1. 会議録本文
本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。
-
000・会議録情報
昭和六年二月二十八日(土曜日)
午後一時十九分開議
━━━━━━━━━━━━━
議事日程 第十九號
昭和六年二月二十八日
午後一時開議
第一 自動車交通事業法案(政府提出) 第一讀會
第二 右議案の審査を付託すへき委員の選擧
第三 輸出組合法中改正法律案(政府提出) 第一讀會
第四 重要輸出品工業組合法中改正法律案(政府提出) 第一讀會
第五 右各案の審査を付託すへき委員の選擧
第六 簡易生命保險法中改正法律案(政府提出) 第一讀會
第七 右議案の審査を付託すへき委員の選擧
第八 重要産業の統制に關する法律案(政府提出) 第一讀會
第九 右議案の審査を付託すへき委員の選擧
第十 著作權法中改正法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第十一 右議案の審査を付託すへき委員の選擧
第十二 大正十三年法律第二號中改正法律案(海軍軍備制限條約實施の件)(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第十三 右議案の審査を付託すへき委員の選擧
第十四 市制中改正法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第十五 町村制中改正法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第十六 府縣制中改正法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第十七 北海道會法中改正法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第十八 家祿賞典祿給與未濟に關する法律案(末松偕一郎君外四名提出) 第一讀會
第十九 鑛業法中改正法律案(丹下茂十郎君外一名提出) 第一讀會
第二十 度量衡法中改正法律案(一松定吉君提出) 第一讀會
第二十一 計量士法案(一松定吉君提出) 第一讀會
第二十二 未成年者飮酒禁止法中改正法律案(長尾半平君外二十四名提出) 第一讀會
第二十三 恩給法中改正法律案(山下谷次君外一名提出) 第一讀會
第二十四 刑事訴訟法中改正法律案(一松定吉君外四名提出) 第一讀會
第二十五 刑事訴訟法中改正法律案(長谷川陸郎君外二名提出) 第一讀會
第二十六 利息制限法中改正法律案(一松定吉君外四名提出) 第一讀會
第二十七 利息制限法中改正法律案(原夫次郎君外三名提出) 第一讀會
第二十八 民事訴訟法中改正法律案(村岡吾一君外三名提出) 第一讀會
第二十九 航空法中改正法律案(永田良吉君提出) 第一讀會
第三十 河川法中改正法律案(山枡儀重君外五名提出) 第一讀會
第三十一 借地借家調停法中改正法律案(小久江美代吉君提出) 第一讀會
第三十二 借家法中改正法律案(小久江美代吉君外二名提出) 第一讀會
第三十三 六大都市に關する法律案(森田茂君外十八名提出) 第一讀會
第三十四 産業組合中央金庫法中改正法律案(由谷義治君外十四名提出) 第一讀會
第三十五 産業組合中央金庫法中改正法律案(岸田正記君外二名提出) 第一讀會
第三十六 癈兵優遇に關する法律案(一松定吉君外一名提出) 第一讀會
第三十七 司法代書人法中改正法律案(斯波貞吉君外一名提出) 第一讀會
第三十八 農會法中改正法律案(牛場清次郎君外三名提出) 第一讀會
第三十九 農會法中改正法律案(末松偕一郎君外十二名提出) 第一讀會
第四十 耕地整理法中改正法律案(牛場清次郎君外三名提出) 第一讀會
第四十一 酒造税法中改正法律案(古島義英君外一名提出) 第一讀會
第四十二 道路維持修繕費損傷者負擔法案(栗原彦三郎君提出) 第一讀會
第四十三 穀類搗精製粉取締法案(大竹貫一君外四名提出) 第一讀會
第四十四 私生子の名稱に關する法律案(一松定吉君外六名提出) 第一讀會
第四十五 負債整理組合法案(土井權大君外三名提出) 第一讀會
第四十六 産業組合法中改正法律案(土井權大君外三名提出) 第一讀會
第四十七 農工銀行法中改正法律案(土井權大君外三名提出) 第一讀會
第四十八 日本勸業銀行法中改正法律案(土井權大君外三名提出) 第一讀會
第四十九 北海道拓殖銀行法中改正法律案(土井權大君提出) 第一讀會
第五十 米穀需給法案(土井權大君外三名提出) 第一讀會
第五十一 米穀需給特別會計法案(土井權大君外三名提出) 第一讀會
第五十二 計理士法中改正法律案(定塚門次郎君外二名提出) 第一讀會
第五十三 無盡業法中改正法律案(松田正一君外二名提出) 第一讀會
第五十四 古物商取締法中改正法律案(石原善三郎君外二名提出) 第一讀會
第五十五 身元保證に關する法律案(一松定吉君外三名提出) 第一讀會
第五十六 辨理士法中改正法律案(名川侃市君外四名提出) 第一讀會
第五十七 大日本帝國國旗法案(石原善三郎君提出) 第一讀會
第五十八 大正十五年法律第五十二號中改正法律案(土地區劃整理に伴ふ清算金等に關する件)(安藤正純君外三十八名提出) 第一讀會
第五十九 震災に因る土地區劃整理施行地區内の假建築著手期限變更に關する法律案(戸井嘉作君外三十八名提出) 第一讀會
第六十 鑛業法中改正法律案(大里廣次郎君外三十七名提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第六十一 鑛業法中改正法律案(坂井大輔君外二名提出) 第一讀會の續(委員長報告)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02019310228&spkNum=0
-
001・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 諸般ノ報〓ヲ致サ
セマス
〔書記官朗讀〕
一昨二十七日貴族院ヨリ受領シタル政府提
出案左ノ如シ
著作權法中改正法律案
大正十三年法律第二號中改正法律案(海
軍軍備制限條約實施ノ件)
一議員ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
建築設計監督士法案
提出者
小西和君兒玉右二君
西村丹治郞君熊谷直太君
增田義一君岡田忠彥君
岡崎久次郞君
守實日田間鐵道敷設速成ニ關スル建議案
提出者
長野綱良君重松重治君
高橋欽哉君松定吉君
湊町天王寺間鐵道電化促進ニ關スル建議
案
提出者
竹田儀一君鏑木忠正君
辻本豐三郞君本田彌市郞君
松定吉君
馬產振興ニ關スル建議案
提出者山内亮君
臼三鐵道速成ニ關スル建議案
提出者
長野綱良君高橋欽哉君
重松重治君松定吉君
森小國間鐵道敷設速成ニ關スル建議案
提出者
長野綱良君重松重治君
高橋欽哉君深水〓君
小山令之君
融和事業ノ徹底ニ關スル建議案
提出者
守屋榮夫君山口義一君
植原悅二郞君星島二郞君
原惣兵衞君岩本武助君
〓水銀藏君
醫療合理化ニ關スル建議案
提出者
川島正次郞君西岡竹次郞君
西村茂生君瀨一二君
犬養健君
長崎縣蠣浦港ヲ指定港灣編入ニ關スル建
議案
提出者田崎武男君
鍼灸師法制定ニ關スル建議案
提出者
竹田儀一君本田彌市郞君
枡谷寅吉君一松定吉君
濱野徹太郞君
高松開港ニ關スル建議案
提出者
戶澤民十郞君小西和君
矢野庄太郞君宮脇長吉君
山下谷次君
司法保護制度制定等ニ關スル建議案
提出者
小林錡君名川侃市君
牧野良三君
(以上二月二十六日提出)
各戰役ニ於ケル殊動者優遇ニ關スル建議
案
提出者
定塚門次郞君佐藤正君
手代木隆吉君高橋守平君
沖繩縣ニ國立水產學校竝國立水產試驗場
設置ニ關スル建議案
提出者
伊禮肇君當眞嗣合君
仲井間宗一君
融和事業ノ徹底ニ關スル建議案
提出者
森田茂君牧山耕藏君
賴母木桂吉君櫻內幸雄君
山道襄一君原夫次郞君
八並武治君加藤鯛一君
荒川五郞君山枡儀重君
(以上二月二十七日提出)
醫療合理化ニ關スル建議案
提出者
岡野龍一君武谷甚太郞君
松田喜三郞君小山令之君
斯波貞吉君
(以上二月二十八日提出)
一議員ヨリ提出セラレタル質問主意書左ノ
如シ
綿製品業ノ振興ニ關スル質問主意書
提出者
村上紋四郞君水野正巳君
地方行政ノ監督ニ關スル質問主意書
提出者
菅原傳君星廉平君
守屋榮夫君大石倫治君
(以上二月二十六日提出)
〔左ノ報〓ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノ爲
玆ニ揭載ス〕
一去二十六日理事補閱選擧ノ結果左ノ如シ
勞働組合法案(政府提出)外一件委員
理事宮澤裕君(委員田子一民君本
日理事辭任ニ付其ノ補闘)
一去二十六日議長ニ於テ辭任ヲ許可シタル
常任委員左ノ如シ
第五部選出決算委員〓瀨一郞君
一去二十六日議長ニ於テ選定シタル委員左
ノ如シ
瓦斯事業法中改正法律案(政府提出、貴族
院送付)委員
山田毅一君高橋秀臣君
大植〓左衞門君杉浦武雄君
佐々木芳照君川口義久君
深澤豐太郞君加藤鐐五郞君
石崎敏行君
昭和四年度第一豫備金支出ノ件(承諾ヲ
求ムル件)外七件委員
紫安新九郞君定塚門次郞君
服部〓一君大西正幹君
齋藤太兵衞君淺川浩君
生方大吉君牛場〓次郞君
岡田素臣君北田正平君
立川太郞君竹內友治郞君
兼田秀雄君山下谷次君
宮川一貫君水島彥一郞君
倉元要一君田川大吉郞君
鑛業法中改正法律案(大里廣次郞君外三
十七名提出)外一件委員
大里廣次郞君比佐昌平君
神部爲藏君原吉郞君
田崎武男君木村義雄君
山崎猛君庄晋太郞君
坂井大輔君
辯護士法中改正法律案(北浦圭太郞君外
三名提出)外二件委員
橫山金太郞君服部英明君
松定吉君谷原公君
北浦圭太郞君古島義英君
石橋茂君大西正幹君
小久江美代吉君松井郡治君
牧野幾男君立川太郞君
牧野良三君小野寺章君
小林錡君名川侃市君
米田規矩馬君松谷與二郞君
一去二十六日ニ於ケル特別委員ノ異動左ノ
如シ
米穀法中改正法律案(政府提出)外一件委
員
辭任高橋元四郞君補關生方大吉君
辭任佐竹庄七君補關北浦圭太郞君
辭任谷原公君補闘篠田有德君
辭任平野鍋吉君補闘岡野龍一君
勞働組合法案(政府提出)外一件委員
辭任太田正孝君補關宮澤裕君
輸出生絲檢査法中改正法律案(政府提出)
委員
辭任西脇晉君補闘服部英明君
國立公園法案(政府提出)委員
辭任林七六君補闕山下谷次君
地租法案(政府提出)外六件委員
辭任藤井達也君補闘八田宗吉君
辭任津雲國利君補闕前田米藏君
一昨二十七日幣原內閣總理大臣臨時代理ヨ
リ左ノ通發令アリタル旨ノ通牒ヲ受領セ
リ
臨時產業合理局事務官竹內可吉
第五十九囘帝國議會商工省所管事務政府
委員被仰付
簡易保險局長園田榮五郞
第五十九囘帝國議會遞信省所管事務政府
委員被仰付
一昨二十七日常任委員補闕選擧ノ結果左ノ
如シ
第五部選出
決算委員太田信治郞君(〓瀨一郞君
補闕)
一昨二十七日議長ニ於テ辭任ヲ許可シタル
常任委員左ノ如シ
第二部選出
決算委員守屋榮夫君
第九部選出
決算委員宮澤裕君
一昨二十七日委員長及理事互選ノ結果左ノ
如シ
瓦斯事業法中改正法律案(政府提出、貴族
院送付)委員
委員長杉浦武雄君
理事
山田毅一君川口義久君
昭和四年度第一豫備金支出ノ件(承諾ヲ
求ムル件)外七件委員
委員長紫安新九郞君
理事
定塚門次郞君大西正幹君
牛場〓次郞君立川太郞君
倉元要一君
鑛業法中改正法律案(大里廣次郞君外三
十七名提出)外一件委員
委員長大里廣次郞君
理事
神部爲藏君庄晋太郞君
辯護士法中改正法律案(北浦圭太郞君外
三名提出)外二件委員
委員長横山金太郞君
理事
服部英明君松定吉君
谷原公君牧野賤男君
名川侃市君
一昨二十七日理事補關選擧ノ結果左ノ如シ
勞働組合法案(政府提出)外一件委員
理事三宅磐君(理事比佐昌平君
本日委員辭任ニ付其ノ補闕)
一昨二十七日ニ於ケル特別委員ノ異動左ノ
如シ
勞働組合法案(政府提出)外一件委員
辭任比佐昌平君補關枡谷寅吉君
辭任三浦虎雄君補關仲井間宗一君
市制中改正法律案(政府提出)外三件委員
辭任村上紋四郞君補闕眞鍋儀十君
辭任林平馬君補關大植〓左衞門君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02019310228&spkNum=1
-
002・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 是ヨリ會議ヲ開キ
マス日程第一自動車交通事業法案ノ第
一讀會ヲ開キマス-江木鐵道大臣
第自動車交通事業法案(政府提出)
第一讀會
自動車交通事業法案
自動車交通事業法
第一章自動車運輸事業
第一條本法ニ於テ自動車運輸事業トハ
一般交通ノ用ニ供スル爲路線ヲ定メ定
期ニ自動車ヲ運行シテ旅客又ハ物品ヲ
運送スル事業ヲ謂フ
第二條自動車運輸事業ノ路線ハ一般ノ
道路、自動車道又ハ一般通行ノ用ニ供
スル通路ニ依ルベシ
第三條主務大臣ハ命令ヲ以テ自動車運
輸事業ニ付路線ニ應ジテ使用スベキ自
動車ノ輛數共ノ他事業ノ基準ヲ定ムル
コトヲ得
第四條自動車運輸事業ヲ經營セントス
ル者ハ命令ノ定ムル所ニ依リ運賃其ノ
他ニ關スル事業計畫ヲ定メ主務大臣ノ
免許ヲ受クベシ
主務大臣ハ前項ノ免許ヲ爲スニ當リ命
令ノ定ムル所ニ依リ其ノ有效期間ヲ指
定スルコトヲ得
第五條主務大臣ハ自動車運輸事業者ガ
免許ノ有效期間滿了後仍引續キ其ノ事
業ヲ經營センコトヲ申請シタルトキハ
當該路線ニ依ル自動車運輸事業ノ不必
要其ノ他特別ノ事由ナキ限リ期間更新
ノ免許ヲ爲スベシ
第六條自動車運輸事業經營ノ免許ヲ受
ケタル者ハ主務大臣ノ指定スル期間內
ニ運輸開始ノ認可ヲ申請スベシ
第十七條第一項ノ專用自動車道ヲ開設
シテ自動車運輸事業ヲ經營スル場合ニ
在リテハ工事方法ヲ定メ前項ノ認可申
請前主務大臣ノ指定スル期間內ニ工事
施行ノ認可ヲ申請スベシ
天災其ノ他已ムヲ得ザル事山ニ因リ前
二項ノ期間內ニ認可ヲ申請スルコト能
ハザルトキハ申請ニ因リ主務大臣ハ期
間ヲ伸長スルコトヲ得
第七條自動車運輸事業者事業計畫又ハ
專用自動車道ノ工事方法ヲ變更セント
スルトキハ主務大臣ノ認可ヲ受クベ
シ
第八條自動車運輸事業ノ自動車ハ命令
ノ定ムル所ニ依リ登錄ヲ受クルコトヲ
要ス
第九條自動車運輸事業ノ運輸、設備及
會計ニ關スル規定ハ命令ヲ以テ之ヲ定
ム
第十條主務大臣ハ公益上必要アリト認
ムルトキハ自動車運輸事業者ニ對シ左
ニ揭グル事項ヲ命ズルコトヲ得
-運賃其ノ他ニ關スル事業計畫又ハ
專用自動車道ノ工事方法ヲ變更セシ
ムルコト
二路線ヲ延長又ハ變更セシムルコト
但シ專用自動車道ノ延長及變更ハ此
ノ限ニ在ラズ
三他ノ運送事業者ト連絡運輸ヲ爲サ
シムルコト
四全部又ハ一部ノ路線ヲ共通ニスル
數人ノ自動車運輸事業者アル場合ニ
共同經營ヲ爲サシムルコト
五旅客又ハ物品ノ運送ニ關スル損害
ニ付保險ニ付セシムルコト
六前各號ノ外事業ノ改善ヲ爲サシム
ルコト
前項第三號及第四號ノ場合ニ於テ其ノ
實施方法又ハ各事業者ノ收得シ若ハ負
擔スベキ金額ニ付協議調ハザルトキハ
申請ニ因リ主務大臣之ヲ裁定ス
第十一條免許、許可又ハ認可ニハ條件
ヲ附スルコトヲ得
前項ノ條件ハ公益上必要アルトキハ之
ヲ變更スルコトヲ得
前條第二項ノ規定ハ第一項ノ條件ニ於
テ他ノ運送事業者ヨリ事業ノ讓渡又ハ
共同經營、會社ノ合併等ヲ求メタルト
キハ之ニ應ズベキコトヲ命ジタル場合
ニ於ケル實施方法及收得又ハ負擔金額
ニ之ヲ準用ス
第十二條自動車運輸事業ハ主務大臣ノ
許可ヲ受クルニ非ザレバ其ノ事業ノ全
部又ハ一部ヲ休止シ又ハ廢止スルコト
マルク。
第十三條自動車運輸事業ノ讓渡ハ主務
大臣ノ許可ヲ受クルニ非ザレバ其ノ效
力ヲ生ゼズ
會社ノ合併ニ因ル自動車運輸事業ノ承
繼ニ付テハ合併前主務大臣ノ許可ヲ受
クベシ
自動車運輸事業者死亡シタルトキハ相
續人ハ其ノ事業ヲ承繼ス
自動車運輸事業ヲ營ム會社ノ解散ノ決
議又ハ總社員ノ同意ハ主務大臣ノ認可
ヲ受クルニ非ザレバ其ノ效力ヲ生ゼズ
第十四條左ノ場合ニ於テハ主務大臣ハ
自動車運輸事業經營ノ免許ノ全部若ハ
一部ヲ取消シ又ハ事業ノ全部若ハ一部
ヲ停止セシムルコトヲ得
法令又ハ免許、許可若ハ認可ニ附
シタル條件ニ違反シタルトキ
二法令ニ基キテ爲シタル處分又ハ免
許、許可若ハ認可ニ附シタル條件ニ
基キテ爲シタル處分ニ違反シタルト
キ
三許可又ハ認可ヲ受ケタル事項ヲ故
ナク實施セザルトキ
四事業ノ經營不確實又ハ資產狀態ノ
著シキ不良其ノ他ノ爲事業ヲ繼續ス
ルニ適セズト認メタルトキ
五公益ヲ害スル行爲ヲ爲シタルトキ
六道路、自動車道又ハ通路ノ狀況ガ
自動車ノ運行ニ適セザルニ至リタル
トキ
第十五條左ノ場合ニ於テハ自動車運輸
事業經營ノ免許ハ其ノ效力ヲ失フ
運輸開始ノ認可申請期間內ニ認可
ヲ申請セザルトキ
二運輸開始ノ認可ナキトキ
三事業經營ノ免許ヲ受ケタル者會社
ノ發起人ナルトキハ運輸開始ノ認可
申請期間內(路線ノ全部又ハ一部ニ
付專用自動車道ヲ開設スル場合ニ在
リテハ工事施行ノ認可申請期間內)
ニ會社設立ノ登記ヲ爲サザルトキ
四專用自動車道ニ付工事施行ノ認可
申請期間內ニ認可ヲ申請セザルトキ
五專用自動車道ニ付工事施行ノ認可
ナキトキ
六事業ノ廢止ノ許可ヲ受ケタルトキ
七事業ヲ營ム會社解散シタルトキ
第十六條自動車運輸事業以外ノ自動車
ニ依ル運送事業ニ關スル規定ハ勅令ヲ
以テ之ヲ定ム
第二章自動車道及自動車道事業
第十七條本法ニ於テ自動車道トハ專ラ
自動車ノ一般交通ノ用ニ供スル道路
(一般自動車道)及自動車運輸事業者ガ
其ノ事業用自動車ノ專用ニ供スル通路
(專用自動車道)ヲ謂フ
本法ニ於テ自動車道事業トハ一般自動
車道ヲ開設シ有償又ハ無償ニテ之ヲ專
ラ自動車ノ一般交通ノ用ニ供スル事業
ヲ謂フ
第十八條自動車道事業ヲ經營セントス
ル者ハ命令ノ定ムル所ニ依リ使用料金
其ノ他ニ關スル事業計畫ヲ定メ主務大
臣ノ免許ヲ受クベシ
第十九條自動車道事業經營ノ免許ヲ受
ケタル者ハ工事方法ヲ定メ主務大臣ノ
指定スル期間內ニ工事施行ノ認可ヲ申
請スベシ
天災其ノ他已ムヲ得ザル事山ニ因リ前
項ノ期間內ニ認可ヲ申請スルコト能ハ
ザルトキハ申請ニ因リ主務大臣ハ期間
ヲ伸長スルコトヲ得
第二十條自動車道事業者工事施行ノ認
可ヲ受ケタルトキハ主務大臣ノ指定ス
ル期間內ニ一般自動車道ノ工事ニ著手
シ之ヲ竣功セシムベシ
前條第二項ノ規定ハ前項ノ期間ノ仲長
ニ之ヲ準用ス
第二十一條自動車道事業者事業計畫又
ハ一般自動車道ノ工事方法ヲ變更セン
トスルトキハ主務大臣ノ認可ヲ受クベ
シ
第二十二條自動車道ニ關スル工事ノ爲
必要アルトキハ自動車道事業者又ハ自
動車運輸事業者ハ地方長官ノ許可ヲ受
ケ沿道ノ土地ニ立入リ又ハ其ノ土地ヲ
一時材料置場トシテ使用スルコトヲ
得
前項ノ規定ニ依ル立入又ハ使用ヲ爲サ
ントスルトキハ已ムヲ得ザル事由アル
場合ヲ除クノ外豫メ土地ノ古有者ニ其
ノ通知ヲ爲スコトヲ要ス
第一項ノ規定ニ依ル立入又ハ使用ニ因
サテ生ジタル損害ハ立入又ハ使用ノ後
遲滯ナク事業者ニ於テ之ヲ補償スベ
前項ノ補償ニ村協議調ハザルトキハ地
方長官之ヲ裁定ス
前項ノ規定ニ依ル裁定中補償金額ニ不
服アル者ハ裁定ノ通知ヲ受ケタル日ヨ
リ三月內ニ通常裁判所ニ出訴スルコト
ヲ得
第二十三條一般自動車道ハ主務大臣ノ
認可ヲ受クルニ非ザレバ其ノ供用ヲ開
始スルコトヲ得ズ
第二十四條一般自動車道ノ構造、維持、
修繕若ハ使用又ハ其ノ交通ノ保全ニ關
スル規定ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第二十五條主務大臣ハ公益上必要アリ
ト認ムルトキハ自動車道事業者ニ對シ
左ニ揭ダル事項ヲ命ズルコトヲ得
使用料金其ノ他ニ關スル事業計畫
又ハ一般自動車道ノ工事方法ヲ變更
セシムルコト
般自動車道又ハ其ノ附屬物件ノ
政善ヲ爲サシムルコト
第二十六條免許、許可又ハ認可ニハ條
件ヲ附スルコトヲ得
前項ノ條件ハ公益上必要アルトキハ之
ヲ變更スルコトヲ得
第二十七條自動車道事業者ハ主務大臣
ノ許可ヲ受クルニ非ザレバ其ノ事業ニ
關スル一般自動車道ノ全部又ハ一部ノ
供用ヲ休止シ又ハ廢止スルコトヲ得
ズ
第二十八條自動車道事業ノ讓渡ハ主務
大臣ノ許可ヲ受クルニ非ザレバ其ノ效
力ヲ生ゼズ
會社ノ合併ニ因ル自動車道事業ノ承繼
ニ付テハ合併前主務大臣ノ許可ヲ受タ
ベシ
自動車道事業者死亡シタルトキハ相續
人ハ其ノ事業ヲ承繼ス
自動車道事業ヲ營ム會社ノ解散ノ決議
又ハ總社員ノ同意ハ主務大臣ノ認可ヲ
受クルニ非ザレバ其ノ效力ヲ生ゼズ
第二十九條左ノ場合ニ於テハ主務大臣
ハ自動車道事業經營ノ免許ノ全部又ハ
一部ヲ取消シ又ハ事業ノ全部又ハ一部
ヲ停止セシムルコトヲ得
法令又ハ免許、許可若ハ認可ニ附
シタル條件ニ違反シタルトキ
二法令ニ基キテ爲シタル處分又ハ免
許、許可若ハ認可ニ附シタル條件ニ
基キテ爲シタル處分ニ違反シタルト
キ
三主務大臣ノ指定スル期間內ニ工事
ヲ竣功セズ其ノ他許可又ハ認可ヲ受
ケタル事項ヲ故ナク實施セザルト
キ
四事業ノ經營不確實又ハ資產狀態ノ
著シキ不良其ノ他ノ爲事業ヲ繼續ス
ルニ適セズト認メタルトキ
五公益ヲ害スル行爲ヲ爲シタルトキ
第三十條左ノ場合ニ於テハ自動車道事
業經營ノ免許ハ其ノ效力ヲ失フ
工事施行ノ認可中請期間內ニ認可
ヲ申請セザルトキ
二工事施行ノ認可ナキトキ
三事業経營ノ免許ヲ受ケタル者會社
ノ發起人ナルトキハ工事施行ノ認可
申請期間內ニ會社設立ノ登記ヲ爲サ
ザルトキ
四一般自動車道ノ供用ノ廢止ノ許可
ヲ受ケタルトキ
五事業ヲ營ム會社解散シタルトキ
第三十一條政府又ハ政府ノ許可ヲ受ケ
タル者ガ自動車道ニ接續シ若ハ接近シ
又ハ之ヲ橫斷シテ一般ノ道路、自動車
道橋梁、河川、運河溝渠、鐵道、
軌道、索道等ヲ造設セントスルトキハ
自動車道事業者又ハ自動車運輸事業者
ハ之ヲ拒ムコトヲ得ズ
前項ノ場合ニ於テ公益上必要アリト認
ムルトキハ主務大臣ハ自動車道事業者
又ハ自動車運輸事業者ニ對シ設備ノ共
用又ハ變更ヲ命ズルコトヲ得
前二項ノ場合ニ於テ其ノ實施方法及費
用ノ負擔ニ付協議調ハザルトキハ申請
ニ因リ關係主務大臣之ヲ裁定ス自動車
道事業者又ハ自動車運輸事業者ノ受ケ
クル損害ノ補償ニ付亦同ジ
第二十二條第五項ノ規定ハ前項ノ補償
金額ニ之ヲ準用ス
第三十二條一般自動車道以外ノ自動車
ノ通行スル道路ヲ開設シテ使用料金ヲ
徴收スル場合ニ關スル規定ハ勅令ヲ以
テ之ヲ定ム
第三章共通規定
第三十三條同一ノ一般自動車道ニ依ル
自動車道事業及自動車運輸事業ノ兼營
ノ場合ニ於ケル免許、許可及認可ニ關
シテハ勅令ヲ以テ別段ノ定ヲ爲スコト
ヲ得
第三十四條主務大臣又ハ地方長官(東
京府ニ在リテハ警視總監ヲ含ム、以下
同ジ)ハ必要アリト認ムルトキハ自動
車運輸事業者又ハ自動車道事業者ヲシ
テ事業上ノ報告ヲ爲サシメ、書類ヲ提
出セシメ又ハ監査員ヲ派遣シテ事業ノ
九ヲ監査セシムルコトヲ得
監査員ハ自動車運輸事業者若ハ自動車
道事業者又ハ其ノ代表者若ハ其ノ他ノ
從業者ニ說明ヲ求メ帳簿、書類及圖面
ヲ檢閱スルコトヲ得
第三十五條本法ニ規定スル主務大臣ノ
職權ノ一部ハ命令ノ定ムル所ニ依リ之
ヲ地方長官ニ委任スルコトヲ得
第三十六條本法又ハ本法ニ基キテ發ス
ル命令ニ規定シタル事項ニ付主務大臣
又ハ地方長官ノ爲シタル處分ニ不服ア
ル者ハ訴願ヲ爲スコトヲ得
第三十七條國ニ於テ經營スル自動車運
輸事業及自動車道事業ニ付テハ第一條
乃至第三條、第丸條(會計ニ關スル規定
ヲ除ク)、第十七條、第二十二條、第
十四條及第五十四條乃至第五十七條ノ
規定ニ限リ本法ヲ適用ス
國ニ於テ自動車運輸事業又ハ自動車道
事業ヲ經營セントスルトキハ當該官廳
ハ主務大臣ニ協議ヲ爲スベシ
第四章自動車交通事業抵當
第三十八條自動車運輸事業又ハ自動車
道事業ヲ營ム株式會社ハ〓當權ノ目的
ト爲ス爲自動車運輸事業又ハ自動車道
事業ノ全部又ハ一部ニ付自動車交通事
業財團ヲ設定スルコトヲ得
自動車運輸事業及自動車道事業ノ抵當
ニ關シテハ本法ニ別段ノ規定アルモノ
ヲ除タノ外鐵道抵當法ヲ準用ス但シ同
法第一章及第三章中登錄トアルハ登
記第四十六條、第六十八條及第六十
九條中監督言廳トアルハ登記所、第八
十條乃至第八十二條、第八十八條及第
九十二條中監督官廳トアルハ裁判所ト
ス
第三十九條自動車交通事業財團ハ左ニ
揭グルモノニシテ同一自動車運輸事業
者又ハ同一自動車道事業者ニ屬シ且其
ノ事業ニ關スルモノヲ以テ之ヲ組成ス
自動車道ノ敷地及其ノ上ニ存スル
工作物竝ニ之ニ屬スル器具機械
二發著場、駐車場其ノ他自動車運行
ノ爲必要ナル沿線土地及其ノ上ニ存
スル工作物竝ニ之ニ屬スル器具機械
三自動車庫、停留所、貨物庫、給油
所附屬工場、事務所、事務員駐在
所其ノ他事業ノ爲必要ナル建物及其
ノ數地竝ニ之ニ屬スル器具機械
四通信又ハ信號ニ要スル工作物及其
ノ敷地竝ニ之ニ屬スル器具機械
五前四號ニ揭ダル工作物ヲ所有シ又
ハ使用スル爲他人ノ不動產ノ上ニ存
スル地上權及第三者ニ對抗シ得ベキ
賃借權竝ニ前四號ニ揭グル土地ノ爲
ニ存スル地役權
六自動車運輸事業ノ爲登錄ヲ受ケタ
ル自動車及其ノ附屬品
七事業經營ノ爲必要ナル貯藏物品及
器具機械
第四十條前條第一號乃至第三號ニ揭グ
ル不動產ノ何レモガ存セザルトキハ自
動車運輸事業ノ爲ニ自動車交通事業財
團ヲ設定スルコトヲ得ズ
自動車交通事業財圍ヲ目的トスル抵當
權ハ之ノミニ依リテ擔保セラルル債務
ノ額ガ三萬圓以上ナラザルトキハ之ヲ
設定スルコトヲ得ズ但シ第二以下ノ順
位ノ抵當權設定ノ場合ハ此ノ限ニ在ラ
ズ
第四十一條自動車運輸事業又ハ自動車
道事業ノ一部ニ付自動車交通事業財團
ヲ設定スル場合ニ於テハ自動車運輸事
業ニ在リテハ獨立ノ路線ニ付、自動車
道事業ニ在リテハ獨立ノ一般自動車道
ニ付之ヲ爲スコトヲ要ス
第四十二條同一事業者ガ自動車運輸事
業ト自動車道事業トヲ兼營スル場合ニ
於テハ兩事業ニ關スルモノヲ合シテ一
個ノ自動車交通事業財團ヲ設定スルコ
トヲ得但シ自動車運輸事業又ハ自動車
道事業ノ何レカ一方ニ付自動車交通事
業財團ノ設定アリタル後ハ此ノ限ニ在
ラズ
前項ノ事業者ガ各事業ニ付各別ニ自動
車交通事業財團ヲ設定スル場合ニハ一
般自動車道ノ敷地其ノ他專ラ自動車道
事業ニ關スルモノハ自動車運輸事業ノ
爲ノ自動車交通事業財團ニ屬スルコト
ナシ
第四十三條自動車交通事業財團ノ設定
ハ自動車交通事業財團登簿ニ所有權
保存ノ登記ヲ爲スニ依リテ之ヲ爲ス
自動車交通事業財團登記簿ニ所有權保
存ノ登記ヲ爲シタルトキハ第三十九條
ニ規定スルモノハ當然自動車交通事業
財國ニ屬ス但シ第三者ニ對抗シ得ベキ
他人ノ權利ノ目的タルモノ又ハ差押、
假差押若ハ〓處分ノ目的タルモノニ付
テハ此ノ限ニ在ラズ
自動車交通事業財團ノ設定後新ニ其ノ
財團ノ所有者ニ屬シタルモノ亦前項ニ
同ジ
第四十四條自動車交通事業財團ハ之ヲ
讓渡シ又ハ所有權及抵〓田權以外ノ權利、
差押、假差押若ハ假處分ノ目的ト爲ス
コトヲ得ズ但シ抵當權者ノ同意ヲ得テ
之ヲ自動車運輸事業又ハ自動車道事業
ヲ營ム株式會社ニ讓渡スハ此ノ限ニ在
ラズ
自動車交通事業財園ニ屬スルモノハ之
ヲ讓渡シ又ハ所有權以外ノ權利、差押、
假差押若ハ假處分ノ目的ト爲スコトヲ
得ズ但シ抵當權者ノ同意ヲ得テ之ヲ讓
渡シ又ハ貸付クルハ此ノ限ニ在ラズ
前項但書ノ規定ニ依リ自動車交通事業
財團ニ屬スルモノヲ讓渡シタルトキハ
抵當權ハ其ノモノニ付消滅ス
第四十五條自動車交通事業財團ヲ目的
トスル抵當權ノ設定又ハ變更ハ總株金
四分ノ一以上ノ拂込アリタル後定款變
更ト同一方法ノ株主總會ノ決議ヲ經ル
コトヲ要ス
第四十六條自動車交通事業財團ノ登記
ニ付テハ其ノ財團ノ所有者タル會社ノ
本店所在地ヲ管轄スル區裁判所又ハ其
ノ出張所ヲ以テ管轄登記所トス
自動車交通事業財團ノ所有者クル會社
ガ本店ヲ一登記所ノ管轄地ヨリ他ノ登
記所ノ管轄地ニ移シタル場合ニ於ケル
登記手續ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
左ノ場合ニ於テハ登記所ハ直ニ其ノ旨
ヲ主務大臣ニ通知スベシ
第一順位ノ抵當權ノ設定ヲ登記シ
タルトキ
二自動車交通事業財團ノ用紙ヲ閉鎖
シタルトキ
第四十七條自動車交通事業財團ニ關シ
テハ工場抵當法第十條、第十二條、第
十八條乃至第二十條、第二十二條乃至
第四十四條、第四十七條及第四十八條
ノ規定ヲ準用ス
本法ニ規定スルモノヲ除クノ外自動車
交通事業財團ノ登記ニ關シテハ不動產
登記法ヲ準用ス
登記ノ申請書ニハ不動產登記法第三十
六條第三號乃至第八號ニ揭グル事項ノ
外左ノ事項ヲ記載スベシ
自動車交通事業財團ノ設定セラル
ル事業ノ表示
二自動車運輸事業ノ爲ノ自動車交通
事業財團ニ在リテハ其ノ事業ノ行ハ
ルル路線ノ表示
三自動車道事業ノ爲ノ自動車交通事
業財團ニ在リテハ之ニ屬スル一般自
動車道ノ表示
四免許ニ有效期間ノ指定アルトキハ
其ノ期間
五免許ニ條件ガ附セラレタルトキハ
其ノ條件
第四十八條第四十二條第一項ノ規定ニ
依リテ自動車交通事業財團ヲ設定シタ
ル場合ニ於テ自動車運輸業又ハ自動車
道事業ノ何レカニ付事業經營ノ免許ノ
失效又ハ取消アリクルトキハ抵當權者
ハ一事業ニ付自動車交通事業財團ノ設
定セラレタル場合ニ準ジ財團ノ全部ニ
對シ其ノ權利ヲ實行スルコトヲ得
第四十九條自動車交通事業財團ニ對ス
ル抵當權ノ强制執行ニ付テハ執行シ得
ベキ一定ノ債務名義ヲ要セズ
强制管理ノ開始ハ自動車運輸事業又ハ
自動車道事業ニ對スル主務大臣ノ監督
ヲ妨ゲズ
强制管理ノ管理人ノ任免ニ付テハ裁判
所ハ主務大臣ノ意見ヲ聽クコトヲ要ス
强制管理終了シタルトキハ裁判所ハ其
ノ旨ヲ主務大臣ニ通知スベシ
第五章罰則
第五十條左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ
