1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
特別會計に於ける營繕費に關する法律案（政府提出）
特別會計の恩給負擔金を一般會計に繰入るることに關する法律案（政府提出）
賠償金特別會計法廃止法律案（政府提出）
昭和四年法律第二十六號中改正法律案（神戸商業大學移轉改築費に關する件）（政府提出）
京都高等工藝學校移轉改築費に充用したる金額の補填に關する法律案（政府提出）
製鐵所特別會計法中改正法律案（政府提出）
簡易生命保險特別會計法中改正法律案（政府提出）
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會議
昭和六年二月十二日（木曜日）午前十一時三分開議
出席委員左の如し
委員長 鈴木寅彦君
理事 服部英明君
理事 枡谷寅吉君
理事 喜多孝治君
理事 宮澤裕君
齋藤太兵衞君 篠田有徳君
北原阿智之助君 淺川浩君
牛場清次郎君 西村金三郎君
高橋守平君 當眞嗣合君
生方大吉君 船田中君
木村清治君 倉元要一君
豐田收君 津崎尚武君
松山常次郎君
同月三日委員淺原健三君、鈴木梅四郎君及鈴木英雄君辭任に付其の補闕として中田ろく郎君、鈴木吉之助君及川口義久君を議長に於て選定せり
同月四日委員中田ろく郎君辭任に付其の補闕として堀部久太郎君を議長に於て選定せり
出席政府委員左の如し
大藏政務次官 小川郷太郎君
大藏參與官 勝正憲君
大藏省理財局長 冨田勇太郎君
大藏書記官 川越丈雄君
大藏書記官 關原忠三君
本日の會議に上りたる議案左の如し
特別會計に於ける營繕費に關する法律案（政府提出）
特別會計の恩給負擔金を一般會計に繰入るることに關する法律案（政府提出）
賠償金特別會計法廃止法律案（政府提出）
昭和四年法律第二十六號中改正法律案（神戸商業大學移轉改築費に關する件）（政府提出）
京都高等工藝學校移轉改築費に充用したる金額の補填に關する法律案（政府提出）
製鐵所特別會計法中改正法律案（政府提出）
簡易生命保險特別會計法中改正法律案（政府提出）発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912783X00319310212&spkNum=0
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001・鈴木寅彦
○鈴木委員長 只今カラ開會致シマ
ス、十一時十五分迄休憩致シマス
午前十一時四分休憩
午後二時三十分開議発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912783X00319310212&spkNum=1
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002・鈴木寅彦
○鈴木委員長 午前ニ引續キマシテ會
議ヲ開キマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912783X00319310212&spkNum=2
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003・松山常次郎
○松山委員 初メニ私ハ賠償金特別會
計法ノ廢止案ニ付テ質問ヲ致シタイト
思ヒマス、是ガ廢止セラレタ結果一般
會計ニドウ云フ影響ヲ與ヘルカ、卽チ
ドレダケノ剰餘金ガアッテ、ソレガ一般
會計ノ方デ使ヘルコトニナルカ、出來
マスナラバ今日マデ賠償金特別會計法
ノ下ニ於テ、獨逸カラ來タ金ガドウ云
フヤウニ使ハレテ來テ、今日其金ガド
ウ云フヤウニ殘ッテ居ッテ、一般會計ノ
方ニドレダケ繰入レラレルコトニナル
カ、其狀況ヲ御說明ヲ願ヒタイト思フ
ノデアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912783X00319310212&spkNum=3
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004・勝正憲
○勝政府委員 賠償金特別會計法廢止
ノ結果、昭和六年度ニ於キマシテ一般
會計ニ繰入レラレル金ノ總額ハ二千二
萬二千四百十一圓デアリマス、其內譯
ヲ申シマスト、雜收入トシテ七百五十
四萬四千百九十二圓、ソレカラ特別會
計ノ殘金ノ繰入ト致シマシテ千二百四
十七萬八千二百十九圓ト云フコトニ
ナリマス、ソレカラ尙ホ將來ニ於キマ
シテハ、昭和七年度ニ於キマシテハ六
百三十三萬五千圓-是ハ「ラウンド·
ナンバー」デゴザイマス、ソレカラ八
年度ニ於キマシテハ五百七十一萬五千
圓、ソレカラ九年度ニ於キマシテハ五
百七十一萬三千圓ト申シマシタヤウ
ニ、約五百六七十萬圓ト云フ金ガ引續
イテハイリマシテ、結局昭和デ申シマス
ト.昭和四十年度マデ此金ハ引續クコ
トニナッテ居リマス、併シ他ノ機會ニ於
キマシテ大藏大臣カラモ御說明申上ゲ
テ居リマス通リニ、一時急場ヲ凌グ爲
ニ此金ヲ一般會計ニ繰入レルコトニ致
シマスケレドモ、政府ノ考ト致シマシ
テハ、之ヲ長イ間引續イテ繰入レルト
云フ考ハナイ、將來財政ノ許ス最近ノ
機會ニ於テ、此繰入ト云フモノハ停止
シタイト云フ希望ヲ持ッテ居リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912783X00319310212&spkNum=4
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005・松山常次郎
○松山委員 能ク分リマシタ、ソコデ
政府委員ノ說明ニ依リマシテ、是ハ極
ク一時的ノコトデアルト云フ御說明デ
ゴザイマシタガ、今日總額ニ於テ二千
萬圓ト云フ金ガアルモノガ、是ガ一般
會計ニ繰入レラレルト云フコトニ付テ
ハ吾々ノ見ル所デハ昭和五年度ニ於テ
モ少カラヌ歲入ノ缺陷ガアルト云フコ
トヲ見テ居ルノデアリマスガ、昭和六
年度ニ於テモドウシテモ是ガ出テ來
ル、吾々ハ歳入ノ見積ガ過大デアルト
斯ウ見テ居ルノデアリマス、ドウシテ
モ私共ノ見ル所デハ政府ノ此廢止ヲス
ルト云フコトハ、單ニ之ヲ廢シテ一般
會計デヤルト云フノデナクシテ、餘ッテ
居ル金ヲ其方ニ流用スルト云フ政府ノ
肚デアルト私共ハサウ見テ居ルノデ
ス、サウナッテ來ルトドウシテモ私共ハ
此政府ノ歲入缺陷ト云フモノハ金解禁
カラ來テ居ル、ダカラ金解禁問題ニ付
テモウ少シク事情ヲ御話シナケレバナ
ラヌト、私共ハ考ヘテ居ルノデアリマ
ス、自然私ノ質問ガ其方ニ亙ッテ行キマ
スカラシテ、其意味ニ於テドウカ御答
ヲ願ヒタイト思ヒマス
ソレニ付キマシテハ主トシテ私ガ質
問致シタイノハ大藏大臣ニ向ッテデア
リマス、ト云フノハ大藏大臣ハ屢〓此問
題ニ付テ、書物ニ依ッテ、或ハ演說ニ依ツ
テ意見ヲ發表セラレテ居リマスカラ、
大藏大臣ニ直接御聽シタイノデアリマ
スケレドモ、大藏大臣ハ御多忙デ方々
ニ行カナケレバナラヌ事情モアリマセ
ウカラ、之ヲ望ムト云フコトハ無理デ
アラウト思ヒマス、數字ニ關係スルコ
トデアリマスカラ.是ハ別ニ大藏大臣
デナクトモ、ドナタデモヤリ得ルコト
斯ウ思ヒマスカラ、勝參與官ニ御尋
ヲ致シタイト思フノデス、若シ御答辯
ノ都合ニ依リマシテ、十分私ガ納得ス
ルコトガ出來ナケレバ、大藏大臣ノ御
答辯ヲ煩サナケレバナラヌコトニナル
カモ知レナイト思フノデアリマス、其
意味ニ於テドウカ御答辯ヲ願ヒタイト
思フノデアリマス、ソレデ金解禁問題
ノ少シク根本問題ニ亙ルノデアリマス
カラ、ドウカ私共ノ能ク分ルヤウニ御
說明ヲ願ヒタイト思フノデアリマス
昭和四年ノ六月二十九日ト云フ日ヲ
私ハ選ンダノデゴザイマス、其日ニ於
ケル對米爲替相場ハ四十三弗六五デア
ルト私ハ承知シテ居ルノデアリマス、
私ハ此問題ヲハッキリト論議致シタイ
ノデアリマスカラ、若シ政府ノ方デハツ
キリシタ數字ガ分ルナラバ、後デ之ヲ
訂正シテ戴キタイト考ヘマスガ、大體
ニ於テ其數字ニ大差ナイ、私ハ相當ニ
ソレヲ調ベテアルノデゴザイマス、其
數字ノ下ニ論議ヲ進メタイト思ヒマ
ス、昭和四年六月二十九日ノ對米爲替
相場ハ四十三弗六五デアル、私ガ何故
ニ六月二十九日ヲ選ンダカト申シマス
レバ、田中內閣ガ總辭職ノ決心ヲ致シ
マシタノハ二十八日ノ午後三時ノコト
デアリマス、故ニ二十九日ノ新聞ニ現
レタル對米爲替相場ハ、田中內閣總辭
職ノ影響ガマダ現レテ居ナイ、卽チ田
中內閣カラ民政黨ノ內閣ニ至ル、其政
變ノ影響ガマダ現レテ居ナイ最終ノ時
ヲ採ルト云フ意味ニ於テ、二十九日ヲ
私ハ選ンダノデゴザイマス、四十三弗
六五ト云フモノガ對米爲替相場デアル
トスルナラバ、其日ニ於ケル日本ノ通
貨ノ價値、通貨百圓ノ價値ハ金ノ目方
ニシテ十七匁七分ニ當ルト、斯ウ私ハ
計算ヲ致シテ居ルノデアリマス、卽チ
百圓ハ平價ニ於テハ四十九弗八四六デ
アル、ソレガ金二十匁ナノデスガソ
レガ四十三弗六五ニ下ッテ居レバ、其時
ニ於ケル通貨ノ價値ハ十七匁七分デア
ル、其昭和四年六月ノ二十九日ニ於ケ
ル通貨ノ價値十七匁七分ガ、昭和五年
一月十一日ニハ金二十匁ニ引上ゲラレ
タノデアリマスカラ、此六箇月ト十四
日ノ間ニ通貨ノ價値ガ一割三分引上ゲ
ラレタト私ハ信ジテ居ルノデゴザイマ
スガ、是ハ今後私共ガ色々論議シテ行
キマスル基礎ニナリマスノデ、此事ヲ
政府委員ニ於テ御承認下サルカ、若シ
御承認下サルナラバ、其事ニ付テ論議
ヲ致シテ見タイト思フ、初メ其點ヲ御
尋致シテ置キマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912783X00319310212&spkNum=5
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006・勝正憲
○勝政府委員 申上ゲマス、昭和四年
六月二十九日ノ對米爲替ノ相場ハ四十
三弗四分ノ三デアリマスカラ、四十三
弗七五デゴザイマス、少シ違ヒマスガ、
大體同ジデゴザイマス、ソレカラ昭和
五年一月十一日ノ相場ハ四十九弗四分
ノ一デ、四十九弗二五ニナリマス、之
ヲ金ノ純分ニ換算致シマシタナラバ
略〓御申述ノ通リニナラウト思ヒマス、
今此處デ算盤ヲ採ッテ居リマセヌカラ、
正確ニハ分リマセヌガ、略、御申述ノ通
リニナルダラウト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912783X00319310212&spkNum=6
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007・松山常次郎
○松山委員 ソレダケノ事ガ分リマス
レバ、後ノ話ヲ進メタイト思ヒマスガ、
數字ハ大シテ變リマセヌカラ、ハッキリ
シタ數字ハ又後デ御答下スッテ結構デ
アリマス、私共ノ見ル所デハ斯ウ云
フコトモ亦分リ切ッタ事デゴザイマス
ガ、論議ノ基礎ニナル事デアリマスカ
ラ、ドウカ御答ヲ願ヒタイト思ヒマス、
通貨ノ價値ガ一割三分引上ゲラレマス
レバ、其結果ドウナルカト云ヘバ、債
權債務ノ關係ガ一割三分ダケ增加スル
譯デアル、故ニ借手ハ一割三分損失シ、
貸手ハ一割三分ダケ利得ヲ得ルモノ
ト、斯ウ云フコトニナルト私共ハ考ヘ
テ居ルノデゴザイマスガ、政府當局ニ
於テモサウ御考ニナリマスカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912783X00319310212&spkNum=7
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008・小川郷太郎
○小川政府委員 一寸私、色々御議論
ヲ爲替相場カラ出發シテ居ル風ニ承リ
マシタカラ、先以テ御答ヲ致サナケレ
バナラヌノデアリマスガ、御質問デハ
昭和四年六月二十九日ノ對米爲替ガ四
十三弗四分ノ三ノ所ヲ取ッテ、其處カラ
出發セラレルヤウデアリマスガ、ソレ
ハ御承知ノ通リニ前內閣ノシマヒノ頃
ノ一番下ッタ日デアリマシテ、ソレガ長
ク續イテ居ルノデアリマセヌ、大體御
承知ノ通リニ對米爲替相場ヲ見マスレ
バ、其上ニ居ッタトモ見ナクチヤナラ
ヌ、昭和四年ノ一月ノ初メハ四十六弗
程デアリマシタガ、一月ノ末カラ二月
ニナリマシテ四十五弗五、ソレカラ三
月ノ初頃カラ致シテ、大體四十四弗半
ヲ上下シテ居リマシテ、ソレカラ六月
ニナリマシテ其四十四弗半ト四十五弗
ノ間ヲ往來シテ居ッタモノガ下ッテ來タ
ノデアリマス、若シ物價ニ影響スルト
カ何トカ云フノナラバ、昭和四年ノ六
月ノ二十九日ト云フ所ヲ取ッテ議論ス
ルコトハ、聊カ穩當デナイヤウニ思ハ
レマス、若シ何割トカ云フ步合ヲ玆ニ
割出サレルナラバ、私ハモウ少シ前ノ
