1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和七年六月四日（土曜日）
午後一時十二分開議
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議事日程 第三號
昭和七年六月四日
午後一時開議
第一 昭和七年法律第一號中改正法律案（滿洲事件に關する經費支辨の爲公債發行に關する件）（政府提出） 第一讀會
第二 昭和七年度一般會計歳出の財源に充つる爲公債發行に關する法律案（政府提出） 第一讀會
第三 行政整理又は軍備整理に際し退官退職したる者等に交付する公債發行に關する法律案（政府提出） 第一讀會
第四 昭和七年度以降國債償還資金の繰入一部停止に關する法律案（政府提出） 第一讀會
第五 國債の價額計算に關する法律案（政府提出） 第一讀會
第六 右各案の審査を付託すへき委員の選擧
第七 兌換銀行券條例中改正法律案（政府提出） 第一讀會
第八 日本銀行納付金法案（政府提出） 第一讀會
第九 日本銀行參與會法案（政府提出） 第一讀會
第十 資本逃避防止法案（政府提出） 第一讀會
第十一 右各案の審査を付託すへき委員の選擧
第十二 關税定率法中改正法律案（政府提出） 第一讀會
第十三 輸入税の從量税率に關する法律案（政府提出） 第一讀會
第十四 右各案の審査を付託すへき委員の選擧
第十五 市町村義務教育費國庫負擔法第三條の特例に關する法律案（政府提出） 第一讀會
第十六 右議案の審査を付託すへき委員の選擧
第十七 遠洋漁業奬勵法中改正法律案（政府提出） 第一讀會
第十八 右議案の審査を付託すへき委員の選擧
第十九 柳河軌道株式會社所屬軌道補償の爲公債發行に關する法律案（政府提出） 第一讀會
第二十 右議案の審査を付託すへき委員の選擧
━━━━━━━━━━━━━発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00419320604&spkNum=0
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001・秋田清
○議長(秋田〓君) 諸般ノ報告ヲ致サセマ
ス
〔書記官朗讀〕
一政府ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
裁判所構成法中改正法律案
民事訴訟法中改正法律案
恩給ノ減額補給及停止ニ關スル法律案
(以上六月四日提出)
一議員ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
大正十二年法律第五十二號中改正法律案
(司法官試補及辯護士ノ資格ニ關スル件)
提出者
原惣兵衞君小林錡君
砂田重政君藏園三四郞君
星島二郞君松定吉君
柳田宗一郞君手代木隆吉君
衆議院議員選擧法中改正法律案
提出者〓瀨一郞君
(以上六月三日提出)
恩給法中改正法律案
提出者
松實喜代太君林路一君
(以上六月四日提出)
佐世保鎭守府海軍病院附屬療養所設置ニ
關スル建議案
提出者
佐保畢雄君向井倭雄君
西岡竹次郞君森肇君
田口文次君
事務官身分保障ニ關スル建議案
提出者〓瀨一郞君
大柚神社創設ニ關スル建議案
提出者
樋口典常君木村正義君
(以上六月三日提出)
官公學獨立經營ニ關スル建議案
提出者
加藤知正君有馬淺雄君
山下谷次君
養蠶業組合ニ對シ國庫助成金交付ニ關ス
ル建議案
提出者
加藤知正君高橋熊次郞君
菅野善右衞門君小野寺章君
繭價安定補償法制定ニ關スル建議案
提出者
加藤知正君高橋熊次郞君
菅野善衞門君小野寺章君
養蠶應急資金償還期限延期ニ關スル建議
案
提出者
加藤知正君髙橋熊次郞君
〓海線丹那隧道西口ニ停車場設置ニ關ス
ル建議案
提出者仁田大八郞君
(以上六月四日提出)
〔左ノ報〓ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノ爲
玆ニ揭載ス〕
一去二日齋藤內閣總理大臣ヨリ左ノ通發令
アリタル旨ノ通牒ヲ受領セリ
文部省普通學務局長武部欽
第六十二囘帝國議會文部省所管事務政府
委員被仰付発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00419320604&spkNum=1
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002・秋田清
○議長(秋田〓君) 是ヨリ會議ヲ開キマ
ス、御諮リ致シマス、第二部選出豫算委員、
中野正剛君ヨリ常任委員辭任ノ申出ガアリ
マシタ許可スルニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00419320604&spkNum=2
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003・秋田清
○議長(秋田〓君) 御異議ナケレバ許可致
シマス、其部ノ諸君ハ速ニ補闕選擧ヲ行ヒ、
御屆アランコトヲ望ミマス
日程第一乃至第五ハ同種ノ議案ナルニ依
リマシテ、一括議題ト爲スニ御異議アリマ
セヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00419320604&spkNum=3
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004・秋田清
○議長(秋田〓君) 御異議ナシト認メマ
ス仍テ日程第一、昭和七年法律第一號中
改正法律案、日程第二、昭和七年度一般會
計歲出ノ財源ニ充ツル爲公債發行ニ關スル
法律案、日程第三、行政整理又ハ軍備整理
ニ際シ退官退職シタル者等ニ交付スル公債
發行ニ關スル法律案、日程第四、昭和七年
度以降國債償還資金ノ繰入一部停止ニ關ス
ル法律案、日程第五、國債ノ價額計算ニ關ス
ル法律案、右ヲ一括シテ其第一讀會ヲ開キ
マス-大藏大臣高橋是〓君
第昭和七年法律第一號中改正法律
案(滿洲事件ニ關スル經費支辨ノ爲
公債發行ニ關スル件)(政府提出)
第一讀會
第二昭和七年度一般會計歲出ノ財源
ニ充ツル爲公債發行ニ關スル法律案
(政府提出)第一讀會
第三行政整理又ハ軍備整理ニ際シ退
官退職シタル者等ニ交付スル公債發
行ニ關スル法律案(政府提出)
第一讀會
第四昭和七年度以降國債償還資金ノ
繰入一部停止ニ關スル法律案(政府
提出)第一讀會
第五國債ノ價額計算ニ關スル法律案
(政府提出)第一讀會
昭和七年法律第一號中改正法律案
昭和七年法律第一號中左ノ通改正ス
「六千七百五十萬圓」ヲ「二億六千萬圓」ニ
改ム
附則
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
昭和七年度一般會計歲出ノ財源ニ充ツ
ル爲公債發行ニ關スル法律案
第一條政府ハ昭和七年度一般會計歲出
ノ財源ニ充ツル爲他ノ法律ニ依リ起債
シ得ル金額ノ外一億六千六十萬圓ヲ限
リ公債ヲ發行シ又ハ借入金ヲ爲スコト
ヲ得
第二條政府ハ昭和七年度一般會計歲出
豫算翌年度繰越額ノ財源ニ充ツル爲他
ノ法律ニ依リ起債シ得ル金額ノ外昭和
八年度ニ於テ公債ヲ發行シ又ハ借入金
ヲ爲スコトヲ得但シ前條ノ規定ニ依ル
公債又ハ借入金ト通ジテ前條ノ制限額
ヲ超ユルコトヲ得ズ
第三條前二條ノ規定ニ依ル公債ノ發行
價格差減額ヲ補塡スル爲必要アル場合
ニ於テハ前二條ノ制限以外ニ公債ヲ發
行シ又ハ借入金ヲ爲スコトヲ得
附則
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
行政整理又ハ軍備整理ニ際シ退官退職
シタル者等ニ交付スル公債發行ニ關ス
ル法律案
今囘ノ行政整理又ハ軍備整理ニ際シ退官
若ハ退職シタル者、休職ヲ命ゼラレタル
者、現役ヲ退カシメラレタル者、解職若
ハ解傭セラレタル者等ニ特別ノ賜金又ハ
手當トシテ交付スル爲政府ハ額面二千五
百四十萬圓ヲ限リ公債ヲ發行スルコトヲ
得
附則
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
昭和七年度以降國債償還資金ノ繰入一
部停止ニ關スル法律案
昭和七年度以降當分ノ內國債整理基金特
別會計法第二條ノ規定ニ依リ繰入ルベキ
元金償還資金ハ前年度首ニ於ケル國債總
額ノ萬分ノ百十六ニ相當スル金額ノ三分
ノ一以上トシ同法第二條ノ二ノ規定ニ依
ル元金償還資金ノ繰入ハ之ヲ爲サザルコ
トヲ得
前項ノ規定ニ依リ國債償還資金ノ繰入一
部停止ヲ爲シタル年度ニ於テハ震災手形
善後處理法第八條但書ノ規定ニ依リ繰入
ヲ要セザル金額ハ同法ニ依リ發行シタル
公債ノ前年度首ニ於ケル未償還額ノ萬分
ノ百十六ニ相當スル金額ノ三分ノ一ト
ス
附則
本法ハ昭和七年度ヨリ之ヲ施行ス
國債ノ價額計算ニ關スル法律案
國債ノ價額ヲ財產目錄ニ記載スルニハ商
法第二十六條第二項ノ規定ニ拘ラズ大藏
大臣ノ告示スル標準發行價格ニ依ルコト
ヲ得但シ其ノ取得ノ際ニ於ケル時價ヲ超
ユルコトヲ得ズ
前項ノ規定ハ外國ニ於テ發行シタル國債
ニハ之ヲ適用セズ
附則
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
明治三十八年法律第二十號ハ之ヲ廢止
ス
本法施行ノ際所有スル國債ニシテ最終ノ
財產目錄調製前ニ取得シタルモノハ第一
項但書ノ規定ノ適用ニ付テハ之ヲ最終ノ
財產目錄調製ノ時ニ於テ取得シタルモノ
ト看做ス
〔國務大臣高橋是〓君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00419320604&spkNum=4
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005・高橋是清
○國務大臣(高橋是〓君) 先ヅ日程第一、
昭和七年法律第一號中改正法律案ニ付テ說
明ヲ致シマス、只今議題トナリマシタ此滿
洲事件ニ關スル經費支辨ノ爲公債發行ニ關
スル法律案ヲ提出致シマシタ、其理由ハ
去ル第六十一囘帝國議會ニ於キマシテ滿
洲事件ニ關スル經費支辨ノ爲メ六千七百五
十万圓ヲ限リ公債ヲ發行スルコトヲ得ル法
律ノ成立ヲ見マシタ、之ニ依クテ大體本年
五月分迄ノ經費ヲ支辨スルコトヲ得ル次第
デアリマスルガ、今後明年一月迄ニ頁ノ
滿洲事件費トシテ約一億七千二百五十万圓
ヲ必要トスルノデアリマス、又別ニ二千万
圓ノ豫備費ヲ設クル必要ヲ認メマシタコト
ハ昨日昭和七年度追加豫算ノ大要ヲ說明
致シタ際ニ申述べテ置イタ通リデゴザイマ
ス、而シテ此等經費ノ財源ハ普通財源支
辨ト致スコトガ困難デアルノミナラズ尙
ホ本經費ノ性質ニ鑑ミマシテ、之ヲ公債ニ
依ルコトヽ致シマシタ、ソレガ爲メ前議會
ニ於テ御協賛ヲ經マシタ滿洲事件ニ關スル
經費支辨ノ爲公債發行ニ關スル法律中ノ發
行限度ヲ、改正增加スルノ必要ガアリマス
ノデ、本案ヲ提出致シタノデアリマス
又日程第二ノ昭和七年度一般會計歲出ノ
財源ニ充ツル爲公債發行ニ關スル法律案デ
アリマスガ、昭和七年度一般會計ニ於テ既
ニ成立シテ居リマスル公債法ニ據リ、公債
ヲ募集スル金額竝ニ滿洲事件ニ關スル經費
支辨ノ爲發行ヲ要スル公債金額ノ外ニ、歲
入ノ不足ヲ補塡スル爲メ一億六千五十餘万
圓ノ公債ノ發行ヲ必要トスルコトハ飛び、
其大要ヲ說明致シマシタ際ニ述ベテ置キマ
シタ、其發行ノ爲ニハ新ニ起債ノ權能ヲ
得ルコトガ必要デアリマス、尙ホ昭和七年
度ノ歲出ニ於キマシテモ、其中若干ノ金額
ハ例年ノ如ク翌年度ニ繰越サルヽ結果ニナル
デアラウト存ゼラレマスルガ其繰越ニ於
テノ財源ハ必シモ七年度內ニ起債スルコト
ヲ必要ト致シマセヌ爲メ、翌年度ニ於テ募
債シ得ルコトヲ爲スヲ適當ト認メルノデア
リマス、此理由ニ依リマシテ、本法律案ヲ
提出シタ次第デアリマス
日程第三ハ行政整理又ハ軍備整理ニ際シ
退官退職シタル者等ニ交付スル公債發行ニ
關スル法律案デアリマス、政府ニ於テ昨年
ヨリ引續キ實行致シテ居リマスル行政整理
等ニ依ル官吏其他雇傭人等ノ人員ノ整理ハ
旣ニ其大部分ヲ終了致シタノデアリマシテ
之ニ依リ退官退職致シマスル人員ハヽ一般
特別各會計ヲ通ジマシテ約二万人ニ上ルノデ
アリマス、而シテ今日一般經濟界不況ノ時
機ニ際會致シマシテ、是等多數ノ人々ガ、
一時ニ其職ヲ去リマスルニ付キマシテハ、之
ニ適當ノ待遇ヲ與フルコトノ必要ナルコト
ハ申スマデモナイコトヽ考ヘマシテ、先例
ニモ鑑ミマシテ、離職者ニ對シ、ソレ〓〓
特別ノ賜金又ハ手當ヲ支給スルコトノ計畫
ヲ致シマシタ、是等特別ノ賜金又ハ手當ハ
公債ヲ以テ交付スルノ必要ガアリマス、仍
テ此公債發行ニ關スル法律案ヲ提出致シタ
次第デアリマス
日程第四、昭和七年度以降國債償還資金
ノ繰入一部停止ニ關スル法律案デアリマス、
現下ノ法制ニ於キマシテハ國債償還資金
トシテ每年度、前年度初ニ、現在ノ國債總
額ノ萬分ノ百十六以上ニ相當スル金額ノ繰
入ヲ要スルノデアリマスルガ、目下我國ノ
財政ハ歲入ノ激減ヲ來シ、是ガ爲メ各會計
ニ於テ多額ノ公債發行ヲ必要トスルニ至リ
マシタ、斯ル狀況デアリマスルカラ、方
ニ於テ多額ノ公債ヲ募集シ、他方ニ於テ相
當多額ノ公債償還ヲ行フヨリモ、寧ロ國債
償還資金繰入ノ一部ヲ停止シテ、其金額ダ
ケ起債額ノ減少ヲ圖ルコトヲ必要ト認メマ
シテ、當分ノ間國債總額ノ萬分ノ百十六ニ
相當スル金額ノ繰入ハ其三分ノ二以內ヲ
減少シ、又一般會計ニ於ケル前々年度剩餘
金ノ四分ノ一ニ相當スル金額ノ繰入ハ、全
部之ヲ停止スルコトニ致シタ次第デアリマ
ス、尙ホ震災手形善後處理法第二條ニ依ル
貸付ノ辨濟金ハ當該年度ニ於テ收入ニ當
ルモノヽ全部ヲ國債償還資金ニ充當スル從
來ノ方針ヲ持續スルコトヽシ、是ガ爲メ本
法律案ニ第二項ヲ設ケタノデアリマス
日程第五、國債ノ價額計算ニ關スル法律
案、此趣旨ヲ大略說明ヲ申上ゲマス、國債
ノ時價ハ一般經濟界ニ於ケル金利ノ高低、
政府財政上ノ必要ヨリ生ズル新規國債發行
額ノ多少等ノ關係カラ、常ニ變動スルコト
ヲ免レヌノデアリマスルガ、他ノ社債劵、
株劵等ノ有價證劵ニ較ベマスレバ、其價格
變動ノ程度ハ極メテ少ク、假令一時特殊ノ
事情カラ相當價格ガ低落スルコトガアリマ
シテモ、間モナク其囘復ヲ見ルノデアリマ
ス隨テ少シ長イ期間ヲ見マスレバ國債
ニ付テハ一定ノ標準ノ價額ヲ以テ之ヲ財產
目錄ニ記載スルコトヲ得ルコトヽ致シマシ
テモ大ナル不都合ヲ生ゼザルノミナラズ、
是ガ爲ニ國債所有者ニ大ナル利便ヲ與ヘ、
國債ノ發行ヲ容易ニシ、且ツ其價格維持ニ
資スル所ガ多イノデアリマス、仍テ國債ノ
價額ヲ財產目錄ニ記載スル場合ニ、商法ノ
財產評價ニ關スル規定ニ特例ヲ設クルコト
ヲ適當ト認メ、本案ヲ提出シタ次第デアリ
マス
各案共ニ何卒御審議ノ上御協賛ヲ願ヒマ
ス(拍手)発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00419320604&spkNum=5
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006・秋田清
○議長(秋田〓君) 各案共質疑ノ通〓ハア
リマセヌ日程第六、右各案ノ審査ヲ付託
スヘキ委員ノ選擧ヲ議題ト致シマス-上
田孝吉君
第六右各案ノ審査ヲ付託スヘキ委員
ノ選擧発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00419320604&spkNum=6
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007・上田孝吉
○上田孝吉君 本案ヲ一括シテ議長指名二
十七名ノ委員ニ付託セラレンコトヲ望ミマ
ス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00419320604&spkNum=7
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008・秋田清
○議長(秋田〓君) 上田君ノ動議ニ御異議
アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00419320604&spkNum=8
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009・秋田清
○議長(秋田〓君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ-日程第
七乃至第十ハ同種ノ議案ナルニ依リ、一括
議題ト爲スニ御異議アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00419320604&spkNum=9
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010・秋田清
○議長(秋田〓君) 御異議ナシト認メマス、
仍テ日程程七、兌換銀行劵條例中改正法律
案、日程第八、日本銀行納付金法案、日程
第九、日本銀行參與會法案、日程第十、資
本逃避防止法案、右議案ヲ一括シテ第一讀
會ヲ開キマス-大藏大臣高橋是〓君
第七兌換銀行劵條例中改正法律案
(政府提出)第一讀會
第八日本銀行納付金法案(政府提出)
第一讀會
第九日本銀行參與會法案(政府提出)
第一讀會
第十資本逃避防止法案(政府提出)
第一讀會
兌換銀行劵條例中改正法律案
兌換銀行劵條例中左ノ通改正ス
第二條第二項及第三項ヲ左ノ如ク改メ同
條第四項ヲ第五項トシ第五項ヲ第六項
トス
日本銀行ハ前項ノ規定ニ依ル準備發行
高ノ外十億圓ヲ限リ政府發行ノ公債證
書大藏省證劵其ノ他確實ナル證劵又ハ
商業手形ヲ保證トシ兌換銀行劵ヲ發行
スルコトヲ得
日本銀行ハ必要アリト認ムルトキハ前
二項ノ規定ニ依ル發行高ノ外更ニ前項
ニ規定スル物件ヲ保證トシ兌換銀行劵
ヲ發行スルコトヲ得但シ十五日ヲ超エ
仍其ノ發行ヲ繼續セントスルトキハ大
藏大臣ノ許可ヲ受クルコトヲ要ス
日本銀行ハ前項但書ノ場合ニ於テ十六
日以後ハ十億圓ヲ超過スル保證發行額
ニ對シ大藏大臣ノ定ムル割合ヲ以テ發
行稅ヲ納ムベシ但シ其ノ割合ハ年三分
ヲ下ルコトヲ得ズ
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
日本銀行納付金法案
日本銀行納付金法
日本銀行ハ事業年度每ニ純益金ヨリ左ニ
揭グル金額ヲ控除シタル殘額ノ二分ノ一
ヲ政府ニ納付スベシ
-拂込資本金額ニ對スル年六分ニ相
當スル金額
二日本銀行條例第十條ノ規定ニ依リ
積立ツベキ金額ノ最少額ニ相當スル
金額
純益金ヨリ前項第一號及第二號ノ金額及
前項ノ規定ニ依ル納付金額ヲ控除シタル
殘額ガ拂込資本金額ニ對シ年四分ノ割合
ヲ超過スルトキハ其ノ超過金額ノ四分ノ
三ヲ更ニ政府ニ納付スベシ
本法ニ依ル納付金額ハ所得稅法ニ依ル所
得及營業收益稅法ニ依ル純益ノ計算上之
ヲ損金ニ算入ス
本法ニ依ル納付金ハ前事業年度分ヲ八月
末日、後事業年度分ヲ翌年二月末日限政
府ニ納付スベシ
附則
本法ハ日本銀行昭和七年後事業年度分ヨ
リ之ヲ適用ス
明治三十二年法律第五十六號ハ昭和七
年七月一日限之ヲ廢止ス但シ同日前ノ發
行稅ニ關シテハ仍舊法ニ依ル
日本銀行條例第十條中「十分ノ一」ヲ「二
十分ノ一」ニ改ム
日本銀行參與會法案
日本銀行參與會法
第一條日本銀行ニ日本銀行參與會ヲ置
キ日本銀行ノ重要ナル業務ニ關シ日本
銀行總裁ノ諮問ニ應ゼシム
第二條日本銀行參與會ハ會長及日本銀
行參與五人以內ヲ以テ之ヲ組織ス
第三條會長ハ日本銀行總裁ヲ以テ之ニ
充ツ
第四條日本銀行參與ハ金融業若ハ產業
ニ從事シ又ハ學識經驗アル者ノ中ヨリ
大藏大臣之ヲ命ジ其ノ任期ヲ三年ト
ス
日本銀行參與ハ無給トス
第五條日本銀行總裁ハ少クトモ每月一
囘日本銀行參與會ヲ招集スベシ
第六條日本銀行參與會ハ日本銀行ノ業
務ニ關シ日本銀行總裁テ意見ヲ述ブル
コトヲ得
日本銀行參與ハ必要ト認ムルトキハ日
本銀行參與二人以上ノ同意ヲ得テ日本
銀行參與會ノ招集ヲ會長ニ請求スルコ
トヲ得
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
資本逃避防止法案
資本逃避防止法
第一條政府ハ內外ノ情勢ニ依リ資本ノ
內外移動ヲ取締ル爲必要ト認ムルトキ
ハ命令ヲ以テ外國通貨及外國爲替ノ賣
買、外國ニ對スル送金、外國通貨ヲ以
テスル預金取引及貸借、外國通貨表示
ノ證劵其ノ他ノ債權ノ賣買及輸入竝ニ
外國居住者ニ對シ信用ヲ與フル行爲ヲ
禁止又ハ制限スルコトヲ得
第二條政府ハ命令ノ定ムル所ニ依リ前
條ノ禁止又ハ制限ニ關係アル事項ニ付
報〓ヲ徵シ又ハ帳簿其ノ他ノ檢査ヲ行
フコトヲ得
第三條政府ハ命令ノ定ムル所ニ依リ外
國通貨、外國爲替又ハ外國通貨表示ノ
證劵其ノ他ノ債權ヲ有スル者ニ對シ之
ヲ日本銀行其ノ他政府ノ指定スル者ニ
賣却スベキコトヲ命ズルコトヲ得
前項ノ賣却價額ハ外貨評價委員會ノ定
ムル所ニ依ル
外貨評價委員會ノ組織及權限ハ勅令ヲ
以テ之ヲ定ム
第四條本法ニ基キテ發スル命令ヲ以テ
規定スル取引又ハ行爲ノ禁示又ハ制限
ニ違反シタル者ハ三年以下ノ懲役若ハ
禁錮又ハ一萬圓以下(若シ當該取引
價額ノ三倍ガ一萬圓ヲ超ユルトキハ當
該。取引價額ノ三倍以下)ノ罰金ニ處ス
本法ニ基キテ發スル命令ニ依ル外國通
貨其ノ他ヲ賣却スベキ旨ノ政府ノ命ニ
