1. 会議録本文
本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。
-
000・会議録情報
昭和六年二月十九日(木曜日)
午後一時四十八分開議
━━━━━━━━━━━━━
議事日程 第十五號
昭和六年二月十九日
午後一時開議
第一 抵當證券法案(政府提出) 第一讀會
第二 不動産登記法中改正法律案(政府提出) 第一讀會
第三 民事訴訟法中改正法律案(政府提出) 第一讀會
第四 競賣法中改正法律案(政府提出) 第一讀會
第五 民事訴訟用印紙法中改正法律案(政府提出) 第一讀會
第六 日本勸業銀行法中改正法律案(政府提出) 第一讀會
第七 農工銀行法中改正法律案(政府提出) 第一讀會
第八 北海道拓殖銀行法中改正法律案(政府提出) 第一讀會
第九 國税徴收法中改正法律案(政府提出) 第一讀會
第十 右各案の審査を付託すへき委員の選擧
第十一 貯蓄銀行法中改正法律案(政府提出) 第一讀會
第十二 右議案の審査を付託すへき委員の選擧
第十三 取引所税法中改正法律案(政府提出) 第一讀會
第十四 右議案の審査を付託すへき委員の選擧
第十五 郵便法中改正法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第十六 鐵道船舶郵便法中改正法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第十七 辯護士法中改正法律案(北浦圭太郎君外三名提出) 第一讀會
第十八 中央卸賣市場法中改正法律案(藤田若水君外四名提出) 第一讀會
第十九 違警罪即决例中改正法律案(一松定吉君外三名提出) 第一讀會
第二十 行政執行法中改正法律案(一松定吉君外三名提出) 第一讀會
第二十一 家祿賞典祿給與未濟に關する法律案(末松偕一郎君外四名提出) 第一讀會
第二十二 鑛業法中改正法律案(大里廣次郎君外三十七名提出) 第一讀會
第二十三 鑛業法中改正法律案(坂井大輔君外二名提出) 第一讀會
第二十四 度量衡法中改正法律案(一松定吉君提出) 第一讀會
第二十五 計量士法案(一松定吉君提出) 第一讀會
第二十六 未成年者飮酒禁止法中改正法律案(長尾半平君外二十四名提出) 第一讀會
第二十七 恩給法中改正法律案(山下谷次君外一名提出) 第一讀會
第二十八 刑事訴訟法中改正法律案(一松定吉君外四名提出) 第一讀會
第二十九 利息制限法中改正法律案(一松定吉君外四名提出) 第一讀會
第三十 民事訴訟法中改正法律案(村岡吾一君外三名提出) 第一讀會
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01619310219&spkNum=0
-
001・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 諸般ノ報告ヲ致サ
セマス
〔書記官朗讀〕
一議員ノ異動左ノ如シ
宮城縣第一區選出議員中島鵬六君死去セ
ラレタリ
一今十九日貴族院ヨリ受領シタル政府提出
案左ノ如シ
明治四十年法律第十一號中改正法律案
(癩豫防ニ關スル件)
一政府ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
治安警察法中改正法律案
寄生蟲病豫防法案
(以上二月十九日提出)
議員ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
產業組合法中改正法律案
提出者
土井權大君板谷順助君
名川侃市君胎中楠右衞門君
農工銀行法中改正法律案
提出者
土井權大君板谷順助君
名川侃市君胎中楠右衞門君
日本勸業銀行法中改正法律案
提出者
土井權大君板谷順助君
名川侃市君胎中楠右衞門君
辨理士法中改正法律案
提出者
名川侃市君杉浦武雄君
戶澤民十郞君牧野良三君
〓瀨一郞君
北海道拓殖計畫ニ關スル建議案
提出者
小池仁郞君一柳仲次郞君
山本厚三君淺川浩君
神部爲藏君澤田利吉君
坂東幸太郞君手代木隆吉君
前田卯之助君岡田春夫君
渡邊泰邦君
(以上二月十八日提出)
樺太ニ市制施行ニ關スル建議案
提出者
喜多孝治君佐々木平次郞君
(以上二月十九日提出)
〔左ノ報告ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノ爲
玆ニ揭載ス〕
一昨十八日ニ於ケル特別委員ノ異動左ノ如シ
米穀法中改正法律案(政府提出)外一件委
員
辭任田中養達君補闕高橋壽太郞君
市制中改正法律案(政府提出)外三件委員
辭任西岡竹次郞君補關藤井達也君
辭任藤田若水君補闕後藤亮一君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01619310219&spkNum=1
-
002・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 是ヨリ會議ヲ開キ
マス、此際幣原總理大臣臨時代理ヨリ發言
ヲ求メラレテ居リマス--幣原總理大臣代
理
〔國務大臣男爵幣原喜重郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01619310219&spkNum=2
-
003・幣原喜重郎
○國務大臣(男爵幣原喜重郞君) 濱口內閣
總理大臣ノ最近ノ症狀ニ付キマシテ報告申
上ゲマス
同首相ノ其後ノ經過ハ至ッテ順調デアリ
マスルガ、今日ノ處デハ未ダ議會ニ出席ノ出
來得ル程度ニハ立至ッテ居リマセヌ、會期モ
段々進行致シ、重要諸議案ガ議會ニ於テ審
議セラレテ居リマスル大切ナ時期デアリマス
ルノニ、健康上ノ爲トハ言ヒナガラ出席シ
得ザルコトハ總理大臣自ラ之ヲ頗ル遺憾
トシ、一方ナラズ苦慮セラレテ居ルノデア
リマス
總理大臣目下ノ症狀ノ大體ヲ申上ゲマス
ルト、何分ニモ負傷ノ重カッタ結果、體力ノ
恢復ガ未ダ充分デナク、下肢ガ尙ホ運動ニ
慣レマセヌ爲、登院ノ運ビニ至リ兼ネテ居
ルノデアリマス、唯今ノ狀況カラ推測致シ
マスルト、今後意外ノ變化ノナイ限リハ
三月上旬中ニハ出席致スコトガ出來得ルデ
アラウト存ジテ居リマス(拍手)首相自身モ
其心掛ケヲ以テ、折角步行ノ練習其他體力
ノ恢復ニ努メラレテ居ルノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01619310219&spkNum=3
-
004・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 秋田君カラ議事進
行ニ付テ發言ヲ求メラレテ居リマス、之ヲ
許シマス、秋田〓君
〔秋田〓君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01619310219&spkNum=4
-
005・秋田清
○秋田〓君 諸君、私ハ只今國務大臣幣原
君ノ言明ニ付キマシテ、議事進行ニ關シ一
言致シタイト存ジマス
本日貴族院ニ於テ幣原國務大臣ハ、濱口
首相登院ノ時期ニ付テ御言明ニ相成ッタコ
トヲ承ハリ、當院ニ於テハ議長ヲ通ジテ此
旨御聲明ニ相成ルコトヲ承リマシタノデ、
私ハ斯ノ如ク貴族院ニ於テハ國務大臣自ラ
言明ヲ致シ、衆議院ニ於テハ議長ヲ通ジテ
聲明ヲ致スト云フガ如キ擧動ハ上下兩院
ノ一ヲ重シトシ、一ヲ輕シトスルガ如キ政
府ノ擧動ト相成リ(「ノー〓〓」)甚ダ然ルベ
カラザルコトヽ考ヘマシタガ故ニ、左樣ノ
過ハ避ケラルヽコトガ宜シカラウト存ジマ
シテ-卽チ法律的ニ申セバ、上下兩院ハ
平等ノ地位デアリマスルケレドモ、政治的
ニ申セバ衆議院ハ國民興論ノ府デアル(「ヒ
ヤヒヤ」)此輿論ノ府ヲ輕ンズルガ如キ擧動
ガアッテハ相成ラヌト云フコトヲ、議長ニ非
公式ニ御忠告申上ゲタノデアル(拍手)本員
ガ非公式ニ此點ヲ議長ニ御注意中上ゲマシ
タル結果、飜然トシテ議長ハ其態度ヲ改メ
ラレヽ政府モ亦本員ノ忠言ニ聽カレタコト
ト見エ、只今幣原君ノ御言明ガアリマシタ
ガ、是ハ憲政ノ爲ニ多トスルノデアリマス
(拍手)
〔發言スル者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01619310219&spkNum=5
-
006・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 靜肅ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01619310219&spkNum=6
-
007・秋田清
○秋田〓君(續) 過ヲ改メラルヽコトニハ
極メテ忠實ナルベシ、極メテ勇敢ナルベシ
〔發言スル者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01619310219&spkNum=7
-
008・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 靜肅ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01619310219&spkNum=8
-
009・秋田清
○秋田〓君(續) 此議長ノ擧動、此政府ノ
擧動ハ將來モ亦斯クアランコトヲ私ハ望
ムノデアル(拍手)
尙ホ此言明ニ付キマシテ、私ハ玆ニ議事
進行ニ必要ナル事柄ト致シマシテ、幸ニ當
席ニ幣原國務大臣ガ居ラレマスカラ、直接
幣原君ガ御答下サッテモ宜シイ、又議長ヲ通
ジテ御答下サッテモ宜シイ、議事ノ進行ノ關
係デアリマスルカラ、幸ニ議長ガ許サルヽ
ナラバ、直接御答ニナリ、卽時御答ニナル
コトヲ吾々ハ希望スルノデアリマスケレド
モ、所謂議院法ノ規定、衆議院規則ノ規定
ニ依ッテ、議長ガ政府ニ確メラレテ御答ニ相
成シテモ、ソレハ議長ノ御考ニ私ハ一任スル
ノデアリマス、兎ニ角一二點御確メヲ致シ
テ置キタイノデアル、卽チ
第一ハ只今ノ御言明、卽チ濱口首相ハ三
月上旬ニ至ッタナラバ、衆議院ニ御出席相成
ルト云フコトデアル、上旬トハ申スマデモ
ナク、一日ヨリ十日マデガ上旬デアル、此
一日ヨリ十日ニ至ルノ間ニ於テ、果シテ濱
口總理大臣ハ當院ニ御出席ニナルト云フコ
トヲ、確ニ此處ニ御言明相成ルコトガ出來
ルカドウカ若シ三月上旬ニ登院スルコト
ガ出來ナカッタ場合ニ於テハ、憲政ノ本義ニ
基イテ、其進退ヲ明カニセラル、意思デアル
カドウカ、之ヲ承リタイノデアリマス(拍
手)私ガ之ヲ更メテ御尋致シマスル所以ノ
モノハ何故デアルカ、卽チ從來吾々ハ此點
ニ對シテ幾度モ御注意ヲ致シタノデアリマ
スルケレドモ、病氣ハ段々宜シイ、何レ出
ル遠カラズ出ルト云フコトヲ以テ、場
ヲ瞞過セラレタノデアル、玆ニ三月上旬ニ
必ズ登院セラルヽト云フ御言明ヲ得レバ、
吾々ハ左樣ニ承知致スノデアリマスルケレ
ドモ、復タ再ビ所謂意外ナル支障ガ出來タ
ト云フコトヲ以テ、其時ニ時日ヲ胡麻化サ
レルト云フヤウナコトニ相成ッタナラバ、國
民ハ承知致サヌノデアルソレデハ憲政ノ
圓滿ナル運行ヲ見ルコトハ出來ナイノデア
ル、私ハ將來ヲ心配致シマスルガ故ニ、敢
テ此事ヲ政府ニ御確メ致シテ置クノデアル、
吾々ノ承ル所ニ依リマスト云フト濱口首
相ノ御病狀ハ今尙ホ全癒ニハ至ッテ居ラナ
イ、卽チ階段ヲ御昇リニナルト云フコトニ
付テモ御支障ガアル、室內六十五度ノ溫度
ヲ保ッテ御靜養相成ルニアラザレバ、御病氣
ノ爲ニハ宜シクナイト云フコトヲ承ッテ居
リマスルガ、果シテ然リト致シマシタナラ
バ三月上旬、只今カラ致シマシテ二週間
以後ニ於テ、御登院ニナルト云フコトハ、
可ナリ困難デハアルマイカト云フ懸念ヲ
持ッテ居ルノデアリマス(拍手)果シテ此點
ニ付テ吾々ヲ首肯セシムルコトガ出來ルカ
ドウカ、玆ニ確メテ置クノデアリマス再
ビ言フ、卽チ三月上旬ニ必ズ登院セラルヽ
カドウカ若シ登院セラレナイト云フ場合
ニ於テハ、其責任ヲ明カニスル意思ガアル
ノデアルカドウカ、此點ニ付テ
〔發言スル者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01619310219&spkNum=9
-
010・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 靜肅ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01619310219&spkNum=10
-
011・秋田清
○秋田〓君(續) 若シハッキリシタ御言明
ガ出來ルコトデアリマスルナラバ、只今ノ
幣原國務大臣ノ言明ニ對シテ、私共ハ相當
ノ敬意ヲ拂フノデアリマスルケレドモ、若シ
ソレハ其時ノ事情デアッテ、意外ノ變化ガ
生ジタ場合ニハ已ムヲ得ヌト云フコト、卽
チ只今ノ御言明ノ中ニ附帶セラレテ居ルヤ
ウナコトヲ、再ビ繰返サルヽナラバ、只今
ノ御言明ハ極メテ輕イ意味デアッテ、少シモ
吾々ガ敬意ヲ拂フニ足ラナイ、權威ナキ言
明デアルト云フコトヲ玆ニ明カニ致シテ、
此點ヲ確メテ置クノデアリマス(拍手)
〔「無用々々」其他發言スル者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01619310219&spkNum=11
-
012・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 御諮リ致シマス、
議員高橋欽哉君ヨリ病氣ニ付二月十九日ヨ
リ同二十八日マデ向フ十日間請暇ノ申出ガ
アリマス、許可スルニ御異議ハアリマセヌ
カ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01619310219&spkNum=12
-
013・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 御異議ガナケレバ
許可致シマス、更ニ御諮リ致シマス、地方
鐵道補助法中改正法律案委員會、刑事補償
法案委員會、市制中改正法律案外三件委員
會公娼制度廢止ニ關スル法律案委員會ノ
各委員長ヨリ、本會議開會中モ委員會ヲ開
キタイト云フ申出ガアリマシタ、之ヲ許可
スルニ御異議ハアリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01619310219&spkNum=13
-
014・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 御異議ナシト認メ
N V.仍テ許可スルニ決シマシタ
只今御報告申上ゲマシタ通リ、議員中島
鵬六君ハ昨十八日逝去セラレマシタ、洵
痛惜哀悼ノ至リニ堪ヘマセヌ、此際小山倉
之助君ヨリ發言ヲ求メラレテ居リマス、小
山倉之助君
〔小山倉之助君登壇〕
〔「議長横暴ダ」其他發言スル者多
シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01619310219&spkNum=14
-
015・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 只今ハ弔辭ヲ述べ
ラレル場合デアリマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01619310219&spkNum=15
-
016・小山倉之助
○小山倉之助君 只今御報告ニナリマシタ
故衆議院議員中島鵬六君ニ對シ、院議ヲ以
テ弔詞ヲ贈ルコトヽシ、其起草ハ議長ニ一
任スルコトノ動議ヲ提出致シマス、而シテ
此際私ハ各位ノ御許シヲ得マシテ、議員一
同ヲ代表シテ、故中島君ノ爲ニ哀悼ノ辭ヲ
述ベタイト存ジマス
中島君ハ明治十八年宮城縣加美郡中新田
町ニ生レ、明治四十五年東京帝國大學法律
科ヲ卒業シ、大正元年辯護士ヲ開業シ、去
大正九年第十四囘衆議院議員總選擧ニ、初
メテ宮城縣第一區ヨリ選出セラレ、本院議
員トナリ、大正十三年マデ勤續、其後昭和
三年及同五年ニ於ケル兩度ノ衆議院議目總
選擧ニ當選シ、憲政ノ爲ニ盡瘁セラレマシ
ク、大正十一年ニ仙臺畜產組合長ニ當選セ
ラレ、其後昨年九月再選セラレ、尙ホ昭和
三年ニハ馬政委員會委員ニ囑託セラレマシ
テ、地方ニ於ケル功績モ尠クナイノデアリ
やく、然ルニ昨十八日俄ニ逝去セラレマシ
タコトハ洵ニ驚愕痛惜ノ至リニ堪ヘマセ
ヌ、玆ニ謹ンデ故人ニ對シ哀悼ノ意ヲ表ス
次第デアリマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01619310219&spkNum=16
-
017・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 小山君ノ提出セラ
レタル動議ニ御異議ハアリマセヌカ
〔「異議ナシ」「異議ナシ」ノ聲起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01619310219&spkNum=17
-
018・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 御異議ナシト認メ
やく、仍テ議長ノ手許ニ於テ起草致シマシ
タ弔詞ヲ玆ニ朗讀致シマス
衆議院ハ議員中島鵬六君ノ長逝ヲ哀悼シ
恭シク弔詞ヲ呈ス
之ニ御異議ハアリマセヌカ
〔「異議ナシ」「異議ナシ」ノ聲起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01619310219&spkNum=18
-
019・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 御異議ナシト認メ
マス、仍テ議長ヨリ此弔詞ヲ贈呈スルコト
ヲ取計ヒマス(拍手)
武藤山治君カラ議事進行ニ付テ發言ヲ求
メラレテ居リマス、之ヲ許シマス、武藤君
〔武藤山治君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01619310219&spkNum=19
-
020・武藤山治
○武藤山治君 議事進行ニ付キ一言スルノ
御許シヲ願ヒタイト考ヘマス、私ハ第一ニ
議長ニ向ッテ、次ニ議長ヲ通ジマシテ、政府
ノ御答辯ヲ求メ、議事進行ニ資シタイト考
ヘルモノデアリマス、私ノ第一ニ議長ニ御
尋致シタイト考ヘマスルノハ、一月二十八
日吾々ヨリ提案シタル救護法ニ關スル決議
案ノ上程ヲ、何ガ故ニ今日マデ上程ノ御運
ビニ御取計ヒ下サラヌカト云フコトデア
リマス、私ヨリ申上グルマデモナク、救護
法ハ生活、能力無ク、而モ扶養者ノナイ所ノ
六十五歲以上ノ老年者、十三歲以下ノ幼者、
及ビ不具、癈疾、傷痍其他精神又ハ身體ノ障
碍ニ依リ、勞役ニ堪ヘナイ者ヲ救護スル法
律デアリマス、此法律ハ昭和四年三月議會ヲ
通過シタモノデアリマスガ、今日ニ於キマ
シテハ其當時ヨリモ一層緊急性ヲ帶ビテ
居ルモノデアリマス、然ルニ政府ニ於キマ
シテハ昭和五年度ノ豫算ニモ其費用ヲ計
上セズ、又昭和六年度ノ豫算ニモ、之ヲ計
上サレナイト云フコトハ私ハ政府ニ於テ
之ニ對スル十分ナル誠意ヲ認メルコトガ出
來ナイト考ヘル者デアリマス、斯ル場合ニ
於キマシテ、直接國民ヲ代表スル衆議院ニ
於キマシテハ、院議ヲ以テ政府ニ向ヲテ救護
法ノ實行ヲ督促スル事ハ、吾々ガ國民ニ對
スル義務デアッテ、今日ノ如キ場合ニ於キマ
シテハ私ハ一日モ緩ウスルコトガ出來ナ
イモノデアルト信ズルノデアリマス(拍手)
然ルニ此問題ニ對シマシテ、吾々ハ既ニ議
長ヨリ形式的ノ御答辯ハ承ッテ居ルノデア
リマス、私ガ今日議長ニ向ッテ御尋ヲ申上ゲ
テ御答ヲ願ヒタイト考へマスルノハ、旣
ニ御答ニナッタヤウナ形式的ナ、所謂通リ一
片ナ御挨拶デナクシテ、モット親切ナ御答ヲ
願ヒタイト存ジマス
次ニ私ハ議長ヲ通ジテ政府ニ向ッテ御尋
ヲシタイト考ヘマス、此救護法ハ實ニ昭和
五年以來ノ問題デアリマシテ、今日ハ最
モ其急ヲ〓ゲテ居ルモノデアルコトハ、過
日來全國ノ方面委員諸君ガ東京ニ集ッテ、遂
ニ政府ニ之ヲ實行スル誠意ナシト認メ
テ、畏クモ上奏スルノ手續ヲ執ッタト云フコ
トニ付テモ、私ハ極メテ明カダト思フノデ
アリマス(拍手)斯ル問題ニ對シマシテ、苟
モ政府ガ全國ノ方面委員ヲシテ聖慮ヲ煩ハ
シ奉ルニ至ッタト云フヤウナ、事ノ玆ニ至ラ
シメタ責任ハ、政府全體トシテモ、勿論御
考ニナルデアラウト考へマスガ、其局ニ當ッ
テオイデニナル安達內相ハ、少クモ私ハ重
大ナル責任ヲ御感ジニナッテ然ルベキモノ
デアルト信ズルノデアリマス(拍手)先頃英
國ノ勞働黨內閣ノ一員タル「サー·モスリ
ー」氏ガ引責辭職サレタノデアリマス、此事
ハ諸君モ御承知ト考ヘマスガ、此「サー·モ
スリー」氏ガ辭職スルニ當ンテ、勞働黨內閣
ノ首相「マクドナルド」氏ニ送ッタ書面ニ依
リマスルト、先頃ノ總選擧ニ於テ、勞働黨
ハ國民ニ向ッテ、完全ナル失業對策ヲ講ズル
ト云フコトヲ約束シタニ拘ラズ一年餘ヲ經
テ尙ホ之ヲ實行シナイト云フコトニ付テハ
自分ハ自責ノ念ニ堪ヘヌカラシテ内閣ヲ去
ル斯ウ云フ意味ノ書面ヲ送,テ、遂ニ辭職
セラレタノデアリマス、若シ安達內相ガ斯
クマデノ御決心ガナクテモ、此問題ニ對シ
テ十分ナ責任ヲ感ジラレテ、場合ニ依ッテハ
引責辭職モ覺悟セラレテ閣議ニ臨マレタナ
ラバ、僅カ年四百万圓ト云フヤウナ、斯ウ
云フ少額ノ財源ノ爲ニ、此救護法ノ實施ガ
昭和五年度ニ行ハレズ、昭和六年度モ其實
行ヲ危ブマレル、斯ウ云フヤウナコトハ私
ハナカルベキ筈デアルト思ヒマス(拍手)之
ニ對シテ救護法ノ其局ニ當ッテ居ラルヽ安
達內相、其御覺悟ハ如何デアルカ、斯ノ如
キハ小サナ問題デアル、斯ウ御考ニナッテ居
ルカドウカ此點ニ付テ私ハ御答ヲ願ヒタ
イト思ヒマス、又
井上藏相ニ私ガ御尋シタイト考ヘマスノ
ハ過日來井上藏相ノ御答辯ヲ拜聽致シテ
居リマスルト云フト、極メテ鮮明ヲ缺イテ
居リマス、最近議場ニ於ケル御答辯ニ依リ
マシテモ、之ヲ實行シタイ意思ハ十分持ッテ
居ルケレドモ、財源ノ捻出ニ苦心シテ居ッ
テ、未ダ完全ニ之ヲ實行スルト云フ意思ヲ
表明セラレナイ、之ヲ避ケラレテ居ルコト
ハ速記錄ニ依ッテ明カデアリマス、井上藏相
ハ旣ニ失業對策トシテ、其財源三千万圓前
後ノ公債ヲ募集スルコトニ同意セラレテ居
ル然ラバ失業者ト同ジク、若クハ失業者
以上、氣ノ毒ナ地位ニ在ル所ノ、社會ノド
ン底ニ於テ惱ム人々ヲ救護スル財源ヲ、何
ガ故ニ公債ニ求メラレナイカ、之ヲ公債ニ
求メラレテ速ニ實行セラレルト云フコトガ、
私ハ極メテ願ハシイコトデアルト考ヘルノ
デアリマス(拍手)
先頃大阪ノ中ノ島公園ノ橋ノ下ニ、百名
近クノ雨露ヲ凌イデ、漸ク露命ヲ繫イデ居
ル所ノ一團ガアッタノデアリマス、之ヲ近所
ノ人ノ苦情ニ依ッテ追拂タ所ノ警察官ノ〓
白ニ依リマスト、斯ノ如キ心苦シク感ジタ
コトハナイト言ッテ居ラレマス、當時其狀況
ハ大阪ノ新聞紙上ニ寫眞マデ揭載セラレ
マシテ之ヲ追フ人、追ハルヽ人々ノ悲痛
ナル告白ハ何人ト雖モ淚ナクシテ之ヲ讀
ムコトノ出來ナイモノデアリマシタ、斯ノ
如キ吾々同胞ノ中ノ不幸ナル人々ヲ救濟ス
ル救護法ノ財源僅ニ四百万圓、是ガ公債支
辨ニ依ッテ實現シナイト云フ理由ヲ知ルニ
苦シムノデアリマス、或ハ井上藏相ハ斯ウ
仰セニナルカモ知レマセヌ、失業ノ財源タ
ル三千万圓ノ公債ハ、是ハ一年限リノモノ
デアル、是ハ臨時ノモノデアル、救護法ノ
財源四百万圓ハ是ハ恆久的ノモノデアル
カラ、非募債主義ヲ執ル現內閣ハ公債ニ
依ルコトハ出來ヌト仰セニナルカモ知レマ
セヌガ、併シ私ハ井上藏相ガサウ云フ風ニ
仰シヤラズニ、此四百万圓ノ恆久ノ財源ヲ
差當リ公債ニ求メテ、議會へ追加豫算ヲ御
出シニナッタ時ニ、若シ在野黨ノ中カラシ
テ政府ノ非募債政策ノ破綻ヲ責メラレマ
シタナラバ、井上藏相ハ是ハ本年度限リ公
債ニ依ルガ、何レ財政行政ノ整理ニ依ッテ、
來ル七年度以降ニ於テハ必ズ公債以外ノ
一般財源ニ依。ッテ之ヲ賄フヤウニスル、決シ
テ非募債政策ノ破綻デナイト、斯ウ御答ニ
ナッタラ差支ナイト思ヒマス、井上藏相ガ非
募債主義ト云フヤウナ事ニ口ヲ藉。ッテ、サウ
シテ斯ル最モ氣ノ毒ノ境遇ニ立ッテ居ル同
胞ヲ救フ所ノ、此救護法ノ實施、之ヲ遲延
セラレルト云フコトハ、私ハ井上藏相ノ爲
ニ惜マザルヲ得ナイノデアリマス、井上藏相
ハ生絲ノ暴落ヲ防グ爲ニ、生絲補償法ノ發
動ニ同意シテ、三千万圓國庫ノ損失ヲ招カ
レタノデアリマス、又昨年末ニ於テハ極
メテ少數ノ人々ノ破綻ヲ彌縫スル爲ニ、興
業銀行ニ命ジテ七千万圓ヲ支出セシメ、救
助サレタノデアリマス、然ルニ此二十万
ニ近イ全國ニ於ケル最モ氣ノ毒ナル地位ニ
落チテ居ル人々ヲ救護スル所ノ、此救護法
ノ實施ヲスル財源四百万圓ヲ支出スルコト
ヲ躊躇シテ未ダ其實現ニ付テ明言ヲ與ヘ
ラレナイト云フコトハ私ハ井上藏相ハ强
者ノ前ニハ極メテ怯懦デアッテ、弱者ノ前ニ
ハ勇敢デアリ、無感覺デアリ、同情心ニ乏
シイモノデアルト言ハレテモ辯解ノ辭ハア
ルマイ(拍手)斯ノ如キ憐ムベキ同胞ヲ救護
スル法案ヲ、之ヲ實行スル勇氣ニ乏シイト
云ワ斯ノ如キ政治ハ私ハ我ガ國家ノ上ニ
不幸ナル結果ヲ招來スル危險ノアルモノデ
アルト深ク憂フルモノデアリマス、故ニ私
ハ玆ニ第一ニ議長ニ御願シタイノハ、私ノ
申上ゲル所ニ全然同感ノ意ヲ表セラレテ
慣例ニ依ッテ各派交涉會ヘ交涉ヲ遂ゲテ、次
ノ本會議ニハ必ズ救護法ニ關スル吾々ノ決
議案ヲ上程スルコトニ努力スルト、斯ウ私
ハ御答ヲ願ヒタイト考ヘマス
第二ニハ政府ニ於テモ今一應閣議ヲ開
カレテ、從來ノ如キ曖昧ナル態度ヲ捨テヽ
此問題ニ對シテハッキリ吾々ノ前ニ明言セ
ラレンコトヲ偏ニ御願ヲ致シマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01619310219&spkNum=20
-
021・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 武藤君ニ御答致シ
マス政府ニ對スル御尋ニ付キマシテハ
議長ヨリ其旨ヲ通ジテ置キマス、又日程ノ
作製ニ付キマシテハ、此問題ニ付テ去ル十
四日中田君カラ御尋ガアリマシテ、御答ヲ
致シテ居ッタノヲ繰返スニ過ギナイノデア
リマス、併ナガラ形式ノコトハ先日ノ答辯
デ分ッタガ、モット親切ニヤラヌカト云フ意
味ノ御言葉ガアリマシタカラ、之ニ附加へ
テ御話致シマスナラバ、此順序ヲ變ヘテ早
ク上程シヨウトナサルナラバ緊急土程ノ
手續ヲ御取リナサルヨリ、他ニ途ガナイデ
ハナイカト考ヘルノデアリマス、之ヲ以テ
御答ト致シマス
是ヨリ日程ニ入リマス、日程第一乃至第
九ハ關聯セル議案ナルニ依ッテ、一括議題ト
爲スニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01619310219&spkNum=21
-
022・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 御異議ナシト認メ
マス日程第一、抵當證劵法案、日程第二、
不動產登記法中改正法律案、日程第三、民
事訴訟法中改正法律案、日程第四、競賣法
中改正法律案、日程第五、民事訴訟用印紙
法中改正法律案、日程第六、日本勸業銀行
法中改正法律案、日程第七、農工銀行法中
改正法律案、日程第八北海道拓殖銀行法
中改正法律案、日程第九、國稅徵收法中改
正法律案ノ九案ヲ一括シテ第一讀會ヲ開キ
マス-渡邊司法大臣
第抵當證劵法案(政府提出)
第一讀會
抵當證劵法案
抵當證劵法
第一條土地、建物又ハ地上權ヲ目的ト
スル抵當權ヲ有スル者ハ其ノ登記ヲ管
轄スル登記所ニ抵當證劵ノ交付ヲ申請
スルコトヲ得
抵當權ノ目的物ガ數個ノ登記所ノ管轄
