1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和六年一月二十七日(火曜日)
午後一時二十二分開議
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議事日程 第六號
昭和六年一月二十七日
午後一時開議
第一 地租法案(政府提出) 第一讀會
第二 營業收益税法中改正法律案(政府提出) 第一讀會
第三 砂糖消費税法中改正法律案(政府提出) 第一讀會
第四 織物消費税法中改正法律案(政府提出) 第一讀會
第五 明治四十一年法律第三十七號中改正法律案(地方税制限に關する件)(政府提出) 第一讀會
第六 大正十五年法律第二十四號中改正法律案(地方税に關する件)(政府提出) 第一讀會
第七 都市計畫法中改正法律案(政府提出) 第一讀會
第八 右各案の審査を付託すへき委員の選擧
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一 國務大臣の演説に對する質疑 (前會の續)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X00719310127&spkNum=0
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001・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 諸般ノ報告ヲ致サ
セマス
〔書記官朗讀〕
一議員ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
鑛業法中改正法律案
號外昭和六年一月二十八日
衆議院議事速記錄第七號
提出者
大里廣次郞君小峰滿男君
神部爲藏君吉田磯吉君
信太儀右衞門君手代木隆吉君
木村義雄君岡野龍一君
大島要三君簡牛凡夫君
中野正剛君比佐昌平君
田崎武男君河波荒次郞君
長野綱良君栗原彥三郞君
末松偕一郞君山本實彥君
澤田利吉君中崎俊秀君
村松恒一郞君森達三君
武知勇記君高瀨梅吉君
牧山耕藏君岡田春夫君
古賀政一君栗山賚四郞君
伊禮肇君佐藤與一君
原吉郞君高橋元四郞君
渡邊泰邦君田中武雄君
山枡儀重君村岡吾一君
三浦虎雄君春島東四郞君
鑛業法中改正法律案
提出者
坂井大輔君野田俊作君
石崎〓行君
度量衡法中改正法律案
提出者松定吉君
計量士法案
提出者松定吉君
未成年者飮酒禁止法中改正法律案
提出者
長尾半平君眞鍋儀十君
谷原公君栗原彥三郞君
風見章君高木正年君
澤田利吉君渡邊泰邦君
三田村甚三郞君櫻內辰郞君
〓水長〓君山桝儀重君
工藤鐵男君田中養達君
服部〓一君坂東幸太郞君
岡田春夫君信太儀右衞門君
杉浦武雄君藤井達也君
星島二郞君土倉宗明君
守谷榮夫君志賀和多稅君
犬竹貫一君
蠶絲業園策ニ關スル建議案
提出者
岡崎久文郞君氏家〓君
高橋守平君百瀨渡君
宮澤胤勇君小山邦太郞君
下元鹿之助君
小倉港ニ關釜連絡船寄港ニ關スル建議案
提出者坂井大輔君
重信川改修ニ關スル建議案
提出者
松田喜三郞君武知勇記君
本多眞喜雄君森達三君
村上紋四郞君
伊豫北條驛ニ急行列車停車ニ關スル建議
案
提出者
松田喜三郞君武知勇記君
本田眞喜雄君森達三君
村松恒一郞君
(以上一月二十六日提出)
原產蕙採取禁止ニ關スル建議案
提出者栗原彥三郞君
小山日光間道路國道編入益改築ニ關スル
建議案
提出者栗原彥三郞君
(以上一月二十七日提出)
一議員ヨリ提出セラレタル質問主意書左ノ
如ジ
鎭海大慘事ニ關スル質問主意書
提出者山下谷次君
日支定期飛行開始ニ關スル質問主意書
提出者永田良吉君
(以上一月二十七日提出)
〔左ノ報〓ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノ爲
玆ニ揭載ス〕
一昨二十六日幣原內閣總理大臣臨時代理ヨ
リ、左ノ通發令アリタル旨ノ通牒ヲ受領セ
リ
拓務省殖產局長殖田俊吉
拓務省拓務局長郡山智
第五十九囘帝國議會拓務省所管事務政府
委員被仰付
一昨二十六日衆議院規則第十五條但書ニ依
リ議長ニ於テ議席ヲ左ノ通變更セリ
二〇七由谷義治君
二二一佐竹庄七君
二二二春島東四郞君
二三四北田正平君
二三五武知勇記君
二五四水野正巳君
二九一澤田利吉君
三三四武內作平君
三三六眞鍋儀十君
四二四鈴木富士彌君
四五二久留義郷君
四六二田中貢君
一昨二十六日常任委員補關選擧ノ結果左ノ
如シ
第二部選出
懲罰委員米田規矩馬君(宮脇長吉
君補闕)
第四部選出
豫算委員西尾末廣君(片山哲君
補闕)
第五部選出
決算委員片山哲君(西尾末廣
君補闘)
第七部選出
豫算委員鷲野米太郞君(八木幸吉
君補關)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X00719310127&spkNum=1
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002・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 是ヨリ會議ヲ開キ
マス-御諮リ致シマス、第六部選出決算
委員庄司良朗君、第七部選出請願委員保良
淺之助君、第二部選出懲罰委員米田規矩馬
君、第三部選出懲罰委員崎山嗣朝君、右常
任委員辭任ノ申出ガアリマス、許可スルコ
トニ御異議ガアリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X00719310127&spkNum=2
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003・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 御異議ナシト認メ
やく、之ヲ許可致シマス、其部ノ諸君ハ速
ニ補闘選擧ヲ行ヒ、御屆アランコトヲ望ミ
マス-更ニ御諮リ致スコトガアリマス
豫算委員長ヨリ本日本會議中ニ豫算委員
會ヲ開キタイトノ申出ガアリマシタ、尙ホ
今後モ本會議中ト雖モ、同委員會及分科會
ヲ開キタイトノコトデアリマス、之ヲ許可
スルニ御異議ガアリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X00719310127&spkNum=3
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004・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 御異議ナシト認メ
やっ、仍テ之ヲ許可致シマス-日程第一
乃至第七ハ同種ノ議案ナルニ依リ、一括議
題ト爲スニ御異議ガアリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X00719310127&spkNum=4
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005・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 御異議ナシト認メ
マス日程第一地租法案、日程第二、營
業收益稅法中改正法律案、日程第三、砂糖
消費稅法中改正法律案、日程第四、織物消
費稅法中改正法律案、日程第五、明治四十
一年法律第三十七號中改正法律案、日程第
六、大正十五年法律第二十四號中改正法律
案、日程第七、都市計畫法中改正法律案ヲ
一括シテ第一讀會ヲ開キマス-井上大藏
大臣
第地租法案(政府提出)第一讀會
地租法案
地租法
第一章總則
第一條本法施行地ニ在ル土地ニハ本法
ニ依リ地租ヲ課ス
第二條左ニ揭グル土地ニハ地租ヲ課セ
ズ但シ有料借地ナルトキハ此ノ限ニ在
ラズ
-國府縣、市町村其ノ他勅令ヲ以
テ指定スル公共〓體ニ於テ公用又ハ
公共ノ用ニ供スル土地
二府縣、市町村其ノ他勅令ヲ以テ指
定スル公共〓體ニ於テ公用又ハ公共
ノ用ニ供スルモノト決定シタル其ノ
所有地但シ其ノ決定ヲ爲シタル日ヨ
リ一年內ニ公用又ハ公共ノ用ニ供セ
ザルモノヲ除ク
三府縣社地、〓村社地、招魂社地
四墳墓地
五公衆用道路、鐵道用地、軌道用地、
運河用地
六用惡水路、溜池、堤塘、井溝
七保安林
第三條土地ニハ一筆每ニ地番ヲ附シ其
ノ地目、地積及賃貸價格(無租地及免租
年期地ニ付テハ賃貸價格ヲ除ク)ヲ定
ム
第四條稅務署ニ土地臺帳ヲ備へ左ノ事
項ヲ登錄ス
一土地ノ所在
二地番
三地目
四地積
五賃貸價格
六所有者ノ住所及氏名又ハ名稱
七質權又ハ百年ヨリ長キ存續期間ノ
定アル地上權ノ目的タル土地ニ付テ
ハ其ノ質權者又ハ地上權者ノ住所及
氏名又ハ名稱
本法ニ定ムルモノノ外土地臺帳ニ關シ
必要ナル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第五條地番ハ市町村、大字、字又ハ之
ニ準ズベキ地域ヲ以テ地番區域トシ其
ノ區域每ニ起番シテ之ヲ定ム
第六條有租地ノ地目ハ土地ノ種類ニ從
ヒ左ノ如ク區別シテ之ヲ定ム
第一類地田、畑宅地、鹽田、鑛
泉地
第二類地池沼、山林、牧場、原野、
雜種地
無租地ノ地目ハ第二條第三號乃至第七
號ノ土地ニ在リテハ各其ノ區別ニ依リ、
其ノ他ノ土地ニ在リテハ其ノ現況ニ依
リ適當ニ區別シテ之ヲ定ム
第七條地積ハ左ノ各號ノ規定ニ依リ之
ヨルト
一宅地及鑛泉地ノ地積ハ平方メート
ルヲ單位トシテ之ヲ定メ一平方メー
トルノ百分ノ一未滿ノ端數ハ之ヲ切
捨ツ
二宅地及鑛泉地以外ノ土地ノ地積ハ
アールヲ單位トシテ之ヲ定メ一アー
ルノ百分ノ一未滿ノ端數ハ之ヲ切捨
ツ但シ一筆ノ地積一アールノ百分ノ
一未滿ナルモノニ付テハ一アールノ
一萬分ノ一未滿ノ端數ヲ切捨ツ
第八條地租ノ課稅標準ハ土地臺帳ニ登
錄シタル賃貸價格トス
賃貸價格ハ貸主ガ公課、修繕費其ノ他
土地ノ維持ニ必要ナル經費ヲ負擔スル
條件ヲ以テ之ヲ賃貸スル場合ニ於テ貸
主ノ收得スベキ一年分ノ金額ニ依リ之
フルト
第九條賃貸價格ハ十年每ニ一般ニ之ヲ
改訂ス第一囘ノ改訂ハ昭和十三年ニ於
テ之ヲ行フ
前項ノ改訂ニ關スル事項ハ其ノ都度別
ニ之ヲ定ム
土地ノ異動ニ因リ賃貸價格ヲ設定シ又
ハ修正スル必要アルトキハ類地ノ賃貸
價格ニ比準シ其ノ土地ノ品位及情況ニ
應ジ之ヲ定ム
第十條地租ノ稅率ハ百分ノ三·八トス
第十一條地和ハ每年左ノ納期ニ於テ之
ヲ徵收ス
宅地租
第一期其ノ年七月一日ヨリ三十一
日限年額ノ二分ノ一
第二期翌年一月一日ヨリ三十一日
限年額ノ二分ノ一
二田租
第一期翌年一月一日ヨリ三十一日
限年額ノ四分ノ一
第二期翌年二月一日ヨリ末日限
年額ノ四分ノ一
第三期翌年三月一日ヨリ三十一日
限年額ノ四分ノ一
第四期翌年五月一日ヨリ三十一日
限年額ノ四分ノ一
三其ノ他
第一期其ノ年九月一日ヨリ三十日
限年額ノ二分ノ一
第二期其ノ年十一月一日ヨリ三十
日限年額ノ二分ノ一
特別ノ事情アル地方ニシテ前項ノ納期
ニ依リ難キモノニ付テハ勅令ヲ以テ特
別ノ納期ヲ定ムルコトヲ得
第十二條地租ハ納期開始ノ時ニ於テ土
地臺帳ニ所有者トシテ登錄セラレタル
者ヨリ之ヲ徵收ス
但シ質權ノ目的タル土地又ハ百年ヨリ
長キ存續期間ノ定アル地上權ノ目的タ
ル土地ニ付テハ土地臺帳ニ質權者又ハ
地上權者トシテ登錄セラレタル者ヨリ
之ヲ徵收ス
第十三條土地ノ異動アリタル場合ニ於
テハ地番、地目、地積及賃貸價格ハ土
地所有者ノ申告ニ依リ、申〓ナキトキ
若ハ申〓ヲ不相當ト認ムルトキ又ハ申
告ヲ要セザルトキハ稅務署長ノ調査ニ
依リ稅務署長之ヲ定ム
第二章土地ノ異動
第一節有租地及無租地ノ轉換
第十四條本法ニ於テ無租地ト稱スルハ
地租ヲ課セザル土地(免租年期地、災
害免租地及自作農免租地ヲ含マズ)ヲ
謂ヒ有租地ト稱スルハ其ノ他ノ土地ヲ
謂フ
第十五條無租地ガ有租地ト爲リタルト
キ又ハ有租地ガ無租地ト爲リタルトキ
ハ土地所有者ハ三十日內ニ之ヲ稅務署
長ニ申告スベシ但シ有租地ガ無租地ト
爲リタル場合ニ於テ之ニ關シ豫メ政府
ノ許可ヲ受ケ若ハ申告ヲ爲シタルモノ
又ハ官公署ニ於テ公示シタルモノニ付
テハ此ノ限ニ在ラズ
第十六條新ニ土地臺帳ニ登錄スベキ土
地ヲ生ジタルトキハ當該地番區域內ニ
於ケル最終ノ地番ヲ追ヒ順次其ノ地番
ヲ定ム但シ特別ノ事情アルトキハ適宜
ノ地番ヲ定ムルコトヲ得
第十七條新ニ土地臺帳ニ登錄スベキ土
地ヲ生ジタルトキハ直ニ其ノ地目ヲ設
定ス
土地臺帳ニ登錄セラレタル無租地ガ有
租地ト爲リ又ハ有租地ガ無租地ト爲リ
タルトキハ直ニ其ノ地目ヲ修正ス
第十八條新ニ土地臺帳ニ登錄スベキ土
地ヲ生ジタルトキハ直ニ之ヲ測量シテ
其ノ地積ヲ定ム
土地臺帳ニ登錄セラレタル無租地ガ有
租地ト爲リタルトキハ直ニ其ノ地積ヲ
改測ス但シ其ノ地積ニ異動ナシト認ム
ルトキハ之ヲ省略スルコトヲ得
第十九條國有財產法第二十一條ノ規定
ニ依リ賣拂又ハ讓與ノ豫約ヲ爲シタル
土地ニシテ開拓ノ事業成功ニ因リ賣拂
又ハ讓與ヲ受ケ有租地ト爲リタルモノ
ニ付テハ土地所有者ノ申請ニ依リ有租
地ト爲リタル年及其ノ翌年ヨリ二十年
ノ開拓減租年期ヲ許可シ年期中ハ其ノ
原地(開拓前ノ土地)相當ノ賃貸價格ニ
依リ地租ヲ徵收ス
前項ノ年期滿了スルモ尙地味成熟セザ
ル土地ニ付テハ更ニ十年內ノ年期延長
ヲ許可スルコトヲ得
第二十條國有財產法第二十一條ノ規定
ニ依リ賣拂又ハ讓與ノ豫約ヲ爲シタル
土地ニシテ埋立(干拓ヲ含ム)ノ事業成
功ニ因リ賣拂又ハ讓與ヲ受ケ有租地ト
爲リタルモノ又ハ公有水面埋立法第二
十四條若ハ第五十條ノ規定ニ依リ埋立
地ノ所有權ヲ取得シ有租地ト爲リタル
土地ニ付テハ土地所有者ノ申請ニ依リ
有租地ト爲リタル年及其ノ翌年ヨリ六
十年ノ埋立免租年期ヲ許可ス
前項ノ年期滿了スルモ尙地味成熟セザ
ル土地ニ付テハ更ニ十年內ノ年期延長
ヲ許可スルコトヲ得
第二十一條前二條ノ規定ニ依リ開拓減
租年期又ハ埋立免租年期ノ許可ヲ受ケ
ントスル者ハ有租地ト爲リタル日ヨリ
六十日內ニ、開拓減租年期又ハ埋立免
租年期延長ノ許可ヲ受ケントスル者ハ
年期ノ滿了スル年ノ六月三十日迄ニ稅
務署長ニ申請スベシ
第二十二條開拓減租年期中ニ於テ地類
變換ヲ爲シタルトキハ開拓減租年期ハ
消滅ス
開拓減租年期中ニ於テ地目變換ヲ爲シ
タルトキハ其ノ地目ヲ修正スルモ其ノ
賃貸價格ハ之ヲ修正セズ
埋立免租年期中ニ於テ地目變換、地類
變換又ハ開墾ニ該當スル土地ノ異動ア
ルモ地目變換、地類變換又ハ開墾ナキ
モノト看做ス此ノ場合ニ於テハ免租年
期ノ滿了スル年ニ於テ其ノ地目ヲ修正
ス
第二十三條開拓減租年期地又ハ埋立免
租年期地ニ付テハ土地所有者ハ年期ノ
滿了スル年ノ六月三十日迄ニ年期滿了
申告書ヲ稅務署長ニ提出スベシ
第二十四條無租地ガ有租地ト爲リタル
トキハ直ニ其ノ賃貸價格ヲ設定ス
開拓減租年期地ニ付テハ有租地ト爲リ
タルトキ直ニ原地相當ノ賃貸價格ヲ設
定シ開拓減租年期ノ滿了スル年ニ於テ
其ノ賃貸價格ヲ修正ス
埋立免租年期地ニ付テハ其ノ年期ノ滿
了スル年ニ於テ其ノ賃貸價格ヲ設定ス
第二十五條開拓減租年期又ハ埋立免租
年期ノ滿了ニ因リ賃貸價格ヲ設定シ又
ハ修正スル場合ニ於テ必要アリト認ム
ルトキハ其ノ地積ヲ改測ス
第二十六條無租地ガ有租地ト爲リタル
トキハ賃貸價格ヲ設定(第二十四條第
三項ノ設定ヲ含ム)シタル年ノ翌年分
ヨリ地和ヲ徴收ス
開拓減租年期ノ滿了ニ因リ賃貸價格ヲ
修正シタル土地ニ付テハ其ノ修正ヲ爲
シタル年ノ翌年分ヨリ修正賃貸價格ニ
依リ地租ヲ徴收ス
第二十七條有租地ガ無租地ト爲リタル
トキハ其ノ申告ヲ要スルモノニ付テハ
申〓アリタル後ニ開始スル納期ヨリ、
其ノ申〓ヲ要セザルモノニ付テハ稅務
署長ガ其ノ事實ヲ認メタル後ニ開始ス
ル納期ヨリ地租ヲ徵收セズ
第二節分筆及合筆
第二十八條本法ニ於テ分筆ト稱スルハ
一筆ノ土地ヲ數筆ノ土地ト爲スヲ謂ヒ
合筆ト稱スルハ數筆ノ土地ヲ一筆ノ土
地ト爲スヲ謂フ
第二十九條分筆又ハ合筆ヲ爲サントス
ルトキハ土地所有者ハ之ヲ稅務署長ニ
申〓スベシ
第三十條一筆ノ土地ノ一部ガ左ノ各號
ノ一ニ該當スルニ至リタルトキハ前條
ノ申告ナキ場合ニ於テモ稅務署長ハ其
ノ土地ヲ分筆ス
一別地目ト爲ルトキ
二無和地ガ有租地ト爲リ又ハ有租地
ガ無租地ト爲ルトキ
三所有者ヲ異ニスルトキ
四質權又ハ百年ヨリ長キ存續期間ノ
定アル地上權ノ目的ト爲ルトキ
五地番區域ヲ異ニスルトキ
第三十一條分筆シタル土地ニ付テハ分
筆前ノ地番ニ符號ヲ附シテ各筆ノ地番
弓山五
合筆シタル土地ニ付テハ合筆前ノ地番
中ノ首位ノモノヲ以テ其ノ地番トス
特別ノ事情アルトキハ前二項ノ規定ニ
拘ラズ適宜ノ地番ヲ定ムルコトヲ得
第三十二條分筆ヲ爲シタルトキハ測量
シテ各筆ノ地積ヲ定ム
合筆ヲ爲シタルトキハ合筆前ノ各筆ノ
地積ヲ合算シタルモノヲ以テ其ノ地積ト
ス
第三十三條分筆ヲ爲シタルトキハ各筆
ノ品位及情況ニ應ジ分筆前ノ賃貸價格
ヲ配分シテ其ノ賃貸價格ヲ定ム
合筆ヲ爲シタルトキハ合筆前ノ各筆ノ
賃貸價格ヲ合算シタルモノヲ以テ其ノ
賃貸價格トス
第三節開墾
第三十四條本法ニ於テ開墾ト稱スルハ
第二類地ヲ第一類地ト爲スヲ謂フ
第三十五條開墾成功シタルトキハ土地
所有者ハ三十日內ニ之ヲ稅務署長ニ申
告スベシ
第三十六條開墾ニ著手シタル土地ニ付
テハ土地所有者ノ申請ニ依リ開墾著手
ノ年及其ノ翌年ヨリ二十年ノ開墾減租
年期ヲ許可シ年期中ハ原地(開墾前ノ
土地)相當ノ賃貸價格ニ依リ地租ヲ徴
收ス但シ地類變換ヲ爲シタル後五年內
ニ開墾ニ著手シタル土地ニ付テハ之ヲ
許可セズ
二十年內ニ成功シ能ハザル開墾地ニ付
テハ前項ノ年期ハ開墾著手ノ年及其ノ
翌年ヨリ四十年トス
前項ノ年期滿了スルモ尙地味成熟セザ
ル土地ニ付テハ更ニ十年內ノ年期延長
ヲ許可スルコトヲ得
宅地又ハ鑛泉地ト爲ス開墾地ニ付テハ
其ノ情況ニ依リ稅務署長ハ開墾滅租年
期ヲ短縮スルコトヲ得
第三十七條前條ノ規定ニ依リ開墾減租
年期ノ許可ヲ受ケントスル者ハ開墾著
手ノ日ヨリ三十日內ニ、開墾減租年期
延長ノ許可ヲ受ケントスル者ハ年期ノ
滿了スル年ノ六月三十日迄ニ稅務署長
ニ申請スベシ
第三十八條開墾減租年期中ニ於テ開墾
成功シタルトキ又ハ其ノ成功地ニ付地
目變換ヲ爲シタルトキハ其ノ地目ヲ修
正スルモ其ノ賃貸價格ハ之ヲ修正セ
ズ
開墾減租年期中ニ於テ其ノ原地ニ付地
目變換ヲ爲シタルトキ又ハ其ノ成功地
ニ付地類變換ヲ爲シタルトキハ開墾減
租年期ハ消滅ス
第三十九條開墾減租年期地ニ付テハ土
地所有者ハ年期ノ滿了スル年ノ六月三十
日迄ニ年期滿了申〓書ヲ稅務署長ニ提
出スベシ
第四十條開墾成功シタルトキハ(開墾
減租年期中ナルト否トヲ問ハズ)直ニ
其ノ地目ヲ修正ス
第四十一條開墾成功シタルトキハ開墾
減租年期地ヲ除クノ外直ニ其ノ賃貸價
格ヲ修正ス
開墾減租年期地ニ付テハ其ノ年期ノ滿
了スル年ニ於テ其ノ賃貸價格ヲ修正ス
但シ年期滿了スルモ尙開墾成功セザル
土地ニ付テハ開墾成功シタルトキ直ニ
其ノ賃貸價格ヲ修正ス
第四十二條開墾ニ因リ賃貸價格ヲ修正
スル場合ニ於テハ其ノ地積ヲ改測ス但
シ其ノ地積ニ異動ナシト認ムルトキハ
之ヲ省略スルコトヲ得
第四十三條開墾ニ因リ地目又ハ賃貸價
格ヲ修正シタル土地ニ付テハ其ノ修正
ヲ爲シタル年ノ翌年分ヨリ修正地目又
ハ修正賃貸價格ニ依リ地租ヲ徴收ス
第四節地目變換及地類變換
第四十四條本法ニ於テ地目變換ト稱ス
ルハ第一類地中又ハ第二類地中ノ各地
目ヲ變更スルヲ謂ヒ地類變換ト稱スル
ハ第一類地ヲ第二類地ト爲スヲ謂フ
第四十五條地目變換又ハ地類變換ヲ爲
シタルトキハ土地所有者ハ三十日內ニ
之ヲ稅務署長ニ申告スベシ
第四十六條二十年內ニ成功シ能ハザル
地目變換地ニ付テハ土地所有者ノ申請
ニ依リ地目變換著手ノ年及其ノ翌年ヨ
リ四十年ノ地目變換減租年期ヲ許可シ
年期中ハ原地(變換前ノ土地)相當ノ賃
貸價格ニ依リ地租ヲ徴收ス
前項ノ年期滿了スルモ尙地味成熟セザ
ル土地ニ村テハ更ニ十年內ノ年期延長
ヲ許可スルコトヲ得
宅地又ハ鑛泉地ニ變換スル土地ニ付テ
ハ其ノ情況ニ依リ稅務署長ハ地目變換
減租年期ヲ短縮スルコトヲ得
第四十七條前條ノ規定ニ依リ地目變換
減租年期ノ許可ヲ受ケントスル者ハ地
目變換著手ノ日ヨリ三十日內ニ、地目
變換減租年期延長ノ許可ヲ受ケントス
ル者ハ年期ノ滿了スル年ノ六月三十日
迄ニ稅務署長ニ申請スベシ
第四十八條地目變換減租年期中ニ於テ
其ノ原地又ハ變換地ニ付地目變換ヲ爲
シタルトキハ其ノ地目ヲ修正スルモ其
ノ賃貸價格ハ之ヲ修正セズ
地目變換減租年期中ニ於テ地類變換ヲ
爲シタルトキハ地目變換減租年期ハ消
滅ス
第四十九條地目變換減租年期地ニ付テ
ハ土地所有者ハ年期ノ滿了スル年ノ六
月三十日迄ニ年期滿了申告書ヲ稅務署
長ニ提出スベシ
第五十條地目變換又ハ地類變換ヲ爲シ
タルトキハ(地目變換減租年期中ナル
ト否トヲ問ハズ)直ニ其ノ地目ヲ修正
ス
第五十一條地目變換又ハ地類變換ヲ爲
シタルトキハ地目變換減租年期地ヲ除
クノ外直ニ其ノ賃貸價格ヲ修正ス
地目變換減租年期地ニ付テハ其ノ年期
ノ滿了スル年ニ於テ其ノ賃貸價格ヲ修
正ス但シ年期滿了スルモ尙地目變換セ
ザル土地ニ付テハ地目變換シタルトキ
直ニ其ノ賃貸價格ヲ修正ス
第五十二條地目變換又ハ地類變換ニ因
リ賃貸價格ヲ修正スル場合ニ於テ必要
アリト認ムルトキハ其ノ地積ヲ改測ス
第五十三條地目變換又ハ地類變換ニ因
リ地目又ハ賃貸價格ヲ修正シタル土地
ニ付テハ其ノ修正ヲ爲シタル年ノ翌年
分ヨリ修正地目又ハ修正賃貸價格ニ依
リ地租ヲ徴收ス
第五節荒地免租
第五十四條本法ニ於テ荒地ト稱スルハ
災害ニ因リ地形ヲ變ジ又ハ作土ヲ損傷
シタル土地ヲ謂フ
第五十五條荒地ニ付テハ納稅義務者ノ
申請ニ依リ荒地ト爲リタル年及其ノ翌
年ヨリ十五年內ノ荒地免租年期ヲ許可
ス
前項ノ年期滿了スルモ尙荒地ノ形狀ヲ
存スルモノニ付テハ更ニ十五年內ノ年
期延長ヲ許可スルコトヲ得
海濶又ハ河川ノ狀況ト爲リタル荒地
ニ付テハ前項ノ延長年期ハ二十年内ト
ス其ノ年期滿了スルモ尙海、湖又ハ河
川ノ狀況ニ在ルモノハ本法ノ適用ニ付
テハ海、湖又ハ河川ト爲リタルモノト
看做ス
第五十六條前條ノ規定ニ依リ荒地免租
年期ノ許可ヲ受ケントスル者ハ稅務署
長ニ申請スベシ荒地免租年期延長ノ許
可ヲ受ケントスル者ハ年期ノ濾了スル
年ノ六月三十日迄ニ稅務署長ニ申請ス
ベシ
第五十七條荒地免租年期地ニ付テハ免
租年期許可ノ申請アリタル後ニ開始ス
ル納期ヨリ地租ヲ徵收セズ
第五十八條荒地免租年期中ノ土地ガ再
ビ荒地ト爲リ免租年期ノ許可ヲ受ケタ
ルトキハ前ノ年期ハ消滅ス
第五十九條開拓減租年期、理立免租年
期開墾減租年期又ハ地目變換滅租年
期中ノ土地ニ付荒地免租年期ヲ許可シ
タルトキハ其ノ許可ヲ爲シタル年ヨリ
荒地免租年期滿了ニ至ル迄ハ開拓減租
年期、埋立免租年期、開墾減租年期又
ハ地目變換減租年期ハ其ノ進行ヲ止
ム
前項ノ規定ハ他ノ法律ニ依リ一定ノ期
間地租ノ全部又ハ一部ヲ免除シタル土
地ニ付荒地免租年期ヲ許可シタル場合
ニ之ヲ準用ス
第六十條荒地免租年期中ニ於テ地目變
換地類變換又ハ開墾ニ該當スル土地
ノ異動アルモ地目變換、地類變換又ハ
開墾ナキモノト看做ス此ノ場合ニ於テ
ハ免租年期ノ滿了スル年ニ於テ其ノ地
目ヲ修正ス
第六十一條荒地免租年期地ニ村テハ納
稅義務者ハ年期ノ滿了スル年ノ六月三
十日迄ニ年期滿了申〓書ヲ稅務署長ニ
提出スベシ
第六十二條荒地免租年期地ニ付テハ其
ノ年期ノ滿了スル年ニ於テ其ノ賃貸價
格ヲ設定ス
第六十三條荒地免租年期ノ滿了ニ因リ
賃貸價格ヲ設定スル場合ニ於テ必要ア
リト認ムルトキハ其ノ地積ヲ改測ス
第六十四條荒地免租年期ノ滿了ニ因リ
賃貸價格ヲ設定シタル土地ニ付テハ其
ノ設定ヲ爲シタル年ノ翌年分ヨリ地租
ヲ徵收ス
第三章災害地免租
第六十五條北海道又ハ府縣ノ全部又ハ
一部ニ亙ル災害又ハ天候不順ニ因リ收
穫皆無ニ歸シタル田畑ニ付テハ納稅義
務者ノ申請ニ依リ其ノ年分地租ハ之ヲ
免除ス
第六十六條地目變換若ハ開墾成功ノ申
告アリタル土地又ハ耕地整理工事完了
シ賃貸價格配賦ノ申出アリタル土地ニ
シテ未ダ土地臺帳ヲ更正セザルモノニ
付テハ其ノ成功地目ガ田畑ナルトキハ
命令ノ定ムル所ニ依リ前條ノ規定ヲ準
用ス
第六十七條前二條ノ規定ニ依リ地租ノ
免除ヲ受ケントスル者ハ被害現狀ノ存
スル間ニ於テ其ノ事實ヲ明ニシテ稅務
署長ニ申請スベシ
第六十八條前條ノ申請アリタルトキハ
被害ノ調査中其ノ年分地租ノ徵收ヲ猶
豫スルコトヲ得
第六十九條第六十五條又ハ第六十六條
ノ規定ニ依リ免除シタル地租ハ法律上
總テノ納稅資格中ヨリ之ヲ控除セズ
第四章自作農地免租
第七十條田畑地租ノ納期開始ノ時ニ於
テ納稅義務者(法人ヲ除ク)ノ住所地市
町村及隣接市町村内ニ於ケル田畑賃貸
價格ノ合計金額ガ其ノ同居家族ノ分ト
合算シ二百圓未滿ナルトキハ納稅義務
者ノ申請ニ依リ其ノ田畑ノ當該納期分
地租ハ命令ノ定ムル所ニ依リ之ヲ免除
ス但シ小作ニ付シタル田畑ニ付テハ此
ノ限ニ在ラズ
民法施行前ヨリ引續キ存スル永小作權
ニ付其ノ設定ノ當時舊來ノ慣行ニ依リ
テ小作料支拂ノ外當該田畑ノ地租ノ全
額ヲ永小作權者ニ於テ負擔スルコトヲ
約シタル田畑ニ關シテハ命令ノ定ムル
所ニ依リ永小作權者ヲ所有者ト看做シ
テ前項ノ規定ヲ適用ス
第七十一條前條ノ規定ニ依リ地租ノ免
除ヲ受ケントスル者ハ每年三月中ニ住
所地市町村ヲ經由シ稅務署長ニ申請ス
ベシ
前項ノ申請期間經過後新ニ前條ノ規定
ニ該當スルニ至リタル田畑ニ付テハ次
ノ納期開始前ニ於テ前項ノ申請ヲ爲ス
コトヲ得
第五章地租徵收
第七十二條稅務署長ハ土地ノ異動其ノ
他地租徵收ニ關シ必要ト認ムル事項ヲ
市町村ニ通知スベシ
第七十三條地租ハ各納稅義務者ニ付同
一市町村內ニ於ケル同一地目ノ賃貸價
格ノ合計金額ニ依リ算出シ之ヲ徵收ス
但シ賃貸價格ノ合計金額ガ一圓ニ滿タ
ザルトキハ地租ヲ徵收セズ
田、畑宅地以外ノ土地ハ之ヲ同一地
目ノ土地ト看做シテ前項ノ規定ヲ適用
ス
第七十四條市町村ハ地租ノ納期每ニ其
ノ納期開始前十五日迄ニ賃貸價格及地
租ノ總額竝ニ其ノ各納期ニ於ケル納額
ヲ稅務署長ニ報告スベシ但シ前報〓後
異動ナキトキハ此ノ限ニ在ラズ
前項ノ報〓後納期開始迄ニ報〓事項ニ
異動ヲ生ジタルトキハ直ニ其ノ異動額
ヲ稅務署長ニ報〓スベシ
第七十五條市町村ハ第七十條ノ規定ニ
依リ地租ヲ免除スル田畑ノ賃貸價格ノ
總額ヲ前條ノ例ニ準ジ稅務署長ニ報告
スパン
第七十六條大藏大臣ハ稅務署長又ハ其
ノ代理官ヲシテ隨時市町村ニ於ケル國
稅徵收ニ關スル事務ヲ監督セシムベ
シ
第六章雜則
第七十七條他ノ法律ニ依リ一定ノ期間
地租ヲ免除シタル土地ニ付テハ別段ノ
規定アル場合ヲ除クノ外第五十七條及
第六十條乃至第六十四條ノ規定ヲ準用
ス
第七十八條稅務署長土地ノ異動ニ因リ
地番、地目、地積又ハ賃貸價格ヲ土地
臺帳ニ登錄シタルトキ又ハ登錄ヲ變更
シタルトキハ土地所有者及納稅義務者
ニ通知スベシ
第七十九條納稅義務者其ノ土地所在ノ
市町村內ニ現住セザルトキハ地租ニ關
スル事項ヲ處理セシムル爲其ノ市町村
內ニ現住スル者ニ就キ納稅管理人ヲ定
メ當該市町村長ニ申告スベシ
第八十條土地所有者ニ變更アリタル場
合ニ於テハ舊所有者ガ爲スベカリシ申
告ハ所有者ノ變更アリタル日ヨリ三十
日內ニ新所有者ヨリ之ヲ爲スベシ
第八十一條本法ニ依リ土地所有者ヨリ
爲スベキ申告又ハ申請ハ質權ノ目的タ
ル土地又ハ百年ヨリ長キ存續期間ノ定
アル地上權ノ目的タル土地ニ付テハ土
地臺帳ニ登錄セラレタル質權者又ハ地
上權者ヨリ之ヲ爲スコトヲ得
第八十二條本法ニ依リ申告ヲ爲スベキ
義務ヲ有スル者其ノ申〓ヲ爲サザルト
キハ五十圓以下ノ過料ニ處ス
非訟事件手續法第二百六條乃至第二百
八條ノ規定ハ前項ノ過料ニ付之ヲ準用
ス
第八十三條詐僞其ノ他不正ノ行爲ニ依
リ地租ヲ連脫シタル者ハ其ノ通脫シタ
ル稅金ノ五倍ニ相當スル罰金又ハ科料
ニ處シ直ニ其ノ地租ヲ徴收ス但シ自首
シタル者又ハ稅務署長ニ申出デタル者
ハ其ノ罪ヲ問ハズ
前項ノ罪ヲ犯シタル者ニハ刑法第三十
八條第三項但書、第三十九條第二項、
第四十條、第四十一條、第四十八條第
二項、第六十三條及第六十六條ノ例ヲ
用ヒズ
第八十四條本法ニ依リ申〓ヲ爲スベキ
義務ヲ有スル者其ノ申告ヲ爲サズ仍テ
地租ニ不足額アルトキハ直ニ之ヲ徵收
ス
第八十五條前二條ノ規定ニ依リ地租ヲ
徵收スル場合ニ於テハ第七十三條ノ規
定ニ拘ラズ當該土地一筆每ニ其ノ地租
ヲ算出ス
第八十六條稅務署長又ハ其ノ代理官ハ
土地ノ檢査ヲ爲シ又ハ土地ノ所有者、
質權者、地上權者其ノ他利害關係人ニ
對シ必要ナル事項ヲ質問スルコトヲ得
前項ノ場合ニ於テ土地ノ檢査ヲ拒ミ又
ハ之ヲ妨ゲタル者ハ百圓以下ノ罰金ニ
處ス
第八十七條市制第六條又ハ第八十二條
第三項ノ市ニ於テハ本法中市ニ關スル
規定ハ區ニ、市長ニ關スル規定ハ區長
ニ之ヲ適用ス
町村制ヲ施行セザル地ニ於テハ本法中
町村ニ關スル規定ハ町村ニ準ズベキモ
ノニ、町村長ニ關スル規定ハ町村長ニ
準ズベキモノニ之ヲ適用ス
第八十八條本法ハ國有地ニ之ヲ適用セ
ズ
第八十九條府縣、市町村其ノ他ノ公共
〓體ハ第二條ノ規定ニ依リ地租ヲ課セ
ザル土地ニ租稅其ノ他ノ公課ヲ課スル
コトヲ得ズ但シ所有者以外ノ者同條第
一號又ハ第二號ノ土地ヲ使用收益スル
場合ニ於テ其ノ土地ニ付使用者ニ租稅
其ノ他ノ公課ヲ課スルハ此ノ限ニ在ラズ
附則
第九十條本法ハ昭和六年四月一日ヨリ
之ヲ施行ス但シ昭和六年分地租ニ限
リ第十條ノ規定中百分ノ三·八トアル
ハ百分ノ四、第十一條ノ規定中宅地租
第一期其ノ年七月一日ヨリ三十一日限
トルアハ其ノ年十一月一日ヨリ三十
日限、其ノ他第一期其ノ年九月一日ヨ
リ三十日限トアルハ翌年一月一日ヨリ
三十一日限、其ノ他第二期其ノ年十一
月一日ヨリ三十日限トアルハ翌年三月
一日ヨリ三十一日限、第七十一條第一
項ノ規定中三月中トアルハ十二月中トス
第九十一條左ノ法律ハ之ヲ廢止ス但シ
昭和五年分以前ノ地租ニ關シテハ仍舊
法ニ依ル
地租條例
災害地地租免除法
宅地地價修正法
明治七年第百二十號布〓地所名稱區
別
明治三十四年法律第三十號
明治三十四年法律第三十一號
明治三十七年法律第十一一號
明治三十七年法律第十六號
大正十五年法律第四十七號
第九十二條土地賃貸價格調査法ニ依リ
賃貸價格ノ調査ヲ爲シタル土地ニ付テ
ハ同法ニ依リ調査シタル賃貸價格ヲ以
テ本法施行ノ際ニ於ケル賃貸價格トス
但シ其ノ賃貸價格ニ依リ算出シタル本
法ノ地租額ガ從前ノ地價ニ依リ算出シ
タル舊法ノ地租額ノ三倍八割ヲ超ユル
土地ニ在リテハ舊法ノ地租額ノ三倍八
割ニ相當スル金額ヲ百分ノ三·八ヲ以テ
除シタル金額ヲ以テ其ノ賃貸價格トス
第九十三條大正十五年四月一日後本法
施行前ニ於テ地價ヲ設定シ又ハ修正シ
タル土地(免租年期又ハ低價年期ノ滿
了ニ因リ原地價ニ復シタルモノヲ含
ム)ニ付テハ第九條第三項ノ例ニ準ジ
其ノ賃貸價格ヲ定ム
大正十五年四月一日本法施行前ニ於テ
分筆又ハ合筆ヲ爲シタル土地ニ付テハ
第三十三條ノ例ニ準ジ前條ノ賃貸價格
ヲ配分又ハ合算シテ其ノ賃貸價格ヲ定
ム
第九十四條舊法ニ依リ低價年期ノ許可
ヲ受ケタル土地ニシテ本法施行ノ際未
ダ原地價ニ復セザルモノニ付テハ第九
條第三項ノ例ニ準ジ其ノ賃貸價格ヲ定
ム
第九十五條前三條ノ規定ニ依リ賃貸價
格ヲ定メタル土地ニ付テハ昭和六年分
ヨリ本法ニ依リ地租ヲ徴收ス
第九十六條本法施行前ニ於ケル土地ノ
異動中本法施行ノ際未ダ舊法ニ依リ地
價ノ設定又ハ修正其ノ他ノ處分ヲ爲サ
ザルモノニシテ本法中之ニ相當スル規
定アルモノニ關シテハ本法ヲ適用ス但
シ第九十一條但書ノ規定ノ適用ヲ妨ゲ
ズ
第九十七條舊法ニ依ル屆出又ハ申明ニ
シテ本法中之ニ相當スル規定アルモノ
ハ之ヲ本法ニ依ル申〓又ハ申請ト看做
ス
第九十八條舊法ニ依リ開墾ノ屆出アリ
タル土地ニシテ本法施行ノ際開墾著手後
未ダ二十年ヲ經過セザルモノハ第三十六
條第一項ノ規定ニ依リ開墾減租年期ヲ
許可セラレタルモノト看做ス但シ地類
變換ヲ爲シタル後五年內ニ開墾ヲ爲シ
タル土地ニ付テハ此ノ限ニ在ラズ
第九十九條舊法ニ依リ免租年期、鍬下年
期又ハ地價据置年期ノ許可ヲ受ケタル
土地ニシテ本法施行ノ際未ダ其ノ年期
ノ滿了セザルモノハ左ノ區分ニ從ヒ本
法ニ依リ免租年期又ハ減租年期ヲ許可
セラレタルモノト看做ス
地租條例第十六條第三項ノ鍬下年
期ハ第三十六條第二項ノ開墾減租年
期トス
二地租條例第十六條第四項ノ鍬下年
期ハ第十九條第一項ノ開拓減租年期
トス
三地租條例第十六條第五項ノ新開免
租年期ハ第二十條第一項ノ埋立免租
年期トス
四地租條例第十六條第六項ノ地價据
置年期ハ第四十六條第一項ノ地目變
換減租年期トス
五明治三十四年法律第三十號ノ年期
延長ハ前各號ノ例ニ準ジ第十九條第
二項、第二十條第二項、第三十六
條第三項又ハ第四十六條第二項ノ年
期延長トス
六地租條例第二十條ノ荒地免租年期
ハ第五十五條第一項ノ荒地免租年期
トス
七地租條例第二十三條又ハ第二十四
條ノ免租繼年期ハ荒地ノ種類ニ從ヒ
第五十五條第二項又ハ第三項ノ年期
延長トス
前項ノ年期ハ舊法ニ依リ許可セラレタ
ル年期ノ殘年期間ノ經過スル年ノ翌年
ニ於テ滿了ス
第百條地積ハ第七條ノ規定ニ拘ラズ當
分ノ內左ノ各號ノ規定ニ依リ之ヲ定ム
宅地及鑛泉地ノ地積ハ六尺平方ヲ
坪、坪ノ十分ノ一ヲ合、合ノ十分ノ
一ヲ勺トシテ之ヲ定メ勺未滿ノ端數
ハ之ヲ切捨ツ
二宅地及鑛泉地以外ノ土地ノ地積ハ
六尺平方ヲ步、三十步ヲ畝、十畝ヲ
段十段ヲ町トシテ之ヲ定メ步未滿
ノ端數ハ之ヲ切捨ツ但シ一筆ノ地積
一步未滿ナルモノニ付テハ步ノ十分
ノ一ヲ合、合ノ十分ノ一ヲ勺トシテ
之ヲ定メ勺未滿ノ端數ハ之ヲ切拾ツ
第百一條舊法ノ土地臺帳ハ之ヲ本法ノ
土地臺帳ト看做ス
第百二條小笠原島及伊豆七島ノ地租ニ
付テハ當分ノ內仍從前ノ例ニ依ル
第二營業收益稅法中改正法律案(政
府提出)第一讀會
營業收益稅法中改正法律案
營業收益稅法中左ノ通改正ス
第十條第一項ヲ左ノ如ク改ム
營業收益稅ハ左ノ稅率ニ依リ之ヲ賦課
ス
法人百分ノ三·四
個人
純益金額千圓以下ナルトキ
百分ノ二·二
純益金額千圓以下ノ金額
千圓ヲ超百分ノ二·二
千圓ヲ超ユル金額
ユルトキ百分ノ二·六
附則
本法ハ個人ノ營業收益稅ニ付テハ昭和六
年分ヨリ、法人ノ營業收益稅ニ付テハ昭
和七年四月一日以後ニ終了スル事業年度
分ヨリ之ヲ適用ス但シ昭和六年分ノ個人
ノ營業收益稅ニ限リ改正規定中百分ノ
二·二トアルハ百分ノ一一·五、百分ノ二·六
トアルハ百分ノ二·八トス
昭和七年三月三十一日以前ニ終了スル事
業年度分ノ法人ノ營業收益稅及昭和五年
分以前ノ個人ノ營業收益稅ニ付テハ仍從
前ノ例ニ依ル
第三砂糖消費稅法中改正法律案(政
府提出)第一讀會
砂糖消費稅法中改正法律案
砂糖消費稅法中左ノ通改正ス
第三條消費稅ノ割合左ノ如シ
砂糖
第一種砂糖色相和蘭標本第十一號
未滿ノ砂糖
甲樽入黑糖
百斤ニ付九十錢
乙樽入、白下糖但シ分蜜シタル
モノ、白下糖以外ノ砂糖ニ加工
シテ製造シタルモノ及全部又
ハ一部ノ新式機械ニ依リ製造
シタルモノヲ除ク
百斤ニ付一圓八十錢
丙其ノ他ノモノ
百斤ニ付·二圓二十五錢
第二種砂糖色相和蘭標本第十八號
未滿ノ砂糖
百斤ニ付四圓五十五錢
第三種砂糖色相和蘭標本第二十二
號未滿ノ砂糖
百斤ニ付六圓七十五錢
第四種砂糖色相和蘭標本第二十二
號以上ノ砂糖
百斤ニ付七圓七十五錢
第五種氷砂糖、角砂糖、棒砂糖其
ノ他類似ノモノ
百斤ニ付九圓五十錢
二糖蜜
第一種氷砂糖ヲ製造スルトキニ生
スル糖蜜
甲糖分ヲ蔗糖トシテ計算シタル
重量全重量ノ百分ノ七十ヲ超
エサルモノ
百斤ニ付二圓七十錢
乙其ノ他ノモノ
糖分ヲ蔗糖トシテ計算シ
タル重量百斤ニ付
七圓七十五錢ノ割合ヲ
以テ算出シタル金額
第二種其ノ他ノ糖蜜
甲糖分ヲ蔗糖トシテ計算シタル
重量全重量ノ百分ノ六十ヲ超
エサルモノ
百斤ニ付九十錢
乙其ノ他ノモノ
百斤ニ付二圓二十五錢
三糖水百斤ニ付六圓七十五錢
附則
本法ハ昭和七年一月一日ヨリ之ヲ施行ス
左ニ掲クル砂糖、糖蜜又ハ糖水ニ付テハ
仍從前ノ例ニ依ル
一本法施行前消費稅ヲ課スヘカリシ
モノ
二本法施行前製造場若ハ保稅地域ヨ
リ引取リ又ハ製造場外ニ移出シタル
モノニシテ第五條第三項、第七條第
三項又ハ第十一條ノ一第三項ノ規定
ニ依リ消費稅ヲ徵收スヘキモノ
三本法施行前消費稅ノ徵收ヲ猶豫シ
タルモノ
第四織物消費稅法中改正法律案政
府提出)第一讀會