千圓以下ノ罰金ニ處ス
免許ヲ受ケズシテ自動車運輸事業
又ハ自動車事業ヲ經營シタルトキ
二認可ヲ受ケズシテ一般自動車道ノ
供用ヲ開始シタルトキ
第五十一條免許ヲ受ケタル者ノ名義ヲ
利用シテ自動車運輸事業又ハ自動車道
事業ヲ經營シタル者ハ五百圓以下ノ罰
金ニ處ス名義ヲ利用セシメタル者亦同
第五十二條自動車運輸事業者又ハ自動
車道事業者左ノ各號ノ一ニ該當スルトキ
ハ三百圓以下ノ罰金又ハ科料ニ處ス
第五十條ニ規定スル場合ヲ除クノ
外本法又ハ本法ニ基キテ發スル命令
ニ依リ許可又ハ認可ヲ受ケテ爲スベ
キ事項ヲ之ヲ受ケズシテ爲シタルト
キ
二免許、許可又ハ認可ニ附シタル條
件ニ違反シタルトキ
三本法ニ基キテ爲シタル處分又ハ免
許、許可、若ハ認可ニ附シタル條件
ニ基キテ爲シタル處分ニ違反シタル
トキ
四第八條ノ規定ニ依ル登錄ヲ受ケザ
ル自動車運輸事業ノ用ニ供シタルト
キ又ハ自動車ニ付不實ノ事項ノ登錄
ヲ申請シタルトキ
五正當ノ事由ナクシテ一般自動車道
ノ使用ヲ拒ミタルトキ
六本法又ハ本法ニ基キテ發スル命令
ニ依リテ屆出又ハ報〓ヲ爲スベキ事
項ニ付虛僞ノ屆出又ハ報告ヲ爲シタ
ルトキ
七監査員ノ監査ヲ妨ゲタルトキ
第五十三條自動車運輸事業者又ハ自動
車道事業者ガ未成年者又ハ禁治產者ナ
ルトキハ本法ノ罰則ハ之ヲ法定代理人
ニ適用ス但シ營業ニ關シ成年者ト同一
ノ能力ヲ有スル未成年者ニ付テハ此ノ
限ニ在ラズ
自動車運輸事業者又ハ自動車道事業者
ハ其ノ代理人、戶主、家族、雇人其ノ他
ノ從業者ガ其ノ業務ニ關シ本法ニ違反
シタルトキハ自己ノ指揮ニ出デザルノ
故ヲ以テ其ノ處罰ヲ免ルルコトヲ得ズ
會社ノ代表者其ノ他ノ從業者會社ノ業
務ニ關シ本法ニ違反シタルトキハ其ノ
罰則ヲ會社ニ適用ス
第五十四條自動車道若ハ其ノ標識ヲ損
壞シ又ハ其ノ他ノ方法ヲ以テ自動車道
ニ於ケル自動車ノ往來ノ危險ヲ生ゼシ
メタル者ハ五年以下ノ懲役ニ處ス
前項ノ未遂罪ハ之ヲ罰ス
第五十五條人ノ現在スル自動車運輸事
業ノ自動車ヲ〓覆シ又ハ破壞シタル者
ハ十年以下ノ懲役ニ處ス
前項ノ罪ヲ犯シ因テ人ヲ傷ニ致シタル
者ハ一年以上ノ有期懲役ニ處シ死ニ致
シタル者ハ無期又ハ三年以上ノ懲役ニ
處ス
第一項ノ未遂罪ハ之ヲ罰ス
第五十六條第五十四條ノ罪ヲ犯シ因テ
自動車ノ〓覆又ハ破壞ヲ致シタル者亦
前條ノ例ニ同ジ
第五十七條過失ニ因リ第五十四條第一
項又ハ第五十五條第一項ノ罪ヲ犯シタ
ル者ハ三百圓以下ノ罰金ニ處ス其ノ業
務ニ從事スル者犯シタルトキハ一年以
下ノ禁錮又ハ五百圓以下ノ罰金ニ處ス
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
本法施行前自動車運輸事業又ハ自動車道
事業ニ該當スル事業ニ付地方長官ノ爲シ
タル事業經營ノ免許又ハ許可ハ之ヲ本法
ニ依ル自動車運輸事業又ハ自動車道事業
經營ノ免許ト看做ス
主務大臣ハ公益上必要アリト認ムルトキ
ハ前項ノ自動車運輸事業ニ付新ニ免許ノ
有效期間、運輸開始ノ認可申請期間又ハ
事業ノ休止期間ヲ指定スルコトヲ得
登錄稅法第三條ノ六中「又ハ漁業財團登
記簿」ヲ「、漁業財團登記簿又ハ自動車交通
事業財團登記簿」ニ改ム
印紙稅法第四條第一項第一號中「軌道財
團」ノ下ニ「、自動車交通事業財團」ヲ加
フ
〔國務大臣江木翼君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02019310228&spkNum=2
-
003・江木翼
○國務大臣(江木翼君) 自動車ニ依リマス
ル運輸交通ハ近時非常ナル發達ヲ遂ゲマ
シテ、公衆ノ日常生活ト密接ナル關係ヲ生
ズルニ至ッタノデアリマス、就中路線ヲ定メ
テ定期ニ運行致シマスル自動車ニ於キマシ
テハ交通機關ト致シマシテ、重要ナル地
步ヲ占ムルニ至ッタノデアリマス、又轉ジテ
我國現在ノ道路ヲ見マスルニ自動車ノ無
カッタ時代ノモノガ、大部分ヲ占メテ居ル次
第デアリマスカラ、自動車ノ發逹ニ伴ヒマ
シー、自動車專用ノ道路ヲモ認ムルノ必要
ヲ生ズルニ至ッタノデアリマス、然ルニ是等
ノ事業ノ準據法規ト致シマシテハ自動車
運輸事業ニ關シマシテハ、纔ニ大正八年ニ
內務省カラ出シマシタ所ノ、自動車取締令
中ニ數箇條ノ規定ガアルニ止マリ、又自動
車專用道路ニ關シマシテハ、明治四年ニ制
定サレマシタ所ノ、太政官布告ノ規定ガ存
在スルニ過ギナイ有樣デアリマシテ、洵
ニ時代ノ要求ニ適應シナイノデアリマス、鐵
道、內務兩省ニ於キマシテハ現時ノ必要
ニ應ズル立法ヲ得タイ方針ヲ以チマシテ、
種々〓究ヲ重ネマシタガ、就中自動車運輸
事業ニ關シマシテハ、第五十六回帝國議會
ニ於キマシテ、貴衆兩院ニ於テ之ニ關スル
請願モ採擇セラレマシタノデ、ソレ等ヲ斟
的致シマシテ、本法案ヲ提出スルニ至ッタ次
第デアリマス玆ニ提案致シマシタ自動車
交通事業法案ハ、以上申述ベマシタ交通行
政ノ見地カラ、自動車運輸事業ニ關スル事
項ヲ規定スルト共ニ、道路交通ノ補充的施
設ト致シマシテ、自動車道ヲ開設スルノ途
ヲ開クガ爲ニ、之ニ關スル事項ヲモ併セテ
規定致シマシタモノデ、之ニ依シテ自動車交
通ノ完全ナル發達ヲ圖ラムントスル趣旨ニ
外ナラナイノデアリマス、今本法案要項ノ
一二ヲ申上ゲテ見マスルト
第一ニ本法ヲ適用致シマスル自動車運
輸事業ト申シマスノハ一般交通ノ用ニ供
スル爲メ路線ヲ定メ、定期ニ自動車ヲ運行
シテ、旅客又ハ貨物ヲ運送スル事業ヲ中ス
ノデアリマス、是等ノ事業者ハ、現在旅客
及貨物ヲ併セ四千名ノ多キニ達シ、其使用
致シテ居リマス自動車ノ數ハ、一万數千輛
ニ及ビ、其營業哩程ハ約九万哩ニ及ンデ居
ルノデアリマス
第二ニ本法案中ニ規定致シマシタ自動
車道ト申シマスノハ一般自動車道及專用
自動車道ノ二種類デアリマス、一般自動車
道ト申シマスノハ、專ラ自動車ノ一般交通
ノ用ニ供スル道路ヲ申スノデアリマシテ
專用自動車道ト申シマスノハ、前ニ述ベタ
ル自動車運輸事業者ガ、其事業用ノ自動車
ノ專用ニ供スル所ノ通路ヲ云フノデアリマ
ス、右ノ內一般自動車道ヲ開設スル者ハ
特ニ自動車道事業者トシテ、一般自動車ノ
通行ニ付キ使用料金ノ徴收ヲ許ス方針ニナツ
テ居ルノデアリマス、現在自動車道ト認ム
ベキモノハ六箇所アルニ過ギマセヌガ、
其他ニ免許ヲ受ケテ居リマスルモノハ九
箇所ニ及ンデ居リ、自動車交通ノ發達ニ伴
ヒマシテ、漸次增加スルノ機運ニ向ヒツヽ
アルノデアリマス
第三ニ、以上ノ自動車運輸事業及自動車
道事業ノ經營ニ付テハ從來ハ地方長官ニ
其免許ヲ委ネテ居ッタノデアリマスガ、本
法施行ノ上ハ原則ト致シマシテハ主務
大臣ニ於テ免許ヲ爲スノ方針ヲ執ッタノデ
アリマス、是ハ此事業ノ重要性ニ鑑ミマシ
テ、其必要ヲ認メタ次第デアリマス
第四ニ、本事業ニ共通致シマスル事項ト
致シマシテ、本法案ノ特色ト致シテ居リマ
スル所ハ自動車交通事業抵當、所謂自動
車事業財團ヲ設ケマシテ、其事業財團ヲ抵
當權ノ目的トナスノ制度ヲ設ケマシテ、其
事業上ノ金融ヲ圓滑ナラシメタ點デアリマ
ス、事業ノ發達ニ伴ヒマシテ、且將來ノ堅實
ナル進步ニ資スルガ爲ニハ事業財團ノ抵
當制度ハ絕對ニ必要ナルモノト信ズルノデ
アリマス
以上申述ベマシタヤウナ理由ヲ以チマシ
テ、本法案ヲ提出致シタ次第デアリマス
本案ニ付キマシテハ自動車業者ノ間ニ於
キマシテモ、相當熱望致シテ居ル趣モ見エ
ルノデアリマスカラ、ドウカ是等ノ事情ヲ
モ御諒承下サイマシテ、何卒御審議ノ上速
ニ御協賛アランコトヲ希望致ス次第デアリ
マス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02019310228&spkNum=3
-
004・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 質疑ヲ許シマ
ス-丹下茂十郞君
〔丹下茂十郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02019310228&spkNum=4
-
005・丹下茂十郎
○丹下茂十郞君 諸君、私ハ只今上程ニナツ
テ居リマスル自動車交通事業法案、之ニ關
聯致シマシテ、鐵道省ガ最近著手セラレテ
居ル所ノ乘合自動車竝ニ貨物自動車ノ營業
ニ付キマシテ、鐵道大臣及ビ內務大臣ニ數
項ノ質疑ヲ致シタイト考ヘルノデアリマ
ス
只今鐵道大臣ヨリ本法案ノ提案理由ヲ說
明サレタノデアリマス、殊ニ之ニ附ケテア
リマスル理由書ヲ見マシテモ、末段ニ於テ
「之ガ助成ノ途ヲ拓キ以テ其ノ健全ナル發
達ヲ圖ルノ要アリ」ト、斯樣ニ云フテアルノ
デアリマスガ、現在江木鐵道大臣ノヤッテ
居リマスル鐵道省營業ノ乘合自動車及ビ貨
物自動車ノヤリ方ヲ見マスト云フト斯樣
ナ法律ヲ制定シテ何處ニ保護スルコトガア
ル、何處ニ助成ヲ圖ルコトガ出來ヨウカ、
現在鐵道省ノヤッテ居ル仕事ハ、殆ド民間ノ
事業ヲ壓迫シテ、經營困難ニ陷ラシメテ居
ルバカリデアル、斯樣ナ法律ヲ拵ヘテ保護
特典ヲ與ヘタ所デ、江木鐵相ノヤリ方デ行
ケバ、片端カラ之ヲ打壞シテ行クコトニナ
ル、果シテ然ラバ私ハ是ヨリ數項ノ點ニ付
テ、江木鐵相ニ御尋シテ見タイト思フノデ
アリマス、私ノ江木鐵相ニ御尋シヨウト思
ヒマスルコトハ、先ヅ第一ニ、鐵道省ノ自
動車營業ニ關スル所ノ計畫及ビ其根本方
針第二ハ鐵道省ノ豫定線ト自動車營業
路線トノ關係デアリマス、第三ニ鐵道省
ノ自動車營業ト云フコトヽ鐵道營業ノ本
質トノ關係デアリマス、第四ニハ鐵道會
計法ノ範圍、第五ニハ、旣設民間自動車ノ
營業ニ對スル所ノ打擊、之ニ對スル政府ノ
補償ノ方法デアリマス、第六ハ地方費支辨
ノ道路橋梁修築ニ關スル所ノ、經費負擔ノ
關係デアリマス、更ニ民間ノ營業者ニ許可
サレル所ノ方針、此七點ニ付キマシテ、其
內內務大臣ニ關スルコトハ內務大臣ヨリ
御答ヲ願ヒタイノデアリマス、世間ニ於テ
近頃江木鐵相ノ自動車網ノ完成ト云フコト
ヲ傳ヘラレテ居ルノデアリマス、此自動車
網ト云フモノハ如何ナル事柄ヲ指シテ居
ルノデアルカ、仄ニ聞ク所ニ依リマスト、
今鐵道省デ調査ヲ致シタモノガ、本州ニ於
テ六十一線、二千百三十三哩、四國ニ於テ
八線、四百六十九哩、九州ニ於テ十四線、
四百八十八哩、合計八十三線、三千九十哩
ノ自動車ノ經營ヲショウトスル所ノ、目論
見ガアルト云フコトデアリマス此自動車
網ナルモノハ如何ナル形式ニ於テ、如何
ナル方法ニ於テ決定サレタモノデアルカ、
或ハ鐵道會議等ニ諮詢サレマシテ、此方針
ヲ定メタモノデアルカ、或ハ思付キ、行キ
當リバッタリノ計畫ヲ樹テヽ、ソコニ政黨ノ黨
勢擴張ノ具ニ供スル所ガアルノデハナイカ、
現ニ開始シテ居ルモノハ、鐵道敷設法ニ定ッ
テ居ル所ノ路線デアリマス、私ノ第一項
ニ伺ヒタイ所ハ此鐵道ノ豫定線デアル所
ニ「バス」ヲ運用スルト云フコトデアル、是
ハ鐵道ノ敷設法ニ於テ、漸次敷設シテ行ク
ベキ所ノ豫定線ヲ定メラレテ居ルノデアリ
マスガ、只今鐵道省ニ於テ經營致シテ居ル
モノハ彼ノ鐵道敷設法ニ定メテ居ル七十
號ノ二、卽チ岡崎多治見間ノ此豫定線ニ、
自動車ヲ動カシテ居ルノデアリマス、此岡
崎多治見線ノ、鐵道豫定線ニ入リマシタ時
ノ經過ハ諸君モ御承知ノ通リ、憲政會ノ
內閣當時、此岡崎多治見間ノ鐵道ヲ敷設ス
ルト云フコトヲ以テ當時ノ憲政會ハ非常
ナル黨勢擴張ヲナサレタノデアリマス、其
當時岡崎ヲ初メ、此岡崎多治見線ノ沿線ニ
於ケル數千人ノ入黨者ヲ以テ、之ニ依ッテ政
府ハ遂ニ之ヲ豫定線ニ加ヘルコトニ相成ッ
タノデアリマス、私モ既ニ言ッタコトモアリ
PV、地方ノ交通ノ利便ヲ圖ル上ニ於テ、
此岡崎多治見線ノ必要ガアルト云フコトニ
付テ、何等異議ヲ申ス者デハナイ、併シ其動
機ハヤハリ憲政會ノ黨勢擴張デアル(「ノー
ノー」)「ノー〓〓」ト言フナラバ、其後問題
ハドウナッテ居ルカ、遂ニ當時ノ憲政會內閣
ノアル內、唯地方ノ者ヲ瞞カシテ(「政友會
ガヤッタノデハナイカ」ト呼フ者アリ)冗談
言ッテハイケマセヌ、政友會デハアリマセ
又、憲政會内閣デヤッタデハナイカ、唯黨勢
擴張ヲシテ、多數ノ入黨者ヲ取レバ、ソレ
デ能事足レリトシテ、ソレ以來何等顧ミラ
レテ居ナイノデアリマス、吾々モ此線路ノ
設置ト云フコトニ對シテハ、何等反對シナ
イト云フコトヲ言ッテ居ルデハナイカ、併ナ
ガラ當時ノ憲政會ノアル內、多數ノ入黨者ヲ
作リ反對モ押切シテ豫定線ニ加へ、其豫定
線ニ加ヘテカラ、此路線ヲ如何ニ取扱ッテ
居フタカト云フコトガ問題デアル、殆ド民
政黨ノ人ハ忘レテ居ルデハナイカ、而モ此
度民政黨內閣ガ出來タ以上ハ、何トカシテ
其責任ヲ果サナケレバナラヌ、併ナガラ今
ノ鐵道省ハドウデアルカ、誤フタル政策ノ爲
ニ鐵道收益ト云フモノハ段々激減シテ是
等ノ新線ニ向ッテ何等手ヲ加ヘルコトガ出
來ナイ、手モ足モ出ナイ狀態デアルケレド
モ、一方カラ言ヘバ之ヲ豫定線ニ加ヘ、明
日ニモ敷設ニ掛ッテヤルト云フヤウナ旨イ
餌ヲ與ヘテ、黨勢擴張ヲヤッタ、其責任ノ
手前此處ニ「バス」ノ營業ト云フコトヲ始メ
テ此豫定線ニ加ヘタ鐵道敷設ヲ帳消ニシ
ヨウト云フ考デハナイカ、吾々ハ之ヲ疑フ
者デアル、卽チ曩ニ黨勢擴張ノ具ニ供シ
テ、豫定線ニ加ヘタ其責任ヲ糊塗スル爲ニ、
一時遁レノ「バス」ノ經營ヲヤxテ居ルモノデ
ハナイカ、更ニ鐵道ノ營業ト自動車ノ營
業ト云フコトノ關係ニ付テ御尋ネシタノ
デアルガ、鐵道ノ營業ナルモノハ、私ガ
申上ゲルマデモナク、所謂國家產業
ノ發達、或ハ軍事ノ上ヨリモ、更に
經濟ノ上ヨリモ此交通運輸ノ完成ヲ期ス
九錢傳一國家自ラ之ヲ經營シテ居ルモノデ
アルガ、其處ニ附屬スル所ノ仕事ヲ爲シ得
ルト云フコトハ、是ハ特別會計法ニ明カニ示
サレテ居ル帝國鐵道會計法ニ依リマスト
其七條ニ於テ、附屬事業デアル事ナラバヤ
リ得ル隨テ此附屬事業ナルモノハ、餘リ
廣義ニ解スベキモノデハナイト思ヒマス
曩ニ江本鐵相ハ是ハ連絡ノ爲デアル鐵
道ノ連絡上ヤル事デアッテ、附屬ノ事業デア
ルト云フコトノ御說明ガアッタノデアリマ
ス、成程鐵道ノ連絡ノ爲ニ附屬ノ事業ヲヤ
ルト云フコトハ、或ハ函館靑森間ノ連絡ヲ
圖ル爲ニ汽船ヲ動カシ、或ハ下關門司間ノ
連絡ヲ圖ル爲ニ汽船ヲ動カス、斯樣ナ本當
ノ連絡上ノ關係ナラバ是ハ私ハ附帶事業
トシテ差支ナイト思フノデアル、併シ今日
經營シテ居ル岡崎多治見間ト云フモノハ
其間三十五哩幾ラアル、是ガ鐵道ノ連絡デ
アルト云フコトガ言ヒ得ルデアラウカ、若
シ東京驛ト上野驛ニ電車ノ交通ガナカッタ
場合ニ此上野驛ト東京驛トノ連絡ヲ圖ル爲
二自動車ヲ用ヒルト云フコトナラバ是
ハ全ク連絡デアル附属事業デアル併シ
今江木鐵相ノ言フコトカラ言ヘバ、東京カ
ラ靑森マデ自動車ヲ飛バシテモ是ハ連絡デ
アル、東京カラ大阪マデ自動車ヲ飛バシテ
モ是ハ連絡デアル、斯樣ニ廣義ニ解スベキ
モノデハナイト吾々ハ思フ、私ハ此自動車
ノ事業其モノヲ惡イト言フノデハナイ、ヤ
ルナラバヤルヤウナ方法ヲ以テヤラナケレ
バナラヌト言フノデアル、殊ニ現內閣ハ、
政友會內閣ノ當時、建設費ハ八千万圓デア
リ、改良費ハ一億四千万圓デアッタモノヲ、
之ヲ半減シテ建設費カ四千二百万圓シカナ
イ、改良費ガ七千七百万圓シカナイ、殊ニ
其七千七百万圓ノ中ニモ、千二百万圓ト云
フ公債ヲ以テ支辨シテ行カナケレバナラナ
イヤウナ、此財政狀態デハナイカ、其時ニ
唯失業救濟ト云フコトニ名ヲ藉リテ、千二
百万圓ノ公債ニ依ッテ、漸ク此改良費ヲ償ッ
テ行カウトスルヤウナ、此窮シタル財政ノ
時ニ於テ、サウシテ一方ニ於テハ事業費ニ
ハ多大ノ節約ヲ加ヘ、最モ鐵道經營上重大
ナル關係ノアル所ノ保線費ノ如キモノガ、
其事業費ニ於テ五百万圓モ滅少シテ居ル、
節約ヲ致シテ居ル、其點ニ付テ鐵相ハ斯樣
ニ言フ、物價ガ下落シテ居ルノデアルカラ、
經費ハ減ジタケレドモ、保線上何等差支ナ
イモノデアルト認メルト言ッテ居ラレル、併
ナガラ吾々共近來鐵道事故ノ頻々トシテ起
ルコトハ洵ニ枚擧ニ遑アラザルモノガア
ルト思フ全ク今日ハ鐵道ノ不安時代デア
リマス、其證據ニハ最近ニ現ハレテ居ル鐵
道ノ事故ハドウデアル未ダ曾テ斯樣ニ事
故ノ頻發シテ居ルコトハアリマセヌ、而シ
テ又鐵相ハ、從來小荷物ノ運搬等ニ自動車
ヲ使ッテ居ッタ故ニソレヲ押擴メテ乘合自
動車ヲ初メ貨物ノ運搬ヲスルコトハ、何等
差支ナイ事デアルト言ハレルガ、斯樣ニ押
擴ゲテ行ケバ、恐ラク鐵道省ノ仕事トシテ
爲シ得ザルコトハナイ、旅客ヲ扱フコトデ
アルカラ宿屋モ必要デアラウ、或ハ風呂屋
モ必要デアラウ、乘客ニ對シテ本屋モ必要
デアラウ、如何ナル事デモ鐵道營業ニ連絡
ノナイコトハナイ、斯樣ニ廣義ニ解スルト
云フコトハ所謂特別會計法ノ精神ニ鑑ミ
テ違ノテ居ルト思フ、若シ之ヲヤルナラバ
適當ニ改正ヲ加ヘナケレバナラヌ、私共ハ
今日出テ居ル所ノ自動車交通事業法案ナル
モノヲ出スカ出サヌカト云フコトヲ委員
會デ聽イタ時ニ、近イ中ニ出スト斯ウ云フ
事デアリマシタカラ、恐ラク此事業法ノ中
ニ國ノ事業ニ關スルモノモ一定ノ事業計
畫、卽チ此法制ヲ定メラレルモノデアルト
思ッテ居ッタガ、是ハ何等ナイ、ヤハリ從來
通リ勝手氣儘ニヤッテ行ク、斯ウ云フコト
ニナッテ居ル、是ハ果シテ差支ナイコトデア
ルカドウカ、殊ニ(「質間ヲシロ」ト呼フ者ア
リ)質間デアリマス-殊ニ鐵相ハ此連絡、
附屬ノ事業、之ニ最モ力ヲ入レテ居ラレマ
スガ、若シ先程申シマスル通リ、岡崎ト多
治見聞ガ連絡ト云フナラバ、成程岡崎ニモ
鐵道ノ驛ガアル、多治見ニモ驛ガアルカラ、
三十五哩カラ離レテ居ルケレドモ、是モ亦.
連絡デアルト言ヘバ多少理窟モアルカモ知
レヌ、併シ最近聞ク所ニ依リマスト上半
田川口カラ笠原ニ至ル所ノ約三哩四バカリ
ノ間、ヤハリ鐵道省ノ「バス」ヲ動カサウト
云フコトニナッテ、玆ニ大ナル黨勢擴張ヲ
ヤッテ居ル其餌ノ爲ニ道路ノ改修ヲ地方
デ引受ケテ、今其負擔ニ非常ニ苦ンデ居ル、
之ニ關係サレタ方モ此處ニ居ラレルガ、併
シ是ガ何處ニ鐵道ニ關係ガアルデアラウ
カ、「バス」ヲ運轉シテ居ル土地カラ、何等
鐵道ト關係ナイ地方へ支線ヲ出シテ行クト
云フコトハ、是ハ何ノ關係ガアルカ、其點
ニ付テ鐵相ノ明快ナル御答辯ヲ煩シタイ
ソレカラ次ニ鐵道省ノ自動車ノ營業ノ爲
ニ、民間ノ營業者ガ非常ナル壓迫ヲ加ヘラ
レ、不況ニ沈淪シテ居リマス事情ヲ一應申
上ゲテ、之ニ對スル政府ノ所見ヲ伺ッテ置キ
タイノデアリマス、最近現內閣ヲ支持シテ居
ル「名古屋新聞」ニ記載サレテ居ルコトヲ、
一寸玆ニ御紹介シテ見マス「省營「バス」ニ
押サレル民營-何ントカ補償ヲト當局へ
陳情、岡多線省營「バス」ノ開業デ、從來ノ
尾三、大榮、品野、長繩ノ四民營「バス」ハ非
常ナ打擊ヲ受ケ、全休若クハ半体狀態ニ陷ッ
テヰルノデ、愛知縣自動車業組合聯合會デ
ハ、鐵道省ニ於テ慰藉的ナ意味デ、何等カ
ノ補償方法ヲ講ジラレタキ旨、四日江木鐵
相ニ陳情書ヲ提出シタガ、コレト同時ニ名
古屋市ヲ除タ愛知縣下ノ郡部ニ於ケル乗合
自動車全體」-元へ「乘合自動車用車體全
長ハ······」(發言スル者アリ)多少讀違ヒ位
アルヨ、ソンナコトヲ言ッタラ駄目ダヨ、モ
ウ少シ雅量ヲ示サヌカイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02019310228&spkNum=5
-
006・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 私語ヲ禁ジマ
ス靜肅ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02019310228&spkNum=6
-
007・丹下茂十郎
○丹下茂十郞君(續) 從來特別ノ制限ヲ加
ヘラレテヰルガ、省營「バス」ニ限ッテ除外例
ヲ認メ、大型車ヲ運轉シテヰルノデ、定期會
社ニモ同樣ノ大キサ迄、民營「バス」ニモ省營
「バス」同樣、大型車ノ運轉ヲ許サレタイ」
云々ト、斯ウアル是デアリマス、此點ヲ
私ハ一應申上ゲテ見タイト思フ、民間ノ營
業者ハ是ハ自由營業デハアリマセヌ、從
來官ノ免許ヲ受ケテヤッテ居ル、所謂特權ヲ
持ッタ所ノ營業デアル、而モ其營業ニ對シ
テハ距離ノ關係、所謂區間ヲ區切ラレ、又
車體ノ大キサヲ制限サレ、賃銀モ制限サレ
テ、其嚴重ナル監督ノ下ニ、而モ多額ノ稅
金ヲ拂ッテ營業ヲヤッテ居ル、殊ニ御承知ノ
通リ斯樣ニ特權ノ事業デアルガ故ニ、此權
利ノ賣買ト云フコトニナルト云フト、中々
多額ノ資本ヲ要スル、或ル電車ノ會社ガ此
民間ノ乘合「バス」ヲ買收スル爲ニ、數万金ヲ
投ジテ買收シタヤウナ實例ガ澤山アル、左樣
ニ資本モ投ジテヤッテ居ル、然ルニ近時此財
界ノ不況-是ハ何時モ言フコトデアルカ
ラ私ハ申シマセヌ、現內閣ノ失政ト云フヤ
ウナコトハ言ハヌデモ、分ッテ居ルデアリマ
セウカラ申シマセヌ、此不況ノ時代ニ、只
サヘ四苦八苦デ經營ヲ續ケテ居ル時ニ、鐵
道省ハ全ク無人ノ野ヲ行クガ如キ有樣デ
ヤッテ行ク、殆ド區間ニ付テモ何等ノ制限モ
カイ、車體ノ大キサニ付テモ何等ノ制限ヲ
加ヘテナイ、アノ二間アルカナイカノヤウ
ナ道路ニ、二十人乘ノ太キナ「バス」ヲ勝手
放題ニ運轉シテ居ル、斯ウ云フ風デアリマ
スカラ、民間ノ營業者ガ打撃ヲ被ムルコト
ハ當然デアル今假ニ民間ノ經營者ト鐵道
ノ經營トヲ比較シテ見マシテモ民間ノ經
營者ニ對シテハ、區間ノ距離ガ極メテ短距
離ニ制限サレテ居ル、車體ガ極メテ小型ニ
制限サレテ居ル、是ハ當然デアル、地方ノ
交通不便ナ道路ニ於テ、狹隘ナル道路ニ於
テ、此乘合自動車ヲ動カスコトデアルカラ
シテ交通保全ノ上ニ於テ當然デアル、而
モ一面ニハ過重ノ稅金ヲ負擔シテ居ル而
モ民間ノ經營者ハ資本ノ乏シイモノデアル
ニモ拘ラズ、固定資本ニハ少カラヌ資本ヲ入
レテ居ル、所ガ鐵道省ノ方ハドウデアルカ、
距離ニ於テハ無制限デアル區間ト云フモ
ノモ無制限デアル、車體モ無制限デアル、
稅金モ掛ラナイ、資本モ豐富ナル國ノ力ヲ
以テヤッテ居ル、斯樣ナコトデアリマスカラ、
此民間ノ經營ハ到底成立タナイコトハ、是
ハ一目臆然デアル併ナガラ(「止メタラド
ウダ」ト呼フ者アリ)止メタラドウデアルト
云フアナタ方ハ、サウ云フヤウナコトヲ云ウ
テハイケナイ、是迄相當ノ資本ヲ掛ケ、地
方ノ利便ヲ圖ノテ營業ヲ繼續シテ居ル、而モ
是ハ特別ニ許可ヲ與ヘテ居ル、勝手ニヤッテ
居ル仕事ヂヤナイ、其場合ニ於テ鐵道省ハヽ
是等ノ旣設ノ會社ニ對シテ何等カノ補償ヲ
與ヘテヤル、是ガ私ハ當然ノコトデアルト
思フガ、之ニ對シテ曩ニ豫算委員會ニ於テ、
江本鐵相ハ考慮シテ居ルト云フコトデア
ル其考慮ハ如何ナル程度ニ考慮シテ居ラ
レルカト云フコトヲ、玆ニ御尋ネシテ置タ
ノデアル
ソレカラ次ニ御尋シテ置タコトハ地方
ノ支辨ノ道路ニ對シテ、鐵道省ガ自ラ費用
ヲ投ジテ改修修築ヲ致シテ行クト云フコト
か、是ハ何ニ依テ行クモノデアルカ、見たい
或ハ鐵道大臣ハ、鐵道省ハ其營業ノ爲ニ受
益者デアルカラシテ、其受益ニ對スル所ノ
一定ノ負擔ヲスルモノデアルト云フコト
ノ遁辭ヲ設ケラレテ居ルカモ知レマセヌ
ガ、實際ニ於テハサウデナイ、鐵道省自ラ
ガ地方ノ道路ニ對シテ修築保存ノ費用ヲ掛
ケテ自ラ事業ヲヤッテ居ル、此點ニ付テ若シ
地方費ノ、所謂受益者ノ負擔トシテ地方費
ニ提出致シテ居ルモノデアルナラバ內務
大臣ハ此地方ノ財政ノ上ニ於テ、如何樣ニ
之ヲ取扱ハレテ居ルカト云フコトヲ御尋シ
タイ
尙ホ地方ノ道路保全ト云フコトニ付テ、
只今申上ゲルヤウニ、民間ノ會社ニ對シテ
ハ制限ヲ加ヘテ居ルガ、鐵道省ノ營業ニ對
シテハ何等ノ制限ヲ加ヘナイト云フコト
ハ此道路保全ノ上ニ於テ何等差支ナイト
認メテ居ルカドウカ是ハ內務大臣カラ明
快ナル御答辯ヲ願ヒタイノデアリマス
更ニ民間經營ノ「バス」ニ對シテノ許可ノ
方針デアルガ、是ガ極メテ黨勢擴張ノ資ニ
利用サレテ居ル、例ヘバ多少政友系統ニ屬
スベキ者ガ出願スルト、其書面ニケチヲ付
ケテ却下シ、民政黨ノ人ガ出願スルト、ツ
レニ許可ヲ與ヘテ居ルト云フ實例ガ澤山ア
ル斯樣ナ狀態デ取扱ハレテ居ルガ、地方
ノ許可ニ對スル所ノ方針、之ニ付テ監督シ
テ居ル內務大臣ノ所見ヲ伺ヲテ置キタイ
更ニ最後ニ一言致シタイノハ此自動車
ノ經營ヲ鐵道省ガヤルト云フコトデ最優
ニ御尋シタ江木サンノ所謂鐵道網ナルモノ
ハ是ハ甚ダ黨勢擴張ニ利用サレルト云フ
ユトヲ虞レルノデアル、殊ニ畫ニ描イタ餅
ノヤウナコトヲ言ッテ居ル、例ヘバ靑森ト何
處カノ道ガアリマス毒森カラ蟹田ト云フ
處ニ至ル路線ニ、自動車ヲ運轉スル計畫ガ
立ッテ居ルト云フコトデアル、併シアノ地方
ハ冬ニナルト自動車ハ動カナイガ一〇〇、
ウシテヤル積リデアルカ、是ハ一時ノ宣傳
ダケデアルカ、或ハ冬ニナッタラ「ガソリン」
權デモ造クテヤル積リデアルカ、是等ノ點ニ
付テモ一ツ御尋シテ置キタイ、本月二十七
日時事新報デ見マスト、省營「バス」ガ四月
ニ一線殖エル、所ガ貨物ガ振ハナイ、貨物
ガ甚ダ振ハナイト云フノデ、盛ニ地方ニ於
テハ貨物ノ蒐集策ヲ議ジテ居ルト云フ、ソ
レガ爲ニ貨物自動車ノ營業者ハ又一層打
擊ヲ被シテ居ルコトヲ頻々ト申傳ヘテ來ル
以上申上ゲタ事柄ニ付テ明快ナル御答辯ヲ
願ヒ且ツ民間「バス」ノ打擊ヲ受ケタ者ニ
對シテ、如何樣ニ取扱フカト云フコトニ付
テ、私ハハッキリ當席ニ於テ承ッテ置キタイ
ト思フノデアリマス
〔國務大臣江木翼君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02019310228&spkNum=7
-
008・江木翼
○國務大臣(江木翼君) 只今丹下君ヨリ色
色ナ條項ニ付テ御尋ガゴザイマシタガ
一順序ヲ立テズニ大體ノ御答ヲ致シテ置
キタイト思ヒマス
第一ニ、鐵道省ニ於テ自動車網ヲ編成ヲ
致シテ居ルト云フコトハ御話ノ通リ事實
デアリマス是ハ過日モ豫算委員會ニ於キ
マシテ申上ゲマスル如ク、鐵道省內ノ事務
官、竝ニ內務省ナリ遞信省ニ於キマスル所
ノ事務官ヲ集メマシテ、純然タル事務的見
地カラ見マシテ、輸送ノ關係ト云フモノヲ
十分ニ調ベ此方面ニハ國營トシテ自動車
ヲ運行セシメタナラバ適當デアラウト云フ
案ヲ鐵道省ニ於キマシテ得マシタ次第ナ
ノデアリマス、是一鐵道敷設法ノ如ク
法律ヲ以テ規定シタモノデモナク、又鐵
道省令ヲ以テ規定シタルモノデモナク、唯
鐵道省ニ於テ是カラ先ニ自動車ヲ運行セン
トスル參考ニ此案ヲ拵ヘタニ過ギナイノ
デアリマス、只今申上ゲマシタ如ク、純然
タル事務的見地カラ此案ヲ作ッタモノデゴ
ザイマスルカラ、固ヨリ黨勢擴張デアリマ
スルトカ政黨ノ關係デアルトカ云フヤウ
ナコトハ、全然考慮ニ入レテナイノデアリ
マス(拍手)左樣ナ考ハ私ニ於テ持ッテ居リ
マセヌバカリデナク、此自動車交通網ヲ拵
ヘマシタ所ノ事務官連ニ於キマシテモ、固
ヨリ左樣ナ考ヲ以テ此案ヲ編成シテ居ラヌ
ト云フコトハ極メテ顯著ナル事柄デアル
ト思フノデアリマス(拍手)
ソレカラ豫定線ト自動車トノ關係ニ付
テ色々ト御尋ガアッタノデアリマスガ、現
ニ鐵道省デ唯一ノ線トシテヤッテ居リマス
ル所ノ岡崎多治見ノ如キハ、所謂豫定線ニ
該當スルモノデアリマスルガ、豫定線デア
ル其トコロニ自動車ヲ運行スルカラト申シ
マシテ、此豫定線ト云フモノヲ、何時迄モ
鐵道ヲ敷設シナイト云フ趣旨デハ毛頭ナイ
ノデアリマス、輸送數量ニ於テ相當ナル增
加ヲ見、鐵道ヲ運行セシムル方ガ經濟的デ
アリ、地方ノ產業ノ爲ニモ必要デアルト認
メマシタ場合ニ於キマシテハ固ヨリ鐵道
ヲ敷設スルノニ何等吝カデナイノデアリマ
ス、從ヒマシテ此線ヲ、何レノ議會デアリ
マシタカ、憲政會內閣ノ時ニ此豫定線ニ編
入致シマシタ目的ト云フモノハ、何レノ時
代ニ於テカ必ズ達成セラレルモノデアル
ト、私ハ信ジテ居ルノデアリマス
自動車運行ト云フコトヽ會計法規トノ關
係ニ付テ、色々例ヲ引イテ御述ニナッタノ
デアリマスルガ、是ハ丹下君能ク御考究ニ
ナッテ居リマスルガ如ク、所謂附帶事業、附
屬ノ事業トシテ之ヲ鐵道省ニ於テ營ムコト
ヲ法律上許サレテ居ルノデアリマス、現
ニ附帶ノ事業トシテヤッテ居リマスルモノ
ノ中ニハ船舶「ホテル」或ハ自動車、而モ
此船舶ノ如キニ於キマシテハ、中々哩數ニ
於キマシテハ長キニ亙ル所ノ運輸ヲヤッテ
居ルノデアリマス、例ヘバ關釜連絡ノ如キ
ニ至リマシテハ、百哩以上ニ亙ッテ居ルモノ
モアルノデアリマス、或ハ樺太稚內ノ間ニ
於ケルモノモ、相當長イノデアリマス斯
樣ニ致シマスルコトハ、蓋シ國家ノ交通ヲ
增進發達セシムル上ニ於テ、極メテ必要ナ
ルコトデアルト思フノデアリマス(拍手)而
モ自動車ノ事業ハヤハリ性質ヲ同ウスル
輸送事業ナノデアル、運輸ノ事業ナノデア
リマス蓋シ鐵道省ガ本來營ンデ居リマス
ル所ノ運輸ノ事業ノ性質ニ於テ、何等異"テ
居ラナイ所ノ旅客、及ビ貨物ノ輸送ヲヤル
自動車ノ營業デゴザイマスカラ、私ハ鐵道
特別會計ノ趣旨カラ考ヘマシテ、之ヲ附帶
事業トスルニ於テ、何等ノ差支ガナイト云
フコトヲ確信ヲ致シテ居ルノデアリマス
(拍手)
ソレカラ、岡崎多治見ノ間ニ國營自動車
ノ運行ヲ開始シタノデアルガ、是ガ爲ニ民
間事業者ニ或ハ廢業スルモノガアルトカ、
或ハ廢業ニ垂ミトスル者ガアルガ、之ニ對
シテ國有鐵道ニ於テハ如何ニ取扱フ積リ
デアルカ、是ハ餘程重要ナル問題デアルト
思フノデアリマス、恐クハ御質問ニナリマ
シタ焦點ガ、此點ニアルノデハナイカト察
スルノデアリマスガ、今日御承知ノ通リ國
有鐵道ガ自動車ノ營業ヲ開始致シマシテ
是ガ爲ニ民間事業者ヲ壓迫スルト云フ場合
ニ於テ、之ヲ補償スル、或ハ損害ノ賠償ヲ
スルト云フヤウナ、法律上ノ規定ハ何等無
イノデアリマス、又之ニ關シテ法律上ノ規
定ヲ設ケルト云フコトモ、中々ムヅカシイ
コトト思フノデアリマス、今日ニ於キマシ
テハ差當リ民間事業者ガ廢業ヲ致ス、國
有自動車ト競爭シテ廢業スルヤウナ場合ニ
限リマシテハ、之ニ依ッテ鐵道省ハ運輸事業
ニ於テ相當ノ利益ヲ得テ居ルノデゴザイマ
スノデ、其利益ヲ得テ居ル範圍內ニ於テ、
