第59回帝国議会　衆議院　本会議　第25号　昭和6年3月10日

1. 会議録本文

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• 000・会議録情報

  昭和六年三月十日（火曜日）
  　　　午後二時三分開議
  　　　　━━━━━━━━━━━━━
  　議事日程　第二十四號
  　　昭和六年三月十日
  　　　午後一時開議
  　　　　質問
  　　一　海外移住政策に關する質問（津崎尚武君提出）
  　　二　航空に關する質問（永田良吉君提出）
  　　三　醫藥制度の大缺陷に關する質問（鈴木梅四郎君提出）
  　　四　健康保險法の實施に關する質問（鈴木梅四郎君提出）
  　　五　滿蒙政策に關する質問（岸田正記君提出）
  　　六　人造絹絲輸入關税竝外國製人絹使用目的の保税工場特許に關する質問（松井文太郎君外三名提出）
  　　七　新聞記者の資格制定に關する質問（飯村五郎君提出）
  　　八　北海道拓殖に關する質問（松實喜代太君提出）
  　　九　天皇の大權國體觀念軍人精神竝政治上の原則に關する質問（松實喜代太君提出）
  　　十　國際紛爭平和的處理に關する質問（田川大吉郎君提出）
  　　　　━━━━━━━━━━━━━
  　第一　競馬法中改正法律案（政府提出）　第一讀會
  　第二　右議案の審査を付託すへき委員の選擧
  　第三　牧野法案（政府提出）　　第一讀會
  　第四　右議案の審査を付託すへき委員の選擧
  　第五　關税定率法中改正法律案（政府提出）　第一讀會
  　第六　右議案の審査を付託すへき委員の選擧
  　第七　船舶積量測度法中改正法律案（政府提出、貴族院送付）　第一讀會
  　第八　右議案の審査を付託すへき委員の選擧
  　第九　蠶絲業組合法案（政府提出）　第一讀會
  　第十　蠶絲業法中改正法律案（政府提出）　第一讀會
  　第十一　右各案の審査を付託すへき委員の選擧
  　第十二　輸出生絲檢査法中改正法律案（政府提出）　第一讀會の續（委員長報告）
  　第十三　耕地整理法中改正法律案（政府提出）　第一讀會の續（委員長報告）
  　第十四　國立公園法案（政府提出）　第一讀會の續（委員長報告）
  　第十五　土地收用法中改正法律案（政府提出）　第一讀會の續（委員長報告）
  　第十六　家祿賞典祿給與未濟に關する法律案（末松偕一郎君外四名提出）　第一讀會
  　第十七　鑛業法中改正法律案（丹下茂十郎君外一名提出）　第一讀會
  　第十八　度量衡法中改正法律案（一松定吉君提出）　第一讀會
  　第十九　計量士法案（一松定吉君提出）　第一讀會
  　第二十　未成年者飮酒禁止法中改正法律案（長尾半平君外二十四名提出）　第一讀會
  　第二十一　恩給法中改正法律案（山下谷次君外一名提出）　第一讀會
  　第二十二　刑事訴訟法中改正法律案（一松定吉君外四名提出）　第一讀會
  　第二十三　刑事訴訟法中改正法律案（長谷川陸郎君外二名提出）　第一讀會
  　第二十四　利息制限法中改正法律案（一松定吉君外四名提出）　第一讀會
  　第二十五　利息制限法中改正法律案（原夫次郎君外三名提出）　第一讀會
  　第二十六　民事訴訟法中改正法律案（村岡吾一君外三名提出）　第一讀會
  　第二十七　航空法中改正法律案（永田良吉君提出）　第一讀會
  　第二十八　河川法中改正法律案（山枡儀重君外五名提出）　第一讀會
  　第二十九　借地借家調停法中改正法律案（小久江美代吉君提出）　第一讀會
  　第三十　借家法中改正法律案（小久江美代吉君外二名提出）　第一讀會
  　第三十一　六大都市に關する法律案（森田茂君外十八名提出）　第一讀會
  　第三十二　産業組合中央金庫法中改正法律案（由谷義治君外十四名提出）　第一讀會
  　第三十三　産業組合中央金庫法中改正法律案（岸田正記君外二名提出）　第一讀會
  　第三十四　癈兵優遇に關する法律案（一松定吉君外一名提出）　第一讀會
  　第三十五　司法代書人法中改正法律案（斯波貞吉君外一名提出）　第一讀會
  　第三十六　農會法中改正法律案（牛場清次郎君外三名提出）　第一讀會
  　第三十七　農會法中改正法律案（末松偕一郎君外十二名提出）　第一讀會
  　第三十八　耕地整理法中改正法律案（牛場清次郎君外三名提出）　第一讀會
  　第三十九　酒造税法中改正法律案（古島義英君外一名提出）　第一讀會
  　第四十　道路維持修繕費損傷者負擔法案（栗原彦三郎君提出）　第一讀會
  　第四十一　穀類搗精製粉取締法案（大竹貫一君外四名提出）　第一讀會
  　第四十二　私生子の名稱に關する法律案（一松定吉君外六名提出）　第一讀會
  　第四十三　負債整理組合法案（土井權大君外三名提出）　第一讀會
  　第四十四　産業組合法中改正法律案（土井權大君外三名提出）　第一讀會
  　第四十五　農工銀行法中改正法律案（土井權大君外三名提出）　第一讀會
  　第四十六　日本勸業銀行法中改正法律案（土井權大君外三名提出）　第一讀會
  　第四十七　北海道拓殖銀行法中改正法律案（土井權大君提出）　第一讀會
  　第四十八　米穀需給法案（土井權大君外三名提出）　第一讀會
  　第四十九　米穀需給特別會計法案（土井權大君外三名提出）　第一讀會
  　第五十　計理士法中改正法律案（定塚門次郎君外二名提出）　第一讀會
  　第五十一　無盡業法中改正法律案（松田正一君外二名提出）　第一讀會
  　第五十二　古物商取締法中改正法律案（石原善三郎君外二名提出）　第一讀會
  　第五十三　身元保證に關する法律案（一松定吉君外三名提出）　第一讀會
  　第五十四　辨理士法中改正法律案（名川侃市君外四名提出）　第一讀會
  　第五十五　大日本帝國國旗法案（石原善三郎君提出）　第一讀會
  　第五十六　大正十五年法律第五十二號中改正法律案（土地區劃整理に伴ふ清算金等に關する件）（安藤正純君外三十八名提出）　第一讀會
  　第五十七　震災に因る土地區劃整理施行地區内の假建築著手期限變更に關する法律案（戸井嘉作君外三十八名提出）　第一讀會
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• 001・藤澤幾之輔

