1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和七年六月九日(木曜日)
午後一時二十分開議
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議事日程 第五號
昭和七年六月九日
午後一時開議
第一 手形法案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第二 右議案の審査を付託すへき委員の選擧
第三 柳河軌道株式會社所屬軌道補償の爲公債發行に關する法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第四 恩給法中改正法律案(松實喜代太君外一名提出) 第一讀會
第五 負債整理組合法案(鷲野米太郎君外五名提出) 第一讀會
第六 中央卸賣市場法中改正法律案(土倉宗明君提出)) 第一讀會
第七 大正十二年法律第五十二號中改正法律案(司法官試補及辨護士の資格に關する件)(原惣兵衞君外七名提出) 第一讀會の續(委員長報告)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00619320609&spkNum=0
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001・秋田清
○議長(秋田〓君) 諸般ノ報告ヲ致サセマ
ス
〔書記官朗讀〕
一議員ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
身元保證ニ關スル法律案
提出者
一松定吉君內藤正剛君
西脇晉君高橋義次君
川橋豐治郞君
號外昭和七年六月十日
利息制限法中改正法律案
提出者
一松定吉君內藤正剛君
高橋義次君西脇晉君
川橋豐治郞君
刑事訴訟法中改正法律案
提出者
松定吉君內藤正剛君
高橋義次君西脇晉君
川橋豐治郞君
行政執行法中改正法律案
提出者
松定吉君內藤正剛君
高橋義次君西脇晉君
川橋豐治郞君
嫡出子又ハ庶子ニ非サル子ノ名稱ニ關ス
ル法律案
提出者
松定吉君竹田儀一君
內藤正剛君高橋義次君
西脇晉君川橋豐治郞君
計量士法案
提出者
一松定吉君內藤正剛君
高橋義次君西脇晉君
川橋豐治郞君
度量衡法中改正法律案
提出者
松定吉君內藤正剛君
高橋義次君西脇晉君
川橋豐治郞君
明治四十一年法律第三十七號中改正法律
案(地方稅制限ニ關スル件)
提出者
岡田忠彥君山口義一君
久原房之助君靑木精一君
田邊七六君熊谷巖君
岡田伊太郞君田邊熊一君
濱田國松君〓水銀藏君
土井權大君河上哲太君
內野辰次郞君村田虎之助君
長島隆二君川口義久君
松實喜代太君工藤十三雄君
高見之通君倉元要一君
森田政義君原惣兵衞君
中谷貞賴君向井倭雄君
寺田市正君
雪國日本ノ根本對策ニ關スル建議案
提出者
內ヶ崎作三郞君賴母木桂吉君
高木正年君中村繼男君
戶井嘉作君小泉又次郞君
木檜三四郞君鵜澤字八君
土屋〓三郞君小坂順造君
鈴木寅彥君工藤鐵男君
田中降三君町田忠治君
山本厚三君添田敬一郞君
野村嘉六君小山松壽君
西脇晉君平野光雄君
井上剛一君廣瀨德藏君
野田文一郞君田中武雄君
八木逸郞君小山谷藏君
櫻內幸雄君原夫次郞君
俵孫一君小川〓太郞君
荒川五郞君山道襄一君
牧山耕藏君勝正憲君
松田源治君大麻唯男君
石炭輸送鐵道運賃引下ニ關スル建議案
提出者
鈴木辰三郞君佐藤庄太郞君
山崎猛君松尾孝之君
神崎川及猪名川改修ニ關スル建議案
提出者蔭山貞吉君
日光國立公園ノ區域擴張ニ關スル建議案
提出者
高田耘平君岡田喜久治君
栗原彥三郞君
鬼怒川堰堤ニ關スル建議案
提出者
高田耘平君岡田喜久治君
栗原彥三郞君
鬼怒川水利ニ關スル建議案
提出者
高田耘平君岡田喜久治君
栗原彥三郞君
日向川改修ニ關スル建議案
提出者〓水德太郞君
鹽專賣制度廢止ニ關スル建議案
提出者
瀬一二君崎山武夫君
(以上六月七日提出)
國分、霧島神宮兩驛間ニ停車場設置ニ關
スル建議案
提出者崎山武夫君
澱川低水工事改良修築ニ關スル建議案
提出者中野種一郞君
雲仙公園ヲ國立公園ニ指定ニ關スル建議案
提出者
西岡竹次郞君中川觀秀君
向井倭雄君中村不二男君
志波安一郞君牧山耕藏君
森肇君中田正輔君
佐保畢雄君
穴水飯田間鐵道速成ニ關スル建議案
提出者
益谷秀次君靑山憲三君
櫻井兵五郞君
發明奬勵ノ爲補助機關設置ニ關スル建議案
提出者大野伴陸君
國有種馬所設置ニ關スル建議案
提出者
木下成太郞君尾崎天風君
墨國アカプルコ港ニ支倉六右衞門ノ記念
碑建設ニ關スル建議案
提出者
中村嘉壽君守屋榮夫君
菅原傳君星廉平君
小野寺章君宮澤〓作君
大石倫治君佐々木家壽治君
蠶絲業國家統制ニ關スル建議案
提出者
芦田均君土井權大君
失業ノ防止及救濟ニ關スル建議案
提出者
守屋榮夫君喜多孝治君
森田福市君芦田均君
木村正義君世耕弘一君
助川啓四郞君鷲野米太郞君
津雲國利君
手取川改修速成ニ關スル建議案
提出者
箸本太吉君益谷秀次君
靑山憲三君
(以上六月八日提出)
預金部資金運用東京府都市計畫速行ニ關
スル建議案
提出者
牧野賤男君中島守利君
安藤正純君國枝捨次郞君
中野勇治郞君犬養健君
立川太郞君伊藤仁太郞君
前出米藏君本田義成君
津雲國利君磯部尙君
三上英雄君坂本一角君
舞鶴驛〓津驛及雄基驛間船車連帶運輸ニ
關スル建議案
提出者水島彥一郞君
酒官營ニ關スル建議案
提出者
小野寺章君星廉平君
高橋熊次郞君太田正孝君
鈴木安孝君松岡俊三君
大石倫治君片野重脩君
近藤壽市郞君高見之通君
愛知縣下渥美外二郡國營開墾實施ニ關ス
ル建議案
提出者近藤壽市郞君
(以上六月九日提出)
一議員ヨリ提出セラレタル質問主意書左ノ
如シ
沖繩縣振興計畫實施ニ關スル質問主意書
提出者伊禮肇君
(以上六月八日提出)
〔左ノ報〓ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノ爲
玆ニ揭載ス〕
一政府ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
絲價安定融資擔保生絲買收法案
絲價安定融資損失善後處理法案
(以上六月七日提出)
一昨八日貴族院ヨリ受領シタル政府提出案
