1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和六年三月三日(火曜日)
午後一時二十八分開議
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議事日程 第二十一號
昭和六年三月三日
午後一時開議
第一 地租法案(政府提出) 第一讀會の續(前會の續)
第二 營業收益税法中改正法律案(政府提出) 第一讀會の續(前會の續)
第三 砂糖消費税法中改正法律案(政府提出) 第一讀會の續(前會の續)
第四 織物消費税法中改正法律案(政府提出) 第一讀會の續(前會の續)
第五 明治四十一年法律第三十七號中改正法律案(地方税制限に關する件)(政府提出) 第一讀會の續(前會の續)
第六 大正十五年法律第二十四號中改正法律案(地方税に關する件)(政府提出) 第一讀會の續(前會の續)
第七 都市計畫法中改正法律案(政府提出) 第一讀會の續(前會の續)
第八 電氣事業法改正法律案(政府提出) 第一讀會
第九 右議案の審査を付託すへき委員の選擧
第十 土地收用法中改正法律案(政府提出) 第一讀會
第十一 右議案の審査を付託すへき委員の選擧
第十二 著作權法中改正法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第十三 右議案の審査を付託すへき委員の選擧
第十四 大正十三年法律第二號中改正法律案(海軍軍備制限條約實施の件)(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第十五 右議案の審査を付託すへき委員の選擧
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02219310303&spkNum=0
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001・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 諸般ノ報告ヲ致サ
セマス
〔書記官朗讀〕
一議員ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
牧野法案
提出者
山內亮君氏家〓君
菅村太事君高橋壽太郞君
(以上三月二日提出)
出版權法案
提出者
山枡儀重君原夫次郞君
加藤知正君星島二郞君
增田義一君
(以上三月三日提出)
鐵道小運送制度改善ニ關スル建議案
提出者
櫛部荒熊君風見章君
手代木隆吉君栗原彥三郞君
松定吉君多田滿長君
壹岐五島平戶近海不正漁業者取締ニ關ス
ル建議案
提出者牧山耕藏君
市谷刑務所移轉速進ユ關スル建議案
提出者
櫻內辰郞君本田義成君
立川太郞君三木武吉君
澁川長野原間鐵道速成ニ關スル建議案
提出者木檜三四郞君
食用蛙飼育ニ關スル建議案
提出者土井權大君
北海道土功組合整理ニ關スル建議案
提出者
木下成太郞君東武君
松實喜代太君佐々木平次郞君
板谷順助君三井德寶君
東條貞君
(以上三月二日提出)
獨逸賠償金ヲ以テ本邦海運業發展費ノ充
當ニ關スル建議案
提出者
眞鍋儀十君三浦虎雄君
八並武治君
獨逸賠償金ヲ以テ本邦海運業發展費ノ充
當ニ關スル建議案
提出者若宮貞夫君
水產增殖事業奬勵ニ關スル建議案
提出者
田中養達君靑木亮貫君
〓水銀藏君堤康次郞君
(以上三月三日提出)
一議員ヨリ提出セラレタル質問主意書左ノ
如シ
官權濫用ニ關スル質問主意書
提出者多木久米次郞君
(以上三月二日提出)
〔左ノ報告ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノ爲
玆ニ揭載ス〕
一昨二日幣原內閣總理大臣臨時代理ヨリ左
ノ通發令アリタル旨ノ通牒ヲ受領セリ
司法書記官森田豐次郞
第五十九囘帝國議會司法省所管事務政府
委員被仰付
遞信省電氣局長富安謙次
第五十九囘帝國議會遞信省所管事務政府
委員被仰付
昨二日議長ニ於テ辭任ヲ許可シタル常任
委員左ノ如シ
第四部選出
決算委員佐保畢雄君
第六部選出
決算委員中谷貞賴君
一昨二日委員長及理事互選ノ結果左ノ如シ
自動車交通事業法案(政府提出)委員
委員長古屋慶隆君
理事
岡本實太郞君坂東幸太郞君
松本忠雄君川口義久君
豐田收君
輸出組合法中改正法律案(政府提出)外一
件委員
委員長井上剛一君
理事
手代木隆吉君岸田正記君
簡易生命保險法中改正法律案(政府提出)
委員
委員長田中養達君
理事
佐藤與一君高橋熊次郞君
重要產業ノ統制ニ關スル法律案(政府提
出)委員
委員長增田義一君
理事
木村義雄君津崎尙武君
一昨二日理事補闕選擧ノ結果左ノ如シ
瓦斯事業法中改正法律案(政府提出、貴族
院送付)委員
理事加藤鐐五郞君(理事川口義久君
二月二十八日委員辭任ニ付其
ノ補關)
一昨二日ニ於ケル特別委員ノ異動左ノ如シ
辯護士法中改正法律案(北浦圭太郞君外
三名提出)外二件委員
辭任谷原公君補闕西田郁平君
國立公園法案(政府提出)委員
辭任佐々木平次郞君補闕土倉宗明君
米穀法中改正法律案(政府提出)外一件委
員
辭任村上國吉君補闕田中祐四郞君
辭任生方大吉君補關前田卯之助君
昭和四年度第一豫備金支出ノ件(承諾ヲ
求ムル件)外七件委員
辭任竹內友治郞君補關庄晋太郞君
自動車交通事業法案(政府提出)委員
辭任名川侃市君補關佐保畢雄君
簡易生命保險法中改正法律案(政府提出)
委員
辭任高橋熊次郞君補關久山知之君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02219310303&spkNum=1
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002・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 是ヨリ會議ヲ開キ
やく、本日ハ質問日デアリマスガ、都合ニ
依リマシテ質問ハ之ヲ延期致シマシタ、此
段御諒承ヲ願ヒマス
日程第一、地租法案、日程第二、營業收
益稅法中改正法律案、日程第三、砂糖消費
稅法中改正法律案、日程第四、織物消費稅
法中改正法律案、日程第五、明治四十一年
法律第三十七號中改正法律案、日程第六、
大正十五年法律第二十四號中改正法律案、
日程第七、都市計畫法中改正法律案ノ七案
ヲ一括シテ前會ノ續ヲ開キマス、是ヨリ討
論ヲ繼續致シマス、通〓順ニ依ッテ發言ヲ許
シマス
第地租法案(政府提出)
第一讀會ノ續(前會ノ續)
第二營業收益稅法中改正法律案政
府提出)第一讀會ノ續(前會ノ續)
第三砂糖消費稅法中改正法律案政
府提出)第一讀會ノ續(前會ノ續)
第四織物消費稅法中改正法律案(政
府提出)第一讀會ノ續(前會ノ續)
第五明治四十一年法律第三十七號中
改正法律案(地方稅制限ニ關スル件)
(政府提出)第一讀會ノ續(前會ノ續)
第六大正十五年法律第二十四號中改
正法律案(地方稅ニ關スル件)(政府
提出)第一讀會ノ續(前會ノ續)
第七都市計畫法中改正法律案(政府
提出)第一讀會ノ續(前會ノ續)
〔「國務大臣ガ居ナイデハナイカ」ト呼
フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02219310303&spkNum=2
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003・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 原惣兵衞君カラ議
事進行ニ付テ發言ヲ求メラレテ居リマス、
之ヲ許シマス
〔原惣兵衞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02219310303&spkNum=3
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004・原惣兵衞
○原惣兵衞君 本員ハ本案ノ上程セラレル
ニ際シマシテ、議事進行ニ付テ一言議長ニ
マデ申述ベタイト思フノデアリマス、現內
閣ノ最モ重大法案デアル所ノ、此減稅法案
ガ上程ニナリマシテ、吾々ハ飽マデ此法案
ヲ、眞劒ニ眞面目ニ審議ヲ致シタイト考ヘ
テ居ルノデアリマス、而モ重要法案デアリ
マスガ故ニ、昨日ヨリ引續イテ眞劍ニ、眞
面目ニ、法案ノ討論ヲ爲サントスルニ際シ
テ其政府委員、而モ各大臣、卽チ總理大
臣以下此法案ニ關係ノアル-少クトモ七
大臣ニ關係アルニモ拘ラズ、此處ニ僅ニ大
藏大臣ヲ除イテ一人モ總理大臣以下出席
ガナイト云フコトハ何タル不眞面目ナコ
トデアルカト思フノデアリマス(拍手)吾々
ハ此重大ナル法案ニ對シテカラニ、政府與
黨ガ眞面目ニ之ヲ審議スルト云フ所ノ、責任
アル態度ヲ執ッテ居ナイト云フコトヲ吾々
ハ斷言スル(拍手)私等ハ此意味ニ於キマシ
テ少クトモ此本案ノ討論ニ先チマシテ、
各政府委員、國務大臣ノ列席ヲ願ハナケレ
バ、本案ノ審議ヲ進メルコトハ出來ナイト
云フコトヲ申上ゲテ、議長ノ御反省ヲ促シ
タイト考ヘル次第デアリマス
〔「議長休憩シロ」「國務大臣ノ出席スル
マデ休憩ナサイ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02219310303&spkNum=4
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005・作田高太郎
○作田高太郞君 議長-議長発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02219310303&spkNum=5
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006・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 作田君、何デスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02219310303&spkNum=6
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007・作田高太郎
○作田高太郞君 議事進行デス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02219310303&spkNum=7
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008・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 議事進行ニ付テ許
シマス、作田君
〔作川高太郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02219310303&spkNum=8
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009・作田高太郎
○作田高太郞君 私ハ
〔「議長々々」「何ダソレハ」ト呼ヒ其他
發言スル者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02219310303&spkNum=9
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010・作田高太郎
○作田高太郞君(續) 議事進行デス-議
事進行デス
〔「議長何ダソレハ」ト呼ヒ其他發言ス
ル者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02219310303&spkNum=10
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011・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 靜肅ニ願ヒマス-
靜肅ニ願ヒマス、議事進行ニ付テ發言ヲ許
シテアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02219310303&spkNum=11
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012・作田高太郎
○作田高太郞君 私ハ本案ノ議事進行ニ付
キマシテ一言致シタイノデアリマス、只今
政友會ノ原君ヨリ關係大臣ノ出席ヲ要求シ、
其出席アルニ非ザレバ本案ヲ進行セズト云
フ御議論ガアッタノデアリマスガ、此議論ハ
當ラナイ(「何ガ議事進行ダ」ト呼ヒ其他發
言スル者多シ)聽キ給へ、此減稅案竝ニ撤囘
動議ニ關シマシテ、昨日ノ討論ヲ今日ニ持
越シマスルニ付キマシテハ政友會ニ於テ
此持越ス爲ニ生ズル事情ニ付テハ完全ナル
諒解ガアル、其諒解トハ何デアルカト言ヘ
バ卽チ關係大臣ハ今多數ノ委員會ニ出
席シテ居ラレルノデアッテ、此減稅案ニ最モ
關係ノ深イ大臣ト交互ノ出席ニ依ッテ會議
ヲ開クト云フ完全ナル諒解ガアル、斯樣ナ
次第デアリマスガ故ニ、只今原君ヨリ總テ
ノ大臣ガ出席スルニ非ザレバ、此會議ヲ進
行セズト云フコトハ、此德義ヲ御忘レニナッ
タコトデアラウト私ハ考ヘマス(拍手)此意
味ニ於テ吾々ハ此狀態ノ儘進行スルコトヲ
希望ニ堪ヘナイノデアリマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02219310303&spkNum=12
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013・原惣兵衞
○原惣兵衞君 議長議長発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02219310303&spkNum=13
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014・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 原君何デスカ-
原君何デスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02219310303&spkNum=14
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015・原惣兵衞
○原惣兵衞君 私ハ議事進行ニ付テ發言ヲ
求メテ議長ニ御注意申上ゲマシタガ、議長
ハ之ニ對シテ何等ノ答辯ハアリマセヌカ、
直チニ此際休憩ヲセラレテハ如何デアリマ
スカ
〔「休憩々々」「進行々々」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02219310303&spkNum=15
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016・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 暫時休憩致シマス
午後一時三十八分休憩
午後二時四分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02219310303&spkNum=16
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017・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 休憩前ニ引續キ會
議ヲ開キマス、高橋熊次郞君
〔高橋熊次郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02219310303&spkNum=17
