1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和七年六月十四日(火曜日)午前十時八分開議
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議事日程 第九號
昭和七年六月十四日
午前十時開議
第一 柳河軌道株式會社所屬軌道補償の爲公債發行に關する法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第二 兌換銀行券條例中改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第三 日本銀行納付金法案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第四 日本銀行參與會法案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第五 資本逃避防止法案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第六 昭和七年法律第一號中改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第七 昭和七年度一般會計歳出の財源に充つる爲公債發行に關する法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第八 行政整理又は軍備整理に際し退官退職したる者等に交付する公債發行に關する法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第九 昭和七年度以降國債償還資金の繰入一部停止に關する法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第十 國債の價額計算に關する法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第十一 恩給の減額補給及停止に關する法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第十二 絲價安定融資擔保生絲買收法案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第十三 絲價安定融資損失善後處理法案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第十四 造幣局資金拂出に關する法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00919320614&spkNum=0
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001・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 是ヨリ書記官ヲ
シテ諸般ノ報告ヲ致サセマス
〔小林書記官朗讀〕
昨十三日本院ニ於テ可決シタル左ノ政府提
出案ハ卽日裁可ヲ奏請シ又可決ノ旨ヲ衆議
院ニ通知セリ
遠洋漁業奬勵法中改正法律案
同日本院ニ於テ可決シタル左ノ衆議院提出
案ハ卽日裁可ヲ奏請シ又可決ノ旨ヲ衆議院
ニ通知セリ
大正十二年法律第五十一一號中改正法律案
同日本院ニ於テ採擇スルコトヲ議決シタル
北陸線鐵道金澤、東海道線織道大垣兩驛間
鐵道速成ノ請願外二十五件ノ請願ハ各、意
見書ヲ附シ卽日之ヲ政府ニ送付セリ
同日委員長ヨリ左ノ報〓書ヲ提出セリ
柳河軌道株式會社所屬軌道補償ノ爲公債
發行ニ關スル法律案可決報〓書
兌換銀行劵條例中改正法律案可決報告書
日本銀行納付金法案可決報告書
日本銀行參與會法案可決報告書
資本逃避防止法案可決報〓書
昭和七年法律第一號中改正法律案可決報
〓書
昭和七年度一般會計歲出ノ財源ニ充ツル
爲公債發行ニ關スル法律案可決報告書
行政整理又ハ軍備整理ニ際シ退官退職シ
タル者等ニ交付スル公債發行ニ關スル法
律案可決報〓書
昭和七年度以降國債償還資金ノ繰入一部
停止ニ關スル法律案可決報〓書
國債ノ價額計算ニ關スル法律案可決報〓
書
恩給ノ減額補給及停止ニ關スル法律案可
決報〓書
絲價安定融資擔保生絲買收法案可決報〓
書
絲價安定融資損失處理法案可決報〓書
造幣局資金拂出ニ關スル法律案可決報告
書発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00919320614&spkNum=1
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002・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 是ヨリ本日ノ會
議ヲ開キマス、口程第一、柳河軌道株式會
社所屬軌道補償ノ爲公債發行ニ關スル法律
案、政府提出、衆議院送付、第一讀會ノ續、
委員長報告、侯爵德川賴貞君
柳河軌道株式會社所屬軌道補償ノ爲公
債發行ニ關スル法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報〓候也
昭和七年六月十三日
委員長侯爵德川賴貞
貴族院議長公爵德川家達殿
〔侯爵徳川賴貞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00919320614&spkNum=2
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003・徳川頼貞
○侯爵德川賴貞君 柳河軌道株式會社所屬
軌道補償ノ爲公債發行ニ關スル法律案ヲ、
審議イタシマシタ特別委員會ノ經過竝ニ結
果ヲ御報告申上ゲマス、本案ハ去ル十日委
員付託以來、翌十一日鐵道大臣ヨリ提案理
由ノ說明ヲ聽取シ、爾後實情竝ニ算定基礎
等ニ關シマシテ質問應答ヲ重ネ、愼重審議
ノ結果、昨十三日全會一致ヲ以テ原案通リ
可決イタシマシタ右御報〓申上ゲマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00919320614&spkNum=3
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004・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 本案ノ第二讀會
ヲ開クニ御異存ゴザイマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00919320614&spkNum=4
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005・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00919320614&spkNum=5
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006・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直ニ本案ノ第二讀會
ヲ開カレムコトヲ希望イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00919320614&spkNum=6
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007・植村家治
○子爵植村家治君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00919320614&spkNum=7
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008・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 西大路子爵ノ動
議ニ御異存ゴザイマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00919320614&spkNum=8
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009・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00919320614&spkNum=9
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010・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 原案ニ御異存ゴ
ザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00919320614&spkNum=10
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011・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイモノ
ト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00919320614&spkNum=11
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012・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直ニ本案ノ第三讀會
ヲ開カレムコトヲ希望イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00919320614&spkNum=12
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013・植村家治
○子爵植村家治君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00919320614&spkNum=13
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014・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 西大路子爵ノ動
議ニ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00919320614&spkNum=14
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015・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00919320614&spkNum=15
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016・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 第二讀會ノ決議
ノ通リデ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00919320614&spkNum=16
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017・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00919320614&spkNum=17
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018・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 日程第二、兌換
銀行劵條例中改正法律案、第三、日本銀行
納付金法案第四、日本銀行參與會法案第五、
資本逃避防止法案、政府提出、衆議院送
付第一讀會ノ續、委員長報告、伯爵林博
太郞君
兌換銀行劵條例中改正法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報告候也
昭和七年六月十三日
委員長伯爵林博太郞
貴族院議長公爵德川家達殿
日本銀行納付金法案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報〓候也
昭和七年六月十三日
委員長伯爵林博太郞
貴族院議長公爵徳川家達殿
日本銀行參與會法案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報告候也
昭和七年六月十三日
委員長伯爵林博太郞
貴族院議長公爵德川家達殿
資本逃避防止法案
右可決スヘキモノナリト決議セリ依テ及
報〓候也
昭和七年六月十三日
委員長伯爵林博太郞
貴族院議長公爵徳川家達殿
〔伯爵林博太郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00919320614&spkNum=18
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019・林博太郎
○伯爵林博太郞君 只今日程ニ上ボリマシ
タ兌換銀行劵條例中改正法律案外三件ニ付
キマシテノ、特別委員會ノ經過竝ニ結果ヲ
御報〓イタシマス、特別委員會ハ、十一日
竝ニ昨日ノ二日間愼重ニ本問題ニ付キマシ
テ審議ヲ致シマシタ、時日切迫ノ際デゴザ
イマスカラ、成ルベク簡單ニ御說明ヲ致シ
タイト思フノデアリマス、第一ニ兌換銀行
劵條例中改正法律案ニ付キマシテハ是ハ
兌換銀行劵ノ保證發行限度ヲ十億圓ニ擴張
イタシマス、同時ニ制限外發行ノ制度ヲ今
迄ヨリハ緩ヤカニ致シマシテ、十五日ヲ超
エタ制限外發行ダケニ大藏大臣ノ許可ヲ要
スルコトトシテ、之ニ對スル課稅率モ現行
ノ年五分以上トアリマスルノヲ年三分以上ニ
低下セシメムトスルノデアリマス、正シイ
所ノ取引ニ必要ナ通貨ノ供給ヲ圓滑ナラシ
ムル爲メ、且ツ我國產業ノ振興ヲ圖ル爲ニ、金
融ノ基調ヲ作ラムトスルノデアリマス、第
二ニ、日本銀行納付金法案ハ是ハ元來ハ
日本銀行ノ利益ハ國家カラ付與サレタ特權
ガアリマス、竝ニ特權的地位ニ基イテ相當
大ナルモノガアルノデアリマスルシ、今囘
ハ第一ニ兌換銀行劵條例中改正法律案デ申
上ゲマシタ通リノコトニナリマスルト、中
中利益ガ上ガッテ來マスノデアリマス、其利
益ヲ基準ト致シマシテ一定ノ部分ヲ政府ニ
納付サセルト云フコトガ適當ナコトデア
ル、卽チ日本銀行ノ利益分配ヲ衡平ノ原則
ニ從ハシメマシテ、其納付額ヲ日本銀行ノ
利益ニ適應シテ、多イ時ハ多イヤウニ之ヲ
納メシムルト云フダケデナク、今囘兌換銀
行劵條例ガ改正サレマスル結果、只今申上ゲ
マシタ通リ色ミ利益ノ增大ニナルコトデア
リマス關係上、之ヲ適當ニ調節スルト云フ
コトガ必要ニナリマス、サウ云フ意味デ是
ハ立案サレテ居ルノデアリマス、所デ一億
二千万圓ノ發行額ガ俄ニ十億圓ニナルコト
デアリマス尤モ之ニ付キマシテハ今迄
デモ四億ノ正貨準備ニ對シマシテ十二億位
ノ通貨ハ常ニ過去ニ於テ存在シテ居ルノデ
アリマスカラ、元來ガ八億内外ノモノハ常
ニ流通サレテ居ルノデアリマス、ソレヲ今
囘十億ニスルト云フコトハ必ズシモ一足飛
デハナイト云フヤウナ政府ノ說明ハアルノ
デアリマスルガ、兎ニ角一億二千万圓ノガ
十億ニナッタト云フコトハ相當ニ今日ノ時
局ニ於キマシテハ、金融ノ膨脹ヲ來スモノ
ト見ナケレバナラナイト思フノデアリマ
ス、從テ之ガ運用如何ト云フコトハ重大ナ
モノデアリマス、且ツ此銀行ノ統制ヲ圖ルト
云フコトノ上カラ申シマシテモ、是ハ重要
ナコトデアルト思フノデアリマス、此金融
統制ニ資スルト共ニ、日本銀行ノ機能ヲ、我
ガ經濟界ノ現況ニ徵シテ一層發揮セシメム
トスルト云フ政府ノ說明デアリマス、第四
ニハ、資本逃避防止法案、是ハ御承知ノ如ク
我國ノ平價ガ段々下落イタシマシテ、爲替
ノ暴落ニ伴ッテ海外ニ、或ハ弗買其他ニ於キ
マシテ資本ヲ送金スルト云フ傾向ガ相當ニ
盛ンニナッテ來タノヲ、之ヲ先以テ防止シナ
ケレバナラナイト云フ所ノ精神カラ起ッテ
來タコトハ御承知ノ通リデアリマス昨
年ノ英國ノ金本位離脫後ニ於キマシテ、殊
ニ此傾向ガ顯著トナッテ參リマシテ、我ガ外
債市價ノ外國ニ於ケル暴落ニ伴ッテ之ニ投
資ガ行ハレテ來マシテ、將來ニ於テモ通貨
ノ增發、其結果トシテ圓ノ價格ガ低落ガア
ルダラウト云フコトヲ見込ンデ、更ニ此傾
向ガ著シクナリハシナイカト云フコトヲ考
ヘラレルノデアリマス、依テ此取締ヲ嚴ニ
ナシマシテ、必要ナ我國ノ資本ヲ國外ニ失
ハナイヤウニシタイト云フ、是ハ尤モナ案
デアルノデアリマス、斯ウ云フ工合ニ致シ
マシテ、以上ノ四ツノ改正案ト云フモノハ
是ハ金再禁止後ノ經濟的狀況ニ鑑ミマシテ、
必要ナル諸對策ノ金融的基調ヲ作ル爲ニ必
要デアルノデアリマス、之ニ付キマシテ質
問應答竝ニ討論ノ狀況ヲ申上ゲテ見タイノ
