1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和六年三月二日(月曜日)
午後一時三十六分開議
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議事日程 第二十號
昭和六年三月二日
午後一時開議
第一 地租法案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第二 營業收益税法中改正法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第三 砂糖消費税法中改正法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第四 織物消費税法中改正法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第五 明治四十一年法律第三十七號中改正法律案(地方税制限に關する件)(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第六 大正十五年法律第二十四號中改正法律案(地方税に關する件)(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第七 都市計畫法中改正法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02119310302&spkNum=0
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001・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 諸般ノ報告ヲ致サ
セマス
〔書記官朗讀〕
一政府ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
電氣事業法改正法律案
土地收用法中改正法律案
(以上三月二日提出)
一議員ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
號外昭和六年三月三日
衆議院議事速記錄第二十一號
牧野法案
提出者
八田宗吉君藤井達也君
大石倫治君高橋熊次郎君
田子一民君
刑事訴訟法中改正法律案
提出者
小林錡君名川侃市君
馬產振興ニ關スル建議案
提出者
大石倫治君藤井達也君
八田宗吉君高橋熊次郞君
田子一民君
(以上二月二十八日提出)
一議員ヨリ提出セラレタル質問主意書左ノ
如シ
小學校〓科書價格引下ニ關スル質問主意
書
提出者山邊常重君
小運送業者ノ待遇改善ニ關スル質問主意書
提出者山邊常重君
(以上二月二十八日提出)
恩給證書利用ニ關スル質問主意書
提出者森峰一君
轉任竝不在ニ因ル連稅防止ニ關スル質間
主意書
提出者森峰一君
(以上三月一日提出)
〔左ノ報〓ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノ爲
玆ニ揭載ス〕
一去二十八日幣原內閣總理大臣臨時代理ヨ
リ左ノ通發令アリタル旨ノ通牒ヲ受領
セリ
:遞信省管船局長忠隆
侯爵廣幡
第五十九囘帝國議會遞信省所管事務政府
委員被仰付
一去二十八日常任委員補闕選擧ノ結果左ノ
如シ
第二部選出
決算委員砂田重政君(守屋榮夫君
補闕)
第九部選出
決算委員若宮貞夫君(宮澤裕君補
〓
一去二十八日議長ニ於テ選定シタル委員左
ノ如シ
自動車交通事業法案(政府提出)委員
古屋慶隆君松本忠雄君
奧山龜藏君岡本實太郞君
佐藤正君坂東幸太郞君
鈴木憲太郞君長野綱良君
大植〓左衞門君木村小左衞門君
卅口義久君三井德寳君
川島正次郞君加藤鐐五郞君
豐田收君名川侃市君
藏園三四郞君森本一雄君
輸出組合法中改正法律案(政府提出)外一
件委員
井上剛一君定塜門次郞君
中亥歲男君飯塚春太郞君
手代木隆吉君瀨川嘉助君
堀切善兵衞君上田孝吉君
岸田正記君
簡易生命保險法中改正法律案(政府提出)
委員
田中養達君岡野龍一君
眞鍋儀十君佐藤與一君
小俣政一君安田正男君
上野基三君高橋熊次郞君
村田虎之助君
重要產業ノ統制ニ關スル法律案(政府提
出)委員
增田義一君辻本豐三郞君
風見章君松井文太郞君
西村金三郞君牧野良三君
土井權大君津崎尙武君
松村光三君
一去二十八日ニ於ケル特別委員ノ異動左ノ
如シ
國立公園法案(政府提出)委員
辭任志波安一郞君補關佐藤重遠君
米穀法中改正法律案(政府提出)外一件委
員
辭任岡野龍一君補闕菅村太事君
瓦斯事業法中改正法律案(政府提出、貴族
院送付)委員
辭任川口義久君補關大崎〓作君
地租法案(政府提出)外六件委員
辭住菊池良一君補闕櫛部荒熊君
辭任松井文太郞君補關本田彌市郞君
辭任辻本豐三郞君補闕一松定吉君
辭任八田宗吉君補闘秦豐助君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02119310302&spkNum=1
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002・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 是ヨリ會議ヲ開キ
そう、第四部選出決算委員佐保畢雄君、第
六部選出決算委員中谷貞賴君、右常任委員
辭任ノ申出ガアリマス、許可スルニ御異議
アリマセヌカ
〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02119310302&spkNum=2
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003・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 御異議ナシト認メ
テ之ヲ許可致シマス、其部ノ諸君ハ速ニ補
關選擧ヲ行ヒ御屆アランコトヲ望ミマス
望月圭介君外十五名カラ書面ヲ以テ、濱口
内閣總理大臣登院ノ時期ニ付テ政府ノ言明
ヲ求メラレマシタ、之ニ對シ政府ヨリハ後
刻御囘答ガアル筈デアリマス
日程第一乃至第七ハ同一委員ニ付託シタ
ル議案ナルニ依リ、一括議題ト爲スニ御異
議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02119310302&spkNum=3
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004・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 御異議ナシト認メ
やく、日程第一、地租法案、日程第二、營
業收益稅法中改正法律案、日程第三、砂糖
消費稅法中改正法律案、日程第四、織物消
費稅法中改正法律案、日程第五、明治四十
一年法律第三十七號中改正法律案、日程第
六大正十五年法律第二十四號中改正法律
案、日程第七、都市計畫法中改正法律案ノ
七案ヲ一括シテ第一讀會ノ續ヲ開キマス、
望月圭介君外十六名カラ成規ノ贊成ヲ得
テ、地租法案外六件ノ撤囘ヲ求ムルノ動議
ガ提出サレテ居リマス、是ハ委員長ノ報〓
ニ次デ其趣旨辯明ヲ許シマス、先ヅ委員長
ノ報告ヲ求メマス、委員長本田恒之君
第地租法案(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報告)
報〓書
一地租法案(政府提出)
右ハ本院ニ可決スヘキモノト議決致候此
段及報告候也
昭和六年二月二十八日
委員長本田恒之
衆議院議長藤澤幾之輔殿
第二營業收益稅法中改正法律案餃
府提出)第一讀會ノ續(委員長報〓)
報告書
一營業收益稅法中改正法律案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和六年二月二十八日
委員長本田恒之
衆議院議長藤澤幾之輔殿
第三砂糖消費稅法中改正法律案政
府提出)第一讀會ノ續(委員長報告)
報〓書
一砂糖消費稅法中改正法律案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和六年二月二十八日
委員長本田恒之
衆議院議長藤澤幾之輔殿
第四織物消費稅法中改正法律案政
府提出)第一讀會ノ續(委員長報告)
報告書
一織物消費稅法中改正法律案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和六年二月二十八日
委員長本田恒之
衆議院議長藤澤幾之輔殿
第五明治四十一年法律第三十七號中
改正法律案(地方稅制限ニ關スル件)
(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報〓)
報告書
一明治四十一年法律第三十七號中改正法
律案(地方税制限ニ關スル件)(政府提
出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和六年二月二十八日
委員長本田恒之
衆議院議長藤澤幾之輔殿
第六大正十五年法律第二十四號中改
正法律案(地方稅ニ關スル件)(政府
提出)第一讀會ノ續(委員長報〓)
報告書
一大正十五年法律第二十四號中改正法
律案(地方稅ニ關スル件)(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和六年二月二十八日
委員長本田恒之
衆議院議長藤澤幾之輔殿
第七都市計畫法中改正法律案(政府
提出)第一讀會ノ續(委員長報〓)
報告書
一都市計畫法中改正法律案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和六年二月二十八日
委員長本田恒之
衆議院議長藤澤幾之輔殿
〔「農林大臣ガ居ナイ」「農林大臣ハドウ
シタ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02119310302&spkNum=4
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005・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 農林大臣ハ貴族院
ノ委員會ニ出席シテ、只今答辯中トノコト
デアリマス
〔本田恒之君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02119310302&spkNum=5
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006・本田恒之
○本田恒之君 地租法案外六件、卽チ減稅
委員會ノ經過及ビ結果ヲ御報告申上ゲマス
委員會ヲ開キマシタルコト二十三囘、其
中四囘ハ夜十時過ギマデ續イテ開イタノデ
アリマス、此法案ハ本議會ニ於ケル最モ重
要ナル法案デアリマスルガ爲ニ、質問ハ廣汎
ニ亙リマシテ、多岐多端ノ最モ詳密ヲ盡シ
タノデアリマス、其詳細ニ亙ッテ一々玆ニ御
報告申上ゲマスル煩ヲ避ケマシテ、大體ハ速
記錄ニ就テ御覽ヲ願フト云フコトニ致シマ
シテ、私ハ其中ノ重要ナル質問二三ノ點ニ
付テ、御報告シタイト考ヘルノデアリマス
先ヅ第一ノ質問ト致シマシテハ今囘ノ
地租法ハ賃貸價格ガ課稅標準ニナッテ居ル
ガ、之ヲ純益ニ課稅スルト云フ考ハ政府ニ
ハナイカ、地租ト云ヒ、營業收益稅ト云ヒ、
均シク所得稅ノ補完稅デアル、然ルニ營業
收益稅ハ純益課稅ニナッテ居ルガ、地租ヲ賃
貸價格ニスルト云フコトハ其權衡ヲ失フ
デハナイカト云フ質問ガ第一デアリマス
之ニ對シマシテ政府ノ答辯ハ、地租ハ從來
地價ニ課稅シタモノデアル、併ナガラ其地
價ト云フモノガ甚ダ不公平デアルカラ、今
度ハ其不公平ヲ矯メル爲ニ、賃貸價格ニ依
ルト云フコトニシタノデアル、一體地租ハ
土地ヲ所有スル者ニ稅ヲ課ケル、所謂物的
課稅ガ相當デアル、之ヲ收益稅ト云フコト
ニ致シマスレバ、徵稅ノ方法カラ考ヘマシ
テモ、殆ド不可能デアリマス、ソレ故ニ賃貸
價格ニ依ッテ課稅スルト云フノガ相當デアル
ト云フノガ、政府ノ答辯ノ大要デアリマス
第二ハ、今囘ノ減稅案ト云フモノヲ地租、
營業收益稅及ビ砂糖消費稅、織物消費稅ノ
四種ニ限定シタノハドウ云フ譯デアルカ、
モウ少シ廣ク減稅ヲ試ミナカッタノハ何故
デアルカト云フ質問ニ對シマシテ、政府ニ
於キマシテハ之ニ對シテ今囘ノ減稅ノ計
畫ト云フモノハ海軍ノ留保財源ノ餘裕ヲ」
以テ計晝シタモノデアルカラ、金高ノ上ニ
於テ他ノ減稅ニ及ブ餘地ガナカッタノデア
ル、殊ニ國民日用ノ生活ニ必要ナル織物稅
及ビ砂糖消費稅ニ限定シタノデアル、又直
接稅トシテハ今日一千万以上ノ納稅者ヲ有
スル所ノ地租、卽チ農民ガ非常ニ疲弊ヲ致
シテ居ルカラ、之ニ向ッテ減稅ヲ試ミタノ
デアル、既ニ農民ノ負擔ヲ減ジタ以上ハ
其均衡トシテ商工業者ニ對シテ負擔ノ輕減
ヲスル必要ガアル、ソレ故ニ營業收益稅ニ
向ッテ輕減ヲ試ミタノデアルト云フノガ、政
府ノ大體ノ答辯デアリマス、又減稅額ガ間
接稅ニ及ブ所ガ少イデハナイカ、僅カニ織
物稅及ビ砂糖消費稅ニ輕減ヲ試ミタト云フ
ノデハ民衆ニ對スル負擔ノ輕減ガ少イデ
ハナイカト云フ質問ニ對シマシテハ政府
ハ今日經濟界ノ變動ノ結果ト致シテ、物價
ハ非常ニ下落ヲ致シテ居ル、此以上更ニ消
費稅ニ減稅ヲ試ミテ物價ヲ低落セシムル
ト云フ必要ヲ認メナイダカラ此程度ニ止
メテ居ッタノデアルト云フ答辯デアリマス、
更ニ消費稅ニ對スル所ノ減稅ト云フモノ
ハ是ハ消費者ニ轉嫁サレズシテ、途中ニ
於ケル商人ノ利益ニ歸スルニ外ナラヌデア
ラウ、此點ハ如何カト云フ問ニ對シマシテ、
政府ノ答辯ニ於キマシテハ消費稅ノ減稅
ガ一般ノ消費者ニ直チニ影響スルト云フコ
トハ困難ノ事情ガアルケレドモ、既ニ消費
稅ヲ相當ニ減額シタ以上ハ影響ガアル
モノト考ヘル尙ホ其減稅ノ效果ガ現ハレ
ルヤウニ、政府ハ特ニ努力ヲシタイト云フ
答辯デアリマシタ
第三ハ、今囘ノ減稅計畫ハ國稅ニノミ限
ラレテ、地方稅ニ及バナイノハドウ云フ譯
デアルカト云フ質問デアリマス、之ニ對シ
マシテハ海軍ノ計畫卽チ海軍ノ充實計畫
ハ、國稅ヲ以テ之ヲ支辨スルト云フコトニ
ナッテ居ル、今囘海軍ノ留保財源ニ餘裕ヲ生
ジタ以上ハ、之ヲ國稅ニ向テ輕減スルト云
フノガ當然ノ結果デアルト云フ、簡單ナル
答辯デアリマス
ソレカラ地租輕減ノ結果、地方稅ニ於キ
マシテハ地租ニ對スル附加稅ガ非常ニ減額
サレル、減額サレヽバソレダケ家屋稅デア
ルトカ、戶數割デアルトカ云フモノニ轉嫁
スルノハ明白デアル、今日旣ニ家屋稅、戶
數割ノ負擔ニ苦シンデ居ル一般國民ハ更
ニ地租ニ於テ減額サレタダケヲ重課サレル
ト云フコトニナルト、一層困難デアラウト
云フ質問ニ對シマシテ、政府ニ於キマシテ
ハ、ソレハ監督ヲ嚴重ニシテ重課ヲセシメ
ナイヤウニシタイト考ヘテ居ル、尙ホ昭和
六年ニ於テ計畫サレテ居リマスル所ノ稅制
整理ニ於キマシテ、地方稅ニ付テハ根柢ヨ
リ相當ノ訂正ヲ加ヘル考デアルカラ、地方
民ノ負擔ニ苦シムト云フ結果ヲ生ゼシメナ
イヤウニシタイト云フ答辯デアリマシタ
最後ニ最モ大ナル質問ガアッタノデアリ
VV、ソレハ政友會ノ大口君カラ發セラレ
マシタ所ノ質問デアリマスガ、減稅ハ勿論
恆久的ノ計畫デアル、恆久的ノ計畫デアル
ニ付テハ其稅源モ亦恆久デナケレバナラ
又、然ルニ政府ノ計畫スル所ニ依ッテ見レ
バ、其稅源ガ甚ダ不確實デアル、殊ニ今囘
ノ海軍補充計畫ノ外ニ、昭和十一年以前ニ
於テ頭ヲ現ハスデアラウト認メラレル所
ノ、所謂第二補充計畫ノ財源ハ何ニ依ッテ求
メルカ、若モ第二計畫ヲ實行スルト云フ場
合ニ於テ、財源ヲ海軍ノ留保財源ニ得ルト
云フコトニナルト、減稅ノ財源ガナクナッテ
シマフ、減稅ノ財源ヲ維持スルト云フコト
ニナルト、第二計畫ノ財源ガナイガ、政府
ハ如何ニシテ之ヲ見出スカト云フ質問デア
リマシタ、之ニ對シテ政府ノ答辯ノ要領ハ、
今囘ノ補充計畫ニ於テ、海軍ノ根幹ト云フ
モノハ旣ニ備シテ居ッテ、國防上何等心配ス
ルコトハナイ、尙ホ所謂第二計畫ト云フモ
ノハ、內外ノ狀況ニ顧ミテ徐ロニ之ヲ計畫
スルト雖モ、決シテ遲シトシナイ、現在ニ
於テハ何等其計畫ヲ持ノテ居ナイノデアル、
斯ウ云フ海軍當局ノ答辯デアリマス、旣
現在ニ於テ何等計畫ト云フモノガナイトス
ルナラバ、之ニ向ッテ其財源ヲ今ヨリ保留シ
テ置ク必要ハアルマイ、五年六年先ニ至ッテ
行ハルベキコトデアラウト思ハレルコト
ハ世界ノ大勢ニ基イテ之ヲ計畫サレル事
柄デアル、デアリマスカラ今カラ其財源ヲ
留保シテ置ク必要ハナイノデアリマスト云
フノガ答辯ノ要領デアリマス、其他或ハ
廣幅織物ニ對シテ何故ニ減稅シナイカ、或
ハ人絹織物ニ對シテ何故ニ免稅シナイカト
云フヤウナ質問、其他重要ナ質問ガ非常ニ
アリマシタガ、一々之ヲ此處ニ御紹介スル
コトハ、其煩ヲ避ケタイト考ヘマシテ、一
切速記錄ニ讓リマス、討論ニ入リマシテ、
大口君ハ政友會ヲ代表サレテ、今度ノ減稅
計畫ト云フモノハ如何ニモ杜撰デアル、共
財源ノ上カラ申シテモ、其內容ニ於テモ
其地方稅トノ關係ニ於テモ杜撰デアルカ
ラ、之ヲ政府ニ返付シテ作成替ヲシテ貰ヒ
タイト云フ御意見ノ發表デアリマシタ松
谷與二郞君ハ此減稅案ハ無產階級ニハ甚
ダ其利益ヲ需ス所ガ薄イカラ、更ニ大イニ
修正ヲシタイト云フ種々ノ御意見ガ出マシ
ク、又永田善三郞君ハ民政黨ヲ代表致シマ
シテ、今ヤ我ガ國民ハ經濟界ノ不況ノ爲ニ、
非常ニ困態ニ陷フテ居ル、此場合ニ於テ減稅
ヲ實行スルト云フコトハ時宜ニ適シタル
大政策デアル、ソレ故ニ政府ノ提案ニ付テ
全部賛成スルト云フ御意兒ヲ發表サレタノ
デアリマス、是等ノ意見ノ詳細ニ付キマシ
テハ、是ヨリ各派ノ代表者ガソレ〓〓此處
ニ於テ演述セラルヽコトデアラウト思ヒマ
スカラ、私ハ其理由ハ一切省略致シマス
最後ニ採決ヲ致シマシタ所ガ、大口君ノ
返付論ハ少數ニシテ否決サレマシタ、永田
君ノ原案贊成論ガ多數ヲ以テ、政府案ハ可
決ニ相成ッタ次第デアリマス、ドウゾ本會ニ
於キマシテモ、委員會決定通リ御贊成アラ
ンコトヲ希望致シマシテ、此委員會ノ報〓
ト致シマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02119310302&spkNum=6
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007・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 是ヨリ撤囘ノ動議
ノ趣旨辯明ヲ許シマス、岡田忠彥君
〔岡田忠彥君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02119310302&spkNum=7
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008・岡田忠彦
○岡田忠彥君 諸君、私ハ委員會ニ於ケル
少數意見卽チ只今提出セラレマシタ所ノ、
地租法案外六件ノ法案ヲ撤囘スベシトノ動
議ノ趣旨辯明ヲ致シタイト存ジマス、卽チ
吾々ハ此動議ニ依ッテ、政府ノ原案ニ反對
ノ意見ヲ表明スル者デアリマス吾々ハ固
ヨリ減稅ナルモノニ付テハ少シモ反對デ
ハナイノデアリマス殊ニ現在ノ此不況ノ
際ニ於テ、又殊ニ金解禁ニ依リ貨幣價値ノ
增サレタル此時代ニ於テ、減稅ナルモノハ
最モ必要ナル政策ナルコトヲ信ズル者デア
リマシテ、寧ロ今囘ノ政府ノ提案ノ額ノ少
ナキコトヲ憾ムノデアリマス
政府ハ曩ニ軍縮會議ニ臨ムニ當ッテ、其保
留財源ヲ主トシテ減稅ニ向ケルト云フコト
ヲ表明致シテ、天下ヲシテ信用サセテ居ッ
タ、卽チ今ヤ如何、其一小部分ヲ以テ減稅
ニ充テルト云フコトハ、全ク政府ノ言明ヲ
裏切リ、國民ヲ欺クモノデアルト吾々ハ信
ズル者デアリマス(拍手)政府ハ御承知ノ如
ク五億八百万圓ノ留保財源ノ中ヨリ、三億
七千四百万圓ヲ海軍ノ整備計畫ニ用ヒ、其
殘額僅ニ一億三千四百万圓ヲ今囘ノ減稅ニ
向ケント致スモノデアリマス、此額ハ一應
多イヤウニ見エル、然レドモ其內容ニ於
テハ、之ヲ六年ニ分割ヲ致シテ減稅シテ居
ルノデアリマス、卽チ一年ハ平年度ニ於テ
僅ニ二千五百餘万圓ノ減稅、六年度ニ於テ
ハモット少クシテ、九百万圓ノ減稅デアル、
吾々ハ甚ダ其額ノ少ナキコトヲ遺憾ト致
シ、又政府ノ言明ノ實行セラレザリシコト
ヲ遺憾ト致ス者デアリマス(拍手)
抑こ一國ノ財政變理ノ任ニ當ル者ガ、減
稅案ヲ提出スルニ當ッテハ、必ズヤ恆久的ノ
計畫ヲ立テナケレバナラヌ、今此計畫ニ依
ルモ、六年ノ間ハ假ニ確實ナ留保財源アリ
トスルモ、其先ノ計畫ハ殆ド無イ、斯ノ如
キ基礎ノ薄弱ナル計畫ノ下ニ實行サレタナ
ラバ今囘ノ減稅ニ依ッテ一旦國民ヲ安心
サセテ置イテ、將來ニ於テ直チニ增稅若ク
ハ公債ノ增發ニ依ッテ、國民ニ重荷ヲ負ハス
ト云フ結果ニナルコトハ明瞭デアリマセ
ス、更ニ進ンデ五億八百万圓ノ此稅源ナルモ
ノハ確實ナモノデアルカドウカ、御承
知ノ如ク六年度ノ豫算ニ於テモ、經常收入
ハ旣ニ一億五千万圓以上ノ減收ヲ來シテ居
ルノデアリマス、況ヤ其留保財源ナルモノ
ハ政府ガ昭和五年度ノ財政計晝ヲ基礎ト
シテ立テタモノデアル、此昭和五年度ノ財
政計畫ハ、諸君ノ御承知ノ如ク十五億幾千
万圓ノ歲入アリシ時代ノ計畫デアル、今囘
ノ計畫ハ如何、卽チ既ニ歲入ガ十四億ニ下ッ
テ居ル其下ッテ居ルニ拘ラズ、依然トシテ
五億八百万圓ノ財源アリト云フコトハ吾
吾ハ到底常識ヲ以テスルモ、之ヲ承認スル
コトガ出來マセヌ(拍手)然ラバ此二億ニ近
キ減收ノ上ニ於テ、尙且五億八百万圓ガ存
スルト云フコトハ架空ノ議論デアリ、紙
上ノ空論デアルト云フコトヲ斷言セザルヲ
得マセヌ若シ强ヒテ此財源ガ留保サレテ居
ルト云フコトデアルナラバ必ズヤ一般ノ
豫算ニ向ッテ非常ナル斧鉞ヲ加ヘ、非常ナル
無理ガ出來テ居ルコトハ明瞭ナルコトデア
リマス
偖テ此五億餘万圓ガ假ニ確實デアルトシ
テモ、吾々ハ更ニ檢討スベキ點ガアル、此
五億餘万圓ノ海軍ノ兵力整備計畫ト云フモ
ノハ果シテ完全ナモノデアリ、國防上十
分ナル安固ヲ與ヘルモノデアルカドウカ、
政府ハ此所謂第一次補充計畫ナルモノハ、
海軍ノ整備計畫中ノ幹根デアルト云フコト
ヲ唱ヘテ居ル、而モ此幹根デアルト云フ第
一次計畫ヲスルモ、委員會ニ於ケル吾々ト
ノ應答ニ依ッテ見ルト甚グ怪シイ、此怪シイ
點ニ付テハ、私ハ便宜上他ノ同僚ニ讓ルノ
デアルガ、然ラバ尙ホ其背後ニ海軍ノ整備
上必要トスル所ノ經費ガアルコトハ明瞭デ
アル卽チ同僚内田君ノ政府ト應答ヲ重ネ
ラレタ所ニ依ッテ明瞭ナルガ如ク、此背後
ニハ第二次補充計畫ガ橫ハッテ居ル、更ニ又
今囘ノ補充計畫ニ依ルト、尙ホ昭和七年度
ヨリ一万八千噸ト云フ新艦ノ維持費ト云フ
モノヽ必要ガアルコトハ是亦政府ノ明瞭
ニ認メテ居ル所デアル此第二次計畫ナル
モノハ昭和九年若クハ十年、十一年ニ亙ッテ
實行サレルモノデアルコトモ、亦政府ノ認
メル所デアルガ、其費用ハ幾ラデアルカト
言ヘバ卽チ全部ノ費用ニ付テハ多少意見
ノ相違モアリマセウガ、吾々ハ之ヲ一億五
千万圓ト考ヘテ居ル、是ハ別問題ト致シマ
シテモ此九年若タハ十年、十一年ノ時ニ
於テ、第二次計畫ニ著手スルナラバ、職工
ノ足留費ノミデモ九百六十万圓ト云フ巨額
ノ費用ヲ要スルコトハ、是亦明瞭デアル(拍
手)又新艦建造費ニ至ッテハ最低二千万圓
ノ財源ヲ要スル、而モ此二ツノ財源ニ付テ
ハ政府ハ將來中外ノ形勢ニ依ッテ考ヘル
ト云フ此一言ノミデ、何等ノ準備ヲシテ居
ナイ、是ハ政府ガ國防ニ對シ國民ノ安固
ニ對シテ、如何ニ誠意ヲ缺クモノデアルカ
ヲ斷言セザルヲ得ナイノデアリマス(拍手)
而モ又現內閣成立以來ノ財政經理ノ有樣
ヲ見ルト洵ニ無謀無經綸ヲ極メテ居ル
卽チ四年度ニ於テハ六千餘万圓ノ繰延ヲ致
シテ居ルノデアル、政府樹立ノ當初、卽チ
昭和四年ノ九月十一日、政府ハ各派ノ代表
ヲ集メテ、所謂實行豫算ナルモノヲ說明シ
