1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和七年六月十一日(土曜日)午前十時七分開議
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議事日程 第七號
昭和七年六月十一日
午前十時開議
第一 關税定率法中改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第二 輸入税の從量税率に關する法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第三 遠洋漁業奬勵法中改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第四 造幣局資金拂出に關する法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第五 市町村義務教育費國庫負擔法第三條の特例に關する法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00719320611&spkNum=0
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001・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 是ヨリ報〓ヲ致
サセマス
〔瀨古書記官朗讀〕
昨十日衆議院ヨリ左ノ政府提出案ヲ受領セ
リ
關稅定率法中改正法律案
輸入稅ノ從量稅率ニ關スル法律案
遠洋漁業奬勵法中改正法律案
造幣局資金拂出ニ關スル法律案
關稅定率法中改正法律案
關稅定率法別表輸入稅表中左ノ通改正ス
第十六號中「一·五〇」ヲ「一一·五〇」ニ改ム
第十八號ヲ左ノ如ク改ム
八八高粱
號外昭和七年六月十二日
同日本院ニ於テ採擇スルコトヲ議決シタル
國幣小社度津神社ノ改築ニ關スル請願外八
件ノ請願ハ各、意見書ヲ附シ卽日之ヲ政府
ニ送付セリ
同日委員長ヨリ左ノ報告書ヲ提出セリ
市町村義務〓育費國庫負擔法第三條ノ特
例ニ關スル法律案可決報告書
請願委員會特別報〓第一一號
同日内閣總理大臣ヨリ左ノ通政府委員仰付
ケラレタル旨ノ通牒ヲ受領セリ
第六十二囘帝國議會大藏省所管事務政府
委員
大藏書記官靑木一男君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00719320611&spkNum=1
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002・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 是ヨリ本日ノ會
議ヲ開キマス議事日程第一、關稅定率法
中改正法律案、第二、輸入稅ノ從量稅率ニ
關スル法律案、第三、遠洋漁業奬勵法中改
正法律案、政府提出、衆議院送付、第一讀
會高橋大藏大臣
關稅定率法中改正法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議
院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和七年六月十日
衆議院議長秋田〓
貴族院議長公爵德川家達殿
每百斤一·〇〇
第十九號中「〇·三〇」ヲ「一·七〇」ニ改ム
第二十二號第一項中「二·九〇」ヲ「四·三〇」ニ改ム
第五十三號中「三六·九〇」ヲ「五〇·〇〇」ニ改ム
第五十五號第一項中「一三·四〇」ヲ「二五·〇〇」ニ、第二項中「八·三〇」ヲ「一五·七〇」
三ツハム
第百十四號ヲ左ノ如ク改ム
一一四パラフィン
一融解點攝氏四十五度ヲ超エサルモノ
甲頁岩油ヨリ分餾シタルモノニシテ粗製
ノモノ無稅
乙其ノ他每百斤六·〇〇
二其ノ他每百斤一二·〇〇
第百四十九號ヲ左ノ如ク改ム
一四九黃燐、赤燐及硫化燐每百斤一四·三〇
第百七十六號ヲ左ノ如ク改ム
一七六ククール酸加里每百斤四·二〇
第二百五十五號中「一·九五」ヲ「三·四〇」ニ改ム
第二百五十九號ヲ左ノ如ク改ム
二五九ピッチ及アスファルト每百斤〇·四〇
第二百五十九號ノ二ヲ左ノ如ク改ム
二五九ノ二コールタール、ピッチ又ハアスファルトノ製品
ニシテ道路修築用ノモノ每百斤〇·四〇
第四百十八號第二項中「八·二五」ヲ「一五·〇〇」ニ改ム
同號第三項ヲ左ノ如ク改ム
三板
甲護謨入ノモノ每百斤一五·〇〇
乙其ノ他每百斤四·〇五
同號第四項中「一八·八〇」ヲ「三〇·〇〇」ニ改ム
第四百六十二號第一項甲中「〇·一〇」ヲ「〇·三六」ニ、第四項中「從價」ヲ「每百斤」ニ、
「一割八分」ヲ「一·三〇」ニ、第六項中「一割八分」ヲ「一一割五分」ニ、第七項中「五分」ヲ
「一割五分」ニ、第十二項中「二割」ヲ「二割五分」ニ改ム
第四百六十三號ノ次ニ左ノ一號ヲ加フ
四六三ノ二マグネシウム每百斤四九·五〇
第四百九十九號第二項丙ロヲ左ノ如ク改ム
ロ其ノ他
ロノ一安全剃刀用ノ刄每百箇一·〇〇
ロノ二其ノ他從價三割五分
五二〇
五四九
五七七
第五百二十號ヲ左ノ如ク改ム
貨幣(金銀貨幣以外ノ貨幣ニシテ本邦通貨ニ非
サルモノハ分類上之ヲ地金ト看做ス)
第五百二十七號第八項乙ヲ左ノ如ク改ム
乙其ノ他
イ地板
ロ調整輪
ハ制動杆
ニ受板
ホ撥條匣
ヘ其ノ他(機械用ノ石ヲ除ク)
第五百四十九號ヲ左ノ如ク改ム
醫療器、オーソペヂックインストルーメント及
同部分品(別號ニ揭ケサルモノ)
陶齒
申金屬製ノ釘ヲ用ヰタルモノ
イ貴金屬ヲ用ヰタルモノ
ロ其ノ他
乙其ノ他
二其ノ他
第五百六十四號中「三割」ヲ「四割二分」ニ改ム
第五百七十七號ヲ左ノ如ク改ム
內燃機關
一自動車用ノモノ及自轉車用ノモノ
二其ノ他
甲一箇ノ重量百キログラムヲ超エサルモ
乙一箇ノ重量二百五十キログラムヲ超エ
サルモノ
丙一箇ノ重量千キログラムヲ超エサルモ
丁一箇ノ重量二千五百キログラムヲ超エ
サルモノ
戊一箇ノ重量一萬キログラムヲ超エサル
モノ
己一箇ノ重量五萬キログラムヲ超エサル
モノ
庚其ノ他
每百箇
每百箇
每百箇
每百箇
每百箇
從價
每百箇
每百箇
從價
從價
從價
每百斤
每百斤
每百斤
每百斤
每百斤
每百斤
從價
無稅
一九·五〇
一八·〇〇
一四·一〇
一〇·五〇
八·〇〇
三割
一一·七〇
二·〇〇
五割
二割
三割五分
三〇·〇〇
二〇·〇〇
一七·七〇
一七·〇〇
一四·七〇
一三·七〇
二割
第六百五號第二項甲ノ二ホ中「從價」ヲ「每百斤」ニ、「一割五分」ヲ「二·六〇」ニ、第十項
中「二二·三〇」ヲ「三五·一〇」ニ改ム
第六百十二號第一項己ノ五中「四·五五」ヲ「六·九〇」ニ、「三·九〇」ヲ「五·六〇」ニ、「二·
一〇」ヲ「三·四〇」ニ、「一·二〇〇ヲ「二·五〇」ニ改ム
第六百三十二號ノ二中「從價」ヲ「每百斤」ニ、「二割」ヲ「五六·〇〇」ニ改ム
附則
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
輸入稅ノ從量稅率ニ關スル法律案稅率ハ當分ノ内之ヲ其ノ百分ノ百三十五
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議トス但シ同輸入稅表ニ揭グル物品ニシテ
院法第五十四條ニ依リ及送付候也本法ノ別表ニ揭グルモノノ從量稅率ハ此
昭和七年六月十日ノ限ニ在ラズ
衆議院議長秋田〓前項ノ規定ニ依ル從量稅率ニ一錢未滿ノ
貴族院議長公爵德川家達殿端數アルトキハ其ノ端數ハ之ヲ切捨ツ
輸入稅ノ從量稅率ニ關スル法律案附則
關稅定率法別表輸入稅表定メタル從量本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
(別表
輸入號稅品名
表番
一六小麥
八高梁
一九玉蜀黍
二二穀粉及澱粉類
小麥粉
五三バター人造バター及ギー
五五コンデンスドミルク
一一四パラフィン
-融解點攝氏四十五度ヲ超エサルモノ
乙其ノ他
一四九黄燐、赤燐及硫化燐
一七六クロール酸加里
二五五カーボンブラック
二五九ピッチ及アスファルト
二五九ノ二コールタール、ビッチ又ハアスファルトノ製品ニシテ道路修築用ノモノ
三六二印刷料紙
二其ノ他
乙其ノ他
イ一平方メートルノ重量五十八グラムヲ超エサルモノ
四一八石絨及別號ニ揭ケサル石絨製品
二絲
三板
甲護謨入ノモノ
四其ノ他
四六二鐵(別號ニ揭ケタル特殊鋼ヲ除ク)
塊及錠
甲銑鐵
四ワイヤロッド(卷キタルモノ)
四六三ノ二マグネシウム
四九九刄物(別號ニ揭ケサルモノ)
二其ノ他
丙剃刀
ロ其ノ他
ロノ一安全剃刀用ノ刄
五二七懷中時計部分品
八其ノ他
乙其ノ他
イ地板
ロ調整輪
ハ制動杆
ニ受板
ホ撥條匣
五四九醫療器、オーソペヂックインストルーメント及同部分品(別號ニ揭ケサル
モノ)
一陶齒
甲金屬製ノ釘ヲ用ヰタルモノ
六〇五機械部分品(別號ニ揭ケサルモノ)
ロール及ローラー
甲鐵製ノモノ
甲ノ二其ノ他
ホ其ノ他
十筬(金屬製ノモノ)
六一二木材
一單ニ切リ、挽キ又ハ割リタルモノ
己バイン、ファーシダー其ノ他ノ針葉樹
己ノ五其ノ他(ドグラスファー等)
イ厚六十ミリメートルヲ超エサルモノ
ロ厚二百ミリメートルヲ超エサルモノ
ハ厚二百ミリメートルヲ超エタルモノ
ニ丸太及割材
ニノ二其ノ他
六三二ノ二屑及故ノセリュロイド(改造用ノミニ適スルモノ)
遠洋漁業奬勵法中改正法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議
院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和七年六月十日
衆議院議長秋田〓
貴族院議長公爵德川家達殿
遠洋漁業奬勵法中改正法律案
遠洋漁業奬勵法中左ノ通改正ス
第一條政府ハ遠洋漁業ヲ奬勵スル爲每
年豫算ヲ以テ定ムル金額ノ範圍內ニ於
テ奬勵金ヲ下付シ其ノ他必要ナル費用
ヲ支出ス
第三條中「定ムル構造ニ」ヲ、削ル
第五條第一項ヲ左ノ如ク改ム
主務大臣ハ遠洋漁船檢査規程ニ適合シ
タル日本船舶ヲ新造シ又ハ遠洋漁船檢
査規程ニ適合シタル日本船舶ニ命令ヲ
以テ定ムル設備ヲ施シタル船舶所有者
ニ對シ左ノ區別ニ從ヒ漁船奬勵金ヲ下
付スルコトヲ得但シ計畫總噸數百噸以
上ノ鋼製ノ船舶ニ在リテハ第一號ノ規
程ニ拘ラズ船舶ノ評價額ノ百分ノ二十
以內ノ漁船奬勵金ヲ下付スルコトヲ
得
一船舶評價額ノ百分ノ十五以內
二設備評價額ノ百分ノ三十以内
同條第三項中「保藏設備、無線電信裝置、
無線電話裝置及副漁具」ヲ「第一項ノ設
備금속시
第十一條第二項中「遠洋漁船船員」ヲ「遠
洋漁船ノ船員若ハ船匠」ゴルド
第二十一條中「大正二十二年三月三十一
日迄」ヲ「昭和二十二年三月三十一日迄」
ニバル
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
本法施行前奬勵金下付ノ指令ヲ受ケタル
者ニ付テハ仍從前ノ例ニ依ル
〔國務大臣高橋是〓君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00719320611&spkNum=2
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003・高橋是清
○國務大臣(高橋是〓君) 只今議題トナリ
マシタ關稅定率法中ノ改正法律案ノ說明ヲ
致シマス、政府ハ改正法律案ニ揭ゲラレテ
居リマスル各物品ニ關スル輸入稅改正ノ
要否ニ付キマシテ、曩ニ關稅調査委員會ニ
諮問ヲ致シマシタ所、成案ヲ得マシタノデ
玆ニ本改正法律案ヲ提出イタシマシタ次第
デアリマス、改正案ノ品目ハ小麥、銑鐵等
二十九品デアリマシテ、輸入稅表中二十四
ノ項目ニ關係シ、部分的改正トシテハ相當
廣範圍ニ亙ッテ居リマス、政府ハ是等物品ノ
生產輸入及需給等ノ狀況ニ鑑ミテ、現行稅
率ハ現在ノ實情ニ適セザルモノト認メマシ
テ大體ニ於テ其輸入ヲ相當抑制シテ、以
テ內地產業ヲ保護スル目的デ本改正法律案
ヲ提出イタシタ次第デアリマス、詳細ナル
點ニ付キマシテハ委員會ニ於テ說明ヲ致ス
考ヘデアリマス、御審議ノ上速ニ御協贊ヲ
與ヘラレムコトヲ希望スル次第デアリマス、
又輸入稅ノ從量稅率ニ關スル法律案ニ付テ
說明ヲ致シマス、政府ハ外國爲替相場ノ現
狀ニ鑑ミマシテ、從量稅率ニ關シ考慮ヲ拂
フノ必要アリヤ否ヤ、竝ニ之ニ關スル具體
案ニ付キマシテ、曩ニ關稅調査委員會ニ諮
問イタシマシタ所、其成案ヲ得マシタノデ
玆ニ本法律案ヲ提出イタシマシタ次第デゴ
ザイマス、御承知ノ通リ從來我國ノ輸入稅
表ニ於テハ、從價稅率ト從量稅率トガ併セ
用ヒラレテ居リマス、現行ノ稅ニ於テハ其
稅率ノ大部分ハ從量稅率ニナッテ居ルノデ
アリマス、然ルニ外國爲替相場ノ現狀ニ鑑
ミマスト、輸入品ノ價格ハ騰貴ヲ免レナイ
狀態ニアリマスガ、斯ノ如キ狀態ノ下ニ於
