1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
勞働者災害扶助法案（政府提出）
勞働者災害扶助責任保險法案（政府提出）
勞働者災害扶助責任保險特別會計法案（政府提出）
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會議
昭和六年三月十七日（火曜日）午前十時三十九分開議
出席委員左の如し
委員長 山邊常重君
理事 竹田儀一君
理事 坂東幸太郎君
理事 村上紋四郎君
理事 崎山武夫君
理事 上田孝吉君
小山令之君 栗山賚四郎君
村上國吉君 佐藤與一君
氏家清君 佐々木芳照君
安藤正純君 牧野良三君
東條貞君 原惣兵衞君
高見之通君 西尾末廣君
同日委員山崎傳之助君、眞鍋儀十君及森田政義君辭任に付其の補闕として佐々木芳照君、村上國吉君及上田孝吉君を議長に於て選定せり
同日理事森田政義君委員辭任に付其の補闕として上田孝吉君理事に當選せり
出席政府委員左の如し
社會局長官 吉田茂君
社會局部長 富田愛次郎君
委員長の許可を得て出席したる者左の如し
社會局書記官 北岡壽逸君
司法書記官 奧野健一君
本日の會議に上りたる議案左の如し
勞働者災害扶助法案（政府提出）
勞働者災害扶助責任保險法案（政府提出）
勞働者災害扶助責任保險特別會計法案（政府提出）発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913760X00519310317&spkNum=0
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001・山邊常重
○山邊委員長 前囘ニ引續キ會議ヲ開
キマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913760X00519310317&spkNum=1
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002・原惣兵衞
○原委員 幾ラ議論ヲ致シマシテモ、
三條ノ問題ハ先般富田政府委員ニ、
數次ノ請負ヲ爲ス場合ト云フ例ヲ御尋
致シタ場合ニ、一家數人ニ依リテ分割
スル場合トカ、順次下請關係ニ於テ請
負ヲ爲ス場合、斯ウ云フヤウナノハ兩
方共、所謂橫斷、縱斷トモ含ンデ居ル
ト云フ御話ガアリマシタガ、果シテ其
御說ハ御認ニナルカドウカト云フコト
ヲ、モウ一度確メテ置キタイト思ヒマ
ス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913760X00519310317&spkNum=2
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003・富田愛次郎
○富田政府委員 縱橫ト云フノハドウ
云フ場合ヲ申上ゲマシタカ、例ヘバ元
請負ノ下ノ方ノ一次、二次、三次ト行
ク場合ニ、元請ト一次、二次、三次ト
ノ間ニ於ケル數次ノ請負ト云フコトヲ
意味シタノデアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913760X00519310317&spkNum=3
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004・原惣兵衞
○原委員 ソレハ先般私ガ御說明ヲ聽
イタ場合ニハ一次ノ數ノモノヲ分割
シテ、請負關係ガ起ルト云フ時ニハ縱
モ橫モ入リマスト御答ヘニナリマシ
タ、是ハ速記ヲ見ルトハッキリ書イテア
リマス、サウスルト元請ト下請ノ關係
以外ノ場合ヲ含ンデ居ナイト云フコト
ニナル譯デアリマスカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913760X00519310317&spkNum=4
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005・富田愛次郎
○富田政府委員 元請ト縱ニ一次二次
三次ト行キマシタ場合ニ付テハ、數次
ノ請負ハ元請カラ一次二次三次ト行ク
場合ハ責任ガアルコトハ當然デアリ
や人、而シテ所謂橫ニ行キマシタ場合
ニ付テモ、例ヘバ元請ガアッテ一ツノ仕
事ヲ甲乙丙ニ分割シタル場合ニ付テ
モ、元請人ニ責任ガアルト云フコトヲ
申シテ居ルノデアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913760X00519310317&spkNum=5
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006・原惣兵衞
○原委員 吉田社會局長官ニ御尋ネシ
タイコトハ、昨日來色々說明ニナリマ
シタガ、事實關係ニ付テハ其方ガ便利
ガ宜イトカ何トカ色々ナコトヲ御說明
ニナッタノデアリマスガ、如何デアリマ
スカ、假リニ事實ニ付テ、私等ハ事實
ハ事實トシテ、適確ナル二三ノ質問ヲ
致シタノデアリマスガ、假リニ事實關
係ハ其方ガ明白デアルト仰セニナッテ
モ、問題ハ事實上ノ問題ニアラズシテ、
法律關係ヲ今論ジテ居ルノデアリマ
ス、殊ニ立法問題デアリマスカラ、立
法問題ノ立前カラ云ウタナラバ連帶責
任ト云フモノハ勞働者ノ味方ニ、ヨリ
以上利益ニナル、連帶責任ヲ-所謂
權利者デアル地位ノ勞働者ニ取ッテ、連
帶責任ト云フモノヲ感ゼシメナイ方
ガ、權利者タル勞働者側ノ地位ハ、保
護ノ利益ガ少イト云フコトダケハ、事
實關係ヲ離レテ、法ノ建前カラ見テ事
實問題ニアラズ、法律問題ト云フ立場
カラ見タナラバ如何ニナリマスカ、何
ト云ウテモ仰セノ通リト云フ御答ニナ
ラナケレバ理窟ハ立タヌト思フガ、ド
ウデスカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913760X00519310317&spkNum=6
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007・吉田茂
○吉田政府委員 事實關係ヲ離レマシ
テ、御尋ネノヤウニ純粹ニ法律上ノ權
利ノ强サカラ申シマシテ、ソレガ訴訟
ニナリマシタ場合ニハ、仰セノ通リニ
數人ノ人ガ連帶シテ保證責任ヲ負ウテ
居ルト云フコトノ方ガ、權利ハ强イコ
トニ違ヒアリマセヌ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913760X00519310317&spkNum=7
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008・原惣兵衞
○原委員 ソレデ能ク分リマシタ、第
三號ニ付テ、私ハ先般來、先ヅ催告ヲ
スベキ旨ヲ請求スルコトヲ得、斯ウ云
フコトヲ御尋ネシマシタ時ニ於テ、元
請人ノ責任ハ、アチラヘ請求ニ行ケト
云フ抗辯權ヲ持ッテ居ルト解シテ居ル
ニ拘ラズ、幾度モ政府委員ハ、イヤソレ
ハ下請ノ方ヘ行ッテ斯ウ云フ通知ヲ出
セ葉書デモ宜イカラ通知ヲ出シテ置
ケバ宜イ、ソレガコチラヘ來レバ足リ
ルノデアリマス、斯ウ云フ御說明ガア
リマシタガ、法律上ノ構成カラ見マシ
テ、サウ云フコトハ斷ジテ言フコトハ
出來ナイト私等ハ考ヘテ居ルノデアリ
マスガ、ソレヲ法律問題トシテ明確ニ
御答辯ヲ願ヒタイ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913760X00519310317&spkNum=8
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009・吉田茂
○吉田政府委員 若シ通知ト申上ゲタ
ナラバ、ソレハ用語ガ正確デナカッタノ
デアリマス、最初ニ下請人ニ請求シテ
居ルコトデアリマス、其請求シテ居ル
ト云フーコトガ證明出來レバデアリマ
ス、サウスレバ更ニ元請人カラ下請人
ニ請求スベキ權利ハ、別ニ樣式ノ定メ
モ何モナイノデアリマスカラ、葉書モ
無論請求トシテ法律的ニハ證據ニ使ヒ
得ルト思ヒマス、單純ニ請求ノ意味ト
シテ通知スルヤウナコトハ事實稀デア
ラウト思ヒマス、多クノ實際ノ場合ニ
於キマシテハ、現ニ勞働者ヲ使ッテ居リ
マス下請人ガ例ヘバ怪我ヲシタ場合、
直グニ病院ニ連レテ行ク、醫者ヲ呼ン一ハ、
デ來ルト云フノデ、直グソレガ扶助ノ
內容ニナルノガ通例デアリマス、隨テ
元請人ト下請人トノ間ニ於テ、下請人
カラ請ケル契約ガアリマス場合ニハ無
論ノコト、其下請人ニ先ヅ請求スルト
云フコトハ通常ノ狀態ノ下ニ於キマ
シテハ、自然ノ成行デアリマスカラ、
下請人ニ請求スルト云フコトノ證明
モ、從ッテ左程困難ナコトデナイデアラ
ウ、其證明ガ困難デナイ以上ハ、證明
セラレタ場合ニ於キマシテハ、元請人
ハ更ニ下請人ニ催告スベキ旨ノ請求ハ
出來ナイノデアリマス、單純ナ通知ノ
意味ダト云フコトガ明瞭デアリマス
トソレハ請求シタ證據ニナラヌカモ
知レマセヌガ、サウ云フコトハ事實少
ナカラウト思フノデアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913760X00519310317&spkNum=9
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010・原惣兵衞
○原委員 私ノ御尋シテ居ルノハサ
ウ云フ問題デナクテ、此第三號ノ規定
ガ、無論法律問題ニナッタ時ノ話デ、
事實問題デ片ガ付イタラ法律ハ要ラナ
イ、片ガ付カナイ時ニ、此法律ガ始メ
テ發動スル譯デアリマス、ソレデアリ
マスカラ勞働者ガ元請人ニ對シテ請求
スル、ソコデ問題ハ現金受取人ハ元請
人ニナッテ居ルノデアリマシテ、其元請
人ヘ行ッタ時ニ、元請人ガ今玆ニ書イテ
アルヤウニ、下請人ニ對シ先ヅ催告ス
ベキ旨ヲ請求スルコトヲ得ト云フコト
先ヅオ前下請ヘ行ッテ請求シテ來
イ、斯ウ云フ權利ヲ持ッテ居ル、サウ
抗辯シタ時ニ勞働者ノ立場ハドウナル
カ、サウスルト裁判ヲヤリ變へテ來ナ
ケレバナラヌ、少クトモソコニ於ケル
所ノ此催告スベキ旨ヲ請求スルコトヲ
得ト云フ規定ハ、法律上如何ナル意味
合デアリマスカ、此法律的ナ精神及其
法律上ノ請求スル權利ト云フモノハ如
何ナルモノカト云フコトヲ御聽キシテ
居ルノデアリマスカラ其點ヲ御說明シ
テ戴キタイ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913760X00519310317&spkNum=10
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011・吉田茂
○吉田政府委員 只今其點ハ申上ゲタ
ト考ヘタノデアリマスガ、下請人ニ對
シマシテ請求シテ居リマス場合ニ於キ
マシテ、元請人ハ裁判上ニ於テモ事實
上ニ於テモ下請人ニ對シテ先ヅ催告ス
ベキ旨ヲ請求スルコトハ出來ナイノデ
アリマス、隨テ元請人ガソレニ依ッテ
支拂ヲ延シテ貰フ譯ニハ行カナイノデ
アリマス、ソレカラ下請人ニ於テ引受
ケル特約ノアリマス場合ニ於テハ、第
三條ニ依リマシテ保險契約ノ締結ハ元
請人デアリマスカラ、保險金ヲ受取ル
者ハ下請人デアリマス、四條ノ一項ニ
其事ガアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913760X00519310317&spkNum=11
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012・原惣兵衞
○原委員 私ノ申スノハ、是ハ結局法
廷ニ立ッテ見タ人デナケレバ、其法理關
係ガ能ク分ラナイ、吉田サンハ社會局
長官トシハ偉イ方デアリマスケレド
モ、ドウモ御分リニナラヌダラウト思
フ、「先ヅ催告スベキ旨ヲ請求スルコト
ヲ得」ト云フ此請求權ノ內容ハ.果シ
テ如何ナルコトヲ意味スルモノデアル
カ、卽チ事業主ガサウ云フコトヲ言ウ
テ拒ム權利ハ、如何ナル內容デスカ、
之ヲ御尋ネシテ居ルノデス、此際ソレ
ヲ申シテ戴ケバ宜イ、若モ是ハ法律上
ノ關係デ、何デシタラ司法省ノ政府委
員ニ來テ戴イタラ、一番解決ガ早イト
思フ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913760X00519310317&spkNum=12
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013・吉田茂
○吉田政府委員 「下請人ニ對シ先ツ
催告スヘキ旨ヲ請求スルコトヲ得」ト
云フ內容ハ、特ニ裁判ニナリマシタ時
ニ、ソレヲ行使シテ、ドウ云フ效果ガ
アルカト云フ御尋デアリマスガソレ
ハ自分ノ履行ヲソレダケ避ケルト云フ
ヨリ外ナイト云フ考デアリマス、ソレ
以外ニハ別ニ取立テヽドウト云フ效果
ハナイダラウト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913760X00519310317&spkNum=13
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014・原惣兵衞
○原委員 只今ノ御說明ハ、效果ノ問
題デアリマスガ、私ハ請求權ノ內容ヲ
問フタノデス、避ケル權利ガアルト言
ハレルガ、其避ケラレルコトガ、勞働
者ノ保護ニナラナイ、ダカラ是ハ法律
上ノ結果カラ見テ居ル、事實問題トシ
テハ折角請求シタノニ、オ前ハ下請
ニ行ケ、俺ハ拂ハナイノダト言ッテ拒ム
權利、卽チ避ケル權利ガアル、斯ウ云
フコトデハ勞働者ハ折角訴ヘテモアツ
チヘ行ケ、コッチヘ行ケト云ッテ二年モ
三年モ掛カルコトニナレバ、事實上勞
働者ハ目的ヲ達スルコトガ出來ナイト
云フ重大ナ事ガ起ッテ來ル、此位權利者
タル勞働者ニ不利ナ規定ハナイト考ヘ
マスガ、此點ハ如何デアリマスカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913760X00519310317&spkNum=14
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015・吉田茂
○吉田政府委員 元請人ハ一應裁判ヲ
避ケルコトガ出來ルノデアリマスケレ
ドモ、下請人ニ對シテ請求致シテ居リ
マスレバ、ソレヲ避ケル手段ハ講ズル
途ガナイノデアリマス、又斯ウ云フコ
トハ、滅多ニアリマスマイケレドモ、
下請人ニ對シテ請求セズシテ、イキナ
リ元請人ニ請求シタト云フ場合デモ避
ケサセルノデハナイノデアリマス、先
ヅ下請人ニ對シテ催告スベキ旨ヲ請求
スルノデアリマス、下請人ニ對シテ催
告ヲ致シテ、扶助致シマセヌケレバ、
ヤハリ元請人ガ拂ハナケレバナラヌノ
デアリマシテ、其結果結局勞働者ガ扶
助ヲ受ケルコトガ出來ナクナルト云フ
ヤウナ虞ハナイノデアリマス、サウ云
フ風ニシテ、ドチラニデモ請求ガ出來
ルソレモ同ジ重サデ請求ガ出來ルト
云フコトハ、權利關係ノ上ニ於キマシ
テ裁判ニナリマシタ時ニ力ガ强イト云
フコトハ御說ノ通リデアリマス、事實
ヲ離レテ考ヘマスト、一見ソレガ非常
ニ便利デアルヤウデアリマスケレド
モ、主タル債務者ガ誰デアルカト云フ
コトガキマッテ居リマスコトガ、其權利
ヲ行使スル上ニ於キマシテ、殊ニ勞働
者ノ扶助ト云フヤウナ場合ニ於キマシ
テハ非常ニ必要ナノデアリマス、誰
ニデモ行ケルト云フコトニ法律上キ
マッテ居リマシテモ、連帶責任者ノ一人
ノ所ニ行ケバアッチヘ行ッテ吳レト言ハ
レ、ソッチヘ行クトソンナ筈ハナイト
云フコトデアッチヘ行ケコッチヘ行ケト
押問答ヲ重ネテ居ッテ、勞働者ノ扶助ガ
十分間ニ合ヒ兼ネルト云フコトガ事
實上起ルト思フノデアリマス、兎ニ角
業務上ノ災害デアリマスカラ、扶助ヲ
迅速ニ行フコトガ最モ必要ナノデアリ
マシテ、裁判上ノ權利ヲ行使スルト云
フコトモ大事ニハ違ヒナイノデアリマ
スガ、迅速ニ確實ニ誰ガ扶助ヲ行フベ
キモノダト云フコトガ分ッテ居リ、ソレ
ガ保險ノ方ニモ聯絡ヲ取ッテ行フテ居ル
ノデアリマスカラ、私共此方デ參リマ
ス方ガ、本法ノ扶助ノ目的ヲ達スルノ
ニ最モ適切デアルト考へテ居ルノデア
リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913760X00519310317&spkNum=15
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016・原惣兵衞
○原委員 政府委員ハイツモ此方ガ却
テ實際ニ宜イノダト仰セニナリマス
ガ、連帶責任ノ場合デモ、責任ノ歸屬
者ガ明白ニナッタ如ク、此規定ガアッテ、
其方ガ實際明ニナルノダト云フコトガ
ドウシテモ出テ來ナイ、元請ニ請求シ
ニ行ク時ハ、少クトモ下請ガ拂ハナイ
場合ヲ法律ハ豫想シテ居ル、下請ガ拂ツ
テ吳レナイカラ、始メテ元請ニ行クコ
トニナル、所ガ元請人ニ、下請ヘ行ケ
俺ハ拂フノデハナイ、アッチヘ行ケト云
フ權利ヲ持タセテ居ルノデスカラ、ソ
レコソアナタノ仰セラレル通リノ、本
當ニ面倒臭イコトヲ法律ニ依ッテキメ
テ居ルノデハアリマセヌカ、アナタノ
言フ通リ法律ハアッチ行ケ、コッチヘ行
ケト云フコトヲ規定シテ居ル、是ガイ
ケナイト云フノデアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913760X00519310317&spkNum=16
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017・吉田茂
○吉田政府委員 此法律デ豫想シテ居
ルノハ引受ノ特約アル場合ニハ下請
人ニ行ケト云フコトヲ規定シテ居ルノ
デアリマス、ソコデ下請人ニ對シテ請
求シテ、拂ハナイカラ元請人ニ行クト
云フ場合ニ、先ヅ下請人ニ對シテ催告
スベキ旨ヲ請求スルコトヲ得ト云フノ
ハ下請人ニ行カズシテイキナリ元請
人ニ行ッタ場合ニ對スル元請人ノ抗辯
ヲ規定シテ居ルノデアリマス、先程モ
申ス通リ、最初ニ下請人ニ請求シタト
云フコトガ證明サレヽバ、元請人ハモ
ウ一遍下請人ニ行ケト云フコトハ言ヘ
ナイノデアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913760X00519310317&spkNum=17
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018・原惣兵衞
○原委員 ソコデ問題ガ起ッテ來マス、
果シテ下請人ニ請求スルト云フコトハ
如何ナル範圍カ、アナタノ仰セハ葉書
一本出シテ下請人ヘ一遍請求スレバ足
リルト云フコトデアルガ、葉書一本出
シテ、裁判上ソレデ宜イト云フナラバ、
此規定ハ置カナイデ、反對ニ權利者タ
ル勞働者ハ下請人ニ內容證明カ何カデ
請求シテ、一定ノ期間內ニ於テ支拂ハ
ナイ時ニハ之ヲ元請人ニ請求スルト云
フコトヲ書ケバ明白デアリマスガ、兎
ニ角裁判上元請人ニ權利ヲ持タシタコ
トハ、是ハ民法ノ規定ヲ見マシテモ抗
辯權デアルカラ、下請人ガ拂ハナカッタ
ト云フノハ如何ナル狀態ヲ言フノカ、
是ガ吾々ニハ分リマセヌ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913760X00519310317&spkNum=18
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019・吉田茂
○吉田政府委員 別ニ其請求ニ付キマ
シテ、樣式ヲ決メルト云フコトハ、是
ハ無論勞働者、下請人ノ關係ヲ律スル
コトヽシテハ不適當デアラウト思ヒマ
スノデ、樣式ハ何等決メテナイノデア
リマス、隨ッテ請求シタト云フ事ガ、葉
書デアラウガ、手紙デアラウガ、書留
デアラウカ、內容證明デアラウガ、何
等カノ方法ニ依ッテ證明サレマス時ハ
元請人ハ下請人ニモウ一遍行ケト云フ
コトハ言ヘナイノデアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913760X00519310317&spkNum=19
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020・原惣兵衞
○原委員 アナタハソレヲ言へナイノ
ダト言ッテモ、法律上ノ建前ガ、一六七
抗辯權ヲ持タシ、元請人ニ一ツノ權利
ヲ持タシテ居ル以上ハ、裁判上ノ問題
ニナルト、權利ヲ確定シナケレバナラ
ヌ、是ハ法律問題ニナルノデアリマス
ガ、アナタハ一遍葉書ヲ出シテ請求シ
タト云フ事實ガアッタナラバ言ヘナイ
ト云フガ、サウ云フ簡單ナモノデアル
ナラバ催告權ナドヽ云フヤカマシイ規
定ノ必要ヲ認メナイ、是ハ本當ノ空文
ニナル、玆ニ元請人ニ重大ナル權利ヲ
持タシタ以上ハ、法律上裁判上愈〓ノ場
合ニナッタ時ニハ、サウ云フコトハ出來
ナイ、結局勞働者ガ一遍デモ通知ヲ出
シタナラバ、サウ云フコトハ言ヘナイ
ト云フコトヲ、アナタヾケガ仰セニナ
ルケレドモ、裁判官ガドウ決メルカト
ナルト、法律ノ精神ニ依ッテ決メナケレ
バナラヌ、今ノ催告權、抗辯權ノ內容
カラ言フナラバ、何處マデモ此催告ス
ベキ旨ヲ請求スルコトヲ得ト云フ、此
請求權ハ如何ナルコトヲ意味スルカ、
アナタデハソレガ御分リニナリマセヌ
カラ、司法省ノ政府委員ガ來ラレテ、
法律的ノ解釋ニ依ッテ御說明ヲ願ハナ
ケレバ、私等ハ其答辯デハ滿足スルコ
トガ出來ナイ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913760X00519310317&spkNum=20
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021・山邊常重
○山邊委員長 皆樣ニ申上ゲマス理
事森田政義君ガ委員ヲ辭任サレマシタ
ノデ、其代リニ上田孝吉君ニ理事ヲ御
願スルコトニ致シマシタ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913760X00519310317&spkNum=21
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022・原惣兵衞
○原委員 只今ノ法律問題ハ偖措キマ
シテ、時間ヲ空費致シマスカラ更ニ質
問ヲ進メマス、勞働者災害扶助責任保
險法案ニ付テヾアリマスガ、此保險法ヲ
御制定ニナル御趣旨ハ、政府ハ少クト
モ國家ノ建前カラ見テ、一ツノ大キナ
社會事業デアリ、社會問題デアルトシ
テ本法ヲ御制定ニナルト云フ御精神デ
アルコトヲ認メテ居ル、サウスルト此
法案ハ少クトモ勞働者ノ災害扶助ノ目
的達成ノ爲ニ御制定ニナルトシテ、政
府ハ眞ニ勞働者ヲ保護スル意味合カ
ラ、國家ノ費用ヲ少シモ出サズニ、請
負人ニ其責任ヲ持タセル、換言スレバ
勞働者自身ニ責任ヲ持タセルコトニナ
ルト思ヒマスガ、政府ハ果シテ勞働者
ヲ保護スルト云フ御趣意ヲ御認メニ
ナッテ居ルヤ否ヤ御尋ヲ致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913760X00519310317&spkNum=22
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023・吉田茂
○吉田政府委員 御尋ノ點ハ本法ノ第
二條ニ規定シテアリマス通リ、勞働者
ノ業務上ノ災害ニ限ラレテ居ルノデア
リマシテ、業務上ノ事由ニ依リマシテ
災害ヲ生ジタ場合ニハ、其業務ニ付テ
ノ事業主カラ賠償ヲ致スコトガ適當デ
アルト考ヘテ居ルノデアリマス、是ハ
現在工場鑛山等ニ於キマシテモ、業務
上ノ事由ニ付キマシテハ斯樣ニナッテ
居ルノデゴザイマス、隨ヲテ事業主ノ扶
助責任ト云フモノヲ、此方面カラ規定シ
タノデアリマス、其外業務外ノ疾病負
傷ト云フヤウナ種々ノ事項ガアリマシ
テ、其爲ニ勞働者ノ不幸ヲ見ルコトモ
無論ゴザイマスノデ、ソレ等ニ對シマ
シテハ健康保險其他ノ社會保險ノ制度
ヲ擴張シテ行キタイト云フ考ヲ以チマ
シテ、調査ヲ致シテ居ルノデアリマス
業務上ニ付キマシテハ、本法ニ規定ス
ルヤウナ建前ガ適當デアルト思ヒマ
ス、尤モ後日是等ノ勞働者ニ對シマシ
テ種々ナル社會保險ノ制度ガ考慮セラ
レマス際ニ於テハ、此扶助責任ノコト
モ其中ニ併セテ受入レ、又ハ關聯シテ
問題ヲ考慮スルト云フ必要ハ無論起ル
ト思ヒマスケレドモ、今マデハ勞働者
ノ業務上ノ災害ニ付テハ、何等扶助ノ
規定ガナカッタノデアリマシテ、今度ノ
規定ニ依リマシテ、斯樣ナル點ガ最小
限度ニ明瞭ニナッタノデアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913760X00519310317&spkNum=23
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024・原惣兵衞
○原委員 五十六議會ノ田中內閣當時
ニ出シタモノニハ保險法ノ規定ガナ
カッタノデアリマス、ソレハ結局ニ於テ
請負業者ニ責任ヲ持タセルト云フコト
ニ立脚シテ居"ッタノデアリマスガ、今度
保險法ヲ制定スルコトハ、結局勞働者
自身カラモ、一日三錢ナリ五錢ヲ取ル
コトニナルノデハナイカト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913760X00519310317&spkNum=24
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025・吉田茂
○吉田政府委員 勞働者ニハ何等ノ負
擔ヲ課セナイノデアリマス、是ハ扶助
責任ノ保險デアリマシテ、例へバ請負
事業ニ付テ申シマスレバ、一ツノ工事
ヲ請負ヒマシタ際ニハ、法律ノ定ムル
所ニ依ッテ事業主カラ保險料ヲ拂フノ
デアリマス、勞働者ハ保險ニハ加入シ
テ居リマセヌ、事業主同志ガ其危險ヲ
分擔スルノデ、勞働者ハ金ヲ貰フ一方
デ自分ハ其危險ヲ負擔セヌノデアリマ
ス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913760X00519310317&spkNum=25
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026・原惣兵衞
○原委員 其點ニ付テ直接勞働者カラ
金ヲ取ルト云フコトニハナッテ居リマ
セヌガ、例ヘバ之ヲ見マシテモ大體ノ
日數カラ見テ、一日何ボト云フ割合ハ
事實上勞働者ニ對シテ、少クトモ利益
ヲ減ストカ何トカ云フ問題ガ、此保險
法ヲ制定スルト同時ニ、起ッテ來ルト思
フノデアリマス、此點ハ保險法ノ規定
ガナイカラト言ウテモ結局斯ウ云フ
法律ヲ制定スル以上ハ、サウ云フコト
ヲ見込ンデ、勞働者ニ轉嫁サレルコト
ニナルト思フノデアリマスガ、此點ハ
ドチラニモ解釋出來ルノデアリマシテ
兎ニ角本法ヲ制定スル以上ハ、少クト
モ國家ガ相當ノ費用ヲ勞働者ノ扶助ノ
爲ニ、國家自身ニ年々何ボカヲ出シテ
ヤラナケレバナラヌ、私ノ言フ點ハ總
テ保險料ニ依ッテ完成シテ行ク、國家ハ
文ノ費用ヲモ持タナイデ、ソレヲ事
業主ニ掛ケテ行クト云フコトハ、結局
勞働者ノ上前ヲ、保險金ヲ償フダケハネ
テ行クト云フコトニナル、デアルカラ
少クトモ斯ウ云フ重大ナ社會立法ヲ御
出シニナルナラバ、現內閣ハ殊ニ社會
的方面ニ御盡シニナッテ居ルト云フナ
ラバ少クトモ此保險法ノ制定ニ付テ
ハ一定ノ費用ヲ國家ガ持ッテヤル、サウ
シテ請負人ガ少クトモ勞働者ヲ、窘メ
テ行クト云フコトヲシナイヤウニシナ
ケレバナラヌ、斯ウ云フコトニ付テハ
國家ハ之ニ對シテ此法ヲ制定スルニ付
テ、國家トシテ持ツベキ所ノ相當ナル
費用ヲ、御考ヘニナッテ居ナケレバナラ
ヌト思フノデアリマスガ、其點ニ付テ
ハ如何ナル費用ヲ御見込メニナッテ居
リマスカ、サウシテ之ヲ補助シテ、勞
働者ノ保護ニ當ラナケレバナラヌト云
フコトヲ、御考ヘニナッテ居リマスカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913760X00519310317&spkNum=26
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027・吉田茂
○吉田政府委員 御尋ハ他ノ般ノ、
例ヘバ健康保險或ハ只今別途此議會ニ