タノデアルガ、其場合ニ何故斯樣ニ無謀ナ
ル繰延ヲ爲シタカト云フコトヲ聞イタ、
所ガ政府之ニ答ヘテ、經常費ニ於テハ中ミ
削減ガムヅカシイ、仍テ此臨時費ニ付テ取
敢ヘズ削減ヲ加ヘタト言テ居ル、而モ六千
二百餘万圓ノ繰延ヲ行,テ居ル、五年度ニ於
テハ一度繰延ヲ致シ、更ニ再ビ又自己ノ實
行豫算ヲ改訂致シ卽チ行政經濟化ノ名ノ
下ニ、第二次ノ四千万圓ノ繰延ヲ致シテ居
ル、六年度ニ於テハ更ニ六千五百万圓、斯
ノ如ク致シテ昭和七年度以後ニ、繼續費ト
シテ差引七千万圓若クハ八千万圓ト云フ負
擔ヲ殘シテ居ルノデアル、五年度豫算ハド
ウデアルカ、之ニ付テモ少クモ四五千万圓
ノ歲入不足ヲ來スコトハ明瞭デアッテ、吾黨
ノ三土君ガ此壇上ヨリ其公人トシテノ面目
ヲ賭ケテ、赤字ノ出ルト云フコトヲ政府ニ
迫ッテ居ル、此不安固ナル五年度ノ豫算ヲ基
トシタル六年度ノ豫算ト云フモノハ信ズ
ルニ足ラヌコトハ明瞭デアリマス、此六年
度ノ歲入見積ガ過大デアルト云フコトハ
本會議若クハ委員會ニ於ケル政府トノ屢〓
ナル質問應答ニ依ッテ明瞭デアリ、天下何人
モ之ヲ疑フ者ハナイ(拍手)而モ亦此六年度
ノ歲入ニ付テハ、非常ニ無理ナル歲入ヲ政
府ハ計上シテ、有ユル財源ヲ漁ッテ居ル形
勢ガアリマス、卽チ獨逸ノ賠償金ヲ國債整
理基金ニ入レルコトハ、政府自ラ之ヲ行ヒ、
自ラ忽チ之ヲ崩シテシマッテ居ル、又煙草ノ
元販賣ノ如キ、一時的、臨時的ノ費用ヲ漁ッ
テ居ル、又自ラノ非募債政策ヲ破クテ、失業
公債二千二百万圓ヲ起シ、尙且足ラズシテ
地方ノ分擔納付金ヲ高メテ、政府ノ懷ニ入
レテ居ルデハナイカ、又最モ緊要ヲ覺エル
救護法ニ付テモ、政府ハ未ダ實行スルコト
ガ出來ナイ、其苦ンダ揚句ハ故ナクシテ
大府縣ニ於ケル所ノ、所謂警察連帶支辨金
ナルモノヲ奪去リ、又競馬法ノ各府縣ニ於
ケル四十万圓以上ノ納付金ナルモノヲ奪ッ
テ、更ニ與ヘル形ニ於テ一時ヲ糊塗セント
スル形勢ガアルヤニ聞イテ居ル、斯樣ニ不
安ナル狀況ニ於テ六年度ノ財政ヲ計畫シ、
更ニ七年度以後ノ計畫ニ移ルノデアルガ、
其計畫モ亦甚ダ無謀デアル、卽チ繼續費ノ
中ニ於テ電話交換擴張費、卽チ時勢ノ進運
ニ依ッテ多々益〓擴張サルベキ此擴張費ナ
ルモノヲ、昭和十年度デ打切シテシマッテ居
ル、後ハドウスルノデアルカ、殆ド其經綸
ガナイデハナイカ
又繼續費以外ノ臨時費ヲ一瞥致シマシテ
モ、年々歲々此歲計表ニ依ルト繼續費以
外ノ臨時費ハ段々減ッテシマッテ、甚シキニ
至ッテハ五割滅以上ニ達シテ居ルト云フ狀
況デアル而モ亦計畫中ノ繼續費以外ノ臨
時費、殊ニ繼續費的ノモノニ付テモ、其終
リノ方ハ殆ド尻切繻絆トナッテシマッテ居ル
譬ヘテ言ヘバ北海道ノ拓殖費、產業奬勵費、
農村振興費、斯樣ナモノハドウナルノデア
ルカ、殆ド政府ハ將來ノ見据ヲ付ケテ居リ
マセヌ、其以外ニ目前ノ必要ニ迫ラレテ居
ル費用ハ、枚擧ニ遑ガナイ、卽チ先程申シ
タ所ノ第二次ノ補充計畫、新艦船ノ維持費
ハ固ヨリ、今囘提案サレタル小作法ガ若シ
可決サレタ場合ニ於テ、其裁判官ノ增員費
ハドウナッテ居ルカ、然ルニ其豫算ハナイ
又年々二三百万圓ノ增加ヲ來シツヽアル所
ノ恩給ノ遞增率ニ付テ全ク其準備ガナイ、
又當面ノ問題デアル地租ヲ賃貸價格ニ依ル
コトニ改正スルナラバ法律ノ規定ニ依リ
昭和十三年度ニ於テ第二囘ノ賃貸價格ノ
改訂ヲシナケレバナラヌノデアリマス、第
一囘ハ一千万圓ヲ要シタガ、第二囘ハ少ク
トモ六百万圓ヲ要スル、此六百万圓ノ經費
ト云フモノモ、全ク財政計畫申ニハ計畫サ
レテ居ナイ、米穀法ノ借入金一億五千万圓
ハドウスルノデアルカ、生絲ノ補償費三千
万圓、之ヲドウスルノデアルカ、斯ク算ヘ
來ルト、殆ド現內閣ノ財政計畫ナルモノハ
破綻ヲ致シテ居ルノデアル(拍手)
更ニ又此計畫中ニ於ケル歲計剩餘金ナル
モノハドウナッテ居ルカト言ヘバ、僅ニ百万
圓乃至二百万圓ノ間ニ在ル、一國ノ財政ヲ
變理スルニ當ッテ、僅ニ百万圓ヤ二百万圓ノ
剩餘金ヲ以テ何ガ出來ルカ、日本財政ノ船
ハ現内閣ノ手ニ依ッテ將ニ沈沒セントシテ
居ルト私ハ信ズル者デアル(拍手)
是ニ於テ政府ハ苦ンダ揚句何ヲ考ヘタカ
卽チ行政財政稅制ノ整理ト云フコトヲ唱道
致シテ居ル、併ナガラ現內閣ハ果シテ此行
政財政ノ整理ニ向ッテ、十分ナル確信ト、十
分ナル誠意ヲ持ヲテ居ルカドウカ、過グル五
十七議會ニ於テ、我黨總裁犬養氏ガ濱口君
ニ向ッテ、行政財政ノ大整理ヲ行フ意圖ハナ
イカト質問ヲ發シテ居ル、濱口君ハ之ニ答
へく、左樣ナルコトハ如何ナル意味ノモノ
カ分ラナイト言ッテ、非常ニ冷淡ナル態度ヲ
致シテ居ルノデアル、五十七議會ニ於テハ
固ヨリ、五十八議會ニ於テモ一言モナイ、
翻ヲテ今囘苦シ紛レニ此行政財政ノ整理ヲ唱
ハイ、有ユル財政ノ缺陷ヲ此中ニ入レテ、
胡麻化シ去ラントシテ居ルノデアルガ、ソ
レデハ今囘ノ此行政財政ノ整理ニ付テ、如
何ナル理想ヲ政府ハ有シテ居ルカ、之ヲ幣
原首相代理ニ聽イタ所ガ、首相代理ガ言フ
ノニ-私ハ念ノ爲ニ速記ヲ讀ンデ見ル「要
スルニ最近非常ナル社會ノ不景氣ノ結果ニ
依リマシテ、國費ヲ極端ニ急激ニ縮小セザ
ルヲ得ザルニ至ッタノデアリマス、此急激ニ
縮小シタル國費ト國務執行トノ關係ニ於
テ、自然調和ヲ缺クヤウナ點モ起ッテ來タノ
デアリマス、ソレ故ニドウシテモ此際斯ノ
如キ不調和ヲ除イテ、行政-政治組織ト
云フコトニ大改正ヲ加へタイ」斯樣ニ答ヘ
テ居ラレル、井上藏相モ同ジ意味ノコトヲ
答ヘテ居ル、是ニ由シテ之ヲ觀ルト、此減收
ヲ塡補スルト云フ以外ニ、政府ノ行財政ノ
整理ニハ理想ハナイ、卽チ消極的ノ意味デ
アル吾々ノ唱フル行財政ノ整理ハ自ラ異
ナルモノガアル、吾々ハ此中央集權的、官
僚的ノ行政組織ヲ打破致シテ、之ヲ民衆的
ノ機構ニ直シテ行クト云フ所ノ、大ナル理
想ヲ具有シテ居ルモノデアル、而モ藏相ハ
此行財政ノ整理ノ問題ノ一ツトシテ將來
苦シクナレバ繼續費モ亦之ヲ繰延ベナケレ
バナラヌト云フコトヲ委員會ニ於テ言明
致シテ居ル、左樣ナラバ此政府ノ提案サレ
タル所ノ繼續費ナルモノハ、殆ド信ヲ措ク
ニ足ラザルモノデアルト言ハナケレバナラ
又、斯ノ如キ貧弱ナル消極的ノ理想ノ下ニ
於テ、如何ニシテ政府ハ此財政整理ヲ行ヒ
得ルカ、吾々ハ之ヲ甚ダ疑フモノデアル
ノミナラズ此整理ノ爲ニハ少クトモ七八千
万圓ノ削減ヲ出サナケレバナラヌ、是ガ政
府ノ力ヲ以テ一年ヤ二年デ出來ルカ、出來
又カ、自ラ天下ノ識者ガ判斷シ得ルモノデ
アルト私ハ信ズルモノデアル
斯ル財政ノ危機ニ當ッテ、好ンデ減稅ノ計
畫ヲ行ヒ恆久的ノ政府財政計畫ニ非常ナ
ル缺陷ヲ與ヘルト云フコトハ全ク是ハ無
謀ノ計畫デアルト言ハナケレバナリマセヌ、
而モ政府ハ七年度以降ニ於テハ、行財政ノ
整理ヲ爲スト云フ、而シテ之ニ對シテハ
今囘ノ提案サレタル四ツノ稅ト云フモノ
ハ其整理ニ加ヘナイト云アコトヲ言明致
シテ居リマス、政府ノ言明如何ニ拘ラズ、
將來ニ於テ中央地方ヲ通ジ、各種ノ稅目ヲ
通ジテ、其均衡ヲ圖ルト云フ以上ハ、如何
ニ强辯ヲ加ヘテモ此四ツノ稅ナルモノヲ
行政財政整理ノ題目ニ入レザルコトヲ得ナ
イコトハ明カデアル、左樣デアルナラバ
此計畫ナルモノハ、少クモ六年度ニ於テハ
其力ガアルカナレドモ七年度以降ニ於テ
ハ何等根據ナキ洵ニ不安定ナル財政計畫
デアル、然ラバ之ヲ急イデヤルト云フコト
ハ政府ガ單ニ自己ノ豫テノ無謀ナル言質
ニ囚ハレテ、國家財政ノ基礎ヲ危クセント
スルモノデアル、卽チ全ク不謹愼ナル態度
デアルト、吾々ハ之ヲ表明スルモノデアリ
マス政府ハ地租委讓法案ノ討議ニ當フテ
モ、民政黨ノ諸君ハ一面ニ於テハ減稅ヲナ
シ、一面ニ於テハ公債ヲ募ルト云フコトハ、
矛盾デアルト云フコトヲ極力唱ヘテ居ルデ
ハナイカ、今政府ハ一方ニ於テ非募債主義
ニ反シタル二千万圓ノ失業公債ヲ起シ、
方ニ於テ此減稅ヲナスト云フコトハ、是ハ
卽チ矛盾デハナイカ(拍手)
更ニ私ハ進ンデ此減稅案ナルモノヽ內容
ニ付テ檢討ヲ加ヘント致スモノデアリマ
ス、此減稅案ナルモノハ、御承知ノ如クニ
四ツノ稅目ヲ多數ノ稅目中ヨリ選定ヲ致シ
テ、之ニ減稅ヲ加へ又其保留財源ナルモ
ノヲ、此四ツノ財源ノ中ニ割振ッタモノデ
アルガ、吾々ハ此減稅ノ爲ニ四ツヲ選定シ
ク其理由ヲ幾ラ聽イテモ、何等理論的事實
上ノ根據ヲ持ッテ居ラヌ、況ヤ此減稅額ノ配
當ニ付テモ、殆ド其根據ヲ持ッテ居ラヌノデ
アル、卽チ平年度ニ於ケル減稅額ノ各稅目
ノ配當率ヲ見ルト、地租ニ於テハ千八十万
圓營業收益稅ニ於テハ四百六十万圓、砂
糖消費稅ニ於テハ六百万圓、織物消費稅ニ
於テハ四百十三万圓デアルガ、此地租ハ申
スマデモナク景氣不景氣ニ依ッテ其稅率ニ
變動ヲ及スモノデハナイ、然ルニ營業收益
稅ナルモノハ、是亦申スマデモナク營業收
益ノ增減ニ依ッテ比例的ニ增減ヲ致スモノ
デアル、砂糖消費稅ハ如何、是ハ從量稅デ
アルニ依ッテ、其砂糖ノ價格ノ如何ニ拘ラ
ズ、一定ノ稅ヲ課セラレルノデアル織物
消費稅ハ如何、從價稅デアルニ依シテ、是八、
不況ニ應ジテ比例的ニ此稅目ハ增減セラレ
ル、ソコデ之ヲ具體的ニ見ルト營業收益
稅ハ六年度政府ノ發表ニ依ルモ、不況ノ結
果當然ノ減トシテ千三百万圓ガ計土サレテ
居ル、然ルニ地租ニハ一厘一毛ノ減收モナ
イ、卽チ當然減ジヤウガナイノデアル、故ニ
此營業收益稅ノ減收千三百万圓ト、今囘配當
サレタル四百六十万圓、合計千七百六十万
圓ト云フモノハ、卽チ是ハ負擔輕減ト言ハ
ナケレバナラヌ、之ニ反シテ地租ノ輕減ハ
僅ニ千八十万圓、卽チ此營業收益稅ト地租
トノ間ニ於テ約七百万圓ノ負擔ノ增減ガア
リ等差ガアルト云フコトハ、所謂此所得
稅ノ兩翼タル補完稅トシテ、地租ニハ酷ニ
シテ營業收益稅ニハ甚ダ寛デアル、其均衡
ヲ失シテ居ルト云フコトハ當然明カナコ
トデアリマス、砂糖消費稅、織物消費稅ノ
二ツノ比較ニ於テモヽ亦同樣ノ理法ガ述べ
得ルト思フノデアル、斯ノ如クニシテ殆ド
政府ハ此配當率ニ付テノ理想根據ヲ缺イデ
居ル況ヤ砂糖消費稅或ハ織物消費稅ニ就
テ見ルト、其減稅率ハ甚ダ少イ、例ヘバ砂
糖ニ付テ見レバ一年ニ一人ガ約二十斤ヲ
使用スルコトハ統計ノ示ス所デアル、之ヲ
今囘ノ減稅ニ引合セテ見ルト、減稅ハ百斤
ニ付テ僅カ三十錢、一斤ニ付テ三厘、仍テ
一人一年ノ消費量二十斤ニ之ヲ加算致スト
云フト一人僅ニ六錢ノ減稅ニシカナラヌ
ノデアル、況ヤ貧民階級ノ一人ノ消費量ガ
ドノ位アルカ、平均以下ニアルコトハ當然
デアル、サウ致スナラバ、此庶民階級ヲ目
的ト致シタ所ノ消費稅ガ、庶民階級ニ向ッ
テハ僅ニ二三厘ノ減稅ニシカ過ギナイト云
フコトハ是ハ計數ノ示ス所デアリマス
又織物稅ニ付キマシテモ、銘仙一反僅ニ二
錢、斯ノ如クニ致シテ、此減稅ナルモノハ
殆ド庶民階級ニ何等ノ效果ヲ與ヘズシテ、
却テ生產者ヲ利スルト云フ、不當ナル結果
ヲ生ズルコトハ、是ハ明瞭デアル此緊縮
セル財源ノ中カラ、斯樣ニ致シテ不當ニ生
產者ヲ利スルト云フコトハ是ハ卽チ國費
ノ濫費デアルト私ハ思フノデアル(拍手)政
府ハ何故ニ國民ノ最モ負擔ニ影響ヲ及ボス
所ノ稅種ヲ選定致シテ
〔發言スル者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02119310302&spkNum=8
-
009・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 靜肅ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02119310302&spkNum=9
-
010・岡田忠彦
○岡田忠彥君(續) 其中核ニ向ッテ集中的
ニ此減稅ヲ講ジナカッタカ、政府ガ斯ノ如ク
總花的ニ、宣傳的ニ、虛榮的ナ稅率ヲ作ル
ト云フコトハ全ク是ハ政府ガ國民ヲ思フ
所ノ誠意ナキコトヲ示スモノデアルト私ハ
思フノデアル、(發言スル者アリ)高橋君、
默ヲテ居ノテ吳レ、ヤカマシクテ困ル、アナ
クハ自分ノ地位ニ考ヘテ·発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02119310302&spkNum=10
-
011・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 私語シテハイケマ
セヌ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02119310302&spkNum=11
-
012・岡田忠彦
○岡田忠彥君(續) 諸君、私ハ更ニ進ン
デ
〔發言スル者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02119310302&spkNum=12
-
013・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 靜肅ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02119310302&spkNum=13
-
014・岡田忠彦
○岡田忠彥君(續) 地方ノ財政ニ向ッテノ
影響ヲ檢討致シテ見タイノデアリマス、抑〓
地方自治體ナルモノニハ從來濫ニ國務ヲ
其頭ノ上ニ委託致シテ居ル、年々歲々國務
ト云フモノヲ、何ニモ經費ヲ付ケズシテ、
無暗ニ地方ニ預ケテシマッテ居ル、一面ニ於
テハ稅源ヲ國稅ニ集中致シテ居ル主義ノ
結果ト致シテ、地方ノ財源ハ涸渴致シテ居
ル、況ヤ此不況ニ臨ンデ、地方ノ財政ト云
フモノガ非常ナ窮乏ニ陷レルコトハ之ヲ
察スルニ難カラザルモノガアリマス、殊、
政府ノ豫算ニ依レバ、所得稅ノ六年度ノ減
收ナルモノハ四千万圓、營業收益稅ノ減收
ナルモノハ千三百万圓、隨テ是ガ府縣町村
ニ向ッテノ減收ト云フモノハ、又夥シキモノ
デアリマシテ、府縣ノ減收約千四百万圓デ
アル、町村ノ減收約千万圓ヲ超エテ居ル
此現狀ノ下ニ、現政府ヲ支持サレテ居ル民
政黨ハ、常ニ此地方自治制ニ付テハ之ヲ閑
却致シテ集中主義ノ下ニ有ユル稅法ノ改
正ヲ行"テ居ルノデアル、卽チ若槻内閣當時
ニ於テハ何ヲシタカト言ヘバ、地方ニ向ッテ
最モ首肯シ難イ所ノ家屋稅ナルモノヲ
般ノ農村ニマデ及ボスト云フ制度ヲ立テヽ
居ル而シテ此家屋稅ナルモノガ、如何ニ
町村地方民ノ負擔ヲ重クナシ、其生活ニ壓
迫ヲ加ヘテ居ルカト云フコトハ私ガ申ス
マデモナイ、況ヤ當時三千万圓ノ家屋稅、
千五百万圓ノ附加稅、之ニ止メルト云フ所
ノ言質ヲ政府ハ與ヘテ居ルニ拘ラズ、今日
ノ家屋稅竝ニ附加稅ナルモノハ一億万圓
ヲ突破致シテ居ルデハナイカ、又町村ノ主
要ナル財源デアル所得稅附加稅ヲ奪ッテ、之
ヲ府縣ニ與ヘタ結果、市町村ナルモノハ此
所得稅附加稅ノ取レザル結果トシテ、是亦
非常ナル悲況ニ陷ノテ居ルコトハ、少シク地
方行政ニ思ヲ致ス者ハ首肯シナケレバナラ
ヌ故ニ我ガ政友會ハ營業稅、地租ノ此兩
稅ヲ地方ニ委讓ヲ致シテ、以テ此地方ノ財
源ヲ涵養センコトヲ唱ヘテ居ルモノデア
ル(發言スル者アリ)諸君ハ今私ノ言ウタ
事ニ付テ妨害ヲシテ居ルヤウデアルガ、能
ク考ヘテ見タラ宜イ、諸君ノ民政黨ヲ統率
致シテ居ル濱口君、此諸君ノ總裁タル所ノ
濱口君ガ、臨時財政經濟調査會ニ於テ何ヲ
言ッテ居ルカ、諸君ハソレヲ顧ミタナラバ宜
イノデアル、濱口君委員ノ一人トシテ起ッ
テ演說ヲシテ、吾々ハ此兩稅委讓ニ贊成ス
ル者デアルト言ッテ居ルデハナイカ、民政黨
ノ諸君ハ少シク恥ヲ知ルガ宜イ(拍手)
〔發言スル者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02119310302&spkNum=14
-
015・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 靜肅ニ願ヒマス-
靜肅ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02119310302&spkNum=15
-
016・岡田忠彦
○岡田忠彥君(續) 政府ノ今囘ノ減稅ノ結
果ニ依ル地方稅ニ對スル方策ヲ繹ネテ見ル
ト云フト、大體ニ於テ地方ノ收入ハ增減ナ
カラシメル趣旨デアルト云フコトヲ辯明サ
レテ居ル、而モ尙ホ此計畫ノ下ニ於テモ、
府縣町村ニ於テハ減收ヲ免レテ居ラヌ、居
ラヌコトハ政府ノ發表セル數字ガ之ヲ證明
致シテ居ル、尙且此現狀ニ當ッテ政府ハ此減
收ニ對シ國家トシテ何等救濟ノ方法ヲ講
ゼズ、自然ニ放任致シテ居ル有樣ト云フモ
ノハ如何ニ內務大臣ガ地方ノ行政ニ對シ
テ無關心デアリ、無誠意デアルカト云フコ
トヲ語ルモノデアルト思フノデアル(拍手)
而モ又此地方稅制ノ調節增減ヲ爲スニ當ノ
テ、政府ハ地方團體ノ簡別性ト云フモノヲ
全ク閑却シテ居ル、卽チ大體ニ於テ增減ハ
ナイト言ッテモ、箇々ノ府縣、箇々ノ町村ニ
於テハ、或モノハ非常ナル增收トナリ、或
モノハ非常ナル減收トナル、之ヲ總ジテ言
フナラバ、富裕ナル所ノ〓體ニ對シテハ、
一時ニ多額ナル增收ヲ與ヘ、貧弱ナル町村
團體ニ向ッテハ益〓其財源ヲ奪クテ窮地ニ
陷レルト云フ結果ヲ呈シテ居ルノデアル、
況ヤ又地租ニ付テ之ヲ言フナラバ、政府ハ
今囘地租ヲ賃貸價格ニ改メタノミナラズ
從來宅地ニ付テハ本稅ニ於テモ、附加稅ニ
於テモ、其課率ハ低カッタ、其低カッタ所ノ
宅地ト云フモノヲ、本稅ニ於テモ又附加稅
ニ於テモ、同率ニ高メテシマッタノデアル、
念ノ爲ニ數字ニ依ッテ言ウテ速記ニ留メテ
置キタイノデアル、卽チ本稅ニ於テハ宅
地ハ從來ハ百分ノ二·五デアッタ、田畑ハ百分
ノ四·五デアッタ、其他ノモノハ百分ノ五·五
デアッタ、此差等ノアル所ノモノニ向ッテ、
今囘政府ハ直チニ均一ニ致シマシテ、之ヲ
百分ノ三·八ニ上ボセタ、又附加稅ニ付テ
言ヘバ、舊法ニ於テハ府縣ノ宅地ハ百分ノ
三十四、其他ノモノハ百分ノ八十三デアッタ
モノヲ、今囘ハ突然之ヲ百分ノ八十二、卽
チ百分ノ三十四ナルモノヲ百分ノ八十二ト
云フ大キナル增稅ヲ加ヘタ、府縣ノ附加稅
ニ於テモ左樣デアリ、町村ニ於テハドウデ
アルカト言ヘバ、町村ハ附加稅ニ於テ百分
ノ二十八デアック、其他ノモノハ百分ノ六十
六デアッタ、然ルニ今囘ハ總テヲ均一ナラシ
メテ百分ノ六十六トナシタ、取モ直サズ市
町村ノ百分ノ二十八ト云フ所ノ宅地ガ、百
分ノ六十六ト云フ激增ヲ來シタノデアリマ
ス、斯樣ニ致シテ附加稅ノ增收ヲ見ル所ノ
府縣ト云フモノハ全國ニ於テ十デアル、
減收ヲナス所ノ府縣ハ全國ニ於テハ三十
七ノ多キニ達シテ居ル、此增收ニ付テハ
政府ハ如何ナル監督ノ方法ヲ用ユルカト云
フコトヲ問ウテ見ルト云フト、政府ノ監督
法ハタッタ一ツシカナイ、卽チ此增收ニ對シ
テハ之ヲ七等分致シテ、七年間ニ於テ漸次
增收ヲ圖ラシメル、此監督方法ヲ執ルニ過
ギナイノデアリマシテ、其以外ニ於テ殆ド
具體的ノ監督方法ノ案件ト云フモノハ、〓
究モサレテ居ラネバ持合セモナイト云フコ
トデアル、左樣ニ致シタナラバ、必ズヤ此
方面ニ向ッテ結局太增稅ヲ行ッテ、地方ノ人々
ハ非常ナル負擔ノ重課ニ苦シムト云フ結果
ヲ生ズルコトハ是ハ明瞭デアル(拍手)政
府ハ此地方ノ監督ヲナス、爲スト、斯ウ言
フノデアルガ、今日マデ內務大臣ノ下ニ於
テ、地方財政ノ監督ト云フモノハ少シモ擧
テ居ラヌ、卽チ各府縣ノ豫算、各市町村ノ
豫算ヲ、五年度ハ四年度ヨリ減ジタイ、又
五年度六年度ハ現狀維持ニシタイト云フ訓
令ヲ發シテ居ルケレドモ、殆ド其訓令ハ實
行サレテ居ナイ、千万圓ノ義務〓育費ハド
ウデアルカト云フナラバ、政府ハ表ヲ發表
シテ、新聞ヲ通ジテ、是ガ爲ニ非常ナル課
率ノ減ガ行ハレルト云フコトヲ唱ヘテ居
ル、卽チ例ヘバ政府ハ市ニ於テ九十九万圓
ノ減額ヲナスト云フコトヲ唱ヘテ居ルケレ
ドモ假ニ私ハ之ヲ東京市ニ付テ調ベテ見
ルト云フト、九万餘圓ト云フ金、卽チ義務
〓育費ノ增加配當ト云フモノハ、未ダ減稅
ニモ何ニモ用ヒテナイ、此九十九万圓ノ中
デ、政府ノ表ニ依ッテ見テモ、三十五万圓ト
云フ金ハ行方不明ノ金デアルコトハ明瞭デ
アルニ拘ラズ、政府ハ天下ニ公表シテ吾
ハ此義務〓育費ニ依ッテ課率ノ輕減ヲナス
ト云フコトヲ唱ヘテ居ルノデアルガ、是ハ
全ク〓僞ノ宣傳デアル(拍手)〓員ノ俸給ガ
拂ヘナイト云フコトヲ文部大臣ニ聞クト云
フト、ソレハ統計ノ示ス程ノコトハナイ、
世間ノ言フ程ノコトハナイト斯樣ニ言ハレ
ルガ、サウデハナイ、現狀ニ於テモット深刻
ニアナタ方ガ調ベタナラバ、如何ニ各地方
ノ市町村ト云フモノガ、此〓員俸給ノ不拂
ヲナシ、寄附ヲ强要シテ居ルト云フコトハ
是ハ明瞭ナル事實デハナイカ(拍手)
斯ノ如ク致シテ非常ナル增稅ヲ一方ニハ
加ヘルノデアルガ、之ニ納稅義務者ノ側ニ
付テ考ヘテ見タイ、卽チ賃貸價格ニ地租ヲ
直シ、又附加稅ヲ增加致ス爲ニ今囘ノ減稅
ヲ差引イテモ、宅地租ニ於テハ全國的ニ五
百万圓以上ノ是ハ增率トナッテ居ルノデア
ル、其上ニ附加稅率ヲ高メタ、ソコデ六大
都市ノ增稅ト云フモノハ實ニ驚クベキ數
ニ達シテ居ルノデアル、東京市ニ於テハ六
百万圓以上ノ增加デアリ之ヲ割合ニ致ス
ト云フト二倍七割ノ增加デアル、大阪ニ
於テハ五百万圓以上ノ增加ニシテ、割ガ二
倍九割、京都市ハ百万圓以上ノ增額ニシテ、
其割ハ二倍七割、神戶市ハ百万圓以上ニシ
テ、其割ハ二倍三割、名古屋市ハ百六十二
万圓ニシテ其割ハ三倍餘デアル、横濱市ハ
百八十一万圓ニシテ二倍一割デアル此六
大都市ノ增加率ト云フモノハ約千八百万
圓ノ多キニ達シ、六大都市ノミヲ以テシテ
干、其割ト云フモノハ二倍七割ノ多キニ達
シテ居ルコトハ、是ハ統計ニ於テ間違ガナ
イ(拍手)若シ夫レ個人ノ、最モ高ク課率ヲ
サルヽ所ノ人ニ至ッテハ、從前ノ課率ニ較ベ
テ五倍二割ト云フ激增ヲ來シテ居ルノデア
ル、而モ亦東京市ニ付テ言ヘバ一戶平均
十五圓以上モ增額トナルノデアリマスル
ガ、此增額ト云フモノヲ今日ノ不景氣ト云
フモノガ堪ヘ得ルカ、殊ニ東京市ノ如ク震
災ノ創痍未ダ癒エザル所ノ地方ニ向ッテ、斯
ル增稅ヲ加ヘルト云フコトハ全ク是ハ政
府ハ氣ガ狂ッテ居ルノデハナイカト私ハ思
フノデアル(拍手)ノミナラズ借地借家法ノ
結果ニ依リマシテ、公課ノ增加ト云フモノ
ハ卽チ地代家賃ト云フモノヲ增スベキ理
由トナッテ居ル、サウ致シマスレバ當然此增
加ト云フモノハ借地人ニ及ビ、借家人ニ及
ブ、是ニ於テカ非常ナル社會上ノ紛議ヲ
此不況ノ眞中ニ於テ生ズルコトハ是ハ明
カナ事實デアル(拍手)內務大臣ハ之ニ對ス
ル間ニ對シテ、借家人借地人ニ轉嫁スルコ
トハ、此不況ニ方ッテナイト言ハレルノデア
ルガ、其不況ガアルガ爲ニ吾々ハ此增徵ヲ
爲スコトガ惡イト、斯樣ニ言フノデアリマ
シテ、內務大臣ハ殆ド民間ノ事情ニ付テハ
目ヲ塞ギ、耳ヲ塞イデ、之ヲ聽カザラン眞
似ヲ致シテ居ルト云フコトハ、哀レムベキ
モノデアリマス(拍手)又大部分ノ府縣町村
ガ減稅トナルコトハ先程申ス通リデアル
ガ、其減稅ノ結果ハ農村ノ財源ト云フモノ
ニ對シテ非常ナル大損害ヲ與ヘル結果ト
ナル、滋賀縣ニ於テハ百九十五ノ町村ノ中、
實ニ百八十六ノ町村ガ減收ヲ來シテ居ル、
富山縣ニ於テハ二百五十三ノ町村中、二百
二十五ノ町村ガ減收ヲナシテ居ル、岡山縣
ニ於テハ三百九十八ノ町村中、三百七十八
ガ減收ヲナシテ居ル三重縣ニ於テハ百一
ノ町村ノ中デ、九十六ノ町村ガ減收ヲナシ
テ居ル、殊ニ滋賀縣ノ坂田郡神照村ノ如キ
ハ地租ノ附加稅ノ減收ガ七千圓ニ達シテ
居ルノデアリマスガ、此村ハ戶數割ガ一万
七百圓ノ戶數割ノ處デアル、此一万七百圓
ト云フ戶數割ハ、既ニ重イ其上ニ、地租ノ
七千三百圓ノ減稅ノ爲ニ、是ガ再ビ戶數割
ノ上ニ臨ンデ來ルト、斯樣ニナッタナラバ
是レ卽チ一村財政ノ破壞デアルノミナラ
ズ、之ヲ辻褄ヲ合ハセンガ爲ニ、少數地主
ノ減稅ノ爲ニ、多數ノ庶民階級ノ戶數割ニ
增ヲナスト云フ、非常ナ反社會政策的ノ結
果ヲ生ズルモノデアルト謂ハナケレバナラ
ヌ(拍手)此減收ノ塡補ニ對シテ政府ノ方策
如何ト質シタ所ガ、政府ハ先以テ財政ノ緊
縮ヲ以テ之ニ應ズルト云フコトデアル、然
レドモ政府ハ今日ノ現狀ニ於テ、市町村ニ
致セ、府縣ニ致セ、財政ノ緊縮ヲ爲シ得ル
カドウカト云フコトヲ考ヘテ貰ヒタイ、先
程モ申ス如クニ、內務大臣ガ非常ナル勢ヲ
以テ、府縣市町村ノ財政緊縮ヲ奬勵致シタ
カナレドモ旣ニ昭和五年度ニ於テハ昭和