相當ノ考慮ヲ致シテ、適當ノ處置ヲ講ジタ
イ、又講ズル決意ヲ持ノテ居ルト云フコト
ヲ申上ゲテ、少シモ差支ナイノデアリマ
ス
ソレカラ道路ノ費用ヲ負擔スルノハ、鐵
道トシテハ面白クナイト云フヤウナ御問モ
アリマシタ、苟モ自動車ヲ運行致シマス以
上、一般ノ交通ニ相當寄與スル所ガナケレ
バナラヌト思フノデアリマス、然ル以上ハ
相當一般ガ之ニ依シテ不便ヲ感ジナイヤウ
二、又愉快ニ旅行ガ出來ルヤウナ設備ヲ致
スト云フコトハ蓋シ當然考ヘナケレバナ
ラヌコトデアリマス、左樣ナ場合ニ置キマ
シテハ、或ハ停車場ヲ設ケル必要モアリマ
セウ、或ハ又道路ヲ擴築スル必要モアリマ
七じ、或ハ橋梁ヲ强クスル必要モアリマセ
ウ、左樣ナ場合ニ於キマシテ、道路ノ管理
者ト相談ヲ致シマシテ費用ノ幾分ヲ負擔
スルコトハ管理者ノ承認ヲ得テ、道路法
ノ命ズル所ニ從ヒマシテ鐵道自ラ道路ノ
修繕ヲヤルコトハ、蓋シ當然シナケレバナ
ラヌコトカト考ヘテ居ルノデアリマス
又民間ノ自動車ニ對スル免許ニ付テ、現
內閣ガ爲ス所ニ於テ、依估ノ沙汰ガアリハ
シナイカト云フヤウナ御疑ガアッタヤウデ
ゴザイマスガ、私ガ關シマスル限リニ於テ
ハ斷ジテ左樣ナコトハナイト云フコトヲ
申上ゲテ置クノデアリマス(拍手)尙ホ彼此
レト御質問ガアリマシタガ、他ノ機會ニ於
テ復タ申上ゲルコトニ致シマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02019310228&spkNum=8
-
009・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 安達內務大臣
〔國務大臣安達謙藏君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02019310228&spkNum=9
-
010・安達謙藏
○國務大臣(安達謙藏君) 只今鐵道大臣ノ
答デ大體盡シテ居ルト思ヒマスケレドモ、
內務大臣ト云フ名指シガアリマシタカラ、
重複ヲ厭ハズ私モ簡單ニ御答致シマス、共
御尋ノ私ニ關スルコトハ地方費支辨ノ道
路橋梁等ニ付テ、其經費ノ分擔等ニ付テ御
尋ニナリマシタヤウデアリマスガ、省營ノ
自動車事業モ、原則ト致シマシテハ、ヤハ
リ自動車ノ取締規則其他ノ保全規則ニ準據
スベキモノデアリマシテ、道路ノ修繕ニ關
スル工事又ハ道路ノ維持ニ要スル費用ヲ、
鐵道省ガ其處デ事業ヲ經營致シマスレバ、
同省ガ利益ヲ受ケル程度ニ於テ、其全部又
ハ一部ヲ鐵道省ニ負擔セシムルコトヲ得ル
規定ニナッテ居リマス
ソレカラ民間「バス」ノコトモ、私ニ御尋
ニナリマシタケレドモ、只今鐵道大臣ノ答
ヘラレマシク通リ、是ハ成程地方廳ニ於テ
許可致シテ居リマスケレドモ、主トシテ重
要ナルコトハ、鐵道大臣ノ認可ヲ受ケテ許
可致シテ居リマス、現內閣ニナリマシテカ
ラ、此地方民間「バス」ノ許可ノ弊害ハ、大
ニ除去セラレタル積リデアリマス(拍手)
〔丹下茂十郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02019310228&spkNum=10
-
011・丹下茂十郎
○丹下茂十郞君 只今內務大臣ノ御答辯
ハ私ノ質問ニ對シテ要點ニ觸レテ居ラヌ、
ソレハ此道路ノ交通保全ノ上カラ、內務行
政ノ上ニ於テ取締ヲ致シテ居ル、共取締ノ
結果ト致シテ、民間ノ自動車營業者ニ對シ
テハ車體ノ大キサ或ハ區間ト云フヤウナ
コトノ制限ヲ加ヘテ居ル、然ルニ鐵道省ガ
白ラ經營スルモノニ付テハ是等ノ制限ガ
何モナイ、先程モ例ヲ擧ゲテ申シマシタガ、
二間足ラズノ道路ヲ通ホス場合ニ、鐵道ノ
大キナ二十人乘ノ自動車ガ通ル爲ニ、他ノ
人馬ノ交通ニ非常ナル障碍ヲ與ヘテ居ル、
道路保全ノ上ニ非常ナル支障ヲ來シテ居ル
ガ、ソレハ何等差支ナイト認メテ居ルカ
民間ノ自動車デアッテモ、或ハ鐵道省ノ自動
車デアッテモ、只今ノ御話カラ言ヘバ、道路
保全ニ關スル所ノ規則ハ遵守シテ居ル筈デ
アルト云フ御話デアルガ、決シテ遵守シテ
居ラヌ、勝手放題ナコトヲヤッテ居ル、ソレ
ヲ內務大臣ハ何ト心得テ居ルカ、殊ニ此自
動車ノ問題ニ付テハ第一鐵道省ガ管理シ
テ居ルケレドモ、道路保全ト云フ交通保全
ノ上ニ於テ、內務大臣ハ必ズ關係シテ居ル
コトデアルカラ、其點ニ於テ內務大臣ハ無
關心デ居ルカ、或ハ御承知ガナイノデアル
カ、此點ニ付テハッキリシク御答辯ガ願ヒ
タイ
ソレカラ鐵道大臣ハ關門ノ連絡ガ百哩カ
ラアル、是ハ理窟デアリマス、是ハ百哩ア
ラウガ二百哩アラウガ、海ノ上ヲ鐵道ヲ敷
イテ行クコトハ中々金ガ掛ルカラ、船デ連
絡ヲ取ルト云フコトハ営四然デアリマス所
ガ今ノ私ノ申上ゲタノハ是ハ鐵道ノ連絡
ト言ハレナイ、マア假ニ岡崎多治見間ノ連
絡ガアルト言ッテモ、其鐵道ノ驛ニ何等ノ關
係ガナイ處ニ、今現ニ鐵道ノ政府委員室デ
聞イテ來タガ、彼ノ俗ニ市ノ倉ト云ッテ居リ
マスガ、上半田川口カラ笠原ニ至ル道路ト
云フモノハ何等鐵道ノ驛ニ關係ガナイト
云フコトデアリマス其處ヲヤッテヤルト
云フコトヲ頻ニ宣傳セラレテ、地方ノ者ハ
多額ノ負擔ヲ爲シテ道路ノ修繕ヲヤッテ、ド
ウシテモ此「バス」ヲ動カサナケレバナラヌ
御義理ガ出來テ居ル、是ガ何等ノ連絡ガア
ルカ、何ノ附帶事業デアルカト云フコトヲ
御尋シタノデス
〔國務大臣安達謙藏君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02019310228&spkNum=11
-
012・安達謙藏
○國務大臣(安達謙藏君) 先ニ御答シタ中
ニ含マレテ居リマシタガ、此道路ノ保全ニ付
キマシテハ鐵道省ノ經營スル自動車事業
ニ對シマシテモ、自動車取締法其他ノ保全
規則ニ準據シテ居リマスト云フコトヲ申上
ゲテ置キマス
〔國務大臣江木翼君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02019310228&spkNum=12
-
013・江木翼
○國務大臣(江木翼君) 私ハ一向地方ヲ承
知シナカッタモノデアリマスルカラ、前ノ御
尋ノ中ニアリマシタ、上半田川口カラ笠原
間ノ自動車運行ノ問題デアリマスルガ、之
ニ付キマシテハ成程地方ノ請願ハアリマ
ス、今聞イタノデアリマスルガ、併シ何等
決定シテ居ル所ハアリマセヌ、ソレダケ申
上ゲテ置キマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02019310228&spkNum=13
-
014・丹下茂十郎
○丹下茂十郞君 簡單デスカラ此處カラ一
言致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02019310228&spkNum=14
-
015・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 宜シウゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02019310228&spkNum=15
-
016・丹下茂十郎
○丹下茂十郞君 ドウモ今ノ內務大臣ノ御
答辯(
〔「登壇々々」ト呼ヒ、發言スル者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02019310228&spkNum=16
-
017・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 靜肅ニ願ヒマス、
許可致シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02019310228&spkNum=17
-
018・丹下茂十郎
○丹下茂十郞君(續) 道路保全ニ關スル所
ノ規定ニ準據シテ居ルト云フコトヲ言ハレ
タ私ハ現ニ實際ニ見テ來テ知ッテ居ル、ア
ノ二十人乘ノ大キナ自動車ハ、民間ニハ許
シテ居リマセヌ、現ニ名古屋市ガアノ二十
間道路ニ於テ動カシテ居ル所ノ自動車ニ對
シテモ、縣ハ僅ニ二尺違テテ居ル爲ニ切捨
ヲサシテ居ル、殊ニアノ高藏寺瀨戶間ノ、
アノ嶮シイ所ノ道路ヲ行クニ、アノ大キナ
自動車ヲ動カスコトハ危險デアル、其自動
車其モノガ危險デアリ、同時ニ交通シテ居
ル所ノ人馬ノ危險ト云フモノハ夥シイモノ
デアル、又現ニ二十名モ乘レル大キナ自動
車ノ通ヲテ居ルコトヲ私ハ見テ居ル、ソレ
デモ道路保全ノ規定ニ準據シテ居ルト云フ
ノハ餘リニ黑キヲ白キト云フ詭辯デア
ル、モウ少シ親切ナ御答辯ヲ願ヒタイ、左
樣ナ詭辯ハイケマセヌ
〔「議長自分ノ席デ何デ質問ヲ許スノ
カ」ト呼ヒ其他發言スル者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02019310228&spkNum=18
-
019・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 靜肅ニ願ヒマス
〔國務大臣安達謙藏君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02019310228&spkNum=19
-
020・安達謙藏
○國務大臣(安達謙藏君) 更ニ御答致シテ
置キマス決シテ不親切ナル御答ヲ致シタ
ノデハアリマセヌ、大體ニ於テ自動車取締
令ニ準據致シテ居リマス今御尋ノヤウナ
狹イ所ハ特ニ命ジマシテ車ノ避ケ得ラ
レルヤウニ、待避所ヲ拵ヘテ置イテアリマ
ス、左樣御承知ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02019310228&spkNum=20
-
021・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 質疑ハ終リマシ
タ-日程第二、右議案ノ審査ヲ付託スベ
キ委員ノ選擧ヲ議題ト致シマス
第二右議案ノ番査ヲ付託スヘキ委員
ノ選擧発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02019310228&spkNum=21
-
022・作田高太郎
○作田高太郞君 本案ハ議長指名十八名ノ
委員ニ付託セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02019310228&spkNum=22
-
023・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 作田君ノ動議ニ御
異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02019310228&spkNum=23
-
024・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 御異議ナシト認メ
さい、仍テ動議ノ如ク決シマシタ、日程第
三及第四ハ同種ノ議案ナルニ依リ、一括議
題トナスニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02019310228&spkNum=24
-
025・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 御異議ナシト認メ
マス
日程第三、輸出組合法中改正法律案、日
程第四、重要輸出品工業組合法中改正法律
案ノ兩案ヲ一括シテ、第一讀會ヲ開キマ
ス-俵商工大臣
第三輸出組合法中改正法律案(政府
提出)第一讀會
輸出組合法中改正法律案
輸出組合法中左ノ通改正ス
第三條輸出組合ハ左ノ事業ヲ行フコト
ヲ得
組合員ハ取扱商品ノ委託輸出、輸
出ノ斡旋、保管、選別、包裝、荷造
其ノ他組合員ノ營業ニ關スル共同施
設
二組合員ノ取扱商品ノ檢査其ノ他必
要ナル取締又ハ事業經營ニ對スル制
限
三海外市場ノ調査、新販路ノ開拓、
其ノ他組合ノ目的ヲ達スルニ必要ナ
ル施設
組合ハ前項ノ事業ノ外組合員ノ取扱商
品ノ買取輸出、組合員ニ對シ其ノ營業
ニ必要ナル資金ノ貸付又ハ組合員ノ貯
金ノ受入ヲ併セ行フコトヲ得
第一項ニ揭ゲタル組合ノ施設ハ組合員
ノ利用ニ支障ナキ場合ニ限リ組合員ニ
非ザル者ヲシテ命令ノ定ムル所ニ依リ
之ヲ利用セシムルコトヲ得
第七條ノ二輸出組合定款ノ定ムル所ニ
依リ組合員ノ事業經營ニ對スル制限ヲ
行フ場合ニ於テハ之ニ關スル規程ヲ定
メ主務大臣ノ認可ヲ受クベシ其ノ規程
ヲ變更セントスル場合亦同ジ
第八條及第九條中「營業上ノ弊害ヲ矯正
スル爲」ヲ「營業上ノ弊害ヲ豫防シ又ハ矯
正スル爲」ニ改ム
第九條ノ二同一種類ノ重要輸出品ノ輸
出ヲ業トスル者ヲ以テ設立セル輸出組
合又ハ其ノ組合員ハ其ノ營業ニ關スル
重要物產同業組合法ニ依ル同業組合ニ
加入セズ又ハ之ヨリ脫退スルコトヲ得
第十六條第二項中第四號ヲ第五號トシ第
五號ヲ第六號トシ第三號ノ次ニ左ノ一號
ヲ加フ
四第十八條ノ二ノ組合ニ在リテハ各
組合員ノ氏名又ハ名稱、住所及保證
金額
第十八條ノ二輸出組合ハ定款ノ定ムル
所ニ依リ組合財產ヲ以テ其ノ債務ヲ完
濟スルコト能ハザル場合ニ於テ組合員
ノ全員ガ其ノ出資額ノ外一定ノ金額ヲ
限度トシテ責任ヲ負擔スルモノト爲ス
コトヲ得
第二十條第三項中「理事」ヲ「理事又ハ監
事」ニ改ム
第二十一條中「十分ノ一」ヲ「十分ノ三」ニ
改ム
第二十八條ノ二組合ノ事業若ハ組合財
產ノ狀況ニ依リ其ノ事業ノ繼續ヲ困難
ナリト認ムルトキ又ハ組合ノ行爲ガ法
令、定款若ハ主務大臣ノ命令ニ違反シ
タルトキ若ハ公益ヲ害スル虞アルトキ
ハ主務大臣ハ左ノ處分ヲ爲スコトヲ得
總會ノ決議ノ取消
二役員又ハ〓算人ノ解任
三組合ノ事業ノ停止
四組合ノ解散
第二十八條ノ三輸出組合聯合會ハ所屬
ノ輸出組合及輸出組合聯合會ノ共同ノ
目的ヲ達スル爲之ヲ設立スルコトヲ得
聯合會ハ輸出組合又ハ輸出組合聯合會
ヲ以テ之ヲ組織ス
聯合會ハ法人トス
第二十八條ノ四輸出組合聯合會ヲ設立
セントスルトキハ命令ノ定ムル所ニ依
リ所屬ノ各組合及聯合會ニ於テ選任シ
タル創立委員ヲ以テ創立委員會ヲ開キ
定款共ノ他必要ナル事項ヲ定メ役員ヲ
選任シ主務大臣ノ認可ヲ受クベシ
第二十八條ノ五創立委員會ニ於ケル議
決及役員ノ選任ハ創立委員總數ノ三分
ノ二以上ノ同意ヲ以テ之ヲ爲ス
第十四條ノ規定ハ創立委員ニ付之ヲ準
用ス
第二十八條ノ六輸出組合聯合會ノ理事
及監事ハ總會ニ於テ所屬ノ組合及聯合
會ノ理事又ハ監事ノ中ヨリ之ヲ選任ス
但シ聯合會設立當時ノ理事及監事ハ創
立委員會ニ於テ之ヲ選任スベシ
特別ノ事由アルトキハ理事又ハ監事ハ
所屬ノ組合及聯合會ノ理事又ハ監事ニ
非ザル者ヨリ之ヲ選任スルコトヲ得此
ノ場合ニ於テハ其ノ選任ニ付主務大臣
ノ認可ヲ受クベシ
第二十八條ノ七輸出組合ニ關スル規定
ハ第三十三條ノ規定ニ依リ準用シタル
產業組合法第三十八條ノ二ノ規定ヲ除
クノ外輸出組合聯合會ニ付之ヲ準用ス
但シ第三條中組合員トアルハ所屬ノ組
合、聯合會及組合員トス
第三十條第一項但書中「出資一口ノ金額
減少」ヲ「出資一口ノ金額ノ減少若ハ第十
八條ノ二ノ規定ニ依ル組合員ノ責任ノ減
少」ニ、同條第三項中「出資一口ノ金額減
少」ヲ「出資一口ノ金額ノ減少又ハ第十八
條ノ二ノ規定ニ依ル組合員ノ責任ノ減少」
三人
第三十三條中「第百三十八條ノ二」ヲ「第
百三十八條ノ三」ニ、「第三十九條乃至第
四十一條、第四十三條乃至第四十六條」
ヲ「第三十八條ノ二乃至第四十六條」
ニ、「第五十一條乃至第五十七條、第六十
條乃至第六十一條」ヲ「第五十一條乃至第
五十八條、第六十條、第六十條ノ二」ニ、
「第六十七條」ヲ「第六十七條、第六十八
條」ニ、「第七十四條ノ二第一項」ヲ「第七十
四條ノ二第一項、第七十七條第三項、第
七十八條」ニ改ム
第三十五條第十號ヲ左ノ如ク改ム
十本法ニ違反シテ出資一口ノ金額ヲ
減少シ、第十八條ノ二ノ規定ニ依ル
組合員ク責任ヲ減少シ、第三十三條
ノ規定ニ依リ準用シタル產業組合法
第五十八條ノ責任期間ノ短縮ヲ爲シ
又ハ組合ノ合併ヲ爲シタルトキ
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
印紙稅法及登錄稅法中輸出組合トアルハ
輸出組合又ハ輸出組合聯合會トス
第四重要輸出品工業組合法中改正法
律案(政府提出)第一讀會
重要輸出品工業組合法中改正法律案
重要輸出品工業組合法中左ノ通改正ス
「重要輸出品工業組合法」ヲ「工業組合法」
三菱八人
第一條中「重要輸出品」ヲ「重要工產品」ニ
改ム
第三條工業組合ハ左ノ事業ヲ行フコト
ヲ得
-組合員ノ製品、其ノ原料若ハ材料
又ハ製造若ハ加工ノ設備ニ對スル檢
査其ノ他必要ナル取締又ハ事業經營
ニ對スル制限
二組合員ノ製品ノ加工又ハ販賣、組
合員ノ營業ニ必要ナル物ノ供給、共
同設備ノ設置其ノ他組合員ノ營業ニ
關スル共同施設
三組合員ノ營業ニ關スル指導、〓究、
調査其ノ他組合ノ目的ヲ達スルニ必
要ナル施設
組合ハ前項ノ事業ノ外組合員ニ對シ其
ノ營業ニ必要ナル資金ノ貸付又ハ組合
員ノ貯金ノ受入ヲ併セ行フコトヲ得
第一項ニ揭ゲタル組合ノ施設ハ組合員
ノ利用ニ支障ヲキ場合ニ限リ組合員ニ
非ザル者ヲシテ命令ノ定ムル所ニ依リ
之ヲ利用セシムルコトヲ得
第六條ノ二工業組合定款ノ定ムル所ニ
依リ組合員ノ事業經營ニ對スル制限ヲ
行フ場合ニ於テハ之ニ關スル規程ヲ定
メ行政官廳ノ認可ヲ受クベシ其ヲ規程
ヲ變更セントスル場合亦同ジ
第七條及第八條中「營業土ノ弊害ヲ矯正
スル爲」ヲ「營業上ノ弊害ヲ豫防シ又ハ矯
正スル爲」ニ改ム
第十六條第二項中第四號ヲ第五號トシ第
五號ヲ第六號トシ第三號ノ次ニ左ノ一號
ヲ加フ
四第十八條ノ二ノ組合ニ在リテハ各
組合員ノ氏名又ハ名稱、住所及保證
金額
第卄八條ノ二工業組合ハ定款ノ定ムル
所ニ依リ組合財產ヲ以テ其ノ債務ヲ完
濟スルコト能ハザル場合ニ於テ組合員
ノ全員ガ其ノ出資額ノ外一定ノ金額ヲ
限度トシテ責任ヲ負擔スルモノト爲ス
コトヲ得
第二十條第三項中「理事」ヲ「理事又ハ監
事」ニ改ム
第二十一條中「十分ノ一」ヲ「十分ノ三」ニ
改ム
第二十八條ノ二組合ノ事業若ハ組合財
產ノ狀況ニ依リ其ノ事業ノ繼續ヲ困難
チリト認ムルトキ又ハ組合ノ行爲ガ法
〓、定款若ハ行政官廳ノ命令ニ違反シ
タルトキ若ハ公益ヲ害スル虞アルトキ
ハ行政官廳ハ左ノ處分ヲ爲スコトヲ得
一總會ノ決議ノ取消
二役員又ハ〓算人ノ解任
三組合ノ事業ノ停止
四組合ノ解散
第二十九條第二項ニ左ノ但書ヲ加フ
但シ特別ノ事由アルトキハ組合、聯合
會又ハ其ノ組合ノ組合員ト同種ノ工業
ヲ營ム者ヲ以テ之ヲ組織スルコトヲ得
第三十條中「所屬ノ各組合及聯合會」ヲ
「所屬ノ各組合、聯合會及工業者」ニ改ム
第三十二條中「所屬ノ組合及聯合會ノ理
事又ハ監事」ヲ「所屬ノ組合及聯合會ノ理
事若ハ監事又ハ所屬ノ工業者ニ」、同條第
二項申「特別ノ事由アルトキハ理事ハ」ヲ
「特別ノ事由アルトキハ理事又ハ監事ハ」
二酸一
第三十三條但書中「所屬ノ組合、聯合會及
組合員」ヲ「所屬ノ組合、聯合會、工業者
及組合員」ニ改ム
第三十五條第一項但書中「出資一口ノ金
額減少」ヲ「出資一口ノ金額ノ減少若ハ第
十八條ノ二ノ規定ニ依ル組合員ノ責任ノ
減少」ニ、同條第三項中「出資一口ノ金額
減少」ヲ「出資一口ノ金額ノ減少又ハ第十
八條ノ二ノ規定ニ依ル組合員ノ責任ノ減
少」ニ改ム
第三十八條中「第百三十八條ノ二」ヲ「第
百三十八條ノ三」ニ、「第三十八條ク二乃
至第四十一條ヽ第四十三條乃至第四十六
條」ヲ「第三十八條ノ二乃至第四十六條
ニ、「第五十一條乃至第五十七條、第六十
條乃至第六十一條」ヲ「第五十一條乃至第
五十八條、第六十條、第六十條ノ二」ニ、
「第六十七條」ヲ「第六十七條、第六十八
條」ニ、「第七十四條ノ二第一項」ヲ「第七
十四條ノ二第一項、第七十七條第三項」ニ
改ム
第三十九條第十號ヲ左ノ如ク改ム
十本法ニ違反シテ出資一ロノ金額ヲ
減少シ、第十八條ノ二ノ規定ニ依ル
組合員ノ責任ヲ減少シ、第三十八條
ノ規定ニ依リ準用シタル產業組合法
第五十八條ノ責任期間ノ短縮ヲ爲シ
又ハ組合ノ合併ヲ爲シタルトキ
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
日本勸業銀行法、農工銀行法、北海道拓
殖銀行法、印紙稅法及登錄稅法中重要輸
出品工業組合トアルハ工業組合トシ重要
輸出品工業組合聯合會トテルハ工業組合
聯合會トシ重要輸出品工業組合法トアル
ハ工業組合法トス
〔國務大臣俵孫一君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02019310228&spkNum=25
-
026・俵孫一
○國務大臣(俵孫一君) 只今土程致サレマ
シタ兩案ノ中、先ヅ輸出組合法中改正法律
案ノ提案ノ理由ヲ御說明申上ゲマス
我國ノ產業ノ發達ヲ圖リマスルニハ、輸
出貿易ノ振興ニ俟ツモノガ多イコトハ、申ス
マデモナイコデアリマヌ、曩ニ大正十四年
輸出組合法ノ制定ヲ致シマシテ海外販路
ノ開拓ニ努メタノデアリマスルガ、其實績ハ
見ルベキモノガ尠カラヌノデアリマス、該
法ニ準據致シマシテ整理致サレマシタ組合
モ、相當ノ數ニ上ッテ居リ、其業績モ顯著ナ
ルモノガアルノデアリマス、併ナガラ現行
法ハ之ヲ實施ノ成績ニ徵シマスルニ未ダ
全カラザルモノガアリマス、卽チ輸出業者
ノ統制ヲ保チマスル點ニ於テ、缺クル所ガ
アリマス、徒ニ無益ナル競爭ヲ爲スガ如キ、
將又其資力信用ガ薄弱デアリマシテ、海外
販路ノ開拓ノ力乏シキモノガアル等デアリ
やっく、斯カル現狀ニ鑑ミマシテ、今囘法律
ノ改正ヲ致シマシテ、輸出組合ノ行フ輸出
業者ノ統制ヲ劃一ナラシメ、輸出組合聯合
會ノ制度ヲ設ケマシテ、輸出業者ノ全國的
ノ統制ノ徹底ヲ期シ、且又輸出事業ノ範圍
ヲ擴張致シマシテ、組合ノ輸出金融ヲモ認
メテ、更ニ一層其組合員ニ對シマシテ、營
業ニ關スル金融ノ利便ヲ圖リ他面ニ於キ
マシテハ、組合員ノ決議權ヲ修正致シマシ
テ、輸出業者ノ組合ニモ便宜ナラシメ、輸
出組合制度ヲ整理シ、我ガ輸出貿易ノ振興
ヲ期セントスルニアルノデアリマス
次ニ重要輸出品工業組合法中改正法律案
ノ趣旨ヲ簡單ニ御說明申シマス、我ガ輸出
中小工業ノ改善振興ヲ圖ルノ目的ヲ以テ、
制定致シテ居リマスル現行法ハ大正十四
年ニ之ヲ施行シマシテ以來本法ニ基ク工
業組合ハ廣ケ輸出工藝品ニ亙リマシテ堅
實ナル發達ヲ致シテ居リマスルシ、著々產
業合理化ノ促進ニ其功績ヲ現ハシツヽアル
次第デアリマス、併ナガラ時勢ノ進運ト本
法施行以來ノ實績ニ鑑ミマシテ、今囘是ガ
一部ノ改正ヲ行ヒ更ニ其機能ヲ十分ニ發
揮スルヤウニ致シタイト云フ考デアリマ
ス、今其改正ノ要旨ヲ擧ゲマスレバ
第一ニ本組合法ノ適用ノ範圍ヲ擴張致
シマシテ、單ニ重要輸出品工業ニ限ラズ、
廣ク一般工業ニ及ボスコトニ致シテ、隨テ
重要輸出品工業組合法ト云フ法律ノ題號ヲ
モ改正ヲ致シマシテ、工業組合法ト云フコ
トニ改メタイ積リデアリマス
第二ニハ、組合事業ト致シマシテ、經濟
的ニ其機能ヲ擴大致シマスル意味ヲ以テ、
新タニ貯金ノ受入及ビ資金ノ貸付ヲ行フコ
トヲ認メマシテ、工業組合ヲシテ中小工業
ニ關スル金融機關タル機能ヲ、有セシムル
コトニ致シタイ積リデアリマス
第三ニハ、中小工業ニ關スル企業ノ統制
ヲ徹底セシムル爲ニ、組合ノ法規ヲ整備致
シテ居ルノデアリマス、此點ニ付キマシテ
ノ詳細ハ委員會ニ於テ申述ベタイト思フ
ノデアリマス
兩案トモ御審議ノ上、協贊ヲ與ヘラレン
コトヲ望ミマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02019310228&spkNum=26
-
027・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 質疑ヲ許ツマス-
岸田正記君
〔岸田正記君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02019310228&spkNum=27
-
028・岸田正記
○岸田正記君 只今議題トナリマシタ輸出
組合法ニ關スル改正案ニ付キマシテ政府
當局ニ就テ私ハ質問シタイト思フノデアリ
マス
本改正案ト深キ關係ヲ有シマスル所ノ輸
出補償制度ノ實施、此點ニ付キマシテ私ハ
一言御質問ヲ申上ゲル者デアリマスガ、今
囘提出サレマシタ輸出組合法案ノ方ノ改正
案ト云フ此骨子ヲ爲スモノハ只今御說明
ニナリマシタ通リ、第一ニハ輸出組合ノ統
制ヲ圖ッテ行タ、續テハ又金融上ノ利便ノ途
ヲ開クト斯ウ云フ御趣旨デアリマスルケ
レドモ、此趣旨ハ要スルニ輸出業者ニ對シ
テノ金融ノ利便ヲ圖ッテ、我國ノ輸出貿易ノ
進展ヲ期シ、向上發展ヲ期スルト云フ、此
趣旨ニ外ナラヌノデアリマスルケレドモ、
此趣旨ヲ徹底スル上ニ於キマシテハ、昨年
議會ニ於テ旣ニ通過シテ、又一部ノ地方ニ
對シテハ既ニ行ハレテ居リマスル輸出補償
制度ノ、黴底シタ所ノ活動ヲ見ルト云フ
是ト關聯シナクテハ到底輸出業者ノ圓滿
ナル金融ノ利便ヲ受ケルコトガ出來ナイノ
デアリマス、此點ニ付キマシテ私ハ是非政
府當局ニ對シテ質問シタイト思フ、輸出補
償制度ハ御存ジノヤウニ、昨年ノ議會ニ於
キマシテ既ニ通過致シテ、昨年ノ八月一日
カラハ、政府ノ御決定ニ依ッテ露西亞、中部
亞米利加、南部亞米利加、巴爾幹、ソレカ
ラ亞弗利加、小亞細亞、是等ノ地方ニ對シ
テ此輸出補償制度ガ實施セラレルコトニ
ナッタノデアリマス、餅シ斯ノ如キ地方ニハ
是ガ行ハレテ居ルケレドモ我國ノ輸出上
ニ於テ最モ重要ナル所ノ位置ヲ占メ、大事
ナル所ノ販路デアリマスル滿洲ニ對シテ
是ガ行ハレテ居ラナイト云フコトハ、私ノ
最モ不可思議ニ堪ヘナイ點デアリマス、此
點ニ付キマシテハ旣ニ滿洲ニ於キマシテ
各種ノ組合、商工會議所、又其聯合組合ナ
ドガ近年〓心ナル運動ヲシ政府當局ニ
對シマシテモ、此實施ヲ歎願致シタノデア
リマスルケレドモ、全然誠意ヲ示サレズシ
テ、政府當局ハ之ヲ斥ケテ居ル是ハ如何
ナル理由ニ基クモノデアルカ、之ヲ私ハ商
工大臣ニ御尋シタイノデアリマス
滿洲ガ我國ノ貿易上最モ大切ナル販路デ
アルト云フコトハ商工大臣モ御存ジデア
リマセウ、卽チ今日滿洲ニ於キマスル所ノ
在住民ハ、北滿南滿ヲ合スレバ、旣ニ二億
人ニ達シテ居ルト云フ狀態、殊ニ近年支那
各地ニ於ケル動亂、是等ニ對シマシテ非常
ニ戰々兢々タル狀態ニアル反面ニ於テハ
滿洲ニ避難民ガ續々集"テ來ル、此結果ハ山
東方面ノミデモ、最近七箇年ニ於キマシテ
ハ二百四十万人カラ集ッテ來タト云フヤ
ウナ狀態デアリマス、又御存ジノ如クニ過
般張學良氏ガ南京ニ參リマシテ、中央政府
ト打合ノ結果ハ、近ク一千万元ノ資金ヲ以
テ二十万戶ノ移民ヲ、滿洲ニ中部支那カラ
引入レテ來ルト云フヤウナ計畫モ立ッテ居
ル、斯樣ナ次第デアリマシテ、殊ニ斯ノ如
キ多クノ在住民ヲ有シテ居ル、特ニ此地ハ御
存ジノ如クニ、經濟的ニモ、歷史的ニモ、
或ハ地理的ニモ、日本トハ深イ關係ヲ有シ
テ居ルト云フコトハ、御存ジノ通リデアル、此
結果ハ我國ノ對滿貿易ノ過去ノ狀態、現在ノ
狀態ガ、明カニ此實情ヲ示シテ居ルノデアッ
テ、御存ジノ如クニ我國ノ貿易ハ輸出入
ヲ合スレバ四十五億圓ニ達シテ居ルケレド
モ、此中デ亞米利加ニ對スル貿易ガ約三割
五分、支郡ニ對シテノ貿易ガ一一割ヲ占メテ
居ルコトハ御存ジノ通リデアル而モ此對
支貿易ノ約四割ヲ占メテ居ルノガ對滿貿
易、是ガ如何ニ重大ノ地位ニアルカト云フ
コトハ御存ジノ通リデアリマセウ、而モ此
重大ナル所ノ販路ニ對シテ、日本カラノ輸
出ハ果シテ如何デゴザイマセウカヽ滿洲ガ
最近ニ於テ諸外國カラ輸入シテ居ル所ノ品
物ノ總量ト云フモノハ四億二千万圓カラ
ニ達シテ居ル、其中デ日本カラ入ッテ行ク品
ガ三割九分、其他ノ諸外國カラ入ッテ來ル物
ガ三割七分、其外ハ支那ノ他地方カラ入ッテ
來ル品物デアル、一衣帶水ノ地位ニアル、
此歷史的ニモ、地理的ニモ深イ關係ノアリ
マス所ノ滿洲ニ對シテ、我國ガ諸外國カラ
入ッテ來ル品物ト、殆ド同一程度ノ輸出ニ止
マルト云フコトハ、洵ニ遺憾千萬ナ現象デ
アルト私ハ信ジテ居ルノデアリマス(拍手)
是等ノ實情ハ何處カラ來テ居ル、言フマデ
モナク日本ノ滿洲ニ對シマスル所ノ拓殖政
策貿易政策、是等ガ頗ル不徹底デアッテ、
殊ニ現內閣ノ消極的ノ對滿政策、滿豪發展
政策ト云フコトニ付テ、非常ナル所ノ禍ヲ
今日ノ日本ノ滿洲ニ於ケル發展ノ上ニ實現
サレテ居ルト云フコトハ、洵ニ私ハ遺憾ニ
存ズル次第デアリマス、此點ニ鑑ミマシテ、
私ハ此重要ナル所ノ日本ノ輸出品ノ販路、
之ニ對シテ政府當局ガ、何ガ故ニ此重大ナ
ル所ノ、輸出上ニ關係ヲ有スル輸出補償制
度ヲ今日マデ實施ニナラナイカ、此點ニ對
シテ明確ナ御答辯ヲ商工大臣ニ御願スル次
第デアリマス
〔國務大臣俵孫一君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02019310228&spkNum=28
-
029・俵孫一
○國務大臣(俵孫一君) 只今岸田君ノ御質
間ノ御趣旨ハ滿洲ニ於ケル我國ノ貿易ノ
發展ノ爲ニ、輸出補償制度ヲ何故適用シナ
イカト云フコトデアルノデアリマス
滿洲ガ我ガ商品ノ重大ナル市場デアリマ
スルコトハ全然御同感デアリマス、併ナ
ガラ補償制度ハ、過グル議會ニ於テ御說明
ヲ申上ゲマシタ通リニ、我國ノ商品ノ新シ
キ市場ヲ開拓スルト云フコトガ、其制度ノ骨
子デアリマス、其新シキ市場ニ於キマシテ
ハ金融ノ便モナク、隨テ爲替銀行ガ手形
ヲ買取ルト云フコトニ不安ヲ感ズル之ニ
對シマシテ其不安ヲ除去スル爲ニ、國家ガ
補償ヲシテヤッテ、爲替銀行ヲシテ手形ヲ買
取ラシメテ、而シテ其地方ニ商品ノ輪出ヲ
便ナラシムルト云フコトガ、補償制度ノ趣旨
デアリマシテ、滿洲ノ如キ舊市場ニ對シテ