織物消費稅法中改正法律案
織物消費稅法中左ノ通改正ス
第一條但書ヲ左ノ如ク改ム
但シ左ノ各號ノ一ニ該當スル織物ニ付
テハ此ノ限ニ在ラス
-綿織物
二麻又ハ麻ト綿トヲ以テ組成シ其ノ
麻ノ單絲カ英式番手四十二番ヲ超エ
サル織物
三經絲ニ綿絲ノミヲ用ヰ緯絲ニ左ニ
揭クル絲ノミヲ用ヰタル織物但シ
「パイル」組織ノ織物ヲ除ク
イ紡毛絲
ロ命令ヲ以テ紡毛然ト看做シタル
絲
ハ紡毛絲及命令ヲ以テ紡毛絲ト看
做シタル絲
ニ綿絲及イ、ロ又ハハニ揭クル絲
第一條ノ二前條ニ於テ綿織物ト稱スル
ハ全重量百分中九十五以上ノ綿、絹紡
紬絲、芭蕉絲其ノ他命令ヲ以テ定ムル
原料ヲ以テ組成スル織物ヲ謂フ
第二條中「百分ノ十」ヲ「百分ノ九」ニ改ム
第二十三條中「綿織物」ヲ「第一條但書ノ
織物」ニ改ム
附則
本法ハ昭和六年十二月一日ヨリ之ヲ施行
ス
左ニ揭クル織物又ハ之ヲ以テ製造シタル
物品ニ付テハ仍從前ノ例ニ依ル
一本法施行前消費稅ヲ課スヘカリシ
モノ
二本法施行前外國輸出若ハ朝鮮移出
ノ目的ヲ以テ又ハ第七條ノ規定ニ依
リテ消費稅ヲ納付セスシテ製造場又
ハ保稅地域ヨリ引取リタルモノ
三本法施行前消費稅ノ徵收ヲ猶豫シ
タルモノ
四本法施行前消費稅ヲ納付シテ外國
ニ輸出シ又ハ朝鮮ニ移出シタルモノ
本法施行前消費稅ヲ納付シタル織物又ハ
之ヲ以テ製造シタル物品ヲ本法施行後外
國ニ輸出シ又ハ朝鮮ニ移出シタル場合ニ
於テ第三條第二項ノ規定ニ依リ交付スル
金額ハ消費稅額ノ十分ノ九ニ相當スル金
額トス但シ第一條但書ノ改正規定ニ依リ
消費稅ヲ課セサルコトト爲リタル織物又
ハ之ヲ以テ製造シタル物品ニ付テハ第三
條第二項ノ規定ヲ適用セス
第五明治四十一年法律第三十七號中
改正法律案(地方稅制限ニ關スル件)
(政府提出)第一讀會
明治四十一年法律第三十七號中改正
法律案
明治四十一年法律第三十七號中左ノ通改
正ス
第一條第一號中「宅地地租百分ノ三十四
其ノ他ノ土地地租百分ノ八
十三」ヲ「地租百分ノ八十二」ニ、「宅地ニ
在リテハ百分ノ三十四、其ノ他ノ土地ニ
在リテハ百分ノ八十三」ヲ「百分ノ八十
二」ニ、同條第二號中「宅地地租百分ノ二十
其ノ他ノ土地地租百
八ヲ「地租百分ノ六十六」ニ、「宅
分ノ六十六」
地ニ在リテハ百分ノ二十八、其ノ他ノ土
地ニ在リテハ百分ノ六十六」ヲ「百分ノ六
十六」ニ改ム
第二條第一項第一號中「百分ノ四十一」ヲ
「百分ノ四十六半」ニ、同項第二號中「百分
ノ六十」ヲ「百分ノ六十六」ニ改ム
附則
本法ハ昭和六年度分ヨリ之ヲ適用ス但シ
第二條ノ改正規定ハ昭和七年度分ヨリ之
ヲ適用ス
昭和六年度分ニ付テハ第一條ノ改正規定
中百分ノ八十二トアルノ百分ハ七十九、百
分ノ六十六トアルハ百分ノ六十三トス
昭和六年度分ニ限リ勅令ノ定ムル所ニ依
リ從前ノ地租ヲ標準トシ從前ノ規定ニ依
リ地租附加稅ヲ賦課スルコトヲ得此ノ場
合ニ於テ段別割ヲ併課スルトキハ段別割
ノ總額ノ制限ハ從前ノ規定ニ依ル
北海道、府縣其ノ他ノ公共團體ニ於ケル
改正制限率ニ依リ賦課スルコトヲ得ベキ
地租附加稅額ト特別地稅額又ハ其ノ附加
稅額トノ合算額ガ從前ノ地租又ハ地價ヲ
標準トシ從前ノ制限率ニ依リ賦課スルコ
トヲ得ベキ地租附加稅額ト特別地稅額又
ハ其ノ附加稅額トノ合算額ニ達セザル場
合ニ於テ特別ノ必要アルトキハ昭和十二
年度分迄ニ限リ勅令ノ定ムル所ニ依リ其
ノ差額ノ範圍內ニ於テ內務大藏兩大臣ノ
許可ヲ受ケ第一條又ハ第四條ノ制限及第
五條第一項ノ制限ヲ超過シテ課稅スルコ
トヲ得
北海道、府縣其ノ他ノ公共團體ニ於ケル
改正制限率ニ依リ賦課スルコトヲ得ベキ
地租附加稅額ト特別地稅額又ハ其ノ附加
稅額トノ合算額ガ從前ノ地租又ハ地價ヲ
標準トシ從前ノ制限率ニ依リ賦課スルコ
トヲ得ベキ地租附加稅額ト特別地稅額又
ハ其ノ附加稅額トノ合算額ヲ超ユル場合
ニ關シテハ昭和十二年度分迄ニ限リ勅令
ヲ以テ第一條及第四條ノ制限內ニ於テ之
ニ代ルベキ課稅ノ制限ラ定ムルコトヲ得
前二項ニ揭グル地租附加稅額、特別地稅
額及其ノ附加稅額ノ算定ニ關シテハ內務
大藏兩大臣ノ定ムル所ニ依ル
北海道、府縣其ノ他ノ公共團體ニ於テ段
別割ノミヲ〓課スル場合ニ於テハ前三項
ノ規定ヲ適用セズ
昭和六年度分ニ限リ個人ニ對スル營業收
益稅附加稅ノ賦課ニ付テハ從前ノ稅率ニ
依リ算出シタルモノヲ以テ營業收益稅額
ト看做ス
北海道府縣以外ノ公共團體ニ對スル第四
項ノ許可ノ職權ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ
之ヲ地方長官ニ委任スルコトヲ得
第六大正十五年法律第二十四號中改
正法律案(地方稅ニ關スル件)(政府
提出)第讀會
大正十五年法律第二十四號中改正法
律案
大正十五年法律第二十四號中左ノ通改正
ス
第二條特別地稅ハ地租法第七十條ノ規
定ニ依リテ地租ヲ免除シタル田畑ニ對
シ地租法第八條ノ賃貸價格ヲ標準トシ
テ之ヲ〓課ス
特別地稅ノ徵收ニ關シテハ地租法第十
二條ノ規定ヲ準用ス
第三條第一項ヲ左ノ如ク改ム
特別地稅ノ賦課率ハ賃貸價格百分ノ三·
一以內トス
第四條第一項中「地價百分ノ二·九」ヲ「賃
貸價格百分ノ二·五」ニ改ム
第八條中「地價」ヲ「賃貸價格」ニ改ム
附則
本法ハ昭和六年度分ヨリ之ヲ適用ス
昭和六年度分ニ村從前フ地租ヲ標準トシ
地租附加稅ヲ賦課スル北海道、府縣其
ノ他ノ公共團體ガ昭和六年度分特別地稅
又ハ其ノ附加稅ヲ賦課スルトキハ勅令ノ
定ムル所ニ依リ從前ノ地價ヲ標準トシ從
前ノ規定ニ依リ之ヲ賦課スベシ此ノ場合
ニ於テ段別割ヲ併課スルトキハ段別割ノ
總額ノ制限ハ從前ノ規定ニ依ル
北海道、府縣其ノ他ノ公共團體ニ於ケル
改正制限率ニ依リ賦課スルコトヲ得ベキ
特別地稅額又ハ其ノ附加稅額ト地租附加
稅額トノ合算額ガ從前ノ地價又ハ地租ヲ
標準トシ從前ノ制限率ニ依リ賦課スルコ
トヲ得ベキ特別地稅額又ハ其ノ附加稅額
ト地租附加稅額トノ合算額ニ達セザル場
合ニ於テ特別ノ必要アルトキハ昭和十二
年度分迄ニ限リ勅令ノ定ムル所ニ依リ其
ノ差額ノ範圍內ニ於テ內務大臣及大藏大
臣ノ許可ヲ受ケ第三條乃至第五條ニ規定
スル制限及第七條第一項ノ制限ヲ超過シ
テ課稅スルコトヲ得
北海道、府縣其ノ他ノ公共團體ニ於ケル
改正制限率ニ依リ賦課スルコトヲ得ベキ
特別地稅額又ハ其ノ附加稅額ト地租附加
稅額トノ合算額ガ從前ノ地價又ハ地租ヲ
標準トシ從前ノ制限率ニ依リ賦課スルコ
トヲ得ベキ特別地稅額又ハ其ノ附加稅額
ト地租附加稅額トノ合算額ヲ超ユル場合
ニ關シテハ昭和十二年度分迄ニ限リ勅令
ヲ以テ第三條乃至第五條ノ制限內ニ於テ
之ニ代ルベキ課稅ノ制限ヲ定ムルコトヲ
得
前二項ニ揭グル特別地稅額、其ノ附加稅
額及地租附加稅額ノ算定ニ關シテハ內務
大臣及大藏大臣ノ定ムル所ニ依ル
北海道府縣以外ノ公共團體ニ對スル第三
項ノ許可ノ職權ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ
之ヲ地方長官ニ委任スルコトヲ得
第七都市計畫法中改正法律案(政府
提出)第一讀會
都市計畫法中改正法律案
都市計畫法中左ノ通改正ス
第八條第一項第一號中「百分ノ十二半」ヲ
「百分ノ九」ニ、同項第四號中「北海道及其
其ノ市町村ニ在リテハ地價千分ノ四以
內、府縣及其ノ市町村ニ在リテハ地價千分
ノ五」ヲ「賃貸價格千分ノ三·四」ニ同條
第三項中「地價」ヲ「賃貸價格」ニ改ム
第十五條中「地價」ヲ「賃貸價格」ニ改ム
附則
本法ハ昭和六年四月一日ヨリ之ヲ施行ス
但シ第八條ノ改正規定ハ昭和六年度分ヨ
リ之ヲ適用ス
昭和六年度分ニ付テハ第八條メ改正規定
中百分ノ九トアルハ百分ノ八、千分ノ三·
四トアルハ千分ノ三·一一トス
昭和六年度分ニ限リ勅令ノ定ムル所ニ依
リ從前メ地租ヲ標準トシ從前ノ規定ニ依
リ地租割ヲ賦課スルコトヲ得此ノ場合ニ
於テ特別地稅ヲ〓課スルトキハ勅令ノ定
ムル所ニ依リ從前ノ地價ヲ標準トシ從前
ノ規定ニ依リ之ヲ賦課スベシ
〔國務大臣井上準之助君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X00719310127&spkNum=5
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006・井上準之助
○國務大臣(井上準之助君) 玆ニ議題トナ
リマシタ地租法案、營業收益稅法、砂糖消
費稅法、及織物消費稅法中改正法律案ニ付
キマシテ、大體ノ說明ヲ致シマス倫敦海
軍條約ノ成立ニ依リマシテ生ジタル餘剩財
源ハ同條約ノ趣旨ニ從ヒ、之ヲ國民負擔
ノ輕減ニ充當スルヲ適當ナリト認メマシテ、
今囘地租、營業收益稅、砂糖消費稅及織物
消費稅ニ付キマシテ、ソレ〓〓法律ヲ改正
致シ、國民負擔ヲ輕減シ、併セテ其公正ヲ
期スルコトニ致シマシタ、尙ホ地租ニ付キ
マシテハ其課稅標準タル地價ヲ賃貸價格
ニ改ムルト共ニ、地租制度ノ全般ニ亙リ
相當廣汎ナル改正ヲ加フルノ必要ヲ認メマ
シタノデ、地租條例ヲ廢止シ新ニ地租法
ヲ制定スルコトニ致シタノデアリマス、是
ヨリ各法律案ニ就キマシテ順次說明ヲ致シ
タイト思ヒマス
先ヅ地租ノ改正ニ付キマシテ述べマスレ
バ、我國現行地租ノ課稅標準タル地價ハ
明治初年地租改正ノ際ニ於ケル調査ニ係リ
W 〓 〓卽チ明治六年七月、地租改正法ヲ
公布セラレ、同八年地租改正事務局ヲ設置
セラレ、同十五年ニ至リ完成シタルモノデ
アリマス、其後田畑ノ地價ニ付テハ、數次
部分的修正ヲ加ヘ、宅地ノ地價ニ付キマシ
テハ、明治四十三年其修正ヲ行ヒマシタガ、
旣ニ長年月ヲ經過シテ居リマス、其間時勢
ノ進展、經濟事情ノ變遷、交通機關ノ發逹、
其他諸般ノ事情ニ依リマシテ、土地ノ利用
狀況ガ著シク變動シテ居ルニ拘ラズ全國
各地目ニ亙リ一般的ニ地價ノ修正ヲ行フ
コトナクシテ今日ニ及ンデ居リマスル結果
ガ、我國地租ノ負擔ガ甚ダ公平ヲ失スルニ
至リマシテ、之ヲ根本的ニ改正スル必要ノ
アルコトハ申スマデモナイコトデアリマ
ス、之ヲ以テ大正十五年稅制整理ヲ行フニ
際シ、政府ハ地租ノ課稅標準タル地價ヲ賃
貸價格ニ改メ以テ現行制度ノ缺點ヲ除
キ、土地ノ負擔ノ公平ヲ得セシムル計畫ノ
下ニ、土地賃貸價格調査法案ヲ第五十一囘
帝國議會ニ提出致シマシテ、、御協賛ヲ得マ
シタノデアリマス、大正十五年四月ヨリ、
全國稅務機關ノ全力ヲ擧ゲマシテ賃貸價格
ノ調査ニ當リ昭和二年末マデニ全國各
地ニ於テ土地賃貸價格ノ決定ヲ見ルコトヲ
得マシテ、豫定ノ如ク調査ノ完了ヲ〓ゲタ
ノデアリマス而シテ當初ノ計畫ニ從ヒマ
スレバ昭和三年ニ於テ、此賃貸價格ヲ課
稅標準トシテ、地租ノ改正ヲ爲スベキ筈デ
アリマシタガ、內閣更迭等ノ事情ニ依リマ
シテ、其實現ヲ見ズシテ今日ニ及ンデ居リ
やっ、併ナガラ我國土地負擔ノ甚シク不公
平ナル現況ニ鑑ミ、地租改正ノ急務ナルヲ
信ジ、政府ハ當初計畫ノ如ク、地和ノ課稅
標準ヲ賃貸價格ニ改正スルコトニ致シ尙
ホ地租制度ノ全般ニ亙リ、適當ナル改正ヲ
加フルノ必要アルヲ認メ、地租條例ヲ廢止
ジ、新ニ地租法ヲ制定シテ昭和六年度ヨ
リ之ヲ實施スルコトニ致シタ次第デアリマ
ス
今其主要ナル點ヲ擧ゲマスレバ、第一地
租ノ課稅標準タル地價ヲ賃貸價格ニ改ムル
ト共ニ、之ヲ十年每ニ改訂スルコトニ致シ
タノデアリマス、地租ノ課稅標準トシテハ、
土地ノ賃貸價格ガ最モ適當ナルモノデアル
ト信ジマスガ、將來久シキニ亙リ是ガ修正
ヲ行ハザレバ現行地租ノ如ク負擔ノ不公
平ナル結果ヲ來スコトヽナリマスノデ、相
當ノ期間每ニ、一般的ニ賃貸價格ヲ修正シ、
時勢ノ變遷ニ適應セシムル必要ガアリマス
ノデ、十年每ニ之ヲ改訂スルコトニ致シマ
シタ而シテ第一囘ノ改訂ハ昭和十三年ニ
之ヲ行フノデアリマス
第二、稅率ハ各地目トモ之ヲ百分ノ三·
八ニ致シタノデアリマス、現行ノ稅率ハ數
囘改正ノ滯革ニ依リマシテ、宅地百分ノ二·
五、田畑百分ノ四·五、其他百分ノ五·五ト
區別シ尙ホ北海道ニ於ケル宅地以外ノ土
地ニ付キマシテハ、特別ノ稅率ヲ設ケテ居
サマスガ、一般的ニ課稅標準ヲ改正シ、全
國ニ互リ、各地目トモ同一ノ方法ニ依リ調
査シタル新課稅標準ヲ採用スルコトニナリ
マスレバ地目ヲ異ニスルガ爲ニ、又地域
ヲ異ニスルガ爲ニ、其稅率ヲ異ニスベキ理
由ハナイト認メマシテ、總テ同一稅率ニ致
シマシタ、而シテ今囘調査シタル賃貸價格
ヲ基礎トシテ、現在地租總額ノ限度ニ於テ
其稅率ヲ算定シマスルト、百分ノ四·五トナ
ルノデアリマスガ倫敦海軍條約成立ノ結
果生ジタル餘剩財源ノ一部ヲ以テ、其負擔
ヲ輕減スルコトニ致シ、稅率ヲ百分ノ三·八
ト定メテ、約一割五分ノ引下ヲ行ッタノデア
リマス
第三、自作農地ノ免稅點ハ、賃貸價格二
百圓ト致シマシタ現在ニ於テ免稅點ハ
住所地市町村及隣接市町村ニ於ケル田畑合
計地價二百圓デアリマスガ、之ヲ田畑合計
賃貸價格二百圓ニ改メマシタ、而シテ田畑
賃貸價格ハ大體ニ於テ現在ノ地價ニ比シ相
當減ジテ居リマスノデ、此改正ノ結果、免
稅ヲ受クベキ納稅者ノ數及土地ノ面積ハ、
相當增加スルコトヽナルノデアリマス
第四、地租改正ニ依ル負擔ノ激增ヲ緩和
スル爲メ、適當ナル方法ヲ講ジマシタ地
租ノ課稅標準及稅率ヲ改正スルガ爲ニ、地
租ノ負擔ニ增減アルベキハ固ヨリ當然ノコ
トデアリマスガ、負擔ノ激增ヲ緩和スルコ
トヲ穩當ト認メマシテ、新地租額ガ現在ノ
地租額ノ三倍八割ヲ超ヱル土地ニ付キマシ
テハ、三倍八割ヲ超過セザルヤウ賃貸價格
ヲ制限致シタノデアリマス
第五、土地ノ異動ニ依ル課稅標準ノ設定
又ハ修正ヲ爲ス場合、必要ト認ムル外、土
地ノ測量ヲ省略スルコトニ致シマシタ、現
行法ニ於キマシテハ土地ノ異動スル每ニ
必ズ之ヲ測量スル制度デアリマスガ、實際
上其必要ナキ場合モアリマスシ、又是ガ爲
メ土地異動ノ處理ヲ遲延セシムル虞モアリ
マスノデ、土地ノ測量ヲ省略シ得ル場合ヲ
認ムルコトニ改正シマシテ、官民相互ノ手
數ヲ省クコトニシタノデアリマス
第六、土地ノ異動ニ依ル課稅標準ノ設定、
又ハ修正ノ方法、各種年期地ノ取扱、納
期及徵收方法ニ付キマシテハ、大體現行ノ
制度ニ則リマシタガ、多少ノ改正ヲ加ヘタ
ノデアリマス、以上ノ改正ニ依り平年度ニ
於テ千八十餘万圓ノ減稅トナルノデアリマ
ス
次ニ營業收益稅ニ付キマシテハ、法人個
人ヲ通ジ、其稅率ヲ引下グルコトヽ致シマ
シタ、卽チ法人ノ稅率百分ノ三·六ヲ百分
ノ三·四ニ、個人ノ稅率百分ノ二·八ヲ百分
ノ二·六ニ引下グルト共ニ、更ニ個人ノ純
益千圓以下ノ金額ニ對シ、特ニ其負擔ヲ輕
減スル必要ヲ認メ、低キ稅率ヲ適用スルコ
トニ改正シマシテ、其稅率ヲ百分ノ二·二
ト致シマシタ、隨テ純益千圓以下ノ個人ノ
營業收益稅者ハ從來ニ比シ、二割餘ノ負擔
ノ輕減ヲ受クルコトニナルノデアリマス
營業所得ハ資產勤勞ノ共同所得デアリマス
ガ、小營業者ニアリマシテハ大營業者ニ比
シ、勤勞ノ部分〓シテ多キモノアルヲ認メ
マシタノデ、個人ノ營業收益稅ノ稅率ヲ單
一ナル比率稅ノ儘之ヲ引下グルコトハ適當
ニ非ズト信ジマシテ、特ニ小營業者ノ負擔
ヲ一層輕減シタ次第デアリマス此改正ニ
依リマシテ、平年度ニ於テ四百六十餘万圓
ノ減稅トナリマス
次ニ砂糖消費稅ニ付キマシテハ、各種別
ヲ通ジテ稅率ノ引下ヲ行フコトヽ致シマシ
タ而シテ稅率ノ引下ヲ行フニ當リマシテ
ハ、下級ノ砂糖ニ對シテ輕減割合ヲ多クシ
上級糖ニハ減稅割合ヲ少タスルヤウニ按配
シタノデアリマス、卽チ第一種糖ハ甲乙丙
ヲ通ジ、稅率一割ヲ引下ゲ、第二種糖ハ九分、
第三種糖ハ八分、第四種糖ハ七分ヲ引下ゲ、
第五種糖ニ對シテハ其輕減率ヲ五分ニ止
メタノデアリマス、糖蜜ニ付キマシテハ砂
糖ノ稅率改正ニ伴ヒ、ソレ〓〓適當ナル改
正ヲ加ヘタ次第デアリマス、此改正ニ依リ
マシテ、平年度ニ於テ六百餘万圓ノ減稅ト
ナルノデアリマス
次ニ織物消費稅ニ付キマシテハ、其稅率
百分ノ十ヲ百分ノ九ニ引下ゲ、總テノ課稅
織物ニ對シ一割ノ減稅ヲ行フ外、免稅織物
ノ範圍ヲ擴張スルコトニ致シタノデアリマ
ス、大正十五年ノ改正ニ當リマシテ、綿織
物ヲ免稅ト致シタガ、絹、人造絹等ヲ混織
シタルモノハ、其分量ガ僅少デアリマシテ
モ、總テ課稅スルコトニナッテ居リマス、今
囘之ヲ改正致シマシテ、少量ノ絹、人造絹
ヲ混織シテモ之ヲ免稅織物トスルコトニ
改メ、更ニ麻織物、及ビ毛織物中ノ下級品
ハ之ヲ免稅スルコトニ致シマシタ、此改正
ニ依リマシテ平年度ニ於テ四百十餘万圓ノ
減稅トナリマス
右ハ今囘ノ減稅計畫ノ大要デアリマス
ガ、昭和六年度ニ於キマシテハ財源ノ關係
上、地租ノ稅率ハ賃貸價格百分ノ四トシ、營
業收益稅ハ個人ノ純益千圓以下ノ金額ニ限
リ、稅率ハ百分ノ二·五ヲ適用スルコトヽシ、
砂糖消費稅ノ改正ハ昭和七年一月一日ヨリ、
織物消費稅ノ改正ハ昭和六年十二月一日
ヨリ之ヲ施行スルコトニ致シマシタ、其結
果ハ昭和六年度ニ於キマシテハ、地租ガ六
百七十餘万圓、營業收益稅百二十餘万圓、
砂糖消費稅二十餘万圓、織物消費稅九十餘
万圓減稅トナリマス、以上申述ベタル減稅
金額ヲ合計シマスト、平年度ニ於テ二千五
百六十餘万圓昭和六年度ニ於テ九百十餘
万圓トナルノデアリマス、何卒十分御審議
ノ上、速ニ御協賛アランコトヲ希望致シマ
ス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X00719310127&spkNum=6
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007・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 安達内務大臣
〔國務大臣安達謙藏君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X00719310127&spkNum=7
-
008・安達謙藏
○國務大臣(安達謙藏君) 玆ニ議題トナッ
テ居リマスル明治四十一年法律第三十七號
中改正法律案外二件ノ法律案ニ付キマシ
テ、一括シテ其大要ノ說明ヲ致シマス
今囘倫敦海軍條約ノ成立ニ因リ生ジマシ
タル財源ヲ以テ、國稅地租及ビ營業收益稅
ノ輕減ヲ行ヒ、且ツ地租ニ關スル制度ヲ改
正シテ、地租法ヲ制定スルコトヽナリマシ
タルニ付キマシテ、之ニ關聯アル地方稅ニ
付キ、地方總體ニ於ケル從前ノ收入ヲ維持
スルト共ニ、是ガ負擔ノ公正ヲ期スル目的
ヲ以チマシテ、玆ニ必要ナル法律ノ改正ヲ
行フコトヽ致シタ次第デアリマス、卽チ國
稅ニ於テ地租ノ課稅標準ヲ賃貸價格ニ改メ、
且ツ其稅率ヲ輕減スルニ伴ヒマシテ、地方
稅タル特別地稅ノ課稅標準ヲ賃貸價格ニ改
メ、又地租附加稅、特別地稅及ビ其附加稅
ノ制限率ヲ、地方總體ニ付キ、從前ト增減
ナキ收入ヲ得ベキ限度ニ整理スルコトヽ致
シマシタ、唯地租及特別地稅ノ課稅標準ヲ
改正致シマス結果、制限率ヲ斯樣ニ定メマ
シテモ、地租附加稅、特別地稅、又ハ其附
加稅ノ收入ハ之ヲ地方團體各個ニ付テ見
マスル時ハ、從前ニ比較シテ少ナカラズ增
減ヲ來ス場合ヲ生ズルコトヲ免レナイノデ
アリマスガ、斯ル場合ニ付キマシテハ、地
租及ビ特別地稅ノ課稅標準タル賃貸價格ノ
次ノ改訂期、卽チ昭和十二年度マデ經過的
便法ヲ設ケマシテ、以テ一面ニハ地方團體
メ財政ニ不時ノ缺陷ヲ生ズルコトナカラシ
ムルト共ニ、一面ニハ土地ニ對スル地方負
擔ノ增加ヲ避ケ、地方財政ノ濫リナル膨脹
ヲ抑制スルコトヽ致シマシタ
次ニ國稅營業收益稅ノ減稅ニ伴ヒマシ
テ、地方稅ニ於テ其附加稅ノ制限率ヲ改正
スルコトヽ致シマシタ、又是ト同時ニ府縣
稅營業稅ニ付テ、營業收益稅ト同一程度ノ
減稅ヲ行フコトヽ致シマシタ、其輕減割合
个昭和六年度ニ於テ約一割、昭和七年度以
降ニ於テ二割餘デアリマシテ、其減稅額ハ、
平年度ニ於キマシテ約百八十餘万圓トナ
ル見込デアリマス、蓋シ府縣稅營業稅ハ
主トシテ國稅ノ營業收益稅免稅點以下ノ
諸營業者ニ對シテ課稅スルモノデアリマス
ルガ故ニ、營業收益稅ニ付テ減稅ヲ爲ス以
上ハ負擔ノ權衡上營業稅ニ付テモ亦減稅
ヲ致シマスルコトヲ相當ト認メタルガ爲メ
デアリマス、尙ホ都市計畫特別稅ニ付キマ
シテモ、地租ノ改正ニ伴ヒマシテ、地租割
及ビ特別地稅ニ付キ必要ナル改正ヲ加フル
コトヽ致シマシタ
以上ハ改正法律案ノ〓要デアリマス、
何卒十分御審議ノ上、速ニ協賛ヲ與ヘラレ
ンコトヲ希望致シマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X00719310127&spkNum=8
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009・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 質疑ヲ許シマス、
高橋熊次郞君
〔高橋熊次郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X00719310127&spkNum=9
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010・高橋熊次郎
○高橋熊次郞君 只今提案ニナッテ居リマ
スル減稅案、新地租法案中ニ付テ、私ハ幾
多ノ疑義ヲ持シテ居ル者デアリマス、是ハ此
内閣ニ於テ本議會ニ提案サレタルモノヽ中
デ、最モ重大ナル案件ノ一ツデアルト吾々
ハ考ヘテ居ルノデアリマス、殊ニ負擔ノ輕
減ヲスルト云フノハ民政黨各位ニ於カレ
テ多年來天下ニ高調力說サレタル所デアル
ト思フノデアリマス、然ルニ吾々ハ此減稅
案ニ現ハレタル限リニ於テハ、寔ニ平素ノ
御主張ニハ副フモノデナイヤウニ考ヘラレ
テ居ルノデアリマスル(拍手)如何ニモ貧弱
デアル、能ク此議會ニ於テ二階カラ目藥デ
アルト云フヤウナコトヲ聞クノデアリマス
ガ二階カラ目藥ドコロノ騒ギデハナイノ
デアリマス、租稅ニ於テモ今日減ジタリト
雖モ、尙ホ八億万圓ニ近イ所ノ租稅ヲ持ッテ
居ルノデアル、ソレニ對シテ僅カ平年度ニ
於テモ二千五百万圓、此平年度ト云フヤウ
ナモノニ付テハ、又吾々ハ論ズルコトモア
ルノデアリマスルガ、兎モ角不確實ナル財
源ヲ以テ後年度ノ減稅計畫ヲ立テルナゾト
云フコトハ少クモ今日ノ財界ノ情勢ニ於
テ之ヲ許スカドウカト云フコトハ是ハ別
ノ問題トシテ他ノ機會ニ讓リマスガ、今年
度ノ豫算ニ現ハレタル結果ヲ見マシテモ、
九百餘万圓デアル、九百餘万圓、八億ニ近
イ所ノ稅金ノ中デ九百餘万圓ノ稅金、是デ
國民ノ負擔ガ輕減サレルトカ、生活ノ安定
ヲ圖リ得ルナゾト云フコトハ、竝ニ產業ノ
振興ヲ之ニ依リヤルナゾト云フコトハ大
ニ識者バカリデハナイ、三歲ノ童子デモ笑
フコトヽ私ハ考ヘル(拍手)ソレデコンナ馬
鹿馬鹿シイヤウナ案ハナカラウト思フノデ
アリマスルカラ、何カ吾々ノ知リ得ナイ範
圍內ニ於テ、色々ナ御名說ヲ承レルカト、
斯樣ニ考ヘテ居ル、此處ニ學殖經驗ニ於テ
世界ヲ驚カシツヽアル有名ナル井上大藏大
臣ノコトデアリマスルカラ(拍手)吾々ノ知
リ得ザル所ノ幾多ノ事實ヲ私共ハ學ブコト
ガ出來ヤウカト云フ、大ナル期待ヲ持ヲテ此
演壇ニ立ッタル次第デアリマスカラ、私ノ質
問ハ成ベク議事ノ進行ヲ考ヘマシテ簡單ニ
申上ゲル積リデアリマスカラ、何時デモノ
ヤウナ、吾々ニハ理解ノ出來ナイヤウナル
ムヅカシイ答辯ヲ以テ、頭ガ良ケレバ良イ
程分ラナイヤウナ御答辯ノ方法ヲ避ケテ、
卒直明確ニ御答辯アランコトヲ豫メ註文ヲ
致シテ置ク次第デアリマス
色々問題ハアリマスケレドモ、第一ニ吾
吾ガ伺ハナケレバナラヌノハ、稅ト云フモ
ノハ兎モ角公平ニヤラナケレバナラヌト云
フコトハ、是ハ當リ前ノコトデアル、而モ
此內閣ハ公正ニ政治ヲ行フト云フコトヲ常
ニ口ニサレルバカリデナク、十大政綱ノ第
一義トシテ之ヲ揭ゲテ居ラレルノデアル
然ラバ、此最モ公平嚴正ニ行ハレベキ稅法
ニ於テハ特ニ之ニ意ヲ用ヒナケレバナラ
ヌノデアル、用ヒラレタニハ相違ハナカラ
ウト思フノデアリマスガ、案ニ現ハレタ所
デ見ルト云フト、一向サウ云フ觀念ハ現ハ
レテ參ラヌノデアル、洵ニ不公平ナル事象
ガ其儘存在シテ居ルヤウニ考ヘルノデアリ
マシ、私共ハ此問題ニ供セラレテ居ル所ノ
減稅ノ諸案ニ亙ッテ色々ナ意見ハゴザイマ
スケレドモ、是ハ順ヲ追テ申上ゲルコトニ
致シマス、又他ノ同僚諸君ニモ色々御意見
ノアルコトデアリマスカラ、其人々ニモ御
讓リヲシタイト思フノデアリマスガ、先以
テ問題トシテ最モ大キイ、而シテ其減稅額
ニ依ッテモ最モ大ナル數字ヲ占メテ居ル所
ノ地租ニ關スル新地租法案ニ付テ、私ハ第
一ニ伺ッテ見タイト思フノデアリマス、其中
デ只今申上ゲタル稅ノ公正ト云フコトニ付
テ、果シテ適當ナ提案デアルカ否ヤト云フ
コトヲ、先ヅ第一著ニ申上ゲテ見タイト思
フノデアリマス、殊ニ從來ノ御言明ニ依リ
マシテモ、又今ノ內閣ノ前身デアル所ノ若
槻內閣時代、今病床ニ橫ハッテ居ラレル所
ノ-元氣ハ囘復サレタト天下ニ表明サレ
テ居ルノデ、吾々ハ慶賀ノ意ヲ表シツヽアル
ノデアリマス、濱口2-大臣ト申上ゲナケ
レバナラヌノデアリマセウガ、其言葉ニ付
テハ色々論議ガゴザイマス此濱口雄幸氏
カ、前ノ大藏大臣デ在ラレタ時分ニモ、度
度地租ト云フモノハ、只今大藏大臣ヨリ御
說明ノアッタ通リニ、明治ノ初年ニ制定サレ
タ法律ニ依ルモノデアッテ、殊ニ課稅標準モ
亦其當時ノ事情ノ下ニ出來上ッタモノデア
ルカラ、時代ニ適合シナイノデアル、今日
ノ經濟界ノ變動ノ場合ニハ事實ニ卽シナイ
課稅ノ標準デアルカラ改正ヲ致シテ以テ負
擔ノ公正ヲ圖ラナケレバナラヌト云フヤウ
ナル御趣旨ヲ繰返サレタヤウニ私ハ聽取ッ
タノデアリマス、然ラバ此提案ニ於テ公
正ニヤッタカドウカト云フコトヲ吾々ハ考ヘ
テ見ナケレバナラヌノデアリマス、ソレデ
私共ハ前ノ地租條例ニ於テ、最モ問題トナツ
タノハ法定地價デアル、法定地價ニ依ッテ
定リタル地租ト云フモノハ、第一地目ニ依ツ
テ公平デナイバカリデナク、地方別ニ見テ
非常ナル差別ガアル、是ハドウシテモ速ニ
改正ヲ致シテ、負擔ノ公平ヲ期セナケレバ
ナラヌト云フノハ是ハ內閣諸公ガ常ニ繰
返サレテ居ルバカリデナク、天下何人モ之
ヲロニシナイ者ハナイノデアリマス、而モ
地租條例ノ改正ハ容易デナイト云フテ、今
マデ度々手ヲ著ケラレタケレドモ完成ス
ルニ至ラナカッタノデアル、今日ハ之ヲ一日
モ速ニ改正ヲシナケレバナラヌト云フノデ、
地租法ヲ提案サレタヤウデアリマスケレド
モ、而モ以前ノ不公平ノ事實ハ少シモ匡救
サレテ居ナイノデアリマス、當時ニアッテ
ハ明治維新ノ際デアルカラ、今日カラ考
ヘテ見ルト云フト、吾々ノ不平不滿モ多少
忍バナケレバナラナイ、甲ト乙トノ交通ノ
不便ナ關係カラシテ、地理的ニ公平ヲ保ツ
ト云フコトハ、當時ハ困難デアッタラウ、
ソレデ吾々ハ非常ナル不公平ノ待遇ヲ受ケ
ナガラモ、忍ンデ居ノタノデアリマス、九州
ノ一部分、或ハ東北ノ全般ナゾハ中國ノ
一部分、九州ノ一部分、四國ノ一部分ナゾ
ニ比較シテハ非常ナル重キ課率ト申シマス
ヨリ、課稅標準ノ下ニ、卽チ地價ヲ定メラ
レー、多年苦ンデ居ッタノデアリマス、併ナ
ガラ先程申上ゲルヤウナル事情ノ下ニ、是
等ノ地方ノ人々ハ我慢致シテ居ノタノデア
リマスガ、今日其弊害ヲ除去スル爲ニ改正
ヲスルノダト云フ趣」日ノ下ニ、此提案ヲサ
レル以上ハ、吾々ハ是等ノ缺點ト云フモノ
ハ當然除カレ得ベキモノナリト考ヘザル
ヲ得ナイノデアリマス、多クノ國民ハ之ヲ
期待シテ居ルダラウト思フノデアリマス、
而シテ吾々ハ數字ヲ的確ニ伺ッテ居リマセ
ヌカラシテ、是等ノ事ハドウ云フコトニナッ
テ居ルカト云フコトハ此場合十分論ズル
コトハ避ケマセウ、吾々ガ世間ニ傳ヘラレ
タル所ノ數字ヲ拾ッテ作リ上ゲタ所ヲ見ル
ト云フト、何等地租條例時代、卽チ法定地
價ノ場合ニ曝サレテ居ッタト同ジヤウニ、地
方的不公平ノ狀態其儘ヲ今日持續サレテ居
ルト吾々ハ考ヘルノデアリマスソレハ吾
吾ハ此處ニ公表サレタル數字ヲ持タナイカ
ラ遠慮スル、公表サレタルモノヲ持ッテ居
ラナイ吾々自身ノ努力ニ依ッテ拾ヒ集メ
タ數字デアリマスカラ、ソレハ私ハ此場合
ハ之ヲ遠慮ヲ致スノデ、是ハ論議ヲ致シマス
マイ.併ナガラ今日此新地租法ノ本デアル
所ノ土地賃貸價格ト云フモノハ、大正十五
年四月一日現在ヲ捉ヘテ、其時ノ狀態ニ依。ツ
テ課稅標準タル土地賃貸價格ト云フモノヲ
定メタノデアル、卽チ土地賃貸價格調査法
ト云フ法律ノ下ニ調査委員ガ立チマシテ、
二年ノ日子ヲ費シテ之ヲ調上ゲタ、共努力
ハ多トスルノデアリマスケレドモ、大正十
五年ノ時ノ經濟狀態ト今日ハ雲泥ノ相違
デアルト云フコトハ、私ガ玆ニ繰返シ申ス
マデモナイノデアル、色々大藏大臣又現內
閣諸公ハ論議サレマスルガ、兎ニモ角ニモ
金解禁ヲ斷行サレタル以來ノ經濟界ノ變革
ト云フモノハ非常ナモノデアル、其政治
上ノ責任云々ハ別問題ト致シマシテ、實際
現ハレテ居ル事象ハ左樣ナ如キモノデア
ル此金解禁以來、殊ニソレノ對策トシテ
財政經濟ノ緊縮政策ヲ採ラレタト云フガ爲
ニ、經濟界ノ大變革ガ起シタノデアル、殊ニ
甚シイノハ不動產ノ價格デアルノデアリマ
ス、田畑ノ價格デアルノデアリマス、サウ
云フ事象ノ下ニ、古イ所ノ標準ヲ當篏メヨ
ウト致シタ所ガ、是ハ公平ニ行ク道理ハナ
カラウト考ヘルノデアリマス、經濟界ガ順
調ニ參ル時分ニハ不公平ト云フモノモ其
範圍ガ狹クナル、併ナガラ經濟界ガ不況ニ
陷ツテ居ル場合ニハ數字ガ細カクナレバ
其差ト云フモノハ非常ニ大キクナルト云フ
コトハ大藏大臣ノ疾ニ御承知ノ筈デアル
ノデアリマス、左樣デアリマスルカラ、今
日ニ於テ此賃貸價格ノ差ハ、地方的ニモ
又地目的ニモ、私ハ非常ナ不公平ナル事象
ガ益〓深クナッテ居ルト云フコトヲ斷定ス
ルノデアリマスル、何ガ故ニ斯ノ如キ不公
平ナル場合ニ、此新地租法ト云フモノヲ特
ニ其儘提案ヲサレタノデアルカ、減稅ヲ爲
サルナラバ、之ヲ其儘ニ置イテ減稅ヲ爲スツ
テモ宜カラウト思フノデアル、ソレヲ故ラ
ニ新地租法ニ變へテ、サウシテ此法律ヲ以
テ不公平ナル事實ヲ其儘ニ置イテ、玆ニ減
稅ヲ行"テ見テモ、其效果ト云フモノハ蓋シ
洵ニ少イモノダラウト吾々ハ考ヘル、減稅
ヲ爲サルコトハ吾々ハ大ニ喜ブ、吾々ハ之
ニ贊成ヲ致スカモ知レヌ、吾々ハヨリ多キ
所ノ減稅ヲ希望致シテ居ルノデアリマス、
ソレナラバ高橋ハ此地租法ナドハ幾分ナリ
トモ公平ニナッタト云フコトヲ認メナイノ
カト言ハレルカモ知レヌ、ソレハ幾分カハ
公平ニモナッテ居リマセウ、併ナガラソレト
同時ニ非常ナル玆ニ不公平ナル事實ガ出テ
來ルト云フコトニ相成ルノデアリマス、改
正ヲシタラ、改革ヲシタラ善クナルトバカ
リハ限ラヌノデアリマス、改正ヲシテ却
テ惡イ結果ト云フモノヲ生ジナイトハ考へ
ラレナイ、改正ト改善トハマルキリ違フノ
デアル(「改正ノ正ハ正シイト云フ字ダ」ト
呼フ者アリ)ソレハ正シクスルト云フノ
ヂヤナイ、ソレハ改メルト云フノデアル··
〔發言スル者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X00719310127&spkNum=10
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011・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 靜肅ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X00719310127&spkNum=11
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012・高橋熊次郎
○高橋熊次郞君(續) 改善ト改革ト云フコ
トヲゴタ混ゼニシテ居ル、ソンナ馬鹿ナ
コトハアルモノヂヤナイ、第一サウヂヤナ
イカ、金解禁ニ致シタ所ガ、金解禁ヲスル
ト云フ事ハ是ハ結構ナコトデアルダラウ、
併ナガラ之ヲヤッタト云フコト、此經濟界
ノ現狀ヲ改メタト云フコトハ吾々ノ眼カ
ラ見レバヤラナイヨリモ惡カッタヂヤナイ
カ、ソレト同ジコトデアル總テ改メサヘ
スレバソレデ宜シイナント云フノハ、新シ
ガリ屋ノ「モダーンボーイ」ト云フモノヽヤ
ル事デアル、ソレハ「マネキン」ノ職掌ダナ
ント思ッタラ大間違ダ(拍手、笑聲)ソレデ
アルカラ私ハ玆ニ承ルノデアリマス此地
租法ノ改正ノ目的ハ、負擔ノ公平ニアッタ筈
デアル、課稅標準ノ公平ニアッタ筈デアルト
思フノデアリマズルガ、ソレガ私共ハ両
其目的ガ達成サレテ居ナイト信ズル、是ハ
私共ノ誤リデアルカ如何デアルカト云フコ
トヲ、先ヅ第一點ニ承"テ置キタイト思フ
ノデアリマス
第二番目ニハ此提案ヲ見ルト云フト、成
程田租、畑租ニ於テハ減稅ニナテテルルノ
デアル、併ナガラ宅地租ニ於テハ著シク增
稅ニナッテ居ルノデアル、大增稅ニ相成シテ
居ルノデアリマス、一千万圓ニモ近イ所ノ
大增稅ニ相成ッテ居ルノデアル(「ソンナコ
トハナイ」「證據ヲ出セ」ト呼フ者アリ)證據
ハ大藏大臣ノ說明書ニ書イテアルヂヤナイ
カ議員ト云フモノハ其位ノ事ハ議場ニ入
ル時分ニハ眼ヲ通シテ置カナケレバイカン
ヂヤナイカ(笑聲「大出來々々々」ト呼フ者
アリ)ソレデ私ハ考ヘテ居ルノハ今日ノ場
合デアル、上下擧ゲテ不況ニ苦ンデ居ル場
合デアル、ソレニ向ッテ增稅ヲスルナドト
云フコトハ今日誰カ考へ得ル事デアルカ
(拍手)而モ減稅ヲスルノダト云フ案ニ向ツ
テ-減稅ヲスルト云フ案ニ向ッテ、倫敦
條約マデモ、之ヲ世間一般ノ人カラ見ルト
其效果ガ洵ニ怪シイ、國防ニモ缺陷アリト
云フ疑ヲサヘ深クスルヤウナ事マデモ犧牲
ニシテ、減稅ヲヤルト云フ建前ノ中カラ
宅地租ニ於テ大ナル增稅ト相成ルト云フヤ
ウナコトハ誰ガソンナ事ヲ考へルノデア
ルカ(拍平)此場合增稅ヲヤッテ、而シテ之
ガ爲ニ生活ノ安定ガ得ラレルカ、之ガ爲ニ
始終口ニセラレル所ノ產業ノ振興ガ出來マ
スカ、吾々ハ恐ラクハ此宅地租ノ大增稅ニ
依ッテ、都會ノ商工業ハ破壞サレルダラウ
ト思フノデアリマス(拍手)國稅ニ於ケル所
ノ宅地租ノ增稅ト云フモノハ、地方稅ニド
ウ云フ工合ニ響クカト云フコトヲ今日考ヘ
ナケレバナラヌヂヤナイカ(拍手)ソレデア
ルカラ吾々ハ此田租ナリ畑租ナリノ方面ニ
於テ減稅サレルト云フコトハ、大ニ喜ンデ
居ルノデアル、併ナガラ農民ニ累ヲ及サズ
シ六、宅地租ナドヲ上ゲナイ工夫ハ幾ラデ
モ出來ヨウト思フノデアリマス、之ヲヤ
ルト云フコトハマルデ農民ヲ僅カノ部
分--田租ヤ畑租ノ僅カノ部分ダケヲ減稅
ヲシテ置イテ、一方ソレデ農民ヲ喜バセテ
置イテ-幾分ナリトモ減稅ニナレバ吾々
ハ喜ブ、併ナガラ其一面ニ於テ宅地租ヲ非
常ニ增稅ヲ致シテ、サウシテソレヲ糊塗ス
ルト云フヤウナコトハ吾々ノ忍ビ得ザル
所デアリマス、農民ニダケ吾々ハ負擔ヲ輕
減サレテ、其他ノ以外ノ日本國民ニ大增稅
ニナッテ、ソレデ農民ハ立テルナント云フ
コトハ吾々ハ考ヘテ居ナイ(拍手)サウ
云フコトヲ考ヘルノハ、今マデ都會ノ人
人ノ利害關係ヤ、大資本家ノ利益ナド
ヲノミ保護シヨウト云フ建前、所謂商工
偏重主義、都會中心主義ダナドト云フ
非難ヲ受ケタルコトヲ、コンナコトデ、
非常ニ安イ費用ヲ以テ取返シヲシヨウ
ナドト云フコトヲ考ヘラレタトスルナラ
バ(拍手)是ハ大ナル誤リデアル、國政ニ不
忠ナルモノデアルト吾々ハ論斷セザルヲ得
ナイノデアリマスルカラ、此點ヲ私ハ聞イ
テ居ルノデアリマスル(發言スル者多シ)サ
ウデアルカラ諸君モ他人事デハナイノデア
ルソレデアルカラ能ク騒ガズニ、大人シ
ク聽イテ居ルノガ當リ前ヂヤナイカ(「委員
會デヤレ」ト呼フ者アリ)委員會ニ於テハ尙
ホ詳シク數字ヲ擧ゲテソレ〓〓吾々ハ-
誰ガ委員ニナルカ分ラヌノデアリマスガ、
其委員ヲ通ジテ吾々ノ考ヘル所ヲ申上ゲ
ルト云フコトハ、是ハ當リ前ノコトデアル、
私ハ是ニ於テ大體ノ肝要ナ點ト思フダケヲ
申上ゲテ居ルノデアルカラシテ、諸君モ靜
カニ聽イテ居ラナケレバナラヌト吾々ハ考
ハトソレハ諸君ノ國民ニ對スル義務ヂヤ
ナイカ(笑聲、發言スル者多シ)政治ノ公正
デアルトカ、何トカ云フヤウナコトヲ言ティ
居ル口ノ下カラ、斯ノ如キ重大問題ニ入ツ
テワー〓〓騒グトハ何事デアルカ、殊ニ貧
弱ナル知識ノ持合セニ依ッテ、サウシテ議
案モ碌ニ見モシナイデ妄評ヲ加ヘルガ如
キハ何タル不眞面目デアルカト國民
ニ呼バレテモ(拍手)諸君ハ辯解ノ辭ガ
ナカラウト私ハ考ヘルノデアリマス
ソレカラ第三點ニ私ハ極ク簡單ニ伺フノ
デアリマシテ、ソレ等ヲ伺ッタ後ニ御答辯ニ
依テハ又第二第三ノ質問ヲ致シタイト思フ
ノデアリマスルガ、私ハ玆ニ一部分ハ減稅