四年度ノ豫算ニ較ベテ、府縣市町村ノ豫算
ハ非常ナルニ厖大ヲ致シテ居ルデハナイカ、
卽チ增加ヲナシテ居ル所ノ府縣ト云フモノ
ハ全國四十七府縣ノ中、實ニ三十三府縣
ノ多キニ亙ッテ居ル、一面ニ於テハ租稅ノ減
收千三百万圓以上ニ達シ公債增發ハ三千
万圓以上ニ達シ、全ク政府ノ訓令ヲ裏切リ、
政府ノ監督ト云フモノハ威力ナキコトヲ示
シテ居ルノデアル、然ルニ此現狀ニ於テ尙
ホ進ンデ財政ノ整理ヲ爲セト云フコトハ是
ハ出來ナイ、政府ニ於テモ之ヲ認メテ、其
最後ノ答辯ト致シテハ已ムヲ得ナイカラ
其減稅ト云フモノハ家屋稅若クハ戶數割
ニ及ンデモ仕方ガナイト云フコトヲ、內務
大臣大藏大臣ハ言明致シテ居ラルル、家屋
稅ノ如キハ申スマデモナク、各地方ニ於テ
非難ノ聲囂々タルモノガアルデハナイカ、
戶數割ニ至ッテハ、庶民階級ハ皆其重キコト
ニ泣イテ居ル、此場合ニ於テ、更ニ此庶民
階級ニ向フテ增稅ヲ爲スト云フコトハ、是レ
卽チ大ナル社會政策ニ反對スルモノデア
リ、一國ノ見地ト致シテ、斯ルコトハ爲ス
ベキモノデナイト私ハ信ズルノデアル
又營業收益稅ニ付テモ同樣デアリマシテ、
營業收益稅ノ課率ヲ低ウ致ス爲ニ、府縣ノ
營業稅ニ於テモ同樣ノ輕減ヲ致シテ居リマ
ス、其結果依然トシテ府縣市町村ノ收入ハ
減クテ來ル、其減ッテ來ルモノヲ如何ニスル
カ、是ガ一ツノ問題デアリマス、其爲ニ政
府ハ制限外ノ課稅ヲ許シテ之ニ應ズルト云
フノデアルガ、若シモ制限外課稅ヲ許スト
云フコトデアルナラバ、何ヲ以テ此府縣ノ
營業稅ヲ下ゲタカ、下ゲタ所ノ理由ト矛盾
致シテ來ルノデアル、國稅ノ營業收益稅ノ
減率ト、府縣ノ營業稅ノ減率ト云フモノハ、
殆ド其區別ナキニ至ルト云フコトハ政府
政策ノ矛盾デアルト言ハナケレバナラヌ、
ノミナラズ外形標準ニ依ァテ、各府縣ノ營業
稅率ハ律スル次第デアルカラ、如何ニ政府
ガ之ヲ監督セントスルモ、殆ド之ヲ監督ス
ルコトハ出來ナイ、斯ノ如ク致シテ貧弱ノ
町村ハ、幾ラ政府ノ政策ノ結果減收トナッテ
モ、其減收ダケノ整理節約ハ出來ナイ、出
來ナイカラシテ已ムヲ得ズ戶數割、家屋稅
ノ增率ニ依ッテ此缺損ヲ塡補スル、又富裕ナ
ル府縣町村ハ、卽チ政府ノ增稅ノ結果トシ
テ多額ノ增收ヲ得ルコトニナル、其結果府
縣町村ヲ集メタナラバ政府ノ減稅ノ結果
ハ府縣町村ノ增稅トナルト云フ結果トナ
ルノデアル卽チ政府ノ減稅ナルモノハ
增稅ノ形ニ於テ地方ニ轉嫁サレルモノデア
ルト云フコトヲ言明セザルヲ得マセヌ(拍
手)
以上ハ本案ニ對スル反對ノ大綱デアリマ
ス然レドモ本案ナルモノハ尙ホ細目ニ
亙ッテ殆ド枚擧ニ遑アラザル程ノ缺點ヲ持ッ
テ居ル、其一二ノ例ヲ申シテ見ルト云フト、
地租ノ免稅點ハ、今囘ノ稅法改正ノ結果、
從前ノ地價二百圓ノモノガ二百四十圓ノ程
度マデ上ッテ居ル、從前ノ地價二百四十圓以
下ノモノガ免稅トナルコトニナッテ居ルノ
デアル、左樣ニ致セバ所謂所得稅ノ兩翼タ
ル所ノ地租、營業收益稅、此均衡ノ上ニ於
テ、必ズヤ營業收益稅ノ免稅點ニ向ッテモ更
正ヲ加ヘテ現在ノ純益四百圓ト云フモノ
ヲ、少クモ純益五百圓トスルコトガ、是ガ
當然デアル、大藏大臣ハ所得稅ノ兩翼デア
ルカナレドモ、營業收益稅ト云フハ全ク性
質ガ違フ、是ハ是レ、彼レハ彼レダカラ
其均衡ハ取レヌト云フコトヲ述べテ居ルノ
デアルガ、是亦諸君ノ總裁タル濱口君ノ意
見ヲ聞イテ見タイノデアル、今濱口君ハ病
床ニ居ル、故ニ今之ヲ起シテ問フコトハ出
來ナイノデアルガ濱口君ノ言明ナルモノ
ヲ見ルト、是ガ明瞭デアルノデアル、卽チ
濱口君ハ大正十五年豫算總會ニ於テ、我黨
ノ武藤委員ノ質問ニ答ヘテ斯クノ如ク言ッ
テ居ルノデアル、「法定地價二百圓ノ田畑ハ
純益大體二百圓トナル土地ハ純然タル資
產デアル、營業ハ資產勤勞ノ共同作用デア
ル、純然タル資產ニ對スル免稅點ハ資產
勤勞共同動作ノ結果タル純益ニ對スル免稅
點ヨリ低キガ當然デアル、ソレ故ニ地租ニ
付テハ純益二百圓、營業稅ニ付テハ純益四
百圓ト云フノガ、補完稅トシテノ均衡ヲ得
テ居ルモノデアル」ト斯樣ニ立派ニ言明致
シテ居ル、サウ致スナラバ、今囘二百四十
圓ニ上ゲタナラバ營業收益稅モ濱口君ノ
趣旨ニ依レバ、之ヲ五百圓ニ上ボスト云フ
コトニナルノデアル、此點ニ於テ政府ハ全
ク〓究ヲ缺イテ居ル、更ニ又四年前ノ此賃
貸價格ニ依ッテ、六年度ニ於テ賃貸價格ノ標
準トナシテ、ソレニ課稅ヲ致スト云フコト
ハ是ハ非常ナル危險ヲ藏シ、非常ナル矛
盾ヲ其間ニ藏シテ居ルモノデアル、凡ソ田
畑ナルモノハ段々ト賃貸價格ハ減ル、大體
ニ於テ宅地ハ段々增加スル傾向ヲ持ッテ居
ル、況ヤ政府ノ政策ノ結果タル此不況ノ眞
直中ニ於テ、田畑宅地ノ間ニ非常ナル不權
衡ヲ起シ、又起サント致シテ居ルコトハ
何人モ之ヲ否ムコトガ出來ナイ、此不權衡
ナル所ノ賃貸價格ヲ捉ヘテ來年度ニ於テ之
ヲ變ヘテ行クト云フコトハ、是ハ非常ナ無
謀デアリ、又非常ナ矛盾デアルト言ハナケ
レバナリマセヌ、又織物消費稅中人絹ニ付
テ之ヲ言ヘバ、政府ハ僅少ナル減稅ヲ吝ン
デ之ヲ免稅ニナシ得ナカッタ、斯ノ如クニシ
テ一億万圓ニ垂トスル東洋南洋ニ向ッテノ
輸出-世界的ノ輸出ニ向シテ、競爭場裡ニ
我國ノ人絹織物ガ出テ居ル此進路ヲ奪ッ
テ-此好機ヲ奪去ルト云フコトハ、如何
ニ政府ガ產業政策ニ向ッテ無理解デアルカ
ト云フコトヲ、示スモノト思フノデアリマ
ス、其他細目ニ向ッテハ枚擧ニ遑ガナイ、今
之ヲ列擧スルコトヲ避ケマス
之ヲ要スルニ今囘ノ減稅ナルモノハ、其
財源甚ダ不確實ニシテ洵ニ無謀極マルモ
ノデアル、地方財政ニ向テテ殆殆共其塡補ノ
方法ヲ講ゼズシテ、地方ヲ破壞セシメルモ
ノデアル、納稅者ニ對シテハ總花的ニシテ
其減稅ノ效果ナク、却テ生產者ヲ利スルモ
ノデアル又地方農村ヲ顧ミルナラバ、其
結果ト云フモノハ全ク庶民階級ノ負擔ヲ增
スモノデアリマシテ、反社會政策的ナモノ
デアル斯ノ如ク論ズル時ニ、吾々ハ殆ド
此諸稅法ニ向ッテ贊成スル所以ガ認メラレ
ナイ、元來民政黨ナルモノハ減稅々々ト言
フケレドモ、未ダ曾テ民政黨トシテ樹立以
來減稅ヲ唱ヘタコトハナイノデアル、卽チ
昭和四年ノ九月十一日ノ、先程申シタ所ノ
實行豫算內示會、其場合ニ於テ吾々ハ政府
ハ減稅ヲ何故主トシナイカト云フコトヲ問
フタ、其時井上藏相ハ答ヘテ言フノニ、金
解禁ノ對策竝ニ善後策ト致シテハ先以テ
行政ノ整理緊縮ヲ行ヒ、以テ公債ノ增發ヲ
抑制シ、若クハ公債額ヲ減ジタイノデアル、
又一面ニ於テ消費節約ヲ奬勵シタイノデア
ル斯樣ニシテ減稅ニ對シテハ其政策ノ持
合セガナイト云フコトヲ言明サレテ居リマ
ス、又民政黨ノ十大政綱ニ於テハ、又五十
七、五十八議會ニ於テ、未ダ曾テ政府ノ斯
樣ナル減稅ヲ唱ヘタコトハナイ、偶、英國ノ
招請ニ依ッテ倫敦會議ニ參ル時ニ當ッテ始
メテ絃ニ政府ハ保留財源ヲ、主トシテ減稅
ニ充テタイト云フコトヲ唱ヘタデ國民ハ
此五億八百万圓ノ保留財源ノ大部分ト云フ
モノハ減稅ニ充テラレルモノトシテ喜ン
ダノデアル、卽チ民政黨ハ之ニ依ッテ輿論ノ
背景ヲ得ンコトヲ求メ一面ニ於テハ不景
氣ニ對スル國民ノ怨嗟ノ聲ヲ轉嫁センコト
ヲ努メタノデアリマス、之ニ反シ我黨ハ夙
ニ行政財政ノ大整理ヲ天下ニ唱道致シテ居
リマス、卽チ國運ノ發展ノ上カラ致シテモ、
亦現在ノ金解禁ノ跡始末ト致シテモ、減稅
ヲ先以テ第一ノ綱領トシナケレバナラヌト
云フコトヲ、夙ニ唱道致シテ居ルノデアル
(拍手)吾々ハ行政財政ノ根本的ノ整理ヲ行
フノデアル卽チ行政組織ニ向シテ改革ヲ加
ヘ、國有財產竝ニ官業ニ向。ッテ重大ナル改正
ヲ加ヘテ、其中ヲ以テ少クモ五千万圓ノ減
稅ヲ爲スト云フコトハ天下ニ公表致シテ
居ル所デアル(拍手)之ニ依ッテ、一般ノ消費
稅ノ減少ヲ致スハ固ヨリノコト、營業稅、
地租ノ輕減ヲ行ヒ之ヲ以テ兩稅委讓ノ階
段ト爲スコトハ是亦天下ニ公表致シテ居
ル所デアリマス(拍手)更ニ進ンデ產業五箇
年計畫ニ依リ、其必要ニ應ジテハ公債ヲ發
行致シテモ、今日ノ時運ニ適スル所ノ諸政
策ヲ行フト云フコトヲ、是亦天下ニ公表致
シテ居ルノデアリマス(拍手)卽チ我黨ノ減
稅案ナルモノハ根本的ニ國家財政改革ノ
基礎ノ下ニ立ッテ居ルモノデアル、之ニ反シ
テ此減稅案ナルモノハ國家財政ノ何等經
綸ニ觸レルコトナク纔ニ一時ヲ塗抹セン
トスル所ノ政策ニシテ、而モ之ニ依ッテ地方
ノ財政ヲ破壞スルモノデアルト云フコトヲ
斷言シテ憚リマセヌ(拍手)私ハ此事ハ軈テ
滅ビ行ク所ノ民政黨ニ向テノ弔鐘デアル
ト云フコトヲ唱ヘテ降壇スル者デアリマス
(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02119310302&spkNum=16
-
017・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 質疑ガアリマス、
之ヲ許シマス-鷲野米太郞君
〔鷲野米太郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02119310302&spkNum=17
-
018・鷲野米太郎
○鷲野米太郞君 私ハ委員長ノ報告ニ關聯
致シマシテ、主トシテ政府ニ御伺致シタイ
ト存ジマス、極ク簡單ニ述べマスカラ、
昨日ノヤウニ無理ナ彌次ヲ飛バサヌヤウニ
シテ戴キマス、一昨日ノ彌次ハ速記錄ヲ御
覽ニナッタラ、私ガ惡イカ、彌次ッタ人ガ惡
イカガ分カリマス(「餘計ナコトダ」ト呼フ
者アリ)餘計ナコトデハアリマセヌ、アノヤ
ウナ亂暴ヲシテ置イテ、今日ハ私ニ對シテ
ドウ云フコトヲ民政黨カラ申シタカト言ヘ
バ、ソレハ今日此處デハ言ハナイケレドモ、
先刻作田君カラ私ニドウ云フコトヲ言ウタ
カ、甚ダ不都合ナルコトヲ言フテ居ル発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02119310302&spkNum=18
-
019・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 質疑ノ趣旨ヲ御述
ナサイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02119310302&spkNum=19
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020・鷲野米太郎
○鷲野米太郞君(續) 私ハ先ヅ第一ニ政府
ガ脫稅ニ關スル取締ニ付テ、ドウ云フ御考
ヲ持シテ居ルカト云フコトヲ御同致シタイ
ノデアリマス、此昭和四年度ノ歲入歳出決
算報告書ニ據リマスト云フト、隨分富豪財
閥關係ノ方々ガ多額ノ說稅ヲシテ居ルヤウ
デアリマス、併シ此事ノ起ッタソレハ政友會
內閣時代ノヤウデアリマスノデ、民政黨內
閣ヲ責メルノデハアリマセヌガ、脫稅ニ關
スル取締ノヤウナコトハ、政友會トカ民政
黨トカノ政治上ノ責任ノ問題デハナタシ
テ、政府ノ首腦ニ在ル所ノ人々ガ稅務當局
ヲ監督スル所ノ事柄ニナルノデアリマスカ
ラ、之ヲ御伺致シタイノデアリマス非常
ナ澤山ナ金額ノ脫稅ガアルノデアリマス
ガ、此處ニ擧ゲテ居ルモノ以外ニ、全國ニ
亙ッテ私ハ非常ナ脫稅アルモノト考ヘテ居
リマス、伊太利ノ「ムッソリニ」ガ財政行政ヲ
整理スル時ニ當ッテ、大藏大臣ノ「ステハニ」
ハ非常ニ下層ノ階級ノ商人デアルトカ、小
企業家ノ所得ニ對シテハ、寛大ナル取扱ヲ
致シタノデアリマスケレドモ、上ノ方ノ說
稅者デアルトカ、或ハ勞働階級デアッテ、非
常ニ所得ガアルケレドモ、伊太利デモ日本
デモ何處デモサウデスガ、勞働階級ノ所得
ニ對シテハ、所得稅ヲ課セナイヤウナ狀態
デアルノデアリマスカラ、非常ナ嚴重ナル
調査ヲシテ、脫稅者ニ對シテハ嚴罰ヲ以テ
臨ミ、非常ナ良イ成績ヲ擧ゲタノデアリマ
スガ、大藏大臣ハ將來此問題ニ付テドウ云
フ御考ヲ持フテ居ルカ、ソレヲ伺ヒタイノデ
アリマス、ソレカラ之ニ關聯致シマシテ、
大臣デアルトカ或ハ次官デアルトカ局長
デアルトカ、府縣知事デアルトカ云フ者ハ
俸給、賞與金ノ以外ニ於テ、或ハ赤十字社
ノ手當デアルトカ、愛國歸人會ノ手當デア
ルトカ、或ハ調査會ノ手當デアルトカ、大
臣ノ御手許金ヨリノ御下賜金デアルトカ云
フヤウナ、特別ノ收入ガ澤山アルノデアル
ガ、私ハ大部分此收入ニ對シテハ所得稅ガ
課セラレテナイカト思フノデアルガ斯ウ
云フヤウナ所得ニ對シテ所得稅ヲ課セナイ
ト云フコトハ今日此際私ハ非常ナル不公
正ナコトデアルト考ヘルノデアルガ、大藏
大臣ハ之ニ對シテ如何ナル御所見ヲ持テ
居ラレルカト云フコトヲ、先ヅ第一ニ御伺
致シタイノデアリマス、ソレカラ
第二ノ問題ハ、是ハ民政黨ガ一昨年組閣
ヲスルヤ、日本ハ經濟亡國、經濟國難デア
ル、公債多額ノ爲ニ國ヲ滅スト云フヤウナ
大キナ宣傳ヲシテ、非募債主義ヲ唱ヘタ
其結果國民ハ非常ニ共鳴ヲ致シマシテ、極
ク貧乏ナ人間デモ眞面目ナ人間ハ、其宣傳
ニ乘リマシテ、郵便貯金、銀行貯金ヲ引出
シテ、政府ニ獻金寄附シタト云フヤウナ者
ガ澤山アッタノデアリマス、所ガ最近ニナリ
マシテ民政黨ノ政策ガ非募債主義ヲ離レ
テ國民ニ對スル公約ヲ裏切ッタト云フ所
カラ、此獻金ヲシタ者ノ中ニハ非常ナ憤慨
ヲシテ居ル者ガアル、現ニ私ノ知人ノ間デ
澤山ノ金ヲ寄附シテ、サウシテ後ニ貯蓄ガ
幾何モナクナッタ者ガアリマス、ソレガ淚ヲ
流シテ民政黨ニ欺カレタルコトヲ憤慨シテ
居ルノデアリマス、此獻金ノ額ハ小額デハ
アルケレドモ、政府ハ一種ノ欺瞞ヲ以テ眞
面目ナ善良ナル國民カラ金ヲ搾上ゲタノデ
ハナイガ、徵收シタ形ニナッテ居ルノデアリ
ママ、大藏當局ハ此獻金者ニ對シテ政治、
道德的ノ責任ヲ感ジテ居ルノデハナイカド
ウカ、感ジテ居ナイノデアルカ、何トモ感
ジナイノデアルカ、之ヲ伺ヒタイト思フノ
デアリマス、サウシテ其獻金ノ額ハ幾ラデ
アッテ、人數ハ大體ドレ位デアッタカト云フコ
トヲ、參考ノ爲ニ御尋致シタイノデアリマス
ソレカラ本減稅案ヲ實現致シマシタナラ
バ、此案ハ非常ナ無理ノアル案デアル、樞
密院ニ對スル言責、國民ニ對スル所ノ公約、
サウ云フモノヽ手前、巳ムヲ得ズシテ無理
ヤリニ是ハヤラナケレバナラヌノデヤルト
云フコトハ、實際ニハ出來ナクシテヤッタモ
ノデアルカラ、減稅計畫ニ非常ナ無理ガア
〓、ソコデ必ズ此案ヲ實施スル時ニハ徵
稅ニ當シテ苛歛誅求ヲスルニ違ヒナイト思
フ、所ガ一方ニ於テハ說稅ナリ、稅ノ取締
ガ不十分デアル爲ニ、稅ヲ免レテ居ル者ガ
アルガ此法律ヲ實施シタ結果ハ非常ナル
苛歛誅求ヲシナケレバ、目的ノ半分モ達ス
ルコトガ出來ナイカラ、非常ナ苛歛誅求ヲ
私ハスルモノト考ヘルノデアリマス、政府
ハ今後モ一昨年及昨年來執ッテ來タルト同樣
ノ方法ヲ以テ、非常ニ殘酷ノ方法ヲ以テ徵
稅スル方針デ進ムノデアルカドウカ社會
政策的ノ觀念カラ考ヘマシテモ、僅ニ二十
圓位ノ營業稅ガ滯納シテ居ルト云ウテ、其
店ノ全部ノ物ヲ差押へテ、商賣ノ出來ナイ
ヤウニシタ例モアレバ、又何モナイ店屋ニ
行ッテ、空ノ金庫ヲ差押へテソレヲ競賣シタ
ケレドモ、僅ニ十圓カ十五圓ニシカ賣レナ
カッタト云フ例ガ現ニ東京ニモアル、斯樣ナ
方針ヲ以テ昭和六年度ニ臨ミ、七年度ニ臨
ンダナラバ、昭和五年度ヨリモ尙ホ酷イコ
トヲシナケレバ徵稅ノ目的ヲ達スルコトガ
出來ナイカラ、必ズ政府ハヤルダラウト思
P、サウシテ稅務署デアルトカ、稅務監督
w
局ニ對シテハ早ヤ營業收益稅ノ徵收ノ方
針デアルトカ、或ハ所得稅ノ徵收ノ方針デ
アルトカ云フヤウナ、課稅ノ標準ヲ定メテ
內訓ニ出シテ居ルヤウナ狀態デアリマスカ
ラ、非常ニ私ハ苛歛誅求ヲヤルモノト考ヘ
ルノデアリマスガ、大藏大臣ハ之ニ對シテ
如何ナル手心ヲ以テ臨マレルカ、此點ヲ先
ヅ御伺ヲ致シタイト思ヒマス
ソレカラ四年度ノ決算ニ赤字ガ出テ居ラ
ヌノデアリマスケレドモ、是ハ普通カラ參
リマシタナラバ、九百六十一万九千圓ノ赤
字ガ出ルノデアルガ、ソレハ同一額ノ豫定
外ノ剩餘金ヲ繰入レテ補塡シタ爲ニ、決算
ニ赤字ガ出ナイノデアリマシテ、實際ハ四
年度ノ決算ノ事實ハ井上サンモ御承知ノ通
リ、赤字ガ出タノデアル、所ガ此赤字ハ豫
算委員會デモ論議ノ問題ニナッタノデアリ
マスガ、此赤字ト云フモノハ普通デアッタナ
ラバ出ナイ、在來ノ方針通リ昭和一年、昭
和二年、昭和三年トヤッテ來タ方針通リニ
シタナラバ、此政友會內閣ノ作ッタ豫算ハ赤
字ガ出ナイ、又剩ッタ、剩ッタノニ赤字ガ出
タト云フノハドウ云フ譯デアルカト云フコ
トハ、井上サンハ能ク御承知ノ筈デアリマ
スガ、此赤字ガ出タト云フ所以ハ、昭和四
年ノ三月三十一日マデノ間ニ於テ、從來デ
アルナラバ法人ノ所得稅ト法人ノ營業收益
稅ハ三月三十一日マデノ間ニ全部四年度
分ヲ取ル方針デ進ムノデアルノニ、井上サ
ンハ五年度ノ豫算ニ於テ赤字ガ出ルト云フ
コトヲ豫見セラレテ、自分ノ作ルベキ豫算
ニ赤字ガ成ルベク出ナイヤウニ、缺陷ガ出
ナイヤウナ方針ヲ取ッテ、四年ノ三月三十一
日マデノ間ニ、其四年度ニ取ルベキモノヲ
五年度ニ繰延ヲシテシマッタ、其額約一千二
百万圓乃至千五百万圓ノ額デアル、其事ニ
付テ豫算委員會デモ大口君及本員カラ、色
色質問申上ゲタノデアリマスガ、其數字、
其金額ナゾニ付テハ甚ダ不明瞭ナ答辯デ
アッテ、十分ニ私ハ得心致シテ居ラヌノデア
リマスカラ、此點ニ付テ十分ナル明快ナル
御答辯アランコトヲ御願致シタイト思ヒマ
ス
ソレカラ緊縮ノ問題デアリマス、緊縮整
理、緊縮整理ト言ッテ、緊縮整理ヲシタ爲ニ何
モ出來ナクテモ、緊縮整理ノ爲ニ已ムヲ得
ナイト言ッテ言責ヲ避ケテ居ルノデアリマ
ス、サウシテ私共ノ考ヘル所ニ依リマスト
云フト、整理緊縮ト云フコトハ緊縮其モノ
ガ目的デナクテ整理其モノガ目的デナク
テ何ノ爲ニ整理スルカ、何ノ爲ニ緊縮スル
カト言ッタナラバ、結局ハ出來ルダケノ減稅
ヲシテ國民ノ負擔ノ輕減ヲヤッテ、民力ノ休
養ヲヤルト云フコトヽ休養ヲヤッテ尙ホ
餘リガアルナラバ、國利民福ノ增進ニ關ス
ル方面、例ヘテ見マスト云フト救護法ノ實
施デアルトカ、或ハ兵役義務者、癈兵ノ優
遇ニ關スル費用ヲ早ク出シテ、是等ノ者ヲ
滿足シテヤルトカ、或ハ發明デアルトカ
〓育デアルトカ、又產業ノ發展ニ關スル緊
急止ムヲ得ナイ所ノ方面ニ金ヲ投ズルト云
フ爲ニ、整理緊縮ト云フコトガ意味ヲ爲ス
ノデアリマス、勿論金ノ解禁後ニ於ケル所
ノ此整理緊縮ト云フコトハ普通ノ場合ノ
整理緊縮ト違フノデアリマスカラ、私共ハ
一カラ十マデ何モ十分ニ出來ナイトカ、或ハ
國利民福ノ增進ノ爲ニ必要ナ費用ヲ投ゼナ
イト云フコトヲ、全部責メルノデハナイノ
デアリマス、ケレドモ私ハ餘リ民政黨內閣
ノ諸公ハ無定見、無策デハナイカト考ヘル
ノデアリマス、仙石滿鐵總裁ハ民政黨ノ元
老デアッテ、三菱ノ長老デ、民政黨カラ言ッ
タナラバ重大ナ人、民政黨ノ內閣カラ言ッテ
モ最モ權威ノアル所ノ隱居、目付役デアル
ガ此仙石貢氏ガ昨年ノ夏デアッタカ、秋デ
アッタカ、何ト言ッタカト言ヘバ、民政黨內
閣ノ諸公ハ籤醫者デアッテ、治療ガ出來ナイ
カラト云フ非難ヲシタ、ケレドモ井上サン
モ濱口サンモ、其他ノ諸公モ何等ノ仙石氏
ニ對スル答モナケレバ、何等ノ詰問モナカ
タカラ、御自身自ラガロハ上手デアルケレ
ドモ、實際ニ實行力ハナイト云フ、切開モ
出來ナケレバ治療モ出來ナイ所ノ、理窟
ダケハ言フ、博士ト云フ看板ヲ掛ケテ居ル
カモ分ラナイ、博士ト云フ看板ヲ掛ケテ居
ルカモ分ラナイケレドモ、イザ病氣ヲ癒ス
ト云フコトニ付テハ、全クノ籔醫者ト同樣
ナ醫者デアルト云フコトヲ、御自身等モ仕方
ナイトシテ我慢ヲシテ居ルノデアルカ、ド
ウモ私ハ今日マデ諸公ガヤッテ來タ所ノ跡
ヲ見マスト云フト、如何ニモ籔醫者主義デ
遺憾至極ニ存ズルノデアリマスガ、來年ニ
於テハ-來年ノコトヲ言ヘバ鬼ガ笑フケ
レドモ、來年ニ於テハ幣原總理代理モ施政
方針ノ演說ノ中デ行政財政ノ整理ヲヤル、
稅制ノ整理ヲヤッテ、大ニ何カ爲スアラン
トシテ居ルノデアリマスガ、其行政財政整
理ト云フコトハ、ドレダケノ程度デヤルノ
カ、ソレヲ承リタイ、此問題ニ付テ屢、豫
算委員會等デモ、本員モ質問ヲ致シタノデ
アリマスケレドモ、甚ダ不明確デアッタノデ
アリマス、政府ハ果シテ陸軍海軍ニ亙ッテノ
軍制改革ヲ斷行シテ軍事費ニ對シテ大節
約ヲ爲スカドウカト云フコトヲ、總理大臣
代理及ビ、海軍大臣陸軍大臣カラモ承リタ
イ
ソレカラ私ハ之ニ關聯シテ政友會ノ諸君
ガ第二海軍補充計畫ニ對スル財源ノ問題
ヲ色々ト論議追窮致シマスト云フト、民政
黨ハ第二次補充計畫ナンカハヤラナイデ宜
イヤウナ言ヒ方ヲシテ、國民ガ非常ニ迷ハ
サレテ、堂々タル新聞ノ調子デモ第二補充
計畫ナドハヤル必要ハナイ、ソンナコトヲ
スルカラ國民ノ負擔ノ輕減ガ出來ナイヤウ
ナコトヲ言ッテ居ルノデアリマスガ、若シ政
府當局ニ於テ第二補充計畫ヲヤル必要ガナ
イト云フナラバ宜シイノデアルケレドモ、
政府ニ於テ第二補充計畫ヲドウシテモヤラ
ナケレバナラヌトスルモノナラバ、民政黨
ノ言論ト云フモノハ、私ハ無責任デアルト
言ハザルヲ得ナイノデアリマスガ、此點ヲ
海軍大臣及ビ總理大臣カラ明確ニ、簡單デ
宜シイケレドモ明確ニ御答辯ヲ御願致シタ
イノデアリマス······(「君ハ日程ノ何ヲ質問
シテ居ルノダ」ト呼ヒ其他發言スル者多シ)
減稅ノコトヲ質問シテ居ルノデハナイカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02119310302&spkNum=20
-
021・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 靜肅ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02119310302&spkNum=21
-
022・鷲野米太郎
○鷲野米太郞君(續) ソレカラ幣原總理代
理ハ施政方針ノ演說ニ於テ行政財政稅制
ノ整理ニ關シテ述べテ居ラレルノデアリマ
スケレドモ、之ヲ讀ミマスルト云フト、行
政財政ノ整理ハヤル、ケレドモ總額ニ於ケ
ル所ノ增稅ハヤラヌト云フ結論ニ達シテ居
ルシ、ソレカラ行政財政ノ整理ハヤルト云
フケレドモ-是ハ民政黨ノ內閣カラ出シ
タカドウカハ知リマセヌケレドモ、新聞ニ
載ッテ居リマシク所ノ、行政調査會ノ組織ト
仕事ト云フ此記事ヲ見マシテモ、行政財政
ノ整理モ、行政ノ一部局ニ對スル所ノ整理
ニ過ギナイ、サウシテ稅制ノ整理ト云フ點
ヲ見マシテモ、一部分ニ過ギナイ所ノ稅制
整理デアルガ、政府ハ行政ノ大改革ヲヤル
意思ハナイカ、十二名ノ閣僚ナント云フモ
ノハ要ラナイ、十二ノ省ハ要ラナイ、私ハ
五省カ六省デ宜イト考ヘテ居ル、英國デモ
最近ハ餘リ閣僚ガ多クテ、省ガ多クテ、統
轄ガ出來ナイト云フ點カラ、勞働黨ノ「モズ
レー」ハ勞働黨ヲ脫黨シテ一派ヲ立テヨウ
トシテ居ル、サウ云フ空氣ニナッテ居ル、伊
太利ノ「ムッソリニー」ナドモ、省ノ數ヲ成タ
ケ少クシヨウトシテ、商工省ト農林省ト勞
働省、其他一省ヲ併セテ、一ツノ產業省ニ
シテ居ル、ソレハ世界ノ大勢ガサウ云フ風
潮ニ向ッテ居ル、我國ニ於テモ今日金解禁ヲ
ヤンタ後ニ於テ、國民ノ負擔ヲ輕減シテサ
ウシテ新シイ方面ノ有要ノ事ヲシヨウト思
フナラバ軍事費ノ節約ト共ニ行政費ノ節
約ヲシナケレバ出來ナイノデアルケレドモ、
政府ノ言フ所ノ行政財政ノ整理ト云フモ
ノハ、斯ンナ大キイ點ニ觸レテナイヤウデ
アルガ、今日ニ於テモ尙ホ政府ハ大整理ヲ
ヤリ、大改革ヲヤルト云フ御意見ガナイカ
ドウカ、之ヲ伺ヒタイ、果シテ此大改革、
大整理ヲヤラズシテ、將來ノ財政ノ切盛リ
ガ出來ルカドウカト云フコトヲ、井上大藏
大臣ニ伺ヒタイノデアリマス
其次ニ私ハ特ニ井上大藏大臣ニ御伺致シ
タイノデアリマスルガ、減稅委員會デ小川
政務次官ト井上大藏大臣ノ意見ガ違ウテ、
大分悶著ヲ起シテ居ノタヤウナコトヲ仄ニ
聞イテ居リマスルガ、其事ハ產業政策ヲ租
稅立法ノ上ニ織込ムカドウカト云フコトデ
アッタノデアリマスガ、結局產業政策ハ租
稅立法ノ上ニ織込マナケレバナラヌト云フ
ヤウナ結論ニ達シタヤウデアリマス、是ハ
私ハ至極同感デ、結構ナコトヽ竊ニ思ウテ
居ルノデアリマスルガ、特ニ此際御伺致シ
タイノハ、金解禁後非常ニ財界ハ不況デア
