1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和六年二月二十六日(木曜日)
午後一時二十五分開議
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議事日程 第十八號
昭和六年二月二十六日
午後一時開議
第一 無盡業法改正法律案(政府提出) 第一讀會
第二 右議案の審査を付託すへき委員の選擧
第三 瓦斯事業法中改正法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第四 右議案の審査を付託すへき委員の選擧
第五 取引所税法中改正法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第六 昭和四年度第一豫備金支出の件(承諾を求むる件)
第六 昭和四年度特別會計第一豫備金支出の件(承諾を求むる件)
第六 昭和四年度豫備金外に於て豫算超過及豫算外支出の件追加(承諾を求むる件)
第六 昭和四年度特別會計第二豫備金支出の件(承諾を求むる件)
第六 昭和四年度特別會計豫備金外に於て豫算超過及豫算外支出の件追加(承諾を求むる件)
第六 昭和五年度第二豫備金支出の件(承諾を求むる件)
第六 昭和五年度特別會計第二豫備金支出の件(承諾を求むる件)
第六 昭和五年度特別會計豫備金外に於て豫算外支出の件(承諾を求むる件)
第七 右議案の審査を付託すへき委員の選擧
第八 鑛業法中改正法律案(大里廣次郎君外三十七名提出) 第一讀會(前會の續)
第九 鑛業法中改正法律案(坂井大輔君外二名提出) 第一讀會(前會の續)
第十 辯護士法中改正法律案(北浦圭太郎君外三名提出) 第一讀會
第十一 違警罪即决例中改正法律案(一松定吉君外三名提出) 第一讀會
第十二 行政執行法中改正法律案(一松定吉君外三名提出) 第一讀會
第十三 家祿賞典祿給與未濟に關する法律案(末松偕一郎君外四名提出) 第一讀會
第十四 鑛業法中改正法律案(丹下茂十郎君外一名提出) 第一讀會
第十五 度量衡法中改正法律案(一松定吉君提出) 第一讀會
第十六 計量士法案(一松定吉君提出) 第一讀會
第十七 未成年者飮酒禁止法中改正法律案(長尾半平君外二十四名提出) 第一讀會
第十八 恩給法中改正法律案(山下谷次君外一名提出) 第一讀會
第十九 刑事訴訟法中改正法律案(一松定吉君外四名提出) 第一讀會
第二十 刑事訴訟法中改正法律案(長谷川陸郎君外二名提出) 第一讀會
第二十一 利息制限法中改正法律案(一松定吉君外四名提出) 第一讀會
第二十二 利息制限法中改正法律案(原夫次郎君外三名提出) 第一讀會
第二十三 民事訴訟法中改正法律案(村岡吾一君外三名提出) 第一讀會
第二十四 航空法中改正法律案(永田良吉君提出) 第一讀會
第二十五 河川法中改正法律案(山枡儀重君外五名提出) 第一讀會
第二十六 借地借家調停法中改正法律案(小久江美代吉君提出) 第一讀會
第二十七 借家法中改正法律案(小久江美代吉君外二名提出) 第一讀會
第二十八 六大都市に關する法律案(森田茂君外十八名提出) 第一讀會
第二十九 産業組合中央金庫法中改正法律案(由谷義治君外十四名提出) 第一讀會
第三十 産業組合中央金庫法中改正法律案(岸田正記君外二名提出) 第一讀會
第三十一 癈兵優遇に關する法律案(一松定吉君外一名提出) 第一讀會
第三十二 司法代書人法中改正法律案(斯波貞吉君外一名提出) 第一讀會
第三十三 農會法中改正法律案(牛場清次郎君外三名提出) 第一讀會
第三十四 農會法中改正法律案(末松偕一郎君外十二名提出) 第一讀會
第三十五 耕地整理法中改正法律案(牛場清次郎君外三名提出) 第一讀會
第三十六 酒造税法中改正法律案(古島義英君外一名提出) 第一讀會
第三十七 道路維持修繕費損傷者負擔法案(栗原彦三郎君提出) 第一讀會
第三十八 穀類搗精製粉取締法案(大竹貫一君外四名提出) 第一讀會
第三十九 私生子の名稱に關する法律案(一松定吉君外六名提出) 第一讀會
第四十 負債整理組合法案(土井權大君外三名提出) 第一讀會
第四十一 産業組合法中改正法律案(土井權大君外三名提出) 第一讀會
第四十二 農工銀行法中改正法律案(土井權大君外三名提出) 第一讀會
第四十三 日本勸業銀行法中改正法律案(土井權大君外三名提出) 第一讀會
第四十四 北海道拓殖銀行法中改正法律案(土井權大君提出) 第一讀會
第四十五 米穀需給法案(土井權大君外三名提出) 第一讀會
第四十六 米穀需給特別會計法案(土井權大君外三名提出) 第一讀會
第四十七 計理士法中改正法律案(定塚門次郎君外二名提出) 第一讀會
第四十八 無盡業法中改正法律案(松田正一君外二名提出) 第一讀會
第四十九 古物商取締法中改正法律案(石原善三郎君外二名提出) 第一讀會
第五十 身元保證に關する法律案(一松定吉君外三名提出) 第一讀會
第五十一 辨理士法中改正法律案(名川侃市君外四名提出) 第一讀會
第五十二 大日本帝國國旗法案(石原善三郎君提出) 第一讀會
第五十三 大正十五年法律第五十二號中改正法律案(土地區劃整理に伴ふ清算金等に關する件)(安藤正純君外三十八名提出) 第一讀會
第五十四 震災に因る土地區劃整理施行區内の假建築著手期限變更に關する法律案(戸井嘉作君外三十八名提出) 第一讀會
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001・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 諸般ノ報〓ヲ致サ
セマス
〔書記官朗讀〕
一政府ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
自動車交通事業法案
輸出組合法中改正法律案
重要輸出品工業組合法中改正法律案
(以上二月二十五日提出)
簡易生命保險法中改正法律案
(以上二月二十六日提出)
昭和四年度第一豫備金支出
ノ件
昭和四年度特別會計第一豫
備金支出ノ件
昭和四年度豫備金外ニ於テ
豫算超過及豫算外支出ノ件
追加
昭和四年度特別會計第二豫
備金支出ノ件
昭和四年度特別會計豫備金
外ニ於テ豫算超過及豫算外
支出ノ件追加
昭和五年度第二豫備金支出
ノ件
昭和五年度特別會計第二豫
備金支出ノ件
昭和五年度特別會計豫備
金外ニ於テ豫算外支出ノ
件
(以上二月二十五日提出)
一昨二十五日貴族院ヨリ受領シタル政府提
出案左ノ如シ
瓦斯事業法中改正法律案
一議員ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
產師法案
提出者
土屋〓三郞君
大里廣次郞君
岡田素臣君
靑木亮貫君
小俣政一君
中馬興丸君
斯波貞吉君
商工會議所法中改正法律案
提出者
山枡儀重君
戶井嘉作君
(承諾ヲ求
ムル件)
野方次郞君
田中養達君
中崎俊秀君
加藤鐐五郞君
中島琢之君
木村〓治君
末松偕一郞君
農會法中改正法律案
提出者
山枡儀重君末松偕一郞君
戶井嘉作君
水產會法中改正法律案
提出者
山枡儀重君末松偕一郞君
戶井嘉作君
畜產組合法中改正法律案
提出者
山枡儀重君末松偕一郞君
戶井嘉作君
土地賃貸價格調査委員會法中改正法律案
提出者
山枡儀重君末松偕一郞君
戶井嘉作君
所得稅法中改正法律案
提出者
山枡儀重君末松偕一郞君
戶井嘉作君
國立種馬所設置ニ關スル建議案
提出者
神部爲藏君岡田春夫君
大沼國立公園設定ニ關スル建議案
提出者
前田卵之助君渡邊泰邦君
國民負債整理公債發行ニ關スル建議案
提出者林平馬君
東京帝國大學農學部附屬農業〓員養成所
獨立ニ關スル建議案
提出者
山枡儀重君增田義一君
荒川五郞君山下谷次君
東〓實君
(以上二月二十四日提出)
赤城榛名妙義ノ三山ヲ中心トスル國立公
園設定ニ關スル建議案
提出者
靑木精一君木暮武太夫君
國產木材使用ニ關スル建議案
提出者
本多眞喜雄君松田喜三郞君
氏家〓君山内亮君
池田敬八君
樺太森林ノ伐採及木材ノ島外移出制限ニ
關スル建議案
提出者
池田敬八君本田眞喜雄君
松田喜三郞君山内亮君
森林火災保險ニ關スル建議案
提出者
氏家〓君松田喜三郞君
本多眞喜雄君山內亮君
河川使用許可ニ關スル建議案
提出者
松田喜三郞君氏家〓君
山內亮君池田敬八君
木材關稅引上改正ニ關スル建議案
提出者
松田喜三郞君本多眞喜雄君
山內亮君池田敬八君
氏家〓君
木材類ノ鐵道貨物運賃輕減ニ關スル建議
案
提出者
池田敬八君本多眞喜雄君
松田喜三郞君氏家〓君
山内亮君
山村ノ課稅負擔輕減ニ關スル建議案
提出者
松田喜三郞君本多眞喜雄君
氏家〓君山內亮君
池田敬八君
(以上二月二十五日提出)
〔左ノ報〓ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノ爲
玆ニ揭載ス〕
一去二十四日幣原內閣總理大臣臨時代理ヨ
リ左ノ通發令アリタル旨ノ通牒ヲ受領セ
リ
社會局部長富田愛次郞
第五十九囘帝國議會內務省所管事務政府
委員被仰付
營繕管財局理事太田嘉太郞
第五十九囘帝國議會大藏省所管事務政府
委員被仰付
一去二十四日議長ニ於テ選定シタル委員左
/白
國立公園法案(政府提出)委員
八木逸郞君信太儀右衞門君
高橋元四郞君小山令之君
矢野庄太郞君前田卯之助君
百瀨渡君櫛部荒熊君
菊池良一君今堀辰三郞君
靑木精一君鈴木安孝君
佐々木平次郞君崎山武夫君
林七六君岩本武助君
志波安一郞君中田験郞君
勞働組合法案(政府提出)外一件委員
添田敬一郞君由谷義治君
比佐昌平君多田滿長君
濱野徹太郞君谷原公君
櫻內辰郞君飯塚春太郞君
三宅磐君栗原彥三郞君
久留義〓君長尾半平君
〓水德太郞君田中貢君
堀内良平君三浦虎雄君
加藤久米四郞君堀切善兵衞君
安藤正純君田子一民君
松村光三君守屋榮夫君
太田正孝君勝田銀次郞君
金光庸夫君西岡竹次郞君
松谷與二郞君
一去二十四日ニ於ケル特別委員ノ異動左ノ
如シ
米穀法中改正法律案(政府提出)外一件委
員
辭任田邊熊一君補闕松山常次郞君
地租法案(政府提出)外六件委員
辭任東〓實君補關前田米藏君
小作法案(政府提出)委員
辭任林七六君補闕加藤知正君
一去二十四日提出者ニ於テ撤囘シタル議案
左ノ如シ
民事訴訟法中改正法律案(長谷川陸郞君
外一名提出)
一昨二十五日委員長及理事互選ノ結果左ノ
如シ
國立公園法案(政府提出)委員
委員長八木逸郞君
理事
菊池良一君信太儀右衞門君
櫛部荒熊君靑木精一君
岩本武助君
勞働組合法案(政府提出)外一件委員
委員長添田敬一郞君
理事
比佐昌平君由谷義治君
多田滿長君田子一民君
守屋榮夫君
一昨二十五日理事補閱選擧ノ結果左ノ如シ
市制中改正法律案(政府提出)外三件委員
理事中谷貞賴君(委員田子一民君本
日理事辭任ニ付其ノ補闘)
一昨二十五日ニ於ケル特別委員ノ異動左ノ
如シ
勞働組合法案(政府提出)外一件委員
辭任松谷與二郞君補關西尾末廣君
輸出生絲檢査法中改正法律案(政府提出)
委員
辭任比佐昌平君補闕氏家〓君
地租法案(政府提出)外六件委員
辭仟前田米藏君補闕久田宗吉君
辭任海老澤爲次郞君補闕前田卯之助君
辭任戶部良祐君補闕石橋茂君
辭任前田卯之助君補闕海老澤爲次郞君
辭任八田宗吉君補闕藤井達也君
米穀法中改正法律案(政府提出)外一件委
員
辭任篠田有德君補闕平野鍋吉君
辭任北原阿智之助君補闕谷原公君
一今二十六日幣原內閣總理大臣臨時代理ヨ
リ左ノ通發令アリタル旨ノ通牒ヲ受領セ
リ
內務書記官鈴木敬
第五十九囘帝國議會內務省所管事務政府
委員被仰付発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01919310226&spkNum=1
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002・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 是ヨリ會議ヲ開キ
やく、片山哲君カラ議事進行ニ關スル發言
ヲ求メラレテアリマス-片山君
〔片山哲君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01919310226&spkNum=2
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003・片山哲
○片山哲君 私ハ一昨日上程サレマシタ勞
働組合法案ノ審議ニ際シマシテ、執リタル
議長ノ處置ニ付キマシテ、議長ニ質問致シ
タイノデアリマス、申スマデモナク勞働組
合法案ハ、極メテ重大ナル法案デアリマシ
テ、特ニ我國勞働大衆ニ取リマシテハ、此
問題ニ對シマシテ多クノ疑問ヲ持チ、否此
問題ニ對スル所ノ矛盾ト不合理ヲ追窮シナ
ケレバナラナイ、强キ意思ヲ持ッテ居ルノ
デアリマス、而シテ此議事進行ニ關スル私
ノ發言ノ順序ト致シマシテ、今マデノ經過
ヲ少シク申述べナケレバナラナイノデアリ
マス、殊ニ此勞働組合法案ハ、吾々カラ申シ
マスルナラバ、是ハ勞働者取締法デアル、
又突如トシテ改正上程サレマシタ勞働爭議
調停法ハ、是亦勞働爭議彈壓法デアル、斯
樣ナ法案ニ付テ無產階級ノ意見ヲ聽カズ、
否此意見ヲ抑付ケテ、何等ノ發言ヲ爲サシ
メズシテ、審議セシメルト云フヤウナコト
ニナッテ參リマスルナラバ、今日立法府ノ意
義ガ何處ニアリマセウカ、ソレダカラ今日
ノ政府ハ資本家本位ノ政府デアリ、又斯樣
ナ取扱ヲ致シマスル議會ガ、反動議會デア
ルト言ハレル所以ハ又其處ニアリト謂ハ
ナケレバナラナイ、此問題ニ關シマシテ
吾々ハ十數箇ノ疑問ヲ持テテルノデアリ
マス、其假面ヲ剝イデ、勞働組合法案ノ名ヲ
藉リマシテ、實際ニ於キマシテハ勞働者ノ
自然發展ヲ彈壓セントスル、反動法案デア
ルト云フコトヲ十分指摘シ、且ツ何故ニ之
ヲ今頃ニナッテ提出シタカト云フコトヲ、內
務大臣ニ質問シナケレバナラナカッタノデ
アリマス殊ニ勞働爭議調停法、是ハ死法
デアル殆ド是ハ活用サレズシテ、藏ノ內
ニシマッテ置カレタヤウナ、死ンダ法律デ
アッタノデアリマス、僅ニ一囘是ガ大阪ニ於
テ適用サレタニ過ギナカッタ法律デアッタノ
デアリマス之ヲ勞働組合法案ト同ジ日ニ
上程致シマシテ、審議セシメヨウト云フ所
ニ、勞働組合法案ガ卽チ反動化シ、取締法
化シ、彈壓法化シ、爭議取締法トナッタ所
以ガ、洵ニ明瞭デアルト私ハ考ヘルノデア
リマス、斯ル意思ガ今日日本ノ勞働大衆ノ
中ニ燃ヘ上ッテ居ルノデアリマス、其意思ヲ
此議會ニ於テ反映セシメルコトハ、私共ノ
任務デアルノミナラズ、又審議ニ際シマシ
テ、當然執ラナケレバナラナイ過程デアルト
云フコトモ、亦明瞭デアルト謂ハナケレバ
ナラナイ、之ヲ發言ノ機會ヲ與ヘズシテ、
闇カラ闇ニ葬リ去ッタト云フ所ニ、今日ノ既
成政治ノ「カラクリ」アリト云フコトヲ言ハ
ナケレバナラナイ、又今日ノ兩政黨ガ所謂
交涉會ト云フ名ノ下ニ於テ吾々ノ發言ヲ封
ジテシマッタ、而シテ又議長ハ其妥協ニ迎
合致シマシテ、ソレヲ其儘ニ採用致シマシ
テ、質問ヲ總テ打切ッテシマッタト云フ所ニ、
議長ハ今日ノ此妥協ニ乘ッテ、卽チ傀儡トナッ
テトナッテ議事ヲ取扱ッタト云フコトモ、
明瞭デアルト謂ハナケレバナラナイノデア
リマス、ソコデ私共ハ此意味ヲ明瞭ニシナ
ケレバナラナイ、議長ニ對シマシテ、其意
義ヲ明瞭ニ聞カナケレバナラナイト云フコ
トカラ、議事進行ニ關スル發言ヲ求メタノ
デアリマス、私共ノ一昨日議事進行ニ關ス
ル發言ヲ求メマシタ所以ハ、斯樣ナ强キ意
思ト、斯樣ナル熱烈ナル要望ニ依ッテ、其意
思ヲ明カニシナケレバナラナイ立場デアツ
タト云フコトハ明瞭デアルト共ニ、此議事
進行ノ發言ハ極メテ重要ナル內容ヲ持ツ、
重大ナル立場ニ立ッテ居。クト云フコトハ明
瞭デアリマス、ソコデ吾々ハ兩派ノ妥協ニ
依ル質問打切ノ動議ガ、如何ナル方法ニ依ッ
テ進ンダカ、ソレハ知リマセヌ、私ハ猪野
毛君ノ演說中直チニ議事進行ニ關スル發言
ノ通〓ヲ、書記官長ヲ通ジテ議長ノ手許ヘ
提出致シタノデアリマス、議長ハ此議事進行
ニ關スル發言ニ對シマシテ、適法ナル處置
ヲ執ラナケレバナラナイノハ當然デアリマ
ス、質問打切ノ動議ガ何時ドウ云フ風ナ形
デ出タカ、吾々ハソレハ知リマセヌ、價例
ニ依リマスルナラバ、質問打切ノ動議ハ
或ハ優先的ニ是ハ審議サレルト云フコトガ、
今日ノ慣例トナッテ居ルカモ知レマセヌケ
レドモ、假ニ之ヲ容認致シマシテ、議事進
行ニ關スル私ノ發言ハ、質問打切ノ動議ノ
後ニ許サレルト云フコトニナッタト致シマ
シテモ、議長ハ其後ニ於テ一體如何ナル處
置ヲ執ラレタノデアリマセウカ、卽チ私ノ
議長ニ愬ヘタイ點ヲ明瞭ニ致シテ見マスル
ナラバ、一昨日ノ議事進行ニ關スル發言ニ
對スル議長ノ處置ハ如何デアッタカ、卽チ作
田高太郞君ガ提出セラレマシタ質問打切ノ
動議ガ可決セラレマシタ後ニ、私ノ議事進
行ハ許サルベキ順序トナッテ居ナケレバナ
ラナイノデアリマス、卽チ私ノ議事進行
ハ、此質間打切動議前ニ提出致シタノハ勿
論ノコト、質間打切動議ニ對スル反對デモ
アリ、此質問ハ續行シテ行カナケレバナラ
ナイ、卽チ勞働組合法案ト云フモノハ、無
產階級ニ取リマシテ重要ナル法案デアリマ
スカラ、質問ヲ打切ラズシテ質問打切前ニ
質問ヲ繼續シ、無產階級ノ意見ヲ十分ニ此
席ニ於テ發露セシメナケレバナラナイト云
フ重大ナル事項デアッタノデアリマスカ
ラシテ、當然是ハ質問ヲ打切ラズニ發言ヲ
許スベキハ勿論ノコトデアリマス、假ニ慣
例ニ依リマシテ、質問打切ノ動議ガ優先權
ヲ持ッテ居ルト致シマシテモ、其後ニ於テ斯
樣ナ取扱ヲシタト云フコトハ、議長ハ本會議
ニ於テ明瞭ニシナケレバナラナイ立場デア
ルノニモ拘ラズ、之ヲ少シモ說明セズシテ、
其儘ニ之ヲ闇カラ闇ニ葬テテママシタ議長ノ
處置ハ、一體如何ナル根據ニ依→タモノデ
アルカ、之ヲ追窮シナケレバナラヌノデア
リマス、特ニ速記錄ニ依リマスト、作田君
ノ動議ハ「質疑終局ノ動議ヲ提出致シマ
ス、卽チ兩案ニ對スル質疑ハ此程度ヲ以
テ終局セラレンコトヲ望ミマス」議長
ハ「作田君ノ動議ニ御異議アリマセヌ
カ」是デ質疑打切ノ動議ガ終ッテ居ルノ
デアリマス、慣例ニ依リマシテモ或
ハ法規ニ依リマシテモ、此後ニ議事進
行ニ關スル發言ヲ許スベキハ、當然ノコト
デアルト謂ハナケレバナラナイノデアリマ
ス、之ヲ何等處置セズシテ、此儘ニ葬ッテシ
マッタ議長ノ處置ハ、極メテ專斷デアリ、法
規ヲ無視シタモノデアルト謂ハナケレバナ
ラヌノデアリマス、更ニ又第五ノ日程ニ移
リマシテ、作田君カラ「各案ヲ一括シテ議長
指名二十七名ノ委員ニ付託セラレンコトヲ
望ミマス」ト云フ、別ノ動議ガ茲ニ現レテ居
リマス、前ノ動議ト違ッテ居リマス、其間ニ
別箇ノ問題ガ提議サレテ居リマスカラ、議
事進行ニ關スル發言ハ、其間ニ介在サレナ
ケレバナラナイモノデアルト云フコトハ
當然ノコトデアルト私ハ思フノデアリマ
ス、然ルニモ拘ラズ議長ハ此別箇ノ問題デ
アル委員付託ノ動議ヲ其儘採用シ、更ニ又
議長ハ「次囘ノ日程ハ公報ヲ以テ御通知致
シマス、本日ハ是ニテ散會致シマス」ト云
フ風ニ、會議ヲ閉ヂテシマッタ、閉ヂル迄ニ
ハ重要ナル議事進行ニ關スル發言ガアルノ
ニモ拘ラズ、ソレニ何等ノ處置ヲ致サズシ
テ、散會ヲ宣シテシマッタト云フコトハ、極
メテ不當ナル事デアルト謂ハナケレバナラ
ヌ、之ヲ要約スルナラバ、結論ニ於テハ勞
働組合法案、勞働爭議調停法案ハ、爭議調
停法案或ハ組合法案ノ名ヲ藉リテ、無產階
級ノ澎湃トシテ揚ノテ參リマス所ノ今日ノ
勢力ヲ彈壓シ、之ヲ暴壓セントスル、今日
ノ政治ノ「カラクリ」ニ迎合致シタ所ノ議
長ノ專斷的處置デアルト云フコトヲ、私ハ
宣言セザルヲ得ナイノデアリマス(「ノー
ノー」)何處ノ議會ニ於テ勞働組合法案ヲ審議
スルニ當リ、無產階級ノ意見、勞働大衆ノ
意見ヲ聽カズシテ審議セラレタ所ガアリ
マセウカ、極メテ廣キ氣持ヲ以テ、斯ル間
題ニ付テハ雙方ノ立場ヲ明瞭ニシ、意見ハ
十分ニ發露セシメテ、言論ニ依テ鬪フノガ、
當然ノ事デナケレバナラナイ、斯樣ナ暴壓
ニ依ッテ、言論封鎖ニ依ッテ勞働組合法ヲ審
議シヨウト云フ其意圖ハ、吾々ガ追窮シマ
スナラバ反動政治ガ、或ハ資本家本位ノ
政治ガ、極メテ濃厚ニナッテ參リマシタト
共ニ、其影響ハドウ云フ風ナ影響ヲ社會全
般ニ與ヘルカト云フコトヲ考ヘテ見マスナ
ラバ非常ニ社會世相ガ惡化スルト共ニ、
經濟恐慌ノ動亂、失業ノ洪水、非常ニ恐ル
ベキ社會狀態ガ玆ニ現ハレテ來ルト云フ、
其原因ヲ作ルモノハ斯樣ナ言論封鎖デア
リ斯樣ナ暴壓的法案ノ提出ガ原因ヲ成シ
テ居ルト謂ハザルヲ得ナイノデアリマス、
此意味ニ於テ議長ノ執リマシタ處置ハ不當
デアルト共ニ、極メテ公明ヲ缺イテ居ル、
不公平極マルモノデアル無產大衆ノ要望
ヲ壓迫シ、暴壓シタ處置デアルト言ハレテ
モ、何等辯解ノ辭ナシト言ハザルヲ得ナイ
ノデアリマス議長ノ明快ナル御答辯アラ
ンコトヲ求メル次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01919310226&spkNum=3
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004・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 片山君ニ御答スル
前ニ御注意致スコトガアリマス、アナタノ
御發言中、議長ニ對シテート申サレマ
シタ、是ハ甚ダ不穩當ト思ハレマスガ、御
取消ニナラヌモノデアリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01919310226&spkNum=4
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005・片山哲
○片山哲君 不穩デアレバ其言葉ハ取消シ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01919310226&spkNum=5
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006・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 片山君ハ取消サレ
マシター御答へ致シマス
一昨日ノ本會議ニ於テ、作田君ヨリ質疑
終局ノ動議ガ出マシタ後ニ、片山君カラ質
疑終局前ニ議事進行ニ付テ發言シタイト云
フ申出ガアリマシタ、然ルニ作田君ノ要求
ハ、只今申述ベマシタ通リ、片山君ノ要求
以前ニ係カルモノデアリマス、而モ作田君
ノ動議ハ先決問題デアリマスカラ、是ハ先
例エ依リマシテ、直チニ採決ヲ致サンケレ
バナラヌノデアリマス、故ニ片山君ノ御發
言ハ之ヲ許可シナカッタノデアリマス、片山
君ハ其後ノ事ニ付テ御述ニナリマシタケレ
ドモ、斯ル性質ノ發言ハ作田君ノ質疑