補償スルト云フコトノ意味デハナイノデア
リマス、併ナガラ敢テ滿洲ニ適用スベカラ
ズト云フコトハゴザイマセヌカラ、是ハ後
日財政ノ餘裕カアリマス場合ニ於キマシテ
ハ滿洲地方ニモ適用スルコトガアルデア
リマセウケレドモ、目下ハ其考ハナイノデ
アリマス
〔岸田正記君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02019310228&spkNum=29
-
030・岸田正記
○岸田正記君 只今商工大臣ノ御答辯ヲ伺
ヒマスルト云フト、輸出補償制度ノ實施ノ
精神ハ新販路ノ擴張ニアル斯ウ云フヤ
ウナ御說明デアリマス、又續イテハ財源ノ
許ス限リニ於テハ之ヲヤル積リデアルケ
レドモ、今日ノ事情ニ於テハ之ヲ許サナイ、
此二ツガ只今ノ御答辯ノ重點ニナッテ居ル
ヤウニ私ハ承ッタノデアリマス
併シ、是ハ商工大臣ノ御答辯トシテハ甚ダ
意外千萬ナ御答辯デアルト思ヒマス、輸出
補償制度ノ實施ノ精神ハ新版路ノ擴張ニ
アルト云フ只今商工大臣ノ御說明デアリ
マスケレドモ、私ハ唯是ノミガ輸出補償制
度ノ精神デハナイト信ジテ居ル、卽チ輸出
袖償制度ノ精神ハ、一面ニ於テハ勿論新販
路ノ擴張ニ重キヲ置イテ居ルト云フコトハ
信ジテ居リマスケレドモ、又一面ニ於テハ
舊販路ト雖モ貿易上甚ダ困難ナル事情ニ
在リテ金融ノ關係、又通商其他ノ關係ニ於
テ、販路ヲヨリ以上ニ開拓スル上ニ於テ、
困難ナ事情ガアル土地ニ對シテハ舊販路
ト雖モ之ニ對シテ輸出補償制度ヲ實施シテ
行クト云フコトガ、眞ニ輸出補償制度ヲ我
國ニ設ケラレタ所ノ根本ノ精神デハナイカ
ト私ハ信ジテ居ルノデアリマス、然ラバ滿
洲ノ如キ固ヨリ新版路デハナイ舊販路
デアルケレドモ今日銀相場ノ變動ノ激シ
イ時、或ハ又常ニ支那動亂ノ影響ヲ受ケテ、
取引ニ不安ヲ感ジテ居ル時、是等ノ販路ノ
擴張ノ上ニ於テ、非常ナ困難ナル事情ヲ伴"
テ居ル土地ニ對シテ、輸出補償制度ヲ實施
スルト云フコトハ當然ノコトデアルト私
ハ信ジテ居ル、故ニ唯新販路ヲ擴張スル、
是ノミニ輸出補償制度ガ設ケラレタガ故
ニ、滿洲ニ輸出補償制度ヲ實施スル必要ガ
ナイト云フ御答辯ハ對滿貿易ニ對シテ不
可解ナル御考ヲ持ッテ居ルモノト私ハ信ジ
子はじん
次ニ又御答辯ニ依リマスト、財政ノ許ス
限リニ於テハ、將來或ハ之ヲ實施スルカモ
分ラヌケレドモ、今日ノ財政ニ於テハ之ヲ
認メヌ、斯ウ仰シヤルノデアリマスガ、是
ガ又對外政策、殊ニ拓殖政策ニ對シテ、御
理解ノナイ商工當局ノ御態度デハナイカト
私ハ思フノデアリマス、卽チ今日ノ此對滿
貿易ニ對シテ補償制度ノ實施ヲ許サナイ程
ニ我國ノ財政ガ果シテ行詰ッテ居ルカ、私
ハ此問題ニ付キマシテハ植民地政策ノ上
ニ於テ、特別會計トサレテ居ル所ノ關東廳
ノ財政ニ對シテ、一般會計ニ於テ行ハレテ
居ル所ノ、現內閣ノ井上大藏大臣ノ殺人的
ノ緊縮政策ヲ唯徒ニ及ボサレ、對滿政策ノ
上ニ及ボサレタモノデハナイカト私ハ思フ
ノデアリマス、若シ然リトスレバ是ハ甚ダ
財政政策上ノ缺陷デハナイカ、今日滿洲ニ
於ケル經濟ガ非常ニ疲弊致シテ居リ、在留
二十万ノ我ガ日本ノ同胞ガ、甚ダ困難致シ
テ居ルト云フコトニ付テハ固ヨリ幾多ノ
外的事情モアリマセウケレドモ、我ガ國內
ノ事情トシテ、現內閣ノ緊縮政策、不徹底、
消極的ノ拓殖政策、是等ガ至大ノ原因ヲ成
シテ居ルト云フコトニ付テハ、私ハ親シク
彼ノ地ニ在住致シテ居ル關係上、篤ト存ジ
テ居ル、此點ニ付キマシテハ私ハ旣ニ質問
書モ出シテ居リマシテ、近ク本議場ニ於テ
徹底的ニ此問題ニ付キマシテ拓務當局、
大藏當局等ニ對シテ詰問スル積リデ居リマ
スケレドモ、唯輸出補償制度ソレ一點ニ付
キマシテモ、御承知ノヤウニ在滿同胞ハ、
今日ノ貿易ノ不振ノ爲ニ非常ニ弱ッテ居ル、
故ニ此事情ヲ愬ヘテ拓務當局、商工當局、
大藏當局ニ對シテ、〓心ニ運動シ、歎願ヲ
致シテ居ルト云フコトハ旣ニ御承知ノ通
リデアル、而シテ之ニ對シマシテハ、旣ニ
商工大藏拓務ノ各省ニ於テハ、次官以下ノ
人々ガ、全ク其必要ヲ痛感致シテ居ルト云
フコトヲ言明サレテ居ルコトハ、私ハ明カ
ニ之ヲ聞イテ居ル、然ルニ今日之ヲ實施セ
ラレテ居ラヌノハ、ドウ云フ譯デアルカ、
既ニ此補償制度ヲ實施スルコトハ、滿洲ニ
對スル日本ノ輸出ノ上ニ於テ、多大ナ便利
ヲ與ヘルモノデアルト云フコトデ、官民一
致之ヲ要望シ、滿洲ニ於テハ關東廳ノ如
キモ、御存ジノヤウニ今囘ノ豫算ニ於テモ、
輸出補償制度ヲ實施スルト云フコトヲ信ジ
タガ故ニ、新規事業トシテ此補償制度ノ實
施ノ經費トシテ、十一万圓ノ費用ヲ要求シ
タト云フコトハ當局モ御承知ノ通リデア
ル、然ルニ是ガ一度大藏省拓務省ニ廻ッタ場
合ニ、是等ニ對シテ膠モナク之ヲ蹂躙シ、
之ヲ削減シテシマハレタト云フコトハ如
何ナル理由ニ基クモノデアルカ、是ハ言フ
マデモナク日本ノ國內ニ於ケル緊縮政
策、此殺人的ノ緊縮政策ヲ、徒ニ對滿貿易
ノ上ニ行ヒ徒ニ關東廳ノ特別會計ノ上ニ
及ボサレタモノデハナカラウカト私ハ思フ、
然リトスレバ、是ハ全ク特別會計ノ蹂躪デ
アル、植民地ニ於ケル特別會計ノ重點ハ言
フマデモナク、徒ニ本國ノ一般會計ノ方針
ニ盲從スベキモノデハナクシテ、植民地ノ
特殊ノ經濟事情、社會事情ヲ考慮シテ、之
ニ適合シタ所ノ豫算ヲ組ンデ行クベキデア
ル、殊ニ植民地ノ本質的ノ事情ト致シマシ
テ、同胞ノ經濟的進展、此點ニ重點ヲ置イ
テ、財政方針ヲ組ンデ行クト云フコトガ當
然ノコトデアル、是ハ言フマデモナク關東
廳ノ特別會計トシテ、特殊性ヲ持タシムル
本旨デアラネバナラヌト私ハ信ジテ居ル、
然ルニ此內地ノ緊縮政策、政府ノ徒ラナル
消極政策、之ヲ海外發展ノ上ニモ及ボサレ
マシテ、此關東廳ノ十一万圓ノ輸出補償制
度ノ實施ニ關スル經費ヲ削減シテシマッタ
ト云フコトハ、全ク特別會計ノ本旨ヲ蹂躪
シタモノト信ジテ居ル、是等ノ點ニ鑑ミマ
シテ、私ハ政府當局ノ御一考ヲ煩シタイ、
關東廳ノ財政ノ上ニ於テモ、此經費ハ十分
アル又本省ノ豫算ニ於キマシテモ、十分
此位ノ經費ハ組ミ得ルモノト信ジテ居ル、
是等ノ事情カラ申シマスト、新販路ノ擴張
ト云フ此一點ガ、旣ニ意義ヲ爲サヌモノデ
アル、且又財政ノ上ニ於テモ、十分ニ是等
ニ對シテノ經費ヲ組ミ得ル餘裕ガアル、此
點ニ鑑ミマシテ、今一點滿洲ニ對スル所ノ
輸出補償制度ヲ實施シ、サウシテ金融上ノ
利便ヲ圖ッテ、我國ノ輸出ヲ此舊販路ニ對シ
テ擴張シテ行キ、益〓發展サセテ行クト云
フ精神ナキヤ否ヤ、重ネテ此點ヲ質問スル
次第デアリマス
〔國務大臣俵孫一君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02019310228&spkNum=30
-
031・俵孫一
○國務大臣(俵孫一君) 重ネテ滿洲貿易ノ
最モ重要ナコトヲ御說キニナッタメデアリ
マスガ、之ニ付テ先刻申上ゲマシタ通リニ、
其地方ガ重要デアル、我國ノ商品ノ重要ナ
ル市場デアルト云フコトハ御同感デアリマ
ス、併ナガラ補償制度ノ趣旨ハ輸出先ノ
事情ガ不明ニシテ、其金融ノ便ヲ得ルニ難
〃、爲替銀行モ其手形ノ買取ニ躊躇スルト
云フ地方ニ於テ、其損害ヲ補償シテ新開拓
ヲスルト云フ趣旨デアリマスカラ、滿洲ノ
如キモノハ關東廳ニ特別會計アリ、滿鐵ア
リ各其途ガ付イテ居ル、輸出補償制度
ノ此働キヲ以テ、滿洲貿易ノ損失ヲ補償ス
ルト云フ趣旨デナイノデアリマスカラ、其
御答ヲ申上ゲタイノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02019310228&spkNum=31
-
032・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 質疑ハ終リマシタ
日程第五、右各案ノ審查ヲ付託スベキ
委員ノ選擧ヲ議題ト致シマス
第五右各案ノ審査ヲ付託スヘキ委員
ノ選擧発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02019310228&spkNum=32
-
033・作田高太郎
○作田高太郞君 兩案ヲ一括シテ議長指名
九名ノ委員ニ付託セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02019310228&spkNum=33
-
034・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 作田君ノ動議ニ御
異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02019310228&spkNum=34
-
035・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 御異議ナシト認メ
マス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ
日程第六、簡易生命保險法中改正法律案
ノ第一讀會ヲ開キマス-小泉遞信大臣
第六簡易生命保險法中改正法律案
(政府提出)第一讀會
簡易生命保險法中改正法律案
簡易生命保險法中左ノ通改正ス
第四條ノ二被保險者十二歲ニ達スル迄
ハ被保險者ノ死亡ニ因リ支拂フヘキ保
險金額ハ被保險者一人ニ付勅令ノ定ム
ル金額以下トス
第四條ノ三被保險者十二歲ニ達スル迄
ハ保險契約者ハ被保險者ノ二親等內ノ
親族ニシテ勅令ノ定ムル者タルコトヲ
要ス
第四條ノ四被保險者十二歲ニ達スル迄
ハ保險契約者ニ付相續開始ノ事由發生
シ其ノ相續人カ前條ニ該當セサル者ナ
ルトキハ被保險者ヲ以テ保險契約者ト
ス保險契約者カ前條ニ該當セサルニ至
リタルトキ亦同シ
第四條ノ五被保險者十二歲ニ達スル迄
ハ保險契約者ヲ以テ保險金額ヲ受取ル
ヘキ者トス
第八條中「二年」ヲ「一年六月」ニ改ム
第二十二條中「及商法第四百二十九條」ヲ
マ第三十四條第三項、商法第三百九十九
條及第四百二十九條」ニ改ム
第二十三條第二項中「二年」ヲ「一年六月」
三段八、
第二十七條保險金額又ハ第二十五條ノ
規定ニ依ル還付金額ヲ支拂フヘキ場合
ニ於テ其ノ保險契約又ハ之ニ基キテ爲
シタル貸付ニ付政府カ辨濟ヲ受クヘキ
金額アルトキハ支拂金額ヨリ之ヲ控除
ス
第三十三條中「郵便物ハ」ノ下ニ「命令ノ
定ムル所ニ依リ」ヲ加フ
第三十四條ニ左ノ二項ヲ加フ
被保險者十二歲未滿ナルトキハ第十四
條第一項及商法第四百一一十八條ノ規定
ニ依ル被保險者ノ同意ヲ要セス
商法第四百二十九條ノ規定ハ被保險者
十二歲未滿ナルトキハ被保險者ノ法定
代理人ニモ之ヲ準用ス
附則
本法ハ昭和六年十月一日ヨリ之ヲ施行ス
〔國務大臣小泉又次郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02019310228&spkNum=35
-
036・小泉又次郎
○國務大臣(小泉又次郞君) 只今議題トナ
リマシタル簡易生命保險法中改正法律案ノ
趣旨辯明ヲ致シマス、今囘ノ改正法律案ニ
付キマシテハ現行簡易生命保險ノ加入年
齡範圍ヲ擴張致シマシテ、所謂小兒保險ヲ
實施スル爲メ、之ニ必要ナル規定ヲ追加致
シマスルト共ニ、併セテ保險金支拂削減ノ
期間ヲ短縮致シマシテ、其他現行規定中ニ
不備ノ點ガアリマスルカラ、其不備ノ點ヲ
修補スル爲ニ、簡易生命保險法ノ一部改正
ヲ致サントスル趣意デアルノデアリマス
簡易生命保險ハ一般生命保險制度ノ足ラ
ザル所ヲ補ヒマシテ、國民ノ大多數ヲ占メ
テ居リマスル薄資者ニ對シテ、容易ク生命
保險ヲ利用シ得ルノ途ヲ開イテ、其經濟生
活安定ニ資セントスル目的ヲ以チマシテ
大正五年初メテ、此制度ガ設ケラレタノデ
アリマスルコトハ諸君ノ御承知ノ通リデ
アリマス、爾來本事業ハ極メテ順調ナル發
達ヲ遂ゲテ參リマシテ、最近ニ於キマシテ
ハ契約件數約千六百万件、保險金額ハ約二
十一億圓ヲ超ユルノ盛況ヲ示シテ參リマシ
テ、著々トシテ制度庶幾ノ效果ヲ收メツヽ
アルノデアリマス併ナガラ現行制度ニ於
キマシテハ最低加入年齡ヲ滿十二歲ニ制
限致シテ居リマスル結果、全國約千九百万
人卽チ總人口ノ約三割ニ相當致シマスル十
二歲未滿ノ小兒ハ、全然本制度ヲ利用シ得
ザル狀況ニアルコトハ庶民保險ト致シテ
制度上遺憾ト考フルノデアリマス、勿論小兒
ノ死亡ハ大人ノ死亡ニ較ベマシテ家計ニ
打擊ヲ加フル程度ハ低イノデアリマスルケ
レドモ、薄資者ニ取リマシテハ一小兒ノ死
亡ト雖モ、直接間接ニ不慮ノ出資ヲ餘儀ナ
クセラレテ、之ニ依ッテ生ズル所ノ家計上ノ
負擔ハ、決シテ少クナイノデアリマシテ、
此點ハ小兒死亡率ノ高イ我國ニ於テ、特步
考慮ヲ要スルコトヽ考フルノデアリマス
而シテ是ガ救濟策ト致シマシテハ生命保
險制度ノ利用ニ依ルコトヲ最モ適當トスル
ノデアリマスガ我國ニ於キマシテハ今
日迄小兒死亡ヲ對象ト致シマスル生命保險
ガ、官營民營ノ兩者ヲ通ジテ未ダ存在シテ
居ラナイノデアリマス、サウシテ小兒ノ死
亡ニ對シ、保險金額ノ支拂ヲ致シマスル生
命保險、所謂小兒保險ハ無審査ノ少額保
險タルコトヲ要シマスル必要上、簡易生命
保險ノ範圍ニ屬スルコトハ海外ノ實例ニ
徴シマシテモ明カデアリマス、我國ニ於キ
マシテハ、簡易生命保險ハ政府ノ獨占事業
デアリマスカラ、小兒保險ヲ實施スルト致
シマスルナラバ、現行簡易生命保險ノ一部
ト致シテ、政府ニ於テ之ヲ實施スルコトヲ
最モ適當ト認メタノデアリマス、簡易生命保
險ノ加入年齡範圍ヲ擴張シテ、小兒保險ヲ
實施セントスル議論ハ本制度創業當初カ
ラアッタノデアリマスガ、政府ト致シマシテ
ハ、先ヅ大人ニ對スル簡易保險ヲ實施致シ
マシテ、其實績ヲ見タル上ニテ小兒保險ニ著
手スルコトヲ適當ト認メマシテ、引續キ調査
〓究ヲ致シマシテ今日ニ及ンダノデアリマ
ス、幸ニシテ簡易生命保險ハ創業後旣ニ十
五年ヲ閱シテ居リマシテ、異常ナル發展ヲ
遂ゲテ居リマスノデ此際多年ノ懸案デア
リマスル小兒保險ヲ實施致シマシテ、木制
度ノ完備ヲ圖ルコトハ時局ニ鑑ミマシテ
極メテ緊切ナルモノデアルト信ズルノデア
リマス
次ニ本改正案ニ於キマシテハ、小兒保險
實施上必要ナル條文ノ外、別ニ加入後短期
期間ニ於ケル被保險者ノ實際死亡率ノ低下
ニ鑑ミマシテ、從來二年デアリマシタ保險
金支拂削減期間ヲ一年半ニ短縮致シマシ
テサウシテ加入者ノ利益ヲ增進スルコト
ト致シマシタ、其他規定ノ形式上不備ト認
ムル條文ノ文字ガアリマスカラ、二三修補
スルコトニ致シタノデアリマス、斯樣ナ次
第デアリマスカラ、何卒愼重ニ御容議ノ上、
速ニ御協賛下サランコトヲ切望スル次第デ
アリマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02019310228&spkNum=36
-
037・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 質疑ハアリマセ
ヌ-日程第七、右議案ノ審査ヲ付託スベ
キ委員ノ選擧ヲ議題ト致シマス
第七右議案ノ審査ヲ付託スヘキ委員
ノ選擧発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02019310228&spkNum=37
-
038・作田高太郎
○作田高太郞君 本案ハ議長指名九名ノ委
員ニ付託セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02019310228&spkNum=38
-
039・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 作田君ノ動議ニ御
異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02019310228&spkNum=39
-
040・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 御異議ナイト認メ
ずう、仍テ動議ノ如ク決シマシタ
日程第八、重要產業ノ統制ニ關スル法律案
ノ第一讀會ヲ開キマス、俵商工大臣
第八重要產業ノ統制ニ關スル法律案
(政府提出)第一讀會
重要產業ノ統制ニ關スル法律案
第一條重要ナル產業ヲ營ム者生產又ハ
販賣ニ關シ命令ノ定ムル統制協定ヲ爲
シタル場合ニ於テ同業者二分ノ一以上
ノ加盟アルトキハ命令ノ定ムル期間內
ニ之ヲ主務大臣ニ屆出ヅベシ之ヲ變更
廢止シタルトキ亦同ジ
前項ノ產業ノ種類ハ統制委員會ノ議ヲ
經テ主務大臣之ヲ指定ス
前項ノ規定ニ依リ指定セラレタル產業
ヲ營ム者ハ命令ノ定ムル事項ヲ主務大
臣ニ屆出ヅベシ
第二條主務大臣前條ノ統制協定ノ加盟
者三分ノ二以上ノ申請アリタル場合ニ
於テ當該產業ノ公正ナル利益ヲ保護シ
國民經濟ノ健全ナル發達ヲ圖ル爲特ニ
必要アリト認ムルトキハ統制委員會ノ
議ヲ經テ當該統制協定ノ加盟者又ハ其
ノ協定ニ加盟セザル同業者ニ對シテ其
ノ協定ノ全部又ハ一部ニ依ルベキコト
ヲ命ズルコトヲ得
第三條主務大臣第一條ノ統制協定ガ公
益ニ反シ又ハ當該產業若ハ之ト密接ナ
ル關係ヲ有スル產業ノ公正ナル利益ヲ
害スト認ムルトキハ統制委員會ノ議ヲ
經テ其ノ變更又ハ取消ヲ命ズルコトヲ
得
第四條主務大臣第一條ノ統制協定ニ對
スル監督上必要アリト認ムルトキハ統
制協定ノ加盟者ニ對シ又ハ協定ニ加盟
セザル同業者ニシテ第二條ノ規定ニ從
セ協定ニ依ルベキコトヲ命ゼラレタル
者ニ對シ業務ニ關シ檢査ヲ爲シ又ハ報
告ヲ爲サシムルコトヲ得
第五條本法ニ定ムルモノノ外統制委員
會ニ關シ必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之
三重大人
第六條第一條第一項ノ規定ニ違反シタ
ル者ハ五百圓以下ノ過料ニ處ス
第一條第三項ノ規定ニ違反シタル者ハ
百圓以下ノ過料ニ處ス
非訟事件手續法第二百六條乃至第二百
八條ノ規定ハ前二項ノ過料ニ付之ヲ準
用ス
第七條重要ナル產業ヲ營ム者左ノ各號
ノ一ニ該當スルトキハ千圓以下ノ罰金
·酸辣、
第二條ノ規定ニ依ル主務大臣ノ命
令ニ違反シ當該統制協定ニ依ラザル
トキ
二第三條ノ規定ニ依ル主務大臣ノ命
令ニ從ハザルトキ
第八條第四條ノ檢査ヲ拒ミ、妨ゲ若ハ
忌避シ又ハ同條ノ規定ニ依リ命ゼラレ
タル報告ヲ爲サズ若ハ虛僞ノ報告ヲ爲
シタル者ハ三百圓以下ノ罰金ニ處ス
第九條重要ナル產業ヲ營ム者ハ其ノ代
理人、戶主、家族、雇人其ノ他ノ從業
者ガ其ノ業務ニ關シ第七條ノ罪ヲ犯シ
タルトキハ自己ノ指揮ニ出デザルノ故
ヲ以テ其ノ處罰ヲ免ルルコトヲ得ズ
第十條第七條ノ規定ニ依リ重要ナル產
業ヲ營ム者ニ適用スベキ罰則ハ其ノ者
ガ法人ナルトキハ理事、取締役其ノ他
ノ法人ノ業務ヲ執行スル役員ニ、未成
年者又ハ禁治產者ナルトキハ其ノ法定
代理人ニ之ヲ適用ス但シ營業ニ關シ成
年者ト同一ノ能力ヲ有スル未成年者ニ
付テハ此ノ限ニ在ラズ
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
本法ハ施行後五年間ヲ限リ其ノ效力ヲ有
ス
前項ノ期間內ニ爲サレタル本法又ハ本法
ニ基キテ爲ス處分ニ違反スル行爲ニ付テ
ハ本法ノ罰則ハ前項ノ期間經過後ト雖モ
仍之ヲ適用ス
〔國務大臣俵孫一君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02019310228&spkNum=40
-
041・俵孫一
○國務大臣(俵孫一君) 只今議題トナリマ
シタ本案ノ提出ノ理由ヲ簡單ニ御說明ヲ申
上ゲテ置キマス、我國產業界數多ノ缺點ヲ
正シマシテ、我ガ產業界ノ立直シヲ行フガ
爲ニハ、或ハ技術ノ點ニ於キマシテ、或人
經營ノ點ニ於キマシテ、合理化スベキ事柄
ハ甚ダ多イノデアリマス、就中根本的ノ缺
陷トシテ總テノ弊害ノ根本ヲ爲シマスル
モノハ企業統制ヲ缺ク點デアルト考ヘル
ノデアリマス、中小企業ト云ハズ、大企業
ト云ハズ、多數ノ企業者ガ洵ニ無規律、無
節制ニ、無謀不當ナル競爭ヲ敢テ致シテ居
リマスコトガ、我ガ產業界ノ現狀デアルノ
デアリマス、其結果ハ我ガ商品ノ海外販路
ノ進出ヲ妨ゲマスルノミナラズ、更ニ各企
業者ガ共倒レト相成リ、我ガ重要產業其モ
ノヽ存在ヲ危殆ニ陷ラシムルト云ッタ如キ
コトガアルノデアリマシテ、是ガ爲ニ延テ
我ガ國民經濟ニ及ボス損害ガ、極メテ大ナ
ルモノガアルノデアリマス、故ニ此現狀ニ
鑑ミマシテ少クモ我ガ重要ナル產業ニ對シ
テ規律統制ヲ付ケ、其安定ヲ圖ルト云フコ
トガ最モ急務デアリマス、是ガ本案ヲ提
出スルニ至リマシタ所以デアルノデアリマ
ス、本案ノ細目ニ至リマシテハ委員會等
ニ於テ申上ゲルコトニ致シタイト思ヒマ
ス、何卒御審議ノ上、速ニ御協賛ヲ與ヘラ
レンコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02019310228&spkNum=41
-
042・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 質疑ヲ許シマス-
土井權大君
〔土井權大君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02019310228&spkNum=42
-
043・土井權大
○土井權大君 只今議題トナリマシタル、
重要產業ノ統制ニ關スル法律案ニ付キ、極
メテ簡單ニ要項ノミヲ揭ゲテ質問ヲ致シタ
イト思ヒマス、申スマデモナク產業ノ統制
法律ナルモノハ從來ノ自由主義經濟カラ
國家統制經濟ニ導ク法律デアリマシテ、產
業界ニ非常ナル影響ヲ及ボスコトハ穂之
申サズトモ御承知ノ通リデアリマス、仍テ
此法律ニ付テ如何ナル點マデ統制ヲ爲サル
ノデアルカ、之ヲ十分此本會議ニ於テ確メ
テ置ク必要ガアルノデアリマス
此處デ第一ニ御伺致シタイノハ、御承知
ノ通リ此產業統制ハ「カルテル」ノ助成、或ハ
「カルテル」ノ奬勵法ト申シテモ敢テ差支ナ
1、確ニ「カルテル」ノ助成、「カルテル」ノ
奬勵デアリマス、然ラバ生產又ハ販賣ニ關
シ、統制ノ協定ヲ爲スト云フコトニ相成ッテ
居リマスガ、此生產方面ノ統制ノ上ニ於テ、
如何ナル程度マデ統制ヲ御認メニナルノデ
アルカ、詳シク申上ゲマスルナラバ、「カル
テル」ニハ原料「カルテル」、或ハ金融「カル
テル」、生產制限、或ハ賃銀「カルテル」、又
ハ檢査、斯ウ云フ風ニ分レマスガ此條
文ノ上カラ眺メマスルト、單ニ生產ノ制限
ト檢査、此二ツニ限。シテ居ルカノ如ク見エル
ノデアリマスルガ、ソレ以上ノ原料ノ共同
購入ト云フガ如キ、所謂原料「カルテル」ヲ、
ソレ以外ニ求メルカ求メナイカ、ソレカラ
當業者ノ共同ニ依リ、其「カルテル」ハ共同
金融ト云フガ如キコトノ仕事ヲ御認メニナ
ルカナラナイカ、更ニ製造工場ナドニ於テ
ハ職工ノ賃銀ノ協定ナドモ行フ「カルテ
ル」ガアリマスルガ、其事モ御認メニナルカ
ナラナイカ、之ヲ先ヅ第一ニ御伺スルノデ
アリマス、ソレカラ
第二ト致シマシテ、版賣統制ノ點ニ付テ
範圍ヲ承リタイ販賣統制ハ先ヅ價格ノ協
定販路ノ分割、之ヲ行フニアラザレバ
眞ニ此「カルテル」ノ目的ト云フコトヲ完ウ
スルコトガ出來ナイ、價格協定、販路ノ分
割、是モ御認メニナルノカナラナイノカ
第三ニ御伺致シタイノハ產業ノ種類デ
アリマス、產業ノ種類トシテハ外國輸出
品、所謂貿易品、是ノミニ重キヲ置イテ居
ラレルノデアルカ、將又內地ノ產業ト云フ
方面ニモ、此「カルテル」ノ適用ガ出來ルノ
デアルカ、特ニ承リタイノハ內地產業ト
致シマシテハ工業モアリマス、或ハ農業モ
アル、又農家ノ副業ガアル、內地ノ產業ニ
「カルテル」ヲ許スト云フナラバ、米デアル
トカ、或ハ小麥デアルトカ、或ハ酒デアル
トカ、醤油デアルトカ、其他農家ノ副業物
ナドガ、隨分產額ガ多大ニ上ッテ居ルモノガ
アリマス、副業ト致シマシテモ、年額一千
万圓以上ノ農家ノ副業ヲ見受ケルノデアリ
マス、サウ云フヤウナ所謂副業ノ團體ガ「カ
ルテル」ヲ行ハフトスル場合ニ於テモ、御
認メニナルノデアルカドウカ
更ニ承ッテ置キタイノハ、然ラバ內地ノ產
業ニ「カルテル」ヲ許スト云フナラバ、產額
ハ幾何ヨリ御許シニナルノデアルカ、例へ
バ十万圓以上ノ產額ガナケレバ「カルテル」
ヲ許サヌ、或ハ一年ニ百万圓以上ノ產額ア
ルニアラザレバ「カルテル」ヲ許サヌトカ、
何カ產額ニ制限ト云フモノガ置カレテ居ル
ノデアルカドウカ、是ガ第三デアリマス、
ソレカラ
第四ニ承リタイノハ地域ノ關係デアリ
マス卽チ販賣統制、販賣聯盟ト云フガ如
キコトヲ致ス場合ニ於テ、或ハ此生產方面
ノ聯盟デモ宜シイ、同業者ト云フモノハ日
本全國ソ同業者デアルカ、若クハ關東關西
ト地域ヲ部分的ニ許スノデアルカ許サナ
イフデアルカ、地域ハ全國的ナリヤ、部分
的ナリヤ
第五ハ、國際「カルテル」ニ對シテボウヤ
ルカ御承知ノ通リ硫酸「アンモニヤ」ナド
ハ國際「カルテル」ヲヤラウト云フ議モ起
キテ居ル、若シ硫酸「アンモニヤ」合社ガ國
際「カルテル」ヲヤッタ、其國際「カルテル」
ニ對シテ、國家ガ干渉スル權利ガアルクデ
アルカサイソデアルカ、ツレガ第五デアリ
マス
第六ハ、是ハ企業聯盟デアリマスルガ故
ニ、箇々別々ノ會社、或ハ個人ガ聯盟ヲ致
シテ居ルガ、ソレガ段々ト進步致スコトニ
ナルト所謂事業ノ統一、同業ノ統一、言
葉ヲ換ヘテ言ワナラバ「トラスト」ノ組織ニ
變化ヲ來スコトガアル其場合ニ於テ、今
旧フ此統制法ニ依ッテ、之ヲ監督シ得ラレル
ヤ否ヤ
第七ハ、專賣特許品ニ對シ國家ハ干渉ス
ル、卽チ此法律ニ依ッテ干涉スル途ガ開ケテ
居ルカ開ケテ居ラナイカ
第八、瓦斯會社デアルトカ、或ハ電氣會
社詰リ公益ソ獨占的ク事業ト云フモノガ
多ク世ノ中ニアリマスガ、是等ニ向ッテ莫大
ナル配當ヲ致シクト云フ場合ニ當ッテ、此配
當ニ對シ配當制限ト云フ途ハ此統制法ニ
於テ開ケテ居ルカ、開ケテ居ラナイカ、其
次一
第九、丁度私モ產業合理局ヘ昨年參ッテ、
其主管者ノ中島男爵ニ御目ニ掛ッタ、男爵曰
ク「兎ニ角此產業統制ト云フガ如キ事ヲス
やじ、失業者ハウント殖エル、失業者ガ殖
エルニ非ザレバ、產業統制ノ效果ナシ」ト
云フコトヲ、中島男爵自ラ言ハレタノデア
リマス私モ同感デアル、然ラバ此不景氣
デ失業者ガ段々增加シツヽアル此時ニ方リ
マシテ、更ニ產業統制ト云フガ如キコトヲ
行ヘバ、一層失業者ノ數ヲ增加スルコトハ、
殆下火ヲ睹ルヨリモ明カデアリマス(拍手)
此失業者ニ對シテハ如何ナル對策、如何ナ
ル政策ヲ持ヲテ居ルカ、之ヲ第九ニ承ルノデ
アリマス
第十ト致シマシテ承リタイノハ、此產業
統制法律案ハ生產者或ハ販賣者ト云フモノ
ヲ保護スル精神カラ出來テ居ルヤウニ私ハ
考ヘルノデアリマス、面シテ生產ノ制限、
價格ノ協定ト云フガ如キ事ヲ致シテ、非常
ニ物價ガ高クナル、サウ云フ場合ニハ、
般消費者ト云フモノハ非常ナル不利益ヲ
被ラナケレバナラヌト云ワコトニ相成ルツ
デアリマスガ、果シテ此一般消費者ノ利益
ノ擁護、保護ハ、ドウ云フ點デオヤリナサ
ル御考デアルカ
ソレカラ最後ニ承リタイノハ、現內閣ハ
不景氣ニナッテモ構ハヌ、兎ニ角大整理ヲヤ
ルニ付テハ低物價政策、物ノ値段ヲ下ゲナ
ケレバナラヌ、斯ウ云フ方針ノ下ニ組閣以
來政治ヲ爲サッテ居ッタノデアリマスルガ、
若シ先刻私ガ御話シタ如ク、價格協定ノ「カ
ルテル」或ハ販賣分割ノ「カルテル」ノ如キ
事ヲ實施スルコトニナレバ、段々ト物價ガ
上ッテ來ル、卽チ組閣當時ニ聲明サレマシタ
ル所ノ低物價政策ト、此値段ヲ上ゲル政策
ト矛盾ハ致シテ居ラナイノデアラウカ、ド
ウデアラウカ、此事ヲ承リタイノデアリマ
久、更ニ御答辯ニ依リマシテ簡單ニ又御伺
ヲ致シタイト思ヒマス(拍手)
〔國務大臣俵孫一君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02019310228&spkNum=43
-
044・俵孫一
○國務大臣(俵孫一君) 只今ノ土井君ノ御
問ニ對シテ、各項ニ付テ簡單ニ御說明ヲ致
シテ置キマス
第一ノ御尋ハ、第一條ノ生產又ハ販賣ニ
關シ統制ヲスルト云フコトデアルガ、ドウ
云フ事項ニ對シテ統制ヲスルカト云フ御尋
デアルノデアリマス此度ノ重要產業ノ統
制ト云フコトニ付キマシテハヽ前ニ提出ノ
理由デ御說明申上ゲマシタ如ク、無謀ノ競
爭ヲ制限シタイト云フノデアリマス、ソレ
散ニ、其趣旨ハ之トシテ需要ト供給ノ調節ヲ
圖ルト云フコトデアリマス、此需要ト供給ノ
調節ヲ圖ルト云フ所ニ、無謀ノ競爭モ無ク
ナリマスシ、隨テ價格ノ安定ヲ付ケルコト
ガ出來ルノデアリマス、第一條ノ生產販賣
ト云フコトニ付キマシテハ吾々共ノ統制
ソ趣旨ハ、其生產ノ協定ヲスル、卽チ需給
ノ調節ヲ圖ル是ガ趣旨デアリマス是ガ
眼目デアリマス、隨ヒマシテ御尋ノ如ク
或ハ共同金融ノ途ヲ付ケマストカ、檢查ヲ
致シマストカ、原料ノ共同購入ヲ致ストカ
云ック如キ事ハ、此統制案ノ趣旨デハナイノ
デアリマス
第二ニ販賣ニ付テ價格ノ協定又ハ販路ノ
分割、斯ウ云フ事ニ付テヤルカドウカト云
ワコトデアリマスガ只今申土ゲマシタ趣
旨ノ通リ、吾々共ハ價格ノ釣上ト云フコト
ハ決シテ欲シナイノデアリマス、價格ノ安
定ヲ欲スル、ソレ故ニ安定ノ結果トシテ、
現在ノ無謀ノ競爭ヲ致シテ居ル價格ハ多
少上ル場合モアルデアリマセウケレドモ
此場合ニ於キマシテハ要スルニ價格ノ安
定ト云フコトヲ主トスルモノデアル、而シ
テ
第三ニ於キマシテ、輸出品ニ限局スルカ、
國內品モ尙ホ統制スルカト云フロトデアリ
マスガ、私共ハ主トシテ輸出品ニ向ッテ統制
ノ途ヲ圖リタイト思フソデアリマス、〓ナ
ガラ國內商品モ亦重要產業デアリマスルカ
ラヽ是モヤハリ統制產業ノ範圍ニ入レタイ
ト思フソデアリマスハ是等ハ何レモ第一條
ニ示スガ如ク、ドウ云フ產業ヲ此法律ノ統
制ノ適用ノ範圍ニスルカト云フコトニ付キ
マシテハ、主務大臣ハ統制委員會ノ議ヲ經
テ決定スルコトニ相成ッテ居ルノデアリマ
たかな?