  ○議長(藤澤幾之輔君)　諸般ノ報〓ヲ致サ
  セマス
  〔書記官朗讀〕
  一去七日貴族院ヨリ受領シタル政府提出案
  左ノ如シ
  船舶積量測度法中改正法律案
  一政府ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
  關稅定率法中改正法律案
  (以上三月七日提出)
  蠶絲業組合法案
  蠶絲業法中改正法律案
  (以上三月八日提出)
  (第一號)昭和五年度歲入歲出總豫算追加
  案
  (以上三月九日提出)
  一議員ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
  衆議院議員選擧法中改正法律案
  提出者
  末松偕一郞君深水〓君
  櫛部荒熊君武谷甚太郞君
  岡野龍一君作田高太郞君
  山枡儀重君
  (以上三月九日提出)
  發明奬勵ニ關スル建議案
  提出者
  竹內友治郞君安藤正純君
  土井權大君
  東北帝國大學ニ農學部增設ニ關スル建議
  案
  提出者
  菅原傳君守屋榮夫君
  星廉平君大石倫治君
  長谷川陸郞君小山倉之助君
  佐藤正君
  (以上三月七日提出)
  ブラジル國アマゾン河口ベレン市ニ帝國
  領事館設置ニ關スル建議案
  提出者
  服部〓一君定塚門次郞君
  濱野徹太郞君木原七郞君
  鷲野米太郞君
  國有林野所在府縣ニ對シ交付金下付ニ關
  スル建議案
  提出者八田宗吉君
  鹿兒島縣笠野原飛行場ニ陸海軍爆擊飛行
  隊設置ニ關スル建議案
  提出者永田良吉君
  鹿兒島灣沿岸ニ海軍航空隊設置ニ關スル
  建議案
  提出者永田良吉君
  耕地ノ擴張改良促進ニ關スル建議案
  提出者
  丹下茂十郞君高草美代藏君
  高橋熊次郞君土井權大君
  片野重脩君
  (以上三月九日提出)
  明治神宮競技ニ關スル建議案
  提出者
  信太儀右衞門君牧山耕藏君
  球磨川改修ニ關スル建議案
  提出者
  深水〓君平山岩彥君
  小山令之君
  北海道廳警察專用電話擴張ニ關スル建議
  案
  提出者
  小池仁郞君一柳仲次郞君
  (以上三月十日提出)
  一議員ヨリ提出セラレタル質問主意書左ノ
  如シ
  國際軍縮會議ニ關スル質問主意書
  提出者田川大吉郞君
  (以上三月七日提出)
  雪國地帶ノ鐵道速成ニ關スル質問主意書
  提出者八田宗吉君
  區劃整理ニ際シ東京市ノ小學校舍移轉補
  償金ニ對スル不當處分ニ關スル質問主意
  書
  提出者遠藤千元君
  (以上三月九日提出)
  一政府ヨリ受領シタル答辯書左ノ如シ
  衆議院議員津崎尙武君提出海外移住政策
  ニ關スル質問ニ對スル答辯書
  衆議院議員永田良吉君提出航空ニ關スル
  質問ニ對スル答辯書
  衆議院議員鈴木梅四郞君提出醫藥制度ノ
  大缺陷ニ關スル質問ニ對スル答辯書
  衆議院議員鈴木梅四郞君提出健康保險法
  ノ實施ニ關スル質問ニ對スル答辯書
  衆議院議員岸田正記君提出滿蒙政策ニ關
  スル質問ニ對スル答辯書
  衆議院議員松井文太郞君外三名提出人造
  絹絲輸入關稅竝外國製人絹使用目的ノ保
  稅工場特許ニ關スル質問ニ對スル答辯書
  衆議院議員飯村五郞君提出新聞記者ノ資
  格制定ニ關スル質問ニ對スル答辯書
  衆議院議目松實喜代太君提出北海道拓殖
  ニ關スル質問ニ對スル答辯書
  衆議院議員松實喜代太君提出天皇ノ大
  權國體觀念軍人精神竝政治上ノ原則ニ關
  スル質問ニ對スル答辯書
  衆議院議員田川大吉郞君提出國際紛爭平
  和的處理ニ關スル質問ニ對スル答辯書
  衆議院議員遠藤千元君提出區劃整理ニ際
  シ東京市ノ小學校舍移轉補償金ニ關スル
  質問ニ對スル答辯書
  (以上三月十日受領)
  海外移住政策ニ關スル質問主意書
  右成規ニ據リ提出候也
  昭和六年二月十日
  提出者津崎尙武
  海外移住政策ニ關スル質問主意書
  一日本國民ノ海外發展ハ日本ノ人口問
  題ノ爲ノミナラズ其ノ根本的觀念ハ世
  界ノ平和ト人類ノ幸福ニ貢獻スルニア
  ル從テ我ガ國ノ海外移住政策ハ其ノ根
  本的方針ヲ確立シテ之ガ實行ヲ期セネ
  バナラヌ政府ハ我ガ國ノ海外移住政策
  ニ關シ根本的方針ヲ確立シアリヤ若シ
  アリトセバ其ノ方針如何
  二我ガ國ノ海外移住政策ハ世界ノ各方
  面ニ對シ其ノ事情ニ應ジテ方針ヲ樹立
  シ實行ヲ期セネバナラヌ政府ハ何レノ
  方面ニ海外移住ヲ奬勵セントスルヤ
  三中、南米各國ハ獨リ「ブラジル」ノミ
  ナラズ日本人ノ移住ニ依リテ拓カルベ
  キモノナリト思惟ス政府ハ之等各方面
  ニ對スル移住奬勵ノ方策アリヤ若シア
  リトセバ具體的ニ示サレタシ
  四滿蒙モ亦日本ノ移住政策上ヨリ觀ル
  モ重要ナル方面デアル現ニ朝鮮ノ我ガ
  國民ニシテ彼ノ地方ニ在住スル者百萬
  ヲ超エ而モ非常ナ迫害ヲ受ケテ居ル政
  府ハ滿蒙ニ對スル移住政策ヲ如何ニ定
  メアルヤ
  五海外移住組合ハ我ガ國ニ於ケル企業
  移民ノ制度ヲ創設セルモノデ我ガ國ノ
  海外移住政策上新紀元ヲ劃スルモノデ
  アル從テ本組合ノ運用如何ハ我ガ國ノ
  海外移住政策上極メテ重大デアル政府
  ハ本組合法施行後ノ實績ヲ如何ニ觀ル
  カ
  六海外移住組合法制定ニ伴ヒ組合ノ設
  立竝活動ニ關スル補助金貸付資金等政
  府ノ支出シタル諸費ニ關シ其ノ各年度
  ノ金額如何、各費目ニ付キ明示ヲ望ム
  七海外移住組合購入土地ノ面積、箇所
  竝其ノ購入土地ニ入植セシ家族數及ビ
  人員如何
  八貸付資金ノ支出竝其ノ囘收狀況、移
  住地ノ現狀及ビ其ノ將來ノ見込如何
  九海外移住組合ハ其ノ重大ナル業務ノ
  一トシテ移住ノ幹旋ヲ爲サネバナラヌ
  然ルニ海外移住組合聯合會ハ其ノ業務
  ヲ海外興業株式會社ニ委任セルハ如何
  ナル理由ナルカ政府ハ此ノ重大ナル事
  項ヲ看過スルモノナリヤ
  +移住者渡航ノ斡旋ヲ海外移住組合聯
  合會自ラ之ヲ爲サズシテ他ニ委任セル
  結果遂ニ「ブラジル」ニ於ケル移民誘入
  ノ免許問題ニ遭遇シ海外移住組合ハ自
  己ノ移住者卽チ所謂企業移民ヲ自ラ取
  扱ヒ得ズ却テ契約移民取扱者タル海外
  興業株式會社ニ支配セラルルニ至ツタ
  斯ノ如キニ本組合法制定ノ趣旨ニ反スル
  モノデアツテ其ノ責任ハ極メテ重大デ
  アル政府ハ本問題ヲ此ノ儘ニ看過スル
  ヤ如何
  十一外務省拓務省及ビ海外ニ於ケル官
  吏等ニシテ海外移住組合ガ自ラ移住者
  ノ取扱ヲ爲サントスルニ付テ反對ノ行
  動ヲ執リタル事實ナキヤ若シアリトセ
  バ政府ハ之ヲ其ノ儘ニ看過スルヤ
  十二海外移住組合聯合會ガ「ブラジル」
  ニ對スル移民誘入認可ヲ得ルコトニ政
  府ハ盡力スル意思アリヤ
  十三政府ハ海外移住組合竝移住組合聯
  合會ノ監督ニ遺憾ナキヤ
  十四海外移住組合聯合會ノ土地購入及
  ビ其ノ處分竝管理等ニ關シ何等ノ過失
  ナシトスルカ政府ノ所見如何
  十五海外移住奬勵費ノ使途ニ關シ政府
  ハ從來ノ方針ヲ以テ滿足ナリト思惟ス
  ルヤ
  十六海外興業株式會社ノ業績ハ政府ニ
  於テ滿足スル狀態デアルカ而シテ政府
  ガ同會社ニ補助シテ居ル直接間接ノ經
  費ノ種類、金額ヲ其ノ當初ヨリ今日ニ
  至ル迄明細ニ指示セラレタシ
  右及質間候也
  昭和六年三月十日
  內閣總理大臣濱口雄幸
  衆議院議長藤澤幾之輔殿
  衆議院議員津崎尙武君提出海外移住政策
  ニ關スル質問ニ對シ別紙答辯書差進候
  〔別紙〕
  衆議院議員津崎尙武君提出海外移住政
  策ニ關スル質問ニ對スル答辯書
  -國民ノ海外發展ハ世界ノ平和ト人類
  ノ幸福ニ貢獻スルヲ以テ主眼トスヘキ
  ハ言ヲ俟タサル所ニシテ政府ノ海外移
  住ニ關スル根本方針モ此ノ趣旨ニ則リ
  テ海外移植民ノ保護奬勵ヲ行フニ在リ
  從ツテ之カ實行ニ當リテハ特ニ彼我ノ
  社會上經濟上其ノ他諸般ノ條件ヲ考察
  シ國際相互ノ利益ト友誼ノ增進ニ遺憾
  ナキ樣有效適切ナル方策ヲ講シ共助共
  榮ノ實ヲ擧ケンコトヲ期セントスルモ
  ノナリ
  二政府ハ世界ノ何レノ國何レノ地方タ
  リト雖モ苟モ邦人ノ移住ヲ歡迎シ且ツ
  共ノ國情カ邦人ノ移住ニ適スルモノア
  ル場合ハ何時ニテモ移住奬勵ヲ爲ス方
  針ナリ
  三伯國以外ノ中南米諸國ニ對スル移住
  奬勵ハ夙ニ政府ノ考慮シ居ル處ニシテ
  右各國ニ調査員ヲ派シ其ノ調査報〓ハ
  在外公館ノ調査報告ト共ニ適宜之ヲ國
  內ニ紹介シ或ハ實耕調査ヲ試ミ又必要
  ノ場合ハ渡航費ヲ補助シ其ノ他〓育、
  醫療、產業施設等ノ問題ニ深甚ノ考量
  ヲ廻ラシ他面移住國トノ協定ヲ結ヒ又
  ハ移民關係法規ノ改善ヲ促ス等以テ此
  ノ方面ニ於ケル我カ國民ノ移住ヲ容易
  ナラシムルト共ニ之カ奬勵ニ努メツツ
  アリ
  四滿蒙ニ對スル移住政策ニ付テハ政府
  トシテハ從來ヨリ積極的ニ其ノ移住ヲ
  奬勵シタルコトナキモ滿鮮兩地ノ接壤
  ノ關係ニ在ルヲ以テ永年間ニ自發的ニ
  移住セルモノ今日ニ於テハ約百万前後
  ヲ算スルニ至レリ此等移住者ニ對シ
  テハ時ニ多少ノ迫害アルハ遺憾ナルモ
  其ノ都度出先官憲ヲシテ匡正ノ途ヲ講ルモ我國農村ノ不況、伯國財界ノ恐慌
  セシメ銳意在留民ノ保護ニ當リツヽア竝革命等ノ爲メ、當初豫期セル如キ成
  ルト共ニ之カ救療、〓育、產業竝ニ金果ヲ看ルニ至リ居ラス。然レトモ今後
  融等ニ關シ出來得ル限リ助成善導ノ途事業ノ遂行ニ一段ノ刷新ヲ加へ組合ノ
  ヲ講シツヽアリ目的達成上遺憾ナキヲ期セムトス
  五、海外移住組合ノ運用ハ我國移民政策六海外移住組合及同聯合會ノ設立以來
  上極メテ重要ナル事項ナルヲ以テ政府之カ目的ヲ達セシムルタメ政府ノ貸付
  ハ之カ運用ニ關シ銳意力ヲ須ヒ來リタシタル資金及補助金ハ左記ノ如シ
  記
  海外企業費貸付金生產資金貸付金內譯
  費目年度昭和三年度同四年度同五年計
  十二月末
  海外企業費貸付金
  円円円円
  土地購入代金三、〇四三、九一〇一、〇一一、六〇六四、〇五五、五一六
  幹線道路築造費八四、七三七一〇八、四六五二三三、〇〇〇四二六、二〇二
  土地區劃及測量費一九四、七三七一一八、五七一五、〇〇〇三一八、三〇八
  登記料一〇一、六一七一五二、三九九二五四、〇一六
  土地調査費三三、〇〇〇四一、四六二七四、四六二
  諸給及雜費七四、二一〇一二九、七四三四七、五四三二五一、四九六
  生產資金貸付金二五〇、〇〇〇二五〇、〇〇〇
  計三、五三二、二一一一、八一二、二四六二八五、五四三五、六三〇、〇〇〇
  二海外移住組合及同聯合會ニ對スル公益施設費事務費其ノ他諸費補助金內譯
  費目年度昭和同三年度同同五年
  二年度四年度十二月末計
  円円円円円
  事務費相助金一〇〇、〇〇〇一一〇、〇〇〇一三〇、〇〇〇三四〇、〇〇〇
  公益施設同四五、〇〇〇三二六、〇〇〇四六、五一五四一七、五一五
  土地調査費同二〇、〇〇〇二〇、〇〇〇
  土地測量費同11一九、〇二〇一九、〇二〇
  計一〇〇、〇〇〇一五五、〇〇〇四七六、〇〇〇六五、五三五七九六、五三五
  七、海外移住組合ノ購入土地面積及箇所末迄ニ三百八家族千六百二十七名ニ上
  ハ別紙ノ如クニシテ之ニ對スル入植者レリ(但シ組織變更前ニ於ケル四組合
  ハ在伯者ノ入植者ヲ合シ昭和六年一月ノ入植者數ヲ除ク)
  海外移住組合聯合會取得土地一覽表(昭和六年一月末現在)
  所在地面積
  サンジヨゼ·ドス·ドラードス·チエ
  チエテ兩河ノ〓ニ介在シチエテ河ヲ隔町步
  サンパウロ州移住地テテテノロエステ線ルッサンビーラ一一八、七九二、五
  驛其ノ他三驛ニ面スル地及パラナ
  河東岸ノ二箇所ノ散地
  サンパウロ州アリアンサ
  移住地リ南方四十粁ノ地
  同バストス
  移住地(三十粁ペーシ河沿ノ地
  同ペンサ耕地チエテ移住地接續地
  パラナ州トレズバラバラナ、
  ス移住地〔東側流域ノ地
  ミナスサスイグラリオ·ドーセ本流ト
  ゼラエス州ンデ移住地〔ランデ河トノ合流地附近
  計
  備考
  アリアンサ移住地
  內譯
  一信濃移住地
  一鳥取移住地
  富山移住地
  熊本移住地三、
  接續移住地一
  肩替組合ノ組織變更前ニ於ケル移住地分讓狀況
  分
  協會名移住總自作
  面積
  人員面
  町步人
  一一、七五〇一九二
  山濃三、二五〇四
  鳥富信
  取三、〇〇〇七
  熊本三、〇〇〇三六
  計二一、〇八〇二四九
  八貸付金ノ支出ニ就テハ第六項參照
  海外企業費貸付金及生產資金貸付金ハ
  何レモ未タ償還ノ時期ニ達セス尙聯
  合會ノ取得セル移住地中バストス、チ
  エテアリアンサ三移住地ニ對シテハ
  昭和四年度ヨリ移住者ノ入植事務ヲ開
  始シ產業、衞生、〓育等ノ一切ノ施設
  ヲ施シ本年一月末現在ニ於テ千六百二
  十七名ノ入植者ヲ出シ現在何レモ相當
  ノ收益ヲ收メツツアルヲ以テ將來ニ於
  テハ入植者ノ增加ト珈琲樹ノ成熟ト共
  ニ益〓發展スベキモノト認ム
  九海外移住組合聯合會カ組合員ノ移住
  ノロエステ線ルッサンビーラ驛ヨ二七、三九三
  ソロカバナ線クアター驛ヨリ東北三二、三三〇
  一、二〇〇
  パネマ河支流チバジイ河三一、二五〇
  支流サスイグ五二、四三三
  二六三、三九八、五
  二七、三九三町步
  六、二五〇町步
  三、〇〇〇同
  三、二五〇同
  一五五同
  、七三八同
  (昭和二年十一月末現在)
  讓面積
  面未分讓
  人不在地主積
  積人員面積
  町人町町步
  六、四一五二二九四、七三一六〇〇五
  八五三五七〇二、五九五
  BITC一〇二五〇二、三〇〇
  入八一五三四〇一、七六〇
  七、八七〇二七六五、八九一七、二五八
  ノ斡旋ヲ爲スヘキハ組合設立當初ノ計
  畫ナリシト雖モ右ハ相當ノ熟練ト經費
  トヲ要シ且ツ之カ卽行ハ現地ニ於ケル
  諸般ノ關係上考量ヲ要スル點アリタル
  ニ依リ差當リ之ヲ海外興業株式會社ニ
  委託スルモ已ムヲ得サルモノト認メラ
  ル
  十組合員ノ渡航斡旋ハ財政上對外關係
  上竝事務遂行ノ便宜上支障無キ限リ自
  ラ之ヲ行フヲ可トスヘク組合設立當初
  ニ於テハ之カ計畫ヲ爲シタルモ爾後諸
  種ノ事情ニ因リ海外興業會社ニ委託シ
  居レルモ之必シモ組合法制定ノ趣旨ニ
  反スルモノニハ非スト認ム
  ±海外移住組合聯合會九組合員ノ渡
  航ノ幹旋ヲ爲サントスルハ組合設立當
  初ノ計畫ナルモ之カ實行ニ當リテハ細
  心ノ〓量ヲ拂フヲ要スルニ鑑ミ關係在
  外公館長ニ於テモ現地ニ於ケル證般ノ
  條件等ヲ篤ト考察シタル結果未タ其ノ
  時機ニ非サル旨ノ意見ヲ有シタルヲ以
  テ政府ニ於テモ大體之ヲ諒認セリ
  十二海外移住組合聯合會カブラジルニ
  對スル組合移民ノ誘入ヲ行フコト內外
  諸般ノ情勢上適當ナル時機ニ達スレハ
  必要ニ應シ相當盡力ヲ爲ス意嚮ナリ
  十三海外移住組合竝聯合會ノ監督ニ就
  テハ常ニ報告書ヲ徵シ若クハ職員ヲ派
  シテ實地監査ヲ爲シ遺憾ナキヲ期シヅ
  ツアリ又海外移住組合聯合會伯國出張
  所ニ於ケル事業其他ノ監督ニ就テハ在
  外公館ノ外特ニ隨時派遣セル職員ヲシ
  テ嚴重ナル監査ヲ勵行セシメ居レリ
  十四聯合會ノ事業ハ遠隔ノ地ニ於テ經
  營スル爲事情ノ不明事業草創ノ際等ノ
  爲其ノ土地購入及其ノ處分竝ニ管理ニ
  關シテ多少遺憾ノ點アルヲ認メ目下之
  カ刷新ニ努メツヅアリ
  十五政府ハ海外移住者ニ對シ渡航費及
  手數料全廢報償金ヲ補助シ居ルモ必シ
  モ現在ノ狀況ヲ以デ滿足セルニアラス
  將來積極的ニ海外移住ノ奬勵ヲ行ハン
  カ爲メ常ニ對策ノ講究ヲ怠ラスシテ時
  代ノ進運ニ適應シ適切ナル保護奬勵ノ
  方途ヲ講スルコトニ努メムトス
  十六海外興業株式會社ノ業績ハ必シモ
  政府ニ於テ滿足シ居ルモメニアラス常
  ニ督勵シテ改善ニ努メシメツツアリ而
  シテ當初ヨリ同社ニ對シ補助シタル金
  額種類ノ合計左ノ如シ
  海外興業株式會社補助金調(自大正十
  年至昭和五年十二月)
  事項金額
  円
  保護〓養費七七四、一五五
  渡航奬勵費八、三九一、六五三
  渡航手數料全廢一、四九八、六三〇
  報償金
  イグアペ、桂、レ
  ジストロ產業組三〇、〇〇〇
  合助成費
  サンパウロ農事
  實習場設置助成三〇、〇〇〇
  費
  〓育、衞生、產二三二、六〇一
  業施設費補助
  合計一〇、九五七、〇三九
  右及答辯候世
  昭和六年三月十日
  外務大臣男爵幣原喜重郞
  拓務大臣松田源治
  航空ニ關スル質問主意書
  右成規ニ據リ提出候也
  昭和六年二月十日
  提出者永田良吉
  航空ニ關スル質問主意書
  ー航空省設置ニ關スル政府ノ所見如何
  二內地、臺灣連絡定期飛行ニ關スル政
  府ノ所見如何
  三航空審議會開設ニ關スル政府ノ所見
  如何
  四航空兵力充備ニ關スル政府、特ニ陸
  軍當局ノ所見如何
  五特別大演習ニ於ケル航空兵力ノ少ナ
  キ理由如何
  六國內及對外航空路開設ニ關スル政府
  ノ所見如何
  右及質問候也
  右答辯ハ口頭ヲ以テセラレムコトヲ望ム
  昭和六年三月十日
  內閣總理大臣濱口雄幸
  衆議院議長藤澤幾之輔殿
  衆議院議員永田良吉君提出航空ニ關スル
  質間ニ對シ別紙答辯書差進候
  〔別紙〕
  衆議院議員永田良吉君提出航空ニ關ス
  ル質間ニ對スル答辯書
  航空行政機關ノ統一ニ關シテハ政府
  ニ於テモ夙ニ〓究中ニシテ民間航空事
  業ノ奬勸指導等ハ既ニ遞信省ニ於テ又
  基礎的學理ノ〓究ハ文部省ニ於テ統一
  セラレアルモ一般器材ノ製造及研究機
  關ノ統一ハ陸海軍民間各、其ノ用途ニ
  從ヒ要求スル所異ルノミナラズ本邦ノ
  如ク陸海軍航空技術ノ個々ニ發達セル
  狀態ニ於テハ其ノ實施ニ付幾多困難ノ
  專情アリ從テ航空省設置ニ關シテハ猶
  領重考究中ナリ
  二內地臺灣間ニ航空路ヲ設置シ定期航
  空ヲ實施スルハ內臺間交通ノ便益ヲ增
  進スルガ爲ニ極メテ肝要ナルハ言ヲ俟
  タザル所ニシテ政府ニ於テモ夙ニ考
  究申ナルガ之ガ爲ニハ相當ノ經費ノ支
  出ヲ要スルヲ以テ將來財政ノ許ス限リ
  可成速ニ其ノ實現ヲ期セムトス
  三航空事業ノ重要性ニ鑑ミ我國航空政
  策ノ確立ヲ圖ル爲航空ニ關スル調査審
  議機關ヲ設置スルコトニ關シテハ政府
  ニ於テ夙ニ考究中ニ屬ス
  四航空兵力ノ充實ニ關シテハ陸軍ニ於
  テモ之ガ實現ヲ急務トシ曩ニ大正十四
  年軍備整理ノ際可成大ナル整備ヲ爲シ
  タルモ猶所望ノ點ニ達セザルヲ以テ目
  下種々〓究審議ヲ進メツツアリ而モ之
  ガ爲大ナル經費ヲ要スルニ拘ラズ國家
  財政ノ現況ハ今俄ニ之ニ要スル資ヲ國
  庫ニ要求シ得ザルヲ以テ種々之ガ對策
  ニ就キ〓究中ナリ
  五幾許ノ航空兵力ヲ配屬スベキヤハ演
  習ノ目的及內容ニ關スル問題ナルヲ以
  テ一〓ニ其ノ多寡ニ關シテ答辯スルコ
  トヲ得ズ
  六國內及國際航空線路ノ開設ヲ圖ルハ
  頗ル緊要ノ事項ナルヲ以テ政府ハ曩ニ
  我國主要幹線航空路タル東京大連間ニ
  定期航空路ヲ開設スルト共ニ國際航空
  路ノ開設ニ關シテハ既ニ當局者間ニ交
  涉中ノモノアリ其ノ他ノ國內線路竝國
  際線路ノ開設ニ關シテモ夙ニ考究中ナ
  ルガ之ガ爲ニハ相當ノ經費ノ支出ヲ要
  スルヲ以テ將來財政ノ許ス限リ可成速
  ニ其ノ實現ヲ庶幾セムトス
  右及答辯候也
  昭和六年三月十日
  陸軍大臣宇垣成
  外務大臣男爵幣原喜重郞
  遞信大臣小泉又次郞
  海軍大臣男爵安保〓種
  醫藥制度ノ大缺陷ニ關スル質問主意書
  右成規ニ據リ提出候也
  昭和六年二月十日
  提出者鈴木梅四郞
  醫藥制度ノ大缺陷ニ關スル質問主意書
  第日本帝國ノ醫藥制度ハ建國已來國
  家的社會的ニシテ歐米ノ如ク個人的營
  利的ニ非サリシハ歴史ノ明示スル所ナ
  ル然ルニ現在ノ制度ハ全ク醫師ノ個人
  的賛利的ニシテ百弊之ニ因テ起ル政府
  ハ建國已來ノ歷史ニ鑑ミ此ノ制度ニ根
  本的改革ヲ施スノ意思ナキカ
  第二日本ノ醫學醫術ハ最近非常ノ進步
  ニシテ將ニ歐米ヲ凌駕セムトシ、病者負
  傷者ノ幸福古來ナキ所ナリ而シテ此ノ進
  步ノ原因ハ建國已來斯道先人ノ獻身的
  努力ノ累積ト國家ノ厚キ獎勸ト將又全
  國民ノ此ノ莫大ナル獎勵費ヲ負擔シタ
  ル三箇條ニ歸スヘキモノナリ隨テ此ノ
  進步シタル醫學醫術ノ恩惠ニ浴スヘキ
  ハ國民ノ階級ト貧富トノ別ナク一切平
  等タルヘキ筈ナリ然ルニ現制度ハ國民
  ノ約四分ノ一ニ過キサル富メル階級ト
  國民ノ約十分ノ一ニ足ラサル健康保險
  ノ被保險人及施藥施療ヲ受クル貧民階
  級トノミ此ノ恩惠ニ浴シ殘ル四分ノ三
  弱ニ當ル大多數ノ國民ハ全ク此ノ恩惠
  外ニ排斥セラレ居レリ政府バ此ノ現狀
  ヲ以テ果シテ其ノ當ヲ得タリト信スル
  ヤ否ヤ
  第三人命ノ大切ナルコトハ國民ノ貧富
  ヲ間ハス正ニ同一ニシテ其ノ間一點ノ
  相違ナキハ何人モ之ヲ疑ハサル正義ナ
  リ然ルニ現行醫藥制度ハ事實ニ於テ富
  メル國民ト最下級ノ國民ノ生命ノミヲ
  重シトシ他ノ大多數ノ國民ノ生命ヲ見
  ルコト鴻毛ヨリモ輕シ否殆ト其ノ眼中
  ニナキカ如シ政府ハ人命尊重ノ此ノ正
  義ニ反スル行政上ノ此ノ大失態ヲ何ト
  見ルカ敢テ其ノ所見ヲ質ス
  第四現行醫藥制度ニ於テハ一家ニ一人
  ノ病者アリ一箇月警者通ヒヲスレハ少
  クトモ六七十圓ヲ要シ不幸一箇月入院
  スレハ第三等室ニ入リテモ金三百圓ヲ
  要ス政府ハ日本國民大多數ノ生活程度
  ハ病氣、負傷ニ際シテ斯ル重キ負擔ニ
  堪ユルモノト信スルカ敢テ其ノ所見ヲ
  質ス
  第五現在ノ開業醫ハ堅キ醫藥「トラスト」
  ヲ作リテ貧民病者ノ應招ヲ拒絕シ生ク
  ヘキ病人ヲモ死セシムル場合少カラス
  然ルニ此ノ點ニ關スル政府ノ取扱ハ極
  メテ不親切ニシテ醫師ヲ取締ルコト極
  メテ寛大ナルハ多數國民ノ最遺憾トス
  ル所ナリ政府ハ此ノ不都合ナル現象ニ
  對シテ果シテ如何ナル所見ヲ有スルカ
  序テ乍ラ敢テ最近三箇年間ニ於ケル醫
  師不應招ニ對スル制裁卽チ其ノ罪跡ト
  其ノ罪人數ノ明示ヲ求ム
  第六日本國民ノ死亡者ノ約半數ハ病ム
  モ生前ニ醫師ノ診察ヲ受クル能ハス死
  後ニ於テ始テ醫師ノ檢診ヲ受ケテ其ノ
  埋葬ヲ許サル而モ此ノ燐ナル死亡者ノ
  檢診料ハ貧者ニ取リテハ非常ニ高ク一
  種高率ナル死亡稅タルノ觀アリ政府ハ
  此ノ貧者ノミノ負擔スル高キ此ノ檢診
  料ニ對シテ果シテ如何ナル感ヲ抱クカ
  敢テ其ノ所見ヲ質ス
  第七lat師ノ分布ハ非常ニ不平均ニシテ大
  都會ニハ人口五百人ニ對シテ醫師一人
  ノ割合ナル所アルニ或地方ニ於テハ人
  口一万人ニ四、五人ニ過キサル所アリ
  就中全國一万二千ノ町村中ニ醫師ナキ
  モノ三千ニ及フ始末ナリ政府ハ斯ル分
  布ヲ以テ國民衞生ヲ十分ニ保護スルコ
  トヲ得ルト考フルヤ否ヤ
  第八人口五百人ニ對シテ醫師一人ノ分
  布ハ開業醫ニ取リテモ頗ル不利益ニシ
  テ此ノ中過半ハ悉ク生活困難ナリ隨テ治
  療上ニ種種ナル惡弊行ハレ或ハ一週間
  ニテ治シ得ヘキ病氣ヲ故意ニ數週ニ延
  長シ或ハ效果少キ高價ノ注射ヲ强要シ
  或ハ專門違ノ病者ヲモ之ヲ專門醫ニ紹
  介セス殆ト瀕死ノ際迄自己ノ病院ニ抑
  留シタル等ニテ本員ノ前議會質問ニ揭
  ケタル醫師ノ十五大罪ヲ現出スルニ至
  リテ社會民人ノ受クル害毒甚シキモノ
  アリ政府ハ此ノ事相ニ對シテ何等ノ責
  任感ナキカ敢テ其ノ所見ヲ質ス
  第九人口二千人又ハ二千五百人ニ對シ
  一人ノ醫師ハ都會地ニ在リテハ或ハ相
  當ノ數ナルヘキモ面積廣ク山河ヲ隔ツ
  ル交通不便ノ地方ニ於テハ實際醫師ノ
  乏シキヲ感スルコト醫師ナキニ同シ政
  府ハ此ノ現狀ニ對シテ如何ナル所見ヲ
  有スルカ其ノ說明ヲ求ム
  第十醫藥制度ノ此ノ大缺陷ヲ幾分ニテ
  モ緩和補助セムトシテ起リタル實費診
  療所設置ニ對スル政府ノ態度ハ常ニ醫
  師會ノ運動ニ制セラレテ專ラ抑壓主義
  ヲ實行セリ現ニ社團法人實費診療所ノ
  支部設置ノ請願書ハ大正十四年ニ提出
  セラレ居ルニ拘ラス内閣カ三度更迭シ
  年ハ七年ヲ閱スレトモ握リ潰シトナリ
  テ今ニ其ノ儘ナルカ如キ其ノ一例ナリ
  政府ハ醫療社會化ノ叫ヒ天下ニ囂囂タ
  ルノ今日尙斯ル態度ヲ正當ナリトスル
  ヤ否ヤ敢テ其ノ所見ヲ質ス
  第十一一昨年九月八王子市民カ相互診
  療組合ヲ作リテ八王子相互病院ヲ新設
  シ診察無料、普通開業醫ノ半額ノ藥價
  及治療費ニテ經營シ現ニ八千百餘戶ノ
  組合員ヲ有シ今ヤ同市及其ノ近郊ニ於
  ケル有益ノ機關ト爲レリ然ルニ八王子
  市南多摩郡醫師會ハ之ヲ仇敵視シ雇傭
  關係ニ在ル同病院ノ勤務醫師四人ニ對
  シ同所ノ藥價診察料ハ同組合ノ所定ニ
  シテ雇傭醫師ニ何等關係ナキニ拘ラス
  同醫師會ノ規約タル最低藥價診察料ニ
  比シ半額ナルヲ理由トシテ規約違反ト稱
  シ百五十圓ノ罰金ヲ請求シテ其ノ醫師
  ヲ脅迫シ更ニ同シ理由ニテ醫師會員ト
  シテ當然保有スル役員ノ選擧權被選擧權
  剝奪ノ暴行ヲ加ヘ居レリ然ルニ此ノ暴
  狀ニ對シ監督官廳タル東京府知事及內
  務省衞生局長ニ對シ組合側ヨリ訴フル
  所アレトモ之ニ對シ東京府知事モ內務
  省衞生局長モ何等ノ所置ヲ施サス同醫
  師會ノ狂暴行爲ヲ看過シテ同病院在勤
  ノ醫師ノ迷惑ナル立場ニ對シテ何等同
  情的所置ヲ採ラサルハ事實ナリトス政
  府ハ今ヤ醫療社會化ノ聲天下ニ叫ハル
  ルニ方リ醫師會ノ監督上該醫師會ノ行
  動ヲ正當トスルモノナリヤ否ヤ敢テ其
  ノ所見ヲ質ス
  第十二鐵道省關係ノ從事員及共ノ家族
  ノ爲ニハ鐵道病院アリ警視廳關係ノ役
  員、警官及其ノ家族ノ爲ニモ亦特別ノ
  病院アリ何レモ廉價ニ容易ク病氣、負
  傷ノ場合ニハ直ニ醫藥ニ接シ居リ政府
  ハ之ニ對シテ相當ノ補助ヲ爲シ居レリ
  又民間ノ大會社ニ於テモ相當ノ病院ヲ
  有シ社員及其ノ家族ニ對シテ前同樣ノ
  診察待遇ヲ與ヘ居ルモノアリ醫師會ハ
  之ニ對シテ其ノ藥價診察料ニ付何等苦
  情ヲ謂ハス然ルニ市民自ラ費用ヲ出シ
  自ラ共同ノ病院ヲ設ケテ診療上ノ便宜
  ヲ圖ルニ對シテハ右ノ如キ暴行壓迫ヲ
  加フルモ政府カ何等ノ制裁ヲ加ヘサル
  ハ全ク全國民ノ要望スル醫療ノ社會化
  ヲ妨遏スルニ同シ政府ハ國民自ラ共同
  ノ病院ヲ作リテ醫療ノ便宜ヲ圖ラムト
  スルモノニ對シテハ國民衞生ノ爲ニ寧
  ロ之ヲ補助スルコトカ正當ナリト思フ
  況ヤ醫師會ノ暴行ヲ傍觀スルハ不當ナ
  リ政府ノ本件ニ關スル所見ヲ質ス
  第十三警視廳ニ於テハ人民自ラ出金シ
  テ其ノ機關病院ヲ作ルノ請願ニ對シテ
  ハ早速認可ヲ與ヘタルニ愛知縣廳ニ於
  テハ醫師ノ經營セサル病院卽チ國民共
  同設立ノ病院ニ對シテハ醫師會ノ思惑
  ヲ遠慮シテカ容易ク認可ヲ與ヘス願書
  提出後半箇年ニ亙リテ今ニ何ノ音沙汰
  ナシ聞ク所ニ據レハ內務省衞生局ニ於
  テハ醫師ノ運動ニ制セラレ醫師ニ非サ
  ル人ノ病院經營ヲ認可セサル論議モア
  ル由時代錯誤モ亦甚シト謂フヘシ政府
  ハ此ノ問題ニ對シテ如何ナル方針ヲ有
  スルヤ敢テ其ノ所見ヲ質ス
  第十四醫療社會化ノ奬勵ニ對シテハ政
  府部內ニ全然相容レサル二方針アリ卽
  チ遞信省ハ國民衞生上實費診療所ノ設
  立ヲ奬勵シ之ニ對シテ其ノ低利資金ヲ
  貸與セルモノノ件數十九件金額二百七
  十餘萬圓ニ達スルノミナラス省自身ノ
  直轄セル簡易保險ノ被保險人ニ對シテ
  ハ現ニ實費診療ヲ經營シツツアリ然ル
  ニ內務省衞生局ハ前項ノ如ク實費診療
  所ノ設置ヲ防遏シツツアリ又同シ內務
  省中ニテ社會局ハ遞信省同樣ノ方針ヲ
  取リテ各地方ニモ之ヲ奬勵シツツアル
  ハ矛盾ノ甚シキモノナリ之カ爲ニ各府
  縣ニ於テモ實費診療所ノ設立ニ關シ其
  ノ衞生課ニ於テハ之ヲ防遏シ其ノ社會
  課ニ於テハ之ヲ奬勵シテ共ノ設立ヲ助
  ケツツアルノ奇觀ヲ呈セリ政府部內ノ
  此ノ相容レサル矛盾不統一ニ屬スル現
  實ノ事相ニ對シ政府ハ如何ナル所見ヲ
  有スルヤ敢テ其ノ眞意ヲ質ス
  第十五已上ノ如キ大缺陷ヲ有スル醫藥
  制度ノ齎ラス直接ノ結果ハ眞ニ驚クヘ
  キモノアリ今其ノ重ナルモノヲ擧クレ
  ハ左ノ如シ
  1日本國民ノ死亡率ハ諸文明國ニ比
  シテ非常ニ高キコト
  2日本國民ノ平均生命ハ之ヲ諸文明
  國ニ比シ是亦非常ニ短命ナルコト
  3文明國ノ恥辱トスル傳染病卽チ肺
  結核、腸「チブス」、赤痢、「トラホー
  ム」ヲ始トシテ幾多ノ流行病ハ是亦
  文明國ニ見ルコト能ハサル程ノ多數
  病者ヲ有スルコト
  4特ニ最恥ツヘキ癩病救療ノ如キ多
  年篤志ノ外國人ノ手ニ任セ日本ノ官
  民ハ殆ト傍觀的ノ態度ヲ取テ怪シマ
  ス最近皇室ヨリ之カ爲ノ御下賜金
  ヲ頂キ始テ官民合同ノ癩豫防協會設
  立ノ擧ヲ見ルカ如キ言語道斷ノ事實
  アルコト
  5日本國民ハ世界文明國中第一ノ恐
  ルヘキ病蟲帶菌者ナリ現ニ文明國ヘ
  ノ入國ニ際シ我カ國民ハ常ニ侮辱的
  取扱ヲ受ケ居ルコト
  政府ハ此等ノ事實ヲ何ト見ルカ敢テ衞
  生行政上ノ責任觀念如何ヲ質ス
  第十六更ニ此ノ制度ノ大缺陷ヨリ生ス
  ル間接ノ惡現象ハ特ニ恐ルヘキモノア
  リ今其ノ顯著ナルモノノミヲ擧クレハ
  左ノ如シ
  1國民ノ貧窮ニ陷ル原因ノ六割餘ハ
  疾病、負傷ニ基クコトハ獨逸ノ率先
  〓究發表スル所ニシテ他文明國皆之
  ヲ承認シ居レリ日本帝國ニ於テモ近
  年大阪府ノ調査ニテ貧困原因ノ七割
  ハ疾病、負傷ニ因ルコトヲ發表シ內
  外共ニ今ヤ確實明白ノ事實トナレリ
  故ニ此ノ制度ノ大缺陷ハ日本國民ヲ
  驅リテ年年歲歲負民ニ陷入レツツア
  ルモノナリトノ結論ニ到達ス
  政府ハ防貧政策ノ第一義トシテ何故ニ
  此ノ制度ノ革新ニ出テサルカ敢テ其ノ
  所見ヲ質ス
  2國民多數カ疾病、負傷シテ直ニ醫
  藥ニ接スルコト能ハス所謂妻臥病床
  兒哭飢ノ境遇ニ陷ルニ至テハ千人中
  二ヲ除ク外ハ皆富豪階級、特權
  階級カ天下ノ名醫ヲ招致シテ直ニ醫
  藥ニ接スルノ事實ヲ目擊シテ自己ノ
  現在ト比較シ遂ニ失望落膽ノ末ニ憤
  懣ニ堪ヘス國家組織、社會組織ノ不
  公平ヲ呪フノ結果思想ノ惡化ヲ促ス
  ハ人情上自明ノ理ナリ政府ハ思想惡
  化ノ此ノ大原因ヲ忘レテ省ミス徒ニ
  枝葉末節ニ付テ彼是焦慮スルハ本末
  〓倒ノ措置ニ非サルカ政府ノ本問題
  ニ關スル所見ハ果シテ如何敢テ明答
  ヲ求ム
  3此ノ惡制度ノ爲ニ國民多數ノ健康
  不良ト爲ルノ結果ハ日本國民勤勞能
  率ノ低下トナリ凡ユル方面ノ事業ハ
  遠ク先進國ニ劣ルニ至ルヘキハ當然
  ニシテ日本ノ文化、日本ノ富强ノ發
  展ヲ妨害スルコト亦自明ノ理ナリ
  政府ハ此ノ點ニ付果シテ如何ニ考慮シ
  ツツアルカ敢テ其ノ所見ヲ質ス
  4近來失業者ノ增加ハ政治上ノ大間
  題ト爲レリ日本ハ元來此ノ惡制度ノ
  爲ニ既得ノ職業ヨリ追放セラレテ失
  業スル者特ニ多シ豈單ニ不景氣ノ結
  果ノミナラムヤ政府カ失業紹介所ヲ
  設置シ失業公債ヲ發行シテ之ヲ救ハ
  ムトシテモ病氣ノ爲ニ永久ノ失業者
  タル者ハ如何トモスルコト能ハサル
  ハ自明ノ理ナリ此ノ點ニ關スル政府
  ノ所見果シテ如何
  第十七政治ノ要諦ハ國民ヲシテ一人モ
  其ノ所ヲ得サル者ナカラシムルニアル
  ハ古今東西ノ定論ナリ日本帝國ハ建國
  已來皇室ノ御家憲トシテ此ノ點ハ特ニ
  重要問題トナリ歷代聖天子ノ常ニ叡慮
  ヲ惱マシ給ヘル所ナリ然ルニ此ノ惡制
  度ノ爲ニ大多數ノ國民ヲシテ已上記述
  ノ如ク困苦ニ呻吟セシムルハ果シテ善
  政ナリト信スルヤ否ヤ政府當局者ノ之
  ニ對スル責任感ハ如何敢テ其ノ明答ヲ
  要ム
  第十八日本帝國現在ノ此ノ惡制度ニ根
  本的革新ヲ斷行シ國民ノ各階級ヲ問ハ
  ス貧富ノ別ヲ論セス疾病、負傷ノ時ハ
  直ニ醫藥ニ接スルコトヲ得セシムルニ
  至ラハ日本國民ノ健康ハ遠カラス世界
  一トナルヘシ日本國民ノ健康カ世界一
  トナレハ其ノ活動勤勞ノ能率モ亦隨テ
  世界一トナルヘシ日本國民ノ活動能率
  カ世界一トナラハ日本帝國ノ文學、技
  藝產業、經濟ヲ始メトシテ海陸軍事
  ニ至ル迄百般ノ事業カ皆世界一トナル
  ヘキコト亦自明ノ理ナリ日本帝國カ世
  界ノ平和、人類ノ幸福ニ對シテ其ノ第
  一線ニ立ツヘキ大經綸ハ先ツ醫藥制度
  ノ根本的革新ニアリト確信ス政府ノ之
  ニ對スル觀念ハ如何敢テ其ノ所見ヲ質
  ス
  右第十七及第十八ノ二項ニ付テハ國家經
  綸ノ根本的大問題ナルカ故ニ總理大臣ノ
  答辯ヲ要求ス
  右及質問候也
  昭和六年三月十日
  內閣總理大臣濱口雄幸
  衆議院議長藤澤幾之輔殿
  衆議院議員鈴木梅四郞君提出醫藥制度ノ
  大缺陷ニ關スル質問ニ對シ別紙答辯書差
  進候
  〔別紙〕
  衆議院議員鈴木梅四郞君提出醫藥制
  度ノ大缺陷ニ關スル質問ニ對スル答
  辯書
  第現在ノ醫藥制度ハ多年ノ經驗ヲ經
  テ實施セラレツヽアルモノナルガ故ニ
  之ニ對シ根本的變更ヲ加フルノ意思ナ
  シ
  第二、第三、第四及第六醫療ノ普及ハ
  政府ノ銳意努力シツツアル所ニシテ或
  ハ公私救療機關ノ無料診療施設ヲ奬勵
  シ或ハ公共團體又ハ基礎鞏固ニシテ經
  營確實ナル公益法人ノ輕費診療施設ヲ
  助成スル等本趣旨ノ徹底ニ遺憾ナキヲ
  期シツツアリ
  第五正當ノ事由ナクシテ診療ノ需ニ應
  ゼザル開業醫師ニ對シテハ法令ノ定ム
  ル所ニ依リ嚴ニ取締ヲ勵行シツツアリ
  最近三ケ年間ニ於ケル醫師不應招ニ對
  スル制裁左ノ如シ
  昭和三年
  一不注意ニヨリ窒息死ニ至ラシメタル嬰
  兒ノ往診ヲ求メラレタルニ應ゼズ罰金
  二十圓ニ處セラレタルモノ一件
  昭和四年
  一妊婦腹痛ニ付往診ヲ需メラレタルモ之
  ニ應ゼズ罰金三十圓ニ處セラレタルモ
  ノ一件
  一午前十一時頃往診ヲ需メラレナガラ正
  當ノ事由ナクシテ應ゼズ罰金二十圓ニ
  處セラレタルモノ一件
  昭和五年
  ナシ
  第七、第八、及第九、醫師ノ分布ハ國民
  ノ保健衞生ニ重大ナル關係ヲ有スルヲ
  以テ常ニ考慮ヲ怠ラズ成績漸次見ルベ
  キモノアリト雖モ尙將來一層ノ努力ヲ
  怠ラザルベシ
  第十、第十二、及第十四、輕費診療機關
  ニ付テハ動モスレバ弊害ノ隨伴シ易キ
  傾向アルニ鑑ミ相當調査ヲ嚴重ニ爲ス
  ト雖モ其ノ基礎鞏固ニシテ經營確實ナ
  ルモノニ付テハ之ヲ助成スルノ方針ヲ
  執リツヽアリ
  第十一、八王子相互診療組合對八王子市
  南多摩郡醫師會トノ問題ハ目下民事々
  件トシテ裁判所ニ繫屬中ナルヲ以テ此
  際之ニ付テノ意見ヲ發表シ難シ
  第十三、政府ハ病院ノ經營者ガ醫師ニ非
  ザルノ故ノミヲ以テ之ガ設立ヲ認可セ
  ザルノ意思ナシ
  第十五、一死亡率ノ減少及平均壽命ノ
  延長ニ關シテハ國民本位ノ向上、醫療
  ノ普及等ノ方法ニ依リ銳意其ノ目的達
  成ニ努メツヽアリ
  各種傳染性疾患ノ豫防ニ關シテハ
  從來努力ヲ怠ラズ我國民ノ如キ生活
  狀態ニ於テ消化器系傳染病ノ豫防ハ
  甚ダ困難ナルモ腸「チブス」ハ近時相
  當ノ減少ヲ示シ赤痢ニ付テハ一進一
  退ノ狀態ニアルモ著シキ蔓延ヲ見ズ
  結核、トラホーム、癩花柳病等ノ
  慢性傳染性疾患ノ如キハ近年漸次其
  ノ減少ヲ示シツツアリ
  一、癩ノ豫防ニ關シテハ道府縣立及私
  立ノ療養所ニ對スル助成等ノ方法ニ
  依リ努力ヲ續ケツヽアリ最近國立癩
  療養所ノ新設ヲ見更ニ來年度ニ於テ
  草津癩療養地區ヲ設定スベク其ノ所
  要豫算ヲ提出中ナルヲ以テ其ノ施設
  ハ漸次普及整備スルモノト認メラル
  尙其ノ運用ヲ完全ナラシムベク本法
  ノ改正法案ヲ議會ニ提出中ナリ
  日本國民特ニ農村住民ノ間ニ蔓延
  セル寄生蟲病ニ關シテハ從來其ノ檢
  査ヲ奬勵セル結果分布狀態判明シタ
  ルヲ以テ其ノ驅除ニ努ムルト共ニ根
  絕ノ方策ヲ講ズルノ必要アルヲ認メ
  本議會ニ寄生蟲病豫防法案ヲ提出シ
  タリ
  第十六、疾病者ノ數ヲ減少シ以テ國民ノ
  福利ヲ增進センガ爲ニハ衞生思想ノ發
  達〓疾病豫防機關ノ完備、治療機關ノ
  普及及國民體位ノ向上ノ必要ナルヲ認
  メ之カ徹底ニ付テハ常ニ努力ヲ拂ヒツ
  ツアリ
  第十七、病ンデ醫藥給セザルモノ無カラ
  シムルハ醫事衞生上最モ重要トスル處
  ニシテ其ノ目的ノ達成ニ付テハ不斷ノ
  努力ヲ傾注シツツアリ
  第十八、醫療ノ普及徹底ヲ期シ國民健康
  ノ保持增進ヲ圖ルハ最モ緊要ノ事項ニ
  シテ之カ制度ノ改善ニ付テハ常ニ考慮
  ヲ怠ラザルトコロナリ
  右及答辯候也
  昭和六年三月十日
  內閣總理大臣濱口雄幸
  內務大臣安達謙藏
  健康保險法ノ實施ニ關スル質問主意書
  右成規ニ據リ提出候也
  昭和六年二月十六日
  提出者鈴木梅四郞
  健康保險法ノ實施ニ關スル質問主意書
  第一保險醫ノ被保險者ニ對スル不當行
  爲ノ監察ヲ主トシテ其ノ醫療受負ノ主
  體タル日本醫師會ニ託スルノ制度ハ宛
  モ政府ノ工事ヲ受負ハセタル受負人ニ
  其ノ工事監督ヲ託スルト同樣ニシテ行
  政上甚シキ失當ノ措置ナリト信ス政府
  ノ所見如何
  第二保險醫ノ不當行爲監督ニ關シ第五
  十八囘議會ニ於ケル政府ノ答辯ハ左ノ
  如シ
  保險醫ノ被保險者ニ對スル不當行爲
  ニ對シテハ日本醫師會ハ契約ニ基キ
  常ニ監督ヲ爲シツツアルモ一方政府
  ニ於テモ各府縣ニ醫師タル技術官或
  ハ囑託ヲ夫々配置シ技術上ノ監督ヲ
  爲スノ外視察員ナル職員ヲ設置シ隨
  時保險醫ノ診療所ヲ巡囘セシメ診療
  上ノ不當行爲ノ無之業常時注意ヲ爲
  シツツアリ
  右答辯ノ如キ方法ニテハ保險醫ノ監督
  ハ事實上名ノミノ監督ト爲ルヘキハ事
  理明白ナリト信ス故ニ此ノ點ニ付テハ
  左ノ事項ヲ明細ニ示サレムコトヲ要ム
  1以上ノ各監督者卽チ日本醫師會、
  醫師タル技術官、囑託又ハ視察員ニ
  依リテ發見サレタル該法實施以來ノ保
  險醫ノ不當行爲ヲ年度別、發見者別、
  道府縣別ニシタル報告ノ提示ヲ求ム
  2第五十八囘議會ニ於ケル政府ノ答
  辯ニテ不當行爲ノ爲ニ戒〓又ハ除名
  處分ヲ受ケタル者ノ人數ハ明白トナ
  リタレトモ本員ノ質問中其ノ違反行
  爲ノ如何ナル種類ナルカ卽チ診療其
  ノモノノ不正又ハ不親切、診療點數
  ノ欺瞞等ノ實相ハ不明ナリ故ニ敢テ
  其ノ違反行爲ノ種類ヲ府縣醫師會別
  ニシテ明示サレタシ
  第三政府カ健康保險ノ診療ヲ日本醫師
  會ノ一手專賣トスルコトハ理論上ヨリ
  謂フモ實際上ヨリ謂フモ共ニ正シカラ
  サルハ說明ヲ要セサル所ナリ然ルニ政
  府ハ他ニ日本醫師會ヨリモ一割ノ低價
  ニテ引受ケムトスル公益法人而モ民衆
  治療ニ於テ多年ノ經驗ヲ有シ其ノ設備
  又相當ニ完備セル綜合病院ヲ東京、橫
  濱大阪ノ三箇所ニ五箇ヲ有スル此ノ
  法人ノ再三ノ申出テニ一切耳ヲ傾ケス
  斯ル不合理ノ契約ヲ實行シツツアルハ
  何人モ其ノ奇怪事ニ不審ヲ抱カルサモ
  ノナシ之ニ對スル政府ノ說明ヲ要求
  ス
  第四保險診療ヲ一手專賣ニ引受ケ居ル
  日本醫師會所屬ノ保險醫ハ多ク個人醫
  ニシテ所謂萬屋的ナリ然ルニ被保險者
  疾病ハ決シテ爾ク單純ナラス內科外
  科、耳鼻咽喉科、眼科、泌尿科、婦人
  科、產科等ニ相關聯スルモノ少ガラス
  此ノ萬屋的ノ一醫師カ各科專門的ニ大
  進步ヲ爲シ居レル今日其ノ治療上ノ技
  術十分ナラス隨テ其ノ效果亦遺憾多キ
  ハ明白ナル事實ナリ
  此ノ點ニ關スル政府ノ所見ヲ質ス
  第五今日ノ醫術ハ大ニ進步シX光線、太
  陽燈ヲ始メトシテ治療上病源菌又ハ病理
  組織ノ檢査上有效ノ器械數フルニ遑ア
  ラス然ルニ此等ノ器械ハ何レモ高價ナ
  ルカ爲ニ個人開業醫ニシテ其ノ設備ヲ
  有スル者甚タ少シ故ニ全國各地ノ個人
  開業醫ヲ以テ保險醫トスル現在ノ制度
  ハ被保險者ニ對シテ醫療器械設備ノ上
  ヨリシテ亦治療上甚タ遺憾ノ點多キヲ
  免レサルハ事實ニシテ是亦一手專賣ヨ
  リ生スル缺點ナリ此ノ點ニ對スル政府
  ノ所見如何
  第六健康保險醫ノ多數ハ個人開業醫ニ
  シテ規定ノ藥價、診察料ヲ拂フ普通患者
  ト被保患者トヲ狹キ同一醫局內ニ於テ
  診療スルカ故ニ兩者ノ間ニ人情ノ自然
  トシテ差別的待遇彼ニ厚クシテ此ニ薄
  キノ弊ヲ免レス卽チ醫師ハ普通患者ハ
  丁寧親切ニシ被保險患者ヲ疎略ニシ甚
  シキハ診療順番サヘモ彼是〓倒スルモ
  ノアリ被保險患者ノ不平貴貴タルモノ
  アルハ之カ爲ニシテ健康保險法ノ威信
  ヲ失墜スルコト少カラス而モ是亦一手
  專賣ヨリ生スル缺點ナリ政府ハ之ニ對
  シ如何ナル所見ヲ有スルカ
  第七政府カ保險醫ノ不當行爲ヲ監察ス
  ル上ニ於テモ個個ノ開業醫ニ對シテ之
  ヲ行フコトハ多クノ時間ヲ要スルノミ
  ナラス晝夜其ノ家庭內ニ行ハルルモノ
  ニ對シ眞ノ監察ハ不可能ナルヘキハ亦
  明瞭ノ事實ナリ是亦一手專賣ニ依ル不
  利益ナリ政府ノ所見如何
  第八日本醫師會ニ一手專賣ノ爲ニ被保
  患者ハ公私立ノ最完備シタル各科綜
  合病院又ハ同上公益法人病院ニ付日進
  醫藥ノ恩惠ニ浴スルコトヲ得ス公私立
  又ハ公益法人ノ最進步シタル綜合病院
  ニアリテハ各科一院內ニアルカ爲ニ被
  保險患者ハ時間ヲ節約シ手續ヲ省キ簡
  便ニ完全ナル治療ヲ受クルコトヲ得ヘ
  シ然ルニ現在ノ制度ニアリテハ患者カ
  此ノ恩惠ヨリ全ク遮斷サレツツアルハ
  一大不幸ナリ政府ハ何故ニ此等優良ナ
  ル各科綜合ノ診療機關ヲ利用シ得ル丈
  ケ利用スルコトニ努メサルカ敢テ其ノ
  所見ヲ質ス
  第九政府ハ健康保險醫療ヲ日本醫師會
  ノ一手專賣ト決定シタルカ故ニ醫師會
  ノ態度却テ倨傲トナリ其ノ診療費ハ每年
  契約ノ都度逆ニ自ラ其ノ壓迫ヲ受ケテ
  直上ノ不利ヲ受ケ居レリ卽チ昭和二年
  度ニ契約シタル醫療費ハ可ナリ高價ナ
  リシニ拘ラス同三年度ノ契約ニ方リ醫
  師會ハ突然前年ノ六割增ヲ要求シ之ヲ
  聞キ入レサレハ診療ヲ引受ケスト迄高
  飛車ニ出テタリ然レトモ時ノ當局者ハ
  却テ其ノ不當ヲ難詰シテ態度强硬ナリ
  シ爲交涉紛交シ日本醫師會ハ例ノ高等
  政策ヲ以テ直接ニ時ノ內務大臣ニ訴ヘ
  六割ノ直上請求ハ容レラレサリシモ總
  額ニ於テ四万五千圓ノ增額ヲ得タリ又
  昭和四年度ニ至リ日本醫師會ハ其ノ强
  硬ナリシ當局者ノ更迭セシヲ幸ニ前年
  度ノ如ク猛烈ナル高壓的ノ運動ヲ以テ
  遂ニ總額約四十万圓ニ相當スル增額ヲ
  獲得セリ又昭和五年度ハ旣ニ物價下落
  シテ醫療費モ亦大ニ低下シタルニ拘ラ
  ス日本醫師會ハ例ノ壓迫的態度ヲ以テ
  當然大ニ直下スヘキ醫療費ヲ其ノ儘ニ
  維持スルコトニ成功シテ又々政府當局
  者ノ失敗トナリ之カ爲ニ國費ハ勿論雇
  傭主、勞働者共ニ此ノ高キ負擔ヲ餘儀
  ナクサレ居ル次第ナリ
  今ヤ日本帝國ハ全般的ニ物價ノ大暴落
  トナリ醫療費ハ當然大ニ下落セリ然ル
  ニ政府ノ收入ハ昨年度モ一昨年度ニ比
  シテ非常ノ減少ヲ來シ居ルニ今年度ハ
  昨年度ヨリモ更ニ甚シキ減少ヲ來シ救
  護法ノ實施スラ財源ナキ爲不可能ナル
  現狀ナレハ政府ハ昭和六年度ノ契約ニ
  際シ過去ニ於ケル日本醫師會ノ壓迫ニ
  依リテ不當ニ直上サセラレタル診療費
  ハ此ノ機會ニ於テ醫療費ノ下落ニ基キ
  大削減ヲ加へ斷乎トシテ之カ直下ヲ實
  行スヘキ立場ニアリト信ス政府ハ此ノ
  問題ニ付過去ノ事實ニ鑑ミ如何ナル對
  策ヲ有スルカ敢テ其ノ所見ヲ質ス
  第十政府カ日本醫師會ニ一手專賣ヲ爲
  セシ結果ニ基キ自ラ大ニ不利ニ陷リタ
  ル要點ハ前記ノ如ク頗ル甚大ナルニ更
  ニ此ノ餘響ヲ受ケテ日本醫師會ノ猛烈
  ナル强壓ノ下ニ呻吟苦悶シツツアルモ
  ノハ全國ニ亙レル三百二十餘ノ各保險
  組合ナリトス日本醫師會ハ各保險組合ト
  ハ協商ノ上其ノ診療費ヲ協定スルコト
  ニナリ居レトモ中央政府ニ對シテスラ
  方ノ如ク橫暴ナル日本醫師會ハ猛威中
  中ニ烈シク各保險組合ノ如キ殆ト其ノ
  眼中ニナキカ如シ自ラ勝手ニ獨斷的ニ
  定メタル高價ナル診療費ヲ何等ノ交涉
  的手段モ取ラス命令的ニ之ヲ押付ケ組
  合側ノ主張抔ハ最初ヨリ寸毫モ其ノ眼
  中ニ措カサルノ暴狀ヲ極メ居レリ其ノ
  事實ハ各保險組合ヨリ社團法人實費診
  療所理事長タル本員宛ニ訴ヘ來リシ文
  書又ハ各組合ト日本醫師會トノ本件ニ
  關スル往復文書ニテ明白ナリ政府ハ各
  保險組合カ實際其ノ負擔ニ堪ヘサルモ
  ノアルハ事實ナルニ右ノ如キ不當ノ壓
  迫ヲ受ケ其ノ不平不滿ハ山々ナカラ他
  ノ方法ヲ取ルコト能ハサルカ爲ニ泣ク
  泣ク日本醫師會ノ命令スル極メテ高價
  ナル醫療費ヲ仕拂フノ餘儀ナキ窮狀ニ
  對シテハ從來全ク傍觀的ノ態度ヲ持シ
  何等組合側ノ苦悶ニ同情セス日本醫師
  會ノ爲スカ儘ニ放任セルカ如シ右ハ如何
  ナル理由ニ依ルカ敢テ其ノ所見ヲ質ス
  第十一健康保險醫ノ多數ハ個人開業醫
  ナルカ故ニ其ノ藥局ニ藥劑師ヲ置カス
  其ノ妻女、下女又ハ車夫ヲシテ調劑セ
  シムルモノ少カラス政府ハ斯ル醫師ニ
  保險醫ヲ依託シテ果シテ安心ナリト信
  元カカ
  第十二醫藥分業ハ別トシテ一般開業醫
  ニ對シ其ノ藥ノ調劑ハ必ス藥劑師タラ
  サルヘカラストノ禁令ヲ發スルハ差當
  リ姑息ナカラ國民衞生上正當ニシテ且
  必要ナリト信ス本件ニ關スル政府ノ所
  見如何
  第十三政府ハ常ニ日本醫師會ノ利益ヲ
  圖ルニ偏シ藥劑師會ノ爲ニ同情ナシト
  ノ批難アリ特ニ健康保險法ノ實施ニ當
  リ此ノ傾向顯著ナルモノアリ之カ爲ニ
  日本藥劑師會中ニハ地方ニ依リ巳ニ同
  法ノ調劑ヲ辭退スルノ決議ヲ爲セシモ
  ノアリ今ヤ全國藥劑師會ノ大問題ト爲
  リ居レリ若葉劑師カ結束シテ其ノ調劑
  ヲ辭退シタリトセハ政府ハ健康保險法
  ノ實施上其ノ調劑ハ全ク藥劑師ノ手ヲ
  絕チテ之ヲ醫師ニ一任シ醫師ノ妻女、
  下女又ハ車夫ヲシテ實際調劑セシムル
  ノ危險ヲ如何ニセムトスルカ敢テ政府
  ノ所見ヲ質ス
  右及質間候也
  昭和六年三月十日
  內閣總理大臣濱口雄幸
  衆議院議長藤澤幾之輔殿
  衆議院議員鈴木梅四郞君提出健康保險法
  ヲ實施ニ關スル質問ニ對シ別紙答辯書差
  進候
  〔別紙〕
  衆議院議員鈴木梅四郞君提出健康保險
  法ノ實施ニ關スル質問ニ對スル答辯書
  第保險醫ノ被保險者ニ對スル健康保
  險法上ノ不當行爲ノ取締ハ政府直接之
  ヲ行ヒ日本醫師會ノ監督ニ委スル樣ノ
  コトナシ而テ日本醫師會ニ於テ行ヒツ
  ツアル保險醫ノ監督ハ契約者トシテ義
  務ノ不履行ヲ防ク意味ニ於ケルモノニ
  過キス
  第二保險醫ノ不當行爲ノ明細別表ノ如
  シ
  第三健康保險ノ診療ハ獨リ日本醫師會
  ノミニ委囑スルニ非スシテ官公立大學
  附屬醫院及道府縣所在ノ公立病院トモ
  契約ヲ締結シ被保險者ノ診療ニ支障ナ
  カラシムル樣勢メツツアリ而テ大體現
  狀ヲ以テ其ノ診療ニ付キ支障ナキモノ
  ト思量シツツアルヲ以テ差當リ醫師會
  員タル醫師ノ所屬スル法人ト別個ニ契
  約ヲ爲ス必要ヲ認メサルナリ
  第四何レノ保險醬ノ診療ヲ受クルカハ
  全ク被保險者ノ自由ニシテ其ノ疾病ノ
  如何ニ依リ夫々專門醫ノ診療ヲ受クル
  コトヲ得且ツ二以上ノ疾病アル者ハ療
  養證明書ニ依リ他ノ適當ノ醫師ヲ之亦
  選擇シ得ルヲ以テ被保險者ノ診療ニ支
  障ヲ來スカ如キコトナシト認ム、叉、
  方官公立大學附屬醫院及公立病院トモ
  契約ヲ締結シツツアルヲ以テ診療上遺
  憾ナキヲ期シ得ルモノト認ム
  第五進歩セル醫療機械ハ一般保險醫ノ
  病院竝ニ醫院ニモ夫々和當設備セラレ
  診療上支障ナシト認ムルモ尙政府ハ前
  述ノ如ク官公立大學附屬醫院及公立病
  院トモ契約ヲ爲シ診療組織ノ完備ヲ期
  シツツアリ
  第六保險醫カ被保險者ヲ差別的取扱ヲ
  爲ス點ニ關シテハ政府ハ法施行當初ヨ
  リ嚴ニ之ヲ取締リ現在ニ於テハ相當效
  果ヲ示シツツアリト認ムルモ將來共此
  ノ點ニ留意シ十分ノ努力ヲ致スヘシ
  第七保險醫ノ不當行爲ノ取締ニ關シテ
  ハ何分共保險醫多數ナル爲メ多少遺憾
  ノ點ナキニ非サルモ監督職員ヲ設置シ
  其ノ他豫算ノ許ス範圍ニ於テ其ノ萬全
  ヲ期シツツアリ
  第八政府ハ前述セル如ク所謂各科綜合
  ノ各官公立大學附屬醫院、公立病院及
  日本醫師會ヲ通シ私立病院ニ於テ被保
  檢者ノ診療ニ當ラシメツツアルヲ以テ
  診療上支障アリトハ認メス
  第九日本醫師會、日本齒科醫師會、日
  本藥劑師會、官公立大學及公立病院等
  ニ對スル昭和六年度ノ契約ニ關シテハ
  著々交渉中ニ屬ス御質問ノ主旨ニ付キ
  テハ政府トシテモ十分考慮スル所アル
  ヘシ
  第十健康保險組合ノ診療組織ニ關シテ
  ハ診療組織整備標準ヲ制定シ組合管掌
  被保險者ト政府管掌被保險者トノ間ニ
  診療上ノ差違ヲ生セシメサルコトニ努
  メ常ニ監督ヲ爲シツツアリ、其ノ診療
  組織ニ付何等傍觀的態度ヲ持シタルカ
  如キコトナキモノト思料ス
  第十一醫師ハ其ノ診療スル患者ニ限リ
  自ラ調劑ヲ爲スコトヲ得ルヲ以テ自己
  保險醫ノ不常行爲明細表
  發見者
  道府縣別件數政府事
  道府縣醫師會
  北海道一
  大阪六六
  長崎一
  栃木一→診療費ノ
  奈良一一同
  愛知三三診療費ノ
  長野四四
  ノ醫局ニ藥劑師ヲ置ク醫師ノミヲ保險
  醫トシテ指定スルツ必要ナシ
  第十二前項ノ如ク醫師ハ其ノ診療スル
  患者ニ限リ自ラ調劑ヲ爲スコトヲ得ル
  ヲ以テ一般開業醫ニ對シ調劑ハ藥劑師
  タラサル可カラストノ禁令ヲ發スルコ
  ト能ハス
  第十三健康保險ノ診療組織トシテハ醫
  師齒科醫師及藥劑師ト契約スルヲ以
  テ其ノ完壁ト信ズルカ故ニ政府ハ昭和
  六年度ノ藥劑支給ニ關シ過般來日本藥
  劑師會當局者ト交渉ヲ進メツツアルモ
  現在ニ於テハ遺憾ナカラ契約締結困難
  ナル狀勢ナリ然レトモ政府ハ今後トモ
  契約締結方交涉ヲ續クル考ナリ、萬.
  日本藥劑師會側ニ於テ契約締結ヲ拒絕
  スルニ於テハ適當ニ法規ノ認ムル範圍
  ニ於テ藥劑師ニ調劑セシムル方法ヲ講
  セントス
  右及答辯候也
  昭和六年三月十日
  內務大臣安達謙藏
  (其ノ一)昭和二年度
  故ノ內容備考
  診療報酬ノ不當請求一
  診療報酬ノ不當請求一
  診療費ノ一部又ハ全部ヲ被保險者ヨリ
  直接收受シタルモノ五
  診療報酬ノ不當請求一
  一部又ハ全部ヲ被保險者ヨリ
  直接收受シタルモノ
  診療報酬ノ不當請求一
  一部又ハ全部ヲ被保險者ヨリ
  收受シタルモノ二
  政府及道府縣
  診療報酬ノ不當請求四醫師會ト協同
  ニテ發見セル
  モノナリ
  宮城一一
  岩手→一
  福井一一
  愛媛四四
  大分二二
  熊本四四
  宮崎二二
  計三二二二·
  保險醫ノ不當行爲明細表
  發見者
  道府縣別件數
  政府道府縣醫師會
  北海道六六
  東京一七一七
  大阪一〇九一
  神奈川三一二
  兵庫二
  長崎一一
  埼玉一一
  千葉五五
  勞務不能ノ意見ニ虛僞アリ又ハ適正ナ
  ラサルモノ一
  診療費ノ一部又ハ全部ヲ被保險者ヨリ
  直接收受シタルモノ一
  同-
  診率費ノ一部又ハ全部ヲ被保險者ヨリ
  直接收受シタルモノ三
  診療ヲ拒絕シタルモノ一
  診療ヲ拒絕シタルモノ二
  診療費ノ一部又ハ全部ヲ被保險者ヨリ
  育接收受シタルモノ三
  診療ヲ拒絕シタルモノ一
  費ノ一部又ハ全部ヲ被保險者ヨリ
  直接收受シタルモノ一
  診療ヲ拒絕シタルモノ一
  (其ノ一)昭和三年度
  事故ノ內容備考
  診療費ノ一部又ハ全部ヲ被保險者ヨリ
  直接收受シタルモノ五
  診療報酬ノ不當請求一
  診察費ノ一部又ハ全部ヲ被保險者ヨリ
  直接收受シタルモノ九
  療報酬ノ不當請求二
  診療簿ノ不備保險醫ノ義務違反ト認
  メラルモノ一
  診療ヲ拒絕シタルモノ五
  療報酬ノ不當請求五
  勞務不能ノ意見ニ虛僞アリ又ハ適正ナ
  ラサルモノ一
  診療費ノ一部又ハ全部ヲ被保險者ヨリ
  直接收受シタルモノ四
  診療報酬ノ不當請求一
  勞務不能ノ意見ニ虛僞アリ又ハ適正ナ
  ラサルモノ-
  診療費ノ一部又ハ全部ヲ被保險者ヨリ
  直接收受シタルモノ一
  診療費ノ一部又ハ全部ヲ被保險者ヨリ
  直接收受シタルモノ二
  請求書又ハ報〓書ニ虚僞ノ記載ヲ爲シ
  タルモノ一
  診療費ノ一部又ハ全部ヲ被保險者ヨリ
  直接收受シタルモノ
  診療費ノ一部又ハ全部ヲ被保險者ヨリ
  直接收受シタルモノ五
  --
  栃茨木城
  奈良二
  三重八八
  知一一
  靜愛
  岡
  福島一三一一一
  長野一一
  德島二二
  愛媛九九
  福岡四四
  佐賀一一
  熊本一一
  鹿兒島五四一
  計九五八九六
  俣險醫ノ不當行爲明細表
  發見者
  道府縣別件數
  政府道府縣醫師會
  北海道一一
  東京二二
  京都一
  一
  同同
  診療報酬ノ不當請求一
  診療費ノ一部又ハ全部ヲ被保險者ヨリ
  直接收受シタルモノ一
  勞務不能ノ意見ニ虛僞アリ又ハ適正ナ
  ラサルモノ七
  診療費ノ一部又ハ全部ヲ被保險者ヨリ
  直接收受シタルモノ
  診療報酬ノ不當請求一
  同
  診療報酬ノ不當請求三
  期日滿了後療養給付ヲナシタルモノ七
  資格取得前ニ療養ノ給付ヲナシタルモ
  ノ三
  診療報酬ノ不當請求一
  勞務不能ノ意見ニ虚僞アリ又ハ適正ナ
  ラサルモノ二
  診療報酬ノ不當請求一
  診療費ノ一部又ハ全部ヲ被保險者ヨリ
  直接收受シタルモノ七
  診療ヲ拒絕シタルモノ一
  診療費ノ一部又ハ全部ヲ被保險者ヨリ
  直接收受シタルモノ一
  請求書又ハ報〓書ニ虚僞ノ記載ヲナシ
  タルモノ三
  請求書又ハ報〓書ニ虚僞ノ記載ヲナシ
  タルモノ一
  同
  診療報酬ノ不當請求三
  診療簿ノ不備保險醫ノ義務違反ト認
  メラルルモノ
  請求書又ハ報〓書ニ虚僞ノ記載ヲナシ
  タルモノ一
  (其ノ一)昭和四年度
  事故ノ內容備考
  診療費ノ一部又ハ全部ヲ被保險者ヨリ
  直接收受シタルモノ一
  診療費ノ一部又ハ全部ヲ被保險者ヨリ
  直接收受シタルモノ一
  診療ヲ拒絕シタルモノ一
  診療費ノ一部又ハ全部ヲ被保險者ヨリ
  直接收受シタルモノ一
  大阪一二一三
  神奈川一
  兵庫一
  長崎一一
  新潟一
  埼玉一-
  群→一
  阜岡城馬
  岐靜茨二
  一
  長野二
  宮城
  福島一
  福井→
  高知一
  福岡-
  熊本一一
  鹿兒島六三三
  計四二三〇一二
  保險醫ノ不當行爲明細表
  勞務不診療費
  廳種能ノ意ノ一部
  診療報又ハ全
  酬ヲ不見ニ虛鄙ヲ直
  當ニ請信アリ接被保
  求シタ又ハ適險者ヨ
  ルモノ正ナラリ收受
  名別サルモシタル
  ノモノ
  北海道一
  大阪五
  療報酬ノ不當請求四
  療費ノ一部又ハ全部ヲ被保險者ヨリ
  收受シタルモノ八
  療簿ノ不備、保險醫ノ義務違反ト認
  メラルルモノ
  診療報酬ノ不當請求一
  診療費ノ一部又ハ全部ヲ被保險者ヨリ
  直接收受シタルモノ一
  診療簿ノ不備、保險醫ノ義務違反ト認
  メラルルモノ一
  診療報酬ノ不當請求一
  診療費ノ一部又ハ全部ヲ被保險者ヨリ
  山接收受シタルモノ一
  診療簿ノ不備、保險醫ノ義務違反ト認
  メラルルモノ一
  診療報酬ノ不當請求一
  診療報酬ノ不當請求二
  同
  診療簿ノ不備、保險醫ノ義務違反ト認
  (メラルルモノ二
  診療費ノ一部又ハ全部ヲ被保險者ヨリ
  直接收受シタルモノ二
  同
  請求書又ハ報〓書ニ虚僞ノ記載ヲナシ
  タルモノ一
  診療報酬ノ不當請求一
  診療費ノ一部又ハ全部ヲ被保險者ヨリ
  )直接收受シタルモノ
  資格喪失後ノ療養ノ給付ヲナシタルモ
  診療報酬ノ不當請求四
  診療簿ノ不備保險醫ノ義務違反ト認
  メラルルモノ二
  (其ノ二)昭和二年度
  診療簿請求書
  期間滿ノ不気被保險又ハ報資格取資格喪
  了後ノ又ハ保診療ヲ者ノ差告書ニ得前ニ失後ノ
  療養ノ險醫ノ拒絶シ別待遇虛僞ノ療養ノ療養ノ計
  給付ヲ義務違タルモヲナシ記載ヲ給付ヲ給付ヲ
  ナシタ反ト認ノタルモナシタナシタナシタ
  ルモノメラルノルモノルモノルモノ
  ルモノ
  六一
  一
  一一
  二
  四一
  分媛井手城野知良木崎
  熊大愛福岩宮長愛奈栃長
  二四二四一一一四三一一一
  三一一
  一一二一
  本
  一三
  宮崎
  計八一八五一三一一
  保險醫ノ不當行爲明細表(其ノ二)昭和三年度
  勞務不診療費診療薄
  廳種誰ノ意ノ一部期間滿被保險請求書資格取-資格喪
  診療報又ハ全ノゞ備又ハ報
  見ニ虚部ヲ被了後ノ又ハ保診療ヲ者ノ差告書ニ得前ヨ失後ノ
  酬ヲ不僞アリ療養ノ險醫ノ拒絕シ別待遇リ療養療養ノ
  當請求又ハ適保險者給付ヲ義務違タルモヲナシ虛僞ノノ給付給付ヲ計
  ヲシタ正ナラヨリ直ナシタ反ト認ノタルモ記載ヲヲナシナシタ
  ルモノサルモ接收受ルモノメラルノナシタタルモルモノ
  名別シタルルモノ
  ノモノルモノノ
  北海道一五
  東京五一
  大阪一
  一五一一二一四九
  神奈川
  崎庫
  一
  一一一八二一一五一一二三〇七六
  一一五一
  愛三奈栃茨千埼長兵
  岡知重良木城葉玉
  一
  七一
  一
  靜
  長野
  島三七三一三
  德福
  島二二
  愛媛七一
  福岡一三一四九
  佐賀一
  熊本一一
  鹿兒島三一一五
  計二〇二三九七二六七三九五
  保險醫ノ不當行爲明細表(其ノ二)昭和四年度
  勞務不診療費診療簿
  廳種能ノ意ノ一部期間滿ノ不備被保險請求書資格取資格喪
  診療報見又ハ全了後ノ又ハ保診療ヲ者ノ差又ハ報得前ニ
  酬ノ不僞アリニ虛部ヲ皺療養ノ險者ノ別待遇告書ニ療番ノ
  當請求保險者拒絕シ虛僞ノ計
  ヲシタ又ハ適ヨリ直給付ヲ義務違タルモヲナシ記載ヲ給付ヲ給
  ルモノ正ナラ接收受ナシタ反ト認ノタルモナシタナシタルナ
  名別サルモシタルルモノメラルノルモノルモノ
  ノモノルモノ
  北海道一
  東京一二
  八一一一
  京都
  大阪一一三一
  一四
  神奈
  兵一一
  長一
  一
  一一
  城野阜岡城馬玉潟崎庫川
  一一
  一二一二
  高福福宮長岐靜茨群埼新一
  二二
  二一
  島一一
  一
  岡知井一
  福一一
  熊本一
  六一
  鹿兒島四
  七二一四二
  計一五一七一
  滿蒙政策ニ關スル質問主意書
  右成規ニ據リ提出候也
  昭和六年二月十二日
  提出者岸田正記
  滿蒙政策ニ關スル質問主意書
  滿蒙則チ支那東北四省カ我カ國ト歷史
  的地理的、經濟的ニ特殊ノ關係ヲ有シ
  我カ國存立ノ生命線クルコトハ論ヲ俟タ
  サル所ナリ然ルニ現在滿蒙ニ居住スル本
  邦人ハ內鮮人ヲ併セテ百萬ヲ算セラルルモ
  今ヤ之等同胞ハ內外諸種ノ原因ニ依リテ
  其ノ經濟甚シク疲弊シ居ルノミナラス其
  ノ將來ニ付痛ク不安危惧ヲ感シツツアリ
  此ノ實狀ニ鑑ミ政府ノ對策ニ關スル所見
  ヲ質サムトス
  右及質問候也
  昭和六年三月十日
  內閣總理大臣濱口雄幸
  衆議院議長藤澤幾之輔殿
  衆議院議員岸田正記君提出滿蒙政策ニ關
  スル質問ニ對シ別紙答辯書差進候
  〔別紙〕
  衆議院議員岸田正記君提出滿蒙政策ニ
  關スル質問ニ對スル答辯書
  滿蒙ニ居住スル邦人ノ經濟的ニ困難セル
  ハ政府ニ於テモ認ムル所ニシテ從來外務
  省、朝鮮總督府、關東廳、南滿洲鐵道株式
  會社、東洋拓殖株式會社等ヲシテ夫々救
  濟施設ニ力メシメツツアリ在滿鮮人保護
  施設トシテハ〓育、醫療、金融、農事獎
  勵貧困者救濟等關係各機關ニ於テ夫々
  實施中ニシテ明年度ニ於テハ更ニ在間島
  鮮人救濟費ヲ增加スル等保護ノ充實ヲ圖
  リ他面共存共榮ノ本義ニ則リ圓滿ナル外
  交折衝ニ依リ邦人ノ經濟的發展ヲ企圖シ
  ツツアリ尙ホ在滿邦人ノ經濟的困難近時
  特ニ甚シキモノアルハ世界的不景氣、空
  前ノ銀塊相場ノ慘落、農產物價格ノ著シ
  キ低下等ノ如キ一般的情勢ニ基ク所多キ
  ヲ以テ之ガ對策ヲ講ズルハ至難ニ屬スト
  雖モ政府ハ在住邦人ノ現狀ニ鑑ミ出來得
  ル限リノ對應策ヲ講ズベク銳意努力中ナ
  リ
  右及答辯候也
  昭和六年三月十日
  外務大臣男爵幣原喜重郞
  拓務大臣松田源治
  人造絹絲輸入稅竝外國製人絹使用目的
  ノ保稅工場特許ニ關スル質問主意書
  右成規ニ據リ提出候也
  昭和六年二月十四日
  提出者
  松井文太郎
  外三名
  人造絹絲輸入關稅竝外國製人絹使用目
  的ノ保稅工場特許ニ關スル質問主意書
  -人造絹絲ノ現行輸入關稅ハ第五十一
  囘議會ノ協賛ヲ經テ百斤ニ付百二十五
  圓ニ制定セラレタルモノナルカ現時ノ
  人造絹絲工業竝之カ應用織物ノ狀況ハ
  制定當時トハ格段ノ相違アル事實ニ鑑
  ミ政府ハ現行稅率ガ高率ニ過クルコト
  ヲ認メサルヤ又之ヲ認ムルニ於テハ之
  ニ關スル改正法律案ヲ今期議會ニ提出
  スルノ意思ナキヤ
  二外國製人造絹絲ヲ原料トシテ輸出織
  物ヲ製造スル目的ヲ以テ保稅工場法ニ
  基キ合法的ニ私設保稅工場ノ設置出願
  ヲ爲ス者多數ナルニ拘ラス之カ特許ヲ
  與ヘタルモノ極メテ尠シ而已ナヲス特
  許阻止ノ運動ヲ行フ者アルヤニ聞ク本
  件ニ關スル政府ノ方針如何
  右質問候也
  昭和六年三月十日
  內閣總理大臣濱口雄幸
  衆議院議長藤澤幾之輔殿
  衆議院議員松井文太郞君外三名提出入造
  絹絲輸入關稅竝外國製人絹使用目的ノ保
  稅工場特許ニ關スル質問ニ對シ別紙答辯
  書差進候
  〔別紙〕
  衆議院議員松井文太郞君外三名提出人
  造絹絲輸入關稅竝外國製人絹使用目的
  ノ保稅工場特許ニ關スル質問ニ對スル
  答辯書
  人造絹ノ現行關稅ハ高率ニ失スルモ
  ノト認メラルルヲ以テ政府ハ之カ引下
  ヲ行フコトトシ其ノ改正案ヲ議會ニ提
  出シタリ
  二保稅工場制度ノ目的ハ輸出品ニ對シ
  關稅ヲ徵セスシテ輸出貿易ノ振興ヲ圖
  ルニ在ルモ一面保稅工場ノ設置カ內地
  ノ產業ニ及ス影響ニ付考慮スルノ要ア
  ルヲ以テ本件保稅工場ノ特許ニ付テハ
  愼重考慮ノ要アルモノト認ム
  右及答辯候也
  昭和六年三月十日
  大藏大臣井上準之助
  商工大臣俵孫
  新聞記者ノ資格制定ニ關スル質問主意
  書
  右成規ニ據リ提出候也
  昭和六年二月十四日
  提出者飯村五郞
  新聞記者ノ資格制定ニ關スル質問主意
  書
  新聞記者ハ所謂社會ノ木鐸タリ而シテ社
  會一切ノ批評家ナリ記者ノ一言一句ハ卽
  チ輿論ノ聲トナリ世道人心ニ影響スル所
  洵ニ甚大ナリト謂フヘシ思想國難ヲ高唱
  力說セラルル今日殊ニ其ノ然ル所以ヲ痛
  感セサルヲ得ス國家社會ノ公安秩序進步
  發達幸福ト極メテ密接絕大ノ關係ヲ有ス
  ル新聞記者ノ業務重且大ナリト謂フヘシ
  實ニ新聞記者ハ無名ノ社會〓育家ナリ指
  導者ナリ無名ノ裁判官ナリ故ニ新聞記者
  ノ人格如何學識經驗如何品位見識如何ハ
  直ニ以テ社會國家ノ進步繁榮ニ影響スル
  ヤ論ヲ俟タス依テ新聞記者ノ資格認定ニ
  關スル設定ヲ設クルハ卽チ國家社會ノ進
  步發達幸福ヲ增進スル所以ニシテ國家ノ
  須要且緊急ノ一事業ナリト確信スルモノ
  ナリ然ルニ是ニ關シ何等ノ規定ナシ天下
  何人ト雖新聞記者タリ得サル者ナキ現狀
  ナリ辯護士ニ辯護士法計理士ニ計理士法
  醫師ニ醫師法アリ其ノ他現今社會ノ公地
  位ハ何レモ夫レ夫レ相當ノ資格ニ待タサ
  ルハナシ
  國家社會ノ公安秩序進步發達ト極メテ密
  接且絕大ノ關係ヲ有スル新聞記者ノ資格
  ニ付何等ノ規定存セサルハ吾人其ノ理ヲ
  解シ能ハサル所ナリ
  政府ハ速ニ新聞記者ノ資格認定ニ關スル
  適當ナル法令ヲ制定スルノ意ナキヤ政府
  ノ所見如何
  右及質間候也
  昭和六年三月十日
  內閣總理大臣濱口雄幸
  衆議院議長藤澤幾之輔殿
  衆議院議員飯村五郞君提出新聞記者ノ資
  格制定ニ關スル質問ニ對シ別紙答辯書差
  進候
  〔別紙〕
  衆議院議員飯村五郞君提出新聞記者ノ
  資格制定ニ關スル質問ニ對スル答辯書
  新聞紙ハ社會ノ公器ニシテ之ニ携ハル新
  聞記者ノ素質及擧措如何ハ以テ國家ノ公
  安秩序、社會ノ進步發達ニ至大ノ影響ヲ
  有スルヤ論ヲ俟タズ而シテ近時新聞紙ノ
  數漸次多キヲ加へ新聞記者ノ數亦從"テ著
  シク增大シ其ノ社會ニ及ボス影響亦益と重
  大ナラムトスルヲ以テ之ニ一定ノ資格
  ヲ設ケムトスルモ亦理由ナキニアラザル
  ヘシ然レドモ新聞記者ノ業務ハ辯護士
  計理士及醫師等ト異リ政治、經濟社會
  等其ノ範圍極メテ廣汎ニ亙ルヲ以テ其ノ
  資格ノ如キ國家ニ於テ之ヲ公認スルハ極
  メテ容易ナラザルモノアリ、元ヨリ辯護
  士、計理士及醫師等ニ於ケルガ如ク國家
  試驗又ハ資格檢定等ノ方法ニ依ルガ如キ
  一案タルヲ失ハズト雖尙考慮ノ餘地アル
  問題ナリ事ハ寧ロ國家直接ノ關與ヲ避
  ケ新聞關係者ノ自發的努力ニ俟ツヲ以テ
  妥當トスベキガ如シ
  曩ニ政府ヨリ出版法改正ノ根本方針ニ付
  諮問ヲ受ケタル警保委員會ノ答申ニ於テ
  新聞協會ノ設立ヲ公認シ新聞記者ノ資格
  缺格ニ關スル事項ノ審査決定ヲ以テ其ノ
  事業ノ一トナセルガ如キ亦此ノ趣旨ニ出
  ヅルモノト認メラル
  新聞記者ノ資格認定ノ問題ハ事極メテ重
  大ナルヲ以テ政府ニ於テハ如上ノ諸點ヲ
  考慮シ目下愼重調査考究中ニ屬ス
  右及答辯候也
  昭和六年三月十日
  內務大臣安達謙藏
  北海道拓殖ニ關スル質問主意書
  右成規ニ據リ提出候也
  昭和六年二月十六日
  提出者松實喜代太
  北海道拓殖ニ關スル質問主意書
  政府ハ第五十八囘議會終了直後第五
  十八囘議會ニ於テ決定セシ昭和五年度
  北海道拓殖費豫算二千七百三万圓ヨリ
  百八十万圓ヲ減シテ二千五百十五万餘
  圓ト變更セリ然ルニ此ノ豫算額タルヤ
  昭和二年一月若槻内閣ニ於テ決定セル
  北海道拓殖費ニ關スル閣議決定事項ニ
  基キタル財源ナリ卽チ前記閣議決定事
  項中ニ
  第二項北海道内ニ於ケル前年度一般
  會計歲入豫算(內務、大藏、司法、文
  部農林、商工及遞信各省ノ收入ヲ
  謂フ)ト北海道拓殖費ヲ除キタル歲
  出豫算(內務、大藏、司法、文部、農
  林、商工及遞信各省ノ支出ヲ謂フ)
  トヲ比較シ其ノ歲入超過額ヲ標準ト
  シテ每年度ノ拓殖費ノ財源ト爲スコ
  ト
  第三項前項ノ歲出豫算ニ對シ決算上
  豫定外ニ增減ヲ生シタルトキハ後
  年度ニ於テ拓殖費ノ財源ヲ增減ス
  ルコト
  第四項前二項ニ依リ生シタル財源
  ノ範圍内ニ於テ每年度豫算編成ニ
  當リ拓殖費豫算ヲ決定スルコト
  第七項國家事變ニ際シ國庫ニ於テ
  一時多額ノ支出ヲ要スル場合ニ於
  テ其ノ間ニ限リ國庫支出金額ニ關
  スル前各項ノ規定ニ依ラサルコト
  アルヘキコト
  ト規定シ國家事變ニ際シ國庫ニ於テ一
  時多額ノ支出ヲ要スル場合ニ非サル限
  リ第二項及第三項ニ依ル財源內ノ支出
  ニ對シテハ一指モ染メサルヘキヲ明擧
  シテ保障ヲ與ヘタル財源ナリ政府ハ如
  何ナル理由ニ依リ此ノ保障ヲ無視シテ
  若槻內閣閣議決定事項ヲ一片ノ空文ニ
  歸セシメ百八十八萬圓ヲ削減シタルカ
  二北海道ハ將來拓殖完成ノ曉ニハ人口
  一千萬以上ヲ包容シ得ヘク又農產、水
  產、畜產、林產、工產、鑛產等ノ生產總額
  ハ二十億圓以上ニ達スヘク帝國ノ國富增
  殖ノ上ニ於テ人口食糧問題ヲ解決スル
  上ニ於テ將又我カ國ノ直面セル經濟國
  難打開ノ上ニ於テ寄與スル所甚大ナル
  ヘキハ論ヲ俟タサルナリ然ルニ此ノ寶
  庫ヲ開發スヘキ現拓殖計畫ハ其ノ規畫
  消極ニ失スルノミナラス其ノ財源常ニ
  不足ヲ生シ豫定ノ事業ヲ遂行スル能ハ
  ス拓殖ノ行程遲遲トシテ進マサルハ吾
  等深甚ノ遺憾トスル所ナリ前內閣ハ此
  ニ見ル所アリ北海道拓殖調査會ヲ設ケ
  調査〓究ヲ遂ケ以テ適切ナル改訂ヲ爲
  サムカ爲第五十六囘議會ニ於テ之カ經
  費ヲ請求シ兩院亦之ヲ可決シ豫算ハ成
  立シタリ然ルニ現内閣ハ何ノ見ル所ア
  リテカ組閣怱忽共ノ經費ヲ削除シ調査
  會ノ設置ヲ廢止セルノミナラス昭和四
  年度豫算二千八百二十二一万七千餘圓ニ
  對シ實行豫算ト稱シ百三十五萬餘圓ヲ
  削減セリ而シテ昭和五年度ハ前年度實
  行豫算ニ僅ニ十八萬圓ヲ增加シテ二千
  七百三萬九千餘圓ヲ第五十八囘議會ニ
  提出シ協賛ヲ經タリト雖前記ノ如ク百
  八十八萬圓ヲ削減シテ二千五百十五萬
  餘圓ト爲セリ斯ノ如クニシテ實際ノ拓
  殖費ハ拓殖計畫ノ豫定事業費ニ比スレ
  ハ昭和四年度ニ於テ百八十萬九千餘
  圓、同五年度ニ於テ四百九十七萬五千
  餘圓ノ減額ナリ加之同六年度豫算卽チ
  今期議會ニ提出ノ豫算ハ二千四百四萬
  千八百九十二圓ニシテ豫定事業費ニ比
  スレハ實ニ七百八十一萬五千七百圓ノ
  減少ナリ政府ハ此ノ如キ措置ヲ以テ北
  海道拓殖遂行上支障ナキモノト認ムル
  ヤ又今期議會提出ノ拓殖費豫算額二千
  四百四萬餘圓ノ數字上ノ基礎ハ何ニ根
  據ヲ有スルヤ而シテ又政府ハ今尙拓殖
  調査會設置ノ必要ナシト認ムルヤ
  右及質間候也
  昭和六年三月十日
  內閣總理大臣濱口雄幸
  衆議院議長藤澤幾之輔殿
  衆議院議員松實喜代太君提出北海道拓殖
  ニ關スル質問ニ對シ別紙答辯書差進候
  〔別紙〕
  衆議院議員松實喜代太君提出北海道拓
  殖ニ關スル質間ニ對スル答辯書
  -昭和五年度北海道拓殖費ハ同年度豫
  算不成立ノ結果當初實行豫算二千六百
  八十五万九千九百二十一圓追加豫算十
  八万圓合計二千七百三万九千九百二十
  一圓ヲ施行スルコトトシタルモ其ノ後
  一般歲入ノ狀況竝物價低落ノ實勢等ニ
  鑑ミ右金額ノ內ヨリ百八十八万四百七
  十三圓ヲ節減スルコトトシタリ而シテ
  右節減額ハ昭和五年度ニ於ケル歲入ノ
  減少ニ對應スルモノナルモ他日決算ノ
  結果ニ依リ歲入ニ剩餘ヲ生シタル場合
  ニ於テハ後年度ノ財源ニ使用セシムル
  モノナルヲ以テ昭和二年ノ閣議決定ヲ
  無視シタルモノニアラス
  ニ、曩ニ大正十五年ニ於テ政府ハ北海道
  拓殖計畫ヲ樹立スルニ當リ特ニ拓殖計
  畫調査會ヲ設置シテ其ノ意見ヲ徵スル
  所アリ該計畫ノ遂行ニ關シ最近財界不
  況ノ結果拓殖費財源ニ影響スル所少カ
  ラサルモノアルハ甚タ遺憾トスル所ナ
  ルモ計畫實施後未タ數年ヲ出テサルノ
  ミナラス財政ノ現狀亦已ムヲ得サルモ
  ノアルニ鑑ミ昭和四年度豫算ノ實行ニ
  當リテハ拓殖計畫調査會ノ設置ハ之ヲ
  見合セタルモ拓殖事業ノ進捗ニ關シテ
  ハ政府ハ目下之カ對策講究中ニ在リ尙
  昭和六年度拓殖費豫算財源ハ左ノ如シ
  (一)昭和五年唐歲入歲出實行豫算ニ於ケ
  ル歲入超過額二、六六二、九二〇圓
  (二)昭和四年度決算剩餘額
  一二二、五五九圓
  (三)昭和四年度北海道外法入收入額
  二、二五六、四一三圓
  合計二四、〇四一、八九二圓
  右及答辯候也
  昭和六年三月十日
  大藏大臣井上準之助
  內務大臣安達謙藏
  天皇ノ大權國體觀念軍人精神竝政治上
  ノ原則ニ關スル質問主意書
  右成規ニ據リ提出候也
  昭和六年二月十九日
  提出者松實喜代太
  天皇ノ大權國體觀念軍人精神竝政治上
  ノ原則ニ關スル質問主意書
  我カ國體上將又憲法上我カ國ノ政治
  ハ天皇中心タルハ炳乎トシテ瞭ナリ
  然ルニ立憲民政黨ノ綱領第一項ニ「國
  民ノ總意ヲ帝國議會ニ反映シ天皇統
  治ノ下ニ議會中心政治ヲ徹底セシムヘ
  シ」トアリ此ノ綱領ノ議會中心政治ヲ
  徹底セシムルコトハ天皇中心政治ニ
  牴觸シ國體ニ背反シ憲法上ノ大權ヲ空
  文ニ歸セシメ憲法蹂躙ト爲ルニ非サル
  カ濱口內閣總理大臣竝各國務大臣ノ所
  見ヲ問フ
  二前抦立憲民政黨ノ綱領ニ依ル議會中
  心政治ヲ徹底セシムヘシト謂フコトハ
  皇室中心主義ヲ精神トスル軍人精神
  ト相反セルニ非サルカ而シテ又陸海軍
  ノ統率ハ天皇ノ大權ニ屬スルコトハ
  憲法ノ條章ニ明ナル所ニシテ立憲民政
  黨ノ綱領ハ此ノ條章ニ反スルニ非サル
  カ然ルニ議會中心政治ヲ綱領トスル立
  憲民政黨總裁ヲ首班トスル內閣ノ閣員
  ニ列スルハ如何ナル理由ナリヤ宇垣陸
  軍大臣安保海軍大臣ノ所見ヲ問フ
  三我カ憲法ニ依レハ宣戰講和條約締結
  ハ天皇ノ大權ニ屬スルコトハ明々白
  々ナリ然ルニ立憲民政黨ノ綱領ノ如ク
  ムハ此ノ憲法ノ條章ニ相反スルニ非サ
  ルカ而シテ又斯ノ如キヲ綱領トスル立
  憲民政黨總裁ヲ首班トセル內閣ノ閣員
  ニ列スルハ如何ナル理由ナリヤ幣原外
  務大臣ノ所見ヲ問フ
  四我カ國ノ政治ハ司法行政立法ノ三權
  分立ノ原則ニ依テ對立シ而シテ裁判所
  (與天皇ノ大權ニ屬スルコトハ憲
  法ノ條章ニ明ナル所ナリ然ルニ前揭立
  憲民政黨ノ綱領ノ如ク議會中心政治ヲ
  徹底セシムルコトハ此ノ原則ヲ無視シ
  憲法ノ條章ニ反スルニ非サルカ而シテ
  又斯ノ如キヲ綱領トスル立憲民政黨ノ
  總裁ヲ首班トスル內閣ノ閣員ニ列スル
  ハ如何ナル理由ナリヤ渡邊司法大臣ノ
  所見ヲ問フ
  右及質問候也
  昭和六年三月十日
  內閣總理大臣濱口雄幸
  衆議院議長藤澤幾之輔殿
  衆議院議員松實喜代太君提出天皇ノ大
  權國體觀念軍人精神竝政治上ノ原則ニ關
  スル質問ニ對シ別紙答辯書差進候
  〔別紙〕
  衆議院議員松實喜代太君提出天皇ノ
  大權國體觀念軍人精神竝政治上ノ原則
  ニ關スル質問ニ對スル答辯書
  一政府ハ立憲民政黨綱領第一項ニ「國
  民ノ總意ヲ帝國議會ニ反映シ天皇統
  治ノ下ニ議會中心政治ヲ徹底セシムヘ
  シ」トアルハ共ノ言葉ノ示ス如ク天
  皇統治ノ下ニ於テ政治上ノ主義トシテ
  議會ヲ通ジテ現ハルル民意ヲ尊重スベ
  キコトヲ述ブルモノニシテ質問者ノ言
  ニ係ル如キ天皇中心政治ニ牴觸シ國
  體ニ背反スル等ノコトナキモノト認ム
  二立憲民政黨綱領第一項ノ趣意ハ前項
  ニ答フル通ニシテ軍人精神及陸海軍ノ
  綺率ニ關スル憲法ノ條規ト何等相反ス
  ル所無キモノト認ム
  三立憲民政黨綱領第一項ノ趣意ハ前掲
  第一項ニ答フル通ニシテ宜戰講和條約
  締結ニ關スル憲法ノ條規ト何等相反ス
  ル所無キモノト認ム
  四立憲民政黨綱領第一項ノ趣意ハ前揭
  第一項ニ答フル通ニシテ司法權ノ運用
  ニ關スル憲法ノ條規ト何等相反スル所
  無キモノト認ム
  右及答辯候也
  昭和六年三月
  內閣總理大臣濱口雄幸
  陸軍大臣字垣成
  外務大臣男爵幣原喜重郞
  司法大臣子爵渡邊千冬
  海軍大臣男爵安保〓種
  國際紛爭平和的處理ニ關スル質問主意
  書
  右成規ニ據リ提出候也
  昭和六年二月二十一日
  提出者田川大吉郞
  國際紛爭平和的處理ニ關スル質問主意
  書
  國際紛爭ヲ平和的ニ解決セムトスル氣運
  滯ク進ミ其ノ實際ニ於ケル成績稍見ルヘ
  キモノアリ現ニ米國ハ我カ國ニ對シ此ノ
  趣意ニ依ル仲裁及調停ニ關スル條約締結
  ノ希望ヲ申出テ來リ旣ニ數年ヲ經過シタ
  リト聞ク
  帝國政府ハ該申出ニ對シ應諾セラ
  ルル方針ニシテ且其ノ交渉ハ近ク完
  了スヘキ程度ニ在リヤ
  二若然ラストセハ其ノ理山如何
  三米國以外ニ仲裁條約ヲ締結セムト
  シテ現ニ交涉中ノ國アリヤ
  且此ノ種ノ一般的條約ノ締結加盟ニ關ス
  ル所謂「應訴義務」ノ問題若ハ「選擇條項」
  ノ問題ニ對シテモ帝國政府ハ國際聯盟ノ
  主要國家中其ノ囘答ヲ怠レルモノノ只一
  國ニシテ如何ニカ其ノ意向ヲ速ニ決定セ
  サルヘカラサル位地ニ在ルモノノ如シ
  政府ハ該問題ニ關シ近ク囘答ヲ發
  セラルヘキヤ
  二果シテ然ラハ其ノ囘答セラルヘキ
  方針如何
  三若尙囘答セラレストセハ其ノ遲延
  セラルル理由如何
  四若〓究未了トセハ其ノ〓究中ナル
  未了ノ問題如何
  右及質問候也
  昭和六年三月十日
  內閣總理大臣濱口雄幸
  衆議院議長、藤澤幾之輔殿
  衆議院議員田川大吉郞君提出國際紛爭平
  和的處理ニ關スル質問ニ對シ別紙答辯書
  差進候
  〔別紙〕
  衆議院議員田川大吉郞君提出國際紛爭
  平和的處理ニ關スル質問ニ對スル答辯
  書
  第仲裁及調停條約ニ關スル問題
  一明治四十一年五月五日華盛頓ニ於テ
  締結セラレ爾來三囘ノ更新ヲ經テ引續
  キ效力ヲ有シタル日米仲裁裁判條約ハ
  昭和三年八月二十三日ヲ以テ期間滿了
  シタリ、之ヨリ先米國政府ハ昭和二年
  末帝國政府ニ對シ右ニ代ルヘキ新條約
  締結方提案シ來リ次テ翌三年三月右提
  案ヲ仲裁裁判條約案及調停條約案ノ二
  條約案ニ分離シテ商議シタキ旨更メテ
  提議シ來レリ帝國政府ニ於テハ固ヨリ
  兩國間ニ此種條約ノ締結ニ異議ナク其
  ノ後交涉ヲ繼續シ居ルモノナリ尤モ本
  件妥結ノ時機ニ付テハ今日之ヲ明言ス
  ルヲ得ス
  二前項ヲ參照セラレンコトヲ望ム
  三米國ノ外猶和蘭等ノ諸國ヨリモ帝國
  政府ニ對シ仲裁裁判條約及調停條約締
  結ニ關スル申入アリ和蘭トハ目下交涉
  中ナリ
  第二所謂「選擇條項」ニ關スル問題
  常設國際司法裁判所ニ對スル應訴義
  務ノ問題ハ同裁判所規程第三十六條第
  二項ニ選擇條項トシテ規定セラレ居リ
  之カ受諾ハ各國ノ自由ニシテ又其ノ受
  諸ハ各國トモ自發的ナリ帝國政府ニ於
  テハ其ノ受諾ニ付原則上異議ヲ有セス
  ト雖モ右受諾ニハ國家主權ノ行動ヲ將
  來ニ亙リ强ク拘束スル重大性ノ存スル
  ノミナラス各國トモ之カ受諾ニ當リテ
  ハ各種ノ留保ヲ附スル例ナルニ付帝國
  政府ニ於テハ各國ノ受諾狀況ヲ考覈シ
  更ニ帝國ノ緊切ナル利害殊ニ國內輿論
  ノ要望ヲ考慮シテ帝國ノ受諾ニ際シ附
  スヘキ留保條件ヲ目下愼重ニ〓究中ナ
  リ
  二三、及四、前項ヲ參照セラレンコト
  ヲエム
  右及答辯候也
  昭和六年三月十日
  外務大臣男爵幣原喜重郞
  區劃整理ニ際シ東京市ノ小學校舍移轉
  補償金ニ關スル質問主意書
  右成規ニ據リ提出候也
  昭和六年二月十九日
  提出者遠藤千元
  區劃整理ニ際シ東京市ノ小學校舍移轉
  補償金ニ關スル質問主意書
  關東大震災災害復舊工事施行ニ關シ東京
  市燒失區域內ニ於ケル區割整理斷行ニ際
  シテハ土地竝各種營造物及動產ニ對シ夫
  レ夫レ適當ノ移轉補償金ヲ交付セラレタ
  ル中ニ於テ小學校舍ノ移轉ニ對シテハ各
  區長ノ申請ニ依リ區ニ交付セラレタリ何
  故ニ補償金受領ノ主體ヲ區ニ決定セラレ
  タリヤ本件ハ市ト市制第六條ニ依ル區ト
  ノ間ニ重大ナル利害ヲ有スルヲ以テ當局
  ノ意思及其ノ理由ヲ明確ニ文書ヲ以テ答
  辯セラレムコトヲ望ム
  右及質問候也
  昭和六年三月十日
  內閣總理大臣濱口雄幸
  衆議院議長藤澤幾之輔殿
  衆議院議員遠藤千元君提出區割整理ニ際
  シ東京市ノ小學校舍移轉補償金ニ關スル
  質問ニ對シ別紙答辯書差進候
  〔別紙〕
  衆議院議員遠藤千元君提出區劃整理ニ
  際シ東京市ノ小學校舍移轉補償金ニ關
  スル質問ニ對スル答辯書
  東京都市計畫土地區劃整理ノ施行ニ關シ
  テハ建物其ノ他ノ工作物ニ對スル移轉補償
  金受領ノ主體ハ特別都市計畫法第六條ノ
  規定ニ準據シ移轉スヘキ建物其ノ他ノ工
  作物ノ所有者ナラサルヘカラス而シテ東
  京市ニ於テ小學校舍ハ區ノ所有ニ屬スル
  カ故ニ前記移轉補償金ハ之ヲ區ニ交付シ
  タル次第ナリ
  右及答辯候也
  昭和六年三月十日
  內務大臣安達謙藏
  〔左ノ報〓ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノ爲
  玆ニ揭載ス〕
  一去七日常任委員補闕選擧ノ結果左ノ如シ
  第三部選出
  決算委員松本忠雄君(奧山龜藏君
  補關)
  第六部選出
  決算委員北原阿智之助君(小野耕一
  郞君補闕)
  第七部選出
  豫算委員八木幸吉君(鷲野米太郞
  君補關)
  一去七日議長ニ於テ辭任ヲ許可シタル常任
  委員左ノ如シ
  第七部選出豫算委員堀内良平君
  一去七日理事補團選擧ノ結果左ノ如シ
  勞働組合法案(政府提出)外一件委員
  理事猪野毛利榮君(委員守屋榮夫
  君本日理事辭任
  ニ付其ノ補闘)
  一去七日議長ニ於テ選定シタル委員左ノ如
  シ
  勞働者災害扶助法案(政府提出)外二伴委
  員
  山邊常重君伊禮肇君
  坂東幸太郞君村上紋四郞君
  村岡吾一君三好榮次郞君
  眞鍋儀十君佐藤與一君
  氏家〓君山崎傳之助君
  安藤正純君崎山武夫君
  牧野良三君板谷順助君
  原惣兵衞君森田政義君
  高見之通君西尾末廣君
  入營者職業保障法案(政府提出)外一件委
  員
  三浦虎雄君水上齊之助君
  原吉郞君西田郁平君
  北原阿智之助君小俣政一君
  宮脇長吉君兼田秀雄君
  八田宗吉君
  船員保險法案(政府提出)委員
  佐竹庄七君前田卵之助君
  山本實彥遠藤千元君
  海野〓馬君若宮貞夫君
  板谷順助君〓賤男君
  小林節
  去七日ニ於ケル特別委員ノ異動左ノ如シ
  國立公園法案(政府提出)委員
  辭任佐藤重遠君補關西岡竹次郞君
  地租法案(政府提出)外六件委員
  辭任海老澤爲次郞君補鬪櫛部荒熊君
  辭任松本攝津君補關濱野徹太郞君
  一昨九日附鈴木內閣書記官長ヨリ藤澤議長
  宛左ノ通牒ヲ受領セリ
  依命通牒
  内閣總理大臣濱口雄幸病氣快癒ニ付外務
  大臣男爵幣原喜重郞ノ內閣總理大臣臨時
  代理ハ本日免セラレ候
  一昨九日常任委員補關選擧ノ結果左ノ如シ
  第七部選出
  豫算委員岡崎久次郞君(堀内良平君
  補園)
  一昨九日委員長及理事互選ノ結果左ノ如シ
  勞働者災害扶助法案(政府提出)外二件委
  員
  委員長山邊常重君
  理事
  伊禮肇君坂東幸太郞君
  村上紋四郞君崎山武夫君
  森田政義君
  入營者職業保障法案(政府提出)外一件委
  員
  委員長三浦虎雄君
  理事
  小俣政一君兼田秀雄君
  船員保險法案(政府提出)委員
  委員長佐竹庄七君
  理事
  前田卵之助君板谷順助君
  一昨九日理事補閱選擧ノ結果左ノ如シ
  自動車交通事業法案(政府提出)委員
  理事川島正次郞君(理事豐田收君本
  月六日委員辭任ニ付其ノ補
  關
  一昨九日ニ於ケル特別委員ノ異動左ノ如シ
  辯護士法中改正法律案(北浦圭太郞君外
  三名提出)外二件委員
  辭任米田規矩馬君補關岩本武助君
  昭和四年度第一豫備金支出ノ件(承諾ヲ
  求ムル件)外七件委員
  辭任齋藤太兵衞君補闕手代木隆吉君
  任生方大吉君補關平野鍋吉君
  場〓次郞君補千元君
  任北田正平君調伊禮肇君
  輸出生絲檢査法中改正法律案(政府提出)
  天草
  任長野綱良君補闕高橋守平君
  地租法案(政府提出)外六件委員
  辭任鎬木忠正君補關佐竹庄七君
  辭任本田彌市郞君補關服部〓一君
  辭任〓水長〓君補國水上齊之助君
  徹太郞君禮肇君
  國立公園法案(政府提出)委員
  辭任高橋元四郞君補關山內亮君
  勞働組合法案(政府提出)外一件委員
  辭任西尾末廣君補闕松谷與二郞君
  小作法案(政府提出)委員
  辭任生方大吉君補闕關矢孫一君
  自動車交通事業法案(政府提出)委員
  辭任坂東幸太郞君補關森峰一君

