1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和六年三月二十日(金曜日)
午前十時四十八分開議
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議事日程 第三十號
昭和六年三月二十日
午前十時開議
第一 牧野法案(政府提出) 第一讀會の續(前會の續)
第二 競馬法中改正法律案(政府提出) 第一讀會の續(前會の續)
第三 關税定率法中改正法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第四 著作權法中改正法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第五 船舶積量測度法中改正法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第六 勞働者災害扶助法案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第七 勞働者災害扶助責任保險法案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第八 勞働者災害扶助責任保險特別會計法案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第九 小作法案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第十 關税定率法中改正法律案(本田恒之君外五名提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第十一 關税定率法中改正法律案(淺川浩君外四名提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第十二 決議案(内閣不信任の件)(犬養毅君提出)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=0
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001・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 諸般ノ報告ヲ致サ
セマス
〔書記官朗讀〕
一議員ノ異動左ノ如シ
新潟縣第四區選出議員石塚讓君死去セラ
レタリ
〔左ノ報〓ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノ爲
茲ニ揭載ス〕
一昨十九日ニ於ケル詩〓委員ノ異動左ノ如
シ
辯護士法中改正法律案(北浦圭太郞君外
三名提出)外二件委員
辭任岩本武助君補關米田規矩馬君
競馬法中改正法律案(政府提出)外一件委
員
辭任大島要三君補劃坂東幸太郞君
辭任難波〓人君補闘佐藤重遠君
關稅定率法中改正法律案(政府提出)委員
辭任今井健彥君補闕加藤知正君
一昨十九日第三部選組請願委員石塚讓君死
去セランタリ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=1
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002・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 是ヨリ會議ヲ開キ
マス只今御報〓ヲ申上ゲマシタ通リ議
員石塚讓君ハ昨日逝去セラレマシタ、室
痛惜哀悼ノ至リニ堪ヘマセヌ、此際武田德
三郞君ヨリ發言ヲ求メラレテ居リマス、之
ヲ許シマス-武田德三郞君
〔武田德三郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=2
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003・武田徳三郎
○武田德三郞君 私ハ只今議長ヨリ御報告
ニナリマシタ、故衆議院議員石塚讓君ニ對シ
テ、院議ヲ以テ弔辭ヲ呈スルコトヲ、玆
發議ヲ致シタイト思フノデアリマス(拍手)
而シテ其弔辭ノ起草ハ議長ニ一任致シタイ
ト思フノデアリマス、此動議ヲ提出ヲ致シ
マス(拍手)
而シテ此際私ハ皆樣ノ御許シヲ得マシ
テ議員一同ヲ代表致シマシテ、故石塚君
ニ一言ノ御弔辭ヲ申述ベタイト存ジマス
(拍手)
石塚君ハ痩應元年九月ニ名古屋市ニ御出
生ニナリマシテ、中央大學ヲ卒業致サレマ
シテ、東京市ニ於テ辯護士ヲ開業サレ、次
デ高田市ニ於テ多年ノ間辯護事務ニ從事サ
レマシタ、次デ又高田町町會議員、中頸城
郡郡會議員竝ニ高田市會議員、及ビ參事會
員ニ歷任サレ、公共ノ爲ニ盡瘁サレタルコ
ト、頗リ顯著ナルモノガアルノデアリマス、
其後昨年二月、卽チ第十七囘總選擧ニ於キ
マシテ新潟縣第四區カラ選出サレテ衆
議院議員ニ當選ヲ致サレタノデアリマス、
不幸ニシテ昨十九日午前四時逝去サレタノ
デアリマシテ洵ニ御同樣哀悼ノ至リニ堪
ヘナイノデアリマス、玆ニ謹デ故人ノ靈ニ
對シテ哀悼ノ意ヲ表スル次第デアリマス
(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=3
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004・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 武田君提出ノ動議
ニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=4
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005・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 御異議ナシト認メ
マス、仍テ議長ノ手許ニ於テ起草致シマシ
タ弔詞ヲ茲ニ朗讀致シマス
衆議院ハ議員石塚譲君ノ長逝ヲ哀悼シ恭
シタ弔詞ヲ呈ス
〔拍手起ル〕
是ヨリ日程ニ入リマス、日程第一、牧野法
案、日程第二、競馬法中改正法律案ヲ一括
シテ前會ノ續ヲ開キマス
第牧野法案(政府提出)
第一讀會ノ續(前會ノ續)
第二競馬法中改正法律案(政府提出)
第一讀會ノ續(前會ノ續)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=5
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006・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 旣ニ討論ハ終局致
シテ居リマスカラ直チニ採決致シマス
兩案ノ第二讀會ヲ開クニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=6
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007・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 御異議ナシト認メ
マス第二讀會ヲ開クニ決シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=7
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008・作田高太郎
○作田高太郞君 直チニ兩案ノ第二讀會ヲ
開キ、第三讀會ヲ省略シテ委員長報告ノ
通リ可決セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=8
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009・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 作田君ノ動議ニ御
異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=9
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010・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 御異議ナシト認メ
マス直チニ兩案ノ第二讀會ヲ開キマス
牧野法案第二讀會(確定議)
競馬法中改正法律案第二讀會(確定議)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=10
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011・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 別ニ御發議モアリ
マセヌカラ兩案トモ委員長報告通リ可決
確定致シマシタ(拍手)
日程第三、關稅定率法中······作田君、何
デスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=11
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012・作田高太郎
○作田高太郎君 議事日程變更ノ動議ヲ提
出致シマス卽チ此際日程第十、第十一ヲ
繰上ゲ、日程第三ト括シテ、其審議ヲ進
メラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=12
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013・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 作田君ノ動議ニ御
異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=13
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014・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 御異議ナシト認メ
マス是ニハ政府ノ同意ヲ得テ居リマス
日程第三、關稅定率法中改正法律案、日程
第十、關稅定率法中改正法律案、日程第十
關稅定率法中改正法律案ヲ一括シテ
其第一讀會ノ續ヲ開キマス、委員長ノ報〓
ヲ求メマス-委員長永田善三郞君
第三關稅定率法中改正法律案(政府
提出)第一讀會ノ續(委員長報告)
報〓書
一關稅定率法中改正法律案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和六年三月十九日
委員長永田善三郞
衆議院議長藤澤幾之輔殿
附帶決議
一近年我カ國人造絹絲織物輸出額ノ激增
ニ鑑ミ我カ人絹製造工業ヲ奬勵助長シ
テ益海外貿易ノ發展ヲ圖ルハ兩者共存
ノ所以ナリト認ム
然ルニ一部織物業者ニ保稅工場ヲ特許
シ內地製人絹ヲ原料トスル多數織物業
者ト海外市場ニ競爭セシムルハ內地人
絹製造業者及前記多數織物業者ノ存立
ヲ危クスルモノナリ故ニ政府ハ將來人
絹織物業ニ對スル保稅工場ノ新設又ハ
擴張ノ特許ヲ與ヘサルハ勿論之カ取締
ヲ嚴重ニシ以テ人絹製造ノ發達ト人絹
織物輸出貿易ノ增進ト相互扞格ナキヲ
期スヘシ
一關稅定率法別表中第六一二號「癸」ニ該
當スル南洋ラワン材ハ近時其ノ輸入量增
加ノ傾向ニアリ其ノ價格低廉ニシテ內地
濶葉樹ノ市場ヲ壓迫スルニ鑑ミ之カ輸
入閣稅引上ケノ要アリト思意ス
第十關稅定率注中改正法律案(本田
恒之君外五名提出)
第一讀會ノ續(委員長報〓)
報告書
一關稅定率法中改正法律案(本田恒之君
外五名提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報告候也
昭和六年三月十九日
委員長永田善三郞
衆議院議長藤澤幾之輔殿
第十一關稅定率法中改正法律案{愛
川浩君外四名提出)
第一讀會ノ續(委員長報〓)
報告書
一關稅定率法中改正法律案(淺川浩君外
四名提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和六年三月十九日
委員長永田善三郞
安永院議長藤澤幾之輔殿
〔水田善三郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=14
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015・永田善三郎
○永田善三郞君 諸君、只今議題ニ供セラレ
マシタ日程第三、關稅定率法中改正法律案、
政府提出、及ビ第十、十一、議員提出法律案、
此二ツニ付キマシテ委員會ノ經過竝ニ結果
ヲ御報〓致シマス、政府案二案ハ木材ニ關
シマスル一部ノ補修的關稅ノ引上デアリマ
シテ、又モウ一ツハ人絹關稅ノ引下デアリ
そう、日程第十、十一ハ員提出ニ係リ
マシテ、關稅定率法中第五十三號、五十四
號五十五號、二百十七號其他デアリマシ
テ、又モウ一ツハ第十八號、十九號、二十二號
デアリマスガ、此中十八號ト十九號ハ、川島
正次郞君外數氏ノ御提案デアリマスガ、是
ハ併合無理スルコトニ致シマシテ、御承認
ヲ得マシタ譯デアリマス、斯樣ナ次第デア
リマシテ政府案ノ、日程第三ニ上ツテ居リ
マス方ハ、多數ヲ以テ可決致シマシタ可
決後之ニ對シテ附帶決議カアリマシテ、
ツハ人絹關稅ニ關シ、一ツハ木材關稅ニ關
シテヾアリマシテ附帶決議ハ兩案共滿場
一致デ可決致シマシタ又議員提出ニ係ル
第十、十一ハ是モ全會一致ヲ以テ可決致
シマシタ、斯樣ナ譯デアリマシテ、詳細ノ
點ハ委員長報告ニ詳シク戰セテアリマス、
ドウカ御覧ノ上ニ本案ニ御贊成アランコト
ヲ御願致ス次第デアリマスーチヨット申
落シマシタ、政府案ニ對シマシテ板谷順助
君外數名ヨリ修正ノ動議ガアリマシタ、少
數ヲ以テ是ハ否決ニナリマシタ、補修ヲ致
シテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=15
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016・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 政府提出、關稅定
率法中改正法律案ニ對シマシテハ岩本武
助君外六名ヨリ少數意見ガ提出サレテ居リ
マス、此意見ハ修正デアリマスカラ、第二讀
會ニ於テ其報告ヲ許スコトニ致シマス、尙
ホ討論ハ便宜上第二讀會ニ於テ爲スコトニ
致シタイト思ヒマス、左樣御諒承ヲ願ヒマ
ス、先ヅ政府提出、關稅定率法中改正法律
案ノ第二讀會ヲ開クニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=16
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017・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 御異議ナシト認メ
マス仍テ本案ノ第二讀會ヲ開クニ決シマ
シタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=17
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018・作田高太郎
○作田高太郞君 直チニ本案ノ第二讀會ヲ
開カレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=18
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019・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 作田君ノ動議ニ御
異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕
己ノ五其ノ他(ドグラスフア-等)
ニ丸太及割材
ニノ一長十メートルヲ超エ、
十センチメートルヲ超エサルモノ
ニノ二其ノ他
癸其ノ他
イ厚百五十ミリメートルヲ超エサルモノ
ロ其ノ他(丸太及割材ヲ含ム)
〔板谷願助君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=19
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020・藤澤幾之輔
○板谷順助君 私ハ本法案ニ對シマシテ、
簡單ニ修正意見ヲ申上ゲマス、此關稅改正
ニ付キマシテハ、政府ノ說明スル所ニ依レ
バ稅ノ收入ヲ得ルガ目的デナクシテ、關
稅定率ノ均衡ヲ得ルト云フコトガ目的デア
ル、斯ウ說明サレテ居ルノデアリマス、然
ラバ均衡ヲ得ルト云フコトハ產業ニ對ス
ル所ノ保護ヲスルト云フ意味デアルカト云
フ質問ヲ致シマシタ、所ガサウデハナイト
言ッテ居ル··発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=20
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021・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 御異議ナシト認メ
マス、仍テ直チニ本案ノ第一一讀會ヲ開キマス
關稅定率法中改正法律案(政府提出)
第二讀會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=21
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022・板谷順助
○議長(藤澤幾之輔君) 此際本案ニ對スル
少數意見ノ報〓ヲ求メマス-板谷順助君
少數者意見書
一關稅定率法中改正法律案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ別紙ノ通修正スヘキモノ
ト認ムルニ依リ少數者意見書及提出候也
昭和六年三月十九日
委員少數意見者
岩本武助
外六名
〔別紙〕
關稅定率法中改正法律案中左ノ通修正ス
「第二百九十號中「一一一五·〇〇」ヲ「七五·
〇〇」ニ改ム」ヲ削ル
第六百十二號第一項已ノ五ノニ及癸ヲ左
ノ如ク改ム
末口ノ直徑三
三·五〇
每立方メー
トル三·〇〇
每立方メー五·〇〇
トル
每立方メー三·五〇
トル
〔發言スル者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=22
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023・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 靜肅ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=23
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024・板谷順助
○板谷順助君(續) ソコデ政府ニ對シテ質
疑ヲ試ミマシタ所ガ、此法案ナルモノガ不
純ノ動機ニ依ッテ提出サレテ居ルト云フコ
トヲ發見致シタノデアリマス、大體關稅改
正ト云フコトハ、我國ノ國策ヲ定ムル上ニ
於テ重大ナル關係ノアル問題デアル然
ルニ現在世界ニ於ケル所ノ大勢ニ對シテ
政府竝ニ民政黨ノ諸君ハ如何ナル所ノ考
ヲ持クテ居ルカ、現在世界ニ於キマシテハ
歐洲戰爭以來國力ノ囘復ノ爲ニ自給自足主
義、有ユル所ノ手段ヲ以テ自國ノ產業ヲ保
護シテ居ルノデアル、卽チ極端ナル所ノ關
稅政策ヲ用ヒテ、而シテ之ニ對スル所ノ對
抗手段ヲ執ッテ居ルノデアリマス、或ハ生產
過剩ノ爲メ、又ハ販路ノ擴張ノ爲ニ、各國
ニ向ッテ不當廉賣ヲ行ッテ居ルノデアル、然
ルニ我國ニ於ケル所ノ狀態ハドウ云フ有
樣ニナッテ居ルカ、一例ヲ申上ゲマスルナラ
バ、北海道ニ於テハ、戰爭以來年々歲々外
國ニ輸出サレル所ノ靑豌豆、澱粉ノ如キモ
ノガ數千万圓アルノデアル、然ルニ靑豌豆
ガ從來亞米利加ニ於キマシテ、百封度ニ對
シテ五十仙ノ課稅ヲシテ居シタモノガ、昨年
ニ於テハ此三倍一弗五十仙ニ値上シタ、又
菜豆類ニ對シマシテハ從來百封度一弗七
十五仙デアッタモノヲ、之ヲ突然三弗ニ値上
シタノデアリマス、更ニ又我國カラ濠洲竝
ニ英國ニ對シテ輸出サレテ居ル所ノ楢材ニ
對シマシテハ從來關稅ガ百石ニ對シテ六
百圓デアッタモノガ、是ガ突然五割ノ値上、
九百三十圓ニ値上ヲ致シマシタ、卽チ世界
各國ニ於テハ關稅ノ障壁ナルモノヲ設ケ
テ白國ノ產業ヲ出來得ルダケ保護スル方
針ヲ執ッテ居ルノデアリマス、然ルニ民政黨
ハ組閣ノ當時ニ於キマシテハ自由貿易主
義ヲ標榜シテ居シタ、卽チ各產業ニ對シテ自
主獨往デ進メヨト云フ方針ヲ執シテ居ッタ、
勿論之ニ對シテハ一應ノ理窟ハアルデア
ラウ、アルデアラウケレドモ、今日我國
ノ狀態ハ如何ナル有樣ニナッテ居ルカ、卽チ
明治初年以來輸入超過デヂリ貧乏ヲシ
テ居ルノデアルデアリマスカラ、此局面
ヲ打開スルト云フコトニ付キマシテハド
ウシテモ一面ニ於テ輪入ヲ防遏シ、輸出ヲ
奬勵スルト云フコトニ對シマシテハ出來
得ルダケ產業ノ振興ヲ圖ラナケレバ何時
ノ時代ニ於テ我國ノ國際貸借ノ改善ヲ達ス
ルコトガ出來ルノデアリマスカ、吾々ハ此
見地カラ我國ノ現在ノ產業ニ對シテ、出來
ルダケ保護奬勵ヲスル必要ガアルト云フコ
トヲ認メルノデアリマス、然ルー此此現現
府カラ提出サレマシタ所ノ木材ノ關稅改正
ニ對シマシテハ產業ヲ保護スル意味カラ
出發シテ居ルノデアルカト云フ吾々ノ質問
ニ對シテ、政府ノ當局ハサウデナイト答一
テ居リマス、大體此木材ノ關稅ト云フモノ
ハ我ガ田中內閣ノ當時ニ於テ、亞米利加
材ガ輸入サレルガ爲ニ、我國ニ於ケル所ノ
木材業者ガ、非常ナル打擊ヲ受ケルト云フ
所カラ、之ニ對シテ關稅ヲ課ケタノデアリ
マスガ、其際ニ民政黨ノ諸君ハ反對シテ居ッ
ク、其反對ノ理由ト致シマシテハ若シ木
材ニ關稅ヲ課ケラレルト高クナル、高クナ
レバ從ッテ都會ニ於ケル借家賃ガ高クナリ
又濫伐ガ行ハレルト云フコトヲ言ッタノデ
アリマスガ、要スルニ現在山村ニ住居シテ
居ル所ノ林業者ハ木材ノ非常ナ暴落ノ爲
ニ殆ド其收支償ハナイト云フヤウナ狀態
ニナッテ居ルノデアリマス、所ガ之ニ對シテ
此度木材ノ一都ニ對シテ關稅改正ノ法案ガ
提出サレタノデアリマスガ、吾々ハ此趣旨
カラ考ヘマシタナラバ何故是ト同ジ運命
ニアル所ノ南洋木材ニ對シテ之ヲ課ケヌ
カ、然ルニ此南洋材ニ對シテ農林大臣ノ說
明スル所ニ依リマスレバ、一般低率ナモノ
同樣ナ稅ヲバ、南洋材ニ課ケルコトニ付テ
相當考究ヲ致シタガ御承知ノ通リ數年次
第々々ニ南洋材ノ輸入スル分量ガ減リツヽ
アル、是ガ增加シテ參ノテ、內地ノ木材ニ壓
迫ヲ加ヘルヤウニナッタナラバ考慮スルト
言シテ居ル、然ルニ近年南洋材ノ我國ニ入ル
數量ハ政府ノ提出シタ所ノ參考資料ニ依
リマシテモ昭和三年ニ於テハ二十三万九
千石、四年ハ三十五万五千石、五年ニ於テ
ハ三十二万千石、年々增加スルト云フ數字
ガ現レテ居ルノデアリマス、勿論昨年ハ
財界不況ノ爲ニ三十二万千石ニ減シテ居リ
マスケレドモ、南洋材ノ輸入ノ爲ニ-現
在我ガ日本ニ於ケル濶葉樹ノ一箇年ノ需要
高ハ五百万石デアリマスガ、之ニ對スル所
ノ半數以上ハ、北海道ニ於テ供給シテ居ル
ノデアリマス、北海道材ガ年々歲々此南洋
材ノ輸入ノ爲ニ壓迫サレマシテ、從來ニ於
テハ三百万石以上移出シテ居ッタノデアリ
マスガ、今日ニ於テハ其半分ノ百五十万石
ニ減ッタト云フヤウナ情勢デアリマス、更ニ
又値段ノ關係カラ申シマシテモ、今日物價
ガ安クナッタ、安クナッテモ生產費ハ八百圓
デハ上ラヌノデアル、然ルニ南洋材ハ第一
木代ガ只同樣デアル而シテ又搬出ニ於テ
モ極メテ便利デアル、是等ノ關係カラ致シ
マシテ、六百圓ノ値段デ以テ內地ニ來テ、
供給サレルノデアリマスカラ、我國ニ於ケ
ル所ノ濶葉樹ナルモノハ、年々歲々是ガ壓
迫ヲ受ケテ居ルヤウナ情勢デアル所ガ我
ガ日本ニ於ケル所ノ此濶葉樹ナルモノハ
本土ニ於テ十八億石、北海道ニ於テ十億石、
更ニ又朝鮮、臺灣ニ於テ約七億石、詰リ我
國ノ領土ニ於テハ四十億石ノ濶葉樹材ガア
ル其需要ナルモノハ、今中シマシタ通リ、
一箇年ニ於テ約五百万石ニ滿タヌノデア
ルデアリマスカラ、是等ノ林業政策ノ上
カラ行キマシテモ、我國ニ於ケル所ノ濶葉
樹ニ對シテ、相當ナ保護ヲ加ヘルト云フコ
トハ當然デアルト云フ見地カラ致シマシ
テ農林大臣ニ質問致シタノデアリマス
又之ニ對シテ民政黨ノ諸君ヨリ希望條件ガ
出テ居ルケレドモ、斯ル生溫イ方法デハイ
カヌ、吾々ハ之ヲ修正シテ、卽チ米材ニ於
ケル田中內閣ノ關稅ヲ課ケタ此均衡ヲ保タ
ンガ爲ニ、年々沿海州カラ無稅デ入ッテ居ル
所ノ、此木材ノ均衡ヲ得ルト云フ目的ヨリ
課稅スルナラバ是ト同樣ノ運命ニアル所
ノ南洋材ニ課ケルト云フコトハ當然ノ結
果デアルト云フノデ、吾々ハ之ニ對シテ修
正ヲ致サントスルノデアリマス
更ニ又米材ニ對シテ、長物ニ付キマシテ
ハ無稅ト云フコトニナッテ居ッタケレドモ、
是ハ均衡ヲ失スル、此意味ニ於キマシテ、
卽チ己ノ五ニ於ケル所ノ「ニノ一」之ニ對シ
テ三圓五十錢「ニノ二」ニ對シテ三圓更ニ
又南洋材ノ從來挽材ニ對スル從價六分ニ對
シテ五圓、無稅ニナッテ居ルノニ三圓五十錢
ヲ課ケマシテ、此度政府ノ改正サレルノ所
ノ沿海州ノ木材ニ、均衡ヲ得セシムル意味
ニ於テ、修正致シタノデアルノデアリマス
更ニ又人絹ノ關稅ノ引下ニ對シマシテ
ハ勿論各々其立場ニ依リマシテ利
害ハアリマセウ、併ナガラ我國ノ人絹ナル
モノガ、近年著シク發展ヲシタ、例ヘバ最
近ニ於ケル所ノ生產高ヲ調ベテ見マシテ
モ昭和三年度ニ於キマシテハ一億六千五
百万「ポンド」昭和四年ニ於テハ二億七千万
「ポンド」昨年ニ於テハ一一億六千六百万「ポ
ンド」ニ增加シテ居ルヤウナ狀勢デアル、デ
アリマスカラ、今日我國ノ輸出ナルモノガ、
非常ナル勢ヲ示シテ居ルノデアリマス、輸
入ハドウデアルカト申シマスレバ、何等增
減ガナイ、此財界ノ不況ノ場合ニ於テ、經
濟界ニ非常ナ衝動ヲ與フル所ノ四割ヲ引
下ゲルト云フコトハ意味ヲ爲サヌ、之ニ對
シテ政府當局ニ向ッテ色々ノ質問ヲ致シタ
所ガ、要領ヲ得ナイノデアリマスカラ、吾
吾ハ現在ノ狀態ニ於キマシテハ、其儘ニシ
テ置キマシテ、將來ノ趨勢ニ依ッテ相當ナ改
正ヲ加フルコトガ相當デアラウト、斯ウ信
ズルモノデアリマス
更ニ澱粉竝ニ煉乳品ニ對シマシテハ、今
日ノ狀勢ニ於キマシテハ、關稅ヲ課ケナケ
レバ、此保護ハ出來ナイト云フコトハ、政民
兩派ニ於テ一致シテ居ル所ノ意見デアリマ
ス現在ノ農村ハ、御承知ノ通リ米ニ對シ
マシテハ、米ノ生產費ヲ償フ意味ニ於テ、
米穀法ナルモノガ出來テ居ル、決シテ農產
物ハ單リ米バカリデハアリマセヌ、卽チ乳
製品ニ於テモ、澱粉ニ於テモ、之ヲ保護シ
ナケレバナラヌ必要ガアル、然ルニ之ニ對
シテ政府ノ當局、農林大臣竝ニ大藏大臣ハ、
相當ニ考慮ヲスルト言。ッテ聲明シタノデア
ルガ、昨日其聲明ナルモノヲ伺ヒマスルニ、
將來ニ於テ出來ルダケ努力スル、唯反古紙
同樣ナモノヲ出シテ居ルノデアリマスノデ
アリマスルカラ、吾々ハ現在ノ政府賴ムニ足
ラヌ、將來ニ於テ出來ルダケ我黨ニ於テー
我黨內閣ニ於テ此問題ヲ解決スル是ヨリ
外ニ途ガナイト云フコトヲ確信スルノデア
リマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=24
-
025・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 此少數意見ニハ成
規ノ贊成アリト認メマス、仍テ少數意見ハ
修正動議トシテ成立致シマシタ、質疑ヲ求
メラレテ居リマス-就鳥野米太郞君
〔鷲野米太郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=25
-
026・鷲野米太郎
○鷲野米太郞君 非常ニ御急ギノヤウデア
リマスルカラ、私ハ極ク簡單ニ述べマスル
カラ、暫ク御〓聽ヲ煩シマス
私ノ伺ハウトスル點ハ、關稅及ビ砂糖消
費稅ノ脫稅ニ關聯シタコトデアリマス、此
事ニ付キマシテハ、巷間色々ノ噂ガアッタノ
デアリマスルガ、三月九日ニ東京朝日新聞
ノ記事ニ依リマスト、某會社ノ輸入砂糖關
稅ノ脫稅及ビ消費稅ノ脫稅ニ付キマシテ
橫濱市民中津梅吉ナル者ヨリ某會社ガ〓發
サレタノデアリマス、其後大阪ノ某經濟雜
誌ニモ、此問題ガ論議セラレテ居リマスル
シ、其他ノ二三ノ新聞ニ於テモ、此事ノ眞
相ガ報道セラレテ居ルノデアリマス會社
ハソレハ事實無根ト申シテ居ルヤウデアリ
さく、サウシテ橫濱稅關ニ於テモ、事實無
根ト云フヤウナ事ヲ言ウテ居ルノデアリマ
スルケレドモ、私ガ色々ノ方法ニ依リテ材
料ヲ得タ所ノ其材料ニ依リマスルト、事實
無根デハ斷ジテナイノデアリマス、サウシ
テ色々ノ人證モアレバ物證モアルノデアリ
やく、所ガ此某會社ナルモノハ、某大財閥
ノ經營シテ居ル大會社デアッテ、民政黨トハ
直接ノ關係ハナクテモ、間接ノ關係ガアル
ノデアリマス、現ニ其會社ノ某當局者モ豪
語シテ、民政黨內閣ノ下ニ於テハ斷ジテ
此間題ハ問題ニナラナイト、會社當局者ガ
〓發ニ關係アル某ニ對シテ豪語シテ居ル間
題デアルノデアリマス、脫稅ノ金額ハ十
數年カラ以前ノ金額ヲ合計シマスト、數千
万圓ニ達スルノデアリマスケレドモ、單一
昭和三年ノ十月カラ昭和五年ノ二月ニ至ル
迄ノ分ダケデモ、六百三十万圓ニ達スルノデ
アリマス(拍手)關稅法ノ規定ニ依リマスト、
脫稅ニ對シテハ三倍ノ罰金ガ課セラレルノ
デアリマスルカラ、其罰金額ハ千八百餘万
圓ニ達シマス、サウシテ砂糖ノ脫稅デアル
ナラバ其砂糖ヲ沒收シ、砂糖ガ賣ラレテ居
ルナラバ、其價額ヲ追徵スルコトニナッテ
居ルノデアリマスルカラ、結局事件ガ進展
シテ參リマシタナラバ某會社ハ數千万圓
ノ金ヲ國庫ニ納入セネバナラヌコトニナ
ル、大脫稅、大事件デアルノデアリマス、
此問題ニ付キマシテ、大藏當局ハ果シテ調
査ヲ進メタカ、又今後調査ヲ進ムルノ御考
デアルカ、此裏ニハ稅關吏及ビ稅務吏ノ收
賄濱職事件モ伏在シテ居ルト云フ噂モア
ル、又司法當局トシテハ、横濱檢事局ヨリ
如何ナル報告ヲ受ケテ居ラレルノデアルカ
傳ヘ聞ク所ニ依リマスト、横濱稅關ト横濱
檢事局ノ間ニハ妥協ヲシテ、此問題ニ手ヲ
著ケナイト云フヤウナ噂ガアルノデアリマ
スルガ、事實ガ明カデアッテモ、司法當局ハ
檢事局ヲ鞭韃シテ手ヲ著ケナイト云フ考デ
アルカドウカ、此點ヲ御伺致シタイノデア
リマス、私ハ色々此開題ニ付テ述べタイノ
デアリマスルケレドモ、是ダケ申シマシタ
ナラバ、事件ノ〓要ハ分ルノデアリマスル
カラ、大藏當局及ビ司法當局ノ御所見ヲ伺
フノミト致シ、更ニ本會議ニテ重ネテ質疑
ハ致サヌノデアリマスルケレドモ、事件炳
トシテ明カデアルカラ、若シ政府ガ一寸モ
事件ノ審理ヲ進メナイナラバ私ハ第二ノ
行動ニ移ルト云フコトヲ、玆ニ斷言シテ降
壇スル次第デアルノデアリマス(拍手)
〔政府委員小川〓太郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=26
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027・小川郷太郎
○政府委員(小川〓太郞君) 鷲野君ノ只今
述ベラレタ事ハ、何等報告ニ接シテ居リマ
セヌ
〔政府委員井本當作君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=27
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028・井本常作
○政府委員(井本常作君) 鷲野君ノ御質問
ニ御答致シマス、鷲野君ハ具體的事實ヲ指
摘シテ居リマセヌカラ、司法省ト致シマシ
テハ答辯ハ出來マセヌ、併ナガラ横濱檢事
局ト橫濱ノ稅關ガ妥協シテ居ルト云フ事實
ハ司法省ト致シマシテハ認メマセヌ、左
樣御承知ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=28
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029・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 質疑ハ終リマシ
タ討論ハアリマセヌ、岩本君外六名提出
ノ修正案ニ贊成ノ諸君ノ起立ヲ求メマス
〔贊成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=29
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030・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 少數デアリマス、
修正案ハ否決セラレマシタ、次イデ本案委
員長報告ニ付テ採決致シマス、本案委員長
報告ニ贊成ノ諸君ノ起立ヲ求メマス
〔贊成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=30
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031・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 多數デアリマス、
仍テ本案ハ委員長報〓ノ通リ決シマシタ
(拍手)是ニテ第二讀會ハ終了致シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=31
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032・作田高太郎
○作田高太郞君 直チニ本案ノ第三讀會ヲ
開カレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=32
-
033・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 作田君ノ動議ニ御
異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=33
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034・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 御異議ナシト認メ
マス仍テ直チニ本案ノ第三讀會ヲ開キマ
ス
關稅定率法中改正法律案(政府提出)
第三讀會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=34
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035・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 別ニ御發議ガアリ
マセヌカラ、本案ハ第二讀會議決ノ通リ可
決確定致シマシタ(拍手)
次ニ本田恒之君外五名提出、關稅定率法
中改正法律案、淺川浩君外四名提出、關稅
定率法中改正法律案ヲ一括シテ其審議ニ入
リマス、兩案ノ第二讀會ヲ開クニ御異議ア
リマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=35
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036・藤澤幾之輔
○護長(藤澤幾之輔君) 御異議アリマセヌ、
仍テ兩案ノ第二讀會ヲ開クニ決シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=36
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037・作田高太郎
○作田高太郞君 直チニ兩案ノ第二讀會ヲ
開キ第三讀會ヲ省略シテ、委員長ノ報〓
ノ通リ可決確定セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=37
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038・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 御異議ナシト認メ
マス直チニ兩案ノ第二讀會ヲ開キマス