ス、隨ヒマシテ土井君ハ、農家ノ副業ヲドウ
スルカ又ハ米穀ヲドウスルカト云フ御尋
デアリマスガ、斯ウ云フモノハ吾々ハ考へ
テハ居リマセヌ、卽チ吾々ノ指定セントス
ル考ノ外デアリマス
第四ニ、地域ハ全國的カ局部的カト云フ
御尋デアリマスガ、統制ヲ圖リマスル上ニ
ハドウシテモ全國的ニ統制ヲ付ケルノ外
ハナイノデアリマス、全國的ノ統制ヲ付ケ
ナクテモ、局部的ノ統制ヲ付ケテ目的ヲ達
シ得ルナラバ勿論局部的ニ相成ルデアリ
マセウガ、要ハ重要產業ノ統制デアルノデ
アリマス
第五ニ、國際「カルテル」ニ付テドウカ、此
法ノ趣旨ハ國際「カルテル」ニ付テハ及ボ
ス權能ハナイノデアリマス、但シ國內產業
ノ製造家ガ、國際「カルテル」ニ參加スルト
云フ場合ニ於キマシテハ此法律ガ働クモ
ノト考ヘテ居ルノデアリマス、統制ニ付テ
ハ「トラスト」ノ弊害ガアル、此「トラスト」
ニ付テハドウスルカト云フコトデアリマス
ガ、是ハ第三條ニ於キマシテ、其協定ガ公
益ニ反シ又ハ產業其モノヽ公正ナル利益ヲ
害スル斯ウ云フコトニ於キマシテハ、其
協定ヲ變更ヲ命ズルカ、又ハ取消ヲ命ズル
カ土井君ノ仰セラレタ通リニ、此法律ハ
一方ニ於テハ協定ヲ勸誘シ、協定ヲ必要ニ
應ジテ强制ハ致シマスルガ、他面ニ於テハ
世ニ所謂反「トラスト」反「カルテル」卽チ「ト
ラスト」「カルテル」ノ弊害ト云フモノヲ除
去スル適當ナル處置ヲ致ス積リデ、第三條
ニ其明文ヲ揭ゲテ居ルノデアリマス
第七ニ、專賣特許品ニ付テハドウスルカ、
是ハ專賣特許品デアリマスル以上ハ勿論
此統制ヲ適用スル必要ハアリマセヌ
第八ニ公益事業ニ付テ、瓦斯事業又ハ
電氣事業ニ付テハドウスルト云フコトデア
リマスルガ、是ハ瓦斯事業ノ如キ公益事業
ニ付テハ此法律ヲ適用スル積リハアリマ
セヌノミナラズ、電氣事業ニ付キマシテハ。
自ラ別種ノ統制法ガアルト云フコトニナリ
マスルカラ、此統制法ハ適用スル考ハナイ
ノデアリマス
第九ニ、此統制ヲ致スト云フコトニナレ
自然ニ所謂無駄ガ省ケルト云フコトニ
ナリ、隨テ失業ガ生ズルト云フコトニナッ
テ來ル、此統制法ノ執行ト失業トノ關係ハ
ドウカ、之ニ對スル對策ハドウカト云フ御
尋デアルノデアリマス、此點ニ付キマシテ
ハ私共或機會ニ於キマシテ、時々申述べ
タコトガアルノデアリマスルガ、我國ノ現
時ノ產業ノ無謀不當ナル競爭ハ、却テ產業
其モノヲ亡ボシテ居ルノデアリマス、產業
其モノヲ危殆ニ陷レ、產業其モノヲ不況ニ
陷ラシメテ居ル所ニ、卽チ其產業ガ成立タ
ヌ、隨テ失業ガ起ルノデアリマス、私共ノ
統制ト云フコトヲ論ジマスルノハ、其事業
ヲ盛ンナラシムル爲メ、發達セシムル爲ニ、
此統制ヲ付ケタイト云フノデアリマス、隨
テ其產業ノ存在アラシメ、其產業ノ發達ア
ラシムルコトデアリマスルカラ、失業ノ問
題ハ毫モ其憂ハナイノデアリマス
〔發言スル者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02019310228&spkNum=44
-
045・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 靜肅ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02019310228&spkNum=45
-
046・俵孫一
○國務大臣(俵孫一君)(續) 第十ニハ、生
產者ノ保護又ハ販賣者ノ保護ト云フコトニ
偏重致シテ、消費者ノコトハ少シモ考ヘナ
イカドウカト云フコトデアリマスルガ、此
點ハ吾々ガ此法律ヲ運用スルニ付キマシ
テ、最モ重大ニ考慮致シテ居ルノデアリマ
ス、是故ニ其協定ヲスル點ニ付キマシテモ、
又其協定ヲ變更又ハ取消ヲ命ジマスルニ付
キマシテモ、主務大臣ノミナラズ、統制委
員會ノ議ニ付シテ、其處置ナリ命令ヲ致ス
積リデアリマス、此命令ヲスルニ付キマシ
テハ唯單リ生產者又ハ販賣者ノ利益ノミ
ナラズ、消費者ノ利益ヲ大ニ考慮シナケレ
バナラヌ、玆ニ公益ガ存在スルノデアリマ
ス、公益ヲ十分ニ考ヘマスル所以ノモノハ、
一般消費者ノ利害ガドウカト云フコトヲ仔
細ニ〓究ヲ致シマシテ、此命令ヲ發シ、此
處置ヲ爲スノデアルノデアリマス
第十一ニ、低物價政策ト此法案ト矛盾ハ
セヌカト云フコトデアリマスルガ、前ニ申
シマスル通リニ、此統制ノ眼目ハ價格ノ安
定デアリマス、價格ノ釣上デハアリマセヌ、
ソレ故ニ少シモ低物價政策ト矛盾ハシナイ
ト云フコトヲ信ズルノデアリマス
〔土井權大君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02019310228&spkNum=46
-
047・土井權大
○土井權大君 ドウモ御答辯ハ遺憾ナガラ
其要領ヲ得マセヌ
第一、生產「カルテル」、販賣「カルテル」、
其生產「カルテル」ノ中ニハ原料「カルテル」、
金融「カルテル」、檢査「カルテル」、生產制
限、賃銀「カルテル」、其種類ガアルガ、其
種類ノ中ドレ〓〓ヲ實施ナサルカ、斯ウ尋
ネタノデアル、ソレガ無謀ナル競爭ガドウ
デアルトカ斯ウデアルトカ、一ツモ私ノ御
尋ヲ致シタコトニ當,テ居ラヌ、モウ少シ
「カルテル」ト云フコトニ付テ〓究ナサイ、
ソレヲヤラナケレバ駄目ダ、ソレカラ價格
ノ協定ト言ハレルガ、假ニアナタノ言ハレ
ル價格ノ算定デモ宜シイ、眞ニ販賣「カル
テル」デアルノカ、或ハ價格ノ協定ヲスルト
云フコトニ付テ、販路分割「カルテル」學問
ノ言葉ヲ以テ言フナラバ販路「カルテル」ト
云フコトヲヤラナケレバナラヌ、其事ヲ御
尋致シタ、ケレドモソレ等ニ何等ノ御答ガ
アリマセヌカラ、委員會マデニ十分「カルテ
ル」ノ御〓究ヲナサッテ、私ノ疑ガ眞ニ了解
出來ルヤウニ御準備ヲ願ヒタイ、ソレカラ
第二ニ申上ゲタイノハ、統制法律ト云フ
モノハ民政黨トデモ申シマセウカ、現內
閣トデモ申シマセウカ、所謂事業家保護主
義デアッテ、農家ナドヲ一切顧ミラレテ居ラ
又、ソレハ何故デアルカト言フナラバ主
ニ輸出品、海外貿易品ノ方ニ重キヲ置イテ、
農家ノ米デアルトカ或ハ副業品デアルト
カ、左樣ナ方ニハ一切ヤラナイ(「ソレハ別
ダ」ト呼フ者アリ)別デハアリマセヌ、斷ジ
テ別デハアリマセヌ、元來日本ニ於ケル農
村ノ發達セザルハ、生產ノ方面ニ重キヲ置
イテ、販賣方面ニ重キヲ置イテ居ラナイカ
ラ農村ハ困ル、生產ハ易ク販賣ハ難シ、眞
ニ農村ノ振興ヲ圖ラウトスルナラバ生產
ニ重キヲ置クト同時ニ、一方此生產物ノ販
賣、販路、之ニ重キヲ置クニアラザレバ
農村ノ振興ハ出來ナイノデアリマス、然ル
ニソレ等ハ何等顧ミナイノデアル、左樣ナ
方面ハヤラナイノデアル、大キナル事業家、
所謂世ノ中ニ於テ事業主義政治、大資本主
義政治ト言ハレルノハ此處デアル、農家ノ
敵ナリト言ハレルノハ-(「問題ガ違フ」
ト呼フ者アリ)問題ハ違ヒマセヌ、モット〓
究シ給ヘ、〓究スレバ問題ガ違ハナイト云
フコトガ分ル発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02019310228&spkNum=47
-
048・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 私語ヲ禁ジマス、
靜肅ニ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02019310228&spkNum=48
-
049・土井權大
○土井權大君(續) モウ少シ〓究シナサ
イ、〓究サヘスレバ分ル「カルテル」ヲ〓究
シテ御出デナサイ-更ニ斯樣ナ重要ナル
法律ヲ、此會期切迫ノ時ニ出サレルト云フ
ノハ、現內閣ハ所謂產業合理化デアルトカ、
國產愛用デアルトカ、斯樣ナ宣傳ヲナサッタ
ガ爲ニ、ドウシテモ辻褄ヲ合ハセ、或ハ宣
傳ヲ致サウト云フ意味デ、斯ウ云フモノヲ
出サレタト謂ハナケレバナラヌ、眞ニ眞心
ガアッテ御出シニナルナラバ、私ガ質問ヲ致
シタコトニ對シテ、悉ク明確ニ御答辯ノア
ル筈デアル、ソレガ無イト云フノハ宣傳
用ナリト言ハレテモ、如何ナル御返事ガ出
來ルカ、詳細ナル點ハ委員會ニ於テ十分御
尋致シタイト思ヒマスカラ、ソレマデ十分
ナル御〓究ヲ願ヒマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02019310228&spkNum=49
-
050・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 松村光三君
〔松村光三君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02019310228&spkNum=50
-
051・松村光三
○松村光三君 私ハ本案ニ對シテ極メテ簡
潔ナル質疑ヲ致シタイト思フノデアリマ
ス、條文其モノニ入ルニ先チマシテ、二ツ
ノ重要ナル點ヲ先ヅ質疑スルノデアリマス
第一ハ政府ハ果シテ如何ナル信念、如何
ナル究極ノ目的ヲ以テ此案ヲ制定シタカト
云フ、本案制定ノ根本的精神ガ不明瞭デアリ
マス、此點ヲ第一ニ伺フノデアリマス、何
故ト申スナラバ、本案ノ第一條ニ依リマ
スト、同業者ノ二分ノ一以上ノ加盟者ガ
アルナラバ屆出ル、更ニ其三分ノ二ノ贊成
ガアルナラバ、玆ニ此產業統制ヲ實施サレ
ルト云フコトデアルカラシテ、結局當該企
業ノ三分ノ一ノ人ガ結束ヲ致スナラバ當
該產業ノ統制ガ成立スルト云フコトニナリ
マス、要スルニ此案ハ、第二條ニ公正ナル利
益トカ、國民經濟ノ健全ナル發達トカ云ッテ
居ラレマスガ、此案ハ畢竟スルニ產業者助
長本位ノ案デアル、詰リ生產本位ノ案デア
ル言葉ヲ換ヘマスナラバ、資本主義其モ
ノヲ、補助シ、更ニ之ヲ助長スル所ノ、資
本主義萬能其モノヽ案デアリマス、是レ私
ガ本案提出ノ根本信念ニ付テ當局ニ伺フ理
山デアリマス、顧ミマスト、現內閣ノ唱ヘ
テ居ル國民經濟ノ健全ナル發達此處ニ
モ國民經濟ノ健全ナル發達ト言ハレテ居リ
マスガ-現內閣ノ國民經濟ノ健全ナル發
逹ト云フ意味ガ、ハッキリ分ラナイ、何故ナ
ラバ大藏大臣ハ、經濟トハ「エコノミー」デ
アッテ、ソレハ消費節約デアルト云フコトヲ
度々繰返シテ居ル、現內閣ノ所謂經濟トハ
消費ノ節約デアル、緊縮節約デアル、是一
十五六世紀ナラバ兎モ角モ、斯ノ如キ消費
節約、緊縮節約ノ經濟ヲ、國民經濟ダナド
ト云フ馬鹿々々シイ事ヲ、堂々ト唱ヘル
所ガ何處ニアリマスカ、要スルニ現內閣ノ
國民經濟ト云フノハ、消費節約、緊縮節約
デアルト今マデ唱ヘテ居ル、然ルニ此處ニ
出マシタ此案ノ所謂國民經濟ト云フノ
ハ、一體何ノ事デアルカ、私ハ此案ヲ見マ
スト、是ハ單ニ生產政策ノ、殊ニ生產本位
ノ資本家ノ生產本位ニ堕シテ居ル所ノ、
國民經濟ト解釋シナケレバナラヌト云フコ
トデアリマス、私ハ此意味ニ於テ、國民經
濟ノ健全ナル發達ト玆ニ唱ヘテ居ル意味ガ
ハッキリシナイノデアル、現內閣ノ茲ニ所謂
國民經濟ノ健全ナル發達ト云フコトハ何ヲ
意味スルカ、言葉ヲ換ヘルナラバ、此案ノ
根本信念、根本目的ハ何處ニ在ルカト云フ
コトヲ徹底的ニ伺フノデアリマス、何故ナ
レバ近時ノ政策ハ動モスルト資本主義ノ
生產本位ニ陷ル虞ガアル、更ニ動モスルト
勞働者ノ爲ノミノ分配本位ニ陷ル虞ガアル、
是ニ於テカ眞ノ國民經濟ナルモノハ分配
主義ノミニ餘リ偏セズ、又資本家ノ生產政
策ノミニモ偏シナイヤウナ案ガナケレバナ
ラナイ、少クトモ此產業統制案ハ、此意味
ニ於キマシテ、國民經濟ノ健全ナル發達ト
云フナラバ、ドウ云フ所ニ此根幹ガアルカ
ト云フコトヲ伺フノデアリマス、何故斯樣
ナコトヲ申スカト云フト、玆ニ國民經濟ノ
健全ナル發達トカ、公正ナル利益トカ言ハ
レルガ、一番必要ナル民衆ノ公正ナル福利
ノ增進ニ關シマシテ何等ノ規定ガナイ、卽
チ國民經濟ノ根幹ハ卽チ資本家ニモ墮セ
ズ、勞働者ニモ墮セザル所ノ、社會民衆ノ
消費者本位ノ政策、此處ニ本當ノ國民經濟
ガアル近時動モスルト國民經濟ノ本體ヲ
誤リ資本ニ傾キ勞働ニ傾イテ居ル、國民
經濟トハ卽チ厚生經濟、資本家ニモ傾カザ
ル勞働ノミニモ傾カザル消費者本位ノ
社會福祉ノ爲ノ經濟デナケレバナラヌ、此
意味ニ於テ私ハ本案ノ規定ニ付キマシテ、
現内閣ノ眞意ヲ先ヅ伺フノデアリマス、何
故斯樣ナコトヲ伺フカ
第二ニ進ミマシテ、此規定ニハ公正ナル
利益トカ、國民經濟ノ健全ナル發達トカ申
シテ居リマスガ、產業統制ニ必要ナル一ツ
ノ規定ヲ缺イテ居ル、ソレハ何デアリマス
カ、ソレハ國民經濟、卽チ厚生經濟ノ社會
福社ノ根幹デアル合理的公正ノ價格ト云フ
觀念ガ此處ニナイ、此規定ナキコトハ本案
ノ非常ナル缺點デアル、何故ナラバ先程當
局大臣ノ說明ニ依リマスト此案ハ價格ノ
釣上ハヤラヌガ、價格ノ安定ヲスルト言ッテ
居ル隨テ低物價政策ト牴觸シナイト云フ
呆ケタ答辯ヲセラレテ居ル、私ハ實ニ驚ク
ノデアル、恐ラク當局大臣ノ言フ意味ハ
第三條ニ於テ主務大臣ハ公益ニ反スルト
カ、又ハ當該企業ノ利益ヲ害スル場合ニハ、
是ガ變更取消ヲ命ズルカラ、消費者ノ利益
ヲ害サナイト云フノデアル、併ナガラ是ハ
少シク產業統制ノ過去ノ歷史ヲ見マスト
斯ノ如キ第三條ノ規定ハ空文デアリマス、
殆ド其活用ヲ見ナイ空文デアリマス、何故
ナレバ昭和二年ニ行ハレマシタ縞三綾工業
ニ對シテ嘗テ產業統制ヲ行ッタ、而モ此產業
統制ヲ行ヒマスト、其瞬間カラ價格ガ大ニ
上ッタ、更ニ輸出綿縮織ノ事業ニ關スル產業
統制ヲ實行シマスト、直グニ價ガ上ッタ、然
ルニ當局ハ產業統制ヲ行フガ、此價格ノ
安定、更ニ公正價格ノ矯正ト云フコトニ付
キマシテハ、何等ノ政策モ行ハレナイ、產
業統制ノ一番缺陷ハ此處ニアル、此第三條
ノ規定デハ、今マデ幾度カ斯ノ如キ規定ガ
アリマスガ、其效果ヲ見テ居ラナイ、ソコ
デ飜ノテ幾多ノ事業ヲ見マスルト、日本ニハ
電氣或ハ瓦斯、水道、地方鐵道、軌道法等
ニ、斯ノ如キ公共事業ニ對シマシテハ所
謂公益規定ガアル、然ルニ此公益規定ト云
フモノガ、殆ド其實效ヲ現シテ居ラナイ
(「ヒヤ〓〓」)私ハ一昨日遺憾ナガラ、瓦斯
業法改正案ガ出マシタ時ニ本會議ニ出席出
來ナカッタノデアリマスルガ、瓦斯ノ問題ノ
如キハ顯著ナ例デアル、瓦斯トカ、電氣ト
カ、水道トカ、斯ノ如キ公共事業ニ對シテ
ハ、監督取統規定ハ澤山アル、瓦斯事業法
第十二條ニハ、斯ウ云フヤウナ規定ガアル、
瓦斯ノ料金共他供給條件ニ關シ若シ不都合
ナコトガアッタナラバ、之ヲ取締ル規定ガチ
ヤントアル、然ルニ全國ノ瓦斯會社ニ對スル
政府ノ取締、殊ニ現內閣ノ取締方針ハドウ
デアルカト云フコトヲ問ハネバナラナイノ
デアリマス、斯ノ如ク瓦斯ニ關シマシテモ、
電氣ニ關シマシテモ、一般公共事業ハ斯ノ
如キ公益取締規定ガアルガ、殆ド厲行サレ
テ居ナイ、況ヤ此重要產業ヲ初メテ玆ニ新
ニ統制ヲ致シマスニ當リマシテハ必ズヤ
玆ニ合理的ノ價格-先程土井サンハ配當
ニ對シテドウスルカト云フコトヲ言ハレタ
ガ、配當ダケデハナイ、配當ハ勿論ノコト、
合理的ノ價格、能ク申シマスル「リーゾナー
ブル·プライス」ニ關シ規定ヲ缺ク場合ニ
ハ殆ド空文デアル意味ヲ成サナイト云
フコトデアリマス、此第三條ニ依リマシテ、
公正ナル販賣價格ノ制裁監督ヲ爲サントス
ルガ如キハ殆ド其效果-全ク其效果ヲ
現スコトガ出來ナイト云フコトヲ考ヘテ見
マス場合ニハ徒ニ資本主義ヲ助ケンガ爲
ニ、產業本位ニ陷フタ爲ニ、國民經濟ノ根幹
デアル厚生經濟社會ノ福社增進ト云フコト
ニ關シテ、何等ノ規定ノナイト云フコトハ、
是ハ大ナル缺點デアルト見ナケレバナラヌ
ノデアリマス之ニ對シマシテ、明快ナル
當局ノ說明ヲ伺フノデアリマス、私ハ先程
綾織物ノコトヲ申シマシタガ、澤山例ガア
ル、曩ニ大同燐寸會社ト云フモノガ出來タ、
其傍系會社竝旭燐寸會社ト云フモノガ出來
タ、是ハ昨年ノ多分十一月デアル、昨年ノ
十一月ニ斯ル一ノ產業統制ガ行ハレタ、其瞬
間カラ燐寸ノ値段ハ直グ二割モ三割モ上ツ
ク、產業統制ハ動モスレバ價格ノ安定ドコ
Pカ、價格ノ釣上ニアラズンバ何ゾヤデア
リマス、ソレ故ニ玆ニ公正價格ニ關スル制
裁規定ガナイ限リハ、卽チ骨拔キドコロカ、
案其モノガ意味ヲナサヌト云フコトヲ當局
ニ伺フノデアリマス
以上二ツノ根本的質疑ヲ致シマシテ、更
ニ案其モノノ內容ニ付テ簡單ニ伺ヒマス
ガ、第一條ノ「重要ナル產業」ト云フコトニ
付キマシテハ先程當局ノ御說明ニ依リマ
スト主ニ輸出工業デアルト云フコトヲ言
ハレル、是ハ能ク考ヘナケレバナラヌ事デ
アル、今日日本ノ物價ハ、成程大藏大臣ガ
自慢スル如ク安クナッテ居ル、併ナガラ安ク
ナッテ居ルモノハ、主ニ輸出工業品デアル
國內需要品ノ物價ハ餘リ安クナッテ居ラナ
イ、然ルニ輸出工業品ニ對シテ專ラ產業統
制ヲ行フ、「ダンピング」ヲシテ海外ニハ安ク
スルガ、國內ノ物價ハ玆ニ產業統制ニ依リ
却テ再ビ高クナルヤウナ虞ガアルナラバ、
國民經濟ノ健全ナル發達ドコロカ、低物價
政策ドコロカ、實ニ吾々民衆、大衆ハ此
爲ニ玆ニ非常ナ影響迷惑ヲ被ラナケレバナ
ラヌノデアリマス、輸出工業ニ對シテノミ
斯ノ如キ事ヲ行フト云フ趣旨ガ甚ダ不明瞭
デアリマス
更ニ產業統制委員會ヲ拵ヘテ、此處デ其
細カイコトヲ決メルト言ッテ居リマスガ、此
產業統制委員會ナルモノハ、今日現在合理
局ニアリマス委員會ヲ基礎トスルノデアル
カドウカ、合理局ニ產業統制委員會ト云フ
モノガアル、之ヲ基礎トスルノデアルカド
ウカ、或ハソレヲ更ニ勅令ニ依ッテ新シク擴
大スルノデアルカドウカ、殊ニ少クトモ厚
生經濟ヲ眼目トスル所ノ、吾々消費者ノ代
表者ヲ加ヘル意思アリヤ否ヤ、之ヲ伺フノ
デアリマス、若シ今日ノヤウナ形其モノデ
アリマシタナラバ、吾々民衆ノ意思ハ代表
サレテ居リマセヌ、少クトモ消費者階級ノ
代表者ヲ、之ニ加ヘナケレバナラヌノデア
リマス、更ニ此委員會ハ、例ヘバ紡績トカ、
鐵トカ、產業別ニ作ラレル意味デアリマス
カ、將又一般的統制委員會ヲ拵ヘルノデア
リマスカ、伺フノデアリマス
更ニ第四條ニ於キマシテ、其業務ニ關シ
檢査ヲ爲シ又ハ報〓ヲ爲ス、如何ナル方法
ヲ以チマシテ此業務上ノ監督檢査報告ヲ
爲サシムルノデアリマスカ、現在ノ商工省
ノ官吏其者ヲ以テ之ヲ監督スルノデアリマ
スカ、或ハ新ナルモノヲ任命スルノデアリ
マスカ例ヘバ會計士ノ如キ、斯ウ云フモ
ノヲ特ニ拵ヘマシテ、其事業會社ノ內容ノ
監査ヲ爲シ、或ハ報〓ヲ爲サシムル意思ガ
アリマスカドウカ、私ハ此案ヲ見マシテ、
殊ニ當局ノ說明ヲ聽キマシテ、非常ニ疑ヲ
益こ增ス者デアリマス、何故デアルカト申シ
マスト此案ハ無謀ナル競爭ヲ除ク、所謂
無謀ナル競爭バカリガ、俵商工大臣ノ頭ニ
非常ニコビリ付イテ居ル、無謀ナル競爭ヲ
除クト云フナラバ當局ハ百尺竿頭更ニ一
步ヲ進メテ、此無謀ナル競爭ヲ除クト同時
ニ、モット進ンデ適切ナル施設ヲ講ジナケレ
バナラヌノデアリマス、唯無謀ナル競爭ヲ
除カンガ爲ニ、玆ニ產業統制ヲ行フト申シ
マスガ、獨逸其他ノ產業統制ヲ見マスト
例ヘバ澤山ノ工場ガアル、其中生產條件ノ
引合ハナイ工場ハ之ヲ潰ス、產業條件ノ惡
イ工場ハ之ヲ潰シ、他ノ殘ッタ全部ノ工場
ガ潰シタ工場ノ責任ヲ分擔スルト云フ
所マデ進マナケレバ產業統制ノ如キハ
其效果ヲ擧ゲルコトハ出來ナイノデアル、
唯無謀ナル競爭ヲ除ク、サウシテ當局ハ
唯大體ニ於キマシテ高見ノ見物ヲシテ居
ルト云フヤウナ形デアル、左樣ナ產業統制
ガ、果シテ其效果ヲ擧ゲ得ルカドウカト云
フコトヲ疑ヲノデアリマス若シ眞ノ產業
統制ヲ行フナラバ、只今申シマシタヤウニ、
或ル工場ハ閉鎖スルト云フ所マデ進マネ
バ產業統制ハ行ハレナイ、若シ世界的不
況ノ此際、日本ニ斯ノ如キ事ヲ斷行致シマ
スナラバ、失業ヲ生ズルコトハ火ヲ睹ルヨ
リモ明ラカデアル、土井君ノ先刻質問セラ
レタル通リデアリマス、斯ノ如キ事ヲ實行
スル意思ガアルカドウカ、若シ實行シマス
ナラバ是ヨリ生ズル所ノ失業ニ向シテ、如
何ナル對策ヲ講ズルカ私ハ此第四條ノ監
督或ハ檢査ニ對シテ、是ガ如何ナル效果ヲ
生ズルカヲ疑フ者デアリマス
西第十條ニ於テ取締役ニ對スル罰則規
定ガアルガ、玆ニ取締役ト云フノハ商法
上ノ取締役全部デアリマスカ、或ハ業務擔
當者ノミデアリマスカ、重要ナル責任問題
デアリマスガ故ニ、此場合ノ所謂取締役ト
云フ意味ヲ御說明願ヒタイノデアリマス、
更ニ本法ノ施行期限ヲ五箇年ニ限ッテ居ル
ノハ、ドウ云フ意味デアリマスカ、苟モ斯ノ
如キ重大法案ヲ、現內閣ハ今日之ヲ簡單ニ
取扱ッテ居ルヤウナ顏ヲシテ居ルガ、恐ラク
是ハ現内閣ノ一大生命トモ云フベキ政策デ
アル、斯ル重大ナル法案ヲ五箇年ニ期限ヲ
限ルト云フ理由ハ何處ニ在ルノデアルカ
殊ニ制裁規定ノアル罰則規定ノアル斯ノ
如キ問題ハ、刑事政策ノ根本觀念カラ申シ
マシテモ、之ヲ五箇年ト限ルト云フコトハ
刑事政策ノ根本精神カラ云。テモ甚ダ誤解
デアル(拍手)唯一時ヤッテ見テ、旨ク行カナ
ケレバ止メヨウト云フナラバ、五箇年デナ
クテモ宜イ、ソレナラバ斯ノ如キ重大ナル
罰則規定ヲ設クルコトハ矛盾デアル、現內
閣殊ニ俵商工大臣ガ何モヤラナイコトハ
ドウモ周圍ニ對シ工合ガ惡イカラ、試メシ
ニヤッテ見ヨウ、ヤッテ見テ旨ク行カナケレ
バ引込マサウ、一年デモ宜イガ、マア五年
バカリノ期限ヲ付ケテ置カウト云フヤウナ
簡單ナル理由ナラバ、是ハ重大ナル事柄デ
アリマス、殊ニ先程申シマシタヤウニ、此
案ハ厚生經濟上消費者階級ニ重大ナル影響
ガアリマス案デアルカラ五年ナドヽ云フ
簡單ナルコトデハイケナイ、國家ノ生命ハ
永久デアル、國民經濟ノ發展ハ無限デアル、
斯ノ如キ場合ニ五箇年ナドヽシテ、試ミニ
此案ヲヤッテ見ルナドヽ云フコトハ、厚生經
濟ノ發展ト云フ觀念ノ少シモナイコトノ明
カナル證據デアリマス
私ハ尙ホ幾多間ヒタイコトガアリマス
ガ、他ハ委員會ニ讓リマシテ、只今伺ヒマ
シタル二ツノ根本問題、更ニ此條文ニ關ス
ル三四ノ問題ニ付キマシテ、明快ナル當局
ノ御說明ヲ願ヒタイノデアリマス
〔國務大臣俵孫一君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02019310228&spkNum=51
-
052・俵孫一
○國務大臣(俵孫一君) 松村君ノ質問ニ對
シマシテ簡單ニ御答シマス重大問題デア
ル產業統制案ノ根本精神ハ何カ、或ハ資本
主義ニ偏シハセヌカ、斯ウ云フ御尋デアリ
マスガ、私ハ本案ノ提出ノ理由ニ說明申上
ゲマシタ如ク現時ノ如キ無謀ノ競爭デハ
產業其モノガ成立タナイ、產業ガ成立タヌ
ケレバ、結局ハ此經濟ノ立直シガ出來ナイ
ノデアリマス詰リ產業ヲ成立タシムルヤ
ウニ、無謀ノ競爭ヲ制限スル必要ガアル、
卽チ此案ハ資本主義デモナケレバ或ハ何デ
モナイ、產業主義デアル產業ヲ盛ナラシ
ムル積リデアル、ソレ故ニ斯ノ如クスルコ
トニ依ッテ、產業ガ初メテ盛ニナルコトガ出
來ルト思フノデアル、而シテ或ハ消費者ノ
側ニ付テ少シモ考慮セヌデハナイカ是一
明カニ法文ノ中ニモ、所謂國民經濟ノ健全
ナル發達ト書イテアリマスノハ國民經濟
卽チ消費者側ノ利益ヲ考慮シナケレバナラ
ヌト云フコトデアルノデアリマス、現ニ第
三條ニモ統制協定ガ公益ニ反シ公益ニ
反スルト云フコトハ、消費者側ノ利益ニ反
スルト云フコトデアテハイカヌト云フコ
トガ、此條文ニ現ハレテ居ルノデアリマス
詰リ今申シマス通リニ、一面ニ於テハ生產
者ガ無謀ナ競爭ヲシテ、生產費ヲ切ッテマデ
販賣シナケレバナラヌト云ッタヤウナコト
ニ相成リマスト、生產者ガ潰レルノデアル
カラ、ソレハ當該產業ノ公正ナル利益ヲ保
護スル、其點ニ於テハ「リーゾネーブル·プ
ロフイット」ヲ保護スルト云フコトニ相成ッ
テ居ルノデアリマス、一面ニ於テ此爲ニ或
ハ消費者側ノ利益ヲ害シハセヌカト云フコ
トニナリマスカラ、其點ニ於テハ卽チ公益
ニ反スルモノハ、之ヲ變更又ハ取消ヲ命ズ
ルト云フコトデアルノデアリマス
第二ニ松村君ノ御趣旨ハ、或ハ監督上其
產業ノ價格ノ最高價格]ヲ決定スルノ權限
ヲ主務大臣ガ持タヌト云フコトガ缺點
デアルト云フ御趣意デハナイカト思フノデ
アリマス、此點ハ現ニ第三條ニ於テ其規定
ガアル、松村君ノ御趣旨ハ第三條ハ空文
デアルト仰セラレマシタガ、若モ第三條ガ
空文デアリマスルナラバ、最高價格ノ決定
ヲ爲スト云フ條文ヲ設ケマシテモ、空文ト
云フコトニ相成ルデハアリマセヌカ、私共
ニ第三條ハ卽チ公益ニ反シ或ハ產業若ク
ハ是ト密接ナル關係ヲ有スル產業ノ公正ナ
ル利益ヲ害スト認メタ場合ニ於キマシテ
ハ、主務大臣ハ是ガ變更又ハ取消ヲ命ズル
ト云フ、所謂「アンチ·トラスト」ノ嚴格ナ
ル規定ガアリマス以上ハ、之ヲ以テアナタ
ノ仰セラルヽ缺點ハ十分ニ除去ガ出來ル
ト信ズルノデアリマス、之ニ付テ縞三綾ノ
統制ニ付テノ御批評ガゴザイマシタ、是一
或ハ御調査デアルカモ知レマセヌガ縞三
綾ハ國內產業者ノ、今申シマス無謀ノ競爭
ノ結果、殆ド生產費ヲ切ッテ居ッタノデアリ
マス、生產費ヲ切ッテ居ルト、隨テ其當業
ガ成立チマセヌ、此故ニ當業者各、自ラガ
自覺的ニ統制ノ必要ヲ感ジ玆ニ合理局ハ
之ニ對シテ助成ヲ與ヘマシテ合理化ノ統
制ガ出來タノデアリマス此爲ニ價格ガ釣
上ッタト仰セラルヽガ、僅ニ一反ニ對シテ二
十錢シカ上ッテ居リマセヌ、二十錢ニ依。テ
初メテ此縞三綾ノ生產費ヲ切ッタコトガ「カ
バー」セラレテ居ルノデアリマス、斯ウ云フ譯
デアリマスカラ、吾々ノ統制ト云フコトハ
決シテ價格釣上デハナイ、詰リ價格ノ安定
デアリマシテ、其當業者ノ生產ヲ保護スル
ノデアリマス、(「燐寸ハドウシタ」ト呼フ者
アリ)燐寸ニ付テモ同樣デアリマス、ソレカ
ラシテ各條ニ付キマシテ御問デアリマシタ
カラ御答致シマスガ、先ヅ
第一ニ此產業ノ適用ハ輸出品ニ重キヲ置
クカ、是ハ果シテドウデアラウカト云フコ
トデアリマシタガ、吾々共ハ今日ノ貿易ノ
狀態ニ鑑ミマスト云フト、輸出品ニ限ッテ著
シク無謀競爭ガ行ハレテ居ルノデアリマス、
國內消費ノ製品モ亦無謀ノ競爭ガアリマス
ルガ、特ニ輸出ニ付テ非常ナル無謀ノ競爭
ガアルノデアリマス、此無謀ノ競爭ノ結果、
遂ニ生產者ノ存立ヲ害スルノミナラズ、輸
出業其モノヲ危クスル、斯ウ云フ無謀ノ競
爭デハ、却テ外國貿易ヲ阻碍致シマスカラ、
私ハソレ故ニ此產業ノ適用、卽チ統制ノ產
業ノ適用ハ主ニ輸出ニ付テ專ラ統制ヲス
ル考デアルト申上ゲタ所以デアリマス
統制委員會ノ構成ヲドウスルカ、目下合
理局ニアリマス統制委員會其モノヲ擴大ス
ルノデアルカ、適用スルノデアルカト云フ
仰セデアリマシタガ、是ハ此法文ニ依ル統
制委員會ハ從來合理局ノ中ニアリマス統
制委員會トハ全ク別物デアリマス、之ニ付
テハ別ニ勅令ヲ以テ此構成ヲ規定致ス積リ
デアリマス
統制委員會ハ產業別デアルカドウカ、是
ハ產業別デハアリマセヌ、所謂中心ノ統制
委員會ヲ作ッテ、此統制委員會ニ總テノ問題
ヲ付議致ス積リデアルノデアリマス、檢查
或ハ報〓ノ調査ヲ新ニ人ヲ命ジテヤルカド
ウカト云フ點デアリマスガ、是ハ今ノ所デ
ハ新ニ人ヲ命ジテヤルト云ッタ如キ考ハ持y
テ居ラヌノデアリマス
第十條ノ取締役、是ハ此業務ニ當ノタ責任
ノアル取締役ヲ意味スル積リデアリマス
最後ニ此法律ノ效力ヲ有期限ニシタノハ
ドウ云フ積リデアルカ、之ニ付テハ簡單ナ
ガラ能ク御說明ヲ申上ゲテ置キタイノデア
リマス、元來此產業統制ノ案ト申シマスモ
ノハ、自由競爭ノ制限デアリマス、目下極
メテ產業狀態ガ無謀ノ競爭ニ陷リマシテ、
全タ產業土ノ混亂狀態ニ陷ッテ居リマスノ
デアリマス、此混亂狀態ヲ救濟スルニアラ
ザレバ、我國ノ產業其モノヲ救濟スル譯ニ
行カヌト考ヘテ居ルノデゴザイマス、併ナ
ガラ此統制ハ今申ス產業ノ現狀ニ卽シマシ
テ已ムヲ得ザル例外規定デアリマス、ソ
レ故ニ斯ノ如キ規定ハ、目下ノ狀態ニ卽シ
テ行フ所ノ法制デアリマスノデ、其實績ガ
擧ル後ニ於キマシテハ此法制ノ效力ヲ失
ハシムルコトガ是レ卽チ純理ニ基イタモ
ノデアルト思フノデアリマス、凡ソ五年ヲ
以テ此法制ヲ行ヒマス時ニ於テ、吾々ガ目
的トスル所ノ產業ノ統制ノ目的ハ達シ得ル
モノト思フノデアリマス、決シテ徒ニ、若
ハ試ニ-試驗的ニ此法案ヲ發布スルトカ
適用スルトカ言ッタ如キ、ソンナ精神ハ毛頭
ナイノデアリマス(拍手)
〔松村光三君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02019310228&spkNum=52
-
053・松村光三
○松村光三君 極メテ簡單ニ質疑ヲ致シタ
ノデアリマスルガ、益〓其要ヲ得ナクナリ
マシタ、要點ハ何レ委員會ニ於テ詳シク伺
ヒマスガ、併シ只今御答ノ要點ニ付テ更ニ
二三疑義ガアル
第一本案成立ハ今日ノ無謀ノ競爭ヲ除
クガ爲ニ產業主義塙重デアル、是ガ間違ダ
ト聞イタノデアル、產業主義ノミデハイケ
ナイ、產業主義ト共ニ國民經濟主義、卽チ
厚生經濟主義デナケレバナラヌデハナイカ
ト云フコトヲ第一ニ伺ッタノデアリマス、產
業主義ハ資本家主義ニ墮スルカラ、消費者
ヲ無視スル結果ニ陷ル產業主義ト共ニ少
クトモ國民經濟主義、厚生經濟主義ノ根本
信念ヲ忘レテハナラヌト云フコトガ第一ノ
要諦デアル
第二、先程俵大臣ハ英語ヲ言ヒマシタガ
「リーゾネーブル·プロフイット」ダケデハイ
カヌ「リーゾネーブル·プライス」公正合理
的價格ノ觀念ヲ加ヘヨ、公正利益ノ問題ノ
ミナラズ、公正合理的ナル價格ノ觀念ヲ加
ヘヨト云フノデアル、此點ニ付テハ私ハ必
ズシモ最高價格トハ言ハナイ、最高價格ト
ハ言ハヌケレドモ、苟モ斯ノ如キ法案ニ對シ
テハ此第二條ニ一項目ヲ加ヘルカ、修正
スルノ必要ガアル卽チ玆ニ合理的ノ價格、
當該產業ノ合理的ノ價格ト云フ意味ノコト
ヲ加ヘナケレバ、此法案ハ不徹底デアルト
云フ意味デアリマス、更に
第三ニハ、第四條ノ規定ヲ行フノニハ
現在ノ商工省ノ役人デ澤山デアルト言ハレ
ル、私ハ現在ノ御役人、卽チ極端ニ申シマ
スナラバ、官僚主義ノ下ニ於キマスル官僚
ノ役人ノ手デ以テ、ドウシテ自由ナル民間
事業ヲ監督シ、之ヲ調査スルコトガ出來マ
スカ、斯ノ如キ官僚政治ノ下ニアリマシテ、
民間ノ自由ナル一般產業ヲ監督シ、調査セ
ントスルガ如キハ二階カラ眼藥ヲ差ス以
上ニ無意義デアリマス、殆ド其效果ヲ擧ゲ
得ザルノミナラズ、更ニ幾多ノ弊害ガ是ヨ
リ起ルト云フコトヲ、御承知願ハナケレバ
ナラヌノデアリマス、更ニ
第四ニハ大臣ノ說明ハ、兎ニ角現在困ッ
テ居ルカラ、其仕事ノ救濟々々卽チ現實
暴露デアル、此困ッテ居ルノヲ救濟シヨウト
云フ不景氣對策デアル、民政黨ノ拵ヘタ不
景氣其モノヽ對策デアル、此不景氣對策ヲ
ヤル、ソレダカラ五箇年モヤッタラ宜カラ
ウト云フ、私ハ實ニ驚ク、苟モ國家ガ信念
ヲ以テ、本當ニ國民經濟ノ發達ノ爲ニ、本
當ニ社會福利ノ爲ニ產業統制ヲ行フナラ
バ五箇年ハ愚カ、國家ノ存續スル限リ行
フ所ノ產業統制デナケレバナラヌ、然ルニ
此不景氣ヲ救ハンガ爲ニ、唯.一時ノ糊塗
策ニ五箇年行ッタナラバ十分デアルナドヽ
言フ、世界何レノ國ニ年限ヲ限ッテ產業統制
ヲ行フ國ガ何處ニアルカ
更ニ先程私ガ伺ヒマシタ燐寸會社ノコト
ニ付キマシテ、燐寸會社ハ三割モ値ガ上ッ
タ合理化ヲヤルト、產業統制ヲヤルト
直グ三割モ上ッタト、質問ニ對シ燐寸モ縞
三綾工業同樣デアルナドヽ簡單ナル御答
デアリマシタ、私ハ他ニ色々ナ事業ノ內容
ヲ玆ニ擧ゲルコトハ避ケマシテ何レ委員
會ニ於テ申上ゲマスガ、產業統制ヲ行フニ
當リマシテハ眼目ハ此信念ヲ以テ厚生經
濟、本當ノ國民經濟ノ根本思想ヲ忘レテハ
イカヌト云フコトヲ、繰返シ當局ニ御注意
ヲ申上ゲマシテ、此質問ヲ打切リタイト思
フノデアリマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02019310228&spkNum=53