打切ノ動議ノ成立ニ依ッテ、消滅致スベキ筋
合ノモノデアリマスカラ、重ネテ之ヲ許ス
筈ノモノデモナク、又片山君カラ何等ノ說
明ナクシテ言論ニ彈壓ヲ加ヘタト云フヤウ
ナ御意見モアリマシタケレドモ、議長ハ議
事ノ進行ノ上ニ一々說明ヲ加フベキモノデ
ハナイノデアリマス、或ル特例ノ場合ニ於
テノミ說明ヲ致スコトガアルニ過ギヌノデ
アリマス之ヲ以テ御答ト致シマス
更ニ松谷與二郞君カラ議事進行ニ關シテ
發言ヲ求メラレテ居リマス、之ヲ許可致シ
マス-松谷君
〔松谷與二郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01919310226&spkNum=6
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007・松谷與二郎
○松谷與二郞君 私ノ議事進行ニ付テノ質
間ハ、去ル十八日ニ於ケル所ノ當院ノ閉門
問題、警官暴行事件、就中議員ノ登院阻止
ニ對スル問題デアリマス、ソレニ對シマシ
テ議長ハ殆ド全部之ヲ否認セラレテ、知ラ
又、存ゼヌ、ノ一點張リデアッタノデアリマ
ス、又內務大臣ニ於カレテモ、其責ヲ議長
ニ歸シテ殆ド答辯ヲ囘避セラレタ次第デゴ
ザイマス、斯ノ如キ閉門ト云フ、殆ド前例
ノナイ重大事案ニ對シテ、何等答辯ヲセラ
レナイ、就中吾々無產黨五名ニ對スル所ノ
表決權ノ機會ヲ失ッタト云フコト自體ハ、實
ニ議會ニ取ッテ重大ナル問題ナリト私共ハ
信ズル、此意味ニ於キマシテ、私ハ先ヅ議
長及ビ內務大臣ニ御尋シタイノハ憲法第
五十三條ニハ「兩議院ノ議員ハ現行犯罪又
ハ內亂外患ニ關ル罪ヲ除ク外會期中其ノ院
ノ許諾ナクシテ逮捕セラルヽコトナシ」ト規
定セラレテ居ルノデアリマス、此規定ハ全
ク議員ノ職權、機能ニ對スル所ノ絕對保障
ノ規定デアルノデアリマス、隨テ議員ノ登
院ヲ權力ヲ以テ阻止スルガ如キハ明カニ
此憲法五十三條ニ違反シタモノデアルト私
共ハ斷ゼザルヲ得ナイ、此吾々ノ登院ニ對
シテ、之ヲ阻止シタト云フコトハ、少クト
モ憲法五十三條ノ精神ヲ無視シ、之ヲ蹂躪
セルモノト議長ハ考ヘテ居ラレナイカドウ
カ、其點ヲ先ヅ第一點トシテ質問致シマス
次デ此十八日ノ豫算案討議ノ表決ニ際シ
テ、無產黨ガ事實上此暴行或ハ閉門、登院
阻止ニ依ッテ表決ニ加ハラナカッタト云フ事
實ヲ、御認メニナッタカドウカト云フコトヲ
御尋シタイノデアリマス
第三點トシテ御尋致シタイノハ、此表決
ニ加ハルコトノ出來ナカッタ原因ト云フモ
ノハ、當日協調會館ニ於ケル所ノ無產三黨
合同ノ議會解散要求大會ガアリマシテ、其
大會カラ吾々ガ決議ヲ齎シマシタル所ノ十
八名ノ委員ト共ニ議會ニ來ル途中ニ於テ
騎馬巡査五六騎、警官三百名ヲ以テ吾々ノ
登院ノ途中ヲ阻止シタノデアリマス、而モ
ドウデゴザイマセウ、私共ガ協調會館カラ
出ルト、アノ御承知ノ通リ御成門ヲ眞直グ
ニ櫻田本〓町ニ出ル道路ト云フモノハ警
官ヲ以テ人垣ヲ作ッテ、ドウシテモ通行セシ
メナイ、私共ハ已ムヲ得ズシテ、左ニ麻布
ニ行ク道ヲ切ッテ、サウシテ之ヲ右ニ切ッテ
愛宕下ニ出ヨウトスルト、ドウデゴザイマ
セウ、其道ニハ自動車約四十臺ト云フモノ
ヲ竝ベテ、サウシテ吾々ノ登院ヲ阻止シタ
ノデアリマス、甚シキニ至ッテハ、斯ウ云フ
太イ繩マデモ張ッテ吾々ヲ阻止シタ、吾々ハ
其間ヲ突破シ、縫ウテヤウ〓〓其間ニ
非常ナル殘虐ナル暴行ガアッタノデアリマ
ス、併ナガラ私自身ニ付テノ暴行ニ付テハ
彼此レ申シマセヌガ、此委員ノ中ニハ隨分
殘虐ナル暴行ヲ受ケタノミナラズ、現ニ此
委員數名ガ檢束セラレタト云フ事實ス
ラアルノデアリマス、ワレカラ丁度私
共ガ正門カラ入ルベク來タノデアリマ
ス、所ガ正門ヲ入ル手前ノ四辻ノ處デハ
警官ガ又人垣ヲ作ッテ居ルノデ、巳ムヲ
得ズ私共ハ左へ切タテ通用門ニ來タノデ
アリマス、當時通用門ニ來ルト、通用門ガ
ピタリト締メラレテ居リマシテ、サウシテ
通用門カラスラモ入ルコトガ出來ナカック
ノデアリマス、而モ龜井前代議士ノ如キハ
院內ニ於テ負傷セラレタト云フコトハ、新
聞紙自身ガ明細ニ其事實ヲ物語ッテ居ル、然
ルニ拘ラズ斯ノ如キ事實ノ有無スラモ、議
長ハ否認ヲシテ居ラルヽノデアルカ、果シ
テ此事實自身ヲ認メラレルカ、議長ヲ通ジ
テ更ニ私ハ內務大臣ニ此質問ヲ申上ゲク
1、果シテ斯ウ云フ事實ガアックノデアル
カ、ナカッタノデアルカ、全然此事實ヲ否認
セラルヽカト云フコトヲ、私ハ議長ニ御伺
ヲシタイ、而モ通用門ヲ締メタ事自身ニ付
テ、果シテ御認メニナッテ居ルカドウカ、何
人ガ締メタノデアルカト云フコトニ付テ、
十分ノ御答辯ガ願ヒタイ、此當時デアリマ
スカシュ淺原、西尾、片山君等ガ、此點ニ付
テ質問シタ時ニ於キマシテ、議長ハ何ト
言ッテ答辯ヲセラレタカト云フト、百數十名
ノ群衆ガ腕ヲ組ンデ殺倒シテ來タノデア
ル、危險ト見テ閉門シタ、ソレデ其當時警
官ノ執ック處置ハ、最モ適當デアルト本院ニ
於テ言明セラレテ居ルノデアリマス、私ハ
百數十名デアッタカ、吾々ノ主張スル二三十
名デアッタカト云フコトニ付テ、私ハ多ク事
實ヲ申上ゲマセヌ、此處ニ其閉門當時ノ寫
眞ガアルノデアリマス、此寫眞ヲ御覽ニナ
レバ極メテ明瞭デアリマス、閉門ヲ將ニセ
ントシテ居ル、警官ガ此處ニ居ル、其裏ニ
ドレダケノ警官以外ノ人員ガ居ルデアラウ
カ僅ニ二三十名シカ居ナイ〃然ルニ拘ラ
ズ百數十名ト云フヤウナ、出鱈目ノ報〓ヲ
爲サレルコト自身ガ、事實ヲ無視シテ居
ル御答辯デアル、私ハ敢テ言フ、其事實ヲ
否認セラルヽナラバ、先ヅ此寫眞カラ否認
シテ掛ラナケレバナラナイ、私ハ敢テ言フ、
議長ハ私共ノ言葉自身ヲ否認セラレテモ、
現代科學ノ粹デアル寫眞自身ハ、私ハ絕對
ニ否認出來ナイト考ヘテ居ル(拍手)議長ハ
果シテ此現代科學ヲ否認セラルヽカドウカ
ト云フコトヲ、先ヅ御尋ヲシタイト考へ
ル
更ニ私ハ申上ゲマスガ、僅カ二三十名ノ
陳情ニ來ル者ニ閉門ヲナスガ如キコトハ
殆下前例ニナイデハナイカ、私ノ聞ク所ニ
依レバ古イ十五六年前ニ於テ、何十万、
何万ト云フ詳衆ガ殺到シタ時ニ、始メテ
囘門ヲ閉サレタコトガアルト承ッテ居ル、議
長ノ仰シヤルヤウニシテモ、タック百名デハ
ゴザイマセヌカ、タッタ百名ノ者ガ陳情ニ來
ルノニ門ヲ締メテ人レナイガ如キコトハ、
實ニ私ハ議員ノ權能、議院ノ神聖ヲ害スル
モノデアルト謂ハザルヲ得ナイ、タッタ百
名、何ガ恐シイノデアル、議院內ニハ警官
ガ居リ、守衞ガ居ルデハナイカ、僅カ百名
ノ人間ガ來ルノニ門ヲ閉シテサウシテソ
レヲ阻止スルガ如キハ實ニ暴擧モ甚シイ
ト私共ハ言ハザルヲ得ナイ(拍手)果シテ斯
ノ如キ僅カ三十名ノ者ガ來タ、ソレニ對ス
ル閉門ハ、今尙ホ適當ナリト信ジテ居ラル
ルヤ否ヤト云フコトヲ御伺シタイ、私ハ斯
ノ如キ暴擧ニ對シテ、何故ニ議長ハアッサリ
ト、ソレハ間違デアッタ、僅カ三四十名、假
ニ百名トシテモ百名位ノ人ノ來ルノニ、
之ヲ閉鎖シタノハ誤デアルト、何故ニアッサ
リト陳謝ノ意ヲ表セラレナカッタカト云フ
コトヲ更ニ御尋シタイ(拍手)實際ニ於テ陳
謝ノ意思ガアルカナイカ、此點ヲ明瞭ニ御
答ヲ願ヒタイ
次ニ私ハ前代議士デアッタ龜井貫一郞君
ノ負傷ノコトニ付テ御尋ヲスル議長ハ負
傷ノ事實ダケハ認メル、認メルガ、何人ガ
暴行ヲ爲シタカ、或ハ又如何ナル時期ニ暴
行ガアッタカ、門前デアッタカ、門外デアッ
タカ分ラナイト言ハレテ居ル、其後ノ調査
ハ如何ニナッタノデアラウカ、閉門ト云フヤ
ウナ、殆ド議會始ッテ以來ナイ處置ヲ執ラ
レタ此事件ニ對シテ、而モ前代議士ガ院內
ニ於テ負傷シテ居ル、其事實スラモ調査ガ
出來ナイデ、果シテ院ノ警備、院ノ神聖ヲ
保テルモノデアルカドウカト云フコトヲ御
尋シタイ、就中龜井君ノ負傷當時ノ寫眞ハ
此處ニアリマス、門ノ內デアルト云フコト
ヲ議長ハ能ク御認メヲ願ヒタイ、亂鬪騒ギ
ヲヤッテ居ルコトハ、此寫眞デ明カヂヤナイ
カ、然ルニ拘ラズ此重大ナル門ヲ閉ヅルガ
如キ前例ノナイ重大ナル事項ニ對シテ
之ヲ有耶無耶ニ葬ムル如キハ私ハ將來ニ
惡傳ヲ貽スモノト絕叫セザルヲ得ナイノデ
アリマス(拍手)此惡例ヲ貽シテマデモ事實
ヲ否認シ、事件ヲ有耶無耶ニセラレル考デ
アルカドウカト云フコトヲ御尋シタイ私
ハ衷心カラ憂ヘテ居ル、僅カ無產黨員五名、
陳情者十八名、全部デ二十三名ヂヤナイ
カ是等ノ者ニ暴行ヲ働キ、或ハ又登院ヲ
阻止シ有ユル暴虐ナル行爲ヲ行ウテ、議
員ノ權能ヲ無視スルガ如キコトアレバ、無
產大衆ヲ激昂セシメテ如何ナル結果ヲ招
來スルカト云フコトニ付テ、其結果ニ付テ
果シテ如何ナル考ヲ議長ハ持ヲテ居ラレル
カ、ドウカ、私ハ敢テ言フ、議會ニ於テハ
ドウ云フ事實ガ行ハレテ居ル、來ル議會モ
來ル議會モ亂鬪騒ギノナイコトハナイノデ
アル現ニ先達ノ如キハ、短刀ヲ持込ミ「ピ
ストル」マデモ持込ンダト云フヂヤアリマ
セヌカ、議會ハ言論ノ府デハアルケレドモ、
言論デハ駄目デアルカラ實力ダ、寳力ダト
云フコトヲ、諸君ガ示シタモノヂヤナイカ
ト私ハ認メザルヲ得ナイ、斯ノ如キ暴力ヲ
揮フ所ノ議會ハ、吾々民衆、吾々無產階級
ノ運動ニ對シテモ此暴虐ヲ敢テスルナラ
バ、如何ニ羊ノ如キオトナシイ無產階級デ
アッテモ、私ハ恐ル、其結果惡ルベキ結果ヲ
招來シ、眞ニ憂慮ニ堪ヘザル場合アリト云
フコトヲ、議長ニ於テ十分御考慮ノ中ニ置
イテ、明瞭ナル御答辯ヲ願フト共ニ、私
極メテ明快ニアッサリト陳謝ノ意ヲ表セラ
レンコトヲ希望致シマシテ降壇致シマス
(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01919310226&spkNum=7
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008・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 松谷君ニ御答致シ
マス
警察權行使ニ關スル間題ニ付テハ、議長
ハ去十九日及二十一日ノ本會議ニ於ケ
ル淺原君其他ノ方々ノ議事進行ノ發言ニ
對シテ、其都度御答致シタノデアリマス、
議長トシテノ答辯ハ同一ノコトヲ重ネル
外ニ、最早新タニ御答スベキモノハゴザイ
マセヌ、之ヲ以テ御諒承ヲ願ヒマス-是
ヨリ日程ニ入リマス
日程第一、無盡業法改正法律案ノ第一讀
會ヲ開キマス、小川政務次官
第無盡業法改正法律案(政府提出)
第一讀會
無盡業法改正法律案
無盡業法
第一條本法ニ於テ無盡ト稱スルハ一定
ノ口數ト給付金額トヲ定メ定期ニ掛金
ヲ拂込マシメ一口每ニ抽籤、入札其ノ
他類似ノ方法ニ依リ掛金者ニ對シ金錢
ノ給付ヲ爲スヲ謂フ無盡類似ノ方法ニ
依リ金錢又ハ有價證劵ノ給付ヲ爲スモ
ノ亦同ジ但シ賭博又ハ富籤ニ類似スル
モノハ此ノ限ニ在ラズ
第二條無盡ハ營業トシテ之ヲ爲ストキ
ハ之ヲ商行爲トス
第三條無盡業ハ主務大臣ノ免許ヲ受ク
ルニ非ザレバ之ヲ營ムコトヲ得ズ
前項ノ免許ヲ受ケントスル者ハ申請書
ニ定款、事業方法ヲ記載シタル書面及
無盡契約約款ヲ添附シ之ヲ主務大臣ニ
提出スベシ
第四條無盡業ハ資本金三萬圓以上ニシ
テ拂込金額一萬五千圓以上ノ株式會社
ニ非ザレバ之ヲ營ムコトヲ得ズ
第五條無盡會社ハ其ノ商號中ニ無盡ナ
ル文字ヲ用フベシ
無盡會社ニ非ザルモノハ其ノ商號中ニ
無盡ヲ業トスル者タルコトヲ示スベキ
文字ヲ用フルコトヲ得ズ
第六條無盡會社ハ他ノ業務ヲ營ムコト
司徒、
第七條無盡會社ノ營業區域ハ道府縣ノ
區域內ニ於テ之ヲ定メ定款中ニ記載ス
ベシ
第八條無盡會社ハ左ノ場合ニ於テハ主
務大臣ノ認可ヲ受クベシ
一定款ヲ變更セントスルトキ
二事業方法又ハ無盡契約約款ヲ變更
セントスルトキ
三出張所又ハ代理店ヲ設置セントス
ルトキ
四本店其ノ他ノ營業所ノ位置ヲ變更
セントスルトキ
第九條無盡會社ハ代理店主ヲシテ其ノ
代理事務ニ關シ代理店ノ出張所其ノ他
ノ從タル營業所又ハ復代理店ヲ設ケシ
ムルコトヲ得ズ
無盡會社ノ代理店主ハ其ノ代理事務ニ
關シ代理店ノ出張所其ノ他ノ從タル營
業所又ハ復代理店ヲ設クルコトヲ得ズ
第十條無盡會社ハ左ノ方法ニ依ルノ外
其ノ營業上ノ資金ヲ運用スルコトヲ得
ズ
國債、地方債其ノ他特別ノ法令ニ
依リ設立シタル法人ノ債劵又ハ株式
ノ買入
二前號ノ有價證劵又ハ不動產ヲ擔保
トスル貸付
三掛金者ニ對シ旣ニ拂込ミタル金額
ヲ限度トスル貸付
四掛金者ニ對シ旣ニ拂込ミタル金額
ヲ超過シ契約給付金額ヲ限度トスル
貸付
五銀行ヘノ預ケ金又ハ郵便貯金
前項第四號ノ規定ニ依ル貸付金總額ハ
拂込資本金及諸準備金ノ總額ヲ超ユル
コトヲ得ズ
第十一條無盡會社ガ會社財產ヲ以テ其
ノ債務ヲ完濟スルコト能ハザルニ至リ
タルトキハ無盡契約ニ基ク會社ノ債務
ニ付各取締役ハ連帶シテ其ノ辨償ノ責
一位三つ
前項ノ責任ハ取締役ノ退任登記前ノ債
務ニ付退任登記後二年間仍存續ス
第十二條無盡會社竝ニ其ノ取締役、監
査役、使用人及代理店主ハ何人ノ名義
ヲ以テスルヲ問ハズ自己ノ計算ニ於テ
其ノ會社ト無盡契約ヲ爲スコトヲ得ズ
第十三條無盡會社ハ無盡ノ缺口又ハ掛
金ノ拂込ヲ爲サザル者アル場合ト雖モ
第一囘ノ抽籤、入札其ノ他類似ノ方法
ヲ行ヒタル後ハ掛金者ノ不利益ニ給付
ヲ變更シ又ハ掛金額ヲ增加スルコトヲ
得ズ
第十四條無盡會社ハ資本ノ總額ニ達ス
ル迄ハ利益ヲ配當スル每ニ準備金トシ
テ其ノ利益ノ十分ノ一以上ヲ積立ツベ
シ
第十五條無盡會社ノ營業年度ハ一月ヨ
リ六月迄及七月ヨリ十二月迄トス
第十六條無盡會社ハ營業年度每ニ業務
報〓書ヲ作成シテ之ヲ主務大臣ニ提出
スベシ
第十七條無盡會社ハ營業年度每ニ主務
大臣ノ定ムル樣式ニ依リ貸借對照表ヲ
作成シ新聞紙ニ依リ之ヲ公〓スベシ
第十八條無盡會社ノ監査役ハ無盡會社
ノ業務及財產ノ狀況ニ關スル調査ノ結
果ヲ記載シタル監査書ヲ每營業年度一
囘作成シテ之ヲ本店ニ備へ置クベシ
第十九條無盡會社ノ常務ニ從事スル取
締役又ハ支配人ガ他ノ會社ノ常務ニ從
事セントスルトキハ主務大臣ノ認可ヲ
受クベシ
第二十條掛金者ハ無盡會社ニ對シ其ノ
加入シクル無盡ノ掛金者五分ノ一以上
ノ同意ヲ以テ其ノ加入シタル無盡ニ關
シ命令ノ定ムル事項ニ付說明書ノ交付
ヲ求ムルコトヲ得
第二十一條無盡會社ノ合併ハ主務大臣
ノ認可ヲ受クルニ非ザレバ其ノ效力ヲ
生ゼズ
第二十二條主務大臣ハ何時ニテモ無盡
會社ヲシテ其ノ業務ニ關スル報告ヲ爲
サシメ又ハ監査書其ノ他ノ書類帳簿ヲ
提出セシムルコトヲ得
第二十三條主務大臣ハ何時ニテモ無盡
會社ノ業務及財產ノ狀況ヲ檢查スルコ
トヲ得
第二十四條主務大臣ハ無盡會社ノ業務
又ハ財產ノ狀況ニ依リ必要ト認ムルト
キハ事業方法若ハ無盡契約約款ノ變
更、業務ノ停止又ハ財產ノ供託ヲ命ジ
其ノ他必要ナル命令ヲ爲スコトヲ得
第二十五條無盡會社ガ法令、定款若ハ
主務大臣ノ命令ニ違反シ又ハ公益ヲ害
スベキ行爲ヲ爲シタルトキハ主務大臣
ハ業務ノ停止若ハ取締役、監査役ノ改
任ヲ命ジ又ハ營業ノ免許ヲ取消スコト
ヲ得
第二十六條主務大臣ハ業務ノ停止ヲ命
ゼラレタル無盡會社ニ對シ其ノ整理ノ
狀況ニ依リ必要ト認ムルトキハ營業ノ
免許ヲ取消スコトヲ得
第二十七條無盡業ノ廢止又ハ無盡會社
ノ解散ノ決議ハ主務大臣ノ認可ヲ受ク
ルニ非ザレバ其ノ效力ヲ生ゼズ
第二十八條無盡會社ガ其ノ目的ヲ變更
シ他ノ業務ヲ營ム會社トシテ存續スル
場合ニ於テハ無盡會社ニ關スル事務ヲ
管理スル主務大臣ハ其ノ會社ガ掛金者
ニ對スル債務ヲ完濟スルニ至ル迄財產
ノ供託ヲ命ジ其ノ他必要ナル命令ヲ爲
スコトヲ得合併ニ因リ無盡會社ニ非ザ
ル會社ガ無盡會社ノ掛金者ニ對スル債
務ヲ承繼シタル場合亦同ジ
第二十二條及第二十三條ノ規定ハ前項
ノ場合ニ之ヲ準用ス
第二十九條無盡會社ガ營業ノ免許ヲ取
消サレタルトキハ之ニ因リテ解散ス
前項ノ場合ニ於テ〓算人ハ利害關係人
ノ請求ニ因リ又ハ職權ヲ以テ裁判所之
ヲ選任ス其ノ〓算人ノ解任亦同ジ
第三十條前條ノ場合ヲ除クノ外裁判所
ハ利害關係人ノ請求ニ因リ又ハ職權ヲ
以テ〓算人ヲ解任スルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ〓算人ヲ解任シタル
トキハ裁判所ハ〓算人ヲ選任スルコト
ヲ得
第三十一條裁判所ハ無盡會社ノ〓算事
務及財產ノ狀況ヲ檢査シ、財產ノ供託
ヲ命ジ其ノ他〓算ノ監督ニ必要ナル命
令ヲ爲スコトヲ得
第三十二條無盡會社ノ〓算、破產又ハ
强制和議ノ場合ニ於テ裁判所ハ無盡會
社ノ檢査監督ニ從事スル官吏ニ對シ意
見ヲ求メ又ハ檢査若ハ調査ヲ囑託スル
コトヲ得
第三十三條無盡會社ノ〓算、破產又ハ
强制和議ノ場合ニ於テ無盡會社ノ檢査
監督ニ從事スル官吏ハ裁判所ニ對シ意
見ヲ述ブルコトヲ得
第三十四條無盡管理會社ハ其ノ管理ス
ル無盡ノ掛金ノ拂込ナキ場合ニ於テ掛
金者ニ代リ掛金ノ拂込ヲ爲ス責ニ任
ズ
第三十五條無盡管理會社ハ其ノ管理ス
ル無盡ノ加入者ニ代リ掛金ノ拂込及給
付金ノ支拂ニ關シ一切ノ裁判上又ハ裁
判外ノ行爲ヲ爲ス權限ヲ有ス
掛金ノ拂込又ハ給付金ノ支拂ニ關スル
訴ニ於テハ無盡管理會社ハ原告又ハ被
告ト爲ルコトヲ得
第三十六條主務大臣ノ免許ヲ受ケズシ
テ無盡業ヲ營ミタル者ハ三千圓以下ノ
罰金ニ處ス
第三十七條左ノ場合ニ於テハ取締役、盛
査役、支配人又ハ〓算人ヲ一年以下ノ懲
役若ハ禁錮又ハ千圓以下ノ罰金ニ處ス
一業務報告書又ハ監査書ノ不實ノ記
載虛僞ノ公〓其ノ他ノ方法ニ依リ
官廳又ハ公衆ヲ欺罔シタルトキ
二本法ニ依ル檢査ニ際シ帳簿書類ノ
隱蔽、不實ノ申立其ノ他ノ方法ニ依
リ檢査ヲ妨ゲタルトキ
第三十八條左ノ場合ニ於テハ取締役、
監査役、支配人、代理店主(代理店主法
人ナルトキハ其ノ業務ヲ執行スル社
員、取締役其ノ他法人ノ代表者)又ハ〓
算人ヲ十圓以上千圓以下ノ過料ニ處ス
但シ其ノ行爲ニ付刑ヲ科スベキトキハ
此ノ限ニ在ラズ
-第六條、第八條、第九條、第十條、
第十三條、第十四條、第十七條又ハ
第十九條ノ規定ニ違反シタルトキ
二第七條ノ規定ニ依リ定メタル營業
區域外ニ於テ營業ヲ爲シタルトキ
三無盡會社ガ第十二條ノ規定ニ違反
シタルトキ
四正當ノ理由ナクシテ第二十條ノ說
明書ノ交付ヲ拒ミ又ハ之ニ虚僞ノ記
載ヲ爲シタルトキ
五本法ニ依リ無盡會社ニ備へ置クベ
キ書類ノ備附若ハ主務大臣ニ提出ス
ベキ書類ノ提出ヲ怠リ、之ニ記載ス
ベキ事項ヲ記載セズ又ハ之ニ不實ノ
記載ヲ爲シタルトキ
六第二十四條、第二十五條、第二十
八條又ハ第三十一條ノ規定ニ依リ主
務大臣又ハ裁判所ノ爲シタル命令ニ
違反シタルトキ
七本法ニ基キテ發スル命令ニ違反シ
タルトキ
第三十九條第十二條ノ規定ニ違反シタ
ル取締役、監査役、使用人又ハ代理店主
(代理店主法人ナルトキハ其ノ業務ヲ執
行スル社員、取締役其ノ他法人ノ代表
者)ハ十圓以上千圓以下ノ過料ニ處ス
前項ノ場合ニ於テハ無盡會社ノ取締役
及監査役ヲ十圓以上千圓以下ノ過料ニ
處ス
第四十條第五條第二項ノ規定ニ違反シ
タル者ハ十圓以上百圓以下ノ過料ニ處
ス
第四十一條非訟事件手續法第二百六條
乃至第二百八條ノ規定ハ本法ニ定メタ
ル過料ニ之ヲ準用ス
第四十二條本法中主務大臣ノ職權ニ屬
スル事項ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ地方
長官ヲシテ之ヲ行ハシムルコトヲ得
第四十三條本法中無盡會社竝ニ其ノ取
締役、監査役、支配人、使用人〓算
人及代理店主ニ關スル規定ハ無盡管理
會社竝ニ其ノ取締役、監査役、支配人、
使用人、〓算人及代理店主ニ、無盡業
ニ關スル規定ハ無盡管理業ニ之ヲ準用
ス
附則
第四十四條本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以
テ之ヲ定ム
第四十五條從前ノ規定ニ依リテ免許ヲ
受ケタル株式會社以外ノ無盡業者ニシ
テ本法施行ノ際現ニ存スルモノハ本法
施行後五年ヲ限リ仍其ノ營業ヲ繼續ス
ルコトヲ得
本法中無盡會社ニ關スル規定ハ前項ノ
無盡業者ニ之ヲ準用ス
第四十六條從前ノ規定ニ依リテ免許ヲ
受ケタル無盡業者ニシテ本法施行ノ際
現ニ存スルモノニ付テハ第四條ノ改正
規定ニ拘ラズ本法施行後五年ヲ限リ仍
從前ノ規定ニ依ル
第四十七條從前ノ規定ニ依リテ免許ヲ受
ケタル無盡業者ニシテ前條ノ期限迄ニ第
四條ノ改正規定ノ要件ヲ具備セザルモノ
ガ其ノ期限迄ニ爲シタル無盡契約ニ付
テハ之ガ完了ニ至ル迄其ノ契約ニ關ス
ル業務ニ限リ之ヲ繼續スルコトヲ得
前項ノ場合ニ於テ無盡業者ガ前項ノ業
務以外ニ無盡業ヲ營ミタルトキハ三千
圓以下ノ罰金ニ處ス
第四十八條從前ノ規定ニ依リテ免許ヲ
受ケタル無盡業者ノ本法施行ノ際現ニ
有スル本店及支店以外ノ營業所又ハ代
理店ハ本法施行後一年內ニ主務大臣ノ
認可ヲ受クルニ非ザレバ之ヲ存續スル
コトヲ得ズ
前項ノ認可申請書ハ本法施行後三月內
ニ主務大臣ニ提出スベシ
第四十九條本法施行ノ際現ニ無盡會社
ノ常務ニ從事スル取締役又ハ支配人ニ
シテ他ノ會社ノ常務ニ從事スル者ハ本
法施行後一年ヲ限リ主務大臣ノ認可ヲ
受ケズシテ引續キ其ノ會社ノ常務ニ從
事スルコトヲ得
第五十條第四十五條第一項ノ無盡業者
ニシテ會社ニ非ザルモノノ業務廢止ニ
付テハ主務大臣ノ認可ヲ受クベシ
第五十一條本法中取締役ニ關スル規定
ハ第四十五條第一項ノ無盡業者ニ付テ
ハ其ノ營業主(營業主法人ナルトキハ
其ノ業務ヲ執行スル社員)ニ之ヲ準用
ス
第五十二條從前ノ第三十一條第一項又
ハ第三十二條ノ無盡業者ニ付テハ仍從
前ノ例ニ依ル
第五十三條非訟事件手續法第百三十六
候、第百三十七條及第百二一十八條ノ二
中「銀行」ヲ「銀行又ハ無盡業若ハ無盡
管理業ヲ營ム會社」ニ改ム
〔政府委員小川〓太郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01919310226&spkNum=8
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009・小川郷太郎
○政府委員(小川〓太郞君) 只今議題トナ
リマシタ無盡業法改正法律案提出ノ理由ヲ
簡單ニ說明致シマス
無盡ハ最モ古イ沿革ヲ有シマスル我國固
有ノ金融法デアリマシテ、早クカラ津々浦
浦ニマデ普及致シテ居ルノデアリマス、現
行ノ無盡業法ハ大正四年ニ始メテ制定セラ
レタモノデアリマシテ、爾來無盡業者ノ適
從スベキ基準トシテ、本業ノ發展ニ貢獻シ
テ參ッタノデアリマス、併ナガラ其後時勢ノ
進運ト本法施行ノ實績トニ鑑ミマシテ、其
無盡業ヲシテ一層庶民金融機關タルノ機能
ヲ發揮セシメンガ爲メ、營業上ノ資金運用
ノ範圍ヲ擴張スル外、銀行法、貯蓄銀行法
及信託業法等ノ規定ヲモ參酌致シマシテ、
或ハ其營業ノ主體ヲ株式會社ニ制限シ、或
ハ無盡會社ノ監査役ヲシテ每營業年度一囘
監査書ヲ作成スルノ義務ヲ負ハシムル等、
種々ノ改正ヲ加フルコトヲ至當ト認メマシ
タノデ、玆ニ無盡業中改正法律案ヲ提出致
シマシタ次第デアリマス、何卒御審議ノ上
御協賛ヲ與ヘラレンコトヲ切望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01919310226&spkNum=9