地ニ散在スルトキハ抵當證劵ノ交付ハ
其ノ一ノ登記所ニ之ヲ申請スルコトヲ
要ス
抵當證劵交付ノ申請ハ申請人(代理人
ニ依リテ申請スルトキハ其ノ代理人)
登記所ニ出頭シテ之ヲ爲スコトヲ要
ス
第二條左ノ各號ノ一ニ該當スル場合ニ
於テハ抵當證劵ヲ發行スルコトヲ得
ズ
一抵當權ガ根抵當ナルトキ
二抵當權ニ付本登記ナキトキ
三債權ノ差押若ハ假差押ノ登記又ハ
抵當權ノ處分禁止若ハ抵當權ヲ他ノ
債權ノ擔保ト爲シタル旨ノ登記アル
トキ
四債權又ハ抵當權ニ附シタル解除條
件ノ登記アルトキ
五抵當證劵發行ノ特約ナキトキ
第三條抵當證劵ノ交付ヲ申請スルニハ
左ノ書面ヲ提出スルコトヲ要ス
-申請書
二抵當權者ノ權利ニ關スル登記濟證
三手形其ノ他ノ積權ニ關スル證書
四抵當證劵發行ノ特約ノ登記ナキト
キハ抵當權設定者又ハ第三取得者及
債務者ノ同意書
五代理人ニ依リテ申請スルトキハ其
ノ權限ヲ證スル書面
前項第三號ノ證書ナキトキハ申請書ニ
其ノ旨ヲ記載スルコトヲ要ス
第一條第二項ノ申請ヲ爲スニハ申請書
ニ其ノ旨ヲ記載シ且他ノ登記所ノ管轄
ニ屬スル目的物ノ登記簿ノ謄本竝ニ其
ノ登記所ノ數ニ應ジ申請書ノ副本及附
屬書面ノ寫本ヲ提出スルコトヲ要ス
抵當證劵ノ交付ヲ申請スルニハ命令ノ
定ムル所ニ依リ手数料ヲ納付スルコト
可愛、
第四條申請書ニハ左ノ事項ヲ記載シ申
請人之ニ記名捺印スルコトヲ要ス
申請人ノ氏名及住所
二代理人ニ依リテ申請スルトキハ其
ノ氏名及住所
三抵當權ノ目的タル土地、建物又ハ
地上權ノ表示
四柢當權設定者及第三政得者ノ氏名
及住所
五抵當權ノ順位及登記ノ年月日
六不動產登記法第百十七條ニ揭グル
事項
七債務者ノ氏名及住所
八抵當權、質權又ハ先取特權ノ登記
アルトキハ債權額、債權者ノ氏名及
住所竝ニ登記ノ年月日
九地上權、永小作權、地役權又ハ賃
借權ノ登記アルトキハ其ノ權利者ノ
氏名及住所竝ニ登記ノ年月日
十登記所ノ表示
±申請ソ年月日
第五條登記官吏ハ抵當證劵交付ノ申請
ガ左ノ各號ノ一ニ該當スルトキハ理由
ヲ附シタル決定ヲ以テ之ヲ却下スルコ
トヲ要ス但シ申請ノ欠缺ガ補正スルコト
ヲ得ベキモノナル場合ニ於テ申請入ガ
卽日之ヲ補正シタルトキハ此ノ限ニ在
ラズ
一其ノ登記所ノ管轄ニ屬セザルトキ
二第二條ニ規定スル事由アルトキ
三申請書ニ記載シタル事項ガ登記簿
ト符合セザルトキ
四申請人ガ出頭セザルトキ
五申請書ガ方式ニ適合セザルトキ
六必要ナル書面ヲ提出セザルトキ
七手數料ヲ納付セザルトキ
第一條第二項ノ申請アリタル場合ニ於
テハ登記官吏ハ申請書ノ副本及附屬書
面ノ寫本ヲ各管轄登記所ニ送付シ其ノ
管轄ニ屬スル目的物ニ付抵當證劵ヲ作
成スベキ旨ヲ囑託スルコトヲ要ス
第六條抵當證劵交付ノ申請ヲ受理シタ
ルトキハ登記官吏(前條第二項ノ規定
ニ依ル囑託アリタルトキハ其ノ部分ニ
付テハ囑託ヲ受ケクル登記所ノ登記官
吏)ハ遲滯ナク抵當證劵ノ交付ニ付異
議アラバ一定ノ期間內ニ之ヲ申立ツベ
キ旨ヲ抵當權設定者、第三取得者、債
務者抵當權及ハ其ノ順位ノ讓渡人及
先順位ヲ抛棄シタル者ニ催告スルコト
ヲ要ス但シ抵當證劵ノ發行ヲ妨グル事
曲アルコトヲ發見シタル場合ハ此ノ限
ニ在ラズ
囑託ヲ受ケタル登記所ノ登記官吏ガ抵
當證劵ノ發行ヲ妨グル事由アルコトヲ
發見シタルトキハ其ノ旨ヲ囑託ヲ爲シ
タル登記所ニ通知スルコトヲ要ス
第一項ノ催告ニハ第四條第一號及第三
號乃至第七號ニ揭グル事項ヲ記載スル
コトヲ要ス
債務者ニ對スル催告ニハ前項ノ事項ノ
外第三條第一項第三號ノ證書ガ手形ナ
ルトキハ其ノ表示及同條第二項ノ規定
ニ依ル記載ヲモ記載スルコトヲ要ス
第七條抵當證劵ノ交付ニ關スル異議ハ
左ノ理由ニ基クトキニ限リ之ヲ申立ツ
ルコトヲ得
申請ニ付第二條ニ規定スル事由ア
ルコト
二債權ノ質入、差押又ハ假差押アリ
タルコト
三催告ニ記載シタル事項ガ登記簿ノ
記載又ハ事實ト符合セザルコト
四債務者ガ抵當權者ニ對シ相殺ヲ以
テ對抗シ得ベキ債權ニシテ其ノ辨濟
期ガ抵當權者ノ債權ノ辨濟期以前ニ
到來スルモノヲ有スルコト
異議ハ他ノ利害關係人ノ權利ニ關スル
理由ニ基キ之ヲ申立ツルコトヲ得ズ
異議申立ノ權利ハ豫メ之ヲ抛棄スルコ
トヲ得ズ
第八條異議ニ關スル裁判ハ抵當證劵交
付ノ申請ヲ受理シタル登記所ノ所在地
ヲ管轄スル區裁判所ニ於テ非訟事件手
續法ニ依リ之ヲ爲ス
前項ノ裁判ニ對シテハ卽時抗告ヲ爲ス
コトヲ得抗〓ハ執行停止ノ效力ヲ有
ス
異議ノ申立ヲ受理シタルトキハ登記官
吏ハ事件ヲ管轄裁判所ニ送付スルコト
ヲ要ス
第九條異議ニ關スル裁判確定シタルト
キハ裁判所ハ遲滯ナク其ノ旨ヲ關係登
記所ニ通知スルコトヲ要ス
第十條第六條ノ催〓ヲ受ケタル者ハ異
議ノ申立ヲ爲スコトヲ得ル事由ニ付テ
ハ其ノ申立ヲ爲シタルモノニ非ザレバ
之ヲ以テ抵當證劵ノ善意ノ取得者ニ對
抗スルコトヲ得ズ
異議ノ申立ヲ理由ナシトスル裁判確定
シタル場合ニ於テハ其ノ申立ヲ爲シタ
ル者ハ二月內ニ訴ヲ提起スルニ非ザレ
バ申立ヲ爲シタル事由ヲ以テ抵當證劵
ノ善意ノ取得者ニ對抗スルコトヲ得
ズ
前項ノ訴ノ提起アリタルトキハ裁判所
ハ之ヲ公〓スルコトヲ要ス
第十一條第六條ノ催告ニ指定シタル期
間內ニ異議ノ申立ナキトキハ登記官吏
ハ抵當權ノ目的物ガ其ノ登記所ノ管轄
地ノミニ在ル場合ニハ直ニ、抵當權ノ
目的物ガ數個ノ登記所ノ管轄地ニ散在
スル場合ニハ囑託ヲ受ケタル登記所ヨ
リ抵當證劵ノ送付ヲ受ケタル後直ニ抵
當證劵ヲ交付スルコトヲ要ス異議ヲ理
由ナシトスル裁判確定シタルトキ亦同
ジ
第十二條抵當證劵ニハ左ニ揭グル事項
ヲ記載シ登記官吏記名捺印シ且登記所
ノ印ヲ押捺スルコトヲ要ス
一證劵ノ番號
二第四條第一號及第三號乃至第九號
ニ揭グル事項
三登記所ノ表示
四證劵作成ノ年月日
囑託ヲ受ケタル登記所ヨリ抵當證劵ノ
送付ヲ受ケタルトキハ登記官吏ハ其ノ
作成ニ係ルモノト一括シ之ニ各證劵ハ
同一ノ債權ノ爲ニ作成シタルモノナル
旨ヲ記載シ且記名捺印スルコトヲ要
ス
第十三條第三條第一項第二號及第三號
ノ書面ノ提出アリタル場合ニ於テ抵當
證劵ヲ交付シタルトキハ登記官吏ハ抵
當證劵ヲ交付シタル旨ヲ其ノ書面ニ記
載シ登記所ノ印ヲ押捺シテ之ヲ申請人
ニ還付スルコトヲ要ス其ノ書面中ニ手
形アルトキハ其ノ手形ハ爾後效力ヲ有
セズ
第十四條抵當證劵ノ發行アリタルトキ
ハ抵當權及債權ノ處分ハ抵當證劵ヲ以
テスルニ非ザレバ之ヲ爲スコトヲ得
ズ
抵當權ト債權トハ分離シテ之ヲ處分ス
ルコトヲ得ズ
第十五條抵當證劵ノ讓渡ハ裏書ニ依リ
テ之ヲ爲ス
商法第四百五十七條第一項ノ規定ハ前
項ノ裏書ニ之ヲ準用ス尙其ノ裏書ニハ
裏書人ノ住所ヲ記載スルコトヲ要ス
第十六條抵當證劵ノ發行アリタル場合
ニ於テハ抵當權ノ變更ハ不動產登記法
ノ定ムル所ニ從ヒ其ノ登記ヲ爲シ且抵
當證劵ノ記載ノ變更ヲ爲スニ非ザレバ
之ヲ以テ第三者ニ對抗スルコトヲ得ズ
數個ノ不動產ニ付抵當權アル場合ニ於
テ其ノ一ヲ消滅セシメタルトキ亦同
第十七條抵當證劵ノ記載ノ錯誤又ハ遺
漏ガ登記ノ錯誤又ハ遺漏ニ基カザル場
合ニ於テハ所持人ハ抵當田證劵ノ記載ノ
變更ヲ申請スルコトヲ得債務者ノ表示
ノ變更其ノ他ノ事由ニ因リ登記ヲ變更
又ハ更正シタル爲抵當證劵ノ記載ガ登
記ト符合セザルニ至リタル場合亦同
ジ
第十八條前條ノ場合ヲ除クノ外抵當證
劵ノ記載ノ變更ハ不動產登記法第五十
六條、第六十四條、第八十一條又ハ第
九十三條ノ規定ニ依ル登記ヲ爲シタル
後ニ非ザレバ之ヲ爲スコトヲ得ズ
第十九條抵當證劵ノ發行アリタル場合
ニ於テ登記官吏ガ抵當權ノ變更、消滅
又ハ更正ノ登記ヲ完了シタルトキハ抵
當證劵ノ記載ヲ變更シ之ヲ其ノ所持人
ニ還付スルコトヲ要ス
第二十條前條ノ規定ハ不動產登記法第
八十一條又ハ第九十三條ノ登記ヲ完了
シタル場合ニ之ヲ準用ス
第二十一條抵當證劵ノ所持人ハ左ノ場
合ニ於テ抵當證劵ヲ交付シタル登記所
ニ證劵ノ再交付ヲ申請スルコトヲ得
證劵ヲ汚損シタルトキ
二證劵ヲ喪失シタル場合ニ於テ除權
判決アリタルトキ
第二十二條抵當證劵ノ再交付ニ關シテ
ハ命令ニ別段ノ定アル場合ヲ除クノ外
第三條乃至第十三條ノ規定ヲ準用ス
第二十三條不動產登記法第六十五條ノ
場合ニ於テ登記官吏ガ囘復登記ノ手續
ヲ完了シタルトキハ更ニ抵當證劵ヲ作
成シ舊證劵ノ所持人ニ交付スルコトヲ
要ス
第二十四條民法第三百七十八條及第三
百八十一條乃至第三百八十七條ノ規定
ハ抵當證劵ノ發行アリタル抵當權ニハ
之ヲ適用セズ
第二十五條抵當證劵ノ所持人ハ元本ノ
一部又ハ利息ノ支拂アリタルトキハ證
劵ニ其ノ金額及受領ノ年月日ヲ記載シ
且之ニ記名捺印スルコトヲ要ス
第二十六條債務者ガ利息ノ支拂ヲ怠リ
タル場合ニ於テ其ノ延滯ガ二年ニ達シ
タルトキハ元本ノ辨濟期到來シタルモ
ノト看做ス但シ抵當證劵ニ特約ノ記載
アルトキハ其ノ定ニ從フ定期ニ元本ヲ
辨濟スベキ場合ニ於テ其ノ延滯ガ二年
ニ達シタルトキ全元本ニ付亦同ジ
第二十七條抵當證劵ノ所持人ハ元本ノ
辨濟期後一月內ニ債務者ニ對シテ支拂
ノ請求ヲ爲スコトヲ要ス
前項ノ場合ニ於テ債務者ガ支拂ヲ爲サ
ザルトキハ抵當證劵ノ所持人ハ公證人
又ハ執達吏ニ其ノ支拂ナキ旨ノ證明ヲ
求ムルコトヲ要ス
第二十八條抵當證劵ニ元本及利息ノ支
拂ノ場所ノ記載ナキ場合ニ於テ債務者
ノ現時ノ住所ガ知レザルトキハ登記簿
ニ記載シタル住所ニ於テ支拂ノ請求ヲ
爲スヲ以テ足ル
第二十九條第二十七條第一項ノ場合ニ
於テ債務者ガ支拂ヲ爲サザルトキハ抵
當證劵ノ所持人ハ五日內ニ各裏書人ニ
對シテ其ノ旨ノ通知ヲ發スルコトヲ要
ス
前項ノ場合ニ於テハ各裏書人ハ抵當證
劵ト引換ニ其ノ支拂ヲ爲スコトヲ得
第三十條抵當證劵ノ所持人ハ債務者ガ
元本ノ支拂ヲ爲サザルトキハ辨濟期ヨ
リ三月內ニ抵當權ノ目的タル土地、建
物又ハ地上權ニ付競賣ノ申立ヲ爲スコ
トヲ要ス
已ムコトヲ得ザル事由ニ因リ前項ノ期
間內ニ競賣ノ申立ヲ爲スコト能ハザル
トキハ抵當證劵ノ所持人ハ期間ノ伸長
ヲ裁判所ニ請求スルコトヲ得裏書人全
員ノ同意アリタルトキ亦同ジ
第三十一條抵當證劵ノ所持人ハ競賣代
金ヲ以テ支拂ヲ受ケザル債權ノ部分ニ
付テノミ其ノ前者ニ對シ償還ノ請求ヲ
爲スコトヲ得但シ第二十七條又ハ前條
ニ定メタル手續ヲ爲サザリシトキハ其
ノ權利ヲ失フ
第三十二條抵當權ガ存在セズ若ハ其ノ
目的タル物及權利ノ全部ガ滅失シタル
ニ因リ競賣ノ中立ヲ爲スコト能ハザル
トキ又ハ競賣代金ヲ以テ競賣費用ヲ償
フ見込ナキトキハ抵當證劵ノ所持人ハ
前二條ノ規定ニ拘ラズ裁判所ノ許可ヲ
得テ其ノ前者ニ對シ償還ノ請求ヲ爲ス
コトヲ得但シ辨濟期ヨリ三月內ニ許可
ノ申請ヲ爲スコトヲ要ス
第三十條第二項ノ規定ハ前項但書ノ許
可ノ申請ニ付之ヲ準用ス
第三十三條第三十條第二項及前條ノ裁
判ハ抵當權ノ目的物ノ所在地ヲ管轄ス
ル區裁判所ニ於テ非訟事件手續法ニ依
リ之ヲ爲ス
許可ヲ與ヘタル裁判ニ對シテハ不服ヲ
申立ツルコトヲ得ズ
中請ヲ却下シタル裁判ニ對シテハ卽時
抗〓ヲ爲スコトヲ得
第三十四條本法ニ依ル裁判ノ費用ニ付
テハ民事訴訟費用法第十六條及民事訴
訟用印紙法第十六條ノ規定ニ依ル
第三十五條抵當證劵ノ所持人ガ第三十
一條又ハ第三十二條ノ規定ニ依リ其ノ
前者ニ對シ償還ノ請求ヲ爲サントスル
トキハ競賣代金ヲ受取リタル日又ハ第
三十二條ノ許可ヲ得タル日ヨリ五日內
ニ各裏書人ニ對シ償還請求ノ通知ヲ發
スルコトヲ要ス
第三十六條抵當證劵ノ所持人ノ裏書人
ニ對スル通知ハ證劵ニ記載シタル住所
ニ宛ツルヲ以テ足ル
第三十七條抵當證劵ノ所持人ガ第二十
九條第一項又ハ第三十五條ニ規定スル
通知ヲ發セザリシトキハ之ニ因リテ生
ジタル損害ヲ賠償スル責ニ任ズ
第三十八條抵當證劵ノ所持人又ハ償還
ヲ爲シタル裏書人ハ左ノ金額中支拂ア
ラザリシモノニ付其ノ前者又ハ債務者
ニ對シ償還又ハ支拂ノ請求ヲ爲スコト
ヲ得
元本及支拂ノ請求ヲ爲シタル日迄
ノ利息
二支拂ノ請求ヲ爲シタル日後ノ元本
ニ對スル法定利率ニ依ル利息但シ約
定利率ガ法定利率ニ超ユルトキハ約
定利率ニ依ル利息
三第二十七條第二項ノ規定ニ依ル證
明書作成ノ費用其ノ他ノ費用
第三十九條抵當證劵ノ所持人ノ其ノ前
者ニ對スル償還請求權ハ競賣代金ヲ受
取リタル日又ハ第三十二條第一項ノ許
可ヲ得タル日ヨリ一年、裏書人ノ其ノ
前者ニ對スル償還請求權ハ償還ヲ爲シ
タル日ヨリ六月ヲ經過シタルトキハ時
效ニ因リテ消滅ス
第四十條民法第四百七十條、第四百七
十二條、商法第二百七十八條第二項、
第二百七十九條、第二百八十一條、第
四百三十七條、第四百三十八條、第四百
四十條、第四百四十一條、第四百五十九
條、第四百六十三條、第四百六十四條
(第一項但書ヲ除ク)第四百八十三條、
第四百八十八條ノ四、第四百九十五條
及民法施行法第五十七條ノ規定ハ抵當
證劵ニ付之ヲ準用ス
第四十一條不動產登記法第十條、第十
二條、第十三條、第二十一條、第四十
四條、第四十五條、第七十七條、第百五
十條乃至第百五十四條第一項、第百五
十五條、第百五十六條、第百五十八條
及第百五十九條ノ規定ハ抵當證劵ニ付
之ヲ準用ス
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第四項乃至第九項ノ規定ヲ除クノ外本法
施行ノ地域ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
本法施行ニ關シ必要ナル規定ハ司法大臣
之ヲ定ム
耕地整理法第二條中「登記シタル權利ヲ
有スル者」ノ下ニ「(抵當證劵ノ發行アリ
タルトキハ其ノ所持人)」ヲ加フ
耕地整理法第二十五條中「第四十四條第
二項」ヲ「第四十四條第三項」ニ、「前項」
ヲ「第一項」ニ、「前二項」ヲ「第一項又ハ
第三項」ニ改メ同條第一項ノ次ニ左ノ一
項ヲ加フ
同一所有者ニ屬スル數筆ノ土地ヲ目的
トスル抵當權ニ付抵當證劵ノ發行アリ
タル場合ニ於テハ前項ノ規定ニ依リ供託
スヘキ第三十條第一項又ハ第二項ノ規
定ニ依ル拂渡金額ノ計算ニ付テハ其ノ數
筆ノ土地ヲ一筆ノ土地ト看做ス但シ其ノ
土地ニ付當該抵當權以外ノ前項ニ揭ク
ル權利アル場合ニ於テ其ノ權利者ノ同
意ヲ得サルトキハ此ノ限ニ在ラス
耕地整理法第四十三條第一項中「建物ニ
付登記シタル權利ヲ有スル者」ノ次ニ「(抵
當證劵ノ發行アリタルトキハ其ノ所持
人)」ヲ加ヘ同條第一項ノ次ニ左ノ一項ヲ
加フ
前項ノ場合ニ於テ抵當證劵ノ所持人ノ
同意ヲ得ルコト能ハサルトキハ地方長
官ノ認可ヲ以テ之ニ代フルコトヲ得
耕地整理法第四十四條第二項中「前項」ヲ
「第一項」ニ改メ同條第一項ノ次ニ左ノ一
項ヲ加フ
前條第二項ノ規定ハ前項本文ノ場合ニ
於テ抵當證劵ノ所持人ノ同意ニ付之ヲ
準用ス
耕地整理法第八十七條中「第四十四條第
二項」ヲ「第四十四條第三項」ニ改ム
都市計畫法第十五條ノ次ニ左ノ一條ヲ加
フ
第十五條ノ二土地區劃整理ニ付テハ耕
地整理法第四十三條ノ規定ニ拘ラス建
物アル宅地ヲ土地區劃整理施行地區ニ
編入スルコトヲ得
第二不動產登記法中改正法律案(政
府提出)第一讀會
不動產登記法中改正法律案
不動產登記法中左ノ通改正ス
第二十八條ニ左ノ一項ヲ加フ
抵當證劵ノ發行アリタル場合ニ於テハ
債務者ノ表示ノ變更登記ハ債務者ノミ
ニテ之ヲ申請スルコトヲ得
第四十三條ニ左ノ一項ヲ加フ
前項ノ規定ハ第二十八條第二項ノ規定
ニ依ル變更登記ノ申請ニ之ヲ準用ス
第五十六條中「其登記ヲ爲ス」ヲ「其登記
ヲ爲ス尙權利ノ變更ノ登記ニ付キ利害ノ
關係ヲ有スル抵當證劵ノ所持人又ハ裏書
人アルトキハ其者ノ承諾書又ハ之ニ對抗
スルコトヲ得ヘキ裁判ノ謄本ヲモ添附ス
ルコトヲ要ス」ニ改メテ同條ニ左ノ一項
ヲ加フ
抵當證劵ノ發行アリタル場合ニ於テハ
其抵當權ノ變更登記ノ申請書ニ抵當證
劵ヲ添附スルコトヲ要ス
第六十五條中「添附スルコトヲ要ス」ヲ「添
附スルコトヲ要ス尙登記ノ囘復ニ付キ利
害ノ關係ヲ有スル抵當證劵ノ所持人又ハ
裏書人アルトキハ其者ノ承諾書又ハ之ニ
對抗スルコトヲ得ヘキ裁判ノ謄本ヲモ添
附スルコトヲ要ス」ニ改ム
第七十一條ニ左ノ一項ヲ加フ
登記官吏ハ囘復ノ登記ヲ爲ス場合ニ於
テ前登記ニ付キ職權ヲ以テ記載シタル
事項アリタルコトヲ發見シタルトキハ
其事項ヲモ記載スルコトヲ要ス
第八十一條中「添附スルコトヲ要ス」ヲ
「添附スルコトヲ要ス尙抵當證劵ノ發行
アリタル場合ニ於テハ其所持人又ハ裏書
人ノ承諾書又ハ之ニ對抗スルコトヲ得ヘ
キ裁判ノ謄本ヲモ添附スルコトヲ要ス」
ニ改メ同條ニ左ノ一項ヲ加フ
第五十六條第二項ノ規定ハ抵當證劵ノ
發行アリタル場合ニ於ケル前項ノ申請
ニ之ヲ準用ス
第百十七條中「其發生期若クハ支拂時期
ノ定アルトキ」ノ下ニ「元本若クハ利息
ノ支拂場所ノ定アルトキ、」ヲ加へ「又ハ
民法第三百七十條ノ但書ノ定」ヲ「、民法
第三百七十條但書ノ定アルトキ又ハ抵當
證劵發行ノ定」ニ改ム
第百十九條ノ二抵當證劵ノ發行アル抵
當權ノ目的物ノ讓渡ニ因ル移轉ノ登記
ヲ爲シタルトキ又ハ抵當權ノ目的物ノ
讓渡ニ因ル移轉ノ登記ヲ爲シタル後抵
當證劵ノ發行アリタルトキハ抵當權設
定者ハ其氏名、住所ノ登記ヲ申請スル
コトヲ得但抵當權設定者カ債務者ニ非
サルトキハ此限ニ在ラス
前項ノ登記ハ抵當權設定ノ登記ニ附記
シテ之ヲ爲ス
第百二十六條ノ三登記官吏カ抵當證劵
ヲ交付シタルトキハ職權ヲ以テ抵當權
設定ノ登記ニ其旨ヲ附記スルコトヲ要
ス
第百二十六條ノ四登記官吏カ抵當證劵
法第五條第二項ノ囑託ニ因リ抵當證劵
ヲ作成シタルトキハ職權ヲ以テ抵當權
設定ノ登記ニ其旨ヲ附記スルコトヲ要
ス
抵當證券法第一條第二項ノ申請アリタ
ル場合ニ於テ登記官吏カ抵當證劵ヲ交
付シタルトキハ他ノ登記所ニ前條ノ登
記ヲ囑託スルコトヲ要ス其申請ヲ却下
シタルトキハ前項ノ規定ニ依ル登記ノ
抹消ヲ囑託スルコトヲ要ス
第百二十六條ノ五前條第一項ノ規定ニ
依ル登記アリタル不動產ニ付キ同條第
二項ノ囑託ニ因リ抵當證劵交付ノ登記
ヲ爲シタルトキハ其登記ハ同條第一項
ノ規定ニ依ル登記ノ時ニ遡リテ其效力
ヲ生ス
第百四十六條中「添附スルコトヲ要ス」ヲ
「添附スルコトヲ要ス尙登記ノ抹消ニ付
キ利害ノ關係ヲ有スル抵當證劵ノ所持人
又ハ裏書人アルトキハ其者ノ承諾書又ハ
之ニ對抗スルコトヲ得へキ裁判ノ謄本ヲ
モ添附スルコトヲ要ス」ニ改メ同條ニ左
ノ一項ヲ加フ
抵當證劵ノ發行アリタル場合ニ於テハ
其抵當權ノ抹消ノ登記ノ申請書ニ抵當
證劵ヲ添附スルコトヲ要ス
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第三民事訴訟法中改正法律案(政府
提出)第一讀會
民事訴訟法中改正法律案
民事訴訟法中左ノ通改正ス
第六百四十三條中「地價」ヲ「賃貸價格」ニ
改ム
第六百四十八條ニ左ノ一號ヲ加フ
第五知レタル抵當證劵ノ所持人及
ヒ裏書人
第六百九十八條第二項ノ次ニ左ノ一項ヲ
加フ
債權ノ屆出ヲ爲ササル抵當證劵ノ所持
人ノ債權又ハ其順位ニ對シテ異議ノ申
立ヲ爲シタル債務者又ハ他ノ債權者ノ
提起スヘキ訴ニ付テハ第六百九十七條
ノ規定ニ依リ準用セラルル第六百三十
三條ノ期間ハ其所持人ノ知レタル日ヨ
リ之ヲ起算ス
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム但
シ第六百四十三條ノ改正規定ハ地租法施
行ノ日ヨリ之ヲ施行ス
〓人
第四競賣法中改正法律案(政府提出)
第一讀會
競賣法中改正法律案
競賣法中左ノ通改正ス
第二十四條第三項ノ次ニ左ノ一項ヲ加フ
抵當證劵ノ所持人カ競賣ノ申立ヲ爲ス
場合ニ於テハ前項ノ書面ノ外申立書ニ
抵當證劵ヲ添附スルコトヲ要ス
第二十七條第三項ニ左ノ一號ヲ加フ
五知レタル抵當證劵ノ所持人及ヒ
裏書人
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第五民事訴訟用印紙法中改正法律案
(政府提出)第一讀會
民事訴訟用印紙法中改正法律案
民事訴訟用印紙法中左ノ通改正ス
第十六條第二項ニ左ノ一號ヲ加フ
四抵當證劵法ニ依ル異議ノ申立及
ヒ同法第三十二條第一項ノ規定
ニ依ル許可ノ申請
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第六日本勸業銀行法中改正法律案
(政府提出)第一讀會
日本勸業銀行法中改正法律案
日本勸業銀行法中左ノ通改正ズ
第十四條第二項中「拂込資本金及積立金
總高ニ相當スル金額ヲ限リ」ヲ削リ同項
ノ次ニ左ノ一項ヲ加フ
前項ノ貸付金額及第三十一條ノ二ノ貸
付金額ハ拂込資本金及積立金總高ノ二
倍ヲ超過スルコトヲ得ス
第十四條ノ二中「宅地又ハ建物ヲ抵當ト
スル貸付金額」ヲ「宅地若ハ建物ヲ抵當ト
シ又ハ之ヲ抵當トスル債權(抵當證劵ヲ
含ム)ヲ質トスル貸付金額」ニ改ム
第十五條第四項中「定期償還ノ方法ニ依
リ」ノ下ニ「又ハ十箇年以內ニ於テ年賦償
還ノ方法ニ依リ」ヲ加フ
第十五條ノ二中「田、畑、鹽田、山林、牧場、
養魚池又ハ漁業權ヲ抵當トスル貸付」ヲ
「田、畑、鹽田、山林、牧場若ハ養魚池ヲ抵
當トシ又ハ之ヲ抵當トスル債權(抵當證
劵ヲ含ム)ヲ質トスル貸付、漁業權ヲ抵當
トスル貸付」ニ改ム
第三十一條ノ一ヲ第三十一條トシ第三十
一條ノ二ヲ第三十一條ノ四トス
第三十一條ノ二日本勸業銀行ハ不動產
ヲ抵當トスル債權(抵當證劵ヲ含ム)ヲ
質トシテ五箇年以內ノ定期償還貸付ヲ
爲スコトヲ得
第十六條第一項、第十七條、第十八條、
第二十六條及第二十七條ノ規定ハ前項
ノ貸付ノ擔保タル債權ニ附隨スル抵當
權及其ノ目的タル不動產ニ之ヲ準用
ス
第三十一條ノ三日本勸業銀行ハ抵當證
劵ノ賣買ヲ爲スコトヲ得
本法中貸付ニ關スル規定ハ抵當證劵ノ
買入ニ關シ之ヲ準用ス
第三十二條第二項中「第十四條第二項」ノ
下ニ「及第三十一條ノ二」ヲ加フ
第三十二條ノ三日本勸業銀行ハ其ノ發
行スル債劵ニシテ政府ノ所有又ハ保管
ニ係ルモノヲ日本銀行ノ爲ニ管理スル
コトヲ得
第五十六條第三號中「第三十一條ノ二」ヲ
「第三十一條ノ四」ニ改ム
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第七農工銀行法中改正法律案(政府
提出)第一讀會
農工銀行法中改正法律案
農工銀行法中左ノ通改正ス
第六條第二號中「拂込資本金及積立金總
髙」ノ下ニ「ノ二倍」ヲ、同條第三號中「市
町村」ノ上ニ「府縣」ヲ、同條第五號中「定
期償還ノ方法ニ依リ」ノ下ニ「又ハ十箇年
以內ニ於テ年賦償還ノ方法ニ依リ」ヲ加
フ
第六條ノ二中「宅地又ハ建物ヲ抵當トス
ル貸付金額」ヲ「宅地若ハ建物ヲ抵當トシ
又ハ之ヲ抵當トスル債權(抵當證劵ヲ含
ム)ヲ質トスル貸付金額」ニ改ム
第七條中「拂込資本金額及農工債劵發行
額ノ四分ノ三迄」ヲ「拂込資本金額及農工
債劵發行額迄」ニ改ム
第七條ノ三ヲ第七條ノ五トス
第七條ノ四ヲ第七條ノ六トシ同條中「田、
畑鹽田、山林、牧場、養魚池又ハ漁業
權ヲ抵當トスル貸付」ヲ「田、畑、鹽田、山
林、牧場若ハ養魚池ヲ抵當トシ又ハ之ヲ
抵當トスル債權(抵當證劵ヲ含ム)ヲ質ト
スル貸付、漁業權ヲ抵當トスル貸付」ニ、
「第七條ノ三」ヲ「第七條ノ五」ニ改ム
第七條ノ三農工銀行ハ第六條第二號ノ
制限內ニ於テ不動產ヲ抵當トスル債權
(抵當證劵ヲ含ム)ヲ質トシ五箇年以內
ノ定期償還貸付ヲ爲スコトヲ得
第八條第一項、第九條、第十條、第十
八條及第十九條ノ規定ハ前項ノ貸付ノ
擔保タル債權ニ附隨スル抵當權及其ノ
目的タル不動產ニ之ヲ準用ス
第七條ノ四農工銀行ハ抵當證劵ノ賣買
ヲ爲スコトヲ得
本法中貸付ニ關スル規定ハ抵當證劵ノ
買入ニ關シ之ヲ準用ス
第二十條中「市町村」ノ上ニ「府縣」ヲ加ヘ
「前項ノ」ヲ削リ同條第一項ノ次ニ左ノ一
項ヲ加フ
前項ノ場合ニ於テ農工銀行ハ府縣ニ對
シテハ內務大臣ニ、市町村其ノ他法律
ヲ以テ組織セル公共團體ニ對シテハ第
一次監督官廳ニ其ノ請求ヲ爲スヘシ
第二十三條第二號中「第六條各項」ヲ「第
六條及第七條ノ三」ニ改ム
第二十四條第一項中「日本勸業銀行」ノ下
ニ「又ハ他ノ農工銀行」ヲ加ヘ同條ニ左ノ
一項ヲ加フ
農工銀行ハ不動產ヲ抵當トスル債權
(抵當證劵ヲ含ム)ヲ質トシテ日本勸業
銀行ヨリ定期償還ノ方法ニ依リ借入金
ヲ爲スコトヲ得
第二十六條第一項中「十倍」ヲ「十五倍」ニ
改メ同項但書ヲ左ノ如ク改ム
但シ年賦償還貸付金總高及定期償還貸
付金總高ヨリ第二十四條第四項及第五
項ニ依リ質ト爲シタルモノヲ控除シタ
ル金額ヲ超過スルコトヲ得ス
第二十七條中「第二十四條第四項」ノ下ニ
「又ハ第五項」ヲ加フ
第四十六條第一號中「第七條ノ四」ヲ「第
七條ノ六」ニ改ム
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第八北海道拓殖銀行法中改正法律案
(政府提出)第一讀會
北海道拓殖銀行法中改正法律案
北海道拓殖銀行法中左ノ通改正ス
第七條ノ二北海道拓殖銀行ハ五箇年以
內ニ於テ定期償還ノ方法ニ依リ不動產
ヲ抵當トスル債權(抵営證劵ヲ含ム)ヲ
質トスル貸付ヲ爲スコトヲ得
第七條ノ三北海道拓殖銀行ハ抵當證劵
ノ賣買ヲ爲スコトヲ得
本法中貸付ニ關スル規定ハ抵當證劵ノ
買入ニ關シ之ヲ準用ス
第八條第一項中「北海道ニ於ケル市」ノ
上ニ「北海道、」ヲ、同條第三項中「定期
償還ノ方法ニ依リ」ノ下ニ「又ハ十箇年
以內ニ於テ年賦償還ノ方法ニ依リ」ヲ加
フ
第八條ノ二中「前二條」ヲ「前四條」ニ改
ム
第八條ノ三中「同條第四項」ノ下ニ「、第七
條ノ二」ヲ加フ
第十一條ノ二中「市町村」ノ上ニ「北海道」
ヲ加へ「前項ノ」ヲ削リ同條第一項ノ次ニ
左ノ一項ヲ加フ
前項ノ場合ニ於テ北海道拓殖銀行ハ北
海道ニ對シテハ內務大臣ニ、市町村其
ノ他ノ公共團體ニ對シテハ第一次監督
官廳ニ其ノ請求ヲ爲スヘシ
第十二條第一項中「十倍」ヲ「十五倍」ニ改
ム
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第九國稅徵收法中改正法律案(政府
提出)第一讀會
國稅徵收法中改正法律案
國稅徴收法中左ノ通改正ス
第四條ノ五中「地租、營業稅、所得稅、醬油
稅」ヲ「所得稅、地租、營業收益稅、資本利
子稅」ニ改ム
第二十八條ニ左ノ一項ヲ加フ
賣却シタル物件抵當證劵ヲ發行シタル
抵當權ノ目的物ニシテ第三條ノ證明ヲ
爲スヘキ抵當證劵所持人分明ナラサル
場合ニ於テ其ノ代金ヨリ督促手數料、
延滯金及滯納處分費ヲ徵シタル殘額カ
債權者ニ交付スヘキ債務額及徵收スヘ
キ稅金ニ充タサルトキハ其ノ抵當證劵
所持人ニ交付スヘキ金額ハ之ヲ保管ス
此ノ場合ニ於テ債權ノ辨濟期限後四月
ヲ過クルモ尙其ノ證明ヲ爲ササルトキ
ハ其ノ保管シタル金額ヲ稅金ニ充テ尙
殘餘アルトキハ之ヲ抵當證劵所持人ニ
交付ス物件ノ賣却後二年內ニ其ノ證明
ヲ爲ササルトキ亦同シ
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
〔國務大臣子爵渡邊千冬君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01619310219&spkNum=22
-
023・渡邊千冬
○國務大臣(子爵渡邊千冬君) 私ハ只今議
題トナリマシタ九法案ノ中抵當證劵法案、不
動產登記法中改正法律案、民事訴訟法中改
正法律案、競賣法中改正法律案及民事訴訟
用印紙法中改正法律案、是ダケニ付キマシテ
一括シテ提案ノ理由ヲ申述ベタイト存ジマス
我國不動產金融ノ狀況ヲ見マスルニ不
動產ヲ擔保トスル債務ノ總額ハ、昭和三年
末ニ於テ六十二億圓ヲ超ユルノ巨額ニ上ッ
テ居ルノデアリマス而シテ是ガ流動化及
資金化ト云フコトハ我國經濟ノ發達上最
モ重大ナル問題デアリマシテ、是ガ解決ハ
社會一般ヨリ非常ニ要望セラレテ居ルノデ
アリマス、然ルニ我國現在ノ制度ニ於テハ
不動產抵當債權者ガ、自己ノ抵當債權ヲ資
金化スル上ニ於キマシテ、有效簡便ナル方
法ガ設ケラレテ居ナイ爲ニ、平時ニ於テモ、
財界變調ノ際ニ於テモ、常ニ多大ノ不便ヲ