關稅定率法中改正法律案(本田恒之君
外五名提出)第二讀會(確定議)
關稅定率法中改正法律案(淺川浩君外
四名提出)第二讀會(確定議)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=38
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039・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 別ニ御發議ガアリ
マセヌカラ、兩案トモ委員長報告通リ可決
確定致シマシタ(拍手)是ニテ本案ハ終了致
シマシタ
日程第四、著作權法中改正法律案ノ第一
讀會ノ續ヲ開キマス、委員長ノ報告ヲ求メ
8 3,1-委員長廣瀨德藏君
第四著作權法中改正法律案(政府提
問、貴族院送付)
第一讀會ノ續(委員長報告)
報告書
一著作權法中改正法律案(政府提出、貴
族院送付)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和六年三月十七日
委員長廣瀨德藏
衆議院議長藤澤幾之輔殿
〔廣瀨德藏君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=39
-
040・廣瀬徳藏
○廣瀨德藏君 委員會ノ模樣ヲ御報告申上
ゲマス本案ハ著作權ニ關スル國際條約ノ
改訂ニ伴フ著作權法ノ一部改正デゴザイマ
ス、其趣意ハ著作者人格ノ保護ヲ全ウシ「ラ
ヂオ」映畫等ニ關スル規定ヲ完備スルト云
フコトガ、主ナル點デアリマス、時代ノ進
運ニ伴フ必要ノ改正デアッタノデアリマス、
流石ニ文藝、學術、美術ニ關スル法律案ノ
委員會デアリマスカラ、他ノ委員會ハドウ
カ存ジマセヌガ、此委員會ハ極メテ靜肅ニ、
極メテ上品ニ議事ガ進行致シマシタ(拍手)
時ニ達記ヲ止メテ政府者ト交涉スルコトモ
ゴザイマシタガ、能ク政府者ト委員トノ間
ニ意思ガ疏通致シマシテ、和氣靄々ノ間ニ
議事ヲ閉ヂタノデアリマス、其中デ註文ノ
アリマシタ主ナルモノハ、〓科書ニ他ノ著
作ヲ載錄スルニ當リマシテ、往々ニシテ間
違ヲタ引用ヲシテ、是ガ爲ニ原著作權者ニ迷
惑ヲ掛ケルノミナラズ、學生ヲ誤ラシムル
虞ガアル、之ヲドウスルカト云フヤウナコ
トガ、主ナル委員ノ註文デアリマス、是ノ
當面ノ問題トシテ、如何ナル處置ヲ執ルカ
ト云フコトニ關シテモ應答ガアリマシタ
ガ、是等總テ委員ノ希望ヲ政府者ガ容レテ、
然ルベク手段ヲ執ルト云フコトニ相成シタ
ノデアリマス、此案ハ貴族院ニ於テ修正ヲ
經タノデアリマスケレドモ、其修正タルヤ、
政府提出ノ原案ト根本精神ニ於テ異ナル所
ガナイノデアリマスカラ、本委員會ニ於テ
モ貴族院ノ修正ヲ是認スルコトニ致シマシ
テ、滿場一致其修正ヲ可決致シタ次第デゴ
ザイマス、ドウゾ速ニ御贊成アランコトヲ
御願致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=40
-
041・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 質疑討論ガアリマ
セヌ、本案ノ第二讀會ヲ開クニ御異議アリ
マセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=41
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042・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 御異議ナシト認メ
やっ、本案ノ第二讀會ヲ開クニ決シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=42
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043・作田高太郎
○作田高太郞君 直チニ本案ノ第二讀會ヲ
開キ、第三讀會ヲ省略シテ、委員長報告ノ
通リ可決セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=43
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044・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 御異議ナシト認メ
やっ、仍テ直チニ第二讀會ヲ開キマス
著作權法中改正法律案
第二讀會(確定議)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=44
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045・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 別ニ御發議ガアリ
マセヌカラ、本案ハ委員長報告通リ可決確
定致シマシタ(拍手)
日程第五、船舶積量測度法中改正法律案
ノ第一讀會ノ續キヲ開キマス委員長ノ報
告ヲ求メマス-委員長河西豐太郞君
第五船舶積量測度法中改正法律案
(政府提出、貴族院送付)
第一讀會ノ續(委員長報告)
報〓書
一船舶積量測度法中改正法律案(政府提
出、貴族院送付)
右ハ本案ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和六年三月十八日
委員長河西豐太郞
衆議院議長藤澤幾之輔殿
〔河西豐太郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=45
-
046・河西豐太郎
○河西豐太郞君 電氣事業法中改正法律案
ノ委員會ニ併託セラレマシタ所ノ、船舶積
量測度法中改正法律案ノ委員會ノ結果ヲ御
報告申上ゲマス、委員會ハ全會一致ヲ以テ
本案ヲ原案ノ通リ可決致シマシタ此段御
報〓申上ゲマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=46
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047・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 質疑モアリマセ
ヌ、本案ノ第二讀會ヲ開クニ御異議アリマ
セヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=47
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048・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 御異議ナイト認メ
マス本案ノ第二讀會ヲ開クニ決シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=48
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049・作田高太郎
○作田高太郞君 直チニ本案ノ第二讀會ヲ
開キ、第三讀會ヲ省略シテ委員長報告通
リ可決セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=49
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050・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 御異議ナシト認メ
マス、仍テ直チニ第二讀會ヲ開キマス
船舶積量測度法中改正法律案
第二讀會(確定議)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=50
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051・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 別ニ御發議ガアリ
マセヌカラ本案ハ委員長報告通リ可決確
定致シマシタ(拍手)
日程第六乃至第八ハ同一委員ニ付託シタ
ル議案ナルニ依リ、一括議題トナスニ御異
議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=51
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052・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 御異議ナシト認メ
マス日程第六、勞働者災害扶助法案、日
程第七、勞働者災害扶助責任保險法案、日
程第八、勞働者災害扶助責任保險特別會計
法案ヲ一括シテ第一讀會ノ續ヲ開キマス、
委員長ノ報〓ヲ求メマス-委員長山邊常
重君
第六勞働者災害扶助法案(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報〓)
報〓書
一勞働者災害扶助法案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和六年三月十八日
委員長山邊常重
衆議院議長藤澤幾之輔殿
令人気
第七勞働者災害扶助責任保險法案
(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報〓)
報告書
一勞働者災害扶助責任保險法案(政府提
出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和六年三月十八日
委員長山邊常重
業務院議長藤澤幾之輔殿
第八勞働者災害扶助責任保險特別會
計法案(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報〓)
報〓書
一勞働者災害扶助責任保險特別會計法案
(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和六年三月十八日
委員長山邊常重
衆議院議長藤澤幾之輔殿
〔山邊常重君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=52
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053・山邊常重
○山邊常重君 諸君、只今議題トナリマシ
タ勞働者災害扶助法案外二件ノ委員會ノ經
過竝ニ結果ヲ御報告申上ゲマス、本委員會
ハ六日間ニ亙リマシテ、當局ト委員トノ間
ニ最モ愼重ナル質疑應答ガアリマシタ、其
議論ノ焦點トナリマシタノハ土木建築工
事ニ於テ、數次ノ請負ニ依ル場合ノ扶助ノ
責任者ニ關スルコトデアリマス、此點ニ付
キ原、牧野、高見、東條ノ諸委員ヨリ、第
五十六議會ニ提案セラレタル案ノ如ク、各
請負人ガ扶助ニ關シ連帶責任ヲ有スルモノ
トスル方ガ勞働者ノ保護ヲ厚クスル所以
デナイカト云フ質問ガアリマシタ、之ニ對
スル政府委員ノ答辯ハ扶助ノ如キ敏速ヲ
要シ、且ツ通常勞働者ノ請求ヲ俟タズシテ
支給スベキモノニ付テハ責任者ヲ明確ニ
スルコトガ必要デアッテ、今囘ノ案ノ如ク先
ヅ下請人ニ請求シ、下請人ノ支拂ハザル場
合ハ、元請人ニ於テ責任ヲ負フコトニスル
方法ガ、却テ勞働者及ビ事業主雙方ニ便利
デアルト認メラルヽノミナラズ、今囘ハ扶
助責任ニ付キ保險法ヲ制定シテアリマスカ
ラ、保險金受領者ヲ一定スル必要カラシテ、
扶助責任者ヲ定メル方ガ必要デアルト云フ
說明ガアリマシタ、其外崎山、西尾、板谷、
安藤ノ諸君ヨリ、各種ノ質疑ガゴザイマシ
タガ、詳細ハ速記錄ヲ御覽ヲ願ヒマス本
委員會ニ於テハ本案ハ勞働者保護上必要
ナルモノト認メ、且ツ實施上適切ナルコト
ヲ認メマシテ、採決ノ結果多數ヲ以テ原案
ニ贊成ヲ致シマシタ、唯政友會ノ諸君ヨリ
本案ニ對シテ修正案ノ提案ガアリマス、何
卒委員會通リ、本會議ニ於キマシテモ、多
數ヲ以テ原案ニ御贊成アランコトヲ御願致
シマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=53
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054・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 先ヅ勞働者災害扶
助法案ノ審議ニ入リマス、本案ノ第二讀會
ヲ開クニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=54
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055・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 御異議ナシト認メ
マ 本案ハ第二讀會ヲ開クコトニ決シマ
シタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=55
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056・作田高太郎
○作田高太郞君 直チニ本案ノ第二讀會ヲ
開カレンコトヲ望ミマス
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=56
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057・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 御異議ナシト認メ
マス第二讀會ヲ開キマス
勞働者災害扶助法案第二讀會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=57
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058・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 安藤正純君外六名
ヨリ本案ニ對スル修正案ガ提出サレマシ
タ其趣旨辯明ヲ許シマス-高見之通君
勞働者災害扶助法案ニ對スル修正案
(安藤正純外六名提出)
勞働者災害扶助法案中左ノ通修正ス
第一條第一項第二號(ロ)ノ次ニ左ノ一號
ヲ加ヘ(ハ)ヲ(ニ)ニ改ム
(^)土木工事又ハ工作物ノ建設保存
修理變更若ハ破壞ノ事業ヲ營ミ常時
十人以上ノ勞働者ヲ雇傭スルモノ
第三條第三項ヲ左ノ如ク改ム
前項ノ場合ニ於テハ各事業主ハ連帶シ
テ扶助ノ義務ヲ負擔スヘシ
希望條項
一政府ハ勞働者災害扶助法第一條(ニ)(原
案(ハ))ノ勅令ニ依リ其ノ範圍ヲ定ムル
ニ當リ從來土木建築業者間ニ存スル淳
風良俗ヲ維持助長スルニ努ムヘシ
勞働者災害扶助責任保險法實施ノ結果
負擔ヲ勞働者ニ轉嫁セシムルコトナキ
樣政府ハ特ニ注意ヲ拂フヘシ
〔高見之通君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=58
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059・高見之通
○高見之通君 討論ハ他ノ同志ノ諸君ニ讓
リマシテ、修正案ニ關シマシテ、簡單ニ趣
旨ヲ說明致シテ置キマス
諸君本案ノ中デ最モ大切ナルモノハ、
普通ノ土木請負業者及ビ建築請負業者ガ、
祖先以來永ク共勞働者ヲ養"テ居ル、サウ云
フ年來ノ大キナ請負業者等ニ、此法律ガ寧
ロ適用サレナイ一ツノ憾ミガアルノデアリ
マス、是等ノ者ヲ如何樣ニ此法律ガ取扱フ
カト申シマスレバ總テ勅令ニ之ヲ讓ル、
勅令ノ內容ハドウカト申シマスト一万圓
以上ノ仕事、一千人以上ノ仕事ノモノニノ
ミ此法律ヲ適用スル、併ナガラ非常ニ大キ
ナ土木請負業者又ハ建築請負業等ノ一万圓
以下、若クハ延人員千人以下ノ小サナ化事
ニ依ッテ起ル災害ニ對シテハ、此法律ニ依ク
テ救濟サレル途ガナイト云フノデアル是
ハ今日ノ現狀ニ照シテハ洵ニ遺憾デアリマ
ス、ソレデアリマスルカラ本條ニ一項目ヲ加
ハイ、普通常傭ノ十人以上ノ勞働者ヲ傭ウ
テ居ル者ニモ、此法案ヲ適用スルト云フノ
ガ吾々ノ修正ノ目的デアリマス
尙ホ又此法案ガ只今申上ゲマシタル如ク、
事業本位デアリマスルカラシテ、永ク日本
ニ傳ッテ居ル所謂請負業者、建築業者ト云フ
モノヽ一万圓以下若クハ千人以下ノ普通ノ
仕事ニハ、此法律ハ適用サレナイ、隨テ餘
リニ物本位デアル、從來日本ノ土木ニ於ケ
ル所謂親方子分、請負ノ棟梁、若衆ト云フ、
此非常ニ善良ナ美風、吾々日本人ニ取ッテ
ハ寧ロ此親分子分ノ氣風ヲ、此機會ニ於
テ助長シテ見タイ、斯ウ云フ關係ヲ此法律
ガ寧ロ看遁スト云フコトハ遺憾デアルカ
う、吾々ハ希望條件ヲ附シテ、此勅令ヲ制
定スルニ當クテハ年來永ク養成サレテ來テ
居ル所ノ、親分子分ノ寧ロ愛ラシイ關係ヲ
看遁サナイヤウニヤッテ貰ヒタイト云フノ
ガ、此希望條件ノ趣意デアリマス(拍手)
又第三條ノ一部分ヲ修正致シマシタル趣
意ハ災害ヲ扶助スル所ノ責任者ヲ、元請
人ト下請人トノ間ノ契約ニ依ッテ、豫メ責任
者ヲ定メルコトハ宜シイケレドモ、一具災
害ヲ被ッタル勞働者ガ、此金ヲ受ケル時ニ先
以テ下請人ニ請求スル但シ其下請人ガ破
產若クハ行方ガ不明デアル時ハ此限ニアラ
ズト云フヤウニ、憐ムベキ此災害ヲ被ッタル
勞働者ガ、執達吏ノ家ニ催〓ニ行クトカ、
破產ノ狀態ヲ調ベサセルトカ下請人ノ行
方ガ何處ニ在ルカト云フヤウナコトヲ調ベ
サセルコトハ餘リニ勞働者ニ對シテ無理
ナル註文デアリマスカラ、吾々ノ見ル所ニ
依リマスレバ下請人ト元請人ノ責任ヲ定
メルノハ御自由デアルガ、一度災害ヲ被ッタ
ル·カ·元請人ニ請求シテモ下請人ニ請
求シテモ、ドチラデモ自山ニヤレルト云フ
ヤウニ、勞働者ヲ保護シテヤル方ガ宜シイ
ト考ヘテ、其何レニモ請求出來ルト云フノ
ガ、吾々ノ修正案ノ趣意デアリマス(拍手)
ソレカラ保險ニ關シマスル一ツノ希望條
項ハ、政府ヨリ色々ノ說明ガアリマシタガ、
結局是ハ保險料ガ高クナル、保險料ガ高ク
ナル結果ハ何人ニ其責任ガ轉嫁サレテ來
ルカト云フト、要スルニ勞働者ノ頭ニ掛デ
來ル、故ニ此保險法案ヲ實施スルニ當ノテ、
勞働者ノ頭ニ無理ナ負擔ノ掛ラナイヤウニ
ヤッテ貰ヒタイト云フノガ、吾々ノ希望條項
ノ趣意デアリマス
要スルニ皆樣方ニ於カレマシテモ、憐ム
ベキ勞働者ノ境遇ヲ救フト云フ同情ノ淚
ガ、總テノ諸君ニオアリナサル以上ハ、滿場
一致此修正案ト、此希望條件ニ御贊成アラ
ンコトヲ御願シテ、辯明トスル次第デアリ
マス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=59
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060・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 是ヨリ討論ニ入リ
マス-西尾末廣君
〔西尾末廣君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=60
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061・西尾末廣
○西尾末廣君 本案ニ付キマシテハ委員
長報告ノ案モ、政友會ノ案モ、吾々ノ滿足ス
ルモノデハアリマセヌ、併ナガラ今日ノ吾
吾無產黨ノ勢力ヲ以テシテハ、是レ以上ノ
良イ案ニ改善スルコトガ出來ナイノデアリ
マスカラ巳ムヲ得ズ吾々ハ次善ノ策ヲ講
ジタイト思フノデアリマス、委員長報告ト
政友會ノ修正案トヲ比較致シマスト政友
會ノ修正案ノ方ガ、勞働者ノ利益ヲ確保ス
ル上ニ於テ、優レタルモノアリト考ヘマス
カラ、吾々ハ政友會ノ案ニ贊成スル者デア
リマス
併ナガラ私ガ一言此機會ニ申上ゲテ置キ
タイノハ、此希望條項ノ中ニ、從來土木事
業ノ間ニ行ハレテ居ル所ノ、所謂淳風良俗
ト云フコトヲ維持シタイト云フ希望條項其
モノニハ、吾々ハ直チニ反對スル者デアリ
マセヌ、併ナガラ淳風良俗、親分子分ト云
フ觀念ヲ惡用シテ、サウ云フモノニ隱レテ、
勞働者ノ權利ヲ兎モスレバ蹂躪スルト云フ
風潮モ亦アルノデアリマス、ソレ故ニ吾々
ハ委員會ニ於キマシテ、サウ云フ勞働者ノ
權利ヲ兎モスレバ蹂躪スルヤウナコトヲ阻
止スル爲メ、此法案ノ運用上ノ爲ニ、勞働
者ノ利益ヲ代表シ得ル人ヲ加ヘタ所ノ民
間ノ委員會ヲ組織スベシト云フ私ノ希望ニ
對ツテ、政府委員ハソレヲ考慮シヨウト約
束シテ吳レタノデアリマス、更ニ又勞働者
災害扶助責任保險法案ノ中ノ責任保險審
査委員會ニ於キマシテハ、勞働者側ノ利益
ヲ代表シ得ル者ヲ、其中ニ加盟サセルト云
フ政府ノ言明ガアリマシタノデアリマスカ
ラ、セメテハ吾々ハ此點ヲ信賴致シマシテ、
此修正案ニ贊成スル者デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=61
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062・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 討論ハ終リマシ
タ先ヅ修正案ニ付テ採決致シマス安藤
君外六名提出ノ修正案ニ贊成ノ諸君ノ起立
ヲ求メヤス
〔贊成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=62
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063・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 起立少數、修正案
ハ否決セラレマシタ次ニ本案ノ委員長報
告ニ付テ採決致シマス、本案ノ委員長報告
ニ贊成ノ諸君ノ起立ヲ求メマス
〔贊成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=63
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064・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 起立多數デアリマ
ス、本案ハ委員長報告ノ通リ可決致シマシ
タ(拍手)是ニテ本案ノ第二讀會ハ終了致シ
マシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=64
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065・作田高太郎
○作田高太郞君 直チニ本案ノ第三讀會ヲ
開カレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=65
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066・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 作田君ノ動議ニ御
異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=66
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067・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 御異議ナシト認メ
マス直チニ第二讀會ヲ開キ·マス
勞働者災害扶助法案第二讀會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=67
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068・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 別ニ御發議ガアリ
マセヌカラ本案ハ第二讀會議決ノ通リ可
決確定致シマシタ、次ニ勞働者災害扶助責
任保險法案外一件ノ審議ニ入リマス、兩案
ノ第二讀會ヲ開クニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=68
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069・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 御異議ナシト認メ
やく、兩案ノ第二讀會ヲ開クニ決シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=69
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070・作田高太郎
○作田高太郞君 直チニ兩案ノ第二讀會ヲ
開キ、第三讀會ヲ省略シテ、委員長報告ノ
通リ可決セラレンコトヲ望ミマス
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=70
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071・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 御異議ナシト認メ
マツ、直チニ兩案ノ第二讀會ヲ開キマス
勞働者災害扶助責任保險法案
第二讀會(確定議)
勞働者災害扶助責任保險特別會計法案
第二讀會(確定議)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=71
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072・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 別ニ御發議ガアリ
マセヌカラ、兩案トモ委員長報〓ノ通リ可
決確定致シマシタ、是ニテ三案トモ議了致
シマシタ暫時体憩致シマス
午前十一時四十二分休憩
午後一時三十四分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=72
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073・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 休憩前ニ引續キ會
議ヲ開キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=73
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074・作田高太郎
○作田高太郞君 日程變更ノ動議ヲ提出致
シマス、卽チ此際日程ノ順序ヲ變更シ先
ヅ日程第十二、決議案ノ審議ヲ爲シ、次デ
政府提出小作法案ノ審議ニ入ラレンコトヲ
望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=74
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075・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 作田君タ動議ニ御
異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ノ聲起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=75
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076・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 御異議ナシト認メ
マス政府ハ此日程變更ニ同意セラレマシ
ク、仍テ日程ハ變更セラレマシタ
日程第十二、決議案ヲ議題ト致シマス
提出者ノ趣旨辯明ヲ許シマス、提出者床次
竹二郞君(拍手)
第十二決議案(內閣不信任ノ件)犬養
毅君提出)
決議案
決議
衆議院ハ現內閣ヲ信任セス
右決議ス
〔床次竹二郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=76
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077・床次竹二郎
○床次竹二郞君 諸君、私ハ提案者ヲ代表
致シマシテ、政府不信任決議案堤出ノ理由
ヲ說明致シマス
現內閣成立以來、吾々ハ努メテ所謂政爭
ヲ避ケテ、政策ヲ以テ國民ニ愬フルノ態度
ヲ執リマシタコトハ天下公知ノ事實デア
リマス(拍手)苟モ內閣ガ大命ヲ拜シテ組織
セラレマシタル以上ハ、假令反對黨ノ內閣
デアリマシテモ、十分ニ其政策ヲ實行セシ
ムルノ雅量ト好意トヲ持ツベキハ當然デア
リマス(拍手)故ニ現内閣ガ其政策ニ於テ
吾々ト所見ヲ異ニスルモノ多キニ拘ラズ、
倒閣運動ヲ避ケ、政府ヲシテ安ンジテ國政
ニ當ラシメタイト云フコトニ、努メタ積リ
デアル(拍手)然ルニ今ヤ現內閣在職一年十
箇月、其間ノ治績ヲ通觀致シマスルニ、施政
全ク其途ヲ誤リ(拍手)政策殆ド失敗ニ歸シ
(「ヒヤ〓〓」拍手)國政ノ前途眞ニ寒心ニ堪
ヘザル(「ヒヤ〓〓」拍手)モノアルヲ認メマ
スルガ故ニ、玆ニ不信任決議案ヲ提出シテ、
其處決ヲ促ス次第デアリマス(拍手)
今日ノ財界深刻ナル不景氣、是レ必ズシ
モ總テ政府ノ責任ニ歸スベキモノデナイコ
トハ勿論デアリマス、將來ノ形勢ニ付テモ、
と觀測ハ各、區々ニ岐レマスルコトモ、是亦
認メナケレバナリマセヌ、併ナガラ其間ニ
於テ、天下萬人悉ク承認シナケレバナラヌ、
動カスベカラザル事實ガ存在致スノデアリ
やく、現在ノ財界ニ現ハレタル事實、卽チ
農商工各方面ニ亙ル深刻ナル打擊、國民購
買力ノ大減少、破產ノ續出、不拂ノ激增、
貿易ノ極度ナル萎縮減退、農村ノ疲弊困態、
多數地方銀行ノ破綻、恐ルベキ失業者ノ簇
問、及ビ之ニ伴フ中央地方財政ノ窮乏、國
民ノ不安、人心ノ沈滯、惡化、是等各種ノ
險惡ナル事態ハ悉ク政府ノ豫想以上ニ出
デタモノデアリマスルコトハ疑ヲ容レナ
イコトヽ思ヒマス(拍手)
政府ハ金輸出解禁ノ準備竝ニ對策ニ付テ
深ク考慮スル所ナク、主トシテ財政ノ整理
緊縮ト、消費節約ノ宣傳ニノミ信賴致シタ
ノデアリマス吾々カラスレバ、是ガ抑ミ政
治ノ根本要道ヲ誤シタモノデアルト思フ、故
ニ其結果ニ至ッテハ悉ク政府ノ聲明ヲ裏
切ッテ、今日ノ如キ非常重大ナル事態ヲ招來
シテ爲ニ全國民ノ多數ハ悲慘ナル境遇ニ
沈淪シ、此恐ルベキ惡政ヲ咀呪スルニ至ッタ
次第ト考ヘマス(拍手)
抑國運ノ盛衰ハ、實ニ國民元氣ノ消長ニ
因ルコトハ、歷史ニ照シテ明カナコトデ、
申上グルマデモアリマセヌ、隨テ政治ノ要
道ハ、維新皇謨ニアルガ如ク、經綸ヲ盛ニ
シ人心ヲシテ倦マザラシムルニアルト存
ジマス(拍手)我國ガ維新以來幾多ノ國難ヲ
透過シテ、能ク今日ノ國運ヲ招來致シマシ
タノハ、一ニ國民元氣ノ作興ト其奮起トニ依
ルモノト思フノデアリマス(拍手)然ルニ今
日ノ難局ニ處シテ、政府ガ徒ニソレガ打開
ノ途ヲ一ニ消費節約ニ求メタノハ大ナル
誤リデアルト思フノデアリマス(拍手)
吾々ノ人生觀ヲ以テスレバ、人生ハ向上
發展デアル、向上發展ナキ人生ハ人生ニア
ラズト言ノテ可ナリト思フノデアル(拍手)
政府ハ今日ノ不景氣ヲ以テ、一ニ世界的不
景氣ニ歸シテ、何等策ノ出ヅル所ヲ知ラヌ
有樣デアル、國民ニ向ッテ屢、隱忍ヲ叫ンデ居
ラレマスノハ、洵ニ賴リナキ話ト思ハレル
ノデアル、(拍手)何故ニ先ヅ第一ニ國民ノ
傳統的精神ニ愬ヘテ、其發奮興起ヲ促サナ
カッタノデアルカト思フノデアル(拍手)少
ナク使へ、而シテ待テト言フヨリハヨリ
多ク働ケ、而シテ多ク使へ、斯ウ激勵シテ
貰ヒタカッタノデアリマス(拍手)政府ノ今
日マデ執ッテ居ル政策ハ、國民ヲ貧乏ニシ、
其意氣ヲ銷沈セシメ、國民ヲシテ小國民タ
ラシムルモノデアルト私ハ思フ(拍手)此政
策ノ續ク限リ、景氣ノ好クナル筈ハナイノ
デアリマス、ソレ故ニ時局匡救ノ途ハ、何
ヨリモ先ヅ人心ノ轉換ヲ圖ル外ニナイト思
フノデアリマス(拍手)
政府ハ最近景氣囘復ノ徵現ハレタリト申
サレテ居リマスガ、政府ノ「インフレーショ
ン」政策ハ、確ニ都市、中央財界ノ一部ヲ賑
ハシツヽアルニハ相違アリマセヌ、サリナ
ガラ一度眼ヲ轉ジテ地方ノ狀況ヲ見マシ
タナラバ、前途ノ形勢眞ニ憂慮ニ堪ヘザル
モノガアルノデアリマス(拍手)農產物ノ價
格ハ生產費以下ニ暴落シ、農家ノ大部分ハ、
其勤勉努力ニ酬イラレナイノミナラズ、地
方中產階級ノ倒產相踵デ、到ル處經濟的不
拂ノ狀態ヲ呈シテ居ルデハアリマセヌカ、
(拍手)國稅又地方稅ニ對スル滯納或ハ不
納、:愈〓增加スルニ至ッテ居ルデハアリマセ
ヌカ(拍手)消費者ノ大部分ヲ占ムル農民ノ
經濟ガ、斯ノ如キ不安ナル時代ニ於テ財
界ノ健全ナル囘復ヲ期スルコトハ到底不可
能デアリマス、此狀況ハ軈テ中央ニ反映シ
來ルコトハ必然ト存ジマス(拍手)
農村ノ窮迫ニ伴ッテ特ニ憂慮スベキコト
ハ、人心ノ動搖、思想ノ惡化デアリマス(拍
手)今ヤ地方ノ民心ハ生活ノ不安ニ脅カサ
レ、其淳風美俗ハ漸ク地ヲ拂フニ至リ、茲
ニ精神的變調ヲ呈スルニ至ランコトハ、實
ニ深甚ナル注意ヲ要スル問題デアリマス
(抱手)政府ガ斯ノ如キ重大ナル事態ニ對シ
テ從ニ樂觀說ヲ流布シテ何等ノ成案ヲ有
せった。彌縫ヲ事トシテ居ラレルコトハ、洵
ニ痛嘆ニ堪ヘナイ所デアリマス(拍手)
政府ハ金解禁ニ依ッテ、國際的ニ我ガ經濟
關係ガ常道ニ復シテ、貿易ハ自ラ順調ニナ
リ、國際貸借ハ自然ニ好轉スルト考ヘタモ
ノト思ハレルノデアリマス、併ナガラ私ハ
此觀測ニ對シテ大ナル疑問ヲ有セザルヲ得
ナイノデアリマス、最近世界ノ經濟界ニ於
テハ關稅戰爭ガ列國間ニ不遠慮ニ開始セ
ラレテ居ル金貨爭奪戰ハ激烈ニ演出セラ
レテ居ルノデアリマス、斯ノ如キ世界經濟
戰爭ノ渦中ニ在リマシテハ我國ノミガ單
リ自由放任ノ考ヲ持ノテ、何等施設スル所ナ
クシテ、徒手空拳デ世界經濟戰爭場裡ニ突
進セントスルコトハ危險千萬ナ話ト思フ
ノデアル(拍手)而モ其影響ノ意外ナルニ驚
イテ、周章狼狽シテ、事後ノ處置ヲ誤ルコ
ト甚シイモノガアルノデアリマス(拍手)產
業ノ合理化ト云ヒ、國產奬勵ト云ヒ、空ナ
ル宣傳ニ過ギナイ、蠶絲救濟、米價調節ノ
失敗ハ明カニ國民環視ノ前ニ暴露サレテ
居ルノデアル(拍手)世界經濟戰ニ對スル用
意ト覺悟トガナケレバ我國ノ對外的經濟
〓係ハ決シテ安定スルモノデアリマセヌ
現內閣ノ成立以來、國際貸借ハ如何ニ改善
セラレタノデアリマスカ、成程輸入超過ハ
多少減少致シマシタラウ、サリナガラ貿易
ハ非常ナル萎縮ヲ來シテ居ルデハアリマセ
ヌカ(拍手)產業ハ萎靡不振ニ陷ッテ居ルデ
ハナイカ、然ルニ政府ハ彌縫糊塗ヲ事トシ
テ、何等爲ス所ハナイデハアリマセヌカ
我國ノ一部ニハ、自由主義ガ經濟上動カス
ベカラザル眞理ノ如ク論ゼラルヽ向モアリ
マスガ、私ハ此思想ハ、現在ノ世界ニ其儘
適用スルコトハ出來ナイモノト信ズルノデ
アリマス、總テノ國、總テノ人類ガ自由主
義ニ依ルノハ、一ツノ理想デハアリマセウ、
サリナガラ事實ハ必ズシモ理想ト一致スル
モノデハアリマセヌ、世界ノ現狀ヲ忘レテ、
空ナル自由主義ノ思想ニ支配モラレ、未曾
有ノ經濟國難ニ處セントスルノハ、池 &
險ダト考ヘルノデアリマス(拍手)宜シク產
業政策ノ大方針ヲ定メ、朝野力ヲ一ニシテ、
積極的ニ其遂行ニ努力セナケレバナラヌ
(拍手)此點ニ於テ吾々ハ現內閣ト政策ノ根
柢ヲ異ニ致シテ居ル、隨テ諸般ノ經營施設
ニ對スル意見モ異ニスルノハ、致シ方ノナ
イコトデアリマス
財政整理ハ現內閣ノ重要政策デアリマス、
併ナガラ財政整理ノ根本ハ、經濟ノ整理ニ
アルコトハ申スマデモアリマセヌ、今日ノ
如キ悲慘ナル經濟狀態ヲ基礎トシテ、財政
ノ安固ヲ望ムト云フコトハ恰モ砂上ニ樓
閣ヲ築クガ如キモノデアル(拍手)政府ノ今
日ノ如キ經濟政策ヲ以テ致シマシテハ民
力ハ涸渴減退シテ、歲入ノ激減ヲ來シ、隨
テ財政ノ窮迫ヲ來スノハ當然デアリマス
(拍手)現內閣成立以來、歲入ノ激減ハ年々甚
シキニ至リマシタコトハ議會開設以來其
例ヲ見ザル未曾有ノ現象デアリマス、明年
度豫算モ恐ラク又同樣ノ結果ニ陷ルベキハ、
豫想ニ難クナイ所デアル、是レ卽チ政府ノ
政策失敗ヲ如實ニ證明スルモノデアリマシ
テ、其責任ハ極メテ大ナリト申サナケレバ
ナリマセヌ(拍手)國家ノ財政ハ個人ノ經濟
ト申スマデモナク異ッテ居ル、入ルヲ計。ツ
テ出ヅルヲ制スベキモノデハナイノデア