ヲ行フトイフ傍ラ增稅トナルト云フコトハ
ヲカシイト云フコトヲ申上ゲテ居ルノデア
リマスルガ、一體是ハ減稅ト云フロノ下カ
ラ增稅ヲシテ居ルノデアル、之ヲ減ラシタ
ガ爲ニ、片一方非常ニ殖ヤスト云フヤウナ
コトハ是ハ避クベキモノデアルト云フコ
トハ、是ハ勿論ノコトデアッテ、私ハ非常ニ
不思議ニスル所デアリマスルバカリデナク、
卽チ田租畑租ニ於テ、是ハ餘程減ッテ居ラナ
ケレバナラナイバカリデナク御承知置キ
ノ通リ、賃貸價格ヲ今承ハリマスヤウニ、
今マデ法定地價、所謂舊地價ニ於テ二百圓
未滿ノモノハ免稅ヲスルコトニナッテ居ッタ
モノガ、今囘ノ提案ニハ賃貸價格ニ直シテ
そ、ソレヲ二百圓未滿トスル、賃貸價格ノ
二百圓未滿ノモノニ對シテ、自作農ニ對シ
テ地租ヲ免除スルコトニナッテ居ル、サウス
ルナラバ田畑ト云フモノハ、總體ニ於テ餘
程課稅標準ガ落チテ居ル、下ッテ居ル、ソレダ
ケ低下シテ居ルノデアリマスカラ、國稅ヲ
課稅サルヽ田畑ガ減額ヲシテ居ル、此基礎
數字ガ減シテ居ノテモ一向ソレニ卽スルヤ
ウナル所ノ大減稅ト云フモノガ、玆ニ行ハ
レテ居ナイノデアリマス、寧ロ其間ニ却ッテ
增稅ノ疑ガアル、基礎數字ガ減シテ居ノテ
自作農トシテ是ハ免稅サレテ居ルト云フニ
モ拘ラズ今度國稅地租地ト云フモノガソ
レニ依ッテ減シテ居リ、基礎反別ガ減シテ
居テモ、稅金ガ其割合ニ減ラナイト云フコト
ハ此間ニ增稅ヲサレテ居ルコトニナルノ
デハナイカ、是ハ私ハ其數字ハ今日此場合
申上ゲル要ハナカラウト思ヒマスカラ、觀
念ノミヲ此處ニ申上ゲテ居ルノデアリマス、
課稅ノ範圍ガ狹マッテ、サウシテ其稅額ハ減
ラナイト云フ、馬鹿々々シイ減稅ノ趣旨ト
云フモノハナカラウト思フ、今マデ稅ノ此
處ニ十ノ基本ガアッテ、ソレノ稅金ガ十ヲ取
ラレタト云フナラバ、是ハ其儘、ソレガ十
二ニナレバ增稅ニナルノデアリマスルガ、
ソレト同ジヤウニ今マデ稅ハ十デアルガ、
基礎ハ九デアッタ、今マデ十ノモノガ九ニ
ナッタト云フコトニナッテ居ルニ拘ラズ、其
九デ以テ、相變ラズ稅額ガ十ナリ十一ナリ
ニナッテ居ルト云フコトニナレバ、是ハ大增
稅デナケレバナラヌノデアリマス、ソレデ
アリマスカラ、是ハ大藏大臣ハドウ考ヘテ
居ルカ、卽チ田畑ニ於テ今囘法定地價ガ賃
貸價格ニ直ッタ、法定地價ガ賃貸價格ニ直ッ
タガ爲ニ、ソコデ國稅地和トシテ課稅サル
ベキ田畑ノ反別ガ減ッテ居ルノデアル、ソレ
デアルカラシテ、此租稅額ニ於テ大ナル減
額ガシテナケレバナラヌノデアル、勿論是
ハ課率ニ於テ減稅ヲシテ居ルノデアルカラ、
數字ハ幾分カ減ルデセウ、減ルデセウケレ
ドモ、ソレデハナクシテ、此課率ノ變化デ
ハナタシテ、此地租法ヲ變ヘタト云フガ爲
ニ、私ハ相當ナル減稅額ガ顯ハレナケレバ
ナラヌト思フノデアルガ、ソレハ大藏大臣
ニ能ク御分リデアラウガ、ソレハ基礎ガ減ッ
タダケハ稅額ニ於テ減稅ニナッテ居ルノデ
アル、ソレニハ間違ガナイト云フノカ、或
ハ是ハ基礎額ハ減ッテ居ルケレドモ、稅額ハ
減ッテ居ラヌノデアル、增稅ニナッテ居ルノ
デアルカ、此點ヲ明カニ御伺致シタイ、ソ
レカラ第二、第三ノ質問ニ移リタイト思ヒ
マス(拍手)
〔國務大臣井上準之助君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X00719310127&spkNum=12
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013・井上準之助
○國務大臣(井上準之助君) 只今ノ高橋君
ノ御問ニ對シテ答辯致シマス、大正十五年
ニ賃貸價格ヲ調査シタ時ハ今日ト見ルト
非常ニ經濟狀態ガ違ッタ、其數年前ノ調査ヲ
基ニシテ稅法ヲ改正スルト云フコトハ不當
ダト、斯ウ云フ御話デアリマスガ、ソレヲ
吾々ハ斯ウ考ヘテ居リマス、成程大正十五
年ニ調査シタ當時トハ今日ノ經濟狀態ハ
大變違シテ居リマス、併ナガラ假ニ賃貸價格
ト申シマスカ、地價ト申シマスカサウ云
フ普通ノ觀念カラ見マシタラバ、農村デモ
市街地デモ、或ハ田畑デモ、宅地デモ、同
ジ水平ニズット下ッタト致シマシテ、吾々
ハ此地租法ヲ其調査ニ依ッテ今日立テタノ
デアリマス、卽チ地租法ノ改正ハ負擔ノ
公正ヲ圖ル、過去ニ於テ數十年ノ間ニ田畑
ト宅地ノ間、或ハ市街地ト農村トノ間ニ非
常ナ負擔ノ公正ヲ缺イテ居ルカラ、ソレヲ
訂正シヨウト云フ爲ニ此改正案ヲ企テタ
ノデアリマスカラ、高橋君ノ言フヤウニ經
濟界ノ變動ハ認メマスガ總テノモノガ同
一ニ下ッタトシマシタナラバ、公正ト云フ點
カラ言ヒマシタナラバ、更ニ不都合ナリト
考ヘテ居リマス(拍手)又一方ハ增稅トナリ、
一方ハ減稅トナル其增稅ダケヲ捉マヘテ
今日ノ世ノ中ニ增稅ヲスルト云フ不都合ナ
コトガアルカト云フ御問デアリマスガ、只今
申シマス如ク、數十年來不公正ナル負擔ヲ
シテ居ルノヲ公正ヲ圖ラウト云フ上ニハ
全體ノ總額ノ稅額ヲ變ヘマイト斯ウ云フナ
ラバ、其負擔ノ負擔者ガ違テ來ルト云フコ
トハ是ハ餘儀ナイ次第デアリマス、卽チ
田畑ニ於キマシテ、減稅ヲスル前デハ、田
畑ノ稅額ハ九百万圓滅ジテ居リマス、ソレ
カラ宅地ノ稅額ハ九百万圓增シテ居リマス、
減稅ヲ致シマス後ニハ田畑ニ於テ千五百
万圓減ジ宅地ニ於テ五百万圓ト云フモノ
ヲ增スノデアリマス、其間ニ增ノ五百万圓
ガ全國ニ通ジテ此經濟界ノ狀態デ不都合
ダト言ハレマスガ、之ニ依テ初メテ負擔ノ
公正ガ出來ルコトヽ吾々ハ考ヘテ地租法ノ
改正ヲ企テタノデアリマス(拍手)第二ノ御
間ハ私ニ一寸呑込ミ兼ネマシタノデアリ
マスガ(「誰ニモ分リマセヌヨ」ト呼フ者ア
リ)甚ダ相濟ミマセヌデスガ、モウ一應質問
ノ論旨ヲ說明シテ戴ケバ、洵ニ有難ウゴザ
イマス(拍手)
〔高橋熊次郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X00719310127&spkNum=13
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014・高橋熊次郎
○高橋熊次郞君 第一點ハ、大正十五年當
時ノ狀態デ調查ヲ致シテ見テモ、一律一體
ニ減ヲタナラバ、其標準ニハ何等變リガナイ
デハナイカト云フ御說デアルノデアリマ
ス、併シ一律一體ニ減シタナドト云フコト
ハ、誰ガソンナコトヲ考へテ居リマス、今
日ハ其資產狀態、其資力ニ依クテ非常ナル差
違ガアルノデアリマス、ソレデアリマスカ
ラ、地方ニ依ッテ、或ハ其個人ニ依ッテ、非常
ナル違ヒガアルノデアリマス、或ハ地主ニ
致シマシテモ、小作人ニ致シマシテモ地
主ノ弱イ者ハ賃貸料ガ非常ニ減シテ來ル、强
イ者ハ一向減ラナイ、小作人ノ强イ者ハ
小作料ヲ引下ゲルコトガ出來ルガ、弱イ
者ハ引下ゲルコトガ出來ナイト云フヤ
ウナ、色々ナ茲ニ經濟上ノ大波瀾ト伴ッテ、
ソレガ一律一體ニ行カナイカラ、私ハ此賃
貸價格ハ公正ノ觀念ヲ裏切ルモノデアル
況ヤ耕地ノ賃貸價格ヨリハ宅地ノ賃貸價
格ト云フモノハ減リ方ガ少ナイト私ハ考ヘ
テ居ル、賃貸料、所謂宅地ノ地代ト云フモ
ノガ耕地田畑ヨリハ私ハ減ラヌト思フ、ソ
レデアリマスカラ、宅地トソレカラ田畑ト
ノ此標準ト云フモノハ、大正十五年當時ニ
於テ可ナリト思ッタ標準ヲ、此儘今日ノ時代
ニ適應スルヤウニスルニハ、餘程ノ改正ガ
ナケレバ相成ラヌト私ハ考ヘテ居ル、律
一體同ジ比例デ、同ジ率デ以テ下ッテ來ルト
云フコトナラバ吾々ハ何ヲカ論ゼン、併
ナガラサウ云フ工合デナク、此經濟界ノ大
變動ニ於テ、地方ニ於テ其打擊ノ受方ニ輕
重ガアルノデアル、同ジ打擊ヲ受ケテモ深
イ淺イガアルト云フコトヲ玆ニ觀念ニ置カ
ナケレバナラヌ、一律一體ニ低下シタナド
ト見ラルヽカラ、財界ノ觀測ヲ非常ニ誤マ
ラレルノデアルサウシテ紡績會社ガ少シ
都合ガ好クナッタト云フト經濟界ガ眞ニ
立チ直ッタト云フヤウニ誤解ヲサレル、紡績
會社ハ宜カラウガ、地方農民ナドハ益〓疲
弊困憊ノ極ニ達シテ居ルサウ云フヤウナ
コトヲ頭ニ置カレテ、サウシテ此改正案ヲ
見ラレナイカラ、ソコニ大ナル錯誤ガ生ズ
ルノデアリマス、又第二ノ點ニ於テ、部
分上ックト云フノモ、ソレモ時代ニ適應スル
ヤウニナッテ居ルカラ-標準ガサウ云フ
建前ニ行クカラ仕方ガナイト云フヤウナ御
意見ノヤウニモ承レマスルガ、併ナガラ同
ジ宅地ト云フモノヽ間ニモ非常ノ差違ガア
ル若シ時代ニ適應シタヤウニ宅地ヲ大修
正ヲ爲サラウト云フナラバ、議論ノ餘地モ
少シアリマセウ、併ナガラ增稅ヲ一方デ防
ガナケレバナラナイト云フ建前カラ三
八デ御止メニナッタノデハナイカ、三·八デ
止メテ居ル以上ハ此處デ十倍、二十倍宅
地ガ上ルモノヲ三·八デ止メ、上ラナイモ
ノハ今日全部地租トシテ取ラレルコトニナ
ルコンナ不公平ナコトガ何處ニアル、サ
ウスルト益〓大キク儲カル者ハ、半分ニモ四
分ノ一ニモシテヤラウ、サウシテ力ノ弱イ
者ヲ精一杯取ッテヤラウト云フ、其建前カラ
來テ居ルコトガ直チニ分ルデハナイカ、斯
ウ云フコトモ一面ニ考ヘラレルノデアリマ
ス、ソレデアリマスカラ玆ニ幾分デモ上ッタ
ト云フ-是ガ營業收益稅ト同ジ建前ニア
ル、補完稅デアルト云フツノ頭ガアッテ、
收益稅デアルト云フナラバマダ宜シイ、其
年其年ニ依ッテ經費ヲ數ヘテ、サウシテ收入
カラ經費ヲ差引イタ其殘高、卽チ純益ニ年
年課稅シテ行クト云フナラバ、是ハ又了解
サレル、併ナガラ今臺帳ニ賃貸價格ヲ揭ゲ
タナラバ、十年間ト云フモノハ動カナイデ
ハナイカ、大ナル天災ノ如キ變革ガアッテ、
價格ガ半分ニモ下ッタトカ何トカ云フヤウ
ナコトガアッタラ、他ニ匡救ノ途モ講ゼラレ
ルデアリマセウガ、併ナガラ其儘デアッタナ
ラバ、如何ニ經濟的價値ガ下リマシテモ、
收入ガ減ジテモ、經費ガ餘計掛ッテモ、少シ
モ動カナイデハナイカ、殊ニ今日ノ田畑ノ
所得、畑ノ中デ最モ賃貸價格ノ高イ所ノ桑
圍、桑ヲ基トシテヤッテ居ル養蠶、ソレカラ
作リ出ス繭ノ價格ハ、今日ドウナッテ居ルカ
ト云フコトハ御承知ノ通リデアリマス、昨
年ノ結果カラ見ルト春蠶ニ於テハ、昨年
ハ二分ノ一三分ノ一、晩秋蠶ノ如キニ至ッ
テハ四分ノ一、五分ノ一ニ値段ガ下ッテ居ル
デハナイカ、養蠶ヲヤッテ居ル者ハ悉ク損失
ヲ招イテ居ルノデアル、桑畑ヲ持ッテ居ル者
ハ悉ク損失ヲ招イテ居ノテ、其後始末ニ借財
ヲ以テシナケレバナラヌ、然ルニ今日ノ經
營難ニ陷シテ居ル時代ニ於テ、借財モ困難デ
アルカラシテ、今日ノ農民ト云フモノハ塗
炭ノ苦ミヲ見テ居ル、田ノ如キニ至リマシ
テハ米ハ昨年ノ半額デハナイカ其半額
デアル田ノ所得ヲ以テ、ドウシテ田カラ利
益ヲ擧ゲラレルカト云フコトニナル、是ガ
營業收益稅デアルナラバ收益ガ減ル、隨テ
經費ヲ引キマスカラ、其殘高タル所ノ收益
ニ課稅スルカラ、經濟界ノ事象ニ應ジテ其
所ニ差別的ナ課稅ノ方法モ出來ルデアリマ
セウガ、是ハ臺帳課稅、臺帳ニ之ヲ揭ゲタ
ル以上ハ十年間ハ挺デモ動カヌト云フモ
ノデアル以上ハ今日臺帳ニ揭ゲル時ニ
十分愼重ナ態度ヲ以テヤラナケレバナラ
又、アナタ方ハ今日ノ豫算ニ於テ行政或ハ
財政ニ於テハ幾多改善スル點ガ多イノデ
アル、行政財政ト云フモノハ、唯歲入缺陷
ヲ補充スルダケノ節約カ繰延ヲヤッタノニ
過ギマセヌ、實際ノ整理ガ出來テ居ラナイ
カラ、財政行政ニ對スル所ノ整理ハ是カラ
ヤル、ソレニ引續イテ稅制ノ大整理、根本
的整理モヤルト云フノデ、行政財政整理調
査會ト云フモノヲ數万圓ノ經費ヲ計上サ
レテ、サウシテ是カラヤラウト云フノデア
ル、サウ云フコトデアルナラバ、何ガ故ニ
此場合ニ、モット十分ニ之ヲ〓究シテ御提案
ニナラナイカ、杜撰ナルモノヲ此處ニ出シ
テ、サウシテ一時遁レヲシヤウナドヽ云フ
ノハ、ソレハ餘リニ國政ニ不忠ナルモノデ
アルト云フコトヲ、再ビ玆ニ繰返サナケレ
バナラヌト私ハ思フノデアリマス
又第三ノ點ニ付テハ、御分リニナラナカツ
タト云フノデアリマスガ、アナタハ能ク此
御提案ニ付テハ御〓究ニナッタコトヽ思フ
ノデアルガ、併シアナタハ既ニ賃貸價格ト
云フモノハ田畑ニ於ケル賃貸價格ト云フ
モノガ、舊法定地價ヨリハ下ッテ居ルト云フ
コトハ御認ニナッタヤウデアル、下ッテ居ル
賃貸價格ヲ、今日マデハ二百圓未滿ノ地價
ノ田畑ヲ持ッテ居ル自作農ハ之ヲ免稅シテ
ヤル、斯ウ云フ建前デアル、ソレデアルカ
ラ今囘ハ是ガ地價ヨリモ下ッタ、賃貸價格ヲ
標準トシテ、二百圓未滿トスルノデアルカ
ラ、同ジ二百圓未滿デモ、法定地價ノ時ノ
二百圓未滿ト、ソレカラ今日ノ賃貸價格ニ
於ケル二百圓未滿トハ、其段別ニ於テ大ナ
ル差等ガアル、ソレデアルカラ其段別ダケ
ハ差引カレル譯デアルカラ、田畑ノ國稅地
租地ト云フモノハ從來ヨリ餘程減シテ居ル
ノデアル、減ッテ居シテモ稅額ニ於テハ其減ッ
タヾケト云フモノハ現レテ居ナイカラシ
テ、私ハ增稅ニ其部分グケナッテ居ルノデハ
ナイカ、詰リ二百圓免稅點ガ、所謂是ハ事
實ニ於テ引上ゲデアル田畑ニ對シテ免稅
點ノ引上ト云フモノヽ其差額ダケハ基礎
數字ノ減シタダケハ、他ノ方法ニ依シテ此計
畫デハ增稅ニナッテ居ルノデアルカナイカ、
ソレダケヲ明瞭ニ承ッテ置キタイ、ソレト
私共只今申上ゲタヤウニ、之ニ對シテ說明
的數字其他ノ根據ハ別ノ機會ニ申上ゲル
ト、斯樣ニ言ッテ居ルノデアリマス(拍手)
〔國務大臣井上準之助君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X00719310127&spkNum=14
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015・井上準之助
○國務大臣(井上準之助君) 御答辯中シマ
ス、宅地ニ於テ增額ニナッタ、增稅デアル、
今日ノ經濟界ニ於テ甚ダ不都合デアルト云
フ前ノ問ト、今度ノ御問ノ三倍八割デ止メ
マシタト云フコトハ是ハ何モ他ニ理窟ハ
アリマセヌ、要スルニナダラカニ、餘リ急
激ニ-納稅者ニ負擔ガ急激ニ殖エルモノ
ヲ或ル程度マデ止メタト云フ一ツノ-三
倍八割ト云フモノハ一種ノ腰ダメデアリマ
ス、何モ他ニ道理ハナイノデアリマス、併
ナガラ高橋君ノ言ハレル、土地臺帳ニ記錄
シタ以上ハ、十年間變ラヌヂヤナイカト斯
ウ言ハレマスガ、御承知ノ如ク今度ノ地租
法ハ十年每ニ之ヲ調査致シマス、今度ノハ
昭和三年カラ實行スベキ筈ノヲ、今日マデ
延ビテ居リマシタノデアリマスカラ、第
囘ノ調査ハ繰上ゲマシテ、昭和十三年ニ再
ビ賃貸價格ノ調査ヲスル積リデアリマス、
從來數十年間其儘ニ放ッタラカシテ不公
正ナル負擔ヲシテ居ヲタモノヨリカ、其點
ニ於テハ餘程改正サレルコトヽ考ヘテ居リ
マス(拍手)
ソレカラ只今宅地租ニ於テ殖エマシタコ
トニ付テ御話ガアリマシタガ、大體申シマ
スト大市街ニ於テ殖エテ居リマス五百万
圓ノモノガ殖エテ居リマスノデ、大體言ヒ
マスト、殆ド各縣ヲ通ジテ大市街ノナイ所
ハ減シテ居リマス、一例ヲ申シマスト、五
百万圓ノ殖エマシタノハ東京府、大阪府、
京都府、兵庫縣、愛知縣、ソレカラ福岡縣
ト云フノガ殖エテ居ル重ナルモノデアリマ
シテ、後ハ殖エマシテモ極ク僅カデアッテ、
大多數ハズット減ジテ居ルノデアリマス
ソレカラ第二ノ御問ハ能ク分リマシタ、
從來ノ地價ト賃貸價格ノ差ハ丁度其差ガ
八割四分ニナリマス、隨テ今度ノ賃貸價格
デ小作ノ免稅點ヲ二百圓ニシテ置キマスト
云フコトハ元ノ地價デソレヲ取ッテ見マ
スト、二百四十圓ニ免稅點ヲ引上ゲタノト
同ジ割合ニナリマス、ソレデスカラ二百圓
ニ免稅點ヲ置キマシテモ、元ノ地價ノ割合
カラ言フト、大分免稅サレル人モ殖エ、今
高橋君ノ言ハレタ通リノ事情ニナッテ居ル
次第デゴザイマス(拍手)
〔高橋熊次郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X00719310127&spkNum=15
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016・高橋熊次郎
○高橋熊次郞君 只今免稅點ノ引上ゲニ付
テ缺陷ト申シマスルカ、稅ノ不足ト云フモ
ノハ他ニ補充シタト申サレタノデアリマ
ス、ソレ等ニ付テノ論議ハ他日ニ之ヲ保留
シテ置キマス、而シテ如何ニモ今マデノ御
說明ヲ承ッテ居ルト云フト、農村ハ疲弊シ
テ居ルカラ、幾分ナリ其方ニ同情ヲシテ、
地租法ニ依ッテ、今日改正ヲヤル此機會ニ
於テ、農民ノ負擔ヲ輕減シテヤッテ、自作
農ニ對シテ負擔ノ輕減ヲ圖ッタヤウニ思ハ
レルガ一面先程內務大臣ノ御說明ニ依ル
ト云フト、地方財源ト云フモノハ減ラス譯
ニハ行カナイ、ソレデアルカラ地方財源ヲ
減ジナイヤウニ其課率ヲ上ゲタト、斯ウ言ッ
テ居ラレル、後ノ方ノ言葉デハ、餘リ上ゲ
過ギテハイケナイカラ、ソコニ於テハ手加
減ヲスル、制限ヲ付シテアルナドト云フコ
トヲ言ハレマシタガ、片方デ與ヘラレテ、
片方デ取上ゲラレテ、ソレデ何ガ農民ガ生
キラレル、殊ニ今日ハ地方ノ負擔ハ非常ニ
重イノデアリマス、私ハ一面ニ於テ此課稅
ト云フモノハ地方ニ於テ地租ニ於テハ非
常ニ重イ、卽チ地方ニ於ケル所ノ地租附加
稅ト云フモノハ本稅ノ、今マデニ依ルト云
フト十七割ニナッテ居ルダラウト思フノデ
アリマス、一倍七割ニモ達シテ居ルノデア
リマス、ソレ〓〓ノ制限ハ設ケテアリマス
ルケレドモ、大藏內務兩大臣ノ認可サヘ經
レバ、此制限率ト云フモノヲ割ッテ、サウ
シテソレ〓〓ノ增加率ヲ設ケルコトガ出來
ルノデアリマス、其町村竝ニ府縣ノ財政ノ
非常ニ苦シイ立場カラ、此制限ト云フモノ
ガ乘越サレテ、サウシテ今日ハ非常ナル重
イ附加稅ヲ受ケテ居ルノデアリマス、ソレ
デアリマスカラ一面地方ニ於テハ國稅ニ於
テ-所謂國稅本稅ニ於テ減ゼラレタル所
ハ地方稅ニ他ニ財源ガ無ケレバソレヲ增
稅シテ、補充シテ行カナケレバナラヌ、詰
リ增稅ト云フ語弊ガアリマセウガ、課率ヲ
增シテ行カナケレバナラヌト云フ建前ニ
ナッテ居ルノデアリマス、又今國稅ノ減シタ
ト云フコトニナルナラバ、ソレダケハ他ノ
方法ニ依ッテ地方ハ財源ヲ求メナケレバ相
成ラヌト私ハ考ヘテ居ルノデアリマス、殊
ニ私ハ他ノ同僚諸君カラ、ソレ〓〓御質問
ガアラウト思ヒマスカラ、私ハ他ノ砂糖消
費稅デアルトカ、織物消費稅デアルトカ、
或ハ營業收益稅デアルトカ云フヤウナコト
ニ付テハ、私ハ幾多ノ疑義ヲ挾ンデ居リマ
スルガ、是ハ他ノ同僚諸君ニ讓リマス、併
ナガラ序ニ申上ゲルノデアリマスルガ、府
縣ノ營業收益稅ト云フモノガ、本稅ニ於テ
減ジタヾケト云フモノハ、府縣稅デ以テ其
稅源ガ無クナルノデアリマスカラ課率ヲ引
上ゲテサウシテ附加稅ト云フモノヲ餘計
取ラナケレバナラヌカ、或ハソレダケハ免
稅點ガ引下ガッタト同ジヤウナ效果ニナリ
マスルカラ、ソレダケト云フモノハ地方
ノ-地方稅ノ營業稅ト云フモノガ餘計ニ
ナルト云フコトニ相成ッテ、ヤハリ營業
者ト云フモノハ地方稅デ餘計取ラレルカ、
國稅デ餘計取ラレルカ、所謂同ジデ、其間
ト云フモノハ僅カナ差デアル、ソレデ財界
ノ非常ニ混亂シタル場合ニ於テ、左樣ナル
所ノ複雜シタル玆ニ稅制ヲ又拵上ゲルナド
ト云フコトハ何ノ利益ガアルカト云フコト
ヲ私ハ考ヘルノデアル、モット事務ト云フモ
ノハ簡便、簡素ニ致シテコソ、此時局ヲ乘
切ル第一義デアルダラウト思フ、ソレガヤ
ハリ緊縮政策ニ適フコトデアル、事務ヲ複
雜ニシテ、サウシテ分ラナクシテ置イテ、
サウシテ事務ノ簡捷ヲ圖ルナドト云フヤウ
ナコトハ餘リ面白クナカラウト思フ、此
課率ヲ變ヘルトカ、或ハ稅額ヲ變ヘルト云
フコトハ是ハ地方團體ニ於テドレダケ迷
惑致シマスカ、殊ニデス、此一方ニ於キマ
シテハ、先程說明ヲ承ッテ居ルト云フト、此
課率ト云フモノハ激減ヲ防グ爲ニ三倍八割
ト云フモノニ稅額ヲ止メタノデアッテ、之ヲ
限度トシテ賃貸價格ヲ定メタト云フヤウナ
御意見モアリマシタガ、ソレハ事務ノ上カ
ラ言ッタラ御尤ノ點モ或ハアリマセウ、併ナ
ガラ一旦之ガ公平ダト云。テ委員會ヲ造リ、
委員ガ出テ調査シタモノヲ、國民ハ是ハ課
稅標準ニナルト思ッテ、公正ナル課稅ノ標準
ダト思タタノノ、後カラ法律ヲ拵ヘテ、ソ
レヲ引繰返シテシマウト云フコトハ課稅
ノ公正ノ觀念ヲ裏切ル大ナルモノデハナイ
カト私共ハ思フ、ソレナラバ斯ウ云フコト
ヲ豫メ考ヘテ置カナケレバナラナカッタノ
デハナイカ、サウ云フコトヲ法律ニモ謠ッ
テ置カズシテ、直チニ其結果ガ國民ガ努力
シテ拵上ゲタ所ノ此標準ト云フモノヲ、唯
法律一片デ、サウシナケレバ事務ガ圓滑ニ
行カナイト云フヤウナコトカラシテ、急激
ナル增加ヲ來スト云フコトハ宜シクナイト
云フコト一點張デ、玆ニ三倍八割ニ止メル
ト云フヤウナコトヲ御決メニナルト云フコ
トハ、非常ニ是ハ間違クタコトデハナイカ、
斯ウ云フ工合ニ私ハ考へルノデス、然ルニ
後カラ來タ法律ヲ以テ、前ニキマッタモノヲ
一々引繰返スト云フヤウナコトハ、非常ニ
間違ッタ考ヲ現內閣ノ諸公ガ持タレルノデ
ハナイカ、斯ウ云フ間違タ考ヲ持タレルカ
ラ、豫算ニ計上シタ收入ガ少ナクナッタラ、
後デ事業ヲ減ラシテ辻褄ヲ合セルノデアル
ナドヽ云フコトヲ、始終考ヘナケレバナラ
ヌダラウト、斯樣ニ考ヘルノデアル、ソレ
デアリマスカラ一旦定メタコト、國民ノ手
ニ依ッテ、或ハ國民ノ前ニ於テ定メタルコト
ヲ、後ノ法律デ之ヲ變更スルト云フコトハ
何事デアルカ、同ジ結果ヲ得テモ、是ハ基
本ニナル、臺帳ニ釘付ニサレルノデアル、只
今ハ十年ノモノヲ、今囘ハ昭和十三年ニ改
正ヲスル考ダト云フガ、ソレハ五十步百步
デアル、二年カ三年ノ違ヒデアル併ナガ
ラ臺帳ニ釘付ケルナラバ、是ハ公正デアル、
隣地トノ比較ハ是デアルト云ッテ公正ニ調
査シタル賃貸價格デアッタナラバ、其通リニ
臺帳ニ揭ゲテヤレバ宜イ、別ニ法律ニ條項ヲ
設ケテ、是ハ何條ニ依ル控除額デアルト書イ
テ差引殘額ヲ土地臺帳ニ表ハシテヤルト云フ
コトニナルト宜シイデハナイカ、折角公正デア
ルトシテ拵ヘタモノガ、唯一片ノ急激ナル變
化ヲ來スノヲ、此處デ以テ止メルトカ、或ハ
事務ノ煩瑣ヲ避ケル爲ニシタナドト云フヤウ
ナ僅カナ理由デ以テ、此公正ダト云フ所ノ賃
貸價格ト云フモノヲ、之ヲ打チ壞シテ行ク
ト云フコトハ、公正ノ觀念ヲ著シク裏切ル
モノデナイカ、課稅標準ト云フモノハソ
ンナ生ヤサシイモノヂヤナイ、非常ニ嚴格
ニ論ズベキモノヂヤナイカ、其課稅標準、ヲ
徒ラニ後カラ法律ヲ作ッテ、サウシテガチヤ
ガチヤ搔廻シテシマウト云フコトニナッタ
ナラバ、當初地方ノ稅務官吏ナリ、或ハ賃貸
價格調査委員ナリガ、折角懸命デ調査シテ、
サウシテ不公平ノ成ベク少ナイヤウニ執ツ
タ盡力ト云フモノハ水泡ニ歸シテシマウ
デハナイカ、斯ウ云フコトニ對シテ私ハ大
ナル疑問ヲ挾ンデ居ルノデアリマスル、是等
ノコトハ事稅制ニ關シテ居リマスルガー
殊ニ數字ノ伴フ問題デアリマスルカラ、數
字ヲ此處デ揭ゲ、或ハ吾々ノ今日マデ知ル
ヲ得ザル卽チ政府ガ未ダ世ノ中ニ發表セ
ラレザル所ノ、色々ナル數字ガアルダラウ
ト思フノデアリマスルカラ、ソレ等ノ基礎
數字ナドノ關係ノ事項ニ付テハ、吾々ハ委
員會ヲ通シテ承知ヲ致シ、之ニ付テ吾々ノ
意見ヲ論議シヤウト、斯樣ニ考ヘテ居リマ
スルガ、今申上ゲタ簡單ナ質問デアリマス
ルカラシテ、之ニ付テハ······併ナガラ私ノ
意見トシテハ是ガ根幹ヲ成スモノデアリマ
スカラ、明快ナル御答辯ヲ內務大臣竝ニ大
藏大臣ニ煩シテ、私ハ今日ノ質問ヲ打切ル
積リデアリマス
〔國務大臣安達謙藏君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X00719310127&spkNum=16
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017・安達謙藏
○國務大臣(安達謙藏君) 御答致シマスガ、
此地方ノ方ハ大體ニ於キマシテ、今度國稅
ガ減ル爲ニ、其影響ガ地方ノ附加稅ニ及ビマ
シテハ地方財政ノ基礎ニ動搖ヲ來シマス
カラ、ソレデ國稅ノ方ハ減ジテモ、其附加稅
ハ元ノ標準ノ通リノ數字ヲ維持シテ行カナ
ケレバナラヌ、サウ云フ考カラ地租及營業
收益稅ハ減ジテモ、地租附加稅、營業稅等
ハ地方へ大體ニ於テ變更ヲ及ボサナイヤウ
ナコトニシテ、此地方ノ稅ノ今日ノ狀態ヲ
維持シヨウト考ヘテ居リマス、ソレデ地方
ノ附加稅ノ高イト云フコトモ、大體ニ於テ
承知シテ居リマスケレドモガ、此負擔ヲ輕
減スルト云フコトハ、是ハ別問題ト考ヘル、
今日是ハ國稅ヲ減ズル爲ノ案デアリマスル
カラ、地方負擔ノ輕減ニ付キマシテハ、又
別ノ方法デ考ヘナケレバナラヌト大體ニ於
テ考ヘテ居リマス(拍手)
〔加藤鐐五郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X00719310127&spkNum=17
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018・加藤鐐五郎
○加藤鐐五郞君 私ハ此場合極ク大綱ニ於
テ五六ノ質疑ヲ致シマシテ、大藏大臣ノ御
答辯ヲ得タイト思フ者デアリマス、先ヅ第
一ニ伺ヒタイト思ヒマスルコトハ倫敦ニ
於ケル軍縮會議ノ當時ニ於テ、非常ニ宣傳
ヲ大ニサレテ、國民ノ負擔輕減ト云フコト
ヲ申サレタノデアリマスルガ、只今玆ニ提
案サレタ其額ハ當時ノ宣傳ト比較致シマ
シテ頗ル輕少デアルノデアリマス(拍手)ソ
レ等ニ對シテハ如何ナル感ジヲ持タレル
カ、本當カラ申シマスレバ、何ノ顏バセヲ
以テ此議會ニ斯樣ナ輕少ナル減額案ヲ出シ
テ見ユルコトガ出來ルカト、斯ウ思フノデ
アリマス、卽チ減額案ハ御承知ノ如ク保留
財源五億八千万圓ノ中デ、僅ニ四分ノ一位
ノ一億三千四百万圓、補充ノ方ニハ殆ド四
分ノ三ヲ持ッテ行"テシマッタト云フ有樣デアル
ノデアリマス、殊ニ我國ノ最初ノ三大原則ヲ
主張致シマシタナラバ、維持費ニ於テモ頗
ル助カッタデアルニ拘ラズ、此補充計畫ヲ
サレタガ爲ニ、維持費ガ頗ル大ニナッタ、
世間ハ軍艦ハ少ナクナッテ軍縮ニナッタケレ
ドモ、經費ニ於テハ軍擴ニナッテ居ル、斯ウ
申シテ居ルノデゴザイマス(拍手)斯樣ナ僅カ
ナ-吾々國民ガ辛抱致シマシタノハ若
槻全權モ此軍縮會議ニ於テハ遺憾デアッタ、
不滿足デアッタ、斯ウ國民モ左樣ニ信ジテ居
リマスルガ、唯此國民負擔ノ輕減ト云フコ
トガ、保留財源ガ五億八百万圓モアルカラ、
半分若クハソレ以上モアルデアラウト云フ
コトヲ、政府ノ宣傳ニ迷ハサレテ信ジタノ
デアリマスルガ、此處ニ出サレタルモノハ
僅ニ一億三千四百万圓位デアルノデアル
之ヲドウ思ハレルカ、曩キノ宣傳ニ對シテ
大藏大臣ハドウ考ヘルノデアルカ、私ハ眞
面目ニ是ハ良心ニ問フテ御答辯ヲ煩ハシタ
イト思フノデアリマス(拍手)
第二ニ私ガ伺ヒタイト思ヒマスルコト
ハ今囘ノ減額ハ軍縮會議ノ結果ニ因ッテ
居ル減額デアリマスルガ、此以外ハ現内閣
ハ最早〓稅ト云フコトハサレルカドウカト
云フコトデアルノデアリマス、民政黨ト云
ヘバ負擔輕減-國民負擔ノ輕減ト終始演
說サレタフデアル、其民政黨ハ此今囘ノ軍
縮以外ニハモウ後ハ減稅ト云フモノハ提
案サレル考ハアルカナイカ、此絕對多數ヲ
持ッテ居ラレル所ノ政府ニ於テ、多年ノ此主
張ヲ實現セナケレバナラヌ義務ガアルノデ
アル然ルニソレハ、只今ハ最早知ラヌ顏
ヲシテ居ラレル國民負擔ノ輕減ト云フコ
トハ何モ知ラヌ顏ヲシテ居ラレル、民政黨
ハ昨今私ノ頗ル奇異ニ感ズルコトハ、昨
年マデ消費節約、消費節約、大臣ガ此處ヘ
出レバ何デモ消費節約、消費節約ト言ッテ
居ヲタ、緊縮セヨ、緊縮セヨト「ラヂオ」マデ
モ盛ニ宣傳サレタ、然ルニ今年ハ消費節約
トカト云フコトハ一言モ言ハヌ、ケロリト
忘レテシマッテ居ル、今ハ世界ノ不景氣一
點張デ言ッテ居ル、是モ何レハ廢業サレル
デアリマセウガ、斯ウ云フ國民負擔ノ輕減
ト云フコトヲ言ッテ居ラレルガ、是ハ御忘レ
ニナッタカ、斯ウ云フ看板ハモウ御撤囘ニ
ナッタカ、斯ウ云フ主張ハ御廢業ニナッタカ
ドウカ、私ガ玆ニ尋ネルノハ軍縮會議ノ
此減稅以外ニ、更ニ政府ハ多年民政黨ガ主
張シテ居クタ所ノ國民負擔ノ輕減ト云フコ
トヲ更ニ考ヘテ居ラレルカドウカ、斯ウ云フ
コトヲ御尋致シタイト思フノデアル(拍手)
ソレカラ第三ニ御尋致シタイト云フコト
ハ此減稅ト云フモノハ唯單ニ稅率ヲ少
シク減ラスコトガ本當デアルカ實際ノ此
實生活ニ對シテ負擔ヲ輕減サレルコトガ減
稅ノ意味デアルカドウカト云フコトデアル
ノデアル、今囘ハ百分ノ「コンマ」ドレダケ
ヲ下ゲタ、何ノ稅率ヲドレダケニ、「コンマ」
二ニシタトカ、三ニシタトカ、顯微鏡デ見
ナケレバ分ラヌ所ノ此僅カナル稅率ヲ下ゲ
ラレタノデアリマスルガ、唯單ニ稅率ヲ下
ゲタト云フコトガ、國民負擔ノ輕減ニナル
カドウカ、國民ノ實際ノ生活狀態ニ卽シテ、
是ガ輕クナッタ時ニ減稅デアル、率バカリノ
問題ヲ以テ減稅々々ト言ヒ得ルコトガ出來
ルカドウカ、私ハ之ニ付テモ言ハザルヲ得
ヌコトガアル、民政黨ハ何時モ形式一點張
ノ議論ヲサレル、表ハ洵ニ宜イヤウダガ、
實ハアベコベニナッテ居ル、今度ノ豫算ノ如
キハ如何デアルノデアリマスカ、十四億四
千幾ラノ豫算、昭和四年ノ政友會ノ豫算ヨ
リモ三億二千万圓トカ減シテ居ル、緊縮シテ
居ルト云フコトヲ、臨時代理モ大藏大臣モ屢〓、
此處デ演說サレタ、成程此額ハ三億減ッテ
居ルカモ知レマセヌガ、併ナガラ此數字ヲ
以テダ、數字ガ十七億ノモノガ十四億ニナツ
タガ故ニ、是ガ縮小セル豫算デアルトカ、
緊縮豫算デアルトカ、左樣ナコトガ言ヘタ
モノデハナイ、國民ノ實際ノ收入所得如何、
懷ロ工合ヨリ見テ、此豫算ガ緊縮セル豫算
カドウカト云フコトヲ考ヘナケレバナラヌ
ノデアル、之ヲ何ト大藏大臣ハ見ラレルノ
デアルノデアリマスルカ(拍手)如何ニモ此
豫算ヲ作ッタコトヲ手柄顏シテ言ハレルノ
デアリマスルガ、何モ此豫算ノ額ガ少
ク-總豫算ノ額ガ少クナッタト云フコトガ、
褒ムベキコトデハナイ、國民ノ懷ロ工合カラ
考ヘナケレバナラヌ、例ヘバ月ニ八十圓ノ
收入ガアル者ガ百圓ノ豫算ヲ作ッタ、一方分
於テ五百圓月ニ收入ノアル者ガ三百圓ノ豫
算ヲ作ッタ、額カラ申シマスレバ八十圓ノ豫
算ヨリ三百圓ノ豫算ヲ作ッタモノガ厖大ノ
ヤウデアルガ、實質ハドウダ、此懷ロノ立
場カラ云ッタナラバ、是ハドチラガ厖大ナ豫
算デアルカ、ドチラガ放漫ノ豫算デアル
カト言ハナケレバナラヌノデアル(拍手)大藏
大臣ハ額ガ少クナッタト云フコトヲ以テ誇リ
トサレルノデアリマス、額ノ問題デハナイ、
率ノ問題デハナイ、數字ノ問題デナクシテ、
國民ノ實收入カラ割出サナケレバナラヌノ
デアル政府ハ今度ノ豫算ナドデモ、頻リ
ニ緊縮豫算ト云ッテ誇リ氣ニ、民政黨ノ諸君
モ、我黨ガヤレバ斯樣ニ緊縮豫算ヲ作ッタ
ト、斯ウ言ハレルノデアリマスルガダ、私
ヲ以テ評シマスレバ、實生活ニ立ッタ立場
カラ言ヘバ、今度ノ豫算ノ如キハ緊縮豫算
デハナイ、驚クベキ大膨脹豫算ト評スルノ
デアリマス、大藏大臣ハ之ヲ何ト見ラレル
カト聞カザルヲ得ヌ
今囘ノ減稅デモサウデアリマス、率ヲ少
シバカリ減ラシテ、是ガ何ノ役ニ立ツカ、國
民ノ實生活ニ對シテ此率ヲ減ラシタノガ何
デアルカ、國民ハコンナ稅率ヲ少シバカリ
減ラシテ貰フヨリモ、先決問題ガアル何
ノ先決問題カ、吾々ハ收入ヲ今少シク殖シ
テ貰ヒタイ、現內閣ノ政策ニ依テ、此國民
ハ非常ニ收入ガ減ッテ來タコトハ、今更私ガ
彼此レ申スマデモナイコトデアル、國民ハ
收入ヲ殖ヤセト言ハナイ、セメテ今マデニ
近キ收入ガアルヤウニ政策ヲ執ッテ貰ヒタ
イ、收入ヲ少クシテ置イテ率ヲ少シバカ
リ減ラシテ、是デ以テ減稅ヲシタ、減稅ヲ
シタ、聽イテ呆レルデハアリマセスカ(拍
手)例ヘバ今囘ノ此減税ニ於キマシテモ、今
年ノ如キハドウデアルカ、僅ニ九百万圓、
之ヲ細カク勘定致ツマシタナラバドウ云フ
コトニナルカ、國民一人一年ニマア十錢位
ノ減稅ニナルデアリマセウ、是モナラヌヨ
リハ宜イカモ知レマセヌガダ、十錢ナラバ
一箇月一人ニ八厘カ九厘、一日ニスルトド
ウナルカコンナ通貨ハ日本ニ無イ程微少
ナル減稅、之ヲ以テ減稅シタ、.減稅シタ、
聽イテ呆レルデアリマセヌカ、平年度ニ於
テ四五千万圓モ減稅ヲスルト云ッテ居ル、是
モ一人前國民ニ宛テヽ見マスレバ一年ニ三
十錢カ二十何錢位ノ減稅ニナル、一箇月ニ漸
ク二錢カ三錢ノ減稅、コンナ減稅ハ國民ハシテ
貰ハナクテモ宜シイ、ソレヨリモ收入ヲモウ
少シ增シテ貰フ是ガ本當ノ減稅デアル
サウ云フコトヲ言ハザルヲ得ヌノデアリマ
ス、分ラネバ私ハ言ヒタイ、大キナ火傷ヲ
國民ニサセテ置イテ、膏藥ヲ少シバカリ貼ッ
テ、是デ宜イヤウニ言ッテ居ルノハ何デアル
カ、國民ヲ食へナイヤウニシテ置イテ、「ミ
ルクキヤラメル」一ツヲ吳レテ、是デ腹ガ膨
レルデアラウカ斯ウ云フ減稅デアルデハ
アリマセヌカ、收入ヲ殖ヤスコトヲ考ヘナ
ク、率ヲ僅ニ減ラスコトヲ以テ得々トシテ、
減稅ナドト言ハレル、根本ニ於テ頭ガ違シテ
居ルト謂ハナケレバナラヌ、斯ウ云フ點ニ
付テ私ハ大藏大臣ガモウ少シ明確ニ、唯數字
ヤ率ノ問題デハナイ、是ガ果シテ國民生活
ニ卽シタ減稅ニナルカドウカト云フコトノ御
說明ヲ私ハ願ヒタイト思フノデアリマス
ソレカラモウ一ツ次ニ伺ッテ見タイト思
ヒマスルコトハ斯ウ云フ遣方ヲ致シ、コ
ンナ僅カナ減稅ヲ致シマシタ政府ハ、今ドウ
云フ狀態ニナッテ居ルカ、議會ニ於テハ歲人
ノ見積ガ過大デアル過大デアルト言ハレ
テ居ルノニ對シテ、過大デアリマセヌ豫
算通リ入リマスト言ッテ居ルガ、何時モ入ラ
ナイノデアル、今年モ思フニ歲入ノ見積ガ
過大デアルト云フ事實ハ、何レ適當ナ機會
ニ的確ニ證明サレルノデアリマセウ斯ウ
云フ場合、減債基金ハ使ッテシマッタ、大藏省
證劵ハ限度マデ出シテ更ニ之ヲ殖サナケ
レバナラヌト云ッテ居ル、剩餘金モ使ヒ果シ
テシマッタ、斯ウ云フ窮乏ノ狀態デアリマス
ガ故ニ、必ズヤ現內閣ハ苛斂誅求ヲシテ居
ルニ相違ナイ、收入ノ見積過大デアルト云
フ證據ニハ、今到ル處、全國ニ苛歛誅求ト
云フ怨嗟ノ聲ガ充チテ居ル、大藏大臣ハ之
ヲ何ト見ル是ニ於テ今囘ノ減稅ガ或ハ
織物消費稅ニ於テ百分ノ〇·二トカ、或
〇·三ヲ減ジタ、マルッキリ普通ノ秤デハ掛
ケラレナイ「モルヒネ」デモ量ル秤ニ掛ケル
位ノ僅カノ分量デアル、息ヲスレバ飛ンデ
行クヤウナ分量デアル、是バカシノ分量、
是ハ悉ク稅務官吏ノ手心デヤル所ノ率デゴ
ザイマスルガ故ニ、是バカシノ率ヲ減ジタ
所ガ、少シク手心ヲ加ヘタナラバ苛歛誅求
ニナル今デスラ苛歛誅求デアル、是ハ必
ズヤ政府ノ意思ヲ酌ンデハドウシテモ彼
等稅務官吏ハ稅金ヲ取上ゲヨウト致スノデ
アリマスルガ故ニ、勢ヒ苛歛誅求ニナルコ
トハ當然デアルノデアル、ソコデ私ハ大藏
大臣ニ聞キタイ、今苛斂誅求ト云フ怨嗟ノ
聲ガ滿チテ居ル、之ニ戒飭ヲ與ヘテ居ルカ、
又將來ニ向シテモ此稅率ヲ減ジテモ苛歛誅
求スルコト勿レ、斯ウ戒飭ヲ十分ニ與ヘル、
見積ガ少クナッテモ是ハ辛抱スル、苛歛誅求
ヲシチヤナラヌ、斯ウ云フ工合ニマデモ言
フ勇氣ガアルカドウカ、是モ私ハ伺ッテ置キ
タイト思フノデアル
ソレカラ今囘ノ此減稅ハ、消費稅ノ方ガ
少イ、民政黨モ今ノ此課稅ノ方針ガ、總テ
消費稅ニ對シテ課稅ヲ少クシテ、消費稅ヲ
少クスルコトガ社會政策ニナッテ居ルト云
フコトハ申スマデモナイコトデアル、民政
黨ノ諸君モ屢〓是ハ言フテ居ルノデアリマス
ルガ、今囘ハ是ハドウナッテ居ルカ、今囘ノ
政府ノ提案サレタ豫算デ見マスト、細カイ
勘定ハ私ハマダ分リマセヌガ、思フニ消費
稅ガ六割半位デ、直接稅ガ三割半位ノ割合
デアリマセウガ今囘ノ此減稅ハ平年度
二千五百万圓減稅スルト致シマシテモ大
マカナ勘定カラ云ヘバ、一千万圓足ラズガ
砂糖ト織物ノ消費稅ニ向。シテ居リ、地租營業
收益稅ニ於テ千五百万圓モ取ッテ居ルノデ
アリマシテ、益、こ是ハ社會政策ニ相反スルド
云フコトニナリハ致ツマセヌカ、是ハ消費
稅ノ方ヲ多クヤラナキヤナラヌノデアル、然
ルニ聞ク所ニ依レバ、初メ地租ト營業收益
稅ダケ減稅ヲスル積リデ居ッタガ、是ダケデ
ハ迚モ世間ニ向ッテ體裁ガ惡イ、マア仕方ガ
ナイカラ是モ混ゼテヤレト云フヤウナ、不
〓心ナル冷淡ナル態度デアルト承ッタノデ
アリマスルガ、左樣ナルコトデハ、多年唱ヘ
ラレタ此消費稅ノ減稅ヲスルト云フ民政黨
ノ主張ハドウナッタノデアリマスルカ、之ヲ
私ハ大藏大臣カラ伺ヒタイト思フノデア
ル
殊ニ私ガ次ニ御尋シテ見タイト思ヒマス
コトハ、今囘ノ此減稅ハ、殊ニ織物消費稅、
砂糖消費稅ノ如キ、斯ウ云フ消費稅ハ減
稅ヲシタナラバ、消費者ニ直チニ響タモノデ
ナケレバナラヌノデアル、然ルニ是ガ響カ
ズ、瞹昧模糊デアル、思フニ斯ウ云フ消費稅
ヲ取ッテ的確ニ消費者ニ響ク所ノ、政府
ノヤッテ居ラレル例ヘバ煙草デアルトカ何