リマスルガ、不況ノ際ノ租稅立法ハドウ
シテモ產業ヲ保護シ、生產ヲ保護スルヤウ
ナ立法ニシナケレバナラヌ、是ハ英吉利ノ
現在ヲ見マシテモ、此方面ニ注意ガ缺ケテ
居ッタ爲ニ、英吉利ハ非常ナ難局ニ立ッテ居
ル、伊太利ハ此方面ニ十分ナ注意ヲシタ爲
ニ、將ニ滅亡ニ瀕シテ居フタ所ノ伊太利ガ、
今日辛ウジテ强國ノ位地ヲ保ツコトガ出
來タ、是ハヤハリ此點ニ注意ガ十分ニアツ
タカラデハナイカト私ハ考ヘルノデアリマ
ス、此問題ヲ學者ハ所謂生產主義ノ租稅制
度ト申スノデアリマスルガ井上サンハ來
年ノ租稅整理ヲ爲スニ方テ、斷乎タル方針
ヲ以テ-或ル一部ノ社會政策的ノ考デア
ルトカ、或ハ社會主義的ノ意見デアルトカ
云フコトハ勿論入レナケレバナラヌノデ
アリマスルガ日本ノ此方面ニ關スル意見
ト云フモノハ、兎角社會政策的社會主義
的ニ傾イテ居ルト私ハ考ヘルノデアッテ、非
常ニ遺憾ニ考ヘルノデアリマスルガ、斯ウ
云フ方針デ租稅ノ立法ヲナサル御方針デア
ルカドウカト云フコトヲ、御伺致シタイノ
デアリマス
ソレカラ之ニ關聯致シマシテ營業收益稅
ハ私ハドウ考ヘテモ非常ナ惡イ法律デア
ラウト考ヘルノデアリマス、營業稅ガ營業
收益稅ニナッタケレドモ、チヨットモ內容ニ
於テ改善セラレテナイ、形ニ於テハ改善セ
ラレタケレドモ、內容ニ於テ改善セラレテ
ナイカラ、出來ルナラバ之ヲ廢止シテ、別
ノ方法ヲ考ヘルガ宜イト思フノデアリマス
ルガ、ソレハドウカ、廢止ガ出來ナイナラ
バ、免稅點ヲ一千圓位マデ引上ゲルト云フ
コトヲ、將來斷行セラレテハドウカト云フ
コトヲ伺ヒタイ
ソレカラ其次ハ織物消費稅ノ問題デアリ
マス、私ハ之ヲ全廢スルガ宜イト云フ考デア
リマス、何故カト云フト生絲產業、絹織
物產業、卽チ絹業ヲ保護シ奬勵スル上カラ
見テ、絹織物ノ稅ヲ免除シタナラバ、ソレ
ダケ絹織物ガ國民ニ需要セラレル、其爲ニ
絹織物工業ガ進ンデ來テ、隨テ色々ノ〓究
ガ積マレテ、海外輸出ノ上カラモ非常ニ利
便デアラウト考ヘルノデアリマス、人ハ廣
幅織物ダケヲ免稅セヨト言ヒマスガ、私ハ
一步進ンデ織物消費稅ヲ全廢シテ、絹業奬
勵保護ノ爲ニ、絹織物ニ對スル所ノ課稅モ
免除スルガ宜イ、是ハ當業者及ビ相當關係
ノ人モ最近盛ニ唱ヘテ居ルノデアリマスカ
ラ、此問題ヲ御伺致シタイノデアリマス
ソレカラ綜合課稅ヲ源泉課稅ニ復活ジテ
ハドウカト云フ事、更ニ損失金ニ課稅スル
ト云フ現在ノ制度ヲ廢止シテハドウカト云
フ事、海外收入ニ對ツテモ更ニ重複シテ
課稅シテ居ルガ、是モ廢止セラレテハドウ
カト云フ點ヲ御伺致シタイノデアリマス
ソレカラ私ハ此法律案ニ付キマシテハ
事實反對スベキカ贊成スベキカト云フコト
ニ實ハ迷ウテ居ル、何故カト云フト、假令
一年デアッテモ減稅ヲスレバ、國民ハソレダ
ケ負擔ガ輕クナル、僅カデアッテモ輕クナ
ル爲スハ爲サヾルニ勝ル、爲サザルハ爲
スニ劣ルデアリマスカラ、成ベク此案ニ贊
成シタイト云フ考ヲ以テ、色々考ヘテ見マ
スルケレドモ、中々疑問ガ澤山生ジテ、七
年度以後ニ於テハ財政ガ非常ナ難局ニ立ツ
ト思フ、譬ヘテ見マスルト云フト、剩餘金
ノ無イコトハ六年度ト同樣デアリマス、救
護法モヤラナケレバナラヌ、東京市及ビ橫
濱市ニ對スル外債ノ利子ノ補給モシテヤラ
ナケレバナラヌ、米ノ始末モシナケレバナ
ラナイ、生絲ノ始末モシナケレバナラナイ、
或ハ癈兵、兵役義務者ノ優遇ニ關スル事モ
シナケレバナラナイト云フヤウナ事ヲ考ヘ
マスト云フト七年度ハ非常ニ財政ガ困難
ニナリマスカラ、ドウシテモ二千三百三十万
圓ト云フ七年度ノ減稅ハ不可能ニナル、八
年度モ不可能、九年度モ不可能、十年度モ
不可能ニナルデアラウ、サウ云フヤウナ考
ニナラザルヲ得ヌノデアリマス、斯樣ナ難
局ニ立ッテ、政府ハ官吏ノ減俸ヲヤルカト問
ウテモ、ヤルトハ申シマセヌ、或ハ稅制ノ整
理ノ際ニ、增稅ヲスルノデハナイカト伺ヒ
マシテモ、增稅ヲスルノダトハ仰シヤラヌ
ノデアリマスルケレドモ、私ハ斷言致シマ
ス、軍制ノ大改革モヨウヤラズ、行政ノ大
整理モヨウヤラズニ、單ニ行政財政ノ整理、
稅制ノ整理ト此新聞記事ニ書キ示シテ
アルヤウナ、部局ノ改廢位ノコトデ進ンデ
行ッタナラバ、行詰ッタ結果ハ必ズヤ官吏減
俸ヲヤルカ、然ラザレバ來年ノ稅制整理、
再來年ノ實行ノ時ニ方ッテハ-曾テ濱口
氏ガ大藏大臣ノ當時、增稅ハシナイ、負擔
ヲ公正ニスルト言明シナガラ、事實ニ於テ
ハ年額五千四百万圓ヲ增稅シタト同樣ニ、
現大藏大臣モ負擔ノ公正トカ、總額ニ於テ
增稅シナイト言ヒナガラ、事實ニ於テハ增
稅スル所ノ態度ニ出ルト、私ハ斷言スルノ
ヲ憚ラナイノデアリマスルガ、井上サンハ
オ前ノ言フコトハ間違デアル、決シテサウ
デハナイト云フコトヲ仰シヤルダケノ勇氣
ガアルカドウカ、ハッキリ承リタイノデアリ
マス、私ハ減稅ニハ大贊成デアリマス、此
案モ理窟サヘ立ツナラバ贊成シタイト思ウ
テ、色々ト惱ンデ居ルノデアリマスルガ、
事實甚ダ不徹底デアッテ、色々ト考ヘテモ贊
成ハ困難デアルガ、若シ政府ニシテ斯ウ云
フコトヲ言ウテ戴イタナラバ、私共國民同
志會ハ六人擧ノテ贊成スル覺悟デアリマス、
ソレハ本案ハ來年、稅制ノ整理ガアルカ
ラ、其稅制整理ノ時ニ所得稅モ、營業收益
稅モ其他有ユル稅ノ整理ヲヤッテ、體系ヲ立
テヽ組直スト云フコトヲ條件トシテ、砂糖
ノ消費稅、織物ノ消費稅、地租及營業收益
稅ノ四ツノモノハヽ此處デ此法律ヲ認メテ
貰ウテ通スケレドモ、一年限リ有效トシテ、
昭和七年度ニ於テハ新ナル稅制ノ下ニ總テ
ヲ織込ンデ、新ナ方針デ出ルカラ贊成ヲセ
ヨト仰シヤルナラバ私共ハ減稅ハスルガ
宜イト云フ、其根本方針カラ進ンデ贊成致
シタイノデアリマスガ、井上大藏大臣ハ其
處マデ言フ所ノ御決心ガアルカ、之ヲ伺フ
ノデアリマス、是ハ本當ニ私共ハ之ヲ眞面
目ニ考ヘテ居ル、昨夜モ武藤會長ヤ其他ノ
同志ノ人ト寄ッテ、之ヲ非常ニ練リマシタ、
成ベク贊成ヲシタイト云フコトデ練ッタノ
デアリマスケレドモ、七年度、八年度、九
年度ノ將來ヲ考ヘルト云フト、此稅制案ハ
不徹底デアルカラ、來年稅制整理ヲヤルナ
ラバ其時ニ全部ヲ疊込ミ、織込ンデ、總
體的ノ體系ヲ立テヽヤラレタラドウカ、是
ガ明カニナルナラバ、私共ハ進ンデ贊成ヲ
スル考デアリマスルカラ、此點ヲ明快ニ御
答辯アランコトヲ御願致シマス
〔國務大臣井上準之助君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02119310302&spkNum=22
-
023・井上準之助
○國務大臣(井上準之助君) 鷲野君ノ御問
ニ對シテ御答致シマスガ第一ノ說稅、脫
稅ハ鷲野君ノ指摘セラレルヤウニ、吾々ハ
非常ニ多イトモ考ヘマセヌ、併シ脫稅ハ常
ニアルコトデアリマスガ、是ハ法制ニ依ラ
ズシテ、私ハ取締ニ依ッテ脫稅ハ少クスル
コトガ出來ルト考ヘテ居リマス、併シ只今
附加ヘテ仰セラレタ、或階級ニ酷ニシテ、
或階級ニ寬ニスルト云フヤウナコトハアッ
テハナラヌノデアリマス、政府ハ法律ノ最
モ忠實ナル執行者ト云フ意味カラシテ、左
樣ナ事ハアッテハナラヌ、又ヤラヌ積リデ居
リマス
ソレカラ大臣次官其他ノ各種ノ收入ヲ擧
ゲテ、是等ガ所得稅ハ課シテ居ナイ、斯ウ
云フ御話デアリマシタガ、是ハ法律ニ依リ
マシテ總テ間違ナク處分シテ居リマス
非募債主義ニ依ッテ獻金ヲシタ高ガ二万
四千四件、總額ニ致シマシテ、一昨年ノ七
月カラ昨年ノ暮マデヾ五十三万七千百十二
圓アリマス、吾々ハ非募債主義ヲ唱ヘテ、
今日マデ度々中上ゲマシタ如ク、決シテ此
主義ガ惡イト考ヘマセヌ、又此主義ヲ決シテ
抛棄ヲ致シテ居ラヌノデアリマス、唯失業
公債或ハ鐵道公債ヲ募リマシタコトハ、今
日ノ特別ノ場合ニ已ムヲ得ヌ處置トシテ、
一時限リ之ヲ取計ッタノデアリマシテ、其計
畫ヲ立テマスニ付テモ、決シテ放漫ニ流レ
ナイヤウニ、十分注意シタ結果デアリマス
カラ、此國民ノ公債償還資金獻納ニ對シテ
ハ吾々ハ大イニ感謝スルト同時ニ、吾々
ノ非募債主義ヲ決シテ吾々ハ後悔モセズ、
抛棄モシテ居ナイ、尙ホ此儘ズット將來ニ
續ケテ行ク積リデアリマス
ソレカラ今日ノ收入減ニ政府ノ財政計畫
ヲ安全ニ持。ツテ行カウトスレバ、政府ハ一昨
年、昨年ニ行ッタヤウナ、稅ノ徵收方法ヲ尙ホ
一層嚴格ニシテ、所謂苛歛誅求ニ流レルデア
ラウ、斯ウ云フ御想像デアリマシタガ、度
度申上ゲマスヤウニ斯樣ナ經濟界ノ狀態
ニ付キマシテハ、法律ノ最モ忠實ナル執行
者ガナケレバナラヌト同時ニ、今日ノ經濟
界ニ處スル處置ト致シマシテハ、苛歛誅求
ノ如キハ政府當局者ノ殊ニ稅務關係ノ
者ハ、最モ注意シナケレバナラヌコトデア
リマス、其點ニ付キマシテハ、吾々不肖ナ
リト雖モ十分注意シテ居ル次第デアリマ
ス
尙ホ昭和四年度ノ財政ノ決算ニ付テノ御
話ハ、政府ガ三月中ニ所得稅ヲ、是マデ繰
上ゲテ徵收シテ居フタノヲ繰下ゲタカラ、昭
和四年度ニ左樣ナ決算狀態ヲ出シテ來タノ
デアラウ、ソレハ他人ノ作ッタ財政デアル
カラ、左樣ナ決算狀態ヲ出シテ、サウシテ
自分ノ作ッタ昭和五年度ニ財源ヲ餘計繰越
シタノデアラウト云フ、斯ウ云フ御推察、
是ハ鷲野君ニ私ハ非常ナ極端ナ邪推ト、斯
ウ申上ゲテ置クノデアリマス、度々申上ゲ
マスルヤウニ、稅ヲ或月ニ非常ニ餘計取
リ或月ニ少ク取ルヤウナ手加減ハ、勿論
禁ズベク忌ムベキ事デアリマシテ、出來ル
ダケナダラカニ平均ニ取ッテ行カウ、斯ウ云
フ方針ノ結果デアリマスカラ、左樣ナ事ハ
斷ジテアリマセヌ(拍手)
尙ホ緊縮或ハ整理ト云フコトハ、減稅ヲ
シテ剩ッタナラバ、國利民福ノ爲ニ使フガ宜
シイ、ソレガ現政府ニ於テ出來ヌコトデハ
ナイ、其通リデアリマス、今日ノ如ク稅收
入ガ極端ニ減リマス場合、ソレニ應ジテ歲
出ヲ減ズルノニ、非常ナ苦心ヲシテ居ルノ
デアリマシテ、思フダケ國利民福ニ此剩餘
金ヲ餘計使フ、或ハ減稅ニ此金ヲ使用スル
コトノ出來ナカッタコトハ、如何ニモ吾々モ
遺憾至極デアル次第デアリマス
尙ホ仙石滿鐵總裁ノ言ヲ引イテ、籔醫者
ト云フ御批評ガアリマシタガ、是ハ鷲野君
ノ御意見ニ委セテ置キマス
尙ホ行政整理等ニ付テ、只今ノ省ノ數ヲ
減ラスベシ、省ガ減ルコトガ行政整理ノ最
モ適當ナルコトデアル、私ハ最モ尊敬スル
鷲野氏ノ意見トシテ、大ニ尊重シテ伺ッテ
置キマス根本的ノ行政財政ノ整理ヲスレ
バ是ハ直チニ考ヘラレル案デアリマス
又世界的ノ大勢ヲ見マシテモ、左樣ニナッテ
居ルコトハ御互ノ認メル所デアリマス
尙ホ稅ノ立法ヲ爲ス場合ニ於キマシテ、
產業政策ヲ織込ムガ適當デアルカ否ヤ、私
ハ勿論左樣ニナクテハナラヌ、稅ノ立法ヲ
致シマス場合ニ、其國ノ產業政策ヲ忘レテ
稅ガ川來ル氣遣ハナイノデアリマス、併ナ
ガラ產業政策ノ一方ニ傾キマスト、往々ニ
シテ社會政策、或ハ擔稅力ト云フヤウナコ
トヲ却テ忘レテ、產業政策ニ偏重ニナリマ
スト、社會民衆ノ爲ニハ非常ナ害ガアッテ、
一時ハ宜クテモ、永年ニ豆リマシテハ却
テ其國ノ產業政策ヲ害スルヤウナコトガア
リマス、隨テ產業政策ヲ加味致シマスコト
ニ付テハ非常ナ困難ナ問題デアリマスケ
レドモ、大體ニ於キマシテ產業政策ヲ加味
シテ、初メテ其國ノ租稅制度ト云フモノハ
出來マスト云フコトハ私ハ何等ノ疑モナ
ク確信ヲ持ッテ居ル次第デアリマス
營業收益稅ハ惡稅ダカラ止メベシ、私必
ズシモ根本ニ於テ不贊成ヲ申シマセヌ、併
ナガラ營業收益稅ハ以前ノ外形標準ニ依
リマシテ課稅ヲシテ居ッタノヲ改正シテ
今日ノ收益ヲ基トシタ營業收益稅ハ、理窟
ハ兎モ角モ、實際ニ於テハ元ヨリ良クナッテ
居リマス、ソレデ今日直ニ私ハ鷲野君ノ說
ニ、其儘贊成ガ出來ヌコトヲ洵ニ遺憾ト致
シマス
織物消費稅ヲ全部無稅ニスベツ、是モ私
ハ鷲野君ニ必ズシモ不贊成ヲ申サヌノデア
リマス、私ハ日本ハ纎維工業ガ立國ノ基デハ
ナイカト思フノデアリマス若シサウ云フ
立派ナ政策ヲ樹テヽ行キマスナラバ、僅カ
ナ織物稅ノ如キハ只今鷲野君ノ唱ヘル如
ク、無稅トシテ國策ノ根本ヲ立テルコトモ、
必ズシモ私ハ不贊成ヲ申サヌノデアリマ
ス、併ナガラ此點ハ稅制ノ全般ニ亙リマシ
タ上デ、吾々ハ稅制ヲ一ツ立直シテ見ヨウ
ト思ッテ居リマスカラ、今私ハ責任ノアル答
辯ヲ致シ兼ネテ居リマス
ソレカラ綜合稅、源泉課稅、永ラク唱ヘ
タ議論デアリマス、今日ノ如ク經濟界ガ變ッ
テ來テ、此綜合稅、源泉課稅ヲ拵ヘマシタ
當時ト、經濟界ガ非常ニ變ッテ居リマス今日
三、彼此レノ之ニ對シマシテハ議論ガア
ル、〓究ヲ致シマシテモ、兩者ニ採ルベキ所
モアルノデアリマスカラ、研究ハ致シマス、
併ナガラ兩者ニ非常ニ何ト申シマスカ、良
イ所ガアル、捨テ難イ點ガアルノデアッテ、
今日綜合課稅ヲ必ズ源泉課稅ニシヨウト云
フ、私ハ今日マダ確定的ノ決心ヲ持ッテ居
リマセヌ、併ナガラ、徹底的ニ調査シテ、
サウシテ一ツ稅制ヲ立直シテ見タイト思ッ
テ居リマス
ソレカラ最後ノ只今玆ニ出テ居ル減稅案
ガ來年度一時限リノコトデアッテ、七年度
カラハ之ヲ根本カラ改廢スルナラバ、同志
會全部ガ御贊成トカ云フ御議論デアリマス
ガ、是ハ減稅委員會ニ於テ私ハ御答シテ置
キマシタ來年ハ稅制ノ全體ニ付テ調査ス
ルノデアリマスカラ此稅其モノヲ絕對的
ニ觸レナイ、變ヘナイト云フコトハ毛頭申
上ゲ兼ネマス、併ナガラ今日只今此四ツノ
稅ノ中デ、殊ニ地租、營業收益稅ヲ變ヘヨ
ウト云フ考ハ毛頭アリマセヌト、斯ウ云フ
コトヲ申シテ置キマシタガ、同一ナルコト
ヲ鷲野君ニ御答致シマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02119310302&spkNum=23
-
024・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 安保海軍大臣
〔國務大臣男爵安保〓種君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02119310302&spkNum=24
-
025・安保清種
○國務大臣(男爵安保〓種君) 鷲野サンカ
ラ御尋ガアリマシタニ付テ御答ヲ申上ゲマ
ス
今囘提出致シテ居リマス海軍兵力整備計
畫以外ニ、昭和十一年以前ニ於テ新タナル
海軍ノ計畫ヲ樹テルコトノ必要ハ認メテ居
ルノデアリマスガ其內容ト時期ニ付キマ
シテハ、內外諸般ノ情況ニ依リマス次第デ
アリマシテ、今日未ダ其具體的計畫ヲ持ッテ
居ラヌト云フ次第デアリマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02119310302&spkNum=25
-
026・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 幣原臨時首相代理
〔國務大臣男傳幣原喜重郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02119310302&spkNum=26
-
027・幣原喜重郎
○國務大臣(男爵幣原喜重郞君) 鷲野君ガ
私ニ御間ニナリマシタ點ハ極メテ簡單デ
アリマスカラ、私モ簡單ニ御答申上ゲマス
第一ノ點ハ來ルベキ行政財政ノ調査會ニ
於テ、如何ナル程度ニ於テ問題ヲ調査セン
トスルノデアルカト云フコトデアリマス
私ハ過日本議場ニ於テ施政方針中ニ述べマ
シタル目的ヲ以テ、行政財政ノ諸般ノ事項ニ
亙ッテ問題ヲ審査センガ爲ニ、此行政財政ノ
調査會ヲ設ケントスルモノデアリマスケレ
ドモ、其審議スベキ問題ノ範園程度ト云フ
モノハ、只今マダ限定シテハ居リマセヌ
第二ノ問題ハ、軍事費ヲ更ニ節減スルノ
意思アリヤ否ヤト云フコトデアリマス、度
度御答致シマシタガ、要スルニ政府ハ軍事
費ノ節減スベキ餘地ノアルモノハ、固ヨリ之
ヲ節減スルノデアリマス、只今マダ繼續致
シテ居リマス軍制調査會ニ於キマシテモ、
過日陸軍大臣ガ答ヘラレマシタ通リ經費
ノ整理節約ガ其唯一ノ目的デハアリマセヌ
ケレドモ、是モ一ツノ目的トシテ調査スル
ト云フコトヲ申シテ居ラレルノデアリマ
ス、其調査ノ結果、經費ノ整理節約ノ餘地
ガアリマス以上ハ、固ヨリ之ヲ行フノデア
リマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02119310302&spkNum=27
-
028・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 質疑ハ終局致シマ
シタ、森本君カラ議事進行ニ關シテ發言ヲ
求メラレテ居リマスガ、只今ノ場合ハ重要
ナル議案ノ討議ノ半バデアリマスガ、ドウ
云フコトニ付テ發言ヲ求メラレルノデアリ
マスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02119310302&spkNum=28
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029・森本一雄
○森本一雄君 議長、議場ガ靜肅デアリマ
シタカラ、私ハ此靜肅ガ其儘繼續スルコト
ヲ希望致シマシテ私ノ動議ヲ撤回致シマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02119310302&spkNum=29
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030・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 撤囘ノ動議ハ先決
問題デアリマスガ、便宜上七案ノ討議ト併
セ討論ニ付シ、採決ハ先キニ之ヲ致シマス、
左樣御了承ヲ願ヒマス、是ヨリ討論ニ入リ
マイク。通〓順ニ依ッテ發言ヲ許シマス、前田
房之助君
〔前田房之助君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02119310302&spkNum=30
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031・前田房之助
○前田房之助君 諸君、私ハ只今議題ニナッ
テ居リマスル地租法案外六件ニ對シマシ
テ、政友會提出ノ撤囘動議ニ反對ヲ致シマ
シテ、委員長ノ報告ニ贊成ヲ致スモノデア
リマス(拍手)各法案ノ內容ニ付キマシテ
ハ何レ吾々ノ同僚ヨリ後デ詳細意見ヲ申
述ブルコトヽ察シマスルガ故ニ、私ハ各法
案ニ對シマシテ、總括的ノ意見ヲ申述ベテ
見タイト思フノデアリマス
先刻岡田君ノ御話ヲ承リマスルト、撤囘
論ノ主ナル所ノ根本ノ理由ハ、減稅ニ對ス
ル恆久的財源ガナイト云フコトデアルノデ
アリマス、隨テ私ハ此點ニ付キマシテ先ヅ
論議ヲ進メタイト存ジマス、諸君モ御承知
ノ如ク、倫敦海軍條約ノ目的ハ、申スマデ
モナク外ハ各國ノ製艦競爭ヨリ起リマスル
危險ヲ防止致シマシテ、進ンデ世界ノ平和
ニ貢獻スルコトデアリマス、又內ニ於キマ
シテハ國民ノ負擔ヲ輕減シ、民力ノ涵養ヲ
致スコトデアルノデアリマス、此崇高ナル
目的ヲ有シテ居リマスル倫敦海軍條約ニ對
シマシテハ恐クハ全國民何人モ反對スル
方ハアルマイト思フノデアリマス(拍手)政
友會ノ諸君モ世界ノ平和、國民ノ負擔輕減
ニ對シマシテハ吾々同樣ノ〓心ヲ有シテ
居ルコトヽ信ジマス(拍手)唯政友會ノ諸君
ガ倫敦海軍條約ニ反對サレテ居リマスル點
ハ條約上ノ兵力量ヲ以テ致シテハ、國防
ノ安固ヲ期シ難イト認メテ居ラレルヤウデ
アリマス、其次ハ減稅ニ對スル所ノ恆久的
財源ガナイト云フコトデアルヤウデアリマ
ス、隨テ私ハ先ヅ此二點ニ付キマシテ政
友會ノ御議論ノ誤シテ居ル點ヲ指摘致シタ
イト思フノデアリマス(拍手)
諸君モ既ニ御承知ノ通リニ、今囘ノ海軍
補充計畫ハ海軍首腦部ガ一致致シテ國防
上不安ナシト認メテ居ルモノデアリマス、
海軍首腦部ト申シマスレバ申スマデモナ
ク海軍大臣、海軍軍令部長竝ニ軍事參議官
ヲ指スノデアリマシテ、是等帝國海軍ノ國
防用兵上ニ付テ全責任ヲ帶ビテ居ル御方ガ
認メテ以テ、國防上不安ナシト云フ意見ニ
一致致シタ以上ハ、吾々ハ此事ニ信賴致ス
ヨリ外ナイノデアリマス(拍手)若シ尙且ツ
反對ヲ致サレマスルナラバ徒ニ反對セン
ガ爲ニ反對スルモノデアルト云フ國民ノ誤
解ニ對シテ、恐クハ辯解ノ辭ハアルマイト
思フノデアリマス(拍手)
〔發言スル者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02119310302&spkNum=31
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032・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 靜肅ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02119310302&spkNum=32
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033・前田房之助
○前田房之助君(續) 諸君、次ニ私ハ減稅
ニ對シマスル財源ノ問題ニ付テ申上ゲタイ
ト思ヒマス、過日委員會ニ於キマシテ、大
口君ガ返付ノ理由トシテ申サレマシタノニ
ハ第一ハ減稅ニ對スル恆久財源ガナイ、
ノミナラズ一步進ンデ、其基礎ヲナシテ居
ル所ノ保留財源五億八百万圓スラ、財政計
畫上計上サレテ居ルマイ、假令計上サレテ
居ッテモ、頗ル不確實デアルト云フ御意見デ
アッタノデアリマス、隨テ私ハ此大口君ノ
御說ノ誤シテ居ル所以ヲ申述ベテ見タイト
思フノデアリマス
成程大口君ノ仰シヤラレマシタ通リ、昭
和六年以降歲入歲出豫算〓計表ハ、歲入ノ
最モ激減致シテ居リマスル昭和五年ヲ基礎
ト致シテ居リマスルガ故ニ、後年度ノ歲出
ノ切盛ニ非常ニ苦心ノ跡ガアルト云フコト
ハ事實デアリマス、卽チ當時指摘サレマシ
タル如ク、昭和六年度ノ歲出ノ臨時部ガ年
年激減致シテ居ル、卽チ昭和六年ニ於キマ
シテ二億六千八百万圓ノモノガ、昭和十五
年ニ於キマシテハ卽チ一億九千百万圓ニ減
退致シテ居ル、又臨時部ニ於キマシテ、繼
續費デナイ所ノ臨時費ガ、昭和六年ニ於テ
ハ一億二千二百万圓デアッタ、ソレガ翌年
ハ八千九百万圓ニ下リ、更ニ漸減ヲ致シマ
シテ昭和十五年ニ於キマシテハ五千万圓
ニ下ッテ居ルコトモ事實デアリマス、吾々ハ
其事實ハ肯定致スノデアリマスルケレド
モ斯ノ如ク歲出ノ切盛ニ苦心ノ跡ガアル
ト云フノハ全ク財政計畫上保留財源五億
八百万圓ヲ計上致シテ居ルカラデアルノデ
アリマス、若シモ保留財源五億八百万圓ヲ
財政計畫上計上シナイト致シマスナラバ、
斯樣ニ歲出ノ切盛ニ苦心ハシナイ筈デアル
ノデアリマス
更ニ私ハ大口君ガ歲出ノ臨時部ガ年々漸
減ヲシテ居ル、卽チ歲出臨時部ガ昭和九年、
十年、十一年ト段々減ッテ居ル、然ルニ一方
ニ於テ海軍補充計畫費ガ九年、十年、十一
年ト段々增加致シテ居ルカラ、保留財源五
億八百万圓ハ極メテ不確實デアルト云フ御
說デアリマスガ、私ハ遺憾ナガラ此點ニ付
キマシテハ見解ノ相違デハアリマセウガ、
大口君トハ全然根本カラ異ナル意見ヲ有シ
テ居ルモノデアリマス、何トナレバ昭和六
年ニ拵ヘタ此〓計表ナルモノハ歲入ノ最
モ激減致シテ居リマスル昭和五年ヲ基礎ト
致シテ居ルモノデアリマス、而シテ御承知ノ
如ク、ソレガ爲ニ租稅收入ニ於キマシテハ、
約一千三百万圓減退シテ居リマス、其他ニ
印紙收入、關稅收入ヲ加ヘマスト、約一億
五千万圓ノ歲入減デアリマス、併ナガラ私
共ハ斯樣ニ一億五千万圓ト云フ巨額ノ歲入
減ガ、昭和九年、十年、十一年マデ永續ス
ルモノトハ斷ジテ認メテ居ラヌノデアリ
マス(拍手)其理由ヲ私ハ少シク詳細ニ申上
ゲテ見タイト思フノデアリマス、卽チ私共
ハ昨年ノ下半期以來ノ物價安定ノ狀態、竝
ニ貿易ノ狀態、國際貸借ノ改善ノ模樣、竝
ニ正貨ノ模樣ヨリ見マシテ、昨年ノ貿易ノ
一箇年間ノ入超ハ僅ニ一億六千万圓デアリ
マシテ、一昨年ニ比較致シマシテ九百万圓
減少ヲ致シテ居ルノデアリマス、ノミナラ
ズ貿易外ノ收支勘定ヲ見マスト、是ハ推定
額デハアリマスルガ、受取勘定ガ一億七千