テハ輸入品ノ價格ニ對スル關係上、從價
稅率ト從量稅率トハソレゾレ趣ヲ異ニスル
點ガ著シク現ハレテ來タノデアリマス、依ッ
テ右ノ關係ヲ調節スル爲ニ此際應急ノ處置ト
シテ、從量稅率ヲ增加スルノガ適當デアルト
認メマス、而シテ其增加ノ程度ハ、外國爲
替相場ノ狀況等ヲ斟酌シテ、三割五分ヲ相
當ト認メタ次第デアリマス、次ニ本法律案
ト關稅定率法中改正法律案トノ關係デアリ
マスガ、關稅定率法中改正法律案ノ方ハ之
ニ依ッテ輸入稅表ニ定メテアリマス稅表中、
其適當デナイト認メタモノニ付テ改正ヲ行
ハムトスルモノデアリマシテ、是等ノ改正
稅率ニ付テハ既ニ右ノ調節ノ關係ヲモ考慮
ニ入レテ居ルノデアリマスカラ、其中ノ從
量稅率ハ本法律案ニ依ル稅率增加ノ範圍外
ニ置イタノデアリマス、尙ホ右ノ外新聞用
紙ノ稅率ハ、文化ノ普及上等ヨリ見テ特別
ニ取扱フベキ理由ガアリト認メマシテ、特
ニ例外ノ中ニ加ヘマシタ、其他詳細ナルコ
トニ付キマシテハ、委員會ニ於テ御說明ヲ
致ス考ヘデアリマス、御審議ノ上速ニ御協
贊アラムコトヲ希望イタス次第デアリマス
〔國務大臣後、藤文夫君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00719320611&spkNum=3
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004・後藤文夫
○國務大臣(後)文夫君 遠洋漁業奬勵法
中改正法律案提出ノ理由ヲ御說明申上ゲマ
ス、遠洋漁業奬勵法ハ明治三十年三月制定
以來玆ニ三十餘年、其間時勢ノ推移ニ順應
イタシマシテ必要ナ改正ヲ行フテ參リマシ
テ、其改正ノ囘數モ前後七囘ニ及ビマシテ、
常ニ新タナル內容ヲ以テ遠洋漁業發達ノ根
幹ヲ爲シテ參クタノデアリマス、我國遠洋漁
業ハ本法ニ依ル奬勵ノ下ニ今日ノ狀況ヲ見
ルニ至ッタ次第デアリマスガ、併ナガラ我國
遠洋漁業ノ將來ニ付テ考ヘマスト、天與ノ
地理的環境カラ見マシテモ、尙ホ未ダ其發
達ノ途上ニアルモノト申サナケレバナリマ
セヌ、就中我國漁業ノ中樞ヲ爲シテ居リマ
スル發動機船漁業ヲシテ、現在ノ漁場ノ範
圍ヲ數倍ニ擴大ヲシテ、南北太平洋ノ洋上
ニ馳驅操業セシメ、以テ將來漁船ノ增加ト
漁獲高ノ增大ヲ期シマスルト共ニ、行詰ッテ
居リマスル沿岸漁場ノ調節ヲ圖ルノ必要ガ
極メテ痛切ナ次第デアリマス、然ルニ本法
ハ其效力ガ昭和七年度ヲ以テ終了スルコト
ト相成ッテ居リマス、斯ノ如キ我國遠洋漁業
ノ狀勢ニ鑑ミマシテハ、本法ノ效力ヲ尙ホ存
續サセマシテ同時ニ遠洋漁業及漁船ノ進
展、變遷ニ應ジテ必要ナ改正ヲ加ヘタイト
存ズルノデアリマス、卽チ今囘ノ改正ノ主
要ナ點ヲ申シマスレバ、本法ノ施行期間ヲ
十五箇年延長イタシマスルノト、更ニ普通
ノ漁船奬勵金ノ下付ニ付テハ、奬勵金額ノ
算出ノ方法ヲ全體ニ單純化イタシマシテ、
船舶ノ評價額ノ百分ノ十五以內ト改メマシ
テ、尙ホ奬勵金ヲ下付シ得ル設備ノ種類ニ
付キマシテハ、從來法律ノ中ニ規定シテア
リマシタノヲ實情ニ應ジテ加除シ得ルヤウ
命令ヲ以テ定ムルコトト致シマシタ、尙ホ
又公共團體其他ノ營利ヲ目的トシナイ法人
ノ行フ遠洋漁業船員ノ養成ノ外ニ、新
船大工ノ養成ニ要スル經費ノ全部、又ハ一
部ヲ下付シ得ルノ途ヲ開ク等ノ、諸點ノ改
正ヲ行ハムトシマスル譯デアリマス、斯樣
ナ次第デ遠洋漁業奬勵法中改正法律案ヲ提
出シタ次第デゴザイマス、宜シク御審議ノ
上御協賛ヲ切望スル次第デゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00719320611&spkNum=4
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005・大河内輝耕
○子爵大河內輝耕君 私ハ質問ノ初メニ一
點御確メヲ致シテ置キタイコトガゴザイマ
ス、今日ノ新聞ニ依リマスルト關稅法ニ付
キマシテ、衆議院ニ於キマシテ希望決議ガ
アッタト云フコトヲ承知イタシマシタ、又ソ
レニ伴〓テ政府ガ或聲明ヲセラレタト云フ
コトガゴザイマス、兩方共二項ニナッテ居リ
マシテ、時間ヲ省ク爲ニ朗讀ハ致シマセヌ
ガ、其希望決議ノ趣旨ニ付キマシテハ、政
府ニ於テ之ヲ認容セラレタモノデアルヤ否
ヤ、又政府ガ聲明サレタト云フコトハ事實
デアルヤ否ヤ、其點ヲ豫メ御確メヲ致シテ
置キマス
〔國務大臣男爵中島久萬吉君演壇ニ登
ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00719320611&spkNum=5
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006・中島久萬吉
○國務大臣(男爵中島久萬吉君) 只今大河
内子爵カラ昨日衆議院ニ於ケル關稅定率法
中改正法律案ノ委員會ニ於キマシテ、私共
ガ政府ヲ代表イタシマシテ聲明ヲ致シマシ
タコトノ事實如何ノ御尋デゴザイマシタ、
事實デゴザイマス、聲明ヲ致シタコトハ事
實デゴザイマス、目ツ聲明イタシタ以上之
ヲ認容スルコトモ當然ノコトデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00719320611&spkNum=6
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007・大河内輝耕
○子爵大河內輝耕君 決議ノ方ハ如何デゴ
ザイマス、サウ云フ決議ノ趣旨ヲ政府ガ認
容サレテ居ルカドウカ
〔國務大臣男爵中島久萬吉君演壇ニ登
ルン発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00719320611&spkNum=7
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008・中島久萬吉
○國務大臣(男爵中島久萬吉君) 認容イタ
シテ居リマスコトモ事實デゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00719320611&spkNum=8
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009・大河内輝耕
○子爵大河內輝耕君 質問ヲ續ケタイト思
ヒマスカラ登壇イタシマス
〔子爵大河內輝耕君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00719320611&spkNum=9
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010・大河内輝耕
○子爵大河內輝耕君 私ノ質問ハ純然タル
事務的ノ質問デゴザイマス、毫モ政治的ノ
意味ハ含ンデ居リマセヌ、從ヒマシテ此案
ニ付キマシテモ全然白紙ノ態度デゴザイマ
シテ、唯分ラナイ所ヲ御確メスルト云フニ
過ギマセタ、豫メ之ヲ申上ゲテ置キマス、
尙ホ此問題ニ付キマシテハ其途ノ權威者
ガ、私ノ後ニ御立チニナリマシテ御質問ニ
ナルト云フコトデゴザイマシテ、實ハ止メ
ヤウカト存ジマシタケレドモ、マア豫備質
問トシテ何カノ御役ニ立テバト存ジマシ
テ、ヤレト仰ッシヤル方モゴザイマシテ立
チマシタ次第デゴザイマス、其御積リデ御
聽取リヲ願ヒタイト思ヒマス、又此問題ハ
世間デヤカマシウゴザイマシテ財閥云々、
財閥ノ保護デアルト云フコトヲ頻リニ申サ
レテ居ル、併シ是ハ言フ者ハ言フ者、言フ者ハ
言フ者デ私ハソンナ考ヘハ更ニナイ、今日ノ狀
態デ大資本家ガ此經濟界ニ必要デアルト云
フコトハ勿論ノコトナンデス、之ヲ財閥ト
カ何トカ言フノガ旣ニ間違,テ居ル、關稅ヲ
立案スルニシマシテモ、國家ノ立場カラ立
案セラレタノデアリマスガ、偶然ニ所謂資
本家ノ利益ニナッテ行カウガ何デアラウガ、
サウ云フコトハ眼中ニナイ譯デアリマス、
斯ウ云フコトモ豫メ御斷リ致シテ置キマ
ス、ソレデ御尋ヲ申上ゲタイト存ジマスノ
デゴザイマスガ、昨日ノ衆議院ノ希望決議
ニ依リマシテ、是ハ商工大臣デモ農林大臣
デモ、ドチラデモ宜シイノデアリマス、昨
日ノ衆議院ノ希望決議ニ依リマシテ、三割
五分ノ從量稅ノ增徵ニ付キマシテハ、將來
何分ノ考慮ヲスル、アレハアノ儘デハ置カ
ナイノダト云フコトガ希望決議トシテ出マ
シテ、政府モ其趣旨ヲ認容セラレタト云フ
コトヲ只今承ハッタノデアリマスガ、其趣意
ハソレハ能ク分リマセヌガ、〓究スル暇モゴ
ザイマセヌガ、色ミナ趣意カラ來テ居ルダ
ラウト思ヒマスガ、其一ツトシテハ、マダ
爲替ガ安定ヲシナイ、爲替ガ安定シナイカ
ラ、モウ少シ樣子ヲ見テカラノ方ガ宜カラ
ウ、爲替ノコトニ付キマシテハ、度ミ大藏
大臣ガ御言明ニナッテ居ル通リ、イツ何處デ
安定スルヤラ今ノ所ハ見据エガ付カヌ、斯
ウ云フ狀態デゴザイマスカラ、是ハ矢張リ
今三割五分ニシテ居ルガ、將來三割五分ガ
宜イヤラ惡イヤラ分ラナイカラ、相當ノ期
間マデ置イテ置イテ、サウシテモウ少シ見
据エガ付テカラ決メテ遲クハアルマイ、斯
ウ云フ御趣旨モ含ンデ居ルト存ジマス、サ
ウスルト是ハ私ノ考ヘガ或ハ間違シテ居ル
カ知レマセヌガ、何分咄嗟ノ間ニ〓究シタ
ノデアリマスカラ、間違ヒガアッタラ御指摘
ヲ願ヒマスルガ、此事ハ他ノ個々ノ品物ノ
方デス、關稅定率法中改正法律案ノ中ニ含
ンデ居ル此二十幾ツカノ品物ニ付キマシテ
、、同樣ナ關係ニナッテ來ハシナイカト云
フ疑ヒヲ持,テ居ルノデアリマス、矢張リ是
モ從量稅デアリマス以上、爲替ガ動カネバ、
何トカ是モ動サネバナラナイ、現ニ政府ノ
材料ニ依リマスルト云フト、此例ヲ銑鐵ニ
取リマスト云フト價格ノ方カラ申シマスレ
バ「カルカッタ」ノ「エフ·オー·ビー」、二十四
「ルーブル」、斯ウ前提トシテ爲替相場ハ百
二十ト云フコトデ、是ハ算出セラレテ居ル
ヤウニ考ヘテ居リマスガ、此二十四「ルーブ
ル」ガドウカト云フコトガ、多少疑ヒガアリ
マスガ、是ハ別ト致シマシテ、爲替相場ハ
始終動イテ居ルガ、只今百十五ニモナッテ
居リマス、又後デ色〓變テテ來ヤウト思ヒ
マスガ、サウスレバ矢張リ印度銑鐵ノ輸入
價格ニ付キマシテハ、當然變動ヲ起シテ來
ヤウト存ジマスノデ、ソレナラバモウ少シ
爲替ガ安定イタシマシテ、之ヲ御制定ニナ
レバ一向差支ナイ、又サウスベキモノデハ
アルマイカト思ヒマス、是ハ銑鐵バカリデ
ハゴザイマセヌ、總テノ問題ニ通ズルコト
デゴザイマスルカラ、總テノ問題ヲ通ジタ
コトトシテ、農林、商工兩大臣ノ中カラ御
答へ下サレバソレデ宜シウゴザイマス、次
ニハ滿洲ノ關係、滿洲ト日本內地トハ經濟
上ノ「ブロック」デアル、滿洲ハ國防上ノ生命
線デアルコトハ勿論、經濟上ニ於テモ是ハ
一ツノ矢張リ生命線デアル、是ハ一ツニ見
ナケレバナラナイノダト云フコトハ度〓今
マデ伺ッテ居ル所ナンデ、又サウナケレバ
ナルマイト存ジマスルガ、段々此〓究ヲ進
メテ行キマスト云フト、此關稅ト云フモノ
ハ滿洲ニ頓著ナク御決メニナッタサウデ、滿
洲ト日本トノ經濟政策ガ決マレバ又從ッテ
之ハ動クノダ、斯ウ云フコトナンデス、ソ
レナラバ何ニモ今御意ギニナル必要モアリ
マスマイト存ジマス承ハリマス所ニ依リ
マスト云フト此內地ニ於ケル銑鐵ノ生產
費ハ三十五圓六十五錢ト云フコトニナッテ
居リマスガ、鞍山ノ生產費ハ是ハ昭和製鋼
所ノ設立ノ趣意書ヲ見タノデアリマス、二
十四圓五十錢ト云フコトニナッテ居ル、滿洲
ガ遙ニ安イ、生產力ハドウカト云フト、昭
和製鋼所ノ計畫ハ五十万噸デ出來テ居リマ
スカラ、本溪湖ト合シテ六十万噸ノ生產力
ヲ持ツテ居ル、只今ノ三十五万噸ニ比シテ
遙ニ生產擴張ノ餘地ガアルト云フコトヲ申
シマス、是等ノ關係ヲチヤント御定メニナツ
テ、滿洲政策ガ確立セラレテカラソレカラ
滿洲デハドレダケノ鐵ヲ造ル、內地デハドレ
ダケノ鐵ヲ造ルト云フコトヲ御決メニナッテ
カラ、ソレカラ斯ウ云フモノヲオヤリニナルノ
ガ相當ナ順序デハアルマイカト思フ、滿洲ハ
構ハズ抛ッテ置ク、先ツ之ヲヤッテ、滿洲ハ
決ッタラ後デヤレバ宜イ、斯ウ云フコトデ
ゴザイマスガ、申スマデモナク關稅、殊ニ
銑鐵ノヤウナ重工業ニ對スル關稅ハ、一週
決マッテシマッタラソレガズット、經濟界ガソ
レニ順應シテ來ルト云フト、之ヲ直スナン
ト云フコトハ迚モ出來ナイ相談、斯ウ云フ
コトハモウ一遍決メタラナカナカ直リニク
イノデスカラ、滿洲ノ樣子ヲ御覽ニナフテ、
滿洲ノ政策ガ立シテカラ御決メニナルベキ
モノデハナイカト思フ、殊ニ豫算ヲ見マス
ト云フト、滿洲ノ鐵ニ對シテハ奬勵金ガ多
少出ルヤウナ風ニナッテ居リマスガ、無論多
額ヂヤゴザイマセヌ、多少ニシロ出ル、是
ガ出ルト云フコトニナリマスレバ、其豫算
ガドウモ、私ノ見タ所デハ此豫算ニ伴テ
居ナイ、出テ居ラナイ、是ハマア後カラ出ス
ト云フ御話デアリマセウケレドモ、政府ガ