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• 002・藤澤幾之輔

  ○議長(薬澤幾之輔君)　是ヨリ會議ヲ開キ
  マスー御諮リヲ致シマス第三部選出豫
  算委員坂本一角君、第八部選出豫算委員深
  澤豐太郞君、第九部選出豫算委員川口義久
  君右常任委員解任ノ申出ガアリマス、許
  可スルニ御異議ガアリマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

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• 003・藤澤幾之輔

  ○議長(藤澤幾之輔君)　御異議ナケレバ許
  可致シマス其部ノ諸君ハ速ニ補關選擧ヲ
  行ヒ御居ケアランコトヲ望ミマス、濱口內
  閣總理大臣ヨリ發言ヲ求メラレテ居リマ
  ス濱口內閣總理大臣(拍手)
  〔國務大臣濱口雄幸君登壇〕

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• 004・濱口雄幸

  ○國務大臣(濱口雄幸君)　諸君、私不慮ノ
  遭難ノ爲メ、時局多事ノ折柄數箇月ノ間國
  務ヲ離ルヽノ已ムナキニ至リマシテ、今日
  マデ諸君ト相見エテ共ニ國政ヲ議スルコト
  ヲ得マセナカッタコトハ、私ノ頗ル遺憾トス
  ル所デアリマス
  兩來健康モ次第ニ囘復ヲ致シ、昨日ヲ以
  テ幣原首相臨時代理ノ任ヲ解カレ、同時ニ
  私自ラ總理大臣ノ職務ニ當ルコトヽナッタ
  ノデアリマス、玆ニ御報〓旁〓特ニ一言ヲ申
  上ゲル次第デアリマス(拍手)

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• 005・藤澤幾之輔

  ○議長(藤澤幾之輔君)　此際犬養毅君カラ
  發言ヲ求メラレマシタ-大養毅君(拍手)
  〔犬養毅君登壇〕

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• 006・犬養毅

  ○犬養毅君　私ハ總理大臣ニ對シテ一言御
  慰勞ヲ申上ゲタイト存ジマス、昨年不慮ノ
  御遭難以來、長キ間御病床ニ在ラレテ、御
  無聊ノ有樣ハ實ニ御同情ニ堪ヘマセヌ、窃
  ニ痛心致シテ居リマシタガ、幸ニ健康ヲ囘
  復セラレテ、今日茲ニ御出席ナサレテ自
  ラ國務ニ當ラレルト云フコトニ接シマシ
  テ、私共實ニ欣抃ニ堪ヘマセヌ、玆ニ謹ン
  デ御慰勞ヲ申上ゲ、又益〓健康ヲ此上囘復
  セラレルコトヲ祈リマス(拍手)

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• 007・藤澤幾之輔

  ○議長(藤澤幾之輔君)　本日ノ日程ニ揭ゲ
  マシタ質問第一乃至第十ハ何レモ政府ヨ
  リ答辯書ヲ受領致シマシタ、仍テ日程ヨリ
  之ヲ省キマス尙ホ答辯ニ對スル意見陳述
  ノ申出ガアリマスガ、適當ナ機會ニ之ヲ許
  シマス、是ヨリ日程ニ入リマス

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• 008・作田高太郎

  ○作田高太郞君　議事日程變更ノ動議ヲ提
  出致シマス、卽チ此際日程ノ順序ヲ變更シ、
  日程第十二乃至第十五ヲ繰上ゲ、其審議ヲ
  進メラレンコトヲ望ミマス

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• 009・藤澤幾之輔

  ○議長(藤澤幾之輔君)　作田君ノ動議ニ御
  異議アリマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

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• 010・藤澤幾之輔

  ○議長(藤澤幾之輔君)　御異議ナシト認メ
  マハ仍テ日程ハ變更セラレマシタ、日程
  第十二、輸出生絲檢査法中改正法律案ノ第
  一讀會ノ續ヲ開キマス、委員長ノ報告ヲ求
  メマス-岡崎久次郞君
  第十二輸出生絲檢査法中改正法律案
  (政府提出)
  第一讀會ノ續(委員長報告)
  報〓書
  一輸出生絲檢査法中改正法律案(政府提
  〓
  右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
  候此段及報〓候也
  昭和六年三月九日
  委員長岡崎久次郞
  衆議院議長藤澤幾之輔殿
  〔岡崎久次郞君登壇〕

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• 011・岡崎久次郎

  ○岡崎久次郞君　私ハ輸出生絲檢査法中改
  正法律案ノ委員會ノ經過竝結果ヲ御報告申
  上ゲルノデアリマス、本委員會ハ去ヌル二
  月十二日ニ第一囘ノ委員會ヲ開催致シマシ
  テ、委員長竝ニ理事ノ選擧ヲ行ヒマシタ
  不肖委員長ニ當選シ理事トシテハ小山邦
  太郞君靑木精一君ノ兩君ガ御選擧ニナラ
  レマシタ引續キマシテ數囘ニ亙リマシテ、
  委員會ヲ開催致シタンデアリマス、本委員
  會ハ蠶絲業法ニ對スル知識薀蓄ノ極メテ深
  キ方々デアリマスカラ蠶絲業ニ對スル根
  本問題、又生絲補償法問題、其他本法ニ規
  定サレマシタ所ノ、有ユル點ニ付テ詳細ナ
  ル質疑應答ガ行ハレタノデアリマス政友
  會諸君ノ中カラ專ラ加藤知正君、靑木精一
  君、永田良吉君等カラ種々有益ナル質問ガ
  アッタノデアリマス、又民政黨ノ諸君ノ中カ
  ラモ氏家君、小山君等カラ質問ヲセラレ、
  適當ニ應答サレタノデアリマスガ、其長キ
  詳細ノコトハ委員會速記錄ニ於テ御覽ヲ願
  フコトニ御願致シマス、去ヌル九日ニ於テ
  討議ニ移リマシタ、本案ノ討議ニ際シマシ
  テハ民政黨ノ小山君カラ本築ニ贊成ノ御
  意見ガ御發表ニナリマシタ、更ニ政友會ヲ
  代表シテ加藤君カラ本案ニ贊成ノ御意見ガ
  陳述サレタノデアリマス、卽チ本委員會ハ
  朝野兩黨ノ全員一致ヲ以テ之ヲ可決サレタ
  ト云フコトヲ御報告スルノ光榮ヲ有スルノ
  デアリマス、尙ホ加藤君カラ竝ニ小山君カ
  ラ各御意見ガ出マシテドウカ生絲ノ現物
  取引所ノ設置ヲ至急ヤッテ戴キタイ、尙ホ此
  建設ノ、經費ニ對シテハ速ニ國庫ノ都合ヲ
  圖ヲテ、橫濱、神戶ノ兩市カラ買取ッテ、檢
  査料ヲ輕減シテ貰ヒタイ、ト云フ意見ガアッ
  タコトヲ御了承願ヒタイノデス、朝野兩黨
  一致シテ本案ヲ支持致シタト云フコトハ
  本案ガ如何ニ政府案トシテ重要且ツ緊急ナ
  モノデアルカト云フコトヲ物語ッテ居リマ
  スガ、此場合討議ヲ致シマスルナラバ委
  員長ノ報告ハ是デ終ルノデアリマスガ、斯
  ノ如キ重大ナル法案ハ極メテ簡單ニモ天下
  ニ知悉セシムル必要モアルノデアリマスカ
  ラ、簡單ニ本案ノ重要ナル點、竝ニ國家國
  民ニ對シテ又我國ノ產業經濟ニ對シテ、
  實ニ緊急ナル問題デアルコトヲ、此席カラ
  簡單ニ申述ル必要ヲ感ズルノデアリマス
  (拍手)
  極メテ簡單ニ申述マスルガ、本案ハ御承
  知ノ通リ生絲ノ輸出貿易ニ際シマシテハ
  正量取引法ニ依ッテ、目方ノ檢査ハ出來テ居
  ルノデアリマスルガ、品質ノ檢査ハ未ダ出
  來テ居ラヌノデアリマス此品質檢査ヲ國
  家ノ一定シタル方針ニ依ッテ行フ、是ガ本案
  ノ第一ノ趣旨デアリマス、生絲ノ目方、竝
  ニ品質ガ國家ノ手ニ依ッテ鑑定サレ、是ガ檢
  査サレテ輸出サレルト云フコトハ、購買者
  タル米國ノ需要家ニ多大ナル便宜ヲ與ヘ、
  竝ニ我國ノ生絲貿易ニ一ツノ偉大ナル革命
  ヲ與ヘルモノデアリマス、而シテ此檢査法
  ハ大體ニ於テ百中九十九「パーセント」マデ
  ハ米國ノ需要家ト其檢査法ノ協定ガ行ハ
  レテ、兩方一致シタル意見ノ合致點ヲ見出
  シタノデアリマス、是故ニ昭和七年一月カ
  ラ我國カラ輸出サレル生絲ハ、其目方竝ニ
  品位ヲ國家ノ檢定所ニ於テ試驗セラレ、外
  國へ輸出スルト云フコトガ、本案ノ主眼デ
  アリ、玆ニ我國ノ生絲貿易ノ基礎ガ確定ス
  ル次第デアルト云フ、重要ナル法律案デア
  ルノデアリマス願クハ滿場一致御贊成ア
  ランコトヲ切望シテ報告致シマス(拍手)

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• 012・藤澤幾之輔

  ○議長(藤澤幾之輔君)　別ニ討論ハアリマ
  セヌ、本案ノ第二讀會ヲ開クニ御異議アリ
  マセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

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• 013・藤澤幾之輔

  ○議長(藤澤幾之輔君)　御異議ナシト認メ
  マス仍テ本案ノ第二讀會ヲ開クニ決シマ
  シタ

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• 014・作田高太郎

  ○作田高太郞君　直チニ本案ノ第二讀會ヲ
  開キ、第三讀會ヲ省略シ委員長報告通リ
  可決確定セラレンコトヲ望ミマス

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• 015・藤澤幾之輔

  ○議長(藤澤幾之輔君)　作田君ノ動議ニ御
  異議アリマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

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• 016・藤澤幾之輔

  ○議長(藤澤幾之輔君)　御異議ナシト認メ
  マス仍テ直チニ第二讀會ヲ開キマス
  輸出生絲檢査法中改正法律案
  第二讀會(確定議)

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• 017・藤澤幾之輔

  ○議長(藤澤幾之輔君)　別ニ御發議ガアリ
  マセヌカラ本案ハ作田君ノ動議ノ如ク第
  三讀會ヲ省略シテ、委員長報告通リ可決確定
  致シマシタ(拍手)日程第十三、耕地整理法
  中改正法律案ノ第一讀會ノ續ヲ開キマス、
  委員長ノ報〓ヲ求メマスー-委員長本田恒
  之君
  第十三耕地整理法中改正法律案(政
  府提出)第一讀會ノ續(委員長報牛ロ)
  報告書
  一耕地整理法中改正法律案(政府提出)
  右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
  候此段及報告候也
  昭和六年三月九日
  委員長本田恒之
  衆議院議長藤澤幾之輔殿
  〔本田恒之君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02519310310&spkNum=17

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• 018・本田恒之

  ○本田恒之君　耕地整理法中改正法律案ノ
  委員會ノ經過及ビ結果ヲ御報告申上ゲマ
  ス、委員會ハ四囘ニ亙リマシテ、精密ナル
  質問應答ガ行ハレタノデアリマス、其詳細
  ハ總テ速記錄ニ就テ御覽ニ願フコトヽシテ
  省略致シマス、質問ノ最モ集中致シマシタル
  點ハ第三條ノ二、及ビ附則第十六條デア
  リマシテ、此點ニ最モ精細深刻ヲ極メタル
  質問ガアッタノデアリマス、各方面ニ亙ッテ
  居リマスカラ、此處デ其要領ヲ申上ゲル必
  要ハナイト考ヘマス、之ニ對シマシテハ是
  ヨリ政友會ヲ代表サレタル人々ニ依リマシ
  テ其理由ハ詳細ニ說明ニナルコトヽ思ヒ
  マスカラ、私カラハ是亦省略致シマス、討
  論ニ入リマシテ、高橋熊次郞君ハ政友會ヲ
  代表サレテ、本案ハ今少シク適當ナル作成
  ヲ求ムル爲ニ、政府ニ返付致シタイト云フ
  動議ヲ提出ニナリマシタ、併ナガラ是ハ少
  數ニ依ッテ否決ニナリマシタ、永田善三郞君
  ハ民政黨ヲ代表サレテ、本案ハ耕地整理法ノ
  主義目的ヲ達スルノニ相當ナル改正デアル
  カラ全部政府案ヲ贊成スルト云フ御意見
  デアリマシタ、而シテ多數ヲ以テ政府原案
  ガ可決ニナッタ次第デアリマス、簡單ナガラ
  此段御報告ヲ申上ゲマス(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02519310310&spkNum=18

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• 019・藤澤幾之輔

  ○議長(藤澤幾之輔君)　本案ニ對シテハ加
  藤鐐五郞君外七名ヨリ少數意見ガ提出サレ
  テ居リマス、是ハ本案ノ撤囘ヲ求ムルノ意
  見デアリマスカラ、此際其報〓ヲ許シマス
  加藤鐐五郞君
  少數者意見書
  一耕地整理法中改正法律案(政府提出)
  右ハ本院ニ於テ政府ニ對シ撤囘ヲ求ムヘ
  キモノト認ムルニ依リ少數者意見書及提
  出候也
  昭和六年三月九日
  委員少數意見者
  加藤鐐五郞
  外九名
  〔加藤鐐五郞君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02519310310&spkNum=19