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018・高橋熊次郎
○高橋熊次郞君 只今議題ニナッテ居リマ
スル(「賴ムカラ簡單ニヤッテ吳レ」ト呼フ者
アリ)地租法案外六件ノ討論ニ入ルベク私
ハ此處ニ立ッタノデアリマスルガ、御註文ノ
如クニ成ベク簡明ニ致ス積リデアリマス
ルカラ、諸君ニ於カレマシテモ、成ベク靜
ニシテ戴カレテ連日ノ委員會ノ爲ニ疲レ
テ居リマスルカラ、左樣ニ豫メ御理解ヲ願ッ
テ置ク次第デアリマス
本稅制改正竝ニ減稅法ニ關スル諸案ハ、關
係スル所頗ル廣汎ニ亙ッテ居リ、又洵ニ複雜
ヲ極メテ居ルノデアリマスル、是ガ爲ニ世
間デハ或ハ誤解ヲ致シテ居ルヤウナ節々モ
少クナイノデアリマス、吾々モ之ヲ審ニ審
査ヲ致シマスルマデハ是ハ簡單ナル減稅
法、簡單ナル所ノ稅制ノ改正ニ止マルモノ
ナリト考ヘテ居ッタノデアリマスガ段々
審議ヲ進メルニ從シテ、疑義ハ百出ヲ致スノ
デアリマス、隨テ政府委員諸公ニ於カレテ
モ大臣ヲ初メ大童ニナッテ吾々ノ質問ニ
答辯セント努メラレクノデアリマスルガ、
奈何セン其根柢ニ於テ不合理ノ點ガ多イノ
デアリマスカラ、如何ニ雄辯ヲ振ハレテモ、
吾々委員ノ疑義ヲ明瞭ニスルニ足ラナカツ
タノデアリマス(拍手)甚シキニ至ッテハ、所
管大臣ガ是ガ、審ニ致サヌカラ政府委員ヲ
シテ答辯セシムル、其答辯ヲセシメヨウト
云フ政府委員ガ分ラナイト云フノデ、本日
ハ係ノ者ヲ探シテモ居ラヌカラ、何レ明日
ナドヽ云フヤウナコトデ、(拍手)ツイ〓〓遺
憾ナガラ此委員會ハ洵ニ議會ノ「レコード」
ヲ作リ、七十幾時間ノ長キニ亙ッタ、ソレデ
モ吾々ノ疑義ハ明カニサレナイノデアリマ
スルカラ此論議ニ付テハ多少ノ時間ヲ要
スルコトハ、豫メ大目ニ見テ戴カナケレバ
ナラヌノデアリマス(拍手)事數字ニ亙ッテ
居リマスルカラ、ドウカ若シ私ノ此處デ申
上グルコトニ疑義ガアッタリ、御批評ノ餘地
ガアッタリスルナラバ、後ニ與黨ノ諸君ガ又
登壇サレルノデアリマスルカラ、其人ニ覺
書ヲ渡シテ、演壇ノ上デ十分論議サレルヤ
ウニナサレテ戴キタイ、サウデナイト私ハ
思想ガ混亂致シマシテ、ツイ長引ク虞ガア
ルコトヲ、豫メ御斷リヲ致シテ置ク次第デ
アリマス(拍手)特ニ減稅ノ諸法案ト云フモ
ノハ、世間ガ待チニ待ッテ居ッタノデアリマ
ス、モウ痺レヲ切ラシテ居タノデアリマ
ス、世間デハ緊縮政策ト云フモノニ付テハ、
隨分不便ヲ感ジテ居ル、又不利益ヲ釀シテ
居ルノデアリマス、是ガ爲ニ昨今ノ經濟界
ノ大不況ト云フモノハ全部トハ申シマセ
ヌガ、其中ノ大ナル部分ト云フモノハ、政
府ノ緊縮政策ノ結果デアルト云フコトハ、
何人モ今日ニ於テハ否ム者ガナイノデアリ
マス(拍手)而モ世間ガ忍ンデ、之ニ對シテ
大ナル反抗心ヲ現サナイト云フコトハ、何
ニ在ッタカト云フト、緊縮政策ノ結果ハ、國
民ノ負擔ニ大ナル輕減ヲ致スダラウト、之
ヲ待チ設ケテ居ッタノデアリマス、然ルニ
一年經ッテモ、一年半經ッテモ、是等ノ事ガ現
レナイノデアリマス、又是ニ於テ疑義ヲ生
ジテ民政黨ニ於テ組閣當時ニ發表サレタ
ル、而モ畏多イ事デアリマスガ陛下ノ御
内覽ヲ得タト稱セラレル所ノ十大政綱、之
ヲ玩味致シテ見ルト、負擔ノ輕減トカ減稅
ト云フヤウナル氣分ガ此處ニ現レテ居ナイ、
何處カ讀ンデル中ニハサウ云フコトノ匂
ガスルヤウダガ、明カデナイト云フコトヲ
世ノ中デ言出シテ、是ガ大分輿論化致サ
ウトシタノデアル、殊ニ之ヲ昨年ノ總選擧
ノ前ニ當ッテ、政友會ハ明カニ減稅ノ項目ヲ
揭ゲテ天下ニ呼掛ケルト、與黨諸君ハ之ニ
對シテ慌テ出シタノデアル、其處デ新シク
八大政綱ト云フモノヲ拵ヘテ、之ヲ選擧宣
傳ノ旗印ト爲サレタト云フコトハ、ヤハリ
其道ニ掛ケテノ「オーソリティー」揃ヒト
吾々ハ感心ヲ致シテ居ッタノデアリマス
(拍手)併ナガラ其八大政綱ノ中ニ、國民ノ負
擔ノ輕減ト云フモノガアルカラシテ、國民
ハ之ニ對シテ大ナル期待ヲ以テ、此減稅案
ヲ迎ヘタノデアリマスガ、今日此減稅案ニ
臨ンデ、吾々ガ審議ヲ重ネテ見マスト、當初
ノ聲明ドコロデハナイノデアル、コンナ事
ヲサレテモ、國民ハ果シテ減稅ノ效果ト云
フモノヲ味ヒ得ルヤ否ヤト云フコトサヘ
疑問視サレルニ至ッタノデアリマス、諸君ガ
試ニ此數字ヲ御覽ニナレバ直グ分ルノデア
ル、此窮迫セル事情ニ於テ、此減稅額ハド
ノ程度ダト云フコトヲ御考ニナラナケレバ
相成ルマイト、私共ハ第一ニ考ヘルノデア
リマス、私共ハ此減稅額ガ洵ニ僅デアルト
云フヤウナ事ヲ考ヘマシタガ爲ニ吾々ノ
計算誤リデハナイカトサヘ考ヘ此數字ヲ
明カニ正確ニ致ス爲ニ、先以テ政府當局ニ
向ッテ、今回ノ減稅ノ昭和六年度ニ於ケル
モノ竝ニ昭和七年度以降、所謂平年度ニ
於ケルモノヲ、豫算ノ歲計總額ト對比致シ
マシテ、其比率ハドノ位ニナルカト云フコ
トヲ、吾々ハ計算シテ貰ッタノデアリマス
ガ、ヤハリ吾々ノ計算ト何等異ル所ガナイ
ノデアリマス、其數字ヲ見マスト、今年度
ニ於ケル數字ト云フモノハ僅ニ今年度ノ
豫算ニ對シテモ一分何厘、卽チ此內閣ガ初
メテ就任サレタル昭和四年度ノ當初豫算、
實行豫算ノ前ノ當初豫算ノ數字ト比較致シ
テ見ルト、今年ナドハ僅ニ-是ハ一寸餘
リ數字ガ大キクナリマシテ、緣ガ遠イヤウ
デアリマスカラ控へマスガ、政府ニ註文致
シタルモノハ昨年、五年度ノ當初豫算デア
リマス、昨年度ノ當初豫算ノ稅ノ收入ニ比
較致シマシタ時ニ、其現レタル數字ト云フ
モノハ、僅ニ一分一厘餘デアル、一分一厘
ト云フノハ何デアルカ、百分ノ一ヂヤアリ
マセヌカ、漸ク平年度ニ於テ二分何厘ト云
フ三分ニ稍、近イヤウナ傾ニナル百分
ノ三ヤ百分ノ一ノ負擔ノ輕減ヲサレテ、此
不景氣ニ直面致シテ今ヤ產ヲ失ハントシツ
ツアル者ガアリ、自分ノ生業ヲ奪ハレント
スル、根柢カラ破壞サレント致シテ居ル人
人ノ窮迫狀態ヲ救濟スルト云フコトニハ
餘リ小サナ數字デハナカラウカト、吾々ハ
改メテ驚愕ヲ致シタノデアリマス(拍手)斯
樣ナルコトカラ、次第ニ吾々ハ進ンデ色々
ノ檢討ヲ致シタノデアリマス
先ヅ第一ニ吾々ガ考ヘマシタノハ、大藏
大臣其他ノ所管大臣ノ御意見ヲ代ル〓〓承
リマシタガ、是等ノ數字ヲ以テシテハ足ラ
ズ、果シテ目下窮迫ヲ致シタル所ノ階級ノ
人々ヲ如何ニシテ救濟シ得ルカ、斯ノ如キ
少額ナル數字ヲ以テシテハ如何トモ仕難
イデハナカラウカ、私共ハ先ヅ農林大臣ノ
出席ヲ求メ、農林大臣ニ對シテ目下窮迫ノ
狀態ニ在ル所ノ農村ノ事情ヲ愬ヘテ、之二
對シテ減稅ハドレダケノ效果ガアルカト言
ヒマスト、是ハ平年度ニ於テ一千万圓內外
地租ノ減稅ヲ致スノデアル、地租ハ是ガ爲
ニ一千八十餘万圓減税セラレルノデアル、
田畑地租ガ減稅セラレルノデアルカラ、農
民ハ是デ救濟サレルノデアル、斯樣ナル御
言葉デアッタノデアリマス、其以外ニハ低
利資金ノ若干ヲ農村ニ融通スルノデアルカ
ラ、是等ト相俟ッテ農村ハ安キヲ得ルノデア
ルト云フヤウナ御答辯ガアッテ、私共ハ之
ニ付テ惜慨ヲ致シタノデアリマス、又商工
大臣ニ對シテ、目下最モ窮迫ヲ致シテ居ル
ノハ中小商工業者ノ狀態デアル又大ナル
工業家、大ナル商人ニ致シマシテモ、其基
礎ノ薄弱ナルモノガアル、殊ニ負債ヲ脊負
ウテ居ル者ハ非常ナル難儀ヲ致シテ居ル、
又會社組織ニ致シマシテモ、大ナル會社必
ズシモ資力ニ於テ決クル所ガナイトハ言ハ
レナイ、負債ヲ多ク脊負ウテ居ル所ノ大ナ
ル會社ト云フモノハ却テ小會社ヨリモ非
常ナル窮迫ノ狀態ニ在リ、世間デハ之ヲ弱
體會社、弱イ身體ノ會社ナリト致シテ、ソ
レゾレ救濟ノ途ヲ講ゼンケレバ相成ラヌト、
聲高ク叫ンデ居ル今日デアルカラシテ、之
ニ向フテ商工大臣ハ如何ナル方法ヲ執ラル
ルカト申上ゲマシタ所ガ、之ニ對シテハ何等
ノ具體的ノ政策ハナクシテ、唯二三法律ノ
改廢或ハ制定ニ依シテ、サウシテ之ヲ救フ、
殊ニ組合法ノ改廢ヲ行ッテ、組合ヲ作ラシメ
ル又一面デハ產業ノ統制法ニ依ッテ統制
ノ實ヲ擧ゲテ、是等ニ處スルト言フ、私ハ
負債ノ整理ニ對スル成案ヲ伺ッタ所ガ、何等
具體的ノ成案ガナカッタノデアル、而シテ一
面ニ於テハ大藏竝ニ其他所管ノ大臣諸公
ニ向ッテ、私ハ凡ソ整理スベキ負債ハドノ程
度ニ達シテ居ルダラウ、又殊ニ窮迫セル中
小商工農業者ガ有スル所ノ負債額ハ如何ト
云フヤウナコトヲ承リ、尙ホ一面ニ於テハ、
政府ガ若シ之ヲ救濟スルダケノ方策ヲ御持
合セテ居ルトスルナラバ何時マデノ期間
ニ於テ、ドレダケノ金額ガ運用セラルベキ
デアルカ、其基礎數字ノ大網ダケデモ示シ
テ戴キタイ、普通銀行、特別銀行ハ無論ノ
コトデアルガ、普通銀行ニ於テモ中小商工
農業者ニ向ッテノ金融ヲ圓滿ニスベク努力
サレテ居ルト云フ御話デアル、殊ニ市街地
ノ產業組合ノ基礎ヲ鞏固ニ致シ、之ヲ通ジ
テ中小商工業者ヲ救ハントシテ居ルト云フ
御話ガアリマシタカラ、之ニ向ケベキ所ノ
銀行資金或ハ預金部資金ト云フモノハド
レ程ノ餘力ガアルカト云フコトヲ承リタ
イ、之ヲ數字的ニ示シテ戴キタイト言ヒマ
シタケレドモ、吾々ハ其返答ヲ何遍カ促シ
マシタガ、遂ニ之ヲ承ルコトガ出來ナカッタ
ノデアリマス左樣デアリマスカラ、一百
カラ言ヘバ是等ノ御言明ハ唯口バカリデア
ル委員會ニ於テハ紙ノ上ト云フコトガ
一ツノ常套語トナリマシテ、此減稅案ハ紙
上ノ減稅案デハナイカト云フヤウナコトガ
問題ニナリマシタノデ、私ハ紙ノ上デモ宜
シイカラ、是等ノ數字ヲ承リタイト言ッタ
ノデアリマスガ、遂ニ紙ノ上ニモ何等現ス
コトガ出來ナイ、卽チ是ハ紙ヨリ以下ノ唯
口先バカリノ方策デアッタト云フコトガ、之
ニ依ッテ分ッタコトヲ頗ル遺憾ト致スノデア
リマス(拍手)
左樣ナ譯デ、此案ヲ吾々ガ審議スルニ當ッ
テ、色々ナル豫備知識ヲ得ル爲ニ、此法案ニ
現レテ居リマスル各條ニ就テノ疑義ヲ質ツ
タノデアリマスケレドモ、何等滿足スベキ
材料ヲ得ラレズ、又ソレニ對スル答辯ヲ得
ラレナカッタバカリデハアリマセヌ、實ハ此
改正法ノ不徹底ニシテ、寧ロ改惡サレタノ
デハナイカトサヘ、吾々ハ考ヘナケレバナ
ラヌヤウナ結果ニナッテ、此演壇ニ立ッタコ
トハ、私ノ最モ不幸トスル所デアリマス
卽チ私ノ不幸トスル所ハ、之ニ對シテ大ナ
ル期待ヲ持テル國民ノ意外トスル所デア
リ、如何ニ國民ヲ落膽セシムルモノデアル
カヲ、吾々ハ覺悟シナケレバナラヌコトヲ、
此場合改メテ闡明致シテ置キマス
殊ニ地租法ニ於キマシテハ其複雜ナル
コトハ一通リデハアリマセヌ、地租法ソレ
自身ニ於テ複雜困難ヲ極ムルバカリデナク、
之ヲ地方稅ニ移スニ於テハ、一面ニ附加稅、
一面ニハ特別地稅ト云フモノガアリ、府縣
竝ニ市町村ト云フ關係ヲ考慮スル時ニ於テ
ハ殆ド亂脈見ルニ忍ビザルモノガアルノ
デアリマス、ソレニ對シテ吾々ハ幾度カ質
問ヲ繰返シタノデアリマスケレドモ、內務
大臣ハ遂ニ之ニ對シテ一言ノ答辯モナサラ
ナイノデアリマス、細カイ所ハ忙シイカラ
私ハ知ラナイト云フノデ、政府委員ヲ帶同
シテ來ラレ、政府委員ノ答辯ニ對シテハ私
ハ全責任ヲ負フカラ、政府委員ニ聞イテ呉
レト云フヤウナコトヲ言ハレマシタ、併ナ
ガラ自分ノ所管ニ屬スル而モ大事ナル地
方稅ニ對スル所ノ諸案ニ對シテ、說明モ出
來ナイナドヽ言ッテ見タガ、餘程御困リニ
ナッタト見エテ、吾々ノ再三再四ノ質問ニ對
シテ、忙シイカラツヒ細カイコトヲ調ベル
遑ガナカッタト言フニ至ッテ、吾々ハ猛然ト
シテ起チ、此重大ナル法案ヲ議會ニ提出ス
ルニ當ッテ忙シイカラ能タ眼ヲ通シテ置カ
ナカッタ、提案ノ理由ヲ心得テ居ラヌナドヽ
云フ、不眞面目ノ態度ヲ以テ議會ニ臨ミ得
ルヤ否ヤ、輔弼ノ責任ヲ盡シ得ルヤ否ヤト
云フコトヲ聞イタ場合ニ、遂ニ其言ハ取消
サレタノデアリマス、是ハ大切ナ事デアリ
マス、內務大臣ハ此大切ナル提案ニ對シテ
サヘ、委員會ニ於テ議員ノ質問ニ對シテ說
明ノ出來ナイト云フ程、複雜シテ居ルト云
フヤウナル本案デアリマスカラ、其內容ガ
如何ナルモノデアルカハ、此事ダケデモ諸
君ハ御理解ニ相成ルコトダラウト吾々ハ考
ヘルノデアリマス(拍手)又農林大臣ニ於テ
ハ農林關係ノ事項、殊ニ目下問題トナッテ居
リマス開墾地ノ關係ヲ聞キマスト、ソレニ
對シテハ開墾ノ事ハ私ハ分ラナイト云フヤ
ウナコトヲ言ッテ見タリ、或ハ耕地整理ト云
フモノニ付テハ、耕地整理法ノ改正案ト云
フモノハ別ニアルニ拘ラズ、之ニ對シテハ
混同ヲシテ答辯ヲ致シタリスルノデ、是亦
失言問題ヲ起シマシテ、取消ヲサレタリ
出テ來ル大臣デ滿足ニ辯答シタ者ハ一人モ
ナイノデアリマス(拍手)又段々論シマス
ガ、此處ニ居ラレル海軍大臣ハ、淘ニ正直
デアリマスケレドモ、色々與黨諸君ヤ他ノ
閣僚カラ差口ガアッタト見エテ、出スト言ア
タ書類ガ出テ來ナカッタリ、或ハ一旦言切ク
タモノヲ後ニ少シ之ニ靄ヲ掛ケテ、少シ
怪シイヤウナコトニ言換ヘテ見タリ、其他
議員ノ銳キ質問ニ遭フテ取消ヲシテ見タリ、
其慘澹タル有樣ハ其儘此委員會ノ光景ヲ
國民ニ見セタナラバ、內閣倒壞ノ聲ガ直チ
ニ擧ルコトダラウト私ハ考ヘテ居ルノデア
リマス(拍手)而モ本會議ノ速記錄ハ官報ノ
附錄トナッテ國民ノ前ニ提出サレルノデア
リマスガ、委員會ノ速記錄及傍聽ハ國民一
般ニ開放サレテ居ナイノデアルカラ、此醜
狀ノ大半ト云フモノハ暴露サレズニ濟ムノ
デアリマスガ、新聞記者諸君ノ眼ニ映シタ
ル其一部分ノ記事ハ新聞紙ヲ通ジテ國民
ガ之ヲ承知シ其斷片的記事ノ末ヲ見テ吾
吾ニ對シテ感謝狀ヲ送リ、又ハ憤激ノ書面
ヲ寄越シ、激勵ノ手紙ガ每日山積シテ居ル、
此事實ヲ見テモ、國民反對ハ明カデアルト
吾々ハ考ヘテ居ルノデアリマス(拍手)斯樣
ノ次第デアリマシテ、吾々ノ疑義ガドノ程
度ノモノデアックカト云フコトヲ、國民ニ十
分徹底セシムル必要ガアルダラウト思ヒマ
スカラ、以下順ヲ逐ウテ成ベタ簡潔ニ論ゼ
ント欲スル者デアリマス、若シ私ノ言フコ
トガ國民ニ徹底シナイコトヲ欲スル諸君ハ、
成ベク大聲ヲ擧ゲテ御騷ギニナルコトヽ思
ヒマスガ、立憲政治家ハ左樣ナコトハナサ
ルマイト確信致シテ、私ハ安心シテ數字上
ニ亙ルコトナドモ二三申述ベタイト思ヒマ
スカラ、僅ノ闇御〓聽アランコトヲ豫メ希
望ヲ申述ベル次第デアリマス
吾々ハ先ヅ此稅制案ニ對シテ、國民ハ如
何ナルコトヲ期待シテ居ッタカト云フ事實
カラ申述ベテ見タイト思フノデアリマス、
卽チ此稅制案ニ依クテ輕減サレル吾々ノ負
擔ト云フモノガドノ程度デアルカハハ先程
大要ノ數字ヲ申述べマシタガ此詳シイコ
トニ付キマシテハ、ソレ〓〓吾々ノ同
僚ガ後カラ専門的ノ立場ニ立ッテ、消費
稅或ハ營業收益稅ト云フヤウナ方面ニ
モ、詳シク論及セラレルコトヽ思ヒマス
カラ、私ハ其大要ニ止メ、重ニ地租法其他
ノ大體ノコトニ付テ、私ハ申述ベテ見タイ
ト思フノデアリマスカラ、其點モ豫メ御諒
解ヲ願ッテ置キタイト思フノデアリマス、私
共ハ常ニ言フノデアリマス、私共ハ此金解
禁ノ善後策、之ニ依ッテ物價下落ヲ來シク、
低物價政策ヲ執ラレル一面ニ於テハ、先程
申上ゲル通リニ財政ノ緊縮、國民ノ消費節
約宣傳、之ニ努メラレク結果ト云フモノハ、
物價ガ非常ナル下落ヲ致シ、物價ガ下落ヲ
致シタト云フコトニ止マルナラ宜シウゴザ
イマスケレドモ、之ニ相伴ッテ消費滅ト云フ
コトヲ來シタノデアル、消費ガ減ジタ爲ニ、
生產ガ之ニ伴ッテ縮少シナケレバナラヌ、物
ハ安クナッテモ賣レ高ガ多ケレバ、辻褄ヲ合
セルコトガ出來ルノデアリマス、物價ハ三
割下ッタ、賣レ高ガ又半分ニナッタト云フト、
物價ガ六割ニ下ッタト同ジ打擊ヲ受ケルノ
デアリマス(拍手)是ガ爲ニ立行クベカリシ
商工業者、農業者、所謂生產業ト云フモノ
ハ遂ニ立行クコトノ出來ナイ、破壞狀態
ニ相成ッタト云フコトノ大ナル理由デアル
コトハ與黨諸君ト雖モ、之ニ對シテハ否
ミ得ナイ事實ナリト私共ハ考ヘルノデアリ
マス(拍手)左樣デアリマスカラヽ吾々ハ負
擔輕減ト云フコトヲ政府ニ當然要求スベキ
デアル、或ハ世界的ノ不況ト云フモノヲ持
出サレマスケレドモ、只今申上ゲルヤウナ
數字ト云フモノハ、主ニ金解禁ノ前後ニ起。y
タ所ノ一ツノ現象デアルノデアリマス、ソレ
ニ幾分ナリトモ世界ノ不況ガ觸ック、而シテ
之ニ對スル所ノ議論ハ既ニ盡サレテ居リマ
スカラ、私共ハ之ニ觸ハルコトハ致シマセ
ヌケレドモ、縱ンバ世界ノ不況ガ之ニ觸ッタ
ト致シマシテモ、事實ハ三割以上ノ物價ノ
低落、農村ニ於テハ半分、或ハ十分ノ一ト
云フ、蔬菜ナドハ低落振リヲ致シテ居ルノ