從ハザル者ハ一年以下ノ禁錮又ハ當該
外國通貨其ノ他ノ價額ノ二倍以下ノ罰
金ニ處ス
本法ニ基キテ發スル命令ニ違反シ報〓
ヲ爲サズ、虛僞ノ報〓ヲ爲シ又ハ帳簿其
ノ他ノ檢査ヲ拒ミタル者ハ六月以下ノ
禁錮又ハ五千圓以下ノ罰金ニ處ス
第五條法人ノ代表者又ハ法人若ハ人ノ
代理人、使用人其ノ他ノ從業者ガ其ノ
法人又ハ人ノ業務ニ關シテ前條ノ違反
行爲ヲ爲シタルトキハ行爲者ヲ罰スル
ノ外其ノ法人又ハ人ニ對シ亦前條ノ罰
金刑ヲ科ス
第六條本法ノ罰則ハ本法施行地ニ本店
又ハ主タル事務所ヲ有スル法人ノ代表
者、代理人、使用人、其ノ他ノ從業者ガ本
法施行地外ニ於テ爲シタル行爲ニモ之
ヲ適用ス
附則
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
〔國務大臣高橋是〓君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00419320604&spkNum=10
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011・高橋是清
○國務大臣(高橋是〓君) 只今議題トナリ
マシタ兌換銀行劵條例中改正法律案、日本
銀行納付金法案及ビ日本銀行參與會法案ニ
付キ一括シテ其提案ノ理由ヲ說明致シマス
我ガ財界ノ現狀ヲ見マスルニ、其最モ憂
フベキ點ハ通貨ノ循環流通ガ圓滑ナラザ
ルコトデアリマシテ、今日ノ如クニ通貨ガ
不足シ、信用ガ收縮シテ居ッテハ、到底產業
ノ振興ヲ望ムコトハ困難デアリマス、之二
付キマシテハ我國ノ兌換銀行劵發行制度
ガ、我ガ經濟力ノ伸展著シキモノアルニ拘
ラズ、明治三十二年以來一度モ改正セラレ
ズ、今日ノ時代ニ適應スルノ機能ヲ缺イテ
居ルコトガ、最大ノ理由デアルト考ヘラレ
や 、卽チ現行ノ兌換銀行券條例ニ依リマ
スレバ保證發行限度ハ一億二千万圓デア
リマスル所、此限度ヲ以テシテハ、我國產
業ノ正當ナル取引ニ必要ナル通貨ヲ圓滑ニ
供給スル上ニ不便尠カラズ、加之正貨保有
高ハ一時ニ比ベテ著シク減少シテ居リマス
ノデ、適當ニ保證發行限度ヲ擴張スルコト
ハ當面ノ急務デアリマス、而シテ近年ノ通
貨發行ノ狀況ヲ見マスルニ、通常ノ通貨需
要量ハ約十二億圓デアリマスルガ、將來ニ
於テハ通貨ノ需要量ハ自ラ增大スルコトア
ルベキヲ考慮スルト共ニ、正貨保有高ノ現
狀ヲモ斟酌致シマシテ、保證發行限度ハ之
ヲ十億圓ニ擴張スルコトヲ以テ適當ナリト
認メタノデアリマス、次ニ我國ニ於テハ月
末季末等ニ際シ、一時的ノ決濟資金需要ノ
爲メ通貨ノ增發ヲ見ルノガ常デアリマスル
ガ、斯ノ如キ一時決濟用ノ通貨ハ過去ノ
實績ニ依ッテ見マスレバ、通常十五億以內
ニ收縮スルノデアリマジテ、特ニ之ヲ抑制
スルノ必要ナシト認メタノデアリマス、唯
十六日以後ニ於テ、尙ホ制限外發行ヲ繼續
セントスル場合ニハ大藏大臣ノ許可ヲ受
クルコトヲ要スルコトヽシ、且ツ之ニ對シ
テハ適當ノ稅率ヲ以テ課稅シ、通貨ノ供
給ガ適當ニ保持セラルヽヤウニスルコトヽ
シタイト考ヘマス、而シテ將來金利ノ低下
アル場合ニ於テ、めヌナル通貨ノ供給ニ支
障ナカラシムル爲メ、制限外發行稅ノ稅率
ノ最低限度ニ付キ、現行年五分ヲ年三分ニ
改メ其限度ヲ下ラザル範圍ニ於テ、大藏
大臣ガ四圍ノ情勢ニ應ジ相當ノ課稅ヲ爲
シ得ルヤウ配意シタノデアリマス
第二ニ日本銀行納付金法案デアリマス
ガ、之ニ付キマシテハ日本銀行ガ國家的
機關デアリ、其利益タルヤ、國家ヨリ賦與
セラレタル特權及特權的地位ト離ルベカラ
ザル關係アルニ鑑ミマシテ、其全利益ヲ基
準トシテ、其一定部分ヲ國家ニ納付セシメ
日本銀行ノ利益分配ヲシテ、公平ノ原則ニ
適ハシメ、且ツ上納額ヲシテ、日本銀行ノ利
益ノ增減ニ順應セシムルコトヲ以テ目的ト
致シマシタ、卽チ現在ノ制限外發行稅制度、
及政府當座預金利子上納ノ制度ハ、共ニ一
定率ヲ以テ發行稅又ハ利子ヲ徵スルモノデ
アリマシテ、日本銀行ノ受クル利益ト、權
衡ヲ得ザルノミデナク、日本銀行ノ利益ノ
增減ニ順應スルノ伸縮性ヲ缺イテ居リマス
ルガ故ニ、此兩制度ヲ廢止シテ、納付金制
度ヲ採用スルコトヲ適當ト認メタノデアリ
やく、殊ニ今囘兌換銀行劵發行制度ガ改正
セラレマスレバ、日本銀行ノ純益ハ著シク
增大スベキハ明カデアリマスルガ故ニ、此
關係カラシテモ、本制度ヲ採用スルコトニ
致シタノデアリマス、唯本制度ノ採用ニ依
リ、日本銀行ノ負債ヲシテ、從前ニ比シ過
度ナラシメザルヤウ、納付金ノ率ヲ適當ニ
定メタノデアリマス、
第三ニ日本銀行參與會法案デアリマスル
ガ、今囘兌換銀行劵條例ニ改正ヲ加ヘマス
結果、通貨ノ供給ハ從來ニ比シ容易トナリ、
圓滑ヲ期シ得ルノデアリマスガ、他面ニ於
キマシテハ通貨ノ供給ヲシテ、眞ニ正當
ナル取引ニ必要ナル需要ニ合致セシメント
スル認定ハ極メテ困難ナルモノガアリ、
又是ガ運用ハ最モ肝要トスル所デアリマ
ス、而シテ一般ニ日本銀行ノ機能ヲ發揚シ、
我國ノ經濟狀況ニ適應セシムル爲ニハ日
本銀行ト金融界竝ニ產業界トノ連繫ヲ緊密
ナラシメ、以テ日本銀行ヲシテ金融統制ノ
實ヲ擧ゲシムルコトガ、極メテ肝要デアル
ト考ヘマス、仍テ日本銀行ニ日本銀行參與
會ヲ設ケ、金融界、產業界ノ代表者、竝
學識經驗アル者ヲ選ンデ日本銀行參與ト
シ、日本銀行總裁ハ重要事項ニ關シ、之
ニ諮問シテ其意見ヲ徵シ、又ハ總裁ニ對シ
意見ヲ陳述スルヲ得セシムルコトハ時宜
ニ適フモノデアルト認メタノデアリマス
以上三箇ノ法律案ノ大綱ニ付キマシテハ、
旣ニ特別金融制度調査會ニ於テモ、審議可
決セラレタル所デアリマス、何卒愼重御審
議ノ上、速ニ御協贊ヲ願ヒマス(拍手)
又日程第十ノ資本逃避防止法案、之ニ付
テ聊カ說明ヲ致シマス、一昨年以來我國ニ
於テハ或ハ圓價値ノ低落ヲ見越シ、或ハ
內外證劵ノ運用、利廻リノ開キニ基キマシ
テ本邦資本ノ海外ニ流出スルモノ多ク、
此傾向ハ昨年九月英國ノ金本位制度離脫後
ニ於テ、特ニ顯著ナルモノガアリマシタ、
最近ニ於キマシテハ本邦外債ノ市價ガ低
落シマシテ、ソレガ爲ニ之ニ對スル逃避、
今日尙ホ其跡ヲ絕タザル狀況ニアリマス、
將來ニ於キマンテモ、通貨ノ發行ガ增加ス
ル場合ニ於テ、資本ノ海外逃避ヲ計畫スル
者續出スルコトナキヲ保セヌノデアリマ
ス、元來資本ノ國際的移動ハ、平時ニ於テ
ハ自由タルベキコト勿論デアリマスルガ、
今日ノ如キ國際經濟ノ非常時ニ際シ、我ガ
資本ノ海外流出ヲ防止スルコトハ國民ノ
安全ヲ保持スル爲メ必要ノ處置デアリマシ
テ、旣ニ多數ノ國ノ實例ノ存スル所デアリ
マス、然ルニ現在ニ於キマシテハ資本ノ
逃避ヲ取締ルベキ何等法規上ノ根據ガアリ
マセヌカラ、今囘之ニ關スル法律案ヲ提出
スル次第デアリマス、而シテ法律ニ於キマ
シテハ取締ノ基本ヲ定メ、實行上ノ細目
ハ命令ニ委任スルヲ以テ機宜ニ適スルモノ
ト認メマシタ、又外債ノ發行、其他資本ノ
流入ニ付キマシテモ、是ガ元利拂等ノ關係
モアリ、其他資本ノ流出ト密接ナ關係ガア
リマシテ、此際之ニ付テモ政府ニ監督權ヲ
有セシムル必要ガアルト考ヘマス、何卒速
ニ協贊ヲ與ヘラレンコトヲ希望致シマス
(拍手)発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00419320604&spkNum=11
-
012・秋田清
○議長(秋田〓君) 質疑ノ通告ガアリマ
ス、之ヲ許シマス--田中貢君
〔田中貢君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00419320604&spkNum=12
-
013・田中貢
○田中貢君 只今議題ニナッテ居リマス諸
案ニ付キマシテ、質疑ヲ致シタイト思ヒマ
ス、再禁止以來、經濟界ノ跡始末ガ付テ居
リマセヌデシタ、漸ク今日二三ノ跡始末ヲ
スル爲ノ法案ガ出マシタコトハ洵ニ喜ブ
ベキコトデアリマス、併ナガラ其法案ガ果
シテ其目的ヲ達成スルコトガ出來ルカ、卽
チ一二ノ疑問ヲ質シテ見タイト思ヒマス
發劵制度ト日本銀行制度ノ改善ニ付キマ
シテハ學界デ論議シ盡サレタ問題デアリ
マス又其問題ニ付テハ高橋サンハ通ヲ
以テ任ジテ居ラレル人デアリマスカラ、思
切ッタ改正案ヲ出サレルコトヽ思ヒマシタ
今日ノ日本ノ發劵制度ト、日銀ノ制度トハ
世界デ一番古イモノデ、一番時代後レノモ
ノデアリマシテ、少クトモ主要國ニ於テハ、
斯ノ如キ後レタ制度ヲ有ッテ居ル國ハアリ
マセヌ、其管理組織ニ付キマシテモ、發劵
ノ制度ニ付キマシテモ、亦其業務ノ規定ニ
付キマシテモ、甚ダ後レテ居ルノデアリマ
ス、然ルニ今日出サレマシタル案ハ、悉ク
私達ノ豫想ヲ裏切リマシタ
ソコデ第一ニ御聞キ致シタイノハ、發劵制
度ニ付テ、從來ノ屈仲制限法ヲ何ガ故ニ其
儘維持セラレタカ、ソレカラ保證發行ノ眼
度ヲ何故ニ十億圓ニ擴張セラレタカ、其根
據ガ承リタイノデアリマス、只今市場ニ使
用シテ居ル通貨ハ-兌換劵ハ十億圓ト仰
シヤイマシタ、卽チ月半バ九億則臺デ、月
末デモ十億圓デアリマス、又過去ニ於ケル
所ノ一二年間ノ發行高ノ一日ノ平均ヲ見マ
シテモ一月ト十二月ヲ除キマスナラ十
億圓臺デアリマス、一月、十二月ト雖モ十
二億ヲ多ク超エマセヌ、又更ニ金解禁前ニ
於ケル發行高ノ一日平均モ、十二億圓內外
デアリマス、之ヲ以テ見マスナラ、今日ノ
正貨四億三千万圓、ソレヲ準備ト致シマス
準備發行ヲ四億三千万圓ト見マスナラ、アト
八億圓ノ保證發行デ今日ハ十分賄ヘルシ、
又ソレガ妥當デアルト信ジマスノニ、ソレ
ヲ十億圓トセラレタ根據ガ承リタイノデア
リマス
第二ニ十五日間ノ期限ヲ限クテ制限外發
行ヲ認容シテ無稅ニシヨウト仰シヤルコト
ハ期末ニ、殊ニ年末ニ於テハ或ハ相當ノ理
由ガアルカモ知レマセヌガ、月末月初ヲ見
マスナラ、十五日ハ長過ギマスシ、此規定ヲ
置キマスコトハ恐ラク十億ト云フ保證發
行ノ限度ヲ認メテ置イテ、事實之ヲ認メヌ
ト云フコトニナリマスカ其點ニ付テノ御
意見ガ承リタイノデアリマス
第三ニ保證發行ト限外發行ニ付テ、斯ノ
如キ態度ヲ執ラレ、又只今大藏大臣ノ御說
明ニ依リマスト、通貨ヲ膨脹サセタイソ
レガ必要ダト仰シヤイマス、私モ或ル程度ノ
通貨ノ膨脹ガ必要タト思ヒマス、金融界ノ
今日ノ不安ハ、再禁止ニ依ッテ一掃スルコト
ガ出來ズ、見方ニ依ッテハ一層不安ニナッテ
居ルト思ヒマス、又貨幣價値ハ內外同一デ
アルベキモノガ、對外價値ト對內價値トノ
間ニ恐シイ開キヲ生ジテ居リマシテ、今日
純然タル國內品ノ生產者ハ、再禁止前ニ優
ル苦痛ヲ受ケテ居ルノデアリマスカラ、此
點カラ或ル程度ノ通貨膨脹ハ必要ダト思ヒ
マス、併シ制度ノ改善ハ何處迄モ制度ノ改
善ナノデアリマシテ、之ヲ如何ニ運用スル
カト云フコトニ依ッテ、眞ノ通貨ノ膨脹ト云
フコトニナルノデアリマセウ、制度自身ノ
改善デハ直チニ通貨膨脹ニハナリマスマ
イ、然ラバ大藏大臣ハ如何ナル方法ニ依ッテ
通貨膨脹ヲサセラレル積リカ、ソレガ承リ
タイ、今日爲替ガ動搖致シテ居リマス、資
本逃避防止ノ法律ヲ作ルトシテモ-後デ
御聞キ致シマスガ-必シモソレノミニ
依ッテ爲替ノ安定ヲ望ムコトハ出來マスマ
イ爲替ノ安定ヲ望ミ得ヌトスレバ通貨
膨脹ノ目標ハ何處ニ置クカ、大藏大臣ノ通
貨政策ノ目標ハ一體何處ニ在ルカト云フコ
トヲ承リタイノデアリマス、又爲替相場ガ
安定シナイトスレバ、財界ノ不安ヲ一掃ス
ルコトガ出來マセヌ、財界ノ不安ヲ一掃ス
ルコトガ出來ヌナラ、銀行ハ信用ヲ擴張ス
ルコトガ出來マスマイ、信用ヲ擴張スルコ
トノ出來ヌノニ、保證發行ノ限度ヲ擴張シ、
通貨ヲ增發致シマシタッテ、是カ實際ニ流通
過程ニ入ルカドウカ疑問デアリ、少クトモ
最近ノ事實ハ高橋サンガ大ニ掛聲ヲ掛ケ
テ居ラレ、種々方策ヲ試ミラレマスケレド
モ、通貨ハ膨脹攻シマセヌ、ノミナラズ政
府ト致シマシテモ、事業ノ豫算ヲ立テルコ
トガムツカシイカラ、政府事業モ亦困難ト
思ヒマス、斯ウ云フ狀態ダカラ、爲替ノ安
定シマセヌノニ、强テ財政ノ方面カラ通貨
膨脹ヲ致スコトニナリマスナラ、確乎タル
目標ナシニ通貨ヲ膨脹サセヨウトシマスナ
ラ、ソレコソ爲替ノ下落ト通貨膨脹トノ追ソ
駈ケゴッコニナルダラウト思ヒマス、ソコデ
私ハ承リタイノハ、此制度ヲドウ云フ風ニ
運用サセナサル積リデアルカ、大藏大臣ハ
一體日本ノ經濟界ハ、近キ將來ニ於テドウ
ナルト思ッテ居ラッシヤイマスカ、ドウスル
積リナノカ、又其通貨膨脹ノ目標ハ何處カ、
實行方法ハ何ウカト云フコトヲ併セテ承リ
タイノデアリマス
第四ニ此制度ノ改正ハ、結局日本銀行ヲ
シテ公債ヲ引受ケシメルコトニ終ルノデア
リマセウ、今年何程ノ公債ヲ引受ケシメル
豫想カ知リマセヌガ、聞ク所ニ依ルト三億
ト豫想サレテ居ルサウデアリマス、更ニ不
動產金融ノ爲ニ、預金部ガ五千万圓ホド融
通政シマシタガ、アトノ一億五千万圓ヲ預
金部ガ引受ケルコトガ出來ヌトスレバ、恐ラ
ク日銀ガ引受ケル外ハアリマスマイ、旣ニ
昭和二年ノ「パニツク」ノ時ヨリ特融ノ爲メ
巨額ノ金ガ固定シテ居リマスノニ、更ニ茲
ニ再ビ巨額ノ金ヲ固定サセマシテ、果シテ
日本銀行ガ非常時ニ對スル最後ノ救濟機關
トシテ、十分ナル働キヲ爲シ得ルカドウカ、
其點ヲ承リタイノデアリマス、私共ノ兒ル
所デハ日本銀行ノ主タル業務ハ商業手
形ヲ割引スルコト市場トノ連繫ヲ保ツ爲
ニ商業手形ノ賣買ヲスルコトガ主タル仕事
デアリマシテ、國債ヲ擔保ニ貸出スガ如キ
モノハ或ル程度ニ制限サルベキモノダト
思ヒマス、從來業務規程デ制限ノアリマシ
タノガ、高橋サンノ時代ニナリマシテ國
債ハ無制限ニ貸スコトニサレタト思ヒマス
ガ、是ハ日本銀行本來ノ性質ト果シテ矛盾
シナイカドウカ、ノミナラズ日本銀行ガ國
債ヲ所有シマスコトハ、少クトモ資本金ト
積立金ノ限度ニ限ラルベキモノデアルト考
ヘマスノニ、今日巨額ノ公債ヲ日銀ガ引受
ケマスコトハ、政府ノ財政ノ便宜ノ爲ニ日
銀ヲ利用スルコトニナルノデアリマシテ、
日銀ノ將來ニ對シテ甚シク危惧ノ念ヲ懷カ
シムルモノデアリマス、大藏大臣ハ何ト其
處ヲ見ラレマスカ、日銀ノ本來ノ性質カラ
申シマスナラバ、政府ノ財政ノ御都合ニ依ッ
テ、日銀ノ政策ヲ動カサレルト云フコトハ考
ヘ物デアリマシテ、大ニ是ハ警メナケレバ
ナリマセヌノニ、最近ハ其最モ考ヘネバナ
ラヌ問題ガ現實ニ起ッテ居リマス、此問
題-此不安ヲ除キマス爲ニハ、少クトモ
日本銀行ノ管理組織ヲ改メテ、總裁、副總
裁ハ株主選出ノ理事ハシテ之ヲ選任セシメ、
政府ガ之ヲ認可スル制度ニ改メテ、日銀ヲ
シテ政府ヨリ獨立セシムルコトガ必要デア
ル、其必要ハ差迫"テ居ルト思ッテ居リマス
ガ、大藏大臣ハ何ト御考ニナリマスカ、承
リタイノデアリマス
次ニ納付金ノ制度ニ付キマシテハ、私ガ
之ニ贊成デアリマスガ、此制度ヲ日本銀行
ノ昨年下半期ノ營業成績ニ當嵌メルトスル
ト日本銀行ハ何割ノ配當ニナルカガ承リ
タイ、一體日本銀行ノ配當ハ高過ギル、非
常ナ特權ヲ持ヲテ居テ、而モ確實ナ日本銀行
ガ高率ノ配當ヲシテ居リマスノデハ普通
一般ノ銀行ハ日銀以上ノ配當ヲ目標トシマ
セヌケレバ株價ヲ維持スルコトガ出來マセ
ヌカラ、高率ノ配當ヲスル、隨テ金利ガ高
クナルト斯ウ思ヒマス、更ニ高率ノ配當ヲ
シマスコトハ一般產業會社ニ對シテ高率
配當ノ惡例ヲ示スコトニナル、斯クテ日本銀
行ノ高率ノ配當ハ、二重ノ害惡ヲ經濟界ニ
流スモノト思ッテ居リマス、其見地カラスレ
バ基本ノ配當ヲ六分ニシ更ニ四分マデ
ヲ許スト云フ、卽チ合計一割デハ多過ギル
ト考ヘルノデアリマスガ、大藏大臣ハ如何
ナル根據ニ依ッテ六分ト四分トヲ御出シニ
ナッタカガ承リタイノデアリマス
更ニ參與會ノ制度ハ、一ツノ進步デアリマ
シテ、結構ダト思ヒマスガ、其權限ヲ見マスト、
諮問ニ答ヘル、意見ヲ述ベルダケデアリマ
ス、是ダケノコトニ依ッテ產業界ト金融界
トノ連繫ガ、大藏大臣ノ豫期セラレル如ク出
來ルカ否カ、更ニ一步ヲ進メテ何ガ故ニ株
主ニアラザル重役ノ制度ヲ認メラレナカツ
タカ、ソレヲ承リタイ
第二ニ選任ノ方法ヲ大藏大臣ニ一任サレテ
居リマスガ、最近ノ政府ト日銀トノ關係ヲ見
マスナラ、其選任ニ付テ、特ニ別ノ機關ヲ設
ケルコトガ必要デハナイカト思ヒマス、尙ホ
又金融界、產業界ノ方面ノ人ヲ拔クコトニナツ
テ居リマスガ、我國ニ於キマシテハ、大規模
ノ企業ト云フモノハ極メテ僅カデアッテ、大
多數ハ中小ノ企業デアリマス、ソレニモ拘ラ
ズ何ガ故ニ中小企業ト云フモノヲ考慮ニ入
レラレナカッタカ、又消費者ノ方面ヲ何故考
慮ニ入レラレナカッタカ、ソレヲ承リタイ
次ニ資本逃避防止法案ニ付テ承リタイノ
デアリマス、本案ハ過去ニ於ケル資本ノ逃
避ノ復歸ト、新タナル資本ノ逃避ヲ防止ス
ルコトヲ目的トスルモノヽ如クデアリマ
ス、先ヅ過去ノ逃避資本、在外資金ノ復歸
策ニ付テ承リタイ、今日ノ異常ナル入超ハ、
再禁止當時ノ御豫想ト違タ、恐ロシク入超
ノ原因ハ色々アリマセウケレドモ、過去ノ
逃避資本ガ濟シ崩シニ物ニ成ッテ來ル、ソレ
ガ最大原因デアルト考ヘラレル、ソコデ此恐
ロシイ入超ヲ抑ヘルニハ、在外資金ヲ押ヘル
外ハアリマセヌ、又今日恐ロシイ入超ヲ續ケ
テ居リマスニモ拘ラズ、爲替相場ガ今日ノ價
格ヲ維持シテ居リマスノハ、在外資金ガ相當
ニアルカラデアリマセウ、此爲替相場ヲ「ノ
ーマル」ナ狀態ニ戾シマスニハ、在外資金ヲ
押ヘルコトガ必要デアリマス、又今日ノ金融
界ハ恐ロシク不安ノ狀態ニアリマス、其不
安ヲ一掃スルコトノ出來ナイノハ、再禁止
ニ依ッテ逃避資本ノ復歸ヲ絕望ナラシメタ
コトニアルト思ヒマス、是等ノ點カラ考ヘ
マスナラバ、異常ノ入超ヲ押ヘル爲ニモ、
爲替相場ヲ「ノーマル」ニスル爲ニモ、又金
融界ノ不安ヲ一掃スル爲ニモ、在外資金ヲ
日本ニ取戾スコトガ、再禁止直後直チニ、
何ハ偖テ置キ、イノ一番ニ考ヘラルベキコ
トデアッタト思ヒマスガ、昨日ノ御演說ヲ承
リマスト、最近少額ナガラ出テ行ク、ソレ
ガ繼續シテハ抛シテ置ケヌ、ソレデヤルノダ
ト云フコトデアリマスガ、私ハ本案ヲ見マ
スナラバ、一條二條ヨリカ、寧ロ第三條ノ方
ガ更ニ重要ナ問題ト思フノニ、何ガ故ニ今
日マデソレヲヤラナカッタカ、其理由ヲ承リ
タイノデアリマス
其次ニ在外資金ヲ日銀ニ賣却セシムル標
準ヲ承リタイ貿易會社モ、保險業者モ、
船舶業者モ、各ミ營業資金ヲ海外ニ持ッテ
居リマス、獨逸ノ如ク爲替管理ヲシテ居ル
國ニ於キマシテハソレガ或ル程度マデ必
要デアリ、又已ムヲ得ズソレヲ置イテ居ル
ノデアリマス、之ヲ賣却セシメマスニハ
如何ナル程度マデハ許容スルカ或ハ如何
ナル額以上ハ買上ゲルカト云フコトニ付
テ、凡ソノ標準ガアルベキデ、ソレヲ承リ
タイ、更ニ在外資金ヲ取上ゲルトシテモ、
一律公平ニハ行キマスマイ、爲替管理ヲシ
テ居ル國ノモノハ取上ゲルコトガムヅカシ
イ、又日本ノ有力ナ貿易會社其他ノモノハ、
海外ニ支店ヲ持クテ居ル、支店ノモノヲ取上
ゲルコトハ出來ル、純然タル子會社ノ所有
モ取上ゲルコトガ出來ルガ、支店長名義ニ
於テ外國ノ法律ニ基キ、外國ノ會社ヲ作ッテ
居ル、ソレニ持タセタ場合ニハ取上ゲル
コトハ出來ナイデアリマセウ、サウスルト
大資本家ハ巧ク逃レルカラ中小ノ企業者
ハ取扱ニ於テ差別ヲ受ケルコトヽナリハシ
ナイカ
次ニ外國通貨ヲ以テスル預金ヲ何ガ故ニ
第三條カラ除カレタカ、又本案ヲ施行スル
コトヲ見越シテ、外國人名義ニ變更スルカモ
知レマセヌガ、之ヲ阻止スル用意ガ出來テ
アルカ、少クトモ在外資金ノ現在額ニ付テ
ハ御調査ガアルモノト信ジマス國別種類
別ノ詳シイコトハ他日ノ機會ニ聽クト致シ
マシテ、「キヤッシユ」又ハ「キヤッシユ」ト看做
サレルモノハ凡ソドレ位アルカ、御分リデ
シタラ承リタイノデアリマス、更ニ日本銀
行ニ之ヲ買上ゲセシメルト致シマシテモ、
政府トノ間ニ損失補償ノ規定ガアリマセヌ
ケレバ效果ガナイト思ヒマス、佛蘭西ノ先
例ガ明ニ之ヲ示シテ居リマスガ、何ガ故ニ
其規定ヲ設ケラレナカッタカ承リタイ
次ニ將來ノ資本ノ逃避ノ防止ニ關シマシ
テ、此條文ヲ拜見致シマスト、直接資本ノ
內外移動ヲ抑ヘルニハ、或ハ適當ナ規定カモ
知レマセヌガ、物ヲ以テ資本ヲ動カス、卽
チ間接資本ノ移動ヲスル場合ヲ果シテ防止
シ得ルヤ否ヤ、卽チ輸出品ノ代金ヲ海外ニ
留メ置ク、無爲替デ輸出ヲシテ置イテ、外
國人名義デ預金スル場合ハドウスルカ、又
海外ニ持ヲテ居ル品物ヲ輸入スルト見セ掛
ケテ、其代金ヲ海外ニ送ル場合ハ、ドノ規
定ニ依ッテ御取締ニナルカ承リタイ
次ニ本案ハ純然タル資本ノ移動ニ主力ヲ
注イデ居ルヤウデアルガ、今日ノ日本デ最
モ大キイ問題ハ見越輸入デアリマス、其
見越輸入ハ最近大體納マッタト申シテ居リ
マスガ、爲替ノ前途ヲ悲觀致シテ居リマス
ナラ、此見越輸入ハ止ミマスマイ、之ヲド
ウシテ抑ヘル積リカ若シ抑ヘルナラ輸入
ノ管理マデ進マナケレバナリマセヌ、若シ
其處マデ進ムトスレバ品目ニ依ルカ、金
額ニ依ッテ相當ノ制限ヲ致サナケレバナリ
マセヌガ、サウスルト假定スルナラ、此條
文デハ不十分ダシ、命令ニ委任スルト云フ
コトハ不穩當ダト考へマス、其點ニ付テモ
意見ガ承リタイ、更ニ資本ノ移動ニ付テノ
制限禁止ハ、大藏大臣御說明ノ如ク、自由
ヲ著シク制限スルモノデアリマスカラ、其
限度ヲ明ニシテ、國民ニ向フ所ヲ知ラセタ
イト思ヒマス、其限度ニ付テノ御意見ヲ承
リタイ
最後ニ過去ノ逃避資本ヲ日本ニ復歸サセ
ルト致シマシテモ、將來ノ資本逃避ヲ防止
スルト致シマシテモ、本案ヲ以テシテハ私
ハ不十分ダト思ヒマス、又假令詳細ナ規定
ヲ設ケルトシマシテモ、絕無ナラシメルコ
トハ困難ダト思ヒマス、寧ロ自然ニ在外資
金ガ歸ッテ來ルナリ、新ナル資本ノ逃避ヲ阻
止スル樣ナ情況、條件ヲ拵ヘテヤラナケレ