トカ云フモノヲ放ッテ置イテサウシテ消
費者ニ餘リ響カナイ斯ウ云フ織物消費稅、
或ハ砂糖消費稅ヲ採ラレタト云フコトハド
ウ云フ譯カ斯ウ言ハザルヲ得ナイノデア
ル、例ヘバ砂糖デアリマス、先刻御說明ノ
アリマシタ如ク、一種カラ五種マデアル
其中デ吾々ガ最モ多ク使ッテ居ル砂糖ハ、
例ヘバ三盆白ノ如キモノデアリマシテ、是
ハ四種ニ屬シテ居ルノデアリマスガ、之ヲ
ドレダケ下ゲルカト云フト、百斤ニ付テ漸
ク五十錢バカリ下ゲラレタノデアリマス、
一斤ニ付テハ僅ニ是ノ百分ノ一五厘バカ
リ下ゲラレタ三盆白ハ今如何デアルカ
二十一二錢デアリマセウ、例ヘバ二十二錢
ニ致シマスト云フト、二十二錢ノ中ニ、思
フニ此稅金ハ八錢三厘五毛デアル、其二十
二錢ノ中ニ稅金ノ八錢三厘五毛ガ加ッテ居
ルノデアリマス、而シテ之ニ對シテ今度五
厘ノ稅金ヲ下ゲラレルト云フト、是ガ直チ
ニ轉嫁シテ一般ノ三盆白ガ二十一錢五厘ニ
低下シナケレバナラヌ理窟デアルノデゴザ
イマスルガ、果シテ一般ノ砂糖ガ此五厘ヲ
引イタ値デ賣出サレルデアリマセウカ、是
ハ必ズ斯ウ云フモノハ消費稅ヲ下ゲテモ無
意味ニ相成ル、此三盆白ナラ三盆白ノ賣價
ト云フモノハ、消費稅ヲ下ゲタ、今度ノ滅
稅ヲシタト云フコトニ依ッテ、吾々國民ノ
負擔ガ何モ輕クナルモノデハナイノデアリ
マシテ、砂糖ノ製造業者ノ普通ノ相場ニ依ッ
テ左右サレルモノデアリマスガ故ニ、斯樣ナ
立場カラ申上ゲマスレバ、今囘ノ此消費稅
ノ減稅ト云フモノハ無意味ナモノデアル
誰ガ喜ブカ、砂糖製造業者ガ喜ブノミデアツ
テ國民ハ少シモ喜バナイ、織物モ亦然リ
ト謂ハナケレバナラヌ、之ヲ的確ナル政
府ガヤッテ居ラレル例へバ煙草-私ハ煙
草悉クトハ申シマセヌ、是ハ嗜好品デアル
トカ、贅澤品デアルトカ云フ譯デハナイ、安
イ煙草ハ必需品トモ言ヒ得ル、之ヲナゼ御下
ゲニナラヌ、之ヲ御下ゲニナッタナラバ
的確ニ消費者ニ對シテ三厘デモ五厘デモ、
明確ニ減稅ニナルデハアリマセヌカサウ
云フ事ハ放ッテ置イテ、何ニモナラヌ資本
家に製造業者ヲ儲ケサセテ、國民ト沒交渉
ナル消費稅ヲ、減稅シタ減稅シタト言フ
テ何ニナルノデアリセマウカ、私ハ寧ロコ
ンナ事ハ廢メテシマッテー-此平年度ニ於
テ砂糖ハ何デモ四百万圓位減稅ニナル、是
ハ砂糖屋ダケガ喜ブダケデアル斯ウ云フ金
ヲ以テ-今少シク內務大臣ガ斯ウ云フ事
柄ニ付テ知識ヲ御持チデアッテ大藏大臣
ニドン〓〓話サレヽバ、救護法ノ四百万圓
ハ砂糖業者ヲ儲ケサス金ヲ以テ支辨シ得
テ、此救護法ハ實現スルデハナイカ、私ハ
內務大臣ニモ此事ヲ伺ッテ見タイト思フノ
デアリマス
ソレカラ先刻高橋君ト大藏大臣トノ間ニ
質問應答ガゴザイマシタガ、都會ノ宅地ト
云フモノハ思フニ今度ノ賃貸價格ノ標準
ニ依リマシテ或ハ十倍、二十倍ノ課稅ニナ
ルデアリマセウ、ソレヲ只今聽イテ居リマ
スレバ、政府ハ一時ニ多クナルノハ抑ヘ
テ、三倍八割ダケデ抑ヘルト、斯ウ云フ御
說明ガアッタノデアリマシテ、成程此案ニ
モ出テ居ルノデアリマス、然ラバ政府ハ都
市ノ住宅地ノ者ニ對シテハ四倍マデハ增
稅ヲスルゾト云フコトヲ明確ニ言ッテ居ラ
レルノデアル一般ガ不景氣ニナッテ收
入減ニ苦ンデ居ルノニ、都市若クハ町ナド
ノ宅地ノモノハ、直チニ四倍マデ增稅スル、
一面ニ於テ減稅々々ト言ヒ直チニ四倍ニ
增稅スル、斯樣ニ窮屈ナル、例ヘバ一割增
稅スルトカ、五割增稅スルトカ一倍ノ增
稅ヲスルト云フナラバ聞エルガ、政府自
ラ大藏大臣自ラガ四倍マデハ增稅ヲス
ル、斯樣ナ急激ナル增稅ラシ一面ニ於テ
減稅々々ト言ヒナガラ一面ニ於テ四倍ノ
增稅ヲスルト言ッテ居ル、是ハ何タル矛盾
デアルノデアリマセウカ、斯ノ如キ急激ナ
ル增稅ガ、公正ナル減稅ノ方法デアルト只
今仰セラレタノデアリマスガ、果シテ、之
ニ一致スルカドウデアルカト云フコトモ、
私ハ伺シテ見タイト思フノデアリマス
モウ一ツ最後ニ伺シテ見タイト思ヒマス
ルコトハ營業收益稅ノコトデアル、之ヲ
ッ、斯樣ナ改正案ヲ出サレルナラバ、モ
ウ少シ進ンデ之ヲ根本的ニ地租法案ノヤウ
ニ改正スル意思ハナイカト云フコトデア
ル營業收益稅ハ濱口首相ガ嘗テ大藏大
臣ノ時代ニ出サレタ時ニ、此議會ヲ通過サ
レタノデアリマスガ、是ハ從來ノ外形標準
デハ不公平デアル、ドレダケ賣(シテモ例へ
バ十万圓ノ賣上ヲシテ損ヲシタ者ニモ、十
万圓デ課ケル、一面ニ於テ二万圓ノ賣上ヲシ
テ儲ッタ者ニモ二万圓ト云フ額ニ課ケルカ
ラ不公平デアル、仍テ是ハ收益ニ課稅ヲシ
ナケレバナラナイト云フノデ、營業收益稅
ト云フノデアルガ、如何ニモ名前ハ立派デ
アルガ、今モ外形標準デ事實ハヤッテ居ルデ
ハアリマセヌカ、殊ニ從來ヨリモ外形標
準ノヤリ方ガ亂暴デ、收益ト云フコトハ見
ラレナイ外形標準デヤッテ居ル、從來ヨリ
惡稅デアルノデアリマス(拍手)是ナドニ對
シマシテモ、今度ノ減稅ガヤレ百分ノ〇·三
デアリマスルカ、〇·二デアリマスルカ、目
ニモ見エナイ程ノ減稅ヲシテ、斯ウ得々ト
言ハレルノデアリマス、併ナガラ是ハ手心
デ行クノデアリマス、コンナ百分ノ〇·二
トカ三トカノ減稅ハ、シテモセヌデモ同ジ
事デアルノデアリマシテ、出ス方カラ言ヘ
バ減稅シテ貰ハナクテモ同ジ事デアルノデ
アリマス、勿論減稅シタナラバ、百分ノ〇·二
トカ三デモ減稅ト云フコトニナルカモ知
レマセヌガ、ソレヨリモ此營業收益稅ノ
本當ノ收益ヲ見出ス方法ヲ考ヘラレルカ、
然ラズンバ之ヲ根本的ニ改メナケレバナリ
マセヌ、只今營業收益稅ハ都市ニ於テハド
ウ云フ狀態デアルカ、大キイ商賣人ハ合法
的ニ脫稅シテ居ッテ、此營業收益稅ニナッタ
ガ爲ニ、大ニ利得ヲ致シテ居ルノデアル
小サイ商工業者ト云フモノハ、此大キイ方
ノ合法的脫稅ノ尻ヲ全部負ッテ居ルノデア
リマシテ、實際ニ於テ都市ノ商工業者ハ
從來ノ營業稅ヨリモ二倍、三倍、甚シキハ
五倍、六倍ノ增稅ニナッテ居ルノデアル、之
ヲ僅カ百分ノ〇·二トカ三ヲ下ゲルト云
フ、モウ少シ租稅ノ公正ヲ圖ルト云フ御建
前デアルナラバ、只今此處デ左樣ナ御案ガ
アルナラバ、之ヲ何トカシナケレバナラヌ
ノデアリマセウガ、之ニ對シテ私ハ大藏大
臣ガ通リ一遍ノ御挨拶デナクシテ、納得ノ
行クヤウニ御說明ヲ願ヒタイノデアル(拍
手)殊ニ私ハ此場合今囘ノ此改正減稅ガ、
千圓以下ノモノニハ率ヲ少クシテ、千圓以
上ノモノニハ率ヲ累進的ニ大キクシタト云
フコトモアッタノデアリマスガ、何故免稅
點ヲ千圓ニ引上ゲラレヌカト云フ事デア
ル、所得稅ハ千二百圓以下ハ免稅、單リ營
業收益稅ハ四百圓以下ハ免稅デアルガ、セ
メテ千圓マデ免稅ニスルノガ當然デアルノ
デハアリマセヌカ、曾テ吾々政友會ハ、經
過的減稅トシテ、一昨年デアリマシタカ
免稅點ヲ千圓ニ引上ゲタ、サウ云フ事ノ否
決サレタル行懸リヨリ、黨略ノ立場カラ、
是ハ當然上グベキモノデアル、上ゲヌデモ
宜イト云フ理窟ヲ私ハ一ツ御示ヲ願ヒタイ
ト思フノデアル要スルニ今囘ノ減稅ト云
フモノハ、名ハ減稅デアッテモ、何モ國民
ハ潤ッテ居ラナイ、唯國民ヲ欺罔シ、唯倫
敦會議ノ結果ニ於テ、減稅々々ト云フ手前
ヲ糊塗スル爲ノ減稅デアル、斯ウ言ハナケ
レバナラヌノデアル(拍手)以上ノ諸點ニ對
シテ私ハ大藏大臣ノ御答辯ヲ煩スノデアリ
マス(拍手)
〔國務大臣井上準之助君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X00719310127&spkNum=18
-
019・井上準之助
○國務大臣(井上準之助君) 加藤君ノ第一
ノ質問ハ減稅額ガ僅少ダ、留保財源ヲ減
稅ニ充當スルト言ヒナガラ、餘リ僅少デハ
ナイカ、斯ウ云フ御非難デアリマシタガ、
海軍ノ補充計畫、卽チ國防ノ充實ヲ保ツ爲
ニ、今日ノ財政ノ狀態ニ於キマシテ、アノ
程度ニ止メルコトハ巳ムヲ得ナカッタ、斯ウ
考ヘマスルト、補充計畫ニアノ金ヲ使ヒ、
其餘剩金ヲ減稅ニ充當シタノデアリマシ
テ、當初カラ度々申上ゲタ如ク、留保財源
ハ五億八百万圓アル、併ナガラソレヲ補充
計畫ニ幾ラ使フカ、減稅ニ幾ラ使フカハ明
言出來マセヌト云フコトヲ度々申シテ居リ
マス(拍手)ソレガ補充計畫ガ定マリ、減稅
ガ定ッテ、玆ニ一億三千四百万圓ノ減稅ヲ實
行シタノデアリマス
尙ホ海軍ノ餘剩財源以外ニ減稅ヲスル考
ガアルカ否カト云フコトデアリマスガ今
日ノ國民經濟ノ狀態カラ言ヒマシテ、財政
ガ許シマスルナラバ、之ニ對スル對策トシ
テハ減稅ガ最モ適當ナルモノト考ヘテ居リ
ママ、併ナガラ今日ハ歲入ガ非常ニ急激ニ
減ジマシテ、ソレニ應ジテ歲出ヲ減額スル
コトサヘモ、非常テ困難ヲ感ズル次第デア
リマスノデ、今日果シテ減稅ガシ得ルヤ否
ヤ、吾々ハ行政整理、財政整理ヲ實行致シ
マシタ上ニ、左樣ナコトヲ考ヘテ見タイト
思ッテ居リマス(拍手)
〔「默レ」ト呼ヒ其他發言スル者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X00719310127&spkNum=19
-
020・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 靜肅ニ願ヒマス-
靜肅ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X00719310127&spkNum=20
-
021・井上準之助
○國務大臣(井上準之助君) 、減稅ハ今
日ノ如ク國民收入ノ減ッタ場合ニ、些少ナ減
稅ヲシテモ、ソレハ減稅ニナラヌカラ、寧
ロ進ンデ國民ノ收入ヲ殖ヤス途ヲ講ジタラ
ドウカト、斯ウ云フ御話デアリマスガ、後
日ニ禍ヲ遺サナイヤウナ經濟政策ヲ行ッテ、
今日ノ經濟狀態ヲ救濟シテ、國民ノ收入ヲ
殖ヤシ得ルヤウナ途ハ吾々不幸ニシテ今
日考出シマセヌノデス(拍手)今日ノ世界ノ
不景氣、今日ノ日本ノ狀態ニ對シテ、國民
ノ收入ヲ直チニ殖ヤシ得ルヤウナ案ガアリ
マシタナラバ、ソレハ直チニ··
〔「止メロ」ト呼ヒ其他發言スル者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X00719310127&spkNum=21
-
022・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 靜肅ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X00719310127&spkNum=22
-
023・井上準之助
○國務大臣(井上準之助君)(續) 左樣ナ案
ハ後年ニ非常ナ禍ヲ遺シマス(拍手)今日加
藤君ハ餘リ減稅額ガ少イカラ、寧ロヤラヌ
方ガ宜カラウト云フ御忠告デアリマスガ
私ハ加藤サンニ申上ゲマスガ、今日ノ如キ
歲入ノ減少致シマス場合ニ、些少タリトモ
減稅ヲ致シマスコトハ、財政上カラ云フト
非常ニ困難ナ立場ニ居リマス(拍手)加藤君
ノ言ハレル如ク、稅ガ今日減レバ、何億減シテ
千、ソレダケ歲出ヲ減ズルヤウナコトガ國
ノ財政上ニ出來マスナラバ、ソレハ非常ニ
結構ナコトデアリマスガ、ドナタデモ苟モ
財政ノ局ニ當ッタ方ハ、國ノ財政ハ左樣ニ便
利至極ニハ參リマセヌ(拍手)何レノ國デモ、
今日ハ英吉利デモ、獨逸デモ、寧ロ增稅ヲ
シテ居リマス、殆ドドノ國デモ皆增稅ヲシ
テ居ルノニ、九百万圓デモ減稅シ得タト云
フコトニハ、私ハ寧ロ同情ヲ願ヒタイ(拍
手)稅務官吏ノ苛歛誅求ノ如キハ、歷代ノ大
藏省デ左樣ナコトハ毛頭致シマセヌ、斯樣
ナ場合ニ一層注意スベキ事項ト考ヘテ居リ
マシテ、御忠告ノ點ハ謹ンデ守リマス、減
稅ガ消費稅ニ少クシテ國稅ニ多イノハドウ
云フ譯カト云フ御話デアリマシタガ、是一
今日ノ經濟界カラ申シマシタナラバ織物
ハ何割ト下ッテ居リマス、砂糖モ同一デアリ
やっ、此物價ノ下ッタ場合ニ、全部ノ減稅ヲ
消費稅バカリニ持ッテ行キマスヨリモ、寧ロ
國稅ニ持ノテ行ッテ地租、營業收益稅ヲ相當
ノ程度デ減稅致シマスコトガ、今日ノ經濟
界、國民ノ狀態ニハ適當ト考ヘタカラデア
リマス(拍手)消費稅ヲ減ジナガラ煙草ノ値
段ヲ何故其儘ニシタカト云フコトハ御尤
ナ御尋デアリマス、若シ假ニ減稅スベキ
金額ガ多クアッタナラバ、必ズ煙草ノ稅モ減
スコトヲ考ヘタデアリマセウ、左樣ニ參ラ
ナイコトヲ遺憾ト考ヘマス
尙ホ留保財源ヲ減稅ニ充當セズニ、何故
ニ救護法ヲヤラナイカ、斯ウ云フコトニ付
キマシテハ、是ハ御意見デアリマスガ、吾々
ハ留保財源ヲ、倫敦軍縮會議ノ結果出テ參
リマシタ餘剩金ハ、國民負擔ノ輕減ヲショ
ウ、斯ウ云フコトヲ考へテ居リマシタノデ、
進ンデ救護法ノ歲出ヲ殖ヤスト、斯ウ云フ
コトニハ吾々ガ考ヘテ居ル考デハナカッタ
ノデアリマス、數十年間ニ地價ノ高低ノ非
常ナ變動ノアッタコトハ、加藤サンモ認メラ
レテ居ラレル、市街宅地ガ非常ニ地價ガ上
リ、賃貸價格モ非常ニ上ッテ居ルコトハ認メ
テ居ラレマス、卽チ吾々カラ考ヘルト、負
擔ノ不公平不公正ガアルト云フコトヲ認メ
テ居ルノデアリマスルガ、所謂國民負擔ノ
不公正ガアルナラバ、一日デモ早ク之ヲ訂
正スルコトガ、私ハ政治ノ要諦ト考へテ居
リマス(拍手)
只今ノ營業收益稅ヲ根本ニ改正スル考ガ
ナイカト云フ御言葉ノ中ニ、外形標準ヲ以テ
大體營業收益稅ノ主トシタル計算ノ基礎ト
スルト云フヤウナ御話デアリマシタガ國
ノ稅ノ營業收益稅ニハ左樣ナコトハ極ク稀
ナコトデアリマシテ府縣ノ營業稅ハ今加
藤サンノ言ハレル通リデアリマスガ、營業
收益稅ハ左樣ナコトハアリマシテモデス
十、純益ガ上ラナイ場合ニ、或ハ賣上高ガ
幾ラトカ云フヤウナコトヲ調査スルコトハ
アリマスガ、餘程少ナイ稀ナ場合デアリマ
スカラ、今ソレダケヲ申上ゲレバ答辯ニナ
ルト考ヘテ居リマス
ソレカラ免稅點引上ヲ何故實行シナカッ
タカト、吾々ハ千圓ト云フ區別ヲ立テヽ
其上ノ稅ト其下ノ稅ヲ變ヘタノデアリマ
ス、卽チ個人ノ收益稅ヲ二·八ノモノヲ、千
圓上ハ二·六ニ變へ、千圓以下ハ二·二ニ變
ヘタノデアリマス、免稅點引上ト殆ド同ジ
ヤウナ意味デ、小營業者ノ稅率ヲ變ヘタノ
デアリマスカラ、大體加藤サンノ言ハレル
コトヽ大シタ差ハナイト考ヘテ居リマス
左樣御承知ヲ願ヒマス
〔加藤鐐五郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X00719310127&spkNum=23
-
024・加藤鐐五郎
○加藤鐐五郞君 私ハ只今大藏大臣ニ質問
スル前ニ當ッテ、一時ノ胡麻化シデナクシ
テ、眞面目ニ御答辯ヲ願ヒタイト存ジテ居
リマシタガ、只今ノ御答辯ハ唯一時ヲ胡麻
化シ、一時ヲ糊塗セントスル所ノ御答辯デ
アル、例ヘバ軍縮會議ニ付テモ何ト言ッタ
カ、現內閣ノ濱口首相ノ如キハ軍縮會議
ノ主ナル目的ハ國民負擔ノ輕減デアルト
言う。只今大藏大臣ハ、額ハ少シモ言ハナ
カッタト言ハレルガ、成程額ハ初メカラ言ヘ
ナイデアリマセウガ、一億八百万圓ノ大部
分ハ、國民負擔ノ輕減ニ振向ケラレルノガ
當然デアル、唯額ヲ言ハナカッタト云フコト
ヲ以テ此場ヲ遁レルト云フコトハ、卑怯千
萬ト謂ハナケレバナラヌ、而モ此軍縮ノ意
義ト云フモノハ國民負擔ノ輕減ヲ主トシ
ナケレバナラヌ、然ルニアベコベニ片方ノ
補充計畫ヲ主トシテ、之ヲ從ト致シテ居ル、
國民ヲ愚弄スルモ甚シキモノト謂ハナケレ
バナラヌ、只今大藏大臣ハ國民ノ收入ヲ
增シタイケレドモ、吾々ハ增ス方法ガナイ
ト言ハレル、成程減稅ヲスルヨリモ、其前
ニ國民ノ收入ヲ增シテ、サウシテ減稅ヲス
ルト云フノガ本當デアルケレドモ、私共ニ
ハ今國民ノ收入ヲ增スコトハ出來マセヌ、
〓ヘテ下サイト云フヤウナ調子デアッタノ
デアル、御〓へ致シマス、國民ノ收入ヲ增
ス方法ハ、現內閣ノ大藏大臣ガ罷メルコト
ニアルノデアル、之ガ一番早途デアル簡
單明瞭デアルノデアリマスガ、之ヲ何ト考
ヘラレル、只今大藏大臣ハ、國民ノ收入ヲ
直チニ增スコトハ、後年度ノ國民ニ禍ヲ貽
スモノデアルカラ、增スコトハ出來ナイト
言ハレタ、後年度ノ禍デハナイ、今此禍ヲ
何ト見テ居ルノデアルカ、國民ガ生活難ニ
苦ンデ居ル、此禍ヲ何ト心得テ居ルノデア
ルカ、百年ノ後々ヨリモ、今逼迫シテ居ル
問題デアリマス、政治ノ要ハ將來ニ向ッテ國
民ノ收入ヲ增スヤウニ考ヘナケレバナラヌ
ノデアルガ、只今國民ノ收入ヲ增ス方法ヲ
講ズレバ、將來ニ禍ヲ貽ストハ何事デアル
カ、私ハ之ヲモウ少シ明確ニ伺ヒタイト思
フノデアル、井上大藏大臣ハ目下ノ財政狀態
ハ頗ル苦イモノデアル、ドウカ加藤サン御
同情ヲ願ヒタイト仰シヤル、左樣ナ同情ヲ
求ムルヨリモ、アナタガ罷メルコトガ一番
之ヲ救フ途デアル、此財政經濟ニ關スルア
ナタノ政策ヲ變ヘルコトガ、一番根本ノ策
デアル、之ヲ何ト心得ラレルカ、政府ハ唯
此減稅ヲスルコトハ額ガ多クナルニ依ッ
テ、財政上困ルト云フコトデアリマス、私
ノ申シタノハ消費稅デアル、消費者ニ向ッテ
的確ニ是ダケ減稅ニナルコトガ轉嫁サレナ
ケレバナラヌ、其轉嫁サレルモノハ政府
ガヤッテ居ル煙草ノ下級品ノ如キヲ五厘デ
モ宜シイ、御下ゲニナルコトガ、是ガ的確
ニ轉嫁サレルモノデアルト申シタノデアル、
濱口首相及此內閣ノ諸君ハ國民ニ對シテ
何時デモ實踐躬行、其範ヲ示スト言ッテ居
ル、示スナラバ先ヅ政府ノヤッテ居ル煙草ヲ
下ゲタラドウカ、此消費稅ヲ輕減スルコト
ガ的確ニ轉嫁サレルコトデハナイカ私ハ
現內閣程奇怪ナ內閣ハナイト思フ、實踐躬
行、範ヲ示スト言ッテ、自ラハ何モヤッテ居
ナイ、例ヘバ此東京ナドハ安達內務大臣
御承知ノコトデアラウト思フガ、風呂屋ト
カ散髪屋ニ値下ゲヲシロ、値下ゲヲシロト
言ッテ居ル、ソレヲ聞カヌト「サーベル」ヲガ
チヤ〓〓サシテ、强制的ニ、事實ハ「サーベ
ル」ノ威力デ以テ値下ヲサシテ居ル、政府ハ
ドウデアルカ、此内閣ハ實踐躬行、範ヲ示
スト言ッテ居ルガ、政府自體ノヤッテ居ルモ
ノハ何モ下ゲテ居ラヌ、郵便、電信、電話、
之ヲ直チニ下ゲロト私ハ言フノデハナイ
ガ、少シモ之ニ付テハ考慮シテ居ラヌ、鐵
道運賃ヲ下ゲルト云ッテ、「メートル」法ニ改
正シテ胡麻化シテ居ルデハナイカ、汽車ノ
辨當ヲ下ゲタ、鐵道省ガ奮發シタト思ヘバ、
是ハ鐵道省ノ値下ゲニアラズシテ、アノ請
負ノ辨當屋ヲ脅カシテ、値下ゲヲシタガ、
自ラハ少シモ値下ゲヲシテ居ラナイ(拍手)
入場料ノ如キハ倍ニシテ居ルノデアル、斯
ウ云フ矛盾撞著シタコトヲ致シテ居ル、私
ハ大藏大臣ニ伺ヒタイト思フノデアリマス
ガ、減稅ヨリモ、先刻來申シマスヤウニ國
民ノ收入ヲ增スコトガ先決問題デアル、只
今ノ稅收入ハ七億七千万圓、或ハ八億圓近
クアルノデアリマスガ、此國稅ガ悉ク免稅
ニナルヨリモ、國民ノ收入ヲ今マデ通リニ
シテ貰〓タ方ガ國民ハ喜ブノデアル、國民ノ
收入ガ約百四十億ト致シマスレバ、只今ハ
三割モ四割モ減ジテ居ルノデハナイカサ
ウスレバ四十億モ下ッテ居ル、稅金ノ總額ガ
今年ノ豫算デ見ルト七億七千万圓、之ヲ全
部無シニシテ吳レルヨリモ、國民ノ收入ヲ
減ゼヌヤウニシテ貰フコトガ、一番大切ナコ
トデアル、是ガ努ムベキコトデアル、大藏
大臣ハ之ヲ何ト考ヘラレルノデアルカ
只今安達內務大臣ハ、私ノ救護法ニ關ス
ル答辯ヲナサラナカッタノデアリマスガ、
私ハ更ニ之ニ加ヘテ質疑ヲ新ニ致シマス、
只今大藏大臣ニ救護法ハ考ヘテ居ラナイ、
今度ハセナイト玆ニ明言サレタノデアリマ
スガ、安達內務大臣ハ聞ク所ニ依リマスレ
バ、先刻全國ノ方面委員ト會見シテ、大一
ヤルト言ハレタト云フデハアリマセヌカ、
方面委員ハ只今皆喜ンデ歸ッタ、ドチラガ本
當デアルノデアリマスカ、大藏大臣ハヤラ
ナイ、安達內務大臣ハ方面委員ニ對シテヤ
ルト言ッタ、昨日ノ、新聞ノ言論抑壓ニ對シテ
政府ヲ代表シテ謝罪スルト嘗テハ申シ、今ヂ
ヤ何トモ言ハナイト言フノト同樣デアル、
何レガ本當デアルカ、安達內務大臣ガ方面
委員ニ對シテ噓ヲ言ッタノデアルカ、ソレト
モ大藏大臣ガ只今救護法ハヤラナイト言。ツ
タガ、實ハヤルノデアルカ、玆ニ私ハ改メ
テ之ヲ御伺致シタイト思フノデアリマス
更ニ大藏大臣ハ營業收益稅ニ付テハ、左
樣ナ不都合ナコトハナイト云フヤウナ御答
辯ガアッタノデアリマス、少シク意味ハ聽
取レナカッタガ、大體ニ於テ營業收益稅ハ
左樣ナ不公平ナコトハナイ、斯ウ云フ風ナ
御答辯ノヤウニ承ッタノデアリマスガ、頗ル
缺陷ガアルノデアリマス、先刻來私ハ指摘
致シマシタ如ク、外形標準デヤラナイ、純
益ヲ見出シテヤルト云フヤウナ御話デアリ
マスガ、外形標準デヤッテ居ルノデハアリ
マセヌカ、アナタノ監督シテ居ル稅務署ノ
所得稅調査委員ト云フモノハ、帳面ヲ-
祕密書類ヲ貰シテ、賣上高ニ何ヲ掛ケルト
云フヤウナ、印刷シタル外形標準デヤッテ
居ルノデハアリマセヌカ、之ヲ大藏大臣ガ
知ラズシテ、左樣ナ事ハナイト言ハレルガ、
若シ知ラズシテ言ヘバ迂濶千萬ト謂ハナケ
レバナラヌ、知ッテ之ヲ爲スト云ヘバ、又例
ノ吾々ヲ欺クモノト言ハナケレバナラヌノ
デアル、私ハ玆ニ更ニ營業收益稅ニ付テ申
シテ見タイ、只今ノ營業收益稅ト云フモノ
ハ、大キナ商賣人ト云フヤウナ者ハ合法
的ニ脫稅ヲ致スノデアリマス、何ヲ以テ脫
稅ヲスルカ、大キナ家ガアレバ、ソレヲ事
務所トシテ利益カラ控除スル、雇人ノ給料
モ控除致シマス、而シテ自分ノ給料モ其處
カラ控除致シマス、若シ利益ガ餘ルヤウニ
多クナッテ、稅率ノ關係ガ不利益ニナルト、
旅費トシテ旅行スルヤウナ形式ヲ取ルノデ
アリマス、廣〓料モ此中カラ取ルノデアリ
マく、呉服屋デ言ウタナラバ寢カセ物マデ
モ、是モ損ノ中ニ入レテ利益カラ悉ク控除
致シテ合法的ニ脫稅ヲ致シテ居ルノデア
リマス所ガ小商工業者ニ至リマシテハ
自分ノ家ナラ、事務所費トシテ家屋ノ代ヲ
取ル譯ニハ參リマセヌ、自分達ノ働キ、是
モ給料トシテ取ル譯ニハ行カナイ、是ガ帳
面ハ出來テ居ラナイ、稅務署ノ官吏ニ帳面
ヲ見セマスレバ、コンナ帳面ハ何モ役ニ立
タナイ、ソレハ成程昔ノ大福帳流ノ帳面デ
アリマスガ故ニ、正確ニハ分ラヌノデアリ
マセウ、ソコデ目安デ以テ何時デモヤッ
テ行クノデアル、多クノ土地ニ於テ、千軒
ニ一軒位シカ合法的ニ簿記デ付ケテ居ル所
ノ帳簿ハナイ、小商工業者ニハソンナモノ
ハナイ、此現狀ヲ何ト見ルノデアルカ、悉
ク外形標準デヤッテ居ルノデアリマス、從來
ノ外形標準ト云フモノハ-從來ノ營業稅
法ニ於キマシテハ、何ノ商賣ハ先ヅドレダ
ケ引イテドレダケ掛ケルト云フ風ニ、商賣
ノ營業狀態ニ依ッテ步合ガ定シテ居ノタ、今度
ハ一律ニ課ケテ居ルデハアリマセヌカ、勝
手氣儘ナ好イ加減ナコトデ課ケテ居ルデハ
アリマセヌカ、何處ニ純益ヲ見出スコトガ
出來ルノデアリマスカ、私ハ此點ヲ更ニ、藏
相ガ唯ヤッテ居リマストカ、ソンナ事ハアリ
マセヌトカ、左樣ナ言葉デハ滿足出來ヌノ
デアリマス、具體的ニ御說明ガ願ヒタイト
思フノデアリマス(拍手)
〔國務大臣井上準之助君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X00719310127&spkNum=24
-
025・井上準之助
○國務大臣(井上準之助君) 加藤君ニ御答
辯致シマス、前段ハ大體御意見デアリマシ
タカラ答辯致ス必要モナイト思ヒマスガ
救護法ノ事ハ非常ナ誤解デアリマス、御質
問ガ、何故ニ餘剩財源ヲ以テ滅稅ヲセズニ
救護法ヲ施行セヌカト云フ御間デスカラ、
餘剩財源ヲ以テ救護法ニハ充當致シマセ
ヌ之ヲ減稅ニ致シマスト、斯ウ答ヘマシ
タ救護法其モノハ昨日デゴザイマシタ
カ、一昨日ダカ、此議場ニ於テドナタカノ
質問ニ對シテ、現政府ノ救護法ニ對スル態
度ハ、ハッキリ申上ゲテ置イタノデゴザイマ
スカラ、御承知ヲ願シテ居ルコトヽ考ヘマ
之、ソレカラ營業收益稅ノコトハ、法律ヲ
御覽下サルト、法律ノ建前ハ何處マデモ純
益標準ニ致スノデアリマス、唯純益ヲ見ル
場合ニ、私ガ申上ゲマシタ如ク、稀ニ外形
標準ニ依ルコトガアリマス、ソレハ法律ノ
執行ノ爲メデアル、ソレダケ御說明申上ゲ
テ置イタラ宜カラウト思ヒマス
〔國務大臣安達謙藏君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X00719310127&spkNum=25
-
026・安達謙藏
○國務大臣(安達謙藏君) 救護法ノコトニ
付キマシテハ先般大藏大臣モ言明致シマ
シタガ、目下其財源ヲ捻出シテ、是非ドウ
カ處置ヲシタイト云フコトニ、專心一意私
ハ努力致シテ居リマス、方面委員ノ方々ニ
對シマシテモ、サウ云フ意味ニ於テ御話ヲ
シテ置キマシタ(拍手)
〔加藤鐐五郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X00719310127&spkNum=26
-
027・加藤鐐五郎
○加藤鐐五郞君 私ハ只今大藏大臣ノ御答
辯ヲ聽イ、テ飽マデモ読辯ヲ以テ胡麻化ス、
斯樣ナ大藏大臣ニ此席デ繰返シ〓〓質疑ヲ
スル要ハゴザイマセヌガ、唯一言致シテ置
キマスルコトハ、營業收益稅ハ法律ニハ純
益ト示シテアル、左樣ナコトハ今更御〓ヲ
蒙ラナクテモ分リ切ッタコトデアル、而シ
テ純益ヲ見テ、偶ニハ-稀ナ場合ニハ外
形標準ノ課稅ヲスルト云フコトヲ仰セニ
ナッタノデアリマスルガ、左樣ナコトハナ
1、稀ノ場合ニハ純益ヲ見テ、多クノ場合
悉クハ外形標準デヤッテ居ルノデアル(拍
手)若シ之ヲ大藏大臣ガ稀ナ場合ト言ハレ
ルナラバ、アナタノ監督下ニアル所ノ稅務署
カラ印刷シタル小册子ガ每年何千ト云フ程、
全國ノ稅務署ノ所得稅調査委員ニ、祕密ノ
判コヲ押シテ渡シテアルノデアル、之ヲ御
覽ニ入レテ見タイト思フ(拍手)此時デモ
稀ナ場合ハ外形標準デヤルト言ハレルノデ
アルカドウカト云フコトヲ、此場合申シテ
置クノデアル、私ハ斯樣ナ一時胡麻化シノ、
胡麻化シバカリデ、遁辭ヲ以テ逃ゲルト云
フヤウナ大藏大臣ニ、最早繰返シ質問ヲス
ル必要ハナイ要スルニ現內閣ノ減稅ト云
フモノハ、唯國民ヲ欺罔スルダケデアル、
申譯ニ致シタモノデアルト云フコトヲ申シ
テ、私ノ質疑ヲ打切ルノデゴザイマス(拍
手)
〔鷲野米太郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X00719310127&spkNum=27
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028・鷲野米太郎
○鷲野米太郞君 大分減稅案ニ關スル質疑
應答ガ繰返サレタノデゴザイマスルガ、私
ノ質問セントスル所ノ或ル點ハ旣ニ質問
ガアッタノデゴザイマスルノデ、總テ左樣ナ
點ニ觸レズニ、成ルベク別箇ノ方面カラ當
局ノ御意見ヲ伺ヒタイト存ジマス、此度ノ
減稅案ハ、實ニ調査ガ不十分デ、孟浪杜撰、
社會政策的ノ見地カラ見マシテモ、負擔ヲ
公平ニスルト云フ見地カラ見マシテモ私
共ハ非常ニ之ヲ遺憾トスルノデゴザイマス
(拍手)併シ此點ニ付キマシテハ敢テ言葉ヲ
重ネナイコトト致シマシテ、二三ノ事柄ニ
付テ御伺致シ、其次ニ政府ノ行政、財政、
稅制ニ關スル調査ニ關シ本當ノ誠意アリヤ
否ヤト云フコトヲ更ニ御伺致シタイト存ジ
マス
一體大藏大臣ハ色々ト御說明ニナッテ居
ラレルノデアリマスルガ、昭和六年度ニ
於ケル所ノ九百万圓ノ減稅、昭和七年度ニ
於ケル所ノ二千數百万圓ノ減稅、昭和八年
度以後ニ於ケル所ノ二千五百万圓ノ減稅
ガ、果シテ現在ノ民政黨ノ財政計畫ノ上カ
ラ言ッテ可能ナリト云フ確信ヲ以テ提案セ
ラレタカドウカト云フコトヲ伺ヒタイト存
ジマス、色々申シテ居リマスケレドモ、要
スルニ私共ノ見解カラ致シマシタナラバ
全ク昭和六年度ニ於キマシテモ九百万圓ノ
減稅ノ財源ハ私ハ之ヲ認メルコトガ出來
ナイト信ズルノデアリマス、歲入ノ缺陷ハ
必ズヤ吾々ノ見ル所デハ七千万圓、八千万
圓以上ニ達スルト考ヘルノデアリマスガ
假ニ酒ノ稅ノ減收ダケヲ見マシテモ、八百
万圓乃至九百万圓ニ達スルカモ分ラヌ、少
クモ今日ニ於テ之ヲ斷行スルコトノ出來ル
所ノ酒ノ稅ノ減收ハ昨年ノ九月ノ全國見
込申告ニ依リマシテモ、五百五十万圓乃至
六百万圓ニ達スルノデアリマスカラ、九百
万圓ノ減稅ノ中、酒ノ稅ダケノ減收カラ見
マシテモ、六百万圓ト云フ所ノ財源ガ無ク
ナッテ、後ニ殘ル所ノモノハ三百万圓デア
ルノデアリマスガ、其他ノ所得稅ヲ點檢致
シマシテモ、砂糖ノ消費稅ヲ調べマシテモ、
營業收益稅ニ付テ考ヘマシテモ、必ズヤ非
常ナ政府ノ見積ト違ック結果ヲ呈スルコト
ト考ヘマス、政府ハ恰モ非常ナ大キナ手柄
顏ニ減稅案ヲ出シテ居ルノデアリマスケレ
ドモ、此減稅ノ財源ガ旣ニ無イト云フコト
ガ明カニナッタ以上ハ、何カ非常ナ苛斂誅求
ノ方法ヲ執ルカ、更ニ特別ノ方法ヲ執ルニ
非ザレバ、財政ノ辻褄ハ絕對ニ私ハ合ハス
コトガ出來ナイコトト考ヘルノデアリマ
ス、之ニ付キマシテ大藏大臣ノ御考ヲ伺ヒ
タイト存ジマス
ソレカラ砂糖消費稅ノ問題デアリマス
ガ是ノ施行ノ期日ヲ來年ノ一月一日ニ致
シマシタ點ト、織物消費稅ハ從價稅デアル
ノニ、砂糖消費稅ハ從量稅ヲ今尙ホ採ッテ
居ルガ從價稅ニ依ルナラバ、景氣ノ好イ
惡イ、砂糖ノ値ノ高低ニ依ッテ、ソレ〓〓課
稅ガ違フノデアルケレドモ、從量稅ヲ依然
トシテ採ル以上ハ砂糖ノ價格ガ下ッテモ、
砂糖ニ對スル負擔ト云フモノハ依然トシテ
變ラナイノデアルガ、私ハ從量稅ヨリモ從
價稅ヲ採ル方ガ公平デアラウト考ヘルノデ
アリマス、何故從價稅ヲ採ラナイカト云フ
コトヲ伺ヒタイノデアリマス
ソレカラ政府ハ減稅スル意思ガアルカノ
如ク、無イカノ如クデアリマス、嘗テノ施
政ノ方針ノ演說ノ際ニハ、大ニ行政財政ノ
整理ノ調査ヲ致シマシタ、稅制ノ整理ヲヤフ
テ、國民ノ負擔ノ大輕減ヲヤルカノ如ク仄
メカシタノデアリマスガ、果シテ政府ニ其
意思ガ有リヤ無シヤト云フコトニ付テ、加
藤君ガ先程質問ヲ致シマシタ所、井上大藏
大臣ノ答辯ハ私ハ甚ダ腑ニ落チナイノデ
アリマス一體民政黨內閣ハ何デモ宣傳
ヲ事トシテ、欺瞞ヲ以テ國民ヲ釣ッテ參ッタ
ノデアリマス(拍手)減稅問題ニ付キマシテ
ハ若シ倫敦條約ガ成立セズニ、之ニ基ク
剩餘財源ト云フモノガナカッタナラバ、何ヲ
以テ民政黨ハ天下ノ民衆ニ對シテ見エルコ
トガ出來ルカ、國防ヲ犧牲ニシテ、僅カノ
金ヲ玆ニ捻出シテ、サウシテ形ダケノ減稅案
ト云フモノヲ出シタノデアリマスルケレド
モ、是レ位ノ減稅デハ民政黨ガ組閣以前
カラ今日マデ天下公衆ニ約束シタ所ノ、國
民負擔ノ輕減ト云フ問題ニ付テノ公約ヲ、
私ハ實行シタモノト認メルコトガ出來ナイ
ノデアリマス(拍手)
更ニ伺ヒタイノハ、民政黨內閣ハ、果シ
テ今後ニ於テ曾テノ公約ヲ實行シテ、減稅
ヲ斷行スルノ勇氣ガアルカ、行政財政ノ整
理ヲ實行スル爲ニ調査ノ機關ヲ置クト言。ツ
テ居ルケレドモ、果シテ行政財政ノ整理ヲ
十四、ソレニ基イテ稅制ノ整理ヲヤッテ、
國民ノ負擔輕減ヲ實行スルト云フ所ノ、眞
面目ノ意思ガアルカドウカト云フコトデア
リマス、行政財政ノ整理ノ調査ヲヤルト云
フコトヲ言ッテ居ルノデアリマスルケレドモ、
恐ラク其目的ハ減稅ニアルノデハナクテ
既ニ政府ノ歲入見積ガ過大デアッテ、昭和六
年度ノ豫算ハ實行難ニ陷ルノデアリマスカ
ラ、何カノ方法ヲ以テ、或ハ官吏ノ整理ヲ
ヤルトカ、或ハ簡單ナ事柄ヲ胡麻化シ的ニ
ヤッテ、僅ノ金ヲ玆ニ產ミ出ス方法ヲ考ヘ
ルノニ過ギナイノデアッテ、民政黨內閣ガ
大ニ宣傳ヲシテ居ルヤウナ意味ノ行政財政
ノ整理デハナイト私ハ考ヘルノデアリマ
ス就キマシテハ政府當局、特ニ陸軍大臣
ニ御伺ヲ致シタイノデアリス行政ノ整理
ヲヤッテ、國民ノ負擔ヲ輕減スル、軍制ノ改
革ヲヤッテ、陸軍ノ費用ヲ節約シテ、國民ノ負
擔ノ大輕減ヲヤルト云フコトハ、民政黨ノ
組閣ノ當時ニモ、十大政綱ノ一トシテ天下
ニ之ヲ宣言シタノデアリマス、但シ條件ガ
附イテ、國防ニ缺陷ヲ生ゼザル範圍ニ於テ
ト云フコトヲ言ウテ居フタノデアリマス、所
ガ國防ニ缺陷ヲ生ズルカ生ゼナイカト云フ
コトハ、抽象的ノ問題デアッテ、生ゼナイト
云フナラバ生ゼナイ、生ズルト云フナラバ
生ズルノデアル程度問題デアッテ、遁ゲ言
葉トシテ甚ダ巧ミナ言葉デアルケレドモ、
私ハ民政黨內閣ガ天下ニ公約シタ所ノ公約
ヲ免レル爲ニ、國防ニ缺陷ヲ生ズルト云フ
ダケノ言葉ヲ以テ、其責ヲ免レルコトヲ認
メルコトハ出來ナイノデアリマス、民政黨
内閣ガ成立致シマシテ間モナク昭和四年ノ
八月デアッタカト存ジマスルガ、陸軍ノ整理
節約ニ依シテ、國民ノ負擔ノ輕減ヲスルト云フ
趣旨ノ下ニ、陸軍大臣ノ管理ノ下ニ、陸軍
省ニ軍制調査會ナルモノガ設置セラレタ筈
デアリマス、日ヲ閱スルコト正ニ一年ト五
箇月、其間ニ何ノ調査ヲシタカ、私ハ能ク
存ジマセヌケレドモ、頻ニ新聞紙ヲ通シテ
色々ノ宣傳ガ行ハレタノデアリマスガ、結
局非常ニ國費ヲ節約シヨウト云フ見地カ
ラ、陸軍ノ整理ヲ試ミルナラバ、國防ニ非
常ナ缺陷ヲ生ズルカラ、經費ノ節約ハ殆ド
不可能ノヤウニ陸軍省ノ方カラ宣傳ヲ致シ
テ居ルノデアリマス、私ノ御尋致シタイノ
ハ、陸軍大臣ガ今日マデ統轄ノ下ニ軍制ノ
調査ヲ爲サッタガ、其結果ノ大要ヲ玆ニ明ニ
シテ戴キタイト云フコトヽ陸軍大臣ハ如
何ナル方法ヲ用ヒテモ、國民ノ負擔輕減ト
云フ見地カラ考ヘテ、陸軍省ノ費用ノ節約
ノ餘地ハナイカ、私共ノ見解カラ致シマス
ト云フト、三億九千七百万圓ノ陸海軍ノ費
用ハ、隨分國民負擔ノ見地カラ考ヘテ僅少
ナモノトハ言ヘナイノデアリマスガ、又將
來モ果シテ三億九千万圓ナリ、四億万圓ノ
軍事費ト云フモノヲ、我國ノ豫算ニ於テ見
ナケレバナラヌモノデアルカドウカ、私共ハ
假ニ陸軍ト海軍ノ當局ガ大英斷ヲ以テー
非常ナ決心ヲ以テ陸軍海軍ノ費用ノ節約ヲ
試ミルナラバ、玆ニ一億圓ナリ、一億五千
万圓、ソレ位ノ費用ノ節約ハ困難デナイ、
而モ國防ノ力ヲ減殺スルコトガナクテ、十
分ニ國防力ヲ維持スルコトガ出來テ、而モ
一億圓位ノ費用ノ節約ガ出來ル、ソレハ私
共ガ過去七八年以來常ニ唱ヘテ居リマス所
ノ國防省ニ關スル計畫デアルノデアリマス
ガ、若シ陸軍ト海軍トガ一致シテ、茲ニ陸
海軍ト航空軍ノ三ツヲ一丸ト致シマシタ所
ノ大ナル國防省ト云フモノヲ考ヘマシテ、
其中ニ海軍モ、陸軍モ、航空軍モ、打ッテ一
丸ト致シマシテ一ツフ首腦者ノ統率ノ下
ニ之ヲ置イテ、國防ノ整理統一ト云フコト
ヲ主眼トシテ、經費ノ節約ト云フコトヲ第
二ノ目的トシテ致シマシタナラバ、必ズヤ
三億七百万圓ノ中カラ、少クトモ一億圓近
イ所ノ經費ノ節約ガ出來ルト云フコトハ
絕對ニ不可能ノコトデナイト考ヘルノデア
リマスガ、陸軍大臣ハ今日マデ一年五箇月
一個、軍制調査ヲ爲サッタサウデアリマス
ガ此樣ナ點ニマデ觸レテノ御調査デアル
カドウカト云フコトヲ伺ヒタイ、此國防省
ニ關スル問題ハ世界ノ何レノ國ニ於テモ
理窟トシテハ甚グ結構ナコトトシテ居リマ
ス、曾テハ英國ニ於テ有名ナル實業家ノ「ゲ
デス」ガ國民負擔ノ輕減ノ爲ニ行政財政整理
委員會ヲ組織シタ時ニ、「ゲデス」ガ航空、
海軍、陸軍ノ三ツヲ打ッテ一丸トシタ國防省
ヲ置クニアラズンバ、國防費ノ節約ハ出
來ナイト云フコトヲ報告シテ以來、世界ノ
政治家トシテ、此問題ニ付テハ非常ナル注
意ヲ拂ッテ居ルノデアリマスガ、實行論ニ入
リマスト、陸海軍ノ對立デアルトカ、其他
ノ關係カラ、事實實行ト云フコトガ非常ニ
困難デアルノデアリマスガ、民政黨內閣ガ
間違シタル所ノ金ノ解禁ヲシテ、國民ヲ是程
難苦ノ中ニ陷レタト云フ以上ハ相當ニ責
任ヲ負ハナケレバナラヌ、ソレニ付テハ國
民ノ負擔ヲ輕減シテ、民力ヲ休養シ產業
發展ノ將來ニ備フルダケノ覺悟ヲセナケレ
バナラヌト考ヘルノデアリマスガ、之ニ付
テ總理大臣代理、大藏大臣竝ニ陸軍大臣、
出來ルナラバ海軍大臣ハ居ラヌノデアリマ
スカラ、豫算委員會デ伺ヒタイト存ジマス
ノデ海軍大臣ハ別ト致シマシテ、三大臣
ノ責任アル御答辯ヲ仰ギタイト存ジマス
ソレカラ井上大藏大臣ハ是ハ多少餘計
ナコトニナルノデアリマスガ(「餘計ナコト
ヲ言フナ」ト呼フ者アリ)先程加藤君ノ質問
ニ對シテ、加藤君ガ國民ノ收入ヲ增加スル
所ノ方法ヲ政府ハ何故考ヘナイカト言ヒマ
シタラ、案ガアルナラバ示セト云フ御話デ
アンタノデアリマスガ私ハ案ガアルノデ
アリマス、其案ハ金ヲ再禁止シ、平價切下
ヲ斷行スルノデアリマスガ、此點ニ付テハ
私ハ豫算委員會デ十分ナル藏相ノ御意見ヲ
伺ヒタイト存ジマスノデ、此處デハ申シマ
セヌガ、以上ノ點ニ付テ政府ノ御答辯ヲ仰
ギマス
〔國務大臣井上準之助君登壇]発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X00719310127&spkNum=28
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029・井上準之助