デアリマスルガ、其要點ダケヲ今日ハ申上
ゲテ置キタイト思フノデアリマス、兎ニ角
一億二千万圓ガ十億ニ膨脹スルト云フコト
ニ付キマシテハ色ミ濫用モ起ルデアリマ
セウシ、又俄ニ資本ガ流レルノデアリマス
カラシテ、ソレヲ見越シテ或ハ株ヲ買フト
カ云フヤウナ投機的ノ方面ニ人心ガ走ルト
云フ惧レガアル、依テ此運用ニ付テハドウ
云フ風ナ考デアルカト云フコトハ是ハ成
程一番今囘ノ質問ニ於キマシテ重大ナモノ
デアルト私ハ考ヘルノデアリマス、桐生、
足利ノ織物業ニ於キマシテモ、又ハ各地方
ニ於ケル農村ノ疲弊ニ鑑ミテ見マシテモ、
ウッカリ資本家ガ金ヲ貸ス、銀行家ガ金ヲ貸
シテモ取レル見込ガナイ、囘收ノ見込ガナ
イ、又借リル方カラ言ヒマシテモ、借リテ
米ヲ作リ、或ハ借リテ織物ヲ作リマシテモ、
返ス見込ガナイト云フ有樣デ實際行詰ッテ
居ルノダ、此行詰リノ時ニ際シテ唯金融バ
カリヲ付ケタ所デ、其方策宜シキヲ得ザレ
バ其金ノ流レ出ル方面ガ或ハ投機ノ方向
ニ行クトカ、不健全ノ方向ニ行クノミデ
テップト一向ニ折角金融ノ基調ヲ付ケルト
云ッテモ其效果ガ現ハレナイヂヤナイカト
云フ質問ハ、私ハ御尤モナ質問デアルト思
フノデアリマス、特ニ大藏大臣ノ出席ヲ求
メマシテ、之ニ付テノ答辯ガアッタノデア
リマス、藏相ハ總テ金融ト云フモノハ自然
ノ調節ニ俟ツト云フノガ標準デアル、農村
ニ於テ例ヘテ見ルナラバ、米ヲ作レバ引合
フト云フコトニナレバ、農民ハ作ッテ之ヲ利
用スルコトニナル、其際ニハ金モ十億出ル
コトデアルカラ金利モ安クナル、金利ガ安
クナレバ低利ノ金ヲ農村ノ小作人ガ有利
ニ之ヲ借リルコトガ出來ル、又一方ニ米價
調節ノ機關モアルシ、金ガ殖エレバ、物價
ガ上ルノデアルカラ米ガ上ル、サウスレバ
作ッテ引合フト云フコトハ、米價ノ儘ニ賣リ
マシテモ、多少農村ニ餘裕ガ出來ル、餘裕
ガ出來レバ其金ヲ以テ購買力ニ代ヘルコ
トガ出來ルト云フヤウナ譯デ、要スルニ國
民ニ購買力ヲ付ケルト云フ方法ヲ講ズルト
云フコトガ、最モ適切ナノデアルト云フヤ
ウナ意味ノ調節ニ依ッテヤラナケレバナラ
ナイト云フ答辯ガアッタノデアマリス、又日
本人ノ方面ノミカラ申シマスレバ、海外ニ
資本ノ逃避ヲ避ケルト云フコトハ出來ルカ
モ知レナイガ、外國ノ方ニ本店ヲ有スル外
國ノ店ガ日本ニ支店ヲ持テ居ル場合ニ、
是ガ逃避ヲ避ケルト云フコトハ困難ヂヤナ
カラウカ、ソレカラ外國ニアル日本ノ會社
ガ財政ガドウモ困難デアルカラ、資本ヲ注
ギ込マナケレバナラヌ、裏面ニ於テ外國デ
色ミナ品物ヲ買ッテ置キナガラ、算盤ガ合ハ
ナイカラト云フノデ、資本ヲ增資スル意味
デ以テ內地カラ送金シタ場合ニハドウナ
ルト云フヤウナ質問ガアッタノデアリマス、
是ニハ矢張リ領事其他ノ調査ニ依リマシ
テ、出來ルダケ監督ヲシテヤルト云フコト
デアリマス、ナカナカ困難ナ場合ガ起ルカ
モ知レナイケレドモ、出來ルダケ之ニ付テ
ハ調査ヲシテ其弊害ノナイヤウニシタイト
云フヤウナ答辯モアリマシタ、又參與會ヲ
作ル、此參與會ヲ作ルト云フト、日本銀行
ノ總裁以外ニ五人ノ參與會員ト云フモノガ
出來ル譯デアリマス、是ガ今マデノ銀行間
ニ於ケル獨立的ノ行動ヲ調節シテ而シテ
日本銀行竝ニ民間ノ諸銀行トノ間ノ意思ノ
疏通ヲ圖ッテ行クト云フコトガ必要デアル、
ソレガ一ツノ大キナ仕事デアリマスガ又
先程申上ゲマシタ如ク、此十億ノ膨脹シタ
金融ガ弊害ノアルヤウニ向キ易イ場合ガア
ルカラ、ソレガサウ云フコトニナラナイヤ
ウニスルノガ此參與會ノ權威ノアル仕事デ
アル、然ラバ參與會員ト云フモノハドウ云
フ人間ヲ選ブノデアルカ、例ヘバ銀行ノ頭
取ト云フヤウナ人ガ參與會ノ委員ニナルト
云フト、日本銀行ノ金利引下ゲモ直グ分レ
バ電話ヲ掛ケテ株ヲ買フト云フヤウナコ
トガ起リハシナイカ斯ウ云フ風ナ質問モ
アッタノデゴザイマスガ、是ニハ人格ノ崇高
ナル者ヲ選ンデ、我ガ國民ノ多數ノ中カラ
五人ヲ選ブノデアルカラ、立派ナ人ガ選バ
レル、經濟界ノ金融、經濟的方面ノ知識經
驗ニ富ンダ人ヲ選ンデヤルノデアッテ、サウ
シテ之ヲ試驗的ニヤルト云フコトハ決シテ
惡イコトデハナカラウト思フ、ト云フ政府
ノ答辯デアッタノデアリマス、マア色ミ申上
ゲレバ限リハナイノデアリマスケレドモ、
此際ノコトデアリマスカラ其〓況ハ此邊
デ止メテ置キマス、而シテ採決ニ移リマシ
タノデゴザイマスルガ、全會一致ヲ以テ此
四案ハ可決ニ相成リマシタ次第デゴザイマ
ス、併ナガラ之ニ付テ附帶決議ガゴザイマ
スルカラ、之ヲ讀ンデ置キマス
政府ハ本法ノ運用ニ付克ク產業振興上必
要ナル金融ノ疏通ヲ圖ルト共ニ投機思惑
ヲ抑制スルコトニ違算ナキヲ望ム
卽チ本案ハ極メテ重大ナモノデアリマスル
カラ、此運用ヲ誤マルト云フコトニナッタ
ナラバ非常ナ弊害ガ經濟界ニ起ル、從テ
經濟界ニ起レバ思想界ニモ波及シマス此
點ニ付テ十分ニ遺算ノナイヤウニ、而シテ
積極的ニ產業ガ振興スルヤウニ遺算ノナイ
ヤウニ願ヒタイト云フ決議ナンデゴザイマ
ス、尙ホ注意ト致シマシテ、例ノ十五日以
上ニ亙フタ場合ニハ三分以上トナッテ居リマ
ス、從來ハ五分以上ト書イテアリマシタノ
ヲ、今囘ハ三分以上ト云フコトニ低クナフ
タノデアリマス、サウスルト動モスレバ三
分ニ止メルト云フヤウナ傾向ガ起リハシナ
イカト云フ噂ガ世間ニテル、成ルベク金融界
ノ實情ニ應ジマシテ、日本銀行ガ利益ノアフ
タ場合ニハソレ相當ノ課稅ヲ取ルヤウニ
シテ貰ヒタイ、三分以上デアルカラ五分取ッ
テモ八分取ッテモ宜イノデアル、從來ハ大低
五分以上ヲ取ッテ居ッタサウデアルガ其利
益ノ如何ニ鑑ミテ無理ニ三分ニ下ゲルト云
フコトノナイヤウニ注意ヲシテ貰ヒタイ、
政府ハ之ニ付テ全ク同意デアル、其精神デ
ヤルノデアルト云フコトヲ申サレテ居リマ
ス、尙ホ直接ニ本案ニ關係ハアリマセヌケ
レドモ、其精神カラ見テ我ミガ心配スル點
ガアルノデアリマス、今ヤ思想ニ經濟ニ國
難ガ來ッテ居リマス、殊ニ財政上ニ付キマ
シテハ注意ヲ怠〓テハナラナイ、今囘ノ農民
救濟等ノ事柄ハ誠ニ已ムヲ得ナイコトデア
リマス、併ナガラ政府ハ國民ノ自發的努力
ヲ促シテ、徒ニ依賴心ニ驅ラレテ政府ニ肉
薄スルコトノナイヤウニシタイモノデア
ル、此點モ十分ニ注意ヲシテ戴キタイト云
フ意見ガ出タノデアリマス、斯ウ云フ意味
ニ於キマシテ本案ハ極メテ重大ナモノデア
リマスルケレドモ、時局ノ上カラ已ムヲ得
ズ行ハナケレバナラナイコトデアル且ツ
是ガ農民ノ救濟竝ニ延イテ工業、商業ノ振
興ニ資スルト云フヤウニシタイモノデアル
ト思フノデアリマス、此意味ニ於キマシテ、
注意スル點ハ十分注意シ、質問スベキ點ハ
十分質問ヲシ、討論ヲ致シマシテ、而シテ
全會一致ヲ以テ可決ニ相成リマシタ次第デ
アリマス、此段御報〓ヲ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00919320614&spkNum=19
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020・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 只今特別委員長
林伯爵ノ、委員會ノ經過結果ヲ報告セラレ
マシタ四案トモ、一括シテ議題トスルコト
ニ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00919320614&spkNum=20
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021・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認
メマス、四案トモ第二讀會ニ移シテ御異存
ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00919320614&spkNum=21
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022・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00919320614&spkNum=22
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023・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直ニ各案ノ第二讀會
ヲ開カレムコトヲ希望イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00919320614&spkNum=23
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024・植村家治
○子爵植村家治君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00919320614&spkNum=24
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025・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 四案ノ第二讀會
ヲ直ニ開クト云フ西大路子爵ノ動議ニ御異
存ゴザイマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00919320614&spkNum=25
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026・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00919320614&spkNum=26
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027・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 四案全部ヲ問題
ニ供シマス、全部原案ニ御異存ゴザイマセ
ヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00919320614&spkNum=27
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028・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00919320614&spkNum=28
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029・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直ニ各案ノ第三讀會
ヲ開カレムコトヲ希望イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00919320614&spkNum=29
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030・植村家治
○子爵植村家治君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00919320614&spkNum=30
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031・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 西大路子爵ノ動
議ニ御異存ゴザイマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00919320614&spkNum=31
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032・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00919320614&spkNum=32
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033・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 各案トモ第二讀
會ノ決議通リデ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00919320614&spkNum=33
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034・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00919320614&spkNum=34
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035・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 日程第六、昭和
七年法律第一號中改正法律案、第七、昭和
七年度一般會計歲出ノ財源ニ充ツル爲公債
發行ニ關スル法律案第八、行政整理又ハ軍
備整理ニ際シ退官退職シタル者等ニ交付ス
ル公債發行ニ關スル法律案、第九、昭和七年
度以降國債償還資金ノ繰入一部停止ニ關ス
ル法律案、第十、國際ノ價額計算ニ關スル
法律案、第十一、恩給ノ減額補給及停止ニ
關スル法律案、第十四、造幣局資金拂出ニ
關スル法律案、政府提出、衆議院送付、第
一讀會ノ續、委員長ノ報告、前田特別委員
長
昭和七年法律第一號中改正法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報告候也
昭和七年六月十三日
委員長子爵前田利定
貴族院議長公爵徳川家達殿
昭和七年度一般會計歲出ノ財源ニ充ツ
ル爲公債發行ニ關スル法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報告候也
昭和七年六月十三日
委員長子爵前田利定
貴族院議長公爵德川家達殿
行政整理又ハ軍備整理ニ際シ退官退職
シタル者等ニ交付スル公債發行ニ關ス
ル法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報〓候也
昭和七年六月十三日
委員長子爵前田利定
貴族院議長公爵德川家達殿
昭和七年度以降國債償還資金ノ繰入一
部停止ニ關スル法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報〓候也
昭和七年六月十三日
委員長子爵前田利定
貴族院議長公爵德川家達殿
國債ノ價額計算ニ關スル法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報〓候也
昭和七年六月十三日
委員長子爵前田利定
貴族院議長公爵徳川家達殿
恩給ノ減額補給及停止ニ關スル法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報告候也
昭和七年六月十三日
委員長子爵前田利定
貴族院議長公爵徳川家達殿
造幣局資金拂出ニ關スル法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報〓候也
昭和七年六月十三日
委員長子爵前田利定
貴族院議長公爵德川家達殿
〔子爵前田利定君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00919320614&spkNum=35
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036・前田利定
○子爵前田利定君 昭和七年法律第一號中
改正法律案外六件ノ審査報告ヲ、便宜上一
括シテ茲ニ御報告ヲ取シマス、是等諸案ニ
付キマシテハ過般堀切政府委員及ビ瀧政府
委員カラ、立案ノ趣旨ニ付キマシテハ詳細
ニ此議場ニ於キマシテ御演述ガゴザイマシ
タカラ
〔副議長公爵近衞文麿君議長席ニ著ク〕
時日切迫ノ際其點ハ省略ヲ致シマス、唯皆
樣方ノ御記憶ヲ喚起スル爲ニ、各案ノ要領
ヲ摘述イタシマシテ御參考ニ供サウト思ヒ
マく、第一ノ昭和七年法律第一號中改正法
律案ハ、是ハ滿洲事變ノ軍事費ノ經費ヲ支辨
イタシマス爲ニ、新ニ公債ヲ一億九千二百
五十万圓增額ヲ致シマシテ發行スル公債法
案デアルノデアリマス、之ニ依リマシテ昭和
七年法律第一號ニ依リマシテ、豫テ協贊ヲ
遂ゲテ居リマスル所ノ費額ト合計イタシマ
スト云フト、本年ノ六月カラ來年ノ一月マ
デ前後合セマシテ二億六千万圓ノ公債發
行高ニナルノデアリマス、第二ノ昭和七年
度一般會計歲出ノ財源ニ充ツル爲公債發行
ニ關スル法律案、是ハ所謂赤字補塡ノ公債
法案デアリマシテ、歲出ノ經費ヲ支辨イタ
シマス爲ニ、歲入ノ缺陷ヲ補塡イタシマシ
テ一億六千六十万圓公債ヲ發行スル案デア
リマス、第三ノ行政整理又ハ軍備整理ニ際
シ退官退職シタル者等ニ交付スル公債發行
ニ關スル法律案、所謂昨年ノ夏ニ退職イタ