提案シテ居リマスル船員保險等ノヤウ
ナ、保險ノ掛金ヲ勞働者カラモ取ルヤ
ウナ實際ノ社會保險ト云フヤウナ場合
ニ於テハ勞働者ノ負擔ヲ輕減スル、
或ハ事業主ノ負擔ヲ輕減スルト云フヤ
ウナ趣意デ、國家ガ其一部分ヲ持ツト
云フコトハ極メテ適當デアリ、只今ノ
ヤウナ御論ガ立ツト思ヒマスガ、此場
合ニ於テハ、業務上ノ事由ニ因リマシ
テ、災害ノ起ッタ場合デアリマスカラ、
事業主ニ扶助責任ガアル、其責任ヲ容
易ニ事業主トシテモ果サレ、又勞働者
トシテモ其責任ヲ容易ニ果シテ貰フ爲
二、事業主ノ間ニ危險分散ノ意味デ、
或ル事業主ダケガ其爲ニ多額ノ扶助金
ヲ拂ハナケレバナラヌト云フコトデ困
ラナイヤウニ、危險分散ノ意味デ、事
業主ノ責任ヲ保險ニ依ッテ果スノデア
リマス、隨テソレニ對シテ國家ガ補助
金ヲ出スト云フコトハ、ソレダケ事業
主ニ對シテ補助ヲスルト云フコトニナ
ルト同ジコトニナルノデアリマス、無
論補助ガ貰ヘレバ、事業主トシテハ非
常ニ結構ナコトニハ違ヒナイノデアリ
マスガ、扶助責任ヲ自分ノ經濟ニ於テ
果スト云フ義務ヲ持ッテ居ル以上ハサ
ウシテソレガ保險ニ依ッテ危險ヲ分散
セシムルト云フコトヲシ得ラレマス以
上ニハ、是ハ事業主ニ於テ保險ニ要ス
ル切ノ費用ヲ持ツト云フコトハ、極
メテ當リ前ノコトデアリマス、又其保
險經濟ノ負擔ガ勞働者ニ轉嫁サレハシ
ナイカ、賃銀ノ減額等ニ於テ轉嫁サレ
ハシナイカト云フ御懸念ノヤウデアリ
マスルガ、是ハ勿論注文主ニ轉嫁サレ
ルト思フノデアリマス、ツノ工事ヲ
請負ッテ、保險ニ這入ラナケレバナラ
ヌ、保險ニ這入ルニハ保險金ヲ支拂ハ
ナケレバナラヌト云フ場合ニ於キマシ
テハ、ヤハリ保險料ヲ支拂ッテ、是ダケ
ノ仕事ヲ引受ケルト云フ計算ノ下ニ、
請負契約ヲスルノデアリマスカラ、ソ
レガ勞働者ノ賃銀ニ影響スルト云フヤ
ウナコトハ、事實アリマスマイト思ヒ
マス、勞働者ト事業主トヲ加ヘテ、政
府デ失業保險デモヤルト云フヤウナ場
合ニハ、無論御說ノ通リ政府カラ費用
ヲ出スノデアリマス、只今迄ノ健康保
險ニ於キマシテモ、政府ガ割ヲ出シ
テ居リマス、今囘ノ船員保險ニ於キマ
シテモ、サウ云フ仕組ニナッテ居リマス
ガ、此保險ハ性質ガ違ヒマス、事業主
ノ扶助責任ヲ保險スルノデアリマスカ
ラ、事業主ガ費用ヲ持ツコトハ當然デ
アリマシテ、此保險經濟ノ始マリマス
當初ニ當リマシテ收入ヲ得ルマデノ間
ノ費用ヲ、事業主ニ持タセルコトハ、
事實行ヒ難クモアラウシ、又實際國家
ガソレヲ持ツベキ理由ガアルト思ヒマ
シテ、今囘ノ追加豫算ニ、ソレニ要ス
ル準備費用ヲ要求シテアルノデアリマ
ス、サウシテ保險經濟ガ始マリマスレ
バ、ズット事業主カラ出テ來ル掛金ガ收
入ニナリマシテ、サウシテ扶助ノ事實
ガ起リマシタ爲ニ、出シマス現金ノ支
拂ガ支出トナッテ、自給自足ヲシテ行ケ
ルコトニナリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913760X00519310317&spkNum=27
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028・原惣兵衞
○原委員 本法ノ內容カラ申シマシ
テ、强制保險ト任意保險トノ二ツニ區
別セラレタノハ、如何ナル譯デアリマ
スカ、先ヅソレヲ伺ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913760X00519310317&spkNum=28
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029・吉田茂
○吉田政府委員 强制保險ハ御覽ノ通
リ、土木建築工事ニ付テヤッテ居リマ
ス、是等ノ工事請負人中ニハ、資力ガ
左程十分デナイ者ガアリ、又非常ナ大
資力ヲ持ッテ居ル者モアリマス、又此種
ノ事業ニ使ハレテ居ル勞働者ノ數ハ、
非常ニ夥シイモノデアリマスカラ、若
シ任意保險ト云フコトニ致シマシテ
入ル者モアリ入ラヌ者モアルト云フコ
トニナリマスト、極メテ資力ノ乏シイ
人々ガ所謂逆選擇ト云フ作用ニ依リマ
シテ、資力ノ十分ナ者ハ、私ハ保險ノ
厄介ニナラズ、自分デ扶助責任ヲ果ス
ト云ッテ、保險ニ入ッテ來ナイ、資力ノ乏
シイ人ノミ入ルト云フコトデアリマス
ト、危險分散ノ趣旨ガソレダケ薄ラゲ
ラレルノデアリマス、隨ッテ保險經濟ガ
成立タヌト云フ障碍ガ起ルノデアリマ
ス、ソレデ土木建築事業ニ付キマシテ
ハ、强制保險トシテ誰モ彼モ入ルコトニ
シテ、危險ヲ分散スル趣旨ヲ立派ニヤッ
テ行カウト云フ趣旨デ、出來テ居リマ
ス、其他ノ事業主ニ對シテハ加入スル
ト否トヲ事業ノ自由ニ任セテ置イタノ
デアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913760X00519310317&spkNum=29
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030・原惣兵衞
○原委員 サウ云フコトニ致シマスト
結局土木建築ノ如キ危險率ノ多イ者ハ
强制的ニ入ラナケレバナラヌト云フコ
トニナッテ來ルト、危險率ノ少ナイ者ハ
入ラナイコトニナルト思フ、ソコデ茲
ニ最モ重大ナル問題ガ起ッテ來ルコト
ハ、此土木事業ナラ土木事業ノ請負人
ダケガ强制的ニ入リ、其他ノ者ガ入ラ
ナイト云フコトニナルト、此事業主ガ
非常ニ大キナ保險率、卽チ保險慣習ニ
伴ウテ、政府ガ費用其他ヲ皆負擔セン
ケレバナラヌノデアリマスカラ、保險
ノ料率ガ非常ニ高クナッテ來ル、非常ニ
ソレガ高クナッテ來ルコトハ、結局スル
所ハ事業主ハ自分デ保險料ヲ持ツノヂ
ヤナイ、卽チ其費用ハ少クトモ勞働者
ニ掛ケテ來ルコトハ當然ナノデアリマ
スソレデスカラ保險料率ト云フモノ
ハ、非常ニ高イ保險料率ニナッテ居ル、
況ヤ此表ニ於テモ其點ニ於テ政府ハ何
故任意保險ト、强制保險トノ區別ヲ今
少シ根本的ニ考ヘテ、保險料率ガ高ク
ナルト云フ點ヲ豫防スルト云フ點ニ付
テ、モウ少シ御考慮ニ御ナリニナラナ
イカト考ヘルノデアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913760X00519310317&spkNum=30
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031・吉田茂
○吉田政府委員 危險率ノ多イ少イニ
依リマシテ、强制保險ト然ラザルモノ
ヲ決メタノデハナイノデアリマス、先
程申上ゲタ通リニ、土木請負業ニ付キ
マシテハ、業態ノ性質上、中以下ノ資
力ヲ持ッテ居ル人ガ澤山ニアルノデア
リマス、又使用勞働者モ非常ニ多イノ
デアリマス、隨テ土木建築ニ付キマシ
テハ、特ニ其間ノ危險分散ト云フ趣旨
デ、皆ニ保險ニ這入ッテ貰フト云フコ
トガ、保險經濟ノ上カラモ、又扶助ノ
上カラモ適當デアラウト云フコトデ、
土木建築業ニ付テハ强制保險ト云フモ
ノヲヤッテ居ルノデアリマス、他ノ任意
保險ノ中ニ加入スルモノヽ中ニモ、保
險率ノ高イモノモ又低イモノモアルノ
デアリマス、保險率ノ高イ業態ニ付キ
マシテハ、其率ニ應ジマシテ保險料ガ
其時ニ高クナッテ來ルノデアリマス、危
險率ノ少イ仕事ニ付キマシテハ、又危
險率ノ少イニ應ジマシテ保險料ガ安ク
ナッテ來ルノデアリマス、危險率ノ多寡
ニ依ッテ强制保險ト任意保險ニ分ケタ
ノデハナイト云フコトハ、先程申上ゲ
タ通リデアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913760X00519310317&spkNum=31
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032・原惣兵衞
○原委員 私ノ御尋シタ要點ハ危險
率ノ少イモノハ任意保險ニナッテ居ル
カラ、其連中ハ這入ッテ來ナイ、結局危
險率ト云フ點ハ、勞働者ノ請負其他ニ
ハ多イノデアリマスカラ、普通ノ工場
其他ニ付テハ少イノデアリマス、私ノ
言フコトハ危險率ノ多イト云フコトガ
ナケレバ、勞働者ノ扶助法ヲ制定スル
必要ガナイ、危險率ノ少イ事業主ト云
フモノハ、任意保險ノ爲ニ這入ッテ來ナ
イノデアリマス、這入ッテ來ナイト云
フコトニナルト、小部分ノ人ガ非常ニ
此保險其他ノ政府ノ事業ナドノ費用、
其他ト云フモノヲ負擔センケレバナラ
ヌコトニナリマスカラ、保險ノ稅率ガ
非常ニ高クナッテ來ル、デスカラ此場合
ノ色々ノ費用ハ、有ユル場合ノ費用ガ
出テ居ルガ、結局土木ナラ土木ト云フ
モノニ制限セラレタル範圍ダケニナッ
テ他ノモノガ這入ッテ來ナイト云フコ
トニナルト、飛ンデモナイ高イ保險料
ヲ拂ハナケレバナラナイコトニナッテ
來マスノデ、私ハ此材料ハ私等トシテ
ハ餘程是ハ調ベナイト此任意保險ト强
制保險ノ關係カラ見テ、非常ニ負擔ヲ
事業主ト勞働者ニ及ボス結果ニナルコ
トハ、私ハ非常ニ憂フベキ點ダト思ッテ
居ルデスカラ問題ハ玆ニ御出シニナツ
タ材料ガ非常ニ杜撰ナモノデアッテ、
モット明確ナモノデナケレバ困ルト云
フコトニ付テ、是デナクテ私ハ府縣別
ニシテ材料ヲ貰ヒタイ、デナケレバ的
確ニ分ラナイ、私ハ今數字ヲ覺ヘテ居
マセヌカラ申上ゲマセヌガ、少クトモ
我黨内閣ノ當時ニ出シタ表ト、今度御
出シニナッタ勞働者ノ表ト、何處カニ百
萬人バカリノ數ガ、明白ヲ缺イテ居ル
ヤウナ杜撰ナ統計ノ材料ニナッテ居ル、
ソレデスカラ少クトモ、府縣別ニ御決
メ下サルト云フコトガ一ツ、モウ一ツ
ハ隧道工事ノ場合ニ於テモ、稼働日數
又ハ事業日數ト漠然トナッテ居リマス
ガ是ハ果シテ稼働日數デ行クカ、事
業日數デ行クカト云フコトガ、非常ナ
關係ヲ及ボシテ來マスノデ、此點ニ付
テノ材料ヲ十分頂戴セヌコトニハ、任
意保險ト强制保險トノ區別ヲセラレタ
ト云フコトニ關係ヲシテ來マスカラ、
此點ニ付テモウ少シ明確ナ材料ヲ頂戴
シマシテカラ、始メテ保險料率ノ問題
ナドト云フモノハハッキリキマル、是
ハ簡易ナヤウデアリマスガ、保險法ヲ
制定セラレルト云フコトニナッテ來マ
スト云フト、非常ニ是ハ決メタ後ガト
ンデモナイ杜撰ナモノガ出來テ、政府
モ困レバ一般ノ事業主勞働者モ困ルト
云フコトニナッテ來ヤセヌカト思フノ
デアリマス、殊ニ例ヘバ砂鑛ノ問題、
第一條ノ砂鑛ヲ採取スル事業ト云フモ
ノハ、是ハ社會局ノ管轄デハナイ、山
デ働クヤウナモノハ鑛山監督局ノ監督
ニ屬シテ居ル、サウ云フヤウナ勞働者ノ
日數ト云フモノハドウナッテ居ルカト
云フヤウナコトハ、鑛山局カラ出タ所
ノ材料ヲ貰ハヌコトニハイケナイ此
點ニ付テ材料ヲ要求致シタ後デナケレ
バ、此質問ハ繼續出來ナイト考ヘマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913760X00519310317&spkNum=32
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033・吉田茂
○吉田政府委員 任意保險ハ皆危險率
ガ低イト仰シヤルノデアリマスカ、ソ
レトモ高イト仰シヤルノデスカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913760X00519310317&spkNum=33
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034・原惣兵衞
○原委員 任意保險ハ深イ淺イト云フ
コトハ申シマセヌ、私ノ言フノハ法律
デ定メタ範圍ノ人シカ入ラナイ、結局
强制セラレテ居ナイ者ハ、入ッテ來ナイ
ト云フコトニナル、私ハ斯樣ニ考ヘル発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913760X00519310317&spkNum=34
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035・吉田茂
○吉田政府委員 强制セラレタ者シカ
入ッテ參リマセヌデモ、保險ノ經濟ハチ
ヤント採レルヤウニナッテ居リマスル
ガ、併ナガラ折角斯樣ナ保險ヲヤルコト
デアリマスカラ、强制保險ニナリマス
以外ニ於キマシテモ、危險分散ト云フ
便宜ニ浴シタイト云フ人ニ對シテハ、
其保險ニ加入スル途ヲ認メテ置クコト
ハ、有益デアルト思ヒマス、隨テ任意
保險ニ入ッテ來ル人ガ相當ニアルデア
ラウト當局ハ見込ンデ居ルノデアリマ
スルガ、强制保險ト任意保險トヲ分ケ
タガ爲ニ、保險經濟ガ持チ難クナル、
或ハ保險料ガ非常ニ高クナルト云フヤ
ウナ心配ハ、少シモナイト考ヘルノデ
アリマス、保險料ハ各事業ノ種類ニ應
ジマシテ、其危險率ノ高イ種類ノ事業
ニ付キマシテハ、保險料ガ高クナリマ
スルシ、危險率ノ低イ事業ニ付キマシ
テハ保險料ガ低クナルノデアリマス、
例ヘバ等シク土木建築ト申シマシテ
モ、隧道工事ノ如キモノト、普通建築工
事ノ如キモノトデハ、危險率ガ非常ニ
違フノデアリマス、建築工事ハ强制保
險デアリマスケレドモ、危險率ハ非常
ニ低イノデアリマス、隧道工事ノ中ニ
在ッテモ危險率ノ高イモノモアルガ橋
梁工事ノヤウナモノハ、其中間ニ位ス
ルト云フ風ニナッテ居リマス、サウシテ
危險率ノ高イニ從フテ扶助ヲスル、卽チ
危險ノ多イ種類ノ事業程、保險料ハ高
イノデアリマス、デスカラ保險料ノ料
率ノ決メ方ガ、事業ニ卽シテ居ナイ、
不公平デアル、危險率ノ高イ仕事デア
ルカドウカヲ考ヘテ、ソレニ依ッテ料率
ヲ計算シテ居ッタ場合ニ、損害又ハ見込
ガ違ッテ非常ニ危險ガ生ジタト云フ場
合ニハ、保險ノ趣旨ニ反スルト云フコ
トガアリマセウ、ソレハ各事業ノ中デ
適當ニ保險料率ヲ決メルト云フ論據ニ
ハナルガ、强制保險、任意保險ヲ區別
スルノハ宜シウナイト云フ論據ニハナ
ラナイノデアリマス、ソレハ御要求ニ
依ッテ材料ヲ差上ゲテアリマス材料ニ
付キマシテノ詳細ナル說明ハ、係リノ
者カラ御納得ノ行クマデ、御說明申上
ゲサシタイト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913760X00519310317&spkNum=35
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036・原惣兵衞
○原委員 政府委員ハ任意保險ノ連中
ハ入ッテ來ナイデモ、ヤッテ行ケルト仰
シヤルガ、其數字ハドウ云フコトニナ
ルノデアルカ、隧道工事ニ付テ、三百
六十日働ク、斯ウ云フ工事ニ付テハド
ウ云フ風ニ御思ヒニナルカ知レヌガ、
山デ働ク人間ハ一箇月ノ割合ニナッテ
來タラ、少クトモ十五日カラ二十日シ
カドウシテモ働キ得ナイ、サウ云フヤ
ウナ點カラ見テ此日數ガ三百マデ出テ
來テ居ルト云フヤウナ點ニ於テ、見積
ガ非常ニ過大デアル、若シモ是ハ事業
日數ダト云フヤウナ工合ニ、御逃レニ
ナラウト云フコトナラバ、尙更是ガ杜
撰デアル、斯ウ云フヤウナ內容デ茫漠
タルモノデ、サウシテ十分立ッテ行クノ
ダト云フ仰セニ對シテ、私等ハ直チニ
サウデアリマスカト云フコトハ言ヘナ
イノデアリマスカラ、モウ少シ明細ナル
府縣別ニシタ、サウシテ適確ナル一ツ
數字ヲ御出シヲ願ヒマシタナラバ、私
等ハ滿足ガ行クト思フノデアリマスカ
ラ、此點ハ私ハ府縣別ニ依ル一ツ材料
ヲ見セテ戴キマシタナラ、ソレカラ私
ハ此質問ヲ繼續シタイト思フノデアリ
マハ
ソレカラ其次ニ申上ゲタイコトハ、
寸分ラナイ點ガ一ツアリマスコト
ハ、此第四條ノ二項ニ「政府ハ前項ノ
規定ニ拘ラズ勅令ノ定ムル所ニ依リ扶
助ヲ受クベキ者ニ保險金ヲ支拂フコト
ヲ得」勅令ノ定ムル所ニ依リト云フコ
トハドウ云フ內容デアリ、ドウ云フ勅
令ヲ言フノデアリマスカ、私ハ一寸分
リマセヌノデス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913760X00519310317&spkNum=36
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037・吉田茂
○吉田政府委員 是ハ第四條ノ第二項
ノ御尋デゴザイスマネ(原委員「左樣デ
ス」ト呼フ)是ハ保險契約者ヲ保險金ノ
受取人トシ、尙ホ保險契約者ト、ソレ
カラ下請人トノ間ニ特約ノアリマスル
時ニ於テハ下請人ヲ以テ保險金受取
人トスル、卽チ請負人、元請ニ對シマ
シテモ下請ニ致シマシテモ請負人ニ
對シマシテ保險金ヲ支拂フ、扶助ヲ行ッ
タ者ニ對シテ保險金ヲ支拂フト云フコ
トガ、第一項ノ立前トナッテ居ルノデア
リマス、是ハ扶助責任ノ保險デアリマ
スカラ、正ニ然ルベキ譯デアリマスル
ガ、併ナガラ特別ノ事情ニ依リマシテ、
此請負人ニ對シテ拂ハズシテ、直接ニ
扶助ヲ受クベキ勞働者ニ保險金ヲ支
拂フ方ガ早イト云フヤウナ、例外ノ場
合ニ於キマシテハ、此第一項ノ規定ニ
拘ラズシテ、直接ニ勞働者ニ保險金ヲ
拂フ途ヲ決メル、ソレノ詳細ナ場合等
ニ關シマシテ、勅令ノ規定デ以テ明ニ
シヨウ、斯ウ云フ趣意デアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913760X00519310317&spkNum=37
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038・原惣兵衞
○原委員 此保險金ノ、例ヘバ此第二
條ノ「扶助責任ノ範圍及保險料率、保險
納付期日其ノ他保險料ニ關スル事項ニ
付テハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム」保險金額
ト云フモノハ、扶助責任ト云フ此範圍
ノ內容ニ這入ッテ來ルノデアリマスカ、
保險金ト云フモノニ付テハ、ドウ云フ
ヤウナ工合ニナルノデアリマスカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913760X00519310317&spkNum=38
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039・富田愛次郎
○富田政府委員 扶助ノ範圍ニ依ッテ
決マルコトデアリマスガ、保險ニスベキ
扶助ノ範圍ヲ如何樣ニスルカト云フコト
ハ、詳細ナコトハ勅合デ以テ規定スル
斯ウ云フ考ヘデ、今現實ニ保險スル部
分ハ、是ダト云フコトハ申上ゲ兼ネル
ノデアリマスガ、先般モ御說明申上ゲ
マシタヤウニ、例ヘバ傷害デアリマス
トカ云フモノニ付テハ、約二週間位以
上ノ重要ナル者ニ付テ、保險ニ付スル
ノガ適當デアッテ、輕微ノ傷害等ニ付テ
ハ直接ニ事業主カラ支拂フト云フコ
トガ適當デモアラウト云フ、大體ノ腹
案ヲ先般御話シテ居ル次第デアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913760X00519310317&spkNum=39
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040・原惣兵衞
○原委員 ソレハ何處マデモ所謂扶助
責任ノ範圍ノ問題デアリマス、例ヘバ
一週間以上寢ナケレバナラヌカラ、之
ニハ金ヲ拂ッテヤルト云フコトハ、其責
任ノ範圍ノ問題デアリマス、デスカラ
私ノ御尋シタイノハ、責任ノ範圍ト云
フ中ノ、今言ウタ通リ一週間以上ノ傷
ダカラ、是ハ責任ヲ認メナケレバナラヌ
トキマッタ上ニ、ソレカラ保險金額ト
云フモノハ結局ドウ云フ工合ニシテキ
メルカ、責任ノ範圍ト云フ範圍ハ、今
ノヤウナ場合ニモ、或ハ勞働者災害扶
助法ニ基イテ保護シテヤラナケレバナ
ラスト云フ責任ノ問題デアリマスソ
コデ保險金ト云フモノハ、私ノ言フノ
ハドウ云フ所デキメテ保險料率ガキマ
ルカ、保險料カキマッテ行クノカ、其金
額ト云フモノハドウ云フ所デキマルノ
カ、私ハ私自身ノ頭ニハッキリ分ッテ居
リマセヌカラ、其點ヲ一ツ伺ヒタイ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913760X00519310317&spkNum=40
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041・富田愛次郎
○富田政府委員 例ヘバ傷害扶助料ニ
致シマスルト云フト、扶助料ノ額ガ其
傷害ニ依ッテキマッテ居ルノデアリマス、
大體其傷害ノ扶助ノ額ハ工場法、鑛業
法等ニ依リ其內容ヲキメル積リデアリ
マスガ、例ヘバ終身自用ヲ辨ゼザルト
云フ程度ノ傷害ニナリマスト云フト、
五百四十日分ノ扶助料ヲ出ス譯デアリ
マスガ、其終身自用ヲ辨ゼザル傷害ガ
アッタト致シマスト、其保險金ハ五百四
十日ノ給料ニ該當スル保險金ヲ支給ス
ルモノデアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913760X00519310317&spkNum=41
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042・原惣兵衞
○原委員 サウ致シマスト云フト、
險金額ト云フモノハ、結局責任ヲ果ス
重大ノ金額ニナッテ來ルノデアリマス
ガ、此條文カラ言ッタラ保險金額ハ勅
令デ定メルノデアリマスカ、定メナイ
ノデアリマスカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913760X00519310317&spkNum=42
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043・富田愛次郎
○富田政府委員 基本ノ金額ハ扶助法
ニ依ル扶助ノ金額ニ依ッテキマルノデ
アリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913760X00519310317&spkNum=43
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044・原惣兵衞
○原委員 扶助料ノ金額ハ、結局ドウ
云フ工合ニキメルカ、私ハ一寸條文ヲ
見誤ッテ分リマセヌガ、其點ヲ伺ヒタイ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913760X00519310317&spkNum=44
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045・富田愛次郎
○富田政府委員 規定スベキ勅令ノ內
容ハ、御手許ニ御配リシテアルト思ヒ
マスガ、扶助ノ額ハ勅令ニ讓ッテアルノ
デアリマシテ、其勅令ニハ先般カラ御
質問ニナリマシタヤウニ鑛業法、工場
法デ規定スルト大體同樣ノ額ヲ支給ス
ル其額ハ工場法ニ依レバ傷害埋葬遺
族扶助料其他御手許ニ行ッテ居ル額ガ
將來勅令ニ依ッテ規定シヨウトスル扶
助料額ナノデアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913760X00519310317&spkNum=45
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046・原惣兵衞
○原委員 分リマシタ、此點ニ付テハ
是ニ止メテ置キマシテ、先刻申シマシ
タ此材料ハ、私ノ今請求致シマシタ鑛
山監督局ノ管轄ニナル所ノ砂鑛採取ニ
伴フ所ノ、サウ云フ材料竝ニ此材料ヲ
府縣別ニシテ戴キタイト云フノデアリ
マスガ、ソレハイツ頃戴ケマスカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913760X00519310317&spkNum=46
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047・山邊常重
○山邊委員長 委員長カラ原委員ニ御
保相談シマスガ、今カラ其材料ヲ取ルト
云フコトハ中々サウ單純ニハ出來マセ
ヌ、幸ニ政府委員ガ其數ニ付キマシテ
ハ詳細ナル基本ノ數ヲ持ッテ居リマス
カラ、一ツ政府委員ノ御說明ニ依ッテ、
御滿足ヲ願ハレナイデセウカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913760X00519310317&spkNum=47
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048・原惣兵衞
○原委員 私ノ言フノハ、決シテ無理
ナコトヲ言フノデハナイノデスガ、斯
ウ云フ日數ガ非常ニ杜撰デアルノデア
リマス、私共隧道工事ニ付テ、三十日
働ケルナドヽ云フコトハ非常ニ間違ツ
テ居ル、モウ少シ詳細ナ數字ガナケレ
バ、保險法ヲ制定スルト云フコトニ對
シテノ材料ハ、ドウシテモ數字ニ依ッテ
示シテ戴イテ、私共ハ多少〓究セヌコ
トニハ、勞働災害扶助法ナラバ宜イケ
レドモ、斯ウ云フモノガ出テ來タ以上
ハ、相當調ベナケレバナラヌト思ヒマ
ス、詳細ナル數字ヲ持ッテオ出デニナッ
テ居ルト云フコトデアリマスガ、只今
申シマシタ砂鑛ニ關スルモノハ鑛山監
督局ノ材料ヲ貫ハナケレバ、內務省ダ
ケノ材料デハドウシテモ私等ハ滿足ス
ルコトガ出來ナイ、サウ云フ點ニ付テ
詳細ナ物ガアルナラバ、數字ヲ御見セ
ニナルコトハ出來ナイノデアリマスカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913760X00519310317&spkNum=48
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049・山邊常重
○山邊委員長 政府委員カラ、說明員
ヲシテ說明致サセタイト云フコトデア
リマスカラ、ソレデ一ツ御滿足ヲ願ヒ
マス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913760X00519310317&spkNum=49
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050・北岡壽逸
○北岡社會局長官 只今ノ原委員ノ數
字上ノ御希望ニ付キマシテ、私カラ申
上ゲマス、先ヅ第一點トシテ、原委員
カラノ御疑問ハ、此前田中內閣ノ時ニ
出シマシタ災害扶助法ニ關聯シマシタ
數字ト、今囘ノ數字ノ間ニ非常ニ開キ
ガアルト云フ御議論ガアリマシタガ、
ソレニ付テ說明申上ゲマス、此前ニ出
シマシタ案ニ於キマシテハ、如何ナル
規模ノモノニマデ此災害扶助法ヲ適用
スルカキマッテ居ナカッタ、隨テ此數字
ヲ調ベマスル時ニハ規模ノ如何ヲ問
ハナイデ、一切ノ勞働者ヲ調ベタ、殊
ニ土木建築業ノヤウナ、一定ノキマッ
タ、繼續ノ雇傭關係デナイモノニ於キ
マシテハ、勞働者ノ數ヲ調ベマスル場
合ニ於キマシテハ、就業致シテ居リマ
スル工事ノ規模ノ如何ヲ問ハナイノミ
ナラズ、現ニ就業シテ居ルカドウカ、
若クハ斯ウ云フ大規模ノ工業ニ就業シ
ナイデ、個人ノ家へ手傳ヘニ行ク左官、
大工ノヤウナ者ヲ集メテ、ソレヲ全部
土木建築ノ勞働者數トシテ御手許ニ差
上ゲテアリマス、隨テ實際勞働者扶助
法ヲ適用シマスルノハ、其一部分デゴ
ザイマスガ、今囘ノ調査ハソレト全然
方法ヲ異ニ致シマシテ、一定ノ規模、
大體ノ腹案ガキマッテ居リマスカラ、サ
ウ云フ風ニ規模ヲ限リマシテ、全國ニ
於キマシテ、昨年ノ十月一日現在ニ於
テ、此所ニゴザイマスヤウニ規模ヲキ
メマシテ、其規模ノ工事ガ幾ツアルカ
ヲ調ベマシテ、其規模ノ工事ニ於テ現
ニ同日働イテ居ル勞働者モ調ベタノデ
アリマス、斯ウ云フヤウナ勞働事項ニ
付キマシテ、一定規模以上ノモノダケ
ノ勞働者ヲ調ベマスル場合ニ於テハ
此外ニ方法ハナイト思ヒマス、隨テ工
場、鑛山ノヤウナ、在籍人員デナク、
現在其日ニ働イテ居ル數デゴザイマス
カラ、全國的ニ勞働者ノ延日數ヲ知ル
場合ニ於テハ、其日ニ働イテ居ル勞働
者ノ數ニ、事業日數ヲ掛ケナケレバ
正確ナ數ガ出テ來ナイノデアリマス
原委員ノ御話ノヤウニ、隧道工事、土
木工事ニ付キマシテハ、稼働日數ハ十
五日、二十日ト云フモノモゴザイマセ
ウ、併ナガラ若シ休ンデ居ル勞働者ヲ
含メタ勞働者ノ數ヲ調べタラ御說ノヤ
ウニナリマスガ、休ンダ勞働者ノ數ハ
調ベマセヌガ、從業日數ヲ掛ケマシテ、
一年三百日ト云フ風ニシタノデアリマ
ス、サウ云フ風ニ御諒承ヲ願ヒマス、
ソレカラ砂鑛業ノ點ニ付テ御質問ガア
リマシタガ、砂鑛業ニ付キマシテハ.