○國務大臣(井上準之助君) 鷲野君ノ第一
ノ質問ハ減稅ハ果シテ實行シ得ルヤ、斯
ウ云フ御質問デアリマスガ、鷲野君ハ昭和
六年度ニ於テノ歲入ガ減少スルカラ不可能
ダト言ハレマスガ、私ハ其前提ニ於テ左樣
ニ考ヘマセヌ、尙ホ酒ノ稅ヲ擧ゲラレテ
此稅ニ於テ的確ニ減ル、斯ウ言ハレマス
ガ先日武藤君カラ同一ナ質問ガアリマシ
タ時ニ、實際ノ前年度ノ造石高九分五厘、
其上ニ五分ノ減ヲ加ヘテ居ルノデアルカ
ラ、ソレデ十分デアル、斯ウ御答辯シタノ
デアリマスガ今日モ左樣ニ考ヘテ居ルノ
デアリマス、隨テ減稅ガ實行シ得ナイト云
フヤウナコトハ想像シテ居リマセヌ
砂糖ノ消費稅ハ從量稅デアルガ、從價稅
ニ變ヘル考ハナイカト云フ御尋デアリマシ
タガ、御承知ノ如ク砂糖ハ從量稅デアリマ
スケレドモ、稅種ヲ幾ラニモ分ケマシテ、
値段ノ高イ砂糖ニハ高イ率ヲ課ケルコト
ニナッテ居リマス、隨テ單純ノ從量稅デハナ
イノデアリマスカラ、私ハ今日ノ砂糖稅ヲ
從價稅ニ變ヘル考ハゴザイマセヌ
尙ホ吾々ノヤラントスル行政、財政、稅
制ノ整理ハ、是ハ來年度ノ歲入缺陷ヲ補フ
爲ノ一ツノ便法デアラウ斯ウ云フ御尋デ
アリマスガ、丁度同一ノ問ガ武藤氏カラア
リマシタ時ニ、旣ニ御答辯申シテ置イタノ
デアリマスガ、何故ニ行政財政ノ整理ヲス
ルカ斯ウ申シマスト、過日モ申上ゲマシ
タ如タ、今日ノ如ク歲入ガ急激ニ減リマ
下、ソレニ依ッテ歲出ヲ減ジテ見マス、サ
ウスルト仕事ノ仕方、仕事ノ分量ト金ノ減
ジタモノト對比致シテ見マスト、ドウシテ
モ一ツ行政ヲ根本的ニ整理シテ見テ、サウ
シテ今日ノ激減シタ歲入ニ適應スルヤウニ
シテ見ヨウ、斯ウ云フ考ガ起ルノデアリマ
ス、吾々ノ行政財政ノ整理ハ其處カラ出テ
來タ考デアリマス、尙ホ稅制ノコトヲ考へ
テ見マスト、今日ノ急激ニ變更シタ經濟界
ノ狀態デハ負擔ノ公正ヲ保チ得ナイモノ
ガ數多アルノデアリマスカラ、之ヲ能ク整
理致シマシテ、國民負擔ノ公平ヲ保ツヤウ
ニシタイト考ヘタ爲ニ、行政財政ノ整理ヲシ
ヤウト云フ考デアリマシテ只今御尋ノヤ
ウニ來年度、卽チ昭和七年度カラ減稅ヲ必
ズ幾ラスルカ斯ウ云フ御尋デアリマシタ
ガ+ソレヲ今日カラ幾ラ何時カラ減稅ヲス
ルト云フ明言ハ出來ヌノデアリマス、併ナ
ガラ財政當局者トシテノ自己ノ希望カラ申
シマスト、先刻多分加藤君デシタカ、或ハ
高橋君デシタカニ御答致ウマシタヤウニ、
今日ノ國民經濟ノ狀態デアレバ、出來ルダ
ケ減稅ヲシテ行クノガ、一番今日ノ國民經
濟ノ狀態ニ適應スル考デアリマス、其途ニ
於テ色々努力ヲ致ス精神デアリマスト云フ
コトヲ御答シテ置イタ、同ジ答辯ヲ致シテ
置キタイト考ヘテ居リマス
〔國務大臣宇垣一成君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X00719310127&spkNum=29
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030・宇垣一成
○國務大臣(宇垣一成君) 只今鷲野君カラ
國防費殊ニ陸軍ノ事ニ付テ御質問ガアリマ
シタ、其點ニ付テ御答ヲ致サウト思ヒマ
ス、陸軍ト致シマシテハ、生產的ノ意味ニ
乏シイ軍費ト云フモノハ努メテ減少シ、必
要ノ最少限度ニ止メタイト云フコトハ是
ハモウ多年ノ希望デアル、一ノ陸軍ノ信條
ト申シテモ宜イノデアリマス隨テ軍費ヲ
減少シテ行クト云フコトニ付テハ永年ノ
間頗ル努力ヲ致シタヤウナ次第デアリマ
ス、然ルニ一體世界ノ大勢ヲ見マスルト平
和ノ要求、平和ノ希望ト云フ、其空氣ハ年
ヲ逐ウテ濃厚ニナリツヽアリマス、又私共
モ切ニ其完全ナル實現ノ出來ルコトノ速カ
ナランコトヲ希望致シテ居ル一人デアリマ
ス、所ガ他面ニ於テ列强ノ有樣ヲ見ルト
歐洲大戰以後軍備ノ有樣ハ劃期的ニ發達ヲ
遂ゲテ居リマス、卽チ近代科學ノ進步ニ伴
ヒマシテ、軍ノ裝備ト云フモノガ著シク科學
化サレテ參クテ居リマス、然ルニ帝國ノ陸
軍ノ有樣ヲ見マスト如何デアルカト申シマ
スレバ、過去大正十二年及ビ大正十四年二
囘ニ整理ヲ斷行致シマシテ、自己ノ捻出シ
ケ所ノ財源ノ一部ヲ以テ、新ナル裝備ノ改
善ヲ努メマシタガ、往時ニ於キマシテハ
戰術ハ十年每ニ一變スル隨テ兵器武裝等
モソレニ順ジテ行ヘバ、大體ニ於テ結構デ
アッタノデアリマスルガ、近時ノ科學ノ進
步カラ見マスレバ、モウ十年ヲ俟タヌト云
フヤウナ有樣デアリマス、隨テ大正十二
年、十一年ニ行ヒマシタ裝備ノ改善モ、今
日列强ノ其物ト較ベテ見マスルト、餘程見
劣リガアリマス隨テ有事ノ際此儘デ置
イテ、國防ノ任務ヲ完全ニ果スト云フコト
ニ付テハ多少ノ-多少デナイ、否犬
ニ考慮ヲ要スベキ點ガアリ得ルヤ否ヤト
云フコトニ付テハ其處ニ大ニ考慮ヲ要
スル點ガアルト存ズルノデアリマス
然ルニ裝備ヲ充實改良スルト云フコトニナ
リマスルト、今日ノ狀態デハ數年前マデハT
假ニ玆ニ飛行機ヲ一臺造ル偵察飛行機ヲ
造リマスニ二三万圓モ出セバ相當ノ機械
ガ出來ダノデアリマスルガ、數年後ノ現在
ニ於キマシテハソレニ六七万圓モ出サネ
バ十分ノモノハ出來ヌト云フヤウナ有樣
デ、萬事ガソレニ比例ヲ致シマシテ、裝備
ノ改善ト云フモノガ從來ヨリハ非常ニ高價
ニナル、多クノ經費ヲ要スルト云フヤウナ
有樣ニナッテ居リマス、隨テ裝備ノ充實改善
ヲ立派ニ仕上ゲヤウト致シマスルト陸軍
トシテハドウシテモ新ニ國庫ニ財源ヲ要求
セネバナラヌト云フヤウナ立場ニ居ルノデ
アリマスルガ、併シ今日ノ國家財政經濟ノ
現況ヲ見マスト、左樣ナコトヲ申出ヅベキ
場合デモナイト存ジマス、ソコデ更ニ一昨
年來調査會ヲ設ケテ、出來ルダケ軍事費ノ
方ニ於テ節約ヲ加ヘテ、サウシテ運用ノ刷
新內容ノ充實ト云フコトヲ圖リタイト、
ソレト同時ニ軍事費ヲ尙ホ削減スベキ餘裕
ヲ發見シテ國家財政ノ現況ニモ順應致シ
タイト云フヤウナ考デ、調査事業ヲ開始シ
テ居ルヤウナ次第デアリマス、陸軍ガ軍費
ノ削減ニ付テ、御演說中ニ何トカマダ餘地
ハ大ニ存シテ居ッテ、努力ノ足ラヌノデハナ
イカト云フヤウナ意味ノ御話モ承ッタヤウ
ニ思ヒマスガ、前申述べマシタ心情ト申シ
マスルカ、或ハ方針ニ基イテ、努力致シテ
居リマス結果、過去ノ事績ニ鑑ミテ見マス
ト、一體ニ國費ト云フモノハ明治年代カラ
逐次ニ增加ヲ致シテ居リマス、所ガ陸軍費
ノ增加ノ景況ヲ申述べテ見マスルト、明治
年代ニ於テハ平均總豫算ノ中二割一分ト云
フモノヲ陸軍費ガ占メテ居ッタノデアリマ
ス、ソレガ大正年代ニナリマシテ一割六分
ニ減ジ昭和六年度ノ豫算ニ於テハソレ
ガ一割三分マデ低下致シテ居リマス、斯樣
ニ努力致シテ居リマスルガ併シマダ/
之ヲ以テ滿足スル者デハアリマセヌ、尙ホ
出來ルダケノ努力ハ致ス積リデ居リマス、
ト申スモノノ、旣ニ昭和二年度カラ六年度
マデニ於キマシテ、卽チ最近五箇年間ニ於
キマシテ、陸軍ト致シテ整理節約ヲ致シタ、
其節減額ト云フモノガ六千二百万圓、繰延
額ガ一億九千六百万圓、合計二億五千八百
万圓以上ニ達シテ居ルノデアリマス、共繰
延ノ中ニモ、相當繰延ガ長イ先キノ年月ニ
亙ッテ居リマスル爲ニ、考ヘヤウニ依ッテハ
是モ亦節減ノ一部ト考ヘテモ失當デナイデ
アラウト思フヤウナ部類モ含マレテ居ルノ
デアリマス、斯樣ナ多額ノ節減繰延等ヲ致
シテ居リマスカラ、現在行テテ居リマス調査
ニ於テ、更ニ是レ以上又巨額ノモノガ出來
ルト云フヤウナコトハ申上ゲ兼ネル次第デ
アリマス、隨テ此方面ニ付テハ大ナル期待
ヲ御持チ下サラヌヤウニ御願致シテ置ク次
第デアリマス、併シ列國ノ軍費ガ總體的ニ
大ニ削減サレルト云フナラバ、是ハ思切ッテ
大整理大節減ガ出來ル次第デアリマス、幸
ニモ明年春二月ヲ期シテ、國際聯盟ノ軍縮
會議ガ開カレルヤウニナッテ居リマス、其時
ニ外國間ニ話ガ旨ク纏リマシタナラバ鷲
野君ノ御希望ニナッテ居ル如キ事實ガ出現
致スデアラウト思フノデアリマス、又私共
モ速ニサウ云フ風ナ氣運ノ到來スルコトヲ
待ッテ居ル次第デアリマス
尙ホ御演說中ニ何ダカ此陸軍ガ特別ニ大
整理ヲシ大縮小ヲシ、軍費ノ大削減ヲデ
モ致スカノ如キ御約束ヲ致シテ居ルヤウニ
御考ニナッテ居ルヤウナ意味合ガ拜聽サレ
タノデアリマス(「民政黨ハサウ言ッテ居ル、
約束シマシタ」ト呼フ者アリ)ドレガ所謂公
約トデモ申シマスカ、ソレニナッテ居リマ
スルカ、濱口內閣ガ出來マシタ當初ニ發表
致シマシタ聲明書ニハ、何モ陸軍單獨ノ御
約束ハナイト思ヒマス、此處ニ幸ニ丁度濱
口內閣組閣當時ノ聲明ヲ持合セテ居リマス
カラ、陸軍軍備ニ關係シタ方面ノコトヲ一
應讀上ゲテ見マス、財政緊縮ノ項目ノ中デ
「卽チ政府自ラ中央地方ノ財政ニ對シ一大整
理緊縮ヲ斷行シ、山テ以テ廣ク財界ノ整理
ト國民ノ消費節約トヲ促進セントス、財政
ノ整理ヲ實現スルニ當リ、陸海軍ノ經費ニ
關シテモ國防ニ支障ヲ來サヾル範圍ニ於
テ、大ニ整理節約ノ途ヲ講ズル所アラント
ス」斯ウ云フ意味合デアリマス、ダカラ陸軍
單獨ニ何モ大ニ特別ナルコトヲ致サネバナ
ラヌト云フ御約束ハ致シテ居リマセヌ(拍
手)併シ事實ヤリマシタ、私入閣以後ニ實行
致シマシタ整理ノ有樣ト云フモノハ決シ
テ他ノ方面ニ劣ッテハ居リマセヌ、人後ニ
ハ落チテ居リマセヌ、人並以上ノコトヲヤッ
テ居ル積リデ居リマス(拍手)
ソレカラ軍制調査ヲヤッテ居ル、此軍制調
査ハ何モ政府ノ意思ニ基イテヤッタノデナ
〃、陸軍自體ノ意思カラ發動シテ實行致シ
テ居ルモノデアリマスカラ、是ハ政府全體
ノ事業ト御認メニナラヌヤウニ願ヒタイト
思ヒマス、政府ノ一部デアル陸軍ノ發意ニ
基イテ實行致シテ居ルノデアリマス、此調
査ノ事業ガ非常ニ遷延ヲシ遲レテ居ル、
年半モ何ヲシテ居ルカト云フヤウナ意味ノ
御問モアリマシタガ、大ニ努力ハ致シテ居
リマス努力ハ致シテ居リマスガ、頗ル事
ガ複雜多岐ニ亙ッテ居リマシテ、ソンナニ容
易ニ結果ヲ纒メ得ルモノデハアリマセヌ、
鷲野君モ御承知デアリマセウガ、吾々ガ軍
制調査ノ一要目ト考ヘテ居リマシタ兵役義
務者及ビ癈兵遺族家族ノ待遇改善、是ハ社
會政策ノ一部デアリ、又同時ニ精神的ニ國
防ヲ健全ナラシムル所ノ一要目デアリマ
ス、此事業ダケデモ御承知ノ通リ一昨年十
一月カラ本年ノ十二月迄掛リマシテ、而モ
其事業ニ御關係下サッタ委員諸君ハ非常ナ
御勉强デ、九十幾囘ト云フ委員會、幹事會
等ヲ催シ、ソレヲ日ニ割テ見マスルト四
日ニ一遍ト云フ頻繁ナ會合ヲ催シテサウシ
テヤリマシタガ、ソレガ漸ク一年有餘ヲ閱
シテ結果ヲ擧ゲ得タノデアリマス、其何十
倍ト云フ多クノ分量ヲ持。ッテ居ル陸軍軍制
ノ調査〓究デアリマスカラ、サウ容易ニ實
行ノ出來ルモノデハアリマセヌ、併ナガラ
吾々ト致シテハ一日タリトモ速ク其成果ヲ
擧ゲタイト云フコトニ努力致シテ居ル次第
デアリマス(拍手)
〔發言スル者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X00719310127&spkNum=30
-
031・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 靜肅ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X00719310127&spkNum=31
-
032・宇垣一成
○國務大臣(宇垣一成君) 織國防省設置
云々ノ御質問モアリマシタガ、是ハ私ノ方
面ニ於テハ相當ニ〓究ヲ致シ、又私トシテ
ハ一個ノ意見モ有シテ居リマス、併ナガラ
是ハ政府全體ニ亙ル問題デアリマスカラ、
私カラ答辯ヲ申スコトハ差控ヘテ置キマス
(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X00719310127&spkNum=32
-
033・作田高太郎
○作田高太郞君 只今上程中ノ議案ニ對ス
ル審議ハ此程度ニ止メテ次ノ日程ニ進マレ
ンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X00719310127&spkNum=33
-
034・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 作田君ノ動議ニ御
異議ハアリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X00719310127&spkNum=34
-
035・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 御異議ナシト認メ
マス仍テ質疑ハ終局致シマシタ-日程
第八、右各案ノ審査ヲ付託スヘキ委員ノ選
擧ヲ議題ト致シマス
第八右各案ノ審査ヲ付託スヘキ委員
ノ選擧発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X00719310127&spkNum=35
-
036・作田高太郎
○作田高太郞君 七案ヲ一括シテ議長指名
二十七名ノ委員ニ付託セラレンコトヲ望ミ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X00719310127&spkNum=36
-
037・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 作田君ノ動議ニ御
異議ハアリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X00719310127&spkNum=37
-
038・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 御異議ナシト認メ
さい、仍テ動議ノ如ク決シマシター是ヨ
リ國務大臣ノ演說ニ對スル質疑ヲ繼續致シ
マス、通〓順ニ依ッテ發言ヲ許シマス-安
藤正純君
-國務大臣ノ演說ニ對スル質疑
(前會ノ續)
〔安藤正純君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X00719310127&spkNum=38
-
039・安藤正純
○安藤正純君 私ハ現時ノ失業問題ニ付キ
マシテ政府ニ質問ヲ致シマシテ、
〔議長退席、副議長著席〕
併セテ其他二三ノ社會政策ノ問題ニ付テ伺
ヒタイト思フノデアリマス、失業者ハ世界
ノ到ル處ニ多少ハ在ルノデアリマス、是ハ
現在ノ經濟組織ノ致ス所デアリマスカラ已
ムヲ得ナイノデアル、英吉利ノ如キ、佛蘭
西ノ如キ(「佛蘭西ニハナイヨ」ト呼フ者ア
リ)獨逸ノ如キ、亞米利加ノ如キ、失業者ハ
アリマスガ、併ナガラ佛蘭西ノ如キハ失業
者ハ殆ンド無イト言ッテモ宜シイ、昨年十二
月ノ調ニ依リマスルト、佛蘭西デハ千六百
六十一人シカ實際ノ失業者ハ無イト云フ、是
ハ其時ノ政治ノ遣方デ失業者ガ少クナッテ、
終ヒニハ根絕スルコトモ出來ルノデアル
我國ノ失業ハ必ズシモ此世界的ノ傾向ノ流
レニ全部織込マレテ居ル譯デハナイノデア
リマシテ、我國ノ失業ガ何デ起ッタカト云フ
ト、簡約シテ言ヘバ、現在ノ濱口內閣ノ不
合理ニシテ極端ナル緊縮政策ノ產物ナノデ
アル、卽チ昭和四年度、昭和五年度ニ瓦リ
マシテ極端ナル所ノ國家事業ノ中止、繰延、
國民ニ向ヒマシテハ消費節約ヲ宜傳シ强要
シタ、其結果ガ斯ノ如ク失業者ノ增大シタ
ルコトハ、一點疑フ所ノ餘地ガナイノデアル
(拍手)然ルニ政府ハ此重大ニシテ而モ益〓
激增スル所ノ失業問題ニ付キマシテ、之
ヲ輕ク見マシテ、現ニ昨年ノ臨時議會
ノ時ニ於キマシテモ、是ハ問題トナッテ
取扱ハレタニモ拘ラズ、一番ノ責任者デア
ル所ノ內務大臣ノ如キハ、最モ之ヲ輕視シ
テ御答辯ニナッテ居ルノデアリマス、併ナガ
ラ其內務大臣ガ之ヲ輕ンジテ樂觀ヲ致シテ
居リマシタ所ノ其論據ハ却テ今日寧ロ反
對ノ論據トナリマシテ、失業者ハ每月每日
ニ累增ヲ致シテ、今日デハ日本全國ニ於テ
生活ニ困リ、失業ヲシテ食フコトガ出來ナ
イデ、死線ニ彷徨シテ居ルモノガ幾十万アル
ト云フコトハ、現在ノ事實デアル(拍手)而
シテ其最モ消極的ニ流レタ者ハ絕望ヲ致シ
テ自殺ヲスル、逃亡ヲスル一家心中ヲヤ
ル、甚シキモノガ起ッテ居ルノデアル、而シ
テ之ガ反撥的ニ行ッタモノハ思想ガ惡化ヲ
致シテ、或ハ詐欺ヲ爲シ、强盜ヲヤリ、殺
人ヲヤリ、甚シキニ至ッテハ社會組織ノ改革
ヲ計畫スルヤウナモノガ澤山ニ出テ來テ居
ルト云フコトハ、統計ガ之ヲ明示致シテ居ル
ノデアル(拍手)斯ノ如ク思想ガ極度ニ險惡
ニナッテ參リマシタノモ、失業者ガ累增シテ
世間ガ生活ニ困ッタ譯デアリマシテ、其源ハ
濱口內閣ノ極端ニシテ世ノ中ヲ見ナイ所
ノ此政策ノ崇ト言ハナクテハナラナイ
(拍手)斯ウ云フ狀態デ進ンデ參リマシタナ
ラバ、玆ニ測ラザル所ノ社會問題ガ起ッテ、
取返シノ付カナイ不祥事ガ起ラナイト、誰
ガ保證スルコトガ出來ルノデアルカ(拍手)
現ニ此空氣ハ內部ニ蘊釀ヲサレテ居ルノデ
アリマス、政府ハ此現象ヲ神經ニ病ミマシ
テ、成ベク失業者ノ統計ヲ小サク出スコト
ニ努力ヲ致シテ居ル、內務省社會局ノ失業
統計ノ如キモノハ信憑スルニ足リナイノ
デアリマス(拍手)是ハ一部ノ所ヲ調ベマシ
テソレデ全體ヲ類推スル所ノ推算ノ統計デ
アリ、而モ其標準ト云フモノガ極メテ小サ
ナ範圍ニ限定ヲ致シテ居ルノデアリマスカ
ラ社會局ノ統計、政府ガ唯一ノ根據ト致
シテ居リマスル社會局ノ統計ハ、眞相ヲ現
ハスコトノ出來ナイ所ノ偏頗ノ統計ト謂ハ
ナクテハナラナイノデアル、而モ其小サク
數字ヲ出サウト努メテ偏頗ナ統計ヲ作ッテ
居ル社會局ノ統計デスラ、數字ガ明カニ之
ヲ物語ッテ居ル、卽チ今ノ政府ガ失業統計ヲ
始メタノハ昭和四年、卽チ昨年ノ九月デア
リマス、其九月ト昨年ノ昭和五年ノ九月ト
ヲ(「昭和四年ハ昨年カ」ト呼フ者アリ)昭和
四年ハ一昨年ダ(「解シタカ」ト呼フ者アリ)
一昨年ノ九月ト昨年ノ九月トヲ比較致シマ
スルト、玆ニ重大ナル數字ガ示サレテ居ル、
昭和四年ノ九月ノ時ニ社會局ガ發表致シマ
シタノハ、二十六万八千五百九十人ト云フ
ノデアル、然ルニ一年經ンタ昨年ノ九月ノ失
業統計ハ、三十九万五千二百四十四人、此
增ガ一年ニシテ十二万六千六百五十四人ノ
增加ヲ致シテ居ルデハナイカ(拍手)割ニ
致シマスト四割七分二厘ノ增加デアル、今
ノ政府ハロヲ開ケバ失業救濟、失業救
濟-失業救濟ト云フコトヲ矢鱈ニ言ッタ
リ書イタリシテ居ルガ、事實碌ナコトハヤッ
テハ居ラナイ、政府ガ謂フ所ノ失業救濟ハ、
濱口內閣ノ慣用手段デアル所ノ宣傳政治ノ
一ツニ過ギナイノデアル(拍手)現ニ若シソ
レ程口ニ言フガ如クノ對策ガ行ハレテ居ル
ノナラバ、一年間ニ十三万モ殖エル譯ガナイ
ヂヤナイカ(ヒヤ〓〓)働キタイ〓〓ト云フ
ノハ人間ノ値打ナンダ、是ガ人間ノ本領ナ
シノ、働ク氣ガ無クナッテシマッタラ仕方ガ
ナイヂヤナイカ、又働クダケノ力ガ無クナツ
テシマッタラ國家ノ元氣ハ消耗シテシマフ、
其働キタイ働キタイト焦セル所ノ國民ノ生
活權ヲ閑却致シマシテ、一面ニハ「天下億
兆一人モ其ノ所ヲ得ザルハ皆朕ガ罪ナリ」
ト陛下ハ一視同仁ノ思召デオイデニナ
ル、其陛下ノ一視同仁ノ大御心ニ背イテ、
陛下カラ御預リシテ居ル所ノ肝腎ノ同胞數
十万ヲ斯ノ如ク死線ノ間ニ彷徨セシムルト
云フノハ是ハ濱口內閣ノ大罪惡デハナカ
ラウカト思フ(拍手)總理大臣、內務大臣ハ
之ニ對シテ果シテ自責ノ觀念ガナイノデア
ルカト云フコトヲ第一ニ御伺ヲ致シタイノ
デアル(拍手)
元來失業問題ト云フモノハ、失業統計ガ
基礎デアリマス、統計ガアッテ何人ノ失業
者ガアルト云フノデ、國家ガ之ニ對スル對
策ガ始メテ出ル、統計ガ杜撰デアレバ對策
モ何モアッタモノヂヤナイ、然ラバ此統計ガ
基礎デアルカラ、之ニ最モ大切ナル注意ヲ
拂ハナケレバナラナイ、而シテ其最モ好イ
統計ヲヤル機會ガ出テ來タ、卽チ昨年十月
一日ノ國勢調査デアリマス、此國勢調査ニ
於キマシテハ社會局ノ每月ノ統計ハ不完
全デアルト政府ガ言ッテ居ルノデアルカラ、
國勢調査ニ當ッテ失業統計ヲ確實ニシナ
ケレバナラナイ責任アリ、義務ガアルモノ
デアル、然ルニ此國勢調査ノ失業統計ナル
モノハ杜撰粗漏洵ニ信憑スルニ足リナイモ
ノデアル、國勢調査ニ於テ發表サレタ失業
者ノ數字ハ幾ラデアルカ、卽チ三十二万二
千五百二十七人ト國勢調査デハ發表ヲサレ
テ居ル、然ルニ同月同日、內務省社會局ガ
發表ヲシタ同ジ日ノ十月一日ノ失業統計ハ
何人デアルカ、卽チ三十七万四千百四十人、
國勢調査ト社會局ノ調査ト、同ジ十月一日
デアリナガラ五万一千六百十三人ノ相違ガ
玆ニ出テ居ルト云フノハドウ云フ譯デア
ルカ、是ハ卽チ政府ガ玆ニ行フ所ノ國勢調
査カラ現ハレル結果ヲ豫想ヲ致シマシテ、
意識的ニ縮小ヲシタ結果デアル、一番容易
イ例ハ國勢調査ニ當ッテ、政府ガ指示シタ一
例ヲ茲ニ示シマス、日傭勞働者ノ失業カ否
カハ九月三十日、卽チ前日デアリマス九
月三十日ノ狀態ニ依ッテ決定ヲセヨト云フ、
斯ウ云フ指令ヲシテ居ル、タッタ一日デ失
業者ヲ決メルト云フ、是ハ亂暴極マル話デ
ハナイカ、恰モ九月三十日ハ晴天デアッタ、
快晴デアッタ、職ヲ求メルニ急ナル失業者
ハ天氣デアルカラ方々ヘ行ッテ仕事ヲ求
メテ、仕事ニアリ就イテ居,タ者ガ多イカ
ラシテ此十月一日ノ失業統計ニハ小サナ
數字ガ現ハレテ居ルノデアリマス、社會局
ノ調査ハ不完全ダト內務大臣ガ言明ヲ致シ
テ居ル、然ルニ其社會局ノ標準ニ-不完
全ダト言明ヲシテ居ル所ノ社會局ノ標準ニ
則リマシテ、其上タッタ一日デ定メルヤウ
ナ不完全ノ統計ヲ何故內務大臣ハ取ラレタ
ノデアルカ、是ニ於テ簡單ニ內務大臣ニ承
リタイ、最モ肝腎ノ此失業者ノ統計ハ是
デ完全ト御認ニナッテ居ルノカドウカ、是ハ
責任ヲ以テ御答辯ヲ願ヒタイノデアリマ
ス一體社會局ノ調査ニセヨ、國勢調査ニ
致シマシテモ、失業者ノ數ガ何故コンナニ
少ク出テ居ルノカ、吾々常識デ考ヘテモコ
ンナ少ナイ筈ハナイ、何故少ナク出テ居ル
カト云ヘバ是ハ失業ニ依ッテ歸農ヲシ歸
村ヲ致シマシタ其人ト云フモノハ、〓ネ失
業者ニ入ッテ居ラナイ、第二ニハ大工ナリ、
左官ナリ、鍜冶屋ナリ、自分ノ小サナ手デ
仕事ヲシテ居ル自立業者ノ失業ハ、失業者
ノ統計ニ入レテ居ラナイ、モウ一ツハ數十
万人ノ學校ヲ出テ來タ者ガ失業ヲシテ仕事
ニアリ就イテ居ラヌ者ハ是ハ統計ニ入レ
テ居ラナイ(拍手)斯ウ云フ風ニ範圍ヲ限定
シテ居ルカラ、玆ニ小サナ數字ガ出テ居
ル
〔「無常識」「出鱈目」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X00719310127&spkNum=39
-
040・安藤正純
○安藤正純君(續) 何ガ無常識ダ、此問題
ハ事實ヲ話シテ居ルノデハナイカ、何ガ出
鱈目ダ、オ前等ニ分ルカ、默ッテ聽イテ居
レ(拍手)
〔發言スル者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X00719310127&spkNum=40
-
041・小山松壽
○副議長(小山松壽君) 靜ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X00719310127&spkNum=41
-
042・安藤正純
○安藤正純君(續) 私ガ玆ニ政府ニ問ハン
トスル所ノ此失業問題ノ如キハ私ガ玆ニ
論及シテ政府ノ責任トシテ問ハントシテ質
問ヲ致シテ居ル所ノ事項ノ如キハ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X00719310127&spkNum=42
-
043・小山松壽
○副議長(小山松壽君) 栗原君御著席ヲ顧
ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X00719310127&spkNum=43
-
044・安藤正純
○安藤正純君(續) 是ハ左樣ナ小サナ政黨
觀念デヤッテ居ルノデハナイ、是ハ國民トシ
テ誰デモ必要ナコトデハナイカ、殊ニ工業
方面ダケデモ政府ノ極端ナル緊縮政策ノ爲
ニ大小ノ各種產業ガ不振ニ陷リ、限產ヲ
ジ、工場ヲ縮小シタリ閉鎖ヲ致シマシタリ
シテ、之ニ因ル所ノ失業者ノ數ト云フモノ
ハ夥シイモノナノデス、殊ニ紡績ノ操短ト、
織物ヤ製絲工場ノ縮小閉鎖ニ因ル所ノ女工
ナドガ失業シテ居リマス數ハ無慮二十万
ヲ以テ算ヘラレルノデアラウト思フ、又海
運界ガ今日稀有ノ悲境ニ基ク所ノ繫船ノ增
加ニ因ル海員ノ失業ト云フモノハ恐ラク
數万人モアルノデアリマス、更ニ最近ニ於
キマシテハ倫敦條約ニ伴フ所ノ海軍縮小ノ
結果、各鎭守府ノ工廠工作部ニ亙シテ整理
ヲセラレル職工ハ、約九千人カラ一万人ニ
及ブノデアル、是ハ現ニ大藏省ト海軍省ト
協議ヲ致シテ居ル次第デアリマスカラ、又
此處ニモ新タル失業者ガ生ジテ來ル次第デ
アル、單リ是ハ工業界ニ於ケル失業者ノ重
ナルモノヲ一二此所ニ言ッタノデアリマス
ガ、更ニ不景氣ノ深刻ニ依リマシテ、ソレ
ガ商人階級ニ影響ヲシテ、大打擊ヲ受ケテ、
其爲ニ商人階級殊ニ中小ノ商業者ガ失業若
クハ全然失業ヲシナイデモ、失業類似ノ狀
態ニ陷クテ居ル者ハ、數万數十万ヲ以テ算
ヘラレルデアラウト思フノデアル、又農村
ニ於キマシテモ、殆ド今日失業狀態ニ陷。
テ居ルコトハ誰ガ見テモ明カデアリマスカ
ラ、是等ヲ統計致シマスト、政府ガ發表ヲ
シテ居ル三十七八万ト云フ數ヨリハ少ナク
トモ三倍ハアルゝ數字ニ直セバ先ヅ今日百
万ノ失業者ガアルト云フコトハ事實デアラ
ウト思フ、政府ニ質問ヲ致シタイ、此點ニ
於テ現在ノ失業統計ノ範圍デス、失業統計
ヲ取ッテ居ル其標準範圍ヲ擴メテ、本當ニ此
失業ト云フモノヽ數ヲ拾タナラバ、私ハ確
ニ此位アルト思フガ、政府ハ之ヲ認メナイ
コトハ出來ナイト思フ、今日ノ失業標準ナ
ラ政府ノ數ガ出ルノデス、本當ニ此失業ト
云フモノニ同情ヲ寄セテ、其範圍ト標準ヲ
鑛メテ實際ニ當ッタナラバ、三倍位ハ出ルト
思フガ政府ハ果シテ之ヲ認メル、ヤ否ヤ、
之ニ對スル內務大臣ノ責任アル御答辯ヲ願
ヒタイノデアリマス、只今マデ言ヒマシタ
コトハ、是ハ政府ノ緊縮政策ニ依ル民間ノ
失業狀態ヲ言"タノデアル、所ガ政府ハ自
ラ手ヲ下シテ大規模ニ失業者ヲ日々製造ヲ
シテ居ルヂヤナイカ(拍手)政府ハ各省ニ
亙テ極端ナル事業ノ縮小、卽チ事業ノ中
止、繰延ヲ行ッテ居ル、昭和四年度ニ於キマ
シテ算盤ヲ取シテ勘定ヲ致シテ見ルト、昭和
四年度ノ豫算ノ削減ノ結果、各種ノ事業費
ヲ削減致シタモノガ約七千万圓ニ及ンデ居
リマス、昭和五年度ノ實行豫算ヲ削減ヲ致
シタモノハ約八千万圓ニ及ンデ居リマス、
更ニ昭和五年度ノ實行豫算ノ施行上、行政
經濟化ト云フ奇妙奇天烈ナル名ニ依ッテ
再度ノ削減ヲ行クタモノガ約四千五百万圓
デアル、是ハ事業費ノ削減ヲ勘定スルト斯
ウ云フ數字ニナルノデアリマス、而シテ此
數字ノ三分ノ一ガ直接、間接ノ勞銀ト見ル
ノガ適當デアラウト思フ、是ダケノ事業費
ヲ削減ヲシタノダカラ、其事業費ノ三分ノ
一ガ勞働者ノ勞銀ト見ルノガ是ガ正當ナル
見方デアラウト思フ、此數字ヲ以テ推算ヲ
シテ見マスルト、勞働者ノ一人一箇年ノ勞
銀ハ三百圓トナル、卽チ一日一圓二十錢ト
シテ、一年二百五十日働クト致シマスト、
勞働者一人一箇年ノ勞銀ガ三百圓ニナル、
其三百圓ヲ四年度、五年度デ削減ヲシタ事
業費ニ割當テテ見ルト、四年度デ政府ガ豫
算ヲ削減ヲシテ、事業ヲ縮小シタ結果、昭
和四年度ニ於テ約七万七千人、昭和五年度
ニ於テ約十三万八千人ノ繼續的失業者ヲ政
府ガ製造ヲシテ居ルト云フコトニナル(拍手)
是ハ一般會計ノコトニ付テノコトヲ言ッタ
ノデアルガ更ニ鐵道會計ニ於キマスル所
ノ建設改良事業費ノ減額デ四年度、五年度
ニ於テヤハリ是ガ數万人ノ失業者ヲ出シテ
居ル、一面ニ日々自ラ事業費ヲ削減シテ失
業者ヲ製造シナガラ、一面ニ失業者救濟ヲ
スルト云フノハ是程明瞭ナル矛盾ハアル
マイデハナカラウカ(拍手)現ニ政府ハ國民
ニ對シマシテ、盛ニ消費節約ノ宣傳、强要
ヲシテ居ルデハナイカ消費ヲ節約シロト
强要シテ居ル、自ラ事業費ヲ削減ヲシテ置
キナガラ、失業者ガ出タト云ッテ世間カラ
攻擊セラレル、ソコデ新ニ失業救濟ノ仕事
ヲ地方ニ起サセテ、サウシテ失業救濟ヲス
ルト云フナラバ、是程政府ガ國民ニ奬メル
所ノ消費節約ノ趣意ニ悖ッテ居ルモノハナ
イ、是程無駄ナ消費ハ天下ニアルマイト思
フノデアル(拍手)政府ガ失業救濟ヲ行フナ
ラバ繰延ヤ中止ヲ廢メマシテ、失業者ノ
製造ヲスルコトヲ止スト云フコトガ先決問
題デハナカラウカト思フ(拍手)內務大臣、
總理大臣ニモ伺ヒタイ、政府ハ勿論此矛盾
ヲ致シテ居ル政策ヲ-致方ガナイノデア
ルガ、矛盾シテ居ル政策ヲ執ッテ居ルト云
フコトヲ御認ニナラナクテハナルマイト思
フォ、內務大臣ニ責任アル答辯ヲ求メタイ
ノデアル、而シテ政府ノ方針ニ依ッテ此繼
續的失業者ヲ又每日々々出シテ居ルト云フ
コトモ御認ニナラナクテハナルマイト思フ
ガ、之ニ對スル答辯ヲ求メルノデアリマス
(拍手)然ラバ政府ノ失業對策ト云フモノ
ハ一體何ヲシテ居ル、第一ニ內務大臣
ガ屢々種々ナル機會ニ於テ發表ヲシテ居
ル、第一政府ノ失業對策ハ不徹底ナル所ノ
職業紹介機關ノ整備デアル所ガ職業紹介
所ト云フモノヲタント殖シモシナイガヽ之
ヲ幾ラ殖シタ所デ職業紹介所ハ職業ノ紹介
ナノデアル、仕事ガアッテコソ紹介ノ役ガ
立ツ、政府自ラ仕事ヲ無クナシ、民間ニ勸
メテ仕事ヲ無クサシメ、產業ヲ不振ニ陷ラ
シメテ、一面ニ職業機關ヲ整備シタ所デ、何
ノ仕事ガ其處ニ生レテ來ル理窟ガアルカ
(拍手)第二ニ政府ガ常ニ公言シテ居ルノハ、
官公營事業ノ調節ト云フコトヲ言ッテ居ル、
官營事業、公營事業ノ調節ハ結構ダ、併シ
調節ト云フコトハ仕事ガ有リ餘ッテ居ルカ
ラ右ノモノヲ左ニ〓シ、左ノモノヲ右ニ廻
シテ、玆ニ本當ノ調節ガ出來ル、今日政府
自ラ仕事ヲ少クシ、世間ノ產業ヲ不振ニ陷
ラシメテ、仕事ハ無イ、仕事ノ無イ所ニ調
節ノアリヤウガナイデハナイカ、事業ガ無
イ所ニ何ノ調節ガアランヤト謂ハナケレバ
ナラヌ(拍手)第三ニ政府ガヤッテ居ル失業
對策ハ何デアルカト云フト地方公共國體
ノ失業救濟事業ノ起工デアル、公債ヲ
借金ヲ地方ニ起サセテ地方ニ失業救濟ヲ
今日マデサセテ居ッタ、政府自ラ何モヤラ
ナイヂヤナイカ、是ハ實ニ可笑シナコトデ
アル、政府ノ政策ニ依ヶテ失業者ヲ造ッテ居
ル、失業者ヲ政府自ラ造リナガラ、其救濟
ハ各地方ノ公共團體デヤレト云フノナラ
バ、是レ明カニ中央政府ガ責任ヲ地方ニ轉
嫁シタルモノニアラズシテ何ゾヤ(拍手)又
斯ノ如クシタ結果今日疲弊困憊シテ居ル所
ノ地方ハ益〓財政ヲ危殆ニ導キ、其結果ハ
今日困リニ困ッテ居ル地方民ガ負擔ノ增
加トナルコトモ亦明カデアラウト思フ(拍
手)之ヲ譬ヘルニ腫物ハ政府自身ガ拵ヘテ
居ッテ、腫レ出シテ膿ガ出テ來ルト、其膿
ハ地方ニ舐メサセテ居ルト云フノガ今日ノ
狀態デハナイカ、而モ政府ハ之ニ依ッテドレタ
ケノ失業救濟ヲシタカト云フト、昭和五年
度ノ各地方〓體ノ救濟事業費ノ豫算ノ總額
ト云フモノハ約五千百十五万圓デアル、
勞力費ノ豫算ガ約一千三百四十八万圓、之
ニ依ッテ救濟サレル見込ノ延人員ガ幾ラデ
アルカト云フト、約七百七十六万人ト云フ
ノダ、政府ハ延人員デ發表ヲシテ居リマシ
テ、是デドレダケノ失業者ガ繼續的ニ救ハ
レテ居ルカト云フコトハ發表ハシテ居ラナ
イ、併シ延人員ノ發表ハシテ居リマスカ
ラ、是カラ推算ヲ致シマスト、一年三百日
勞働者ガ出ルト致シマスレバ、此地方全
體-五年度ノ全體ノ仕事ニ依ッテ救ハレ
ル所ノ勞働者ハ三万七千四百人シカ救ハレ
ナイト云フ勘定ニナル、之ニ對シテ國庫ガ
ドレダケノ補助ヲシテ居ルカト云フト、僅
ニ二百九十四万圓デス是デハ失業救濟事
業ノ九割三分ト云フモノハ地方ニ負擔ヲサ
セテ、僅ニ七分八厘ダケヲ國庫ガ補助ヲシ
テ居ルト云フコトハ餘リニ酷イデハナイ
カ(拍手)而モ是ハ昭和五年度計畫ノ全部ナ
ンデス、地方ガヤッテ居ル仕事ノ全部、所
ガ是ガ實際ニコヽマデヤッテ居ラナイ、昭
和五年十二月ノ二十四日、暮ノ二十四日現
在デハ總額五千百万圓ノ各地方ノ失業救濟
事業ノ中デ、認可濟ノモノハ三千六十万圓
デス、約六割シカ認可ヲマダシテ居ラナ
イ、更ニ其實際ヲ地方ニ付テ調ベテ見マス
ルト實際各地方デ著手ヲシテ居ルモノ
ハ此豫算額ノ二分ノ一シカヤッテ居リマ
セヌ、隨テ實際救濟ヲサレツヽアル所ノ失
業者ハ一万八千七百人、大數二万人ト言ッテ
宜シイ二万人シカ今日マデ救シテ居ラナ
イ、洵ニ驚キ果テタル緩漫無責任、不親切
ナル救濟策ト謂ハナクテハナルマイト思フ
(拍手)私及世間デ知ッテ居ル所ノ現政府ノ
失業救濟策ト云フノハ是ガ全部デアルト
確信致シマス、併シ或ハ私共ノ知ラナイコ
トガアルカモ知レナイカラアルナラバ內
務大臣ニ此席デ御說明ヲ願ヒタイト思フノ
デアリマス政府ハ今囘三千四百万圓ノ失
業公債ヲ發行スルコトニ決シマシタサウ
シテ一日平均約四万人ノ失業者ヲ救濟スル
ト云フ見込ダト稱シテ居リマス、所ガ昭和
六年度ノ豫算ヲ見マスルト、一般會計ニ於
マシテハ一億二千九百万圓ノ巨額ノ節約ヲ
計畫ヲ致シマシタガ、其中此勞銀ヲ含ンデ
居ル各種ノ歲出ニ屬スル節約ト云フモノガ
約九千三百万圓ニ上ッテ居ル、方ニコン
ナ澤山ノ事業費ヲ節約ヲシテ置キナガラ
サウシテ繼續的ニ多數ノ失業者ヲ出シテ置
キナガラ、一方ニ失業公債ヲ發行シテ、失業
ノ救濟ヲスルト云フコトハ、天下恐ラク是程
ノ大矛盾ハアルマイト思フノデアル(拍手)
政府ハ非募債主義ヲ以テ政綱ト致シマシ
テ國民ニ公約ヲ致シタノデアル然ル
ニ其非募債主義ト云フモノハ明カニ此失
業公債ヲ發行シ、茲ニ明カニ破壞ヲセラレ
タト云フコトハモウ天下誰デモ承知ヲシ
ナイモノハアルマイト思フ、或ハ失業救濟
デアルカラ是ハ別ダト大藏大臣ナドハ昨日
モ太田君ニ對スル答辯ニ付テ言ノテ居ラレ
タ、併ナガラ失業救濟ニ政府ガソレ程ノ一
體誠意ヲ初カラ持ッテ居ラナイヂヤナイカ、
又昨年ノ臨時議會ノ時ニ於テモ是ハ問題ニ
ナッタ、而シテ吾々ガ今日マデ注意ヲシタ
コトガ今日事實トナッテ現ハレタノデアル、
井上藏相ハ之ニ對シテハ、成ベク少額ニシ
テ一年限リノ公債ダト、斯ウ言ッテ居ル、可
笑シナ話ナンダ、失業公債デ幾ラ救ヘルカ
ト云フト、失業公債デ四万人シカ救ヘナ
イ、是ハ政府自身ガ發表シテ居ル、地方ノ
方ノ救濟事業ヲ加ヘテモ、五六万人シカ救
ヘナイ是ハ政府ガ發表シテ居ル、而モソ
レガ一年限リデアリマスト、ドウシテモ繼
續的ノ三十七、八万ト云フ政府ガ發表シテ
居ル失業者ダケデモ救濟スルコトガ出來ル
ノデアリマスカ、卽チ一面ニ於テハ事業費
ヲ削減シテ、一面デハ失業公債ヲ發行シテ
居ルノハ確カナ矛盾デアルト云フコトヲ內
務大臣ハ認メナクチヤナラナイ(拍手)又大
藏大臣ガ言明スル所ノ一年限リノ斯ル少額
公債デドウシテ現在ノ失業者ヲ救ヒ得ル成
算ガアルノデアルカ、之ヲ大藏大臣、內務
大臣カラ明瞭ニ答辯ヲ願ヒタイノデアリマ
ス
最後ニ言ハナケレバナラヌコトハ、政府
ガ今日マデ鉦太鼓入デ失業公債、失業救濟
ト云フコトヲ-失業救濟々々々々ト言ッ
テ居ルガ、實際調ベテ見ルト失業救濟ノ本
態ハ斯ル貧弱ナル、不親切ナル、不徹底ナ
ルモノニ過ギナイト云フコト』ガ明カニナツ
タノデアリマスガ、而モ其貧弱、不誠意、
不親切ナル政府ノ失業救濟ハ僅ニ失業者
ノ中ノ日傭勞働者本位ナンダ、失業者ハ敢
テ日傭勞働者ニハ限リマセヌ
次ニ聞カナケレバナラヌコトハ、熟練職工
ハドウデアルカ、熟練職工ノ如キハ最モ必要
ナルモノデアル、政府ハ產業ヲ不振ニ陷レシ
メナガラ、而モ口ヲ開ケバ產業ノ振興ヲ言ッ
テ居リマス、產業ヲ振興スレバ失業者ガ少ク
ナルト云フコトハ常ニ政府ハ言ッテ居ル、所
ガ其產業ヲ振ヒ興スノニ必要ナルモノハ熟
練エヂヤナイカ、又他日段々世ノ中ノ景氣
ガ好クナッテ產業ガ振ヒ興レバ、最モ必要
ナル第一ノ要素ハ熟練職エデアル卽チ熟
練職工ハ一名產業職エデアル、其熟練工
產業職工ノ對策ニ至ッテハ今日マデ何モ手
ヲ著ケテ居ラナイノデアルカ、政府ハ之ニ
對シテ如何ナル考ヲ持フテ居ルカト云フコ
トヲ伺ヒタイノデアリマス、失業對策トシ
テ考ヘルコトハ自由勞働者ノ對策ト、熟練職
工ノ對策トモウ一ツハ知識階級ノ對策デ
アル、之ニ對シテハ內務大臣ト併セテ文部
大臣モ聽イテ置イテ貰ヒタイ、而シテ文部
大臣ノ答辯ヲ促シタイノデアリマス、知識
階級ノ失業對策ハ何ヲ一體政府ガシテ居ル
カト云フト、極ク臨時的ノ寫字ヲサセル
筆耕ヲサセル、此間ヤッタ國勢調査ノ手傳
ヲサセル、或ハ各省ニ於テ極ク低級ノ調査