シマシタリ退官イタシタリ、ソレ等ノ者ニ
對シマスル交付公債デアリマシテ、其額ハ
二千五百四十万圓デアルノデアリマス、其次
ハ昭和七年度以降國債償還資金ノ繰入一部
停止ニ關スル法律案、本年度ニ於キマシテ
本來ナラバ七千三百万圓餘ノ繰入ヲ爲スベ
キ所ヲ、二千六百八十三万圓ダケ繰入レマ
シテ、其差額ノ四千七百万圓ト云フモノヲ
繰入ヲ停止スルノデアリマス、ソレガ此本
案ノ要領デアリマス、次ニ國債ノ價額計算
ニ關スル法律案、所謂國債優遇法案デアル
ノデアリマス、商法ノ第二十六條ノ規定ニ
依リマスト、各銀行會社其他ニ於キマシテ、
公債ノ價値ヲ財產評價スル場合ニハ其時
價ニ依ラナケレバナラヌノデアリマスケレ
ドモ、此特例ニ依リマシテ標準價格ニ依ッテ
算定シ得ル利便ヲ與ヘタ法案デアルノデア
リマス、次ニハ恩給ノ減額補給及停止ニ關
スル法律案、是ハ退職官ヲ昨年ノ夏イタシ
マシタル者ニ付テノ恩給ハ元來俸給ニ根
源ヲ置クモノデアリマスルカラ、恩給額モ
減俸ニ伴フテ低クスル筈デアルノデアリマ
スケレドモ、昨夏ニ於ケル行政整理ノ一時
的ノ措置ニ基キマシテ減俸イタシマシタ、
ソレニ基ク恩給ノ減額ハ適當ノモノニアラ
ズト云フ政府ノ見解ニ依リマシテ、其差額
ハ恩給デ增額ヲシテ給與シテヤルト云フ法
案デアルノデアリマス、第一點ハソレデア
リマスルガ、第二點ハ〓職員ニ付キマシテ、
一旦辭任ヲ致シマシテ更ニ再任ヲ致シマシ
タ節ニハ、新ニ貰ヒ受ケマス所ノ俸給額ガ、
以前勤メタ時ノ俸給ヨリモ低イ場合ニハ
全部ノ恩給ハ停止セラレマセヌデ、其差額
ダケヲ恩給額ノ中カラ補給ヲシテヤルト云
フ立前ニナッテ居ルノデアリマスケレドモ、
今囘ノ減俸ニ依リマシテ俸給ガ減リマシタ
其差額ヲ、自然ノ法律ノ發動ニ俟チマスト
云フト、他ト權衡上其宜シキヲ得ナイト云
フ所カラ、ソレハ現在ノ儘ニ据置クト云フ
規定デアルノデアリマス、終リニ造幣局資
金拂出ニ關スル法律案、是ハ在上海邦人ノ
事業復興ヲ促進スル爲ニ、造幣局デ保有シ
テ居リマス所ノ銀地金五万貫ヲ、金額ニ換
算シマスルト五百万圓程度ノモノヲ、低資
ヲ以テ融通シヤウト云フ案デアルノデアリ
やく、特別委員會ハ去ル十一日竝ニ昨日開
會ヲ致シマシテ、愼重ニ審議ヲ致シタノデ
アリマス、委員ト大藏大臣トノ間ニ、委員
ト政府委員トノ間ニ質疑應答ガ相當ゴザイ
マシタケレドモ、今之ヲ玆ニ一々御紹介申
上ゲルト云フコトハ、今日ノ場合差控ヘマ
シテ、其主要ナリト認メタモノヲ若干此處
デ御紹介申サウト思フノデアリマス、其
一ツハ一委員ヨリ政府ノ財政上ノ收支ノ均衡
ヲ圖ル上ニ付テノ考へ如何ト云フコトデア
リマシテ、國庫ノ收入ニ缺陷ガアルト云フ
故ヲ以テ、他ニ何等ノ方策ヲ講ゼナイデ、
赤字補塡ノ爲ニ連歲、公債ヲ發行シテ行ク
ト云フヤウナ考ヘデアルノカ、歲計ノ收支
ノ均衡ヲ圖ルニ付テハ借金政策ノ外ニ增
稅ト云フ法ガアル、又政費ノ節減ト云フ法
モアル是等ニ付テ藏相ハ考ヘガナイヤウ
デアル、又夥シキ公債ヲ發行スルニ付テノ
將來ニ於ケル何分ノ考ヘモ持合セガナイヤ
ウデアル、此點ニ付テノ質問ニ對シマシテ、
大藏大臣ハ固ヨリ赤字補塡ノ公債ノ如キモ
ノヲ、繰返スト云フコトハ望マシカラヌコ
トデアル併ナガラ今日ノ場合之ヲ增稅ノ
方面ニ漁ルト云フコトハ實際上不適當ト考
ハ、所謂地方ニ於ケル豪家ト申スベキヤ
ウナモノハ田地田畑山林等ヲ多ク保有シ
テ居ルモノデアル、ソレ等ノ者ガ今日ソレ
等ノ澤山ナル田地田畑山林ヲ持ツガ故ニ、非
常ニ生計ニ困難ヲ感ジテ居ル次第デアル
左樣ナ場合ニ之ヲ直接稅方面ニ漁ルト云フ
コトハ、時機宜シキヲ得ナイノデアラウ、
國民ノ擔稅力ヲ養ハセタ其後ニ於テコソ、
增稅スルト云フコトモ出來ルト考ヘルケレ
ドモ、今日ノ場合其時機ニ非ズト云フ考ヘ
デアル、尙又政費ノ節減ニ付モテ、出來ル
ダケハ豫算編成ノ際ニ、査定ニ査定ヲ重ネ
タ次第デアルガ、何分ニモ國家ノ進運ニ伴。フ
テ已ムニ已マレヌ施設モ新ニ生ジテ來ルヤ
ウナ次第デアルカラ、是レ以上ニ政費ノ節
減ト云フモノモ圖ラレ得ナイノデアル、要
ハ國家ノ產業ヲ振興シテ民力ヲ涵養シテ
而シテ後ニ堅實ナル方策ヲ講ズルヨリ外ニ
途ハナイト信ズルノデアルト云フヤウナ御
答辯デアリマシタ、之ニ對シマシテ質問ノ
委員ハ自分トハ意見ガ相違シテ居ルケレ
ドモ、併シ藏相ノ說明ニ付テハ了解イタシ
タト云フコトデアリマシタ、尙又減債基金
ノ一部繰入レ停止ニ付テ、同委員ハ再ビ質
問シテ申サレルニハ一方ニ巨額ノ公債ヲ
發行スル、其場合ニ僅ニ四千七百万圓ホド
ノ繰入ヲ停止シテ見タ所デ何等ノ效果ガア
ルモノデハナイ
〔議長公爵德川家達君議長席ニ復ス〕
寧ロ成立シテ居ル所ノ法律ノ精神ヲ尊重シ
テ繰入ルベキモノハ繰入レ必要ナル公債
ハ之ヲ起債スルト云フ風ニ致サレタ方ガ公
債ノ信用ヲ保チ、國家ノ信用ヲ保ツ上ニ於
テ······其方ガ宜クハアルマイカトノ質問ガ
アッタノニ對シマシテ、大藏大臣ハ繰入ルベ
キ金額ヲ減少シテ、ソレダケ新ニ起債ヲス
ル所ノ公債額ノ嵩ヲ低メルト云フコトハ自
分トシテハ適當ナル措置デアルト思フノデ
アル、ソレデコソ公債ノ信用ヲ保ツ所以ノ
モノデアルト自分ハ考へテ居ルノデアルト
云フ御答辯デアリマシテ之ニ對シマシテモ
質問委員ハ自分ノ意見ト相違ヲシテ居ルト
云フコトヲ申サレマシタガ、質問ヲ打切リ
ニセラレタノデアリマス、尙ホ此際特ニ皆
樣ノ御聽キニ達シテ置キタイト思ヒマスル
コトハ委員外ノ或一議員ガ此委員會ニ參
ラレマシテ、國債ノ價格算定ニ關スル法律
案ニ付テ政府ノ所見ヲ尋ネタイト思フカラ、
質問ヲ許シテ貰ヒタイト云フ御請求ガアリ
マシテ、委員長ハ特別委員會ニ諮リマシテ
御許シヲ致シタノデアリマスルガ、此一議
員ノ御質問ハ、此法律案ハ商法第二十六條
ノ所謂國債ノ財產價値ヲ評定スル規定ノ特
例デアル、故ニ此特例ヲ設クル上ニ於キマ
シテハ、十分ニ愼重ニ考慮ヲ重ネタ上デシ
ナケレバナラヌコトデアラウト思フト云フ
コトヲ先ヅ以テ前提トサレマシテ、進ンデ
政府ノ行政上ノ監督ノ屆ク所ノ銀行會社、
澤山ナル國債ヲ保有シテ居ル所ノ銀行トカ
生命保險會社ノ如キ政府ノ監督ノ手ノ屆ク
モノニ付テハ此特例ヲ適用シテデモ尙ホ
監督官ニ依ッテ無法ナル所ノ、無理ナル所
ノ決算ヲ議定スルコトモアルマイト思フケ
レドモ、政府ノ眼ノ屆カザル所ノ一般會社
ニ於テ、此特例ヲ惡用シテ本來ナラバ時價
ニ換算スレバ到底利益ヲ生ミ出シ得ナイ
決算デアルニ拘ラズ、偶、此特例ヲ援用ヲ
シテサウシテ利益金ヲ計上シ、世ニ所謂
蛸配當ヲ爲スガ如キコトガアッタナラバ、債
權者保護ノ上ニ大ナル遺憾ガ生ズル次第デ
アル、此點ニ付テハ政府ハ如何ナル考ヲ有
タレルカ、元來ナラバ此法律ニ相當修正ヲ
加フベキノガ適當ト思フケレドモ、ソレハ
致サナイトシテモ、勅令ヲ以テ此特例ヲ行
使スル所ノ範圍ヲ限定スルノ要ガアルデハ
アルマイカト云フ質問ニ對シマシテ、政府
委員ハ銀行保險會社等ノ、政府ノ行政上ノ
監督ノ及バナイヤウナ方面ノ一般會社ニ於
テ、此特例ヲ適用スルガ故ニ、惡弊ヲ生ズ
ルト云フヤウナ會社ハ先ヅアルマイト思
フ、第一ソレ等ノ會社ニ於テハ國債ヲ多額
ニ保有スルト云フコトモ先ヅ稀ノコトデア
ルト思フカラ、左樣ナ虞ハナカラウト思フ、
又政府ニ於テモ此特例ヲ濫用スルト云フコ
トニ付テハ十分ニ是ハ抑制、抑止シナケ
レバナラヌト考ヘテ居ルト云フ答辯デアリ
マシタガ、質問議員ハ更ニ追究サレマシテ、
政府ガ此特例ヲ濫用スルコトニ付テノ抑制
ヲ爲サルト云フケレドモ、ソレハ如何ナル
法律ノ根據ニ基イテ爲サルノデアルカ、苟モ
左樣ナ制限ノ規定ガナイ限リニ於テハ、左
樣ナ會社ニ於テハ自由ニ此特例ヲ援州スル
ト云フコトハ毫末モ差支ナイコトデアッテ、
而シテ危險ハ其處ニ胚胎スルノデハナイカ
ト云フ質疑ヲ重ネラレマシタ、政府委員ニ
於キマシテハ、ソレニ對シテ數囘ニ亙ッテ應
答ヲナサレマシタケレドモ、我ミ特別委員
會ニ出席サレタル委員諸君ニ於カレマシテ
ハ、委員長ト同樣ニ痒イ所ニ手ノ屆カナイヤ
ウナ節ガアッタカノヤウニ考ヘラレタノデ
アリマス、故ニ午後ノ會ノ劈頭ニ大藏大臣
ニ御出ヲ請ヒマシテ、其時ニハ此質問議員
ハ此席上ニハ居ラレマセヌデアリマシタケ
レドモ、同樣ナル趣旨ヲ、皆サンノ御許ヲ
得マシテ委員長カラ御傳ヲシテ、之ニ對ス
ル答辯ヲ求メタノデアリマス、大藏大臣モ
政府委員ノ說明ト略、同樣デアリマシテ、
實際ニ之ヲ運用ノ上ニ於テ、一般會社ガ國
債ヲ多額ニ保有シテ居ノテ、ソレヲ惡用スル
ト云フヤウナ弊ノ生ズルコトハナイト考
ヘルシ又ソレニハ監査役ト云フ機關モア
ルシ、又株主ノ眼モ光ッテ居ルコトデアルカ
ラシテ、左樣ナ欺瞞的行爲ヲシテモ、ソレ
ハ其眞相ハ直キニ看破サレル次第デモアル
カラ、左樣ナ心配ハアルマイ、而シテ一面
ニ於テハ澤山ニ國債ヲ保有シテ居ル所ノ
銀行會社ニ於テハ此特例ニ依ッテ安心シテ
國債ヲ多額ニ保有スルコトモ出來、從テ國
債ノ信用、國債ノ價額ヲ維持スルコトモ出
來テ、國債ガ他ノ有價證劵ノ如クニ投機的
ニ賣買ヲ頻繁ニ繰返サレルト云フヤウナコ
トモナクナッテ、國債トシテノ價額ノ安定ヲ保
ツ次第デモアルノデアルカラ、先ヅ其弊ハ
アルマイト云フコトデアリマシタ、尙ホ申
落シマシタケレドモ其質問議員ノ申サレマ
シタ第二ノ質問ハ、玆ニ破產ニ頻セムトス
ル所ノ會社ガアルトシテ、其會社ノ有フテ居
ル所ノ國債ノ價額ノ算定ノ如何ニ依クテハ
當然ニ破產ニナラナケレバナラナイ會社
ガ、此特例ニ依リ······特例ノ御蔭ニ依ッテ、
之ヲ算定スルト云フト破產シナイノミナラ
ズ、或場合ニハ利益モ生ズルト云フヤウナコ
トガナイトモ言ヘナイ、左樣ナ場合ニ於テ
ハ會社ニ對スル債權者ノ保護ノ上ニ於テ
甚ダ遺憾ナコトデアル、思フニ政府ハ一面
ニ多額ノ國債ヲ保有スル所ノ銀行會社ニ對
シテ、此特例ヲ布クコトニ急ニシテ、斯カ
ル方面ニ對スル所ノ注意ガ缺ケテ居フタノ
デハアルマイカ、ト云フヤウナ質間ヲ御傳
ヲシテ、大藏大臣ノ御答ヲ請フタノデアリマ
スガ、大藏大臣ハ左樣ナコトハ先ヅ無イ
デアラウト云フ御答辯デアリマシタ、而シ
テ質問ハ打切リニナリマシテ、討議ニ入リ
マシタガ、別段是ト云フ各案ニ付キマシテ
意見モ出マセヌデ、各案トモ全會一致ヲ以
テ可決ニ相成ッタ次第デアリマス、但シ國
債······減債基金ノ繰入一部停止ノ法律案ニ
付キマシテハ或一委員ハ元來是ハ自分
ノ意見ト相違ヲシテ居ルノデアルケレド
モ、此際ハ別ニソレニ對シテ異議ハ言ハナ
イト云フコトヲ申サレマシテ所謂消極的
贊成ノ意ヲ示サレタ次第デアッタノデアリ
やっ、以上ヲ以チマシテ各案ノ審査ノ要領
ヲ御報告申上ゲマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00919320614&spkNum=36
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037・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 只今前田子爵ガ
特別委員長トシテ報告セラレマシタ日程第
六第七、第八、第九、第十、第十一第
十四ノ法案ノ中、諸君ニ於テ御異議ガナケ
レバ日程第六ヨリ第十一マデ一括シテ議
題ト致シマス、各案ノ第二讀會ヲ開クコト
ニ御異存ゴザイマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00919320614&spkNum=37
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038・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00919320614&spkNum=38
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039・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直ニ各案ノ第二讀會
ヲ開カレムコトヲ希望イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00919320614&spkNum=39
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040・植村家治
○子爵植村家治君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00919320614&spkNum=40
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041・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 西大路子爵ノ動
議ニ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00919320614&spkNum=41
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042・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00919320614&spkNum=42
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043・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 各案全部ヲ問題
ニ供シマス、全部原案ニ御異存ゴザイマセ
ヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00919320614&spkNum=43
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044・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00919320614&spkNum=44
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045・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直ニ各案ノ第三讀會
ヲ開カレムコトヲ希望イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00919320614&spkNum=45
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046・植村家治
○子爵植村家治君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00919320614&spkNum=46
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047・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 西大路子爵ノ動
議ニ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00919320614&spkNum=47
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048・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00919320614&spkNum=48
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049・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 各案トモ第二讀
會ノ決議通リデ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00919320614&spkNum=49
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050・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00919320614&spkNum=50
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051・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 此際議事日程變
更ノコトヲ御諮リ致シマス、日程第十四ハ
只今前田特別委員長ヨリ報告セラレマシタ
カラ、日程第十二ノ前ニ繰上ゲタイト考ヘ
マス、御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00919320614&spkNum=51
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052・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00919320614&spkNum=52