鑛山局ニ於テモ、鑛區ノ數ダケ分ッテ居
リマスガ勞働者ノ數トカ災害數、サ
ウ云フモノハ一切統計ガゴザイマセ
ヌ是ハ私ノ方デ調ベタ統計ガアルノ
ミデゴザイマス、此砂鑛區ニ於ケル現
在勞働者ノ數、竝ニ災害ノ數ニ付キマ
シテハ、非常ニ數ガ少ナイ、砂鑛區ハ
現ニ數ガ少ナクシテ、而モ常時繼續的
ニ働イテ居リマセヌ、本法ノ適用ヲ受
ケマスルモノハ常時十人以上ノ勞働者
ヲ使ッテ居ルモノト云フコトデアリマ
スガ、是ニ付テハ、全國ニ於テ十以下
ノ模樣デゴザイマス、其邊デ御諒承ヲ
願ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913760X00519310317&spkNum=50
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051・原委員
○原委員 只今ノ御話ハ延人員ヲ調べ
テ、事業日數ヲ加ヘタト斯ウ云フコ
トニ遁レレバ遁レラレルト思ヒマス
ガ、是ハ今一寸感ジタコトデアリマス
ガ、延人員ガ殖エテ來ル程人ガ變ル、
人ガ變ルカラ危險率ト云フモノハ高ク
ナッテ來ル、サウ云フコトガ起ッテ來マ
セウシ、私ノ言フノハ少クトモ府縣別
ナラバ府縣別デ表ヲ戴イテ、完全ナ材
料デナケレバ-保險料保險金額等ニ
重大ナ關係ガ起ッテ來ルノデアリマス
カラ、此點ハ相當正確ナ材料-ソレ
ダケノ證明ヲスベキモノガナケレバ、
ドウシテモ私ハ賛成スルコトガ出來ナ
イ、殊ニ此數字ダケデ行ケト言ハレマ
シテモ、行キヤウガナイノデアリマス
此點ハ是非一ツ材料ヲ戴キタイト思ヒ
やっ、ソレカラ鑛山局ニハ統計ガナク
テ、社會局ニ統計ガアルト云フコトハ、
面白イコトヲ耳ニスルノデスガ、一體
鑛山局ト云フ鑛山其モノ管轄ノ所
ニ、統計ガナイノニ、內務省ガサウ云
フ統計マデ御調ベニナッテ、監督シナケ
レバナラヌト云フコトハドウ云フ譯デ
スカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913760X00519310317&spkNum=51
-
052・富田政府委員
○富田政府委員 只今ノ御質問ハ鑛
山、鑛業法ノ適用ヲ受ケル鑛夫ニ關ス
ル事項ハ、內務省ノ所管トナッテ居ルノ
デアリマシテ、隨テ其扶助其他ニ關ス
ルコトハ、坑夫ニ關スル事項トシテ、
商工省ノ所管ニハ屬シテ居リマセヌノ
デゴザイマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913760X00519310317&spkNum=52
-
053・原委員
○原委員 併ナガラ砂鑛ト云フモノ
ハ現ニ砂鑛ヲ採集スル事業ハ、是ハ
鑛山局ノ監督デナクシテ、アナタノ方
ノ監督デスカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913760X00519310317&spkNum=53
-
054・富田政府委員
○富田政府委員 業トシテハ無論商工
省ノ所管デアリマスガ、坑夫勞働者ニ
關シマスルコトハ、一般鑛山デモサウ
デアリマスガ、內務省ノ所管ニ相成ッ
テ、官制上サウナッテ、一般ノ業務ニ關
スル監督ト坑夫ニ關スル事項トハ、同
ジ一ツノ法律ノ中デモ、主管ヲ書別ケ
マシテ、兩者ノ所管ニナッテ居リマス、
事項別ニハ截然ト別ケテアルノデアリ
マス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913760X00519310317&spkNum=54
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055・原委員
○原委員 工場法ニ依ル一ツノ監督ト
云フヤウナ意味合カラ云ヘバアナタ
ノ方ノ御管轄デアラウト思ヒマスケレ
ドモ、少ナクトモ鑛山、サウ云フモノ
ニ關係スル鑛山局ハ、其人員其他鑛山
ニ働ク人ノ總テノ問題ハ、全然監督ガ
ナイト云フ譯デハナイト思ヒマス、此
點ニ付テ私非常ニ暖昧デアリマスカ
ラ、鑛山局ガ鑛山ニ働イテ居ル所ノ勞
働者其他ニ、全然何等材料モ無ク何等
ノ監督モシナクシテ、サウ云フコトヲ
抛リ放シニシテ置クト云フコトハ解セ
ヌノデアリマス、併シ實例ヲ擧ゲテ見
ヤウト云ッテモ、私ハ分リ兼ネマスガ
其點ハ勞働者其他ニ關シテ一切監督ガ
ナイト御說明ニナリマスカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913760X00519310317&spkNum=55
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056・富田政府委員
○富田政府委員 官制上明瞭ニナッテ
居リマス、今一寸官制ヲ持合セテ居リ
マセヌガ-今官制ヲ讀上ゲテ申上ゲ
マスガ區別シテアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913760X00519310317&spkNum=56
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057・原委員
○原委員 司法省ノ方ハドナタカォ出
デニナリマスカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913760X00519310317&spkNum=57
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058・山邊委員長
○山邊委員長 見エテ居リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913760X00519310317&spkNum=58
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059・原委員
○原委員 司法省所管ノコトニ付テー
-勞働者災害扶助法案ノ第三條ノ第三
項ノ規定ノ內容ヲ御伺ヒ致シタイ、此
「前項ノ場合ニ於テ元請負人ガ扶助ノ
請求ヲ受ケタルトキハ扶助ヲ引受ケタ
ル下請負人ニ對シ先ヅ催告スベキ旨ヲ
請求スルコトヲ得」ト云フコトハ裁
判上ノ事實權利ヲ行使スルトキニ於
テ、如何ナル形ノモノデアリマスルカ
ソレヲ伺ヒタイ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913760X00519310317&spkNum=59
-
060・奧野司法書記官
○奧野司法書記官 恰度ソレハ催告ノ
抗辯ヲ與ヘタト同ジコトデアラウト思
ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913760X00519310317&spkNum=60
-
061・原委員
○原委員 只今ノ御說明ニ依ッテ愈〓明
白ニナリマシタガ、サウナリマスルト、
民法上ニ於ケル檢索ノ抗辯權ナドヽ云
フヤウナモノモ一ツモ入レナイデ、兎
ニ角先ヅ下負人ニ請求セイト云フコト
ヲ、抗辯トシテ提出スレバ、ソレデ宜
イ譯デアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913760X00519310317&spkNum=61
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062・奥野司法書記官
○奥野司法書記官 サウデアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913760X00519310317&spkNum=62
-
063・原委員
○原委員 只今ノ司法省ノ政府委員ノ
御說明ニ依ッテ明白ニナリマシタ、先般
來內務省ノ人ハ、通知ヲ出シテ置ケバ
足リルノダト云フヤウナコトデ、明白
ニ元請負人ニ抗辯權ヲ先ヅ得サセル、
斯ウ云フコトニナッテ來タ、サウナルト
先程言ッタヤウニ、連帶規定ト關聯シ
テ、此規定ヲ置クト云フコトハ、非常
ニ勞働者ヲシテ不利益ニ陷ラシメル、
卽チ何處マデモ勞働者本位デナクテ、
事業者本位デアルト云フヤウナ形ニ
ナッテ來マシタカラ、内務省ノ政府委員
ノ御說明ガ、理由ガナクナッテ來タト思
フノデアリマスガ、此點ニ付テ尙ホ內
務省ノ政府委員ハ、本法ハ勞働者ニ不利
益デアル、隨ヲテ此規定ト云フモノハ
ドウシテモ勞働者本位デ御立テニナル
ト云フコトニナルナラバ、此規定ハ削
除シナケレバナラヌト、斯樣ニ考ヘル
ノデアリマスガ、如何デアリマスカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913760X00519310317&spkNum=63
-
064・奧野司法書記官
○奧野司法書記官 此下請負人ニ對シ
テ、先ヅ催告スベキ旨ヲ請求スルコト
ヲ得ト言ッテ、卽チ折辯權ヲ與ヘテ居リ
マスルガ、其抗辯權ノ內容ハ、下請負
人ニ對シテ先ヅ催告ヲスレバ、卽チ裁
判上裁判外、何レデモ宜イノデアリマ
スガ、サウ云フ風ニ請求ノ通知ヲスレ
バ、ソレデ以テ十分デアッテ、ソレカラ
後ノ請求ニ對シテハ、元請負人ハ催〓
ノ抗辯ガナイト云フコトニナルノデア
リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913760X00519310317&spkNum=64
-
065・原委員
○原委員 民法上ノ催告權ノ內容ハ、
私等ノ從來考ヘテ居ル點ハ一定シテ居
ルト思フノデアリマスガ、サウ致シマ
スト、今司法省ノ政府委員ノ言ハレル
ノニハ通知ヲスレバ宜イト、斯ウ言
ハレル、通知ヲスレバ宜イト云フコト
ハ、下請負人ニ對シテ、金ヲ拂ッテ吳レ
ト云フ所ノ葉書デモ出シテ置イタラ、
ソレデ宜イト仰セラレルノデアリマス
カ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913760X00519310317&spkNum=65
-
066・奥野司法書記官
○奥野司法書記官 結局通知ヲシタ、
卽チ催告ヲシタコトガ證明ガ出來ルヤ
ウナ、例ヘバ內容證明ト言ッタヤウナ方
法ニ依フテ通知ヲスレバ、ソレデ其結果
如何ニ拘ラズ、ソレデ足リルト考ヘマ
ス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913760X00519310317&spkNum=66
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067・原委員
○原委員 催告スベキ旨ヲ請求スルコ
トヲ得ト云フコトハ、結局內容證明ナ
ラ内容證明デ催告シタ、催告シタ以上
ハ、ソレデ元請負人ガ責任ヲ負ハナケ
レバナラヌ、斯ウ云フ意味合デアリマ
スカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913760X00519310317&spkNum=67
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068・奥野司法書記官
○奥野司法書記官 サウデアリマス、
勿論催告ヲシテ辨濟ヲ受ケレバ、勿論
問題ハアリマセヌガ、辨濟ヲ受ケナイ
場合ニハ、サウ云フ催告ノ手續ヲシタダ
ケデ、元請負人ニ對シテ、再ビ請求ヲ
爲シタ場合ニ、元請人ハ最早直チニ應
ジナケレバナラナイコトデアラウト考
ヘマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913760X00519310317&spkNum=68
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069・原委員
○原委員 サウスルト、此規定ハ從來
私等ノ考トハ非常ニ違ッテ居ッテ、簡單
ナ內容證明ヲ出セバ宜イト云フ規定デ
アッタナラバ、是ハ簡單ナ抗辯ミタヤウ
ナモノトナッテシマフ、私等ハ此抗辯ト
云フモノハ、裁判上ノ權利ノ行使ト思
ヒマスガ、アナタハサウデナク、卽チ
勞働者ガ下請人ニ通知サヘ出セバ宜
イ、斯ウ云フノデアッテ、此通知ノ點カ
ラ見レバ、私等ハ抗辯權ハナイヤウニ
考ヘマスガ、是ハ如何デアリマスカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913760X00519310317&spkNum=69
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070・奧野司法書記官
○奧野司法書記官 通知ト言ヒマスノ
ハ、催告ヲ爲スベキコトヲ請求シテ、
其結果下請人ニ對シテ、請求ノ通知ヲ
スルト云フコトヲ意味スルノデ、元請
人ニサウ云フ抗辯ヲ爲スコトガ出來ル
ト云フ趣旨デアリマシテ、隨ッテサウ
云フ抗辯ガアレバ、先ヅ扶助請求者ガ
下請人ニ對シテ拂ッテ吳レト請求スル、
其請求ノ方法ハ、裁判上デモ宜シイ、
或ハ裁判外ノ、例ヘバ單ナル通知ノ端
書デモ宜イト思ヒマスガ、實際問題ト
シテ內容證明ト云ッタヤウナ方法ニ依ツ
テ通知ヲ出スデアラウト思ヒマス、サ
ウ云フヤウナ方法ニ依ッテ、先ヅ請求ノ
通知スレバ、元請人ノ方ニ再ビ來マス
扶助ノ請求ニ對シテ、最早之ニ應ジナ
ケレバナラナイト云フ結果ニナルト考
ヘマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913760X00519310317&spkNum=70
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071・原委員
○原委員 此條文自體カラ見マシテ、
サウ云フ論理ハ出テ來ナイノデアリマ
ス、兎ニ角裁判上ノ問題デ、檢索抗辯
デナイノデアリマスカラ、彼方ニ請求
セイト云フコトハ、少クトモ請求ヲシ
テ、其權利ヲ實行シテ見テ、ソレガイ
ケナカッタト云フ意味ニナラナケレバ
ナラヌト思ヒマス、サウデアリマセウ
アナタノ言ハレルノハ簡單ニ勞働者、
權利者ガ通知シテ置ケバ宜イ、斯ウ云フ
ノデアリマスガ、一方此法文自體カラ
見マスレバ、何處マデモ元請人ハ彼方
ニ請求シテ吳レト云フコトヲ抗辯シタ
時、裁判所ハ一遍請求シテ居ルカラ宜
イノダ、サウハイカナイノデアリマス、
此處ノ請求ト云フコトハ、權利ヲ飽マ
デモ實行シヤウト云フコトニナリマセ
ウ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913760X00519310317&spkNum=71
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072・奧野司法書記官
○奧野司法書記官 催告サヘスレバ、
ソレデ足リルト考ヘマス、勿論ソレニ
依ッテ辨濟ヲ受ケレバ問題ハナイデア
リマセウケレドモ、辨濟ヲ受ケラレナ
イ場合ニハ、敢テ强制執行等ガ權利ノ
實行ヲヤラナクトモ、請求ト云フコト
ニハ通知ヲ以テスレバ、ソレデ以テ足
リルモノト考ヘマス、此點ハ丁度補償
ノ場合ノ催告ノ抗辯ト同樣ニ考ヘテ居
リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913760X00519310317&spkNum=72
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073・原委員
○原委員 サウ云フ工合ニ簡單ニスル
ナラバ此條文ハ殆ド空文ダト考ヘマ
ス、簡單ニ通知サヘスレバ宜イト云フ
ガ、催告ノ場合ハ檢索抗辯ヲシテ、尙
ホ實行不可能ノ場合デアル、催告ノ內
容ハ此法ニ規定サレテ居ルガ、檢索抗
辯シタダケデパ、彼方ニ行ッテ請求セ
ヨ、俺ハ受ケラレナイト云ッテ、何處マ
デモ刎ネテシマフ、此方ニ請求スレバ、
彼方カラ金ヲ取レト云フ、サウ云フ風
ナコトニ何處マデモナリハセヌカト思
ヒマスデスカラ若シ催告デナクテ、
簡單ニ端書デ通知シタラ宜イト云フコ
トニナレバ、愈〓三項ノ規定ハ全ク要ヲ
爲サナイモノニナッテシマフ、ソレナラ
バ尙更斯ウ云フモノヲ置イテ置ク必要
ハナイ、元請人ノ所ニ行ッテモ取レナ
イ、而モ下請人ノ所ニ行ッテモ取レナ
イト云フヤウナ問題ガ起ッテ來ル、是
ハ本當ノ事實問題ニシタナラバ下
請負人ノ帳場ニ行ッテ、金ヲ吳レト言
ヘバ吳レルノデアルカラ、其位ノコト
ハ直接元請負人ノ所ヘ來ル筈ガナイ、
ソレデ此內容ニハ、、非常ナ疑ガアルト
思ヒマス、若シソンナ簡單ナモノデアツ
タナラバ、三項ノ規定ハ全ク空文ニ終
ルノデアリマスカラ、サウ云フ簡單ナ
モノデアッタナラバ、事實上不必要ト思
ヒマスガ、如何デスカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913760X00519310317&spkNum=73
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074・奥野司法書記官
○奥野司法書記官 補償ノ場合ト違ヒ
マシテ、抗辯ヲ認メテ居ラナイ結果、
解釋ト致シマシテハ、サウ云フ强制執
行ガ出來ルコトヲ奬勵スルマデノ手續
ハ必要デナイノデ、唯催告ヲシロト云
フコトヲ請求スルコトガ出來ルダケ
デ、而シテ之ニ基イテ一應催告スレバ
其結果辨濟ヲ得ラレナクトモ、卽チ强
制執行ヲヤラナクトモ、又再ビ元請負
人ニ對シテ請求シタ場合ニハ最早元
請負人ガ直ニ辨濟ヲシナケレバナラヌ
ト云フヤウニ、此規定ノ上カラノ解釋
上デハサウナルモノト考ヘマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913760X00519310317&spkNum=74
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075・原委員
○原委員 ソレデアルカラ、此規定ハ
極ク單純ナ、アッテモナクテモ宜イ、本
當ノ效果ノナイ規定デアル、斯ウ云フ
コトニ私ハ解スルコトニナリマスガ、
ソレデ宜シウゴザイマスカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913760X00519310317&spkNum=75
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076・吉田政府委員
○吉田政府委員 效果ノ點カラ申ス
ト、非常ニ效果ガアリマス、元請負人
ト下請負人トノ間ニ於キマシテ、特約
ガアル場合ニハ下請負人ガ事業主ニ
ナッテ居ルノデ、其順位ヲ決メマシテ、
ソレデ無論事實ノ問題ガ一致シマス、
元請負人ト下請負人トアリマス場合
ニ、順位ヲ此三項ニ依ッテ明ニシテ居リ
やっ、ソレハ事實ニ基イテ居ルノデア
リマシテ、多ク下請負人カラ絶對ニ受
ケラレナイト云フ所マデ突詰メテ、强
制執行其他ヲシナケレバイケナイト云
フコトニナリマスト、勞働者ハ金ヲ取
ルニモ手間ガ掛ルノデアリマスカラ、
全然下請負人ヲ拔キニシテ、元請負人
ニ行ッタ場合ニ於キマシテハ催告スベ
キ旨ヲ請求スルコトヲ得ルト云フコト
ニスルノガ、此法ヲ設ケマシタ趣旨デ
アリマス、事實サウナッテ居ルカラ、サ
ウ云フモノハ必要ナイト云フ意味ニハ
ナラヌト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913760X00519310317&spkNum=76
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077・原委員
○原委員 其點ニ付キマシテハ結局
連帶責任ノ規定ヲ省イタガ爲ニ、サウ
云フ規定ヲ設ケテ行カウト云フコトニ
ナルト思ヒマスガ、此以上之ニ對スル
質問ハ打切リマス、ソコデ先ニ申上ゲ
マシタ保險料率ニ關スルモノ、其他私
ノ只今要求致シマシタ災害扶助法ニ基
ク負擔ノ推定ノ材料ニ付テ、府縣別竝
ニ官制其他ヲ御覽ニナッタ結果、監督局
ノ方ニ材料ガアリマスナラバ出シテ戴
キタイ、其上デ私ノ質問ヲ續ケルコト
ニ致シマシテ、私ハ此際質問ヲ留保致
シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913760X00519310317&spkNum=77
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078・富田政府委員
○富田政府委員 官制ノ點ハ、只今手
元ニ官制ガアリマスカラ申上ゲマス、
社會局ノ官制ノ第一條ハ
第一條社會局ハ內務大臣ノ管理ニ
屬シ左ニ揭グル事務ヲ掌ル
一勞働ニ關スル一般事項
二工場法施行ニ關スル事項
三鑛業法中鑛夫ニ關スル事項
四工業勞働者最低年齡法施行ニ關
スル事項
ト云フコトニナッテ居リマシテ、工場法
ハ全部デアリマス、ソレカラ鑛業法中
ニ付テハ、鑛夫ニ關スル事項ハ內務大
臣ノ所管ニナッテ居リマス、其他直接、
鑛業法中ニ規定ガアリマセヌデモ鑛業
勞働者ノ最低年齡ニ關スルコトヽ
般勞働ニ關スル事項ハ、內務大臣ノ主
管ニ屬スルト云フコトニ官制ガ定メラ
レテアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913760X00519310317&spkNum=78
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079・東條委員
○東條委員 今原君カラ言ハレマシタ
材料ノ中ニ、鑛山局關係ノモノデー
鑛務署デ各鑛業者ニ對シテ事業ニ關ス
ル明細ナル報〓ヲ徵シテ居ル、一是ハ唯
勞働者ノ數トカ何トカ云フヤウナ單純
ナモノデハナクシテ、事業ノ內容ニ付
テノ明細ナ報告書ヲ必ズ義務トシテ報
告サセテ居リマス、此報告書ニ依リマ
スト、例ヘバ鑛業ニ關シ何日何人ト云
フヤウナ延人員ノ報告ガ明ニアルソ
レノ集計シタモノガ確ニナケレバナラ
ヌ筈ダト思ヒマスガ、私ハ實際官廳ノ
中ノ取扱ノコトハ知リマセヌ、鑛務署
ダケガ集メテ、鑛山局ニハ報〓ニナッテ
居ラヌカモ知レマセヌケレドモ、鑛務
署デハ確ニ報告ヲ集メテ居リマス、之
ヲ御調ベ下サッテ、若シ鑛山局ニ集計サ
レタモノガ來テ居リマスナラバ戴ケル
ヤウニナルダラウト思ヒマスガ、鑛山
局デハ御調ベニナッタノデアリマスカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913760X00519310317&spkNum=79
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080・北岡壽逸
○北岡社會局書記官 只今御質問ノ鑛
業明細書ハ固ヨリ、鑛山監督局ニ出テ
居リマス、ソレハ一般ノ鑛山ニ付キマ
シテハ詳細ナル統計ガ出テ居リマスル
ガ砂鑛ニ付キマシテハ鑛業ノ趨勢ノ
ヤウナ統計ノ中ニ這入ッテ居リマセヌ、
特ニ社會局デ調ベマシタ數字ハアリマ
スガ、ソレニ依レバ最近ノ砂鑛業ト云
フモノハ非常ニ少イ、常ニ繼續シテ砂
鑛業ヲヤッテ居ルモノハ極メテ少イ餘
程長イモノデモ一年ノ中ニ百五六十日
トカ百八十日ノ期間ヤッテ居リマスモ
ノハ、私等ノ局ニハ統計ガアリマセヌ、
從テ本法ノ適用ガドウナリマスカ、尙
施行ノ問題デアリマスカラ、ハソキリ申
上ゲラレマセヌ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913760X00519310317&spkNum=80