ル宜シク國民ノ利福、國運ノ進展ヲ本位
トシテ、必要ナル經費ニ對シ、歲入ヲ調理
スルノガ財政上ノ任務デアル歲入ノ減少
ニ餘儀ナクセラレ、漫然歲出ヲ減額スルノ
ハ何人ニデモ出來ル所デアリマス(拍手)
其間何等財政家若タハ政治家ノ經綸手腕ヲ
要スル所ハナイノデアリマス(拍手)政府ハ
財政ノ整理緊縮ト稱シテ居ラレマスガ、其
實一定ノ方針ニ基ク緊縮デハナイト吾々ハ
申シダイノデアリマス、歲入激減ノ結果、已
ムヲ得ズシテ切詰メタル窮策ニ過ギナイト
シカ思ハレヌノデアル(拍手)而モ歲出ノ減
額モ其大部分ヲ繼續費ノ繰延ニ求メタル結
果ハ將來ニ禍根ヲ貽ツ、財政紊亂ノ端ヲ
啓クニ至ッタモノデアリマス
彼ノ預金部資金ノ運用ニ至リマシテハ、
現內閣ノ手ニ依ッテ極度ニ攪亂ヲセラレタ
モノト言ハナケレバナラヌ(拍手)政府ハ非
募債主義ヲ標榜シナガラ、旣ニ募債ノ必要
ニ迫ラレ、政策ノ破綻ヲ餘儀ナクセラレテ
居ルデハアリマセヌカ、一方ニ非募債ト稱
シ事業ヲ縮小シ、失業者ヲ簇出シナガラ、
他方ニハ失業救濟事業公債ヲ發行スルト云
フノハ矛盾撞著ノ處置デアリマス、現內
閣ハ減稅ニ最モ力ヲ注イデ居ラレル、至極
結構ナコトデアリマス、國民經濟力ハ極度
ニ滅退ヲ致シ、今ヤ國民ハ負擔過重ニ苦ン
デ居ル、苛歛誅求ヲ愬ヘルノ聲ハ全國ニ
滿ツルニ至ッテ居リマス、租稅ノ滯納ナリ、
不納ノ增加ナリ全ク是ハ失政當然ノ結果
デアルト申サナケレバナラヌ(拍手)國民ノ
要求スルノハ唯空ナル減稅デハアリマセ
又、經濟的ノ活動デアリマス彈力ノ增加
デアリマス、而シテ眞ニ熱望シテ止マザル
ノハ生活ノ安定デアリマス、地方財政ノ窮
迫ハ近來益〓甚シクナッテ、地方自治體ニシ
テ支拂不能ノ狀態ニ陷タルモノガ少ナク
ナイノデアリマス是ハ實ニ容易ナラザル
事態デハアリマセヌカ、地方自治ノ破壞ハ
實ニ國本ヲ危ウカラシメル不祥ノ事柄デア
リマス、斯ク申述べマシタル財政經濟ノ失
敗ハ、各方面ニ亙ッテ重大ナル形勢ヲ釀シ、
其禍害ハ圖ルベカラザルモノガアルト思ハ
レルノデアリマス、之ヲ救フノ途ハ、唯內
閣ノ更迭ニ依ッテ政策轉換ノ途ヲ圖ルヨリ
外ハナイト言ハザルヲ得ナイノデアル(拍
手)
現內閣ノ外交ニ付テ一言致シマス、現內
閣ノ外交ハ一言ニシテ之ヲ評シマスルナラ
バ、國際事務アッテ國策ナシト申サネバナラ
ヌ(拍手)又他ノ方面カラ之ヲ見レバ、國際
協調モ若シソレガ眞ノ國際協調デアルナラ
バ固ヨリ吾々モ贊成デアリマスルガ、現
內閣ノ爲ス所ヲ見ルニ、唯從ニ國際協調ト
云フ名ニ捉ハレテ、國家ノ存立ニ立脚出發
スル自主外交ナシト申サネバナリマセヌ
(拍手)如何ニモ目前ハ或ハ表面ハ、平和
的無難ナル外交デアリマスルガ實際ニ於
テハ國威ヲ失墜シ、國交ノ不安ヲ馴致スル
ノ因ヲ作リツヽアルノデアリマス(「ノウノ
ウ」拍手)我國ハ革命後ノ中華民國及ビ露西
亞兩國ニ隣援致シマスルガ故ニ、所謂革命
外交トデモ申シマセウモノニ、直面シテ居
ル所ノ立場ニ在ルノデアル、兩國ノ外交ガ
其特殊ノ國情ヨリシテ、或ハ積極的デアリ、
徹底的デアリ、或ル場合ニハ大膽露骨デア
ルノハ免レザル所デアリマス、之ニ對スル
帝國ノ外交ハ、我ガ國策ニ基ク大方針ヲ定
メテ、正々堂々タル態度ニ出ヅルノ外ハ策
ナキコト勿論デアルト私ハ信ズル、此意味
ニ於テ現内閣ノ外交ハ、根柢ヨリ誤ッテ居ル
ト私ハ申シタイノデアル、遺憾ナガラ現内
閣ノ外交ナルモノハ、東洋ニ於ケル我國ノ
立場ヲ辨ゼズ、露支兩國ノ目的方針ヲ知ラ
ザルモノデナイカト思ハレルノデアリマ
ス、吾々ノ所見デハ、東洋ノ和平ヲ保チ、
文化ヲ進メ、由ッテ以テ世界ノ文運ニ貢獻ス
ル是ガ我國ノ使命デアルト思フ、而シテ
帝國ノ軍備モ、外交モ、玆ニ其基調ヲ持ツ
ベキモノデアルト思フノデアリマス(拍手)
ソレ故帝國ノ執ルベキ外交方針ハ、極メテ
明白デアルト存ジマス、卽チ支那ニ對シテ
ハ善隣ノ誼ヲ結ビ、密接ナル經濟關係ヲ維
持シ、同時ニ滿蒙ニ於ケル我國ノ地位ヲ確
保シ、經濟的發展ヲ圖リ、露國ニ對シテハ
旣得ノ權益ヲ擴充シ、圓滿ナル通商關係ヲ
實現スル、此以上ノ關係ヲ基礎トシテ永ク
東亞ノ平和ヲ維持スル、是ガ帝國外交ノ神
髓デアルト私ハ信ズルノデアリマス(拍手)
サウシテ此見地ニ基イテ最近ノ情勢ヲ見マ
スルニ、遺憾ニ感ズル點ガ甚ダ多イノデア
リマス(拍手)
日華兩國ノ關係ニ於テモ、兩國ノ意思疏
通ヲ缺クコト尠クナイノデアリマシテ、各
種懸案ノ解決困難ヲ告ゲテ居ル、對露關係
ニ於テ通商取引上ノ障碍ガ頻出シテ居ル
特ニ北洋漁業ノ問題ハ絕エズ紛糾ヲ極メテ
居ルノデアリマス、政府ノ爲ス所ヲ見マス
ルニ進ンデ我ガ政策ノ徹底ニ努ムルト云
フノデハナクシテ、事起ッタ後、事務的ニ當面
ヲ糊塗スルニ、維レ日モ足ラザルノ觀ガア
ルノデアリマス(拍手)結果ハ却テ大局ヲ誤
リツヽアリト認メザルヲ得ナイノデアル
(拍手)
滿蒙ノ現狀ニ付テハ頗ル憂慮セザルヲ得
ナイノデアリマス、帝國ノ生命線トモ謂フ
ベキ滿蒙ニ於ケル地位ニ關シ、不安動搖ヲ
感ズルコトハ吾々ノ斷ジテ默視スル能ハ
ザル所デアリマス(拍手)此機會ニ於テ私ハ
滿蒙ニ於ケル我國ノ立場ニ關スル吾々ノ所
信ヲ披瀝スルノ必要ヲ感ズルノデアリマ
ス滿蒙ハ我國ト經濟上重大ナル關係ニ在
ルダケデハアリマセヌ、申スマデモナク實
ニ東亞平和ノ鍵ガ滿蒙問題ニ繫ッテ居ルノ
デアリマス(拍手)滿蒙ノ現狀ニ動搖ヲ來ス
コトハ、卽チ東亞平和ノ動搖デアリマス(拍
手)而シテ滿蒙ニ對スル經濟關係ノ不安ハ
同時ニ滿蒙ニ於ケル政治關係ノ不安デアリ
マス(拍手)歐洲大戰ニ當,テ、幸ニ東亞ノ平
和ハ維持致サレマシタ、今日ニ至ッテモ尙ホ
平和ガ確實ニ維持セラルヽノデアリマス、
是ハ全ク帝國ガ東洋平和維持ノ責任ヲ雙肩
ニ荷ヒタル結果デアルト思フノデアリマス
(拍手)此責任ヲ將來ニ向ッテ完全ニ遂行ス
ル爲ニハ、列國モ亦東亞ニ於ケル我國ノ地
位ヲ確認スルノ必要ガアルノデアリマス
(拍手)責任ヲ擔當セシムルニハ、之ヲ擔當
シ得ル地位ヲ保障スルノガ當然デアリマス
(拍手)此點ニ於テ私ハ倫敦會議ニ於ケル政
府ノ外交ガ、如何ニモ無定見デアル(拍手)
又餘リニ名ノミノ國際協調ニ過ギタモノデ
アルト云フコトヲ、甚ダ遺憾トスル者デア
リマス(拍手)吾國ノ當初ノ主張ハ、東亞ノ
平和ヲ保障スルガ爲メニ、絕對必要ナル最小
限度ノモノデアッタト信ズルノデアリマス、
其當然ナルキ張ヲ曲ゲルニ至リマシタコト
ハ我ガ國策ニ對スル信念ヲ缺ク結果デア
リマス(拍手)而シテ其結果國防ニ關スル疑
惑ヲ生ジ、軍部內ニ甚シキ動搖ヲ惹起致シ
マシタルコトハ政府ノ一大失態ト申サナ
ケレバナリマセヌ(拍手)
今囘政府ガ提案致シタル補充計畫ハ、果
シテ我國國防ノ安固ヲ期スル上ニ於テ、遺
憾ナキモノナリトノ確信ニ基イテ居ルノデ
アリマスカ否ヤ(拍手)政府ノ說明ヲ綜合シ
テ見レバ、將來第二ノ補充計畫ヲ追加スル
ノ必要ヲ否認スルコトガ出來ナイヤウニ考
ヘラレマスガ如何デス(拍手)國防ノ安全ヲ
圖ラントスレバ減稅ノ財源ハナクナル
減稅ノ目的ヲ全ウセントスレバ、追加計畫
ノ財源ハナクナルコトハ必然デアリマス
(拍手)故ニ政府ノ計畫ハ全ク一時ヲ糊塗ス
ルモノデアッテ、財政上ヨリ見テモ國防上
ヨリ見テモ、將來ニ重大ナル禍根ヲ貽スモ
ノト申サナケレバナリマセヌ(拍手)斯ノ如
ク其根柢ニ於テ信念ヲ缺ク政府ノ態度ハ
直チニ我國四圍ノ形勢ニ反映ヲ致シテ、對
外的威信ニ影響スル所尠カラザルハ、甚ダ
遺憾ニ存ズルノデアリマス(拍手)
之ヲ要スルニ現在各方面ニ現レテ居リマ
スル外交ノ難局ハ國策ヲ顧ミザル現內閣
ノ事務的努力ヲ以テ致シマシテハ、之ヲ處
理シ得ル見込ハ到底アルマイト思フノデア
リマス(拍手)現內閣ノ如ク我國ノ自主的立
場ヲ忘レテ、對手國ノ感度意向ノミニ迎合
セントスル、協調本位ノ外交ヲ以テ致シマ
シテハ、知ラズ識ラズノ間ニ形勢ハ益〓不
利ニ陷ル外ハアリマスマイト思ヒマス(拍
手)當面ハ無事ナルガ如クデアルケレドモ、
其間國威ハ甚シク失墜ヲ致シテ、四圍ノ情
勢漸ク險惡ヲ加ヘ、實ハ眞ノ國際協調ヲモ
危クセントシテ居ルコトハ現內閣外交失
敗ノ結果ナリト斷定セザルヲ得ナイノデア
リマス(拍手)
以上既往ニ於ケル政府ノ失政ノ大要ニ付
テ申述ベタ積リデアリマス政府ハ之ニ對
シテ當然其責任ヲ負ハレナケレバナラヌ
同時ニ失政ニ對シ、其跡始末ノ責任モ亦、現
內閣ノ諸公之ヲ負ハナケレバナラヌノデア
リマス(拍手)サリナガラ此點ニ付テハ吾々
ハ遺憾ナガラ、現內閣ノ手腕技倆ニ對シテ、
全ク絕望セザルヲ得ナイノデアリマス
(拍手)現內閣ハ成立ノ初メニ當ッテ意氣頗
ル旺盛ナルモノガアッタ、其組閣ノ手際ト云
ヒ十大政綱ノ發表ト云ヒ私ハ確ニ立憲
的デアッタト讃辭ヲ呈スルコトニ吝カデア
リマセヌ、然ルニドウデスカ、其後ノ經過
ヲ見ルニ、絕望セザルヲ得ナイノデアル
彼ノ官吏減俸案ヲ中止シテカラ以來、政府
ハ常ニ左顧右眄シテ、政策ニ對スル所信ト
勇氣トヲ失ッタト認メルノデアリマス付
手)十大政綱ノ多クハ捨テヽ顧ミズ、重要政
策モ亦之ヲ遂行スルノ熱誠ハナイ(拍手)サ
リトテ又反對ニ之ヲ改變スルノ勇氣モナイ
ノデアル唯其日暮シニ沒頭スルノ觀ガア
ルト申シテ差支ナイノデアル(拍手)斯ク見
レバ政治的ニ內閣ノ命脈ハ旣ニ盡キテ居ル
ノデアリマス(拍手)然ルニ之ヲ思ハズ、只
管政權ニ戀々タルノ餘リ(拍手)憲政ノ本義
ヲ紊リ
〔發言スル者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=77
-
078・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 靜肅ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=78
-
079・床次竹二郎
○床次竹二郞君(續) 輔弼ノ重責ヲ懈ルガ
如キニ至ッテハ、延イテ我國ノ名〓ヲ破壞ス
ルモノデアリマシテ、閣臣諸君ノ爲ニ深ク
惜マザルヲ得ナイノデアル、所信ト勇氣ト
ヲ缺ク所ノ現內閣ハ、如何ニモ二百七十有
餘名ノ絕對多數ハ有シテ居ラレルノデアリ
マスガ、氣ハ飢テ居リ體ハ疲レテ居ルデハ
ナイカ、譬ウレバ中心腐蝕シタル大木ノ如
キモノデアル(拍手)最早國家棟梁ノ材タル
コトヲ得ザルモノト斷言セザルヲ得ナイノ
デアリマス(拍手)
今ヤ天下ノ人心全ク現內閣ヲ去ッテ、內閣
彈効ノ聲ハ野ニ滿チテ居ルデハナイカ、閣
員諸君內ニ省ミ深ク悟ラレル所ガアッテ然
ルベキデアル、政黨ノ立場カラ申スナラバ、
將ニ捲土重來ノ時デアリマセウ、民政黨ノ
中デモ純理ノ分カル諸君ハ、其通リ考ヘテ
居ル、情實ニ拘泥シ時代ヲ達觀スルノ明
ナキ長老諸君ガ意見ガ違フノデアル、國政
ノ上カラ申セバ、速ニ進退ヲ明カニシテ、
天下人心ノ一新ヲ圖ルベキ時デアルト信ズ
ルノデアリマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=79
-
080・作田高太郎
○作田高太郞君 本案ハ質疑ヲ爲サズ、直
チニ討論ニ入ラレンコトヲ望ミマス
〔「賛成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=80
-
081・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 作田君ノ動議ニ御
異た。譲アリマセヌカ
「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=81
-
082・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 御異議ナシト認メ
マス仍テ質疑ヲ爲サズ、直チニ討論ニ入
リマス富田幸次郞君
〔富田幸次君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=82
-
083・富田幸次郎
○富田幸次郞君 犬養君外政友會諸君一同
ヨリ御提出ニナリマシタ內閣不信任案ノ御
說明ハ只今床次サンヨリ拜聽致シマシ
タ、併ナガラ甚ダ遺憾デハアリマスケレド
モ、其理由ノ薄弱ナルコトニ驚カザルヲ得
ヌノデアリマス(拍手)床次サンハ人心ノ一
新ヲ說カレタ而シテ其人心ノ一新ハ今
日ノ場合上下協力シテ爲スコトデアルト高
調サレタノデアリマス、其點ハ如何ニモ同
感デアリマス
次ニハ自由主義政策バカリニ依賴スベキ
モノデハナイト云フコトヲ御說キニナラレ
テ居リマスガ、此點モ私共ハ大シテ異論ガ
ナイノデアリマス、單ニ自由主義政策、保
護政策、斯ウ云フヤウナモノニ偏偏スベキ
時代デハアリマセヌ、故ニ吾々ハ民政黨創
立ノ當時ニ於テ、床次君ナドト共ニ所謂國
家成長主義ヲ唱ヘタノデアリマス
次ニハ歲入ノ減少ニ付キマシテ御述べニ
ナリマシタガ、如何ニモ歲入ハ減少ヲシツ
ツアリマス、又減少シテ居ルノデアリマ
ス、併ナガラ床次君ノ見ル所ト吾々ノ見ル
所トハ意見ヲ異ニスルノデアリマス
次ニ又財政ノ整理緊縮ニ付テ御非難ガ
アッタノデアリマスケレドモ、所謂伸ビント
欲スレバ、先ヅ縮マナケレバナラナイ(拍手)
建築ヲ爲サント欲スレバ、先ヅ基礎工事ニ
力ヲ入レナケレバナラナイ、卽チ其基礎工
事ニ重キヲ置イテ建築ヲ爲スカ、其基礎工
事ハ好イ加減ナコトニシテ置イテ仕事ヲス
ルカト云フ意見ノ相違デアリマス
次ニハ公債政策ノ破綻ニ付テ御述べニナ
ラレタノデアリマスガ、公債政策ニ付キマ
シテモ、是ハ私ト見ル所ヲ異ニシテ居ルノ
デアリマスカラ、次ニ述ブル積リデアリマ
ス
或ハ減稅問題ニ於テ說カレタケレドモ
ガ、其減稅ガ非ナリトハ論ゼラレズシテ、
減稅ノミデハ今日ノ民力ノ休養ハ出來ヌ、
斯ウ說カレタノデアッテ、其意見ノ相違ト云
フコトハ唯僅カノヤウニ考ヘラレタノデ
アリマス
次ニ外交問題ニ付テ諄々ト御述ベニナラ
レタノデアリマスガ外交ノ大本、大綱ニ
至ッテハ、床次氏ト大體意見ヲ同ジクスルモ
ノデアリマス併ナガラ倫敦會議ノ結果云
云、サウシテ海軍補充計畫ノ問題等ニ至リ
マシテハ、私ハ床次君ト意見ヲ異ニスルモ
ノデアリマスカラ、是ヨリ私ノ見ル所ニ付
テ申述ベテ見タイト思フノデアリマス
元來政權ノ移動ハ政治的價値ニ依ッテ決
セラレナケレバナラヌ、政治的價値トハ何
ゾヤト言ヘバ、有效適切ナル政策其モノデ
アル卽チ政黨相互ノ政策ガ、國民ノ批判
ニ於テ其多數ノ支持ヲ受ケテ居ルモノガ政
權ヲ執ルト云フコトハ、卽チ立憲政治ノ理
想境デアッテ、何人モ異議ノナイ所デアル
是ガ所謂政黨内閣ノ政黨內閣タル所以ノ常
道デアリマス政友會ハ今玆ニ不信任案ヲ
提出シテ、濱口內閣ノ辭職ヲ要求シテ居
ル、然ラバ濱口內閣ガ辭職シテ迭ルベキモ
ノハ何人デアルカ、中スマデモナク近來ノ
習慣カラ申セバ、政友會デナケレバナラヌ、
是ニハ異議ハナイ、吾々モ斯ク信ズル、然
ルニ國民ノ批判ト支持トハ何レニアルカト
言ヘバ旣ニ昨年ノ選擧ニ於テ明カニ決定
セラレテ居ルデハナイカ、卽チ現内閣ハ其
選擧ニ於テ、所謂多數ノ支持ヲ得テ、決定
サレテ居ル所ノ政策ノ遂行ノ途中ニアルノ
デアリマス、選擧ガ濟ンデマダ一年ト經タ
ヌノニ、早クモ政權ノ引渡ヲ要求スルガ如
キハ、餘リニ早急、餘リニ借越ノ行爲デハ
ナカラウカト思フノデアリマス、私ハ第一
此意味ニ於テ、此不信任案ヲ排斥シナケレ
バナラヌノデアリマス是ニ於テ床次サン
ニ中シタイノハ、急ガバ〓レト云フコトデ
アル、床次サンハ性急ニ事ヲサレテ、而モ
失敗サレタ御體驗ヲ有セラレル方デアルカ
ラ、今少シク御自重アランコトヲ希望シタ
イト思フノデアリマス、然ラバ現内閣ノ中
心政策ハ何デアルカト云ヘバ、所謂財界ノ
建直シニアルノデアリマス、世界戰爭以來
積極放漫ニ流レテ、行詰リノ狀態ニアッタ
所ノ、我ガ財界ノ建直ヲ行ヒ、國民經濟ノ
優越ノ地位ヲ占メルト云フコトハ、我黨ノ
根本政策デ、現內閣ガ組織以來銳意努力シ
テ居ルノデアリマス(拍手)卽チ整理緊縮モ
是ガ爲デアリ、消費節約モ亦是ガ爲デア
リ、國際貸借ノ改善モ亦是ガ爲デアル、斯
ノ如クニシテ十分ニ準備ヲ備ヘ、金ノ輸出
解禁ヲ斷行シテ、而シテ各種ノ事業ヲ整理
シ、產業ノ合理化、國產ノ愛用、輸出ノ奬
勵ヲ行フテ居ルノハ、我ガ財界興振ノ爲ニ、
眞ニ喫緊ノ要務ト言ハナケレバナラヌ元
來財界ノ建直シニハ此國費ノ節約ガ第一
デアリマスカラ、一昨年七月內閣ガ出來ル
ト共ニ、昭和四年度ノ豫算ヲ、其實行ノ途
中ニアッタニ拘ラズ思切ァテ財政整理ノ緊
縮ヲ行ウタノデアリマス、又昭和五年度ニ
於テモ、此方針ニ依ッテ豫算ノ編成ヲ爲シ、
又昭和六年度ノ豫算ヲ編成スルニ當リマシ
テモ依然其方針ヲ持續致シマシテ、一層
ノ整理緊縮ヲ加ヘテ所謂歲出ヲ十四億四
千万圓ニ切詰メタノデアリマス、隨テ之ヲ
昭和四年度ノ歲出ニ比較ヲ致シマスルト
三億二千万圓ノ大節約デアリマス、斯ノ如
キ國費ノ大節約ヲ加フルト共ニ、地方財政
ニ於テモ節約ヲ加ヘ、又國民ノ消費節約ヲ
モ奬勵シ、上下協力一致、卽チ床次サンノ
所謂上下力ヲ協セテ、國民經濟ノ建直シニ
從事シタ結果ガ、多年平準ヲ保テナカッタ
所ノ爲替相場モ平準ヲ得テ、結局輸入ガ減ッ
テ、海外貿易ノ「バランス」ガ取レテ、金ノ
解禁モ出來タ次第デアリマス(拍手)何ト
言ッテモ金ノ解禁ハ現內閣ノ一大功績デア
リマス(拍手)國民モ亦之ヲ感謝シテ居ルノ
デアリマス、政友會ノ諸君ハ、口ニハ色ミ
御非難ヲナサルケレドモ心ノ中デハ能ク
ヤッテ吳レタト感謝サレテ居ルト思フノデア
リマス(拍手)旣往十三年間國民經濟ノ癌腫
トシテ取殘サレ、孰レノ内閣モ切開手術ノ
出來ナカッタ此金解禁ヲ、現內閣ニ依クテ初
メテ斷行サレタト云フ其事自體ガ、一大事
業デアルフデアリマス、元來今日ノ世界經
濟ト云フモノハ一ツノ大キナ組織體ヲ成
シテ發展シテ來タモノデアリマス、國際間
ノ經濟關係ハ、互ニ離レルコトノ出來ナイ
連絡關係ニ立ッテ居ルノデアリマス、故ニ日
本ガ何時マデモ輸出禁止ヲ其儘ニシテ、經
濟上鎖國ノ地位ニ立ツト云フコトハ出來ナ
イ、斯樣ナル地位ニ立ッテ居ッタナラバ、日
本ノ經濟發展ト云フモノヲ企圖スルコトハ
出來ナイト思ヒマス(拍手)故ニ此大事業ノ
ツ斷行ニ依シテ、吾々ノ經濟組織ハ世界融通經
濟ノ基礎ノ上ニ置カレタノデアリマス、今
日マデ吾々ノ經濟組織ハ不自然ナ通貨ノ上
ニ置カレテ居クテ、動搖常ナキ基礎ノ儘ニ放
置サレテ居フタニ拘ラズ、世界列國ノ經濟ガ
比較的鞏固ナ地位ニ居ッタノデアリマス、卽
チ彼我相對抗シテ經濟上ニ角逐スルニ於テ
ハ我ハ常ニ不利ノ地位ニ押付ケラレテ、
如何トモスルコトガ出來ナカッタノデアリ
マスガ、金解禁後ニ於テハ、吾々ハ列强ト
同ジ鞏固ナル地盤ノ上ニ立ツニ至ッタノデア
リマス、吾々ノ購買力ハ世界ニ對シテ平等
デアルト共ニ、物價ノ關係モ亦共通デアル、
卽チ吾々ハ益ハ事業ヲ整理シ、產業ヲ合理
統制シテ、世界經濟ノ競爭場裡ニ立ッテ力强
ク濶步スル所ノ、茲ニ地盤ヲ鞏固ニシナケ
レバナラヌ場合ニアル(拍手)是ガ卽チ上下
協力ヲ要スル所以ノ途デアラウト思フノデ
アリマス(拍手)故ニ此點ハ濱口內閣ノ政策
ニ謳歌シ、不信任ドコロカ、寧ロ床次サン
ハ信任投票ヲ投ゼラレルガ當然デハナカラ
ウカト思フ(拍手)
是ハ床次サンハ申サナカッタケレドモガ、
政友會ノ諸君ハ無準備ノ金ノ解禁ト云フコ
トヲ大變仰セニナル、而シテ無準備ノ金ノ解
禁ノ爲ニ、今日ノ不景氣ヲ來シタモノデア
ルト云フコトヲ御批評ナサッテ居ル、併ナガ
ラ金解禁其モノニ反對スルコトハ出來ナイ
ト思フノデアリマス(拍手)前田中內閣ノ大
藏大臣タリシ三土忠造君ハ壓金解禁ノ
御意思ノアルコトヲ御表示ニナッテ居ルコ
トニ依ッテモ明カデアリマス、然ラバ其前內
閣ニ何カ金解禁ノ御準備ガアッタカト探究
シテ見マスルト云フト、何モ無カッタノデア
リマス、元來金ノ解禁ニハ其定石トシテ、
而シテ其當然ノ準備トシテ、公私經濟ノ節
約、卽チ中央地方ノ財政ノ整理緊縮ト、公
私經濟ノ整理節約ニ依ッテ、國際貸借ノ均衡
ヲ圖ルヨリ外ニ途ハナイノデアリマス(拍
手)現內閣ハ其當道ヲ步ンデ、而シテ爲替相
場ヲ囘復シ、國際貸借ノ均衡ヲ得タ場合ニ
於テ、金ノ輸出解禁ヲ斷行シ、之ニ伴ウテ
各事業ノ整理ト產業ノ合理化トヲヤッテ居
ル、ソレ以外ニドウ云フ準備、ドウ云フ善
後處理ヲ要スルノデアリマセウカ、政友會
ノ諸君ガ新平價解禁論ヲ唱ヘルカモ知ラヌ
ガ是ハ非常ナ場合ニ於ケル非常ノ手段デ
アッテ、輕々ニ爲スベキコトデハアリセヌ
(拍手)佛蘭西ハ「フラン」ガ十分ノ一ニ落
チ、伊太利ハ「リラー」ガ六分ノ一ニ落チテ
居ッタノデアルカラ、新平價解禁ヲヤッタノ
デアル、所ガ我ガ日本ハ田中內閣ノ末期ニ
於テサヘ爲替相場ハ一割二分ノ差デアル、
サウシテ濱口內閣ガ出來ルト云フト、其爲
替相場ハ引返シテ六七分ノ開キニナッタノ·
デアルカラ、何モ非常手段ヲ執ル必要ハナ
カッタノデアリマス(拍手)政友會ノ大口君
ハ產業ノ施設ガ十分出來テ、產業ガ發展
シタ後ニ於テ金ノ解禁ヲ行ヘバ宜イト言ハ
レテ居ル、然ラバ何時マデ經ッタナラバ其時
機ガ來ルデアリマセウカ、殊ニ今日ノ世界
不景氣ノ一ツノ大ナル原因ハ何デアルカト
言ヘバ生產設備ノ增大ニ依ル生產ノ過剩
デアリマス、然ルニ政友會ノ例ノ積極政策
ニ依ッテ、生產ノ「コスト」ヲ其儘ニシテ置
イテ、生產ヲ奬勵シタ結果ハ如何相成ルデ
アリマセウカ、製品ノ賣行ハ推シテ知ルベ
キデハアリマスマイカ、殊ニ今日ノ世界不
景氣ニ遭遇シタナラバ、一層悲慘ノ境遇ニ
陷ヲテ居ルト云フコトハ問ハズシテ明カデ
アラウト思フノデアリマス、若モ日本ガ世
界共通ノ整理緊縮ノ大方針ヲモ立テズ、金
ノ解禁ヲモ爲サズシテ、依然トシテ通貨膨
脹、積極放漫ノ政策ヲ執ケテ居ッタナラバ
果シテ如何ナル狀態ニ陷,タカ、申スマデモ
ナク輸入ハ益〓增額シ、爲替相場ハ暴落ニ暴
落ヲ重ネ、當時眼前ニ迫クテ居ッタ所ノ外債
二億三千万圓ノ借替サヘ出來ナイト云フ窮
境ニ陷ッタノデハナカラウカト思フ(拍手)
今ニ於テ濱口內閣ノ政策ガ、國ヲ救フ所以
ノ途デアッタコトヲ感謝セザルヲ得ヌノデ
アリマス
次ニ此昭和五年度ノ歲入缺陷問題ニ付テ、
政友會諸君ハ非常ニ攻擊ヲサレテ居ル、併
ナガラ是ハ世界竝ノコトデアッテ已ムヲ得
又、一昨年卽チ千九百二十九年度ニ於テ、
英國ノ如キハ一億二千万圓、獨逸ノ如キハ
一億五千万圓ノ歲入缺陷デアル、昨年ニ至ッ
テハ更ニ一層甚シイ、緊縮ダケデハ間ニ合
ハズシテ、英國ハ四億二千万圓ノ增稅ヲ爲
シ、米國ハ一昨年御承知ノ通リノ所得稅ノ
減稅サヘ廢メテ、所謂三億一千万圓ト云フモ
ノヲ、此財源ニシヨウト云フコトニナッテ居
ル、獨逸ハ二億五千万圓、伊太利ハ九千万
圓ト云フヤウナ增稅ヲヤッテ居ル、又最近ノ
外電ニ依ルト、伊太利ハ是ダケデハ足ラズ、
官吏ノ俸給一割二分ヲ減額シタトモ傳ヘラ
レテ居ルヤウデアリマス、各國共ニ斯樣ナ
ル事情デアルニ拘ラズ、我ガ日本ノ大藏大
臣タル井上君ハ、歲入缺陷八千万圓ニ對シ
テ、行政整理其他ノ手段ニ依ッテ辻褄ヲ合セ
テ居ル、其手腕ハ大シタモノト讚メナケレ
バナラヌト思フノデアル(拍手)日本ニ大藏
大臣其人アリトシテ、世界ニ誇ルニ足ルデ
ハナイカト思フノデアリマス(拍手)
政友會ノ諸君ハ金ノ輸出解禁後ノ正貨ノ
流出ニ付テ非難攻擊ヲサレテ居リマスガ、
此金ノ解禁後ニ於キマシテ、世間デハ金ノ
解禁ヲヤッタナラバ、二億カ三億カノ正貨ガ
流出スルデアラウト云フヤウナ心配ヲシ
テ居ッタ、吾々ハ一億圓位デ濟メバ誠ニ上
上ノ出來デアルト考ヘテ居ッタノデアリマ
ス、所ガ最近ニナッテ聽イテ見マスト輸出
總額ハ三億八百万圓デアリマス、ソコデ政
友會ノ諸君ハソレ見タコトカト云フ譯デ、
得タリ賢シト攻擊ヲナサッテ居ルノデアリ
マスガ、併シ是ハ少シク見當違デアル、出
タモノト入ッタモノヲ差引イテ見マスト、
流出總額ハ二億四千七百万圓デアッテ、而モ
其內容ヲ點檢シテ見マスト、日本ノ放資家
ガ海外ニ放資シタモノガ一億万、卽チ海外
殊ニ倫敦、紐育ニ於テ、日本正貨ノ外國拂
證劵ヲ、日本人ノ手ニ於テ買ックモノガ卽チ
一億圓デアリマス、其他ニ六千万圓ト云フ
モノガアリマスガ、此六千万圓ハ爲替ノ前
途ヲ見越シテ取引シタモノデアッテ、本年上
半期ノ輸入資金ニ當テルモノデアリマス、
故ニ昨年ノ正貨總額カラ之ヲ控除シナケレ
バナラヌ、然ルニ此六千万圓ト云フモノヽ
流出シタ原因ヲ調ベテ見マスト丁度昨年
ノ八九月頃デアッタ、八九月頃ニ於テ類ニ政
變ガ傳ヘラレタ、其當時ハ倫敦海軍條約ガ
樞密院ノ議ニ掛シテ、今ニモ政變ガ來ルヤウ
ナ惡宣傳ガ行ハレタ、サウシテ臨時大會マ
デ開イテ御騷ギニナッタ方々モアッタノデア
リマス(拍手)サウシテ政界不安ノ空氣ヲ漂
ハシダノデアリマスカラ、若シモ內閣ガ迭
ルト云フト爲替ガ下ル、サウシテ代ツタ內閣
ガ金ノ再輸出禁止デモヤルト云フト、是ハ
大變ナコトデアルト利ニ銳イ所ノ商人ナ
ドハ前途ヲ見越シテ所謂爲替ノ取引ヲ致
シ其取引額ガ一億乃至二億ニ近イト云フ
コトデアリマス、其取引ノ際ニ日本銀行及
ビ正金銀行カラ支出シタ所ノ正金ガ六千万
圓デアリマスカラ、此六千万圓ノ流出ハ果
シテ何人ノ責任ニ歸シテ宜シイノデアリマ
スカ(拍手)此六千万圓ニ前ノ一億圓ヲ加フ
レバ一億六千万圓、之ヲ二億四千七百万圓
カラ差引キマスト、昨年中ノ正貨流出ノ純
粹額ハ僅ニ八千七百万圓ニ過ギナイノデア
リマス(拍手)吾々ハ一億位ハ流出スルカモ
知レヌ、ソレデモ大出來デアルト思ッテ居タ
モノガ、一億圓足ラズデ濟ンダト云フコト
ハ是ハ吾々ノ豫期以上ノ好成績デアルト
言ハナケレバナラヌ、又政友會ノ諸君ハ今
日ノ不景氣ハ金解禁ノ結果ノ如クニ宣傳ヲ
サレ、攻擊ヲセラレテ居リマスガ、是ハ誤
レルモ甚シイト言ハナケレバナラヌ、不景
氣ハ世界全般ニ亙ッテ、產業革命以來ノ大嵐
ガ吹荒ンデ居ルノデアリマス、卽チ各國共
ニ非常ニ困難ヲシテ居ル時代デアリマス、
然ルニ不景氣ガ我ガ日本バカリノヤウニ
言ッテ居ルノハ、國民ヲ愚ニスルモ亦甚シイ
ト言ハナケレバナラヌノデアリマス(拍手)
現ニ昨年ノ物價下落ノ狀況ヲ見テモ分ル
昨年一箇年ニ米國ニ於テハ一割八分六厘、
英國ニ於テハ二割二分二厘、我ガ日本ニ於
テハ二割一分六厘ノ物價指數ノ低落デアリ
ひと、サウシテ昨年十二月ノ調ニ依リマス
ルナラバ、戰前ヲ百トシテノ物價指數ニ對
シ、米國ハ一〇九·二、英國ハ一〇三·七デ
アッテ、殆ド戰前ノ狀態ニ復シテ居ルノテア
ルガ、日本ハマダ一二七·八デアリマスカ
ラ、物價低落ノ度ハ英米ニ比シテ尙ホ少ナ
イト言ハナケレバナラヌ(拍手)此比較カラ
考ヘテ見マスナラバ不景氣ト物價低落ト
ハ相互關係ガアリマスガ、金解禁トハ深イ
關係ノ無イト云フコトハ明カデアラウト思
フノデアリマス
又政友會諸君、殊ニ只今床次サンハ失業
公債ノ發行ヲ難ジ、所謂公債政策ノ破綻デ
アルト攻擊ヲサレテ居タノデアリマスガ、
是モ亦思ハザルノ甚シキモノデアリマス、
世界押並べテ不景氣ト云フコトハ事實デ
アッテ、各國共ニ失業者ハ群ヲ成シテ居ル、
是ガ救濟ニ付テハ各國共ニ政治家ガ腦漿ヲ
絞"テ居ルノデアリマス、我國獨リ之ヲ等閑
ニ附スル譯ニ行カナイ、仍テ政府ハ財界建
直シノ根本方針タル整理緊縮ト非募債政策
トハ斷ジテ變更シナイノデアルケレドモ、
建直シガ成就ヲシテ、產業ノ基礎ガ確立ヲ
ジ、失業者ノ消化ガ出來ルマデハ、一時的、
臨時的ノ策トシテ失業救濟ヲシナケレバナ
ラヌノデアリマス(拍手)是ガ爲ニ或程度ノ
失業救濟ハ政治家トシテハ巳ムヲ得ヌ處置
デアリマス、是カ卽チ社會ノ義務デアルト
同時ニ國家ノ義務デアルト言ハナケレバナ
ラヌ、故ニ政府ハ地方公共團體ヲシテ土木
工事ヲ起シテ、之ニ當ラシメテ居ルノミナ
ラズ、政府自ラ事業ヲ起シ、又地方團體ノ
事業ニ對スル補助範圍ヲ擴メル等、出來得
ルダケノ手段ヲ講ジテ居ルデアリマス、卽
チ道路公債ノ二千二百万圓、或ハ鐵道公債
ノ一千二百万圓、樺太事業公債ノ百五十万
圓トカ云フモノハ其現レニ外ナラナイノ
デアリマス、卽チ醫者ノ言ヲ藉リテ申シマ
スナラバ、所謂對症療法デアル根本ノ病
氣ヲ癒ス所ノ處方箋ニ變化ハ無イノデアル
ケレドモ、時ニ起クタ所ノ餘症ニ對シテ應急
手當ヲ爲スト同樣デアルト考ヘルノデア
ル、卽チ處方箋バカリヲ墨守シテ應急手當
ノ出來ヌノハ、是ハ藪醫竹庵デアッテ、名醫
ト申スコトハ出來ナイ、英國ノ勞働黨ノ總
理「マクドナルド」氏ノ如キスラ、世界ノ不
景氣ハ勞働黨ノ力ヲ以テシテハドウスル
コトモ出來ナイトシテ失業救濟ノ困難ナ
ルコトヲ說イテ居ルノデアリマス
〔發言スル者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=83
-
084・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 靜肅ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=84
-
085・富田幸次郎
○富田幸次郞君(續) 而モ現内閣ノ失業救
濟ト云フコトハ「マクドナルド」氏ノ困難ナ
リトスル所ノ失業對策デアッテ、所謂名醫ノ
技術タル對症療法ト言ッテモ宜シカラウト
思フノデアリマス、且又現內閣ハ失業對策
ト相竝ンデ金融對策、殊ニ中小產業者ノ金
融ニ付テモ、及ブダケノ努力ヲ致シテ居ル
ノデアリマス、昨年三月預金部カラ信用組
合ヲ通ジテ、中小商工業者ニ對シテ二千五
百万圓、其他農漁山村ノ失業救濟資金トシ
テ預金部ヨリ七千万圓尤モ此一部ハ農漁山
村ニ於ケル中小產業ノ金融援助トナッテ居
ルノデアリマスガ、尙ホ政府ハ全國銀行家
トモ協力シテ、銀行業者ハ小口ノ貸付ニ、
特別ニ便利ナ實行ヲシヨウト云フコトニ
ナッテ居ルノデアリマス(拍手)其他米價調
節ノ應急策トシテモ、三千万圓ヲ支出シテ
居ルノデアリマスルカラ、要スルニ失業公
債ノ三千五百十万圓、中小產業者ヘノ融通
資金九千五百万圓、農村救濟ノ米價調節ノ
應急施設トシテ三千万圓、合計一億六千万
圓ト云フモノガ、各種ノ機關ヲ通ジテ分配
サレルノデアルカラ、是コソ旱天ノ惠雨ト
モ申サナケレバナラヌト思フノデアル(拍
手
次ニ現内閣ノ一大成功ハ海軍軍縮ノ問題
ノ解決デアリマス、此問題ニ付テモ、ドウ
ヤラ床次サンカラハ御非難ガアッタヤウデ
アリマスルケレドモ、兎ニ角是ハ現内閣ノ
大成功デアルト申サナケレバナラヌ(拍手)
是ハ現內閣ガ世界平和ノ趨向ニ鑑ミ、進ン
デ平和ノ增進、國民負擔ノ輕減ニ寄與シタ
ル大事業デアルト云フコトハ、玆ニ斷言シ
テモ何人モ非難スル者ハナカラウト患フ
(拍手)若モ各國ノ專門家ガ互ニ小我ニ囚ハ
レテ、所謂自國ノ自我ノミヲ考ヘテ、會議
ヲ決裂ニ終ラシメテ居,タナラバ、其結果ハ
果シテ如何デアッタデアリマセウカ、今頃ハ
製艦競爭ニ沒頭シテ、此不景氣ノ場合ニ
各國民ガ何レモ靑息吐息ノ窮境ニ陷ヲテ居
ルノデハナカラウカト思フノデアリマス
(拍手)幸ニ各國共ニ國防上最小限度ノ安全
點ニ止メ交讓妥協ノ精神ニ依ッテ、幾度カ決
裂ニ瀕セシ會議ヲ纒メ得タコトハ非常ニ
欣ブベキコトヽ言ハネバナラヌノデアリマ
ス(拍手)之ヲ現ニ我國ノ境遇ニ付テ考ヘテ
見マシテモ、若シ倫敦會議ガ決裂ニナッテ
居ッタナラバ、ドウナッテ居ッタカ、卽チ戰鬪
艦代換建造ノ爲ニ昭和六年度ヨリ五箇年
間ニ約三億五千万圓ヲ支出シナケレバナラ
ヌノデアリマス加フルニ米國ガ一千九百
二十九年ノ法律ニ依フテ、大型巡洋艦二十三
隻ヲ製造スルトスレバ、吾國ハ之ニ對抗シ
テ七割ノ比率ヲ維持セントスルナラバ五
六艘ノ大型巡洋艦ヲ建造シナケレバナラヌ
コトニナッテ居ッタノデアリマス(拍手)一隻
ノ建造費ニ三千万圓乃至三千五百万圓ヲ要
スルトスレバ、如何ニ少ク見積ッテモ、一億
五千万圓ヤ二億圓ハ掛ッタノデアラウト思
フノデアリマス(拍手)戰鬪艦ノ代換建造ニ
三億五千万圓ト云フモノヲ要スルニ、更 -
大型巡洋艦新造ノ爲ニ一億五千万圓乃至二
億圓ヲ要スルトセバ吾ガ國民ハ僅カ五箇
年ノ間ニ、五六億ノ軍艦建造費ヲ負擔シナ
ケレバナラナカッタノデアリマス(拍手)マ
サカ政友會ノ諸君ト雖モ、ソレデモ結構デ
アルトハ申サナイデアラウト思フノデアリ
マス(拍手)既ニ製艦競爭ヲ避ケタイ、サウ
シテ軍艦新建造費五六億ハ到底國民ノ力ニ
堪ヘヌ、サウ云フコトデアリマスルナラバ、
倫敦會議ノ成立ニ對シテ、彼此レ申スベキ
筈ノモノデハナカラウト思フノデアリマス
(拍手)所謂國民ハ感謝コソスレ、決シテ杞
憂ハシテ居ナイト云フノハ此事デアリマス
(拍手)況ヤ倫敦會議成立ノ結果トシテ五
億八百万圓ト云フ大キナ土產ガ出來テ、其
中カラ少クハアルケレドモ一億三千四百
万圓ト云フ減稅ガ出來ルト云フコトハ所
謂政友會ト雖モ、文句ノ言ハルベキ筈ガナ
イト思フノデアリマス(拍手)況ヤ昨年ノ特
別議會ニ於テハ、所謂義務〓育費ノ國庫支
辨金ノ增額ニ依ッテ、一千万圓ノ減額ヲシ
タ、サウシテ今囘ノ倫敦會議ノ結果ニ於テ
ハ平年度ニ於テ二千五百万圓ノ減稅ヲシ
テ、玆ニ年々合計三億五千万圓ノ國民負擔
ノ輕減ガ出來ルト云フコトハ、何ト言フテモ
此內閣ガ、國民ニ對シテ誠意ノ現レデアル
ト斷定シナケレバナラナイト思フノデアリ
マス(拍手)最近外國電報ノ傳フル所ニ依リ
マスレバ、曩ニ倫敦會議カラ脫退シテ居フタ
伊太利、佛蘭西ノ方ノ協定モ、此際圓滿ニ
成立シタト云フコトニナッテ居ル、是ガ爲
ニ世界ノ平和ノ一層保障サレルコトガ出來
タノハ、寔ニ喜バシイコトト思ヒマス、畢竟
斯ノ如キ喜バシキ結果ニ導イタコトハ、曩
ニ日英米三國全權ガ世界ノ大勢ヲ利導シテ
來タ賜デアルト言ハナケレバナラヌ(拍手)
日英米三國ノ當局者ニ對シテ、世界各國民
ハ等シク敬意ヲ表シテ居ルコトデアラウト
思フノデアリマス、其點カラ申シタナラバ、
現內閣ニ不信任ヲ表スルドコロカ、所謂負
擔輕減ノ恩人、世界平和ノ大明神トシテ、
頌德表ヲ奉ラナケレバナラヌト思フノデア
リマス(拍手)
今日ノ日本ハ徒ニ內政問題ノ枝葉末節ニ
付テ、政爭是レ事トスベキ場合デハナイ、
床次サンノ所謂上下協力シテ國難ニ當ルベ
キ秋デアリマス、須ク經濟國策ヲ樹チヽ
一路邁進シナケレバナラヌ時デアリマス、
(拍手)經濟國策トハ何カ、卽チ低廉ニシテ
優良ナル製品ヲ造ッテ、内ニ於テハ國產ヲ愛
用シテ、出來ルダケ輸入品ヲ防遏シ、叉外
ニ向ッテハ海外ニ市場ヲ求メテ、輸出ノ旺盛
ヲ期セナケレバナラヌノデアリマス(拍手)
今日ノ世界ハ所謂「マーケット」爭奪、卽チ市
場ノ爭奪戰デアリマス、我ガ日本ハ世界大
戰中、東洋ニ、南洋ニ、或ハ歐米品ヲ驅逐シ
テ、其市場ヲ擴張シテ居ッタノデアリマスケ
レドモ、戰後ハ漸次奪返サレテ、舊位置スラ
保ツコトガ出來ナイヤウナ悲境ニ沈淪シテ
居ルノデアリマス、是ハ畢竟スルニ通貨ノ
膨脹、物價ノ騰貴、粗製濫造等ノ結果デア〃
テ、今日ハ現ニ我ガ國民ハ此點ニ對シテ反
省ト、奮發ト、サウシテ經濟界ノ更新ト
進展トヲ企圖シナケレバナラナイ狀態ニ立
至クテ居ルノデアリマス(拍手)現內閣ノ財
界建直シト產業ノ合理化トハ、是ガ對應策
トシテ洵ニ喫緊ノ要務デアルト言ハナケレ
バナラヌト思フノデアリマス(拍手)然ルニ
政友會ノ諸君ガ之ニ反對シテ、積極政策、
關稅政策ヲ高調セラルヤウニ見エル基礎
ヲ固メズ、建築圖面バカリ引イテ見タ所ガ、
何ノ役ニ立ッモノデハアリマセヌ(拍手)政
友會ノ諸君ハ我黨ノ鐵筋「コンクリート」
的基礎工事ヲ見テ、ヤレ石ガ惡イ、ヤレ此
土ガ惡イト非難シテ居リマスケレドモ、軈
テ宏壯ナ產業樓閣ヲ築ク所ノ準備工事デア
ルカラ、靜ニ見テ居ッテ欲シイノデアリマス
(拍手)所謂政友會式「バラック」ノ建築、所謂
床次サンノ言ハレタ砂上ノ樓閣ヲ夢ミルガ
如キハ、此際國民ノ最モ警戒スベキコトデ
アラウト思フノデアリマス(拍手)丁度濠洲
ノ政情ガ政友會時代ノ政策ニ能ク似テ居
ル、戰爭中カラ戰後ニ掛ケテ、所謂積極政
策ヲ執ヶテ非常ニ物價ガ騰貴シタ、然ルニ各
國ガ戰後ノ整理ヲ爲ス場合ニ、濠洲ノミハ政
友會內閣同樣ニ物價ヲ下ゲテハイケナイ、
仕事ヲ少クシテハイケナイト言ッテ「インフ
レーション」ノ政策ヲ執タノデアリマス、
斯ウ云フコトガ卽チ「インフレーション」ノ
政策デ、先刻ノ床次サンノ言ハレルヤウナ
コトハ「インフレーシヨン」ノ政策ニハナラ
ナイ、而シテ其結果ハドウデアルカト言ヘ
バ、世界ノ物價ガ下レバ、其安クナッタ品物
ト云フモノガ濠洲ニ入ッテ來ル、仍テ其對策
トシテ、數囘ニ互ッテ關稅ヲ上ゲタノデアリ
甲く、卽チ關稅政策ヲ執リ、關稅ノ障壁ヲ
築イテ外國品ノ影響ヲ避ケタノデアリマ
スガ、內ニ於テハ其代リドン〓〓公債ヲ募
集シテ、出來ルダケノ仕事ヲヤッタノデアリ
マリー、所ガ御承知ノ如ク濠洲ハ勞働黨ノ非
常ニ勢力ノアル所デアリマスルカラ、勞働
黨ガ此政策ニ共鳴ヲシテ支持シタノデアリ
そく、併ナガラ勞働黨ノ天國ト言ハレタ所
ノ此濠洲デモ、世界ノ不景氣ハ如何トモス
ルコトガ出來ナイ、一昨年來カラ非常ナ勢
ヲ以テ襲來シテ來タ不景氣ノ爲ニ、外國ノ
品ハドン〓〓入ッテ居リ、濠洲ノ輸出品ノ第
一位デアル所ノ羊毛ハ暴落ヲシタ、サウシ
テ第二位ニアル所ノ小麥ト云フモノハ是
ハ世界的不況ノ爲ニ非常ナ影響ヲ受ケタ
濠洲ダケハ大不作デアッタ爲ニ非常ニ困難
ヲシタ、內政ノ事ハ兎ニ角糊塗彌縫ハ出來
タノデアリマスルケレドモガ、外國貿易ト
云フモノハ非常ニ打擊ヲ受ケテ、外國ノ公
債ノ利拂モ出來ナイデ、遂ニハ昨年ニ迫ッテ
居ッタ所ノ外債ノ借換モ出來ナイト云フコ
トニナッタ、若シ田中內閣ガ續イテ居ッタナ
ラバ、昨年ニ迫ッテ居フタ所ノ一一億三千万圓
ノ外債ノ借換モ出來ナカッタト同樣ノ窮境