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• 020・加藤鐐五郎

  ○加藤鑛五郞君　私ハ此場合同志ト共ニ本
  案ノ撤囘ヲ求ムル動議ノ說明ヲ致シ、併セ
  テ吾々ノ反對スル趣意ヲ玆ニ聲明致シタイ
  ト思フノデゴザイマス(拍手)今議會ニ政府
  ヨリ提出サレタル法案ハ多々アルノデゴザ
  イマスガ、地租法案ニ關聯ヲシタル法案程
  缺陷ノ多イモノハナイノデアリマシテ遺
  憾ナガラ政府ノ失態、醜態ヲ暴露致シタノ
  デゴザイマス、今囘ノ此耕地整理法案ハ
  政府委員自ラ申サレタ如ク、頗ル難解至極
  ノ法案デアルノデアリマスガ故ニ、世間此
  難解ナルコトト、今一ツハ頗ル簡單ナル改正
  法律案デアルト云フコトヲ早合點シテ居ル
  上ヨリ致シマシテ、頗ル之ヲ小ナル改正案
  トシテ、餘リ注意ヲ拂ハレナカッタノデア
  リマシタ、併ナガラ委員會ニ於テ吾々ガ之
  ヲ調査致シマス時ニ幾多ノ缺陷ガ出テ參
  リマシタガ故ニ、吾々ハ之ヲドウシテモ撤
  囘シナケレバナラヌト云フコトニ立至ッタ
  ノデゴザイマス
  政府ハ此耕地整理法改正案ヲ提出スル時
  ニ當リマシテ、此說明書ニモアリマスル如
  ク、是ハ單ニ地租法案ノ改正ノ結果、從來
  ノ地價ガ賃貸價格ニ變ルノデアルガ故ニ、
  之ニ從フベク耕地整理法ヲ改正スル又地
  租法ガ十年每ニ改訂ヲスルガ故ニ、之ニ應
  ズルヤウニ耕地整理法ヲ改正スルノデアツ
  テ、國家ガ現行ノ耕地整理法ニ依ッテ與ヘ
  テアル所ノ据置ノ總テノ恩惠ハ以前通リニ
  此耕地整理法ニ與ヘテアルト說明ヲ致シタ
  ノデアリマシタ、是デアルナラバ、吾々モ
  是ハ當然ナ改正案デアリマシテ、此案ニ贊
  成スベキデゴザイマスガ、委員會ニ於テ屢、〓
  質疑ヲ致シテ居リマス中ニ於テ、又此案
  ヲ精讀スル上ニ於テ、現內閣ハ此單純ナル
  改正ト云フ言葉ノ中ニ、火事場泥棒的ニ二
  三ノ條項ヲ追加致シマシテ、大ナル惡法ト
  ナサントシタルコトヲ吾々ハ見出シタノデ
  アリマス、卽チ吾々ハ斯ノ如キ火事場泥棒的
  ノ條文ヲ入レテ、政府自ラ地租ノ減租ノ据
  置ヲスル恩惠ヲ與ヘル同樣デアルト云フ所
  ノ根柢カラ裏切リマシタガ故ニ、是ハドウ
  シテモ撤囘セナケレバナラヌト云フ所ニ立
  至ッタノデアリマス、然ラバドウ云フ點ガ斯
  樣ナ根柢ヨリ覆スガ如キコトヲ爲シタ條文
  テアルカト云フ、二三ノモノヲ私ハ指摘シ
  テ玆ニ諸君ノ御贊成ヲ得タイト思フノデア
  リマス卽チ第一ハ耕地整理法ノ三條ノ二
  ト云フ所デアリマシテ、讀ンデ見マスト「市
  ノ區域內ノ土地及主務大臣ノ指定スル地域
  內ノ土地ハ之ヲ整理施行地區ニ編人スルコ
  トヲ得ス但シ市ノ區域內ノ土地ニシテ主務
  大臣ノ指定スル地域内ノモノニ付テハ此ノ
  限ニ在ラス」トアルノデアル、之ヲ碎ケテ申
  セバドウ云フコトデアルカト申スト、耕
  地整理ハ市ノ區域內ニシテハナラナイ、併
  シ市ノ區域內デアッテモ廣イ田ナドノアル
  所ハ農林大臣ガ宜シイト言ヘバソレハ差
  支ナイ、又市ノ區域外デアッテモ、農林大臣
  ガイケナイト言ッテ指定シタ場所ニ於テハ、
  耕地整理法ヲヤルコトハナラナイ、是ダケ
  デアリマシテ、之ヲ唯讀ンデシマヒマスレ
  バ、如何ニモ何デモナイヤウデアリマスケ
  レドモ所謂市以外ニ於テ農林大臣ノ指定
  シタル區域ト云フコトハドウ云フコトデ
  アルカト申セバ都市ニ限ラナイノデアリ
  マス、卽チ人口デ申セバ、千カ五百、是ハ
  ハ.ッキリ致シマセヌガ、地方ノ市デナイ所ノ
  町所謂小邑ト申スカ、小市街ト申スカ、
  ソレナドモ一切耕地整理ノ地區內ニ入レテ
  ハナラヌト云フコトデアリマシテ、是ハ耕
  地整理ノ仕事自體ヲ全クサセナイト云フコ
  トデゴザイマスソレカラモウ一ツハ附則
  ノ十六條ト云フノガアリマシテ、頗ル難解ノ
  字句ガ使ッテアリマスガ、是ハ一口ニ申セバ、
  從來耕地整理ガ與ヘテ居ッタ所ノ恩惠、卽チ
  政府ハ耕地整理法ニ對シテ國家ガ恩惠ヲ與
  ヘテ居ルノハ依然トシテ與ヘテ置クト言
  ヒツヽ此附則ノ十六條ト云フモノハ之ヲ
  一切剝奪スルト云フコトデアリマシテ、所
  謂國家ガ其經營者、組合ニ與ヘテ契約ヲシ
  タル所ノ既得權トモ稱スベキモノヲ取ッテ
  シマッタト云フコトデアリマス、是ナドハ實
  ニ耕地整理法ノ恩惠ヲ少シモ取ラナイ、其
  儘ニシテ置クト言ヒツヽ直チニ此十六條
  ニ來ッテ、今マデノ恩惠、工事中ノモノヽ今
  マデノ恩惠ヲ一切取ッテシマフト云フコト
  デアリマス私ハ是等ノ案ヲ見ル時ニ於キ
  マシテ、大藏大臣ガ曩ニ此影ノ如キ減稅案
  ヲ出シテ國民負擔ノ輕減ニ之ヲ充テルノ
  デアル政府ハ苦シイケレドモ、此減稅案
  ヲ提案シタノデアルト彼此レ申サレタノデ
  アリマスガ、此十六條ノ如キハ此耕地整理
  法ヲ通ジマシテ、現內閣ハ增稅ノ計畫ヲ致
  シテ居ルノデアル、卽チ耕地整理法ヲ通ジ
  テ地租ノ增稅ヲ明カニ致シテ居ルト云フノ
  デゴザイマス、奇怪千萬ト謂ハナケレバナ
  ラヌノデゴザイマス、私ハ更ニ此場合此三
  條ノ二ヲモウ少シ立入ッテ說明ヲ致シタイ
  ト思フノデアリマス、卽チ委員會ニ於テ高
  橋君等ヨリ屢〓質疑ガアリマシタガ、農林大
  臣ノ所謂指定スルト云フ所ノ場所ハドン
  ナ場所デアルカ、少シモ是ハ要領ヲ得ヌノ
  デアリマス、人口ノ千デ以テ定メルカ、二
  千デ以テ定メルカ、或ハドウ云フ場所ヲ指
  定スルカト云フト、常識デ定メル、其場合
  ニ依ッテ定メルト云フコトデアリマスルガ、
  何等基礎ナキ所ノ漠然タル答辯デアリマス
  ルガ、要スルニ是ハ農林省ト致シマシテハ
  將來宅地ニナルヤウナ場所ハ耕地整地ノ
  地區內ハ耕地整理ハシテハナラヌト云フコ
  トデアルノデアリマス、世間多クノ人ハ
  吾々同僚ノ中ニ於キマシテモ、都市ニ於テ
  市制施行ノ場所ニ於テ、耕地整理ヲスルト
  云フコトヲ止メルコトハ當リ前ノ如ク感ズ
  ルノデアリマスルガ、是ハ都市ノミヂヤナ
  イノデス、全國幾百ノ小市街、町ト中シマ
  スルカ、村ト申シマスルカ、苟モ相當人ノ
  集ノテ居ル市街、小市街ハ一切地區內ニ入レ
  ナイト云フコトデゴザイマスルガ故ニ、卽
  チ耕地整理ト云フモノハモウ如何ナル町
  ノ外レニ於テモ出來ナイト云フコトニ相成
  ルノデゴザイマス、我國ノ耕地整理ハ御承
  知ノ如ク頗ル發達シ來ッテ居ルノデアリ
  マスルガ、ドノ點ガ發達シテ來タカト申シ
  マスレバ本當ノ農作物ノ耕地整理ガ盛ニ
  モナッテ居リマスルガ、ソレ以上所謂小市街
  若クハ都會ノ周圍ニ於ケル郊外地ガ宅地整
  理トシテ、耕地整理ガ發達シテ來タノデア
  リマシテ耕地整理ノ發達ハ所謂宅地整理
  ノ發達ガ今日ノ此發達ヲ來シタト云フコト
  ハ申スマデモナイノデアリマス、只今各都
  市ニ於キマシテ、立派ナル郊外ノ道路ガ出
  來ル、色々ノ設備ガ出來ル又地方ノ市ト
  稱スルコトノマダ出來ナイ町ニ於キマシテ
  モ立派ナ道路ガ出來テ、色々ノ住宅設備
  ガ完備ニ近キヤウニナッテ居ルト云フノハ、
  全ク甘耕地整理ノ御蔭デアルノデゴザイマ
  スル、然ルニ今後之ヲ一切スルコトナラヌ
  ト云フコトニ相成リマスルト、農林省ノ立
  場カラハ或ハ宜イカモ知レマセヌケレド
  モ內務省ノ立場、國家ト云フ立場ヨリ見
  マスレバ是ハ住宅、宅地問題ノ上ニ重大
  ナル惡影響ヲ及ボスコトデアリマシテ由
  由シキ大事デアルト謂ハナケレバナラヌノ
  デアル(拍手)斯樣ニ申シマスルト所謂耕地
  整理ヲ町ノ附近ニシナクテモ、ソレハ區劃
  整理ヲスレバ宜イヂヤナイカト云フ反問ヲ
  スル人モアルノデアリマスガ御承知ノ如
  ク區劃整理ト申スコトハ、都市計畫ヲ指定
  シテアル所ノ都市デナイト、是ハ行フコト
  ガ出來ナイノデアリマス、只今我國ニ於テ
  市ハ百十幾ツモアリマスルガ、其間ニ於テ、
  都市計畫ノ指定地トナッテ居ルノハ百少シ
  足ラヌノデアリマシテ、當然市デアリナガ
  ラマダ都市計畫ノ指定ヲサレナイ所ガ十幾
  ツモ實ハアルト云フ有樣デアリマシテ、ソ
  レ以下ノ所謂町、人口二万カ三万ノ町、全
  國ニ幾百アルデアリマセウカ、ソレ等ノモ
  ノハ都市計畫ノ指定ニナフテ居リマセヌ市
  デアリマス、隨テ區劃整理モ出來ナイト云
  フコトデアリマシテ、ソレ等幾百ノ都市、
  或ハ總テノ中心地デアル所ノ、小市街ト云
  フモノハ今後其附近ニ於テ、住宅整理ト
  云フコトハ絕對ニ出來ナイト云フコトニ
  相成ッテ居ルノデゴザイマス、卽チ此法律
  ガ通過致シ、實施サレマシタナラバ、日本
  ノ國ノ多クノ町ト云フモノハ、モウ今後立
  派ナ道モ出來ズ、又色々ナ住宅設備モ出來
  ズ、宅地ノ整理モ出來ズシテ、雜然トシテ
  昔ノ如ク到ル處ニ家ガ出來テ、サウシテ道
  ハ曲リ勝手次第ト云フコトニ相成ルノデア
  リマシテ、今日マデ發達シ來ッタル所ノ耕
  地整理ニ依ッテ與ヘラレタル總テノ宅地ト
  云フモノハ是カラ根柢ヨリ破壞サレルト
  云フコトデアリマシテ、內務當局トシテハ
  此耕地整理ノ指定ト云フモノハ是ハ住宅
  問題ノ上ニ於テ大問題デアルノデゴザイマ
  ス、私ハ斯ウ云フ點ニ於テ都市計畫ト區劃整
  理及ビ耕地整理ノ斯ウ云フ問題ニ對シテ、住
  宅整理ノ問題ニ對シテ內務大臣ニ御尋致シ
  マシタ所、內務大臣ハ都市計畫ノ何タルコ
  トヲ知ラナカッタノデアリマス、區劃整理ノ
  何タルコトヲ知ラナカッタノデアリマス、況
  ヤ斯樣ナ法律ガ出テ住宅整理ト云フコトガ
  絕對ニ出來ヌガ、ドウナルカト云フコトニ
  對シテ、私ハ少シモ左樣ナコトハ知リマセ
  ヌト明カニ答辯サレタノデアル(拍手)然ラ
  バ政府委員ガ答辯スルカト思ヘバ政府委
  員モ斯樣ナコトハ私共ハ知ラナイト言ッテ、
  眞ニ都市ノ經營者ノ首班タル所ノ內務大臣
  及ビ政府委員ノ數人、一人モ此問題ニ對シ
  テ知ラナイト云ン有樣デアリマシテ、其夜、
  急ニ慌テヽ都市計畫課長ヲ政府委員ニ任命
  シテ、ソレカラ安達內務大臣ガ聞カレテ、
  アヽサウ云フコトデアッタカト御諒解ニ相
  成ッタカドウカハ分リマセヌケレドモ、其邊
  頗ル吾々共ハ怪シク思ウテ居ルノデアリマ
  ス、是ハ實ニ國家ノ宅地整理住宅整理ト云
  フ問題ハ重大ナル問題デアリマシテ、之ヲ
  內務大臣ガ少シモ知ラズニ、農林大臣ガ斯
  ウ云フモノヲ出サレタノヲ、少シモ知ラズ
  ニマルッキリ放任シテ置クト云フコトハ是
  ハ實ニ醜態ノ最モ大ナルモノト謂ハナケレ
  バナラヌノデアル(拍手)
  私ハ此場合耕地整理ト宅地整理ノ問題ニ
  付テ少シク申シテ見タイト思フノデアリマ
  ス、由來我國ニ於キマシテハ農ヲ重ンジマ
  シテ耕地整理ヲスルト云フコトハ頗ル宜
  イコトデアルト思フ卽チ米ガ穫レル、農
  業上ノ利益ヲ增進スル米ガ穫レル、食糧
  問題ノ解決ニナル、非常ニ之ヲ宜イコトト
  シタ、勿論宜イコトデアリマス、併ナガラ
  一面宅地整理、所謂區劃整理ト云フコトニ
  ナルト、之ヲ頗ル蔑視シ、冷遇シタノデア
  ル、是ハ地所ヲ持ッテ居ル者ガ道ヲ直シテ
  自分ノ宅地ノ値ヲ上ゲル爲ニヤルノデアル、
  斯ウ云フモノニサウ恩惠ヲ與フル必要ハナ
  イト云フ態度ヲ持シタノデアリマスガ是
  ハ誤レルモ甚シキモノデアルノデアリマ
  ス、今ノ都市計畫ト云フコトハドウ云フコ
  トデアルカ、都市計畫ハ區劃整理ニ依ッテ始
  メテ完成スルノデアリマシテ、區劃整理ト
  云フモノハ所謂都市計畫ニ指定サレマシ
  タ都市ニ於テ、各個人ガ丁度耕地整理ト同
  ジヤウニ組合ヲ作ッテ設計書ヲ出シテ、其都
  市計畫ノ設計ニ依ルコトニ承諾ヲシテ、內
  閣ノ認可ヲ受ケテ、サウシテ道路ヲ造ル
  公園ヲ造ル、色々ノ立派ナル所ノ設備ヲシ
  テ道路ヲ立派ニシ、或ハ側溝ヲ造リ總テ
  ノ設備ヲシテ、之ヲ公共團體ガ受取ルノデ
  アリマシテ、公共〓體ハ少シノ金モ掛ケズ
  シテ都市計畫ヲ完成スルト云フコトニ相成
  ルノデアリマス、固ヨリ慾ト二人連レダト
  言ハレマスガ、耕地整理モ米ヲ多ク作ルト
  云フコトノ慾ガアルノデアリマシテ、其國
  家ノ大局ノ上ヨリ致シマスレバ、其慾望ヲ
  滿足セシメ國家公共團體ハ少シモ經費ヲ
  使フコトナクシテ大ナル市街、此町ヲ完
  成スルト云フコトハ、是ハ欣ブベキ事デア
  ルノデアル、東京市ノ復興ハ如何デアリマ
  スカ、八億何千万圓要ッタ九億近ク要ッタ
  ノデアリマスガ、國家ガ是ハ八割マデ背負ッ
  タノデアリマス、之ヲ各都市ニ於テ國家公
  共〓體ノ力ヲ藉リズシテ、宅地ヲ斯樣ニ改
  善スル者ガアリマシタナラバ是ハ大ニ奬
  勵ヲシナケレバナラヌ筋合デアルニ拘ラ
  ズ、之ヲ蔑視シタト云フノハ、要スルニ都
  市政策ニ關スル所ノ知識、理解ト云フモノ
  ガナカッタ所以デアルノデゴザイマス、御承
  知ノ如ク人口ハ日ニ〓〓都會ニ集中致スノ
  デアリマスルガ、是ハ大都市ノミデハナイ、
  其地方々々ノ經濟上ノ中心タル所ノ、人口
  三千、或ハ五千ト云フ處ニモ集ノテ居ルノデ
  ゴザイマシテ、之ヲ今ノ儘ニ此法ガ實行サ
  レマシタナラバ、雜然トシテ何モスルコト
  ハイカヌ、耕地整理ヲスルコトモイカヌ、
  區劃整理ヲスルコトモイカヌ、雜多勝手ニ
  シテ置クト云フコトニ相成ルノデゴザイマ
  スガ故ニ、吾々ハ是ハ由々シキ大事デアル
  ト思フ、卽チ此案ヲ通スコトハ見レバ洵
  ニ簡單ナヤウデアリマスガ、此案ヲ通過サ
  スト云フコトハ、國家大局ノ上ヨリ致シマ
  シテ、洵ニ由々シキ大事デアルト云フコト
  ヲ信ジテ疑ハナイノデアリマス、ソコデ吾
  吾ハ此三條ノ二ト云フモノガ、是ガ今度火
  事場泥棒的ニ出來タモノデアリマスガ故
  ニ是ナドハドウシテモ通過サスコトハ出
  來ナイ、是レ吾々ガ撤囘ヲ求ムル主ナル一
  ツデアリマス、而シテ更ニ附則第十六條デ
  アリマスルガ、是ハ從來ノ耕地整理ノ組合
  ニ與ヘテアル所ノ特權-ムヅカシイ文句
  デ書イテアリマスガ、一口ニ言ヘバ此特權
  ヲ悉ク剝奪シテシマフ、斯ウ云フ耕地整理
  ヲスレバ減租ヲシテヤル、ヤレ何年間ハ少
  シモ地租ノ增徴モシナイ、只デヤッテヤル
  色々ナ條件ガアルノヲ、是デ以テ一切去ラ
  バト云フノデ打切ヶテシマフノデアル、是等
  ニ對シテ吾々ガ農林大臣ニ質問ヲ致シマス
  ト、耕地整理ト云フ名ノ下ニ宅地整理ヲヤ〃
  タノデアルガ故ニ、欺イタノダカラ仕方ガ
  ナイト言フ內務大臣ニ之ヲ聽クト、內務
  大臣ハ耕地整理ヲ-(二字)シテ宅地整理
  ヲシタノデアルカラ仕方ガナイ、是ハ驚入ッ
  タ御答辯デアリマスガ、要スルニ此耕地整
  理ノ名ノ下ニ宅地整理ヲシタ、今日ノ各市
  街地ガ立派ニナッタノハ、此恩惠、此御陰デ
  アルノデアル若シ之ヲ耕地整理ノ名ノ下
  ニ宅地整理ヲヤッテイカヌト云フナラバ、誰
  ガ之ヲ許シタノデアルカ、地方長官ガ之ヲ
  認可シタノデアル當然之ヲ監督スル所ノ
  農林大臣ノ責任デアリマス、卽チ地方ニ於
  キマシテ耕地整理、宅地整理ヲヤル爲ニ府
  縣知事ハ耕地整理ヲヤレト言ッテ奬メルノ
  デアル、耕地整埋ヲヤルナラバ色々補助モ
  アル色々特典モアル、手續モ簡便デアル
  カラ、耕地整理ヲヤレ〓〓ト言ッテ奬メサシ
  テ置イテ、是ガ工事ニ著手シテ、或ハ完成
  セントシ、若クハ未完成ノ場合ニ於テ其恩
  惠ヲ切ッテシマフト云フコトハ、誰ガ奬メタ
  ノデアル、此責任ハ當然農林大臣ガ負ハナ
  ケレバナラヌ、然ルニ噓ヲ言ッテ居ル誰ガ
  噓ヲ言ッテ〓ヘタカ、府縣知事ガ之ヲ〓ヘタ
  ノデアリマス、卽チ農林大臣ガ之ヲ認可シ
  タコトデアル自分ノ粗漏ハ棚ニ上ゲテ置
  イテ、而シテ國家ノ上ニ貢獻シタ所ノ此事
  業ヲチョ〓〓切ルトハ何事デアル、殊ニ內
  務大臣ハ是ハ-(二字)シタ-御取消ニ
  ナッタノデアリマスガ、耕地整理ノ名ノ下ニ
  所謂區劃整理、宅地整理ヲシタノデアリマ
  スガ故ニ、大ニ此點ハ感謝シナケレバナラ
  ヌノデアル、然ルニ何等之ニ對シテ理解ガ
  ナイト言ヘバソレダケデアリマスガ、此事
  ヲ忘レテ、左樣ナ者ニ恩惠ヲ與ヘルコトハ
  必要ガナイナドヽ言ハレルニ至リマシテ
  ハ、驚入ッタコトヽ謂ハナケレバナラヌノデ
  アリマス、斯ウ云フ理解ノナイ內務大臣ノ
  下ニ、特別市制ダノ、ヤレ都制ダノト云フ
  コトハ笑フニ絕エタルコトデアルト思フ
  ノデアル(拍手)政府自ラ恩惠ヲ與ヘルコト
  ヲ約束シ、サウシテ此既得權ニ類ンタルモ
  ノヲ一切取上ゲルト云フコトハ、政府自ラ
  背信不德ノ行動ヲ爲スト云フコトデアルノ
  デアリマス
  私共ノ此意見ハ黨派ノ問題デハナイノ
  デアリマシテ、與黨ノ諸君モ多數之ニ御贊
  成デアッタノデアル、與黨ノ委員諸君ハ多數
  吾々ニ贊成ノ意思ヲ表サレテ、ドウカ骨ヲ
  折ッテ吳レ給ヘ君達ノ言ハレル通リダ、洵
  ニ此耕地整理法ハ惡法デアルガ故ニ、是ハ
  何トカ直スヤウニ御骨折ヲ願ヒタイ、御骨
  折デハナイ、諸君ハ與黨ノ幹部ニ極力運動
  サレタ、併シ政府ハ此政府ノ面目ニ關スル、
  惡イ事ハ分ノテ居ル、成程政友會ノ言ハレタ
  ヤウニ是ハ洵ニ惡カッタ、ケレドモ政府ノ面
  目ニ關スルカラ、君達モ仕方ガナイカラ從
  へ與黨ノ諸君ノ中デ何人カ私ニ憤慨サレ
  テ話サレタカ分ラナイ、委員ノ多數ハ皆此
  惡法タルコトヲ認メラレテ居ルノデアル、
  惡法タルコトヲ認メテ之ニ贊成ヲシナケレ
  バナラヌ、黨弊是ニ至ッテ極マレリト謂ハナ
  ケレバナラヌ(拍手)何レ詳細ノ點、其他ノ
  點ハ高橋君ヨリシテ述べラレルコトデアラ
  ウト存ズルノデアリマスガ要スルニ耕地
  整理法ノ改正ト云フモノハ、唯單ナル地價
  ヲ賃貸價格ニシタト云フ名ノ下ニ、火事場
  泥棒ヲ致シタコトデアル又一面ニ於テ大
  藏大臣ガ增稅計畫ヲ致シタルコトデアリ、
  政府トシテハ背信不德ノ行動デアリ而シ
  テ國家大局ノ上ヨリ見レバ住宅ノ整理ヲ根
  柢ヨリ破壞スルコトデアリマスガ故ニ、私
  共ハ以上ノ理由ニ依ッテ本案ハ撤囘シ、殊ニ
  共他ノ點ニ於テ缺陷多クアルノデアリマス
  ガ故ニ、一、二箇條ヲ修正削除スルヨリモ、
  寧ロ根本ヨリ此難解、不可解至極ナル所ノ
  耕地整理法ヲ根本ヨリ改正シテ、吾々ノ承
  認ヲ求ムルコトガ當然ノ事ナリト信ジテ、
  玆ニ撤囘ノ動議ヲ提出シ之ヲ說明シ、反
  對ノ意思ヲ表示シタ所以デアルノデゴザイ
  マス(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02519310310&spkNum=20

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• 021・藤澤幾之輔

  ○議長(藤澤幾之輔君)　此少數意見ハ成規
  ノ贊成ガアリマスカラ、動議トシテ成立致
  シマシタ、撤囘ノ動議ハ先決問題デアリマ
  スガ便宜上之ヲ本案ノ討議ト併セテ討論
  ニ付シマス、尤モ採決ハ之ヲ先ニ致シマス、
  左樣御諒承ヲ請ヒマス、是ヨリ討論ニ入リ
  マス、發言ヲ許シマス高橋熊次郞君
  〔高橋熊次郞君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02519310310&spkNum=21

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• 022・高橋熊次郎

  ○高橋熊次郞君　私ハ只今議題ニナッテ居
  リマス耕地整理法ノ改正案ニ對シテ、委員
  會ニ於テ、亦本會ニ於テ加藤鐐五郞君外數
  名ヨリ提出ヲ致シタ、本案ヲ政府ニ於テ撤
  囘ヲ致シテ、更ニ組替ヲ致シテ本議場ニ提
  出スベシト云フ、撤囘ノ動議ニ贊成ヲ致ス
  者デアリマス、只今加藤君ヨリ詳細ニ亙ッテ
  申述ベラレマシタルガ如クニ、此改正案ハ
  誠ニ其當ヲ得ザル改惡案トモ申スベキモノ
  デアリマス、何等耕地整理當業者ニ對シテ
  利益ヲ齎シマセヌ、其他ノ此法ニ依ッテ色々
  ナル便宜ヲ得タモノヲ一切封ジ込ンダト云
  フノガ、此改正案ノ骨子デアリマスル加
  藤君ノ申述ラレマシタガ如クニ、地租法ガ
  改正ニナッテ、地價ガ賃貸價格ニ課稅標準ガ
  變ヲタカラシテ、地租法ニ關聯スル事項ヲ改
  正ヲシナケレバナラヌト云フ建前カラ起ッ
  タル、耕地整理法ノ改正ノ此時機ニ當フテ、
  此機會ヲ利用シテ幾多ノ改正ヲ企テタト云
  フノガ、此改正案ノ內容デアルノデアリマ
  ス、此幾多ノ附帶シタル改正ト云フモノニ
  無理ガアルト云フノガ、吾々ノ議論ノ根據
  ヲ爲スモノデアリマス
  又改正案ノ前段ニ述ベマシタ地租法ノ改
  正ニ伴フ當然ノ改正ニアリマシテモ、吾々
  ハ此法律案ヲ一覽致シマシタルニ、頗ル難
  解ノ字句ガアルノデアリマス、又晦澁ノ文
  句ガ少クナイノデアリマス、之ヲ農林大臣
  ニ尋ネマスルニ、一向農林大臣ニハ御分リ
  ガナイノデアリマス、他ノ政府委員ヲ顧ミ
  テ「スリップ」「メモ」ヲ前ニ持出サナイト云
  フト御答辯ガ出來ナイト云フヤウナル有樣
  デ、當ノ主務大臣デアル農林大臣ガ旣ニ御
  現解ニナラナイヤウナル改正法律案デアリ
  マスカラ、吾々モ二三日目ヲ曝シタヾケデ
  ハ中々此改正案ノ內容ヲ了得スルコトガ
  困難ニナッタノデアリマス、併ナガラ委員會
  ニ於ケル日數ハ僅カデアリマシテ、議會ノ
  會期モ切迫致シタコトデアルト云フノデ
  委員長ガ頗ル氣ヲ揉ンデ居ラレルニ對シ
  テ、御氣ノ毒ニ感ジテ、吾々ハ質問打切ノ
  動議ニハ、遺憾ナガラ從ッタ次第デアルノデ
  アリマスガ、殊ニ最後ニモウ少シ明カナル
  御答辯ヲ主務大臣タル農林大臣ヨリ承ルコ
  トガ出來ルト思ッタノデアリマスガ、ヤハリ
  初メト同ジデ、一向要領ヲ得ナカッタノデア
  リマス、他ノ政府委員ニ何ヒマシテモ其通
  リデアリマス、已ムヲ得ズ耕地整理課長ノ
  有働博士ヲ煩ハシテ、特ニ急ニ之ヲ政府委
  員ニ御任命ニナッテ、吾々ノ質疑ニ答辯ヲサ
  レルト云フコトニナッテ、有働博士トノ質疑
  應答ニ依ッテ種々法案ノ內容ナルモノガ明
  カニナリ掛ケタ所デ幕ガ閉ヂラレタ、斯樣
  ナ譯ニナッタノデアリマス、ソレデアリマス
  カラ吾々議員ノ職責ト致シテ、誠ニ不徹底
  デアル、洵ニ遺憾ノ意ヲ表サザルヲ得ザル
  コトニ相成ッタノデアリマス
  御承知置ノ通リニ、此耕地整理法ハ農業
  ノ耕地ヲ改善ヲ致シテ、農業上ノ利益ヲ增
  進スル目的ヲ以テ、今ヨリ二十八年前、明
  治三十三年ノ一月十五日ヲ以テ施行サレタ
  ノデアリマス、初メハ唯區劃ノ變更デアル
  トカ、或ハ畦畔ノ整理トカ、或ハ土地ノ分
  合デアルトカ云フヤウナル、簡單ナルコト
  ニ止メタノデアリマスケレドモ、明治四十
  二年ニ至リマシテ是ガ根本的改正ヲ企テ、
  今日ノ耕地整理法ノ基礎ヲ形作ッタノデア
  リマス、卽チ從來初メニハナカッタ所ノ開墾
  ノ助成的精神ヲ以テ、ソレ〓〓方法ヲ講ゼ
  ラレタ、或ハ又今マデハ唯共同施設ニ止ッ
  ク、ソレヲ耕地整理組合ヲ作リマシテ之ヲ
  法人格ニ致シ、唯申合セ組合ノ程度ニ止マ
  ラズシテ、之ヲ法人ニ致シ、且ツ今マデハ
  必ズ共同者ハ意思ノ合致ヲ要シタノデアリ
  マスガ、地區內ノ者ノ三分ノ二以上ノ同意
  ヲ經レバ强制加入ヲ致サシメルコトガ出
  來ル所謂强制編入ノ規定ヲ加ヘタノデア
  リマス、斯樣ナコトニ相成ッテ居リマスカ
  ラ、色々耕地整理ヲ爲ス者ニ對シテハ便益
  アハハ恩典ヲ與ヘタノデアリマス
  然ルニ此改正ニ依ッテ其恩典ノ大半ヲ剝
  奪サレルト云フヤウナコトニ相成シテ居ル
  ノデアリマス、唯些々タル點ハ從來ノ趣旨
  ヲ重ンズルト云フコトニ相成"テ居リマス
  ケレドモ、大ナル恩典ト認ムベキモノト云
  フモノハ、悉ク奪取セラレタノデアリマス、
  其中ニ付テ先程加藤鐐五郞君ヨリ詳細ニ述
  ベラレタル所ノ市街宅地ト云フヤウナ方
  面ニ於ケル耕地整理ト云フモノハ儼トシ
  テ此耕地整理法カラ除外サレタノデアリマ
  ス、又今日マデヤッタ所ノ宅地ニ對シテモ
  此法ノ施行以後ト云フモノハソレニ對ス
  ル恩典ノ大半ヲ奪去ラレルト云フコトニ相
  成クテ居ルノデアリマス、又普通ノ耕地整理
  ノ地區ニ致シマシテモ、此改正法ガ成立ヲ
  致シマスル以前ニ手續ヲ完了シテ、ソレゾ
  レノ地價ト云フモノヲ新シイ土地ニ配賦ヲ
  致シマシタ其モノハ別問題ト致シマシテ、此
  手續ノ完了ニ至ラナイモノハ全部恩典ノ
  大半ヲ剝奪スルト云フコトニナル間違ッタ
  ヤリ方ヲ、此改正法デヤラウト致シテ居ル
  ノデアリマス、斯樣ナル色々ノ點ヲ吾々ハ
  擧ゲマスルト云フト、是ハ改善デナクテ改
  惡デアルト云フ結論ニ到達ヲ致スノデアリ
  マス
  一部ノ論者竝ニ政府當局ニ於テハ吾々
  ハ宅地ニ重キヲ置クノデハナイ、宅地ト云
  フモノハ萬巳ムヲ得ザル場合ノミ之ヲ適用
  スルノデアル、然ルニ市街地ノ附近ニ於テ
  ハ將來宅地ニ致スト云フ目的ヲ以テ耕地整
  理ヲ始メルノデアルカラ、是ハ法ノ惡用デ
  アルナゾト云フコトヲ言ハレ、吾々ノソレ
  ニ對スル攻撃ニ堪ヘズシテ、內務大臣ノ如
  キハ遂ニ-(二字)ト云フ文字ヲ用ヒタノハ
  惡カッタト謝罪サレ、取消サレタト云フ事實
  モ加藤君カラ申述ラレタ通リデアルノデア
  リマス、苟モ主務大臣タル農林大臣ガ、地
  方長官ノ申請ニ依ッテ之ヲ許可シタル其事
  項ヲ、惡用致スナゾト、立派ナル輔弼ノ責
  任ニアル國務大臣ガ議會ノ眞中デ放言スル
  ナゾト云フコトハ不謹愼デアルカ、盲目
  的デアルカト云フコトニ付テハ委員一同
  啞然トシテ、流石ノ與黨ノ諸君モ色ヲ失ハ
  ザルヲ得ナカッタト云フ次第デアッタノデア
  リマス、斯樣ナ事ノ生ジマシタハ何故デア
  ルカ、若シモ宅地ノ整理ト云フモノガ必要
  デナイトスレバ、所謂區劃整理ト云フモノ
  ノ施行精神ハ何ニ依フテ行ハレルノデアル
  カ、區劃整理ト云フモノハ大ナル都市ニ於
  テ行ハレルト云フコトノ必要ヲ感ジテ居ル
  ノデアル現今之ニ漏レタルモノ又區劃
  整理ト云フ勅令ノ出ナイ前ニ當ノテ、卽チ其
  母法タル都市計畫法ト云フ法律ガマダ出デ
  ザル以前ニ當ッテ、耕地整理ヲ通ジテ是等ノ
  仕事モ派生的ニヤッテ居タ、是デ大ニ便益
  ヲ得タノデアル、之ヲ今日急ニ廢スルト云
  フコトニナレバ、是等ノ計畫ヲ致シタ者、
  又計畫ヲ致サントスル地區ニ於キマシテ
  ハ、非常ナル不便ヲ感ズルノデアル、又準備
  ヲシタノガ水泡ニ歸スルト云フコトニナル
  ナラバ、非常ニ不利益ヲ受クルコトニナル
  一片ノ法律ノ改正ヲ以テ是等ノ旣得ノ權利ヲ
  制奪スルト云フコトハ是ハ違法デアルト吾
  吾ハ考ヘルト云フヤウナル意見ノ陳述モ致
  シタノデアリマスルガ、是ハ違法デハナイ、
  アレハ權利トハ認メラレナイ、思惑ガ外レ
  タ程度ダナドヽ云フヤウナ、無責任ナ言葉
  ヲ以テ吾々ノ質問ヲ抹殺セント試ミラレタ
  ル政府委員モアッタノデアリマス、法律上ニ
  於ケル權利デハナイカモ知レマセヌ、併ナ
  ガラ地方長官ガ申請ヲシテ、主務大臣ガ之
  ヲ認可致シタルモノハ、是ハ政治道德ノ上
  カラ見マシテモ、政治上ノ權益デアルト云
  フコトハ明カデアル、政治上ニ取得致シタ
  ル權利デアルト云フコトハ明カデアルト吾
  吾ハ論斷ヲ致シテ、色々質問致シマシタケレ
  ドモ、遂ニ曖昧模糊デ了ッタ、然ラバ市街地
  ト云フモノハドウ云フ意味デアルカト云フ
  市街地ノ〓念ニ對シテ種々質問ヲ重ネタノ
  デアリマスルガ、何等確定的ノモノハナイ
  ノデアリマス、市街地ト云フモノハ常識デ
  判斷ヲスルト云フ、然ラバ當識ノ根據ハド
  ウダト聽クト、是ハ其時ノ事情ニ依ルノデア
  ルト云フ、其時ノ事情トハ何ゾヤ、實例ハ
  ドウダト云フコトニナルト、市ノ行政區域
  以外ノ指定地域ハ或ハ道路ヲ以テ之ヲ境ヲ
  スルサウスルト道路ノ向フ側ト此方側
  ニ依クテ、取扱ニ非常ナル甲乙ガ出來ルガド
  ウダ、殊ニ東京ノ眞中トハ違ッテ、市ノ外レ、
  或ハ町村ニナリマスルト耕地ガ其間ニ點
  點挾マル、是等ノモノヲ一律一體ニ法ノ適
  用ヲ受ケナイヤウニナルト云フコトハ將
  來地方農村市街地ノ爲ニ脅威トナルノデア
  ルト云フヤウナコトヲ申上ゲ、之ニ對シテ
  將來指定地區ハドウ云フ內容ヲ有スルモノ
  デアルカ、如何ナル內容ヲ以テ地區ヲ指定
  スル積リデアルカト云フヤウナコトヲ質問
  致シタニ對シマシテモ、色々御答辯ガアリ
  マシタガ遂ニ要領ヲ得ナカッタノデアル、
  每日々々三日間ニ亙ル質問ニ對シテ、每日
  是等ノ問題ニ對シテ答辯ガ違フノデアル、
  ソレデ吾々ハ更ニ質問ヲ繼續セント致シタ
  ノデアリマスルガ、奈何セン、時間ノ關係
  上質問ノ打切ト相成シタ次第デアリマス
  其他ニ吾々ハ幾多ノ論點ガアリマスルガ、
  加藤君ニ依ッテ詳說ヲサレマシタ、ソレデア
  リマスルカラソレ等ノ點ハ省キマスガ、唯、
  今日有租地田畑段別ガ約五百八十万町步、
  之ニ對シテ九十万町步ニ近イモノガ今日マ
  デ二十八箇年ノ間ニ耕地整理地區ニ編入サ
  レテソレ〓〓工事ヲ進メテ居ルノデアリ
  マス、之ニ對スル豫算ヲ見マシテモ、五億
  一千八百万圓ト云フ數字ヲ今日吾々ハ見ル
  ノデアル、今日マダ負債トシテ殘ッテ居ル元
  金ヲ取立テヽ見テモ、一億三千万圓ニ上ッテ
  居ル、昭和六年度ニ於テ償還スベキ元金、
  竝ニ利子ヲ合計致シマスルト、約二千万圓、
  是等ノモノヲ如何ニシテ償還スルカト云フ
  コトハ、今日ノ大問題ニ相成ッテ居ル、之二
  對シテ如何ナル解決策ヲ持ッテ居ルカト云
  フコトヲ伺ヒマシタガ、之ニ對シテハ農林
  當局バカリデナク大藏大臣ノ出席ヲ求メ
  マシテ、色々之ニ付テ對策ヲ伺ッタノデアリ
  マスルガ、低利資金、卽チ預金部資金ノ貸
  出ノコトデアルカラシテ、預金部運用委員
  會ノ決定ヲ俟タナケレバ成案ハ發表スルコ
  トガ出來ヌ、腹案ハ農林大臣トノ間ニハ出
  來テ居ルケレドモ、未ダ省議ノ決定ヲ經ナ
  イカラ、之ヲ發表スルコトハ出來ヌト云フ
  ヤウナ答辯ガアリマシタカラ、私共ハ此點
  ハドウスルアノ點ハドウスルト云ッテ伺ン
  タノデアリマスケレドモ、遂ニ的確ナル答
  辯ヲ得ルコトガ出來ナカッタノデアリマス、
  卽チ今日非常ナル米價安ニ苦ンデ居ルノデ
  アリマスガ此耕地整理法ニ依リマシテ計
  畫ヲ立テマシタモノヽ米價ノ基礎ハ幾ラ
  デアルカト云フト卽チ償還能力ノ基礎ニ
  計算ニ取ッタ所ノ米價ハ、昭和三年マデハ約
  三十二圓見當デアッタノデアリマス、昭和四
  年ニナッテ是ガ三十圓ニナリ昭和五年ニ
  ナッテ是ガ二十九圓ニ下ッタノデアリマス、
  二十九圓ト云ヒ、三十圓ト云ヒ、今日ノ米
  價ニ比較致シマスルト、約倍額デアルノデ
  アリマス、今日ハ十六圓五六十錢、十七圓
  ガ中央ノ公定相場ノ中値デアリマセウ、地
  方農村ニ於ケル庭渡ノ値段ト云フモノハ
  ソレヨリ一圓乃至二圓ノ下ヲ潜ノテ居ルノ
  デアリマス、十四五圓ト云フ此米價ヲ以テ、
  縱ンバ昭和五年ニ定メタル二十九圓ノ米價
  ヲ基準ト致シタル豫算ト雖モ、到底年賦金
  ノ償還ト云フモノヲ實行スルコトガ出來ナ
  イデハナイカ、ソレデ今日負擔金、年賦金
  ノ償還不能ニ陷ッテ居ルト云フコトハ(株)
  當然過ギル程當然ナ事象デハナイカ、ソレデ
  アルカラ吾々ハ之ニ對シテ約五箇年ノ間
  ノ中間据置期間ヲ設定シテ貰ヒタイト云フ
  コトハ、當業者ヨリ熱心ニ當局ニ向ッテ陳情
  致シテ居ルノデアルガ、之ニ對シテハドウ
  デアルカト云フコトヲ質問致シタノデアリ
  マスケレドモ、ソレニ對シテ的確ナル御答
  辯ガナイ、段々答辯ヲ承ルト云フト、何カ
  償還年限ヲ幾分カ延長ヲ致シテ、今年ナリ
  來年ナリノ償還ノ額ヲ幾分カ縮メルト云フ
  ヤウナコトノ匂ガスル程度ノ御答辯ガアッ
  タノデアリマス、而シテ吾々ハ償還期限ヲ
  延長シ、其年々々ノ償還金額ハ幾分カ少ク
  ナリマシテモ償還能力ノ增加ト云フモノ
  ハ求メ得ナイノデアル、ソレガ爲ニ吾々ハ
  償還能力ガ充實シテ、サウシテ此年賦金ヲ
  返還スルコトノ出來ルヤウナ力ガ出來ルモ
  ノデハナイ、殊ニ米價卽チ農產物價下落ニ
  依ッテ生ジタル力ノ不足デアリマスカラ、之
  ヲ補フノニハ、ドウシテモ借入金額ヲ減ジ
  ナケレバナラヌ、借入金額ヲ正面カラ積極
  的ニ之ヲ減額スルコトハ許サヌトスルナラ
  バ、其仕拂フ利子ヲ減ズレバ卽チ是ガ元
  金ヲ減額シタト同ジヤウナル效果ガ及ブノ
  デアル、然ルニ五分四厘ノ平均利子ガ四分
  八厘ニナッタト云フノハ、郵便貯金ノ預金利
  子ノ引下ニ依ル當然ノ引下デアル、ソレデ
  ハ吾々ニハ何等ノ痛痒ヲ感ジナイノデアル
  カラ更ニ之ヲ外ニシタル利子ノ引下ヲ要
  求スルノデアル、之ニ對シテ大藏大臣ハ如
  何ナル決心ト抱負トヲ有セラルヽヤト吾々
  ハ熱心ニ之ヲ質問致シタノデアリマスガ、
  ヤハリ前言ヲ繰返スノミデアリマシテ、何
  等的確ナル答辯ヲ得ナカッタノデアリマス
  斯ノ如ク致シテ農村ヲ救濟シ、農業經營
  ノ合理化ヲ致ス第一線ニ進ンデ居ル耕地整
  理事業ト云フモノハ今ヤ破綻ニ瀕シ、大
  半ハ破壞サレント致シテ居ルノデアリマス、
  吾々ハ其實例ヲ申述べマシテ、卽チ山形縣
  ニ於ケル松澤耕地整理組合、岐阜縣ニ於ケ
  ル所ノ一組合、斯ウ云フヤウナル色々ナ極
  度ノ困難ニ陷クテ居ル組合ガアリマスガ、卽
  チ岐阜縣ニ於ケル所ノ揖斐郡谷汲村ニアリ
  マスル名禮耕地組合、斯ウ云フモノハ非常
  ナル疲弊因憊ノ極ニ達シテ、當時是ガ世話
  役ヲ承ッタ人ハ、村ノ人ニ對シテ何トモ面目
  次第モナイト云フノデ、門ヲ閉シテ外ニ出
  デナイト云フヤウナル、徒ニ天ヲ仰イデ死
  ヲ待ツト云フヤウナル氣ノ毒ナ狀態ニナ
  テ居ル、或ハ山林デアッタ時代ニハ多少ノ收
  入ガアッタガ、今日ニ於テハ水源或ハ水路ノ
  不完全カラシテ、到底何等ノ作物モ穫リ得
  ナイト云フヤウナル實情ニアルト云フヤウ
  ナコトヲ吾々ハ申述べ一面ニ於テハ山形
  縣ノ南村山郡松澤耕地整理組合ニ對シマシ
  テハ反對者ヲ押切ッテヤッタ事業デアルガ
  爲ニ、今日反對者ハ頑强ニ反對ヲ致シテ、
  負擔金ヲ納メナイ、是等ノ事ト相俟チマシ
  テ、工費ガ存外餘計掛ッタ、、豫算ノ三倍四倍
  ト云フヤウナル多額ノ工費ヲ要シタガ爲
  ニ、是ガ整理ニ容易デナイト云フヤウナコ
  トモ申述マシタ、是等ニ對シテハ當局ニ於
  テモ十分御承知ノコトデアル、是等ニ對シ
  テハソレ〓〓ノ救濟方法モ立テヽ居ルガ
  尙ホ一層ノ盡力ヲ致サウト云フダケデ、其
  內容ニ付テ伺ヒマシタケレドモ、何等吾々
  ヲ滿足サセル的確ナル內容ノ御持合ガナカツ
  タト云フコトハヽ洵ニ吾々ノ遺憾トスル所
  デアリマス、耕地整理ノ事業ト云フモノハ
  將來如何ニスル積リデアルカ、米價安トソ
  レカラ過剩米穀生產ト云フ、此事情ヲドウ
  見ルカト云フコトヲ質問シマシタガ、之二
  對シテハ一時的ノ豐作デアルカラ、年々繰
  返スベキモノデナカラウカラ、既定方針ハ
  變ヘナイ積リデアルト言ハレル、既定方針
  ヲ變ヘナイト云フナラ、吾々ハ組合ノ助成
  方法或ハ開墾事業ノ助成方法ト云フモノ
  ハ、益〓力ヲ入レナケレバナラヌノニ拘ラ
  ズ緊縮實行豫算ノ編成ト伴ヲテ、今日マデ
  大正十四年以來格段ノ減額ヲ來シテ居ルノ
  デアル斯樣ナコトノ埋合セヲ、此法律改
  正ニ當ッテ他ノ特典ヲ剝奪シテ、ソレニ廻ス
  ベキ金ヲ、卽チ今マデ豫算ニ於テ減額サレ
  タル開墾助成、耕地整理組合助成金ノ此缺
  陷ヲ補充スルト云フヤウナル意味ニモ取ラ
  レルデハナイカト云フコトヲ、私共ハ當局
  者ニ向ッテ伺ッタノデアリマスルガ、之ニ對
  シテハ確タル御答辯ハナカフタト吾々ハ記
  憶スルノデアリマス、之ヲ要スルニ此耕地整
  理問題竝ニ將來耕地ノ擴張計畫竝ニ米穀增
  收對策ト云フモノトニ付テハ、農林當局ハ的確
  ナル所ノ對策ノ持合セガナイト云フコトガ明
  カニナッタノデアリマス、是ニ於テ耕地整理
  事業ニ關係ヲ有スル者ハ益〓其憂ヲ深ク致
  シタト云フ結論ニ到著致シ、其他耕地整理
  組合法ヲ通ジマシテ、都市計畫ノ立直シヲ
  致サウト努メル者ニ對シテハ絕對ニ今後
  ハ許サレナイデハナイカト云フ危惧ノ念ヲ
  持タシメルヤウナル立法ヲ敢テスルコトニ
  相成ッタノデアリマス、ソレハ都市計畫法ニ
  議ヲタト農林當局ハ言ヒマスケレドモ、都市
  計畫法ノ中ノ區劃整理、殊ニ都市計畫ト云
  フモノハ、全國ニ四十何市アリマセウ、其
  都市ノ中デ之ノ實行サレテ居ルモノハ僅少
  ニ過ギナイト吾々ハ承知致シテ居ルモノデ
  アリマス、爾餘ノ市以下ノ町村ノ密集市街
  地ニ於テモ、何等適用サルベキ所ノ法律ノ
  持合セハナイ、何等助成ノ方法ガナイト云
  フコトニ今日ハ相成ッテ居ルノデアリマス、
  左樣デアリマスルカラ此法律ニ依ッテ、卽チ
  第三條ノ二ト云ノ此一條項ヲ加ヘテ、將來
  市街地ニナルヤウナ事態ヲ豫想サレル土地
  ハ耕地整理法カラ斷然之ヲ除外スルト云
  フヤウナル事項、竝ニ附則第十六條ト云フ
  モノヲ新ニ制定ヲサレテ、從來耕地整理法
  ニ據フタ所ノ宅地ト云フモノニハ、將來恩典
  ヲ何等與ヘナイト云フヤウナル除外法律ヲ
  玆ニ作ラレタト云フコトハ、吾々ノ非常ニ
  不滿トスル所デアルバカリデナク、與黨諸
  君ニ於テモ大ナル不滿ガアルト云フコトヲ
  吾々ハ承ッテ居ルノデアリマス、現ニ今日此
  大切ナル耕地整理改正法案ニ對シテ何等討
  論ヲナサラナイ、吾々ノ是ダケノ內容ヲ持っ
  テ居ル所ノ此議論ニ對シテ何等反對ノ御演
  說ガナイ、原案贊成ノ御演說サヘ御遠慮ニ
  ナルト云フ裏面ヲ拜察スルナラバ、此案ノ
  內容ノ如何ナルモノデアルカト云フコト
  ガ、天下悉ク知リ得ルダラウト思ハレル(拍
  手)私ハ更ニ呶々ヲ用フル必要ナシト思フ、
  不十分ナガラ此程度デ以テ加藤鐐五郞君カ
  ラ申述ベタ趣旨ニ於ケル撤囘論ニ對シテ贊
  成ノ意ヲ表シ、原案ニ對シテハ大ナル反對
  ノ意思ヲ表明シテ降壇セントスルモノデア
  リマス(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02519310310&spkNum=22

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• 023・藤澤幾之輔

  ○議長(藤澤幾之輔君)　討論ハ終局致シマ
  シタ、是ヨリ採決ニ入リマス、先ヅ加藤君
  外七名提出ノ撤囘動議ヲ採決致シマス、撤
  囘ノ動議ニ贊成ノ諸君ハ起立ヲ望ミマス
  〔贊成者起立〕

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• 024・藤澤幾之輔

  ○議長(藤澤幾之輔君)　少數デアリマス、
  仍テ撤囘動議ハ否決セラレマシタ、次ニ本
  案ノ第二讀會ヲ開クヤ否ヤヲ御諮リ致シマ
  ス、本案ノ第二讀會ヲ開クニ贊成ノ諸君ハ
  起立
  〔贊成者起立〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02519310310&spkNum=24

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• 025・藤澤幾之輔

  ○議長(藤澤幾之輔君)　起立多數デアリマ
  ス仍テ本案ノ第二讀會ヲ開クニ決シマシ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02519310310&spkNum=25

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• 026・作田高太郎

  ○作田高太郞君　直チニ本案ノ第二讀會ヲ
  開カレンコトヲ望ミマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02519310310&spkNum=26

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• 027・藤澤幾之輔

  ○議長(藤澤幾之輔君)　作田君ノ動議ニ御
  異議アリマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02519310310&spkNum=27

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• 028・藤澤幾之輔

  ○議長(藤澤幾之輔君)　御異議ナシト認メ
  やく、仍テ直チニ第二讀會ヲ開キマス
  耕地整理法中改正法律案第二讀會

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02519310310&spkNum=28

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• 029・藤澤幾之輔

  ○議長(藤澤幾之輔君)　別ニ御發議ハアリ
  マセヌカラ、委員長報告通リ決シマシタ、
  之ニテ本案ノ第二讀會ハ終リマシタ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02519310310&spkNum=29

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• 030・作田高太郎

  ○作田高太郞君　直チニ本案ノ第三讀會ヲ
  開カレンコトヲ望ミマス
  〔「異議ナシ」ト呼ブ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02519310310&spkNum=30

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• 031・藤澤幾之輔

  ○議長(藤澤幾之輔君)　作田君ノ動議ニ御
  異議ナシト認メマス、仍テ直チニ第三讀會
  ヲ開キマス
  耕地整理法中改正法律案第三讀會

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02519310310&spkNum=31

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• 032・藤澤幾之輔

  ○議長(藤澤幾之輔君)　別ニ御發議ガアリ
  マセヌカラ第二讀會議決ノ通リ可決確定致
  シマシタ(拍手)日程第十四及ビ第十五ハ同
  一委員ニ付託シタル議案ナルニ依リ、一括
  議題ト爲スニ御異議アリマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02519310310&spkNum=32

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• 033・藤澤幾之輔

  ○議長(藤澤幾之輔君)　御異議ナシト認メ
  マス日程第十四、國立公園法案、日程第
  十五、土地收用法中改正法律案ヲ一括シテ
  第一讀會ノ續ヲ開キマス委員長ノ報〓ヲ
  求メマス-委員長八木逸郞君
  第十四國立公園法案(政府提出)
  第一讀會ノ續(委員長報牛ロ)
  報〓書
  一國立公園法案(政府提出)
  右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
  候此段及報告候也
  昭和六年三月九日
  委員長八木逸郞
  衆議院議長藤澤幾之輔殿
  第十五土地收用法中改正法律案(政
  府提出)第一讀會ノ續(委員長報〓)
  報〓書
  一土地收用法中改正法律案(政府提出)
  右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
  候此段及報〓候也
  昭和六年三月九日
  委員長八木逸郞
  衆議院議長藤澤幾之輔殿
  〔八木逸郞君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02519310310&spkNum=33

