錯誤デ
アルト思フ、是ハ今日ノ世ノ中ニ於テ
ハ債務ヲ四年ナリ五年ナリ延バシテ
ヤルト云フコトデナケレバ、社會ハ救
ハレハシナイ、財界ハ助カルモノデハ
ナイ、ソレニ斯ウ云フ法律ヲ拵エテ、
ドン〓〓競賣サレルト云フコトニナッ
テハ、財界ト云フモノハ益〓混亂シテ、
富豪ガ益、利益ヲ併呑シテ、中產階級以
下ノ貧乏人ハ、其財產ヲ取上ゲラレ、非
常ナ不利益デアルコトハ申スマデモナ
イコトデアル、此期限デ、三月經テバ
競賣ヲスルト云フ法律ノ如キハ、非常
ニ惡法デアル、斯ウ云フ法律ヲ設クル
コトニ依ッテ、中產階級以下ノ債務者ノ
受クル迷惑ト云フモノハ多大ナモノデ
アル、此東京ナドハ、震災後有ユル借
金ヲ致シテ漸ク「バラック」ヲ、二度モ
三度モ建テ換ヘテ、
ノ建築法デアルトカ、市ノ美觀トカ云
ウテ、頻リニ大キナモノヲ建テロ、建
築費ハ貸シテヤルカラ立派ナモノヲ建
テロト云フテ頻リニ勸メテ、共同的ニ
世間デ一ツノ建物ヲ建テレバ奬勵金ヲ
澤山ヤルト云フヤウナコトデ、無理算
段ヲシテ家ヲ造ッタ所ガ、此社會ノ景氣
ガ非常ニ惡クナッテ、ソレニ依ッテ家賃
ハ取レヌ、一面ニ國家ハサウ云フ建物
ニ對シテ非常ナ稅金ヲ課ケテ居ル、家
屋稅ノ負擔ト云フモノハ大變ナモノデ
アル、今日ニ於テハ建物ノ收入ニ依ツ
テ家屋稅ヲ拂フコトハ出來ナイ、家屋
稅ダケノ收入ノナイ家主ガ多イ、サウ
云フ所ニ持ッテ來テ、此抵當證劵法ト云
フモノガ出來ルト、債務者ハ强要サレ
テ、抵當證劵ト云フモノヲ出スコトヲ
承諾シナケレバナラヌ、サウシテ期限
ガ來タラ三月內ニ於テ競賣サレル、是
ガ普通ナラバ少々延バシテ吳レト云ヘ
バ厭ヤ〓〓ナガラ債權者ハ延バスコ
トモアルガ競賣サレルコトニナルト、
債權者ハ非常ナ不利益ニナルガ、已ム
ヲ得マセヌト云フノデ三月內ニ競賣ス
ルノデアリマス、此點ニ於テ現在ノ不
動產ヲ抵當ニシテ居ル債務者ト云フモ
ノハ非常ナ不利益ヲ蒙ル、先祖代々住
ミ馴レタ土地ヲ逐ハレル、漸ク地震後
ニ於テ、約七年間苦心慘澹ノ結果出來
市區改正ニ對シテー上ッタ店舗其モノハ、全部高利貸其他
ノ金融業者ノ餌食トナッテ取上ゲラレ
ルト云フコトノ、非常ナ氣ノ毒ナ憐ム
ベキ結果ヲ來シハセヌカト思フノデア
リマス、此點ハ非常ニ本法案ニ於テ考
ヘナケレバナラヌ點デアラウト思フ、
而シテ斯ウ云フヤウナ二年利息ガ滯レ
バ期限ガ來タモノト見ル、期限ガ來タ
ラバ三月內ニ必ズ競賣シナケレバナラ
ヌト云フ法律ヲ拵エナケレバナラヌト
云フ理由ガ何處ニアルカト云フト、卽
チ裏書人ノ責任ト云フコトニ付テ嚴重
ナル法律ヲ設ケラレタ結果、卽チサウ
シテ置カナケレバ裏書人ガ償還ノ義務
ヲ負フコトニ於テ非常ナ迷惑ヲスル
ト云フコトニナルノガ一ツノ原因ト
ナッテ居ルト私ハ考ヘル、實際斯ウ云フ
法律ヲ拵ヘテモ、擔保裏書ヲスルコト
ハ殆ドナカラウト思フ、是ハ日本ノ國
民性ト致シテ、命ヨリモ大事ナモノハ
判デアルト云フ、他人ノ請判ヲスルト
云フコトハ日本ノ人間ハシナイ、他人
ノ債務ノ責任ヲ負フト云フコトハ、日
本ノ人間ハシナイ、ドンナコトガアッテ
モシナイ、是ハ外國人ト非常ガ違フ、
外國ナドデハ、非常ナ金ノ保證ヲスル
ガ、日本ノ人間ハ人ノ保證ハ幾ラシテ
モ、金ノ保證ハセヌト云フノガ日本人
ノ性質デアル、隨テ今日抵當證劵ニ裏
書ヲスル、サウスルト其裏書人ハ、競
賣シテ金ガ足ラヌ時ハ、其債務ヲ負ハ
ナケレバナラヌ、辨償シナケレバナラ
ヌ、況ヤ此法案ニ依ッテ見ルト抵當ノ