ニ陷ッタノデアリマス(拍手)ソコニ於テ濠
洲政府ガ英蘭銀行ニ泣付イテ、サウシテ其
整理ヲ求メタ、サウスルト英蘭銀行ノ重役
ノ二三ガ濠洲ニ出張シテ、一個ノ整理案ヲ
作ッタ、其整理案ノ骨子ハ何デアルカト云フ
ト、濠洲ノ各州全體ニ亙ル所ノ整理緊縮デ
アリマス、次ニハ公備ノ發行中止デアリマ
ス、此二ツガ骨子トナッテ整理案ガ出來タ
ノデアリマスガ、之ニ對シテ勞働黨ハ反對
ヲシテ居ルノデアルガ、聯合政府ノ首相「ス
カーリン」氏ハ之ヲ決行スルダケノ大勇猛
心ヲ奮ヒ起シテ居ルノデアリマス、是ハ恰
モ我ガ濱口內閣ノ緊縮政策ニ對シテ、政友
會ガ反對ヲセラレルト同樣デ、洵ニ能ク似
テ居ルヤウニ思ハレルノデアリマス(拍手)
然ルニ若シ政友會ヲシテ、世界ノ大勢モ顧
ミズ、世界的不景氣ニモ頓著ナク、依然ト
シテ例ノ積極放漫政策ヲ繼續セシメテ居,
タナラバ如何デアリマセウ、所謂今日ノ濠
洲ガ全體的ニ財政上、經濟上ノ破滅ヲ來シ
タト同ジ轍ヲ踏ムノデハナカラウカト思ハ
レルノデアリマス(拍手)
而シテ先刻床次サンハ外交問題ニ付テ現
內閣ヲ攻擊サレタ、殊ニ幣原外交ヲ攻擊サ
レタノデアリマス、併ナガラ其思想ノ現ハ
レカラ推定ヲシテ見ルト云フト、ドウモ帝
國主義的外交ヲ喜バレルヤウナ傾ガナカラ
ウカト推定サレルノデアリマス(拍手)今日
ノ時代ハサウ云フ時代デハナイ、所謂平和
主義ニ於テ經濟的發展ヲ企圖セナケレバナ
ラヌ、此點ハ床次君ト同論デアリマス、而
シテ我ガ日本ト最モ近イ距離ニ在ッテ、非常
ニ密接ノ關係ニアル所ハ何處デアルカト言
くり、所謂東洋ノ「マーケット」デアリマス、
然ルニ日本ハ餘リニ東洋ノ市場ヲ閑却シテ
居ッタ傾ガアル、支那ニ於テモ、南洋ニ於テ
モ、輸出入共ニ其大部分ハ皆歐米トノ關係
デアリマス、卽チ七割以上ハ歐米トノ關係
デアリマシテ、現ニ支那ノ輸入貿易ニ付テ
見テモ、日本ハ僅ニ三割シカ占メテ居ナイ
ノデアリマス、其餘ノ七割ハ歐米ニ占メラ
レテ居ルノデアリマス、南米ノ如キニ至ッテ
ハ其貿易關係ノ八割ト云フモノハ、歐米
其他ニ占メラレテ居リマシテ、日本ハ僅ニ
其一割何分ト云フニ過ギナイノデアリマ
ス、斯ノ如ク日本ガ極ク近イ大ナル市場ヲ
閑却シテ居ッテハ、到底我ガ經濟ノ發展ヲ望
ムコトハ出來ナイノデアリマス、唯吾々ハ
常ニ想ヒヲ此點ニ廻ラシテ居ル、所謂經濟
市場ヲ東洋殊ニ支那方面ニ確立セネバナラ
ヌト云フ考デ、支那ニ對シテハ指導和親ノ
方針ヲ執ッテ進ンデ來テ居ルノデアリマス、
然ルニ如何デアリマセウ、前田中內閣ノ如
キハ之ニ反對ヲシテ、二囘マデモ無用ノ兵
ヲ山東ニ出シテ、四千万圓ト云フ巨額ノ國
帑ヲ費シテ支那ヲ脅カシ、又張作霖爆死事
件ト云フヤウナ大不祥事件ヲ惹起シテ、支
那上下ノ反感ヲ激發シ、以テ對支關係ノ行
詰リヲ生ジタノデアリマス、是ガ爲ニ內閣
ガ更迭シ、濱口內閣ハ極力其善後處理ニ努
力シ、隨テ日支關係ハ非常ニ改善サレタノ
デアリマス、日支關係ノ改善ハ軈テ日支貿
易ノ增進デアリマス、幣原外交ハ我國ノ經
濟國策ト兩翼雙輪ノ關係ニアルト云フコト
ハ此處デ今更私ガ辯明ノ要ハナイト思フ
ノデアリマス現內閣外交ノ根本義ハ國際
正義ノ高調ニアルノデアリマス、世界平和
ノ努力ニアルノデアリマス、切言スレバ世
界ノ各方面、殊ニ東洋方面ニ於テ經濟發展
ノ支障ヲ除キ、進ンデ其發展ヲ圖ルニアル
ノデアリマス、卽チ支那方面ニ對シテハ、將
來我國ノ經濟市場ノ確立ヲ圖ランガ爲ニ、
努力シツヽアルノデアリマス、加藤高明內
閣以來、幣原外務大臣ノ外交ノ跡ヲ點檢致
シマスナラバ歷々トシテ之ヲ證明スルコ
トガ出來ルト思フノデアリマス(拍手)
之ヲ要スルニ幣原外交ノ大本大綱ハ我
ガ經濟國策ノ確立ノ爲ニ、全局ノ問題ニ對
シテ平和的、經濟的ニ、各般ノ計畫ヲ進ム
ルニアルノデアリマス、此計畫ハ實ニ遠大、
其理想ハ高遠ト言ハナケレバナラヌト思フ
ノデアリマス、唯目前ノ露領ノ問題ガドウ
デアルトカ、滿洲ニ於ケル鐵道問題ガドウ
デアルトカ云フ、一二ノ問題ヲ捉ヘテ彼此
レ言フコトハ、所謂片鱗ヲ見テ全班ヲ批評
スルノ類デアッテ、ドウカ此幣原外交、卽チ
現內閣ノ外交ノ大本大綱ノ進展ハモウ少
シ長イ眼ヲ以テ見テ欲シイト思フノデアリ
マス、唯徒ニ之ヲ性急ニ非難攻撃スルト云
フコトハ、寧ロ我ガ經濟國策ヲ妨害スルモ
ノデアルト思フノデアリマス(拍手)
私ハ以上ノ趣意ニ於テ不信任ノ理由ナ
ク又頗ル見當違ノ攻擊デアルト云フコ
トヲ論破シタ積リデアリマス、提出者諸
君ニ於テハ其意ヲ認メラレルナラバ
過ッテ改ムルニ憚ルコト勿レ、速ニ潔ク
案ヲ撤回セラレンコトヲ希望スルノデアリ
マス
〔秦豐助君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=85
-
086・秦豐助
○秦豐助君 私ハ現內閣ヲ信任セズト云フ
所ノ決議案ニ贊成ヲ致シマシテ、玆ニ諸君
ニ愬ヘタイト思フ次第デアリマス、只今富
田君ガ述ベラレマシタコトハ政權ノ轉移
スルコトハ、昨年ノ選擧ニ依ッテ二百七十名
ノ多數ヲ得タカラシテ、是ガ政策ノ政治的
價値ヲ現シテ居ルカラ、何等今日ニ於テ斯
ノ如キ決議案ノ必要ガナイト云フコトヲ述
ベラレテ居ッタノデアル、此意味ハ要スルニ
此二百七十名ノ多數ガアレバ、如何ニ惡イ
政治ヲシテモ長ク續イテ宜シイト云フコト
ヲ肯定スルモノデアッテ、是ガ政策ノ破綻ト
共ニ此政權ノ移轉、卽チ內閣ノ更迭ガアル
ト云フ、立憲政治ノ本義ニ背反シテ居ルモ
ノト吾々ハ信ズルノデアリマシテ、殆ド採
ルニ足ラザル所ノ說デアルト私ハ思フノデ
アリマス(拍手)其他ノ事ハ今日ノ實際ノ狀
況天下國民ノ皆知ル所ノ深刻ナ不景氣、
濱口君自ラモ認メテ居ル所ノ、世界的不景
氣バカリデハナイ、此內閣ノ政策ニ依ッテ此
不景氣ヲ招來シテ居ルト云フコトヲ濱口君
自ラモ認メテ居ル、其明白ナル事實ニ對ス
ル辯解ノ爲ニ、多クノ言葉ヲ費サレタニ過
ギナイノデアル吾々ハ此點ニ付テハソ
レ故ニ之ヲ述べマセヌ、其政權ノ關係、憲
政ノ大義ニ付テ、私ハ現內閣ハ絕對的ニ存
在ヲ許スベカラザルモノデアルト信ジテ居
ルノデアリマス(拍手)
抑〓濱口內閣總理大臣ガ憲政ノ大義ヲ紛
亂シテ、實ニ我國ノ立憲政治ヲ破壞スルノ
行動ヲ敢テ致シテ居ルト云フコトハ實一
吾々トシテハ見ルニ忍ビナイ所デアルノデ
アル(拍手)元來內閣總理大臣ノ地位ハ極
メテ政治上重要デアルコトハ中スマデモナ
1、又他ノ國務大臣トハ異ル所ガアルト云
フコトハ、是モ明ガデアル、此大命ガ內閣
總理大臣タルモノニ降下致シマシテ、サウ
シテ內閣ガ組織セラレル、今日ハ政黨政治
ノ發逹ニ伴ヒマシテ、政黨ノ總裁ニ大命ガ
降下スルコトニナッテ居ルガ、是ハ何ノ意味
デアルカ、卽チ政黨ガ國政ヲ運用スル所ノ
原動力ヲ持ッテ居ッテ、共總裁ニ統率力ガア
リ指導精神ガアッテ、之ニ依ッテ指導セラ
レー、立憲政治ガ完全ニ運用セラレルト云
フ所カラ、是ガ來テ居ルノデアル(拍手)卽
チ此大命ノ降下致シマシタコトハ內閣總
理大臣其人ニ對シテ天皇陛下ノ御信任ガ
アリ、其人ノ政黨ヲ指導シ、統率スル所ノ
力ニ對シテ、此大命降下ガアッタノデアリマ
シテ是ガ他ノ國務大臣トハ違フ所デアル
ノデアル(拍手)是ガ重大ナル要點デアル
又內閣官制カラ申シマシテモ內閣總理大
臣ハ他ノ國務大臣トハ異、テ、各大臣ノ首班
トシテ機務ヲ奏宣シ、行政各部ノ統一ヲ圖
ラナケレバナラヌ重大ナル任務ヲ持ッテ居
ルノデアル、卽チ內閣總理大臣ハ內閣ノ中
心デアッテ、此者ニ依シテ卽チ內閣ガ國政ヲ
運用スルコトガ出來ルト云フコトハ言フ
マデモナイ所デアルノデアリマス(拍手)ソ
レ故ニ此內閣總理大臣ノ地位、又其職責ハ
極メテ重大デアリマシテ是ハ他ノ國務大
臣トハ特別ニ考ヘナケレバナラヌ點ガアル
ト云フコトハ、申上ゲルマデモナイト考ヘ
ルノデアル、殊ニ今日ノヤウナ現內閣稅政
百出ノ結果、國民ハ塗炭ノ苦ミニ遭ッテ居
ル、外ニ在ッテハ外交ガ失敗致シマシテ、サ
ウシテ我ガ權益ガ失ハレツヽアルト云フ時
代ニ於テハ此內閣總理大臣ノ働ト云フモ
ノハ、最モ重要性ヲ加ヘテ來ルモノデアル
ト私ハ考ヘルモノデアル(拍手)故ニ內閣總
理大臣ト云フモノハ昃ニ起キヽ夜半ニ寢ネ
陛下ノ御信任ニ對ヘ國民ノ信用ヲ失ハ
ナイヤウニ、十分努メナケレバナラヌ職責
ガアルト思フノデアル(拍手)然ルニ濱口內
閣總理大臣、此內閣ハ如何デアルカ、昨年
遭難セラレマシテ、卽チ內閣官制ノ所謂故
障ガ起ッタ、自ラ輔弼ノ責任ヲ盡ス能ハザル
所ノ故障ガ起ッタカラト云フノデ、臨時代理
ヲ設ケラレマシテ、幣原外務大臣ガ之ニ任
ゼラレタ諸君、昨年ノ十一月カラ本年ノ
三月ニ至ルマデ、卽チ臨時代理ノ解任セラ
ルヽニ至ル間、五箇月ノ久シキニ亙ッテ、而
モ議會開會中ニ於テ、此臨時代理ガ繼續シ
タト云フコトハ是ハ我ガ立憲史上未曾有
ノ變態デアルト云フコトハ爭フベカラザ
ル事實デアリマス、實ニ一大惡例ヲ貽シク
モノデアルト云フコトヲ認メルモノデアル
(拍手)此罪惡ヲ犯シ、而モ此內閣總理大臣
ノ地位ハ、私ガ先程述べマシタ通リデアツ
テ、極メテ重大デアルニモ拘ラズ、之ヲ沒
却シテ、サウシテ斯ノ如キ長期ニ亙リ、臨
時代理ト云フモノヲ以テ議會ニ臨ンデ來タ
ノデアル、此事ガ卽チ濱口內閣ガ立憲政治
ヲ破壞シタル所ノ、一ツノ大罪惡ヲ犯シタ
モノデアルト云フコトヲ、吾々ハ認メルモ
ノデアル(拍手)內閣官制ニ、故障アル時ハ
臨時代理ヲ置クト云フコトハ臨時デナケ
レバナラヌ、臨時ト云フ文字ハ何年デモ宜
シイ、期間ノ定ガナイカラト云フナラバ、
濱口君ハ何時マデデモ病氣デ以テ靜養シテ
居ノテ、臨時代理デ繼續シテ宜シイト云フコ
トニナリマシテ、サウ云フヤウナル解釋ハ
到底吾々ハ認メルコトガ出來ナイ(拍手)此
大命降下ノ意味ハ濱口君其人ニ對シテ渡
サレタモノデアッテ、幣原君ニ對シテ渡サレ
タモノデナイコトハ明瞭デアル、然ルニ斯
ノ如キ長期ニ亙ッテ臨時代理トシテ、實際ニ
於テ內閣總理大臣ノ職責全部ヲ行フト云フ
コトデアッタナラバ、其實際ハ卽チ幣原內閣
ガ成立シタト同ジデアリマスカラ、濱口君
共人ニ依シテ國政ヲ運用シテ行クト云フ所
ノ精神天皇陛下ノ下サレタ大命降下ノ意
義ハ、玆ニ滅却セラレタルモノト言ハナケ
レバナラヌ(拍手)
〔「議長、民政黨ハドウシタ」ト呼ヒ其
他發言スル者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=86
-
087・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 靜肅ニ-挑發シ
テハイケマセヌ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=87
-
088・秦豐助
○秦豐助君(續) 此臨時代理其人ハ民政黨
ノ領袖デナイ、又民政黨ノ黨員ニ非ザル
全ク黨外ノ人物デアッテ、之ヲ臨時代理ト致
シマシタコトハ一面ニ於テ政黨政治ノ發
達ヲ阻碍スル所ノ行動デアルト吾々ハ認メ
ルノデアル、民政黨諸君ハ議會中心政治ナ
ルモノヲ高調シテ居ルノデアルガ、併ナガ
ラ斯ノ如キ黨外ノ人統率ノ力ノナイ所ノ
者ヲ連レテ來テ、ソレヲ臨時代理トシテ、
總理大臣ノ職權全部ヲ長キニ亙ッテ行ハシ
ムルト云フコトハ卽チ民政黨自ラ自己ノ
主張ヲ抛擲シタルモノト私ハ斷言セザルヲ
得ナイ(拍手)卽チ政黨政治主義ト云フモノ
ヲ玆ニ抛擲シタルモノデアル、一時政權ヲ
維持スルガ爲ニ、此主義ヲ抛擲シタト云フ
コトハ民政黨ノ一ツノ罪惡デアルト私ハ
考ヘル、又實際上如何デアッタカ、幣原君ガ
臨時代理トシテ、久シキニ亙ッテ此任ニ當ツ
タ間ニ於キマシテ、國務ガ如何ニ澁滯ヲ致
シタカ、其事ハ實際上ニ非常ナル惡影響ヲ
來シタノデアリマス、殊ニ幣原君其人ハ內
閣總理大臣ノ職責全部ヲ行フトロニハ言ッ
テ居ルケレドモ、何等サウ云フヤウナ信念
モナケレバ、又能力モナカッタト云フコトハ、
事實ノ上ニ明カニサレタノデアル(拍手)現ニ
幣原君自身ガ、此臨時代理ハ議會ノ休會明
ケマデシカヤラナイ積リデアルト云フコト
ヲ明言シテ居ッタノデアル、然ルニ民政黨ノ
內輪ノ事情、サウシテ濱口君ノ病氣ノ狀態、
是等ガ幣原君デナレケバドウシテモ政權
ヲ維持スルコトガ出來ナイト云フヤウナ私
ノ關係カラ致シマシテ、幣原君ガ濱口君カ
ラ懇請ヲセラレテ、サウシテ遂ニ之ヲ承諾
シタト云フコトハ事實デアル、斯ノ如ク幣
原君ソレ自身ガ、眞ニ濱口君ノ代理トシテ、
大政ヲ變理スル內閣總理大臣ノ實ヲ擧ゲル
ト云フコトノ信念モナケレバ又實際ニモ
能力ガナカッタト云フコトハ明カデアルノ
デアリマス(拍手)其顯著ナル實例ハ何デア
ルカ卽チ幣原君ガ豫算委員會ニ於テ、中
島君ノ質問ニ對シテ發シタル所ノアノ暴言
ハ立憲政治ヲ破壞スル所ノ暴言デアルノ
デアリマス(拍手)中島君ノ質問ニ對シテ幣
原臨時代理ハ、倫敦條約ニ依テテ防防ガ危險
デナイト云フコトハ倫敦條約ガ御批准ニ
ナッタト云フコトデ證明シテ居ルデハナイ
カト云フコトヲ言ッテ居ルコトノ如キ諸
君、是ハ卽チ天皇陛下ヲ證人ニシタト云
フヤウナ、實ニ僣越極マル所ノ事柄デアル
(拍手)斯ノ如キ所ノ暴言ヲ發シタコトハ
是ハ幣原君ガ卽チ立憲政治ヲ理解セザル所
ノ人デアルト云フコトヲ、明カニシタモノ
デアルト私ハ思フノデアリマス(拍手)幣原
君ノ臨時代理中ニヤッタ所ノ行爲ニ對シテ
ハ國務上ノ行爲、卽チ議會ニ於テノ發言
ニ對シテハ、濱口君ガ復職シタル上ニハ
濱口內閣總理大臣ガ責任ヲ執ルノデアルト
云フコトヲ言明シ濱口君モ亦幣原君ノ臨
時代理中ノ國務上ノ行爲、議會ニ於ケル發
言ニ付テハ責任ヲ執ルト言ッテ言明ヲ致シ
マシタガ、此立憲政治ヲ破壞シ、責任ヲ
天皇ニ歸スル所ノ暴言ニ對シテ、濱口君ハ
如何ナル責任ヲ執ラントスルノデアルカ、
(拍手)此責任ヲ執ラナケレバ、立憲政治ト
云フモノハ破壞セラルヽト云フコトヲ私ハ
申スノデアル而シテ此臨時代理ガ久シキ
ニ瓦ッテ置カレ、議會ニ臨ンダ爲ニ、國務ノ
澁滯シタルコトハ夥シイモノデアル、現
諸君ノ見ルガ如ク、重要法律案ハ之ガ爲ニ
議會ニ提出ガ非常ニ遲レテ今日デハ審議
未了ノ確實デアルモノガ多數デアルト云フ
ヤウナ狀況デハナイカ、又現內閣ガ長イ間
掛ッテ審査ヲ爲シタ選擧法ノ改正、是等ノ如
キモノモ樞密院ニ提出スルコトガ非常ニ遲
レタ爲ニ樞密院デ停頓シテ、遂ニ議會ニ
提出スルコトガ出來ナイト云フヤウナ狀態
ニ陷クテ居ルノデアル(拍手)是等ノ重要法
案竝ニ選擧法案ノ如キハ民政黨ノ常套手
段トシテ唯俺ハ斯ウ云フ風ニスル積リデ
アルト云フ、宣傳ノ手段ニ供シタナラバ格
別デアルガ、實際ニ之ヲ行フト云フ上ニ於
テハ國務ガ澁滯シテ、臨時代理ノ下ニ於
テ政務ガ行ハレナカッタト云フコトノ確カ
ナ證據デアルト私ハ考ヘルノデアリマス
(拍手)又此臨時代理ガ久シキニ亙ッテ置カ
レテ、ソレガ爲ニ國務ノ澁滯シタル例ト致
シマシテハ澤山アッテ、殆ド枚擧ニ遑ナイノ
デアリマスガ現ニ記憶ニ新ナルコトハ何
デアルカト云フト、彼ノ六年度ノ豫算ニ於
テ、朝鮮ノ忠〓南道ノ道廳移轉費、是ガ衆
議院ニ於テ、民政黨ガ政府ノ意見ニ反對ヲ
シテ、サウシテソレガ通過致シテ、貴族院
ニ於テソレガ復活セラレテ、再ビ還ッテ來タ
時ハ民政黨ノ諸君ハ本議院ニ於テ、其院
議ヲ尊重スルコトヲ忘レテ、貴族院ノ決議
ニ盲從シタト云フヤウナコトハ是ハ臨時
代理ノ期間ニ於ケル所ノ一ツノ重大ナル缺
陷デアルト考ヘルノデアル(拍手)實ニ此政
府部內ノ不統一、又民政黨ソレ自身ノ統一
セラレザルト云フコトハ、卽チ臨時代理ノ
斯ノ如キヤリ方デハ、到底十分行ハレナイ
ト云フコトノ證左デアルト私共ハ思フノデ
アリマス
又近クハ追加豫算ノ、大阪ニ帝國大學ヲ
創設スルト云フ案ハ、我黨ニ於テハ之ヲ修
正削除ノ意見ヲ出シタノデアッテ、其意見ハ
山崎君カラ十分ニ說明セラレマシタガ、諸
君、是亦貴族院デ是ガ削除セラレタナラバ、
民政黨ノ諸君ハ之ニ對シテ同意ヲ表スルノ
デアルカ、實ニ今日ノ內閣、民政黨ノ爲ス
所ハ、全ク矛盾撞著ヲ極メテ居ルト私ハ考
ヘル次第デアル、(拍手)又他ノ豫算ニ於テ、
裁判所構成法ノ改正ニ依テテナナケレバ爲
スコトノ出來ナイ、事實上ノ裁判所ノ廢止
ト云フモノヲ、六十二箇所モ斷行スルト云
フヤウナコトヲ、豫算ノ上ニ說明モセズニ
隱シテ置イテ、サウシテ是ガ問題トナッタ、
此事ハ段々調ベテ見ルト、司法大臣、大藏
大臣以外ノ閣僚ハ、少シモ之ヲ知ラナカッタ
ト云フニ至ッテハ、實ニ驚クノ外ハナイノデ
アル、斯ノ如ク政府部内ノ不統一、民政黨
內ノ不統一ト云フモノハ、其例ヲ擧ゲルナ
ラバ實ニ數多イ事デアリマス、又今囘ノ議
會ニ於テ、特ニ吾々ニ目立ッテ考ヘラレタコ
トハ何デアルカト言ヘバ國務大臣ノ答辯
ガ如何ニモ支離滅裂ニシテ、無責任ヲ極メ
タト云フコトデアリマス、私ガ之ヲ綜合シ
テ考ヘテ見マスト云フト、是等ノ國務大臣
ハ議會ニ於ケル所ノ答辯ニ付キマシテ申合
ヲシタト考ヘルノ外ハナイノデアル確ニ
三ツノ申合ヲシテ居ル、何デアルカト云フ
ト第一ニハ答辯ヲ差控ヘルト云フコトノ
方針デアル、第二ニハ法文ノ解釋ハ之ヲ避
ケルト云フ方針デアル、第三ハ假定ノ事實
ハ御答ヲシナイト云フ所ノ方針デアル諸
君此三ツノ方針、實ニ此立憲政治ガ言論
政治デアリ、國政ヲ十分ニ明白ニシテ之
ヲ國民ノ前ニ明カニスルト云フ所ノ趣意ヲ
沒却シタル所ノ、祕密主義ノヤリ方デアル
ト思フノデアル(拍手)成タケ答辯ヲシナイ
ヤウニ、而モ之ヲ瞞過スルヤウニシテ居ル
ト云フ方針ヲ執ッタコトハ、此議會ニ於テ此
內閣ノ爲シタコト程是ガヒドイモノハナイ
(拍手)ソレガ爲ニ國務ガ澁滯シクコトハ夥
シイモノデアリマシテ、議會ニ於ケル本會
議竝ニ委員會ニ於ケル議事進行ガ、非常ニ
遲延致シタト云フコトハ一ニ此政府ノ答
辯方針カラ來タノデアル(拍手)之ヲ一々申
述ベマシタナラバ、實ニ何日間掛ッテモ言切
レナイ程數多イコトデアリマスガ、共一例
ヲ申上ゲレバ、例ヘバ彼ノ中華民國ニ我ガ
日本ノ大使ガ二年ノ間未ダニ存在シテ居ラ
ナイ〓所謂「アグレマン」問題、小幡公使ヲ
以テ中華民國ノ公使ニシヨウト言ッテ申入
レテアルノニ拘ラズ、二年間放"テ置カレ
テ、サウシテ實際上ニ於テハ拒絕セラレ
タト同樣ノ結果ヲ來シテ居ルノデアル、之
ニ付テ先年議會ニ於テ植原君ガ質問ヲ致シ
マシタル所、當時幣原外相ハ是ハ未ダ懸
案申デアッテ解決ヲシナイノデアルカラシ
テ御答スル機會デナイト言ッテ居ッタガ、
今度ハドウダ、今度ハ旣ニ小幡共人ハ卽チ
獨逸ノ大使トナッテ赴任シテ居ルノデアッ
テ、小幡君ニ關シテハ、卽チ中華民國ノ公
使ト云フ問題ハ、旣ニ消減シ去ッテ解決シタ
ノデハナイカ、然ラバ之ニ對シテ答辯ヲシ
ナケレバナラナイノデアルガ其答辯ヲス
レバ外交ノ大失敗ヲ暴露スルガ爲メ、復又
ロヲ差控ヘタ方ガ國家ノ爲デアルトカ何ト
カ云フヤウナ、全ク何等意味ヲ成サナイ言
葉ヲ以テ答辯ト致シテ居ルノデアリマス
(拍手)實ニ常識アル議員ヲシテ憤慨セシム
ルモノデアッテ、唯政府ノ命維レ從フ民政黨
ノ議員ノ外ハ斯ノ如キ答辯ニ滿足スルモ
ノデハナイ(拍手)又北洋漁業ノ問題ニ付テ
モ或ハ朝鮮銀行ノ支店ノ閉鎖問題ニ付テ
モ、其他滿洲問題、間島問題、県等ニ付テ
外務大臣ノ答フル所ヲ見レバ、總テ是ハ祕
密主義デアッテ明カニ、大膽ニ、率直ニ、
我ガ日本國民ノ意思ヲ帝國議會ヲ通ジテ外
務大臣ガ述ベナケレバナラヌ、之ヲ利用シ
ナケレバナラヌノニ、反對ニ外國側、相手
側ノ意見ヲ代表シテ、此處ニ述ベテ居ルト
云フヤウナコトデアリマス(拍手)實ニ驚ク
ベキ所ノ有樣デ、其幣原君ノ外交ハ軟弱外
交ト呼バレテ居ッタガ、軟弱外交デハナイ、
今度ノ議會ノ質問應答ニ依ッテ私ガ之ヲ批
判スルナラバ、幣原君ノ外交ハ第三者外交
ト謂ハナケレバナラナイノデアル(拍手)自
分ガ日本ノ當事者デアルト云フコトヲ忘レ
テ當事者以外ニ第三者ノ位置ニ立ヲテ、何
方ノ方ノ言分ガ宜イカト云フコトヲ判斷ス
ル所ノ保守的ノ第三者外交デアルト云フ
コトヲ吾々ハ看破シタノデアル、コンナ外
交デ日本ノ國ガ亡ビナケレバ幸ト私ハ思フ
ノデアル(拍手)滅ビルヤウニ、亡ビルヤウ
ニ、日本ノ權益ヲ喪フヤウニ、失フヤウニ
ト我國ヲ導キツヽアルノガ、此幣原外交デ
アッテ、軟弱外交ト言フノデハ、マダ言葉ガ
軟イ位ノモノデアッテ、實ニ是ハ第三者外
交、我ガ日本ノ國ノ權利利益ヲ全ク眼中ニ
置カナイモノデアルト評シテモ、私ハ差支
ナイト思フノデアル(拍手)
又海軍補充計畫ニ付キマシテモ、海軍大
臣ノ答フル所ハ何デアルカ、唯答辯ヲ差控
ヘル差控ヘルト言ッテ居ル、併ナガヲ是モ
段々段々內田君カヲ專門的ノ立場デ追窮ヲ
セラレルト云フト、少シヅツ其差控ヘテ居,
タト云フ所ノ答辯ヲ、段々段々繭カラ絲ヲ
繰出スヤウニ少シヅヽ吐イテ來タノデア
ルザウ云フ風ニ僅カヅヽ吐イテ來ル、而
モソレハ專門的立場カラ十分ニ追窮シナケ
レバ、祕密ニシテ居ルト云フ方針ヲ採ッテ居
ルノデアルカラ、議事ガ中々進行シナイデ、
國務ガ澁滯ヲシテ居ルト云フノハ當然デ
アルト私ハ思フノデアル(拍手)
又法文ノ解釋ハ答ヘナイト云フ方針ヲ
採ッテ居ル、是ガ爲ニ議事ノ進行ヲ妨ゲラレ
タコトハ、實ニ今度ノ議會位、此濱口內閣
位立憲政治ヲ解セザルノ甚シキハナイト
思フノデアル、法文ノ解釋ヲ差控ヘルト云
フカ、我ガ日本ガ今日立憲政治、法治國ト
シテ、憲法ノ條章玆ニ法令ノ規定ニ依ッテ國
務ヲ運用スルモノデアルト云フコトハ、何
人モ知ッテ居ル所デアル、然ラバ見解ノ相違
ハアラウケレドモ、帝國憲法ノ條章、法令
ノ規定ハ、政府ハ斯ノ如クニ解釋ヲシテ、
サウシテ斯ノ如キ行動ヲ取ルノデアルト云
フコトハ答辯ヲシナケレバナラヌ筈デア
九、ソレヲ答辯ヲシナイナラバ、ソレハ立
憲政治デハナイ、專制政治、德川將軍ト同
樣デハナイカト私ハ思フノデアル(拍手)斯
ノ如キ專制政治ノ態度ヲ取テテ法法ノ解釋
ハ答ヘナイト云フヤウナ馬鹿氣タコトヲ、
平氣デ國務大臣ガ言ッテ居ルト云フコトハ、
濱口內閣ヲ以テ其始メデアッテ終リテアラ
ウト私ハ考ヘル斯ノ如ク法文ノ解釋ハ答
ヘナイト言ッテ居ッタガ、諸君如何デアルカ、
吾々ハ國務大臣ノ行動ニ於キマシテ宮ハー
驚クベキモノヲ發見スルノデアル、彼ノ宇
垣陸軍大臣ガ昨年ノ三月カラ久シキニ亙。ツ
テ閉籠ヲテ居ッタサウシテ宇垣陸軍大臣ハ
遂ニ病氣再發致シマシテ、サウシテ臨時代
理ガ設ケラレタノデアル、之ニ付テモ質問
ヲ致シタ、第一ニ將校分限令ニ於テ、傷痍
疾病ニ困ッテ執務セザルコトガ六箇月以上
ニ及ンダナラバ休職ヲ命ズルコトヲ得ルト
云フ規定ガアルノデアル、而シテ其但書ニ
「但シ本人ノ願アルトキ又ハ其ノ代員ヲ要
スルトキハ六月ヲ待ツノ限ニ在ラス」ト明
カニ規定致シテアルノデアル、私ハ宮脇君
ノ質問ニ依ッテ其端〓ヲ得テ、之ニ付テ陸軍
大臣ニ向"テ尋ネタノデアル、陸軍大臣ハ陸
軍大臣トシテ、此將校分限令ニ服スルノデ
アルカドウカト云フコトヲ尋ネマシタラ
バ、宇垣君ハ之ニ服スルノデアルト答ヘタ、
然ラバ將校分限令ニ服スル以上ハ其病氣
ガ長キニ亙ッテ臨時代理ガ出來タ、卽チ代員
ヲ要スル場合ハ、六箇月ヲ待タズシテ休職ヲ
命ゼラレナケレバナラヌト云フコトヲ述べ
タ、所ガ之ニ付テ答辯ヲ差控ヘテ、法文ノ
解釋ハ述べナイト云フヤウナコトヲ申シマ
シタ、併ナガラ私ガ追窮ヲ致シタ爲ニ、遂
ニ彼ガ答辯ヲ致シタ、其答辯ガ驚イタモノ
デアル、六箇月ヲ經レバ休職ヲ命ズルコト
ヲ得ルト云フ所ノ本文ノ方ガ但書ノ方ニ來
テ但書ノ六箇月ヲ待ツノ限リニアラズト
云フノハ、六箇月ヲ待ツノ限リニアラザル
コトヲ得ル意味デアルト云フヤウナ驚クベ
キ答辯ヲ致シタノデアル、斯ノ如ク國務大
臣ノ答辯ガ支離滅裂デアッテ、法文ノ解釋ス
ラモ出來ナイデ、サウシテ其ヤッタ行動ト云
フモノハ、全ク法文ニ背馳シテ居ルコトヲ
濱口內閣ハ認メテヤッテ居ルノデアル、斯ノ
如ク憲法政治ノ根本義ヲ破壞シ、又法令ヲ
無視スルコトハ濱口內閣ヨリ甚シキモノ
ハナイト私ハ思フノデアリマス(拍手)
諸君、又假定ノ事實ニ付テ答辯ヲセヌト
カ云フガ、併ナガラ此首相代理ノ權限ニ付
テ尋ネタ、幣原君ハ何ト言ッタカ、國務大臣
ノ缺員ノ場合ニハ本當ノ內閣總理大臣ト
同樣ニ奏宣ノ權能ガアルカト言ック所ガ、ソ
レハ今缺員ガナイカラ、假定ノ事實デアル
カラ答ヘラレナイト言ッタガ、然ラバ其職務
範圍ノ中ニアルカト尋ネタ所カ、ソレハ答
辯出來ナイト言ッテ、之ヲ避ケタノデアリマ
スガ、實ニ斯ノ如キ簡單明瞭ナル問ニ對シ
テモ、答辯ガ出來ナイト云フヤウナ憫レナ
狀態ニ置カレタノハ、全ク此長キニ亙ッテ臨
時代理ガ置カレタ爲メデアルト、私ハ斷言
セザルヲ得ナイノデアル、其他斯ノ如キコ
トヲ一々申シマシタナラバ非常ニ多イ私
ハ今之ヲ玆ニ略スノデアリマスガ、斯ノ如
ク國務ガ澁滯シテ、到底輔弼ノ責任ヲ盡シ
能ハナカッタト云フコトハ、是ハ私ハ明瞭デ
アルト思フノデアリマス(拍手)又幣原君ガ
言フガ如クニ、首相ノ職權全部ヲ行フモノ
デアルト致シマシタナラバ、是ハ幣原超然
內閣ガ生レタト同樣デアリマシテ、玆ニ民
政黨ハ超然內閣ヲ認メタノデアリ、又此超
然內閣ノ出現ト云フコトニ依ッテ、サウシテ
一時ヲ糊塗シテ政權ヲ繫イデ行ッタト云フ
コトハ、明カニ立憲政治ヲ破壞スルモノデ
アルト私ハ考ヘルノデアル(拍手)
斯ノ如ク臨時代理ガ久シキニ亙ッテ國務
ヲ澁滯セシメ、立憲政治ヲ破壞シテ居ルト
云フコトハ、現內閣ノ大罪惡デアルト私ハ
斷言シテ憚ラナイモノデアリマス、又曩ニ
臨時代理ガ解任セラレタ、濱口君自ラ大政
燮理ノ責任ヲ盡スコトガ出來ナイト言ッテ、
卽チ臨時代理ガ置カレタノデアリマスガ、
ソレガ自ラ輔弼ノ大任ヲ盡スコトガ出來ル
ト云フ、健康狀態ニ囘復シタト云フノデ以
テ、臨時代理ガ玆ニ解任セラレタ、三月十
日カラ議會ニモ登院セラレタト云フコトデ
アリマス、諸君、然ルニ此事ハ陛下ニ向ッ
テ上奏ヲシ、又國民ニ向ッテ聲明シ、又議會
ニ來ッテ挨拶ヲシタノデアル、然ルニ實際ハ
如何ナ狀態デアルカ、十日ニ登院ヲシテカ
ラ貴族院、衆議院ニ至ッテ、僅ニ二分カ三
分ノ挨拶ヲシタニ過ギナイ、又連日登院致
スコトモナイ、僅ニ來ッテ直チニ去ルト云フ
ヤウナ狀態デアリマシテ、登院スルト云フ
ノハ名ノミデアッテ、何等其實績ハ擧テ居
ラナイノデアル(拍手)現ニ院內ニ於テ閣議
ハ屢〓〓開カレテ居ルノデアリマスガ、此閣
議ニ内閣總理大臣濱口君ハ一遍モ出席シテ
居ラナイデハナイカ(拍手)總理大臣ガ內閣
ノ首班トシテ〓議ヲ統率シテ行クノガ當然
デアルノニ、其閣議ニ內閣總理大臣ガ常ニ
缺席シテ、他ノ國務大臣ガ烏合ノ辯ヲ以テ
會議ヲシテ居ルト云フコトハ前古未曾有デ
アッテ、斯ノ如キ狀態デアレバ、我國ニ內閣
總理大臣ナシト斷言シテ憚ラナイノデアリ
マス(拍手)
諸君、新聞紙ヲ御覽ナサイ、每日濱口君ノ
容態書ガ書イテアルノデアル、健康ガ十分
ニ囘復シタト云フナラバ、容態書ヲ每日書
ク必要ハナイ、脈搏ハ幾ツデアルトカ、呼吸
ハ幾ツデアルトカ、「スープ」ヲ飮ンダトカ
云フヤウナコトヲ書ク必要ガ何處ニ在ル
(拍手)彼ハ悲壯ナル決意ヲ以テ登院シタト
言ッテ居ル、何デアル、悲壯ナル決意、國務
大臣トシテ、內閣總理大臣トシテ臨時代理
ノ解任ヲ奏請シ、國民ニ向ッテ聲明ヲシ、而
シテ議會ニ向ッテ挨拶ヲシテ、健康狀態、輔
弼ノ責任ヲ自ラ盡スニ耐ヘルト明言シタル
其者ガ、悲壯ナル決意ヲシテ登院スルト云
フコトハ何タル譫言デアルカ(拍手)健康狀
態ガ囘復シテ居ルナラバ、悲壯ナル決意ハ
要ラナイ、健康狀態ガ囘復シテ居ラナイカ
ラシテ、苦シイケレドモ悲壯ナル決意ヲシ
テ、ヤッテ來ルト云フナラバ、是レ國家ノ爲ニ
ヤルノデハナクシテ、政權ヲ失ハザランガ
爲ニ、悲壯ナル決意ヲシタノデアル、電費
國民ヲ眼中ニ置カズ、唯自己ノ政權維持ノ
爲ニ汲々タルモノデアルト斷言シテ憚ラナ
イモノデアリマス、若モ輔弼ノ大任ヲ盡ス
ニ耐ヘナイノデアルナラバ、速ニ職ヲ去ル
ノガ是ガ臣節ノ當然デアルト思フノデア
ル(拍手)今日此濱日君ノヤッテ居ル所ノ狀
態カラ見マスルト云フト、如何ニ贔屓目ニ
見マシテモ、臨時代理ヲ解イタ時ニ奏請シ
タ事ハ、卽チ天皇陛下ニ對シテ、之ヲ欺
イタモノデアルト言ハザルヲ得ナイノデア
ル(拍手、發言スル者アリ)何ノ辯解ノ餘地ガ
アルカ(拍手)國民ニ對シテ之ヲ聲明シタ、
國民ニ對シテ之ヲ聲明シタコトハ、國民ヲ欺
イタモノデアルト言ッテモ辯解ノ餘地ガナ
イノデアル、又議會ニ對シテ挨拶ヲシタ、
議會ニ對シテ挨拶ヲシタコトハ恐ラク
是ハ·······(「議長々々」「取消セ」ト呼ヒ其他
發言スル者アリ聽取スル能ハス)······是亦
辯解ノ餘地ガナイノデアル
〔「議長々々」「取消セ」「取消セ」ト呼ヒ
其他發言スル者アリ〕
〔議長何事カ秦豐助君ニ〓ク〕
〔「取消セ」「取消セ」「濱口ヲ出セ」ト呼
ヒ其他發言スル者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=88
-
089・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 靜肅ニ願ヒマ
ス-靜肅ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=89
-
090・秦豐助
○秦豐助君(續) 只今議長カラシテ特ニ注
意ヲセラレマシテ、私ノ述ベタ事ガ諸君ノ
方ニ徹底シテ居ラヌヤウデアルカラ、モウ
一遍繰返シテ吳レト云フコトデアルガ、私
ノ申述ベマシタノハ、濱口君ガ登院以來、
卽チ臨時代理ヲ解任シテ以來ノ此狀態ヲ見
レバ卽チ天皇陛下ニ對シ奉ッテ、此臨時
代理ヲ解イテ戴キタイ、自分ガ健康狀態
自ラ大政變理ノ大任ニ當ルコトガ出來ルト
云フ健康狀態ニ戾リマシタカラシテ臨時
代理ヲ解イテ貰ヒタイト言ッテ居ル、サウシ
テ今日此狀態ヲ續ケテ居ルト云フコトハ
天皇陛下ヲ欺キ奉ッテ居ルノデアル····
(「議長々々」「取消セ」「取消セ」ト呼ヒ其他
發言スル者多ク聽取スル能ハス)
〔「取消セ」「取消セ」「取消ス必要ナイ」
「斷ジテナイ」「議長々々」ト呼ヒ其他發
言スル者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=90
-
091・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 秦君、秦君、アト
ガ吾々ニハッキリ聽エナイ··
〔「モウ一遍聽カセロ」「何遍デモ聽カセ
テヤレ」「濱口ヲ出セ」ト呼ヒ其他發言
スル者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=91
-
092・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 只今ノ秦君ノ言葉
ノ中ニ、最後ノ言葉ガドウモハッキリ私共ニ
ハ分リマセヌ、併ナガラ此場合ニソレヲ論
ジテ居ルコトハ困難デアリマス、ソレデ速
記錄ヲ見テカラ適當ナ措置ヲ致シマスカ
ラ此場合暫ク御待チヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=92
-
093・秦豐助
○秦豐助君(續) 諸君、濱口君ハ
〔拍手起リ發言スル者多タ議場騒然〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=93
-
094・藤澤幾之輔
○議長 (藤澤幾之輔君)靜肅ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=94
-
095・秦豐助
○秦豐助君(續) 内閣總理大臣トシテノ臣
節ヲ辨ゼザルモノデアルト私ハ考ヘルノデ
アリマス
〔「議長」「議長」「取消セ」ト呼ヒ其他發
言スル者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=95
-
096・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 靜肅ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=96
-
097・秦豐助
○秦豐助君(續) 而シテ濱口君其人ニ天
皇ヲ輔弼スル所ノ重責ヲ·····(拍手起リ發
言スル者多ク議場騷然聽取スル能ハス)根
本觀念アリヤ否ヤ、私ハ之ヲ疑フノデアル
〔「議長々々」「濱口ヲ出セ」ト呼ヒ其他
發言スル者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=97
-
098・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 靜肅ニ願ヒマ
ス-只今ノ秦君ノ演說ノ言葉尻ノ議長ノ
耳ニ入ッタコトハ、ハッキリ致シマセヌケレ
ドモ、秦君カラ聽イタ所ニ依リマスト、斯
樣ニ言ハレテモ仕方ガアルマイト云フ意味
デ言ッタノデアル、サウ云フ言葉デアル
〔拍手起リ其他發言スル者多ク議場騒
卷発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=98
-
099・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 御待チナサイ-
故ニ是ハ速記錄ヲ調ベマセヌケレバ、ハッキ
リ致シマセヌカラ、速記錄ヲ調ベタ後ニ、
適當ナル措置ヲ執リマスカラ、暫ク靜肅ニ
御願致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=99
-
100・秦豐助
○秦豐助君(續) 內閣總理大臣ガ、卽チ內
閣ノ
〔發言スル者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=100
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101・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 靜肅ニ願ヒマス
〔「議長」「議長」「事皇室ニ關スル事デハ
アリマセヌカ」「議長何ヲ考ヘテ居ル
カ」ト呼セ其他發言スル者多ク議場騷
然発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=101
-
102・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 靜肅ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=102
-
103・秦豐助
○秦豐助君(續) 民政黨ノ諸君ハ、此濱口
君ノ狀態ヲ見テ、十分······見込ガアルノデ
アルカ、諸君··
〔「議長斷ジテ進行サセヌゾ」ト呼ヒ其
他發言スル者多ク議場騷然〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=103
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104・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 靜肅ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=104
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105・秦豐助
○秦豐助君(續) 濱口君ハ此議會ハ僅カ
ノ間デ了ルノデアルカラシテ、此間ヲ通リ
拔ケテ、ソレカラハ··(發言スル者多ク
議場騷然聽取スル能ハス)······是ハ今日ノ
場合ニ於テ內閣總理大臣トシテ、此重大サ
ル時局ニ方ッテ十分ニ國家ノ爲メ、國民
ノ爲ニ職責ヲ盡サナケレバナラナイ所
ノ······(議場騷然聽取スル能ハス)總理大臣
トシテハ曠職ノ責ヲ免レヌモノデアルト思
フノデアリマス、斯ノ如クニ職責ヲ曠ウシ
テ居リナガラ、恬然トシテ其職ニ在ルト云
フコトハ、斷ジテ許スベカラザル事デアル
ト私ハ思フノデアル······(「議長」「議長」ト
呼ヒ其他發言スル者多ク議場騒然)立憲政
治ハ卽チ責任ノ政治デアル、此責任ヲ解セ
ザル所ノ(議場騷然聽取スル能ハス)又
濱口君ハ速ニ辭職ヲシナケレバナラヌモノ
デアルト、私ハ斷言スルノデアリマス、卽
チ此憲政ノ本義カラ考へテ見マシテ、現内
閣ハ速ニ辭職スベキモノデアルト云フコト
ヲ私ハ述べマシテ、玆ニ擅ヲ降ル次第デア
リマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=105
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106・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 櫻井兵五郞君
〔櫻井兵五郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=106
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107・櫻井兵五郎
○櫻井兵五郞君 諸君(議場騷然)-諸君
(「諸君ハドウシタ」「休憩」ト呼ヒ其他發言