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• 034・八木逸郎

  ○八木逸郞君　本案委員會ノ經過竝ニ結果
  ヲ御報告致シマス、本案ハ國民多年ノ要望
  デ、數年前ヨリ時ノ內閣ガ其要望ヲ滿タサ
  ンガ爲ニ〓究モサレ、審査モサレ、國立公
  園委員會ノ設置ヲシテ、之ニ諮詢セラレタ
  結果、今囘愈、著手ニ及ブベシト云フコトニ
  ナリマシタノガ本案ノ現レタ所以デアル
  ノデアリマス、而シテ國立公園設置ノ要旨
  ハ日本ノ富メル大自然ヲ區劃シテ、國家
  ガ之ヲ公園トシテ經營ヲ爲シ、世界各國ニ
  其美ヲ宣揚スル、又國民ノ心身ノ健康ヲ進
  メ、更ニ此雄大ナル自然ニ憧レテ來ルベキ
  外人ヲ誘致スルト云フコトハ、國家ノ爲ニ
  種々ナル點ニ於テ大ナル效果ガ現レルト云
  フコトカラ、此法案ガ提案サレタ次第デア
  リマス
  而シテ此趣意ニ於テハ委員諸君ガ全然同
  意ヲサレマシテ、異論ハナカッタノデアリマ
  ス唯劃時代的ノ法案デアリ、一度誤レバ
  國家百年ノ長計ヲ誤ルト云フコトデ、委員
  諸君ハ非常ナ御〓誠ヲ以テ此委員會ニ於
  テ攻究ヲサレタノデアリマス、卽チ法律
  ノ根本精神-大體觀ハ、固ヨリ微ニ入リ
  細ニ亙リ國務大臣ヲ首メ內務ノ政府委員ハ
  勿論、或ハ史蹟名勝天然紀念物ノ關係ニ付
  テハ文部大臣ニ聽キ、國有林、保安林ニ關
  シテハ農林大臣ノ說明ニ聽キ、又水力電氣
  ニ關シテハ遞信省ノ政府委員ニ聽キ、交通
  若クハ觀光ノコトニ對シテハ鐵道省ニ聽キ
  五囘開キマシテ、其中ノ委員會ノ一ツハ九
  時間打通シニ勵精サレタノデアリマス、又
  五時間位ノ委員會ハ數囘アリマシテ、滿場
  一致デ可決ニナッタノデアリマス、右樣ノ次
  第デ質問應答ノコトヲ御紹介スルコトハ甚
  ダ煩瑣ニナリマスルガ故ニ、委員會ノ應答
  ハ速記錄ニ讓リマシテ、御報告ヲ致シマセ
  又、唯一ツ申上ゲテ置キタイノハ委員諸
  君ノ御希望トシテ、此候補地ハ國立公園ノ
  委員會デ、候補地トシテ選定サレタ十六箇
  所ノ區域ニ限ラズシテ、將來尙ホ〓究シテ、
  更ニ大ナル規模ニ擴ゲテ、サウシテ國家百年
  ノ大公園ニ致シタイト云フ御希望ガ、政民
  兩黨ノ委員諸君ノ御意見デアッタト思フノ
  デアリマス、而シテ終リニ臨ンデ滿場一致
  デ御可決ニナッタノデアリマス、序ナガラ併託
  ニナリマシタ法案ニ付テ御報告致シマス、
  御併託ニナリマシタノハ土地收用法ノ改正
  デアリマス、此改正ノ法案ハ、全委員ガ十
  分御諒解アラセラレタト見エマシテ、政府
  委員ノ說明ヲ一切省キ、僅カ一分以內ニ於
  テ、滿場一致ヲ以テ可決致シタノデアリマ
  ス、委員會ニ於テ明治二十三年以來ノ「レコ
  ード」ヲ此委員會ニ於テ現シマシタコトヲ
  委員長ハ光榮トシテ此壇ヲ降リマス(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02519310310&spkNum=34

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• 035・藤澤幾之輔

  ○議長(藤澤幾之輔君)　質疑ハアリマセ
  ヌ、討論ニ入リマス-土倉宗明君
  〔土倉宗明君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02519310310&spkNum=35

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• 036・土倉宗明

  ○土倉宗明君　本案ニ對シテハ大體ニ於テ
  贊成ヲスル者デアリマス蓋シ本案ハ多年
  ノ間本議場ニ於キマシテモ、第二十八議會
  以來或ハ建議ノ形トナリ、或ハ請願ノ形ト
  ナリ、屢〓現レマシテ、此案ノ必要ナルコ
  トヽ重要ナル點ハ旣ニ何人ニ於テモ之ヲ
  認メテ居ルノデゴザイマス、併ナガラ本案
  タルヤ我日本ニ於テ初メテノ試ミデアリマ
  シテ、歐米先進國ノ國立公園ニ對シマスル
  態度カラ見マシテモ、極メテ大切ナル問題
  デアリマシテ、愼重ニ事ヲ運バナケレバナ
  ラナイト信ジテ疑ハナイデアリマス、隨
  ヒマシテ本案ニ對シテ吾々ハ委員會ニ於キ
  マシテモ、大臣及ビ政府委員ト屢〓質問應
  答ヲ重ネテ、本案趣旨ノ貫徹ニ當リ、政府
  ハ果シテ幾許ノ誠意ト、サウシテ本案ノ重
  大性ヲ存ジテ居ルカト云フ點ニ觸レテ見マ
  スト、政府ノ誠意、又政府當局ノ答辯ハ
  全ク此國立公園ナルモノヽ趣旨ニ合致シナ
  イ意味ノ御答辯ヲ屢〓承ルノデゴザイマス
  抑、國立公園ト市井ニアリマス普通ノ造
  園ノ公園トハ、動モスレバ混同スル嫌ヒガ
  アルヤウニ窺ハレタノデアリマス、造園ノ
  公園ト云フモノト、國立公園ノ趣旨ハ根柢
  カラ異"テ居リマス、造園ノ公園ハ人力ヲ用
  ヒ人工ヲ加ヘテ之ヲ造形スルニアルノデ
  ゴザイマスガ、國立公園ナルモノノ意義精
  神ハ言ハズト明カナル如ク、大自然其儘ニ、
  出來ルナラバ一點モ人工ヲ加ヘズ、天然自
  然其儘ヲ用フルト云フノガ國立公園ノ趣旨
  デアルト私共ハ信ジテ疑ハヌノニ、政府ガ
  此點ニ對シテ、此趣旨ヲ基礎トシテ、今ヤ
  選定サレテ居リマス、十六候補地トシテ採
  用スル所ノ場所ハ、成ベク地方分布的ノ見
  地カラ選定致シタノデアルト云フコトヲ
  こ內務大臣ハ屢〓吾々ニ言明サレタノデゴザ
  イマス、是ハ多年ノ國民要望デアリ、天下
  ノ希望スル所デアルコトハ政府モ認メ、又
  何人モ之ヲ認メテ居ルノデアッテ、此問題ガ
  天下ニ公表致サレマスヤ、各地方カラ國立
  公園指定ヲ希望スル所ノ者ガ續々トシテ運
  動ヲ起シ、而モ速ニ國立公園指定ノ恩惠ニ
  浴センモノトシテ、非常ニ熱烈ナル運動ノ
  起リツヽアルコトハ、何人モ之ヲ御存ジデ
  アリマセウ、此熱烈ニ希望スル所ノ者ニ對
  シテ、國立公園ルナモノヽ眞ノ意義ヲ政府
  ハ明カニ示サズシテ、出來ルダケ、而モ萬
  遍ナク各地方々々ノ希望ヲ滿シ、日本全國
  カラ普ク之ヲ分布的ニ採ラントスルガ如キ
  傾向ヲ言明サレルノデアリマス、是ハ甚ダ
  吾々トシテハ怪シカラヌト思フノデアリマ
  シテ、天然自然ヲ基礎トシ、大自然其儘ヲ、
  近代ノ混濁セル此社會風〓ノ一面カラ之ヲ
  〓化ニ資シ、或ハ國民保健、健康ニ之ヲ資
  セントスル上カラ行キマシテヾモ、我ガ日
  本國中ニ於テ、例ヘバ北海道若クハカ州、
  或ハ其他如何ナル地點ニ假ニ斯ノ如キ優秀
  ナル所ノ國立公園ニスベキ所ノモノガ偏在
  シテ居リマシテヾモ、此偏在シタル所ノモ
  ノカラ、漸次選擇ヲシテ行クト云フ方針ヲ
  執ラナケレバナリマセヌノニ、政府當局ハ
  動トモスレバ此全國ニ多ク希望ヲ持ッテ居
  ル所ノモノヲ失望セシメザランガ爲ニ、若
  クハ是等ノ人ノ運動ヲ起サシメテ、動トモ
  スレバ之ヲ政治的ニ利用ナサントスル傾向
  ガ十分ニ窺フコトガ出來ルノデアリマス、
  斯ノ如キコトアリト致シマスナラバ、所謂
  此意義アル所ノ國立公園法案ヲ以テ、黨勢
  擴張ノ具ニ供スル所ノモノデアッテ、神聖ナ
  ル所ノ本案ヲ冒濱スルモ甚シイト謂ハナケ
  レバナラヌ(拍手)吾々ハ斯ノ如キ意思ヲ以
  テ質問ヲ致シタノデアリマスルガ、內務大
  臣ハ左ニアラズ、決シテ左ノ如キ偏頗ナル
  處置ヲ以テ此候補地ノ選定ヲナスモノニ非
  〓ズト斯樣ニ屢〓辯明ヲサレ、又辯解ヲサレタ
  ノデハアリマスケレドモ、依然トシテ地方
  分布的ニ之ヲ採用セントスルノデアルト云
  フ御意思ヲ聲明セラレル理由ハ吾々ハ解
  釋スルニ苦シムモノデアリマス、北海道ニ
  偏シヤウガ、九州ニ偏シヤウガ、將タ何レ
  ニ偏シヤウガ、眞ニ國立公園共モノノ趣旨
  ニ合致スル所ノ候補地デナクテハ、之ヲ採
  ルモノニ非ズト云フ意思ヲ何故ハッキリト
  聲明ヲナサラヌノデアリマスカ(「連記錄ヲ
  見ロ」ト呼フ者アリ)速記錄ノ如何ナル點
  ニ左樣ナル言アルカハ吾々ハ委員トシテ
  之ヲ發見スルコトガ出來ナイバカリデナシ
  ニ、之ヲ曾テ聞イタコトモゴザイマセヌ、故
  ニ最終ノ質問當日ニ於キマシテモ、本案
  ハ此點ニ對シテ吾々ハ斯ノ如キ方針ノ下ニ
  於テ初メテ善良ナル仕事、神聖ナル所ノ國
  立公園ト云フモノガ選定サルベキモノデア
  ルト云フコトヲ、不肖ナガラ内務大臣ニ御
  〓ヲ申上ゲタノデゴザイマス
  甚ダ借越デハアリマスルケレドモ、國立
  公園ト云フモノヽ意義ニ付テ聊カ私ハ申述べ
  テ見タイ、歐米ニ於キマシテ國立公園ナルモノ
  ガ初メテ現レマシタノハ、今日ヨリ約百年
  以前ノ千八百三十年ニ亞米利加ノ「ホットトプ
  リングス」ニ設ケラレタノガ共起源ヲ爲スノ
  デアリマス、而モ其地域ハ極メテ少ク、僅カ
  一哩平方ノ範圍內ニ於テ、時ノ亞米利加政
  府ハ百万弗ノ巨費ヲ投ジテ建設致シタモノ
  デゴザイマス、ソレガ濫觴トナッテ今日ノ亞
  米利加ニ於テハ約二十數箇所ノ多キニ達シ
  テ居ルノデアリマス漸次其規模モ擴張サ
  レ、サウシテ完全スルニ至ッタノデアリマ
  ス、所ガ此計畫ガ最初爲サレテカラ今日ノ
  計畫ノ〓要ヲ見マストキ、最初ハ成ルベク
  人工ヲ加ヘ、天然ヲ主ニセズシテ、動トモ
  スレバ人工多キヲ加ヘルト云フ傾向ガアッ
  タノデゴザイマスガ、ソレガ漸次々々、
  步々々ト數ガ增加致シマスルニ從ッテ、成タ
  ケ人工ヲ省ク、天然ヲ基礎トシテ此天然ヲ
  保存シ、若クハ之ヲ變改スルガ如キコトハ
  極度ニ避ケルト云フヤウナ傾向ニナッテ居
  ルコトハ皆樣モ御案内デアラウト思フノ
  デゴザイマス固ヨリ歐羅巴ノ各地ニ於テ
  モ亞米利加ノ如キ大規模、巨額ナル經費ヲ
  使ッテ拵ヘタル所ハ稀デアリマスルナレド
  モ、各國共ニ國立公園ナルモノヲ設定シテ
  居リマスル趣旨ハ、悉ク此大自然ヲ以テ現
  代ノ物質文明、科學文明カラ受ケル幾許ノ
  弊害ト、サウシテ打擊ヲ此大自然ニ依ッテ、
  天然ノ懷ニ依ヶテ之ヲ育ム、而モ之ヲ〓化セ
  ントスル所ノモノニ依ッテ初メテ國立公園
  ナルモノヽ重大性ガ發兒セラレルノデゴザ
  イマス、顧ミテ我ガ日本ノ是等十六箇所ヲ
  擧ゲラレマシタル國立公園ノ候補地ト言ハ
  レマスルモノハ、悉ク世界ニ於テモ稀ニ見
  ル所ノ景勝ノ地デアル、又各々其特徴ヲ備
  ヘテ居ル所ノモノデゴザイマス、譬ヘテ申
  述ベテ見マスルナラバ、北海道ノ登別溫泉
  ヲ中心トスル公園、或ハ靑森ノ十和田湖ヲ
  中心トスル所ノ候補地、或ハ大山ヲ中心ト
  スル所ノ候補地、或ハ富士ヲ中心ニスル所
  ノ候補地、日光ヲ中心トスル所ノ候補地、
  更ニ四國ニ行キマシテハ小豆島及ビ屋島ヲ
  中心トスル所ノ瀨戶內海ヲ包含スル所ノ國
  立公園、更ニ又九州ニ渡リマシテハ長崎ノ
  雲仙ヲ初メ、霧島及ビ阿蘇、更ニ又黑部溪
  谷ヲ中谷トスル所ノ立山連峰ノ候補地、此
  立山ヲ中心ニスル所ノ日本「アルプス」候補
  地ノ如キハ、實ニ是ハ歐羅巴、亞米利加ニ
  於テモ稀ニ見ル所ノ絕勝ノ地デアルコト
  ハ是ハ天下悉ク認メル點デアラウト思フ
  ノデゴザイマス(「ソレダケ言ヘバ宜イ」ト
  呼フ者アリ)敢テ私ハ諸君ノ申サルヽガ如
  ク、ソレダケ言ヘバ宜イト云フノデハナイ、
  何カノ特徵ガナクテハナリマセヌ、共特徵
  ノ點カラ行ケバ、私ハ自分ガ富山縣選出デ
  アルカラ立山連峰、卽チ日本「アルプス」中
  心ノ候補地ヲ玆ニ激賞スル者デハナイ、吾
  吾ノ政敵デアリ、又現內閣ノ內務大臣デア
  ラセラレマスル所ノ安達君ノ御〓里ノ九州
  熊本ノ、阿蘇ヲ中心トスル所ノ國立公園ナ
  ドモ、私ハ激賞シテ巳マザル所ノ者デゴザ
  イマス、阿蘇ハ諸君モ御案內ノ如ク世界ニ
  於ケル所ノ火山トシテ、其火口ニ於テ世界一
  ヲ誇ル所ノモノデアリ、現ニ又此大自然ノ活動
  ガ何人ニ依ッテモ、足ヲ運ビマスレバ此狀態
  ヲ見得ルト云フコトハ、是レ天下ノ奇觀デ
  アリ、壯觀デアルノデゴザイマス、此點ニ
  向ッテ、此風景ト此大自然ノ活動其モノヲ資
  料トスル點カラ申シマシテモ、私ハ國立公
  園ノ候補地ノ中ニ這入ルト云フコトハ敢テ
  不當デハ決シテナイト思フノデゴザイマ
  ス、又之ヲ選定致シマシテモ、決シテ不當
  デハナイト思フノデアッテ、此點ハ私ハ安達
  內務大臣ト交換的、若クハ安達內務大臣ニ
  媚ヲ呈シテ阿蘇ヲ激賞スル者デハ斷ジテナ
  イノデアル、所謂國立公園ノ趣旨ニ副フ所
  ノモノデアルナラバ速ニ此國立公園ヲ指
  定シ、サウシテ之ニ向。テ完全ナル設備ヲ施
  スト云フコトガ初メテ此國立公園ナルモ
  ノヽ意義ヲ了解シテ居ルモノデアルト私ハ
  言ウテ差支ナイト思フ(拍手)然ルニ現內閣
  ハ是等ノ優秀ナル候補地ヲ十六箇所擧ゲ、
  而モ長年ニ亙〓テ此調査ヲ爲シ、既ニ成案モ
  出來、報名書モ立派ニ出來上ッテ居ルノニ拘
  ラズ今囘突如トシテ本案ガ玆ニ提出ヲ致
  サレマシテ、而モ其法文ヲ見マスルト實
  ニ驚クベキ缺陷ガ多々アルノデゴザイマス
  (「何故反對シナイ」ト呼フ者アリ)
  去リナガラ缺陷アリト言サテモ、本案ソ
  レ自體ハ我黨內閣ニ於テモ、又何人ノ時代
  ニ於テモ此重要性ヲ知ッテ居リマスガ故
  ニ、此大切ナ案ナルコトヲ存ジテ居リマス
  ガ故ニ、此法案其モノニハ反對ヲ爲スモノ
  デハナイ、ケレドモ要ハ之ヲ實施スルニ當
  リ、之ヲ實行致シマスルニ當ッテ、本案ニ對
  シテドレダケノ理解ヲ持チ、ドレダケノ誠
  意ヲ持ッテ居ルカト云フコトニ依ッテ初メ
  テ是ガ是デアルカ非デアルカト云フコトノ
  岐路ニ立ツモノデアルト私ハ思フ(拍手)
  然ラバ先ヅ第一段ニ之ヲ事實完全ナルモ
  ノニ仕上ゲント致シマスルナラバ、當然伴
  フベキ所ノモノハ豫算デハナイカ、金デハ
  ナイカ、然ルニ此本案提出サレタル曉ニ、
  豫算ノ上カラ考ヘルト先ヅ委員會ニ支拂
  ハルベキ所ノ一万數千圓、此小額ノ費用ダ
  ケガ所謂豫算トシテ吾々ガ見得ル所ノモノ
  デアリマス、經費トシテ見得ル所ノモノデ
  アリマス、其他之ニ要スベキ幾多ノ財源
  費用ニ對スル財源ト云フモノニ付テ、委員
  會ニ於テモ質問應答ガアッタノデアリマス
  ルガ、大略此公園設置ニ當ッテ政府ガ必要ト
  目論ム所ノモノハ僅ニ一町步當リ四十圓ト
  云フコトガ言明サレタノデアリマス、卽チ
  此範圍內ハ分リマシタガ、果シテ是ダケガ
  政府ガ言明スルモノナリトセバ、切メテ來
  年度カラ實施スルト云フノデアルカラ、其
  財源ノ說明ヲシテ吳レナクテハナラヌト思
  フノデアリマス財源ナクシテ仕事ヲ爲サ
  ウト云フガ如キコトハ所謂人氣取策デア
  リマシテ、眞實本案ヲシテ施行スルダケノ
  勇氣ガナイモノデアルト斷定シテモ、敢テ
  過言デハナイト思フノデアリマス(拍手)而
  モ調査々々ト云フコトヲ頻ニ內務大臣ハ力
  瘤ヲ御入レニナルノデアリマスガ將ニ今
  秋行ハルベキ所ノ縣會議員ノ總選擧ニ當リ
  マシテ、恐ラク內務大臣ハ是カラ國立公園
  ヲ餌ニシテ、或ハ何等カノ作用ヲ爲スモノ
  デナイカト云フコトノ疑ヲ吾々ハ抱クノデ
  アリマス、ノミナラズ政府ハロヲ開ケバ絕エ
  ズ緊縮ヲ唱ヘ、財政難ヲロニシテ居ラレル、
  緊縮ヲ唱ヘ財政難ヲロニスル政府デアリマ
  スナラバ、此十六候補地ヲ一時ニ擧ゲテ何
  等決定ヲ與フル事ナシニ、而モ是等ノモノ
  ヲ一時ニ決定デモ仕兼ネマジキ態度トロ吻
  ヲ示シテ居ルノデアリマスガ、斯樣ナ所ノ
  モノモ全部擧ゲテ其施設ニ移リマシタナラ
  バ、假令小額ナル金ト雖モ莫大ナル經費ニ
  達スルノデアリマシテ、果シテ現內閣ノ緊
  縮政策、又財政難ヲ絕エズロニシテ居ラレ
  ル方ガ、ドウシタナラバ是ダケノ莫大ナル
  經費ヲ何レカラ捻出サレルノデゴザイマス
  ルカ、此捻出スル所ノ財源ヲ持タズシテ、
  サウシテ調査々々ニ口ヲ藉リ、愼重調査ヲ
  口實ト致シテ、此十六箇所、否其他澤山ノ
  此國立公園ヲ希望スル所ノ地點-地方ノ
  人々ヲシテ所謂運動ヲ爲サシメ、請託ヲ爲
  サシメ、有ユル激烈ナル所ノ裏面ノ運動
  ヲ爲サシメルト云フコトハ一ハ人心ヲシ
  テ不安ナラシムルト云フ責任ヲ內閣ハ執ラ
  ナケレバナラヌト私ハ思フノデアリマス、
  (「ソレガ贊成演說カ」ト呼フ者アリ)本案ヲ
  贊成致シマスレバコソ私ハ此苦言ヲ呈スル
  ノデアリマス(「ヒヤ〓〓」拍手)斯ノ如キ
  誤ッタル考ヲ持チ、サウシテ間違ッタル處置
  ヲ以テ、本案ノ所謂名前ダケヲ御採リニナッ
  テ、其實際ハドウナッテモ構ハナイト云フナ
  ラバ、吾々ハ本案ニ對シテハ反對スル所ノ
  者デアリマス、ケレドモ反對ヲ爲スベキ場
  合ニ於テハ反對ノ理由ガナクテハナラス、
  贊成ヲ爲ス時ニハ贊成ヲ爲スベキ理由ヲ申
  述ナケレバナラヌ、私ノ申上ゲテルノハ反
  對理由デハナイ、贊成ノ理由ヲ申述テ居ル
  ノデゴザイマス
  更ニ此國立公園法ニ依リマスト「主務大
  臣特別ノ事由アリト認ムルトキハ公共團體
  ヲシテ國立公園事業ノ一部ヲ執行セシムル
  コトヲ得」ト云フ規定ガアリマス、此規定ニ
  依リマスト、他ノ條項ニ於テハ國家ガ之ヲ
  爲スモノデアルト云フ規定ガアリマシテ、
  今讀上ゲマシタ第四條ノ規定ニ於テ、是ガ
  公共團體或ハ其他ノ者ニ、之ヲ行ハシムル
  コトガ出來ルト云フ規定ガアルノデゴザイ
  マシテ、且ツ其經費負擔ノ點ニ於テモ、國家ガ
  之ヲ負擔スルノガ原則デアルケレドモ、個
  人デモ其負擔ヲ爲スコトヲ得ルト云フ規定
  ガ殊更設ケラレテ居ルノデゴザイマス、此點
  ニ付テ委員會ニ於テモ屢、議論ガ交ヘラレ、
  質問應答ヲ重ネラレタノデアリマスガ、是
  等ハ運用ニ方ッテモ餘程大切ナ點デゴザイ
  マシテ、近時各地方ノ國立公園ヲ希望スル
  所ノ人々ハ假令金ヲ出シテモ、施設ハ其
  地方若クハ公共團體或ハ府縣ニ於テ之ヲ爲
  シテモ、差支ノナイト云フコト程〓心ナル
  所ノ地方モ多クアルノデゴザイマス、尙ホ
  國家ガ財政ニ窮シテ居ル、今日現在困ッテ居
  ルト云フ窮狀ヲ見テ、地方カラ其負擔ヲ申
  出デラレタナラバ、政府ハ固ヨリ許可ヲセ
  ラレル方針デアルカモ知レマセヌケレドモ、
  其爲ニ此規定ヲ置カレタモノデアルト私共
  ハ思フノデアリマスガ、是デハ折角ノ國立
  公園法ト云フモノガ全ク死物ニ相成ル原
  則ハ國家之ヲ爲ス、而モ之ヲ大規模ニ爲ス
  ノニハ、飽マデモ個人ノ力ヤ一地方ノ力ニ於
  テハ之ヲ爲スコトガ出來ナイト云フ上カ
  ラ、卽チ國立公園ナルモノハ國家ノ手ニ依。ツ
  テ之ヲ爲スト云フコトガ、之ノ精神デアル
  コトヲ御忘レニナッテハナラヌト考ヘマス、
  更ニ又本法第九條ニ於キマシテ「主務大臣
  ハ國立公園ノ保護又ハ利用ノ爲必要アリト
  認ムルトキハ其ノ區域內ニ於テ一定ノ行爲
  ヲ禁止若ハ制限シ又ハ必要ナル措置ヲ命ズ
  ルコトヲ得」ト云フ規定ガゴザイマス、此一
  簡條ハ本案施行ニ方ッテ、公共團體ノ事業及
  ビ個人ノ事業、卽チ產業上ニ渉シテ權益ガ衝
  突ヲ來ス場面ノ出テ來ルコトガ多々アルノ
  デゴザイマス、之ヲ政府モ豫想セラレマシ
  テ、個人ノ私權ニ對シテハ賠償ノ責ヲ負
  フテ居ラレル規定モアルノデゴザイマス
  ガ、公人ニ對シテ、或ハ公共團體ニ對シマ
  シテノ賠償ノ規定ト云フモノガ、全然置カ
  レテ居ラナイノデゴザイマス、サウシテ內
  務大臣ハ國有林野デアルトカ、或ハ其他ノ
  モノガ大部分ヲ占メテ居ルカラ、決シテ面
  倒ナ事件ハ起ラナイデアラウト云フ御答辯
  ヲナサレテ居リマシタケレドモ、例ヘバ斯
  ノ如キ公園地帶ト云フモノハ山間僻地デア
  ルコトヲ吾々ハ想像スルニ苦マナイ、山間
  こ僻地ニ於ケル所ノ村落ノ生活狀態、例ヘバ
  收入ノナキ所ノ僻村山地ノ村落ニ於キマシ
  テハ、義務〓育費ノ捻出ニ苦ンデ村有財產
  ノ山林其他ノ收入ニ依。フテ此〓育費ヲ補塡
  シテ居ル所ノ者ガ多々アルコトデゴザイマ
  ス、斯ル村落ガ山間地帶ニ於テハ多クヲ占
  メテ居ルト云フ關係ニ於テ、本法ガ施行セ
  テレケ曉ニ於テ國立公園ノ地域ニ編入セラ
  レタ場合ニハ、是等ノ資源ヲ失フノデアル
  隨テ一村ノ存立ニ重大ナル所ノ結果ヲ及ボ
  スモノデアリマスノニ、本案ニ依ッテ賠償サ
  ルベキ所ノ途ガ開ケテ居ラナイモノトスル
  ナラバ、非常ナル所ノ問題ヲ惹起スルコト
  ハ爭ハレザル事實デアルト思フノデアリマ
  ス是ハ直チニ現ハレテ來ル問題デアリマ
  スガ、之ニハ何等ノ規定ガゴザイマセヌ
  (「規定ガアルヨ」ト呼フ者アリ)アリマセ
  ヌアリマセヌケレバコソ質間等ニ於テモ
  屡〓之ヲ繰返シタノデゴザイマス、トモアレ
  斯ル重要ナル所ノ國立公園法ヲ現內閣ノ運
  用ニ依ッテ-吾々ハ法案ニハ今日ハ贊意
  ヲ表スル者デアルガ、將來之ヲ實施スルニ
  當シテ、政府ノ運用如何ニ依リマシテハ是ガ
  無意義トナリ其施設宜シキヲ得、運用宜
  シキヲ得レバ有意義ナル所ノ效果ヲ發揮ス
  ベキコトハ言ヲ俟タナイノデアリマス、吾
  吾ハ甚ダ現内閣ノ諸公ノ取ラレル所ノ態
  度、又言明サレル所ノ態度其モノガ曖昧デ
  アリ、甚ダ不誠意デアルト云フ點カラ、本案
  ガ生レタ時ニ於テ果シテ如何樣ナル結果ヲ
  摺來スルカト云フコトヲ危惧致シマスガ爲
  ニ此理由ヲ申上ゲマシテ、本案贊成ノ理
  由トスル次第デゴザイマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02519310310&spkNum=36

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• 037・藤澤幾之輔

  ○議長(藤澤幾之輔君)　討論ハ終局致シマ
  シタ、兩案ノ第二讀會ヲ開クニ御異議アリ
  マセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02519310310&spkNum=37

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• 038・藤澤幾之輔

  ○議長(藤澤幾之輔君)　御異議ナシト認メ
  マス
  依テ第二讀會ヲ開クニ決シマシタ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02519310310&spkNum=38

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• 039・作田高太郎

  ○作田高太郞君　直チニ兩案ノ第二讀會ヲ
  開キ、第三讀會ヲ省略シテ委員長報告通
  リ可決セラレンコトヲ望ミマス
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02519310310&spkNum=39

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• 040・藤澤幾之輔

  ○議長(藤澤幾之輔君)　御異議ナシト認メ
  さい、直チニ兩案ノ第二讀會ヲ開キ議案全
  部ヲ議題ト致シマス
  國立公園法案第二讀會(確定議)
  土地收用法中改正法律案
  第二讀會(確定議)
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02519310310&spkNum=40

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• 041・藤澤幾之輔

  ○議長(藤澤幾之輔君)　別ニ御發議モナイ
  ヤウデアリマスカラ、第三讀會ヲ省略シテ、
  兩案トモ委員長ノ報〓通リ可決確定致シマ
  シタ(拍手)
  日程第一、競馬法中改正法律案ノ第一讀
  會ヲ開キマス-町田農林大臣
  第競馬法中改正法律案(政府提出)
  第一讀會
  競馬法中改正法律案
  競馬法中左ノ通改正ス
  第二條第二項中「六日內」ヲ「八日內」ニ改
  ム
  第四條第二項ヲ左ノ如ク改ム
  勝馬投票劵ノ發賣ハ競馬一競走ニ付一
  人一枚ヲ限リ單勝式勝馬投票劵及複勝
  式勝馬投票劵ヲ發賣スル場合ニ於テハ
  競馬一競走ニ付一人各一枚ヲ限ル
  第六條ニ左ノ二項ヲ加フ
  勝馬投票的中者無キ場合ニ於ケル賣得
  金又ハ前項但書ノ規定ニ依リ生ジタル
  超過金ハ命令ノ定ムル所ニ依リ之ヲ勝
  馬投票劵ヲ購買シタル者ニ拂戾スベ
  シ
  前二項ノ拂戾金ノ債權ハ一年間之ヲ行
  ハザルトキハ時效ニ依リテ消滅ス
  第八條第一項中「百分ノ四以內」ヲ「百分
  ノ六以內」ニ改メ同條ニ左ノ三項ヲ加
  フ
  第一項ノ規定ニ依ル納付金ノ額ニ相當
  スル金額ハ馬ノ改良增殖及馬事思想ノ
  普及ノ爲必要ナル經費竝ニ社會事業ノ
  爲必要ナル經費ニ充ツルコトヲ要ス馬
  ノ改良增殖及馬事思想ノ普及ノ爲必要
  ナル經費ニ充ツル金額ハ納付金ノ額ニ
  相當スル金額ノ三分ノ二ヲ下ルコトヲ
  得ズ
  前項規定ノ適用ニ付テハ金額ノ算出ハ
  各年度ニ於テ其ノ年度ノ豫算金額ニ依
  ル
  競馬場ノ開設又ハ維持、競走馬ノ出馬
  登錄又ハ出場、競馬ノ觀覽、勝馬投票
  劵ノ發賣又ハ購買、拂戾金又ハ競馬賞
  金ノ交付又ハ受領其ノ他競馬ノ施行又
  ハ開催ニ關シテハ地方稅ヲ課スルコト
  司徒大
  第十四條中「又ハ五千圓以下ノ罰金ニ處
  ス」ヲ「若ハ五千圓以下ノ罰金ニ處シ又ハ
  其ノ刑ヲ併科ス」ニ改メ同條第二號ノ次
  ニ左ノ一號ヲ加フ
  三第一條ノ法人ノ開催スル競馬ノ競
  走ニ關シ業トシテ多數ノ者ニ對シ財
  物ヲ以テ賭事ヲ爲シタル者
  第十五條第五號ノ次ニ左ノ一號ヲ加フ
  六前條各號ノ一ニ規定スル行爲ノ相
  手方ト爲リタル者
  第十六條第一號ヲ削リ第二號ヲ第一號ト
  シ以下順次繰上グ
  附則
  本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
  〔國務大臣町田忠治君豆)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02519310310&spkNum=41

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• 042・町田忠治

  ○國務大臣(町田忠治君)　只今上程サレマ
  シタ競馬法中改正法律案ヲ提出致シマスル
  所以ノ大要ヲ申上ゲマス
  競馬法ガ實施セラレマシテ玆ニ八年、昭
  和四年ニ於テ其一部ノ改正ヲ見マシタガ、
  競馬ノ實況ニ鑑ミマスノニ法律制定當時
  ノ精神ヲ達成スルニハ更ニ改正ヲ要スル
  モノガ少クナイノデアリマスノミナラズ
  現下產馬界ノ狀況ヲ見マスニ、馬ノ改良增
  殖ヲ圖ルガ爲ニ、牧野法ヲ制定シテ種牡馬
  ノ充實ヲ圖ル等、急施ヲ要スル施設多ク
  且ツ一方ニ於キマシテハ、救護法ノ實施ヲ
  必要トスルモノガアリマス、仍テ政府ニ於キ
  マシテハヽ愼重〓究ノ結果ニ基キマシテ、
  玆ニ競馬法ノ改正ヲ提案致シタノデアリマ
  ス、其詳細ハ委員會ニ於テ之ヲ述ベルコト
  ト致シマス此處ニハ大要ニ止メテ置キマ
  ス(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02519310310&spkNum=42

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• 043・藤澤幾之輔

  ○議長(藤澤幾之輔君)　質疑ヲ許シマ
  ス川島正次郞君
  〔川島正次郞君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02519310310&spkNum=43

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• 044・川島正次郎

  ○川島正次郞君　只今上程ニ相成リマシタ
  競馬法ハ其改正ノ內容ハ極メテ簡單デア
  リマスケレドモ、此競馬法ノ改正ニ依ッテ生
  出ス所ノ金ヲ、救護法實施ノ費用ニ充テル
  ト云フ意味ニ於キマシテ極メテ重大ナル
  所以ガアルノデアリマス私ハ其意味ニ於
  キマシテ、農林大臣、陸軍大臣、文部大臣、
  司法大臣ニ對シマシテ、數點ノ質疑ヲ致シ
  タイノデアリマス
  第一ニ御伺致シタイノハ、此競馬法ハ第
  四十六議會ニ初メテ提案ニナッタノデアリ
  マシテ、其當時主管省デアル所ノ陸軍大臣
  ノ御說明ニ依リマシテモ、亦司法省政府委
  員ノ御說明ニ依リマシテモ、此競馬ガ〓博
  若クハ富籤類似デアルト云フコトハ、極メ
  テ明白ニナッテ居ルノデアリマス、往年馬劵
  ノ賣買ヲ許シタ際ニハ內閣ノ閣令ヲ以テ
  之ヲ許シテ居ッタ、其後馬劵ガ種々ナル物議
  ヲ起シマシタガ爲ニ、一時是ハ停止サレテ
  居ッタノデアリマス、其當時ニ於キマシテ
  ハ競馬ノ法律上ノ問題ニ付テハ種々ナル
  議論ガアッテ一致シナカッタ、其後新刑法ノ
  制定ニ當リマシテ競馬ガ〓博若クハ富籤
  類似デアルト云フコトガ、一點疑ヲ挾ム餘
  地ガナク相成ッタノデアリマス、是ニ於テ第
  四十六議會ニハ刑法ノ特別法ヲ設ケルト
  云フ意味ニ於キマシテ、從來閣令ヲ以テ規
  定シテ居ッタ所ノ、此競馬ノ許可ガ初メテ法
  律トナッテ現ハレタノデアリマシテ、此事實
  ヲ見テモ、亦去ル五十六議會ニ本案一部ノ
  改正案ヲ提出セラレマシタ際、司法省泉二
  刑事局長ノ御辯明ニ考ヘマシテモ、競馬ガ
  〓博若クハ富籤類似デアルト云フコトハ
  議論ノ餘地ガナイ所デアリマス、然ラバ何
  故ニ競馬ヲ許スカト言ヘバ現在日本ノ馬
  匹ハ極メテ發達ガ幼稚デアリマシテ、國防
  上竝經濟上馬匹ノ增殖改良ヲスル必要ガア
  ル馬匹ノ增殖改良ニハ種々ナル方法ガア
  リマスケレドモ、競馬ノ方法ニ依ッテ之ヲ行
  フコトハ、極メテ有效デアルト云フ見地カ
  ラ致シマシテ、縦令競馬ガ富籤若クハ〓博
  類似デアルニシマシテモ、風〓上、思想上、
  害ガアルニシマシテモ、國家全體ノ利益カ
  ラ見マシテ、之ヲ或ル程度ノ制限ヲ附シテ
  許シテ、以テ馬匹ノ增殖改良ヲ行フコトガ
  必要ナリト云フ意味ニ於キマシテ、此法案
  ガ成立シタノデアル、隨テ此競馬ヲ許ス範
  圍ニハ一定ノ限界ガアル筈ナノデアル、四
  十六議會ニ陸軍大臣提案ノ說明ノ一部ニ於
  テ「其風〓上ニ及ボス影響ヲ局限スル爲ニ、
  多大ノ注意ヲ拂ヒマシテ、以テ多年物議ヲ
  釀シタヤウナ事態ヲ再ビ發生セシメヌコ
  トヲ期シタ次第デアリマス」斯樣ニ說明シ
  テ居ルノデアリマシテ、競馬法ニ依ル所ノ
  馬劵發賣ノ內容ガ一定ノ限界ガアルノハ
  當然デアル、言換ヘマスレバ人ト馬トヲ
  秤ニ掛ケテ、ドッチガ重イカ、人間界ノ風〓
  思想ヲ害シナイ程度ニ於キマシテ、馬匹ノ
  改良發達ヲ企ツルコトガ必要デアルト云フ、
  此一定ノ限度ヲ定メマシテ、現行法ヲ規定
  シテ居ル、然ルニ今囘此競馬法ニ一大革命
  ト云フベキ改良ヲ加ヘ言換ヘマスレバ
  從來ハ馬券ヲ一枚シカ買フコトガ出來ナカ
  タ、ソレヲ今囘改良敢シマシテ、複勝式、
  單勝式トノ二樣ノ馬劵ヲ賣ルコトヲ許スヤ
  ウニナッタ、一人ニ於テ各一枚ヅヽ合計二
  枚マデハ買フコトガ出來ルヤウニ相成ルノ
  デアリマス從來一人一枚ト限ッタコトハ、
  要スルニ思想上、風〓上、又刑法ノ規定ト
  牴觸シナイ範圍內ニ於テ、之ヲ決メタノデ
  アリマスガ此一枚ノ制限ヲ撤廢シテ二
  枚ニスルト云フコトハ、全ク競馬法制定當
  時ノ精神ヲ蹂躪シタモノデアル、斯ノ如キ
  ハ競馬ニ依ッテ射倖心ヲ煽リ立ッテ、風〓上、
  思想上、弊害極メテ大ナルモノガアルト吾
  吾ハ確信致スノデアリマス(拍手)馬事改良
  以上ニ思想上、風〓上ノ弊害ガアル此法
  律ヲ提案シマシタニ付テ、司法大臣ハ刑法
  處罰ノ範圍ヲ狹メル改正案デアッテモ、刑法
  擁護上差支ナシト御考ニナッテ居リマスカ、
  又內務大臣ハ警察取締ノ見地カラ御覽ニナ
  リマシテ、今囘ノ改正案ハ適當ナリト御考
  ニナッテ居リマスカ、之ヲ伺ヒタイ
  諸君、不景氣極メテ深刻ナルガ爲ニ、都
  市農村ヲ通ジテ極メテ閑散デアル多數ノ
  國民ハ、暇ガアッテ而モ收入ガ無イ、ソコデ
  不正ノ收入ヲ夢見ルコトハ當然デアリマ
  ス、殊ニ農村ニ於キマシテハ繭米、蔬
  菜類、有ユル農產物ノ價額ガ、勞働賃銀ニ
  モ足リナイト云フ結果、多數ノ農民ト云フ
  モノハ、勞作ヲスル氣力ガ無クナッテ居ル、
  是ニ於テ此隙ニ乘ジテ、今日デハ全國到ル
  處ノ農村、漁村、山村ニ跨テ、賭博ガ非常ナ
  ル流行ヲシテ居ルト云フコトハ爭へナイ
  所ノ一大事實デアリマス、不景氣ノ結果、
  賭博ガ非常ニ流行シテ來タ、不景氣ハ現内閣
  サヘ迭レバ立ドコロニ直ルカモ知レマセヌ
  ケレドモ、此賭博ノ爲ニ國民ノ心ニ喰入ッタ
  所ノ投機心、竝ニ是カラ生ズル所ノ怠ケ癖
  ト云フモノハ不景氣ノ產物トシテ永久ニ
  續クモノデアリマス、此時ニ當ッテ投機心ヲ
  挑發スルガ如キ、〓博思想ヲ奬勵スルガ如
  キ、此改正案ヲ御出シニナルト云フコトハ
  如何ニ政府ガ〓育振興ヲ叫ンデモ、思想ノ
  善導ヲ叫ンデモ、全ク實績ノ擧ラナイ矛盾
  シタル所ノヤリ方デアル、文部大臣ハ一體
  斯ノ如ク馬券賣買ノ範圍ヲ擴張シテ、〓博
  思想ヲ皷吹スルコトハ風〓上又〓育上差
  支ナシト御考ニナッテ居リマスカ、先ヅ第一
  點トシテ之ヲ御伺スル次第デアリマス(拍
  手)
  第二點トシテ御同シタイノハ、競馬法ハ
  只今申上ゲタ如ク、國防上、經濟上必要ナ
  ル點ト風〓上、思想上ノ防止スベキ點ト、
  互ニ斟酌考慮ヲシテ、適當ナル範圍ニ於テ
  許サレテ居ル、隨テ本案ヲ改正スル場合ニ
  ハ、二ツノ制限ガアル、一ツハ改正ノ要旨
  ガ、思想上或ハ風〓上惡影響ヲ及ボサナイ
  ト云フコトデアリマスシ、一ツハ馬事改良
  ノ爲ニ必要デアルト云フ點デアッテ、此第一
  ノ思想上、風〓上ノ問題ニ付キマシテハ
  只今申上ゲタ通リデアリマスガ、然ラバ果
  シテ今囘ノ改正案ガ、馬ノ改良增殖ノ爲ニ
  必要デアルカドウカ、元來政府ハ品質ノ改
  良ト、五十万頭ノ維持ヲ目的トシテ馬政
  計畫ト云フモノヲ立テヽ來タ、競馬法施行
  以來約六箇年經ッタ昭和四年ノ實績ニ徵シ
  マスト、馬ノ頭數ト云フモノハ競馬法施
  行サレテ居ルニ拘ラズ、累年遞減ヲシテ來
  テ居ル、一方ニ於テ馬質ハドウカト申スト、
  主トシテ競馬ハ「サラブレット」ヲ本位ニシ
  テ行フガ爲ニ、軍事上又實用上必要ナル馬
  匹改良ノ目的ヲ達スルコトガ出來ナイト云
  フ見地カラ致シマシテ、四十六議會ニ於テ
  ハ競馬法ノ一部ヲ改正シテ、將來競馬ニハ
  必ズ「アラブ」若クハ「アングロアラブ」ノ馬
  ヲ使用サレル所ノ障碍競走、或ハ速步競走
  ト云フモノヲヤルコトニ相成ッタ、爾來今日
  マデ三期間競馬ヲ行→タノデアリマスガ、競
  馬法ヲ改正致シテ、今日マデ僅ニ二箇年間、
  再ビ農林大臣ハ馬政ノ振興上必要ナリト云
  フ理由ヲ以テ、馬劵購買數ヲ擴張シ、競馬
  ノ日數ヲ延長シ、之ニ依っテ馬產ヲ奬勵スル
  ト云フ理由ガ一體何處ニアルノデアリマス
  カ、吾々ハ之ヲ解スルニ苦シムノデアリマ
  ス、此點ニ關シテ農林大臣ノ御辯明ヲ得タ
  イ、元來馬政ハ陸軍省ノ所管デアッタ、是ガ
  其後軍縮ノ聲ニ依ッテ、陸軍ノ經費ヲ節減ス
  ルガ爲ニ、其政策ニ利用サレテ、是ガ農林
  省ニ移ッタノデアル、今日日本ニ於ケル馬政
  計畫ノ重點ガ、同ジク國防上ノ必要ニアリ
  ト云フコトハ申スマデモナイ、良民良兵ト
  同ジ原則ニ依ッテ、良民馬ハ常ニ良兵馬デ
  アルト云フコトハ、陸軍ガ常ニ考ヘテ居ル
  所デアリマス、陸軍當局ハ今日如何ナル馬
  政計畫ヲ御持チニナッテ居ルカ、又現在ノ日
  本ノ馬ノ狀態デハ、軍事上不都合ナリト御考
  ニナッテ居リマスカ、更ニ現行法ノ競馬法ノ
  範圍內デハ、馬ノ增殖改良上差支アリト陸
  軍大臣ハ御考ニナッテ居リマスカ、又陸軍大
  臣ハ今囘ノ競馬法ノ改正ニ依ッテ、如何ナル
  程度ニ馬ノ增殖改良ト云フコトヲ期待シテ
  御出デニナルカト云フコトヲ、陸軍大臣ニ
  御伺シタイノデアリマス
  第三ニ御伺シタイ、政府ハ此議會開會後、
  突如トシテ競馬法ノ改正ヲ計畫サレタノデ
  アル、ソコデ二月二十二日ニ急遽馬政委員
  會ヲ農林大臣官邸ニ御招集ニナッテ、改正案
  ヲ諮問シタ、元來斯樣ナ重大ナル改正案デア
  リマスカラ、數囘傾重協議ヲ重ネルガ當リ
  前デアルニ拘ラズ、農林大臣ハ馬政委員會
  ニ向シテ卽決可決ヲ要求シタノデアル、是ニ
  於テ馬政委員會ハ三項ノ條件ヲ附シテ農林
  大臣ノ諮間案ヲ認メタ、其一ハ一競爭一人
  一枚主義ニ對シ、本改正案ハ幾分之ヲ緩和
  スルモノナルガ故ニ、本案ノ如ク改正セラ
  ルヽコトハ可ナリト雖モ、此際尙ホ一層進
  ンデ、枚數制限ヲ撤廢セラルヽヤウ考慮セ
  ラレタシ、二、政府納付金ノ費途ニ付テハ、
  之ヲ馬事振興ニ必要ナル經費ニ充ツル爲
  メ、少クトモ三分ノ二以上確保セラルヽヤ
  ウ、競馬法中ニ規定ヲ置カレタシ三、政府
  納付金ノ使途ノ區分、其他競馬法中ノ重要
  ナル事項ハ勅令ヲ以テ設置セラルベキ馬
  政委員會ヲシテ審議セシムルコトノ規定ヲ
  競馬法中ニ置カレタシト云フ、三點ヲ條件
  トシテ本案ニ贊成シタ、競馬法ノ改正ハ元
  來第一條ニ規定シタル如ク、馬ノ增殖改良
  若クハ馬事思想普及ノ目的以外ニハ絕對ス
  ルコトノ出來ナイノハ勿論デアル、然ルニ
  政府ガ今囘突然此改正案ヲ企テタ所以ト云
  フモノハ全ク馬ノ改良ノ目的カラ發シタ
  ノデハナイ、若モ馬ノ改良增殖若クハ馬事
  思想普及ノ眞ノ目的ガアルナラバ何モ慌
  テフタメイテ議會開會後ニチッテ、之ヲ立
  案シテ馬政ノ委員會ニ掛ケル必要ハナイ
  (拍手)是ハ此競馬法ヲ提案サレタ所ノ沿革
  カラ考ヘマシテモ、亦今囘御提案ニナッタ
  所ノ追加豫算ノ內容カラ考ヘテモ一點疑
  ヲ入レルコトハ出來ナイ所デアッテ、今囘ノ
  改正案ガ競馬法ノ要求スルモノニアラズシ
  テ、全ク財政上ノ目的ニ依テテテラレタ
  ト云フコトハ明カナ點デアル、此競馬法ガ
  五十六議會ニ出サレタ當時カラ、競馬法ニ
  依ッテ生ミ出ス金ト云フモノハ、悉ク馬事振
  興ノ爲ニ使フト云フコトハ、一ツノ鐵則ニ
  ナッテ居ル、五十六議會ニ田中內閣ガ競馬法
  中ノ一部改正案ヲ提案シマシタガ、ソレガ爲
  ニ生ミ出シタ金ハ何ニ使ッタカト言ヘバ、悉
  ク馬事振興ノ爲ニ使シテ居ル、卽チ競馬監督
  ニ關スル經費、家畜保險實施ニ關スル經
  費、馬ノ傳染性流產竝ニ不姙症調査ニ關ス
  ル經費、馬事振興ニ關スル經費、馬ノ傳染性
  貧血豫防ニ關スル經費、牧野改良ニ關スル
  經費等數項目ニ亙ッテ、實ニ此五十六議會ニ
  於テ田中內閣ハ馬事振興ノ爲ニ新ニ百四
  十九万七千圓ト云フ新要求ヲ致シテ居ル
  (拍手)其當時民政黨ノ諸君ハ、此田中內閣
  ノ競馬法改正案ニ反對ヲシタ、其反對ノ唯
  一ノ理由ハ何デアルカト云フト、地租委讓
  ヲ計畫シテ居ッテ、地租委讓ノ爲ニ財源ガ不
  足シテ居ルガ、共不足財源ヲ補フガ爲ニ競
  馬法ヲ改正スルフダト云フコトガ、諸君ノ反
  對ノ唯一ノ理由デアッタ、併ナガラ百步ヲ
  讓ッテ、假ニ諸君ノ言フガ如ク、當時ノ改
  正案ガ地和委讓ノ財源ノ不足ノ缺陷ヲ補フ
  トシテモ而モ是カラ生ミ出シタ金ハ悉ク
  馬事振興ノ爲ニ使シテ居ルデハナイカ、然ル
  ニ今囘ハドウカ、今囘ノ改正案ト云フモノ
  ハ是カラ生ミ出シタ金ヲ以テ馬事ノ振
  興ニアラズシテ、全ク目的ノ違タタノ社會
  事業ニ使フト云フノデアリマスカラ、經費
  不足ノ爲ニ競馬法ノ改正ヲヤルノハイカヌ
  ト言ッタ諸君ハ、經費不足ノ爲メノ今囘ノ改
  正案ニ贊成スルコトハ出來ナイ筈デハナイ
  カ
  〔發言スル者多シ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02519310310&spkNum=44