バナリマセヌ、今日金融界ガ著シク梗塞シ
テ居ル爲ニ、逃避資本ガ歸ッテ居ルノデア
リマス、茲ニ若シ通貨ノ異常ナ膨脹ヲヤリ
マスナラ、之ヲ阻止スルコトニナリマセウ、
又財政ノ均衡、辻褄ガ合ハヌトカ、國際貸
借ノ辻褄ガ合ハヌト云フコトニナレバ爲
替ハ下落シマセウ、自ラ資本逃避ガ行ハレ
ルデアリマセウ、斯ウ考ヘマスナラ是等
ニ關スル政府ノ政策ト、此法案トノ間ニ矛
盾ヲ致シテ居ルノデアリマスガ、大藏大臣
ハ其矛盾ヲ如何ニ解カレルカガ承リタイ
以上ニ對スル御答辯ヲ承リマシタ上デ、
更ニ必要ニ依リマシテハ質問ヲ續行致シタ
イト思ヒマス(拍手)
〔國務大臣高橋是〓君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00419320604&spkNum=13
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014・高橋是清
○國務大臣(高橋是〓君) 只今田中サンカ
ラ色々數箇條ニ亙ッテノ御尋デアリマシタ、
中ニハ細カナ數字ニ亙ッテ御說明ヲスル必
要ガアルコトモアリマスカラ、ソレハ委員
會デ詳シク材料ニ依ッテ御說明シタ方ガ宜
カラウト思ヒマス、此兌換劵ノ保證準備發
行額ヲ十億ト原案デハナッテ居リマス、ソレ
ハ從來カラノ兌換發行高カラ見マシテ、八
億圓ガ適當デアル、八億圓デ足レリト云フ
御意見ノヤウデアリマス、是ハ大藏省ニ於
キマシテハズット前ニ遡リマシテ、日本
銀行兌換劵ノ發行高ヲ月別ニ調ベタノモア
リマス、併シ最近ニ於キマシテハ先ヅ通常
十二億圓ト云フモノガ、常時ニ於テノ發行
高ト認メテ宜イヤウニ考ヘマス、然ラバ十
二億圓ガ常時ノ現在ノ發行高デアルナラ
バソコニ通貨準備ガ四億アルカラシテ、
十二億カラ正貨準備ノ四億ヲ差引クト、恰
モ八億デ事足リルヤウニ考ヘラレルガ、併
シ此種々ノ法案等ヲ出シテアリマスル通
リ、今日現政府ノ提出シマシタ諸案ハ謂
ハヾ此經濟界ノ建直シノ基礎工事ニ過ギナ
イ、唯銀行ノ制度ヲ改善シタリ、或ハ保證
額ヲ增加シタルバカリデハナク、大藏省關
係ノ仕事バカリデハ此財界ノ建直シヲスル
コトハ不可能ナノデアル、デ先ヅ以テ此地
形ヲ作ッタノデス、是カラ此地形ノ上ニ建
設ヲスルノハ、皆是ハ各省ニ關係ガアルノ
デアリマス、農林省、商工省、內務省ニモ關
係ガアルノデス、其各省ノソレ〓〓所管ノ
事務ニ付テ是カラ政策ヲ立テラレルノデア
ル左樣ニシテ政策ガ立ッテ參リマスト云
フト、今日ヨリハ通貨ガ殖エルト見ルノガ當
リ前デアラウト思フ、今日ノ狀況ニ於テ十
億、四億ノ正貨ヲ差引テ八億、今日ノ儘デ財
界ヲ捨テヽ置イテ宜イト云フナラバ八億
圓デ事足レリト考ヘルガ、併シソレデハ滿
足ハ出來ナイ、モット民間ノ農商工、總テノ
業務ニ於テ活氣ヲ帶ビテ、發展ヲ圖ルト云
フコトニ國民ノ氣風ガナラナケレバ此財
界ノ建直シハ出來ナイ、サウナッテ來マス
レバ今日以上ニ通貨ノ必要ヲ見ルコトハ
明カデアリマス、ソレ故ニ十億圓ヲ以テ適
當ト認メタノデアリマス
ソレカラ制限外發行稅ノコトニ付テ之ヲ
廢シタ、制限外ノ制度ニ於テ、今迄五分ニ
下ラザル稅ヲ取ッテ居ック、之ヲ制限外ガ出
ナイヤウニ、十二億デ足ルモノヲ十億ノ發
行トシ、正貨準備ヲ加ヘテ十四億マデハ制
限外ヲ出ス必要ガ無クナッタ、是ハ政府ノ利
益ガ減ッタヤウニ一寸御話デアリマシタガ、
是ハサウデハナイ、納付金制度ヲ採用スル
以上ハ、總テ日本銀行ノ利益ト云フモノハ
或ルモノヲ差引イタ後ハ政府ニ上納スルコ
トニナッテ居リマス、制限外ノ發行稅ヲ現在
ノ如ク政府デ之ヲ主ナル收入ト見テ行ク必
要ガナクナルノデス、ソレカラ通貨ヲ殖ヤ
ス-膨脹サセルト、其通貨ヲ使フ所ノ標
準ハ何ニ取ッテ居ルノカト云フヤウナ、卽チ
運用ニ關スル御尋デアリマシタ、是ハ通貨
ヲ幾ラ殖ヤシタクトモ、民間ノ事業ガ起ラ
ナケレバ、通貨ノ殖エヤウハナイノデス
何故民間ノ事業ガ振ヒ興ラナイカ、丁度地
方ノ銀行ノ資金ガ、土地ニ凍結シテ居ルガ
如ク、今日ノ人心ハ、企業心ト云フモノハ、
マルデ凍結シタヤウナ有樣デス、之ヲ解カ
ナケレバナラヌ、而シテ通貨ヲサウ云ウ企
業ノ方面、產業ノ方面ニ向シテ、十分ニ圓滑
ニ、其疏通ヲ-流通ヲ圖ルト云フノガ目
的デアリマス、但シサウ云フ場合ニ於テハ、
投機ト云ヒ、思惑ト云フヤウナコトハドウ
モ免レナイ、ケレドモ成ルベクサウ云フ方
ニハ抑ヘテ、サウシテ殖產工業ニ向ッテ、國民
ガ働ク、其爲ニ必要ナ方面ニ向ッテ、通貨ヲ
十分ニ供給スル、斯ウ云フ目的デアリマス
故ニ標準ト云ウテ數字的ニハ別ニナイ、詰
リ農商工ノ取引上ニ於テ必要ナモノヲ、分
業ヲ以テ實質的ノ標準トスルノデアリマス
ソレカラ頻リニ爲替ノ安定ト云フコトヲ
御述ニナリマシタ、爲替ノ安定ト云フコト
ハ固ヨリ必要デアリマス、併シ今日ノ國際
間ノ關係、世界中ニ於テ何處ニ爲替ノ安定
ヲ求ムルコトガ出來マセウ、又何ニ依ッテ爲
替ノ安定ヲ求メルカ、ソレガ爲ニ歐米諸國
ハ如何ニシテ國際間ノ爲替ヲ安定シ得ル
ヤウナ方法及標準正貨ヲ何ニ取ルカト云フ
コトハ皆考慮シテ、其方法ノ無キニ苦ンデ
居ル有樣デス、我國ノ產業ガサウ爲替相
場ニ依クテ全部支配サレテ居ルト云フコト
ハナイノデアリマス、我國ノ國民ノ生產ノ
力ハ、少クトモ一箇年百億圓ノ生產力ヲ持ッ
テ居ルノデス、其中ノ二割前後ガ外國貿易
ニ關係ヲ有フテ居ルノデス、シテ見レバ國
家ノ生產力ニハ爲替相場ノ響ト云フモノ
ハ、世間デ思フヤウニ大ナルモノデハナイ、
貿易商人-貿易關係ノ人々カラ言ハスレ
バ、爲替相場ガ安定シナケレバ、今ニモ經
濟界ガ破綻スルヤウナ聲ヲ立テマスケレド
モ左樣ナモノデハナイ、抑と一國ノ爲替
相場ト云フモノハ、何ガ力トナッテ之ヲ支ヘ
ルノデアルカ、從來諸國ニ於テ爲替相場ヲ
テ支持シテ來タノハ、多クハ借金デス、一方
ニ於テ貸ス國ガアリ、一方ニ於テ借リル
其貸借ガ自由デアッタカラシテ、金貨本位ト
云フモノハ維持ガ出來テ居ッタ、我國ノ金解
禁ヲシタ時モサウデス、若シ世界ノ大勢ガ
元ノヤウナ譯デアッテ、國ノ信用サヘアレバ
幾ラデモ金ヲ貸スト云フ貸手ガアレバ、貿
易其他ノ關係ニ於テ、外國ニ支拂フベキモ
ノハ借金ヲ拂フト云フコトガ出來タ、暫ク
ソレデ續イテ居ノタ、世界各國皆サウデアッ
ク、其金ノアル者ガ貸サナクナッタカラシ
テ、世界中ノ不景氣ト云フモノヲ喚起シタ
譯デアル、今日ハ爲替相場ニ、サウ重キヲ
置イテ論ズル時機デハナカラウト思フ、是
ハ須ラク世界中ドウ云フ風ニ動イテ行クカ、
ドウ云フ所ニ國際間共通ノ貨幣制度ト云フ
モノガ出來ルカ、サウ云フコトヲ見テ後ニ
考ヘテ然ルベキモノデ、今日我國ガ如何ニ
考ヘテ見タ所デ、我國獨リデ以テ此爲替相
場ヲ世界各國ニ對シテ安定スルト云フコト
ハ不可能ナコトデアル(拍手)ソレカラ金再
禁止以來、期待ニ背イテ益、輸入ガ殖エテ來
タ私ガ何カソンナコトハナイト云フヤウ
ナコトデモ聲明シタカノ如クニ御話ガアリ
マシタガ、私ハ初メカラ輸入超過ニナルト
云フコトハ覺悟シテ居ル、分リ切ヲテ居ル話
デアル、何ノ爲ニ弗買ガ起ッタカ、ソレハ思
惑ノ弗買モアッタラウ併ナガラ或ル部分ハ、
或ハ大部分ハ輸入品ノ支拂代金ニ充テヨウ
トシテ居ノタノモアルノデアル、ソレ故ニ今
日棉花ナリ、羊毛ナリ、主ニ輸入品ノ殖エタ
ノハソレデス、其大量ノ輸入ノアッタニモ拘
ラズ、其原價ハ旣ニ支拂濟デアル、ソレカラ
マダ一ツ取返シノ付カヌモノガ今日アル、
日本人ガアノ場合ニ於テ弗ヲ買ッタト云フコ
トハ大〓モウ決濟ガ付イタヤウナ狀況デ
アルト私ハ認メテ居ル、唯戾ラヌモノハ外國
ノ銀行初メ諸會社、日本ニ於テ自分達ノ國
カラ持ッテ來夕資本ガ尠カラズアッタ察ス
ル所ドウシテモ三億以上四億位ハアッタト
思フ、ソレガ皆逃ゲテ行フテシマッタ、是ガ
マダ戾"テ來マセヌ、ソレ故ニアノ當時我國
カラ資本ガ出タ、是ガ全ク日本人ノ資本デ
アルト見ルノモ過チデアル、外國人ガ內地
ニ於テ營業シテ居ッタ、其資本モ尠カラズア
ル、今言フ通リ三億乃至四億ト云フモノハ
出テ行ッテシマッタノデアル、總テ是ガ日本
人ノ金ガ外國ヘ行ヲタノダト思フノモ是ハ
間違デアル、ソレカラ資本逃避ノコトニ付
テ色々御話ガアリマシタガ、ドウモ私共一
一細カニ記憶スルコトガ出來マセヌガ此
中ニ無爲替テ送フタモノヲドウスルト云フ
ヤウナ御話ガアリマシタ、今日デハ日本ノ
外債ガ非常ニ安イノデス、御承知ノ通リ英
米共ニ、外國人ニシテ今日本ノ公債ノ買手
ガナイノデス、始ドナイト言ウテ宜イ位、
或ハ又新タニ金ヲ調達スル爲ノ抵當ニモ取
ラズ、擔保品ニモ取ラヌ、サウ云フ狀況デ
アル、此日本ノ公債ノ外國ニ於テ價ノ下ッ
タ又人々ガ之ヲ危險視シテ持タナイト云
フコトハ彼等ノ一體財界ノ不況ノ結果デ
モアリマスルガ今日我國ガ擧國一致ノ力
ヲ以テ當ノテ居ル滿洲上海事件、斯ウ云フ事
ガ誤ラレテ、認識ガ十分サレナイ爲ニ日
本ノモノニ手ヲ出サナクナッタ、サウ云フ場
合デアリマスルカラ、算盤ヲ採クテ見ルト、
內地ノ人ハ日本デ、今例ヘバ公債ヲ持ツト
カ或ハ株劵ヲ持ヲテモ、極ク確實ナ株劵
ニシテ見タ所デ、利廻リカラ考ヘテ見ルト、
日本政府ノ外國ノ公債ヲ持フタ方ガ利廻リ
ハ確ニ好イ、一割乃至一割五分位ニ廻ルモ
ノガアル、同ジク日本政府ノ公債ダカラ
外國デ發行シタモノデモ、寧ロ利廻リノ好
イ方ガ宜イト云フノデ、ボツ〓〓ソレヲ買
フ人ガ出テ來テ居ル、昨今デハ餘リ多額ナ
買物ハナイ、併ナガラ千圓二千圓乃至五千
圓ト云フヤウナモノガ日々買ハレルヤウナ
有樣デアル、之ヲ捨テヽ置ケバ中々大シタ
高ニナリマスカラ是等モ第一取締ラナケ
レバナラヌ、ソレカラ見越輸入、無爲替輸
出、サウシテ又向フヘ其金ヲ置イテ置キハ
セヌカサウ云フモノハドウシテ取締ル
カ、出來マイガト云ヤウナ御尋ダガ、是
モ出來ルノデス、兎ニ角商賣上ニアラズシ
テ苟モ日本ノ資本ヲ外國ニ移スト云フ働
ヲ持ッタモノハ、是ハ禁ズルノデス、ソレ故
ニ御承知ノ通リ罰則モ可ナリ重イコトニ
ナッテ居ル、報告ヲセヌ者、報〓ヲ僞ル者、
或ハソレヲ屆出ナイ者、或ハ法律ニ背イタ
取扱ヲスル者、皆是ハ嚴重ニ罰スルコトニ
ナッテ居リマス、而シテ貿易上、取引上、外
國ノ支店ニ於テ輸出爲替ヲ取立ル、ソレヲ
又輸入爲替ニ使フ、サウ云フ商賣上ノ事ニ
立入ッテ居ルノデハナイ、唯其目的ガ日本ニ
置クヨリ、己ノ持ッテ居ル資本ヲ外國ニ移
シタ方ガ利廻リガ多イ、安全デアルト云フ
考カラシテ、外國ニ資本ヲ移スノヲ取締ル
ノデアル、其目的ハ只今提出シテアル所ノ
法案ガ成立致シマスレバ先ヅ遺憾ナク取締
ガ出來ルト思フ、外國ニハ其他ノ輸入管理
法トカ、色々ナ貿易上ニ於テ外國品ヲ防イ
デ國產ヲ用ヒサセ、國內ノ產業ヲ興起サセ、
發展サセルト云フ目的デ、國產保護ノ下ニ
色々ナ方法ヲ執ッテ居リマス、併シ何故今日
政府ハ唯資本逃避ヲ取締ルダケデ、爲替管理
トカ或ハ貿易ノ管理トカ云フ事ヲシナイ
カト云フコトデアリマスガ、未ダソレヲス
ル必要ハナイト今ノ所デハ認メル、成程質
易ヲ管理シテ、外國カラ輸入超過ニナラヌ
ヤウニスルト云フコトハ結構ナ事デアル、
併ナガラ何モソレヲ是非セナケレバナラヌ
ト云フ場合ニナッテシテ宜イノデアリマス、
今日ハマダ其必要ハ認メナイ成タケ國際
間ノ取引ハ自由ニシテ發達サセタイ、マダ
マダ我國ノ家庭工業カラ成ルヤウナ製品ニ
シテ丁度ソレガ先ノ國ノ一般需要者ニ適當
スルヤウナ品物ガ隨分アルノデアリマス
唯是マデ我ガ貿易商人ガ大キナ國々ニ著眼
シテ、サウ云フ小サナ國々ノ所ニ眼ガ屆カ
ナカッタ、努力シナカッタト云フコトニナフ
テ居ル、ソレデ今日デハ徐々トサウ云フ方
面ニ向テテ新ニ市場ヲ開ク、是ハ貿易者ノ努
力ヲ切ニ希望スルノデアル、サウ云フモノ
ヲ、外國貿易ハ面倒ダ、イケナイト言ッテ
氣ヲ挫クノハ宜クナイ、一寸考ヘレバ役ニ
立ツヤウナ法案デアッテモ、或ハ政策デアッ
テモ、其影響スル所ヲ深ク考ヘルト得ル
所ヨリ失フ所ノ多イコトガ多々アルノデア
リマス、今日ノ資本逃避取締ノ方法デマダ
足リナケレバ、其時ニ至ッテ輸入管理ナリ、
其他ノ手段ヲ執ル事ヲ實行シテ差支ナイノ
デアルト思フ先ヅ今日ノ所デハ是ダケデ
以テ足リルト見込ンデ居ルノデアリマス
マダ外ニ何カアリマシタカ知ラヌガ、ドウ
モ私眼ハ惡シ、記憶ハ惡シ(笑聲)此位デアッ
タカト考ヘマス、以上御答致シマス(拍手)
〔田中貢君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00419320604&spkNum=14
-
015・田中貢
○田中貢君 澤山聞キマシテ、一時ニ述べ
タモノデスカラ御忘レニナッタ點モアリマ
シテ十分ヲ盡シマセヌガ、委員會ニ於テ詳
細ナ事ヲ御聞キシタイト思ヒマス唯一二
ノ點ニ付キマシテノミ此處デ御尋ネシタ
イ、通貨膨脹ノ目標問題ニ付キマシテ、其目
標ガ立タヌト仰シヤイマシタガ、今日純然
タル國內製品ガ輸入品ニ較ベテ甚シク下ッ
テ居リマス言換ヘマスレバ再禁止當然
ノ影響ヲ受ケテ居リマセヌ、ソレデ國內產
業ガ甚シク困ッテ居ル、ソレヲ採算ガ出來ル
ヤウニシテヤリマセヌケレバ御希望ノ通
貨膨脹ト云フ事ハムヅカシイト思フノデア
リマス、私自身ハ今日ノ產業界ノ將來ニ付
キマシテ見通シヲ付ケテ、政策ヲ立テル事
ガ可能デアルト信ジテ居ルノデアリマス
第二ニ爲替ノ事ヲ非常ニ氣ニナサルヤウ
デアリマシテ、爲替ハ日本ノ產業ニ影響ガ
ナイ、外トノ關係ハ大シタ影響ガナイト云
フコトヲ屢〓承リマスガ、日本ノ重要產業
ノ中ノ纖維工業ハ外國ヲ無視致シテハ立
行カヌノデアリマス此點ハ私共ト大イニ
所見ヲ異ニ致シテ居リマスガ、尙ホサウ云
フ大キイ問題ハ別トシテ、一二具體的ノ例
ヲ擧ゲテ見マセウ、爲替相場ノ影響ヲ受ケ
マシテ、外國カラ入リマス所ノ小麥ハ十二
月十日ヲ百ト致シマスト五月二十一日ニ
百五十五デアリマス、然ルニ製粉ハ百十四
デアリマス、原料ノ値上リガ五割五分九厘
デ製品ノ値上リハ一割四分二厘デアリマ
ス、棉花綿絲ニ於テモ此通リデアリマス、
被服地ノ原料品ハ、總平均ニ致シマシテ二
割一分一厘上フテ居リマスノニ、被服地ノ方
ハ六分一厘シカ上ッテ居リマセヌ、斯ウ云フ
狀態ガ今日ノ產業界ニ到ル處ニアルノデア
リマシテ、假令今日再禁止ヲシテ居ッテ、「ブ
ロツク、エコノミー」溫室經濟ダト申シマシ
タ所ガ、對外關係ヲ無視致シマシタノデハ
產業界ノ囘復ハ出來マスマイノミナラズ
對外關係ガ日本ニ取ッテ重要ナコトハ、ドン
ナニ「インフレーション」ヲナサラウト思ッ
タッテ、國際貸借ガ改善サレテ、外カラ金ガ
入ッテ來テ、眞ニ國民ノ所得カ殖エマセヌケ
レバ本當ノ「インフレーシヨン」ニナリマ
スマイ(拍手)此點デ私共ハ藏相ト大イニ所
見ヲ異ニ致シテ居ルコトヲ遺憾ト致シテ居
リマスガ、他日ノ機會ニ讓リマス只今ハ
此點ニ關スル御答辯ノミヲ伺ヒマシテ、細カ
イコトハ委員會デ承リタイト思ヒマス(拍
手)
〔國務大臣高橋是〓君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00419320604&spkNum=15
-
016・高橋是清
○國務大臣(高橋升〓君) 何カ製品ヲ御擧
ゲニナッテ御尋ノヤウデアリマスガ、原料品
ガ安クナックトカ、高クナッタトカ云フ場合
ニ於テ直チニソレガ製品ノ價ニ及ブト考
ヘラレルノガ関違ヂヤナイカ(拍手)凡ソ製
品ニシマシテモ、御調べニナッタラ分リマセ
ウガ問屋デ以テ、問屋ノ卸賣ノ値ガ小賣
ニ響キマスノニハ三箇月乃至四箇月掛リ
マス、輸入品ノ價ガ安クナッタカラ、直グニ
ソレト同ジヤウニ製品ガ安クナルト云フ譯
ニモ行カズ、其間ニ數箇月ノ期間ヲ要スル
ノデアリマス、サウシテ固ヨリ品物ニ依リ
マシテハ旣ニ蓄ヘテアル物、又不足シテ
居ル物、各、事情ガ違ママス、金再禁止ヲ
シタナラバ爲替相場ガ下ル、下レバ直グ
ニ貨幣價値ガ下ルノダカラシテ、我國ノ物
價カ騰貴スルダラウ、是ハ一應議論トシテ
ハサウモ受取レルガ、實際ハソンナモノヂ
ヤナイ、爲替相場ガ三割五分下フタトシテ、
其三割五分ガ或ル商品ニ製品トナッテ及ブ
ノハ、三箇月四箇月掛ルノデアリマス、サ
ウシテ又其製品ガドレ位蓄ヘガアルカナイ
カト云フコトニモ依ル、各是ハ一樣ニハ行
カナイ、一ツヅヽ物品ヲ調ベテ御覽ナサイ
ソレカラ私ガ爲替相場ニ付テハ今日重
キヲ措イテ居ラヌト云フヤウナコトヲ申シ
タノヲ、直チニ外國貿易ヲ無視スルト仰シ
ヤルガ、是モ亦聽違ヒナンデアル(拍手)外
國貿易ヲ無視スルナント云フコトハ私ハ
寸毫モ思ッテ居リハシナイ、外國貿易ハ大切
デアルカラコソ、我ガ貿易商人ヲシテ、是
迄ノヤウナ大都會バカリヲ相手ニシナイ
デ、田舎廻リヲシテ稼グヤウニ努力シテ貰
ヒタイト云フコトヲ先刻申上ゲタ(「其通
リ」拍手)其他細カイコトハ何レ委員會ニ於
テ御尋ニナリマセウカラ、其時ニ讓リマス
(拍手)発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00419320604&spkNum=16
-
017・秋田清
○議長(秋田〓君) 質疑ハ終局致シマシ
タ日程第十一右各案ノ審査ヲ付託スヘ
キ委員ノ選擧ヲ議題ト致シマス
第十一右各案ノ審査ヲ付託スヘキ委
員ノ選擧
關稅定率法中改正法律案
關稅定率法別表輸入稅表中左ノ通改正ス
第十六號中「一·五〇」ヲ「一一·五〇」ニ改ム
第十八號ヲ左ノ如ク改ム
八八高粱
第十九號中「〇·三〇」ヲ「一·七〇」ニ改ム
第二十二號第一項中「二·九〇」ヲ「四·三〇」ニ改ム
第五十三號中「三六·九〇」ヲ「五〇·〇〇」ニ改ム
第五十五號第一項中「一二一四〇」ヲ「二五·〇〇」ニ、
三郎人
第百十四號ヲ左ノ如ク改ム
一一四パラフィン
融解點攝氏四十五度ヲ超エサルモノ
甲
ノモノ
乙其ノ他
二其ノ他発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00419320604&spkNum=17
-
018・上田孝吉
○上田孝吉君 本案ヲ一括シテ議長指名二
十七名ノ委員ニ付託セラレンコトヲ望ミマ
ス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00419320604&spkNum=18
-
019・秋田清
○議長(秋田〓君) 上田君ノ動議ニ御異議
アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00419320604&spkNum=19
-
020・秋田清
○議長(秋田〓君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ、-日程
第十二及第十三ハ同種ノ議案ナルニ依リ、
一括議題トナスニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00419320604&spkNum=20
-
021・秋田清
○議長(秋田〓君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ日程第十二、關稅定率法中改正法
律案、日程第十三、輸入稅ノ從量稅率ニ關
スル法律案、右ヲ一括シテ第一讀會ヲ開キ
マス
第十二關稅定率法中改正法律案政
府提出)第一讀會
第十三輸入稅ノ從量稅率ニ關スル法
律案(政府提出)第一讀會
每百斤一·〇〇
第二項中「八·三〇」ヲ「一五·七〇」
頁岩油ヨリ分餾シタルモノニシテ粗製
無稅
每百斤六·〇〇
每百斤一二·〇〇
第百四十九號ヲ左ノ如ク改ム
一四九黃燐、赤燐及硫化燐每百斤一四·三〇
第百七十六號ヲ左ノ如ク改ム
一七六クロール酸加里每百斤四·二〇
第二百五十五號中「一·九五」ヲ「三·四〇」三八人
第二百五十九號ヲ左ノ如ク改ム
二五九ピッチ及アスファルト每百斤〇·四〇
第二百五十九號ノ二ヲ左ノ如ク改ム
二五九ノ二コールタール、ピツチ又ハアスファルトノ製品
ニシテ道路修築用ノモノ每百斤〇·四〇
第四百十八號第二項中「八·二五」ヲ「一五·〇〇」ニ改ム
同號第三項ヲ左ノ如ク改ム
三板
甲護謨入ノモノ每百斤一五·〇〇
乙其ノ他每百斤四·〇五
同號第四項中「一八·八〇」ヲ「三〇·〇〇」ニ改ム
第四百六十二號第一項甲中「〇·一〇」ヲ「〇·三六」ニ、第四項中「從價」ヲ「每百斤」ニ、
「一割八分」ヲ「一·三〇」ニ、第六項中「一割八分」ヲ「一一割五分」ニ、第七項中「五分」ヲ
「一割五分」ニ、第十二項中「二割」ヲ「二割五分」ニ改ム
第四百六十三號ノ次ニ左ノ一號ヲ加フ
四六三ノ二マグネシウム每百斤四九·五〇
第四百九十九號第二項丙ロヲ左ノ如ク改ム
ロ其ノ他
ロノ一安全剃刀用ノ刄每百箇一·〇〇
ロノ二其ノ他從價三割五分
第五百二十號ヲ左ノ如ク改ム
五二〇貨幣(金銀貨幣以外ノ貨幣ニシテ本邦通貨ニ非
サルモノハ分類上之ヲ地金ト看做ス)無稅
第五百二十七號第八項乙ヲ左ノ如ク改ム
乙其ノ他
イ地板每百箇一九·五〇
ロ調整輪每百箇一八·〇〇
ハ制動杆每百箇一四·一〇
ニ受板每百箇一〇·五〇
ホ撥條匣每百箇八·〇〇
へ其ノ他(機械用ノ石ヲ除ク)從價三割
五四九
五七七
一〇」ヲ「三·四〇」ニ、
附則
第五百四十九號ヲ左ノ如ク改ム
醫療器、オーソペヂックインストルーメント及
同部分品(別號ニ揭ケサルモノ)
一陶齒
甲金屬製ノ釘ヲ用ヰタルモノ
イ貴金屬ヲ用ヰタルモノ每百箇一一·七〇
ロ其ノ他每百箇二·〇〇
乙其ノ他從價五割
二其ノ他從價二割
第五百六十四號中「三割」ヲ「四割二分」ニ改ム
第五百七十七號ヲ左ノ如ク改ム
內燃機關
一自動車用ノモノ及自轉車用ノモノ從價三割五分