平生ノ多クノ場合ニ於テ、爲替ノ止マッ
テ居ッタ所ヲ御捉ヘニナル方ガ、正確デ
ハナイカト思フノデアリマス、是ハ割
合論ノ基礎デアリマスカラ一寸御斷リ
シテ置キマス
ソレカラ次ノ御質問ハ、此爲替相場
ガ上ッタト云フコトヲ、直チニ貨幣價値
ノ騰貴デアルト論斷セラレマシテ、ソ
レデ債權債務ノ關係ニ及バレタヤウデ
アリマス、其考ニ付キマシテモ私ハ異
論ノアルコトデアルト思ヒマス、デ御
承知ノ通リニ爲替相場ト云フノハ、若
シ貨幣價値論カラ言ヘバ對外價値ノ
上ッタモノデアリマス、ソレデアリマス
カラシテ、外ノモノガ變ラヌト見タナ
ラバ、算盤ノ關係ダケデ爲替相場ガ上ツ
タト云フコトハ、國際貿易ニ關シテ居
ル所ノ品物ニハ影響ヲ及ボスト思ヒマ
ス、併シソレガ日本ノ內地ニ生產サレ
內地ニ消費セラレル物ニマデモ、ソレ
ト同ジヤウニ物價ガ影響ヲ受ケル、爲
替相場ガ一割上レバ、內地ニ生產サレ
ル物、內地ニ消費セラレル物マデモ一割
カラ下ルト云フ、斯ウ云フ風ニ論斷セ
ラレルノハ、私ハ是モ正確デハナイト
考ヘテ居リマス、ソコデ貨幣價値ノ騰
貴ト云フコトデ一割騰貴シタノモアリ
マセウガ、皆一割騰貴シタト云フ風ニ、
爲替相場ノ影響ヲ論斷スルト云フコト
ハ、私ハ承認致シマセヌ、價値論デサ
ウ云フコトヲ御話ニナルナラバ、ソレ
ハサウ云フ議論ガアリマセウケレド
モ、之ニ付テ日本ノ今日ノ場合ニサウ
云フ議論ハ當嵌ラヌト思フノデアリマ
ス
ソレデ債權債務ノ關係ガドウナルカ
ト斯ウ云フコトデアリマスガ、若シ只
今ノヤウナ御議論ヲ爲サイマスレバ、
過去ニ於キマシテ爲替ガ始終變ヲテ居
ルノデアリマス、嘗テハ三十八弗二分
ノ一ニモナリ、ソレガ五十弗以上ヲ突
破シタコトモアルノデス、其廣イ範圍ヲ
步イテ行ク間ニ、アナタノ御議論ヲ以
テ致シマスト、始終債權債務ノ關係ヲ
根本的ニ混亂セシメテ居ルモノデアル
ト言ハナケレバナラヌト思フノデアリ
やっ、ダカラサウ云フ御議論ハ一寸私
ハ直チニ御承認申上ゲル譯ニ行キマセ
ヌ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912783X00319310212&spkNum=8
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009・松山常次郎
○松山委員 今小川政務次官ノ御話ノ
アッタコトハ一應御尤ト思ヒマス、併ナ
ガラ此爲替相場ノコト、隨テ貨幣價値
ト云フコトニ付テハ、私ノ考ヘテ居ル
コトハ斯ウナノデス、今小川政務次官
ハ昨年ノ一月頃、-一昨年ノ一月、
昭和四年ノ一月頃ノコトヲ御話ニナリ
マシタガ、本當ニ嚴格ニ之ヲ言ヘバ
更ニ詳細ニ言フナラバ、大正六年九月
金輸出禁止ニナッタ時以來ノコトヲスッ
カリ平均シテ見ナケレバナラヌ、页一
言フナラバ其平均デモイケナイ、其當
時ニ於ケル貸借關係ト云フモノガ、例
ヘバ四十三弗ノ貸借關係ト四十五弗ノ
貸借關係ガドレダケニ變化ガ行ハレタ
カト云フ、總テヲ其分ニ付テ「レート」
ヲ付ケナケレバナラヌ、サウ云フコト
ニナリマスト、是ハ到底其實際ニ於テ
特別ノ委員デモ拵ヘテ、ズット調ベレバ
-或ハ政府ノ手ヲ以テ調ベレバ分ル
カモ知レマセヌガ、到底私共其手ヲ持ツ
テ居ラナイ者デハサウ云フコトハ分ラ
ナイノデアリマス、故ニ私ハ玆ニ特ニ六
月二十九日ヲ選ンダト云フコトハ、勿
論二十九日ト云フ其日ノ爲替相場ガ
貸借關係ヲ考究スル最モ公平ナ、中庸
ヲ得タ數字デアルト言フノデハアリマ
セヌ、田中內閣ノ終リカラ-詰リ田
中內閣ガ倒レテ今度ノ民政黨內閣ニナ
ルト云フコトハ、未ダ大命ガ降下シナ
イデモ、直グ世間ノ人ノ頭腦ノ中ニ來
ル、民政黨ノ內閣ニナレバ、今マデノ
主張ニ徵シ舊平價解禁ヲヤルト云フコ
トハ、是亦想像セラレマスカラ、濱口
內閣ニナルマデズット爲替相場ガ上リ
掛ケタ特別ノ場合デアル、ソレガ七月
ノ二日デアリマシタカ、成立ノ時ニ於
テハ、既ニ影響ガ現レテ居ルカラ、其
影響ノ現レテ居ラナイ所ノ七月二十九
日ヲ取ッタ、私ハソレデ其日ニ於ケル爲
替相場ガ其當時ニ於ケル貨幣價値ヲキ
メルニ最モ公平ナ、中庸ヲ得タ數字デ
アルト言フノデハアリマセヌ、之ヲ私
共政治的ニ考ヘテ、其內閣ノ政治上ノ影
響ガ-政策ノ影響ガ現レルト云フコ
トヲ〓究スルノニ、私ハ特ニ六月二十
九日ト一月十一日ト云フ此二ツノ日ニ
付テ〓究ヲスルノデアリマスカラ、ソ
レガ適當ナ中庸ヲ得タ數字デアルトカ
何トカ云フコトニ付テハ別問題トシ
テ、只此二ツヲキメナケレバ、非常ニ
複雜ナル關係ノモノヲ一般論デ大體此
位デ宜カラウト云フヤウナコトヲ言ツ
テ居ッテハ話ガキマリマセヌ、ソレデス
カラ私ハ六月二十九日ト一月十一日ト
云フ二ツノ日、ソレガ適當デアルカナ
イカト云フコトニ付テハ別ノ問題ニシ
タイト思ヒマス、是ハ別ニ論議スルコ
トニシテ、六月二十九日ト一月十一日
ト此二ツノ日ニ付テ私共ノ〓究ヲ進メ
テ行クト云フコトヲ御承認ヲ願ヒタイ
ノデアリマス
ソレカラ貨幣價値ノ問題デゴザイマ
スタ、實際ノ事實ニ於テハ日本內地ニ
於テハ兌換ヲセラレマセヌカラ、紙幣
ト金貨トノ聯絡ト云フモノハアリマ
セヌカラ、是ハ分リマセヌケレドモ、
例ヘバ六月二十九日ニ於テ對米爲替相
場ガ四十三弗六分五厘デアル、私共
百圓ノ金ヲ米國ニ送ルナラバ、向フデ
四十三弗六分五厘ニ相當スル金ヲ受取
ルコトガ出來ル、輸出ハ禁止セラレテ
居ルケレドモ、輸入ハ禁止セラレテ居
リマセヌカラ、其輸送料ダケソレカラ
差引イタダケノモノハ、大體日本ニ於
テ私共受取ルコトガ出來ルノデアリマ
ス、百圓ノ金ヲ持ッテ居ルナラバ、ソレ
ダケノ金ノ目方-爲替相場ニ相當ス
ル金ノ目方ヲ受取ルコトガ出來ルノデ
アリマスカラ、私共ハ爲替相場ニ依。リ
テ換算シタルモノガ、其日ニ於ケル貨
幣ノ價値デアルト定メルコトハ敢テ差
支ナイト思フノデアリマス
其前ニ其當時金輸出禁止中斯ウ云フ
事實ノアルコトハ政務次官モ御承知ダ
ト思ヒマス、橫濱正金銀行ニ於テ齒科
醫トカ金細工ヲスル所ノ工業用ノ材料
トシテ、橫濱正金銀行ニ於テ金ノ賣下
ヲシテ居ル場合ニ、貨幣法ノ規定ニ依
リ一匁五圓ト云フ割合デ賣ッテ居ッタケ
レドモ、日本ノ貨幣價値ガ下ルニ從、ツ
テ一匁五圓デ買ッタ者ガ得ヲ致シマス
カラ、段々需要ガ多クナッテ、ソレマ
デ平均年ニ二千萬圓位ノ需要デアッタ
モノガ三千萬圓ニ殖ヱタ、ソレデ驚イ
テ急ニ爲替相場ニ準據シテソレヲ賣下
ゲルト云フコトニナッタ、一匁六圓五
十錢位マデ金ノ價値ガ上ッテ居ル筈デ
アリマス
是カラ言ッテモ日本ノ當時ノ貨幣價
値ト云フモノハ、爲替相場ニ依ッテ算定
スルノガ適當デアルト私ハ思フノデア
リマス、併ナガラ購買力ト云フ點ニナ
リマスト、今政務次官モ御話ニナッタ通
リニハ海外輸出貿易品ニ於テハ直グ爲
替相場ノ影響ヲ受ケルケレドモ、國內
デ產出シ、國內デ消費スル物ニ至ッテハ
直グ影響ヲ受ケマセヌ、旣ニ貨幣價値
ガ爲替相場ニ準據シタモノデアルト云
フナラバ、例ヘバ百圓ガ十七匁七分ト
云フ金ノ量ガ定ッタ以上ハ、若シ國內ニ
於ケル生產費ノ要素、例ヘバ租稅ガ
直グ下ラナイ、運賃ガ直グ下ラナイト
云フ、色々ノ事情ニ依ッテ生產費ガ直
グ下ラナイカラ、其物價ハ直グ下ルト
云フ譯ニハ行キマセヌケレドモ、玆
金モ一ツノ貨物、商品デアリマスカ
ラ、此外ノ物價ガ大體ニ於テ貨幣價値
ガ一割三分上レバ、物價ハ一割一分五
厘下落スルト云フ原則ニ-之ニ假ス
ニ相當ノ時ヲ以テスルナラバ、其原則
ニ向ッテ大體ニ於テ動イテ來ルト云フ
コトハ間違ナイ事實デアルト私ハ信
ズル、此意味ニ於テ、私共ハ勿論今申
シマスルヤウニ、貿易品ノヤウニ、純
國內的ノ商品ノ、物價ハ直グ下落ハ致
シマセヌケレドモ、大體ニ於テ假ス
ニ時ヲ以テスルナラバ、其原則ニ向ッテ
移ッテ來ルモノデアルト私ハ信ズルノ
デアリマス
此意味ニ於テ、私共ハ此貸借關係ノ
コトニ付テ考ヘルニ付テ、貨幣價値ガ
旣ニサウ云フヤウニ一割三分引上ゲラ
レルト云フコトデアルナラバ、之ニ依ツ
テ債權、債務ノ量ガ一割三分增加スル
モノデアル、勿論今申シマス購買力ト
云フモノハ、直グソレニ依ッテ動キマ
セヌケレドモ、相當或ル品物ニ對シ
テハ、相當ノ期間ヲ經ナケレバ變化ス
ルモノデハナイガ債權債務ノ量ガ、例
ヘバ之ヲ金ノ目方ニシテ申シマスルナ
ルパ、昭和四年ノ六月二十九日ニ於ケ
ル百圓ノ金ノ背後ニハ、金ノ目方十七
匁七分ノ金ガ附イテ居ル、所ガ昭和五
年ノ一月十一日ニハ二十匁ノ金ガ附イ
テ居ルト云フ事實ニ決シテ間違ナイト
思フノデアリマス、此意味ニ於テ通貨
ノ價値ガ一割三分引上ルナラバ、債權
債務ガ一割三分增スモノデアルト云フ
コトニ付テハ、私ハ間違ガナイト思フ
ノデアリマスガ、モウ一度小川政務次
官ノ御意見ヲ承リタイト思フノデアリ
マス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912783X00319310212&spkNum=9
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010・小川郷太郎
○小川政府委員 尙ホ松山君ニ一應御
斷リ致シマスガ、六月二十九日ヲ御取
リニナッテ、ソレデ現内閣ノ政策ノ影
響ヲ御議論爲サルト云フノデアリマス
ガ、ソレナラバ、現內閣ノ出來タ日ノ
七月二日三日、其時ヲ御取リニナル方ガ
モット正確デアリマスマイカ、ソレニナ
リマスト、七月二日ハ四十四弗八分ノ
デアル、三日ハ四十四弗八分ノ三デアリ
マス、デスカラ是ハ計算ノ問題デアリマ
スガ、特ニ前內閣時代ノ一番下ッタ時
ヲ取ッテ議論ヲ爲サルト云フコトハ
私ハ政策ノ影響ヲ論ゼラレルニハ、正
確デナイト、斯ウ云フ風ニ考ヘルノデ
アリマス、其事ハ前カラ申上ゲテ居リ
マスガ、モウ一度玆ニ申上ゲマス
ソレカラ次ニハ、貨幣價値論デアリ
マスガ、貨幣價値論ハ是ハ理論的ノ問
題デアリマス、又松山君ノ御話ヲ聽イ
テ居リマシテモ、此貨幣價値ト云フコ
トヽ物價ノ騰落ト云フコトヲ裏表ノ
ヤウニ考ヘラレテ居ルヤウデアリマ
ス、今日物價ガ下ッタ、ソレハ他ノ方
カラ見レバ貨幣價値ガ上ッタノダト斯
ウ云フコトニナルノデアリマシテ、物
價ノ下落、卽チ貨幣價値ノ騰貴、貨幣價
値ノ下落、卽チ物價ノ騰貴ト、斯ウ云
フ風ニ御考ヘニナッテ居ルヤウデアリ
マスガ、サウ云フ意味ニ於テ貨幣價値ト
云フコトヲ御使ヒニナルナラバ、爲替
相場ノ騰貴ガ貨幣價値ノ騰貴ダト云フ
ノトハ違フノデス、內容ガ違フ、貨幣
價値ト云フ言葉ハ同ジデスガ、內容ガ
違フ、爲替相場ガ上ッタト云フコトハ
少クトモ言葉ヲ分ケテ言ヘバ對外價
値ノ騰貴ト云フコトニハ言ヘマセウ、
ケレドモソレガ直ニ物價ノ下落ダト、
サウ云フ風ニ卽斷スルコトハ、私ハ出
來ナイト思フノデアリマス、殊ニ其當
時ニ於キマシテ、今松山君ノ御話ノ中
ニモアリマシタ通リニ、日本ノ兌換劵
ヲ以テ、日本銀行ノ「バンクノート」
ヲ以テ、金ヲ買フノデアルトカ、何ト
カ云フノデアリマスカラ、其兌換劵ガ
物ヲ買フ所ノ力、其貨幣價値ト云フモ
ノト正金ノ-「スピーシー」ノ購買
スル力、卽チ貨幣價値トヲ確ニ分ケテ
考ヘテ居ラレル、サウシテ片一方ニ於
テハソレヲ混同シテ貨幣價値ハ爲替
相場デアルト云フ風ニ論ゼラレル、其
處ニアナタト私等トノ考ノ根本的ニ違
フ所ガアル、少シ混同シテ居ラレルト
思フノデアリマス、世間ノ議論ヲ聞キ
マスト、今ノ物價ハ二割幾ラ下ッテ居
ルカラシテ、貨幣價値ガ二割幾ラ上ッ
テ居ルノダ、ソレハ爲替相場カラ來テ
居ルノダ、政府ノ金解禁ノ政策ニ因ッ
テ、爲替相場ガ上ッタノダ、ソレガ物價
ヲ下ゲタ、斯ウ云フ御議論ヲナサルナ
ラバ、其貨幣價値トハ何ゾヤト云フ觀
念ヲ混同セラレタ御議論デアルト思
フ、其事ヲ明ニセラレヌ限リハ此問答ガ
チグハグニナリマス、尠クトモアナタ
ガサウ云フ御議論ヲナサルナラバ、對
外價値ト對內價値ヲハッキリ分ケテ御
議論ナサラヌトイクマイト思フノデア
リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912783X00319310212&spkNum=10
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011・松山常次郎
○松山委員 今小川政務次官ノ御話ニ
ナッタコトニ付テ、私ハ直グ承服スル譯
ニハ行キマセヌ、對外價値ト對內價値
トヲハッキリ別ニシロト云フコトデア
リマスガ、私ノ考デハ對外價値即チ對
內價値ニナル、ソレハ貨幣價値デ物價
トハ違ヒマス、貨幣價値ガ動イタッテ、
物價ハ直グニ動クモノデハナイ、對外
的商品ニアッテハ、貿易スル-取引
ノ行ハレル時ニ物價ガ動イテ來マス、
ケレドモ純國內的ノ物ハ直グソレデ動
クモノデハナイ、併シ貨幣價値ト云フ
モノハ、卽チ百圓ノ金ヲ米國ニ送ルナ
ラバ、四十三弗六ニ相當スル金ヲ吾々