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081・原惣兵衞
○原委員 內容ガ重大デーアリマスカ
ラ、鑛山監督局長若クハソレニ代ルベ
キ人ニ來テ戴イテ、其關係ヲ明白ニシ
テ戴キタイト思ヒマス、是ハ材料ニ關
係スルノデスガ、其點ヲ明白ニシテ戴
キタイ、兎ニ角府縣別ニ依ル材料位ハ、
御示シ下サラヌト、重大ナル保險法ヲ
決メル譯ニ參リマセヌ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913760X00519310317&spkNum=81
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082・山邊常重
○山邊委員長 一寸速記ヲ止シテ······
[速記中止]発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913760X00519310317&spkNum=82
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083・山邊常重
○山邊委員長 ソレデハ午後一時マデ
休憩致シマス
午後零時二十分休憩
午後三時十八分開議発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913760X00519310317&spkNum=83
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084・山邊常重
○山邊委員長 ソレデハ休憩前ニ引續
キ會議ヲ開キマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913760X00519310317&spkNum=84
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085・高見之通
○高見委員 私ハ後カラ來タモノデア
リマスカラ或ハ質問ガ重複ニナルカモ
知レマセヌガ、簡單ニ答辯シテ貰ヘバ
結構デス、ソレハ先ヅ第一條ノ第二ノ
點ノ「土木工事又ハ工作物ノ建設、保
存」云々ト云フノガアリマスガ、是八
ドウモ讀ンデ見ルト案外ニ土木工事ノ
種類範圍ガ非常ニ限局サレテ居ルヤウ
ニ思フデスガ、先ヅ勅令ノ定メル事項
ト云フモノハドウ云フヤウナモノデス
カ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913760X00519310317&spkNum=85
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086・吉田茂
○吉田政府委員 御尋ノ點ハ是ハ勅令
デ內容ヲ詳細ニ規定スル見込デアリマ
スガ、只今ノ見込ト致シマシテハ勞働
者ノ使用延人員千人以上ノ工事又ハ工
事ノ費用、詰リ工事請負金額一萬圓以
上ノモノ、但シ二階建以下ノ木造住宅
ノ工事ハ除ク、是ハ危險ガ少イカラト
云フ意味デアリマス、ソレカラ危險ナ
工事ト致シマシテ今ノハ規模デ制限シ
テアリマスガ、火藥類、動力ニ依リ運
轉スル機械、若クハ運搬ノ用ニ供シマ
スルニ軌道ヲ用ヰルモノデ、工事期間
三十日ヲ越ユルモノ、地上十米突、地
下三米突以上ノ工事ヲ行ヒマスルモノ
デ、工事三十日間ヲ超ユルモノト云フ
ヤウナコトヲ勅令ニ於テ指定スル見込
デアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913760X00519310317&spkNum=86
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087・高見之通
○高見委員 サウシマスルト、普通色
色ノ工事デ金額一萬圓ニ相當スルヤウ
ナ事業、普通サウ云フ仕事ヲヤルノハ
之ニ當ル、一般普通ノ土木工事、建築
工事ハ皆之ニ當ルト見テ宜シウゴザイ
マスカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913760X00519310317&spkNum=87
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088・吉田茂
○吉田政府委員 今ノ規模ハサウ云フ
狙ヒ所ヲ決メテアリマスカラ、サウ御
考ニナッテ宜シウゴザイマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913760X00519310317&spkNum=88
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089・高見之通
○高見委員 サウ致シマスルト、普通
土木工事、又ハ工作物ノ建築、殊ニ鑛
業法ト工場法ヲ除イタ普通ノ土木請負
ヲヤッテ居ル勞働者、使用人、使ハレテ
居ル勞働者ヲ一般的ニ見テ見マスル
ト、日本全國ヲ通ジテ大體溫情的ノ生
活ヲシテ居ル、サウシテ無賃ノ宿泊所
トカ、或ハ一時立ン坊ト云フヤウナ生
活ヲシテ居ル者ニ於テハ、勞働者ト雇
主トノ間ハ、唯市役所カラ來テ連レテ
行カレルト云フヤウナ關係ニ於テハ、
雇主ハ何人デアルカ知ラナイケレド
モ、通常此土木請負業ト云ヘバ平常
カラ生活ノ保障モシテ居ルシ、
ル日ニハ賃銀モ貸シテヤルト云フ親分
子分ノ非常ナ深イ關係ガ土木請負業者
ニハアル、國粹會トカ云フヤウナ者モ
主トシテ土木ノ請負業者ニ關係シテ居
ル今ノ日本ノ國粹ハ、親分子分ノ詰
リ忠君愛國ノ忠ト云フ意味ハ、國粹ノ
根本デアリマス、デアルカラ土木業者
ト云フモノハ場合ニ依テハ、親分ノ爲
ニハ如何ナル犠牲ニモ立ツト云フ、昔
ノ日本人ノ大和魂ト云フモノガ玆ニ現
ハレテ、日本ノ土木請負業者ト云フモ
ノハ其間溫情的デ、他ノ勞働者ナドト
大分段ガ違フヤウニ思フ、ソレニ對ス
ル工場關係ヲ見マスルト、下請人ガド
ウシタトカ、權利ヲ認メサセルトカ、
何トカ云フコトガアッテ、土木ノ請負業
者ノ親分子分ノ關係ヲ冷酷ニスル、斯
樣ナ嫌ガアルモノデハナイカ、今日ノ
現狀ニ於テ、又今日私共ガ土木ノ
選擧ノ關係等デ田舍ニ於テモ、大阪、
東京ニ於テモ、非常ニ溫情的ノモノヲ
見ルノデアリマス、此關係ヲ法律デ制
定スルノハ寧ロ普通ノ鑛山トカ工場
勞働者ニ適用スルモノデ、ドウモ少シ
ク現在ノ事情ニ適用サレヌ法律デアル
ヤウニ考ヘルガ、此點ヲ聞イテ見タイ
ト思フノデアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913760X00519310317&spkNum=89
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090・吉田茂
○吉田政府委員 御話ノ如キ使用者
ト.又ソレニ使用セラレマス勞働者ノ
雨ノ降間ノ美シイ關係ト云フモノハ、ソレハ
最モ望マシイコトデアリマス、工場、
鑛山等ニ於キマシテモ、サウ云フ關係
ニ立ッテ居ルコトガ多々アルコトハ御
承知ノ通リデアリマス、土木ノ親方等
ニ付テモ只今御話ニナリマスヤウナ關
係ノコトモゴザイマスガ、此法律ニ依
リマシテ、ソレ等ノ人々ノ間ニ於キマ
シテ、最小限ノ是ダケト云フ例ヘバ是
ハ扶助ノ內容ノ時ニ又御質疑ガアラウ
ト思ヒマスガ、各種ノ場合、終身扶養
ヲ辨ジ難イ場合、色々ナ傷病手當、埋
葬料デアリマストカ、サウ云フモノ
最小限度ヲ決メテアリマシテ、是ダケ
ハ勞働者ノ權利トシテ、又使用者ノ義
務トシテ、支拂ヲスルノデアルト云フ
コトヲ確保致シマセヌケレバ、現在ノ
實情ニ於キマシテ左樣ナ立派ナ溫情ノ
行ハレテ居ル所モアリマセウケレド
モ、全體トシテ勞働者ノ福利ヲ保持ス
ル上ニ於キマシテ十分デナイト考ヘマ
シテ、斯樣ナ立法ヲ致スノデゴザイマ
ス、尙ホ是レ以上或ハ是レ以外ニソレ
等ノ事業ガアリマシタ場合ニ、雇主ガ
雇人ニ對シテ溫イ情誼ニ基キマシテ、
色々便宜ヲ圖リ、世話ヲシテヤルト云
フコトハ、決シテ排斥スベキモノデハ
ナイノデアリマス、是ダケノモノガゴ
ザイマセヌト云フト立法制定ニ付テ御
說明申上ゲマシタ通リ、工場鑛山等ノ
勞働者、或ハ今囘提案ニナッテ居リマ
ス、船員ト云フヤウナモノニ比シマシ
テ、所謂屋外勞働者ト云フ方ハ殆ド不
完全デアリマシテ、現在官業ニデモ從
事シテ居ルモノハ、官業ニ從事シテ居
ル故ヲ以チマシテ別ニ扶助ノ規定ガゴ
ザイマスガ、ソレ以外ノモノハ扶助ノ
爲ノ規則ト云フモノハナシニ、ホンノ
手心ニ任セテアルノデアリマス、無論
御話ノヤウナ心持カラ十分ナコトヲシ
テヤル事業者モゴザイマス、是等ノ人
ハ此法ガ制定セラレタカラト云ッテ、別
ニ今マデヨリ辛イ義務ヲ課セラレルト
云フコトハナイノデアリマス、併シ此
法律デ要求シテ居リマスルダケノ限度
ニモ達シテ居ラナイモノガ非常ニ多イ
ノデアリマス、ソレ等ノ不幸ナ勞働者、
殊ニ御話ノ中ニモアリマシタヤウニ種
種雇主トノ間ニ繼續的ニ雇傭關係ニ
立ッテ居ラナイ者、本法ニ規定シテアル
種類ノ勞働者ニ對シマシテハ、殊ニ業
務上ノ災害ヲ受ケマシタ場合デモ、扶
助ガ行渡リ兼ネルヤウナ實狀デゴザイ
マスノデ、大體工場法、或ハ鑛業法ニ
基イテ出マスモノトノ間ニ權衡ヲ取リ
マス意味デ、此條項ヲ決メルノデアリ
やっ、決シテ溫情ヲ破壞スルト云フ意
味デハゴザイマセヌ、併ナガラ法律ヲ
以テ是ダケノコトヲ規定シテ置クコト
ハ、少クトモ今日ノ時勢カラ緊急已ム
ベカラザルモノト考ヘテ立案ヲシタ次
第デゴザイマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913760X00519310317&spkNum=90
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091・高見之通
○高見委員 ソコデ私ハ一寸聞イテ見
タイガ、勞働者ト云フガ、此勞働者ト
云フ範圍ハドウ云フ程度ガ勞働者ノ範
圍デアリマスカ、此法律ニ基ク勞働者
ノ定義ハドノ程度マデノ勞働者ノ範
圍デアリマスカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913760X00519310317&spkNum=91
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092・吉田茂
○吉田政府委員 ソレハヤハリ雇傭契
約ニ基キマシテ、事業主ニ雇ハレマシ
テ、勞務ニ服シマス肉體勞働者ノ意味
デアリマス、勞働者ト云フコトノ意味
ハ、各種ノ法律ヲ通ジテサウ云フ意味
ニ使ハレテ居リマスガ、本法ニ於テモ
サウ云フ意味デアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913760X00519310317&spkNum=92
-
093・高見之通
○高見委員 サウシマスト今日勞働者
ト云フモノハ、肉體ヲ提供シテ仕事ヲ
シテ居ル、其時ノ狀態カラ見テ勞働者
ト云フノデアッテ、例ヘバ東京市役所ニ
出掛ケテ勞働者ノ證明ヲ貰ッテ來ル、或
ハ大體主トシテ勞働ノ仕事ヲヤッテ居
ル證明書ヲ貰ハナクテモ、何處カノ宿
屋ニ何時モ泊ッテ、日々勞働者ノ仕事ヲ
スル者ト云フヤウナ、何カ區別ガナイ
ノデスカ、又食フニ困ッテ、立派ナ大學
ノ學生ガ一般ノ勞働ニ出テ居ルト云フ
ヤウナ者デモ、勞働者ト云フノデアル
カ、其範圍ヲ伺ヒタイ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913760X00519310317&spkNum=93
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094・吉田茂
○吉田政府委員 只今ノ謂ハヾ勞働者
ノ定義デアリマスガ、之ヲモウ少シ御
尋ノ趣旨ニ從フテ細カク申シマスト、第
-ニハ事業主トノ間ニ雇傭關係ノア
ルコトガ必要デアリマス、報酬ヲ貰ッテ
雇ハレテ働イテ居ルト云フコトガ必要
デアリマス、雇ハレテ居リマス限リハ、
其雇傭關係ハズット繼續的ニ數箇月或
ハ數年引續イテ居リマセウトモ或ハ
一時的ナ、アナタノ仰シヤルヤウナ日
雇勞働者デアリマシテモ、共ニ雇ハレ
テ居ルト云フ以上ハ此勞働者タルコ
トヲ妨ゲナイノデアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913760X00519310317&spkNum=94
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095・高見之通
○高見委員 サウスルト本條ノ勞働者
ハ、タッタ一日學生ガ日當ヲ貰ッテモ、ソ
レハ勞働者ト御解釋ニナルノデスカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913760X00519310317&spkNum=95
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096・吉田茂
○吉田政府委員 雇傭關係ノ下ニ働キ
マスレバ、ソレデモ宜シウゴザイマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913760X00519310317&spkNum=96
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097・高見之通
○高見委員 此際ニ一寸社會局トシテ
ノ御解釋ヲ承ッテ置キタイコトハ、今ノ
勞働者災害扶助法ノ勞働者ノ定義ハ能
ク分リマシタケレドモ、一般的社會政
策ニ基ク總テノ勞働問題ニ關スル勞働
者モ、社會局ハサウ云フ風ニ御解釋ニ
ナッテ居ルノデアルカ、又サウ云フ時ニ
ハ、特別ノ自由勞働者或ハ登錄勞働者
ト云フヤウナ形容詞ノナイ限リニ於テ
ハ「テクニカル·ターム」トシテ、總テ
ノ勞働者ト云フ時ハ、社會局デ御決定
ニナッテ居ル勞働者ノ意味ヲ、局長ノ御
言葉通リ解釋シテ宜イカ、又或ル法條
ニ依ッテハ、自由勞働者ヲ含ム勞働者ノ
說明モアリ、或ル法條ニ依ッテハ登錄ダ
ケノ勞働者モアルガ、只今政府委員カ
ラ御說明ニナリマシタヤウナ色々ノ場
合ガアルカナイカ、ソレヲ參考マデ承ツ
テ置キタイト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913760X00519310317&spkNum=97
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098・吉田茂
○吉田政府委員 我國ニ於テ法律ニ勞
働者ト云フ字ヲ用ヒマス場合ニ於テ
ハ只今私ノ申シマシタ意味ニ一般ニ
ハ用ヒテ居リマス、但シ勞働會議ノ國
際條約等ニハ、モウ少シ廣イ意味デ、
知能勞働者ト云フヤウナ者モ含メテ書
ク場合ガアリマスガ、我國ノ法律上ノ
用語トシテハ、只今申シタヤウニ、雇
傭關係ノ下ニ立ッテ他人ニ雇ハレテ肉
體勞働ニ從事スル者ヲ勞働者ト云フ、
斯樣ニ心得テ居リマス、併ナガラ將來
何カノ事柄ニ付テ立法致シマス場合ニ
於テハ、立法ノ目的トスル所ニ依フテ、
勞働者ノ見解ガ或ハ只今申上ゲタコト
ト變ッテ用ヒラレルコトガアルカモ知
レマセヌガ、全般ノ問題トシテハ、只
今申シマシタヤウナ解釋デアルト心得
テ居リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913760X00519310317&spkNum=98
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099・高見之通
○高見委員 ソコデ一寸聽イテ置キタ
イコトハ、只今ノ勅令ニ定メル程度ハ
一萬圓ダトカ、延人員ノ仕事ト云フ方
面カラ御覽ニナッテ居ルノデアルガ玆
ニ大キナ請負主ガアッテ、澤山ノ勞働者
ヲ家ニ置イテ居ル、其者ガ一寸賴マレ
テ近所ノ堤防ヲ直シテ吳レ、其金額ハ
三千圓カ二千圓デアル、ソレカラ其延
人員ハ五十人カ百人デ宜シイ、サウ云
フ仕事ヲシテ居ル時ニ勞働者ガ怪我ヲ
シタサウスルト是ハ勞働者災害扶助法
ニ掛ラナイノデスカ、ソレヲ承リタイ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913760X00519310317&spkNum=99
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100・吉田茂
○吉田政府委員 勅令ヲ以テ定メマス
場合以外ノ仕事ニ從事致シマス場合ニ
ハ、此扶助法ノ義務トシテノ扶助ハナ
イノデアリマス、其場合ニ於キマシテ
ハ民事上ノ關係トシテ、現在ト同ジ
ヤウニナルノデアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913760X00519310317&spkNum=100
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101・高見之通
○高見委員 ソレダカラ勞働者ノ建前
カラ見ルト、此法律ハ餘リ今日ノ日本
ノ現狀ニ適シナイ法律デハナイカト思
フ、何トナレバ、今日ノ請負ヲヤッテ居
ル大キナ請負主ハ、、一ツノ事務所ヲ持ツ
テ其處デハ何百萬圓ト云フ大キイ仕事
モヤル代リニ、何千圓、何百圓ト云フ小
サイ仕事モヤル、ソコデ小サナ仕事ヲ
ヤッテ居ル時ニ、其雇ハレタ勞働者ガ怪
我ヲシタ、所ガ其仕事ハ一萬圓ノ金ニモ
ナラズ、又ソレ程大キナ延人員モナイ仕
事デアルカラ、此勞働者災害扶助法ニハ
掛ラナイ、君等助手ニヤレト云フノデ、
五十錢カ一圓位ヤッテモ宜イシ、場合ニ
依レバヤラナクテモ宜イ、サウ云フ屁理
窟ガ起ル、今日折角今工場法トカ若クハ
キナ鑛山ノ仕事ヲヤッテ居ルヤウ
ナ所ハ、主人ノ顏モ知ラナケレバ誰ガ
主人ダカ分ラヌカラ、勞働者ト工場主
トノ間ニ災害扶助ノ獨立ノ法律ヲ置ク
必要モアル、併ナガラ今申上ゲタ如ク
實際ニ土木請負者トシテ土木工事或ハ
工作物ノ工事ヲヤッテ居ル者ハ、相當
ノ者ハ皆家ノ勞働者ヲ使ッテ居ル、是ハ
代々皆使ヒ、其又仕事ノ下請ノ人間ガ居
ル、ソコデ大キナ棟梁ノ親分ガ下請ニ
仕事ヲサシテ、而モ其仕事ハ三千圓カ
二千圓ノ仕事ヲシテモ下請ノ者ガ居ツ
テ、其下請ノ下ニ勞働者ト云フ者ガ居
ル、サウ云フ者ガ怪我ヲシテモ、今此
扶助法ト云フモノガ出來タ爲ニ、萬
圓以下ノ仕事デアッテ延ベ人員ガ幾人
ダカラ、サウ云フ仕事ナラ元請人ハ下
請人ニ金ヲ拂ハヌデモ宜イコトニナ
ル、斯ウ云フコトハ御互ニ三百的ニ說
明スルヤウニナリ、損害賠償ノ請求ヲ
認メナイ、普通ノ民法ニ於テノミ損害
賠償ノ請求ヲスル外ハ殆ド出來ナイト
云フコトニナル、實際日本現狀ニ於テ
ハ、三百圓デアラウガ五百圓デアラウ
ガ、相當力ノアル者ハ別トシテ、此法
律中ノ適用ノ中ニ入レテ、工事ノ大小
ヲ問ハズ、或ハ身分ノ相當ノ者デアリ、
其處ニ使ハレテ居ル者ハ工事ノ大小ヲ
問ハズ此法律デ一〓ニシテヤルト云フ
コトガ、非常ニ法律ノ權能ヲ發揮シ、
又溫情主義ヲ一益〓適當ニ法律デ統一シ
テ行クヤウニ感ゼラレルノデアルガ、
只今ノヤウナヤリ方デハ、ドウモ一般
ノ本當ノ請負狀態ト少シ異ッテ行クヤ
ウデスガ、サウデナイデスカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913760X00519310317&spkNum=101
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102・吉田茂
○吉田政府委員 寔ニ御尤ナ御尋ト存
ジマス、出來マスルコトナラバ當局
ニ於キマシテモ、ドンナ小サナ工事ニ
於テモ苟モ他人ニ雇ハレテ居ル勞働者
ガ業務上災害ヲ受ケマシタ場合ニ於キ
マシテハ、ソレニ何等カ法律上ノ根據
ヲ得ルヤウニ致シテヤリタイト云フコ
トハ、私共同ジ希望ヲ持フテ居ルノデア
リマスガ、斯樣ニ致シマシテ法律ニ依
リマシテ扶助ノ金額ヲ定メ、尙ホ保險
ノ方法ヲ取ッテヤリ一定ノ扶助ノ限界
ヲキメルト云フコトニナルト、ドウシ
テモ何等カノ方法ニ依リマシテ事業規
模ト云フモノニ制限ヲ設クルコトハ已
ムヲ得ナイノデアリマス、工場法ニ於
キマシテモ御承知ノ通リ一定ノ人數以
下ノモノニ付キマシテハ工場法ヲ適
用致シテ居リマセヌ、又只今ノ請負工
事以外ニ於キマシテモ、第一條ノ中ニ
アリマスヤウニ御承知ノ如クデアリマ
スガ、土石、砂鑛ヲ採取スル事業ニシ
テ動力若ハ火藥類ヲ用ヒルヤウナ危險
程度ノモノ若ハ地下ニ於テ作業ヲ爲
ス者、又ハ十人以上ノ勞働者ヲ使用ス
ル者、是ハ只今ノヤウナ御話ノ點カラ
考ヘマスルト、ヤハリ十人以下ノ勞働
者ヲ使用シテ居ル者ニ扶助シテヤラネ
バナラヌト云フ感ジハ、人道的ニ起ル
ノデアリマスガ、一定規模以上ノ工事
デナイト一般ニ命ズルト云フコトハ無
理ニナッテ來ル、又土木工事ニ付キマシ
テモ、丁度御話ノヤウナ國道府縣、市
町村又ハ勅令ヲ以テ指定スル公共團體
ノ直營工事、或ハ又鐵道、軌道、索道
ナドノ運輸事業、或ハ水道電氣若ハ瓦
斯ノ事業ヲ營ム者ガ、公共〓體ト云フ
事業主體ガアリマシテ、自分ノ事業ノ
爲ニ直營ノ工事ヲヤル、其事業主體ニ
於テ賠償ヲ致ーシマスコトハ無理デア
ル是モ規模ヲ問ヒマセヌ、其他ノ事
業ハ先程例トシテ玆デ申上ゲマシタ主
トシテ請負ニ掛ルモノ全體ノ問題トシ
テ考ヘマスト、請負工事ヲサレル前ハ
請負人ガ註文者カラ貰フテ、其金額ノ範
圍內デ工事ヲヤルノデアリマシテ、無
論請負人ノ中ニハ資力ノ豐富ナ何々組
ト云フ大キナ者モアル、是ガヤハリ下
請ト云フヤウナ者ニ數次ノ下請ニ依ツ
テ下請ヲサシテヤルト云フ場合モア
ル請負人自體ノ資產ニ依リマシテ其
限度ヲキメルト云フコトニナルト、法
律ヲ以テキメル上カラハ非常ニムヅカ
シイ、請負者ノ不正直ナ者ハ出サヌ正
直ナ者ハ出スト云フヤウナコトニナツ
テハ中々公平ヲ期シ難イノデ、請負工
事ニ付キマシテハドウシテモ工事金額
或ハ工事期間ト云フヤウナ、工事其モ
ノヽ規模デ問題ヲキメマス以外ニハキ
メヤウガナイノデアリマス、此法律ハ
今度新シク出來マスガ、ズット前カラ〓
究ヲシテ居リマシタノデ、此點ニ付キ
マシテハ地方々々ノヤリマスモノ、或
ハ水道ノ組合ノヤル大キナ事業主體
デ、直營主體デナイ場合ハ、ドウシテ
モ賠償ノ義務者ヲ請負人トスルト云フ
コトハ、一ツ〓〓ノ請負ノ仕事ノ規模
ノ大小長短、其請負ッタ仕事ノ或ハ木造
ノ二階建ノ小サイ工事トカ、一定ノ限
度ヲ工事ニ付ケマセヌケレバ、外ニ付
ケル良法ハナイノデアリマス、ソレガ
爲ニ只今申シタヤウナ、使用勞働者延
人員千人以上、工事費一萬圓以上ノモ
ノト云フ風ナ限界ヲ以テ扶助ノ制限ヲ
キメタノデアリマシテ、法律ニ依ッテ義
務ヲ强制スルニハ是レ位ノモノデナケ
レバ無理デアラウト云フ考カラ出テ居
ルノデアリマス、此限度ヲ千圓以上ニ
シタラドウカ、一萬圓以上ハ少シ安過
ギルトカ、或ハ高過ギルト云フヤウナ
コトニ付テハ、ソレハ程度ノ問題ト思
ヒマスカラ、御議論モゴザイマセウト
思ヒマスガ、現在ノ土木建築界ノ狀況、
又土木建築ノ大小、土木建築ヲシテ居
ル人々ノ意見等ヲ十分斟酌致シマシ
テ、是位ノ限度ガ適當デアラウト考ヘ
テ居リマス、尙ホ勅令ノ規定ニナルマ
デハ此點ハ能ク考慮致シマスケレド
モ、私共ハ此點ハサシテ議論ハナカラ
ウカト考ヘテ居リマスガ、御質問ノ御