左ノ如シ
手形法案
一去七日齋藤内閣總理大臣ヨリ左ノ通發令
アリタル旨ノ通牒ヲ受領セリ
拓務省管理局長生駒高常
拓務省殖產局長北島謙次郞
拓務省拓務局長郡山智
第六十二囘帝國議會拓務省所管事務政府
委員被仰付
農林書記官井野碩哉
第六十二囘帝國議會農林省所管事務政府
委員被仰付
一去七日常任委員補闕選擧ノ結果左ノ如シ
第一部選出
決算委員岩瀨亮君(立川太郞君補
關
第二部選出
豫算委員小池四郞君(龜井貫一郞君
補國)
第二部選出
豫算委員福田關次郞君(中野寅吉君
補闕)
第四部選出
豫算委員岡本一巳君(長島隆二君補
關
第五部選出
豫算委員高木正年君(平川松太郞君
補闕)
第五部選出
請願委員村松久義君(原吉郞君補闕)
一去七日議長ニ於テ辭任ヲ許可シタル常任
委員左ノ如シ
第三部選出豫算委員鈴木富士彌君
第四部選出豫算委員岡本一巳君
第六部選出豫算委員松本忠雄君
第六部選出豫算委員加藤鯛一君
第七部選出豫算委員大麻唯男君
第五部選出決算委員山枡儀重君
第七部選出決算委員〓水留三郞君
一去七日常任委員理事補闕選擧ノ結果左ノ
如シ
豫算委員
理事福田關次郞君(理事中野寅吉君
昨六日委員辭任ニ付其ノ補
關
決算委員
理事三善信房君(理事立川太郞君昨
六日委員辭任ニ付其ノ補闕)
一去七日特別委員理事補闕選擧ノ結果左ノ
如シ
關稅定率法中改正法律案(政府提出)外一
件委員
理事高橋熊次郞君(理事今井健彥君
本日委員辭任ニ付其ノ補闕)
市町村義務〓育費國庫負擔法第三條ノ特
例ニ關スル法律案(政府提出)委員
理事大神田軍治君(理事谷原公君昨
六日委員辭任ニ付其ノ補闕)
一去七日委員長互選ノ結果左ノ如シ
決算小委員
委員長蔭山貞吉君
一去七日議長ニ於テ選定シタル委員左ノ如
シ
裁判所構成法中改正法律案(政府提出)外
一件委員
牧野良三君小野寺章君
中谷貞賴君牧野賤男君
上野基三君高見之通君
鳩山秀夫君岩崎幸治郞君
宮古啓三郞君三上英雄君
小林錡君中井一夫君
作田高太郞君原夫次郞君
松定吉君濱野徹太郞君
高橋義次君松谷與二郞君
大正十二年法律第五十二號中改正法律案
(司法官試補及辯護士ノ資格ニ關スル件)
(原惣兵衞君外七名提出)委員
原惣兵衞君松木弘君
靑木雷三郞君小野寺章君
花城永渡君玉置吉之亟君
柳田宗一郞君眞鍋勝君
原淳一郞君
衆議院議員選擧法中改正法律案(〓瀨一
郞君提出)委員
熊谷直太君藤井達也君
加藤久米四郞君佐保畢雄君
松野鶴平君加藤鐐五郞君
芦田均君三上英雄君
竹內友治郞君鳩山秀夫君
星島二郞君向井倭雄君
本田彌市郞君土屋〓三郞君
小山谷藏君山枡儀重君
〓水德太郞君〓瀨一郞君
福島縣矢吹原國營開墾實施ニ關スル建議
案(中野寅吉君提出)外一件委員
大崎〓作君岡本一巳君
崎山武夫君山村豐次郞君
林儀作君尾崎天風君
〓寛君菊池良一君
川橋豐治郞君
絲價安定融資擔保生絲買收法案(政府提
出)外一件委員
宮古啓三郞君木暮武太夫君
西方利馬君山本愼平君
加藤知正君土井權大君
森田福市君河野一郞君
大石倫治君砂田重政君
佐竹直太郞君熊谷巖君
長田桃藏君庄晋太郞君
實岡半之助君森肇君
大本貞太郞君宮本雄一郞君
松本忠雄君田中貢君
高橋守平君木檜三四郞君
三宅磐君原淳一郞君
林平馬君小山邦太郞君
杉山元治郞君
一去七日ニ於ケル特別委員ノ異動左ノ如シ
昭和七年法律第一號中改正法律案(滿洲
事件ニ關スル經費支辨ノ爲公債發行ニ關
スル件)(政府提出)外四件委員
辭任福田關次郞君補關中野寅吉君
關稅定率法中改正法律案(政府提出)外一
件委員
辭任今井健彥君補關高橋熊次郞君
一昨八日常任委員補鬪選擧ノ結果左ノ如シ
第三部選出
豫算委員川崎克君(鈴木富士彌君補
闘)
第四部選出
豫算委員長島隆二君(岡本一巳君補
關
第五部選出
決算委員池田秀雄君(山枡儀重君補
閉
第六部選出
豫算委員佐藤正君(松本忠雄君補鬪)
第六部選出
豫算委員後藤亮一君(加藤鯛一君補
關
第七部選出
豫算委員山枡儀重君(大麻唯男君補
〓
第七部選出
決算委員伊禮肇君(〓水留三郞君補
〓
一昨八日委員長及理事五選ノ結果左ノ如シ
裁判所構成法中改正法律案(政府提出)外
一件委員
委員長牧野良三君
理事
小野寺章君中谷貞賴君
作田高太郞君
大正十二年法律第五十二號中改正法律案
(司法官試補及辯護士ノ資格ニ關スル件)
(原惣兵衞君外七名提出)委員
委員長原惣兵衞君
理事
靑木雷三郞君柳田宗一郞君
衆議院議員選擧法中改正法律案(〓瀨一
郞君提出)委員
委員長熊谷直太君
理事
藤井達也君加藤鐐五郞君
〓水德太郞君
絲價安定融資擔保生絲買收法案(政府提
出)外一件委員
委員長宮古啓三郞君
理事
木暮武太夫君西方利馬君
加藤知正君高橋守平君
小山邦太郞君
福島縣矢吹原國營開墾實施ニ關スル建議
案(中野寅吉君提出)外一件委員
委員長大崎〓作君
理事
崎山武夫君川橋豐治郞君
一昨八日ニ於ケル特別委員ノ異動左ノ如シ
關稅定率法中改正法律案(政府提出)外一
件委員
辭任津崎尙武君補闕高橋熊次郞君
辭任林路一君補闕杉本國太郞君
昭和七年法律第一號中改正法律案(滿洲
事件ニ關スル經費支辨ノ爲公債發行ニ關
スル件)(政府提出)外四件委員
辭任內田信也君補闕金光庸夫君
一昨八日決算小委員ノ異動左ノ如シ
辭任谷原公君補闕田中祐四郞君
辭任松尾四郞君補關中村三之丞君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00619320609&spkNum=1
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002・秋田清
○議長(秋田〓君) 是ヨリ會議ヲ開キマ
ス、日程第一、手形法案ノ第一讀會ヲ開キ
マス-司法大臣小山松吉君
第手形法案(政府提出、貴族院送
付第一讀會
手形法案
手形法
第一編爲替手形
第一章爲替手形ノ振出及方式
第一條爲替手形ニハ左ノ事項ヲ記載ス
ベシ
證劵ノ文言中ニ其ノ證劵ノ作成ニ
用フル語ヲ以テ記載スル爲替手形ナ
ルコトヲ示ス文字
二一定ノ金額ヲ支拂フベキ旨ノ單純
ナル委託
三支拂ヲ爲スベキ者(支拂人)ノ名稱
四滿期ノ表示
五支拂ヲ爲スベキ地ノ表示
六支拂ヲ受ケ又ハ之ヲ受クル者ヲ指
圖スル者ノ名稱
七手形ヲ振出ス日及地ノ表示