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010・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 質疑ハアリマセ
ヌ-日程第二、右議案ノ審査ヲ付託スベ
キ委員ノ選擧ヲ議題ト致シマス
第二右議案ノ審査ヲ付託スヘキ委員
ノ選擧発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01919310226&spkNum=10
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011・作田高太郎
○作田高太郞君 本案ハ政府提出、抵當證
劵法案外九件ノ委員ニ併セ付託セラレンコ
トヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01919310226&spkNum=11
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012・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 作田君ノ動議ニ御
異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01919310226&spkNum=12
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013・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 御異議ナシト認メ
マス仍テ動議ノ如ク決シマシタ
日程第三、瓦斯事業法中改正法律案ノ第
一讀會ヲ開キマス俵商工大臣
第三瓦斯事業法中改正法律案(政府
提出、貴族院送付)第一讀會
瓦斯事業法中改正法律案
瓦斯事業法中左ノ通改正ス
第十二條第二項ヲ左ノ如タ改メ同條第四
項ヲ削ル
前項ノ規定ニ依リ瓦斯料金ノ設定又ハ
變更ノ認可申請アリタルトキハ主務大
臣ハ關係市町村ノ意見ヲ徴スベシ
第十二條ノ二瓦斯事業ヲ營ム會社其ノ
資本ヲ增加セントスルトキハ命令ノ定ム
ル所ニ依リ主務大臣ノ認可ヲ受クベシ
第十二條ノ三瓦斯事業ヲ營ム會社瓦斯
事業以外ノ事業ヲ營マントスルトキハ
命令ノ定ムル所ニ依リ主務大臣ノ認可
ヲ受クベシ命令ノ定ムル限度ヲ超エ同
一會社ノ株劵若ハ債劵ヲ所有シ又ハ同
一人ニ對シ資金ノ貸付ヲ爲サントスル
トキ亦同ジ
第十二條ノ四前二條ノ規定ハ瓦斯事業
ヲ營ム會社ニシテ瓦斯事業以外ノ事業
ヲ主タル業務トスルモノニハ之ヲ適用
セズ
前項ノ會社ノ範圍ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第十六條ニ左ノ一項ヲ加フ
前項ノ規定ハ第十二條ノ四ノ會社ガ瓦
斯事業ヲ營マザル會社ヲ合併セントス
ル場合ニハ之ヲ適用セズ
第十七條ノ二市町村ト瓦斯事業者トノ
間ニ存スル事業經營ニ關スル定ニ基キ
市町村又ハ瓦斯事業者ガ相手方ニ對シ
要求ヲ爲シ又ハ承認ヲ求メタル場合ニ
於テ協議調ハザルトキハ主務大臣之ヲ
裁定ス
前項ノ規定ハ本法又ハ本法ニ基キテ發
スル命令ニ依リ主務大臣ノ許可又ハ認
可ヲ受クベキ事項ニ關シテハ之ヲ適用
セズ
第十八條行政官廳ハ瓦斯事業者ニ對シ
瓦斯工作物、業務及財產ノ狀況ニ關シ
檢査ヲ爲シ又ハ報〓ヲ爲サシムルコト
ヲ得
主務大臣ハ瓦斯事業者ニ對シ瓦斯工作
物、業務又ハ利益金ノ處分、銷却其ノ
他計理ニ關シ改築、改善其ノ他監督上
必要ナル事項ヲ命ズルコトヲ得
第二十條ノ二瓦斯事業者其ノ供給區域
ノ一部分ニ對シ久シキニ亙リ瓦斯ノ供
給ヲ爲サザルトキハ主務大臣ハ其ノ部
分ニ付供給區域ノ變更ヲ命ズルコトヲ
得
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
本法ニ依リ認可ヲ受クベキ事項ニシテ本
法施行ノ際現ニ存スルモノハ本法ニ依リ
認可ヲ受ケタルモノト看做ス
〔國務大臣俵孫一君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01919310226&spkNum=13
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014・俵孫一
○國務大臣(俵孫一君) 只今提出致シマシ
タ瓦斯事業法中改正法律案ノ提出ノ理由ヲ
御說明申上ゲマス、瓦斯事業ハ公共ノ利益
ニ重大ナル關係ガアリマスルカラ、一方是
ガ取締監督ヲ嚴重ニ致シマスルト共ニ、他
方事業ノ發達ヲ助成スル必要ガアリマスル
ノデ、現行事業法ヲ制定致シマシテ、大正
十四年ヨリ實施致シテ居ルノデアリマス、
然ルニ現行法ハ瓦斯事業上ノ財務的監督ニ
缺クル所ガアリマシテ、其規定ガ未ダ十分
デアリマセヌ、仍テ法律施行後ノ實績ニ鑑
ミ、今囘專ラ此點ノ監督規定ヲ充實スルノ
目的ヲ以テ、改正案ヲ提出シタ次第デアリ
マス尙ホ之ニ從ヒマシテ、現行法ノ施設
ニ付テ不便且ツ不十分ヲ感ズル二三ノ事項
ヲ、同時ニ改正致シタイ積リデアルノデア
リマス、詳細ノコトハ委員會ニ於テ御說明
ヲスルコトニ致シタイト思ヒマス、何卒御審
議ノ上協賛ヲ與ヘラレンコトヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01919310226&spkNum=14
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015・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 質疑ヲ許シマス、
深澤豐太郞君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01919310226&spkNum=15
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016・原惣兵衞
○原惣兵衞君 只今深澤君ガ一寸見エテ居
リマセヌカラ本案ハ後〓シニシテ、日程
ヲ變更セラレンコトヲ廳ヒマス
〔「賛成々々」「反對々々」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01919310226&spkNum=16
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017・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 原君ノ動議ニ贊成
アリト認メマスガ、御異議アリマセヌカ
〔「反對々々」「贊成々々」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01919310226&spkNum=17
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018・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 今深澤君ガ見エマ
シタカラ、質疑ヲ許シマス、深澤君
〔深澤豐太郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01919310226&spkNum=18
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019・深澤豐太郎
○深澤豐太郞君 私ハ只今御提案ニナリマ
シタ瓦斯事業法中改正法律案ニ付キマシ
テ、其大綱ニ付テ二三ノ疑義ヲ質シテ置キ
タイト思フノデアリマス
今囘此瓦斯事業法ヲ改正セラルヽニ當リ
マシテ、以前ニ瓦斯事業法ヲ作リマシタ當
時ノ、瓦斯事業法制定ノ精神ト同一ノ理由ニ
依ッテ、依然トシテ此改正案ガ出サレタモノ
デアルカドウカ、此改正案提出ノ理由書ニ
依ッテ見マシテモ、前囘ト殆ド同一ノ理由ナ
ルガ如クニ吾々ハ之ヲ承知致サナケレバ
ナラナイノデアリマス然ルニ瓦斯事業法
全體ヲ通ジテ、果シテ瓦斯事業法ノ制定ノ
精神ガ需要者ノ保護ニアルカ、會社ノ保護
ニアルカト云フコトハ、全部ヲ通ジテ一見
シテ分ル所デアルノデアリマス、卽チ瓦斯
事業法制定ノ理由書ノ二三ヲ引例致シマス
ルナラバ、瓦斯事業法提案理由書トシテ、
大正十二年ニ提案サレタ時ノ理由書ノ一部
ニハ現在ノ瓦斯事業ニハ何等ノ統一セル
法規ガナイカラ、其法規ヲ統一シテ、會社
ノ發達ヲ助長スル爲ニ作ルモノデアルト說
明セラレテ居リマス、又瓦斯事業法制定ノ
理由、及其施行事務ノ所管ニ付テノ議院ニ
提出シタル文書ニ依リマスト、瓦斯事業ハ
最モ重要必須ノ工業ニシテ、之ヲ保護奬勵
スルノ必要緊切ナルモノアリ-此瓦斯會
社ヲ保護獎勵スルノ必要緊切ナルモノアリ
トシテ、此法律ガ出サレタ、同時ニ或ル場
所ニハ所謂報償契約ニ依リ各地各樣ノ取
締ヲ爲シ、其間各種ノ情弊ヲ釀成シ旁、
事業ノ發達ヲ阻碍シタルコト少カラザリ
キ、故ニ此法律ニ依ヲテ報償契約デ阻碍サ
レテ居ル瓦斯事業ヲ發達セシメテヤルノデ
アルト說明シテ居ル、又其次ハ-同一ノ
理由ガ各所ニアリマスルカラ省略致シテ置
キマスルガ、瓦斯事業法制定ノ理由トシテ
居ルモノハ、要スルニ瓦斯事業其モノガ國
民生活ニ必須ナモノデアルト其ニ、染料藥
品其他ノ工業ヲ助長スル意味カラシテモ、
此事業ヲ保護奬勵シテ、便宜ヲ與ヘテ發達
セシメテヤラナケレバナラナイト云フノ
ガ、瓦斯事業法制定ノ精神デアッタノデアリ
マス、商工大臣ハ今日モ依然トシテ需要者
ノ利益ハ第二義ニ置イテ瓦斯會社ヲ保護
發達セシムルコトヲ第一義トシテ作ラレタ
ル此瓦斯事業法制定ノ精神ヲ、其儘承認シ
テ居ルモノデアルカ否カト云フコトノ說明
ヲ承リタイ
此理由カラ今囘ノ改正ノ案ヲ見マスルト
云フト、吾々ハ幾多ノ疑義ヲ發見致スノデ
アリマス、其中デ最モ重要ト思ヒマスル二
三ヲ間ヒマスレバ、今囘ノ吾々ノ手許ニ廻
ハサレタ改正案ノ中ノ第十二條ノ二ト云フ
モノニ、「瓦斯事業ヲ營ム會社其ノ資本ヲ增
加セントスルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ
主務大臣ノ認可ヲ受クベシ」ト云フノガア
ル是ハ御承知ノ如ク昨年、一昨年ニ亙ッ
テ、東京市ト瓦斯會社ト及ビ商工當局トノ
間ニ問題ヲ釀シマシタ東京瓦斯會社ガ、其
資本ヲ二倍ニ增加セント致シマシタルトキ
ニ、東京市ハ報債契約ノ條文ニ依ッテ此增資
ヲ阻止致シマシタ、會社ハ之ニ承服セズシ
テ、商工大臣ノ裁定ヲ求メマシタ、商工大
臣ハ之ヲ不認可ノ裁定ヲ與ヘマシタ、然ル
ニ今囘此規定ガ作ラレタコトニ依ッテ、自治
國體タル東京市ハ、瓦斯會社ノ增資計畫ニ對
シテ喙ヲ挾ムノ權利ヲ失フノ虞ガアルコト
ヲ認メザルヲ得ナイノデアリマス(「ソンナ
事ハナイ」ト呼フ者アリ)ソンナ事ハナイト
云フ聲ガアリマスガナケレバ幸デアルカ
ラ質問ヲシテ居ルノデアリマス、諸君、リ
ンナコトノ虞ガナイト云フコトハナイ、此
條文一ツヲ見レバ、其樣ナ事ハナイト云フ
聲モ出マシヤウガ、此條文ノ次ヲ見テ下サ
イ、第十七條ノ二ニ「市町村ト瓦斯事業者
トノ間ニ存スル事業經營ニ關スル定ニ基キ
市町村又ハ瓦斯事業者ガ相手方ニ對シ要求
ヲ爲シ又ハ承認ヲ求タル場合ニ於テ協議調
ハザルトキハ主務大臣之ヲ裁定ス」トアル、
是ハ現在ノモノヽ或ル部分ニ一寸改正ヲ加
ヘタダケデアル、其次ニ「前項ノ規定ハ本法
又ハ本法ニ基キテ發スル命令ニ依リ主務大臣
ノ許可又ハ認可ヲ受クベキ事項ニ關シテハ
之ヲ適用セズ」ト云フノガアル、本法又ハ本
法ニ基キテ發スル命令、此命令ニ依ッテ主務
大臣ノ許可又ハ認可ヲ得タ所ノ事項ニ關シ
テハ之ヲ適用セズトアリマスシテ見ル
ト此增資ハ主務大臣ノ認可ヲ得ベシト云フ
コトヲ前ノ方ニ規定ヲシテ、主務大臣ノ認
可ヲ經タルモノハ報償契約ノ定メ、卽チ此
處ニアリマスル「事業經營ニ關スル定ニ基
キ」云々ト云フ條項、其次ニ來タ此本法竝
ニ本法ニ依ル命令ニ依ッタモノハ、裁定ヲ求
ムルコトガ出來ナイト云フノデアルカラ
此條文ヲ挿入シ、アトニ此裁定ニ付テノ範
〓ヲ限定シテ、增資ニ對シテ各自治公共團
體ノ裁定ヲ要求スル權利ヲ失ハシメタモノ
デアルト斷ジテ、差支ナイモノデアルカド
ウカ、此點ニ付テ明答ヲ願ヒタイ
同時ニ同ジ條項ニ於テ最モ虞レナケレバ
ナラヌコトハ、十七條ノ二ニ此條文ヲ持ッテ
來テ、其但書ニ今ノ本法ニ依ル命令ニ依ッテ
主務大臣ノ認可ヲ經ベキモノニハ裁定ヲ要
求スルノ權利ガ無イト云フコトニ定メタノ
デアリマスカラ、若シ私ノ解釋スル通リデ
アルトスルト、今日東京市ヲ始メ五大都市
其他各地ニ於テ都市ト瓦斯會社トニ取交サ
レテ居ル報償契約ノ各條項ハ、大體ニ於テ
此瓦斯事業法デ許可又ハ認可ヲ要スベキ事
項トサレテ居ルノデアル試ニ諸君ガ瓦斯
事業法竝ニ瓦斯事業法ニ依ッテ發セラレタ
ル勅令ノ全文ヲ御覽ニナルト分ル、其勅令
ノ第一條以下悉ク主務省ノ認可又ハ許可ヲ
要スベキコトガ規定セラレテ居ルノデアリ
マス、若シ其規定ノ中ニ認可申請ノ場合ハ
自治體、公共團體ノ承諾書ヲ添附スベシト
云フ一項ガアリマスレバ吾々ハ此虞ヲ懷
カナイノデアリマスガ、現在ノ勅令ニハ是
ガアリマセヌ、之ヲ挿入スルカ、然ラザレ
バ今囘出サレタ此改正ノ趣旨ニ付テ、此點
ヲ明カニ安心ノ出來ルヤウニ說明ヲシテ貰
ハナケレバナリマセヌ
元來商工省ガ斯ウシタ許可又ハ認可ニ付
テ權限ヲ掌握シ、報償契約ヲ無效ニシテ、
骨拔ニシテ、其權限ノ全部ヲ商工省ガ握ク
テ、瓦斯事業ヲ保護奬勵セントスルノデア
リマスガ、瓦斯事業其モノカラ見レバ、洵
ニ變ブベキ法案デアルカモ知レナイケレド
モ、此瓦斯ノ供給ヲ受ケテ居ル·所ノ各都市
ノ住民ニ對シテハ、最モ恐ルベキ脅威ヲ感
ズル改正案デアルト謂ハナケレバナリマセ
ヌ(拍手)
東京市其他或ル一箇所カラ來マシタ今囘
ノ瓦斯料金裁定ニ付テモサウデアリマス
瓦斯會社ガ商工省ニ裁定ヲ申請スル理由
ト、自治團體ガ商工省ニ申請スル裁定ノ理
由ト、商工省ハ何レヲ正シトシテ御裁定ニ
ナッテ居ルカ、ヤハリ依然トシテ商工省當局
ハ瓦斯會社ヲ保護奬働スレバ足シリトス
ル態度ガ、依然トシテ改マラナイデ居ルデ
ハアリマセヌカ、東京市ノ場合ノ如キハ
此處ニ說明スルマデモアリマセヌケレドモ、
現在二圓二十五錢ノ瓦斯料金ヲ徵收セラレ
テ居ル、ソレヲ裁定ノ結果僅ニ十三錢ノ値
下ヲシテ、七年六月三十日カラシテ十八錢
値下ニスルト云フ御裁定ニナッタ、此裁定ノ
如キハ、東京市ガ商工省ニ申請シタル所ガ
正シイカ、會社ガ商工省ニ申請シタル所ガ
正シイカ、商工當局トシテハ其歷史ヲ考ヘ
ルナラバ、直チニ了解ガ行クノデアル民
政黨ノ各位中ニハ此問題ニ付テ最モ深キ
造詣ト最モ〓心ナル努力ヲサレタ所ノ諸
君ガ澤山アル、商工當局ハ此東京市ノ歷史
ヲドウ考ヘテ居ルカ、現在二圓二十五錢デ
アル瓦斯料金ヲ五十錢値下セヨト云フ要求
ハ東京市民トシテハ動カスベカラザル條
件ノ上ニ立ッテ居ル要求デアリマス、ソレヲ
商工當局ハ一蹴シ去ッテシマッタ其條項ハ
瓦斯ヲ造ルコトハ石炭ニ依ルコトハ勿論、
石炭ノ値段ガ之ニ影響スルコトハ言フマデ
モアリマセヌ、大正八年ニ横山商工政務次
官ナドガ市會議員ヲサレテ居リマス當時、
瓦斯會社カラ値上ノ要求ガアッタ、其時ノ瓦
斯會社ノ値上ノ要求ノ粮據ハ、石炭ノ値段
ガ騰貴シタ、二十二圓三十錢ノ噸當リニ騰
貴ヲシテ居ル、故ニ今日ノ狀態デハ會社
ノ觀當ハ五分二厘ノ配當スラ辛ウジテ爲シ
テ居ル有樣デアルカラ、是非瓦斯料金ノ値
上ヲシテ貰ヒタイト云フノガ會社ノ要求デ
アッタ、其石炭ガ二十二圓三十錢ニナッテ、
サウシテ他ノ事業ハ非常ナ發達ヲシテ、郵
船會社ハ八割ノ配當ヲスルトカ、東京電燈、
帝國電燈、其他同樣ノ公共事業マデ、皆一
割二分ノ配當ヲシテ居ル時ニ、瓦斯會社單
リ五分二厘ノ配當ニナッテシマッタ其際ニ
要求シタ其五十錢値上ノ要求ニ最モ强硬ニ
反對ヲシテ、公共〓體デアルカラ五分二厘
ノ配當デモ澤山デアル、今日ハ値上スベキ
時機ニ非ズトシテ、蹶然立ッテ市民ヲ指導シ
テ、アノ大運動ヲサレタ者ハ民政黨ノ諸君
ノ中ニモ澤山居ルシ、政府當局ノ中ニハ
其旗頭トシテ横山政務次官ガ居ルデハナイ
カ、諸君、ソレハ二十二圓幾ラノ石炭ノ値
段ノ時ニ二圓二十五錢ニ値上ヲシタ、其値
上シタ時ノ會社トノ契約ノ一項ニハ、此處
ニ其成文ガアリマスケレドモ「將來炭價低
落ノ場合其ノ他特別ノ事情ニ依リ市ガ瓦斯
料金ノ引下ヲ要求シタルトキハ會社ハ正當
ノ理由ナクシテ之ヲ拒ムコトヲ得ズ」ト云
フ條項ヲ附ケテ値上ヲ承認シテ居ル、將來
石炭ノ値段ガ下ック、サウシテ東京市ガ値下
ノ要求ヲシタ場合ハ、瓦斯會社ハ正當ノ理
由ヲクシテ之ヲ拒ムコトヲ得ズ、諸君、石
炭ノ値段ハ今日幾ラニナッテ居リマスカ、
二十二圓三十錢デアルト云フ當時ノ、大正
八年ノ石炭ノ値段ハ、是ハ瓦斯會社ト三井
物產ノ契約ガ、大正十年マデ十圓何ガシデ
一噸買收ノ契約ガアリ、同時ニ其不足分ヲ
三十三圓デ其他カラ買求メ、此十圓ク石炭
ト三十三圓ノ石炭ト一〓ニシタモノガ、二
十二圓幾ラデアルト云フ說明ヲ瓦斯會社ハ
東京市ヘ出シテ居ル其石炭ガ一昨年東京
市ガ此値下要求ヲシタ時ニハ、十七圓八十
錢ニ下ッテ居ッタ、十七圓八十錢ニ下ッタカ
ラ値下ヲセヨト云フ要求ヲシタトキニ、民
政黨ノ鈴木寅彥君-御見エニナラヌケレ
ドモ、鈴木寅彥君ノ名前デ全市ニ出シタ「パ
ンフレット」ノ中ニハ吾々ハ當時十四圓幾
ラノ石炭ヲ買ッテ居ッタノダ、故ニ今日デモ
尙ホ高イノダト云フノデ、此反對理由ヲ市
民ニ宣傳致シマシタ、吾々ハ其理由ナキコ
トヲ公文書ニ依ッテ證明シテ居ルケレドモ、
商工省ハ之ヲ採用サレナイ、又今日之ヲ見
タナラバドウデアリマス、十四圓幾ラダカ
ラ値下ガ出來ナイト言ッタ、其石炭ノ値段ハ
商工當局ノ調デモ、旣ニ十二圓臺ニ下ッテ居
ルコトヲ御認メニナッテ居ルノデハナイカ、
此一項デモ値上當時ニ較ベテ、旣ニ立派ニ
元ノ値段マデ石炭ハ下ッテ來テ居ル、炭價ノ
低落ヲ來シテ元ノ値段ニ下ッタ場合ニ、東京
市ガ之ヲ要求シタル時ニハ拒ムコトヲ得ズ
ト云フ明文ガアッテ、之ヲ會社ガ拒ンデ、之
ヲ商工省ニ裁定ヲ求メタノニ、商工當局ハ
此二百万市民ノ正シキ要求ト、立派ナ條項
ノアル要求ヲ一蹴シテ、市民ノ期待ヲ裏切〃
テシマッタノデアリマス、諸君、吾々ハ世間
動モスレバ俵商工大臣ヲ捉ヘテ-ト言ハ
レルケレドモ、吾々ハ此俵商工大臣ガ資本
家ヲ擁護スル點ニ於テ會社ヲ擁護スル
點ニ於テハ-ドコロカ、最モ腹ノ黑イ態
度ヲ示シタモノデアルト思フノデアリマス
(「議長注意セイ」「取消セ」ト呼フ者アリ)私
ハ世間デサウ言フ者ガアルト言ッタノダカ
ラ、取消スナラバ世間デ言フモノヲ取消サ
セナイ、殊ニ横山政務次官ニ至リマシテハ
當時反對ノ旗頭デアッタバカリデナク、現ニ
商工政務次官トシテ其鍵ヲ握クテ居ル一人デ
アリマス(發言スル者アリ)東京市民ノ爲ニ
言フテ居ルノニ、君ハ反對スルカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01919310226&spkNum=19
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020・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 私語ヲ禁ジマス-
私語ヲ禁ジマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01919310226&spkNum=20
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021・深澤豐太郎
○深澤豐太郞君(續) 橫山商工政務次官ハ
當時瓦斯問題デ疑獄ガ起タ際ニ、東京市會
議員トシテ瓦斯問題ニ村テノ、平生ノ監視ヲ
全ウスルコトヲ得ズトシテ御辭職ニナッタ
ノデアリマス五十錢値上ニナッタ時、御自
身ガ極力反對シタノニ、其反對ガ通ラナカッ
《共
タト云フノデ辭職ヲセラレタ人デアル、
五十錢値土ニ反對ヲサレタ商工政務次官ガ
居ルノダ、其人ニ其五十錢ヲ元ノ値段ニ還
セト云フ案ニ對シテ、自分ガ鍵ヲ握ッテ居ル
一人デアルニ拘ラズ、遂ニ商工政務次官ハ
東京市會議〓トシテ嘗テ執ッタ態度ヲ忘レ
タルガ如ク、此問題ヲ元ニ還スコトニ或ハ
努力シタカモ知レヌケレドモ、表面ニハ現レ
テ居ナイ、其結果カラシテモ之ヲ見ルコト
ガ出來ナイ、商工政務次官橫山勝太郞君ト
シテハ此點ニ付テ何等カ辯明ヲ爲スノ責
任アルモノト私ハ思フノデアリマス(拍手)
殊ニ內務省ノ方ハ-居リマセヌガ、內務
省ノ政府委員ニ此問題ニ付テ答辯ヲ得ナケ
レバナラヌコトガアリマスカラ、後デ御出
席ヲ要求致シテ置キマス、內務省ノ政務次
官ノ見エマスマデ、横山政務次官ニ御尋ヲ
シテ置キマス是ハ商工大臣ニ聞イテモ宜
イノデスケレドモ、關係上橫山政務次官ニ
御聞キヲ致シテ置キマス
瓦斯會社ハ商工省ノ裁定ニ依ッテ二圓七
錢デ將來瓦斯ノ供給ヲスルコトニナリマシ
タ、併シ此二圓七錢ト云フ瓦斯ノ値段ハ
是ハ最高限度ヲ決メタモノデアッテ、ソレヨ
リ安ク賣ルノハ差支ナイト云フ意味デアル
カドウカヲ御伺致シテ置キタイ、卽チ瓦斯
會社ハ今日マデ二圓二十五錢デアックノニ、
或者ニハ一圓三十錢デ賣リ、一圓五十錢デ
賣フテ居ル、大量ヲ供給スル處ニハ値段ノ割
引ヲ相當致シテ居ルノデアリマスシテ見
ルト瓦斯會社ノ瓦斯料金ト云フモノハ其
會社ナリ、個人ナリトノ隨意契約ニ依クテ
ハ之ヲ變更スルコトガ出來ルモノデアル
カ、サウシテ見ルト瓦斯供給ノ料金ハ所
謂私法上ノ權利ニ屬スルモノデアッテ、商工
省ガ最高値段ヲ裁定ヲシテモ、市民ト瓦斯
會社トノ取引ハ私法上ニ於テ强チ其裁定
ニ從ハナケレバナラヌモノデハナイ、會社
ニ對シテ强制力ヲ有スルモノデハナイト云
フ點ニ付テ、强制力ヲ有スルモノナリヤ否
ヤ、若シ有スルモノデアレバ、其法律的根
據ヲ承リタイト思フノデアリマス、尙ホ將來
商工省ハ-瓦斯供給ニ付テノ計量器使用
料ニ付テ伺ヒマス、恰モ米屋デ枡ヲ使ヒ、
秤ヲ使フガ如キ此計量器使用料ヲ、之ヲ撤
廢セシムルノ意思アリヤ否ヤ、尙ホ內務省
ノ方ガ見エマセヌカラ、商工省ノ方ニ御伺
致シテ置キマス、本日ノ新聞ニ依リマスル
ト云フト、東京瓦斯會社ハ瓦斯熱量販賣ニ
付テノ正式申請ヲシタ、實施期ハ來ル五月
カラト云フ報導ガアリマス、此申請ヲ受領
セラレタカドウカ、又此熱量販賣制度ノ申
請ヲ受領セラレタ其手續ニ缺クル所ハナイ
カドウカ、東京市ト瓦斯會社トノ間ニハ報
償契約ガ現存シテ居リマス、其現存シテ居
ル報償契約ニハ東京市ト瓦斯會社トノ間
ニ瓦斯供給條件デ協議整ハザル時ニ、瓦斯
會社ハ商工省ニ申請ヲスル、又商工省ニ申
請スルニシテモ、東京市ノ承認ヲ求メタ文