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053・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 日程第十四ノ法
律案ノ第二讀會ヲ開クコトニ御異存ゴザ
イマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00919320614&spkNum=53
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054・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00919320614&spkNum=54
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055・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直ニ本案ノ第二讀會
ヲ開カレムコトヲ希望イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00919320614&spkNum=55
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056・植村家治
○子爵植村家治君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00919320614&spkNum=56
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057・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 西大路子爵ノ動
議ニ御異存ゴザイマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00919320614&spkNum=57
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058・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00919320614&spkNum=58
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059・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 原案ニ御異存ゴ
ザイマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00919320614&spkNum=59
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060・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00919320614&spkNum=60
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061・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直ニ本案ノ第三讀會
ヲ開カレムコトヲ希望イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00919320614&spkNum=61
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062・植村家治
○子爵植村家治君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00919320614&spkNum=62
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063・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 西大路子爵ノ動
議ニ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00919320614&spkNum=63
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064・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00919320614&spkNum=64
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065・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 第二讀會ノ決議
通リデ、御異存ゴザイマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00919320614&spkNum=65
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066・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00919320614&spkNum=66
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067・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 日程第十二、絲
價安定融資擔保生絲買收法案、第十三、絲
價安定融資損失善後處理法案、政府提出、
衆議院送付、第一讀會ノ續、委員長報告、小
松謙次郞君
絲價安定融資擔保生絲買收法案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報〓候也
昭和七年六月十三日
委員長小松謙次郞
貴族院議長公爵德川家達殿
絲價安定融資損失善後處理法案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報告候也
昭和七年六月十三日
委員長小松謙次郞
貴族院議長公爵德川家達殿
〔小松謙次郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00919320614&spkNum=67
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068・小松謙次郎
○小松謙次郞君 只今上程サレマシタル兩
案ノ、特別委員ノ審査ノ結果ヲ御報告イタ
シマス、去ル十一日此兩案ガ特別委員ニ付
託セラルルヤ、直ニ委員長、副委員長ノ選擧
ヲ了シマシテ、不肖委員長トナリ、又稻田
男爵ガ副委員長トナリマシタ譯デアリマ
ス、尙ホ引續キマシテ質問討議ニ移リ、昨
日.午前更ニ討論ノ末、本案ヲ可決スベキモ
ノト決定イタシマシタ次第デアリマス、此
二案ハ世ニ所謂滯貨生絲ノ處分竝ニ善後策
デアリマス、昭和四年以來ノ我蠶絲業界ニ
於ケル問題ヲ解決セムトスルモノデアリマ
ス、滯貨生絲ハ昭和四年ノ紐育ニ於ケル不
況ニ起因イタシマシテ、其當時價格千二百
五十圓ヲ維持スルコトガ出來ナクナリマシ
タ爲ニ、同五年ノ三月絲價安定融資補償法
案ナルモノヲ設ケラレマシテ、三千万圓程
度ニ於テ前期、千二百五十圓ト絲價ノ相違
ヲ政府ニ於テ補償ヲ致シタノデアリマス、
然ルニ其補償ノ總額ハニ一千万圓ト限定セラ
レマシタノデアリマスガ、絲價ノ狀況ハ漸
次低落ヲ致シマシテ、其補償總額三千万圓
ニ達シマシテモ、尙ホ此絲價ガ維持ヲスル
コトガ出來ヌ狀態ニナリマシタノデアリマ
ス、次イデ生絲ヲ有スル各會社ハ共同保管
制度ヲ起シマシテ、之ヲ數箇月ニ分割シテ
賣却ヲスル案ヲ立テマシタガ、此案モ遂ニ
遂行スルコトガ出來ズニ終リマシタ、近來
ニ至リマシテ、之ヲ一定シテ賣却ヲスル案
ヲ立テ共同管理ノ代理者タル正金銀行ト旭
「シルク」トノ間ニ賣買ノ契約ヲ成立シタノ
デアリマスルガ、僅ニ其一部分ヲ引取リマ
シタノミニシテ絲價ガ更ニ低落ヲ致シタガ
爲ニ、遂ニ解約ノ已ムナキニ至リマシタノ
デアリマス玆ニ於テ若シ銀行ガ其擔保ニ
取リマシタル所ノ生絲ヲ賣却スルヤウナコ
トニナリマスルト、我蠶絲業ニハ非常ナ結
果ヲ惹起スノデアリマス、恰モ此春絲ノ出
廻リマス今日ニ於キマシテ、此儘ニ到底放
任スルコトガ出來ナイト云フノガ本日ノ此
上程ニナリマシタル二案デアルノデアリマ
ス、此案ニ依リマスルト補償生絲七千四百
四十一荷口、ソレカラ共同保管ノ生絲ニ屬
スルモノガ二千三百九十荷ロデアリマシテ
此合計九千八百三十一荷口、單價四百五十
二圓二十五錢ヲ以テ買收ヲ致スト云フノガ
大體ノ骨子デアリマス、其結果損失ノ分擔
ト云フモノガ、製絲業者ノ負擔額ガ三千八百
五十万圓銀行ガ是マデ貸付ケマシタル利子
其他倉敷等ヲ合セテ其負擔額ガ八百八十二
万百八十六圓、政府ノ負擔額ガ四千五百三
十八万二千九百六十八圓ト云フコトニ相成
リマスノデアリマス、尙ホ其外ニ銀行ハ買
上後ニ於ケル生絲ノ保管料、十箇年間ニ約二
百五十万圓、此買收ヲ五箇年間ニ公債ヲ以
テ支拂フ、此買收代金ノ無利子ガ約六百万
圓前ニ述べマシタ當業者負擔額ノ三千八
百五十万圓ノ無利子十一箇年賦ノ償還ニ依
ル利子負擔額ガ千二百五十万圓、總計二千
百万圓ト云フモノヲ尙ホ負擔スル割合ニ相
成ッテ居ルノデアリマス、此問題ハ多年一万
荷口程ノモノガ存在シテ居リマスルガ爲
ニ終ニ市價ヲ牽制ヲ致シテ、サウシテ年
年ノ生絲ノ賣買ニ對シテ非常ナ是ハ壓迫ヲ
加ヘルモノデアルノデアリマス或モノハ
之ヲ燒却スルガ宜シイト云フ論サヘ立テタ
モノガアルノデアリマスルガ、此度ノ案ニ
依リマスルト政府ハ公債ヲ以テ此生絲ヲ買入
レマシテ、サウシテ其儘銀行ニ保管ヲサセ
テサウシテ之ヲ市場へ出サヌト云フコト
ノ條件デ買受ケヲ致シタノデアリマス、從
テ此生絲ノ處分ト云フモノハ一般市場ニハ
出ナイコトニナッテ居ルノデアリマス、斯樣
ナコトデ總テガ負擔ヲ致シテ、サウシテ此
餘計ナ生絲ヲ漸次消却ヲスルヤウニ取計ラッ
タノデアリマス之ヲ政府ガ利用イタス
上ニ付キマシテモ特ニ年限ヲ定メズ、法律
ノ規定ニ基キマシテ市場ニ出デザルヤウ
ナ方法ヲ以テ之ヲ處分スルコトニ相成ッテ
居ルノデアリマス、卽チ新規ノ用途ヲ考ヘ、
又ハ新規ノ販路ニ向ケテ之ヲ處分スル、其處
分ニ當ッテハ委員ニ相談ヲシテ、サウシテ其
販路ナリ、用途ナリヲ定メルコトニ相成ク
テ居リマス、試ミニ其新規ノ用途ハ如何ナ
ルモノデアルカト申シマスト云フト、豫テ
御承知ノ如ク洋服ニ使ヒマストカ、或ハ又
國旗ニ使ヒマストカ、其他子供ノ洋服デア
リマストカ、總テ此市場ニ今マデナカッタ方
面ニ之ヲ使ッテ、生絲トシテノ競爭ヲ成ルベ
ク避ケルコトニシタイト云フ考デアルサウ
デアリマス、又新規ノ販路トハ如何ナルモ
ノデアルカト申スト、是ハ「ブラジル」デア
リマストカ、「メキシコ」デアリマストカ
是迄取引ヲ致サヌ分野ニ於テ此取引ヲスル
ヤウナコトガアレバ、此方ニ向シテ十分調査
ヲシテ之ヲ執リ行フ、斯ウ云フヤウナコトデ
アルサウデアリマス、從テ此生絲ハ今ノ如
キ處分ガ出來ナイ限リハ殆ド市場ニハ出ナ
イノデアリマシテ、將來ノ生絲ノ生產ニ付
テハ何等ノ壓迫ヲ加フルコトガナキニ至リ
マシタ譯デアリマス、ソレカラ第二ニ申上
ゲテ置キタイト思フコトハ、斯樣ナコトヲ
スルヤウニナリマシタノモ、詰リ生絲ノ需
給ノ關係ガ十分是迄統制ヲサレテ居ラヌ結
果デ、斯ウ云フコトニナリ得タノデアル、
若シ今日ノ儘ニ於テ、其儘ニ放任シテ居ッタ
ナラバ、恐ラクハ又再ビ同樣ナ問題ヲ起ス
コトガナイデハナカラウカ斯ウ云フ懸念
ガアリマスノデ、委員ノ大部分ノ質問ナリ
若クハ希望ナリハ總テ懸テテ點點ニ屬シタ
ノデアリマス、之ニ付キマシテハ政府モ
特ニ此點ニ付テハ留意ヲサレテ居ルノデア
リマス、併シ中ニ此繭ヤ絲ノ統制ト云フコ
トハ頗ル困難デアッテ、政府ノ方針ダケデハ
到底是ハ行ハレナイコトデアル併ナラガ
今日ノ此事態ニ鑑ミテ、何レモ自覺發奮シ
テ將來再ビ斯樣ナコトニセヌヤウニ、成ル
ベク自制ヲスルヤウニ取計ヒタイト思フ、
政府モ亦人造絹絲其他今日生絲ニ對スル種
種ノ難問ガアリマスノデ、是等ニ對シテモ
相當考慮ヲ費シタル上、近キ將來ニ於テ相
當對策ヲ講ジテ之ニ當ル積リデアル尙ホ
又其對策ヲ致ス上ニ付テハ、當業者ノ十分
自覺發奮ヲ希望スル次第デアルト云フヤウ
ナ答辯デアリマシタ、此蠶絲業統制ノ問題
ニ付キマシテハ特ニ意ヲ致シテ、何レ早晩
此點ニ付テハ或ハ御披露ヲシ得ル時期モア
ルダラウト云フヤウナ答辯ノコトデアリマ
シリ、其他詳細ノ事柄ハ大體速記ナドニア
リマスノデ、特ニ報〓ハ致シマセヌノデア
リマス、右申上ゲマシタ事柄ガ本案審議ニ
於ケル一番ノ大キイ間題デアリマスルカ
ラ、特ニ其コトヲ御報〓ヲ致シテ置キマス、
兩案ノ報告ハ大體是デ終リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00919320614&spkNum=68
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069・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 兩案トモ第二讀
會ヲ開クコトニ御異議ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00919320614&spkNum=69
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070・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00919320614&spkNum=70
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071・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直ニ兩案ノ第二讀會
ヲ開カレムコトヲ希望イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00919320614&spkNum=71
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072・植村家治
○子爵植村家治君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00919320614&spkNum=72
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073・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 西大路子爵ノ動
議ニ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00919320614&spkNum=73
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074・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00919320614&spkNum=74
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075・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 兩案全部ヲ問題
ニ供シマス、全部原案ニ御異存ゴザイマセ
ヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00919320614&spkNum=75
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076・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00919320614&spkNum=76
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077・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直ニ兩案ノ第三讀會
ヲ開カレムコトヲ希望イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00919320614&spkNum=77
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078・植村家治
○子爵植村家治君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00919320614&spkNum=78