二其ノ他
甲一箇ノ重量百キログラムヲ超エサルモ
每百斤三〇·〇〇
乙一箇ノ重量二百五十キログラムヲ超エ
サルモノ每百斤二〇·〇〇
丙一箇ノ重量千キログラムヲ超エサルモ
每百斤一七·七〇
丁一箇ノ重量二千五百キログラムヲ超エ
サルモノ每百斤一七·〇〇
戊一箇ノ重量一萬キログラムヲ超エサル
モノ每百斤一四·七〇
己一箇ノ重量五萬キログラムヲ超エサル
モノ每百斤一三·七〇
庚其ノ他從價二割
第六百五號第二項甲ノ二ホ中「從價」ヲ「每百斤」ニ、「一割五分」ヲ「二·六〇」ニ、第十項
中「二二·三〇」ヲ「三五·一〇」ニ改ム
第六百十二號第一項己ノ五中「四·五五」ヲ「六·九〇」ニ、「三·九〇」ヲ「五·六〇」ニ、「二·
「一·二〇」ヲ「二·五〇」ニ改ム
第六百三十二號ノ二中「從價」ヲ「每百斤」ニ、「二割」ヲ「五六·〇〇」ニ改ム
本法ノ別表ニ揭グルモノノ從量稅率ハ此
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行スノ限ニ在ラズ
輸入稅ノ從量稅率ニ關スル法律案前項ノ規定ニ依ル從量稅率ニ一錢未滿ノ
關稅定率法別表輸入稅表ニ定メタル從量端數アルトキハ其ノ端數ハ之ヲ切捨ツ
稅率ハ當分ノ內之ヲ其ノ百分ノ百三十五附則
トス但シ同輸入稅表ニ揭グル物品ニシテ本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
別表
表輸入稅品名
番號
一六小麥
八高粱
一九玉蜀黍
一三一穀粉及澱粉類
小麥粉
五三バター人造バター及ギー
五五コンデンスドミルク
一一四パラフィン
一融解點攝氏四十五度ヲ超エサルモノ
乙其ノ他
一四九黃燐、赤燐及硫化燐
一七六クロール酸加里
二五五カーボンブラック
二五九ピッチ及アスファルト
二五九ノ二コールタール、ピッチ又ハアスファルトノ製品ニシテ道路修築用ノモノ
三六二印刷料紙
二其ノ他
乙其ノ他
イ一平方メートルノ重量五十八グラムヲ超エサルモノ
四一八石絨及別號ニ揭ケサル石絨製品
二絲
三板
甲護謨入ノモノ
四其ノ他
四六二鐵(別號ニ揭ケタル特殊鋼ヲ除ク)
一塊及錠
甲銑鐵
四ワイヤロッド(卷キタルモノ)
四六三ノ二マグネシウム
四九九刄物(別號ニ揭ケサルモノ)
二其ノ他
丙剃刀
ロ其ノ他
ロノ一安全剃刀用ノ刄
五二七懷中時計部分品
八其ノ他
乙其ノ他
イ地板
ロ調整輪
ハ制動杆
ニ受板
ホ撥條匣
五四九醫療器、
モノ)
陶齒
甲金屬製ノ釘ヲ用ヰタルモノ
六〇五機械部分品(別號ニ揭ケサルモノ)
二ロール及ローラー
甲鐵製ノモノ
甲ノ二其ノ他
ホ其ノ他
十筬(金屬製ノモノ)
六一二木材
一單ニ切リ、
己パイン、ファー
己ノ五
イ
ロ
ハ
ニ丸太及割材
ニノ二其ノ他
六三二ノ二屑及故ノセリュロイド(改造用ノミニ適スルモノ)
〔國務大臣高橋是〓君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00419320604&spkNum=21
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022・高橋是清
○國務大臣(高橋是清君) 只今議題トナリ
マシタ關稅定率法中ノ改正法律案ノ說明ヲ
致シマス、政府ハ改正法律案ニ揭ゲラレテ
居リマスル各物品ニ關スル輸入稅改正ノ要
否ニ付キ、曩ニ關稅調査委員會ニ諮問致シ
マシタ所、成案ヲ得マシタノデ、玆ニ本改
正法律案ヲ提出致シタ次第デアリマス、改
正案ノ品目ハ小麥、銑鐵等二十九品デアリ
マシテ、輸入稅表中二十四ノ項目ニ關係シ、
部分的改正トシテハ相當廣範圍ニ亙ッテ居
リマス、政府ハ是等物品ノ生產輸入及需給
等ノ狀況ニ鑑ミテ、現行稅率ハ現在ノ實狀
ニ適セザルモノト認メマシテ、大體ニ於テ
オーソペヂックインストルーメント及同部分品(別號ニ揭ケサル
挽キ又ハ割リタルモノ
シダー其ノ他ノ針葉樹
其ノ他(ドグラスファー等)
厚六十ミリメートルヲ超エサルモノ
厚二百ミリメートルヲ超エサルモノ
厚二百ミリメートルヲ超エタルモノ
其輸入ヲ相當抑制シテ、內地產業ヲ保護ス
ル目的ヲ以テ、本改正法律案ヲ提出シタノ
デアリマス、尙ホ詳細ナル點ニ付テハ委員
會ニ於テ御說明ヲ致ス考デアリマス、御審
議ノ上速ニ御協贊ヲ與ヘラレンコトヲ希望
致シマス
日程第十三ノ輸入稅ノ從量稅率ニ關スル
法律案ノ說明ヲ致シマス、政府ハ外國爲
替相場ノ現狀ニ鑑ミマシテ考慮ヲ拂フノ必
要アリヤ否ヤ、竝ニ之ニ關スル具體案ニ付
キマシテ、曩ニ關稅調査委員會ニ諮問致シ
マシタ所、成案ヲ得マシタノデ、玆ニ本法
律案ヲ提出致シタ次第デアリマス、御承知
ノ通リ從來我國ノ輸入稅表ニ於テハ、從價
稅率ト從量稅率トガ併セ用ヒラレテ居ル、
現行ノモノニ於テハ稅率ノ大部分ハ從量
稅率ニナッテ居ルノデアリマス、然ルニ外國
爲替相場ノ現狀ニ鑑ミマスト、輸入品ノ價
格ハ騰貴ヲ免レナイ狀態ニアリマスガ斯
ノ如キ狀態ノ下ニ於テハ、輸入品ノ價格ニ
對スル關係上從價稅率ト從量稅率トハソレ
ゾレ趣ヲ異ニスル點ガ著シク現ハレテ來ル
ノデアリマス、仍テ右ノ關係ヲ調節スル爲
メ此際應急ノ處置トシテ從量稅率ヲ增加
スルノガ適當デアルト認メマス、而シテ其
增加ノ程度ハ外國爲替相場ノ狀況等ヲ斟
酌シテ、三割五分ヲ相當ト認メタ次第デア
リマス
次ニ此法案ト關稅定率法中改正法律案ト
ノ關係デアリマスガ、關稅定率法中改正法
律案ノ方ハ、之ニ依ッテ輸入稅表ニ定メテア
リマス稅表中、適當デナイト認メタモノニ
付テ改正ヲ行ハントスルモノデアリマシテ、
是等ノ改正稅率ニ付テハ旣ニ右ノ調節ノ
關係ヲモ考慮ニ入レテ居ルノデアリマスカ
ラ、其中ノ從量稅率ハ本改正法律案ニ依
ル稅率增加ノ範圍外ニ之ヲ置イタノデアリ
マス、尙ホ右ノ外新聞用紙ノ稅率ハ文化
ノ普及上等ヨリ見テ、特別ニ取扱フベキ理
由ガアリト認メマシテ、特ニ例外ノ中ニ加
ヘマシタ、其他詳細ナル點ニ付キマシテハ
委員會ニ於テ御說明ヲ致スコトニ致シタ
イ、何卒御審議ノ上速ニ御協贊ヲ與ヘラレ
ンコトヲ希望スル次第デアリマス(拍手)発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00419320604&spkNum=22
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023・秋田清
○議長(秋田〓君) 質疑ノ通〓ガアリマ
ス、順次之ヲ許シマス、中島彌團次君
〔中島彌團次君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00419320604&spkNum=23
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024・中島彌團次
○中島彌團次君 只今議題トナッテ居リマ
ス關稅ノ改正案ニ付キマシテ、高橋大藏大
臣、後藤農林大臣、中島商工大臣、永井拓
務大臣、及荒木陸軍大臣ニ對シテ御質問致
シタイト考ヘテ居リマス、私ノ質問ハ多少
廣汎ニ亙ルノデアリマスガ、其場所々々ニ
依リマシテ所管大臣カラ御答辯ヲ戴ケバ、
ソレデ結構デアリマス
大藏大臣ガ昨日ノ此壇上ニ於テ御說明サ
レマシタ所ニ依リマスト云フト「世界經濟
ノ大勢ヲ見マスルニ、不況ノ深刻ナルニ從
ヒ各國何レモ先ヅ內ヲ整ヘルコトヲ根本
トシ、輸入ヲ防遏シテ國內產業ノ發達ヲ圖
ラントスル傾向ガ顯著デアリマシテ、各國
擧ッテ外國物資ニ對シテ高率ノ關稅ヲ賦課
スルノミナラズ、國ニ依ッテハ更ニ進ンデ貿
易ノ管理、又ハ特定商品ノ輸入禁止ヲ行フ
モノサヘモアルノデアリマス、各國ノ情勢
ガ斯ノ如クデアルノミナラズ、我國ノ現狀
ヨリスルモ、此際出來得ル限リ輸入ヲ防遏
スルト共ニ、國內產業ヲ保護助長スルコト
ハ最モ必要デアリマスカラ、政府ハ緊急
ノ必要アリト認ムル輸入品ニ付キ、關稅率
ノ引上ゲヲ行フコトヽ致シマシタ」斯ウ云
フ意味デ、政府ニ於キマシテハ二十九品
ニ亙ッテ關稅率ノ引上ゲヲ行フト同時ニ、
從價稅ト從量稅トノ均衡ヲ保タシメンガ
爲ニ、從量稅ニ對シマシテ一律一體ニ
三割五分引上ゲルト云フノガ、今度提案
サレマシタ關稅改正デアルト私ハ解釋致シ
マス此時ニ於キマシテ、私共ガ先ヅ第一
ニ御尋ヲ申上ゲタイノハ、爲替ガ三割五分
下ッタガ故ニ、從量稅品ヲ一律一體ニ何故ニ
三割五分引上ゲタノカ、此點ニ付テ非常ニ
私共ハ疑問トシテ居ル譯デアリマス、固ヨ
リ私共ハ與黨デアリマスカラ、本案ニ對シ
マシテ反對スルト云フ意味デ質問スルノデ
ハアリマセヌ、併ナガラ關稅改正ノ如キ、
國民生活ニ對シテ重大ナル利害關係ヲ有シ
マスル問題ニ付キマシテハ吾々ハ野黨ノ
立場ヲ以テ質問センケレバナラヌト云フコ
トヲ痛切ニ感ズル次第デアリマス、ソコデ
三割五分ダケ何故ニ從量稅ニ對シテ關稅ノ
引上ヲヤルコトニナッタカト云フコトガ、私
共大變ニ理解スルニ苦ム次第デアリマス、
是ヨリ前ニ申上ゲテ見タイノハ、我國ノ輸
入貿易品ヲ大體ヲ觀察致シテ見マスルニ
無稅品ト從量稅品ト從價稅品トノ三ツニナツ
テ居リマスルガ、無稅品ガ品數ニ於テハ百
八十一デアッテ、從量稅品ハ品數ニ於キマシ
テ九百七十七デアリマシテ、從價稅品ハ五
百三十四デアリマス、品數カラ見マスルト
云フト、從價稅ハ五百三十四デアッテ、相當
ノ數量ヲ占メテ居ルヤウデアリマスルケレ
ドモ、昭和六年ニ於ケル輸入金額カラ觀察
致シテ見マスナラバ無稅品ガ四割九分八
厘ヲ占メテ、殆ド我國ノ貿易品ノ五割ニ近
イ金額ヲ占メ、サウシテ從量稅ガ三割九分
ニナッテ居リマシテ、從價稅ハ僅ニ八分九厘、
殆ド「パーセンテージ」ニ掛ルカ掛ラナイカ
ノヤウナ程度デアリマシテ、統計上從價ト
從量トヲ區別スルコトガ困難デアル雜品
ガ六分六厘デアリマス、斯ノ如ク從價稅ト
云フモノハ、貿易全額カラ言ウタナラバ微
微タルモノデアリマシテ、僅ニ八分九厘ヲ
占メテ居ル關係デアリマス、而シテ從量稅
品ノ大部分ヲ見テ見マスルト、生活ノ必要
品ニアラズンバ工業ノ原料、材料デアリマ
ス、一千万圓以上ノ輸入ノアルモノヲ調査
シテ見マスルナラバ、豆類ガ三千七百万圓
デアッテ、小麥ガ三千五百万圓、砂糖ガ一千
五百万圓、鳥獸肉ガ九百五十万圓、鹹魚ガ
一千万圓、礦油ガ八千五百万圓、ソレカラ
木材ガ四千三百万圓、毛織絲ガ一千五百万
圓、綿織絲ガ一千五百万圓、製紙用「パルプ」
ガ一千一百万圓、銑鐵ガ一千一百万圓
鐵ハ全體デ四千八百万圓ニナッテ居リマス、
ソレカラ其板ガ一千二百万圓、自動車ノ部
分品ガ一千二百万圓、內燃機關ガ一千万圓
ト云フガ如クニ、大部分ノ品物ニ亙リマシ
テ從量稅品ノ中ヲ觀察シマスレバ、今申上
ゲマシタ如クニ、生活ノ必要品カ、然ラズ
ンバ工業ノ原料材料デアル、斯ウ云フ點カ
ラ觀察致シテ見マスルナラバ、一律一體ニ
三割五分ダケ引上ゲルト云フコトハ、何ヲ
意味スルカト申シマスルト云フト、物價ヲ
騰貴セシメテ、國民生活ヲ脅威シ、社會思
想ヲ危險ナラシムルト云フ點ニ付テ非常ナ
ル心配ニ堪ヘナイノデアリマス、更ニモウ一
ツノ心配ハ、輸入ハ防遏シ得マシテモ、工業ノ
原料、材料品ニ重課スルト云フコトハ、輸
出ヲ妨害スルヤウナ點ニ立到ッテ來ハセヌ
カト云フコトノ心配ガアリマス、大藏大臣
ハ昨日ノ御說明ニ於キマシテ、外國ニ於テ
ハ盛ニ關稅戰ガ行ハレテ、輸入ヲ防遏致シ、
輸出ヲ奬勵スルコトニ努力シタ、ソレデ關
稅ヲ引上ゲナケレバナラヌト申サレマスケ
レドモ、日本ノ國ノヤウニ無稅品ガ半分以
上ヲ占メテ居フテ、從量稅品ガ半分ヲ占メテ
居ルト云フヤウナ國デアリマシタナラバ
是ハ外國ト餘程事情ヲ異ニシテ居リマス、
大體政友會ノ方々ハ保護關稅主義ヲ非常
ニ盛ニ唱ヘラレテ居リマスルガ、貿易全體
カラ考ヘテ見マシテ、保護ダケニ力ヲ入レ
テ、輸入ハ防遏シ得テモ、輸出ガ奬勵サレ
ヌト云フコトニナッテ來マスト是ハ根本
ヲ誤ルモノデナイカト私ハ考ヘマス、固ヨ
リ輸出品ニ對スル原料、材料ニ付キマシテ
ハ、戾稅ノ制度モアリマスシ、又保稅倉庫ノ
制度モアリマスケレドモ、是トテ矢張稅額
ニ相當スル公債擔保ヲ提供センケレバナラ
ヌ制度デアリマスカラ、其點カラ考ヘマス
ト云フト、輸出商人ニ對シマシテハ、必シ
モ輸出ノ原料材料ガ無稅ニナルト云フコト
ガ、何等ノ負擔ナシニ行ハルルト云フコト
デハナイト考ヘマス斯ウ云フ點カラ觀察
致シマシテ、三割五分一律一體ニ從量稅ヲ
引上ゲルト云フコトハ殆ド金額カラ申上
ゲマスナラバ、關稅全體ニ對スル非常ナ重
大ナル引上ニナッテ、國民生活上及ビ輸出貿
易ニ影響スル所ガ大變ニ大キナモノガア
ルト云フコトヲ吾々ハ感ズル次第デアリ
マスガ、此邊ニ對スル高橋大藏大臣及中
島商工大臣、後藤農林大臣ノ御意見ハ如
何デアリマスカ、私共ハ數字ヲ擧ゲテ玆
ニ申上ゲマスカラ、此點ニ付テ御親切ニ
御答下サランコトヲ希望致シマス、ソ
レカラ外國デハ千九百三十一年ニ於テ無
暗ニ關稅ヲ引上ゲテ、殆ド關稅戰デ疲レテ
居ル本年ニ入"テ關稅戰ト云フモノハ不
景氣ヲ助長スルモノデアルト云フコト
ヲ悟ノテ、本年ノ一月アタリカラ段々關稅
ノ引下ガ行ハレツヽアリマス、此事ニ付テ
詳シク申上ゲタイガ、委員會ニ讓ルコトヽ
致シマシテ此處デハ省キマスガ、要スルニ
關稅戰ガ世界不景氣ノ殆ド根本原因ヲ爲シ
タト言ウテ宜シイ、他ニモ高橋大藏大臣ガ
今申サレマシタ如クニ、金ヲ貸ス所ガ貸サ
ナクナッタコト、卽チ信用ノ世界的收縮シタ
ト云フコトモ廿、ツノ原因デアリマセウ、
其他ニモ幾多ノ原因モアリマセウガ、關稅
戰ニ依クテ各國ガ有無相通ズルコトヲ打壞
シテシマッテ、是ガ不況ノ一ツノ原因ニナフ
タコトハ最早私ガ茲ニ論ズルマデモアリ
マスマイ、殊ニ此關稅戰ガ下火ニナラント
スル時ニ當ノテ、日本ノ國ガ再ビ遲蒔ニ此
關稅戰ノ仲間入ヲスルト云フコトハ、却テ
不景氣ヲ囘復シ、產業ヲ保護スル上ニ於テ
ドンナモノデアラウカ、私共餘程此點ニ對
シテ疑問ヲ持フテ居ル次第デアリマスカラ、
私共ノ先輩デアル所ノ高橋大藏大臣ノ御〓
示ヲ受ケタク考ヘテ居ル次第デアリマス、
サウシテ三割五分ダケ從量稅ヲ引上ゲルト
云フコトニ對シテ、私共ガ疑問ヲ持ッテ居ル所
ハ、何故ニ大藏大臣ハ爲替ノ下タタヲヲヘテ、
輸入平均價額ヲ捉ヘナカッタカト云フ點ニ
付テ御〓示ヲ承リタイ、私共ノ考デハ高
橋藏相モ、今田中君ノ質問ニ對スル御答辯
ニ對シマシテハ高橋藏相ハ爲替カ下ッタカ
ラ直チニ物價ハ上ルベキモノデハナイ、三
箇月掛ルト仰シヤッタ、ソレカラ考ヘテ見
マスルト云フト、爲替ガ三割五分下ッタカ
ラ、直チニ從量稅品ノ稅率ヲ三割五分引上
ゲルト云フコトハ藏相自身ノ答辯ト矛盾
撞著シテ居ルヤウニ私ハ考ヘル次第デアリ
マス(「攻擊ダ」ト呼フ者アリ)攻擊シテ居ル
ノデハアリマセヌ、質問ヲ致シテ居ルノデ
アリマス、私共ノ考デハ、三割五分爲替ガ
下ヲテ居リマスケレドモ、物價ハ三割五分
ダケ上ッテ居リマセヌ、輸入平均價格ニ付
キマシテモ、亦從量稅品ノ輸入平均價格ニ
付キマシテモ、三割五分上ッテ居リマセヌ、
ソレハ玆ニ吾々ガ調査シマシタ調査ノ書類
ガアリマスルガ、大體是ハ大藏省カラ戴イ
テ參リマシタモノデアリマスルカラ、嘘デ
ハナカラウト考ヘマス、卽チ昭和七年三月
ト昭和六年十一月トノ重要ナル輸入品ニ
付キマシテ、ドレダケ輸入平均價格ガ騰貴
シテ居ルカヲ見テ見マスルニ、豆類ニ、砂
糖ニ、生牛乳ニ、「コンデンスミルク」ニ、礦
油苛性曹達、曹達灰、天然曹達、硫酸「ア
ンモニユーム」、合成染料、毛織絲、毛織物、
ソレカラ製紙用「パルプ」、硝子板、鐵、鉛、
鍚、亞鉛、木材、活動爲眞用「フイルム」、
斯ウ云フヤウナ重大ナル輸入品ニ付キマシ
テ、算盤ヲ採ッテ見マスルト云フト、二割
五分一厘ダケ騰貴シテ居リマス、爲替ノ下
落ガ三割五分ニ對シテ二割五分一厘ダケ騰
貴シテ居ルノデアリマスルカラ、一割ト云
フモノハ餘計ニ國民ガ負擔サレナケレバナ
ラヌト云フ結論ニナッテ來マス、殊ニ私共ハ
澤山ナ貿易品ノ中デ、僅カ二十二位ヲ取リ
マシタノデアリマスルカラ、外ノ物ハドウ
カト言ハルヽ方モアリマセウガ、是等ハ全
部重要輸入品デアリマシテ、此等ハ皆一箇
年ノ輸入額何百万圓以上ノ金額ニ上ッテ居
ルモノデアリマス、其中デ毛織物ガ五割一
分九厘デアッテ、毛織絲ガ三割九分七厘デ
アル、ソレカラ硝子板ガ十二割デアッテ錫
ガ四割デ亞鉛ガ四割デアッテ、木材ガ三割九
分五厘デアッテ、是等ガ三割五分以上ニナツ
テ居ル、他ノ物ハ大部分ニ於キマシテ三割
五分以下ニナッテ居リマス、更ニ三井物產
ノ調査シマシタ二十七種ニ亙リマスル重要
輸入品ノ平均價格ニ付キマシテモ、二割一
分ホカ上ッテ居ナイ、何方ガ本當デアルカ、
ソレハ品目ノ選定ノ方法ニ依ッテ異ルデ
アリマセウガ、兎モ角モ二割一分乃至一一割
五分位ホカ上ッテ居ナイモノニ對シマシテ、
爲替ガ三割五分下ッタカラ、直チニ從量稅
品ニ對シテ三割五分ダケノ一律一體ナル引
上ヲナスト云フコトハ一割乃至一割五分
ダケヲ國民ニ不當ニ重課スル結果ニナリハ
セヌカト云フコトヲ吾々ハ心配スルモノデ
アリマス、此點ニ付キマシテ大藏大臣ノ御
說明ヲ戴キタイ、サウシテ問題ハ爲替相場
ガ三割五分下ッテ居リマスケレドモ、內地
ノ物價ノ狀態ヲ見テ見マスルニ、金ノ輸出
再禁止ヲ昨年ノ十二月十三日ニ於テ行ハレ
マシタ、ソレカラ一時物價ハ騰貴シテ來マ
シタケレドモ、今日ニ於キマシテハ殆ド
再禁止前ト違ハヌ狀態デアッテ、日本銀行
ノ統計ニ依リマスルト、昨年十二月十日ニ
較ベマシテ、本年五月二十七日ニハ六分七
厘ホカ騰貴シテ居ナイノデアリマス、タッタ
六分七厘ホカ騰貴シテ居ナイ、是カラ見マ
スルナラバ従量稅品ノ從價率ト云フモノ
ハ此關稅改正ガ一般的ニ行ハレマシタ卽
チ大正十五年ニ較ベマシテ、大正十五年ノ
關稅改正ハ時ノ濱口大藏大臣ガ行ッタノ
デアリマスガ、大正十四年ニ於ケル物價ヲ
以テ大體標準ト致シマシテ、從量稅品ト從
價稅品トノ權衡ヲ取ッタノデアリマス、其權
衡ヲ取リマシタ結果、物價ガ大正十四年ニ
較ベマスルナラバ大體四割見當下落シテ
居リマスルカラ、從量稅品ノ從價率ガ下ッ
テ居ルベキ理由ハナク、却テ從量稅品ノ從
價率、卽チ基礎率ト言ヒマセウカ、關稅定
率法ニ於ケル基礎率ト云フモノハ、却テ上ツ
テ居ルノデアリマス其證據ハドウ云フ點
ニアルカト申上ゲマスルナラバ、茲ニ豆類
外二十幾種ニ付テ、立法當時ト今日ト、從
量稅品ト從價稅品トガドレダケノ比率ヲ以
テ權衡ヲ失シテ居ルカ、權衡ヲ失シテ居ナ
イカト云フコトニ付キマシテ〓究シマシタ
所ガ、大豆ニ付キマシテハ立法當時ノ從
價率十二「パーセント」デアッタモノガ二十一
「パーセント」ニ今日ハ上ッテ居リマス、米
及籾ニ付キマシテハ、十六「パーセント」デ
アッタモノガ二十五「パーセント」ニ上ッテ居
リマス、小豆ニ付キマシテハ十「パーセン
ト」デアッタモノガ十五「パーセント」ニ上ッ
テ居リマス、玉蜀黍ガ九「パーセント」ガ十三
「パーセント」ニ上リ、菜子及芥子ハ十「パー
セント」ガ十三「パーセント」ニ上ッテ、砂糖
ガ三十一「パーセント」ガ七十四「パーセン
ト」ニ上ッテ居リマス、「コンデンスミルク」、
ソレカラ革類ガ少シ落チテ居ルダケデアッ
テ、礦油ハ十二「パーセント」ガ二十四「パー
セント」ニ上リ、「パラフィンワックス」ハ六十
一「パーセント」ガ六十四「パーセント」ニ上
リ、粗苛性曹達ガ、十四「パーセント」ガ二十
「パーセント」ニ上リ、人造藍ガ二十「パーセ
ント」ガ三十一「パーセント」ニ上リ、鹽基性
染料ガ三十五「パーセント」ガ四十一「パー
セント」ニ上リ、直接染料ガ三十五「パー
セント」ガ四十五「パーセント」ニ上リ酸性
染料ガ三十五「パーセント」ガ六十「パーセ
ント」、殆ド倍ニナッテ居ル、漆ハ五「パーセ
ント」ガ八「パーセント」ニナリ、印刷料紙ガ
七「パーセント」ガ十四「パーセント」ニナリ、
包裝用ノ紙及「マッチ」用ノ紙ガ十五「パーセ
ント」ガ二十二「パーセント」ニナリ、「シー
トバー」ガ十「パーセント」ガ二十三「パーセ
ント」ニナッテ居リマス、其他述ベテ行キマ
スレバ澤山アリマスケレドモ、省略致シマ
スカ、唯僅ニ「コンデスミルク」ト、ソレカ
ラ革類ガ僅ニ一「パーセント」下ッテ居ルダ
ケデアリマシテ、大部分ノ品物ニ付キマシ
テ從量稅品ヲ觀察シテ見マスルナラバ基
礎率ト云フモノハ立法當時ニ比シマシテ
物價ガ四割以上下落シテ居リマスルガ爲
ニ、從量稅品ノ基礎率ト云フモノ、卽チ從
價率ト云フモノガ下ッテ居ルコトハナクテ、
却テ上ッテ居ルヤウナ狀態デアリマス、之ニ
對シマシテ三割五分以上ノ引上スル所ノ理
由ガ、私共ハ解釋ニ苦ム次第デアリマス、
若シ引上スルニ致シマシテモ、金輸出再禁
止前ノ一定ノ期間ト、金輸出再禁止後ニ於
ケル一定ノ期間トノ輸入平均價格ヲ捉ヘテ
引上ノ根據トスルト云フコトガ、是ガ相當
デナカラウカト私ハ考ヘル、關稅ハ御承知
ノ通リ消費稅デアリマスルカラ、消費稅ナ
ラバ從價何割ト云フガ如ク、卽チ物價主
義市價主義、若クハ生產費主義、若クハ
輸入平均價格主義ニ依フテ、此引上率ヲ決定
スベキモノデアリマス、爲替ガ三割五分下ッ
タカラ、直チニ物價ガ三割五分上ルベキモ
ノデハナイ、ソレハ大藏大臣モ曩ニ此處デ
論ゼラレマシタ所ニ依リマシテモ明カデア
リマスルガ、爲替ガ下ッタト云フノハ原因デ
アリマシテ、物價ガ上ッタト云フコトハ結果
デアッテ、吾々ノ直接必要ナル生活ノ必需
品、其他製造工業品ニ影響ヲ及ボス所ハ爲
替ノ問題デナクシテ、何ボ上ッタカト云フ物
價ノ問題デアルト私ハ考ヘマス、此點カラ
考ヘマシテ、大藏大臣ハ何故ニ爲替低落主
義ヲ-取ラレテ、物價主義ヲ取ラレナカツ