ハ受取レル、ソレヲ我國へ持ッテ來レ
バ百圓ノ金ヲ握リ得ルノデアリマスカ
ラ、其貨幣ノ價値ニ付テモ、動イタト
言ヘルト思ヒマス、併シ此處ハ學者ノ
論議スル場所デハアリマセヌカラ、サ
ウ云フ事ハ論議シテ居ルコトハ出來マ
セヌ
ソレカラ先ニ御話ニナッタ七月二日
ニ內閣ガ成立シタカラ、其時ヲ以テ論
議シタラ宜カラウト申サレマスガ、私
モ一分ヤ二分ヲ爭フ積リハアリマセヌ
カラ、ソレニシテモ宜シウゴザイマス
ガ、是ハ一割二分ト私ガ申シタモノガ、
一割二分ニナリマスカ、一割一分ニナ
リマスカ、何レニシテモ債權債務ノ量
ガ增シタ、金解禁ニ依ッテ貨幣價値ガ
上ッタト云フコトニハ間違ガナイ、サウ
スルト債權債務ノ量ヲソレダケカ增ス
モノデアルト云フコトニ付テ御承認ニ
ナリマスカ、其事ヲ私共ノ質問ヲ進メ
テ行キマスル基礎トシテ、小川政務次
官ノ御答ヲ願ヒタイト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912783X00319310212&spkNum=11
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012・小川郷太郎
○小川政府委員 爲替相場ガ上ッタ爲
ニ債權債務ノ關係ヲ亂シタト云フ風ナ
御議論デアリマスガ、若シ爲替相場ト
云フコトカラ言ハレルナラバ、過去ニ
於キマシテモ、常ニ債權債務ノ關係ヲ
亂シテ居フタト言ハナケレバナラナイ
ノデアリマス、デアルカラ貨幣價値論
デ、政府ガ貨幣法デモ直グ改メテヤッ
タヤウナ場合ヲ想像セラレテ、サウ云
フヤウナ政策ガ貨幣價値ヲ動カシテ、
サウシテ遂ニ債權債務ノ關係ヲ亂シタ
ト云フヤウナ御議論デハナイカト思フ
ノデアリマス
爲替相場ハ金解禁ヲヤッタ後ニハ却
テ安定シマスガ、其以前ニ於キマシテ
ハ御承知ノ通リニ始終動イテ居ッタ
ノデアリマス、始終動イテ居ッテモ、大
體其度每ニ債權債務ノ關係ガ變ルカラ
シテ、ソレヲドウシヨウ斯ウシヨウト
云フヤウナ問題ハ出テ來テ居ナカッタ
ノデアリマス、サウ云フ風ニ若シ金ノ
解禁ハ爲替相場ガ變動スル爲ニ、債權
債務ノ關係ヲ亂スコトガ出來ルトアナ
タガ言ハレルナラバ、其惡イ事ヲ直ス
爲ニ金解禁ト云フモノガ行ハレタト言
ッテモ宜イノデアリマス、今松山君ハ上
ガル方ノコトヲ御話ニナリマシタケレ
ドモ、下ガル方ニナレバ逆ニナッテ債權
債務ノ關係ヲ又亂スノデアリマス、是
ハ決シテ內閣ノ責任ダトカ何トカ云フ
コトヲ私ハ申スノデハアリマセヌ、初
メカラ御斷リ申シテ置キマスガ、前內
閣ガ出來テ、昭和二年四月ノ十九日ニ
於テハ四十八弗四分ノ一一デアッタノガ
前內閣ノ終リノ頃ニハ前ニ申上ゲタ通
リ四十四弗ヲ潜ルト云フコトモアッタ
ノデアリマス、四十八弗四分ノ三カラ
四十四弗ノ邊マデ動イテ下ッテ居リマ
ス是ハ此二年餘ノ間ニ債權債務ノ關
係ガ無茶苦茶ニ物價ヲ亂シタノデハナ
イカト云フ議論モ亦出テ來ヤウト思ヒ
やっ、ソレデアリマスカラ其爲替ノ
寸變ル事ヲ以テ債權債務ノ根本ヲ動カ
スト云フヤウナ御議論ヲナサイマスナ
ラバ、私ハ過去ハ皆同ジヤウナ議論ガ
出來ルヂヤナイカト思フノデアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912783X00319310212&spkNum=12
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013・松山常次郎
○松山委員 小川政務次官ノ御答ニナ
ル如ク、サウ云フヤウニ其時々々ト、
色々ノ時ヲ取レバ皆變ルカラ、ソレヲ
スレバ議論ノ果シガ付カナイ、基礎ガ
キマラナイカラ、一昨年六月二十九日
ト昨年一月十一日ヲ以テ話ヲシテ居ル
ト申上ゲテ居ルノデアリマシテ、決
テ私ハ其時ノ內閣ノ責任ヲ問フテ居ル
ノデハナイ、其議論ノ末ニハサウナツ
テ行キマセウガ、唯議論上二ツノ時ヲ
以テ之ヲ御質問シテ居ルノデアリマ
ス、ソレデ六月二十九日ガイケナイナ
ラバ、七月二日デモ宜シイト云フコト
ヲ、私ハ御話シテ居ルノデアリマス
是モ亦橫道ニハイルノデ、私ハ斯ウ
云フ事ニ付テ餘リ論ジタクハナイノデ
アリマスガ、ドウモ橫道へハイッテモ
仕方ガナイカラ其事ニ付テ御話シマ
ス、田中內閣ノ時ニ、ソレガ動イタト
云フコトハ、是ハ世界大戰ト云フ非常
時デアッテ、日本ハ金ノ輸出ヲ禁止シ
タ、金本位制ノ一時的停止ヲヤッタ、斯
ウ云フ已ムヲ得ザル事故ノ爲ニ起ッタ
事デアリマシテ、其時ノ內閣ハ別ニ其
事ニ付テ責任ヲ執ルベキコトヂヤナ
イ、現內閣ハ金解禁ト云フコトニ依。フ
テ貨幣ノ價値ヲ決定スルノデアリマス
カラ、其處ニ責任ガ生ズル、田中內閣
ノ時ニ變化ガ來タカラト云ッテ、是ハ別
ニ其根本ノ金解禁問題ヲ解決シナイ以
上ハ其處ニ責任ガ生ジテ來ルモノデ
ハナイト思ヒマス、ソレヲ田中內閣ノ
時ヲ以テ議論ヲセラレルト云フコトニ
付テハ、私ハソレハマルデ橫道ヲ行ッ
テ居ルコトデアルト思ヒマス、現內閣
ハ金解禁ヲヤッテ貨幣價値ヲ決定スル
カラ其處ニ責任ガ生ズル、其決定ノ仕
方ガ善イトカ惡イトカ、其時機ガ善イ
トカ惡イトカ云フコトニ依ッテ責任ガ
生ズルノデアリマス、ソレハマルデ問
題ガ違フト思ヒマスガ、此點ニ付テハ
私ハ質問ヲ殘シテ置キマス、サウシテ
私ノ質問ヲ進メテ行キマス
私ノ御尋致シタイ事ハ賠償金特別會
計法廢止法律案理由書ト云フモノヲ見
マスト「賠償金特別會計ハ之ヲ存置ス
ルノ要ナキニ至リタルヲ以テ賠償金特
別會計法ハ之ヲ廢止スルノ必要アリ是
レ本案ヲ提出スル所以ナリ」トアル、
此存置スルノ要ナキニ至ッタト云フノ
ハドウ云フ譯デ其必要ガナクナッタ
ノカト云フコトヲ政府ニ私ハ御尋ヲ致
シタイ、ソレハ民政黨、多年ノ主張デ
アリマシテ、今日ノ日本ノ國債ト云フ
モノハ、日本國民ニ重過ギテ、苑 日
本ノ國ノ財政ハ、是ガ爲ニ亡ビテシマ
フト云ッタヤウナ議論ヲシテ、サウシ
テ今日マデ民政黨ノ人ハ國民ニ愬ヘテ
來タノデアリマス、其結果トシテ所謂
玆ニ減債基金ヲ殖シテ、其國債ヲ輕ク
スルト云フ政策ヲ執ラレルコトハ、當
然ナコトデアルト思ヒマス
所ガ私ガ前ニ御尋シタ事ニ付テマダ
御答ガナカッタノデアリマスガ、金解禁
ノ結果、貨幣價値ヲ引上ゲタ其結果、
債權債務ノ量ヲ增シタ、卽チ借手ノ負
擔ヲ增シタノダ、日本國民ニハ六十億
ノ國債ガアル、其中デ外債ヲ引イテモ、
四十五億四千萬圓アル、地方債ヲ合セ
テ六十六億圓アル、六十六億圓ノ國民
ニ負擔ガアル、貨幣ノ價値ヲ引上ゲタ
結果ハ、國民ノ負擔ガ增シテ居ル譯デ
アル、一割三分引上ゲタトスレバ、
割三分國民ノ負擔ガ增シテ居ル譯デア
ル、卽チ六十六億圓ノ一割三分ナラバ
八億五千八百萬圓增シテ居ル、是ハ今
申シマシタ六月二十九日ガ七月二日ト
ナリ色々スルコトニ依ッテ少シノ變化
ハ來マセウ、ソレハ一割三分ガ一割二
分ニナリ、一割一分ニナッテモ宜シウ
ゴザイマスガ、確ニ國民ノ負擔ガ增
シテ居ル譯デアリマス、國民ノ負擔
ガ增シテ居ルナラバ愈〓減債基金ト
云フモノヲ殖サーナケレバナラヌ筈デ
アル、私共ノ國債ニ對スル考ハ小川
君ナドノ考トハ違ヒマス、小川君等
ガ思フ程國民ガ負擔ニ堪ヘラレナイト
ハ私共ハ見テ居リマセヌケレドモ、
小川君等ハ國民ガ堪ヘラレナイ程ノ
負債デアルト見テ居ル、其國民ノ負
擔ガ一割三分ナリ一割一分ナリ增シテ
居ル時ニ、此減債基金ヲ無クシテシマ
フト云フヤウナ政策ヲドウシテ執ラレ
ル、此賠償金特別會計法ノ中ニハ之
ヲ減債基金ニ繰入レルト云フコトヲ明
記シテアル、此明記シテアル法律ヲ無ク
シテシマフ、サウシテ一般會計ニ繰入
レル、然ラバ一般會計ノ中カラ其六百
三十萬圓ダケノモノヲ此減債基金ノ中
ニ繰入レルナラバ宜シウゴザイマス
ガ、之ヲ見テ居ルト繰入レテ居ラナイ、
一般會計ノ繰入額モ千五百萬圓バカリ
ノモノガ減ッテ居ル、其他ニ國債ノ增加
ニ伴ッテ殖スモノガ三百何萬圓アリマ
スガ、差引ソレデモ一般會計カラ一千
二百五十餘萬圓ト云フモノガ減少サレ
テ居ル、併シ是ハ國債ガ增加スルニ依ツ
テ殖サネバナラヌモノヲ加ヘタノデ
テ ジ元來此根幹タルモノヲ言フナラ
バ一千五百萬圓ダケ一般會計ニ於テ
減シテ居ルノデアリマス、是ハドウモ
民政黨ノ今マデ主張スル主張ト合ハナ
イト私ハ信ズルノデアリマス、「之ヲ存
置スルノ要ナキニ至リタルヲ以テ」ト
斯ウ明記サレテ居ルノハドウ云フ譯デ
存置スル必要ガ無クナッタノデアルカ、
其事ヲ明瞭ニ御答ヲ願ヒタイノデアリ
マス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912783X00319310212&spkNum=13
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014・小川郷太郎
○小川政府委員 松山君ノ御質問ハ本
會議デ私大要ドナタカノ質問ニ御答致
シマシタコトニナリマス、本賠償金特
別會計ヲ存置スル要ナシト斯ウ云フコ
トヲ申上ゲマシタノハ、約メテ申シマ
スレバ斯ウ云フ次第デアリマス、賠償金
ト云フ特別會計ガアリマシテ、獨逸ノ
賠償金ナラ獨逸ノ賠償金ハ其特別會計
ニハイリマス、サウシテ此戰爭ノ爲ニ
救恤金ヲヤルト云フヤウナコトガアリ
マシテ、ソレヲ其賠償金特別會計カラ
拂ッテ後ノモノハ多ク一般會計ヘ入レ
ルデ昨年ニナリマシテ民政黨內閣ノ
政策トシテ減債基金ノ方ヘモ六百三十
萬圓限度ニ入レル、斯ウ云フコトニナッ
テ居。ッタノデアリマス、所ガ其救恤金ナ
ント云フヤウナコトノ支拂ハ大體結了
シタノデアリマス、ソレデアリマスカ
ラ獨逸カラハイル賠償金ガ賠償金特別
會計ニ入リ、一般會計ヘ入レテ一般會
計ノ經費ニ充テルト云フコトニナルノ
デアリマスカラ、サウシマストモウ賠
償金特別會計ヲ存置スル必要ガナイコ
トニナルノデアリマス、今後獨逸カラ
賠償金ガ來マスガ、ソレヲ直グ一般會
計ニ入レテ、一般會計デ使ッタラ宜イ
ト云フコトニナルノデアリマス、ソレ
ガ此提案ノ理由ニ、最早存置スル必要
ガナイト斯ウ申シタ譯デアリマス、
(「其點ヲモウ少シハッキリ願ヒマス」ト
呼フ者アリ)是ハ此法律ヲ能ク讀ンデ
戴ケバ分リマスガ賠償金特別會計ノ中
ニハ嘗テハ國際聯盟、ソレカラ航空事
業、ソレカラ移植民ノ保護、サウ云フ
モノハ目的モ指示致シテ賠償金特別會
計カラ一般會計ニ注込ミマシテ、一般
會計カラ其目的ノ所ヘ使ッテ居ッタ譯デ
アリマス、其他ニ救恤金トカ云フヤウ
ナモノハ其特別會計カラ直グ拂フ、ソ
レカラ今ノ減債基金ノ方ヘ繰入レル分
モ一般會計ヲ經由セズシテ拂フ、斯ウ
云フコトニナッテ居ルノデアリマス、ダ
カラ今後減債基金ノ方ヘ繰入レルコト
モ一時廢メル、此議論ノ善惡ハ後ニ申
シマスガ、救恤金ノ方モ濟ンダ、斯ウ
云フコトデアリマスカラ、賠償金特別
會計ヲ置イテ置キマシテモ、ソレハ形
式ダケデアリマシテ、一般會計ヘ繰入
レテ一般會計デ使フト云フノデアリマ
スカラ、賠償金トシテハイルモノヲ、
直チニ一般會計ヘ入レテモ同ジ結果ニ
ナル、勿論賠償金特別會計ノ事務費ト
云フモノハ別ニアリマスガ、賠償金ガ
他ノ一般會計ヘ行キマスレバ、事務費
モ一般會計ノ方デ支辨スルコトニナリ
マスカラ、兎ニ角特別會計ヲ置イテ置
ク必要ハナクナッタト云ッテ宜シイノデ
アリマス
更ニ進ミマシテ其減債基金ニ繰入レ
ルコトヲ廢メタト云フコトニ付テ御議
論ガアリマシタガ、私ハ度々本會議デ
モ御話モ致シマシタシ、大藏大臣カラ
モ能ク此問題ニ付テ話ヲセラレテ居ル
通リデアリマシテ、民政黨ノ主張ト致
シマシテハ獨逸ノ賠償金ガ今後ハイッ
テ來ル、其ハイッテ來ル六百三十萬圓位
ノモノヲ限度トシテ減債基金ニ繰入レ
テ國債償還ニ振當テル、斯ウ云フコト
ヲ主張シテ來タノデアリマスケレド
モ今日ノ財政狀態デハドウモ已ムヲ
得ザルモノガアルノデ、一時之ヲ當分
中止シテ置クガ、是ハ永久ニヤルト云
フノデハアリマセヌ、此財政々策ガ善
イカ惡イカト云フコトハ議論ノ餘地ガ
アリマセウケレドモ、-世論ニモ隨
分アリマシタヤウデ、寧ロ減債基金法
ニ依ル所ノ繰入マデモ廢メタラドウカ
ト云フ、サウ云フ議論マデアッタノデア
リマス、減債基金法ノ中ニハ色々ノ規
定ガアリマシタケレドモ、根本ハ其前
年度ノ初メニ於ケル國債總額ノ萬分ノ
百十六ト云フモノヲ減債基金ニ繰入レ
テ行ク、斯ウ云フコトニナッテ居ルノデ
アリマスガ、其萬分ノ百十六マデモ廢
メテシマッタラドウカ一時中止シタラ
ドウカト云フ議論ガアッタノデアリマ
ス、現ニ此間モ申シマシタ通リ、朝
事アル時分ニハ、變則デアリマスケレ
ドモ、高橋是〓サンノ藏相時代ニ於
テ萬分ノ百十六ナンカト云フモノヲ廢
メテ、一時中止スルト云フ時代モアッタ
ノデアリマス、併シサウ云フコトハ非
常ナ場合デアルカラ避ケナケレバナラ
ナイ、現內閣ハ其萬分ノ百十六ナンカ