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079・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 西大路子爵ノ動
議ニ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00919320614&spkNum=79
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080・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00919320614&spkNum=80
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081・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 兩案共第二讀會
ノ決議通リデ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00919320614&spkNum=81
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082・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00919320614&spkNum=82
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083・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 是デ本日ノ日程
ヲ終リマシタガ、豫算案其他特別委員ヨリ
報〓ガ午後ニアラウト考ヘマスカラ、午後
二時マデ休憩イタシマシテ、午後二時ニ御
集リヲ願フコトニ致シマス
午前十一時十五分休憩
午後二時十八分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00919320614&spkNum=83
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084・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 是ヨリ書記官ヲ
シテ報告ヲ致サセマス
〔瀨古書記官朗讀〕
本日委員長ヨリ左ノ報〓書ヲ提出セリ
昭和七年度歲入歲出總豫算追加案(分)
號)、
昭和七年度各特別會計歲入歲出豫算追加
案(特第一號)
豫算外國庫ノ負擔トナルベキ契約ヲ爲ス
ヲ要スル件可決報告書発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00919320614&spkNum=84
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085・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 是ヨリ午後ノ會
議ヲ開キマス、只今書記官ヲシテ報告ヲ致
サセマシタ昭和七年度歲入歲出總豫算追加
案、第一號、昭和七年度各特別會計歲入歲
出豫算追加案、特一號、豫算外國庫ノ負擔
トナルベキ契約ヲ爲スヲ要スル件、三部分
此際議事日程ヲ追加シテ行キタイト存ジマ
ス、御異議ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00919320614&spkNum=85
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086・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認
メマス、委員長報告、柳澤豫算委員長
一昭和七年度歲入歲出總豫算追加案(第
(現)
一昭和七年度各特別會計歲入歲出豫算追
加案(特第一號)
一豫算外國庫ノ負擔トナルベキ契約ヲ爲
スヲ要スル件
右衆議院ヨリ受領シタル各案ヲ審査シ總
テ衆議院議決案ノ通可決スヘキモノナリ
ト議決セリ依テ及報〓候也
昭和七年六月十四日
委員長伯爵柳澤保惠
貴族院議長公爵德川家達殿
〔伯爵柳澤保惠君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00919320614&spkNum=86
-
087・柳澤保惠
○伯爵柳澤保惠君 是ヨリ豫算委員會ニ於
キマスル議事ノ經過竝ニ結果ヲ申上ゲタイ
ト存ジマス、此度ノ追加豫算ハ御承知ノ如
クニ各省ニ跨クテ居リマス、併ナガラ時日切
迫ノ爲ニ分科ニ移サズシテ、委員會ニ於テ
議事ヲ進行スルコトニ相成リマシタ、祕密
會ハ二度開キマシタ、追加豫算ノ說明ハ先
日大藏大臣ガ本議場ニ於カレマシテ最モ詳
細ヲ極メテ御演說ニナリマシタノデ、私ハ
其邊ヲ一切省略イタシマス、直ニ質疑應答
ノ主ナル部分ノ大要ヲ一括歸納イタシマシ
テ御報告申上ゲマス、此豫算ハ御承知ノ如
クニ各省ニ跨リマシテ、何レモ緊急ヲ要ス
ル事項ニ相違ナイノデゴザイマス、併ナガ
ラ能ク內容ヲ見マスルト、果シテ何レモガ
皆緊急事項ニ該當スルヤ否ヤ、多少疑ガナ
イコトモゴザイマセヌ、相當議論ノ餘地ア
リト存ジマスガ、此點ニ關シテハ餘リ論議
ハナカッタノデゴザイマス、論議ノ焦點ハ事
局ニ密接ノ關係ノゴザイマス事項ニ限フテ
居リマシテ、此點ニ付テ多クノ質疑應答ガ
アッタノデゴザイマス、今質疑セラレマシタ
事項ヲ分類イタシテ見マスルト、對外事項
ト對內事項ニ分レマス、對外ノ分ハ僅ニ對
支問題ダケデアリマシテ、他ノ外國ニ對ス
ル分ハ一ツモゴザイマセヌ、對內ノ分ハ先
ヅ大約五ツニ分レテ居リマス、對內ノ第
一ハ財政及經濟問題、其次ガ農村救濟問題、
其次ガ〓育問題、其次ガ神社及宗〓問題、
次ニ保健衞生問題、先ヅ斯樣ニ分レルヤウ
ニ存ジマス、先ヅ對外問題ヨリ申上ゲタイ
ト存ジマス、對外問題、卽チ今囘ニ於キマ
シテハ對支問題デアリマスルガ、對支問題
ノ大部分ハ滿洲問題デゴザイマス、第一ニ
申上ゲタイノハ滿洲事件ニ要シマスル經費
ト滿洲國承認問題ノ件デゴザイマス、豫算
ヲ御覽ニナリマスト、御承知ノ如クニ外務
省ニ於キマシテ五百五十万圓、大藏省ノ此
件ニ關スル豫備金ガ二千万圓、陸軍ガ一億
一千七百万圓、海軍ガ三千九百万圓、關東
廳ガ二百六十五万圓、是ハ大數デ申上ゲタ
ノデゴザイマス、合計一億九千万圓、二億
ニ近イ金デアリマシテ、此中陸軍ニ要スル
金ガ二割强ニ當リマス、斯樣ナ巨額ノ支出
ヲスルノハ、是ハ滿洲國承認ノ爲ノ前提ト
云フ譯デハナイノデアリマスルケレドモ、
滿洲國ノ承認問題ニ關シマシテハ、政府ハ
速ニ出來得ルダケ實行ノ考デゴザイマス、
唯是ニハ相當準備ノ期間ガ要リマスノデ、
準備ノ期間完了次第其運ビニナスト云フコト
デゴザイマス、而シテ又此九月ニ於、キマス
ル所ノ國際聯盟總會ニ對シマスル政府ノ態
度ハ、マダ十分ニ確定的ニ申上ゲルコトハ
出來ナイノデゴザイマス、對支問題ノ第二
ト致シマシテ、矢張リ滿洲問題デアリマス
ルガ、移民問題、產業調査、資源調査ナド
ノ問題ガゴザイマス、滿蒙ニ於ケル移民殊
ニ農業移民ニ適セル地方ノ調査ニ付キマシ
テハ、是マデモ政府ニ於テ相當御調査ガアッ
タノデアリマスルガ、併シ完全ト申スベキ
所ノ基礎調査ハ缺ケテ居ッタノデアリマス、
故ニ差當リ治安ノ維持セラレマシタル地方
ヨリ調査ヲ始メル計畫デアリマス、豫算ハ
是等ニ要スル豫算デアリマスルガ、今日マ
ダ具體的ニドノ地方ガ移民ニ適スルヤ否ヤ
ト云フコトヲ指示スルコトハ難イノデアリ
マス、デ治安維持ニ付キマシテハ外務省、
拓務省ノ兩省ガ相協力イタシマシテ、各在
外ノ機關ヲ通ジテ當ラシテ居ルノデゴザイ
やく、產業調査ニ付キマシテハ、是ハドウ
云フ調査ヲスルノデアルカ、ドウ云フ程度
ニスルカト云フ種類及程度ニ付キマシテ
ハマダ十分ニソレヲ具體的ニ申サレヌノ
デアリマシテ、追ミソレヲ具體化スルト云
フコトデゴザイマス、資源調査ニ付キマシ
テハ、是ハ今マデモヤッタノデアリマスケレ
ドモ、誠ニ是モ不十分デアリマスルノデ、
學術的ノ調査ノ必要ヲ認メマシテ、追ミ政
府ニ於カレマシテモ何等カノ仕事ニ著手ス
ルサウデゴザイマス、鐵ニ付キマシテ考ヘ
マスルト大部分ハ我國ニ入ルノデアリマ
ス、製鐵業ノ發展ハ大イニ歡迎スル所デア
リマスカラ、ソレヲ阻止スルコトハ極メテ
避ケタイ考ヘデゴザイマス、今囘關稅ガ高
マリマセウケレドモ、滿洲ノ製鐵業ヲ保護
スル方法ニ付テハ當局ハ熟慮スルサウデゴ
ザイマス、對支問題ノ次ハ滿鐵首腦部更迭
問題デアリマス、滿鐵ノ使命ノ重大ナルコ
トハ申スマデモナイコトデゴザイマスル
ガ、兎角是マデハ政變每ニ首腦部ノ更迭ガ
アリマスルガ、是ハ現政府ニ於テ望マシカ
ラヌコトニ考ヘテ居ラレルヤウニ存ジマシ
タ、或ハ滿鐵ヲ民營ニシ、或ハ純然タル官
營ニシ、ドチラカニ定メタガ宜カラウト云
フ御論モアルノデアリマスガ、滿鐵ハ御承
知ノ通リ外國デ仕事ヲシテ居リマス、故
之ヲ利用スル者ハ大部分外國人デゴザイマ
ス、之ヲ官營ニ移シマスルト、外交上ノ點
ヨリモ亦財政上ノ點ヨリモ、政府モ隨分困
ルコトガアルサウデゴザイマス、又拓殖上、
經濟上、國防上、重大ナル使命ヲ有スル滿
鐵デアリマスルカラ、之ヲ民營ニシマスル
ト、是亦政府モ困ルノデアリマス、結局滿
鐵ハ其成立ノ歷史カラ致シマシテ、民間ニ
移スト云フコトハ大イニ考ヘモノデアル、
結局現在ノ儘ニスル方ガ宜イヤウニ思フト
云フコトデアリマシテ、首腦部ノ更迭ニ付
テハ成ルベクサウナラナイヤウニシテ見タ
イト云フヤウナ御考ヲ承タノデアリマス、
次ハ在支我居留民ノ損害賠償問題デアリマ
ス、戰禍ノ爲ニ損害ヲ被リマシタル我ガ居
留民ニ對スル救濟トシマシテハ、元來公平
ニ考ヘマスト、是ハ支那側ガ負擔スルノガ
當然デアリマセウガ、中ミサウ云フ運ビニ
ハ參リマセヌ、差當リ銀塊ノ貸付約五百万
圓程度ノモノヲ以テ、救濟ノ考ヘデアルト
外務省ハ申サレマシタ、又對支事業ノ恢復
ニ付テモ相當ニ援助スル考ヘデアルト云フ
コトヲ承ハリマシタ、是デ對外問題ハ終リ
やっく次ハ對內問題デアリマス、第一ニ申
上ゲタイノハ財政及經濟問題デアリマス、
其一ツハ豫算ノ編成、公債政策、其將來
ノ對策等ニ付テノ御質問ニ對スル答辯ノ大
要ヲ申上ゲマス、前內閣ノ時ニ、財源ノ無
イ豫算ハ其膨脹ヲシテハイカス、確ク財源
ノナキ豫算ノ膨脹ヲ戒メタ其御方ハ亦現今
ノ藏相デゴザイマス、同一ノ人ニシテ今囘
ノ豫算ヲ御編成ニナリナガラ、盛ンニ今度
ハ財源ノナイ豫算ヲ編成サレタノデアリマ
ス、公債ノ支辨ガ巨額ニ上ボリマシテ且ツ
赤字埋合セモ公債ニ依,テ居ルノデアリマ
ス、過去ノ事實ニ徵シマスルノニ輸出入ノ
均衡宜シキヲ得タ時代モゴザイマス、剩餘
金ノ巨額ニ上ボッタ時代モゴザイマス、然ル
ニ現今ハ全ク正反對ノ時代デゴザイマス、
又今日ハ滿洲事件ノ爲ニ特ニ公債ガ多イノ
デゴザイマスケレドモ、是等ヲ除外イタシマ
シテモ巨額ニ達スルノガ豫算面ニ出テ居ル
通リデゴザイマス、目下政府ノ外債ハ十四
億七千四百餘万圓、地方債ガ二億三千餘万
圓、合セテ十七億餘圓ト云フモノヲ有フテ居
リマス、其外民間ノ外債ヲ合セマスルト民
間ノ外債ガ約八億アリマスカラ通計二十五
億内外ノ外債ガゴザイマス、是ハ事實デア
リマス、貿易其他ノ國際貸借關係ヲ見マ
スルト、是ハ〓算デゴザイマスルガ、何
レモ我國ニ不利ノ狀況ニゴザイマス、又
近時爲替ノ變動ニ伴ヒマシテ海外拂ハ數
千万圓以上ニ上ボッテ居リマス、是等ノ
專實モ否ムコトガ出來ナイノデアリマス、
又八年度ニ於キマシテモ公債ハ增ストモ減
ズル見込ハナイト云フコトデゴザイマス、
併ナガラ赤字ハ總テ公債ノミニ依ッテ補塡
スルモノトノミハ當局者ハ考ヘテ居ラヌノ
デゴザイマス、又外債償還ニ關シマシテハ
借換ノ不可能ノ分ハ正金ニシテ償還スルノ
ハ無論デゴザイマスガ、此對策トシテハ先
ヅ國內產業ノ振興發展ヲ根柢トシテ居ルト
云フコトデゴザイマス、例ヘテ申シマスレ
バ棉花及ビ羊毛ノ輸入、ソレヲ精製シテ輸
出スルヤウナコトハ是亦有望ナル事業デゴ
ザイマスケレドモ、現今何レノ國デモ自給
自足ノ狀態ニ汲々トシテ居ル時デアリマシ
テ、我國ノ製品ノ輸出モ思フニ委セズ、生
絲ノ如キモ近時ハ品質モ良好ニナリ、生產
費モ安クナリマシタガ、世界的ノ不況ノ爲
ニ思フヤウニナラヌノデアリマス、故ニ政
府ノ外債支拂ニ對シマシテハ我國モ自給自
足ノ主義ヲ執リマシテ、生產ヲ盛ンニシテ
外債ヲ減ラス方法ヲ考ヘネバナラヌト云フ
コトデゴザイマス、國際觀光客ノ如キモ歐
米ト申シマセズ我國ニ於キマシテモ、相當
今マデ或意味ニ於テ引當テニナッテ居リマ
シタガ、近時ハ此金額モ非常ニ減リマシ
ク、海運業モ亦然リ、海外放資ニ對シマス
ル收入モ多少ゴザイマスルガ、是モ信賴シ
難イノデアリマス、移民ノ送金ノ如キモ亦
近來減リマシテ移民國ニ於テソレヲ運用ス
ルヤウニナッテ居リマス、朝ト謂ハズ野ト謂
ぐつ、此外債ニ對シテハ其引當テハ何レモ
無慙ナ有樣デアリマス、唯四億三千餘万圓
ノ正貨ガ賴ミニスルダケデ、是ハ出來ルダ
ケ保存シタイト云フ御考デゴザイマス、併
ナガラ貿易關係モイツ曙光ヲ見マスルカ將
來ノ見込ハ付カナイノデ、差當リ產金奬勵
ト共ニ爲替相場ヲ基ト致シテ金ノ買上ゲヲ
行ヲテ外國ノ送金ニ充テテ居ルト云フ狀態
デゴザイマス、幸ニモ我國ノ金ノ產額ハ從
來ヨリ增シマシテ、是マデ約二千万圓ト見
積ラレテ居ルノガ、近年ニハ三千万圓ニ上
ボッタサウデゴザイマス、ソレ等ヲ引當テニ
致シマシテ尙ホ不足ノ時ニハ正貨準備金
ニ手ヲ付ケルヤウニナリマスガ、對外信用
ノ維持ハ切ニ必要デゴザイマスノデ、此信
用ヲ落サヌヤウニ政府ハ努力スルト云フコ
トデゴザイマス、今日ノ世界的不況ハ主ト
シテ獨逸ノ外債不拂ニ基クコトガ餘程由來
シテ居リマスガ、「モラトリアム」ヲ一箇年
或ハ二箇年延バシテモ景氣ノ恢復ハ望ミ
難イ、但シ國ニ依フテハ正金ヲ餘リ多ク持
過ギテ却テ困ル國モアラウカラ、此邊ヲ十
分考慮ニ入レテ〓究調査ノ必要ガアルト云
フコトデゴザイマス、要スルニ將來ニ於テ
信用ヲ失フコトモアルマイト云フ御考デゴ
ザイマス、又一般國民ニ取リマシテモ財政
ノ現況ヲ知悉サセルノガ必要デアリマスニ
依ッテ、最モ適當ナル方法ヲ色ミ執ラレマシ
テ、我國現時ノ財政狀態竝ニ財政觀念ヲ國
民ニ植付ケタイト云フ思召シデゴザイマス、
次ハ財政ノ基礎ノ根本建直シ、財源ノ基
礎ノ確立、稅制整理、官業收入ノ擴張等ノ
質問ニ對スル答辯ヲ一括シテ申上ゲタイト
思ヒマス、誰デモ收入ヲ增シテ支出ヲ制ス
ルト云フコトハ誰デモ望マシイコトデ、是
ガ所謂根本ノ建直シニナル譯デアリマスケ
レドモ、今日其實行ハ頗ル面倒デ困難デゴ
ザイマス、財政問題ト經濟問題トノ關係ハ
極メテ密接デアリマスルヲ以テ、經濟界ノ
實況モ十分ニ考慮スル必要ガアル、增稅ニ
續イテ歲出ノ削減、是ガ實行出來マスレバ
宜シウゴザイマスルガ、今日ノ狀況デハ迚
モ增稅ナドハ思ヒモ寄ラヌコトデゴザイマ
ス、故ニ中ミ財政上餘裕ヲ見ルコトハ困難
ト思ヒマス、英米ノ例ヲ引カレマシタガ、
英國及米國ノ狀況ト全ク本邦ノ狀態トハ同
一ニ論ゼラレマセヌ、是迄モ政府ガ所得稅
ノ累進ヲ圖リ地租ノ改正ナドヲ企テラレマ
シテ、努メテ負擔ノ公平ヲ實行セラレタル
如クニ、從來ニ於キマシテモ稅制整理ニ付
テハ御努力ニナッタノデアリマス、併シ如何
ニシテモ現時ノ情勢ハ、增稅ヲ許シマセ
又、赤字ハ增稅ヲ以テ埋合セヲスル、是ハ
不可能デアリマス、又間接稅ニ付テ見マシ
テモ亦然リ、故ニ現今ノ政府ノ方針トシマ
シテハ此際主トシテ產業奬勵ノ手段ヲ執。,
テ國民ノ所得ヲ增シテ、然ル後改メテ稅制
整理ヲ考慮シヤウト云フコトデゴザイマ
ス、官業收入ノ擴張、例ヘバ酒、砂糖ノ專
賣電力國有、保險、主トシテ生命保險ノ
官有ト云フヤウナ論ガゴザイマスガ、是
政府ハ贊成セヌト云フコトデアリマス、次
ハ貿易ノ振興ノコトデス、世界的不景氣ノ
折柄支那事件ガ起リマシテ、貿易ハ頗ル不
況デ殊ニ輸出業者ニ取リマシテハ非常ナル
苦難ヲ嘗メテ居ルノデアリマス、然ルニ豫
算面ニ於テハ一向貿易振興策ガ目立フテ
見エナイ、貿易振興費ノ如キハ誠ニ微々タ
ル模樣デアル、併ナガラ產業振興ニ關シマ
シテハ僅カナガラモ八万圓ノ支出ヲサレ、
尙ホ將來ニ付テハ十分ニ考ヘルト云フコト
デゴザイマス、輸出補償法ノ範圍擴張ノ如
キコトハ今日考ヘテ居ラヌガ、今後更ニ考
慮シテ見ヤウト云フコトデゴザイマス、不
景氣回復ノ一段ト致シマシテ、英國ハ既ニ
世界經濟會議ナルモノヲ起スコトヲ企テマ
シテ、亞米利加ニ之ヲ申込ンダ様子デゴザ
イマス、此邊ニ付キマシテハ我國ニ於テモ
若シ狀態ガ分リ次第、又我國ニ取ッテ必要ト
認メレバ、進ンデ參加シタイト云フ御希望
ガゴザイマス、中小商工業者ノ疲弊困迫
ハ是ハ農村ニ於ケル所ノ人ミト殆ド狀態
ハ變ラヌコトハ御承知ノ通リデアリマス、
此救濟ニ付キマシテモ當局者ハ相當ニ考慮
サレテ居ルノデアリマス、先ツ大體ヲ申上
ゲマスト、金融ノ途ヲ圓滑ニシヤウト云フ
コトデアマリス、ソレゾレ特殊ノ機關ノ活
用ヲ十分ニ考ヘル積リデアル、マダ成案ハ
ナイガ若シ成案ガ出來ルトスレバ、或ハ次
ノ議會ニ提出スルカモ知レヌト云フコトデ
ゴザイマス、其次ハ燃料問題デゴザイマス、
燃料問題ニ付テハ每議會質問ガ出マスシ御