趣旨ハ寔ニ御尤ダト思ヒマス、斯樣ナ
扶助責任ヲ事業主ノ義務トシテ規定ス
ルト云フコトニナルト、何等カノ限界
ヲ置カナクテハナラナイ、請負工事ニ
付キマシテハドウシテモ工事ノ規模
ト云フヤウナモノデヤルヨリ仕方ガナ
イト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913760X00519310317&spkNum=102
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103・高見之通
○高見委員 少シ諄イヤウニ思フケレ
ドモドウモ私ノ言フ意味ハ尤ダト御
解釋ニナッテ居ル、併ナガラ法律規則ノ
上デ取ラレルナラバドウモ已ムヲ得ナ
イ、斯ウ仰シヤルガ、ソレデハ斯ウ云
フ二ツノコトヲ聞イテ見タイト思フ、
先ヅ第一ニ今申上ゲタ如ク財產一千萬
圓カラノ大キナ請負ノ商賣ヲシテ居ッ
テ、ソレガ非常ニ澤山ノ勞働者ヲ先祖
代々使ッテ來タ、然ルニソレガ小サイ事
業デ一萬圓以下デ延人員十人以下ノ仕
事ヲヤッタ時ニハ、此法律ハ溫情主義ヲ
破ルモノダト思フガ、何カアナタノ御
意見ガアレバ聽イテ置キタイ、或ハ直
接國稅幾ラ納メテ居ル者デ、サウシテ
其下ノ勞働者デ何年カ引續イテ其家ニ
代々居ルヤウナ者ニ對シテハト云フ一
箇條ヲ入レタラ如何デスカ、ソレカラ
モウ一ツハ、此法律ニ對スル勅令案ヲ
作ラレタノハ、何時頃カ知ラヌガ近來
ハ物價モ非常ニ安クナッテ居ルシ、社會
ガ不景氣デ仕事ガ幾ツモ〓〓分レルヤ
ウナ感ガアルガ、一萬圓ノ工事ニ千人
ハ少シ形ガ大キ過ギルト思ヒマスガ、
モウ少シ金額モ小サクシ、延人員モ少
クシテ、サウシテ一方ニハ從來ノ關係
者デアッテ、多少ノ稅金モ納メ、一年ナ
リ二年ナリ連續シテ勞働ヲヤッテ居ル
雇傭關係ニモ之ヲ及ボスヤウナ工合ニ
シテ、本當ノ溫情主義ヲ徹底スルヤウ
ニスルコトヲ當局ハ御考ニナラヌノデ
アルカ、ヤハリ前說ヲ御主張ニナルカ
一寸ソレヲ聽イテモ見タイ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913760X00519310317&spkNum=103
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104・吉田茂
○吉田政府委員 請負工事ト云フノハ
先程申シマシタヤウニ、臨時的ノ一ツ
一ツ切レ〓〓ノ工事デアリマス、隨テ
請負工事ニ使用致シマス勞働者ハヤ
ハリ其工事ニ伴ッテ入ッテ來ル收入ノ範
圍デ賄フノガ當リ前デアリマス、又サ
ウ云フノガ請負ノ性質デアリマスカラ
此請負工事ノ經濟以外ニ、事業者ニ財
產ガ有ルカ無イカニ依ッテ、其請負工事
ニ使用サレル勞働者ガ扶助ヲ受ケラレ
ルカ受ケラレナイカヾキマルノデハ、
斯樣ナ社會立法ニ於テハ頗ル公平ヲ缺
クコトニナリマスカラ、御考ノ點ハ十
分私共ハ諒解スルノデアリマスケレド
モサウ云フ限リ方ヲスルコトハ、詰
リ金ノアル者ニ雇ハレタ者ハ扶助ヲ受
ケラレルガ、金ノ無イ者ニ雇ハレタ者
ハ扶助ヲ受ケラレナイ、斯樣ナコトヲ
法律デ認メルコトハ如何カト思ヒマ
ス、サウ云フ臨時請負ノ工事ニ付キマ
シテハ、ドウシテモ其工事ノ危險性ヲ
以テ標準トスルコトガ必要デアラウト
思ヒマス、ソレカラ又永年勤續シテ居ツ
タ勞働者ニハ厚クスルト云フ趣旨ハド
ウカト云フコトデアリマスガ、是モ成
ベク一人ノ勞働者ガ一人ノ事業主ニ對
シテ、永年勤續シテ居ルコトハ、社會
ノ醇風美俗ト云フコトカラ考ヘマシテ
最モ望マシイコトデハアリマスケレド
モ、土木建築等ノ請負工事ニ於テハ、
中々ソレダケノ人間デハ濟マナイノデ
アリマシテ、御承知ノ通リ臨時人夫ガ
澤山要ルノデ、臨時人夫ノ供給ヲスル
者ガアッテ、其方ノ親方ノ手カラ入ルト
云フコトモゴザイマス、左樣ナ場合ニ
一人ノ雇主ニ長ク勤メテ居タ者ハ非常
ナ恩典ニ浴シ得ルシ、時々代ッタ者ハ假
令其業務上怪我ヲシタノデモ、扶助ヲ
受ケラレナイト云フヤウナ差別ヲ設ケ
ルコトモ望マシクナイト考ヘマスノデ
其點モ如何カト思フノデアリマス、ヤ
ハリ是ハ工事ノ規模ニ依ッテキメルコ
トガ穩當デアラウト云フコトニ落付ク
ト思ヒマス、尙ホ大會社デモ小サナ工
事ヲスルコトガアルデハナイカト仰シ
ヤイマスガ、成程左樣ナコトモゴザイ
マセウケレドモ、ヤハリ大キイ會社ハ
大工事ヲ扱フ方ガ多イト思ヒマス、小
サイ仕事ナラバ、例ヘバ吾々ガ一萬圓
モ掛ラナイヤウナ自分ノ住宅ヲ建テヨ
ウト云フ時ニハ、左樣ナ大會社ニ賴マ
ナクテモ手頃ナ請負業者ガアルノデゴ
ザイマス、尙ホ土木建築等ノ小工事ニ
於テハ、業務上ノ災害ヲ生ズル度數モ
ヤハリ少イノデアリマス、普通木造住
宅等ニ於キマシテハ差上ゲマシタ表ノ
中ニハ除イテアリマスガ、木造建築ハ
此頃ノ鐵筋「コンクリート」ノ工事ト云
フモノニ比ベテ危險率ガ少イノデアリ
マス、是ハ業務上受ケタ災害ニ付テノ
扶助デアリマスカラ、工事ノ規模ノ小
サイモノニハ適用シナイト云フコト
ハサウ云フ災害ガ割合少イト云フコ
トモ一ツノ理由デアリマス、無論御指
摘ノヤウニ、ドンナ小サイ工事デモ生
命ニ係ルヤウナコトモゴザイマスガ
統計的ニハサウ云フ場合ハ極メテ少イ
ノデアリマス、サウ云フ細イ工事ニマ
デ本案ヲ適用スルコトハ、實際無理ガ
起リマスシ、又實際サウ云フ小サイ工
事ニ付テ災害ヲ扶助スルコトヲ實行致
サセルコトハ甚ダヤリ惡イノデアリマ
スカラ、一定ノ規模以上ノモノト云フ
コトニ致シタノデアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913760X00519310317&spkNum=104
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105・高見之通
○高見委員 ドウモ此案ヲ起草サレタ
頭ガ溫情主義ヨリ、幾ラカ「ハイカラ」
的主義デハナイカト思ヒマス、例ヘバ
御言葉ノ中ニモ、請負經濟ノ下ニ大體
ノ標準トナリ何ナリデ解決サセルト云
フコトガ建前ダト仰シヤルガ現ニ資力
アルニ拘ラズ其災害扶助ニ應ゼヌト云
フ場合ハ、罰金ヲ科スルト云フ制裁規
定モアリマスガ、ソレハ如何デスカ、
大體ハサウ云フヤウナ工事ト云フモノ
ヲ一ツノ纒リニシテ、其處ニ何カ多少
利益ガアレバ、其利益ノ中ニサウ云フ
災害扶助ノ危險モ含ンデ置クト云フコ
トヲ建前ニシタノデナク、要スルニ事
業主トソレカラ勞働者ト云フ關係ノ上
ニ於テ、事業主トシテハ當然勞働者ヲ
助ケベキモノナリト云フ觀念カラ大體
出發シテサウシテ今日勞働者ト事業主
ガ色々ノ點ニ於テ間違ヲ起シタリ喧嘩
ヲシタリスルカラ、日本ノ社會思想ノ
上カラ斯ウ云フモノガアレバ非常ニ宜
イト云フ意味カラ出發サレタモノデ
アッテ、勞働者ノ仕事ノ關係カラデナ
〃、勞働者及ビ事業主ト云フモノヽ關
係ノ上ニ於テ、其仕事ノ上ニ疾病ヲ起
シ、若ハ傷害ヲ受ケタナラバ、是ハ當
然物ノ道理トシテモ、道德上カラ見テ
モ、何カラ見テモ災害ノ扶助ニ應ズベ
キモノデアルト云フ觀念ノ下ニ、私
出發サレタモノデアッテ、左樣ニ端的ニ
大キナ仕事ニハ災害ガアリ、小サイ仕
事ニハ比較的危險ガ少イ、仕事ノ大小
ト云フ方面カラ出發シテ、長イ間日本
獨特ノ風習デアル勞働者ト事業主間ノ
關係ハドウデモ宜シイ、勞働及ビ事業
ト云フ問題カラ出發シテ、斯ウ云フ法
律ヲ作レバ宜イト云フ大體ノ觀念ガ其
處カラ出發シタカ、サウデナク、今日
社會思想上カラ考ヘ、又根本的ニ勞働
者ト云フモノニ對シテハ、事業主ハ當
然ノ責任トシテ可愛ガルト云フ觀念ノ
上カラ出發シタノデアリマスカ、此法
律ヲ規定サレタ根本ノ趣意ハ何處ニア
リマスカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913760X00519310317&spkNum=105
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106・吉田茂
○吉田政府委員 是ハ社會立法トシテ
ノ根本問題ニ觸レタル御質問ト考ヘマ
シテ、最モ望マシイコトハ何等ノ法
律規定ハゴザイマセヌデモ、御尋ノヤ
ウナ趣旨ニ依ッテ、自分ノ使用シテ居ル
勞働者ガ事業ノ爲ニ災厄ニ遭ヲタ時ニ
ハ事業主ハ資力ノ有無ニ拘ラズ其財
產ノ許ス限リ、其不幸ノ勞働者ニ對シ
テ法律上ノ義務デナク、自分ノ道德心
ノ發露トシテ扶助ヲ行フト云フコトガ
一番望マシイコトデアリマス、決シテ
私共ソレヲ否定スル心持ハアリマセ
ヌ、サウ云フ意思ハ益〓助長シテ參リタ
イト考ヘマスガ、併ナガラ事實ニ於キ
マシテハサウ云フ心持デヤッテ吳レテ
居ル奇特ナ事業家モゴザイマスシ、亦
サウ云フ心持デ使ハレテ居ル心掛ノ極
メテ良イ勞働者モゴザイマス、併ナガ
ラ現在ノ社會ノ事實ニ鑑ミマスト、現
在ニ於キマシテハヤハリ法規ニ依ッテ
双方ノ間ノ關係ヲ一律ニ不公平ナク規
律スル、勞働者ノ受クベキ福利ノ限度
ハ是ダケ、ソレニ對シテハ事業主モ是
ダケノコトヲシナケレバナラヌト云フ
義務ノ限度ヲ規定致シマスルコトハ、
已ムヲ得ザル情勢ナノデゴザイマス、
何モ規則ナクシテ社會ニサウ云フ不幸
ガアッタ場合ニ、關係者ノ自發的ノ美シ
イ心持デ解決シテ行クト云フノデアリ
マシタナラバ、恐ラク現在ノ社會立法
ハ要ラナイコトニナルノデアリマス、
併ナガラ現在ノ社會組織、經濟組織ノ
下ニ於キマシテ、一方ニ於テサウ云フ
心持デ努メルト同時ニ、權利義務ノ限
界等ハ規律ヲ以テ、ソレヲ統制スルコ
トガ、實際ノ上ニ於テ必要ナノデアリ
TV、又事業主ニ於キマシテモサウ云
フ規則ニ依ッテ不公平ナク、サウシテ今
度ノヤウナ保險デモアリマスレバ殊ニ
シ易クナルノデアリマスカラ、サウ云
フ風ニシテ貰フコトガ、自分ノ義務ヲ
履行スル上ニ於キマシテ、便宜ナノデ
アリマス、決シテ御話ノ美シイ心持ト
云フ趣旨ヲ否認スルノデハアリマセヌ
ケレドモ、ソレバカリヲ以テシテハヤ
リ難イ、今日ノ組織ノ下ニ於キマシテ
ハヤハリ規則ヲ以テ其處ニ一定ノ基準
ヲ定メル、其基準ノ運用ニ當ッテハ出來
ル限リ美シイ心持ヲ持ッテヤル、總テノ
社會立法ハ何時モ其處カラ起ッテ來ル
ト思ヒマス、御尋ノ趣旨ハ決シテ間違ッ
テ居ルトハ考ヘナイノデアリマスガ、
斯樣ナ規則ヲ以テキメマセヌト、現在
請負工事ニ於キマシテ御話ノヤウニ繼
續的ニ使用セラレルノデハナクシテ、
人ヲ入レマス場合ニ入代リ立代リ今日
ハ甲ノ親方、明日ハ乙ノ親方ト云フ風
二、又午前中ニ來タ者ト午後ニ來タ者
トガ同ジ者デナイ、サウ云フ者ヲ整理
シテ一定ノ人數ヲ揃ヘテ仕事ヲスルト
云フ組織ノ下ニ於テハドウシテモ其
處ニ一定ノ限界ヲキメナケレバナラ
ヌ、限界ヲキメルト致シマスレバ事業
ノ規模、種類、其事業ガ危險デアルカ
危險デナイカ、大キイ事業カ小イ事業
カト云フコトヲ限界ニシテキメル以外
ニ方法ガナイノデアリマス、是ハ工場
法等ニ付テモ同ジコトガ言ヘルト思ヒ
マス、我國固有ノ工場ノ組織ニ付テ見
レバ、工場主ト勞働者トノ間ハ非常ニ
美シイ情誼デ出來テ居ル、又大キナ工
場ニ於テモサウ云フ家族主義ガ一般ニ
行ハレテ居ル所ガアルニ拘ラズ、規則
ヲ以テ就業時間ヲ制限シ、或ハ災害ノ
場合ノ扶助ノ責任ヲ規定シ、或ハ危害
豫防裝置ニ付テモ色々ナ規定ヲ設ケ、
或ハ日常勞働者ノ健康保險制度ヲ取入
レル、サウ云フコトヨリモ、病氣ノ時
ナラバ事業主ガ治療ヲシテヤーレバ宜
イ、勞働者ハ自發的ニ掛金ヲ納メレバ
宜イデナイカ、何モ强制的ニシナクト
モ宜イデハナイカト云フヤウニ、道德
的方面カラ言ヘバ論ジ得ラレルノデア
リマスケレドモ、ソレノミニ依ッテハ完
全ヲ期シ難イト思ヒマスカラ、各種ノ
社會立法ガ必要ナノデアリマス、此規
則モ亦其一ツト御考ヲ願ヒタイノデア
リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913760X00519310317&spkNum=106
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107・高見之通
○高見委員 諄イヤウデアリマスケレ
ドモ、今ノ御答辯ハ私ノ問ハントシテ
居ル所ニ的中シテ居ラヌ、成程此法律
ノ中ニ大切ナコトモアル、或ハ病氣ト
カ何トカ云フ場合ニ無制限ニ事業主ガ
勞働者ヲ保護シナケレバナラヌト云フ
義務ヲ、道德上カラ見テ考ヘル必要モ
ナカラウト思フ、ソコデ其出發點ガ私
ハ端的ニ聽イテ置キタイ、事業主ハ請
負經濟ヲ離レテ、當然勞働者ヲ保護ス
ベキモノデアルト云フ根本ノ理由カラ
ヤッタモノデアルカ、其處ダケヲ聽イテ
置キタイノデス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913760X00519310317&spkNum=107
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108・吉田茂
○吉田政府委員 御尋ノ點ニ關シマシ
テハ、申セバ中間ニ在ルト言ッテ差支ナ
イト思ヒマス、請負人ハ他人カラ報酬
ヲ得マシテ、或ル工事ヲ請負ッテ、其請
負フタ工事ニ對シマシテ勞働者ヲ使ツ
テ居ルノデアリマス、隨テサウ云フ事
業ニ勞働者ヲ使フト云フコトニ依ッテ、
初テ請負人ト勞働者トノ間ニ賠償ヲ付
スルカ付シナイカト云フ問題ガ成立シ
テ來ルノデアリマスカラ、請負經濟ノ
中デ支辨セラルベキデアリマスガ、併
シ事實ハ請負經濟ノ中デ支辨出來ヌヤ
ウナ大怪我ヲスルコトモアリマセウ、
併シ大怪我ヲシテモ、請負金額ヲ超過
シタカラ、免除シヤウト云フコトハナ
イノデアリマス、苟モ勞働者ヲ使ッテ、
他人カラ報酬ヲ得テ工事ヲ請負フタ人
デアリマスナラバ、此規模ニ當篏ッテ居
ル限リ免レ難イノデアリマス、自分ノ
資力ヲ超過シタモノガアル、殊ニ中以
下ノ請負業者ニ取リマシテハ、非常ニ
支拂ニ困難ヲ感ズルコトガアルノデ、
各事業主ノ間ニ危險ヲ分擔スル意味ニ
於キマシテ、保險制度ヲ取入レタノデ
アリマスカラ、事業主ハ强制的ニ保險
ニ加入サセラレマス、請負金額ヲ貰ヒ
マシタ際ニ、其金額ノ中カラ保險料ヲ
支拂ッテ强制的ニ加入サセラレルノデ
アリマスカラ、イザ支拂ト云フ時ニハ
自分ノ資力ヲ超過シテモ困ラヌヤウニ
此法律ハ出來テ居ルノデアリマス、資
力ノアルモノニ限ッテ支辨ヲ命ズルト
云フヤウナ區別ハ致シテ居リマセヌ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913760X00519310317&spkNum=108
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109・高見之通
○高見委員 意見ノ相違ニナルカ知ラ
ヌガ、私共ハ法案ノ趣意ハ何トナク普
通ノ工場勞働者、或ハ鑛山勞働者ヲ建
前ニシテ、土木ノ請負人ヲ規定セラレ
ントスル傾向ガアルト感ゼラレル、現
在ノ大多數ヲ占メテ居ル土木ノ請負人
ト勞働者、ソレカラ東京邊リニハ只今
ノ御話ノヤウニ甲カラ乙、乙カラ丙、
丙カラ丁ニ移ルト云フノガ隨分アル、
一方ニ於テ非常ニ多數ノ親分子分ノ關
係デ來テ居ル所ガアル、而モサウ云フ
方面ガ何ゾ圖ラン資力ガ十分ニアリ、
多額ノ稅金モ納メテ居ルト云フヤウナ
方面ニハ、假令共仕事ガ一萬圓以下デ
アリ、若クハ延人員千人以下ノ仕事デ
モ、商賣デスカラ隨分澤山ノ仕事ヲ分
割シテ請負フコトモアリマス、詰リ請
負主ガ大キナ金持デアッテ、小サイ仕事
ヲスル時ニハ、屢〓起ル災害ヲ-殊ニ
日本ノ現狀ニ於テハ小サイ工事ヲ幾ツ
モヤッテ居リマスカラ、サウ云フ時ニ於
テ此法條ノ適用ヲ免レルト云フヤウナ
コトハ、金持保護ト云フヤウナコトニ
ナリ、從來ノ溫情的ナ土木請負業者ノ
親分子分ノ善イ所ヲ打壞スモノデナイ
カト考ヘル、併シソレハマア意見ノ相
違トシテ、是レ以上議論致シマセヌガ
此際一寸聽イテ見タイノハ、第二條ノ
中ニ「疾病ニ罹リ」ト云フ文句ガアリ
マスガ、此「疾病ニ罹リ」ト云フノハ
業務上ノ原因例ヘバ勞働者ガ仕事ヲシ
テ居ルト急ニ雪ガ降リ、非常ニ寒イ風
ガ吹イテ來テ、其勞働者ガ風邪ヲ引イ
タト云フヤウナコトハ、此「疾病ニ罹
リ」ト云フ中ニ這入ルノデアリマスカ
負傷シタト云フヤウナコトハ非常ニ分
リ易イケレドモ、勞働者ガ業務上疾病
ニ罹リト云フノハ一體ドウ云フ場合デ
アリマスカ、一ツ試ミニ聽イテ見タイ
尤モ是ハ「勅令ノ定ムル所ニ依リ」云
云ト云フコトガアリマシテ、何カ色々
ナ定メモアリマセウケレドモ、一寸伺ツ
テ置キマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913760X00519310317&spkNum=109
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110・吉田茂
○吉田政府委員 此處ニアリマス業務
上疾病ニ罹リト云フ場合ハ、普通ニ所
謂職業病トデモ申シマスカ、例ヘバ土
木建築工事ニ付キマシテ極ク顯著ナ例
ハ、此頃深イ所ノ基礎工事ヲ致シマス
ノニ能ク「ケーソン」ト云フモノヲヤッ
テ居リマス、サウ云フ所ニ從事スル場
合ニ、所謂「ケーソン」病ト云フモノニ
罹ル、其他瓦斯ノ事業ニ從事シテ居ル
場合ニ瓦斯ニ中毒スル、サウ云フ業務
トノ關係ノ顯著ナモノヲ言フノデアリ
マシテ、只今御話ノヤウニ寒イ風ガ出
テ來テ風邪ヲ引イタト云フヤウナノ
ハ、所謂業務上ノ事由ニ依ルモノト考
ヘナイノデアリマス、是ハヤハリ業務
上ト云フコトニ限定セラレテアリマシ
テ、其業務上ト云フノハ、サウ云フ業
務トノ因果關係ノ極メテ密接ナモノデ
アリマス、詰リ職業病ト云フヤウナ種
類ノモノヽ積リデアリマス、其他ノモ
ノニ付キマシテハ、現在ヤッテ居リマス
健康保險ノ範圍デモ擴張セラレマシ
テ、此種類ノ勞働者モ被保險者ニナル
ト云フコトニナリマスレバ、只今御話
ノヤウナ風邪ヲ引イタヤウナ場合モ救
濟セラレルコトヽ思フノデアリマス
ガ、マダ此法案ハ其方面ニハ及ンデ居
ラナイノデ、業務上明確ナ因果關係ノ
アルモノニ限ッテ居リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913760X00519310317&spkNum=110
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111・高見之通
○高見委員 今ノ御言葉デ大體分リマ
シタガ、ソレナラ斯ウ云フ場合ハドウ
デスカ、臺灣トカ云フヤウナ少シ溫カ
イ所デ事業ヲヤッテ居ル、其處ハ非常ニ
「マラリヤ」ト云フヤウナ風土病ガ流行
ル、又朝鮮邊リデモ隨分到ル所ニ於テ
風土病ト云フモノガアル、サウ云フ所
デ開墾事業トカ色々ナ仕事ニ從事シテ
居ッテ「マラリヤ」ニ罹ッタト云フヤウナ
場合ハ、是ハアナタ方ノ御解釋デハ事
業ニ基ク疾病ト見ルカ、或ハ大分間接
的ノモノデアルカラサウ見ナイノカ、
是等ノ事ハ實際問題トシテ非常ニ深イ
關係ガアリマスカラ、一應伺ッテ置キタ
イ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913760X00519310317&spkNum=111
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112・吉田茂
○吉田政府委員 只今例トシテ御擧ゲ
ニナリマシタヤウナ風土病ト云フヤウ
ナモノハ、是ハ其業務ニ從事シタルガ
爲デナクテ、其土地ニ行ケバ其業務ニ
從事シナクテモ罹ル病氣デアリマスカ
ラ、業務ニ直接基因シテ罹ッタ病氣ト
シテ認メナイ積リデアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913760X00519310317&spkNum=112
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113・高見之通
○高見委員 ケレドモ、其處ニハ「マ
ラリヤ」等ガ殆ド常時的ニアルノデア
ル、其時ニ會社ノ方デハドウモ「マラ
リヤ」ガ非常ニ多イカラ其積リデヤレ
ト請負人ニ言フ、然ルニ請負人ハソレ
ニ對スル所ノ設備、或ハ一哩四方ノ蚊
ヲ退治シテヤラナケレバナラヌト云フ
ヤウナコトハ、仕事ヲヤル上ニ於テ當
然ヤルベキ筈デアリマス、然ルニ請負
主ガソレダケノ設備ヲ怠テ、無智ノ勞
働者ガ「マラリヤ」ニ罹ルト云フヤウナ
時ニ於テ、ソレハ大部分間接的ダ、誰
ガ行ッテモ罹ルノダト云フヤウナコト
ハ、餘リニ事業主ヲ保護スル規定デハ
ナイカ、モウ少シ事業主ニ向ッテ相當ナ
制裁ヲ加ヘル途ヲ開キ、サウシテ勞働
者ヲ保護スル途ヲ開ケバ宜イ、尙ホ瓦
斯ヲ使ッタ場合、或ハ特別ナ硫酸ノ臭ヒ
ヲ嗅イダト云フヤウナ場合ハ負傷ト云
フ方ニ入レテ宜イ、疾病ト云フヨリモ
負傷ト云フ場合ニ近イデセウ、負傷ト
云フモノハ必ズシモ肉ガ破レ、皮ガ破
レタト云フ場合ノミデハナイ、醫學上
ノ負傷ト云フ意味ハ分リマセヌガ、或
ハ肉的ニ傷ヲ受ケタト云フヤウナ場合
モアル、ソコデ今御話ノヤウニ若モ會
社ト個人トノ契約デ、尤モ行政官廳ガ
サウ云フコトヲ命令スルコトモ出來ル
カ知レマセヌガ、一方ハ無智文盲ナ勞
働者デアリマス、片方ハ請負人ト言ヘ
バヤハリ相當ナ資產ヲ持ッテ居ル、百萬
二百萬ト云フ資金ヲ投ジテ事業ヲシ、
又一擧ニシテ幾百萬圓ノ金ヲ儲ケルト
云フ立場ニ居ル、ソレ故ニ當然サウ云
フコトハ法律ガ無クテモ請負主ハ相當
災害ノ防除ノ途ヲ開キ、法律ガ無クテ
モ無論何トカ心配スルノガ請負主ノ責
任デアルガ、段々法律ガ現レテ來ルト
云フト、法律ヲ楯ニ取ッテ免レヨウトス
ルヤウナコトガ起ル、政府ガ所謂法律
ヲ作ル時ニ能ク考ヘテ置イテ貰ヒタイ
ト云フノハ此點デアリマス、デ今申シ
タヤウニ一方ハ無智ナ者デアリ、一方
ハ金持ノ事業家デアル、若モソコニ相
當ナ設備ヲシテ蚊ノ來ナイヤウニシ、
或ハ蚊帳デモ十分釣ッテヤルトカ、或ハ
其處ニ沼ガアレバ其沼ヲ埋メルトカ云
フヤウナ設備ヲヤレバ「マラリヤ」ニ罹
ル筈ハナイ、「マラリヤ」ト云フモノハ
誰ガ行ッテモ罹ルト言ハレタガ、用事ガ
無クテハ誰モ行キマセヌ、其仕事ノ爲
ニノミ「マラリヤ」ニ罹ル、併シ設備ヲ
スレバ「マラリヤ」ニハ罹ル筈ハナイ、
然ルニ負傷者デモナク、又死亡デモナ
イト云フ、事業主ノ方ノ不親切ノ爲ニ
其人間ガ「マラリヤ」ニ罹リ、癈疾者同
樣ナ狀態デ歸ッテ來タ、ソコデ辯護士ガ
裁判所ニ談判ニ行ッテモ、亦社會局長ヲ
訪問シテ見テモ、局長ノ言ハレルヤウ
二、法律ハ斯ウ云フ解釋デアル、斯ウ
ナッタ以上ニハ洵ニ勞働者ガ可哀想デ
ハナイカ、疾病ト云フ觀念ニ對シテモ
ウ少シ勞働者ニ同情シタ解釋ハ出來ナ
イカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913760X00519310317&spkNum=113
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114・吉田茂
○吉田政府委員 私ノ先程申シマシタ
狭イ意味ノ業務上ノコトニ付テモ、仕
事ニ從事中疾病ニ罹ッタトカ、或災害ニ
遇フタ場合ニ於テ、其保護ヲ厚クスル必
要ノアルコトハ當局モ認メテ居リマ
ス、此法ノ目的トシテ居ル所ハ業務上
ノサウ云フ疾病或ハ負傷ノ場合ニ、事
業主ノ全責任トシテソレヲ補償サセル
ノハ明カニ業務ノ爲ノ場合以外ニハ、
此法律ハソックリ其儘適用セラレナイ
ノデアリマス、是ダケヲ以テ屋外勞働
者ノ保護ガ完備スルモノトハ思ヲテ居
リマセヌガ、今マデハ是ダケノコトス
ラモ法律ニ依ル補償ノ途ガナカッタノ