八手形ヲ振出ス者(振出人)ノ署名
第二條前條ニ揭グル事項ノ何レカヲ缺
ク證劵ハ爲替手形タル效力ヲ有セズ但
シ次ノ數項ニ規定スル場合ハ此ノ限ニ
在ラズ
滿期ノ記載ナキ爲替手形ハ之ヲ一覽拂
ノモノト看做ス
支拂人ノ名稱ニ附記シタル地ハ特別ノ
表示ナキ限リ之ヲ支拂地ニシテ且支拂
人ノ住所地タルモノト看做ス
振出地ノ記載ナキ爲替手形ハ振出人ノ
名稱ニ附記シタル地ニ於テ之ヲ振出シ
タルモノト看做ス
第三條爲替手形ハ振出人ノ自己指圖ニ
テ之ヲ振出スコトヲ得
爲替手形ハ振出人ノ自己宛ニテ之ヲ振
出スコトヲ得
爲替手形ハ第三者ノ計算ニ於テ之ヲ振
出スコトヲ得
第四條爲替手形ハ支拂人ノ住所地ニ在
ルト又ハ其ノ他ノ地ニ在ルトヲ問ハズ
第三者ノ住所ニ於テ支拂フベキモノト
爲スコトヲ得
第五條一覽拂又ハ一覽後定期拂ノ爲替
手形ニ於テハ振出人ハ手形金額ニ付利
息ヲ生ズベキ旨ノ約定ヲ記載スルコト
ヲ得其ノ他ノ爲替手形ニ於テハ此ノ約
定ノ記載ハ之ヲ爲サザルモノト看做
ス
利率ハ之ヲ手形ニ表示スルコトヲ要ス
其ノ表示ナキトキハ利息ノ約定ノ記載
ハ之ヲ爲サザルモノト看做ス
利息ハ別段ノ日附ノ表示ナキトキハ手
形振出ノ日ヨリ發生ス
第六條爲替手形ノ金額ヲ文字及數字ヲ
以テ記載シタル場合ニ於テ其ノ金額ニ
差異アルトキハ文字ヲ以テ記載シタル
金額ヲ手形金額トス
爲替手形ノ金額ヲ文字ヲ以テ又ハ數字
ヲ以テ重複シテ記載シタル場合ニ於テ
其ノ金額ニ差異アルトキハ最小金額ヲ
手形金額トス
第七條爲替手形ニ手形債務ヲ負擔スル
能力ナキ者ノ署名、僞造ノ署名、假設
人ノ署名又ハ其ノ他ノ事由ニ因リ爲替
手形ノ署名者若ハ其ノ本人ニ義務ヲ負
ハシムルコト能ハザル署名アル場合ト
雖モ他ノ署名者ノ債務ハ之ガ爲其ノ效
力ヲ妨ゲラルルコトナシ
第八條代理權ヲ有セザル者ガ代理人ト
シテ爲替手形ニ署名シタルトキハ自ラ
其ノ手形ニ因リ義務ヲ負フ其ノ者ガ支
拂ヲ爲シタルトキハ本人ト同一ノ權利
ヲ有ス權限ヲ超エタル代理人ニ付亦同
ジ
第九條振出人ハ引受及支拂ヲ擔保ス
振出人ハ引受ヲ擔保セザル旨ヲ記載ス
ルコトヲ得支拂ヲ擔保セザル旨ノ一切
ノ文言ハ之ヲ記載セザルモノト看做ス
第十條未完成ニテ振出シタル爲替手形
ニ豫メ爲シタル合意ト異ル補充ヲ爲シ
タル場合ニ於テハ其ノ違反ハ之ヲ以テ
所持人ニ對抗スルコトヲ得ズ但シ所持
人ガ惡意又ハ重大ナル過失ニ因リ爲替
手形ヲ取得シタルトキハ此ノ限ニ在ラ
ズ
第二章裏書
第十一條爲替手形ハ指圖式ニテ振出サ
ザルトキト雖モ裏書ニ依リテ之ヲ讓渡
スコトヲ得
振出人ガ爲替手形ニ「指圖禁止」ノ文字
又ハ之ト同一ノ意義ヲ有スル文言ヲ記
載シタルトキハ其ノ證劵ハ指名債權ノ
讓渡ニ關スル方式ニ從ヒ且其ノ效力ヲ
以テノミ之ヲ讓渡スコトヲ得
裏書ハ引受ヲ爲シタル又ハ爲サザル支
拂人、振出人其ノ他ノ債務者ニ對シテ
モ之ヲ爲スコトヲ得此等ノ者ハ更ニ手
形ヲ裏書スルコトヲ得
第十二條裏書ハ單純ナルコトヲ要ス裏
書ニ附シタル條件ハ之ヲ記載セザルモ
ノト看做ス
一部ノ裏書ハ之ヲ無效トス
持參人拂ノ裏書ハ白地式裏書ト同一ノ
效力ヲ有ス
第十三條裏書ハ爲替手形又ハ之ト結合
シタル紙片(補箋)ニ之ヲ記載シ裏書人
署名スルコトヲ要ス
裏書ハ被裏書人ヲ指定セズシテ之ヲ爲
シ又ハ單ニ裏書人ノ署名ノミヲ以テ之
ヲ爲スコトヲ得(白地式裏書)此ノ後ノ
場合ニ於テハ裏書ハ爲替手形ノ裏面又
ハ補箋ニ之ヲ爲スニ非ザレバ其ノ效力
ヲ有セズ
第十四條裏書ハ爲替手形ヨリ生ズル一
切ノ權利ヲ移轉ス
裏書ガ白地式ナルトキハ所持人ハ
-自己ノ名稱又ハ他人ノ名稱ヲ以テ
白地ヲ補充スルコトヲ得
二白地式ニ依リ又ハ他人ヲ表示シテ
更ニ手形ヲ裏書スルコトヲ得
三白地ヲ補充セズ且裏書ヲ爲サズシ
テ手形ヲ第三者ニ讓渡スコトヲ得
第十五條裏書人ハ反對ノ文言ナキ限リ
引受及支拂ヲ擔保ス
裏書人ハ新ナル裏書ヲ禁ズルコトヲ得
此ノ場合ニ於テハ其ノ裏書人ハ手形ノ
爾後ノ被裏書人ニ對シ擔保ノ責ヲ負フ
コトナシ
第十六條爲替手形ノ占有者ガ裏書ノ連
續ニ依リ其ノ權利ヲ證明スルトキハ之
ヲ適法ノ所持人ト看做ス最後ノ裏書ガ
白地式ナル場合ト雖モ亦同ジ抹消シタ
ル裏書ハ此ノ關係ニ於テハ之ヲ記載セ
ザルモノト看做ス白地式裏書ニ次デ他
ノ裏書アルトキハ其ノ裏書ヲ爲シタル
者ハ白地式裏書ニ因リテ手形ヲ取得シ
タルモノト看做ス
事由ノ何タルヲ問ハズ爲替手形ノ占有
ヲ失ヒタル者アル場合ニ於テ所持人ガ
前項ノ規定ニ依リ其ノ權利ヲ證明スル
トキハ手形ヲ返還スル義務ヲ負フコト
ナシ但シ所持人ガ惡意又ハ重大ナル過
失ニ因リ之ヲ取得シタルトキハ此ノ限
ニ在ラズ
第十七條爲替手形ニ依リ請求ヲ受ケタ
ル者ハ振出人其ノ他所持人ノ前者ニ對
スル人的關係ニ基ク抗辯ヲ以テ所持人
ニ對抗スルコトヲ得ズ但シ所持人ガ其
ノ債務者ヲ害スルコトヲ知リテ手形ヲ
取得シタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
第十八條裏書ニ「囘收ノ爲」、「取立ノ
爲」、「代理ノ爲」其ノ他單ナル委任ヲ示ス
文言アルトキハ所持人ハ爲替手形ヨリ
生ズル一切ノ權利ヲ行使スルコトヲ得
但シ所持人ハ代理ノ爲ノ裏書ノミヲ爲
スコトヲ得
前項ノ場合ニ於テハ債務者ガ所持人ニ
對抗スルコトヲ得ル抗辯ハ裏書人ニ對
抗スルコトヲ得ベカリシモノニ限ル
代理ノ爲ノ裏書ニ依ル委任ハ委任者ノ
死亡又ハ其ノ者ガ無能力ト爲リタルコ
トニ因リ終了セズ
第十九條裏書ニ「擔保ノ爲」、「質入ノ爲」
其ノ他質權ノ設定ヲ示ス文言アルトキ
ハ所持人ハ爲替手形ヨリ生ズル一切ノ
權利ヲ行使スルコトヲ得但シ所持人ノ
爲シタル裏書ハ代理ノ爲ノ裏書トシテ
ノ效力ノミヲ有ス
債務者ハ裏書人ニ對スル人的關係ニ基
ク抗辯ヲ以テ所持人ニ對抗スルコトヲ
得ズ但シ所持人ガ其ノ債務者ヲ害スル
コトヲ知リテ手形ヲ取得シタルトキハ
此ノ限ニ在ラズ
第二十條滿期後ノ裏書ハ滿期前ノ裏書
ト同一ノ效力ヲ有ス但シ支拂拒絕證書
作成後ノ裏書又ハ支拂拒絕證書作成期
間經過後ノ裏書ハ指名債權ノ讓渡ノ效
力ノミヲ有ス
日附ノ記載ナキ裏書ハ支拂拒絕證書作
成期間經過前ニ之ヲ爲シタルモノト推
定ス
第三章引受
第二十一條爲替手形ノ所持人又ハ單ナ
ル占有者ハ滿期ニ至ル迄引受ノ爲支拂
人ニ其ノ住所ニ於テ之ヲ呈示スルコト
ヲ得