返辭モゴザイマスガ今度モ出マシタ、殊
油ノ問題ニ付キマシテハ我國ノ產額ハ極メ
テ少イノデアリマス、故ニ海外輸入ニ待ツ
コトガ頗ル多イノデアリマスルガ、一朝或
事件デモ起レバ忽チ不足ヲ感ズル不安ガア
リマス、其不安ヲ除去スル爲ニ國策樹立ノ
必要ナキヤト云フ論ニ付テハ、政府ハ全ク
同感デアリマシテ、當局ニ於キマシテハ國
內ニ於キマスル石油資源ノ開發、海外ニ於
ケル石油資源ノ確保、開發、代用品ノ〓究
關稅改正等ヲ旣ニ決議セラレマシテ其實行
ニ著手シテ居ラレマス、之ニ依フテ幾分カ生
產額ノ增加ノ曙光ヲ見マスケレドモ、今後
一層努力シテ努メテ見タイト云フ御說デゴ
ザイマシタ、次ニ農村疲弊救濟問題ニ移リ
マス、農村ノ疲弊困迫其極ニ達シマスル聲
ガ頗ル高ク、救濟ノ必要ノ聲ハ諸方ニ現ハ
レテ居リマス、併ナガラソレニ付テハ當局
ハ決シテ之ヲ雲煙過眼視シナイノデアリマ
スガ、同時ニ是ハ都市ニ於キマスル所ノ中
小商工業者ノ現況ヲモ考慮シナケレバナリ
マセヌノデ其救濟策ニ付テハ既ニ相當ノ腹
案モアリマスルガ、マダ具體的ニ發表ハ出
來ヌノデアリマス、併シ此事ハ農村救濟問
題ト申シマシテモ一般ノ政策ニモ關係スル
コトデアリマスルノデ、近キ將來臨時議會
ニ提案スルヤ否ヤ未定デアル、又米價調節
ノ必要上米穀法ガ公布セラレテ居リマスル
ガ、此效果ガ甚ダ薄イト云フ非難ガ隨分ゴ
ザイマス、寧ロ多額ノ金ヲ出スノハ無益デ
ハナイカト云フ論ガアリマスガ此〓究竝ニ
改正等ニ關シマシテハ政府ハ考慮中デゴザ
イマス、又肥料管理ト米穀法トハ關係ガ密
接デゴザイマシテ、農家ニトリテ重大ナ問
題デアリマス、是等ニ關シマシテハ種々ノ
方策ガ講ゼラレテ居リマスルガ、モウ一層
考究ヲ進メテ見ルト云フコトデゴザイマ
ス、ソレカラ滯貨生絲買上ゲノ件、是ハ買
上ゲタモノハ諸種ノ方面ニ利用スル考ヘデ
アル併ナガラ是ハ製絲業者ヲ壓迫スルガ
如キ同ジ方面ニハ用ヒナイ、全クノ新方面
ノミニ之ヲ使用シテ、從テ從來ノ用途ニハ
使ハナイノデアルカラシテ、此買上ゲノ
結果ハ少シモ民衆ノ壓迫ニハナラヌト云
フコトノ御說明デゴザイマシタ、次ニ〓
育ノ問題ニ移リマス、〓育問題ニ付テ主
ナル條項ハ初等〓育輕視ノ傾向、圖畫
〓科書ノ不備、〓育法ノ改善、映畫〓育ノ
必要、生「フイルム」〓分增加ノ件、學制改
革ノ件等デゴザイマス、我國ニ於キマシテ
ハ初等〓育ハ普及イタシテ居リマシテ、兒
童ノ最大多數、殆ド百分ノ百ニ近イ程初等
〓育ヲ受ケテ居リマスルノハ事實デアリマ
ス、此〓授ニハ十分力ヲ盡スベキデアルノ
ニ兎角初等〓育ヲ輕ク見ルヤウナ非難ガ
アル、又〓育勅語ノ精神ニ背馳スル如キ修
身〓育ヲ施セル非難モアリマス、殊ニ初等
〓育ニ於キマスル所ノ圖畫〓科書ノ不備
ハ德育上ノ一大缺點デアルト云フ非難モ
ゴザイマス、是等ノ點ニ關シマシテハ當
局者モ相當調査ガアルノデアリマセウガ、
尙ホ能ク實情ヲ調ベテ非難ノ起ラナイヤウ
ニ氣ヲ付ケテヤラウト云フコトデゴザイマ
ス、又兒童ノ增加ニ伴ヒマシテ〓育費モ增
加スルノデアリマス、サウ云フコトカラシ
テ或ハ極端ニ小學校ヲ廢止シタラ宜イヂヤ
ナイカ、合併シタラ宜イヂヤナイカ、或ハ
〓員ノ俸給ヲ減ラシタラ宜イヂヤナイカト
云フ論ガ隨分出マスノデ、當局者ハ之ニ付
テ餘程心配シテ何トカ考案ヲ廻ラシテ居ラ
レルノデアリマス、ソレニ付テハ何トカ〓
育法ノ改善ヲ考ヘテ居ラレマスルケレド
モ小學〓員ノ素質ノ低下ハ誰シモ望ム所
デハゴザイマセヌ、兒童〓育ニ惡影響ヲ與
ヘマスノデ、此邊モ十分考慮スル、尙ホ貧
弱村ニ對シマシテハ、〓育費ハ九分通リ國
ノ負擔トナッテ居ル現狀デアリマス、サウ云
フ所ニ對シテハ殆ド義務〓育費ハ殆ド全部
國庫支辨ノヤウニナッテ居リマスルケレド
モ、併シナガラ全部國庫ガ負擔スルト云フ
如キ大問題ニ付キマシテハ、尙ホ十分〓究
シヤウト云フコトデゴザイマス、尙ホ義務
〓育費ヲ特別會計ニスルコトニ付テハ、其
希望ヲ持ッテ居ルト云フコトデゴザイマス、
〓員及經費ノ不足ヲ補フ爲ニ映畫〓育ヲ以
テ初等〓育ノ補充トナスノ論モ一理アル所
デゴザイマスガ、人格養成ノ上カラ見マシ
テ是ダケデハドウモ盡シテ居ラヌヤウデア
ル、但シ初等〓育ノ補充ニハ大イニ必要ヲ
認メルガ、矢張人格アル〓員ノ行動ガ兒童
ニ反映スル所ニ妙味ガアル故此邊モ考ヘナ
ケレバナラヌ、地方ニハソレソレ特質ヲ有
スルコトデアリマスルカラ、地方地方ノ事
情ヲ參酌シテ〓育ノ方法ヲ變ヘルコトモ必
要デアラウ、又〓育映畫ニ依ル收入ニ關シ
テ非難ガアルノデアリマスルガ、此點モ將
來考究シヤウト云フコトデゴザイマシタ、
映畫ノ必要ヲ當局ハ認メテ居ルニ拘ラズ、今
囘生「フイルム」ノ關稅ノ激增ヲ見ムトシテ
居ルノデアリマス、三割五分上ガルノデア
リマス、是ハ本邦ノ映畫〓育ノ發展ヲ大イ
ニ阻止スルモノデアリマシテ、此非難ガ起ッ
テ居リマス、ケレドモ當局者ハ輸入ノ映畫
中ニハ隨分風俗壞亂ノモノモアリ、又思想
惡化ノモノモアリ、故ニ之ヲ防止シテ國產
映畫ノ保護ヲ必要ト認メテ居ラレルノデア
リマス、是ハ當局ノ辯明デアリマスルガ當
局者ハ現時生「フイルム」ノ國產ガ出來ナイ
コトヲ御注意ニナラヌヤウニ考ヘラルルノ
デアリマス、生「フイルム」ハ輸入ニ俟ッテ初
メテソレガ役ニ立ツノデアリマス、其輸入
以外ニハ國產ハナイノデアリマス、此輸入
ノミニ依リマシテ國產映畫モ出來マスシ、
〓育映畫モ出來ルノデアリマス、ヽ其邊ヲ考
ヘマスルト當局者ハ生「フイルム」製造ニ對
スル認識不足ト言ハレテモ仕方ガナイヤウ
ニ考ヘラレルノデゴザイマス、尙ホ映畫及
圖書雜誌ニ對シマスル取締ガ近來非常ニ緩
カニナッタヤウニ見エマスルニ對シテハ、是
ハ一層當局者モ心得テ注意スルト云フ方針
デゴザイマス、尙ホ映畫國策樹立、映畫ニ
關スル一切ノ事務ヲ取扱フペキ映畫取締機
關ノ設置ニ關シマシテハ、未ダ十分〓究セ
ラレナイ模樣デゴザイマス、學制改革ノ件、
此改正案ニ付キマシテ歷代ノ當局者ガ常ニ
努力シテ居ラレルコトハ事實デアリマセウ
ガ、併ナガラマダ成案ガ得ラレヌノデアリ
マス、併シ調査ノ機關モアリ、又問題モ繼
續的ニ調査サレテ居ルノデアリマスルカ
ラ、追〓完結スル都合デアリマス、併ナガ
ラ是ニハ周到ナル用意ヲ要シマスノデ、現
在ニ於テハ先ヅ差當リ〓育ノ內容改善ニ付
テ考慮中デアルトノコトデゴザイマス、次
ニ神社及宗〓問題ニ移リマス官幣及國幣神
社約二百ホドゴザイマスルガ、其中百ニ
近イ所ノ神社ノ造營ニ關シマシテハ、一社
ニシテ少クトモ平均二十數万圓ハ掛ルサウ
デアリマス、故ニ全體デハ約二千万圓ホド
ニナリマス、今囘ノ豫算ニ於キマシテ僅ニ
十八万餘圓ガ出テ居ルノデアリマスルガ、
斯ウ云フ風ナ狀態デ繼續シマスレバ、神社
ノ造營ハ百五十年モ掛ルト云フコトデアリ
マス、斯樣ナ風ニユックリトヤクテ居ッテ、果
シテ敬神崇祖、思想善導、國體擁護ナドト
云フ美風ガ助長サレルカドウカ甚ダ疑ハシ
イノデアル、曾テ本院ニ於テソレニ付テノ
希望決議モアル、此問題ニ付テハ當局者ハ
決シテ本院ノ希望ヲ輕ク見テ居ルノデハナ
イ、又敬神崇祖ニ異論ガアル筈ガナイ、神社
造營ニ付テハ苦慮シ居ル、等閑シテ居ラヌ
ガ何分御承知ノ如キ財政ノ現狀デアルガ故
ニ思フニ任セナイ、決シテ神社ヲ輕視スル
ガ如キ所ハ毛頭ナイ、今後出來ルダケ努
力シヤウト云フコトデゴザイマシタ、宗〓
法案ニ付キマシテハ、是ハ先年提出セラレ
マシタガ由來其儘ニナッテ居リマス、是ハ中
中解決ニ困難ナル問題デアリマスルノデ、
當局者ハ十分ニ考慮シテ、提案ノコトモ考
ヘヤウト云フコトデゴザイマシタ、次ハ保
健衞生問題デゴザイマス、癩患者ノ取締ノ
コトデアリマス、近頃大都會或ハ田舍ニデ
モ、隨分癩患者ガ出テ居ルノデアリマス、
是ガ繁華ナ地ニモ隨分出テ來マシテ、中ミ
是ガ不快ノ觀念ヲ市民ニ與ヘルノデアリマ
ス、是ハ傳染病デアリマシテ、其療養ノ爲
ニ現今地方ニモ病院ガアリ、又國營ノ癩療
養所モゴザイマス、其他近來增設ノ傾向モ
アルノデアリマス、併ナガラ斯樣ナ傳染シ
易イモノヲ諸方ニ曝シテ置クノハ如何ニモ
國辱デアリマスノデ、此取締ヲ嚴重ニシテ
貰ヒタイト云フ論議ニ對シマシテハ當局
者ハ全ク同感デ、今一層取締ニ氣ヲ付ケテ、
戶外ノ癩患者ニ對シマシテモ、取締法ヲ改
正スル積リデアルト云フコトデゴザイマシ
ク、先ヅ是デ委員會ニ於キマスル所ノ各種
ノ重モナル質問應答ノ大要ヲ申上ゲタ積リ
デゴザイマス、無論細カイ御質問モ中ニハ
ゴザイマシタガ、ソレハ遺憾ナガラ略シマ
シタ、質問ガ終リマシテ、討論ニ入リマシ
タ時ニ、一委員ヨリ斯樣ナ意味ノコトヲ申
サレマシタ、各地方ニ於ケル所ノ農民其他
ノ窮乏狀態ノ悲報ハ中ミ多ク耳ニシ、又新
聞ニモ見テ居ルトテ、其實例ヲ話サレマシ
タ尙衆議院ニ於キマスル所ノ救濟決議案
ノ可決ニ至リマシタコトヲ述べラレ、又首
相ヨリ努力スルト云フコトヲ、衆議院ニテ
面會セラレタ人ミニ對スル御言明ヲ引用セ
ラレマシタ、又本院ニ於キマシテハ農民、
中小商工業者、及ビ失業者救濟ニ關スル希
望、建議、決議ト云フヤウナコトガ度ミゴ
ザイマシタガ、其次第ヲ述ベラレマシテ、
從來ノ政府ハ極メテ無策デアルト云フコト
ヲ申サレテ、現政府ニ對策ヲ要求セラレマ
シタ、之ニ對シテ首相ヨリ答辯アラムコト
ヲ御請求ニナリマシタ、何レ今日中ニ首相
ヨリ何等カノ御答辯アルコトト存ジテ居リ
マス、尙ホ一委員ヨリ贊成演說ガゴザイマ
シタ、是ハ追加豫算ニ付テハ多少疑問モア
ル、併ナガラ時日切迫ノ爲ニ暫ク政府ノ說
明ニ信賴シテ贊成スルノデアル、但シ今後
十分ナル行政及財政ノ整理ヲ期待シテ居
r、外ニ發言モゴザイマセヌデ、第一號追
加豫算、特第一號追加豫算其他一件ガ可決
ニナッタノデアリマス、甚ダ杜撰ナ報〓デ恐
縮デゴザイマスガ、何卒委員長ノ報〓通リ、
御贊成可決アラムコトヲ希望イタシマス
〔男爵阪谷芳郞君發言ノ許可ヲ求ム〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00919320614&spkNum=87
-
088・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 阪谷男爵ハドウ
云フコトデアリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00919320614&spkNum=88
-
089・阪谷芳郎
○男爵阪谷芳郞君 意見ガ述ベタイノデス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00919320614&spkNum=89
-
090・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 通〓ガゴザイマ
スカラ其通告者ガ濟ンデカラ願ヒタイ、阪
谷男爵ノハ此豫算ニ付テ反對贊成、ドチラ
ノ御意見デゴザイマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00919320614&spkNum=90
-
091・阪谷芳郎
○男爵阪谷芳郞君 贊成デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00919320614&spkNum=91
-
092・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 小林嘉平治君ガ
通告サレテ居リマスカラ其後デ願ヒタイ、
小林嘉平治君ノ登壇ヲ望ミマス
〔小林嘉平治君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00919320614&spkNum=92
-
093・小林嘉平治
○小林嘉平治君 私ハ貴族院議員ノ一員ト
シテ、殊ニ地方選出ノ議員ト致シマシテ如
何ニ現內閣ヲ見テ居ルカ、又此豫算ヲ如何
ニ見テ居ルカ、又院ノ內外ニ現ハレテ居ル
問題ニ付テ如何ニ見テ居ルカ、殊ニ農村間
題ニ付テ現内閣ニ如何ナル要望ヲ持フテ居
ルカト云フコトヲ御話シ申上ゲルト云フコ
トハ、決シテ無意味デナイト思フノデアリ
やっ、私ハ今玆ニ提案サレテ居ル豫算ニハ
贊成ノ意ヲ表スモノデアリマス、而モ私ハ
其內容ニ付テ決シテ滿足ヲ致シテ居ルモノ
デハアリマセヌ、其歲出ハ如何デアリマス
ルカ、決シテ此非常時ヲ救ヒ出ス所ノ何モ、
ト云フテハ少シ言葉ガ過ギルカ知ラヌガ、
殆ド何ヲモ見出シ得ナイノデアリマス、而
モ其歲入ヲ見マスト云フト是ハ確カリ非常
時ニ副フタモノガ出來上,テ居リマス、赤字
公債ヲ一億六千万圓カラ出シテ、サウシテ
歲入ヲ塡補イタシテ居ル、又軍事費其他ニ
對シテ二億九千万圓カラ公債ヲ出シテ居
ル、四億九千万圓······四億六千万圓ニ近イ
公債ニ依フテ辻褄ヲ合シテ居ルノデアリマ
ス、而モ此財源ヲ如何ニスベキカ、償還財
源ヲ如何ニスベキカト云フコトニ付テハ
何等ノ考慮モ拂ハレテ居リマセヌ、私共議
會始フテ以來斯ウ云フ亂暴ナ豫算ト云フモ
ノハ見タコトガナイ、斯ク大ナル不安ヲ持ッ
テ居ルニモ拘ラズ、私ハ何ガ故ニ贊成スル
カ、私ハ只今豫算委員長ノ仰シヤッタヤウナ
簡單ナ意味デハアリマセヌ、組閣日尙ホ淺
1、ソンナ意味デハアリマセヌ、又議會召
集後ニ其途中ニ出來上ッタ內閣デアル、デア
ルカラシテ見遁シテ置ク、ソンナ意味ヂヤ
アリマセヌ、私ハ現内閣ニ大ナル信賴ヲ持,
テ居ル、現内閣ハ確カニ實力ヲ具ヘテ居ル、
是ガ敢テ私ハ此豫算ニ贊成シテ居リマス所
以ナンデアリマス、何ガ故ニ私共現內閣ヲ
信賴スルカ、中ニハ現內閣ハ政黨ニ基礎ヲ
置カナイ寄木細エデアル、直チニ壞レルデ
アラウ、斯ウ云フコトヲ考ヘテ居ル人モア
ルヤウデアリマス、私ハ決シテ然ラズ、鐵
筋混凝土ノ是ハ內閣デアル、確カニ非常時
ニ處スル耐震耐火請合ノ內閣デアル、斯ウ
云フコトヲ信ジテ居ル、何トナレバ其基礎
ハ國民ニ置イテ居ル、此內閣出來上ッタ時ニ
誰カ此內閣ヲ歡迎シナイ者ガアリマシタ
カ、確カニ其基礎ハ國民ニ置イテ居ル、又
確カニ鐵筋デアリマス、齋藤首相始メ內閣
ニ列シタ方ミハ、其才能トカ手腕トカ云フコ
トニ付テハ、人ニ依ッテ色〓見方ガアリマセ
ウ、兎ニ⻆眞面目ナ人デアル、人格者揃ヒ
デアル、決シテ私利黨略ノ爲ニ惡イコトヲ
スル人ヂヤナイ、此信賴ヲ受ケテ居ル、之
ガ非常ナ力デアリマス、私ハ敢テ之ヲ鐵筋
デアル、鐵骨デアルト稱スル所以デアル、
又「コンクリート」ガチヤント打込ンデア
ル、決シテ現内閣ハ政黨ヲ無視スルモノヂ
ヤアリマセヌ、議會政治ヲ尊重イタシテ
居リマス、政民ノ二大政黨ガ「コンクリー
ト」ニナッテ居ル、現ニ議會ニ於テ、衆議院ニ
於テ彼ノ「コンクリート」ヲ打込ンデ居ル樣
子ヲ見ルト實ニ愉快デ堪ラナイ、現ニ現ハ
レテ居ル豫算案ニ付テアノ衆議院ノ光景ハ
如何デアリマシタ、多少兩大政黨トノ間ニ
議論ハアッタヤウデアリマス、一方ハ大ナル
積極的デアル、我黨ノ豫算ヲ踏襲シタモノ
デアル、將來モ財政、經濟政策ニ向フテ積極
的ニ進マナケレバナラヌ、又一方ハ決シテ
是ハ或一黨一派ノモノヂヤナイ、我ミガ殘
シテ置イタ其方針ヲ繼イテ來タモノデア
ル、言葉ハ違ヒマスガ、其實、結論ハ同ジ
所ニ到達シタノデアリマス、平假名デ書ク
カ片假名デ書クカト云フダケノ違ヒデア
ル、議會ハ言論ノ府デアリマス、十分ニ議
論ヲ練ルガ宜シイ「コンクリート」ヲ煉リ返
シテ居ルヤウナモノデアル、サウシテ兩大
政黨ノミナラズ、無產黨モ雙手ヲ擧ゲテ贊
成ヲ致シテ居リマス、軍事費ハ兎ニ角ト致
シマシテ、此種ノ提案ニ向テテ起起立總員、
全會一致ト云フ議長ノ宣言ヲ下シタコトハ
嘗テアリマスカ、私ドモ經驗デハ覺エヘガ
ナイ、確カニ「コンクリート」ハ斯ノ如クニ
シテ打込マレ、又昨日ノアノ農村救濟、時
局對策ニ對スル所ノ決議案ニ對シテノ態度
ハ如何デアリマス、兩大政黨ハ勿論ノコト
無產黨モデス、之ニ贊成ヲ致シテ矢張リ全
會一致ノ決議ヲ見タノデアリマス、是ハ私
ハ私ハ敢テ鐵筋「コンクリート」ノ國民ノ擧國
一致ノ信賴ヲ受ケタ所ノ實力ノアル丈夫ナ內
閣デアルト云フコトヲ深ク信ズル所以デア
ルノデアリマス、先刻來色ミ議事ノ取廻シ
ノ都合モアルト云フコトデ餘リ時間ヲ長ク
取ルノハ迷惑デアルト云フコトヲ聞キマシ
タノデ、私ハ農村問題ニ重點ヲ置キマシテ、
サウシテ私ハ自分ノ此信賴シテ居ル內閣ニ
向ウテ要望スル所ヲ述べテ見タイト思フノ
デアリマス、私ハ農村ニ住ンデ居ル關係デ
能ク內情ヲ承知イタシテ居リマス、今日ノ
農村ノ極度ニ窮迫シテ居ル狀態モ能ク承知
シテ居ル、一面ニハ又其長所モ能ク分ッテ居
ル、色ミト〓究モシ、考ヘテモ見マシタガ、
所謂窓外一枝ノ梅ト云フカ、一日中梅ヲ探
シテ步キマシタガ見當ラナイ焉ゾ知ラン自
分ノ家ニ歸ッテ見ルト窓前ノ梅一枝デアル、
農村ヲ救フモノハ言葉ハ古イガ勤儉ノ二字
ヨリ外ニナイ、之ヲ今ノ流行リ言葉デ言ヘ
バ、所謂自力更生ヨリ外コナイト云フコト
ヲ深ク信ズルモノデアリマス、此自力更生
ハ單ニ私ハ農村ヲ救フノミナラズ、今日ノ
日本ヲ救フモノデアルト深ク信ジテ居ル、
私共今度ノ戰爭ニ依リマシテ色ミノモノヲ
得マシタ、其中デ一番私共ノ獲物ノ大キナ
モノハ何デアルカト云フト、私ハ日本ガ······
日本國民ガ國民自身ヲ知ッタト云フコトデ
アル、自己ヲ知ッタト云フコトデアル、其自
力如何ヲ知ッタカト云フコトデアル、私是レ
位ノ獲物ハナイト思フ、私共戰爭前ニ心配
シテ居ッタコトハ、近頃所謂左傾的ノ思想ガ
這入ッテ來タ、赤イ思想ガ瀰漫シテ來タ、日
本ノ國體觀念ニ或ハ搖ギガ來テ居リヤシナ