政策ヲ決定シテ議會ガ審議權ヲ行フ以上、
斯ウ云フ風ナ跛ナ案ハ是ハドウモ誠ニ協贊
スルコトガ難イ、後カラヤルト仰シヤッテ
モ、又ドウナルンダカ譯ガ分ラヌ、斯ウ云
フモノハチヤント揃ヘテ、サウシテ政策ヲ
定メタ上ニ御出シニナルベキモノヂヤナイ
カ、此點カラ言,テモドウモ今日之ヲ御提
出ニナル理由ハ無イト存ジマス、ソレカラ
是ハ鉄鐵ノ問題デゴザイマスルガ、政府ノ
仰シヤル所ニ依リマスルト云フト、銑鐵ノ
內地ノ生產費ガ三十五圓六十五錢、斯ウ云
フコトニナッテ居リマス、此內容ヲイヂッテ
見マスルト云フト、隨分ドウカト······私
共素人ガ考ヘマシテモ、何ダカドウモモウ
少シ何トカナリサウナモノダト思フヤウナ
費用ガ中ニ含マレテ居リマスル、殊ニ鶴見
ノ淺野造船ノ生產費ニ依リマスルト、二十
七圓二錢七厘ト云フコトニナッテ遙カニ安
イ、サウスレバ外ノ銑鐵業ノ方モマダマダ
整理ノ餘地ガアリハシナイカ、此三十五圓
ト云フ計算ハ少シドウモ高過ギハシナイ
カ、政府ノ御計算トシテ少少高過ギハシナ
イカト思ハレル節ガゴザイマスソレカラ
尙ホ政府ガ一噸當リノ設備費ハ幾ラデアル
カト云フコトニ對シテ、五十圓ト云フ御調
ニナッテ居ル、併シ是ハデス、政府ハサウ云
フ風ニ見テ居ラレマスケレドモ、只今ノ實
際ハ是ガ二百四十圓位ニナクテ居ル、是ハド
ウシテ斯ウ云フ風ニナッテ居ルカト云フト、
何モ其人ガ惡イト云フ譯ヂヤゴザイマセヌ
ガ、物ノ高イ時ニ造ツタ爲ニ斯ウ云フモノ
ニナッテシマッタノデ、今更是ハ持チ扱ッテ
居ル、ソレデ決シテ其ヤリ方ガ惡イトカ
云フコトヲ申スノヂヤゴザイマセヌガ、前
ニヤッタ其謂ハヾ損失、前ニヤッタ損失ヲ國
民ノ負擔ニ轉嫁サレチヤ、是ハドウモ堪フ
タモノヂヤナイ、矢張リ失敗ヲシテ損ヲシ
タ·······失敗ト言ッチヤ言葉ガ惡ウゴザイマ
スガ、思惑違ヒデ大變高イ生產費ヲ掛ケタ
以上ハ、是ハ企業者ガ相當ニ整理ヲシテ、
矢張リ五十圓ノ程度迄ニ切下ゲテ、ソレカラ
後ニ保護ヲスベキガ當然ダラウカト思フ、是
ダケノコトヲ······成程此希望決議ニ依リマ
スルト、希望決議ヂヤナイ、政府ノ聲明ニ
依リマスルト、合理化トカ大合同トカ云フ
コトガゴザイマス、大合同ナンテ云フコト
ハ餘桿問題デゴザイマセウ、餘程厄介ナモ
ノダラウト思ヒマス、併シ是ハマアドウ云
フコトニナリマスカ知リマセヌガ、合理化
ハ出來ヤウト思フノデス、ヤリ方ニ依レ
バ此合理化ヲ十分ニ御ヤリニナッテ、サ
ウシテ其狀態ヲ能ク仔細ニ御〓究ニナッテ、
サウシテ關稅ヲ御決メニナッテ一向差支ナ
1、少々是ハ順序ガ〓倒シテ、何故コンナ
ニ御急ギニナルノカ其意味ガ能ク分ラナ
1、ソレカラ此關稅ガ政府ノ財政ニ付テ隨
分影響シヤウト思ヒマスガ、如何ナル關係
ニナッテ居ルカ承ハリタイノデス、是ダケ
何スレバ·······稅ヲ上ゲレバ政府ノ總テノ
此鐵ニ關スル費用ト云フモノハ上ッテ來
ル、是ガドノ位ノ御見込デゴザイマスカ、
隨分國防ナンゾニ使フモノハ中々多イモノ
ダラウト思ヒマスガ、此點ヲ一ツ御示シヲ
願ヒタイト思ヒマス、是ハ大藏省所管ノコ
トデゴザイマスガ、大藏大臣ナリドナタカ
ラナリ、御分リニナッタ程度デ承知スルコト
ガ出來レバ宜シイ、ソレカラ尙ホ序ニ、銑
鐵バカリヂヤゴザイマセヌ、今ノ豫算ノ關
係ハ外ノ關稅ノ目的物ニ付テモ同ジコトデ
ゴザイマス、同ジコトヲ是モ色々ナ此二十
幾程、或ハ全體ニ付テノ三割五分、コンナ
モノヲ上ゲタ爲ニ餘程豫算ノ上ニ影響シテ
來ヤウト思ヒマスガ、此金額ハドノ位カ
ソレガ果シテ豫算ニ見テアルモノデアラウ
カドウカト云フコトヲ伺ヒタイ、銑鐵ニハ
限リマセヌ、總テノ問題デゴザイマス、ソ
レカラ先程······只今チヨット私ガ一番初メ
ニ申シマシタケレドモ、此案ト云フモノハ
無論政府ガ財閥保護ノ爲ニ立テラレタモノ
トモ何トモ思ヒマセヌ、又政黨ガ政府ヲ動
カシテ財閥保護ノ爲ニヤッタモノダトモ思ヒ
マセヌ、併シデス、結果ニ於テ財閥······財閥
ト申セバ何デアルガ、大資本家ノ利益ニナル
ト云フコトハ是ハ爭フコトノ出來ナイ事實
デアリマス、ソレデ斯ウ云フ思想界ノコン
ナ狀態ノ時ニ、世間ニ是ハ財閥保護ヂヤナ
イカト云フヤウナ風ニ疑ヲ懷カセルト云フ
コトハ、是ハドウモ免レヌコトダラウト思
ヒマス、此點ハドウモ政府トシテドウ云フ
譯デ··サウ云フ點ハモウ少シ明カニナ
スッテ、サウシテ今迄私ノ說明シタヤウ
ナ······御質問ヲシタヤウナ點ガスッカリ明
瞭ニナレバ、世間ノサウ云フ疑惑ナンソモ
スッカリ無クナッテシマハウト思フ、モウ少
シ是ハ能クサウ云フ點ヲハッキリサレル必
要ガアラウト思フ、ソレデ最後ニ總理大臣
ニ私ハ申上ゲタイ、只今申述ベタノハ極ク
一端デゴザイマシテ、此關稅ノ各品目ニ付
キマシテ問題ハ非常ニ多イノデス、仁シロ
二十幾種ト云フ問題デ、非常ナ重要ナ問題
ヲ澤山含ンデ居ル、ソレデ是ダケノ重要ナ
問題ヲ澤山含ンデ居ルノヲ、組閣以來僅カ
ノ間ノ御〓究デ此處へ御提出ニナルト云フ
コトハ是ハ如何ナルモノカ、誠ニ總理大臣
ニ對シテ申上ゲニクイ言葉デゴザイマスル
ガ、モウ少シ政府トシテハ何ダカ國務ニ冷
淡ダト云フヤウナ感ジヲ一般ニ與ヘナイコ
トモナイ、如何ニ總明ナ御方デアッテモ、無
論中島商工大臣ノ如キハ斯ウ云フ道ニ付テ
ハ權威者デアルト云フコトハ萬々承知イタ
シテ居リマスケレドモ、政治家トシテノ〓
究ト、又サウデナイ方ノ立場カラ〓究サレ
ルノトハ違フノデアリマシテ、內閣ガ一度
更ッタ以上ハ、斯ウ云フ問題ハ能ク御審議ニ
ナッテ、サウシテ御出シニナルベキモノヂヤ
ナイカ、ドウモ內閣ヲ組織スルト直グ斯ウ
云フ重要ナ澤山ナ問題ヲ御出シニナル、外
ノ問題ハナンデス、サウ云フ問題ハ少ウゴ
ザイマスガ、斯ウ云フ問題ヲ咄嗟ノ間ニ呑
込ンデシマウト云フヤウナコトハ迚モ出來
ナイ相談、モチット是ハドウモ其處ノ點ガ
我ミトシテ誠ニ申上ゲエクイケレドモ、納
得ガ行キ兼ネル、殊ニ議會ニ對スル關係、
議會ハアト四日デス、四日位ノモノニコン
ナモノガ精密ニ〓究ガ出來ルカ出來ナイカ
ハ御分リダラウト思フソレデ是ハ通常議
會マデ御待チニナッテ少シモ差支ナイ問題
デゴザイマスカラ、斯ウ云フ問題ハ今是非
協賛シテ吳レロト云フヤウナコトヲ仰シヤ
ルニハ當ルマイカト思フ、寧ロ是ハ政府ノ
方カラ、時日ガ少イカラモット審議ヲ議會デ
シテ貰ヒタイト云フ理由デ御撤囘ニナッテ
モ差支ナイモノト思フ、實ハ齋藤首相ニ對
シテ申上ゲニクイ言葉デゴザイマスルガ、
國民一同ハ此內閣ニ對シテ多大ナ期待ヲ
有ッテ居ル、ドウカ此內閣ヲシテ今迄ノ積弊
ヲ一掃スル爲ニ之ヲ後援シテ、サウシテ一
ツデモ仕事ヲヤッテ戴キタイト思ヒマスル
カラ、大概ノ事ニハ眼ヲネムッテ協賛ヲ致
シテ居ル、若シ此案ガ單獨內閣ノ時ニ出テ
來タモノナラバ、是ハモウ通ラナイコトハ
分リ切テテ居ル、木葉微塵ニナッテ居ル、ソ
レデサウ云フ風ニ政治上ノ狀態ヲ考ヘテ、
ドウゾ總理大臣竝ニ總理大臣ヲ補佐セラル
ル所ノ各大臣ハ、能ク御考ヘニナッテ、サウ云
フヤウナ政情デアレバアル程、內閣ノ方デ
ハ態度ヲ愼重ニサレテ、咄嗟ノ間ニコンナ
問題ヲ貴族院ニ持ッテ來テ、何デモ議了セヨ
ト云フヤウナコトハ御避ケニナッテ、ドウゾ
世間ニ對シテ無理ヲ押スト云フヤウナ感ヲ
懷カサレズ、決シテ總理ガサウ云フ御考デ
ナイト云フコトハ承知イタシテ居リマス
ガ、サウ云フ風ナコトヲ世間ニ考ヘサセル
ヤウナコトハ萬々御避ケニナッテ戴キタイ、
是ハ此問題バカリヂヤゴザイマセヌ、將來ニ
モ影響スル事デゴザイマス、ドウゾ無理ヲ
御押シニナルト云フヤウナ事ハ寧ロ斯ウ云
フ內閣デアレバアル程、强イ內閣デアレバ
アル程、サウ云フ事ハ御考ニナラナケレバ
ナラヌト思フ誠ニ申上ゲニクイコトデゴ
ザイマスガ、此關稅定率法ハ御差支ナケレ
バ此際御見合セニナッテ、サウシテユックリ
內閣トシテ十分御審議ニナリマシテ、此次
ノ通常議會ニ御提案ニナッテ、政府モユック
リ〓究ヲスル、又我ミモユックリ〓究ヲス
ル、サウシテ肚ノ中カラ考ヘガ行ッタト云フ
コトニ致シタイ、殊ニ此問題ニ付テハ財界
ニモ反對ガ多イ、此處ニ御出デニナリマス
ル所ノ大阪商工會議所會頭ノ稻畑君、副會
頭ノ森君、此方〓ノ御意見モ薄〓承知イタ
シテ居ルノデアリマスガ、サウ云フ方面ニ
モ納得サセル必要ガナカラウカト思フ、是
ハ今少シ御急ギニナラナカッタ方ガ宜カラ
ウト思ビマスガ、事玆ニ至テハ少シ御無理
カ存ジマセヌガ、御立場ハ能ク存ジテ居リ
マスガ、私ハソレヲ希望トシテ總理ノ御意
見ヲ伺ヒタイト存ジマス
〔國務大臣子爵齋藤實君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00719320611&spkNum=10
-
011・齋藤實
○國務大臣(子爵蕭藤實君) 只今ノ御質問
ノ最後ノ方ニ付キマシテ、私ヨリ一應御答
ヘ致シマス、本案ハ既ニ關稅調査委員ニ於
キマシテ十分ニ無議サレタ問題デアリマシ
テ、是ハ政黨ノ政策トカ何トカ云フコトデ
ナク、國家トシテ十分ニ調査セラレタ問題
デアリマスルニ依ッテ、前內閣ニ調査セラレ
タモノデハアリマスケレドモ、十分ノ調査
ガ出來、國家ノ爲ニ斯ウアッテ然ルベキモノ
ト云フコトヲ考ヘマシテ、此議會ニ提出イ
タシマシタ次第デアリマス、何卒御審査ノ
上ニ御協賛ヲ賜ハラムコトヲ希望スル次第デ
ゴザイマス、其他ノ點ニ付キマシテハ、他ノ
主務大臣ヨリ御答ヲ申上ゲマス
〔國務大臣高橋是〓君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00719320611&spkNum=11
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012・高橋是清
○國務大臣(高橋是清君) 御質問ノ諸點ニ
付キマシテ、私ノ關係スル所ヲ御答ヘ致シ
マス、御承知ノ通リ此關稅ヲ高クスルト云
フコトハ一ツハ國内ノ、內地ノ產業ヲ助
長スル、之ヲ保護シテ助長スルト云フ目的
ニ出ヅルモノト、一ツハ又政府ノ收入ヲ增
加スル爲ニ關稅ヲ高クスル、此二ツノ目的
ガ各國ニ於テモ關稅ノ上ニハ現ハレテ居ル
ノデアリマス、而シテ今般ノ提出シテ居リ
マスル此關稅ノ改正ハ重キヲ國內產業ノ助
長ニ置イテ居ルノデアリマス、又爲替相場
ガ安定ヲシチイ、ソレハ今日三十一二弗デ
先ヅ動搖ノ幅モ狹クナッテ居リマス、マダ併
シ是ガ爲替相場ノ安定シタトハ言ヘナイノ
デアリマス、其爲替相場ノ定マラヌノニ何
モ今急イデ此從量稅ノ改正ヲスルニハ及ブ
マイト云フ御意見ノヤウデアリマス、成程
爲替相場ハ是デ安定シタトハ申サレマセ
又、併ナガラ旣ニ金ノ輸出再禁止ヲシマシ
ク、是ハ爲替相場ガ下ガルト云フコトハ是
ハ當然ノ話デス、唯如何ナル程度ニソレガ
下ガルカ、下ガッタモノガ如何ナル所ニ安
定スルカト云フコトハ是ガ分ラヌノデアリ
マー、此從量稅ヲ定メマシタ時ノ爲替相場
ハ亞米利加ノ弗ノ四十八九弗ノ相場ノ時
ニ之ヲ基準トシテ從量稅ヲ定メタノデアリ
マス、今日爲替相場ガ現在ノ如ク下ガッテ居
マスト云フト、此從量稅ニ係ハルモノハ爲
替相場ガ下ガッタ爲ニ利益ヲ得テ居ル、恩惠
ヲ受ケテ居ル、四十八九弗ノ相場ヲ標準トシ
テ定メタモノガ今日三十一二弗ト云フ所ニ
稍、動イテ居ル、落著イテ動イテ居ルヤウデ
アルモウ明カニ此從量稅ト云フモノハ其
儘ニハ、從前ノ儘ニハ捨テ置カレヌト云フ
コトガ確カナノデアリマスソレ故ニ先ヅ
今日動キノ餘リ無イ所ノ三十一二弗ノ爲替
相場ヲ基準トシマシテ、現行ノ爲替相場デ
此從量稅ニ採算シテ參リマスト云フト、其
現在カケテ居ル稅ノ三割五分ガ先ヅ適當デ
アラウ、之ニ矢張リ輸入品ノ價格モ考慮シ
マシテ、從價稅トノ關係ヲモ調ベテ、提案
ノ如ク定メタ次第デアリマスカラ左樣御承
知ヲ願ヒマス、ソレカラマダモ一ツアリマ
シタ、此關稅改正、關稅ヲ改正シタ爲ニ政
府ノ歲入ヲドレ位ニ見ルノカト云フ御尋ネ
ノヤウデアリマス、是ハ豫算ニモ計上シテ
アリマスガ、此七年度ノ豫算ニ載フテ居リマ
スルノハ千六百万圓、今般ノ關稅改正ニ依
リマシテ收入ノ殖エルモノガ千六百万圓デ
アリマス〓而シテ是ハ九箇月分ノ計算デア
リマス、故ニ之ヲ一箇年分トシマスルト今
般ノ改正デ先ヅ二千万圓ノ增收ガアルト云
フ計算ヲ立フテ居リマス
〔國務大臣男爵中島久萬吉君演壇ニ登
ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00719320611&spkNum=12
-
013・中島久萬吉
○國務大臣(男爵中島久萬吉君) 大河內子
爵カラノ御質問中、私ノ所管ニ屬シテ居リ
マスル部分ニ付キマシテ御答辯ヲ申上ゲタ
イト存ジマス、子爵ノ御質問中銑鐵業ノ現
在ニ於ケル困難ハ、業者ガ過去ニ於ケル設
備ノ過剩重複ト經營ノ非合理化ノ結果デ
アッテ、銑鐵業者ガ自家ノ設備ノ改善ニ依フフ
テ、生產ノ合理化ヲ行ハズニ、徒ニ政府ノ
保護ヲ求ムルコトハ甚ダ其當ヲ得ナイ、先