デアリマス、是等ノ事實ヲ吾々ハ三割ニ止
メルト云フダケノ雅量ガアル三割ノ物價
ノ低落ノ爲ニ受ケタル打擊ト云フモノハ
吾々ハ負擔ノ輕減ニ依ッテ賠償ヲシテ貰ハナ
ケレバナラヌト云フ權利ヲ持ッテ居ルノデ
アリマス、然ルニ政府ハ減稅或ハ減收ト云
フモノヲ見込ミマシテサウシテ色々ノ算
盤ヲ立テタノデアリマスガ、ソレデモ尙ホ
三億四五千万乃至四億万圓ト云フモノハ
ドウシテモ吾々ノ損失ニ歸シ、是ガ爲ニ吾
吾ハ、折角財界ガ好況ニナッタナドト云フコ
トヲ幾ラ言ハレテモ、新聞ヤ雜誌ヲ見テ、
貿易尻ガドウナッタト云フヤウナコトガ見
エマシテモ、吾々ガ浮ビ上ルコトノ出來ナ
イノハ斯ウ云フ大キナ國家的ニ重壓ヲ此
處ニ掛ケテ居ラレルト云フノハ大ナル一
ツノ癌ト致シテ、之ヲ取去ッテ貰ハナケレバ
ナラヌノデアリマス(拍手)卽チ吾々ハ今年
度ノ豫算ニ致シマシテモ、殊ニ昨年度昭和
五年度ノ當初豫算ヲ見マスト、約九億万圓
ノ稅收入ヲ吾々ハ豫算ノ上ニ見出スノデア
リマス、政府ニ、國稅トシテ十億、地方稅
トシテ其外ニ七億ヲ取ラレテ居ルノデア
ル是等ニ加ヘテ、或ハ煙草、鹽樟腦等
ノ所謂專賣益金、租稅ト同ジデアルト當委
員會ニ於テ大藏大臣ノ言明サレタル所ノ是
等ノ專賣益金、是等ノモノ或ハ登錄稅其
他ノ印紙稅法、或ハ其他ノ印紙ノ收入、所
謂印紙收入ト云フモノヲ之ヲ加ヘマスト云
フト、全部デ約二十億ニ垂〓ト致シテ居ル
ノデアリマス、私共ハ郵便收入デアルトカ、
或ハ特別會計ニ屬スル所ノ鐵道ノ運賃、或
ハ其他ノ鐵道ノ收入ト云フヤウナモノモ考
慮ニ入レル必要ガアリマスケレドモ、之ヲ
姑ク措イテ見ルノデアリマス、ソレデ吾々
ハ、二十億ト云フ負擔ヲ國家カラ强制サレ
テ居ルノデアリマスカラ、此二十億ト云フ
モノハ三割減、卽チ三割ト云フモノハ幾ラ
デアルカト云フコトヲ見ナケレバナラヌ
二十億ノ三割ハ取リモ直サズ六億万圓デア
ル六億万圓ト云フモノハ、物價下落ニ伴ツ
テ當然減ゼラルベキ國民ノ負擔デアル、是
ダケ負擔ヲ減ゼナケレバ、國民ハソレダケ
ノ重キ負擔ノ爲ニ壓迫サレルト云フコトニ
相成ルノデアリマス、ソレデアルカラ、之
ヲ一面五年度ニ於ケル所ノ收入ノ減少ノ一
億二千万圓前後、或ハ今囘提案サレタル減
稅ノ九百万圓、斯ウ云フヤウナモノヲ差引
キマシテモ、先程申上ゲタル通リ三億六七
千万圓乃至四億万圓ト云フモノハ吾々ノ
負擔ハ輕減サレズニ、ソレダケ殘"テ居ルノ
デアリマス、吾々國民ガ緊縮政策其他ノ消
極政策ニ依ッテ期待シ得タノハ、物價下落ニ
伴フ所ノ租稅ニ依ル或ハ政府事業ニ依ル
所ノ吾々ノ負擔ト云フモノハ當然減ゼラ
ルベキモノデアルト云フコトニアッタノデ
アリマス、ソレガ今日僅ナル所ノ減稅デ以
テ、此間ノ事ヲ胡麻化スト云フヤウナ譯ニ
當ルノデアリマスカラ、吾々ノ憤激スルバ
カリデナク、國民モ大ナル不滿ノ意ヲ現シ
ツヽアルト云フコトハ玆ニアルノデアリマ
ス(拍手)
諸君ハ日々ノ新聞ヲ御覽ニナッテモ、諸君
ニ同情スルヤウナ意見ト云フモノハ、少シ
モ今日ハ新聞紙上ニ現ハレテ居ナイ、吾々
委員會ノ言論ノ主ナルモノヲ、忠實ニ之ヲ
發表シテ下サルト云フヤウナコトヲ考ヘ
テ吾々ハ國民ニ吾々ノ疑惑ト云フモノガ
通ジ、政府ノ腹ノ底ガ分リ掛ケタト云フコ
トニ付テ、吾々ハ非常ニ喜ンデ居ルノデア
リマス、左樣デアリマシテ、私共ハ此減稅
ノ大綱ニ於テ、旣ニ吾々ノ期待シテ居ッタ所
ノ程度ノ減稅ト云フモノハ望ミ得ナカッタ
バカリデナク、其減稅ノ結果ト云フモノハ、
大資產家階級ニ重クシテ、中以下ノ、殊ニ
無產階級ニ對シテハ寔ニ輕微ナモノデア
ルト云フコトヲ、此場合ニ私ハ力說シナケ
レバナラヌノデアリマス、同僚岡田君竝ニ
木暮君ヨリモ、消費稅其他ニ付テ縷ミ御申
述ベニナリマシタ通リニ、私共ハ一般民衆
ノ負擔ニ歸スル所ノモノハ、此減稅案ニ於
テ何等ノ負擔ノ輕減ヲ爲サナイト云フコト
ニ付テハ大ナル不滿ヲ感ジテ居ルノデア
リマスル、一般ノ民衆ノ生活ノ安定ヲ期ス
ルナラバ、木暮君ノ言ハレタル如クニ、消
費稅ニ向ッテ大ナル輕減ヲ致サナケレバナ
ラヌノデアリマス、大藏大臣ハ我國ノ直接
稅ト云フモノハ是ハ地方稅モ含ンデ考ヘ
ナケレバナラヌカラシテ諸外國トノ國稅
ノ中ノ、直接稅ト消費稅トノ割合ヲ直チニ
比較スルコトハ當ラナイゾト言ッテ、委員會
ニ於テ大見得ヲ切ラレタノデアリマスガ、
何ト致シテ、地方稅ヲ之ニ加算致シマシタ
所ガ我國ノ地方稅ト云フモノハ他ニ類
例ヲ見ザル所ノ、家屋稅トカ、或ハ戶數割
ト云フヤウナモノガ、非常ナル重キ負擔ニ
相成ッテ居ルコトヲ吾々ハ數ヘナケレバナ
ラヌ、サウ云フモノマデ比ベテ、漸ク直接
稅ト消費稅ト云フモノハ是ガ諸外國ト對
比シ得ル程度位ニナルト云ウテ、何モ威張ッ
タ話デハナイ、サウ云フコトヲ伺シタ所ガ、
一般ノ民衆ノ負擔ガ輕クナッタト云フヤウ
ナ氣持ガ致サヌト云フコトヲ、私ハ此處デ
闡明ヲ致スノデアリマス、今日私ハ酒ノ
稅金ヲ捉ヘテ見マシテモ、今日酒ト云フモ
ノハ、前ニ大藏大臣デアラレタル濱口總理
大臣ナドノ言ハレマスルニハ、酒ヤ煙草ト
云フモノハ、飮マナクテモ人ハ死ニハシナ
イカラト言ハレタコトヲ、嘗テ耳ニ致シテ
居ルノデアリマス、今日ハ左樣ナコトハア
リマセヌ、殊ニ地方農家ニ於キマシテモ
或ハ無產階級ト申シマスルカ、或ハ勞働階
級ト云フヤウナ方面ニ於キマシテハ、酒ハ
唯一ノ嗜好物デアリマス、之ヲ安價ニ得ラ
レルト高價ニナルト云フコトハ此間ニ
非常ナル隔リガアルノデアリマス、目下ハ
洵ニ酒ノ値段ニ比較致シマシテ、稅金ノ割
合ハ高クナリマシタ、之ヲ假ニ酒ガサウ云
フ暴落ヲ致シタト云フコトヲ眼中ニ置カズ
シテ之ヲ見マシテモ、市價ノ三割乃至五割
ヲ下ラナイノデアリマス、斯ウ云フ高イ稅
金ヲ吾々ハ背負ウテ居ル、砂糖ニ對シテハ
今日ハ殊ニ五割乃至六割ニ近イ稅金ヲ、吾
吾ハ負擔スル割合ニナルノデアリマス、砂
糖ノ値段ハ此頃砂糖業者ノ「カルテル」ニ
依ッテ、幾分カ下落ヲ防イデ居リマスケレド
モ、世界的砂糖ノ生產過剩ノ結果ト致シテ、
日ニ月ニ砂糖ハ下落ノ趨勢ヲ辿クテ居ルニ
拘ラズ、僅カバカリノ稅ノ輕減ニ依ッテ、何
等負擔ハ輕クナッテ居ラヌト云フコトハ明
カデアリマス吾々ハ約四割乃至五割六割
ト云フヤウナ、過重ナル稅金ヲ負擔致シテ
居ルノデアリマス煙草ノ如キニ至ッテハ
委員會ニ於テ吾々ノ追窮ノ結果、遂ニ賣上
ノ七割ト云フモノハ政府ノ純益ニ收マルト
云フコトガ明カニナッタノデアル、官業デア
ルカラ暴利デナイナドト言ウテ、大藏大臣
ハ見得ヲ切ラレタノデアリマスケレドモ、
吾々ハ驚入ッタル事ナリト今日モ考ヘテ居
ルノテアリマス、殊ニ煙草ノコトニ關シマ
シテハ私ハ色々ノ風說ヲ耳ニ致シテ居リ
マス煙草ハ六月限リト致シマシテ、無理
ニ元賣捌制度ハ廢止セラレテ、政府ガ直營
ヲ爲サル、專賣局ガ直營ヲスルト云フコト
ニ相成ッテ居ルノデアリマスルガ、近頃世間
ヲ騷ガシテ居ル問題ハ、政府ハ此五年度ノ
年度末、卽チ三月中ニ大ナル收入ヲ得ナケ
レバ到底五年度ノ財政ノ辻褄ヲ合セルコ
トガ出來ヌト云フコトハ、議會デ問題ニナッ
テ、旣ニ是ハ天下周知ノ事實デアリマスル
ガ、之ヲ如何ニシテ糊塗スルカ、之ヲ如何
ニシテ辻褄ヲ合セルカト云フコトハ、今日
非常ナル問題ニナッテ居ルノデアリマス、其
一端ト致シテ、私ハ煙草ノコトヲ茲ニ中上
ゲタカラ、煙草ニ關聯シタコトヲ申上ゲル
ナラバ元賣捌ニ向ッテ-今日殘ノテ居ル
地方ノ元賣捌ニ向ッテ、ドウ云フコトヲ專賣
局ガ强制サレテ居リマスカ、今日地方ノ元
賣捌ヲ捉ヘテ、之ニ對シテ、本年ノ六月マ
デノ必要ナル數量ヲ、今日ニ於テ前ニ買溜ヲ
サセルト云フコトヲ强制ヲ致シテ居ルノデ
アリマス、是ガ爲ニ地方ノ元賣捌ハ、尠カ
ラザル所ノ金融上ニ於テ困難ヲ感ジ、四苦
八苦ノ狀態ニ在ルノデアリマス、私共ハ後
ニ申述ベルノデアリマスガ、將來ノ財政計
畫ト云ハズ、只今提案ニナッテ居ル六年度ニ
於テノ煙草收入ハ四月、五月、六月ノ三
箇月分ト云フモノガ、五年度ニ於テ既ニ賣
拂ッテシマッテ置クト云フコトニナレバ五
年度ニ於テハ或程收入ハ增加致シマセウ
ガソレダケ六年度ニ於テ歲入ノ缺陷ヲ生
ズルト云フコトハ當然ノコトデアルノデ
アリマス、斯ウ云フコトヲシテ辻褄ヲ合セ
ナケレバナラヌト云フヤウナコトヲ考ヘル
時ニ於テ吾々ハ此一般中產階級以下ノ負
擔力ノ最モ乏シイ、富ノ程度ノ最モ低イ所
ニ向シテ、而モ消費稅ト云フモノハ他ノ直接
稅ト違ッテ其所得ト云フモノヽ一部分ヲ
取去ルノデハナイノデアル、其人ハ所得ガ
有ラウガ無カラウガ、玆ニ購買力ヲ生ジタ、
消費力ヲ生ジタト云フ、其消費力、購買力
ノ一部分ヲ取去ルト云フヤウナ、亂暴ナル
稅金デアリマスルカラ私ハコンナ財政ノ
辻褄ヲ合セルコトニマデ、斯ウ云フ稅金ガ
使ハレルト云フコトハ、洵ニ私ノ情ノ忍ビ
ザル所デアリマスルカラ、特ニ此一項ヲ此
場合附加へタノデアリマスル(拍手)
斯樣ナコトヲ吾々ハ考フル時ニ於テ、洵
ニ此稅金ハ、一般的ニハ吾々ノ期待シ得ル
ヤウナ減稅ハサレナイト同時ニ、階級的ニハ
洵ニ悲シムベキ所ノ程度ニ相成ッテ居ルト
云フコトヲ、今日吾々ハ叫ザルヲ得ナイノ
デアリマス、ソレデ私共ハ國民一人當リド
ノ位ノ程度デアルカ、一分一厘何毛ト云フ
ヤウナ數字ハ一體國民一人當リニ致スト云
フト、ドノ位ノ程度ノ減稅ヲサレタノデア
ルカト云フコトヲ計算シテ見マスト、或
人ニ依ッテ之ヲ我國ノ國民ハ六千四百万ト
計算ヲ致シ、明カニスル爲ニハ六千四百四
十万ト云フヤウナ數字ヲ以テ基礎ト致シテ
之ヲ計算スルカラ、多少ノ違ヒハアリマセ
ウ、假ニ六千四百万ノ數字ヲ以テ之ヲ計算
シテ見マスト、昭和六年度ニ於ケル所ノ減
稅額九百十万圓ト云フモノヲ、六千四百万
ノ國民ニ割當テヽ見マスト、一人前ノ一年
ニ於テ減稅サルヽ額ハ幾ラデアルカ、十四
錢二厘ト相成ルノデアリマス、十四錢二厘、
敷島ヲ一ツ買フダケノ金モ吾々ハ輕減サレ
ナイデハアリマセヌカ(拍手)ソレハ一人分
一年デアル、月ニ致シマスト一錢二厘ニナ
ルノデアル、月ニ一錢二厘位ノ輕減ヲサレ
テ、私共ハ是ガ大ナル······(「馬鹿ナ議論ヲ
スルナ」ト呼フ者アリ)何ガ馬鹿ダ、此通リ
デハナイカ、是ハ政府ガ割出シタ數字カラ
吾々ハ割出シテ居ルノデアル、少シモ馬鹿
ナコトデハナイ、諸君ガ算盤ヲ採ッテ見給
ヘ、直グ分ル-平年度ニ於キマシテモ、
ドノ位ニナルカト云フト、詰リ二千五百万
圓ト云ヒマスケレドモ、是ハ八年度カラ二
千五百万圓ニナルノデアリマスカラ、七年
度ハ二千三百万圓臺デアルノデアリマス、
ソレデ其處ニ七年度ニ於テハ、平年度ト云ッ
テモ二百万圓ノ喰違ヒハアリマスケレド
モ、吾々ハ大體二千五百万圓ト目星ヲ著ケ
テ計算致シテ參リマスト年額一人前四十
錢ト相成ルノデアリマス、又月ニ割ルト三
錢三厘位ニナルノデアリマス、コンナ端タ
金ヲ吾々ガ負ケテ貰"テ、減稅ヲシテ貰ッタ
ト云ッテ、ドウシテ吾々ノ生活ガ安定ヲサレ
タリ、沈ミ行ク商工業ガ勢ヲ盛返シテ、サ
ウシテ產業ノ振興ガ圖リ得ラレルナドト云
フヤウナコトガ出來マスカ、何處ヲ捉ヘタ
ラソンナ音ガ出ルカト私ハ謂ハナケレバナ
ラヌノデアリマス(拍手)
斯ウ云フコトヲ吾々ガ考ヘマスル時ニ於
テ、私ハ洵ニ此減稅ト云フモノハ、寧ロ不
眞面目デアルト叫バザルヲ得ナイノデアリ
やっく、ソンナコトヲヤッテ、サウシテ百分ノ
一ト云フヤウナ、コンナ僅ナル減稅ヲ致シ
テ國民ノ負擔ヲ輕減スルノダナドト、一年
度ノ年度割ヲ云フト、國民ガビックリスルカ
ラ、態ト六年度分ノ合計ヲ致シテ、一億三
千四百万圓ノ負擔輕減ヲヤルノダナドト云ッ
テ、天下ヲ胡麻化スト云フヤウナコトハ
實ニ大膽ト云フカ、橫著ト云フカ、形容ノ
言葉ヲ私ハ知ラナイノデアリマス(拍手)斯
樣ナコトヲ致シテ、ソレナラバ減稅ニ代ヘ
ルニ、國民ノ負擔ヲ輕減スル何事ヲヤッタ
ノデアルカ、私共ハ商工業、產業ニ必要、
農業ニ最モ負擔ノ重課ヲ來ス所ノ是等ノモ
ノ殊ニ產業ノ中心デアル所ノ石炭ノ、此
運賃ニ付テハドウナッテ居ルカト云ウテ、態
私ハ鐵道當局ヲ委員會ニ來テ貰ッテ、是ヲ
說明シテ貰ック、鐵道當局ヲ態〓來テ貰フ必こ
要ハナイト思ッタカラ、商工大臣ノ所管デア
ルコトガ主デアルカラ、商工大臣ニ聽カウト
シタノデアルガ、商工大臣ハ分ラヌ、ソレ
デアルカラ、是ハ寧ロ當局者ヲ此處ヘ呼出
シテ聽イタ方ガ御便利デアル正確デアル
カラ、明日マデ待ッテ吳レト云フノデ、吾々
ハ忙シイノデ、成ベク早ク質問ヲ打切リタ
イト思ッテ居ッタノデアルガ、折角商工大臣
ノ懇望デアルカラ、其日ハ見合セテ、翌日
ヲ待ッテ是等ノ質問應答ヲ致シタノデアル、
デアルノニ何等徹底的ナ所ノ、吾々ノ滿足
シ得ルヤウナ答辯ハ少シモ出來ナカッタ、ソ
レダカラ其時分ニ、石炭等ニ付テ私ハ質問
ヲ致シタノデアル、石炭ニ向シテ、政府ハ近
頃-四月カラ始マル昭和六年度ニ於テ、
石炭ノ購入ハ昨年ニ比シテ約二割減ト云フ
コトヲ基礎ニシテ契約ヲナサレルヤウト云
フノデアル、然ルニ吾々ハ昨年ノ春聽イテ
居ッタノデアリマスガ、船舶業者、殊ニ石炭
ノ產地デアル所ノ北海道ニ於ケル所ノ船舶
業者ガ買入レル年契約ハ當業者トノ折衝
ノ時ニ、ドウ云フコトヲ致シタカト云フト、
約一割五分昨年ヨリモ値上ゲサレルト云フ
コトデ、船舶業者ハ此不況ノ際ニ當ノテ、其
石炭マデガ値上ゲサレルニ至ッテハ、立行ク
コトガ出來ヌト云フノデ、大恐慌ヲ來シタ
ト云フ事實ヲ私ハ耳ニ致シテ居ノタノデア
リマスルカラ、此事實ハ政府殊ニ鐵道當局
ガ、三百万噸ニ近イ石炭ヲ買入レルノニ、
昨年ヨリ二割安ク契約ヲスルコトガ出來ル
ト云フヤウナ事實ト對比致シテ、其開キハ
約三割五分ニ相成ルガ、是ハ何ノ爲デアル
カ、一ハ鐵道運賃ハ手前持デアル民間ノ
業者ハ政府ニ石炭ノ運賃ノ支拂ヲ致サナ
ケレバナラヌト云フコトガ、卽チ此結果ニ
ナルト云フコトヲ私ハ力說致シマシテ、當
局ノ意見ヲ求メタノデアリマスルガ、何等
徹底的ノ答辯ハナカッタノデアリマスル、殊
ニ輸出貿易ヲ振興スルガ爲ニ、輸出工業品
ニ對シテハソレ〓〓ノ運賃ノ割引ヲ致ス、
之ニ對シテ私ハ法ノ不備ヲ指摘致シテ、例
ヘバ貴重ナル品物ヲ噸扱ニスル、或ハ貸切
扱ニシテ、一車以内デハイカヌト云フヤウ
ナ扱ニスル、橫濱ノ埠頭ニ直送ヲシナケレ
バナラヌト云フヤウナコトヲ規定シテアル
ガ爲ニ、當然ノ效果ハ現レ得ナイノデア
ル是等ニ對シテ改正ノ事實アリヤ否ヤト
云フコトヲ伺ッタノデアリマスガ、御當局ニ
於テ答辯ハ出來ナカッタノデアリマス、斯ウ
云フヤウナ重大ナ事件ヲ、委員會ニ於テ吾
吾ハ質問ヲ致シタガ、假スニ時日ヲ以テシテ
モ、尙且ツ吾々ニ答辯ガ出來ナイ、吾々ハ
時間ノ節約ヲ圖ル爲ニ、書面ヲ以テ數字的
ノ基礎ヲ明カニセヨト迫ッテモ、是等ノモノ
ハ出來ナイト云フヤウナコトデ、如何ニ吾
吾ハ議事ヲ進メヤウト致シテモ進メ得ナ
カッタ主ナル原因ハ、政府當局者ノ答辯ヲ爲
シ得ナカッタ事實ガ、斯ノ如キ結果ヲ致シタ
ト云フコトガ、其眞相デアルト云フコト
ヲ、此場合ニ吾々ハ言明シテ置カナケレバ
ナラナイノデアリマス(拍手)
ソレカラ私共ハ色々質疑ヲ致シテ居ッタ
ノデアリマスガ、中々吾々ノ考ヘルヤウナ、
徹底的ナ御答辯ヲ得ルコトガ出來ナカッタ
ノデアリマス、私共ハ只今申上ゲタル所ノ、
各階級或ハ一般的ニ見マシテモ、稅ガドン
ナ割合ニナッテ居ルカト云フコトヲ、一人
當リニ致シテ之ヲ讀上ゲタノデアリマス、
併シ諸君御承知ノ通リ、國民ハ一億ダトカ、
何千万ナドト云フ數字ハ耳ニ慣レテ居リマ
セヌ、目ニ慣レテ居リマセヌ、何錢、何圓
何十、何百位ノ程度マデハ國民ハ慣レテ居
リマスガ、何億トカ何千トカ云フコトハ分
ラナイカラ、自分ハ、大成金ニデモナッタト
心得テ、政府ノ宣傳ニツイ乘ルノデアル、
ソレデアルカラ諸君ニ聽イテ戴クト共ニ、
私ハ國民ニ向ッテ聽イテ貰ハナケレバナラ
ヌカラ、ウルサイダラウガ、此減稅額ト云
フモノハ一人當リノ數字ニスルト幾ラニ
ナルノデアルカト云フコトヲ、ウルサイデ
アラウガチヨット申上ゲマスカラ、暫時ノ
間御辛抱ヲ願ヒタイ(拍手)例ヘバ租地ハ平
年度、昭和七年度以降ニ於キマシテハ約
一割五分ノ減稅ニナルノデアリマス、之ヲ
段ニ於テ計算致シテ見マスト、一段步當リ
ノ地租ト云フモノガ一年間ニ二十錢ニナ
ルノデアリマス、是ハ平年度二十錢-ソ
レカラ營業收益稅ハ平年度ニ於テ、法人ト
個人ト遠ヒマスガ、法人ニ於テハ五分五厘