書ヲ添付シテ、此申請ヲシテ居ルカドウカ、
東京市ノ報債契約ハ一片ノ空文デアル、此
東京市ノ承諾書ヲ添付セザル申請ヲ、商工
省ハ之ヲ受領シテ差支ナキモノト認メルヤ
否ヤ、此點ニ付テ明答ヲ得タイ、同時ニ此
熱量ノ販賣制ト云フモノハ、吾々需要者ノ
側カラ見ルト、最モ不便極マルモノデアリ
マス、成程熱量ヲ一定ノ狀態ニ置イテ供給
スルコトハ瓦斯供給上必要ナ條件ニ明カ
ニ相違ナイ、併シ之ニハ瓦斯事業法ノ上ニ
制限ガ附イテアリマス、此制限ニ依ヶテ熱量
ヲ保タシメテ置ケバ宜シイ、此〓量制ニ依ッ
テ料金ヲ取ルト云フコトヲ、ナゼ會社ハ斯
樣ニ御急ギニナルカ、ナゼ御要求ニナルカ、
吾々市民カラ見レバ現在ノ「メートル」制
度ニ依ッテ供給ヲ受ケテ居ッテ、其「メート
ル」制度デ料金ヲ拂ッテ、何等ノ不便ヲ感ジ
ナイノデアル、之ヲ熱量制ニシタ場合ニ、
此「メートル」ヲ熱量ノ「メートル」ニ改メテ
料金ヲ取ルト云フノナラバ話ハ分リマス
ケレドモ、此料金ヲ取ル申請ヲシタ條文ニ
依ルト、瓦斯代金計算法ト云フモノニ、需
要家ニ取付ケタル瓦斯「メートル」ニ依リ計
量セラレタル瓦斯使用量、立方「メートル」
ニ四千二百「キロ、カロリー」ヲ乘ジタル積
ヲ一万「キロ、カロリー」ニ依ッテ除シ、其
商ヲ一熱位當ノ瓦斯料金ニ乘ジテ瓦斯代金
ヲ算定スルトアル、詰リ之ヲ熱量制トシテ
取ッテモ、現在ノ立方「メートル」デ以テ計ッ
テ居ル、其出テ來タ所ノ「メートル」ヲ、色
色ナ數字ヲ掛ケタリ、除シタリシテ、此ヤ
ヤコシイ所ノ熱量制ト云フ數字ヲ出サウト
云フノデス、是デハ「メートル」ヲ備ヘテ居
ル一般ノ需要家ハ、今月ハ何「メートル」廻ッ
タト云フノデ、直チニ料金ハ幾ラト云フ算
定ガ出來ルノデス、ソレヲ斯ノ如キ數種ノ
手段ヲ施サナケレバ料金ガ出テ來ナイト云
フ熱量制ニ改メルノ必要ガ何處ニアルカ、
又斯ノ如キ制度ヲ現在ノ「メートル」ノ儘デ
許可シテ差支ナイモノカドウカ、是ハ需要
者ノ側カラ見ルト、最モ重要ナルコトデア
リマスカラ、是非明答ヲ願ヒタイノデアリ
さく、計算モ馴レヽバ出來ルカモ知レマセ
ヌガ、一寸諸君ガヤッテ御覽ナサイ「メート
ル」ニ四千二百「キロ、カロリー」ヲ乘ジタル
積ヲ、一万「キロ、カロリー」ニテ除シ、其
商ヲ一熱位當ノ瓦斯料金ニ乘ジテ、瓦斯代
金ヲ算定スル、コンナ面倒ナコトヲシナイ
デモ「メートル」ノ儘デ立派ニチヤント料金
ガ出テ來ルデハナイカ、之ヲ商工大臣ハ改
ムルノ意思アリヤ否ヤ、先般商工大臣ハ此
問題ニ付テハ改メルノ意思ナシト云フコト
ヲ私共ニ御明答ニナリマシタ、今正式ノ手
續ヲ以テ-吾々カラ見レバ正式デナイ手
續ダ、東京市ヲ無視シタル手續ダケレドモ、
此手續ヲ以テ此申請書ヲ受理シタ以上ハ
此受理シタ申請書ヲ如何ニ取扱フ積リデア
ルカ、許可スル積リデアルカ許可シナイ
積リデアルカ、之ヲ御明答ヲ願ヒタイ
〔「內務省ノ政府委員ハドウシタノデス
カ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01919310226&spkNum=21
-
022・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 言ウテヤッテ居リ
マス、モウ見エマセウ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01919310226&spkNum=22
-
023・深澤豐太郎
○深澤豐太郞君(續) 十八條ノ第二項ニ
「主務大臣ハ瓦斯事業者ニ對シ瓦斯工作物、
業務又ハ利益金ノ處分、銷却其ノ他計理ニ
關シ改築、改善其ノ他監督上必要ナル事項
ヲ命ズルコトヲ得」トアル、此利益金處分ト
云フモノニ付テ、商工大臣ガ命令ヲ以テ、
之ヲ改メルコトガ出來ルト云フ規定ヲ設ケ
ルノデアルケレドモ此利益金ヲ處分スル
ニ付テ、利益金ヲ配當ニ廻スベカラズ、之
ヲ値下ニ廻スベシト云フヤウナ、命令ヲモ
出シ得ルモノデアルカドウカ、又其他配當
ニ廻スバカリデナク、原價銷却ニ致シマシ
テモ、其他會社ノ基礎ヲ鞏固ニスル爲ニ、
其方へ廻ストカ、樣々ノ利益金處分ニ主務
大臣ノ命令權ヲ設定セントスルノデアリマ
スガ、是ハ會社ノ自由ノ立場カラ申シマシ
テモ、或ハ吾々需要者ノ立場カラ申シマシ
テモ、商工大臣ノ過去ノ經歷ニ鑑ミ、現
東京市ノ瓦斯料金値下命令ヲ發スル前ニ、
瓦斯會社ガ原價銷却ハ純益ノ一分九厘デ宜
イト云フノヲ、ソレニ一分一厘ヲ加ヘシメ
テ、三分ノ原價銷却金ヲ計上サセタ、斯ウ
シテ利益金ヲ會社ノ利益ノ方ニ使ッテ、供給
サレテ居ル、市民ノ利益ノ爲ニハ御使ヒニ
ナラナイ商工省當局ノ歷史カラ見テ、最モ
危險ナ條文デアルト思フノデアリマス、商
工大臣ハ此利益金處分ト云フコトニ付テ
說明ヲ加ヘテ置イテ戴キタイ、尙ホ今アリ
マス瓦斯事業法ノ改正シナイ部分ノ中ニ
「公益ノ場合」云々ト云フ一項ガアリマス
此「公益ノ場合」ニ商工大臣ハ命令ヲ以テ料
金ヲ制定セシメルコトガ出來ルノデアリマ
スガ、此公益トハ果シテドウ云フコトヲ云
フノデアリマセウカ、若シ東京市ノ場合ノ
如キハ料金不納同盟ヲ起シテ、一種ノ暴
動ニ等シキ狀態ニデモナラナケレバ、商工
大臣ハ之ヲ公共上必要ナルモノトハ御認メ
ニナラナイノカ、又現在ノ如クニ東京市ガ
各機關ヲ通ジテ手續ヲ履ンデ、此料金ノ値
下ヲ求メテ居ルヤウナ場合ニハ、之ヲ公共
上ノ必要ナリトハ御認メニナラナイノカ、
此點ニ付テモ御答ヲ煩シテ置キマス內務
省ノ政府委員ガ見エマスマデ、以上ノ諸點
ニ付テ商工當局ノ御答ヲ得タイノデアリマ
スガ、之ヲ要スルニ瓦斯事業法ノ制定ノ精
神ハ依然トシテ資本家擁護デ、使用者ヲ
保護スル意味ハナイ、アリトシテモ全ク其
均衡ヲ保ッテ居ナイト云フ一項ニ付テノ說
明-增資ノ陰謀ヲ助長スルノデハナイ
カ、現ニ東京市ガ反對スルガ爲ニ增資ガ出
來ナイノモ、此改正ニ依ッテ樂々ト增資ノ出
來ルヤウニ改正ヲシヨウトシタノデハナイ
カ、報償契約ヲ骨拔キニシテ、此事業法及
之ニ依ル命令ニ依シテ定メタモノニハ、裁定
ヲ申請スル所ノ權利ノナイヤウナ規定ヲ設
ケテ、報償契約ヲ骨拔キニシテ-此命令
ヲ見レバ全部アリマス、大阪デモ京都デモ、
玆ニ全部ノ報償契約ガアリマスガ、此報償
契約ヲ見レバ、報償契約ノ内容ハ全部瓦斯
事業法デ決メラレルモノト言ッテモ差支ナ
イ、シテ見ルト報償契約ニ依ル裁定ノ申請
ハ出來ナクナルガ、此骨拔キニシテシマッ
テ、サウシテ自治體ノ迷惑ニナルコトヲ顧
ミナイヤウナ改正案ヲ御出シニナッタ共理
由ヲ、若シ納得ガ行クコトガ出來レバ、私
モ幸デアルト思ヒマス、公益ノ爲トハドノ
程度ヲ言フカ
ソレカラ料金ノ法律的强制力、是ハ橫山
サンデモ宜シイ、以上ノ諸點、計量器使用
ノ撤廢デアルトカ、斯ウ云フコトニ付テノ
商工當局ノ御說明ヲ承リマシテ、重ネテ內
務省ノ方ガ見エマシタトキニ、簡單ニ質問
ヲ致シマス
〔「來タ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01919310226&spkNum=23
-
024・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 此際深澤君ニ一寸
御話致シマス、先刻ノ-ノ譬ハ、前ニ如
何ナル言葉ヲ置カレマシテモ、議長ハドウ
シテモ不穩當ト思フノデアリマス、此際御
取消ニナッテハ如何デスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01919310226&spkNum=24
-
025・深澤豐太郎
○深澤豐太郞君 明瞭ニ取消シテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01919310226&spkNum=25
-
026・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 深澤君ハ取消サレ
マシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01919310226&spkNum=26
-
027・深澤豐太郎
○深澤豐太郞君(續) 此瓦斯事業法ニ依リ
マスルト報償契約ニ依ル裁定ハ最モ重要
ナルモノデアルカラ、內務當局ト協議スベ
シト云フコトヲ特ニ明記致シテアル、齋藤
政務次官ハ瓦斯事業法ハ御覽デアラウト思
ヒマスケレドモ、瓦斯事業法ノ一番末尾ノ
所ニアルノデアリマス、報償契約ノ爭議裁
定等ハ內務行政ニ影響スル所大ナルヲ以
テ、內務大臣ト協議シタル上、之ヲ行フコ
トヽ爲ストアル、此報償契約ニ依ル爭議ノ
裁定ハ最モ重要ダトアルガ、今此改正案ニ
依ルト、其報償契約ナルモノハ全ク骨拔キ
ニサレテ、內務當局ガ將來商工當局ト協議
スルノ必要ノナクナルヤウナ法律ガ出テ居
ルガ、此自治體ヲ監督スル內務當局ハ其
權限ヲ商工當局ニ蹂躪セラレテ差支ナイト
御考ニナッテ居ルカドウカ、此點ヲ御伺致シ
テ置キマス(拍手)
〔國務大臣俵孫一君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01919310226&spkNum=27
-
028・俵孫一
○國務大臣(俵孫一君) 深澤君ノ御質問ニ
出來ルダケ簡單ニ御答ヲ致シマス(「詳細ニ
願ヒマス」ト呼フ者アリ)詳細ノコトハ委員
會ニ於テ申上ゲル機會ガアルダラウト思ヒ
8 %、本案ノ提出ノ精神ハ果シテ事業家
本位デアルカ、使用者タル市民本位デアル
カ以前ノ提案ヲシタトキノ理由ヲ引用ニ
ナッテ御話ニナッタノデアリマスガ、本案ハ
曩ニ提出ノ理由ノトキニモ簡單ニ申上ゲマ
シタ通リニ、瓦斯事業ハ公共ノ利益ニ關係ガ
ゴザイマスカラ一面ハ事業ノ發達ヲ希望
スルト共ニ、他面ハ使用者タル市民ノ公益
ノ增進ヲ圖ル趣意ト、二ツ重ナッテ此立法ノ
精神ヲ成シテ居ルノデアリマス、最初ノ法
律ノ制定ノ-現行法ノ制定ノトキニ出シ
タ理由書ヲ御引用ニナリマシタガ、其御引
用ニナッタ理由書ノ一部分ニモ、此事業ヲ發
達セシムルト云フコトヲ希望スルト共ニ、
公益上必要ナル取締ヲ爲スト云フコトガ
ハッキリ書イテアリマス、ソレ故ニ現行法ノ
精神モ、今囘提案シタ精神モ、此點ニ於テ
ハ毫モ變リハゴザイマセヌ、唯今囘ノ提案
シマシタモノハ、會社ノ財務的ノ取締ガ十
分デナイ、ソレ故ニ丁度御引用ニナリマシ
タ增資問題モ、アトデ說明ヲ致シマスガ、
或ハ銷却モ斯ウ云フ點ノ監督ノ規定ヲ缺イ
テ居リマスガ爲ニ、動モスルト公益ニ反ス
ルヤウナコトガアルト云フコトノ虞ヲ持タ
ルヽノデアリマスカラ、此會社ノ業務、財
務的ノ監督ヲ補充スルト云フコトガ、今囘
ノ提案ノ主ナル意味ヲナシテ居ルノデアリ
マス隨ヒマシテ增資問題ニ付テ、報償契
約ノ規定ハ今囘ノ提案トソコニ齟齬ガアル
ノデハナイカ、報償契約ノ規定ヲ如何ニ考
ヘルカト云フコトノ御質問デアッタノデア
リマス、此點ハ能ク御考ヲ願ヒタイコトハ、
增資問題ニ付テハ、同ジク主務官廳ノ處置
ニ付テハ前後變リハゴザリマセヌ、現在ノ
狀態ハドウカト申シマスト、深澤君モ能ク
御承知ノ通リニ、報償契約ニ基イテ增資問
題ノ取扱ヲ致シテ居ルノデアリマス、併ナ
ガラ此會社ト市トノ協議ガ調ハザル場合ニ
於テハ、是ハ現行法ニ於テ主務大臣ノ裁定
ヲ求メテ居リマス、ソレ故ニ一昨年ノ秋頃
此問題ガ起ッタトキ、商工大臣ハ增資スベカ
ラズト云フ裁定ヲ致シテ居ルノデアリマ
ス此度ノ規定ニ於キマシテモ、其增資ノ
認可ヲ要スル、今マデハ認可規定デナカッタ
ノデアリマス-認可ヲ要スル、然ラバ報
償契約ニ基ク市ノ主張ハドウナルカト云フ
御疑念デアリマス、是ハ規定ニゴザイマセ
ヌガ、命令ヲ以テ定メテ、增資問題ニ付キ
マシテハ關係市又ハ町村ニ諮問ヲスル主
務大臣ハ此增資認可申請ヲ得マシタトキニ
於キマシテ、改メテ其關係ノ市町村ニ諮問
ヲシテ、其意見ヲ徴スルコトニ致シタイト
思ッテ居ルノデアリマス、卽チ假令認可ヲ致
スコトニ致シマシテモ、其關係ノ市町村ノ
意向ニハ重キヲ置イテ考ヘルト云フコトニ
致シタイト思ッテ居ルノデアリマス、此增資
問題ノ認可ト云フコトガ、深澤君ノ御趣旨
ニ依リマスト云フト會社ノ保護ダ、今マデ
ハ市ガヤカマシク言ッテ居。タカラ、會社ハ增
資ヲ能ウシナカッタガ、主務大臣ノ認可
ト云フコトニナルト、全ク市ニ沒交涉
デヤルノダカラ、會社ノ保護ダト仰セラレ
テ居リマスガ、是ハ大變ニ吾々共ノ考トハ
意見ヲ異ニシテ居リマス、增資ニ對シテ認可
申請ハ單リ會社ノ爲ダケデハアリマセ
又、世間往々ニ致シマシテ瓦斯會社ノ意嚮
ヲ-自分ノ利益ヲ增資ニ隱シマシテ其
增資ノ資本金ニ對スル配當ヲ專ラニ致シマ
シテ、市民ノ料金値下ヲ妨ゲルヤウナ行動
ガアルノデアリマス、ソレ故ニ增資ノ認可
ヲ受ケシムルト云フコトハ是ガ監督上、
財務上ノ取締監督ヲ必要トスル所以デアリ
マシテ、增資ヲスルコトハ會社ノ爲ニ必要
ナル資金デアルヤ否ヤ、徒ニ自己ノ利益ヲ
增資、株式配當ニ取去ルト云フ行動ノ爲ニ
出デヽ居ルモノデアルヤ否ヤヲ、能ク檢討
ヲ致シマシテ、主務大臣ハ認可致ス積リデ
アルノデアリマス、增資必ズシモ會社ヲ保
護スルダケデサク、增資ノ取締ハ卽チ消費
者タル市民ノ利益ヲ擁護スル譯デアルノデ
アリマス、然ラバ報償契約ハ一體ドウナルノ
カト云フコトノ意味ノ御尋モゴザイマシタ
ノデアリマスガ、報償契約ハ或ル部分ニ於
5、法律ノ力ニ依ッテ部分的ニ消滅スル場
合モアルノデアリマスガ、報償契約ノ效力
ニ付テハ決シテ當局者ハ之ヲ全然無效デ
アルト云フ意見ヲ持。ッテ居リマセヌ、增資ニ
付キマシテモ、是ハ報償契約ノミニ依ルナ
ラバ、會社ガ其關係市ニ協議ヲ致シマシテ、
協議ガ調ハナイ場合ニ於テハ主務大臣ニ
裁定ヲ求メテ居ルノデアルガ、今度ハ認可
ヲ要スル、認可ト裁定トハ少シモ主務大臣
ノ處置ニハ變リハゴザイマセヌ、第十七條
ノ二ノ第二項ヲ、本法ニ依ッテ認可ヲ受ケ
ル者ハ裁定ヲ申請スルノ權利ガナイト云フ
コトニ付テ御引用ニナリマシタ、是ハ御話
ノ如キ意味ノ下ニ出タ規則デハナイノデア
リマス裁定モ商工大臣ノ處分デアルシ
認可モ處分デアル同ジク商工大臣ノ處置
ヲ致シマスルノニ、裁定ノ働ト認可ノ働ト
二重ニ處置スル必要ガナイカラ、此第十七
條ノ二ノ第二項ガ生レテ來テ居ルノデアリ
きく、ソレカラシテ之ニ牽聯致シマシテ
此度東京瓦斯會社ノ料金ノ申請、之ニ對ス
ル商工大臣ノ處置、之ニ對シテ色々ノ御意
見ヲ御述ニナッタノデアリマスガ、是ハ深澤
君ノ御意見ト私ノ商工省ノ意見トハ大
分距離ガアリマス、違ッタ距離ガアリマス
併ナガラ段々御話ノ如キ說モ伺ヒマシタ
ガ料金ノ量定ニ付キマシテハ唯一〓ニ
石炭ノ値段ノミニ依ッテ、之ヲ判斷スル譯ニ
行カヌト云フコトヲ申上ゲテ置キタイノデ
アリマス、卽チ試ミニ東京市ノ要求ノ五十
錢此五十錢ノ値下ニ付テ、會社ハ幾何ノ
支出ヲ要スルコトニ相成リマスカト言ヘ
バ是ハ申上ゲルマデモナク深澤君ハ御承
知ダラウト思フ、五十錢ノ値下ニ付テ會社
ハ六百万圓ノ支出ヲ要スルノデアリマス
斯ウ云フ支出ヲ以テ會社ニ强ユルコトハ、
是レ卽チ會社ノ營業ノ基礎ヲ危クスルコト
ニ相成リマスルカラ、此點ニ付テ商工大臣
ハ、市民ノ利害ト會社ノ利害ト相共ニ睨ン
デ裁定ヲ致シタノデアリマス、此間ニ於テ
ハ何等自ラ顧ミテ疚シイコトハアリマセヌ、
色々ナ御話ガゴザイマシタケレドモガ、若
シ深澤君ノ御話ノ如ク、私ノ處置ニ付テ何
カ疑ハシイコトガアルナラバ明カニ御指
摘ヲ願ヒマス
ソレカラシテ割引料金ニ付テ御話ガアリ
マシタ、是ハ既ニ料金ニ付テ主務大臣ノ認
可ヲ要スルト云フ規定ニ相成リマスル以上
ハ割引料金ニ付キマシテモ、商工大臣ノ
認可ヲ要スル事項デアリマス、認可ヲ經ズ
シテ割引ヲシテ居ルト云フコトハ、ソレハ
認ムルコトハ出來マセヌ「メートル」ニ付テ
ドウスルカト云フコトデゴザイマスルガ
「メートル」ノ料金ハ恰モ瓦斯料金ト同樣デ
アリマス「メートル」料金ヲ無タスレバ、瓦
斯料金ヲソレダケ上ゲナケレバ、會社ガ到
底計算ガ出來ヌト云フコトニ相成リマスル
カラ、是ハ「メートル」料金ヲ無クスルモ、
置クモ、結局使用者ノ負擔ニ於テハ、料金
ト同樣ニ見ルト云フコトガ正當デアルト思
フノデアリマス〓量制ニ付テノ御話ガア
リマシタガ、是ハマダ熱量制ハ主務省ニ參,
テ居リマセヌ、或ハ深澤君ハ此事實ヲ豫知
シテ居ルカ、又或ハ其手續ノ途中デアルカ
モ知レマセヌ、併ナガラ深澤君ノ御說ノ如
〃、若シ此申請ニ手續上ノ不法ガアリマス
ルナラバ、受理シタ上デ其申請書ヲ見マシ
テ正當ナル手續ニ依シテ之ヲ矯メ直ス外
ハナイノデアリマス、而シテ熱量制ニ村キ
マシテ、當局者ノ意見ハドウカト云フ御尋
デアリマスルガ、是ハ能ク其申請ヲ見マシ
タ上デ、之ニ對スル適當ナル考察ヲ加ヘ、
處置ヲ致ス積リデアルノデアリマス
尙ホ最後ニ附加ヘテ置キマスルガ、此第
十八條ノ第二項ヲ御引用ニナッテ、利益金
フ處分銷却其他ニ村テ必要ナル命令ヲ發ス
ルコトガ出來ルト云フ、此主務大臣ノ働ニ
依ッテ如何ナルコトヲ爲スデアラウカ、或ハ
銷却ニ專ラニチルナラバ、此銷却ヲ減ジテ、
料金値下ノ方ニ之ヲ振向ケルト云。ッタ如キ
コトヲスルカドウカト云フ御尋デアリマシ
〃、是モ亦先ニ增資問題ニ付テ申上ゲマシ
タ通リニ、徒ニ銷却ヲ少ナク致シマシテ
株式ノ配當ヲ多クスルト云フコトハ、是ハ
單リ會社ノ不爲ノミナラズ、消費者タル市民
ノ不爲デアリマス、銷却ヲ怠リマシテ會社ハ
更ニ其事業ヲ繼續スルニ村テ、大イニ無益
ナ修繕費、若タハ無益ナ設備費ヲ費ササケ
レバナラヌト云フコトハ是レ同ジタ其經
費ハ市民ノ負擔ニ於テ爲ストモ見ラレルノ
デアリマス、ソレ故ニ銷却ニ付テモ、利益
處分ニ付テモ、商工省ハ適當ト認ムル所ニ
依ッテ判斷ヲ致シマシテ、餘リニ銷却ガ少ナ
イトカ、乃至又其反對ニ、餘リニ銷却ヲ多
ク致シマシテ、市民ノ料金値下ニ對シテ、
其財源ヲ他ニ轉化スルガ如キ行動ガアリマ
スルナラバ、何レモ亦商工省ハ其會社ノ財
務的監督ノ必要上カラ、之ヲ制限致シタイ
ト考ヘテ居ルノデアリマス(拍手)
〔政府委員橫山勝太郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01919310226&spkNum=28
-
029・横山勝太郎
○政府委員(横山勝太郞君) 深澤君ニ御答
致シマス御質問ノ料金ノ問題、計量器ノ
問題、熱量制ノ問題ニ付テハ、只今商工大
臣カラ御答ニナリマシタカラ私ハ之ヲ略シ
W.B.深澤君ノ御質問ノ趣旨ハ主トシテ
私ノ責任ニ關スル問題デアックト思ヒマス
御說ノ通リ大正九年十二月、瓦斯料金ノ問
題ニ關聯致シマシテ、東京市會議員ノ職ヲ
辭シタコトハ仰セノ通リデアリマス、當時
ハ瓦斯會社ガ一圓ノ料金ノ値上ヲ要求致シ
マシタ、漸次〓究ノ結果、五十錢ノ値上ト
云フコトニ相成ッタノデアリマスガ、其當時
ニ於キマシテハ、吾々ハ全ク瓦斯會社ノ申
請ハ不當ナリト認メテ、之ヲ反對致シタコ
トハ事實デアリマス、併ナガラ今囘炭價ノ
値下ニ依シテ元ヘ引戾スト云フコトニ付云
ノ御說ニ付テハ、直チニ御同意申土ゲル譯
ニ行カナイノデアリマス、御承知ノ通リニ
瓦斯料金測定ノ條件ト致シマシテ、炭價ノ
値下リ若クハ値土リト云フコトガ、重要ナ
ル條件デアルト云ツコトハ勿論デゴザイマ
スルケレギモ、單リ炭價ノ問題ノミニ依、テン
瓦斯料金ノ裁定ヲ下スコトハ出來ナイノデ
アリマス、入許費其他ノ問題ヲ詳細ニ考慮
致シマシテ、今囘ノ商工大臣ノ裁定ハ妥當
ヲ得タルモノデアルト確信ヲ致シテ居リマ
ヌ故ニ大正九年ノ當時ニ於キマシテハ
私ハ信念ニ基イテ之ニ反對シ、今囘ハ色々
ノ條件ニ依ッテ、今日ノ所ニ於キマシテハ
此程度ノ値下ヲ以テ最モ其當ヲ得タルモノ
ト確信ヲ致シテ居ル次第デアリマス
尙ホ將來ノ事ニ付テ色々御詰問ガゴザイ
マシタガ此點ハ大體ニ於テ深澤君ト同意
見デアリマシテ、瓦斯會社ノ事業ハ勿論獨
占事業デアリマスルカラ、獨占ノ弊害ノ
起ッテ參リマスルコトハ、極力之ヲ防壓致シ
タイト思ヒマス、同時ニ報償契約ノ精神、
其他報償契約ニ類似致シマスル東京市ト
瓦斯會社トノ點ニ於キマスル取交ハシノ如
キモクモ、其精神ノ在ル所ヲ尊重致シマシ
テ、全消費者ノ爲ニ利益ヲ擁護スル確信ヲ
持ラテ居ルト云フコトヲ申上ゲマス
〔政府委員齋藤隆夫君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01919310226&spkNum=29
-
030・齋藤隆夫
○政府委員(齋藤隆宋君) 內務省ガ監督シ
テ居リマスル所ノ地方自治體、卽チ市町村
ト瓦斯事業者トノ間ノ事業經營ニ關スル定
メニ付テ紛議ヲ起シテ一方ガ他方ニ對シ
テ或ル要求ヲ爲シ、又或ル承認ヲ求メル場
合ニ於キマシテハ、主務大臣ガ、之ヲ裁定
スルト云フコトニ相成テ居リマス、而シテ
其主務大臣ハ商工大臣デゴザイマスルケレ
ドモ、商工大臣ガ之ヲ裁定スルニ當リマシ
テハ、勅令ノ定ムル所ニ依ッテ、內務大臣ト
協議ヲスルト云フコトニ相成ッテ居リマス、
故ニ商工大臣ハ内務大臣ノ意見ヲ無視シ
テ、單獨ニ自由勝手ナル裁定ハ出來ナイノ
デアリマス、故ニ商工大臣ヨリ協議ヲ求メ
ラレマシタル場合ニ於テハ內務省ハ最モ
公正ナル立場ニ立ッテ、內務省ガ監督シマス
ル所ノ市町村ノ利益ヲ擁護シ、會社ニ不當
ナル利益ヲ與ヘルト云フコトニ付キマシテ
ハ、十分ニ注意ヲスル積リデアリマス、左
樣ニ御承知ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01919310226&spkNum=30
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031・深澤豐太郎
○深澤豐太郞君 商工省ニ對スル質問ハ止
メマシテ只今ノ齋藤政務次官ノ演說ニ對
シ簡單ニ質問シタイト思ヒマスカラ、當席
カラ御許シヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01919310226&spkNum=31
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032・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 宜シウゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01919310226&spkNum=32
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033・深澤豐太郎
○深澤豐太郞君 只今齋藤政務次官ハ裁定
ニ付テ十分ニ協議スルト言ハレマシタガ、
今囘ノ法律ニ依ルト、其裁定ト云フモノヲ
無クシテ、大體ニ商工大臣ノ許可事項ニ讓ク
テシマッタノデアリマス、裁定ニ付テ內務大
臣ノ發言ガ失ハレテ居ルノダカドウカ、裁
定ニ至ッタナラバ十分協議スルト云フガ、裁
定ガ無クナッテシマッタラ、內務省ノ權限ヲ
失ハレルノデハナイカ、此點ニ付テ御質問