以テ自家ノ內容整理ヲ行ッテ、ソレデモ尙ホ
自立ノ基礎ヲ得ルコトガ出來ナイト云フ曉
ニ於テ、初メテ國家ノ援助ヲ求ムルモ亦遲
カラズト云フガ如キ御議論デアッタヤニ拜
聽イタシマシタ、是ハ私モ全ク御正論ダト
認メマス、固ヨリ本法ノ當業者ト致シマシ
テモ、必ズシモ自カラ爲スベキヲ爲サズシ
テ、徒ニ政府ノ保護ニノミ依賴イタシテ居
ルト云フ譯デハナイノデゴザイマス、例へ
バ輪西、兼二浦、釜石ト云フガ如キ、此三
者ニ付テ見タダケデモ最近千數百万圓ノ企
業費ヲ投ジマシテ、作業能率ノ向上ヲ圖リ、
其生產能率ノ如キモ亦百二十万〓ト云フガ
如キ巨額ニ上ボッテ居リマシテ、尙ホ其生產
費ニ於テモ、大正十五年ノ當時ト相比較イ
タシテ見マスルト、殆ド隔世ノ感ガアルヤ
ウナ程度ニ進ンデ居ルノデゴザイマス、唯
現下特別ノ事情ニアリマスル所ノ印度銑ノ
爲ニ異常ナル脅威ヲ受ケマシテ、滯貨ガ嵩
ミ、流石ニ其負擔ニ堪ヘ切レヌ現狀ニアル
ガ爲ニ、差當リ此不當ナル海外ノ競爭カラ
ノ壓迫ヲ免カレシメマシテ、一應斯業ヲ其
合理化的地位ニ囘復セシムルエ非ズンバ、
本邦精銑事業モ結局一部ノ作業停止ヲ免カ
レ難イ現狀デゴザイマス、斯ノ如ク相成リ
マスルト、精銑業ノ包容イタシテ居リマス
ル勞働力ハ、其程度ニ於テ失ハレマシテ、
延イテサナキダニ昨今陰鬱ナル失業問題ニ
一段ノ暗影ヲ投ズルト云フコトニ至リハス
マイカ、尙ホ精銑業ノ副產物ニ伴ッテ、折角
發達シ來リマシタ所ノ有機化學工業ノ成立
ヲモ、害スルニ至リハスマイカト云フヤウ
ナコトヲ考ヘマスル時ニ、今囘ノ銑鐵ニ對
スル關稅ノ引上ハ誠ニ已ムヲ得ザルモノト
認メマシタ次第デアルノデゴザイマス、併
ナガラ又飜フテ考ヘマスルト、子爵ノ仰セニ
相成リマシタ通リ、當業者ガ漫ニ國家ノ保
護ニ馴レマシテ、設備ノ改善充實、作業ノ
合理化等ヲ忘レルニ至リマスルコトモ、亦
國家トシテ大イニ戒シメナケレバナラヌノ
デアリマスカラ、先程劈頭ニ御質問デゴザ
イマシタ通リニ、此事ガ偶、本案ニ關スル衆
議院ノ討議ノ場合ニ於テ、一度ナラズ其言
議ニ上ボリマシタ所デ、遂ニ本案贊成ノ附
帶希望決議ト致シマシテ、新聞ニ御覽ニ相
成リマシタ通リノ聲明ヲ致スコトニ相成、ツ
タノデアリマス、此段ハ何卒國家ノ爲ニ御
諒察ヲ仰ギタイノデゴザイマス、尙ホ御質
間中財閥ノ保護ト云フヤウナ點ニ付テノ事
モゴザイマシタヤウニ拜聽イタシマシタ
ガ、成程三井、三菱兩家ノ如キモノガ銑鐵
ノ事業ニ於テ相應重要ナ部分ヲ占メチ居リ
マスコトハ卽チ事實デゴザイマスケレドモ、
併ナガラ銑鐵ノ生產分野ニ於ケル三井、三
菱兩家ノ領分ニ至リマシテハ、僅ニ全體ノ
二割强ニ過ギナイノデアリマシテ、必ズシ
モ本法ノ銑鐵事業ガ三井、三菱ノ專營事業
デアルト云フ譯デハナイノデゴザイマス、
此點モ事實トシテ御認メヲ戴キタイト思ヒ
マス、尙ホ滿蒙トノ關係ニ付テノ御尋ガゴ
ザイマシタガ、是ハ衆議院ノ委員會ニ於テ
モ屢、拓務大臣ヨリ御答ガアリマシタノデア
リマスガ、本日ハ拓務大臣ガ御見エニナリ
マセヌノデ私カラ代ッテ御答辯ヲ申上ゲタ
イト存ジマス、滿蒙トノ關係ニ付キマシテ
ハ子爵ノ仰セノ如ク、固ヨリ本案ニ對シテ極
メテ重要ナル關係ヲ有ッテ居リマスカラ、是
ハ更ニ案ヲ具シテ次ノ議會ニ御諸リヲ致ス
コトニ相成ッテ居ルノデゴザイマス、代シテ
御答辯ヲ申上ゲマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00719320611&spkNum=13
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014・大河内輝耕
○子爵大河內輝耕君 チヨット細カイコト
デスガ、今ノ銑鐵ガ二割ダケガ大資本家ダ
ト云フコトデゴザイマスガ、二割ト云フコ
トノ外ハ何ヲ仰シヤルノデスカ、後ノ八割
ハ何ヲ云フノデスカ
〔國務大臣男爵中島久萬吉君演壇ニ登
ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00719320611&spkNum=14
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015・中島久萬吉
○國務大臣(男爵中島久萬吉君) 私ノ統計
ハ聊カ古クハアリマスケレドモ、大體比例
ハ失ッテ居ナイ積リデゴザイマスカラ御答
ヘ申上ゲタイト思ヒマス、銑鐵ノ生產分野
ニ於ケル領分ト致シマシテハ滿洲ガ二割
强、關東ノ方面ノ業者ノ領分ガ三分五厘、只
今申上ゲマシタ通リニ三井、三菱ノ領分ガ
二割强デアリマシテ、其外ハ官業ノ五割二
分、其他デゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00719320611&spkNum=15
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016・大河内輝耕
○子爵大河內輝耕君 確メテ置キマス、滿
洲ノ二割ハ之ニ何ニモ關係ノナイコトハ勿
論デアリマス、關東ノ三分五厘、是ハ關係
ガゴザイマセウ、官業ハ製鐵事業デセウガ、
是ハ一貫作業デアリマスカラ銑鐵ノ關稅ガ
上ッタダケノコトナラバ是ハ變ハルコトハ
ナカラウ、結局實利ヲ得ルコトハ結果カラ
申スノデ、決シテ政府ガサウ云フヤウナ意
見デオヤリニナッタトハ考ヘマセヌケレド
七、事實影響ヲ受ケルノハ、此二割ト仰シ
ヤッタモノダケガ、利益ヲ受ケルト云フ結果
ニナラウト思ヒマスガ如何デスカ
〔國務大臣男爵中島久萬吉君演壇ニ登
ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00719320611&spkNum=16
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017・中島久萬吉
○國務大臣(男爵中島久萬吉君) 私ハ子爵
ノ御尋ニ伴ヒマシテ唯本邦ノ製鐵業ニ於ケ
ル生產分野ヲ申上ゲタノデアリマシテ其
關係ニ付キマシテハ全ク子爵ト御同論デア
リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00719320611&spkNum=17
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018・大河内輝耕
○子爵大河內輝耕君 今一應大藏當局ニ御
尋ネシタイノデスガ、誠ニ大藏大臣ヲ煩ハ
シテ相濟ミマセヌノデスガ、大藏大臣デモ
ドナタデモ宜シイノデスガ、私ノ御問ヒノ
シヤウガ惡カッタノデ、是ハ關稅ノ增牧ガ幾
ラアルト云フコトヲ伺タノデハナイ、斯ウ
云フ風ニ關稅ヲ御上ゲニナレバ歲出ニ影響
シテ來ル、歲出ガ膨脹シテ來ルダラウ、是
ハ幾ラニナリマスカト云フコトヲ御尋ネシ
ク、ソレト同時ニ其歲出ノ增加ハ本年度ノ
豫算ニ御見込ミニナルヤ否ヤト云フコトヲ
御尋ネシタノデス
〔國務大臣高橋是〓君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00719320611&spkNum=18
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019・高橋是清
○國務大臣(高橋是〓君) 御答ヘ致シマス、
關稅ノ改正ヲスル結果歲出ガ膨脹スルト云
フ御尋ネノヤウデアリマスガ、而シテ其膨
脹スルノハ歲出ニ於テ幾ラ殖エルカト云フ
御尋ネノヤウニ聽キ取リマシタ、關稅ヲ改
正シマシテソレガ爲ニ歲出ガ殖エルト云フ
コトハ角立ヲテ言フ程ノ增加ガナイト私ハ
考ヘテ居リマス、或ハ稅關ノ官吏ニ人ガ少
シ殖エルカモ知レマセヌガ、其事ハ事務ノ
方ニ調ベガアリマスレバ政府委員カラシテ
御答ヲ致サセルヤウニ致シタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00719320611&spkNum=19
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020・大河内輝耕
○子爵大河內輝耕君 度〓伺ッテ何デスガ、
事務費ノ增加ヲ伺ッテ居ルノデハゴザイマ
セヌ、關稅ガ上ガレバ、例ヘテ申セバ陸軍
ノ糧秣費ノ如キ、或ハ陸軍ノ武器ニ要ス
ル······海軍モサウデゴザイマスガ······鐵類、
是等ノモノヲ買フコトニ付キマシテハ餘分
ノ費用ガ要ルダラウト云フコトヲ聽クノ
デ、其意味デ御答ヲ願ヒマス
〔國務大臣高橋是〓君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00719320611&spkNum=20
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021・高橋是清
○國務大臣(高橋是清君) 御答ヘ致シマス、
此物價ノ上ガルノハ單リ關稅ノ增加ニ依ク
テ上ガルモノニ止マラズ、今後通貨ノ膨脹
ヲ圖リマシテモ、其目的トスル所ハ現在ノ
物價ヨリ之ヲ高クスルト云フノガ目的デア
リマス、現在ノ如ク物價ガ安クシテハ生產
者ガ其費用モ償ハヌト云フヤウナ狀態デア
リマスカラシテ、今後ハ從前ヨリハ物價カ
上ガルト云フコトハ一般ニ想像ガ出來ルノ
デアリマス、其考ヲ以テ豫算ハ編成シテア
ルノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00719320611&spkNum=21
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022・大河内輝耕
○子爵大河內輝耕君 大體ノ意味ハ能ク分
リマシタ、兎ニ角政府ノ仰シヤルコトダケ
ハ能ク分リマシタガ、最後ニ總理大臣ニ今
一應是ハ重大ナ問題デアリマスカラ申上ゲ
テ置キマス、此問題ニ付テハ私ハ何モ申シ
マセヌ、總理ノ仰シヤルコトヲ伺フテ置キマ
ス、併シ將來斯ウ云フ複雜シタ問題ヲ短期
ノ議會ナドニ御出シニナッテ、咄嗟ノ間ニ議
了サセルト云フコトハ是ハドウモ御互ニ止
メタイト思ヲ、餘リ面白イコトデナイト私
ハ考ヘル、總理ニ於キマシテハ定メシ御同
感ダラウト思ヒマス、成ルベク餘日ヲ十分
議會ニ與ヘテ隔意ナキ意見ヲ交換シテ相當
ノ時間ヲ取テテモ已ムヲ得マセヌカラ十分
〓究サシテ、サウシテ決議サセルト云フコ
トガ是ハ總理ノ御本心ダラウト思ヒマス、
此案ニ付テハ何モ申シマセヌガ、將來ハ左
樣ナ御考ダラウト存ジマスガ、左樣心得テ
宜シイカ否ヤ、是ハ重大ナ問題デゴザイマ
スカラ、今一應御答辯ヲ願ヒマス
〔國務大臣子爵齋藤實君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00719320611&spkNum=22
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023・齋藤實
○國務大臣(子爵、廣實君) 只今ノ御說ニ
付キマシテハ御同感デゴザイマスカラ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00719320611&spkNum=23
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024・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 大河內子爵ノ質
疑ハ終了シタモノト認メテ宜シウゴザイマ
スカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00719320611&spkNum=24
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025・大河内輝耕
○子爵大河內輝耕君 是デ終了イタシマシ
タ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00719320611&spkNum=25
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026・徳川家達
○議長(公爵德川家遠君) 斯波男爵
〔男爵斯波忠三郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00719320611&spkNum=26
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027・斯波忠三郎
○男爵斯波忠三郞君 私ハ政府ニ對シマシ
テ聊カ御尋ヲ致シタイト存ジテ居リマシタ
所ノ大要ニ付キマシテハ、只今大河內子爵
ヨリ縷々御質問ガゴザイマシテ大半盡キテ
居ルノデアリマス、併ナガラ尙ホ二三問子