スル者多シ)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=107
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108・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 靜肅ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=108
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109・櫻井兵五郎
○櫻井兵五郞君(續) 諸君、私人(議場騷
然)本決議案ニ對シテ反對ノ意ヲ表明スル
者デアリマス(發言スル者多シ)本案提出ノ
理由ニ付キマシテハ先刻來床次君ノ御說
竝ニ秦君ノ御話ヲ篤ト拜聽致シマシタ(拍
手發言スル者アリ)私ハ主トシテ經濟政
策ニ付テ、諸君ト所信ヲ異ニ致シマスル點
ニ付テ申上ゲタイノデアリマスルガ併
ナガラ先刻來床次君ノ御說竝ニ秦君ノ御說
ヲ
〔發言スル者多ク議場騒然〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=109
-
110・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 靜肅ニナサラヌケ
レバ折角ノ滅茶々々ニナッテシマヒ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=110
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111・櫻井兵五郎
○櫻井兵五郞君(續) 問題ニ關シマシテ······
〔議場騒然〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=111
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112・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 隱忍シテ······スル
ヤウニ願ヒタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=112
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113・櫻井兵五郎
○櫻井兵五郞君(續) 諸君··
〔發言スル者多ク議場騷然〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=113
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114・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 本案ハ重大ナ案デ
アリマスカラー先刻起タ問題ハ、アレハ
此根本デハナイノデアリマス、アノ問題ハ、
アレハアレトシテ、サウシテ此重大ナル案
ヲ圓滿ニ議事ヲ進メラレンコトヲ議長ハ
希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=114
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115・櫻井兵五郎
○櫻井兵五郞君(續) 諸君、秦君ノ論ゼラ
レマシタ所ノ要點ハ諸君ガ曾テ憲政ノ運
用竝ニ憲政規畫整備ニ關スル決議案ヲ御提
出ニナッタ、其御趣旨ニ關シテト私ハ拜聽ヲ
致シタノデアリマス(拍手)而シテ其要點ト
セラレマス所ノ事ハ、第一ニ久シキニ亙ッテ
臨時代理ヲ置イタノガ惡イ(發言スル者多
シ)第二ト致シマシテハ、代理總理ノ任ヲ解
イテ總理自ラ國務ヲ見ルニ至ッタガ、併ナ
ガラ議會ニ對スル登院モ不十分デアル、國
務ヲ荒廢スルモノデアルト、斯樣ノ御論旨
デアッタト私ハ拜承ヲ致シタノデアリマス
(拍手)諸君、私ハ此度ノ總理大臣ノ地位ニ
對シマスル所ノ、殆ド絕無ニ屬シマスル此
事例ニ對シマシテ、諸君ガ茲ニ見ル所アツ
テ憲政ノ運用或ハ憲政ノ規畫整備ト云フ
所ノ御論ヲ唱ヘラレテ居ルノデアル之ニ
ハ吾々モ相當首肯ヲ致ス點モアルノデアリ
マスルガ、併ナガラ諸君、是ハ現在ノミナ
ラズ、將來ニ取リマシテモ、洵ニ重大ナル
問題デアリマス、ソレ故ニ此點ニ付キマシ
テハ我ガ憲政將來ノ爲ニ、是ハ十分ナル
意見ノ決定ヲ致シテ置カナケレバナラヌ問
題デアルト私ハ信ズルノデアリマス(拍手)
諸君、此問題ニ關シテ諸君ノ擧ゲラルヽ所
ノ論點ハ、第一番ニ代理總理ヲ置イタガ
併シソレハ政黨員デナイカライカヌト云フ
コトガ、論旨ノ一點デアリマシタ是ハ私
ハ玆ニ明言ヲ致シテ置キマス是ハ意見ノ
相違ニアラズシテ、事實ニ對スル認定ノ解釋
ノ相違デアル、吾々ハ絕對ニ、諸君ノ其說
ニ反對スル者デハナイ併ナガラ吾々ハ、
屢〓吾々ノ同志ノ內閣ニ入リ、政見ヲ同ジ
ウシ、現在ノ閣僚ノ一人デアルカラ、是
實質上政黨員同樣ト云フ解釋ノ下ニ執ッタ
處置デ、必ズシモ諸君ト絕對ノ意見ノ反對
デナイ、唯解釋ノ相違ニ過ギナイト云フコ
トヲ茲ニ申上ゲテ置キマス、諸君、次ニ臨
時代理ヲ長キニ亙ッテ置イタノハ宜シクナ
イ、之ニハ鳩山君ノ御論モアリマシタ、又
內閣官制八條ノ解釋ハ、鳩山君ノ御解釋モ
或ハ至當デアルカモ知レヌト思フガ、併ナ
ガラ私ハ此問題ハ諸君ノ憲政ノ運用竝ニ
憲政ノ規畫ヲ整備スルト云フコトガ精神ニ
ナッテ居リマスガ、然ラバ玆ニモウ一ツ憲政
ノ規畫ヲ定メル上ニ於テ、諸君ニ私ハ理由
ヲ追加シタイ問題ガアルノデアル、ソレハ
何デアルカト中シマスレバ立憲治下ニ於
テ、政黨内閣ナルモノニ對シテハ、政策ノ
破綻以外ニハ絕對ニ政變ヲ起サシメナイ、
之ヲ私ハ憲政ノ規畫ニ致スベキモノデアル
ト思フノデアリマス、政策ノ破綻ニ依ル彈
効ハ、又別ニ受ケマス、是ハ別問題デアル
私ハ憲政治下ニ於テ、政策ノ破綻以外ノ他
ノ原因ニ依シテ政變ハ起サシムベカラズ、之
ヲ憲政ノ規畫ノ第一條ニ持ッテ行キタイノ
デアリマス、而シテ此度ノ首相代理問題、
或ハ首相ノ登院問題、是ハ何ニ依ッテ起ッタ
ノデアリマセウ、是ハ一靑年ノ濱口內閣ニ
對スル政治上ノ誤解ニ基ク、所謂總理ノ遭
難ニ其端ヲ發シテ居ルノデアリマス、此點
ヲ吾々ハ深ク考慮ヲ致サナケレバナラヌ問
題ト思フ之ニ對シマシテモ諸君ハ論ゼラ
レルデアラウト思フノデアリマス、ソレハ
ソレニ堪ヘナイヤウニナッタラ、他ニ同志ヲ
以テ代ヘタラ宜シイデハナイカト斯樣ニ
申サレルカモ知レヌ、其御說モ固ヨリ一面
ノ道理ハアリマス、アリマスガ、併ナガラ
先刻秦君モ論ゼラルヽガ如ク、又屢"鳩山
君、秋田君等ヨリモ論ゼラレタ如ク、總理
ノ地位ハ他ノ國務大臣ト違ノテ、非常ニ重大
デアル立憲治下ニ於テハ總理大臣ト云
フモノハ是ハ特別ノモノデアル、非常ニ
重大ナモノデアルト、斯樣ニ諸君ガ言ハレ
テ居ルノデアル、私モ亦之ニハ同感デアリ
やっ、諸君、然ラバ左樣ニ重大ナル地位ニ
對シテハ深ク斯ノ如キ、殆ド絕無ニ亙ル
ガ如キ事例ノ場合ニ對シテハ、今少シク私
ハ深キ考慮ヲ要スルノデハナイカ、諸君ノ
論ゼラレル所ガ大切デアッテモ、ソレ以上ノ
大切ナル理由ガ玆ニアッタナラバ、吾々ハソ
レニ從ハナケレバナラヌノデアラウト思フ、
人ヲ取換ヘテ總理ニ致スコトハ政變デナイ
ト斯樣ニ論ゼラレルノデアリマセウ、併
ナガラ少クトモ斯樣ナ直接行動ニ依クテ、苟
モ一國ノ總理大臣ニ危害ヲ加ヘタコトニ基
ク問題ニ對シテ、之ヲ肯定スルガ如キ嫌アル
處置ヲ執リマシテ、ソレヲ繰返スヤウナコ
トガアッタナラバ、我國ノ憲政ノ根柢ハドウ
ナルデアリマセウ、是ハ私ハ黨派ノ問題ト
致サズ、我ガ憲政將來ノ爲ニ、深キ考慮ヲ
シナケレバナラヌモノト思ヒマス、此決議
案ニ付テモ、何カ國務ヲ廣廢スルト云フ御
非難モアリ、或ハ總理大臣ノ心事ニマデ立
入ッテ、政權ニ執著スルト云フ御議論モアリ
マスガ、吾々ガ濱口總理大臣一身ノ立場ニ
立ッテ、深ク考ヘテ見ルコトモ必要デアリマ
ス、諸君、武士ハ相見互デアル古ヨリ士
ハ事ニ臨ンデ死スルハ易ク、生キルハ難シ
ト云フ言葉ガアリマス是ハ濱口總理大臣
ノ今ノ一身ノ立場ニ當歌ッテ居ルノデハナ
カラウカト思フノデアリマス、肉體的ニモ、
政治的ノ地位ニモ、サウデアッタト思フノデ
アリマス、東京驛頭ニ於テ、男子ノ本懷デ
アル詰ラヌコトヲセズニ此儘ニ眠ラセイ
ト言ハレタ、萬一其通リデアッタラ、均ク
樂デアッタラウガ、如何ニモ後ノ生キルノニ
難キヲ覺エラレタノデアリマス、而シテ此
度ノ政治上ノ、今ノ問題ニ對スル立場トシ
テモ濱口總理大臣一身ノ上ヨリ致シマス
ナラバ、關下ニ伏シテ骸骨ヲ乞フコトハ實ニ
易キコトデアル、併ナガラ之ヲ爲サズ
シテ、兎ニ角健康ヲ囘復シテ、用ヒル
ノ餘地ガアルナラバ、君國ノ爲ニ盡サ
ウト云フ、此心事ハ一身ノ安キヲ捨
テ、以テ其責任ノ大ナルニ感ジテ、公
殉ゼラレタモノデアルト私ハ思フノデア
リマス、立場ガ違ヒマスカラ、或ハ多少
解釋ノ違モアラウトハ思ヒマスケレドモ
御互ヒ政黨內閣ノ上カラ考ヘテ見レバ分
ル、吾々民政黨ニ於テハ民政黨ノ所信ニ
從ッタ政策ノ遂行ハ、今ヤ將ニ其途中ニアル
ノデアルカラ、濱口總理大臣ハ此責任ヲ痛
感セザルヲ得ナイ、諸君ノ言ハルヽ通リ、
金解禁ハ洵ニ重大問題デアリマシタ併ナ
ガラ其善後策マデモ片付ケルコトガ、正二
濱口總理大臣ノ現在ノ責任デアリマス
是等ノ點カラ顧ミマシテ、私ハ此問題ハ
左樣ニ輕々ニ扱フベキモノデハナイ、憲政
ノ規畫ヲ定メル上カラ致シマシテモ、深キ
考慮ヲ致スベキ問題デアルト云フコトヲ諸
君ニ申上ゲテ、先刻來秦君ノ言ハレタコト
ニハドウモ同意ヲ致シ難イト云フコトヲ
申上ゲル次第デアリマス
諸君、次ニ私ハ經濟問題ニ於テ、不幸ニ
シテ意見ヲ異ニ致シマス點ニ付テ申上ゲタ
イノデアリマス政友會ト民政黨トノ、此
經濟政策ニ於ケル意見ノ異ナル點ガ明カニ
ナッタト思フノデアリマス、恐ラク我ガ政治
ノ歷史ノ上ニ於キマシテモ、今囘位政策問
題ニ付テ、黑カ白カト云フ如キ、明白ナ反
對ノ意見ヲ持ツニ至ッタコトハ少イト私ハ思
フノデアリマス、私ハ當會期ノ初ヨリ、本
會議竝ニ豫算委員會、今又床次君等ヨリモ
伺ヒマシタガ、是ハ一ツ國家ノ爲ニ明カニ
致シテ置キタイト思フノデアリマス、而シ
テ經濟政策ニ於キマシテ、諸君ト意見ヲ異
ニシタ點ハドウ云フ點ニアルカト申シマス
レバ吾々ハ收縮政策ナノデアル諸君ハ
膨脹政策デアル、此頃ノ言葉デ申シマスレ
バ吾々ハ「デフレーション」デアル先刻
床次君モ申サレマシタガ、政友會ノ御主張
ハ「インフレーシヨン」デアリマス、單ニ此
對照ニ於テ論ジテモ宜シイノデアリマスケ
レドモ、此問題ハ多クノ內容ヲ持クテ居リマ
スガ故ニ、大分內容的ノ論議ガ本會議竝ニ
豫算委員會デ鬪ハサレマシタカラ、私ハ三
四ノ項目ニ亙ッテ、全然諸君ガ彈効ノ理由ト
サレルコトニ承服ガ出來ナイ理由ヲ申述べ
タイト思フノデアリマス
第一ハ財政緊縮デアル、諸君、財政緊縮
ノ問題ハ濱口內閣ノ「デフレーシヨン」政
策ヲ肯定スレバ、財政ハ緊縮シナケレバナ
ラヌ、之ヲ否定スレバ、諸君ハ膨脹トハ言
ハレヌカモ知レマセヌガ、少クトモ田中內
閣時代ノ財政ノ程度、斯ウ云フコトニ論ガ
歸スルノデアリマス、是ハ是ダケノ問題ト
シテ餘リ論ジナクテモ、先ニ進ンデ「デフレ
ーシヨン」ガ宜シイカ「インフレーシヨン」
ガ宜シイカヲ決定スレバ、自ラ決定スル問
題デアル、併ナガラ諸君、私ハ此問題ニ付
テ一言ダケ附加ヘテ諸君ニ申上ゲテ置キタ
イト思フ、其問題ハ曾テ諸君モ肯定セラレ
タ問題デアル、ソレハ確カ田中內閣ノ時、
第五十五議會デアッタト記憶致シテ居リマ
ス、其當時尾崎君、長島隆二君アタリカラ、
經濟國難ニ關スル決議案ガ出マシタサウ
シテ其經濟決議案ノ內容ハドウデアッタカ
ト申シマスレバ、大ニ儉約ヲスベシ、而シ
テ歲出ニ於テ少クトモ三億圓ヲ減ゼヨト云
フコトガ案ノ內容デアッタ、其當時無論吾々
民政黨モ贊成シテ居リマスガ、政友會諸君
モ無論之ニ御贊成ニナッテ、サウシテ滿場一
致デ、アノ時長島君、尾崎君提出ノ決議案
ガ通過シテ居リマス、卽チ此時ハ財政ノ緊
縮ニ付テ政友會モ承認シテ居ッタノデアリ
マスガ、ソレハ今御取消ニナルノデアリマ
スカドウカ一寸伺ッテ置キタイ
諸君、第二ハ消費節約ノ點デアリマス
ガ、之ニ對シテハ大分新シイ御意見モアリ、
三土君ノ著書ニモソレヲ拜見致シマシタ
堀切君ノ御意見モ屢、拜聽致シテ居リマス、
此消費節約ノ問題ニ關シマシテハ、私ハ二
點アルト思フ、其一點ハ卽チ諸君ノ誤解デ
アル、今一點ハ消費ニ對シマスル吾々ト諸
君トノ全然意見ノ異ナル點デアリマス
誤解ニ對シマスル點ハドウ云フ意味デ
アルカト申シマスレバ、吾々ガ國民ニ消費
節約ノ宣傳ヲ致シマシタコトハ是カラ金
解禁ヲヤルノニ、戰爭時代ノ好況氣分ノ惰
ヲ、以テシテ行,テハ困ル、人心ノ緊張ヲ要
スル、ソレ故ニ無用ヲ省イテ之ヲ有用ニ注
グ、是ダケノ意味デアル、之ヲ諸君ガ餘リ
ニ深イ意味ニ取ッテ誤解ヲシ過ギラレテ居
ルノデアル、先頃吾々ノ同志ノ田中貢君モ、
提燈ノ火ヲ點ケヨト言ウタ所ガ、提燈其モ
ノニ火ヲ點ケタト云フコトヲ言ハレタガ
ソレニ類シタ誤解デハナイカト吾々ハ考ヘ
ルノデアル其點ハ誤解デアルト云フコト
ヲ玆ニ申上ゲテ置キマス
次ノ消費經濟ニ關スル所ノ諸君ト吾々ノ
意見ノ相違デアルガ是ハ玆ニ徹底的ニ明
カニ致シタイト思フ諸君ハ斯樣ニ言ハレ
ル、是ハ三土君カラモ能ク伺ッテ居リマス、
今日ノ交換流通經濟ノ下ニ於テハ消費ト
生產ハ相對立シテ居ルノデアッテ、車ノ兩輪
ノ如キモノデアル、故ニ消費ノ輪ガ大キケ
シバ生產ノ輪モ大キク行ケルノデアル、
ソレ故節約ドコロデハナイ、是ハドウシテ
モ消費ヲ刺㦸シナケレバナラヌ、刺戟ガ盛
ニナレバ、生產ヲ盛ンニスルコトガ出來ル
失業者ヲ吸收スルコトモ出來レバ一四、
經濟ヲ旺盛ニスルコトモ出來ル、ダカラ濱
口內閣ガ消費ノ節約ヲ考ヘルナドト云フコ
トハ是ハ飛ンデモナイ間違デアッテ、消費
ハ刺戟スベキモノデアル、現ニ亞米利加ハ
ドウデアル「フーヴアー」ガ斯樣ナコトヲ
言ッタ「メロン」ガ斯樣ナコトヲ、言ッタ「フオ
ード」ハアノ「パニック」ノ時ニ際シテモ聲明
書ヲ發シテ消費ヲ旺盛ニシナケレバナラヌ
ト言ッテ居ルデハナイカ、英吉利ニ於テモ學
者ガ之ヲ同樣ニ唱ヘテ居ルデハナイカ、斯
樣ニ申サレルノデアリマス、是ハ明白ニ吾
吾ニ向ッテ、吾々ノ考ガ間違ッタトシテ挑戰
シテ居ラレルノデアル、併シ是ハ誠ニ明カ
ナル見解ノ相違デアリマス
私共ハ左樣ニハ考ヘナイノデアリマス、
成程今日ノ交換流通經濟ノ下ニ於キマシテ
ハ消費ト生產ハ對立ヲ致シテ居リマスケ
レドモ、吾々ノ注意ヲ致スベキ所ハ此消
費ト生產ノ「バランス」ヲ破ラナイト云フコ
トガ、其要點デアルト思フ(拍手)消費ヲ煽,
テ今日ノ購買力ヲ失ッテ、明日ニ續カナイ所
ノ消費力デアッテハ、決シテ此經濟ノ旺盛ヲ
期スルコトハ出來ナイ、併ナガラ諸君、私
ハ亞米利加デ「フーヴアー」ヤ「メロン」ヤ
「フオード」ノ言ッタコトハ、之ヲ承認致シマ
ス、ケレドモ是ハ亞米利加ト日本トノ經濟
國情ガ違テテ居ル、御承知ノ通リ亞米利加ハ
大戰後債務國ガ債權國ニナッタ、サウシテ貿
易ハ出超ニナッテ、每年々々非常ニ金ガ入ラ
テ來ル、其上ニ投資ニ對スル利子モアリ
少クトモ二十億以上ノ貿易ト貿易外トノ受
取金ガ入ッテ來ル、其上ニ世界ノ金ノ四割ヲ
現在保有シテ居ル卽チ約九十億ノ正貨ヲ
持ッテ居ルト思フ、ソレ故ニ最初ハ亞米利加
ノ政治家モ考ヘタヤウデアリマス、ドウモ
此樣ニ金ガ充滿シテ「インフレーション」ガ
起ッテハ困ルト云フノデ、盛ニ外ニ貸出シヲ
シタ、所ガ諸君、此貸出シノ結果ガ如何ニ
現レタカト云フト歐洲戰敗國ハ其金ヲ借
リテ產業ノ合理化ヲヤッテ、而シテ生產原價
ヲ低下シ、亞米利加ノ消費ニ向クテ戰ヲ挑ン
デ來ル、ソレノミナラズ、方針トシテハ自
給自足ノ經濟ヲ採ノテ進マント致シテ居ル、
斯ウナレバ亞米利加ハ金ヲ貸シテ、サウシ
テ自分ノ產業ノ競爭者ヲ作ルノデアル是
ニ於テ亞米利加ハ考ヘタ、能ク考ヘテ見レ
バ吾々ノ總生產ニ對スル九割マデハ國內
消費デアル一割ノ輸出ノ如キハ之ヲ無視
シテモ宜シイ、市場ハ國內ト云フコトニシ
ヨウ、國內市場主義ヲ採ラウ、サウスルニ
ハドウシテモ、今マデノ生產機構ヲ縮小シ
ナイデ行クニハ此消費ヲ煽ラナケレバナ
ラヌ、アノ位澤山金ヲ持テテルル國デアリマ
スカラ、少々位-民度モ高マッテ居ルカ
ラ、消費ヲ煽ルヤウニシテモ、ソレハ差支
ナイデアリマセウ
是ニ於テ亞米利加ノ政治家モ左樣ナコト
ニ傾イテ、「フオード」ノ如キハ一種自分ノ優
越ナ資本主義ノ立場カラ來テ居ル、サウ云
フ國情ノ下ニ於テ、亞米利加ハ消費ヲ旺盛
ニシタ方ガ宜イ、サウスルト生產ガ盛ニナ
ルト考ヘ得ラレタノデアル、然ルニ諸君、
日本ノ經濟國情ハドウデアルカ、吾々ハ輸
入超過國デアル、金ハ僅カシカナイ、是ト
亞米利加ト較ベテ同ジク飽クマデ國內市
場ニ於テ消費ヲ刺戟シテ行カウト考ヘラレ
マセウカ、殊ニ三土君ナドハ產業合理化
ヲヤルコトハ大量生產デアル、大量生產デ、
原價ヲ下ゲテ行ケバ宜イト言ハレルケレド
モ、日本ノ產業ハ八割マデハ中小工業者デ、
直チニ大量生產ガ出來ルモノデハナイ、加
之亞米利加ハ一割ノ輸出貿易ヲ犠牲ニスル
コトハ出來ルカモ知レマセヌガ日本ハ總
生產ニ對スル一割五分ノ海外輸出ト云フモ
ノハ日本國民經濟ノ命ノ綱デアル、斷ジ
テ此點ニ於テ亞米利加ト一致シナイ、斯ウ
考ヘテ見マスレバ、政友會ノ諸君ガ言ハレ
ル消費節約政策ノ攻擊ハ當ラナイ、消費ヲ
大ニ刺戟シテ生產ヲ旺盛ニシヨウト云フ此
經濟思想ハ全然間違ヲテ居ル、諸君ノ經濟
政策ノ根柢ガ、モウ覆ッテシマッテ居ルト私
ハ思フ、現ニ英吉利ニ於テモ英吉利ノ或
ル學者ガ此說ヲ唱ヘタノデアルガ最近ノ
議會ニ於テハ、斯ノ如キコトニ對シテ大藏
大臣ニ注意ヲスルヤウナコトガ出來テ今
朝ノ朝日新聞ノ論說ニアル、何ト出テ居ル
カ、全ク之ニ依ッテモ、諸君ノ唱ヘラレタ經
濟思想ハ根柢カラ覆ッテ居ル、其題ト致シマ
シテ英國ノ節約運動、消費奬勵ノ不評判、
內容ヲ御覽ニナルト諸君ノ考ヲ茲ニ反駁
致シテ居ル、斯樣ニ考ヘ來リマスナラバ
我ガ濱口內閣ノ執ッテ居リマス消費ニ對ス
ル考ハ、全然間違〓テ居ルモノデハナイト云
フコトヲ玆ニ斷言シテ憚ラヌノデアリマ
ス
其次ハ金解禁ノ問題デアリマス、諸君ハ
之ヲ議論ノ中心トシテ居ラレル、此金解禁
ニ付キマシテ諸君ノ御意見ヲ伺ヒマスト
準備方法ニ於テ諸君ト意見ガ異ナルヤウデ
アリマス、先頃大口君ガ言ハレタ、先ヅ金
解禁ヲヤラウトスルナラバ、產業ノ基礎ヲ
鞏固ニシテ行カナケレバナラヌ、又三土君
ガ言ハレテ居リマス、合理化ヲヤッテ、大量
生產デ原價ヲ引下ゲルヤウニシテ、準備シ
ナケレバナラヌ、物價ハ下ゲテハイカヌ、
高物價ノ儘デ宜イ、サウシテ大量生產ニ依"〃
テ原價ヲ下ゲル、產業ヲ整理シテ、サウシ
テ其準備ヲ整ヘルベキデアルノニ、濱口內
閣ハ財政緊縮、消費節約ヲヤッタノハ間違
デアルト言ハレル、併ナガラ諸君、玆ニ私
ハ諸君ニ重大ナル見落シガアルト思フ、其
重大ナル見落シトハ何デアルカト中セバ
諸君ハ平時經濟ノ場合ヲ考ヘテ、サウ言ッテ
居ラレルノデアラウ、平時經濟ナラバ、諸君
ノ言ハレル通リデアル、言葉ノ基礎ヲ鞏固
三·一物價ヲ引下ゲナイデ、合理化ヲヤツ
テ急激ナ變化ヲ財界ニ與へナイノガ一番
安全デアリマセウ、併ナガラ諸君、日本ノ金
解禁ヲヤル前ノ日本ノ經濟狀態ト云フモノ
ハ常態デハナイ、金解禁ト云フ堤防ヲ繞
ラシテ、國際的ニハ經濟上ノ鎖國ヲヤッテ
居ルノデアッテ、此鎖國ノ中ニ於ケル日本ノ
經濟ハ常態ニアラズシテ變態デアル、變
態ニ處スル時ニ於テハ、濱口內閣ノ執ッタヤ
ウナ方法以外ニハ無イノデアル(拍手)玆ニ
失禮デハアリマスガ、諸君ノ重大ナル理由
ノ見落シガアルト思フ、デアリマスカラ、
ドウシテモ議論ノ喰違ヒハ其處カラ起ッテ
來ルト思フノデアリマシテ、諸君ノ御攻擊
ハ、何等ノ理由ヲナサナイモノデアルト、私
ハ玆ニ申上ゲルノデアリマス(拍手)諸君、
尙ホ一言一寸附加ヘテ置キマスガ、諸君ハ
此金解禁ハ、或ハ新平價論ヲ御執リニナッテ
居ルノデハナイカト云フコトモ想像セラル
ルノデアリマス、大口君ノハ大分露骨ニ之
ヲ言ッテ居ラレル、三土君ノ著書ニ依リマス
ト再禁止、而シテ平價切下、出直論ニ對シ
テ、相當同情アル所ノ論ヲ致シテ居ラル
ル、此二ツノ點カラ見マスレバ、或ハ新平
價論ヲ以テ御考ニナッテ居ッタノデハナイカ
ト思ヒマスケレドモ、ソレナラバドウシテ
モ、是ハ濱口內閣ガ舊平價解禁ヲヤルト言ツ
テ出タ時ニ、在野黨ノ任務トシテ、諸君ハ
正々堂々ト新平價論ヲ以テ戰ッテ來ラレナ
ケレバナラナカッタノデアル、ソレガナイノ
デアッテ、後カラ斯樣ナコトヲブツ〓〓言ハ
レルト云フヤウナコトハ、私ハ玆ニ卑怯デ
ハアルマイカト御警告ヲ申上ゲル
諸君、其次ハ濱口內閣ノ「デフレーシヨ
ン」政策ガ物價ヲ引下ゲタ、是ガ惡イト言ハ
レル大口君ノ說ニ依リマスト、物價ヲ叩
キ付ケテ下ゲタト斯ウ言ハレル、卽チ諸
君ハ高物價論デアリマス、現在ノ物價ヲ維
持シテ行カウ、解禁前ノ物價ヲ維持シテ行
カウト云フ考デアル、併シ解禁前ノ物價ヲ
維持シテ、吾々ガ世界經濟ニ直面シテ行
ク、其結果ハドウナリマス、之ヲ肯定スレ
バ金解禁ハ出來ナイ、常ニ爲替ヲ動搖サシ
テ置カナケレバナラヌト云フコトニナル
豫算委員會デ堀切君ノ議論ノ中ニ、爲替ノ
動搖ハサマデ重キヲ置カヌデモ宜イト云フ
御說ガアタッガ、吾々ハサウハ考ヘナイ是
ハ現ニ事實ニ於テ是デハイカヌト云フコト
ガ立證サレテ居ルノデアリマス、諸君、吾
吾ハ大正六年五月ニ金輸出禁止ヲ致シマシ
テ以來、十二年五箇月ノ間金ノ輸出禁止ヲ
致シテ、國際經濟ニ對シテ一ツノ鎖國的方
法ヲ執ッテ來タ、サウシテ物價ハ常ニ國際物
價ニ向シテ二割以上ノ開キガアル、先ヅ是デ
守ッテ行カナケレバナラヌ筈デアルカモ知
レナイガ、事實ハドウデアルカ、丁度戰後
ノ世界ノ經濟政策ト云フモノハ、皆「デフレ
ーション」デアリマシテ、總テノ物價ガ下ッ
テ來テ、各國共是ハ皆一致シテ太洋ノ水準
ノヤウナモノヲナシテ居ル、此場合ニ日本
獨リ約十三年ニ近イ年月ノ間、金輸出禁止ノ
堤防ヲ海岸ニ對シテ築イテ、日本經濟ノ水
位ヲ高メテ置イタ、所ガ世界經濟ノ水壓ガ
强クテ、イツシカ輸出禁止ノ堤防ニ穴ガ開
イテ來タ、サウシテ吾々ガ大戰中ニ富マシ
テ居フタ國民經濟生活ヲ空虛ニスルマデニ、
穴カラ富ガ漏レテシマッタ、二十七億四千万
圓ノ正貨ヲ得テ居タモノガ、是ガ爲ニ半バ
ノ正貨ヲ穴カラ奪ヒ去ラレテ、我ガ國民經
濟ノ內容ハ殆ド空虛ニナッタ、吾々ハ高物價
政策ヲ維持シテヤッテ行ッテモ、國際經濟ニ
對スル立場ニ於テハドウシテモ是ハイカ
ヌモノデアルト思フ濱口內閣ノ執ッタ如
ク一大英斷ヲ以テ金解禁ヲヤルト云フ政
策ヲ執ラナケレバナラヌト云フコトハ此
十箇年間ノ事實ガ何ヨリ雄辯ニ立證シテ居
ル、其卽チ濱口內閣ノ政策ノ此事實ガ裏書
ヲシテ居ルモノデアルト、私ハ玆ニ斷言ヲ
致シテ憚ラヌト思フ諸君、此經濟問題ノ歸
結ト致シマシテ、私ハ今考ヘテ見クイノデ
アリマス、此場合ニ當フテ一言シナケレバ
ナラヌコトハ先程カラモ其處カラ大分ヤ
カマシク言ッテ居ラレマスガ、不景氣ニナッ
タ此事實ガドウダ、此不景氣ノ原因ガ何處
ニアルカト云フコトニ付テハ程度ノ差ハ
アリマスルケレドモ、諸君モ認メラレ、吾
吾モ認メテ居ル一ツノ事柄ガアル、ソレハ
世界經濟ノ恐慌ニ因ル原因デアル、諸君ハ
現在ノ不況ヲ主トシテ濱口內閣ノ政策ニ因
ル、今日ノ不景氣ノ原因ガ濱口內閣ノ政策
ダト言ッテ居ラレルノニ對シテ、吾々ハ一
昨日モ濱口總理大臣ガ此席ニ於テ述ベラレ
マシタ通リ、數字的ニハ言ヘナイガ、現在
ノ不景氣ハ主トシテ世界經濟恐慌ニ因ルノ
デアル斯樣ナコトヲ濱口總理大臣ガ述べ
テ居ラルヽ併シ是ハ數字ノ上カラ申シマ
シタナラバ、濱口內閣ガ成立ヲシテ、金解
禁ヲヤルマデニ、物價ハ八分下ッテ居ル、今
日マデニハ二割七分一厘下ッテ居ル、其差ハ
一割九分一厘デアルカラ、此一割九分一厘
ガ世界不景氣ノ原因デアル、斯ウ云フコトヲ
或ハ言フ人ガアルカモ知ラヌガ、吾々ハ左
樣ナコトハ申サヌ、此關係ハ中々ムヅカシ
イ、併ナガラ少クトモ二ツノ原因ガアルト
云フコトダケハ、是ハ諸君モ承認ナサラナ
ケレバナラヌト思フノデアリマスガ、是ハ
別個ノ問題デアリマス、別個ノ問題デアリ
マスガ、吾々モ此「デフレーシヨン」政策ガ
現在ノ或ル期間ノ間ニ、一時ノ不景氣ヲ起
スト云フコトヲ、全ク否認スル者デハアリ
マセヌ、併ナガラ是ガ必ズ吾々ノ目標トシ
テ目指シテ居ル所ノ域ニ達スルモノデアル
ト云フコトダケハ吾々ハ玆ニ明確ニ之ヲ
信ジテ居ルノデアル、現ニ此歸結トシテ證
據モ擧ゲルコトガ出來ルト思フノデアリマ
ス
〔發言スル者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=115
-
116・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 靜肅ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=116
-
117・櫻井兵五郎
○櫻井兵五郞君(續) 諸君、ソコデ現ニ目
標ハ國民經濟ノ建直シデアリマス、世界ノ
經濟ト調和スル所ノ、本當ニ基礎アル日本
ノ國民經濟ヲ打建テルコトガ目標デアリマ
ス、而シテ吾々ノ政策ガ誤ラナカッタト云
フ證據ハ、ボツ〓〓其證據ガ現ハレテ居ル、
現ニ諸君、第一ニ國際物價ニ對スル我國內
物價ノ今日ノ水準化ノ有樣ハドウデアリマ
スカ、是ハ御考ニナレバ分ル、是ハ確ニ將
來ノ基礎ヲナス問題デアリマス
次ニハ國際貸借ノ改善、是ハ諸君ガ貿易
ガ萎縮シタト言ッテ攻擊ヲサレル、成程金額
ハ大分減リマシタ、併シ數量デハ左程デハ
アリマセヌ、兎モ角モ約十箇年ノ間、每年
每年二億五千万圓以上ノ入超ヲ以テ、正貨
ヲ取ラレタ狀態ガ改善サレ、殆ド國際收支
ノ「バランス」ガ玆ニ取レルト云フ、此狀態
ニ至ッタコトハ、吾々ノ政策ノ誤ラナカッタ
證據デアルト言ハズシテ何ゾヤデアル(拍
手)而シテ先刻床次君ノ御論ノ中ニ、合理化
ハ宣傳ノミダト、斯樣ナ事ヲ仰セラレタ
〔發言スル者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=117
-
118・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 靜肅ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=118
-
119・櫻井兵五郎
○櫻井兵五郞君(續) 併ナガラサウデハア
リマセヌ、政府ノ直接ニ手ヲ下シテ居ル所
ノ合理化ト云フモノハ、是ハ範圍ガ狹イカ
モ知レマセヌ、併ナガラ政府ガ玆ニ產業合
理化ヲヤラナケレバナラヌト云フ主張ヲ
執ッテ、サウシテ國民ヲ指導致シ、一方ニ於
テ經濟上ノ改革ヲ致シタト云フ、此中ニ於
テチヤント經濟界全體ニ於テハ其向フ所ガ
分ル、一ツノ自動的合理化作用ガ起ッテ、我
國ハ餘程是ガ爲ニ產業合理化ノ事實ガ、生
產機構ノ中ニ於テ達成サレテ居ル(拍手)斯
樣ニ私ハ見テ誤リナイト思フ
諸君、今日ノ有價證劵ノ價格ノ囘復ハ如
何デアリマスカ、是ハ諸君カラ言ハレルナ
ラバ、先程床次君ノ御言葉ノ中ニ「インフル
ーション」ト云フ御言葉ガアッタガ、アレハ
私甚ダ意味ヲ取ルニ苦ンダノデアリマス
ガ、恐クハ金融救濟ヲヤッタト云フ意味デア
ラウト思フ、所ガ今日ノ有價證劵ノ囘復ト
云フコトハサウ云フ金融救濟ノ爲メダト
斷ズベキモノデハナイ、自動的合理化ガ起"
タ爲ニ、低物價ノ中ニ於テモ、相當ノ採算
ガ取レルヤウニナッテ來タ、是ガ基礎ニナツ
テ、今日ノ景氣ガ聊カ囘復ヲスルノデアラウ
ト云フ曙光ガ現レテ來テ居ルノデアルト云
フコトヲ以テ、諸君ノ御說ノ全然間違ヶテ居
ルト云フコトヲ、私ハ玆ニ申上ゲテ憚ラヌ
ト思フノデアリマス
斯樣ニ考ヘテ參リマスルナラバ消費ニ
對スル見解ト致シマシテモ、金解禁ニ對ス
ル所ノ諸君ノ重大ナル點ノ見落シカラ致シ
マシテモ、又物價ヲ中心トスル世界經濟ノ
關係カラ見マシテモ、ドウシテモ諸君ガ濱
口內閣ノ政策ガ誤シテ居〓タト云フコトヲ言
ハレルコトハ御無理デアル、隨テ斯ノ如キ
經濟政策ニ關スル論ヲ以テ、濱口內閣ノ彈
効ノ理由ニセラレヨウト云フコトハ、全然
是ハ過チデアルト云フコトヲ、私ハ玆ニ斷
言ヲシテ憚ラヌ(拍手)
諸君、私ハ最後ニ一寸外交問題ニ一言ヲ
觸レタイト思フノデアリマス、範圍ハ對支
外交ニ止メマス、幣原外交ヲ能ク諸君ハ軟
弱外交デアルト言ハレルノデアリマスガ、
今日ノ複雜微妙ナル外交ヲ、軟弱トカ强硬
トカ云フ形容詞ヲ以テスル所ノ御批評ハ當
ラヌト思フノデアリマス、先刻モ秦君ハ
第三者外交ト言ハレタガ、サウ云フコトヲ
言ハレルヨリハ、實際ノ內容ニ付テ吾々ガ
諸君ト意見ヲ鬪ハスコトガ必要デアルト思
フ、國民ノ聽カントスル所ハ形容詞デハナ
イト思フノデアル諸君、幣原外交ハ何モ
シナイヤウニ諸君ハ非難ヲセラレマスガ
サウヂヤナイ、ドウ云フコトヲシタカ、第
一番ニハ對支外交ヲ軌道ニ還シタデハアリ
マセヌカ、諸君、餘程險惡ニナッテ居ッタ
殆ド手ノ著ケヤウガナイヤウニナッテ居ッタ、
ソレヲ軌道ニ還シ、今日ハ事實ニ於テ何處
ニ排日排貨ノ國民運動ガアルカ、經濟關係ノ
上ヨリ見マシテモ、他ノ國際貿易ノ關係ニ
比較ヲ致シマスレバ、アノ銀安ト云フ重大
ナル不利益ナ條件ガアルニ拘ラズ、相當ノ
對支貿易ノ成績ヲ收メテ居ルト云フコト
ハ、是ハ幣原外交ノ第一番ノ成功デアルト
思フノデアリマス(拍手)
第二番目ニハ、諸君、此山東ノ居留民ノ
保護ノ問題デアリマス、諸君、昨年ノ五六
月ノ頃ニ支那南北ノ爭覇戰ガ起ヲタ、其時ハ
ヤハリアノ田中內閣ノ濟南出兵ノ時ト同ジ
ヤウニ、山東一帶ガ戰雲ニ蔽ハレテ、非常
ナ不安ナ狀態ニナッタ、此時ニ幣原外交ハド
ウ云フコトヲヤッタカ、南北兩當局ニ向ッテ
嚴重ナル所ノ警告ヲ與ヘ嚴格ナル自省ヲ
求メテ、外交的手段以外ニ何等ノ方法ヲ執
ラナカッタ、然ルニ諸君、其結果ハドウデアツ
タカト申シマスレバ、濟南ヲ初メ膠濟鐵道
沿線ニ於ケル三千ノ我ガ居留民ノ生命モ損
ジナケレバ、財產モ損ジナイ、之ニ對シテ
諸君ハドウデス、彼ノ田中外交ノ場合ニ於
テハ、此幣原外交ニ對比スベキ場合ニ於テ、
二個師團ノ兵ヲ動カシテ、三千五百万圓ノ
國帑ヲ費シテ、而モ其上ニ尙且之ヲ完全ニ
保護スルコトガ出來ナイデ、十五名ノ慘殺
者ヲ出シ、十四名ノ負傷者ヲ出シタ、サウ
シテ居留民ノ財產ニモ非常ナル損害ヲ被ッ
ク斯ウ考ヘテ見マスルナラバ、諸君ノ言
ハルヽガ如キ、所謂强硬外交ガ宜イカ、幣
原外交ガ宜イカト云フコトハ、自ラ明カデ
ハアリマセヌカ、左樣ナ强硬トカ、軟弱ト
カ云フコトヲ言ハズニ、實際ノ外交ナラバ、
外交ノ手段ニ於テ、萬全ナル成績ヲ擧ゲル
ト云フコトヲ吾々ハ目標トシナケレバナ
ラヌノデハナイカト思フノデアリマス
次ニハ諸君、滿洲問題、是ハ今重大ナル
問題トシテ、朝野共ニ論ゼラレテ居ル、其
問題ノ內容ハ何デアルカト申シマスレバ、
滿鐵ニ對スル竝行線問題、所謂、吉林ト海
龍ヲ繋グ所ノ海吉線、ソレカラ打虎山ト通
遼ヲ繫グ所ノ打通線、是ハ支那ガ勝手ニ敷
設シタノデアルサウシテ將來ニ向ッテハヽ
滿鐵ヲ包圍セントスル如キ計畫ヲ立テヽ居
ルト云フ、是ガ今ノ重大ナル問題デアル、
私ハ松岡君ノ所謂滿洲ハ我ニ取〃テノ生命
線デアルト云フコトモ肯定ヲ致シマス
而シテ此鐵道問題ノ重大デアルト云フコト
モ承知致シテ居リマス、併シ是ハ濱口內閣
ガ此重大性ヲ考ヘテ、今現ニ交涉ヲ始メテ
居ル、諸君ハ之ニ對シテ議會前ニ此交渉ヲ
始メタカラ、是ハ對議會策ダト言ハレル、然
ルニ是ハ非常ナル間違デアリマス、吾々ハ
今マデ單ニ對支外交ヲ軌道ニ還スノニ相當
ノ時間ヲ要シタノデハアリマセヌカ今ヤ
此問題ハ私共ハ相當ノ解決ヲ致スベキモノ
ト思フノミナラズ此問題ニ付テハ、斷ジ
テ吾々ハ諸君カラ非難ヲ受ケル筋合デハナ
イト考ヘル、何トナレバ海吉線ハ田中內閣
ノ時ニ支那ハ勝手ニ起エシタ、ソレカラ打
通線ハヤハリ田中內閣ノ時ニ是ハ完成ヲシ
テ居ル、之ニ對シテ何故モット適切ナル方
法ヲ執ルコトニ、田中內閣時代ニ御心付ニ
ナラナカッタノデアルカ、此問題ヲ以テ吾々
ヲ責メラレルコトハツレハ筋合デハナ
イト云フコトヲ、私ハ玆ニ御斷リヲ申上ゲ
テ置ク、唯吾々ハ此後始末ヲヤルノデアル、
諸君、又濱口內閣ノ外交成績ト致シマシテ
ハ、更ニ間島問題モ大體片付イテ居リマス、
又南京、漢口事件モ、相當多額ノ賠償金ヲ
取ッテ解決ヲ致スコトニ近付イテ居リマス
最後ニモウ一ツ厄介ナ濟南事件、是ハ諸
君カラ相續シタ遺產デアリマス、洵ニ迷惑
ナ遺產デアリマスガ之ニ對シテモ吾々ハ
今解決ノ曙光ヲ認メテ居ルト云フヤウナ次
第デアリマシテ、幣原外交、卽チ濱口內閣ノ
外交ハ、他ノ列國-對支以外ノコトハ私ハ
論ジテ居ル暇ハアリマセヌカラ、是ハ他ノ
同志ニ讓リマスガ、對支外交ノミニ付テ考
ヘテ見テモ、斯樣ナ成績ヲ擧ゲツヽアルト
云フコトハ、諸君ニ申上ゲテ私ハ憚ラヌ、
是ハ濱口內閣ノ洵ニ偉績ノ一ツデアルト云
フコトヲ、私ハ之ヲ國民ニ申シタイノデア
リマス
斯樣ニ考ヘ來リマスナラバ所謂憲政ノ
運用ノ問題ニ關シテモ、是ハ深ク諸君ガモ
ウ少シ考慮ヲナサルベキ問題デアルト考ヘ
ル又經濟問題ヲ以テ彈効シヨウト云フコ
トモ、前申上ゲマシタ通リ、理由トシテハ
相立タヌ、而モ外交ニ付キマシテモ、我國
ノ外交ノ樞軸デアル對支外交ニ於テ、斯ノ
如キ成績ヲ擧ゲテ居ル、諸君ガ當會期ノ初
メヨリ先刻又床次君ノ御說明ニナリマシ
タル理由ノ上カラ併セテ考ヘテ見マシテ
モ、諸君ノ此處ニ數ヘテ以テ濱口內閣ヲ彈
効シ、濱口內閣ガ退クベキモノデアルト云
フ理由ハ或ハ妥當ニアラズ、或ハ全然理
由ヲナサナイモノデアッテ、斯ノ如キ決議案
ニ對シテ、吾々ハ是非トモ玆ニ國民ノ名ニ
於テ、吾々ノ二百七十名ノ多數ヲ以テ、玆
ニ斷然粉碎シ去ルベキモノデアルト思フノ
デアリマスガ、併ナガラ諸君ガ若シ玆ニ顧
ミル所ガアッテ、寧ロ吾々ノ粉碎ヲ俟タズシ
テ、本案ノ撤囘ヲ爲サレルナラバ尙ホ幸デ
アル、私ハ邦家憲政ノ爲メ、諸君ニ强ク撤
囘ノ勸〓ヲ致シテ、此壇ヲ降ル次第デアリ
マス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=119
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120・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 山口義一君
〔山口義一君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=120
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121・山口義一
○山口義一君 私ハ現內閣不信任ノ決議案
ニ對シマシテ、贊成ノ理由ヲ申述ベ只今
富田君、櫻井君ノ御意見ニ對シマシテ、反
駁ヲ致シタイト思フノデアリマス
富田君、櫻井君ノ御述ニナリマシタル所
ハ大體ニ於テ金解禁、緊縮政策、消費節
約ノ問題ニ關スル御辯明デアルノデアリマ
ス、ソレカラ憲政運用ニ關スル問題、更に
最後ニ外交ニ關シテ御述べニナッタノデア
リマスガ、先ヅ櫻井君ノ代理首相設置ノ
問題ニ對スル御意見ニ對シテ反駁ヲ加ヘテ
見タイト思フノデアリマスガ、櫻井君ハ此
首相ノ遭難ノ事實ト云フコトニ對シテ重キ
ヲ置イテ居ラレル吾々モ濱口首相ノ御遭
難ニ對シマシテハ深甚ナル御同情ヲ致シ
テ居ッタノデアリマス、併ナガラ櫻井君ハ、
此遭難ニ對スル同情ノ事實問題ト、不動ノ
責任政治ノ根本原則トヲ混同シタル議論デ
アルト言ハナケレバナラヌ(拍手)濱口首相
ハ本月十日ヨリ議會ニ御出席ニ相成シタノ
デアリマス、併ナガラ今日御出席ニ相成シタ
ト云フコトノ事實ヲ以テ、此議會ノ會期三箇
月、其大部分デアル二箇月半ニ亙ル所ノ會
期ニ御出席ニ相成ラナカッタト云フ、此責任
ヲ解除スルコトハ出來ナイノデアリマス
我黨ハ議會ノ開會ノ劈頭ニ當リマシテ憲
政運用ニ關スル所ノ決議案ヲ提出致シテ居
リマス、ソレハ代理首相デ以テ議會ニ臨マ
レルト云フコトハ憲政ノ本義ガ許サナイ
ト云フ意味デアルノデアリマス、然ルニ代
理首相デ以テ本月ノ十日迄押通シテ來ラレ
タノデアル、又豫算審議ノ最後ノ日ニ於テ、
本議場ニ於テ審議決定ヲ致サレント致シマ
スル時ニ當フテ、我黨ハ又決議案ヲ提出致シ
マシテ、首相ノ登院ヲ要求致シタノデアリ
さい、衆議院ニ於ケル所ノ豫算ノ審議ハ憲
法ガ豫算ノ先議權ヲ認メテ居ルト云フ點カ
ラ申上ゲマシテ、是ハ議會政治ノ中心デア
ルト言ハナケレバナラナイ、共豫算審議ノ
初カラ終ヒ迄一囘モ顏ヲ出サナイ、殊ニ今
年ノ豫算ハ濱口內閣ニ取ッテハ初テ自ラ
作タ豫算、、而モ今日ノ窮迫セル所ノ不況ノ
ドン底ニ陷フテ居ル國民ヲ如何ニスルカト
云フコトガ、第五十九議會ノ一番重大ナル
問題デアリマスル以上ハ、此議會ノ豫算審
議程重大ナル豫算ノ審議ハナイノデアリマ
ス然ルニ其間一囘モ顏ヲ出サナイト云フ
ノデハ責任政治ノ本義ヲ紊ルモノデアル
ト申シテ差支ナイノデアル(拍手)先程櫻井.