ヲ致シマス
〔政府委員齋藤隆夫君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01919310226&spkNum=33
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034・齋藤隆夫
○政府委員(齋藤隆夫君) 此度ノ改正案ニ
規定シテ居リマスル所ノ、商工大臣及ビ內
務大臣ノ權限ニ付キマシテハ委員會ニ於
キマシテ詳細御答致シマスルカラシテ、ド
ウカ其時マデ御待チヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01919310226&spkNum=34
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035・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 質疑ハ終リマシ
タ-日程第四、右議案ノ審査ヲ付託スベ
キ委員ノ選擧ヲ議題ト致シマス
十
第四右議案ノ審査ヲ付託スヘキ委員
ノ選擧発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01919310226&spkNum=35
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036・作田高太郎
○作田高太郞君 本案ハ議長指名九名ノ委
員ニ付託セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01919310226&spkNum=36
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037・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 作田君ノ動議ニ御
異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01919310226&spkNum=37
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038・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 御異議ナシト認メ
マヽ、仍テ動議ノ如ク決シマシタ
日程第五、取引所稅法中改正法律案、第
一讀會ノ續ヲ開キマス委員長ノ報告ヲ求メ
マス-委員長山邊常重君
第五取引所稅法中改正法律案(政府
提出)第一讀會ノ續(委員長報〓)
報告書
一取引所稅法中改正法律案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報告候也
昭和六年二月二十四日
委員長山邊常重
衆議院議長藤澤幾之輔殿
〔山邊常重君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01919310226&spkNum=38
-
039・山邊常重
○山邊常重君 諸君、只今上程サレマシタ
取引所稅法中改正法律案ノ委員會ノ經過竝
ニ結果ヲ御報告申上ゲマス
本改正案ハ極メテ簡單デアリマスルガ、
其及ボス範圍ハ頗ル廣クアリマス卽チ本
案ノ提案者ハ大藏省デアリマスガ、其所管
事務ノ大部分ハ商工省ノ所管デアリマス
改正ノ要點ハ從來ノ生產取引モ或ハ相對
賣買モ、取引所法ノ規定ニ依リマスルト云
フト、其稅金ガ萬分ノ二·五デアリマス、然
ルニ本改正案ニ依リマスレバ、生產取引ハ從
來同樣ニ萬分ノ二·五デアリマスルガ、相對
賣買ノ取引ノミガ改正致サレマシテ、一·二
五ニナッテ居リマス、卽チ半額ノ稅金ニナツ
タノデアリマス此事ニ付キマシテ政友會
ノ難波〓人君及ビ門田新松君ヨリ、微ニ入
リ細ニ涉リクル御質問ガアリマシタ其質
問ノ要點ハ、之ヲ證劵取引ニ比較致シマス
ルト云フト、一昨年ノ證劵取引ノ取引所稅
ハ單ニ取引ノ稅金ガ二百七十二万圓、長
期ノ卽チ生產取引ノ稅金ハ僅ニ九十一万圓
デアリマスデアルカラ若シ生產取引ノ手
數料ヲ其儘ニシテ置イテ相對賣買ノ取引
ヲ半額ニスルト云フコトハ、徒ニ投機思惑
ヲ助長スルコトニナリハシナイカト云フ御
質問ガアリマシタ、又民政黨ノ高橋秀臣君、
石原善三郞君ヨリモ、詳細ナル御質問ガア
リマシタ、之ニ對シマシテ政府委員亦能ク
答辯ヲセラレマシタ、其結果委員會ハ滿場
一致ヲ以テ原案ニ贊成ヲ致シマシタ、何卒
本院ニ於キマシテモ、御審議ノ上滿場一致
御贊成アランコトヲ御願致シマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01919310226&spkNum=39
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040・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 質疑モ討論モアリ
マセヌ、本案ニ對シ第二讀會ヲ開クニ御異
議アリマセヌカ-御異議ナシト認メマ
ス、本案ノ第二讀會ヲ開クニ決シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01919310226&spkNum=40
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041・作田高太郎
○作田高太郞君 直チニ本案ノ第二讀會ヲ
開キ第三讀會ヲ省略シ、委員長報〓ノ通
リ可決セラレンコトヲ望ミマス
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01919310226&spkNum=41
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042・藤澤幾之輔
○議長 (藤澤幾之輔君)御異議ナシト認メ
マス、仍テ直チニ第二讀會ヲ開キマス
AY-AA
取引所稅法中改正法律案
第二讀會(確定議)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01919310226&spkNum=42
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043・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 發議ハアリマセ
又、本案ハ委員長報告通リ可決確定致シマ
シタ(拍手)
日程第六、昭和四年度第一豫備金支出ノ
件、外七件ヲ議題ト致シマス-小川政務
次官
昭和四年度第一豫備金
支出ノ件
昭和四年度特別會計第
一豫備金支出ノ件
昭和四年度豫備金外ニ
於テ豫算超過及豫算外
支出ノ件追加
昭和四年度特別會計第
二豫備金支出ノ件(承諾ヲ
第六昭和四年度特別計豫求ムル
備金外ニ於テ豫算超過件
及豫算外支出ノ件追加
昭和五年度第二豫備金
支出ノ件
昭和五年度特別會計第
二豫備金支出ノ件
昭和五年度特別會計豫
備金外ニ於テ豫算外支
出ノ件
〔政府委員小川〓太郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01919310226&spkNum=43
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044・小川郷太郎
○政府委員(小川〓太郞君) 昭和四年度第
一豫備金支出外七件ニ關スル事後承諾ヲ求
ムル爲メ、玆ニ議案ヲ提出致シマシタニ付
キ、其大體ノ說明ヲ致サウト存ジマス
昭和四年度第一豫備金ノ豫算額ハ六百万
圓デアリマスガ、昭和四年勅令第九十七號
ニ依リ、第一豫備金ヨリ補充致シマシタ主
ナル事項ハ外國在勤俸、衞生試驗所阿片
費、市町村交付金、受託造修費、家畜傳染
病豫防費及製鐵業獎勵金等デアリマシテ、
其總額ハ六百万圓デアリマス、各特別會計
ニ於キマシテモ、第一豫備金ヨリ豫算超過
ノ支出ヲ爲シタルモノガアリマス
次ニ昭和四年度豫備金外支出追加ニ付キ
申上ゲマス、昭和五年一月二十一日、第五
十七囘帝國議會ニ於テ、衆議院ガ解散セラ
レタル結果、昭和四年度ニ於テ支出ヲ要ス
ル費途ニ對シ、政府ハ已ムヲ得ズ昭和五年
一月二十四日ヨリ同年三月二十五日マデノ
間ニ於テ、歲計剩餘金ヲ以テ豫算超過及豫
算外ノ支出ヲ爲シタルモノガアリマス、其
事項ノ主ナルモノハ警察費連帶支辨金、諸拂
戾及補塡金、恩給、衆議院議員總選擧諸費、
失業救濟事業補助員總選擧通信
取扱費等デアリマシテ、其總額ハ千六百三
十五万九千三百六十四圓デアリマス各特
別會計ニ於キマシテモ第二豫備金及豫備
金外ニ於テ、其歲計剩餘金或ハ歲入金ヲ以
テ豫算超過及豫算外ノ支出ヲ爲シタルモノ
ガアリマス
次ニ昭和五年度第二豫備金支出ニ付テ申
上ゲマス、昭和五年度一般會計第二豫備金
ノ豫算額ハ八百万圓デアリマスガ、其支出
ノ主ナル事項ヲ擧ゲマスレバ、倫敦海軍會
議參列費、失業救濟臨時施設費補助、臺灣
匪徒鎭定費及各省所管ニ亙ル火災、風水害
其他ニ依ル復舊費等デアリマシテ、其總額
ハ四百四十六万千二百九十一圓デアリマ
ス
尙ホ各特別會計ニ於キマシテモ、其第二
豫備金及豫備金外ニ於テ豫算外ノ支出ヲ爲
シタモノガアリマス何卒御審議ノ上承諾
ヲ與ヘラレンコトヲ望ミマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01919310226&spkNum=44
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045・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 質疑ヲ許シマス-
藤井達也君
〔藤井達也君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01919310226&spkNum=45
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046・藤井達也
○藤井達也君 諸君、本員ハ只今政府委員
ヨリ御說明ノアリマシタ昭和四年度外務省
豫備金外支出調査調書追加案ニ付キマシ
テ、總理大臣代理兼外務大臣、海軍大臣等
ニ御尋致シタイト」思フノデアリマス、其
金額ハ僅ニ十八万七千五百二十三圓ト云フ
少額ノモノデアリマスケレドモ、此倫敦會
議ノ問題ト云フモノハ、洵ニ重大ナル案件
デアリマス、現內閣ガ此度豫算ヲ提出ナサ
レマシタ其內容ヲ見マスルト貧弱ナルニ
至ッテハ未ダ曾テ何レノ內閣デモナイ程、見
窶ラシイ案ヲ提出シテ居ルノデアリマス、
取分ケ最モ重要ナ問題ハ所謂倫敦會議ニ
依ッテ生ジマシタ海軍ノ問題ト、國民負擔ノ
輕減デアルト仰セニナリマス所ノ減稅問
題、此二ツダケハ洵ニ重要ナ問題デアリマ
スケレドモ、其他ノ問題ニ至ッテハ、三文ノ
價値モナイヤウナモノダケデアルト私ハ考
ヘテ居ルノデアリマス、故ニ此處ニ出マシ
タ金額ハ少額デアリマスケレドモ、關聯ス
ル所洵ニ重大ナ關係ニナルノデアリマスカ
ラ、此際私ハ聊カ數項ニ亙リマシテ、外務
大臣或ハ總理大臣代理ニ御尋ヲ致シタイト
思フノデアリマス、ケレドモ總理大臣代理
ニ致シマシテモ、御承知ノ通リノ失言カラ
全ク落第生ニナリ、戰々兢々トシテ、或ハ
貴族院ニ或ハ衆議院ニ、恰モ薄氷ヲ履ム
ヤウナ心持デ、ウロ〓〓シテ居ルノデアリ
マスカラ、此處ニ御招キシテモ出ルコトモ
出來マスマイカラ、永井政務次官ノ御答辯
デモ結構デアルト玆ニ申上ゲテ置クノデア
リマス
倫敦條約ノ趣意ニ依リマスレバ、此條約
ニ依ッテ競爭的軍備ニ常ニ伴フ危險ヲ防止
シ、且ツ負擔ヲ輕減センコトヲ希望スト云
フ此趣意ノ目的ノ下ニ此會議ガ開カレタ
ト思フノデアリマスケレドモ、此議會ニ於
キマシテ、倫敦條約ノ結果ニ依ル海軍ノ國
防、竝ニ國民負擔ノ輕減ト民政黨ガ唱ヘテ
居リマス稅制ノ問題等ヲ考ヘテ見マスルト、
倫敦條約ニ依ル國防計畫ト云フモノハ、國
防ヲ不安ニコソナラシメマシタケレドモ、
決シテ我國ノ國防ハ之ニ依ッテ安全ナリト
考ヘルヤウナ人ハ一人モアリマスマイ、唯
僅ニ二百七十名ノ、世間カラ所謂贋造ナド
ト言ハレマス代議士諸君ダケニ過ギヌノデ
アリマス、他ノ國民ハ皆一樣ニ、倫敦條約
ニ依ッテ國防ニ不安ヲ來シタモノデアルト
云フコトデ、津々浦々ニ至ルマデ、一六一
言論ヲ以テ現內閣ヲ彈劾シツヽアルト思フ
ノデアリマス、又國民負擔ノ輕減ダト仰セ
ニナリマスルガ現內閣ハ其與黨デアリマ
スル民政黨、元フ憲政會時代カラシテ、國
民負擔ノ輕減ヲスルト盛ニ御宣傳ニナッテ
居リマシタケレドモ、若シ夫レ倫敦條約ナ
カリセバ、殆ド現內閣ト云フモノハ半文ノ
減稅モ出來ナカッタモノデアルト思フノデ
アル、辛ウジテ現內閣成立シマシタ其好機
會ニ於キマシテ、倫敦會議ニ遭遇シタノデ
アッタレバコソ、之ヲ利用致シテ、國防ニハ
無理ニ缺陷ヲサセナガラ、海軍ヲ壓迫シテ、
捩リ込ンデ出サシタモノハ一億三千四百万
ト云フ、恰モ雀ノ淚ノヤウナ、二階カラ目
藥ヲサスヤウナ、此減稅ヲヤッタモノデア
ル、多年主張シマスル民政黨、元ノ憲政會
時代ノ減稅ノ趣旨ト其目的トハ、根本的ニ
相違シテ居ルノデアルト謂ハザルヲ得ナイ
ノデアリマス(拍手)
然ラバ私ハ第一問ニ伺ヒタイノハ、政府
ハ倫敦條約締結ノ結果ト致シマシテ、米國
ノ海軍力ヲ增大セリト御考ヘニナラザル
ヤ、隨テ將來我國ノ兵力量ガ、米國ト軍備
ノ競爭的危險ニ遭遇スルノ已ムナキコトニ
至ルモノト考ヘザルヤ否ヤト云フコトヲ御
尋致シタイト思フノデアリマス、何故之ヲ
御尋スルカト言ヒマスルナラバ、民政黨ノ
諸君、現內閣ノ人々ダケハ、倫敦條約ハ成
功ノヤウナコトヲ宣傳シマスルケレド
平〓〓
〔議長退席、副議長著席〕
心ノ奧底カラ良心ニ愬ヘマシテ、倫敦條約
ハ大ナル成功デアッタ、國防ニ不安ガナカツ
タナドト云フヤウナ、大キナコトヲ言ヘル
人ハナイト私ハ思フノデアリマス(拍手)恐
ラク海軍當局ニシマシテモ、外務省ノ諸君
デモ、此倫敦條約ハ失敗デアル、唯之ヲ補
充ノ途ニ依ッテ辛ウジテ胡麻化スト云フコ
トガ其良心ニ愬ヘテ浮ビ出マスル所ノ私
ハ結論デアルト思フノデアリマス(拍手)
此見地カラ考ヘマシテ、亞米利加ハ倫敦
條約ニ關シテ、如何ニ彼等ガ之ヲ亞米利加
國民ニ向ッテ、其成功ヲ誇シテ居ルカト云フ
コトヲ申述ベマスルコトガ、最モ必要ト思
フノデアリマス、亞米利加ハ大成功デア
ル、倫敦條約ニ依ッテ國防ノ充實ガ十分出
來タモノデアル、決シテ此國防ニ依ッテ
今後日本ト戰フヤウナ際ニ當リマシテモ、
亞米利加ハ必ズ日本ト云フモノヲ壓迫スル
コトガ出來ルモノデアルト云フコトヲ、堂
堂ト亞米利加ノ議會ニ於キマシテ闡明致シ
テ居ルト致シマスルナラバ、一面ニ於キマ
シテ我國ノ國防上ニ非常ナル缺陷アレバコ
ソ、亞米利加ハ斯ノ如キ論斷ヲ下スモノデ
アルト私ハ信ズルノデアリマス(拍手)此見
地ヨリシテ私ハ暫クノ間亞米利加ノ上院ノ
外交軍縮委員會ニ於テ發表サレマシタ、其
討論內容ト云フモノヲ諸君ニ申述ベマシ
テ、如何ニ亞米利加ハ倫敦條約ニ成功致
シ、隨テ日本ハ倫敦條約ニ依ッテ非常ナル失
敗ヲ來シタカト云フコトヲ明瞭ニ致シマス
ルコトハ代議士デアル吾々ノ本分デアル
ト同時ニ、國民ヲシテ十分之ヲ知悉致サセ
マシテ、將來ニ於テ此倫敦條約ダケデハ我
國ノ國防ハ不安デアルカラ、吾々ハ一大決
心ヲ致シ、一大努力ヲ致シテ、亞米利加ノ
國防ニ對抗シナケレバナラヌ、國防ヲ充實
セシメンガ爲ニハ、飽クマデ吾々ハ此際米
國上院ノ狀況ト云フモノヲ論議スルコト
ガ、最モ必要ナリト固ク信ズルノデアリマ
ス
昨年ノ五月十二日、月曜日デアリマス、
米國外交軍縮委員會ニ於キマシテ、國務長
官ノ「スチムソン」ハ次ノヤウナコトヲ堂々
ト辯明シテ居ルノデアリマス、倫敦軍縮會
議ニ於テ米國代表ガ集ッテ、餘程馬鹿氣タ
「パリテイー」ヲ作レル結果、日本ノ海軍力
ガ著シク優勢ヲ示スヤウナコトニナラズ、
大西、太平兩洋ヲ隔テタ米國ガ、日英兩國
カラ脅威ヲ受ケルヤウナコトハ絕對ニナ
ク、全ク安全デアルコトハ、全米國海軍權
威者ノ一致シタ見解デアルト自ラ誇ッテ居
ルノデアリマス、諸君、之ニ反シテ我國ノ
全權委員諸君デモ、海軍當局デモ、或ハ政
府當路者デモ、此倫敦條約ハ寔ニ國防ニ〓
陷ヲ來シ不安デアル、之ヲ補充スル辛ウジ
テ途ガアルナゾト云フコトデ、慌テフタメ
イテ居ルニ反シマシテ、米國ニ於キマシテ
ハ堂々此條約ニ依ッテ、米國ハ全ク太平、
大西兩洋ニ安全デアルト得意ニナッテ居ル
點ヲ考ヘマシテモ、如何ニ倫敦條約ハ慘メ
ナ結果ヲ我國ニ來シタモノデアルト云フ、
ツノ證據ニナルト私ハ思フノデアリマス
(拍手)
更ニ之ヲ細カニ別ケテ見マスルト、例
バ主力艦ニ付キマシテノ「スチムソン」ノ明
瞭ナル演說ニ依リマスルナラバ、北米合衆
國ハ艦齡二十年ノ戰艦ガ二隻、艦齡十九年
ノ戰艦ガ三隻、英國ハ艦齡十七年ノモノ五
隻、日本ハ艦齡十七年ノモノ一隻ヲ廢棄ス
ルモ、是等ハ艦齡ヲ比較スル時、何レモ米
國ニ取ッテ有利デアルト云フコトヲ申シテ
居ル主力艦ノ問題ニ關シマシテモ、米國
自ラハ其艦齡ヲ比較致シマスル時ニ、日本
ヨリモ亞米利加ノ艦齡ハ古イノデアリマス
ルカラ、若イ艦齡ヲ日本ヲシテ之ヲ廢艦セ
シメタト云フコトハ一ツノ成功デアルト
云フコトヲ申シテ居ル、此一點デモ主力艦
ニ於テ、先ヅイノ一番ニ失敗シタモノデア
ルト云フコトハ明瞭ナリト私ハ論斷スルノ
デアリマス
然ラバ驅逐艦ニ關シマシテハ如何ナルコ
トヲ申シテ居ルカト申シマスナラバ驅逐
艦ハ英米兩國トモ十五万噸ニ決シタルモ
米國ハ本條約ニ依ッテ多大ノ利益ヲ得タ、殊
ニ委員諸君ノ御注意ヲ促サントスルモノデ
アル、我ガ驅逐艦ハ廢艦ト同時ニ建造スル、
廢艦年齡ニ達スルノデアリマスカラ隨テ
此條約ニ依ッテ代換建造ノ時期ト云フモノ
ハ普通代換建造ノ時期ヨリモ長期ニ亙〃
テ造換ヲスルコトヲ得ルノミナラズ-此
後ノ事ガ必要デアリマスカラ、能ク耳ヲ洗ッ
テ民政黨ノ諸君ハ御聽キ願ヒタイト思フノ
デアリマス、尙ホソレヨリモ好都合ノ事ハ、
此條約ガ締結サレザレバ、條約終了ノ時期
タル千九百三十六年十二月三十一日ニ於
テ、我ガ驅逐艦ノ艦齡ハ、普通ノ慣習ニ從
フナラバ現有二十九万噸中僅ニ廢艦年齡ニ
達セザルモノハ一万四千噸ニ過ギヌノデア
リマスト言明シテ居ル、驚クベキ條約デアル
ト言ハネバナラヌノデアル、サスレバ亞米
利加ハ千九百三十六年ニ當リマシテ、二十
九万噸ノ艦ノ中デ艦齡ニ達シナイト云フモ
ノハ、僅ニ一万四千噸ニ過ギナイノデアル、
千九百三十六年ニナリマスト、亞米利加ハ
當然此驅逐艦ト云フヤウナモノハ廢艦年齡
ニ達シマスルカラ、殆ド大部分ト云フモノ
ガ九割七分マデハ之ヲ廢棄シナケレバナ
ラヌ、廢艦ニシナケレバナラヌコトニナッタ
ノニ、丁度好イ按配ニ日本ガ此倫敦會議ヲ
開キマシタカラ、好機到レリトシテ、玆
十五万噸ト云フ計畫ヲ致シマシタカラ、新
シイ艦ガ亞米利加ニハ出來ル、竝ニ又廢艦
シマスルモノヲバ、當然廢艦セネバナラヌ
モノヲ廢艦スル代リニ、新シイ軍艦ヲ十五
万噸造ルヤウニナッタノデアリマスカラ、米
國ト致シマシテハ、倫敦條約ト云フモノハ、
誠ニ有難イ神樣ノ御託宣デアルト考ヘルノ
デアリマス、而モ此御話中ニ、換言スレバ
我國ハ當時老朽ナル「ウオーアバード」ヲ有
スルニ過ギズ、驅逐艦代換建造ハ恐シキ大
問題デアッタノデアルト、米國ノ「スチムソ
ン」ハ言ッテ居ル所ヲ考ヘマシテモ、驅逐艦
ノ問題ハ米國ニハ非常ナ有利ナ地位ヲ與
ヘ、且ツ其財政上ノ問題カラ見マシテモ、米國
ノ利益ハ莫大デアル、日本ハ結局米國ニ利
益ヲ與ヘテ、却テ日本自ラ國防上ノ缺陷ノ
結果不安ヲ來シタモノデアルト云フコト
ハ明瞭デアルト謂ハザルヲ得ナイノデア
リマス
次ニ潜水艦ニ付テ說明ガアリマシタガー
是ハ重大ナ問題デアリマスカラ、君等ノヤ
ウナ人方ガソンナ事ヲヤッテ居ル暇ニ、一刻
一刻我國ノ國防ノ不安ト云フモノハ來シテ
居ルノダカラ、暫ク默ッテ聽キ給へ-潜水
艇ハ私ガ申スマデモナク、四面海ヲ以テ環
ラサレテ居リマス我ガ海軍國ト致シマシテ
ハ、洵ニ重要ナコトハ、諸君ト共ニ何等意
見ノ相違ガナイノデアリマス、然ルニ此潜
水艦ニ付テ「スチムソン」ノ米國上院ニ於ケ
ル議論ヲ見マスト、次ノヤウナコトヲ言明
シテ居ルノデアリマス、潜水艦ニ於テモ利
益ヲ得タコトハ驅逐艦同樣デアル-驅逐
艦同樣デアルト云フコトヲ能ク御承知願ヒ
タイノデアル、本條約ハ日、英米對等ト
ナッタノデアルガ、我ガ潜水艦ハ目下驅逐艦
同樣ノ實情ニアル、殆ド廢艦同樣ナ實情ニ
アルノデアル、千九百三十六年ニハ廢艦年
齡ニ達セザルモノハ、僅ニ二万二千噸デア
ルト云フコトヲ明瞭ニ申シテ居ル、九万噸
ノ潜水艦ノ中ニ、千九百三十六年ニナリマ
スルト、廢艦トナラザルモノハ僅ニ二万二
千噸ニ過ギナカッタノデアリマスルガ、倫敦
條約ノ結果ニ依リマシテ廢艦ニナラネバナ
ラヌ所ノ軍艦ト云フモノヲ、條約ニ依ッテ玆
ニ新ニ建造スルコトガ出來タノデアリマス
カラ、是亦米國ノ利益デアルト云フコトハ
言フマデモナイノデアリマス、日本ノ軍艦
ハ潛水艇ニシテ千九百三十六年マデニ廢艦
ニナルヤウナモノハヽ幾ラアルカト云フコ
トヲ吾々ガ考ヘテ見マシテモ、全ク亞米利
加ガ殆ド其八分、九分通リマデ廢艦ニナル
モノト比較シマス時ニハ全ク利益ト云フ
點ニ於テ雲泥ノ差、宵壤ノ差以上デアルト
謂ハザルヲ得ナイノデアリマス、此點カラ
考ヘマシテモ、全ク我國ト云フモノハ潜水
艇ノ問題ニ關聯致シマシテ、國防上ニ不安
ヲ來シタバカリデナク、却テ米國ニ甚大ナ
ル利益ヲ與ヘタモノデアリマスルガ、尙ホ
是デモ政府自ラガ潜水艇ニ關シマシテ國防
上ニ不安ガナイ、我國ガ利益ヲ得タナドト
云フヤウナ寢言ヲ語ッテ居ルヤウデハ一日
一刻々々ト我ガ國防ニハ不安ガ來スモノデ
アルト云フコトヲ斷言シテ憚ラヌノデアリ
マス(拍手)
是カラヤカマシイ八吋砲大型巡洋艦ト六
吋砲大型巡洋艦ニ關シテ說明シマスルカ
ラ、是亦十分諸君ノ御謹聽ヲ願ヒタイト思
フノデアル、諸君、是ハ御承知ノ方モアリ
マセウ是ハ私自身ガ右委員會ノ速記ノ原
本ヲ見マシテ、自分デ飜譯シタノデアリマ
スカラ、私ノ言ヒマス所ニ誤ガアッタナラ
バ御訂正ヲ願ヒタイ、併シ失禮ダガ諸君ガ
翻譯シタモノヨリモ、藤井達也ノ翻譯シタ
モノヽ方ガ餘程立派ダト確信致シマス是
ハ少シ長クナリマスガ、國民一般ニ知ラセ
ル必要ガアリマスカラ、此際其內容ヲハッキ
リト朗讀致シ、速記錄ニ依リ、又新聞ニ依
リマシテ國民全體ニ深ク知ラセ、而シテ此
條約ト云フモノガ、如何ニ亞米利加ニ有利
ニシテ、我國ノ失敗デアッタカト云フコト
ヲ、確ツカリ知ラセル必要ガアリマス故ニ、
此處デ倫敦條約ノコトヲ論ズルノデアリマ
ス、「スチムソン」ガ曰ク、此會議デハ日本