イカ、斯ウ云フヤウニ深ク心配シテ居リマ
シク、然ルニ戰爭ニ依ッテ何ガ現ハレテ來マ
シタ、私ドモ日〓日露ノ役ニモ見ルコトノ
出來ナカッタ所ノアノ爆彈三男士ガ現ハレ
テ來マシタ、又アノ空閑少佐ノ壯烈ナル最
期ハ如何デアリマスルカ、是ハ私共ハ日〓
日露ノ戰役ニモ見ナカッタ事質デアルノデ
アリマス、斯ウ云フ力强イモノガ日本ニア
ル、決シテ日本ノ日本精神、大和魂ト云フ
モノハ失ハレテ居ナイト云フコトヲ見出シ
マシタ、是ハ大イナル今度ノ戰爭ノ獲物デ
アルト思ウテ居ル、又國際聯盟デ始終十三
對一デ闘フテ來タ、非常ニ私ハ日本ガ茲ニ
自信力ヲ强クシ得タト感ジテ居リマス、是
ハ大イナル獲物デアル、此處ニ基礎ヲ置イ
テ我ミハ更生シナケレバナラヌ、是ハ近頃
ノ解決問題ノ一例ニ過ギヌガ、アノ滯貨生
絲ノ處分問題ノ如キモ
(副議長公爵近衞文麿君議長席ニ著ク〕
確カニ私ハ自力更生ノ自覺ノ現ハレノ一デ
アルト思ウテ居ル、今日迄色ミノ案ヲ實行
シテ見タガ、結局其內ニハ亞米利加ノ景氣
モ好クナルダラウ、サウシタラ何トカナル
ヂヤラウ、マルキリ他力デアル、今決シテ
サウ云フモノヲ相手ニシテ居〃テハナラナ
イ、玆ニ目覺メタ時ニアノ大問題ガ一週間經
タヌ內ニ······此間議會デ質問シタ時ニハマ
ダ農林大臣ハ考慮中デアルト云フモノガ、
旣ニソレガ貴衆兩院ニ於テ決定サレテ居
ル、是ハ確カニモウ自分自ラ目覺メテ自分
ノ力デ更正シナケレバナラヌト云フ閃キガ
玆ニ私ハ現ハレテ來テ居ルト思フノデアリマ
ス、又私近頃起ッテ居ル所ノ、前議會ニモヤ
カマシカッタ所ノ犬養首相ニ對スル臣節問
題、又荒木陸相ニ對スル所ノ留任問題ニ付
テモ私ハ自分ノ考察スル所ヲ述ベテ見タイ
ト思フ、私ハ忘レモセヌ此壇上カラ大養首
相ハ進ンデ骸骨ヲ乞ヒ奉ルモ責任ヲ執
ル一ツノ途デ、進ンデ此職ニ留マッテ再ビ
斯カル過チノナイコトニ萬全ヲ盡スト云フ
コトモ責任ヲ取ル途デアル、自分ハ後ノ
モノヲ選ブノデアル、斯ウ仰セラレマシタ
荒木陸相又然リ、世間ハデス、此臣節問題
ト云フコトニ付テ餘リ共鳴シナカッタ、矢張
リ此骸骨ヲ乞ヒ奉ルト云フコトヨリハ、退イ
テ其職ニ留ッテ、サウシテ其責任ヲ果スト云
フコトガ宜イト判斷シタモノト私ハ見テ居
ル、皆樣御承知ノ通リ首相ノアノ凶變ハ一
應考ヘルト此問題ニ聯關シテ居ルカト思フ
ガ、決シテサウヂヤナカッタヤウデアル、又
荒木陸相ノ今次ノ留任問題ニ付テ考ヘマス
ノニ、昭和ノ聖代ニ有リ得べカラザルアノ
官邸ノ凶變ハ、決シテ陸相ノ責任ナイトハ
認メマセヌ、而モ其陸相ノ留任ト云フコト
ヲ寛大ニ認容シテ居ル現狀デアリマス、是
ハ如何ニ解釋スルカ、私ハ責任ヲ取ッテ辭職
スル、腹ヲ切ルト云フコトモ一ノ責任ヲ取
ル途デアル、ソコニ更生シテ自分ノ責任ノ
重大ナルモノアルコトヲ自覺シテ、所謂自
力更生ト云フコトガ私ハ此問題ヲ解釋シ得
ルト思フノデアリマス空閑少佐、乃木將
軍、私ハ此途ヲ選ンダモノデアルト私ハ信
ジテ居ル、此意味ニ於テ陸相ノ留任ニハ私
ハ深キ敬意ヲ拂フテ居ル者デアルノデアリ
マン、是ハ餘談ノヤウデアリマスルガ、農
村更正ニモ此心持ガ私ハ必要デアルト思フ
テ居ル、如何ニモ農村ハ窮迫イタシテ居リ
マス、色ミノ材料ニ依ッテ類推シマスルト云
フト、五十億內外ノ負債ヲ有ッテ居ルト云フ
コトハ事實デアル、而モ亦其半面ヲ見ルト、
其半バニ近イ所ノ貯金ノアルト云フコトモ
事實デアル、餘リ世間デハ言ハヌガ、斯ウ
云フコトモ事實デアル、此半面ノ事實モ考
ヘナケレバナラヌ、見方ニ依ッテハ農村ノ
今日アルハ彼等自ラガ蒔イタ所ノ種ヲ刈ッ
テ居ルトモ見得ル、アノ景氣ノ好イ時代ニ繭
ガ十五圓モシタ、十圓以上モシタ、米ガ十
五圓モシタト云フ時ニ今日アルコトヲ覺悟
シテ、サウシテ勤儉節約貯畜ヲスルナラバ、
決シテ今日ノヤウナ狀態ニ陷ラナカッタノ
デアリマス、現ニ私農村ニ於テ個々ノ事實
ヲ調ベルト、サウ云フ人ガ隨分アル、我一
ハ今日アルベキヲ豫想シテ儉約シテオ金ヲ
貯ヘテ置イタ、貯金ハ斯ウ云フ時ニ利用ス
ルモノデアルト云フコトデ、不景氣ト云フ
モノハ何處ヲ吹ク風デアルカト云フ風ニ安
ラケク日送リヲシテ居ル、多クハナイガ、
現ニアル、此處ヲ能ク考ヘナケレバイカヌ、
又今眞面目ナ農村、眞面目ナ農民ハ玆ニ目
覺メテ何ヨリモ自力更生ノ途ヲ迪ラウト云
フコトニ奮國シテ居ル村モ現ニアル、兵庫
縣ノ如キハ現ニデス、自力更生祭ト云フモ
ノヲ執リ行フテ、サウシテ縣ヲ擧ゲテ一致
シテ斯ク進マウト云フコトニシテ居ル、又
帝國農會ニ於キマシテ、此間各縣ノ農會長
ガ寄リマシテ、矢張リ農村救濟ノ基調ハ自
力更正ニ置カネバナラヌ、サウシテ天ハ自
カラ助クル者ヲ助ク、爲政者ハ、此更正ノ
覺悟アルモノヲ助長スルコトニ努メテ貰ヒ
タイ、斯ウ云フ決議ヲ致シテ居ル、其實行
ニ取リ掛カラウトシテ居ルノデアリマス、
私ハ政府ハ此處ニ基調ヲ置イテ戴キタイ、
私、昨日衆議院デ一日、アノ決議案ノ出ル
ノヲ待ッテ樣子ヲ窺"テ居リマシタガ、此指
導精神ニ觸レテ衆議院ノ方ミガ餘リ頭ヲ
使ヶテ居ナイノヲ甚ダ遺憾ニ存ジマシタ、兎
ニ角現在國民ノ多數ヲ占メテ居ル農民ガ非
常ニ窮迫シテ居ルト云フコトハ現在ノ事實
デ、眞面目ナ借金モ少クナイト云フコトモ
事實デアル、今此更生ノ精神ヲ以テ自ラ新
シイ運命ヲ開カウトシテ居ル、此更生ノ意
氣ノアル者ニ對シテハ、出來ルダケ爲政者
タル者ハ之ヲ助長スル所ノ方策ヲ執ッテ戴
カナケレバナラヌト思フノデアリマス、此
方策ト致シマシテ、院ノ內外ニ取沙汰サレ
タ對案ニ借金ノ捧引ガアリマス、「モラトリ
アム」ガアリマス、卽時平價ノ切下ガアリマ
ス、是ハ單ナル其方面ノ知識ノ無イ人ノ言
論デアルト一笑シ去ルコトハ出來マセヌ、
實際眞面目ナ農民ニモ、事ニ依ルト斯ウ云フ
コトガ現ハレテ來ルノデナイカト云フコト
ヲ期待スル人モ間ミアルノデアリマス、其
聲ヲ聞クノデアリマス、私ハ決シテ此衆議
院デ此聲ノ現ハレタト云フコトヲ無意味ノ
モノト思ヒマセヌ、幸ニ衆議院デ此聲ガ高
調サレテ、而モ斯ウ云フコトハ國家ノ基礎
ヲ危クスルモノデアル、彼等自身、農民自
身ヲ滅ボスモノデアル、決シテ農民ヲ濟フ
途デナイト云フコトガ明ニサレマシテ、ソ
コデ練リ上ゲラレタノガ、アノ政友會及民
政黨ノ決議案デアリマス、私ハ此ノ點ニ觸
レマシテ··
〔議長公爵德川家達君議長席ニ復ス〕
議論ヲ簡約ニスル爲ニ御案內デアリマセウ
ガ、決議案ノ要旨ヲ讀ミ上ゲタイト思ヒマ
ス、政友會ノ救濟策ハ通貨流通ノ圓滿、是
ガ一デアリマス、第二ハ農村其他ノ負債整
理、第三ハ公共事業ノ徹底的實施、第四ハ
農產物共他重要產業統制、此四ツデアリマ
ス、ソコデ民政黨ノ決議ハ一、金融ノ疏通、
ニ、負債ノ整理、三、生產物竝ニ販賣ノ
統制、四、土木工事ノ普遍的實行、是デア
リマス、要スルニ少シモ變シテ居リマセヌ、
斯ク行詰ッテ參リマスト、所謂步ムベキ途ハ
一ツデス、一ツモ變ヲテ居リマセヌ、私ハ時
間ノ都合上多クノ言葉ヲ費スコトヲ遠慮イ
タシマス、ドウカ政府ニ於カレマシテハ、
衆議院ニ於テモ詳シク此意味合ヲ御話ガア
リマシタ、此意ノ存スル所ヲ御汲取アッテ、
サウシテ私ハ一日モ速ク臨時議會ヲ召集シ
テ、具體的ニ此案ノ解決ニ邁進サレムコト
ヲ切ニ望ンデ巳マナイノデアリマス、承ハ
ル所ニ依リマスト、我ガ陛下ニ於カセラレ
テモ深ク農村問題ヲ御憂慮遊バサレマシテ
〓態、總理大臣、又農林大臣ヲ御召ニナッタト
云フコトヲ承ッテ居リマス、此農村問題ノ解
決ハ軈テ所謂中小商工業者ノ解決ニナルノ
デアリマス、軈テ都市ノ問題ノ解決ニナル
ノデアリマス、私ハ農村ニ重點ヲ置イテ御
話シマシタケレドモ、今日困フテ居ルモノハ
啻ニ中小商工業者、農民ノミデハアリマセ
ヌ、總テノ人ガ困ッテ居ル、行詰ノテ居ル、
併シ國民ノ多數ヲ占メテ居ル所ノ農村ヲ救
ヒ、農民ヲ救フコトニ依ッテ玆ニ私ハ日本ガ
更生ヲスルコトガ出來ルト深ク信ジテ居ル
ノデアリマス、私ハ前ニ述べマシタ意味ニ
於キマシテ現內閣ヲ信賴シ、又實行力ヲ備
ヘタ内閣デアルト深ク信ジテ居リマス、決
シテ私ハ短命トハ認メマセヌ、議會ノ總テ
ガ與黨デアリマス、アノ無產黨ノ人スラア
ア云フヤウナ態度デアリマス、ドウカ御自
重御自愛下サイマシテ驀地ニ此難局ヲ救フ
コトニ御進ミアラムコトヲ切ニ望ンデ已ミ
マセヌ(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00919320614&spkNum=93
-
094・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 阪谷男爵ノ登壇
ヲ願ヒマス
〔男爵阪谷芳郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00919320614&spkNum=94
-
095・阪谷芳郎
○男爵阪谷芳郞君 本員ハ此豫算ニ對シ實
ニ斷膓ノ思ヲ以テ贊成スルモノデゴザイマ
ス、實ニ議會有ッテ以來四十餘年間最惡ノ歲
計デアル、昭和七年度ノ歲計ハ非常ノ均衡
ヲ失シ、我邦歲計上ノ新例タル歲入補塡公
債ヲ發行スルノ已ムヲ得ザルニ至ッタノデ
アリマス、然カノミナラズ、此公債ハ內外
何レノ市場ニ於テモ募集ノ見込ナク、政府
ハ日本銀行條例竝ニ兌換銀行劵條例ニ改正
ヲ加へ、巨額ノ不換紙幣ヲ發行シテ日本銀
行ニ引受ケシムルモノデアリマシテ、公債
ノ性質上最惡ノモノト言ハナケレバナラ
ヌ、多年多大ノ歲計剩餘ヲ有シ、基礎ノ鞏
固ヲ以テ誇リトシタル我邦財政ノ斯ル不良
ノ狀態ニ陷リタルコトハ、近年ニ於ケル歷
代内閣ノ不節制ナル濫費ト、歲計豫算上用
意周到ヲ缺キタル結果デアッテ、實ニ遺憾ノ
至リデアリマス、尙ホ一層今年度歲計ノ不
良ナルコトハ、七年度ニ於テ政府ガ新ニ計
畫セル公債發行高ハ殆ド七億圓デアリマシ
テ、其一箇年ノ利子ハ三千五百万圓ヲ下リ
マセヌ、政府ハ此巨額ノ新公債元利償還ニ
要スル財源ニ付テハ、未ダ何等ノ計畫ヲ有,
テ居ラナイノデアリマス、斯ノ如キ不良ナ
ル財政計畫ヨリ生ズル惡影響ハ、今後遠カ
ラズ一般經濟上、延テハ國民全部ノ頭ノ上
ニ落下シ來ルノデアッテ、今日ヨリ想像スル
モ實ニ寒心ニ堪ヘヌモノガゴザイマス、國
家ノ衰退イタシマスノハ往々財政紊亂ニ其
端ヲ發シ終ニ國威ヲ失墜シ亡國トナリタル
モノハ古今餘リニ其實例ガ多イノデアリ
マス、或ハ援助ヲ國際聯盟ニ求ムルモノモ
アリ、或ハ債權國ニ鐵道、或ハ稅關ノ管理
ヲ託スルモノモアリマス、霜ヲ履ンデ堅氷
至ルノ戒ハ賢明ナル國民ハ一日モ忘レテハ
ナリマセヌ、本員ハ切ニ明治大正兩天皇
ノ御稜威ニ依リ、築上ゲラレタ帝國今日ノ
世界的强國タルノ地位ヲ失墜セザルヤウ、
擧國一致深ク反省セムコトヲ望ムモノデア
リマス、幸ニ齋藤首相ハ過日本員ノ質問ニ
對シ、次ノ年度卽チ昭和八年度ヨリハ歲入出
ノ均衡ヲ囘復スルコトヲ期スルト言明セラ
レタノデアリマシテ、本員ノ深ク滿足シ、首
相ノ誠意ニ信賴スルモノデアリマス、大藏
省ノ仕事ハ人身ニ例ヘテ申シマスレバ心
臟ヤ膓胃ノ如キモノデアリマシテ、若シ心
臟ヤ腸胃ガ不健康デアッタナラバ、腦モ手足
モ十分活動ノ出來マセヌコトハ勿論デアリ
や 、來ル八年度ノ豫算ノ編成ニ當フテハ、
各省大臣ハ大決心ヲ以テ大節減ヲ覺悟シ、
地方人民モ農民ト謂ハズ商工業者ト謂ハズ、
過大ノ要求ヲ政府ニ爲スコトナク、進ンデ
增稅ヲモ辭セズ、共ニ倶ニ首相ヲ助ケテ歲
計ノ均衡ヲ圖リ、財政ノ健康狀態ヲ囘復ス
ルコトニ力ムベキデアル、本員ハ今日ヨリ
豫メ此事ヲ政府竝ニ國民ニ切望イタシテ置
キマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00919320614&spkNum=95
-
096・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 齋藤內閣總理大
臣
〔國務大臣子爵齋藤實君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00919320614&spkNum=96
-
097・齋藤實
○國務大臣(子爵齊藤實君) 本日午前豫算
總會ニ於キマシテ、前田子爵ヨリ御質問ガ
アリマシタ點ニ付キマシテ、此機會ニ御答
ヘ致シタイト思ヒマス、農村ノ救濟等ニ關
シ度ミノ貴族院ノ決議ニ付キマシテハ、昨
日衆議院ニ於ケル同樣ノ決議ノ際申述ベマ
シタ通リ、政府ハ成ルベク速ニ之ガ對策ヲ
樹テマスルコトニ努力イタシマス積リデゴ
ザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00919320614&spkNum=97
-
098・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 他ニ發言者モナ
イト認メマスカラ、豫算案ニ付テ採決イタ
シタイト存ジマス、諸君ニ於テ御異議ガナ
ケレバ、先刻豫算委員長ノ報〓セラレマシ
タ豫算案三件、一括シテ議題ト致シタイト
存ジマス豫算案全部、原案ニ同意ノ諸君ノ
起立ヲ請ヒマス
〔起立者多數〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00919320614&spkNum=98
-
099・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 過半數ト認メマ
ス、議事ノ都合上四時半マデ休憩イタシマ
ス
午後三時二十一分休憩
午後四時三十三分開會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00919320614&spkNum=99
-
100・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 是ヨリ書記官ヲ
シテ報〓ヲ致サセマス
〔瀨古書記官朗讀〕
本日本院ニ於テ可決シタル左ノ政府提出案
ハ卽日裁可ヲ奏請シ又可決ノ旨ヲ衆議院ニ
通知セリ
柳河軌道株式會社所屬軌道補償ノ爲公債
發行ニ關スル法律案
兌換銀行劵條例中改正法律案
日本銀行納付金法案
日本銀行參與會法案
資本逃避防止法案
昭和七年法律第一號中改正法律案
昭和七年度一般會計歲出ノ財源ニ充ツル
爲公債發行ニ關スル法律案
行政整理又ハ軍備整理ニ際シ退官退職シ
タル者等ニ交付スル公債發行ニ關スル法
律案
昭和七年度以降國債償還資金ノ繰入一部
停止ニ關スル法律案
國債ノ價額計算ニ關スル法律案
恩給ノ減額補給及停止ニ關スル法律案
造幣局資金拂出ニ關スル法律案
絲價安定融資擔保生絲買收法案
絲價安定融資損失善後處理法案
昭和七年度歲入歲出總豫算追加案(第)
號
昭和七年度各特別會計歲入歲出豫算追加
案(特第一號)
豫算外國庫ノ負擔トナルベキ契約ヲ爲ス
ヲ要スル件
本日衆議院ヨリ本院ノ送付ニ係ル左ノ政府
提出案ハ同院ニ於テ之ヲ可決シ奏上セル旨
ノ通牒ヲ受領セリ
手形法案
本日委員長ヨリ左ノ報告書ヲ提出セリ
關稅定率法中改正法律案可決報〓書
輸入稅ノ從量稅率ニ關スル法律案可決報
告書発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00919320614&spkNum=100
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101・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 是ヨリ會議ヲ開
キマス、關稅定率法中改正法律案、輸入稅ノ
從量稅ニ關スル法律案、右兩案ノ第一讀會
ノ續ヲ開ク爲ニ、議事日程ノ追加ヲ致シタ
イト考ヘマス、御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00919320614&spkNum=101
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102・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 御異議ナイト認
メマス、委員長報告、兒玉伯爵ノ登壇ヲ望
ミマス
關稅定率法中改正法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報告候也
昭和七年六月十四日
委員長伯爵兒玉秀雄
貴族院議長公爵德川家達殿
輸入稅ノ從量稅率ニ關スル法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報告候也
昭和七年六月十四日
委員長伯爵兒玉秀雄
貴族院議長公爵德川家達殿
〔伯爵兒玉秀雄君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00919320614&spkNum=102
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103・兒玉秀雄
○伯爵兒玉秀雄君 關稅定率法中改正法律
案外一件ニ關スル特別委員會ノ經過竝ニ其
結果ヲ御報告申上ゲマス、委員會ハ去ル十
一日ヨリ十四日マデ日曜日ニモ拘リマセ
ズ、午前午後ニ亙リ開會ヲ致シマシタ、政
府ノ說明ヲ求メ、次デ二案ニ付テ質疑應答
ヲ重ネテ愼重ニ審議ヲ盡シタ次第デアリマ
ス、御承知ノ通リ今囘ノ關稅定率改正法律
案ニ揭ゲラレマシタル品目ハ二十九ノ種目
ニ亙ッテ居リマスルノデ、可ナリ廣汎ニ亙リ