君ハ官制第八條ノ末節ニ隱レテソレヲ根
據トシテ居ラレルヤウデアリマスルガ、是
ハ唯單ニ事務代理ノ規定ヲ規定致シテ居ル
ノニ過ギナイノデゴザイマシテ、之ヲ以テ
首相ノ議會ニ對スル所ノ職責ヲモ含ンデ居
ルモノデアルトハ解スルコトガ出來ナイ、
吾々ハ此首相ノ議會ニ對スル所ノ職責ノ上
カラ考ヘマシテ、今日迄議會ニ出席シナカッ
タ所ノ責任ヲ糺彈シナケレバナラナイノデ
アリマス
〔議長退席、副議長著席〕
民政黨ノ立黨ノ宣言ニ於テ議會中心政治
ヲ標榜致シテ居ル、此議會中心政治ノ理想
ヲ高ク揭ゲテカラ今日デドレ位ニナルカ
マダ三年經ツカ經タヌデナイカ、三年經ツ
カ經タナイ間ニ、此理想ヲ泥ノ中ニ棄テ
シマッテ、サウシテ連レテ來タノハ誰デアル
カト云フト、金權ト官僚トノ混血兒デアル
幣原喜重郞君ヲ連レテ來テ、內閣ノ首班ニ
据エタ、ソレモ唯濱口君ガ政權ニ嚙リ付キ
タイト云フ其心ダケデアル、(拍手)本當ノ
責任觀念ヲ持ヲテ居リマスルナラバ、潔ク辭
職ヲシナケレバナラヌ筈デアリマスルガ、
辭職ヲシナイ、自分ガ出ラレナイ間ヲ胡麻
化スガ爲ニ、此金權ト官僚トノ混血兒デア
ル所ノ幣原喜重郞君ヲ連レテ來タ、一部分
胡麻化シニシタノデアル(「無禮ナコトヲ言
フナ」「其通リ」ト呼フ者アリ)此事ニ付テハ
安達內務大臣ニ對シテ、豫算委員會ニ於テ
我黨ノ同志カラ色々質問ヲシテ居ル、民政
黨ニ於テ多年政黨政治ノ爲ニ御盡シニナツ
タ安達內務大臣、黨外ノ人間ヲ連レテ來テ、
サウシテ之ヲ內閣ノ首班ニ据エルト云フノ
ハ何事デアルカトニフ〓トノ質問ニ對シ
テ、安達君ハ黨外ノ人デアレテモ、黨ノ政策
ニ共鳴ヲシ、民政黨メ內閣ニ贊成ヲシテ居
ル者デアリサヘスルナラバ入黨書ニ印判
ヲ捺シテ居ルトカ捺シテ居ナイトカ云フ
ヤウナコトハ是ハ形式ニ過ギナイノデア
ルト云フコトヲ御答辯ニ相成クテ居ル、サウ
云フ風ニ考ヘラレルナラバ非常ナ間違デア
リマス、元來濱口內閣ガ出來タト云フノハ、
個人ノ濱口君ニ大命ガ降。ツタノデナイ、民政
黨ノ總裁タル資格ニ於テ降ッタノデアル
(拍手)然ラバ濱口君ガ黨員デアルト云フ
コトガ、是ガ重大ナル形式デアリマス(拍
手)此重大ナル形式ヲモ抹殺スルコトガ出
來ルナラバ政黨政治ト云フモノハ、世界
ノ中カラ總テ抹殺シテモ差支ナイコトニナ
ル(拍手)然ルニ多年政黨ノ爲ニ働カレテ來
タ所ノ安達君ノロカラ斯樣ナ御言葉ガ出
ルト云フコトハ安達君モ亦耄碌シタリト
言ハザルヲ得ナイノデアル(拍手)卽チ此政
黨內閣主義ニ反シテ代理首相ヲ設置サレ
タト云フコトハ、何ト言ッテモ責任政治ノ根
本原則ヲ破ルモノデゴザイマシテ現內閣
竝ニ民政黨ハ、國民ノ同情ノ陰ニ隱レテ
上御一人ニ對スル所ノ御信任ニ背キ奉リ、
下國民ニ對シテハ政黨內閣主義ノ裏切者
デアルト斷言シテモ差支ナイノデアル(拍
手)櫻井君ノ御意見ニ對シマシテハ、是ダケ
ノコトヲ以テ反駁ヲ致シタイト思フノデア
リマス
ソレカラ金解禁ノ問題、緊縮政策ノ問題、
〔發言スル者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=121
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122・小山松壽
○副議長(小山松壽君) 靜肅ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=122
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123・山口義一
○山口義一君(續) 消費節約ノ問題ニ付キ
マシテ、只今富田君竝ニ櫻井君ノ御述ニナ
リマシタル御意見ニ對シテ反駁ヲ加ヘタイ
ト思ヒマスルガ、今日ノ此社會不安ノ狀態、
殺人的不景氣ノ狀態、其結果生レテ參リマ
シタル所ノ此夥シイ失業者、是ハ現內閣ノ
經濟政策ノ結果デアル、現內閣ガ金解禁ヲ
最惡ノ時期ニ斷行シタト云フノガ其重大ナ
ル原因デアルト私ハ思フノデアリマス失
業者ハ何レノ國ニモアル、外國ニモ失業者
ハアル英國トカ、米國トカ、或ハ獨逸ノ
如キハ失業者ハ段々增加致シテ居ル、ケレ
ドモ亦國ニ依フテハ失業者ガ無イ國モアル、
佛蘭西ノ如キハ殆ド無イト言ッテモ宜シイ、
去年ノ十二月ノ調査ニ依ルト云フト、一千
六百六十一人ヨリナイト云フコトニ相成,
テ、殆ド無イト言ッテモ宜シイ、又瑞典デア
ルトカ、丁抹デアルトカ、諾威デアルトカ
云フヤウナ國ハ段々失業者ガ減少シテ居
ルト云フヤウナ狀態デアリマスカラ、兩門
依ッテハ政治ノ如何ニ依ッテ、失業者ヲ段々
無クスルコトモ出來レバ又根絕スルコト
モ出來ルノデアル(拍手)所ガ我國ハドウデ
アルカト云フト(「段々減クテ居ル」ト呼フ者
アリ)段々減ッテ居ルト云フノハ、サウ言フ
人ノ錯覺デゴザイマシテ、內務省ノ發表ニ
依ルト云フト、段々殖エテ居ル(拍手)一昨
年ノ九月ノ社會局ノ發表ニ依リマスト云フ
ト二十六万八千五百人デアル、ソレガ咋
年ニナルト云フト三十七万四千人ト、斯ウ云
フコトニナッテ居ル一箇年間ニ十万五千五百
人增加致シテ居ル、是ハ極ク內輪ニ見積ッタ
數デアル、是ハ極ク內輪ニ見積ッテ出來ルダ
ケ小サク小サクト計算シタル數字デサヘモ
三十七万四千人アル、歸農者デアルトカ、
歸山者デアルトカ、村ニ歸ッテ親爺ノ家デ仕
事ヲ致シテ居ル者デアルトカ、或ハ大エデ
アルトカ、左官デアルトカ云フヤウナ、小
サイナガラモ自分デ仕事ヲ致シテ居ル人ガ
失業致シタ者、或ハ學校ノ卒業者何十万ト
云フ失業者、サウ云フ者ハ計算ニ入レテ居
リマセヌカラ、三十七万デ濟ム、普通失業
者ハ百万人、先ヅ百万人ト言ノテ居ル、此百
万人ノ失業者ヲ作ッテ置イテ、ソレヲドウス
ルカト云フト失業公債デ救濟スルノデア
ルト言フガ、ソレハ一般會計ニ於テ二千二
百万圓、特別會計ニ於テ一千二百万圓、合
セテ三千四百万圓ノ失業公債デ之ヲ救濟ス
ルト言フノデアル、サウシテ救濟サレル數
ハドレ位デアルカト云フト、八万一千人デ
アル、政府ノ自ラ發表シテ居ル此三十七万
四千人ニ對シテモ、八万一千人デハ殘ル二
十九万三千人ト云フ者ハ救濟サレナイデ、
共儘放ッテ置カレナケレバナラヌト云フコ
トニナル(拍手)普通ノ百万人ニ致シマスナ
ラバ九十一万人以上ノ失業者ト云フ者ハ
何トモ手ノ著ケヤウガナイト云フ狀態ニア
ル、是ハ現内閣ガ金解禁ノ政策ヲ誤リ、緊
縮政策、消費節約ノ其結果玆ニ生マレテ來
タノデアル、先程來富田君或ハ櫻井君ハ金
解禁ノ影響ヂヤナイ、今日ノ此不景氣ハ金
解禁ノ影響ヂヤナイ、世界的ノ不景氣ダ、
其影響ノ方ガ大キイノダ、是ハ度々井上君
ガ言ハレタ所デアル、而モ井上君ハ此世界
的ノ不景氣ハ金解禁前迄ハ分ラナカッタノ
デアル金解禁後突發シタル所ノ珍事デア
ルカラ、神ナラヌ身ノ誰モ知ル由モナイノ
デアル、斯ウ云フ御意見デアルノデアリマ
ス併ナガラ吾々モ世界ノ不景氣ヲ全然否
認スル者ヂヤナイ、全然否認スル者ヂヤナ
イケレドモ、今日吾々ガ苦ンデ居ルヤウナ、
極度ノ不景氣ニ外國ガ苦ンデ居ルモノデア
ルトハ思ハナイノデアリマス(拍手)而シテ
此世界ノ不景氣ハ金解禁前迄ハ分ラナカツ
タト云フケレドモ、是ハ世界ノ經濟學者或
ハ金融業者、色々ノ人ノ意見ヲ發表シテ居
ルノヲ見ルト云フト、去年アレ位ノ不景氣
ガ來ルト云フ前兆ハ、昨年、一昨年、其又
前カラズット現ハレテ居ル、一昨年ノアノ亞
米利加ノ株式ノ恐慌ノ時、井上君ハ(「一昨
年ナラ對策ヲヤレ」ト呼フ者アリ)吾々ハ世
界的ノ不景氣ガ深刻デアルカラ、左樣ナ時
ニ金解禁ヲヤルト云フコトガ打擊ヲ刺戟ス
ルト云フノデヤラナカッタノデアル(拍手)
井上君ハー
〔發言スル者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=123
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124・小山松壽
○副議長(小山松壽君) 靜肅ニ-靜肅ニ
願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=124
-
125・山口義一
○山口義一君(續) 一昨年ノ十月二十九日
デアリマシタカ、亞米利加ニ株式恐慌ガ起ッ
タ、株式恐慌ガ起ッタ其事實ニ對シテモ、井
上大藏大臣ハ豫算委員會ニ於テ、アレハ唯
株式ダケノ恐慌デアッテ、經濟界ハチットモ
心配スルコトガ要ラナイ、經濟界全體ハ安
心デアル、斯ウ云フコトヲ考ヘテ居ラレタ
ノデゴザイマスル、ケレドモ此一昨年ノ株
式恐慌ニ對シテハ亞米利加ノ經濟學者ハ
皆軈テ恐慌ノ來ルベキ前兆デアルト云フコ
トヲ豫言致シテ居ル、豫言シタ例ハ澤山ゴ
ザイマスケレドモ、共主ナル一例ヲ擧ゲテ
申上ゲマスルト、亞米利加ノ景氣〓究所ノ
「バブソン」博士ハ一昨年ノ十月二十九日
ノ株式恐慌ニ先立ツ一昨年ノ春ノ株式暴落
ノ時ニ、旣ニ是ハ財界ノ恐慌ガアルゾト云
フコトヲ豫言致シテ居ル(拍手)所ガ豫言デ
ゴザイマスルカラシテ當ルコトモアレバ當
ラヌコトモアル
〔發言スル者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=125
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126・小山松壽
○副議長(小山松壽君) 靜肅ニ願ヒマス-
靜肅ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=126
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127・山口義一
○山口義一君(續) 當ルコトモアレバ當ラ
ヌコトモアルノデアリマス、併ナガラ苟モ
金解禁ヲ斷行シヨウト云フ井上大藏大臣
ハ亞米利加ノ景氣ニ對シテハ深甚ナル注
意ヲシナケレバナラヌ筈デアル然ルニ此
豫言ニ對シテハ注意シナイノミナラズ、
豫言ガ的中シタルアノ株式暴落ニ對シテサ
ヘモ、單ニ有價證劵ダケノ恐慌デアッテ、經
濟界ハ何トモナイト云フヤウナコトヲ言フ
ニ至ッテハ、是ハ無責任モ甚シイト言ハナケ
レバナラナイ(拍手)
元來此亞米利加ノ恐慌ト云フモノハ、此
亞米利加ノ恐慌ガ原因トナッテ世界ノ不景
氣ガ玆ニ卷起タノヂヤナイ、歐洲ノ不景氣
カラ亞米利加ガ恐慌ニ引込マレテ來タノデ
アル、而シテ其歐洲ノ不景氣ノ原因ハ何處
ニアルカト云フト、獨逸賠償金問題ト對米
戰債問題ニ原因ヲ發シテ居ル、其獨逸賠償
金ト對米戰債ガ棒引サレナケレバ、歐洲ノ
經濟復興ハナカ〓〓ムヅカシイト云フコト
ハ色々ノ人ガ色々ノ場合ニ於テ其意見ヲ
發表致シテ居ル、唯亞米利加ダケガ一昨年
マデハ景氣ガ好カッタ、何故ニ亞米利加ハ一
昨年ノアノ暮マデ景氣ガ好カッタカト云フ
ト、ソレハ無理ニ國内ニ於テ購買力ヲ造ツ
テ居ッタカラデアル、外國ニ品物ガ賣レナク
ナッタ場合ニ於テ、國内ニ於テ消費力ヲ無理
ニ造ッテ、卽チ月賦販賣制度ニ依っテドンド
ント消費ヲ盛ニシテ行ヲタカラ、去年暮マデ
一時不合理ナル景氣ガ茲ニ現レテ居ッタノ
デアリマス、所ガ一昨年ノ株式ノ暴落ヲ機
會ト致シテ、遂ニ行詰ッテシマッテ、亞米利
加モ到頭世界不景氣ノ渦中ニ卷込マレルヤ
ウニナッタノデアリマスカラ、此昨年カラノ
世界ノ不景氣ト云フモノハ、決シテ金解禁
カラ後ニ突發シタル所ノ棒事ヂヤナクテ、
二年モ三年モ前カラ其前兆ガ現レテ居ッタ
ト云フコトハ、是等ノ事實ヲ以テスレバ明
カデアリマス、デアルカラシテ左樣ナ事實
ヲ無視シテ、サウシテ金解禁ヲヤッタノデア
ルカラシテ、暴風雨ニ窓ヲ開ケタヤウナモ
ノデ、玆ニ我國ハ不況ノドン底ニ陷ヲテシ
マッタト云フコトハ當然ナコトデアル(拍手)
而モ井上大藏大臣ハ金解禁ヲ一番良イ時ニ
ヤッタト、斯ウ言フテ居ル、絕好ノ機會ニ金
解禁ヲヤッタノデアル、殆ド是ハ天佑デアル
ト云フヤウナコトヲ言ッテ居リマス、ソレハ
何ヲ指スノデアルカト云フト、亞米利加ノ
金利ガ安クナッタコトヲ云フノデアリマス、
如何ニモ亞米利加ノ金利ハ株式暴落以來安
クナッタ、紐育準備銀行ハ二囘ニ亙ッテ金利
ヲ下ゲタケレドモ、金利ノ下ックト云フコト
ハ銀行家、金融業者ニハ都合ガ好イケレド
モ、一囘物價ガ下ッタト云フコトハ產業ニ
大ナル打擊デアルト云フコトヲ考ヘナケレ
バナラナイ、金利ノ下ッタコトダケ考ヘテ、
物價ノ下ッタト云フコトヲ考ヘナイカラシ
テ、玆ニ吾々ハ受ケナクテモ濟ム所ノ打擊
ヲ受ケナケレバナラヌヤウニナッテ來タ、元
來金解禁ハ外國ノ物價ノ〓騰期ニヤルノガ
當リ前デアル上リ掛ケニヤルノガ當リ前
デアル、外國ノ物價ガ上リ掛ッタ時ニ金解禁
ヲヤルト云フト、國內ニ於テハ爲替高ニ依
リ物價ノ下落ガアルケレドモ、外國ノ物價
ガ上ッテ居ルカラシテ差引玆ニ急激ナル物
價ノ下落ヲ來サナイカラシテ、不景氣ハコ
ンナニ深刻ニナラズニ濟ムノデアル、ソレ
ヲアベコベニ物價ノ下リ掛ケニ-低落期
ニ金解禁ヲヤッタカラシテ、非常ナル打擊ヲ
受ケタノデゴザイマシテ、卽チ銀行家ヤ金融
業者ニハ大變都合ガ好イケレドモ、產業ハ
破壞サレナケレバナラヌト云フコトニナ
ル現內閣ハ金融資本家ニハ都合ガ好ケレ
バ、產業ハ破壞サレテモ構ハナイ、國民大
衆ハ飢ニ泣イテモ構ハナイト云フノガ、此
金解禁ノヤリ方ガアル(拍手)而モ金解禁ヲ
ヤル時ニ現内閣ハ何ト言ッタカト云フト、金
解禁ヲヤッテモ大丈夫ダ、國民ヲ安心サシ
テ、寧ロ油斷サシテ金解禁ヲヤッタ、現內閣
ノ金解禁ヲヤル時ノ聲明書ニハ何ト言ッテ
居ルカ、今ヤ內外諸般ノ準備ガ全ク出來タ
カラシテ、金解禁ヲヤッテモ憂フベモ現象ガ
發生シナイト云フコトヲ確信スルト言ッテ
居ル(「其通リ」ト呼フ者アリ)其通リデアル
ト云フノハ民政黨ノ人ダケデアル、金解禁
ヲヤッテカラ後ノ經濟上ノ事情ヲ見マスト
云フト、悉ク惡現象バカリデアリマセヌカ、
農村ト云ハズ都會ト云ハズ、有ユル階級悉
ク悲慘ナル狀態窮迫ノドン底ニ陷フテ居ル、
甚シキハ生活ガ出來ナイ爲ニ病氣ニナリ、
マダソレドコロデナイ、發狂スル、自殺ス
ル、人殺ヲスルト云フヤウナ狀態ニ相成クテ
居ル、去年ノ十月、十一月頃ハ其極度ニ達
シテ居リマシテ、農村ノ恐慌ト工業ノ方ノ
恐慌ト、是ガ聯結ヲ致シマシテ、去年ノ暮
ニハ一大恐慌ノ絕頂ニ達セント致シタノデ
アリマスルガ、ソレガ辛ウジテ切拔ケテレ
タト云フノハ、景氣ガ好クナッタカラ是ガ無
事ニ切拔ケラレタト云フノデナイ(「其妙ヲ
得タカラダ」ト呼フ者アリ)其妙ヲ得タト云
フノハ大ナル誤リデゴザイマシテ、現內閣
ガ常ニ攻擊シテ居ル、現內閣ノ政策ト矛盾
撞著シテ居ル所ノ「インフレーシヨン」政策
ヲヤッタカラ、無事ニ切拔ケタノデハナイ
カ、興業銀行ヲシテ不當ナル貸出ヲドンド
ンヤッタカラ··
〔副議長退席、議長復席〕
年末ニ息ガ吐ケタノデハナイカ、先程カラ
富田君ナリ或ハ櫻井君ナリガ景氣ガ好クナ,
タナッタト言フケレドモ、景氣ガ好クナッタト
云フコトヲ諸君ガ選擧區ニ行ッテ言ッタナラ
バ、酷イ目ニ逢ハナケレバナラヌ、今日ノ
景氣ノ好クナッタノハ是ハ唯單ニ
〔發言スル者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=127
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128・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 靜肅ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=128
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129・山口義一
○山口義一君(續) 金融景氣ダケデアリマ
ス、金融景氣ダケガ好クナッタ、ソレハ「イ
ンフレーション」政策ヲ取ッタカラシテ一時
救ハレタト云フノデ、死ニ掛ッテ居ル病人ニ
「カンフル」注射ヲヤッタノト少シモ違ハナ
イ、是ガ更ニ大キナ反動トナッテ現ハレテ
來テ、軈テ再ビ大キナ恐慌ガ來ルト云フコ
トハ火ヲ睹ルヨリモ明カナンデアリマス
然ラバ何故ニ金解禁ヲ撰リニ撰ノテ斯ン
ナ惡イ-一番惡イ時期ニヤッタカト云フ
ト、ソレハ金解禁ヲヤルノニ經濟上ノ理由
ヲ考ヘナイデ、政治上ノ理由カラ金解禁ヲ
ヤッタノデアル(拍手)黨略ニ依ッテ金解禁ヲ
ヤッタカラ、一番惡イ時ニ金解禁ヲヤラナケ
レバナラヌヤウニナッタ、元來金解禁ノ理論
ト云フモノハ中々ムヅカシイ、國民ノ大多
數ハ之ヲ理解スルコトハ實際困難デアル、
其金解禁ノ理論ノムヅカシイ、理解スルノ
ガ困難デアルト云フ其隙ニ乘ジタノガ現內
閣、分ラナイ時ニ金解禁ノ效力ヲ誇張シテ、
金解禁サヘヤルナラバ景氣ガ好クナルノデ
アルト云フ風ニ宣傳ヲ致シタノデアル
〔「違フ」ト呼ヒ其他發言スル者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=129
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130・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 靜肅ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=130
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131・山口義一
○山口義一君(續) 違フト云フ人ガアルナ
ラバ、井上君ガ地方ニ行ッテ演說シタ其一節
ヲ言ッテ置ク、井上君ハ何ト言ッテ居ルカト
云フト、金解禁ト云フモノハ丁度夏ノ暑イ
時ニ富士山ニ登ルヤウナモノデアル、途中
ハ暑クテ苦シイケレドモ、頂上ニ行ッタナラ
バ涼シイ風ガ吹イテ來ルノダ、丁度金解禁
モ其樣ナモノデ、解禁スルマデハ苦シイケ
レドモ、頂上ニ行ッタラ凉シイ風ガ吹イテ來
ルト同ジヤウニ、解禁シテシマヘバ景氣ガ
好クナルノダ、斯ウ云フ風ニ言ノタカラシテ
國民ハ解禁スルマデノ辛抱ダ、解禁サヘス
レバ景氣ガ好クナルノデアルト、斯ウ云フ
風ニ考ヘテ之ニ共鳴シタ、サウ云フ風ニ誇
張シテ宣傳ヲシテ、一月十一日ニ解禁ヲ斷
行シテ、二月二十日ニ選擧ヲヤッタト云フ所
ニ安達內務大臣ノ巧妙ナ所ガアル(拍手)マ
グ解禁ノ打擊ガ現ハレテ來ナイ前ニ先ヅ選
擧ノ投票ヲ取ッテシマハウト云フ考デアル、
二月二十日ダカラシテ、マダ金解禁ノ打擊
ガ現ハレテ來テ居ナイ、打撃ガ現ハレテ來
ナイ時ニ投票ヲ取ッテシマッテ、投票ヲ取ッテ
シマヘバ後ハ野トナレ山トナレト云フノガ
現內閣ノヤリ方デアル(拍手)ダカラシテ今日
地方へ演說ニ行ッタラ、地方ノ人ハ何ト言ッ
テ居ルカト云フト、民政黨ニ瞞サレテ投票
ヲ取ラレタノガ殘念ダト云フ(拍手)アノ投
票ヲ取返セルモノナラ取返シテヤリタイト
云フノガ國民ノ聲デハアリマセヌカ(拍手)
此金解禁ヲ誤シタル其上ニ、緊縮政策ヲ
行アタ、櫻井君ハ緊縮政策ノ效能ヲ述べラレ
タガ、井上大藏大臣モ常ニ言ッテ居ラレル、
金解禁ヲヤルノニハ緊縮政策ヲヤラナケ
レバナラナイ、外國モ皆ヤッテ居ル、是ハ金
解禁ヲヤル常道デアル、所ガソレガ大變ナ
ル間違デアル、外國ガ金解禁ヲヤルノニ財
政緊縮ヲヤッテモ、是ハ我國ガ其通リヤラナ
ケレバナラヌト云フ理窟ハナイ(拍手)何故
ナラバ外國ノ爲替相場ノ下ッタ原因ト、日本
ノ爲替相場ノ下ッタ原因トハ違フ、外國ノ爲
替相場ノ下ッタ原因ハ、歐洲大戰ノ爲ニ歲入
以上ニウント歲出ヲヤッタカラシテ、玆ニ爲
替相場ガ下落シタ、我國ノハサウヂヤナイ、
我國ノ爲替相場ノ下ッタノハ左樣ナ原因デ
ハナクシテ、財界其モノヽ整理ガ徹底シテ
居ナカッタカラシテ、爲替相場ガ下ッタ、此
事ハ諸君ハ御存ジナカラウケレドモ、現內
閣ノ人ハソレダケ位ノコトハ能ク知ッテ居
ル、知ッテ居ル證據ニハ、若槻內閣ノ時ニ、
金解禁ヲヤルニハドウシテモ財界ノ整理ヲ
シナケレバナラナイ、其財界ノ整理ヲスル
ニハ先ヅ震災手形ヲ處分シナケレバナラヌ
ト云フノデ、アノ議會ニ二億七百万圓ノ震
災手形善後法ヲ出シタノガ却テ藪蛇トナッ
テ、三十六ノ銀行ガ潰レテシマッタノデアル
ケレドモ、併ナガラ金解禁ヲヤルノニハ、
先ヅ財界ノ整理ヲシナケレバナラヌト云フ
コトダケハ現內閣ノ人モ認メテ居,タ、ソ
レナラ財界整理其モノヲヤッタラ宜イ、所ガ
財界ノ整理ヲヤラナイデ何ヲヤッテ居ルカ
ト云フト、財政ノ緊縮ノ名ノ下ニ事業ノ繰
延中止ダケヲヤッテ居ル、濱口內閣ガ出來テ
カラ今日マデ事業ノ繰延中止ヲヤッタモノ
ハ中央ニ於テ二億三千万圓、地方ニ於テ
一億九千万圓、先ヅ四億二千万圓程ノ事業
ノ繰延中止ヲヤッテ居ルノデアリマスルガ、
サウスルト云フト、ソレ等ニ關係シテ居ル
所ノ事業家ハ仕事ガ無クナル、勿論勞働者
モ失業シナケレバナラヌト云フコトニナッ
テ來ル、然ラバソレ等ノ人々ヲ相手ニ致シ
テ居リマスル所ノ人ガ、又仕事ガ無クナッテ
來ルト云フコトニナッテ、玆ニ夥シイ人間ガ
失業ノ狀態ニ陷リ、ソレ等ノ人々ハ皆日本
ノ富ヲ喰込ンデ行カナケレバナラヌト云フ
コトニナル、今日日本ノ富ハ千二十三億圓
デアルト云フ、其日本ノ富ノ千二十三億圓
ノ中デ、正貨ノ形デ存在シテ居ルノハ僅ニ
八億圓ニ過ギナイ、アトハ工場デアルトカ、
鐵道デアルトカ、成ハ船舶デアルトカ、或
ハ山林デアルトカ、田畑デアルト云フヤウ
ナ、所謂生產設備ノ形ニ於テ此富ガ蓄積サ
レテ居ルノデゴザイマスルガ、事業ハ此富
ヲ蓄積スル所ノ一ツノ方法デアル、其事業
ヲ繰延中止ヲ致シテ、ドウシテ財界ノ整理
ガ出來ルデアラウカト思フノデアリマス
(拍手)ソコニ根本ノ錯誤ガアル、而シテ本
當ノ財政緊縮トシテヤラナケレバナラナイ
所ノ行政ノ整理デアルトカ、財政ノ
整理ト云フヤウナモノハ一ツモヤリハシ
ナイ、十大政綱ノ中ニ揭ゲタ所ノ軍政
改革ノ如キモ一指ヲ染メルコトガ出來
ナイヤウナ狀態デアリマシテ、唯事業ノ
繰延中止ニ依クテ國民ノ所得ヲ奪ヒ、
國民ノ仕事ヲ無クシテシマッテ、其上ニ消費
節約ニ依ッテ購買力ヲ斷切ッテシマフ、外國
デハ、先程櫻井君ガ言。タケレドモ、ドウシ
テ消費力ヲ盛ニシヨウカト云フ事バカリ考
ヘテ居ルノニ、現內閣ハアベコベニ消費ヲ
ドウシテ少クシタラ宜イカト云フ、アベコ
ベナ事ヲ考ヘテ居ルノデアリマスカラ、我
國ノ經濟狀態ハ金解禁ニ依ッテ不況ニ陷リ、
緊縮政策ニ依ッテ事業ヲ無クシテシマヒ、其
上消費節約ニ依ッテ購買力ヲ斷切ッテシマッ
タノデアリマスカラ、玆ニ未曾有ノ殺人的
不景氣ニ相成ッタノデアリマス(拍手)、サウ
シテ其責任ヲ尋ネルト云フト、是ハ世界的
ノ不景氣ダト云フ、ケレドモ世界ノ不景氣
ト比較スル標準ハ、先程櫻井君ガ申サレタ
ガ、貿易ト物價指數デアル、貿易ト物價指
數ヲ取ッテ見ルト云フト、日本ガ一番惡ク
ナッテ居ルヂヤナイカ、貿易ノ減退ノ割合ハ
日本ガ一番惡イ、是ハ千九百二十九年ノ末
ト、昨年ノ末トノ比較デアリマスガ、英吉
利ノ輸入ハ一割四分四厘ノ減デアリマス
ガ、輸出ハ二割一分六厘ノ減ニナッテ居ル、
獨逸ハ輸入ハ二割五分減ッテ居ッテ輸出ハ
割一分ノ減ニ過ギナイノデアル、佛蘭西ハ
輸入ハ一割一分減ッテ居ル、輸出ハ一割四分
六厘、斯ウ云フ狀態ニナッテ居ル、日本ノヤ
ウニ輸入ガ二割九分六厘モ減ッテ輸出ガ三
割一分五厘モ減ッテ居ルト云フヤウナ國ハ
何處ニモナイ、一番惡イ〓〓ト言ッテ居ル亞
米利加デサヘモ、輸入ハ三割四分モ減ッテ居ル
ケレドモ、輸出ハ僅ニ二割六分七厘ヨリ減
テ居ナイ、斯ウ云フヤウナ數字デアリマス
カラ、貿易ノ狀態ハ何ト言ッテモ日本ガ一
番惡イト言ハナケレバナラヌ、又物價ノ指
數ノ低落ノ割合ハドウデアルカ、千九百二
十九年卽チ濱口內閣ガ出來タ時ト、昨年ノ
十一月トノ比較ヲ取ッテ見マスト云フト、日
本ハ二割六分四厘ノ低落ノ割合ニナッテ居
ル、英吉利ハ一割八分四厘、亞米利加ハ一
割七分九厘、佛蘭西モ一割九分五厘、獨逸
デハ一割二步八厘ト云フヤウナ狀態デ、二
割以上ニ突破シテ居ル國ハ何處ニモナイノ
デゴザイマスカラシテ、我國程物價ガ急激
ニ低落ヲ致シテ居ルト云フ所ハ一ツモナ
イ、何處ニモナイノデアリマス、ダカラ物
價ノ低落ノ割合カラ見マシテモ、此貿易狀
態カラ見マシテモ、日本ガ最モ惡イト言ハ
ナケレバナラヌ、而モ銀行ノ潰レタ狀態、
体業銀行ハ僅カニ三十位ニ過ギナカラウケ
レドモ、本當ニ法律ノ上カラ言ッタラ、休業
シナケレバナラヌ銀行デアッテモ、ソレヲ本
當ノ休業銀行ニスルト云フト、內閣ノ政策
ノ破綻ニナルカラシテ、店ダケ開ケサシテ
置イテ、サウシテ預金ハ取ルケレドモ朝ニ
預金ヲ入レテ、晝カラ取リニ來ルト云フト
拂ハナイト云フヤウナ、マルデ詐欺ミタイ
ナ開店休業銀行ガ、殆ド二百ニモ達スルト
云フヤウナ狀態デ、開店休業銀行ト、休業
銀行トヲ合セマスルト云フト、殆ド六億圓
ノ預金ガ今日固定シテ取レナクナッテ居ル
ト云フヤウナ狀態ニナッテ居リマスル國ハ、
世界何レノ國ヲ見マシテモ一ツモナイノデ
アリマス、(拍手)サウシテ、諸君ハ景氣ガ
段々順調ニ向イテ來タ、斯ウ云フコトヲ言
ハレテ、樂觀說ヲ飛バサレルケレドモ、是
ハ先程言ッタ通リニ、昨年末ノ「インフレー
シヨン」政策ノ結果デゴザイマシテ、其反動
ガ今日漸ク現ハレテ來テ居ル、「カンフル」
注射ノ反動ガ今日漸ク現ハレテ來マシテ、
一時ハ興業銀行カラ貸出シタ所ノ資金ハ、
事業家ノ手ニ渡ッタケレドモ、ソレガ又中央
ノ有力銀行ノ手ニ囘收サレテシマッテ、今日
デハ事業家ノ方モ再ビ資金難ニ泣イテ居ッテ、
中央有力銀行ノ資金ガ、ダブ付イテ有リ餘ッテ
困ッテ居ルト云フヤウナ狀態ニ相成ッテ居
ル、有力銀行モ此餘ッタ所ノ資金ニ困ッテ居
ル、公債デモ買ッテ吳レヽバ、政府ハ大變都
合好カラウケレドモ、政府ノ公債政策ノ破
綻ノ結果、公債ヲ買フノモ危險デアルト云
フヤウナ感ジヲ致シテ居ル、公債ノ値段モ
段々下ッテ來ルコトハ、是ハ火ヲ睹ルヨリモ
明カナコトデアル、(拍手)最初ハ非募債主
義デアッタ所ガ、ソレガ破綻ヲ來シテ、二十
五百万圓ノ失業公債ヲ出サナケレバナラヌ
ヤウニナッテ居リマスルシ、其外ニマダドウ
云フヤウナ名義デ公債ヲ發行シナケレバナ
ラナイカモ分ラナイト云フヤウナコトニ相
成ッテ居リマス、其上ニ減債基金モ段々無ク
ナッテ來テ、普通ナラバ每年ノ年度末ノ繰
越金ガ相當ニアリマスカラシテ、一億四五
千万圓ノ減債基金ハチヤントアルノデア
ルケレドモ、昭和六年度ノ減債基金ハ僅カ
ニ八千万圓ヨリナイト云フ狀態デアリマ
ス、其上獨逸ノ賠償金モ一般會計ノ方ヘ繰
入レテシマッタノデゴサイマスカラ、公債ニ
對スル所ノ信用ト云フモノハ段々ニナク
ナッテ、サウシテ公債ノ値段ノ下ルト云フコ
トハ、誰ガ考ヘテモ想像サレルノデアルカラ
シテ、中央有力銀行モ、斯樣ナ方面ニ投資
スルコトハ危險デアルカラシテ、勢ヒ是ハ
海外ニ投資ヲシナケレバナラヌト云フ順序
ニナッテ、旣ニ正月カラ是迄正貨流出ハシナ
イシナイト大藏大臣ハ言ハレルケレドモ、和
蘭銀行ヲ通ジテ今日迄三囘程既ニ四五万圓
ノ正貨ガ海外ニ流出シテ居ル、サウスルト
ドウナル、今日デサヘモ金ノ保有高ハ世界
各國ニ較ベテ我國ハ大變其率ガ少ナイ、例
ヘバ世界ノ主ナル國ノ金ノ保有高ノ割合ヲ
比較シテ見マスルト云フト、亞米利加ハ此
濱口內閣ガ出來タ時カラ、去年迄ノ比較ヲ
取ッテ見マスト、三割七步三厘デアル、ソレ
ガ三割八步四厘ニナッテ居ル、佛蘭西ハ一割
三分二厘七毛カラ一割七分五厘ニナッテ居
リマス、英國ハ七分四厘カラ七分七毛ニナッ
テ居ル、日本ハ之ニ比較シテドウデアルカ
ト云フト、五分二厘カラ三分九厘八毛ト云
フヤウニ、大變ナ激減デアル、其上今言フ
ヤウナ割合デ、正貨ガ海外ニドン〓〓出テ
行ッテ、八億シカナイ正貨ガドン〓〓減クテ
行ッタナラバ、誰カ我國ノ金本位制度ノ基礎
ヲ危クシナイト斷言シ得ル者ガアリマセウ
カ(拍手)
斯ノ如ク正貨ハ外國ヘドン〓〓取ラレテ
行ク、貿易狀態ハ惡イ、失業者ハ非常ナ勢
ヒデ殖エテ行ク、而モ之ニ對シテ現內閣ハ
何等カノ對策ガアルカト云フト、將ニ國ヲ
擧ゲテ破產シナケレバナラヌ危機一髪ノ時
ニナッテ居ルノニ、之ニ對スル何等ノ對策ナ
〃、世界ノ景氣ノ囘復ヲ待タナケレバナラ
又、是ダケデハナイカ、濱日君ガ一昨日大
口君ノ質問ニ對シテ、世界ノ景氣ハ段々良
クナッテ來ル見込デアリマスト云フケレド
モ、何等的確ナ數字ニ基キ之ヲ斷言サレタ
ノデモ何デモナイ、世界ノ景氣ハ却テ昨年
十月、十一月以來惡クナッテ居ル、我國ノ景
氣ハ昨年十月、十一月以來金融景氣、中間
景氣ヲ出シタケレドモ、世界ノ不景氣ハ段
段深刻ニナッテ居ル、貿易ノ數字ヲ見テモ、
物價ノ低落ノ割合カラ見マシテモ、段々惡
クナッテ行クノデアリマスカラ、此世界ノ景
氣囘復ヲ待テヨト云フガ、何時ニナッタラ景
氣ガ囘氣ガ囘復スルカ豫想出來マセヌ、今
日吾々ハ苦シクトモ辛抱シテ居ル、救濟ガ
アルト云フ見込ガ立ツナラバ我慢ガ出來ル
ケレドモ、幾ラ長ク待ッテモ救濟サレル見込
ガナイト云フコトニナリマスナラバ、國民
ハ絕望シナケレバナラヌコトニナッテ來ル、
絕望ノ結果現內閣ノ政策ヲ恨ムト云フダケ
デ濟ムナラバ、事ハ甚ダ簡單デアル、ソレ
ヲ飛ビ越シテ資本主義制度ノ根本ヲ否認ス
ルヤウニナリマシタナラバソレコソ國民的
一大危機デアルト言ハナケレバナラヌ(拍
手)
今日大學ヲ卒業致シ、專門學校ヲ卒業シ
タ所ノ學生、殊ニ頭腦ノ良イ學生ガ、共產
主義ニ動モスレバ成リタガルト云フノ
ハ、原因ハ何處ニアル、是ハ唯取締ダケヲ
嚴重ニスレバソレデ宜シイト考ヘテ居ッタ
ナラバ、其源ノ根ヲ絕ヤスコトハ出來ナ
イ、現內閣ノヤウニ金融資本家ダケヲ擁護
スル、金解禁ヲシテモ、唯銀行ダケノ都合
ハ考ヘルケレドモ、國民大衆ハドウナッテモ
構ハヌト云フヤウナヤリ方デアッタナラバ、
是ハ思想ガ惡化セザルヲ得ナイノデアリマ
ス、其結果共產主義ニ走ル者ガアリト致シ
マスルナラバ、是ハ春秋ノ筆法ヲ以テ中シ
マスルナラバ、革命ノ前提要件デアル國民
的危機ヲ作ルモノハ、現內閣ナリト言ハレ
テモ致方ガナイノデアリマス(拍手)吾々ハ
斯ノ如ク上御一人ニ對シテハ輔弼ノ責任
ヲ盡サズ、下國民ニ對シテハ政黨內閣主義ヲ
裏切リ、國民ヲ窮迫ノドン底ニ陷レテ、而
モ其責任ヲ感ジナイヤウナ現內閣ハ、一日
モ存在ヲ許スコトガ出來ナイカラシテ、玆
ニ糺彈ヲ致シ、其處決ヲ促ス所以デアリマ
ス、諸君ノ御贊成ヲ御願致ス次第デアリマ
ス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=131
-
132・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 眞鍋儀十君
〔眞鍋儀十君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=132
-
133・眞鍋儀十
○眞鍋儀十君 私ハ先輩諸君ガ四邊ヲ驚力
ス雄辯ヲ振ハレタニ對シ、只今マデ敬虔ノ
態度ヲ以テ謹聽致シテ居,タノデアリマス、
併ナガラ諸君ノ申サレル所ハ極端ナル誇張
ノ言辭ヲ弄シテ巧ニ使験乃至相互使喉ノ關
係ニ於テ、感情ヲ以テ理論付ケラレントス
ル態度ニ至ッテハ、私共共鳴スルコトガ出來
ナイノデアリマス、會期ガ將ニ盡キントシ
テ、殊ニ議員提出法律案ガ多分ニ殘サレテ
居ル今日ニ於テ、ドウシテモ諸君ガ不信任
案ヲ提出シナケレバナラヌト云フナラバ、
シナケレバナラナイ當然且ツ必然ノ理由ガ
確然トシテ居ラナケレバナラヌ筈デアルト
私ハ思フ、其諸君ノ議論ガ一トシテ現內閣
ノ諸施設ヲ覆スベキ、根本ノ理由ヲ持タナイ
所說デアルコトヲ私ハ斷言スル、私ハ今諸
君ノ所說ニ對シテ形而學上ノ論據ニ立ッテ、
一々反駁ヲ加ヘテ見ヨウト考ヘルモノデア
リマス(拍手)
元來政友會ノ諸君ハ色〓ノ御議論ヲナサ
イマスケレドモ、諸君ノ根柢ヲ流レテ居ル
指導精神ト云フモノハ一體何レニ存在シ
テ居ルノデアルカハ私ハ知ラナイ、先ヅ第
一番ハ現在ノ軍縮問題ニ對シテ、相當ノ議
論ヲ費サレテ居ルフデアリマス、其軍縮間
題ニ對シテハ贊成デアルノカ反對デアルノ
カ、諸君ハ若シ軍縮問題ニ耗成ト言ハレル
ナラバ、過日樞密院ニ對スル諸君ノ行動ハ
贊成ノ意義ヲ現ハシテ居ルモノデアルカド
ウカ、一體犬養總裁ハ曾テハ軍國排擊ノ巨
頭トシテ相當世間カラ尊敬ヲ拂ハレタ方デ
アリマス、其大養總裁ガ最近ニ於テハ軍閥
擁護ノ立場ニ在ル樞密院ヲ擁護サレタト云
フコトハ一體何事デアル、犬養總裁ハ曾テ
有名ナル軍閥排擊ノ巨頭デアッタケレドモ、
今日政友會ノ總裁トナッテハ江南ノ橘、江北
ニ生ズレバ枳トナルノ觀ヲ私共ハ感ズルモ
ノデアリマス、一昨年濱口總裁ガ七割二分
二厘ヲ千九百三十六年マデ持ツト言ッタニ對
シテ、大口君ハ六割七分七厘デアルコトヲ
鬼ノ首デモ取ッタヤウニ玆ニ極言セラレテ
居リマスルガ(「大ロヂヤナイ、內田信也ダ
ヨ」ト呼フ者アリ)大口君モ申サレマシタ、
諸君、千九百三十六年迄ハ七割二分二厘デ
アッテ、千九百三十六年後ニ於テ始メテ竣工
スルコトガ出來ルト云フナラバ、千九百三十
六年ノ始ニ於テハ七割二分二厘ヲ持ッテ居
ルコトハ明瞭デハナイカ(拍手)更ニ諸君ハ
補充計畫ニ付テノ色々ノ御質問ガアッタガ、殊
ニ第二次計畫ニ付テノ色々ノ御質問ヲナ
サッテ居リマスルガ、ソレハ海軍大臣ハ第二
次計畫ノアルコトヲ、ハッキリト明瞭ニ申シ
テハ居ラヌデハアリマセヌカ、諸君、今日
一應此計畫ニ依"テ國防上ノ不安ハ除カレ
ルト申サレテ居ル所カラ見レバ、決シテ第
二次計畫ヲ明瞭ニ中シタモノデハナイノデ
アリマス、諸君、若モ海軍大臣ガ假令左樣
ナコトヲ申サレタニ致シマシテモ、海軍大臣
ガ申シタコトハ國家ノ意思ノ決定ニハナラ
ヌデハアリマセヌカ(發言スル者多ク議場
騒然)諸君、第二次計畫ノコトニ付テハ······
〔發言スル者多ク議場騷然〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=133
-
134・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 靜肅ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=134
-
135・眞鍋儀十
○眞鍋儀十君(續) 海軍大臣ガ何ト言ハレ
マシテモ、國家ノ豫算デアル以上ハ諸君ノ
協賛ヲ經ナケレバ確定セヌデハアリマセヌ
カ(拍手)諸君ガ自ラ協賛權ヲ否認サレルノ
デアルカ、私ハ其態度ニ對シテハ贊成スル
コトガ出來マセヌ、殊ニ第二次計畫ヲ云々
サレルナラバ、私ハ少クトモ亞米利加ノ態
度ヲモウ少シ見テ貰ハナケレバナラヌト思
フ、亞米利加デハ御承知ノ通リ、今囘ノ豫
算ハ千九百三十一年度ノ一年度ニ限ラレテ
居ル筈デアリマス、諸君ハ八年度ニ亙ッテ豫
算ヲ審議セラレテ居リマスルガ、其一年度
シカヤラナカッタト云フコトハ、日本ノ今後
ノ狀況ニ察シテ伸縮自在ナル態度ヲ執ッテ
居ルモノト見ナケレバナラヌト思フ、其亞
米利加共他ノ周圍ノ狀況ヲ察知シナガラ、
諸君ガ如何ニモ日本ニハ第二次計畫ヲモ計
畫セラレテ居ルガ如ク發表セラルヽコトガ
國家ノ爲ニ私ハ悲マナケレバナラヌ事實デ
アルト思フノデアリマス(拍手)
斯ウシテ現ハレマシタ減稅案ニ對シマシ
テ、諸君ハ其額ノ少ナイコトニ付テ批判ヲ
加ヘテ居ルヤウデアリマス、ケレドモ現ニ
政府ハ一億三千四百万圓ハ減稅ヲスルト明
瞭ニ申シテ居ル以上ハ、減稅ハ減稅デアル
コトニハ間違ナイデハナイカ、減稅ニナッテ
居ルト云フ證據ニハ、高橋熊次郞君ハ地租
ハ一割五分ノ減稅率ニナリ、營業稅ハ法人
ガ五分五厘、個人ガ七分カラ八分ノ減稅率
ニナッテ居ルト申サレテ居ル、砂糖消費稅ガ
八分、織物消費稅ガ一割ノ減稅トナッテ居ル
トハッキリ申サレテ居ルコトニ依ッテモ明
瞭デハナイカト私ハ思フ(拍手)諸君、若シ
諸君ノ言ハルヽ所ニ百步ヲ讓フテ、減稅ニナ
ラヌト假定致シテ見マセウ、百步ヲ讓ッテ減
稅ニナラヌト假定ヲシテモ、減稅ニナラナ
イト云フコトハ、重稅ニナルト比ベテ御考
ニナッタ時ニ、私ハ減稅ニナラナクテモ、此
案ヲ採ラナクテハナラヌト思フ、況シテ、
減稅ニナラナイト云フコトニナッテモ、其減
稅ニナラナカッタコトニ依ッテ世界ノ平和ガ
確立サレルト云フ、片方ニ利益ガアルト云
フコトヲ見逃シテハナラヌデハナイカ(拍
手)殊ニ私ハ思フ、アノ減稅委員會ニ於テ
ハ諸君ハ一體減稅ヲスベキ財源ノ捻出ヲ
依賴サレタ委員會デハナイ筈デアル、政府
ガ一億三千四百万圓ノ減稅ニナルカラ、是
レ是レニ付テノ減稅ヲ審議シテ貰ヒタイト
云フナラバ、何デ營業稅、地租稅ニ付テノ
審議ヲシナイノデアルカ(拍手)私ハ諸君ガ
枝葉末節ニ囚ハレテ、眞ニ減稅ノ審議ヲ爲
サレナカッタコトヲ洵ニ遺憾トシテ居ル者
デアリマス(拍手)殊ニ今囘軍縮ノ結果、職
工ノ整理公債ヲ出スト云フコトニ對シテモ、
諸君ハ色々此處デ論議ヲサレタヤウデアリ
マス、是ハ無產黨諸君ニモ御關係ガアリマ
ス、此軍縮ニ依ッテ職エガ解雇サレルト云フ
コトハ、無產黨ノ諸君トシテハ解雇サレル
職工ニ付テハ、洵ニ氣ノ毒ヲ感ジラレナケ
レバナラヌト思フケレドモ、軍縮ト云フ大
キナ眼目ノ下ニ於テ、其犧牲トナッテ職エガ
解雇サレナケレバナラヌト云フ時ニハ職工
ノ解雇ヲ-職工ニ重キヲ置クカ、此軍縮
ニ重キヲ置クカト云フコトニナッテ來ルト、
職工ヲ捨テヽ軍縮ノ原則ニ就クコトガ私ハ
無產黨トシテモ、本當ノ立テ方ノ議論デナ
ケレバナラヌト思フノデアリマス(拍手)
體今囘失業公債ガ二千二百万圓出サレマシ
タニ付キマシテモ、諸君ハ非難サレテ居リ
マスルケレドモ、失業公債ヲ出スト云フコ
トニハ、マサカ諸君モ反對デハゴザイマス
マイ、一體民政黨デハ御承知ノヤウニ、原
則トシテ國債ハ一般會計デハ公募シナイコ
トニナッテ居リマス、原則トシテハ募集シナ
イノデアリマスケレドモ、特別非常ノ場合
ニ於テハ、私共ハ今日ノ失業公債ヲ起スコ
トハ是ハ當然過ギル當然デナケレバナラ
ヌト思フ(拍手)
〔發言スル者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=135
-
136・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 靜肅ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=136
-
137・眞鍋儀十
○眞鍋儀十君(續) 國民ガ肝腎デアルカ、
主義ガ大切デアルカト云フ時ニハ、其主義
サヘ擲タナケレバナラヌノニ、此原則ヲ毀
損シナイ範圍ニ於テ公債ヲ發行スルト云フ
コトハ、是ハ決シテ差支ナイト今日ハ考ヘ
ナケレバナラヌト思ッテ居ル(拍手)
山口サンハ亞米利加ノ不景氣ノ御話ヲナ
サイマシタガ、學者ハサウ云フコトヲ申シ
マシタデセウ、私モ其話ナラバ聞イテ居リ
やく、亞米利加デハ景氣ト不景氣ハ七年
カラ十年ヲ周期トシテ廻。テ來ルト云フコ
トヲ〓究サレテ居ル學者モアッテ、ソレヲ解
圖ノヤウニ、詳解マデ附ケテ居ラレル學者
ガアルト云フコトヲ聞イテ居リマス、サウ
ナッテ來ルト、此周期ト云フモノハ、私ハド
ウモ日本ニハ周期的ニモ此風波ハ押寄セテ
來ルコトヲ是カラ豫感シテ掛ラナケレバナ
ラヌト思ッテ居ッタ、然ルニソレガ幸ニシテ
押寄セナカッタノヲ私共ハ喜ンデ居ッタニ
モ拘ラズ、遂ニ世界ノ大戰後ノ餘殃ハ遂
ニ日本ニモ來タノデアリマシテ、此周期的
ノ計算ハ、平生カラ出來テ居ッタガ、斯ノ如
ク非常ノ不景氣ガ來ルト云フコトハ、此圖
表ノ中ニモ嵌ラナカッタコトヲ私共ハ承知
致シテ居リマス
諸君、私ハ金解禁ニ對シテ御非難ガアル
ヤウデアリマスガ、此非難ハ特色アル非難
デアルト思フ、今マデノ非難ト云フモノハ、
ナゼ約束ヲシテ果サナカッタカト云フ所ニ、
非難ノ重點ガアッタヤウデアリマス、此非難
ハナゼ早ク實行シタカト云フコトニ付テノ
御非難デアル所ニ、私ハ注意スベキ點ガア
ルト思フ、政友會ノ諸君ハ、地租委譲ノ如
キハ、ヤルト言ッテ御ヤリニナラナカッタ、
非難ハ御受ケニナッタ、民政黨ハヤルト言。ツ
テ、早クヤリ過ギタト云フ非難ヲ受ケテ居