ノ減稅ニナッテ居リマスガ、純益百圓當リト
云フコトニシテ、是亦二十錢ノ減稅ニナ
ルノデアリマス(「結構デハナイカ二十錢
デ·····」ト呼フ者アリ)結構ダト言ヒマスケ
レドモ、併ナガラ之ニ地方稅ガ附加サレル
ノデアリマスカラ、地方稅ノ附加稅ト云フ
モノハドッサリ課率ガ上ッテ來ルモノデア
ルカラ、餘リ結構ダナント云フヤウナ聲ハ
出セナイノデアリマス、個人ニ付キマシテ
ハドウナルカト云フト、是ハ七分乃至二割
八分以內ノ減稅ニナリマス、純益百圓當リ
ト云フモノガ二十錢乃至八十錢ノ減稅ニ相
成ッテ居ルノデアリマス、御承知ノ通リ千圓
以下ニ對スル稅率ト云フモノハ輕クナッテ
居リマス、ソレデ千圓以上ノモノト千圓以
下ノモノト對照致シマシテ、純益ニ付テ平
等ニ參クテ居リマセヌ、玆ニ階段ガ附イテ居
リマスカラ、百圓ノ純益ニ付テ二十錢乃至
八十錢ノ減稅ニナルノデアリマス、砂糖消
費稅ハ木暮君或ハ岡田君モ申サレマシタ
ガ、最モ酷イノデアリマスカラ、私ハ此處
デ又繰返スノデアリマスガ、砂糖消費稅ハ
平年度ニ於テ、平均八分ノ減稅ニナッテ居
リマス、此砂糖一斤ニ付テハ約五厘ノ減稅
ニナル、從量稅デアリマスカラ、量ニ付テ
之ヲ價格ニスルト云フト、一斤當リ二厘ト
カ二厘ト云フヤウナコトニナッテ居リマス
ケレドモ、量デ計算スルト一斤當リ約五
厘ノ平均減稅ニ相成ルノデアリマス、砂糖
一斤ニ付テ五厘ナント云フモノヲ減稅サレ
テモ、何處ニ甘味ガアルカト云フヤウナコ
トハ吾々ニハ分ラナイ(笑聲、拍手)ソレ
カラ織物消費稅ハ、平年度ニ於テ平均ニ
致シテ約一割ノ減稅デアリマスカラ、織物
査定價格ニ對スル一分ノ減稅ニナルノデア
ル、ソレデ三圓ノ査定價格デアルナラバ三
錢ニナルノデアリマス、僅カ銘仙一反ニ三
錢·三錢ノ減稅ニナッタカラト云ッテ今
マデ銘仙ナドニ觸リ得ナカッタ者ガ、銘仙ヲ
買込ムコトガ出來ルナドト云フコトヲ考ヘ
タラ、大間違デアルト謂ハナケレバナラヌ
ト思ヒマス(拍手)
斯ウ云フコトヲ私ハ考ヘルト、サウ云フ
時分ニ於テ、私共ハ大ナル失望ヲ感ズルノ
デアリマス、之ヲ更ニ階級別ニ直セバドウ
ナルカト云フ數字ヲ擧ゲテ居リマスガ、是
ハ時間ガ長クナリマスカラ、外ノ論旨ヲ進
メル上ニ於テドウカト思ヒマスケレドモ
是ハ大切ナ事デアリマスカラ、暫時ノ時間
ヲ拜借致シマシテ、成ベク早口ニ申上ゲマ
スカラ、御聽落シノナイヤウニ御願ヲ致シ
タイ、卽チ地租ヲ、之ヲ階級別ニ分ケ、人
員或ハ現在負擔額、減稅額、一人當リ減稅
額ト云フヤウニ分ケ、更ニ之ヲ備考ヲ附シ
テ、大地主ト云フ者、中地主ト云フ者、小
地主、其他ニ自作農デ免稅サレルモノト云フ
ヤウナモノヲ、玆ニ表ニ取ッテ見マスルト云
フト、斯ウ云フコトニナリマス、豫メ斷ッテ
置キマスガ、備考欄ニ吾々ガ記載シテ居リ
マス所ノ大地主、中地主ノ區別ト云フモノ
ハ、斯樣ニナッテ居ルノデアリマス、大地主
ト稱スル者ハ、地租二百圓以上納稅ノ者ヲ
標準ト致シマシタ、中地主ハ同ジク十五
圓納稅ノ者ヲ標準ト致シマシタソレカラ
小地主ハ十五圓未滿ノ者ヲ標準ト致シ、凡
ソ最高ガ二町步ノ田地ヲ持ッテ居ルト云フ
者ガ、此小地主ノ最高デアリマス、斯ウ云
フ風ニ區別致シテ見マスト云フト、地租ヲ納
ムル所ノ大地主ハ、今日四万二千人ニナッテ
居リマス、現在ノ地租負擔額ト云フモノハ、
ドノ位ニナッテ居ルカト申シマスルト千
三百六十五万圓ニナッテ居リマス、減稅額ガ
之ニ對シテ百十八万圓、一人當リノ減稅額
ト云フモノハ五十一圓九十錢ニナルノデア
リマス、中地主階級ヲ捉ヘテ見マスルト、
其納稅人員ハ百六万八千人ニナッテ居リマ
ス、是ノ現在ノ負擔地租額ト云フモノハ三
千七百五万圓ニナッテ居リマス、減稅額ガ五
百九十三方圓ニナッテ居リマスカラ、一人當
リニハ五十五錢五厘ニナッテ居リマス、小地
主ハドノ位ノ人員ニナッテ居ルカト申シマ
スルト先程四万二千人ト申シタノハ誤
リデアリマス、四百九十二万六千人デアリ
やく、サッキノ中地主モ誤ッテ讀ンダカモ知
レヌ、是ハ百六万八千人デアリマス(「全部
違っテ居ルノダラウ」ト呼フ者アリ)ソンナ事
ヲ言フト長クナリマスカラ、成ベク大人シ
ク御聽キナサイ-現在ノ小地主ノ負擔額
ト云フモノガ一千六百三十万圓ニ相成ルノ
デアリマス、減稅額ハ之ニ對シテ二百七十
万圓ニ相成リマスカラ、其一人當リノ減稅
額ハ〇·〇五四、卽チ五錢四厘ニナルノデア
リマス、ソレカラ二百圓未滿ノ地價ヲ持ッテ
居リマスル、自作ヲ致シマスル者ノ減稅ノ
人員ハ、御承知置キノ通リ是ガ五百六十三
万一千人ニナッテ居リマス、是ハ國稅ニハ關
係アリマセヌカラ、是ハ國稅ヨリ省イテ吾
吾ハ表ニ入レテ居リマセヌ、斯ウ云フコト
ニナッテ居リマス、デ表ニハ入レテ居リマセ
ヌガ、之ヲ吾々、例ヘバ申シテ置キマスガ、
現在ノ負擔額ハ九百三十万圓、減稅額ガ百
四十九万圓ニナッテ居ルト云フコトニナッテ
居リマスソレデ人員ハ私ハ、只今ノ二百
圓未滿ノ自作農者モ入レマシテ、合計ガ
一千百六十六万七千人、現在ノ地租額ハ之
ヲ除キ-之ヲト云フノハ二百圓未滿ノ
自作農、之ヲ除キマシタ減稅額ガ大約六千
七百万圓ニナッテ居ル、平年度ニ於テハ千八
十一万圓ト云フモノガ、卽チ減稅サレルコ
トニナルノデアリマスソレデ最後ニモウ
一應繰返シテ見マスルト、一人當リハ大
地主ハ五十一圓九十錢、十五圓未滿ノ地租
ヲ納ムル中地主ハ、僅ニ一人當リ五十五錢
五厘、ソレカラ小地主ハ-中地主ノ十五
圓未滿ト云ッタノハ間違デ、是ハ以上デアリ
マス(笑聲)笑ヲタリスルト尙ホ間違フカラ
氣ヲ付ケナケレバイケナイ、小地主ガ十五
圓未滿ノ者ハ五錢四厘トナル、ソレデ大地
主ガ五十一圓九十錢、中地主ガ五十五錢五
厘小地主ガ五錢四厘ト云フヤウナ割合ニ
ナル(拍手)是ガアベコベニナレバ、社會公
正ノ觀念ニピッタリ合フノデアリマス、大地
主ニハ餘計ニヤリ、小地主ニハ少クスルト
云フコトハ、是ハ苟モ社會政策ヲ加味シタ
ル稅制ノ改正ダナドヽ云フコトヲ仰シヤル
コトハ、御愼ミニナラレタ方ガ無難ダト吾
吾ハ思フノデアリマス(拍手)
營業收益稅デモ其通リデアリマシテ、大
ナル營業者、中ナル營業者、小ナル營業者
ト、斯ウ云フコトニ分ケマスト云フト、大
營業者ハ五千人、中營業者ハ二十五万一千
人、小營業者ハ五十二万四千人、是ノ合計
ガ七十八万人ニ相成ル、ソレデ現在ノ稅額
ガ三千三百八十六万圓ト云フモノハ大營業
者、千五百六十万圓ト云フモノハ中營業者、
九百十二万圓ト云フモノハ小營業者ニナツ
テ居リマス、之ヲ合計致シマシテ五千八百
五十八万圓ト相成ルノデアリマス、ソレデ
大營業者ニ對スル減稅額ト云フモノハ百二
十万、中營業者ニ對スル減稅額ガ百三十六
万、小營業者ニ對スル減稅額ハ二百六万、
其合計ガ四百六十一万ニナル、ソレデ一人
當リヲ計算シテ見マスト、大營業者ハ二百
四十圓、中營業者ハ五圓四十錢、小營業者
ハ三圓九十三錢、斯ウナルノデアリマス(拍
手)私ガ大營業者ト唱ヘタ五千人ノ營業者
ハ、收益稅二百圓以上納メル所ノ營業者ヲ
推算致シタノデアリマス、又中營業者ト云
フノハ、同ジク三十圓以上二百圓未滿ノ納
稅ヲ致ス者デアリマス、小營業者ハ同ジク
三十圓未滿ノ者ヲ捉ヘタノデアリマス、ソ
レガ府縣稅ノ附加稅ニ於テ激增ヲ致スト云
フコトニナルノデアルカラシテ、尙ホ不公
平ヲ增スト云フコトニナル
私ハ國稅ニ關スル限リニ於テ、是ダケノ
事ヲ言ッテ居ルノデアリマス、砂糖消費稅、
織物消費稅ト云フノハ、上中下ニ分ケテモ
宜シウゴザイマスガ、是ハ皆同ジコトデア
リマス、左樣デアリマスルカラ、是ハ一人
當リ十五錢九厘ト云フモノヲ均一ニ大資
產家モ、中資產家モ、下級ノ者モ、大營業
者モ、中營業者モ、下級ノ者モ、一律一體
ニ一人ニ付テ十五錢九厘ノ減稅ト相成ルノ
デアリマス、斯ウ云フ事ヲ考フル時ニ於テ、
此各階級別ニ分チマシタル負擔ト云フモノ
ハ洵ニ其當ヲ得ザルモノナリト吾々ハ考
ヘテ居ルノデアリマス、ソレデ私ハ此稅制
ト云フモノハ負擔ノ公平ト云フコトニ付
テハ、ドノ點カラ見テモ何等考慮サレタト
云フ跡ハ少シモナイト云フコトヲ高調力說
ヲ致スノデアリマス(拍手)殊ニ地租法ニ於
テハ少シモ······(「自分ノ內閣デハ增稅バカ
リシテ居ッテ人ノ內閣ニケチヲ付ケルナ」ト
呼フ者アリ)······何モ分ラズニソンナ彌次
ヲ飛バスト云フト、私ハソレニ付テ辯明ヲ
スル必要ガ生ジマスト、私ノ言論ハ進行致
シマセヌ、民政黨ノ幹部ガソレデモ差支ナ
イト云フナラバ、私ハソレニ對シテ多少ノ
意見ヲ申述ベマス-地租ノ改正ニ依リマ
ス不公平ト云フモノヲ吾々ハ考ヘマス時ニ
於テ、洵ニ負擔ノ公正ト云フモノハ、再ビ
此處デ以テ裏切ラレルノデアリマス、ロヲ
極メテ各地方的ニ負擔ノ公平ヲ得タ、各地
目別ノ負擔ノ公正ヲ圖ッタト言ハレマスケ
レドモ、各地方別ナドニ付テハ、少シモ負
擔ノ公正ナドハ顯ハレテ居リマセヌ、ソレ
デ從來現行地價ノ額ニ於テ非常ニ低カッタ
ト言ハレル地方ニ於テハ、今囘ノ改正ニ
於テ之ヲ引上ゲタカラ、公正ニナッタト言ヒ
マスケレドモ、其引上ト云フノハ僅デア
ル、私ハ幾ラ公正ニヤラウト云ヒマシテモ、
サウ急激ナル增加ト云フモノハ中々困難デ
アル、殊ニ地方ノ人々ヲ相手ニ致シテ、賃
貸價格ト云フモノヲ調査致シタノデアリマ
スカラ、容易ニ何倍、何十倍ト云フヤウナ
ル所ノ引上ト云フモノハ賃貸價格ニハ容
易ニヤレナカッタト云フ事情ハアリマセウ
ガ、サウ云フ事情ハ私ハ察知スルノデアリ
マスケレドモ、此結果ト云フモノハ少シ
モ公平ニ相成"テ居ラヌノデアリマス、左樣
デアルカラ、此點ニ付テ調査シタノデアル
カラ、此調査資料ハ確カデハナイカト言。ツ
テ、大藏大臣ヤ政府委員ノ方々ガ極論サレ
ルカラ、サウナラバ此賃貸價格ノ出テ來ル
基デアル土地ノ賣買價格ト云フモノニ付
テ相當ノ調査ガアルダラウト言ッテ、是ノ
提出ヲ求メタ所ガ、中々御提出ニナラヌノ
デアリマス、其間ニ一部分ニ付テ政府委員
ハ出サナケレバナラヌト觀念ヲ致シテ、之
ヲ出サウト努メルト云フト、吾々ハ註文モ
シナイノニ、參與官ト云ヒマスカ政務官
ナドガ飛出テ、サウシテソレハ政府デ以テ
調査シタコトガナイトカ、或ハドウダトカ
言フ、調査シタコトノナイモノガ、何故主
稅局ノ年報ニ揭ゲテアルカト言ッテ突込ム
ト左右ヲ顧ミテ聞イテ見タリシテ、アル
ケレドモ、アレハ杜撰ナモノデ當テニナル
モノデハナイ、杜撰ナモノデ當テニナラナ
イト云フコトガ、政府當局トシテ言ヘルカ
ト言ッタ所ガ、何カ變手古ナ顏ヲサレタノデ
アリマスガ、遂ニ其事デ吾々ニ酷ク突込マ
レルト云フトイカヌ、簡單ニヤラレナイト
困ルト思ッテ、到頭ソレヲ出シテ來タノデス
カラ、私ハ簡單ニヤリ、其出シテ來タモノ
ノ材料ヲ能ク見テミマシテモ、一向吾々ノ
腑ニ落チルヤウナコトハナイ、ヤハリ今日
不平均ニナッテ居ルヤウナ處ハ賣買價格ガ
安イカト思フト、私ノ比較シテ居ル所ノ隣
縣ナドニ較ベテハ非常ニ高イノデアル、此
處ニハ高知縣ノ選出ノ方モ御出デニナリ
マセウガ、高知縣ノ地價ト云フモノハ、
殊ニ畑ノ地價ハ非常ニ是マデ安イ、天下ノ
不公平ト云フコトノ標準ニサレテ居ッタノ
デス、今度僅ニ上ッタ、ケレドモマダ之ヲ
比較シテ見マスルト、非常ニ跛ニナッテ居
ルノデアル、ソレデ私ハ之ヲ雪國ノ東北地
方ト比較スルナドト云フコトハ言ハナイ、
私ハ二毛作ガ取レ、三毛作モ取レルト云フ
ヤウナ此土地ヲ、東北ノヤウナ一毛作ガ漸
クデアリ、七年ニ一囘早冷ガ來テ、不作デ
アルト云フコトガ確實ダト云フヤウナ土地
ト吾々ハ比較スルトハ言ハナイ、隣縣ノ
香川縣ト比較シ、德島縣ト之ヲ比較シテ見
ルノデアル、卽チ高知縣ニ於テノ今マデノ
地價ハ一段步平均ニ付テ二圓五十七錢四
厘ニナッテ居ッタ、ソレガ香川縣デハ十二圓
五十錢ニナッテ居ッタノデアル幾ラ高知縣
ガ地所ガ惡イ、地味ガ惡イ、山ガ多イト言ッ
テ見タ所ガ、二圓五十七錢四厘、香川縣ガ
十二圓五十錢、徳島縣ガ十二圓七十八錢三
厘トナッテ居ル、今度改正ヲ致シテ甲乙ガナ
クナッタ、玆ニ不公平ノ事實ガ無クナッタト
言フ賃貸價格ヲ睨ンデ見ルト、高知縣ガ僅
カ上ッテ二圓五十何錢ノモノガ三圓十三錢
二厘ト相成リ、德島縣ガ十二圓五十二錢九
厘ト相成リ、香川縣ガ十一圓五十八錢四厘
ト相成ッタ、三圓ト十一一圓、三圓ト十一圓、
是デ負擔ノ公正ガ出來マスカ、山ガ多イ、
七割八分ト云フモノハ山畑ダ、斯ウ云フヤ
ウナコトヲ政府委員ガ言ヒマスカラ、ソレ
ナラバ山梨縣ノ山、山形縣ノ山ハドウナル
カ、山ヲ冠ニ被ッテ居ルヤウナ縣ハ殆ド大
半ハ山デアルト云フコトヲ見ナケレバナラ
又、其土地ノ大半ハ山畑デアル所ノ山形縣
ガ、今日ノ賃貸價格ガ八圓二十錢八厘、山梨
縣ガ八圓四十四錢ニナルノデアル、之ヲ三
圓ニ比較致シマスト、非常ナ差デハナイカ、
是デモ負擔ノ公平ハ期シ得タト言ハレルカ
ト言ッテ吾々ハ突込ンダノデアリマス、然ル
ニ政府ニ於テハ色々言ハレマシテ、サウシ
テ主稅局年報ニ出テ居ルヤウナル、此土地
ヲ上中下三段ニ別ケタ所ノ、標準地ニ於ケ
ル所ノ年々ノ賣買價格デアルトカ、賃貸料
デアルトカ云フヤウナモノヲ、吾々ニ見セ
マイト努メラレタルモノデアリマスガ吾
吾ノ追窮ガ甚シカッタモノデアリマスカラ、
之ヲ表ニシテ吾々ニ渡サザルヲ得ザルニ
至ッタノデアリマス、其表ヲ見マシテモ、私
ノ疑問ハ益〓深クナルバカリデアリマシテ、
何等吾々ノ疑問ヲ氷解スルニ足ルモノハ少
シモゴザイマセヌ、卽チ稅第三十三號ト致
シテ、昭和四年土地賣買價格表ト云フモノ
ヲ吾々ニ見セラレタ、是ハ一段步當リデア
リマス、卽チ私共ガ比較致シマス所ノ高知
縣ノ如キニ至リマシテハ、畑ヲ例ニ取リマ
スト、上等ガ四百圓デアリマス、中ガ二百
五十圓ニナリ、下ガ百五十圓ト相成ッテ居
リマス、之ニ對シテ德島縣ハ幾ラデアルカ
上ガ三百二十圓、中ガ二百六圓、下ガ百十
九圓デアルノデアリマス、又香川縣ノ畑ノ
賣買價格ハ、上ガ三百圓、中ガ百八十圓、
下ガ七十圓ト相成ッテ居ルノデアリマス、此
事ヲ私共ハ見ナケレバナラヌノデアリマス、
中ヲ取リマシテモ高知縣ノ二百圓ニ對シテ
香川縣ハ百八十圓デアル、香川縣ノ方ハ安
イノデアル又下ノ方ヲ見マシテモ、高知
縣ノ百五十圓ニ對シテ香川縣ハ其半分以下
ノ七十圓デアルノデアリマス、ソレデ私ハ
賃貸價格ガ約三層倍、四層倍ニ近イ所ノモ
ノガ盛ラレテ是デ香川縣ガ高知縣ニ比シ
テ非常ナル重課ヲ地租ノ上ニ於テ受ケルト
云フコトニナッテ、是ガ世ノ中ニ發表サレ
タナラバ、囂然トシテ不滿ノ聲ガ起上ルダ
ラウト思フ、山形縣ノ如キニ於キマシテモ、
上ノ畑カ三百圓、中ノ畑ガ二百圓、下ノ
畑ガ百二十圓ニナル、ソレカラ山梨縣ノ如
キハ上ノ畑ガ五百圓、中ノ畑ガ二百五十
圓、下ノ畑ガ百五十圓ニナッテ居ルノデア
リマス、斯ウ云フコトヲ考慮ニ入レマス時
ニ於テ、政府ノ今囘標準ニ取リ入レラレタ
ル所ノ賃貸價格ト云フモノハ、何等公平、
公正ナモノヂヤナイ、舊地價ト何等其點ニ
於テハ變ッタコトガナイト云フコトヲ、私ハ
此場合明カニ諸君ノ御理解ヲ願ハナケレバ
ナラナイノデアリマス政府ガ此賣買價格
ト云フモノヲ發表ヲシナイ、近頃ニナッテ年
報ニ揭ゲナイヤウニナッタナドト云フコト
マデ言ッテ、吾々ノ質問ヲ避ケヨウトサレ
タ、卑劣ニシテ陋劣ナル心事ニ至ッテハ、私
ハ之ヲ見遁スベカラザルモノト思ッタノデ
アリマスケレドモ、其心中ノ苦シサト云フ
コトヲ思ヒ遣ッテ、之ヲ許シテヤッタノデア
リマス(拍手)
斯樣ニ土地ニ於テハ不公平ニナッテ居リ
マス、之ラ色々ナル例ヲ擧ゲテ申セバ、色々
ナ比較モ出來ルノデアリマスケレドモ私
ハ煩ヲ避ケテ是ハ論ジマセヌ、田ニ於テモ
同樣ナルコトガアリマス、殊ニ宅地ニ於テ
ハ甚シイモノガアルノデアリマス、負擔ノ
激增ヲ避ケルト云フロノ下カラ、負擔ガ五
倍ニモ六倍ニモ激增スルト云ッテモ、是デ以
テ負擔ノ激增デナイナドト云フコトハド
ウシテ言ハレマスカ、私ハ此五倍六倍ト云
フコトハ、何時デモ此稅ヲ考ヘル時ニ於テ
ハ地租總額ニ於テハ本稅ノ約二倍ト云フ
モノガ地方稅ニ於テ課セラレルト云フコ
トハ、吾々ハ一時デモ頭ヨリ去ッテハイケ
ナイノデアリマス(拍手)今日ニ於テハ殆ド
地租ト云フモノハ是ハ國稅デアルカ地方
稅デアルカ分ラヌ程ノ稅額ニ相成シテ居ル
ノデアリマス(拍手)諸君ハ地租委譲ニ反對
サレルト雖モ、事實ニ於テハ地方稅ノ方ガ