目的物タル不動產ガ燒ケタ場合ニ於テ
モ、共抵當證劵ノ所持人ハ、損ヲセズ
シテ、其裏書人ガ如何ナル場合ニ於テ
モ其債務ヲ拂ハニヤナラヌ、斯ノ如ク
裏書人ノ責任ハ多大ナモノデアル、他
人ノ金ヲ貸シタ債權ノ保證ニ、自分ノ
判ガ押シテアレバ、十萬圓ノ金ノ抵當
證劵ニ裏書ヲスレバ、何時マデモ十萬
圓ハコッチニ取殘サレル、十萬圓ノ保證
ヲシナケレバナラヌト云フコトニナ
ル、サウ云フコトニナッテ居ルカラ、卽
チ抵當證劵ガ燒失シタ場合ニ於テモ
其裏書シタ者ガ責任ヲ負フコトニナ
ル、又實際ニ今日ノ銀行ノ取引カラ申
シテモ、手形ノ裏書ト云フモノガアル
ガ、銀行ハ決シテ手形ノ裏書ヲスルモ
ノハナイ、手形ノ再割引ニ付テハ、取
引銀行ニ於テハヤルケレドモ、行員カ
誰カニ裏書サセテドン〓〓市場ニ出
シタ日ニハサウ云フ銀行ハ忽チ信用ヲ
失墜スルノデアリマスカラ、手形ノ裏
書ト云フコトハ再割引ノ取引銀行以
外ニハシナイ、サウ云フ場合ニ證劵法
ヲ拵ヘテ、裏書人ノ責任ヲ設ケタ所ガ
銀行等ノ金ヲ貸シタ時ニハ直接ノ契
約銀行トカ何トカ云フモノトノ再割引
以外ニ、ドン〓〓裏書ヲスル場合ハ多
クナカラウト思フ、裏書人ノ責任ヲ保
護スルト云フ趣旨カラ、債務者ニ非常
ニ不利益ナ規定ヲ設ケラレテモ、裏書
人ノ責任ヲ保護スル場合ハ少イ、債務
者ノ不利益ノミニ常ニナルト私ハ思
フ、サウ云フ次第デアルカラ徒ラニ裏
書人ノ迷惑ト云フコトノミニ頭ヲ使ハ
レテ、債務者ノ蒙ムルベキ不利益ニ付
テハ、全然閑却セラレタル本法案ニハ
吾々其點ニ於テ贊成スルコトガ出來ヌ
ノデアリマシテ、ドウシテモ此法案ヲ
出ストスルナラバ、債務者ノ立場ト云
フモノヲ考慮シテ貰ヒタイ、債務者其
モノガ相當ニ借換ノ出來ル餘裕ヲ與ヘ
ルダケノ法律ニシテ貰ハナケレバ、債
務者ハ立ッテ行ケヌト思フ、競賣ニ依ツ
テ受クベキ債務者ノ信用ノ失墜、財產
上ノ損害、是等ノモノヲ除カレルヤウ
ニスルコトガ必要デアラウト思フ、ソ
レニハ今言フ通リニ期限後三箇月デ競
賣スルト云フコトハ、是ハドウシテモ
期間ガ短イ、是ハ一箇年位ニ延バシテ、
一箇年位迄ハ競賣シナクテモ宜イト、
斯ウ云フコトニシテ置クコトガ宜カラ
ウト思フ、ソレヲ三箇月ト云フ短イコ
トニシテ置クコトハイカヌト私ハ思
フ、一年間競賣ガ出來ヌト云フノデハ
ナイ、スルノハ何時デモ宜イガ一箇年
內ニスレバ宜イト云フコトニシテ貰ヒ
タイ、必ズ三箇月デナケレバナラヌト
云フ法律ニシタノガイケナイ、一箇年
內トシテ、前ノ裏書人ニモ其請求ガ出
來ルト云フコトニシテ、債務者ノ利益
ヲ擁護スルコトガ最モ適當ナモノデハ
ナカラウカト私ハ思フ
次ニ金融業者ノ取締ト云フコトデア
リマス、此點ニ付テノ御留意ヲ願ハナ
ケレバナラヌ、今日ニ於テハ、血モ淚
モナイ、冷血鬼トハ、金融業者ヲ言フ
ノデアル、例ヘバ芝居ニデモ、直グ高
利貸ト云フ者ガ出ル、惡辣ナル金融業
者ハ血モ涙モナイコトヲスル、金ヲ貸
シテ貰ヒタイト、非常ニ困ッテ居ル立場
ニ付ケ込ンデ、非常ニ不利益ナ證書ヲ
作リ、辨濟ガ出來ヌ時ハ、非常ニ堅イ
約款ヲ作ルト云フヤウナコトニ依ッテ、
二重取三重取ヲスルノガ今日ノ狀況デ
アル、憐ムベキハ債務者デアッテ、取締
ルベキモノハ金融業者デアル、此金融
業者ニ對シテ、斯ウ云フ抵當證劵ヲ出
ス時分ニハ、其取締ノ法規ニ付テ御考
ヲ願ハナケレバナラヌ、然ルニ本法案
ヲ見ルト、之ヲ取締ルコトハチットモ
ナイ、却テ金融業者其モノヲ、勝手氣