爵ノ驥尾ニ附シマシテ質問ヲ試ミテ見タイ
ト思フノデアリマス、元來關稅改正ノ如キ國
家經濟上ノ大キナ問題ヲ議スルニ當リマシ
テハ只今大河內子爵モ申サレマシタ如ク
極メテ愼重ナル態度ヲ取ラナケレバナラナ
イノデアリマス、殊ニ昨今ノ如ク國際間ノ
經濟狀態ノ變化ガ極メテ多イ此時期ニ際シ
マシテハ、輕ミシク處理スベキ問題デハナイ
ト存ズルノデアリマス、此點ニ付キマシテ
大河內子爵ハ總理大臣ニ御尋ネデアッタノ
デアリマシテ總理大臣ハ關稅調査會ニ付
シテ愼重ニ審議シタト御答ヘニナッタノデ
アリマス、併シ私ノ聊カ承知シテ居ル所ニ
於テハ、關稅調査委員會ハ議會ノ開會時
期前卽チ先月ノ二十日デアッタカト存ジマ
スカ、タッタ一囘開カレテ居ルノデアリマ
ス、而シテ其一囘開カレタ調査委員會ニ於
テ斯カル大問題ガ卽決サレタノデアリマ
ス、無論其以前ニ於テ政府當局ニ於カレマ
シテハ、此問題ニ付テ愼重ニ審査ニハナッテ
居ルコトトハ考ヘマスルケレドモ、事實ハ
囘ノ關稅調査委員會ニ於テ之ヲ難ナク議了
シテ居ルノデアリマス、先年、大正十五年
ト記憶イタシマスガ、一般關稅ノ改正ヲ企
テラレマシタ時ニ於テハ、今囘ノ改正ヨリモ
ソレハ一般デアリマスルカラ非常ニ範圍ハ
廣イノデアリマス、其時ニ於キマシテハ此
貴族院ノ諸公ノ中ニモソレニ參加サレタ方
ガ澤山アッタカト記憶イタシテ居リマスガ、
長キ時日ノ間愼重ニ愼重ヲ重ネテ審議サレ
テ居ルノデアリマス、殊ニ現下產業ノ不振、
失業問題ノヤカマシキ此時ニ於キマシテ
ハ斯カル國民經濟ニ大影響ヲ及ボシマス
所ノ問題極メテ愼重ニ審議サレムコトヲ望
ム譯デアリマス、大河內子爵ハ斯カル短期
ノ臨時議會ニ於テ、急イデ之ヲ審議サレル
コトニ付テ御非難的ナ御質問ガゴザイマシ
タヤウデゴザイマスルガ、私ハ全然御同感
デアリマス、政府御當局ノ御說明ニ依リマ
スレバ、今度ノ改正ハ收入主義ニアラズシ
テ、產業ノ振興ニアルノデアル、是デ以テ
我帝國ノ產業ヲ開發スルノニ資スルノデア
ルト云フ御說明デアルヤウデアリマス、果シ
テ政府ノ御考ヘニナッテ居ルガ如ク斯カル
急激ニ又多額ノ增額ヲ突如トシテ爲サルル上
ニ於テ、其產業振興ノ目的ヲ達シ得ラレル
ヤ否ヤハ私ハ大イニ疑フノデアリマス、產
業ノ振興ノ要諦ト致シマシテハ、何ト申シ
マシテモ生產費ノ低下ヲ圖ル外ニナイト存
ジマス、而シテ輸出ヲ盛ンナラシムルニ歸結
ハアラウト思フノデアリマス、殊ニ我帝國
ノ如キ工業ノ原料ノ乏シキ國ニ於キマシテ
ハ此生產費ノ低下中、原料ニ屬スルモノ
ノ價格ヲバ出來ルダケ低下スルコトニ努メ
ナケレバナラヌノデアリマス、然ルニ今囘
從量稅ヲバ爲替相場ノ變動カラト云フコト
ニ依リマシテ、突如トシテ三割五分增加サ
ルル案デアルヤウデアリマス、而シテ此從
量稅ガ三割五分增加サルルト申シマス其法
律案ノ文句ヲ見テ見マスルト云フト、一齊
ニ從量稅ニ對シテハ三割五分增加スル、併
シ其次ニ羅列シテアル品目ニ對シテハ此限
リニアラズト書イテアルノデアリマシテ、
此處ニ羅列サレテ居リマスル其品目ハ關稅
ヲ上ゲナイノデアルカト思ッテ居リマスル
ト云フト、關稅定率法ノ所ニ至リマシテ、
三割五分トコロデハナイノデアリマス、モッ
トモット上ルノデアリマス、只今大河內子爵
ガ例ニ取ラレテ御話ニナリマシタ銑鐵ノ如
キハ現今百斤ニ付テ十錢ノ關稅ガ掛クテ
居ルモノガ、之ガ突如トシテ百斤ニ付テ三十
六錢課スルコトニナルノデアリマス、二十
六割ノ增加額ニナルノデアリマス、デ此三
割五分ノ增加ト云フコトニ付キマシテノ基
礎ハ何處ニアルノデアルカト云フコトヲ衆
議院デモ質問ガアッタヤウデアリマシテ、速
記錄ニ於テ聊カ承知シテ居リマスルガ、政
府御當局ノ御答辯ハ先ヅ此邊ガ適當ト思ッ
タト云フ位ナ御答辯ニ過ギナイヤウデアリ
VV、先程モ大藏大臣カラノ御答辯ニ爲替
相場ガ變動ヲシタガ爲ニ、先ヅ三割五分位
ナ所ガ適當デアラウト云フ御說明デアッタ
ヤウニ私議席カラ伺ッタノデアリマス、併シ
爲替相場ダケヲ基礎トスベキデナクシテ、
物價ノ高下ヲモ考ヘナケレバナラヌノデア
ラウト思ヒマス、先程大藏大臣ハ現行ノ從
量稅率ヲ決メタ時代ニハ、爲替相場ガ四十
八九弗デアッタ時代デアル、ソレガ昨今デハ
三十三弗位デアルト云フコトデアッテ、單
ニ爲替相場ニ基礎ヲ置イタヤウナ御話デ
アッタノデアリマスケレドモ、モウ一ツ考ヘ
ナケレバナラヌ大キナ玆ニ一ツノ狀況ハ、物
價ノ指數デアルト思ヒマス、其當時設定サ
レマシタ時ノ物價ト、現今ノ物價トヲ比較
シテ見マスレバ現今ノ物價ノ指數ハ、當
時カラ見レバ四割位下落シテ居ルノヂヤナ
イカト思ハレルノデアリマス、然ラバ此物
價ノ指數ヲバ何故御考慮ニ入レテオ出デニ
ナラヌノデアルカ、爲替相場ノ下落ト云フ
コトハ、又一方カラ申セバ、是ハ物價ガ、輸
入物價ノ向上カラシテ、自然ニ保護サレテ
居ルト云フ見方モ出來ルノデアリマス、ソ
レニ加フルニ物價ガ下,テ居リマスナラバ
從量稅ニ關スル限リハ是ハ非常ナ保護ヲ
モウ旣ニ受ケテ居ルト言ッソテ宜シイノデア
リマス、其上ニマダ三割五分、一度ニ三割
五分上ゲナケレバナラヌト云フコトガチヨッ
ト解シニクイノデアリマス、是ハドウ御說
明下サイマスカ知レマセヌガ、此點ニ付キ
マシテ大藏當局ノ御說明ヲ煩ハシタイト思
フノデアリマス、今ヤ我國ノ產業界ハソレ
コソ技術其他經營ノ方面ニ於キマシテモ、
全然堅實ナ發達ヲ遂ゲツツアルト云フコト
ハ事實ニ徵シテ見エルノデアリマス、從
來我國カラシテ外國ニ輸出セラルルモノハ
嗜好品デアルトカ、或ハ贅澤品デアルトカ
云ッタヤウナモノガ其對象デアッタ所ガ、近
頃ハソレコソ所謂近世工業ノ產物ガ諸外國
ニマデ輸出サレル氣運ニ向イテ來タノデア
リマス、例ヘテ申シマスレバ鐵類ノ製品デ
アリマス、其中デ近頃最モ著シク感ゼラレ
ルノハ機械類デアリマス、尙ホ水道鐵管ノ
如キ、是ガ南洋方面ハモウ既ニ輸出サレテ
居ルノデアリマスガ、尙ホ進ンデ極ク最近
ノ話デアリマスガ、歐羅巴カラモ註文ヲ受
ケテ、大阪方面ノ鐵工業者ハ水道鐵管ヲ歐
洲マデ輸出スルニ至ッタト云フ話モ聞イテ
居ルノデアリマス、現ニ輸出表ヲ見マシテ
モ、鐵製品ノ輸出ハ最近二千三百万圓ナリ
四百万圓位ニ達シテ居ルト存ジマス、四番
目カソコラニ當クテ居ルヤウニ存ズルノデ
アリマス、此矢先キニ持ッテ來マシテ、突如
トシテ此三割五分ノ一般ニ從量稅ヲ上ゲ、
殊ニ銑鐵ノ如キ二十六割モ增加スルト云フ
コトハ、折角其〓ニ就カムトスル我國ノ輸
出工業ニ對シテ、非常ナ打擊ヲ與ヘルモノ
デハナイカト思フノデアリマス、現ニ極メ
テ堅實ナル發達ノ途中ニアリマス所ノ諸機
械工業、是ガ何ト申シマシテモ、今囘ノ鐵
關稅ノ結果非常ナ打擊ヲ被ルコトハ爭ハレ
ナイ事實デアルノデアリマス、併シ一方ニ
於テ銑鐵ノ關稅ヲ上ゲナケレバ、日本ノ製
鐵業ガ滅ビルト云フ位ニ仰セニナルノデア
リマスガ、此鐵關稅ノ値上ノ結果、是カラ
シテ利益ヲ得ルモノト、又之ニ依フテ迷惑
ヲ感ズル者トガドノ位アルカト云フテ考ヘ
テ見マスルト云フト是ハ比較ニナラヌ位
迷惑スル者ガ多イノデアリマス、銑。鐵製
造業者ト云フモノハ是ハ極ク數ニ於
テハ少イノデアリマス、或ハ是迄投下シ
タ資本ニ於テハ可ナリナモノヲ使シ
居ルカモ知レマセヌガ、其數ニ於テハ極メ
テ少イノデアリマス、又ソレニ從來イタシ
テ居リマスル職工等ニ至リマシテモ、是ハ
比較ニナラヌ位少イノデアリマス、ソレハ
其筈デアルノデアリマス、鐵工業者ハ是
ハ全國ニ亙フテ廣ク散布サレテ居ルノデア
リマシテ、小ハ田舍ノ鍛冶屋ヨリ、大ハ大造
船所ノ經營ニ至ル迄、鐵ヲ用ヒザルモノハ
ナイノデアリマシテ、此鐵ノ値上ガリ程此
方面ニ打擊ヲ與フル大ナルモノハナイト申
シテ宜カラウト存ズルノデアリマス、併シ
其銑鐵ノ工業ハ、是ハ國家ノ重要工業トシ
テ、是ハ是非存置シナケレバナラヌコトハ
申ス迄モナイノデアリマス、此點ヨリ致シ
マシテ、政府ハ製鐵ニ關スル保護ニ付テハ
至レリ盡セリデアルノデアリマス、現ニ銑
鐵業者ハ奬勵金ヲ受ケテ居ルノデアリマ
ス、一噸生產スルニ付テ五圓位ノ奬勵金ヲ
政府カラ頂戴シテ居ルノデアリマス、其外
ニ今囘尙ホ一噸ニ付テ······百斤ニ付デ三十
六錢デアリマスルカラ、一噸ニ付テ六圓ニ
先ヅ當ル譯デアリマス、サウ致シマスト銑
鐵業者ガ一噸ノ銑鐵ヲ製造シマスト云フト、
國家カラ之ニ對シテ十圓ト云フ非常ナ多額
ナ保護奬勵ヲ受ケテ居ル形ニナルノデアリ
マス、玆ニ於テ少シク數字ニ亙ッテ御質問シ
ナケレバナラヌノデアリマスルケレドモ、
此席ニ於テ管ミシク生產費ガドウデアルト
云フヤウナコトニ付テノ數字ノ御質問ハ、
御聽苦シイダラウト思ヒマスルカラ、是ハ
他ノ機會ニ讓リマシテ此處デハ申上ゲマセ
ヌ、ケレドモ斯カル多額ノ保護奬勵ヲ要ス
ル程ニ、日本ノ製鐵業ガ幼稚デアルトハ考
ヘナイノデアリマス、斯カル多額ノ、奬勵
金ヲ多額ニ要サナケレバナラナイト云フノ
ハ是ハ先程大河內子爵カラモ仰セニナリ
マシタ如ク、我國ニ於ケル製銑業ガ戰爭直
後ニ於テ、或ハ戰爭中ニ於テ極メテ物價ノ
高カリシ其當時ニ於テ設立サレタ、其設備
ヲ以テ經營セムトスルカラ、斯カル無理ガ
生ズルノデアラウト思フノデアリマス、今
全ク白紙ノ上ニ於テ、新ニ製鐵所ヲ設立ス
ルト致シマスレバ、斯カル多額ノ費用ヲ要
スルコトハ萬々ナイト私ハ信ジマス、ソコ
デ。先程大河內子爵ガ商工大臣ニ御尋ネニナ
リマシタヤウニ、此問題ハ先以テ現在我國
ニ現存シテ居ル製鐵業者ノ合理化ヲ行ヒ、
尙ホ必要ナラバ資本ノ切下ゲナリ合同
ナリ行ッテ、然ル後ニ國家ノ保護ヲ要求スベ
キデナイカト云フ御議論ハ、是ハ商工大臣
モ御認メニナッテ居ル通リ、其通リデアラウ
ト思フノデアリマス、然ルニ今囘此關稅定
率ノ增額案ガ突如トシテ議會ニ出マシテ
最早既ニ衆議院ヲ通ノテ貴族院ニ來テ居ル
ノヂアリマシテ、我ミト致シマシテハ誠エ
取扱ヒニクイ問題ニナッテ居ルノデアリマ
ス、併シ斯カル、製鐵業ノ基礎ガ斯カル狀況
ニアル其矢先キニ於テ、此處ニ提案サレテ
居リマスルヤウナ關稅ヲ上ゲタトテモ、果
シテ其目的ガ達シ得ラレルヤ否ヤト云フコ
トニ付テモ、亦聊カ疑問ヲ殘スノデアリマ
ス、商工大臣ハ徹底的ニ合理化ヲ行フ此
議案ガ通過シタ以上ハ製鐵業ニ對シテ徹底
的ニ合理化ヲ行フト云フ御聲明ヲ遊バシタ
サウデアリマス、ケレドモ又一方カラ考へ
テ見マスルニ、現在ノモノヲ考慮サレテソ
レヲ整理サレタ所デ、斯カル多額ノ奬勵金
竝ニ關稅ヲ、ソレガ半減スルト云フヤウナ
風ニ考ヘラレ得ルノデアリマセウカ、或ハ
三分ノ一ニ減ルノデアルト云フコトモ考ヘ
ラレルデアリマセウカ、此點ニ付テ現在ノ
保護金ガ多額デアリマスノデ、之ヲ徹底的
ニ整理スルトハ仰セラレマスルケレドモ、
然カナサレテモ此保護金ガサウ急激ニ減少
シ得ルモノデアルトモ考ヘラレナイノデア
リマスルガ、其點ニ付キマシテノ御考ヲ
承ハルコトガ出來マスルナラバ、誠ニ幸ヒ
ト存ズルノデアリマス、今囘ノ關稅ノ値上
ゲハ大河內子爵モ御述べニナリマシタ如
ク二三ノ製銃業者ガ救濟サレルダケニ止
マリハセナイカト云フコトヲ仰セラレタノ
デアリマス、此救濟ト云フコトト國家ノ產
業保護ト云フコトトハ、是ハ申ス迄モナク
全然別ノ立前デ考ヘテ戴カナイト云フト、
殊ニ昨今ノ如キ資本家ニ偏重スルト云ック
ヤウナ、事實ハナクトモ左樣ナ懸念ノアル
場合ニ於テハ是ハ十分ニ考ヘナケレバナ
ラヌコトデアラウト思フノデアリマス、私
ノ記憶スル所ニ依リマスルト云フト先年
產業審議會ナルモノガゴザイマシテ、其審
議會ニ於キマシテモ本間題ガ議セラレマシ
テ、關稅ノ値上ゲト云フコトガ問題ニナッタ
ヤウニ聞イテ居リマス、而シテ其當時ニ於
キマシテノ案ハ、凡ソ額ハシッカリ私ハ記憶
イタシテ居リマセヌケレドモ、凡ソ十圓位
ノ關稅ノ引上ゲヲ一噸ニ付テ致シテ、サウ
シテ是迄與ヘテ居ヲタ所ノ製鐵ノ保護奬勵
金ヲ全廢スルト云フ案デアフタヤウニ考ヘ
テ居リマス、然ルニ今囘ハ其奬勵金ヲモ矢
張リ存置シテ置キ、サウシテ六圓ココニ與
ヘヤウト云フノハ、丁度其產業審議會ノ節
ニ考ヘラレテ居ッタヤウニ、矢張リ銑鐵一噸
ニ付テ凡ソ十圓ノ保護ヲ與、ヘナケレバナラ
ヌト云フコトカラ割出サレテ居ルヤウニ思
ハレルノデアリマス、サウ致シマスト、其
時代ト現今ト何等製鐵業ニ於テ進步ヲ見テ
居ラヌト云フヤウナ結果ニ相成ルノデゴザ
イマスケレドモ、私ノ承知シ居ル範圍ニ
於キマシテハ製銃業ノ技術ハ其當時ヨリ
遙ニ進步イタシテ、生產費ガ安ク出來得ル
ヤウニナッテ居ルト思ヒマス、然ルニモ拘ラ
ズ、矢張リ其當時ト全體ニ於テ同額ノ獎勵
金ト申シマスカ、關稅ト奬勵金ト加へマス
ト、其當時考ヘラレテ居ノタ所ノ額ト同樣ノ
モノガ要ルト云フコトハ如何ニモ不審ニ
堪ヘナイヤウナ感ジガ致スノデアリマス
此點ニ付キマシテ、當局ハ如何御考ヘニナノ
テ居リマスカ、是モ伺フコトガ出來レバ結
構ダト思ヒマス、其他尙此細目ニ渉ッテ承リ
タイコトモ澤山ゴザイマス、澤山ゴザイマ
スルガ、此本會議ノ席上ニ於テ左樣ナコト