-
054・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 鷲野米太郞君
〔鷲野米太郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02019310228&spkNum=54
-
055・鷲野米太郎
○鷲野米太郞君 私モ本案ニ付テ數箇ノ問
題ヲ提供シテ、當局ノ御意見ヲ伺ヒタイト
思ヒマス、大分先程來ノ質問ト重複ヲシテ
居リマスカラ成ベク之ヲ避ケテ御伺致ス
コトニ致シマス
第本案ノ適用ノ範圍デアリマスガ、
之ニ付キマシテ土井君及其他ノ質問ニ對シ
テ商工大臣ノ御答ガアリマシタガ私ハ商
工大臣ノ御答ハ主トシテ輸出工業ト云フ
御話デアリマシタケレドモ、此案ヲ能ク讀
ミマスト、法律トナッタ曉ニハ、ソレ以外ノ
產業ニ付テ此法律ノ適用ハ確ニ出來ルモノ
ト考ヘルノデアリマスガ、此重要產業ノ統
制ニ關スル法律案、有勅旨ヲ奉ジ帝國議
會ニ提出スト云フ所ニ、商工大臣ト、農林
大臣ト、遞信大臣ノ三大臣ガ、總理大臣代
理ノ外ニ名ヲ列セラレテアリマスガ、恐ク
ハ私ハ此法律ハ電力ニ關スル統制ニモ適
用ヲスルナラバ出來ルモノト考ヘルノデア
リマス、ソレカラ又其他ノ水產業デアルト
カ、サウ云フモノニ對シテモ、適用シヨウト
思ツタラ適用シテ差支ナイ、又適用スル必要
ガアルナラバ適用スベキデアル、サウ云フ
意味カラ致シマシテ、隨分本法ノ適用ノ範
圍ハ廣汎ニ涉ルベキモノト私ハ考ハラレル
ノデアリマス、或ハ交通運輸ノヤウナモノ
ニモ適用ガ出來ルカモ分ラヌケレドモ、此
立法ノ大體ノ仕組カラ申シマシテ、鐵道デ
アルトカ、サウ云フヤウナモノニハ適用セ
ナイト云フ趣旨ノヤウニ考ヘラレルノデア
リマスケレドモ、遞信大臣モ名ヲ列セラレ
テ居ルト云フ所カラ考ヘマスレバ、電力統
制ナドニハ確ニ此法律ヲ適用スルト云フ御
意思ノアルモノト見テ差支ナイト考ヘルノ
デアリマス、サウ云フ意味カラ云ヒマスト、
是ガ法律トナッタ曉ニハ、隨分廣汎ニ適用ヲ
見ルベキモノデアリマスガ、商工大臣ハ主
トシテ輸出工業ト仰シヤッタノデアリマス、
私ハ農林大臣、遞信大臣或ハ總理大臣代理
ニ對シテ、本法適用ノ範圍ハ果シテ商工大臣
ノ御答辯ノ通リデアルカドウカト云フコト
ヲ、更ニ御伺シタイト考ルノデアリマス
ソレカラ有效期限ノコトニ付キマシテ
私モ松村君ト同樣ノ考ヲ持ッテ居ルノデゴ
ザイマスガ、商工大臣ハ五箇年デ結構デア
ルト云フノデアリマスガ、單ニ不況切拔ケ
ノ資本家ヲ擁護スル精神デアルナラバ、五
箇年デ結構デアルケレドモ「カルテル」ト云
フコトヲ一方カラ取締リ、獨占價格ヲ形成
スルト云フコトニ對シ、國民經濟ヲ保護シ、
消費者ノ立場ヲ擁護スル上カラ取締ルトス
ルナラバ此法律ハ永遠ノモノデナケレバ
ナラヌ、將來此法律ノ結果、產業ガ統制セ
ラレタナラバ、非常ニ資本家ノ力ガ强クナッ
テ、其結果ハ不況切拔ケノ後ニハ資本
家ノ立場ガ有利ニナッテ、消費者ノ立場モ考
ヘズニ、價格ノ吊上ト云フコトニ向ッテ邁進
シテ行クニ違ヒナイト私ハ考ヘルノデアリ
マく、若シ取締ガ不十分デアッタナラバ、サ
ウ云フ方面ニ向フノデアルガ、五箇年ノ有
效期間デアッタナラバ、此法律ガ消滅シタ後
ニハ其取締ハドウシテ取締ルノデアルカ
〔「前項ノ期間經過後ト雖モ之ヲ適用ス
トアルデナイカ、能ク調ベテ來イ」ト
呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02019310228&spkNum=55
-
056・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 靜肅ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02019310228&spkNum=56
-
057・鷲野米太郎
○鷲野米太郞君(續) サウ云フ筈ハナイデ
スソレハ違ヒマス、アナタノ仰シヤルノ
ハ僕ノ話ト精神ガ違ヒマス
〔「能ク調ベテ來イ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02019310228&spkNum=57
-
058・藤澤幾之輔
○議長 (藤澤幾之輔君)私語ヲ禁ジマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02019310228&spkNum=58
-
059・鷲野米太郎
○鷲野米太郞君(續) ソレハ違ヒマス、「前
項ノ期間內ニ爲サレタル本法又ハ本法ニ基
キテ爲ス處分ニ違反スル行爲ニ付テハ本法
ノ罰則ハ前項ノ期間經過ト雖モ仍之ヲ適用
ス」ト云フコトデアッテ、斯ンナ詰ラヌ期間
ノ犯罪ノ處分ニ關スルコトヲ聞イテ居ルノ
デナイ··発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02019310228&spkNum=59
-
060・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 鷲野君、私語シテ
ハイケマセヌ
〔「何ヲ言ッテ居ル」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02019310228&spkNum=60
-
061・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 眞鍋君靜肅ニ願ヒ
や、発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02019310228&spkNum=61
-
062・鷲野米太郎
○鷲野米太郞君(續) モウ少シ〓究ナサ
イ、ソンナ馬鹿ナコトヲ聞イテ居ルノデナ
イ、私ハ現在ノ產業ノ自由主義、自由競爭放
任主義ノ下ニ、餘リ產業無政府狀態ヲ呈シ
テ居ルト云フコトハ、非常ニ不都合ナコトデ
アルカラ、產業統制ニ關スル制度ガ必要ト考
ヘルノデアリマスケレドモ、又一方價格ノ吊
上デアルトカ、或ハ生產協定デアルトカ、價格
協定デアルトカ云フコトハ、今日ニ於テモ消
費者側、或ハ或生產品ヲ使用スル當業者側ニ
不便ヲ呈シテ居ル、譬ヘテ見マスト綿絲ノ
操短ト云フコトガ、割合ニ極端ニ行ッテ居ル
ノデ需給ノ關係ヲ離レテ、需要ヨリモ供
給ガ少クナッテ居ルカラ、綿絲ハ先物ガ非常
ニ安クテ、當月物ガ非常ニ高イヤウナ、サ
ウ云フ釣合ヲ保タナイ所フ狀態ヲ呈シテ居
ル此關係カラ商工大臣モ御承知ノ、縞三
綾業者ハ保稅工場ヲ設ケテ、支那ノ綿絲
ヲ輸入シテ、更ニ輸出スル時ニハ關稅ノ免
除ヲ得ヨウトシテ、大藏省又ハ商工省ニ陳
情シテ居ルケレドモ、大藏省モ、商工省モ
紡績業者ノ立場ヲ保護シテ、縞三綾業者ノ
中請ハ容レナイヤウナ狀態ガアル、現在ニ
於テモ既ニサウデアルナラバ、將來ニ於テ
ハ大イニ其虞レガアルカラ、此五箇年ト期
限ヲ限ッタコトハ、絕對ニ認メルコトガ出來
ナイモノデアッテ、此法律ハ永遠ニ生命ノ
アル法律トシナケレバナラヌト考ヘルノデ
アリマスルガ、商工大臣ハ五箇年デ十分デ
アルト云フ御意見デアルカ、其點ヲ確メタ
イト考ヘルノデアリマス
ソレカラ統制委員會ノ組織ニ付キマシテ、
松村君ノ質問ガアッタノデ、大體ハ分ッタノ
デアリマスルガ、私ハ恐クハ統制委員會ノ
組織モ、ヤハリ月並的ノ、政府ノ御用ヲス
ルヤウナ有觸レタ(拍手)名ダケ名高イ所ノ
商工會議所ノ主腦者デアルトカ、御用實業
家ヲ中心トシテ竝ベテ、ソコヘ官吏ヲ加へ、
學者ヲ加ヘ、或ハ兩院議員ヲ加フル位ノモ
ノデアラウト考ヘルノデアリマスルガ、此
法律ハ一方カラ言ッタラ、消費者ノ立場ヲ
守ラナケレバナラヌ法律デアリマスルカラ、
ドウシテモ私ハ消費者側、特ニ下層階級ヲ
代表スベキ消費者側ノ勞働組合ノ關係者デ
アルトカ、或ハ消費組合ノ關係者デアルト
カ、或ハ無產黨ノ關係者デアルトカ云フ者
ヲ加ヘナケレバナラヌト考ヘルノデアリマ
ス、又公平ト云フ立場カラ、或ハ會計檢査
院ノ院長デアルトカ、行政裁判所ノ評定官
デアルトカ、普通ノ裁判官ノヤウナ者ヲ加
ヘナケレバナラヌト考ヘルノデアリマスル
ガ當局者ハドウ云フ御意見デアルカ、此
點モ御伺致シタイト存ジマス
〔發言スル者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02019310228&spkNum=62
-
063・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 靜肅ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02019310228&spkNum=63
-
064・鷲野米太郎
○鷲野米太郞君(續) ソレカラ最高價格決
定ノ事デアリマスルガ、是モ松村君ノ御質
問ガアッタノデアリマスルケレドモ、私モ此
點ニ對シテ疑問ヲ持クテ居ル、第三條ニ「統
制委員會ノ議ヲ經テ其ノ變更又ハ取消ヲ命
ズルコトヲ得」トアルガ、價格協定トシテ、
非常ニ價格ノ高イ所デ協定シタ時ニ、此規
定ニ依ッテ商工大臣ガ統制委員會ノ議ヲ經
テ最高價格ヲ指定スルコトハ、私ハ出來ナ
イト考ヘルノデアリマス、變更ノ命令ハ出
來ルケレドモ、最高價格ヲ直チニ指定スル
コトハ出來ナイト思フ、此權限ガ當該主務
大臣ニ無カッタナラバ、或ル場合ニハ此產業
統制ニ關スル法律ト云フモノハ、資本家擁
護ノ法律ニナッテシマッテ、消費者ノ立場ト
云フモノガ蹂躪セラレテシマフノデハナイ
カト考ヘルノデアリマス、故ニドウシテモ
私ハ最高價格ヲ何カノ方法デ定メルカ、或
ハ最高價格ヲ決定シテ指圖ヲスル所ノ權限
ガ、主務大臣ニナケレバナラヌト考ヘルノ
デアリマスルガ、是ダケノ規定ガ十分ト尙
ホ御考ヘニナラレルカ、其點ヲ重ネテ御伺
致シタイト存ジマス
ソレカラ此法律ノ第一條ヲ見マスト〓〓〓
要ナル產業ヲ營ム者生產又ハ販賣ニ關シ命
令ノ定ムル統制協定ヲ爲シタル場合ニ於テ
同業者二分ノ一以上ノ加盟アルトキハ命令
ノ定ムル期間內ニ之ヲ主務大臣ニ屆出ヅベ
シ」トアッテ、唯二分ノ一以上ノ加盟ト云フ
コトデ、資本トカ或ハ事業關係ノ大小ト云
フコトヲ考ヘズニ、營業者ノ數ニ於テ決定
ノ出來ルヤウナ規定デアリマス、又第二條ヲ
見マスルト「主務大臣前條ノ統制協定ノ加盟
者三分ノ二以上ノ申請アリタル場合」トアフ
テ此場合ニ於テモ單ニ營業主體ノ數ノミ
ノ規定デアリマスルガ、斯ウ云フ方針デ進
ンデ參リマシテモ、私ハ大體ニ於テ差支ハ
ナイト思ヒマスルケレドモ、或ル場合ニハ
非常ナ大キナ資本ヲ擁シテ居ル營業者ト
小サナ營業者トガ競爭ヲスルヤウナ場合
ニ.多數ノ小資本ノ營業者ガ國結ヲ致シマ
シ 、少數ノ大資本ヲ以テ事業ヲシテ居ル
者ヲ、數ニ於テ壓倒スルヤウナ結果ニナッ
テ、非當ナ不公正ナ結果ヲ呈スルノデハナ
イカト考ヘマスルノデ、或ハ何カノ方法デ
資本額トカ、或ハ設備ノ模樣デアルトカ、
從業員ノ數デアルトカ云フモノヲ考慮スル
必要ガナイカドウカ、之ヲ御伺致シタイノ
デアリマス
ソレカラ私ハ多少商工大臣ダケデハ御答
辯ノ出來ナイ點モ伺ヒタイト存ジマシタノ
デ、總理大臣代理及ビ農林大臣ノ御出席ヲ
御願致シタメデアリマスルケレドモ、マダ御
出席ガアリマセヌ、併シ質問ハ致シマスル
カラ、商工大臣ガ御答ガ出來ナイ點ハ、御
協議ノ上改メテ御答辯ヲ願ヒタイノデアリ
マス(「委員會デヤレ」ト呼フ者アリ)委員ハ
九名ニスルト云フコトデアッテ、吾々ハ委員
ヲ希望シタケレドモ割當ガナイ、第一控室
ニハ吾々國民同志會ニモ、無產黨ニモ割當
ガナイノデアル(「ヒヤ〓〓」)此案ハ民政黨
及ビ政友會ノ獨占ノ案デナクシテ、國民ノ
產業、國民ノ經濟、消費者ノ立場カラ考へ
テモ、重要ナ案デアルカラ、吾々ハ十分ニ
質疑モ致シタイノデアリマスケレドモ、委
員會ニ出席スルコトガ出來ナイカラ、隨テ
此席デ聽カザルヲ得ナイノデアル(拍手)サ
ウシテ今私ガ聽カウトスル點ハ、委員會デ
質問スルヤウナ事デハナクシテ、モット重
要ナ點デアルノデアリマス(「簡單々々」)私
ハ簡單ニ早クヤル積リデアッタノデアリマ
スケレドモ、色々ト詰ラヌ橫槍ヲ、誤解シ
テ入レル人ガアルノデ、時間ガ取ラレタノ
デアリマス、眞鍋儀十君ノ如キハ其一人デ
アリマス
〔眞鍋儀十君「法案ヲ見ロ、期間經過後
ト雖モ適用ストアルヂヤナイカ」ト呼
フ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02019310228&spkNum=64
-
065・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 靜肅ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02019310228&spkNum=65
-
066・鷲野米太郎
○鷲野米太郞君(續) 熟讀ナサイ、私ノ言
ハントスル所ハ、ソンナ意味デハナイノデ
ス
私ハ政府ノ關稅政策ト不當廉賣取締ニ關
スル御意見ヲ、此場合御伺致スト云フコト
ハ此產業統制ニ關スル法案ノ審議ニ當ク
テ、最モ重要ナ事ト考ヘルノデアリマスカ
ラ、此點ヲ御伺致シタイ、產業統制ト云フ制
度ハ一面カラ考ヘマスナラバ產業保護
ニ關スル一ツノ形式トナルノデアリマス
ソレデ關稅政策ト非常ナ重要ナ關係ガアル
ノデアリマス、近來世界ノ風潮ガ段々變ッ
テ參リマシテ、產業上ノ自由デアルトカ、
經濟自由デアルトカ云フヤウナ原則ハ、政
治ノ實際ニ於テハ適用セラレナクナッタト
云フコトハモウ旣ニ政府當局ノ十分御承
知ノコトデアラウト考ヘルノデアリマス
所ガ私ハ是ニ於テ特ニ伺ハナケレバナラヌ
點ハ、關稅ニ關スル方針、又ハ硫安ノ不當廉
賣ナドニ關スル政府ノ熊度ト云フモノガ、
甚ダ透明ヲ缺イテ居ル點デアリマス、鐵ノ
關稅引上ヲ政府ガ唱ヘテ居ルカト思ヘバ
或ル一部分ニ反對ガ現ハレテ來ルト、鐵ノ
關稅引上ヲ中止シ此爲ニ製鐵合同ト云フ
重要ナ政府ノ政策モ、之ヲ中絕シナケレバ
ナラヌト云フヤウナ運命ニ立至ッテ居ルノ
デアリマス、大藏大臣ハ曾テ大阪ニ於テ鐵
關稅引上ヲシナイト云フ演說ヲシテ置キナ
ガラ、昨年ノ秋アタリカラ鐵ノ關稅ヲ引上
ゲナケレバナラヌト云フヤウナコトヲ復タ
唱ヘ出シテ、最近ニナリマスルト、又ドウ
ヤラ大藏省ニ於テ反對ガアルト云フコト
デ、鐵ノ關稅引上ト云フコトハ中止スルヤ
ウデアッテ、其爲ニ製鐵ノ合同ト云フ、重要
ナ產業ノ統制ノ案件ト云フモノモ、反古ニ
ナッテシマッテ、商工大臣ハ非常ナ難境ニ立
タレタト云フコトヲ聞イテ居ルノデアリマ
ス、斯ウ云フヤウニ民政黨ノ關稅政策ニ對
スル考ト云フモノハ非常ニ不透明デアル
ヤウデアリマス(拍手)最近ニハ木材ノ關稅
引上ヲヤリ出スカト思ヘバ、又一方カラ人
絹ノ關稅引下ヲヤラウトシテ居ルノデアリ
マス、サウシテ製鐵ノ關稅ヲドウスルカ、此
方針モマダ定マラヌ、其他ノ問題ニ付テ
モ
〔此時發言スル者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02019310228&spkNum=66
-
067・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 靜肅ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02019310228&spkNum=67
-
068・鷲野米太郎
○鷲野米太郞君(續) 一方ニハ產業統制ノ
制度ヲ設ケヨウトシテ居ル他方デハ關稅
ニ關スル政府ノ態度ト云フモノハ定マラヌ
ト云フコトハ甚ダ私ハ不都合デハナイカ
ト考ヘルノデアリマス、民政黨ハ政友會ト
多少違ッテ今日ニ至ル迄ドチラカト云ヘバ、
總テ關稅等ニ關スル態度ハ、自由經濟主義的
ナ態度ヲ執ッテ來タノデアリマシタガ、其爲
ニ今マデ屢〓手形ヲ振出シタ爲ニ、色々ノ
行詰リヲ生ジテ煩悶苦悶ヲシテ居ルコト
ト私ハ考ヘルノデアルノデアリマス(拍手)
一體民政黨ガ今日マデ唱ヘ來タタ所ノ自由
主義的ナ經濟政策ト云フモノハ今日ノ場
合殊ニ產業統制ノ制度ヲ實施シヨウト云フ
ヤウナ時代ニ當フテハ根本的ニ此方針ヲ改
訂スル必要ガアルノデハナイカ、此點ヲ私
ハ政府當局ニ御伺致シタイト存ジマス
ソレカラ商工大臣ト農林大臣トハ、硫安
ノ「ダンピング」ニ對スル問題ニ付テ、意見
ガ非常ニ齟齬シテ居ルヤウニ私ハ拜見ヲ致
スノデアリマスガ、ヤハリ硫安ノ「ダンピン
グ」ニ對スル問題ハ、此處デ不當廉賣取締法
ノ適用モシナイデ、此儘放任シテ置ク積リ
デアルカドウカ、議會中ハ色々ノ關係カラ、
其點モハッキリスルコトガ出來ナイカラ、不
鮮明ニスル積リデアルカドウカト云フコト
ヲ、御伺致シタイノデアリマス、抑、窒素
工業ニ關係ノコトハ、一方カラ申シマシタ
ナラバ農民ノ利害ニ重大ナ關係ガアルコ
トデアルノデアリマスルケレドモ、窒素工
業ノ如キ前途アル產業ハ、國家ノ一ツノ重
要ナ方策トシテ、前途ヲ考ヘズニ目先バカ
リ考ヘテ、糊塗曖昧ノ間ニ進ンデ行クト云
フコトハ、非常ニ私ハ我國ノ將來ニ憂フベ
キコトデハナイカト考ヘルノデアリマス、
燐寸工業ノコトヲ松村君ガ申シマシタガ、
恐クハ燐寸工業ノ過去ト現在ノ狀態ヲ顧
ミ、靜ニ判斷シタナラバ、此硫安ノ「ダンピ
ング」ノ問題ト云フモノガ、決シテ輕々シイ
問題デナイト云フコトハ、皆樣御分リノコ
トヽ考ヘルノデアリマス、殷鑑ハ決シテ遠
カラズ燐寸工業其モノニ在ルノデアリマ
ス、燐寸工業ノ今日ノ爲體ト云フモノハ、
瑞典ノ燐寸ノ「ダンピング」ノ爲ニ、我國ノ
燐寸工業ガ倒サレタノデアリマス、硫安ト
云ハズ、其他ノ產業ニ於テ、外國ノ「ダンピ
ング」ノ爲ニ、我國ノ產業ガ非常ニ脅威ヲ受
ケテ居ルト云フコトハ明ナコトデアリマ
ス、我國ノ製鐵工業ガ印度ノ銑鐵ノ爲ニ非
常ナ打擊ヲ受ケテ居ル、窒素工業モ共通リ
デアル、燐寸工業ノ二ノ舞ヲ踏マナイヤウ
ニ、確乎タル所ノ方針ヲ決メテ、當業者ヲ
指導シ國民ノ向フ所ヲ定メナケレバナラ
ヌノデアルノニ、何タルコトデアリマスル
カ、商工大臣ト農林大臣トハ始終議員ノ質
問ニ對スル答辯ガ違ッテ合ハナイ、是ハ私ハ
政府ノ政策ノ不統一ノ結果デアルト言ハズ
シテ何デアラウト考ヘルノデアリマス(拍
手)此點ニ付キマシテ農林大臣、商工大臣、
總理大臣代理ガ、此處デ答ヘルコトガ出來
ナイナラバ、閣議ヲ開イテ御協議ヲ爲スッタ
上、ハッキリト民政黨內閣ノ是等ニ關スル
主義政策ヲ、此議場ヲ通ジテ天下ニ聲明セ
ラレンコトヲ希望致スノデアリマス(「鷲野
君、簡單ニ願ヒマス」ト呼フ者アリ)簡單ニ
ヤリマス、私ハ產業統制ニ關スルコトハ
ドレダケ重要性ガアルカト云フコトヲ御考
ニナッテノ御話カ、ドウカヲ伺ヒタイノデ
アリマス
ソレカラ更ニ私ハ政府當局ニ御伺致シタ
イノハ、硫安ノコトデ云ヒマシテモ、製鐵
ノコトデ考ヘマシテモ、其他ノ色々ノ點カ
ラ考ヘマシテモ私ハ現在ノ政府ノ產業方
針ト云フモノハ決ッテ居ナイ、不統一不徹底
デアルト考ヘルノデアリマス、政府ハ宜シ
ク我國ノ產業政策ノ不統一不徹底ト云フコ
トニ鑑ミテ、玆ニ政黨政派ト云フモノヲ考
ヘズニ產業統制ノ委員會位ノ小規模ノモノ
デナク、非常ニ大キナ產業大調査機關ノヤ
ウナモノヲ定メテ、硫安ハドウスル、製鐵
事業ハドウスル、窒素工業ハドウスル、或
ハ其他ノ重要產業ハドウスルト云フコト
ノ、大方針ヲ樹テラルル所ノ御意向ハナイ
カドウカト云フコトヲ伺ヒタイノデアリマ
ス、譬ヘテ見マスルト、一ツノ生絲ノ問題
カラ考ヘテ見マシテモ、商工省ト農林省ト
ノ意見ガ必ズシモ一致シテ居ナイ、又生絲
ヲ原料トシテノ織物ニ付テ課稅ノ方面カ
ラ考ヘテ見マシテモ、輸出向廣幅ノヤウナ
織物ハヽ縦令ソレガ輸出品トナラズ、內地
向需要品デアッテモ、免稅ヲシタラバ宜イノ
ヲ免稅シナイヤウナコトハヤハリ是ハ產
業政策ト稅制制度ニ關スル政府ノ方針ト云
フモノガ確立シテ居ナイカラデハナイカ
ト考ヘルノデアリマス、其他關稅ノ問題ヲ
考ヘマシテモ、綿業又ハ生絲、人絹等ノ將
來ヲ考ヘマツテモ、ドウシテモ十分ナル〓
究調査ヲ遂ゲテ大方針ヲ樹テナケレバナ
ラヌ所ノ時機ニ、今ヤ達シデ居ルノデハナ
イカト考ヘルノデアリマス、此點町田農林
大臣ハ曾テ私ガ個人トシテ承ッタ時ニハ、中
中御意見ガアッタヤウデアリマスカラ、特ニ
町田農林大臣ノ此點ニ對スル御意見ヲ、議
會ヲ通シテ國民ニ聽カシテヤッテ戴キタイ
ト考ヘルノデアリマス
更ニモウ一ツ私ノ伺ヒタイ點ハ、現在ノ
商工省ト農林省トガ對立シテ居ルヤウナ關
係デ、產業ノ統制、又ハ合理化デアルトカ、
其他ノコトヲヤラウトシテモ、非常ニ不便
ナ點ガ澤山アル、又商工大臣ガ何カヤラウ
トシテモ大藏省デ引掛カルトカ其他ノ所
デ思フヤウニ行カヌ點ガアルノデアルガ
是ハ我國ノ產業行政ニ關スル行政機關ガ分
立ツテ不統一デアルカラデアラウト考ヘ
ルノデアリマス、政府ハ昭和七年度ニ於テ
行政ノ整理改革ニ關スル抱負ヲ現實シヨウ
トシテ、六年度ニ其調査ヲヤルサウデアリ
マスガ、其際ニ農林、商工兩省ヲ打ッテ一丸
トシテ一ツノ產業省ノヤウナモノニシ
之ニ勞働問題ヲ取扱フ所ノ內務省ノ社會局
ノ一部分ノ事務ヲ入レ、關稅ニ關スルコト)
或ハ通商貿易ニ關スルコトモ打ッテ一丸ト
シテ一ツノ產業省ノ下ニ統轄スルナラバ
產業政策ノ統一ノ上カラ考ヘマシテモ、或
ハ產業政ヲ簡易直ニ實行スル上カラ考。
ヘマシテモ、非常ニ是ハ義アルコトヽ考
ヘルノデアリマスガ、之ニ付テ商工大臣及
ビ農林大臣、總理大臣代理ノ所見ヲ伺ヒタ
イト考ヘルノデアリマス
私ノ質問ハ以上ノ諸點ニ付テノ質問デア
リマスカラ、出來得ル限リ詳細ニ明確ニ御
答辯アランコトヲ御願致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02019310228&spkNum=68
-
069・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之 ( )俵商工大臣
〔國務大臣俵孫一君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02019310228&spkNum=69
-
070・俵孫一
○國務大臣(俵孫一君) 鷲野君ノ御質問ニ
對シテ簡單ニ御答致シマズ
第一ハ私ガ申上ゲマシタ產業ノ種類ニ
付デ主トシテ外國輸出品ニ對シテ適用ス
ル考デアルト申上ゲマシタラ、然ラバ內地
消費製品ハドウカト云フユトデアルガ勿
論之ニモ適用スル積リデアリマス、主トシ
テト申シマシタノデ、國內消費ノ製品ニ對
シテハ適用セヌトハ申上ゲナカッタノデア
リマス
第二ノ期限ニ付キマシテハ是ハ先刻松
村君ニ對シテ申上ゲマシタ如ク、此五箇年
間デ、十分統制ノ實ヲ擧ゲ得ルモノド考ヘ
テ居ルノデアリマス
第三ニ委員會ノ組織ニ付テ、消費者ヲ代
表スル所ノ人ヲ入レル考ハナイカト云フコ
トデアリマスガ、此委員會ノ組織ニ付テハ、
十分ニ御意見ノコトヲ考慮致シマス
第四ニ最高價格ノ決定ヲスル必要ハナイ
カ、第三條ニ其意義ガ不明デアル是デハ
到底最高價格ノ決定ヲシテ)消費者ノ利益
ヲ保護スルト云フ意義ガナイデハナイカト
云フ仰セデアリマシタガ、是モ先刻松村君
ニ對シテ私ガ御答中上ゲタ通リデアリマシ
テ是ハ詰リ價格ノ吊上ハ決シテ精神デハ
ナイ價格ノ安定ガ精神デアルカラ價格
ノ吊上ハ決シテ目標トシナイ、隨テ最高價
格ノ決定ト云フコトニ付テハ考慮ノ必要ハ
ナイ但シ此範圍ニ付キマシテハ是ハ主
務大臣ハ統制委員會ノ議ヲ經デ行フノデア
リマシテ此第三條ノ規定デ一面ニ於テハ
生產者ヲ保護シ、一面ニ於テハ消費者タル
國民ヲ保護スルト云フ點ニ於テ、十分デア
ルト考ヘルノデアリマス
第五ニ、第一條ハ或ハ當業者ノ二分ノ一、
第二條ハ加盟者ノ三分ノ二、是デハ極ク一
部分ノ者ガ大企業家ヲ壓迫スルガ如キコト
ガアリハセヌカト云フコトデアッテ、唯數ノ
ミデハイカスデハナイカト云フ御趣意デ
アッタノデアリマス、併シソコガ主務大臣ノ
裁量、統制委員會ノ裁量ニ依テ、アナタノ
御疑ニナル點ハ十分考慮スル餘地ガアルノ
デアリマス、ソレ故ニ第一條、第二條ノ數
ノミニ依ッテモ少シモ差支ナイ、斯ウ思フノ
デアリマス
第六ノ關稅政策及ビ不當康賣、之ニ付キ
マシテ堂々タル意見ノ御發表ガアリマシタ
ガ、現內閣ハ決シテ關稅ニ付テハ絕對的自
由政策ヲ執。ッテ居ルノデハアリマセヌ、必要
ガアルナラバ關稅ヲ掛ケルト云フコトハ
現ニ實行致シテ居ルコトヲ以テ御諒解ヲ願
ヒタイノデアリマス、鐵ニ付テ云々ト云フ
コトデアリマシタガ、鐵ニ付テハ今御尋ノ
如キ事ニハナッテ居リマセヌ、是ハ後日鐵ニ
對スル現政府ノ考ヲ申上ゲル機會ガアルダ
ラウト思ヒマス、硫安ニ付テ不當廉賣法ヲ
適用スルヤ否ヤト云フコトニ付テハ、農林
大臣ト商工大臣ト意見ガ違フト仰セラレマ
シタガ、決シテ違ヒマセヌ、昨日モ米穀委員
會ニ於テ答辯致シマシタ如ク、少シモ違ッテ
居リマセヌ、農林大臣ト相談ヲ致シマシテ、
之ニ付テハ目下不當廉賣法ヲ適用スル意味
ヲ以テ、幹事會ヲ招集致シテ居ルノデアリ
やっ 、毫モ此間ニ不統一ハアリマセヌ
第七ニ大調査會ヲ起シテ產業政策ヲ決定
スル意思ハナイカ、是ハ現ニ實行致シテ居
リマス、内閣ニ產業審議會ヲ設ケテ居ルノ
デアリマス
第八ニ產業行政機關ヲ統一スル意思ハナ
イカ目下政府ハ明年度ニ於テ行政整理ヲ
スルコトニ致シテ居ルノデアリマスガ、御
說ノ如キ考デアルカナイカハ、只今發表ノ
時機デハアリマセヌ(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02019310228&spkNum=70
-
071・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 質疑ハ終局致シマ
シタ日程第九右議案ノ審査ヲ付託スベ
キノ委員ノ選擧ヲ議題ト致シマス
第九右議案ノ審査ヲ付託スヘキ委員
ノ擧発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02019310228&spkNum=71
-
072・作田高太郎
○作田高太郞君 本案ハ議長指名九名ノ委
員ニ付託サレンコトヲ望ミマス
〔「贊成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02019310228&spkNum=72
-
073・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 作田君ノ動議ニ御
異食べ俄アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02019310228&spkNum=73
-
074・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 御異議ナシト認メ
マス仍テ動議ノ如ク決シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02019310228&spkNum=74
-
075・作田高太郎
○作田高太郞君 議事日程變更ノ動議ヲ提
出致シマス、卽チ日程第十及同第十一ハ後
廻シトセラレンコトヲ望ミマス
〔「贊成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02019310228&spkNum=75
-
076・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 作田君ノ動議ニハ
御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02019310228&spkNum=76
-
077・藤澤幾之輔
○議長(藤澤淺之輔君) 御異議ナシト認メ
マス仍テ兩案ハ之ヲ後廻シト致シマス
日程第十二、大正十三年法律第二號中改正
法律案ノ第一讀會ヲ開キマス、矢吹政務次
官-御見エニナリマセヌカラ、日程第十
二及第十三ハ後廻シト致シマス
日程第十四乃至第十七ハ同一委員ニ付託
シタル議案ナルニ依リ、一括議題トナスニ
御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02019310228&spkNum=77
-
078・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 御異議ナシト認メ
マス
日程第十四、市制中改正法律案、日程第
十五、町村制中改正法律案、日程第十六、
府縣制中改正法律案、日程第十七、北海道
會法中改正法律案ヲ括シテ其第一讀會ノ
續ヲ開キマス、委員長ノ報〓ヲ求メマス、
末松偕一郞君
第十四市制中改正法律案(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報〓)
報〓書
一市制中改正法律案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報告候也
昭和六年二月二十七日
委員長末松偕一郞
衆議院議長藤澤幾之輔殿
第十五町村制中改正法律案(政府提
出)第一讀會ノ續(委員長報〓)
報〓書
一町村制中改正法律案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報告候也
昭和六年二月二十七日
委員長末松偕一郞
衆議院議長藤澤幾之輔殿
第十六府縣制中改正法律案(政府提
出)第一讀會ノ續(委員長報告)
報告書
一府縣制中改正法律案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和六年二月二十七日
委員長末松偕一郞
衆議院議長藤澤幾之輔殿
第十七北海道會法中改正法律案(政
府提出)第一讀會ノ續(委員長報〓)
報〓書
一北海道會法中改正法律案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報告候也
昭和六年二月二十七日、
委員長末松〓一郞
衆議院議長藤澤幾之輔殿
〔末松偕一郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02019310228&spkNum=78
-
079・末松偕一郎
○末松偕一郞君 只今議題トナリマシタル
市制······中改正法律案外三件ニ付キマシ
テ委員會ノ經過及ビ結果ヲ最モ簡單ニ御
報告致シマス
本委員會ハ本月十二日ヨリ昨日マデ九囘
開會致シマシテ、此間委員各位ノ非常ナル
御精勵ニ依ッテ、昨日政府提出ノ原案通り可
決致シタノデアリマス、本案ノ骨子ハ新
ニ婦人ニ公民權ヲ與ヘルコト、及ビ男子
公民權ノ年齡ヲ二十歲ニ低下スルコトデア
ルノデアリマス、隨テ委員會ニ於ケル質疑
應答ノ大部分ハ此二點ニ集中サレタノデ
アリマス、而シテ新ニ婦人ニ公民權ヲ與ヘ
ルコトニ付キマシテハ政友會ノ委員諸君
カラハ、第一ニ府縣會議員ノ選擧權、被選
擧權ニ及バザルコトハ我國立法ノ沿革ノ
上ニモ亦條理ノ上ニモ甚ク不徹底デハナ
イカト云フ質問デアリマシタ、第二ハ名
譽職ニ就クニ付テ夫ノ同意ヲ要スルト云フ
コトモ不必要デハナイカ、第三ハ、男子ノ年
齡ヲ二十歲ニ低下シナガラ、婦人ノ年齡ヲ二
十五歲ニ止メタノハ甚ダ不必要デハナイ
カト云フ點ニ集中サレタノデアリマシタ