タト云フ點ニ付テ御親切ナル御答辯ヲ戴キ
タク考ヘテ居ル次第デアリマス
ソレカラ當分ノ內ダケガ三割五分從價稅
ヲ引上ゲルト云フコトニナッテ居リマスル
ガ、當分ノ內ト云フコトハ何ヲ意味スルノ
デアルカ、關稅全體ヲ改正シテ次ノ議會ニ
之ヲ提出致ス、ソレ迄ガ當分ノ內ノ御考ヘ
デアルカ、若クハ經濟界ガ安定スル迄ト云
フヤウナ、漠然タル當分ノ內デアルカ、私
ノ考デハ、多分次ノ議會迄ノ間ニ全體ノ關稅
改正ヲ致シマシテ、ソレカラ次ノ通常議會
ニ關稅改正法案ヲ提出致ス迄ノ間ヲ當分
ノ內ト御考ニナッテ居ルデアラウト考ヘマ
スルガ、此當分ノ內ノ意味ハドレダケノ期間
ヲ意味シ、果シテ私ガ想像シテ居ルヤウナ
通リノ當分ノ內デアリマスカ、其點ニ付キ
マシテ御答ヲ煩シタイ、ソレカラ保護論ト
致シマシテ、考ヘテ見マスルト云フト、從
價稅品ハ爲替相場ガ下ッタガ爲ニ、輸入平均
價格ガ上ッテ居ルコトハ是ハ事實デアリマ
ス、從量稅品ニ於キマシテモ、亦爲替相場
ガ下ッタガ爲ニ輸入平均價格ガ上ッテ居ルコ
トハ事實デアリマス、而シテ從價稅品ニ於
テハ二重ノ保護ニナッテ居リマス、例ヘバ輸
入平均價格ガ上ッタト云フコト、モウ一ツハ
稅率ガ仲縮力ガアッテ、稅率何割ト云フコ
トニナッテ居リマスルカラ、稅金額ガ上ッタ
ト云フコトヽ此稅金ノ上リト輸入平均價
格ト二ツデ從價稅品ノ內地對抗產業品ハ保
護サレテ居ルコトニナッテ居リマスルガ、從
量稅品ハ輸入平均價格ガ上ッタダケデアッテ、
稅率ハ釘付デ動カナイ、隨テ稅金モ釘付デ
動カナイ、此點ヲ考ヘテ見マスルト云フト
從量稅品ニ對シマシテ從價稅品ノ方ガ、詳
シイ言葉ヲ以テ言ヘバ從量稅ノ內地對抗產
業品ガ從價稅ノ內地對抗產業品ニ比シテ保
護ガ薄イヤウニ感ゼラレルカラ、三割五分
引上ゲラレルナラバ、保護ノ點カラ考ヘテ
モ、從量稅ノ方ガ保護ガ薄イカラ三割五分
引上ゲテ、之ガ保護ヲ囘復スル、從量稅ト從
價稅トノ平均ヲ取ルト云フ點ニ付キマシテ
ハ一應御尤ノヤウナ議論ニモ考ヘラレル、
併ナガラ從量稅品ニ對シテ一律一體ニ之ヲ
保護スルト云フコトハドウ云フヤウナ缺
點ヲ生ジテ來ルカト申シマスルト云フト
中ニハ今度改正案ニ上リマシタ二十九品ヲ
除ケタナラバ、印刷用ノ紙ダケガ除カレテ
居ル、他ノ點ハ少シモ除カレテ居ナイ印
刷用ノ紙ハ新聞紙用ナル爲ニ除カレタト觀
察政シテ居リマスガ、他ノ人絹デアルトカ、
綿絲デアルトカ、日本ノ輸入品ノ中ニ十分
ニ最早ヤ保護稅ヲ引下グベキ必要ガアッテ、
人絹ノ如キハ此前ノ關稅改正ニ於テ保護稅
ヲ引下ゲテ居ル、綿絲ノ如キモ保護稅ヲ撤
廢セヨ、若クハ引下ゲヨト云フ論ガアル、
我國ノ紡績業ガ保護關稅ニ依ラナクテモ、
最早ヤ十分ニ立チ得ルヤウナ程度ニナッテ
居ル、斯ウ云フヤウナ物マデモ全部一律一
體ニ、三割五分ノ保護稅ヲ受ケルト云フコ
トニナリマスト云フト、洵ニ不公平ナコト
デアリマシテ、私共ノ保護論カラ致シマス
ナラバ、一品々々ニ從量稅ノ內地對抗產業
品ト從價稅ノ內地對抗產業品トヲ斯ノ如
ク較ベテヤルベキモノデアリマシテ從量
稅ト從價稅トノ平均權衡ヲ取ルガ爲ニ、三
割五分一律一體ニ引上ゲテ保護シヨウト云
フ目的ハ私ハ洵ニ不公平ナヤリ方デアル
ト考ヘマス、併シ藏相ノ說明ノ中ニハ、保
護論ト云フコトハ言ウテナイ唯從量稅品ノ
從價稅率ガ、輸入平均價格ガ引上〃タガ爲
ニ、從價稅ト均衡ヲ失テ居ルカラ、權衡ヲ
取ルガ爲ニ、三割五分一律一體ニ引上ゲル
ト云フコトガ御趣旨ノヤウデアリマスケレ
ドモ、此中ニハ保護論モ矢張加味サレテ居
ルノデハナイカト云フコトヲ感ズル次第デ
アリマス
サウシテ輸入防遏、輸出奬勵ト云フコト
ニ付テ考ヘテ見マシテモ亦サウデアリマ
ス輸入防遏ニ致シマシテモ、一律一體ニ
三割五分引上ゲルト云フコトハ、果シテ十
分デアルカ否ヤ、此點ニ付キマシテハ三割
五分一律一體引上論ニ付テノ理由ト致シマ
シテ輸入防遏ト云フコトハ謳テアリマセ
ヌカラ私ハ此處デ論ジマセヌガ、今申上ゲ
マシタ如クニ保護論ト致シマシテモ、餘程
是ハ不公平ナコトニナッテ來マシテ、或物ハ
非常ニ保護ガ厚クナリ、或物ハ非常ニ保護
ガ薄クナル結果ニナッテ來ハセヌカト云フ
コトヲ私共ハ心配スル次第デアリマス、斯
ノ如ク保護論ガ中ニ含マレテ居ルナラバ
一品々々ニ之ヲ調査致シマシテ、保護率ヲ
決メルト云フコトハ正當デナイカト考ヘマ
ス、サウシテ爲替ガ三割五分下ッタカラ、三割
五分ダケ從量稅ヲ引上ゲルト云フコトニナ
リマスナラバ曩ニ田中君ノ質問ニ對スル
高橋大藏大臣ノ答辯ニ依リマスルト云フ
ト、爲替ハ安定ガ出來ナイモノデアルト言
ハレテ居ル、爲替ハ安定ハ決シテ出來ナイ、
皆各國共ニ之ニ困リ拔イテ居ル、サウスル
ナラバ三割五分ノ爲替ガ下ッタカラト云フ
點ヲ捉ヘテ、從量稅品ニ一律一體ニ之ヲ課
ケルト云フコトハ洵ニ矛眉シタ次第デハ
ナイカト私ハ考ヘル、爲替ガ安定セズシテ、
三割五分モ四割五分モ、六割五分モ、マダ
下ルカモ知レナイ、サウシタナラバ從量稅
ト從價稅トノ-ヤハリ高橋藏相ノ御意見
ニ依レバ均衡ヲ失フコトニナル、私共ハ均
衡ヲ失ハヌト思ヒマスルガ、失フコトニナ
リマスルカラ、爲替ガ下レバ下ルダケ、ソ
レダケ從量稅率ヲ引上ゲナケレバイカヌコ
トニナッテ來ルト私ハ考ヘル、之ヲ極端ニ言
ヒマスレバ爲替ガ零ニナレバ從量稅品ノ
引上ト云フモノハ無限大ニ引上ゲラレナケ
レバナラヌヤウナ結果ニモナッテ來ルト考
ヘマス、爲替安定政策ト云フモノガ確立致
サズシテ、玆ニ三割五分ダケ引上ゲルト云
フコトハ、洵ニ以テ私共ニハ諒解ニ苦シム
次第デアリマシテ、政府ハ從量稅ニ對シテ
三割五分ダケ引上ゲルト云フ決心ヲ持クテ
居ルナラバ、爲替相場ノ低落率ヲ根本ト致
シマスルナラバ先ヅ第一ニ爲替ノ安定ニ
對スル方策ヲ講ジテ、而シテ後ニ之ヲ行フ
ベキモノデナイカト私共ハ感ズル次第デア
リマス、併シ爲替ハ安定ガ出來ナイト言ッテ
居ル、安定出來ナイ爲替ヲ捉ヘテ、之ヲ基
礎トシテ一律一體ニ三割五分引上ゲルト云
フコトハ、恰モ無標準ニ、漠然ト幽靈ヲ捉ヘ
ルヤウナヤリ方デアルカト私ハ考ヘマス
此點ニ考ヘマシテモ洵ニ放漫ナヤリ方デア
リマシテ吾々ハ此點ニ付キマシテ十分ノ
御說明ヲ戴カナケレバ承服スルコトガ出來
ナイ次第デアリマス、更ニ關稅收入ト致シ
マシテ一千六百万圓見積ッテアルサウデア
リマス、サウシテ此三割五分引上ニ依ッテ約
九百六十万圓、二十九種ノ稅率ノ引上デ六
百四十万圓ニナッテ居リマス、斯ウ云フヤウ
ナ見當デ、關稅收入ト致シマシテハ、今度
ノ改正ニ依ッテ千六百万圓ダケヲ增收トシ
テ見積ッテ居ルヤウデアリマスルガ、此千六
百万圓ト云フモノハドウ云フヤウナ働キヲ
シテ居ルカト申シマスルナラバ、斯ウ云フ
不景氣ノ時ニ當フテ、千六百万圓ノ增收ヲ期
スルヤ否ヤト云フコトガ、私共ハ疑問トシ
テ居ル一人デアリマス、之ニ對シテ政府ハ
確乎タル所ノ確信ガアルヤ否ヤ、又アルト
致シマシテモ、此內閣ノ財政經濟ノ立方ヲ
見テ見マスルニ、歲入ノ不足ノ補塡ト云フ
モノハ全部公債ト關稅トニ持タシテシマッ
テ居ル、斯ウ云フヤウナ遣方ヲヤッテ居ル、コ
ンナ遣方ハ外國ニ於テハ一ツモアリマセヌ
ノデ、消費稅ノ引上ト、公債ニ依ッテノミ財
政ノ收支ヲ合ハスコトハ是ハ遣リ方ガ無
茶苦茶デナイカト私ハ考ヘル、民政黨內閣
時代ニハ歲入ノ不足ト云フモノハ先ヅ直
接稅ノ增稅ト、ソレカラ關稅ノ引上ト公
債ト、整理節約トノ四ツデヤッテ來マシタ、
是ガ當リ前ノ政策デアリマシテ、之ヲ間違
ヒト言フ方コソ間違ヒデアルト私ハ考ヘル
ノデアリマス、政友會內閣デ、此制度ヲ打
壞シテシマッタ、英吉利ノヤリ方ヲ見マシテ
モ、米國ノヤリ方ヲ見マシテモ、皆第一ニ
整理節約ヲヤッテ、ソレカラ直接稅ノ增稅ヲ
ヤッテ居ル、ソレデ足ラヌ所ヲ公債募集、若
クハ消費稅等ニ依ッテ補充スルト云フコト
ニナッテ居リマス、增稅デモ、直接稅ノ增稅
ヲシナケレバ、財政ノ基礎ヲ鞏固ニシタト
云フ意味ヲナシマセヌ、政友會ノ諸君ハ
之ニ反對サレマシテ、民政黨內閣ノヤッタコ
トヲ打壞サレマシタケレドモ、是ハ根本カ
ラ間違ッテ居ルノデス、山崎君ガ昨日ノ此席
上ニ於キマシテ、政策ハ總選擧ニ於テ決定
シテ居ルト言ハレマシタ(「其通リ」ト呼フ
者アリ)今選擧ヲヤッタナラバ、是ガ反對ニ
民政黨ガ三百三名、政友會ガ百四十七名ニ
ナリマセウ、東京ヲ中心ト致シマシテ、北
ハ北海道カラ南ハ沖繩縣ニ至ルマデ、金輸出
禁止ニ依ル所ノ好景氣ガ現ハレテ來ナカッ
タノデ、政友會ニ瞞サレタト云フ觀念ハ痛
切ニ皆感ジテ居ルヤウナ次第デアリマス
(拍手)私ハ關稅改正論ノ時ニ當ッテ此演說
ヲスル必要ヲ認メマセヌガ山崎君ガ昨日
總選擧ニ於テ政策ハ決定サレテ居ルト言フ
カラ、吾々民政黨ノ一員トシテハ一言此立
場ヲ辯解スルコトガ、八千万同胞ニ對シテ
忠實ナル所以デアルト信ズルノデアリマ
ス、政策ハ決シテ總選擧ニ於テ決定サレテ
ハ居リマセヌ
〔發言スル者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00419320604&spkNum=24
-
025・秋田清
○議長(秋田〓君) 中島君-質問ノ範圍
ヲ出ナイヤウニ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00419320604&spkNum=25
-
026・中島彌團次
○中島彌團次君(續) 一言其點グケヲ辯明
致シテ置キマス、直接稅ニ對スル反對論
アナタ方ガ反對シタカラ勢ヒソコマデ行カ
ネバナラヌヤウニナッタノダ、實ハ政友會ト
モ手ヲ握フテ居リマスカラ、吾々ハ反對論ハ
敢テ述ベタクハナイ、アナタ方ガ彌次ルカ
ラ、ドウシテモ其意義ヲ言ハナケレバナラ
ヌヤウニナッテ來タ、山崎君ガ昨日言ハナケ
レバ、今日私ノ此言葉ハナイノデアリマス
私共ノ考ト致シマシテハ財政ノ辻褄ヲ合
スコトガ第一デアッテ、爲替相場ヲ安定サス
ト云フコトガ其次デナケレバナラヌト考ヘ
ル總テノ政策ガ此處カラ出發シテ行カナ
ケレバ、我國ノ今日ノ不景氣ハ囘復ガ出來
ナイト私ハ考ヘマス、ソコデ千六百万圓モ
ノ消費稅、卽チ期稅ニ對シテ大增稅ヲヤル
ナラバ、何故ニ直接稅ノ方モ增稅ヲヤラヌ
カト云フコトヲ私ハ問ウテ見タイ、是ガ正
論デアリマス、何處ノ國デモ整理節約ヲヤッ
テ直接稅ト間接稅ト、ソレカラ公債ト云
フヤウニ、段々ト其財政ノ基礎ヲ鞏固ニス
ルコトニ付テ、各、執ルベキ順序ヲ持ッテ居
リマス、我國ダケガ公債ト消費稅ノ、殊
關稅ダケニ依ッテ財政ノ辻褄ヲ合スト云フ
コトハ、是ハ洵ニ以テ歐羅巴先進國ノ先例
ニモ反スルコトデアルノミナラズ、財政ノ
根本ノ立方ト致シマシテハ、此點ニ付テハ
政友會ノ諸君ト私共ノ意見ガ異クテ居ルコ
トヲ、私共ハ洵ニ遺憾ニ思フノデアリマス
斯ウ云フヤウナ內閣デアフテコソ、初メテ
增稅ヲ私ハヤリ得ルト考ヘル、政黨内閣ナ
ラバ選擧區ノ御遠慮モアリマスシ世間ノ
人氣ト云フコトモアリマセウ、斯ウ云フヤ
ウナ點カラ考ヘマシタナラバ增稅ヲヤル
ニハ政友會、民政黨ガ援ケタ所ノ擧國一致
內閣、卽チ齋藤大將ノ內閣ガ最モ適當デア
ルト私ハ考ヘル、此點ニ鑑ミマシテ、關稅ト
公債ノミニ財政ノ收支ヲ合スコトニ依ラ
ズシテ、何故ニ增稅計畫ヲ立テナイカ、民
政黨デ立テヽヤック位ナモノデモ宜シイ、ア
レ位ナモノヲドウシテ實行シナイカ、私共
ハ此點ニ付キマシテ洵ニ不思議ニ感ズル次
第デアリマス、英國ニ於テモ、米國ニ於テ
モ、皆私ノ言フ通リ之ヲ實行シテヤッテ居ル
ソレカラ細カイ問題ニ付キマシテハ委員
會ニ於テ申上ゲマスルガ、次ハ銑鐵ノ問題
デアリマス、銑鐵ノ關稅ノ引上率ガ非常ナ
大キナ率ニナッテ居リマシテ百斤十錢ダケ
課カッテ居ルモノガ、今度ハ百斤三十六錢ニ
上ルコトニナッテ居リマス、箆棒ナ上リ方デ
アッテ、洵ニ私共ハ此銑鐵ノ引上問題ニ付テ
ハ驚キマシタ、昭和六年ニハ九十二万噸ダ
ケ內地生產ガアッテ、朝鮮デ十五万噸、滿洲
デ三十四万噸、合計百四十万噸アリマス、
ソレカラ輸入ニ付キマシテハ昭和四年ニ
六十五万噸デアッテ、昭和六年ニハ四十万
順內二十四万噸ガ滿洲カラ來テ、內十五
万噸ガ印度カラ來テ居ル、銑鐵關稅引上ノ
問題ノ根本ハ、此十五万噸ノ印度ノ問題デ
ス、印度ノ「バーン」カラ來ル所ノ銑鐵ニ對
シテ關稅ヲ課ケルト云フコトガ、今度ノ問
題ノ根本デアルト私ハ解釋致シマス、サウ
シテ政府ノ調ニ依リマスルト云フト、需要
ハ昭和四年ニ百八十七万噸アッテ、昭和六年
ニハ百四十一万噸アッテ、生產能力ハ二百十
万噸アルカラ、優ニ日本ノ國內ニ於ケル所
ノ需要ヲ、生產ヲ以テ自給自足ガ出來ルト
言ウテ居ル是レ非常ナ見解ノ誤リデアリ
マシテ、二百十万噸ノ鐵ハ、ソレハ今日ノ熔
鑛爐カラ換算ヲシマシタ鐵ノ供給ノ數量デ
アリマシテ、休ンデ居ル所ガ澤山アリマス、
是モ皆火ヲ入レテシマヘバ、無論二百十万
噸ハ出來マセウ、出來マセウガ、此火ヲ消
シテ居ル所以ガ何處ニアルカト言ッタナラ
バ生產費ガ高クテ價格ガ安イカラ償ハナ
イ、儲ケガナイカラ火ヲ消シテシマウテ居
ル、生產能力二百十万噸ト計算スルコトガ
根本ノ誤リデアルト私ハ考ヘル、隨テ自給
自足ノ能力ガ有ルカ無イカト云フコトガ又
問題ニナッテ來マス、ソコデ十五万噸ノ印度
カラ來テ居ル鐵ニ對シテ課稅シテ、非常ノ
重率ヲ課スルコトヽナッテ居リマスルガ、政
府關稅改正ノ引上理由ヲ見マスルト云フ
ト市價ガ下落シテ居ル、故ニ製鐵事業者
ガ採算ガ不良ダト云フノガ一ツノ原因、外
國銑鐵ニ壓迫サレルト云フコトガ其二ノ原
因、銑鐵ハ基礎工業ナルガ故ニ、之ヲ放任
スル時ニ於テハ潰滅スル、故ニ開稅ヲ引上
ゲテ外國品ノ輸入ヲ防遏スルト云ウテ居
ル、成程銑鐵ノ事業ハ基礎工業ニ違ヒアリ
マセヌ、日本ニ於テモ是ハ關稅ヲ改正シテ
引上ゲテ、之ヲ保護スルカセヌカ、前々內
閣ニ於キマシテモ、幾度カ此問題ハ〓究シ
タ重大ナル間題デアリマス、所ガ今日ニ於
キマシテハ結局關稅ヲ改正ヲセズシテ、
噸一圓六十七錢ノ稅金ヲ課ケ、更ニ四圓餘
リノ補助金ヲ之ニ與ヘマシテ、銑鐵製造業
者ヲ保護シテ居ルノデアリマス、ソレバカ
リデアリマセズ、關稅改正ノ一噸一圓六十
七錢ト補助金ノ四圓バカリデハナクマダ
所得稅モ許シテヤレバ營業收益稅モ取ラ
ヌ、更ニ地方稅ノ附加稅モ免ズルト云フコ
トニナリ其他銑鐵製造ノ機械器具等ニ對ス
ル輸入稅ニ對シテモ免稅シテ居ル狀態デ
アッテ、日本ノ國ノ產業ニ於キマシテ、銑鐵
業者程保護サレタ產業ハ殆ドナイト言フテ
宜イ位デアリマス、是ダケノ保護ヲ受ケテ
居リナガラ、尙且ツ是ガ立行カヌ理由ハ何
處ニアルカ、今度ノ關稅改正ノ如クニ、噸
ガ十圓二十二錢ニ相當スルヤウナ關稅改正
ヲセニヤナラヌ理由ガ何處ニアルカト云フ
コトヲ、私ハ御尋シテ見タイ
此點ニ付キマシテハ中島商工大臣ニ對シ
テ御答辯ヲ煩ハシタイノデアリマスルガ、
政府デ調ベテ居ル、所ガ採算ガ取レナイト
云フ、關稅改正ノ諮問案ノ說明ニ依リマシ
テモ、銑鐵ニ付テハ今日下落シテ銑鐵業者
ガ採算ガ取レナイト云フコトヲ言"テ居ル
算盤ガ引合ハナイト云フコトヲ言ッテ居ル、
其算盤ノ引合ハナイ理由ハ何處ニアルカト
申シマスルト云フト、是ハ少シ細カクナッテ
參リマスカラ、委員會ニ於テ詳シイコトハ
論ジマスルガ、問題ハ要スルニ生產費ノ問題
デアリマス、今日政府ノ昭和五年二月二日ニ
於テ調ベラレマシタ生產費ハドレ位ニナッ
テ居ルカト申上ゲマスルト云フト、此生產
費ト云フモノガ、篦棒ニ私共ノ調査シマシ
タ所ノ生產費ヨリ高クナッテ居ル、何故ニ髙
クナッテ居シタカト申シマスルナラバ、色々ナ
點ガ此中ニ含マレテ居ルヤウニ私共ハ考ヘ
マスルガ、政府ノ調ニ依リマスルト云フ
ト、昭和五年二月二日ノ調ニハ四十六圓
三十六錢トナッテ居ルノデス、四十六圓三十
六錢トナッテ居リマシテ、是ハ鐵鑛石ト「コー
クス」トマンガン」、石灰石、勞力費、雜費、利
益及償却、此合計ガ四十六圓三十六錢トナツ
テ居リマス、此四十六圓三十六錢ト云フモノガ、
昭和五年ノ生產費デアリマスルカラ、ソレ
カラ物價ガ一割三分下ッテ居リマスルカラ、
大體物價ノ下リ工合ヲ見テ、政府ノ調ヲ想
像シテ見マスルト云フト六圓三錢ヲ引ケ
バ卽チ一割三分ヲ引キマスルト云フト
四十圓三十三錢ト云フ生產費ガ此處ニ出來
マス、此四十圓三十三錢ト云フ生產費ガ、
恐ラク政府ノ今日ノ生產費デアラウト考ヘ
ル、少シノ違ヒハアリマセウガ、大體物價
ノ一割何分ノ値下リヲ見マシテ換算シテ見
マスルト云フト、四十圓ナンボニナッテ來
ル、此中ニ雜費ト云フモノガ-大正十四
年九月カラ二年、三年、四年、五年ト此雜
費ガ十二圓、十圓、九圓七十錢、九圓五十
錢ト云フ如クニ、雜費ト云フテ生產費ノ中
ニアル大抵鐵ノ生產費ハ鑛石デアルト
カ、「コークス」デアルトカ、「マンガン」デ
アルトカ、石灰石トカ、勞力トカ、營業費
ト云フモノガ生產費ノ根本ヲ作成スルモノ
デアリマス、ケレドモ政府ノ製作シタ中ニ
此雜費ト云フヤツガ入ツテ居ル、是ガ私ハ非
常ニ怪シイト考ヘル、此雜費ガ何故怪シイ
カト考ヘテ見マスルト政府ガ今日マデ引
上ゲントシテ居ル所ノ關稅率カラ換算シテ
見マスルト云フト、百斤三十六錢ニ引上ゲ
マスカラ、內地ノ生產費ト印度銑鐵ノ輸入
價格ヨリ見テ、噸十圓二十二錢ノ保護ヲ要
スルト政府ハ說明サレテ居ル、奬勵金ガ此
中デ四圓十二錢ダケアルカラ、之ヲ差引シ
マスルト云フト、噸ガ六圓卽チ百斤三十六
錢トスルノヲ適當ト認ムルト政府ガ說明サ
レテ居リマス、所ガ此中ニ於キマシテ十
圓二十二錢政府ガ引上ゲナケレバ、此銑鐵
事業ハ保護サレナイト云フコトヲ唱ヘラレ
テ居リマスルガ、此十圓二十二錢ノ中カ
ラ今中上ゲマシタヤウニ、政府カラ與ヘ
ラレテ居ル奬勵金四圓十二錢ヲ引ケバ六圓
十錢トナリマス、六圓十錢ヲ基礎トシテ、
百斤三十六錢ト云フモノヽ關稅ヲ決メタモ
ノデアリマスルガ是カラ又現行ノ關稅ノ
噸一圓六十七錢ヲ引キマスルト云フト、後
ニ殘ルモノガ四圓三十三錢トナリマス、此
四圓三十三錢ガ、先刻申上ゲマシタ九圓五
十錢ノ雜費ニ入ヶテ居ルノデナカラウカ、
何故カト申スナラバ、鶴見ニ於ケル淺野ノ
製鐵會社ヲ除キマシテ、五ツノ製鐵會社ヲ
合計致シマスルト云フト、其資本金ガ一億
万圓デアッテ、社債及借入金ガ千二百五十
万圓、支拂手形ガ約二千五十万圓、卽チ資
本金一億万圓ニ對シテ借錢ガ三千三百万圓
デアッテ、年ニ七朱ノ利息ト見マシタナラ
バ、二百三十万圓ガ借錢ニ相當シテ居リマ
ス、昭和四年ノ五製鐵會社ノ銑鐵生產量ガ
五十七万三千噸デアリマスカラ、之ヲ割ッテ
見マスナラバ、丁度製鐵會社ガ一噸ニ付キ
マシテ、四圓何ガシト云フ借錢ヲシテ居ル
コトニナッテ來ル、今申上ゲマシタヤウナ工
合ニ、四圓何ガシト云フ借錢ヲ此關稅改正
ニ於テ丁度保護スルヤウナ結果ニナッテ來
マス、是ハ洵ニ重大ナ問題デアリマシテ、
由來我國ノ製鐵會社ノ釜石、兼二浦、輪西、
是等ノ製鐵會社ガ、大體ドウ云フヤウナ狀
況デ居ルカト申シマスニ、鑛石、「コーク
ス」、石炭トカ、運賃其他ニ付キマシテ細カ
ク申上ゲマシタナラバ果テガアリマセヌカ
ラ、此處デハ節約致シマスルガ(笑聲)釜
石、鶴見、輪西、兼二浦及本溪湖、鞍山等
ノ此六製鐵會社ニ付キマシテ、淺野ノヤッ
テ居ル鶴見ヲ除イタ外全部ハ、噸ガ四百圓
モスルヤウナ時ノ設備デアッタノデアリマ
ス、卽チ放漫ナル經營ヲヤッタガ爲ニ、今申
シマシタ今日噸四圓ノ借金ノ利息ヲ負擔シ
テ居ル、此放漫ナル經營振リ、噸四圓モノ
借金ノ利息ヲ負擔シテ居ル此會社ヲ、關稅
ヲ高クシテ保護スルト云フコトハ是ハ私
共ハ餘程考ヘナケレバナラヌ重大問題デナ
イカト考ヘル(拍手)政友會ノ中デモ手ヲ叩
イテ吳レル人モアリマス、此五會社ハ噸四
百圓ニ餘ル所ノ銑鐵ノ相場ノ時ニ建設ヲ致
シタモノデアリマスルカラ、今日ニナッテハ
其負債ノ毒ヲ孕ンデ居リマス、而シテ輪西
ハ鑛物ハ自分ノ所ト、外國カラ來テ居ル
トカ、石炭ハ自分デヤッテ居ルトカ、中央ヘ
遠イトカ、或ハ熔鑛爐ガ一番大キイモノ
ガ百五十噸デアルトカ、兼二浦ニ付テ
モ鑛石、石炭ノ中央市場ニ遠イトカ
近イトカ、或ハ熔鑛爐ノ設備ガ不完全デア
ルトカ、斯ウ云フヤウナ點ニ付キマシテ、
釜石モ亦然リデアリマスガ、日本ノ國ノ五
製鐵會社乃至六製鐵會社ニ付キマシテハ
頗ル產業ガ合理化サレテ居リマセヌデ、噸四
百圓時代ノ借錢ヲ見込ンデ居ルバカリデハ
ナイ、鑛石モ外國カラ來テ居レバ、石炭モ
亦餘所カラ取ッテ居ルト云フヤウナ所ガ澤
山アリマシテ、銑鐵製造ノ獨立ガ、日本ニ
於テ出來ルカ出來ナイカト云フ點ニ付キマ
シテハ各製鐵業、製鐵會社ソレ自身ヲ調
査シタ上デナケレバ決定ガ出來ルモノデハ
ナイ、政府ノ方ニ於キマシテモ亦然リ、此
問題ニ付キマシテハ、關稅改正委員會ノ議
ニ上ス前ニ、政府モ迷ウテ居ラレタ、政友會
內閣ノ時ニ於テモ迷ウテ居ラレテ、ドウス
ルカ、斯ウスルカ、大藏省ニ內容ヲ聞イテ
見マスルニ、モウ一遍當業者カラ「ヒヤーリ
ング」シタ後ニ於テヤラウヂヤナイカト云
フ意見モアッタ、ソレガ突如トシテ玆ニ現
レテ來マシテ、百斤ニ付テ三十六錢モノ稅
ヲ課ケル、十錢ノ物ニ三倍六分、卽チ三十
六錢ノ稅ヲ課ケルト云フヤウナコトニナツ
タト云フコトハ、ドウモ私共解釋ニ苦ミマ
ス、或ル一部資本家ノ手ガ之ニ廻ッテ、政府
ハ餘儀ナク此案ヲ出サネバナラヌヤウニ
ナッタノデハナイカト云フ點ニ付キマシテ、
私共ハ頗ル疑問ニ感ズル、是ハ重大ナル問
題デアリマシテ、此點ニ付キマシテハ委
員會ニ於キマシテモ私ハ十分質シタク考ヘ
テ居リマスガ、鐵製品ノ如キモノガ非常ニ
國民生活ノ必需品デアリ、殊ニ「スチール」
其他ニモ影響ヲ及ボス、鍋ヤ釜ニ付キマシ
テモ、重大ナル影響ヲ及ボスコトニナッテ居