第二十二條振出人ハ爲替手形ニ期間ヲ
定メ又ハ定メズシテ引受ノ爲之ヲ呈示
スベキ旨ヲ記載スルコトヲ得
振出人ハ手形ニ引受ノ爲ノ呈示ヲ禁ズ
ル旨ヲ記載スルコトヲ得但シ手形ガ第
三者方ニテ若ハ支拂人ノ住所地ニ非ザ
ル地ニ於テ支拂フベキモノナルトキ又
ハ一覽後定期拂ナルトキハ此ノ限ニ在
ラズ
振出人ハ一定ノ期日前ニハ引受ノ爲ノ
呈示ヲ爲スベカラザル旨ヲ記載スルコ
トヲ得
各裏書人ハ期間ヲ定メ又ハ定メズシテ
引受ノ爲手形ヲ呈示スベキ旨ヲ記載ス
ルコトヲ得但シ振出人ガ引受ノ爲ノ呈
示ヲ禁ジタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
第二十三條一覽後定期拂ノ爲替手形ハ
其ノ日附ヨリ一年內ニ引受ノ爲之ヲ呈
示スルコトヲ要ス
振出人ハ前項ノ期間ヲ短縮シ又ハ伸長
スルコトヲ得
裏書人ハ前二項ノ期間ヲ短縮スルコト
ヲ得
第二十四條支拂人ハ第一ノ呈示ノ翌日
ニ第二ノ呈示ヲ爲スベキコトヲ請求ス
ルコトヲ得利害關係人ハ此ノ請求ガ拒
絕證書ニ記載セラレタルトキニ限リ之
ニ應ズル呈示ナカリシコトヲ主張スル
コトヲ得
所持人ハ引受ノ爲ニ呈示シタル手形ヲ
支拂人ニ交付スルコトヲ要セズ
第二十五條引受ハ爲替手形ニ之ヲ記載
スベシ引受ハ「引受」其ノ他之ト同一ノ
意義ヲ有スル文字ヲ以テ表示シ支拂人
署名スベシ手形ノ表面ニ爲シタル支拂
人ノ單ナル署名ハ之ヲ引受ト看做ス
一覽後定期拂ノ手形又ハ特別ノ記載ニ
從ヒ一定ノ期間內ニ引受ノ爲ノ呈示ヲ
爲スベキ手形ニ於テハ所持人ガ呈示ノ
日ノ日附ヲ記載スベキコトヲ請求シタ
ル場合ヲ除クノ外引受ニハ之ヲ爲シタ
ル日ノ日附ヲ記載スルコトヲ要ス日附
ノ記載ナキトキハ所持人ハ裏書人及振
出人ニ對スル遡求權ヲ保全スル爲ニハ
適法ノ時期ニ作ラシメタル拒絕證書ニ
依リ其ノ記載ナカリシコトヲ證スルコ
トヲ要ス
第二十六條引受ハ單純ナルベシ但シ支
拂人ハ之ヲ手形金額ノ一部ニ制限スル
コトヲ得
引受ニ依リ爲替手形ノ記載事項ニ加ヘ
タル他ノ變更ハ引受ノ拒絕タル效力ヲ
有ス但シ引受人ハ其ノ引受ノ文言ニ從
ヒテ責任ヲ負フ
第二十七條振出人ガ支拂人ノ住所地ト
異ル支拂地ヲ爲替手形ニ記載シタル場
合ニ於テ第三者方ニテ支拂ヲ爲スベキ
旨ヲ定メザリシトキハ支拂人ハ引受ヲ
爲スニ當リ其ノ第三者ヲ定ムルコトヲ
得之ヲ定メザリシトキハ引受人ハ支拂
地ニ於テ自ラ支拂ヲ爲ス義務ヲ負ヒタ
ルモノト看做ス
手形ガ支拂人ノ住所ニ於テ支拂フベキ
モノナルトキハ支拂人ハ引受ニ於テ支
拂地ニ於ケル支拂ノ場所ヲ定ムルコト
ヲ得
第二十八條支拂人ハ引受ニ因リ滿期ニ
於テ爲替手形ノ支拂ヲ爲ス義務ヲ負
フ
支拂ナキ場合ニ於テハ所持人ハ第四十
八條及第四十九條ノ規定ニ依リテ請求
スルコトヲ得ベキ一切ノ金額ニ付引受
人ニ對シ爲替手形ヨリ生ズル直接ノ請
求權ヲ有ス所持人ガ振出人ナルトキト
雖モ亦同ジ
第二十九條爲替手形ニ引受ヲ記載シタ
ル支拂人ガ其ノ手形ノ返還前ニ之ヲ抹
消シタルトキハ引受ヲ拒ミタルモノト
看做ス抹消ハ證劵ノ返還前ニ之ヲ爲シ
タルモノト推定ス
前項ノ規定ニ拘ラズ支拂人ガ書面ヲ以
テ所持人又ハ手形ニ署名シタル者ニ引
受ノ通知ヲ爲シタルトキハ此等ノ者ニ
對シ引受ノ文言ニ從ヒテ責任ヲ負フ
第四章保證
第三十條爲替手形ノ支拂ハ其ノ金額ノ
全部又ハ一部ニ付保證ニ依リ之ヲ擔保
スルコトヲ得
第三者ハ前項ノ保證ヲ爲スコトヲ得手
形ニ署名シタル者ト雖モ亦同ジ
第三十一條保證ハ爲替手形又ハ補箋ニ
之ヲ爲スベシ
保證ハ「保證」其ノ他之ト同一ノ意義ヲ
有スル文字ヲ以テ表示シ保證人署名ス
ベシ
爲替手形ノ表面ニ爲シタル單ナル署名
ハ之ヲ保證ト看做ス但シ支拂人又ハ振
出人ノ署名ハ此ノ限ニ在ラズ
保證ニハ何人ノ爲ニ之ヲ爲スカヲ表示
スルコトヲ要ス其ノ表示ナキトキハ振
出人ノ爲ニ之ヲ爲シタルモノト看做
ス
第三十二條保證人ハ保證セラレタル者
ト同一ノ責任ヲ負フ
保證ハ其ノ擔保シタル債務ガ方式ノ瑕
疵ヲ除キ他ノ如何ナル事山ニ因リテ無
效ナルトキト雖モ之ヲ有效トス
保證人ガ爲替手形ノ支拂ヲ爲シタルト
キハ保證セラレタル者及其ノ者ノ爲替
手形上ノ債務者ニ對シ爲替手形ヨリ生
ズル權利ヲ取得ス
第五章滿期
第三十三條爲替手形ハ左ノ何レカトシ
テ之ヲ振出スコトヲ得
一一覽拂
二一覽後定期拂
三日附後定期拂
四確定日拂
前項ト異ル滿期又ハ分割拂ノ爲替手形
ハ之ヲ無效トス
第三十四條一覽拂ノ爲替手形ハ呈示ア
リタルトキ之ヲ支拂フベキモノトス此
ノ手形ハ其ノ日附ヨリ一年內ニ支拂ノ
爲之ヲ呈示スルコトヲ要ス振出人ハ此
ノ期間ヲ短縮シ又ハ伸長スルコトヲ得
裏書人ハ此等ノ期間ヲ短縮スルコトヲ
得
振出人ハ一定ノ期日前ニハ一覽拂ノ爲
替手形ヲ支拂ノ爲呈示スルコトヲ得ザ
ル旨ヲ定ムルコトヲ得此ノ場合ニ於テ
呈示ノ期間ハ其ノ期日ヨリ始マル
第三十五條一覽後定期拂ノ爲替手形ノ
滿期ハ引受ノ日附又ハ拒絕證書ノ日附
ニ依リテ之ヲ定ム
拒絕證書アラザル場合ニ於テハ日附ナ
キ引受ハ引受人ニ關スル限リ引受ノ爲
ノ呈示期間ノ末日ニ之ヲ爲シタルモノ
ト看做ス
第三十六條日附後又ハ一覽後一月又ハ
數月拂ノ爲替手形ハ支拂ヲ爲スベキ月
ニ於ケル應當日ヲ以テ滿期トス應當日
ナキトキハ其ノ月ノ末日ヲ以テ滿期ト
ス
日附後又ハ一覽後一月半又ハ數月半拂
ノ爲替手形ニ付テハ先ヅ全月ヲ計算
ス
月ノ始、月ノ央(一月ノ央、二月ノ央等)
又ハ月ノ終ヲ以テ滿期ヲ定メタルトキ
ハ其ノ月ノ一日、十五日又ハ末日ヲ謂
フ
「八日」又ハ「十五日」トハ一週又ハ二週
ニ非ズシテ滿八日又ハ滿十五日ヲ謂
フ
「半月」トハ十五日ノ期間ヲ謂フ
第三十七條振出地ト曆ヲ異ニスル地ニ
於テ確定日ニ支拂フベキ爲替手形ニ付
テハ滿期ノ日ハ支拂地ノ曆ニ依リテ之
ヲ定メタルモノト看做ス
曆ヲ異ニスル二地ノ間ニ振出シタル爲
替手形ガ日附後定期拂ナルトキハ振出
ノ日ヲ支拂地ノ曆ノ應當日ニ換ヘ之ニ
依リテ滿期ヲ定ム
爲替手形ノ呈示期間ハ前項ノ規定ニ從
ヒテ之ヲ計算ス
前三項ノ規定ハ爲替手形ノ文言又ハ證
劵ノ單ナル記載ニ依リ別段ノ意思ヲ知
リ得ベキトキハ之ヲ適用セズ
第六章支拂
第三十八條確定日拂、日附後定期拂又
ハ一覽後定期拂ノ爲替手形ノ所持人ハ
支拂ヲ爲スベキ日又ハ之ニ次グ二取引
日內ニ支拂ノ爲手形ヲ呈示スルコトヲ