感ジテ居ル次第デアリマス、政府ハ玆ニ見
ル所ガアリマシテ、抵當證券法ノ制定ニ依
リ、抵當證券制度ヲ創設致シマシテ、不動
產抵當附債權ノ證劵化ヲ圖ルコトヽシ、兎
角ニ固定シ易イ不動產貸出ニ關スル缺點ヲ
除去シ、不動產金融ノ便宜ヲ增進セシメタ
イト存ジマス
今此制度ノ金融上ノ作用ヲ〓略申述べマ
スレバ、抵當證劵ハ不動產ヲ抵當トスル債
權ヲ證劵化シタモノデアリマシテ、大體ニ
於テ手形ニ不動產抵當ヲ固著セシメタ形ト
ナルノデアリマス、而シテ此制度ナキ現在
ニ於テハ一々移轉登記ノ手續ヲ經ナケレ
バ不動產上ノ抵當權ノ移轉ヲ以テ第三者
ニ對抗スルコトガ出來ナイノデアリマス
ガ抵當證劵ニ於キマシテハ、手形ト同樣
ニ裏書ニ依ッテ之ヲ讓渡シマスレバ、第三者
ニ對抗シ得ルコトヽナルノデアリマス、斯
クテ裏書讓渡ト云フ簡便ナル手段ニ依リマ
シテ輾轉スルコトニナルノデアリマスカ
ラ、不動產ノ抵當ノ附イタ債權ガ容易ニ流
動シ、隨テ又資金化セラルヽニ都合好クナ
ルト云フ仕組デアルノデアリマス、之ニ加
フルニ右ノ裏書ニハ一定ノ裏書上ノ責任
ガ附著シテ居リマスノデ、人的擔保作用ガ
不動產ナリ物的擔保ノ上ニ加ハリ、更ニ流
動化及資金化ノ作用ヲ圓滑ナラシムルコト
ト相成ルノデアリマス
以上ハ抵當證劵法ノ大要ノ說明デアリマ
スガ、本法制定ノ必要ニ付キマシテハ、旣
ニ金融制度調査會ニ諮問シテ可決セラレタ
所デアリマス、而シテ同法ノ制定ニ伴ヒ不
動產登記法、民事訴訟法、競賣法及民事訴
訟用印紙法ノ改正ヲモ必要トシタノデアリ
マシテ、ソレ〓〓改正法律案ヲ提出致シタ
次第デアリマス、何卒愼重審議速ニ御協賛
アランコトヲ希望致シマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01619310219&spkNum=23
-
024・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 小川政府委員
〔政府委員小川〓太郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01619310219&spkNum=24
-
025・小川郷太郎
○政府委員(小川〓太郞君) 只今議題トナ
リマシタ日本勸業銀行法中改正法律案、農
工銀行法中改正法律案及北海道拓殖銀行法
中改正法律案ニ付キマシテ、一括シテ提案
ノ理由ヲ申述ベタイト存ジマス
不動產金融ノ圓滑ヲ圖ルコトハ積年ノ問
題デアリマシテ、此問題ヲ解決スル爲ニハ
不動產ヲ抵當トスル債權ノ資金化、證劵化
ヲ行フノ必要ガアリマス、仍テ政府ハ別ニ
抵當證劵ニ關スル法律案ヲ提案シテ、不動
產ヲ抵當トスル債權ノ輾轉ヲ容易ナラシム
ル制度ヲ設ケントスルコトハ、旣ニ司法大
臣ヨリ說明サレタ通リデアリマス、此抵當
證劵制度ヲ設ケマスト共ニ、不動產金融ヲ
主タル業務トシテ居リマス日本勸業銀行、
農工銀行及北海道拓殖銀行ヲシテ、抵當證
劵ヲ賣買シ、又ハ之ヲ質トシテ定期償還貸
付ヲ爲スノ途ヲ開キ、又抵當證劵トナリ居
ラザル不動產抵當債權ニ付キマシテモ、同
樣ノ貸付ヲ行フコトヲ得セシメテ是等ノ
銀行ヲシテ其機能ヲ十分ニ發揮サセタイト
考ヘマス、此種ノ業務ヲ新ニ認ムルコトニ
依リマシテ、定期償還貸付限度ノ擴張、又
ハ債劵發行限度ノ擴張ガ必要トナリマスカ
ラ、此點ニ付テモ相當改正ヲ加フルコトヽ
致シマシタ
更ニ現在是等ノ銀行ハ農業者、工業者、
又ハ漁業者ニ對シマシテ、十人以上ノ連帶
ヲ以テ定期償還ノ方法ニ依ル無抵當ノ貸付
ヲ爲スコトヲ認メラレテ居リマスガ、今囘
是等ノモノニ對シ、新ニ年賦償還ノ方法ニ
依リ、無抵當貸付ヲ認ムルコトヽシ、長期
低利ノ資金ノ利用ヲ容易ナラシメテ、庶民
金融改善ノ一端ニ資シタイト考ヘマス、又
農工銀行及ビ北海道拓殖銀行ハ、今日ニ於
テハ資力モ相當充實シテ來タノデアリマス
カラ、道府縣ニ對スル無抵當貸付ヲ爲スコ
トヲ認ムルコトヽ致シマシタ、尙ホ日本銀
行ニ於テ管理スル有價證劵中、日本勸業銀
行發行債劵ハ便宜同行ヲシテ日本銀行ニ
代リ是ガ管理ヲ爲サシムルコトヽシ、又農
工銀行ガ農工債劵元利金支拂等ノ爲ニ、他
ノ農工銀行ノ代理店トナリ得ルヤウ改正ヲ
致シタイト考ヘマス
以上ノ事項ニ關シ、其大綱ニ付キマシテ
ハ金融制度調査會ニ諮問シ、同會ニ於テ愼
重審議ノ上可決セラレタノデアリマシテ、
玆ニ其趣旨ニ依リ本案ヲ提出シタ次第デア
リマス、何卒御協贊アランコトヲ希望致シ
マス(拍手)
次ニ議題トナッテ居リマス國稅徵收法中
改正法律案ニ付キマシテ、其提案ノ理由ヲ
說明致シマス、現行法ニ於キマシテハ納
稅者ノ財產ノ上ニ抵當權ヲ有シテ居リマス
者ガ、國稅ニ對シ先取權ヲ行使シマスニハ
其抵當權ノ設定ガ、國稅ノ納期限ヨリ一箇
年以前ニアルコトヲ證明シナケレバナラナ
イコトニナッテ居リマス、然ルニ今囘抵當證
劵ノ制度ガ出來マシテ、納稅者ノ財產ノ上
ニ設定セラレタル抵當權ニ付テ、抵當證劵
ガ發行セラレタ場合、證劵ガ輾轉シマシテ
其所持人ガ何人デアルカ判明セズ、隨テ稅
務署ガ權利者ニ通知ガ出來ズ、其結果トシ
テ債權者ガ國稅ニ對シ先取權ヲ行使スル所
ノ機會ヲ失フガ如キ場合ヲ生ズルノ虞ガア
リマス、斯ノ如キ場合ニハ相當期間ノ猶豫
ヲ與ヘ、其權利行使ノ機會ヲ得セシメルノ
必要ヲ認メ、玆ニ本案ヲ提出シタ次第デア
リマス、尙ホ從來ノ稅法ノ改廢ニ伴ヒマシ
テ、改正ヲ要スルモノガアリマスノデ、是
モ同時ニ改正スルコトヽ致シマシタ、何卒
御審議ノ上御協賛ヲ與ヘラレンコトヲ希望
致シマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01619310219&spkNum=25
-
026・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 質疑ヲ許シマス、
名川侃市君
〔名川侃市君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01619310219&spkNum=26
-
027・名川侃市
○名川侃市君 抵當證劵法ノ提出ニ付キマ
シテ、司法大臣ニ質問ヲ致シタイフデアリマス
其第一ハ本案ハ土地、建物、土地ニ對
スル地上權ヲ目的ト致シマシタル、抵當權
其モノヽ輾轉ヲ容易ニスル爲ニ、作ッタ法律
デアルト云フノデアリマス、所ガ不動產ハ
申スマデモナク其土地ノ位置、又土地ノ種
類交通ノ便否、耕作地デアリマスト云フ
ト土地ノ肥エテ居ルトカ、瘦セテ居ルト
カ云フコトニ依ッテ、價格ニ多大ノ相違ガア
ルモノデアリマス、隨テ是ハ現今ノ取引界
ニ於テ盛ニ取引セラレテ居リ、市場ニ公
定相場ヲ持ッテ居ル株式ナドヽハ其擔保
トシテノ取引ニ非常ナ相違ガアルモノデア
リマス、故ニ債權ヲ擔保トシテ抵當物ヲ取
ルニ付テハ、債權者ハ必ズ其土地ヲ實地ニ
見テ、具ニ其價格ヲ評定シテ、而モ債權ノ
期間モ普通ノ手形ノ如キ短イモノデナイノ
デアリマスカラ、將來ノ財界ノ狀況、價格
ノ變動ト云フモノニ付テ考慮ヲ拂ッタ上ニ
於テ、其擔保價格ヲ決メルモノデアリマシ
テ、株式ノ如ク直チニ右カラ左ヘト輾轉ノ
出來ルモノデハナイノデアリマス、(2015)
擧ゲマスレバ神奈川縣ノ川崎ノ在ナドニ
於テハ水害ノ爲ニ何十町ト云フ田地ガ、
登記簿ノ上ニ於テハ立派ニ畑ニナッテ居ル
處ガ、五尋六尋ノ海底ニナッテ居ル處ガ澤山
アリマス、是等ノ所有者ガ遠隔ノ土地ノ銀
行ヘ行ッテ、私ハ東京ノ附近デ是ダケノ地面
ヲ持ッテ居ルノデアルカラ、是デ金ヲ貸シテ
吳レト言ウテ、ソレヲ擔保ニシテ金ヲ借リ
テ、拂ハヌ時ニ抵當權ヲ實行シヨウトシテ
行ッテ見ルト、海ノ底デアルト云フノデ、ソ
レガ詐欺ト云フ事件ニナッタ、或ル一ツノ所
有者ノ如キハ其爲ニ十幾犯ヲヤッテ、監獄
ニ二十何年モ入ッテ居ル人間ガアル、斯ノ如
クニ不動產ノ擔保ト云フモノハ決シテ其
地目坪數ナドヲ見テ、直チニ擔保ニ取ルコ
トハ出來ヌモノデゴザイマスルガ故ニ、此
輾轉ト云フモノハ、決シテ容易ニ出來ルモ
ノデハナイノデアリマス、故ニ現今ノ表示
方法デアル抵當權ノ登記、其登記ヲ切ッテ柢
當權ヲ輾轉サセルコトニ於テモ、ソレ程不
便ヲ感ズルモノデナイト我々ハ思フノデア
リマス、最モ今日擔保物トシテ取引セラレ
テ居ル株式、此物ニ付テモ現今ノ法律制度
ハ何デアルカ、之ニ付テハ甚ダ規定ガ不完
全デハアリマセヌカ、現今株式ノ質權ノ設
定ニ付テハ何等ノ規定ガ法律ニナイノデ
アル、如何ナル方法ニ依ッテ質權ノ設定ガ出
來ルカト云フコトモ、法律ニ書イテナイノ
デアル、故ニ其株式ノ所屬ノ株式會社トシ
テモ、其株式ガ何人ニ質權ノ設定セラレテ
アルカト云フコトハ分ラナイノデアル隨
テ其株式ニ質權ヲ持ッテ居ル者モ、其質權ノ
目的物デアル所ノ株式ノ配當ヲ受取ルコト
ガ出來ヌト云フコトニ、現今ニ於テ非常ナ
不便ヲ感ジテ居ルノデアル、又此株式ヲ銀
行ナドガ擔保ニ取ッテ、銀行ガ竊盜ニ遭クテ
其品物ヲ盜マレタ、其株式ガ株安ノ爲ニ輾
轉シタ場合ニ於テ、債權者タル銀行ガ其株
式ヲ取戾ス所ノ手續モ法律ニ書イテナイ、
唯占有囘收ノ手續ニ依ッテ、僅ニ之ヲ取戾ス
コトガ出來ルト云フコトガ書イテアルニ過
ギヌノデアリマスガ、占有囘收ノ手續ト云
フモノハ、其盜ンデ行ッタ者ガ持っテ居ル間
ハ取戾サレルケレドモ、其盜ンダ者ガ他人
ニ其株式ヲ讓渡シタ時ハ取リニ行ケナイノ
デアル、斯ノ如ク盛ニ取引サレテ居ル所ノ
株式ノ擔保ニハ、非常ニ不完全ナル法律デ
アルニ拘ラズ、是等ニ付テハ何等ノ改正ノ
實ヲ擧ゲラレズシテ、實際ニ於テ之ヲ改正
セラレタ所ガ、ソレダケノ實用ノナイ所ノ
不動產抵當ニ付テ證劵發行ノ方法ヲ執ラレ
タト云フ、當局ノ其根據ト云フモノハ何處
ニアルカト云フコトヲ、第一ニ聞キタイノ
デアリマス
第二ニ承リタイノハ、我國ノ此抵當權ノ
規定ハ、佛蘭西民法ニ則テ出來テ居ルモノ
デアリマス、而シテ此抵當證劵、卽チ證劵抵
當ト云フモノハ、獨逸民法ニアル規定デア
リマス、佛蘭西民法ニ則ッテ居ル所ノ、現
今日本ノ抵當權ノ規定ニ對シテ、獨逸民法
ノ規定ヲ直チニ採ッテ來テ、證劵抵當ノ方法
ヲ採用スルト云フコトハ其規定ノ中ニ於
テ色々ト不便ノコトガ出來テ來ルコトト思
フノデアリマス、此點ニ付テ當局者ハ如何
ナル考ヲ持ッテオイデニナリマスカ、ソレヲ
聞キタイノデアル
第三ニ承リタイ所ハ、此本法案ニ依リマ
スト云フト、民法ニ規定シテアル抵當權滌
除ノ規定、其規定ヲ證劵抵當ニハ適用セヌ
ト云フコトニナッテ居ルノデアリマス、滌除
ト申シマスノハ、說明スルマデモナク御承
知ノ通リ、抵當ノ目的物ヲ他人ガ買ッタト
キニ、其代金ヲ抵當權者ニ拂ヘバ、抵當ヲ
消シテ貰ヘルト云フ規定デアリマス、此規
定ハ卽チ法律ニ於テ、債權者ガ抵當權ヲ實
行シテ競賣ヲ致シマシタトキニハ、其競賣
代金ヲ債權者ガ取ルコトニ依ッテ、其抵當權
ハ消滅スルコトニナル、卽チ競賣ノ手續ニ
依ッテ抵當物ヲ賣レバ抵當權ハ消滅スル
コトニナル、然ラバ競賣ノ手續ニ依ラズシテ
任意賣買デアッテモ、其目的物ヲ賣"テ其代金
ヲ抵當權者ガ取ッタナラバ、其抵當權ハ消滅
スルコトニスルト云フコトガ是ハ理論上
當然ノコトデアルト私ハ思フノデアル、故
ニ現行民法ニ於テ其規定ガアルノデアル
又此滌除ノ規定ハ佛蘭西民法ニアッテ、獨逸
民法ニナイ規定デアリマス、故ニ獨逸ノ發
達シタル法律ナルニ拘ラズ、此滌除ノ規
定ノナイト云フコトハ獨逸民法ノ缺點デ
アルト致シテ、學者及實際家ガ批評シテ居ル
所デアル、其獨逸民法ノ缺點トセラレテ居ル所
ノ滌除ノ規定ノナイモノヲ、折角日本ノ民法
ニアル滌除ノ規定ヲ全然適用セヌト云フガ
如キ、改惡スル所ノ方法ヲ執ラレル根據ハ、
何處ニアルカト云フコトヲ聞キタイノデア
リマス、卽チ此滌除ト云フコトハ非常ニ
土地ノ所有者ノ爲ニ便宜ナル方法デアリマ
シテ其土地、建物、ソレヲ大變希望スル
人ガアル、是非トモ此土地ヲ自分ガ欲シイ
ト言ウテ希望スル人ガアル、其時ニ於テ之
ヲ買ヒマシタ所ガ、滌除ノ手續ガアレバ
代金ヲ持ッテ行シテ抵當ヲ消シテ貰フコトガ
出來ル、滌除ノ手續ガナイト云フト、抵當
權者ハソレデハイケナイ、私ハ債權全部ヲ
拂フニアラザレバ、ドウシテモ此抵當ハ消
サヌト云フコトガアル、所ガ目的物ハ債權
全部ノ價格ハナイ、一万圓ノ債權デ、目的物
ハ五千圓シカ價格ガナイト云フトキニ、其
土地ヲ買ウタ者ニ一万圓拂ヘト云フノハ非
常ニ酷デアル、サウ云フ時ニ於テ抵當權者
ガ之ヲ競賣致シマシテモ五千圓シカ取レ
ヌノデアルカラシテ、任意ニ賣買シタ代金
五千圓ヲ拂ッタナラバ、其抵當權ヲ消シテ
ヤルコトニスルト云フコトハ、之ヲ折角希
望シテ買ウタ所ノ第三取得者ニ於テ非常ニ
便宜デアル、然ルニ意地惡イ抵當權者ガアツ
テ、オ前ハ折角買ウタケレドモ、抵當權ハ
消シテヤラナイト云フコトデ、競賣セラレ
マスト云フト、折角買ウタ所ノ此土地、建
物ヲ、又人ニ取ラレルト云フコトニナルノ
デゴザイマスガ故ニ、此滌除ノ規定ト云フ
モノヲ全然廢止致シマスト云フト、不動產
ノ賣買ト云フモノハ行ハレナクナル、抵當
ノ附イクル土地ノ買手ガナクナル、サウナ
リマスト云フト、土地ノ所有者ハ此滌除ノ
規定ガ法律ニナイガ爲ニ、土地ノ賣買ガ出
來ナイ、土地ヲ持ッテ居リナガラ、之ヲ處分
スルコトガ實際ニ於テ出來ナイト云フヤウ
十、非常ナ不便ヲ生ズルコトニナルト思フ
ノデアリマス、斯ノ如キ實際ノ結果ヲ生ズ
ル以上ハ、只今提案者ヨリ說明セラレタ所
デモ且ツ此法案ノ後ニ理由書トシテ附ケ
ラレテ居ル所ニ於テモ、不動產金融ヲ圓滑
ナラシムル爲ニ本法案ヲ提出スルト言ハレ
ルノハ、却テ此法案ノ爲ニ土地ノ所有者ハ、
不動產ニ依ッテ處分シテ金ヲ作ルト云フコ
トガ出來ナクナリマシテ、非常ニ不利益ナ
ル結果ヲ生ズルモノデアルト思フノデアリ
マスサウ云フヤウナ次第デアリマシテ、
現今ノ經濟界ハ如何デアルカト申シマスレ
バ敢テ現內閣ヲ攻撃スルノデアリマセヌ
ガ、實際ノ結果ガ金解禁ノ御蔭ト云フカ何
ト云フカ非常ニ金解禁ノ爲ニ金ノ値段ハ
高クナッタ、一万圓ノ借金ヲシタ者ガ、金ノ
値段ガ高クナッタカラ、一万五千圓モ拂ハナ
ケレバナラヌヤウナ、現今ノ狀況ニナッテ
來テ居ルノデアリマス、經濟界ハ非常ニ不
景氣ニナッテ來タ、今日デハ借金シタ者ガ非
常ニ困ッテ居ル、安イ錢ヲ借リテ高イ金ヲ拂
ハナケレバナラヌト云フコトニナッテ居ル
ノデアリマスカラ、今日社會ノ輿論ト云フ
モノハ成ベク金錢ノ貸借ニ付テハ裁判ヲ
延バスヤウニ、支拂ノ猶豫ノ方法ヲ設ケテ
昔ノ德政トマデハ行カズトモ、借金ノ中三
割、四割ノ棒引ヲサスト云フコトガ最モ公
平デアルト、社會ノ輿論ガ今日ナッテ居ル
時代デアリマス、其時代ニ於キマシテ、現
行民法ニ於テ債務者ヲ保護シ、土地ノ所有
者ヲ保護シテアル立派ナ規定ガアルニ拘ラ
ズ、此規定ヲ全然廢止シテ、債務者ヲ苛メ
テ、而シテ抵當權者ノ便宜ヲ圖ル、斯ウ云
フコトガ時代ニ適應シタル立法デアルト言
ヘルデアリマセウカ、世間ノ人ハ現内閣ハ
富豪ノ爲ニ便宜ヲ圖リ、金融業者ノ爲ニ便
宜ヲ圖ルト言フガ、此法律ヲ出シタ所ヲ見
レイ、サウ云フヤウニ見エル、私ハ此點ニ
付キマシテ、提案者ニサウデナイカドウ
カ、吾々ガ得心スルダケノ說明ヲ聞キタイ
ノデアル、何故ニ滌除ノ規定ヲ排除サレタ
カト云フコトヲ、最モ懇切ニ承リタイト思
フノデアリマスソレカラ次ニ不動產ノ金
融ヲ圓滑ナラシムル爲ニスルト仰シヤルガ、
現行ノ裁判制度ニ於テ果シテ是ガ出來ルカ、
出來ヌカト云フコトヲ御尋致シタイノデ
アリマス卽チ今日抵當權ノ實行ニ依ッテ
競賣ノ申立ヲ致シマシテ、是ガ競賣セラレ
テ、抵當權者ガ金ヲ取ルマデニ、長キハ五
年、短クトモ三年ハ掛ル、是ガ現今ノ裁判
ノ實情デアル、サウ云フヤウニ裁判所ソレ
自體ガ權利ノ擁護ニ付テ非常ニ手續ガ遲
延致シテ居ル、ソレニ斯ウ云フ法律ヲ拵ヘ
テ不動產ノ金融化デアルナドヽ何處ヲ押
セバソンナコトガ言ヘルカ、是ハ司法省ニ
於テ先ヅ其裁判所ヲ嚴重ニ監督ヲシテ、早
ク此抵當權實行ノ方法ヲ付ケルヤウニナサ
ルナラバ、コンナ法律ナドヲ拵ヘル必要ハ
ナイ、コンナ法律ヲ御作リニナッタ所ガ、幾
ラ輾轉シテモ愈〓抵當權ヲ實行スルト云フコ
トニナレバ五年モ三年モ掛ルト云フコト
デアッタナラバ、何人ガ抵當權ヲ讓受ケル者
ガアリマセウ、私ハ此點ニ付キ司法省ノ所
信ガ聞キタイ、今日ノ抵當權實行ニ對スル社
會ノ不便不利ハ非常ナモノデアル、先日モ
私ノ關係シタ事件デアリマスケレドモ、五
年前卽チ土地ガ一坪三百圓モスル時ニ競賣
シテ置イテ、ソレヲ手續ガ遲レテ、漸ク此
間登記ヲシテヤルカラ、錢ヲ納メロト言フ、
社會ハ不景氣ニナッテ坪百圓モセヌヤウナ
時分ニ、ソレヲ裁判所ノ手續ニ依ッテ、四年
モ五年モ引渡ヲ延バサレテ、而モ景氣ノ盛
ンナ時ノ値段、三百圓デ引取ラネバナラヌ
ト云フコトハ、非常ナ不便ナコトデアリマ
ス、是ハ抵當權者ノ不便デナク、競賣シタ
者ノ不便デアリマス、サウ云フヤウナ不便
ガアルノデアリマスカラ、コンナ法律ガ拵
ヘラレタ所デ、ソレガ改良出來ヌ以上ハ
決シテ不動產ノ金融ノ圓滑ハ出來ナイト思
フ、之ニ對スル司法當局ノ答辯ヲ求メマス
第四ニハ、此規定ニ依リマスト償還ノ請
求、卽チ抵當證劵ヲ讓渡シタ者ニ付テハ、其
讓渡人ガ讓受人ニ償還ノ義務ガ書イテア
ル、目的物ヲ處分シテ代金ガ債權ニ滿タヌ
トキニハ、ソレヲ辨償スルコトニナッテ居
ル、是ハ私隨分危險ナ話デハナカラウカト
思フ、手形ノ如ク三十日トカ、六十日トカ、
長クテ九十日トカ云フ期日ノモノデゴザ
イマシタナラバ債務者ノ資產、信用狀態
ニ於テモ、ソレ程ノ變更ハ來シマセヌガ故
ニ、其手形ノ裏書人ガ其讓渡ニ付テ責任ヲ
負フト云フコトニ付テ、重大ナル不結果ハ
來シマセヌケレドモ、抵當權ヲ設定スル債
權ノ如キハ長イノハ十年賦モアレバ、二
十年賦モアリ、隨分履行期ハ長イノデアル、
隨テ時勢ノ變遷ニ依ッテ、抵當物ノ價格ニ
付テモ非常ナ相違ヲ來シテ來ルノデアリマ
ス、ソレニ付テ常ニ證劵ノ讓渡人ガ責任ヲ
負ハナケレバナラヌト云フコトデアッタナ
ラバ抵當權ヲ取ル者モナシ、取ッテモ讓
渡スニシテモ危險デアルカラ、讓渡スモノモ
心配ニナルト云フコトニナッテ、却テ斯樣ナ
規定ノ爲ニ、土地、建物ノ金融ト云フモノ
ヲ妨ゲルノデハナイカト思ヒマスガ、其點
ニ付テノ御意見ヲ承リタイ、ソレカラ
第五ニ承リタイノハ本法案ニ依リマス
ト抵當權ト債權トノ分離讓渡ヲ禁ジテアル
ノデアリマス、所ガ實際ニ於テハ抵當權ダ
ケ離シテ讓渡スルコトガ行ハレテ居ル、或
ル銀行ガ何人カニ金ヲ貸シテ居ル、所ガ擔
保物ガナイ、併シ誰某ガ擔保物ヲ持ッテ居ル
サウダカラ、其擔保物ダケ讓受ケヨウ、抵
當權ダケ讓受ケヨウト云フヤウナコトガ、
社會ニ於テ實際ニ行ハレテ居ル、アヽ云フ
債務者ニ金ヲ貸シテ、債權債務ノ關係ヲ有
スルコトハ甚ダ迷惑デアルカラ、債務マデ
讓受ケルノハ厭デアルガ、擔保權ダケ讓受
ケヨウト云フコトハ世間ニ於テ行ハレテ
居リマシテ、銀行界ニハ最モ行ハレテ居ル
ノデアル、ソレヲ斯ウ云フヤウニ、金融化
ヲ圓滑ニシテ行クヤウニショウト云フナラ
バ抵當權ト債權トヲ分離シテ讓渡スルト
云フコトニシテコソ、始メテ目的ヲ達スル
コトト思フノデアリマスガ、ソレヲ必ズ分
離讓渡ハ出來ヌト云フコトニセラレルノデ
アッタナラバ、本法案ノ趣旨ニ反スルモノデ
ハナイカト思フノデアリマス、成程之ヲ分
離讓渡ヲスルト云フコトニナリマスルト
手續ニ於テハ色々面倒ナコトガ出來ルカモ
知レマセヌガ、手續ノ面倒ヨリモ、圓滑ヲ
圖ルト云フナラバ、サウシナケレバ之ヲ制
定シタル所ノ根據ヲ失フノデハナイカト
私ハ思フノデアリマスソレカラ又本法案
ニ付テハ、債權ノ一部ノ讓渡、抵當權ノ一
部ノ讓渡ニ付テハドウ云フ風ニナサル積
リデアルカ、其規定ガゴザイマセヌガ、其方
法ニ付テモ尙ホ承リタイノデアル、ソレカラ
第七ニ承リタイノハ只今提案者ノ說
明ニ依リマスト、抵當權ノ讓渡ハ證劵ノ裏
書ニ依ッテ之ヲ爲シテ、登記ハ要ラナイト云
フヤウニ仰セラレタノデアリマス、或ハ是
ハ私ノ聞誤リデアッタカ知レマセヌガ、是
ハ法案ノ十五條カラ見テモ「抵當證劵ノ讓
渡ハ裏書ニ依リテ之ヲ爲ス」ト書イテアリ
マスサウ云フヤウニ見エルノデアリマス
ガ、果シテサウデアルトスルナラバ民法
百七十七條ノ規定ヲ除外スルコトニナサレ
タノデアルカドウデアルカ、若シ除外スル
コトヽナサレタモノデアルナラバ此第二
條ナドニ於テ、抵當權ノ本登記ガナイモノ
ハ證劵ヲ發行セズト書イテアル、ソンナ規
定ハ要ラナイノデハナイカ、登記ト全然關
係ガナイモノデアルナラバ、サウ云フ規定
ハ要ラナイモノデアルト思フノデアリマス
ガ、ソレニ付テノ實際ノ取扱ハ如何ニ爲サ
ルノデアルカト云フコトヲ聞キタイ
第九ニ承リタイコトハ、證劵抵當、卽チ抵
當權ノ證劵ヲ發行シタ時ニ、中途ニ於テ此
證劵ヲ取消シテ、普通ノ抵當ニスルト云フ
コトガ出來ルモノデアルカドウカ、其點ヲ
承リタイノデアル
モウ一ツ承リタイコトハ不動產ノ金融
化ヲ圓滑ニスルト云フノデアルナラバ、抵
當權ノ證劵ニ依ル讓渡デナクテ、不動產ノ
所有權其モノニ付テノ證劵ヲ發行シテソ
レニ依ッテ圓轉滑脫ニ讓渡スヤウニ爲サル
コトガ、一層進ンダ方法デハナイカト思フ
ノデアリマスガ、ソレヲサウ云フコトヲセ
ズシテ、抵當權ノミニ限ラレタ事情如何ト
云フコトヲ御尋致シタイト思ヒマス
〔國務大臣子爵渡邊千冬君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01619310219&spkNum=27
-
028・渡邊千冬
○國務大臣(子爵渡邊千冬君) 名川君ノ御
質問ノ第一ハ土地ト云フモノハ其位置ニ
依リ、種類ニ依リ、交通ノ便否ニ依リ、又
其土地ガ肥エテ居ルカ、瘠セテ居ルカト云
フコトニ依ッテ、其價格ト云フモノハ一定
シテ居ラナイノデアルカラ、抵當證劵ト云
フモノヲ發行致シタダケデハ果シテ其證
劵ニ記載セラレテ居ル所ノ土地ノ價格ガ
分ラナイノデアルカラ、サウ云フ狀態ニ於
テ其證劵ガ能ク流通スルカ、融通性ヲ持ツ
カ、サウ云フコトハ困難デハナイカ、其樣
ナ困難ノアル抵當證劵ト云フヤウナ制度ヲ
設ケルコトハ不必要デアラウ、斯ウ云フヤ
ウナ御質問デアッタノデアリマスケレドモ、
是ハ抵當證劵ニ限ラズ、普通ノ手形ニ於キ
マシテモ、其手形ノ信用ト云フモノハ、之
ヲ發行シタ人、其支拂人、又ハ裏書人ニ依。ツ
テ、其證劵ノ信用ト云フモノハ決マルノデ
アリマシテ、其信用ノ有無、厚薄ニ依ッテ、
其融通性、流通性ト云フモノガ決定セラレ
ルノデアリマスカラ、抵當證劵ノミ今名川
君ノ指摘セラレタヤウナ不便ガアルノデハ
ナイノデアリマス、況ヤ初ニ抵當證劵ヲ請
求スル人ハ、其土地ニ付テハ十分ナル知識
ヲ持ッテ居リマスガ故ニ、之ニ對シテ金ヲ貸
シ、サウシテ之ヲ人ニ讓ルトキハ裏書ヲシ
テ、自ラ其責任ヲ帶ビルノデアリマスカラ、
抵當證劵ナルモノハ土地ノ値打ト裏書人ノ
信用ト、兩方ノ合ハサッタモノニ依ッテ融通
性ガ行ハレルノデアリマスカラ、抵當證劵ニ
ノミ特別ナ不都合ガアルト云フコトハ吾
吾ハ考ヘナイノデアリマス、第二以下滌除
ノ問題、競賣其他ノコトハ政府委員カラ
申上ゲタ方ガ明瞭デアラウト思ヒマスカ
ラ、政府委員カラ申上ゲマス
〔政府委員長島毅君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01619310219&spkNum=28
-
029・長島毅
○政府委員(長島毅君) 大體私カラ御答申
上ゲタイト思ヒマス
一ノ點ハ大臣ヨリ御答ニナリマシタカ
ラ二ノ點カラ御答申シタイト思ヒマス
二ノ點ハ名川代議士ノ仰セノ如ク、我
ガ民法ハ大體抵當權ニ付テハ佛蘭西法ノ主
義ニ依ッテ居リマスノデ、登記ノ方ハ獨逸法
ノ主義ニ依ッテ居リマス大變ニ此點ハ調
和ノシ惡イ點ガアルノデアリマス、ソレデ
其點ハ抵當證劵法ノ際ニモ非常ニ苦心ヲ致
シマシテ、何トカソレニ付テハ調和ノ出來
ルヤウナ方法ヲ講ジテ居ル積リデアリマ
ス、卽チ獨逸法ノ登記ニ於キマシテハ御
承知ノヤウニ公信主義デアリマスケレド
モ、我ガ民法ハ公示主義ニ依ッテ居リマスノ
デ、非常ニ此點ガ抵當證劵ノ發行ノ上ニ困
難ノ問題ヲ起シマシタノデ、之ニ付キマシ
テハ異議ノ手續ヲ十分ニ認メテ、抵當證劵
ノ流通ニ支障ノナイヤウニ致シタ積リデア
リマス
ソレカラ其次ハ滌除ノ點デアリマシテ、
是ハ洵ニ名川代議士ノ御說ハ御尤デアリマ
シテ、名川代議士モ多年此方面ニハ御經驗
ノオアリニナルコトデアリマスガ、御承知
ノ如クニ滌除ハ非常ニ此抵當權ノ執行ノ上
ニモ色々ト手續上不便ヲ來シマス、ノミ
サラズ實際ニ於テ、第三取得者ノ居所ガ分
ラナイヤウナコトガアリマシタリ何カ致シ
マシテ、非常ニ抵當權ノ執行ノ上ニ困難ヲ
來シテ居ルノデアリマス、而シテ第三取得
者ノ方カラ申シマシテモ、結局ハ賣レタ、
相當ナ値段デ買取ラネバナラナイノデアリ
マスカラ、左程ニ實益モ少イヤウデアリマ
ス、現ニ御承知デアラウト思ヒマスガ、滌
除ニ依クテ事件ガ旨ク處理サレタト云フコ
トハ餘リ澤山ナイヤウデアリマスカラ、
此際流通ヲ非常ニ圓滑ナラシムルコトヲ要
スル抵當證劵ニ付テハ、セメテ此滌除ヲ除
ケタナラバドウデアラウカト云フコトデ、
除ケタノデアリマス
第四デアリマシタカ、其次ノ競賣ノ遲延
ノ點ハ是ハ裁判所トシテモ十分ニ努力ハ
致シテ居リマスガ、何分ニモ現行ノ競賣法
ノ手續ガ非常ニ複雜デアリマシテ、債務者
ニ澤山ノ異議デアルトカ、抗〓ガ出來ルヤウ
ニナッテ居ル結果、甚ダ圓滑ニ進ンデ居ラヌ
コトハ、洵ニ遺憾トスル點デアリマス、是ハ
折角競賣法竝ニ强制執行法ノ改正ヲ計畫致
シテ居リマスノデ、サウ云フコトニ依ッテ漸
次救濟サレルコトヽ思ヒマスガ、尙ホ今後
一層此點ニ付テハ注意ヲ致シタイト思ッテ
居リマス
其次ニハ裏書人ノ償還ノ問題デアリマス
ガ、成程裏書人ハ非常ニ重大ナル責任ヲ負
フコトニナルト思ヒマス、仰セノ如クニ手
形ノ裏書人ハ經濟上カラ中セバ其償還ノ
責任ガ一層重イコトヽ存ジマスガ、此責任
ヲ重ク致シマセヌト、ドウシテモ抵當證劵
ノ流通ト云フコトガ、完全ニ行ハレナイノ
デアリマス、第一ノ御問ニアリマシタヤウ
ニ土地ソレ自身ノ價格ト云フモノガ、土
地ヲ實際見ナイト分ラナイノデアリマスカ
う、其土地ノ價格ヲ見テ一々之ヲ取引ヲシ
テ居ルト云フノデハ抵當證券流通ニ支障
ヲ來シマスノデ、ドウ致シマシテモ裏書人
ノ責任ト云フコトヲ十分ニ重カラシメナケ
レバ抵當證劵ノ流通ガ出來ナイノデアリ
マスカラ、是ハ本法ノ規定トシテハ止ムヲ
得ナイコトニナルノデアリマス
ソレカラ其次ハ分離讓渡ノ禁止ノ事ニ付
テノ御尋デアリマスガ、是ハ本法ニモアリ
マス通リニ、紙當附ノ債權ガ抵當證劵ニ化
體致サレマスノデアリマスカラー-一ツノ
證劵ニ化體サレルノデアリマスカラ、結局
是ハ分離禁止ヲ致シマセヌト、抵當證劵ノ
趣旨ニ副ハヌコトニナルノデアリマス所
謂有價證劵化ト云フコトニ適合致シマセヌ
カラ斯ウ云フコトニシマシタノデアリマ
ス
ソレカラ抵當權ノ一部讓渡ハ、是ハ抵當
證劵ヲ發行シテ居リマスル以上ハ出來ナイ
ノデアリマス、唯併ナガラ裏書人、所持人
等全員ノ同意ニ依リマシテ、牴當證劵ヲ二
枚ニスル、或ハ三枚ニスルト云フコトニ致
シマスレバ之ニ伴ヒマシテ抵當權ノ一部
讓渡モ出來ルコトニナルコトヽ存ジマス
其次ハ民法ノ百七十七條ヲ除外シタカト
云フ御尋デゴザイマスガ、抵當證劵發行後
ニ於キマシテ、抵當權ノ流通ノ問題ニ村テ
申セバ、是ハ百七十七條ヲ除外致シテ居リ
マス、併ナガラ抵當證券發行前ノ所有權ニ
付テハ、何處マデモ登記ガナケレバナラヌ
コトニチッテ居ルノデアリマス、尙ホ抵當證
劵ノ內容ノ變更ニ付キマシテハ、是ハ登記
ヲ同時ニ變更シナケレバナラヌコトニナリ
マスカラ、此點ダケニ村テハ百七十七條ノ
規定ヲ除外シテ居ラナイコトニナルノデア
リマス
其次ノ御尋デアリマスガ、抵當證劵ヲ
旦發行シタ以上ハ、ソレヲ取消スコトガ出