ルノデアリマス、此問題ヲ輕卒不謹愼ニモ、
〓々ノ間ニ事ヲ決シテ、此議會ニ出サナケ
レバナラヌヤウニナッタト云フコトニ付キ
マシテハ、私共ハ非常ニ此點ニ付キマシテ、
國民ニ對シテ、ドウシテモ此不思議ヲ質シ
テ置カナケレバイカヌト云フノデアル若
シ一部資本家ノ壓迫ノ下ニ於テ是ガ出來タ
トスルナラバ、是ハ由々シキ大問題デアリ
マシテ、我國ニ於キマスル所ノ國民ノ思想
問題ニ付テモ、社會問題ニ付テモ、非常ニ
是ハ重大ナル影嚮ヲ及ボスベキ問題デハナ
イカト云フコトヲ私ハ考ヘマス、國民自身
ト致シマシテ、私共國民ノ代表ト致シマシ
テ、此點ニ付キマシテ十分政府ニ質疑ヲ致
サナケレバナラヌ所ガアル、殊ニ是ガ關稅
引上ノ改正ニ付キマシテハ餘程此銑鐵ニ
付キマシテ愼重ナル態度ヲ執ラナケレバナ
ラヌト思フノデアリマス、此持ヲテ居ル借錢
ト云フモノヲ、政府ガ肩替リシテ、之ヲ辨
償シテ、交付公債デ肩替リシテヤルカ、或
ハ然ラズンバ、資本金ヲ切下ゲテ、サウシ
テ立派ナ會社ニ整理シタ後ニ於テ生產費ヲ
出シテ來テ、外鐵ノ輸入沖著價格ト比較シ
テ關稅改正ヲ決メルト云フノガ、是ガ古
今ヲ通ジテ誤ラザル正論デアルト私ハ考ヘ
ル次第デアリマス(拍手)斯ウ云フヤウニ觀
察シテ見マスルト云フト、鐵關稅改正、其
引上ト云フモノニ付キマシテハ、私共ハ承
服スルニ洵ニ苦ム點ガ澤山アルノデアリマ
ス、加之生產費ト致シマシテ、今申シマシ
タ如クニ、政府ガ今調ベタ點カラ觀察致シ
マシテモ四十圓三十三錢トナリマス、此生
產費ニ對シマシテ、假令之ヲ正シイモノトシ
テ考ヘテ御話甲上ゲマスルト云フト、大正七
年卽チ本年ノ一月カラ四月迄ノ外國銑鐵ノ
輸入平均價格ハ、是亦大藏省ノ發表ニ依レ
バ二十六圓四錢ニナッテ居リマス、之ニ奬勵
金ヲ四圓餘ヲ加ヘテ、關稅ノ噸一圓六十七
錢ヲ加ヘマシタナラバ合計三十一圓七十
一錢トナリマス、之ニ陸揚諸費二圓ヲ加へ
マスナラバ、三十三圓六十九錢トナッテ參リ
マシテ、先刻申シマシタ此中デヲカシナ非
合理化的ナ雜費トシテ、借錢ノ噸四圓デア
ルトカ、或ハ負債ノ償却ヲ見積ッテアリマス
ル所ノ九圓五十錢何ガシト云フモノヲ、政
府ノ調ノ生產費カラ差引キマシタナラバ、
今日ノ狀態ニ於キマシテモ、亦決シテ外國
ノ銑鐵ト云フモノハ安クハナッテ居ナイ、內
地ノ生產費ガ外國ノ銑鐵ノ生產費ノ沖著價
格ニ對シマシテ安クハナッテ居ナイ、殊ニ釜
石鑛山ニ付テ之ヲ調査致シマシタ所ガ、此
釜石ノ方ハ、最モ非合理化的ノ所デアル、
此非合理化的ノ所デスラ、私共ノ調査ニ依
リマスト云フト、生產費ノ合計ガ二十九圓
七十四錢トナッテ居リマス、是ガ外鐵ノ輸入
平均價格ト、今申シマシタ現行ノ一圓六十
七錢ノ關稅ト、サウシテ四圓ノ奬勵金ヲ加
ヘタモノト較ベテ見マスナラバ、其方ヨリ
ズット安クナッテ居ル、釜石鑛山ガ二十九圓
七十四錢デアッテ、外鐵ノ今言フヤウナモノ
ヲ計算致シマシタ其合計ガ三十三圓六十九
錢ニナッテ居リマス、是カラ考ヘテ見マシタ
ナラバ政府ノ生產費ノ調ト云フモノハ餘
程高ク見積ヲテ居リマシテ、此釜石鑛山ノ方
ノ生產費ノ調ト云フモノハ負債ノ〓四圓
ト云フモノヲ除ケテ考ヘテ居ル、又其負債
ノ償却モ除ケテ、裸ニシテ考ヘタ問題デア
リマシテ、生產費ヲ裸デ議論シタ問題デア
リマス、毒ヲ含メタ問題デアリマセヌ、卽
チ鑛石ガ銑鐵一噸當リ十圓二十二錢ニ當リ、
「コークス」ガ十圓七十八錢ニ當リ、石灰石
ガ七十四錢ニ當リ、其他ガ三十五錢デ、作
業費、動力費ガ四圓八十錢デアッテ、機械器
具、熔鑛爐修繕費及償却費ガ一圓八十錢デ
アッテ、營業費ガ一圓、是デ合計二十九圓七
十錢トナッテ、ソレカラ是ガ隅田川へ持ッテ
來マスト運賃ガ一圓二十錢、合計三十一圓
九十四錢ニナリマス、斯ウ云フヤウニ日本
ノ國ニ於ケル非合理化的ナ、最モ合理化サ
レテ居ナイ銑鐵製造所ノ釜石ニ於ケル生產
費サヘモ外鐵ニ較ベマシテ、外鐵へ現行ノ
關稅ヲ課ケテ、サウシテ補助金ト云フモノ
ヲ是ヘ又持ッテ行ッテ較べテ見マスト、此方
ガ安イト云フコトニナッテ來レバ、何ヲ苦ン
デ百斤ガ三十六錢ニ引上ゲナケレバナラヌ
理由ガアルカ、私共ハ此點ニ付キマシテ中
島商工大臣ニ御親切ナル御答辯ヲ希ヒ、此
問題ニ付キマシテハ國民ト共ニ十分ニ御聞
キシタイ點デアルト云フコトヲ玆ニ加ヘテ
置キマス、是ハ重大ナ問題デアリマシテ、
一步此問題ヲ誤ッタナラバ、我國ノ基礎ノ產
業ヲ活スカ活サヌカノ問題デアル、同時ニ
又一步之ヲ誤クタナラバ、所謂社會問題ヲ起
スカ起サヌカノ重大問題デアル、齋藤内
閣成立ノ趣旨ニモ影響シテ來ル問題デアル
ト云フコトヲ考ヘル次第デアリマス(拍手)
ソレカラモウ一點鐵ノ問題ニ付テ聞キタ
イノハ印度ノ「バーン」ノ鐵ニ百斤三十六錢
モノ關稅ヲ課ケマスト云フト、將來日印貿
易ヲ阻害スル所ノ虞ナキヤ否ヤ、此前モソ
レヲ心配致シマシテ、綿絲綿布ニ對シテ關稅
ヲ課ケラレタナラバ困ルト云フ問題デ、片
岡大藏大臣ノ時ニ噸四圓ノ奬勵金ヲ與ヘ
テ此問題ヲ解決シタノデアル、所ガ其後ニ
於テ印度ハ綿絲綿布ニ付テ關稅ヲ引上ゲタ
カラ、報復關稅ノ虞ハ無イノデアリマスガ、
今日ノ印度ノ社會狀態ヲ見マスノニ、外國
品ニ對シテ排斥ヲシテ居ル狀態デアリマシ
テ印度人ノ日本人ニ對スル考ト云フモノ
ハ前トハ非常ニ違ッテ來テ居ル、若シ茲ニ
一步誤クテ、印度ノ「バーン」ノ銑鐵ニ對シ
テ關稅ヲ課ケテ高クスルヤウナコトニナソ
テ來マスルナラバ印度人ノ心理ヲ刺戟致
シマシテ、更ニ又此綿絲綿布ヲ引上ゲル虞
ハナイカ、殊ニ人絹ニ對シテ、更ニ又報復關
稅ヲ喰フ虞ハナイカ、殊ニ日印貿易ニ對シテ
重大ナル影響ガアル問題デアリマスカラ、
此點モ亦政府ハドウ云フ風ニ御考ニナッテ
居ルカ
ソレカラ汽船會社ト致シマシテモ、此「バー
ン」ノ銑鐵ガ安イ原因ト云フモノハ郵船
ヤ大阪商船ガ、歸リ荷トシテ積ンデ來ルカ
ラ安イノデアリマス、此歸リ荷ト云フモノ
ガナクナッテシマヘバ、汽船會社モ郵船會社
モ困リマス、隨テ日印貿易ノ將來ニ暗影ヲ
投ズル、此問題ニ付テ十分御考察ト御〓
究ヲ戴イタカ否ヤ、サウシテ關稅ハ更ニ斯
ウ云フ結果ニナッテ來マス、滿洲ノ鐵ニ付キ
マシテ本溪湖及鞍山站ニモ關稅ガ課ルコト
ニナッテ居リマス、從來ハ昭和五年ニ於キマ
シテ本溪湖及鞍山站ニ付テハ百三十九万四
千圓ト云フモノヲ、關東廳ヲ通ジテ補助金
ヲヤッテ居フテ、內地ト同ジヤウナ取扱ヲヤッ
テ居リマスガ、今度ハ關稅ヲ百斥ニ付テ十
錢ヲ三十六錢ニ引上ゲルナラバ之ニ對シ
テモ亦補助金ヲ增加シナケレバイカヌガ、
其增加シナケレバナラヌ所ノ豫算ヲ計上シ
テアルヤ否ヤ
斯ノ如ク致シマシテ今日銑鐵ノ關稅ヲ引
上ゲタ結果、印度カラ來ナクナッタト致シ
テ、結果ニ於テ將來ハドウナルカト云フコ
トヲ考ヘテ見マスルト、今コソ內地銑鐵製
造業者ハ滿洲ノ鞍山ト本溪湖ト手ヲ繫イデ、
印度ノ「バーン」鐵ニ當ッテ居リマスガ、將來
印度鐵ガ來ナクナッタ時ニハ、今度ハ滿洲鐵
ト日本鐵ガ內地ニ於ケル所ノ爭ヒノ問題ニ
ナッテ來マス
斯ウ考ヘテ見マスルト、荒木陸軍大臣ニ
私ハ御尋ヲ致シタイノデアリマスガ、滿洲
問題ハ御承知ノ通リ是ハ我國々民ノ殆ド生
命線ノ問題デアリマシテ、一億四千五百万
圓モノ大金ヲ使クテ、幾多ノ生靈ヲ犧牲ニシ
テ〓ッタ問題デアリマス、而シテ滿洲國ガ今
度出來テ、此滿洲國ヲ承認致シテ、之ヲ將
來立派ナモノニ育テヽヤラナケレバナラヌ
ト云フコトニナッテ來マス、サウナッテ來タ
ニモ拘ラズ、現內閣ノ提出セル關稅案ト云
フモノハ悉ク滿洲カラ來ル物ニ對シテ增
率スルコトニナッテ居リマス、鐵ガ然リデア
リマス、是ハ豫算デ補助スレバ別問題デア
リマスガ、而シテ高粱ノ如キ、玉蜀黍ノ如
キ、木材ノ如キ-木材ハ從量三割五分ノ
稅率ガ課ルコトニナリマス、斯ノ如ク滿洲
カラ來ル物ニ對シテハ一律一體ニ從量稅
率ノ三割五分引上ゲカラ除クト云フコトガ、
是ガ日本ノ滿洲國策ニ對スル方針デハナイ
カト私ハ考ヘル、一律一體ニ從量稅率ヲ三
割五分ニ引上ゲテシマッテ置イテ、サウシテ
滿洲カラ來ルモノモ此引上ノ中ニ交ッテ居
ル殊ニ鐵モ此中ニ重大ナル稅率ヲ課セラ
レルコトニナリ、高粱モ課セラレルコトニ
ナリ、サウシテ玉蜀黍モ課セラレルコトニ
ナリマス、滿洲國ニ對シテハ是ハ日本ガ抱
イテ行ッテ、日本ガ輸入國トナッテヤッテ、初メ
テ滿洲經濟ガ立行クベキモノデハナイカト
私ハ考ヘル、此點ニ付キマシテ陸軍大臣ハ
如何ニ御考ヘナサルカ、殊ニ陸軍大臣ハ滿
洲問題ニ付キマシテハ殆ド自分ノ生命ヲ
賭シテマデモ此問題ニ付キマシテ努力サレ
テ居ルヤウニ思ハレマス、ソレナラバ滿洲
問題ニ對シテハ日本ガ輸入國トナッテヤラ
ナケレバナラヌト私ハ考ヘル、殊ニ三井及
ビ三菱ニ於キマシテハ、二千万圓モノ大金
ヲ投ジマシテ、滿洲國ノ援助ニ當ッテ居ル、
滿洲カラ來ル物ニ悉ク關稅ヲ引上ゲテ課ス
ルニ至リマシテハ我ガ滿洲對策、國策果
シテ那邊ニアリヤト云フコトヲ吾々ハ疑ハ
ザルヲ得ナイ、此問題ニ付キマシテ陸軍大
臣ノ御考ヲ私ハ御問シタイノデアリマス、
(此時発言スル者アリ)サウ云フヤウナ問題
デハナイノデス、眞面目ニ私ガ述ベルカラ
眞面目ニ聽イテ下サイ、私ハ國家ヲ憂フル
餘リ眞面目ニ論ジテ居ル贊成スベキモノ
ハ贊成シ、反對スベキモノハ反對シマスガ、
吾々ハ現内閣ノ與黨デアル限リ、反對ハ致
シマセヌ、併ナガラ問フベキ所ハ質シ、聞
クベキ所ハ聞カナケレバ、吾々國民ノ選出
者トシテノ責任ガ濟マヌ次第デアルト云フ
コトヲ御記憶ヲシテ下サイ、政友會ノ諸君
ニ對シマシテモ、御迷惑デアリマセウケレ
ドモ、モウ暫クドウカ御聽置キヲ下サイ、
デ斯ノ如ク考ヘテ見マスルト云フト、餘
程ノ重大ナ問題ガ此關稅改正ノ內面ニ含
マッテ居リマス、此點ニ付テ陸軍大臣ハドウ
御考ニナルカト云フコトヲ私ハ御伺ヲシタ
イ(「ソンナコトハ拓務大臣ニ聞ケ」ト云フ
者アリ)ソレハ拓務大臣デモ結構デアリマ
ス、結構デアリマスガ、陸軍大臣ニ問フタ
所以ハ、陸軍大臣ガ滿洲問題ニ付テ力ヲ入
レラレテ居ルカラ中シタノデアル、陸軍大
臣ガ滿洲ニ對スル其苦衷ヲ私共ハ察シ奮闘
努力滿洲問題ニ對シテ敢然トシテ立ッテヤ
ラレテ居ル其精神ニ感心スレバコソ、私ガ
御問申シタノデアリマス
サウシテ其次ノ問題ハ「バーン」ノ鐵、印
度ノ「バーン」ノ鐵ニ對シテハ日本人モ投資
ヲシテ居リマス、政府ニ於キマシテハ南洋ノ
木材ノ「ラワン」ニ付キマシテハ今囘ノ關
稅改正ノ中カラ省キマシテ-農林省カラ
大藏省ヘ出シマシテ、大藏省カラ關稅改正
委員會ニ提出ニナリマシタケレドモ、關稅
改正委員會デハ、「ラワン」卽チ南洋材ノコ
トデス、南洋材ニ付キマシテハ之ヲ小委
員會ニ委スト云フコトニナッテ止メテシマッ
テ、今度ノ改正案ニハ出テ居ナカッタ「ラ
ワン」ニ付テモ相當無稅ノヤツヲ二割五分デ
アッタカ忘レマシタガ、引上ゲルコトニナ
リ、六分デアッタヤツモ相當引上ゲルコトニ
ナッテ居リマスガ、此「ラワン」ニ對シテハ、
拓務省ノ御意見ニ依ルト云フト、南洋ニ於
ケル所ノ日本人經營ノ企業デアルト稱シ
テ「ラワン」ハ無稅デアリマス、大手ヲ振ッテ
日本ノ關稅ノ關門ヲ通過シテ來ルノデアリ
マ·「バーン」ノ銑鐵モ亦日本人ガ經營シ
テ居ルニ、何故ニ此錢ニ付テ辛ク引上ゲル
カ是ハ確ニ拓殖政策ト致シマシテモ、印
度ニ對スル所ノ鐵ヲ引上ゲテ、南洋ノ「ラワ
ン」ハ無稅ニ置イテ置クト云フコトハ矛盾
デナイカト私ハ考ヘル、此點ニ付キマシテ、
餘程是ハ〓究スベキ問題デアル、政府ノ原
案デハ引上ゲル、南洋ノ「ラワン」モ引上ゲ
ル考デアッタラシイケレドモ、之ガ委員會デ
潰レテシマッタ、サウスレバ印度ノ「バーン」
トノ關係上、同ジク日本人ノ經營上ニ付キ
マシテモ、是ハ同ジヤウナ關係ニ立ッテ居
ルモノヲ、一方ハ重ンジ一方ハ虐待スル
ト云フコトハ矛盾デハナイカ、是ハ永井
拓務大臣ニ御答辯ヲ煩シマス、サウシテ鐵
ノ問題ニ付キマシテモマダ質問シタイコト
ガ澤山アリマスケレドモ、大體是ダケニ致
シマシテ、其次ニ於キマシテ木材カラ小
麥ニ付テ御伺シタク考ヘルノデアリマス
木材問題ニ付キマシテハ細カイコトハ時
間モ經ッテ參リマシタカラ、私ハ玆ニ簡單ニ
是カラ御話申上ゲマス後ハ小麥ト木材ダケ
簡單ニ御質問ヲ申上ゲマシテ止メタイト考
ヘマスカラ、モウ暫ク御靜聽ヲ煩シタイ、
木材ノ需要ハ六千六百万石デアリマス、昭
和五年ノ農林統計デ御分リニナッテ居リマ
スガ、內地ノ生產高ガ五千三百万石デアッ
テ、其不足ガ千二百万石、日本デハ木材ガ
千二百万石ガ足ラナイ、是ハ明カナ事實デ
アッテ、此足ラナイ木材ガ何處カラ來テ居ル
カト言ッタナラバ、米國カラ五百八十万石
加奈陀カラ百五十万石、沿海州カラ百八十
万石、滿洲カラ五十万石、南洋カラ四十万
石其他カラ澤山アリマスルガ、之ヲ除ケ
マシテ、大體合計シテ千五十万石位ノ輸入
ハ今日アルノデアリマス、サウシテ內地需
要ノ不足ガ千二三百万石アッテ、外材ヲ入レ
ナケレバ日本ノ今日ノ建築ノ需要ヲ充スコ
トガ出來ナイコトハ明カデアル、所ガ今日
ニ於キマシテ政府ガ米材ニ付テ非常ナ高率
ノ引上ヲナシテ居リマス、殊ニ「ドグラスフ
ァー」ニ付キマシテ、米松ニ付テ引上ヲ爲シ
テ居リマスガ、改正法ヲ窺ッテ見マスルト
云フト、米檜、米杉、米栂ニ比シテ米松ガ
低率ナルガ爲ニ、澤山入ッテ來ルカラ、之ヲ
止メナケレバナラヌト云フノガ第一ノ理
由、第二ノ理由ハ此儘ニシテ置ケバ般
木材關稅率ノ制定ノ效果ヲ牧ムル能ハザル
ノミナラズ、各種林政上ノ施設ハ所期ノ目
的ヲ達スルコトヲ得ナイ、、卽チ本邦林業ノ方
面及農山村住民ノ救濟ノ爲ニ、米國カラ入ツ
テ來ル米松ヲ引上ゲルト、斯ウ言ハレテ居
リマス、(「其通リ」ト呼フ者アリ)所ガ其通
リデナイ理由ヲ澤山私ハ御話申上ゲテ見セ
ル、細カイコトバ申シマセヌガ、今日ニ於
ケル所ノ日本ノ木材界ノ價格ヲ紊シ、之ヲ
低落セシメテ居ル原因ガ二ツアリマス、其
一ツハ不景氣ト云フコトデ、是ハ明カナコ
トデアリマス、其次ハ北洋材卽チ樺太材デ
アリマス、樺太材ガ今日ノ木材界ノ大勢ヲ
動カシ、農山村民ガ困ラセラレテ居ルノハ
樺太材ノ爲デアリマス(「ノー〓〓」)ノー
ノート云フ御方ニ對シテハ、私ガ玆ニ一ツノ
數字ヲ擧ゲテ皆樣ニ御話申上ゲレバ分ル、
何故ニ樺太材ガ······樺太材程滑稽ナモノハ
アリマセヌ、デ樺太廳ノ豫算ヲ見マシテモ
立木ガ千百万石、丸太ノ六百万石アレバ一
年ノ樺太ノ島內需要ハ十分デアル、所ガ是
ガ內地ニドレ位移入サレテ居ルカト申シマ
スルト、九百万石ガ內地ニ入ッテ來テ居リマ
ス、樺太廳ノ豫算ヲ見マスルト、是ハ決算
デアリマスルガ、森林收入累計表ニ依リマ
スルト、昭和四年ニ於キマシテ千二百万石
ダケノ立木ヲ伐ルコトヲ許スコトニナッテ
居ル、所ガ實際之ヲ步留リカラ換算致シマ
シテ、丸太ニ直セバドレ位出テ來ルカト申
シマスルト、約六十「パーセント」ト致シマ
シテ七百二十万石ホカ出テ來ナイ、昭和四
年ニハ七百二十万石ホカ伐レナイ、是ガ八
百万石トシテモ宜シウゴザイマスガヽ七百
二十万石カラ八百万石ダケ出タコトニナツ
テ居ル實際日本ニ來テ居ルノガドウカト
云ッタナラバ、是ガ昭和五年ノ統計ニナッテ
八千三十万五千石ニナッテ居リマス、斯ウシ
テ見マスト島內消費ハ零ニナッテ洵ニ可笑
シイ、島內消費デスラ六七百万石アッテ、サ
ウシテ七百万石ダケシカ伐ラサナイデ、內
地ニ九百万石出テ居ルト云フコトニナリマ
ス、島內消費ハ零デ全部內地ニ出テ來テ居
ルト云フコトニナッテ、コンナ可笑シイ事ハ
アリマセヌ、是カラ考ヘテ見マスト樺太
木材ノ步留ハ六十「パーセント」ト言ハレテ
居リマスケレドモ、當業者カラ聞ケバ百「パー
セント」若クハ二百「パーセント」ト言ハ
レルヤウナ評判デアル、是ハ何故カト言ヘ
バ、樺太ノ豫算ガ大體間違,テ居ル、樺太ノ
豫算ガ大體一年ニ於テハ二千二百十七万圓
ダケノ昭和七年度ノ豫算ニナッテ居リマス
ガ、此豫算ノ中デ三割六分八煙ハ森林收入
デアル、租稅ヲ課ケルニモ樺太內ニハタッタ
三十人ホカ居リマセヌ、所得稅ヲ取シテ見タ
所ガ、營業收益稅ヲ取ッテ見テモ知レタモノ
デアル、樺太ヲ養シテ行クノハ森林收入ノ
此八百十万圓、卽チ三割六分八厘、約歲
入ノ四割ニ當ルモノ半バニ近イモノガ
森林收入、樺太ノ役人ハ商賣人ニ對シテ三
拜九拜頭ヲ下ゲテ木材ヲ買テテフテ居ル
隨テドン〓〓濫伐シテ買ッテ貰ヒ、伐ッテ値
段ガ下ル、又伐ルト云フヤウナ狀態デヤッ
テ居ルモノデアリマスカラ、樺太木材
ト云フモノガ內地ニ年ニ多イ時ニハ千二
百万石、少クトモ八百万石以上ノ樺太木
材ガ日本ノ國ニ流込ンデ來ルノデアリマシ
テ、亞米利加ノ四百万石位ノ米松、之ヲ假
令倍ニ上ゲテ見マシタ所ガ、樺太木材ノ流
入ニ依ッテ-噓ト思ヘバ深川ノ木場ニ行ク
テ聞ケバ分リマス、樺太木材ニ依ッテ全部市
價ヲ暴落サセラレテ、泣キノ淚デ居リマス
此點カラ考ヘルト日本ノ農山村民ノ救濟策
ト申スコトハ樺太木材ノ取締ヲヤッテ、樺
太ノ森林行政ノ確立ヲヤラナケレバナラ
ヌ、換言スレバ樺太ニ對シテ國庫ノ補充金
ヲ增シテヤッテ、森林收入ダケニ賴ラナイ
政策ヲ執ラナケレバ米材ヲドレ位上ゲマ
シテモ、內地ニ於ケル所ノ此山林業者及造
林業者、其他製材業者ハ救濟サレナイ、此
點ハ私一個ノ議論デハナタ、苟モ木材ニ付
テ御關係アル人ハ何人モ之ヲ疑ハナイ正論
デアルト私ハ考ヘル、隨テ樺太ニ於ケル所ノ
森林政策、財政々策ヲ確立シテ、樺太ガ三
割六分八厘ト云フヤウナ木材收入バカリニ
賴ルコトヲ止メテシマッテ、此事ニ付キマシ
テハ民政黨内閣ニ於テモ心配シ、樺太ヲ一
般會計ニ移シテ、林業ハ農林省ニ移管シ、
ソレカラ鐵道ハ鐵道省ニ移管シ、一般行政
ハ內務省ニ移ス方針ヲ執ッテ居リマシタガ、
政友會內閣ニ依ッテ是モ打壞サレテシマッ
ク、斯ノ如キ立派ナ政策ハ悉ク政友會內閣
ニ依ッテ壞サレタヤウナコトニナッテ居リマ
スガ、樺太ニ於ケル所ノ木材ノ取締ヲシ
此木材ヲ保存スルト云フコトハ、是ハ國家百
年ノ大計デアリマス、何トナレバ之ヲ今日
ノ如ク濫伐ニ委シテ置キマシタナラバ、是
ガ年々無クナッテモウ何十年カ經テバ裸
ニナルサウナレバ日本ノ木材ノ問題バカ
リデハナクシテ、製紙ノ問題ヲドウスル
「パルプ」材料ハ無クナル、輸出ノ大宗デア
ル製紙問題ハドウスル
製紙工業ニ對スル點カラ考ヘマシテモ、
此點ニ付キマシテハ十分ノ取締ヲ行ハナケ
レバナラヌト考ヘマス、政府ハ亞米利加カ
ラ來ル米松ノ關稅ヲ引上ゲテ、前門ニ於テ
戶ヲ閉メタケレドモ、後ロカラ來ル所ノ北
洋材、樺太材ニ對シマシテハ明ケ放シノ狀
態デアデ、是デドウシテ林業政策ガ立行ク
モノデアリマスカ、此點ニ付キマシテモ後
藤農林大臣ハ十分御考デアラウト考ヘマス
カラ、此點ニ付テ能ク御答辯ヲ戴キタイト
考ヘマス
ソレカラマダ詳シイコトガアリマスケレ
ドモ止シマシテ、小麥ニ付キマシテ簡單ニ
一言ダケ申上ゲテ壇ヲ降リタク考ヘマス、
小麥ノ問題ニ付キマシテモ亦非常ナ關稅率
ノ引上ゲニナッテ居ル、小麥ノ生產高ハ約六
百万石アリマシテ輸入高ガ五百万石アッテ
需要高ガ約千百万石アリマス輸入高ガ六
百万石アリ、差引需要ニ對スル不足高ガ五、
六百万石ト農林省ノ統計ニ依クテモ明カニ
ナッテ居ル、是タケノ小麥ガ不足デアルガ、
此關稅ニ對シマシテ非常ニ高率ナ引上ニ
ナッテ居リマス、今度ノ關稅ニ依ルト七年
一月カラ三月迄ノ外國小麥ノ輸入平均價格
ガ三圓九十錢デアリマス、之ニ二圓五十錢
ノ關稅ヲ課ケルト七割八分ト云フ關稅率ニ
ナッテ居ル、小麥ガ今日デハマルキリ貴重
品扱ニナルノヂヤナイカト考ヘマス、七割
八分ト云フ高率ノ關稅ヲ課ケラレルト云フ
コトガ、果シテ宜シイカ否ヤ、小麥粉ニ付
キマシテモ平均輸入價格ガ本年一月カラ三
月迄ノ間ニ於キマシテ六圓四十錢ニナッテ
居リマスルガ、ソレヲ四圓三十錢ノ關稅ヲ
課ケレバ七割一分ニ當ルコトニナッテ居リ
マく、所ガ斯ノ如キ稅率ト云フモノハ全世
界ノ稅率ヲ調ベテ見マスルニ獨逸ニ於キ
マシテ禁止稅ヲ課ケテ居ル、獨逸ハ一石ニ
付テ十四圓十四錢ニ對シマシテ十六圓三十
錢課ケテ居ル、是ハ農林省ノ調デアルカラ
間違ナカラウト考ヘル、是ハ外國ノ立法例
デアリマスガ、千九百三十一年ノ七月現在
ニ依レバ、斯ノ如クナッテ居リマスルガ、獨
逸ダケ除ケテ見レバ佛蘭西ニ於テハ從價五
割課ケテ居ル、伊太利ニ於テハ六割八分課
ケテ居ル、他ノ國ニ於テハ三割トカ二割ト
カデアリマシテ、八割近イ所ノ稅率ヲ課ケ
テ居ル國ト云フモノハ獨逸國ヲ除ケテハ殆
ド無イヤウナ狀況ニナッテ居リマスルガ、是
デ農家ヲ保護スルコトガ出來テ、農村ガ助
カレバ宜シイ、所ガ吾々ハ色々〓究シテ見
マスケレドモ、農村ハ之ニ依ッテ助カリサ
ウモナイ、助カルドコロカ、農村ハ却テ不
利益デアル、不利益ニナルノハドウ云フ點
カラ申スカト云ヒマスルト、農村ノ人口ハ
約六割占メテ居リマス農林省ハ四割八分
ト云ッテ居ルケレドモ、不景氣ノ結果歸農
シテ居ル人ヲ加ヘテ見レバ六割ニナッテ居
ル、ソレカラ一千万石ノ不足デ、六百万石農
村ガ作ッテ六百石賣ルコトニナッテ居レバ
農村ハ作ッタモノダケ全部賣ルコトニナッテ
居ル、ソレカラ一方ハ農村以外ノ人々カラ
考ヘマシテモ、農村ノ中デモ消費階級ト云
フモノガ多イ、小麥ヲ持ッテ居ッテ澤山賣買
スル者ハ大地主階級ダケデアッテ、中小農
階級ハナイ、ソレカラ小麥ノ倉庫ノ內ヲ調
ベテ見マスルト、米ハ成程農村ノ人ハ大地
主カラ中農小農ニ至ルマデ倉庫ヲ利用シテ
居リマスガ、倉庫ノ統計ニ依ッテ見マス
ト、小麥ハ殆ド商賣人ガ預ケテ居ル、是ガ
面白イ眼ノ著ケ所デアリマス、小麥ハ商賣
人ガ預ケテ居〓テ農業者ガ預ケテ居ナイ、
米ハ預ケテ居ッテ子供ノ學費ガ掛ッテ色々費
用ガ要ルト言ッタラ、取リ出シテ賣ッテ居リ
マスケレドモ、小麥ハ大抵中間商人ガ農