デアリマスノデ、先ヅ一番必要ナ最小
限ノ扶助ノ原則ヲ此法律デ決メマシ
テ、尙ホ進ンデハ御話ノヤウナ業務外
ノ負傷疾病ト云フヤウナコトニマデ段
段ニ擴張致シ、治療ノ途ヲ擴張ヲ致シ
テ行キタイト考ヘテ居リマス、各種ノ社
會立法ヲスル上ニ付テ自ラ其間ニハ緩
急ノ差別ガアルノデ、玆ニ當局ガ今囘
規定シテ居ル所ノモノハ、最モ緊要捨
置キ難キモノトシテ之ヲヤルノデアリ
マス、是ダケデ尙ホ當局ハ十分トハ考
ヘマセヌデ、御話ノヤウナ場合ニ對シ
テ保險等ノ制度ガ最モ能クソレニ適合
スルコトヽ考ヘマシテ、陸上勞働者ニ
對シテモ業務上ノ事由ニ依ル災害ニ於
テハ、事業主ガ總テ負擔スルノデアリ
やっ、其他業務外ノモノニ付テモヤハ
リ段々法則ガ進ミツヽアリマス、番
遲レテ居ルノハ屋外勞働者ニ對スル保
護デアリマスガ、之ニ最モ緊切ナ保護
ヲ今囘ノ法律ニ依ッテ決メテ行カウト
云フノデ、決シテ御尋ノ如キ點ヲ放ッテ
置カウト云フノデハアリマセヌ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913760X00519310317&spkNum=114
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115・高見之通
○高見委員 社會局長ガ政府委員トシ
テ御說明ニナリマシタガ、ソレガ速記
錄ニ載ッテ居ル以上ハ、立法ノ趣旨ハ其
處ニアルノデセウト云フヤウナ言葉モ
アリマスケレドモ、遺憾ナガラソレニ
滿足出來ナイ、モット私ハ具體的ナ場合
ヲ出シマセウ、特ニ「マラリヤ」ニ例ヲ
取ッテ······最近伊太利デハ非常ニ灌漑
工事ヲヤッテ居ルガ、マダ羅馬ニハ最近
病氣ガ發生スル、ソレデ農夫共ハ高イ
山ニ家ヲ持ッテ居ッテ、朝カラ晩マデ其處
ニ生活シテ居ル、ソレデ仕事ヲスル時ニ
ハ非常ナ沼地デシナケレバナラヌ、其
處へ出レバ必ズ病氣ニナルト云フ所デ
アル、ソコデ最近「ムッソリニー」ノ農業
政策デ澤山金ヲ掛ケテ、サウ云フ病源
ヲ取ッテシマッタノデアルガ、今臺灣邊
リデハ「マラリヤ」ノ蚊ガ大變居ルト云
フノデ、仕事ヲスル者ハ其流行地帶カ
ラ三里モ四里モ電事ニ乘ッテ歸ルヤウ
ナ遠イ所ニ宿舍ヲ持ッテ居ル程デアリ
マスガ、午後ノ二時頃ニ仕事ヲヤッテ居
ルト、其工事場デ「マラリヤ」ノ蚊ニヤ
ラレルノデアル、宿舍デハ朝六時ニ出
テ危險地帶デ仕事ヲシテ午後六時ニ
陳pt.蚊帳ヲ釣ッテ有ユル設備ノ完全
ナ所ニ其勞働者ハ寢テ居ル、ソレダカ
ラ普通ノ常識カラ見テモ、醫學上ノ點
カラ見テモ、其「マラリヤ」ニハ罹ル筈
ガナイノダカ、其仕事ノ場所ハ土木工
事ノ非常ニ面倒ナ所デ、叢モモアリ沼
地モ多イノデ、其處ニハ「マラリヤ」ノ
蚊ガ澤山居テ喰ハレヽバ必ズ病氣ニナ
ル、其時ニ其「マラリヤ」ハ事業主ガ持ツ
テ來タノデモ、請負主ガ飼ッテ居ルモノ
デモナイ、ダカラ俺ハ知ラヌト云フコ
トハ、疾病ト云フ文字ヲ假ニ御入レニ
ナッテモ、東京邊リハマダ宜イガ、植民
地ト云フヤウナ方面ニハ斯ウ云フ場合
ガ非常ニ多イノデス、サウ云フ場合ニ
請負人ガ、ソレハ社會局長ガ出サヌデ
モ宜イト云フ解釋ニナッテ居ルカラ出
サヌトナッテ來ルト、折角產業保護助長
ノ爲ニ、其他社會政策ノ爲ニ御作リニ
ナッタ所ノ趣意ガ沒却サレルコトニナ
リマス、斯ノ如キ場合ガアッタトスレ
バ、ヤハリ疾病ト云フコトハ事業主ガ
或ハ瓦斯ヲ使フトカ、或ハ又硫酸ヲ使
フトカト云フヤウナ場合ニ於ケル疾病
ノミデアッテ、今申上ゲタ場合ハ疾病ノ
中ヘ入レル積リデアルカ入レナイ積リ
デアルカ、端的ニ聞イテ見タイ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913760X00519310317&spkNum=115
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116・吉田茂
○吉田政府委員 實例ヲ段々數多ク御
擧ゲニナリマスト、ソレハ業務上ノ疾
病トスベキモノト業務外ノ疾病トスベ
キモノトノ限界ニ觸レテ來ルト思ヒマ
ス、一番最初ニ御擧ゲニナリマシタ例
ノ如キ、濕地ノ中デ仕事ヲスル、必ズ
仕事ノ性質上濕地ニ降リテ働カナケレ
バナラヌト云フノデ、朝カラ晩マデ濕
氣ニ觸レテ居ル爲ニ「マラリヤ」ニ罹ル
コトモアリマス、サウ云フ場合ニハソ
レハ業務上ノ疾病ト申シテ差支ナイト
私共ハ思ヒマス、必ズシモ高壓ノ電氣
ヲ使用スルトカ、毒瓦斯ノ影響トカニ
限ル譯デハアリマセヌ、併シ臺灣ノ「マ
ラリヤ」ノ場合ハ今ノ場合程顯著デハ
ナイト思ヒマス、臺灣ヘ行ツテ其仕事
ニ關係スレバ「マラリヤ」ニナルケレド
モ、關係シナケレバ罹ラナインダト云
フコトガアルカドウカ私ハ知リマセヌ
ガ、濕地カラ來ル疾病トスルカドウカ
疑問デアルト思ヒマスガ、御參考ノ爲
ニ申上ゲテ置キマスガ、此法律ハ植民
地ニハ適用シナイノデアリマス、樺太
ニハヤハリ扶助ニ關スル規定ハアリマ
スガ、ソレハ內地ノ法律ガ適用サレテ
ハ居リマセヌ、臺灣·朝鮮等ニモ此法律
ヲ適用スルコトハ臺灣朝鮮ノ現在ノ
狀況カラ考ヘマシテモ適當デナイト思
ヒマシテ適用致シマセヌ、業務上ノ疾病
デアルカ否カヲ區分スルノハムヅカシ
イト思ヒマスガ、例ヘバ濕地デナクトモ
仕事ヲスル場所ニ何カ皮膚カラ入ッテ來
ル蟲ガ居ル、其處デ仕事ヲスル者ハドウシ
テモ蟲ノ襲擊ヲ受ケル惧レガアル、其處
デ土工ニ從事シタ爲ニ其病氣ニ取ヲ付カ
レルト云フコトデアレバ、業務上ノ疾
病ト云ヘルト思フ、直接仕事ニ從事シ
タコトニ依ッテ、其仕事カラ來ル病氣ヲ
業務上ノ疾病ト云フノデアリマス、其
外仕事ニ從事シテ居ッテ、其機會ニ間接
ノ他ノ原因ニ依ッテ病氣ニナル、例ヘバ
風ヲ引キマストカ或ハ冷エタ爲ニ下痢
ヲシタトカ、サウ云フノハ仕事ニ直接
原因シタト申セマセヌ、業務上ノ疾病
ト申シテ居リマセヌ、是等ノ場合ハ資
力ノ薄イ勞働者デアリマスカラ、ソレ
ニ對スル保護ノ法制ヲ立テルコトハ勿
論必要デアリマスケレドモ、ソレハ別ノ
法制ヲ立ツベキモノデ、此扶助責任ト
云フ範圍デヤルベキデハナカラウト考
ヘテ居リマス、先程私ガ例トシテ申上
ゲマシタ瓦斯中毒ナドヽ云フダケニ限
ル積リデハアリマセヌ、例トシテ擧ゲ
ラレタ御趣旨ノヤウニ關係ガ直接デゴ
ザイマスレバ入リマス、入ル入ラヌト
云フコトハ其事業ノ實際ニ行ハレテ居
ル狀態如何ニ依ルコトデアリマス、私
ノ擧ゲタ例以外ニモ入ル場合モアリマ
ス、多分例トシテ御ゲニナリマシタノ
モ、直接其原因ガ業務ニアルト云フ場
合ハ入レルノカ入レナイノカト云フ御
趣意デアルト思ヒマス、直接其業務ニ
原因ガアルト云フ場合ハ入レルノデア
リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913760X00519310317&spkNum=116
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117・高見之通
○高見委員 サウシマストモウ一應念
ヲ押シテ置キタイガ、第二條ノ是ハ問
題ノ中ノ負傷トカ死亡トカ云フコトハ
明瞭ニアリマスガ、此問題ノ中ノ疾病ト
云フコトガ將來一番爭ノ種ニナルダラ
ウト思ヒマスガ、サウスルト勅令ナド
ニ於キマシテ、疾病ノ種類等ニ付テハ
相當明確ナ規定ヲサレル積リデアリマ
スカ、只今承ル所ニ依レバ何トナク其
邊ハ個々ノ場合ニ委セルヤウナ、寧口
之ヲ裁判ノ判決例カ何カニ俟タントス
ルヤウナ御言葉ノヤウニモ見エルガ、
勅令ノ定ムル所ニ依ルト云フト、何カ
勅令ニ基イテ疾病ニ關スル所ノ特別ナ
標準ナリ、基準ナリト云フモノヲ御出
シニナル積リデアルカ、此中デ一番議
論ニナッテ、將來裁判ノ議論ニナル所
ハ、業務上疾病ニ罹ルト云フ文字ガ非
常ニムヅカシイ一ツノ判例ガ付クヤウ
ニナッテ來ルカ知レマセヌガ、ソレニ對
シテ何カ豫メ一定ノ基準ヲ以テヤラレ
ル積リデアルカ、モウ一遍聞イテ置キ
タイト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913760X00519310317&spkNum=117
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118・吉田茂
○吉田政府委員 此問題ハ今日始ッタ
コトデハゴザイマセヌ、工場、鑛山等
ニ於キマシテ從前カラ扶助ノ規定ガゴ
ザイマス、其場合モ業務上デアルカ、
業務外デアルカ、鑑別スル必要ガ常ニ
アッタ譯デゴザイマス、地方廳等カラマ
デ問合セガ參ヲテ居リマスガ、只今マデ
ハ打合セ會議デアルトカ、役所ノ通牒
等デ此基準ヲ示シテ參ヲテ居リマス、從
來ノ扶助ノ關係デハ勅令デ明カニ定メ
タト云フコトハナイノデアリマスガ
無論御質問ノ通リ標準ガ明カデアルニ
越シタコトハナイノデアリマスカラ
今囘ハ適當ナ標準ヲ定メ得ルナラバ、
命令ノ規定ノ中ニ定メタナラバ宜イカ
ト思ッテ居リマス、抽象的ニ條文ヲ書キ
マシテ總テ一々ノ場合ニ於ケル懸念ヲ
一掃スルト云フ譯ニハ行カナイノデア
リマス、其邊ハ餘程考慮致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913760X00519310317&spkNum=118
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119・高見之通
○高見委員 ソレカラモウ一ツ聞イテ
置キタイト思ヒマスノハ、第一條ニ直
營工事トアリマスガ、公共團體ノ直營
工事ト云フノハ請負工事ト違フノデス
カ、直營工事ノ說明ヲシテ貰ヒタイト
思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913760X00519310317&spkNum=119
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120・吉田茂
○吉田政府委員 直營工事ト申シマス
ノハ、丁度請負工事ノ裏デアリマス、
東京市ノヤウナ大キナ公共團體トカ、
或ハ瓦斯會社ト云フヤウナ大キナモノ
ガ自分デ仕事ヲスル場合デアリマス、
請負人ニヤラセズニ、サウ云フ所ニハ
仕事ニ關スル機關ヲ持ヲテ居リマス、技
師モ居リマスレバ、監督モ居リマスレ
バ、職人モ居リマス、職人ノ居ラナイ
場合ハ人夫供給業者カラ供給ヲ受ケテ
仕事ヲスル場合モアリマス、是ハ單ニ
人夫ノ供給ヲ受ケルダケデ、事業ハ會
社ガ自分ノ仕事トシテアルノデアリマ
ス、請負人ニ出サズ瓦斯會社ナドハ仕
事ヲシテ居リマス、請負人ニ出サズ仕
事ヲスル場合ニハ其公共〓體ナリ、其
事業會社ナリガ其扶助責任ヲ果ス、サ
ウシテソレ等ノ〓體ナリ會社ナリハ資
力ニ於テモ勞働者ヲ扶助スル位ノコト
ハ十分出來ル資力ヲ持ッテ居リマスカ
ラ、是ハ事業ノ規模ニ關スル制限ヲ繼
續シテ行ハレルモノニ付テハ置イテナ
イノデアリマス、ソレカラ請負工事ノ
場合ニハソレト違ヒマシテ、一ツノ
ノ單獨ニソレ等ノ會社デモ仕事ヲスル
場合請負ニ出スコトモアリマス、例
バ東京市役所カラ請負ニ出スコトガア
リマス、請負ニ出サレルト市役所ハ註
文竝ニナリマス、事業主體ハ註文ヲ取ツ
タ請負人ニナル、是ハ請負入札トカ指
名入札トカソレ〓〓入札ニ依ッテ取ッテ
居リマスガ、其仕事ヲ落シタ請負者ガ
扶助ノ責任者ニナッテ居リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913760X00519310317&spkNum=120
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121・高見之通
○高見委員 サウスルト例ヘバ水力電
氣ノ會社ガ一括シテ此仕事ヲ某々會社
ニ請負ハセルト云フノガ請負デアッテ
自分ノ會社ガ仕事ヲヤッテ部分々々ヲ
小サク請負ハセルト云フコトモ一ツノ
直營工事ト見ルノデアルカ、其區別ヲ
ハッキリシテ置キタイト思ヒマス、例へ
バ全體的ニ一人ノ人ニ請負ハセル、水
力電氣ノ土木工事一切ヲ大體ニ於テ請
負ハセル、ソレガ五百萬、三百萬、其
下ニ又五十萬、三十萬トカ云フノガ請
負工事デアル、其他指名入札トカ或ハ
小サク分ケテヤルトカ云フヤウナモノ
ヲ皆直營工事ト解釋サレマスカドウデ
スカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913760X00519310317&spkNum=121
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122・吉田茂
○吉田政府委員 大キイ仕事デセウ
ガ、小サイ仕事デセウガ、會社ノ手デ自
ラ事業ヲヤルノデアリマセズシテ、他
人ニ請負ハシテヤルノハドッチモ請負
工事デアリマシテ、十萬圓、二十萬圓
ト云フ大キナ工事ヲ請負ハセルト云フ
ノハ請負工事デアルコトハ勿論デアリ
マス、四百圓、五百圓ノ請負デモ請負
ニ出シタ仕事ハ事業ノ規模ニ依ッテキ
マッテ來ルノデアリマス、電氣會社ガ自
分ノ事業ノ爲ニ直營デ仕事ヲスルト云
フ場合ガ此場合デアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913760X00519310317&spkNum=122
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123・高見之通
○高見委員 此際一ツ私ハ局長ナリ政
府ノ御考ヲ聞イテ置キタイノデアリマ
スガ、今日モ勞働組合法ガ上程ニナッテ
居リマスガ、遂ニ內務大臣モ十分ナル
說明ヲサレナカッタ、勞働團體契約權ニ
關シテハ、ドウ考ヘテ居ルカト云フ點
ニ對シテモ、今サウ云フコトハ規定ス
ル考ガナイ、斯ウ云フヤウナ御話ガア
リマシタ、私ハ團體契約ト云フモノハ
大變我國ノヤウナ場所ニハ非常ニ必要
ナ仕事デハナイカ、殊ニ疾病ダトカ、
其他今日ノヤウナ溫情主義デ出發シテ
居ル請負者間ノ關係ナドヲ法律ニ規定
サレル場合ニ當ッテ、團體契約ト云フモ
ノヲ一ツ認メルカドウデアルカ、或ル
勞働者ト或ル請負ノ人ノ間ニ一種ノ組
合ノヤウナモノヲ作ッテ、ソコニ兩者ガ
相寄ッテ勞働賃銀トカ疾病ノ場合ヲキ
メルトカ云フヤウナコトヲ法律デキメ
ル、詰リ團體契約デアリマス、伊太利
アタリノ、是ハズット以前ニ英吉利ノヤ
ウナ「ツレード·アクト」自然々々ニ進
ンデ來タト云フヤウナモノヲ手本ニシ
タリシ、日本ハ寧ロドッチカト云フト
是カラ新シイ法律ヲ採用シテ行クト云
フノデアリマシテ、今ノ勞働組合法モ
果シテ今期議會ニ貴族院ヲ通過スルカ
セヌカ、是ハ政府トシテハ違フ御考デ
アリマセウガ、私ハドウカト存ジマス、
又此法案モ政府ノ御考ハ、滿場一致絕
對多數ヲ以テ貴族院マデ通過サセルト
云フ御考デアリマセウガ、何分會期ガ
切迫シテ居リマスカラ、ドウカ分ラナ
イソコデ立法的ノ議論デアリマスル
ガ、此機會ニ於テ團體契約-東京ア
タリノ土木組合ナラ土木組合ガアッテ、
又一方土木ニ關係スル勞働者-或ル
一種ノ土木勞働者、或ハ左官勞働者ノ
一ツノ組合ノヤウナモノヲ作レバ、其
組合ト組合トガ法律ノ保護ノ下ニ團體
契約ヲ締結シテ、其契約ニ基キマシテ
兩方カラ委員ガ出テ來テ、或ハ勞働賃
銀トカ、或ハ時間トカ、又其仕事ノ特
殊ノ場合例ヘバ今申上ゲタヤウナモノ
デ、此法律ハ溫情的デナイ、私ハ幾ラ
カ疑ヲ以テ見テ、ドウモ是ハ金持保護
ノ傾ガアルヤウニ思ヒマス、第一條ノ
其他ノ工事ニシテ勅令ノ定ムルト云フ
ノヲ見ルト云フト、一千萬圓、二千萬
圓、三千萬圓ト云フ大キナ金持ガ、小
サイ仕事ヲ請負フ時ニハ、親先祖代々
カラ世話ニナッテ居ル勞働者ニハ、此扶
助法ハ適用セズシテ、何デモ宜イ、兎
ニ角一萬圓ト千人ノ延人員サヘアレ
づ、其仕事ニ出掛ケテ行クト云フヤウ
ナ法律ハ、或意味ニ於テ金持ヲ助ケル
モノデナイカ、サウシテ溫情主義ヲ破
ルヤウナモノデナイカト云フ疑ガア
ル、サウ云フモノハ個人ニ勝手ニヤラ
セルト云フヨリモ、モウ一步進ンデ團
體權ヲ認メテヤルト云フト今日伊
太利アタリハ勞働爭議ハ非常ニ數ガ少
クナッテ居リマス、又ソレニ關スル色々
ノ設備準備モ非常ニ進ンデ居ル、鑛山
ノ地獄部屋トカ何トカ云フ鑛山業者
ト、普通ノ紡績會社トカ、或ハ肥料會
社ト云フ所デ勞働者、又ハ製絲會社デ
モ、燕カ何カノヤウニ、冬來テ夏去ル
ト云フモノヲ相手ニスル、サウ云フ所
ノモノハ物本位デ行キ、物質本位デ行
クサウシタモノカラ出發シテ行ク、
其處ニ衞生、經濟、總テヲ行フテ行クト
云フコトハ、是ハ非常ニ理窟ガアル、
ケレドモ土木ノ請負トカ、大工ノ請負
トカ云フヤウナモノハ、日本ニハ寧ロ
國粹ノ氣風ガ或程度アッテ、彼等ガ主張
シテ居ルヤウニ、親方乾兒ノ關係ガ密
接デアリマス、私ハ伊太利ノ團體契約
ヲ讀ンダガ、彼等ノ團體契約ハ各條
項ニ記載セル所ニ依レバ、是ハ國家ノ
爲メ斯ウ云フ法律ヲ作ルノデアル、是
ハ愛國心ニ依ッテノミ此法律ガ生キテ
來ル、是ハ忠誠ノ念ヲ持ツ伊太利ト云
フモノ、產業ヲ眞ニ保護シヤウト云フ
愛國至誠ノ信念ト云フモノガ、土臺ニ
ナッテ、此法律ガ生キルノデアルト云フ
コトヲ各所ニ書イテアリマス、是ハ無
論長官ナゾハ百モ二百モ御承知デアリ
マセウガ、私ハ此伊太利ノ團體契約ノ
法文、是ハ眞ニ伊太利ノ建國ヲ思ヒ、
伊太利ノ國ヲ何處迄モ繁榮セシメ、其
伊太利ノ建國ニ忠實ニシテ、忠誠ナル
信念ニ依ッテノミ此法律ハ維持サレ、又
此法律ヲ實行シヤウト云フ所ノ各部分
部分ノ人間モ、其積リデヤッテ行カナ
ケレバナラヌト云フコトヲ主張シテ居
リマス、然ルニ最近「ハイカラ」學者共
ハ多少「インターナシヨナル」ノ思想
ニカブレテ、又非常ニ唯心論カラ唯物
的ニ徹底シタ所ノコッパ學者共ガサウ
云フ文字ヲ使フト、何トナク時代ニ遲
V、今日ノ工場勞働トカ、或ハ工場法
ト非常ニ遲レタモノデアルカノ如キ解
釋ヲシテ何處迄モ唯物的ニ進ムト云フ
コトヲ以テ目的トシテ居ルヤウナ傾ガ
アルケレドモ、ソレハ今ノヤウナ精神
ハ駄目デアル、古河市兵衞ハドウ云フ
顏ヲシテ居ルカ、住友ト云フ爺ハドウ
云フ顏ヲシテ居ルカ何モ知ラナイ、
ツノ「カンパニー」一ツノ勞働者、サウ
シテ賃銀ト云フ、三角關係ニアルヤウ
ナ鑛山勞働者-多クノ製造工場ナゾ
ノ勞働者ニ對スル法律、ソレハ宜イケ
レドモ幸ニ日本アタリハ溫情ノ精神
デ、寧ロ普通一般ノ社會組織ヨリモ、
眞ノ國粹ハ此處ニアルト彼等ハ主張シ
テ居ル、土木ヤ大工ノ親方乾兒ト云フ
此氣風ガ、丁度伊太利ノ非常ニ復興的
ノ、寧ロ或意味ニ於テ反動的デアルガ、
ソレハ何ゾ知ラン法律ヲ實行セラレ
テ、ソレガ非常ニ成績ヲ擧ゲテ、伊太
利ノ町ニ於テハ-羅馬ノ町デハ爭議
ナゾハ殆ド少イ、サウシテ斯ウ云フコ
トハ要ラヌコトヲ申上ゲルヤウデアリ
マスガ、過般私ハ貧乏代議士デアリマ
スガ「タクシー」ニ乘ッテ自宅ニ歸リマ
シタガ、其「タクシーノノ運轉手ガ言フ
二、アナタ方ガ議場デ色々言ウテ居
リマスガ、少シ東京ノ新宿ヤ隅田川ノ
邊リニ行ッテ御覽ナサイ、此寒天ニ著ル
物モナク、寢ル物モナク寢テ居ル者ガ
非常ニ澤山アル、之ヲアナタ方ハ少シ
モ救フト云フコトヲ御存ジナイ、五十
錢ナリ七十錢ナリデ圓「タク」ニ乘ヲテ
御歸リニナル堂々タル代議士樣、是ガ
實際ノ今日ノ狀態デアリマス、斯ウ申
シテ居リマシタガ、所ガ伊太利ハサウ
云フ貧乏人ヲ運レテ來テ-私ハ一軒
一軒ノ狀態ヲ見マシタガ、羅馬ノ町カ
ラハ、サウ云フヤウナ野天ヤ寒天ニ倒
レテ居ル者ハ、殆ド一掃シテ居ルヤウ
ナ狀態デアリマス、サウシテ彼等ハ上
ト下ト一致シナケレバナラヌ、眞ニ伊
太利ノ國ヲ思フ、愛國的ノ法律デアル
トカ、此法律ヲ實行セントスル各「メ
ンバー」ハ、愛國的信念ニ依ッテノミ此
法律ガ實行サレルト云フコトヲ、法文
中ニ現ハシテ居リマス、是ハ惡ク言ヘ
バ反動的思想デアリマスガ、併シ一ツ
ノ伊太利ノ尊重スベキ潮流デナイカ、
此勞働團體契約法ト云フヤウナ、尊重
スベキ此潮流ガ、幸ナルカナ日本ノ土
木、日本ノ建築屋ト云フガ如キ、日本
ノ大和魂、所謂主人ノ爲ニハ命ヲ捨テ
ルト云フ所ノ、溫情ニ滿々タル此團體
ニ之ヲ持ッテ來テ、サウシテ團體契約ト
云フモノデ寧ロ縛ヲテ紛議ヲ一掃シ、サ
ウシテ團體ト團體トノ間ノ基準ヲ法律
的ニ示シテ、兩者ノ感情ヲ渾然一致シ
タ方法デ行クト云フコトノ考ヲ以テ、
勞働組合法モ其處マデニハ出來テ居ラ
ヌガ、將來アナタハ絕エズ立法ノ原稿
ヲ御書キニナルノデアリマスカラ、勿
論此法律ガ旨ク兩院ヲ通過スレバ御目
出タイ話デアリマスガ、更ニ考慮ヲ費
スト云フ場合ニ於テ、サウ云フ御考ハ
ナイカドウカ、ソレヲ一ツ私ハ聽イテ
見タイト思ヒマス、サウシテ若シ勞働
組合法ノヤウナモノデモ、亦別ニ新タ
ニ〓體契約法トシテ、勞働組合法トソ
レカラ勞働扶助法案ト云フ、全ク別個
ノ種類ニ屬スルモノヲ、一括シテ團體
契約法ト云フモノヲ新タニ法律デ出ス
ノモ一ツノ方法デアリマス、要スルニ
勞働者、事業主、雇傭主、ソレカラ勞
働者ト云フモノヽ上ニ、何處マデモ溫
情的ニ涙アル法律ヲ拵ヘテ行クト云フ
ヤウニ唯物的信念カラ出ズシテ、唯心
的ノ法律ヲ、勞働問題ニ付テ作ル、サ
ウ云フヤウナ御考ハナイカ、今日ノ思
想問題ニ付テ伊太利ノ惡戰奮鬪ヲ審カ
ニ吾々ガ見タ時、其法律ガ今現ニ生キ
テ、サウシテ最新ノ而モ二三年以前ノ
法律トシテ其法律ガ執行サレテ、其理
想ノ上ニ進ンデ居ルノデアルカラ、如
何デセウカ、幸ヒ斯ウ云フ日本ノ國粹
ノ親分子分ガ非常ニ溫情的ニ出來上ツ
テ居ル關係ヲ、法律ノ上ニ加味スルヤ
ウナ考ヲ以テ進ンデ貰フ譯ニ行カヌカ
ドウカ、只今疾病ト云フ文字、或ハ第
三號ニ關スル所ノ物質本位カラ物ヲ觀
タ所ノ規定、サウシテ人ト人トノ關係
ノ規定ガ何トナク分レテ居ルヤウナ氣
持モアルノデアリマスカラ、溫情的ノ
法律ト云フモノヲ、溫情的ノ規定ヲ場
合ニ依ッテハマダ一箇條加ヘルトカ、兎
ニ角溫情的觀念ニ出發スルコトガ出來
ナイカト云フコトヲ聞イテ見タイノデ
アリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913760X00519310317&spkNum=123
-
124・吉田茂
○吉田政府委員 御話ノ團體協約ノコ
トニ付キマシテハ、是ハ勞働組合法ノ
審議ニ當リマシテ、內務大臣カラモ私
カラモ其委員會ニ能ク申上ゲテアッタ
積リデアリマスルガ、決シテ當局ハ團
體協約ト云フモノヲ否認スル考ヲ持ツ
テ居リマセヌ、現在ニ於キマシテモ例
ヘバ海員ノ勞働組合等ノ如キハ、賃銀
ヲ船主トノ間ニ團體協約ニ依ッテ定メ
テ居ルト云フコトハ、御承知ノ通リデ
アリマス、最近不況ニナリマシタ爲ニ、
雙方ノ協定ニ依リマシテ最低賃銀ノ切
下ヲ團體協約ニ依ッテ致シテ居リマス、
斯ノ如キハ事業主ト勞働者トノ間ノ關
係ヲ御話ノ通リニ極メテ圓滿ニ解決ヲ
スル、其運用ヲ又事業主ト勞働者ノ協
調ニ依リマシテ圓滑ニヤッテ行クト云
フ上ニ非常ニ結構ナヤリ方ト思ヒマ
ス、現在我國ニ於キマシテ團體協約ガ
結バレテ居リマス以上、工場等ニ於キ
マシテハ十數箇所ハモウ出來ツヽアリ
マス漸次殖エルト思ヒマス、是等ニ
對シマシテハヤハリ據ルベキ法制ノ基
礎ヲ與ヘルト云フコトガ最モ望マシイ
コトヽ考ヘルノデアリマスガ、團體協
約ヲ法律ニ於キマシテ基礎ヲ與ヘルト
云フコトニナリマスト云フト、隨分ム
ヅカシイ此法制上ノ技術的ノ問題ガ非
常ニ澤山起ッテ來ルノデアリマス、其團
體協約ト云フノハ、個人ノ雇傭契約ト
ドウ云フ關係ニ立タセルカ、個人契約
ニアッテハ團體協約ノ行ハレタ場合ニ
於テ、個人契約ハ此團體協約ニ優先サ
レテシマフコトハ勿論デアリマスガ、
全然個人契約ヲ認メナイ譯ニ參リマセ