來ルカ、出來ヌカト云フ御尋デアリマスガ、
是モ詰リ裏書人竝ニ所持人ノ同意ガアリマ
スレバ取消スコトハ出來ルヲデアリマス
ソレカラ最後ノ御尋ハ、不動產所有權自
體ニ付テ、地劵ノヤウナモノヲ發行シタラ
ドウデアルカト云フ御尋デアリマスガ是
ハ仰セノ如ク斯ク致シマスレバ不動產ノ
流通性ハ、徹底的ニ便宜ノヤウニ無論ナリ
マスノデアリマスガ、併ナガラ兎ニ角我ガ
民法ハ不動產ニ付テ登記ノ根本主義ヲ採ッ
テ居リマシテ、此根本主義マデヲ變改致シ
マスコトハ、法律制度ノ非常ナ變更ニナリ
マスノデ一寸急ニハ出來ナイコトデアリ
マスカラ、其點ハ差控エタ次第デアリマス、
答辯ガ甚ダ簡單デアルカモ存ジマセヌガ、
名川代議士ハ十分ニ御專門ノ方デオイデニ
ナリマスクデ、極ク簡單ニ御答致シマシタ
(拍手)
〔名川侃君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01619310219&spkNum=29
-
030・名川侃市
○名川侃市君 只今提案者及政府委員ヨリ
答辯ガアリマシタガ其中デ重ネテ御尋致
シテ置キタイコトガ一點アルノデアリマス、
ソレハ民法滌除ノ規定ノ排斥デアリマス
ガ、只今長島政府委員ヨリ、是ハ實際ニ於
テ滌除ト云フモノハ多ク行ハレテ居ナイ
且ツ其滌除ト云フコトニ付テ、此規定ガア
ル爲ニ抵當權ノ實行ニ色々ト煩瑣ナル手續
ガ要ルカラ之ヲ排除シタ、斯ウ云ヲ御答辯
デゴザイマシタガ、今日此滌除ノ規定ヲア
ル爲ニ、抵當權者ガ迷惑シテ居ルト云フノ
ハ、實際ノ事實デアリマス、〓ナガラ是
ハ私ハ決シテ法律其物ノ罪デハナイト思フ
ノデアリマス裁判所ニ於テモ一部分ノ罪
ガアル、卽チ民法ノ所謂第三取得者ト云フ
ノハ本登記ヲシタル第三取得者デナクト
モ假登記ノ者デモヤハリ第三取得者ト見
ルト云フヤウナル大審院ガ判例ヲ下シマシ
タガ爲ニ、其抵當權ノ實行ヲ妨ゲントスル
一部ノ三百ナドガ、登記料ノ要ラナイ所ノ
假登記ヲ致シテ、此滌除ト云フ手續ニ隱レ
テ、色々抵當權者ヲ苛メテ居ルニ過ギナイノ
デアリマス、是ハ私ハ大審院ノ判例ガ聊カ
當ヲ失シテ居ルモノデハナカラウカト思
フ本登記ヲスルマデハ第三取得者トハ言
ヘナイノデアリマスカラ、判例其モノガ正
シキニ還リマスニ於テハ、此滌除ガアル爲
ニ抵當權者ガ困ルト云フコトハナイノデア
リマス、而シテ此滌除キ云フモノハ、實際
ニ於テ多ク行ハレテ居ナイト御セラレマス
ガ私ノ少ナキ經驗ニ依リマスト、此滌除
ト云フモノハ相當澤山行ハレテ居ルト思
フノデアリマス、司法省ニ於テ其點ニ村テ
統計デモオアリデアリマシタナラバ、今田
デナタトモ宜シウゴザイマスカラ、一ツ頂
戴致シタイト思ヒマス、他ハ又他ノ機會ニ
於テ聽クコトニ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01619310219&spkNum=30
-
031・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 政府ノ答辯ガアリ
マセヌ--上田孝吉君
〔上田孝吉君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01619310219&spkNum=31
-
032・上田孝吉
○上田孝吉君 私ハ本案ニ付キマシテハ、
三ツノ點ニ付テ極ク簡單ニ質問ヲ致シタイ
ノデアリマス
第一ハ本案提案ノ根本ノ觀念デアリマ
ス、只今提案者カラ御說明ニナリマシタ點、
竝ニ其理由書ヲ見マスト、「我國ノ經濟及
金融ノ狀況ニ鑑ミ不動產金融ヲ圓滑ナラシ
ムル爲抵當證劵制度ヲ創設シ」云々トアル
ノデアリマス、此御說明ニ依リマスト、單
ニ抵當債權者ニ對スル金融狀態ヲ圓滑ナラ
シムル爲デアルカノ如クニ見エルノデアリ
マス然ルニ方今社會ノ進步ニ伴フテ唱道
セラレテ居リマスモノハ不動產ノ資金化
ト云フコトデアリマス、特ニ我國現今ノ狀
況ニ於キマシテハ、多クノ土地ヲ有シ、家
屋ヲ持ッテ居リマシテモ、其地代ヲ徵牧スル
上ニ於テ、其家賃ヲ取立テル上ニ於テ種
種困難ナル狀況デアリマス是等困難ナル
狀況ニアリマスニ拘ラズ、他ノ一面ニ於テ
ハ、其土地ヲ相當將來ニ於テ尙ホ有效ナラ
シムル爲ニ於テ、或ハ其家屋ヲ修繕スル必
要上、更ニ又ソレ等ニ對シマス公租公課ニ
依リマシテ、折角多クノ不動產ヲ有シナガ
ラ、名實相伴ハザルノガ現在ノ實情デアリ
やく、是等ノ點ヲ顧ミル時ニ於キマシテ、
社會ノ進步ニ伴ウテ、而モ今日ノ經濟窮迫
ノ狀態ニ鑑ミマシテ、是等不動產ニ對スル
金融狀態ヲ圓滑ナラシメル、卽チ不動產ヲ
資金化スルト云フコトガ、或ハ最モ適切ナ
ル現在ノ狀態デハナイカト私ハ考ヘルノデ
アリマス、然ルニモ拘ラズ、本案ハ單ニ其
一部ノ抵當權ニ對シマシテ證劵ヲ發行シテ、
唯其抵當債權其モノヽ金融ヲ圓滑ナラシメ
ル卽チ言換ヘマスナラバ、金ヲ貸シテ居
ルイ費、金融業者ノミヲ保護致シマシテ、其
物ヲ持ッテ居リマス者自體ニ對シマス保護
政策ガ何等含マレテ居ナイコトヲ、私ハ遺
憾ニ考ヘルノデアリマス(拍手)此點ニ付テ
ハ先程名川君ガ第十點ノ質問ト致サレマシ
テ、少シ其一部ニ觸レテ居ラレマスケレド
モ、政府當局ノ之ニ對シマス徹底的ノ御答
辯ヲ缺イテ居ッタノデアリマス、然ルニ拘ラ
ズ此第一點程、此法律案ニ對シマスル根本
ノ觀念ニ於テ、必要ナモノハナイト私ハ考
〓ル仍テ政府當局ニ於キマシテ、此法律
案ハ不動產資金化ノ少ナクトモ前提トシテ
御出シニナッタモノデアルカドウカ單
此抵當權者ノミヲ保護スル意味ニ於テ御出
シニナッタモノデアルカ、ドウカト云フコト
ヲ御伺シタイ、最近ニ於キマシテ政府當局、
濱口內閣ノ諸公ハ、常ニ社會ノ進化ニ伴ヒマ
シテ、種々立法スベキ事柄ヲ、唯自己ノ宣
傳ニ依ッテ瞞著センガ爲ニ、此五十九議會ニ
於キマシテ提案サレマシタ法律案ヲ見マシ
テモ、悉ク微溫的デアリマス、或ハ之ヲ小
作法ニ於テ見マシテモ、米穀法ニ於テ見マ
シテモ、更ニ又刑事補償法案等ニ於テ見マ
シテモ、唯世間ヲ瞞著シ、彌縫スルガ爲ニ、
不徹底ナルモノヲ出シテ世ヲ欺カントシテ
居ル傾向ガ多イノデアリマス、本案モ亦或
ハ斯ノ如キ種類ニ類セザルヤヲ私ハ非常ニ
恐レマスガ故ニ、此點ニ付テ政府當局ノ最モ
詳細ナル御說明ヲ願ヒタイノデアリマス
第二ノ私ノ質問ハ、此不動產ニ對シマシテ
利害關係ヲ持ッテ居ル者ヲ、本案ノ立法ニ對
シテ考慮サレテ居ルカドウカト云フコトデ
アリマス諸君、今日既ニ土地、家屋、斯
ウ云フヤウナ不動產ニ對シマシテ、此不動
產ノ所有權ハ御存ジノ如ク其過去ニ於キマ
シテハ、是ハ絕對物權、完全物權デアリマ
シテ、他ヨリ制肘或ハ拘東サレルコトヲ非
常ニ嫌ッタモノデアリマスケレドモ、其後
文化ノ進步ニ從ヒマシテ、種々周圍ノ事情
ガ此處ニ絡ヲテ參リマシタ關係上、此完全物
權ノ性質ヲ有シテ居ルベキ所ノ不動產ノ所
有權ニ對シマシテ、或ハ賃貸借ト云ヒ或
ハ地上權ト云ヒ、色々ノ場合ニ於テ多クノ
制限ヲ蒙ヶテ居ルノデアリマス、特ニ此不動
產ニ對シテ賃貸借ヲ爲シテ居ル土地ヲ借
リ或ハ家屋ヲ借リテ居リマスル者ガ、其所
有者ガ何人デアルカト云フコトハ、其賃
借人ニ取リマシテハ最モ重要ナ事柄デアリ
そう、而シテ此賃貸人ガ何人デアルカ、地
主ガ何人デアルカト云フ此重要ナ要件ニ對
シテ本件ノ如クニ此抵當權利者ガ此所
有權ノ移轉ニ依シテ輾轉致シマスル場合ニ
於テハ-過去ニ於テモ勿論抵當權ノ移轉
ハ出來マスケレドモ、從來ニ於キマスル
抵當權ノ移轉ニ付テハ、尙ホ相當ノ手續ヲ
要シタニモ拘ラズ、本案ノ如クニ此證劵ノ
裏書ニ依ッテ、容易ニ輾轉サレマスル場合ニ
於キマシテハ其所有者カ何人デアルカト
云フコトニ對シマシテハ、賃借人ハ洵ニ迷フ
ノデアリマス、賃借人ガ非常ニ迷フ結果ヲ
生ズルノデアリマス、此證劵ノ所有人ガ變
リ、軈テソレガ競賣セラレマスルコトハ
軈テ所有者ガ變ル結果ニナリマス、爲ニ賃
借人ニ影響ヲ及ボス所、亦多大ナルモノガ
アル仍テ政府當局ニ於キマシテハ、此不
動產ニ對シマスル利害關係人ト云フコトニ
御考ヲ御及ボシニナッタカドウカ、又此點ニ
付テ考慮セラレタモノデアルト致シマスル
ナラバ此法律案ノドノ條項ニサウ云フコ
トガ現レテ居ルカト云フコトヲ、御伺致シ
タイノデアリマス
第三ニ私ハ御伺致シタイノハ、此立法ノ
基本解釋デアリマス、卽チ先程名川君カラ
モ申サレマシタル如ク、我國ノ抵當權其モ
ノハ、佛蘭西法ヨリ解釋ヲシテ來テ居ルノ
デアリマスルガ、今日此抵當權ニ付キマシ
テ、從來質權ト相對立シテ來テ居ッタノデ
アリマス、我國ニ於キマシテハ古クカラ、
大寶令時代、鎌倉、德川時代ニ至リマシテ
モ、常ニ此質權ガ根本デアリマシテ、質權
カラ次イデ抵當ノ觀念ガ來タモノデアリマ
ス、斯ノ如キ狀態ニ於テ、抵當權ガ發達シ
テ來テ居リマスル時ニ於テ、此抵當權ハ申
スマデモナク、是ハ擔保物權デアリ、他物
權デアリマス、卽チ其不動產ニ對シマスル
從タル權利デアリマス、、然ル所此法案ニ依
リマシテ、玆ニ抵當證劵ガ發行セラレマシ
タ場合ニ於テ、此抵當證劵ハ一種ノ有價證
劵トシテ取扱ハレルモノデハナイカト私ハ
考ヘマス併ナガラ此抵當證劵ハ有價證劵
デアリマシテモ、從來ニ於キマスル手形ヤ、
或ハ株劵ヤ、サウ云フヤウナモノト、非常
ニ趣ヲ異ニ致シテ居リマスコトハ、申スマデ
モナク手形ノ如キハ卽チ對人信用、其振出
人引受人、裏書人ノ信用ニ依ッテ輾轉スル
モノデアリマスケレドモ、此抵當證劵ハ寧
ロ其抵當權自體、卽チ其不動產其モノヲ主
ナル信用ト致シマシテ、サウシテ先程政府
委員カラモ御說明ガアリマシタガ、之ニ更
ニ其裏書人ノ信用ヲ加味スルモノデアルト
云フコトヲ言ッテ居ラレルノデアリマス、仍
テ私ガ此法的基本ノ解釋ト致シマシテ御伺
ヲ致シタイノハ、此抵當證劵ハ、卽チ今マデ
ノ有價證劵ト同ジ觀念ヲ以テ解釋シテ宜イ
カドウカ、サウデナクシテ、ヤハリ從來ノ
私等ガ解釋シテ居ルヤウニ、抵當債權其モ
〓、卽チ他物權其モノニ對シマスル從タル
權利ノ移轉デアルト考ヘテ差支ナイノデア
ルカドウカ、萬一是ガ其物權ヲ從トシテ解
釋サレタモノデアリマス場合ニ於テハ先
程名川君カラ御質問ガアッタヤウナ問題ガ
起ッテ來ル、卽チ抵當權ヲ設定スル場合ニ於
テ、其債權者ガ其物ガ價値ガアルカドウ
カ、其物ハ何處ニ在ッテ、ドウ云フ地位、ド
ウ云フ狀況ニ在ッテ、サウシテ之ニ對シテ金
ヲ貸スベキ價値ガアルカドウカト云フコト
ガ、最モ大切ナ問題デアリマス、然ルニ此
抵當證劵其モノガ、從來ノ所謂他物權ノ觀
念ニ依。シテ發行サレタモノデアルト致シマ
シタナラバ之ヲ輾轉致シマスコトハ洵
ニ其債權者ニ取シテ危險ヲ與ヘルノデアリ
さく、仍テ此場合ニ於テハ或ハ此抵當證
劵ヲ交換スルヤウナ、卽チ其物ノ價値ヲ定
メルヤウナ一ツノ方法、或ハ交換所ト申シ
マスカ、或ハ取引所ト申シマスカ、紹介所
ト云フカ、兎ニ角何等カノ名目ノ下ニ、
ツノ相場ヲ定メル所ノ機關ヲ必要トシナイ
カドウカト云フコトヲ、私ハ御伺致シタイ
ノデアリマス
私ハ此三ツノ點ニ付キマシテ、當局ノ最
モ明確ナル答辯ヲ求メマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01619310219&spkNum=32
-
033・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 渡邊司法大臣
〔國務大臣子爵渡邊千冬君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01619310219&spkNum=33
-
034・渡邊千冬
○國務大臣(子爵渡邉千冬君) 上田君ノ御
質問ニ御答致シマス
第一ノ御質問ハ、此抵當證劵ノ方法ハ
其第一ノ債權者ヲ保護スル爲ノ規定デアッ
テ、金ヲ借ル方ノ側カラ言ヘバ何モ利益
ヲ得ルコトハ出來ナイ、卽チ金ヲ借ル人ガ
自分ノ持ッテ居ル土地ヲ資金化スルニハ
此抵當證劵法ニ依ッテハ利益ヲ得ルコトガ
出來ナイデハナイカ、斯ウ云フヤウナ御質
問デアッタト思ヒマス、是ハ私ハサウデナ
イト思フノデアリマス、上田君ハ是ハ土
地ヲ持ッテ居ル者ハ、何モ利益シナイト言ハ
レマスケレドモ、今日ノ現狀ニ於キマシテ
ハ、不動產ノ金融ト云フモノハ、極メテ固定
シテ居ルノデアリマシテ、一度不動產ヲ抵
當トシテ金ヲ貸付ケマスト云フト、其囘收
ガムヅカシイノデアリマシテ、隨テ不動產
ヲ抵當トシテ金ヲ貸シタ人ハ再ビ他ノ土
地ニ對シテ金ヲ貸ス餘裕ガ無クナッテシマ
フノデアリヤス、是ハドウ云フ譯デアルカ
ト云フト、初ニ金ヲ貸シタ人ガ其債權ガ固
定セラレテ居ルカラデアリマス、併ナガラ
其初ニ土地ヲ抵當ニ取シテ金ヲ貸シタ共權
利ト云フモノガ證劵化セラレテ、流通致シ
マスナラバ、茲ニ新シキ資金ト云フモノガ
出來テ來ル、新シキ資本ト云フモノガ出來
テ來ルノデアリマスカラ、資本ト云フモノ
ハ又土地ニ投下セラルヽ金ニナルノデアリ
マス、斯ノ如クニシテ是ハ資金化ノ前提デ
アルカト言ハレルノデアリマスケレドモ、
私ハ先刻モ中シマシタ通リ、此抵當證劵ノ
發行ニ依テ、直チニ土地ト云フモノガ資金
化セラレルト申シテモ差支ナイト思ッテ居
ルノデアリマス
第二ニ上田君ハ利害關係者ヲ少シモ顧
慮シテ居ナイデハナイカ抵當證劵ト云フ
モノガ發行セラレテ居ル以上ハ、自分ノ借リ
テ居ル所ノ家、借リテ居ル所ノ土地ガ、何時
ノ間ニカ自分ノ知ラナイ所有者ノ手ニ移ツ
テ居レバ債務者タル者ハドウ云フ目ニ遭
ウカ分ラヌカラ危險デアルデハナイカ、サ
ウ云フ關係者ノ利害ト云フモノヲ少シモ顧
慮シテ居ナイノハ、此法ノ缺點デハナイカ
ト云フヤウナ御質問デアッタト思ヒマス
此點ハ現ニ借地借家法ト云フモノモ出來テ
居リマシテ、此抵當證劵法ニ依ッテ借地人
ト地主、借家人ト家主ト云フモノヽ法律關
係ハ明瞭ニナッテ居リマシテ、私ハ此所有
者ガ他ノ所有者ニナッタカラト云ッテ、土地
ヲ借リ家ヲ借リテ居ル者ノ權利ニハ、何等
ノ關係ハナイト云フコトヲ信ジテ居ルノデ
アリマス、是ガ第二ノ御答デアリマス、第
三ノ御質問ハ何デアリマシタカ(上田孝吉
君「第三ノ質問ハ、詰リ此抵當證劵法ノ法
的基本解釋ヲ聞イテ居ルノデアリマス、有
價證劵トシテ、何ノ有價證劵ト云フコトニ
ナルカ」ト答フ)ソレデハ
第三ハ普通ノ有價證劵、普通ノ手形ト
違フコトガアルカドウカ、サウ云フヤウナ
御質問ト思ヒマスガ、是ハ私ハ先刻名川君
ノ御質問ニ對シテ申上ゲマシタ通リ、抵當
ノ附イテ居ル所ノ債權ヲ證劵化致シタモノ
デアリマシテ、普通ノ手形ハ當リ前ノ場合
ニハ唯振出人、發行人及ビ裏書人ノ信用
ニ依ッテ流通致シテ居ルノデアリマスケ
レドモ、此抵當證劵ノ場合ニハ發行者、ソ
レガ他人ノ手ニ渡レバ裏書人ノ信用及ビ
其土地ノ價格ト云フモノガ、其手形ノ信用
ヲ增シ、又流通性ト云フモノヲ、ソコニ形
作ッテ居ルノデアリマシテ、サウ云フ相違
ハ、普通ノ手形又ハ證劵トハ違フト言ヘバ、
違フ點ガアルノデアリマス、左樣御承知ヲ
願ヒマス
〔上田孝吉君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01619310219&spkNum=34
-
035・上田孝吉
○上田孝吉君 只今提案者ノ御說明ニ對シ
マシテ尙ホ細微ニ質問ヲ致シタイ點モア
リマスガ又他日ノ機會ニ讓リマス、唯私
ノ質問致シマシタ第一點ハ詰リ抵當證劵
ノ基本解釋ヲ御尋致シタノデアリマス、詰
リ此抵當證劵ハ、從來ノ手形或ハ株劵ト同ジ
ヤウナ意義ヲ持ッテ居ル有價證劵デアルカ
ドウカ、又サウデナクシテ、ヤハリ一種ノ
抵當權其モノニ、斯ウ云フヤウナ融通性ヲ
附ケタ所謂有價證劵、詰リ物權共モノニ重
キヲ置カレタ有價證劵デアルカドウカト云
フ、共根本ノ區別ヲ御聞キシテ居ルニ拘ラ
ズ、政府當局ノ御說明ハ洵ニ曖昧デアリマ
ス、ノミナラズ私ガ最後ニ特ニ御聞キ致シ
タイト思ヒマシタコトハ、此抵當證劵共モ
ノハ少クトモ普通ノ手形ト違ヒマシテ、
不動產自體ニ重キヲ置イタ所ノ證劵デアル
コトハ論ヲ俟タナイ、然ラバ此證劵ノ價値
ト云フモノハ、軈テ其不動產ガ如何ナル價
値ヲ持→テ居ルカト云フコトニ對シテ、非常
ニ影響スルモノデアルコトハ又當然デアリ
やく、仍テ私ハ先程名川君モ一寸觸レマシ
タ通リニ、此抵當證劵ガ發行サレタ時ノ其
本ノ不動產自體ニ於テ、ドウ云フ價格ヲ持ン
テ居ルカト云フコトノ目安ヲ付ケヌト、抵
當證劵ノ流通ト云フコトハ却テ金融界ニ
非常ナ危險ヲ及ボスモノデハナイカト云フ
コトヲ申シテ居ル、仍テ其目安ヲ付ケルノ
ニドウスルカ、或ハ取引所ノヤウナモノデ
モ御設ケニナルカ、或ハ交換所ノヤウナモ
ノデモ御拵ヘニナルカ、兎ニ角其不動產ノ
各、目安ト云ヲモノヲ、ドウ云フ風ニ御立
テニナリ、其價値ヲドウ云フ風ニ定メルカ
ト云フコトニ付テ、何等カ御考ニナッタコ
トガアルカドウカ、又サウ云フ風ニ考ヘル
必要ガアルカドウカト云フコトヲ御尋シテ
居ルノデアリマス、此點ニ付テ更ニ御答ヲ
願ヒマス
〔政府委員小川〓太郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01619310219&spkNum=35
-
036・小川郷太郎
○政府委員(小川〓太郞君) 只今御質問ノ
中ニ、不動產ノ價格ヲ一定スルヤウナ、何
カノ施設ハナイカト云フヤウナ意味ノ御質
問ガアリマシタガ、之ニ對シテ不動產取引
所ト云フ御話モアリマシタガ不動產取引
所ニ付テモ、色々考究ハシテ見マシタガ、
今政府ハ之ニ對シテ一定ノ考ヲ持ッテ居リ
マセヌ、サウ云フモノヲ設ケルト云フ考ハ
持ッテ居リマセヌ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01619310219&spkNum=36
-
037・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 板谷順助君
〔板谷順助君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01619310219&spkNum=37
-
038・板谷順助
○板谷順助君 只今議題トナッテ居リマス
ル法律案ノ中ノ、主タル抵當證劵法案ニ付
キマシテハ同僚ヨリ質問サレタル事デア
リマスカラ、私ハ之ニ關聯シテ居ル日程第
八北海道拓殖銀行法中改正法律案ニ對シ
テ政府ノ所見ヲ伺ヒタイト思フノデアリ
マス、改正ノ問題ハ極メテ簡單デアル卽
チ抵當證劵法ガ實施サレタ場合ニ於テ、其
質ヲ取ッテ貸ス或ハ賣買スルト云フ程度デ
アッテ、問題ハ極メテ簡單デアリマスガ、其
提案ノ理由ト致シマシテ不動產金融ノ方
法ヲ圓滑ニシテ其機能ヲ一層發揮スル、
此問題ハ北海道ニ取ッテハ重大ナ問題デア
リマスカラ、私ハ其根本方針ニ付テ承リタ
イト思フノデアリマス
現在北海道ノ拓殖銀行ハ、御承知ノ通リ
北海道竝ニ樺太ニ於ケル所ノ唯一ノ特殊銀
行デアリマシテ、而シテ拓殖政策ノ上ニ於
テ重大ナル關係ヲ持ッテ居ルノデアリマス、
然ルニ其規模ガ極メテ狹少デアッテ、何等拓
殖ノ趣旨ニ副フテ居ラヌ、ソコデ吾々ハ從
來同志ト共ニ業務ノ發展或ハ權限ノ擴張ニ
付キマシテ、色々努力ヲシテ參リマシタケ
レドモ、今日迄其實現ヲ見ルコトガ出來ナ
カッタコトハ、非常ニ遺憾ニ存ジテ居ル次第
デアリマス、現在北海道ノ不動產ハ約五十
億圓ト推定サレテ居ルノデアリマスガ、拓
殖銀行ナルモノノ狀態ハドウデアルカ、拓
殖地ニ於ケル所ノ唯一ノ不動產金融機關デ
アル所ノ拓殖銀行ナルモノハ其資本金ガ
僅ニ千二百五十万圓デアッテ、債劵ノ發行額
ハ十倍ニ限ラレテ居ル、現在ニ於テハ殆ド
其債劵ニ對スル一億二百七十五万圓、制限
ニ達シテ居ルヤウナ次第デアリマシテ旣
ニ行詰リヲ生ジテ居ルヤウナ有樣デアル、
斯ウ云フコトデハ、將來北海道ノ發展ヲ圖
ル上ニ於テ、金融機關ニ於テ非常ニ缺陷ガ
アルカラ、政府ト致シマシテハ勸業銀行
ト同樣ニ債劵ノ發行額ヲ十五倍ニ增加ヲス
ル、之ニ付テノ考ガアルカドウカ、更ニ又
現在ノ低利資金ハ、債劵ノ發行額ノ約半分、
卽チ五千万圓程度ヲ融通サレテ居ルノデア
リマスガ、只今申上ゲマシタ通リ、債劵發
行額ヲ增加スルト同時ニ、低利資金ヲ增加
シテ、北海道ニ於ケル所ノ金融ノ圓滑ヲ圖
ル意思アリヤ否ヤ、更ニ現在ノ北海道拓殖
銀行ニ於ケル最高ノ認可步合ハ八分六厘ト
ナッテ居ル、勸業銀行カラ見ルト云フト一步
高イ、斯ウ云フ高イ金利デアリマシテハ
例ヘバ農村ニ致シマシテモ、商工業者ニ致
シマシテモ、何ノ仕事ヲシテモ引合フモノ
デハナイ、デアルカラシテ勸業銀行ト同樣
ニ此最高ノ步合ヲ制限スルノ意思アリヤ
否ヤ、併ナガラ此問題ヲ解決スル上ニ於キ
マシテハ先ツ第一ニ勸業銀行ト同樣ニ看
板ガ良クナケレバイカヌ、信用ガ伴ハナケ
レバイカヌノデアル、ソコデ現在拓殖銀行
トシテハ、債券發行ノ上ニ於キマシテ、非
常ナ不利ガアルノデアリマスカラ、最近ニ
於テ政府ガ興業銀行ニ對シテ援助シテ居ル
ト同樣ニ、特殊ノ權利ヲ與ヘテ保護改善ス
ル意思アリヤ否ヤ、先ツ第一ニ此三點ニ付
テ何ヒタイノデアリマス
更ニ北海道ノ拓殖計畫ニ對シマシテ、重
大ナル關係ガアリマスル所ノ此金融問題、
此金融問題ニ付キマシテ現在ノ拓殖計畫
ナルモノハ非常ナ行詰リヲ生ジテ居ル、北
海道ノ拓殖計畫ナルモノハ非常ナル所ノ行
詰リヲ生ジテ居ッテ、或ル論者ハ寧ロ拓殖事
業ヲ行政官吏ニヤラセルコトヲ止メテ、拓
殖銀行ノ權限ヲ擴張シテヤラセル方ガ寧ロ
效果ガアル斯ウ云フ議論モアルノデアリ
マスカラ、私ハ此拓殖計畫ニ對スル根本方
針ニ付テ、此席ニ於テ質問スルノ御許シヲ
願ヒタイト思フノデアリマス、多數ノ諸君
ハ北海道ハ植民地デアル、必ズ國家ヨリ非
常ナル恩惠ヲ受ケテ居ルコトデアラウト考
ヘテ居ルデアラウケレドモ、實際ハサウヂ
ヤナイ、明治二年開拓使ヲ置カレテ以來、
旣ニ六十餘年ニナルノデアリマスガ、成程
國費ヲ投ジタル金額ハ八億三千五百万圓デ
アルノモ事實デアリマスガ、一面ニ於テ吾々
北海道民ガ租稅ヲ納メタル金額ハ八億四千
五百万圓、差引國家ガ千万圓儲ケテ居ルト云
フ計算ニナッテ居ルノデアリマシテ、北海
道ト致シマシテハ國家ノ恩惠ヲ受ケテ居
ルコトハ極メテ薄イノデアリマス、併ナガ
ラ此拓殖計畫ナルモノハ我國ノ人口、食
糧問題ヲ解決センガ爲ニ、國策トシテ樹立
サレタモノデアル、デアルカラシテ此拓殖
計畫ノ遂行ニ付キマシテハ、政友會タリト
雖モ、民政黨ト雖モ、政黨政派ヲ超越シテ
此問題ヲ解決セネバナラヌト云フコトヲ
吾々ハ常ニ考ヘテ居ルノデアリマス(拍手)
所ガ現在北海道ニ於ケル所ノ狀態ハドウ
ナッテ居ルカ、實施以來既ニ五箇年經過シ
テ居ル、然ルニ拓殖ハ遲々トシテ更ニ
振ハズ、殊ニ民政黨內閣トナッテ、豫算
ヲ三タビ變更縮小致シマシテ、其結果現在
ノ北海道ノ拓殖計畫ナルモノハ、非常ナ一
大危機ニ直面致シテ居ルノデアリマス(拍
手)果シテ其原因ハ何處ニアルカ、山來民政
黨ノ諸君ハ年中宣傳ニ浮身ヲ宴シテ其
時々ノ便利主義ニ依ッテ、常ニ原論ト結論ト
一致シナイト云フコトヲ、私ハ非常ニ遺憾
ニ存ズルノデアリマス(拍手)論ヨリ證據、
北海道拓殖計畫ニ對スル民政黨ノ態度ナル
モノガ、如實鮮明ニ之ヲ物語ッテ居ルノデア
リマス(拍手)ソコデ私ハ安達內務大臣
ハオイデニナラヌケレドモ、同氏ノ御話ニ
ナッタコトハ、民政黨ノ代表意見デアルト考
ヘルガ故ニ、此席ニ於テ御話スルノデアル
ガ、昭和三年民政黨ノ總務トシテ安達氏ガ
北海道ニ於テ御演說ニナッタコトガアル、其
際私ハ其演說ヲ拜聽シタ一人デアルガ、演
說ノ要旨ニ、獨逸ノ「ゾルフ」大使ノ御話ヲ
引用サレタノデアリマス、「大使曰ク、安達
サン、日本ノ人口、〓糧問題ハ何モ心配ス
ル必要ハアリマセヌ、私ハ北海道ヲ視察シ
テ參ッタノデアリマスルガ、アノ廣漠タル所
ノ原野、アノ廣イ所ノ沃野ニ於テハマダ
マダ日本ノ人口、〓糧問題ヲ解決スルニハ
十分デアル、此話ニ對シテ自分モ共鳴スル
一人デアル」ト安達サンハ仰シヤッタノデア
ル、苟モ一國ノ責任アル政治家ガ、外國人
ノ話ヲ聽イテ共鳴スルナドヽ云フ、ソンナ
馬鹿氣タコトガアラウトハ思ハヌケレド
モ、兎ニモ角ニモ北海道ニ同情サレタコト
ニ付キマシテハ、吾々ハ心窃ニ喜ンデ居ッタ
ノデアリマス
〔發言スル者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01619310219&spkNum=38
-
039・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 靜肅ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01619310219&spkNum=39
-
040・板谷順助
○板谷順助君(續) 然ルニ現在ノ北海道ノ
狀態ハドウナッテ居ルカ、御承知ノ通リ此北
海道ノ拓殖計畫ナルモノハ憲政會若槻內
閣ノ當時ニ於テ立案確定サレタノデアリマ
シー、卽チ自足自給主義、北海道ニ於ケル
所ノ一般會計ノ歲出入ノ超過收入額ヲ以
テ、其財源ニ充テルト云フ建前ニナッテ居
ル、卽チ二十年ニ於テ九億六千三百万圓ト
云フ金デアルカラ、成程金額ハ大キイ、計
畫ハ多種多様ニ亙シテ居ル爲ニ、其當時ノ憲
政會ノ諸君ハ有頂天ニナッテ、北海道拓殖計
畫成ルト大法螺吹イテ、謳歌推讃至ラザル
ナク、提灯行列ナドヲヤッテ非常ナ大騷ギヲ
ヤッタ問題デアリマス(拍手)併ナガラ吾々
政友會トシテハ反對ヲシタ、何トナレバ財
源ノ捻出方法ナルモノハ極メテ不滿足デア
ル、歲入ニ大ナル所ノ缺陷ガアル、斯ル不
徹底ナル所ノ自給自足主義ナルモノ-御
承知ノ通リ北海道ハ新開地デアルカラ、元
ヲ入レナイデ仕事ヲシロト言ッタッテ、出來
ルモノヂヤナイノデアルカラシテ、吾々ハ
反對ヲ致シタ、卽チ殆ド是ハ畫ニ描イタ牡
丹餅同樣デアッテ、箸ヲ執ルコトガ出來ナ
イ、故ニ反對ヲシタニモ拘ラズ、民政黨-
其當時ノ憲政會ノ諸君ハ多數ヲ以テ之ヲ
押切ッタノデアルガ、現在ノ北海道ニ於ケル
所ノ狀態、其當時ノ諸君ノ行動ヲ顧ミテ果
シテ顏色ガアルカ(拍手)果セル哉、實施一
年ナラズシテ、早クモ破綻ヲ生ジテ、歲入
ニ大ナル所ノ缺陷ヲ生ジタノデアル、ソコ
デ田中內閣ノ當時ニ於キマシテハ一般會
計ヨリ昭和三年度ニ於テ七百六十万圓、昭
和四年度ニ於テ五百十五万圓支出補充ヲ致
シマシテ、豫算ノ成立ヲ見タノデアリマス
ガ、共後民政黨內閣ガ出現スルヤ、折角確
定シタル所ノ豫算金額ノ中カラ百三十五万
圓ヲ削リ取シタ、更ニ又昭和五年度ニ於キマ
シテ、特別議會ニ於テ、濱口內閣ガ自ラ豫算
ヲ編成提案ヲシテ、北海道ニ於ケル所ノ超
過收入二千七百三万圓ガ貴衆兩院ヲ通過シ
タニモ拘ラズ、僅カ三週間經ツカ經タザル
間ニ、實行豫算トカ何トカ言ッテ、此中カラ百
八十八万圓ト云フモノヲ削減シタ、更ニ又
昭和六年度ニ於ケル所ノ豫算ニ對シテ、如
何ナル方針ヲ執ッタカト申シマスルト云フ
ト道廳長官ガ北海道ノ超過收入二千八百
四十七万圓ト云フ、此金額ノ中カラ四百四
十三万圓ト云フモノヲ削減致シマシタト云
フガ如キ、其無責任ナル態度ハ、驚カザルヲ
得ナイ次第デアリマス濱口首相ハ曾テ北
海道拓殖計畫ノ財源ノ基礎ヲ明カニシテ、
而モ豫算ハ神聖ナル議會ヲ通過シタニモ拘
ラズ、勝手ニ削減訂正ヲシテ、北海道ニ於
テ上ッタ金額ノ中カラ百八十八万圓ヲ奪取ッ
テ、サウシテ一般會計ニ之ヲ編入ヲ致シマ
シテ··発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01619310219&spkNum=40
-
041・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 板谷君、質問ノ趣
旨ダケヲ御述べ下サイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01619310219&spkNum=41