儘ナコトガ出來ルヤウニシテアル、何
トナレバ金ヲ拂ッテモ證劵ニ書クノハ
卽チ債權者卽チ金融業者ガ書込ム、ソ
コデ一萬圓ノ金ヲ五千圓拂ッテ、之ヲ書
イテ置イテ吳レ、書イテ置イテヤルト
言ウテ書カナクテモ仕樣ガナイ、債權
者ガ書クノデスカラ、書イテ置イテヤ
ルト言フテ書カナイデ置ケバ、假ニ五
千圓ノ愛取證ヲ持ッテ居ッタ所ガ、債權
者カラ一萬圓デアルト言ウテ請求サレ
レバ拂ハナケレバナラヌ、他人ニ之ヲ
輾轉讓渡スレバ、受取證ヲ持ッテ居ッテ
モ一萬圓皆取ラレルト云フコトハ、非
常ニ不利益ナコトデアッテ、斯ウ云フコ
トハ惡辣ナ金融業者ガ立派ナ爪ヲ持ツ
テ居ルノニ、更ニ之ニ刀ヲ與ヘ、「ピス
トル」ヲ與ヘルヤウナモノデアッテ、此
規定ナルモノハ、金融業者ノ兇器ニナ
リハセヌカト思フ隨ッテ之ニ對シテハ
憐ムベキ、又非常ニ弱キ地位ニ居ル所
ノ債務者、是ハ昨日司法省ノ委員カラ、
借リタラ債務者ノ方ガ强イト仰セラレ
タガ、ソレハ間違デアル、拂ッテ吳レト
云フ時分ニハ債權者ガ弱イヤウデアル
ガ、兎ニ角債權者ト云フ地位デ、强制
執行其他破產等ノ申立ニ依ッテ、苛メラ
レルノデアルカラ、弱イ者ハ債務者デ
アル、之ヲ助ケナケレバナラヌ、部
ノ金デモ拂ッタ者ハ、ソレニ付テノ證明
材料ヲ取ッテ、二重取ヲサレヌヤウニ
防グコトガ、社會ノ信用ヲ維持スル所
以デアル、法律ノ效用ハ其處ニ在ル、
人間ガ堯舜ノ世ノ民ノ如ク、正直者バ
カリナラ法律ハ要ラヌ、惡イ者ガアル
カラ法律ガ要ルノデアル、惡辣ナル二
重取ヲスルヤウナ者ヲ防グ爲ニ、法律
ヲ拵ヘテ置カナケレバナラヌ、現行ノ
一部拂ヲタ時ニ於テ、抵當證劵ニ書イテ
ナケレバ效力ガナイト云フヤウナ法律
ハイカナイ、是ハ抵當證劵ニ書ク以外
ニ、之ヲ登記致シテ、其登記ニ依ッテ何
處マデモ辨濟ヲ主張シテ、自己ノ權利
ヲ債務者ガ擁護セラルヽヤウニスルコ
トガ、法律上當然ノコトデアル、又金
融業者ガ目的物ヲ取ラウトスル、此抵
當ヲ安ク競買ニシテ取ッテヤラウト云
フ場合ニ、債務者ノ方デハ、金ヲ拂ッテ
抵當證劵ヲ取戾サウトシテモ、金融業
者ガ抵當證劵ヲ輾轉致シテ、誰ガ持ッテ
居ルカ分ラヌヤウナイコトニシテ、債
務者ヲ窘メルト云フコトガアリマス
ガ、曩ニ申シマシタ通リ、債務者ガ期
限ガ來タ時分ニ借替ヲシヤウ、借替ヲ
スルニ付テハ、來月ガ期限デアル、再來
月ガ期限デアルト云ウテ、債務者ハ今
カラ借替ノ準備ヲシナケレバナラヌ、
抵當權者ニ交涉シナケレバナラヌト思
ヘバ、期限前カラヤラナケレバナラヌ、
ソレニハ抵當權者ノ何人デアルカヲ知
ル必要ガアル、其知ルニ便宜ナ方法ヲ
設ケテヤラナケレバナラヌ、又二番三番
ノ抵當權ヲ持ッテ居ル者ガアル時ニハ
二番三番ノ抵當權者ニ於テモ、一部ノ
抵當權ガ安ク競賣スルト二番三番ノ
抵當權者ハ辨濟ヲ受クベキ擔保力ガア
ルニ拘ラズ、安ク競賣セラレル爲ニ、
辨濟ヲ受ケルコトガ出來ヌノデアリマ
スカラ、二番三番ノ抵當權者ハ、一番
抵當權者ニ、抵當權ヲ讓受ケルカ、或
ハ債務者ニ代ッテ自分ガ一番ニナッテ、
其目的物ノ價格ノ上ル時ヲ見テ、之ヲ
賣ルナリ、債務者ニ拂ハスナリシテ、
自分ガ其辨濟ヲ得ヨウトスルコトモ、
二番三番ノ抵當權者ハ常ニ考ヘテ居ル
ノデアル、然ラバ債權者ガ何人デアル
カト云フコトハ、他ノ抵當權者ニ於テ
モ之ヲ知ルコトガ必要ナノデアル、又
目的ノ第三取得者、ソレ等ノ者ガ、此
抵當ノ建物又ハ抵當ノ土地、此土地ヲ
宅地ニシヨウトカ、此家ヲ住宅ニシヨ