餘計ナノデアル倍額モ取ッテ居ルノデア
ルカラ、事實ニ於テハ地方稅ニ委讓サレタ
ヤウナ形ニ相成ッテ居ルノデアリマス、ソレ
デアリマスカラ、私ハ宅地ニ於テハドノ位
ニナッテ居ルカト云フコトヲ、諸君ニ能ク頭
ニ入レテ戴カナケレバナラヌ、都會ノ人ハ
分ラナイカラ、マダ鳴ヲ潜メテ居ルノデア
リマスガ、是等ノ事實ヲ知ックナラバ、神經
ノ銳敏ナル所ノ都會地ノ住民ハドンナコト
ヲ言出スカト、吾々ハ心配シテ居ルノデアリ
マス(「都會中心ノ民政黨ハ苦シカラウ」ト呼
フ者アリ)都會中心ノ民政黨ハ苦シカラウ、
ソレハ私共御察シスルモノデアルガ、公ト
私ト云フモノハ判然區別ヲシナケレバ相成
リマセヌカラ、私ハ苦痛ヲ忍ンデ、玆ニ六大
都市ノ地租竝ニ附加稅ノ增加額ハ、ドレダケ
ガ宅地ニ於テ示サレルカト云フコトヲ、改
メテモウ一度諸君ノ御耳ニ達シ、國民ノ前
ニ之ヲ讀上ゲテ見タイト思フノデアリマス
卽ナ六大都市ハ東京大阪京都神戶名古屋
橫濱ヲ指スト云フコトハ諸君ノ御承知ノ
通リデアル、ソレデ東京市ニ於テハ六百四
十四万圓、大阪ニ於テハ五百十八万圓、京
都ニ於テハ百二十四万圓、神戶ニ於テハ百
二十二万圓、名古屋ニ於テハ百六十二万圓、
橫濱ニ於テハ百八十一万圓、六市ノ合計ガ
千七百餘万圓ニ相成ルノデアリマス、之ヲ
平均致シマスト、二倍七割ノ大增稅ニ相成
ルノデアリマス、卽チ二十七割ニ相成ルノ
デアリマス、東京市ニ於テハ二倍七割、大
阪ニ於テハ二倍九割、京都ニ於テハ二倍七
割神戶ニ於テハ二倍三割、名古屋ニ於テ
ハ三倍餘、橫濱ニ於テハ二倍一割ノ數字ニ
相成ルノデアリマス、個人ニ付テ之ヲ考ヘ
テ見マスト、最高ノ限度ハ三倍八割ニ止メ
ルト云フ法ノ精神デアル、併ナガラ附加稅
ノ法定ノ制限率ニ止メルト假定シテ考ヘテ
見マシテモ、本稅ニ附加稅ヲ加算スレバ、
是ハドレダケニナルカト云フト、最高限ノ
人ハ五倍二割マデハ賦課サレルト云フコト
ニ相成ルノデアリマス、斯ウ云フ激增ヲ致
シテモ、是デモ激增ニナラヌ、三倍八割デ
止メル、ソレ以上ハ激增デアルガ、其以下
ハ激增デナイナドト云フコトハ其理窟ハ
何處カラ生ミ出サレルカト吾々ハ考ヘナケ
レバナラヌ(拍手)コンナ大激增ト云フモノ
ハ果シテ此儘デ濟ムカ、地主ハ我慢スルダ
ラウ、併ナガラ之ヲ借リテ居ル借地人或ハ
借家人ト云フモノニ、之ガ轉嫁サレルカサ
レナイカト云フコトニ付テ、更ニ重大ナル
問題ガ起ッテ參ルノデアリマス(拍手)或ハ
是ハ物價下落、不景氣ノ今日デアルカラ
地主或ハ家主ハサウ云フコトハヤルマイ
ト云フノガ政府當局ノ御辯明デアリマス、
併ナガラ今日ノ如ク經濟界ノ窮迫シタル狀
態ニ於テ、當然ヤルベキモノヲ、其人ノ道
德心ノ抑制ニ依ッテ之ヲヤラナイナドト云
フコトハ吾々ハアリ得ナイデハナイカト
考ヘラレルノデアリマス、法律ハ當然之ヲ
ヤリ得ルヤウニ規定ヲ致シテ居ルノデア
ル、卽チ諸君ノ御承知ノ通リ、借地法、借
家法ト云フモノハ、何ヲ物語ッテ居ルカト云
フコトヲ、新シク諸君ノ前ニ御紹介ヲ致サ
ナケレバナラヌノデアリマス(拍手)
卽チ借地法ノ第十二條ニ於キマシテハ、
土地ニ對スル租稅-之ニ色々ナ關係以外
ノコトガ書イテアリマスカラ、是ハ省キマ
スルガ、土地ニ對スル租稅ガ、地代又ハ借
賃ニ比較シテ不相當ナルニ至リタル時ハ
一定ノ期間地代又ハ借賃ヲ增加セザル特約
ナキ時ニ限リ請求スルコトヲ得ト書イテア
ル是ハ土地ニ對スル租稅、地租ト云フモ
ノガ上ッタ場合ニハ特別ノ約束ガナイ限リ
ハ地代又ハ借賃ト云フモノヲ增加スルコ
トガ出來ルト云フ法律ノ規定ガアルノデア
リマス、ソレカラ借家法ノ第七條モ、建物
ノ借賃ニ付キ云々トアッテ、是ハ同ジ規定ニ
ナッテ居ルノデアリマス、ソレデアリマスカ
ラ地租ノ增加ノ爲ニ、借地人、借家人ハ法
律上當然値上ノ請求ヲ受ケルト云フコトニ
相成ッテ居ル、是ガ一人ニ付キ最高五倍二割
マデ上ルト云フ今日ニ於テ、借地人ヤ借家人
ノ脅威トナラナイト云フコトハ誰ガ言ヒ
得ルカト私ハ論斷セザルヲ得ナイノデアリ
マス(拍手)
私ハ斯ノ如ク次第ニ推論ヲ致シテ見マス
ルト、此地租法ト云フモノハ、幾多ノ不合
理ヲ私共ノ前ニ陳列ヲサレテ居ルノデアリ
さい、私ハ內容ニ付テソレ〓〓政府ノ答辯
ヲ求メタノデアリマスガ、頗ル曖昧模糊ナ
ル答辯ヲ致シテ、到底私ノ質問ヲ正面カラ
之ヲ論難スルコトガ出來ズ、遂ニ私ノ質問
ノ要旨ハ之ヲ認メタノデアリマス、併ナガ
ラ意見ガ違フト言ッテ逃ゲヲ打ッタノデアリ
マスガ、私ノ眼カラ見マスレバ、是ダケノ
モノヲ減稅ヲ致シタト云フコトヲ言ヒタイ
ガ爲ニ、態ト增稅ニナル部分ヲ隱シテ置イ
タト云フ事實ガ一ツ、尙ホ今囘ノ賃貸價格
ハ各地目ノ間ニ、所謂田地田畑ト宅地ノ間
ニ多少不平等トナル、上ッタモノガアリ
下ッタモノガ生ズルカモ知レヌケレドモ、賃
貸價格全體ノ上ニ於テハ大ナル增減ヲ示サ
ナイ、大ナル增加ヲ致サナイト云フヤウナ
コトヲ建前ニシタト云フロガアルモノデア
リマスカラ增加スル部分ハ色々工夫ヲ致
シテ、サウシテ之ヲ增加セシメナイヤウニ
數字ヲ作上ゲタト云フコトガ、事實ノ上ニ
現ハレテ居ルノデアリマスガ、ソレ等ノ事
實ハ澤山アルヤウデアリマスガ、主ナルモ
ノヽ二三ニ付テ私ハ玆ニ紹介ノ勞ヲ執ッテ
諸君ノ御批判ヲ仰ギタイ、斯樣ニ考ヘテ居
ル次第デアリマス、卽チ第一點ハ自作農ノ
免租地デアリマス、私ハ自作農免租地ニ於
テハ當然今囘賃貸價格ガ制定ヲサレ、地
價ニ代ルコトニナッテ、サウシテ田畑ニ付テ
大體ニ於テ幾分カ總平均ハ下ッテ居ルノデ
アリマス、賃貸價格ガ下ッテ居ルノデアリ
マスカラ、二百圓未滿ノ地價ヲ有シ自作ス
ル者ハ、之ヲ國稅地租ヲ免除致シタノデア
リマシテ、是ハ府縣稅ノ特別地稅ト云フモ
ノヽ課稅標準ニ變ッテ參ルノデアリマス、國
稅ニ於テ免稅ヲサレルノデアリマスガ是
ガ賃貸價格ノ二百圓未滿ト云フコトニ改正
ヲサレ、是デ舊地價ニ換算シテ見マスト
約二百四十圓マデハ免稅ヲサレル形ニ相成
リ、是ダケ課稅基本額ハ增加サレルト云フ
コトニナル、卽チ免稅點ノ引上ト同ジヤウ
ナ效果ヲ持ッテ居ル、詰リ小農保護ノ意味ガ
此處ニアルンダナドト言ッテ威張ラレルノデ
アリマスガ、其免稅ニナル免稅點ガ引上ツ
テ、ドレダケノ面積ト云フモノガ、之ニ依ツ
テ保護ヲ餘計ニ加ヘルコトニナッタカト云
フト、約二十二万町步デアルノデアリマス、
今迄ノ自作農ノ面積ハ約百三十万町步、今
囘ノハ百五十二万町步ニ相成ルノデアリマ
ス、左樣デアリマスカラ、其差二十二万町
步ト云フモノハ今囘更ニ國稅ノ免稅ヲ受
クルノデアリマス二十二万町步ニ對スル
所ノ四·五ト云フ在來ノ稅率ヲ掛ケマスト、
是ガ百二十五万圓ニナルノデアリマス、三·
八ヲ掛ケマシテモ、是ガ百十三万圓ニナル、
百二十五万圓乃至百十三万圓ト云フモノ
ハ當然是ハ減稅ニナラナケレバナラヌ、
今度ノ地租額カラ是ハ當然引去ラレテ居ラ
ナケレバナラヌノデアリマスガ、此事
實ガナイノデアリマス、左樣デアリマ
スカラ、全體ニ於テ私共ハ是ダケノ數字
ト云フモノハ增稅ニ相成ッテ居ル形ニ
ナッテ、此減稅案ガ現ハレタト云フコト
ヲ看遁スコトハ出來ナイノデアリマス
ソレデ吾々ハ色々ナ工夫ヲシテ覗イテ見
マシタガ、色々計算ヲシテ見マシタガ、兎
モ角總體カラ此數字ヲ引イテ計算シテ見マ
シテモ、最少限度ニ於テ八十三万餘圓ト云
フモノガ、ドウシテモ是ガ增稅ニ相成ッテ居
ル、是ハ減ズベキモノヲ減ジテ居ナカッタト
云フコトヲ、私共ハ明カニ致シタノデアリ
マス(拍手)卽チ改正法ニ於テハ賃貸價格二
百圓未滿ノ免租地ト云フモノハ田畑合計
約百五十二万町步ニナッテ居ル、詳シク言フ
ト百五十二万一千二百二十一町步デアリマ
スガ、卽チ現行ノ地價二百圓未滿ノ免租地
約百三十万町步ニ比シ、詳シク言フト百三
十万二千八百九町歩デアル、約二十二万町步
ノ增加ニナッテ居ルノデアリマスカラ、免租
地ノ增段別ニ對スル地租ト云フモノハ、斯
ウ云フ計算ニ相成ルコトヽ思フノデアリマ
ス、卽チ現行自作農ノ免租地ノ段別百三十
万町ニ對スル地租額ハ七百三十九万圓デア
ルカラ、二十二万町步ニ對スル免租額ト云
フモノハ百二十五万圓、斯ウナルト云フコ
トハ先程申上ゲタ通リデアリマス、是尺
諄クナリマスガ、參考ノ爲ニ中上ゲルト
改正ノ方デハ免租地ハ七百八十二万圓ニ
ナッテ居リマスカラ、之ヲ百五十二万町步デ
割ッテ、サウシテ二十二万町步ヲ掛ケ合セル
ト百十三万圓ト云フ數字ガ出テ參ルノデア
リマス、ソレデアルカラ免租地ノ段別ノ內
二十二万町步ト云フモノハ、國稅カラ當然
落サレテ地方稅タル特別地稅ノ課稅基準
トナルモノデアルカラ、此分ノ地租額百二
十五万圓ト云フモノハ、當然吾々ハ改正ノ
基準タル地和總額カラ落シテ置カナケレバ
ナラヌ、ソレヲ加ヘテ增減ガ餘リナイト言
フ、吾々ハ之ニ對シテ大ナル不滿ヲ懷イテ
居ルバカリデナク、是ダケノ增稅ニナルヤ
ウナコトヲ來シテ居ルト云フコトハ明カデ
アル、ト云フノハ此部分ヲ當然除イテ、サ
ウシテ是ダケノモノデ增減ナキ範圍ト云フ
コトデナケレバ、此當然隱レタル所ノ百二
十五万圓ト云フモノハ、其他ノ土地ニ向ッテ
全部轉嫁サレタト云フコトニ相成ルノデア
リマスカラ、是ダケノ免稅點ヲ引上ゲタト
云フ言葉ハ立派デアルガ、引上ゲタガ、ソ
レハ隣リノ人々ノ負擔ヲ引上ゲタ斯ウ云
フコトニ相成ッテハ、一向利目ガナイデハナ
イカト私ハ考ヘル、之ヲ詳細ニ私ハ數字的
ノ根據ヲ申上ゲテモ宜イノデアリマスガ、
時間ガ大分經ヲテ居リマスカラ、私ハ此問題
ハ此程度ニ止メテ次ノ問題ニ移リマス第二
ノ點ハ三倍八割ニ制限ヲシタト云フコト
ニ付テ、不合理デアルト吾々ハ言ハナケレ
バナラヌノデアリマス、三倍八割デ之ヲ止
メタト云フノハ何故デアルカ、此前ノ原案
昨年出サウト思ッタケレドモ、議會ガ解散ニ
ナッタカラ出シ得ナカッタノデアル、其時分
ニハ四倍五割ニ止メヤウト云フ案デアッタ
ガ、今囘ハ三倍八割ニ止メタ計算ニ難易
ガアル計算ニ便利ノ爲メダカラ云々ト云
フヤウナコトヲ言ハレマシタガ、此前ノ明
治四十三年ノ時分ニハ、非常ニ細カイ計算
ヲサレタノデアリマス、卽チ一方ニ於キマ
シテハ、宅地ニ於キマシテモソレ〓〓ノ不
平等ナル所ノ稅率ガ盛ラレテアッタ、色々ナ
ル關係ニ於キマシテ、郡村宅地ハ市街宅地
トハ違シテ居ル、郡村宅地ハドウデアル、市
街宅地ハドウデアル、詰リ市街宅地ハ百分
ノ二十デアリ郡村宅地ト云フモノハ百分
ノ八デアル、斯ウ云フヤウナ不平等ナル租
率デアリ、又他ノ地目ノ土地ニ於テモソ
レゾレ違シタ課率ガアッタノデアルカラ、之
ヲ平均ニ見ヤウトスルニハ、一率ニ行カズ
二、此倍數ノ制限ト云フモノハ、ソレ〓
異ッタ標準デヤル、卽チ市街宅地ニ於テハ十
八倍ソレカラ郡村宅地ニ於テハ七倍二割ト
云フヤウナコトヲ取ッテ、サウシテ此課率ノ
違ッタコトヲ平均シヤウト云フヤウナ面倒
ナル努力ヲ、四十三年ニ於テハ拂ハレタノ
デアリマスル、ソレデアリマスカラ、技術
モ進步シタル今日ニ於テ、面倒ダカラナド
ト云フコトハ、到底理窟ニ相成ラヌト吾々
ハ考ヘテ居ルソレデ私共ハ此土地ノ制限
率ヲ見マスル時ニハ、田地ニ於テハ約四倍
五割、宅地ニ於テハ僅ニ二倍五割、其他ノ
土地、卽チ山林原野ノ如キモノニ至ッテハ
五倍五割マデニ、制限ヲ高メラレテ居ルト
云フヤウナ事實ヲ看遁ガシテハイカヌト
斯樣ニ考ヘテ居ルバカリデナク、三倍八割
トシタ爲ニ、稅額デ約二百万圓ト云フモノ
ガ浮ビ上ルノデアリマス、三·八ト云フ新稅
率ニ依リマシテモ、約百六十六万一千圓ニ
相成ルノデアリマス、斯樣ナ大キナ金額ト
云フモノハ當然負擔シナケレバナラヌ大
資產家階級ノ負擔ヲ、其他ノ人々ノ頭ニ轉
嫁シテ顧ミザル所ハ、大資產保護デアルト
吾々ハ謂ハナケレバナラヌノデアリマスル
(拍手)吾々ニ示サレタル例ニ依リマシテ
モ、東京ノ中央ニ在ッテ、昔ハ原デアッタモ
ノガ、今日ハ東京繁華ノ中心ニナッテ居ル東
京驛前ノ、アノ丸ノ内ノ地所ガ、僅カ十圓
前後デアッタモノガ、今日此六大都市最高地
價比較表デ見マスト百圓ト云フ賃貸價格ヲ
持ッテ居ルノデアリマス、名古屋ノ中區邊リ
ニ於キマシテモ、之ニ類スル所ノ急激ナル
地價ノ增加ヲ來シテ居ルノデアリマス、賃
貸價格ト云フモノハ左樣ニ十倍ニ近イ割
合ヲ以テ上ッテ居ル、斯ウ云フ處ヲ三倍八割
ニ止メ、繁華ノ程度ノ劣ッテ居ル處ハ三倍八
割精一パイ取ルト云フコトニ於テ、私ハ大
ナル負擔ノ不公平ガ此處デ起ルノデハナイ
カト思フ、高橋ハ左樣ニ言フケレドモ、大
ナル資產家バカリデハナイ、小サナル地主
モ激增地ニハ少クナイト言ハレマスケレド
モ、斯ウ云フヤウナ急激ナル變化ガアッタヤ
ウナ丸ノ內デアルトカ、名古屋ノ中區邊リ
三、大地主デナケレバ到底斯ンナ高イ地
所ヲ持切ル譯ニハ行カヌト云フ事實ガアル
コトヲ私共ハ拒ミ得ナイト思フノデアリ
やく、サウスルト、要スルニ三倍八割デ止
メタト云フコトハ、卽チ之ニ依ッテ大資產家
階級ノ反感ヲ緩和シヨウト云フ卑劣ナル考
デ此率ヲ定メタモノデアルト云フコトハ
ドウシテモ否ミ得ナイト吾々ハ考ヘル、サ
ウシテ大資產家階級ノ負擔スベキ所ノ三倍
八割以上ノ增加額ト云フモノヲ、其他ノ一
般ノ下級ノ土地ニ轉嫁スルニ至ッテハ、何タ
ル不當事デアラウカト吾々ハ考ヘザルヲ得
ナイノデス、卽チ一般地租納稅者カラ見マス
しや、是ダケノモノハ當然減額サレ得ベキ
モノヲ轉嫁サレタガ爲ニ減額ヲサレ得ナ
カッタト云フコトハ、大ナル不公平デアリ、
一方ニ於テハ消極的大增稅デアルト吾々ハ
謂ハナケレバナラヌ
其外ニ更ニ私ハ第三點トシテ、重大ナル
事實ヲ看遁スコトノ出來ナイノハ無屆異
動地ヲ今囘ノ地租ノ計算カラ省イテ、全然
箪笥ノ中ニ藏ノテ置イテ、地和法ガ改正ニナ
リ宅地ノ稅率ガ暴騰シテカラ初メテソ
ロソロ-畑ガ宅地ニ総ベッタ、山林ガ宅地ニ
變ノタト云フ、無屆異動地ノ整理ト云フモノ
ノ其成績ヲ、地租ノ課率ガ變クテカラ自然
增收ノ形デ玆ニ持出サウト云フヤウナ、隱
レタル大增稅計畫ト云フモノヲ吾々委員會
ハ看破致シタノデアリマス(拍手)之ニ對シ
テハ十數時間ヲ費シ、熱心ナル質問應答ヲ
重ネタ其結果、初メハ政府ハ容易ニ落城ハ
シナカッタガ、到頭終ヒニハ降參ヲ致シテ、
其通リノ計算ニナリマスト言ッタノデアル、
併ナガラ其答辯ノ中ニモ、マダ隱レテ居ル
事實ガアルノデアリマス、ソレハ百六十餘
万圓-私ノ計算ニ依ルト百九十餘万圓ニ
ナルノデアリマスカラ、約二百万圓、是ハ
當然今囘ノ地租法ノ基準デアル所ノ現在地
租總額ノ計算ニ現ハレナケレバナラヌ、何
故私ハ之ヲ言フカト云ヘバ、今ヨリ二年
前、昭和四年度ヨリ始マリ、昭和五年度、
昭和六年度ノ三箇年ニ、百餘万圓ノ國帑ヲ
費シテ之ヲ調査致シテ居ルノデアル、旣ニ
昭和四年度、五年度ニ於テ調査致シタモノ
ハソレ〓〓ノ市町村役場ノ土地臺帳ニ記
入ヲサシテ居ルノデアリマス、此異動ト云
フモノハ將來ニ起ルモノデナクシテ既ニ
異動ト云フモノハ明カニナッテ居ルノデア
ル臺帳ニ之ヲ揭ゲテ居ルノデアル、移動
ノ手續ハ大半濟ンデ居ルノデアル、ソレヲ
此地租法ヲ制定スルニ方ッテ、減稅案ヲ討議
スルニ方ッテ、其明カナル所ノ地租額ト云フ
モノヲ傍ニ取ッテ置イテ、サウシテ將來ノ增
稅計畫ノ材料ニ供サウトシタノハ、玆ニ看
遁スベカラザル、寧ロ不正ガアルト私ハ論
ズルノデアリマス(拍手)左樣デアリマスル
カラ、此事實ハ私ハサウ簡單ニハ之ヲ看遁
シテ行ク譯ニハ參ラヌト思フノデアリマ
ス、ソレデ此額ト云ンモノハドノ位ニナル
カト云フト、政府ハ百十一万四千餘圓デア
ルト云フ、是ハ宅地課率二·五ヲ課ケタ數字
デアルカラ吾々ノ言フガ如クシテ、四·五
ト云フモノヲ之ニ掛ケテ行クト其稅額ハ
百九十六万五千圓ニナル、其差引額八十五
万圓ダケハ隱レテ居ルノデアル此事實ハ
認メルト、斯ウ言ハレタ、所ガ委員會ハ遂
ニ理事會ノ中合ニ依ッテ、過グル二月二十
七日デ質問ヲ終局ニ及ンダノデアリマスル
カラ惜イ哉、吾々ハソレ以上質問スルコ
トガ出來ナカッタ、併ナガラ是ハ一ツノ欺
瞞答辯デアル、何トナレバ此無屆異動地ノ
百十一万四千圓ト云フモノハ宅地ハ二·
五トシテ勘定シタリシテハ何モナラヌノ
デ、是ハ畑ハ畑トシテ地租ヲ盛ッタノデア
ル、田ハ田トシ、山林ハ山林トシテ地租ヲ
盛ッタノデアリマスカラ、恐クハ此無屆異
動地ト云フモノハ、地租法ノ計算基礎トシ
テ表ニ上ッタモノハ僅ニ二十万圓前後ノ