-
042・板谷順助
○板谷順助君(續) 承知シマシタ、然ルニ
百八十八万圓ヲ奪取シテ
〔發言スル者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01619310219&spkNum=42
-
043・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 靜肅ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01619310219&spkNum=43
-
044・板谷順助
○板谷順助君(續) 多數ノ失業者ヲ製造シ
タト云フコトニ對シマシテハ、第一ニ豫算
ノ審議權ヲ無視シタルノミナラズ、苟モ自
己ノ言責行動ヲ重ンズル所ノ立憲政治家ト
シテ、アルマジキ無責任ナル態度ト申シテ
モ、決シテ私ハ過言デハナイト思フノデア
リマス(拍手)果シテ之ニ對シテ政府ハ如何
ナル考ヲ持ッテ居ルカ、更ニ濱口內閣ガ非募
債主義ヲ標榜シテ居ルニモ拘ラズ、北海道
ニ於ケル所ノ民政黨ノ支部ハ如何ナル決議
ヲシテ居ルカ(「ソンナコトガ關係ガアル
カ」ト呼フ者アリ)關係ガアル、拓殖問題ハ
金融問題ニ關係ガアルカラ言"テ居ル、北海
道ノ民政黨支部ナルモノハ「現行拓殖計畫
ガ歲入超過額ヲ以テ其ノ財源トスルハ旣往ノ
實績ニ鑑ミ經濟界ノ狀勢ニ照シ事業遂行上
遺憾少カラザルヲ認ム仍テ政府當局ハ公債
及其ノ他適當ノ方法ニ依リ財源ノ確保ヲ圖
リ以テ拓殖計畫ノ遂行上遺憾ナカラシメン
コトヲ望ム」ト云フコトヲ、昨年ノ道會ニ於
テモ、或ハ本院ニ對シテモ建議案ヲ出シテ
居ルノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01619310219&spkNum=44
-
045・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 板谷君、本問題ト
他ノ問題ヲ混同シナイヤウニシテ、成ベク
簡單ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01619310219&spkNum=45
-
046・板谷順助
○板谷順助君(續) 北海道ニ於ケル民政黨
ノ諸君ガ、斯ル行動ヲ執ラナケレバナラナ
イ原因ガ何處ニアルカ、諸君、現在ノ民政
黨ノ錯覺的政策ヲ轉換シテ一般ノ生產業
ヲ起シテ、產業ニ對スル所ノ新生面ヲ開ク
コトガ急務デアル、更ニ又北海道ノ如キハ
各府縣ノ失業問題ヲ解決スル上ニ於テ、幾
多ノ屈强ナル所ノ資源ガアル或ハ又事業
ガアル、デアルカラ現在ノ國難打開策ノ
班ハ、北海道ノ開發ニ依ッテ擔當シ得ルト
云フ吾々ノ信念ニ對シテ、北海道ノ民政黨
ガ追從シテ來タノデアル(「馬鹿ヲ言ヘ」ト
呼フ者アリ)其通リデアル諸君、然ルニ
北海道ニ於ケル所ノ民政黨ノ緊縮節約ノヤ
リ方ハ、ドンナ事ヲシテ居ルノデアル
カ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01619310219&spkNum=46
-
047・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 板谷君、質問ノ趣
旨ヲ御述べ下サイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01619310219&spkNum=47
-
048・板谷順助
○板谷順助君(續) 事務費或ハ設備費ノミ
ヲ殘シテ置イテ、肝腎ノ事業費ト云フモノ
ヲ削減シテ居ル、コンナ國家ノ上ニ於テ不
利益ナル事ガアラウカ、事業ガアルカラ事
務費、人件費ノ必要ガアル然ルニ事業費
ノ大部分ヲ削減シテ居,テ、人件費ノミ殘シ
テ、而シテ機械器具ハ遊バシテ置キ、頂ハ
又役人ノ如キハ閑散無聊ニ苦ンデ居ル、斯
ル不經濟ナ事ヲシテ居ッテ、緊縮節約ノ實ガ
何處ニアルカ、諸君、少ナクモ北海道ニ於
ケル民政黨ノ諸君ガ、現在ノ北海道ノ拓殖
計畫ナルモノハ、公債又ハ其他ノ方法ニ依
ラザレバ此遂行ガ出來ナイト云フコトヲ自
覺サレタト云フコトニ對シテハ、大ニ敬意
ヲ表スルモノデアルガ、更ニ又吾々ノ主張、
卽チ吾々ノ軍門ニ降服セラレタト云フコト
ヲ私ハ欣ブモノデアル
更ニ又第三ノ問題ト致シマシテ、北海道
ノ現在ノ拓殖財源ナルモノハ極メテ不確
實デアル、根本カラ之ヲ改正シナケレバナ
ラヌト云フコトハ、民政黨モ政友會モ一致
シタル所ノ意見デアル、此見地カラ田中內
閣ノ當時ニ於テ、北海道拓殖調査會ナルモ
ノヲ組織シタ、是ハ貴衆兩院ヲ通過シテ居
ル、然ルニ現內閣ガ出現スルヤ、之ヲ廢シ
タト云フコトハドウ云フ理由デアルカ、
根本カラ改正スル必要ガナイト云フノデ廢
シタノデアルカ、或ハ又反對黨ガ作ッタノ
デアルカラ、之ヲ破壞スルト云フ意味ニ於
テヤッタノデアルカ、實ニ言語道斷デアルト
言ハナケレバナラヌノデアル、更ニ北海道
ノ金融問題ニ關聯シテハ、井上大藏大臣ガ
預金部ノ金三百五十万圓ヲ、拓殖銀行ノ手
ヲ通ジテ鰊合同會社ニ貸付スルト云フ美名
ノ下ニ、卽チ現內閣ノ產業合理化ヲ圖ルト
云フ上カラ企テタ鰊漁業合同ナルモノガ、
全然失敗ニ歸シテ、政府竝ニ民政黨ノ宣傳
ノ爲ニ、現在北海道ニ於ケル所ノ二十万ノ
漁民ガ其方向ニ迷ヒ、破產倒產者ガ續出
シテ、現在休業シナケレバナラヌ運命ニ陷フ
テ居ルモノガ五百統、而シテ之ニ關係シテ
居ル所ノ漁業勞働者ガ一万五千人以上ニ垂、
トスルガ如キ、人道上或ハ經濟上、又社
會政策上、許スコトノ出來ナイ所ノ重大
ナル所ノ問題ガ起ッテ居ルノデアル(拍手)
大體此責任ハ拓殖銀行ニ關聯発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01619310219&spkNum=48
-
049・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 板谷君、板谷君、
只今ハ討論ノ時デハアリマセヌ、法案ニ對
スル質疑ノ場合デアリマスカラ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01619310219&spkNum=49
-
050・板谷順助
○板谷順助君(續) 大體北海道ニ於ケル鰊
漁業ハ水產物中第一位ヲ占メテ居ッテ、殆
ド年額二千万圓、生產經濟ノ上ニ於キマシ
テモ重大ナル關係ガアル、更ニ又國家ノ產
業ノ上ニ於テモ、重大ナル關係ヲ持ッテ居ル
ノデアリマス、然ルニ現內閣ガ產業合理化
ノ美名ノ下ニ、此鰊漁業ノ合同ヲ企テタノ
デアッテ、此促進ノ爲ニ民政黨員貴族院議員
金子元三郞氏、小池仁郞氏、山本厚三氏ノ
諸君ノ如キハ漁村各方面ヲ行脚ヲシテ
其加入ヲ勸メタ、又一面ニ於テ北海道長官ガ
援助スルト云フヨリハ寧ロ干涉ノ下ニ、水
產會員ノ如キ水產吏員ノ如キ官權ヲ笠ニ
著テ中ニハ殆ド脅喝的ニ加入ヲサセタ其
結果、昨年ノ暮ニハ不自然ニモ、厖大ナル
二千七百万圓ノ會社ノ成立ヲ見タノデアル
ガ、其後ニ於テ產業資金三百万圓ヲ拓殖銀
行ニ申込ンダ、所ガ個人ノ連帶保證ガナケ
レバイカヌト云ッテ撥付ケラレタ、其結果窮
餘ノ策ト致シマシテ、本年ノ一月鰊合同組
合ナルモノガ組織サレマシタケレドモ
〔發言スル者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01619310219&spkNum=50
-
051・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 靜肅ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01619310219&spkNum=51
-
052・板谷順助
○板谷順助君(續) 遂ニ拓殖銀行ガ相手ニ
シナイ爲ニ遂ニ是ガ解散シナケレバナラ
ナイト云フ運命ニ立至ッタノデアリマス、諸
君、此問題ニ對シテ會社ハ卽チ厖大ナル二
千七百万圓デアル產業資金トシテ拓殖銀
行ニ三百万圓ヲ申込ンダケレドモ撥付ケラ
レタ是ガ二百万圓トナリ、百万圓トナツ
テ、最後ニ殘ッタ所ノ殘骸、九十二箇統ニ對
シテ六万圓、六万圓ヨリ貸スコトガ出來ナ
イト云フ、斯ウ云フ拓殖銀行カラ侮辱的ノ
拒絕ヲ受ケタト云フコトニ付テハ洵ニ散
散デアルト謂ハナケレバナラナイノデアリ
マス(拍手)諸君、世ノ中ニ龍頭蛇尾ト云フ
コトガアル··
〔議長板谷順助君ニ何事カ〓ク〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01619310219&spkNum=52
-
053・板谷順助
○板谷順助君(續) 世ノ中ニ龍頭蛇尾ト云
フコトガアル、初ハ龍頭ノ如キ大法螺ヲ吹
イタガ終ヒニハ遂ニ蚯蚓ノ尻尾ニモ追付
カヌヤウナ、哀レナ討死ヲ遂ゲタノデア
ル、現內閣ノ產業合理化ナルモノハ總テ此
類デアル、是ガ最モ適例デアルノデアリマ
ス(拍手)然ルニ現在北海道ノ漁民ガ非常ニ
苦ンデ居ル、今日非常ノ窮境三つテ居ル
ニモ拘ラズ、當然責任ヲ負ハナケレバナラ
ヌ立場ニアル所ノ
(十一字)ハ平然トシテ知ラヌ顏ヲシテ居ル
ノハ何事デアルカ、尤モ(五字)
ハ責任ヲ
〔「議長々々」「中止サセロ」ト呼ヒ其他
發言スル者多シ〕
〔議長板谷順助君ニ何事カ告ク〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01619310219&spkNum=53
-
054・板谷順助
○板谷順助君(續) 何事デアル尤モ-
(五字)ハ責任ヲ感ジテ、一月北海道
ニ歸テ其跡始末ヲサレマシタケレドモ·
〔發言スル者多シ〕
〔議長板谷順助君ニ何事カ〓ク〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01619310219&spkNum=54
-
055・板谷順助
○板谷順助君(續) 宜シイ、只今私ハ人名
ヲ言ッタノハ取消シマス-所ガ小池仁郞
氏ハ出來ルダケ努力ヲサレタ、其誠意ハ認
メルガ、遂ニ不成功ニ終タノハ洵ニ御氣ノ
毒ニ堪ヘナイ次第デアル、併ナガラ其後聞
ク所ニ依レバ、此責任ヲ北海道長官ニ轉嫁
セントシテ居ル此全部ノ責任ヲ北海道長
官ニ轉嫁セントシテ、而シテ水產課長ナル
モノニ辭表ヲ提出サシテ居ル、何タル醜態
デアルカ、何タル醜態デアルカ····
〔「議長々々」「止メサセロ」ト呼ヒ其他
發言スル者多シ〕
〔議長板谷順助君ニ何事カ〓ク〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01619310219&spkNum=55
-
056・板谷順助
○板谷願助君(續) 諸君、現內閣ノ產業合
理化ナルモノハ、總テ斯ノ如キ狀態デア
ル、現在北海道ニ於テ非常ニ苦ンデ居ル所
ノ漁民、是等ニ對シテ關係シタル所ノ民政
黨議員ハ、津輕海峽ヲ渡ルノ勇氣ガアル
カ、恐クハ騙サレタ所ノ漁民ハ蓆旗ヲ立ッテ
諸君ヲ迎ヘルデアラウ、是ハ拓殖問題ニ付
テ重大ナ關係ガアルカラ、政府ノ責任ヲ詰
問スルノデアル(拍手)
〔政府委員小川〓太郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01619310219&spkNum=56
-
057・小川郷太郎
○政府委員(小川〓太郞君) 板谷君ニ御答
致シマス
第一ノ御質問ハ、北海道拓殖銀行ノ債劵
ノ發行額ヲ、拂込資本金額ノ十五倍トスル
意思ハナイカト云フ御質問デアリマシタ
ソレハ丁度此案ガサウナッテ居リマス、卽チ
北海道拓殖銀行ノ債劵ノ發行額ヲ、拂込資
本金額ノ十倍デアッタノヲ、十五倍ニ改メ
ルト云フコトニ提案サレテ居リマス
第二ハ低利資金ヲ北海道ノ方面ニ增加
スル意思ナキカト云フ質問デアリマシタ、
是ハ一寸現狀ヲ申上ゲマス、北海道ノ方ニ
廻シテ居リマス大藏省預金部ノ地方資金ハ
四千九百六十四万八千四百九圓デアリマシ
テ、郵便貯金ハ八千五百二十七万二千九百
四十六圓デアリマス、全國ニ較ベテ見マス
レバ全國ハ地方資金ガ九億三千九百二十
一万九百七十九圓デ、郵便貯金ハ二十一億
六千八百八十二万四千三百八十八圓デアリ
マく、卽チ北海道ハ全國平均以上ニ地方咨
金ガ廻ッテ居リマス、併シ今後ニ於キマシテ
モ、出來得ル限リ地方資金ヲ、北海道ノ方
ニ〓シタイト考ヘテ居リマス
第三ハ、北海道拓殖銀行ノ貸付最高利率
ヲ制限スル意思ハナイカト云フコトデアリ
マシタ、ソレハ勸業銀行ノ貸付最高利率ヨ
リハ高イカラシテ、之ヲモット制限シタラド
ウカト云フ、御意見ヲ交ヘテノ御質問デア
リマシタ、北海道拓殖銀行ハ債劵ノ利廻カ
ラ見マスト、勸業銀行ノ債劵ノヤウニ良好
デアリマセヌ、尙ホ次ニハ北海道ノ金利
ハ內地ノ金利ヨリモ高イノデアリマス
サウ云フヤウナ事情カラ、北海道拓殖銀行
ノ貸付最高利率ガ、勸業銀行貸付最高利率
ヨリ高イノハ、是ハ已ムヲ得マセヌ
第四ハ、色々北海道拓殖政策ニ關聯致シ
マシテノ御質問デアッタヤウデアリマス、御
質問ト言ハンヨリハ、實ハ御意見デアッタト
思ヒマス之ニ付キマシテ私ハ一々御答ヲ
スル必要ハナイト思ヒマスガ、唯一ツ茲ニ
申上ゲテ置キマスノハ、北海道拓殖計畫ト
云フモノハ、昭和二年ノ閣議デ決定ノ通リ
ニ行ハレテ居リマス、而シテ何カ昭和五年
ニ於キマシテ、一般會計ニ百八十万程奪取ッ
テ何トカト云フヤウナ御話ガアリマシタケ
レドモ、ソレハサウデハアリマセヌ、決算
ノ上デ餘,テ來マスレバ、ソレハ北海道拓殖
ノ方ニ使フノデアリマス、之ヲ奪取ルト云
フヤウナコトハ間違デアリマス
尙ホ實行豫算ノ節約ニ付キマシテ、審議
權ヲ無視シタトカ何トカ云フヤウナ御言葉
ガアリマシタガ、ソレハ御議論デアル斷
ジテサウデハアリマセヌ、尙ホ其他ノ御意
見ハ板谷君ノ御意見デアリマシテゝ政府ハ
斷ジテサウ考ヘテ居リマセヌ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01619310219&spkNum=57
-
058・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 鷲野米太郞君
〔鷲野米太郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01619310219&spkNum=58
-
059・鷲野米太郎
○鷲野米太郞君 抵當證券制度ガ實施セラ
レルニ付キマシテ、日本勸業銀行法、農工
銀行法、北海道拓殖銀行法ノ改正法律案ガ、
之ニ附帶シテ提出セラレルコトニナリマシ
タノデ、私ハ主トシテ金融方面ノコトニ付
キマシテ、大藏當局ニ伺ヒタイト存ジマス
抵當證劵法ノ制度ヲ設定シナケレバナラヌ
ト云フコトハ、長イ間ノ希望デアリマシテ
ソレガ實現ガ出來ルト云フコトハ、洵ニ結
構ナコトデアリマス、是ヨリ不動產ノ金融
ガ圓滑ニナリ、又不動產ノ流通ト云フモノ
ガ容易クナルト云フコトデ、非常ニ結構ナコ
トデアリマスケレドモ、之ニ付キマシテ私
三四ノ點ニ付テ御伺致シタイト存ジマス
私共ノ考フル所ニ依リマスト、此抵當證
劵制度ガ實施セラレマスト、日本銀行特融
ノ不動產擔保ニ付テ貸シテ居ル所ノ部分ノ
整理ト云フモノガ促進セラルヽノデアリマ
スケレドモ、其爲ニ非常ナ弊害ヲ醸スノデ
ハナイカト考ヘルノデアリマス現在ニ於
ケル不動產ノ價格ハ、三四年前乃至五六年
前ノ價格ト比ベマスト、殆ド半額ニモ達シ
ナイ程不動產ノ時價ト云フモノハ暴落シ
テ居ルノデアリマスルガ、特融ノ際ノ不動
產ノ見積價格ト云フモノハ、非常ナ高イモ
ノデアリマスノデ、今ノ時價ト比ベマシタ
ナラバ、大變差異ガアルノデアリマスガ
若シ此制度ヲ適用致シマシテ抵當證劵ヲ發
行致シマシテ、特融ノ整理ヲスルコトニナ
リマスルト、非常ナ弊害ガ現ハレテ來ルノ
デハナイカト考ヘルノデアリマス、就キマ
シテハ特融ノ擔保ニ供セラレテ居リマスル
所ノ、不動產ニ依リ金融セラレタ所ノ、其囘
收ノ成績ヲ玆ニ明カニシテ戴キタイノデア
リマス、又抵當證劵制度ハ信用ノ膨脹ニナ
ルノデアリマス之ヲ巧ミニ運用スルナラ
バ非常ナ結構ナコトデアリマスルケレド
モ、之ヲ惡用スル時ニハ非常ナ弊害ヲ生ジ
テ、第二ノ臺灣銀行事件ノヤウナモノヲ惹
起サレナイト云フ保證モ出來ナイノデアリ
マス、所ガ今ヤ財界ノ整理時期デアリマス、
成ベク固ク整理ヲシテ、財界ノ基礎ヲ培養
シナケレバナラヌ時デアリマスルガ、此抵
當證劵制度ノ實施ニ依リマシテ信用ノ膨脹
ヲ圖リ、之ヲ惡用シマスルト、景氣ノ煽揚
ニナリ「インフレーシヨン」ヲ起シテ、政府
ノ政策トスル低物價政策デアルトカ、或ハ
財界ノ整理デアルトカ云フコトヽ逆行スル
結果ニナリハシナイカト考ヘルノデアリマ
スガ、之ニ付テ政府ノ御意見ヲ伺ヒタイト
思フノデアリマス、就キマシテハ最後ニ問
題ニナル點ハ、此抵當證劵制度ノ實施ノ間
題デアリマス、又日本勸業銀行其他ノ銀行
ノ改正法律ノ實施ノ問題デアルノデアリマ
スルガ、政府ハ必ズ此抵當證劵制度ノ施行
期日ヲ非常ニ早ク、恐クハ六年ノ四月一日
以後、直チニ實施セラレルダラウト考ヘル
ノデアリマスガ、左樣ニ實施ノ時期ヲ非常
ニ早メルト云フコトハ、此制度ヲ逆用致シ
マシテ、現在ノ日本銀行ニ特融ノ擔保トナツ
テ居ル所ノ不動產デアルトカ、或ハ地方ノ
銀行ニ擔保トナッテ居〓テ、同收ノ困難ニナッ
テ居ル所ノ不動產ノ整理ニハ都合ガ好イノ
デアリマスケレドモ、本當ニ此抵當證劵制
度ノ恩惠利益ヲ受ケヨウトスル新タナ人々
ニ於テハ、實際ノ利用ガ私ハ十分ニ出來ナ
イノデハナイカト考ヘルノデアリマスカラ、
何時之ヲ行フカ、其施行ノ時期ニ付テ御答
ヲ願ヒタイノデアリマス
ソレカラ最後ニ、政府ニ於キマシテハ
金融制度ノ金體ニ付テ改善ヲシヨウトシ
テ、色々調査〓究ヲ遂ゲラレテ、當ニ成案
ガアル筈デアルノデアリマスガ、是ヨリ更
ニ最モ大事ナ、最モ金融制度ノ中心ニナル
中央銀行制度、卽チ日銀ノ制度ノ改善ニ付
テノ案件ヲ、果シテ本議會ニ提出スルノ意
思ガアルカドウカ、此點ヲ御答辯願ヒタイ
ノデアリマス
ソレカラ是ハ多少問題トハ離レテ居ルノ
デアリマスケレドモ、今問題ニナッテ居ル所
ノ田舎ノ小銀行ハ、昭和七年ニ於テ資本
金ヲ百万圓以上ニシナケレバ、銀行ヲ存續
スルコトガ出樣ナイ關係ニナッテ居ッテ、ソ
レ等ノ銀行ノ關係者ハ大分恐慌ヲ來シテ居
ルノデアリマス、政府ニモソレ〓〓意見ヲ
開陳シテ居ルヤウデアリマスガ、政府ハ不
景氣ナル此時代ニ鑑ミ又ハ財界ノ現狀ニ
鑑ミテ、アノ銀行法ノ規定ニ修正ヲ加ヘル
トカ、或ハ來年カラ施行シナケレバナラヌ
其制限規定ヲ、緩和スルノ御意思ガアルカ
ドウカト云フコトモ承リタイノデアリマス、
是ダケ政府ニ御伺ヲ致スコトガ出來ルナラ
バ甚ダ仕合ト存ジマス
〔政府委員小川〓太郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01619310219&spkNum=59
-
060・小川郷太郎
○政府委員(小川〓太郞君) 鷲野君ノ御質
間ニ簡單ニ御答ヲ致シマス、日銀特融ノ囘
收ノ狀況ニ付テ御質問ガアリマシタガ、是
ハ各銀行ニ關係ガアリマスカラ、此處ニ申
上ゲ兼ネマス、併シ尙ホ囘收ノ最後ノ期間
ハ長イモノデアリマスカラ、サウ今日ノ經
濟界ノ狀況カラ、急ガナケレバナラヌト云
フヤウナコトモアリマセヌ、心配スルコト
ハナイト考ヘテ居リマス、ソレカラ
第二ニ、玆ニ提案シテ居リマス所ノ法律
ハ何時カラ施行スルカト云フコトデアリ
マシタガ、今ノ所七月位カラ施行スル積リ
デ居リマス、四月以前ニ施行スルト云フヤ
ウナ考ハ毛頭アリマセヌ、ソレカラ
第三ニ、日銀條例改正ノ意思ハナイカト
云フコトデアリマスガ、是ハ豫算委員會デ
大藏大臣モ既ニ答ヘテ居リマス通リニ、今
ノ所サウ云フ考ハ持ノテ居リマセヌ
第四ニハ。無資格銀行ノ年限延長ノ意思
ナキヤト云フ御質問デアリマシタガ、是モ
今ノ所考ヘテ居リマセヌ、來年度末ト云フ
御話デアリマシタガ、是ハ七年度ノ末マデ
デアリマスカラ、今考ヘテ居リマセヌト申
上ゲテモ差支ナイノデアリマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01619310219&spkNum=60
-
061・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 質疑ハ終局致シマ
シタ、日程第十、右各案ノ審査ヲ付託スベ
キ委員ノ選擧ヲ議題ト致シマス
第十右各案ノ審査ヲ付託スヘキ委員
ノ選擧発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01619310219&spkNum=61
-
062・作田高太郎
○作田高太郞君 各案ヲ一括シテ議長指名
十八名ノ委員ニ付託セラレンコトヲ望ミマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01619310219&spkNum=62
-
063・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 作田君ノ動議ニ御
異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01619310219&spkNum=63
-
064・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 御異議ナシト認メ
マく、仍テ動議ノ如ク決シマシタ-日程
第十一貯蓄銀行法中改正法律案ノ第一讀
會ヲ開キマス--小川政務次官
第十一蓄貯銀行法中改正法律案(政
府提出)第一讀會
貯蓄銀行法中改正法律案
貯蓄銀行法中左ノ通改正ス
第五條ニ左ノ二號ヲ加フ
六國債、地方債又ハ特別ノ法令ニ依
リ設立シタル法人ノ債劵ノ割賦販賣
七國債其ノ他前號ニ揭クル有價證劵
ノ募集又ハ其ノ元利金支拂ノ取扱
第九條中「第五號」ノ下ニ「第六號」ヲ加ヘ
「前項」ヲ「第一項」ニ改メ同條第一項ノ
次ニ左ノ一項ヲ加フ
貯蓄銀行ハ主務大臣ノ定ムル所ニ依リ
大藏省預金部ヘノ預ヶ金ヲ以テ前項ノ
供託ニ代フルコトヲ得
第十條預金者、第一條第一項第四號ノ
規定ニ依ル給付金ノ債權者及第五條第
六號ノ規定ニ依ル有價證劵ノ給付ヲ受
クヘキ債權者ハ其ノ預金、給付金及有
價證劵ノ給付ヲ受クヘキ債權ニ關シテ
ハ前條ノ規定ニ依リテ供託シタル國債
及有價證劵竝ニ供託ニ代ヘタル大藏省
預金部ヘノ預ケ金ニ付他ノ債權者ニ先
チ辨濟ヲ受クルノ權利ヲ有ス
前項ノ規定ニ依リ優先辨濟ヲ受クル範
圍ハ預金額、給付金額又ハ給付ヲ受ク
ヘキ有價證劵ノ時價ヲ限度トス但シ給
付金又ハ有價證劵ノ給付ヲ受クヘキ債
權ニシテ給付金又ハ有價證劵ノ給付時
期到來セサルモノニ付テハ既ニ拂込ミ
タル金額ヲ限度トス
第十一條第一項中第六號以下ヲ左ノ如ク
改ム
六第五條第六號ノ規定ニ依ル有價證
劵ノ給付ヲ受クヘキ債權者ニ對シ旣
ニ拂込ミタル賦拂金ヲ限度トスル貸
付
七道府縣市町村ニ對スル一年內ノ貸
付
八割賦償還ノ方法ニ依ル一一年內ノ貸
付
九銀行若ハ大藏省預金部へノ預ケ金
又ハ郵便貯金
十主務大臣ノ定ムル所ニ依リ信託會
社ヘ爲ス金錢又ハ有價證劵ノ信託
+一銀行又ハ信託會社ノ引受アル手
形ノ買入
第十三條第二項ヲ左ノ如ク改ム
第十一條第一項第三號又ハ第七號ノ規
定ニ依ル貸付金ノ總額ハ各拂込資本金
及準備金ノ總額ヲ、第十一條第一項第
八號ノ規定ニ依ル貸付金ノ總額ハ拂込
資本金及準備金ノ五分ノ一ヲ超ユルコ
トヲ得ス
同條ニ左ノ一項ヲ加フ
第十一條第一項第八號ノ規定ニ依ル貸
付金ハ一人ニ付千圓以下トシ且確實ナ
ル二人以上ノ保證アルコトヲ要ス
第十四條中「第五號」ノ下ニ「第六號」ヲ加
へ「第九號第二項」ヲ「第九號第三項」ニ改
メ同條ニ左ノ一項ヲ加フ
前二項ノ規定ハ一信託會社ニ對スル信
託財產及其ノ信託會社ノ引受ケタル手
形ノ買入高ノ總額ニ付之ヲ準用ス
第十五條第一項中「第五號」ノ下ニ「第六
號」ヲ加フ
第十七條有價證劵割賦販賣業法ハ第一
條及第八條乃至第十一條ノ規定ニ限リ
貯蓄銀行ニシテ第五條第六號ノ業務ヲ
營ム者ニ付之ヲ適用ス
第十九條ニ左ノ一號ヲ加フ
三有價證劵割賦販賣業法第十條ノ規
定ニ違反シタルトキ
第二十一條第二項中「給付金」ノ下ニ「及
第五條第六號ノ規定ニ依リ給付ヲ爲スヘ
キ有價證劵」ヲ加フ
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
〔政府委員小川〓太郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01619310219&spkNum=64
-
065・小川郷太郎
○政府委員(小川郷太郞君) 貯蓄銀行法中
改正法律案ノ提案ノ趣旨ヲ說明致シマス
現行貯蓄銀行法ハ大正十年制定セラレ、
同十一年ヨリ實施ヲ見タモノデアリマシ
テ、其制度ハ略、整備シテ居リマスガ、更ニ
實施後ノ實情ニ鑑ミマシテ、貯蓄銀行ノ業
務トシテ營マシムルモ差支ナシト認メル種
目ヲ追加シ、又資本運用ノ範圍ヲ擴張シ、
就中貯蓄銀行ガ庶民階級ニ對シ、對人信用
ニ依リ或ル程度ノ資金供給ヲ爲シ得ル途ヲ
開キ、以テ刻下ノ問題タル庶民金融緩和ノ
一助タラシムル等、適當ノ改正ヲ加ヘント
スルモノデアリマス愼重審議ノ上御協贊
アランコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01619310219&spkNum=65
-
066・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 日程第十二、右議
案ノ審査ヲ付託スベキ委員ノ選擧ヲ議題ト
致シマス
第十二右議案ノ審査ヲ付託スヘキ委
員ノ選擧発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01619310219&spkNum=66
-
067・作田高太郎
○作田高太郞君 本案ハ政府提出抵當證劵
法案外八件ノ委員ニ併セ付託セラレンコト
ヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01619310219&spkNum=67
-
068・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 作田君ノ動議ニ御
異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01619310219&spkNum=68
-
069・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 御異議ナシト認メ
マス仍テ動議ノ如ク決シマシタ-日程
第十三、取引所稅法中改正法律案ノ第一讀
會ヲ開キマス-小川政務次官
〓〓〓
第十三取引所稅法中改正法律案政
府提出)第一讀會
取引所稅法中改正法律案
取引所稅法中左ノ通改正ス
第五條第一項中「第三種商品ノ賣買取
引萬分ノ二·五」ヲ
「第三種商品ノ賣買取引
甲銘柄又ハ等級別ニ相對賣買ノ方法
ニ依リテ行ヒ履行期ニ於テノミ差金
ノ授受ニ依リテ決濟ヲ爲シ得ル取引
ニ屬スルモノ萬分ノ一·二五
乙其ノ他ノモノ萬分ノ二·五
ニューハ
第二十二條中「北海道府縣、市町村及北海
道沖繩縣縣ノヲ」「海海道府縣及市町村ニ
改ム
附則
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
〔政府委員小川〓太郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01619310219&spkNum=69