之ニ對スル政府ノ答辯ハ千三百五十万人
ト云フ多數ノ婦人ニ、新ニ公民權ヲ與ヘル
ノデアッテ、所謂劃期的變革デアル、斯ル制
度ノ變革ハ成ベク漸進主義ニ依シテ、中正穩
健ナル發達ヲサセタイノデアル、隨テ今囘
ハ此程度ニ止メタイト云フ答辯デアリマシ
ク、之ニ付キマシテハ第一ノ府縣會議員ニ
擴張スルト云フコトヽ夫ノ同意ヲ得ルト
云フ點ニ付キマシテハ政友會カラ之ヲ削
除スルト云フ修正ノ動議ガアリマシテ、此
修正意見ハ少數意見トシテ後ニ報〓サレル
ノデアリマスカラ、其報告及討議ノ際ニ詳
シク申述ベラレルコトヽ考ヘルノデアリマ
ス
次ニ男子ノ年齡ヲ二十歲ニ低下スルコト
ニ付キマシテ、政友會ノ委員諸君カラ度々
ノ質疑モアリマシタガ、新聞紙ノ報ズル所
ニ依リマスレバ、目下衆議院議員ノ選擧法
ガ樞密院ニ御諮詢ニナッテ居ルサウデアル、
又其年齡ニ付テモ二十歲デアッタノガ、色々
樞密院ノ反對ガアッテ、之ヲ二十三歲トカ
或ハ二十五歲ニ訂正シヨウト云フ議ガアル
サウデアルガ、若シ衆議院議員ノ選擧法ノ
年齡ガ二十歲トナラズシテ、二十三歲若ク
ハ二十五歲トスルコトニナッタナラバ、政府
ハ此年齢ノ喰違ヒニ對シテドウスルノデア
ルカ、我國ノ立法例ノ沿革カラ見テモ、外
國ノ立法例ノ實際ノ狀況カラ申シマシテ
モ、公民權ノ年齡ト選擧權ノ年齡、卽チ公
民權及參政權ノ年齡ハ大體ニ於テ同ジデア
ル然ルニモ拘ラズ日本ノ立法ガ若シ其間
ニ差ヲ生ズルト云フコトニナッタナラバ、甚
ダ不都合デハナイカト云フ質問デアッタノ
デアリマス、之ニ對シテ內務大臣ノ答辯
ハ、此點ハ政府ニ於テモ十分ニ愼重ニ考慮
シタノデアル、併ナガラ公民權ト參政權ニ
付テハ根本ガ違フノデアルカラ、必ズシモ
是ガ一致スルコトハ必要デナイト云フ意見
デアル、故ニ此公民權ニ付テハ二十歲ニ依ツ
テ協賛ヲ求メタイ、斯ウ云フ說明デアッタ
ノデアリマス、此點ニ付キマシテハ最後ニ
於キマシテ、星島君カラ此理由ヲ以チマシ
テ、衆議院議員選擧法ガ本衆議院ニ付議サ
レルマデ、此地方制度ノ審議ヲ延期シテハ
ドウカト云フ動議ガアリマシテ是ハ否決
ニナリマシタガ、此點ガ非常ナル問題ニナツ
タノデアリマス
是等ニ關聯シタ色々ノ質問ニ付テ、最モ
主ナル事ノ二三ヲ御報告致シテ置ク必要ガ
アラウト思ヒマスカラ、簡單ニ其項目ヲ申
上ゲタイト思フノデアリマス、學生生徒ノ
多數ニ公民權ヲ與ヘルニ付テハ、選擧運動
ニ熱中スル爲ニ、學業ヲ怠ルト云フヤウナ
弊ガナイカト云フ質問ニ對シマシテ、文部
大臣カラ、我國ノ民法ノ規定ニ依レバ二十
歲ヲ以テ成年トシテ居ル、又〓育カラ云ッテ
モ、普通ノ〓育ヲ終レバ國民ノ〓育トシテ
完成スルノデアル、況ヤ中學校ヲ卒業スレ
バ高等普通〓育ヲ修メルノデアッテ、卽チ
法ノ精神カラ云ッテ、又〓育ノ制度カラ云ッ
テモ、二十歲ニ年齡ヲ低下スルト云フコト
ハ、何等差支ガナイ道理デアル、唯之ニ反
對スル者ハ、兎角選擧運動等ニ熱中シテ學
校ヲ怠ルト云フヤウナ事ガアルカモ知レヌ
ト云フ心配デアルラシイガ、此種ノ事ニ熱
中シテ學業ヲ怠ルト云フヤウナ事ハ、選擧
運動ダケニ限ラナイノデアル、例ヘバ「スポ
ーツ」等ニ付テモ其例ガアルノデアル、隨テ
此純眞ナル二十歲カラ二十五歲ノ人ニ新ニ
公民權ヲ與ヘ、之ニ依ッテ公民的〓養訓練ヲ
ヤラウト云フ、此大ナル目的ノ爲ニハ、幾ラ
カ學業ニ付テ怠ルト云フヤウナ弊ガ其中ノ
一部ニアッテモ、是ハ已ムヲ得ナイコトデア
ルト云フ答デアッタノデアリマス、殊ニ學生
ハ今度ハ約七万殖エル二十歲カラ二十五
歲マデノ人ハ、三百万ニ近ク增加スル筈デ
アル、此三百万ト云フモノヲ學生生徒ノ爲
ニ犧牲ニスルノハ勿論不都合デアル二十
歲カラ二十五歲マデノ靑年ニ選擧權ヲ與ヘ
ルナラバ、七万ノ學生生徒ニ選擧權ヲ與ヘ
ルコトハ正當デアルカラ、文部省ハ此案ニ
付テ何等異議ガナイト云フコトデアリマシ
タ、此點ニ付テハ委員ノ大多數ハ、文部省
ニ於テモ其考デ學生生徒ノ選擧權ヲ保護シ
テ貰ヒタイト云フ意見デアッタノデアリマ
ス、之ニ關聯シマシテ內務當局カラ、學生
ノ住所ニ關スル問題ノ解釋ガ說明サレタノ
デアリマス、内務當局ノ解釋ニ依リマスレ
バ學生生徒ノ住所ト云フモノハ〓里ニ
在ルト云フコトニシテ居ルサウデアリマ
ス、卽チ自己ノ學費ノ全部ヲ自己ノ勞働ニ
依シテ支給シ、同時ニ〓里ニ歸ルコトガ殆ド
ナイヤウナ者ニ限ッテ、其學校ノ所在地或ハ
自分ノ住ンデ居ル處ニ住所ガアルノデアリ
マシテ其他ノ大多數ノ學生生徒ノ住所ハ
〓里ニ在ルトシテ居ル爲ニ、學生生徒ノ投
票ハ實際ニ出來ナイノデアルト云フヤウナ
說明ガアリマシタ、是ハ甚ダ宜シクナイ、
學生生徒ニ折角公民權ヲ與ヘナガラ、其投
票ヲ奪ハレルト云フヤウナコトハ宜シクナ
イカラ、文部省及內務省ニ於テ十分考慮シ
テ、是等ニ選擧權ヲ與ヘルヤウニスル必要
ガアルト云フ希望ガアッタノデアリマス、ソ
レカラ公民〓育ニ關シテ色々質疑ガアリマ
シタ、卽チ今囘多數ノ婦人ノ新有權者ガ殖
工、又二十歲カラ二十五歲マデノ三百万ニ
近イ所ノ新有權者ガ出來ルノデアルガ、此
際公民〓育ヲドウスルカ、サナキダニ公民
〓育ノ必要ヲ認メルノデアルガ、此焦眉ノ
急ニ迫クテ、殊ニ本年ノ九月ノ道府縣會議員
ノ選擧ニ於テモ、新ニ是等ノ選擧人ガ加ハ
ルノデアルカラ、此際公民〓育ヲ徹底的ニ
ヤル必要ヲ認メルガ、文部省ハ果シテドウ
云フ考ヲ持ツカト云フ御議論ガアッタノデア
リマス、之ニ對シテ文部省ハ現ニ六年度
ノ豫算ニ十三万圓ト云フ金ヲ支出シテ、講
習其他ノ方法ニ依ッテ公民〓育ヲヤラウト
シテ居ルト云フ答辯ガアリマシタガ、ソレ
デハ甚ダ不徹底デアルカラ、成ルベク追加
豫算ヲ請求シテ、ソレニ依テ此公民〓育ノ
普及徹底ニ全力ヲ盡シテ呉レト云フ希望ガ
アッタノデアリマス、又公民〓育ヲスルニ付
テ、映畫トカ「ラヂオ」ヲ利用シテ貰ヒタイ
ト云フ希望デアリマシタ
次ニハ名簿ヲ統一シテ貰ヒタイト云フ意
見ガ非常ニ多カッタ、卽チ衆議院議員ノ選擧
人名簿ト市町村會、卽チ公民權ニ關スル
選擧人名簿ガ、兩方ニ分レテ居ル爲ニ、市
町村ノ事務ヲ繁雜ニシ、之ニ費ス費用ガ多
額ニ上ッテ居ル故ニ、何トカシテ一〓ニシタ
イ、殊ニ今度ハ住居年數ガ一年ニナッタノデ
アリマスカラ、此二ツノ名簿ハ萬難ヲ排シ
テモ一ツニシタイト云フ希望デアリマシ
テ、之ニ對シマシテ內務當局ハ色々陳辯ガ
アリマシタガ、萬難ヲ排シテモ之ヲ實行シ
テ貰ヒタイト云フコトニナッタノデアリマ
ス
ソレカラ投票所ヲ增設シテ貰ヒタイト云
フ希望ガアリマシタ、今日ノ投票所ヲ少ナ
クトモ學校ノ數位ニ之ヲ增設シテ貰ヒタイ
ト云フコトノ希望ガアリマシタ、ソレカラ
地方行政ノ監督、殊ニ原案執行ニ關シテ色
色質問應答ガアリマシタ、ソレカラ缺格條
項ニ關シテモ質問ガアリマシタガ、缺格條
項ニ關スルコトハ衆議院議員ノ選擧法ノ
付議サレタ際ニ於テ、ソレガ帝國議會ヲ通
過シタナラバ、成ベク近キ將來ニ於テ、同
ジヤウナ缺格條項ヲ市町村制其他地方制度
ニ及ボスト云フ答辯デアリマシタ、斯ノ如
キ次第デアリマシテ、其他色々ノ質問應答
ガアリマシタガ、是ハ速記錄ニ依ッテ御承知
ヲ願フト云フコトニ致シマシテ、質問應答
ヲ打切ッテ討議ニ入リマシタ、其討議ニ付キ
マシテ、討論ノ後ニ於キマシテ、星島君カ
ラ先ニ御話シタ卽チ衆議院議員ノ選擧法ガ
本會ニ付議サレルマデ、本案ノ審議ヲ延期
スルト云フ動議ガ出マシタ是ハ少數ヲ以
テ否決サレマシタ、次イデ倉元君カラ皆樣
ニ御配リシテアル所ノ所謂少數意見ト云
フ修正意見ガ出マシタガ、是亦少數ヲ以テ
否決サレマシタ、是ハ少數意見トシテ留保
サレテ、今日御辯明ニナルト云フコトヲ信
ジテ居リマス、最後ニ政府提案ノ只今ノ議
題ニナッテ居ル四案ニ付キマシテ採決ヲ致
シマシタガ、多數ヲ以テ可決致シマシタ、
大體右ヲ以テ報告ト致シマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02019310228&spkNum=79
-
080・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 四案ニ對シテハ中
谷貞賴君外九名カラ各、少數意見ガ提出サ
レテアリマス、此意見ハ何レモ修正デアリ
マスカラ、第二讀會ニ於テ其報告ヲ許スコ
トニ致シマス、尙ホ討論ハ便宜上第二讀會
ニ於テ爲スコトニ致シタイト思ヒマス、左
樣御諒承ヲ願ヒマス、四案ノ二讀會ヲ開ク
ニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02019310228&spkNum=80
-
081・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 御異議ナシト認メ
マス、仍テ四案共二讀會ヲ開クニ決シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02019310228&spkNum=81
-
082・作田高太郎
○作田高太郞君 直チニ四案ヲ一括シテ第
二讀會ヲ開カレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02019310228&spkNum=82
-
083・藤澤幾之輔
○議長(摩澤幾之輔君) 作田君ノ動議ニ御
異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02019310228&spkNum=83
-
084・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 御異議ナシト認メ
やっ、仍テ直チニ四案ノ第二讀會ヲ開キマ
ス
市制中改正法律案第二讀會
町村制中改正法律案第二讀會
府縣制中改正法律案第二讀會
北海道會法中改正法律案第二讀會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02019310228&spkNum=84
-
085・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 四案ニ對スル少數
意見ノ報告ヲ求メマス-中谷貞賴君
〔「質疑ハドウシタノデス」ト呼フ者ア
リ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02019310228&spkNum=85
-
086・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 質疑ハ此後ニ許シ
マス
少數者意見書
一市制中改正法律案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ別紙ノ通修正スヘキモノ
ト認ムルニ依リ少數者意見書及提出候也
昭和六年二月二十七日
委員少數意見者
中谷貞賴
外九名
〔別紙〕
(小字及-ハ少數意見)
市制中改正法律案中左ノ通修正ス
第三十二條第五項ヲ左ノ如ク、同條第六
項中「第二項又ハ第三項」ヲ「第二項、第三
項又ハ前項」ニ改ム
妻ニシテ當選シタル者ハ勅令ヲ以テ指
定スル場合ヲ除クノ外夫ノ同意ヲ得ル
ニ非ザレバ之ニ蕉ズルコトヲ得ズ
官吏又ハ妻ガ當選シタル場合ニ於テ當
選ノ告知ヲ受ケタル日ヨリ二十日以內
ニ之ニ應ズベキ旨ヲ市長ニ申立テザル
トキハ其ノ當選ヲ辭シタルモノト看做
ス第三項ノ場合ニ於テ最終ニ當選ノ告
知ヲ受ケタレ日ヨリ一一十日以內ニ何レ
ノ當強ニ焦ズベキカヲ日立テザレトキ
ハ總テ之ヲ辭シタルモノト看做ス
第三十三條第一項第五號ノ次ニ左ノ一號
フ
ヲ加へ同條第二項中「第五項」ヲ「第六項」
三四六、
六第三十六條ノ二ノ規定ニ依ル訴訟
ノ結果當選無效ト爲リタルトキ
第三十四條第一項中「第五項」ヲ「第六項
ニ攻ム
第三十八條第一項及第二項中「第六項」ヲ
「第七項」ニ改ム
第七十三條第七頃ヲ左ノ知ク收ム
第三十二條第四項ノ現定ハ官吏ニシテ
市長ニ當選シタル者ニ、同條第五項ノ
規定ハ妻ニシテ名譽織市長ニ當選シタ
ル者ニ之ヲ凖用ス
少數者意見書
一町村制中改正法律案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ別紙ノ通修正スヘキモノ
ト認ムルニ依リ少數者意見書及提出候也
昭和六年二月二十七日
委員少數意見者
中谷貞賴
外九名
〔別紙〕
(-ハ少數意見)
町村制中改正法律案中左ノ通修正ス
第二十九條第四項ヲ左ノ如ク、同條第五
項中「第二項」ヲ「第二項又ハ前項」ニ改
ム
妻ニシテ當選シタル者ハ勅令ヲ以テ指
定スル場合ヲ除クノ外夫ノ同意ヲ得ル
ニ非ザレバ之ニ應ズルコトヲ得ズ
官吏又ハ妻ガ當選シタル場合ニ於テ當
選ノ告知ヲ受ケタル日ヨリ二十日以內
ニ之ニ應ズベキ旨ヲ町村長ニ申立テザ
ルトキハ其ノ當選ヲ辭シタルモノト看
做ス
第三十條第二項中「第四項ヲ「第五項ニ
改ム
第三十一條第一項中「第四項一ヲ「第五項」
三枚入
第三十五條第一項及第一一項中「第五項」ヲ
「第六項一ニ改ム
第六十三條第五項ヲ至ノ如ク改ム
第二十九條第三項ノ現定ハ官吏ニシテ町
村長ニ當選シタル者ニ、同條第四項ノ規
定ハ妻ニシテ名譽職町村長ニ常選シタル
者ニ之ヲ準用ス
少數者意見書
一府縣制中改正法律案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ別紙ノ通修正スヘキモノ
ト認ムルニ依リ少數者意見書及提出候也
昭和六年二月二十七日
委員少數意見者
中谷貞賴
外九名
(小字及-ハ少數意見)
府縣制中改正法律案中左ノ通修正ス
第六條第一項中「市町村公民ヲ「市町村
公民タル男子ニ、司條第二項中「戰時若
ハ事變ニ際シ召集中ノ者ハ選擧權及」ヲ
「戰時若ハ事變ニ際シ又ハ兵役法第五十
五條第二項ノ規定ニ依リ召集中ノ者ハ」
ご依人
第十三條ノ二第二項中「選擧人名簿ニ登
錄セラレタル者」ヲ「選擧人名簿ニ登錄セ
ラレタル男子」ニ改ム
第十六條第項及第二項中「選擧人名簿
ニ登錄セラレタル者」ヲ「選擧人名薄ニ登
錄セラレタル男子」ニ改ム
第十八條ノ二第一項中「確定名簿ニ登錄
セラレサル者」ヲ「確定名簿ニ登錄セラレ
ザル男子」ニ同條第二項中「確定名簿ニ
登錄セラレタル者ヲ「確定名簿ニ登錄セ
ラレタル男子」ニ同條第三項中「公民權
ヲ有スル者」ヲ「公民權ヲ有スル男子」ニ
改ム
第二十七條第五號中「身分、」ノ下ニ「男女ノ
別、」ヲ加フ
第五十四條中「妻」ヲ「配偶者」ニ改ム
少數者意見書
一北海道會法中改正法律案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ別紙ノ通修正スヘキモノ
ト認ムルニ依リ少數者意見書及提出候也
昭和六年二月二十七日
委員少數意見者
中谷貞賴
外九名
(小字ハ少數意見)
北海道會法中改正法律案中左ノ通修正ス
第三條第一項中「年齡二十五年以上ノ男
子ニシテ二年以來」ヲ「年齡二十年以上ノ
○及年齡二十五年以上ノ女子
男子。ニシテ一年以來」ニ、同條第二項中
「二年」ヲ「一年」ニ改ム
〔中谷貞賴君登壇〕
〔「內務大臣ハドウシタ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02019310228&spkNum=86
-
087・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 內務大臣ハ今直グ
見エマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02019310228&spkNum=87
-
088・中谷貞頼
○中谷貞賴君 市制中改正法律案外三件ニ
對シマシテノ修正ノ意見ニ付キマシテ、其
趣旨辯明ヲ致サントスル者デアリマス
修正ノ要旨ハ市町村婦人公民權ヲ府縣
制ニ及ボシマシテ、府縣會議員選擧權竝ニ
被選擧權ヲ市町村婦人公民ニ、之ヲ及ボサ
ントスルモノデアリマス
第二ノ修正ノ點ハ、妻ガ名譽職ニ當選致
シマシタル場合ニ於キマシテ、夫ノ同意ヲ
要スル〓云フ、本改正案ノ條項ヲ削除セン
トスルノデアリマス、原案ニ於テ規定セラ
レマシタ趣旨ニ從ヒマスレバ婦人ニ公民
權ヲ賦與シタル其精神ヲ貫徹シテ居ラヌノ
ミナラズ、府縣自治團體ト市町村自治體ノ
團體ノ活動ノ大小、自治權ノ强弱ノ關係ニ於
キマシテ、頗ル不徹底タルヲ免レマセヌ、又
妻ノ當選ノ場合ニ於キマシテ夫ノ同意ヲ要
スルガ如キコトハ、事實上不必要ナル條文
ナルノミナラズ、却テ我國ノ家族制度ニ紛
淆ヲ來スノ虞アルガ故ニ、我黨ニ於キマシ
テハ黨議ヲ以テ此修正ノ意見ヲ決定致シ
マシテ、委員會ヲ通シテ之ヲ主張スル所以
デアルノデアリマス原案ノ本會議竝ニ委
員會ニ於キマスル內務大臣ノ答辯ニ依リマ
スレバ婦人ノ公民權ヲ府縣ニ及サザル所
ノ理由ハ唯漸進ノ主義ニ反スルト云フ一
點ニ止マッテ居ルノデアリマス、吾々ト雖モ
婦人公民權及參政權ニ付キマシテ、漸進ノ
主義其モノニ必ズシモ反對スル者デハアリ
マセヌケレドモ、併ナガラ其漸進ノ程度範
圍ニ付テハ自ラ明確ナル根據デアラネバ
ナラヌノデアリマス、何ガ故ニ市町村公民
權ノミニ止メテ之ヲ府縣ニ及サザルヤ、何
ガ故ニ是ガ漸進ノ主義ニ反スルヤト云フコ
トヲ、明確ニ答辯セラレナケレバナラヌ筈
デアリマス、今日ノ市ノ發展、殊ニ東京大
阪等ノ大都市ノ異常ナル發達ハ其經濟的
活動ノ方面ニ於キマシテモヽ到底府縣ト同
日ノ論デハアリマセヌ、こ偶〓形式的ニ府縣
ガ市町村ノ上級自治機關ナルノ故ヲ以テ、
全然實質ヲ眼中ニ置カザルガ如キハ決シ
テ時代ニ適合セル立法ト云フ譯ニハ參ラヌ
次第デアルノデアリマス、市ト府縣トノ自
治ノ內容ニ付キマシテ、事新ラシク玆ニ申
上ゲル必要ハアリマセヌガ、吾縣ノ諸君ガ
居ラレヽバ洵ニ失禮デアリマスガ、僅
其豫算ハ四百万圓デアル、沖繩縣ハ百七十
万圓デアルニ拘ラズ、東京市ハ實ニ二億四
千万圓、大阪市ハ一億四千万圓ノ厖大ナル
豫算ノ運用ヲ致シテ居ルノデアリマス、其
事業ノ內容ニ於キマシテモ、固ヨリ是等府
縣ノ決シテ及ブベキモノデハアリマセヌ、
若シソレ自治ノ內容、卽チ自治權ノ强弱ノ
點ニ至リマシテハ市町村ノ方ガ遙ニ府縣
ヨリモ完全ナル自治權ヲ有シテ居ルノデア
リマス、其點ニ於キマシテハ、府縣ハ寧ロ
不完全ナル自治權ヲ有スル團體デアルコト
モ、諸君ノ御承知ノ所デアリマセウ、市町
村ニ於キマシテハ、選擧ニ依ッテ名譽職市長
又ハ名譽職町村長タルコトモ出來マスガ、
府縣ニ於テハ自治ノ構成員ハ其代表者タ
ル知事ヲ選擧スルコトハ出來ナイノデアリ
マス、又事實ノ上ニ之ヲ見マスルニ、現內
閣成立以來、昭和四年五年ノ兩年度ニ於テ、
原案執行ヲナスコト實ニ九縣乃至十縣ノ多
キニ相成ッテ居ルノデアリマス、此政府ノ官
僚的干涉政治ニ付キマシテ追窮スレバ內
務大臣ハ法規ノ許ス所ナリト、之ヲ辯明シ
了ッテ居ル所ヲ見マスナラバ、內務大臣自ラ
府縣ノ自治ノ範圍ガ至ッテ幼稚ニシテ、又頗ル
貧弱ナルコトヲ明言シテ居ルモノト謂ハナ
ケレバナラヌ次第デアルノデアリマス、卽
チ此自治權ノ大小强弱ノ內容カラ申シマシ
テモ、一體何處ニ府縣ト市町村トニ對シマシ
テ、公民權賦與ニ關シテ差別ヲスル根據ガアル
デアリマセウカ、又內務大臣ハ本案ノ說明ニ
當リマシテ、其住民ト其團體トノ利害ノ關
係ニ付テ、屢〓說明ヲセラレタノデアリマ
スガ、是亦婦人ガ町村行政ニ於テハ利害ノ
關係ガ深クシテ、府縣自治行政ニ於テハ其
關係ガ淺イト云フコトハ事實ノ上ニ於テ
證明スルコトハ決シテ出來ナイ次第デアリ
マく、卽チ府縣行政ノ大部分ハ悉ク地方
民ノ生活及利害ニ關係ヲ致シテ居ルノデア
リマスガ故ニ、之ヲ區別スルコトハ頗ル困
難デアルノミナラズ、府縣會議員ノ選擧
權、被選擧權ヲ規定致シテ居リマス所ノ條
文及立法上ノ慣例ヲ見マスレバ、常ニ府縣
會議員ノ選擧權、被選擧權ハ、市町村ノ公
民ト云フコトガ法文ノ上ニ明カニナッテ居
ルノデアリマス、此改正條文ニ於テ、初メ
テ市町村ノ公民ガ府縣ノ選擧權ヲ有スルト
云フ、此規定ヲ此處ニ差別的ニ設ケテ、男
子タル公民ニ限ラシメント致シタ次第デア
ルノデアリマス、卽チ多年ノ沿革ヲ無視シ
タル規定ノ改正ト言ハネバナラヌノデアリ
マス
又年齡ノ點ニ付キマシテ、ドウシテモ玆
ニ矛盾ガアルノデアリマス、卽チ政府ノ說
明スル所ニ依レバ、選擧權ト政治或ハ自治
行政ノ關係ハ、其理解ノ程度ニ依ルト云フ
說明デアリマスガ、今囘ノ改正案ニ依リマ
スレバ滿二十五歲以下二十歲以上ノ男
子ハ、新ニ府縣會議員ノ選擧權、被選擧權
ヲ獲得スルコトニ相成ッテ居ル、然ラバ滿二
十五歲以上ノ婦人ハ、府縣自治行政ニ對シ
テハ滿二十五歲以下二十歲以上ノ男子ヨ
リモ、自治行政ニ對スル理解ノ程度ガ低イ
ト云フコトヲ、果シテ自信ヲ以テ主張シ得
ラレルヤ否ヤト云フ〓デアルノデアリマ
ス、二十五歲以下ノ靑年ヨリ二十五歲以
上ノ社會的經驗ヲ積ンダ所ノ母或ハ婦人ト
云フ者ガ、理解ノ程度ガ高キコトハ、恐ラ
ク議論ノ餘地ハナイト思フノデアリマス
ガ百步ヲ讓"テモ、私ハ二十五歲以上ノ婦
人ト、二十五歲以下二十歲以上ノ男子トガ、
自治行政ニ對スル知識經驗ノ程度ハ、少ク
トモ同一以下ニ下ルベキ理由ハナイト信ズ
ル者デアルノデアリマス(拍手)隨ヒマシテ
何レノ方面ヨリ之ヲ考察致シマシテモ、特
ニ府縣會公民權ニ對シマシテ、婦人ニ限ッテ
之ヲ除外スルコトハ理論上又實際上不適
當ナル原案ト言ハネバナラヌ次第デアリマ
スガ故ニ、玆ニ修正ノ意見ヲ開陳スル次第
デアルノデアリマス
第二ノ名譽職ニ當選ヲ致シマシタル場
合、夫ノ承諾ヲ要スルト云フ規定ノ削除ノ
問題デアリマスガ、此唯一ノ論據トスル所
ハ政府ハ我國ノ家族制度ノ上ニ於テ、此
規定ヲ必要トスルト云フ御主張デアリマス
ケレドモ、諸君、果シテ實際ノ選擧ニ當リ
マシテ、斯ノ如キ規定ノ必要ヲ見ルガ如キ
場合ガ生ジ得ルデアリマセウカ、稀有ノ場
合ニハアルトスルモ、恐ラクハ斯ノ如キ規
定ハ全ク無用ノ空文デアルト云フコトヲ私
ハ斷言スルニ憚ラヌノデアル、殊ニ民法ノ
規定ニ於テ、妻ノ法律行爲ハ夫ノ同意ヲ要
スル規定アルヲ以テ、此辯解トセラレル次
第デアリマスルケレドモ、法律行爲ハ日常
屢"起リ得ルモノデアルト思フ、又選擧ノ如
ク必ズシモ公然ニ起リ得ナイ場合ガ多々ア
リ得ルノデアリマス、卽チ夫ノ監督ノ及バ
ザル場合ガ多々アルト云フコトヲ想像スル
コトハ、當然ノ次第デアルノデアリマス、
故ニ民法上ニ於テ、妻ノ法律行爲ガ夫ノ同
意ヲ要スルト云フ、ソレダケノ理由ヲ以テ、
妻ノ當選ノ場合ニ同意ト、之ヲスルコトハ
理論統一セザル所以ト考ヘル次第デアリマ
ス、殊ニ公法ノ方面ニ於キマシテ、例ヘバ
女〓員小學校ノ女〓員ハ、其數ハ政府
ノ發表スルトコロニ依レバ實ニ五万六千人
ノ多數ヲ有シテ居ルノデアリマス、此五万
六千人ノ女〓員ガ、其〓職ニ就任スルニ當
リマシテハ、決シテ夫ノ同意ヲ必要トシテ
居ラヌノデアリマス、妻ガ家庭ヲ外ニシテ、
日々勤務ヲ致ストコロノ此學校〓員ノ就
任サヘモ夫ノ同意ヲ要シテ居ラヌ、又女醫
ニ付キマシテモ同樣ニ、夫ノ同意ヲ得テ居
ラヌコトニナッテ居ルノデアリマス、殊ニ又
市制竝ニ町村制ノ規定ノ上ニ於キマシテ、
此同意ノ規定ト絕對ニ相許シ得ザル法文ガ
アリマス、卽チ市制第十條竝ニ町村制第八
條ニ依リマスレバ、市町村名譽職ニ當選シ
タル者ハ病氣、老年其他ノ事情ニ依ルニ非
ズンバ其就任ヲ拒絕スルコトガ出來ナイ
若シ之ヲ辭スル場合ニ於テハ一年以上四
箇年以下ノ公民權ノ停止ヲ市町村ハ爲シ得
ルト云フ規定ニ相成ッテ居ルノデアリマス、
卽チ斯ノ如ク此名譽職ニ就任スルコトハ
一方ニ於テハ權利デアルト共ニ、國家ハ之
ニ向"テ其義務ヲ强要シテ居ルノデアリマ
ス、唯官吏ハ當選シタ場合ニ於テ、本屬長
官ノ許可ヲ要スルコトニ相成ッテ居リマス
ガ、併ナガラ官吏ハ國家ノ使用人デアルノ
デアリマス、使用人ナルガ故ニ、政府ノ許
可ヲ得ルコトハ當然デアリマスガ故ニ、安
達內相ノ御考ハ、妻ヲ以テ夫ノ使用人トデ
モ御考ニナッテ居ルノデアリマセウカ、諸
君、私ハ此夫ノ同意ヲ要スルト云フ規定ヲ、
此處ニ加ヘラレマシタトコロノ政府ノ眞意
ニ付テ、或ル一ツノ疑ヲ持ッテ居ルノデア
リマス、恐ラクハ此法條ハ、之ヲ以テ男女
半等ヲ好マザルトコロノ保守者ニ對スルト
コロノ一ツノ「カモフラージユ」デハアリマ
スマイカ、我國ノ婦人參政權論者又ハ婦人
ノ權限ヲ擴張セント主張スルトコロノ人々
ノ間ニ於キマシテハ我國ノ婦人ノ地位ニ
關シマシテ、重大ナル錯誤ニ陷ッテ居ルク
デアリマス
婦人ノ參政權ノ問題ノ如キハ、決シテ我
國ノ婦人ヲ地位トハ何等ノ關係ハチイモノ
デアル、我國ハ古來決シテ男尊女卑ノ國輛
デハアリマセヌ、唯短見者流ノ西洋飜譯者
流ガ、我國ノ家族制度、社會制度ノ表面ヲ
見マシテ、我國ヲ以テ男尊女卑ノ國柄ナリ
、、誤フテ之ヲ判斷致シタ次第デアルト私
ハ固ク信ズル者デアルノデアリマス、敢テ
天照皇大神ノ我ガ國建國ノ歷史ヲ引クマデ
モナタ、實ニ天照皇大神ハ女性ニ渡ラセラ
レ、三韓征伐ヲセラレタ神功皇后モ、亦聖
武天皇、又ハ大化ノ新政ヲ斷行セラレタ
陛下モ女帝ニ渡ラセラレルノデアリマス、
若モ婦選論者、或ハ女權論者ノ考ヘルガ如
ク、我國ニ於テ古來男尊女卑ノ思想ガ少シ
デモアリマシタナラバ、女帝ニ在シマシテ、
斯ノ如キ大偉業ヲ成就セラルル筈ガナイノ
デアリマス、偶〓。國國ニ於テ婦入參政權ノ議
論ニ對シテ異論ノアリマスル所ハ抑〓夫
ト妻トハ其權能ニ於テ、其職分ニ於テ相違万
アル、卽チ夫ハ社會的、活動的デアル妻
ハ內助的デアル、內面的デアルト云フコト
ガ、却テ國家ノ爲、社會ノ爲家庭生活ノ
爲ニ幸福デナイカト云フ所ノ議論ヨリ出發
シタノデアリマス、決シテ婦人ノ權利、婦
人ヲ侮辱スルガ故ニ婦人ニ參政ノ權利ヲ興
ヘザルモノデハナイノデアリマス、然ルニ
本改正案ニ從ヒマスレバ、名ハ如何ニモ婦
人ニ公民權ヲ與ヘルガ如ク見セテ置キナガ
ラ、府縣ニ對シテハ之ヲ削除シ、又ハ公法
上ノ權利、其名譽職ノ當選ニ對シマシテ、
夫ノ同意ヲ要スルガ如キ、卽チ公權ヲ、夫
タル私權ヲ以テ之ヲ制限セントスルガ如キ
所ニ、却テ女ノ權利ヲ侵害シ、女ヲ侮辱ス
ルモノトナッテ居リマス私ハ斯ノ如ク理
論ノ上ニ於テモ不統一デアリ、不徹底デア
ルガ如キ此原案ヲ、此修正案ノ如ク修正ス
ルコトガ、國家ノ爲ニモ、亦社會ノ爲ニモ
婦人ノ爲ニモ、最モ必要デアルト確信スル
ノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02019310228&spkNum=88
-
089・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 各少數意見ニハ正
規ノ贊成ガアルト認メマス、仍テ各少數意
見ハ修正案トシテ成立致シマシタ-質疑
ノ通告ガアリマスカラ之ヲ許シマス-星
島二郞君
〔星島二郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02019310228&spkNum=89
-
090・星島二郎
○星島二郞君 私ハ本案ヲ審議スルニ當リ
マシテ、最モ關係ノ深イ事項ニ付キマシテ、
政府ニ此機會ニ御尋シタイト思フノデアリ
マス、ソレハ先程委員長ノ御報告ニモアリ
マシタガ、本案ヲ審議スルニ當ッテ、第一ニ
問題トナッタノハ男子ノ年齡問題デアリマ
シタ、又其缺格條項ニ於キマシテ、政府委
員ハ業議院議員ノ選擧權ニ關スル缺格條項
ト本案ニ關係スル此公民權ニ關スル缺格
條項トハ其資格ヲ同ジウセンケレバナラ
ヌ、斯ウ云フ御答辯ガアッタノデアリマスル
ガ、今日ノ本案ハ與黨ノ多數ニ依ッテ、此議
會ヲ通過セントシテ居リマス、多年與黨ク
諸君ハ、府縣ニモ婦人ノ公民權ヲ擴張セヨ、
或ハ夫ノ許諾ヲ要スルナドヽ云フコトハ下
ラヌコトダト云フ御議論ガアッタニモ拘ラ
ズ、政府ニ盲從サレテ→本案ノ將ニ通過サ
レントスルニ當リマシテ、政府ハ今樞密院
ニ諮詢サレマシテ、衆議院議員ノ選擧法ノ
改正ヲ企テヽ居ラレル
ソコデ御尋シタイノデアリマスガ、目下
政府ハ樞密院ニ諮詢サレテ居リマスル所ノ
衆議院議員選擧法ハ、果シテ本期議會中ニ
提案サルヽヤ、先般委員會ニ於キマシテ
同僚田子君ヨリ御尋シマシタトキニ、安達
內務大臣ハ、提案スル積リデアルト云フコ
トヲ言明サレマシタ、ソコデ吾々ハ本案審
議ニ當フテ、此年齡問題-新聞ニ依リマス
レバ、政府ハ二十歲ヲ原案トシテ出シテ居
ルニ拘ラズ、樞密院ニ於テハ之ヲ二十三
歲或ハ二十五歲ト云フ風潮ガアルサウデ、
何カ之ヲ妥協サレントスルヤウナ噂モ出テ
居リマスガ吾々ハ今日マデノ法制ノ沿革
カラ致シマシテモ、此衆議院議員ノ選擧權
ノ年齡ト、公民權ノ男子ニ於ケル年齡トハ、
今マデ等シクシテ參ッテ居ル沿革ヲ尊重シ
タイト云フ意味カラ、屢、質疑ヲシタノデ
アリマスルガ今此處デソンナ事ヲ質問ス
ルノヂヤナイ、安達内務大臣ハ本期議會中
ニ、而モ憲法附屬ノ大法典ヲ、會期ノ大半
ヲ過ウタル今日、必ズ提案サレルト此演壇
デ言明出來マスカ(拍手)而シテ此公民權ニ
關スル缺格條項、例ヘバ刑餘者ヤ破產者、
サウ云フ者ヲ今度擴大スルサウデアリマス
ルガ、若シ本案ガ通過シタ場合ニ、直チニ
又本案ノ改正案ヲ本期議會中ニ提案サレル
ノデアリマスルカ吾々ハ本案ノ審議ニ當
リマシテ、最モ重大ナル關係ヲ有シテ居リ
マスルカラ、此點ヲ此機會ニ於キマシテ安
達內務大臣ヨリ明ニ伺シテ置キタイト思フ
ノデアリマス
尙ホ憲法附勇ノ大法典ヲ、會期ノ大半ヲ
過シタル今日提案サレマツテ、果シテ能ク
審議ヲスルコトガ出來ルデアリマセウカ、
吾々ハ非常ニソレヲ疑ハザルヲ得ナイノデ
アリマス、ソコデ此公民權ノ年齡問題及缺
格條項、殊ニ政府ハ現在樞密院ニ諮詢サレ
テ居リマスル所ノ缺格條項ハドウ云フ程
度マデニシテ諮詢サレテ居リマスルヤ、本
案ノ審議ニ付キマシテ、必要デアリマスル
カラ、此際承リタイト思フノデアリマス(拍
き
〔國務太臣安達謙藏君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02019310228&spkNum=90
-
091・安達謙藏
○國務大臣(安達謙藏君) 衆議院議員選擧
法ハ成ベク早ク本議會ニ提案スル積リデア
リマス
年齡及ビ缺格條項ニ付テノ御話デアリマ
スガ、年齡ハ地方自治ノ公民權ニ關スル年
齡ト、衆議院議員選擧權ニ關スル年齡トハ
是ハ別箇ニ考慮致シテ居リマス、ツレデ此
法案ガ通過致シマシテモ、衆議酵院議員選擧
法ニ付テ何等ノ關係ハ無イト考ヘテ居リマ
ス(拍手)
缺格條項ノコトハ、是ハ衆議院議員選擧法
ノ缺格條項ヲ、此市町村制ノ改正案ニモ適用
致シタイト考ヘテ居リマス、併シ是ハ本議
會ニ間ニ合ヒマセヌカッタナラバ、次ノ議會
ニ改正案ヲ出シテ差支ナイト考ヘテ居リマ
ス、其內容ニ付キマシテ、今樞密院ニ、如
何ナル缺格條項ヲ出シテ居ルカト云フコト
ハ是ハ祕密ニ屬シマスカラ、一切此處デ
之ヲ言明スル譯ニハ參リマセヌ(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02019310228&spkNum=91
-
092・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 質疑ハ終リマシ
タ之ヨリ討論ニ入リマス、通〓順ニ依フテ
發言ヲ許シマス-山枡儀重君
〔山枡儀重君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02019310228&spkNum=92
-
093・山枡儀重
○山枡儀重君 只今議題トナッテ居リマス