万圓多イノデアリマスルガ故ニ、昨年ノ國
際收支ハ殆ド平衡ヲ得テ居ルノデアリマ
ス斯樣ナ結果正貨ノ流出ハ、最初吾々ガ
心配ヲ致シテ居ッタ程ニハ流出致シテ居リ
マセヌ、差引二億四千七百万圓ノ正貨ハ流
出致シテ居リマスケレドモ、其中、外貨債
劵ノ投資ガ一億圓、他ニ昭和六年度ノ輸入
爲替ニ使ヒマスル金ガ六千万圓アリマスル
ガ故ニ、昨年度ニ於テ我ガ國家ノ本當ノ損
失トシテ計上致シマシタ所ノ正貨ノ純流
出額ハ僅ニ八千七百万圓ニシカ過ギナイノ
デアリマス、ノミナラズ本年ノ一月二月ノ
貿易ノ狀態ヲ見マスト、諸君ガ御承知ノ如
ク、一月ハ輸入超過期デアリマスケレドモ、
アベコベニ百七十八万圓ノ出超ヲシテ居リ
やく、又二月ノ貿易ハ最近發表致シマシタ
ガ、僅ニ七十五万圓ノ入超ニ過ギマセヌデ、
一昨年ト比較ヲ致シマスト實ニ七千百八
十万六千圓ノ入超減デアルノデアリマス
(拍手)斯樣ナ事ハ恐クハ歐洲大戰爭以來、
曾テ無イ所ノ順調デアラウト思ヒマス、尤
モ金額ハ減ッテハ居リマス、商品ノ値下ニ依
リマシテ金額ハ減ッテ居リマスケレドモ、數
量ハ少シモ減シテ居ラヌノデアリマス、卽チ
生絲ニ付テ見マスルニ、生絲ハ金額ニ於キ
マシテハ二割減デアリマスケレドモ、數量
ニ於キマシテハ三割三分四厘ノ增加デアリ
マス
〔發言スル者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02119310302&spkNum=33
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034・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 上田君、注意シマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02119310302&spkNum=34
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035・前田房之助
○前田房之助君(續) 又棉花ニ於キマシテ
ハ、紡績ノ各番手ノ採算點ヲ御計リニナッテ
居リマス關係上、數量ハ昨年ヨリ是亦多イ
ノデアリマス、斯ノ如ク數量ノ上カラ申シ
マシテモ少シモ減退ヲ致シテ居リマセヌ
卽チ物價ノ安定ノ狀態、國際貸借ノ現狀竝
ニ正貨流出ノ度合カラ考ヘマスルト世界
的ノ不況ガ今俄ニ囘復ヲ致シマセヌ以上、
我ガ日本ノ國ノ財界ガ直チニ好轉スルモノ
トハ私ハ考ヘテ居リマセヌケレドモ、併ナ
ガラ我國ノ財界ガ今ヤ步調ヲ固メツヽアル
ト云フ事ダケハ、確カナ事實デアラウト思
フノデアリマス(拍手)學理上ノ意見ハ別ト
致シマシテ、景氣ハ循環ヲ致シテ居ルモノ
デアリマス、旣ニ我ガ財界ガ地固メヲ致シ
テ居リマスル以上ハ昭和九年、十年、十
一年マデ、今日ノ如ク約一億五千万圓ノ歲
入減ガアルト云フ事ハ)常識上判斷スルコ
トガ出來ナイノデアリマス(拍手)ノミナラ
ズ、段々是カラ恐ラクハ歲入減ガ殖エマス
ルカラ、〓計表ニ於キマスル所ノ歲入過、
所謂剩餘金ニ相當スル金ガ、恐ラクハ昭和
九年、十年、十一年エハ、〓計表ヨリモ餘
程增加致スデアラウト私ハ信ジマスルガ故
ニ保留財源五億八百万圓ハ寧ロ前途頗
ル確實ナルモノアリト斷定シテ憚ラヌト私
ハ思ヒマス(拍手)
斯ク論斷致シマスル時ニ於キマシテ、保
留財源五億八百万圓ノ財源ニ付キマシテハ
政友會ノ諸君ハ餘リ御心配ナサル必要ハナ
イノデアリマス然ラバ其他ノ財源ハ如何
デアルカ、卽チ海軍ニ對スル財源、又減稅
ニ對スル財源ハ如何デアルカト申シマス
ト政友會ノ諸君ノ第一ニ御心配ナサレマ
シタノハ、新艦船ニ對スル維持費デアッタ
ノデアリマス、固ヨリ海軍補充計畫ノ三億
七千四百万圓ノ中ニハ、新艦船維持費ハ毛
頭含ンデ居リマセヌ、唯艦船製造補充ニ關
スル經費ガ二億四千七百万圓、又航空兵力
充實ニ關シマス經費ガ八千二百万圓、其他
內容充實ニ關スル經費ガ四千五百万圓ダケ
含マレテ居ルノデアリマシテ新艦船維持
費ハ少シモ含ンデ居ラヌ事ハ事實デアリマ
ス、是ニ於キマシテカ、政友會ノ內田君ハ
非常ニ此點ヲ心配サレマシテ或ハ新艦船
維持費ガ厖大ナル額ニ達シテ、ソレガ爲ニ
減稅ノ財源ガ無クナルモノデハナカラウカ
ト御心配サレマシタ結果、委員會ニ於キマ
シテハ祕密會議マデ開イテ、隨分突込ン
デノ御質問ガアッタノデアリマス、併ナガラ
其質問應答ノ結果ハ新艦船一万八千噸ダ
ケ增加スルト云フ事ガ明瞭ニ相成ッタノデ
アリマス、一万八千噸ト申シマスルト、維
持費ガ一噸二百圓ト致シマシテ三百五六十
万圓ニナルノデアリマス、而モ維持費ト云
フモノハ、從來ノ慣行ニ依リマスト、海軍ガ
海軍ソレ自體ノ努力ニ依テ、大部分捻出ヲ
致シテ、尙且ツ足ラザル所ヲ大藏省ニ要
求スル事ニ相成ッテ居ルノデアリマス、隨テ
三百五六十万圓ノ中デ、恐ラクハ百五十万
ヤ六十万ハ、海軍自體ノ力デ捻出ガ出來ル
ト思ヒマスガ故ニ、不足額ハ僅ニ百万圓內
外デアルノデアリマス、斯樣ナ僅ナ金デア
リマス以上ハ、財政技術ノ按配ニ依ッテ當
然處理サレルモノデアッテ、毛頭減稅ノ恆久
財源ニハ影響ヲ及ボサヌノデアリマス(拍
手
更ニ政友會ノ諸君ガ心配ナサレマシタノ
ハ昭和十年、十一年ニ於テ航空能力維持
ノ爲ニ約九百万圓程ノ金ガ要ルト云フコト
デアリマシタガ是ハ目下ハ抽象的ノ議論
デアッテ、万一實際ニ於テ是ガ要ルト假定致
シマシテモ、アノヤウナ九百万圓程度ノ金
ハヤハリ財政技術ニ依ッテ然ルベク按配ガ
出來ヤウト思フノデアリマス、決シテ減稅
ノ財源ニハ影響ヲ及ボサヌノデアリマス
次ニ政友會諸君ノ最モ御心配ニ相成ッテ
居リマスノハ、第二次補充計畫ニ對スル費
用デアルノデアリマス、政友會ノ諸君ハ第
二次補充計畫ハ、昭和十一年度前ニ必ズ實
行シナケレバナラヌ、而モソレハ一億五千
万圓ノ巨額ニ達シテ居ルト云フコトデアリマ
スガ、私ハ其眞僞ハ知リマセヌ、併ナガラ
第二次補充計畫ナルモノハ各國ノ情勢、卽
チ英米兩國ノ艦船製造ノ計畫ガ決定ヲ致シ
タ上ニ於テ、我ガ日本ガ決定スベキモノデ
アルト云フコトハ、政府當局ノ屢〓言明ヲ
致シテ居ル所デアルノデアリマス(拍手)卽
チ軍備ノ相對性ニ考ヘマシテモ、英米兩國
ガ全部ノ權利ヲ行使セザルニ、我ガ日本帝
國ノミガ全部ノ權利ヲ行使スル必要ガ何處
ニ在ルノデアリマスカ、英米兩國ガ全部ノ
權利ヲ行使スルナラバ、日本モソレニ順應
致シ、又權利ヲ行使シナイナラバ、日本モ
廢メレバ宜イノデアリマシテ、今日ノ場合
ニ於キマシテハ、第二次補充計畫ナルモノ
ハ全然不明ノ事實ト申サナケレバナリマ
セヌ、吾々ハ過去ノ事實ニ徵シマスルニ、
昭和四年田中政友內閣ノ當時、兩稅委讓ヲ
提案サレマシテ、當時國庫ニ八千万圓ノ收
入ガ缺ケタノデアリマス當時將來ノ新艦
船建造ニ對シマスル所ノ保留財源ハ一般
ナンボアッタノデアリマスカ、當時ノ保留財
源ハ僅ニ六千五百万圓ニ過ギナカッタデハ
アリマセヌカ、而モ當時ハ華盛頓會議ノ結
果ト致シマシテ、每年一箇年ニ主力艦一隻
ヲ建造シナケレバナラヌト云フコトニナツ
テ居リマシタ、卽チ是ハ昭和六年カラデア
リマスカラ、主力艦一隻ノ建造ハ最低ニ見
積リマシテモ八千万圓ヲ要スルノデアリマ
ス、外ニ巡洋艦、驅逐艦、潜水艦等補助艦
ノ當時ノ現有勢力ガ四十万噸アッタノデア
リマス、潜水艦ノ艦齡ハ十二年デアリマス
ケレドモ、此三種ノ艦艇ノ艦齡ヲ平均致シ
マスト十六年ニ相成リマスガ故ニ、補助艦
船ハ一箇年ニ平均二万五千噸ヲ建造シナケ
レバナラヌト云フコトニ相成シテ居ッタノデ
アリマス、サウ致シマシテ補助艦船ハ昭和
六年度デ一段落ヲ〓ゲルコトニナッテ居リ
マシタガ故ニ、昭和七年カラハ必ズ一箇年
間ニ平均二万五千噸ヲ建造シナケレバ相成
リマセヌ、一噸假ニ之ヲ三千圓ト致シマシ
テモ、補助艦ノ建造ダケニ七千五百万圓ヲ
要スルノデアリマス、共他ニ主力艦一隻八
千万圓デアリマスカラ、昭和七年以降ニ於
キマシテハ一箇年間ニ一億五千万圓ノ新艦
船建造費ヲ要スルコトヽ相成ッテ居ッタノデ
アリマス、然ルニ當時ノ之ニ對シマスル所
ノ保留財源ハ、僅ニ六千五百万圓ニ過ギナ
カッタノデアリマス(拍手)而モ諸君ハ兩稅
委讓ヲ提案サレタノデアリマスガ今日ハ
旣ニ倫敦海軍條約ガ成立致シテ居ル而モ
海軍補充計畫ニ對シマシテ六千二百万圓ノ
金ガ保留サレテアルノデアリマスガ故ニ、
當時ト比較致シマスト今囘ノ保留財源六千
二百万圓ハ海軍補充計畫ニ對シテ頗ル堅實
味ヲ帶ビテ居ルモノト申サナケレバナラヌ
ト思フノデアリマス(拍手)斯樣ナ點ヨリ判
斷致シマスルトキニ於キマシテハ、私ハ國
家ノ大局カラ打算サレマシテ、サウシテ此
財源ヲ承認ナサッテ下サル方ガ宜カラウト
思フノデアリマス
更ニ私ハ政友會ノ諸君ガ委員會ヲ通ジマ
シテ、頗ル減稅額ガ少イデハナイカ、一億
三千四百万圓、僅カ六箇年間ニ之ヲ減稅ス
ル、甚ダ前言ヲ食ンデハ居ナイカト云フ議
論ガアッタノデアリマスルガ、併ナガラ財界
ガ不況デ、歲入ガ激減ヲ致シテ居リマスル
際ニ於キマシテ、六箇年ニ一億三千四百万
圓、平年度ニ於キマシテ二千五百万圓ノ減
稅ヲ爲シ得ルト云フコトハ全ク倫敦海軍
條約ノ賜デアリマシテ、現內閣ノ國民負擔
ノ輕減ニ對シマスル至誠ノ一端ノ現レデア
ルト申サナケレバナラヌノデアリマス(拍
手)若シ倫敦海軍條約ガ不成立ニ終ッテ居ル
ト致シマシタナラバ、ドウ云フコトニ相成ッ
テ居ルノデアリマスルカ、今申上ゲマシタ
如ク、昭和七年カラ主力艦ノ建造一隻八千
万圓、補助艦新建造費七千五百万圓、億
五千五百万圓ヲ要シマスルノミナラズ、談
判決裂ノ結果ト致シマシテ、各國ニ於テ製
艦競爭ガ激烈トナリマシテ、又空軍兵力ノ
充實ニ對スル競爭モ激烈ニナリマスルガ故
ニ、僅ニ五億八百万圓位ノ保留財源ヲ以テ
致シマシテハ到底國防ノ安全ヲ期スルコ
トハ出來ナイト思フノデアリマス(拍手)其
結果ハ大增稅ヲ致スカ、多額ノ公債ヲ發行
致スヨリ外ニ途ガナイノデアリマスガ、今
日ノ場合ニ於キマシテ大增稅ヲ行フタリ、
多額ノ公債ヲ發行スルコトニ相成リマスル
ナラバ、我ガ財界ハ洵ニ拾收スルコトノ出
來ナイ不景氣ニナルト云フコトハ、極メテ
明白ナル事實デアラウト思フノデアリマス
(拍手)吾々日本國民ハ此災厄ヨリ逃レマシ
テ、サウシテ一億三千四百万圓ノ減稅ヲ爲
シ得タト云フコトハ、前刻申シタ如ク、全
ク倫敦海軍條約ノ賜デアッテ、國民ノ大多
數ハ必ズヤ現內閣ノ此誠意ヲ諒トシテ下サ
ルコトヽ固ク信ジテ疑ハナイ者デアリマス
(拍手)
以上ノ理由ニ依リマシテ財源ガ不確實デ
アルカラ返付スルト云フ御議論ハ極メテ
論據ノナイ所ノ御議論デアラウト思ヒマス
(拍手)隨テ私ハ謹ンデ此返付論ヲ政友會諸
君ニ返付致シタイト考ヘルノデアリマス
(拍手)
次ニ申上ゲタイノハ、政友會ノ諸君ハ委
員會ヲ通ジテ現内閣ハ組閣當初カラ國民負
擔ノ輕減、民力ノ涵養ヲヤカマシク唱ヘテ
居ルニ拘ラズ、今囘ノ減稅案ハ海軍ノ剩餘
金僅ニ一億三千四百万圓ニ過ギナイコト
ハ全ク組閣當初ノ聲明ニ反シテ居ルデハ
ナイカト云フ御議論ガアッタノデアリマス、
隨テ之ニ對シテ一言論議致シテ見タイト思
ヒマス、吾々ハ固ヨリ一日モ早ク根本的ノ
稅制整理ヲ斷行致シマシテ、國民負擔ノ輕
減ヲ圖リタイト考ヘテ居ルノデアリマスケ
レドモ、今日ノ日本ノ財政ノ狀態ヲ考ヘマ
スルト、直チニソレハ實行ガ出來マセヌ、
(發言スル者アリ)能ク御聽キナサイ、我ガ
日本ノ財界ニ非常ナ癌腫ガアリマス、例
バ物價ガ三割下ッタカラ、歲出ハ三割減ラ
ヌ、サウシテ國民ノ負擔ヲ三割減少シヨウ、
サウ云フ御論ハ理想トシテ洵ニ結構デアリ
マス、爲政者トシテハソレヲ實行スルコト
ニ努力シナケレバナラヌト思ヒマス、併ナ
ガラ今、日本ノ財政ノ內容ヲ見マスト云フ
ト容易ニ之ヲ實行シ得ナイ所ノ茲ニ禍根
ガアルノデアリマス、禍根トハ何カト申シ
マスルト云フト歲出ノ中ニ法律ニ依リマ
スル所ノ義務的經費、是ガ多額ヲ占メテ居
ルノデアリマス、然ラバ義務的經費ガ幾ラ
アルカト申上ゲマスルト昭和四年ニ於キ
マシテハ六億六千五百万圓、昭和五年ニ於
キマシテハ六億六千百万圓、昭和六年ニ於
キマシテハ六億五千万圓ノ多額ニ達シテ居
リマス、是ハ如何ナル內閣ガ出來マシテモ、
容易ニ減額シ得ナイ所ノモノデアルノデア
リマス、而シテ昭和六年度ノ此義務的經費
六億五千万圓ノ内容ヲ點檢致シテ見マスル
ト、國債整理基金繰入ト云フモノガ二億五
千八百六十万圓アルノデアリマス、其他ニ
年金恩給ニ關スル經費ガ一億四千七百万圓
アリマス、私ハ國債ニ關スル經費ガ何故コ
ンナニ殖エタカト云フ過去ノコトハ追究致
サウトハ致シマセヌ、併ナガラ今日國債ガ
斯ノ如ク殖エ、恩給ガ斯ノ如ク殖エテ居リ
マスル以上、先以テ國債ノ整理低減ヲ行ハ
ナケレバナリマセヌ、更ニ恩給法ヲ改正致
シマシテ、サウシテ財政ノ單純化、財政ノ經
濟化ヲ行ハナケレバナリマセヌノデアリマ
ス、如何ナル政治家ガ局ニ立チマシテモ、
今日ノ國債ノ整理低減ヲ行ハナケレバ、斷
ジテ歲出ヲ減退セシムルコトハ出來ナイノ
デアリマス是ニ於キマシテカ現內閣ハ成
立以來、銳意財政ノ整理緊縮ト、公債ノ整
理ニ努メテ參ッタノデアリマス、一方ニ於キ
マシテハ國民經濟更新ノ爲ニ、金解禁ヲ斷
行致シテ參ッタノデアリマス、現內閣ノ執リ
マシタ財政ノ整理緊縮、國債ノ整理低減竝
ニ金解禁斷行コソ、洵ニ國民負擔ノ輕減ニ
對シマスル最モ有效適切ナル準備行爲ト認
メナケレバナラヌノデアリマス(拍手)先ヅ
組閣當初之ヲ斷行致シマシテ、然ル後ニ今
申上ゲルガ如ク稅制バカリデハ整理ガ出來
マセヌカラ、行政財政ノ整理ヲ竝行致シマ
シー、近ク調査會ヲ開キマシテ、サウシテ
以テ國民負擔ノ公平ト輕減ニ努メタイト
思ッテ居ルノデアリマスルガ故ニ、決シテ現
內閣ハ組閣以來根本整理ヲ忘レテ居ルノデ
ハナイノデアリマス唯國家ノ現狀ハ一足
飛ビニ根本整理ガ出來マセヌカラ、著々ト
適切有效ナル準備行爲ヲ致シテ居ルノデア
リマス(拍手)
又總體論ト致シマシテ今囘ノ減稅案ヲ見
ルト、消費稅ガ非常ニ少クシテ、サウシテ
直接稅ガ多イト云フ御議論ガアリマシタ、
成程消費稅ハ平年度ニ於キマシテハ一千万
圓、直接稅ハ一千五百万圓デ、直接稅ガ多
イノデアリマス、併ナガラ稅制政策ト申シ
マスルモノハ決シテ一定不變ノモノデナク
シテ常ニ國民ノ實生活ニ卽シタ所ノ改正
ヲ致サナケレバナラヌト思ヒマス、消費稅
ガ多イト云フコトニ付テハ將來爲政家ト
シテハ思ヒヲ此點ニ致サナケレバナラヌト
ハ考ヘマスケレドモ、少クトモ現在ノ國民
ノ實生活ヲ見マスル場合ニ於キマシテハ
昨年以來物價ガ激落ヲ致シテ、生活必需品
モ非常ニ低落ヲ致シテ居リマス、砂糖、織
物消費稅ノ如キハ三割四割低減ヲ致シテ
居リマスルガ故ニ、今日國民生活ノ實際カ
ラ見マスルト云フト消費稅ヲ輕減スルヨリ
モ、ヨリ以上地租竝ニ營業收益稅ヲ、ヨリ
多ク輕減スルト云フコトガ、農村竝ニ商工
業者ノ疲弊困憊ヲ極メテ居ル現狀カラ見マ
シテ、最モ必要ナル手段方法デアラウト思
フノデアリマス(拍手)併ナガラ今申上ゲタ
ル如ク消費稅ニ付イテ無關心デハアリマセ
又、全體ノ根本整理ヲヤルトキニ於キマシ
テハ此點ニ付テハ爲政家トシテ相當ニ御
考慮ヲ願ヒタイト思フノデアリマス
共他私ハ內容ニ付テ幾多申上ゲタイコト
ガアリマスルケレドモ、是等ニ付キマシテ
ハ後トヨリノ同僚諸君ニ御讓リヲ申スコト
ト致シマシテ、此際ハ避ケマスルガ要ス
ルニ今囘ノ改正案ト云フモノハ第一地租
ノ課稅標準ヲ賃貸價格ニ變ヘマシテ、數十
年ニ亙リマスル所ノ不公正ノ地價ヲ是正致
シタ、ソレガ第一ノ目的デアリマス、天ノ
總テヲ通ジマシテ社會政策的方針ガ加味サ
レテ居ルノデアリマス、營業收益稅ニ致シ
マシテモ、千圓以下ノ納稅者ニ對シテ、特
ニ二割ヲ輕減ヲ致シテ居ル、其他織物消費
稅ニ致シマシテモ、中流以下ノ國民ノ使用
致シマスル織物ノ範圍ヲ擴張致シマシタ、
又砂糖ニ致シテモ、其他日常生活ニ必要ナ
ル商品ニ對シテモ、多ク減稅ヲ致シテ居
ル、是等ノ點カラ考ヘマシテモ、社會政策
方針ガ强ク流レテ居ルノデアリマシテ、現
在ノ國民生活ノ實際カラ見マスト、極メテ
有效ナル所ノ改正方法デアッタト思フノデ
アリマス、私ハ此際最後ニ一言公債ト減稅
ニ關シマスル關係ニ付キマシテ、意見ヲ申
上ゲテ見タイト思フノデアリマス、先刻政
友會ノ諸君ハ現內閣ハ一方ニ平年度ニ於
テ、二千五百万圓ノ減稅ヲ行フガ、一カハ
於テ失業救濟ノ名ノ下ニ、道路公債二千万
圓ヲ發行致シテ居ルカラ、言ハバ公債ヲ財
源トシテ減稅ヲ致シテ居ルモノデアル、是
ハ民政黨多年ノ主張ニ反スルト論難サレテ
居ルノデアリマス併ナガラ今モ大藏大臣
ガ申サレマシタ如ク、今囘ノ道路公債ト申
シマスルモノハ諸君御承知ノ如ク昨年來
不景氣ガ深刻ニナリマシテ失業者ガ簇出
致シタ、其失業者ヲ救濟致シマスル一時的
便法ト致シマシテ、一年ヲ限ッテ發行ヲ致シ
タノデアッテ、決シテ永續致シテ居ルモノデ
ハアリマセヌ、隨テ恆久財源デアリマスル
減稅ノ財源トハ決シテ相成ラヌノデアリマ
ス、所ガ又一般會計ニ於テ一一千二百万圓、
鐵道特別會計ニ於テ千二百万圓、樺太特別
會計ニ於テ百五十万圓、合計三千五百五十
万圓モ公債ヲ發行致シテ居ルコトハ政策
ノ破綻デアルノミナラズ、現內閣成立當時
ト本年一月ノ公債總額ヲ考ヘテ見ルト
八千万圓モ殖エテ居ルト云フコトハ、正二
之ヲ裏書致シテ居ルモノト諸君ハ非難サレ
テ居ルノデアリマス、併ナガラ公債ノ內容
ヲ考ヘマスルト、是ハ間違ッタ御議論デア
リマス、成程總額ハ殖エテ居リマスケレド
モ、諸君ノ御承知ノ如ク、法律ニ依リマス
ル所ノ交付公債ガ四千三百万圓、更ニ借換
差額ニ依リマスルモノガ四千五万圓、合計
八千八百万圓ハ政府ノ責任ニアラザル增額
デアリマスルガ故ニ、差引致シマスト八百
万圓減少致シテ居ル勘定ニナッテ居ルノデ
アリマス、諸君ハヤカマシク仰シヤイマス
ガ、田中內閣時代、政友會內閣ノ時代ニ於
キマシテ、昭和四年度ノ財政計畫ヲ考ヘマ
スルト、當時昭和五年カラ昭和十五年ニ至
ル間ニ於キマシテ一般會計ニ於テハ五億
九千六百万圓、特別會計ニ於テハ六億七千
五百四十万圓、合計十二億七千百四十万圓
ト云フ實ニ莫大ノ公債ヲ發行シナケレバナ
ラヌト云フ方針ヲ立テラレタノデアリマ
ス、若シ吾々ガ今日斯樣ナ公債ヲ財源ト致
シテ豫算ヲ編成シテモ宜イト云フコトナ
ラバ、別段大ナル努力モ大ナル苦心モ要シ
ナイノデアリマス、併ナガラ若シ斯樣ナ公
債ヲ財源ト致シマシテ、財政計畫ヲ立テマ
スナラバ、今日ノ場合ニ於キマシテハ、ソ
レガ爲ニ財政ノ大膨脹ヲ致スデアリマセ
ウ、ソレガ爲ニ國民ニ對シテ大增稅ノ素因
モ出來ルノデアリマス、又將、來國民ニ對シ
マシテ、非常ナ禍根ヲ貽スノミナラズ、斯
樣ニ厖大トナッタ財政ヲ今日立テマスト云
フト勿論物價ハ直ニ騰貴致シマス、ソレ
ガ爲ニ國際貸借ヲ惡化致シマシテ、金貨ハ
滔々トシテ海外ニ流レ出ナケレバナラヌノ
デアリマス、サウシテ產業ノ基礎ハ根本力
ラ破壞サレルノデアリマスガ故ニ、吾々ハ
金本位制度ヲ擁護スル上ニ於キマシテモ
亦財政ノ基礎ヲ鞏固ニスル上ニ於キマシテ
モ、進ンデ國民負擔ヲ輕減スル必要上カラ
申シマシテモ斷ジテ斯樣ナ政策ヲ執ル譯
ニハ參ラヌノデアリマヌ(拍手)卽チ吾々ハ
敢テ忍ビ難キヲ忍ンデ、將來大ニ仲ビンガ
爲ニ今日緊縮方針ヲ執ッテ居ルノデアリマ
ス、恐ラク全國大多數ノ國民ハ現内閣ノ此
誠意ニ對シマシテモ、必ズヤ堅忍不拔ノ精
神ヲ以テ相協力サレマシテ、此經濟國難ノ
打壞ニ邁進サレルト云フコトヲ私ハ信ジテ
疑ハナイ者デアリマス(拍手)諸君モ御承知
ノ如ク、私ハ岡田君ガ政策ノ問題ヲ述ベラ
レマシタガ爲ニ、其點ニ一言觸レテ置キタ
イト思ヒマス
現內閣ハ斯樣ニ緊縮方針ヲ執ッテ居ルガ、
政友會ノ諸君ハ非常ニ積極方針ヲ稱ヘテ居
ラレル、然ルニ金解禁後積極方針ヲ執リマ
シタ世界各國ノ例ヲ考ヘマスト左樣ナ國
ハ悉ク財政ノ行キ詰リニ遭ヒマシテ、金ノ
輸出再禁止ヲ致シテ居ルノデアリマス、私
ハ言ハナイ積リデアルガ、例ヲ言ヘト仰シ
ヤレバ詳シク申上ゲマス、濠洲ノ例ニ付テ
見マスト千九百二十五年ノ四月ニ金解禁ヲ
致シタノデアリマス然ルニ其後濠洲ニ於
テハ非常ニ公債ヲ濫發致シマシテ、財政ガ
厖大ヲ致シテ、聯邦竝ニ洲政府ハ每年歲入
ノ不足ニナリマシテ、千九百二十九年ニ於
キマシテハ濠洲ノ聯邦政府ハ百四十七万
一千磅ト云フ金ガ不足致シテ居ルノデアリ
マー、然ルニ一方濠洲ガ保護關稅政策ヲ執
リマシタ結果トシテ物價ハ低落シナイ
生產費モ低落致シマセヌカラ、國際貸借ハ
惡化致シ、遂ニ財政ノ行詰リニ遭ヒマシテ、
千九百二十九年ノ十月ニハ金ノ輸出再禁止
ヲ致シマシタ、是ハ御承知デアリマセウ、
ノミナラズ亞爾然丁ニ於テモ同樣ノ關係ニ
於テ、金輪出再禁止ヲ致シタノデアリマス、
斯樣ニ歐洲各國ニ於キマシテモ、金解禁後
積極政策ヲ行ッテ居ル國家ハ、悉ク金ノ輸出
再禁止ヲ致シテ居ルノデアリマス、卽チ學
理上カラ申シマシテモ、金解禁後財政ノ基
礎ノ未ダ鞏固デナイ際ニ於キマシテ、積極
方針ヲ執ラウト致シマスナラバ、先以テ金
ノ輸出再禁止ヲシナケレバナラヌ必要ガア
ルト思フノデアリマス、政友會ノ諸君ハ
果シテ此勇氣ガオアリニナリマスカ、而モ
政友會ノ諸君ハ昨年ノ十二月二十二日ニ於
キマシテ、產業五箇年計畫外十一項ニ關シ
マスル政策大綱ヲ天下ニ發表サレタノデア
リマス、當時全國ノ新聞雜誌ハ殆ド一齊ニ
筆ヲ揃ヘテ在野黨トシテ政友會ガ斯ノ如
キ具體的政策ヲ公表致シタコトハ洵ニ激賞
スルニ足ルトシテ、之ヲ賞讃致シタノデア
リマス、併ナガラ唯惜ムラクハ政友會ハ
財界不況ノ原因ニ對スル認識ヲ誤"テ居ル、
今日ノ我ガ日本ノ財界ノ不景氣ハ卽チ世
界的不景氣ノ影響ト、生產過剩ニ因ル影響
デアル、ニ拘ラズ今日產業五箇年計畫ヲ立
テヽ積極政策ヲ執ルナラバ、折角建直ラン
ト致シテ居リマス我國產業ノ機能ハ根本
カラ破壞サレル虞ガアルノデアルト、殆ド
筆ヲ揃ヘテ論難攻擊致シマシタ、此點カラ
考ヘマシテモ、政友會ノ積極政策ニ對スル
國論ノ歸趨ハ、自ラ明カデアルノデアリマ
ス(拍手)又實際ノ點ヨリ考ヘマシテモ、政
友會ノ御主張ヲ詳細ニ新聞紙ヲ通ジテ拜見
致シマスト、現在二十億圓ノ輸入品ガアル
其中半分ノ十億圓ヲバ內地製造工業ヲ盛ニ
致シマシテ、生產品ヲ拵ヘテ十億圓ニ相當
スル輸入ノ防遏ヲナサルト云フコトデアリ
やく、出來レバ洵ニ結構デアリマス、出來
レバ私モ之ニ贊同ヲ致ス者デアリマス、併
ナガラ是ハ我ガ日本ノ國ガ天然資源ガ少ナ
ク原料ニ乏シイト云フコトヲ、第一ニ忘
却サレタ議論デアリマス、ノミナラズ臨時
產業合理局ノ調査ニ依リマスト云フト、國
內ノ國民ガ國產品ヲ愛用致シマスルナラ
が、二億五千万圓ニ相當スル代用品ダケハ
製造ノ可能性ガアルト云フコトデアリマ
ス、併サガラソレ以外ノ物ハ今日マデ民
間ノ事業家ガ幾度カ試ミタノデアリマスケレ
ドモ收支ガ合ハナイカラ、此儘ニ棄テヽ
居ルノデアリマス、今日若シ此產業ヲ助長
致シマスルナラバ、國家ハ莫大ナ助成ヲ致
サナケレバナラヌト思ヒマス、國家ガ助成
スルコトガ出來ナケレバ高度ノ保護關稅
ヲ致サナケレバナラヌト思フノデアリマ
ス、今日ツ財界ニ於キマシテ公債ヲ發行致
シテマデ、其莫大ナ助成金ヲ拵ヘテ見タリ、
高度ノ保護關稅ヲ課スルト云フコトハ、恰
壬地震ノ後デ基礎工事ヲ施サズシテ、其上
ニ高層ナ建築物ヲ致シクト同樣ナモノデ
アッテ、一タビ强風ガ吹ケバ根柢カラ建築物
ガ倒レテ、大ナル慘害ヲ及ボス虞ガアルノデ
アリマス(拍手)隨テ遺憾ナガラ私共ハ此政
策ニハ御贊成ガ出來ナイノデアリマス
更ニ政友會ノ岡田君ガ此處ニ申サレマシ
クガ、行政財政ノ根本整理ヲ致シテ、サウ
シテ軍備ノ經濟化ヲ行フテ、五千万圓ノ減稅
ヲ行フト先刻仰シヤリマシタガ、是亦私共
モ雙手ヲ擧ゲテ贊成スル者デアリマス相
五ニ政黨ハ努力致シテ、此方針デ進マナケ
レバナラヌノデアリマスケレドモ、今申上
ゲマシタ如ク、行政財政ヲ根本整理ヲ致シ
マスルニハ先以テ財政ノ緊縮ヲヤラナケ
レバナラナイ、卽チ公債ノ整理低減ヲ行ハ
サケレバナラナイ、之ヲヤラナケレバ、行
政財政ノ根本的整理ガ出來ナイノデアリマ
シテ、卽チ是ハ政友會ノ積極政策ト、全ク