ヲ中止スルヤウナコトハ、世間ニハ議
論ハアリマシタケレドモ斷ジテヤラ
ナカッタノデアリマシテ、唯獨逸ノ賠償
金ノ方ノ繰入ト云フモノハ六百三十萬
圓位ノコトデアリマスカラシテ、大
シテ影響ノアルモノデハナイ、斯ウ
考ヘマシテ一時當分ノ間之ヲ減債基金
ニ繰入レルコトヲ廢メタ、斯ウ云フコ
トニナッタノデアリマス、ソレデアリマ
スカラ、或ル時期ニナリマシタナラバ
此政策ヲヤハリ囘復シテ行ク積リデア
リマス、其時ニハドウスルカト云ヘバ、
其時ニハ賠償金特別會計ト云フモノ
ヲ.其爲ニ存置シテ置ク必要ハナイノ
デアリマシテ、一時當分廢メテ居ルモ
ノヲ、又其法律ヲ直シテ行ク必要ハナ
イノデアリマスカラ、ソレハ廢メテ置
イテ、今度減債基金ニ繰入レルト云フ
ヤウナコトガアリマシタナラバ、寧ロ
減債基金法ノ中ニ、之ヲ規定シタイト
思ッテ居ルノデアリマス、是ハ政策ニ係
ルコトデアリマスカラ、何モ法文デ賠
償金特別會計ト云フモノヲ置イテ居ツ
テ、其減債基金ノ方ニ繰入レル分ダケ
ヲ一寸當分ヤメルト云フヤウナコト
ヲ規定シテ置ク必要モナイト思フノデ
アリマス、是ガ賠償金特別會計ヲ存置
スル必要ナシト云フ、斯ウ云フ一ツノ
理窟ニモナルノデアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912783X00319310212&spkNum=14
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015・松山常次郎
○松山委員 今小川政務次官カラ御答
辯ヲ承ッテ居リマスル中ニ、幾多ノ疑念
ガ愈〓加ッテ來ルノデアリマスガ、第一私
共ガ其處ニ疑ヲ挾マナケレバナラヌコ
トハ、民政黨ノ今マデノ議論カラ云ヘ
バ賠償金六百三十萬圓ト云フモノヲ
繰入レルコトヲ中止シタト云フコト
ハ、是ハ洵ニ非常ナ政策上ノ大逆轉デ
アルト思フノデアリマス、此處ニ昨年
ノ特別議會ノ時ニ於ケル賠償特別會計
法中改正法律案ノ委員會ニ於ケル速記
錄ガアリマスガ、津原委員ヨリノ質問
ニ對シテ井上大藏大臣ノ答辯ガ之ニ
載ッテ居リマス、津原君ノ議論ハドウ云
フコトデアルカト云ヘバ、何ガ故ニ第
三條ノ第二項、卽チ田中內閣ノ時ニ決
メタ國際聯盟、移殖民及ビ航空施設ニ
關スル此支出金ヲ是カラ出スト云フ條
項ヲ削ラナイデ、何ガ故ニ第三項トシ
テ之ヲ減債基金ニ繰入レルト云フコト
ヲ入レタノカ、ドウシテ削ッテシマハナ
イノデアルカ、斯ウ云フモノヲ殘シテ
置クト又將來出ス虞ガアル、減債基金
ヲ殖スト云フコトハ現內閣ノ財政政
策ノ一ツノ現レデ、是ハ井上大藏大臣
モ他ノ場合ニ於テ言ウテ居ル、極メテ
重要ナル事デアル、ソレヲ實行スル爲
ニ此賠償金ヲ全部使フト云フコトハ結
構ナコトデアルガ、其二項ヲ削ラナイ
ト云フコトハ、將來此大事ナ減債基金
ニ繰入レルベキ金ヲ橫取リサレル虞ガ
アル、故ニドウシテ之ヲ削ラナイノデ
アルカト云フヤウナ意味ノ質問ニ對シ
テ、井上大藏大臣ノ答ヘラレテ居ルコ
トハ、是レデアリマス、「御答致シマス、
政府ガ今囘提出致シマシタ趣意ハ本
議會ニ於キマシテ、私ガ說明致シマシ
タヤウニ、獨逸カラ取リマス賠償金ヲ
國債償還基金ニ充當シヨウト云フ爲ニ
アレダケノ改正案ヲ提出シタノデアリ
マスガ、何レ此賠償金特別會計ト云フ
モノハ、適當ノ解決ヲシテシマハナケ
レバナラヌ、斯ウ云フコトヲ考ヘテ居
リマス、隨テ只今津原委員ノ御意見ノ
如ク-御意見ノ如クト云フヨリハ、
御意見ニ從ヒマシテト云フ方ガ相應ハ
シイ言葉ト思ヒマスガ、其趣意ヲ以チ
マシテ關係法規ノ改正ヲ致シマシテ、
サウシテ速ニ議會ニ提出スルコトニ致
シマスト云フコトヲ申上ゲテ差支ナイ
ノデアリマス」
斯ウ云フコトヲ言ッテ居ルノデアリ
や人、是カラ云ッテモ賠償金特別會計法
廢止ノコトハアルダラウガ、ソレハ全
額ヲ減債基金ニ入レル爲ニト云フコト
ガ明カニ之ニ明記サレテ居ルノデアリ
やさ、然ルニ此賠償特別會計法ヲ廢止
シテ、サウシテ減債基金ヲソレニ繰入
レナイト云フコトハ民政黨ノ是迄ノ主
張ニ鑑ミテ非常ナ政策上ノ逆轉デハナ
イカ、若シ今小川政務次官ノ御答ニナッ
タ事ニ依ッテ、此中ニ書イテアル條項カ
ラ申シマシテ、救恤金モ要ラナクナッタ
ノデアル減債基金繰人モヤラナクナツ
タ、ソレデ必要ガナクナッタ、マダ外ニ
アル、國際聯盟、移殖民、航空施設ニ
關スル支出ト云フ條項ガマダ殘ッテ居
ルノデアリマス、是ハ田中內閣ノ時ニ
ヤッタモノダカラ實行スル必要ガナイ、
其必要ガナクナッタカラ廢メルノダ、斯付キマシテ一ツノ大キイ是カラ論議シ
ウ云フヤウニ今申サレマス、吾々常識
的ニ考ヘテ······併シ近イ將來ニ於テソ
レヲ又元ニ戾ス、財政上ノ都合ガ許ス
コトニナッタナラバ、減債基金ニ繰入レ
ルト云フコトニナルノダ、是ハ此儘ニ
シテ置イタラドウカ、サウシテ此賠償
金ノ繰入ノ事ヲ廢メルト云フコトニ致
シタラドウカ、サウ云フ質問ヲ私共ハ
玆ニ致シタクナルノデアリマス、ソレ
デ都合ニ依ッテ今度ハイケナイノダ、斯
ウ云フ御答デアリマシタガ、是ハ私共
ハ政府ノ非常ニ苦心ノ存スル所、サウ
シテ胡麻化シノ存スル所デアルト思フ
ノデアリマス、此賠償特別會計法ヲ廢
止スルト云フコトハ、之ニ依ッテ今私ガ
一番初メニ御尋致シマシタ、二千萬圓
バカリノ金ガ一般會計ニハイッテ來ル
ノデアリマス、昭和五年度ニ於テモ歲
入缺陷ガアル、昭和六年度ニ於テモ愈〓
此歲入不足ト云フモノハ多クナッテ來
ルソレヲ補ハンガ爲ニ此賠償金特別
會計ノ中ニアル二千萬圓ノ金ヲソッチ
ヘ流用シタイガ爲ニ、又此減債基金ヲ
減ズル、斯ウ云フ事ガ起,テ來テ居ルノ
デアリマシテ、政府ノ目的ノ存スル所
ハ其處ニアルノデアル、決シテ要ラナ
クナッタカラ之ヲ廢メルト云フヤウナ
簡單ナ考デハナイト思フノデアリマ
ス、玆ニ私共ハ現內閣ノ政策上ノ事ニ
ナケレバナラヌ問題ガアルノデアリマ
ス
ソコデ私ノ話ハヤハリ金解禁問題ニ
戾フテ來ルノデアリマス、政府ニ御尋致
シタイ事ハ、是ハ私ハ書イテ出シマス
カラ、此處デハ唯讀ンデ言ッテ置キマス
ガ、今日我國ノ貸借ノ總額ガ幾ラアル
カ其內譯トシテ銀行預金ガドレダケ
アルカ、銀行ノ社債ガドレダケアルカ、
會社ノ社債ガドレダケアルカ、個人ノ
貸借ガドレダケアルカソレカラ國債
ノ中デ公債ト地方債ノ內譯、銀行貸出
金是ダケノモノガ最近ノ政府ノ御調
ニナッテ居ル所デドウ云フ風ニナッテ居
リマスカ、是ハ今直グ知ラシテ戴ケル
ナラバ私ノ議論ハ直グ進メラレルノデ
アリマスルガ、此事ニ付テ政府ノ御調
ヲ一ツ頂戴致シタイノデアリマス、ソ
コデ私ハ話ヲ進メタイト思フノデアリ
マスルガ、大體政府ノ調ヲ戴イテ居リ
マシタラ時ガ掛リマスカラ、私ノ調べ
タモノニ依ッテ話ヲ進メタイト思ヒマ
スソレ故其數字ハ幾分政府ノ御調べ
ニナッタ確實ノモノト違フカト思ヒマ
ス、若シ直グ分ルナラバ此書イタ物ヲ
御渡シ致シマスカラ御答ヲ願ヒタイト
思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912783X00319310212&spkNum=15
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016・小川郷太郎
○小川政府委員 松山君ノ今ノ最後ノ
數字ノ事ハ後カラ調ベマス、前段ニ御
話ニナリマシタ事ニ付キマシテ一應御
答ヲシテ置ク方ガ宜カラウト思ヒマ
ス、前議會ニ大藏大臣ガ津崎君ニ御答
致シマシタ其言葉ニ付テ御質問ガアリ
マシタガ、適當ナル始末ヲスルトカ、
サウ云フ意味ノコトヲ······発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912783X00319310212&spkNum=16
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017・松山常次郎
○松山委員 ソンナ瞹昧ナコトデハア
リマセヌ、津崎委員ノ意見ニ從ヒマシ
テ、卽チ全部ヲ減債基金ニ廻ス、ソレ
ヲ實行スルト云フコトデアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912783X00319310212&spkNum=17
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018・小川郷太郎
○小川政府委員 ソレハ私ガ其前後ヲ
讀ンデ大藏大臣ノ御答ノ筋ヲ此處デ又
繰返シテ申上ゲル必要ハナイト思ヒマ
スガ、大體其時分ノ考ハ適當ナル始末
ヲ付ケルト云フヤウナコトヲ言ヒ表シ
テ居ルトスルナラバ、此賠償金特別會
計ハヤハリ整理ヲシテ廢止ヲスベキモ
ノダト云フコトヲ考ヘテ居ッタ、其言葉
ハ貴族院ノ特別委員會ニ於テハッキリ
申シテ居ル譯デス、其時分ノ考ヲ文句
ノ言ヒ表シ方ガ惡カッタカモ知レマセ
ヌケレドモ、救恤金ヲ交付シタ後デハ
賠償金特別會計ヲ存置スル必要ハナイ
ト云フ考ハ以前カラ持ッテ居ッタノデア
リマシテ、今後ハイッテ來ル賠償金ヲ減
債基金ニ繰入レルト云フコトハ、是一
一ツノ政策デアリマスカラ、今ノ特別
會計ガアラウガナカラウガ、其政策ヲ
行フコト〓ニ付テハ行ヘルノデアリマ
ス、ソレ故賠償金特別會計トシテハ之
ヲ何トカ始末ヲ付ケヤウト云フ考ガ其
當時アリマシタ、ソレヲ申シタノデア
ラウト思ヒマス、貴族院ノ方デハキッパ
リサウ云フコトヲ申シテ居ルト記憶シ
テ居リマス、ソレカラ尙ホ津崎君トノ
問答ニ關聯シテノ御質問ノ條文ノ改正
デアリマスガ、前議會デ三條ノ三ヲ附
加ヘマシタ趣旨ハ、明白ニ文字ガ示シ
テ居リマスガ、昭和四年度以降受領ス
ル賠償金及物件ノ賣拂代金ノ受入額ニ
相當スルモノハ豫算ノ定ムル所ニ依リ
國債整理基金特別會計法第二條ノ規定
ニ依ル繰入額ノ外、一般會計負擔ノ國
債ノ元金償還ニ充ツル爲之ヲ國債整理
基金特別會計ニ繰入ルヽコトヲ得」卽
チ昭和四年度以降ニ受領スル所ノ賠償
金ノミ之ヲ減債基金ニ繰入レル、斯ウ
云フコトデアッタ昭和四年度以前ニハ
イッテ來マシタ賠償金ガ溜ヲテ居ルノデ
スガ、其賠償金ハ前內閣ノ財政計畫デ
ズット後ニモ使フコトニナッテ居リマシ
タカラ、ソレハ變更シナイ、前內閣ノ
財政計畫ヲヤハリ踏襲致シマシテ、今
アナタノ御話ニナッタ三ツノ目的、移殖
民保護トカ、或ハ國際聯盟、航空事業
サウ云フ目的ノ爲ニ使フコトニ財政計
畫ガナッテ居リマシタカラ、ソレハ其儘
使フコトニナルノデアリマス、其モノニ
使ッテシマッタ後ニ賠償金ガハイッテ來
ル、ソレヲ減債基金ニ繰入レルノダカ
ラ、賠償金特別會計ト云フモノハナクテ
モ宜イ、存置スル必要ハナイ、何時カ
ハ之ヲ片付ケナケレバナラヌ、斯ウ云
フコトデアッタト思フノデアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912783X00319310212&spkNum=18
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019・松山常次郎
○松山委員 併シソレハ現在ハドウ
ナッテ居ルカ、此二千萬圓ト云フモノハ
國際聯盟ヤ移殖民保護ノ爲ニ殘シテ置
クノデスカ、政府ハ勝手ニ使ヘナイノ
デスカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912783X00319310212&spkNum=19
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020・小川郷太郎
○小川政府委員 昭和四年度カラハ
イッテ來ル賠償金ガ、多少違ハアリマセ
ウガ、年々六百三十萬圓位ダト思ッテ居
リマス、ソレヲ別ニ減債基金ニ入レヨ
ウ、ソレガ現內閣ノ新シイ政策デアッタ
ノデアリマス、前カラ殘ッテ居ッタモノ
ハ財政計畫上一般會計ニ入レテ、今申
シタ目的ノ爲ニ使フ、其目的ノ爲ニ使
フノデアルカラ、何モ特別會計ヲ經由
セヌデモ宜イト云フヤウナコトモアリ
マセウガ、一般會計ニ移シテシマッタノ
デアルカラ、殘ルモノハ皆一般會計ニ
ハイッテ來ルカラ、昭和四年モ五年モ金
ハ出テ居リマスガ、昭和五年カラ見マ
スト減債基金ノ方ニ入レルモノト、今
アナタガ仰シヤッタ前內閣ノ目的ノ爲
ト二ツアル譯デアリマス、唯問題ハ政
策ノ點デアリマスガ、ソレヲ吾々ハ減
債基金ノ方ニ入レヨウト前議會デモ申
シテ居ッタノデアリマスケレドモ、今囘
ソレヲ改メテ當分ノ中之ヲ取止メテ置
ク、斯ウ云フコトデアルト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912783X00319310212&spkNum=20