ル市制中改正法律案外三件ニ付テ、私共ハ
中谷貞賴君等提出ノ修正動議ニ反對致シマ
シテ委員長報告、卽チ政府提出原案ニ贊
成スルモノデアリマス(拍手)
只今ノ政友會ノ修正ハ二點デアリマスカ
ラ、此二點ノミニ付テ反駁ヲ試ミレバ宜イ
譯デアリマスケレドモ、此案ノ二ツノ要點、
卽チ男子ノ公民權ノ年齡ヲ二十歲ニ低下ス
ル點ト、婦人ニ公民權ヲ興ヘル點ニ付キマ
シテハ、世間ニ、是ハ餘リニ手緩イ案デア
ルト云フ急進論者ガアリマスルシ、又是ハ
餘リニ行過ギテ居ルト云フ保守論者モアル
ノデアリマス、而シテ本案ガ本院ヲ通過致
シマシテ、貴族院ニ行ッテ審議セラレマス時
二.此保守思想ヲ代表スル人ノ多イ貴族院
ニ於テ、是等ノ問題ガ論議ノ中心點トナル
ト思フノデアリマスルシ尙ホ男子ノ公民
權ノ年齡低下ノ問題ニ關シマシテハ、新聞
紙ノ傳フル所ニ依リマスルト、樞密院ノ諸
君ガ、衆議院議員選擧法ノ年齡低下ニ對シ
テ反對ノ意見ヲ持タルヽト云フ趣デアリマ
スルガ故ニ、私共ハ此際之ニ贊成ヲシテ、
衆議院ガ通過致シマスル趣旨ヲ明白ニシ
テ是等ノ諸君ノ蒙ヲ啓タ必要ガアルト思
フノデアリマス(拍手)
先ヅ第一ニ二十歲ニ年齡ヲ低下致シマス
ルコトニ贊成ヲ致ス趣旨ヲ明カニ致シタイ
ト思ヒマスガ、民法上ノ丁年ノ年齡ガ一一十
歲デアリマス、是ト國會及地方議會ノ議員
ノ選擧權ノ年齡ヲ同一ニスルト云フコトハ
今日私法上ノ權利義務ト、公法上ノ權利義
務ノ關係ニ於テ、複雜ニ關係致シテ居リマ
スルガ故ニ、之ヲ兩方同一年齡ニスルト云
フコトガ當然デアッテ
〔議長退席、副議長著席〕
各國共ニ左樣ニ相成ッテ居ルノデアッテ、我
國ニ於テモ曾テ明治十一年ノ府縣會規則ニ
於テハ年齡二十歲デアッタノデアリマス、
唯今日マデ二十五歲ト云フ點ニ、長キ慣例
デ限ッテ來テ居ルノデアリマスガ故ニ、最早
四十年ノ經驗ヲ經タ今日、丁年ト同一ニス
ルノガ當然デアルノデアッテ、現內閣ガ此點
ニ著眼ヲ致ツマシテ靑年、純眞ナル諸君ヲ
有權者ニ致シマシタコトハ、現內閣ノ大功
績デアルト謂ハナケレバナラヌノデアリマ
ス(拍手)而シテ之ニ對スル二ツノ反對論ガ
アルノデアリマス一ツハ兵役ノ義務ニ就
ク者ガ入營ヲ致シテ居ル、其間選擧權ガナ
イ、國家ノ重大ナル義務ヲ果シテ居ル所ノ
者ガ、一方ニ於テ之ガ爲ニ選擧權ヲ失フヤ
ウナコトガアルコトハ、國民思想上面白ク
ナイト云フ議論ガ樞密院アタリデ行ハレテ
居ルト云フコトデアリマスルガ、併ナガラ
今日ノ選擧權ノ觀念ハ、單ニ權利デハナイ
ノデアッテ、國家ノ公務及市町村府縣ノ公務
ニ從事スル義務ヲ負フノデアリマシテ、權
利ノ要求ニ非ズシテ、國地方ノ国體デ、
守ルベキ義務ト責任ヲ負擔スルコトニ相成
ルノデアリマスルカラ、兵役ノ義務ニ就カ
ザル者ハ、セメテ此選擧權ニ依ッテ國家地方
ニ盡スノガ當然ノ義務デアルト考ヘラルヽ
ノデアリマス(拍手)
而シテ學生生徒ニ選擧權ヲ行使セシムル
コトガ不當デアルト云フ議論ガ行ハレテ居
ル趣デアリマスルガ學生生徒ノ中デ、今
日矯激ナル思想ニカブレル者ガアリマシテ
學校當局者ハ極メテ困難ヲ致シテ居ルノデ
アリマスガ、此選擧ノ問題ガ學校學生生徒
ノ論議ノ點トナルナラバ一層學生ノ思想
ガ政治ニ走ッテ危險デアルト云フ議論ヲ屢〓
聞クノデアリマス、併ナガラ私ハ全ク是ト
反對ノ所見ヲ持ッテ居ルノデアリマシテ、今
日ノ學生生徒ノ中デ、矯激ナル思想ニ陷ル
者ガアリマスルコトハ、餘リニ抽象的論理
ヲ弄ビ過ギテ居ルカラデアリマシテ、實際
政治ノ問題ニ觸レテ、此間題ノ解決ニ付テ、
眞實ナル論議ヲ鬪ハスコトニ相成リマスル
ナラバ寧ロ矯激ナル危險思想ヲ去ルコト
ニ相成ッテ、矯激ナル思想ヲ豫防スルコトガ、
此公民權ヲ與ヘ、或ハ参政權ヲ與ヘテ、實
際問題ニ携ハラセルコトガ宜カラウト思ハ
レルノデアリマス(拍手)
私ハ斯樣ナ諸般ノ意味ニ於テ、二十歲ニ
年齡ヲ低下致シマスル政府ノ原案ニ贊成ヲ
致スノデアリマスガ、私ハ一言之ニ對スル
政友會ノ態度ニ及ビタイト思フノデアリマ
ス卽チ曩ニ政府ノ選擧革正審議會ニ於キ
マシテ、年齡ヲ二十歲ニ低下スルノ案ガ論
議セラレタノデアリマス我黨選出ノ委員
諸君ハ、二十歲ニ低下スベシト云フ議論ヲ
提出致サレタノデアリマス、採決ニ入ル
ニ當ッテ、政友會カラ選バレタル委員諸君
ハ二十歲案ニハドウモ贊成シ兼ネルノデ
二十三歲位ニマア落付イテモ宜イカモ知
ラント云フヤウナ御挨拶デアッテ、小委員會
ニ於テハ二十三歲說ガ多數デアッタノデア
リマスガ、其後ニ至ッテ、政友會ノ方ニ於テ、
愈こ審議會ガキマリ、民政黨ガ二十歲ニキ
マッテカラ、漸クニシテ政務調査會ニ於キマ
シート二十三歲ニ之ヲ決定致サレタノデア
リマス、斯樣ニ躊躇逡巡セラレタルコトハ
意義ガアルノデアリマシテ、若イ-二十
五歲カラ二十歲マデノ間ノ若イ者ハ純眞デ
アッテ、大體ニ於テ新有權者ノ多數ハ我ガ民
政黨ニ投票スルモノト私共ハ考ヘテ居ルノ
デアッテ(拍手)此事情ヲ承知シテカラ、政
友會ノ諸君ガ躊躇逡巡セラレテ、而モ大勢
斯ノ如クナッタトキ、萬巳ムヲ得ズシテ之ニ
贊成ヲセラレタコトハ實ニ卑怯ニシテ哀
レデアルト思フノデアリマス(拍手)
諸君、只今中谷貞賴君ハ本案ガ不徹底
デアルト云フ論據トシテ、男女同權論ノ根
據ヨリ之ヲ論ゼラレタノデアリマス、私ハ
婦人ニ公民權ヲ與フルコトガ、中谷君ノ論
據ノヤウニ、男女同權論ト云フ大前提カラ
出發スベキモノデナイノデアリマシテ、私
共ハ此男女同權論カラシテ、此婦人ニ公民
權ヲ與フル案ニ贊成ヲ致シテ居ルノデナイ
ト云フコトヲ明ニ致シテ置キタイト思ヒマ
ス
成程民法ノ第十四條ノ規定ニ於テ、玆ニ
夫ノ權利ヲ認メラレテアルノデアリマスガ、
中谷君ト雖モ第十四條全部ヲ削除シテ、ソ
レ等ノ行動一切ニ對シテ、夫ノ同意ヲ要ス
ルコトヲ必要トシナイト云フ論デハアルマ
イト思フノデアリマス、又男ヨリモ女ノ方
ニ、或種ノ權利ガ與ヘラレテアル、工場法
ニ於ケル夜業禁止ナドハ、婦人ニ敬意ヲ表
シテ、特殊ノ權利ガ與ヘラレテアルノデア
リマス、斯樣ナ多クノ例ヲ擧ゲル必要ハア
リマセヌガ、男子ト女子トガ總テノ問題ニ
於テ、必ズシモ同一ノ扱ヲ受ケナケレバナ
ラヌト云フ必要ハナイノデアッテ、或モノニ
付テハ男子、或モノニ付テハ女子、各こ適
當ナル解決ヲスレバ、男子女子各〓其志ヲ
遂ゲルコトガ出來ルノデアルト私共ハ信ズ
ルノデアリマス(拍手)
今日婦人ガ男女同權論デナクテモ政治ニ
參與スベキ當然ノ資格ガ出來テ居ルト云フ
コトハ、私ガ詳細ニ最早中上ゲル必要ハア
リマセヌ、中谷君ノ御議論デアリマスル所
ノ市町村ノ公民權ヲ與ヘナガラ、何故府
縣ノ選擧權被選擧權ヲ與ヘナイカト云フ議
論ニ私ハ反駁ヲ加ヘタイト思フ、此中谷君
ノ議論ハ論據ガ三ツデアッタト思フノデア
リマス、市町村ト府縣トハ性質ガ同ジモノ
デアルカラシテ、同ジ權利ヲ持タナケレバ
ナラヌト云フ議論デアリマス、併ナガラ今
日ノ府縣ノ仕事ト、市町村ノ仕事トノ上ニ
各種ノ相違ノアリマスルコトハ今私ガ管
管シク申上ゲル必要ガアリマセヌ、法規ヲ
調ベテモ、或ハ實際ノ事情ヲ見ルナラバ、
必ズシモ同一ノ性質デハナイノデアリマ
ス、ノミナラズ中谷君ハ、府縣ノ選擧權被
選擧權ト、市町村ノ選擧權被選擧權トハ
長年同一ノ形式ヲ取ッテ來テ居ッタノニ、今
囘初メテ異ッタ取扱ヲスルコトハ不都合デ
アルト云フ御議論デアッタノデアリマス、是
ハ中谷君ガ過去ノ歷史ヲ御承知ナイ所カラ
起ッテ來テ居ル所ノモノデアリマス、卽チ過
去ノ歷史ヲ見マスナラバ、市町村制ニ於テ
ハ何時デモ選擧權ト被選擧權トハ同樣デ
アッタノデアリマス、然ルニ府縣制ニ於テ
ハ、選擧權ト被選擧權トハ常ニ條件ガ異ッテ
來テ居ッタノデアッテ、市町村ノ公民デアッ
テ、府縣ノ選擧權ガアッテモ、被選擧權ガナ
イ場合ガ屢〓アッタノデアリマス、ノミナラ
ズ其選擧權被選擧權ノ條件ニ至リマシテ
ハ常ニ異"テ參"タノデアッテ、府縣ノ選擧
權被選擧權ト、市町村ノ選擧權被選擧權トガ
同一ニナッタノハ、僅ニ大正十五年以來ノコ
トナノデアリマス、此事實ニ徵シテ、中谷
君ノ今囘初メテ府縣ト市町村ト異ッタル態
度ヲ取ルノガ不都合ダト云フ論據ガ壞レル
コトヽ信ズルノデアリマス而シテ中谷君
ハ沖繩縣ハ豫算ガ百數十万圓デアル東京
市大阪市ハ一億何千万ノ豫算デアル斯樣
ナ大ナル豫算ノ審議權ヲ與ヘナガラ、沖繩
縣ノヤウナ小サイ縣ノ審議權ヲ與ヘナイコ
トハ矛盾デアルト云フ御議論デアル、是ハ
屢、政友會ノ委員諸君カラ委員會ニ於テ論
議セラレタ所デアリマシタ、併ナガラ沖繩
縣ノ女子ガ沖繩縣ノ縣ノ議員ノ選擧權被
選擧權ヲ有セズシテ、而シテ東京市ノ公民
權ヲ得ルト云フナラバ成程矛盾ニ相違ナ
イノデアリマス、併ナガラ東京市ノ婦人ガ
東京市ノ市民權ヲ得テ、而シテ東京府ノ選
擧權被選擧權ハ得ナイト云フノデアリマ
ス、其選擧權被選擧權ハ、個人ノ立場カラ
考ヘナケレバナラヌノデアッテ、其一人ガ東
京市ニ對スル親密ノ間ト、東京府ニ對スル
親密ノ間トヲ考ヘテ見マスルナラバ、大阪
市ノ婦人ガ大阪市ニ對スル觀念ト、大阪府
ニ對スル觀念トヲ捉ヘテ見マスルナラバ
市ニ對スル觀念ノ方ガ强イト云フコトガ明
白デアリマシテ、强イ觀念ヲ持ッタ方カラ、
先ヅ與ヘルコトガ當然デアルト言ハナケレ
バナリマセヌ(拍手)諸君、私共ハ今婦人ニ
市町村ノミノ權利ヲ與ヘテ而シテ軈テ府
縣ノ選擧權被選擧權ヲ與ヘテ、軈テ將來參
政權ヲ與ヘル順序ニ相成ルト思フノデアリ
マスガ、此自ラ順序ヲ履ムコトヲ私ハ主張
シテ居ルニ過ギナイノデアッテ、府縣ノ選擧
權被選擧ヲ與ヘルコトガ絕對ニ不當デアル
ト論ジテ居ルノデハアリマセヌカラ、私ノ
過去ノ行動ト、何等ノ矛盾ヲ致シテ居ラナ
イノデアリマス、而シテ今日ノ情勢カラ考
ヘマスルナラバ政治ハ單ニ理窟通リ其儘
施行スル譯ニ行キマセヌ、立憲政治ノ今日
デアリマスルガ故ニ、天下ノ輿論ノ趨勢ヲ
見テ、其輿論ノ趨勢ニ從ッテ、其趨勢通リニ
實現スベキガ當然デアッテ、今日ノ天下ノ輿
論ノ趨勢ヲ見マスルナラバ、大體政府原案
ノ程度ニ今落付ケテ置クコトガ適當デアル
ト考ヘラレルノデアリマス(拍手)
而シテ次ニ夫ノ同意ヲ要スル點ニ付テ反
對ヲ致サレルノデアリマス、成程民法ニ夫
ノ同意ヲ要スル點ガアルノデアリマス
〔發言スル者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02019310228&spkNum=93
-
094・小山松壽
○副議長(小山松壽君) 靜肅ニ廚ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02019310228&spkNum=94
-
095・山枡儀重
○山枡儀重君(續) 此點ハ先程申シマシタ
通リ中谷君自身モ之ヲ承認致シテ居ラレ
ル然ルニ此問題ニ付テ引合ニ出サレル點
ハ、五万ノ女〓員ガアッテ、夫ノ同意ヲ要ス
ルコトヲ要シナイノニ、議員ニ當選シタル
場合ニ限ッテ、夫ノ同意ヲ要スルコトハ均衡
ヲ失スルト云フコトデアル、併ナガラ〓員
タルベキコトヽ市町村議員タルベキコト
トハ、自ラ異シテ居ル、〓員タルコトハ、本
人ノ任務デアッテ、而シテ何時ト雖モ此〓員
タルコトヲ罷メルコトハ自由デアリマス、
然ルニ議員ハ市制及町村制ノ定ムル所ニ
依乃、故ナクシテ之ヲ辭職シタル場合ニ
ハ公民權ヲ停止スルコトヲ得ル制裁ガ與
ヘラレテ居ルノデアリマシテ、今日ノ家庭
ノ事情ニ於テ、此議員タルコトノ不可能ナ
ル場合ガアッタトキニ、何等妻タル女ガ、議
員ヲ辭スベキ途ガ無イ、萬一辭スルトスレ
バ、公民權ヲ剝奪セラレル危險ガアルト致
シマスルナラバ、今日ノ日本ノ家族ノ狀態
ニ於キマシテ、夫ノ同意ヲ得ザル場合ニ
ハ、卽チ家庭ノ必要ノ場合ニハ議員タラ
ザルコトヲ得ルノ途ヲ開イテ置ク、是ガ我
ガ家族制度上必要ナノデアリマス、諸君、
玆ニ中谷君ハ只今斯樣ナ議論ヲセラレタノ
デアリマス、此夫ノ同意ヲ要セズトスル議
論ノ論據ト致シマシテ、實際ニ於テハ斯樣
ナ場合ハ殆ド起ッテ來ナイト云フコトデアッ
ク、斯樣ナ場合ガ起ッテ來ナイト云フコト
ハ常ニ夫ノ同意ヲ得ラルヽ故デアルト考
ヘナケレバナラヌノデアリマス、而シテ中
谷君ハ斯ノ如キ法律ヲ設ケルコトハ女ヲ
侮辱スルモノデアルト言ハレタガ、法律ノ
文章ハ社會ノ實體ヲ映スニ過ギナイノデ
アッテ、中谷君ハ實際ニハ妻ハ夫ノ同意ヲ要
スルノガ日本ノ慣例デアッテ、夫ノ同意ヲ要
セズシテ議員トナルガ如キ場合ハ無イデア
ラウト豫想セラレテ居ルト致シマスルナラ
バ、ソレヲ如實ニ法文ニ現シタノガ此文章
デアッテ、此文章ガ婦人ヲ侮辱スルト云フコ
トデアレバ中谷君ノ思想ハ直チニ婦人ヲ
侮辱スルト言ハナケレバナラナイノデアリ
マス
私ハ右ノヤウナ事情ニ依リマシテ、政府
原案ニ贊成ヲ致スノデアリマシテ玆ニ千
三百五十萬人ノ婦人ガ、新ニ地方公民權ヲ
得ラレルト云フコトハ我ガ立憲政治ノ上
ニ於ケル一大事實デアリマシテ現內閣ノ
功績洵ニ偉大ナルモノアリト謂ハナケレバ
ナラヌト思フノデアリマス(拍手)私ハ斯樣
ナ意味ニ於テ、政友會ノ修正案ニ反對ヲ致シ
マシテ政府提出ノ原案ニ贊成致スノデア
リマシテ諸君ノ御贊成ヲ願ヒタイト思フ
ノデアリマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02019310228&spkNum=95
-
096・小山松壽
○副議長(小山松壽君) 倉元要一君
〔倉元要一君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02019310228&spkNum=96
-
097・倉元要一
○倉元要一君 私ハ中谷君ノ修正意見ニ贊
成スル者デアリマス政府ノ原案ニ對スル
修正意見ニ贊成スルト同時ニ、政府ノ原案
ノ一部ニ反對スル者デアリマス、只今山枡
君ニ依リマシテ、中谷君ノ修正意見ニ對ス
ル反駁ノ御議論ガアリ、續イテ冒頭ニ於キ
マシテハ內務大臣ガ樞密院ニ於ケル辯明
ノ代辯ヲ爲サレタカノ感ガアル御議論ガ
アッタノデアリマス
抑〓本案ノ審議ヲ致シマス上ニ付キマシ
テハ最モ此案ノ骨子デアル年齡及ビ婦人
ニ初メテ與フル所ノ公民權ノ年齡懸テ此
二ツノ問題ニ在ルノデアリマス、本案ヲ審
議スル上ニ於テ、今申シマス通リニ年齡
ガ案ノ一番ノ骨子デアル以上ハ各階級ノ
選擧ヲ通ジテ年齡ノ足並ヲ揃ヘテ之ヲ
定スルト云フコトハ是ハ我國ノ法制ノ
上カラモ、此制度ノ運用ノ上カラモ極メ
テ私ハ必要ナルコトヽ存ズルノデアリマス
(拍手)
ソコデ現在衆議院議員選擧法ハ、只今樞
密院ニ於テ審議中デアリマシテ、此審議ノ
形勢ハ每日新聞紙ニ依ッテ報ゼラレマス
ヤウニ、或ハ政府ハ樞密院ニ屈服シテ、
十歲ト云フ此年齡ヲ現行法ノ二十五歲
又ハ步ミ寄リヲシテ、妥協ヲシテ二十三
歲ト云フ此程度デ我慢スルカドウカト云
フコトガ傳ヘラレテ居リマスガ、是ハ內務
大臣モ、最初此案ニ付テ樞密院ノ諮詢ヲ奏
請セラレタ當時ノ御決心ト云フモノハ、必
ズ二十歲ヲ以テ貫クト云フ御決心ガアッタ
モノニ違ヒナイ併ナガラ其審議ノ形勢ガ
惡クナッタ爲ニ-本議場ニ於テ、本案ガ初
メテ上程セラレタ當時、同僚船田君ヨリ
此衆議院議日選擧法ノ改正ニ付テ萬一樞
密院ニ於テ年齡等ニ修正ガ行ハレ、政府ノ
原案ノ如ク同意ヲ得ルコト能ハザル場合ニ
於テ、年齡ノ點ニ、此改正案ト喰違ヒヲ生
ズル虞ハナイカト云フ、此質問ニ對シマシ
テ、內務大臣ハ何ト御答ニナッタカト云フ
ト、是ハ決シテ喰違ヒヲ生ズルト云フコト
ハ全然ナイト思ヒマス、ト云フコトヲ、ハシ
キリ此席上デ御答ニナッテ居ルノデアリマ
ス、ソレニモ拘ラズ、是ガ委員會ニ移サレ
マシテ、委員會ニ於テ此點ヲ尙ホ十分ニ確
メタノデアリマスガ、內務大臣ハ何ト之
ニ對シテ答ヘラレタカト云フト本議場ニ
於ケル答辯ヲ覆ヘシテ、此選擧法ニ對スル
年齡ノコトハ本改正案ノ地方制度ニ於ケ
ル公民權ノ年齡トハ全ク別箇ニシテ考へ
ベキ問題デアルト言ハレタ、先刻星島君ガ
此壇上デ質問致シマシタ、ソレニ對シテモ
同樣ノコトヲ以テ御答ニナッテ居ルノデア
リマス然ラバ先日本議場ニ於ケル船田
君ニ對スル所ノ御答辯ハ全ク何等ノ確信
ナクシテ、出鱈目ニ御答辯ヲ爲サッタモノ
ト思ハナケレバナラナイノデアリマス(拍
手)此法案ノ骨子ガ年齡ニアル關係カラ見
マシテ私共ハ我國ノ法制ノ沿革ヲ見ナケ
レバナラヌ
抑〓自治制度ノ始マリハ、諸君モ御承知ノ
通リ、市町村會規則ト云フモノガアリ又
府縣會規則ト云フモノガ出來、是ガ抑〓我國
ノ自治制度ノ濫觴デアリマスル、此十四年
ノ府縣會規則ト云フモノニ定メテアッタ選
擧年齡、被選擧年齡ト云フモノハ何歲デアッ
タカト云フト選擧年齡ハ二十歲デ被選
擧年齡ハ二十五歲デアッタノデアリマス、ソ
コデ市町村制ガ二十一年ニ發布ニナリ同
年カラ實施スルコトニナリ、二十二年ニ憲
法ノ制定發布ガアリマシテ、續イテ翌年ノ
明治二十三年ニ、此府縣制ト云フモノガ制
定セラレタノデアリマスデ年次ヲ逐ウ
テ各制度ガ定マリマシタ、其際ニ於ケル
選擧年齡ハ一貫シテ二十五年ト云フコト
二、各制度共ニ足竝ヲ揃ヘテ一定シテ居ル
ノデアリマス、是ハ單リ我國ノ沿革、歷史
ノミナラズ、各國ノ立法例ヲ御覽ニナリマ
シテモ政府ガ吾々ノ審議ノ參考ノ資料ト
シテ、御提出ニナリマシタ其材料ノ表ヲ見
マシテモ、英國ト云ヒ、米國ト云ヒ獨逸
ト云ヒ瑞典ト云ヒ、總テ此地方制度ニ於
ケル選擧年齡ト、衆議院卽チ國會ニ關スル
所ノ選擧年齡トハ一致シテ居ルノデアリマ
ス是ガ一致シテ足並ヲ揃ヘルト云フコ
トハ、先刻モ申シマスヤウニ、此法制ノ建前、
立法ノ建前、制度ノ運用ノ上カラ致シマシ
テ國家ニ對シテ重大ナル影響ヲ及ボスモ
ノデアリマス、先ヅ此年齡ニ差異ヲ生ジマ
スルト市町村等ニ及ボス影響ハ極メテ重
大デアリマス、此議會ニ於テノ論議ハソレ
限リデ濟ムノデアリマスガ、是ガ愈〓法律ト
ナッテ出テ、發布セラレマシタル後ニ於キ
マシテハ必ズ地方町村ニ於キマシテハ
衆議院議員ノ名簿府縣會議員ノ名簿、其
他町村會議員ノ名簿、各名簿ニ亙ッテ此年齡
ノ異ナルガ爲ニ、町村ガ複雜ナル委任事務
ニ依テ、財政困難ナル折柄ニモ拘ラズ尠
ナカラザル經費ヲ負擔スルガ如キハ甚ダ
時代逆行デアリ此內閣ノ方針ニ副ハヌト
思ハナケレバナラヌノデアリマス先刻モ
申シマシタヤウニ、內務大臣ガ冒頭ニ於テ
此處デ船田君ニ御答ヘニナッタコトガ、委員
會ニ臨マレルト直ニ豹變シテ、別箇ニ考ヘ
得ベキ事ナリト、全ク樞密院ノ雲行ニ對シ
テ甚ダ自分ノ所信ヲ貫クコトガ出來ナイト
云フコトハ旣ニモウ自分ノ最初ノ決心ト
云フモノハ鈍ッテシマヒマシテ、何處マデモ
忠實ニ此選擧年齡ハ二十歲ヲ以テ貫クベキ
モノデアリ是ガ憲政運用ノ爲ニ又選擧
權ノ性質精神ニ考ヘテモ必要ナリト思ハレ
ルナラバ何處マデモ是ハ樞密院ニ對シテ
突張ラナケレバナラヌト思フノデアリマ
ス
本來此選擧年齡ト云フモノガ、男子二十
歲ト云フコトハ何人モ今日モウ既ニ異存ノ
ナイ所デアラウト思フ、旣ニ普選實施セラ
レマシテ二囘ノ實施ヲ見、其〓育ノ程度
ハ駸々乎トシテ日ニ進ミツヽアル之ヲ二
十歲ニ低下シテ此憲政運用ノ益〓滑カナ
ランコトヲ希望スルト云フコトハ當然ノ
事デアルト私共ハ思フノデアリマス
一方又今囘政府ガ誇リトシテ、始メテ婦
人ニ公民權ヲ與ヘルノデアル其婦人ニ公
民權ヲ與ヘルト云フ政府ノ主張セラレル根
抵トナッテ居ル理由ハ何デアルカ、政府ハ女
子ノ知能、事物ニ對スル判斷ハ或ル點ニ
於テハ男子ニ優ルトモ劣リハシナイト云フ
コトヲ强ク御主張ニナリ、又吾々モ此女子
ノ一般社會的ニ進出シテ居ラレル此大勢
ヲ見マスト今日女子ガ此公民權ヲ獲得セ
ラレルト云フコトハ當然過ギル程當然デ
アルト私共考ヘル、此ノ男子ヨリモ或ル點
ニ於テハ婦人ガ優ッテ居ル、知識ノ點ニ於テ
モ、其總テノ能力ノ點ニ於テ男子ニ劣ル
所ナシ〓育ノ程度モ、今日ノ進步ノ狀態
ニ鑑ミルト決シテ男子ニ劣ルモノデナイ
ト云フ見地ニ立脚セラレテヽ此公民權ヲ與
ヘラレルナラバ一步進ンデ何故女子ニモ
二十歲トシテ此年齡ノ一致ヲ圖ヲテ公民權
ヲ與ヘナイノデアルカ(拍手)甚ダ此點ニ於
テ政府ノ論據ハ薄弱デアリマス、其主張セ
ラルヽ所ト其與ヘル所ノモノハ甚ダ矛盾
ガ多イノデアリマス··
〔發言スル者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02019310228&spkNum=97
-
098・小山松壽
○副議長(小山松壽君) 生方君靜肅ニ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02019310228&spkNum=98
-
099・倉元要一
○倉元要一君(續) 山枡君ノ先刻ノ中谷君
ニ對スル御議論ノ反駁ヲ承ッテ居リマシタ
ガ、婦人ノ公民權ニ對シテ、中谷君ガ御論
ジニナリマシタ夫ノ同意ヲ要スル點ニ於ケ
ル論旨ハ山枡君ノ御聽キ違ヒデハナイカ
ト思フノデアリマス、中谷君ノ、夫ノ同意
ヲ要スルコトヲ認メルコトハ甚ダ不合理デ
アルトシテ論ゼラレタ要旨ハヽ玆ニアルノ
デアリマス、婦人ニ公民權ヲ與ヘルト云フ
此根本精神、今私ガ申述べマシタヤウニ婦
人ノ智能、總テノ能力、總テノ社會的進出
ノ趨勢カラ見テモ、今日男子ト同樣ニ取扱ッ
テ差支ガナイト云フコトニ見ル如ク、ソレ
程ニ婦人ノ能力ヲ認メルナラバ、此民法ノ
總則第十四條ニ依ル私法上ノ-一家ノ利
害ヲ本トシ其家庭ノ平和ヲ保持スルト云
フ、其根柢ニ立ッテ出來テ居ル所ノ民法第十
四條ト云フモノハ私法的ノモノデアル
全ク一家ノ平和ノ保持ヲ基礎トシタモノデ
アル、此意味ニ於テ夫權ヲ尊重スルノデア
ル、夫ノ權利ヲ認メテ居ルノデアル、是ハ
唯個人ノ立場デアル、所ガ今度公民權ヲ與
ヘラレ衆望ヲ荷ッテ其者ガ立候補シテ當
選ヲシタ場合ニ、此者ハ必ズヤ我國ノ從來
ノ慣習カラ見マシテモ、夫ノ同意ヲ得ズシ
テ立候補ヲスルガ如キ無謀ナル女子ハ私ハ
決シテ一人モナイト思フノデアリマス
(拍手)必ズヤ立候補ヲ致ス前ニハ夫ト相
談ノ上デ、然諾ヲ受ケテ必ズヤルモノデア
ルト云フコトハ、是ハ常識デ判斷シテモハッ
キリシテ居ルソレヲ態玆ニ規定ヲ一項
設ケテ、之ヲ表面的ニ夫權ヲ尊重スルガ如
キ又家庭ノ是ガ平和ヲ維持スル一ツノ方
法デアリ東洋ノ美風ヲ維持スル一ツノ方
法デアルト云フヤウナコトヲ考ヘラレルニ
至ヲテハ、女子ニ公民權ヲ與ヘルト云フ根本
ノ精神ト、相背戾スルモノデアルト思フ(拍
手)而モ公法上ニ依テ與ヘラレタ公民權ノ
行使ニ依ッテ、妻タル身分ノ人ガ取得シタ此
權利ガ其妻タル身分ヲ持フテ居ル人ノ夫
タル個人ノ考ニ依テ是ガ破壞セラルヽト
云フコトハ延テハ是ハ自治ノ制度ヲ紊ル
モノデアルト申サナケレバナラヌ(拍手)是
ハ何ト考ヘテモ、三歲ノ兒童ヲ俟タズシ
テ、尙ホ此法ヲ改正スル精神ニ鑑ミマシテ
モ、矛盾撞著タルコトヲ免レナイ、尙ホ〓
囘公民權ヲ與ヘラルヽ婦人ノ數ハ內務當
局ノ調ベタ所ニ依リマスト云フト千三百五
十六万人、而モ其中デ妻タル身分ノ者ガ千
八万人サウ致シマスト是ハ大體ニ於テ
總數ノ八割ト云フモノガ妻タル身分ニ置カ
レテ居ルト見ナケレバナラヌ、サウシテ見
ルト云フト政府ガアノ條項ヲ玆ニ列ネタ
ト云フコトハ如何ニモ事實土ニ於テ、妻
タル身分ノ人ノ立候補ハ無イト云フコトヲ
豫想シナケレバナラヌヤウナ形ニ、法文ノ
體裁ガナルノデアリマス、斯樣ニ考ヘテ參
リマスト云フト、此妻タル身分ノ人ガ、主
トシテ事實上ニハ立候補シ、輿望ヲ荷ッテ出
ル人ガ大部分妻タル身分ノ人デアラウト私
ハ考ヘマス之ヲ一面ニ於テ斯ノ如キ規定
ヲ置イテ之ヲ阻止スルト云フヤウナ態度
ニ出ルコトハ甚ダ公民權ヲ與ヘル精神ニ
反スルモノナルコトヲ明カニシテ置キタイ
ト存ズル次第デアリマス
次ニ尙ホ山枡君ノ此點ニ於ケル反駁ノ論
據トシテ中谷君ニ加ヘラレマシタ反駁
ハ中谷君ガ官職又ハ〓職ニ就テ居ル婦人
ニ對シテ國家又ハ公共國體ガ之ヲ採用ス
ル場合ニ、夫ノ同意ヲ要スルト云フ條件ヲ
認メタモノハナイデハナイカ、ソレト是ト
ハ全ク違フト云フコトヲ以テ反駁ヲ御試ミ
ニナッタノデアリマスガ、併ナガラ夫權ヲ
尊重スルト云フ此規定ヲ置イタ所ノ精神
カラ之ヲ考ヘマスルナラバ中谷君ガ申シ
マシタヤウニ、其人ノ一身上ノ全ク家庭
ヲ離レル關係ト言ヒ、一ツノ職務ヲ有ツト
云フコトノ見地カラ考ヘルナラバ是ハ當
然同樣ニ考へ得ベキモノデアルト私ハ思
フ
次ニ申述ベテ置キタイコトハ公民權ヲ
與ヘテ市町村制ノミニ之ヲ適用シテ、行使
ヲ認メテ同ジ地方ノ自治體デアル所ノ府
縣制ニ及バナイ此點ニ付テ私ハ少シ論議
ヲ進メテ見タイト思フノデアリマス市町
村卽チ地方ノ自治團トシテ成程區域ニ於
テ又市町村自治ノ事務ノ內容ニ於テ唯
大小ノ差コソアレ其自治タルコトノ本質ニ
於テ何等ノ異ル點ハナイノデアリマスソ
レヲ市町村ナルガ故ニ先ヅ漸進主義トシ
テ此程度ニ止ムベキモノデアリ府縣ニ及
ブベカラズトスル議論ハ自治ト云フ本質
ヲ何ト考ヘテ居ラレルカ、殊ニ民政黨ノ諸
君ハ昨年五月ノ特別議會ニ於テ三十數
名ノ提出者ノ下ニ百數十名ノ贊成者ヲ得
テ、婦人ノ公民權ヲ與ヘル卽チ其公民權
ハ府縣ニ及ブベシト云フ案ヲ御提出ニナツ
テ居ル我黨モ亦之ヲ出シテ居ルソレヲ
今日ニ及ンデ此政府ノ今囘ノ改正案ニ付
テ此點ヲ何等ノ考慮ヲ拂ハズシテ、唯政
府案ニ盲從セラルヽコトハ、甚ダ私ハ政治道
德上不都合千萬ナ話デアルト思フ地方ノ
町村自治、卽チ市町村自治、府縣ノ自治、
共ニ地方制度ノ下ニ立ツ所ノ地方自治デア
リマス何等其實質ニ變ル所ガナイノデア
ルカラ、私共ハヤハリ年齡ト同樣ニ、女子
ニ公民權ヲ與ヘルト云フ根本觀念カラ致シ
マシテ府縣制ニ及バナイト云フコトハ
矛盾ノ甚ダシイモノト思フ、是ハ物ニ喩ヘ
テ申シマスナラバ、子供ガ砂糖ヲ嘗メタノ
ニ菓子ヲ喰。ッテ惡イト言フノト同ジデア
ル、同ジ性質ノモノデアル、之ヲ一ツハ宜
イガ、一ツハイカヌト云フコトハ理論ノ
上カラ、條理ノ上カラ、決シテ通ル議論デ
ハナイト思フノデアリマス民政黨ノ諸君
ハドウカアノ昨年ノ特別議會ニ於ケル行
動ヲ顧ラレテ吾々共ノ修正ニ進ンデ御贊
成アルコトガアナタ方ノ將來ニ對スル民
政黨ノ黨勢ノ維持ニモ必要ナコトデアルト
思フ又國民ハ民政黨ノ前ノ行動ト、吾々
ガ今囘主張シテ居ル所ノ修正ノ意見トヲ比
較シテ政友會ノ主張ガ公平ナルコトヲ必
ズ讚美シテ、今囘與ヘラルヽ千三百五十六
万ノ有權者ハ、我黨ノミニ投票スベキモノ
ナリト私共ハ信ズル自ラ前日ノ聲明ヲ裏
切り恬トシテ恥ヂザル所ノ其態度ハ私
共カラ言ハセルナラバ、是ハドウモ何時モ
不徹底ナ頭ダケ出シテ物ヲ中途半端ニ
シテ置イテ俺ガヤッタト云フ顏ヲシタイ、
宣傳主義ノ政黨デアルコトヲ物語ルモノデ
アリマスデアリマスカラ私ハ此案ヲ靜ニ
考ヘテ公平ニ見テ、今申ス所ノ町村制第
二十八條第三項、市制第三十二條第五項ノ
夫ノ同意ヲ要スルト云フ規定ハ削除致サナ
ケレバ此改正案ノ體ヲ爲サヌノデアリマ
ス、尙ホ此公民權ヲ市町村ノ自治ニ實行シ
テ之ヲ實施シテ行ク以上ハ何等府縣ノ
自治ト市町村ノ自治ト內容、意義ニ於テ
大ナル差ナキ以上ニ於テハ此公民權ハ府
縣ニ及ブベキモノナリトシテ府縣制第六
條ノ本案ヲ私共ハ修正スル所以デアリマ
ス山枡君ノ御述べニナル所ノ反駁論ハ
唯自黨ノ宣傳材料ヲ此壇上ニ於テ御述ベニ
ナッタダケデ、其實質ニ於テハ何等顧ミル所
ノ資料ハナイノデアリマス、ドウカ民政黨
ノ諸君モ國家ノ爲ニ、此一千三百五十六
万ノ女子ノ公民權有權者ノ爲ニ、進ンデ勇
氣ヲ鼓舞シテ吾々ニ贊成アランコトヲ私
ハ求メル者デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02019310228&spkNum=99
-
100・小山松壽
○副議長(小山松壽君) 是ニテ討論ハ終局
致シマシタ採決ニ入リマス各案ハ公民
權選擧權ノ擴張デアリマシテ關聯セル
議案デアリマスカラ修正案ハ四案ヲ一括
シテ採決シ、次イデ委員長報告ノ四案ヲ一
括シテ採決致シマス先ヅ四案ニ對スル中
谷君外丸名提出ノ修正案ヲ採決致シマス
此修正案ニ贊成ノ諸君ノ起立ヲ求メマス
〔贊成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02019310228&spkNum=100
-
101・小山松壽
○副議長(小山松壽君) 起立少數、仍テ修
正案ハ否決セラレマシター次ニ四案ノ委
員長報告ハ何レモ可決デアリマス委員
長報告通リ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02019310228&spkNum=101
-
102・小山松壽
○副議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メ
マス仍テ四案共委員長報告通リ可決致シ
マシタ(拍手)是ニテ四案ノ第二讀會ヲ終リ
マシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02019310228&spkNum=102
-
103・作田高太郎
○作田高太郞君 直ニ四案ノ第三讀會ヲ開
カレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02019310228&spkNum=103
-
104・小山松壽
○副議長(小山松壽君) 作田君ノ動議ニ御
異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02019310228&spkNum=104
-
105・小山松壽
○副議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メ
マス仍テ直ニ四案ノ第三讀會ヲ開キマス
〓총
市制中改正法律案(政府提出)第三讀會
町村制中改正法律案(政府提出)
第三讀會
府縣制中改正法律案(政府提出)
第三讀會
北海道會法中改正法律案(政府提出)
第三讀會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02019310228&spkNum=105
-
106・小山松壽
○副議長(小山松壽君) 別ニ御發議モアリ
マセヌカラ四案共第二讀會議決ノ通リ可
決確定致シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02019310228&spkNum=106
-
107・作田高太郎
○作田高太郞君 殘餘ノ日程ヲ延期シテ散
會シ明後三月二日定刻ヨリ特ニ本會議ヲ
開カレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02019310228&spkNum=107
-
108・小山松壽
○副議長(小山松壽君) 作田君ノ動議ニ御
異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02019310228&spkNum=108
-
109・小山松壽
○副議長(小山松壽君) 御異議ナキモノト
認メマス仍テ動議ノ如ク決シマシタ、次
囘ノ日程ハ公報ヲ以テ御通知致シマス、本
日ハ是ニテ散會致シマス
午後六時十分散會
衆議院議事速記錄第十九號中正誤
頁段行誤正
四七六-三取消サセナ取消サセナ
イサイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02019310228&spkNum=109
4. 会議録のPDFを表示
この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。