ハ明カニ總括的七割ノ提案ヲシタルモ、英
米兩國ニ依リテ認容セラレナカッタ、而シテ
日本軍艦ノ今日ノ實情ヲ見、相互ノ巡洋艦
ノ關係ヲ考慮スレバ、當時米國ハ水上ニ浮ベ
ル一隻ノ八吋砲巡洋艦ヲ所有シ、一隻ハ將ニ
竣成セントシタルモ、五隻建造中ノモノハ
單ニ著手シタルニ過ギナカッタト云フコト
ヲ申シテ居ル、謂ハヾ倫敦條約、此何百万
圓ト云フ金ヲ使ッテ倫敦條約ニ參ッテ或ハ
若槻全權ニシテモ、財部全權ニシマシテモ、
大法螺ヲ吹イテ倫敦ニ參リマシタ當時ニ、
亞米利加ノ軍艦ハ幾ラアルカト云ヘバ
艘ハ唯現有ヲ致シ、將ニ竣成セントスルモ
ノガ一艘アリ、五艘ハ單ニ建造ニ著手シタ
ダケデアッタノデアル、謂ハヾ實際海ニ浮ン
デ居シタ軍艦ト云フモノ、八吋砲巡洋艦ト云フ
モノガ一艘デアッタト云フコトヲ、能ク〓〓
國民ガ承知ヲ願ヒタイト思フノデアリマ
ス、日本ハ八艘ノ八吋砲巡洋艦ヲ有シ、尙
ホ四艘ハ近ク完成セントシ、總計ニ於テ十
二艘ヲ有シテ居ル、六吋砲巡洋艦ニ於テハ、
米國ハ七万噸ヲ所有スルニ過ギザルモ日
本ハ九万八千噸ヲ所有シテ居ルノデアル
六吋砲巡洋艦ニ於キマシテハ米國ハ僅ニ
七万噸シカ所有シテ居ナイケレドモ、日本
ハ九万八千噸ヲ所有シテ居ッタノデアリマ
ス、故ニ米國ノ日本ニ求メントスル重點ハ、
六箇年間ニ米國ガ十五艘ノ八吋巡洋艦ヲ日
本ノ十二艘ニ對抗シテ建造シ、日本ヲ凌駕
シ更ニ三艘ノ巡洋艦ヲ千九百三十六年マ
デニ完成セシムルコトノ目的ヲ以テ倫敦條
約ヲ開イタノデ、之ニ乘ッテヘマナ條約ヲシ
テ來タコトハ失敗デアルト吾々ハ言フノデ
アリマス(拍手)六吋砲巡洋艦ニ關シテハ、米
國ハ現在現有セル七万噸ヲ十四万四千噸ニ
增加シ-諸君、六吋砲巡洋艦ハ僅ニ七万
噸シカ亞米利加ハナカッタノデアリマス、然
ルニ之ヲ十四万四千噸ニ增加シタト云フコ
トニナリマスルナラバ、謂ハヾ亞米利加ハ
六吋砲巡洋艦ニ於キマシテ、七万四千噸ノ
增加ヲ致シタノデアリマス、驚クベキコト
ト謂ハネバナラヌノデアル、驅逐艦ノヤウ
ナ銀座通リノ夜店ノガラクタ道具ノヤウ
ナモノヲ澤山貰ヲテ來テ、八吋砲ニスベキ
カ六吋砲ニスベキヤト云フコトガ現在
世界ノ海軍ニ於キマシテ重要ナル論點ニ
ナッテ、何レガ優勢デアルカ、其優劣ガ
今尙ホ決定シナイヤウナ此大問題デア
リマスル六吋巡洋艦ニ關シマシテハ七
万四千噸モ與ヘテ來タト云フコトハ
何ヲ以テ我國ガ海軍條約問題ニ關係シテ
成功セリナドヽ云フコトヲ言フコトガ
出來マスルカ、不思議千萬ニ考ヘルノデ
アリマス(指手)之ヲ成功ナドト云フヤウナ
方々ハ民政黨ノ代議士ニハアルマイケレ
ドモ、之ニ謳歌スルヤウナ者ハ大體低能兒
カ、巢鴨ノ病院ニ通ハセネバナラヌト思フ
ノデアリマス、而シテ日本ハ然ラバ六吋巡
洋艦ニ付キマシテ、幾許ヲ貰フタカト云フコ
トニ關シテノ說明ヲ見マスト、日本ハ現有
九万八千噸ヲ僅ニ二千噸ヲ增加シテ十万噸
ニ達シタモノデアル、大切ナル八吋巡洋艦
エ付キマシテハヽ御承知ノ如ク非常ナル國
防上ノ不安ヲ來スヤウナ、七割ヲ外レマス
ル比率ヲ得テ、六吋巡洋艦ニ關シマシテハ、
ソレデモ何カ大變ナ大成功デモシテ來タカ
ノヤウニ政府ガ宣傳シ、六吋巡洋艦ニ依ッテ
國防上ノ不安ト云フモノヲ一婦スルコトガ
出來ルト期待セシメタニ拘ラズ、驚ク勿レ
現有九万八千噸ノ上ニ僅ニ二千噸ダケヲ
貰シテ來テ喜ンデ居ルノデアリマス、餘程御
目出タイ所ノ海軍當局デアリ、全權諸君デ
アルト言ハネバナラヌ、是ハ私ガ言フノデ
ナイ、亞米利加ノ全權ガ言フノダカラ、文
旬ガアルナラ亞米利加ノ全權ニ文句ヲ言。ツ
テ貰ヒタイト思フノデアリマス、謂ハゞ米
國ガ日本ヲ凌駕スルマデ、彼ヲ單ニ足踏ミ
セシムルニアル、「スチール·スタンド」、
靜カニ足踏ミサセラレルヤウナ條約ヲ結ン
デ來マシタカラ、米國ノ「スチムソン」ガ堂
堂議會ニ於テ、日本ヲシテ足踏ミセシムル
モノデアルト公言サレマシテモ、厚顏無恥
ナル全權竝ニ外務當局ハ、此條約デモ滿足
ダナドヽ云フヤウナコトヲ言ッテ居リマセ
ウケレドモ、米國自身ノ方デハ日本ヲシテ
足踏ミセシムルノデアル、暫ク立タシテ居
ルノデアル、「マラソン」競走ナラ、其邊ニ
ウロ〓〓立タシテ置イテ、自分ノ方ハドン
ドンソレヲ凌駕シテ競走スルモノデアルト
云フヤウナコトニナリマスルナラバ、如何
ニ此條約ニ於キマシテ我國ガ不利益ヲ被。ツ
タカト云フコトハ、此事實一ツヲ捉ヘマシ
テモ、立派ニ失敗ナリト云フコトガ明カナ
リト思フノデアリマス(拍手)
此後ニ、最後ノ文句ガアリマスカラ、此
文句ヲ約メテ申シマセウ、日本代表ヨ、全
米國代表ハ是等ノ事ニ依テ、日本代表及ビ
日本政府ニ未曾有ニシテ甚大ナル讚美ヲ呈
シタトアル、諸君、外交上ノ折衝ニ當ッテ
外國カラ讚美ヲ表サレル時ニハ必ズ讚美
ヲ表サレタ國ガ失敗デアルト云フコトヲ吾
吾ハ思フノデアリマス、外務大臣ノ弊原君
ノ如キハ、何カ云フト世界ノ平和ノ爲デア
ル親善ノ爲デアル、而シテ支那カラデモ、
露西亞カラデモ、或ハ米國カラデモ、拍手
喝采サレヽバ外交ガ一大成功デアルト御
考ヘニナルコトガ根本ノ間違デアルト申
スノデアリマス、此條約ニ關シマスル「スチ
ムソン」ノ演說ヲ見マシテモ、日本ニ讃美ヲ
與ヘルモノデアルト云フコトヲ堂々明言シ
マスル以上ハ、讚美サレルグケ、日本ガ倫
敦條約ニ於キマシテ米國ニ讓歩ヲ致シ、米
國ニ有利ナル地位ヲ與ヘタカラ、向フガ讚
美ヲ與ヘルモノデアルト說明セザルヲ得ナ
イノデアリマス、更ニ「スチムソン」ハ米國
ガ日本ヲ凌駕スルマデ、日本ハ自ラヲ拘束
シ、足踏ミ致ス條約ヲ締結セ勇氣ト、且
ツ自ラ千九百三十六年後、條約ガ繼續セザ
ル場合ニ際シ、米國ニ好地位ヲ與ヘル所ノ
條約ヲ締結シタル日本政府ハ容易ナラザ
ル難關デアッタノデアルト、是亦非常ニ同情
ヲ寄セテ居ル日本ニ同情ヲ寄セラレテ、
外務當局ハ喜ブカモ知レマセヌケレドモ、
同情ト效果トハ別デアリマス唯同情サレタ
ダケデ喜ブコトガ外交デハアリマセヌ、同
情サレナクテモ、有利ナ條件、有利ナ權益
ヲ吾々ガ持ツト云フコトガ、外務當局トシ
テ當然執ラネバナラヌ所デアルニ拘ラズ
唯徒ニ彼等カラ容易ナラザル難局デアッタ
ナドヽ同情サレヽバ、世間ハ「ロボット」サン
トカ何トカ言ヒマスガ、所謂外務大臣ノ如
キハ如何ニモ得意ニナッテ、外國ト親善ガ出
來、或ハ米國ノ非常ナル讚美ヲ得タモノト
喜ンデ居リマス、玆ニ間違ガ出來ルノデア
リマス
現ニ此議會開會當時何ト言ッタ、移民問題
ニ付テハ、暫ク此移民問題ヲ靜觀シ、サウ
シテ興味アル結果ヲ見ヨウナドヽ云フヤウ
ナ御演說ニナッテ居ラレマスケレドモ、何處
ニ興味アル結果ガ來マス。、現ニ米國ノ上院
ニ於テハ、日本ノ移民問題ハ尤デアル同
情スルケレドモ、此移民ガ米國ニ入ルコト
ハ絕對御斷リ致シマスト拒絕シテ居リマ
ス、日本ノ移民問題ニハ同情モスル、御氣
ノ毒ダケレドモ、併シ同情ト此移民トハ別
個ノ問題デ、之ヲ混同スル譯ニハ參ラヌノ
デアル同情ハ同情デアルケレドモ移民
ノ入ルコトダケハ御斷リ致シマスト米國ノ
上院、下院ニ於キマシテ是ガ決定サレテ居
ル所ヲ見マシテモ、同情ダケデ喜ブヤウナ
外務大臣デハ、我國ヲ代表シテ一國ノ外交
ヲ預カル資格ガナイト私ハ考ヘテ居ルノデ
アリマス
更ニ最後ノ「スチムソン」ノ言葉ガ實ニ妙
味ヲ以テ吾々ハ迎ヘナケレバナラヌ、此難
關ハ議論ヲ以テ律シタリ、財政上、經濟上
ノ事情ニ依フテ律シ能ハザルベク、如何ナル
貧弱國ト雖モ、製艦競爭ヲ以テ威壓サレル
モノデハナイノデアル予ハ此條約ニ關シ
テ日本政府ニ敬意ヲ表シ、脫帽スルモノデ
アルト云フノガ、最後ノ言葉ニナッテ居リマ
ス,吾々御互ガ外國ニ參リマシテ、外國人
ガ吾々ニ脫〓スルト云フ時ニハ、全ク心カ
ラ自分ノ利益ニナル、而モ此利益ノ表情ヲ
センガ爲ニ「シイク·ハンド」ニ代ヘテ脫〓
ヲ致スノデアリマス、然ラバ「スチムソン」
ガ議會ニ於テ堂々日本ニ對シテ脫〓スルト
云フヤウナ、此言葉一ツヲ捉ヘテ考ヘマシ
テモ、現內閣ノ倫敦條約ナルモノハ亞米
利加ニハ甚ダ有利デアッテ、日本ガ其有利ヲ
能ク忍ビ、國防ニ不安ヲ來セルノモ我慢シ
テ吳レタカラ、之ニ敬意ヲ表シテ脫帽シタ
モノデアルト、最後ニ論結ヲシタモノデア
リマス(拍手)
諸君、此「スチムソン」ガ言ヒマシタ此簡
單ナ、彼ノ議會ニ於キマスル答辯ヲ見マシ
テモ、全ク倫敦條約ナルモノハ非常ナル大
失數デアル其結果ト致シマシテ洵ニ將來
ニ不安ヲ懷クノデアリマス、一國々々相互
ノ間ニ於キマシテ、戰爭ノ不安ヲ除去スル
ト云フ場合ニハ其兩國共國防上ニ於テ不
安ガナク、互ニ對立ガ出來マスレバコソ、
一國ガ他ニ向ッテ戰爭ヲ開始セヌノデアリ
やく、御互ニ世界ノ國々ガ今ヤ混沌タル狀
態ニ陷ッテ居ル、現內閣ハ世界ハ平和デアル
ト云フヤウナ御演說ニナッテ居リマスルケ
レドモ、吾々ハ斯ク呑氣ニハ考ヘテ居リマ
セヌ、永井政務次官モ御出デデアリマスガ、
今歐洲ノ現狀ヲ考ヘテ御覽ナサイ、「ヴエル
サイユ」ノ條約ハ世界ノ不安ノ土臺ヲ作〃テ
居リマスカラ、戰敗國ノ獨逸ニシテモ、或
ハ墺地利ニシテモ、其他ノ諸國ニ至ルマデ、
戰敗國ガ「ヴエルサイユ」條約ニ依ッテ被リ
マシタ幾多ノ條約ニ依ッテ被リマシタ幾多
ノ條約上ノ不利益ト云フモノヲ、何トカシ
テ恢復致シ、尙又「ヴエルサイユ」條約ニ依ツ
テ國防上幾多ノ制限ヲ被タモノヲ撤廢致
シタイ、現下ノ條約ヲ破棄シタイト云フ氣
運ガ盛ニ在ルコトハ恐ラク外務政務次官
モ御承知ノコトヽ思フノデアリマス、之h
關聯シテ尙ホ佛蘭西ト伊太利ノ間ニ於キマ
スル地中海ノ問題、及ビ國防上ノ問題、或
ハ波蘭ト獨逸ノ間ニ於キマシテモ、相當樣
樣ナル是等ノ不安ト云フモノガアッテ、互ニ
己レニ有利ナ國々ト提携シテ、自分ノ不利
益ナル國ヲ擊破シヨウト云フヤウナ氣分ハ、
澎湃トシテ起ッテ居ルノデアリマス、此條約
上ノ問題バカリデナク、現內閣ハ何カト云
フト、ヤレ世界的ノ不景氣ダ、滿洲問題ヲ
言フト、滿洲ノ空氣ガ惡イナドト外務大臣
ガ言フガ、現內閣ノ財政計畫ト言ヘバ、風
ノ話デ胡麻化シテシマヒ、外交ノコトヲ言
ヘバ空氣デ以テ胡麻化スカラ、此内閣ハ攫
ミ所ガナイ、サウ云フヤウナ狀態ニナッテ居
リマスガ、要スルニ世界ノ不景氣ノ結果、經
濟戰ト云フモノガ猛烈ニナリ、或ハ關稅問題
ニ關シマシテモ、列國互ニ相食ムヤウナ狀
勢ニナッテ居ルソデアリマスカラ、此氣運ト
云フモノハ容易ニ吾々ハ鎭壓スルコトガ出
來ナイト思フノデアリマス、然ラバ此度ノ
倫敦條約ニ依ッテ、亞米利加自體ト云フモノ
ハ、非常ニ有利ナ地位ヲ占メタト云フコト
ヲ言明シテ居ル、サウ言フト民政黨ノ外務
太臣ノ幣原君ガ曰ク、イヤ亞米利加ハ八吋
巡洋艦ニ關シテハ、亞米利加ノ旣定計畫ハ
二十三隻デアッタノガ十八艘ニナッタカラ、
コヽデ五万噸ダケ少クナッタデハナイカト
云フコトヲ、貴族院ニ行フテ放言シテ居ル是
ハ意外ナコトデアルト吾々ハ考ヘルノデア
ル、成程八吋巡洋艦ニ關シマシテハ五万
噸ダケ少クナッタデアリマセウケレドモ、先
程申シマシタ通リ、六吋巡洋艦ニ關シテハ
向フノ方ガ七万噸デアッタノガ、十四万二千
噸ニナリ、七万二千噸增加致シタノデアリ
マスカラ、八吋巡洋艦、六吋巡洋艦ヲ合セ
テ比較致シマシテモ、亞米利加ノ方ト云フ
モノハ二万二千噸ノ增加ニナッタノデアリ
やくろ斯ウ云フヤウナ幾多ノ缺陷ヲ來シタ
ノデアリマスカラ、私ハ却テ米國ト日本ノ
間ニ於キマシテハ現在以上將來ニ於キマ
シテ、此兩國間ノ戰爭ヲ惹起スル所ノ虞ガ
アルト考ヘルノデアリマスガ、外務當局ハ
如何ニ御考ニナリマスカ、此點ノ答辯ヲ第
一ニ御願シテ置キタイノデアリマス
第二ノ質問ハ政府ハ千九百三十五年ニ
開カルベキ軍縮會議ニ於テ、倫敦條約締結
ニ依リ、我ガ海軍力ノ劣勢ヲ、再ビ條約前
ノ如ク囘復シ得ル確信ガアルカ否カト云フ
コトデアリマス、謂ハベ一言ニシテ申シマ
スト、千九百三十五年ニ再ビ開カルベキ軍
縮會議ニ於テ、此劣勢ニナッタモノヲ回復
シ得ル確信アリヤ否ヤト云フコトヲ御尋シ
タイノデアリマス、是ガ重大ナ問題デアル
ト思フノデアリマス、之ニ付テ何カ言フト、
若槻君ニ致シマシテモ、亦民政黨ノ代議士
諸君デモ、今幾分海軍力ガ少クナッタトテ、
千九百三十五年ニナッタ時ニハ、再ビ軍縮會
議ガ開カレルカラ、其時ドン〓〓勝手ニ取ツ
タラ宜イデハナイカト云フヤウナ演說マデ
シテ居ル(發言スル者アリ)ガヤ〓〓諸君ガ
言ッテモ、若槻君ナドハ靑年會館デサウ云フ
御演說ガアッタコトヲ承知シテ居リマス、反
對黨ノ政友會デハ、倫敦條約ハ失敗シタ、
國防ノ不安ガアルト云フヤウナコトヲ言フ
ガ、千九百三十五年マデ不安ガナイノデア
ル、現ニ諸君ヲ代表シテ居ル政府當局ハ
皆サウ言フヂヤアリマセヌカ濱口雄幸氏
ニシテモ、幣原外務大臣ニシテモ、海軍大
臣ニシテモ、其他五月人形ノヤウニ竝ンデ
居リマス各大臣モ、千九百三十五年マデハ
不安ガナイノヂヤナイカ、千九百三十五年
ニ、不安ガアレバ其際幾ラデモ取ッタラ宜イ
ヂヤナイカト云フヤウナ放言ヲシテ、國民
ノ或者ダケヲ喜バシテ居ル、喜ンデ居ル者
デアッテモ、先ヅ大體民政黨ニ凝リノ〓ノ黨
員ダケ兎ニ角喜バシテ居リマス、ソレ
ダカラ私ハ外務大臣ニ言フノデアル、千九
百三十五年ニ再ビ開カレマス所ノ軍縮會議
ニ於キマシテハ此劣勢ニナッタモノヲ元
ノ儘ニ囘復スルコトガ出來ルカ謂ハヾ現
内閣ガ倫敦ニ全權ヲ派遣スルニ當リマシ
テ、補助艦ニ關シマシテハ總括的ニ七割、
大型巡洋艦ニ關シマシテハ七割ト云フコト
ヲ主張シテ、潜水艇ニ關シマシテハ現狀維
持ト云フコトヲ御主張ニナッタノデアリマ
スガ、此御主張ニナッタコトヲ抛棄致シテ、
吾々國民ヲシテ國防不安ナリト憂ヘシメネ
バナラヌヤウナ狀態ニ陷ラシメナガラ、再
ビ之ヲ囘復スルコトノ御考ガアルカ否カト
云フコトデアリマス、是ハ十分〓究セネバ
ナラヌ所ノ重大ナル案件デアルト、吾々ハ
考ヘルノデアリマス、此點モ私ハ、米國側
ノ此次ニ來ルベキ會議ニ對シマスル米國
全權竝ニ米國委員ノ言明ト云フモノヲ諸君
ニ申上ゲテ、再ビ軍縮會議ヲ開キマシテモ、
決シテ我國ガ再ビ此劣勢ヲ囘復スル主張ト
云フモノハ、貫徹スルコトガ出來ナイ、殆
ド絕望ダト云フコトヲ考ヘマスノデアリマ
スカラ私ハ此點ニ關シマシテ、米國當局
諸君ノ言明ヲ諸君ニ紹介シテ置ク必要ガア
ルノデアリマス、而シテ又政府委員ヨリ
シテ詳細、米國ガ斯ノ如キ大言壯語ヲシテ
居ルコトニ對シマシテ、如何ナル將來ノ準
備ガアリ、御決心ガアルカモ承ッテ置キタイ
ト思フノデアリマスカラ、此點ヲ私ハ質問
シテ見タイト思フノデアリマス
千九百三十年卽チ昨年ノ七月十五日ノ米
國特別議會ニ於キマシテ、倫敦軍縮會議ノ
討議ニ當ノテ、上院議員ノ「カルフオルニヤ」
選出ノ「ハイラム·ジヨンソン」「インデイヤ
ナ」選出ノ「ロビンソン」兩氏カラ、次ノ
ヤウナ質問ガアッタノデアリマス、日本ハ
次ノ會議デ亞米利加トノ均勢ヲ主張スルデ
アラウカト云フコトヲ質問シマスト、米
國ノ倫敦會議ノ全權デアリマシタ、「リー
ド」ハ之ニ答ヘ、倫敦會議ノ內容ヲ說
明シテ言フニハ、「亞米利加ハ日本全權ニ
對シテ日本ハ次ノ會議ニ於テ其欲スル所
ノモノヲ要求スルコトガ出來ルノデアル、
同時ニ亞米利加モ同樣ノ權利ヲ保持スル」ト
申シテ居リマス、自由ニ主張ハシマセウケ
レドモ、亞米利加ハ又同樣ニ其權利ヲ保持
スルモノデアルトハッキリ申シテ居ル、謂
ハヾ現在ナラバマダシモ、亞米利加ハ飽マ
デ日本ニ對抗シテ、或ハ若シ日本ガ從ハナ
カッタナラバ、此條約遂行ノ爲ニハ戰爭モ辭
セナイト云フ威嚇ヲ致シマシテモ、現有勢
力カラ考ヘマストキニハ亞米利加ハ現在
デハ日本ニ向ッテ其最後ノ壓迫モ、威壓モ、
脅喝モ出來ナイノデアリマス、ケレドモ千
九百三十五年ニナリマス時ニハ、旣ニ亞米
利加ノ大型巡洋艦ニ關シマシテモ、其他ノ
軍艦モ、十分整備サレルノデアリマスカラ、
其際ハ倫敦條約ニ於テ執リマシタ態度以
上强硬ナル態度ニ出テ來ルモノデアルト
考ヘマスガ、政府當局ハ之ヲ如何ニ御考ニ
ナッテ居ルノデアリマスカ、現ニ此事ハ今「リ
ード」ガ言ヒマシタ通リ、吾々ハ同樣ノ權利
ヲ保持スルノデアル、現在ニ於キマシテハ、
マダ僅カナアノ八吋巡洋艦ノ微弱ナル勢力
ヲ持ツノデアルガ、十八艘ト云フヤウナ權
利ヲ得タカラ、旣ニ千九百三十五年ニ於テ
總テノ軍艦ノ整備ガ完成致シ、總テノ準備
ガ出來タ際ニハ彼等ハ決シテ日本ニ應ズ
ルモノデナイコトハ玆ニ地球大ノ判ヲ押
シテ私ガ明言シテ憚ラヌノデアリマス
尙ホ言葉ヲ續ケテ言フニハ「余ハ次ノ會
議デ日本ガ各艦種ニ對シ七割要求ヲ繼續ス
ルコトヲ豫期シテ居ル」向フハチヤント政
府ガ御言明ニナラナクテモ、千九百三十五
年ニハ再ビ七割ノ要求ヲスルモノデアルト
喝破シテ居ルノデアリマス、向フノ外交官
ト、日本カラ參リマシタ若槻君デアルトカ、
財部君デアルトカ云フヤウナ官僚上リヤ、
或ハ軍事專門ダケデ、世間ノ實際ヲ知ラナ
イ人トハ異ナリマシテ、「リード」ニシテ
モ、「スチムソン」ニシテモ、酢デモ蒟蒻デモ
喰ヘナイヤウナ慥ッカリシタ者ガ來テ居ル
カラ、旣ニ千九百三十五年ノ會議ニハ日
本ハ要求スルニ相違ナイ、ナゼカト云フト、
彼等ハ軟弱ナル此濱口內閣ノ全權諸君ト云
フモノヲ飽マデ抑へ付ケテ、見事ニ成功シ
タノデアルカラ、如何ニ軟弱ナル此日本全
權諸君デモ、日本外交當局者デモ、恐ラク
此儘オメ〓〓トシテハ居レマイ、千九百三
十五年ニナッタナラバ、必ズヤ反撥的ニ七
割ト云フモノヲ現實ニ主張スルモノデアル
ト云フコトヲ、旣ニ今日ヨリ豫見シテ居ル、
此慧眼ニハ驚カザルヲ得ナイノデアリマ
ス此慧眼ノナイノハ日本當局者ダケデア
ルト私思フノデアリマス(拍手)兎ニ角既ニ
七割ノ要求ヲ繼續スルコトヲ豫期シテ居ル
(「出鱈目ヲ言フナ」ト呼フ者アリ)出鱈目デ
ハアリマセヌ、シッカリ調ベテ居リマス、更
ニ論ジテ曰ク、余ハ-又亞米利加トシテ
ハ此要求ニ對シテ絕對反對スベキコトヲ
豫期シ「エキスペクト」シテ居ルト、ハッキ
リ申シテ居リマス、如何ニ現內閣ノ壽命ガ
長クトモ、千九百三十五年マデハ續キマス
アイモウ二三箇月カ-來月頃ハ倒レテ
シマフト思フノデアルガ、假ニ千九百三十
五年マデアルトシマシテモ、「スチムソン」
ガ言フガ如ク、此要求ニ對シテハ亞米利
加トシテハ絕對反對ト云フコトヲ議會ニ於
テ堂々ト明言シテ居リマス、殘念ダガ現
内閣ノ下デハ再ビ失敗ヲ致スコトニナルモ
ノデアリマスルガ、幸ニモ近ク潰レルノデ
アリマスカラ、是ハ吾々ガ代ッテ囘復シテ
上ゲマセウ、此見地カラ考ヘテ、私ハ外務
當局ニ、千九百三十五年ニハ再ビ囘復シ得
ル決心アリヤ、又ソレニ對シマシテ如何ナ
ル御考ガアリマスルカヲ、此際御尋シテ置
クノデアリマス
第三ハ(「ソンナコト聽ク必要ハナイ」ト呼
フ者アリ)ソレハサウデセウ、別ニアナタガ
外務大臣ニナル望ミガナイノダカラ-偖
テ第三ノ御尋ハ政府ハ速ニ千九百三十年
二月五日倫敦軍縮會議ノ祕密會席上ニ於ケ
ル米國首席全權「スチムソン」氏ノ提案ノ內
容及其經過ト、同年四月三日日本首席全權
若槻氏ノ提案ノ內容及其經過ヲ本議場ニ公
表スル考ナキヤ否ヤ、是ガ最後デアリマス、
一應外務當局ノ御返答ヲ承シタ後ニ、重ネ
テ私ハ御尋シマス
〔政府委員永井柳太郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01919310226&spkNum=46
-
047・永井柳太郎
○政府委員(永井柳太郞君) 藤井君ガ國防
ノ前途ヲ憂慮セラレテ、御質問ニナリマシ
タ御精神ニハ敬意ヲ表シマス、併シ倫敦會
議ノ成果ニ關シテハ、藤井君ニ幾多ノ誤解
ガアルト存ジマス、第一ノ御質問ニ於テ、
倫敦會議ノ結果、米國ノ海軍力ヲ特ニ增大
セシメタデハナイカト云フコトデアリマシ
タ、此度ノ倫敦會議ハ御承知ノ通リ、各國
ガ各、其國防ヲ最小限度ノ安全保障ニ制限
致シマシテ、ソレニ依ッテ得タ海軍費ノ餘剩
金ヲ以テ、國民負擔ノ輕減ヲ圖ルコトヲ目
的ト致シタノデアリマス、故ニ各國ハ各〓
出來ルダケ互讓ノ精神ヲ以テ、其海軍力ノ
制限ニ努メタノデアリマス、現ニ米國ハ「ジュ
ネーヴ」會議ノ當時ニ於キマシテハ補助
艦ニ對シテ合計六十四万噸ヲ要求シテ居リ
マシタ、然ルニ此度ノ倫敦會議ニ於キマシ
テ、五十二万六千噸ニ讓步致シテ居ルノデ
アリマス、殊ニ藤井君ガ最モ重キヲ置カレ
タ八吋砲大型巡洋艦ハ、千九百二十九年ノ
米國ノ海軍計畫ニ於キマシテハ二十三隻
ノ建造ヲ計畫シテ居リマシタニ拘ラズ、二
十一隻ニソレヲ制限シ、進ンデ十八隻ニ制
限シ、更ニ其十八隻ノ中十五隻マデハ無制
限ニ建造ハ出來ルガ、殘リノ三隻ノ建造ニ
付テハ、年限ノ制限ヲ受ケナケレバナラヌ
程米國自身モ大ナル讓歩ヲ致シタノデア
リマス、潜水艦ニ於キマシテモ、米國ハ全
廢ヲ主張致シタニ拘ラズ、日本ノ主張ニ同意
ヲ表シテ、米國モ日本モ共ニ五万二千七百
噸トシテ、均等ノ比率ニ依ッテ潜水艦ヲ建
造スルコトノ承諾ヲシタノデアリマス、斯
ノ如キ結果、御承知ノ通リ「ジュネーブ」會
議ノ當時ニ較ベマスレバ、我ガ日本ノ米國
ニ對スル海軍力ノ比率ハ、寧ロ增大シテ居
リマス、現ニ「ジュネーヴ」會議ノ當時ニ
ハ、時ノ日本政府カラ、補助艦ノ總噸數ニ
對シテハ對米六割五分マデ讓步スル、殊ニ
八吋砲大型巡洋艦ニ對シテハ六割六分六
厘マデ讓步スルト云フコトニシテ交涉ヲサ
レタガ尙ホソレデモ會議ハ決裂ニ終ッタ
ノデアリマス、然ルニ此度ノ倫敦會議ノ成
果ハ如何デアッタカト申シマスレバ、米國ニ
對シマシテ日本ハ、補助艦ノ總噸數ハ六割
九分七厘、卽チ七割ニ垂ミトシ、八吋砲搭
載ノ大型巡洋艦ハ、先程御話ニナッタ千九百
三十五年ノ次ノ海軍會議マデハ、七割二分
二厘ヲ確保スルコトガ出來ルヤウニナッタ
ダケデモ、著シキ進步デアル、斯ノ如ク米
國ヲシテ出來ルダケ讓步サセテ、尙ホ米國
ノ「スチムソン」全權等ガ、此度ノ倫敦會議ノ
ノ結果ニ滿足シテ居ラレルトスレバ、日本
トシテモ亦其結果ニ滿足セザルヲ得ナイノ
デアリマス、此度ノ倫敦會議ノ結果、米國
ハ米國ガ安全デアリ得タト考ヘ、日本ハ日
本ガ安全デアリ得ルト考へ、英國ハ又英國
ガ安全デアリ得ルト考ヘル所ニ、其協調點
ヲ發見シ得タコトハ、明カニ倫敦會議ノ一
成功ト謂ハナケレバナラナイ、私ハ現内閣
ノ倫敦會議ニ於テ行ヒマシタ其結果ニ付テ
自〓自讚ハ致シマセヌケレドモ、曩ニ華盛
頓會議ニ於テ主力艦ノ七割ヲ要求シテ、僅
ニ六割ヲ得ルニ過ギズ「ジュネーヴ」會議ニ
於テ補助艦ノ總噸數六割五分、八吋砲搭載
ノ大型巡洋艦ノ噸數六割六分六厘ヲ要求シ
テ決裂シタ、前二囘ノ會議ニ較ベレバ成功
デアッタコトハ過チナイコトヽ思ヒマス(拍
手)而シテ其結果、互ニ國防ヲ最小限度ノ安
全保障ニ止メマシテ、之ニ依ッテ各國民ノ負
擔輕減ニ貢獻スルコトガ出來ルコトハ吾
吾ノ幸福トスル所デアルト存ジマス(拍手)
第二ニ千九百三十五年ノ、次ノ海軍會議ニ
於テ、此度倫敦會議ニ於テ失ハレタ劣勢ヲ、
再ビ囘復スル覺悟ガアルカ如何ト云フコト
デアリマスガ、吾々ハ此度ノ會議ニ於テ、
特ニ日本ガ劣勢ニ落チタトハ信ジテ居リマ
セヌ、濱口內閣ガ千九百三十五年マデ繼續
致シマスル場合ハ、此度ノ倫敦會議ニ於ケ