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021・松山常次郎
○松山委員 非常ニ大事ナ點デアリマ
スカラ其處ヲハッキリシテ置キタイト
思ヒマス、今小川政務次官ノ答辯ニ依
リマスト、年々ハイッテ來ル六百三十萬
圓、之ヲ減債基金ニ入レルト云フ方針
ヲキメテ居ノタガ、都合ニ依リヤメル、
是ハアナタ方ノ御考デアリマスカラ
ハッキリシマシタガ、モウ一ツハ初メ御
尋シタ通リ約二千萬圓ノ金ガアリマス
ガ、其金ハ今マデ通リニ救恤金ハ要ラ
ナクナッタカモ知レマセヌガ、國際聯
盟、移殖民、航空施設ト云フヤウナコ
トニ支出スル爲ニ、一般會計デズット
持ヲテ居ルノデアリマスカ、其事ヲハツ
キリ御答ヲ願ヒタイ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912783X00319310212&spkNum=21
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022・小川郷太郎
○小川政府委員 二千萬圓ノ數字上ノ
說明ハ他ノ政府委員カラ御說明ガアリ
マセウガ、大體六百三十萬圓ヲ減債基
金ノ方ニ入レタノハ昭和五年度デアリ
マス、ソレハ前內閣ノ方針通リニヤッタ
譯デアリマスガ、其以前ハサウデハナ
ク獨逸ノ賠償金其他ノ賠償金ガアリ
マシテ、段々溜ッテ特別會計ニアッタカ
ラ、今ノ法律ニ明示サレタ目的ニ使フ
ト云フノガ建前デアリマシテ、其外ニ
モ使ヘナイ金デハナイソレヲ廢止ス
ルカラ一般會計ノ方ニ移ッテシマフ、
殘ッタ額ガアリマスガ、ソレハ歲入過ト
シテ會計表ニモ出テ居リマス、一般會
計デ歲入ト歲出トヲ突合シテ見レバ歲
入ノ方ガ多クナッテ居ルガ、其一ツノ原
因ハ此處ニモアル譯デアリマス、大體
ハサウ云フ風ニナッテ居リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912783X00319310212&spkNum=22
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023・松山常次郎
○松山委員 其點ガハッキリ致シマセ
ヌ、今申上ゲル二千萬圓ハ之ヲ一般會
計ニ繰入レルト、一般會計ニ持込ンデ
行ク持參金ガ二千萬圓アル譯デアル、
此持參金ハ何ニ使フカト云フト、今マ
デノ法律ニ依レバ初メハ救恤金デアリ
マスガ、是ハ必要ガナクナッタト云フ政
府ノ御說明デ能ク分リマシタガ、モウ
一ツハ減債基金ニ繰入レルト云フコト
デアル、然ラズンバ國際聯盟カ、移殖
民カ、航空施設ニ關スル事ヨリ外ニハ
使ヘナイ筈デアル、ソレヲ今一般會計
ニ入レテシマフノデアリマスガ今政
務次官ノ御話デハ入レテモ是ハ一般會
計ノ中デ賄ウテ、國際聯盟ナリ、移殖
民ナリ、或ハ航空施設ノ事ニソレヲ使
フノデアルカラ、別ニ差支ナイノダ、
斯ウ云フ風ニ御話ニナッタヤウニ私ニ
ハ聞エタノデアリマス、此點ヲハッキリ
シテ戴キタイ、之ヲ外ニ使フノヂヤナ
イカ、外ノ歲入不足ヲ補フ爲ニ使フノ
デハナイカ、持參金ヲ持ッテ行ッタ筈ノ
目的ニ使フノデアルカ、向フニ行ッテ向
フノ會計ノ足ラズノ賄ニ使フノデハナ
イカ、此事ヲハッキリシテ置イテ戴キタ
イト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912783X00319310212&spkNum=23
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024・小川郷太郎
○小川政府委員 大體前ノ財政計畫ニ
アッタモノヲ尊重シテ行クト云フコト
ハ申上ゲマシタガ、昭和四年ハサウ云
フ風ニナッテ居リマス、昭和五年モサウ
云フ目的ノ爲ニ使ッテ行クト思ヒマス
ガ、是カラ後特別會計ヲ廢止シテ一般
會計ニハイッテ來マスト云フト、何ニモ
使ヒ得ルト云フコトニナル譯デアリマ
シテ、目的ガ法律ニ規定シテアレバコ
ソソレニ使ハナケレバナリマセヌケレ
ドモ、今後ハソレヲ如何ナル目的ニ使ッ
テモ宜イト云フヤウニ、法律上ニ指示
シタル所ハナクナル譯デアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912783X00319310212&spkNum=24
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025・松山常次郎
○松山委員 先程御尋シタ銀行預金ト
カ云フ數字ハマダ分リマセヌカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912783X00319310212&spkNum=25
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026・小川郷太郎
○小川政府委員 一寸細カイ數字デア
リマスカラ··発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912783X00319310212&spkNum=26
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027・松山常次郎
○松山委員 ソレデハ私ハ外ノ事デ一
ツ御尋致シマス、私共井上大藏大臣ノ
御意見ヲ書物ナリ演說ナリデ聞ク上ニ
於テ、腑ニ落チナイ一ツノ事ガアルノ
デス、ソレハ何カト云フト、斯ウ云フ
議論ノ進メ方ヲシテ居ラレル、日本ハ
外國ニ比シテ物價ガ高イ、故ニ輸入超
過ハ年々減ラナイ、ソコデ吾々ハ金解
禁ヲヤッテ、物價ヲ下ゲテ、サウシテ輸
入超過ヲ減ジテ、輸出超過ニシテ行ク
ヤウニ國際貸借ヲ改善スルノダ、斯ウ
云フ風ニ井上サンハ屢〓御意見ヲ發表
シテ居ラレルノデアリマスガ、小川政
務次官モ同ジヤウニ御考ヘニナッテ居
リマスカ、若シソレニ付テアナタガ答
ヘラレヌト云フナラバ、他ノ機會ニ私
ハ井上サンニ御聽シテモ宜シイ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912783X00319310212&spkNum=27
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028・小川郷太郎
○小川政府委員 ソレハ物價トカ何ト
カ云フ言葉ノ用ヒ方ニ依リマシテハ色
色議論ガアリマセウガ、少クモ爲替ガ
上ルト云フコトニナレバ外國カラ原
料ヲ仰イデ居ル日本ト致シマシテハ
原料品ガ-他ノ事ガ同ジト致シマス
ト、其爲替ノ上ルニ從ッテ原料品ガ下
ルト云フコトハ、卽チ生產費ヲ下ゲテ
行クコトニモナリマスカラシテ、隨テ
國際貸借ノ改善ニモナッテ行クコトニ
ナルデアリマセウ、デアリマスカラ其
考ヘ方ガ、今マデ金解禁ヲヤラナイデ、
全ク日本ガ世界經濟ト遮斷ヲセラレタ
ヤウナ形デヤッテ行クト云フコトハ宜
シクナイ、ソレガ或ル一方ニハ物價ノ
上ニモ現レテ來ル、斯ウ云フコトハ言
ヒ得ルト思ヒマス、唯併シ松山君ハ其
議論ヲ以テ、直ニ今日ノ物價ガ下ッテ
居ルノハ貨幣價値ノ騰貴デアッテ、ソレ
ガ金解禁カラ當然來タノダト云フコト
デアレバ、前ニ私ノ申シマシタ貨幣價
値論ト云フ、根本ニ於キマシテ議論ノ
餘地ガアルト思フノデアリマス、併シ
大藏大臣ノ言ハレタ、或ハ著書ニアル
一々ヲ私ハ責任ヲ持ラテ解釋スルト云
フコトハ出來マセヌガ、大體ノ考ヘ方
ハサウ云フコトニ於テ至當デアルト考
ヘテ居ルノデアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912783X00319310212&spkNum=28
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029・松山常次郎
○松山委員 此處ガ非常ニ大切ナ事デ
アリマス、小川政務次官ノ言ハレタコ
トハ現內閣ノ錯誤、卽チ武藤山治君ノ
言葉ヲ藉リテ言ヘバ井上大藏大臣ノ錯
覺ト謂フ、錯覺ガ其處ニアル、其點ガ
錯覺デアルカドウガ、私ハソレヲ論ズル
ノデハアリマセヌガ、其處ガ大切ナ點デ
ス、今ノ小川政務次官ノ御話デハ爲替
相場ガ上レバ外國カラハイッテ來ル原料
ノ値ガ下ル、故ニ日本ノ物價ガ下リマ
シテ外國ニ輸出ガシ易クナル、斯ウ云フ
ノデス-今サウ言ハレルノデスガ、是
ハ大切ナ點デスカラハッキリ伺ヒタイ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912783X00319310212&spkNum=29
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030・小川郷太郎
○小川政府委員 ソレハ斯ウ云フ誤解
ガアリマス、金ノ解禁ヲヤルガ爲ニ爲
替相場ガ、アナタノ論デハ一割ナラ
一割上ッタ、總テノ物價ガ一割下ッタト
言ハレルガ、斯ウ云フ風ニハ直グニハ
言ヘヌト思フ、私ハ少クトモ外國カラ
ハイッテ來タリ、出タリスルモノガ、爲
替ヲ通シテヤルモノハ、其程度ニ於テ、
他ノ條件ガ同ジナラバヤハリ影響スル
モノデアル、大體論カラ言ヒマスト、
日本ノヤウナ、原料ハ多ク外國ニ仰ガ
ナケレバナラヌヤウナ國デアリマス
トソレガ他ノ條件ヲ同ジウシタモノ
ト見テ、爲替相場ガ上ッテ來ルト、謂
ハバ安イモノガ買ヘルト同ジ結果ニ
ナル、其言ヒ方ヲ以テ、直チニ一割爲
替ガ上ッタカラ日本ノ物價ハ一割直グ
下ッタト言フコトハ、私ハ多少留保致シ
タイト思ヒマスガ、一般論トシテ物ノ
分リ易イ爲ニサウ云フコトヲ假定シテ
言フコトモアリマスガ、ソレハ正確デ
ナイト思ッテ居リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912783X00319310212&spkNum=30
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031・松山常次郎
○松山委員 其處ナンデス、アナタノ
言フヤウナソンナ點ヂヤナイ、其處ニ
アナタ方ノ一ツノ大キナ間違ガアル、
ソレガ爲ニ國民ガ惱ンデ居ルノデス、
能ク其點ハハッキリシテ戴キタイト思
ヒマス、今小川政務次官ノ言ハレタ如
ク、例ヘバ紡績ノ如キモ原料タル棉花、
是ハ爲替相場ガ一割上レバ-是ハ爲
替相場ガ一割上レバ物價ガ一割下ルノ
ヂヤナイ、一割三分上レバ物價ガ一割
五分下ル、其ハ一割ト云フ數字ハ違ヒ
マスガ、兎ニ角大體一割トシテモ常
識的ニ言ヘバサウ言ッテ居リマスカラ
宜シウゴザイマスガ、併シ爲替相場ガ
一割上ッタ爲ニ、物價ガ一割下ッタノデ
ハ對外的ニハ同ジ値デス、國際貸借
改善、輸出增進ニハ少シモ裨益スル所
ガナイ、ソレヲ裨益スルト思ッテ居ル國
民ニモサウ言ッテ居ル、國民モ知ラナ
イデ、學者デ、實際家デアル井上サンガ
サウ言フカラ本當デアラウト、騙サレ
テ居ルガ、其處ガ非常ニ大切ナ點デア
ル、爲替相場ガ上ッタ爲ニソレデ物價ガ
下ッタ、日本國內デ下ッテモ、對外的ノ
輸出ノ上ニハ少シモ影響ガナイ、同ジ
コトデアル、對外的ニハソレガ下ッタト
思フ所ニ大キナ間違ガアル、私共ノ考
デハ現内閣ガ爲替相場ヲ引上ゲテ、運
賃ノ價値ヲ引上ゲタガ爲ニ、日本ノ生
產原價ハ對外的ニ上ッテ居ルト思フ、ソ
レヲ井上サンハ下ッテ居ルト斯ウ言ッテ
居ル、アナタモ其議論デアル、其處ニ
大キナ間違ガアルト思フ
ソレデ一ツ私ノ言フコトヲ聽イテ戴
キタイ、生產原價ノ要素ヲ爲スモノハ
生產原價ノ要素ヲ爲ス所ノ租稅及ビ諸
公課ガアル、或ハ鐵道運賃、ソレカラ
郵便、電信、電話ノ料金、斯樣ナモノ
ガアリマスルガ、其外煙草專賣トカ、
是ハ生活ニ關係ガアリマスガ、斯樣ナ
モノガ原ノ値段デアルト云フコトハ、
其貨幣ノ價値ガ引上ッタガ爲ニ內容實
質ニ於テハソレダケ上ッテ居ル、アナタ
方ガ九億圓ノ租稅ヲ取ルト云フコトハ
通貨ノ價値ガ一割三分引上ッタ場合ニ
ハ、ソレハ一億二千萬圓ダケ國民ノ增
稅ニナッテ居ル、所ガ今申シマスヤウニ
金解禁ヲヤッテ通貨ノ價値ヲ一割三分
ーソレハ一割一分デモ一割二分デモ
宜シイ、ソレダケ引上ゲテモ、租稅及ビ
諸公課ヲ下ゲラレナイト云フコトハ
生產原價ノ一要素ヲ爲ス所ノ租稅及ビ
諸公課ト云フモノガ對外的ニ云フナラ
バ一割三分ダケ引上ゲラレテ居ル、ソ
レナラバ生產原價ガ安クナル筈ガナ
イ、鐵道運賃ガ其儘デアッテ、郵便、電
信、電話ノ料金ガ其儘デアルト云フコ
トハ、對外的ニ之ヲ考ヘルナラバ一割
三分ダケ引上ゲラレテ居ル、ソレデ生
產原價ガ安クナル道理ガナイ、尙ホ其
外此俸給、給料ノ問題、政府ハ減俸問
題ヲ提ゲテヤリ損ナッタ、ソレガ爲ニ民
間ノ一般ノ者ノ合理的ノ減俸ヲ行ハウ
トシタ趨勢ガ阻止セラレテ、勞働賃銀
ガ下ルコトヲ阻止セラレタ、ソレガ元