  ---

• 045・藤澤幾之輔

  ○議長(藤澤幾之輔君)　靜肅ニ願ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02519310310&spkNum=45

  ---

• 046・川島正次郎

  ○川島正次郞君(續)　今囘ノ計畫ハ全ク
  馬事改正ノ爲ニシカ使フコトガ出來テナイト
  云フ此鐵則ヲ破ッテ、ソレ以外ニ使フ所ノ
  從來トハ違タ政策ヲ執ルノデアッテ若モ
  玆ニ端ヲ發シタナラバ、將來ニ於テハ益、ニ
  此競馬カラ生ミ出ス所ノ金ト云フモノガ
  馬事振興以外ニ使フコトニ相成ルノデアリ
  マシテ民政黨中ノ馬事ニ關係スル諸君ト
  雖モ此改正案ニハ贊成ハ出來ナイト私ハ
  考ヘル
  一體現內閣ハ、社會政策ト云フコトヲ盛
  ニ高調サレマスケレドモ、之ニ對シテ如何
  ナルコトヲ爲シタカ、本豫算ニ於テ社會政
  策ノ爲ニ計上シタル金ト云フモノハ、職業
  紹介機關ノ充實ニ關スル經費ヲ僅ニ五万九
  千圓何ガシ、ソレ以外ニハ本豫算ノ何處ヲ
  見テモ、一錢一厘社會政策ニ關スル所ノ新
  規事業ハナイノデアッテ、聲ノミ大ニシテ其
  實ノ件ハザルコト實ニ甚シイモノデアル
  (拍手)此救護費ノ如キハ防貧救貧政策中
  ノ最小限度ノモノデアッテ、絕對的ニ必要
  ナノデアル、而モ田中內閣當時之ヲ提案ス
  ルヤ、民政黨ノ諸君ハ態〓施行期日ヲ昭和
  五年ヨリ之ヲ實施スルト直シタ、此沿革
  カラ考ヘテ見テモ、現內閣ハ當然本豫算ノ
  中ニ救護費ヲ組入レルノガ當リ前デア
  ル、如何ニ現內閣ガ社會政策ニ對シ、又救
  護法ノ實施ニ關シテ冷淡デアルカト云フコ
  トガ此一事ヲ以テモ分ルノデアル、然ル
  ニ輿論ガ囂々トシテ來テ、全國ノ方面委員
  ハ是ガ爲ニ總辭職ヲスルト云フマデニナフ
  テ來、又貴衆兩院ノ本會議、委員會等ニ於
  テ、屢〓救護法實施ノ議論ガ行ハレテ來
  テ遂ニ輿論ノ鞭韃ニ堪へ難クナッテ、始メ
  テ內務大臣及共他各大臣ハ救護法實施ノ肚
  ヲ決メタソコデ色々財源ヲ漁テ見タケ
  レドモ、見當ラナイ、其結果漸ク著眼シタ
  ノガ此競馬法ノ改正ナノデアル、之ニ依ッテ
  相當ノ財源ヲ捻出シテ、之ヲ救護費ニ充テ
  ヤウトシタノデアリマスカラ、今囘ノ競馬
  法ノ改正ト云フモノガ、馬事ノ振興ノ目的
  ニアラズシテ、全ク財政上ノ目的ニアッタ
  ト云フコトハ明カラ事實デ、全ク本末ヲ〓
  倒シタ財源關係カラ出發シタ改正案デアル、
  卽チ競馬ヲ許可スル目的ト云フモノガ、馬
  ノ增殖デハナクシテ、政府ノ財政上ノ收益
  主義ニ偏シタト云フコトハ馬政史上ノ一
  大罪惡ト言ハナケレバナラヌト私ハ考ヘル
  ノデアリマス(拍手)政府ハ新タナル改正案
  ニ付テ、平年度ニ於テ二百万圓ノ增收ヲ計
  畫シテ居ル、ソコデ從來政府ノ納付金百分
  ノ四以内トアルノヲ、今日百分ノ六以內ト
  改正シヤウト云フノデアリマスケレドモ、
  昭和四年ニ百分ノ一カラ百分ノ四以內ニ改
  正ヲシテ、僅カ二箇年シカ經タナイ今日、
  再ビ斯ノ如キ改正案ヲ出サレタ、是デハ各
  地方ノ競馬倶樂部ガ立行カヌト云フノデ
  反對ノ聲ガ盛ニ起ルノヲ豫想シ、政府ハ思
  想上又ハ風〓上ノ一大惡改革デアルノヲ覺
  悟シナガラモ、馬劵一人ニ付二枚發賣ト云
  フコトヲ許スコトニ相成タタデデル、之ニ
  付テハ各方面トモ馬事關係者皆反對ナノデ
  アル、納付金ヲ餘計取ラレルコトハ反對デ
  アルケレドモ、一方ニ於テ今マデハ一枚シ
  カ買ヘナカッタノガ、今囘ハ二枚マデ買フコ
  トガ出來ルト云フ、此餌ニ釣ラレテ、厭ヤ
  厭ナガラ馬事關係者ハ贊成シテ來タノデ
  アル、言換ヘレバ多額ノ納付金ヲ搾上ゲル
  ガ爲ニ、交換的馬券ノ擴張ヲシタト云フコ
  トニ相成ルノデアリマス是等ノ諸點ヲ綜
  合シテ見マスト政府ハ救護法實施ノ爲
  二、競馬法ニ要求シナイ所ノ改正ヲ加ヘ
  テ、國民ノ射倖心ヲ排發スル世上デハ今
  囘ノ改正ハ、現內閣ハ博奕ノ「テラ」錢デ社會
  事業ヲヤッテ居ルト言ッテ居ルガ、ソレドコロ
  デハナイ其「テラ」錢ノ上前ヲ刎ネテ社會事業
  ヲヤルノデハナイカ、緊縮政策ノ結果、失業
  者ガ出來ルサウスルト新ニ公債ヲ起シ
  テ、之ヲ救濟シヨウト云フノト同ジヤリ方
  デアッテ、燐寸ト喞筒ヲ以テ步クト云フ、全
  ク危險極マル所ノヤリ方デアルト言ハナケ
  レバナラヌノデアリマス(拍手)ソコデ私ハ伺
  ヒタイ競馬法カラ生ミ出シタ所ノ金ヲ、
  馬事振興以外ニ御使ヒニナルト云フコト
  ハ競馬法制定ノ精神ニ反スルモノデアル
  カドウカト云フコトヲ、農林大臣ニ御伺シ
  タイ、又是カラ出ル所ノ金ヲ以テ、社會事
  業ニ充當スルト云フコトハ國民精神ノ作
  興上弊害アリト御考ニナラナイカト云フコ
  トヲ御伺シタイノデアリマス
  第四點ニ御伺シタイノハ、今囘政府ハ追
  加豫算ヲ御出シニナッタ、共追加豫算ノ中ニ
  ハ、農林省ノ所管トシテ、競馬監督ニ關ス
  ル經費ノ增加一万五千七百四十九圓、種牡
  馬充實ニ關スル經費十三万七千六百九十三
  圓、又臨時部ニ於テ種牡馬ノ充實ニ關スル經
  費二十五万七千六百八十六圓、馬ニ關スル
  牧野改良奬勵費九万五千九百四十六圓ト云
  フ經費ヲ御計上ニナッテ居ル、ソコデ先達ノ
  豫算總會ニ於テ、我黨ノ砂田代議士ヨリ、
  元來追加豫算ノ性質ト云フモノハ會計法
  第七條ノ規定ニ依ッテ會計法第七條ニ
  ハ何ト書イテアルカト云フト「歲入歲出ノ
  總豫算ハ前年ノ帝國議會集會ノ始ニ於テ之ヲ
  提出スヘシ」「必要避クヘカラサル經費及法
  律又ハ契約ニ基ク經費ニ不足ヲ生シタル場
  合ヲ除クノ外追加豫算ヲ提出スルコトヲ得
  ス」ト書イテアリマシテ、必要避クベカラザ
  ル經費ノ外ハ追加豫算ニ提出スルコトガ
  出來ナイ譯デアル、然ルニ現內閣ハ、本豫算
  提出ノ際ニハ、現內閣一流ノ緊縮政策ニ依ッ
  テ、馬ノ經費八十一万圓ト云フモノヲ前年
  度ヨリ減額シテ今囘御提案ニナッテ居ル、然
  ルニ更ニ追加豫算ニ於テ、是ダケノ經費ヲ
  御出シニナルト云フコトハ如何ナル理由
  ニ依ルカ、一體何處ニ此競馬監督ニ關スル
  經費、或ハ牧野改良ニ關スル經費、種牡馬
  ノ充實ニ關スル經費ト云フモノガ、必要避
  クベカラザルモノト御認メニナルカドウカ
  ト云フコトヲ質問シタ所ガ、大藏大臣ノ御
  答辯ニ曰ク、ソレハ今囘提案ノ競馬法中改
  正法律案ノ中ニ於テ斯樣ナ文句ガアル、「第
  一項ノ規定ニ依ル納付金ノ額ニ相當スル金
  額ハ馬ノ改良增殖及馬事思想ノ普及ノ爲必
  要ナル經費竝ニ社會事業ノ爲必要ナル經費
  ニ充ツルコトヲ要ス馬ノ改良增殖及馬事思
  想普及ノ爲必要ナル經費ニ充ツル金額ハ納
  村金ノ額ニ相當スル金額ノ三分ノ二ヲ下ル
  コトヲ得ズ」ト云フ、斯樣ナ改正案ガ出テ居
  ルカラシテ、此改正案ニ依ッテ此追加豫算ヲ
  提出シタノダ、斯樣ナ御說明デアリマスケ
  レドモ、併ナガラ會計法ノ規定ハ明カニ必
  要避クベカラザルモノニ限ッテ居ル、若モ今
  回追加豫算トシテノ御提案ガ、必要避クベ
  カラザルモノデアルナラバ、斯ノ如ク牧野
  改良費若クハ種牡馬ノ充實ニ關スル經費ノ
  如キハ、常ニ分ッテ居ルコトデアッテ、何故
  本豫算ノ中ニ之ヲ織込マナカッタカ、本豫算
  デハ現内閣ハ八十一万圓減額ヲシナガラ
  此不急ナル所ノ經費ヲ追加豫算ニ求メルト
  云フコトハ實ハ此馬ニ關スル經費ハ左程
  緊急ノモノデハナイ、併ナガラ一方ニ於テ
  救護法ヲ提出シナケレバナラヌ、所デ馬事
  ニ關スル此新改正案カラ生ミ出ス所ノ經費
  ヲ悉ク救護法ニ流用スルコトニ付テハ多
  大ノ反對ガアル、根本ニ於テ、馬事改良以
  外ニ流用スルコトニ反對シテ居ルノデアリ
  マスカラ、此反對ヲ緩和スルガ爲ニ、庁
  出シタ所ノ經費デアル言換ヘレバ馬ノ經
  費ト云フモノハ、救護法ニ便乘シテ出サレ
  タモノデアル、丁度泥棒ガ番犬ニ牛肉ヲ與
  ヘルヤウナモノデアルソレト同ジ思想デ
  ハナイカ、必要モナイコトヲ此救護法ヲ實
  施シタイバカリニ慌テヽ出シテ、各方面ノ
  空氣ヲ緩和シヨウト云フノデアリマシテ、
  全ク會計法ノ精神ヲ蹂躪シタモノト謂ハナ
  ケレバナラナイ、是ニ於テ私ハ農林大臣ニ
  對シテ、今囘ノ此追加豫算ト云フモノハ
  如何ナル理由ニ依ッテ必要避クベカラザル
  モノト御認メニナリマシタカ、ドウカト云
  フコトヲ御聽キシタイノデアリマス
  第五ニ御質問申上ゲタイコトハ一昨年
  現內閣成立以來、有ユルモノガ不景氣デ、
  萎靡沈滯シテ居ルニ拘ラズ、犯罪件數ト云
  フモノハ盛ニ殖エテ來テ居ル、隨テ婚博類
  似ノ競馬ノ如キモノガ益、盛ニナッテ來タ、
  此不景氣ノ時ニ、競馬グケガ盛ニナルト云
  フ、昭和四年ハ公認競馬ノ馬劵ノ賣上高ガ
  幾ラカト言ヘバ四千百六十一万圓、ソレ
  ガ昨年ハ四千二百八十三万圓ニナッテ、百二
  十万圓モ餘計賣レテ來タ譯デアル、是ダケ
  ノ金ト云フモノハ競馬場デ活躍スルノデ
  アルカラ、失敗者モ澤山出來テ來ル、隨テ
  倒產スル者、破產スル者、家庭上ノ悲劇ト
  云フモノガ、到ル處ニ產出サレテ來テ居ル
  ソデアリマシテ、元來此競馬ト云フモノハ
  決シテ競馬「フアン」ニ利益ナモノデハナ
  イ合理的ニ搾取サレタ所ノ金ガ多イノニ
  加ヘテ、不正ガ行ハレ易イノデアリマスカ
  ラ、競馬「フアン」ト云フモノハ非常ナル損
  害ヲ致シテ居ル、昨年ノ春ノ競馬ノ賣上十
  一箇所全部ヲ合計シテ見ルト二千百四十九
  万四千圓アッタ、此金額ノ中デ政府ノ納付金
  ト、競馬倶樂部ノ取ル手數料一割五分ヲ差
  引クト、ソレハ三百二十二万四千八百圓ニ
  ナル、其外ニ穴ガ出タ爲ニ、剩餘金ガ來タ、
  此剩餘金ガ幾ラカト云フト百六十三万個ニ
  テッタノデアッテ、此納付金ト競馬倶樂部ノ
  手數料、穴カラ出ル剩餘金ヲ合計スルト、
  實ニ四百八十六万圓ニナル、僅カ二千百四
  十九万圓ノ中四百八十六万圓ト云フモノハ
  競馬倶樂部ニ天引サレテシマフ、隨テ一枚
  ノ馬劵ト云フモノガ二十圓ニ通用セズ、四
  圓二十一錢ヲ差引イタ十五圓七十九錢ニシ
  カ通用シナイノデアリマスカラ、是デハ競
  馬「フアン」ト云フモクハ到底合理的ニ考
  ヘテ利益ガアル筈ハナイノデアル、競馬ノ
  「フアン」ト云フモノモ、競馬ト云フモノハ
  決シテ儲カラヌコトハ能ク知ッテ居ル、能ク
  知ッテ居ルケレドモ、他人ハ損ヲシテモ俺ダ
  ケハ儲カルンダト言ッテ飛ンデ行ク所ニ、此
  競馬ノ不健全性ト云フモノガ潜ンデ居ル譯
  デアル(拍手)然ルニ今囘ノ改正案ハドウ
  カ、今囘ノ改正案ニ依ッテ、政府ハ從來一箇
  年納付金ガ百六十五万九千四百四十七圓デ
  アッタノヲ、更ニ二百一万四千百四十八圓ヲ
  增加シヨウト云フノデアル、此競馬カラ上
  ル金ト云フモノハ、平年度ニ於テ三百六十
  七万三千五百九十五圓ニシヨウト云フノ
  ガ現內閣ノ計畫ナノデアル、ソレデ一體
  是ダケ納付金ヲ上ゲルニハ幾ラ馬券ヲ賣
  ルト云フ計算カト申上ゲマスルト、現在デ
  ハ一箇年四千二百万圓シカ賣レナイ馬劵
  ガ政府ノ計畫デハ所謂馬券ト云フモノ
  ハヽ複勝式、單勝式一人二枚マデ買フコト
  ガ出來ルト云フ結果トシテ、七千四百万圓
  ト云フ多額ノ金ガ、競馬ニ依ッテ使ハレルト
  云フコトヲ、現政府ハ御計畫ナサッテ居ル、
  今囘ノ改正案ト云フモノハ如何ニ賭博若
  クハ富籤類ノ奬勵案デアルカト云フコト
  ガ、斯ノ如キ多額ノ馬劵ノ賣上ヲ期待シテ
  居ルト云フコトニ依ッテモ明カナル事實デ
  アル(拍手)然ルニ斯ノ如キ馬劵ヲ賣ル所ノ
  範圍ヲ擴メル又競馬ノ日數ヲ六日カラ八
  日ニ延長シナガラ、一方ニ於テハ競馬ヲ取
  締ル合理的ニ考ヘテモ、又不正行爲ノ點
  カラ考ヘテモ、競馬「フアン」ニ不利デアル
  所ノ此競馬ヲ取締ト云フコトニハ、極メテ
  不熱心ナ所ノ改正案ナノデアル、改正案ノ
  中ニ第十四條ニ、第一條ノ法人ノ開催スル
  競馬ノ競走ニ關シ、業トシテ多數ノ者ニ對
  シ財物ヲ以テ賭事ヲ爲シタル者ハ罰スルト
  云フ規定ヲ新ニ御設ケニナッタ、是ハ所謂呑
  屋ヲ取締ル規定ナノデアル、成程競馬場ニ
  ハ呑屋ナルモノガ橫行濶步シテ、盛ニ不正
  ヲ行"テ居ル、併ナガラ呑屋ノ取締ト云フコ
  トハ此改正案デ以テ、徹底的ニイカヌト
  云フコトハ先程讀ンダ所ノ馬政調査會ノ
  希望條件ニ依クテモ明カナノデアル、馬政調
  査會ノ希望條件ハ「勝馬投票劵類似行爲ノ罰
  則ヲ置カントスル所以ハ此種行爲ヲ撲滅セ
  ントスル趣旨ナルベシト雖モ寧ロ此種行爲
  ヲ發生セザルヨウ制度ヲ樹立スルコトヲ適
  當ナリトシ、一人一枚主義ノ撤廢ハ此種行爲
  發生ノ原因ヲ除去スベキガ故ニ是ガ撤廢ヲ
  適切ナリト認ム」ト馬政委員會ハ希望條件ヲ
  附シテ居ルノデアリマシテ、此馬政委員會
  ノ希望條件ニ對シテハ、無論吾々反對デア
  リマスケレドモ、併シ一面カラ考ヘマシテ
  呑屋ノ取締ト云フコトハ決シテ新タナル
  所ノ改正案デ出來ナイト云フコトハ馬政
  委員會ガ明カニ認メテ居ル事實ナノデア
  ル、而モ競馬ノ弊害ト云フモノハ呑屋デハ
  ナイ、呑屋ニ非ズシテ八百長ニアル、八百
  長ヲ盛ニ競馬關係者ガ行フト云フ所ニ競
  馬ノ弊害ガアルノデアッテ現行競馬法ノ第
  五條ヲ見ルト云フト、當該競馬倶樂部ノ役
  員開催執務員、調〓師、騎手及ビ馬丁等
  ノ馬劵ヲ買フコトヲ禁止シテ居ルケレド
  モ、實ハ是ハ有名無實ナ規定デアッテ、盛ニ
  競馬關係者ガ馬劵ヲ買フ、競馬關係者ガ馬
  劵ヲ買フカラ、ソコデ八百長ノ必要ト云フ
  モノガ起ルノデアッテ、此競馬關係者ヲ取締
  ルト云フ法規ヲ何處カニ設ケナケレバ、不
  正行爲ト云フモノハ斷然除去スルコトハ出
  來ナイ、然ルニ今囘ノ改正案ト云フモノハ
  唯馬劵購買數ノ擴張若クハ競馬日數ノ擴張
  ニ急ニシテ、僅カ呑屋取締ノ條文ヲ一箇條
  入レマシタケレドモ、是ハ馬政委員會ノ認
  メルガ如ク、實行不可能ナル規定ナノデア
  ル、ソレ以外ニ八百長取締ノ規定ヲ自ラ設
  ケヌト云フコトハ所謂弊風ノ廓〓ヲ期セ
  ズシテ、斯ノ如ク馬劵賣上ノ擴張ヲナシ、
  開催日ヲ延長シタコトガ、果シテ適當デア
  ルカドウカト云フコトヲ、農林大臣ニ御聽
  キシタイノデアリマス
  第七ニ御聽キシタイノハ地方競馬ノ問題
  デアル、公認競馬ガ盛ニナルト共ニ全國
  ニ存在シテ居ル所ノ地方競馬ト云フモノガ
  益〓盛ニナッテ來テ、殊ニ關東地方ニ於ケル
  柏、羽田、川越、熊谷、又關西地方ニ於ケ
  ル長岡、園田、明石、大阪、岸和田等ノ各
  競馬ノ如キハ殆ド公認競馬ヲ凌グ程ノ大
  盛況ヲ呈シテ居ル、三日間ノ賣上五十万圓
  以上ニ上ルコトモアル位デアリマス、然ル
  ニ公認競馬ノ外ニ、何故今日地方競馬ヲ認
  メテ居ルカト申上ゲレバ、公認競馬ト地方
  競馬トハ其目的ヲ異ニ致シテ居ル、地方
  競馬ハ地方的ノ產馬ノ奬勵ヲスルノガ目的
  デアル、ソコデ公認地方競馬規則ノ中ニ「競
  馬場所在ノ府縣內ニ出走ノ日迄引續キ三月
  以上飼養セラレザル馬ハ左ノ場合ヲ除クノ
  外之ヲ出走セシムルコトヲ得ズ」ト云フ規
  定ガアル、然ルニ現在ノ實際ハドウカト云
  フト、一ツノ馬ガ到ル處ノ各府縣ノ地方ノ
  競馬ニ出テ居ル、各府縣ノ市町村デ以テ、馬
  籍ニ登錄シテ居ルノデアリマスカラ、何處
  ヘデモ出ルコトガ出來ルト云フコトニ相
  成ッテ居ル、又ソレノミデナイ、現ニ公認競
  馬ニ出ル所ノ馬ガ、名前ヲ變ヘテ盛ニ地方
  競馬ニ出テ居ルノデアリマシテ、現ニ最近
  ニ開カレタル所ノ羽田ノ地方競馬ノ如キ
  ハ五十頭近クノ公認競馬ノ馬ガ出場シテ
  居ル始末デアル、是ハ全ク地方競馬ガ期待
  スル所ノ地方的ノ馬ノ奬勵デハナクテ、賭
  博以外ニ何等ノ目的ガナイカラシテ、ッ
  ノ馬ガ各地方ノ競馬ニ出ル公認馬ガ變名
  ヲ以テ出ルト云フコトニ相成ッテ居ルノデ
  アル、斯ノ如ク地方競馬ト云フモノハ、公認
  競馬以上ニ弊害ガ激シイ、一面ニ於テハ不
  正ガ行ハレ易イノデアッテ、今日公認競馬ハ
  一人一枚シカ馬劵ヲ賣ラヌト云フ制度ガ、
  比較的嚴重ニ守ラレテ居リマスケレドモ、
  地方ノ公認競馬ト云フモノハ一人デ以テ
  十枚モ二十枚モ、甚シキハ百枚モ二百枚モ馬
  劵ガ買ヘルト云フ始末デアル此弊害ノ多
  イ、地方產馬ノ奬勵上何等ノ目的ヲ達スル
  コトノ出來ナイ地方競馬ニ對シテ、現內閣
  ハ規則ノ改正ヲ計晝サレテ居ルト云フ話デ
  アル馬劵ヲ二圓若クハ三圓ニスルコトヲ
  御計畫ナスッテ居ルト云フ噂ガアリマスガ、
  果シテソレハ事實デアルカ、事實デナイカ、
  若シ事實デアルトスルナラバ私ハ是ハ公
  認競馬以上ノ〓博ノ奬勵ニナル、風紀上、
  思想上、弊害ノ甚シキモノト私ハ考ヘルノ
  デアル、地方競馬ニ對スル將來ノ御方針ヲ
  承リタイノデアリマス
  最後ニモウ一點御聽キシタイコトハ、今
  囘ノ改正案ノ中ノ第八條ニ「競馬場ノ開設
  又ハ維持、競走馬ノ出馬登錄又ハ出場、競
  馬ノ觀覽、勝馬投票劵ノ發賣又ハ購買、拂
  戾金又ハ競馬賞金ノ交付又ハ受領其ノ他競
  馬ノ施行又ハ開催ニ關シテハ地方稅ヲ課ス
  ルコトヲ得ズ」ト云フコトヲ御規定ニナラ
  ウトシテ居ル、現在十一箇所アル競馬塲ノ
  中、五府縣デハ地方稅ヲ取。テ、其金額ガ三
  十九万五千圓ニ達シテ居ル、然ルニ今日政
  府デハ此地方稅ヲ取ルコトヲ出來ナクシ
  ヨウト云フ、其理由ハ何處ニアルカト云フ
  ト競馬倶樂部ニ對スル所ノ納付金ト云フ
  モノヲ百分ノ四カラ六ニ上ゲル、ソコデ競
  馬倶樂部ノ方ニ對シテ餘裕ヲ取ル爲ニ、地方
  稅ヲ課スルコトガ出來ナイト云フ條文ヲ玆
  ニ御規定ニナッタノデアラウト私ハ想像ス
  ルノデアリマス、斯ノ如キハ中央財政ノ爲
  ニ地方財政ヲ壓迫スルモノデハナイカト思
  フ(拍手)殊ニ新聞ノ傳フル所ニ依ルト、現
  内閣デハ救護法ノ使用ニ、來年度ハ此競馬
  法カラ產出ス金ダケデオヤリニナリマスケ
  レドモ、昭和七年度以後ニハ、競馬法カラ
  產出ス金デハ足リナクテ、警察費連帶支辨
  金ヲ減額シテ之ニ充テル計畫ガアルヤウニ
  聞イテ居ル、現在警視廳ノ警察費連帶支辨
  金ハ十分ノ六之ヲ十分ノ五ニシテ約百
  四五十万圓ノ金ヲ產出スト云フコトヲ聞イ
  テ居ルノデアリマスガ、果シテ是ガ事實デ
  アルカドウカ、若モ是ガ實現シタ曉ニハ
  警察力ヲ減ラスカ、地方稅ヲ增スカノ二點
  シカナイ、併ナガラ今日ノ東京附近ノ狀況
  ヲ見テ何處ニ巡査ヲ一人減ラス餘地ガアル
  カ、全ク警察力ハ不足デアッテ、吾々都民ハ
  枕ヲ高クシテ寢ルコトガ出來ナイ狀況ノ現
  下ニ於テ警察力ト云フモノハ毫モ滅ラス
  餘地ガナイ、一面ニ於テ地方稅ト云フモノ
  ハ悉ク附加稅ハ制限外ニ課稅シテ、而モ
  震災ニ因ル所ノ負債ト云フモノヲ三千万圓
  背負シテ居シテ、是サヘ一錢一厘返スコトガ
  出來ナイト云フ狀況デアッテ、何處ニ增稅ノ、
  餘地ガアルカ、斯ノ如キハ全ク地方民ニ對
  シテ難キヲ强ヒルモノデアッテ、現內閣ハ有
  ユル點ニ於テ自己ノ財政ノ爲ニ地方財政
  ト云フモノヲ壓迫シテ居ルノデアリマスガ、
  其現ハレガ此處ニモ出ヨウトシテ居ル、私
  ハ今囘ノ此地方稅ヲ課スルコトヲ得スト云
  フ改正案ガ、地方財政ヲ壓迫スルモノト考ヘ
  ル者デアリマスガ、之ニ對シテ內務大臣ハ
  如何ニ御考ニナッテ居リマスカ、以上ノ點ニ
  關シマシテ、關係大臣カラ明快ナル御答辯
  ヲ得タイノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02519310310&spkNum=46

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• 047・藤澤幾之輔

  ○議長(藤澤幾之輔君)　町田農林大臣
  〔國務大臣町田忠治君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02519310310&spkNum=47

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• 048・町田忠治

  ○國務大臣(町田忠治君)　川島君ノ御尋
  ハ多岐廣洗ニ渉ッテ居リマス、七八問ト私
  ノ方ニハアリマスガ、便宜上私ハ一括シテ
  大體申上ゲルト、私ニ對スル質問ガ大抵御
  了解ガ出來ルコトヽ思ヒマス
  第一世間デモ誤解ヲシテ居ルヤウデアリ
  やべ、此誤解ヲ川島君ノ質問ニ依ッテ、世間
  ノ誤解ヲ解キタイト思フコトハ何カ此度
  ノ競馬法ノ改正ニ依ッテ、國家ガ納付金トシ
  テ新タナ收入ヲ得ル、其收入ヲ救護法ニ全
  部使フガ如キ誤解ガ世間ニアリマス、川島
  君ハ左樣デアリマスマイガ大體ニ於テ此
  度ノ救護法ニ要スル一年ノ經費ガ、私ノ記
  憶ニ依ルト約三百万圓デアリマス、大藏當
  局トシテ、一年ノ計算ニ於テ約三百万圓ノ
  經常財源ヲ要スル考デアリマシタ而シテ
  農林省ガ競馬法ノ改正ニ依テ教護法ニ分ツ
  金額ハ大體四十万圓ト御記憶下サレバ宜
  シイ、此度ノ改正ニ依ッテ、二百万圓新タナ
  增收ガ出來マス、併シ其二百万圓ノ增收ノ
  中ノ約六十万圓ハ、從來地方稅若クハ地方
  納付金トシテ競馬所在地ニ納付セシメテ居ク
  タ、金額ハ約六十万圓デアリマス、先刻川
  島君ノ御話ノ通リ、此度ハ一切地方稅若ク
  ハ地方納付金ヲ課スルコトヲ得ズトシテ、
  斯樣ニ定メテアルト云フコトハアナタノ
  御話ノ通リデアリマス、之ニ依ッテ地方財政
  ガ如何ニナルト云フコトハ、內務大臣カラ
  答辯セラレルデアリマセウガ、私ノ方ノ立
  場トシテハ、此地方ニ納付セシメテ居ッタ六
  十万圓ガ、此度ハ農林省ノ方ニ歸ッテ來ルノ
  デアリマス、競馬法實施ノ責任者タル吾々
  ノ見ル所ハ、左樣ニ出テ居リマス、故ニ今
  マデノ百分ノ四ヲ百分ノ六ニスルト云フコ
  トハ、納付金ノ率ヲ高メテアルト云フヨリ
  モ、地方デ取ッテ居リマシタ地方納付金ヲ中
  央ニ囘收シタガ爲ニ、百分ノ六以內ト致シ
  タノデ、是ガ爲ニ競馬協會、競馬會社ノ負
  擔ヲ重クシタト云フ意味デハアリマセヌ、
  其地方稅ニ及ボス關係ハ、內務大臣ガ別ニ策
  アリト云フコトデアリマスカラソレヲ御
  聽キナスッタ上ニ願ヒマス
  ソレカラ此度ノ競馬法ノ改正ガ、何カ風
  〓ニ害アルカノ如キ御質問デアリマス、私
  共モ風〓ヲ常ニ重ジテ、競馬法ノ改正ニ對
  シテハ、常ニ愼重ナ考慮ヲ拂ァテ居リマス、
  前內閣ガ競馬法ヲ改正セントシテ提案サレ
  タ際ニ吾々ガソレニ贊成スルコトヲ躊躇
  致シマシタ主ナル原囚ハヤハリ風〓問題
  デアリマシタ、併シ此度ノ改正ハ單勝式ト
  複勝式ヲ併セ行フト云フノデアリマス、
  單勝式ハ寧ロ賭事ノ分量ガ非常ニ多イノデ
  アリマス複勝式ハ危險ヲ平分シテ、所謂
  賭博ノ性質ハ單勝式ニ於テヨリモ、複勝
  式ニ於テ著シク輕減サレテアルコトハ御承
  知ノ通リデアリマス故ニ此度ハ單勝式ヲ
  止メテ、複勝式ヲヤルノデハアリマセヌ、
  單勝式ト複物式ヲ同時ニ併行スルコトノ出
  來ル規定デアリマスノデ、單勝式ニ屬スル
  賭事ノ弊害ハ、從來ノ通リデアリマス、併
  シ是ハ複勝式ニ依ッテ緩和サレテアリマス
  ガ故ニ全體ノ分量カラ參リマスレバ、風
  〓ニ害アリト見ラレル程度ハ著シク之ニ
  依ッテ改善セラレタコトデアリマス、ソレカ
  ラモウ一ツ中シテ見タイノハ從來ノ競馬
  ニ對スル一般ノ弊害ハ取締ガ單リ競馬會
  社ニバカリ參リマシテ、業務トシテ場內若
  クハ場外ニ於テ甚シキ弊害ヲ伴フ所ノ所謂
  「ガラ」トカ云フコトガ日ニ益〓盛ニナデン
  來ルト云フコトデアリマス、東京、橫濱ノ
  如キ所ニ於キマシテ、關西ニ於ケル桃山等
  ヨリモ、馬劵賣買ニ依ッテ得マシタ所ノ上リ
  高ノ頗ル少ナイ所ノ其原因ノ主ナルモノガ
  風〓ヲ最モ害シテ居ル所ノ、公然タル馬券
  ノ賣買ニ依ラザル所ノ一種ノ忌ハシキ「ガ
  ラ」ガ玆ニアルノデアリマス、此取締ガ完全
  ニナリマスト、公ニ許シテアル所ノ馬券ノ
  賣上高ハ著シク增加スルノデアリマス、之
  ニ依ッテ自然ト收入ガ增シ、川島君ガ四千何
  百万圓ガ七千何百万圓ニナルト言ハレル、
  此增シ方ハ、第一複勝式ヲ合セ行フコトニ
  依ッテ得マス收入、ソレカラ十倍ノ割戾金ヲ
  ヤック殘リガ、今マデハ競馬會社ガ之ヲ收入
  シテ居ル之ヲ出來ルダケ馬劵ヲ買入レタ
  者ニ吳シテヤルト云フコトニ依ッテ、將來收
  入ノ多ク增スコトガ第二デアリマス
  第三ニハ最モ明カナノハ從來地方デ取シ
  テ居リマシタル地方納付金ガ、移クテ中央ニ
  參リマス、之ニ依ッテ得ベキ收入ノ明カニ
  增スコトガアリマス、之ニ依リ凡ソ二百万
  圓ノ增牧ガアルノデアリマス、然ラバ川島
  君ハ何故從來ハ馬事振興ノ爲ノミニ使ッテ
  居ノタ此納付金ヲ更ニ社會事業ノ方ニ分ツ
  ノデアルカ、川島君ノ御說ニ依ルト、此納
  付金ハ絕對ニ馬事振興ニ限ルベキモノデア
  ルトノ斷案ヲ下サレテノ御員問デアリマス、
  是モ一種ノ見方デアリマス、併シ歐米各國
  ノ例ニ依リマスルト、歐米各國ノ最近ノ傾
  向ハ一面馬事振興ト同時ニ、社會奉仕ト中
  シマセウカ、社會事業ニ此幾分ヲ使フト云
  フコトハ、殆ド各國ニ於テ例外ナキ普通ノ
  コトヽ相成ッテ居ルノデアリマス、私ハ玆デ
  諸君ニ向ッテ强テ爭ヲ求メマセヌガ、前內閣
  ガ百分ノ一カラ百分ノ四マデ納付金ヲ增サ
  ルル案ヲ出サレタ、前內閣ノ當局者モ將來
  相成ルベクハ此一部ヲ社會事業ニ使ヒタイ
  ト云フ、希望ヲ持ッテ居ルト云フ意思ヲ表明
  サレタコトヽ私ハ承知致シテ居リマス、殊
  ニ前內閣ノ時ニ於キマシテ豫算トシテ新
  ナ收入ガ百六十万圓位アルト云フ計算デア
  リマシタモノヽ中ニ、百四十万圓ヲ馬事振興
  費ニ向ケラレテ、他ノ二十万圓ハ一般財源
  ニ繰入レラレテアルコトハ事實デアリマ
  ス、私ハ强ヒテ前內閣ノコトハ申シマセヌ
  ガ、凡ソ斯樣ナ性質ノ納付金ハ其幾分ヲ社
  會事業ニ使フコトハ單リ西洋各國ニ於テ
  旣ニ行ハレタノミナラズ、我國ニ於ケル
  般ノ思想モ斯樣ニ傾イテ居ルノハ當然ト考
  ヘマス、故ニ唯我國ニ於テハ馬事ノ振興ハ
  マダ十分デアリマセヌ、後刻陸軍大臣カラ
  答辯セラレマセウガ、現ニ私ノ所管ト今ハ
  ナッテ居リマス馬事振興ハ第二期計畫ノ
  今日ハ中途ニアリマスガ、國防上カラ見マ
  シタ所ノ百五十万頭ヲ優良ナル馬ニ依ッテ
  充實スルト云フコトハ實現サレテ居リマ
  セヌ、故ニ之ヲ充實セシムル爲ニ所謂種馬
  ノ充實或ハ牧野法ノ制定、合セテ其一部ヲ社
  會事業ニ與ヘルト云フコトノ爲ニ此改正ヲ
  求メタノデアリマス、而シテ茲ニ御記憶願
  ヒタイ最モ重大ナルコトハ、此法律ニ依ッテ
  納付金ノ少クトモ三分ノ二ハ馬事振興ニ用
  ヒルトシテハ、將來ハ率ザ知ラズ、今後當
  分ノ間馬事ノ改良ノ完備セザル間ハ此納
  付金ノ三分一以下ヲ以テ社會事業ニ投ジ、
  少クトモ三分ノ二ハ法律ニ依ッテ馬事振興
  ノ爲ニ之ヲ用ヒルト云フ規定ヲ設ケタノデ
  アリマス、川島君ノ御尋ハ色々ニ分レマス
  ガ、大體今私ガ中上ゲタコトハ、川島君ノ
  御質問ノ各方面ノ御答辯ト相成ルコトヽ存
  ジマス(拍手)
  〔國務大臣宇垣一成君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02519310310&spkNum=48

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• 049・宇垣一成

  ○國務大臣(宇垣一成君)　川島君ノ御質問
  ニ御答致シマス御質間ヲ要約致シテ見マ
  スト、凡ソ三ツニ分ケテ御答ヲ致シタナ
  ヲバ宜カラウト思フノデアリマス、其
  一ツガ陸軍當局ハ馬事ノ振興ノ現況ヲ如
  何ニ見テ居ルカ、又第二ニハ現狀ニ於テ
  軍事上差支ナイカ、現程度ニ於テ滿足シ
  テ居ルカ、又第三ニハ若シ滿足セナイトス
  ルナラバ將來ニ對スル馬事ニ關スル今後ノ
  目標ヲ如何ナル所ニ置イテ居ルカト、斯ウ
  云フ意味合ニ拜聽致シタノデアリマス、馬
  事ノ改良ハ漸次ニ好成績ヲ擧ゲツヽアリマ
  ス、併ナガラ今日ニ於キマシテハ機械動力
  ノ發達ヲ伴ヒマシテ、ドウモ馬ノ數ノ增加
  ト云フコトハ吾々ノ豫期シテ居ルヤウニハ
  參ッテ居リマセヌ、思ハシクアリマセヌ、隨
  テ現狀ニ於テ軍事上差支ナイカ、現程度ニ
  滿足シテ居ルカト申セバ遺憾ナガラ未ダ
  是デ結構デアルト云フコトハ申上難イノデ
  アリマス、卽チ現時吾々ノ方面ニ於テ調査
  致シテ居リマスル所ノ馬ノ總數ハ、凡ソ百
  五十万頭バカリデアリマス、其中カラ四歲
  以下ノ幼馬ト、十六歲以上ノ老馬ヲ除キマ
  スル時ニハ地方馬ノ中デ軍用ノ資格ヲ有
  シテ居ルモノハ凡ソ五十九万頭バカリアリ
  マい、其中カラ更ニ又姙娠シテ居ル馬約十
  二万頭バカリヲ控除致シマスルト、直チニ
  軍用ニ供シ得ベキ數ト云フモノハ四十七万
  頭內外ニナルノデアリマス、此數ハ戰爭ノ
  初期ノ需要ニハ應ジ得ラレマスルガ、戰爭
  ガ少シク長ク繼續スルト、又規模ガ意想外
  ニ擴大シテ來ルト云フヤウナコトニナリマ
  スルト、ソコニ不足ヲ感ズルヤウナ次第デ
  アリマス、斯樣ナ次第デ現狀ニ於テハ滿足
  ヲシ、結構デアルト申上ゲ難イノデアリマ
  スルガ、然ラバ今後ニ對シテハ其馬事ノ振
  興改良ヲ如何ナル點ニ目標ヲ置イテ進ム
  カト申シマスレバ軍部ノ希望、要求ト致
  シマシテハ、所謂百五十万頭ト云フコト
  此總數ノ維持ドチラカト申セバ動モスル
  ト此馬ノ數ガ機械動力ノ發達ニ伴ヒマシ
  テ減ジヤウト云フヤウナ趨向ガアリマス
  カラ此百五十万頭ト云フ總數ノ中ニ於ケ
  ル馬ノ種質ノ改良向上、其改良向上ト云フ
  ノハドウ云フ方面ニ改良ヲシ向上ヲ圖ルカ
  ト申セバ持久力ノ强イ、且ツ用途ノ廣キ
  馬ヲ多ク作ルト云フ方面ニ向ッテ進ミタイ
  ト思ウテ居ルノデアリマス、大體御質問ノ
  要點ハ是ダケト思ヒマス(川島君「競馬ニハ
  贊成デスカ」ト呼フ)勿論贊成デアリマス
  〔國務大臣安達謙藏君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02519310310&spkNum=49

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• 050・安達謙藏

  ○國務大臣(安達謙藏君)　私ニ對スル御尋
  ハ主ニ最後ノ地方稅ニ關スル御尋デアリマ
  シタ、最初ニ一言致シテ置キマスガ、此度競
  馬法ガ改正セラレマシテ、從來ハ馬匹ノ改
  良トカ、增殖トカ、馬事思想ノ普及トカ云
  フコトニ限ッテ居ッタモノガ、更ニ之ニ社會
  事業ノ財源ニ充テルト云フコトガ加ハリマ
  シタノハ是ハ我國ノ競馬法ノ一大改良、
  一大進步ト思ヒマス、此度救護法ヲ實施ス
  ルニ當リマシテ、其財源ノ一部ヲ競馬ノ收
  入ニ求ムルコトニ致シマシタ、而シテ公認
  競馬ノ收入ハ之ヲ國ノ救護法實施ノ費用ニ
  充テ、地方競馬ノ收入ハ之ヲ府縣ノ救護法
  施行ノ費用ニ充ツルノ方針ヲ執リマシタ、
  此方針ニ基キマシテ、公認競馬ニ付キマシ
  テハ、政府納付金ノ率ヲ引上ゲ、又競馬法
  施行規則第十九條ノ剩餘金額ヲ拂戾スコト
  ニシテ、競馬法ヲ改正セントスル故ニ、此
  上更ニ公認競馬ニ對シ地方稅ヲ課スル時ハ
  負擔過重トナリマシテ、競馬ノ執行ニ支障
  ヲ來スモノト認メマスカラ、之ヲ認メザル
  コトニ致シマシタ、此結果從來馬劵買得稅
  ノ許可ヲ受ケタル横濱市及ビ福岡縣ハ、將來
  課稅ヲスルコトヲ得ザルコトヽナリマス、
  隨テ是ハ財源ヲ別ニ求メネバナリマセヌ、
  外ニ數府縣アルヤウニ御話ニナリマシタ
  ガ、是ハ縣稅ヲ課シテハ居リマセヌ、是ハ
  寄附金ニナッテ居リマス、ソレデ横濱市ニ於
  キマシテハ御話ノ通リ馬券買得稅ノ收入
  トシテ十二万五千圓ヲ豫算ニ計上シテ居リ
  マシテ昭和六年度ニ於キマシテハ其半
  額ノ六万二千五百圓ノ歲入缺陷ヲ生ズルコ
  トニナリマスガ、此缺陷ヲ補塡シマスノニ
  ハ歲出ノ整理節約或ハ政府高利債ノ借替
  等ニ依リマシテ、之ヲ補塡スルコトニ致シ
  タノデアリマス、サウシテ昭和七年度以降
  ハ此十二万五千圓ノ財源ヲ失フコトニナリ
  マスノデ、是亦同樣ノ方法ニ依ッテ補塡スル
  コトニ致シマス、又內務省ト致シマシテハ、
  昭和六年度ノ行政、財政、稅制整理ニ依リ
  マシテ幾分國費ニ餘裕ガ生ズルコトニナ
  リマシタ場合ハ、神奈川縣及ビ横濱市ノ財
  政救濟ノ爲ニ、相當ノ國費ヲ補給スルノ希
  望ヲ有シテ居リマス、ソレカラ福岡縣ニ付
  キマシテハ福岡縣ノ馬券買得稅收入豫算
  ハ約五万圓デアリマス、同縣ニ對シマシテ
  ハ、地方競馬觀覽稅ヲ許ス見込デアリマス、
  此福岡縣ノ地方競馬入場劵賣上高ハ百三十
  五万圓デアリマスガ、其百分ノ五卽チ六万
  七千圓ノ收入ニナリマス、之ヲ以テ歲入不
  足ヲ補塡致シマスレバ一万七千圓ノ餘剩ヲ
  生ズルコトヽナルノデアリマス、ソレカラ
  地方競馬ノコトニ付キマシテハ是ハ地方
  競馬規則ヲ改正致シタイト思ヒマシテ、農
  林省ト協議ノ上デ既ニ若干話ガ進行シテ居
  リマス、サウシテ取締等ハ嚴重ニ致ス積リ
  デゴザイマス
  〔政府委員野村嘉六君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02519310310&spkNum=50