ウトカ、分家ニシヨウトカ、或ハ妾宅
ニシヨウト考ヘル人モアリマセウ、ソ
レデドウシテモ之ヲ欲シイト云フノ
デ、買ッタ時分ニハ抵當權ガ誰デアル
カ分ラヌガ爲ニ、之ヲ辨濟スルコトモ
出來ズシテ、惡辣ナ抵當權者ニ抵當權
ヲ執行サレテ、他ノ者ニ取ラレルト云
フコトガアッテハナラヌノデアリマス、
是カラ行ッテモ第三取得者、其他ノ第三
者カラ言ッテモ、抵當權者ノ何人デアル
カヲ常ニ明ニスルコトガ必要ナコトデ
アル、而シテ本法案デハ、誰ガ抵當權
者デアルカ分ラヌノデアリマスカラシ
テ、之ヲ明ニスル爲ニ、抵當權ヲ讓渡
スル每ニ、附記登記ヲスルコトガ必要
デアル、是ハ手續ガ面倒デアルト仰シ
ヤルケレドモ、附記登記デアルカラ極
ク簡易デ、委任狀ヲ一本書イテ代書人
ニ賴メバ出來ルコトデアル、手數ノ掛
カルコトデモ何デモナイ、假ニ手數ガ
掛カルトシテモ、他ノ抵當權者ヤ、債
務者ヤ、第三者ガ保護ヲサレヽバ、ソ
レ位ノコトハシナケレバナラヌ、現 代
司法省ガヤッテ居ル法制ヲ見テモ、今日
裁判所ニ供託シテ居ル保證金ヲ下ゲル
ニハ、非常ニ面倒ナ手續ヲシテ居ル、保
證金ヲ一ツ取ルノデモ、三箇月モ四箇
月モ掛ル、長ケレバ半年モ掛ラナケレ
バ保證金ガ取レナイト云フヤウナ、ヤ
カマシイ手續ヲ拵ヘテ居ル、ソレ程ニ
物ニ間違ノナイヤウニスル微細ノ法律
ヲ拵ヘル以上ハ、債務者ヤ、他ノ抵當
權者ヤ、第三者ノ利益ヲ保護スル爲ニ
ハ、讓渡ノ登記手續ヲ吝マレテ、ソレ
テセヌデモ宜イト云フコトヲ言ハレル
ノハ如何ナモノデアラウカト思ヒマ
ス、此點ニ於テ讓渡ノ手續ニ於テハ、
必ズ登記手續ヲスルコトガ必要デア
ル、サウスルコトハ何モ抵當法ノ精神
ヲ沒却スルモノデハナイ、瑞西ナドノ
法制ニ於テモサウ云フコトニナッテ居
ルノデアリマスカラ、是ハ登記ヲスル
ト云フコトガ必要デアルト思フノデア
リマス
ソレカラ今度ハ滌除ノ手續、是ハ私ハ
本會議デモチヨット申シテ置キマシタ
カラ、重ネテハ申シマセヌガ、滌除ノ
規定ト云フモノハ、佛蘭西民法ニ於テ
發逹シテ居ルモノデアル、滌除ノ規定
ガアルカラコソ、抵當ニ入ッテ居ル土地
ニ讓渡ガ出來ルノデアル、卽チ抵當ニ
入ッテ居ル所ノ目的物ヲ他人ガ買ウタ
時債權者ニ期限前デモ之ヲ拂ヒ、サウ
シテ抵當ノ附イテ居ナイ完全ナ土地ニ
シテ住居ヲスル、自分ノ所有地トシテ
心持好クソレヲ持ツ、又ハ其處ニ安心
シテ家ヲ建テル、又ハ安心シテ利益ヲ
得テ他ニ讓ルト云フ風ニ、土地ノ所有
者又ハ土地ヲ買ウタ者ニ便益ヲ與ヘテ
ヤラナケレバナラヌ、所ガ滌除ト云フ
規定ガ無クナリマスト、期限前ニ於テ
之ヲ拂フト云フコトモ出來ヌシ、又意
地ノ惡イ債權者デアルナラバ、ドウカ
債務ハ拂フカラ競賣ハ止メテ吳レト云
フテモ、抵當權者ニ於テ競賣ヲスルト
云ヘバ、之ヲ第三者ガ拒ムコトガ出來
ヌト云フコトニナッテ、遂ニ競賣ヲサレ
テ、不利益ヲ受ケルコトニナル、又現
ニ自分ガ其土地ヲ持タウト思ッテモ、意
地ノ惡イモノガ他カラ來テ競買シテ之
ヲ取ッテシマウ、折角第三者ガ、其土地
ナリ建物ナリ買ウテ、自分ノ所有ニシ
ヨウト思フタノガ、自分ノモノトシテ
所有ヲ繼續スルコトガ出來ズ、他人ニ
取ラレルト云フコトニナリマス、ソレ
デ滌除ノ規定ヲ取除イテシマウト、目
的物ハ何人モ之ヲ讓受ケルコトガ出來
ヌヤウニナリマシテ、非常ニ土地ノ所
有者ガ困ル、現在此ノ抵當證劵法ト云
フモノガ出來マスト、一番ニ抵當證劵