モノデアルダラウト私ハ考ヘルノデアリマ
ス、私共ハ是非トモ、是ハ宅地ニ直ッタナ
ラバ、宅地ニ直ッタモノト致シテ、ソレヲ
此表ニ上セナケレバナラヌ、表ニ上セルバ
カリデナク、今囘政府ガ增減ナキ範圍デ
ヤッタト云フ地租總額ノ六千七百万圓ノ中
ニハ當然是ハ含ンデ居ルベキ筈ダト吾々
ハ考ヘル、ニモ拘ラズ政府ハ故意ニ是ハ豫
算ヲ取シテ、別ニ調上ゲルコトニナッテ居ル
ノデアルカラ、普通ノ異動地ト何等違シタ
所ハナイカラシテヤッタ、斯ウ云フ答辯デ
アリマスケレドモ、普通ノ異動地ト云フモ
ノハ先ガ分ラナイ、今年調ベテ見ナケレバ
分ラナイノデアリマスルカラ、過去五箇年
ノ移リ變リト云フ實績ヲ捉ヘテ平均ヲシ
テ、來年度ノ豫算ニ上セルノデアル收入
見積額ヲドレダケ、收入減ヲドレダケ、併
ナガラ是ハ過去昭和四年、昭和五年ノ二年
掛ーフハサウシテ之ヲ調上ゲテ臺帳ニ記入
シテ居ル、ソレデアルカラ明カナ數字デア
ル山林ガ宅地ニ直リ、田畑ガ宅地ニ直ッタ
ナラバヤハリ田、畑ハ山林ヲ宅地ト致シ
テ、之ヲ類地ニ依ッテ地價ヲ見ル、類地ニ
依テ賃貸價格ヲ見ルト云フ規則ニナッテ居
ルノデアリマスカラシテ、是ハ當然此計算
ノ上ニ揭ゲテ置カナケレバナラヌ、公明正
大ニヤラウトスルニハ堂々ト地租ノ總額
ノ中ニ加ヘナケレバナラヌモノヲ、之ヲ別
ニ取シテ置イテ、サウシテ將來ノ增稅計畫
ノ一端ニ致サウ、年々百九十六万五千圓、
之ヲ三·八ノ平均率ニ直シマシテモ、百六
十六万一千八百九十五圓デアル、此百七十
万圓ニ近イ所ノ數字ト云フモノハ當然是
ハ地租額ノ中ニ計上シテ、是ノ輕減ヲスル
ト云フ基礎數字ノ中ニ加ヘナケレバナラナ
イバカリデナク、是ハ他ノ前ニ述ベタ二ツ
ノ事項トハ違クテ、之ヲ取ッテ置イテ、サウ
シテ地租法ガ通ツテカラ、六年度ニ之ヲ自
然增收約百七十万アッタ、來年度ニ於テハ
三百万圓アッタト、斯ウ云フヤウナコトデ
年々財政ノ、十年計畫ノ中ニ約二千万圓乃
至三千万圓ノ自然增加ヲ圖ラウト云フ、陋
劣ナル手段ヲ執ッタト云フコトハ、否ミ得
ナイ事實デアルト云フコトヲ、私ハ此場合
申上ゲルノデアリマス(拍手)斯ウ云フコト
ヲ吾々ハ考ヘル時ニ於テ、此內閣ノ執ッタ
ル所ノ稅制改正ト云フモノハ、何等眞面目
ナモノヂヤナイノデアル、若シモ眞面目ナ
計畫デアルトスルナラバ、何ヲ言ッテモ
內務大臣ガ分ラナイトカ、或ハ耕地整理ノ
關係、或ハ殊ニ地租ノ一端ニアル所ノ開墾
地ニ關スル地租ノ減免ト云フヤウナル、大
切ナル法規ニ對シテ農林大臣ハ分ラナイナ
ドト云フコトハドウシテモ言ッテ居ラレ
ナイ筈デハナカラウカト思フ、又地租法外
六件ノ中ニ於ケル、都市計畫法中ノ區劃整
理ニ關係スル方面ノ如キニ付テハ加藤
鐐五郞代議士ヨリ詳細ニ申述ベラルヽデ
アリマセウケレドモ、是等ノ中ノ質問
應答ノ中ニ、內務大臣ハ答辯ガ出來ナ
イ、次田地方局長モ答辯ガ出來ナイ、
岡田某ト云フ政府委員モ亦答辯ガ出來ナ
イ、今日ハ其方ノ係リハ生憎控室ニ居ラ
ヌカラシテ、明日ニシテ吳レナドト云フ、
吾々ガ質問ヲ打切ラウト云フヤウナ間際ニ
ナカフ。此醜態ハ何事デアル、與黨諸君ハ之
ニ付テ顏色ヲ失ッタノデアル(拍手)サウシ
テ其晩ノ中ニ急遽御裁可ヲ經テ翌日都市
計畫課長ノ鈴木某ト云フ役人ヲ急ニ政府委
員ニ仕立テ、サウシテ翌日答辯ヲサシタナド
ト云フコトハ其不面目サ加減ニ於テ、寧
ロ呆レ返ラザルヲ得ナイト思フ、吾々ハ餘
リノ事ニ呆レ果テヽ攻擊スル言葉モ之ニ對
シテハナカッタノデアリマス(拍手)サウ云
フヤウナコトヲ致シテ、此議會ヲ甘ク見タ
ト云フノハ、抑とノ行違ヒデアッタラウト
思フ、大臣デサヘモ一日ヤ二日位說明ヲ聽
イタ位デハ分ラナイカラ、忙シイ議員ナド
ニハ分ル筈ガナイノデアル減稅トイフ名ニ
恐レテ「オウライ」〓〓デアッサリ通ッテ行ク
ダラウト云フコトノ御考ハ、抑〓ノ手違デ
アッタラウト思フ、斯樣ニ大藏大臣デモ際ド
イ所ハ分ラナイカラ、先ヅ政府委員ニ說明
サシテ、ソレカラ自分ガ說明スル、今政府
委員ノ言ッタ通リ、斯樣ナ說明ナラ誰デモ出
來ル、其他ノ爾餘ノ大臣ニ至ッテハ沙汰ノ限
リデ、其中デモ大藏大臣ハ大藏大臣ダケアツ
テ、胡麻化シノ答辯デハアルガ、答辯ダケ
ハ出來ル、併シ同ジ答辯ヲ繰返シ〓〓ヤル、
其根氣ノ强イニハ野黨ノ諸君モ大ニ敬服ヲ
致シタガ、其圖々シサ加減ニ付テハ驚イタ
ノデアリマス、ソレデ與黨諸君ハ幾ラ呆レ
返ラウガ、吾々ハドウシテモ血ヲ吐クマデ
國民ノ前デ怒鳴ラナケレバナラナイ、コン
ナ欺瞞的ナ提案ト云フモノハ議會ヲ通過
サシテハイカヌト云フ信念ガアルノデア
ル與黨ノ諸君ハ睡ケレバ睡ッテ居ッテモ差
支ナイ、吾々ハ諸君ガ睡ラウガ睡ルマイガ、
ソンナコトハ構ハナイ、吾々ノ聲ハ六千四
百四十万ノ內地ノ人、八千數百万ノ日本國
民全部ニ知ラシメ、場合ニ依ッテハ世界ニモ
通ジサセヤウト思フノデアル(拍手)ドウセ
吾々ガ如何ニ名論ト卓說ヲ吐イテ、正論ヲ
鬪シテモ、二百七十名デ以テ潰シテシマハ
ウ、壓倒シテシマハウト云フノデアルカラ、
諸君ニハ睡フテ貰フタ方ガ議事ノ進行ノ上ニ
ハ都合ガ好イノダ(「傍聽席デ.聽イテ居ル
ゾ」ト呼フ者アリ)吾々ハ傍聽席ヲ標準トシ
テヤッテ居ルノデハナイ、諸君ノ間違。シタ觀
念ヲ、吾々ハ其睡リカラ覺サウトシテ居ル
ノデアル、ソレガ吾々ノ眞ノ目的デアルカ
ラ諸君ハ其積リデ成ベク靜肅ヲ保タレタ
方ガ、諸君ノ爲ニ、利益ナリト吾々ハ考ヘ
ルソレデ私共ハ一面此法案ニ付テ幾多ノ
缺點ヲ發見スルノデアルガ殊ニ財源ニ關
シテ大ナル疑義ヲ挾ンデ居ルノデアリマ
ス諸君ハ大聲ヲ揚ゲテ、倫敦條約ニ依ッテ
海軍ノ補充計畫ニ取シテ置イタル所ノ留保
源五億八百万圓ノ中カラ、大藏大臣ガ非
常ニ腕ニ變ヲ掛ケテ、海軍大臣ト取組ンデ、
遂ニ其申ノ四分ノ一ハ取ッテシマッタ卽チ
二割六分ハ取ッテ、之ヲ減稅ニ向ケルノハ偉
イヂヤナイカト言ッテ、大分威張ラレル、大
分威張ラレルバカリデナク、討論者ノ或ル
一人ノ如キハ倫敦會議ガ若シモ破レタナ
ラバ今頃ハ大增稅ヲ食ッテ居ルデハナイ
カ、減稅ハ愚カナコト、國民ハ大增稅ニ苦
マナケレバナラナイヂヤナイカナンテ物
識顏ニ此處デ言ハレタノデアル、何ヲ見テ
ソンナ夢ヲ見テ居ルノカ、夢ニ怯ヘタ子供
ノ譫語ミタイナモノデアル(拍手)諸君ハ倫
敦會議ニ臨ムニ當ッテハ、倫敦會議開催以前
ニ於テ、英米ノ間ニ豫備會議ノアッタト云フ
コトヲ忘レテハイカヌノデアリマス豫備
會議ニ於テハ如何ナルコトガ議セラレタ
カ、豫備會議ニ於テハ、華盛頓條約ニ於テ
認メラレタル所ノ主力艦ノ建造ト云フモノ
ハ更ニ或ル年限ノ間延期シヨウヂヤナイ
カ、代換建造モヤメヨウデハナイカト云フ
決議ガアル他ノ事件ナリ補助艦ニ關スル
所ノ條約ノ締結ハ出來ナクテモ、是ダケハ
通サウデハナイカ、此成案ガ出來ナカッタ
ナラバ、來年ノ夏ニ更ニ華盛頓デ會議ヲ開
イテ、是ダケハ一ツ決メテ置カウヂヤナイ
カト云フヤウナコトガチヤント分シテ居ル、
主力艦ナドハアノ倫敦會議ガ不幸ニシ
テ-不幸ト言フカ幸ト言ハウカ、出來
上ラナクトモ、此處ニ於テ何等國民ノ負擔
ノ增加ナドヲ來スモノデハナイ、況ヤソン
ナ餘計ナコトヲセズ、三大原則ト云フモノ
ヲ其儘デ居ッタナラバ、殊ニ力ヲ入レタ所ノ
潜水艦ト云フモノヲ、現在ノ保有量ヲ吾々
ガ持ッテ居ッタトシタナラバドウデアルカ
何等國防ノ上ニ缺陷ガ無イデハナイカ吾
吾ハ七万八千噸ノ潜水艦ノ保有量ト云フモ
ノヲ握ッテ居ッタノニ、倫敦會議デ之ヲ三分
ノ一ヲ減ゼラレテ、五万二千餘噸ニ減ラサ
レルト云フコトデアルカラ、無理ナコトヲ
シナケレバナラヌノデアル、殊ニ吾々ハ大
型巡洋艦ヲ要求ダケ持ノテ居ッタラドウデア
ルカ、吾々ハ既ニ海ニ浮ベルモノヲ八艘、
竝ニ其當時ニ於テ四艘ノ「キール」ニ昇ッテ
彫斯ウ云フ十二艘ト云フモノガアル、
更ニ吾々ハ要スルダケノ十二万噸ト云フモ
ノヲ持ッタラドウデアルカ、ソレヲ不幸ニシ
テ財部ト云フ當時ノ海軍大臣ガ、今ノ海軍
大臣ハ當時倫敦ニ居ラレタカラ能ク覺エテ
居ラレルデアラウガ、事モアラウニ十二艘
ト十二万噸ト間違ヘタナドヽ云フニ至ッテ
ハ何事デアルカ(拍手)ソレニ「ジユネーブ」
會議ニ於テ、吾々ノ有スル七千一百噸デ、八
吋砲ヲ載セテ居ル所ノ加古級ノ巡洋艦ト云
フモノハ世界ノ脅威ニナッタ、其場合ニ是ト
比較サルヽ所ノ英吉利ニ四艘ノ巡洋艦ガア
ル、是ハ噸數ニ於テハ九千九百噸デ、一万
噸カラ百噸バカリ足リナイ、又搭載スル所
ノ大砲ノ口徑ニ於テハ八吋ハ無イケレド
モ、七吋半アルト云フ、ソレト我國ニ於ケ
ル七千一百噸ノ小サイ體デアッテ、之ニ八吋
ノ大砲ヲ載セルモノヲ比較致シテ、共ニ之
ヲ輕巡洋艦ト致シテ、大型ノ巡洋艦ニハ入
レナイト云フノデ日米比率六割五分デアッ
タカ、サウ云フ比率ニナッテ居ル、其有名
ナ四艘ノ軍艦ノ七千一百噸ノ軍艦デアルト
云フコトヲ頭カラ忘レ去ッテ、之ヲ加ヘテ十
二艘ニナッテ居ルノニ氣付カズニ居ッタノデ
アルソレデアルカラ亞米利加ハ十五艘デ
十五万噸デアルケレドモ、日本ノ大型巡洋
艦ト云フモノハ今保有致シテ居ル所ノ現
在ノモノダケデハ十二艘デアルケレドモ
十二万噸ニナラナイデ十万八千四百噸トナ
ルノデアル斯ウ云フヤウナ事實ヲ忘レテ
シマッテ、十二万噸ト十一一艘ト間違ヘテ、サ
ウシテ鳧ヲ付ケタナドヽ云フコトハ、實
私ハ惜慨ニ堪ヘナイ、ソレバカリデハナ
イ、無事ニ日本ナドニオメ〓〓歸ッテ來ラ
レル筈ハナイト私ハ考へルノデアリマス
(拍手)ソレデアルカラ吾々ハ倫敦會議ナド
ニ破レテモ主力艦ニ於テハ艦齡ヲ延長致
シテ、代換ノ建造ヲ、九箇年ノ間ト思ッテ居
リマスガ、止メヨウト言ッテ居ル、更ニ大型
ノ巡洋艦サヘ吾々ガ尙ホ二艘ヲ持ッテ居レ
バ、何モ小型ノ乙級巡洋艦ナドヲ殖シテ置
ク必要ガ無イ、驅逐艦ナドハ多ク殖ス必要
ガ無イ、潜水艦サヘ七万八千噸ノ保有量ヲ
存續シ得レバ、殊ニ世界ニ於テ日本ノ海軍
軍人程潜水艦ヲ巧ミニ使ヒ得ル者ハ無イト
云フコトハ定評ヂヤナイカ、其體軀ノ小サ
イコトガ幸ヲ爲シ、忍耐力ノ强イト云フコ
ト食物ヲ吾々ガ動物質ヲ攝ラヌデモ宜シ
イト云フヤウナ、色々ナ關係カラ、潜水艦
ノ勤務ト云フモノハ最モ日本人ニ適スル、
世界ニ是ト比較スル者ガ無イト云フコトニ
ナッテ居ル、サウ云フ銳イ立派ナ武器ヲ捨
テ、サウシテ日本ニ於テハ餘リ威力ヲ發
揮シナイ、世界デモ見捨テラレカケテ居
ル亞米利加邊リデ第二豫備、第三豫備ト
シテ、軍港ノ奧ニ繫イデ置クト云フ驅逐艦
ナドト同ジ待遇ヲ受ケルト云フヤウナ馬鹿
ナコトハ何事デアルカト私ハ言ヒタイ、
ソレデアルカラ倫敦會議ナンゾハ潰シタ方
ガ、日本ノ海軍力ハ更ニ立派ニナリ吾々
ガ是ガ爲ニ負擔ハ減少コソスレ、何等負擔
ノ增加ナドハ來シ得ナイ、所謂國防ノ經濟
化ノ實モ之ニ依ッテ擧リツヽアリ、其通リ海
軍ハ進ンデ居ッタヂヤナイカ(「暴論ダ」ト呼
フ者アリ)騷グノハ廢メ給へ、暴論ヂヤナ
イ、實際サウヂヤナイカ、潜水艦ノ如キハ
ドウデアルカ、條約ニ於テ十三年ガ艦齡デ
アル十三年ガ艦齡デアルニ拘ラズ、我ガ
國デハ今囘ノ補充計畫デ十一年ノモノヲド
シドシ壞シテ、サウシテ之ヲ新シク拵ヘル
ト云フノデハナイカ、斯ウ云フ不經濟ナコ
トヲスルヨリモ、若シ國民ニ負擔力ナシト
スルナラバ、十三年ノモノハ十七年ニ繰延
ベレバ、相當財源ニ餘裕ヲ生ズルノデア
ル、其位ノコトハ日本人ハ器用デアルカラ、
何デモナイコトデアル、或ハ其間ニ諸種ノ
改良ナドヲ加ヘレバ、何デモナク出來ルコ
トデアル、ドノ點カラ行ッテモサウデアル、
大型巡洋艦ノ二艘サヘ持ッテ居ッタナラバ
何モ驅逐艦デアルトカ、或ハ小型ノ巡洋艦
ナドハ之ヲ餘計拵ヘル必要ハナイト云フ
コトヲ、吾々ハ此處デ言明スルノデアル、
ソレヲ摑ヘテ、何處デ聽キ習ッタカ知ラヌ
ケレドモ、下ラヌコトヲ言ッテ、サウシテ大
聲ヲ揚ゲルナドト云フコトハ、笑止千萬ト
言ハザルヲ得ナイノデアリマス(拍手)ソレ
バカリデハアリマセヌ、吾々ハ其他ニモ海
軍ノ問題ニ付テ色々論議スベキ點ガアル
殊ニ私ハ海軍大臣ヲ責メルヨリハ、大藏大
臣ハ何ヲヤッテ居ルノダ、委員會ニ於テアナ
タノ發表シタ意見ガアルガ、此海軍條約ニ
關シ、海軍ノ建造計畫ニ對シ、ドウ云フ意
見ヲ持ッテ居ルカト云フコトノ前提ト致シ
テ、アナタガ「經濟往來」ト云フ雜誌ノ二月號
ノ特ニ附錄トシテ發表サレタ意見ハ、是ハ
アナタノ意見デアルカ、ソレトモ後デ其字
句ノ末ニ付テハ一々私ハ責任ヲ負ハレナイ
ナドト、他ノ機會ニアックヤウナ工合ニ胡
麻化スカト思ッテ、私ハ念ヲ押シテ聞イク所
ガ、其通リデアルト答ヘタ、私ハ今モ其通
リノ意見デアルト答ヘタ、ソレデ私ハ改メ
テ論ズル、ソレデ宜シイ、私ハ時間ガナイ
カラ論議ハ他ノ機會ニ讓ルト言ッタ、ソレデ
私ハ其控ヲ持ッテ居ルガ、斯ウ云フコトデア
ル、「我國財政及經濟ノ現狀ト其將來」ト丁寧
ニ附錄トシテ、アナタノ論說ヲ特別待遇ニ
致シテアル、ソレデ井上準之助トアリ色
色ノコトヲ說明シテ「我國財政ノ現狀」、「軍
縮剩餘金ノ性質」ト云ッテ色々ノコトヲ說明
サレ、其次ニ「留保財源ノ使途」ト云フコト
ニナリマス、ソコデ此處ニ問題ニナリマス
ノハ、斯ウ云フコトデアル少シク長クナ
リマスカラ、一分間位デ讀上ゲマスカラ、
我慢ヲシテ聽イテ戴キタイ、「此留保財源ノ
五億八百万圓ノ中デ、三億七千四百万圓ダ
ケヲ海軍ノ補充計畫ニ取ッタノデアリマス、
殘リノ一億三千四百万圓ヲ、昭和六年度カ
ラ十一年度マデ減稅ニ持ッテ行クノデアリ
マス、隨テ平年ニハ二千五百万圓ヅヽ每年
減稅ヲスルコトニナリマス海軍ノ補充計
畫ノ詳細ヲ申述ベル自由ハナイノデアリマ
スカ、大體ヲ申シマスト、海軍ノ軍縮條約
ニ依リ與ヘラレタル權利ノ全部ヲ實行シ、
尙ホソレ以外ニモ「オプシヨン」ノアリマス
ルモノハ大部分實行シテ、ソレ以外ニ航空
隊ヲ擴張スルノデ、ソレニ依ッテ三億七千
四百万圓ノ金ヲ使用スルノデアリマス、減
稅ニ振向ケル一億三千四百万圓ガ少イト云
アコトノ非難ガアルノデアリマスガ、上ニ
述べマスヤウナ財政狀態ノ中カラ、一億三
千四百万圓ノ減稅財源ヲ捻出スルコトハ
非常ニ困難ナ仕事デアッタト云フコトヲ、
敢テ國民諸君ニ申上ゲタイノデアリマス」
ト斯ウ言ッテ居ル、自分ハ間違ッタ、是ハ間
違ッタトハ-貴方ハ斯ンナ事ハ言ハレマ
スマイ、苟モ大藏大臣トシテ、天下ノ耳目
ヲ引ク奉答文トナッテ陛下ノ御左右ニ奉ソ
タ其奉答文、或ハ敷奏文トモ申シマスルカ、
政府カラ見マスレバ敷奏文、軍事參議官會
議カラ云ヘバ奉答文、其計畫ニ基イテ愼重
ニ審議ヲ爲サレタル所ノ此案件ニ對シテ、
間違ヲタル意見ヲ國民ニ知ラシムルナゾト
云フヤウナコトデ發表ナサラウトハ思ハナ
イ、是ハ今マデ度々例ノアッタル如ク、唯
欺瞞的ニ、其事實ヲ國民ガ詳シク知ラザル
ヲ奇貨トシテ、斯ノ如ク間違ヲタル意見ヲ
發表致シテ、國民ヲ欺瞞セントスル事ニ
出デタノデハナイカト吾々ハ考ヘル(拍
手)更ニ私ハ繰返シテ讀上ゲマス、「海軍々
縮條約ニ依リ與ヘラレタル權利ノ全部ヲ實
行シ、尙ホソレ以外ニモ「オプシヨン」ノア
リマスルモノハ大部分實行シテ、ソレ以
外ニ航空隊ヲ擴張スルノデ、ソレニ依。ツ
テ三億七千四百万圓ノ金ヲ使用スルノデ
アリマス」今日ノ吾々ノ言フ第一補充計
書、是ハ旣ニ海軍當局ニ於カレマシテモ、
首相代理幣原君ニ於キマシテモ疾ニ御認メ
ノ通リデアリマス、吾々ノ使フ所ノ名稱ノ
第一補充計畫ノ外ニ、第二第三ノ補充計畫
モ必要デアル、希望ヲ持ッテ居ルト言ハレ
ク、唯其財源關係ニ於テ多少考慮ノ餘地ガ
アルト言ハレタ此問題、第一補充計畫ガ完
全ニ出來上ッタカドウカ、倫敦條約デ認メタ
ル、獲得シタル權利ノ全部ナドハ何等實行
サレテ居リマセヌ、第一ニ倫敦條約ニ依ッテ
吾々ハ千九百三十六年卽チ昭和十一年度マ
デニ完成シ得ル所ノ代換建造計畫ニ致シマ
シテモ其中ノ驅逐艦ノ六隻ト云フモノハ
省カレテ居ルデハナイカ、海軍大臣ノ說明
ヲ聽クト云フト、是ハ設計モ圖面モ出來テ
居ルノデアルカラ、必要ノ場合ニ應ジテ急
激ニ拵ヘルカラ、此計畫ニハ入レナイト明
カニ言ッテ居ル、全部ヲ拵ヘルニモ、海軍大
臣カヲ提示サレタル所ノ數字ヲ根據トシ
テ、單價ヲ根據ト致シテ計算シテモ、四千
万圓內外ノモノガ掛カルノデアル、其他ニ
華盛頓會議ニ認メラレ、更ニ倫敦會議ニ於
テ追認ヲサレタ所ノ航空母艦一艘ノ建造、
一万二千噸級、衝突カ何カデ沈沒シタル