要ス
手形交換所ニ於ケル爲替手形ノ呈示ハ
支拂ノ爲ノ呈示タル效力ヲ有ス
第三十九條爲替手形ノ支拂人ハ支拂ヲ
爲スニ當リ所持人ニ對シ手形ニ受取ヲ
證スル記載ヲ爲シテ之ヲ交付スベキコ
トヲ請求スルコトヲ得
所持人ハ一部支拂ヲ拒ムコトヲ得ズ
一部支拂ノ場合ニ於テハ支拂人ハ其ノ
支拂アリタル旨ノ手形上ノ記載及受取
證書ノ交付ヲ請求スルコトヲ得
第四十條爲替手形ノ所持人ハ滿期前ニ
ハ其ノ支拂ヲ受クルコトヲ要セズ
滿期前ニ支拂ヲ爲ス支拂人ハ自己ノ危
險ニ於テ之ヲ爲スモノトス
滿期ニ於テ支拂ヲ爲ス者ハ惡意又ハ重
大ナル過失ナキ限リ其ノ責ヲ免ル此ノ
者ハ裏書ノ連續ノ整否ヲ調査スル義務
アルモ裏書人ノ署名ヲ調査スル義務ナ
シ
第四十一條支拂地ノ通貨ニ非ザル通貨
ヲ以テ支拂フベキ旨ヲ記載シタル爲替
手形ニ付テハ滿期ノ日ニ於ケル價格ニ
依リ其ノ國ノ通貨ヲ以テ支拂ヲ爲スコ
トヲ得債務者ガ支拂ヲ遲滯シタルトキ
ハ所持人ハ其ノ選擇ニ依リ滿期ノ日又
ハ支拂ノ日ノ相場ニ從ヒ其ノ國ノ通貨
ヲ以テ爲替手形ノ金額ヲ支拂フベキコ
トヲ請求スルコトヲ得
外國通貨ノ價格ハ支拂地ノ慣習ニ依リ
之ヲ定ム但シ振出人ハ手形ニ定メタル
換算率ニ依リ支拂金額ヲ計算スベキ旨
ヲ記載スルコトヲ得
前二項ノ規定ハ振出人ガ特種ノ通貨ヲ
以テ支拂フベキ旨(外國通貨現實支拂
文句)ヲ記載シタル場合ニハ之ヲ適用
セズ
振出國ト支拂國トニ於テ同名異價ヲ有
スル通貨ニ依リ爲替手形ノ金額ヲ定メ
タルトキハ支拂地ノ通貨ニ依リテ之ヲ
定メタルモノト推定ス
第四十二條第三十八條ニ規定スル期間
內ニ爲替手形ノ支拂ノ爲ノ呈示ナキト
キハ各債務者ハ所持人ノ費用及危險ニ
於テ手形金額ヲ所轄官署ニ供託スルコ
トヲ得
第七章引受拒絕又ハ支拂拒絕
ニ因ル遡求
第四十三條滿期ニ於テ支拂ナキトキハ
所持人ハ裏書人、振出人其ノ他ノ債務
者ニ對シ其ノ遡求權ヲ行フコトヲ得左
ノ場合ニ於テハ滿期前ト雖モ亦同ジ
一引受ノ全部又ハ一部ノ拒絕アリタ
ルトキ
二引受ヲ爲シタル若ハ爲サザル支拂
人ノ破產ノ場合、其ノ支拂停止ノ場
合又ハ其ノ財產ニ對スル强制執行ガ
效ヲ奏セザル場合
三引受ノ爲ノ呈示ヲ禁ジタル手形ノ
振出人ノ破產ノ場合
第四十四條引受又ハ支拂ノ拒絕ハ公正
證書(引受拒絕證書又ハ支拂拒絕證書)
ニ依リ之ヲ證明スルコトヲ要ス
引受拒絕證書ハ引受ノ爲ノ呈示期間內
ニ之ヲ作ラシムルコトヲ要ス第二十四條
第一項ニ規定スル場合ニ於テ期間ノ末
日ニ第一ノ呈示アリタルトキハ拒絕證
書ハ其ノ翌日之ヲ作ラシムルコトヲ
得
確定日拂、日附後定期拂又ハ一覽後定
期拂ノ爲替手形ノ支拂拒絕證書ハ爲替
手形ノ支拂ヲ爲スベキ日又ハ之ニ次グ
二取引日內ニ之ヲ作ラシムルコトヲ要
ス一覽拂ノ手形ノ支拂拒絕證書ハ引受
拒絕證書ノ作成ニ關シテ前項ニ規定ス
ル條件ニ從ヒ之ヲ作ラシムルコトヲ
要ス
引受拒絕證書アルトキハ支拂ノ爲ノ呈
示及支拂拒絕證書ヲ要セズ
引受ヲ爲シタル若ハ爲サザル支拂人ガ
支拂ヲ停止シタル場合又ハ其ノ財產ニ
對スル强制執行ガ效ヲ奏セザル場合ニ
於テハ所持人ハ支拂人ニ對シ手形ノ支
拂ノ爲ノ呈示ヲ爲シ目拒絕證書ヲ作ラ
シメタル後ニ非ザレバ其ノ遡求權ヲ行
フコトヲ得ズ
引受ヲ爲シタル若ハ爲サザル支拂人ガ
破產ノ宣告ヲ受ケタル場合又ハ引受ノ
爲ノ呈示ヲ禁ジタル手形ノ振出人ガ破
產ノ宣告ヲ受ケタル場合ニ於テ所持人
ガ其ノ遡求權ヲ行フニハ破產決定書ヲ
提出スルヲ以テ足ル
第四十五條所持人ハ拒絕證書作成ノ日
ニ次グ又ハ無費用償還文句アル場合ニ
於テハ呈示ノ日ニ次グ四取引日內ニ自
己ノ裏書人及振出人ニ對シ引受拒絕又
ハ支拂拒絕アリタルコトヲ通知スルコ
トヲ要ス各裏書人ハ通知ヲ受ケタル日
ニ次グ二取引日內ニ前ノ通知者全員ノ
名稱及宛所ヲ示シテ自己ノ受ケタル通
知ヲ自己ノ裏書人ニ通知シ順次振出人
ニ及ブモノトス此ノ期間ハ各其ノ通知
ヲ受ケタル時ヨリ進行ス
前項ノ規定ニ從ヒ爲替手形ノ署名者ニ
通知ヲ爲ストキハ同一期間內ニ其ノ保
證人ニ同一ノ通知ヲ爲スコトヲ要ス
裏書人ガ其ノ宛所ヲ記載セズ又ハ其ノ
記載ガ讀ミ難キ場合ニ於テハ其ノ裏書
人ノ直接ノ前者ニ通知スルヲ以テ足
ル
通知ヲ爲スベキ者ハ如何ナル方法ニ依
リテモ之ヲ爲スコトヲ得單ニ爲替手形
ヲ返付スルニ依リテモ亦之ヲ爲スコト
ヲ得
通知ヲ爲スベキ者ハ適法ノ期間內ニ通
知ヲ爲シタルコトヲ證明スルコトヲ要
ス此ノ期間内ニ通知ヲ爲ス書面ヲ郵便
ニ付シタル場合ニ於テハ其ノ期間ヲ遵
守シタルモノト看做ス
前項ノ期間內ニ通知ヲ爲サザル者ハ其
ノ權利ヲ失フコトナシ但シ過失ニ因リ
テ生ジタル損害アルトキハ爲替手形ノ
金額ヲ超エザル範圍內ニ於テ其ノ賠償
ノ責ニ任ズ
第四十六條振出人、裏書人又ハ保證人
ハ證劵ニ記載シ且署名シタル「無費用
償還」、「拒絕證書不要」ノ文句其ノ他
之ト同一ノ意義ヲ有スル文言ニ依リ所
持人ニ對シ其ノ遡求權ヲ行フ爲ノ引受
拒絕證書又ハ支拂拒絕證書ノ作成ヲ免
除スルコトヲ得
前項ノ文言ハ所持人ニ對シ法定期間內
ニ於ケル爲替手形ノ呈示及通知ノ義務
ヲ免除スルコトナシ期間ノ不遵守ハ所
持人ニ對シ之ヲ援用スル者ニ於テ其ノ
證明ヲ爲スコトヲ要ス
振出人ガ第一項ノ文言ヲ記載シタルト
キハ一切ノ署名者ニ對シ其ノ效力ヲ生
ズ裏書人又ハ保證人ガ之ヲ記載シタル
トキハ其ノ裏書人又ハ保證人ニ對シテ
ノミ其ノ效力ヲ生ズ振出人ガ此ノ文言
ヲ記載シタルニ拘ラズ所持人ガ拒絕證
書ヲ作ラシメタルトキハ其ノ費用ハ所
持人之ヲ負擔ス裏書人又ハ保證人ガ此
ノ文言ヲ記載シタル場合ニ於テ拒絕證
書ノ作成アリタルトキハ一切ノ署名者
ヲシテ其ノ費用ヲ償還セシムルコトヲ
得
第四十七條爲替手形ノ振出、引受、裏
書又ハ保證ヲ爲シタル者ハ所持人ニ對
シ合同シテ其ノ責ニ任ズ
所持人ハ前項ノ債務者ニ對シ其ノ債務
ヲ負ヒタル順序ニ拘ラズ各別又ハ共同
ニ請求ヲ爲スコトヲ得
爲替手形ノ署名者ニシテ之ヲ受戾シタ
ルモノモ同一ノ權利ヲ有ス
債務者ノ一人ニ對スル請求ハ他ノ債務
者ニ對スル請求ヲ妨ゲズ旣ニ請求ヲ受
ケタル者ノ後者ニ對シテモ亦同ジ
第四十八條所持人ハ遡求ヲ受クル者ニ
對シ左ノ金額ヲ請求スルコトヲ得
一引受又ハ支拂アラザリシ爲替手形
ノ金額及利息ノ記載アルトキハ其ノ
利息
二年六分ノ率ニ依ル滿期以後ノ利息
三拒絕證書ノ費用、通知ノ費用及其