ヲ承ルコトハ煩ニ堪ヘマセヌカラ、他ノ機
會ニ讓ルコトト致シマスガ、一ツ茲ニ伺フテ
見タイノハ、日本人ガ海外ニ於テ經營シテ
居リマスル其生產品ガ、國家的樞要ナモノ
デアル場合ニ於テハ、ソレヲ單ニ外國品ト
云フ立場カラシテ、外國品視スルト云フコ
トガ善イカ惡イカト云フコトデアルノデア
リマス、ト云フコトハ具體的ニ申シテ見
マスレバ、印度銑デアルノデアリマス、印
度銑ハ御承知デアラウト思ヒマスルガ、是
ハ一部日本人ノ投資シテ居ルモノガアルノ
デアリマス、ト云フノハ内地ノ工業原料
ノ最モ大事ナモノデアル銑鐵ヲ安ク印度カ
ラ入レルト云フ目的デヤッタモノダラウト
思ヒマス、所謂邦人ノ海外投資ト申ス事業
ノ一ツダラウト思ヒマス是ハ不必要ノモ
ノモアルカモ存ジマセヌケレドモ必要ナ
工業原料、殊ニ我國ノ如キ工業原料ノ乏シ
キ國ニ於テハ寧ロ奬勵スベキ事業デアル
カモ知レヌト存ズルノデアリマス、以上ノ
見地カラ申シマスルト、內地ノ銑鐵業者ハ
印度銑ヲバイツデモ目ノ敵ニ言ヒマスルケ
レドモ、又見方ニ依フテハ左樣ニ敵視スベキ
デモナイヤウニ考ヘルノデアリマス殊ニ
先程大河內子爵ノ申サレタル如ク、滿蒙ニ
於ケル我ガ邦人ノ經營ニ係ルモノデアッテ
而モ昨今滿洲ノ資源開發ト云フ聲ノ最モ高
調サレテ來テ居ル此時ニ際シテ、之ヲ阻害
スルヤウナ方策、是ハ餘程考ヘナケレバナ
ラヌコトデアラウカト思ヒマス、滿洲ノ資
源ヲ開發スルト云フコトハ我國ノ生命線
ノ第一線デアルトサヘ言ハレテ居ル位デア
ルノニ滿洲ニ於ケル邦人經營ノ此產物
ヲバ、內地へ入レルコトヲムツカシクスル
ヤウナ傾ノアルモノハ是ハ大ニ考慮シナ
ケレバナラヌノデハナイカト考ヘマス此
點ニ付キマシテ先刻大河内子爵カラ御尋ネ
ニナッタノデアリマスルガ、マダ滿洲ニ對ス
ル日本ノ大方針ト云フモノガ十分定ッテ居
ラヌト云フヤウナコトヲ承ッタノデアリマ
スルケレドモ、此點ハ十分御考ヘニナッテ處
理サレムコトヲ希望シテ置クノデアリマ
入、是ハ質問デハゴザイマセヌケレドモ、
序ナガラ申述べタ次第デアリマス、私ノ御
問ヒ致ス所ノ要點ハ、大藏當局ニ對シマシ
テハ、此三割五分ト云フコトハ、何故三割
五分ナノデアルカト云フコト、其質問ノ理
由ニ付キマシテハ、申述ベタ通リデアリマ
スルシ、又商工關係ノ當局ニ對シテハ私
ノ申述ベタ點ノ最モ要用ナ點ハ、製鐵業ノ
整理ヲ思ヒ切ッテ御ヤリニナルト云フコト
デアルガ、左樣爲サレタナラバ、今囘御決
メニナッタヤウナ、現今定メラレテ居ルヤウ
ナ非常ニ重イ國家的ノ保護ハ、取ラレテモ
宜シイヤウニ相成リマスカ、一言ニシテ申
セバソコノ點ガ一番大事ナ點デアルト思ヒ
マス
〔國務大臣高橋是〓君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00719320611&spkNum=27
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028・高橋是清
○國務大臣(高橋是〓君) 只今御尋ノ、何
故從量稅ヲ三割五分ト決メタカト云フ御尋
デアル、先刻モアラマシ其理由ハ申述ベタ
積リデアリマスガ、其從量稅ヲ定メマシタ
時ノ爲替相場ハ、我國ノ紙幣ガ亞米利加ノ
弗ニ對シテ百圓ガ四十八弗ニ當ッテ居ッタ時
ニ定メタノデ、此海關稅ナルモノハ一體言
フト、紙幣デナク邦貨デ取ルノガ當リ前ダ
ト私ハ考ヘテ居ルノデス、其時ノ我ガ紙幣
ガ亞米利加ノ弗ニ對シテ四十八九弗······
百圓ノ紙幣ガ四十八九弗ノ値ヲシテ居フ
タモノガ、今日ハ三十二弗ノ値ニナッタ、
シテ見レバ爲替相場ガ下アタ爲ニ從量稅
ハ元納メタ稅カラ見ルト云フト輕クナッ
〃、三割五分ダケ輕クナッタ、斯ウ云フコ
トニ考ヘラレルノデアリマス、ソレ故ニ三
割五分ヲ增加スル、元ノ稅ノ三割五分
ヲ增加スル、斯ウ云フコトニ決メタノ
デアリマス、而シテ前ニ申シマス通リ、之
ヲ決メルニ付キマシテハ、唯爲替相場ガ
三割五分下ッテ居ルカラ、ソレダケヲト云フ
意味ニ非ズシテ、其輸入品ノ價ヲモ考慮シ
テ三割五分ト云フコトニ決メタノデアリマ
ス、ソレカラ調査會ノコトノ御話ガアッタ
ノデアリマスガ、是ハ御承知ノ通リ、我國
ニ於テハ常設ノ關稅調査委員ト云フモノガ
存在シテ居ルノデアリマス、而シテ其委員
ナル方ミノ中ニハ、平常其職務上ニ於テ我
國ノ產業ヲ保護スル、助長スルト云フコト
ヲ念トシテ調査ヲセラレテ居ル官吏モ尠カ
ラズ居ルノデアリマス、旣ニ常設ノ委員ト
爲ラレテアル方ミハ······此關稅問題ハ、決
定スル迄ニ隨分長ク世上ニハ問題トナッテ
新聞等ニモ現ハレタノデアリマス、金再禁
止以來、昨年ノ十二月以來爲替相場ガ下リ
マシタニ付テ、關稅ヲ動カス必要アリト云
フコトハ一般ニ認メラレテ居ッタノデアリ
マス、ソレ故ニ成程調査委員會ヲ開キマシ
タノハ一日デアッタカモ知レマセヌガ、其委
員タル諸君ハ前申ス通リ常職トシテ常ニサ
ウ云フ事ヲ考慮〓究サレテ居ル方と、又常識
ニ非ズトモ世間ニ關稅問題ガ左樣ニ唱ヘラ
V、現ハレタ以上ハ矢張リ相當御〓究ヲ爲
サッテ居ッタコトダト私ナドハ考ヘルノデア
リマス、ソレ故ニ其調査中ノ時間、時日ト
云フモノハ相當ニ掛リマシタ、又交渉スル
所モ多方面ニ亙ッテ居ルノデアリマス、ソレ
デ此如何ナル品物ヲ保護シタラ宜イカ、保
護スルナラバドウシタラ宜イカ、サウ云フ
コトニ付キマシテハ關係ノ省ニ於テ專ラ調
ベルコトデアリマシテ、大藏當局トシテハ
其意見ニ重キヲ置ク譯デアリマス、唯大藏
當局トシマシテハ物ノ稅ガ上レバ、或八
其物ガ名前ノ變ヲタ品物ニナ〃デ居ル等ノ關
係ナドヲ能ク調ベルニ過ギナイノデアリマ
ス、サウ云フ譯デアリマスカラシテ、唯常
設委員ノ集ッタ會議デアリマスカラ、如何ニ
モ會議ノ時間カラ申シマシタラ、或ハ日數
カラ申シマシタラバ、短期ノ間ニ、咄嗟ノ
間ニ決メタヤウニ見エマスケレドモ、事實
ハ左樣ニ簡單ニ是ガ決ヲタモノデナイト云
フコトダケヲ玆ニ申上ゲテ置キマス
〔國務天臣男爵中島久萬吉君演壇ニ登
ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00719320611&spkNum=28
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029・中島久萬吉
○國務大臣(男爵中島久萬吉君) 斯波男爵
ノ私ノ所管事項ニ關ジマスル御質問ハ可ナ
リ多岐ニ亙ッテ居ルヤウニ拜聽イタシマシ
タガ、主ナル點ハ、今囘ノ關稅引上等ニ依
ル卽チ我國ノ銑鐵事業ニ對スル國家的保護
ガ極メテ厚イ、寧ロ厚キニ過グル、此國家ノ
恩典ニ報イルガ爲ニ當局者ハ製銑業者ニ對
シテ極力生產費ノ合理的引下ヲ圖ラシメ、
此生產費ノ合理的引下ヲ行ヒマシテ、出來
ルナラバ今囘ノ關稅引上等ニ依リマスル銑
鐵業ノ寧ロ厚キニ過ギル國家的保護ヲ空シ
ウセシムル程度ニ內容ノ整理ヲ圖ラシムル
コトガ出來ルカドウカ、ト云フコトニ付テ
ノ御尋ヲ最モ重シト拜聽イタシマシタガ、
私モ自分ノ力ヲ揣ラズシテ、敢テ當業者ニ
對シテ其内容ノ整理ヲ圖ラシムル努力ノ結
果ガ果シテ那邊ニ及プベキヤト云フコトニ
付テハ、甚ダ微力ヲ歎ゼザルヲ得ナイノデ
アリマスルケレドモ、昨日衆議院ノ委員會
ニ於テ聲明ヲ致シマシタル通リ、極力斯業
ノ合理化ニ向ヒマシテハ微力ナガラ其力ヲ
十分ニ致シテ見タイト思ウテ居ル譯デアリ
マシテ、其事ニ付キマシテハ自然斯波男爵
ノ如キ專門家ノ御力ニ依ラザルヲ得ナイト
存ジマスルカラ、ドウカ私ノ志ヲ諒トセラ
レマシテ、御鼎力ヲ賜ランコトヲ希望イタ
ス次第デアリマス、尙ホ製銑業ト鐵加工業
トノ關係ニ付テモ御論及ニ相成リマシタ通
リ此銑鐵業ガ鐵加工業ノ基礎的工業デア
リマスルカラ、此銑鐵業ニ對スル關稅引上
ノ結果、鐵加工業ガ之ニ依フテ打擊ヲ受クル
ガ如キコトハ固ヨリ避ケナケレバナラヌト
思フノデアリマス、併ナガラ大體ノ上カラ
申シマセウナラバ、此兩者ノ關係ハ須ラク
共存共榮ノ觀念ヲ基礎トシテ考慮イタスベ
キモノデアリマシテ、本邦製銑業ノ現狀竝
ニ銑鐵市價ノ實際ヲ無視イタシマシテ、專
ラ鐵加工業ノ爲ノミヲ圖リマスル考ハ國家
ノ上カラ考ヘマシテ、或ハ危險デハナカラ
ウカト云フヤウナ考ヲ持ッテ居ル次第デア
リマス、殊ニ男傳ハ鐵加工品ノ輸出ニ對ズ
ル關係ニ付テ御心配ニ相成リマシタ樣デア
リマスルガ、私ヲ以テ之ヲ見レバ、畢竟原
料ノ生產者ナリ、又ハ輸入業者ナリノ負擔
ニ於テ、或ハ原料安値ヲ賴ミト致シマスル
工業ノ基礎ハ決シテ安固デハアリ得ナイ道
理デアリマシテ、現ニ製鐵一般ノ事業ノ上
カラ致シマシテモ、是ガ基礎產業デアリマ
スル所ノ製銑業ト、之ヲ原料ト致シマスル
鐵加工業トノ關係ハ、此鐵加工品ノ輸出關
係ニ於テモ、亦共存共榮ノ基礎ノ上ニ立タ
ネバナラヌト信ズル譯デアリマス、尙モウ
一點御論及ニ相成リマシタ所ハ、先年產業
審議會ニ於テ此問題ガ討議セラレマシタ場
合ニ、種々ナル問題ガ自カラ議ニ上ック譯
デアリマスルガ、爾來銑鐵業ノ生產能率ハ
向上イタシマシテ、先程私ガ申上ゲマシタ通
ニ、當時ト今日トヲ比較イタシマスルト、銑鐵
業生產能率ハ固ヨリ同日ノ談デハナイノデ
アリマス、從ノテ今囘改メテ斯ノ如キ關稅ノ
引上ヲ行フコトガ、製銑業ノ生產能率ノ上
カラ見マシテ、或ハ不當ニアラズヤト云フ
ヤウナ御考ノ起リマスルコトモ固ヨリデゴ
ザイマスルケレドモ、今囘銑鐵ニ對スル關
稅引上ノ原因ハ、所謂市價經濟ノ關係ニ出
發イタシタモノデアリマシテ、銑鐵ノ最近
ニ於ケル市價ヲ見マスルノニ、昭和五年
年初ニ於テハ、四十二三圓デアリマシタガ、
年末ニ至リマシテ、是ガ三十二三圓ト下落
ヲ致シマシタ、更ニ昭和六年ノ九月卽チ英
國ガ金ノ停止ヲ致シマシタ直前ニ於テハ、
更ニ下リマシテ二十五圓內外デアリマシタ
ト思ヒマス、然ルニ英吉利ノ金禁止ノ結果
ヲ受ケマシテ、十一二月ノ頃ニ是ガ二十二
圓ト下落イタシマシテ、僅ニ十二月卽チ我
國ガ金ノ再禁止ヲ致シマシタ結果ト致シマ
シテ、初メテ六年九月卽チ英國ガ金ノ停止
ヲ致シマシタ直前ノ相場ニ戾ッタト云フノ
ガ卽チ現狀デアルノデアリマシテ、此市價
ニ對シマシテ銑鐵事業ガ受ケマスル脅威ヲ
除クガ爲ノ關稅引上デアルノデアリマスル
カラ、當時審議會ノ時ニ色々御審議ニ相成
リマシタル銑鐵業ノ生產能率ノ關係ト離レ
テ.別途ニ御考ヲ煩シタイ次第デアルノデ
アリマス、印度ニ對スル我ガ商人ノ投資關
係ニ付テカラ、延イテ印度銑ヲ斯程ニ敵扱
ヒニセナイデモ宜イデハナイカト云フノデ
アリマシタガ、是ハ印度銑ノ不當競爭ト云
フコトニ對シマシテハ、獨リ我國ノミナラ
ズ、英吉利ニ於テモ、亞米利加ニ於テモ、
非常格別ノ手段ヲ執リマシテ、之ガ防遏ニ
努メテ居ル現狀デゴザイマシテ、獨リ我國
ノミ印度銑ニ對シテ敵意ヲ挾ンデ居ルト云
フ譯デハナイノデゴザイマス、此點モ御了
解ヲ戴キタイト存ジマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00719320611&spkNum=29
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030・斯波忠三郎
○男爵斯波忠三郞君 大體御說明ヲ得マシ
タノデゴザイマスガ、次ニ承クテ見タイコ
トガ殘フテ居リマスカラ御許シヲ願ヒマス、
宜シウゴザイマスカ、此席ヨリ宜シウゴザ
イマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00719320611&spkNum=30
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031・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 宜シウゴザイマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00719320611&spkNum=31
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032・斯波忠三郎
○男爵斯波忠三郞君 大藏大臣ハ三割五分
ト云フコトヲ極メラレタノハ、爲替相場ノ
變動ニ基イテ極メラレタ、尙其外ニ事情ヲ
考慮シタト云フ御答辯デアッタト拜聽イタ
シタノデアリマス、私ガ御尋ネ申上ゲタノ
ハ、爲替相場ノ變動ノ外ニ、尙此稅率ヲ御
極メニナル上ニ於テ、物價ノ變動ト云フコ
トヲ十分ニ御考慮ニナッタカドウカ、變動ト
申シマスヨリモ現行稅率ガ定メラレマシタ
當時ニ比ベマスレバ、現今ノ物價ハ非常ニ
下ヲテ居ルノデアル、然ラバ現ニ從量稅デア
ルモノニ非常ナ保護ニナル譯デアルガ、ソ
レヲ御考慮ニナッタカ否カト云フコトヲ御
尋ネシタノデアリマス、併シ其點ハ爲替相
場共他ヲ考慮シタ、其他ノ中ニ入ッテ居ルノ
カモ知レマセヌケレドモ、其他ヲ御考慮ナ
スッタノニシテハ、如何ニモ其影響ガ稅率ノ