ヌ、ドウ云フ效力ヲ團體協約ニ與ヘル
カ、ドウ云フ形式デ團體協約ヲ結バセ
ル必要ガアルカ、又〓體協約ノ當事者
ト云フモノニ付テハ如何ナル規定ヲ要
スルカト云フコトハ、申セバ法制上ノ
非常ニ精密ナ〓究ヲ要スルノデアリマ
ス、私共成ベク速ニ團體協約ニ關スル
法制ヲ確立シタイト云フ考ヲ以テ別途
ニ〓究ヲ進メテ居リマス、成ベク速ニ
ソレヲ致シタイト思ッテ居リマス
今囘勞働組合法ノ中ニソレヲ入レマ
セヌデシタコトハ、勞働組合法ノ中ニ
タッタ一箇條勞働協約ニ關スル規定ヲ
入レテ置キマシテモ、非常ニアトニ疑
問ガ殘ルダラウト思ヒマス、却テ紛清
ヲ來シハシナイカ、
組合ニ關スル法制ニ關スルコトヲ主ニ
致シマシテ、團體協約ニ付キマシテハ
別ニ團體協約法ト云フヤウナモノデ、
完全ニ整備シテ出スコトガ必要デアラ
ウ、斯ウ考ヘテ只今調査ヲ進行シテ居
ルノデアリマス、成ベク早ク脫稿致シ
タイ積リデヤッテ居リマス
其問題ト屋外勞働者ト引括メマシテ
只今色々御話ニナリマシタガ、非常ニ
結構ナ御著眼デアルト考ヘマス、併シ
屋外勞働者ハ御承知ノ通リニ其業態ガ
必ズシモ一致シテ居リマセヌシ、又利
害關係ノ上カラ申シマシテモ、一ツノ
工場デ引續イテ勤メルト云フヤウナ事
業單位ト云フモノガ永久的ニキマッテ
居リマセヌカラ、中々組合ヲ拵ヘ惡イ
ノデアリマス、一部分々々々ニ付テハ
ナイコトモアリマセヌ、例ヘバ市ノ電
氣局ノ從業員ノ組合デアリマストカ、
市ノ水道局ノ從業員ノ組合ダトカ云フ
ノニ稍〓永續的ニ一ツノ雇ハレテ居ル
者ノ組合モ出來マスガ、ソレ等ノ組合
ノ現狀ハ甚ダ滿足ト云フノニハマダ遠
イト思ヒマス、ドチラカト申セバ協調
的ニ働クコトガ非常ニ多イヤウニ私共
感ジテ居リマス、御話ノヤウニ東京ナラ
東京ノ土工組合デアルトカ、東京ノ大
工組合ト云フヤウナモノヲ一ツノ纒ッタ
組合ニ之ヲ結成致シマシテ、サウシテ
勞働組合法ハ勞働ソレニ對シテ東京ノ請負業者ト云フモ
ノヲ、又一ツ纒ッタ組織ニ是ハ出來テ居
リマスガ、其間ニ東京ノ屋外勞働者ノ
團體協約ヲ結ブト云フヤウナコトハ、
マダ〓〓一々ノ團體協約ハ中々ムヅカ
シイノデアリマスカラソコマデニ大
分距離ガアルト思ヒマスガ、海員等ハ
是ハ業態ガ利害關係ガ一致シテ居リマ
スシ、元カラ海員組合等ハ纏リノ宜イ
組合デアリマスカラ、アヽ云フ風ニ旨
ク協調的ニ仕事ガ運ンデ居ルノデアリ
やく、屋外勞働者ハ最モ纒リ惡イ所ノ
代表的ノモノト思ッテ居リマス、ト云。ツ
テ決シテ望ミヲ捨テル譯デハアリマセ
ヌガ、實地ニ之ヲ纒メテ行カウト云フ
コトハ隨分ムヅカシイト思ヒマス
尙ホ又伊太利ノ立法ノ例ヲ御話デア
リマシタガ、是ハ私共モ伊太利ノ最近
ノ立法ハ非常ニ特色ヲ持ッテ居ルト思ツ
テ居リマス、其中ノ或部分ノ行キ方ユ
付キマシテハ吾々日本國民ノ考、又日
本ニ近イ所モアルト思ヒマスガ、一々
我國ノ立法ニ於キマシテ伊太利ノ組合
法其他勞働法制ニアリマスルヤウナ國
家ニ對スル忠誠ノ念ト云フヤウナコト
ヲ、一々書イテ置クト云フコトハドウ
デアラウカト思ヒマスルガ、併シア
云フ行キ方ト云フモノモ吾々ハ勞働立
法ヲスル上ニ於テハ他山ノ石トシテ大
ニ參考ニスル値打ガアルト思ヒマス、
我國ニ於キマシテハ伊太利ノ如ク、殊
更ラシク日本國民トシテ忠誠ノ念ニ
依ッテ此法律ヲ運用スルノダト云フヤ
ウナコトヲ、今日ノ色々ナ立法ノ中ニ
於テ入レル必要ハ私ハナイト思フノデ
アリマス、伊太利デハ特ニ必要ガ强カ
ラウカト思フノデアリマス、其邊ハ違
ヒモアルコトデアリマスケレドモ、其
精神トスル所ハ、ソレハ大ニ吾々モ參
考ニシテ宜シイト考ヘテ居リマス、〓
體協約ノコトニ關シマシテハ只今申上
ゲマシタヤウニ、出來ルダケ速ニ其方
面ノ法制ヲ整備シタイト云フ積リデ調
査ヲ進メテ居ル次第デアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913760X00519310317&spkNum=124
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125・高見之通
○高見委員 ソレニ對シテ念ヲ押シテ
置ク、御話ハ能ク分リマシタ、御意思
ノアル所ハ能ク分ッタ、併シ如何デスカ
私ガ今申上ゲタヤウナ溫情主義、情化
ト云ッテハオカシイガ勞働者ト雇傭主
ガ精神的ニ結合シテ行ク主義、サウシ
テソレハ日本ノ國民ノ思想ニピッタリ
合ッテ居ル所ノ主義、サウシテサウ云フ
ヤウナ意味ヲ以テ、サウシテ今御〓究
中デアルト云フガ、今日ノ社會思想ノ
變化ノ激シイトキニ向ッテ、多少反動的
ト申シマスルカ、其思想ノ上ニ出發シ
テサウシテ兩者ノ融合統一ヲ圖ルト
云フヤウナ意味ノ下ニ、殊ニ伊太利ナ
ドノ話ヲ聞クト云フト非常ニ若イ勞働
大臣、其下ニ於ケル祕書官ナドノヤウ
ナ人モ殆ド晝夜奮闘シテ、其救濟ニ向ツ
テ國民ノ爲ニ努力シテ居リマスカラ、
アナタモ若イシ、健康デ非常ニ御勉强
家デアリマスカラ、如何デスカ、サウ
云フ信念ノ上ニ立ヲテ來ルベキ暮ノ議
會ニ自ラ御出シニナルヤウナ考ハナイ
カ、今日ノ激烈ナル世相ニ御考ヘニナ
リ、又內外ノ國情ヲ御覽ニナリ、又日
本帝國ノ國民ノ從來ノ善キ美風ヲ何處
迄モ助長サセルト云フコトノ上ニ於テ
此法律ガ出レバ尙ホ一層-サウ云フ
ヤウナモノヲ本年ノ暮ニデモ出スヤウ
ナ考ハアルカナイカト云フコトヲ一寸
聞イテ見タイ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913760X00519310317&spkNum=125
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126・吉田茂
○吉田政府委員 成程御話ニ依リマシ
テ、私ノ御答漏レノアッタコトヲ悟リマ
シタ、此社會立法、詰リ其他ノ法令ノ
起草ニ當ッテ唯物的デナシニ、モウ少シ
道義方面カラノ考ヲ主トシテ出發シタ
ラドウカト云フ御氣付デゴザイマス、
是ハ實際ノ立法ヲ致シマスル上ニ於キ
マシテハヤハリ中庸ヲ得ネバナリマ
セヌノデ、無論社會ノ良風美俗ヲ維持
スルコトヲ常ニ念頭カラ離レテハナラ
ヌト考ヘテ居リマス、ト同時ニ物質的
方面ニ於ケル規定モ亦必要デアル、多
クノ社會立法、殊ニ斯ウ云フ給與ニ關
スル規定ガ、物質ノ方面ニ重キヲ置ク
コトハ性質上已ムヲ得ナイト思ヒマ
ス、唯ソレヲ規定スル上ニ付キマシテ、
私共ノ持ッテ居ル心持ノ上ニ於テ、社會
ノ良風美俗ヲ忘レナイト云フコトデ立
法ヲシテ、過ヲ少クスルコトガ出來ル
ト思ヒマス、是ハ立法ノ上ノミナラズ、
法律ノ運用ニ於キマシテモサウ云フ考
ヲ持ッテ居ラネバナラヌト思ヒマス、勞
働組合法ニ致シマシテモ、ヤハリアノ
法律ヲ運用シテ行キマス上ニ於キマシ
テハ、勞資ノ協調、勞資一體トナッテ、
互ニ相助ケ合ッテ、產業ノ發展ヲ圖ッテ
行クト云フコトヲ念ト致シマシテ、ア
ノ法律ノ運用ニ當ラナケレバナリマセ
ヌ、アノ法律ヲ運用スルノニ、勞資ノ
闘爭ヲ念トシテ運用スルノト、只今申
上ゲマシタ趣旨デ運用スルノトデハ、
同ジ法律ノ運用デアッテモ非常ニ結果
ガ違ヒマス、多クノ社會立法ガ給與、
救貧、防貧ノ制度ニ觸レテ居ル以上ハ
其規定ダケヲ見マスト、常ニ物質的ニ
傾キ過ギテ居ルト云フ御感想ガアリマ
セウケレドモ、私共ト致シマシテハ、
立法ヲスル心持ト致シマシテハイツ
デモ我ガ國ノ良風美俗ヲ頭ノ中ニ置
キ、勞資ノ協調、貧富ノ間ノ美シイ情
誼ニ依ル解決ト云フコトヲ念頭ニ置キ
マシテ、ソレ等ノ立法ニ當ル必要ガア
ラウト思ヒマス、ト言ッテ單純ナ道德的
規定ノミデハ、社會政策ノ實ヲ擧ゲル
コトガ出來ナイ、ソコニハドウシテモ
物質的ノ規定ガ必要デアルト思ヒマ
ス、私共トシテ心掛クベキコトハ、兩
方面ノ事ヲ常ニ忘レズニ、正シキヲ得
テ行クヤウニ心掛ケル點ニアルト思ヒ
やじ、御質問ノ趣旨ハ能ク諒承致シマ
シタ
尙ホ協約法ニ付テ、此次ノ議會ニ提
案スル意思アリヤ否ヤト云フ御尋デア
リマスガ、是ハ旣ニ勞働組合法ノ制定
ニ掛リマシテ以來、協約法ニ關スル審
議ヲズット進メテ居リマスガ、、何分問題
ガムヅカシイシ、又私共ノ役所ノ詰
リ社會政策ノ見地カラ一番ノ重點デア
リマスガ、是ハ司法省方面ノ民事的ノ
法令ガ非常ニ大部分ヲ占メルノデアリ
マス、丁度小作法制ト似タ意味デ、司
法省方面ノ〓究ガ非常ニ面倒デアリマ
ス、ソレニ前ニ團體協約ニ付テ司法省
デ〓究サレタヤウニ承ッテ居リマシテ、
司法省デ〓究資料ヲ集メラレテ居ルト
思ヒマス、可ナリムヅカシイ法制デア
ルノデ、ハッキリ次ノ議會ニ提案スルマ
デノ準備ガ整ヒマスカ、ドウモ明確ニ
御答致シ兼ネマスガ出來ルダケ、調査
ヲ終リマシテ成案ヲ得タイト勉强シテ
居リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913760X00519310317&spkNum=126
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127・高見之通
○高見委員 次ニ第三條ノ三項デアリ
マスガ、私モ此三項ハ勞働者本位ノ三
項デナイデハナイガ、ドチラカト云ヘ
バ、金持ヲ助ケル法條ノヤウニ考ヘテ
居ル、此法條ハ寧ロ有害無益デアルカ
ノ如ク考ヘマス、先程原君カラモ詳細
ナル質問モアリマシタガ一寸聽イテ
置キタイノハ「下請負人ガ破產ノ宣告
ヲ受ケ又ハ其ノ行方ガ知レザルトキハ
此ノ限ニ在ラズ」斯ウ云フ但書ガアリ
マスガ、此但書ハ、催告スベキ旨ヲ元
請負人ガ下請負人ニ請求スルコトガ出
來ルケレドモ、若シ下請負人ガ破產ノ
宣告ヲ受ケテ居ル、若クハ行方ガ分ラ
ヌ時ニハ、敢テ催告ノ必要ハナイト云
フ意味デアリマスカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913760X00519310317&spkNum=127
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128・吉田茂
○吉田政府委員 其通リデアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913760X00519310317&spkNum=128
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129・高見之通
○高見委員 是ハ一ツハ勞働者ノ問題
デアリ一ツハ請負人ノ問題デアリマス
カラ、裁判上ドレ程ノ實例ガ現ハレル
カ分ラナイガ、行方ガ分ラヌト云フノ
ハ如何ナル標準デ云フノデアリマス
カ、事實上ニ於テ行方ガ分ラヌト解釋
スルノデアリマスカ、勞働者ガ見テ何
處ヘ行ッタカ分ラヌト云フノデアリマ
スカ、勞働者ダケ合點スレバ宜イノデ
スカ、例ヘバ私ハ朝鮮、臺灣ト云フ文
字ヲ止メマシテ、北海道ト致シマシテ、
北海道ニ元請人ガ居ッテ大キナ工場ヲ
持ッテ居ル、所ガ下請人ガ靑森ナリ秋田
ナリ仙臺カラヤッテ來テ病氣ニナッテ仕
事ヲ棄テヽ行ッテシマッタ、所デ元請人
ハ下請人ノ住所ヲ知ッテ居ル、東京神田
淡路町ニ行ケバ現ニ看板ヲ懸ケテ居
ル勞働者ノ方デハソレヲ探サナケレ
バナラヌト云フコトニナッテ、行方ガ分
ラヌト云フト、イヤ行方ハ分ッテ居ル、
札幌ノ或ル宿屋ニ下請人ガ泊ッテ居タ
ノダガ、仕事ガ濟ンデサッサト東京ニ逃
ゲテシマッタ、ソレバ勞働者ノ方デ宿屋
ニ聞イタガ何處ニ行ッタカ分ラナイソ
コデ元請人ニ向ッテ、行方不明ヂヤナイ
カト突込ンデ見ルト、元請人曰ク、神
田ノ淡路町ニ居ル、ソレデ其處ニ催告
狀ヲ出スト云フコトニナリマスガ、行
方ガ知レナイト云フコトハ、ドノ程度
ノモノデスカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913760X00519310317&spkNum=129
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130・吉田茂
○吉田政府委員 行方不明ト云フノハ
民法ニモ同ジ例外ガ規定シテアルト思
ヒマスガ、只今御例示ニナリマシタヤ
ウニ、行方ハ能ク分ッテ居ルノダケレド
モ、勞働者ガ知ラナカッタト云フノハ
行方不明ノ中ニ這入ラヌト思ヒマス、
左樣ナ場合ニハ元請人ガ行方ヲ知ラシ
テヤレバ直チニ明瞭スル譯デアリマ
ス、併シ事實ハ只今御例示ノヤウナ場
合モ、アリマセウケレドモ下請人ノ行
方所在等ニ付テハ勞働者ノ方ガ能ク承
知シテ居ルダラウト思ヒマス、下請人
ハ自分ヲ直接使ッタ申サバ親方ニ當ル、
一番緣ノ深イ人デアリマスカラ、其人
間ガ何處ニ居ルカト云フコトハ大抵分
ルト思ヒマス、ノミナラズ第二項ヲ御
覽ニナリマスレバ下請人ガ特ニ扶助ヲ
引受ケテ居ル契約ノハッキリシテ居ル
場合ニ三項ガ適用ニナルノデアリマシ
テ、隨テ御話ノヤウニ先ヅ第二番ニ元
請人ノ所ニ飛込ンデ行ッテ斷ハラレル
ト云フコトハ極メテ稀デアッテ、下請人
ノ所ニ飛込ンデ行クノガ順序デアリマ
ス、其下請人ガ勞働者ニ一番分ルダラ
ウト思ヒマス、又事實下請人カラ金ヲ貰
ヒ難イヤウナ場合ニ於キマシテハ、保
險法ニ於キマシテ役所カラ直接ニ勞働
者ニ拂ッテヤッテ宜シイノデアリマス、
下請人ガ居所、轉々トシテ居ルヤウナ
場合ニ於キマシテハ、保險經濟ノ方カ
ラ勞働者ニ拂ッテヤルコトガ出來ルノ
デアリマスカラ、御尋ノヤウナ場合ニ
決シテ勞働者ガアッチコッチスル爲ニ不
利益ヲ生ズルコトハナイト思フノデア
リマス、何故サウカト申シマストソ
レハ下請ニ一番ニ請求スルノガ極メテ
自然ノコトデアル、多クノ場合サウデ
アル、又下請人ノ住所氏名等ハ契約ヲ
サセタ時分ニ、工事場ノ帳場ニ揭示サ
セル積リデアルカラ、直接ニ勞働者ニ
接觸致シマス下請人ノ住所ガ、勞働者
ニ不明デアルヤウナ場合ハ稀ニハアル
カモ知レマセヌガ、極メテ例外的ニシ
カ起リ得ナイト思ヒマス、唯是ハ元請
人ガ只今ノ催告ヲスルコトヲ請求スル
コトガ出來ルカラト言ッテモ、元請人ヲ
無暗ニ保護スル結果ニナルノデハアリ
マセヌ、其場合ニハ元請人ガ下請人ニ
扶助ヲ引受ケサセル場合デアルカラ、
隨テ元請人ト下請人トノ請負契約ノ條
項等モソレニ應ジテ出來テ居ルニ違ヒ
ナイ、サウシテ下請人ハ住所ヲ屆ケテ
居リマスカラ、サウ云フ場合ニ尙且ツ
下請ニ少シモ請求ヲセズシテ、サウシ
テ元請ノ所ニ飛込ンデ行ッタ勞働者ニ、
ソレハ下請ニ請求シテ吳レト言ハレル
ノハ、言ハレマシテモ決シテ無理トハ
思ハヌト思フノデアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913760X00519310317&spkNum=130
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131・高見之通
○高見委員 局長ハドウモ實際ノ事情
ニ疎イノデハナイカト思フ、何故カト
云フト、今ノ場合デナイケレドモ、先
程ノ屋外勞働ノ方ガドウモ判然シナ
イ、工場ノ方ハ非常ニ固著シテ居ル、
屋外勞働ハドウモバラ〓〓ニナッテ轉
轉スルト仰シヤルケレドモ、田舍ノ方
ニ行クト其反對デアル、例ヘバ絲ノ工
女ナドハ每年呼ビニ行ク、例ヘバ私ハ
富山縣デアルガ、工場ヘ行ク工女ハ富
山縣ノ女デアルガ、去年行ッタ者ハ嫁ニ
行ッタリ、子供ヲ產ンダリシテ、今年ハ
他ノ內容ノ分子ノ變ヲタ者ガ行ク、ソレ
カラ屋外勞働ト申スト、何處デモ水害
ナドデ毎年々々海岸ガイタムノデ縣デ
ハ一年百萬圓ナラ百萬圓ノ經濟ノ中
デ、十萬圓トカ二十萬圓ノ土木費ハ每
年キマッテ居ル、ソレデアルカラ少シ大
キナ請負ヲ商賣ニシテ居ル者ト勞働者
ノ間ハ非常ニ仲好クシテ居ル、又今年
ハ水害ガアッテ何兵衞ト何兵衞ガ何處
ノ仕事ニ行クト云フ位マデキマッテ居
ルノデアッテ、屋外勞働ノ方ガ寧ロ定著
シテ、工場勞働ノ方ガ何ゾ圖ラン、形
ハ非常ニ定著シテ居ルヤウデアルケレ
ドモ、內容ノ分子ガ變ヲテ居ルコトガア
ルダカラ實情ヲ御〓究ニナルト非常
ニ違ッテ居ルト云フヤウナコトガアリ
ハシナイカト思フ、行方ノ知レヌ場合
ニ於テモ、元請ト下請トノ間ニ書面デ
契約ヲスルト言フケレドモ、勞働者ハ
書面デ契約シテ居ルカドウカハ知リマ
セヌ、下請人ガ病氣ノ時ニハ誰ガヤル
トカ、工場ノ貼紙ニ書イテナイカラ、
ソンナコトハ理窟デアッテ、事實上ハド
ウカト云フト、下請人ニ請求スレバ宜
イカ、元請人ニ請求スレバ宜イカ分ラ
ナイ、實際ハ下請人トヨリモ元請人ト
ガ親シイ、玆ニ水力電氣ガ長野縣ナラ
長野縣ニ起リマスト、其仕事ヲ其縣ノ
請負人ガ取ッテ行ッテシマフ、其後ニ下
請人ガヤッテ來テ其中五十萬圓吳レ、百
萬圓吳レト言ウテ、群馬ナリ栃木カラ
來ルト云フノデアッテ、元請ハ其縣ノ者
デ、貴族院議員ナドモ居ルガ、サウ云
フ人達ガ他カラ下請人ヲ連レテ來テヤ
ラセル、約束ガサウ出來テ居ルケレド
モ、今度下請人ガ算盤ヲ彈ク時ニハ、
自分ノ能ク知ッテ居ル勞働者ハ連レテ
來ナイ、一人一日五十錢八十錢デ其地
方ノ人間ヲ使フ、サウシテ飯場デ仲好
クシテ居ルケレドモ、仕事ガ濟ンデシ
マフト一日モ早ク計算シテサッサト引
揚ゲテシマフ、アナタノ御考ハアベコ
ベデスヨ、引揚ゲテ行ッタ後ハ何處ニ
行ッタカ分ラヌカラ、勞働者ハ元請人ノ
所ニ行ク、サウシテ災害扶助法ト云フ
モノガ出來テ、怪我シテモ金ヲ貰ヘル
ヤウニナッタサウダト言ッテ元請人ノ所
ニ申出ルト、オ前ハ行方ガ分ラヌト言
フケレドモ、俺ノ方ニハ下請トチヤン
ト契約シテアッテ分ッテ居ル、是ハ下請
人ガ拂フコトニナッテ居ルト言ハレル
其行キ所ハ何處カト聞クト下關ダト言
フカラ其處へ手紙ヲ出シテ見ル、考ヘ
テ御覽ナサイ、金ヲ拂ハナイデ逃ゲテ
行ッタ者ガ、下關ニ行ッテ居ルト云フノ
デ、其處ヘ手紙ヲ出シテ見テモ普通一
般ノ常識デ誰ガ金ヲ拂フモノデスカ、
然ルニ一方ハ病氣デ金ノナイ勞働者
デ相手ガ金持デアルナラ催告モ宜イ
デセウケレドモ、下請ハ行方不明デア
ル元請人ハ俺ハ下請ト斯ウ云フ約束
ガアルカラ知ラヌ、サウシテオ前ハ催
告狀ヲ出シタラ宜イト言ッテモ、勞働者
ガ催告狀ヲ出スコトガ分リマスカ、催
告狀ヲ出スノハドウシテモ役場ニ行カ
ナケレバナラヌ、內容證明ヲシテ其料
金ヲ拂ハナケレバナラヌ、、サウ云フモ
ノヲ出シテモ下請人ハ下關ニ飛ンデ
行け、サウシテ勞働者ハ怪我ヲシテ
居ッテモ一文モ貰ヘナイ、今日ノ生活ニ
困ル勞働者ニ、元請ト下請トノ契約ヲ
知ッテ居ルカ、誰ガソンナモノヲ〓究ス
ル勞働者ガアリマスカ、五十錢八十錢
ノ勞働者ヲ捉ヘテ、此事業ハ元請ト下
請トノ間ニ約束ガ出來テ居ル仕事デア
ル、サウシテ事務所ハ閉鎖シタ、宿屋
ニハ居ラヌ、行方不明若クハ破產ノ宣
告-破產ノ宣告ト云フモノハソレハ
新聞ニ廣〓サレテ初メテ分ルノデア
ル勞働者ニサウ云フコトガ分ルカ、
サウ云フ點カラ考ヘルト、全ク是ハ勞
働者本位ノ法律デナイト思フ、ソレヨ
リハ何カ方法ヲ講ジテ、元請デモ、下
請デモ、ドッチデモ拂フコトニシタラ如
何カト思フ、下請人ガ責任者デアルナ
ラバ、元請人ガ之ヲ立替ヘ、元請人ガ
責任者デアルナラバ元請人ガ支拂フト
云フコトニスレバ宜イ、勞働者ノヤウ
ナ貧乏ナ人間ニ、內容證明ヲ出サシタ
リシナクテモ宜イ、內容證明ヲヤッタ
リ、手紙ヲヤッタリシテ返事ヲ貰フマデ
ニハ、病院ニ入ッテ居ル人間ハ死ンデシ
マフ、大キナ元請負人ニナルト生意氣
ナ辯護士トカ、事務員トカ三百的ノ者
ガ居ッテ、「オ前達ハ法律ハ分ラヌダラ
ウ」勞働者ノ方デハ病氣デ痩テ居ル、
或ハ腕ガ一本無クナッテ困ッテモ、病院
ニハ這入レヌ、「ソレヂヤ下請ヘ行ケ」
「下請ハ分リマセヌガ何ダカ、下關ニ居
ルサウデス」「ソレヂヤ下關へ行ッテ來
イ」ト言フ、或ハ「破產ノ宣告ヲ受ケテ
居ルト云フコトヲ聞イタカ」「聞キマシ
タ」「ソレハ實ハ受ケチヤ居ラヌ、立派
ナ紳士ダ、宣告ヲ受ケタトカ受ケヌカ
オ前ハ新聞ヲ見タカ、見ナイダラウ、
下關ノ何十何番地ニ其下請ガ居ルカ
ラ、內容證明ヲヤッテ返事ヲ貰へ」ト
云ッタ所ガ、ソンナ惡イコトヲシテ居ル
下請人カラ返事ガ來マスカ、ソンナコ
トハ餘リ無駄ナ話デス、向フノ返事ヲ
待ッテ初メテ元請人ニ行カナケレバナ
ラヌト云フコトデアレバ、或ハ又郵
便局デ內容證明ノ判サヘ貰ッテ來レバ
宜イノダト云フコトデアレバ、サウ云
フ手續ヲサセルト云フコトガ、勞働者
ニ何ノ實益ガアルカ、是ハ僅ニ勞働者
ニ無用ノ手數ヲカケルノミデ、期スル
所ハ元請人ガ利益ヲスルバカリデア
ル、高ガ勞働者ト土木ノ請負ノ間ニ、
斯ウ云フムヅカシイ規則ヲ作ッテ何處
ガ勞働者ノ利益ニナルカ、寧ロ是ハ元
請人、下請人等「ブルジヨア」ノ爲ノ
ミニ作ラレタ「ブルジヨア」保護ノ法律
デハナイカト私ハ考ヘル、ドウ御考ヘ
ニナリマスカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913760X00519310317&spkNum=131
-
132・吉田茂
○吉田政府委員 大變事情ヲ盡シテ此
規定ガ役ニ立タヌヤウナ御話デゴザイ
マシタガ、法文ヲ御覽ニナリマスルト
元請負人ガ原則トシテ事業ノ事業主デ
アリマス、第一項ニ其事ハ書イテアリマ
ス、數人請負人ガアル場合ハ、元請人ガ
事業主ナノデアリマス、元請人ガ補償
スベキデアリマス、併ナガラ下請人ガ
直接ニ事業ニ從事致シマシテ勞働者ヲ
使用スルト云フ關係カラ致シマシテ、
第二項ニ依リマシテ、下請負人ニモ亦
扶助ヲ爲サシムル途ガ開ケマシテ、是
モ勞働者ノ爲ト考ヘマス、隨テ下請負
人ガ明ニ扶助ヲ引受ケテ居リマス場合
ハ直接勞働者ニ接觸ヲ致シテ居リマ
ス所ノ下請負人ガ、先ヅ支拂ヲスルト
云フノガ極ク普通ノ順序デアル、隨テ
左樣ナ引受ノアル場合ニ、遡ッテ元請負
人ニ請求スルト云フコトハ、普通ノ順
序ニ違ッタヤリ方デアリマス、今例ト
シテ御擧ゲニナリマシタノモ普通ノ
場合ト致シマシテハ、事業ノアル場合
ニ事業上ノ疾病或ハ事業上ノ災害ト云
フモノガ起ッテ來ルノデアリマスカラ
大抵ノ時ハ下請人ガ居ルノデアリマ
ス、併シ例トシテ御擧ゲニナリマシタ
ヤウニ、下請人ガ引拂ッタ所デ請求ス
ルト云フヤウナ場合モアリマセウ、サ
ウ云フ場合ニ、下請負人ニ一遍モ請求
シテ居ラナカッタト云フ場合ハ、元請人
ハ法律ノ規定ノ上カラモ下請人ニ催告
スベキ權利ヲ持ッテ居リマス、ケレドモ
御話ノ如ク、元請人ト勞働者トハ親シ
イ仲デアルト云フヤウナ例ノ場合-
サウ云フ例ガ地方ニ於テアルコトモ承
知シテ居リマス、其場合ハ下請人ガ扶
助ヲ引受ケルト云フ二項ノ規定ヲ適用
サレナイコトガ多イ、元請人ハ勞働者
ハ懇意ナ間柄デアル、下請人ハ他カラ
入ッテ來テ、臨時ニ事業ヲ管理スルト云
フヤウニ、元請負人ノ使用人ノヤウナ
積リデ、他カラ入ッテ來ルト云フ場合、
下請人ト勞働者ノ關係ヨリ、元請負人
ト勞働者ノ方ガ密接ト云フヤウナ場合
デアリマシタナラバ、二項ノ規定ニ依
リマシテ、下請人ヲ事業主トスルト云
フコトハ多ク行ハレナイダラウト思
フ、ソレニモ拘ラズ又例外ガアリマシ
テ、サウ云フ場合デアルニ拘ラズ、下
請人ガ扶助ヲ引受ケルト云フコトガ法
律ノ表カラ出來マスカラ、サウ云フ弊
害ガアルカモ知レナイ、サウ云フ場合
ニ事業ガ完了シテ、下請人ガ其場所ニ
居ナイト云フヤウナコトガ起リマシタ
ナラバ、是ハ土木建築ニ付キマシテハ
御承知ノ通リ强制保險ナノデテリマス
カラ、保險ヲ致シテ居リマス國家自ラ
扶助責任ヲ縣廳ノ手ヲ通ジマシテ果
ス、左樣ナ遠隔ノ地ニ、直接扶助スル
責任者ガ離レテ居ッテ、便宜デナイト考
ヘマシタナラバ、事業主ハ勞働者ノ爲
ニ直接ニ保險金ヲ戾シテヤルト云フ途
ヲ開イテアルノデアリマスカラ、決シ
テ御話ノヤウニ、事業主ヲ保護シテ勞
働者本位デナイト云フノデナイ、何處