ヲ發行スルト云フト、二番三番ノ抵當
權ヲ取ルモノハ無クナルト思フ、而モ
此抵當證劵ガ發行ニナリマスト、抵當
權ヲ持ッテ居ル者ガ、他ニ讓ル場合ニ
裏書人ガ大變ナ責任ヲ負フノデアリマ
スカラシテ、擔保餘力ノアルモノニシ
ナケレバ自分ガ危險デアル、從テ從來
ハ價格ノ六掛デ貸シタモノガ、價格ノ
四掛シカ貸サヌヤウニナッテ、融通金額
ガ少クナルト思フ、融通金額ガ少クナ
レバ、第二第三ノ抵當ヲ付ケルコトガ
出來ナクナリ、目的物ヲ賣ラウニハ滌
除ノ規定ガ無クナッタカラ、何人モ手ヲ
出ス人ガ無クナリマス、ソコデ折角不
動產ニ依ッテ金融ノ圓滑ヲ圖ラウトセ
ラレタ本法ノ目的ハ逆ニナッテ、土地ノ
所有者ガ非常ノ不利ヲ受ケルコトニナ
ルト思フ、此滌除規定ト云フモノハ
抵當目的物ノ所有者ニ土地ノ所有ヲ容
易ナラシメ、又其土地ヲ特別ノ事情デ
欲シガッテ、是非トモ所有シタイト云フ
者ニ依ッテ取得シタル第三取得者ノ利
益ヲ保護スル爲ニ設ケラレタル所ノ佛
蘭西民法ニ於テ誇リノ規定デアル、法
制ノ發達シタル獨逸ニ滌除ノ規定ガナ
イト云フコトハ、法ノ缺點デアルトシ
テ、學者ヤ實際家ガ、今日言ウテ居ル
點デアリマス、其滌除ノ規定ト云フノ
ガ民法ニアルノヲ、抵當證劵デ特ニ削
除シナケレバナラヌト云フコトハ少シ
モナイ、政府委員ハ實際行ハレテ居ナ
イカラ之ニ入レナイト云フコトヲ言ハ
レルガ、削ラナクテモ、置イテモ少シ
モ差支ナイ、之ヲ排斥シテ、全然適用
セズトセラレタト云フコトハ、土地所
有者ノ爲ニ非常ナ不利益デアルカラ、
ドウシテモ其點ハ削除シテ、此滌除ノ
適用ト云フモノハ土地ノ所有者、第三
取得者ニ許シ、又地上權永小作權ヲ有
スル者ニモ許スト云フコトガ、最モ必
要デアラウト思フノデアリマス、〓
申上ゲタイコトガ澤山アリマスケレド
モ、餘リ長ク申上ゲマスコトモ非常ニ
御迷惑デアリマスガ、大體贊成ノ理由
ト致シマシテハ、今申シマシタヤウナ
次第デアッテ、滌除ノ規定ヲ復活シテ、
三月ヲ六月ニスル、二年ノ利息ノ滯リ
ニ依ッテ期間ガ來ルトアルノヲ三年ト
シテ、之ヲ緩和シテ貰フト云フコトガ
最モ必要デアル、又抵當權ノ所持人ガ
何人デアルト云フコトヲ、常ニ明ニシ
テ置クコトガ、取引ノ確實ヲ保護スル
上ニ於テモ、債務者ノ便宜ノ上カラモ
必要デアルト、斯ウ思ッテ牧野君ノ修正
案ニ贊成スル次第デアリマス
ソレカラ尙ホ大藏當局ニ最後ニ御願
ヒシテ置キタイコトハ、今日ハ地方ガ
植林其他ニ付テ非常ニ努力ヲシテ、植
林ト云フコトハ盛ニナッテ來テ居ルノ
デアリマス、隨テ中々昔ノ天然林ノ如
クナラズ、植林ニ金ヲ掛ケテ居ル、所
ガ今日ハ御承知ノ通リ、木材ガ非常ニ
下ッタノデアリマスカラ、山林ヲ抵當ニ
シテ金ヲ借リタイト云フ地方ノ希望ハ
大變多イノデアリマス、所ガ勸業銀行
ナドハ、山林ハ本店扱ニナッテ支店デハ
之ヲ取扱ッテ吳レマセヌガ爲ニ、少シ東
京ヨリ離レタ土地ニ於テ、山林ヲ抵當
ニ入レテ勸業銀行カラ金ヲ借リルト云
フコトハ、殆ド不能デアル、ドウカ是
ハ一ツ山林ノ抵當モ、各支店ニ於テ取
扱フト云フコトガ、此法案マデモ拵ヱ
テ何處マデモ金融ヲ圓滑ニシヨウト云
フコトカラ言ッテモ、當然ノ事デアリマ
スカラ、是非サウ云フ取扱ニナルト云
フコトヲ大藏當局ト致シマシテモ、勸
業銀行ニサウ云フ風ニ督勵サレンコト
ヲ御願ヒスル次第デアリマス
ソレカラ終リニモウ一言申上ゲテ置
キマスガ、抵當證劵ノ裏書ト云フコト
ハ各國ノ法制ニナイ、今マデノ日本ノ