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• 051・野村嘉六

  ○政府委員(野村嘉六君)　川島君ノ御尋
  ハ文部省トシテ競馬ハ風〓竝ニ思想上如
  何ニ考ヘルカト云フ御質間デアリマス、文
  部當局ト致シマシテハ競馬ハ風〓上竝ニ
  思想上宜シイトハ思ヒマセヌ、併ナガラ馬
  匹ノ改良增殖及ビ馬事思想ノ普及ヲ圖ルコ
  トヲ目的トスルノデアリマスカラ、產業奬
  勵上差支ナイコトヽ存ジマス、又取締ヲ嚴
  重ニスル以上ハ風〓上ノ弊害ヲ防ギ得ルコ
  トヽ思ヒマス、殊ニ只今農林大臣ハ此改正
  案ハ從來ノ法律ヨリハ風〓上ノ弊害ヲ一層
  除クコトニ努メタト云フコトデアリマスカ
  ラ、文部當局ト致シマシテハ此點ヲ以テ
  御答ト致シマス(拍手)
  〔政府委員泉二新熊君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02519310310&spkNum=51

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• 052・泉二新熊

  ○政府委員(泉二新熊君)　司法大臣ハ貴族
  院ニ於ケル豫算總會ニ出席ノ爲ニ差支ガア
  リマスノデ、政府委員カラ御答申上ゲマス、
  司法省ニ對スル御質問ノ御趣旨ハ勝馬投
  票劵ノ賣買ニ關スル行爲ハ、〓博又ハ富籤
  類似ノモノデアルト思ヒマスガ之ヲ今囘
  擴張シテモ刑法ノ擁護上差支ナイト考ヘル
  カト云フ御趣旨デアッタト思ヒマス、此勝馬
  投票權賣買ニ關スル行爲ハ、其本質上カラ
  申シマスト、富籤デアルト云フコトニ付キ
  マシテハ、旣ニ歐米諸國ニ於ケル學說モ殆
  ド一致シテ居ルト申上ゲテ宜シイノデアリ
  マス、隨ヒマシテ之ヲ出來得ル限リ取締ル
  ト云フコトノ必要デアルノハ申スマデモナ
  イコトデアリマス、併ナガラ一面ニ於キマ
  シテ公益ノ要求スル所已ムヲ得ナイト云フ
  場合ガアリマスル時ハ此競馬デアリマス
  ルトカ或ハ取引所ニ於ケル相場取引デア
  リマスルトカ、其實質上カラ申シマスルナ
  ラバ、富籤又ハ〓博ニ當ルヤウナ行爲デア
  リマシテモ、國法ガ之ヲ許シテ居ルコトハ
  今日ノ現行法ガ之ヲ證明シテ居ルノデアリ
  マス、又外國ノ例ト致シマシテモ、澤山ニ
  之ヲ數ウルコトガ出來ルノデアリマス、今
  囘ノ改正ニ付キマシテハハ一面ニ於テ競馬
  開催ノ日數ヲ二日程增加スルト云フ點ニ於
  テ疑問ニナッテ居ル譯デアリマスルガ、他ノ
  一面ニ於キマシテハ從來ノ單勝式ニ加ウ
  ルニ複勝式ヲ以テスルト云フコトヤ、ソレ
  カラ從來割戾シヲ受ケルコトノ出來ナカッ
  タモノヲ、馬劵購買者全部ニ割戾ス場合ガ
  アルト云フヤウナ規定モ設ケラレタノデア
  リマシテ、危險負擔ノ率ガ幾分減少シテ居
  ルノデアルト云フコト、及ビ主務省ノ御說
  明ヲ能ク聞キマシテ〓究シタ結果ニ依リマ
  スルト云フト、本法ノ運用上從來ヨリモ一
  層有效ナル取締ノ方法ヲ講ゼラレルト云フ
  コトヲ承リマシタサウシテ此程度ニ於テ
  改正ガ行ハレマシテモ、尙ホ歐米諸國ニ於
  ケル競馬法ト較ベテ見マスルト云フト、非
  常ニ嚴重ナル制限ガ附セラレテ居ルコトニ
  ナッテ居ルノデアリマス、唯吾々ガ憂ヘマス
  ルコトハ、許可ノ條件ニ隨ッテ馬劵ヲ賣買致
  シマスルト云フ行爲ヨリ、之ニ關聯シテ行
  ハレマスル所ノ呑屋ト稱スル者ガアリマ
  ス、之ニハ色々ナ弊害ガアルノデアリマス、
  外國ノ立法例ニ於テハ「ブック·セーラー」ト
  シテ之ヲ許シテ居ル所モアルシ、禁ジテ居
  ル所モアルノデアリマス、日本ノ法律デハ
  無論之ヲ禁ズル趣旨デアルノデアリマスル
  ガ、今マデハ唯刑法デ罰シテ居ッタノデアリ
  マスガ、刑法ノ却定デハ輕イ、此度ハ更ニ
  呑屋ト稱スル者ニ對シテ嚴重ナ刑罰規定ヲ
  設ケルト云フコトナドニ依リマシテ、二日
  ノ日數ヲ增加スルト云フコトヨリ生ズル危
  險ヲ防グニ大丈夫デアラウ、之ヲ要シマス
  ルニ今囘ノ改正ガ刑法ノ精神ヲ破壞スルヤ
  ウナ結果ニナルト云フコトヲ考ヘマセヌノ
  デ、本法ノ改正ニ司法省トシテハ贊成ヲシ
  テ居ル次第デアリマス(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02519310310&spkNum=52

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• 053・藤澤幾之輔

  ○議長(藤澤幾之輔君)　藤井達也君
  〔藤井達也君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02519310310&spkNum=53

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• 054・藤井達也

  ○藤井達也君　同志ノ川島君ヨリ詳細ニ
  瓦ツテ政府當局ニ御質問ガアッタノデアリマ
  スルガ、只今ノ御答辯ヲ承テテママルト、
  農林大臣ノ御說明ノ如キニ至リマシテハ
  全ク要領ヲ得ナイモノデアルト言ハネバナ
  ラヌノデアリマス、陸軍大臣ニ於カレテモ、
  又農林大臣ニアラセラレテモ、大體本案制
  定當初ノ目的ハ如何ナル點ニアッタノデア
  リマスルカト云フコトヲ、御忘レニナッテ居
  ルデハナイカト私ハ思フノデアリマス、(拍
  手)本案ノ制定ノ當初ノ目的ハ言フマデモ
  ナク、馬ノ增殖、改良、若クハ馬事振興思
  想ノ普及ト云フコトガ主眼トナッテ出來テ
  居ルノデアリマスルカラ若シ夫レ改正ノ
  必要ガアリトシマスルナラバ或ハ社會的
  事業ニ、本改正ニ依ッテ得マシタル經費、財
  源ト云フモノヲ使用シヤウト云フ御考デア
  リマスルナラバ當初ノ目的ガ十分到達致
  シマシテ政府當局トシテ馬事振興ニ於テ
  遺憾ナキト云フ結果ヲ見タル後ニ
  〔議長退席、副議長著席〕
  社會政策ニ其金ヲ使用スベキモノデアルト
  考ヘルノデアリマス(拍手)然ルニ只今農林
  大臣ノ御說明ハ不得要領デ全ク吾々諒解
  スルコトガ出來マセヌガ、現ニ陸軍大臣ノ
  御說明ヲ御聽キ致シマシテモ、此本案制定
  ノ最初ノ目的ト云フモノニハ、未ダ到達致
  サズシテ、餘程ノ距離ノアルコトヲ吾々ハ
  確實ニ考ヘルノデアリマス、故ニ私ハ重ネ
  テ御尋シタイノハ、農林當局トシテモ亦國防
  ノ衝ニ當リ、特ニ軍馬ト云フモノハ軍事ニ
  際シテ重要ナ武器デアル、普佛戰爭當時ニ
  ハ百人ノ兵隊ニ七頭位ノ軍馬デ足リタモノ
  ガ、却テ歐洲戰爭ニナリマスルト百人ノ
  兵隊ニ三十三頭ヲ要スルト云フヤウニ、武
  器ガ次第ニ發達致シ、飛行機或ハ又飛行船
  或ハ自動車等ガ盛ニ發達シタ此戰爭ヲ考
  ヘテ見マシテモ如何ニ軍馬ト云フモノガ國
  防上ニ於テ、陸軍ニ必要デアルカト云フコ
  トハ十分吾々ノ說明ヲ要セズシテ御諒解
  ノコトヽ思フノデアリマス、然ラバ此本案
  制定ノ最初ノ目的ヲ御考ヘニナリ其目的
  ト云フモノニ向ッテ十分ナル施設ヲ致シ、其
  餘裕アッタトキニ初メテ其金ヲ他ニ使用ス
  ルコトガ、私ハ最モ適當ナル所ノモノデア
  ルト思フノデアリマス、之ヲ言フト農林大
  臣ハ或ハ又內務大臣ニシテモ、ソレハ外國ノ
  例ハドウデアル佛蘭西ハドウデアルト云
  フヤウナコトヲ仰セニナリマスルガ、熱
  佛蘭西ト、或ハ其他ノ國ト我國ト相比較〓
  シマシテ、決シテ日本ノ馬ト云フモノガ他
  國ニ輸出スル程立派ナ馬ニモナッテ居ラヌ
  ト思フノデアリマス、同時ニ又外國ト比較
  致シマシテ馬事ノ振興ノ盛デアルトハ申ス
  コトガ出來ナイト思フクデアリマス、特ニ
  外國人ハ大體皆賭博心ノアル國民デアリ
  P.H.射倖心ノ强イ國民デアリマス投機
  心ノ盛ナ國民デアルカラ、事ニ當リマシテ
  ハ馬ト云ハズ「ベースボール」ト云ハズ或
  ハ「テニス」ニシロ、或ハ「ボクシング」ニシ
  ロ或ハ「レスリング」ニシマシテモ、皆何
  事デモ賭ヲシナケレバ夜モ日モ明ケヌト云
  フ國民ノヤッテ居リマスル制度其儘ヲ日本
  ニ持ヲテ來テ、外國ガヤルカラ日本デモ眞似
  ヲセナケレバナラメト云フヤウナコトノ考
  ハ、寧ロ御止メ願ヒタイト私ハ閣僚諸君ニ
  御願シテ置クノデアリマス
  諸君、現ニ此本案ノ制定ノ當時ニ於キマ
  シテノ大正十二年、四十六議會ニ於キマス
  ル其當時ノ山梨陸軍大臣ノ提出ノ趣意ヲ考
  ヘテモ、其說明ノ中ニ、「卽チ競馬振興ノ策
  ヲ講ジマシテ、之ニ由リマシテ國民ノ馬ニ
  關スル思想ヲ振起致シ、サウシテ馬ノ改良
  增殖ニ强力ナル所ノ根柢ヲ與ヘルコトハ
  此間ニ處シテ極メテ有效ノ一手段ト信ズル
  ノデアリマス」、謂ハバ此目的ト云フモソハ
  全ク馬ノ振興ノ爲ニ此本案ハ制定スルモノ
  デアル、他ニ何等ノ考ガナイト云フコトヲ
  明瞭ニ申サレ、又田中內閣、昭和四年、五
  十六議會ニ於キマシテ、時ノ農林大臣山本
  悌二郞氏ノ御說明ヲ拜聽シマシテモヤハ
  リ同ジヤウナ趣意ト云フモノガ滔々論述サ
  レテ居ルノデアリマス、要スルニ本案ノ目
  的ト云フモノハ、全ク國家ノ產業ニ於キマ
  シテ、或ハ又軍事ノ上ニ於キマシテ、ドウ
  シテモ百五十万頭ト云フモノヲ維持シ、而
  モ是等ノ馬ト云フモノハ皆立派ナ馬ヲ造リ
  タイト云フコトガ趣意ニナッテ本案ヲ出シ
  タモノデアル、射倖心ヤ或ハ〓博ヲヤツカ
  リ、富籤ヲヤルヤウナ思想デ以テ出來タモ
  ノデナイト云フコトハ當局自ラ御承知デ
  アリマスルナラバ馬事振興ト云フモノノ
  目的ヲ十分ニ完成致シマシテ、サウシテ其
  餘裕アッタ場合ニ初メテ之ヲ社會事業ニ使
  用スルト云フコトニナリマスルコトガ、正
  シイ所ノ考デアルト思フノデアリマス、然
  ルニ此競馬料ヲ集メテ社會事業ノ爲ニ使用
  スルノデアル、外國デヤッテ居ル外國デ
  ヤッテ居ルカラ其眞似ヲスレバ宜シイト云
  フヤウナ輕卒不謹愼ナ態度ヲ以チマシテ
  本案ヲ改正ヲ致シ、而モ其金ヲ無理ニ馬事
  振興ノマダ其完成セザルニ先チ、其賭博ニ
  依ッテ出來マシタ金ト云フモノヲ社會事業
  ニ使用スルト云フコトハ、是ハ外國人ナラ
  バイザ知ラズ、我國ニ於キマシテハ先ヅソ
  ンナ思想ト云フモノヲ去ッテコソ初メテ國
  民思想ノ善導ガ出來ルモノト考ヘテ居ルノ
  デアリマス、然ルニ本案ニ對スル答辯ヲ見
  ルト、全ク閣僚共ニ少シモ要領ヲ得ナイノ
  デアリマスカラ、私ハ農林太臣ニ是レ以上
  御尋ヲシマセヌ、御尋シマシテモ唯要領ヲ
  得ナイ御答辯ガアルト思ヒマスルガ、ドウ
  陸軍太臣ダケハハッキリト現在ノ施設狀況
  ニ於テ、現在ノ實情ニ於テ現在ノ馬事振
  興程度ニ於テ、最早十分デアル、餘リガア
  ルカラ社會事業デアリマスル所ノ救護法ハ
  財源ニ之ヲ使用スルモノデアルト云フコト
  ヲ明瞭ニハッキリ御答ヲ願ヒタイト思フ
  ノデアリマス
  先程モ川島君カラノ御質問ガアリマシタ
  通リ、田中內閣當時ニ於キマシテハ農林省
  所管ニ關シテハ國家ノ產業政策ノ見地ヨ
  リ考ヘマシテ、國家ニ出來ルダケ產業ト云
  フモノヲ與ヘ、國家ノ富ヲ殖シ、尙且ツ國
  民ノ生活ヲ樂ニシタイト考ヘマシタカラ
  農林省所管ニ付テハ十分ノ案ヲ計畫シ豫
  算モ計上シタノデアリマス、然ルニ現內閣
  ニナリマスルトヤレ財政ノ緊縮デアル經
  濟ノ消費デアルト云フヤウナ名目ノ下ニ、
  實行豫算ニ名ヲ藉リマシテ殆ド其金額ハ
  一千万圓以上モ農林省管轄ニ於テ金額ガ
  減ッテ居ルノデアリマス、取分ケ川島君ノ質
  問ノ通リ、此馬事振興ニ關シマスル經費ヲ
  見マスルト、殆ド驚クベキ所ノ金額ガ少ナ
  クナッテ居ルノデアリマス、例ヘバ動物購買
  費ガ二十一万四千七百圓減シテ居リマス、馬
  事振興奬勸費ガ十二万九千五百二十圓減ッ
  テ居リマス種馬所及ビ種馬牧場費ト云フ
  モノガ二十七万九千九百十四圓減ッテ居ル
  ノデアリマス、今日追加トシテ十三万七千
  六百九十三圓出マシタガ、ソレデモ殆ド十
  五六万圓ト云フモノハ減テテルルノデアリ
  WV、例ヘバ畜產試驗場ノ新營ト云フモノ
  ガ九万一千餘圓ニナッテ居リマシタモノガ、
  是ハドレダケ減ッタカト云フト、八万二千餘圓
  モ減フテ居リマスヾ九万一千餘圓ノ中九千四
  百五十圓ヲ殘シテ置イテ、八万二千餘圓ト
  云フモノハ減ッテ居リマス、又馬事振興ニ付
  テ最モ大切ト御考ニナリマスル種馬所及ビ
  種馬牧場新營ト云フモノガ三十万六千九百
  餘圓トナッテ居リマシタモノヲ、六万四千圓
  ト云フモノヲ殘シマシテ、二十四万二千九
  百圓ト云フモノヲ減ジテ居リマス、政友會
  內閣時代ニ於キマシテハ三十万六千圓以
  上アッタモノヲ、現內閣ハ之ヲ六万四千圓
  ヲ殘シテ、其差額二十四万二千九百餘圓ト
  云フモノヲ削ッタノデアリマス、此度追加豫
  算ニ依リマシテ八万圓ダケ囘復シタノデア
  リマス、又種馬所及ビ種馬牧場修繕費モ政
  友會內閣ノ時ニハ九万三千八百餘圓アリ
  マシタノヲ現內閣ハ一万二千圓ト致シマ
  シテ、差引八万一千八百五十圓ト云フヤウ
  ナモノヲ減ジタノデアリマス、面シテ追加豫
  算ニ依ッテ僅ニ四万四千五百餘圓ト云フモ
  ノガ增加致シマシタガ、要スルニ殆ド馬事
  振興ト云フコトニ關シテハ盲滅法ニ豫算
  ヲ削テテ居ルノデアリマス、吾々カラ考ヘ
  マスルト、又農民諸君カラ考ヘ、特ニ畜產
  ニ關係ノアリマス農村方面カラ考ヘマスル
  ト現內閣ト云フモノハ馬事振興ニ何等誠
  意ガナカッタト云フコトハ此事實ニ依ツ
  テ明瞭ナラザルヲ得ナイノデアリマス
  斯ノ如クニ私ハ僅カ二三ノ事項ヲ取ッタノ
  デアリマスガ、之レ全體ヲ讀ンダラ諸君ハ
  ビックリシマセウ、到ル處ニ馬事振興ニ關ス
  ル重要ナルモノガ殆ト全部削減、削除サレ
  テ居リマス、例ヘバ其一ツヲ讀ンデ見マセ
  ウ地方競馬指導奬勵費ト云フモノハ政友
  內閣當時ハ二万五千三百五十餘圓、現內閣
  ニナルト奬勸費ガ一万圓削ッテシマッテ僅ニ
  一万三千四百五十圓ヲ殘シタ程度デアリマ
  ス、國家ノ馬事振興若クハ競馬獎勵ト云フ
  ヤウナ農村ニ最モ大切ナ馬ニ關係アル仕事
  ト云フモノハ、農林省ニ於キロシテ殆下
  片ッ端カラ之ヲ削ッテ居ルヤウナ次第デアリ
  マスカラ、先程申シマシタ通リ現內閣ハ農
  村ニ理解ナク、及ビ農村ノ馬產ニ關シテ全
  然理解ガナイバカリデナク、何等誠意ノ見
  ルベキモノガナイト云フコトハ明瞭デアリ
  W. .然ルニ承ル所ニ依リマスルト、是
  陸軍大臣、農林大臣ニモ是非共聽イテ頂戴
  シナケレバナラヌノデアリマスガ、國家ノ
  馬政方針遂行上ノ必要事業ノ〓要ト致シマ
  シテ、國有種雄馬ノ充實ガ三百二十五万
  圖、民有種雄馬ノ充實費百六十万圓、官制
  ニ依ル馬制委員會ノ設置ガ三万圓、地方競
  馬奬勸費二百万圓、馬事奬勵其他畜產組合
  奬勵費百万圓、馬產試驗場設置五十万圓、
  調匹行政機關ノ充實費五十万圓、馬匹利用
  奬勵費百五十万圓、馬匹育成奬勵費五十万
  圓、馬匹登錄助成費五十万圓、馬匹繁殖能
  率增進施設費八十万圓、衞生改善施設費五
  十万圓、馬匹飼料作物優良原種ノ普及奬勵
  費二百五十万圓總計一千三百四十三万圓ト
  云プモノガナケレバ政府當局、取リ分陸軍
  太臣カ御考ニナッテ居リマスル我國ノ國防
  上モ一旦事ノ有ッタ時ニ遺憾ナキヲ期スル
  コトガ出來ナイト云フコトデアリマス卽
  チ是ハ明瞭ニ政府部內ノ大體ノ方針ニナッ
  テ居ルト吾々ハ承ッテ居ルノデアリマス、然
  ルニ政友會内閣ハ之ニ向ッテ出來ルダケ此
  方針ヲ講ジテ居ッタニモ拘ラズ、現内閣ガ出
  來マスルト云フト此大方針ヲ根柢カラ破壞
  シ、而モ此度馬事振興ニ熱心ナヤウナ顏ヲ
  致シテ救護法ニ無理ニ財源ヲ捻出センガ爲
  ニ國民諸君ノ間ニ於テ賭博デハナイカ富
  籤デハナイカ、射倖心ヲ旺盛ニスルモノデ
  アル誘導スルモノデアルト議論アル競馬
  法ヲ改正シテ其財源ヲ求メ、而モ其財源ヲ
  所謂國家馬事振興ノ爲メニ多ク使ハズシ
  ヲ、所謂競馬法ノ財源カラ產出シタル金ト
  云フモノヲ社會事業ノ名ヲ藉ッテ救護法ニ
  使用スルト云フコトニナリマスルナラバ
  是ハ全ク國家ノ馬事方針ヲ根柢カラ破壞ス
  ルモノト私ハ思フノデアリマス、尙又陸軍
  當局ハ吾々カラ考ヘテ見マシテモ現ニ陸軍
  ガ軍事上重要ト云ッテ、田中內閣ノ當時ニ於
  キマシテハ百四十三万九千五百五十圓ト云
  フモノヲ馬匹買上ゲニ計上シテ居ッタ、其馬
  匹買上代金ヲ百十九万五千九百三十五圓ニ
  滅ラシタノデアリマスカラ、殆ド二十四万
  圓ト云フモノヲ少ナクシテ居ルノデアリマ
  ス、馬匹育成費ニ於キマシテハ田中內閣當
  時ニ於キマシテ百二十五万三千八百四十二
  圓デアリマシタノヲ百十六万八千六百七
  十六圓ヲ差引キ八万五千圓減ルヤウニナツ
  テ居リマス、要スルニ此點ヲ考ヘマシテモ
  吾々ハ軍事上カラ考ヘテモ、政府ト云フモ
  ノハ政友會內閣ガ組ミマシタ當時ヨリモ餘
  程樣々ノ點ニ於テ馬事振興ト云フモノニ不
  熱心ナノデアリマス然ルニ此樣ナ實情ニ
  ナッテ居ルニモ拘ラズ、突如トシテ此度此案
  ヲ出シテ改正ヲ斷行シテ、其斷行ニ依ッテ救
  護法ノ財源ヲ求メル爲メダト云フコトデア
  リマスレバ、吾々モ國民トシテ特ニ馬產地
  ニ關係ノアル者トシテ、現內閣ト云フモノ
  ハ馬事振興ニ誠意ガナイト言ハザルヲ得ナ
  イノデアリマス、私ハ最モ本法ノ改正ニ依
  ル政府ノ增收額ノ基礎及ビ其費途ト云フモ
  ノハ全ク不安デアルト考ヘテ居リマス
  何故之ヲ申シマスカト云フト、馬劵ノ賣上
  代金ガ昭和二年ニ於キマシテ二千六百三万
  三千餘圓ニナッテ居ルノデアリマス、昭和三
  年度ニ於キマシテ三千二百三十五万二千九
  十餘万圓デアリマス、其差引額ガ昭和二年
  度ト三年度ニ於キマシテハ、六百三十一万
  九千九百圓增ニナッテ居ルノデアリマス
  所ガ昭和四年度ニナリマスト四千百四十一
  万六千九百二十圓、詰リ八百六万四千餘圓
  ガ昭和四年度ニ於テ增額シテ居ルノデアリ
  Rゞ、然ルニ五年度ニナリマスト、玆ニ面
  白イ現象ガ現レテ居リマス、昭和四年度ハ
  三年度ニ較ベテ八百六万四千餘圓增加シタ
  モノガ、四年ト五年ヲ比較致シマスト、僅
  ニ四百十一万餘圓シカ增加シテ居ラヌノデ
  アリマス、此百四十幾万餘圓ト云フヤウ
  十、三年、四年ニ比較致シマスト、五分ノ
  一ノ程度ニ迄シカ增加シナイ此現象ヲ考
  ヘルト是ハ何ヲ物語ッテ居ルノデアリマ
  ス々、言フ迄モナク現内閣ノ財政政策ト經
  濟政策ト云フモノガ、遂ニ國民ヲ瀕死ノド
  ン底ニ陷レテ射倖心デアルト言ハレテ居リ
  マスル競馬ニスラモ、幾ラ燒糞ニナッテ、ド
  ウセ斯ウナッタ以上ハ棄鉢ニヤリタイト考
  ヘデ居クテモ、懷ニ金ガナイカラヤレナイ結
  果、斯ノ如ク金額ハ少額ニ減ッタノデアル、
  所謂現內閣ノ財政經濟政策ノ失敗ハ、射倖
  心ニマデ歷然ト現レテ居ルト言ハザルヲ得
  ナイノデアリマス(拍手)所デ昭和四年度ノ
  政府收入金ガ幾ラアルカ調ベテ見マスト
  百二十万六千六百餘圓アッタノデアリマス、
  五年度ニ於キマシテハ百四十四万九千餘
  圓差引ドレダケ殖エタカト云フト、驚ク
  勿レ僅ニ十四万三千餘圓シカ殖エテ居ラヌ
  ノデアリマス、諸君、此十四万三千餘圓シ
  カ殖ヘナイ、不景氣ノドン底ニ國民ヲ陷レ
  マシタル現內閣ガ、如何ナル手品ヲ御使ヒ
  ニナルカハ存ジマセヌケレドモ、昭和六年
  度ノ競馬法改正ニ依ル收入ニ於テ百万圓
  ト云フモノヲ得ルコトハ容易ナコトデハナ
  イト思フノデアリマス、若シモ政府ガ馬事
  振興デアル、競馬奬勵テアルト云フ名目ノ
  下ニ、博奕心ヤ射倖心ヲ盛ニ煽動奬勵シテ
  ヤッタナラバ、或ハ百万圓ノ金ガ殘ルカモ知
  レマセヌケレドモ、現在ヲ見マスル時、誠
  ニ國民ハ餓死線上ニ彷徨致シ、噴火山上ニ
  踊ルヤウナ第狀ニ立至ッテ居ル際故、百万圓
  ノ增額ヲ得ヤウト云フヤウナコトヲ御考ニ
  ナルコトハ、根本カラ御考ガ誤ッテ居ルト、私ハ
  大藏當局ニ御尋シナケレバナラヌノデアリ
  せっ、又面白イ現象ハ、如何ニ現內閣ガ財
  政ニ窮シテ手品、輕業ノ天勝式ノコトヲヤッ
  テ居ルカト云フコトハ、玆ニ明瞭ニナッテ居
  リマス、救護法ノ爲ニ約七十万餘圓ヲ、昭
  和七年一月一日カラ之ヲ御使用ニナルト云
  フコトデアリマスガ、此七十八万餘圓ト云
  フモノヲ、算盤ニ合シテ計算シテ見マス
  ト、昨年度政府ノ收入金、所謂五年度ノ收
  入金ガ百三十四万圓アッタノデアリマスカ
  ラ、之ニ六年度收入ノ百万圓ヲ足シマスト、
  二百三十四万餘圓ニナルノデアリマス、
  二.百三十四万餘圓ヲニ一分致シマスト其
  ツガ七十八万圓ニ當ルノデアル、明カニ農
  林大臣ハ、救護法ノ財源ト云フモノハ決
  シテ競馬カラ求メナイノデアル、納付金カ
  ラ持ヲテ來ルノデアル、四十万圓程度ト仰セ
  ニナルケレドモ、數字ハ逃レル譯ニハ參リ
  マセヌ、七十八万圓ト云フノガ、丁度本年
  度ノ百万圓ト、昨年度政府收入ノ百三十四万
  ト足スト、丁度二百三十四万圓ニナルノデ
  アリマス、之ヲ三ツデ割ルト七十八万圓程
  ニナル、サウシテ三分ノ二ヲ馬事振興ノ方
  ニ取ルト云フノデアリマスカラ、百五十六
  万圓ト云フモノガ殘ルノデアリマス、全ク
  現內閣ノ救護法ノ財源ハ、馬ノ博奕カラ上ツ
  テ來ルモノデアルト云フコトハ、數字ニ依ツ
  テ明瞭ナリト言ハザルヲ得ナイノデアリ
  やく、ソレヲ胡麻化ス爲ニ關稅定率ノ改正
  ヲヤリ出シタノデアル、改正ニ依リマスト
  五十四万圓上ルノデアリマス、追加豫算ノ
  中ニ種馬監督ニ關スル經費ト云フモノヲ計
  算シテ居リマス或ハ經常部臨時部ヲ總計
  致シマスト約五十万圓程度ニ上ルノデア
  リマス、サウシマスト本法改正ニ依ッテ二
  百三十餘万圓ノ收入ガアル、其三分ノ二ト
  云フモノヲ馬事振興ニ使用スルト致シマシ
  タナラバ、百五十六万圓ト云フモノガ馬事
  振興費ニナルノデアリマス、此處ガ手品ノ
  種ニナルノデアル、本改正ヲシナクトモ、
  本年度ニ於テハ當然百三四十万圓ノ收入ガ
  アルコトハ、誰モ之ニ異議ヲ言フ者ハ無イ
  ト考ヘルノデアリスマ、然ラバ馬事振興ノ
  方面カラ考ヘマストキニハ、本法ヲ改正シ
  テ射倖心、富籤、博奕心ト云フモノヲ奬勵
  シナクトモ、當然從來田中內閣當時ニ於キ
  マシテ、百分ノ四ト改正シマシタル立派ナ
  ル法案ニ依リマシテ馬事振興費トシテ自
  然約百五十六万圓ホドノモノハ生ジテ來ル
  ト吾々ハ思フノデアリマス、然ルニ救護法
  ニ金ヲ使フコトヲ胡麻化サンガ爲ニ、無理
  ニ此追加豫算ニ於テ、農林省ガ經常部ニ於
  テ競馬。監督ニ關スル經費ノ增加ハ一万五千
  七百幾圓デアル、種牡馬ノ充實ニ要スル經
  費ガ十三万七千幾ラデアル、又臨時部ニ於
  キマシテ、種牡馬ノ充實ニ關スル經費ガ二
  十五万七千幾ラデアル或ハ牧野改良ニ對
  シマシテ九万五千圓ト云フヤウナコトヲヤ
  リマシタガ、結局本案ヲ改正シナクトモ
  百五十六万圓ト云フ程度ノモノハ殘ルノデ
  アリマスカラ、本法改正ニ依ッテ恩惠ヲ蒙ル
  程度ト云フモノハ僅ニ二三十万圓ノ程度
  ニ過ギナイノデアリマス、本案ヲ實施シマ
  シテ、財源上政府豫期ノ如キ收入ガ無イコ
  トニナッタ場合ハ、之ヲ胡麻化サネバナラ
  ヌ、救護法ニハドウシテモ金ヲ持。ッテ行カ
  ナケレバナラヌノデアリマスカラ、此處デ
  馬事振興費ト云フヤウナモノヲ無理ニ製造
  シ追加豫算ニ出シテ來テ、サウシテ救護
  ニ財源ガ足リヌ際ニハ政府ハ馬事振興ニ之
  ヲ使シテ居ルヤウニ見セカケ、此埋合セニ關
  稅ノ增收ヲ充當シ、國民ヲ欺ク爲ノ手練手
  管ノ手品ノ種ニ使用シタモノデアルト云フ
  コトハ數字ニ依ッテ明瞭ナリト言ハナケ
  レバナラヌノデアリマス、ソコデ私ハ救護
  法ノ財源ハ大藏大臣竝ニ內務大臣ニ御尋シ
  タイノデアリマスガ、救護法ノ財源ヲ他ニ
  御求ニナル御考ガナイカ、洵ニ救護法ト
  云フノガ我黨內閣當時ニ於キマシテ之ヲ制
  定致シ、民政黨ノ諸君ハ之ニ附帶決議ヲシ
  テ作リ上ゲタ國家重要ナル法律デアリマ
  ス、此法案ニ對シテ民政黨ノ諸君ハ其當
  時何ト仰セニナッタノデアリマスカ、政友
  會ガ唯法案ヲ制定シタバカリデハイカヌ、
  明カニ豫算ヲ制定致シ、其金額ヲ明カニシ
  ナケレバナラヌト云フコトカラシテ、昭和
  五年ノ四月一日カラ、之ヲ實行スルヤウニ
  シヤウト云フコトガ、其當時朝野共ノ議
  論デアッタノデアリマス、現內閣ハ社會政
  策ト云フコトヲ高調シテ居ル手前カラ考ヘ
  テモ-取分ケ現内閣ニナッテ以來ノ社會
  ノ狀態ヲ考ヘテ御覽ナサイ、是ハ誰人モ御
  異存ハナイト思フノデアリマス、現內閣財
  政政策ノ根本ノ誤リカラ、或ハ金解禁ノ不
  注意ナル不準備ナル斷行ニ依リマシタ結
  果トシテ、殆ド吾國會テナイ所ノ財政上經
  濟上ニ於キマスル困難ヲ招來シ、地方農村
  ハ言フマデモナク、中產階級、商工業者ニ
  至ルマデ、疲弊困憊ノ極度ニ立至リ、日々
  紙上ニ現レマスル樣々ノ記事ヲ見マスル
  ト一家心中ト云フヤウナコトマデ續出シ
  テ居リマス、此狀態ヲ思ヒマスルナラバ現
  在是非共救護法ノ實施ト云フモノハ朝野
  異議ナキ所デアリマス、一日モ早ク之ヲ斷
  行シタイト云フコトハ、國民總意ノ聲デア
  ルト思フノデアリマス、然ルニ現內閣ハ
  ヤレ財源ガナイノデアル、無イ袖ハ振レヌ
  ト云フヤウナコトヲ以テ、遂ニ之ヲ履行セ
  ズ巳ムナク二万人ノ代表ノ方面委員ト云
  フモノガ、安達內務大臣ノ膝元へ參リマシ
  テ强硬談判ヲ致シ、尙ホ是デモ我慢シ切
  レズ致シマシテ、遂ニハ宮城前ニ於テ、是
  等ノ諸君ト云フモノガ陛下ニ對シマシテ
  此陳情ト云フモノヲ上奏スルヤウナ、最後
  ノ手段ニマデ出タモノデアリマス、若シ夫
  レ政府自ラガ救護法ニ御誠意ガアリマスナ
  ラバ、他ニ財源ヲ疾クニ御求メニナリマシ
  テ、之ニ充當ヲスルト云フコトハHeyl
  國務大臣トシテ、且又社會政策ヲ口ニ致シ
  テ居リマスル現內閣ニ於テハ、必ズ當然爲
  サナケレバナラヌコトデアリマス、然ルニ
  遂ニ之ヲ爲サズシテ、因循致シテ居ッタノデ
  アリマス、此點カラ私共ハ、現內閣ニ若シ
  モウ少シ誠意ガアルナラバ、他ニ財源ヲ求
  メテ欲シイノデアリマス、例ヘバ失業救濟
  デ二千二百万圓ノ公債ヲ發行シテ見タリ、
  一億三千万圓ノ地方公債ヲ出シテ見タリ、
  或ハ又一面ニ於キマシテハ現內閣ハ昨年
  ノ五月ニ於キマシテ、獨逸賠償金ノ六百三
  十万圓ト云フヤウナモノハ是ハ特別會計
  ニ置イテ、サウシテ減債基金ノ爲ニ、之ヲ使
  用セネバナラヌナドト法律ヲ出シテ居ルカ
  ト思フト、本年度ニナリマスルト、之ヲ持ッ
  テ來テ一般會計ノ財源ニスルト云フヤウ
  ナマルデ手ヲ覆シ、片々タル才子風情ノ
  ヤルヤウナ手段ヲ執ッテ居ルノデアリマス、
  自己ノ主張ヤ政策ヲ片〓端カラ變更シテ、非
  募債主義ガ公債政策ニナリ、獨逸ノ賠償金
  ハ減債基金ニ振向ケテアッタノガ、一般會計
  ノ財源ニ持。シテ來ルト云フヤウナコトヲヤ
  ルヤウナ現內閣デアルカラ、誠意ガアレバ
  此救護法ニ對スル財源デアリマスル四百万
  圓、若クハ三百万圓ノ金ヲ作ルコトガ出來
  ナイト云フヤウナコトハ絕對ニナイノデ
  アリマス、手練、手管、手品ノ上手ナ現內
  閣デアルカラ、立チ所ニソンナコトハ出來
  ルト私ハ考ヘルノデアリマス、謂ハヾ誠意
  ガナイカラ、財政上ニ行ロッテ遂ニ此財源ト
  云フモノヲ、所謂競馬ノ最初ノ目的デアリ
  マスル馬事振興費ノ方ニ充當セズシテ、却
  テ本法ヲ改正致シ、無闇ニ射倖心ト云フモ
  ノヲ奬勵シ、誘導シナガラ、收入金ヲ他ノ目的
  ニ使用スルト云フコトハ言語道斷沙汰ノ
  限リデアルト私ハ思フノデアリマス、本法
  改正ノ政府收入金ハ全部馬事振興ニ充當ス
  ベキデアリマス最後ニ本改正ノ條項ヲ御尋
  スルニ先ッテ一言致シテ置キマス、ソレハ本
  草案ノ內容ヲ制定スルニ當リ、陸軍省ハ非
  常ニ御反對デアッタト云フコトヲ吾々ハ聞
  イテ居リマス、其事實がアルカドウカ、陸
  軍省ハ競馬法ノ目的以外ニ、之ヲ使用スルト
  云フコトハイケナイト云フ、盛ニ御主張ガ
  アッタト云フコトヲ聞イテ居リマスガ、又サ
  ウ云フコトガアッタカドウカト云フコトヲ、
  明瞭ニ承リタイノデアリマス、尙ホ又一ツ
  不思議ニ思ヒマスノハ、從來馬事振興ノ爲
  ニ、競馬法ノ改正ニ依リマシテ、國家ノ收
  入金ハ農村振興、馬事振興ノ爲ニ使用スル
  金ハ、大體決定シテ居ルノデアリマス、然
  ルニ此度改正ヲ致シマシテ、三分ノ二以下
  ニナラザル程度ニ於テ、馬事振興ニ之ヲ使
  用セネバナラヌト云フ御說明ニナッテ居リ
  マスガ、然ラバ從來ノ旣得權ハドウナリマ
  スカ、從來政府ガ地方ノ馬產家諸君ノ爲ニ、
  大體既得權ト申スコトハ甚ダ烏滸ガマシ
  イノデアリマスガ、大體與ヘテ居ッタ馬事振
  興ノ權利、卽チ所謂從來政府收入金ヲ、馬事
  振興ノ爲ニ使用シテ居リマスルモノヲ除イ
  ク、新ニ國家ノ收入トナル增額ノ三分ノ二
  ダケ、政府ガ馬事振興ニ充テ、殘リ三分ノ
  一ヲ救護法ニ充テルト云フノカドウカ御
  聽キ致シタイノデアリマス、ナゼカト云フ
  ト、從來馬事振興ニ關シマシテ、農村ノ農民
  諸君、馬產家諸君ト云フモノハ自分等ハ
  政府ノ所謂昭和四年當時ノ改正ニ依ッテ、大
  體年々是ダケノ馬事振興費ガ政府カラ出來
  ルノデアルカラ、是ハ吾々ノ旣得權ト考ヘ
  テ居ルノデアリマス、然ルニ本法改正ニ依。ツ
  テ、所謂旣得權利ガナクナルト云フコト
  ハ農村ノ馬產家ニ於キマシテハ重大ナ
  ル影響ガアルノデアリマスカラ、其點ヲ明
  瞭ニ御聽キシテ置キタイト思フノデアリマ
  ス最後ニ御尋致シマスノハヽ本法ノ改正
  ニ依リマス所ノ刑罰デアリマス改正前ノ
  法律ニ依リマスト、本法ヲ犯シタ者ハ五千
  圓以下ノ罰金ニ處スト書イテ居リマシタモ
  ノヲ「五千圓以下ノ罰金ニ處シ又ハ其刑ヲ
  併科ス」ト書イテアル、是ハ餘程注意シナケ
  レバナラヌ事項デアルト私ハ考ヘマス、ナ
  ゼカト申シマスト單勝式ノ勝馬劵ト云フ
  モノヽ外ニ、更ニ複勝式勝馬劵ヲモ一人デ
  買ヒ得ルヤウニ改正ヲシ、國民ノ射倖心ヲ
  煽動シテ置イテ、此射倖心ニ釣ラレテ知ラ
  ズ識ラズ刑法ヲ犯スヤウナ者ガ-本法ヲ
  犯スヤウナ不心得ナ者ガアリマスト、從來
  ヨリモ罰則ヲ重クシテ、尙ホ體刑マデ併科
  スルト云フヤウナコトニナリマスナラバ、
  其間ニ非常ナ矛盾ガアルト思ヒマス、此矛
  盾ヲ防ガントスルナラバ、射倖心ト云フモ
  ノヲ誘導シナイ方法ヲ取リ、刑罰ノ適用ト
  云フモノヲ次第々々ニ狹クナルノデアリマ
  スガ、徒ニ進ンデ政府ガ射倖心ヲ旺盛ニシ
  誘導シ、而シテ射倖心ニ駈ラレマシテ、罪
  ヲ犯ス者ガアリマスト、之ニ對シテ罰金ヲ
  加ヘ、尙ホ體刑ヲ併科スルト云フコトハ
  餘リニ過酷ナル本法制定方法デアルト考ヘ
  マスガ當局ハ如何ニ御考カ、御答辯ヲ願
  ヒタイト思ヒマス、諸君、要スルニ本法ハ
  全ク吾々國民トシテ重大ナル法案デアリマ
  ス、特ニ農村ノ馬產家關係ニ於キマシテ
  就中私ノ地方ノヤウナ風雪ノ多イ寒イ國ニ
  於キマシテハ特別ニ農村ト云フモノハ疲
  弊シテ居リマス、此寒イ國ニ於キマシテハ、
  副業ノ一ツト致シマシテ、農村ガ馬產ヲ奬
  勵致シテ、此馬ニ依ッテ得タ代價ニ依ッテ
  辛ウジテ家計ヲ立。ッテ居ルト云フ者ガ、殆ド
  九割ヲ占メテ居ルト云フ狀態ニナッテ居ル
  ノデアリマス、然ルニ現內閣ガ成立シテ以
  來ト云フモノハ農村ハ疲弊困憊致シ取
  分ケ馬產家諸君ガ造ノテ居リマス馬ノ値段
  ハ驚クベキ其價格ヲ減シテ居ルノデアリ
  マス、民政黨ノ諸君ハ金解禁ヲスレバ、馬ノ
  値段ハ高クナルト云フヤウナ、樣々ノ御演
  說ヲ各所デサレタト云フコトデアリマス
  ガ、驚ク勿レ現内閣成立後金解禁ニ依リマ
  シテ馬ノ値段ハ從來ノ額ヨリモ半分ノ値
  段ニ下ッテ居リマス、中ニハ十五圓ノ馬モア
  しょう七圓ノ馬モアルト云フヤウナ狀態デ
  豚ノ値段ニモ尙ホ足ラザルヤウナ奇現象ヲ
  呈シテ居リマス、總テ是等ノ實情ハ言フマ
  デモナク、現內閣ノ財政政策ト云フモノガ、
  根本カラ國民ヲ疲弊サ.セタモノデアリマス
  ガ、之ニ付キマシテハ馬事振興ト云フコト
  ハ、目下最モ重大デアリマス、ドウカ政府
  當局ト致シマシテハ、本法改正ノ政府收入
  ハ全部馬事ニ使用シ、救護法ノ財源ト云フ
  モノハ他ニ之ヲ求メ、而シテ此財源ニ依。ン
  テ救護法ノ目的ヲ到達サレンコトヲ望ムノ
  デアリマスガ、他ニ財源ヲ御求メニナル御
  考ガ、大藏當局トシテアルカ否カ、之ニ付
  テ明快ナル御答辯ヲ御聽キシタイト思フノ
  デアリマス
  〔國務大臣宇垣一成君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02519310310&spkNum=54

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• 055・宇垣一成

  ○國務大臣(宇垣一成君)　藤井君ノ御質問
  ニ御答ヲ致シマス、藤井君ノ是ハ御質問デ
  ハナカッタ、御意見ノヤウニモ思ヒマシタ
  ガ、陸軍當局ハ競馬法制定常時ノ精神ヲ全
  ク忘レテ居リハセヌカ、沒却シテ居ラヌカ、
  斯ウ云フ意味ノ御話ガアリマシタガ、決シ
  テ忘却ハ致シテ居リマセヌ、卽チ制定當時ノ
  精神ト云フモノハ、競馬カラ得タ收入ハ國
  民ノ馬事思想ノ振興、馬ノ改良、增殖、之
  ニ用ヰルト云フコトニナッテ居ルノデアリ
  マシテ、今日私自ラハ依然ト左樣ニ考ヘテ
  居リマス(拍手)所ガ今囘提出サレタ競馬法
  ノ改正案ニ依ッテ、其收入ノ一部分ヲ他ノ事
  業ニ用ユル、其處ニ矛盾ガアリハセヌカ、
  其點ヲ抑ヘテ制定當時ノ精神ヲ忘レテ居ル
  デハナイカト、斯ウ云フ御考ガ起ッタノヂヤ
  ナイカト存ズルノデアリマス、制定當時ノ
  此納付金額ト云フモノハ極メテ僅少デア
  リマシテ、隨テソレヲ全部馬事ニ充當スル
  ト云フコトガ當事ニ於テハ最モ至當ナコ
  トデアッタデアラウト思フノデアリマスル
  ガ、今日ニ於テハ競馬ニ依ッテ政府ノ納付金
  額モ相當ニ殖エテ參リマス又此度ノ改正
  ニ依レバ尙史ニソレガ殖エテ參ルノデア
  リマス、隨テ馬事ノ改良ニ關スル施設モ、
  益〓現在ヨリハヨリ良クナリ得ルノデアリ
  マスルカラ、其一部ヲ社會事業ニ充當スル
  ト云フ如キコトモ當局トシテハ一向差支
  ナイコトヽ考ヘテ居リマス、尙ホ陸軍省豫
  算ノ中ノ育成費、或ハ馬匹買上代、是等ガ
  積ッテ二十餘万圓減少ニナッテ居ル、ソレヲ
  以テ私共ノ馬ニ對スル熱意ガ缺ケテ居ルト
  カ、或ハ馬事ヲ等閑ニ付シテ居ルト云フヤ
  ウナ御議論モアリマシタガ此減少ト云フ
  モノハ物價ノ下落、之ニ伴フ自然ノ結果デア
  リマス、決シテソレニ依ッテ馬事ヲ等閑ニ付
  シ或ハ之ニ對スル熱意、誠意ガ缺ケテ居
  ルト云フ譯デハナイノデアリマス寧ロ熱
  意、誠意ハ前當局ヨリモ、私自ラハ程度ノ
  高マッタモノヲ有シテ居ル積リデアリマス、
  ソレデアルカラコソ今度ノ改正ヲ贊成致
  シテ居ルノデアリマス、陸軍省ハ此改正ニ反
  對デハナイカ、反對デアッタト云フヤウナコ
  トヲ聞イテ居ルガドウカ、斯ウ云フ御話モ
  アリマシタガ、無論改正ニ依ッテ得タ收入ノ
  全部ヲ馬ノ方ニ向ケ得ルト云フコトナラ
  バ、是ハ多々益、辨ズルデ、望ム所デアリマ
  ス、併ナガラ國防ハ申スマデモナク馬事ダ
  ケデハアリマセヌ、卽チ社會ノ施設ヲ改善
  シテ、ソレニ依ッテ國民思想ヲ穩健ニ導イテ
  行クト云フコトモ、是ハ國防ヲ堅實ナラシ
  ムル一大要素デアルト存スルノデアリマ
  ス、左樣ニ御承知ヲ願ヒマス(拍手)
  〔國務大臣町田忠治君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02519310310&spkNum=55