マデモ勞働者ノ爲ヲ考ヘマシテ、扶助
法ノ第三條竝ニ保險法ノ規定ガ出來テ
居ルノデアリマスカラ、之ヲ御意見ノ
ヤウニ改メマシテ、ドッチデモ拂フ、催
告ノ抗辯ナシニドッチデモ請求ヲ受ケ
タ者ガ拂フノダト云フ所ニ法制ノ建前
ヲ置イテ見マシタ所デ、ヤハリ拂フ誠
意ノナイ事業主或ハ下請人ト云フモノ
ハ唯アッチカラ拂フノダ、アッチヘ行ッテ
吳レ、片方デハソンナコトヲ云ッテコツ
チヘ來テモ駄目ダカラアッチヘ行ッテ吳
レト言ハレルヤウナ弊害ヲ豫想スレバ
其弊害ノ方ガ多イカト思ヒマス、ドッチ
ガ第一順位、ドチラガ主ト云フコトガ
キマッテ居リマス方ガ、勞働者トシテモ
心强ク、物ガ早ク運ビマス、ソレデ運
ビマセヌ場合ハ保險金支拂ノ原則ニ對
シテ例外ヲ設ケテ、政府ノ職權ヲ以テ、
扶助ヲ受クベキ勞働者、或ハ勞働者ガ
不幸ニシテ死亡シタ場合ハ其遺族ニ對
シテ、事業主ノ扶助ニ代ッテ政府カラ保
險金ヲ支拂フト云フ途ヲ開イテアルノ
デアリマスカラ、何處マデモソコハ親
切ニ考ヘテ居ル積リデアリマス、決シ
テ御話ノヤウナ偏頗ナ依怙ノ考デ是ガ
立案サレテ居ルノデハゴザイマセヌノ
デ、殊ニ第三條ノ規定等デ催告ノ抗辯
ヲ致スト云フコトハ、御質問ノ最初ニ
御話ニナリマシタ通リニ、ソレガ訴訟
ニナッタラ裃デ色々往復ガアルノデア
リマスガ、請負人ト勞働者トノ間ニ最
後ノ訴訟ノ時ニハ、ソレヲ極マリヲ附
ケル途ハ法律ノ上ニ於テハ開イテ置カ
ナケレバナラヌケレドモ、ソレニ至リ
マスマデニハ、只今申シマシタヤウニ
中々金ガ貰ヘナイ場合ニハ、勞働者若
クハ遺族ニ對シテ直チニ國家ノ保險經
濟カラ扶助ニ變ヘテ支拂フコトガ出來
ルノデアリマス、國庫ノ方ハ保險料ヲ
取ッテ居ルノデアリマスカラ、損ヲスル
ノデハナイノデアリマス、旁〓以テ決
シテ御心配ノヤウナ弊害ハナイト考ヘ
マス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913760X00519310317&spkNum=132
-
133・高見之通
○高見委員 ドウモ今ノ御話デハ腑ニ
落チナイ、ソレハドウ云フ譯カト云フ
ト元請負人ト下請負人ノ約束ハ如何
樣ニモ出來ル、又誰ガ支拂當事者デア
ルト云フコトヲ豫メ元請人ト下請人ノ
協定スルコトハソレハ自由デス、今玆
ニ災害ノ問題ガ起ッテ來ルト云フヤウ
ナ時ニ當ッテ、是ハ裁判上ノ問題デアル
ト仰シヤルケレドモ、兎ニ角今勞働者
ガ血ヲ流シテ非常ニ困ッテ居ル、金ガ要
ル扶助料ヲ出シテ貰ヒタイト云フ時
ニ、下請人ガ何處へ行ッタカ分ラナイト
云フ時ニ、一應催告ノ手紙ヲヤレ、サ
ウシテ其手紙ヲ持ッテ來ナケレバ拂ハ
ナイト云フコトデアルト、ソレハ催〓
ヲシタヾケデ宜イト云フコトデハ徒ニ
手數ヲ掛ケルノデハナイカ、ソコデ愈〓
訴訟ニナッタ場合ニハ元請人ノ責任デ
ハナイカ、或ハ下請人ガ本當ノ責任者
デナイカト云フヤウナ時ニ、是ハ二人
ノ間ニチヤント約束ガ出來テ居ルカラ
シテ元請人ト下請人ノ間ノ議論ヲ明確
ニスル方ガ自由自在デアルケレドモ、
併ナガラ何等效用ノ無イヤウナ、勞働
者カラシテ殆ド無意味ナヤウナ催告狀
デ一應請求ヲシナケレバ元請人ノ方
ニハ行カレヌ、而モ元請人カラ返事ガ
アラウガナカラウガ、何デモ宜イ、サ
ウ云フモノサヘ持ヲテ居レバ、一寸銀行
ノ切符カ何カノヤウニ持ッテ來ルト、ソ
レヲ見テ適當ニ相談ヲスルト云フコト
ハ單ニ勞働者ノ手數ヲ掛ケルニ過ギ
ナイ、勞働者ノ方カラ見レバ、下請人
デアラウガ、元請人デアラウガ何デモ
宜イ、何ト言ッテモ事業主ノ方ハ金ヲ
持ッテ居ル、下請デアラウガ元請デアラ
ウガ、場合ニ依ッテハ下請人ノ方ガ金
持デアリマシテ、元請人ノ方ガ貧乏ナ
コトガアルガ、兎ニ角下請モ金持、元
請モ金持何レモ金持デアル、是ハ仕事
ノ場合々々ニ依ッテ、或ル災害ノ起ッタ
場合ニハ豫メ誰ガ引受ケルト云フコト
ハ約束ヲシテ掛ルガ宜シイ、サウシテ
約束シタ上デ訴訟ノ事件ガアッタ時ニ
ハ勞働者ノ方カラ兩方一遍ニ訴ヘテ、
元請人ガ債務者デアラウガ、下請人ガ
債務者デアラウガ、ハッキリスル途ヲ開
ケバ十分デアル、ソコデ元請ト下請ト
ノ間ノ兩者ノ約束ヲ明カニシテ置ケ
バ、ソレデ仕事ヲスル時ニ於ケル元ノ
出發點モ十分ニ明確ニナル、勞働者ニ
徒ニサウ云フ手數ヲ掛ケサセテ、サウ
シテ裁判上カラ眺メテ見テモ、實際ノ
效果カラ眺メテ見テモ、催告サヘスレ
バソレデ宜シイト云フヤウナ程度ノモ
ノヲ作ッテ、サウシテソレヲスルノハ
徒ニ三角關係ヲ複雜ニスルノデアッテ、
勞働者ニ無駄ナ手數ト無駄ナ責任ヲ負
擔サセルト云フコトニ過ギナイノデア
ル、斯ウ考ヘルノデアリマスガ、モウ
少シ其邊ノ御說明ヲ願ヒタイ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913760X00519310317&spkNum=133
-
134・吉田茂
○吉田政府委員 昨日來專ラ其點ヲ說
明シテ居ル積リデアリマスガ、マダ御
了解ヲ十分ニ戴キマセヌコトハ、甚ダ
殘念ニ思フ、責任ハ此方ガ明確ニナル
ノデアリマス、誰カラ賠償ヲ受ケルノ
デアルト云フ事ガハッキリ致シテアリ
マス方ガ宜シイノデ、ドチラデモ宜イ
ト云フ事ハ、一見有利ノヤウデアッテ、
實際ハ扶助ノ責任ヲ果シテ貰フ上ニ於
テハ不便ナノデアリマス、ドチラヘ行ツ
テモ宜イト云フコトハ、ドチラカラモ
斷ラレル危險ガ多分ニアルノデアリマ
ス、是ハ訴訟ノ時ニハ別デアリマスガ、
實際勞働者ガ事業主ノ所ヘ行ッテ金ヲ
貰フト云フ時ニハ、ドッチヘ行ッテモ金
ヲ貰フト云フコトニナッテモ-ソレ
ハ覊束スレバ宜イト云フ御意思ノヤウ
デアリマスガ、內部關係トシテサウ云
フ事實ガ··発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913760X00519310317&spkNum=134
-
135・高見之通
○高見委員 下請ガ拂フモノヤラ元請
ガ拂フモノヤラ、初メ仕事ニ掛ル時ニ
勞働者ガ一々サウ云フコトヲ知ルコト
ハ困難デアル、倒レタ後ニナッテ一番都
合ノ好イ所カラ貰ヘル方ガ宣イダラ
ウ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913760X00519310317&spkNum=135
-
136・吉田茂
○吉田政府委員 サウ云フ事ヲ知ルコ
トハ中々困難デアルト仰シヤルノデア
リマスガ、勞働者ハ普通下請ニ使ハレ
ルノデアリマス、下請ノアル場合ニハ
元請ニハ使ハレルノデハナイノデアリ
やっ、下請ガ勞働者ヲ使ヘバコソ下請
ト云フモノガ成立ツノデアリマシテ、
元請ガ直グ勞働者ヲ使ッテ居ルト云フ
ヤウナ事ハ無イノデアリマス、原則ト
シテサウ云フコトニナッテ居リマスケ
レドモ、併シ放ッテ置ケバ何等ノ特約
ヲ爲サズシテアレバ事業主トシテ元請
ガ責任者ノノデアリマス、特約ヲ致セ
バ下請モ責任者ニナリマス、サウシテ
下請ト云フモノハサウ云フ場合ニ於テ
ハ直接ニ勞働者ヲ使ッテ居ル故ヲ以テ
自分ガ責任者ニナルノデアリマス、事
實ノ理由トシテハサウナルノデアリマ
ス、ソコデ勞働者ヲ使役シテ居ル下請
人ガ扶助ノ責任ヲ引受ケタ場合ニハ
單ニ勞働者トノ內部的ノ契約ト云フダ
ケニ止マラズシテ、其引受ノ契約ヲシ
タ場合ニハ下請人ノ住所氏名等ヲ揭示
サセル積リデアリマス、命令ニ依ッテ是
ハ公示心得ト云フノデ今デモ揭示ガ色
色アリマスノデアリマシテ、揭示スル
コトハ決シテ面倒デナイト考ヘマス、
デアリマスカラ一ハ自分ノ直接ニ使フ
テ貰ッテ居リマスル下請デアリマスガ、
今一ツハ明カニサウ云フ揭示ノアルコ
トデアリマス、下請ニ先ヅ請求ヲスル
ト云フコトハ決シテ無理ナ要求デハナ
イノデアリマス、極ク自然ナノデアリ
ヾじ、事實ニ適ッテ居ルノデアリマス、
殊ニ危急ノ場合、或ハ今怪我ヲシテ血
ヲ流シテ居ルト云フヤウナ時デ、マダ
下請ガソコニ居ル、工事期間中デアル
ニ違ヒナイノデアリマス、ソレガ病氣
ガ長引イタ時ニ始メテ、工事期間ガ
終ッテ下請人モ其處ヲ引拂ッテシマッタ
ト云フヤウナ事ガ起リマセウケレド
モ、是ハ多クノ場合ニ於テハ業務上ノ
災害疾病ニ對スル問題デアリマスカ
ラ、下請人ガ工事ノ主タル責任者デアッ
テ、其處ニ居ルト云フ場合ニ於テハ先
程モ申上ゲタ通リ、保險經濟ノ中カラ
政府ガ代ッテ保險金ヲ勞働者ニ支拂ッテ
ヤル、斯ウ云フ途ガ開カレテ居ルノデ
アリマス、何囘モ申ス事デアリマスガ、
扶助ノ責任ヲ誰ガ一番ニ果スカト云フ
コトヲハッキリシテ置キタイ、ハッキリ
シテ置クコトガ簡易迅速ニ保險金ヲ受
ケラレル所デアル、アッチニモコッチニ
モ行ケルコトニシテ置キマスルト、却
テ遷延サセル虞ガアル、斯ウ云フ見地
カラ此規定ハ出來テ居ルノデアリマシ
テ、丁度御心配ニナル點ガ私共ノ立案
シタ趣旨トアベコベニ御考ニナッテ居
ルヤウデアリマスガ、實地ニ御明ルイ
頭デ御判斷下サレバ、下請人ガ先ヅ扶
助ノ義務ヲ果スト云フコトハ左程無理
デハナイト云フ事ヲ御了解下サルコト
ガ出來ルト考ヘマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913760X00519310317&spkNum=136
-
137・高見之通
○高見委員 今承ッテ驚イタノハ、揭示
ヲサセルト云フ事ヲ仰シヤイマシタ
ガソレハ長官ノ希望ノ傳達デモ出ス
ト云フ御聲明デスカ、省令トカ勅令ト
云フコトデヤリタイト云フコトガ何カ
アルノデアリマスカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913760X00519310317&spkNum=137
-
138・吉田茂
○吉田政府委員 是ハ左樣ナ方法ヲ何
デ規定スルカト云ヒマスルト、私カラ
傳達スルノデアリマセヌデ、內務省令
ヲ以テ規定スル積リデアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913760X00519310317&spkNum=138
-
139・高見之通
○高見委員 其內務省令デ規定スルト
云フコトハ此法律ノ何ニ依ッテ規定サ
レテ居ルノデスカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913760X00519310317&spkNum=139
-
140・吉田茂
○吉田政府委員 是ハ法律ノ施行ニ關
スル規定デゴザイマスカラ、當然省令
ノ權限ニ依ルノデアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913760X00519310317&spkNum=140
-
141・高見之通
○高見委員 本條ハ事業主ハ勅令ノ定
ムル所ニ依ルトカ、或ハ其他ノ工事ニ
シテ勅令ノ定ムル規模ノモノトカ、其
他色々ノ勅令或ハ第五條ノ行政官廳ノ
命令ノ定ムル所ニ依リ云々ト云フヤウ
二、勅令トカ省令ヲ發スル場合ヲ皆書
イテアル、其書イテアル所ニ依ッテ初メ
テ其モノガ、或ハ勅令ヲ受ケ、若クハ
省令トナルモノデアリマス、然ルニ何
等ノ法條ノ根本基礎ガ無クシテ、アナ
タガ勝手ニ省令ヲ發スルコトハ、何ノ
權限デ御出シニナルノデアリマセヌ
カ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913760X00519310317&spkNum=141
-
142・吉田茂
○吉田政府委員 甚ダ申上ゲヤウガ惡
イカモ知レマセヌガ、是ハ委任ニ依ッテ
法律ノ內容トナルベキ事柄ヲ委任命令
デ定メル場合モゴザイマスシ、又法律
ヲ施行スルニ付キマシテ必要ナル手續
ヲ施行命令デ定メル場合モゴザイマ
ス、只今申シマシタ手續ニ關スル施行
ノ命令ハ、委任ガナクトモ出來ルノデ
アリマス、其例ハ多々アルノデアリマ
ス、必ズ省令ヲ出ス場合ニ法律ノ根據
ガ無ケレバナラナイト云フ譯デハナイ
ノデアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913760X00519310317&spkNum=142
-
143・高見之通
○高見委員 ケレドモ委任命令ト云フ
モノハ、勅令トカ、行政官廳ノ命令ガ
卽チ委任命令デセウ、此法律ニ基イテ
此法律ト同樣ノ力ノアルモノヲ命令ヲ
以テ發スルコトヲ得ト云フカラニハ、
名ハ命令デアルケレドモ、其力ハ法律
ノ範圍內ニ於テ法律ト同樣ノ效果ヲ
持ヲノデアリマス、委任命令若クハ施行
命令ト云フコトハ、其法律ニ基イテ、
其法律ガ委任シタル時ニ於テノミ委任
命令ヲ發スルコトガ出來ル、法律ガ委
任セザル時ニ於テドウシテ委任命令ヲ
發スルコトガ出來マスカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913760X00519310317&spkNum=143
-
144・吉田茂
○吉田政府委員 是ハ甚ダ申上ゲニク
イノデアリマスガ、憲法ノ規定ニ基キ
マシテ、委任ガアリマセズトモ-法
律ヲ施行スル爲ニ必要ナモノハ委任ガ
アリマセヌデモ、命令ヲ以テ規定シ得
ルコトニナッテ居ルノデアリマス、命令
ノ中ニ委任命令モゴザイマスルシ
委任命令ト云フノハ上級ノ法律或ハ命
令ノ委任ヲ受ケル爲ニ始メテ委任ノ命
令ガ出來ル場合モアルノデアリマス、
又施行命令ト云フモノハ委任ヲ受ケズ
トモ法律ヲ施行スル爲ニ、或ハ公共ノ
安寧秩序ヲ保ツ爲ニ出スノデアリマス、
此方ハ行政命令デアリマス、命令權ハ
必ズシモ委任ニ依リ出スモノデハアリ
マセヌ、左樣ナ屆出ヲ命ズルトカ、サ
ウ云フ法律ヲ施行スル爲ニ必要ナ手續
ハ、是ハ普通ノ施行命令トシテ委任ノ
範圍外デ出シテ居ルノデアリマス、決
シテ法律違反デナイノデアリマス、勿
論法律ト同樣ノ力ハ持ッテ居リマセヌ、
法律ヲ施行スル爲ニ、其手續トシテ出
スノデアリマス、手續ノ違反ニ對シテ
ハ罰ガゴザイマスガ、其手續ヲ怠ッタカ
ラト云フテ、兩者ノ間ノ特約ヲ無效ニ
スルト云フ限度マデ效果ハアリマセ
ヌ、違反ニ對スル制裁ノ限度ハ命令ノ
種類ニ依ッテ定ッテ居ルノデアリマシ
テ、決シテ不思議デハナイノデアリマ
ス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913760X00519310317&spkNum=144
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145・高見之通
○高見委員 サウデハナイデセウ、例へ
バ玆ニ一ツノ火事ガ起ッタ、或ハ病氣ガ
起ッタト云フ時ニ、其處分ニ付テ何ヲド
ウスルト云フ〓括的ニ與ヘラレタ根本
觀念ガアッテ、始メテ委任命令ヲ出シ得
ル、サウ云フ極ク輕微ノ場合ヲ謂フノ
デアリマセウ、今ノ場合ハ勅令ナリ命
令ノ定ムル所ニ依ルト云フヤウニ、原
因ガ法律ニアル以上ハ、只今ノ施行命
令モヤハリ法的根據ガ無ケレバナラ
ヌ、仕事場ニ於テ必ズ揭示スルト云フ
コトヲ命令スルノデアル、ソレニ依リ
他ノ下請人ト元請人トノ間ノ個人契約
ガ完全ニ勞働者ニ分ルコトニナッテ居
ル、斯ウ云フコトヲ言ハレテ、是ガ非
常ニ大切ナ責任デアルトスレバ、何カ
是ハ法律ナリ何ナリニ於テ根據ガ無ケ
レバナラヌ、只アナタガ是カラサウ云
フモノヲ拵ヘルトカ、或ハ勅令ナリ命
令ニ依ルト云フヤウナ、端的ナ、麴町
三丁目デ小便スベカラズト云フヤウ
ナ、獨立命令ト同一ニ解釋サレルノハ
少シク强辯ノ嫌ヒハナイカ、勞働者ノ
立場カラ見ルト、此第三項ノ規定ハ非
常ニ可哀相デハナイカ、アナタハ揭示
規定ト云フモノヲ特別ニ出シテスルト
云フコトハ、是ハ旣ニ省議ヲ經テ居ル
ノデアリマスカ、又只今玆デ御辯明ニ
ナッタノデアリマスカ、又サウ云フモノ
ヲ出サナケレバ特別ニ重イ制裁デモ付
ケルト云フヤウナコトヲ御考ヘニナツ
テ居ルノデアリマスカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913760X00519310317&spkNum=145
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146・吉田茂
○吉田政府委員 決シテ普通ノ獨立命
令ヲ出スト云フ意味デ申上ゲテ居ルノ
デハアリマセヌ、獨立命令ト云フノハ
公共ノ安寧秩序ヲ維持スルトカ、人民
ノ幸福ヲ增進スル爲ニ、必要ナ命令ヲ
發スルノデアリマス、法律ヲ施行スル
爲ニ發スル命令ハ、委任ノ必要ナク、
法律ニ基ク施行命令デアリマスカラ、
一般ノ施行ニ關スル行政手續ニ依ッテ、
委任ノ根據無ク命令デヤルコトニナッ
テ居リマス、無論權利義務ノ關係ヲ相
殺スル譯ニハ行キマセヌガ、手續ヲ命
ズルノデアリマス、工場法ニ於キマシ
テモヤハリ是ハ委任規定ハアリマセ
ヌケレドモ、工場法ノ施行規則、農商
務省令ノ第十三條ニ「工業主ハ扶助ニ
關スル事項ノ要領ヲ平易ニ記述シ適當
ノ方法ヲ以テ之ヲ職工ニ周知セシムベ
シ」ト云フヤウナ施行命令ヲ規定致シ
テ居リマス、是ハ極メテ普通ナコトデ
アリマス、決シテ不穩當ナコトデハナ
イノデアリマス、之ニ付テモ罰則ガア
リマス、サウ重イ罰ハ科シマセヌガ、罰
則規定ハ此十三條ニモ付イテ居リマ
ス、サウシテ是ハ只今仰セノ如ク率然
私ガ思ヒ付イテ卽答辯申上ゲテ居ルノ
デハアリマセヌ、兩三日來繰返シ申上
ゲテ居ルノデアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913760X00519310317&spkNum=146
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147・高見之通
○高見委員 私モウ一ツ念ヲ押シテ置
キタイノハ、憲法ノ八條ニ依ル施行命
令ト仰シヤルガ、總テ立法事項ハ權利
義務ニ關係スルモノハ、法律ニ依ルニ
アラザレバ出來ナイコトニナッテ居ル、
揭示ト云フヤウナコトノ如キハ、權利
義務ニ非常ニ重大ナ關係ヲ來タスノデ
ハナイカ、若シモ揭示ヲ怠ッタ場合ハ
ドウデスカ、其責任ハ誰ガ負擔シマス
カ、揭示ニ依ッテ始メテ下請人ノ責任ガ
解除サレルト云フナラバ、權利義務ニ
非常ニ重大ナ影響ヲ與ヘル、サウシテ
皆是ハ-アナタ憲法ノ御取違ヒヂヤ
ナイデスカ、憲法ノ立法事項ト云フモ
ノヽ觀念ヲ、非常ニ根本カラ錯誤シテ
居ラレルノデハナイカト思フノデス、
ケレドモアナタ仰シヤルナラ、幾ラデ
モ仰シヤルガ宜シイ、私モ言ヒタイケ
レドモ時間ガナイノナラ致方ガナイ、
ソレカラモウ一ツ伺ッテ置キタイ、第五
條ニ「危害ノ防止又ハ衞生ニ關シ必要
ナル事項ヲ事業主又ハ勞働者ニ命スル
コトヲ得」ト云フコトガアリマスガ、
是ハ一體ドウ云フコトデアリマスカ、
簡單ニ勞働者ニ命ズルト云フコトハ、
ドウ云フコトデスカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913760X00519310317&spkNum=147
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148・吉田茂
○吉田政府委員 例ヘテ申シマスル
ト危險ナ機械ノ取扱方ニ付キマシテ、
其取扱方法ニ關スルコトヲ規定シタノ
デアリマス、或ハ危險ナ爆發物ノアリ
マスル所デ燐寸ヲ摺フタリ、煙草ヲ喫ツ
タリシテハナラヌト云フ制限ヲ置イ
テ、サウ云フ危害ヲ避ケル爲ニ、災害
ノ防止ヲスル爲ニ、事業主ニ命ズルコ
トモ多々ゴザイマスルガ、勞働者ニ命
ズルコトモアルノデアリマス、ソレラ
ノ事ヲ書イタノデアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913760X00519310317&spkNum=148
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149・高見之通
○高見委員 サウスルト若シモ勞働
者ガ言フコトヲ肯カズシテ、危險ナ場
所デ煙草ヲ喫ッタト云フ時ニハ、ソレハ
ドウナリマスカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913760X00519310317&spkNum=149
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150・吉田茂
○吉田政府委員 左樣ナ重大ナ過失ガ
アリマシタ場合ニハ、委任命令ノ方
デ、別ニ書イテ資料トシテ差上ゲテア
リマスガ勞働者災害扶助法施行命令
ニ規定スベキモノヽ中ニアリマス通リ
ニ、負傷ニ關シマシテ當該勞働者ニ重
大ナル過失ガアッタト云フ場合デアリ
マシタナラバ、其事實ニ付キマシテ地
方長官ノ認定ヲ受ケタ場合ハ、扶助料
ノ一部ヲ支給シナイコトモ起リ得マス
ガ、直接ニハ其命令ニ違反致シマシタ
勞働者ニ對シマシテ處罰ヲスル積リデ
アリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913760X00519310317&spkNum=150
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151・高見之通
○高見委員 併シサウ云フコトハ命令
デ規定スルヨリモ、法律デ御規定ニナッ
タラ如何デスカ、一體第五條ハ事業主
ハ危害ノ防止ヲ要スルト云フコトデ、
其防止ヲ事業主ガヤラナカッタ場合
ハドウナルト云フコトヲ、命令デ規
定スルノハ少シオカシクアリマセヌ
カ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913760X00519310317&spkNum=151
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152・吉田茂
○吉田政府委員 唯、今ノ扶助料ヲヤ
ルカ、ヤラヌカト云フ問題ハ、第五條
ノ問題デハアリマセヌ、第二條ノ問題
デアリマス、第二條ハ御覽ニナリマス
通リ「事業主ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ
勞働者ガ業務上負傷シ、疾病ニ罹リ又
ハ死亡シタル場合ニ於テ本人又ハ其ノ
遺族若ハ本人ノ死亡當時其ノ收入ニ依
リ生計ヲ維持シタル者ヲ扶助スヘシ」
ト云フコトニナッテ居リマス、扶助ノ內
容其制限等ハ、一切命令ノ規定ニ委任
シテアルノデアリマス、是ハ自ラ外國
ノ例モ、斯ウ云フ立法ノ建前沿革ガサ
ウナッテ居リマス、工場法ニ於キマシテ
モ扶助ノ內容ニ付テハ悉ク命令ニ委任
シテアリマス、ソレデ御審議ノ上ニ御
判リニナラズシテ御不便デアラウト思
ヒマシテ、一切ノ資料ヲ總テ御手許ニ
差上ゲテアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913760X00519310317&spkNum=152
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153・山邊常重
○山邊委員長 ソレデハ本日ハ此程度
デ散會致シマス、尙ホ明日ハ最終日ト
シテ御協議願ヒタイノデアリマスカラ
各委員ノ方ハ是非御出席願ヒタイト思
ヒマス、時間ハ追テ公報ヲ以テ御知ラ
セ致シマス
午後六時散會発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=005913760X00519310317&spkNum=153
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