法律ト云フモノハ、皆外國ノ法律ヲ模
做シテ居ル、先進國デ何十年ト使ッテ先
ヅ支障ノナイ法律ヲ其儘日本ニ持ッテ
來テ模倣スル、ダカラ大體ニ於テ不都
合ハナイ、唯民情風俗ノ違フ外國ノ法
律ヲ其儘日本ニ使フカラ、日本ノ國情
ニ適セヌト云フ不便ハアリマスケレド
モ、法律其モノヽ適用ニ於テ、非常ニ
行詰ルト云フコトハ今日マデナカッタ、
所ガ此抵當證劵ノ裏書ト云フ事ハ、外
國ノ法令ニハナイ、初メテ今度斯ウ云
フ事ヲ企テラレタノデアリマス、而モ
此抵當證劵ト云フモノハ、手形ナド
ハ非常ニ違フノデアリマス、卽チ手形
ト云フモノハ、手形其モノニ權利ガア
ルノデアルガ、抵當證劵ハ權利デハナ
イ、他ニ抵當權ト云フ物權ガアル、其
物權ノ輾轉ダケヲ此證劵デヤル、其輾
轉ニ證劵ヲ必要トスルト云フダケデア
ルノデアリマス、ソレニ付テ、裏書人
ニ重大ナル責任ヲ負ハサレタト云フコ
トニ依ッテ、非常ニ實際ニ於テハ色々ト
不都合ノ事ガ出テ來ル、不都合ノ事ガ
出テ來ル結果トシテ、今言フ通リニ裏
書人ハ擔保責任ヲ負ハヌヤウニ、免責
文句ヲ書クト云フコトニナルカラ、サ
ウスレバ裏書人ヲ保護スルニ熱中セラ
レテ、債務者ノ利益ヲ犧牲ニスルヤウ
ナ本法案ハ之ヲ緩和シテ改正セラレル
コトガ必要デアラウト思フノデアリマ
ス、是ダケヲ申上ゲテ置キマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912563X01019310305&spkNum=5
-
006・荒川五郎
○荒川委員長 是デ討論ハ終結致シマ
シタ、是ヨリ直ニ採決ニ入リマス、牧
野君ノ修正ハ第十五條ニ「前項ノ讓渡
ハ之ヲ登記スルコトヲ要ス」ト云フ第
二項ヲ加ヘルコト、第二十五條ニ罰
項ノ元本ノ支拂アリタルトキハ之レヲ
登記スルコトヲ要ス」ノ第二項ヲ加フ
ルコト、竝ニ第二十六條ノ「二年」ヲ「三
年」ニ改メルコト、第三十條ノ「三月ㄴ
ヲ「六月」ニ改メルコト、以上ノ修正ノ
外、第二十四條ヲ全文ヲ削リ、ソレヲ
削ル結果トシテ各條項ヲ繰上ゲ、且ツ
條文內ノ引用箇條ヲソレニ應ジテ訂正
スルコト、斯ウ云フノデアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912563X01019310305&spkNum=6
-
007・牧野賤男
○牧野委員 只今ノ二十六條ノ修正デ
アリマスルガ、二年ヲ三年ニスルト云
フコトハ、前段ノ二年デス、卽チ利息
ノ支拂ヲ怠リタル場合ノ二年デ、後段
ノ二年ハ修正シナイノデス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912563X01019310305&spkNum=7
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008・荒川五郎
○荒川委員長 左樣、只今牧野君ノ言
ハレタ通リ前段ノ二年デアリマス
以上牧野君ノ修正案ニ御同意ノ諸君ハ
御起立
[贊成者起立〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912563X01019310305&spkNum=8
-
009・荒川五郎
○荒川委員長 起立七名······(「八名デ
ス」ト呼フ者アリ)······只今ノ起立員數
ハ委員ガ辭任交代ニナリマシタコトガ
委員長ニ屆ケテアリマセヌカラ、頭數