ノ儘デアルト云フコトハ、貨幣價値ガ
一割三分引上ゲラレルナラバ、ソレダ
ケソレ等ノモノヽ內容、實質ガ上ッテ居
ルノデス、然ラバ生產原價ガ安クナル
筈ガナイ、高クナッテ居ルノデス、ソレ
カラ地代家賃ノ如キ、殊ニ大キナモノハ
借入金ノ利息ノ如キ、是ハ後デ私ハ其數
字ヲ示シテ戴イタ上デ論議シヤウト思
フノデスガ、借入金ノ元金ニ於テ今日
ノ日本ノ產業ト云フモノハ非常ナ大キ
ナ負擔ニナッテ居ル、井上大藏大臣モ其
事ヲ言ッテ居ラレル、今日ノ農村ノ振興
ノ出來ナイノハ過大ノ負債ガアル爲ダ、
產業合理化ノ出來ナイノハ過大ノ負債
ガアル爲ダ、此負債ノ整理ノ問題ハ今
日社會的ニ重大ナ意義ヲ爲スニ至ッタ
ト云フコトヲ井上サンガ言ッテ居ル、
貨幣價値ヲ一割三分引上ゲタガ爲ニ其
負債ノ利ガ增シサ居ル、ソレデソレダ
ケ日本ノ產業ト云フモノヽ上ニ壓迫ヲ
加ヘテ居ルノデス、其利息モ其通リデ
ス、ソレカラ動力費ノ問題、是モ大分
近頃ハ下ッテ來タガ、契約ノ色々ナ關係
モアッタデセウガ、是モ下ッテハ行キマ
ス、ソレカラ原料費、是ガ例ヘバ棉花
ノヤウナ外國關係ノモノハ、日本デ之
ヲ左右スル譯ニ行キマセヌガ、日本ノ
繭ノ如キモノハ、是ハウント叩下ゲラ
レテシマッタ、外ノ物ノ價値ガ上ッテー
-併シ外國ニ品物ヲ-生絲ヲ賣ルガ
爲ニハソレダケ下ゲナケレバ賣レナ
イ、日本ノ貨幣價値ガ上ッテ居ルカラ、
ソレダケ下ゲナケレバ賣レナイ、殊ニ
支那ノ銀暴落ノ關係、支那ノ生絲ノ競
爭關係等ガ現レテ生絲ノ價値ヲ下ゲナ
ケレバ賣レナイ、併シ生產原價ガ上ッテ
居ル、租稅ノ如キ、鐵道運賃、郵便電
信、電話ノ問題、俸給給料ノヤウナ問
題煙草專賣價格ノヤウナ問題、斯ウ
云フヤウナ政府ノ手ニ於テ下ゲヤウト
思ヘバ下ゲラレルモノガ一ツモ下ゲテ
居ラナイ、貨幣價値ダケ引上ゲタ、ソ
レガ爲ニ生產原價ハ上ッタ、上ッタケレ
ドモ高クハ賣レナイ、安ク賣ラナケレ
バナラヌト云フコトハ結局弱イモノ
ガソレヲ負擔シナケレバナラヌ、卽チ生
絲ニ於テハ原料費ノ繭ト云フモノヽ値
段ガドン〓〓ト叩カレルコトニナッテ
居ルノデアル、是ガ今日ノ農村ノ疲弊
ノ非常ニ重大ナ原因ニナッテ來テ居ル
譯デアリマス、ソレデ今申シマスル紡
績ノヤウナモノハ日本デ叩ク譯ニ行カ
ナイ、アナタガ申シマシタヤウニ、其
爲替相場ノ騰貴ニ伴フダケ物價ハ下ッ
テ行ク、下ッタコトハ同ジコトデス、是
ハ別ニ日本ノ輸出ヲ少シモ助ケナイ、
是ハ元ノ儘デス、生絲ノヤウナモノハ
叩カレルカラ日本ノ農村ハ非常ニ疲弊
シテ居ル、斯ウ云フヤウナ譯デアル、
モウ一ツ、株主ノ配當、株主ノ配當ヲ
少クスル、今マデ一割シテ居ッタモノヲ
五分ニシタトカ、八分ニスルト云フヤ
ウナ問題、今日之ヲ飛越シテ無配當ニ
シテモ大抵ノ會社ハイケナイ、サウス
ルト株主ノ配當ハ或ル限度ニ於テ固定
シテシマフ、サウスルト原料費ト云フ
モノハ獨リ生產原價ヲ下ゲルト云フコ
トヲ負擔シナケレバナラヌカラ、卽チ
繭ノ値段ガ底無シニ下ッテ農村ガ非常
ナ困難ニ陷フテ居ルノデアリマス
斯ウ云フヤウナ譯デ現內閣ハ爲替相
場ヲ引上ゲタガ爲ニ貨幣價値ガ上ッテ
其結果ハ何カト云フト生產原價ガ上ツ
テ居ル爲ニ日本ノ貿易ガ困難ニナルノ
デアリマス、其證據ニ政府ハ產業合理
化トカ、國產品ノ愛用トカ、貿易局ヲ拵
ヘルトカニ努力シテ居ルト言ハレル
ガ、尙ホ輸入超過ノ率ハ增大シテ居ル
是ハ井上大藏大臣ガ胡麻化シテ居ル、
輸入超過ハ減ッテ居ルト言フ、總額ニ於
テソレハ減ッテ居リマス、輸入超過ノ總
額ハ下ッテ來テ居ルノデアリマスガ、率
カラ云ヘバ輸入超過ノ率ハ增大シテ居
リマス、是モ施政方針ノ演說ニ於テ井
上サンハ胡麻化シテ居ル、ケレドモ輸
入超過ノ率ハ增大シテ居リマス、是程
政府ハ國際貸借ノ改善ニ努力シテ居ル
ニ拘ラズ、貨幣價値ヲ引上ゲタト云フ
此一ツノ事ノ爲ニ、卽チ生產原價ヲ引
上ゲタガ爲ニ輸出ガ困難ニナッテ居リ
マス、ソレヲ如何ニモ井上サンノ著書
デ見ルト、金解禁ニ依ッテ物價ヲ下落
セシメテ、サウシテ國際貸借ノ改善ヲ
スル、斯ウ云フ議論ヲシテ居リマス、
私今ニ腑ニ落チナイト言フノハ此點デ
アリマス
之ヲモウ一ツ實際ニ就テ申上ゲマ
ス、是ハ井上サンノ演說ノ中ニモアリ
マシタ、昭和四年六月カラ昨年ノ暮マ
デノ間ニ米國ニ於テハ物價ガ二割二分
下ッテ居ル、日本ハ二割七分下ッテ居リ
マス、英國ハ二割二分下ッテ居リマス、
大體日本ノ物價ノ低下率ガ多クテ外國
ノ率ニ接近シテ來テ、日本ノ國際貸借
ハ善クナッテ來タ、斯ウ云フ意味ニ於テ
井上サンガ言ッテ居リマス、所ガ是ハ其
處ニ胡麻化シガアル、是ハ斯ウ云フコ
トニナリマスガ、實例ヲ以テ申シマス、
百圓ノ生絲ヲ一昨年六月ノ末頃ニ米國
ニ賣ル時ハ四十三弗-輸送料ナゾヲ
引イテ、私ハソレヲ無クシテ言ヒマス
ガ、理論上之ヲ〓究ノ爲ニ-四十三
弗六五ニ亞米利加ニ賣レタ、ソレガ米
國ニ於テ今日二割二分物價指數ガ下落
シタト云フコトハ、米國人ガ二割二分
ダケ安ク日本ノ物ヲ買ハント欲スル、
サウスルトソレダケ引クト、今日米國
人ハ幾ラニ買ハウトスルカト云フト、
三十四弗四仙デ買フ、其間ニ日本ノ貨
幣價値ガ-爲替相場ガ上ッテ來タガ
爲ニ、其三十四弗四仙ヲ日本ニ換算ヲ
致シマスルト六十八圓三十錢ニナリマ
ス、卽チ百圓ノ物ガ六十八圓三十錢ニ
ナリマスカラ三割一分七厘下ッテ居リ
マス、卽チ日本ノ物ガ三割一分七厘下ッ
タハ米國ガ二割二分下ッテ居ル間ニ、日
本ニ於テハ三割一分七厘ダケ下ッテ元
ト同ジ貿易ガ行ハレル、然ルニ日本ハ二
割七分ヨリ下ッテ居リマセヌカラ輸出
ノ狀態ガ惡クナッテ居リマス
故ニ私共ノ申上ゲルコトハ、金解禁
ヲヤッタ結果生產原價ガ引上ゲラレテ
日本ノ貿易狀態ハ惡クナッタト斯ウ信
ジテ居ルガ、ソレモ忍バナケレバナラ
ヌ事ナラ忍バナケレバナラヌガ、他ノ
方面ニ於テドレダケ忍バナケレバナラ
ヌカ、井上大藏大臣ノ議論ハ金解禁ヲ
ヤッテ物價ヲ下ゲテ、サウシテ輸出狀態
ヲ好クシタト言ウテ居リマスガ、其處
ニ錯覺ガアル-頭ノ錯覺ガアル、今
申シマスル通リ是ハ非常ニ大事ナ問題
デアリマシテ、今日ノ不景氣ト非常ニ
重大ナ關係ガアル、隨ッテ是ハ政府ノ歲
入ト云フモノト非常ニ關係ガアル、私
共此賠償金特別會計ヲ廢止スルコトニ
付テ、私共ノ意見ヲ決定スル上ニ非常
ニ大事ナコトデアリマスカラ、ドウカ
ハッキリト此點ニ付テ小川政務次官ノ
御答ヲ願ヒタイト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912783X00319310212&spkNum=31
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032・小川郷太郎
○小川政府委員 非常ニ澤山ノ問題ニ
亙ッテ御話ニナリマシタノデ一々項ヲ
逐ウテ御話ヲスルコトモ出來ナイカト
思ヒマスガ、根本論カラ一ツ正シテ行
カナケレバナラヌト思ヒマス、以前ニ
モ申シマシタヤウニ、松山君ハ貨幣價
値ヲ上ゲタ、ソレデ今日ノヤウナ財界
ノ窮況ヲ來シテ居ルノダ、斯ウ云フ御
議論デ、其貨幣價値ト云フ御議論ヲ承ツ
テ居リマスト云フト、今ノ物價ガ二割
幾ラ下ッタト云フノハ、ソレヲ貨幣價値
ノ騰貴ト斯ウ云フ風ニ見ラレテ、ソレ
ガ現內閣ノ金解禁、卽チ爲替ガ上ッタト
云フコトヽ同ジヤウニ御議論ヲナサツ
テ居ルノデハナイカト思フノデス、(松
山委員「サウデハナイ」)ソレハ井上大
藏大臣ガ色々ナ處デ說明シテ居ルヤウ
デアリマスガ、爲替相場ノ方カラ來タ
モノハ計算ノ仕方ハ松山君ノト違ヒマ
ス、大體アナタノ御取リニナッタ六月二
十九日ト云フコトヲ取ラナイデ、其爲
替ガドウ云フ處ニアッタカト云フコト
ヲ見マシテ、現內閣ノ以前ニ於テ平均
四十五六弗ノ處デアッタ、ソレニ依ル爲
替ノ上リ方ハ六分トカ何トカ云フヤウ
ナ風ノ數字ヲ出シテ居ルヤウニ記憶シ
テ居リマス、計算ノ仕方ハ多少違ヒマ
スガ、爲替相場ノ騰貴ニ依ッテ多少ノ影
響ガアッタト云フコトハ、大藏大臣モ認
メテ居ルヤウデアリマス、ケレドモ今
日ノ二割幾ラカ下ッテ居ル處ノモノハ
爲替相場ノ騰貴、卽チ金解禁ノ結果デ
アルトハ言ヘナイノデアリマシテ(松
山委員「勿論サウデス」)今日ノ色々窮
況ヲ來シテ居ルモノハ、ソレヨリハ世
界ノ不景氣、或ハ銀相場ノ暴落、サウ
云フヤウナモノガ響イテ居ルノデアリ
マシテ、ソレデ物價ガ下ッテ居ルダカ
ラ貨幣價値ガ上ッタト云フコトニナル
ノデアリマスカラ、貨幣價値ガ上ッタト
云フコトヲ言フナラバ、世界ノ不景氣、
銀塊ノ暴落、サウ云フヤウナモノガ主
ナル原因ダト、斯ウ云フノデアリマス
カラ、現內閣ノ政策ノ結果ダトハ言ヘ
ナイノデアリマス、世界ノ不景氣ナリ、
銀相場ノ下落ト云フモノヲ以テ、松山
君モ現內閣ノ政策ノ結果ダトハ仰セニ
ナラナイダラウト思フノデス、ソレデ
アリマスカラサウ云フ風ニ物價ガ色々
ナ事情デ下落シテ來ル、其下落シテ居
ルコトヲ政策へ持ッテ來ルト云フコト
ハ私ハ議論トシテハ正確デナイト思フ
ノデアリマス、其處ニ根本ノ違ガアリ
マスカラ、個々ノ問題ノ觀察ノ仕方ガ
又違ッテ來ルト思フノデス
大體松山君モ御承認ニナルデアリマ
セウガ、物價ノ騰落ト云フヤウナモノ
ハ貨幣價値ノ騰落ト反比例的ニ考ヘラ
レルノデアリマセウガ、物價ノ騰落ト
云フモノハ色々ナ原因ガアリマシテ、
多ク需要供給ノ關係デモ云フノデアリ
マスガ、政策ノ結果デモ何デモナイノ
デアリマス、現ニ生絲トカ、繭ノ例ヲ御
取リニナリマシタ、ソレナンカモヤハ
リ世界ノ不景氣、販賣價格ノ定マルノ
ハヤハリ需要供給ノ關係ト云フヤウナ
モノニアルダラウト思フノデアリマス
現ニ今御引キニナリマシタ例ニ依ッテ見
マシテモ、是ハ生絲ノ値段デアリマス
ガ、嘗テ四十三弗六五ト云フノガ三十
四弗ニナッタ、斯ウ云フノモ日本ノ爲替
相場ガ上ッタカラ、日本ノ圓價ニ換算シ
テ見タナラバ、八十六圓ノモノガ六十八
圓ニナッタト云フノデナクシテ、亞米利
加ノ紐育ナラ紐育ノ市場ニ於テ、亞米利
加ノ弗ノ關係ニ依ッテ、生絲ノ値段ガ四
十三弗カラ三十四弗ニナッテ居ルノデア
リマス、卽チ世界ノ市場ニ於テ物ガ下ッ
テ居ル、生絲ガ下ッテ居ルト云フノデア
リマスカラ、是ガ金解禁ノ結果デアル
トハ言ヘナイノデアリマス、爲替相場
ガ上ッタノハ金解禁ノ結果デ、生絲ノ値
段ガ三十四弗ニナッテ居ルトカ云フヤ
ウナコトハ言ヘナイ、ソレガ卽チ世界
ノ不景氣、大藏大臣ノ謂フ世界ノ不景
氣ガ其處ニ來テ居ルノデアリマシテ、
此政策ノ結果デアルト云フコトハドウ
シテモ言ヘナイト思フノデアリマス
尙ホ色々ノ問題ヲ御話ニナリマシタ
カラ、悉ク私ハ御答ガ出來マセヌガ
租稅ガ上ッタトカ、生產費カ上ッタト云
フヤウナ御話ガアリマシタケレドモ、
ソレハドウ云フ御議論デアリマスカ、
能ク呑込メマセヌデシタ、ガ併シ租稅ガ
上ッタト云フ議論ヲナサイマスノハ物
價ガ二割下ッタ、ソレガ貨幣價値ノ騰貴
デアル、斯ウ言フ御議論デアルト思フ
ノデアリマス、處ガ其原因ハ前申シタ
ヤウニ、世界ノ不景氣トカ何トカ云フ
ヤウナコトデ、全體ノ世界ノ物價ガ變動
スル時デアルカラ、其議論ヲ以テ-政
策デ租稅ヲ實ハ引上ゲテ居ルト云フヤ
ウナコトニハナルマイト思フノデアリ
マス、尙ホ御承知ノ通リ今日問題ニナツ
テ居ル租稅收入ガ十分デナイト云フコ
トデアリマシテ、ソレデ以テ現內閣ヲ
攻擊セラレテ居ルモノト思ヒマス、ソ
レハドウカト言ヘバ租稅收入ハ減ル
ノデアリマス、殊ニ間接稅ト云フヤウ
ナモノハ物價トモ關係ヲ持チマセウ、
物ノ賣買ノ數ト云フモノモ關係ヲシマ
セウ、サウ云フ處デ租稅收入ガ減ッテ居
ルノデアリマスカラ、租稅收入ガ以前
ノ如クニアルト云フコトヲ前提トシ
テ、ソレヲ今ノ物價カラ見ルト云フト
比較的增稅ニナッテ居ル、斯ウ云フ議論
ノ立テ方デアリマスト云フト、其處ニ
私ハ少シ事實ニ合ハナイ觀察ガアルノ
デハナイカト思フノデアリマス、問題
ハ根本論デアリマシテ、貨幣價値ノ騰
貴ト云フコトヲ一體ドウ解釋スベキカ
ト云フ問題ヲ解決シマセヌト云フト、
此問題ハ喰違ヲテ行クト思フノデアリ
マス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912783X00319310212&spkNum=32
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033・松山常次郎
○松山委員 經濟學ニ於キマシテハ私
ハマルデ素人デアリマシテ、分ラナイ
者デゴザイマス、併ナガラ私ハ此經濟
學ニ非常ニ通ジテ居ラレルト云フ學者
タル小川君ノ頭ノ朦朧トシテ、根本的
ノ問題ヲ一寸モ〓究シテ居ラナイコト
ニ私ハ驚クノデス、驚イタカラト云ウ
テ是ハ根本的ノ問題デスカラ、六千萬
人ノ日本國民ガ全部聽カントスル重大
ナ生活ニ關係スル問題ヲ、サウ宜イ加
減ニ措ク譯ニハ行カナイ、併シ恐ラク