-
070・小川郷太郎
○政府委員(小川〓太郞君) 玆ニ議題トナ
リマシタ取引所稅法中改正法律案ニ付テ、
大體ノ說明ヲ致シマス
今囘取引所ニ於ケル商品ノ現物取引ヲ圓
滑ニシ、現物取引業者ノ取引ヲ便宜ナラシ
ムル爲メ、其商品取引中ニ新タニ銘柄又ハ
等級別ニ相對賣買ノ方法ニ依ッテ行ヒ、履行
期ニ於テノミ差金ノ授受ニ依ッテ決濟ヲ爲
シ得ル取引ガ加ヘラレルコトニナルノデア
リマスガ、此取引ハ普通ノ〓算取引ト異リ
マシテ、賣買及其決濟上種々ノ制限ヲ附セ
ラレ、比較的投機性ニ乏シイモノデアリマ
スカラ、現行ノ商品取引ノ稅率ヨリ低イ所
ノ新稅率ヲ設クル必要ヲ認メマシタノデ、
本案ヲ提出シタ次第デアリマス、何卒御審
議ノ上速ニ御協贊ヲ與ヘラレンコトヲ希望
致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01619310219&spkNum=70
-
071・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 質疑ハアリマセ
ヌ-日程第十四、右議案ノ審査ヲ付託ス
ベキ委員ノ選擧ヲ議題ト致シマス
第十四右議案ノ審査ヲ付託スヘキ委
員ノ選擧発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01619310219&spkNum=71
-
072・作田高太郎
○作田高太郞君 本案ハ議長指名九名ノ委
員ニ付託セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01619310219&spkNum=72
-
073・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 作田君ノ動議ニ御
異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01619310219&spkNum=73
-
074・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 御異議ナシト認メ
やく、仍テ其通リニ決シマシタ-日程第
十五及第十六ハ同一委員ニ付託シタル議
案ナルニ依リ、一括議題トナスニ御異議ア
リマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01619310219&spkNum=74
-
075・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 御異議ナシト認メ
マス-日程第十五、郵便法中改正法律案、
竝第十六、鐵道船舶郵便法中改正法律案ヲ
一括シテ第一讀會ノ續ヲ開キマス、委員長
ノ報〓ヲ求メマス-委員長井上剛一君
第十五郵便法中改正法律案(政府提
田、貴族院送付)
第一讀會ノ續(委員長報〓)
報〓書
一郵便法中改正法律案(政府提出、貴族院
送付)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和六年二月十六日
委員長井上剛
衆議院議長藤澤幾之輔殿
第十六鐵道船舶郵便法中改正法律案
(政府提出、貴族院送付)
第一讀會ノ續(委員長報〓)
報告書
一鐵道船舶郵便法中改正法律案(政府提
円貴族院送付)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和六年二月十六日
委員長井上剛
衆議院議長藤澤幾之輔殿
〔井上剛一君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01619310219&spkNum=75
-
076・井上剛一
○井上剛一君 只今議題ニ供セラレマシタ
郵便法中改正法律案竝ニ鐵道船船郵便法中
改正法律案ハ、極メテ簡單ナモノデアリマシ
テ此二案トモ貴族院ヨリ囘付セラレマシ
タ政府提出法律案デアリマス、諸君ノ御委
託ニ依リマシテ、吾々委員ガ其審査致シマ
シタ經過竝ニ結果ヲ簡單ニ御報告中上ゲタ
イト存ジマス、此兩案ヲ提出サレマシタ要
點ハ、從來、尺貫法ニ依ッテ居リマシタモ
ノヲ、「メートル」法度量衡ニ依ルコトニ相
成リマシタ結果トシテ、是非是ガ改正ヲ要
スルトノ趣旨ニ外ナラヌノデアリマス、尤
モ此實施期ハ今日ハ尙ホ猶豫期間中ニ屬
シテ居リマスガ、諸般ノ準備ハ旣ニ整ヒ、
毫モ支障之ナキヲ認ムルト同時ニ、此「メー
トル」法ヲシテ國民ニ周知セシムル上ニ於
テモ、利益ガ大ナルモノデアルト云フコト
ニ依ッテ提出セラレタコトガ要點デアリマ
ス、ソコデ簡單ニ其內容ヲ申上ゲマスト云
フト郵便法中改正法律案ノ第十八條ノ各
種郵便物ノ、從來ハ幾匁トアリマシタノヲ、
幾「グラム」ト改正スルニ過ギヌノデアリマ
ス、鐵道船舶郵便法中改正法律案ノ內容ノ
一端ヲ申上ゲレバ、第十條第一項、從來郵
便車ノ使用料金ヲ定ムルニ於キマシテ、其
容積ガ八立方呎マデ一哩ニ付キ十割以內ト
アリマシタノヲ、八立方「メートル」一「キ
ロメートル」每ニト云フヤウニ、要スルニ哩
ヲ「キロメートル」、立方呎ヲ「メートル」ト
改正致シタダゲノコトデアリマシテ、以下
之ニ準ジマスカラ、之ヲ省略致シマス詳細
ニ付キマシテハ、本會ニ於ケル小泉遞信大
臣ノ趣旨辯明、及ビ委員會ニ於ケル速記錄
等ニ依ッテ御參照ヲ乞ヒマス、ソコデ委員會
ニ於キマシテハ政友會所屬ノ大石倫治君
ト政府委員トノ間ニ於キマジテ、質問應答
ヲ交換セラレマシタ結果、愼重審議ヲ經マ
シテ、兩案トモ滿場一致ニ依リマシテ原案
ヲ認メルコトニ致シマシテ、可決サレマシ
ク、就キマシテハ本議場ニ於キマシテモ
何卒滿場一致可決セラレンコトヲ望ミマス、
玆ニ此段御報告申上ゲマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01619310219&spkNum=76
-
077・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 質疑ハアリマセ
ヌ兩案ノ第二讀會ヲ開クニ御異議アリ
マセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01619310219&spkNum=77
-
078・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 御異議ナシト認メ
マス第二讀會ヲ開クニ決シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01619310219&spkNum=78
-
079・作田高太郎
○作田高太郞君 直チニ兩案ノ第二讀會ヲ
開キ、第三讀會ヲ省略シテ、委員長報告ノ
通リ可決セラレンコトヲ望ミマス
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01619310219&spkNum=79
-
080・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 御異議ナシト認メ
マン、直チニ兩案ノ第二讀會ヲ開キマス
郵便法中改正法律案第二讀會(確定議)
鐵道船舶郵便法中改正法律案
第二讀會(確定議)
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01619310219&spkNum=80
-
081・藤澤幾之輔
○議長(蔵澤幾之輔君) 御發議ガアリマセ
ヌカラ、兩案トモ委員長報告通リ可決確定
致シマシタ(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01619310219&spkNum=81
-
082・作田高太郎
○作田高太郞君 議事日程變更ノ動議ヲ提
出致シマス、卽チ此際特別會計ニ於ケル營
繕費ニ關スル法律案、特別會計ノ恩給負擔
金ヲ一般會計ニ繰入ルルコトニ關スル法律
案、賠償金特別會計法廢止法律案、昭和四
年法律第二十六號中改正法律案、京都高
等工藝學校移轉改築費ニ充用シタル金額ノ
補塡ニ關スル法律案、製鐵所特別會計法中
改正法律案、簡易生命保險特別會計法中改
正法律案ノ七案ヲ一括シテ議題トナシ委
員長ノ報告ヲ求メ、其審議ヲ進メラレンコ
トヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01619310219&spkNum=82
-
083・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 作田君ノ動議ニ御
異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01619310219&spkNum=83
-
084・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 御異議ナシト認メ
やっ、仍テ、日程ハ變更セラレマシター
特別會計ニ於ケル營繕費ニ關スル法律案、
特別會計ノ恩給負擔金ヲ一般會計ニ繰入ル
ルコトニ關スル法律案、賠償金特別會計法
廢止法律案、昭和四年法律第二十六號中改
正法律案、京都高等工藝學校移轉改築費ニ
充用シタル金額ノ補塡ニ關スル法律案、製
鐵所特別會計法中改正法律案、簡易生命保
險特別會計法中改正法律案ヲ一括シテ第一
讀會ノ續ヲ開キマス、委員長ノ報告ヲ求メ
マス-委員長鈴木寅彥君
特別會計ニ於ケル營繕費ニ關スル法律
案(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報牛ロ)
報告書
一特別會計ニ於ケル營繕費ニ關スル法律
案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和六年二月十九日
委員長鈴木寅彥
衆議院議長藤澤幾之輔殿
特別會計ノ恩給負擔金ヲ一般會計ニ繰入
ルルコトニ關スル法律案(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報〓)
報告書
一特別會計ノ恩給負擔金ヲ一般會計ニ繰
入ルルコトニ關スル法律案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和六年二月十九日
委員長鈴木寅彥
衆議院議長藤澤幾之輔殿
賠償金特別會計法廢止法律案(政府提
〓第一讀會ノ續(委員長報告)
報告書
一賠償金特別會計法廢止法律案(政府提
出
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和六年二月十九日
委員長鈴木寅彥
衆議院議長藤澤幾之輔殿
昭和四年法律第二十六號中改正法律案
(神戶商業大學移轉改築費ニ關スル件)
(政府提出)第一讀會ノ續(委員長報〓)
報告書
一昭和四年法律第二十六號中改正法律案
神戶商業大學移轉(政府提出)
改築費ニ關スル件
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和六年二月十九日
委員長鈴木寅彥
衆議院議長藤澤幾之輔殿
京都高等工藝學校移轉改築費ニ充用シ
タル金額ノ補塡ニ關スル法律案(政府
提出)第一讀會ノ續(委員長報〓)
報告書
一京都高等工藝學校移轉改築費ニ充用シ
タル金額ノ補塡ニ關スル法律案(政府
提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和六年二月十九日
委員長鈴木寅彥
衆議院議長藤澤幾之輔殿
製鐵所特別會計法中改正法律案(政府
提出)第一讀會ノ續(委員長報生ロ)
報告書
一製鐵所特別會計法中改正法律案(政府
提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和六年二月十九日
委員長鈴木寅彥
衆議院議長藤澤幾之輔殿
簡易生命保險特別會計法中改正法律案
(政府提出)第一讀會ノ續(委員長報告)
報告書
一簡易生命保險特別會計法中改正法律案
(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和六年二月十九日
委員長鈴木寅彥
衆議院議長藤澤幾之輔殿
〔鈴本寅彥君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01619310219&spkNum=84
-
085・鈴木寅彦
○鈴木實彥君〓只今議題ニ供セラレテ居リ マス、特別會計ニ於ケル營繕費ニ關スル法律
案外六件ノ委員會ノ經過及ビ結果ヲ御報〓
致シマス、會議ヲ開クコト六囘ニ及ビマシ
タガ、其質疑應答ハ速記錄ニ依ッテ御承知ヲ
願ヒタイト思ヒマス、討議ニ入リマシテ、
特別會計ニ於ケル營繕費ニ關スル法律案ニ
關シマシテ、反對ヲ唱ヘラレマシタ論旨ハ、
營繕ノ統一ハ贊成デアルガ、營繕統一ヲス
ルヨリモ先ニ、用度品統一ノ如キコトヲ先
行スベキデアラウト思フノミナラズ特別
會計ヨリ一般會計ニ此費目ヲ移ス所以ノモ
ノハ一般會計ニ於ケル歲入ノ不足ヲ塡補
セントスルモノデアルカノ如キ疑ヲ懷クノ
デアル斯樣ナ意見デアリマシタ
第二ニ特別會計ノ恩給負擔金ヲ一般會計
ニ繰入ルヽコトニ關スル法律案、是ハ第一
ト同樣ナル意味ニ於テ反對デアルト云フコ
トデアリマス
第三ハ賠償金特別會計法廢止法律案、之
ヲ一般會計ニ移スコトニ反對ナル理由ハ
先ト同一デアルガ、更ニ之ニ加フルニ、現
內閣ガ唱道シテ居ル所ノ公債政策破壞ト認
ムル點モアルカラ、是ニモ反對デアルト云
フコトデアリマス
第四ノ昭和四年法律第二十六號中改正法
律案、第五ノ京都高等工藝學校移轉改築費
ニ充用シタル金額ノ補塡ニ關スル法律案、
此二案トモ第一ト同一ノ理由ニ依ッテ反對
サレタノデアリマス
製鐵所特別會計法中改正法律案ハ、運轉
資金六千万圓ヲ一千万圓增シテ七千万圓
ニシタイト云フ法律案デアリマス、此事ノ
起リシコトハ現内閣ノ爲サレタ所ガ惡イ
結果デアル、デアルカラ之ニ同意ヲ表スル
コトガ出來ナイト云フ論旨デアリマス
最後ノ簡易生命保險特別會計法中改正法
律案ハ新ニ營繕費ヲ設ケルト云フコトデ
アッテ、先ノ法律案ト矛盾スル嫌ガアルガ故
二、贊成スルコトガ出來ナイト云フ御意見
デアリマシタ
原案ニ贊成ノ議論ハ、今ヤ我國ノ經濟建
直シノ道程ニ於テ、此法律案各案トモ適當
デアルカラ、之ニ贊成ヲスルト云フ御意見
デアッタノデアリマス、採決ノ結果ハ、只今
申上ゲマシタ七法律案ヲ一括シマシテ、多
數ヲ以テ原案贊成ニ決定ヲ致シタ譯デアリ
きくち此段御報告ヲ致シマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01619310219&spkNum=85
-
086・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 是ヨリ討論ニ入リ
マ人宮澤裕君
〔宮澤裕君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01619310219&spkNum=86
-
087・宮澤裕
○宮澤裕君 本案ガ先月二十九日ニ上程サ
レテ主管大臣ノ提案ノ趣旨辯明ヲ承タ
ノデアリマス、此七案共一見單純ナル法律
ノ改正案デアルガ如ク見エルノデアリマス
ルガ、之ヲ能ク檢討致シマスル時ニ、是
悉ク財政法規デアルノデアリマス、而シテ
提案ノ說明ニ依リマスト、其趣旨ハ極メテ
立派デアリマスルガ、一見誰シモ其裏面ニ
思ヲ及ボス時ニ、是ハ容易ナラザル法律ノ
改正案デアルト云フコトガ看取出來ルノデ
アリマス、數囘ノ質疑應答ニ依リマシテ、
委員會ハ今日ノ午後二時ニ終了致シマシ
タ而モ一二時間ノ間隔ヲ置イテ、倉皇ト
シテ本案ガ本會議ニ緊急上程ヲ見タト云フ
事實ヲ以テシテモ、此案ガ如何ニ一般豫算
ト深キ關係ガアルカト云フコトハ、想像ガ
出來ルデアラウト思フノデアリマス(拍手)
特別會計ニ於ケル營繕費ニ關スル法律案
外六件ノ中ノ、特別會計ノ恩給負擔金ヲ一
般會計ニ繰入ルヽコトニ關スル法律案中
ノ、各特別會計ニ於テ負擔致シマスル負擔
金ヲ、手續上一般會計ニ繰戾シテ、一般會
計カラ支拂フト云フコトハ、財政ノ原則及
ビ經理ノ建前カラ申シマシテ其會計自體
ニ於テソレ〓〓分擔致シマスト云フコト
ハ當然ノコトデゴザイマス、卽チ之ニ伴
フ法案ノ改正デゴザイマスルガ故ニ是ハ
大體ニ於テ趣旨ニ於テハ反對ハナイノデゴ
ザイマスソレカラ其次ニ神戶ノ商業大學ノ
移轉改築ニ關スル法律案モ、大體ニ於テ異
議ハナイガ、强テ私等ガ想豫致シマスル時
ニ、用地ノ賣却ニ依ッテ移轉改築ヲヤラウ
ト云フノガヽ民政黨卽チ現內閣ノ失政ノ爲
ニ經濟界ノ不況ニ遭遇シ、土地ガ賣却シ得
ズシテ今日マデ遷延シテ居ルト云フ事實
デアル、故ニ之ニ對シテモ、サシテ反對ス
ベキ多クノ理由ハナイト言ッテ宜イ、尙ホ京
都ノ高等工藝學校移轉改築ニ充用シタル金
額ノ補塡ニ關スル法律案モ、多少ノ異議ハ
アリマスケレドモ、大體ニ於テ問題ノナイ
問題デアル
最後ニ簡易生命保險特別會計法中改正法
律案ハ、確カ大正十一年カニ簡易生命保險
ノ特別會計法ガ制定サレマシテ、其廳舎ハ
自ラ造リ、土地ヲ買收スルコトガ出來ルト
云フ法律ガアリマスガ、支局ノ廳舍ノ敷地
買收新築費ニマデ、此法律ノ解釋ヲ適用シ
テ宜イカドウカト云フコトニ依ッテ、多少ノ
疑義ガアルカラト云フノデ、立法府ヲ重ン
ジテノ御提案ト思ヒマスカラ、是モ大シテ
反對ノアルベキ筈ノモノデナイ、殘ル問題
ハ先キニ申シタ特別會計ニ於ケル營業費
ニ關スル法律案、ソレカラ獨逸賠償金ノ特
別會計法廢止法律案、八幡製鐵所特別會計
法中改正法律案、此三案ニ關シマシテハ
吾々ノ疑惑ガ質疑應答ヲ重ネルニ從ッテ愈、
櫟ミヲ加ヘタノデアリマス(拍手)簡單ニ御
清聽ヲ煩シマスガ、御案內ノ通リ各省ニ於
ケル營繕修繕ヲ、大藏省ニ於キマスル營繕
管財局ニ之ヲ移轉スルコトニ依ッテ、所管ヲ
移スコトニ依ッテ事務ノ整理統一ヲ圖リ經
費ノ節約ヲ圖リ技術ノ進步改良ヲ圖ルト
云フ御趣旨デアル、趣旨ハ全ク御結構デ、
無論此趣旨ニハ固ヨリ贊成申上ゲル不贊
成ノ人ハ一人モナカラウト思ヒマスガ、然
ラバ如何ニシテ之ヲ實行ナサルノデアルカ、
其組織方法ハドウ云フ風ニ手配ガ出來テ居
ルカ其經費ハ幾ラノ節約ガ出來ルノデア
ルカ、如何ニ改良進步ガ行ハレル御見込デ
アルカト云フコトニ付テ、質問ヲ致シマス
ルト云フト、何等組織方法手段、改良ノ持
合セガナイ、然カ致シマシテ整理統一ノ
コトニ付テ、人員ノ問題等ニ付テ之ヲ照會
シマスルト云フト、全ク方法手段ハ考ヘラ
レテ居ナイ、諸君モ御案內ノ通リ、文部省
ニ大キナ建築課ガゴザイマス、勅任級ノ技
師ヲ以テ其課長ト致シ、數十人ノ人員ヲ使ツ
テ居ルノデゴザイマス、其建築課ノ如キハ、
例ヘバ如何ニ之ヲ改廢スルノデアルカ、如
何ニ移管スルノデアルカト云フ質問ヲ致シ
マスルト云フト、果シテ其課ヲ存置スベキ
ヤ否ヤ、或ハ其人員ノ幾ラヲ大藏省ニ移管
スベキヤ否ヤ、全ク此案ガ無イ、此原案ニ
贊成ヲ願フコトヽナラバ徐ロニ考ヘルノ
デアルト云フ外、何ノ案モナイ無策ノ提
案デアルト云フコトヲ吾々ハ看取致シタノ
デアリマス、然カ致シマスル時ニ、事務ノ
簡捷ヲ御話ニナリマスガ、所管爭ヒ其他ニ
付テ、却テ事務ガ煩雜ニナリ及ビ經費ガ
益〓倍加スルコトニ依ッテ、嵩ム結果ヲ招來
シハシナイカト云フコトニ付テハ殆ド
答フル所ヲ知ラヌノデアリマス、然ラバ凡
ソ經費ノ節約ハ幾ラ位ノ見込デアルカト云
フコトニ付テ、是亦經費節約ニ付テハマダ
見込ガ立ッテ居ラヌト云フ、其他技術ノ改良
ト云フコトモ、單ニ抽象論デゴザイマシテ、
是ダケ斯ウスルナラバ斯ウデアルト云フ腹
案ダニ持合セガナイト云フ此案ニ、贊成ノ
仕樣ガゴザイマセヌ、而シデ移管ニ依ッテ一
般會計ニ振向ゲラレル凡ノ金額ハ一百万圓
デアリマスガ、其金額ヲ果シテ營繕事務ニ
使フヤ否ヤ、民政黨諸公ノ從來ノ遣リロカ
ラ見マスト云フト、所謂事業ノ打切、延期
繰延ガ常套手段デアリマス然ラバ此營繕
費ヲ一會計ニ引込ムコトニ依ッテ此費用、所
謂營繕ノ方ハ中止打切、繰延延期ノ常套手
段ヲ以テ之ヲ他ニ利用スルト云フ結果ヲ招
來スルノデアル吾々ハ斯ノ如キ所謂財政
政策ノ破綻、其缺陷ノ埋合ニ立案サレタル
法律案ニハ贊成スル譯ニハ參リマセヌ、況
ヤ所謂用度品ノ購買統一ト云フコトモ現下
ノ問題デゴザイマスカラ、是モ吾人皆贊成
シテ居ル問題デゴザイマスガ、是ト一〓ニ、
モウ少シ愼重ニ〓究致シ、所謂組織機構ヲ
改メテ、此提案ヲ出直シテハドウデアリマ
スルカト云フ質問應答ヲ重ネタノデアリマ
ス、正ニ此意味ヲ以テ此案ニ反對セザルヲ
得ナイノデゴザイマス
次ニハ八幡製鐵所特別會計法ノ改正法律
案デアリマス、是ハ去ル二十九日ニ於テ商
工大臣ノ御說明ガアリマシタ通リニ、今囘
一千万圓運轉資金ヲ增加スルノ要求デアル
ノデアリマス、此特別會計法ハ御案内デゴ
ザイマセウガ、大正十五年ノ三月ノ中頃ニ、
確カ五十一議會ト思ヒマスルガ、會期正ニ
迫ッテ、倉皇トシテ時ノ若槻内閣ノ商工大臣
片岡氏ガ此議會ニ提案ナサッテ、御說明ノ
任ニ當ラレタモノデ之ニ六千万圓バカリ
運轉資金ガアルナラバ、更ニ此事業ノ改良
擴張モ圖ッテ、我國ニ於ケル製鐵上ノ完成ヲ
期スルト云フ御說明デアッタ、我黨ヨリハ只
今ノ幹事長デアリマス森氏ガ質問ノ任ニ
當ッテ、討論ヲ盡シタノデアリマスルガ、其
後此六千万圓ノ運轉資金ヲ使フコトニ依ツ
テ、最近マデ順調ナル成績ヲ收メテ居ル
今日ニ至ッテ突如トシテ此六千万圓ノ運轉
資金ヲ以テハ事業經營困難デアルカラ、更
ニ一千万圓ノ增額ヲ要求スルト云フコトニ
ナッテ居ル、私共其內容ニ立入ッテ能ク之ヲ調
ベ製鐵所長官ト質問應答ヲ重ネマスルト、
是亦民政黨內閣ノ失政ノ結果ガ、此增額ヲ
要求シテ居リマス案デアルガ、近頃鋼材ヲ
造リマシテモ
〔議長退席、副議長著席〕
此事業界ノ不振ノ爲ニ、所謂一般ノ工業界
ノ沈衰ノ爲ニ、官界民間共ニ鋼材ノ需要ガ
激減致シテ居ル、幾ラ造ッテモ賣レナイ、
所謂製品ヲ資金化スル譯ニ參ラヌノデゴザ
イマス、昨年ノ春頃ニ於キマシテハ在庫
品ガ僅ニ四万噸見當デアッタ、ソレガ今日デ
ハ七倍以上ノ三十万噸近ク在庫品トナッテ、
是ガ庫ニ押込マレテ居ルト云フ實情ニア
ル而シテ其趨勢ハ日一日ト强クナッテ來
テ居ルノデゴザイマスルガ故ニ、幾ラ資金
ヲ增大致シマシテモ、「ストック」ヲ增シマシ
タ所ガ、此事業ハ不振ナラザルヲ得ナイノ
デアリマス、而モ御案內ノ通リ、誤レル金
解禁策ノ爲ニ、外國ノ安イ鋼材ハドンノ
關稅ヲ突破致シマシテ內地ニ流入致シテ居
リマス、サナキダニ需要ノ激減致シマシタ
鋼材界ニ、斯ノ如キ外國ノ廉價ナ優良品ガ
ドン〓〓輸入サレルノデアリマスカラシテ、
幾ラ之ヲ增資致シマシテモ、結局是ハ在庫
品タラザルヲ得ナイ、在庫ノ山ヲナスニ過
ギナイト云フ結果ニ陷ルノデアリマス、斯
ノ如キモノニ幾ラ資本ヲ注込ンダ所デ此事
業ガ保護出來ルカ、御案內ノ通リ製鐵業ハ
我國ノ國策上重大ナルモノデアルガ故ニ、
所謂銑鐵カラ鋼材ニ行キマスル一貫作業ニ
對シテハ或物ニハ一噸ニ付六圓、或物ニ
ハ五圓、三圓ト云フ重大ナル補助ヲ與ヘテ、
而シテ八幡製鐵所ノ如キハ所謂會計法ノ二
條ニ、每年六千万圓ノ運轉資金ヲ得ルガ爲
ニ、所謂公債ヲ發行シ又ハ借入金ヲ爲スコ
トガ出來ルト云フコトヲ許サレテ居ル、非
常ニ特權ヲ與ヘラレテ居ル、ノミナラズ更
ニ其十三條ヲ見マスルト云フト、年度內ニ
於テ現金ノ支拂ガ必要ガアル場合ハ、千
万圓借入ヲ認ムルト云フ規則サヘ許サレテ
居ル「本會計ニ於テ支拂上現金ニ不足アル
トキハ本會計ノ負擔ニ於テ最高千万圓ヲ限
度トシ一時借入ヲ爲シ又ハ融通證劵ヲ發行
スルコトヲ得」勿論是ハ年度內ニ償還スル
ノ義務ハアリマスケレドモ、斯ノ如ク有ユ
ル特典ヲ與ヘテ此事業ヲ助長奬勵致シテ居
ルノデゴザイマスルガ、資金難ヲ來シ、所
謂製品ノ山ヲナスト云フノハ正ニ民政黨
內閣失政ノ現レデアルノデアリマス(拍手)
斯ウ云フモノニ幾ラ資金ヲ供給致シマシテ
モ、遂ニ之ハ在庫品ヲ蓄積セシムルニ止マ
ルト云フ意味ヲ以テ反對致シタノデアリマ
ス、況ヤ殊ニ目下製鐵合同ノ問題ガゴザイ
マく、委員會ニ於キマシテ、先程我黨ノ委
員ヨリ之ヲ當局者ニ質問致シマシタ時ニ、
何時是ハ實現ナサルノデアルカ、果シテ決
行ナサル御意思アリヤ否ヤ御答辯ヲ願ヒタ
イト言シタノデアリマスルガ、之ニ對シテ、目
下審議中デアル、審議會ニ於テ審議中デア
ルカラ今答辯ノ限リデナイ、答辯ハ致シ兼
ネルト云フノデアリマスルガ、或ハ風聞ニ
依リマスルト此合同案ハ本議會中ニ成
立シテ、或ハ法律案ノ御提出ガアルカトモ
思ハルヽノデアリマスルカラ、彼此レ思ヒ
較ベマシテ、此際一千万圓ノ運轉資金ヲ增
額致シマスルコトハ、斷ジテ反對致シマス
ル者デアリマス
最後ニ此獨逸ノ賠償金特別會計法ノ廢止
ノ法律案デアリマス是ハ私其當時ニ於テ
質シマシタ通リニ、全ク民政黨諸公ガ多年
唱ヘテ居ラレマシタル國債ノ整理償還、是
ハ民政黨十大政策ノ中デ最モ光彩ヲ放チ
國民ノ共鳴ヲ得タル、最モ重要ナル政策デ
ゴザイマス、此政策ニ基イテ、昨年ノ五月
井上大藏大臣ガ此獨逸ノ賠償金ヲ國債整理
基金ノ中ニ繰入レマスルコトハ極メテ妥
當ト信ズル、又當然ノ措置デアル、況ヤ其
金額ノ性質ハ賠償金デアリマスルガ故ニ、
斯ノ如キ金ハ所謂國債ノ償還ニ之ヲ充當致
シマスルコトハ當然デゴザイマスルト云
フコトヲ以テ一貫シタ政策ヲ實現スルモ
ノナリト述ベテ、此議場ニ於テ多數ノ贊成
ヲ求メタノデアリマス、私共ハ民政黨ガ此
政策ニ依ッテ之ヲ實現スルモノト期待シ
國民ノ期待モ亦恐ラク玆ニアッタノデアラ
ウト云フコトヲ固ク信ジテ居ッタノデアリ
マスルガ、漸ク一年、此賠償金ヲ所謂減債
基金ニ繰入レマスルヤ否ヤ、忽チ其翌年ノ
六年度ニ於テハ此繰入ヲ廢シテ、一般會
計ニ引戾シテ、一般會計ノ收入ニ之ヲ充當
シ、歲入缺陷ノ補塡ニ之ヲ充當シヨウト致
シテ居ルノデアリマス、單ニ金額カラ申シ
マスレバ、獨逸ノ賠償金一箇年六百三十万
圓デアルカ如キ、所謂假面ヲ冠ッテ居リマス
ルガ、此賠償金特別會計法ニハ、現在留保シ
テ居リマスル資金ガ二千万圓餘アルノデア
リマス、而シテ其二千万圓餘ノ金ハ此特別
會計ヲ廢止スルト同時ニ、是ガ一般會計ニ
全部繰入レラレテ、是ガ一般會計ノ費用ニ
充當サレテ、所謂財政ノ缺陷ヲ補塡スルト
云フコトニナルノデアル(拍手)單ニ六百三
十万圓デハゴザイマセヌ、六百三十万圓ノ
數倍ノ金ガ、此特別會計法ヲ廢スルコトニ
依ッテ、一般會計ニ繰入レラレテ、是ガ一般
會計ノ費用ニ充當シヨウトスルコトニナツ
テ居ル、尤モ此中ニ於テ、從來ノ法律計畫
ニ屬シマスル經費デアリマスル、所謂國際
聯盟ノ費用デアルトカ、或ハ移植民ノ補助
費デアリマスルトカ、或ハ航空施設ノ補助
費デアリマスルトカ、或ハ航空ニ伴フ色々
ナ氣象ニ關スル設備ノ補助費デアリマスル
トカ、或ハ南米航路ノ補助デアルトカ云フ
モノニ、相當多額ノ金ヲ使フノデアル、是
ハ豫算ノ定ムル所ニ依ッテ、相當ノ金ガ要ル
ノデアルカラ此二千万圓ノ大部分ハ、其
方ニ充當サレルノデアルカラ、一般會計ノ
財源ニハ之ヲ用ヒルコトハ出來ヌト云フコ
トデアル、然ラバ是等ノ費用ハ全部デ幾ラ
デアルカト詳細ナル說明ヲ求メマシタガ、
遂ニ是ガヨウヤット八百万圓、八百餘万圓デ
アリマスカ、是ガ此方面ニ向ケラレル費用
デアルト云フコトニナルノデアリマスカラ、
二千万圓ノ中カラ八百万圓引キマスト一千
二百万圓、是ガ卽チ一般會計ノ財源ニ充當
サレテ、歲入缺陷ヲ補塡スル働ヲ爲シテ居
ルノデアル(拍手)私ハ是ニ於テ質問致シ
タ民政黨ハ前ニ申シタ通リ多年國債整理
ヲヤッテ、國民ノ負擔ヲ輕減スル、是ガ