ルコトハ、寧ロ私ハ喜バシイト思フ(拍手)
是ハ恐ラク民政黨內閣デナケレバヤラレナ
イコトデアリマシタラウ、恐ラク私ハ政友
會ノ諸君ノ內閣ニ於テハ、常ニムヅカシイ
所ハ避ケテ通ラレテ、易イ所ダケ通ラウト
サレル諸君ニ於テハ、金ノ解禁ハ出來ナカツ
タト私ハ斷言スル、一體將來ノ內閣ト云フ
モノハ、何モ彼ニモヤラナケレバナラヌ內
閣ヨリハ、何カ一ツダケノコトヲヤレバ、
內閣ハ挂冠ヲシテモ宜イト云フ方ニ政治ガ
進ンデ行カナケレバナラヌト考ヘルノデア
リマス、我ガ民政黨內閣ニ於テハ、旣ニ金
ノ解禁モ實行シ、軍備ノ縮小モ實行シタ、
此二ツモヤッテ居レバ、當然私ハ功績ハ認メ
ラレナケレバナラヌト思フ(拍手)
現下ノ失業問題ニ付テハ、私ハ〓究シテ
見ナケレバナラナイ二ツガアルト思フ、
ツハ諸君ノ言フ不景氣ニ原因スルモノデア
ルガ、モウ一ツハ機械工業ノ發達ニ依ルコ
トヲモ考ヘテ見ナケレバナラヌ筈デアルト
思ヒマス、大體機械ノ發達ト云フモノハ、
勞働ヲ段々ト蠶食シテ行クモノデアリマ
ス、箇々ノ機械ガ發達スルコトニ依ッテ、勞
働ノ範圍ト云フモノハ次第ニ局限サレテ行
クコトハ、是ハ僞リナイ事實デアリマス、
一體社會ト云フモノハ次第ニ成長力ヲ以テ
伸ビ行クモノデアリマスカラ、機械ガ次第
ニ發達スレバ、ソレダケ勞働ガ局限サレル
ト云フコトハ、是ハ僞ラナイ事實デス、サ
ウシテ見レバ失業ト云フモノハ、機械ノ發
達ノ方面カヲ考ヘテモ、ドウシテモ是ハ免
レナイ一ツノ現象トナッテ來ルノデアリマ
ス(拍手)今日デハ機械全部ニ依ラズ、勞働
全部ニ依ラザル、所謂半機械時代デアリマ
スルガ故ニ、今ノ政局ニ立ッテ居ル者ハ、失
業問題ニ對シテハ餘程愼重ナル態度ヲ執ラ
ナケレバナラヌト私ハ思フ(拍手)間ニ合セ
ニヤッテ行クト云フ政治ナラバ別デアルガ、
眞劍ニヤッテ行カウト云フノナラバ、今日ノ
過渡時代ニ對シテハ、今日ノ文明ヲ次ノ文
明ニ移シテ行クト云フコトニ付テ、眞劍ナ
努力ガ私ハ必要デアルト思フ者デアリマス
(拍手)
斯ウシテ參リマスレバ、結局私共ハ勞働
問題ニ付テ一言ヲ費サナケレバナラナク
ナッテ來ルノデアリマス、一體一昨日モ貴族
院ニ於テ、藤原銀次郞氏ハ闘爭ト云フコト
ニ付テ可ナリニ論ゼラレテ居ルヤウデアリ
やく、サウシテ日本勞働總同盟ノ色々ノ刷
物ヲ持ッテ來テ、其刷物ノ中ニハ「吾等ハ勞
働階級ト資本家階級トガ兩立スベカラザル
コトヲ確認ス」ト云フコトニ對シテ、餘程危
險思想デモアルカノ如クニシテ、勞働組合
ニ對スル反對ノ理由ノ根源トサレテ居リマ
ス、只今ノ勞働組合ニハ事ニ依レバ共產
主義ヲ多少帶ビタモノガ絕對ニナイトハ言
ヘナイデアリマセウ、且又右翼ノ團體ノ方
三、殆ド旣成政黨ニ接近シテ居ル團體ノ
アルコトヲモ亦認メナケレバナラヌト思ヒ
マス、此一番極端ナル最左翼ノ言葉ヲ持ッテ
來テ、勞働團體ノ總テガ斯樣デアルト斷定
サレテ、勞働組合ニ反對ヲサレルコトハ、
私ハ議論ノ根據ガ間違,テ居ルト申上ゲル
ノデアリマス(拍手)
一體政友會ノ諸君ガ勞働組合ニ對シテ、
贊成デアルノカ反對デアルノカ、私ハ何時
マデ諸君ガ今日ノ狀態デ、此社會ヲ押シテ
行ケルカドウカト云フコトニ付テハ、疑問
ヲ持ッテ居ル者デ、今日ノ場合寧ロ私ハ勞働
組合ハ公認サレテ居ルコトガ、諸君ノ爲ニ
モ利益デアルト思ハザルヲ得ナイノデアリ
や っ、今日諸君ハ色々ノ問題ニ對シテ、悉
ク反對サレテ居リマス、諸君ノ贊成サレナ
ケレバナラヌモノニ對シテマデ、反對ヲサ
レテ居リマス、是ハ諸君自身ガ指導精神ヲ
持タレナイト云フ一ツノ裏書デアルト私ハ
思フ、例ヘバ用語ノ不十分以外ニハ言ヒ
樣ノナイ幣原外相ノ言葉ニ對シマシテモ、
失言問題ニ付テ、隨分罵詈讒謗ヲ擅ニサレ
テ居リマスガ、ソレハ委員會バカリデナク、
本會議ニ於テモ、サウ云フ態度ヲ執ラレテ
居ル、サウシテ大幹部ガ左樣ナ行動ヲ執ラ
レテ、平議員ノ方モ之ニ非常ナ策動ヲサレ
テ居リマス、サウシテ終ニハ委員長ノ机ヲ
破壞シ、速記臺ヲ破壞シテ、市井無賴ノ徒
ト雖モ餘リニヤラナイ行動ヲヤラレタコト
ハ、如何ニ何デモ私ハ遺憾ニ思フ、私共ハ
告訴ノ取下ゲマデシテ、諸君ガ冷靜ニ歸ラ
レルコトヲ求メタ者デアリマス、私ハ決シ
テ諸君ガ怖イノデハアリマセヌ、議會政治
ノ信用ガ堕落サレル所ニ、私共ノ怖サガアッ
タノデアリマス(拍手)國民政治ニハ何等ノ
關係ガナイ所ノ形式問題ニ付テ、數日ニ亙。ツ
テ、左樣ナ暴行行爲ニ出デラレルコトハ、
上ハ陛下ニ對シ奉リ、下ハ國民ニ對シテ
何ノ面目ガアルノデアルカ(拍手)
〔發言スル者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=137
-
138・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 靜肅ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=138
-
139・眞鍋儀十
○眞鍋儀十君(續) サウシテ各委員會ニ於
キマシテ、今日マデ前例ノナイヤウナ長イ
時日ヲ費シテ、諸君ハ專心議事ノ引延シ策
ニ努力サレテ居リマシタガ、併シ其引延シ
ヲサレタ中ニハ、私共ガ驚クベキコトニハ、
諸君ガアレ程熱求サシタ救護法ニ對シテマ
デ、競馬法ニ付テ議論ヲ鬪ハサレテ、議事
ヲ遷延セラレタコトハ、洵ニ遺憾デアルト
思フ競馬法ノ財源ヲ以テ救護法ニ充テル
ト云フコトハ、砂田重政君ニ御問ニナレバ御
分リニナルト思フ、砂田君ハ昭和四年ノ二
月八日ニ、第五十六議會ノ競馬法ノ委員會
デ、平川委員ノ質問ニ對シテ、砂田參與官
ハ「將來收入ガ馬事振興ニ充テヽ餘ッタモ
ノハ一般ノ社會事業ニ投ズルコトニナルベ
キ本質ニナッテ居リマス」ト申シテ居ラレマ
ス(拍手)
諸君ハ斯ウ云フ必死的ノ反對ヲセラレタ
ニ拘ラズ、旣ニ諸君ノ反對中ニ、我黨ニ於
キマシテハ資本家ニ對シテハ企業ノ統制
ニ關スルモノ、勞働者ニ關シマシテハ勞働
組合法、中小商工業者ニ對シマシテハ營業
收益稅、地主ニ對シマシテハ地租ノ輕減、
農民大衆ニ對シマシテハ來ルベキ小作法、
サウシテ一般ニハ消費稅ノ輕減、無辜ノ被
告人ニ對シマシテハ刑事補償法、婦人ニ對
シマシテハ公民權、小兒ニ對シマシテハ保
險法ノ如キヲ、旣ニ私共ハ可決致シテ居ル
ノデアリマス、斯ウシテ外ハ平和ノ確立ニ
努力シ、內ハ經國安民ニ力ヲ盡シテ居ル現
內閣ガ、ドウ考ヘマシテモ、私共ハ諸君カ
ラ不信任サレル理由ニ至ッテハ、毛頭發見ス
ルコトガ出來ナイノデアリマス、恐ラク諸
君ハ年中行事ノ一ツトシテ、最後ニ本案ヲ
提出シナケレバナラナイト御考ニナッタノ
ガ、不信任案提出ノ本當ノ理由デアリマセ
ウ、流石ニ二十年來ニ亙ッテ、自由黨ノ血ヲ
受ケテ居ラレル諸君トシテハ、此儘泣寢入
ヲスルト云フコトハ、洵ニ殘念デアッタニ相
違ハナイケレドモ、併シドウ考ヘテモ、御
出シニナッタノガ無理デアル、殊ニ少數ヲ以
テ必然葬ラルベキ運命ニ置カレテアルノデ
アリマス、私ハ諸君ガドウシテモ倒閣ニ向"
テ專念ナサルヨリハ、寧ロ本然ノ性ニ立歸,
テ、大義正道ヲ御歩キニナッタ方ガ、倒閣ノ
目的ガ早ク達セラレルデアラウコトヲ考ヘ
ルノデアリマス
私ハ諸君ノ出サレマシタ不信任案ニ對シ
テハ、ドウ考ヘテ見テモ贊成ノ理由ハ絕對
ニナイコトヲ表明致シマシテ、此演說ヲ終
ル者デアリマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=139
-
140・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 兒玉右二君
〔兒玉右二君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=140
-
141・兒玉右二
○兒玉右二君 本案ニ贊成ノ意見ヲ述ベヤ
ウト思ヒマス、私ノ最モ敬愛スル櫻井君ノ
先刻ノ御話ニ、滿洲ノ兩鐵道ガ政友會內閣ノ
時ニ出來タカノヤウナ御言葉ガ確ニアッタ
ヤウニ記憶致シマスガ、ソレハ櫻井君ハ何
カノ御間違デアル、打通、吉會兩線、之
ヲ斷行シタノハ幣原サンガ外務大臣ノ時デ
アッタコトニ一寸訂正致シテ置キマス、而シ
テ是ハ民政黨ノ諸君モ定メシ御同感ニ相成
ルデアラウト思ヒマスガ、私ノ所へ電報ガ
來タ、其他永井君ノ所ヘモ、或ハ來テハ居
ランカト思ヒマスガ、其電報ニ依リマスト、
滿鐵理事等ガ交渉ノ其模樣ハ、請負金額ヲ
借款ニ直シテ、科子ハ全部免除シテ、而シ
テ竝行線ニ關スル事柄ハ、是ハ事後ニ延長
スルト云フヤウナ形勢ニアルト云フノデ、
大連、奉天ノ人士ハ非常ニ騒擾ヲ起シテ居
ルト云フコトデアリマス、是ハ何モ政黨政
派ニ關係ノナイコトデアリマシテ、恐ラク
ハ諸君ニ置カセラレテモ、斯ノ如キ滿鐵
ニ關スル軟弱ナル論調ガ起ルコトハ定メシ
御嫌ヒデアラウト思フノデアル、私共ハ此
際特ニ申上ゲテ置キタイノハ、民政黨ノ諸
君ノ中ニモ强硬ナル外交論者ガアッテ、私共
常ニ御目ニ懸ル機會ガ能クアルノデアリマ
ス、恐ラクハ諸君ノ中ニ、少シク外交ノ如何
ヲ御承知ニ相成ル方ニシテ、幣原サンノ外
交ヲ、國家ノ爲ニ悅ブベキ外交ト思ハルヽ
方ハ諸君ノ中ニ一人モナカラウト思ヒマ
ス、(「國民全部悅ンデ居ル」ト呼フ者アリ)
サウ云フ冗談ハ拔キニ致シマシテ、私共ガ
現在ノ日本國家ノ前途ヲ
〔發言スル者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=141
-
142・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 靜肅ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=142
-
143・兒玉右二
○兒玉右二君(續) 考ヘテ見マシタ時ニ、
私共是ハ永井柳太郞君ナドモ能ク御記憶デ
アリマセウガ、確カ五十一一議會デアッタラウ
ト思フガ、私ガ豫算總會ニ於テ三聯單、釐
金稅、專照單ノ質問ヲ幣原外相ニ申上ゲタ
コトガアル、幣原外相ハ如何ナル機ミデアッ
タカ御忘レニ相成ッテ居ッタ、永井君ガ私ノ
議席ヘオ出デニナッテ、懇々御辯明ニナッタ
コトハ、永井君能ク御記憶デアリマセウ、
一體幣原ト云フ御方ハ、支那ノ土地ハ一遍
モ踏ンダコトハナイ方ダ(拍手)而シテ現在
ノ民族自決ノ精神カラ論ズル外交ノ骨子ヲ
捉ヘテ、而シテ黃色人種ノ幸福ニ寄與スル
ト云フ外交家ガ、支那ノ土地ヲ知ラズ、釐
金稅ヲ知ラズ、專照單ヲ知ラナイヤウナ外
務大臣デハ、竟ニ外交ノ重キヲ託スルニ足
ラナイモノト斷言スルニ不都合ハナカラウ
(拍手)私共ハ現在ノ日本帝國ノ將來ヲ鑑ミ
テ、其大局ニ頗ル迂遠デ困ルノデアル、私
ハ何モ新聞記者ニ此應援ヲ求メルト云フ譯
デハゴザイマセヌケレドモ、少クモ輿論ノ
先驅者デアル、新聞記者諸君ガ書イタ幣原
外交ニ對スル現在ノ興論ニ付テハ、民政黨
ノ諸君モ、國民トシテ多少御參酌相成ルコ
トガ必要デハナカラウカト思フノデアリマ
ス、其新聞記者、東京日日、東京朝日、時
事、國民、少クモ報知斯聞ハ民政黨ノ機關
紙カノヤウニ思ッタガ、此報知新聞マデモ、
幣原外交ノ軟弱ニ對シテ一大鐵槌ヲ加ヘテ
居ル(拍手)之ヲ讀上ゲルト云フコトハ、甚
ダ手數デアリマスカラ、輿論ノ趨勢ニ鑑ミ
ラレル諸君ハ、自分等ノ抱持シテ居ル外務
大臣ガ、日本帝國ノ國運ノ爲ニ甚ダ面白カラ
ヌ外務大臣ナリトスルナラバ、諸君自ラ之
ニ處決ヲ求メラレルガ、國家國民ノ慶福ナ
リト私ハ信ズルノデアリマス(拍手)五十六
議會、卽チ田中內閣ノ時ニ、諸君ヨリ今夜
ノ如キ不信任案ガ提案サレマシチ、其提出
ノ理由ハ、濱口現總理大臣ガ此壇上ニ於テ
述ベラレタ、之ニ對シテ私ガ此記憶ヲ新タ
ニスルコトノ必要ハ、權利トシテ感ズルヨ
リモ義務トシテ痛感サレルコトガ必要デア
ラウト思フ(拍手)關稅稅率ニ關シテ、是ハ濱
ロサンノ御議論、關稅稅率ニ關シテ、國民政
府ノ高壓的態度ニ遇ウテ、卒然トシテ態度
ヲ改メ、實施ノ前々日タル三日前ニ調印ノ
手續ヲ取ッタコトハ、政友會外交ノ一大失態
デアル(「其通リ」ト呼フ者アリ)先ヅ其通
リナドヽ云フコトノ御批評ハ止メテ貰ッテ
御聽キヲ願ヒタイ、政友會外交ノ一大失態
デアル、濟南ノ虐殺ト出兵ガ第一一ノ失態デ
アル、滿洲某重大事件ガ第三ノ失態デアル、
商租權等ノ權益ヲ確保シ得ナカッタノガ第
四ノ失態デアルト、此壇上ニ於テ仰シヤッタ
(「其通リ」ト呼フ者アリ)其通リデアリマセ
ウ、而シテ此關稅政策ト云フコトニ想ヒ到
ルナラバ、新關稅ノ協定ハ何時出來タ、昨
年ノ十二月二十九日ニ出來タ、而シテ幣原
外務大臣ハ、列國ト共ニ一箇月間ノ期限ヲ
置イテ、此關稅ノ實施ノ承認ヲ求メラレタ
デハナイカ、然ルニ十二月二十九日ニ之ヲ
發布シテ、一月一日ヨリ支那ハ無斷デ之ヲ
斷行シ、從價稅五割、從量稅十割乃至十一
割ノ高率ヲ課ケテ、日本帝國ノ經濟的ノ同
盟ノ關係ヲ滅茶々々ニ壞シタノミナラズ、
關稅稅率ニハ必ズ釐金稅撤廢ト云フコトガ
日置大使ヲ大使ニスル時ノ條件デアッタ、然
ルニ其關稅稅率ノ條件-世界列國ヲ日本
帝國ガ誘ッタ是ガ條件デアル、其條件デアル
ニモ拘ラズ釐金稅ハ本年ノ四月一日ヨリ之
ヲ斷行スルト云フコトヲ、支那ガ勝手ニ表
明ヲスル所ヲ見ルト、此壇上デ濱口總理大
臣ガ言ハレタヤウニ、三日間ノ期限ニ協定
ニ應ジタコトハ外交ノ失態デアルトスレ
バ〓金稅ノ撤廢ヲ斷行シ得ナイ外交ノ談
判ハ、濱口內閣ノ世界ヲ欺イタ不信ノ外交
デアルト言ハナケレバナラヌ(「ノー〓〓」)
事實ヲ物語ルコトダケハ公平無私ニ御聽キ
ヲ願ヒタイノデアル
第二ニハ濱口君ガ此壇上デ仰セニナッタ
コトハ、滿洲ノ某重大事件、(「其通リ」ト呼
フ者アリ)其滿洲ノ某重大事件トハ一體ド
ウ云フコトデアル、滿蒙ニ於ケル斯ノ如キ
重大ナル事柄ヲ、中外ノ疑ヲ解カナケレバ、
日本帝國ノ外交ノ瑕瑾デアルト濱口君ハ此
壇上デ述ベラレタ、而シテ此問題ガ、宮中
ノ陰謀ニ依シテ田中內閣ガ倒レタ、而シテ此
後ニドウダ、濱口總理大臣ガ宰相ノ職ニ就
カレテ、同時ニ中外ノ疑ヲ拂ハナケレバイ
カヌカト云フ、其中外ノ疑惑ヲ何時解カレ
タカ、我黨ノ植原悅二郞君ヨリ此質問ヲシ
タ時ニ、濱口君ノ御答辯ニ曰ク、疑ヲ解ク
時ト、解カナクテモ宜イ時ガアルト御答辯
ニナッタ、諸君、是ハ洵ニ失禮ナガラ、總理大
臣濱口君ハ人格者デアルト思ヒキヤ、實
片々タル三百代言ノ龜鑑デアルト、私ハ承認
シテ居ルモノデアリマス(拍手)私共ガ滿蒙
問題ヲ論ズル時ニハ、諸君ノ中ニモ御同感ノ
方ガアルデアリマセウ、私共ハ此滿蒙問題ノ
現狀ヨリ見テ、幣原外務大臣ノ執ラレタル其
ヤリ方ニ付テハ、諸君ト共ニ遺憾ナコトハ
澤山アルノデアル、柳河縣ノ東山農場ノ如キ
ハ何タル失態デアリマス、柳河縣ノ東山農
場ニ六百五十町步ノ開墾ガ出來タト云フコ
トハ誰デモ知シテ居ル、此開墾ガ出來タ柳河
縣ノ東山農場ナルモノハ、日本人ト朝鮮人
ガ此中ニ入ッテ開墾ニ從事シテ居ル、此從事
シテ居ル者ヲ、昨年ノ六月一日ニ、柳河縣
知事ガ首ニ綱ヲ著ケテ-支那デハ首ニ綱
ヲ著ケテ縛ルノデアルガ、首ニ綱ヲ著ケテ、
此農場ヨリ奉天ノ方ニ追捲ッタデハナイカ、
斯ウ云フ事ハ、事柄ハ小サイケレドモ、實
ニ重大ナ問題デアル、此柳河縣ノ農場ノ一
團ガ、奉天ノ總領事館ニ行,テ談判ヲスル
ト奉天ノ領事館デハ、斯ノ如キコトハ幣
原外相ノ部下デハ中〓話ガ付カヌ、之ヲ張
學良ニ行ッテ訴ヘルガ宜イト云フノデ、張學
良ニ行フテ訴ヘタ所ガ、張學良ノ曰ク、オ前
ノ國ノ外務大臣幣原君ハ、常ニ支那ト親善
ノ誼ヲ唱ヘテ居ル者デアル、オ前ノ國ガ俺
ノ國ニ來テ、滿鐵ノ後援デ大キナ農場ヲ開
墾スルト云フコトハ、是ハ他ノ國ヲ侵略ス
ルモノデアッテ、幣原君ハ之ニ決シテ贊成ヲ
シナイカラ、オ前達ハ國ニ歸ッテ幣原外務大
臣ニ之ヲ訴ヘルガ宜イト、遂ニ泣ク々々彼等
ハ東山農場ヲ引揚ゲタノデアリマス(拍手)
斯ノ如キコトヲ數ヘ上ゲルナラバ澤山ア
ル、此東山農場ノ事實ハ公文書ニ現ハレテ
居ルノデアル、外務省ノ諸君ハ能ク御承知
デアリマセウ、此東山農場ノ事實ニ徵シテ
見テモ、日本帝國ノ臣民ノ權利ヲ保護スル
コトハ、幣原外相ニ依ッテハ、日本帝國ノ國
權ハ斷ジテ保護ハ出來ナイモノデアルト僕
ハ斷言スル、幣原外相ハ大正十三年七月
日加藤內閣當時、日米ノ條約ガ出來テ、
移民法ガ可決決定サレタ時ニ、此議會ニ於
テ、此壇上ニ於テ斯ウ云フ御演說ヲ爲サッテ
居リマス、日本人排斥論者ト雖モ、近頃ハ
日本人ガ劣等人種デアルト云フガ如キ議論
ハ注意シテ避ケテ居リマス、唯彼等ノ言フ
所ハ、日本人ハ米國人トハ油ト水トノ關係
デアル、油ト水トハ決シテ融合スルモノデ
ナイノデアル、而シテ日本人ハ外國人ニ同
化セラレザルモノデアル、同化セラレルト
云フコトハ日本人ニハ出來ナイト米國人ハ
之ヲ見テ居ル、故ニ日本人排斥ノ聲ハ重
要ナル前提トナッテ居ルケレドモ、日本人種
ガ劣等人種デアルト云フコトニ付テハ、決
シテ吾々ハ承服スルコトハ出來ナイ、是八
諸君、水ト油デアルト云フヤウナ觀念ガ、
私共ハ對支外交ニ向ッテ幣原サンガ更ニ何
等ノ知識ガ無イト思ッタガ、焉ゾ知ラン對米
外交ノ根本義ニ付テモ、亞米利加スラ完全
ニ解釋シ得ナイ、實ニ驚キ入ッタル外務大臣
デアルト私ハ斷言スル
今囘ノ軍縮ニ付テハ、諸君ハ既ニ聽キ倦
イテ居ラレルデアリマセウ、私共ハ日本ノ
大使ガ日本ヲ立ッテ、亞米利加ヲ通ッテ倫敦
ニ行カレル時ノ聲明モ、勿論諸君ハ能ク御
記憶デアリマセウ、而シテ其時ニ日本全權
ノ大ナル「モットー」ハ何デアッタカ、脅威ヲ
受ケズ、脅威サレズ、吾々ハ眞ニ自主的ノ
上ニ立ッテ云々ト云フノガ、此大使諸君一行
ノ聲明ト吾々ハ承ッタノデアル、然ルニ「リ
ード」ガ倫敦カラ歸ッテ、亞米利加ノ上院ノ
外交會デハ何ト答ヘテ居ル、日本ノ大使ナ
ドハ降服ト云フコトヲ忘レテ居ッタ、自分ガ
降服シタト云フコトニ氣ガ付カナカッタ、降
服ト云フコトハ勿論「サレンダー」ト云フ言
葉デアリマセウ、私共ハ子供ノ時ヨリ降
參ヲシナイト云フコトニ付テ、大和民族ハ
一種ノ誇リヲ持ッテ居ルモノデアル(拍手)
英吉利ノ艦隊ガ北洋艦隊ニ打沈メラレル時
ニ、强キ獨逸ノ艦隊ハ、英吉利ノ劣弱ナル、
劣勢ナル艦隊ニ降服ヲ勸メタ、此降服ヲ勸
メラレタ時ニ、彼等ハ
〔發言スル者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=143
-
144・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 靜肅ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=144
-
145・兒玉右二
○兒玉右二君(續) 私ハ特ニ海軍大臣ニ御
聽キヲ願ヒタイト思フノデアリマスガ、此降
服ヲ勸メラレタ時ニ、英吉利ノ艦隊ハ「チユ
ードル」王朝以來吾ガ英吉利ニハ降服ナシ
ト云フ言葉ヲ以テ答ヘタノデアリマス(拍
手)日本ノ海軍ノ大使諸君ガ-亞米利加ノ
大使ガ日本ノ大使ハ降服ヲシタモノナリト
云フ斷言ヲ私共聞クニ至ッテ陛下ノ使命
ヲ帶ビテ行カレタ海軍ノ諸君ハ、如何ナル
感想ヲ以テ陛下ニ見エ、而シテ海軍ノ諸
君ニ見エルノ御考デアルカ、私ハ衷心ヨリ
國家ノ爲ニ之ヲ悲シム者デアリマス(拍手)
此頃ハ桑港或ハ其他ノ太平洋沿岸ノ新聞
ハ何ト書イテ居ル、日本ハ旅順港ニ
於テ開城ヲスルデアラウ、開城卽チ「キヤプ
チユレーシヨン」開城ヲスルデアラウト亞
米利加ノ新聞ハ書イテ居ルノデアリマス、
私共ハ千九百三十六年ニハ、日本ノ海軍ハ
科學的ニハ敗北ヲスル年月デアル、而シテ
支那ハ吾ガ日本帝國ニ向ッテ、何處マデモ三
十六年ニハ滿洲奪還ノ計畫ヲ持ノテ居ルコ
トモ、諸君御承知デアリマセウ、苟モ國家
ヲ憂フル者ナラバ、此計畫ニ向フテ滿腔ノ力
ヲ盡サナケレバナラヌト云フコトニハ反
對黨ノ諸君モ御不同意ハナカラウト私ハ思
フノデアル(拍手)此問題ガ私共最モ必要ナ
時デアッテ、而シテ此滿蒙ノ解決ナルモノガ、
到底幣原外務大臣ニ依ッテハ爲シ能ハザル
モノデアルト云フコトニモ、滿堂ノ諸君、
心ノ中ニハ御同意デアリマセウ(拍手)昨年
ノ九月ノ二十日頃、是ハ諸君ガ能ク御承知
デアラウガ、第二「インターナショナル」ノ
總裁ヲシテ居ル「バンデルベルト」ガ、日本
ニヤッテ參リマシタコトモ、殊ニ無產黨ノ諸
兄ハ能ク御承知デアリマセウ、此「バンデル
ベルト」ガ日本ニヤッテ來タ時ニ、是ハ日本デ
ハ第三「インターナシヨナル」ト云フコトガ
能ク分ッテ居ルノデアル、此「パンデルベル
ト」ガ第二「インターナシヨナル」ノ頭目デ
アルコトモ御承知デアル、今ノ「マクドナル
ド」ハ副總裁デアリマス、此「バンデルベル
ト」ガ工業倶樂部デ、國際聯盟ノ諸君等ニ招
カレテ演說ヲ致シマシタ、共演說ハドウ云
フ演說ヲシタカト云フト、日本ハ平和ヲ好
愛スルノ餘リ、軍縮問題ニ對シテ多大ノ犠
牲ヲ拂ッタコトハ、吾々第二「インターナシ
ヨナル」ノ人トシテハ、敬意ヲ拂ハナケレバ
ナラヌガ、亞米利加ハ洵ニ最小ナル犠牲デ、
太平洋ノ將來ニ對シテ吾々ハ
〔「馬鹿言ヘ」ト呼ヒ其他發言スル者ア
リ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=145
-
146・藤澤幾之輔
○議長(〓澤幾之輔君) 靜肅ニ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=146
-
147・兒玉右二
○兒玉右二君(續) 非常ナ憂慮ヲ持ツモノ
デアルト云フ言ヲシテ居ルノデアリマス、
然ルニソレガ翌日ノ新聞デハ、外務省ガ抹
殺シタノカ、外務省ノ書記官ガ飜譯シタノ
デアリマスカ、外務省ノ書記官ノ飜譯ニハ、
今私ガ言ウタヤウナ演說ノ筆記ハ、全部取
消シテアルノデアル、私共ハ斯ウ云フコト
ハ、少クモ世界ノ紳士デアリ、思想界ノ大
家デアル「バンデルベルト」ニ對シテ、外務
省ガ之ヲ抹殺シタト云フコトハ、日本ノ軍
縮會議ノヤカマシイ時デアッタカラ、是ダケ
ノ大家ノ言ヲ、軍縮ニ大犠牲ヲ拂ッタト云フ
言ヲ抹殺シタコトハ、是モヤハリ外務省ノ
陋劣ナル手段デハナカラウカト私ハ思フ
(拍手)斯樣ナコトハ日本ノ今迄ニハ多タナ
カッタノデアル、此頃段々ト斯ノ如キ陰險ナ
ルコトガ出テ來タト云フコトハ、政權慾ノ
爲ニ何事ヲモ犠牲ニスル······(「政友會ノ事
ダ」ト呼フ者アリ)民政黨一派ノ陋劣ナル心
事ガ、日本ノ道德ヲ傷ケルモノデアルト斷
言スルモノデアル(拍手)
私ガ殊ニヲカシイト思フノハ、諸君ハ金
解禁ヲ議論サレル時ニ、金解禁ハ非常ナ弊
害ガアルト言ハフモノナラバ、血眼ニナッテ
諸君ハ怒ラレル、又景氣ガ少シ好イト言ヘ
バ喜ンデ之ニ非常ナ敬意ヲ表サレル、ソ
レモ本當ノ景氣ナラ喜ンデモ宜イガ、噓ノ
景氣ハ糠喜ビニ外ナラヌノデアル··
〔「馬鹿言ヘ」ト呼ヒ其他發言スル者多
シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=147
-
148・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 靜肅ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=148
-
149・兒玉右二
○兒玉右二君(續) 先刻モ山口君ガ痛切ナ
ル議論ヲシテ居ッタガ-幾ラ諸君ガ其處
デ彌次ラレテモ、選擧區ニ御出デニナリマ
シテ、此景氣ハドウダト質問サレタ時ニ、
萬事ハ解決スルダラウト私ハ思フノデアル
(拍手)諸君、私共ガ諸君ト考ヘナケレバナ
ラヌコトハ、外交ノ上カラ見、英吉利ノ「チ
ヤーチル」或ハ外交カラ見ル佛蘭西ノ「ポア
ンカレー」ナンカハ、金解禁ヲ斷行スルノ
ニ、三年八箇月苦心ヲシテ、是ノ準備ニ汲
汲ト努メタデハナイカ、英吉利ノ「チヤーチ
ル」ハ-英吉利ノ「チヤーチル」ハ加奈陀
ト墺地利ヲ之ヲ外交的ニ·
〔發言スル者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=149
-
150・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 靜肅ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=150
-
151・兒玉右二
○兒玉右二君(續) 外交的ニ之ヲ〓究ス
ベク「ドウヴアー」海峽ノ渡守マデ「チヤーチ
ル」ハ之ヲ助ケタデハナイカ(拍手)「ポアン
カレー」ノ如キハ、彼ハ「カフエー」ニ行ヲテ
マデ其窮狀ヲ調ベテ、三年八箇月營々トシ
テ國民ノ慘狀ヲ調ベテ、而シテ其新平貨デ、
打切リヲシタノハ土曜日ノ晩ニ
〔發言スル者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=151
-
152・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 靜肅ニ願ヒマス-
生方君靜肅ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=152
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153・兒玉右二
○兒五右二君(續) 打切リヲシタデハナイ
カ、土曜日ノ晩ニ金解禁ノ打切リヲ發表ヲ
シテ、日曜ノ日ニ議會ヲ開イテ天下ニ金解
禁ヲ聲明シタデハナイカ(拍手)日本ノ現內
閣ハ金解禁ト云フコトニ一體少シノ準備ガ
アッタカ(拍手「アッタ〓〓」ト呼フ者アリ)若
シアッタト言フナラ國民ヲ欺ク聲デアルト
私ハ斷言致シマス、外交ノ軟弱ナル事斯ノ
如ク、金解禁ナント云フヤウナ唯選擧ノ對
策ニ用ヒタ金解禁ガ、國民ノ幸福ヲ傷ケル
コト、世界的ノ不景氣ダ何ダト云フ中ニ段
段ト農民ハ死ンデ行クデハナイカ、餓エテ
死ンデ居ルデハナイカ(拍手)諸君ガ世界的
ノ不景氣ト言ッテ空吹ク風ノ如ク、唯政權ニ
戀々トスル共間ニ(拍手)國民ハ死シデ居ル
デハアリマセヌカ(拍手)吾等ハ斯ノ如キ日
本ノ帝國ノ國民ヲ鏖ニスルヤウナ内閣
〔發言スル者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=153
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154・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 靜肅ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=154
-
155・兒玉右二
○兒玉右二君(續) 一日モ早ク倒レテ其罪
ヲ上陛下ニ謝シ奉リ、此贋造的選擧ノ責任
ヲ下國民ニ謝スルト云フコトガ、最モ立憲
的現內閣ノ行動デアラウト深ク考ヘテ、本
案ニ贊成スル者デアリマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=155
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156・作田高太郎
○作田高太郞君 討論終局ノ動議ヲ提出致
シマス、卽チ本案ニ對スル討論ハ此程度ヲ
以テ終局セラレンコトヲ望ミマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=156
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157・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 作田君ノ動議ニハ
成規ノ贊成ガアリマス、仍テ動議ハ成立致
シマシタ(拍手「反對」其他發言スル者多シ)
此際安達內務大臣ヨリ發言ヲ求メラレテ居
リマスカラ、之ヲ許シマス、--安達内務大
臣(拍手)
〔國務大臣安達謙藏君登壇〕
〔「引込ミ給へ」「濱口ヲ出セ」其他發言
スル者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=157
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158・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 靜肅ニ願ヒマス
〔「總理大臣ヲ出セ」「一體無禮ヂヤナイ
カ」其他發言スル者多ク離席スル者ア
ツ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=158
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159・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 靜肅ニ願ヒマ
ス-津雲君著席ナサイ-著席ナサ
1-著席ナサイ-著席セナケレバ
〔發言スル者多ク議場騷然〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=159
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160・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 靜ニナサイ-靜
ニナサイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=160
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161・安達謙藏
○安達國務大臣 私ハ玆ニ政府ヲ代表シテ
本決議案ニハ絕對反對ノ意思ヲ表シマス
(拍手)
〔發言スル者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=161
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162・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 作田君ノ討論終結
ノ動議ノ採決ヲ致シマス-作田君ノ動議
ノ採決ヲ致シマス-作田君ノ動議ノ採決
ヲ致シマス、尙ホ此際投票ハ記名投票ヲ以
テ致シマス、是ヨリ記名投票ヲ行ヒマス、
作田君ノ動議ニ贊成ノ諸君ハ白票-1作田
君ノ動議ニ贊成ノ諸君ハ白票、反對ノ諸君
ハ靑票-作田君ノ動議ニ贊成ノ諸君ハ白
票、反對ノ諸君ハ靑票、閉鎖-氏名點呼
ヲ命ジマス
〔書記官氏名ヲ點呼ス〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=162
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163・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 投票漏ハアリマセ
ヌカ
〔「アリマス」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=163
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164・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 投票漏ハアリマセ
ヌカ
〔「ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=164
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165・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 投票漏レナシト認
メマス-投票函閉鎖-開匣-開鎖
〔書記官投票ノ數ヲ計算ス〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=165
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166・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 投票ノ結果ヲ書記
官長ヨリ報〓セシメマス
〔田口書記官長朗讀〕
投票總數四百八
可トスル者白票二百三十九
否トスル者靑票百六十九発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=166
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167・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 討論ハ終局致シマ
シダ
〔參照〕
作母君提出討論終局ノ動議ヲ可トスル議
員ノ氏名左ノ如シ
石原善三郞君石橋茂君
石川久兵衞君井本常作君
井上剛一君一宮房治郞君
一柳仲次郞君飯塚春太郞君
今堀辰三郞君猪股謙二郞君
原吉郞君原脩次郞君
原夫次郞君服部〓一君
服部英明君濱野徹太郞君
長谷川陸郞君林平馬君
春島東四郞君坂東幸太郞君
西村金三郞君西村丹治郞君
西脇晉君西田郁平君
本田恒之君本多眞喜雄君
堀內良平君戶井嘉作君
戶部良祐君戶澤民十郞君
道源權治君富田幸次郞君
當眞嗣合君中馬興丸君
小野重行君小野耕一郞君
小俣政一君小峰滿男君
小久江美代吉君小山倉之助君
小川〓太郞君岡田素臣君
岡本實太郞君岡野龍一君
大植〓左衞門君大島要三君
大西正幹君大里廣次郞君
大麻唯男君奧山龜藏君
渡邊泰邦君加藤睦之介君
加藤六藏君川崎克君
河西豐太郞君勝田永吉君
勝正憲君鏑〓忠正君
風見章君河波荒次郞君
簡牛凡夫君漢那憲和君
神部爲藏君横山勝太郞君
橫山金太郞君吉川吉郞兵衞君
高橋秀臣君高橋守平君
高橋元四郞君高橋壽太郞君
高橋.欽哉君高瀨梅吉君
高田耘平君高島兵吉君
田中祐四郞君田中万逸君
田中武雄君田中養達君
田中隆三君田中貢君
田崎武男君武內作平君
武富濟君武谷甚太郞君
武知勇記君竹田儀一君
賴母木桂吉君多田滿長君
俵孫一君谷原公君
添田敬一郞君土屋寛君
津原武君中島琢之君
中村繼男君中村啓次郞君
中亥歲男君中崎俊秀君
中野正剛君仲井間宗一君
長塚忠策君長尾半平君
長野綱良君永井柳太郞君
村上國吉君村上紋四郞君
村岡吾一君村松恒一郞君
紫安新九郞君生方大吉君
鵜澤宇八君牛場清次郞君
海野數馬君氏家〓君
野田文一郞君野澤卯市君
野中徹也君野村嘉六君
栗原彥三郞君櫛部荒熊君
工藤鐵男君黑金泰義君
栗山資四郞君山本實彥君
山本厚三君山田道兄君
山田毅一君山邊常重君
山内亮君山道襄一君
山枡儀重君山崎傳之助君
安田耕之助君安田正男君
八並武治君八木逸郞君
矢野庄太郞君松田源治君
松井郡治君松井文太郞君
松尾四郞君松本忠雄君
松村謙三君前田房之助君
前田卵之助君眞鍋儀十君
枡谷寅吉君牧山耕藏君
增田義一君町田忠治君
藤田若水君古島義英君
古屋慶隆君福田五郞君
深水〓君小山邦太郞君
小山谷藏君小山令之君
小泉又次郞君小坂順造君
小西和君小村俊一君
小池仁郞君古島宮次郞君
古賀政一君木檜三四郞君
海老澤爲次郞君田昌君
寺島權藏君手代木隆吉君
赤塚五郞君阿由葉勝作君
靑木亮貫君荒川五郞君
安達謙藏君淺川浩君
佐藤正君佐藤與一君
佐藤謙之輔君佐藤啓君
佐藤喜八郞君佐竹庄七君
櫻內辰郞君櫻內幸雄君
齋藤隆夫君齋藤太兵衞君
澤本與一君澤田利吉君
作田高太郞君木村秀興君
木村義雄君木原七郞君
北田正平君北浦圭太郞君
北原阿智之助君岸衞君
菊池良一君由谷義治君
三木武吉君三七七磐君
三田村甚三郞君三浦虎雄君
水上齊之助君宮澤胤勇君
宮崎高四君〓水德太郞君
〓水長〓君篠原陸朗君
篠田有德君斯波貞吉君
信太儀右衞門君鹽田團平君
下元鹿之助君重松重治君
平野光雄君平野鍋吉君
平川松太郞君平山岩彥君
一松定吉君廣瀨德藏君
比佐昌平君久留義〓君
森達三君森峰一君
森田茂君最上政三君
百瀨渡君粟山博君
關矢孫一君關口志行君
鈴木富士彌君鈴木寅彥君
鈴木憲太郞君杉浦武雄君
菅村太事君末松偕一郞君
〓瀨一郞君小山松壽君
後藤亮一君
否トスル議員ノ氏名左ノ如シ
犬養健君犬養毅君
井上孝哉君井上知治君
石嶙敏行君石井次郞君
磯部〓吉君瀨一二君
出井兵吉君今井健彥君
飯村五郞君岩本武助君
猪野毛利榮君板谷順助君
林七六君林讓治君
鳩山一郞君原惣兵衞君
秦豐助君濱田國松君
八田宗吉君西岡竹次郞君
西村茂生君星廉平君
星島二郞君本田義成君
堀切善兵衞君保良淺之助君
東〓實君東條貞君
士弗權大君豐田收君
床次作二郞君大口喜六君
大崎〓作君大野伴隨君
大石倫治君太田正孝君
小野寺章君岡田忠彥君
若宮貞夫君加藤知正君
加藤久米四郞君加藤鐐五郞君
川口義久君川島正次郞君
勝田銀次郞君片野重脩君
河上哲太君橫川重次君
米田規矩馬君高橋熊次郞君
高見之通君高草美代藏君
高山長幸君田邊熊一君
田邊七六君田口文次君
立川太郞君胎中楠右衞門君
武田德三郞君丹下茂十郞君
瀧正雄君竹內友治郞君
多木久米次郞君津雲國利君
津崎尙武君土倉宗明君
中島守利君中島知久平君
中谷貞賴君中山貞雄君
中野猛雄君中村嘉壽君
難波〓人君名川侃市君
永田良吉君向井倭雄君
村田虎之助君上田孝吉君
上野基三君內田信也君
內野辰次郞君植原悅二郞君
野方次郞君熊谷巖君
熊谷直太君久山知之君
久原房之助君倉元要一君
工藤十三雄君藏園三四郞君
山崎猛君山崎達之輔君
山口義一君山田又司君
山本条太郞君山下谷次君
松村光三君松岡洋右君
松山常次郞君松野鶴平君
松實喜代太君牧野賤男君
牧野良三君前田米藏君
船田中君深澤豐太郞君
藤井達也君木暮武太夫君
小林錡君兒玉右二君
寺田市正君靑木精一君
靑山憲三君安藤正純君
秋田〓君東武君
佐保畢雄君佐藤重遠君
佐々木平次郞君崎由武夫君
崎山嗣朝君坂本一角君
坂井大輔君本村〓治君
〓瀨規矩雄君喜多孝治君
岸田正記君宮澤裕君
宮脇長吉君富川一貫君
三尾邦三君三土忠造君
三井德寶君水島彥一郞君
志波安一郞君志賀和多利君
庄晋太郞君〓水銀藏君
島田俊雄君廣岡宇一郞君
廣瀨爲久君平井信四郞君
樋口典常君森田政義君
森〓昶君森恪君
守屋榮夫君望月圭介君
瀨川嘉助君〓家吉次郞君
鈴木吉之助君鈴木英雄君
鈴木隆君鈴木梅四郞君
鈴木安孝君砂田重政君
菅原傳君助川啓四郞君
西尾末廣君大山郁夫君
鷲野米太郞君中田縣郞君
武藤山治君村田不二三君
八木幸吉君淺原健三君
森本一雄君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=167
-
168・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 是ヨリ本案ノ採決
ヲ致シマス、本案ニ贊成ノ諸君ノ起立ヲ求
メマス
〔贊成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=168
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169・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 起立少數-本案
ハ否決ザレマシタ-大山郁夫君カラ議事
進行ニ關スル發言ヲ求メラレテアリマス、
之ヲ許可致シマス-大山郁夫君
〔大山郁夫君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=169
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170・大山郁夫
○大山郁夫君 諸君、私ハ濱口内閣不信任
ニ對スル勞働者農民ノ意思ヲ尊重シ、ソレ
ヲ聽ク途ヲ講ズル點ニ關シテ、議長ニ說明
ヲ求メタイト思ッテ居ルノデアリマス、今
日.