私ハ十分小川君ニ此事ヲ成程ト思ウテ
貰フコトハ出來ナイト思ヒマスカラ、
此問題ハ委員長ノ御許ヲ得テ、尙ホ次
ノ機會マデ持越シテ、私モ出來ルダケ
手段ヲ盡シテ政府當局ニ理解シテ貰ヒ
タイト思フ
唯小川君ニ一ツ此事ヲ私ハ理解シテ
貰ヒタイト思フ、貨幣價値ト云フコト
ニ付テ學者ノ小川君ガ今言フヤウナ議
論ヲセラレルト云フコトニ付テハ、ソ
レハ尤ナ所ガアルノデセウ、併シ此事
實ヲ小川君ニ一ツ聽イテ貰ヒタイ、私
ハ昨年六月二十九日、是ハ六月二十九
日デモ七月二日デモソンナ事ハドッチ
デモ宜シイ、唯キチントシタ數字ヲ摑
ム必要ガアリマスカラ六月二十九日ト
言ヒマス、其時ニ於ケル爲替相場ガ、是
ガ又私ハ四十三弗六五、七五ト云フ御
話デスガソレハドッチデモ宜イ、ソンナ
細カイ事ハドウデモ宜イノデス、其時
ニ於ケル爲替相場ガ四十三弗六五ト致
シマシテ、サウスレバ其日ニ爲替ヲ組
ンデ米國ニ百圓ノ金ヲ送ルナラバ、四
十三弗六五ニ相當スル現金ヲ受取レ
ル、送金料ヲ引イタダケノ現金ガ取レ
ル、其現金ヲ日本へ持ッテ來ルナラバ、
其往復ノ送金料ヲ引イタダケノ現金ヲ
百圓ニ付テ吾々ハ受取リ得ル譯デアル
輸出ハ禁止サレテ居ルケレドモ、輸入
ハ禁止サレテ居ラナイ、故ニ六月二十
九日ニ於ケル日本ノ百圓ハ四十三弗六
五ニ相當スル金ノ目方デアルト云フコ
トハ私ハ無學ナ者デ、經濟ノコトニ
付テハ明ルクナイケレドモ、是ハ動カ
スベカラザル事デアルト思フ、其時ノ
貨幣價値ハ-日本ノ百圓ノ價値ハソ
ンナ小川君ノ言フヤウニ瞹昧ニ動クモ
ノデナイト私ハ信ジテ居ル、是ハ私ノ
信念デアル、ソレヲ說明スルコトハ、
私モ學者ノ意見ヲ聽キマス、小川君モ
一ツ〓究シテ下サイ、六月二十九日ニ
於テ爲替相場ガ四十三弗六五デアル時
ニ、百圓ヲ爲替デ向フヘ送レバ四十三
弗六五ニ相當スル、送金料ヲ引イタダ
ケノ現金ヲ米國デ受取リ得ル筈デア
ルソレヲ組ンデ日本ヘ送金シテ來レ
バ、四十三弗六五ニ相當スル金、卽チ
往復ノ送金料ヲ引イタダケノ金ノ目方
ヲ吾々ハ受取リ得ル、卽チ日本ノ百圓
ト云フモノハ昨年ノ六月二十九日ニ於
ケル四十三弗六五ニ相當スル金ノ目方
デアル、ソレガ日本ノ其日ニ於ケル金
ノ價値デアルト私ハ信ジテ疑ハナイ、
此事ニ付テ學者タル小川君ハ能ク御〓
究ヲ願ヒタイ
モウ一ツ此場合ニ於テ御尋シタイ事
ハ、私ガ前ニ引イタ例ニ付テ小川君ノ
言フコトハ極メテ杜撰ナ數字モ間違ツ
テ居ルシ、誰ガ聽イテモ理解出來ナイ、
此事ヲ私ハモウ一遍御尋シタイ、私ガ
前ニ言ウタ事ノ結論ハ斯ウ云フコトナ
ノデス、昭和四年ノ六月カラ昨年ノ暮
マデノ間ニ、米國ニ於テハ物價指數ガ
二割二分下ッタ、日本ニ於テハ二割七分
下ッタ、其結果ハ日本ノ物ヲ米國ニ輸出
シ易イ狀態ニナッテ居ルカドウカト云
フコトデアリマス、私共ハ輸出シ易イ
狀態ニハナッテ居ラヌト信ズル、斯ウ云
フ事ハ詰ラヌ事ノヤウデアリマスケレ
ドモ、今日ノ不景氣ノ根本ノ原理デア
リマスカラ、私ハ何處マデモ明カニシ
ナケレバ承知出來ナイ
ソレデ一問一答デ小川君ニ御聽致シ
タイノデス、送金料ナドハ拔キニシテ
根本原理ニ付テ御尋致シタイ、昨年ノ
六月二十九日ニハ四十三弗六五トナツ
テ居リマス、ソレハ七五デモ宜シイ、
計算スルノガ面例デスカラ、ドチラデ
モ宜シイガ、六五トシテ下サイ、假ニ
百圓ノモノヲ亞米利加ニ賣ルナラバ、
四十三弗六五ニ賣レルト云フコトハ御
承認ニナリマスカ、生絲デモ宜シイ、
何デモ宜シイ、日本デ百圓ノ物ヲ賣ッタ
ナラバ、爲替相場ガ四十三弗六五ノ場
合ニハ亞米利加デハ四十三弗ハ五デ
買フテ吳レルト云フコトヲ御承認下サ
イマスカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912783X00319310212&spkNum=33
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034・小川郷太郎
○小川政府委員 一寸問題ガハッキリ
シマセヌガ、四十三弗六五デ亞米利加
デ賣買サレテ居ル物ガアル、其物ヲ買ツ
タ時分ニ日本デハドレダケ金ヲ送ッタ
ラ宜イカト云ヘバ百圓ヲ·発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912783X00319310212&spkNum=34
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035・松山常次郎
○松山委員 宜シウゴザイマス、承認
スレバ宜シイ、サウスルト···発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912783X00319310212&spkNum=35
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036・小川郷太郎
○小川政府委員 色々議論ノ紛雜ヲ避
ケル爲ニ申上ゲテ置カナケレバナラヌ
ト思ヒマスガ、金物價-金デ物價ヲ
見タナラバ斯ウ云フコトニナル、日本
デハ其時分ニハ、本當ヲ云ヒマスト貨
幣ノ作用ヲ麻痺サレタト云フヤウナ形
デ、實際ハ兌換劵ガ日本ノ物價ヲ支配
シテ其兌換劵ノ名ニ於テ物價ガ言表
サレテ居ルト思フ、ソレヲ對內價値ト
カ、對外價値トカ云フコトデ御話ヲシ
タノデアリマスガ、金物價ト、ソレカ
ラ銀行劵ニ依ル通貨ノ物價ト云フモノ
トハ違フノデアリマシテ、ソレヲアナ
タハ何カ混同サレテ、直グ貨幣價値ト
云フヤウニ言ハレマスカラ、ソレヲ否
認シテ居ル譯ナノデアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912783X00319310212&spkNum=36
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037・松山常次郎
○松山委員 其事ヲ承認シテ下サレバ
宜シイ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912783X00319310212&spkNum=37
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038・小川郷太郎
○小川政府委員 爲替相場ガ百圓ニ付
テ四十三弗六五ト云フコトデアレバ、
百圓札ヲ以テ四十三弗六五ニ換ヘラレ
ルト云フコトハ言ヘマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912783X00319310212&spkNum=38
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039・松山常次郎
○松山委員 亞米利加デ日本ノ生絲ヲ
四十三弗六五デ賣ッテ、送金料ナドハ拔
キニシテ、吾々ガ正金銀行ヘ行ケバ、
日本ノ紙幣デ百圓受取レルト云フコト
ハ御承認下サイマスネ-所ガ其時ヨ
リ今日マデニ米國ノ物價指數ハ二割二
分下ッタ、故ニ米國人ハ日本ノ生絲モ二
割二分安ク買ハント欲スル、此事モ御
承認下サイマスカ、モウ一ツ言フナラ
一、先ニ四十三弗六五デ買。タ物ハソ
レカラ二割二分引イタ三十四弗四仙デ
亞米利加人ハ買ハンコトヲ欲スル、サ
ウスレバ亞米利加人ノ負擔ハ前ト同ジ
コトデアル、其事ヲ御承認下サイマス
カ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912783X00319310212&spkNum=39
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040・小川郷太郎
○小川政府委員 其處デス、アナタハ
亞米利加ノ物價指數ガ二割二分下ッタ
カラ、總テ日本カラ行ク物モ一一割二分
下ッタモノ··発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912783X00319310212&spkNum=40
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041・松山常次郎
○松山委員 私ハ皆ト言ウテハ居ナ
イ、根本ノ原理ヲ言ウテ居ルノデス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912783X00319310212&spkNum=41
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042・小川郷太郎
○小川政府委員 全體ノ物價ガ下ッテ
居レバ、假ニ亞米利加ノ相場ガ一一割二
分下ッテ居ルト云フコトデ、總テノ物ノ
賣買ガ行ハレルト云フコトハ考ヘラレ
マセウガ、併シアナタノ言ハレルヤウ
ニ、買ハント欲スルト云フコトニナリ
マスト、需要供給ノ關係モアリマス
シ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912783X00319310212&spkNum=42
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043・松山常次郎
○松山委員 私ハ他ノ關係ナドハ言ヒ
マセヌ、亞米利加人ハ二割二分下ゲテ
買ヘバ前ト同ジ負擔ニ感ズル、其事ハ
御承認ナサイマスネ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912783X00319310212&spkNum=43
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044・小川郷太郎
○小川政府委員 同ジ負擔カドウカ知
リマセヌケレドモ····発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912783X00319310212&spkNum=44
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045・松山常次郎
○松山委員 詰リ斯ウ云フコトナノデ
ス、今日亞米利加ノ物價指數ハ二割二
分下ッテ居ル、一般的ニ亞米利加人ハ二
割二分安ク買ヘル、同ジヤウニ日本カ
ラ行ク品物モソレダケ安ク買ヘバ、亞
米利加人ハ高クナッタトモ思ハヌ、安ク
ナッタトモ思ハヌ、同ジヤウニ感ズル、
其事ハアナタハ御承認ナサイマスカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912783X00319310212&spkNum=45
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046・小川郷太郎
○小川政府委員 感ズルト云フコトハ
分リマセヌネ、物價ガ下ッテ居ルト云フ
事實ダケノ問題ダカラ、同ジヤウニ感
ズルト云フコトハ、ソレハ違ッタ問題デ
スナ、唯物價ガ二割二分下ッテ居ルト云
フ事實カラ、サウ假定スレバ、其假定
通リ認メルダケデ、議論ハ無イコトニ
ナリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912783X00319310212&spkNum=46
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047・松山常次郎
○松山委員 モウ一度言ヒマス、四十
三弗六五デ買ッタ物ヲ、今日亞米利加デ
ハ三十四弗四仙デ買ヘル、サウスレバ
同ジ程度ニ於テ、日本カラ行ッタ物モ三
十四弗四仙デ買ヘバ亞米利加人ハ同ジ
負擔ニ感ズル発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912783X00319310212&spkNum=47
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048・小川郷太郎
○小川政府委員 同ジ負擔ト云フコト
ハ言葉ガ惡イデスナ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912783X00319310212&spkNum=48
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049・松山常次郎
○松山委員 私ノ言フ意味ハ分ッテ居
ルデセウ、送金料ヲ引イテ三十四弗四
仙、日本ノ今日ノ金ニ換算スルト六
十八圓三十錢ニナル、此計算ハ間違ナ
イ積リデス、私ノ計算ヲ信ジテ下サイ
サウスルト金解禁以前ニ百圓デ宜ノ.