阿蘇級ノ機械水雷敷設艦ノ二隻ト云フモノ
ガ認メラレテ居ル二隻ノ中一隻シカ要ラ
ナイト、海軍大臣ハ說明サレタヤウデアル
ガ、一隻ダケデモ五千噸級ノモノデアッテ、
斯ウ云フモノハ更ニ倫敦條約ノ結果、吾々
ハ權利トシテ得テ居ルノデアルケレドモ
之ニ付テ吾々ハ何等計畫ヲシテ居ルナドト
云フコトハ、說明ハ少シモ承ラナカッタノデ
アリマス、サウ云フヤウナコトデアリマス
ルナラバ、第二補充計畫ハ別問題トシテ、
第一補充計畫ニ依ッテ、卽チ海軍ノ軍縮條約
ニ與ヘラレタル所ノ權利ノ全部ヲ實行シタ
ナドト云フコトハ噓八百デアルト言ハザ
ルヲ得ナイノデアリマス(拍手)更ニ之ヲ建
造スルニハ一億圓近クノ財源ト云フモノ
ハ必ズ要ル、一億圓以上ニ私ハ上ルダラウ
ト思フ、一億二三千万圓當然要ルコトヂヤナ
カラウカト思ハレル、「尙ホソレ以外ニモ
「オプション」ノアリマスルモノハ大部分實
行シテ」云々、「オプション」ト云フモノハ
何ダト聽イテ見ルト、私ガ素人ダト思ッテ
「オプション」ト云フノハ專門語デアリマ
ス、何ヲ言フテ居ル(拍手)專門語デアルカラ
私ニハ能ク分ラナイ、ソレダカラ「オプシ
ヨン」ト云フノハ何ヲ指スノデアルカト更
ニ聽クト、代換建造、マダ年齡ノ來ナイモ
ノハ、製艦能力ノ都合ナンカデ以テ、繰上
ゲテ建造スルコトガ出來ル、是ハヤッテモヤ
ラナクテモ宜イカラ、是ガ「オプション」ダ
ト云フ說明、何ヲ呆ケタコトヲ言ッテ居ルカ
(拍手)、「私ハソレハ承服シナイケレドモ
今日ハ議事ノ進行ヲ急グシ、最後ノ質問日
デアルカラ、是デ以テ我慢シテ保留スル」
ト言ッタ(發言スル者アリ)今ノコトヲ言ッテ
居ルノヂヤナイ、委員會ノコトヲ言ッテ居ル
ノダーサウ云フ論議ヲ致シテ居ッタノデ
アル、ソレデアルカラ「此「オプシヨン」ニ對
シテハ、私ハソンナ說明ヲ聽イテ諒解ガ出
來ナイ、不滿デアルケレドモ、ソンナモノ
ヂヤナイト云フコトヲ、私ハ此處デ斷言シ
テ置イテ、後ノ機會ニ論議スル」ト言ッテ、其
時分ニハ保留シテ置イタノデアル、「オプシ
ヨン」ト云フノハ、此處ニ條約ノ成文ガアル
ガ、外務省デ印刷シタ條約ノ成文ニ日本ノ
有シテ居ル「オプシヨン」ナント云フモノハ
何處ニアルカ、「オプシヨン」ト云フノハ
亞米利加ニ對スル第何條カニアリマスルモ
ノバカリデハナイカ、卽チ倫敦條約ノ「第十
八條合衆國ハ(甲)高級巡洋艦十五隻總噸
數十五万噸(十五万二千六百「メートル」式
「トン」)ヲ千九百三十五年マデニ竣エスル
ノ企圖ヲ有ス」-此千九百三十五年マデ
ニ竣工スルト云フコトヲ、三十六年ニ間違
ヘタリナドシタ是ハ別問題ダカラマア
此處デハ論ジナイガ-「三十五年マデニ
竣エスル企圖ヲ有ス、合衆國ハ自國ガ建造
スルノ權利ヲ與ヘラレタル殘餘ノ高級巡洋
艦三隻ノ各隻ニ代フルニ、乙級巡洋艦一万
五千百六十六噸(一万五千四百九「メートル
式「トン」)ヲ以テ選擇スルコトヲ得」ト書イ
テアル、此「選擇スルコトヲ得」ト云フノガ、
卽チアナタガ言ハレテ、私ヲ驚カシタル所
ノ專門的言葉ナンデ、是ガ「オプション」ナ
ンデアル、ヤッテモヤラナイデモ宜イト云フ
ヤウナノハ「オプシヨン」デモ何デモナイ、
之ヲヤラナイカラ之ヲヤラセロト言フノガ
選擇、「オブシヨン」ナノデアル、日本デハ
製艦能率ヲ維持スル爲ニ代換建造ヲ、艦齡
ヲ繰上ゲテヤル權利ヲ得タッテ、ソレヲヤラ
ナカッタトテ、何モ其代償ガナイデハナイ
カソンナ「オプション」ガ何處ノ國ニアリ
マスカ(拍手)ソンナ馬鹿ナコトヲ言ッテ、サ
ウシテ「オプシヨン」ヲ與ヘラレタル權利ノ
全部ヲ實行スル、ソンナ馬鹿ナコトヲ大藏
大臣トモアルモノガ答辯スル筈ノモノデハ
ナイ、多分「オプション」ト認メタト云フ、
ソンナコトデハナイ、千九百三十六年、昭
和十一年度マデニ完成シテハイケナイケレ
ドモ、著手スルコトノ出來ル權利ヲ得テア
ルモノダ、斯ウ云フヤウナコトヲ言ハレ
タ積リデアラウト思ヒマスガ、ソレナラバ
益〓奇怪至極デアル、サウ云フ權利ヲ何ガ實
行シタカ、第一補充計畫ニ、ソレガ含マレ
テアルカト云フコトモ、吾々ハ考慮シナケ
レバナラヌ、若シアルトシテモ、微々タル
モノデアッテ、吾々ノ氣ノ付カナイ程度ノモ
ノデアル將來是等ヲ建造スルコトニナル
ナラバ、昨日一寸木暮君モ之ニ觸レラレタ
問題デアリマスカラ、私ハ多クハ言ヒマセ
ヌガ、少クトモ之ニ對シテ一億七八千万圓
ノ製艦費ガ要ルコトデアラウト思フノデア
リマス、サウ云フヤウナコトヲ茲ニ差措イ
テ、斯ノ如キコトヲ臆面モナク論文トシテ
天下ニ公表サレルト云フコトハ何事デアル
カト、吾々ハ論ジタクナルノデアリマス
其他ニ未ダ問題ニ上ッテ居ラヌ條約上ノ
權利、噸數等ニ於キマシテ、非常ニ大キナ
ル數字ガアルト云フコトハ私共明カナル
事實デアルト思ヒマス、卽チ吾々ハ今日條
約ニ於テ認メラレタル代換ノ建造額ハ全
部ニ於テ六万七千五百噸アリマス、輕巡洋
艦ニ於テ、驅逐艦ニ於テ、潜水艦ニ於テ
尙ホ敷設艦ニ於テ、航空母艦ヲ取除イテ是
レダケノモノヲ合セマシテモ、六万七千五
百噸デアル、吾々ハ此第一補充計畫デ以テ
現ハレテ居ル所ノ數字ヲ差引キマシテモ、
尙ホ之ニ付テ二万八千三十噸ハ餘ヲテ居ル、
是レダケト云フモノハ吾々ハ權利ノ全部
ヲ抛棄シナイ限リ、倫敦條約ニ依ッテ得タル
權利ノ全部ヲ行使スルト云フナラバ、此二
万八千三十噸ヲ吾々ハ是非トモ建造シナケ
レバナラヌ、之ヲ實行セズシテ、全部ヲ實
行シタト云フコトハ大嘘ノ河童デアルト
謂ハナケレバナラヌ(拍手)
其他私ノ申シマシタル著手シ得ルモノガ
アル、昭和十一年ノ終リマデニ竣エスルコ
トガ出來ナイト云フモノハ、今日其殘リガ
三万二千九百噸アリマス、三万二千九百噸
ノ中ノ何割デアルカ、木暮君ノ言ハレタ通
リ或ハ六割カ、四割カドレ程建造ニ著
手スルカ分ラヌケレドモ、其何割ヲ建造シ
ヲ、又昭和十一年度ニ於テハ、其中ノ何割
ノ部分マデガ竣工スルカ、或ハ六割ノ竣工
デ止メルカ、或ハ八割ノ竣工ニナルカト云
フコトデ、此所要金額ハ變フテ參リマセウ
ガ、是ハ相當大キナ數字ガ現ハレテ來ナケ
レバナラヌノデアリマス、ソレニモ拘ラズ
今囘ノ三億七千四百万圓ヲ以テ「海軍ノ軍
縮條約ニ依リ與ヘラレタル權利全部ヲ實行
シ尙ホソレ以外ニモ「オプシヨン」ノアリ
マスモノハ大部分實行シ、ソレ以外ニ航空
隊ヲ擴張スル、ソレニ付テ三億七千四百万
圓ノ金ヲ使用スルノデアリマス」ト斯ウ云
フヤウナ噓八百ヲ竝ベ立テヽ減稅ニ向ケ
タ金額ノ少ナカッタコトヲ瞞化シ去ラウト
云フコトハ餘リ白々シイ見エ透イタ肚ノ
裡ナリト吾々ハ言フノデアリマス(拍手)ソ
レハ今ヲ時メク大藏大臣トシテ、金解禁ノ
善後處置ヲシナケレバナラヌ大ナル責任ガ
アルト、天下ニ呼號シテ居ル大藏大臣ノ仕
打トハ洵ニ似テモ似付カヌ卑劣ナル御根
性デハナイカト吾々ハ考ヘサセラレルノデ
アリマス(拍手)
斯ウ云フ欺瞞的ナル所ノ計畫ヲ以テ、此
減稅案ヲ終始セントスルモノデアリマスル
ソレデアリマスカラ、吾々ハ地方稅等ニ於
キマス所ノ負擔ノ過重ナルコトニ付テハ
吾々ハ何トモ申スコトガ出來ナイノデアリ
せい、サウシテ是等ノ財源ニ付テノ欺瞞政
策ト云フモノハ大藏大臣ハ自ラ切ッテ、厚
カマシクモ同ジヤウナコトヲ繰返サレテ
何處ヲ風ガ吹クンダト云フヤウナ顏ヲシ
テ、餘リ世間ニ知レテハイケナイモノダカ
ラ、專門家デナイ私ナドノ質問ニ對シテハ
餘リ世間ニ「センセーシヨン」ヲ與ヘナイヤ
ウナコトヲ言ッテ居ルガ、海軍大臣ハ當ノ責
任者デアルカラ、常ニ間違ククトト間違ッ
タト言明ヲナサルト云フノハ、流石ニ軍人
ダト私ハ思フノデアル、此委員會ノ-昭
和六年二月二十六日、第二十囘減稅法委員
會ノ速記ヲ見マシテモ、我黨ノ內田委員ノ
質問ニ對シテ、斯ウ云フコトヲ言ハレテ居
ル、工程表ノ〓要ニ付テ-工程表ト云フ
ノハ製艦ノ工程表デアル、專門的ニハ線
表ト云フ、線表ト云フノハ線ヲ書イタ表
デアルカラ線表ト云フ、「此工程表ノ〓要ト、
今朝程申上ゲマシタル軍艦製造費ノ噸單
價、ソレヲ割當テヽ見ルト、豫算ノ上ノ各
年度ニ現ハレテ居ル費用ガ、大分〓違ヒガ
アルヤウニ思フガ、サウ思フカ思ハヌカ、
斯ウ云フコトデアリマス、是ハ內田サンノ
仰セノ通リデアリマス、是ハ非常ナ違ガア
ルコトハ數字ノ上ニ明カデアリマス」、斯ウ
言ッテ居リマス、豫算ノ上ノ數字ト、ソレカ
ラ實際海軍省ガ是カラ軍艦ヲ拵ヘルト云フ
豫定表ノ間ノ數字上ニ、大ナル食違ガアル
コトハ明瞭デアリマス、斯ウ海軍大臣ハ唱
ヘテ居ルノデアル、サウスルト海軍ノ製艦
費ニ關スル限リニ於テハ豫算ト云フモノ
ハ何等確定的ノモノヂヤナイ、不確實ナモ
ノデアル、段々之ヲ突込ンデ行クト、民間
ニ註文スルト前金ハ拂ハヌデモ宜イ、今年
竣エツナイモノハ翌年度ニ廻シテ支拂ヲシ
テモ宜イカラ、金ハ豫算ニ取ッテナクテモ仕
事ダケハ出來ルト、海軍當局ハ委員會ニ於
テ述ベラレタデハアリマセヌカ、豫算ガナ
クテ行政官ガ仕事ヲヤル、而モ之ヲ外部ノ
國民ト契約ヲナサルナドヽ云フコトハ何
處カラソンナ理窟ガ出テ參リマセウ、政府
委員ノ一人デアル大藏省ノ川越政府委員
ハ學理的ニハ認メル、繼續費ト云フモノ
ノ年度割ガ決ッテ居テモ、、繰上使用ト云フコ
トハ學理ノ上カラ認メラレルト思フ、併
ナガラ學理ノ上デ認メテモ、實際ニコンナ
コトヲヤラレテハ、豫算ト云フモノガ滅茶
滅茶ニナルカラ、コンナコトハヤラセナイ
積リデアルト言"テ居ル、吾々ハ學理ノ問題
ニ於テサヘ、是ハ怪シイモノナリト思フノ
デアリマス、年度割ガ豫算デチヤント決ッテ
居ル、本年海軍ガ何々艦何隻ヲ拵ヘルガ、
金ハ今年度ニナイカラ、三菱造船所アタリ
ニ金ヲ支拂ハズシテ註文シテ、サウシテオ
前ノ方ハ來年金ガ出來タラ拂フカラ、拵ヘ
テ吳レナドト云フコトヲ契約ナサルト云フ
コトデハ、國政ハドウナリマスカ、海軍省
デアルカラ之ヲ見遁スト云フノデスカ、是
ガ世ノ中ニ知レテ其樣ナ方法ニ依ッテ縣デ
行ッタリ、農事試驗場デ行ッタリ、工業試驗
所ナドデ、年度割ヲ滅茶々々ニシテ仕事ヲ
ヤッテモ宜イト言ッタラ、國政紊亂、疑獄事
件ナドガ玆ニ端ヲ發スルデハアリマセヌカ
ト考ヘルノデアリマス、コンナ馬鹿ナコト
ヲヤッテ、サウシテ辻褄ヲ合セテ行カウ、大
藏大臣ニ建艦費ヲ値切ラレタカラ、別ノ方
法デヤラウナドヽソレハ潜航艇ノ乘組員
ナドナラヤレルカモ知レマセヌガ、大キナ
御身體ノ持主ノ海軍大臣ニハ出來ナイ相
談デアラウト私ニハ思ハレルノデアリマス
(拍手)ソンナ馬鹿々々シイコトヲヤルトハ
何事デアルカ、ソレデアルカラ潜水艦ニ於
テ、六年度ニ三艘製艦ヲスルト云フ豫算ヲ
取ッテ置キナガラ實際ノ所デハ四艘モ拵
ハトリ或ハ一艘ハ舊計畫ノ分デアル、斯ウ
云フヤウナコトヲ言フ、差引スルト二艘餘
計拵ヘルノデハナイカト吾々ガ質問スル
ト、到頭最後ニハ取消シマスト云フコ
トニナッタ、驅逐艦ニシテモ其通リ、今
年度ニ於テ工程表ニハ是亦四艘アッタト
記憶シテ居ル、然ルニ豫算ニハ三艘シカ
ナイ、段々追詰メラレテ、其一艘ハ去年竣
工シタモノデアル、竣エシタケレドモ、
マダ十分デハナイノデアル、彈藥ヲ載セ
ルト云フヤウナ、造兵上ノ仕事ガマダ殘ッテ
居ル、ソレデアルカラ是ハ六年度ニ完成ス
ル中ニ入レテ、六年度デ之ヲ建造スルト云
フコトニナッテ居ルノデア、ルト言フ、段々後
デ調ベテ見ルト云フト、昨年ノ十二月、夙
ニ軍艦旗ヲ華々シク立テヽ第八驅逐艦隊
ニ編入サレテ居ルノダト云フニ至ッテハ
體海軍省ノ豫算ナドハ減茶苦茶デハナイカ
ト、吾々委員ノ間ニ大ナル疑惑ヲ生ジタノ
デアリマス、コンナ圖々シイ厚カマシイコ
トヲヤッテ······(「同ジコトヲ何遍言フノダ」
ト呼フ者アリ)眞鍋君ナドハマダ御若イ、結
婚サレテ間モナイアナタノヤウナ新進代
議士ハコンナ大切ナコトハ能ク何遍モ何
遍モ腑ニ落チルヤウニ聽イテ十分ニ幹部
ヲ激勵シ、大臣ニ向ッテモ大ニ激勵サレ戒飭
サレテ、サウシテ國家ヲ泰山ノ安キニ置キ、
畏多イコトデアリマスケレドモ御上ノ御
軫念ヲ安ンジ奉ル方法ニ出デナケレバナラ
ヌ、是ガ國民ニ徹底セザル限リハ-政府
當局ニ徹底セザル限リハ何百万遍デモ私
ハ此處デ述ベルコトヲ辭サナイモノデア
ル吾々ハ左樣ナ決心ヲ持,テ國政審議ニ
當ノテ居ルノデアル、斯樣ナ滅茶苦茶ナ豫算
ヲ提出サレタガ、豫算總會ハ審議期間ガ決
マッテ居ルカラ、ソレデ吾々同僚ハ已ムナク
質疑ヲ打切ッテ豫算ヲ貴族院ニ通シテヤッ
タ今ハ其審議ノ眞最中デアル、然ルニ豫
算案ニ付キマシテ吾々ノ言議ヲ盡シ得ザ
リシモノガ、稅制委員會ニ於テ其缺點ヲ暴
露サレ、其醜狀ガ明カニナルト云フニ至ッ
テハ何タルコトデアルカト謂ハナケレバ
ナラヌ是デモ公明正大、綱紀ノ肅正ト云
フ看板ニ對シテ恥シクナイカト云フコト
ヲ政府當局竝ニ與黨諸君ニ愬ヘルノデア
リマス左樣ナコトデアリマシテ、我國ノ
將來ノ財政計畫ト云フモノガ、今年度ニ於
テ滅茶苦茶ニ相成ッタコトヲ、吾々ハ看取ス
ルノデアリマス吾々ガ將來ノ財政計畫ニ
信ヲ置ケナイト云フ所以ハ前ニ擧ゲタル
事實ニ於テモ明カデアル將來ドウシテモ
政府ガヤラナケレバナラナイ幾多ノ仕事ガ
玆ニ殘ッテ居ルノデアル、ソレ等ノコトヲ吾
吾ハ考慮ニ入レル時ニ、此海軍計畫ガ終ル
最後ノ年度デアル昭和十一年度ニ於テ、繼
續費以外ノ臨時費ト云フモノハ僅ニ五千万
圓、五年度ニ於テ一億二千万圓以上ニアッタ
モノガ六年後ノ昭和十一年度ニハ僅ニ其
半額ニ充タナイ五千万圓ニナル、ソレマデ
ノ間ハ年々歲々是ガ遞減ヲ致シテ參ルノデ
アリマス、サウ云フコトヲ考フル時ニ於テ、
ドウシテ吾々ハ安心ヲシテ居ラレルカ此
事ヲ考ヘル時ニ於テ吾々ハ將來政府ニ於
テハ相當ニ仕事ヲヤラナケレバナラヌ繰
延中止ト云フヤウナ事バカリハヤッテハ居
ラレナイ、ソレデハ國民ガ助カラナイ、國
家ノ產業〓育ノ基礎モ危クナルト云フヤウ
ナ譯デアリマスカラ、ドウシテモヤッテ行カ
ナケレバナラヌ事業ガ澤山アル昭和六年
度ニ於テ一億二千二百万圓アッタモノガ、七
年度ニ於テハ八千九百万圓ニナリ、其次ノ
八年度ニ於テハ七千八百万圓、九年度以降
ニ於テハ七千万圓ト減リ、五千七百万圓ト
減リ、十一年度ニ於テハ是ガ五千万圓ニナソ
テシマフコンナ事ガ一面ニアリ、一カニー
於テハ景氣ハ囘復スルナドト云フ太平樂ヲ
列ベル景氣ハ何時カ囘復シヨウガ、此二
三年間ニ殊ニ金解禁以來被ッタ創痍ト云
フモノヲ、產業界カラ取去ルコトガ出來マ
スカ、其間ニハ負債ノ延滯ヲ來シ、其間ニ
出來タ所ノ負債ノ增加ヲドウシテ償却スル
カト云フ、此大事ナ問題ヲ吾々ガ考慮スル
時ニ於テ、一面ニ貿易尻ノ僅ナル囘復トカ、
或ハ海外ノ株式ノ値段ガ幾分上ッタト云フ
ヤウナコトノ僅ナル材料デ以テ、ドウシテ
ソンナ樂觀ガ出來マセウカ、而シテ政府ハ
歲費ノ節減ヲ圖ルトカ、行政財政ノ整理ヲ
來年カラヤルトカ言フ、此事ニ付テハドウ
ダ、アノ事ニ付テハドウダ、殊ニ國民ガ今
日悉ク希望致シテ居ル官吏ノ減俸ニ付テハ
ドウカト云フコトヲ私ハ二日モ三日モ費
シテ之ヲ論ジタ時ニ、何等之ニ對シテ明快
ナ答辯ハ無イデハナイカ、而シテ此年度末或
ハ年末ニ官吏ニ惠與的ニ與ヘル所ノ年末
賞與或ハ年度末賞與ト云フモノヲ減シタ
カラ、官吏ノ待遇ハ惡クナッタ、官吏ノ收入
ハ減ジタノデアルト言フガソレナラバド
レダケノ數字ガ、是等ノ賞與金ノ減額ニ依ツ
テ國政ノ上ニ影響ガアッタカト云フコトヲ
知ル爲ニ吾々ハ其數字ノ大要ヲ示セト云
フトソレハ計算ガ面倒ダ、イヤ何ダト云シ
テ中々出サナイ、到頭終ヒノ質問日ニナツ
テ漸クソット私ニ手渡ヲスルト云フニ至ク
チハ何タルコトデアル、ソレモ昭和三年度
ト四年度ニ限ルモノデアルニ至ッテハ、是ハ
沙汰ノ限リデアル而モソレヲ見ル時ニ於
テ私ハドウ云フ感ジヲシタカト云フト
四年度ニ於テ一般會計ノ二千何百万圓ト云
フ此賞與金ガ、僅カ一割位減ッテ居ルニ過
ギナイ、一面ニ煙草ノ專賣、或ハ鐵道運賃
收入、斯ウ云フヤウナモノヲ含ンデ居ル所
ノ特別會計ニ於テハ、減ルドコロデハナイ、
逆ニ四千万圓ノ中二百万圓ト云フモノヲ、
四年度ニ於テ增加シテ居ルノデアリマス、
吾々ノ考フル所ニ依リマスレバ、賞與金ノ
如キモノハ減額ヲスベキモノデハナイ是
ハ寧ロ增額スルトモ決シテ減額ノ出來ナ
イ性質ノモノデアル、サウシテ此官吏ニ對
スル賞與金ト云フモノハ吾々民間デ謂フ
所ノ賞與金ト同ジ性質ノモノデアルカト云
フコトヲ繰返シテ聞イタ所ガ、大臣ハ其通