村カラ買占メテ預ケテ居リマス、此點カラ
考ヘテ見マシテモ、小麥ノ關稅ヲ高率ニ引
上ゲテ、是デ農村ガ保護出來ルカト云ヘバ
出來ナイカモ知レナイ、何故ナレバ、中間商
人ニ依ッテ是ガ皆取ラレテシマフト云フヤ
ウナ結果ニナッテ居ル、小麥ノ會社ト云フモ
ノハ、御承知ノ通リ製粉會社ハタッタ四ツデ
アリマス、大雜把ニ言ヘバ三ツシカアリマ
セヌ、此製粉會社ガ買占メニ掛ッテ參リマス
ルト、小麥ノ價格ガズット上ル、上ルト直グ
中間商人ガ知ル、知レバ、中間商人ガ直チ
ニ農村ヘ行ッテ買占メテシマヒマシテ農
村ノ利益ト云フモノハ中間商人ニ依
テ取ラレテシマフト云フコトニナルノデア
リマス、是カラ考ヘテ見マスルト、倉庫ノ
狀態カラ觀察致シ、小麥ノ關稅ヲ引上ゲテ
モ、農村ハ消費者デアルト同時ニ生產者デ
アル此點カラ考ヘテ、農村ニ對スル利益
ハドウカト考ヘル、ソレカラ今言ッタヤウニ
中間商人ニ利益ヲ取ラレテシマッテ、農村民
ニ落チヌヂヤナイカト云フコトヲ私ハ心配
スル、此點ニ付テ、販賣ニ對シテハ農林省
アタリガ面倒見テヤルト申シマスルガ、中
中販賣ニ對スル面倒ハ見切レナイ、是ハ中
中困ッタ問題デアリマス、是ガ小麥ノ關稅ヲ
引上ゲテ一番先ニ農村ニ利益ガアルトスル
ナラバ、吾々ハ雙手ヲ擧ゲテ贊成スルノデ
アリマスルガ、此點ニ付テ十分ナル御說明
ヲ願ヒタイト思ヒマス、ソレカラ大正十五
年濱口大藏大臣ノ時ニ、百斤七十七錢デア
リマシタノヲ倍ニ上ゲマシテカラ、百斤一
圓五十錢ニ上ッテ居リマスルガ、ソレカラ反
別ガ殖エタト云ウテ居リマスケレドモ、殖
エタト云ッテモ僅カシカ殖エテ居ナイ、減
タ年モアリマス、大體昭和元年ガ四十九万
六千町歩ト致シマシテ、其次ガ四十六万七
千町步ニナッテ居リマス、關稅改正ガ實施セ
ラレタノハ大正十五年四月デアルカラ、是
カラ見テ行クト、四十六万七千町步デ、昭和
二年ガ四十七万三千町步デアッテ昭和三年
ニハ四十八万九千町步、昭和四年ガ四十九
万四千町步、昭和五年ガ四十九万一千町步
デ、昭和六年ガ五十万一千町步ニナッテ殖
エテ居リマス、唯四年カラ五年ダケ減フテ
居ル、後ハ今申シマシタヤウニ、十五年ト
二年ト較ベルト七千町步ダケ增加シ、二年
ト三年トハ一万六千町步增加シ三年ト四
年ハ五千町步增加シ、四年ト五年トハ三千
町步ダケ減"テ居リ、五年ト六年トハ一万町
步ダケ增加シテリ居マス、斯ウ云フ風ニ四
年カラ五年ニ三千町步ダケ減タタトヲ除
ケテ、後ハ全體少シヅヽハ殖エテ來テ居リ
マスルガ、併シ麥全體ノ耕作段別ハドウカ
ト言ッタラ減クテ居ル、麥全體カラ見ルト
昭和元年ノ百七十七万四千町步ガ、昭和六
年ニハ百三十五万六千町步ニナッテ、四十一
万八千町步ダケ麥全體デ減シテシマッテ居
ル、ソレカラ稞麥及大麥モ決ッテシマッテ、小
麥ダケ少シ殖エテ居ルカラ、關稅改正ノ結
果ダト言ヘバ言ヘヌコトモナイデセウケレ
ドモ、政府ノ立案ノ如クニ、農家ノ裏作ヲ
補助奬勵スルト云フコトデアルナラバ、稞
麥ガ減リ、大麥ガ減ッタヾケ、及ビソレ以上
ニマダ小麥ハ行ッテ居ルカモ知レマセヌガ、
兎ニ角稞麥ト大麥ガ減ッテ小麥ニ行ッテ居ル
コトニナル、サウシテ全體ノ反別ハ年々減ク
テ昭和元年ニ較ベタナラバ昭和六年ハ四十
一万八千町步モ減タテ居ルノデアッテ、關稅
改正ノ效果ハ何處ニアルカト言ハナケレバ
ナラヌ、農林省ニ聞キマシタナラバ、關稅
改正ヲヤラナカッタナラバモウ少シ減ルノ
デアッタト斯ウ言ッテ居リマスケレドモ、ソ
レハ假定論デアリマシテ、十分ニ茲ニ論ズ
ベキ立論ノ根據ニナラヌト考ヘマス、斯ウ
云フヤウナ點カラ觀察致シマスレバ、殆ド
八割ニ近イ所ノ重大ナル所ノ稅率ヲ課ケル
ト云フコトハ餘程考ヘモノデアリマシテ、
之ヲ輸入平均價格ニ對照致シ、ソレカラ農
村ニ對スル所ノ影響ニ付キマシテ、各別ニ
私ハ色々調査シタモノヲ持ッテ居リマスケ
レドモ、餘リ長クナリマスカラ是デ終リマ
スタ、今マデ申上ゲマシタ點ニ付キマシテ
關係各大臣ハ玆ニ詳細ニ亙リマシテ御答辯
下サランコトヲ御願申上ゲル次第デアリマ
ス、洵ニ長ク御〓聽ヲ煩シマシテ感謝ニ堪
ヘマセヌ(拍手)
〔國務大臣高橋是〓君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00419320604&spkNum=26
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027・高橋是清
○國務大臣(高橋是〓君) 私ノ關係スル點
ニ付テ御答致シマス、總ジテ此關稅ヲ改正
シテ稅率ヲ高メルト云フト、世間一般ニ直
チニ之ニ反對スルノニ、國民生活ヲ脅威ス
ル、斯ウ云フコトガ能ク新聞ニモ見エ、又
人ノ言フコトヲ聞クノデアリマス、併シ私
ノ知ル所デハ國民ノ生活ヲ脅威スルトカ云
フヤウナ時分ニ用ユル統計ハ國民ノ生活
上ノ必需品ト云フモノガアッテ、其統計ヲ引
用スルノデアリマス、我國ノ統計ハ主ニ重
要品デアル、ソレハ產額ノ多イモノヲ拾ヒ
上ゲテ中ニハ〓料品等モ入ッテ居リマス
ケレドモ、ドウモ混雜シテ居ッテ、正シイ、
國民ノ生活ニ必要ナ必需品ト云フモノヲ
取ッタ統計ト云フモノハ私ハマダ見ナイノ
デアリマス、ソレ故ニ統計カラ取ッテ、直チ
ニ關稅ノ引上ガ國民生活ヲ脅威スルト云フ
聲ハ餘リ仰々シク聞エルヤウニ思ハレル
(拍手)ソレカラ從量稅ヲ三割五分引上ゲタ
ノハドウ云フ譯カ、何ヲ標準トシタノカト
云フヤウナ御質問デ、中島君ハ主ニ輸入品
ノ賣價、市價ソレト爲替相場トヲ合シテ其
點ニ重キヲ置イテ、輸入品價格ヲ標準トシ
テ稅率ヲ定メルガ宜イト云フ御意見ノヤウ
ニ窺ハレタ、此度ノ從量稅ノ三割五分引上
ト云フノハ、此從量稅ヲ定メラレタ時ノ我
國ノ爲替相場ト云フモノガ、米國ノ四十八
弗乃至四十九弗ニ落著イテ居フタ時ガ此從
量稅ヲ定メタ爲替相場ノ基準デアル、ソレ
故ニ今日カラ云ヘバ從量稅ハ其時ノ基準
ガ四十八九弗ノ時ニ定メラレタノデアルカ
ラ、爲替相場カ今日ソレヨリ三割五分下ルト
云フト、三割五分ノ恩惠ヲ受ケテ居ルト云
フコトニナル、ソレ故ニ是マデ課ケテ居。ツ
タ稅ノ三割五分ヲ增ス、斯ウ云フコトニナ
リマス而シテ一方ニ於テハ爲替相場ト云
フモノヲ安定セズニ爲替相場ヲ採ルト云フ
コトハドウ云フ譯カト云テ、私ノ言フコト
ニ矛盾ガアルト云フヤウナ御咎モアリマシ
タケレドモ、先ヅ今日ノ所デハ別段政府ガ
政策、或ハ何カ人爲的ニ手ヲ入レナクテ
モ今日デハ先ツ三十二三弗ノ所ニ落著イ
テ居ルノダカラ、ソレニ依テテ割割分ト云
フモノヲ此際引上ゲル、前ニハ四十八九弗
ノモノガ基準デアッタモノヲ、今日ノ爲替相
場ニソレヲ直シタト云フニ過ギナイ、ソレ
カラヨク爲替相場ガ三割五分下ッタノニ、物
價ガ、ソレニ響イテ居ラヌト云フコトヲ屢、
御述べノヤウデアリマシタガ、爲替相場
ト輸入品ノ市價トハ常ニ並行シテ上ッタリ
下ッタリスルモノヂヤナイ、ト云フモノハ製
品ノ上ニ於テハ今日駸々トシテ進ム所ノ發
明ノ爲ニ、生產費ガ安クナルト云フコトハ
澤山アルノデス、生產費ガ變ルカラ其物ガ
安ク出來ルノデアル、爲替相場ニノミ因ル
譯デハナイ、爲替相場ト輸入品ノ市價トヲ
常ニ是ハ並行シテ上下スルモノダト斷定シ
テ居ッタナラバ、ソレハ事實ニ於テハ間違
デアル
ソレカラ關稅改正ニ對シテ豫算ニ稅額ガ
積ッテ居ル、是ハ色々技術的ニ調ベタ結果、
定率法改正ニ依ル分ガ四百七十六万八千二
十二圓ト斯ウ積ッテアルノデス、ソレカラ從
量稅ノ三割五分增加ニ依ル分ハ一千百四十
二万九千四百四十三圓、合セテ一千六百十
九万七千四百六十五圓ト豫算ニハ上ボセテ
アルノデアリマス、其技術的ノ計算ノ仕方
ニ付テハ委員會ニ於テ御質問ガアッタナラ
バ、政府委員ヨリ御答ヲシマセウ、ソレカ
ラ銑數其他ノ品目ニ付キマシテハ、其各〓所
管省ニ於テ是ハ能ク專門的ニ調ベタノデア
ル故ニソレニ對シテノ御答ハ、其各、ノ所
管大臣カラ申上ゲル方ガ宜イノデアリマシ
テ、大藏大臣トシテハ其處マデハ〓究シナ
イ、斯ウ云フ品物ニ付テ今度ノ稅ト云フモ
ノハ國內產業ヲ保護スルト云フ意味ハ無論
含ンデアル其見地カラシテ斯ウ云フ物ハ
稅ヲ上ゲナケレバナラヌト云フコトニ付テ
ハ一應其所管當局ノ意見ニ重キヲ置イテ
考ヘナケレバナラヌ、ソレダカラ是ハ其各〓
所管當局ニ就テ御尋ニナフタラ宜カラウ
ソレカラ「當分」ト云フコトニ付テ又今度
ノ通常議會ニ改メテ出ス積リカト云フヤウ
ナ御尋デアリマスルガ、我國ニハ關稅調査
委員會ト云フモノガ常設サレテアリマス
隨テ時々此委員會ニ掛ケテ關稅ヲ動カシテ
居ル既ニ濱口內閣、濱口氏ガ立案シマシ
タ贅澤品關稅法、矢張リ之ニモ「當分ノ內」
ト云フ文字ガ使ッテアル、是ハ殆ド法律ノ用
語ニナッテ居ル、是ハ屢〓變ルノデアリマ
ス、併ナガラ次ノ通常議會ニ於テ更ニ此關
稅法ノ改正ヲ出ストカ出サヌトカ云フコト
ハ御尋ガアッテモソレハ私ガ此處デ明ニ
御答スルコトハ出來ナイ、唯「當分」ト云フ
意味ハサウ云フ意味ナノデス、ソレダケ御
答ヲシテ置キマス(拍手)
〔國務大臣男爵中島久萬吉君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00419320604&spkNum=27
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028・中島久萬吉
○國務大臣(男爵中島久萬吉君) 只今中島
彌團次君カラ今囘ノ銑鐵關稅引上ニ付キマ
シテコマ〓〓御質問ガゴザイマシタ中ニ、
關稅改正ノ基礎ヲ致シテ居リマスル生產費
ノ件、ソレカラ我國ノ銑鐵事業ノ設備カ改
善セラレテ居ルヤ否ヤ、其他日本本邦
ニ於ケル銑鐵ノ生產費ニ關スル事、竝ニ一
部ノ我國資本家ガ印度ニ投資ヲ致シテ居リ
マスル、其投資ニ對スル影響、竝ニ滿洲銑
ニ對スル影響ト云フガ如キ諸點ニ付キマシ
テハ之ヲ委員會ニ於テ御說明申上ゲル方
ガ妥當ト信ジマスカラ、私ハ極ク御質問ノ
大綱デゴザイマシタ、銑鐵業ニ對スル根本
ノ御質問ノ趣旨ニ對シマシテ、簡單ニ御答
辯ヲ申上ゲテ置キタイト存ジマス
中島君ハ此銑鐵業ニ對スル保護ガ如何ニ
モ厚クハナイカト云フヤウナ事ヲ御尋ネニ
ナリマシタガ、私モ亦銑鐵業ニ對スル國家ノ
保護ガ厚イコトハ之ヲ認メマス、騎テ斯ノ
如キ銑鐵業ニ對スル保護ヲ必要ナラシメテ
居リマスル事情ヲ除キマシテ、斯業ノ合理化
的施設ヲ考ヘナケレバナラヌト云フコトハ
勿論ナリト存ジマスルケレドモ、當面銑鐵
業ニ對シマスル印度銑ノ壓迫ヲ除クニアラザ
しく、我國ニ現存致シテ居リマスル銑鐵業
ハ遂ニ衰滅ヲ來スコトニナル、其結果ハ銑
鐵業ノ包容致シテ居リマスル勞働力ガ無ク
ナリマシテ、深刻ナル現下ノ失業間題ニモ
此上ノ暗影ヲ投スルト云フコトニナリハス
マイカ、尙ホ銑鐵業ニ伴ヒマスル副產物ヲ
原料ト致シマスル有機化學工業ト云フモノ
ガ、昨今銑鐵業ノ所產ト致シマシテ發達ヲ
致シテ參クテ居リマスルガ、是ガ成立ヲ害ス
ルコトナキヤ、斯ウ云フ點ヲ考ヘマスル時
ニ此度ノ銑鐵關稅ノ引上ハ、洵ニ已ムベ
カラザルモノト認ムル譯デゴザイマス
尙ホ印度ノ報復如何ト云フ問題デゴザイ
マスルガ、御案内ノ如ク印度ハ我國ノ態度
如何ニ拘ラズ、旣ニ二囘ニ亙リマシテ我
國カラ輸出致シマスル綿絲布關稅ノ引上ヲ
斷行致シマシタル外ニ、更ニ最近ニ於テハ
綿布、人絹竝ニ絹織物等ニ對スル關稅ノ增
徵ヲ計畫致シテ居リマス、同時ニ我國ハ年
年巨額ノ棉花ヲ印度カラ輸入致シテ居リマ
スル事情ニ鑑ミマシテ、一部十五万噸ノ銑
鐵輸出ニ對シテハ左マデ印度政府ノ態度
ヲ心配スベキ必要ハナイカニ思ヒマス、此
二點ヲ甚タ簡單デハゴザイマスルガ御答申
上ゲテ置キマス(拍手)
〔國務大臣後藤文夫君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00419320604&spkNum=28
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029・後藤文夫
○國務大臣(後藤文夫君) 中島君ノ私ニ對
スル御質問ニ御答致シマス、第一ハ木材ノ
關稅ニ對シテヾアリマス、亞米利加ノ木材
ニノミ關稅ヲ課ケタ所デ、其橫ニハ樺太ノ
木材ガ內地ノ木材ヲ壓迫スルデハナイカ、
ソレヲ除カズシテ關稅ヲ米材ニ課ケルト云
フコトハドウ云フ譯デアルカ、斯ウ云フ御
問デアッタヤウデアリマス、勿論米材ニ關稅
ヲ課ケルコトノミガ、內地ノ木材ノ價格ノ
下落ニ對スル壓迫ヲ除ク手段デアルトハ申
シマセヌ、併ナガラ樺太ノ木材ノ問題ハ
中島君ガ縷々論ゼラレタ如クニ、是ハ我ガ
領土內ニ於ケル關係ノ間題デアリマス、關
稅ノ問題トハ別デアリマス、米檜ガ日本ノ
木材ヲ壓迫シテ居ルト云フ事實ハ、看過ス
ルコトハ出來ヌノデアリマス米檜ニ對ス
ル關稅ハ其效果ハアルノデアリマス、樺太
ノ木材ノ問題、樺太ノ林政ノ整頓ト云フヤ
ウナ問題ハ自ラ又別ニ考究ヲ要スル事柄
デアラウト思ヒマス
ソレカラー麥ノコトデアリマスルガ、小
麥ニ大變ナ高イ稅ヲ增彼シタデハナイカ、
二圓五十錢ト云フヤウナ稅ハ輸入ノ小麥ノ
價ニ比スルト、七割何分ト云フヤウナ高イ
モノニナルデハナイカ、中島君ノ言ハレタ
所ガ、私ノ聽違ヒカモ知レマセヌガ、今度
一時ニ輸入ノ小麥ニ七割何分ト云フヤウナ
高イ稅ヲ增徵シタヤウニ言ハレタヤウニ聞
エマシタガ、サウデハアリマセヌ、是ハ恐
ラク私ノ聽違ヒデアリマセウ、在來一圓五
十錢ノ稅ガ課"テ居ルノデアリマス、更ニ今
度一圓ノ增微ヲシタト云フノデアリマシテ、
一時ニ七割何分上ゲタト云フノデハアリマ
セヌ、私ト同ジヤウナ聽違ヒヲサレタ方ガ
アルトイケマセヌカラ一寸其事ヲ申上ゲテ
置キマス
先年、大正十五年デアリマシタカ、小麥
ノ關稅ヲ上ゲテ以來、確ニ我國ノ小麥ハ增
產ノ方向ニ向ッタノデアリマス、小麥ノ作付
反別モ增加シテ居リマス、現ニ尙ホ裏作ト
シテ、小麥作ニ利用ノ出來ルデアラウト思
ハレル我國ノ耕地面積モ、五十万町步カラ
ノ見込ガ付ケラレルノデアリマス、此小麥
ノ增產ト云フコトハ、今日小規模ナ農業ノ
經營ヲシテ居ル我國ノ農家ニ取シテハ、農家
ガ集約的ナ農業ノ經營ヲスル上ニ、是非織
込ンデ奬勵ヲシナケレバナラヌモノデアラ
ウト思ハレルノデアリマス
隨テ今日小麥ノ價格ガ下落ヲシマシテ、農
家ガサナキダニ困憊ヲシテ居ル所ニ、折角
增產ノ機運ニ向テテ居ル小麥ト云フモノニ
非常ナ打擊ノ來ルコトハ、ドウシテモ救ハ
ナケレバナラヌノデアリマス、農家ノ小麥
ノ生產費、他ノ一般ノ農產物ノ價、將來增
加サルベキ耕作面積ニ於ケル小麥ノ生產費
ノ具合トカ云フヤウナモノヲ考ヘマシテ、
輸入ノ小麥ノ價ト云フヤウナモノヽ振合ヲ
見テ、今度ノ關稅ノ引上ヲ致スヤウニ致シ
タ譯デアリマス、斯ノ如キ關稅ヲ課ケテハ
一體日本ノ小麥ハ日本ノ消費ニ足ラナイノ
デ澤山輸入ヲスルノダカラ、隨テ小麥ノ値
ガ上リ、小麥粉ノ値ガ上ッテ消費者ガ非常ニ
困ルデハナイカ、殊ニ農村モヤハリ消費者
デハナイガ、一方ニ得ル所ハアッテモ一方
ニ失フト云フノデ、大シタ農村ニ利益ハア
ルマイト云フ意味ノ御尋ガアッタヤウデア
リマスガ、併シ今日農村デ生產シテ居ル小
麥ガ六百万石以上ニナッテ居リマシテ、農村
デ消費サレル小麥粉ヲ假ニ小麥トシテ見マ
スレバ、ヤハリ四百何十万石、五百万石前後
ノモノデアリマシテ、百數十万石ノ小麥ニ
付テハ總計算ニ於テモヤハリ農家ハ値カ上
ル爲ニ利益カアルヤウナ計算ニナルノデア
リマス、併シ私ハ玆ニ細カイ計算ニ付テ論
ジョウトハシマセヌ、今日ノ小麥粉ノ低落
ノ狀況ヲ見マスレバドウシテモ相當關稅
ノ引上ヲ行シテ、小麥ノ生產ヲ保護シテ置ク
ノデナケレベ將來我國ノ農業生產ニ非常ニ
心配ガ多イノデアリマス、之ヲ以テ御答ト
致シマス
〔國務大臣荒木貞夫君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00419320604&spkNum=29
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030・荒木貞夫
○國務大臣(荒木貞夫君) 只今中島君カラ
御尋ノ件ニ付キマシテハ、將來ノ滿洲問題
ニ關シテ大キナル關係ハ持チマスガ、只今
御論議ニナリマシタ滿洲關稅ノ問題ハ主
管トシテ拓務大臣ガ居ラレマスノデ、先ヅ
拓務大臣ヨリ御答スルコトニ依ッテ御諒承
ヲ願ヒマス
〔國務大臣水井柳太郞君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00419320604&spkNum=30
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031・永井柳太郎
○國務大臣(永井柳太郞君) 中島君ノ御質
問ノ中拓務省ニ關係ノアル事ダケヲ御答致
シタイト存ジマス
第一ニ滿洲產ノ銑鐵ニ對スル關稅引上
ハ滿洲ニ於ケル製鐵業ニ打擊ヲ與ヘルノ
ミデナク、日滿兩國ノ經濟關係ノ前途ニモ
暗影ヲ投ズルデナイカト云フ意味ノ御質問
デアッタト思ヒマス、日滿兩國ハ相互扶助ノ
經濟關係ヲ確立セラルベキモノデアリマス
ルノミナラズ、滿洲ニ於ケル製鐵業ハ、帝
國國策ノ上カラ見マシテモ重大ナル意義ヲ
持ノテ居ルノデアリマス、隨テ關稅引上ノ
爲ニ滿洲產ノ銑鐵ガ受ケル打擊ハ、出來ル
ダケ之ヲ緩和シナケレバナラヌト考ヘマ
ス、前ニモ製鐵奬勵法ガ實施セラレマシタ
當時ニ、滿洲ノ製鐵業者ニ對シマシテ別途
ノ保護ノ方針ヲ講ジタノデアリマスガ今
囘モ關稅引上ノ爲ニ滿洲ノ製鐵業者ガ受ク
ル打撃ヲ緩和スル爲ニ、何等カノ方法ヲ講
ズベキデアルト云フコトヲ考ヘマシテ、今
共審議ヲ進メテ居ルノデアリマス
第二ニ南洋ノ「ラワン」材ニ對シテハ無稅
トナッテ居ルガ、ソレハ如何ナル理由カト云
フ意味ノ御質問ガアッタヤウニ思ヒマス、御
承知ノ通リ南汁ニ於ケル「ラワン」材ノ生產
ニ從事シテ居リマス者ハ、投資モ、生產モ、
運搬モ、總テ日本人ガ行ッテ居ルノデアリ
マス、然ルニ御承知ノ通リ彼等ノ生產スル
「ラワン」材ノ販路ハ我ガ日本ニ殆ド限ラ
レテ居リマスルノニ、最近ノ爲替關係ノ爲
ニモ非常ナ打擊ヲ受ケテ居リマス、此上關
稅ヲ課セラルヽコトニナリマスレバ殆ド
致命的ノ打擊ヲ受ケナケレバナラナイ特殊
ノ事情ニ居リマスルノデ、南洋ノ「ラワン」
材ニ對シテハ特殊ノ取扱ヲシタ方ガ宜イト
云フ意見ガ出テ居ルノデアリマスガ、此取
扱ニ付キマシテモ今尙ホ調査ヲ進メテ居ル
次第デアリマス
〔中島〓〓大君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00419320604&spkNum=31
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032・中島彌團次
○中島彌〓次君 大藏大臣首メ各大臣カラ
洵ニ深切丁寧ナル御立派ナル答辯ヲ戴キマ
シテ滿足スル者デアリマス、就キマシテ詳
細ニ亙ッテハ委員會ニ於テ質問致シマシテ
再ビ此處ニ於テ申上ゲマセヌガ、唯誤解サ
レテ居ル點ガ一二點アリマスルカラ、ソレ
ダケハ訂正シテ置キマス、後藤農林大臣ガ
私ガ米檜ヲ上グルト云フヤウナコトヲ言ッ
タト言ヒマシタケレドモ、今度ノ稅率ノ改
正ニ於キマシテハ、米松ダケノ引上デアッテ、
米檜ノ引上ニナッテ居リマセヌ、私ハサウ云
プコトヲ言ウタノデハアリマセヌ、米檜ト
米松ト御混同ナサラヌヤウニ御願致シマス
(「揚足ハ措ケ」ト呼フ者アリ)揚足取デハア
リマセヌ、是ハ重大ナル問題デアリマス、
ソレカラモウ一方ハ高橋大藏大臣ノ仰シヤ
ルノハ-居リマセヌガ、御老人ノコトデ
スカラ居ラレナケレバ申シマセヌ、高橋大
藏大臣ノ仰シヤルニハ、爲替ガ四十九弗ノ時
ニ此現行法ガ出來タノダ、今日ハ三十二弗
ニ安定シテ居ルノダカラ、ソレダケ恩惠ヲ
受ケテ居ルカラ、ソレダケ從量稅ニ課ケル
ンダト云フヤウナコトヲ仰シヤイマシタ
ガ、前ノ田中君ニ對スル答辯デハ爲替ヲ安
定スル策ハナイ、爲替ハグラ〓〓動ク、何
處ノ國デモソレニ困シテ居ル、マルデ何ヲ本
體トシテ言ッテ居ルカ分ラヌ、田中君ノ質問
ニ對シテハ爲替ガグラ/〓動クト答ヘ私
ニ對シテハ爲替ガ安定シテ居ルカラ三割五分
課ケタト言フ、洵ニ以テ私共ニハ解釋ハ出
來マセヌ、藏相ノ方針カラ-遺方カラ考
ヘテ見マシタナラバ、今目先ハ爲替ガ强イ、
爲替ガ强イ理由ハドコニアルカト云フト、
亞米利加ノ弗ガ惡ノイデアルカラ、日本ノ爲
替ガ强クナッテ居ルノガ一ツト、昨年末ニ
於テ五億千二百万圓ト云フモノガ外國ニ出
テ居ッテ、見越輸入デ大分使ハレタガ、マ
ダ殘ッテ居ルモノガアリマスカラ卽チ外國
ニ資金ガ、所謂在外資金ガ大分殘シテ居ル
是ガアルカラ爲替ガ三十二弗ニ止ッテ居ル、
是ガナクナッテシマッタナラバドウスルカト
云フト今ノ高橋藏相ノヤラレテ居ル「イ
ンフレーション」ヲヤッテ行ク、公債募集ヲ
ヤッテ行ク、斯ウ云フヤウナコトヲヤッテ行ツ
テ財政ノ辻褄ヲ合セテ行ケバ總テ皆爲替
ノ弱イ材料デ、此點カラ行ケバ爲替ハ下落
スル外ナイ、サウスレバ今言ッタヤウナ工
合ニ、高橋サンノ三十二弗ニ安定シテ居ル
カラ三割五分課ケルト云フ議論ノ根本ハ
ブチ壞レテシマフト私ハ考ヘルソレカラ
モウ一ツハ、私ガ物價主義ヲ何故採ラナカッ
タト云フコトヲ言ッテ、爲替ガ下ッタカラ直
ニ物價ガソコデ騰ルモノデハナイト云フ、
ソレハ私モソレ位ノコトハ承知シテ居ル、
ソレハ私モ此前ノ時ニ言ヒマシタガ、爲替
ガ下ッタカラト云ッテ必シモ物價ニハソレダ
ケ響カナイノデアル、物價ノ騰貴率ヲ何故
取ラヌカ、輸入平均價格ニ於テ何故之ヲ標
準トシナイカ、三割五分一律一體ニ付テハ