上ニ於テ見エナイヤウニ考ヘラレルノデア
リマス、其點ヲ御尋シタノデアリマス、尙
ホ御答辯ヲ伺ヘレバ結構ダト思ヒマス
〔國務大臣高橋是〓君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00719320611&spkNum=32
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033・高橋是清
○國務大臣(高橋是清君) 御答イタシマス、
總ジテ今般ノ稅率ヲ上ボセマシタノハ第
一番ニ先ヅ爲替相場ト云フモノニ重キヲ置
イタノデアル、ソレカラアトハ矢張リ物價
ノ方ニモ考慮ヲシテサウシテ定メタノデア
リマシテ、唯單ニ爲替相場ダケト云フ意味
デハアリマセヌノデアリマス、左樣御承知
ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00719320611&spkNum=33
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034・斯波忠三郎
○男爵斯波忠三郞君 只今ノ御答辯ニ付キ
マシテハ、是以上御問ハ致シマセヌ、又外
ノ機會ニ讓ルコトニ致シマス、商工大臣ハ
私ノ質問ニ對シマシテ懇切ニ御答辯ヲ下
サッタコトヲ感謝イタシマスガ、是マデ我
國ノ鐵工業者、其他造船業者、是ハ鐵工業
者ノ中カモ知レマセヌガ、兎ニ角鐵ヲ原料
トシテ經營イタシテ居リマスル諸工業者
ハ暫ク鐵ノ方ニ付テハ我慢ヲスルト云フ
立場デ來テ居ルノデアラウト思ヒマス、ド
ウシテモ是ハ未來永劫國家ガ多額ノ保護ヲ
シ、指針ヲ示シ、尙ホ關稅デ以テドウシテ
モ保護セナケレバナラヌト云フ工業デア,
タナラバ、是ハ根本的ニ此問題ヲ考慮シナ
ケレバナラヌ問題デアラウト思ヒマス、保
護ヲ必要トスルト云フコトハ、將來保護ノ
要ラナイ時代ガ來ルト云フコトヲ期待シテ
ノ我慢デアラウト考へテ居リマス、中島商
工大臣ハ大變强イ御決心デ以テ內地製鐵業
ヲ整理シ、合理化シテ此目的ニ適ハシメル
ト云フ御精神デアリマスルコトハ誠ニ結構
デアリマスルカラ、是以上御尋スルコトハ
尙細目ニ涉ッテノ御尋デアリマスカラ、是モ
他ノ機會ニ讓リマシテ、私ノ質問ハ是デ一
應打切ルコトト致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00719320611&spkNum=34
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035・大河内輝耕
○子爵大河原輝耕君 先程ノ質問ヲ一ツ補ッ
テ置キタイ、先刻商工大臣ノ御答デハ、滿
洲ノコトハ拓務大臣ガ宜シクヤルカラト云
フコトニ伺ッタノデアリマス、私ノ伺ヲタ趣
旨ハサウデハナイノデアリマス、滿洲ノ鐵
ノ生產ガ、例ヘバ今ノ三十五万噸ガ五十万
噸ニナルカ、六十万噸ニナルカ、分ラナイ、
斯ウ云フヤウナ事ニナレバ、ソレガ內地ハ
製鐵業ニ影響ヲ及ボシテ來ヤウカラ、滿洲
ノ製鐵ノ政策ガ確立シタ場合ハ、更ニ廣ク
申セバ滿洲政策ガ確立シタ場合ニハ、此關
稅率ハ更ニイヂラナケレバナラナイコトニ
ナルカドウカト云フコトト假ニソレヲイヂ
ラナケレバナラヌト云フヤウナコトナラ
バ、ソレ迄此改正ハ御見合セニナッタラドウ
カト云フコトヲ申スノデ、其コトヲ伺ッタ譯
ナンデス、此意味ヲ農林大臣ニモ伺フタノデ
アリマス
〔國務大臣男爵中島久萬吉君演壇ニ登
ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00719320611&spkNum=35
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036・中島久萬吉
○國務大臣(男爵中島久萬吉君) 大河內子
爵ノ重ネテノ御尋デゴザイマスガ、此滿洲
ト內地トノ此經濟關係ニ付キマシテハ、單
ニ製鐵事業ノ關係ニ止マラズシテ、其他一
般產業ニ亙リマシテ、所謂極東經濟、「ブロ
ツク」經濟ノ見地カラ考へテ見ナケレバナ
ラヌ點ガ、多々アラウト思ヒマス、從フテ只
今仰セニ相成リマシタ點モ、自然極東、「ブ
ロツク」經濟ノ見地カラ考ヘナケレバナラ
ヌ日ガ、近ク參ラウト思ッテ居リマス、今囘
ノ關稅引上ハ、先程モ申上ゲマシタ通リ、
印度銑ノ脅威ニ對スル當面ノ事情ニ對處
スルノミノ考慮ニ發シタモノデアリマス
カラ、他日ノ事情ニ對處イタシマシテハ、
又他日ノ考ヲ必要トスルノデアラウト存ジ
マス
〔國務大臣後藤文夫君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00719320611&spkNum=36
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037・後藤文夫
○國務大臣(後藤文夫君) 滿洲ト我國トノ
經濟ノ關係ヲ見マシテ、關稅ノ點ニ考慮ヲ
加ヘルト云フコトハ、必要ナコトデアルト
思ヒマス、殊ニ今後、滿洲ニ於ケル各種ノ
事柄ガ進展シテ參リマシテ、又將來ノ產業
ノ發達ノ事情ニ依リマシテ、色々ナ點ニ關
稅ノ問題ハ考慮ヲ要スルコトガ出來テ來ル
ダラウト豫想シテ居リマス、サウ云フ積リ
デ居リマス、以上御了承ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00719320611&spkNum=37
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038・東園基光
○子爵東園基光君 只今議題トナリマシタ
三案ハ、何レモ重要ナル案ト認メマスルニ
依リマシテ、議長指名十八名ノ委員ニ付託
セラレムコトヲ望ミマス、右動議ヲ提出イ
タシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00719320611&spkNum=38
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039・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00719320611&spkNum=39
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040・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 東園子爵ノ動議
ニ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00719320611&spkNum=40
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041・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認
メマス、特別委員ノ氏名ヲ、書記官ヲシテ
朗讀ヲ致サセマス
〔瀨古書記官朗讀〕
關稅定率法中改正法律案外二件特別委員
公爵一條實孝君侯爵德川義親君
伯爵兒玉秀雄君子爵井上匡四郞君
子爵片桐貞央君犬塚勝太郞君
男爵斯波忠三郞君森賢吾君
男爵赤松範一君男爵松岡均平君
內藤久寛君稻畑勝太郞君
森平兵衞君大川平三郞君
田村新吉君藤原銀次郞君
菅澤重雄君北村宗四郞君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00719320611&spkNum=41
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042・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 日程第四、造幣
局資金拂出ニ關スル法律案、政府提出、衆
議院送付、第一讀會
造幣局資金拂出ニ關スル法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議
院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和七年六月十日
衆議院議長秋田〓
貴族院議長介爵徳川家達殿
造幣局資金拂出ニ關スル法律案
政府ハ造幣局資金トシテ保有スル銀地金
ノ內五萬貫ヲ限リ當該資金ヨリ之ヲ拂出
スコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ拂出シタル銀地金ハ支
那在留邦人ノ事業復興資金トシテ貸付ク
ルコトヲ得
第一項ノ規定ニ依リ拂出シタル銀地金ハ
拂出シノ日ヨリ五年以內ニ一般會計ノ負
擔ニ於テ之ヲ補塡スベシ
附則
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
〔政時委員瀧正雄君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00719320611&spkNum=42
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043・瀧正雄
○政府委員(瀧正雄君) 造幣局資金拂出ニ
關スル法律案提出ノ理由ヲ說明申上ゲマ
ス、支那ニ在留スル邦人ハ、昨年來ノ政變
ノ影響ヲ受ケマシテ、事業ノ經營ガ甚シク
困難又ハ不能ニ陷リマシテ、何レモ極度ノ
窮迫ニ頻シテ居リマス、之ヲ此儘ニ抛置イ
タシマシタナラバ、多年刻苦精勵ノ結果築
キ上ゲマシク所ノ邦人ノ經濟的地步ガ破壞
セラルル虞ガ大ナルモノガアルノデアリマ
ス、仍テ政府ハ造幣局資金トシテ保有イタ
シテ居リマスル所ノ、銀ノ地金五万貫、時
價約五百万圓ヲ拂出シ、之ヲ前述ノ在支邦人
事業復興ノ爲メ貸付ケルト云フコトガ適當
ト認メマシテ、本法律案ヲ提出イタシマシ
タ次第デアリマス、何卒速ニ御審議ノ上御
協贊アラムコトヲ御願スル次第デゴザイマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00719320611&spkNum=43
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044・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 本案ハ昭和七年
法律第一號中改正法律案外五件ノ特別委員
ニ付託イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00719320611&spkNum=44
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045・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 日程第五、市町
村義務〓育費國庫負擔法第三條ノ特例ニ關
スル法律案、政府提出、衆議院送付、第一
讀會ノ續、委員長報告、副委員長東園子爵
市町村義務〓育費國庫負擔法第三條ノ
特例ニ關スル法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報告候也
昭和七年六月十日
副委員長子爵東園基光
貴族院議長公爵德川家達殿
〔子爵東園基光君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00719320611&spkNum=45
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046・東園基光
○子爵東國基光君 只今議題ニナリマシタ
市町村義務〓育費國庫負擔法第三條ノ特例
ニ關シマスル法律案ノ特別委員會ノ經過竝
ニ結果ヲ申上ゲマス、是ハ市町村ノ廢置分
合又ハ境界ノ變更ノアリマシタ場合ニ、主
務大臣ハ勅令ノ定ムル所ニ依リマシテ、市
町村義務〓育費國庫負擔法ノ第三條ノ規定
ノ適用ニ付キマシテ、期間ヲ定メテ特例ヲ
開キマスル所ノ法案デアリマス、是ハ一昨
日竝ニ昨日ノ二日間委員會ヲ開キマシテ、
規定ノ通リソレ〓〓正副委員長ノ選擧ヲ終
リ續イテ質問ヲ致シマシタ譯デアリマス
ガ、是ハ御承知ノ通リ從來ト雖モ市町村ノ
廢置分合ノアリマシタコトハナイデハゴザ
イマセヌガ、今囘御承知ノ通リ東京市ニ於
キマシテ隣接五郡八十二箇町村ガ本年ノ十
月一日ヨリ合併ニナリマスノデアリマス、
此爲ニ從來御承知ノ通リ國庫負擔法ニ依リマ
シテ、町村ノ國庫ヨリ交付ヲ受ケマスル所ノ
金額ハ市ノ受ケマスルヨリモ多イノデア
リマス、是ガ今囘市ニ編入ニナリマスルヤ
ウナコトニナリマスルト、市ハ當然市ノ受
ケマスル所ノ率ニ依リマシテ交付セラレマ.