ノ他ノ費用
滿期前ニ遡求權ヲ行フトキハ割引ニ依
リ手形金額ヲ減ズ其ノ割引ハ所持人ノ
住所地ニ於ケル遡求ノ日ノ公定割引率
(銀行率)ニ依リ之ヲ計算ス
第四十九條爲替手形ヲ受戾シタル者ハ
其ノ前者ニ對シ左ノ金額ヲ請求スルコ
トヲ得
一共ノ支拂ヒタル總金額
二前號ノ金額ニ對シ年六分ノ率ニ依
リ計算シタル支拂ノ日以後ノ利息
三其ノ支出シタル費用
第五十條遡求ヲ受ケタル又ハ受クベキ
債務者ハ支拂ト引換ニ拒絕證書、受取
ヲ證スル記載ヲ爲シタル計算書及爲替
手形ノ交付ヲ請求スルコトヲ得
爲替手形ヲ受戾シタル裏書人ハ自己及
後者ノ裏書ヲ抹消スルコトヲ得
第五十一條一部引受ノ後ニ遡求權ヲ行
フ場合ニ於テ引受アラザリシ手形金額
ノ支拂ヲ爲ス者ハ其ノ支拂ノ旨ヲ手形
ニ記載スルコト及受取證書ヲ交付スル
コトヲ請求スルコトヲ得又所持人ハ爾
後ノ遡求ヲ爲スコトヲ得シムル爲手形
ノ證明謄本及拒絕證書ヲ交付スルコト
ヲ要ス
第五十二條遡求權ヲ有スル者ハ反對ノ
記載ナキ限リ其ノ前者ノ一人ニ宛テ一
覽拂トシテ振出シ且其ノ者ノ住所ニ於
テ支拂フベキ新手形(戾手形)ニ依リ遡
求ヲ爲スコトヲ得
戾手形ハ第四十八條及第四十九條ニ規
定スル金額ノ外其ノ戾手形ノ仲立料及
印紙稅ヲ含ム
所持人ガ戾手形ヲ振出ス場合ニ於テハ
其ノ金額ハ本手形ノ支拂地ヨリ前者ノ
住所地ニ宛テ振出ス一覽拂ノ爲替手形
ノ相場ニ依リ之ヲ定ム裏書人ガ戾手形
ヲ振出ス場合ニ於テハ其ノ金額ハ戾手
形ノ振出人ガ其ノ住所地ヨリ前者ノ住
所地ニ宛テ振出ス一覽拂手形ノ相場ニ
依リ之ヲ定ム
第五十三條左ノ期間ガ經過シタルトキ
ハ所持人ハ裏書人、振出人其ノ他ノ債
務者ニ對シ其ノ權利ヲ失フ但シ引受人
ニ對シテハ此ノ限ニ在ラズ
一覽拂又ハ一覽後定期拂ノ爲替手
形ノ呈示期間
二引受拒絕證書又ハ支拂拒絕證書ノ
作成期間
三無費用償還文句アル場合ニ於ケル
支拂ノ爲ノ呈示期間
振出人ノ記載シタル期間內ニ引受ノ爲
ノ呈示ヲ爲サザルトキハ所持人ハ支拂
拒絕及引受拒絕ニ因ル遡求權ヲ失フ但
シ其ノ記載ノ文言ニ依リ振出人ガ引受
ノ擔保義務ノミヲ免レントスル意思ヲ
有シタルコトヲ知リ得ベキトキハ此ノ
限ニ在ラズ
裏書ニ呈示期間ノ記載アルトキハ其ノ
裏書人ニ限リ之ヲ援用スルコトヲ得
第五十四條法定ノ期間內ニ於ケル爲替
手形ノ呈示又ハ拒絕證書ノ作成ガ避ク
ベカラザル障碍(國ノ法令ニ依ル禁制
其ノ他ノ不可抗力)ニ因リテ妨ゲラレ
タルトキハ其ノ期間ヲ仲長ス
所持人ハ自己ノ裏書人ニ對シ遲滯ナク
其ノ不可抗力ヲ通知シ且爲替手形又ハ
補箋ニ其ノ通知ヲ記載シ日附ヲ附シテ
之ニ署名スルコトヲ要ス其ノ他ニ付テ
ハ第四十五條ノ規定ヲ準用ス
不可抗力ガ止ミタルトキハ所持人ハ遲
滯ナク引受又ハ支拂ノ爲手形ヲ呈示シ
且必要アルトキハ拒絕證書ヲ作ラシム
ルコトヲ要ス
不可抗力ガ滿期ヨリ三十日ヲ超エテ繼
續スルトキハ呈示又ハ拒絕證書ノ作成
ヲ要セズシテ遡求權ヲ行フコトヲ得
一覽拂又ハ一覽後定期拂ノ爲替手形ニ
付テハ三十日ノ期間ハ呈示期間ノ經過
前ト雖モ所持人ガ其ノ裏書人ニ不可抗
力ノ通知ヲ爲シタル日ヨリ進行ス一覽
後定期拂ノ爲替手形ニ付テハ三十日ノ
期間ニ爲替手形ニ記載シタル一覽後ノ
期間ヲ加フ
所持人又ハ所持人ガ手形ノ呈示若ハ拒
絕證書ノ作成ヲ委任シタル者ニ付テノ
單純ナル人的事由ハ不可抗力ヲ構成ス
ルモノト認メズ
第八章參加
第一節通則
第五十五條振出人、裏書人又ハ保證人
ハ豫備支拂人ヲ記載スルコトヲ得
爲替手形ハ遡求ヲ受クベキ何レノ債務
者ノ爲ニ參加ヲ爲ス者ニ於テモ本章ニ
規定スル條件ニ從ヒ其ノ引受又ハ支拂
ヲ爲スコトヲ得
參加人ハ第三者、支拂人又ハ旣ニ爲替
手形上ノ債務ヲ負フ者タルコトヲ得但
シ引受人ハ此ノ限ニ在ラズ
參加人ハ其ノ被參加人ニ對シ二取引日
內ニ其ノ參加ノ通知ヲ爲スコトヲ要ス
此ノ期間ノ不遵守ノ場合ニ於テ過失ニ
因リテ生ジタル損害アルトキハ參加人
ハ爲替手形ノ金額ヲ超エザル範圍內ニ
於テ其ノ賠償ノ責ニ任ズ
第二節參加引受
第五十六條參加引受ハ引受ノ爲ノ呈示
ヲ禁ゼザル爲替手形ノ所持人ガ滿期前
ニ遡求權ヲ有スル一切ノ場合ニ於テ之
ヲ爲スコトヲ得
爲替手形ニ支拂地ニ於ケル豫備支拂人
ヲ記載シタルトキハ手形ノ所持人ハ其
ノ者ニ爲替手形ヲ呈示シ且拒絕證書ニ
依リ其ノ者ガ引受ヲ拒ミタルコトヲ證
スルニ非ザレバ其ノ記載ヲ爲シタル者
及其ノ後者ニ對シ滿期前ニ遡求權ヲ行
フコトヲ得ズ
參加ノ他ノ場合ニ於テハ所持人ハ參加
引受ヲ拒ムコトヲ得若所持人ガ之ヲ受
諾スルトキハ被參加人及其ノ後者ニ對
シ滿期前ニ有スル遡求權ヲ失フ
第五十七條參加引受ハ爲替手形ニ之ヲ
記載シ參加人署名スベシ參加引受ニハ
被參加人ヲ表示スベシ其ノ表示ナキト
キハ振出人ノ爲ニ之ヲ爲シタルモノト
看做ス
第五十八條參加引受人ハ所持人及被參
加人ヨリ後ノ裏書人ニ對シ被參加人ト
同一ノ義務ヲ負フ
被參加人及其ノ前者ハ參加引受ニ拘ラ
ズ所持人ニ對シ第四十八條ニ規定スル
金額ノ支拂ト引換ニ爲替手形ノ交付ヲ
請求スルコトヲ得拒絕證書及受取ヲ證
スル記載ヲ爲シタル計算書アルトキハ
其ノ交付ヲモ請求スルコトヲ得
第三節參加支拂
第五十九條參加支拂ハ所持人ガ滿期又
ハ滿期前ニ遡求權ヲ有スル一切ノ場合
ニ於テ之ヲ爲スコトヲ得
支拂ハ被參加人ガ支拂ヲ爲スベキ全額
ニ付之フ爲スコトヲ要ス
支拂ハ支拂拒絕證書ヲ作ラシムルコト
ヲ得ベキ最後ノ日ノ翌日迄ニ之ヲ爲ス
コトヲ要ス
第六十條爲替手形ガ支拂地ニ住所ヲ有
スル參加人ニ依リテ引受ケラレタルト
キ又ハ支拂地ニ住所ヲ有スル者ガ豫備
支拂人トシテ記載セラレタルトキハ所
持人ハ此等ノ者ノ全員ニ手形ヲ呈示シ
且必要アルトキハ拒絕證書ヲ作ラシム
ルコトヲ得ベキ最後ノ日ノ翌日迄ニ支
拂拒絕證書ヲ作ラシムルコトヲ要ス
前項ノ期間內ニ拒絕證書ノ作成ナキト
キハ豫備支拂人ヲ記載シタル者又ハ被
參加人及其ノ後ノ裏書人ハ義務ヲ免ル
第六十一條參加支拂ヲ臣ミタル所持人
ハ其ノ支拂ニ因リテ義務ヲ免ルベカリ
シ者ニ對スル遡求權ヲ失フ
第六十二條參加支拂ハ被參加人ヲ表示
シテ爲替手形ニ爲シタル受取ノ記載ニ
依リ之ヲ證スルコトヲ要ス其ノ表示ナ
キトキハ支拂ハ振出人ノ爲ニ之ヲ爲シ
タルモノト看做ス
爲替手形ハ參加支拂人ニ之ヲ交付スル
コトヲ要ス拒絶證書ヲ作ラシメタルト