ノ手傳ヲサセル、或ハ年始狀ヲ書クノニ方
方へ派遣シテ筆耕ヲサセテ居ルサウ云フ
コトノ極ク僅カナコトシカ知識階級ノ失業
者ニ對シテハ仕事ヲ宛行シテ居ラナイ、之
ニ封シテ幾ラ金ヲ使ッテ居ルカト云フト
僅ニ數十万圓シカ使ッテ居ラナイ、是ハ少
額給料者ニ當テルモノ、是ハ極ク僅カナ少
額程度ノ給料取リヲ救フ策トシテ行ハレタ
モノデアリマシテ、ソレカラ以上ノ學校出
ノ者ニ對シテノ失業者ノ對策ト云フモノハ
何ニモアリマセヌ、最近ノ專門學校以上ノ
卒業生、卽チ高等〓育ヲ受ケタ者ト云フモ
ノハ全ク放任ヲセラレテ居ル、言葉ヲ換へ
テ言ヘバ、學校卒業生ト云フモノハ幾ラ仕
事ガナクテモ、ソレハ失業者トハ看做ツテ
居ラナイト云フコトヲ考ヘルト、知識階
級ノ者ハドンナニ失業シテモ、政府ハ
之ニ對シテ對策ヲ講ズル必要ナシト云
フノガ今ノ政府ノ量見デアラウカト
思フ(拍手)試ミニ私ハ統計ヲ以テ簡單
ニ玆ニ內務大臣ト文部大臣ニ示シテ
置キタイ、昭和三年度ノ官公私立ノ
大學ニ於キマシテノ卒業生ト云フモノハ
九千五百十九人アルノデス、所ガ此昭和三
年ノ九千五百人ニ對スル、仕事ニ有リ就ケ
ナイ未就職者ガ四千百二十八人アル、卽チ
四割三分强ノ未就職者デアル、昭和四年度
ニ於テノ官公私立大學ノ卒業生ハ九千九百
九人デアル之ニ對スル未就職者ハ五千七
百二十人デアル、卽チ五割八分弱ノ未就職
者ガアル、更ニ卽チ此表ヲ對比致シマスト、
昭和三年度デハ卒業生ノ四割三分ガ未就職
者デアッタガ、昭和四年度ニナルト五割八分
ノ未就職者ヲ出シタノデアル、更ニ昭和三
年度ノ官公私立ノ專門學校ニ依シテ統計ヲ
取ッテ見マスルト、官公私立專門學校ノ卒業
生ガ一万四千百四十四人、其中ノ未就職者
ハ六千四百九十四人、卽チ四割六分弱ノ未
就職者デアル、昭和四年度ノ官公私立專門學
校ノ卒業者ト云フモノハ一万五千四百三十
九人アル、而シテ其未就職者ガ一万百七十
九人、割ニ致シマスレバ六割六分ノ未就職
者ナノデアル大學ニ於キマシテハ三年
度ノ四割三分ガ、四年度ニナッテ五割八分ニ
增加シ、專門學校ノ方デハ三年度ハ四割
六分デアッタモノガ、四年度ニナッテ六割六
分ニ增加ヲ致シテ居ル、體高等專門學校
ト云フモノハ、農工商其他實業ヲ授ケルノ
ガ高等專門學校デアリマセウ、實業ヲ授ケ
ル專門學校ノ卒業者ガ卒業ヲシテ、ご依頼、
分モ實業ニ就クコトガ出來ナイト云フノナ
ラ何ノ爲ニ政府ハ莫大ナ金ヲ掛ケテ專
門學校ヲ官立ノ手ニ依ッテ經營シテ居ルカ
ト云フコトガ、玆ニ一大問題トナルデハナ
カラウカト思フノデアル(拍手)又今日ノ官
公私立ノ大學ト雖モ、實際職業ニ關スル學
問ヲ修得スルノガ今日ノ大學ニナッテ居ル、
然ルニ此多クノ未就職者ヲ出シテ居ルト云
フコトハ是ハ大ニ注意スベキ現象デハナ
イカト思フノデアリマス、茲ニ中學校ノ現
象ヲ唯一言致シテ文部大臣ノ參考ニ供シ
目ツ注意ヲ喚起致シテ置キタイト思フ、卽
チ三年度ニ於キマスル全國ノ公私立ノ中學
校ノ卒業生合計ハ五万一一千八百八十二人デ
アル、所ガ其中デ未就職者ガ一一万三千八百
八十二人モアル、中學校ノ卒業生ハ上ノ學
校ヘ行ッテ居ル者モアル、官公署ニ奉職シテ
居ル者モアル、〓員ニナッテ居ル者モアル、
實業ニ就イテ居ル者モアル家ノ仕事ヲ助
ケテ居ル者モアルノダカラ、サウ云フ者ヲ
差引イテ、實際仕事ニ從事シテ居ナイ者ハ
四割五分二厘ニ達スルノデアル、此狀態ハ
一國ノ文〓ヲ握シテ居ル所ノ文部大臣ハ現
在及將來、對シテ大、考慮ヲ費サナケレバ
ナラヌ問題デナカラウカト思フ(拍手)是ハ
私ハ此知識階級ノ學校卒業生ノ失業者ハ
私ハ之ヲ呼ンデ危險ナル失業者ト稱シテ居
ル(「其通リ」ト呼フ者アリ)是ハ實ニ將來思
想ノ問題ニ觸レル極メテ大問題デアリマス、
內務大臣ハ此學校卒業生、知識階級ノ失業
者ニ對シテ、親切ナル對策ヲ講ジル考ハナ
イカ、又如何ナル御考ヲ今日準備シツツア
ルカト云フコトヲ、正直ニ此處デ御辯明ヲ
願ヒタイノデアル、又文部大臣ハ之ニ對シ
テ今後ドンナコトヲ考ヘテ居ルカ、若シ此
我ガ日本ノ社會ガ斯ノ如クニ高等〓育ガ必
要ガナイ、高等專門〓育ヲ受ケタ者ガ、却
テ社會カラ容レラレナイデ、飯ヲ食フニモ
困ル失業者トナルナラバ、玆ニ日本ノ〓育
ノ方針ヲ餘程能ク考ヘテ、新ニ指導シナケ
レバナラナイ問題ガ生ジルノデハアルマイ
カト思フ、苟モ文部大臣デアルナラバ、殊
ニ只今ノ文部大臣田中君ハ、實業界ニ御經
驗ノアル人ナノデアルカラシテ、能ク斯ウ
云フ事情ハ一層御分リニナルダラウト思
フ、果シテ此趨勢ニ鑑ミテ、現在ニ於テ如
何ナル對策ヲ、此知識階級ニ對シテ立テル
ト云フ恐ラク準備ガ出來テ居ルダラウ、或
ハ少クトモ實際的準備ハ出來ヌトシテモ、
頭ノ中ニ其位ノコトハ考ヘテ居ルデアラウ
ト思フカラ、玆ニ明白ニ其意見對策ヲ承リ
タイ(發言スル者多シ)-モウ少シハ內容
ノアル彌次ヲヤリ給ヘ、同ジコトバカリ繰
返シテ、ソンナ低劣ナ彌次ハ聽ク耳ヲ持タ
ヌ-持ツ者デハナイガ···
〔「坊主ニ耳ガアルカ」ト呼ヒ其他發言
スル者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X00719310127&spkNum=44
-
045・小山松壽
○副議長(小山松壽君) 靜肅ニ願ヒマス
〔「早クヤリ給へ」ト呼ヒ其他發言スル
者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X00719310127&spkNum=45
-
046・小山松壽
○副議長(小山松壽君) 御互私語ヲ止メテ
戴キタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X00719310127&spkNum=46
-
047・安藤正純
○安藤正純君(續) 私ハ此失業對策ニ關聯
ヲ致シマシテ、玆ニ救護法ノ問題ニ付テ、
一言承ッテ置キタイノデアル(拍手)今年ハ
此救護法ノ實施ヲ今ノ政府ガシナイト云フ
コトハ何レノ方面カラ見テモ全ク不可解
デアッテ、其態度ヲ解スルニ苦ム、第一ニ救
護法ト失業問題トハ是ハ問題ガ違ヒマス、
問題ハ違フガ、救護法ガ玆ニ實施ヲサレレ
バ、間接ノ失業緩和トナルト云フコトモ亦
事實デアラウト思フ(拍手)昨年臨時議會ニ
於ケル內務大臣ノ答辯ノ如キハ全ク的ヲ
外レテ居ル、卽チ日本ハ家族主義デアルカ
ラ失業ガ緩和ヲサレル、日本ニハ小サナ商
工業者ガ多イカラ失業ガ緩和ヲサレル、是
ハ全ク的外レデアル、家族主義ナルガ爲ニ
失業ト云フコトヲ、親ヤ兄弟ニ心配カケル
ノハ辛イト云フ爲ニ、失業ヲ隱シテ居ル爲
二、益、失業ニナルト云フコトニナッテシマ
フノデアル、如何ニ家族主義デアラウトモ、
仕事ガナイト云フノダカラ、目付カル譯ガ
ナイノデアル、又小サナ商工業ガ日本ニ多
イカラ緩和ヲサレルノデアルナドト云フケ
レドモ、今日此政府ノ政策ノ結果大打擊、
一番甚大ナル打擊ヲ受ケテ居ルノハ小サ
ナ商工業者デアルノデアリマスカラ、之ニ
依ッテ失業ガ緩和ヲセラレルナント言フノ
ハ、飛ンデモナイ的外レノ議論デハナカラ
ウカト思フ(拍手)ソレヨリハ救護法ノ實施
ヲサヘスレバ、ソレコソ問題ガ違フガ、失
業緩和ニナルト云フコトハ明カナ事實ヂヤ
アルマイカト思フノデアル(拍手)第二ニ、
昨日モ大藏大臣ガ答辯ヲシテ居タガ、財源
ガ乏シイト言ノテ、救護法ノ財源ニドウシテ
乏シイノカト云フコトヲ私ハ疑フ、國民負
擔ノ輕減ノ爲ニ殘サレタ所ノ此軍縮餘剩財
源、其負擔輕減ノ先決問題トシテ、僅カナ
ル救護法ノ實施ニ充テルト云フノガ寧ロ當
然ノコトデハナカラウカト思フノデアル、
(拍手)第三ニ、ドウシテモ此處ニ考ヘ及ブ
ノハ一體此救護法ト云フモノハ、政友會
内閣ノ時ニ第五十六議會ニ提出ヲシタモノ
デアリマシテ、昭和四年ノ三月二十三日ニ
兩院ヲ通過シテ居ル、共時ニ附帶決議トシ
テ、本法ハ昭和五年四月一日ヨリ之ヲ實施
スベシト云フ決議ヲサレテ居ルヂヤナイ
カ、政府ガ提出ヲシタ時ハ實施ハ勅令ヲ
以テ定メルト云フコトニナッテ居シタ當時
委員會等ニ於テ最モヤカマシク言ハレテ、
實施期限ハハッキリ決メナケリヤナラヌト
主張ヲセラレタノハ、アナタ方民政黨ノ諸
君デハナカッタカ(拍手)其結果玆ニ昭和五
年四月一日ニ實施スルト云フ決議ヲサレテ
居ルヂヤナイカ、此議會ニ對スル所ノ民政
黨ハ責任ガアルノヲ、今日此議會ノ責任ヲ
諸君ハ忘却ヲセラレタノヂヤナカラウカト
思フノデアル(拍手)殊ニ全國ノ國民ガ之ヲ
要望致シテ居ル、共國民ノ中カラ選バレテ
居ル所ノ全國ノ方面委員ハ、昨年カラシテ
屢〓會議ヲ開キ、大會ヲ開イテ、非常ニ熱烈
ナル希望ヲ發シ、熱烈ナル運動ヲ致シテ居
ルノデアル、全國ノ町村長モ亦之ヲ熱望致
シテ居ルノデアル、之ニ對シマシテ政府當
局ノ冷淡無情、實ニ驚クニ餘リアルノデア
ル(拍手)洵ニ小サナ話デアルカモ知レナイ
ガ、玆ニ唯一例ダケ私ハ言ッテ置ク、是ハ實
際ヲ私ハ知ッテ居ルカラシテ言ッテ置ク、昨
年ノ十一月ノ末ニ全國ノ方面委員ノ代表ノ
陳情委員ガ內務大臣ヲ訪ネ、大藏省ヲ訪ネ
テ、大藏大臣、大藏政務次官等ニ陳情ヲシ
タノデアル、內務大臣ハ自分ノ責任デアル
カラ一通リノ御挨拶ガアッタサウダガ、大藏
大臣ナドニ至ッテハ言語道斷、一體諸君ガ方
面委員ト云フガ-大藏大臣ハ今向フヘ
行ッタガ、後デ誰カカラ傳ヘテ貰ヒタイ、
體方面委員ト云フモノハ何ヲスルノカ、ド
ウ云フ仕事ヲスルノカト云フヤウナコトヲ
頭カラ聞イテ-聞イタ擧句ニ、世ノ中ニ
ハ方面「ブローカー」ト云フモノガアルト云
フヤウナ言葉ヲ弄シテ、其時行ッタ者ハ皆
私共ニ斯ウ云フコトヲ言ッテ居ル、マルデ、
行ァタ方面委員ハ井上大藏大臣ニ「メンタル
テスト」ヲサレニ行ッタヤウナモノデアル、
國民全體ノ熱望ヲ抱イテ、早ク實施シテ吳
レト云フ、其陳情ニ行ッタ吾々ヲ取ッ捕マヘ
ラ「メンタルテスト」ヲ行ヒ、方面委員ハ一
體何ヲスルノデアルカ、斯ノ如キ冷淡無情
ナル態度ヲ執ルニ至ッテハ實ニ酷イモノデ
アルト言ッテ吾々ニ愬ヘテ居ル、小川大藏政
務次官ノ如キハ腰スラ掛ケナイデ、中腰ニ
ナッテ方面委員ニ會ッテ、前ニ進ムヨリハ、
財源ガナイ、財源ガナイト一口言ッテハ後ヘ
引退ッタト言ッテ非常ニ怨ンデ居ル(拍手)斯
ノ如キ冷酷不人情、己レノ同胞ノ憐レナル
者スラ救フコトニ對スル所ノ親切ナル〓情
ノ一片スラナイ所ノ財政當局デアルカラ、
僅カナ救護法ノ實施ガ出來ナイノデアルト
斯ウ思フノデアルガ、之ニ對シテ何故內務
大臣ハ之ヲ押シテ、此急要ナル問題ヲ實施
セシメル所ノ威力實力ガナイカト云フコト
ヲ、玆ニ私ハ御伺ヲ致シタイノデアル(拍
手)方面委員ハ非常ナル憤慨ヲ致シマシテ、
今日ハ最早政府ニ縋ノテモ仕方ガナイカラ
ト云フノデ、上奏ノ準備ヲ致シテ居ル、上
奏ノ準備ヲシテ、其上奏ノ責任ヲ引キマシ
テ全國ノ方面委員一齊ニ辭職ヲシヨウト云
フ決心ヲ致シテ居ルノデアリマス、大臣諸
君ニ玆ニ忠〓致シテ置ク、是ハ國民全體ノ
要求デアル、又吾々ハドウシテモ之ヲ實施
セシメナケレバナラヌト思フノデアリマス
カラ、玆ニ國民ヲ代表シテ之ガ實施ヲ政府
ニ勸〓、忠告致シテ置クト云フコトヲ能ク
承知ヲシテ貰ヒタイノデアリマス
最後ニ今一ツ政府ニ質問ヲシナケレバナ
ラナイコトガアルノハ勞働組合法ノコトデ
アル、勞働組合法ト云フモノヲ政府ハ一體
ドウスルノカ、之ニ對シテハ民政黨內閣ハ
深イ行掛リト歷史ヲ有ノテ居ル筈デアル、加
藤內閣ノ時ニ於キマシテ、卽チ第五十一議
會ニ於キマシテ、勞働組合法ヲ此議會ニ提
出ヲシタノハ當時ノ憲政會ノ內閣デハナイ
カ、當時ハ勞働組合調停法案ト勞働組合法
案トヲ合セテ提出ヲシテ同ジク是ガ委員會
ニ掛シタ、委員會ハ一月有餘是ガ審議ニ費
サレマシタ、而シテドッチニ餘計質問ガアツ
タカト云ヘバ、組合法ノ方ヲズット質問ヲ
シテ來タ、一月經シタ以後ニ愈〓委員會ニ於
テハ質問ヲ終了シテ討議ニ掛ラウト云フト
キニ、民政黨側出身委員諸君ハ是ハ組合
法ハ後ニ延バシテ調停法案ダケノ討議ニ掛
ラウト云フコトヲ主張シタ、吾々政友會ノ
委員ハ左樣ナコトハナイヂヤナイカ、質問
ハ旣ニ終了シテ居ルノデアルカラ同ジク討
議ニ掛ラウト言シタガ、肯カナイデ到頭切離
シテツマッテ、調停法案ダケノ審議ヲ進メ
テ委員會ヲ終了シテ、本會議ニ於テ勞働爭
議調停法案ダケヲ成立サセテ、組合法ヲ置
イテケボリニシテシマッタ、議會ニ自ラ提出
シテ置イテ、憲政會出身ノ委員ヲ使嗾シテ
之ヲ握潰サシタノハ、當時ノ憲政會內閣ノ
責任デアル(拍手)第二囘ニ此組合法案ガ提
出ヲサレタノハ、其次ノ第五十二議會デア
リマス、第五十二議會ニ於テハ又勞働組合
法案ヲ提出ヲシタガ、提出ヲシタ時期ハ、
私ハ是ハマダ能ク調ベテ置カナカッタガ、是
ハ恐ラク二月ノ半バダト思ヒマス、而シテ
審議ヲヤラウト思ヘバ日ハアッタノダガ、委
員長ガ遂ニ之ヲ開カナイ、遂ニ三月ノ二十
二三日ノ時ニ於テ、本會議ノ議場ニ於テ、最
早審議ノ餘日ガナイカラ、此法案ハ今議會
ニ於テハ審議ハ進メマセヌト云フコトヲ本
會議デ宣告ヲシテ瞹味模稜ニ附シ去ッテシ
マッタノデアル、ソコデ私ハ非常ニ不審ヲ
持ッテ居ルノデアル、今度ハ民政黨內閣ガ
非常ニ熱心ニ組合法ヲ出スト云フコトヲ宣
傳ヲシ、殊ニ安達內務大臣ノ如キハ非常ナ
ル熱心ヲ以テ之ニ掛ッテ居ル、實ハ私ハ不思
議ニ感ジタノデアル、自ラ人ニハ思想ノ系
統ガアル、安達內務大臣ノ思想ニシテ、ア
ノ社會局案出ノ勞働法案ヲ內務大臣ガ提出
ヲスルノハ少シ思想ノ行キ方ガ違フト思ッ
テ、實ハ之ヲ不審ニ思ッテ居〓タ(拍手)ケレ
ドモ勇敢ニモ內務大臣ハ之ヲ自ラ引受ケテ
提出シヤウト云フ、然ルニ一度、實業家、資
本家ノ反對ニ會フヤ、忽チシドロモドロニ
ナリマシテ、今日ハドウ云フ狀態ニアルノ
カ、本當ニ政府ガ之ヲ出ス意ガアルナラバ、
敢テ實業家ヲ二度マデモ呼ンデ、懇談會ト
稱シテ其意見ヲ徴スルマデモナイデハナイ
カ、止スナラ止ス、出スナラ出ス、政府ニ
於テ之ヲ決メテ宜イ譯デアルガ、今日如何
ナル狀態デアルノカ、私ガ推測致シマスノ
ニ、斯ウナッタ以上ハ行懸リ上出サナクテ
ハ政府ノ面目ガ第一立タナイ、ソコデ、恐
ラク提出ハ致シマセウガ、第五十二議會ノ
故智ヲ做ッテ、恐ラク一月ノ中旬位ニ提出
ヲシテ、衆議院ニ於テ審議未了、握潰シニ
シテ御茶ヲ濁スノガ關ノ山デハアルマイカ
ト思フ(拍手)サウ致シマスト、結論ハ、ア
ア云フ法案ヲ玆デ成立サセル熱心モ誠意モ
ナイノデアルガ、唯勞働階級ニ對スル所ノ
表向キノ歡心ダケヲ買ハントスルノガ、政
府ノ本當ノ肚デハアルマイカト思フ(拍手)
失業問題ト云ヒ救護法ト云ヒ、勞働組合法
ト云ヒ、斯ル社會問題、社會政策ニ關スル
問題ニ對シテ現政府ノ態度ハ洵ニ不親切、
無諒解、無誠意極マルモノデアルト云フコ
トヲ私ハ斷言スルニ憚ラナイノデアル(拍
手)願クハ大臣諸君ハ之ニ對シテ胡麻化サ
レナイデ、簡單明瞭ニ御答辯アランコトヲ
希望致シタイノデアリマス(拍手)
〔發言スル者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X00719310127&spkNum=47
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048・小山松壽
○副議長(小山松壽君) 靜肅ニ願ヒマス
〔國務大臣安達謙藏登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X00719310127&spkNum=48
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049・安達謙藏
○國務大臣(安達謙藏君) 只今ノ安藤君ノ
御質問ニ對シマシテ、其要點ダケヲ成ベク
簡單ニ御答スル積デアリマス
最初ニ安藤君ハ世界ノ失業者ノ大勢ヲ話
サレマシテ、世界ノ經濟組織ガ變ルカラ、
失業者ガ多少アルト云フ言葉ヲ御使ヒニ
ナッタヤウデアリマスガ、私ノ見ル所ハ-
新聞ノ報ズル所ハ誰モ知テ居リマスガ、世
界ノ失業者ノ數ハ、日本ノ比較ニナラナイ
程各國共ニ多イノデアリマス、簡單ニ申上
ゲマスト、英國ガ二百三十万、米國ガ三百
万、獨逸ガ三百七十万ト云フ大多數デアリ
マス、ソレデ安藤君ハ日本ノ失業者ガ激增
スルノヲ私ガ大變輕ク視テ居シタ、斯ウ云フ
御言葉ガアリマシタガ、私ハ決シテ輕視シ
テハ居リマセヌ、輕視シテ居リマセヌガ、
サレバト云ッテ今日ノ我國ノ失業ノ狀態ハ
安藤君ナドノ御考トハ事實ガ違シテ居リマ
ス、何トナレバ安藤君ハ十月一日ノ國勢調
査ニ依ッテ調ベテ統計表ヲ御信用ニナラナ
イ、其統計ト社會局ノ統計トハ安藤君
ノ御話ノ通リ、若干--五六万ノ差ガアリ
マシタ、併ナガラ大勢ハ社會局デ推定シテ
居リマシタノト、此十月一日ノ國勢調査ト
ハ甚シキ差ガナカッタ、唯東京方面ガ大分
違ッテ居リマスガ、他ハ推定數ト國勢調査
ニ依テ調ベタノトハ大體ニ於テ似寄ッテ居リ
マス、是ハ大變喜バシイ傾向デアリマス(拍
手)少カラザル金ヲ使ヒマシテ、玆ニ作リマ
シタ所ノ國勢調査ノ統計ニ根據ヲ置カヌト
云フコトハ、甚ダ無理ナ話デアラウト思フ
(拍手)而シテ如何ナル事ヲ社會局ガ爲シタ
カ、又失業者ノ數ハドウナルカト云フコト
ノ大勢ヲ御話シマス、失業者ノ數ハ昨年ノ
初メカラ臨時議會ノ頃マデ成程一旦激增ハ
シテ居リマシタ其頃ハ議場ニ於ケル所ノ
御話モ中々三十万四十万デハ止マラナ
イ五十万、六十万、或ハ百万ニナルダラ
ウト云フコトデアッタ、所ガ豈圖ランヤ、十
月一日ノ調査ヲ見ルト三十二万幾ラデア
ル、所ガ之ニハ理由ガアル--私ハ失業者
ガ減ズルトハ思シテ居リマセヌ、併ナガラ激
增シナイ理由ヲ玆ニ御答シナケレバナラ
又、激增シナイコトハ事實デアリマス、其
原因ハ何カト云フト、第一ハ勿論此不景氣
ノ結果各工場トモ閉鎖シテ居シタモノガ、モ
ウ其閉鎖ガ無クナテシマッテ、ソレガ一轉
シタ、ソコデ職工ノ解雇セラレルヤウナ者
ハ比較的ニ少クナッテ、モウ不景氣ガ底ヲ突
イタ、サウシテ其變リ目ハドウカト中シマ
スト、地方ニ於テ紡績會社ハ勿論、其他絹
織物トカ綿織物ノ會社ナドガ非常ニ今活氣
ヲ呈シテ來テ居ル、ソレダカラサウ云フ事
カラシマシテモ失業者ハアナタ方ノ御想像
スルヤウニ激增致シマセヌ、ソレカラ第二
ニハ安藤君モ言ハレマシタガ、吾々ハ地方
ニ確ニ事業ヲ起シタ、失業公債ヲ以チマシ
テ事業ヲ起シタコトガ各地ニ非常ナ大影響
ヲ及ボシテ居リマス、又農林省ガ七千万圓
ノ金ヲ貸付ケルコトモ其中ノ一部デアリマ
ス、ソレニ依テ失業者ガ大變緩和セラレテ
居リマスカラ、諸君ノ御想像ノ如ク激增シ
マセヌ、今安藤君ノ御話ノ通リ、昭和五年
度ニ地方ニ於テ五千万圓以上ノ事業ヲ起シ
タ、是デ一日ニ延人員四万一千人ガ救ハレ
ルコトニナッテ居リマスガ、更ニ昭和六年度
ニ於キマシテハ、玆ニ失業公債ヲ起シマシ
テ事業ヲ致シマスカラ、之ニ依ッテ勞働者ノ
救濟セラレル所ノ者ガ非常ニ增加致シマシ
タ(「ドノ位增加シマシタカ」ト呼フ者アリ)
ソレハ延人員ハ略シテ置キマスガ、一日ニ
平均豫定人員ガ八万一千四百人以上ニナル
豫定デアリマス、是デ失業者ハ大變緩和セ
ラルヽ、ソレハ失業者ノ中ニ於キマシテモ、
昭和五年度ニ於テモ、自由勞働者ガ十七万
人デアッテ、其救濟ヲ要スル者ガ十一万人、
ソレデアリマスルカラ、半分以上ハ此經費
ニ依ッテ救濟セラルヽト云フコトニナッテ居
ル(拍手)
ソレカラ玆ニ特ニ御話シナケレバナラヌ
コトハ、安藤君ハ大變輕視セラレマシタケ
レドモ、職業紹介所ノ活躍ヲ玆ニ御話シテ
置キタイト思ヒマス、職業紹介所ハ今日幾
ツアルカ、前内閣ノ頃ニ二百六十バカリア
リマシタノガ、今日ハ殖エマシテ、全國ニ
三百七箇所ニナッテ居リマス(「ソンナ事ハ
何ニモナラヌ」ト呼ヒ其他發言スル者多シ)
何ニモナラヌコトハアリマセヌ-所デ一
般ノ勞働者ヲ一年ニ幾人是ガ紹介シテ居ル
カ、是ハ日傭勞働者デハアリマセヌヨ、其
勞働者ヲ紹介シテ居ル中ニハ、小僧モ、女
中ナドモ含ンデ居リマス、ソレガ全國ニ於
キマシテ約五十七万人ハ紹介シテ居リマ
ス、其他ニ日傭勞働者ハドレダケ紹介シテ
居ルカト云フト日傭勞働者ハ四百五十万
人紹介シテ居ル(拍手)是ハ延人員デハナイ
〔發言スル者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X00719310127&spkNum=49
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050・小山松壽
○副議長(小山松壽君) 靜肅ニ願ヒマ
ス-私語ヲ禁止致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X00719310127&spkNum=50
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051・安達謙藏
○國務大臣(安達謙藏君)(續) ソレカラモ
ウ一ツ特ニ御話シテ置カナケレバナラヌコ
トハ、朝鮮人ノ勞働者デアリマス、朝鮮人ノ
勞働者ハ、御承知ノ通リ非常ニ澤山內地ニ
入ッテ働イテ居リマス、朝鮮ノ方ニ於テ今年
モ事業ヲ起シマシタ、來年ノ如キハ六千五
百万圓カノ事業ヲ起スコトニナッテ居リマ
スカラ、現在朝鮮ノ方ニ事業ガ著々起ッテ
來マシタ爲ニ、內地ノ方ニ渡航シテ來ル者
ガ段々少クナリマシタ、ノミナラズ此方ニ
居ル者モ、朝鮮ノ方ヘ歸ルヤウニナッテ居リ
や っ、ソレガ爲ニ非常ニ影響ガアリマス、
ソレカラ事業ヲ縮小シテ、サウシテ一方ニ
失業救濟ヲスルト云フコトハ矛盾デハナイ
カ、斯ウ云フコトデスガ、ソレハ國家ノ大
局カラ緊縮政策ヲ執ッテ、サウシテ一方ニ失
業者ガ出タノヲ、之ヲ若干救濟スルコトハ
當然ナ話テアル
ソレカラ今年ノ中ニ、特ニ失業者ノ多イ
所ハ何ト申シテモ東京及ビ橫濱方面デアリ
マスカラ、之ニ國家直接ノ事業ヲ起シテ、
三百万圓ノ金ヲ投ジテヤル、國家ガ何モシ
ナイシナイト云フ事ヲ類ニ仰シヤイマスガ、
サウデハナクシテ、國家ハ此京濱間ニモ、
明年ハ又全國ニ向ッテ、土木事業ヲ起スト云
フ所ノ計畫ヲ立テヽ居ルノデアリマス、是
デ失業ハ大變緩和セラレルコトヽ考ヘテ居
リマス
ソレカラ救護法ノ御尋ニ付キマシテハ
先刻モ御答致シテ置キマシタガ、玆ニ私御
答致シテ置キマス、安藤君ノ御尋ノ通リ
私度々方面委員ノ人ニ會,テ居リマス、救護
法ヲ實施シタイト云フコトハ全然御同感デ
アリマス、又民政黨モ、救護法ヲ實施スル
事ニ對シテハ非常ニ熱心デアリマス、唯今
日未ダ其財源ヲ發見致シマセヌカラ、大藏
大臣ト度々交渉致シマシテ、此救護法ノ財
源捻出ニ今日努メテ居ルト云フコトヲ申上
ゲテ置キマス(拍手)
ソレカラ勞働組合ノ事ニ付キマシテ、安
藤君御尋デアリマシタガ、是ハ近日提案ス
ル積リデアリマス、安藤君ハ此勞働立法ニ
付テハ大變御熱心デアリマスガ、單リ安藤
君ノミナラズ、確ニ此勞働問題ノ如キハ黨
派ヲ超越シテ考慮シタイト思ヒマスカラ、
ドウゾ政友會ノ諸君ニモ御贊成アランコト
ヲ希望シテ置キマス(拍手)
〔國務大臣田中隆三君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X00719310127&spkNum=51
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052・田中隆三
○國務大臣(田中隆三君) 只今安藤君ヨリ
御尋ノ事ハ內務省所管ノ失業者ト云フ事
ト關聯シテノ御尋デアリマシタガ、多分本
大臣ニ對シテハ、學校ヲ卒業シテ就職セザ
ル者ニ付テノ御尋デアラウト思ヒマス、國
家、府縣、市町村等ヲ通ジテ五億三千六百
万ト云フ大ナル金ヲ費シテ、折角〓育ヲ致
シマシタ其人ノ中ニ、其職ヲ得ザル者ガア
ルト云フ事ニ付キマシテハ安藤君ト共ニ
頗ル遺憾ニ存ジテ居リマス、洵ニ殘念ナ事
ト思ヒマス、併ナガラソレニ付キマシテハ、
多少皆樣ニモ御考慮ヲ願ハナケレバナラヌ
事ガアルト思フ、ソレハ今日ノ我國ノ〓育
制度ノ上ニ於テ、小學校、中學校、高等學校等
ハ、普通〓育ヲ授ケル場所デアルト云フコ
トヲ、ハッキリ〓育令ノ中ニ書イテ、而モ其
各法令ノ初メニ書イテアルノデアリマス
然ルニ實際ノ事實ニ於テハ此學校ヲ出テ
直チニ民間ソレ〓〓ノ事業ニ就職スルト云
フ意味ヲ諒解シナイカ、兎角ニ唯小學校ヲ
卒業シタ者ハ中學校ニ走リ、中學校ヲ卒業
シタ者ハ高等學校ニ行ク、又大學ニ行クト
云フヤウナ人ガ多イノデゴザイマシテ、直
チニ實際ノ世間ノ仕事ニ直接スベキ運命ヲ
持ッテ居ルト云フコトヲ理解シナイ者ガ、父
兄-子供ガ分ラヌト云フナラバマダ宜シ
ウゴザイマスケレドモ、其父兄タル人ニ於
テモ、其點ニ付テ注意ガ足ラヌノデアリマ
ス(拍手)ソレ故ニ自分ハ就任以後殊ニ此點
ニ注意ヲ致シマシテ、先ヅ以テ小學校生徒
ニ對シテハ其環境、其力等ニ應ジテ小學校
ヲ出タ以上ニ進ムベキ針路ヲ指導スルコト
ニ大ニ力ヲ用ヒテ居ルノデアリマス(拍手)
又更ニ進ンデ中學校ニ致シマシテモ、事實
ハ三分ノ二ト云フモノハ志望ハ皆上級ノ學
校ニ進マウトシテ居リマスケレドモ、事實
ハ其三分ノ一シカ、外ノ學校ニハイレヌ
三分ノ二ト云フモノハ、兎ニモ角ニモ、否
デモ應デモ實際ノ社會ニ出テ、ソレ〓〓ノ
仕事ニ就カナケレバナラヌ、サウ云フ運命
ヲ持ノテ居ルノデアル、然ルニ中學校ニ於テ
ハサウ云フ運命ニ應ジタダケノ素養ヲ養
フト云フヤウナ事情ニナッテ居リマセヌ、
ソレ故ニ中學校ノ制度ニ於キマシテモ此度
制度ヲ改メマシテ、中學校ヲ一種ト二種ト
ニ分チマシタ、同ジ中學校ノ中ニ於テ、三
年カラ以上ニナリマスト、四年、五年ヨリ
更ニ進ンデ高等學校ニ進ム者ト、實際ノ仕
事ニ就ク者トノ間ニ、ソレ〓〓ノ素養ヲ授
ケルコトヲ別ニスル制度ヲ立テタノデアリ
マス、是ハ來年度カラ實施スルコトニナッタ
ノデアリマス、サウ云フヤウナ意味合ヲ以
テ、ソレ〓〓根本的ニ、就職上ニ付テノ不
平均ノ出ナイヤウニ努メテ居ル積リデアリ
マス(拍手)固ヨリ其生徒ニ依ッテハ斯ル素
養ヲ與ヘマシテモ、世間ノ不景氣等ノ爲ニ
實際ニ於テ就職ニ困難ヲ感ズルコトハ、是
ハ已ムヲ得ザルコトヽ思ヒマス、併ナガラ
茲ニ念ノ爲ニ申上ゲテ置キマスガ、卒業シ
テ就職セザル者ノ統計、是ハ安藤君御指摘
ニナッタモノニ間違ヒガアルトハ申上ゲマ
セヌガ、是ガ中々調ベラレヌノデアリマス、
ソレ〓〓ノ學校ニ御賴ミシテ、其卒業者ノ
就職先等ヲ御尋シテ居リマスケレドモ、學
校デモ中々ハッキリセヌモノト見エマシテ、
御返事ガ旨ク集ラナイカラ、統計ノ上ニ、
所謂就職セザル者ト云フ方ノ數ガ中々減シ
テ來ナイ、又直チニ就職スルト云フコトハ、
サウ云フ人モアリマセウケレドモ、ヤハリ
相當ノ月日ガ經〃テソレ/〓納マル、東京ノ
學校デアリマスレバ、卒業後東京ニ於テ直
グ就職スル人モアリマセウケレドモ、又當
分然ルベキ所ガナクシテ、一旦家ニ歸シテ、
然ル後ニソレ〓〓ノ場所ニ就職スルト云フ
者モ、諸君モ御見聞ガアリマセウガ、多々ア
ルノデアリマス、ソレ故ニ實際ノ就職率ト、
本當ニ就職シ得ザル者トノ區別ハ、文部省
ニアル統計ニ付テ相當ナ斟酌ヲシテ御考ニ
ナッテ戴カナケレバナリマセヌ、併ナガラ卒
業生ヲ通觀シテ見マスト、實業方面ニ關ス
ル卒業生ノ就職率ト云フモノハ非常ニ宜シ
ウゴザイマス、先程專門學校ニ付テノ統計
ノ御話ガアリマシタガ、實業專門學校ノ方
ヘ、五年ノ非常ニ不景氣ナ時代デモ八割以
上就職致シテ居リマス、實業ニ關係ノナイ
方ノソレ〓〓ノ仕事ニ付キマシテハ、遺憾
ナガラ非常ニ其率ガ惡イト云フコトハ事實
デアリマス、大體文部省ニ關スル限リニ於
テ、只今申シマシタ通リ、直接ノ所管ト致
シマシテハ、所謂失業者救濟云々ト云フ職
務ハ私ノ方ニアリマセヌ、併ナガラソレノ
ノ各學校ノ主任者ト共ニ、卒業生ノ前途ニ
付キマシテハ、有ラン限リヲ盡シテ、ソレ
ゾレノ就職等ヲ周旋致シテ居リマスコトハ
事實デアリマス、之ニ依ッテ御承知ヲ願ヒマ
ス
〔安藤正純君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X00719310127&spkNum=52
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053・安藤正純
○安藤正純君 只今內務大臣、文部大臣カ
ラ御答辯ガアリマシタ、內務大臣ノ御答辯
デハ、英吉利ヤ亞米利加等ハ非常ニ多イガ、
日本ハ之ニ對スレバ少イト云フコトデアル
ガ、ソレハ當然ノコトデアル、英吉利ヤ亞
米利加等ニ於キマシテハ、或ハ勞働組合法
ノ設ケモアリ、サウ云フヤウナ組織ガアッ
テ、失業者ノ數ガ集マルヤウニナッテ居ル
ノデアリマス、所ガ日本ハサウ云フ設備モ
何モナイノデアリマスカラ、失業者ノ數ガ
サウハ其處ニ出テ來ナイ、其處ヘ持ノテ來
テ、社會局ノ統計ノ取リ方ガ態〓小サク取〓
ルヤウニ出來テ居ル、是ハ內務大臣モ明カ
ニ、社會局ノ統計ハ決シテ完全トハ言ヘナ
イト云フコトヲ、現ニ昨年ノ臨時議會ニ此
處デ答辯シタヂヤナイカ、アナタガサウ云
フコトヲ忘レチヤ困ル、不完全ナル統計デ
アルカラ、國勢調査ヲヤルノガ好イ時機デ
アッタノニ、其際本當ノ失業者ノ數ヲ得ルヤ
ウニナゼヤラナカッタカ、不完全ト自ラ認メ
テ居ル所ノ此社會局ノ統計ヲ基礎ニシテ國勢
調査ヲヤッタカラ益、國勢調査ガ小サタ出
ルノハ當リ前ヂヤナイカ、卽チ政府ハ意識
的ニ小サクシタノデアルト云フコトヲ私ハ
言ウタノデアル、所謂國勢調査ト、社會局
每月ノ調査ト、數ガ成ベク合フヤウニ、初
メカラ小サクシテ持ッテ行ッタカラ、サウ云
フ數ガ出ルノハ當リ前ヂヤアリマセヌカ
ソレカラ更ニ內務大臣ハ、失業者ノ數ハ殖
エテ居ラナイト云フガ、一體何ヲ言ッテ居
ル、ソレハ私ガ此處デ言ッタデハナイカ、昭
和四年ノ九月カラ昨年ノ十月マデニ及ビマ
シテ、唯一箇月カ二箇月ノ例外ノアル外ハ、
ズット激增シテ居ル、每月々々累增ヲシテ居
ル、是ハ統計上ノ數字ノ問題ナノダカラ、
嘘モ僞リモナイ、アナタハ社會局カラ數字
ヲ取寄セテ居ルガ、其處ニ吉田社會局長官
ガ居ルカラ、一遍聞イタラ分ルヂヤナイカ、
一箇月カ二箇月ノ例外ハアルガ、每月累增
シテ居ル數字ガ現ニ出テ居ル、少クナッタ
ト云フノハドウ云フコトデアル、現內閣ガ
失業統計ヲ始メタ一昨年ノ九月ト、一年經〃
タ昨年ノ九月ト、其一年ノ間ニドウシテ十
三万人殖エルノダ、卽チ失業救濟ト云フコ
トニ付テ碌ナ仕事ヲシテ居ラナイカラ、玆
ニ十三万人殖エタト云フコトハ、是ハ事實
ニ於テ政府ノ救濟ノ無效ナルコトヲ物語ッ
テ居ルモノデゴザイマズ、又段々失業者ガ
ナクナッテ來ルト云フ、左樣ナ頓デモナイ樂
觀ヲシテ居ルコトガ、此問題ヲキメル上ニ
於テ非常ナ誤リノ根據トナル、昨年樂觀ヲ
シテ居タカラ、今日十三万人モ殖エテ來タ、
況ヤ十三万人殖エタナドヽ云フコトハ是
ハ政府ノ統計ヲ基礎トシテノ話デアル、本
當ノコトヲ言ヘバ三十七万ヤ八万デハナ
イ、確ニ百万人ハアル、是ハ當リ前デアル、
是カラ無クナルト云フヤウナ、左樣ナ社
會ニ同情ノナイ、社會問題ニ理解ヲ持ッテ
居ラナイ內務大臣ガ、左樣ナ對策ヲ講ゼラ
レテハ國民同胞ハトンダ災ヲ受ケナケリ
ヤナラヌト云フコトヲ私ハ申スノデアル、
又地方ニ起債事業ヲサシテ居ルト言ウテ居
ル、地方ノ起債事業··
〔「社會ニ同情ガナイトハ何ダ」ト呼ヒ
其他發言スル者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X00719310127&spkNum=53
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054・小山松壽
○副議長(小山松壽君) 靜肅ニ願ヒマ
ス-靜肅ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X00719310127&spkNum=54
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055・安藤正純
○安藤正純君(續) 地方ニ對スル所ノ起債
事業ガ效ヲ奏シテ、ソレデ失業者ガ少ナク
ナッタナドト、內務大臣ハ頓デモナイコトヲ
言ノテ居リマスルガ、併ナガラ地方ノ起債事
業ト云フコトソレ自身ガ間違ッテ居ル、私ガ
先程指摘シタ、國家ノ政策デ失業者ヲ激增
サシテ置イテ、其責任ヲ轉嫁シテ、地方ニ
仕事ヲサシテ、今日マデ政府ガ碌デモナイ
國庫ノ補助ヲシテ居ルナドハトンダ政策
ノ誤リデアルト云フコトヲ指摘シタ、況ヤ
地方ノ起債事業ノ爲ニ斯ウ云フ缺陷ガアル、
地方ハ中央政府ノ方針ニ從〓テ無暗ニ地
方ノ豫算ヲ緊縮サレルモノダカラ、歲入ト
歲出ガ均合ハナイ、ソレデ或ル地方ニアッ
テハ、其財政ヲ料理スル上ニ困ル爲ニ、失
業救濟ナラバ政府ガ起債ヲ認可シテ吳レ
ル、ソコデ失業救濟ヲ名トシテ、政府カ
ラ起債ノ認可ヲ受ケテ金ヲ借リテ、先ヅ其
金ノ中カラ失業救濟モヤルコトハヤルガ、
ソレヲ他ニ使ッテ、地方ノ財政ノ歲入ノ缺
陷ヲ補ヒ、其埋合セヲシテ居ル地方ガ現ニ
アルト云フコトヲ玆ニ指摘シテ置ク、ソレ
ハ內務大臣ノヤリ方ガ惡イ爲デアル、此失
業公債ニ依ッテ、今後國內ニ平均八万何人救
ハレルト云フコトヲ內務大臣ハ言ハレタノ
デアル、而シテ要救濟者ハ十一万人ニ過ギ
ナイト云フ、今日ク時代ニ於キマシテ、十
一万人位ノ救濟ヲ要スルコトデ足リルトス
ルカ否カハ、是ハ常識アル者ナラバ誰デモ
分ルデアリマセウ、十一万人ダケ救ヘバ、
失業者ハ無クナッテシマフナドト云フコト
ハ、少シク常識ノアル者ハ誰モ考ヘナイコト
デハナカラウカ、紹介所ヲ增加シテ、二百
何十箇所ヲ今日ハ三百七箇所ニシタカラト
言ッテ、内務大臣ハ自慢ラシク御吹聽ニナラ
レマス、併ナガラ職業紹介所ハ、失業登錄ヲ
致シテ、失業手帳ヲ持ッテ居ラナイ者ハ相
手ニシナイ、所ガ失業手帳ハ、失業者全部
ニ出テ居ルカト云フト、十分ノ一カ二十分
ノ一シカ失業手帳ハ持ッテ居ラナイノデハナ
イカ、其失業登錄ヲシテ、失業手帳ヲ持ッテ
居ル者ガ紹介所ニ行キマシテモ、其中ノ三
分ノ一、五分ノ一シカ救ハレナイデ、後一
大抵アブレテ歸ルト云フノガ現在ノ狀態デ
ハアリマセヌカ、少シク其實情ヲ內務大臣
ハ實地ニ視察シテ御覽ヲ願ヒタイト思フ、
況ヤ職業紹介所ト云フモノハ仕事ノアルノ
ヲ紹介スルニ過ギナイ、紹介所ヲ餘計ニ拵
ヘタカラ仕事ガ出ル譯デハナイジヤナイ
カ、仕事ヲ先ヘ拵ヘルト云フコトガ、寧ロ
先決問題デハナカラウカト思フ、政府ノ事
業縮小ニ付キマシテハ安藤君ノ言ハレタ
通リデアルガ、是ハ致シ方ガナイト言ハレ
タ、內務大臣ハ一方ニ國家ノ事業ヲ縮小シ
テ失業者ヲ製造シ、一面ニ之ヲ救濟スルノ
デアルト云フ私ノ主張ヲ立派ニ御認メニ
ナッタモノト認メマス、救護法ニ付テハ自分
ハ〓心デアルケレドモ、財源ガナイ、併ナ
ガラ努力ヲシタイト內務大臣ハ仰シヤッタ
カラ、是ハ快ク私ノ勸〓ヲ御容レ下サッタ
コトト思ヒマシテ、一層之ニ御努力アラン
コトヲ希望致シマス
勞働組合法ハ近日出スト仰シヤッタ、近日
ト云フノハ何時ノコトデアルカ、本當ナラ
バアレ程謳ハレ、アレ程內務大臣ガ主張サ
レタ所ノ勞働組合法案デアリマスカラ、本
議會開會ノ劈頭ニ於テ之ヲ提出シテコソ
本當ニ組合法ニ忠實ナルモノデハナカラウ
カ、今日提出サレテモ既ニ遲イノデアル、
遲イケレドモ出サナイヨリハ宜シイ、- -
モ早ク提出シテ-又民政黨ノ諸君ヲ使嗾
シテ握潰シナドヲシナイヤウニ、今カラ豫
メ御忠告ヲ申シテ置キマス
文部大臣ノ御答辯ニ對シテ一言申上ゲテ
置ク、私ノ統計ハ正確デアリマス、私ノ官
公私立ノ大學ノ卒業生ト、不就職者トノ釣合
及ビ實業專門學校ノ卒業生ト、其不就職者
トノ割合ハ、是ハ正確デアリマス、正確デ
ナイトアナタガ仰シヤルヤウナ口吻ガ先刻見
エタガ、若シサウデアルナラバ、文部省ハ好
イ加減ナ噓ノ統計ヲ作ッテ居ルモノダト云フコ
トヲ茲ニ私ハ斷言シテ置ク、アナタハ大臣
トシテ能ク御承知ナイ、私ノ言ッタノガ正確
ノ統計デアリマス、又中學校ノコトヲ、此
處デ文部大臣ハ理由トシテ仰シヤッテ、旣ニ
本年度カラ中學校ヲ二種制ニシテ、一ハ上
級學校ニ連絡スル準備學校トシ、他ノ一ハ
中學校デ完成ジテ實業ニ當ラシムルヤウ〓
育スル、此第一種、第二種ノ二種制トシタ
カラ、少クトモ是カラハ中學校ノ卒業生デ
實業ニ就ク者ガ多クナルデアラウトノ御意
見、此御陳述ハ一應承リマス、唯私ガ遺憾
ニ存ズルコトハ、此案ハ元ノ原案ノ時ニ於
テハ、中學校ニ第一種、第二種ヲ分ケルノ
ハ第三年カラ分ケルヤウニ、恐ラク原案