民政黨ノ政策、所謂政友會ガ多年放漫政策
ヲヤルコトニ依ッテ、國民ニ六十億ニ近イ負
擔ヲ加ヘテ居ル、是デハ國民ハ疲弊シ、國
家ノ滅亡ハ近キニ在ル、銳意努力シテ此公
債ヲ償還スル公債ヲ增加セザルノミナラ
ズ、非增加主義ニ依リ之ヲ支拂フコトニ依ツ
テ遞減スルト云フコトガ、民政黨ノ政策デ
アルト云フコトヲ言ッタノデアル、然ラバ昭
和六年度ニ於テ、果シテ公債ハ幾ラ償還ス
ルノデアルカ、其數字ヲ承リタイト質問致
シタ、之ニ依ッテ其數字ガ明カニナッタノデ
アリマスガ、卽チ總額ノ万分ノ百十六、六
千九百十二万九千圓、是ハ勿論前カラノ法
規デアリマスガ故ニ、是ハ重大ナル拘束ガ
アルカラ、流石ニ之ヲ改正スルコトニ依ッ
テ此金ヲ減額スル譯ニハ參ラナイ、是ハ無
論繰入レル、其次ニハ震災手形ノ善後處理
ニ依ル六百三十万九千圓ヲ繰入レル、其他
ニ於テハ唯國民ノ報國心ヲ刺戟スルコトニ
佐々、昭和六年モ一万何千圓カノ償還獻
納金、此三ツヲ漸ク加ヘテ、之ガ所謂減債
基金ニ充當スル額デアル而シテ其總額ハ
幾ラデアルカト云フト、七万二千九百四十
八圓位デアル、斯ウ云フ御答辯デアル、然
ラバ恐ラク私ノ信ズル所ニ依ルト、本年ニ
於テ-六年度ニ於テ公債ヲ募集スベキ額
ハ寡聞ニシテー-私ガ知リ得テ居ル所デ
モ、各特別會計ニ於ケル旣定ノ公債額ガ五
千六百六十万圓ハアリマス更ニ最近失業
救濟ノ意味ニ於テ內務省カラ二千二百万圓
ノ公債ノ募集ノ御計畫ガ示サレ、鐵道特別
會計ニ於テ一千二百万圓ノ募債ガ計畫サ
V、樺太廳ニ於テ百五十万圓ノ募債ガ計畫
サレ、更ニ遞信省ノ所管ニ於テ最近百五十
万圓、海員救濟ノ爲ニ公債ヲ募集サレルコ
トニナッテ居ル、之ニ付テモ三千六百五十万
圓、前ノ各特別會計ノ公債額ヲ之ニ加算致
シマスト、裕ニ九千二百十万圓以上ノ金額
ニ相當スル、又六年度ニ於テ募債攻シマス
ル、此私ガ知リ得タ額ノミヲ償還額ト比較
致シマシテ千六百十五万二千圓カラノ公
債增加ノ數字ヲ示スコトニナルデハアリマ
セヌカ(拍手)是デモ民政黨ノ公債不增加主
義公債遞減主義ニ反スルコトハナイト云
フノカ(拍手)況ヤ更ニ所謂生絲ノ絲價補償
法ニ依ル交付公債、是ガ少ク見積ルモ二千
四百六七十万圓ノ金額ニナル、マダ或ハソ
レ以上ナルデアラウト信ジテ居ル、朝鮮鐵
道ノ買收ニ伴フ交付公債ノ金額ガ八百六十
万圓位キット要ルノデアリマス、更ニ海軍工
廠ノ從業員ヲ整理致シマシテ、之ニ交付シ
マスル公債ガ六百五十万圓、或ハ七百万圓
モ要ルノデゴザイマセウ、之ヲ內輪ニ見マ
シテモ、此三ツヲ總計致シマシテ三千九百
七十二万圓、此三千九百七十二万圓ト、更
ニ此一般公債額ノ七千五百九十四万八千圓
ヲ合計致シマスルト云フト、諸君、一億三
千百八十三万圓以上ニナルノデアリマス(拍
手)私ハ今年度卽チ昭和五年度ト、六年度ノ
一般公債額ヲ比較致シマシテモ、確カ五年度
ノ償還額ハ九千數百万圓ニナッテ居ルト信
ズル、六年度ハソレガ僅ニ七千二百万圓、
此兩年度ヲ比較致シマシテモ二千万圓以上
ノ差額ガソコニアル、是デ果シテ公債償還
ト云フ民政黨ノ政策ノ公約ヲ裏切ル、所謂
政策ノ破綻ニアラズト言フコトガ出來ルカ
(拍手)況ヤ交付公債ハ別ダト云フ御話デア
ルカラ、之ヲ敢テ追窮セヌニ致シマシテモ、
交付公債額、之ヲ加算致シマスル時ニ、
億三千幾百万圓ト云フ多額ノ公債募集ヲス
ルコトニ依ッテ、公債ハ加速度ヲ以テ激增シ
テ居ル今日ニ於テ、民政黨ハ何ノ顏色ヲ以
テ國民ノ公約ニ違ハヌト言フノデアルカ
(拍手)私ハ斯ウ云フ質問ヲ致シタノデアリ
やく、更ニ是ハ中央ニ於ケル一般會計、特
別會計ニ於テノミナラズ、地方ノ公債ニ於
テドウデアルカ、府縣ニ於テ市町村ニ於
テ-是ハ去ル二十七日デアリマスルカ
ニ我黨ノ井上孝哉氏ト大藏大臣ノ質問應
答ニ依フテ明瞭ニナッテ居ル、昭和元年ニ於
テハ地方ノ府縣市町村ノ公債總額ハ十五
億臺デアッタ、ソレガ二年度ニハ十八億臺ニ
ナリ、三年度ニハ二十億臺ニナリ、四年度
ニハ二十二億臺ニ激增致シテ居ル、而シテ
五年度ニハ幾ラデアルカト申シマスルト云
フト、是ハ會計ノ半途ニアルカラ、マダ算
定ハ付カスノデゴザイマスルガ、四年ノ四
月カラ十二月ニ至ルモノト、五年ノ四月カ
ラ十二月ニ至リマスル公債ノ總額ヲ比較致
シマスルト云フト、裕ニ一千七百幾十万圓
ノ增額ヲ示シテ居ル、此中カラ所謂震災復
興公債ヲ兩方カラ引キマスルト云フト、二
千二百幾十万圓ト云フモノガ五年度ノ四
月カラ十二月マデノ方ガ、四年度ノ同期間
ニ比シテ增大致シテ居ルト云フコトニナソ
テ居ルノデアリマス、然リト致シマスル時
二、中央地方共ニ公債ガ斯ノ如キ加速度ヲ
以テ增加サレテ居ル(拍手)是デ公債ノ整理
償還、財政ノ整理緊縮ノ面目何處ニゴザ
イマスルカ、明確ナル御答辯ヲ願ヒタイ
ト云フコトヲ以テ、小川政府委員ニ私ハ質
シタノデゴザイマスルガ、小川政府委員ハ
何ト答ヘラレタカ、折角ノ御問デアリマス
ルガ、民政黨ノ公債ノ整理償還ト云フ主義
主張ニ於テハ、毫モ變ステ居ラヌ、其精神ヲ
酌ンデ吳レ、多少ノ數字ハドウナッテ居ッテ
モ、其精神ヲ諒トセヨト云フコトデゴザイ
マスルガ、諸君、一國ノ政治ヲ論ジ、立憲
政治ヲ論ズルニ、數字ヲ措イテ議論ノ餘地
ガ何處ニアルカ(「ヒヤ〓〓」、拍手)況ヤ財政
學者ヲ以テ任ジ、天下ノ靑年子弟ノ〓育ノ
任ニ當ッテ居ラレタ小川政府委員ガ、今日政
府、大藏省ノ當路者トシテ此議會ニ臨ン
デ、數字ヲ無視シテ精神ヲ酌ンデ之ヲ論ズ
ルトハ何タル言ヒ分デアルカ、私ハ之ヲ了
解スルニ苦シム(拍手)政治ト云フモノハ實
際デゴザイマス、實際ヲ論ズルニハ數字ヲ
措イテ外ニナイ、私ハ其數字ニ立脚シ、其
數字ニ依ッテ質問致シテ居リマスル、此財政
ノ破綻、政策ノ破綻、之ヲシモ政策ノ破綻
デナイト言フナラバ何ガ政策ノ破綻デア
ルカト云フコトヲ申シテ居ル、斯ウ云フコ
トヲ以テ質問ヲ致シマシタガ、之ニ對シテ
ハ何等答辯スルコトガ出來ナカッタノデゴ
ザイマス(拍手)
斯ウ云フ譯デゴザイマスガ故ニ、前ニ申
シタル四案ハ特別ト致シマシテ、此三案ハ
悉ク財政ノ破綻、歲入ノ缺陷ヲ補塡シマス
ル民政黨ノ內閣ノ窮策ノ法律案ノ改正デア
ルカラ、斷ジテ吾々ハ贊成スル譯ニハ參リ
マセヌ、況ヤ吾々ハ既ニ昨日一般豫算ニ對
シテ、國民ノ名ニ於テ、斯ノ如キ豫算ヲ議
會ヲ通過サセマスコトハ國民ニ對シテ申譯
ガナイ、國民ノ名ニ於テ之ヲ返上致ス、豫
算ノ編成替ヲ政府ニ致シタル立場ヨリ、此
政府案全部ヲ御返上致シ、此撤囘ヲ要求致
シマスモノデゴザイマス(拍手)諸君、私ハ
是ニ於テ思フ、昨年九月十月デアッタカト
思フノデアリマスガ、國民ノ多數ハ何ト言ッ
テ居ル、恐ラク今ノ民政黨內閣ハ早クテ十
月、晩クモ十一月ニハ倒壞スルデアラウト
云フコトヲ申シテ居ッタ、マサカ、國民ノ多
數ガデアリマス、マサカ國民ノ多數ハ神ナ
ラヌ身ノ、濱口總裁ノ東京驛頭ニ於ケル遭
難ヲ豫想シテノ言デハナイ、民政黨ガ昭和
四年度ニ於テ、所謂上下兩院ヲ通過致シマ
シタル此豫算案ニ對シテ實行豫算ヲ編成
スルト稱シテ、此議會ニ於ケル豫算審議權
ヲ無視シテ、洵ニ亂暴ナル經理事務ヲ御執
リニナッタ、其結果トシテドウデアルカト云
フト、昭和四年度ニ於テ三千數百万圓ノ缺
損ガ出來タ、之ヲ補塡スルニ前年度ノ剩餘
金九百万圓ヲソレニ當テタケレドモ、尙ホ
二千六七百万圓ノ缺損ガ出來タカラ、之二
氣付クヤ、倉皇トシテ年度ノ二三箇月過ギ
テ居ル昭和五年ノ三月三十一日ニ、所謂震
災善後公債ヲ發行シテ、二千六百數十万圓
ノ公債ヲ募集致シテ、サウシテ財政ノ補塡
ヲヤッタデハナイカ、我黨ノ同志ニ依シテ此
事實ハ剔抉サレテ居リマスガ、是ハ唯會計
法違反ニ非ズ、三月三十一日ニ納入命令ダ
ケハ出シタト云フコトヲ以テ、大藏大臣ハ
答辯サレテ居ル、此二千數百万圓ノ金ノ納
入ヲ三月三十一日マデニサスルノニ、三月三
十一日ニ納入命令ヲ出シテ居ル何デソレ
ガ出來ルモノデゴザイマスカ、是ガ彌縫糊
塗、頭隱シテ尻隱サズ、是ガ失政ノ現ハレ
デアリマス(拍手)次ニ昭和五年度デゴザイ
マスガ、是ハ又御手ノ物ノ所謂實行豫算ト
云フモノヲ一度モ二度モ更改ニナッテ御實
行ニナッタ、昨年ノ特別議會ニ於テ豫算ノ
見積ノ過大ヲ指摘致シタ時ニ、サニアラズ、
御心配ハ要ラヌト言ッタ其口ノ下カラ、六月
ノ半バニ於テ八千百万圓ノ缺損ヲ來シテ居
ル、所謂行政ノ經濟化ナドト申シマシテ、
六千万圓ハ補塡ガ付イタサウデアリマスケ
レドモ、數百万圓ノ補塡ハ付カヌ、尙ホ其
爲シタ後ニ於テ、凡ソ四五千万圓ノ減收ハ
明瞭デアルト想像致シテ居ル、然カ致シマ
スルナラバ四年度五年度共ニ、是ハ財政ノ
破綻者トシテノ前科者デアル(拍手)此者ガ
斯ノ如キ財政ノ缺陷ヲ又復來シテ、此重要
ナル政策ニ破綻ヲ來スニ於テハ、國民ガ今
年-昭和六年度ノ豫算ノ編成ハ爲シ得ナ
イデアラウ、政治道德トシテ責任政治家
トシテ、速ニ罪ヲ國民ノ前ニ謝シテ、此閣
僚全部ハ總辭職ノ擧ニ出ルデアラウト思へ
バコソ、此十月、十一月ハ內閣ハ總辭職ヲ
スルモノダト、國民ハ堅ク信ジタノデゴザ
イマス(拍手)然ルニ厚顏無恥ニモ此財政窮
乏ヲ、有ユル特別會計其他減債基金ノ繰入
ヲ中止スルコトニ依ッテ財源ヲ補塡致シテ、
彌縫致シテ居ルノデアリマスガ故ニ、責任道
德所謂責任政治ノ本領ヲ辨ヘ立憲政治
ノ根本ヲ理解スル者デゴザイマスレバ是
ハ少クトモ爲シ得ナイ事柄デアリマスルガ、
之ヲ敢テ爲シ得ントスルガ爲ニ、斯ノ如キ
窮策ヲ演ジテ居ルノデアリマス
民政黨ハ所謂十大政策ヲ揭ゲタ一昨年ノ
七月組閣當時ニ揭ゲタ所謂十大政策ノ何ヲ
ヤッテ居ルノデアルカ、所謂政治ノ光明ヲ
言ッテ政治ノ不公明是ヨリ甚シキハナイ、國民
ニ所謂民心ノ作興ヲ唱ヘテ、民心ノ廢頽今日
ヨリ甚シキハアリマセヌ、食フヤ食ハズノ
國民ニ、民心ノ作與ガ出來マスカ、況ヤ綱
紀ノ肅正ヲ唱ヘテ選擧對策ニ利用致シマシ
タケレドモ、是ハ空理、是ヨリ甚シキハナ
イノデアリマス、又所謂對支外交ヲヤル
追隨外交ヲヤルコトニ依ッテ常ニ失敗ヲ致
シテ居ルノデアル、永井柳太郞氏ノ如キ、
時ノ顯官ヲ以テ所謂南京ニ於テ貴國ヲ一等
國ト認メルト言シタ、此言辭ニ對シテ謂レナ
キ憤慨ヲサレテ、御馳走マデシテ取消ヲサ
レタト云フ事實ハ、何ト見ルカ、時ノ政府
ノ顯官、外務ノ政務次官ガ、貴國ヲ一等國
ト認メルト云フコト、此外交辭禮ニ對シテ
意ヲ挾マヌト云フノハ如何ニ支那ガ日本
ノ追隨外交ニ對シテ、日本ヲ舐メテ居ルカ、
日本ヲ馬鹿ニシテ居ルカト云フコトハ之
ニ依ッテ明瞭デハアリマセヌカ、況ヤ露西亞
ノ所謂浦鹽ニ於ケル朝鮮銀行ノ如キハ遂
ニ廢止ノ巳ムヲ得ザルニ立至ッタト云フコ
トハ今日ノ新聞電報ニモ書イテアル、
トシテ失政ナラザルハナシ、對支軟弱外交、
是ヨリ甚シキハナイト私ハ斷言スルノデア
リマス(拍手)爾カ致シマシテ、所謂財政ノ
整理、軍備ノ縮小、公債ノ整理、償還、或
ハ金解禁、或ハ社會立法、悉ク失敗致シテ
居ルデハナイカ、悉ク爲シ得ナイデハゴザ
イマセヌカ、爲シ得テ居ルモノハ、例ヘバ
金解禁、財政ノ整理緊縮ノ如キ、悉ク失敗
ニ終シテ、國民ヲ今日ノ如キ失業苦ノドン底
ニ叩キ込ンデ、生活困難ノ狀態ニ陷ラシメ、
遂ニ救フベカラザル大動搖ヲ實現致シテ居
ルノデゴザイマス
多クノモノハ爲シ得ズ、爲シ得タモノハ
悉ク失敗デアル、爲スト斷言致シマシタル
社會立法ハ何ヲ致シテ居ルカ所謂救護法
ヲ提案致シマシタ時ニ、昭和五年ノ四月一日
ニ實施シテ呉レト言ッテ、附帶決議シマシタ
民政黨ノ手前、是ガ今ノ內閣ノ當事者デア
ルガ故ニ、當然議會ニ出スベキモノデアリ
マスルガ、一年ニ四百万圓ノ救護費スラ之
ヲ提案スルコトガ出來ナイデハナイカ、況
ヤ其失政ノ結果不景氣ハ彌ガ上ニモ嵩ンデ
來テ、失業者ハ非常ニ增加シ、所謂道ニ餓
莩橫ハルノ今日ニ於キマシテ僅ニ昭和六
年ノ一箇年、イカヌケレバ半箇年、十月一
日カラ之ヲ實施スルコトニ依ッテ、僅ニ二百
万圓ノ經費シカナイ、之ヲスラ實施致サナ
イ、又値切リ小切リヲスルコトニ依ッテ、遂
ニ昭和六年一月一日ヨリ一箇年四分ノ一ノ
百万圓ノ經費ヲ以テ、此救護法ヲ實施シテ
吳レト云フ國民ノ熾烈ナル要求ニ對シテス
ラ、此百万圓ノ經費ノ捻出スルコトガ出來
ナイ、遂ニ方面委員ハ奏上マデ申シ奉ッテ
宸襟ヲ惱シ奉ルト云フヤウナコトハ上御一
人ニ對シテ何ト御詫ビ致スノデゴザイマセ
ウカ
〔發言スル者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01619310219&spkNum=87
-
088・小山松壽
○副議長(小山松壽君) 靜肅ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01619310219&spkNum=88
-
089・宮澤裕
○宮澤裕君(續) 斯ノ如ク悉ク政策ニ失敗
致シ所謂食フヤ食ハズノ國民ニ向ッテハ
速ニ其罪ヲ謝ス、上御一人ニ對シ奉リ骸骨
ヲ乞フテ、而シテ國民ニ對シテ其罪ヲ謝ス、
是レ立憲政治家ノ態度デアリ、斯クシテ再
ビ出直スノガ諸君等ノ爲メデアル、立憲政
治家トシテ諸君等ニ失政ガアルナラバ、其
罪ヲ天下ニ謝シ、政府ノ名分ヲ立テヽ立憲
政治ノ正道ニ移ルコトガ諸君等ノ重大ナル
任務ト信ズルノデアル、私ハ本案ヲ全部返
上致シマスト同時ニ、民政黨内閣、民政黨
諸公ノ反省ヲ促シ、速ニ總辭職ヲ希望致シ
マシテ此壇ヲ降ルノデゴザイマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01619310219&spkNum=89
-
090・小山松壽
○副議長(小山松壽君) 淺川浩君
〔淺川浩君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01619310219&spkNum=90
-
091・淺川浩
○淺川浩君 本員ハ只今上程ニ相成リマシ
ク特別會計營繕費ニ關スル件、少數意見ニ
反對ヲ致シ、原案ヲ支持スル爲ニ登壇致シ
タノデアリマス、只今宮澤君ニ依リマシテ
少數意見ノ御發表ヲ拜聽致シマシタ、委員
會ニ於テ、又本會議ニ於テ、政府ノ提案ノ
說明、委員會ニ於ケル政府ノ說明、之ニ依
リマシテ吾々ハ此原案ニ贊成ヲ致ス者デア
リマス宮澤君ノ各案ニ付テノ御意見ニ對
應致シテ細論ヲ致ス筈デアリマスケレド
モ、其必要ハナイト認メマス、要ハ昭和三
年ノ前內閣總選擧後ニ於テ、經濟國難匡救
ノ決議案ガ前內閣ニ致サレテ居リマス
昨年ノ七月成立ヲ致シマシタル現內閣ハ
十大政策ヲ設ケマシテ殘ラズ實行シテ居
ル、殊ニ財政ノ整理國家ノ經濟ヲ直スノ
ニハ財政ノ整理カラシテ行カナケレバ相成
ラヌ先以テ財政ノ整理ヲ致シ、國家ノ財
政ノ安固ヲ致シ、サウシテ後ニ國際經濟ノ
「レベル」ヲ求メ
〔副議長退席、議長復席〕
而シテ國民經濟ノ建直シヲシナケレバナラ
又、現政府ハ此十大政策ニ付テ現ニ其實行
ノ過渡期デアル、吾々ハ此財政ノ整理時代、
國際經濟ノ平均ヲ得ル上ニ於テノ國民
經濟ヲ建直ス上ニ於テノ、最モ適當ナル
過渡期ニ於テ已ムヲ得ナイコトヽ信ズル故
ニ、原案ヲ贊成スル次第デアル、色〓宮澤
君ニ於テ政策ノ破綻トカ色ミノ事ヲ仰シヤ
ラレマシタガ旣ニ是等ヲ論ズル必要ハナ
イ、此道程ニ於テハ已ムヲ得ズ原案ニ贊成
スルヨリ外ナイ、希クハ多數ノ諸君、ドウ
ゾ反省セラレテ原案ニ贊成セラレンコトヲ
(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01619310219&spkNum=91
-
092・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 是ニハ討論ヲ終リ
マシタ、右七案ノ第二讀會ヲ開クヤ否ヤヲ
御諮リ致シマス、第二讀會ヲ開クニ贊成ノ
諸君ノ起立ヲ願ヒマス
〔贊成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01619310219&spkNum=92
-
093・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 多數デアリマス、
仍テ七案ノ第二讀會ヲ開クニ決シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01619310219&spkNum=93
-
094・作田高太郎
○作田高太郞君 直チニ七案ノ第二讀會ヲ
開カレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01619310219&spkNum=94
-
095・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 作田君ノ動議ニ御
異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01619310219&spkNum=95
-
096・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 御異議ナシト認メ
き り、仍テ七案ノ第二讀會ヲ開キマス
特別會計ニ於ケル營繕費ニ關スル法律
案第二讀會
特別會計ノ恩給負擔金ヲ一般會計ニ繰
入ルルコトニ關スル法律案第二讀會
賠償金特別會計法廢止法律案第二讀會
昭和四年法律第二十六號中改正法律案
(神戶商業大學移轉改築費ニ關スル件)
第二讀會
京都高等工藝學校移轉改築費ニ充用シ
タル金額ノ補塡ニ關スル法律案
第二讀會
製鐵所特別會計法中改正法律案
第二讀會
簡易生命保險特別會計法中改正法律案
第二讀會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01619310219&spkNum=96
-
097・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 別ニ御發議モアリ
マセヌカラ、委員長報告通リ決シマシタ、
是ニテ七案ノ第二讀會ハ終リマシタ(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01619310219&spkNum=97
-
098・作田高太郎
○作田高太郞君 直チニ七案ノ第三讀會ヲ
開カレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01619310219&spkNum=98
-
099・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 作田君ノ動議ニ御
異議アリマセヌカ
〔「異議」ナシト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01619310219&spkNum=99
-
100・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 御異議ナシト認メ
マン·仍テ直チニ第三讀會ヲ開キマス
特別會計ニ於ケル營繕費ニ關スル法律
案第三讀會
特別會計ノ恩給負擔金ヲ一般會計ニ繰
入ルルコトニ關スル法律案第三讀會
賠償金特別會計法廢止法律案第三讀會
昭和四年法律第二十六號中改正法律案
(神戶商業大學移轉改築費ニ關スル件)
第三讀會
京都高等工藝學校移轉改築費ニ充用シ
タル金額ノ補塡ニ關スル法律案
第三讀會
製鐵所特別會計法中改正法律案
第三讀會
簡易生命保險特別會計法中改正法律案
第三讀會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01619310219&spkNum=100
-
101・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 別ニ御發議ガナケ
レバ第一讀會議決ノ通リ可決確定致シマ
シタ(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01619310219&spkNum=101
-
102・作田高太郎
○作田高太郞君 議事日程變更ノ動議ヲ提
出致シマス、卽チ此際日程ヲ變更シ、淺原
健三君提出、警察權行使ニ關スル緊急質問
ヲ上程シ其趣旨辯明ヲ許可セラレンコト
ヲ望ミマス
〔「贊成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01619310219&spkNum=102
-
103・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 作田君ノ動議ニ御
異議ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01619310219&spkNum=103
-
104・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 御異議ナシト認メ
やっ、仍テ日程ハ變更セラレマシタ、警察
權行使ニ關スル緊急質問ノ趣旨辯明ヲ許シ
マス-淺原健三君
警察權行使ニ關スル緊急質問(淺原健
三君提出)
〔淺原健三君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01619310219&spkNum=104
-
105・淺原健三
○淺原健三君 私ハ衆議院議員ノ權威確保
ノ爲ニ、警察權行使ニ付テ內務大臣ニ重要
ナル緊急質問ヲ致サントスル者デアリマ
ス、安達內務大臣ハ野ニ在ル數十年、常
議會ノ權威確保ノ爲ニ戰ヒ續ケラレタ、自
他共ニ許ス政界ノ苦勞人デアル、故ニ私ノ
此衆議院議員ノ權威保持ニ關スル質問ニ
當ッテ、御答辯ヲナサルニ際シテハ、部下ヲ
護ルノ餘リニ急ニシテ、將來ノ議會ノ權威
ヲ冒瀆スルガ如キ閣僚意識ニ驅ラレタル
一時的答辯ナク、安達內務大臣ノ誠實ニシ
テ眞實味溢レタ明快ナル御答辯アルベキ
コトヲ、前以テ御願致シテ置ク所以デアリ
マス
吾々ハ昨年二月ノ十八日、芝協調會館ニ
於テ午後一時カラ社會民衆黨、勞農黨竝ニ
全國大衆黨、三無產政黨協同ノ下ニ、濱口
內閣卽時打倒、醜惡議會卽時解散要求ノ民
衆大會ヲ開催致シタノデアリマス
〔發言スル者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01619310219&spkNum=105
-
106・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 靜肅ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01619310219&spkNum=106
-
107・淺原健三
○淺原健三君(續) 大會ノ席上ニ於テ、入
場者一千名ハ民衆ノ名ニ依リ、全會一致
ヲ以テ濱口內閣打倒ト、醜惡議會卽時解散
要求ノ決議ヲ決定致シマシテ、其決議ヲ齎
ラシ、内閣總理大臣代理幣原喜重郞氏ニ手
交セシムベク、大會ハ各黨六名ヅヽ都合
三黨合セテ十八名ノ代表實行委員ヲ選定シ
テ議會ニ向ハシタノデアリマス吾々無產
黨議員同僚五名ハ是等十八名ノ代表者ヲ
案內致シマシテ、時十八日午後五時二十分
衆議院ノ通用門ニ至ッタノデアリマス、然ル
ニ何事ゾ制服ノ巡査百數十名、加フルニ
騎馬巡査數騎、此警官隊ハ衆議院ノ構內ニ
入レル吾々議員五名及ビ代表者十八名、其
他隨行者ヲ合セテ總勢三十名ヲ、議院ノ構
內ヘ一二間入リ居リタルニモ拘ラズ、院內
警備ノ任ニ在ル制服警察官ト協力シテ、門
外ヘ暴力ヲ以テ突出シタノデアリマス、サ
ウシテ突如トシテ通用門ノ門扉ハ內カラ堅
ク鎖サレテ、門ガ箝メラレテシマッタノデア
リマス、時恰度豫算討議將ニ終ラントシ
テ、豫算ノ採決目睫ニ迫レル場合デアリマ
シタ、吾々同僚五名ハ、全有權者ノ輿望ヲ荷ッ
テ議員ニ當選セル衆議院議員ノ重大ナル任
務中ノ最大任務デアル豫算案ノ採決ニ當
リ、反對投票ヲ爲スベク
〔發言スル者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01619310219&spkNum=107
-
108・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 靜肅ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01619310219&spkNum=108
-
109・淺原健三
○淺原健三君(續) 急遽入場ヲ急ギ、聲ヲ
大ニシテ開門ヲ迫リ、更ニ扉ヲ打叩イテ開
門ヲ連呼シタノデアリマスガ、門際ニハ警
視ノ制服ヲ著ケタ警官及ビ院內取締ノ任ニ
在ル上野某ト稱スル警部、其他制服警官數
十名ハ門扉ニ體ヲピッタリクッ付ケテ、斷
ジテ開門ヲ肯ンジヨウトシナイノデアリマ
ス押問答遂ニ數十分、漸クニシテ代議士
五名及ビ代表者デアル社會民衆黨ノ書記長
赤松克麿君、全國大衆黨執行委員會議長麻
生久君、竝ニ社會民衆黨ノ選出前衆議院議
員デアル龜井貫一郞君、其他都合總勢十二
三名ガ漸ク門內ニ入ルコトヲ得タノデアリ
マス、然ルニ諸君何事デアルカ、衆議院ノ
構內ニ於テ、行政警察權カラ獨立シタル院
內ニ於テ、入ッタ代議士五名、代表者數名、
ソレガ院內ニ於ケル制服警官ノ爲ニ打ツ、
蹴ル毆ル引摺リ倒ス等、有ユル暴行ヲ
受ケタノデアル(拍手)是ハ或ル方ハ左樣ナ
コトガナイト仰セラレルデアラウト信ズ
ル、然リ、サウ信用スルコトガ常識デアル、
併シ昨日ノ現場ハ各新聞記者諸君、又ハ民
政、政友ノ院內事務員諸君、或ハ民政黨ノ
中ニモアルカモ知レマセヌガ、政友會ノ代
議士諸君モ、アノ構內ニ於ケル警察官ノ打
ツ、蹴ル、毆ルノ暴行ヲ、ハツキリト目撃セラ
レテ居ルコトハ、動カシ難キ事實デアル、特
ニ甚シカッタノハ龜井貫一郞君デアリマス
龜井君ハ前代議士ノ資格ニ依リマシテ、登
院章ヲ貰ヒ、殆ド每日議會ニ出入セラレテ
居ル人デアル、龜井君ハ自己ノ胸ニアル登
院章ヲ示シ、更ニ龜井貫一郞ナル姓名ヲ明
カニシタルニモ拘ラズ、〓井君ヲ取卷イタ
十四五名ノ制服巡査ハ不當ニモ龜井君ヲ
アノ冷イ步道ニ叩キ付ケ、泥靴ヲ以テ蹂躪
シ更ニ頭髪ヲ摑ンデ引張リ廻ハシ、衆議
院々內醫務局ノ診斷、治療十日ノ傷害ヲ加
フルニ至ッタノデアリマス(拍手)吾々ハ此暴
行ノ中ニ揉マレ〓〓、更ニ當時龜井君ノ傷
害ユ依ッテ、醫務局ニ之ヲ運ンデ居ル間ニ、
遂ニ豫算討議ハ採決ニ入ッテ散會シテシマッ
クノデアリマス、故ニ吾々ハ、誰ガ命令ヲ
發シテ衆議院ノ通用門カ閉サレタモノデア
ルカ、先ヅ其命令者ヲ糺スコトヲ以テ、最
モ爲スベキ急務デアルト信ジタ、故ニ議會
散會後、直チニ歸ラレヤウトスル藤澤議長
ヲ擁シテ議長應接室ニ訪レヽ藤澤議長ハ
通用門ノ閉鎖ヲ命ゼラレタカ否カヲ非公式
ニ御尋ネ致シタノデアリマス、然ルニ藤澤
議長ハ明言シテ曰ク、私ハ當時豫算ノ討議
採決ニ方ッテ議場ニ在リ、、左樣ナ事ハ全ク存
ジマセヌ、然ラバ議院ニ於ケル警察權ノ絕
對ノ支配權ヲ持タレル藤澤幾之輔氏ガ、之
ニ對シテ一言ノ命令モ發セズ、寸毫ノ關係
モ御持チニナラナイコトハ藤澤幾之輔氏
ノ人格ニ依ッテ、非公式デアラウトモ、此一
言ニ依ッテ明瞭ニ信ズルコトガ出來ルト思
フ、然ラバ議長ノ命令ナカリシニモ拘ラズ、
警務課ガ獨斷ニ依ッテ門ヲ閉シタカト思ヒ
マシテ、更ニ副守衞長ヲ警務室ニ訪レテ尋
ネタ、然ルニ副守衞長亦明言シテ曰ク私
ノ知レル範圍ニ於テハ、守衞ニ向ッテ門ヲ閉
スノ命令ハ發シテ居ナイ、更ニ又私ノ知レ
ル範圍ニ於テハ斷ジテ守衞ガ門ヲ鎖シテ
ハ居ナイ、然ラバ議長命令セズ、警務課之
ヲ執行セズトスルナラバ、議會始マッテ恐ラ
ク初メテノ、議員登院阻止ノ結果ニ至レル
閉門ノ如キ、前代未聞ナル···
〔「正門ガアルヂヤナイカ」其他發言ス