リデアル是ハ精勵恪勤ナ者ニ對シテ相當
ナ惠與金ヲ與ヘテ、サウシテ勵マス意味モ
含ンデ居ルト云フヤウコトヲ言ハレル此
整理緊縮ヲヤル時ト雖モ官吏ノ惠與金
年末賞與金、若クハ年度末賞與金ヲ幾分タ
リトモ削ルト云フコトハ其趣意ニ適ハナ
イ、寧ロ是ハ官吏モ相當ナ體面ヲ保タ
ナケレバナラヌ、昔ノ腰辨トハ今日ハ違
フ、生活ノ程度ガ高マッテ、威嚴ヲ拂ハ
ナケレバナラナイカラシテ、年末ヤ年
度末ニ於テハ多少ノ借財ト云フモノモ
アラウサウ云フ時ニ困ラナイト云フヤ
ウニ、此賞與金ナドヲ吳レルノデアラウ、
サウ云フコトヲ考ヘル時ニ於テ、寧ロ平常
月々渡サレル所ノ此月給ト云フモノニ手ヲ
加ヘテ、寧ロ賞與金ニハ手ヲ加ヘザルガ、
是ガ行政整理ノ實ガ擧ルノデハナイカト云
フコトヲ、私共ハ攻メ寄タノデアリマス
サウシテ此俸給ニ付テ、所謂人件費ニ付テ
表ヲ求メタノデアリマスガ、私ガ請求最シ
マシテカラ、約二十日間バカリ經ッテ漸ク
昭和三年、四年ノ過去ノ實績ト云フモノガ、
吾々ノ手許ニ出サレタノデアリマスガ之
ニ依リマシテモ、下級雇員等ノ給料ト云フ
モノハ相當ニ減額サレテ居リマスケレド
モ、上級ノ高等官以上ノ者、奏任、勅任ニ
對シテハ少シモ減額ヲサレナイト云フコ
トデアリ、其表ヲ睨ンデ見マシテモ其人
員ニ於テモ高等官以上ノ者ハ毫モ人員モ
減ラヌ寧ロ增シテ居ルノデアルサウシ
テ雇員、傭人以下ノ下級ノ給料ノミガ減
少ヲ示シテ居ルト云フヤウナ事實ヲ發見致
シテ政府ノ行政整理トハ那邊ニ其目標
ヲ定メテ居ルカト云フコトニ付テ、私ハ推
測ニ苦シムノデアリマス、デアリマスカラ、
私ハ寧ロ此場合高給ヲ貪ル所ノ勅任以上、
或ハ高等官ノ相當ナ所以上ニハ大減額ヲ致
シテ、一面其消費ニ制限ヲ加ヘテ、最近ノ
物價低落ニ依。ッテ脅威ヲ受ケテ居ル產業、ソ
レカラ下級生活者、是等ニ對シテ緩和ヲ圖
ルト云フコトハ當然ノコトデアラウ今日
物價ノ低落ヲ是レ以上防グト云フコトモ、
官吏ノ消費力、官吏ノ購買力ニ依ッテ保タレ
テ居ルト云フコトナドヲ考ヘル意味ニ於ケ
ル官吏ノ此購買力ノ增大ト云フコトハ
我國生產界ニ、又我國下級ノ國民ノ生活ノ
上ニドレダケ影響ヲ與ヘテ居ルカ、好影響
ヲ與ヘテ居ルカ、或ハ生活必需品ノ低下ヲ
妨ゲテ居ル所ノ一ツノ原因ヲ爲スノデハナ
イカ、サウ云フヤウナル世間ニ幾多ノ疑問
ガ起キテ居ルノデアルカラ、是等ノ事ヲ明
カニシナケレバナラヌト吾々ハ思ッタガ故
ニ是等ノ問題ヲ繰返シタガ、遂ニ大藏大
臣、其他ノ政府委員カラハ何等徹底シタ
答辯ヲ求メルコトガ出來ナカッタノデアリ
マス是等ノ重大ナル問題ヲ吾々ハ考慮ス
ル時ニ於テ、諸君ガ之ニ對シテドウ云フ觀
測ヲ持タレルカ私ハ今日此處ニ僅カノ時
間ヲ費シテサウシテ自分ノ思フ所ノ一部
分シカ述べ得ナイコトヲ、私ハ非常ニ遺憾
トスル次第デアリマスルガ要スルニ此稅
制案ト云フモノハ曩ニ發表シタノ所ノ唯一
部分ノ此項目卽チ選擧前ニ發表シタル所
ノ八大政綱ト云フモノヽ中ノ、第四番目ノ
國民ノ負擔輕減ト云フ所デ謳ッタモノヲソ
レヲ今日漸ク何トカシテ之ニ辻褄ヲ合セル
積リデ、總花的ニ砂糖消費稅ニ二十一万圓、
ソレカラ織物消費稅ニ於テ六十何万圓ナド
ト云フヤウナ、斯ンナチッポケナ減稅ナドヲ
致シテ何ニナルノデアルカ(拍手)ソレデア
ルカラ世ノ中ニ政綱ナドト稱シテ公表スル
時分ニハ餘リ噓八百ヲ竝ベナイ方ガ宜カ
ラウト思フ、ソレデ二百七十名ノ過半數ノ
大多數サヘ獲得スレバ何事デモ爲シ得ル
ナドト云フヤウナ、不用意ナル所ノ觀念カ
ラ出發致シテ、國民負擔ノ輕減ト生活ノ安
定-「イ、ロハ」ト分クテ「イ」ニハ國稅、
地方稅ノ整理輕減、「ロ」ニハ生活必需品ニ
對スル消費稅ノ整理輕減、「ハ」ニハ義務〓
育費國庫負擔金ノ增額、此義務〓育費ハ
是ハ漸ク千万圓ノ輕減ヲ昨年ノ特別議會ニ
於テ之ヲ決行致シタガ、今日ソレガ地方ニ
於テ負擔ノ輕減ニ使用サレタカドウカト內
務當局ニ追窮ヲ致シマスト云フト、其答辯
ハシドロモドロデアル吾々ガ表ヲ出シテ
之ヲ說明シロト言ヘバ其表ニハ增滅ノ末
ノミヲ書イテ基礎數字ガナイノデアル
今マデハ幾ラノ義務〓育費ノ交付金ガアッ
テ、サウシテ今囘ハ幾ラノ交付金ヲ增シテ、
ソレガ爲ニ增減ハドウ出タト云フヤウナコ
トヲ書イテナイデ、其結果ダケヲ三角ヲ付ケ
タリ丸ヲ付ケタリシテヤッテ居ル、幾ラ聞
イテモ何モ分ラナイ殊ニ御膝元ノ東京府
ニ於テハマダ是ハ負擔ノ輕減ニ充テヽ居
ナイ、目下督促中デアルナドト云フコトヲ
言ハレ、議會デ餘リヤカマシイモノダカラ、
無暗ニ內務省カラ電話ガ掛ッテ來テ困ルカ
ラ議會デハ少シ穩カニシテ貰ヒタイナド
ト云フヤウナ吾々ニ願ガ東京府カラ出テ
來ルト云フヤウナ、馬鹿々々シイコトデ終
始シテ居ッタノデアリマス(拍手)ソレデア
リマスカラ、第一番ニ國稅、地方稅ノ整理
輕減、地方稅ヲ何程整理シタカ何程輕減
シタカ却テ逆ニ益こ地方稅ニ付テハ窮迫
ヲセシメテ居ルデハナイカ一面ニ於テ
吾々ハ國民トシテハ、吾々ノ稅金ヲ成ベク
少クシテ貰ハナケレバナラヌ吾々カラ支
出シテ國家ヘ納メル金ハ成ベク少クシテ
戴カナケレバナラヌガ一面吾々ノ租稅デ
以テ賄ヲシテ居ル所ノ市町村ノ財政、各道
府縣ノ財政ト云フモノハ、ドウナッテ居ルカ
ト云フコトモ考ヘナケレバナラヌノデアリ
マス、負擔ノ公平ト云フコトヽ地方中央
ノ財政ト云フモノガピッタリ合ッテ初メテ
眞ノ負擔輕減ガ出來上ルノデ、一部ノ特權
階級、大資本家階級ニ媚ビルガ如キ提案ヲ
致シ、是等ノ目的ヲ達成シ得ラレルナドト
云フコトハ、ドウシテソンナコトヲ考ヘラ
レル斯ウ云フコトヲ吾々ガ考フル時ニ於
テ此減稅計畫ヲ含ム豫算ト云フモノハ
私共ハ曲リナリニモ六年度ハヤレルカモ知
レヌガソレハ色々ナ苛歛謀求ヲヤリ先
程述ベタヤウナ、煙草ノ元賣捌人ニ對シテ
ヤッタヤウナコトヲヤッタラ、何トカヤレル
カモ知レヌ併ナガラソンナコトデハ到底
辻褄ヲ合セルコトハ出來ヌカラ、ヤハリ非
募債主義ガ失業救濟ノ名義デ破綻ヲシタト
同ジヤウニ、是ハソットヤハリ公債ノ資源ニ
俟クテ辻褄ヲ合セルニ至ルデハナイカ、吾々
ハ初カラ堂々ト豫算ニ掲ゲテ、サウシテ公
債ト云フモノデ以テ、是ダケノ仕事ヲスル
ト云ッテ天下ニ公表シ、議會デ論議ヲスルノ
ナラ宜イケレドモ、法律デ以テ公債デ支辨
シテモ宜シイ、又ハ借入金デヤッテモ宜シイ
ト云フヤウナ法律ガアルノヲ幸ニ公債ノ
名ヲ避ケテソット借入金デ賄ヲスルナドト
云フコトハ、何事デアルカト吾々ハ考ヘテ
居ルノデアル、現ニ昭和四年六月末ニ比シ
テ昭和六年一月末-吾々ノ田中內閣カラ
諸君ノ內閣ニ移變リノ時ト、ソレカラ其後
ニ於ケル所ノ公債ト云フモノダケデモ、八千
餘万圓ヲ增加致シテ居ル借入金ニ於テモ
二千九百餘万圓ヲ增加致シテ居ルノデアリ
マス之ニ製鐵所事業費ノ借入金デアルト
カ、米穀法ノ借入金デアルトカ、鐵道事業費
ノ一時借入金ナドト云フモノヲ加ヘタナラ
バ、借入金丈ケノ增加ガ二億圓ヲ突破スル
デアラウト思フ、斯ウ云フヤウナル公債ト
政策ヲ持續シナガラ、公債ハ政友會デヤッタ
ノデアルト云フ、吾々ハ天災地變ニ因ル所
ノ公債、戰爭ニ因ル所ノ公債、或ハ地震ニ因
ル所ノ復舊復興ノ公債、其以外ハ殆ド產業
公債デアルニ拘ラズ之ヲ增加シテ六十億
ニ達セシメタノハ政友會デアルナド言ツ
テ自分ガ天下ヲ取ッテ僅二年ノ間、非募債
主義ヲ高唱シテ居ル中ニ八十餘万圓ノ公
債ヲ增加セシメ、尙ホソレデ足ラズシテ
二千九百餘万圓ノ借入金ヲ、此一月マデ僅
カ二箇年ノ間ニヤッテ退ケタデハナイカ(拍
手)其他ニ特別會計ノ製鐵所デアルトカ、其
他ノ一時借入金ヲ加ヘタナラバ二億ヲ突破
スル、今日議會ノ問題ニナッテ居ル所ノ
億五千万圓ノ大藏證劵等ト思ヒ合セル時ニ
於テ此財政計畫ト云フモノハ、如何ナル
程度ニ危險ニ瀕シテ居ルカト云フコトヲ考
へ一面ニ於テ特ニ國ノ財政地方ノ財政
ニ於テドンナ窮迫ノ事前ニアルカト云フ
コトヲ考ヘル時ニ於テ農村竝ニ中小商工
業者ノ疲弊困態其極ニ達シ每月々々地方
ニ於ケル所ノ銀行ノ休業、又開店ヲ致シテ
モ、休業狀態ノ持續ヲ以テ營業ヲヤッテ居ル
所謂開店体業銀行ト云フモノヲ合セテ約二
百ヲ超エ、後者ノ預金ト云フモノハ五億、
竝ニ体業銀行ノ一億五千万圓ヲ合シタナラ
バ、約七億ニ近イ所ノ此預金ト云フモノガ、
銀行ヨリ取入レラレナイ取返スコトノ出
來ナイ、引出スコトノ出來ナイト云フ事情
ニ在ル今日、殊ニ是ガ地方ニ本店ヲ有スル銀
行ニ多イト云フコトヲ考ヘルナラバ如何
ニ吾々ガ-國民ガ其業ニ在ル者ト無イ者
トヲ問ハズ、農民デアルト商工業者デア
シテハラハドレダケ苦ミノ渦中ニ呻吟
コトヲ考ヘ斯ノ如キ苛
歛誅求ヲ來シ、其ノ結果滯納處分ノ頻々トシ
テ起ツテ、サウシテ遂ニ財界ヲ大混亂ノ裡ニ
導カントスル危險ノアルヤウナ稅制案ハ
悉ク撤回ヲ致シテ諸君ノ聲明シタル趣旨
ニ合スル所ノ今日ノ窮迫シタル經濟界ノ
現狀ニ卽スル所ノ稅制案減稅案ヲ建直シ
テ吾々ニ見エンコトヲ諸君ニ希望スル
總理大臣代理以下其他内閣諸公ニ向フテ此
事ヲ勸〓シテ私ノ討論ヲ打切ラントスル
モノデアリマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02219310303&spkNum=18
-
019・作田高太郎
○作田高太郞君 討論終局ノ動議ヲ提出致
シマス卽チ七案ノ撤囘ノ動議ニ對スル討
論ハ此程度ヲ以テ終局セラレンコトヲ望
ミマス
〔「贊成」「贊成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02219310303&spkNum=19
-
020・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 作田君ノ討論終局
ノ動議ニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02219310303&spkNum=20
-
021・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 御異議ナシト認メ
きく、仍テ討論ハ終局致シマシタ是ヨリ
採決ニ入リマス先ヅ望月圭介君外十六名
提出ノ七案ノ撤囘ヲ求ムルノ動議ニ贊成ノ
諸君ノ起立ヲ求メマス
〔贊成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02219310303&spkNum=21
-
022・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 少數デアリマス
仍テ撤囘ノ動賢、否決セラレマシタ次一
七案ノ第二讀會ヲ開クヤ否ヤヲ御諸リ致シ
マハ七案ノ第二讀會ヲ開クニ贊成ノ諸君
ノ起立ヲ求メマス
〔賛成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02219310303&spkNum=22
-
023・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 多數デアリマス、
仍テ第二讀ヲ開クニ決シマシタ(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02219310303&spkNum=23
-
024・作田高太郎
○作田高太郞君 直チニ七案ノ第二讀會ヲ
開カレンコトヲ〓ヱミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02219310303&spkNum=24
-
025・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 作田君ノ動議ニ御
異議ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02219310303&spkNum=25
-
026・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 御異議ナシト認メ
マス、仍テ直チニ七案ノ第二讀會ヲ開キマス
地租法案第二讀會
營業收益稅法中改正法律案第二讀會
砂糖消費稅法中改正法律案第二讀會
織物消費稅法中改正法律案第二讀會
明治四十一年法律第三十七號中改正法
律案(地方稅制限ニ關スル件)第二讀會
大正十五年法律第二十四號中改正法律
案(地方稅ニ關スル件)第二讀會
都市計畫法中改正法律案第二讀會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02219310303&spkNum=26
-
027・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 別ニ御發議ガアリ
マセヌカラ七案共委員長報告通リ決シマ
シタ是ニテ七案ノ第二讀會ハ終リマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02219310303&spkNum=27
-
028・作田高太郎
○作田高太郞君 直チニ七案ノ第三讀會ヲ
開カレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02219310303&spkNum=28
-
029・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 作田君ノ動議ニ御
異議ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02219310303&spkNum=29
-
030・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 御異議ナシト認メ
マス、仍テ直チニ七案ノ第三讀會ヲ開キマス
地租法案第三讀會
營業收益稅法中改正法律案第三讀會
砂糖消費稅法中改正法律案第三讀會
織物消費稅法中改正法律案第三讀會
明治四十一年法律第三十七號中改正法
律案(地方稅制限ニ關スル件)第三讀會
大正十五年法律第二十四號中改正法律
案(地方稅ニ關スル件)第三讀會
都市計畫法中改正法律案第三讀會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02219310303&spkNum=30
-
031・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 別ニ御發議ガアリ
マセヌカラ七案ハ第二讀會決議ノ通リ可
決確定致シマシタ(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02219310303&spkNum=31
-
032・作田高太郎
○作田高太郞君 殘餘ノ日程ハ延期シ、本
日、是ニテ散會セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02219310303&spkNum=32
-
033・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 作田君ノ動議ニ異
議ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02219310303&spkNum=33
-
034・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 御異議ナシト認メ
マス仍テ動議ノ如ク決シマシタ次囘ノ
日程ハ公報ヲ以テ御通知ヲ致シマス本日
ハ是ニテ散會致シマス
午後四時五十五分散會
衆議院議事速記錄第二十一號中正誤
頁段行誤正
五二三四一風見章君木村義雄君
五二四一一一ハ右ハ本院ニ右ハ本院ニ
可決於テ可決
五四六四一0願ヒマス望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02219310303&spkNum=34
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