ルト同ジニ、國防ヲ最小限度ノ安全保障ニ
止メテ、日本國民竝ニ世界各國民ノ負擔ノ
輕減ヲ圖リ同時ニ世界ノ平和ニ貢獻シタ
イト云フ、眞劍ナル覺悟ヲ持ッテ居リマス
第三ニ倫敦會議ノ祕密會ノ內容ニ付テ、
其經過ヲ公表セヨト云フ御質問デアリマシ
タガ、特ニ祕密會トシタモノヽ內容ニ付キ
マシテハ遺憾ナガラ今此處デ公表スルノ
ハ適當デナイト云フコトヲ御答ヘ申シテ置
キマス(拍手)
〔藤井達也君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01919310226&spkNum=47
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048・藤井達也
○藤井達也君 永井君ニ對シマシテハ、吾
吾ハ國民外交ノ主張者トシ、又其御雄辯ニ
於テ多大ナル敬意ヲ表スルノデアリマス、
ケレドモ外交ハサウ簡單ニハ參リマセヌ、
天ニ輝ク一方ノ燦タル星ノ光ヲ見ヨ、地ニ
咲ク一輪ノ花ナドノ名文句デハ外交ハヤレ
マセヌ、私ガ多大ナル敬意ヲ表シテ居リマ
スル永井君ニシテ、今ノヤウナ胡麻化シノ
御答辯ガアッテハ、洵ニ驚入ッタモノト謂ハ
ナケレバナリマセヌ、例ヘバ田中內閣當時
ニ於テ、「ジュネーヴ」會議ニ當リ對米總括
六割五分、或ハ大型巡洋艦ニ關シマシテ六
割六分ノ要求ヲシタノデアルケレドモ、是
デモ失敗ニ終ッタモノデアルト云フヤウナ
コトヲ仰セニナリマスルコトハ、國民ヲ欺
クノ甚シイモノデアルト謂ハナケレバナラ
又、事實ハ成程サウデアリマセウ、然ラバ
此度ノ倫敦條約ナルモノヽ比率ハ、如何ナ
ル關係ニナッテ居リマスルカ、表面ダケハカ
ラクリヲシテ、如何ニモ七割ノ要求ヲ得タ
ヤウナ胡麻化シヲシテ居リマスケレドモ、
其內容ヲ精細ニ調べ、尙ホ先程私ガ申シタ
如ク、千九百三十五年ニ再ビ開キマスル所
ノ會議ニ於カレマシテ、其要求ト云フモノ
ハ容易デナイ、現在ニ於テスラ亞米利加ノ
壓迫ヲ感ジテ來マシタヤウナ、此我國ノ外
交政策ト致シマシテハ、千九百三十五年再
ビ會議ヲ開カレマス時ニ於テ、亜米利加ガ
海軍整備ヲ全ウシ而シテ我國ガ劣勢力ヲ
以テ外交上對抗シマシテモ、今日マデノ主
張ニ再ビ返スコトガ出來ルナドヽ御考ニナ
ルコトハ靑年會館ノ演說會等デ爲サルベ
キモノデアルト思ヒマス、現ニ千九百三十
五年、三十六年ノ我國ノ對米比率ニ關シ
取分ケ八吋巡洋艦ニ關シマシテハ此議場
ニ於キマシテモ、或ハ豫算總會ニ於テモ、
大問題ニナッタデハアリマセヌカ、一國ノ總
理大臣デアリマス所ノ濱口雄幸君、而モ御
病氣ノ際追窮スルコトハ洵ニ遺憾千萬デア
リマスケレドモ、不輕卒、不謹愼カ或ハ
條約ノ內容ヲ知ッテ居ラナカッタカ、了解シ
テ居ラナカッタカ分リマセヌケレドモ、如何
ナルコトヲ言ッタノデアリマスカ、此條約ノ
存續中ト云フモノハ、我國ノ對米比率ハ大
型巡洋艦ニ於テ七割二分デアルト云フヤウ
ナコトヲ放言シ、是ガ、本議場ノ大問題ニナッ
タコトハ御承知ノ如クデアル、諸君、海軍
當局ノ言明ヲ承リマシテモ、千九百三十六
年ノ十二月三十一日ニナリマスルト、我國
ノ大型巡洋艦ノ對米比率ハ六割七分七厘ニ
減ルコトモ御承知ト思フノデアリマス、六
割七分七厘ナラバ、政友會內閣ガ要求シタ
六割六分以上ヂヤナイカト云フヤウナコト
デ、胡麻化ス積リデアリマセウケレドモ、
條約ニ依レバ千九百三十三年ニハ米國ハ新
ニ一艘ヲ造ルコトニ著手致シマス、千九百
三十四年ニハ更ニ新ナル軍艦一艘ヲ造ルベ
キコトニ致シ、千九百三十五年ニハ更ニ又
新ナル軍艦ヲ造ルコトニ著手致シマスカラ、
千九百三十八年ノ交ニナルト、我國ノ八吋
巡洋艦ノ對米比率ハ六割二厘ニ低下スルト
云フコトハ爭フベカラザル事實デ、且ツ結
果デアリマスガ(拍手)是デモ大成功ダト此
壇上デ、永井君ノヤウナ本當ニ吾々ノ敬意
ヲ表スル政治家ガ國民ヲ欺クヤウデハ是
ハ國民外交ノ指導者デアルト云フコトヲ全
ク落第シタモノデアルト私ハ遺憾ナガラ考
ヘルノデアリマス、國民ヲ欺イテハイケマ
セヌ、明瞭ニ永井君ハ、千九百三十八年ニナ
レバ我國ノ對米比率八吋巡洋艦ハ六割二
厘ニナッテ、國防上ノ不安ヲ來スモノデア
ル政友會ガ主張シタ「ジュネーヴ」會議ヨ
リモ甚ダ劣ルモノデアルト御說明ニナッタ
方ガ、正直ナ御方デアルト世間カラ言ハレ
ルト思フノデアリマス(拍手)
ソレカラ色々御說明ガアリマシタケレド
モ、此問題一ツダケデ十分吾々ノ說明ガ足
リ、又民政黨ガ如何ニ倫敦條約ニ於テ國民
ヲ欺イテ居ルカト云フコトハ民政黨ノ大
雄辯家デアリマス永井君ガ代表シテ、國民
ニ之ヲ知ラシタノデアルコトヲ確ク銘ヲ打ッ
テ置クノデアリマス
偖テ最後ノ御答辯ヲ聽キマシテ、洵ニ私
ハ永井君ハ國民外交ノ主張者デアルト云フ
コトハ、ドウゾ今後ハ御止メヲ願ヒタイト思
フノデアリマス、國民外交ト云フモノハ
其國ノ外交ト云フモノヲ正々堂々ト中外ニ
之ヲ宣明致シ、國民ヲシテ十分ニ其內容ヲ
知ラシメテ、而シテ國民ハ倫敦條約ガ民政
黨內閣ノ爲ニ大ナル失敗ヲ來シ、國防上ノ
不安ト云フモノヲ招來シタガ、將來之ヲ囘
復セネバナラヌ自覺ヲ促スコトニ銳意努力
セシムルコトガ、國民外交ノ趣意デアルト
私ハ思フノデアリマス然ルニ何デモ彼デ
モ、之ヲ包ミ隱シテ置イテ、之ヲ發表シナ
イト云フヤウナコトニナリマスナラバ、國
民外交デハナイト思フノデアル、所謂祕密
外交デアリマス、現ニ政友會田中內閣當時
ニ於キマシテ、滿洲ニ出來マシタ某重大事
件ニ關シテ諸君ハドンナ決議案ヲ出シテ
居ルカ、民政黨ノ諸君ハ、若シ滿洲重大事
件ト云フモノヲ公表シナケレバ、中外ノ疑
惑ヲ招キ、外交上ノ信用ヲ失墜スルバカリ
デナク、國軍ノ士氣ト云フモノヲ沮喪セシ
ムルモノデアルト論難シ、田中內閣ニ向ッ
テ、無理ヤリニ此重大デアリマスル滿洲
某事件ト云フモノヽ公表ヲ迫ッタコトハ
ヨモヤ御忘レニハナルマイト私ハ思フノデ
アリマス、此一ツダケヲ私ハ責メルノデハ
アリマセヌ、吾々ハ次ノ事實ヲ引用致シマ
シテ、外務當局-斯ウナルト永井君ハ甚
ダ氣ノ毒デアリマスガ、落第シマシタカラ、
ドウカ外務大臣總理大臣ガ出マツテ、此質
問ニ對シテ答辯ヲ欲スル次第デアリマス
昨千九百三十年七月十五日、米國上院ノ
特別議會ニ於キマシテ、全權「リード」ハ上
院議員「ジヨンソン」ノ要求ニ應ジマシテ、
千九百三十年二月五日、倫敦軍縮會議ノ祕
密會席上ニ於ケル米國主席全權「スチムソ
ン」ノ提案ノ內容ト、其經過ヲ公表致シタノ
デアリマス、サウシテ其記錄ト云フモノヲ
バ、本會議ノ記事錄ニ記載シタノデアリマ
ス、サウシテ「リード」ハ、當時議會ノ論戰
ニ關シマシテ、倫敦軍縮會議ニ於テ四月二
日日本全權ガ祕密會議ニ於テ提案シタ案ノ
內容及ビ其經過ト云フモノヲ詳細ニ說明シ
テ居リマス、日本ノ外務省ハ國民外交デア
ルト唱ヘ、永井君ノ如キハ演說會ニ出レ
バ國民外交ナラザルベカラズト唱ヘマス
然ルニ旣ニ米國ニ於テ、而モ倫敦會議ノ全
權デアリマシタ「リード」ガ、堂々ト此內容
ヲ發表致シテ居リマスルナラバ何ヲ恐レ
テ我國ガ其內容ノ發表ヲ拒ム必要ガアルカ
ト謂ハザルヲ得ナイノデアリマス(拍手)然
ルニ內容ハ事祕密ニ屬スルカラ之ヲ發表シ
ナイト云フ、外國ガ旣ニ發表シテ居ルナラ
バ、我國ノ外務當局モ之ヲ發表シテ、其經
過內容ヲ國民ニ知ラセマシテ、假ニ倫敦條
約ガ成功ナラ成功デ宜シイ、失敗ナラ失敗
トシテ國民ガ此成功失敗ト云フコトヲ十
分判斷シテ、千九百三十五年ノ會議ニ列シ
マス際ノ、國民ノ決心ト政府當局ノ決意ト
云フモノヲ今日ヨリ、作ラシメルト云フ上
カラ考ヘマシテモ、此發表ト云フコトハ最
モ重大ナリト私ハ論斷セザルヲ得ナイノデ
アリマス
ソレカラ先程永井君ハ、亞米利加ガ二十
三隻デアッタモノガ十八隻ニナッタコトハ
非常ナ亞米利加ノ讓步ヂヤナイカナドト云
フコトヲ仰セニナリマシタガ、ソレダカラ
私ハ最初アナタニ言ッタヂヤアリマセヌカ、
八吋巡洋艦及ビ六吋巡洋艦ト云フモノハ
海軍ノ戰爭ニ於テ何レガ有利デアルカト云
フコトハ日本ニ於キマシテモ、亞米利加
海軍當局ニ於キマシテモ、重要ナ論議ノ間
題ニナッテ居ル、八吋巡洋艦ト六吋巡洋艦ノ
國防上ノ優劣ト云フモノハ、問題ニナッテ居
ルコトハ永井君モ御承知ト思フノデアリマ
ス、無論我國トシテハ、八吋巡洋艦ガ必要
トシテ居ルノデアリマスケレドモ、亞米利
加ニ於キマシテハ海軍當局ノ間ニハ非常
ナ議論ガアルノデアリマス、故ニ現ニ先程
私ガ念ヲ押シテアナタニ申シタヂヤアリマ
セヌカ、大型巡洋艦ハ、成程二十三隻ヲ十
八隻ニ讓步致シマシタケレドモ、六吋巡洋
艦ハ現有勢力僅ニ七万噸デアリマシタモノ
ヲ、日本ガ更ニ七万四千噸ト云フモノヲ與
ヘタノデアリマスルカラ、謂ハバ亞米利加
ノ六吋巡洋艦ハ七万四千噸ヲ增加致シマシ
テ、十四万四千噸ニナッタト云フコトハ、御
承知ニナラナケレバナラヌト思フノデアリ
ど、然ルニ此樣ナ大切ナモノガ七万四千
噸モ增加シタ方ハ言ハナイデ、唯大型巡洋
ガ、二十三隻ガ十八隻ニナッタカラ、是ハ餘
程讓步シテ吳レタナドヽ云フ御目出タイ事
ヲ考ヘテ居クテハ、外交當局トシテ國防ニ對
シマスル注意ガ足リナイノカ若クハ徒ニ
唯國民ヲ欺ク爲ニ、此壇上デ辯ヲ弄サレタ
モノデアルト言ハネバナラヌノデアリマス
(拍手)是ハ餘談ニ亙リマシタガ、一應氣ガ付
キマシタカラ此點ニ注意ヲ與ヘテ置キマス、
ソレカラ更ニ「リード」ガ辯明シテ、若シ亞米
利加ガ大型巡洋艦二十一隻ナント云フモノ
ヲ固持シタナラバ、日本ハ亞米利加ニ對シ
テ五對三ノ比率ヲ保ツ爲ニ殆ド英吉利ト
同等ノ噸數マデ建造セネバナラヌ破目ニナ
ルノデアリマスト論ジ、更ニ潜水艦ニ關シ
テハ、次ノヤウナ驚クベキ事實ガアリマス
カラ、能ク議員諸君ガ御聽キニナッテ、御國
ニ歸ッタラバ選擧區デ國民ニ御宣傳ガ願ヒ
タイト思フノデアリマス(笑聲)
「リード」ガ上院議員ニ答ヘタ一節ニ於
テ、次ノヤウナ事ヲ言ッテ居リマス、洵ニ妙
味ノアル所ノ言論ガ玆ニ發表サレテ居ルノ
デアリマス、彼ガ言ヒマスルニ「潜水艦ニ關
シテハ、雙方潜水艦ヲ以テ戰爭スルコトハ
ナイ」-是ハ日本ト亞米利加トノ聞ノ將
來ノ關係ノ質問應答カラ「リード」ガ之ヲ引
出シタノデアリマスカラ、左樣御承知ヲ願
ヒタイ、「隨テ潛水艦ニ關スル日米ノ比率ハ、
何等重要ナ事デナイ」-亞米利加ノ方デ
ハ重要ナ事デナイト言ッテ居ル、日本デハ大
變潛水艦ガ必要デアルト當局ガ唱ヘテ居リ
マスガ、亞米利加ノ方デハ、何等必要ガナ
イト言ッテ居ル、「日本ハ亞米利加ニ付テハ
日本ノ二倍ヲ與フルニ敢テ異議ガナイ」-
之ヲ御記憶ヲ願ヒタイ、日本ノ外務大臣及
ビ外務當局ハ、如何ナル御考カ知ラヌケレ
ドモ、全權トシテ參ッタ人ハ此樣ニ言ッテ居
ル、日本ハ亞米利加ニ付テハ日本ノ二倍ヲ
與フルニ敢テ異議ガナカッタト云フ、驚クベ
キ事デハアリマセヌカ、潜水艇ガ我國ノ國
防ニ於キマシテ重大ダ、故ニ七万八千噸ト
云フ現有量ヲ飽マデモ保持スルト云フ、其
御決心ニハ感服スルノデアリマスルガ、唯
現有勢力ダケヲ得テ來レバ宜シイト云ッ
テ-若槻禮次郞君ナドハアノ當時ニ於
キマシテ、全權ニ出ル前ニハ例ノ越後鐵道
ノ疑獄事件、十万圓問題ナドガ絡ンデ、輿論
囂々トシテ非難ノ的ニナッテ居ッタモノヲ、民
政黨ノ諸君ガ大イニ之ヲ壓迫シテ、若槻全
權ヲ倫敦ニ送リマシタガ、若槻君ハ潜水艦
七万八千噸ト云フモノハ、ドウシテモ必要
デアルト言フテ、此必要ト云フコトヲ飽マデ
固持サレマシク御考ニハ敬意ヲ表シマスルケ
レドモ、驚ク勿レ、現有勢力ダケハ保持シ
ナケレバ、國ニ歸ッテ國民ニ非難サレルト云
フ考カラ、自分ノ方ニ七万八千噸サヘ吳レ
ルナラバ君ノ方ハ二倍デモ三倍デモ差支
ゴザイマセヌナドト云フヤウナ事ヲ亞米
利加ニ對シテ言フニ至ッテハ驚クベキ全
權無能ナル全權、無恥厚顏ナル全權諸君
デアルト謂ハザルヲ得ナイノデアリマス
(拍手)苟モ日本ガ米國ニ對シマスル國防ヲ
保持シマス以上ハ亞米利加ノ潜水艇ハ一
隻デモ殖ヤサナイ考デ行カネバナラヌノニ、
自ラ言明シタル潜水艦ノ現有保持ト云フコ
トヲバ何トカシテ持歸ラナケレバ、此言明
ヲ裏切シタト國民カラ責メラレルコトガ厭
ヤダト云フヤウナ、個人的ノ氣持ヲ以テ、
重大ナル外交ノ折衝ニ當テ、亞米利加ニ二
倍ノ潜水艦ヲ與ヘテモ差支ナイナドト言明
ヲスルト云フコトハ、全ク現内閣ノ諸公ハ
言フマデモナク、全權諸君ト云フモノハ自
國ヲ顧ミザル所ノ交渉デアッタト謂ハザル
ヲ得ナイノデアリマス、唯日本トシテハ七
万八千噸ヲ必要トスル旨ヲ主張ウテ已マナ
カッタノデアルガ、遂ニ日英米共ニ五万七千
噸マデ切下ゲルコトニナッタト言ッテ居ル
之ヲ見マスルト、日本全權諸君ノ切ナイ胸
モ能ク分リマスケレドモ、要スルニ此外交
ニ當リマシタ諸君ガ、唯自分ノ主張ヲ守リ
サヘスレバ、亞米利加ガ何万噸ノ軍艦ヲ造
リ、潜水艦ヲ造ッテモ宜シイト云フヤウナ氣
持ニ囚ハレタコトガ、明瞭ニ此委員會ノ內
容ニ現レテ居ルト言ハザルヲ得ナイノデア
リマズ、諸君、斯ノ如ク既ニ亞米利加自體
ガ、此內容經過ヲ說明シテ居ッタトスルナラ
バ、外務當局ハ何モ祕密ニスル必要ガナイ、
況ヤ其倫敦條約ノ結果ヲ今御聞キシマス
ト、大成功デアルトハ考ヘナイケレドモ、
梢〓滿足シテ居ルト云フ御說明ヲシテ居リマ
スルガ、誰人モ滿足ジテ居リマセヌ、豫算
委員會或ハ稅制委員會等ノ狀態ヲ考ヘテ御
覽ナサイ、議事ハ何時モ何デ停頓スルカト
云フト、海軍ノ倫敦條約ニ關シマスル間題
ノ質問應答ガアリマスルト、何時モ民政黨內
閣ノ大臣諸君ト云フモノハ立往生ヲシテ居
リマス、(拍手)畏多イコトデアリマスルケ
レドモ、外務大臣兼總理大臣代理デアリマ
スル所ノ幣原外務大臣ハ如何ナルコトヲ
爲サイマシタ、大ナル失言ヲシ、而モ倫敦
條約ハ批准ヲ得タカラ宜イヂヤナイカ、批
准ヲ得タカラ國防ハ安全ヂヤナイカナゾ
ト陛下ニ對シマシテ責ヲ歸スルヤウナ
アノ失言ノ出來タコトモ謂ハバ倫敦條約
ノ問題カラ出テ居ル、稅制委員會デ昨日モ
海軍當局ノ說明ヲ聽キマスルト、昭和六年
度ノ豫算ヲ見レバ豫算ニ於テ潛水艦ハ一
隻シカ造ラヌヤウナ豫算ヲ組ンデ居ルヽ祕
密會ニ於キマシテ、其建艦計畫ノ內容ヲ聽
キマスト、其外ニ二隻造ル計畫ヲシテ居ッタ
ト云フノデ、內田君カラ追究サレマスト
是ハ取消シテ置キマスト恰モ軍艦ヲ造ル
コトヲ飴チヨコカ何カノ玩具ヲ造ルヤウナ
氣持デ答辯シテ居リマス如何ニ此倫敦條
約ト云フト建艦計畫トガ、伏魔殿デアルカ
ト云フコトヲ、吾々ハ深ク疑フノデアリマ
ス、同時ニ又無理ニ一億三千四百万圓ト云
フモノヲ以テ國民負擔ノ輕減ヲサレルト云
フ好餌ニ隱レテ海軍ト云フモノヲ壓迫致
ジ、倫敦條約ノ不安アルニモ拘ラズ、强テ
滅稅ヲサスト云フコトニナッタノデアリマ
スカラ、稅制委員會等ニ於キマシテ、幾多ノ
失態ガ出來テ居ルモノデアルト言ハザルヲ
得ナイノデアリマス、デアリマスカラ私ハ
此內容ヲ發表スルコトガ最モ必要ダト思フ
ノデアリマス、現ニ永井君ハ國防上ニ於テ
此度作ノタ條約ハ洵ニ結構ナ條約ト言フケ
レドモ、私ハ海軍大臣ノ貴族院ニ於キマス
ル說明ヲ此處ニ一寸讀ンデ見マセウ、決シ
テ滿足シテ居ラヌ、却テ今マデノ現有力ノ
方ガ立派デアッテ、國防上ニ於テモ不安ガナ
イ、更ニ又經濟的ニモ出來テ居ルト云フユト
ヲハッキリスル必要ガアリマスルカラ、何ト
シテモ是ハ讀マザルヲ得ナイノデアリマス、
安保海軍大臣ハ貴族院本會議ニ於テ斯樣ナ
コトヲ言ッテ居リマス此兵力ト云フモノハ
所謂今マデ現有勢力トシテ居リマシタ兵力、
詰リ對米總括的七割、八吋巡洋艦七割、潛水
艦ニ付キマシテハ七万八千噸、是ガ最モ有
效ナモノデアルト云フ說明ニ、次ノヤウナ
コトヲ言ッテ居リマス「此兵力量ト云フモノ
ガ我國ノ國防方針ニ基キマシテ、旣定ノ
作戰計畫ヲ遂行シマス以上ニ於テ下此兵力
量ガ有效デアリ又經濟的デアッテ、此兵力量
ガ最モ適當デアルト云フコトハ、積年ノ海
軍演習共他種々ナル事柄ニ於テ〓究考査シ
マシタ所デアッテ、此兵力量ガ最モ適當デア
ルトノ信念ヲ以テ、所謂三大主張ナルモノ
ヲ强調致シテ居ッタ」ト言テ居ルノデアリ
マイク謂ハヾ現有兵力ト云フモノハ經濟的
ニモナレバ、國防上ニ於テモ最モ適當ナル
モノデアッタニモ拘ラズ、此度倫敦條約ト云
フモノヲ作リマシタ結果、不安ガ出來タモ
ノデアルト裏書シタモノデアルト言ハザル
ヲ得ナイノデアリマス(拍手)
更ニ又私ハ倫敦條約ノ交涉ニ當リマシタ
現內閣ノ態度ト云フモノハ、諸君ガ推戴シ
テ居リマス所ノ濱口總裁ノ御主張ニモ相反
シテ居リマス、何故カト申シマスト、第四
十四議會ニ於テ、原內閣當時ニ華盛頓條約
ニ先ッテ時ノ總理大臣原氏ニ對シマシテ、諸
君ノ總裁、現在ノ總理大臣濱口雄幸君ハ次
ノヤウナ洵ニ立派ナル御質問ヲ爲シ、又
立派ナル御信念ノ下ニ御演說ガアッタノデ
アリマス、ドウゾ能ク御聽キヲ願ヒタイト
思フノデアリマス「八八艦隊ノ計晝ト云フ
モノハ、我國ガ獨立國トシテ立ッテ居ル以
上、絕對ニ必要ナル最小限度デアル、外國
トノ競爭ノ目的ハ更ニ無イ、徵塵モ無イ、
況ヤ各國互ノ間ノ不信ノ結果、疑惑ノ結果
ナド、思ヒモ依ラヌコトデアル、果シテ國
防上獨立國トシテノ最小限度ノ計畫デアルト
スルナラバ、假令英國ガ之ヲ半減ニシヨウ
トモ」-能ク御聽キナサイ、英國ガ半分ニ
ショウトモデス-「亞米利加ガ之ヲ半減
ニシヨウトモ、日本ハ斷ジテ之ヲ減ズルコ
トハ出來ナイ譯デハナイカ」、ト御尋ニナツ
テ居ル、然ラバ我國ノ最小限度ノ國防ヲ保
ツ爲ニハ、如何ニ亞米利加ヤ英國ガ其國防
ヲ減ジテモ、最小限度ハ確乎トシテ之ヲ保
持セネバナラヌト云フコトヲ、第四十四議
會ニ於テ仰セニナッタモノデアルト言ハザ
ルヲ得ナイノデアリマス、更ニ語ヲ繼ギマ
シテ「然ルニモ拘ラズ、外國ガ減スナラバ
我國亦之ヲ半減シテ宜シイト云フ政府ノ御
考デアルナラバ國民ガ今日マデ八八艦隊
ノ建造ニ對シテ有ッテ居ッタル觀念ヲ、小ナ
カラズ動搖セシメ、其結果折角官民ノ努力
ニ依ッテ拵ヘタル此八八艦隊建造ノ趣意ト
云フモノハ外國ノ爲ニ或ハ疑ハルルト云
フ結果ニナリハセヌカト云フコトヲ、私ハ
憂フルノデアリマス」ト質問シテ居ル、第四
十四議會ニ於テ政府ニ御尋ニナル時ニハ
八八艦隊ヲ半減スルト云フヤウナコト、讓
步スルト云フヤウナコトハ絕對ニイケナイ
モノデアル、外國ハ如何ニ半減シテモ日本
ハ絕對ニ半減スベカラズ、外國ニ如何ナル
コトガアッテモ、我國ハ八八艦隊ト云フモノ
ニ對スル權利ハ確保セネバナラヌト云フヤ
ウナ御主張ヲナサレタノデアリマス、現內
閣ノ總理大臣デアル濱口君ガ、倫敦條約ニ
付キマシテ其必要ノ最小限度ノ國防ヲ保持
シタト永井君ガ御考ヘニナルカ、此點モ御
尋致シテ置キタイト思フノデアリマス
ソレハ啻ニ濱口雄幸君バカリデハアリマ
セヌ、又華盛頓會議以後ノ大正十一年一月
二十八日第四十五議會ニ於テ、現在ノ鐵道
大臣江木翼君ハ次ノヤウナコトヲ申シテ、
當時ノ高橋內閣總理大臣ニ答辯ヲ求メテ居
リマス、是ハ民政黨內閣ニ於キマスル所ノ
智慧者トシテ、民政黨ノ諸君ガ推稱シテ居
ル江木君ノ演說デアリマスカラ之ヲ引用シ
テ、如何ニ民政黨ト云フ政黨ハ唯黨利黨略
一本槍デ以テ大切ナル外交問題ヲ場當リニ
持出シ、後ハ野トナレ山トナレト云フ弊ガ
アルカヲ證明スル爲ニ、一言玆ニ江木君ノ
速記錄ヲ讀マネバナラヌノデアル、江木君
曰ク「一方ガ十割一方ガ七割ト云フナラバ、
七ノ方ハ防禦力デ、十ノ方ハ攻擊力デアル、
若シ果シテ常識ヲ以テ左樣ニ考ヘラレルト
シタナラバ、何故ニ英米ハ攻擊力ヲ有スル
權利ガアッテ、日本ハ防禦力ニ甘ンジナケレ
バナラナイノデアルカ、之ヲ海軍大臣ハ海
軍ノ見地ニ於テ十分ナル說明ガナクテハナ
ラヌコトデアル」ト仰セニナッテ居ル、江木
君ノ如キハ高橋内閣當時ニ於テ、華盛頓條
約ニ對シテ、亞米利加ヤ英國ガ攻擊力ヲ保
持スルナラバ我國モ攻擊力ヲ保持シナケ
レバナラヌト云フ程マデモ强調サレテ居ツ
タト云フコトハ、此一節ニ依ッテ明瞭ナリト
言ハザルヲ得ナイノデアリマス、更ニ又亞
米利加ノ新聞ナドヲ引例ナサレタノデアリ
マスガ、其內容ヲ讀ミマスト、亞米利加ノ
新聞ノ如キハ殊ニヒドイ、殆ド全體ニ亙ッテ
喧シカッタノデアリマスガ「日本全權ハ懸引
スル」甚シキニ至リマシテハ斯ウ云フ面白
イコトマデ言ッテ引イテ居リマス、日本娘ガ
店先ニ立ッテ朝ノ商賣ヲシテ居ル、懸引ノ
「ポンチ」マデ出シテ居ル、日本全權ノ惡口
ヲ言ッテ居ルノデアル、亞米利加ノ新聞紙バ
カリデナク、最モ權威アル「倫敦タイムス」
ハ、特ニ加藤全權ノ趣旨ハ分ラヌ、是ハ懸
引デハアルマイカ、而モ東洋流ノ商賣ノ形
式「オリエンタル·フオーム·オブ·バーゲニ
ング」ト云フヤウナ言葉ヲ使ッテ居ル、七割
案ニ對シテ是ガ國防ノ最小限度デアルト云
フコトニ付テハ政府ニ於テ十分ナル辯明
ガナクテハナラナイ、悉ク懸引デアルト云
フコトヲ盛ニ攻擊シテオイデニナリマス
ガ、此度ノ倫敦條約ニ於キマシテハ、江木
君ノ言葉ヲ以テ吾々ガ之ヲ追究シマシタナ
ラバ恰モ此現有勢力ノ維持ト云フモノヲ
主張シテ、大型巡洋艦ノ七割ヲ主張致シマ
シテ千九百三十八年ニハ六割二分ニオル
ト云フヤウナコトヲヤリ、又潜水艦ニ關シ
マシテハ、現有勢力七万八千噸ト云フモノ
ヲ抛棄致シタ、其結果ヲ見マスト、是コソ
江木君ノ言葉ヲ藉リテ言ヘバ「オリエンタ
ル·フオーム·オブ·バーゲニング」ト云フコ
トニナリハセヌカト云フコトヲ先ヅ第一ニ
御尋シナケレバナラヌノデアリマス、要ス
ルニ全ク現內閣ハ自ラ在野黨當時ニ於キマ
シテ主張シマシタル主義言質ヲ、全然裏切"
タモノデアルト云フコトガ明瞭ナリト言ハ
ネバナラヌノデアリマス
ソコデ最後ニ私ハ此國民外交上發表セヨ
ト迫ラネバナラヌ所以ノモノハ、外務大臣
幣原君ガ五十六議會ニ於テ田中總理ニ對シ
テ、內田伯爵ノ對支問題ニ關シ、諸外國ノ
政府ニ申込マレマシタ一切ノ說明竝ニ提議
ト云フモノハ、國民ニ利害深イモノデアル
カラ、內田大使ガ或ハ英國或ハ米國ニ於キ
マシテ、對支問題ニ關シテ諒解ヲ求メ、對
支問題ニ對シマシテ提案シタ其內容ヲ發表
セヨト、田中總理大臣ニ迫ッタコトガアリ
マス、自分ノ內閣ニナッテ、諸外國ガ發表シ
マシタルモノスラモ、之ヲ發表スルコトヲ
控ヘテ見タリ、拒絕シテ見テ居リマスル此
內閣ノ外務當局ガ、何故田中內閣當時ニ於
キマシテハ、外交ノ重要ナ問題デアリマス
ル所ノ、內田伯爵ガ對支問題ノ内容ニ關シ
マシテ、世界各國ニ諒解ヲ求メマシタコト
ヲ發表セヨト迫ッタカ、其點ヲ永井君カラ聽
キタイト思フノデアリマス、自分ニ都合ノ
好イトキニハ發表セヨト言ッテ迫リ、自分ニ
都合ガ惡クナレバ、事機密ニ屬スル、外交
ノ機密ニ屬スルカラト言ッテ發表シナイヤ
ウデハ國民外交ニハナリマセヌ、況ヤ田
中內閣ニ、對支問題ニ關シ、機密外交ヲ發
表セヨト迫ッタ此外務大臣、而モ總理大臣代
理ヲ戴イテ居リマスル以土ハ、吾々ガ此倫
敦會議ノ內容ヲ國民ニ十分知ラシムル必要
ガアルノミナラズ、旣ニ亞米利加ニ於テ發
表シタノデアリマスカラ、是非トモ發表セ
ラレンコトヲ、御再考ヲ御願致シテ降壇スル
次第デアリマス