枘鑿相容レナイ所ノ議論デアラウト思フノ
デアリマス(拍手)ノミナラズ政友會ノ諸君
ガ、軍備ノ經濟化ヲ行フト稱セラレマシタ、
吾々國民ハ又軍備ノ經濟化ニ努力スルヲ必
要アルハ勿論デアリマス、併ナガラ諸君ガ、
海軍首腦部ガ一致致シテ、今囘ノ海軍補充
計畫ヲ以テ、國防上安全デアルト看做シテ
居ルニ拘ラズ尙且國防上不安ナリト稱セ
ラレマシテ、軍備ノ擴充ヲ努メルガ如キ、
此態度ヲ執ッテ居ラレマスル限リニ於キマ
シテハ軍備ノ經濟化ハ決シテ實現スルモ
ノデハナイソデアリマス(拍手)私ハ敢テ政
友會諸君ガ軍國主義者デアルトハ申シマセ
ヌケレドモ、斯樣ナ態度ヲ執ラレマスルコ
トハ國民ニ於テ政友會ハ軍國主義者デハ
ナイカト云フ所ノ誤解ヲ喚起シハシナイカ
ト思フノデアリマス斯ク論ジ來タル時ニ
於キマシテ、吾々ハ今日政友會ノ政策ヲ以
テ財政ノ立直シヲヤリ、國民負擔ノ輕減ヲ
圖ルト云フコトハ、恰モ木ニ椽クテ魚ヲ求ムツ
ル所ノ類デアラウト思ヒマス(拍手)尙ホ極
言致シマスルナラバ、甚グ御無禮ナ言分デ
アリマスガ、現下ノ我ガ國民經濟ノ實體
ニ於キマシテ、諸君ガ積極政策ヲ執ラレマ
スルノハ、恰モ國民ニ向。ッテ「パン」ヲ與フベ
シト稱シナガラ其實石ヲ投ズルト同ジ結
果ニ陷ヰルト思セマス、希クハ國民負擔ノ
輕減ニ忠實ナル政友會ノ諸君ハ、虛心坦懷、
黨爭意識ヲ棄テマシテサウシテ私情ヲ棄
テラレマシテ、國家ノ大局ヨリ、國民ノ負
擔ノ輕減ニ相當ヲ效果ガアリマスル所ノ
本減稅案ニ御贊成下サランコトヲ希ウテ止
マザル次第デアリマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02119310302&spkNum=35
-
036・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 先刻申述ベマシタ
濱口總理大臣ノ登院時期ノ問合ニ對シマシ
テ、政府カラ囘答ガアリマス、之ヲ讀ミマ
ス
濱口首相ハ今日ノ所ニテハ曩ニ二月十
九日本院ニ於テ私カラ言明セシ通リ今後
意外ノ變化ノナイ限リハ本明上旬中ニハ
出席致スコトガ出來得ルデアラウト存ジ
テ居リマス
内閣總理大臣臨時代理
外務大臣男爵幣原喜重郎
〔拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02119310302&spkNum=36
-
037・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 木暮武太夫君
,
〔木暮武太夫君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02119310302&spkNum=37
-
038・木暮武太夫
○木暮武太夫君 私ハ只今議題ニナッテ居
リマスル地租法案外六件ニ對シマシテ、委
員長ノ報告ニ反對致シテ、岡田君ノ動議ニ
贊成ヲ表スル者デアリマス
此減稅案ヲ實質的ニ見マスル場合ニハ
其財源ノ點ニ於テ、或ハ内容ノ點ニ於テ、
洵ニ吾々カラスルナラバ一顧ノ價値ナキ
案デアルケレドモ、併シ形式上カラ之ヲ見
マスルナラバ、現內閣ガ今期議會ニ提案致
サレマシク所ノ乏シキ議案ノ中ニ於テ特
ニ國民負擔ノ輕減ニ關スル限リニ於テハ
形式上重要ナル所ノ案デアルト私ハ考ヘル
ノデアリマス、此意味合デ私ハ討論ヲ進ム
ルニ當リマシテモ、極メテ冷靜ニ私ノ所論
ヲ盡シ、而シテ只今反對黨前田君ノ御述ニ
ナリマシタコトノ多クハ經濟問題ニ關ス
ルモノデアリマスルガ本案ニ關スル限リ
ニ於テ、最後ニ反駁ヲ加ヘル積リデアリマ
ス(拍手)
諸君、吾々ハ減稅ニ對シマシテハ大贊成
デアリマス、卽チ吾々ハ合理的ニ、恆久性
ヲ帶ビタ財源ヲ伴ッタ大減稅コソ、吾々ガ希
望スル所ノモノデアルノデアリマス(拍手)
殊ニ今日ノ如ク現内閣ツ誤ッタ舊平價金解
禁ニ依ッテ、貨幣價値ノ上騰トナリ國民ハ
金納制度ノ下ニ於テハ實質土已ムヲ得ズ
玆ニ增稅ヲ甘ジテ受ケナケレバナラヌ現況
ニ於テハ殊ニ私ノ恆久的ノ財源ヲ伴フ所
フ大減稅ナラバ、雙手ヲ擧ゲテ大贊成ヲ致
スモノデアリマス、而シテ今囘ノ減稅ヲ私
共ガ調ベテ見マスルニ一億三千四百万圓
ト申シテ、如何ニモ大變ナル金額ノヤウニ
御吹聽ニナリマスルケレドモ、岡田君ガ申
上ゲマシタ通リニ、平年度ニ於テ僅ニ一千
五百万圓、昭和六年度ニ於キマシテハ僅ニ
九百万圓ニ過ギナイ、卽チ昭和六年度豫算
ニ於テ、我ガ租稅減リタリト雖モ七億七千七
百万圓、更ニ之ニ專賣益金ヲ加ヘマスナラバ
九億七千六百万圓ヲ算スル、其尨大ナル國稅
ニ關シテノ國民負擔ニ對シマシテハ、私ハ
餘リニ其少額ニ過ギタルコトヲ考ヘル者デ
アリマス、而シテ此內閣ガ昨年ノ議會ニ於
キマシテ、總理大臣ヲ首メト致シテ、世間
ニ宣傳致シタモノハ軍縮ガ出來サヘスレ
バ國民ニ對シテハ多額ノ負擔ノ輕減ヲスル、
殊ニ我黨ノ大口君ノ質問ニ對シテ濱日總理
大臣ハ、軍縮剩餘金ハ主トシテ之ヲ減稅ニ
充テ、國民負擔ノ輕減ニ當ツベシト云フコト
ヲ宣傳致シ、聲明致シ、公約致シマシタコ
トニ對シマシテハ五億八百万圓ノ中、實
ニ僅ニ二億何ガシガ減稅デアッテ、大部分ノ
モノガ軍事費ニ取ラレタト云フコトニ對シ
マシテハ、餘リニ前議會ニ於キマスル濱口
總理大臣ノ御言明ト云フモノヲ裏切ルコ
ト大ナルモノガアルト私ハ考ヘテ居ルノ
デアリマス(拍手)
更ニ又私ガ申上ゲルマデモナク、金解禁
ノ斷行ト、而シテ低物價政策ト云フコトヲ
以テ唯一ノ旗印ト致シテ、世間ニ向ッテ來マ
シタ所ノ此濱口內閣ニ於テハ私カラ申シ
マスナラバ軍縮剩餘金ヲ俟タズシテ、夙
ニ早ク減稅ヲ斷行シナケレバナラナイ責任
ガアッタト私ハ考ヘル(拍手)申スマデモナ
ク舊平價金解禁ト云フコトガ、理論ト實際
ニ於キマシテ必ズ國民ヲ弱メル卽チ不況
ヲ特ニ深刻ナラシメテ、產業ノ上ニ一大打
擊ヲ與ヘ、國民ノ所得ハ激減ラスル、而シ
テ國民ノ擔稅力ハ弱メラルヽト云フコトハ
是ハ金解禁ヲ舊平價デヤル場合ニ於テハ
何人モ豫期シナケレバナラナイ事質デハア
リマセヌカ(拍手)此金解禁ヲ舊平價デ斷行
致シマスル所ノモノハ、寧ロ緊縮消極ヲ行
ヒマシテ得タ所ノ財源ヲ、此不況ニ沈淪シ
テ擔稅力ノ弱メラレマシタ所ノ大衆ノ爲
ニ、減稅ニ依シテ其負擔ヲ輕クスルト云フコ
トガ金解禁ノ先ヅ第一ノ前提條件デハナ
カラウカト私ハ考ヘルノデアリマス(拍手)
諸君、而シテ此內閣ハ低物價政策ヲ盛ニ
御唱ヘニナッテ居ルノデアリマス、低物價政
策ヲ唱ヘルニ於キマシテハ先ヅ隗ヨリ始
メヨ、低物價政策ヲ唱ヘテ、當業者ニ壓迫
ヲ加ヘルヨリモ、自分ノ統制下ニ在ル專賣
局ノ煙草ノ値段ヲ下ゲタリ、或ハ鐵道ノ運
賃ヲ下ゲタリ減稅ヲシタリシテ、サウシ
テ生產費ノ切下ゲニ資スルコトガ、私ハ親
切ナル仕事デハナカラウカト思フノデアリ
マス、低物價政策ト稱シテ、國民多數ニ對
シテハ、物ノ値ヲ安クスルコトヲ宣傳シテ、
自ラハ高物價政策ヲ維持シテ居ルガ爲ニ、
國民大多數ハ生產費ノ高價ナルガ爲ニ、
弦ニ不況ノ底ニ沈淪シテ居ルト云フ事實ヲ
忘ノテハナラヌノデアリマス(拍手)此金解
禁ノ斷行ト、而シテ低物價政策ヲ御唱ヘニ
ナル所ノ現内閣ニ於テハ寧ロ吾々ハ軍縮
剩餘金ヲ俟タズシテ、夙ニ早ク大減稅ヲ行
フベキ重大ナル責任ガアッタト考ヘルノデ
アリマス(拍手)而シテ今囘倫敦條約ニ依リ
マシテ軍縮會議ノ結果トシテ剩餘金ガ出
タナラバ、民政黨ノ諸君、現內閣ノ諸君ニ
於キマシテハ待ッテ居マシクト云フノデ、
過去ニ於ケル罪滅シノ爲ニ、多大ノ減稅ヲ
此際ヤル好「チヤンス」デアルト私共ハ信ジ
テ居ルノデアル、然ルニ其金額ガ、御承知
ノ通リ八億八百万圓ノ中、僅ニ一億三千四
百万圓デアル、大部分ノ三億七千四百万圓
ト云フモノヲ軍事費ニ取ラレタト致シマシ
テハ、餘リニ國民ト致シマシテハ此內閣
ト云フモノハ長ク國民ヲ苦メテ置イタケレ
ドモ、救フ時ハ僅カナコトシカ救ッテ下サラ
ナイト云フコトヲ申上ゲテモ、御辯解ノ言
葉ハナカラウト私ハ思フノデアリマス(拍
手)
更ニ私ハ內容ニ付キマシテ論議ヲ進メテ
見タイト思ヒマスルガ、御承知ノ通リニ現
內閣ガ今同御出シニナリマシタ所ノ豫算案
ハ世間ニ於テハ無爲無策ト稱シ、或ハ無
情冷酷ノ豫算ト稱シ、或ハ無經綸ノ豫算ト
稱セラレテ居ル所ノ、洵ニ見榮ノナイ豫算
デアリマスルケレドモ、其乏シキ豫算ノ中
デ五万圓ヲ計上シテ、今囘昭和六年度カラ
行政財政ノ整理調査會ヲ御設ケニナラウト
云フ所ノ豫算ノ金額ガ出テ居ルノデアリマ
ス、幣原總理大臣代理モ、此壇上ニ立ッテ施
政方針ノ御演說ノ中デ、此問題ニ言及致シ
テ、サウシテ稅制ノ改正ノ緊要ナルコトヲ
述ベテ居ラルヽ又井上大藏大臣モ、委員
會其他ノ機會ニ於キマシテ、政府ハ昭和七
年カラ斷乎トシテ根本的ノ稅制ノ整理ヲ斷
行スルモノデアルト云フコトヲ言明サレテ
居ル、殊ニ井上大藏大臣ハ、昭和七年度ニ
根本的ノ稅制ノ整理ヲ斷行スル場合ニハ、
負擔ノ均衡ヲ得ルコトハ勿論デアルガ、同
時ニ產業政策、社會政策ヲ加味シテ、渾然
トシタル根本的ノ稅制ノ改廢ヲ斷行スル積
リデアルト云フコトヲ一般ニ聲明致シテ居
ルノデアリマス
〔議長退席、副議長著席〕
然ラバ旣ニ政府ニシテ、產業政策ト負擔ノ
公平ト、而シテ又社會政策ヲ加味シタル大々
的根本的ノ統制ノ改正ト云フコトヲ、昭和七
年度ニ於テオヤリニナル意思ガオアリニナル
ノデアリマシタナラバ、今囘產業政策ヲ加味
セズ、而シテ社會政策ヲ加味セズ、唯負擔
ノ輕減ノミヲ目標トシテ御作リニナッタ所
ノ地租トカ、營業收益稅、或ハ織物消費稅、
或ハ砂糖消費稅ニ對シマシテモ、論理上當
然昭和七年度以降ニ於テハ手ヲ觸レルト云
フコトハ明カナ事實デハアリマセヌカ、然
ラバ昭和七年度以降ニ於ケル此地租トカ、
營業收益稅トカ、或ハ織物消費稅、砂糖消
費稅ニ對シマシテハ、昭和七年度以降ニ於
ケル所ノ此案文ト云フモノハ吾々カラ端
的ニ言ハシムルナラバ、全ク空文ニ過ギナ
イト申上ゲテ差支ハナイノデアル、卽チ軍
縮ノ剩餘金ニ依ル減稅ト云フモノハ論理
上昭和六年度限リデ置イテ、昭和七年度以
後ハ之ニ手ヲ觸レテ議場ニ出スト云フコ
トハ、吾々ノ協賛權ヲ全ク輕蔑スルモノデ
アルト私ハ考ヘルノデアリマス、此意味ニ
於キマシテ昭和七年度ニ根本的ノ稅制整理
ヲオヤリニナル御考デアル以上ハ)昭和七
年度以降ニ於ケル所ノ本案ト云フモノハ
全ク空文デアッテ空文ニ協贊ヲ與ヘルト云
フコトハ、衆議院トシテハ御互ノ恥デアル
ト云フコトヲ考ヘナケレバナラヌノデアリ
マス(拍手)
更ニ私ハ內容ニ付キマシテ一二論ジテ見
タイト思フノデアリマスガ、今囘ノ減稅案
ノ內容ヲ見マスト、前ニ同僚ノ人カラモ申
上ゲタ通リニ、平年度ニ於キマシテハ二千
五百万圓、其二千五百万圓ノ中、直接稅ト
思ハルヽ所ノ地租、營業收益稅ハ一千五百
万圓、而シテ國民大衆ニ轉嫁シ負擔サルベ
キ所ノ織物消費稅竝ニ砂糖消費稅ハ僅ニ
千万圓、此割合ヲ申シマスルナラバ、六割
-25)モノガ地租ト營業收益稅ノ減デア
リ、僅ニ四割ガ消費稅ノ減デアルト云フコ
トヲ物語ッテ居ルノデアリマス、殊ニ甚シイ
ノハ昭和六年度ニ於ケル減稅案ノ內容デ
ハアリマセヌカ、九百万圓ノ小減稅ノ中デ
八百万圓ト云フモノハ地租ト營業收益稅ノ
減稅ニノミ振向ケテ置イテ、砂糖ト織物消
費稅ハ僅ニ百十万圓、砂糖ノ如キハ昭和六
年度ニ於キマシテハ二十一万圓デ、之ヲ昭
和六年度ニ於キマスル所ノ砂糖消費稅ノ豫
算七千六百六十万圓ニ對シマスルト、減稅
ノ二十一万圓ノ砂糖消費稅ノ減ノ割合ガ僅
ニ二厘六毛ト云フニ至ッテハ、驚キ入ッタコ
トデアルト私ハ考ヘルノデアリマス、卽チ
民政黨ハ御承知ノ通リ、長ク在野時代カラ
先ヅ國民大衆ノ負擔トナリ、國民大多數ニ
轉嫁サルル所ノ消費稅ヲ減ジテ、而シテ後
ニ直接稅ニ及ブベシト云フコトヲ御唱ヘニ
ナッテ居リマスケレドモ、其民政黨ガ支持ス
ル內閣ガ、今日御出シニナリマシタ減稅案
ハ消費稅ト直接稅ノ割合デ見マスルト
直接稅ニ輕クシテ消費稅ニ重キ憾ミノアル
コトハ餘リニ民政黨多年ノ宣言ヲ裏切ル
モノデアラウト私共ハ考ヘルノデアリマス
(拍手)
而シテ私共ハ冷靜ニ日本ノ今日ノ國稅ノ
體系ヲ考ヘテ見タイ、今日日本ノ國稅ノ體
系ト云フモノハ基本稅、根幹稅ト致シマ
シテ所得稅、之ニ配スルニ收益稅、卽チ地租
及ビ營業收益稅、資本利子稅ト云フヤウナモ
ノヲ所得稅ニ配シマシテ、之ヲ根幹稅、基
本稅ト致シテ、此根幹稅、基本稅ニ對シテ、
附帶稅ト申シマスカ、枝葉稅ト申スモノガ
消費稅デアリマス、然ルニ言葉ヲ更ニ端的
ニ申シマスルナラバ所得稅ハ一軒ノ家ニ
於テハ主人ノ如キモノデアルシ、地租、營
業牧益稅ノ形デ取シタモノハ、是ハ一軒ノ家
ノ主人ニ次グ主婦ノヤウナモノデアル更
ニ消費稅ノ如キニ至ッテハ、一軒ノ家ニ致シ
マスルナラバ、使用人、下男ノ如キモノデ
アルノデアリマス、然ルニ我國ノ此直接稅
ト而シテ消費稅トノ割合ハ如何ナル狀
態デアルカト云フコトヲ吾々ハ考ヘテ見タ
イ、昭和六年度ノ豫算ニ於キマシテ、所謂
租稅收入ト云フモノニ、專賣益金ノ一億九
千何ガシト云フモノヲ足シマシテ、九億七
千六百万圓ト云フモノヲ、國稅中ニ於ケル
大體國民ノ負擔ト致シマスルト、此所謂國
民ニ負擔ヲ及ボス所ノ大體ノ租稅ノ收入ノ
中デ、酒或ハ〓涼飮料稅、或ハ專賣益金、
或ハ織物消費稅、關稅、其他ノ消費稅ト云
フモノハ實ニ六億三千五百万圓ノ多キニ
及ンデ、割合ハ六割五分ヲ突破致シテ居ル
ト云フノガ今日ノ實狀デアルデハアリマ
セヌカ、外國ノ例ヲ見テモ、租稅ノ中ノ六
割五分マデヲ、消費稅ニ背負ハシテ置クト
云フヤウナ、不健全ナル所ノ租稅體系ヲ持。ツ
タ所ハ、一國モ無イト言ッテ私ハ差支ナイト
思フノデアリマス(拍手)言葉ヲ換ヘテ申シ
マスルナラバ、主人ヤ主婦ガ大部分ノ金ヲ
背負ハズシテ、六割五分ト云フ大多數ノ金
ト云フモノヲ、下男ヤ使用人ニ背負ハシテ
居ルト云フ我ガ國稅體系ニ相當ノ無理ガ
アリ、玆ニ不健全ガアルト云フコトヲ、爲
政者ハ注意致サナケレバナラヌト思フノデ
アリマス(拍手)然ラバ此點ヲ御考ニナルナ
ラバ、先ヅ從來カラ政治家デ稅金ヲ減ラサ
ウト云フ時ニハ、民政黨ノ人達ガ言フト同
ジヤウニ、金ト云フモノガアリサヘスレバ、
必ズ皆消費稅ノ輕減ニ向ケタト云フノハ此
理由デアル、而モ······(「前内閣ハドウシタ」
ト呼フ者アリ)御待チナサイ、能ク話シテヤ
ル-而シテ民政黨ノ人達ニ、特ニ御聽キニ
入レタイト思フコトガアル、ソレハアナタ
方モ日本ノ租稅ノ中デ、六割五分マデガ
消費稅ニ背負ハサレテ居ル、成程日本ノ
租稅體系ヲ何トカシナケレバナラヌト考ヘ
ルデアラウト思フガ、其消費稅ガ六割五分
ヲ占メテ居ルト云フコトハ、現內閣ニナソ
テ、昭和六年度ノ豫算デ初メテ現レタ數字
デアルト云フコトヲ私ハ申上ゲルノデアリ
マス(拍手)大正九年ノ時代ニ於キマシテハ
消費稅ガ租稅ニ對スル割合ト云フモノハ五
割五分デアッタ、然ルニ一割殖エテ、昭和六
年度ノ今日ノ歲入ニ於キマシテハ、實ニ六
割五分ヲ占メテ居ルデハナイカ、言葉ヲ換
ヘテ言ヘバ(發言スル者アリ)御分リニナ
ラナケレバ能ク話シテヤル、卽チ日本ノ租
稅ト云フモノガ、此內閣ニナッテ來レバ來
ル程、段々中產階級以下ノ人ニヨリ大ナル
モノヲ負擔セシメル傾向ガアルト云フコト
ニナッテ來ルノデアル(拍手)卽チ社會政策
的ノ御考ヲ持ノタ政治家ハ、剩餘金ガアルナ
リ、或ハ今度ノ軍縮ノヤウナ金ガアリマス
ルナラバ、所謂消費稅ノ輕減ニ、其努力ヲ
用ヒルト云フコトハ私ハ當然ナコトデアラ
ウト思フ、更ニ又、ナゼモット消費稅ヲ輕
減シナケレバナラナイ理由ガソコニ存スル
カ、申スマデモアリマセヌ、消費稅ノ如ク
消費ト云フコトニ依ッテ、人ノ給付能力ヲ測
定スルト云フコトニハ相當ノ缺陷ガアル
ソコデ消費稅ノ一番ノ缺陷、能ク皆サンガ
御唱ヘニナリマスヤウニ、金ノアル人ニハ割
合ニ負擔ガ重クナクッテ、貧者ニ割合ニ重イ、
上層階級ニハ割合ニ輕クシテ、下層階級ノ人
ニ重イ、玆ニ消費稅ノ缺點ガアル、而モ消
費稅ト云フモノハ民衆ノ無智ニ乘ジテ、
動トモスルト其租稅金額ハ多クナリ勝チノ
モノデアル、卽チ心アル政治家、殊ニ社會
政策ヲ御考ニナル所ノ政治家デアリマスル
ナラバ、金ガアッテ之ヲ減稅ニ向ケル場合ニ
ハ先ヅ消費稅ニ其大部分ヲ向ケルト云フ
ノガ、此不公正ノ傾キノアル-而モ所得
稅其他ニハ累進稅ト云フモノガアルガ、消
費稅ニ付テハ累進稅ト反對ニ、所謂逆進稅
的ノ色彩ヲ多ク含ンデ居ルト云フコトニ著
眼シテ、消費稅ノ輕減ト云フコトニ力ヲ向
ケナケレバナラヌ(拍手)此內閣ガ出來テカ
ラ、常ニ社會政策ヲ實行シテ居ル、今モ前
田君ノ御意見デモ、社會政策ヲ實行スルト
云フコトヲ言ハレタガ、此稅金ヲ減ラス場
合ニ、直接稅ニノミ重クシテ、此消費稅ヲ
輕視シタト云フコトハ、如何ニ口ニ言フ所
ハ社會政策デアッテモ、其行フ所ガ反社會政
策的デアルト云フコトヲ證明致シテ居ルノ
デアル(拍手)ソコデ只今モ前田君カラモ御
話ガアッタガ、物價ガ三割モ下ッテ來タノダカ
ラ、消費稅ハ下ゲナクテモ宜カラウ、井上
大藏大臣モ私ノ質問ニ對シテ、不景氣ニナッ
テ物價ガ下ッテ來タ時ニハ、消費稅ヲ下ゲル
必要ハナイト、斯ウ仰セラレタガ、諸君、
物價ガ下ッテ國民ノ收入ガ減ッタ時コソ、大
衆ノ負擔トナッテ居ル消費稅ヲ輕減スルコ
トノ、一番ノ必要ナル時デアルト考ヘル(拍
手)物價ノ下ッタト云フコトハ、同時ニ失業
者ガ殖エテ、產業ガ衰ヘテ、國民多數ノ所
得ガ少クナッテ居ル時デアル、卽チ英吉利ノ
「マグドナルド」ガ言フ通リニ、倫敦ノ靴ノ値
段ガ下ッタ時ガ卽チ倫敦ノ靴屋ノ職エガ一
番困ッテ居ルト云フコトヲ忘レテハナラヌ、
其通リデハアリマセヌカ(拍手)ソレヲ何
ゾヤ日本デハ物價ノ下ッタ時ニハ消費稅ノ
輕減ヲ行ハナクテモ差支ナイト云フ、此
間違ック觀念、是ガ根本ノ現内閣ノ誤ッタ所
ノ經濟的觀念デハナイカト思フ(拍手)
諸君、消費稅ヲ私ハ論ズルニ方リマシテハ、
委員會ニ於ケル井上サンノ御答辯デアリマ
シタガ、我國ノ財政變理ノ大任ニ御當リニナ
テ居ル所ノ井上大藏大臣ガ、專賣制度ニ對
シテノ無理解、國民大衆ノ負擔輕減ニ對シ
テハ斯ウ云フ案ヲ御出シニナルガ、財政
的ニハ御分リニナッテ居ル方デナイト云フ
事實ヲ私ハ申上ゲテ見タイト思フ、煙草ノ
儲ケガ多過ギルト云フ議論ガ出タ、詳シイ
コトハ私ハ同僚ノ加藤君ナリ、高橋君ナリ
ニ御讓リ致シマスカラ、能ク皆サンハ御聽
キヲ願ヒタイト思ヒマスガ、二億七千万圓ノ
煙草ノ賣上ノ中デ、一億七千万圓ノ收益ガ
アル、是ハ暴利ヂヤナイカト云フヤウナ議
論ガ出タ、又煙草ノ賠償價格ヲ引下ゲル、
或ハ小賣人ノ手數料ヲ一分引イタ、或ハ又
工賃モ減"タデハナイカ、斯ウ云フヤウナ點
カラ、煙草ノ値下ヲスルヤウナ御意見ハア
リマセヌカト云フヤウナ議論ガ出マシタ、
其委員會ニ於キマシテ井上大藏大臣ハ、何
ト言ハレタカト云フト、二億七千万圓ノ賣
上ノ中デ、一億七千万圓ノ利益ノアル、此
煙草ノ專賣ト云フヤウナコトハ暴利デセウ、
暴利ダケレドモ、是ガ專賣ノ特長デアッテ、
專賣ダカラ出來得ルノデアルト云フコト
ヲ確乎トシテ仰セラレタニ至ッテハ、是ハ
大藏大臣ノ言葉デハナイ、唯國庫收入一點
張リノ下級稅務官吏ノ言葉デアルト私ハ考
ヘル(拍手)
諸君、是ハ爲替ノ事ヤ、金融ノ事ニ付テ
ハ井上サンハ能ク御答辯ニナルカラ間違
ハナイケレドモ、斯ウ云フ事デハ能ク御間
違ヲ爲スッテ御出デニナルガ、今日社會通念
ノ上カラ見テ、又今日進ンダ財政論ノ上カ
ラ見テ、專賣制度、國家ノ獨占事業ト云フ
モノガ肯定サレ、許容サレテ居ル所以ノモ
ノハ何デアル、國家ニ對シテ國庫收入ヲ多
額ニ齎ラスト云フコトバカリデハゴザイマ
セヌデセウ、卽チ專賣事業ト云フモノハ
謂ハバ消費稅ノ形ヲ變ヘタモノデアルカ
ラ言葉ヲ換ヘテ申シマスルナラバ、少數
ノ資本家ニ利益ヲ壟斷セシムルコトヲ制止シ
テ、多數國民ニ利益ヲ均霑セシムルト云フ、
公益的ノ效果ヲ忘レテハ私ハナラヌト思フ、
(拍手)更ニ又專賣制度ト云フモノハ、殊
煙草專賣制度ノ如キモノハ、我國ニ於テモ、
各國ニ於キマシテモ、是ガ肯定サレ、許容
サレテ居ル理由ハ、消費稅ノ形ヲ持ッテ居ル
關係トシテ、普通ノ消費稅ニ於キマシテ
ハ立法者ガ考ヘルヤウニ轉嫁ガムヅカシ
イモノダカラ、本當ノ擔稅者ハ何處ダカ分
ラナイ、消費稅デハ分ラナイケレドモ、專
賣制デ以テ、政府ガ直接ニ物ヲ賣付ケル場
合ニ於テハ卽チドウ云フ加減デモ出來ル
カラシテ、所謂給付能力ニ應ジ、應能課稅
ニ應ズル所ノ原則ヲ此處ニ加味スルコトガ
出來ルト云フコトガ、是レ專賣制度ノ許容
サレ、肯定サレル重大ナル理由デアルト思
フ、モウ一ツノ理由ハ申スマデモナク消
費稅デハ、累進稅ト云フモノヲ設ケルコト
ガ出來ナイ、併シ專賣ナラバ煙草ナラ煙
草ヲ賣ル場合ニ、賣ル所ノ品物ヲ區別ヲシ
テ、サウシテウント高級ノ物ハ高クシテ、
サウシテ下ノ物ハ安クスルト云フコトニ依
テ、消費稅ニ免レ難キ缺點デアル所ノ、逆
進稅的ノ色彩ヲ幾分デモ弱メルト云フ所
ニ、煙草專賣ノ妙用ガアルト私ハ考ヘル(拍
手)是等ノ專賣制度ニハ、卽チ國庫收入上ノ
主義モ必要デアラウガ、更ニ社會政策的ノ
考モアラウ更ニ又應能課稅ノ原則モ必要
デアル、更ニ又累進稅的ノ必要モアラウ、
更ニ公益的法則ヲ適用スルノ必要アルト云
フコトヲ忘レテ、唯二億七千万圓ノ中一億
七千万圓儲カル、暴利ダラウガ、國庫ノ收入
ヲ擧ゲサヘスレバソレデ宜イノダト云フヤ
ウナ、私ヲシテ言ハシムルナラバ、一ツノ
徴稅官廳デアル所ノ專賣局ヲシテ、大「トラ
スト」ノ光景タラシムルコトハ、斷ジテ私ハ
專賣制度ノ效果ハナイト考ヘルノデアリマ
ス是等ニ付キマシテハ、井上サンニ能ク御
注意中上ゲテ置ク、西洋ノ言葉ニモアル通
リ最良ノ財政家ハ必ズ最良ノ政治家デナ
クチヤナラヌ、況シテヤ世間批判スルガ如
クニ最惡ノ財政家ノ時ニ於テハ、最惡ノ
政治家ナラザルベカラズト私ハ考ヘル(拍
チ
偖テ諸君、只今中上ゲマシタヤウニ、本
減稅案ノ內容ニ付キマシテハ政府ガ企圖
計畫ヲ致シマシタ如キ、所謂負擔ノ公正、
均衡ヲ圖ルト云フ共目的モ、達成セシムル
コトガ極メテ困難デアル、ソレバカリデハ
ナイ、財源ノ問題ヲ更ニ考ヘテ見ルト、玆
ニ本案ノ致命的ノ傷ガアルト私ハ考ヘルノ
デアリマス(拍手)而シテ諸君、諸君ハ財源
ノ檢討考究ト云フコトヲ敢テ致シマセヌ
デ減稅ノ美名ニ醉フト云フコトハ、ソレ
ユソ禍ヲ後世ニ貽シ、財政上是ヨリ危險甚
シキハナシト私ハ考ヘルノデアリマス(拍
手)減稅ト云フモノガ、オ互ノ間ニ認メラレ
ル所以ノモノハソレガ財政上、財政政策
上、財政計畫上、卽チ恆久的ノ財源ガアル
カ、或ハ確實ナル財源ガアルカト云フコト
ニ依ッテ、其減稅ガ良イカ惡イカト云フコト
ガ私共ニハ分ルノデアル(拍手)然ルニ唯
減稅々々ト言ッテ、減稅ノ美名ニ醉ヲテ、財源
ノ檢討ヲ缺クト云フガ如キハ、洵ニ危險千
萬ナ話デアルト私ハ考ヘルノデアリマス
(拍手)此意味合デ、私ハ前田君カラ御話ガ
アリマシタケレドモ、暫ク財源ノ問題ニ付
キマシテ論旨ヲ進メテ、諸君ノ公平ナル御
判斷ヲ願ヒタイト思フノデアリマス
本案ハ御承知ノ通リニ、五億八百万圓ノ
建艦保留財源ノ中デ、三億七千四百方圓ヲ
海軍補充計畫ニ充テヽ殘ノ一億三千四百
万圓ト云フモノヲ以テ、國民負擔ノ減稅ヲ
シ、ヨウト云フコトデアリマス、此元金デア
ル所ノ五億八百万圓ト云フモノガ、財政計
畫上全クモウソレダケノモノハナイ、事實
ニ於テ五億八百万圓ヲ得ルコトハ困難デア
ルト云フコトハ是ハ岡出君カラ縷々申上
ゲマシタカラ、私ハ多クノ言ヲ玆ニ費サナ
イノデアリマスルガ、唯茲ニ海軍ニ關係シ
テ申上ゲタイト思フコトハ所謂新艦船ノ
維持費デアリマス、只今前田君カラモ新艦
船維持費ニ付テ色々ニ御話ガアリマシタ
ガ、前田君ノ議論ト云フモノハ新艦船維
持費ト云フモノハ臨時費デ、一遍コッキリノ
モノノヤウニ聽エマシタガ、ソレハ違フト
思フ、年々是ハ繼續シテ行クモノデアル、
軍事當局ガ、御承知ノ通リニ千九百三十六
年ノ末ニ於テハ所謂除籍致シタモノヲ控
除シテ、新タニ增加スルモノガ、制限内艦
艇ニ於テモ一万八千噸ニ及ンデ居ルト云フ
コトヲ言ッテ居ル、而モ亦海軍大臣ガチヤン
ト所謂新艦船維持費ト云フモノニ付テ