ハナッテ居タノデハアルマイカ、ソレヲ今日
ハ四年カラ分ケルヤウニシテシマッタ、三年
カラ分ケテコソ、始メテ實業ニ就ク練習ヲ
シテ、世ノ中ニ出テ、其〓育ガ役ニ立ツヤ
ウニナル、四年ニナッテ二ツニ分ケタノデ
ハ、洵ニ申譯ニ過ギナイデハナイカ、文部
大臣ガ中學校ヲ兩種ニ分ケテ、一ハ上ニ連
絡シ、一ハ實際社會ノ生活ト連絡セシムル
ト云フ誠意ガアルナラバ、ナゼ原案通リ第
三年カラ分ケルト云フコトニナサラナカツ
タカト云フコトヲ、玆ニ私ハ疑問ト致スノ
デアル、要スルニ斯ウ云フ時代ニナリマシ
テ、此澤山ノ知識階級ノ無就職者、失業者
ヲ拵ヘルト云フコトハ、是ハ實ニ社會惡化
ノ原因デアリマス、現ニ今日學校騒動ガア
ル、學校騷動ハ昨日カ一昨日カ、淺原君ノ
質問ニモ出テ居タヤウデアリマスガ、私ハ
斯ウ觀察スル、此學校騷動ニ對シテ、文部大
臣ハ尙ホ彈壓方針ヲ以テ臨ムヤウナ口吻ヲ
持ッテ居ラレタ、私必ズシモ總テノ取締ヲ嚴
ニスルト言フコトヲ惡イト言フノデハアリ
マセヌ、或ル場合ニハ嚴重ニシテ然ルベシ、
併ナガラ今日學校騒動ノアノ原因バ、外
部カラ來ル所ノ力ニ因ルモノモ多イ、而シ
テソレガ外デ學校ヲ卒業シテモ食フコトガ
出來ナイ、所謂羽織ゴロニナツテブラ〓〓シ
テ居ルヤウナ者ガ、仕事ガナイ爲ニ學校へ
利き、ソレヲ唆ッテ行クト云フヤウナコト
モアル、言葉ヲ煎ジテ言ヘバ、生活ノ困難
カラ來ル思想ノ惡化ト云フコトモアルノデ
アリマスカラ、文部大臣トシテハ、今日ノ
此時代ニ顧ミテ、此學校卒業生ノ失業者ヲ
何トカスルト云フコトヲ、當ノ責任者タル
內務大臣ト相談シテ、此知識階級ノ失業對
策ヲ講ジナクテハナルマイト云フコトヲ私
ハ言フノデアル、今一ツハサウ云フ時勢ニナッ
テ〓育ヲ受ケタ者ハ、世ノ中カラ實際ニ用
ヒラレナイ、〓育ヲ受ケタ爲ニ飯ガ食へ
ナイト云フナラバ、今日ノ學校制度ノ改革、
學制ノ改革ト云フ問題ニ付テ、文部大臣ハ
何等カ御意見ガアッテ然ルベキデハナイカ
ト云フコトヲ、モウ一ツ私ハ玆ニ言ッテ置
クノデアル、ソレヲ御考ニナラナケレバ、
文部大臣トシテハ寧ロ贖職ノ責ヲ玆ニ受ケ
ルノデハナカラウカト思フ是レダケノコ
トヲ內務大臣、文部大臣ニ申上ゲテ、更ノ
御意見ヲ承リタイノデアル
〔國務大臣安達謙藏君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X00719310127&spkNum=55
-
056・安達謙藏
○國務大臣(安達謙藏君) 簡單ニ御答シテ
置キマス、安藤君ハ國勢調査ノ數字ト社會
局ノ數字トガ安藤君ノ考ヨリハ大變ニ少
イモノデスカラ、何カ此間ニ狎合ッテヾモ、
殊更アノ數字ヲ少クシタカノ如ク仰シヤイ
マシタガ、全然サウ云フコトハアリマセヌ、
國勢調査ハソンナコトハ全然アリマセヌ、
ドウゾ御安心ヲ願ヒマス
ソレカラ私ガ失業者ハ激增ハシナイ-
私ハ少クナルトハ申シマセヌ、併ナガラ安
藤君等ノ想像セラレタヤウニ激增シナイト
云フコトハ申シマシタ、安藤君ハ、昨年ノ
議會ニ於テハ多分失業者ガ今後六十万、百
万トナッテ、餓死スル者ガアルダラウナドヽ
云フコトヲ申サレマシタガ、サウ云フ狀態
デハナイノデアリマス、ソレカラ地方起債
ノコトハ非常ニ鄭重ニ致シテ居リマシテ、
是ハ各地ノ狀況ヲ調ベサウシテ失業者ノ
狀態モ調べ、又其事業ヲ起シテ、將來地方
ノ爲ニナルヤウナ性質ヲ調ベマシテ、之ヲ
許シテ居ルノデアリマスカラ、其間ニ決シ
テ不都合ノコトハナイト云フコトヲ申上ゲ
テ置キマス
ソレカラ勞働法問題ニ付キマシテハ、是
ガ遲レル、此事ニ付テ一言致シテ置キマス
ガ、折角出ス以上ハ、私ハ資本家側モ勞働
者側モ、能ク其意思ヲ疏通シテ、所謂勞資
ノ徹底セル協調ヲ圖ッテ、而シテ此案ノ通過
ヲ圖リタイト云フ考カラ、資本家側ノ懇談
會或ハ勞働者側ノ懇談會ナドヲ開ク所以
デアリマス
〔國務大臣田中隆三君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X00719310127&spkNum=56
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057・田中隆三
○國務大臣(田中隆三君) 一寸世間ニ誤解
ガアルトイケマセヌカラ、一言申上ゲテ置
キマス、只今中學校ノ制度ヲ一種ニ區別ス
ルコトヲ四年カラデアルヤウニ安藤君ハ仰
シヤイマシタガ四年ト云フノハ原則デ、
三年カラデモ宜シイ、三年四年兩方共ニ認
メテ居ルノデアリマスカラ、左樣御承知ヲ願
ヒマス、ソレカラ統計ノコトハ、私ノ言葉ガ
足リナカッタカモ知レマセヌガ、統計ガ間違
ト云フコトヲ申上ゲタ積リデアリマセヌデ
シタ、唯統計ハ、學生ノ行方、始末ガ、年月ガ
經タナケレバ正確ニ分ラヌ、サウシテ統計ハ
一方急イデ出來ルノデアリマスカラ、大數
ニハ違ヒハナカラウトハ思ヒマスケレドモ、
非常ニ數字ガ時々ニ依ッテ違ッテ居ルト云フ
コトヲ申上ゲル積リデアッタ、卽チ直グ就職
シタ人ハ分リマスケレドモ、〓里ヘ戾シタ
リ、外ヘ離レタリシテ、就職シタノハ、其
出身ノ學校デモ分リマセヌノデ、ソレデ非
常ニ困難デアリマス云フコトヲ申上ゲタ積
リデアリマシタノデ、安藤君ハ然ルベキ時
ニ於テ御取リニナッタノデ、或ハ文部省ノ
或ル時期ニ於テ取シタモノハサウナッテ居ル
ダラウト思ヒマスケレドモ、ソレガ時變ッ
テ、今日ナラ今日マデノ知リ得タ所ノ範圍
ニ於テ統計ヲ取リマスト云フト、又變ッテ來
やく、ソレハ今ノハッキリシナカッタ人ノ行
方ガ、ハッキリシタコトニ依ッテ、サウ云フ
變化ヲ惹起ス譯デアリマス、安藤君ノ御質
問トシテ、斯ル知識階級ノ人ノ就職ニ付テ
御憂慮ニナラルヽ點ニ於テハ、私モ安藤君
以上ニ同感ヲ以テ心配シテ居ル積リデアリ
マスカラ、重ネテ此事ヲ申上ゲテ、御注意
ノコトハ一層注意致シマス
〔安藤正純君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X00719310127&spkNum=57
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058・安藤正純
○安藤正純君 私ハ內務大臣、文部大臣カ
ラ再應ノ答辯ヲ得マシタガ、併シ私ノ質問
ニ全部御答ニナッテ居リマセヌ、ソコデ是
カラ問答ヲ進メマスト、大分細カイ點ニ入
リマスカラ、ソレハ何レ此議會中ニ無論機
會ガアリマスカラ、其他ノ機會ニ讓リマシ
テ、私ノ大體ノ質問ハ是デ打止メマス、唯
(〓〓、玆ニ全然御答ニナッテ居ラナイ、
ツモ觸レテナイコトガ一ツアリマスカラ、
ソレダケヲ一寸內務大臣ニ伺シテ置ク、政
府ノ失業對策ハ、主ニ自由勞働者ニ對スル
對策デアル、ソレモ不徹底ニシテ薄弱ナ
ル、貧弱ナル對策デアルト斯ウ私ハ言フ、
而シテ最モ肝腎ナ熟練工ニ對スル對策ハド
ウシテ居ルカ、熟練工ハ所謂產業職エデアツ
テ、產業振興ノ爲ニハ非常ニ必要ナル要素
デアルガ、之ヲ放シテ置イテハ熟練ガ不熟
練ニナル、又散逸ヲシテシマッテハ困ルノ
デアルカラ、之ヲ救フノガ急務デアル、之
ニ對スル對策如何ト云フコトヲ御尋シテア
ルガ、內務大臣ハ一言モ之ニ御觸レニナリ
マセヌ、併シ私ハ是デ登壇ハ致シマセヌ、
又登壇ハ恐ラク數ニ依シテ制限サレテ出來
ナイデアリマセウ、ダカラ他ノ機會ニ於テ
私ノ質問ハ又致シマスガ、此熟練工、產業
職工ニ對スル對策如何ト云フコトヲ、簡單
デモ宜イカラ、內務大臣カラ何ヲ一體考ヘ
テ居ルカ、又ドウ云フ準備ヲシテ居ルノデ
アルカト云フコトヲ、一言茲ニ承。ッテ置キ
マシテ、私ノ質問ハ打止メト致シマス
〔國務大臣安達謙藏君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X00719310127&spkNum=58
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059・安達謙藏
○國務大臣(安達謙藏君) 簡單ニ一言致シ
テ置キマス、熟練職工ノ問題ハ失業防止
委員會デモ色々之ニ付テハ協議致シマシタ
ガ、各工場ノ時間ノ調節ヲスルコト、ソ
レカラ各工場ニ於テ國產奬勵ヲスルト云
フヤウナコトガ、熟練職工ノ職ヲ失ハシメ
ザル所ノ主ナル原因ニナッテ居ルコトヲ、
失業防止委員會デ〓究致シテ居リマス、共
方針ヲ以テ努メテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X00719310127&spkNum=59
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060・小山松壽
○副議長(小山松壽君) 井上孝哉君
〔井上孝哉君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X00719310127&spkNum=60
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061・井上孝哉
○井上孝哉君 私ハ玆ニ地方財政ニ關スル
質問ヲ、內務大臣竝大藏大臣ニ向ッテ質疑
ヲ致シマス、近頃民政黨ノ主張、內閣ノ命
令ガ、往々ニシテ地方ニ十分ニ透徹セズ、
隨テ其命令ガ往々ニシテ地方ニ行ハレザル
コトガ頗ル多イノヲ認ムルノデアリマスル
ガ、是ハ命ズル所ノ政府ノ命令ガ其宜シキ
ヲ得テ居ラナイノニ基クカ、或ハ又命令ヲ
奉ズベキ地方ガ、之ヲ遵守スルニ從順デナ
イノニ歸スルカ、其何レニ致シマシテモ、
地方監督ノ責任ヲ持ノテ居ル所ノ內務大臣
ノ統督宜シキヲ得テ居ルカ、得テ居ラナイ
カニ屬セシメナケレバナラナイ(拍手)諸
君、之ニ付テハ內務大臣安達君ガ、內務大
臣トシテ其職責ヲ盡スコトニ於テ缺クル所
ナキヤ否ヤト云フコトヲ、吾々ハ檢討セネ
バナラナイノデアリマス(拍手)諸君、昨年
十一月十四日ニ於キマシテ、濱口總理大臣
ガ東京驛ニ於テ遭難ノ變アリマシタ場合
ニ、安達內務大臣ハ陛下ニ供奉致シテ御
警衞ノ任ニ當ッテ居ルト云フコトハ、內務大
臣トシテ最モ重要ノ任務デアリマシテ(拍
手)是ガ爲ニ寢食ヲ忘ルヽコトハ申スニ及
ぶつ、身命ヲ賭シテ御警衞ノ任ニ當ラナケ
レバナラヌ重要ナル任務デアリマス(拍手)
諸君、然ルニ十四日ノ變ガアリマスルヤ、
內務大臣ハ急遽、倉皇二百里ノ道ヲ遠シト
セズシテ東京ニ歸來致シタノデアリマス
ル、諸君、斯ノ如キハ此重要ナル任務ヲ抛
擲致シテ、職務ヲ贖廢スル所ノ最モ甚シキ
モノデナケラネバナリマセヌ(拍手)安達內
務大臣ハ何ト御考ニナリマスルカ、其上ニ
立ツ者ガ規律ヲ紊リマシテ、其任務ヲ怠ル
コトガアリマスル場合ニ、下百官有司ガ之
ニ傚ヒテ、其職務ヲ曠廢スル場合ニ、之ヲ
監督スルコトガ出來ナイデハアリマセヌカ
(拍手)內務大臣ハ何ガ故ニ斯ノ如ク誤リタ
ル行動ニ出デラレタモノデアルカ、明瞭ナ
ル御答辯ガ求メタイモノデアリマス(拍手)
斯ノ如クニシテ內務大臣ガ其職務ヲ行ハル
ルニ當ッテ、斯ル大ナル瑕瑾ガ本ニナッタノ
デアルカ、地方ニ中央政府ノ政令ノ行ハ
レザルコトガ甚ダ多クアリマスルコトヲ、
是カラ段々ト質疑ヲ致シタイト思フノデア
リマス(拍手)
內務大臣ハ地方ノ豫算編成、即テ昭和六
年度豫算編成ニ關シテ、大ニ注意ヲ與ヘラ
レテ居シタ、ソレハ溯リマシテ、民政黨ノ
十大政綱ニ於テ地方ノ財政ノ緊縮ヲ大ニ强
調致シテ居ラレルノデアリマスガ、更ニ其
後ニ於テ、地方官會議ニ於テモ、反覆町嚀
ニ地方財政ノ緊縮ニ對シテ力ヲ注イデ居ラ
レル、其上ニ玆ニ昭和五年ノ八月十六日ニ
於キマシチ、內務大臣ノ依命通牒トシテ、
地方ガ準據スベキ程度ヲ明示致シタノデア
リマス、其依命通牒ハ「昭和六年度地方豫
算編成ニ關スル件依命通牒、歲出ハ出
來得ル限リ整理節約ヲ行ヒ其總額ハ少クト
モ前年度當初豫算總額ヲ超エザルコト」ト
云フ、玆ニ準繩ヲ命令ニ示シタノデアリマ
ス、緊縮節約ノ場合、數ニ地方ノ財政ハ
屠緊縮ヲ圖ラナケレバナラヌ、ソレニ付テ
ハ昭和六年度ノ豫算ハ如何ニシテモ四和五
年度ノ豫算ヨリモ超エテハ相成ラヌト云フ
ノガ政府ノ方針、内務大臣ノ地方長官ニ對
スル嚴トシタル命令デアタノデアリマ
ス(拍手)諸君、然ルニ內務大臣ノ命ヲ奉ズ
ベキ地方長官ガ、如何ナル態度ヲ執。タカ
ト云フト、百方苦心ヲ致シタ末ノ豫算編成
ガ、東京府外二十六縣ハ內務大臣ノ命ニ背
イテ、昭和五年度ノ豫算ヨリモ超過致シテ
昭和六年度豫算ヲ編成致シタノデアリマス
(拍手)諸君、內務大臣ガ斯クモ叮嚀反覆ニ
命ジマシタル所ノ其命令ガ、地方長官、部
下タル地方長官ニ依ッテ、是ハ明カニ蹂躪
セラレタモノデアルト見ナケレバナラヌ
ガ、內務大臣ハ果シテ地方長官ガ內務大臣
ノ命令ヲ蹂躙シ了ッタモノデアルト考ヘラ
レルカ、若シ蹂躪シタモノデアル、命ニ背
イタモノデアルト、卽チ內務大臣ハ昭和六
年度ノ豫算ガ昭和五年度ノ豫算ヨリモ少ク
編成スルノガ當然デアル、然ルベキモノデ
アル、如何ナル府縣モ之ニ從ハナケレバナ
ラヌト云フ意思ヲ示サレテ居ルノニ對シ
テ、地方長官ガ其反對ノ行動ニ出タ場合
ハ內務大臣ノ意見ニ依テ、節約シ得ベキ
其程度ヲ命ゼラレナケレバナラヌ、卽チ豫
算ノ減額命令ヲ出スベキガ內務大臣ノ當然
ノ職權、執ルベキ當然ノ順序デアルト謂ハ
ナケレバナラヌ、內務大臣ハ之ニ對シテ減
額命令ヲ發シ、更正豫算ヲ命ゼラレル意思
ガアルカ否カト云フコトヲ、明瞭ニ御答ヲ
願ヒタイ
次ニ政府ハ地方ニ對シテ、中央政府ノ責任
ヲ轉嫁致スコトガ頗ル多イノデアリマスル
ガ、ソレニ對シテハ政府ハ言ヲ左右ニ託シ
テ、種々ナ辯解ヲ努メテ居ラルヽコトヲ聞
キマスルガ、玆ニ私ハ政府ガ如何ニシテモ
遁辭ヲ設ケルコトノ出來ナイ、政府ノ責任
ヲ地方ニ轉嫁致シテ居ル重大ナル問題ニ對
シテ皆疑ヲ試ミタイ、ソレハ各府縣ニ跨ッテ
行ハレテ居ルコトデアリマスルガ、河川港灣
ノ改修問題ニ關スルコト、河川ノ改修費ハ
諸君御承知ノ如ク、豫メ年度割ヲ定メマシ
テ、政府ト地方トノ分擔額ヲ定メテ、是ガ
幾年カニ亙ッテ執行サレツヽアルノガ當然
ノ既定ノ事實デアリマスルガ、現內閣ハ此
年度割ニ依テ、政府ト地方ト分擔致シテ居
リマスル所ノ河川改修費ニ於テ、政府ノ負
擔額ヲ大ニ繰延ベマシテ、地方ノ負擔額ヲ
繰上ゲマス大ナル力ヲ有ッテ居ル所ノ政府、
其政府ノ負擔ハ、繰延ベル力ノ少イ所ノ地
方府縣ノ分擔額ハ之ヲ繰上ゲル、實ニ物ノ
倒逆ノ甚シイモノデアリマスガ、斯樣ニ致
シマシテ、ソレノミナラズ將ニ今物價ガ低
落ヲ致シテ、低落ヲ致シマスル其物價ニ、
地方ノ負擔モ、政府ノ負擔モ、同ジ割合デ
減額スルノハ當然過ギル程當然ナコトデア
ルノニ拘ラズ、政府ハ政府ノ負擔額バカリ
大ニ減額ヲ致シマシテ、地方ノ負擔額ニ對
シマシテハ物價低落ノ同ジ原因ガアルニ
拘ラズ、甚ダ僅カナル、申譯ダケノ減額ヲ
致スガ如キハ、實ニ中央政府ノ責任ヲ、力
無キ地方ニ轉嫁致シテ、地方ヲ苦シムルモ
ノヽ甚シイモノデアルト謂ハナケレバナラ
又、諸君、澤山ナル事例ハ諸君ノ御手許デ
明カニナッテ居ラナケレバ相成ラヌノデア
リマスルガ、私ハ此場合最モ的確ニ申述べ
テ、內務大臣ノ明晰ナル御答辯ヲ得ナケレ
バナリマセヌカラシテ、其中ノ一ツノ事例
ヲ茲ニ御披露致シマスル、ソレハ木曾川改
修ノ問題ヲ茲ニ持出シマスルガ、木曾川改
修費ハ正ニ二千五百万圓ノ豫算大正十年カ
ラ昭和十二年迄十七箇年ニ亙ル工事デアリ
マスルガ、其二千五百万圓ノ中一一千万圓ガ
政府ノ負擔、五百万圓ガ府縣ノ負擔デアリ
マス、然ルニ政府ハ今ノ十七年ノ工事ノ間、
丁度今年ガ十年目デアリマス、後殘ス所ハ
七年、其十年ノ過ギル今年マデニ於テ、其
政府ノ負擔スベキ二千万圓ノ中ノ唯僅ニ三
百九十一万圓ハ、是ハ政府負擔額ノ五分ノ一
ニシカ當リマセヌ、其五分ノ一ニシカ當ラ
ヌ負擔ヲ政府ガ致シテ、其他ノ爲スベキ負
擔ハ後へ〓〓ト送シテ居ル、而シテ地方ノ負
擔分ニ對シテハドウカト云フト、昭和十二
年迄ノ間ニ出セバ宜イモノヲ、遂ニ繰上ゲ
テシマヒマシテ、今年迄ニ悉ク五百万圓ノ
金ヲ使シテシマフノデアリマス、諸君、何ト
弱イ者ヲ苛メル弱肉强〓ノ謗ヲ免レナイ所
ノ中央政府ノ處分、斯ノ如ク甚シキニ至ッテ
ハ責任轉嫁ノ最モ顯著ナル事例ト謂ハナ
ケレバナラヌ(拍手)殊ニ物價低落ノ爲ノ減
額ヲ、政府ノ二千万圓ニ對シマシテハ驚
ク勿レ二割ノ減額ヲ致シ、地方ノ分擔額ニ
對シテハ唯五分ニモ及バナイヤウナ、斯ノ
如キ不公平極ル所ノ處置ヲ致シテ居ル、ノ
ミナラズ驚クベキコトハ昭和六年度ノ豫
算デ、木曾川改修費ノ昭和六年度ノ豫算ハ
二百万圓計上シテアッタモノヲ減額致シマ
シテ、八十二万圓ニ致シタ、致シタノハ勿
論政府ノ繰延又繰延、緊縮政策ノ當然ノ結
論デアリマスルガ、八十二万圓ニ減額ヲ致
シタ昭和六年度ノ豫算ハドウ云フ風ノ內容
カト云フト、其內ノ四十万圓ト云フモノハ
支川ノ改修費デアリマシテ、是ハ別口ニナッ
テ居ル、ソレヲ差引キマスルト四十二万圓
殘ルガ、其四十二万圓ノ內ノ二十二万圓ガ
木曾川本川改修工事費デアリマシテ、殘ル
二十万圓ハ實ニ吾々遺憾ニ堪へナイモノ
デアルガ、ソレハ實ニ人件費ニ殆ド大部分
使ハレテ、後ハ機械ノ錆止メ手直シト云フ
コトノ爲ニ二十万圓ノ大ナル金ガ玆ニ費サ
レルコトニナテテルノデアリマス、是ハ何
ヲ物語ルカト申シマスルト、私ハ何モ他意
ハナイ、斯ノ如ク申スコトハ政府ノ緊縮繰
延ノ爲ニ、實ニ事業ハ停頓致シマシテ、途
中デ頓挫致シマシテ、今ノ事業モ亦繰延べ
ヲケレバ出來ヌヤウニナッテ、十七年ノ事業
ハ二十年ニ、今年ニ於テ延バサレル計畫ガ
定メラレタノデアリマスルガ、斯樣ニ長ク
延バシマスル其間ニ、全ク手戾リヲ致シテ、
工事ハ實ニ哀ムベキ狀態ニナッテ居ル、是ガ
爲ニ國利民福ヲ一日モ早ク進メナケレバナ
ラヌ又河川改修費、諸君ガ協賛セラレタル
此河川改修費ガ、政府ノ執行ヲ誤ルガ爲ニ
手戾リヲ致シテ、事業ハ中途ニ於テ顧挫致
シテ居ル、ソレガ爲ニドノ位多クノ費用ガ
徒ニ、無駄ニ、無益ニ使ハレルカ、殆ド計
數ノ上ニ擧ゲ得ナイ程頼害ガ多クテ、得ル
新ノ額ル僅少ナルコトニナリ了ッテ居ルノ
デアリマスル(拍手)是ハ木曾川ヲ一ノ事例
トシテ申述ベタノデアリマスルガ、二十幾
河州、三十幾府縣ニ互ッテ、同ジ運命ニ地方
ガ虐待サレテ居ルノデアリマス
次ニ大藏大臣ニ質問ヲ致シマス、其第一
ハ政府ソ重要ナル政策デアル、彼ノ緊縮政
策ノ實行ノ減續デアリマスルガ、大藏大臣
ハ昨年ノ藏政方針ノ演說、卽チ昭和五年四
月二十四日ノ特別議會ニ於ケル演說ニ於テ
斷樣ニ申サレテ居リマス「昭和四年度ノ實
行豫算ニ於テハ二億七千万圓ノ緊縮ヲ行
七、昭和五年度ノ當初豫算ニ於テ、昭和四
年度ノ當初豫算ニ比シ二億五千餘万圓ノ緊
縮ヲ行ッタノデアリマス」斯樣ニ申述ベラレ
テ居ル私ハ此前段ヲ後ニ廻シマシテ玆ニ
申述ベタイノハ、昭和五年度ノ當初豫算ニ
於テ、昭和四年度ノ當初豫算ニ比シ二億五
千餘万圓ノ緊縮ヲ行ッタト、是ガ政府ノ最モ
得意キシテ、其緊縮政策ノ實行ノ成績ヲ、
當議會ヲ通ジテ國民ニ御吹聽ニナッタル、重
大ナル中心點トシテ申述べラレテ居ルノデ
アルガ、私ハ實ニ意外ナ事實ヲ發見シテ、
洵ニ不思議ニ堪ヘナイノデアル、ソレハ昨
日內務省カラ特ニ配村ヲ顯ヒマシタ地方財
政〓要ニ依リマスルト、昭和四年度ヲ當初
豫算ハ十七億七千八百四十一万六百九十一
圓デアリマシテ、昭和五年度ノ當初豫算ハ
十五億八千四百七十九万七千五百四十四圓
デアリマス、之ヲ差引イテ見マスルト一億
九千三百六十一万三千百四十七圓トナリマ
ス、大藏大臣ガ二億五千餘万圓緊縮シタト
云フコトヲ申サレタガ、一億丸千三百餘万
圓ニ止マッテ居ルノデ、其間ニ實ニ五千六百
万圓ノ大ナル相違ヲ致シテ來タノデアリマ
ス(拍手)私ハ五十万百万ノ金ガ、若シヤ計數
ニ行違ヒガアッテモ、大藏大臣ヲ責メテ糾彈
ヲ致シテ、此處ニ質間ヲスル心持ニハナラ
ヌノデアリマスルガ、驚ク勿レ五千六百万
圓ノ茲ニ相違ガ出タ、サウシテ其相違ハ大藏
大臣ノ推測トカ、見積リトカ云フコトナラバ
間違テ來ルノモ咎メルコトハ出來マ
セヌガ、大藏大臣ガ特別議會デ演說サレタ
ル事實ハ共ニ過去ノ事實デアリマス、昭
和四年度ノ當初豫算ト、昭和五年度ノ當初
豫算ト比ベテ二億五千万圓緊縮シタノデア
リマスト、此處ニ得意ニナッテ披露ニナッタ
其計數ガ、卽チ昭和五年度ノ當初豫算モ、
演說サレタノハ昨年ノ四月二十四日デア
リ、地方ノ豫算ノキマリマスルノハ一昨年
ノ十二月、昨年一月、二月ニキマッテ居ルノ
ダカラ、昨年ノ四月二十四日ニナッテノ演
說ニハ事實ハ明瞭ニナッテ居ルノデアリ
マスルガ、其既定ノ事實ノ上ニ於テ、本年
度ト前年度トノ比較ニ於テ、緊縮政策ノ成
續トシテ現ハシタルモノガ、茲ニ違シテ居
ルト云フコトニナルナラバ-而モ五千六
百万圓ノ多クガ二億五千万圓ノ間デ違フト
云フコトニナルナラバ、大藏大臣ノ責任ハ
容易ナラザルモノガアラウト思フ(ヒヤ
セヤ、粕手)
次ハ現内閣ノ大ナル政策ノ第二トシテ、
非募債政策ノ事ヲ大藏大臣ニ質問ヲ致シマ
スルガ、非募債政策-私ハ無論地方財政
ニ對シテ御尋ヲスルガ、第一地方ノ起債、
卽チ地方債ガドンナニナッテ居ルカト云フ
事ニ付テ、往々大藏大臣ハ此演壇ニ於テ御
說明ニナッテ居ルガ、私ニハ頓ト大藏大臣ノ
意ノ在ル所ガ分ラヌニ依ッテ、其數ヲ明瞭ニ
玆ニ示シテ、大藏大臣ノ御答辯ヲ促サナケ
レバ相成ラヌノデアリマス
第一ハ地方ノ募債卽チ地方債ガ、年々其
實數ニ於テ絕對的ニ增加致シテ居ルコト
ガ、是ガ何ヨリモ明瞭ナル事實トシテ現ハ
レテ居ル、大藏大臣ニ向シテ過去ノ事ヲ申
スノハ其當ヲ失スルカモ知ラヌガ念ノ爲
ニ昭和元年度カラ言フノガ物ノ順序デアラ
ウト思ヒマス、昭和元年度ニ於テハ十五億
圓臺、昭和二年度ニハソレガ十八億圓臺ニ
ナリ、昭和三年度ニハ二十億圓臺ニナリ、現
大藏大臣ノ所管ニ相成ッテカラノ昭和四年
度ガ更ニ二十二億圓ヲ超過シテ居ル、斯ノ
如ク實數ニ於テ段々ト二億、三億、或ハ
億七千万圓、斯ノ如キ增加ヲ致シテ居ル、
ノミナラズ四年ノ四月カラ四年ノ十二月迄
ト、五年ノ四月カラ十二月迄、卽チ本年度ノ
最近ノ事實ヲ、前年度ノ同ジ期間ノ事實ト
比ベテ見マスルト、玆ニ又明瞭ナル募債ノ
著シキ增加ガ現ハレテ居ルノデアリマス、
卽チ昭和四年度ノ四月カラ十二月迄ノ間ト、
五年ノ四月カラ十二月迄ノ間ノ差ガ何程ア
ルカト云フト千七百五十八万八千圓、最近
著シタ地方債ガ多クナッテ居ルノデアリマ
ス、卽チ最近ノ年度-本年度ノ四月力
ラ十二月マデニ許可サレタ地方績ガ、四
年ノ四月カラ十二月マデニ許可サレタル
モノヨリモ千七百五十八万八千餘圓殖エテ
居ルノデアルガ、而モ更ニ考ヘナケレバナ
ラヌコトハ、震災復舊ノ公債-震災復舊
ノ公債ト云フモノハ、是ハ特別ヲ原因ノ下
ニ在ルモノデアリマスカラ、是ハ控除シテ
考ヘルガ適當デアルカラ、四年度カラモ五
年度カラモ、共ニ震災復舊ノ公債ヲ除イテ
見ルト、更ニ本年度ノ起債ガ甚シク增加ノ
計數ガ現ハレテ來ルフデ、二千二百五十万
圓ト云フモノガ前年度ヨリモ今年度ニ於テ
多クナッテ參ルノデアリマス、其上ニ茲ニ
考ヘナケレバチラヌコトハ、是ダケ申止ゲ
タダケデアリマスルト、本年度ノ地方債ガ
許可ヲサレタノガ一億二千八百万圓デアリ
マスルケレドモ、是ニハ內務大藏兩大臣ガド
ウ云フ考ヲ持ッテ居ラルヽノカ、近頃許可
ヲ更ニ與ヘラレナイト云フ事實ガ、玆ニ明
カニ加ハラナケレバナラヌ、地方ニ於テ地
方債ノ許可申請ガ近來頗ル多クナッテ居ル、
多クナッテ居ルノデ、當局大臣ノ手許ニ滯。ツ
テ居ルノガ一億圓弱アルコトハ、是ハ確カ
ナ數字デアラウト思ヒマスルガ、其一億圓
弱アリマスル中ニハ、災害ノ復舊公債デア
リマスルトカ、失業ノ公債デアリマスルト
カ、政府ガ奬勵シ、若クハ法令ニ依ッテ當
然政府ガ認メナケレバナラナイモノガ澤山
積マレテ居ルニ拘ラズ、之ヲ許可ヲ急イデ
サレヌモノハ、私ガ邪推ヲ致スト、非募債
政策ノ失敗ガ、玆ニ數字ノ上ニ現ハレルコ
トヲ嫌ウテ、帝國議會ノ審議ノ相當ニ進ム
マデハ、地方債ノ許可ヲ手控ヘヲシテ居ラ
レルノデハアルマイカト疑ハザルヲ得ナイ
ノデアリマス(拍手)
諸君、其他ニマダ玆ニ全ク手ノ著イテ居
ラヌノハ、彼ノ農漁山村救濟低利資金七千
万圓ト云フモノ、是ガ地方カラシテ許可申
請ヲシテ來ル手續ノ途中ニアルノダガ、之
ヲ加ヘマスルト、今兩省デ躊躇シテ居ラレ
テ、手許ニアルモノト共ニ勘定シマスル
ト、現在ノ一億二千八百万圓ノ許可シタノ
ガ、二億ヲ突破スルコトハ申スニ及バズ、
恐ラク三億ニ近ヅクカ、若クハソレヲモ超
過スル現象ガ、本年度ノ末日マデニ現ハレ
テ來ルベキ順序ガ明瞭ニ立ッテ居ルト思フ
ノデアリマス(拍手)ノミナラズソレニ加フ
ルニ、地方債ヲ許可シマスル所ノ政府ノ方
針ハ、正ニ大ニ緩和セラレタ、從前ノ非募
債主義ノ熱ノ高カッタ時ハ、餘程ヤカマシ
ク言テ、地方ニ地方債ノ償還計畫ガ十分
ニ樹ッテ居ラヌケレバ許サヌト言ウテ、前
カラモ後カラモ檢査ヲサレテ、容易ニ許サ
レナンダモノデアリマスルガ、近年ハソレ
ガ一轉致シテ、地方債ニ關スル限リ、ドウ
ニカ斯ウニカ名義サヘ付ケバドン〓〓許可
スルマデノ寛大ナル方針ヲ執ルヤウニ、方
針ガ此處ニ掌ヲ反スヤウニ一變ヲ致シタコ
トニナッテ居ル(拍手)勿論政府ハ別ニソレ
ラ内緒ニヤッテ居ル譯デハナイデセウ、內
務大臣ノ訓示トシテ、昨年第一囘ノ地方官
會議ニ於テ、地方債ハ緩和スル途ヲ講ズル
ト云フコトヲ演說ヲシテ居ラレル、更ニ第
二囘ノ地方官會議ニ於テハ、一層其範圍ヲ
擴張シテ、地方債許可方針ヲ公表セラレタ
ノデアリマス、ノミナラズ今日地方ヲ廻ッ
テ見マスルト、實ニ彼方デモ此方デモ、ド
ノ府デモ、ドノ縣デモ、ドノ市町村ニ於テ
モ、地方債ガ近來認メラレルト云フコト
デ、ドン〓〓ト許可申請ノ準備ヲ致シテ居
リマシテ、而モ其許可ノ明カニ下ルベキコ
トハ、誰モ疑フ者ノナイヤウニ緩和セラレ
タノガ今日ノ地方債ノ實況デアル、シテ見
マスルト云フト、今申述べマシタ第一ノ理
由デアル地方債ガ年々一億數千万圓、二億
圓更ニ此度ハ二億圓以上三億圓ニモ上ラ
ウト云フ、絕對數ニ增加シツヽアル所ノ計
數ヲ示ス證據ト、竝ニ政府ノ執ル所ノ方針
ガ玆ニ一變致シマシタコトニ付テ、地方債
ノ如キモノガ、今日ドウ云フ政府ノ方針デ
アルカト云フコトハ、是ハ明瞭ニナッテ居
ル事實デアルガ斯ノ如キハ政府ハ非募債
主義ト云フ、其主義其政策ハ今日デモ尙且
ツ存續致シテ居ルモノデアリマセウカ、少
ナクモ地方債ニ對シテハ既ニ其牙城ヲ守ル
コトガ出來ナクテ、全ク政府ノ方針ハ抛擲
シテシマハレタモノデナイカト云フコトヲ
明瞭ニ御答辯ヲ願ヒタイト思ヒマス(拍手)
マダ質問ヲ致シタイ事ガアリマスガ、今
ノ質問ニ對スル答辯ノ次第ニ依ッテ更ニ進
ンデ質疑ヲ續ケタイト思ヒマスカラ、兩大
臣カラシテ、只今伺ヒマシタル數點ニ付テ
明瞭ナル說明ヲ與ヘラレタイト思ヒマス
(拍手)
〔國務大臣安達謙藏君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X00719310127&spkNum=61
-
062・安達謙藏
○國務大臣(安達謙藏君) 只今井上君ハ大
演習ノ頃、私岡山ニ陛下ニ扈從シテ參。ツ
テ居リマシテ、歸京致シマシタ事ニ付テノ
御尋ガアリマシタカラ、玆ニ御答致シテ置
キマス、十四日ノ午前十時三十分頃デアリ
マシタカ、大演習ノ御野立場ノ附近ニ於キ
マシテ、濱口首相ガ遭難シタト云フ報知ニ
接シマシタ、其負傷ガ下腹部デ頗ル危篤デ
アルト云フ事ガ分リマシタノデ、總理大臣
ノ重傷ニ遭ヒマシテ危篤デアルト云フ事
ハ、是ハ國務ニ重大ナル關係ガアルト考ヘ
マシテ、ソレデ陛下ノ御裁可ヲ得マシテ
(「不忠不敬ノ臣」「何ヲ言フカ」其他發言ス
ル者アリ)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X00719310127&spkNum=62
-
063・小山松壽
○副議長(小山松壽君) 靜肅ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X00719310127&spkNum=63
-
064・安達謙藏
○國務大臣(安達謙藏君) 特別其日ノ大演
習ヲ終リマシテ、サウシテ大本營ニ御還幸
ノ後、私ハ午後ノ五時何十分カノ汽車デ一
應東京ニ歸リマシタ、而シテ十六日ノ日ノ
夜、又岡山ニ著キマシタ、其間ハ齋藤政務
次官ガ內務大臣代理トシテ扈從シ、御警衞
ノ任ニ當ッテ居リマシテ、爾來十七、十八、
十九日ト又三日間私扈從シ御警衞申上ゲマ
シテ、宇野港カラ御乘艦ニナリマスマデ御
送リ奉ッテ、サウシテ歸ッタ次第デアリマシ
テ、御警衞ノ責任上、內務大臣トシテ何等
缺クル所ナイト私ハ考へテ居リマス(拍手)
ソレカラ此河川港灣費ノコトニ付キマシ
テ、色々御話ガアリマシタガ、此河川港灣
費ノ國庫カラノ補助ノ出シ方ニ付テハ、大
體ニ於テ現內閣ニナリマシテ始メタコトデ
ハナク、是ハ歷代ノ內閣ガ同ジ方針ヲ執リ
マシテ、先ヅ玆ニ、或ル地方ニ百万圓ノ金
ヲ出サネバナラヌ、併ナガラ國庫ノ都合上
出サレナイ、所ガ地方ハ一万圓デモ、五千
圓デモ宜イカラ、今年カラ著手シタイト云
フコトハ、何處ノ河川港灣デモ同ジ事情デ
アリマス、ソレダカラ最初ニ僅カナ金ヲ以
チマシテ、サウシテヤリマスカラ、ソレデ
地方ノ負擔ガ、最初ノ間多クナッテ、先デ
段々國費ガ殖エテ行クヤウニ、大體論トシ
テハナッテ居ル、ソレカラ又財政ハ困難ニ
ナルノニ、地方ノサウ云フ事業ヲ起シタイ
ト云フ希望ハ頗ル盛デアル、ソレデ一方ニ
財政ハ意ノ如クナラザルニ、地方ノ希望ヲ
若干デモ充タサウト云フト、ソコニ是マデ
ノ財政ノ年度ヲ繰上ゲ、或ハ繰替ヘテヤル
コトハ、是ハ已ムヲ得ナイコトデアル、サ
ウ云フコトハ歴代ノ內閣ガ能クスルコトト
思フ、木曾川ノ例ヲ御引キニナリマシク
ガ、木曾川ハ既ニ地方ノ分擔金ハ使ヒ盡シ
マシテ、國費バカリデヤッテ居ル、サウナッ
テ居リマス、ソレデ此問題ニ付テ、弱者ヲ
苛メル、弱肉强食ト云フ御言葉ガアリマシ
タガ、他方ノ事情ハ決シテサウ云フ事情デ
ナイト云フコトハ是ハ皆樣御承知ノ通リ
ダラウト思フノデアリマス(拍手)
ソレカラ前ニ一言申上ゲルコトヲ落シマ
シタ、此六年度ノ豫算ハ、昭和五年度ノ豫
算ニ超エナイヤウナ豫算ニ止メルト云フコ
トヲ原則トスル、ソレハ大體ニ於テハサウ
デアリマス、併ナガラ緊急已ムヲ得ザル場
合ハ例外ト爲スコトヲ得ルト云フコトニナッ
テ居リマシテ、是ハ私地方長官會議ノ場合
ニ、明白ニサウ云フ訓示ヲ致シテ居リマス
カラ、井上君ノ御指摘ニナルヤウナ、地方
ノ豫算ガ幾ラカ殖エテ居ルト云フナラバ、
多分此例外ニ當ル所ノ失業救濟トカ、何ト
カ云フコトデ出來テ居ルノダラウト思フノ
デアリマス(拍手)
〔副議長退席、議長著席〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X00719310127&spkNum=64
-
065・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 井上大藏大臣
〔國務大臣井上準之助君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X00719310127&spkNum=65
-
066・井上準之助
○國務大臣(井上準之助君) 井上君ノ第一
ノ御問ノ、五千万圓バカリノ差ノアル點ハ、
一應ハッキリ致シマスガ、是ハ取調ベマシ
テ、明日ニデモ說明致シマスコトガ安全ト
思ヒマスカラ、明月御答辯致シマス、尙ホ
其次ノ地方債ニ付テノ態度ガ、非募債主義
ト矛盾セヌカト云フ御話デアリマス、成程
絕對數ニ於テハ減シテ居リマセヌ、井上君ガ
御示シノ如ク、昭和二年度ニ於テハ三億三
千万圓程殖エテ居リマス、昭和三年度ニ於
テハ二億五百万圓殖エテ居リマス、昭和四
年度ニ於テハ一億七千百万圓殖エテ居リマ
ス、昭和五年度ハ此數字ガ未ダ分リマセヌ、
ノミナラズ此年度ト比較致シマスト、井
上君ノ言ハレルヤウニ、一月カラ三月マデ
ハ是マデノ數字ヨリハ幾ラカ殖ヱマセウ、
今マデノ十二月マデノ數字デ申シマスト、
許可額ガ一億二千万圓ニナッテ居リマス、サ
ウ云フコトデアリマシテ、此地方債ニ付キ
マシテハ、國債ト違ヒマシテ、當初カラ一
般會計ニ絕對的ニ公債ヲ計上セヌ、斯ウ云
フコトハ地方債ニハ申シテ居リマセヌ、失
業者ニ對スル失業救濟ノ事業、或ハ災害ノ
復舊ト云フヤウナモノニ對シテ、眞ニ必要
已ムヲ得ザルモノハ地方債ヲ許可シテヤ
ル、斯ウ云フコトニ致シテ居リマスノデ、
從來ニ比較シマシテ、增加率ハズン〓〓減ッ
テ居リマスガ、段々是マデノ增加率ヨリモ
減ル、斯ウ云フコトヲ考ヘテ居ッタノデアリ
マン、若シ假ニ此一月カラ三月マデ殖エマ
シタナラバ、ソレハ大體申シマスト失業救
濟ノ爲デアリマス、昨年度ノ十二月マデニ
一億二千万圓許可ヲシテ、多少殖エテ居リ
マスヤウナ心持ガスル、比較ヲシマセヌカ
ラ、殖エテ居リマスヤウナ氣持ガシマスノ
ハ先日申上ゲタヤウニ、殆ド全部ト申シ
テ宜シイノデアリマスガ、失業救濟、或ハ
失業救濟類似ノモノヽ爲ニ殖エタ數字デア
リマス、是ダケノコトハ申上ゲマスガ、先
程御話ノ、一月カラ三月マデウント殖エハ
セヌカ、一億ノ許可額ガ手許ニ來テ居ルデ
ハナイカト云フコトハハッキリ致シマセ
ヌガ、只今申ス如ク農村漁村ニ對スル七千
万圓等モ、今許可ヲ得テ來テ居ルノガ、聞
イテ見マスト六七件決定シテ參ヲテ居リマ
スカラ、是マデヨリハ幾ラカ殖エルカモ知
レマセヌ、サウ申上ゲテ置キマス
〔井上孝哉君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X00719310127&spkNum=66
-
067・井上孝哉
○井上孝哉君 兩大臣ノ御答辯ヲ伺ヒマシ
タガ、如何ニシテモ其答辯ハ私ノ耳ニ了解
シ得ル程度ノ答辯ニハナッテ居リマセヌ、內
務大臣ガ岡山縣ヘ供奉セラレタ場合ニ、東
京へ歸ルベキ順序ニ付テノ說明ガアリマシ
タガ、ソレハ當然其順序ヲ執ラレタコトハ、
是ハ執ラナケレバナラヌ當リ前ノコトデア
ルガ、私ノ御尋シタイノハ、臣子ノ分トシ
テ、殊ニ廟堂ノ重臣ノ地位ニ居ル內務大臣
ガ、己ノ任務ヲ捨テ、其職務ヲ曠廢スルヤ
ウナコトヲ····
〔發言スル者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X00719310127&spkNum=67
-
068・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 靜肅ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X00719310127&spkNum=68
-
069・井上孝哉
○井上孝哉君(續) 左樣ナコトヲ陛下ニ
申上ゲテ御許シヲ得ルト云フコトガ(拍手)
是ガ抑〓不心得ノ甚シイモノデアルト言ハ
ナケレバナリマセヌ、御警衞ノ任務ト云フ
モノハ、次官ヲ以テ代理セシムルナゾト云
フ、通常ノ任務トハ違フノデアリマス(拍
手)是ハ絕對的ノ任務デアッテ、何人ニモ代
ヘ難イ、如何ナル仕事ニモ代ヘ難イ所ノ大
切ナル任務デアル
〔發言スル者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X00719310127&spkNum=69
-
070・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 靜肅ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X00719310127&spkNum=70
-
071・井上孝哉
○井上孝哉君(續) 私ノ考デハ安達內務大
臣ハ職務ニ熱誠デアルコトヲ私ガ認ムルト
同時ニ陛下ニ對スル忠誠ノ觀念ニ至ッテ
ハ吾々ト異ナル所ノモノガアルト言ハナ
ケレバナラヌ(拍手)
〔「議長注意シロ-議長注意シロ」ト
呼ヒ其他發言スル者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X00719310127&spkNum=71
-
072・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 只今井上君ノ演說
中(「議長何ヲ言フ」ト呼ヒ其他發言スル者多
ク議場騒然)靜肅ニ願ヒマスO議場騒然)
御聽キナサイ御聽キナサイ(議場騒然)ー- 32.