キハ之ヲモ交付スルコトヲ要ス
第六十三條參加支拂人ハ被參加人及其
ノ者ノ爲替手形上ノ債務者ニ對シ爲替
手形ヨリ生ズル權利ヲ取得ス但シ更ニ
爲替手形ヲ裏書スルコトヲ得ズ
被參加人ヨリ後ノ裏書人ハ義務ヲ免ル
參加支拂ノ競合ノ場合ニ於テハ最モ多
數ノ義務ヲ免レシムルモノ優先ス事情
ヲ知リ此ノ規定ニ反シテ參加シタル者
ハ義務ヲ免ルベカリシ者ニ對スル遡求
權ヲ失フ
第九章複本及謄本
第一節複本
第六十四條爲替手形ハ同一內容ノ數通
ヲ以テ之ヲ振出スコトヲ得
此ノ複本ニハ其ノ證劵ノ文言中ニ番號
ヲ附スルコトヲ要ス之ヲ缺クトキハ各
通ハ之ヲ各別ノ爲替手形ト看做ス
一通限ニテ振出ス旨ノ記載ナキ手形ノ
所持人ハ自己ノ費用ヲ以テ複本ノ交付
ヲ請求スルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ
所持人ハ自己ノ直接ノ裏書人ニ對シテ
其ノ請求ヲ爲シ其ノ裏書人ハ自己ノ裏
書人ニ對シテ手續ヲ爲スコトニ依リテ
之ニ協力シ順次振出人ニ及ブベキモノ
トス各裏書人ハ新ナル複本ニ裏書ヲ再
記スルコトヲ要ス
第六十五條複本ノ一通ノ支拂ハ其ノ支
拂ガ他ノ複本ヲ無效ナラシムル旨ノ記
載ナキトキト雖モ義務ヲ免レシム但シ
支拂人ハ引受ヲ爲シタル各通ニシテ返
還ヲ受ケザルモノニ付責任ヲ負フ
數人ニ各別ニ複本ヲ譲渡シタル裏書人
及其ノ後ノ裏書人ハ其ノ署名アル各通
ニシテ返還ヲ受ケザルモノニ付責任ヲ
負フ
第六十六條引受ノ爲複本ノ一通ヲ送
付シタル者ハ他ノ各通ニ此ノ一通ヲ保
持スル者ノ名稱ヲ記載スベシ其ノ者ハ
他ノ一通ノ正當ナル所持人ニ對シ之ヲ
引渡スコトヲ要ス
保持者ガ引渡ヲ拒ミタルトキハ所持人
ハ拒絕證書ニ依リ左ノ事實ヲ證スルニ
非ザレバ遡求權ヲ行フコトヲ得ズ
引受ノ爲送付シタル一通ガ請求ヲ
爲スモ引渡サレザリシコト
二他ノ一通ヲ以テ引受又ハ支拂ヲ受
クルコト能ハザリシコト
第二節謄本
第六十七條爲替手形ノ所持人ハ其ノ謄
本ヲ作ル權利ヲ有ス
謄本ニハ裏書其ノ他原本ニ揭ゲタル一
切ノ事項ヲ正確ニ再記シ且其ノ末尾ヲ
示スコトヲ要ス
謄本ニハ原本ト同一ノ方法ニ從ヒ且同
一ノ效力ヲ以テ裏書又ハ保證ヲ爲スコ
トヲ得
第六十八條謄本ニハ原本ノ保持者ヲ表
示スベシ保持者ハ謄本ノ正當ナル所持
人ニ對シ其ノ原本ヲ引渡スコトヲ要
ス
保持者ガ引渡ヲ拒ミタルトキハ所持人
ハ拒絕證書ニ依リ原本ガ請求ヲ爲スモ
引渡サレザリシコトヲ證スルニ非ザレ
バ謄本ニ裏書又ハ保證ヲ爲シタル者ニ
對シ遡求權ヲ行フコトヲ得ズ
謄本作成前ニ爲シタル最後ノ裏書ノ後
ニ「爾後裏書ハ謄本ニ爲シタルモノノ
ミ效力ヲ有ス」ノ文句其ノ他之ト同一
ノ意義ヲ有スル文言ガ原本ニ存スルト
キハ原本ニ爲シタル其ノ後ノ裏書ハ之
ヲ無效トス
第十章變造
第六十九條爲替手形ノ文言ノ變造ノ場
合ニ於テハ其ノ變造後ノ署名者ハ變造
シタル文言ニ從ヒテ責任ヲ負ヒ變造前
ノ署名者ハ原文言ニ從ヒテ責任ヲ負
フ
第十一章時效
第七十條引受人ニ對スル爲替手形上ノ
請求權ハ滿期ノ日ヨリ三年ヲ以テ時效
ご飯〓
所持人ノ裏書人及振出人ニ對スル請求
權ハ適法ノ時期ニ作ラシメタル拒絕證
書ノ日附ヨリ無費用償還文句アル場
合ニ於テハ滿期ノ日ヨリ一年ヲ以テ時
效ニ罹ル
裏書人ノ他ノ裏書人及振出人ニ對スル
請求權ハ其ノ裏書人ガ手形ノ受戾ヲ爲
シタル日又ハ其ノ者ガ訴ヲ受ケタル日
ヨリ六月ヲ以テ時效ニ罹ル
第七十一條時效ノ中斷ハ其ノ中斷ノ事
由ガ生ジタル者ニ對シテノミ其ノ效力
ヲ生ズ
第十二章通則
第七十二條滿期ガ法定ノ休日ニ當ル爲
替手形ハ之ニ次グ第一ノ取引日ニ至ル
迄其ノ支拂ヲ請求スルコトヲ得ズ又爲
替手形ニ關スル他ノ行爲殊ニ引受ノ爲
ノ呈示及拒絕證書ノ作成ハ取引日ニ於
テノミ之ヲ爲スコトヲ得
末日ヲ法定ノ休日トスル一定ノ期間內
ニ前項ノ行爲ヲ爲スベキ場合ニ於テハ
期間ハ其ノ滿了ニ次グ第一ノ取引日迄
之ヲ仲長ス期間中ノ休日ハ之ヲ期間ニ
算入ス
第七十三條法定又ハ約定ノ期間ニハ其
ノ初日ヲ算入セズ
第七十四條恩惠日ハ法律上ノモノタル
ト裁判上ノモノタルトヲ問ハズ之ヲ認
メズ
第二編約束手形
第七十五條約束手形ニハ左ノ事項ヲ記
載スベシ
證劵ノ文言中ニ其ノ證劵ノ作成ニ
用フル語ヲ以テ記載スル約束手形ナ
ルコトヲ示ス文字
二一定ノ金額ヲ支拂フベキ旨ノ單純
ナル約束
三滿期ノ表示
四支拂ヲ爲スベキ地ノ表示
五支拂ヲ受ケ又ハ之ヲ受クル者ヲ指
圖スル者ノ名稱
六手形ヲ振出ス日及地ノ表示
七手形ヲ振出ス者(振出人)ノ署名
第七十六條前條ニ揭グル事項ノ何レカ
ヲ缺ク證劵ハ約束手形タル效力ヲ有セ
ズ但シ次ノ數項ニ規定スル場合ハ此ノ
限ニ在ラズ
滿期ノ記載ナキ約束手形ハ之ヲ一覽拂
ノモノト看做ス
振出地ハ特別ノ表示ナキ限リ之ヲ支拂
地ニシテ且振出人ノ住所地タルモノト
看做ス
振出地ノ記載ナキ約束手形ハ振出人ノ
名稱ニ附記シタル地ニ於テ之ヲ振出シ
タルモノト看做ス
第七十七條左ノ事項ニ關スル爲替手形
ニ付テノ規定ハ約束手形ノ性質ニ反セ
ザル限リ之ヲ約束手形ニ準用ス
一裏書(第十一條乃至第二十條)
二滿期(第三十三條乃至第三十七條)
三支拂(第三十八條乃至第四十二條)
四支拂拒絕ニ因ル遡求(第四十三條
乃至第五十條、第五十二條乃至第五
十四條)
五參加支拂(第五十五條、第五十九條
乃至第六十三條)
六謄本(第六十七條及第六十八條)
七變造(第六十九條)
八時效(第七十條及第七十一條)
九休日、期間ノ計算及恩惠日ノ禁止
(第七十二條乃至第七十四條)
第三者方ニテ又ハ支拂人ノ住所地ニ非
ザル地ニ於テ支拂ヲ爲スベキ爲替手形
(第四條及第二十七條)、利息ノ約定(第
五條)、支拂金額ニ關スル記載ノ差異
(第六條)、第七條ニ規定スル條件ノ下
ニ爲サレタル署名ノ效果、權限ナクシ
テ又ハ之ヲ超エテ爲シタル者ノ署名ノ
效果(第八條)及白地爲替手形(第十條)
ニ關スル規定モ亦之ヲ約東手形ニ準用
ス
保證ニ關スル規定(第三十條乃至第三
十二條)モ亦之ヲ約束手形ニ準用ス第
三十一條末項ノ場合ニ於テ何人ノ爲ニ
保證ヲ爲シタルカヲ表示セザルトキハ
約束手形ノ振出人ノ爲ニ之ヲ爲シタル
モノト看做ス
第七十八條約束手形ノ振出人ハ爲替手
形ノ引受人ト同一ノ義務ヲ負フ
一覽後定期拂ノ約束手形ハ第二十三條
ニ規定スル期間內ニ振出人ノ一覽ノ爲