ハ安保國務大臣ガ之ヲ認メテ居ル、卽チ
委員會ニ於キマシテモ、安保國務大臣ガ內
田君ノ質問ニ答ヘテ「新艦船維持費ヲ必要
トスルコトハ、御說ノ通リデアリマス」ト云
フコトヲ言ウテ居ル、而シテ今前田君モ、
新艦船維持費ト云フモノヲ、五億八百万圓
ノ中カラハ引イテナイト云フコトヲ仰セラ
レタノデアル、又前田君ハ、唯古イ艦ト新
シイ艦トヲゴッチャニシテ、所謂噸對噸ノ御
計算ニナッテ居ルガ、是ハ非常ニ違フテ居
ル古イモノヲ除籍シテ、廢艦シテ、新シ
イモノガ出來ルト云フノデアルカラ、是
噸對噸ノ點バカリデナク、馬力ノ點ヲ考慮
シナケレバ新艦船維持費ノ計算ガ出來ナ
イト私ハ考ヘルノデアル、卽チ富士ノ如キ
古イ艦ハ、一万噸級デ以テ馬力ハ一万馬力、
高雄ハ一万噸デ馬力ガ十三万馬力、馬力ガ
違フ、此馬力ヲ考慮シナケレバ新艦船ノ
維持費ノ議論ハ出來ナイ、又計算ガ出來ナ
イト私ハ考ヘル從來御承知ノ通リニ新
艦船維持費ノ內規ト云フモノガ、皆サンモ
委員會ニ於テ御說明ヲ御聽キニナリマシタ
デアリマセウガ、巡洋艦ニ於テハ二百圓、
或ハ潜水艦ニ於テハ二百五十圓、驅逐艦ニ
於テハ二百二十二圓、斯ウ云フコトニナッテ
居リマスルコトヲ見、且ツ海軍大臣ガ一万
八千噸ノ新タニ增加致シマスモノニ對シテ、
新艦船維持費ハ必要デアルト云フコトヲ御
認ニナッテ居ルト致シマシタナラバ、是ガ百
圓ニ致シマシテモ-是ハ所謂制限內ノ艦
艇バカリデアリマスガ、制限外ノ艦艇ニ付
テモ、ヤハリ維持費ト云フモノハ必要デア
ルカラ、彼此レ合セマスルト是ガ六年間
ニ於テ二千万圓位ノモノガ必要デアルコト
ハ、私ハ差支ナイト思フノデアリマス、之
ヲ引イテナイ、是ハ引イテナイ、卽チ五億
八百万圓ノ中カラ、所謂軍縮ニ依ル剩餘金
ヲ出サウト云フナラバ、建艦ノ費用モ引ク
ノデアリマス航空隊ノ費用モ引クノデア
リマス、或ハ又其他ノ整備費モ此中カラ引
クト云フコトニナッテ參リマスガ、此新艦船
ノ維持費ヲ引イテ居ラヌト云フコトモ、此
減稅ニ對スル財源ガ不確實ナルモノデアル
ト斷言シテ憚ラナイノデアリマス(拍手)更
ニ又今囘ノ軍縮ニ依リマシテ海軍工廠ニ
於テ雇ヲ解カレル者ニ對シマシテハ政府
ハ金ヲ出シテ、此解雇手當ヲ相當ニ支給ス
ルト云フコトヲ申サレテ居リマス、內田君
ノ質問ニ對シテ、委員會ニ於キマシテモ大
藏大臣ハ交付公債ヲ出スノデアルト云フ
コトヲ申サレテ居リマス、併シ一體考ヘテ
見レバ是ハ特別ノ倫敦會議ニ因ル軍縮ト
云フコトニ依ッテ失業者ガ出タノデアリマ
スカラ、他ノモノデ之ヲ負擔スルト云フコ
トハ筋ガ立タナイト私ハ思フ、是コソ五億
八百万圓ノ保留財源ノ中デ、此交付公債ニ
代ルベキ六百万圓ナリ、七百万圓ナリヲ先
ヅ引クト云フコトガ、減稅ノ財源ヲ確メルモ
ノデアルト考ヘル、然ルニ政府ハ交付公債
ヲヤルト云フコトデアル
抑〓玆ニ能ク諸君ノ御注意ヲ喚起致シタ
イト思フコトハ去ル二十六日ノ委員會、
卽チ今日カラ見レバ四日前ノ減稅委員會ニ
於テ、內田君ガ此交付公債ニ付テ質問ヲ致
シマシタ、サウシテ此金額ハ幾ラデアルカ、
最早減稅委員會ノ質問モ終ルヤウニナル時
デアルカラ、此交付公債ノ金額ト云フモノ
ガ決ッテ御發表ニナラナケレバ、又所謂借金
ニ依ル所ノ減稅デアルカ、其金額ハドレ位
デアルカト云フヤウナコトヲ、議員トシテ
確メル責任ガアルト云フ點ヲ、十分ニ海軍
大臣ニ質問サレタノデアリマス、所ガ海軍
大臣ハ何ト御答ニナッテ居ルカ、是ハ速記錄
ヲ見ルト能ク分リマスガ、斯ウ言ッテ居リマ
ス、安保國務大臣ノ答辯デアリマスガ「今內
田サンノ御話ノ通リ工廠長モ招集シテ非常
ニ愼重審議ヲ致シマシタノデ、大體ノ決定
ヲ見テ居リマスケレドモ、其數字ハモウ少
シノ間發表ヲ控ヘテ居リタイト云フ希望デ
アリマスカラ、左樣御諒承ヲ願ヒマス是
ハ數字ヲ發表〓シマスト云フコトハ、各工
廠ノ、非常ニ從業員ノ頭ニ影響ヲ持チマス
カラ、愈、此處ト云フ所ニナリマスルマデハ、
今暫ク發表ヲ差控ヘタイト存ジテ居リマ
ス」ト申サレテ居リマス、卽チ交付公債ノ金
額ハ何程デアルカト云フコトヲ、議員ノ審
議ヲ致シマス必要上、委員會ノ進行致シマ
ス必要上、此金額ヲ聽イタ所ガ、ソレヲ言
フト何人職ヲ解クト云フヤウナコトガ波及
シテ、海軍工廠ニ從事シテ居ル多數ノ人ノ
人心ニ非常ナル影響ヲ與ヘルカラ、話スコ
トガ出來ナイト云フコトヲ、四日前ノ二十
六日ノ委員會デ申サレタノデアリマス、然
ルニ何デアルカ、今日ノ閣議ノ上デ御發表
ニナッタ所ニ依リマスト、海軍職工解傭手當
關係公債額面約六百八十万圓、歸〓旅費約
十五万圓、解傭員數約八千人、解傭手當一
人平均六百九十圓ト云フコトヲ御發表ニ
ナッタノデアリマス、四日前ニ此金額ヲ發表
スルコト-內田君ノ質問ニ依ッテ、金額ダ
ケデモ發表シタラドウカト言ッタ所ガ、金額
ヲ發表スルコトサヘ人心ニ影響スル、人心
ヲ刺戟スルコト大ナルモノガアルカラ、發
表シナイト言ッテ置キナガラ、僅カ三日カ四
日經ッタ今日、減稅委員會ノ質問ハ疾クニ濟
ンデ、今日採決スルト云フ時ニナッテ御發表
ニナルト云フコトハ卑怯デアルバカリデ
ハナク、議員ノ權限ヲ侵スモノデアルト私
ハ考ヘル四日位ノ後ナラバ委員會ニ於
テ質問ガアッタ時ニ、チヤント御發表ニナツ
テモ差支ガナイデハナイカ、然ルニ僅カ四
日ノ後ニナッテ御發表ニナレルモノガ、其當
時ニ於キマシテハ御發表ニナレナイト云フ
コトハ豫算ノ審議權ヲ有シ、法案ノ審議
權ヲ有スル、所謂議員ノ職能ヲ侵スモノデ
アルト私ハ斷言シテ憚ラナイノデアリマ
ス、此內閣ハ、或ハ都合ノ惡イ時ニハヽ不
答辯主義ト云フヤウナコトヲ御唱ヘニナル
ケレドモ、實ニ私ハ御互ニ民政黨ト云ハズ
政友會ト云ハズ、質問シタ事ニ對シテハヽ
能ク答辯シテ吳レテ、愼重審議スルト云フ
コトガ是ガ議院政治ノ私ハ本領デアルト
云フ、然ルニ當時ノ狀況カラ云フト安保
海軍大臣ハ言ヒサウニシテ尻ヲモジ〓〓サ
セテ居タ、所ガ井上サンダッタカ、海軍政務
次官ダッタカ、言ハヌ方ガ宜カラウト云フコ
トヲ言ッタヤウニモ、私ハ見受ケタノデアリ
マスアンナ風ニ相談ヲシテ、サウシテ今
日御發表ニナルヤウナモノヲ、四日前ニ御
發表ニナレナイト云フコトハ、安保サンノ
頭カラ御考ヘニナルト、四日前ニハ人心ヲ
刺戟シ、惑亂スルモノデアルガ、稅制委員
會ガ濟ミサヘスレバ、モウ人心惑亂ノ虞ガ
ナクナッタト云フ御考デアルカドウカ、私疑
フノデアリマス
諸君、而シテ此約七百万圓ノ交付公債ト
云フモノハ申スマデモナク是ハ不生產的
ノ公債デアリマス、御承知ノ通リニ、ソレ
ガ國家產業ノ基礎ヲ培養スルヤウナ公債デ
アリマシクナラバ異議ハナイガ、一方デ公
債ヲ募集シテ、サウシテ減稅ヲスルト云フ
コトハ是ハ私ハ異議ガアルト思フ、民政
黨ノ方、殊ニ民政黨ノ總裁デアリ總理大臣
タル濱口君ハ、曩ニ豫算討論ノ場合ニ我ガ同
僚山崎君ガ說明致シマシタ通リニ、財政計
畫ノ上ニ於テハ名義ノ如何ヲ問ハズ一方
デ借金ヲシテ、一方デ減稅ヲスルト云フコ
トハ不健全極マル所ノ財政計畫デアルト
云フコトヲ、在野當時カラ能ク御論ジニナッ
テ居ラレル方デアル、然ルニ所謂此積極的
ナ考ヲ以テ產業振興トカ、或ハ其他ノ一國
國民經濟ノ基礎ヲ培養スル形ヲ以テノ公
債一言ニシテ言ヘバ、算盤ノ採レル公債
デアルナラバ吾々ハ宜イト思フノニ、此交
付公債ノ如キハ算盤ノ採レナイ不生產的公
債デハナイカ、不生產的公債ヲ一方ニ背負ッ
テ置イテ、サウシテ一方ニ減稅ヲスルト云
フコトハ、アナタ方ノ總大將ノ濱口君ノ言
フコトヲ、全ク裏切ル所ノ事柄デアラウト
私ハ考ヘル(拍手)
〔發言スル者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02119310302&spkNum=38
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039・小山松壽
○副議長(小山松壽君) 靜肅ニ願ヒマス-
長谷川君ニ注意致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02119310302&spkNum=39
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040・木暮武太夫
○木暮武太夫君(續) 財源ノコトニ付キマ
シテハ今申上ゲ、且ツ今囘政府ガ提案致
シマシテ、殊ニ倫敦條約ニ依ル兵力量ノ缺陷
ヲ補塡スル所ノ根幹ヲ成スト、稱セラレテ
居リマス所ノ補充計畫、之ヲ引イテ減稅ヲ
スルノダカラ是ガ確乎トシタモノデナクチ
ヤナラヌト考ヘル此點ニ付テ少シ論議ヲ
進メテ見タイノデアリマス、御承知ノ通リ
委員會ニ於キマシテ、內田君カラ此點ニ付
テ色々ノ質問ガアッタ、卽チ所謂二億四千七
百万圓ト云フ所ノ、艦艇ノ建造費ト云フモ
ノヽ年度ヤ何カノコトヲ考ヘテ豫算ト豫
算ノ上ニ現レテ居ル所ノ金額ト、海軍ガ持ッ
テ居ル所ノ今度ノ補充計畫ノ豫定ノ工程表
ト云フモノガピッタリ合ハナケレバナラヌ、
是ハ大變ナ問題デアルト云フコトノ質問ガ
アッタノデアリマス、而シテ昭和六年度ノ豫
算ダケニ付テ、今囘ノ所謂補充計畫ノ中ノ
此艦艇建造費ノ金額ト云フモノニ付テ考ヘ
テ見マスト、御承知ノ通リニ驅逐艦ハ十二
隻、ソレカラ潜六艦ガ五隻、其說明トシテ
海軍大臣ハ既定計畫ニ依リ製造中ノモノ
ガ驅逐艦ニ付テハ八隻、新ニ今囘ノ補充計
畫デ起エスルモノガ四隻、潜水艦ニ付テハ
製造中ノモノガ四隻、新ニ造ルモノガ一隻
ト云フコトヲ、豫算面ニ從ッテ御說明ヲ爲
サッタノデアル、然ルニ政府ガ祕密會マデ要
求致シマシテ-祕密會ヲ要求スル以上ハ
吾々ハ權威アル所ノ御豫定ノモノデナケレ
バナラヌト考ヘル所ノ、補充計畫ノ工程表
ヲ拜見致シマスルト、驅逐艦ノ新ニ造ルモ
ノガ四隻デアルノガ、豫算面ニ載シテ居ル所
ノ驅逐艦ハ三隻デアル、潜水艦ハ豫算ノ面デ
ハ新ニ造ルモノハ一隻トナッテ居ルガ、此工
程表ニ於テハ三隻、此處デ卽チ潜水艦ニ於
テ二隻、驅逐艦ニ於テ一隻、此工程表ト昭
和六年度ノ豫算ニ於ケル所ノ差違ト云フモ
ノガ、的確ニ爬羅別抉サレタノデアリマス
(拍手)ソコデ海軍大臣ハ內田君ト色々押問
答ノ結果、補充計畫ノ工程表ト、ソレカラ
所謂昭和六年度ニ於ケル豫算金額デ以テ出
來上ル所ノモノトノ相違ト云フモノヲ海軍
大臣ハ御認ニナッテ、サウシテ、サウ云フ譯
ナラバ今度ハ豫算通リニ潛水艦ハ一隻ニシ
ヨウ、二隻ヲ廢メルト云フヤウナ御話モアツ
ク、更ニ又驅逐艦ニ付キマシテハ私共ガ
此點ニ付テオカシイト考ヘルコトハ、工程
表ニ於テ驅逐艦ガ三隻トナッテ居ルト云フ
コトヲ指摘シマスト、豫算面ニ新ニ造ルモ
ノハ驅逐艦ガ四隻ニナッテ居ルノハ是ハ間
違デ、一隻ハ製造中ノ方ニ這入ル、製造中
ノモノハ九隻デ、新ニ造ルモノヽ方ガ三隻
デアルト云フコトヲ御說明ニナッタ、ソレデ
其三隻ハ何デアルカト云フト驅逐艦狹霧
ト云フモノガ目下建造中デアル、ソレダカ
ラ是ハ建造中ノ方ニ入レルノガ當然デアル
ト云フコトヲ御答ニナッタ、ソコデ吾々其委
員會ニ列席シタ者ハ、ソレデハ海軍大臣ノ
御說明ノ通リ、狹霧ト云フモノハ建造中ノ
モノデアラウト考ヘタ、所ガ豈圖ランヤ此
處ニ持ッテ居リマス所ノ海軍公報第千二百
三號ヲ見マスルト、何ト書イテアルカト云
フト「雜款」ニ於テ「事務所撤去、驅逐艦狹
霧艤裝委員事務所ヲ浦賀船渠株式會社浦賀
工場內ニ設置中ノ處一月三十一日撤去セ
リ」ト云フコトガ書イテアル、更ニ又其次
ノ「艦船所在」ト云フ所ノ項目ノ中ニ何ト書
イテアルカト云フト二月二日午前十時調
ト云フ所ニハヽ此狹霧ト云フモノハ旣ニ建
造ヲ終ッテ、竣エシテ任務ニ服シテ居ルト云
フコトガ歷然ト載ッテ居ルデハナイカ(拍
手)卽チ海軍大臣ガ建造中デアルト仰セラ
レタモノガ-マダ昭和五年度ノ會計年度
ノ中デアリ、昭和六年度ニナルニハ二箇月
モ間ノアル時ニ於テ、旣ニ任務ニ服シ居リ、
安保海軍大臣ノ言フコトハ全ク虛構ノコト
デアルト云フコトヲ、此事實ガ裏書シテ居
ルデハアリマセヌカ(拍手)斯ノ如ク委員會
ニ於テ爬羅剔抉サレマシタ所ノ幾多ノ事實
ヲ見テモ、所謂今囘ノ倫敦條約ニ依ル兵力
量ノ缺陷ヲ補塡スルト稱スル其根幹デアル
補充計畫其モノハ··
〔發言スル者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02119310302&spkNum=40
-
041・小山松壽
○副議長(小山松壽君) 靜肅ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02119310302&spkNum=41
-
042・木暮武太夫
○木暮武太夫君(續) 衆議院ノ方ハ諸君ノ
多數ニ依ッテ通過シ、今ヤ貴族院ニ於テ審
查中デアル··
〔發言スル者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02119310302&spkNum=42
-
043・小山松壽
○副議長(小山松壽君) 靜肅ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02119310302&spkNum=43
-
044・木暮武太夫
○木暮武太夫君(續) 諸君、昭和六年度ノ
豫算ハ我ガ衆議院ニ於テハ旣ニ民政黨ノ多數
ノ諸君ニ依"テ可決確定サレテ通過致シマ
シタガ、今ヤ貴族院ニ於テ審査中デアリマ
ス、貴族院ニ於テ審査中デアル所ノ昭和六
年度ノ豫算ノ中デ以テ、豫算金額ニ依ル所
ノ艦ヲ造ルコトヽ海軍ガ祕密會マデ要求
シテ權威アルモノトシテ御發表ニナッタ所
ノ海軍部內ノ補充計畫工程表トニ、斯ノ
如ク六年度ダケデモ非常ナ違ヒガアル七
年八年九年十年十一年マデニハ、恐ラク大
ナル違ヒガアルト云フコトヲ斷言シテ憚ラ
ナイ、然ラバ先ヅ五億八百万圓ノ中カラ減
稅ニ充テル餘剩金ヲ取ル爲ニ引クベキ所ノ
此第一次補充計畫ニ、斯ノ如キ所ノ出入リ
ガアルト致シマスレバ、今囘ノ一億三千四
百万圓ノ減稅ノ財源ト云フモノハ不安定
極マルモノデアルト斷言シテ差支ナイト思
フノデアリマス(拍手)
私ハ最後ニ此減稅案ノ根本ヲ搖ガスト申
シマセウカ、寧ロ此減稅案ニ付テ色々仰シ
ヤル所ノ理由ヲ、全ク根本カラ覆シ、否定
スル所ノ、何人モ論議スル餘地ヲ容サナイ
所ノ、決定的ニ財源ノ缺陷ニ付テ申上ゲテ
見タイト思フノデアリマス、御承知ノ通リ
ニ豫算委員會其他ノ席上ニ於テ安保海軍
大臣、幣原首相代理、或ハ井上大藏大臣等
ガ、內田君、秦君、中島君其他ノ方々ノ質問
ニ對シマシテ御答ニナッタ所ニ依リマスト、
政府ハ昭和十一年十二月三十一日、卽チ千
九百三十六年十二月三十一日マデニ今囘倫
敦條約ニ依ッテ我國ガ獲得致シマシタ權利
ヲ實行スル必要ト希望ヲ有スルト云フコト
ヲ御認ニナッテ居ルノデアル、卽チ倫敦條約
ニ依ッテ獲得シタ所ノ我ガ造艦權利ヲ實行
スル必要ガアルト云フコトヲ御認ニナッテ
居ル、端的ニ之ヲ申上ゲマスナラバ、此造
艦權利ト云フモノハ政府ガ必要ガアルト云
フナラバ、實行スル譯デアル而シテ此權
利ヲ實行スル所ノ必要ガアルト云フコト
ハ二ツノ建前カラ是ハ申上ゲナケレバナ
ラヌ、一ツハ御承知ノ通リニ昭和十一年十
二月三十一日マデニ完成スル所ノ造艦權利
ハ昭和十一年十二月三十一日マデニ之ヲ
實行スルト云フコトヲ、御言明ニナッタト同
ジダト私ハ思フ、卽チ若シ昭和十一年十二
月三十一日マデニ完成スルモノヲ之ヲ實行
致サナイト云フコトニナレバ、ソレハ權利
ノ抛棄ヂヤナイカ、昭和十一年十二月三十
一日マデニ是ハ保留サレテ居ル權利デアン
テ、是ガ翌年ニ〓ッタナラバ、是ハ權利ノ抛
棄デアル、幣原首相代理モ權利ノ抛棄ハシ
ナイト云フコトヲ御言明ニナッテ居ルノダ
カラ、千九百三十六年ノ末日マデニ完成ス
ル權利ヲ行使スルト云フコトヲ、半面カラ認
メタコトヽ私ハ考ヘルノデアリマス併シ
千九百三十六年ノ末日マデニ完成シ得ル所
ノ造艦權利ガ、大部分ナリ全部ナリガ、今
囘ノ補充計畫ノ內ニ這入ッテ居レバ、私ハ文
句ハ言ハナイノデアリマス、併シ御承知ノ
通リニ千九百三十六年ノ末日マデニ完成ス
ベキ所ノ造艦權利ノ中デ、今日ノ補充計畫
デヤラナカッタモノガ相當ニアル、卽チ噸數
ニ致シマスナラバ二万六千噸デアリマス、
之ヲ建艦費ニ直シマスト八千三百八十七万
五千圓ト云フ巨額ノ金ニナル、是ハ權利ヲ
抛棄シナイ、而シテ權利ヲ實行スルコトノ
必要ヲ認メルト言フ以上ハ、必ズ政府ハ之
ヲ千九百三十六年ノ末日マデニ完成スル所
ノ考デアラウト私ハ考ヘル(拍手)更ニ又權
利ノ保留シテアル所ノ造艦權利ヲ實行スル
ト云フコトヲ、他ノ半面カラ見マスナラ
バ、所謂千九百三十六年ノ末日マデニ著手
シテモ宜シイケレドモ、完成シテハイケナ
イト云フ所ノ權利ガアル是ハ恐ラク六十
「パーセント」ヤルカ、或ハ二十「パーセ
ント」ヤルカ、四十「パーセント」ヤルカ知
リマセヌケレドモ、併ナガラ是ハ千九百三
十六年ノ末日マデニ著手シテ、千九百三十
七年一月ニナッテ竣エシテモ宜イモノデア
ルカラノ相當ノ所マデ之ニ著手スベキコト
ハ我ガ國防ノ安固ヲ圖ルベキモノトシ
テ、是ハ當然ノヤリ方デアラウト私ハ思フ、
更ニ此權利ハ三万二千九百噸デアリマス
サウシテ此金額ヲ政府ノ言フ豫算面ニアル
所ノ建艦費ニ直シマスナラバ、一億二千一
百万圓デアル是ノ六十「パーセント」トス
ルナラバ、實ニ七千二百万圓デアル、サウ
シテ見ルナラバ一方、千九百三十六年マデ
ニ完成スベキ所ノモノガ八千三百万圓ア
リ一方ハ六十「パーセント」ト致シマシテ
モ千九百三十六年末日マデニ著手シテー
完成シテハイカヌガ著手シテ宜イ所ノモノ
ヲ六十「パーセント」ヤッテモ、七千二百万圓
ノ金ガ玆ニ必要デアルトスレバ一億五千
六百万圓ノ金ガ必要デアルコトハ申スマデ
モナイ、民政黨ノ諸君ハ、サウ云フ事ハモ
ウ答辯濟ダトカ何トカ云フヤウナコトヲ仰
セラレテ居ル、又之ヲ御確信ニナッテ居ル
ヤウデアルガ、豫算委員會或ハ分科會其他
ニ於テ、秦君、內田君、其他ノ人ガ質問シ
タ結果ト致シテ、段々ト襤褸ガ出テ來テ居
ルヂヤナイカ、卽チ昭和十年、十一年度ニ
渉ッテ、端境期ニ第二次補充計畫ガ頭ヲ出ス
モノデアルト云フ事サヘ言明シテ居ルデハ
ナイカ(拍手)或ハ又海軍工廠ノ船體部ノ職
工ヲ遊バセズニ、所謂工業能力ヲ維持スル
爲ニハ九百六十八万圓ト云フ金ガ必要デ
アルト云フ事サヘモ到頭白狀シテ居ルデハ
ナイカ、是等ノ頭ヲ出ストカ、或ハ海軍工
廠ノ工業能力ヲ維持スル爲ニ、少クトモ九
百六十八万圓ノ金ガ掛ルト云フコトヲ發表
致シテ居ルト云フコトハ是ハ最低ノ金デ
アッテ、ソレ以上ハ一億五千万圓ニモ及ブモ
ノデアルト云フコトヲ其裏ニ含ンデ居ル
モノデアルト私ハ考ヘルノデアル(拍手)例
ヘバ昨年ノ十一月ノ十二日デアリマシタ
カ、海軍軍令部長トシテ政府ノ兵力量決定
ニ對シテハ多大ノ反對ヲ爲シテ、海軍軍事參
議官ニナリマシタ所ノ加藤大將ガ、大阪デ
語フタ所ノモノガアル、昭和九年カラハ一億
何千万圓ト云フ金ヲ使ッテ、第二次補充計畫
ヲヤルノデアルト云フコトヲ立派ニ新聞記
者ノ方ニ話シテ、是ハ幾多ノ新聞ニ出テ居
ル是ガ他ノ人デアルナラバ、政府ハ新聞
ノコト位ハ吾々ハ責任ヲ持タヌト言ハレル
カ知レナイケレドモ現內閣ノ締結シタ海
軍條約兵力量ノ缺陷ニ對シマシテハ、現內
閣ト意見ヲ異ニシテ軍令部長ノ職ヲ辭シ軍
事參議官ノ職ニ就イテ居ル所ノ人ガ昭和
九年カラハ一億何千万圓ノ第二次補充計畫
ノ金ガ要ヲテ、而モ航空隊ノ二隊モ增設スル
ノデアルト云フコトヲ、公々然ト發表シテ
居ラレルコトガ、又以テ私ガ申上ゲマシタ
所ノ著手シ得ベキ所ノ權利ヲ先ヅヤッテ、
而シテ昭和十一年ノ末日マデニ完成スベキ
モノヲ全部ヤ。テ、玆ニ一億五千六百万圓近
イ所ノ、所謂第二次補充計畫ト云フモノガ
出ルト云フコトヲ、暗々裡ニ物語ッテ居ルモノ
デアラウト私ハ考ヘルノデアリマス、サウ
シテ見ルナラバ三億七千四百万圓ト云フモ
ノニ對シテ、一億五千幾ラヲ加ヘルナラ
バ、今度ノ建艦保留財源五億八百万圓ヲ超
スコト驚ク勿レ二千二百万圓ノ多キニ達
スルノデアル、是レ吾々ノ同僚ガ此減稅案
ト云フモノヲ補充計畫ヲ確立シタ後デヤレ
バ、減稅スルドコロデハナイ、昭和九年度
以後ニ於テハ必ズ增稅ニナルヤウナ虞ヲ含
ンデ居ル所ノ僞瞞的ノ案デアルト云フ所以
デアル
偖テ諸君、現內閣ハ倫敦條約ノ兵力量ニ
關シマシテハ、諸君ガ旣ニ御承知ノ通リニ、
當時ノ軍令部長ノ反對ヲ押切ッテ、サウシテ
兵力量ヲ決定致シテ、國民ニ向ッテハ、軍縮
ノ結果多大ノ減稅ヲ爲シテ、國民負擔ノ輕
減ヲナスト云フコトヲ公約致シマシタ併
ナガラ此海軍條約ニ依ル所ノ兵力量ノ缺陷
ト云フコトガ、海軍部內デハ大問題トナッ
テ而モ此缺陷ヲ補充スル所ノ補充計畫ニ
付キマシテハ御承知ノ通リニ海軍ノ軍事
參議官會議及ビ樞密院會議ニ於テ重大ナル
問題トナッタ、此時ニ政府ハ必ズ責任ヲ以テ
一方デハ減稅ヲヤリ一方デハ補充計畫ヲ
完成シテ、國防ノ安固ヲ期スト云フコトノ
誓約ヲシテ、サウシテ條約御批准ノ奏請ニマ
デ至ッタト云フコトハ、是ハ樞密院會議ノコ
トダカラト云ッテ、政府ハ御否認ニナルカモ
知レマセヌガ、新聞其他ニ依ッテ既ニ天下
公知ノ事實デアルト私ハ考ヘルノデアリマ
ス斯ノ如ク一方ニ於テハ滅稅ヲ行ヒ
方ニ於テハ國防ノ安固ヲ期スト云フコトヲ
誓約シタモノデアルガ、以上申述ベル如ク
ニ國防安固ナラント欲スレバ減稅ハ錢
モスルコト能ハズ、又減稅ヲセント欲スレバ
國防ノ安固期シ難シト云フ「ヂレンマ」ニ今
日陷ノテ居ルデハアリマセヌカ(拍手)諸君、
私共ハ批准ヲ奏請致シマシタ所ノ濱口總理
大臣竝ニ幣原外務大臣ト云フモノガ、實上
此減稅ヲシヨウトスレバ一方ノ國防計畫ト
云フモノハ不安デアリ國防ヲ全クショウ
トスレバ減稅ハ一文モ出來ナイト云フヤウ
ナ、斯ウ云フ羽目ニ立至ラセタヤウナ倫敦
條約ヲ締結シタ其罪ハ寔ニ重大ナルモノ
デアルト云フコトヲ斷言シテ憚ラナイノデ
アリマス(拍手)只今前田君ハ海軍ノ首腦部
ニ於キマシテハ是デ國防ノ計畫ニ不安ハ
ナイト云フコトニ一致シテ居ルンダト云フ
御話デアル、サウシテ其首腦部ト云フノハ
軍令部ト軍事參議官ト云フヤウナ人逹デア
ルト云フコトヲ仰セラレタノデアルガ、然
ラバ一致シタ意見ト云フノハ私共カラ考ヘ
マスナラバ所謂奉答文ガ卽チ一致シタ意
見デアラウト思フ併ナガラ奉答文ノ內容
ニ付テハ吾々ハ知ラヌノデアリマスガ首
腦部ニ於テ此國防デ安全デアルト一致シテ
居ルト云フ奉答文ノ內容ヲ知ッテ居ルヤウ
ニ言ハレル前田君ハ、ソレヲ何處カラ御聽
キニナッタモノデアルカ、更ニ又豫算委員會
或ハ本會議ニ於キマシテ此處ニ御列席ニ
ナッテ居ル所ノ安保海軍大臣ハ何ト言。ッテ居
ル、今囘ノ倫敦條約ノ兵力量ニ於テハ將
來用兵作戰上若干ノ國防ニ不足缺陷ガアル
ト云フコトヲ斷言致シテ居ルデハアリマセ
ヌカ(拍手)自分ノ戴イテ居ル所ノ內閣ノ椅
子ニ就イテ居ル國務大臣ガ海軍大臣ガ此
條約ニ依ル兵力量デハ以テ國防ノ安固ト
カ或ハ用兵作戰上ニ付テ見ルト、若干ノ
不足、缺陷ガアリト云フコトヲ御認ニナツ
テ居ルナラバ吾々政友會ノ者ガ之ヲ若干
ノ不足、或ハ又缺陷ガアリト認メルノハ
當然ノコトデアルト思フノデアリマス(拍
手)政府ガ今囘補充計畫ヲ提案ニナッタト云
フコトハ實際ハ恐ラク補充計畫ト云フモ
ノハ當然爲スベキ補充計畫デアルニ違ヒ
ナイ、ソレヲ海軍ヲ壓迫シタト言フカ、海
軍ヲ强要シテ、此壓迫ヤ强要ニ負ケタ海軍
大臣モ弱イ人デアルニ違ヒナイガ、兎モ角
モ海軍大臣ヲ壓迫、强要シテ、分割スベカ
ラザル所ノ補充計畫ヲ分割シテ出シテ此
今囘ダケノ補充計畫デ以テ恰モ倫敦條約ニ
依ッテ生ジタ兵力量ノ一大缺陷ヲ補フガ如
クニ裝ウタル其心事ハ、極メテ陋劣ナルモ
ノガアルト思フノデアリマス、一方ニハ財
源ニ於テ不確實ナ出來モシナイ幾多ノ公約
ヲ果サントスルガ爲ニ、減稅ヲスルト云フ
ニ至ッテハ唾棄スベキモノガアルト私ハ
感ズルノデアリマス(拍手)
ソレカラ先刻前田君カラ
〔發言スル者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02119310302&spkNum=44
-
045・小山松壽