キ給へ聽キ給へ-御聽キナサイ、御聽キナ
サイ(議場騷然)-マア御聽キナサイ-
只今井上君ノ演說中安達內務大臣ハ陛下
ニ對スル忠誠ノ觀念ヲ持タヌト云フ言葉ニ付
テ御注意ガアリマシタガ、是ハ能ク速記錄
ヲ取調ベマシテ、若シ注意スベキ點ガアリ
マシタナラバ、其上デ注意シマス-井上
君、論旨ヲ進メナサイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X00719310127&spkNum=72
-
073・井上孝哉
○井上孝哉君(續) 內務大臣ハ河川改修費
ノ質疑ニ對シテ說明答辯ヲ致サレマシタ
ガ、寧ロ其答辯ノ要旨ハ
〔發言スル者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X00719310127&spkNum=73
-
074・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 靜肅ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X00719310127&spkNum=74
-
075・井上孝哉
○井上孝哉君(續) 河川改修費ヲ扱ッタコ
トハ其通リデアルガ、ソレハ現內閣ニ於テ
始ッタコトデハナイ、前ノ內閣、以前カラ左
樣ナ方針ガ續ケラレテ居ルト云フ意味ニ述
ベラレマシタガ、ソレハ私ノ質疑ヲ誤解ヲ
シテ居ラレルノデ、成程ドノ內閣ニ於テモ
河川港灣ノ改修費ト云フモノハ繰延ベラレ
ルコトハナイデハアリマセヌ、ナイデハア
リマセヌガ、此木曾川デ今申シマシタ事實
ト云フモノハ前ノ內閣ニ於テ繰延ベタコ
トハ正當ナル割合ニ於テ正當ナル順序ヲ
經テ行ッタノダガ、現内閣ハ苦シイコトニハ
中央ノ豫算ヲ無理ニデモ節約シナクチヤナラ
ヌ立場ニ居ルガ爲ニ、此處デ以テ現内閣ニナツ
テ一昨年竝ニ昨年ヤリマシタコトヲ其割合
ヲ全ク變ジマシテ、今マデ類例ノナイ地方
苛メノヤリ方デ、地方ノ負擔ハ今大臣ノ中
サレル通リ、二十年モ掛ッテ使フノヲ僅カ
十年ノ間ニスッカリ使ハシテシマヒ、其上ニ
低落シタ物價ノ其影響ト云フモノハ國ノ方
バカリデ便宜ヲ得テ、地方ニ便宜ヲ與ヘル
コトガ、殆ド藥ニシタイ位僅シカ地方ニ與
ヘナイ、斯ノ如キヤリ方ト云フモノハ、前
前年竝ニ前年ニ於テ現內閣ガ行ッタコトデ、
前ノ內閣ニ於テハ、憲政會內閣ニ於テモ左
樣ナ不都合ナヤリ方ハヤッテ居ラヌ、全ク是
ガ緊縮政策ノ主張ノ結果ニ、政府ガ豫算ノ
編成ニ困難ヲ感ジタ結果ガ、斯ノ如ク地方
ニ當ッテ行ッタノデアリマシテ、而モ內務大
臣ハ之ニ對シテ辯明セラレルニハ、地方ハ
サウ云フ場合ニ喜ンデヤルノデアッテ、決シ
テ中央ガ無理ヲ强ヒルノデナイト云フ說明
デアルガ、左樣ナ迂闊ナコトヲ下層ノ事情
ニ通ジテ居ラレ、地方ノ事情ニ通ジテ居
ル安達內務大臣ノ口カラ聽クト云フニ至ッ
テハ如何ニモ驚カザルヲ得ナイ官僚風ニ
變シタモノト言ハナケレバナラヌ、中央ガヤ
ルベキコトヲヤラナイ、地方ハ背ニ腹ハ代
ヘラレナイ、改修シナケレバ水ハ氾濫ヲ致
シ、人畜ノ損害ヲ起シ、非常ナ迷惑ヲ受ケ
ルカラ國ガヤラナケレバ仕方ガナイ、地方
デ先ヘ納付金ヲシテデモヤルト云フノハ
是ハ泣ク〓〓ヤルコトデアッテ、決シテ喜ン
デ笑ウテヤル縣ハ一縣モアリマセヌ、全ク
中央ガ地方ヲ壓迫致シテ、內務大臣ハ弱肉
强食ナドト云フコトハナイト申サレマス
ガ、ソレヲ感ジ付カナイト云フコトガ、內
務大臣ノ爲ニ如何ニモ惜ムベキコトデアル
ト考ヘル、更ニ地方豫算ノ編成ニ對シテ内
務大臣ノ辯明ハ、特別ノ事情アル場合ハ例
外ト致シテ置イタト言ハレルガ、特別ノ場
合ト云フノハ私共ノ諒解スル所デハ十ノ
中ノ一トカ、二十ノ中ノ一トカ云フノガ、
特別ノ事情デアラウト思フガ一道三府四十
三縣、卽チ四十七ノ中デ二十七ガ大臣ノ命
令ニ背クト云フヤウナ、特別ノ事情ガ二十七
ツ府縣ノ中ニアルト云フコトハ、如何ニモ驚
入ッタルコトデ、左樣ナコトデハ政府ノ令達
ノ威信ト云フモノハ全ク失墜シテシモフモ
ノデアル、併ナガラ私ノ明瞭ニ諒解致シタコ
トハ正ニ內務大臣ハ自分ノ令達ヲ地方ガ
蹂躪致シタノデハナイ、ソレハ特別ノ事情
トシテ認メテヤルト云フ意味ヲ申サレタノ
デアルガ、シテ見マスレバ內務大臣ガ節約
ノ餘地アルカラシテ、昭和六年度ハ昭和五
年度ノ豫算ヨリモ少クセイト言ウタ、其命令
ハ甚ダ不當デアッテ、地方ハ緊縮節約ノ餘
地ノナイモノデアルト云タコトヲ、內務大
臣ガ認メタモノデアルト諒解致シテ居
ル(拍手)更ニ大藏大臣ノ答辯ハ實ハ御
答辯ガ出來ナイデアラウト私ハ推察ヲ
致シテ質問ヲ致シタノデアリマスガ、
若シモ内務省ガ此一月卽チ今月刋行致シ
マシタ昭和五年度ノ地方財政〓要ノ七頁
ヲ御覽ニナレバ、實ニ明瞭ニナルコトデ
アリマシテ、此計數ハ內務省ガ間違デアル
トハヨモヤ申サレマスマイ(拍手)私ハ今ソ
レヲ皮肉ニ內務大臣ニ御伺スルコトハ致シ
マセヌガ、此頃東君ガ言ハレタ大地ヲ打ツ槌
ハ外レルコトハアッテモ、此申分ハ間違ハナ
イト言ハレタガ、私ノ只今質問ヲ致ス、井
上大藏大臣ガ昨年ノ四月此壇上ニ於テ、正
ニ昭和四年度ノ豫算ヨリモ昭和五年度ノ地
方豫算ハ二億五千餘万圓少ナク致シタト云
フ事實ヲ此處ニ申述べラレマシタノガ全ク誤
リデ、五千六百万圓ノ相違ヲ致シテ、ソレ
ガ明カニ此處ニ現ハレテ居ル所ノ兩年度ノ
豫算ノ比較ニ依ッテ、是程明瞭ナコトハナイ
ノデ、ソレコソ大地ヲ打ツ槌ハ誤ッテ當リマ
セヌデモ、私ノ申シマスル此計數ノ誤ッテ居
ルコトハ明瞭ナ事デアリマスカラ、太鼓ノ
ヤウナ判ヲツイテ私ハ保證致スノダガ、若
シモ私ノ言フコトガ惡クテ、大藏大臣ノ言
ハレルコトガ善イノナラバ、私ハ大藏大臣
ノ要求セラレルドンナ方法ニ依ッテデモ、天
下ニ向ッテ謝罪ヲ致スノデアルガ、若シモ大
藏大臣ノ方ガ誤リデアッタナラバ、私ノ要求
スル所ノ方法ニ依ッテ、天下ニ謝スル覺悟ガ
アルカドウカ(拍手)是ガ他ノ事ナラバ私ハ
斯クモ追窮ハ致サヌノデアリマス、何ヲ申
シテモ大事ナ-現內閣ノ最モ大事ナル緊
縮政策ノ其大方針ニ依ッテ、大ニ地方ノ豫算
ヲ緊縮セヨト云フ命令ヲ發シテ、其命令ハ
卽チ其當時訓令ニ依ッテ一割五分減額セヨ
トマデ念ヲ押シタル緊縮デアッテ、其結果ガ
其推測デナイ事實、四年度ト五年度ト云フ
其事實、其豫算ト云フモノヲ比較シテノ話
デ、旣定ノ事實ニ於テ斯ノ如ク誤リガアル、
シテ見マスト大藏大臣ガ、或ハ內務大臣
ガ得意ニナッテ緊縮ヲ高調セラレタ所ニハ、
大ニ虚僞ノ宣傳ガアッタト云フコトヲ謂ハ
ナケレバナラヌ(拍手)諸君、是ガ虛僞ノ宣
傳デアルト共ニ、吾々ハ考ヘテ見レバ實ニ
憂慮ニ堪エナイコトハ此間中カラ當議會
ニ於テ段々議論ノアル、歲入ノ見積ガ多イ
トカ少イトカト云フコトニ付テ、大藏大臣
ハソレハ或ハ世界ノ不景氣ノ爲ニ影響ヲ蒙
ルコトガアッタンダトカ、或ハ將來ニ於テ
モアリサウナコトヲ言ハレルノデアルカラ
シテ、斯ノ如ク自分ノ方ノ全ク見込違ヒノ
コト、或ハ故意ニ違ヘテ大キク作ッテ居ルコ
トハ、世界ノ不況ニナスリ付ケテ、而モ自
分ノ誇ラネバナラヌ所ノ得意ニシタイコト
ハ現在ノ事實ヲ誇張シテ、サウシテ此議
會ヲ通シ、國民ニ虛僞ノ宣傳ヲ爲スノミナ
ラズ、地方官會議ニ於テハ地方長官ニ之ヲ
總理大臣、內務大臣等ガ訓示ヲ致シテ、此
計數ヲ示シテ居ル、其地方長官ハ歸リマシ
テ町村長ヲ通ジテ日本全國ニ宣傳シテ居
ル現內閣ノ大主張デアル緊縮政策ガ、其
本ニ於テ、根柢ニ於テ斯樣ナ大ナル數字ノ
誤リヲ致シテ居ルト云フコトハ是ハ實ニ
政府ノ爲ニ惜ミテモ尙ホ餘リアルコトト謂
ハナケレバナリマセヌ(拍手)
更ニ大藏大臣ガ地方債ノ增加ノコトニ付
テノ答辯ハ一應聽ケバ尤ラシク言ハレル
ガ、ソレガ大ニ誤クテ居ルノデ、大藏大臣ハ
絕對數ニ於テ年々增シテ行ッテ居ル、ソレハ
私ガ申シタ通リ、或ハ三億、或ハ二億、或
ハ一億七千万圓、又最近ノ此年度モ亦前年
ヨリモ多ク增スト云フコトハ、其傾向ハ大
藏大臣ハ認メラレテ居リナガラ、增シテハ
居ル、併ナガラ其增シ方ガ段々少クナルヤ
ウニ努メテ居ルト言ハレルガ、非募債政策
ト云フモノハサウ云フコトデアリマセウカ
(拍手)吾々カラ思フト、現在大藏大臣ガ此日
本ノ世帶ヲ引受ケラレタ時ニ、二十億ノ地
方債ガアッタナラバ、ソレカラ後ニ一年ニ一
億五千万圓デモ、二億圓デモ償還スル額ガ
アルガ、其償還スル額程度位ニ新シイノヲ許
シテヤッテ、元受取ッタ身上ヨリモ餘計ニ地
方債ガ增サヌヤウニスルト云フノナラバ、
マダ非募債政策ノ說明ニナルカ知レナイ
ガ、絕對數ガ增シテ行クト云フノデハ、卽
チ年々償還スルヨリモ遙ニ多ク地方債ヲ許
可ヲ致シテ、ソレガ年々一億二億增シテ行
クト云フノガ、ドウシテ非募債政策ノ說明
ニナリマスルカ(拍手)更ニ驚クベキハ若シ
モ增スナラバソレハ失業公債デアルト言ハ
レルガ、左樣ナコトハ承ラヌデモ明瞭デア
ル、失業公債デアレバ、ソレハ震災復舊ノ
公債ノヤウニ傍ノ方へ取除ケテ宜イト云フ
御考カ知ラヌガ、失業公債ナルモノハ政府
ノ緊縮政策、消費節約ノ結果事業ガ起ラヌ、
產業ガ不振デアル、ソレガ爲ニ失業者ガ續
發スル、ソレヲ救濟シナケレバ見殺シニシ
ナケレバナラヌト云フノデ公債ヲ起スノダ
カラ、卽チ政府ノ大失政ニ基イタル所デ、
地方債ガ斯クモ增發致スノデアル(拍手)何
等答辯ハ斯ノ如クニシテ少シモ諒解スルコ
トガ出來ナイ、答辯ニハナッテ居ラヌト思ヒ
マスル、唯私ノ最モ遺感トスル所ハ、井上
大藏大臣ガ今此處デ御答辯ニナリ得ナイ所
ノ其問題ニ付テハ、何レ兩三日ノ中ニハ致
方ナシニ其事實ヲ此處デ辯明セラレルデア
ラウカラ、其時ニ承ルコトヽ致シマスガ、
此二億五千万圓ガ五千六百万圓モ違フノダ
トサウシマスルト、此昭和四年度ニ於ケ
ル實行豫算ニ於テ二億七千万圓ノ緊縮ヲ
行ッタト云フコトヲ言ハレタガ、是ガ甚ダ怪
シイモノデアラウト思フノデ、此四年度ノ
決算ヲ見ナケレバナラヌガ、四年度ノ決算
ハマダ容易ニキマラナイ、此四年度ノ決算
ノキマルトキニ大藏大臣ニ御目ニ懸ルコト
ヲ得レバ、必ズヤ此二億七千万圓モ大ナル
間違ガアルデアラウト思フガ、併ナガラ殘
念ナコトニハ其決算ノ分ル頃ニハ、最早-
井上準之助君ハ居ラルヽカモ知ラヌガ、大
藏大臣ノ井上準之助君ニ御目ニ懸カルコト
ガ出來ナイデアラウト思フコトガ殘念デア
ル(拍手)
內務大臣ハ國ガ地方ニ持,テ行ッテ轉嫁致
シテ、ソレガ爲ニ地方ヲ苦シメルヤウナコ
トハナイト言ハレマシタカラ、更ニ進ンデ
御尋ヲ致サナケレバナリマセヌガ、義務〓
育費ノ國庫負擔金ヲ一千万圓本年度カラ增
額ヲサレク、其增額ノトキニハ特別議會
ニ於テ濱口總理大臣ガ昨年五月此處ニ施政
演說ヲサレタ、其時ニ斯樣ニ申サレテ居
ル、地方稅ノ負擔ハ非常ニ重イ、其重イノ
ヲ緩和シナケレバナラヌカラ、玆ニ一千万
圓ヲ增加シテ、之ニ依ッテ生ズル地方財政ノ
餘裕ヲ以テ地方稅ノ輕減ヲナサシム、卽チ
義務〓育費一千万圓ヲ更ニ增シテ八千五百
万圓ニスル、其一千万圓ノ爲ニ地方ノ〓育
費ガソレダケ餘裕ガ出來ルノダカラ、其餘
裕ノ財政ヲ以テ地方稅ヲ輕減セヨ、斯ウ其
方針ヲ此處デ演說サレテ、而シテ五年ノ六
月十九日ニ通牒ヲ發セラレタ、其通牒ハ何
ト言ッテアルカト云フト「一、一千万圓ヲ〓
員俸給ニ充當スルコトニ因リテ生ズル餘裕
ハ全額之ヲ市町村ノ負擔輕減ニ充ツルコ
ト」「一戶數割、家屋稅附加稅ノ減額、又
ハ三ツノ國稅ノ附加稅等ニ於テ負擔過重ニ
亙ルモノニ付テハ減額」斯ノ如ク市町村ノ
戶數割或ハ家屋稅附加稅若クハ國稅デアル
所得稅、營業收益稅若クハ地租ノ附加稅デ
アルモノデ、市町村ノ負擔ノ重イヤウナ所カ
ラ減稅ヲセイト、斯ウ云フコトヲ更ニ通牒
ヲ出サレタノデアリマスルガ、定メテ政府
ニ於テハ十分ナ御調ガアルデアラウト思ヒ
マスルガ、私ガ西ニ東ニ各地ニ出張ヲ致シ
マシテ調ベマシタ所、竝ニ我政務調査局ニ
依ッテ調ベマシタル所ニ依リマスルト(笑
聲)政府ノ命令デアル、政府ノ主張デアル所
ノ此義務〓育費一千万圓ニ代ルベキ地方、
市町村稅ノ減稅ト云フモノハ、藥ニシタイ程
モ吾々ハ見出スコトノ出來ナイ程ツレ程甚
シク、全ク實行ノ出來テ居ラヌト云フコト
ガ眞相デアリマス(拍手)稀ニ私ガ見マシタ
所デ、減稅ヲ致シタ所ガアルガ、減稅ヲ折
角致シマシテモ、直グ其翌月ニハ追加ヲ致
シマシテ、マルデ元ノ杢阿彌ニナッテシマウ
テ、何等地方稅ノ減稅ハ之ニ依ッテ實現ヲ致
シテ居ラヌ、斯ノ如ク減稅ガ行ハレテ居ラ
又、卽チ政府ノ命令ガ行ハレテ居ラヌ、ソ
レノミナラズ折角大切ノ〓員俸給ハドウ
ナッテ居ルカ、誰モ己レノ子弟ヲ託スル所ノ
〓員ヲ優遇致シタイノハ誰シモ親ノ心、併
ナガラ地方ノ負擔ガ苦シクテ中ミ心配ヲシ
テ居ル、ソコヘ持フテ來テ中央ハ樂デモナイ
財政ノ中カラ、一千万圓ノ多クヲ地方ニ更
ニ下渡金トシタ、ソレデアルノニ拘ラズ〓
員ノ俸給ハ今日ドウ云フ風ニナッテ居ルカ、
內務大臣ハ百モ御承知デアラウト思フガ、
〓員ノ俸給ハ支給ガ出來ナイノデアリマス
(拍手)或ハ町村長ノ會議ニ於テ一齊ニ〓員
ノ俸給ヲ減額シヨウト云フ決議ヲ致シタ
リ或ハ又到ル處〓員ノ俸給ヲ一割五分若
クハ二割ノ減額ヲ致ス、又少シ形ヲ變ヘテ
減額ヲサセズニ〓員ニ迫ッテ寄附シテ吳レ
ヌカト云フヤウナ、寄附ヲサセル、好ミモ
シナイ寄附ノ强要ヲ致スコトガ、〓育者ニ
マデ斯ノ如キコトヲ行フ、然ラザル者ハド
ウナルカト云フト、一月送リ二月送リ三月
送リト云フヤウナ風ニ、〓員俸給ノ支給ガ
全ク完全ニ行ハレテ居ラヌ事實ガ天下到ル
處ニアルノデアリマス(拍手)此頃私ガ〓ッ
タ所デ驚クベキ事實ハ、〓員俸給、役場吏
員俸給-役場吏員ノ俸給モ〓員俸給ト同
ジ運命ニ陷ヲテ、ヤハリ支給ガ行ハレテ居ラ
ヌガ、サウ云フ俸給ヲ渡スベキ日ニ近寄リ
マスルト、後場ノ吏員ガ東奔西走熱狂致シ
テ稅ノ未納ノ整理ヲシ、集メ廻ッテ、サウシ
テ〓員ノ俸給、吏員ノ俸給ヲ支給スルコ
トニ努メテ居リマスルガ、何ト悲慘ナ有
樣デハアリマセヌカ(拍手)斯ノ如キ府縣
ガ。
〔發言スル者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X00719310127&spkNum=75
-
076・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 靜肅ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X00719310127&spkNum=76
-
077・井上孝哉
○井上孝哉君(續) 三十府縣モアルヤウニ
私ノ調査ニハ···
〔發言スル者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X00719310127&spkNum=77
-
078・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 靜肅ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X00719310127&spkNum=78
-
079・井上孝哉
○井上孝哉君(續) 出テ居ルノデアリマ
ス、斯ノ如キ有樣ニナルノモ已ムヲ得ナ
イ
〔發言スル者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X00719310127&spkNum=79
-
080・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 靜肅ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X00719310127&spkNum=80
-
081・井上孝哉
○井上孝哉君(續) 全ク納稅ノ狀態ガ激變
ヲ致シテ、殆ド納稅ガ困難ナル有樣ハ、是
ハ御互モ稅ヲ納メテ居ッテ體驗ヲ致シテ居
ルコトデアリマスルガ、其稅ノ入ラナイコ
トヽ云フモノハ、國稅ハマダ宜シイガ、縣
稅モマダ宜シイガ、市町村稅ニ至リマシテ
ハ、甚ダシキニ至ッテハ調定額ノ六割モ這
入ラナイ所ガアル、憐ムベキ狀態デアリマ
ス(拍手)
斯樣ナ稅ノ滯納ノ激シイノハ已ムヲ得ナ
1、國稅ガ九億圓臺カラ七億圓臺ノ今日ニ
マデ變ラテ居ル、ソレ程下ッテ居ルノダカラ、
隨テ附加稅ガ甚ダ少ナクナッテ參タタノミナ
ラズ、縣稅、市町村稅ニ至ッテ隣レムベキ
ナノハ獨立稅デアル、各稅ガヤハリ非常ナ憐
レナ納稅狀態ニナッテ參ッタ、其筈デアリマ
セウ、商工業ハ不振デアル、農產物ノ價格
ハ非常ナ低落ヲ致シタ、擔稅能力ト云フ
モノガ憐レムベキモノニナッタノハ-現
在ノ社會ヲ誰ガ造ヲタカ知ラヌガ、現在ノ經
濟狀態ガ斯ノ如キ有樣ニ至ッテ居ル(拍手)
擔稅能力ガ無イ位デアリマスカラシテ、
借リタモノナンゾハ迚モ返スコトハナイ、
每日此處デ話ガ出ルガ「モラトリアム」ハ全
ク到ル處ニ行ハレテ居ルト云フ甚シキ狀態
デアリマスル(拍手)銀行ノ睡眠狀態ニ在ル
ト云フコトガ、昨日モ頻ニ話ニ出テ、私ノ
初メテ聽イタヤウナ妙ナ銀行モアッタヤウ
ダガ、要スルニ睡眠銀行ト云フコトヲ言ハ
レ居ッタガ、私ハ市町村ノ此支拂ノ停滯致ス
有樣ハ、ヤハリ睡眠狀態ニ傾イテ居ルモノ
デアルト、遺憾ニ思フノデアリマスル(拍
手)市町村デハ收入ガ激減致シマシタモノ
デスカラ、ドウニモ斯ウニモナラヌ、納稅
ノ爲ニ、滯納整理ノ爲ニ狂奔致スコトヲ申
述ベタノデアリマスガ、ソレデモ追付カナ
イカラシテ、遂ニ一時金ヲ借入レルト云フ
コトデ、アチラコチラカラ借入金デ間ニ合
セテ居ルガ、年度ノ末ニナッタ所ガ拂フ見
込ハ全クナイ、ドウスルカト云フト三月三
十一日ニ返シマシテ、翌日ノ未明卽チ四月
一日ニ借入レルト云フ有樣デ、此綱渡リヲ
シテ居ル有樣ト云フモノハ、洵ニ名狀スベ
カラザル所ノ窮厄ナル有樣ニナッテ居ル、斯
ノ如キ事實ハ、安達內務大臣ハ無論十分ニ
御承知ニナッテ居ルデアラウガ、斯樣ナ私ノ
申述ベタ事實ヲ是認セラルヽヤ否ヤノ御答
辯ヲ求メマスル
更ニ歲入ガ歳出ニ伴ハナイコトハ、府縣
ノ間ニ於テ現ニ四年度ニ於キマシテ、十九
府縣モ赤字ノ出ルヤウナ狀態デアッタコト
ガ現レテ參ッテ居ルガ、五年度ニ於キマシ
テモ、十四億餘圓ノ府縣ノ稅及稅外收入ノ
中デ、必ズヤ其五分位ハ又減縮スル程ノ狀
態ダ、今現レテ居ルノデアルカラ、後年度
ニ於テモ、定メテ幾多ノ赤字ノ出ル所ノ府
縣ガ現レテ來ルノ已ムヲ得ザル有樣ニナッ
テ居ル、而シテ內務大臣ガ先刻御答辯ノ如
ク地方ハ緊縮ノ餘地ハナイ、內務大臣ノ
命令ニ背イテモ、尙且ツ之ヲ認メナケレバ
ナラヌ程、地方ノ狀態ハ逼迫シテ居ルガ、
財政ハ最早緊縮スルコトノ出來ナイ程度ニ
マッハ押縮メ押縮メテ、押へ付ケテアル有
樣デアリマスカラ、此場合ドウシテモ此以
上ニ歲出ニ於テ、財政ヲ整理致シ、節約致
スト云フコトハドンナニ現內閣ガ力瘤ヲ
入レテモ、モウ敵ハヌコトニナッテ居ル、ソ
レハ府縣ノ豫算ヲ以テ、先刻中上ゲタ如ク
一道三府四十三縣ノ中ニ、二十七縣モ例外
ノアルコトヲ以テ、證據立テルコトガ、明
瞭デアリマスル(拍手)動モスルト内務大臣
ハ監督權ヲ振〓サレマス、監督權ヲ振廻サ
レマスガ、ソレハ地方長官マデハ監督權
モ及ビマセウ、地方長官モマサカ內務大臣
ノ命令ガ、適當デアルトハ思ヒモ寄ラヌデ
セウガ內務大臣ノ逆鱗ニ觸レヽバ、自分
ノ地位ガ明日ニモ危クナッテ來ルト云フノ
デ、地方長官マデハ內務大臣ノ命令ガ及
ブガ、一ツ進ミマシテ市町村長ニナリマス
ルト、內務大臣ノ命令モスッカリ反古ニサ
レテ了フノデ、最早今日民政黨內閣ノ此內
務大臣安達閣下ノ威信ハ、殆ド地方市町村
ニ於テ威信地ニ墜チテ居ル有樣デアリマ
ス、市町村ニ於テ尙且ツ然リ、公吏デサヘ
モ斯ノ如クデアリマスカラ、民心ハ最早全
ク離反致シテ居ルト謂ハナケレバナラヌソ
コデ緊縮セヨ、節約セヨト云フノダガ、中々
緊縮節約ノ餘地ハナイ、冨豪デアルトカ、
大臣ノ邸宅デアルトカ云フモノハ、是ハチッ
ト間取リヲ節約シヤウト思ヘバ五間ヤ六
問、間取リヲ少クシテモ富豪ヤ大臣ノ邸宅
ハ差支ナイデアラウガ、御互ノ如キ陋屋ノ
五間ヤ六間シカナイ所デハ節約セヨト言
ハレテモ二間ヤ三間ヨリ取ル譯ニハ行カナ
イノダ、況ヤ九尺二間ノ裏長屋ニ至ッテハ、
間モ削ルコトノ出來ナイノハ申スマデモナ
イコトダカラ、府縣ノ財政ノ此以上ノ節約
ノ出來ナイコト、竝ニ市町村ノ節約緊縮ノ
出來ナイコトハ明瞭ナル事實デアルカラ、
如何ニ監督權ヲ振廻シテモ、不能ノ事ハ出
來マセヌ、ソレデアルノニ拘ラズ、中央ハ
內務大臣ガドンナニ否認ヲサレテモ、失業
救濟ノ事業ニ於キマシテモ、政府デヤラナ
ケレバナラヌコトヲ地方ニバカリ押付ケ
テ、內務大臣ノ答辯ノ意思ヲ以テ言ヘバ、
ナアニ失業救濟モ地方デ喜ンデヤルノダ、
決シテ嫌ッチヤ居ラヌト言ハレルダラウガ、
ソレハ迂濶千萬ナ話デアル、失業救濟ヲ地
方ニ於テ、今日起債ニ依ッテヤッタモノバカ
リデモ、此年度ニナッテ三千六百万ノ多キ
負擔ヲ致スガ、中央ハ僅カ三百九十万圓弱
シカ出シテ居ラヌ、左樣ナ有樣デ失業救濟
ニ於キマシテモ、國ノ仕事、國ノ責任ヲ轉
嫁シテ地方ノ財政ヲ壓迫致シテ居ル事實ガ
アル、加之先刻申述ベタ通リ、河川改修ニ
於キマシテ
〔發言スル者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X00719310127&spkNum=81
-
082・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 靜肅ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X00719310127&spkNum=82
-
083・井上孝哉
○井上孝哉君(續) 同ジ國ノ責任ヲ地方ニ
轉嫁致シテ、地方ヲ苦シメテ居ルコトハ、
丁度失業救濟ト彼ノ河川改修トガ二ツ相竝
ンデ、國カラ苦シメラレテ、國庫ガ地方財
政ヲ全ク窮厄ニ陷レルト云フ狀態ガ出現致
シテ居ルノデアリマス(拍手)斯樣ニシテ府
縣ノ收入ト支出ノ模樣ヲ見ルト、來年度ノ
豫算ニ於キマシテモ、正ニ府縣ノ歲入ハ千
百万圓ノ多キヲ減少致シマシテ、支出ノ方
ハ今年度ヨリモ更ニ千四百五十万圓增ス、
出ス方ガ斯ノ如ク增シ、入ル方ガ斯ノ如
ク減ル、シテ見マスレバ、今ハ最早整理ノ
餘地ノナイト內務大臣ノ認メラレテ、減額
命令モ出スコトノ出來ナイヤウナ地方ノ狀
態ニ於テハ、最早之ヲ他ニ求ムルコトハ出
來ヌ、地方有ノ財產ガアリマシタガ、赤字
ガ出ルモノデアリマスカラ、其方ノ整理ノ
爲メ地方有財產モ出來ルダケ融通シテ、最
早地方有財產ニ求メルコトガ出來ヌカラ、
其上足ラヌナラバ仕樣ガナイ、地方債ハド
ンドン起セト奬勵スルヨリ外途ハナイ、元
來内務大臣ハ地方ニ斯ノ如ク政府ノ責任ヲ
轉嫁シテ、地方ヲ苦シメルノデアルガ、地
方ノ財政ト云フモノハ國ノ財政ヨリモ豐カ
ナモノデアルト御考ニナッテ居ルカドウカ、
之ヲ伺ヒタイノデアリマス、今申上ゲタ數
件ニ付テ明瞭ナル御答辯ヲ內務大臣カラ與
ヘラレンコトヲ望ミマス(拍手)
〔國務大臣安達謙藏君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X00719310127&spkNum=83
-
084・安達謙藏
○國務大臣(安達謙藏君) 井上君ハ河川港
灣ノ地方費ノ節減繰延等ニ付キマシテ、地
方ヲ非常ニ虐待スルト(發言スル者多シ)是
ハ確ニ井上君ノ誤解デアリマシテ、決シテ
地方ハ虐待セラレルト云フ感ジヲ持ッテ居
リマセヌ、ソレカラ(拍手、發言スル者多
シ)二十幾縣ノ昭和六年度ノ豫算ガ
〔發言スル者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X00719310127&spkNum=84
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085・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 靜肅ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X00719310127&spkNum=85
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086・安達謙藏
○國務大臣(安達謙藏君) 糖五年度豫算
ヨリモ增加シタト云フコトハ、是ハ先ニ申
シタヤウニ、緊急已ムヲ得ザルガ爲ニ增加
シタノデアリマス、是ハ
〔發言スル者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X00719310127&spkNum=86
-
087・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 靜肅ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X00719310127&spkNum=87
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088・安達謙藏
○國務大臣(安達謙藏君)(續) ソレカラ〓
員給料ノ···
〔發言スル者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X00719310127&spkNum=88
-
089・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 靜肅ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X00719310127&spkNum=89
-
090・安達謙藏
○國務大臣(安達謙藏君) 不足ヲスル
コトハ、是ハ往々サウ云フ所ガアリマスガ、
是ハ(發言スル者多シ)一時借入金ヲシテ〓
員ノ··
〔發言スル者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X00719310127&spkNum=90
-
091・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 靜肅ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X00719310127&spkNum=91
-
092・安達謙藏
○國務大臣(安達謙藏君)(續) ソレカラ赤
字ガ出タト云フコトデアリマスガ、是ハ現
内閣ノ成立シマス以前ニ當リマシテ缺陷ガ
アリマシタ、其缺陷ガアリマシタノヲ出來
ルダケ補塡致シマシタケレドモガ、ソレガ
補塡ガ出來ナイ所ガ赤字ニナッタノデアリ
マス
〔發言スル者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X00719310127&spkNum=92
-
093・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 靜肅ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X00719310127&spkNum=93
-
094・安達謙藏
○國務大臣(安達謙藏君) 此地方ノ缺
陷ナルモノハ前內閣ノ頃カラ地方ニ大缺陷
ガアッタノデアリマス、其整理ガマダ付カナ
イダケガ赤字ガ出タノデアリマス
〔發言スル者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X00719310127&spkNum=94
-
095・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 靜肅ニ願ヒマス
〔井上孝哉君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X00719310127&spkNum=95
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096・井上孝哉
○井上孝哉君 內務大臣ノ御答辯ヲ伺ヒマ
シタガ··
〔發言スル者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X00719310127&spkNum=96
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097・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 靜肅ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X00719310127&spkNum=97
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098・井上孝哉
○井上孝哉君(續) 只今ノ内務大臣ノ御答
辯ニ依リマシテ私ノ耳ニスルコトヲ得タノ
ハ地方ガ改修費ノ取扱ニ付テハ、決シテ
地方ハソレヲ中央カラ虐待サレルトハ思ウ
テ居ラヌト云フコトダケノ答辯ガ聽エマシ
タガ、其內務大臣ノ考ヘテ居ラルヽコト
ハソレハ表面ノコトデアッテ、裏面ノ眞相
ハ分ッテ居ラレヌノデアルガ、最モ其河川改
修費ニ於テ或ハ繰延ヲ致シ、或ハ又地方ノ
負擔ヲ先ニシテ出スト云フコトニ付テ、全
然ソレニ對シテ地方ガ根柢カラ反對スルト
云フコトハナイガ、政府ガヤラルヽガ如
キ、今マデ此處デ申サレマシタガ如ク、政
府ハ僅ニ負擔ノ五分ノ一弱シカ出サヌ、共
地方ハ其間ニ全部出シテシマヘト云フヤウ
ナ、左樣ナ極端ナル取扱ヲ受ケタコトハ今
マデ曾テナイカラシテ、今度初メテデ、實ニ
中央ノヤリ方ニ付テ地方ハ痛入ッテ居ルノ
デ、大臣ノ耳ニハ地方ノ報告ト云フモノ
ハ、ソレガ淨化サレテ入ルモノダカラ、地
方ノ本當ノ狀況ガ報告サレズニ、ソレガ淨
化サレ、淨化サレテ奇麗ニナッテ內務大臣
ノ耳ニ入ルノダカラシテ、內務大臣ガ曾テ
經驗サレタ如ク、此現狀ヲ眺メテ眞相ヲ知
ラレヌケレバ、地方ノ狀態ヲ穿ツコトハ出
來ナイモノデアルト言ハナケレバナラヌ、
私ハ三度玆ニ登壇致シマシタカラ、是レ以上
登壇スルコトハ出來マセヌノデ、無論登壇モ
シマセヌガ、併ナガラ今內務大臣ノ御答辯
ハ少シモ私ノ耳ニ入ラズニ、唯ソレダケ聽
エタ······(發言スル者多シ)ソレダカラ私ハ
最早質問ハシマセヌガ、今答辯サレタコト
ヲモウ一應此處デ答辯ヲサレナケレバ分リ
マセヌ、答辯ハ敢テ求メマセヌ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X00719310127&spkNum=98
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099・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 內務大臣カラ答辯
ガアリマセヌ、只今作田君カラ成規ノ贊成
ヲ得マシテ-成規ノ贊成ヲ得マシテ······
〔「議事進行ノ發言ヲ許サヌコトハナ
イ」ト呼ヒ其他發言スル者多ク議場騷
卷発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X00719310127&spkNum=99
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100・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) ·····御異議アリマ
セヌカ······(議場騒然聽取スル能ハス)·····
作田君ノ動議ノ如ク······マシタ(議場
騒然)······傍聽席ノ退場ヲ命ジマス······O賊
場騒然)······致シマスカラ(議場騒
然·······雨君ノ退席ヲ命ジマス······(議場騒
然)······君ニ退場ヲ命ジマス
〔「速記ガ取レナイデハナイカ」ト呼ヒ
其他發言スル者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X00719310127&spkNum=100
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101・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) ···君ニ退場ヲ命
ジマス
〔「議長ハ祕密會ヲ宣告シタケレドモ民
政黨ハ一人モ立タナイカラ祕密會ハ否
決ニナリマシタ」「採決ヲ取ッテ見ロ」ト
呼ヒ其他發言者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X00719310127&spkNum=101
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102・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) ··暫時休憩致シ
マス
午後八時六分休憩
午後十一時開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X00719310127&spkNum=102
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103・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 休憩前ニ引續キ會
議ヲ開キ、公開致シマス、先刻議長ノ宣〓
ガ議場ニ徹底致シマセヌカッタカラ之ヲ取
消シマス、國務大臣ノ演說ニ對スル質疑ハ
終局ト認メテ御異議ガゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X00719310127&spkNum=103
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104・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 御異議ナシト認メ
ママ、仍テ質疑ハ終局致シマシタ、本日ハ
是ニテ散會致シマス、次會ノ日程ハ公報ヲ
以テ御通知致シマス
午後十一時一分散會
衆議院議事速記錄第六號中正誤
頁段行誤正
八六-末道路).起ッタ
〇四三一九內務大臣內務大臣ハ
一〇四三二〇官邸ハ官邸
一〇四三三〇檢事正ノ檢事正ハ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X00719310127&spkNum=104
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