〔政府委員永井柳太郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01919310226&spkNum=48
-
049・永井柳太郎
○政府委員(永井柳太郎君) 藤井君ノ御質
問ノ中ニ、倫敦會議ノ當時ニ於ケル祕密會
ノ內容ヲ米國ノ全權ガ米國ニ於テ公表シタカ
ラ日本政府モ之ヲ公表セヨト云フ意味ノ
御言葉ガアリマシタガ、私ガ先程申シマシ
タヤウニ、祕密會ノ-特ニ各國ガ申合セ
テ祕密會トシタ所ノ經過ヲ發表スル場合
ハ其關係國ノ諒解ヲ得タ後ニスルコトガ
當然デアルト存ジマス、他國ガシタカラ日
本モ必ズ其通リニシナケレバナラヌト云フ
コトハ、是ハ私ノ了解シ得ナイ所デアル、
現內閣ハ倫敦會議ノ經過竝ニ成果ニ關シマ
シテハ議會ノ內部ニ於テ、常ニ總テノ質
問ニ對シテ明瞭ナル答辯ヲ與ヘ且ツ其說
明スベキコトモ十分ニ說明ヲシテ居リマ
ス、又議會ノ外部ニ對シマシテモ、政府當
局者ノミナラズ、全權モ亦或ハ演說ニ或
ハ文章ニ、出來ルダケ國民ニ其眞相ヲ了解
セシムルコトニ努メタノデアリマシテ吾
吾ハ國民外交ノ精神ヲ確立スル點ニ於テ
ハ、斷ジテ人後ニ落チル者ニ非ズト信ジマ
ス、其他ノ點ニ對シマシテハ、私ガ先程申
上ゲマシタコト以外ニ、蛇足ヲ加フル必要
ヲ認メマセヌ、總テ御意見トシテ承ッテ置キ
マス
〔藤井達也君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01919310226&spkNum=49
-
050・藤井達也
○藤井達也君 諸君、永井君ノ御答辯ヲ承
リマシテ、永井君ノ如ク立派ナル尊敬スベ
キ人、此外務當局者ガ斯ノ如キ軟弱政策ト
云フモノヲ、此壇上デ平氣デ御論議ニナル
ヤウデハ、我國ノ外務省ヲ洵ニ吾々ハ憂ヘ
ザルヲ得ナイノデアリマス、只今ノ御話ニ
依リマスルト亞米利加ガ發表シテモ吾々
ハ發表スル必要ガナイ、亞米利加ニ對シマ
シテ然ラバ、諒解ヲ求メル御考デアルカド
ウカ、此點ヲ最後ニ御尋致シマス
モウ一ツハ然ラバ亞米利加ニ於キマシテ、
條約ノ內容ヲ議會ニ於テ說明スルヤウナ際
ニ當リマシテハ、亞米利加政府ヨリ我國ニ
諒解ヲ求メテ來タカ否カヲハッキリ御答辯
ガ願ヒタイノデアリマス、若シ夫レ我國ニ
諒解ヲ求メズシテ發表シタト云フコトガ、
惡イト云フコトヲ御諒解ニナリマスルナラ
バ、之ニ對シマシテ異議ヲ申立テマスルコ
トハ當然我ガ外務當局ノ執ルベキ態度デ
アルト思フノデアリマス、然ルニ漫然トシ
テ、外國ガ發表シタケレドモ、我國ガ之ニ
向テテ何モ發表スル必要ハナイ、諒解ヲ求ム
ル必要ガナイト云フコトニナリマスルナラ
バ軟弱外交デアルト言ハネバナラヌノデ
アル、現內閣ガ成立シテ以來總テノ外交政
策ヲ考ヘテ御覽ナサイ、永井君ハ强イコト
ヲ言ハレルカモ知レマセヌガ幣原外務大臣
ノ軟弱外交ハ天下周知ノ事實デアリマス、
何人モ之ヲ疑ハヌノデアリマス、「アグレマ
ン」問題ニ關シマシテモ、或ハ又滿洲鐵道問
題ニ關シマシテモ、或ハ最近浦潮ニ出來マ
シタ所ノ鮮銀問題ニ關シテモ、北洋漁業ノ
問題ニ關シマシテモ、或ハ亞米利加ノ移民
問題ニ關シマシテモ、何レモ追從軟弱外交
以外ニハ何物モ吾々ハ之ヲ見ルコトガ出
來ナイト思フノデアリマス此問題ニ關シ
マシテ、亞米利加ガ諒解ヲ求メテ來タモノ
デアルカ否ヤ、更ニ又亞米利加ニ對シテ諒
解ヲ求メル考ガアルカ否ヤト云フコトヲ、
最後ニ御尋致シマシテ降壇スル次第デアリ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01919310226&spkNum=50
-
051・小山松壽
○副議長(小山松壽君) 答辯ハアリマセ
ヌ-日程第七、右議案ノ審査ヲ付託スベ
キ委員ノ選擧ヲ議題ト致シマス
第七右議案ノ審査ヲ付託スベキ委員
ノ選擧発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01919310226&spkNum=51
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052・作田高太郎
○作田高太郞君 本案ハ議長指名十八名ノ
委員ニ付託セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01919310226&spkNum=52
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053・小山松壽
○副議長(小山松壽君) 作田君ノ動議ニ御
異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01919310226&spkNum=53
-
054・小山松壽
○副議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メ
V 、仍テ動議ノ如ク決シマシタ
日程第八、鑛業法中改正法律案、日程第
九、鑛業法中改正法律案ノ兩案ヲ一括シテ
第一讀會、前會ノ續ヲ開キマス、提出者大
里廣次郞君ノ趣旨辯明ノ繼續ヲ許シマス
第八鑛業法中改正法律案(大里廣次
郞君外三十七名提出)
第一讀會(前會ノ續)
第九鑛業法中改正法律案(坂井大輔
君外二名提出)第一讀會(前會ノ續)
〔大里廣次郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01919310226&spkNum=54
-
055・大里廣次郎
○大里廣次郞君 私ハ去ル二十一日ノ私ノ
提案ノ說明ノ續ヲ簡單ニ申上ゲマス、此案
ハ極メテ重大ナル案デ、超黨派的ノ問題デ
アリマスカラ、速ニ御審議下サイマシテ、
滿場ノ御贊成ヲ賜ランコトヲ偏ニ御願致シ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01919310226&spkNum=55
-
056・小山松壽
○副議長(小山松壽君) 日程第九-坂井
大輔君
〔坂井大輔君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01919310226&spkNum=56
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057・坂井大輔
○坂井大輔君 本案ハ民政黨ノ大里君カラ
既ニ提案ノ說明ハシテアリマス、私モ提案
者ノ一人トシテ簡單ニ說明ヲ申上ゲタイト
思ヒマス
本案ハ五十六議會ニ民政、政友合同ニ於
テ本議會ヲ通過シテ居ル案デアリマス、此
際提案ノ說明ヲスルノ必要ハアリマセヌ、
本案ガ通過スルコトハ明瞭デアリマス唯
一言私ハ民政黨ノ案ト政友會ノ案トノ違フ
所ニ、鑛業法ノ八十二條ノ削除ト云フコト
ガ政友會ノ案ニアリマス、是ハ兩稅委讓ニ
伴フタル所ノ關係條項ノ八十二條ノ削除ガ
アリマシタ爲メデ、今囘ハ兩稅委讓ガアリ
マセヌカラ、本案ヲ强ク主張スルノ意思ハ
アリマセヌ、併シ多數ヲ以テ政府ヲ支持サ
レテ居ル民政黨ノ方ニ-私ハ此施行期日
ヲ勅令ヲ以テ發表スルト云フコトガ、甚ダ
是ハ腑ニ落チヌノデアリマスカラ、政友會
內閣デハ、是ハ政府ノ提案トシテ提出致シ
テ居リマスノデ、民政黨モ多數ヲ以テ政府
ヲ支持サレテ居リマスシ、政友會モ之ニ同
意ヲシテ提案シテ居リマスカラ、希クバド
ウカ政府ヲシテ一日モ早ク、是ガ施行ノ期
日ヲ明記サレンコトヲ切ニ希望致シマシ
テ、私ハ提案ノ理由ニ代ヘル次第デアリマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01919310226&spkNum=57
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058・小山松壽
○副議長(小山松壽君) 質疑ノ通〓ハアリ
マセヌ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01919310226&spkNum=58
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059・作田高太郎
○作田高太郞君 兩案ヲ一括シテ議長指名
九名ノ委員ニ付託セラレンコトヲ望ミマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01919310226&spkNum=59
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060・小山松壽
○副議長(小山松壽君) 作田君ノ動議ニ御
異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01919310226&spkNum=60
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061・小山松壽
○副議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メ
やく、仍テ動議ノ如ク決シマシタ
日程第十、辯護士法中改正法律案ノ第一
讀會ヲ開キマス、提出者ノ趣旨辯明ヲ許シ
マス、提出者北浦圭太郞君
第十辯護士法中改正法律案(北浦圭
太郞君外三名提出)第一讀會
辯護士法中改正法律案
辯護士法中左ノ通改正ス
第五條第三號ニ左ノ但書ヲ加フ
但シ衆議院議員選擧法罰則違反ニ依リ
禁錮ノ刑ニ處セラレタル者ニシテ同法
第百三十七條第二項前段ノ宣告ヲ受ケ
且執行猶豫ノ言渡ヲ受ケタル者ハ此ノ
限ニ在ラス
附則
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
〔北浦圭太郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01919310226&spkNum=61
-
062・北浦圭太郎
○北浦圭太郞君 極メテ簡單デアリマス、
現行刑法法典ニ於キマシテ、執行猶豫ノ制
度ハ是ハ實ニ嚴肅ナル刑事法廷ニ於ケル
慈母ノ淚デゴザイマス、如何ナル被〓ト雖
モ此言渡ヲ受ケマシテ、感謝感泣セザル者
ハナイノデアリマス、然ルニ吾々職ヲ辯護
士ニ奉ジテ居リマス者ニ對シテハ、時アッテ
ハ執行猶豫ノ言渡ガ、却テ非常ナル不利益
ノ結果ヲ招來スルノデアリマス、卽チ昨年
ノ總選擧ニ於キマシテ、吾々ノ同僚ノ一人
タル辯護士ガ選擧運動ニ熱心ナル餘リ、所
謂衆議院議員選擧法罰則違反ニ問議サレタ
ノデゴザイマス、其辯護士ハ潔ク自己ノ罪
狀ヲ自白致シマシテ、其罪ニ服センコトヲ
決意致シマシタ結果、豫審ニ於キマシテモ
勿論、檢事廷ニ於キマシテモ、自己ノ犯罪
事實ヲ全部自白致シタノデアリマス、然ル
ニ公判審理ノ結果、罪ハ罪ナリト雖モ、情
狀頗ル憫量スベキモノアリト致サレマシ
テ、禁錮二箇月、執行猶豫三箇年ノ言渡ヲ
受ケタノデアリマス、尙ホ衆議院議員選擧
法ノ第百三十七條第二項前段ノ宣告、卽チ
選擧權、被選擧權ヲ停止セズト云フ恩典サ
ヘアッタノデアリマス、日疋ガ通常デアリマス
ナラバ、喜ンデ其罪ニ服スベキ筋合デゴザ
イマスガ、其身辯護士デアリマスガ爲ニ、
已ムナク恨ミヲ呑ンデ控訴上告ヲ致シタノ
デゴザイマス、蓋シ諸君、刑法施行法ノ第
三十六條ニ依リマスト「六年未滿ノ懲役又
ハ禁錮ニ處セラレタル者ハ他ノ法律ノ適用
ニ付テハ刑ノ執行ヲ終リ又ハ其執行ヲ受ク
ルコトナキニ至ルマテ公民權ヲ停止セラレ
タルモノト看做ス」ト、斯樣ニゴザイマス
卽チ此法律ニ依リマスト、刑期ヲ終ルカ若
クハ執行猶豫期間ヲ經過スルニアラザレ
バ、公民權ヲ剝奪サレルモノデゴザイマ
ス、次ニ辯護士法第五條第三號ニ依リマス
ト、公民權停止中ノ者ハ辯護士タルコトヲ
得ザル趣旨ノ規定ガゴザイマス、此二ツノ
規定ヲ綜合考覈シテ見マスト、此場合執行
猶豫ノ言渡サヘナケレバ、二箇月ノ刑期滿
了ニ依ッテ、直チニ辯護士ノ事務ニ從事スル
コトガ出來マスガ、執行猶豫ノ恩典ニ浴シ
マシタガ爲ニ、却テ三箇年ノ間其職務ヲ剝
奪サレル所ノ結果ヲ招來シタノデアリマ
ス、斯ノ如キハ刑法法典ガ執行猶豫ノ制度
ヲ認メタ眞ノ精神ニ反スルコト甚大ナリト
確信致シマスガ故ニ、今囘本改正案ヲ提出
致シマシテ、諸君ノ御贊成ヲ得ント欲スル
者デアリマス、諸君願クバ吾々辯護士ノ爲
ニ、尙且斯ノ如キ矛盾撞著セル規定ヲ有ス
ルト云フ點ニ、深甚ナル御考慮ヲ賜ハリマ
シテ、本改正案ニ御贊成アランコトヲ熱望
致シテ降壇致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01919310226&spkNum=62
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063・小山松壽
○副議長(小山松壽君) 質疑ノ通〓ハアリ
マセヌ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01919310226&spkNum=63
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064・作田高太郎
○作田高太郞君 本案ハ議長指名十八名ノ
委員ニ付託セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01919310226&spkNum=64
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065・小山松壽
○副議長(小山松壽君) 作田君ノ動議ニ御
異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01919310226&spkNum=65
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066・小山松壽
○副議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メ
マス仍テ動議ノ如ク決シマシタ、日程第
十一及第十二ハ提出者同一ノ議案デアリ
やく、仍テ一括議題トナスニ御異議アリマ
セヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01919310226&spkNum=66
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067・小山松壽
○副議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メ
マス-日程第十一、違警罪卽决例中改正
法律案、日程第十二、行政執行法中改正法
律案ノ兩案ヲ一括シテ第一讀會ヲ開キマ
ス、提出者ノ趣旨辯明ヲ許シマス、一松定
吉君
第十一違警罪卽决例中改正法律案
(一松定吉君外三名提出)第一讀會
違警罪卽决例中改正法律案
違警罪卽决例中左ノ通改正ス
第二條第一項ノ次ニ左ノ一項ヲ加フ
前項ノ言渡ヲ爲シタル時ハ卽時被〓人
ノ指定シタル親族故舊緣故者及ヒ辯護
士ニ通知スヘシ
第三條ニ左ノ一項ヲ加フ
前項ノ請求ハ被告人ノ爲ニ前條第二項
ニ揭クル者ヨリモ亦之ヲ爲スコトヲ
得
第七條ノ二警察官署ニ檢束引致セラレ
タル者及ヒ拘留處分ヲ受ケタル者ノ接
見及ヒ信書ニ關シテハ刑事訴訟法第四
十五條第百十一條第百十二條監獄法及
ヒ監獄法施行規則中接見及ヒ信書ニ關
スル規則ヲ準用ス
附則
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
第十二行政執行法中改正法律案(一
松定吉君外三名提出)第一讀會
行政執行法中改正法律案
行政執行法中左ノ通改正ス
第一條第一項ノ次ニ左ノ一項ヲ加ヘ第二
項中「前項」ヲ「第一項」ニ改ム
釋放シタル被檢束者ヲ同一事由ヲ以テ
再ヒ檢束スルコトヲ得ス
〔一松定吉君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01919310226&spkNum=67
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068・一松定吉
○一松定吉君 諸君、只今上程セラレマシ
タ違警罪卽決例中改正法律案及行政執行法
中改正法律案ニ對シマシテ、提案ノ理由ヲ
說明致シマス
違警罪卽决例ハ御承知ノ如ク、明治十
八年九月二十四日布〓第三十一號ヲ以テ發
布セラレタルモノデアリマシテ、憲法實施
前ノ法律ニ係ルモノデアリマス、ソレガ爲
ニ時勢ノ進運ニ適應シナイ幾多ノ缺陷ヲ有
スルノデアリマス故ニ往々ニシテ此法律
ノ運用ヲ誤リ、又ハ惡用シテ、警察官ガ能ク
人權蹂躙ヲ致スコトガアルノデアリマス、
是ハ吾レ人共ニ非常ニ痛歎致シテ居ル所デ
アリマス、仍テ吾々ハ此缺陷ヲ補正シ人
權尊重ノ實ヲ擧ゲタイ爲ニ本案ヲ提出シタ
ノデアリマス、御承知ノ如ク違警罪卽决例
ニ於キマシテ、私ノ提案致シマシタ目的ノ
主ナルモノハ、違警罪ノ卽決ヲ受ケタ場合
ニ於テ、其卽決ヲ受ケタ者ガ正式裁判ヲ中
立テルコトニ付テ、警察官ガ能ク之ヲ阻止
スルノデアリマス、故ニ此阻止ガ出來ナイ
ヤウニシテ、人權ヲ伸張シタイト云フノデ
アリマス、此意味ニ於キマシテ、違警罪卽
決ヲ受ケテ拘置セラレマシタ場合ニ於テ
ハ、卽決ヲ爲シタ警察官ガ此事ヲ其卽決ヲ
受ケタ者ノ指定シタル親戚、故舊、辯護士
等ニ通知スルコトガ一ツ、尙ホ其通知ヲ受
ケタ者ガ本人ト同ジヤウニ、正式裁判ノ中
立ヲスルコトガ出來ルト云フヤウニ改正ス
ルコトガ一ツ、尙ホ吾々ガ缺陷トシテ非常
ニ憂慮致シテ居リマス所ノ彼ノ面接、物品
ノ授受、信書ノ往復等ノコトヲ禁ジテ居ル
ノヲ改メテ、刑事訴訟法及ビ監獄法竝ニ監
獄法施行規則等ニ關スル規則ヲ準用スルコ
トニシテ、人權ノ仲張ガ十分出來ルヤウニ
シタイト云フコトガ一ツデアリマス、故
右ノ趣旨ヲ基礎トシテ遠警罪卽决例中ノ一
部ヲ改正致シタイト云フノガ、本案提出ノ
理由デアリマス
次ニ行政執行法中一部改正法律案提案ノ
理由ヲ說明致シマスガ、警察官ガ行政執行
法第一條ノ規定ヲ惡用シテ盥廻シ檢束、
連續檢束、若クハ引戾檢束ト云フガ如キ不
都合ナルコトヲ致シマシテ、人權ヲ蹂躪致
シテ居ルノガ多イノデアリマス、故ニ此弊
害ヲ除去スル意味ニ於テ、第一條第一項ノ
次ニ「同一ノ事由ヲ以テ再ビ檢束スルコト
ヲ得ズ」ト云フ一項ヲ附加ヘタナラバ、斯ノ
如キ不法ナ取扱ヲ爲スコトガ出來ナイヤウ
ニナリマスカラ、此意味ヲ附加改正致シタ
イト云フノガ、本改正案ノ骨子デアリマ
ス、此案ハ違警罪卽决例ノ一部改正案ト共
ニ、度々此議場ニ現レテ居リマシテ、第五
十六議會ノ如キハ、衆議院ハ滿場一致之ヲ
通過シタニ拘ラズ、貴族院ニ於テ審議未了
ニナリマシタコトハ、吾々ノ痛嘆ニ堪エナ
イ所デアリマス、人權尊重ヲ念トセラルヽ
皆樣ニ於カセラレマシテハ、此點ニ御留意
ヲ給ハリマシテ、速ニ本兩案ニ御贊成ノ
上可決確定セラレンコトヲ切望致シマシ
テ、降壇スル次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01919310226&spkNum=68
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069・作田高太郎
○作田高太郞君 兩案ヲ一括シテ北浦圭太
郞君外三名提出ノ辯護士法中改正法律案
ノ委員ニ併セ付託セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01919310226&spkNum=69
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070・小山松壽
○副議長(小山松壽君) 作田君ノ動議ニ御
異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01919310226&spkNum=70
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071・小山松壽
○副議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メ
マス仍テ動請ノ如ク決シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01919310226&spkNum=71
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072・作田高太郎
○作田高太郞君 殘餘ノ日程ヲ延期シ、本
日ハ是ニテ散會セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01919310226&spkNum=72
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073・小山松壽
○副議長(小山松壽君) 一寸御諮リ致シマ
ス、第五部選出決算委員〓瀨一郞君、右常
任委員辭任ノ申出ガアリマス、許可スルニ
御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01919310226&spkNum=73
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074・小山松壽
○副議長(小山松壽君) 御異議ガナケレバ
許可致シマス、其部ノ諸君ハ速ニ補闘選擧
ヲ行ヒ、御屆アランコトヲ望ミマス-只
今ノ作田君ノ動議ニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01919310226&spkNum=74
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075・小山松壽
○副議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メ
マス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ、次囘ノ日
程ハ公報ヲ以テ御通知致シマス、本日ハ是
ニテ散會致シマス
午後五時五分散會
衆議院議事速記錄第十八號中正誤
第四百三十七頁第二段第二十八行
中「大正二十一年」ヲ「昭和十二年」ニ
附則第二項ヲ左ノ如ク改ム
トアルハ
中「大正二十一年」ヲ「昭和十二年」ニ
附則第二項ヲ左ノ如ク改ム
ノ誤発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X01919310226&spkNum=75
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