スルト、其差額ニ於テ夥シイ負擔ヲ增加ス
ルノデアリマス、右樣ノ理由ヨリ其負擔ヲ
俄ニ激增セシメナイコトト、其他此自治體
ノ財政上ノ紛レヲ防ギマスル爲ニ、其緩和
ノ目的ヲ以テ此特例ヲ設ケラレタノデアリ
マス、第一ニ此委員會ニ於キマシテ或委員
ノ質問イタシマシタコトハ、此特例ヲ設ケ
マシタ爲ニ東京市ノ負擔ガ幾ラ助カルノデ
アルカ、卽チ言ヒ換レバ特例ガナカッタナ
ラバ、無イ時ニハ幾ラデアッタノデアルカ
ト云フヤウナ問ヒガアリマシタノデアリマ
ス之ニ對シマシテ政府委員ヨリ從來町村
デアリマスルガ故ニ交付サレテ居リマシタ
所ノ、所謂負擔法ノ第三條ノ後段ノ交付金
ハ九十八万一千三百六十一一圓ト斯ウ云フ額
ニナッテ居リマス、又特別ノ町村ト致シマシ
テ增額交付ヲ受ケテ居リマシタ、負擔法卽
チ第五條ノ交付金ノ方ハ十万四千二百十七
圓餘ト云フコトニナッテ居リマス、從ヒマシ
テ此東京市ニ今度入リマスル所ノ町村ガ市
ト云フ冠ヲ被リマセヌデ、町村ト云フ方ニ
ナッテ居リマシタ時ニ、郡ニ居リマシタ時
ニ、百八万五千五百七十九圓ト云フモノヲ
減ゼラルト云フコトニナルノデアリマス、
サウ云フヤウナ譯デアリマスルカラシテ、
只今特例ガアリマセヌト突然東京市ノ負擔
ハ斯カル增額ヲ起シマスノデ、今囘ノ特例
ノ設ケラレマシタ一ツノ例デアリマス、又
第二ニ此東京市ノ隣接町村ノ合併ニ伴ヒマ
シテ、此特別ノ法案ニ依リマシテ交付金ヲ
東京市ニ交付シマスル場合ト、交付セナイ
場合トニ依リマシテ、關係ノ市町村民ノ負
擔ノ樣子ハドウ云フヤウニナルカト云フヤ
ウナ質問ニ對シマシテハ、政府委員ヨリノ答
ニ依リマスルト、此東京市域ノ擴張ト同時
ニ、御承知ノ通リ東京市ニハ市郡聯帶ト三
部ノ制ニナッテ居リマスガ、其三部制ヲ廢止
シマス場合ニ於キマシテ、一戶當リノ負擔ガ
元ノ東京市ノ市、其方ハ編入前ニ於キマシテ
ハ六十六圓五十九錢六厘、大層組カクアリ
マスガサウ云フコトニナッテ居リマス、編入
後ニナリマスルト七十一圓八十三錢四厘ト
云フコトニナリマシテ、差引キ五圓二十三
錢八厘ト云フモノガ增スノデアリマス、是
レ卽チ町村ノモノガ新ニ入リマスカラ斯ウ
云フ形ニナリマス、又今ノ五郡ノ方ノ合併
サレマス八十二箇町村ノ方ノ狀況ヲ見マス
ルト東京市ニ入リマセヌ前ニ於キマシテ
ハ三十四圓三十四錢八厘、斯ウ云フ負擔ニ
ナッテ居リマスルガ東京ノ市域ニ入リマシ
テ、率ガ同一率ニ計算サレマスルノデ、是
ガ編入後ニハ減リマシテ二十九圓七十二錢
厘卽チ差引キ四圓六十二錢六厘ト云フ
モノハ減ズルノデアリマス、是ハ今囘ノ此交
付金ノ特例ヲ考慮イタシマセヌ場合デアリ
マスノデ、若シ此特例ノ法案ガ決定イタシ
マスルナラバ、此交付金ヲ受クルモノト致
シマシテ、一戶ノ當リガ先刻中上ゲマシタ
六十六圓五十九錢六厘、ソレガ編入後ニ於
テモ七十一圓八十三錢四厘ト云フコトヲ申
上ゲマシタガ、ソレガ編入後ニ七十圓四十
錢四厘、卽チ差引三圓八十錢八厘ト云フ增
加ニ止マルノデアリマス、從ヒマシテ此法
律案ノ制定ニ依リマシテハ、舊市域バ一戶
當リガ一圓四十三錢ヲ、前ニ計算イタツマ
シタノヨリハ減ジマシテ、又郡部ノ方ノ八
十二箇町村ノ方ニ於キマシテハ編入前ガ三
十四圓三十四錢八厘ト申上ゲマシタガ、是
ハ編入後ニ於キマシテ二十九圓十錢四厘ト
云フコトニ相成リマシテ、差引五圓二十四
錢四厘ヲ減少シマス、從テ此法律ノ制定ニ
依リマスト郡部ハ二段ノ減少ヲセラレマシ
テ、又更ニ六十一錢七厘ト云フモノヲ減少
スルコトニナルノデアリマス、此樣ナ答辯
ガゴザイマシタ、又次ニ此國庫負擔法ハ元
來前ニ申上ゲマシタ通リ市ニ輕ク町村ニ重
イト云フコトガ精神ニナッテ居リマスルノ
デ、從テ之ニ依リマスルト市ニ對シマスル
交付金ハ暫定的ト思ハレル、是ハ凡ソドノ
位マデ續クモノデアルカ、ト云フヤウナ問
ガゴザイマシタ、之ニ對シマシテ政府委員
ヨリハ期間ハ大體十箇年トスル、是ハ其間
ニ逐次遞減ヲシテ交付金額ヲ定メル、斯ウ
云フヤウナ返事デアリマシタ、又或委員ハ
此特別ニ交付金ヲ受ケマスル爲ニ、負擔法
ノ第四條ノ規定ニ依リマスル特別市ニ對シ
マスル國庫交付金額ガ增加イタシマシテ、
其結果、他ノ町村ノミニ交付シマスル金額
ガソレダケ減少スルヤウニナリハシナイカ、
之ヲ避ケルニ付テハドウデアルカト云フヤ
ウナ問ニ對シマシテハ、政府委員ヨリハ、
此法案ニ依リマシテ現在ノ町村ニ交付シマ
スル國庫支出金ガ減少シマス場合ハ卽チ二
ツアルソレハ國庫負擔法ノ第四條ノ關係
ニ付キマシテ特別市ニ對シマスル交付金ガ
增加スル場合ト、卽チ今ノヤウナ場合、又
國庫交付金ノ配當ノ基礎ニナリマスル〓員
ノ數、又兒童數ノ增加ト云フヤウナ場合
ガアリマスノデ、是等ニ對シマシテハ適
當ニ斟酌シテ、現在町村ノ受ケテ居ル
交付金ニ減少ヲ生ゼシメナイヤウニスル、
斯ウ云フ御話ガアリマシタ、然ラバ其適當
ニ之ヲ斟酌スルト云フヤウナ御話デアル
ガ、之ニ對シテハドウ云フヤウナ計算ニナ
ルカト云フ問ニ對シマシテ、當局ヨリハ、
勅令ノ規定ニ之ヲ入レラレマシテ、國庫交
付金ノ配當基礎ニナッテ居リマスル〓員數
及就學兒童數等ニ、百分ノ百乃至百分ノ十
ヲ乘ズルコトニ依フテ之ヲ斟酌スルコトガ
出來ル、斯ウ云フヤウナ御答デアリマシタ
尙ホ本問題ニ直接ハ關係イタシマセヌデゴ
ザイマスルガ、委員ノ或一人ヨリ此義務〓
育國庫負擔ハ全體、全部ヲ負擔セラルベキ
理想ノモノデアル、斯ウ云フコトニ付テ當
局ハ考慮シテ居ルコトハナイカ、又若シ全
部ガムヅカシイトスルナラバ、少クモ〓員
俸給ダケハ悉ク國庫デ負擔スベキモノデア
ル、之ニ對スル考ヘハ如何、又ソレモ全部
ガムヅカシイトシタナラバ、今マデノ負擔
ノ······今マデノ交付ト致シテモ、ソレヲ特
別會計ニスル所ノ意思アリヤ否ヤ、此ヤウ
ナ點ニ付キマシテ非常ニ御熱心ナル質疑ガ
アリマシタノデアリマス、之ニ對シマシテ
ハ政府委員ニ於カレマシテモ、深ク考慮セ
ラレマシテ十分ナル〓究ヲ致シタイト云フ
ヤウナ意味ノ答ガアリマシタ譯デアリマ
ス是ハ重要ナル質問ト存ジマスルノデ玆
ニ附加ヘマシテ御報〓イタシマス、右ノヤ
ウナ次第デ討議ニ移リマシタガ、何等本案
ニ對シマスル異議モゴザイマセズ、採決ニ
至リマシテ滿場一致ヲ以テ本案ヲ原案ニ決
定イタシマシタ次第デアリマス、此段御報
告申上ゲマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00719320611&spkNum=46
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047・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 本案ノ第二讀會
ヲ開クコトニ御異議ゴザイマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00719320611&spkNum=47
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048・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナシト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00719320611&spkNum=48
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049・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直ニ本案ノ第二讀會
ヲ開カレムコトヲ希望イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00719320611&spkNum=49
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050・植村家治
○子爵植村家治君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00719320611&spkNum=50
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051・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 西大路子爵ノ動
議ニ御異議ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00719320611&spkNum=51
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052・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 御異議ナシト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00719320611&spkNum=52
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053・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 本案全部ヲ議題
ニ供シマス、全部御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00719320611&spkNum=53
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054・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00719320611&spkNum=54
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055・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直ニ本案ノ第三讀會
ヲ開カレムコトヲ希望イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00719320611&spkNum=55
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056・植村家治
○子爵植村家治君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00719320611&spkNum=56
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057・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 西大路子爵ノ動
議ニ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00719320611&spkNum=57
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058・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00719320611&spkNum=58
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059・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 第二讀會ノ決議
通リデ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00719320611&spkNum=59
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060・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00719320611&spkNum=60
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061・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 本日古島一雄君
ヨリ病氣ニ付キ、昭和七年法律第一號中改
正法律案外六件特別委員ノ辭任ノ申出ガゴ
ザイマシタ、許可スルコトニ御異存ゴザイ
マセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00719320611&spkNum=61
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062・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認
メマス、補闕トシテ山上岩二君ヲ指名イタ
シマス、書記官ヲシテ報告ヲ致サセマス
〔瀨古書記官朗讀〕
本日委員會ニ於テ當選シタル正副委員長ノ
氏名左ノ如シ
兌換銀行劵條例中改正法律案特別委員會
委員長伯爵林博太郞君
副委員長石塚英藏君
昭和七年法律第一號中改正法律案特別委
員會
委員長子爵前田利定君
副委員長木村〓四郞君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00719320611&spkNum=62
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063・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 次ノ議事日程ハ
本院彙報ヲ以テ御通知ニ及ビマス、本日ハ
是ニテ散會イタシマス
午後零時二十三分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00719320611&spkNum=63
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