モノニ對シテ受取ッタ百圓ノ金ハ、今度
ハ六十八圓三十錢シカ受取レヌノデア
リマスカラ、亞米利加人カラ云ヘバ、
日本ハ三割一分七厘ダケ物價ガ下ッタ
コトニナル、百圓受取ッタモノハ今日六
十八圓三十錢シカ受取レナイノデアリ
マスカラ、日本人ノ受取ル金ハ三割一
分七厘下ル、卽チ日本デ三割分七厘
下ゲテ賣ッタ時ニ、亞米利加人ハ以前ト
同ジ狀態ニ於テ取引ヲシテ吳レル、此
事實ヲ御承認ニナッテ吳レマスカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912783X00319310212&spkNum=49
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050・小川郷太郎
○小川政府委員 ソレハ一體ドウ云フ
御議論デスカ、能ク分リマセヌガ丁
度私ノ言フヤウナ議論ニナルノデス
ネ、世界ノ不景氣デ亞米利加ノ物價ガ
下ッタ、アナタノ仰シヤルヤウニ二割二
分-日本ノ爲替相場トカ何トカ云
フ問題デハナイ、金解禁トカ何トカ云
フコトデナクシテ、亞米利加ガ世界ノ
不景氣ノ影響ヲ受ケテ下ッタ物價·····発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912783X00319310212&spkNum=50
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051・松山常次郎
○松山委員 日本ノ金解禁ノ爲ニ日本
ノ貨幣價値ガ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912783X00319310212&spkNum=51
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052・小川郷太郎
○小川政府委員 ソレヲ其處ヘ持ッテ
來ルカラ困ル··発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912783X00319310212&spkNum=52
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053・松山常次郎
○松山委員 話ヲ能ク聽イテ下サイ、
宜イデスカ、詰リ亞米利加デハ二割二
分物價ガ下ッテ居ル、サウ云フ狀態ノ下
ニ於テハ、日本ノ品物ヲ三割一分七厘
下ゲレバ、元ト同ジヤウニ圓滑ニ、昭
和四年六月末ノ當時ノ輸入貿易ガ行ハ
レル、其事ヲ御承認ナサイマスカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912783X00319310212&spkNum=53
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054・小川郷太郎
○小川政府委員 アナタノ御觀察ノヤ
ウニ、サウ云フ所ヘ貿易問題ヲ持ッテ
來テハ困ルノデス、何故ナラバ亞米利
加ノ物價ガ二割二分下ッタト云フコト
ハドウ云フコトヲ言フカト言ヘバ
亞米利加ノ是ハ物價指數ノ取リ方デア
リマスガ、重要ナル品物ニ付テ考ヘテ
見タノダト思ヒマス、其中ニハ日本ノ
貿易ニ何等關係ノナイ物ガ皆ハイリ込
ンデ居ルノデアリマス、ソレカラ又日
本ノ物價指數ト云ッタ所デ、亞米利加ノ
貿易ニ關係ノナイ物ガ澤山ニアル譯ナ
ンデス、ソコデ普通ノ物價ノ下リ方ヲ
見テ、今六十八圓三十錢ニナッテ、三十
一「パーセント」下ッテ居ルカラシテ、日
本カラ亞米利加ニ行ク品物ガ三割一分
デ行クトカ何トカ云フ議論ハ、第一其
比較ノ相手方ガ私ハ違ッテ居ルト思フ
ノカ·ス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912783X00319310212&spkNum=54
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055・松山常次郎
○松山委員 アナタハ學者ダカラソン
ナ事ヲ仰シヤルノダラウガ、根本ノ原
理ヲ聽イテ居ル、特定ノ問題ニ付テ言ッ
テ居ルノデハナイ、貿易關係ダケニ付
テ分レバ宜シイ、詰リ私ノ言フコトハ
委員長、私ハ此質問ハ打切レマセ
ヌヨ、此事ガ分ルマデ-小川政務次
官デ分ラナケレバ、井上大藏大臣ニ來
テ貰ッテ、私ハ何處マデモ御尋ヲスル、
其事ヲ言ッテ置キマス-兎モ角亞米
利加ガ今日二割二分物價指數ガ下ッテ
居ルト云フコトハ、日本ニ於テ三割一
分七厘物價ガ下ッテ初メテ昭和四年六
月二十九日當時ノ貿易關係ガ圓滑ニ行
ハレル、其狀態ニ於テ舊態ヲ維持出來
ル所ガ日本ガ二割七分ヨリ下ッテ居
ラヌト云フコトハ、日本ノ物價ノ狀態
ハ、尙ホ今日ハ詰リ金解禁前ヨリモ
濱口內閣成立前ヨリモ、貿易狀態ガ惡
クナッテ居ル、政府ハ產業合理化トカ、
貿易局ヲ拵ヘルトカ、國產愛用奬勵ト
カ、有ユルコトヲ努力シテ居ルニモ拘
ラズ尙ホ輸入超過率ガ殖ヱテ居ル、井
上大藏大臣ハ八百萬圓輸入超過ガ減ッ
テ居ルト言ッテ居ルケレドモ、貿易ノ總
額ハ殖ヱテ居ル、生絲トカ云フ特殊ノ
物ニ於テハ非常ナ犠牲ヲ拂ッテ賣ッテ居
ルニ拘ラズ、尙ホ旨ク輸出ガ行カナイ
ト云フコトハ、金解禁ト云フ此事實ノ
爲デアル、ソレガ爲ニ日本ノ貿易ガ旨
ク行カナイ、ソレカラ先ニ申シマシタ
ヤウニ、政府ハ、鐵道運賃モ下ゲナイ、
租稅モ下ゲナイ、專賣ノ煙草等有ユル
物ヲ下ゲナイ、斯ウ云フモノハ下ゲナ
イケレドモ、總テノ生產原價ハ下ゲナ
ケレバナラヌ、賣價ヲ下ゲナケレバ賣
レナイカラ-其生絲ノ相場ニ依ッテ
直チニ繭ト云フモノハ三分ノ一ニモ四
分ノ一ニモ下落スルト云フ慘狀ヲ呈シ
テ居ルノデアリマス、此根本ノ原理ヲ
能ク理解シナケレバナラヌ、其上デ金
解禁ガ宜シイカ、宜シクナイカヲ判斷
シナケレバナラヌ、生產原價ガ下ル、
生產原價ガ下ッテ居ル、ソレダカラ輸
出ガドウ斯ウト云フヤウナ胡麻化シノ
議論ノ下デハ、此問題ヲ看過スルコト
ハ出來ナイノデアリマス
デ私ハ小川政務次官ノ頭デハ是ハ分
ラナイト思ヒマスカラ、尙ホ是ダケ申
上ゲテ置キマス、今申上ゲル通リ、米
國ニ於テハ物價指數ガ一一割二分下ッテ
居ルニ對比シテ、昭和四年六月二十九
日ノ當時ノ貿易狀態ヲ維持スルガ爲ニ
ハ、日本ハ三割一分七厘物價ヲ下ゲナ
ケレバナラヌ、然ルニ今日日本ハ二割
七分ヨリ下ッテ居ラヌト云フコトハ、日
本ノ物價ガ未ダ下リ足ラヌノデアリマ
ス、物價ガ下ッテ不景氣ガ是カラ尙ホ
エラクナル、有ユル海外貿易ニ政府ガ色
色努力シテ居ルニモ拘ラズ惡クナッテ
行ク、正貨流出ガ盛ニナル斯ウ云フ
結論ニ達スルノデアリマス、是ハ極メ
テ大事ナ問題デアリマスカラ、小川政
務次官モ能ク御考ヘニナッテ、此先キ幾
ラ申上ゲテモ分ラナクナリマスカラ、
此素人ノ議論ガドレダケ間違ッテ居ル
カト云フコトヲ、十分御理解ニナッテ御
說明ヲ下サルナラバ了解ガ出來ルダラ
ウト思フ、ソレヲ胡麻化シノ下ニ於テ
ハ素人デアッテモ、幾ラアナタガ大學
者デモ承服ハ出來マセヌ、是ハ小川政
府委員ニ申シテ置キマス、是ハ宜イ加
減ニ胡麻化シ得ル問題デハナイ、金解
禁ノ根本問題デス、日本ノ不景氣ノ根
本問題デアリマス、此問題ガ毫モ今マ
デノ本會議、豫算委員會ト云フヤウナ
處デ十分論議シ盡サレテ居ナイノデア
リマス、落付イテヤレナイ、ソレデ此
賠償特別會計法ノ此機會ヲ與ヘテ貰。ツ
タノデゴザイマスカラ、幾ラデモ此問
題ヲ論議ヲスル、若シ政務次官デ分ラ
ナケレバ、井上大藏大臣ニ來テ貰フテ論
議スル積リデアリマス、ドウカ政府委
員ニ於カレテモ此點ヲ十分御〓究ニ
ナッテ御答辯下サルコトヲ希望致シマ
ス、私ノ質問ハ留保シテ此程度ニ止メ
タイト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912783X00319310212&spkNum=55
-
056・小川郷太郎
○小川政府委員 松山君ガ尙ホ質問ヲ
續ケテヤルト云フコトデアリマセヌカ
ラ、私ハチヨット挨拶ダケシテ置キマ
ス、今ノ松山君ノ議論ノ仕方ハ私稍〓了
解ヲ致シマシタガ、其處ニ私ハ少シ贊
成出來ナイ所ガアリマス、ト云フノハ
亞米利加ノ方ノ取扱方ハ、物價ハ四十
三弗六五デアッタモノガ、今日三十七弗
四デスカ、サウナッタ、マア二割二分下
落シタ、一般物價ヲ捉ヘテノ御議論デ
アリマス、日本ノ物價ノ二割七分ト云フ
コトモ一般ノ物價、凡テノ物價ト云フ
モノヲ平均シタモノデアリマス、所ガ
アナタノ御議論ノ中デチヨット私ノ不
思議ニ思ヒマスノハ、亞米利加ノ物價
ガ二割二分、卽チ三十四弗幾ラニナツ
テ居ルモノヲ以テ、日本デ今日換算シ
テ見ルト云フト六十八圓三十錢デアッ
テ、三割一分七厘ト云フコトニナルカ
ラ是デ取引ガ出來ナケレバナラナイ、
是デ取引ヲセナケレバナラヌ、是デ日
本ノ品物ヲ賣ル、亞米利加ノ品物ヲ買
フト云フモノナラバ、ソレハ一般物價
デハナイノデアリマス、撰バレタ物ニ
付テ言フコトデアリマスカラ-一方
ノ觀察ハ一般物價デ總テノモノヲ包括
シタモノデ、亞米利加ト日本デ取引サ
レルモノハ特殊ノモノガ言ハレテ居ル
ノデアリマスカラ、一般物價論ヲ以テ
特殊ノ品物ガ取引サレルトカ、取引ガ
サレナイト云フコトヲ議論爲サル所ニ
私ノ贊成ノ出來ナイモノガアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912783X00319310212&spkNum=56
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057・鈴木寅彦
○鈴木委員長 ソレデハ松山君ノ質問
ヲ留保シテ今日ハ是デ散會シマス、次
ノ日時ハ公報デ申上ゲマス
午後四時三十分散會発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005912783X00319310212&spkNum=57
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