ル者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01619310219&spkNum=109
-
110・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 靜肅ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01619310219&spkNum=110
-
111・淺原健三
○淺原健三君(續) 此奇怪事ハ議長ノ命
令ニ依ラズ、警務課之ヲ執行セズト云フナ
ラバ、唯警視廳當局ノ獨斷專行ニ依ッテ行ハ
レタモノト言ハザルヲ得ナイ、然ラバ其責
任ハ安達內務大臣ノ負ハルベキモノデアル
コトハ言ハズシテ明瞭ナル結論ダト信ジ
マス、故ニ私ハ簡單ニ三ツノ要點ヲ摑ンデ、
安達內務大臣ニ御尋致シマス
第一ハ議長命令セズ、警務課執行セザルニ
モ拘ラズ、警視廳當局ノ獨斷專行ニ依ッテ、
何ガ故ニ通用門ヲ閉鎖シタカト云フ、此
質問ニ對シ、安達內務大臣ハ明瞭ニ御答シ
テ戴キタイ、或ル人ハ仰シヤルカモ知レナ
イ、正門ガ開イテ居ルト言ハレルカモ知レナ
イ、必ズヤ正門ハ開イテ居ルデアラウ、併ナガ
ラ衆議院議員ハ正門カラ入ラウト、通用門カ
ラ入ラウト、衆議院議員ノ絕對自由デアリマ
ス、況ヤ警察官ガ通用門ヲ鎖シ、議員ニ向フ
テ正門ニ廻レナドヽ命令スル權能ハ、如何ナ
ル法律ニ依ッテ許サレテ居ルカト言ハザル
ヲ得ヌ、或ハ內務大臣ハ正門ヲ閉セルロト
ニ付テ、前例アルコトヲ以テ、御答辯ノ具
ニ供セラレルカモ知レナイ、成程今カラ十
四五年前、正門ガ閉サレタ前例ハアルサウ
デアル、併シソレハ群集ガ衆議院ノ正門ニ
殺到シ、其數數萬ト云フ數ヲ示シタ時、法
律ノ規定ハ衆議院ノ正門ハ議員ニアラザ
レバ一步モ入ルコトハ出來ナイ、入ルベカ
ラザル所ノ群集數萬ガ殺到シタルガ故ニ、
門ヲ閉ジタモノデアッテ、通用門ヲ閉シタ前
例ハ、五十九議會マデ、議會始テ以來未ダ
一囘モナイノデアリマス、承ル所ニ依リマ
スレバ第三次桂內閣ノ當時、議長大岡育
造氏ノ際ニ、數万ノ群集ガ門前ニ殺到シタ
ニモ拘ラズ、議長ハ門ノ閉鎖ヲ命ゼス、傍
聽人控室ニ何千ヲ入レラレタト云フ、而モ
其時ハ丁度停會當日デアッタノデ、大岡育造
氏ハ傍聽人ヲ正門カラ退場セシメラレタ
更ニ第五十議會普選運動ノ「デモンストレー
シヨン」ガ、贊成者、反對者共ニ行ハレタル
時モ、亦通用門モ正門モ斷ジテ閉鎖シナ
カッタト云ワ而モ十幾年前正門ヲ鎖シ
タノハ議長ノ命令デ正門ヲ鎖シタノデア
ル今度ノ閉鎖ノ如ク、議長ノ命令ナ
ク、警視廳當局ガ獨斷專行ニ依ッテ閉鎖サ
レタ前例ハ遺憾ナガラ一囘モナイコトヲ斷
ゼザルヲ得ナイ(拍手)議院ハ申スマデモナ
ク行政警察權カラ獨立セル場所デアル、然
ルニ警視廳之ヲ獨斷專行ス、其筈デアル
丸山警親總監ハ本日ノ新聞紙ニ於テ、昨日
ノ事件ニ對シ新聞記者ニ談話シテ曰ク-
官吏傍聽席ニ丸山警視總監ハ居ル筈デア
ル、ハッキリ聽イテ置クベシアノヤウナ
咄嗟ノ際ニヽ門ヲ閉メタコトハ臨機ノ處置
デ、議院法ニ牴觸スルモノデハアリマセヌト
斯ウ言明シテ居ル、何ト云フ不屆ノ事カ、
丸山警視總監ハ勝手ニ議院法ヲ解釋シテ、
之ヲ執行スル自由ヲ何時委託サレタカ、コ
ンナ考ヘ方、コンナ僣越ナ考へ方ヲ總監ガ
持ッテ居レバコソ、突如トシテ警察官ガ上長
官ノ頭ヲ反映シテ、議會ノ門ヲ鎖スノ暴擧
ヲ爲ス、由來最近ノ丸山整視總監ノ態度ハ、
我儘增長僣上至極、心アル者ヲシテ常ニ眉
ヲ顰メシメテ居ル所ノ警視總監デアル、私
ハ議長ノ命令モナク警務課トノ協議モナ
ク唯警視廳ガ勝手ニ自己ノ權限內ニアラ
ザル議院法ヲ解釋シテ議院ノ閉門ヲ爲ス
事差支ナシト云フガ如キ暴言ヲナス警視總
監ハ、此一事ヲ以テスルモ、安達內務大臣
ハ罷免ノ責任アリト謂ハザルヲ得ナイ、最
近ニ其例ヲ見マセヌ又議會ノ通用門閉鎖ニ
對シ、內務大臣ノ明確ナル御答辯ヲ望ミマ
ス
第二ハ院內ニ於テ衆議院議員ガ、制服ノ
警察官カラ打ツ、蹴ル毆ル、引キ倒サレルノ
暴行ヲ受ケル、是ハ日本ノ議會ノミデハナ
↑、世界ノ議會デモ恐ラク先例稀ニ見ル所
ノ大ナル醜態デアルト信ズル、否、此ニ至
テハ警察官ノ態度醜態ヲ通越シテ狂態ニ近
イモノト言ハザルヲ得ナイ、此狂人的警察
官ニ保護セラレル日本ノ民衆亦禍ナル哉ト
言ハザルヲ得ナイ、故ニ安達內務大臣ハ、
議長ノ許可アルニアラザレバ行使スルコト
ノ出來ナイ警察權ヲ、勝手ニ衆議院構內ニ
行使シテ、遂ニ議員ヲ毆打シ、登院章ヲ持
テル者ニ對シ傷害ヲ加へタルコトニ付テ、
如何ナル責任ヲ執ラントセラルヽカ
第三ニ御尋申上ゲル事ハ、門ヲ閉サレタ
結果、無產黨議員五名ハ重大ナル豫算討議
ニ參加スルコトヲ得ズ、遂ニ採決ニ當ッテ投
票不能ノ擧ニ陷ラシメタコトニ對シ、安達
内務大臣ハ議員ノ公務ノ執行ヲ正服警察官
ニ依ッテ阻止セラレ、妨害セラレタル此一事
ニ對シ、如何ナル答辯ヲ以テ臨マレルノデ
アルカ、私ハ豫算採決ハ特ニ議員ノ任務中
デノ最モ重大ナル任務デアル
〔發言スル者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01619310219&spkNum=111
-
112・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 靜肅ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01619310219&spkNum=112
-
113・淺原健三
○淺原健三君(續) 議員ノ爲スベキ最大ノ
任務、憲法ニ依シテ擁護セラレル投票權ガ、
警察官權ノ暴擧ニ依ッテ、蹂躙セラレルト云
フガ如キハ安達內務大臣何ノ顏ヲ以テ
明イ政治ヲ豪語セラレルノデアルカト言ハ
ザルヲ得ナイ(拍手)
〔發言スル者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01619310219&spkNum=113
-
114・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 靜肅ニ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01619310219&spkNum=114
-
115・淺原健三
○淺原健三君(續) 要スルニ昨日ノ事件ハ
警察官ノ非常識ト暴擧ニ依ッテ始マリ、ソレ
デ終フタ、是ハ全體ノ新聞記者諸君ノ認メテ
居ルコトデアル、私ハ其中ノ一ツ、政友ニ
與セズ、民政ニ與セズ、自他共ニ中立ヲ以
テ、最近天下ニ認メラレテ居ル所ノ、報知
新聞ノ急流緩潮子ノ筆ヲ玆ニ紹介スルナラ
バ、此筆者ハ一氣呵成懸河ノ健筆ヲ揮ッテ居
ル「代表者ト其一群約五十名ヲ取締ルノニ二
百三百ノ佩劍ガ必要ト認メラレルナラバ
ソレモ宜カラウ」何ト行政警察權ニ對スル不
信任ノ辛辣ナル批評デハナイカト言ハザル
ヲ得ナイ「併シ當然院內ニ入ルベキ用務ト
資格ヲ有スル人達ヲ、何ノ理由ヲ以テ阻止
スルノデアルカ」--ガ玆ニ申上ゲル一
新聞ノ記事ニ依ッテシテモ、昨日ノ行爲ハ
如何ニアノ目擊者ノ間ニ、安達謙藏氏ノ治
下ニ行ハレル「スパイ」政治ヲ、マザ〓〓ト
見セ付ケラレタカラ明瞭ニ物語フテ居ル(拍
手)而モ內務大臣ニ特ニ申上ゲテ置キマス
コトハ、多衆ガ門前ニ殺到シタルガ故ニ、
已ムヲ得ザル機宜ノ所置ナリト云フ見解ヲ、
若シ御持チニナッテ御答辯ナサルトスルナ
ラバ、事實ヲ無視セラレルノ甚シイモノデ
アルト云フコトヲ申上ゲテ置ク、門前ニ殺
到シタル者ハ僅カ三十名デアル、此處ニ私
ハ寫眞ヲ明瞭ニ御見セシテ置ク、門前ニ在
ル者僅ニ三十名、門內ヲ固メル制服巡査二
三十名、三十名ガ門ニ殺到シタルガ故ニ、
警視廳ハ自己ノ越權行爲デアル衆議院ノ門
ヲ閉鎖セザレバ、防止シ得ナイトスルナラ
バ、職務怠慢ノ甚シイモノデアルト言ハナ
ケレバナラヌ、故ニ私ハ左樣ナ御答辯モ承
リタクナイ
唯最後ニ安達サンニ御答辯ヲ求ムルニ當ッ
テ申シテ置キタイコトガアル、是ハ安達サ
ンノ如キ苦勞人ニ對シテハ贅言カモ知レナ
1、必要ノナイ希望デアルカモ知レナイ、
屋上屋ヲ架スルノ結論デアルカモ知レナイ、
併シ昨日起ッタ事件ニ付テ、安達謙藏氏ガ部
下ヲ守ルノ立場カラ、更ニ其當面ノ當事者
ガ無產黨議員デアルガ故ニ、議席ヲ僅カ五
ツシカ持タナイ微力ナル者デアルガ故ニト
シテ、之ヲ輕視シテ、一時的ナル答辯ヲナ
サントスルナラバ、私ハ思ハザルノ甚シイ
モノダト思フ、衆議院議員ノ登院ヲ阻止ス
ルト云フコトハ、ソレガ無產黨議員タルト、
或ハ野黨タルト、與黨タルトヲ問ハズ、衆
議院全體ノ權能行使ニ關スル重大ナル問題
デアル(拍手)故ニ此問題ニ對シテ、安達謙
藏氏ガ開會以來今日マデ、無產黨議員ニ答
辯セラレタル如キ不親切ナル態度ヲ以テ之
ヲ一蹴シ去ラウトセラレルナラバ、ソレハ
無產黨議員ニ對スル侮辱デハナク、衆議院
議員全體ヲ侮辱スルモノデアリ、議會ソレ
自體ヲ蹂躪スルモノデアル、而モ官僚出身
ノ方ナラバ率ザ知ラズ、生レタ時カラ政黨
人デアリ、議會人デアル安達謙藏氏、自己
自ラノ權能ヲ侮辱セラレルコトニナルノデ
アリマス、故ニ此點ニ付テハ、十數年來未
ダ曾テ前例ヲ見ザリシ重大ナル事件トシ
テ、安達內務大臣ハ明確ニ自己ノ責任ヲ明
カニシテ、其進退ノ處置ガ天下民衆ノ希望
ニ反セザルヤウ明確ナル御答辯ヲ要求ス
ル所以デアリマス(拍手)
〔國務大臣安達謙藏君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01619310219&spkNum=115
-
116・安達謙藏
○國務大臣(安達謙藏君) 淺原サンニ御答
致シマス、昨十八日ノ午後一時カラ、芝公
園內協調會館ニ於テ開催セラレマシタ無產
者大會ノ終了致シマシタル後、決議文ヲ首
相代理ニ手交スルト稱シテ、代表者十數名
ガ徒步ニテ協調會館ヨリ衆議院ニ向ヒ出發
致シマシタル所、之ヲ利用致シマシテ、法
律上ノ手續ヲ執ラズシテ、街頭示威運動ヲ
敢行セントスル者ガアリマシタガ故ニ、警
戒セル警察官ハ途上ニ於テ度ミ之ヲ阻止致
シマシタケレドモ、尙ホ解散致シマセズシ
テ、午後五時二十分頃衆議院通用門外ニ於
テ約百名ノ群衆ガ(「ノー〓〓」)衆議院內ニ
殺到セントスル形勢ヲ示シマシタノデ、警
察官ハ門外ニ於テ之ヲ解散セシムルニ努メマ
シタ、其際議院通用門ノ閉鎖トカ、其他ノ
事故ガアッタトノコトデアリマスガ、院內
ノ警察權ハ議長ノ執行スル所デアリマスガ
故ニ、私ヨリ此方ハ議長カラ御答辯ニナル
コトガ當然ノコトヽ考ヘマス
〔「議長答辯セヨ」其他發言スル者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01619310219&spkNum=116
-
117・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 議長ニハ淺原君カ
ラ御質問ガアリマセヌ、サウシテ只今ノ場
合ハ日程ヲ變更シテ、內務大臣ニ對スル質
問ノ場合デアリマス-淺原健三君
〔淺原健三君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01619310219&spkNum=117
-
118・淺原健三
○淺原健三君 私ハ日程ヲ變更シテ、警察
權行使ニ關シ內務大臣ニ質問致シタノデア
リマス故ニ、議長ハ答辯ノ必要ナイト云フ
コトダサウデアリマス、始メテ其點ガ分リ
マシテ、有難イト思ヒマスガ、私達ノヤウ
ナ議事規則ノ能ク分ラナイ者ニ對シ、議長
ガ答辯出來ナイコトヲ知リナガラ、其答辯
ヲ議長ニ讓ラレタ內務大臣ハ何ト云フ卑怯
ナ振舞デアルカ···発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01619310219&spkNum=118
-
119・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 淺原君-此場合
アナタニ申上ゲマスガ、此儘デ議長ニ御質
問ニナルト云フコトハ、先例ニモ適ヒマセ
ヌカラ、議長ニ御尋ニナラントスルナラバ、
議事進行ノ方式ニ依ッテヾモ御尋ニナッタ方
ガ、アナタノ目的ヲ御逹シニナル途デアラ
ウト議長ハ餘分ナガラ申上ゲマス(發言ス
ル者多シ)內務大臣ニ問ハレテ居ルコトニ
付テハ妨ゲテ居リマセヌ、內務大臣ニ對ス
ル質問ガアレバ御述下サイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01619310219&spkNum=119
-
120・淺原健三
○淺原健三君(續) 私ハ··
〔「內務大臣ヤレ」「何ヲシテ居ル」其他
發言スル者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01619310219&spkNum=120
-
121・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 靜肅ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01619310219&spkNum=121
-
122・淺原健三
○淺原健三君(續) 私ハ警察權行使ニ付テ
內務大臣ニ質問シタルニモ拘ラズ、議長ガ此
手續デハ答辯出來ナイト云フ規則與例ヲ百
モ承知ノ內務大臣ガ、議長ニ答辯ヲ讓ッテ
自己ノ爲スベキ答辯ヲ囘避セラレタ、其卑
怯ナ態度ヲ攻擊シテ居ルノデアリマス、私
ハ議長ニ御尋シテ居ルノデハアリマセヌ、内
務大臣ノ御答辯ガ、アレ程二度モ三度モ重
ネテ御願シテ居ルニモ拘ラズ、相モ變ラズ官
僚國務大臣ト雖モ恐ラクモウ少シ叮嚀デア
ラウニ、木デ鼻ヲ括ッタヤウナ御答辯ヲナサッ
タ、先ヅ第一ニ門前ニ殺到シタル者ヲ百名
ト仰シヤッタガ、此寫眞ガ百名ニ見エルカド
ウカ(「一部分ダ」ト呼フ者アリ)此廣場ヲ撮
シタ寫眞ガ一部分ダト見ラレルカドウカ
併シ百步千步万步ヲ讓シテ、內務大臣ノ答辯
ノ通リ、百名殺到シタトシテモ、二百名カ
ラノ正服巡査ガ居ノテ、タッタ百名ノ而モ何
等ノ武器ヲ持タザル民衆······(發言スル者
多シ)彌次ガナクナレバ發言ヲ續ケマス、
議長ハ議場ノ騷擾ヲ御取鎭メヲ願ヒマス
〔發言スル者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01619310219&spkNum=122
-
123・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 靜肅ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01619310219&spkNum=123
-
124・淺原健三
○淺原健三君(續) 若シ百步千步ヲ讓クテ
百名トシテモ、タッタ百名ノ民衆ガ、民衆ノ
自田ニ入リ得ル-民衆ノ權能デアル通用
門ニ來タカラト云ッテ、正服ガ百名モ二百
名モ居リナガラ門ヲ閉ヂナケレバナラナイ
トハ警視廳ノ警備能力ハ無能ノ極致ト謂
ハナケレバナラナイ(拍手)ソンナコトハ一
時遁レノ詭辯デアリマス、一時遁レノ囘避
的答辯デアル、私ハ內務大臣ニ、若シ百名
ノ民衆ガ來テサヘ門ヲ閉ヂナケレバナラナ
カッタトスルナラバ、往年何千何万ト押掛ケ
テ來タ時ニ、門ヲ閉ヂナカッタ其當時ノ警視
廳ノ力ト、今ノ警視廳ノ力トハ百分ノ一「パ
ーセント」ニ過ギザルモノカト言ハザルヲ
得ナイ、ソレハ內務大臣ノ無能、警視總監
ノ無能振リヲ、自ラ此壇上デ內務大臣ガ暴
露セラルヽニ過ギナイノデアル(拍手)
更ニ第二ノ質問デアリマス院內デ暴行
ガ行ハレテ居リ傷害ガ加ヘラレテ居ル
而モ前衆議院議員トシテ名前ヲ知ラレタ人
デアル、而モ信用スベキ院內醫務局デ十日
間ノ治療ヲ要スルト云フ診斷書ヲ書イタ、
此明確ナル傷害事件ニ付テ、安達內務大臣
ハ院內ノコトダカラ知ラナイ、議長ニ關ス
ルコトデアルガ故ニ知ラナイ、內務大臣、
若シ議長ガ此席上デ、私ハ命令ヲ發シタモ
ノデナイト宣言シタナラバ安達內務大臣
ハ今ノ御答辯ヲ何ト始末ヲ御附ケニナル積
リデアルカ(拍手)民政黨ノ諸君ガ反對黨ノ
反對投票ヲ蹴飛バシテ、藤澤幾之輔君ヲ議
長ニ擧ゲラレタコトハ、其人格高潔ナルコ
トガ全部ノ原因ナリト信ズル、然ラバ藤澤
幾之輔氏ガ昨日議長應接間ニ於テ、新聞記
者立會ノ下デ明言セラレタ言葉ヲ眞實ト承
ルコトハ、當然過ギル程當然ナコトデハナ
イカ、藤澤議長ノ此明確ナル明言アルニモ
拘ラズ、安達內務大臣ハ之ヲ囘避セラレテ
居ル、私ハ此重要ナル緊急質問ニ當リ、安
達內務大臣ガ顧ミテ他ヲ言ウテ、明確ナ答
辯ガ出來ナイノハ、安達內相ノ治下、如何ニ
極端ナル警察萬能政治ガ行ハレテ居ルカト
云フコトヲ、安達內務大臣ハ承認セラレナ
ケレバナラナイ(拍手)私ハ院外ニ於ケル無
產黨運動ガ、常ニ明ルイ政治、民衆警察、
言論ノ自由尊重、民衆ノ身體保護ナドト云
フ民政黨一流ノ空宣傳バカリデ、民衆ガ欺
瞞セラレテ居ルケレドモ、事實ハ安達謙藏
氏ノ治下、吾々無產運動者ハ甚シイ屈辱ト
蹂躪ヲ受ケテ居ルノデアリマス、共維圖
ガーソレヲ小サクシタ圖面ガ昨日ノ暴行
デアリマス、處モアラウニ、場所柄モ辨ヘ
ズ、衆議院ノ構內デ、安達謙藏氏ハ斯ノ如
キ部下ヲ養成セラレツヽアル、私ハコンナ
安達內務大臣ニ向ッテ民衆ノ警察ナドヲ質
問スル吾々ノ方ガ愚デアルコトヲ悲シム、
唯吾々ハ斯ノ如キ安達謙藏氏ノ封建的警
察政治ノ打破ハ、唯濱口內閣ヲ叩潰スコト
ニ依ッテノミ實現スルコトヲ信ズルガ故ニ、
私ハ安達內相ニ對スル質問ハ打切リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01619310219&spkNum=124
-
125・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 淺原君、議事進行
ガアリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01619310219&spkNum=125
-
126・淺原健三
○淺原健三君 アリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01619310219&spkNum=126
-
127・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 之ヲ許シマス
〔發言スル者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01619310219&spkNum=127
-
128・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 靜肅ニナサイ
〔淺原健三君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01619310219&spkNum=128
-
129・淺原健三
○淺原健三君 私ハ議事進行ニ關シテ、議
員ガ議會內デ自己ノ權利義務ヲ完全ニ行使
シ得ルヤ否ヤニ付テ、議長ニ御尋致シタイ
ト思フノデアリマス
昨二月ノ十八日午後五時二十分、通用門
ガ突如トシテ閉鎖セラレ、衆議院議員ノ登
院ガ警察官ニ依ッテ阻止セラレマシタガ、、議
長ハ通用門閉鎖ノ命令ヲ發セラレタカ否
カ、若シ命令ヲ發セラレタトスルナラバ
如何ナル理由デ命令ヲ御發シニナッタカ、更
ニ若シ命令ヲ發セラレズトスルナラバ、議
長ノ命令ナキニ拘ラズ通用門ガ閉鎖セラレ
テ居ッタ、此事實ニ對シ院內取締ノ絕對責任
アル議長ハ、如何ナル處置ヲ御執リニナリ、
如何ナル御考ヲ御持チニナッテ居ルカ、此一
點デアリマス
更ニ第二ハ閉鎖セラレタル門カラ-閉
鎖セラレマシタ-閉鎖致サレマシタ門カ
ラ、無產黨ノ議員五名ガ入院致シマシタル
際ニ、正服警官ハ各無產黨議員ヲ打ツ蹴ル
ノ暴行ヲ敢テシ、更ニ登院章ヲ持テル社會
民衆黨所屬前衆議院議目龜井貫一郞君ヲ、
院內ノ醫務局診斷ニ基ケバ、治療十日ノ傷
害ヲ與ヘラレタル此事實ニ對シ、議長ハ如
何ナル議長トシテノ善後處置ヲ御執リニ
ナッタカ、是ガ一ツ
第三ハ此門ヲ閉鎖セラレテ居ッタ時間ハ、
議長ハドノ位ト御認ニナッテ居ルカ、吾々ノ
知ル所ニ依レバ······(「議長ハ知ラナイ」ト
呼フ者アリ)議長ガ門ノ閉ッテ居ルコトヲ知
ラナイナドト云フ怠慢ナル議長ガ何處ノ世
界ニアルカ、私達ノ知レル範圍ニ依リマス
レバ-私達ノ知レル範圍ニ依リマスレ
バ、約二十四五分間門ガ閉メラレテ居ッタノ
デアリマス、其爲ニ議員五名ガ登院ノ自由
ヲ失ヒ、遂ニ······(「表門カラハイレバ宜イ
ヂヤナイカ」ト呼フ者アリ)、遂ニ豫算案ノ
討議ニ當ノテ採決ニ加ハルコトガ出來マセ
ヌデシタガ、議長ハ通用門ノ守衞又ハ警察
官ニ向ヒ、議員ノ登院ハ本日ハ必ズ正門ニ
廻ルベシト命令ヲ發セラレタカドウカ、諸
君ノ彌次ノ如キ出鱈目ナ命令ハ恐ラク發セ
ラレナカッタデアラウ、然ラバ何人ノ手ニ
依シテ豫算ノ採決ニ當リ投票權ノ行使ヲ不
能ナラシムルガ如キ閉鎖ヲ行ッタノデアル
カ、是レ議員ノ權能ヲ蹂躙シ、議員ノ權能
行使ヲ無視スル夥シイモノデアリマスガ、
之ニ對スル藤澤幾之輔氏ノ御考ハ如何デア
ルカ
以上三點ヲ御尋致シテ、藤澤氏ノ御答辯
ニ依リ、再質問致スコトヲ玆ニ保留致シテ
置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01619310219&spkNum=129
-
130・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 淺原君ノ御質問ニ
御答致シマス、昨十八日芝協調會館ニ於テ、
無產黨共同鬪爭委員會主催九議會解散要
求無產者大會ノ結果、陳情ノ爲メト言ッテ
百餘名本院ノ通用門ニ押寄セ、腕ヲ組ミ一
團トナリ、突進セントシテ、甚ダ不穩ノ情勢
ヲ示シマシタノデ、豫テ議院警備ノ爲メ出
張中ノ警察官ガ、其狀況ニ鑑ミ、構內ニ入
ルコトヲ拒絕セントシタルニ、其一〓ハ强
ヒテ侵入セントシタノデ、一時-一時通
用門ヲ閉鎖シテ之ヲ防止致シマシタトノ事
デアリマス、議長ガ議院警備ノ爲メ會期中
警察官ノ出張ヲ求ムルコトハ法規ニ基ク
コトデアリマシテ、又實際初期議會以來ノ
慣行デモアリマス(拍手)議長ハ其際會議中
デアリマシテ、議長席ニ著イテ居ッタノデ、
後ニ至ッテ其事情ノ報〓ヲ受ケ、承知致シタ
次第デアリマス、其際警察官ノ執リタル所
ノ行爲ハ、固ヨリ警備ノ職務ニ當ル者ノ當
然爲スベキ任務ヲ果シタモノト思フノデア
リマス、暴行云々ノコトニ付キマシテハ
議長ハ未ダ左樣ナ事實ノアッタ報〓ヲ受ケ
テ居リマセヌ、聞ク所ニ依レバ警察官ノ暴
行ヲ爲シタト云フ事實ハナイト云フコトデ
アリマスガ、是ハ只今ノ演說ヲ聽キマシタ
コトデアリマスカラ、尙ホ取調ベルコトニ
モ致シマセウ、又通用門閉鎖ノ際多少混雜
致シマシタ趣デ、其陳情員中ニハ代議士及
ビ前代議士ノ黴章ヲ佩ビラレタル方ガアツ
タノデ、ソレ等ノ人々ニ對シテハ早速院內
ニ入レルヤウ取計ッタトノコトデアリマス、
又議員ノ登院ヲ阻止シタト云フコトデアリ
マスガ、通用門ハ混雜ヲ避ケル爲メ一時閉
鎖シタノミデアリマス又議員及ビ前代議
士ノ諸君ハ早速入場セラレルヤウ致シタ
トノコトデアリマス、ノミナラズ正門ノ方
ハ平素ノ通リ何等異狀ガナカッタノデアリ
マスカラ、議員諸君ノ入場ハ御自由デアツ
タノデアリマス、只今ノ所ニ於テ議長カラ
御答致ス所ノモノハ是ダケデアリマス
〔淺原健三君「議長々々」ト呼フ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01619310219&spkNum=130
-
131・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 議事進行デアリマ
スカラ再質問ハ許シマセヌ-此場合一言
致シマス、先刻秋田〓君カラ爲サレタル所
ノ議事進行ノ趣ヲ政府ニ通知致シマシタ
所、左ノ如キ報告ヲ得マシタカラ、之ヲ朗
讀致シマス
首相臨時代理ハ濱口首相ノ症狀ニ付「唯
今ノ狀況カラ推測致シマスルト、今後意
外ノ變化ノナキ限リ、三月上旬中ニハ出
席致スコトガ出來ルデアラウト存ジテ居
リマス」ト、本日本議場ニ於テ報告シタノ
デアリマスガ、此言明ヲナスニ付テハ
首相自身竝ニ主治醫ノ意見ヲモ愼重ニ考
量シタ次第デアリマシテ今日ノ所、是
以上ノ言明ハ致シ兼ネマス
斯ウ云フ御返事デアリマス-秋田〓君、
何デスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01619310219&spkNum=131
-
132・秋田清
○秋田〓君 極メデ簡單デアリマズガラ、
當席ヨリ發言スルコトノ御許シヲ願ヒマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01619310219&spkNum=132
-
133・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 秋田〓君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01619310219&spkNum=133
-
134・秋田清
○秋田〓君 只今ノ議長ノ御報告ハ承リマ
シタ、私ガ議長ヲ通ジテ御尋致シタルコト
ニ對シテ、政府ヨリ得タル御答ヲ以テ致シ
マウテハ何等吾々ノ期待ニ副ハザルモノ
ガアルノデアリマス、恐クハ國民多數ノ者
モ滿足致シマスマイ(拍手)隨テ濱口君ノ臣
節問題ハ、今後囂々タル世論ヲ惹起スデア
ラウト思ハルヽノデアリマス、吾々ハ此濱
口君登院時期如何ノ問題ニ付キマシテハ
今後嚴重ニ政府ノ態度ヲ監視スルト共ニ、
相當ノ處置ヲ執ルベキコトヲ、玆ニ言明致
ス次第デアリマス(拍手)尙ホ議長ニ於カセ
ラレマツテモ、本院ノ議權尊重ト其擁護ノ
意味ニ於キマシテ、相當ノ御考慮アランコ
トヲ促シテ置キマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01619310219&spkNum=134
-
135・作田高太郎
○作田高太郞君 殘餘ノ日程ヲ延期シ、本
日ハ是ニテ散會セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01619310219&spkNum=135
-
136・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 作田君ノ動議ニ御
異議ハアリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01619310219&spkNum=136
-
137・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 御異議ナシト認メ
マス、仍テ其通リ決シマシタ、次囘ノ日程
ハ公報ヲ以テ御通知致シマス、本日ハ是ニ
テ散會致シマス
午後六時十三分散會
衆議院議事速記錄第十五號中正誤
頁段行誤正
三三七二三工廠機能工廠能力
三三七二八工廠機能工廠能力
三三七二二五軍艦ヲ造ル軍艦ヲ造ル
ペキ所ノベキ爲メノ
三三八一一六モウ少シ活モウ少シ其
瞑ヲ活眼ヲ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01619310219&spkNum=137
4. 会議録のPDFを表示
この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。