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• 056・町田忠治

  ○國務大臣(町田忠治君)　藤井君ノ私ニ對
  スル御尋ハ計數ニ關スルコトガ多イノデ
  アリマスルガ故ニ、委員會デ詳細申上ゲマ
  ス、唯一言申述ベテ置キタイノハ此度ノ
  救護法ノ豫算ノ財源ノ全部ガ、競馬法ニ依〃
  テ得タ財源ニアルカノ如キ御質問ガアリマ
  シタガ、サウデアリマセヌ、何カ私共ガ此
  豫算ヲ作ルニ、一時無理ヲヤッタカノ如キ御
  尋デアリマスガ、左樣デアリマセヌ、足ノ
  誤解ヲ防グ爲ニ私ハ明カニ申上ゲマス、此
  度ノ救護法ノ財源ノ全部ハ競馬法カラ出
  タモノトノ御解釋ハ誤リデアリマス、其詳
  細ハ委員會ニ於テ中上ゲマス(拍手)
  〔政府委員泉二新熊君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02519310310&spkNum=56

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• 057・泉二新熊

  ○政府委員(泉二新熊君)　刑罰ヲ此度ノ改
  正案ニ依。ツテ重クスルト云フコトハ酷デハナ
  イカ、大體サウ云フ御質問ノ趣意デアッタト
  思ヒマス、洵ニ御尤ノ御見解ト思ヒマスケ
  レドモ、一面ニ於キマシテハ、刑罰制裁ヲ
  重クスルト云フコトモ、ヤハリ必要ガアル
  ト思フノデアリマス卽チ許可ヲ受ケマシ
  タ競馬會ガヤル場合デアリマスレバ是八
  法律デ許スノデアリマスカラ、處罰ノ範圍
  ニ屬シマセヌケレドモ、許可ヲ受ケナイモ
  ノ、許可ノ範圍ニ屬セザルモノ又殊ニ所
  謂呑屋ト稱スル者ノ行爲デアリマスト、其
  弊害ガ非常ニ多イノデアル、殊ニ呑屋ノ如
  キハ刑法第百八十六條ノ第二項賭博開帳
  ト云フノト性質ガ類似致シテ居ルノデアリ
  PV、此刑法第百八十六條ノ第二項ノ規定
  ヲ御覽ニナリマスレバ三箇月以上五年以
  下ノ懲役ト云フ刑罰制裁ヲ加ヘラレテ居ル
  ノデアリマス、ソレ程マデニ重クシマセヌ
  デモ、現行法ヨリハ少シク此取締ヲ嚴重ニ
  スル、刑罰上ノ取締ヲ嚴重ニスルト云フコ
  トガ、今囘ノ改正ニ伴ヒマシテ適當デアラ
  ウト云フ考カラ致シマシテ、案ニアリマス
  通リノ幾分ノ重イ刑罰ヲ定メルト云フコト
  ニナッタ次第デアリマス
  〔政府委員小川〓太郞君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02519310310&spkNum=57

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• 058・小川郷太郎

  ○政府委員(小川〓太郞君)　救護法實施ノ
  財源ニ付テ御尋デアッタヤウデアリマス、救
  護法實施ニ要スル經費ヲ支辨スル財源ハ
  一ツハ一般財源デアリマスガ、一ツハ競馬
  法改正ニ依ル所ノ收入デアリマス、競馬法
  ノ改正ハ一部ヲ社會事業ノ爲ニ使フ、其
  社會事業ニ使フト云フノハ、救護法ノ實施
  ニ要スル費用ニ要スル費用ニ使ヒタイト考
  ヘテ居リマス是ハ旣ニ農林大臣カラモ御
  話ガアリマシタヤウナ風ニ、歐羅巴ニ於テ
  モ其例ガアルノデアリマス、前內閣モ斯ウ
  云フコトヲ考ヘテ居ラレタト思ヒマス、ソ
  レハ政府委員ノ說明ノ中ニモアリマス是
  ハ決シテ不當ナコトデハナイ、財源トシマ
  シテハ斯ル特殊ノ財源ト云フモノハ正當
  ナモノト考ヘマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02519310310&spkNum=58

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• 059・小山松壽

  ○副議長(小山松壽君)　堀部久太郞君
  〔堀部久太郞君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02519310310&spkNum=59

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• 060・堀部久太郎

  ○堀部久太郞君　只今農林大臣閣下カラ川
  島君ノ御質問ニ對シテ御答辯ガアリマシ
  ク、農林大臣ノ只今ノ御說明デハ、歐米諸
  國ニ於テハ競馬ニ依ル納入金ガヤハリ社會
  事業ニ使ハレテ居ル、隨テ我國ニ於テモ差
  支ガナイト云フヤウナ、御答辯デアッタヤウ
  ニ承ッタノデアリマスガ、只今陸相閣下ノ御
  說明ニ依ルト、ヤハリ日本ノ競馬法ハ、政
  府ノ取上ゲル所ノ納入金ト云フモノガ、馬
  事振興或ハ馬匹ノ改良ニ使フノガ本旨デア
  ルト云フコトヲ御述べニナッタヤウデアリ
  マスガ、歐米諸國ノ競馬ト云フモノハ、是
  ハ賭博行爲ノ公許デアル、ヤハリ日本ノ競
  馬ノ精神ト云フモノハ今陸相閣下ノ仰セ
  ノヤウデナクテハイケナイ、斯ウ私ハ考ヘ
  ルノデアリマスガ、今囘ノ競馬法ノ改正ニ
  付キマシテ、競馬法其モノノ缺陷ニ關シマ
  シテハ川島議員、ソレカラ藤井議員カラ指
  摘爲サレマシタ、私ハ競馬法ニ依ッテ得ラル
  ル政府納入金ノ一部ガ流用サレル所ノ此救
  護法ハ其實施ガ緊急ヲ要スル斯ウ云フ
  意味ニ於キマシテ完全ニ速行ヲシテ戴キタ
  イガ、此際私ハ政府當局ニ御考直シヲ御願
  申上ゲタイコトガアル、今日ハ與黨カラ登
  壇時間ガ制限サレテ居ルノデアリマスカ
  ラ、簡單ニ私ノ希望ヲ述ベテ政府ノ御意向
  ヲ伺ヒタイノデアリマス
  救護法ノ實施ノ急ヲ要スルト云フコトハ
  今日ノ輿論デアッテモ、最早異論ハナイ、ド
  ナタモ非常ニ〓心ニ其實施ヲ御希望ニナツ
  タノデアリマス、今囘ノ實施ガ假令不完全
  ナモノデアリ或ハ其財源ニ付テハ隨分不
  評ハアルケレドモ、兎ニ角爲スハ爲サザル
  ニ優ルノデアリマスカラ、政府ガ愈、御實行ミ
  ニナルト云フコトニナッタコトハ私共非常
  ニ喜ブノデアリマス、所ガ唯玆ニ一ツ遺憾
  ナコトガアル、是程大事ナ此重要法案ガ今
  日マデ首鼠逡巡シテ一向捗ラズ、丁度中風
  病ミガフラ〓〓ト步イテバタット腰ヲ拔カ
  ス、又步イテバッタリ腰ヲ拔カス、コンナ狀
  態デ斯ル重要議案ガ今日マデ更ニ決定サレ
  ナカッタガ、此頃全國方面委員カラ手酷イ目
  ニ遭ハサレテ、ヤット不承無精政府當局ガ腰
  ヲ上ゲタト云フ、齒搔イ不體裁ヲ見セツケ
  ラレタ吾々ハ、政府ノ政治ノ實行ニ對スル
  御誠意ヲ疑ヒ、又斯ル大切ナ法律案ヲ今日
  マデ實施スルコトガ出來ナカッタト云フ優
  柔不斷-殊ニ今日大衆ガ塗炭ノ苦ミヲ嘗
  メテ居ル政治上大事ナ時期デアルダケ、政
  府ノ優柔不斷ヲ嘆カザルヲ得ヌノデアリマ
  ス、ソレデ私ハ一體此救護法ナドヽ云フ問
  題ハ理窟デ解決スベキ問題デハナイト思
  フ要スルニ今日窮民ガ如何ナル狀態ニ苦
  ンデ居ルカト云フコトヲ政府ノ大官、當局
  ノ方々ガ十分御理解下サラナケレバ實際出
  來ヌコトダ、所ガ遺憾ナガラ當局ニハ其御
  理解ガナイ-必ズ私ハナイト思ヒマス
  ソレデ私ハ下ラヌ例ダト思ハレルカ知ラヌ
  ガ、質問ノ前提トシテ先ヅ御理解ヲ願フタ
  メニ···(「下ラヌコトナンカ言フナ」ト呼
  フ者アリ)所ガ大事ナコトナンダ、間部君ハ
  奧サンガ新シイセイカ、近頃氣ガ立ッテ居ラ
  レテイケナイ、少シ落付キナサイ··
  〔發言スル者多シ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02519310310&spkNum=60

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• 061・小山松壽

  ○副議長(小山松壽君)　私語ハ爲サラヌヤ
  ウニ願ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02519310310&spkNum=61

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• 062・堀部久太郎

  ○堀部久太郞君(續)　是ハ政府當局ニ取〃
  テハ寧ロ參考ニナル良イ話デアリマスカ
  ラ、御聽キヲ願ヒマス、私ハ一昨年此議會
  ヘ出ルマデ實ハ大阪デ一膳飯屋ヲ經營シテ
  居ッタ、ソレハ民政黨ノ本田彌市郞君モ近所
  ニ居ッテ能ク御承知デアル、其時ノ統計ヲ申
  上ゲレバ今日政府當局ガ社會ノ實情ヲ如
  何ニ御理解ガナイカト云フコトガハッキリ
  分ルト思フ、一昨年ノ三月一膳飯屋デ
  アリマスカラ來ル客ハドウ云フ人デアルカ
  ト云フト、ソレハ勞働階級ノ極ク下ノ人々
  デアル、收入ノ少イ極ク貧シイ人達デア
  ル······其統計ヲ申上ゲナケレバ政府當局ニ
  御分リニナラヌト思フ、ソレデ三月ニソレ
  等ノ客ガ私ノ店へ來ラレテ食ハレマシタ、
  其平均ノ使ヒ高ト云フモノハ是ハ每月統
  計ヲ取ッテ居リマシタガ、一昨年ノ三月ニ於
  テ一人當リガ一日三十二錢、アナタ方ガ御
  聽キニナルト甚ダ「ケチ」ナ話デアルガ、
  膳飯屋ノ客ダカラ仕樣ガナイ、三月ガ一人
  當リ三十二錢、ソレカラ四月ニナリマスト
  二十九錢ニナリ、五月ニナルト二十六錢ニ
  ナリ、現内閣ガ成立シタ七月ニナルト十八
  錢ト段々下ッテ來タ、ソレデ一昨年ノ春カラ
  世ノ中ノ不景氣ガ如何ニ深刻ニナッテ來タ
  ト云フコトハ皆樣ノ御承知ノ通リデアリ
  又此事實ガ證明シテ居ル、所ガ(「勉强シナ
  イカラダ」ト呼フ者アリ)勉强ハシテ居ル、
  來ル客ガ減ッタノデハナイ、使ヒ高ガ段々
  減ッテ來タノデアル、朝飯ヲ食ッテ居ノタ人
  モ朝飯ヲ拔ク、三皿食ッテ居ッタ人ガ二皿ニ
  ナル、一皿ニナル、斯ウ云フコトニナッテ來
  タ恐ラクハ今日デハ贅澤ノ出來ル皆サン
  デモ、晝食ナド多少御儉約ナサッテイルカモ
  知レヌト思フノデアリマス、兎ニ角サウ云
  フ風ニ食ヒタイ物モ食ハヌト云フヤウナ悲
  慘ナ狀態ヲ呈シテ來タ、併シ是等ノ人々ハ
  マダ〓〓金ヲ拂ッテ飯ノ食ヘル人ダガ、現內
  閣ガ成立シ、其後金解禁ヲ斷行セラレテ以
  來食ヘナクナッタ人間ガドレ程アルカ、昨
  年私ノ調査シタ所デモ尙目ツ斯ノ如キ狀態
  デアリマスカラ、食へナイ人間ガドレ程今
  日殖エテ居ルカト云フコトハ皆樣モ御想
  像ニ難クナイデアラウト思フ、一體御役人
  ガ貧民窟ノ視察ニ出掛ケタヤウナ場合ニ
  ハ自動車ニ乘ッテ行ク、貧民窟ノ入ロデ車
  ヲ捨テヽ鼻ヲ撮ンデグル〓〓急イデ見テ步
  ク、ソレデハ實際ガ分ルモノデハナイ、迚
  モ貧乏氣分ハ味ヘルモノデハナイ、一膳飯
  屋ト云フモノハ今日ノ社會ノ景氣不景氣ト
  云フコトガ如實ニハッキリ寫ル所ノ明鏡ノ
  如キモノデアリマス、ソコデ井上サンガ現
  内閣入閣ナサッテカラ、愈〓金解禁ト云フコ
  トヲ最近ニスルカラ儉約ヲシロ、緊縮ヲシ
  ロト國民ニ强制サレタガ、實ハ其以前ニモ
  ウ多クノ人々ハオ上ニソンナ事ヲ言ハレナ
  クテモ-私ノ一膳飯屋ノ例ヲ見テモ分ル
  通リ、食フ物マデ追々ニ減ラシテ緊縮ヲ實
  行シテ居ッタ(「競馬法ノ本論ニ入ルベシ」ト
  呼フ者アリ)是カラ入リマス、是ハ前ニ云
  フ通リ私ガ質問ヲスル前提トシテ當局ニ悲
  慘ナ社會相ノ御理解ヲ願ヲテ置カナケレバ
  ナラヌ、此救護法ノ實施ニ付テハ安達內務
  大臣閣下ハ可ナリ御心配ニナッタガ、財布ノ
  元締ヲサレル井上藏相閣下ハドウシタ譯カ、
  一向冷淡デ居ラレタヤウニ思ハレル、安達內
  務大臣閣下ハアレ程議會前カラ實施ノ爲ニ
  御努力下サッタニ拘ラズ、井上藏相ハ更ニ御
  容レニナラヌ荏苒會期ノ迫ッタ今日ニナッテ
  漸ク競馬法ノ改正ニ依ッテ一部ノ財源ヲ捻
  出シテ、姑息ナヤリ方ヲシヤウト云フノデ
  アル、井上大藏大臣閣下ハ生憎此席ニ御出
  ニナラヌカラ、次官ノ小川サンカラ私ノ申
  スコトヲ明カニ御取次ヲ願ヒタイ、一體藏
  相ハアレ程緊縮々々トヤカマシク言ハレタ
  ガ、藏相御自身ハ決シテ緊縮ナサッテ居ラヌ
  ト信ズル、藏相ガ世間ニ對シテ緊縮ヲ要求
  シテ居ル手前、俺ノ家庭デモチット緊縮シナ
  ケレバ世間ニ對シテ工合ガ惡イ、ソコデ奧
  サンニ對シテ、金ヲ使フト云フコトハ御法
  度デアルカラ、御召ノ著物ナドヲ著テハナ
  ララヌゾ、或ハ「ダイヤ」ノ指環ナドハ買ッテ
  ハナラヌゾト言ハレル、ソンナ眞面目ナ事ヲ
  井上サンガ家庭デ井上サンガ眞實所謂緊縮
  ヲ御家庭デ實行ナサッテ居ッタトシタナラ
  バ奧サンニ逃出サレテシマフ、ダカラ井
  上サンハ必ズ自分ノ家庭ニ於テハ、緊縮ダ
  儉約ダナドト云フコトハ實行サレテ居ラヌ
  筈デアル、小川サンドウゾ此事ヲ井上サン
  ヘ申上テ頂キタイ、必ズ爲サッテ居ラヌト思ヒ
  マス、(「ソレガ競馬法ニ何ノ關係ガアルカ」
  ト呼フ者アリ)ダカラ御理解ヲ願フ爲ニ
  申述ベルノデアル、ソコデ私ハ競馬法ニ付
  テ申上ゲマス(「今日ノ事ガ何ダ」ト呼フ者
  アリ)ソレハ今日ハ最モ眞劍ナ政治ヲ要ス
  ル秋ナノデアル、グカラ兎ニ角當局諸公ニ
  社會相ニ付テ御理解ヲ戴キタイ、決シテ井
  上サン御一人デハナイ、是ハ上流ノ人々ハ
  總テサウダト思ハレル、由來競馬法ノ納入
  金ハ先程陸相閣下ガ仰シヤッタヤウニ、馬匹
  改良或ハ馬事振興ニ御使ヒニナルト云フコ
  トガ勿論宜シイ又正當デアル尤歐洲諸國
  ニ於テハ或ハ社會事業ニ使ウテ居ルノデア
  ルカラ、好イ事ニ使フノハ宜イヂヤナイカ
  寧ロ之ヲ公許シテ今後政府ノ納入金ヲ無暗
  ニ殖ヤスト云フ先例ヲ作ル時ニハ、非常ナ弊
  害ガ起リハセヌカト云フコトヲ憂フルノデ
  アリマス、先日モ或ル婦人聯盟ノ主ナル婦人
  ノ集ッタ席ニ行キマシタガヤハリ政府ニ對
  シテ、ドウカ社會風〓ノ爲ニ、今度政府ニ
  於テ此救護法ノ實施ヲ御心配下サルサウデ
  アルケレドモ、成ルベクナラバ、一ウ競馬ナ
  ドカラ財源ヲ得ヌヤウニ願ヒタイ、實ハ先
  般井上サンノ所ニ伺ヒニ出タケレドモ御
  會ヒ下サラナイ、ドウシタラ御會ヒ下サル
  カ又、吾々ノ御願ガ通ルカト云フコトヲ申
  シテ居リマシタ、カヽル財源ハ此競馬法ナ
  ドカラ得ナイ方ガ宜カラウ他ニ適當ナ方策
  ヲ講ジテ貰ヒタイト云フ考ガ社會運動ニ關
  係スル是等ノ婦人方ニモアル又、貴族院
  方面ニモ反對ノ意見ガ多イヨウデアル、ナラ
  ウコトナラ-外ニ絕對財源ガナイト云フ
  ナラバ已ムヲ得ヌ(「無イカラ宜カラウ」ト
  呼フ者アリ)無イ、ソレナラ是カラ其財源ヲ
  〓ヘテ上ゲル·
  〔拍手發言スル者多シ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02519310310&spkNum=62

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• 063・小山松壽

  ○副議長(小山松壽君)　靜肅ニ願ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02519310310&spkNum=63

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• 064・堀部久太郎

  ○堀部久太郞君(續)　ソレデハ私ハ〓ハ
  リタイト言フナラ矢釜シイ時間ヲ少シ延長
  シテモラッテ〓ヘテ上ゲル、ソコデ是ハ特ニ
  內相閣下ニ願ハナケレバナラヌト思フヽア
  ルナラバ速ニ是等ノ窮民ヲ救ハレルコトガ
  宜イヂヤアリマセヌカ、ソコデ今競馬法、
  此競馬ノ納入金ニ依ルト甚ダ面白クナイト
  云フコトハ前質問者兩君ガ詳シク御話ニ
  ナッタカラ、私ハ時間モナシ是ヲ略シマセウ
  ソレデ第一ニ斯ウ云フコトガ最モ穩健デア
  ラウト私ハ考ペタノデアリマスガ、此問題
  ハ安達內相閣下ガソレヲ實行スル御意思ガ
  ナイト云ハレタガ、適當ノ財源ナキ場合ニ
  ハ公債ヲ發行シテ戴クト云フコトハ穩健著
  實デ最モ宜イ、決シテ政府ノ今日マデノ非
  募債ノ主張ニ反シタ譯ノモノデハナイト私
  ハ思フ、卽チ失業救濟ノ爲ニ三千万圓ノ公
  債ヲ起サウト云フ政府ガ、失命スル者ノ爲
  二、失命公債ノ三百万圓ヤ四百万圓ノ公債
  ガドウシテ發行出來ナイ、弱イ失命スルホ
  ドノ者ハ餘命ガナイ爲ニ打ッチヤッテ置イテ
  モ文句ヲ言ハナイ、失業者ハマダ死ナヌ選
  擧ノ時ニハ出テ來ルカモ知レヌトイフノカ、
  若シ是ガイカヌト言フナラモウ一ツ〓ヘテ
  上ゲル卽チ政府ハ擔稅能力ノ豐富ナ有
  產階級卽チ富豪階級ニ對シテ適宜ニ負擔ヲ
  サセテ下サル譯ニ行カヌカ(「武藤ニサセ
  ロ」ト呼フ者アリ)武藤氏モ勿論宜シイガ、
  三井、三菱ノ兩家ノ如キハ假ニ三十万圓位
  ノ負擔ヲサセテモ何デモナイ一向コタヘナ
  イ(「ゾンナ法律ガ制定出來ルカ」ト呼フ者
  アリ)ソレハアナタ方デ誠意ヲ以テヤレバ
  出來ル必ズ出來ル今私ハ名ヲ指シタカ
  ライカヌガ其收入ノ程度ニ應ジテ、假
  最高三十万圓、ソレカラ以下ノ富豪ニハ低
  下シテズット負擔サセレバ、社會上物質的ニ
  最モ上位ニ居ル所ノ少數ノ富豪階級ノ負擔
  ニ依"テ、社會ノ最モドン底ニ居ル多數ノ食
  フニ食へナイ窮民ガ樂ニ救ヘルデハナイカ
  又所謂富豪階級自身ヲ擁護スル所以デモア
  ル(「ソンナコトガ出來ルカ」ト呼フ者アリ)
  ヤレナイノデハナイヤラナイノデアル
  是モイカヌト仰シヤル、ナラ是ナラドウカ、
  現內閣ハ組閣當時ニ官吏ノ減俸ト云フコト
  ヲ御聲明ニチッタ、是ハ具體的ニ十分ニ御〓
  究ニナッテ成案ヲ得ラレタコトデアリマス
  カラ、今日慌テヽ成案ヲ拵ヘナクテモ旣ニ
  其成案ヲ持ッテ居ラレルノデアル、ソレヲ出
  シサヘスレバ何時デモ出來ル、一體此問題
  ニ付テハ當時安達内務大臣閣下ハ確カ熊本
  ニ御遊說デアッタ、所ガ此問題ニ付テ東京ニ
  於テ文句ガ起ッテ、折角出シタモノヲ引込メ
  ヨウト云フコトニナッタ、當時新聞ノ報ジタ
  所デアルガ安達內務大臣ハ九州カラ電報
  ヲ打タレタ、卽チドコノ演說會デモ減俸ノ
  コトヲ吹張スルト、聽衆ガ非常ニ喜ブト、
  是ハ實ニ名案ダカラ、是非トモ政府ハ實行
  シナケレバナラヌト云フコトヲ電報セラレ
  タト云フコトヲ、新聞デ拜見シテ居ッタ、ダ
  カラ安達內相閣下ノ如キモ是ハ寧ロ名案デ
  アルト御確信ニナッテ居ルニ相違ナイ、殊ニ
  二月中ノ請願委員會ニ官吏ノ減俸ヲ請願シ
  テ來タ請願人員ノ數ハ一万六千三百四十七
  人デアル、是等ノ人々ハヤハリ輿論ヲ代表
  シテ居ル人デアル、·斯ウ解シテ差支ナイト
  私ハ信ズルノデアリマス殊ニ與黨ノ皆樣
  ハ此減俸ノ問題ノ爲ニハ非常ニ忠實ニ御考
  ニナッテ、過日來屢〓政政ニ對シテ是ガ實行
  ヲ御要望ニナッテ居ルト云フコトヲ聞イテ
  居ル私共ハ皆樣ノ御決意ニ對シテ敬意ヲ
  表シ、非常ニ感謝シテ居ルノデアリマス
  且又財源ヲ競馬法ノ改正カラ得ルコトハ閣
  僚間ニサヘ異論ガアッタノデハアリマセン
  カ(「質問ニ移リ給へ」ト呼フ者アリ)私ハ簡
  單ニ切上ゲマスガ、今一ツ適當ナ財源トシ
  テ申上タイモノガアリ又是ガ私ノ本論トモ
  云フベキモノデアリマスガ何分時間ヲ制限
  サレテ居マスカラ是ハ委員會ニ於テ詳シク
  述ベサセテ戴クコトニ致シテ要領ダケヲ申
  シマス、今申シタ減俸案ト云フモノヲ政府
  ガ無ゾウサニ引込メラレタノデ再ビ之ヲ出
  スト云フコトハ世間體ガ惡イ、吾々デモ個
  人的ニサウ云フ場合ハアル、オ上デモヤハ
  リサウカモ知レヌ、ソレデ一度引込メタモ
  ノヲ再ビ出ス譯ニ行カヌト云フナラバ、
  割減俸ナドト云フソンナ亂暴ナ怨マレルヨ
  ウナコトヲセヌデ、モット低イ率デモ四百五
  十万ヤ五百万圓ハ樂ニ出來ル(「ソンナコトガ
  出來ルカ」ト云フ者アリ)、無イト仰シヤルカ
  ラ言フノデアル、此ノ重要ナ問題ハ時間ノ都
  合デ殘念乍ラ其詳シイコトハ委員會デ說明
  ヲスルコトニ致シマス、今與黨ノ諸君ハ全
  ク財源ガナイト云ハレル、ドウシテモ競馬
  法ヲ改正シテ財源ヲ得ンケレバナラヌト云
  ハレルノデアルガ、今申上ゲタ通リ私ハ詳
  シクハ委員會デ其方法ヲ申述ベマスガ、政
  府ハ宜シク他ノ適當ナ財源ヲ御選ビニナッ
  テ救護法ノ完全ナル卽行ヲ御決意下サレ、
  其原案ヲ再提出ナサル御意思ガナイカドウ
  カト云フコトヲ御伺ヲ致シタイノデアリマ
  ス、之ヲ要スルニ是等ノ財源ニ依リマスト
  云フト、完全卽行ハ決シテ出來ヌノヂヤナ
  イ、私ハマダ何ウ云フ風ニ救護法ヲ御實行
  ニナルカ、卽チ本年度ニ於テ何程ノ金ヲ投
  ズルカ、或ハ平年度ニ於テドウ云フ方法ニ
  依ッテ其資金ガ供サレルカト云フコトヲ深
  ク存ジマセヌガ、コノ財源ヲ得ル爲ニ競馬
  法ノ改正ヲ行フタト云フコトハ否認スルコ
  トハ出來ナイ明白ナ事實デアル、內務大臣
  ノ如キハ議會前カラ之ガ實施ニハ非常ニ御
  心配ナサレタヨウデアルガ私ハ井上藏相ニ
  申上ゲル、完全卽行ガ出來ヌノデハナクテ
  シナイノデアル、ツマリ斷行力ガナイノデ
  アル、此際一言附加ヘテ置キタイノハ先日
  豫算案討論ノ際與黨側トシテ立タレタ、堤
  代議士ノ發言デアリマス、卽チ先般ノ豫算
  案ノ討論ノ際ニ堤君ハ斯ウ云フコトヲ云。ツ
  テ居ルガ、是ハ大變ナ間違デアル、ソレハ
  井上藏相ガ所謂金解禁ヲ爲サッタコトヲ賞
  揚シ、其斷行ヲ非常ニ稱ヘテ昭和ノ井伊大
  老ト云フテ居ラレルノデアルガ、大老ノ心
  事ハ斯ウデアル、櫻田門外ノ雪ト消ヘル直
  前ニ大老ハ「春淺ミ野中ノ〓水氷リ居テ底ノ
  心ヲ汲ム人ゾナキ」ト詠マレテ居ル、所ガ井
  上サンハドウカト云フト、金解禁ヲ鳴物入
  デハヤシタテ宣傳ニ寧日ナシト云フ有樣デ
  其後造幣局ノオツイシヨウデアッタカ知リ
  マセヌガ、肖像入リノ「マーク」マデ造ッテ
  騷ガレタ、政治家トシテノ氣分ガ全ク違ッテ
  居ル、ソレカラ大老ノ斷行ト云フノハ、自
  分ノ一身一命ヲ賭シテ國家國民ノ爲ニ開國
  ヲ斷行シタノデアルガ失禮ダガ井上サンハ
  黨利黨略ノ爲メ國家ガ衰ヘ國民ガ塗炭ノ苦
  ミニ陷ルノモ構ハズ、金解禁ヲ斷行サレタ、
  此二ツノ斷行ノ本質ニハ大變ナ相違ガア
  ル、又先見ノ明ハドウデアッタカ、大老ハ斃
  レテモ開國ノ國是ハ確立シタガ今日井上閣
  下ノ金解禁後ノ豫言ハ財界恢復ノ「曙光ア
  リ」モ「金貨ノ流出ナシ」モ皆ンナ當ガハズ
  レタヾケデハナク國民ハ擧ッテ酷イ目ニ遭
  ヒ財界ハ沈衰シ農漁村小商工業者ハ靑息吐
  息ノ悲境ニアヘイデ居ルノデアリマス井
  上サンハ算數ノ事ニハ長ケテ居ラレマショ
  ウガ堤君ガ態。大老ニ比較シテ昭和ノ井伊
  大老ナドヽ云ハルヽコトハ吾々彥根舊藩士
  一同ノ名譽ノ爲メニ默過スルコトハ出來ナ
  イノデアリマス、堤君ハ同藩デモ士分デナ
  イカラ眞ノ大政治家ノ心事ヲ御理解ナイト
  思ヒマスノデ此席デ其發言ノ御取消ヲ願ッ
  テ置キマス、私ハ是カラ寧ロ本論ニ入リタ
  イノデスガ、モハヤ時間ガアリマセンカラ
  後ハ委員會ニ讓ルコトニ致シマス、甚ダ時
  間ヲ取シテ恐縮ニ存ジマス
  〔國務大臣安達謙藏君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02519310310&spkNum=64

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• 065・安達謙藏

  ○國務大臣(安達謙藏君)　堀部サンノ一膳
  飯屋ノ御話ハ謹ンデ拜聽致シマシタ、救護
  法ノ實施ノコトニ付キマシテハ卽行ノ御註
  文ガアリマシタケレドモガ、是ハ財源ノ關
  係モアリマスシ、御註文ニ應ズル譯ニ參リ
  マセズシテ、七年度ノ一月カラ實行致スコ
  トヽ致シテ居リマス、サリナガラ其準備ノ
  爲ニ數箇月間ヲ要シマス、左樣御承知ヲ願ッ
  テ置キマス、而シテ財源トシテ今御注意ニ
  ナリマシタガ、救護法ハ恆久ノ財源ヲ要シ
  マスカラ、之ヲ公債ヲ以テ支辨スル譯ニ參
  リマセヌ
  其次ニ少數ノ有產階級ニ課稅ヲスルト云
  フコト、官吏ノ減俸ト云フコトヲ御話ニナ
  リマシタガ、現在ノ所ニ於テハサウ云フ考
  ヲ持ッテ居リマセヌ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02519310310&spkNum=65

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• 066・小山松壽

  ○副議長(小山松壽君)　質疑ハ終了致シマ
  シタ、日程第二、右議案ノ審査ヲ付託スベ
  キ委員ノ選擧ヲ議題ト致シマス
  第二右議案ノ審査ヲ付託スヘキ委員
  ノ選擧

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02519310310&spkNum=66

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• 067・作田高太郎

  ○作田高太郞君　本案ハ議長指名十八名ノ
  委員ニ付託セラレンコトヲ望ミマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02519310310&spkNum=67

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• 068・小山松壽

  ○副議長(小山松壽君)　作田君ノ動議ニ御
  異議アリマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02519310310&spkNum=68

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• 069・小山松壽

  ○副議長(小山松壽君)　御異議ナイト認メ
  マリ、仍テ動議ノ如ク決シマシタ-日程
  第三、牧野法案ノ第一讀會ヲ開キマス-
  町田國務大臣
  第三、牧野法案(政府提出)第一讀會
  牧野法案
  牧野法
  第一條本法ニ於テ牧野ト稱スルハ牛馬
  ノ生產飼育ノ爲放牧又ハ採草ヲ爲スヲ
  目的トスル土地ヲ謂フ
  第二條地方公共團體ハ其ノ所有スル牧
  野ニ付命令ノ定ムル所ニ依リ管理方法
  ヲ定メ行政官廳ノ認可ヲ受クベシ認可
  ヲ受ケタル管理方法ヲ廢止又ハ變更セ
  ントスルトキ亦同ジ
  行政官廳必要アリト認ムルトキハ前項
  ノ管理方法ノ變更ヲ命ズルコトヲ得
  第三條牧野ノ荒廢防止、害蟲ノ驅除豫
  防其ノ他牧野ノ保護ニ關シ必要ナル事
  項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
  第四條命令ヲ以テ規定シタル者ヲ除ク
  ノ外牧野ニ於テ放牧又ハ採草ヲ爲ス者
  ハ協同シテ牧野ノ維持又ハ改良ヲ圖ル
  目的ヲ以テ牧野組合ヲ設立スルコトヲ
  得
  第五條牧野組合ハ法人トス
  第六條牧野組合ハ其ノ名稱中ニ牧野組
  合ナル文字ヲ用フベシ
  牧野組合ニ非ザルモノハ其ノ名稱中ニ
  牧野組合タルコトヲ示スベキ文字ヲ用
  フルコトヲ得ズ
  第七條牧野組合ハ一定ノ牧野ヲ以テ其
  ノ地區トス
  第八條牧野組合ハ其ノ目的ヲ達スル爲
  左ノ事業ヲ行フコトヲ得
  一牧野ノ維持又ハ改良ニ必要ナル共
  同設備ノ設置
  二草生ノ改良
  三荊棘、土石其ノ他障害物ノ除去
  四害蟲ノ驅除豫防
  五牧野ニ關スル利用統制
  六前各號ニ揭グルモノノ外牧野ノ維
  持又ハ改良ヲ圖ルニ必要ナル施設
  第九條政府ハ牧野組合ニ對シ豫算ノ範
  圍內ニ於テ奬勵金ヲ交付スルコトヲ得
  牧野ノ改良ニ關スル施設ヲ爲ス地方公
  共團體、畜產組合、畜產組合聯合會又ハ
  主務大臣ノ指定スル團體ニ付亦同ジ
  第十條牧野組合ヲ設立セントスルトキ
  ハ組合ノ地域タルベキ牧野ニ付組合員
  タル資格ヲ有スル者三分ノ二以上ノ同
  意ヲ得テ定款ヲ作成シ行政官廳ノ認可
  ヲ受クベシ
  牧野組合ハ前項ノ認可ヲ受ケタル時成
  立ス
  第十一條牧野組合成立シタルトキハ其
  ノ地區タル牧野ニ付組合員タル資格ヲ
  有スル者ハ總テ之ヲ組△口トト但但
  別ノ事由ニ依リ行政官廳ノ認可ヲ受ケ
  タル者ハ此ノ限ニ在ラズ
  第十二條牧野組合ノ定款ニハ左ノ事項
  ヲ記載スベシ
  一目的
  二名稱
  三地區
  四事務所ノ所在地
  五組合員タル資格ニ關スル規定
  六事業及其ノ執行ニ關スル規定
  七牧野ノ利用統制ノ定ヲ爲ス組合ニ
  在リテハ之ニ關スル規定
  八役員ニ關スル規定
  九經費ノ分擔方法
  十組合ガ公〓ヲ爲ス方法
  十一存立時期又ハ解散ノ事由ヲ定メ
  タルトキハ其ノ時期又ハ事由
  前項ニ規定スルモノノ外定款ニ定ムル
  コトヲ要スベキ事項ハ命令ヲ以テ之ヲ
  定ム
  第十三條牧野組合ハ第十條ノ認可ヲ受
  ケタルトキハ設立ノ登記ヲ爲スベシ
  登記スベキ事項左ノ如シ
  一前條第一項第一號乃至第三號、第
  十號及第十一號ニ揭グル事項
  二事務所
  三設立認可ノ年月日
  四理事ノ氏名、住所
  第十四條牧野組合ノ理事ハ總會ニ於テ
  組合員中ヨリ之ヲ選任ス但シ特別ノ事
  由アルトキハ組合員ニ非ザル者ヨリ之
  ヲ選任スルコトヲ得
  組合設立當時ノ理事ハ定款ヲ以テ之ヲ
  定ムベシ
  理事ハ何時ニテモ總會ノ決議ヲ以テ之
  ヲ解任スルコトヲ得
  第十六條第一項及第二項ノ規定ハ理事
  ノ選任又ハ解任ニ之ヲ準用ス
  第十五條牧野組合ハ牧野ノ改良事業ヲ
  行ハントスルトキハ其ノ改良計畫ヲ定
  メ行政官廳ノ認可ヲ受クベシ認可ヲ受
  ケタル改良計畫ヲ廢止又ハ變更セント
  スルトキ亦同ジ
  第十六條牧野組合ノ定款ノ變更ハ總會
  ニ於テ總組合員半數以上出席シ出席者
  ノ議決權ノ三分ノ二以上ヲ以テ之ヲ決
  ス
  定款ノ變更ハ行政官廳ノ認可ヲ受クル
  ニ非ザレバ其ノ效力ヲ生ゼズ
  定款ノ變更ガ地區ノ增減ニ關スルトキ
  ハ第一項ノ規定ニ依ル決議ノ外新ニ編
  大セラレ又ハ削除セラルベキ地區タル
  牧野ニ付組合員タル資格ヲ有スル者又
  ハ組合員ノ三分ノ二以上ノ同意アル
  コトヲ要ス
  第十七條牧野組合ノ組合員ハ定款ノ定
  ムル所ニ依リ總會ニ於テ書面又ハ代理
  人ヲ以テ議決權ヲ行フコトヲ得此ノ場
  合ニ於テハ之ヲ出席者ト看做ス但シ組
  合員ニ非ザレバ代理人タルコトヲ得
  ズ
  第十八條牧野組合ノ總會ノ決議ニ依ル
  解散ハ行政官廳ノ認可ヲ受クルニ非ザ
  レバ其ノ效力ヲ生ゼズ
  第十九條行政官廳ハ牧野組合ニ對シ業
  務ニ關スル報〓ヲ爲サシメ、書類帳簿、
  業務ノ執行又ハ財產ノ狀況ヲ檢查シ
  定款又ハ經費ノ分擔方法ノ變更ヲ命ジ
  其ノ他監督上必要ナル命令又ハ處分ヲ
  爲スコトヲ得
  第二十條牧野組合ノ總會ノ招集ノ手續
  又ハ決議ノ方法ガ法令又ハ定款ノ規定
  ニ違反スルトキハ組合員ハ決議ノ日ヨ
  リ一月以内ニ其ノ決議ノ無效ノ宣〓ヲ
  裁判所ニ請求スルコトヲ得
  前項ノ場合ニハ商法第百六十三條第二
  項及第三項ノ四ヲ準用ス
  第二十一條牧野組合ノ行爲又ハ總會ノ
  決議ガ法令又ハ定款ニ違反シ其ノ他公
  益ヲ害スルノ虞アルトキハ行政官廳ハ
  其ノ決議ヲ取消シ理事、監事若ハ〓
  算人ヲ解任シ組合ノ業務ヲ停止シ又
  ハ組合ノ解散ヲ命ズルコトヲ得
  第二十二條民法第四十四條、第四十五
  條、第四十六條第二項、第四十七條、第
  四十八條、第五十條乃至第六十四條、
  第六十五條第一項第三項、第六十六條、
  第六十八條乃至第七十條、第七十二條
  乃至第七十五條、第七十七條乃至第八
  十一條及第八十三條竝ニ非訟事件手續
  法第三十五條第一項、第百十七條、第
  百十九條乃至第百二十二條、第百三十
  六條乃至第百三十八條、第百四十二條
  乃至第百五十七條、第百七十五條、第
  百七十六條及第百九十五條ノ二ノ規定
  ハ牧野組合ニ之ヲ準用ス但シ民法第四
  十五條、第四十六條第二項、第四十八
  條及第七十七條中一週間トアルハ之ヲ
  二週間トス
  第二十三條牧野組合ガ本法ニ基キテ爲
  ス登記ニ付テハ登錄稅ヲ課セズ
  第二十四條牧野組合ハ定款ノ定ムル所
  ニ依リ定款違反者ニ對シ過怠金ヲ課ス
  ルコトヲ得
  第二十五條第十五條ノ規定ハ牧野ヲ設
  置スル畜產組合、畜產組合聯合會及主
  務大臣ノ指定スル團體ニ之ヲ準用ス
  第二十六條左ノ場合ニ於テハ牧野組合
  ノ理事、監事又ハ〓算人ヲ五圓以上二
  百圓以下ノ過料ニ處ス
  一本法ニ依リ行政官廳ノ認可ヲ受ケ
  テ爲スベキ事項ヲ之ヲ受ケズシテ爲
  シタルトキ
  二本法ニ依ル登記ヲ爲スコトヲ怠リ
  タルトキ
  三行政官廳又ハ總會ニ對シ不實ノ申
  立ヲ爲シ又ハ事實ヲ隱蔽シタルトキ
  四本法ニ依リ行政官廳ノ徵スル報〓
  ヲ差出サズ又ハ其ノ檢査ヲ拒ミ其ノ
  他行政官廳ノ命令若ハ處分ニ從ハザ
  ルトキ
  五本法ニ依ル總會ノ招集ヲ怠リタル
  トキ
  六組合ノ目的ニ非ザル事業ヲ爲シタ
  ルトキ
  七本法ニ依リ事務所ニ備ヘ置クベキ
  書類ヲ備ヘズ、其ノ書類ニ記載スベ
  キ事項ヲ記載セズ若ハ不正ノ記載ヲ
  爲シ又ハ正當ノ理由ナクシテ其ノ閱
  覽ヲ拒ミタルトキ
  八本法ニ違反シテ破產ノ宣告ヲ請求
  セザルトキ
  九本法ニ依ル公〓ヲ爲スコトヲ怠リ
  又ハ不正ノ公〓ヲ爲シタルトキ
  十〓算ノ場合ニ於テ本法ニ違反シテ
  辨濟ヲ爲シ又ハ組合財產ノ分配ヲ爲
  シタルトキ
  第二十七條牧野ヲ設置スル畜產組合若
  ハ畜產組合聯合會ノ役員又ハ牧野ヲ設
  置スル主務大臣ノ指定スル團體ノ代表
  者第二十五條ノ規定ニ依リ準用スル第
  十五條ノ規定ニ依ル認可ヲ受ケザルト
  キハ五圓以土二百圓以下ノ過料ニ處ス
  第二十八條非訟事件手續法第二百六條
  乃至第二百八條ノ規定ハ前二條ノ過料
  ニ之ヲ準用ス
  附則
  本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
  本法施行ノ日ヨリ六月以內ニ於テ第二十
  五條ニ揭グル者ノ行フ改良事業ニ付テハ
  同條ノ規定ニ依リ準用スル第十五條ノ規
  定ヲ適用セズ
  〔國務大臣町田忠治君登壇〕

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• 070・町田忠治

  ○國務大臣(町田忠治君)　只今上程セラレ
  テ居リマスル牧野法案提出ノ理由ヲ極メテ
  簡單ニ說明致シマス、我國牧野ノ現狀ヲ見
  マスルニ、其多クハ多年ノ慣行ニ隨フテ之ヲ
  使用シテ居ルノデアリマス、而モ牧野ヲ使
  用スル者ハ小農デアリマシテ、從來其手入
  レモ不十分デアルノミナラズ、濫牧、濫穫
  ノ結果漸次牧野ノ荒廢ヲ見ルニ至リマシタ
  コトハ洵ニ遺憾ニ堪ヘマセヌ、是ガ維持改
  善ノ對策ヲ講ズルコトハ必要デアリマス、
  仍テ本案ニ於キマシテハ地方公共團體ノ所
  有スル收野ニ對シ、其所有者ヲシテ管理方
  法ヲ定メシメ、牧野ノ維持改良ノ基礎ヲ確
  立スルト共ニ、一般牧野ニ於テ放牧又ハ採
  草ヲ爲ス者ヲシテ國家助成ノ下ニ牧野組合
  ヲ組成スルコトヲ得セシメ、從來ノ濫牧濫
  穫ノ弊ヲ矯正スルト共ニ、進ンデ牧野ノ維
  持改良ニ關スル各種ノ施設ヲ行ハシメ、且
  ツ牧野ノ荒廢防止及ビ害蟲驅除豫防ニ關
  シ、ソレ〓〓適當ナル方法ヲ講ジ、以テ牧
  野ノ維持改善ヲ圖ラントスルノデゴザイマ
  ス、何卒御審議ノ上御協賛アランコトヲ望
  ミマス

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• 071・小山松壽

  ○副議長(小山松壽君)　日程第四、右議案
  ノ審査ヲ付託スベキ委員ノ選擧ヲ議題ト致
  シマス
  第四、右議案ノ審査ヲ付託スベキ委員
  ノ選擧

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• 072・作田高太郎

  ○作田高太郞君　本案ハ政府提出競馬法中
  改正法律案ノ委員ニ併セ付託セラレンコト
  ヲ望ミマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02519310310&spkNum=72

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• 073・小山松壽

  ○副議長(小山松壽君)　作田君ノ動議ニ御
  異議アリマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02519310310&spkNum=73

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• 074・小山松壽

  ○副議長(小山松壽君)　御異議ナシト認メ
  マス仍テ動議ノ如ク決シマシタ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02519310310&spkNum=74

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• 075・作田高太郎

  ○作田高太郞君　殘餘ノ日程ハ延期シ、本
  日ハ之ニテ散會セラレンコトヲ望ミマス

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• 076・小山松壽

  ○副議長(小山松壽君)　作田君ノ動議ニ御
  異議アリマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X02519310310&spkNum=76

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• 077・小山松壽

  ○副議長(小山松壽君)　御異議ナシト認メ
  PV2、仍テ動議ノ如ク決シマシタ、次囘ノ
  日程ハ公報ヲ以テ御通知致シマス、本日ハ
  是ニテ散會致シマス
  午後六時四十分散會
  衆議院議事速記錄第十四號中正誤
  頁段行誤正
  六一七一二五相當ニ考ヘ相當ニアリ
  マスマス
  六一七四三七天然樹植人工樹植

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