〔發言スル者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=170
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171・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 靜肅ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=171
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172・大山郁夫
○大山郁夫君(續) 濱口內閣ニ對スル不信
任案ガ此處ニ上程サレタノデアル、サウシ
テ濱口內閣ニ對スル不信任ヲ持ッテ居ル多
クノ人々カラ發言ヲ求メラレテ居ッタノデ
アリマス、今日ノ發言ノ「プログラム」ヲ見
ルト、多數ノ人ガ此問題ニ關シテ意見ヲ吐
カウトシテ待構ヘテ居ッタノデアル、然ルニ其
「プログラム」ガヤット眞ン中ドコロニ來タ時
ニ方ッテ、民政黨ノ諸君ガ討論打切ノ動議ヲ
出サレタノデアリマス、諸君、濱口內閣ニ
對スル不信任ノ根據ト云フモノハ百ヤ千デ
盡キルモノデハナイノデアル(拍手)其僅カ
バカシダケガ論ゼラレタ時ニ當ッテ、民政黨
ノ諸君ハ橫暴ニモ討論打切ノ動議ヲ出サレ
タノデアリマス、殊ニ-殊ニ勞働者農民ノ
立場カラノ不信任ノ聲ト云フモノハマダ
一ツモ揚ッテ居ラナイノデアル、所ガ諸
君、勞働者、農民、無產市民、植民地民衆
ト云フモノハ民政黨ニ對シテ爪ノ垢程ノ信
任デモ持"テ居ルカト言ヘバ、全然反對デ
アッテ、勞働者、農民コソハ民政黨ヲ正面ノ
敵トシテ鬪ッテ居ルノデアリマス、斯ル勞働
者農民ノ其意見ト云フモノハ、第五十九
議會開會以來到ル所ニ是ガ發表サレタノデ
アル、東京ニ於テモ無產者大會ト云フモノ
ガ幾度開カレタカ知レナイ、サウ云フ大會
ニ於テ常ニ濱口內閣ノ打倒ガ叫バレテ居ル
ノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=172
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173・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 大山君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=173
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174・大山郁夫
○大山郁夫君(續) ソレデ今日モ協調會館
ニ於テ又無產者大會ガ開カレタノデアリマ
ス、サウシテ其大會ニ於テ濱口內閣ノ不信
任ガ滿場一致ヲ以テ可決サレタノデアリマ
ス、サウシテ其大會カラ十四五名ノ代表者
ガ正式ニ選バレテ、此議會ニヤッテ來タノデ
アル発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=174
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175・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 大山君-大山
費けど
〔發言スル者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=175
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176・大山郁夫
○大山郁夫君(續) 其代表者ガ十四五名隊
伍ヲ組ンデ此議會ヘ來タノデアル、サウシテ
第一面會室ニ入ッテ飽マデ濱口內閣卽時打
倒ノ決議ヲ濱口首相ニ手交シヨウト吾々ニ
面會ヲ求メ仲介ヲ依賴シヨウトシテ居タノ
デアリマス、面談室ニ於テ無產黨議員團ノ
各員トノ面談ヲ求メテ居タノデアル、然ル
ニ······(發言スル者多シ)諸君、聽イテ戴キ
タイ、濱口內閣ハ三十名ノ正服巡査ヲアノ
面談室ニ送クテソレ等十四名ノ代表ヲスッカ
リ檢束シテシマッタノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=176
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177・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 大山君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=177
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178・大山郁夫
○大山郁夫君(續) 斯ウ云フコトヲ見テ
モ、勞働者、農民ガ如何ニ熱烈ニ濱口內閣
ヲ不信任シテ居ルト云フコトヲ、ハッキリ見
ルコトガ出來ルノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=178
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179・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) ···發言中止ヲ命
ジマス-中止ヲ命ジマス-降壇ヲ命ジ
マス-降壇ヲ命ジマス
〔大山郁夫君發言ヲ繼續ス〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=179
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180・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 暫時休憩致シマス
午後七時二十二分休憩
午後八時三十七分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=180
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181・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 休憩前ニ引續キ會
議ヲ開キマス、日程第九、小作法案ノ第一
讀會ノ續ヲ開キマス、委員長ノ報〓ヲ求メ
マく、委員長小西和君
第九小作法案(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報〓)(確定議)
報告書
一小作法案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ別紙メ通修正スヘキモノ
ト議決致候此段及報告候也
昭和六年三月十八日
委員長小西和
衆議院議長藤澤幾之輔殿
〔別紙〕
(小字及-ハ委員會修正)
小作法案中左ノ通修正ス
第六條小作地ノ賃借權ハ賃貸人ノ承諾
アルニ非ザレバ之ヲ譲渡スコトヲ得ズ
小作地ニ付テハ
但シ別段ノ慣習アルトトハ其ノ慣習ニ
從フ
第十七條小作地ノ賃借人ガ一年分ノ小
作料ノ一年以上ノ滯納其ノ他之ニ準ズ
ベキモノトシテ命令ノ定ムル滯納ヲ爲
二
シタル場合ニ於テ一月ヲ下ラザル期間
ヲ定メテ支拂ヲ爲スベキ旨ヲ催告シ其
ノ期間內ニ支拂ナキトキハ賃貸人ハ賃
貸借ヲ解除スルコトヲ得賃借人ガ信義
ニ反シ賃貸人ヲ害スル目的ヲ以テ故意
ニ小作料ヲ滯納シタル場合亦同ジ
〔小西和君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=181
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182・小西和
○小西和君 先刻ノ決議案ニ續イテ只今小
作法案ガ上程セラレマシタノハ大風一過光
風霽月ノ感ガアリマス、而モ其重大性ニ於
テハ寧ロ小作法案ノ方ガ勝,テ居ルノデア
ラウト考ヘマス、委員ハ此重大ナ法案ニ對
シマシテ委員會ヲ開クコト十七囘、何レモ
皆極メテ誠實ニ、又極メテ眞摯ニ討議ヲ盡
サレタノデアリマス、質問應答ノ內容ニ付
キマシテハ、只今逐一ソレヲ中上ゲルコト
ヲ省略致シマスカラ、皆樣ニ於カレテハ速
記錄ニ依シテ御承知ヲ願ヒタイト思フノデ
アリマス、偖テ討論及ビ採決ニ入リマシテ、
木村委員カラ修正ノ提案ガアリマシタソ
レヲ委員會ハ多數ヲ以テ決議ヲ致シタノデ
アリマス、其修正ヲ只今讀上ゲマス、修正
ヲセラレマシタル點ハ二箇條デアリマス、
先ヅ其第一箇條ハ第六條ノ但書ヲ「別段ノ慣
習アル小作地ニ付テハ其ノ慣習ニ從フ」
斯樣ナ修正ガアリマシタ、又第十七條ヲ「小
作地ノ賃借人ガ小作料ノ滯納ヲ爲シタル場
合ニ於テ二月ヲ下ラザル期間ヲ定メテ支拂
ヲ爲スベキ旨ヲ催告シ其ノ期間內ニ支拂ナ
キトキハ賃貸人ハ賃貸借ヲ解除スルコトヲ
得」此二箇條デアリマス
是ハ委員會ニ於テ多數ヲ以テ通過致シマ
シタ、之ニ對シテ土井權大君ヨリ反對ガア
リマシタ、其反對又ハ意見ハ委員會ニ於テ
述ベズシテ、本會議ノ席ニ於テ述べルト云
フコトデ、ソレヲ留保セラレマシタ、尙ホ
又片山哲君カラ修正ガ出マシタ、併ナガラ
是ハ成規ノ贊成ガナカッタ爲ニ、其修正ハ成
立致サナカッタノデアリマス、是ハ委員會ノ
經過及ビ結果デアリマス(拍手)ドウカ委員
會ノ決議ノ通リ御贊成ノ上、御採決アラン
コトヲ希望致シマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=182
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183・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 討論ニ入リマ
ス-丹下茂十郞君
〔丹下茂十郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=183
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184・丹下茂十郎
○丹下茂十郞君 只今上程ニナリマシタ小
作法ニ對シマシテ、政府提出ノ原案竝ニ
委員長報告ノ修正案、共ニ反對ヲ致ス者デ
アリマス、此法案ハ極メテ杜撰、デアリ、不
備デアリ、不徹底デアリ、幾多ノ缺陷アル
コトヲ認メマスルガ故ニ、更ニ愼重〓究ヲ
盡スノ要アリト考ヘテ反對致ス次第デアリ
マス(「簡單」ト呼フ者アリ)簡單ト云フ御說
ガアリマス、私共モ此時間ノ經過シタ時
ニ、長タラシク言フコトハ好マナイノデア
リマス、成ベーク此次ノ本會議ニ提案シテ貰
フテ、サウシテ日程ノ第一デ緩リト論議シ
テ見タイト思ッテ居リマシタガ、農林大臣
ノ面目上今夜ドウシテモ審議シナケレバ
ナラヌコトニナッタサウデ、私ハ簡單ニヤ
リタイノデアリマスケレドモ、只今誰方
カノ御話ノ通リ、此小作法ナルモノハ、實
ニ重大性ヲ持ッテ居リマス、殊ニ恐ラク此衆
議院ハ多數ヲ以テ通過致スデアリマセウ、
併ナガラ
〔發言スル者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=184
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185・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 靜肅ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=185
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186・丹下茂十郎
○丹下茂十郞君(續) 貴族院ヘ廻廻テハ最
早此法案ヲ審議スル餘地ノナイコトハ明瞭
デアル、併ナガラ今日後程申上ゲマスル中
ニモアリマスルガ、小作爭議ノ關係ニ於
テ、裁判ノ係爭ガ中々多クナッテ居リマス
ルガ、是ガ現在ノ民法ニ於ケル所ノ不備ナ
ル條項ニ依リマシテ審理スル爲ニハ、非常
ニ裁判官ハ困ッテ居ル、ソコデ既ニ現在ニ於
テモ、此小作法ノ骨子トナル所ノ要項ヲ參
考ニ致シテ、此係爭事件ノ裁判ニ用ヒテ居
ル、殊ニ此衆議院ニ於テ通過致シマシテ、
假令貴族院ニ於テ握潰サレマシテモ、衆議
院ノ意ノ在ル所ハ、此決議ニ依クテ現ハレル
ノデアリマス、ソレ故ニ今後裁判ヲスル上
ニ於テ、此衆議院ニ於ケル所ノ論點ト云フモ
ノガ、非常ナル參考ニナリ重要視サレル
コトニナリマスノデ、之ヲ簡單ニ述ベテ僅
ニ此處ヲ始末ヲスルト云フダケデハ、農村
ニ對シテ相濟マヌコトヽ私ハ信ズルノデア
リマス(拍手)洵ニ諸君ニハ御迷惑デアリマ
スルガ、同樣ニ迷惑デアリマス、或ハ一時
間掛リマスカ、二時間掛ルカ知リマセヌガ、
十分ニ論議ヲサセテ戴キタイ、ドウゾ暫ク
御靜ニ御聽取ヲ願ヒマス
〔發言スル者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=186
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187・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 靜肅ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=187
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188・丹下茂十郎
○丹下茂十郞君(續) 私ハ大體一般的ノ事
柄ニ付テ反對ノ意見ヲ申上ゲマシテ、更ノ
同僚ノ名川君ニ依リマシテ、立法上ノ關係
ニ付テ反對スルコトヲ十分ニ御述下サルコ
トニナッテ居リマス、私共ハ我國ノ農村ノ現
狀ニ鑑ミマシテ、小作法ノ制定ノ必要ナル
コトヲ痛感致シテ居ル一人デアルノデアリ
マス、近時我ガ農村ノ經濟上、社會上、竝
ニ思想上ノ變遷ニ伴ヒマシテ、益〓小作ノ
關係ガ複雜ニ相成ッタコトハ申スマデモア
リマセヌ、漸次增加シツヽアル所ノ小作爭
議ナルモノハ、單ナル分配上ノ爭ニ止マリ
マセズ、最近段々思想問題ニ出發シテ、其
爭議ガ頗ル激化致シテ來テ居ル狀態ハ、洵
ニ農村ノ爲ニ、殊ニ國家ノ爲ニ憂フベキ現
象デアルト思フモノデアリマス(拍手)小作
關係ノ紛議ニ對シマシテハ、現在法制上準
據スル所ノモノガ完全ニゴザイマセヌ、卽
チ民法ノ極メテ不完全ナル所ノ適用ニ止マ
リマシテ、一定ノ據ルベキ所ガナイ、隨テ
解決上極メテ不便ヲ感ジテ居ルコトハ申ス
マデモナイノデアル、此小作法ヲ制定シ
テ、小作人ノ權益ヲ保護スルト共ニ、其義
務ノ履行ヲ明定ヲ致シテ更ニ地主ノ專橫ヲ
制限スルト共ニ、又共權利モ確保致シマシ
テ、以テ兩者ノ關係ヲ明確ニ認ムルコト
ハ卽チ農村ノ共存共榮ヲ圖ル上ニ於テ、
極メテ必要ナルコトデアル、年久シク之ヲ
翹望致シテ居ルモノデアリマス、最近小作
問題ノ經過ニ鑑ミマシテモ、御承知ノ通リ
大正十年原内閣ノ當時、時勢ノ趨勢ニ鑑
ミ、又廣ク農村ノ輿論ニ聽イテ、小作法制
定ノ目的ヲ立テマシテ、小作制度調査會ナ
ルモノヲ設ケマシタノハ御承知ノ通リデア
リマス、爾來朝野幾多ノ機關ニ依リマシテ
調査〓究ヲ進メラレ、歷代ノ內閣モ亦此制
定ニ腐心致シテ今日ニ及ンダノデアリマ
ス、小作問題ニ關シマシテハ去ル大正十三
年、恰モ三派內閣ノ當時、小作調停法ヲ制
定致シマシテ、專ラ調停機關ニ依リマシ
テ、互讓妥協、爭議解決ノ一機關ヲ設クル
コトニ相成リマシタガ、當時私共モ其特別
委員トシテ、小作法ノ母法ナクシテ、單一
調停法ノミヲ以テシテハ、所謂靴ヲ隔テ
痒サヲ搔クヤウナ感ジガアルコトヲ論述シ
タ一人デアリマス、而シテ速ニ小作法典ノ
制定ノ必要アルコトヲ力說致シタノデアリ
マス、然ルニ小作法ノ制定ハ、我國ノ土地
制度ノ根本ニ觸ルヽ所ノ重大問題デアリマ
スガ故ニ、是ハ最モ愼重ニ愼重ヲ重ネテ、
公平嚴正ナル心事ヲ以テ之ニ當ラナケレバ
ナラヌコトハ勿論デアリマス、我國ノ土地
制度ハ、往古大化ノ新政、又明治維新ノ、
此二囘ニ於キマシテ行ハレタル改革ガ、從
來我國土地制度ノ二大改革事業ト致サレテ
居ルノデアリマスガ、更ニ小作法ノ制定ガ、
我國土地制度ノ第三囘ノ變革トモ言フベキ
重要注ヲ帶ビテ居ルト思フノデアリマス、
申スマデモナク本法ノ制定ガ、萬一輕卒ニ
致シテ過リガアッタナラバ、實ニ取返シガ付
カヌ山々シキ大問題トナルコトハ申スマ
デモナク、故ニ輕々ニ之ヲ取扱フコトハ大
ニ避ケナケレバナリマセヌ、唯一時ノ權
義、政略、或ハ一時ノ人氣取リノヤウナ爲
ニ之ヲ取扱ッテ、輕卒ナル決定ヲ見ルナラ
バ、農村ノ根本ヲ破壞シ、農村社會組織ヲ
紊リ、國家ノ基礎ニモ影響スルヤウナ虞ガ
アルト私共ハ信ズル者デアリマス、故ニ吾
吾ハ小作法制定ノ必要ナルコトヲ認メルト
同時ニ、又此小作法ノ制定ニ付テハ、頗ル
憂惧ノ念ヲ禁ズルコトガ出來ナイ者デアリ
マス、故ニ其審議ニ當リマシテハ、最モ重
大ニ取扱〓テ、十分審議檢討ノ必要ヲ認メ
テ、殊ニ當局大臣ノ懇切、熱心、丁寧ナル
所ノ說明ヲ要求致シタ者デアリマス、然ル
ニ今囘吾々委員ニ付託セラレマシタ際ニ、
政府當局ガ此小作法ノ提案ニ對シテ、殆ド
何等ノ確信ヲ持タナイ、又眞摯ナル所ノ態
度ヲ持タナイ、熱烈ナル誠意ノ認ムベキモ
ノガアリマセヌ、卽チ小作法ガ本院ニ提案
セラレマシタノハ、二月ノ十四日デアッタノ
デアリマス、爾來一月半ノ長イ期間ガアリ
マシテ、會ヲ開クコト十七囘、是ハ委員長
ノ報〓ガアリマセヌカラ私ガ報告シテ置キ
マス(「十七囘ト言ッタヨ」ト呼フ者アリ)サ
ウデアリマシタカ、ソレデハ訂正致シマ
ス、開會日數ハ二十囘デアリマスニモ拘ラ
ズ、其間三日ハ所管大臣ガ出席セラレヌ爲
ニ流會ニ相成ヲタノデアリマス、而シテ此十
七囘ノ囘數ノ中デ、此審議ニ要シタ所ノ時
間ハ實ニ四十七時間デアル、其四十七時間
ノ審議ヲスル間ニ農林大臣ガ何同出席シ
タカ、僅ニ八囘、延時間ニシテ十時間ト七
分デアル、斯樣ナ大法典、斯樣ナ重要性ヲ帶
ビテ居ル法典ヲ審査スルニ當リマシテ、其
所管大臣ノ出席ガ、十七囘、四十七時間ノ
中、僅ニ八囘、十時間、是デドウシテ是ノ
愼重ナル審議ガ出來マセウ、政府ガ眞摯ナ
ル態度ヲ持タナイコトガ、反對ノ一ツノ理
由デアル、司法大臣又然リ、殊ニ最終ノ委
員會ノ決定ヲ致ス日ノ如キハ兩大臣一切
出席ヲ見ルコトガ出來ナカッタ、而モ其最後
ノ日ハ、民政黨ノ委員諸君ト其日ヲ以テ打
切ルコトノ約束ガアリマスカラ、吾々ハ尙
ホ其審査ヲ打切ルニ當リマシテハ、農林及
ビ司法兩大臣ノ說明ヲ聽クベキコトガ多々
殘ヲテ居シタニモ拘ラズ、遂ニ出席ガナイケ
レドモ、一方ニハ民政黨ノ委員諸君ト約束
ガアリマスカラ、其信義ヲ重ンジテ遂ニ其
日ヲ以テ打切ッタノデアリマス、卽チ其審議
ニ當リマシテハ不十分デアリ、吾々ノ頗ル
不滿ニ感ズル所デアリマス、殊ニ町田農林
大臣ハ、口ニハ最モ熱心ナルコトヲ唱ヘテ
居ルガ、其事實ハ以上申上ゲタヤウナ次第
デアリマス、殊ニ法案ノ提出ノ際、其說明
ノ中ニ曰タ「成ベク皆樣ノ御審議ヲ願ヒタ
1、若シ假ニ御審議ノ結果、私共ノ努力ニ
依ッテ貴衆兩院ヲ通過シ得ナカッタト致シマ
シテモ、斯樣ナ場合ハ私共ハ努メテ努力シ
テ避ケマスガ、國家重大ナル法案トシテ愼
重ナル審議ヲ要スルト云フコトデアルナラ
が、ソレニ楫當ノ時日ヲ藉スコトモ亦已ム
ヲ得ナイト思ヒマス」貴衆兩院ニ於テ決定
サレマセヌデモ已ムコトヲ得マセヌ、何等
其法案ニ信念ヲ持タナイト云フコトガ明瞭
デハアリマセヌカ、殊ニ同僚片野君ノ質問
ニ對シテモ斯樣ニ言ハレテ居ル「委員會ニ
於テ御意見ヲ十分御述べ下サレバ、私共モ
必ズシモ此原案ニ固執致シマセヌ、皆樣ノ
御意見ヲ尊重シテ、最モ完全ナルモノニ致
シタイ考デアリマス」、此政府提案ガヤハリ
確信ヲ持タナイコトハ是デ明瞭デアル、曩
ニモ申述べマシタ通リ、此小作法ノ制定ハ、
我ガ土地制度ノ根本ニ觸レル重要法案デア
ルト云フ點ニ於テ、現內閣ハ此點ニ付テ一
定ノ方針ヲ持タヌ、固ヨリ重大ナル問題デ
アルコトハ、提案ノ際同僚土井君ノ質問ニ
依リマシテ、十分ニ盡サレテ居ルノデアリ
マスガ、之ニ對スル政時當局ノ答辯、說明
ハ、殆ド何モノヲモ捉ヘルコトガ出來ナイ
有樣デアル、而モ士井君ノ質問ノ如ク、小
作制度ノ制定ハ所謂土地國有問題ニ關聯シ
テ來ル頗ル重要性ヲ持,テ居ルモノデアル、
〓チ土地ハ自作主義カ或ハ小作主義カ、是
農村問題ノ解決上當然到達スベキ問額デア
ルト思フノデアリマス、吾々ハ現在ノ農村
ノ情勢ニ鑑ミ、又我國農業經營ノ實際ニ鑑
ミマシテ、殊ニ我國ノ農業ガ極メテ小農組
織デアルノ故ヲ以チマシテ、又我國農業ノ
舊キ歷史ノ關係ヨリ考ヘテ、自作農創設維
持ヲ徹底サセルコトノ必要ヲ感ジテ居ル者
デアリマス、此小作法ノ制定ハ卽チ我農村
ノ組織、殊ニ農業經營ノ實際ニ鑑ミテ、自
作農主義ヲ採ルト云フコトニ於テ、小作法
ノ制定ニ非常ナル關係ヲ持ッテ來ルト思フ
ノデアリマス、今日農村ノ狀態ハ最早私ガ
申上ゲルマデモアリマセヌ
〔發言スル者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=188
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189・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 靜肅ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=189
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190・丹下茂十郎
○丹下茂十郞君(續) 今日ノ農村ノ經濟狀
態ヲ考ヘマスレバ、自作農ニ於テモ其生活
ノ安定ヲ得ルコトガ出來ナイ有樣デアル、
燃ルニモ拘ラズ、同ジ生產力ヲ持ッテ居ル土
地ノ生產額ヲ地主ト小作ノ此二ツノ階級ガ
其分配ニ依テテ生キナケレバナラナイト云
フコトニナリマス以上ハ、玆ニ小作モ成立
タナイ、又地主モ成立タナイト云フ結論ニ
到達スルノデアル、此自作農ト小作法ハ最
モ密接ナル關係ヲ持ッテ居ルモノデアリマ
スガ故ニ、玆ニ根柢ヲ置イテ此小作法制定
ニ掛ラナケレバナラヌト云フコトヲ私ハ固
ク信ジテ居ル者デアル、殊ニ現內閣ハ自作
農ニ對スル方針ガ極メテ曖昧模糊デアル、
現在自作農創設ニ關スル所ノ施設ハアリマ
ス、彼ノ三派內閣ノ當時貨幣改鑄益金ニ依ブ
テ、農村振興ニ關スル所ノ施設ヲ開始致シ、
之ニ依ヶテ自作農創定ノ事業ヲ開始セラレ、
漸次多少ノ擴張ハ致シテ居リマスケレド
モ、敢テ此自作問題ヲ解決スルト云フガ如
キ根本ニ觸ルル政策ヲ執ッテ居ナイノデア
リマス、唯掛聲ノミハ大キイケレドモ、其
實際ガ之ニ伴ハナイ狀態ニ在ルノデアリマ
ス、此問題ニ付キマシテ委員會ニ於テ町田
農相ニ質シマシタ所ガ··
〔發言スル者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=190
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191・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 靜肅ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=191
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192・丹下茂十郎
○丹下茂十郞君(續) 町田農相ハ斯樣ニ言
ハレル、財界ガ好況ニ至レバ公債ヲ發行シ
テモ、大ニ自作農創設維持ニ努メル積リデ
アルト云フコトヲ言明シテ居ル、是ハ洵ニ
傾聽ニ値スルモノデ在ルガ、現內閣ハ左樣
ナ自作農ニ對スル政策ヲ持テ居ナイ、殊ニ
委員會ニ於テ町田農相ハ前々內閣ノ當時、
若槻首相ノ諒解ノ下ニ其事ハ本會議ニ於テ
聲明致シテ居ルト云フコトヲ言ッテ居ルノ
デアリマス
〔發言スル者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=192
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193・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 靜肅ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=193
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194・丹下茂十郎
○丹下茂十郞君(續) 而モ町田農相ハ財界
ノ模樣ガ好ケレバ幾ラデモ公債ヲ發行シ
テ、自作農ノ創設維持ニ努メルト云フコト
ヲ前々內閣ノ當時、本會議ニ於テ聲明致シ
タト云フコトデアルガ、而モソレニハ最モ
力ヲ入レテ、當時ノ速記錄ニ依クテ調ベテ見
ヨト云フ位ニ御答辯ニ相成ッタノデアリマ
ス、而シテ私ハ前々內閣當時ノ速記錄ヲスッ
カリ涉獵致シマシタ所ガ、ソレハ大變ナル
間違デアッテ、町田農相ハ左樣ニ考へラレ
テ居ッタカ知レマセヌガ、若槻首相ハ現在ニ
於テモ、近キ將來ニ於テモ、公債ヲ發行シ
テ自作農創設維持ヲスルト云フガ如キコト
ハ宜クナイコトヽ思ヒマスト言明シテ居
ル、卽チ町田農相ノ言ハレル自作農ニ關ス
ル施設ハ當時若槻首相ノ諒解ノ下ニ之ヲ
述ベテ居ルト言ハレルガ、是ハ全然間違フテ
ルコトヲ後ニ農相ニ質シタ所ガ、更ニ調査
シタ上デ御答ヲスルト云フコトデアリマシ
ク、所ガ其後何等ノ御答ガナカッタコトカ
ラ見レバ、ヤハリ間違ッテ居ッタコトヲ是認
セラレタモノト思ヒマス、卽チ小作制度ナ
ルモノハ自作農主義ト最モ密接ナル關係ヲ
持ッテ居リマスガ故ニ、自作農問題ノ方針ガ
確立スルニアラズンバ小作問題モ亦核心
ニ觸ルヽコト能ハザルハ申上ゲルマデモナ
イコトデアルト思フノデアリマス
更ニ小作法ノ目的ハ一面ニハ善良エシテ
勤勉ナル小作人ヲ保護誘掖シテ、漸次橫暴
ナル所ノ地主ノ桎梏ヨリ脫セシメ、又其一
面ニハ理解アリ同情アル地主ヲ保護シ、其
權利タル收益權ヲ擁護シテ、以テ平和ナル
農村ヲ保持スル爲ニ、漸次惡化セントスル
所ノ小作爭議ヲ緩和シテ、而モ其根絕ヲ圖
ルト云フ所ニ小作法ノ目的ヲ置カナケレバ
ナラヌト信ズル者デアリマス、政府提案ノ
小作法ハ其內容ガ此核心ニ觸レテ居ラヌ、
却テ徒ニ事端ヲ繁カラシムルト云フ虞ガア
ル、卽チ爭議誘發ノ虞ガアルコトヲ認メル
者デアリマス
而モ最初ニ申シマス通リ、此法案ハ杜撰
不備デアル今其一二ノ例ヲ申上ゲテ
見マス、法案ノ詳細ニ付キマシテハ更
ニ名川君ヨリ述べラレルコトヲ申上ゲテ置
キマシタガ、本法案ノ不備デアルコトハ、
與黨ノ諸君ニ依ッテ修正案ガ提出セラレル
ニ於テ明瞭ニ認メルコトガ出來ルデハアリ
マセヌカ、殊ニ賃借權、永小作權ナル文字
ガ、民法ニ規定シテアル所ノ賃貸借及ビ永
小作權トノ關係ニ於テノ說明ガ司法大臣ニ
於テ十分ニ出來ナイ、遂ニ此問題ハ不明ノ
儘ニ委員會ヲ終ッタ事實ニ依リマシテモ、此
法案ガ如何ニ杜撰デアルカヾ分リ得ルト思
フノデアリマス
更ニ又本法案ニ於テ小作人ヲ保護シタイ
ト云フコトヲ唱ヘテ居ルノデアリマスガ、
例ヘバ地主ガ其土地ヲ賣却セントスル時
ニ當ッテ、其小作人ニ買取ノ意思ガアレバ其
協議ニ應ズルト云フコトノ通知ヲ致スコト
ヲ要スル規定ガ設ケラレテアル、而シテ一
定ノ期間ニ協議ガ整ハザル時ハ、遂ニ何等
之ヲ救濟スル途ガナイ······
〔發言スル者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=194
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195・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 靜肅ニ願ヒマス、
會議時間ガ長ク掛リマス、靜肅ニ願ヒマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=195
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196・丹下茂十郎
○丹下茂十郞君(續) 若シ此誠意ノナイ所
ノ地主ニ對シテハ是ハ單ニ一片ノ空文ト
ナッテシマッテ居ル、卽チ提案者ハ之ニ依ッテ
小作者ヲ保護シ、小作者ノ利益ヲ圖リ、小
作人ニ土地ヲ買取ル機會ヲ與ヘルト言ヒナ
ガラ、而モ其手續ヲスルコトニ非常ナル手
數ガ掛リ、ソレダケ若シ地主ガ應ジナカッタ
場合ニハ何等救濟スル途ガナイ、實際ニ於
テ其小作人ニ自作農地ヲ買取ル便宜ヲ與ヘ
ルト云フコトデアルナラバ-若シ地主ガ
承諾シナイ場合ニ於テハ、小作委員會ナリ
何ナリ外ノ機關ニ於テ之ヲ裁定ヲ致シテ、
成ベク小作人ニ其土地ヲ買ハシメルト云フ
機會ヲ與ヘナケレバ、何等小作法ノ實ヲ擧
ゲ得ラレナイト思フノデアリマス、或ハ又
一方ニ於テハ地主ヲ擁護シテ居ルト言ヒマ
ス、併ナガラ一地方ニ於キマシテ行ハレ
テ居ル慣行ヲ取ッテ、之ヲ全國的ニ施行セン
トスルヤウナモノガ少クナイノデアル、慣
行ノナイ地方ハ此小作法ノ制定ニ依ッテ新
タナ一ツノ義務ヲ負ハセラレルコトニナル
ノデアリマシテ、非常ナル迷惑ヲ感ズル地
方ガ生ズルノデアリマス、固ヨリ小作ノ關
係ハ多年地方ニ於ケル所ノ特殊ノ關係ニ
立ッテ居ルモノガ多イノデアリマス、併ナガ
ラ其特殊ノ地方ニ於ケル特殊ノ慣行ヲ他ニ
持ッテ行ッテ、全國的ニ敷衍セシムルト云フ
ガ如キコトハ、非常ニ考ヘナケレバナラヌ
コトデアリマス、左樣ナモノガ此小作法ノ
中ニハ相當ニアル、此小作ノ慣行ニ付キマ
シテハ、大正十年頃ヨリ農林省ニ於テハ各
地方ニ付テ其慣行ヲ調査シテ居ルモノデア
〓、併ナガラ此慣行ナルモノハ多年ノ慣行
モ慣行デアリ、一年二年ニ起ノタ新シイ間
題デモ之ヲ慣行トスルコトガ出來ルモノデ
アル、故ニ此慣行ヲ法律ノ中ニ取入レルコ
トニ付キマシテハ、餘程愼重ナル考慮ヲ拂
ハナケレバ、飛ンデモナイ結果ヲ來スコト
ニナルノデアリマス(拍手)
更ニ法案ノ解釋問題ニ付キマシテハ被ノ
小作料ニ關シテ爭議發生ノ虞レガアル、爭
議トハ如何ナル程度マデ爭議ト云フカト云
フコトハ、司法大臣ハ何等說明ガ出來ナ
イ、又不可抗力ニ依ル所ノ減免問題ニ付テ
ノ手續ノ如キコトハ、一般小作地ニ對シテ
檢見要求ノ煩雜ナル仕事ヲ負ハセラレルコ
トニナッテ、檢見ノ慣行ノナイ地方等ニ於キ
マシテハ非常ナル混雜ヲ來ス虞レガアル、檢
見ノ事項ニ付テハ小作官其他地方ニ於ケル
幾多ノ機關ヲ要スルコトニ相成ルノデアリ
マスガ、ソレ等ノ點ニ付テハ頗ル不徹底デ
アル、其他小作地ノ引渡シヲ以テ物權的ノ
對抗力ヲ認メルト云フ如キ、幾多難解煩雜
ノ字句ガアルノデアリマシテ、吾々ハ其審
議ニ當リマシテ、成ベク吾々ハ最モ嚴正公
平ノ立場ニ立ッテ、此小作法ノ制定ヲ必要ト
スル故ニ、出來ル限リ完全ナモノト致サウ
トシテ審議致シマシタガ、前申ス通リ當局
誠意ナク、遂ニ吾々ガ熱心ナル審議ヲスル
コトガ出來ナカッタ、之ヲ要スルニ吾々ハ農
村ノ現狀ニ鑑ミ、殊ニ國家ノ爲ニ最モ重大
ナル性質ヲ有スル本法案デアリマス故ニ、
終始至誠一貫〓究討議ヲ重ネタノデアリマ
スガ、政府當局ニ識意ナク、殊ニ農林大臣ノ
出席ガ極メテ短時間デアァテ、能ク其論議ヲ
盡スコトカ出來マセズ、又司法大臣モ何等
本法ニ付テ信念ガナイ、暗中模索スルガ如
キ說明デ、吾々委員ハ滿足ナル答辯ヲ聽ク
コトガ出來ナカッタノデアル、併ナガラ
提案ノ本法ニ對シマシテハ、成ベク完全無
缺ノ法典トシテ、一度是ガ施行サレマシ
タナラバ容易ニ之ヲ動カスコトノ出來ナ
イ重大ナルモノデアリマスガ故ニ、十分修
正モ加ヘ、論議ヲ盡シテ完全ナルモノニ致
サウトシタガ、ドウシテモ修正スルコトガ
出來ズ、遂ニ筆ヲ投ジテ此案件ハ與黨委員
ノ修正案ニ反對セザルヲ得ナイコトニ
ナッタノデアリマス、吾々ガ此法案ニ反對ス
ル所以ハ最初ニ申上ゲマシタ通リ、先ヅ法
案ガ杜撰不備ニシテ、幾多ノ缺陷ガアルト
云フコト更ニ政府ガ本法ノ實施ニ對シテ
確信ナク、眞摯ナル態度及ビ熱心ナル誠意
ノ認ムベキモノガナイト云フコト、又我國
ノ土地制度ニ對スル一定ノ方針ヲ持タナ
1、卽チ自作農創定維持カ、或ハ小作制度
カ、何レニシマシテモ極メテ曖昧模糊デア
ル、而モ更ニ本法ノ施行ニ依リマシテハ、
小作爭議根絕ノ核心ニ觸レテ居ナイ所ノ法
案デアル、本法ノ施行ニ依ノテ更ニ一層小
作爭議ノ事端ヲ繁カラシメルト云フコト
ガ吾々ノ反對スル其一デアル、更ニ小作
ノ關係ハ〓ネ地方ニ依〃テ特殊ノ慣行ガ
アルモノデアルガ、之ヲ法律ニ組入レテ
法律化スル、卽チ地方ノ慣習ヲ法律化スル
ニ付テハ、頗ル其判定ガ困難トナル、所謂
難解、共運用ヲ期シ難イ虞レガアルト考ヘ
マシテ、是亦大ニ〓究ヲスル必要ヲ認メタ
ノデアリマス、而シテ此法案ヲ施行スルニ
當テ政府當局ニ財政上ノ計畫ヲ聽キマシ
タ所ガ、農林省ニ於テハ約六十万圓、司法
省ニ於テハ約六十二万圓ノ經費ヲ計上セン
トスル所ノ豫定ヲ持ッテ居ル、此大法典ヲ施
行スルニ當リマシテ、斯樣ナ貧弱ナル豫算
ヲ以テ、完全ニ此法律ヲ施行スルコトハ、
絕對ニ出來ナイモノト私ハ信ズルノデアル
(拍手)是レ卽チ反對スル一ツノ理由デアル、
而モ政府ハ本案ニ依リマシテ、善良ナル小
作人ヲ保護シ、同情アル地主ヲ保護スルト
言フガ、其内容ハ殆ド小作擁護ニ關スル所
ノ見ルベキモノガ一ツモナイ、書イテアッテ
モ、ソレハ殆ド空文デアリ、畫ニ描イタ餅
ト同ジヤウナモノデアル、地主ノ擁護ト申
シテモ何等見ルベキモノハナイ、隨テ此法
律ヲ施行シテモ、却テ煩雜ナル手續ヲスル
ダケデアッテ、其效果ノ見ルベキモノガナイ
ト云フコトニ論斷ヲ下サヾルヲ得ヌノデア
ル
諸君、政府ガ本法案ノ寒議ニ際シテ、說明
ノ爲ニ委員會ヘ出席スルコトガ出來ナカツ
タト云フコトハ、是ハ幾多ノ委員會等ガ開
カレテ忙シカッタカラ出ラレナイ、是モ認メ
ザルノデハアリマセヌガ、併ナガラ諸君、
近來開店休業ト云フ言葉ガ出來テ居ル、是
ハ現內閣ノ失政ニ依シテ最近出來タ所ノ熱
語デアリマス、第五十九議會ガ開會セラレ
マシテ以來、政府ハ殆ド重要ナル所ノ法案
ハ一モナカッタ、是ハ恐ラク濱口首相ノ病氣
引籠ノ結果、代理首相デー主人ガ留守デ、
手代番頭ノミデ手ガ著カナカッタ爲メデア
ラウト思フ(「餘計ナコトヲ言フナ」「ソンナ
コトハ關係ガナイ」ト呼フ者アリ)イヤ是ハ
關係ガアル、此法案ノ審議ガ遲レルト云フ
コトニ大變關係ガアル、而モ會期ノ三分ノ
二ヲ經過シタ頃カラ、無暗ヤタラニ澤山ノ
法案ヲ出シテ居ル、ソレガドウシテソレダ
ケノ間ニ多數ノ審議ガ出來ルカ、左樣ナ事
デアルガ故ニ、實際確信ヲ持ッテヤルナラ
バ、殊ニ此小作法ノ如キハ、大正十年カラ
〓究シテ居ル問題デアル、現內閣ニ於テモ
相當〓究シテ、實際之ヲ出サウトスル確信
ヲ持フテ居ルナラバ、議會ノ開會ト同時ニ斯
樣ナ大法典ヲナゼ出サナイカ(拍手)始ド會
期ノ三分ノ二ヲ過ギテカラ、無暗ヤタラニ
澤山ノ法案ヲ出スカラ其審議ガ出來ナイ、
開店休業デアッタ政府ガ次ニ閉店、店仕舞ノ
爲ニ大廉賣ヲスルヤウナヤリ方ヲヤッテ居
ルデハナイカ(拍手)斯樣ナ事デ此重大ナル
法案ヲ審議シテ之ヲ通過シタナラバ、却テ
ソレガ爲ニ非常ナル迷惑ヲ農村ニ及ボス結
果ニナルガ故ニ、吾々ハ更ニ政府ガ愼重ナ
ル調査〓究ヲ遂ゲテモウ一遍出直シテオ
イデナサイト云フ意味ニ於テ反對スル者デ
アル(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=196
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197・作田高太郎
○作田高太郞君 本案ノ討論ハ此程度ニ止
メ、他ノ一切ノ動議ニ先ヲテ本案ノ讀會ヲ
省略シ、委員長報〓ノ通リ可決セラレンコ
トヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=197
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198・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 作田君ノ動議ニ贊
成ノ諸君ノ起立ヲ求メマス
〔發言スル者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=198
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199・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 作田君ノ動議ニ贊
成ノ諸君ノ起立ヲ求メマス
〔贊成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=199
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200・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 起立多數デアリマ
ス、作田君ノ動議ノ如ク決シマシタ
〔發言スル者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=200
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201・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 作田君ノ動議ノ如
ク決シマシタ
〔「異議アリ」「異議ナシ」ノ聲起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=201
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202・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 異議ガアリマスカ
〔「異議アリ」「異議アリ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=202
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203・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 異議ノ申立ニハ成
規ノ贊成アリト認メマスカラ、記名投票ヲ
以テ採決致シマス(拍手)作田君ノ動議ハ、
本案ノ討論ハ此程度ニ止メ-本案ノ討論
ハ此程度ニ止メ、他ノ一切ノ動議ニ先ッテ本
案ノ讀會ヲ省略シ、委員長報告通リ可決セラ
レンコトヲ望ミマス、斯ウ云フノガ作田君
ノ動議デアリマス、作田君ノ動議ニ贊成ノ
諸君ハ白票、反對ノ諸君ハ靑票ヲ持參セラ
レンコトヲ望ミマス
閉鎖-氏名點呼ヲ命じマス
〔書記官氏名ヲ點呼ス〕
〔「呼バレル前ニ投票スルト云フコトハ
ナイ」「ヤリ直セ〓〓」ト呼ヒ其他發言
スル者多ク議場騒然〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=203
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204・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 靜ニ-靜ニシテ
下サイ-點呼シタコトガ聽エナイ者ガ
アッタ爲ニ混亂ヲシマシタカラ、讀直シ
ヲシマス-更ニ點呼ヲ致シマス-更ニ
點呼ヲ致シマス
〔發言スル者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=204
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205・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 靜肅ニ願ヒマス
〔書記官氏名ヲ點呼ス〕
〔「聽エナイ」「議場ノ整理ヲヤッテ吳レ」
「モットシッカリ讀メ」「早過ギル」「緩クリ
ヤレ」「大キイ聲デヤレ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=205
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206・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 投票漏ハアリマセ
ヌカ
〔「アリマス」「投票漏ガアリマス」ト呼
フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=206
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207・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 投票漏ハアリマセ
ヌカ
〔「アリマス」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=207
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208・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) アレバ投票ナサ
イ投票漏ナシト認メマス-投票函閉
鎖-開匣-開鎖-投票ノ結果ヲ書記
官長ヨリ報〓セシメマス
〔田口書記官長朗讀〕
投票總數二百二十六
可トスル者白票百六十六
否トスル者靑票六十発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=208
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209・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 投票ハ決シマシ
タ-作田君ノ動議ノ如ク決シマシタ
〔參照〕
本案ハ討論ヲ終局シ讀會ヲ省略シテ委員
長報告ノ通可決スヘシトノ動議ヲ可トス
ル議員ノ氏名左ノ如シ
石原善三郞君石川久兵衞君
井本常作君井上剛一君
一宮房治郞君一柳仲次郞君
今堀反三郞君猪股謙二郞君
原吉郞君原夫次郞君
服部〓一君長谷川陸郞君
林平馬君春島東四郞君
坂東幸太郞君西村金三郞君
西村丹治郞君西脇晉君
西田郁平君本田恒之君
堀内良平君戶井嘉作君
戶部良祐君富田幸次郞君
當眞嗣合君中馬興丸君
小野耕一郞君小俣政一君
小峰滿男君小久江美代吉君
小山倉之助君小川〓大·郞君
岡田素臣君岡田春夫君
岡野龍一君大植〓左衞門君
大島要三君大西正幹君
大里廣次郞君大麻唯男君
渡邊泰邦君加藤六藏君
河西豐太郞君風見章君
河波荒次郞君簡牛凡夫君
漢那憲和君神部爲藏君
横山勝太郞君吉川吉郞兵衞君
高橋秀臣君高橋守平君
高橋元四郞君高橋壽太郞君
高瀨梅吉君高島兵吉君
田中隆三君田中貢君
田崎武男君武谷甚太郞君
武知勇記君賴母木桂吉君
多田滿長君俵孫一君
谷原公君添田敬一郞君
土屋〓三郞君土屋寛君
津原武君中島琢之君
中村繼男君中崎俊秀君
中野正剛君仲井間宗一君
長塚忠策君長尾半平君
長野綱良君永井柳太郞君
村上國吉君村上紋四郞君
村岡吾一君紫安新九郞君
鵜澤字八君牛場〓次郞君
海野數馬君野田文一郞君
栗原彥三郞君櫛部荒熊君
工藤鐵男君黑金泰義君
栗山資四郞君山本實彥君
山田道兄君山田毅一君
山内亮君山道襄一君
山枡儀重君安田耕之助君
八並武治君八木逸郞君
矢野庄太郞君松田喜三郞君
松田源治君松井文太郞君
松村謙三君前田卵之助君
眞鍋儀十君牧山耕藏君
藤田若水君古島義英君
古屋慶隆君深水〓君
小山邦太郞君小山谷藏君
小山令之君小坂順造君
小西和君小池仁郞君
古賀政一君木檜三四郞君
海老澤爲次郞君田昌君
寺島權藏君阿由葉勝作君
藍川〓成君荒川五郞君
淺川浩君佐藤謙之輔君
佐藤啓君佐藤喜八郞君
佐竹庄七君櫻內辰郞君
櫻內幸雄君齋藤隆夫君
齋藤太兵衞君澤本與一君
澤田利吉君作田高太郞君
木村秀興君木原七郞君
北田正平君北浦圭太郞君
北原阿智之助君菊池良一君
由谷義治君三田村甚三郞君
三浦虎雄君水上齊之助君
宮澤胤勇君宮崎高四君
〓水長〓君篠原陸朗君
斯波貞吉君鹽田團平君
重松重治君平野光雄君
平山岩彥君廣瀨德藏君
森峰一君森田茂君
最上政三君百瀨渡君
鈴木富士彌君鈴木寅彥君
杉浦武雄君末松偕一郞君
否トスル議員ノ氏名左ノ如シ
井上知治君瀬一二君
飯村五郞君猪野毛利榮君
林七六君林讓治君
西岡竹次郞君西村茂生君
星島二郞君本田義成君
東〓實君土井權大君
豐田收君大崎〓作君
若宮貞夫君加藤知正君
加藤久米四郞君加藤鐐五郞君
勝田銀次郞君片野重脩君
高橋熊次郞君高見之通君
高草美代藏君田子一民君
丹下茂十郞君瀧正雄君
津雲國利君津崎尙武君
中山貞雄君中村嘉壽君
名川侃市君永田良吉君
野方次郞君熊谷直太君
倉元要一君藏園三四郞君
由崎猛君山崎達之輔君
山口義一君山田又司君
松山常次郞君船田中君
藤井達也君木暮武太夫君
寺田市正君靑山憲三君
佐藤重遠君木村〓治君
喜多孝治君三井德寶君
水島彥一郞君島田俊雄君
森蟲昶君森恪君
望月圭介君〓家吉次郞君
鈴木英雄君砂田重政君
多木久米次郞君森本一雄君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=209
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210・藤澤幾之輔
○議長(藤澤幾之輔君) 本日ハ是ニテ散會
致シマシテ、次囘ハ二十三日特ニ本會議ヲ
開キマス、日程ハ公報ヲ以テ御通知致シマ
ス、本日ハ是ニテ散會致シロス
午後九時五十六分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913242X03119310320&spkNum=210
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