此點ヲ申シマシタケレドモ、藏相ハ其點ハ
態ト誤解サレテ御答辯ナサレタ、生活必需
品ノ統計ガナイカラ俺ハ見テ居ラナイト云
フ重要輸入品統計ノコトハ知ッテ居ル
ガ、他ノ事ハ知ラナイト言ヒマシタガ、洵
ニ亂暴ナ話デアリマシテ、一國ノ國務大臣
タル藏相ガ關稅ヲ課ケル時ニ、生活必需品
ガドンナモノデアルカ、統計ヲ見テ居ナイ
ト云フコトハ、洵ニ國民ニ對シテ不深切ノ
甚シキモノデアルト云フコトヲ考ヘル、此
點ダケヲ私ハ申上ゲテ置キマシテ、後ハ委
員會ニ於キマシテ十分ニ質問致シタイト考
ヘマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00419320604&spkNum=32
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033・秋田清
○議長(秋田濟君) 栗原彥三郞君
〔栗原彥三郞君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00419320604&spkNum=33
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034・栗原彦三郎
○栗原彥三郞君 私ハ本案ニ關聯致シマシ
テ傾ク簡單ニ質疑ヲ致シタイト思フ者デア
リマス、諸君、昨年滿洲國ノ綿織物竝ニ絹
織物等ノ移入輸入ノ總額ハ大連、牛莊、安
東縣竝ニ哈爾賓ノ四箇所ノ海關管區內ノモ
ノヲ合シマシテ、其總額ハ五千九百九十二
万一千圓デアリマシテ、其中綿織物ハ四千
九百九十八万四千圓デアリ、更ニ又絹織物
或ハ人造絹絲ノ織物、或ハ絹綿交織品ト申
シマスルヤウナモ·ノガ、實ニ九百九十三万
七千圓ト云フ額ニ上ッテ居ルノデアリマス
諸君、我國ノ地理的關係カラ致シマシテ
モ、亦運輸交通ノ點カラ致シマシテモ、亦
滿洲國內ニアリマシテハ支那內地ホド排日
排貨ノ運動ガ盛デナカッタト云フ點カラ考
ヘテ見マシテモ、我ガ日本帝國ノ製品ハ相
當ニ滿洲ニ輸入サレテ居ラナケレバナラナ
イノデアリマス、然ルニ滿洲ノ實際ニ付テ調
査致シマスルト、日本ノ製品ト云フモノハ僅
ニ一小部分ニ過ギナイデ、大體ハ滿洲ノ主
要市街地ノ「デパート」等ニ就テ調査ヲ致シ
マスルト、或ハ上海、或ハ杭州或ハ蘇州、
或ハ天津、或ハ盛澤鎭廣東ニモアリマ
スルガ、サウ云フヤウナ場所ノ支那人ノ工
場ニ於テ製造セラレタ物ガ大體デアリマシ
テ、日本ノ物ハ實ニ寂々寥々デアリマス、
殊ニ滑稽ナノハ支那ノ上海ニモ、杭州ニモ、
蘇州ニモ「ルチー·パリス」ト云フ新ラシイ
最高級ノ織物機械ガナイノニモ拘ラズ、此
機械ヲ以テ製造致シマシタ、一寸ガ七百囘
若クハ九百囘ノ然ヲ加ヘマシタ所ノ最高級
ノ織物ガ、麗々ト上海何々電力廠製ト云フ
「レツテル」デ賣ラレテ居ルト云フヤウナ狀
態デアリマス、然ラバ何故日本ノ品物ガ行
カナイノデアルカト斯ウ考究致シマスル
ト、只今滿洲國ニ於テ行ハレテ居リマスル
關稅法ハ、民國ガ昨年保護貿易ノ爲ニ作リ
マシタ所ノ關稅法ガ、其儘用ヒラレテ居ル
ノデアリマシテ、支那ノ製品ニ對シテハ僅
ニ五分ノ釐金稅ガ課ケラレテ居ルダケデ
アッテ、日本ノ內地デ製造シタ織物ニ對シ
テハ品種ニ依。テ多少ノ差ハアリマスル
ケレドモ、大體ニ於テ二割或ハ二割五分ト
云フ重稅ガ課ケラレテ居ルノデアリマス、
諸君ノ中ニハ御嗤ヒニナルヤウナ不眞面目
ナ御方モアルヤウデゴザイマスルケレドモ、
日本ノ織物工業者ノ現狀ト云フモノガ、冷
眼ヲ以テ之ヲ視ルヤウナ現狀デアリマス
カ、諸君、織物業者ノ狀態ハ或ハ農村ノ
人々ノソレノ如ク洵ニ御氣ノ毒ナ狀態ニア
リマシテ、或ハ轉業シ、或ハ体業シ或人
破產ノ運命ニ陷ラナケレバナラナイト云フ
者ガ、日ニ幾十ヲ以テ數フルト云フ悲慘ナ
ル狀態ニアルノデアリマス、此故ニ滿洲國
ニ於ケル稅法ガ改正セラレテ、日本ノ織物
ガ自由ニ滿洲ニ這入ッテ行クヤウニシタイ
ト云フ希望ハ日本ノ織物業者ガ大旱ノ雲
霓ノ如ク望ンデ居ル所デアリマス、殊ニ滿
洲國ノ要人ニ於キマシテハ若シ日本ガ織
物ニ關スル所ノ關稅ノ改正ヲ希望スルト云
フ意思ガアレバ何時デモ協商ノ上ニ、新タ
ナル滿洲國ノ關稅法ヲ制定シテ、日本ノ希
望ニ應ズルダケノ覺悟ト用意ガアルト云フ
コトヲ明言シテ居ルノデアリマス、ドウゾ
政府ハ滿洲國ニ對シテ、或ハ承認トカ不承
認トカ云フヤウナ色々ノ手續モゴザイマセ
ウ、併シサウ云フコトハ假ニ十分御〓究
ノ上トセラレルトシマシテモ、只今日本ノ
織物工業者ガ斯ノ如ク悲慘ナル狀態ニア
リ斯ノ如ク大旱ノ雲霓ノ如ク滿洲國ノ關
稅法ノ改正ヲ希望致シテ居ルノデアルカ
ラ、政府ハ速ニ滿洲國ノ要人ト協商致シマ
シテ滿洲國ノ織物ニ對スル關稅法ノ改正
ヲスルヤウニ御盡力ガ願ヒタイノデアリマ
スルガ、政府當局ハ之ニ對シテ如何ナル御考
ヲ持ノテ居ルノデアリマスカ、御伺ヲシタイ
ノデアリマス(拍手)
〔國務大臣子爵齋藤實君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00419320604&spkNum=34
-
035・齋藤實
○國務大臣(子爵齋藤實君) 只今ノ御質問
ニ御答致シマスガ、滿洲國ニ對シマスル方
針ハ昨日大體述ベマシタ通リデアリマス、
御質問ノ如キ關稅其他ノコトニ付キマシテ
ハ未ダ之ヲ此處デ御答辯致ス時機ニ到達
シテ居リマセヌ、暫ク其積リデドウゾ御待
チヲ願ヒマス(拍手)発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00419320604&spkNum=35
-
036・栗原彦三郎
○栗原彥三郞君 一寸自席デ簡單ニ······発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00419320604&spkNum=36
-
037・秋田清
○議長(秋田〓君) 栗原彥三郞君発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00419320604&spkNum=37
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038・栗原彦三郎
○栗原彥三郞君 只今ノ總理大臣ノ御答辯
ノ要旨ハ大體諒承致シマスガ滿洲國ニ對
スル大體ノ國策ガ決定シテカラデナケレ
バ、織物ニ關スル問題ガ決定シナイト云フ
ヤウナコトデハ、私共滿足スルコトガ出來
マセヌ、根本政策ヲ速ニヤッテ戴キタイノデ
アリマスルカラ、斯樣ナ問題ハ出來ルダケ
速ニ御處置セラレンコトヲ希望致シテ置キ
マス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00419320604&spkNum=38
-
039・秋田清
○議長(秋田〓君) 質疑ハ終局致シマシ
タ日程第十四、右議案ノ審査ヲ付託スヘ
キ委員ノ選擧ヲ議題ト致シマス
第十四右議案ノ審査ヲ付託スヘキ委
員ノ選擧発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00419320604&spkNum=39
-
040・上田孝吉
○上田孝吉君 兩案ヲ一括シテ議長指名十
八名ノ委員ニ付託セラレンコトヲ望ミマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00419320604&spkNum=40
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041・秋田清
○議長(秋田〓君) 上田君ノ動議ニ御異議
アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00419320604&spkNum=41
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042・秋田清
○議長(秋田〓君) 御異議ナシト認メマ
ス仍テ動議ノ如ク決シマシタ、日程第十
五市町村義務〓育費國庫負擔法第三條ノ特
例ニ關スル法律案ノ第一讀會ヲ開キマ
ス-文部大臣鳩山一郞君
第十五市町村義務〓育費市町村義務
〓育費國庫負擔法第三條ノ特例ニ關
スル法律案(政府提出)第一讀會
市町村義務〓育費國庫負擔法第三條
ノ特例ニ關スル法律案
市町村ノ廢置分合又ハ境界變更アリタル
場合ニ於テハ主務大臣ハ勅令ノ定ムル所
ニ依リ市町村義務〓育費國庫負擔法第三
條ノ規定ノ適用ニ付期間ヲ定メ舊町村ノ
地域ニシテ新ニ市ニ屬シタル部分ヲ町村
ト看做シ同條ノ規定ニ依リテ町村ノミニ
交付スル國庫支出金ヲ當該市ニ交付スル
コトヲ得
附則
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
〔國務大臣鳩山一郞君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00419320604&spkNum=42
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043・鳩山一郎
○國務大臣(鳩山一郞君) 提案ノ理由ヲ說
明致シマス、市町村ノ廢置分合又ハ境界變
更ニ依リマシテ、町村ノ地域ヲ市ニ屬セシ
メマシタ場合ニ於キマシテ、新ニ市ニ屬ス
ルニ至ッタ地域、之ニ付テハ從來町村トシテ
交付ヲ受ケテ居リマシタ市町村義務〓育費
國庫負擔法第三條後段ノ交付金ヲ、將來市
ハ受ケルコトヲ得ザルニ至リマス結果、國
庫下渡金ノ急激ナル減少ヲ來スコトヽナリ
マシテ、〓育上ニモ、財政上ニモ著シイ支
障ヲ生ゼシムル虞ガアリマス場合ガアリマ
スカラ、之ニ對スル適當ナル緩和策ヲ講ズ
ル必要ガアルト認メタノデアリマス、殊大
本年十月一日ヲ以テ、東京市ニ於キマシテ
ハ近接町村八十二箇町村ヲ合併スルコトニ
ナッテ居リマスル關係上、此議會ニ此法案ヲ
提出致シマシタ次第デアリマス、何分御審
議ノ上御協賛アランコトヲ望ミマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00419320604&spkNum=43
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044・秋田清
○議長(秋田清君) 質疑ノ通告ハアリマセ
ヌ-日程第十六、右議案ノ審査ヲ付託ス
ヘキ委員ノ選擧ヲ議題ニ供シマス
第十六右議案ノ審査ヲ付託スヘキ
委員ノ選擧発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00419320604&spkNum=44
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045・上田孝吉
○上田孝吉君 本案ハ議長指名九名ノ委員
ニ付託セラレンコトヲ望ミマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00419320604&spkNum=45
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046・秋田清
○議長(秋田〓君) 上田君ノ動議ニ御異議
アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00419320604&spkNum=46
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047・秋田清
○議長(秋田〓君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ、日程第
十七ハ都合ニ依リマシテ後廻シト致シマス
日程第十九、柳河軌道株式會社所屬軌道
補償ノ爲公債發行ニ關スル法律案ノ第一讀
會ヲ開キマス-鐵道大臣三土忠造君
第十九柳河軌道株式會社所屬軌道
補償ノ爲公債發行ニ關スル法律案
(政府提出)第一讀會
柳河軌道株式會社所屬軌道補償ノ爲
公債發行ニ關スル法律案
政府ハ柳河軌道株式會社所屬軌道ノ經營
廢止ニ對スル補償ノ爲額面二十二萬九千
四百圓ヲ限リ公債ヲ發行スルコトヲ得
〔國務大臣三土忠造君壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00419320604&spkNum=47
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048・三土忠造
○國務大臣(三土忠造君) 提案ノ理由ヲ簡
單ニ申上ゲマス、九州門司、鹿兒島線ノ中
ノ福岡縣下ノ一驛矢部川カラ柳河ニ至リマ
スル所謂柳河軌道鐵道ガアルノデアリマス、是
ト並行ニ鐵道省ノ省線矢部川カラ佐賀ニ至
リマスル線ノ、矢部川カラ柳河ニ至リマス
ル部分ガ、昨年九月二十四日完成、營業開
始ヲ致シマシタ結果トシテ、柳河軌道株式
會社ノ同ジ並行線ニナリマス部分ノ營業狀
態ガ非常ニ惡クナリマシタ、此軌道ハ餘程
收益モ好カッタノデアリマスガ、政府ノ並行
線ガ完成致シマシタ爲ニ、急激ニ打撃ヲ蒙ッ
テ、僅ニ百五十日間ニ六割四分ノ減收ヲ來
シテ、無配トナッテシマッタノデアリマス、
仍テ地方鐵道法及軌道法ニ依リマシテ、之
ニ對シテ補償ヲ與ヘンケレバナラヌ、其補
償ヲ與ヘマス爲ニ公債ヲ發行スルト云フ
ノガ、此法律案ノ目的デアリマス、何卒御
審議ノ上御協贊アランコトヲ希望致シマス
(拍手)発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00419320604&spkNum=48
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049・秋田清
○議長(秋田〓君) 質疑ノ通〓ハアリマセ
ヌ-日程第二十、右議案ノ審査ヲ付託ス
ヘキ委員ノ選擧ヲ議題ト致シマス
第二十右議案ノ審査ヲ付託スヘキ委
員ノ選擧発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00419320604&spkNum=49
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050・上田孝吉
○上田孝吉君 本案ハ議長指名九名ノ委員
ニ付託セラレンコトヲ望ミマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00419320604&spkNum=50
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051・秋田清
○議長(秋田〓君) 上田君ノ動議ニ御異議
アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00419320604&spkNum=51
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052・秋田清
○議長(秋田〓君) 御異議ナシト認メマ
ス仍テ動議ノ如ク決シマシタ-此場
合、日程第十七、遠洋漁業奬勵法中改正法
律案ヲ上程致シマス、其第一讀會ヲ開キマ
ス-農林大臣後藤文夫君
第十七、遠洋漁業奬勵法中改正法律案
(政府提出)第一讀會
遠洋漁業奬勵法中改正法律案
遠洋漁業奬勵法中左ノ通改正ス
第一條政府ハ遠洋漁業ヲ奬勵スル爲每
年豫算ヲ以テ定ムル金額ノ範圍內ニ於
テ奬勵金ヲ下付シ其ノ他必要ナル費用
ヲ支出ス
第三條中「定ムル構造ニ」ヲ削ル
第五條第一項ヲ左ノ如ク改ム
主務大臣ハ遠洋漁船檢査規程ニ適合シ
タル日本船舶ヲ新造シ又ハ遠洋漁船檢
査規程ニ適合シタル日本船舶ニ命令ヲ
以テ定ムル設備ヲ施シタル船舶所有者
ニ對シ左ノ區別ニ從ヒ漁船奬勵金ヲ下
付スルコトヲ得但シ計畫總噸數百噸以
上ノ鋼製ノ船舶ニ在リテハ第一號ノ規
程ニ拘ラズ船舶ノ評價額ノ百分ノ二十
以內ノ漁船奬勵金ヲ下付スルコトヲ
得
一船舶評價額ノ百分ノ十五以內
二設備評價額ノ百分ノ三十以內
同條第三項中「保藏設備、無線電信裝置、
無線電話裝置及副漁具」ヲ「第一項ノ設
備」二郎人
第十一條第二項中「遠洋漁船船員」ヲ「遠
洋漁船ノ船員若ハ船匠」三位人
第二十一條中「大正二十二年三月三十一
日迄」ヲ「昭和二十二年三月三十一日迄」
三枚入り
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
本法施行前奬勵金下付ノ指令ヲ受ケタル
者ニ付テハ仍從前ノ例ニ依ル
〔國務大臣後藤文夫君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00419320604&spkNum=52
-
053・後藤文夫
○國務大臣(後藤文夫君) 遠洋漁業奬勵法
中改正法律案提出ノ理由ヲ御說明致シマ
ス、遠洋漁業奬勵法ハ明治三十年三月制定
以來、玆ニ三十餘年ノ間、時勢ノ推移ニ順
應致シマシテ、必要ナル改正ヲ行,テ參リ
マシテ、其改正ノ囘數モ前後七囘ニ及ンデ、
常ニ新シイ內容ヲ以テ、遠洋漁業發達ノ根
幹ヲ爲シ來ッタノデアリマス、我國遠洋漁
業ハ、本法ニ依ル奬勵ノ下ニ、今日ノ狀況
ヲ見ルニ至ッタ次第デアリマスガ、翻ッテ我
國遠洋漁業ノ將來ヲ考ヘテ見マスルト天
與ノ地理的關係カラ見マシテモ、尙ホ未ダ
其發展ノ途上ニアルモノト謂ハナケレバナ
リマセヌ、就中、我國漁業ノ中樞ヲ爲シテ
居リマス發動機船漁業ヲシテ、現在ノ漁場
ノ範圍ヲ數倍ニ擴大シテ、南北太平洋ノ上
ニ馳驅操業セシメテ、以テ從業漁船ノ增加
ト漁獲高ノ增大ヲ期シマスルト共ニ、行詰ッ
テ居リマス沿海漁場ノ調節ヲ圖ルノ必要ガ
極メテ痛切デアリマス、然ルニ本法ハ其效
力ガ昭和七年度ヲ以テ終了スルコトヽ相
成ッテ居リマス、斯ノ如キ我國遠洋漁業ノ
情勢ニ鑑ミマシテ、本法ノ效力ヲ存續サセ
テ同時ニ遠洋漁業及漁船ノ進展變移ニ應
ジテ、必要ナル改正ヲ加ヘントスルモノデ
アリマス、卽チ今囘ノ改正ノ主要ナ點ヲ擧
ゲマスレバ、本法ノ施行期間ヲ十五箇年延
長致シマスルト共ニ、普通ノ漁船奬勵金ノ
下付ニ付テハ、奬勵金額ノ算出方法ヲ包括
的ニ單純ニ致シマシテ、船舶ノ評價額ノ百
分ノ十五以內ト改メマシテ、奬勵金ヲ下付
シ得ル設備ノ種類ニ付キマシテモ、從來法
律中ニ規定シテアリマシタノヲ、實情ニ應
ジテ加除シ得ルヤウ命令ヲ以テ定ムルコト
ト致シマシタ、又公共團體其他ノ營利ヲ目
的トシナイ法人ノ行フ遠洋漁船、船員養成
ノ外、新ニ船匠-船大工ノ養成ニ要スル
經費ノ全部又ハ一部ヲ下付シ得ルノ途ヲ開
ク等ノ諸點デアリマス、玆ニ遠洋漁業奬勵
法中改正法律案ヲ提出致シタ次第デアリマ
ス、宜シク御審議ノ上御協贊アランコトヲ
切ニ御願スル次第デアリマス(拍手)発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00419320604&spkNum=53
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054・秋田清
○議長(秋田〓君) 本案ニ對シテハ質疑
ノ通告ハアリマセヌ-日程第十八、右議
案ノ審査ヲ付託スヘキ委員ノ選擧ヲ議題ト
致シマス
第十八右議案ノ審査ヲ付託スヘキ委
員ノ選擧発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00419320604&spkNum=54
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055・上田孝吉
○上田孝吉君 本案ハ政府提出關稅定率法
中改正法律案外一件ノ委員ニ併セ付託セラ
レンコトヲ望ミマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00419320604&spkNum=55
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056・秋田清
○議長(秋田〓君) 上田君ノ動議ニ御異議
ハアリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00419320604&spkNum=56
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057・秋田清
○議長(秋田〓君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ-是ニテ
日程ハ全部議了致シマシタ、次囘ノ日程ハ
公報ヲ以テ御通知致シマス、本日ハ是ニテ
散會
午後五時五分散會
衆議院議事速記錄第三號中正誤
頁段行誤正
八四三〇和見エテ相見エテ
○二九兵匡兵匪
三八宜シカツタ喧シカツタ
一一一一三二八在支那人在支邦人
〇八六五一九茅榧
二一七負擔ノ時ニ負擔百ノ時ニ
四四一六物質ヲ物資ヲ
三1 111第一戰ニ第一線ニ
二四四二五是レ之ヲ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00419320604&spkNum=57
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