マシテ其稅率ヲ改正セラルルモノデアリマ
ス、政府ハ是等品目ノ生產輸入及ビ需要供
給ノ狀況等ヲ精査イタシマシテ、現行稅率
ハ外國品ノ輸入ヲ抑制シ內地產業ヲ保護ス
ル點ニ於テ遺憾少カラズトナシテ、取敢ズ
之ヲ改正スルノ必要ヲ認メタノデアリマ
ス、輸入稅ノ從量稅率ニ關スル法律案ニ付
キマシテハ、御承知ノ通リ現今ノ輸入稅表
中ニハ從價稅率ト從量稅率トヲ併用シテ居
リマスルガ、昨年來我國ノ外國爲替相場ノ
低落ニ基キマシテ、輸入品ノ價格ハ自然ニ
騰貴ノ傾向ヲ來シマシタルガ爲ニ、從價稅
率ニ依ル課稅金額ガ增加セラレマシタノニ
モ拘ラズ、従量稅ニ依ル課稅ハ從來トノ、
變化ガ無イガ爲ニ、玆ニ課稅ノ調和ヲ害ス
ルノ結果ヲ來シタノデアリマス、玆ニ於キ
マシテ、當分ノ内相當增率ノ必要ヲ認メテ、
爲替相場其他ノ事情ヲ參酌イタシマシテ、
大體三割五分程度ヲ適當ト認メテ、之ニ依〃
テ調節ヲ圖ラムトシタノデアリマス、本案
ハ國民經濟ニ直接重大ナル影響ヲ及ボスベ
キ重大ナル案件デモアリ、且ハ衆議院ニ於
テ殆ド全會一致ヲ以テ議決シタル關係モア
リマスルノデ、旁、兩案ニ亙リ各品目ニ付
キ詳細ナル質問應答ガ重ネラレマシタ、其
細目ニ涉リマシテハ之ヲ速記錄ニ讓ルコト
ニ致シマシテ、其重要ナル二三點ニ付テ御
紹介ヲ申上ゲタイト思ヒマス、本案ノ如キ
產業上竝ニ國民生活ニ重大ナル關係ヲ有ス
ル議案ヲ、短期ノ臨時議會ニ何故ニ出シタノ
デアルカ、又爲替相場ノ不安定ノ今日ニ、
從量稅三割五分ヲ增徵スル理由ハ如何デア
ルカ、政府ハ關稅增率ハ物價低落ノ爲ニ苦
シミツツアル國民ノ生活ヲ救濟スルノ所以
デアリ、又各國ノ關稅政策ニ對峙シテ、國
内產業ノ窮地ヨリ之ヲ救濟スルノ方策デア
ルガ故ニ、一日早ケレバ一日ノ利益アリト
信ズル、臨時議會ニ提出スル所以ノモノモ
玆ニ存スルノデアル、尙ホ爲替相場ノ安定
ヲ俟テテ稅ヲ改正スルトナレバ、徒ニ時機
ヲ失スルノ虞レアリト說明セラレテ、尙ホ
若シ爲替相場ニ急激ナル變動ヲ來タスベキ
場合ニ於キマシテハ、政府ハ更ニ稅率ヲ改
正スルノ用意ガアルト云フ說明デアリマシ
ク、又一委員ヨリハ只今ノ趣旨トハ反對
ニ、列國ハ競ヲテ關稅障壁ヲ設ケテ、單リ日
本ハ立チ遲レテ居ル傾キガアル、臨時議會
ヲ開イテ此關稅問題ヲ解決スルハ當然デア
ル、更ニ又次囘ニ於テ廣汎ニ亙ッテ關稅ノ改
正ノ意思アリヤト云フ質問ニ對シマシテ、
政府ハ更ニ愼重ナル調査ヲ遂ゲテ改正案ヲ
提出スルノ準備ガアルト言明セラレテ居リ
マス、又國防上ノ見地カラ見マスレバ、低廉
ナル物資ノ購入ヲ必要トスルノガ原則デア
ルケレドモ、一面戰時ニ於キマスル國家總
動員ノ關係ヨリ見マスルナラバ、製鐵業ノ
如キハ最モ重要ナル起業デアリ、鐵ソレ自
身ハ勿論ノコト、是ヨリ生ズル所ノ副產品
ニ付キマシテモ、是非トモ自給自足ノ國策
ヲ立テナケレバナラヌト述ベテ居リマス、
又國內產業ノ保護奬勵竝ニ非常時ニ對スル
歲入關係ニ依リテ、本案ハ臨時議會ニ提案
スル已ムヲ得ザル事情ガアルト云フ事柄ヲ
述ペデ政府ノ所信ヲ明カニシテ居リマス、
委員會ニ於キマスル質問ノ中心ハ從量稅率
增稅玆ニ銑鐵問題ニ集中セラレタノデアリ
マス、銑鐵ニ關係イタシマシテハ、印度銑
鐵ノ關係、印度ニ於ケル製鐵業ニ關スル邦
人投資ノ始末、關稅增徵ノ日用品ニ及ボス
ベキ影響、輸入貿易ニ障碍ヲ及ボスコトハ
ナイノデアルカ、又膚鐵輸入ノ增加ヲ促ス
虞レガナイノデアルカ、又關稅引上ゲハ印
度ノ報復政策ヲ導クノ憂ハナイノデアルカ
ノ如キ、各般ノ問題ニ亙リマシテ專門的ニ
微細ナ說明デ重ネラレタノデアリマス又
木材ニ關係イタシマシテモ詳細ナル質問ガ
アリ、殊ニ南洋材ノ處理方ニ付キマシテ政
府ノ所信ニ質シ又小麥ニ付テ自給自足ノ
方針アリヤ否ヤ等ノ質問ガ重ネラレタノデ
アリマス、尙ホ政府ハ衆議院ニ於キマシテ
製鐵事業ノ整理竝ニ合理化ニ關スル聲明ヲ
爲シ、又衆議院ニ於キマシテ關稅ノ完璧殊
ニ從量稅ノ改正ニ關スル決議ヲ爲シタニ付
テ、政府ハ之ヲ十分ニ尊重スル意味ノ言明
ヲ爲シテ居リマス、最後ニ鐵ノ政策ニ關係
イタシマシテ鐵國策ノ樹立ノ必要ヲ述べ、
殊ニ滿鮮ヲ包含シタル所ノ新シキ鐵ニ對
スル國策ノ樹立ノ必要ニ關係イタシマシ
テ、特ニ總理大臣ノ出席ヲ求メテ其所信
ヲ質シタノデアリマス、ソレニ對シマシ
テ總理大臣ハ我國ノ製鐵事業ガ滿洲ニ於
ケル事業等ヲ除外シテハ、到底確乎タル
基礎ノ上ニ立ツコトハ出來ナイト云フコ
トハ誠ニ御說ノ通リデアリマス、最近ノ
滿洲ノ情勢ニ鑑ミマシテ將來鐵及ビ之ニ附
隨スル產業ノ國策ヲ立ツルコトニ付テハ、
十分努力イタシタイモノデアルト云フ深切
ナル言明ガアッタノデアリマス、次イデ質問
ヲ終了イタシマシテ討論ニ移リマシタ、本
案ノ全部ニ對シテハ必シモ誰モ贊成スベキ
モノデハナイガ、齋藤總理大臣ガ老軀ヲ提
ゲテ此難局ニ立タレタコトニ付テ衷心ヨリ
敬意ヲ表シ、齋藤總理ニ對シテ明ルク正シ
イ政治ヲ希望スル意味ニ於テ本案ニ對シテ
二個ノ希望條件ヲ附シテ本案ニ同意ヲサレ
タイト云フ意見ノ陳述ガゴザイマシタ、其
希望決議ハ
本案ハ此際暫定的ニ承認スルモ政府
ハ本案實施ノ狀況ニ鑑ミ將來一層ノ完
璧ヲ期スルハ勿論從量稅品目ニ付完全
ナル調査ヲ遂ゲ更ニ稅率改正案ヲ成ル
ヘク速ニ議會ニ提出スヘシ
二、現在製鐵業ノ資本ヲ整理シ及事業ノ
合理化ヲ圖リ以ヲ生產費ノ低減ヲ期ス
ベシ
此二ツノ希望條件ヲ述べラレタノデアリマ
ス、此二個ノ希望決議ニ對シマシテハ大
藏大臣竝ニ商工大臣ヨリ誠意實現ヲ期スベ
キ旨深切ナル言明ガゴサイマシタノデゴザ
イマス、他ノ委員ヨリモ略ボ同樣ノ意見ノ
陳述ガゴザイマシテ、討論ヲ終結イタシマ
シタ、採決ニ入リマシタガ、採決ノ場合ニ
於キマシテ、全會一致兩案共原案ニ可決シ
テ、之ニ附帶決議ヲ附スベキモノナリト決
定シタノデアリマス、之ヲ以テ本特別委員
會ノ報告ヲ終リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00919320614&spkNum=103
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104・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 溝口伯爵ヨリ質
疑ノ通告ヲ得マシタカラ發言ヲ許シマス、
溝口伯爵発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00919320614&spkNum=104
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105・溝口直亮
○伯爵溝口直亮君 極メテ簡單ナルコトデ
ゴザイマスカラシテ、議席ニ於テ發言イタ
シタイト思ヒマス、御許シヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00919320614&spkNum=105
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106・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 宜シウゴザイマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00919320614&spkNum=106
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107・溝口直亮
○伯爵溝口直亮君 私ハ此機會ニ於キマシ
テ產業國策ニ關シマシテ、政府ノ所信ヲ伺
ヒタイト存ジマス、勿論從來モ產業國策ノ
アッタコトハ申上ゲルマデモゴザイマセヌ
ケレドモ、今日ノ狀勢ハ非常ナル變化ヲ起
シテ居リマス、世界ニ於ケル國際經濟關係
ガ大イナル變更ヲ見マシタノミナラズ、近
クハ滿蒙ノ形勢ハ非常ナル變化ヲ生ジテ居
リマス、從テ此際現下ノ狀勢ニ適應スル產
業國策、殊ニ鐵工業ニ關スル國策ヲ樹立ス
ルコトハ、最モ國家百年ノ大計トシテ速ニ
考慮實行スベキコトナリト確信スル所デゴ
ザイマス、政府ハ之ニ關シテ如何ナル信念
ト覺悟ヲ有セラルルカ、此機會ニ於テ其所
信ヲ伺ヒタイト存ジマス
〔國務大臣子爵齋藤實君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00919320614&spkNum=107
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108・齋藤實
○國務大臣(子爵齋藤實君) 唯今溝口伯爵
ノ御質問ニ對シマシテ御答ヲ致シマス、政
府ハ日本及滿洲ノ產業政策ニ付キマシテ、
良ク關聯シマシタル政策ヲ立ツベキデアル
ト考ヘテ居リマス、殊ニ製鐵業ニ付キマシ
テハ一貫ノ國策ヲ樹テナケレバナラヌト考
ヘテ居ル次第デアリマスルカラ、此方針ヲ
以チマシテ國策ヲ樹テタイト云フ考ヲ持,
テ居リマス、之ヲ以テ御答ト致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00919320614&spkNum=108
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109・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 別段發言モナイ
ト認メマスカラ採決ヲ致シマス、採決ニ付
キ御諮リヲ致シマス、只今兒玉特別委員長
ノ報告セラレマシタ兩案トモ一括シテ議題
トナスコトニ御異存ゴザイマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00919320614&spkNum=109
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110・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00919320614&spkNum=110
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111・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 兩案ノ第二讀會
ヲ開クコトニ御異存ゴザイマセヌカ
〔〔異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00919320614&spkNum=111
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112・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00919320614&spkNum=112
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113・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直ニ兩案ノ第二讀會
ヲ開カレムコトヲ希望イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00919320614&spkNum=113
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114・植村家治
○子爵植村家治君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00919320614&spkNum=114
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115・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 西大路子爵ノ動
議ニ同意ノ諸君ノ起立ヲ請ヒマス
〔起立者多數〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00919320614&spkNum=115
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116・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 過半數ト認メマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00919320614&spkNum=116
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117・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 兩案全部ヲ問題
ニ供シマス、全部原案ニ御異存ゴザイマセ
ヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00919320614&spkNum=117
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118・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00919320614&spkNum=118
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119・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直ニ兩案ノ第三讀會
ヲ開カレムコトヲ希望イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00919320614&spkNum=119
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120・植村家治
○子爵植村家治君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00919320614&spkNum=120
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121・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 西大路子爵ノ動
議ニ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00919320614&spkNum=121
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122・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00919320614&spkNum=122
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123・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 兩案トモ第二讀
會ノ決議通リデ御異存ゴザイマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00919320614&spkNum=123
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124・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 御異議ナイト認
メマス、発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00919320614&spkNum=124
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125・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 書記官ヲシテ報
告ヲ致サセマス
〔瀨古書記官朗讀〕
昭和七年六月十四日
內閣總理大臣齋藤實
貴族院議長公爵德川家達殿
通牒
本月十五日貴族院ニ於テ帝國議會閉院式
執行被仰出候発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00919320614&spkNum=125
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126・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 是ニテ散會イタ
シマス
午後四時五十三分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006203242X00919320614&spkNum=126
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