ハ八ツアリマシタケレドモ、委員數ハ
七人ト心得テ七人ト申シマシタガ、今
承レバ委員ノ補闕ガアッタノデアリマ
ス、其補闕ヲ認メマシテ、只今ノ起立
八名、少數ニ依ッテ否決サレマシター
只今ノ箇條原案ニ付テ、原案ニ贊成ノ
御方ノ起立ヲ求メマス
〔贊成者起立〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912563X01019310305&spkNum=9
-
010・荒川五郎
○荒川委員長 起立九名殘餘ノ各條項
ハ政府原案ニ御異議アリマセヌカ
[「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912563X01019310305&spkNum=10
-
011・荒川五郎
○荒川委員長 御異議ナイ、御異議ナ
イト認メマス、ソレデハ抵當證劵法案
ハ全部原案ノ通リ決定致シマシタ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912563X01019310305&spkNum=11
-
012・牧野賤男
○牧野委員 少數意見ノ留保ヲ致シテ
置キマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912563X01019310305&spkNum=12
-
013・荒川五郎
○荒川委員長 承知致シマシタ、以下
不動產登記法中改正法律案、民事訴訟
法中改正法律案、競賣法中改正法律案、
民事訴訟用印紙法中改正法律案、日本
勸業銀行法中改正法律案、農工銀行法
中改正法律案、北海道拓殖銀行法中改
正法律案、國稅徵收法中改正法律案以
上一括シテ政府原案ノ通リ御異議アリ
マセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912563X01019310305&spkNum=13
-
014・荒川五郎
○荒川委員長 御異議ガナイト認メテ
政府原案ノ通リ決定致シマシタ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912563X01019310305&spkNum=14
-
015・磯部清吉
○磯部委員 一寸此際、只今名川君カ
ラ御話ガアリマシタケレドモ、今一言
申上ゲテ置キタイト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912563X01019310305&spkNum=15
-
016・荒川五郎
○荒川委員長 一寸御待チ下サイ、ソ
レカラ更ニ貯蓄銀行法中改正法律案、
是モ原案ニ御異議ガナイト認メテ宜シ
ウゴザイマスカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912563X01019310305&spkNum=16
-
017・荒川五郎
○荒川委員長 御異議ナシト認メマス
是デ只今マデ審議中ノ諸案ハ總テ決定
致シマシタ、此際一言御挨拶ヲ申上ゲ
マス、本委員會ハ、後ニ送ラレタ無盡業
法改正案モアリマスガ、重要ナ法律案
タル諸案ハ、前後十囘ニ亙ッテ委員各位
ニ非常ニ熱心ニ國務ヲ議セラレ、眞摯
ナル態度ヲ以テ勉强シテ論議サレ、今
日ヲ以テ討議決定ニ至ッタコトハ、洵ニ
敬意ヲ表スル所デアリマス、玆ニ諸案