○副議長(小山松壽君) 靜肅ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02119310302&spkNum=45
-
046・木暮武太夫
○木暮武太夫君(續) 國債ニ付テノ御話ガ
アリマシタガ、一言私ハ反駁致シテ置キマ
スガ昭和六年度ニ於テ私共ガ聽イタ範圍
ニ於テハ所謂償還額ガ七千四百万圓デ
サウシテ新ニ借入レタモノハ九千餘万圓ニ
ナッテ居ル、差引二千万圓ノ昭和六年度ニ
於キマシテハ國債ノ增額ニナッテ居ル、國債
ノ減債ト云フコトニハナッテ居ラナイ、法律
ノ結果デアルトカ、何ノ結果デアルトカ言
ヒマスガ現內閣ノ下ニ於テ殖エタモノハ
殖エタト言ハナケレバナラナイノデアリマ
ス(拍手)
私共ハ以上申上ゲマシタヤウナ趣旨ヲ以
チマシテ斯ノ如キ財源ノ不確實ナル所ノ
減稅ニハ減稅ニハ大贊成デアルカラ
寧ロ建直シヲ行ッテ、組替ヲ爲シテ、サウシ
テ更ニ此議場ノ協贊ヲ受クベシト云フ所ノ
岡田君ノ動議ニ贊成スル所以デアリマス
(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02119310302&spkNum=46
-
047・小山松壽
○副議長(小山松壽君) 西脇晉君
〔西脇音音登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02119310302&spkNum=47
-
048・西脇晉
○西脇晉君 私ハ只今議題ニナッテ居リマ
ス地租法外六案ニ對シマシテ、政友會ノ撤
囘ノ動議ニハ反對ヲ致シ、而シテ本田委員
長ノ報〓ニ贊成ヲ致ス次第デアリマス此
度ノ減稅ノ法案ハ言フマデモアリマセヌ
地租營業收益稅、織物及ビ砂糖消費稅ノ
四種ニ關スルモノデアリマス、私ガ此案ニ
贊成ヲ致シマスル點ハ、此法案ハ地租ノ根
本的改正ヲ先ヅ致シ同時ニ減稅ヲ爲シ
而シテ我國ノ疲弊困態セル所ノ農民諸君ノ
負擔ヲ輕減致シ、同時ニ中小商工業者及ビ
無產大衆ノ生活ヲ安定スルト云フ大目的ニ
出デヽ居ルノデアリマスカラ、私ハ此原案
ニ贊成スル次第デアリマス、ソレハ卽チ現
時ノ國民ノ痛苦ノ一部分ヲ除キマシテ同
時ニ財界建直シノ一助ニナルト云フコトハ
明々白々デアルト思フノデアリマス(拍手)
先ヅ原案ニ贊成ヲスル主ナ理由ヲ申上ゲマ
ス、而シテ反對ノ御意見ニ對シテ批評ヲ加
ヘタイノデアリマス
減稅ノ財源ハ不確實デアル、此點ニ付キ
マシテハ同僚ノ前田君其他ノ御方ニ此理
由ハ讓ッテ置キマス、反對黨ノ御方ハ減稅金
額ガ非常ニ少イ、現ニ木暮君モ左樣申サレ
タノデアリマス、私ハ左樣ニ思ヒマセヌ、
平年度二千五百万圓ハ中々多イノデアリマ
ス、此二千五百万圓ト云フ金額ハ、之ヲ絕
對的ニ見テ行ク··
〔發言スル者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02119310302&spkNum=48
-
049・小山松壽
○副議長(小山松壽君) 大石君靜肅ニ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02119310302&spkNum=49
-
050・西脇晉
○西脇晉君(續) 數ハ相對的デアリマス、
唯金額其モノヲ見テ僅少デアルト云フコト
ハ言ヘナイノデアリマス、殊ニ此減稅ニ付
キマシテ現內閣ガ色々苦心ヲ致シ外ハ世
界ノ平和ニ貢獻シ、內ハ國民ノ負擔ヲ輕減
スルト云フ大目的カラ出テ居リマスル所ノ
此度ノ減稅金額ハ僅少トハ言フコトハ出
來マセヌ、過去ノ歷代ノ內閣ガ減稅ヲ企テ
マシタ、幾何ノ金額ヲ以テ減稅ヲヤッタノデ
アルカ、議會ノ開設以來歷代ノ內閣ヲ數フ
ルコト十數ニ及ビマスルガ、大正三年ノ山
本内閣マデハ殆ド增稅ノ歷史デアル是ハ
必ズシモ增稅其モノガ惡イトハ斷ジテ言ハ
ナイノデアリマス
〔發言スル者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02119310302&spkNum=50
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051・小山松壽
○副議長(小山松壽君) 大石君注意シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02119310302&spkNum=51
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052・西脇晉
○西脇晉君(續) 國家ノ必要ナル場合、或
ハ國家ノ大事變、戰爭其他ノ事由ニ依ッテ增
稅モアッタノデアリマス、山本内閣ノ時ハ減
稅ヲ致シマシタ、是ハ政友會諸君ガ支持ヲ
セラレタ內閣デアリマス僅カ千百五十万
圓ニ過ギナイ續イテ大正七年ノ寺內內閣
デアリマスガ是ハ二千百万圓ノ增稅ヲ致
シテ居ルノデアリマス是ハ政友會諸君ガ
ヤハリ支持サレタ內閣デアル大正九年ノ
原內閣ニ至リマシテハ八八艦隊其他色々ナ
事ガアッタノデアリマスガ、一億四千三百万
圓ノ增稅ヲ圖。ッタ、最近ニハ大正十二年加藤
友三郞內閣デアリマスルガ、是レ亦政友會
諸君ガ支持サレタ所ノ內閣デアリマス、千二
百八十万圓減稅ヲ致シテ居ル、昭和二年ノ
若槻內閣ノ時ハ五百三十万圓ノ減稅ヲ致シ
手可にい此度ノ減稅ハ二千五百万圓デア
ル-平年度ニ於テハ二千五百万圓デア
ル、過去ノ歷史ト比較致シテ見マスルト
二千五百万圓ハ非常ナ大金デアリマス、卽
チ私ガ絕對的ニ數ダケハ論ジテハイケナイ
ト云フ所以デアリマス殊ニ加藤友三郞內
閣ノ千二百八十万圓ニ比較スルト、二千五
百万圓ハ倍額デアリマス決シテ是ハ僅少
デアルト云フコトハ斷ジテ出來ナイノデア
リマス
續イテ木暮君ハ又言ハレマシタ、此度ノ
減稅ハ直接稅ト間接稅トノ關係ニ於キマシ
テ、間接稅ガ甚ダ少イノデアル、極メテ少
イ、其割合ガ甚ダ少イ、斯樣ニ仰セラレル
ノデアリマス是ハ木暮君ハモウ少シ御〓
究ヲ爲サッタラ宜シイト思フノデアリマス、
和稅ノ體系ヲ見マスレバ卽チ國稅バカリ
デハ斷ジテイケナイ、地方稅モ通ジテ考ヘ
ナケレバナラヌト思フノデアリマス、地方
稅ヲ通ジテ幾ラアルカト計算ヲシテ見マス
ルト直接稅ノ總額ハ十億四千五百万圓ア
リマス、間接稅ノ總額ハ六億四千三百万圓
남동是ハ先刻木暮君ハ專賣益金ヲ計算サ
クカ、私モ專賣益金ヲ間接稅ノ中ニ
加ヘマス、サウシテ其割合ヲ見ルト直接稅
ハ六割一分八厘、間接稅ハ三割八分二厘デ
アリマス三ト二ノ割合デアリマス、今度
ノ減稅ノ總額、卽チ直接稅ハ千五百四十万
圓間接稅ガ一千二十万圓デアリマスヤ
ハリ三ト二ノ割合デアル何ガ故ニ今囘ノ
減稅ガ間接稅ニ薄クシテ、直接稅ニ厚イト
云フノデアリマスカ、ヤハリ共割合ハ均衡
ヲ得テ居ルノデアリマス、此意味カラ申シ
マシテモ、此度ノ減稅ノ計晝ハ吾々ハ大ニ
贊成スル次第デアリマス
尙ホ此度ノ租稅ノ改革ノ主ナルモノハ何
處ニアルカ地租ノ大改正ヲシタコトガ重
大ナ一ツデアリマス、而シテ此地租ノ課稅
標準ヲ賃貸價格ニ直シタト云フコトデアリ
マス、御承知ノ如ク地租條例ヲ明治初年ニ
實行シタ明治六年ノ七月ニ畏クモ明治大
帝陛下カラ御詔勅ガ降ッタ、租稅ノ制度ハ均
一公平ニシナケレバイカヌ、均一公平ニシ
テ全國ニ於テ民ニ厚薄ナカラシムルヤウニ
シナケレバナラス、此上諭ガアッテ維新ノ元
動ハ大ニ日夜焦慮シテ、玆ニ地租條例ノ制
定ヲ見ルニ至ッタノデアリマス、爾來六十年
間、明治四十三年ニ宅地ノ改正ヲ致シマシ
タガ是レ亦二十年ヲ經テ居ルノデアリマ
ス、斯樣ニ現在ノ現行法ノ地租ハ、課稅標
準ヲキメテカラ數十年間ノ期間ヲ經テ居リ
マシテ國民負擔ノ上ニ於テ非常ニ不公平
ヲ來シテ居ル、之ニ向。ッテ先ヅ改正ヲ加ヘナ
ケレバナラヌト云フノハ多年ノ希望デア
ル此點ニ付キマシテハ政友會諸君ガ昭
和四年第五十六議會ニ於テ兩稅委讓ノ案ヲ
此壇上デ出サレタ其時ニヤハリ政友會諸
君ハ地租ノ課稅標準ハ賃貸價格ヲ以テ之ヲ
ヤルト云フコトニキメテ居ラレタノデアリマ
ス、此明治初年以來未ダ一遍モ改正ヲ加ヘ
ナイ所ノ地租ニ向ッテ、數十年來ノ目的ヲ達
シタコトハ此度ノ此地租法案ト云フモノ
ガ、如何ニ國民ノ課稅ノ均衡ヲ得ルコトニ
大效果ガアルト云フコトノ證據デアルト思
フノデアリマス、而シテ地租法案ハ課稅ノ
均衡ヲ得ル稅制ノ整理ヲスルト共ニ減稅
ヲ爲スト云フ、二ツノ重大ナル要素ガ含マッ
テ居ルノデアリマス、卽チ地租ニ於テハ町
村、殊ニ農村ノ關係アリマス所ノ村落ノ方
ノ田畑ノ租稅ニ付キマシテハ一千六百万
圓ノ減稅ヲ致シテ居ル宅地ニ於テ五百万
圓バカリ殖エタノデアリマス、是ハ稅制整
理ヲ伴フ所ノ案デアリマスルカラ而モ六
十年間ノ課稅ノ均衡ヲ得セシムル目的ノ爲
ニ之ヲ改正致シタノデアリマスカラ、課稅
ノ均衡ヲ得ル爲ニハ、多少ソコニ增減ガア
ルノハ致方アリマセヌ、併ナガラヤハリ此
宅地ニ於キマシテモ三割八分ノ率ヲ以テ減
稅ヲ致シテ居ルコトハ事實デアルノデアリ
マス、左樣ナ重大ナル改正ヲ含ンダル所ノ
現行制度デアリマシテ之ヲ是非行ハナケ
レバナラヌト云フ理由ハ後デ述ベマス
而シテ私ハ岡田君ノ原案ニ對シマス所ノ
批評ニ付キマシテ、一二論駁ヲ致サウト思
フノデアマリス地租ニ對シテ免稅點ガ二
百四十圓ニナッタ、地租ノ賃貸價格ヲ二百圓
ニシタコトハ從來ノ地價ニ比較シテ四十
圓上ッタノデアル免稅點ヲ上ゲタノデア
ル營業收益稅ハ其儘ニシテ置クノハ宜シ
クナイ、權衡ガ取レナイ、斯ウ云フ御論デ
アリマシタガ、營業收益稅ノ方ハ免稅點ヲ
上ゲマシテモ、是ハ所謂府縣稅ニ於テ課稅
ヲセラルヽ所ノ所謂危險ガアルノデアリマ
ス、殊ニ營業收益稅ハ千圓以下ノ者ニ對シ
テハ二分二厘、所謂二·一一ノ減稅ヲ致シタノ
デアリマス、其爲ニ營業稅ノ納稅人員七十
万人以上アリマスガ其中デ五十數万人ノ
人ハ減稅ノ恩典ヲ受ケルコトガ出來タノデ
アリマス、卽チ是デ權衡ハ十分得テ居ルト
思フノデアリマス
次ニ岡田君ハ又言ハレル、何故ニ人絹ニ
免稅ヲシナカッタカ「レーヨン」ニ何故免稅
ヲシナカッタカト申サレタノデアリマス、日
本ニ於キマシテ一番「レーヨン」ノ需要ノア
リマスノハ、卽チ百五十「デニール」ノモノ
デアリマス綿絲ノ三十二番手ニ當ルノデ
アリマス、一番需要ノ多イ所ノ綿絲三十二
番手ト「レーヨン」百五十「デニール」ト比較
シテ見マスト値段ハ莫大ナル違ヒガアル
ノデアル、デアルカラ綿絲ノ免稅ヲ致シテ
居ルカラト云フ理由ヲ以テ、「レーヨン」ノ
免稅ヲシナケレバナラヌト云コトハナイ
「レーヨン」ノ百匁當リハ一圓內外デアリマ
ス、日本ノ各方面ニ於テ需要サレル所ノ綿
絲ハ卽チ三十二番手デアリマスルガ是八
三十九錢デアリマス綿織物ヲ免稅致シタ
カラ「レーヨン」ニ對シテ免稅ヲシナケレバ
ナラヌト云フ理由ハ斷ジテナイノデアリ
マス
續イテ私ハ賃貸價格ノ何故ニ正當デアル
カト云フコトヲ、尙ホ附言致シテ置キマス、
賃貸價格ノ問題ニ付テハ最早論議ヲスル餘
地モナイヤウデアリマスガ、此點ニ付テハ
殆ド外國ニ於テモ、例ヘバ英國、佛蘭西ノ
如キハ所得稅ヲ根幹ト致シ、地租其他ノ
營業收益稅ニ關スル如キモノヲ兩翼トシテ
居ル所ノ建前ハ日本ノ稅制ト能ク似テ居
ルノデアリマス、英國ニ於テモヤハリ臺帳
ノ賃貸價格ヲ以テ課稅標準トシテ居ルノデ
アリマス、佛蘭西ニ於テモ左樣デアリマス、
吾々ハ此賃貸價格制度ヲ支持スル所以ハ此
ニアルノデアリマス(拍手)
次ニ岡田君モ言ハレ木暮君モ言ハレタ
ノデアリマスガ、現內閣ハ減稅ヲ一方ニヤッ
テ居ル、減稅ヲ一方ニヤッテ居ルガ、公債ヲ
募ル計畫デアル三千五百五十万圓ノ公債
ヲ募ル計畫デアル、是ハ將來國民ニ負擔ヲ
掛ケル所ノ一ノ結果ヲ招來スル一方デ減
稅シテモ何ニモナラヌヂヤナイカ、斯ウ言
ハレマスガ是ハ繰返シテ申シマセヌ失
業公債ハ一年限デアルノ路與ニ仲ヲ精考
ルヽナラバ吾々ハ過去
ヘンケレバナラヌノデアリマス、大正十二
年ノ加藤內閣、卽チ政友會ガ支持シテ居ラ
レタ所ノ加藤內閣-加藤友三郞內閣ニ於
テ、千二百八十万圓ノ減稅ヲ致シテ居リマ
スガ、ヤハリ其年ニハ公債財源ヲ使ッテ居
ル、三千五百万圓バカリハ電信電話ノ公債ヲ
募ルコトニナッテ居ッタノデアリマス、卽チ
是ガイケナイト言フナラバヤハリ此加藤
友三郞內閣ノ減稅ト云フモノハ無茶苦茶ナ
モノデアルノデアル、況ヤ此失業公債ハ唯
一年限ノモノデアル、一年限デアッテ、恆久
性ヲ持シテ居ナイノデアリマスカラ、今囘ノ
減稅ニ何等支障ヲ生ズルコトハ斷ジテナイ
ノデアル(拍手)殊ニ大正九年原内閣ニ於
テ、一億四千五百万圓ノ增稅ヲ致シテ居ル
原內閣ニ於テ一億四千五百万圓增稅ヲシテ
居ルガ、吾々ハ一面ニ於テ國債ノ整理ハ完
全ニシナケレバナラヌ、國債整理ノ基金ヲ
此爲ニ繰入レテ、一方ニ於テハ國債ノ市價
ヲ安定ニシ國債整理ノ充實ヲセンケレバ
ナラヌト云フコトハ是ハ固ヨリ一致シテ
居ル所デアリマス、然ルニ大正九年ノ原内
閣ガ一億五千万圓モ公債ヲ募集シテ居ッテ、
尤モ是ハ八八艦隊ノ必要ガアッタノデアリ
マセウカラ、之ヲ必ズシモ惡イトハ言ハナ
イノデアル、其時ニ減債基金ニ繰入レル所ノ
アノ法律ヲ廢メテ、大正九年、十年、+
年ノ三年間ハ、國債整理ノ爲ニ減債基金ニ
繰入レル所ノ法律ヲ廢シテシマッタヂヤナ
イカ、一方デ公債ヲ盛ニ殖ヤシテ居リナガ
ラ、減債基金ニ繰入レル所ノ法律マデ、三
年間其實行ヲ停止スルト云フコトハ、原內
閣ノ公債政策ノ大ナル間違デアル(拍手)然
ルニ今囘ノ濱口內閣ノ減稅法案ハ如何デ
アリマセウ獨逸賠償金ノ六百三十万圓ハ
成程繰入ヲ廢メタノデアル是モ一時限デ
アリマス永久ノモノデナイ、而シテ減債
繰入基金法ニ依ル所ノ一万分ノ百十三ノ、
所謂繰入ノ金ト云フモノハ今度ハ少シモ
弄ッテ居ラヌノデアル、卽チ七千五百九十万
圓ヲ減債基金ニ繰入レルコトニナルノデア
ル卽チ一方ニ減稅ヲヤリマシテモ、公債
政策ニ對シマシテハ-公債ノ整理ノ爲
ニハ斯樣ニ繰入金ヲ豫算ニ計上シテアル
コトヲ以テ見マシテモ、借金ヲ以テ減稅ス
ル所ノ政友會諸君ノ批評ハ當ラナイト思フ
ノデアリマス(拍手)
次ニ現內閣ノ減稅法案ハ社會政策ガ加味
シテ居ラヌ一向社會政策ガ加味シテ居ラ
ヌ左樣ナ御批評ガアッタノデアリマス、併
シ是ハ大ナル間違デアリマス、社會政策ハ
大ニ加味シテ居リマス、卽チ是カラポツポ
ツ申上ゲマス、岡田君ガ此議場デ只今申サ
レマシタヤウニ、地租ニ付キマシテハ自
作農奬勵ノ爲ニ地價二百圓以下ノ田畑ニ付
キマシテハ所謂免稅ヲ致シテ居ル今囘ノ
改正ハ賃貸價格ヲ二百圓ニ致シマシタカ
ラ之ヲ地價ト比較シテ見マスルト、二百
四十圓ニ免稅點ガ上ッタト同ジ結果ニナリ
やく、此爲ニ日本中ヲ通ジマシテ、免稅ノ
恩典ヲ受ケル者ハ三十一一万人ノ多キニ及ン
デ居リマス(拍手)而シテ其反別二十二万町
步ノ多キニ及ンデ居ルノデアリマス、是ガ
社會政策、產業政策ニアラズシテ何ゾヤデ
アリマス(拍手)營業收益稅ニ付キマシテ
ハ一般ニハ七分ノ減稅ヲ致シタノデアル、
法人ニハ五分ノ減稅デアル、而シテ先刻申
シマシタヤウニ、千圓以下ノ納稅者ニ對シ
テハ、二割一分强ノ減稅ヲ致シマシタ、其
爲ニ恩典ヲ受クル人ハ五十万二千人ノ多キ
ニ及ンデ居リマス、砂糖消費稅ノ御話ガ、木
暮君、岡田君カラアリマシタノデアリマス
ガ砂糖消費稅ニ付キマシテモ、社會政策
ハ十分加味シテ居リマス、一番需要ノ多イ
第一種糖ニ於テハ一割ノ減稅ヲ加ヘテ居
ルノデアリマス、第二種糖ニ付テハ九分ノ
減稅ヲ加ヘテ居リマス、其斤數ヲ言ッテ見ル
ト日本デ吾々ガ消費致シマス所ノ砂糖ノ
需要總量十三億万斤ノ中、第一種第二種
ヲ消費致シマスモノハ七億万斤ノ多キニ
及ンデ居ルノデアリマス卽チ是等ノ砂糖
ニ對シテ一九九罰一方ハ九分ト云フ
減稅ヲ行ッテ居ル、是ガ社會政策ニ非ズシテ
何ゾヤデアリマス、織物消費稅ニ付キマシ
テハ、全體ニ付テ一割ノ減額ヲ加ヘテ居リ
すぐ、而シテ綿絲ヲ九十五「パーセント」以
上含ンデ居ルモノニ對シマシテハ今マデ
ハ色々ナ制限ガアッテ必ズシモ免稅ニナツ
テ居ラヌガ、今囘ノ改正ハ綿絲九十五「パー
セント」以上含ンデ居リマス織物ハ、他ノ絲
ヲ混織致シテモ之ヲ免稅スルト云フコトニ
致シタノデアリマス、麻織物ニ付キマシテ
モ非常ニ免稅ノ範圍ヲ擴張致シマシテ茲
ニ繊物稅テ通ジマシテモ社會政策ヲ行テン
居ル次第デアリマス地租ニ付キマシテハ
左樣デアル、營業收益稅ニ付テモ左樣デア
ル砂糖、織物消費稅ニ付テモ左樣デアル
ト云フコトヲ以テ見マシテモ、如何ニ社會
政策、產業政策ヲ加味シテ居ルカト云フコ
トガ十分分ルノデアリマス
諸君、岡田君ハ尙ホ批評シテ曰ク、今度
ノ地租ノ改正、殊ニ賃貸價格ノ調ハ四年前
ノ調デアルソンナ古イ物ヲ持クテ來テハイ
カヌデハナイカ、ソンナ古イ物デハ却テ課
稅ノ公正ヲ期スル譯ニハ行カナイデハナイ
カ、左樣ニ仰セラレタノデアリマス、所ガ
今囘ノ此減稅法案ニ付テ調ベマシタ所ノ此
賃貸價格ハ昭和二年ノ末ニ調査ヲ完了シ
タノデアリマス大正元年カラ昭和二年ノ
末マデ掛ッタノデアリマス、此爲ニ一千万圓
ノ金ヲ使ヒ(「商工大臣ハドウシタ」ト呼フ
者アリ)八百万人ノ人ヲ使ヒ、專門ノ高等官
二人、八百万人ノ役人、加フルニ日本全國
ノ役人ヲ兼務サセテ、九千万人ノ人ガ之ニ
掛リマシテ二年間心血ヲ注イダ所ノ賃貸價
格ノ調査デアリマスデアルカラ三年前デ
アルカラ是ハ古イト云フ譯ニ行カヌ、斯樣
ナ親切、丁寧、懇切ヲ極メテ調査シタ所ノ
賃貸價格デアリマスカラ課稅ノ公平ハ十
分期セラレルト思フノデアリマス··
〔「議長、商工大臣ハドウシタ」其他發言
スル者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02119310302&spkNum=52
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053・小山松壽
○副議長(小山松壽君) 請求シテ居リマ
ス求シテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02119310302&spkNum=53
-
054・西脇晉
○西脇管君(續) 尙ホ木暮君ハ、濱口內閣
組閣以來少シモ減稅ニ對スル所ノ政策ニ付
テ言ッテ居ラヌト云フヤウナコトヲ仰セラ
レタノデアリマスガ、我ガ民政黨ガ減稅ニ
對スル所ノ意見ヲ聲明シタノハ何時デアル
カト云フト最近昭和四年一月ノ大會ニ於
テ、斯樣ナコトヲ言フテ居ル、社會政策的見
地ヨリ左記ノ方法ヲ以テ國稅及地方稅ノ整
理廢減ヲ行フ、イ地租及營業收益稅ハ適
當ナル修正ヲ加ヘテ國稅トシテ之ヲ存續ス
ルコト生活必需品ニ對スル消費稅織物消
費稅ヲ整理スルコト、斯樣ニ中外ニ我ガ民
政黨ハ聲明致シテ居ッテ、此政策ヲ、卽チ今囘
ノ議會ニ於テ此減稅案ニ現シタノデアリ
マス卽チ我黨ハ在野時代ニ公約シタ所ノ
減稅ニ關スル所ノ政策ヲ、內閣ヲ擔當致シ、
政治ノ局ニ當ッテ、直チニ此減稅法案ヲ出シ
テ國民ノ公約ヲ行ッタノデアル、之ニ反シ
マシテ政友會諸君ハ此間ノ委員會ニ於キ
マシテモ亦只今岡田君ノ御演說ヲ拜聽致
シテ居リマシテモ、此度ノ減稅ハ財源ガ乏
シイトカ、其他其內容ニ付テ御批評ガアリ
マシタガ、政友會諸君ハ如何ナル減稅案ヲ
以テ吾々ニ對セラレルカ其減稅案ノ內容
ガ分ラヌ、唯、返付スル、撤囘セヨト云フ仰
セデアル、然ルニ政友會ニ於テハ、昨年ノ
九月十六日ニ臨時大會ヲ開イタガ、其時ノ
犬養總裁ノ演說中ニ斯ウ云フコトヲ言ッテ
居ル、國民ノ負擔ヲ輕減シ、政澤ノ普遍化
ヲ圖ルコトハ刻下ノ急務デアル我黨ハ國
民大多數ノ負擔ニ係ル地租營業收益稅、
消費稅、鑛產稅等ニ對シ五千万圓程度ノ減
稅ヲ行ヒ以テ一面國民苦難ノ一部ヲ除去
シ他面產業振興ノ一助タラシメント欲ス
ト云フヤウナ意味ノ御演說ヲナサレタノデ
アリマス、サウシマスト、政友會ノ減稅ニ
關スル政策ハ、我黨ト殆ド違クテ居ラヌ唯
違フノハ鑛產稅アルノミ唯鑛稅ガアル
ノガ違フノト五千万圓ト二千五百万圓ト
違フダケデアリマス、卽チ租稅ノ體系カラ
言ツテモ、減稅ノ內容カラ言ッテモ、殆ド違
ハナイノデアル、唯金額ガ少イト云フダケ
デアル、然ラバ私ハ政友會ノ方々ニ問ヒタ
イ兩稅委讓ハドウサレタノデアルカ先
刻岡田君ノ御意見モアリマシタヤウニ、地
方ハ財源ガ涸濁シテ居ルノデ、地方稅ノ整
理ヲシナケレバナラヌ地方ノ財政ヲ潤澤
ニシナケレバナラヌト云フ其意見ハ撤囘
サレヌヤウデアリマス、政友會ガ地方ニ財
源ヲ與ヘル爲ニ、昭和四年卽チ五十六議會
ノ此議場ニ於テ、兩稅委讓案ヲ提出サレテ
居ルノデアル、併シ吾々ハ是ト意見ガ違フ
ノデアル兩稅委護ハ地方ニ財源ヲ與ヘル
カモ知レヌガ必ズシモ其爲ニ國民ノ負擔
ヲ輕減スルモノデハナク、增稅ノ端ヲ啓キ
國民課稅ノ不均衡ヲ來スノデアルカラ、吾
吾ハ反對ヲ致シタノデアリマスガ其兩稅
委讓ハ行フ積リデアルカドウカ或ハ最早
捨テヽ顧ミヌ積リデアルカ政友會諸君ノ
今日ノ國民經濟ニ卽シタ御意見ハドウデア
ルカ、岡田君ハ唯斯ウ云フコトヲ言ハレタ、
此度五千万圓ノ財源ヲ以テ-卽チソレハ
行政整理ヲスル或ハ陸海軍ノ費用ノ經濟
化或ハ用度及ビ其他ノ費用ヲ節約シテ五
千万圓ヲ捻出スルト言ハレテ居ル併ナガ
ラ兩稅委讓ハ棄テヽ顧ミナイノデアルカド
ウカソレヲ伺ヒタイ、而シテ兩稅委讓ヲ
棄テル棄テヌハ別トシテ五千万圓ノ減稅
ヲヤルト云フノデアルナラバ吾々ガ國民
ノ各方面ニ亙レル、此行詰ッタ經濟狀態ヲ救
フ〓カ、根本的ノ財政整理、稅制整理ヲス
ルコトハ政友會諸君ト同ジデハアリマセ
ヌカ、唯遠フ所ハ、吾々ハ國民ノ行詰レル
現狀ヲ見ルニ忍ビナイカラ來年カラ行政
財政ノ整理ヲヤルト云フノデ今年豫算イ
上ニ於テ五万圓ノ費用ヲ取。ッテ居ルノデア
リマスガ、先ヅ倫敦條約ニ依ッテ餘剩財源ガ
出來マシタナラバ、是ハ國民ガ納メタ所ノ
金デアルカラ、國民ニ返スコトハ當然デア
ル此倫敦條約ニ因ル餘剩財源ヲ、國民ハ
首ヲ長クシテ待ッテ居ル首ヲ長クシテ待ツ
テ居ル此減稅ヲ、來年マデ待テト云フ政友
會諸君ハ國民ニ對シテ忠ナルモノト言ヘ
ルカドウカ、私共ハ來年度ニ於テ行政財政
ノ粮本的整理ヲ致スノデアルガ、國民ハ此
餘剩財源ヲ、一日モ早ク減稅ニ向ケラレル
コトヲ、旱天ノ雨ノ如ク待ッテ居ルノデアリ
マス卽チ此減稅案ヲ實行スルナラバ、是
ガ慈雨トナッテ國民ノ苦痛ヲ十分救フコト
ガ出來ルト斷言シテ憚ラナイノデアリマ
ス此意味ヲ以チマシテ私ハ政友會諸君ノ
撤囘案ニハ反對ヲ致シ政府提出ノ本案ニ
贊成スル次第デアリマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02119310302&spkNum=54
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055・作田高太郎
○作田高太郞君 本日ノ會議ハ此程度ニ止
メ明日ノ本會議ニ於テ之ヲ繼續スルコト
トシ、是ニテ散會セラレンコトヲ願ヒマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02119310302&spkNum=55
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056・小山松壽
○副議長(小山松壽君) 作田君ノ動議ニ御
異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02119310302&spkNum=56
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057・小山松壽
○副議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メ
マスヽ仍テ動議ノ如ク決シマシタ次囘ノ
日程ハ公報ヲ以テ御通知致シマス、本日ハ
是ニテ散會致シマス
午後六時十一分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02119310302&spkNum=57
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