ノ決定ニ當リマシテ、諸君連日ノ勞ヲ
謝シマス、是ヨリ無盡業法改正法律案
ノ大體ノ說明ヲ聽キタイト思ヒマス、
少シ時刻ガ過ギマシタガ、ドウゾ此際
御進行ヲ願ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912563X01019310305&spkNum=17
-
018・板谷順助
○板谷委員 議事進行ニ付テ、只今ノ
勸業銀行法ニ關聯シテ希望ヲ述ベタイ
ト云フ申出ガ今アッタノデアリマスガ、
極メテ簡單デアリマスカラ、此際一寸
御許シヲ願ヒタイ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912563X01019310305&spkNum=18
-
019・荒川五郎
○荒川委員長 ソレデハ簡單ニ、磯部
君ニ敬意ヲ表シテ御許シヲ致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912563X01019310305&spkNum=19
-
020・磯部清吉
○磯部委員 私ハ此處デ勸業銀行ノコ
トニ付テハ、只今名川サンカラ懇々政
府ニ御希望ガアリマシタカラ、今更申
上ゲル必要ハナイノデアリマスガ、私
ハ勸業銀行ノ業務ニ付テハ、遺憾ヲ持ツ
テ居ルノデアリマス、名川君ト私ハ感
ヲ同ジウシテ居ルト思フ、京都府ニ農
工銀行ノアッタ時分ニハ、山林ノ金融ニ
付テハ、非常ニ圓滿ニ、早ク取引ガ出
來タ、所ガ勸業銀行ニ農工ガ合併サレ
テカラ以來ハ、大キナ金ハ本行直接ニ
融通ヲ致シマスカラ宜イケレドモ、中
以下ノ少額ノ金ハ、全ク勸業銀行ノ金
ガ途絕シテシマッタ、恐ラク勸業銀行ノ
支店ノアル所ハ同感デアラウト思フ、
全ク斯ウ云フ時代ニ、資金ノ融通ヲ得
ル途ガナイノデアリマスカラ、之ヲド
ウカシテ政府當局カラ忠告シテ戴イテ
支店ニ同ジヤウニヤッテ貰ヒタイ、サウ
スレバ出張ノ旅費モ少クテ、事ハ早ク
テ、非常ニ金融上圓滿ニ行クト思フノ
デアリマス、申込ミヲシテカラ六箇月
モ經タヌト行カヌ、六箇月待タヌト、
金融ノ取引モ出來ナイヤウナ結果ガ、
從來往々アルノデアリマス、實際地方
民ハ、其點ヲ非常ニ遺憾トシテ居ルノ
デアリマス、其支店ニ取扱ッテ貰ヘバ、
一箇月乃至二箇月デ取引ガ濟ムト思ヒ
やっ、此點ハ特ニ名川君カラモ御希望
ガアッテ、今更申上ゲル必要ハナイノデ
アリマスガ、切ニ此事ヲ地方民ハ懇望
シテ居リマスカラ、政府當局ニ於カレ
テハ吾々ノ意ノアル所ヲ忠告願ヒタ
イ速カニ支店ニ取扱ハセルヤウニ願
ヒタイ、重ネテ私ハ申上ゲテ置キマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912563X01019310305&spkNum=20
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021・荒川五郎
○荒川委員長 ソレデハ先ヅ一應此程
度デ措キマシテ、午後一時半ニ開クコ
トニ致シマス、是デ休憩致シマス
午後零時二十一分休憩
(休憩ノ儘散會)発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912563X01019310305&spkNum=21
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