之ヲ呈示スルコトヲ要ス一覽後ノ期間
ハ振出人ガ手形ニ一覽ノ旨ヲ記載シテ
署名シタル日ヨリ進行ス振出人ガ日附
アル一覽ノ旨ノ記載ヲ拒ミタルトキハ
拒絕證書ニ依リテ之ヲ證スルコトヲ要
ス(第二十五條)其ノ日附ハ一覽後ノ期
間ノ初日トス
附則
第七十九條本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以
テ之ヲ定ム
第八十條商法第四編第一章乃至第三章
及商法施行法第百二十四條乃至第百二
十六條ハ之ヲ削除ス但シ商法其ノ他ノ
法令ノ規定ノ適用上之ニ依ルベキ場合
ニ於テハ仍其ノ效力ヲ有ス
第八十一條本法施行前ニ振出シタル爲
替手形及約束手形ニ付テハ仍從前ノ規
定ニ依ル
第八十二條本法ニ於テ署名トアルハ記
名捺印ヲ含ム
第八十三條第三十八條第二項(第七十
七條第一項ニ於テ準用スル場合ヲ含
ム)ノ手形交換所ハ司法大臣之ヲ指定
ス
第八十四條拒絕證書ノ作成ニ關スル事
項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第八十五條爲替手形又ハ約束手形ヨリ
生ジタル權利ガ手續ノ欠缺又ハ時效ニ
因リテ消滅シタルトキト雖モ所持人ハ
振出人、引受人又ハ裏書人ニ對シ其ノ
受ケタル利益ノ限度ニ於テ償還ノ請求
ヲ爲スコトヲ得
第八十六條裏書人ノ他ノ裏書人及振出
人ニ對スル爲替手形上及約束手形上ノ
請求權ノ消滅時效ハ其ノ者ガ訴ヲ受ケ
タル場合ニ在リテハ前者ニ對シ訴訟〓
知ヲ爲スニ因リテ中斷ス
前項ノ規定ニ因リテ中斷シタル時效ハ
裁判ノ確定シタル時ヨリ更ニ其ノ進行
ヲ始ム
第八十七條本法ニ於テ休日トハ祭日、
祝日、日曜日其ノ他ノ一般ノ休日ヲ謂
フ
第八十八條爲替手形及約束手形ニ依リ
義務ヲ負フ者ノ能力ハ其ノ本國法ニ依
リ之ヲ定ム其ノ國ノ法律ガ他國ノ法律
ニ依ルコトヲ定ムルトキハ其ノ他國ノ
法律ヲ適用ス
前項ニ揭グル法律ニ依リ能力ヲ有セザ
ル者ト雖モ他ノ國ノ領域ニ於テ署名ヲ
爲シ其ノ國ノ法律ニ依レバ能力ヲ有ス
ベキトキハ責任ヲ負フ
第八十九條爲替手形上及約束手形上ノ
行爲ノ方式ハ署名ヲ爲シタル地ノ屬ス
ル國ノ法律ニ依リ之ヲ定ム
爲替手形上及約束手形上ノ行爲ガ前項
ノ規定ニ依リ有效ナラザル場合ト雖モ
後ノ行爲ヲ爲シタル地ノ屬スル國ノ法
律ニ依レバ適式ナルトキハ後ノ行爲ハ
前ノ行爲ガ不適式ナルコトニ因リ其ノ
效力ヲ妨ゲラルルコトナシ
日本人ガ外國ニ於テ爲シタル爲替手形
上及約束手形上ノ行爲ハ其ノ行爲ガ日
本ノ法律ニ規定スル方式ニ適合スル限
リ他ノ日本人ニ對シ其ノ效力ヲ有ス
第九十條爲替手形ノ引受人及約束手形
ノ振出人ノ義務ノ效力ハ其ノ證劵ノ支
拂地ノ屬スル國ノ法律ニ依リ之ヲ定ム
前項ニ揭グル者ヲ除キ爲替手形又ハ約
束手形ニ依リ債務ヲ負フ者ノ署名ヨリ
生ズル效力ハ其ノ署名ヲ爲シタル地ノ
屬スル國ノ法律ニ依リ之ヲ定ム但シ遡
求權ヲ行使スル期間ハ一切ノ署名者ニ
付證劵ノ振出地ノ屬スル國ノ法律ニ依
リ之ヲ定ム
第九十一條爲替手形ノ所持人ガ證劵ノ
振出ノ原因タル債權ヲ取得スルヤ否ヤ
ハ證劵ノ振出地ノ屬スル國ノ法律ニ依
リ之ヲ定ム
第九十二條爲替手形ノ引受ヲ手形金額
ノ一部ニ制限シ得ルヤ否ヤ及所持人ニ
一部支拂ヲ受諾スル義務アリヤ否ヤハ
支拂地ノ屬スル國ノ法律ニ依リ之ヲ定
ム
前項ノ規定ハ約束手形ノ支拂ニ之ヲ準
用ス
第九十三條拒絕證書ノ方式及作成期間
其ノ他爲替手形上及約束手形上ノ權利
ノ行使又ハ保存ニ必要ナル行爲ノ方式
ハ拒絕證書ヲ作ルベキ地又ハ其ノ行爲
ヲ爲スベキ地ノ屬スル國ノ法律ニ依リ
之ヲ定ム
第九十四條爲替手形又ハ約束手形ノ喪
失又ハ盗難ノ場合ニ爲スベキ手續ハ支
拂地ノ屬スル國ノ法律ニ依リ之ヲ定
ム
〔國務大臣小山松吉君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00619320609&spkNum=2
-
003・小山松吉
○國務大臣(小山松吉君) 只今議題トナリ
マシタ手形法案ニ付テ御說明ヲ致シマス
政府ニ於キマシテハ現行商法中時勢ノ進
運ニ伴ヒマシテ改正ヲ要スベキモノアリト
認メマシテ、曩ニ其要綱ヲ如何ニスベキカ
ト云フコトヲ、法制審議會ニ諮問致シタノ
デアリマスガ、其中爲替手形及約束手形ニ
關スル規定ニ付キマシテハ同會ニ於テ之
ヲ爲替手形及約束手形ニ關シ統一法ヲ制定
スル條約ノ附屬書トナッテ居リマスル手形
統一法ノ如ク、改正スルヲ相當ト認ムル旨
ノ決議ガアリマシテ、法制審議會總裁ヨリ
其旨ノ答申ガアッタノデアリマシタ、此手形
統一法ヲ制定スル條約ナルモノハ、如何ナ
ルモノデアルカト云フコトヲ申シマスル
ト、此條約ハ一昨年、卽チ昭和五年ノ國際
聯盟招聘ノ下ニ開カレマシタ手形及小切手
法規統一ノ、國際會議ニ於テ成立シタモノ
デアリマシテ、我國モ同年九月五日調印ヲ
致シタノデアリマス、之ニ依リマスレバ、各
締約國ハ條約ノ附屬書タル手形統一法ヲ、
各自ノ領域內ニ施行スルコトヲ約スト云フ
コトニナッテ居リマスルカラ、締約國タル各
國ハ孰レモ之ヲ國內法トシテ施行セネバナ
ラヌノデアリマス、而シテ此手形統一法ノ
沿革ヲ申シマスルト、此統一法ハ明治四十
五年ニ和蘭「ヘーグ」デ開カレマシタ手形法
規統一、萬國國會議ニ於テ成立致シタモノデ
アリマシテ、其後多年歐洲各國竝ニ我國ニ
於テモ〓究致シテ居リマシタ手形統一規則
ト云フモノヲ骨子ト致シマシテ、之ニ多少
ノ修正ヲ加ヘタ程度ノモノデアリマシテ、
之ヲ我ガ現行商法ニ比較致シマスルノニ、
實際上ニ於テモ、理論上ニ於テモ優レタ點
ガ尠クナイノデアリマス、仍テ政府ハ右手
形統一法ニ基キマシテ、司法省內ニ委員會
ヲ設ケ、愼重ニ調査審議ヲ重ネマシタ結果、
手形法案ノ脫稿ヲ見タノデアリマス、尙ホ
右「ジユネーブ」ノ條約ニハ各國ガ批准ヲ
爲シ得ベキ期限ガ定メテアリマシテ、ソレ
ハ千九百三十二年、卽チ本年ノ八月三十一
日迄デアリマシテ、目ツ其條約ノ效力ガ發生
スル爲ニハ、國際聯盟理事會ニ常任代表者
ヲ出シテ居リマス聯盟國ノ、三箇國ヲ包含致
シマシタル七箇國ノ批准又ハ加入ガアルコ
トヲ必要トシテ居リマスカラ、聯盟理事會
ノ常任代表者ヲ出シテ居リマス、我國ト致
シマシテハ曩ノ「ヘーグ」ノ手形法規統一
萬國會議以來直チニ〓究ヲ重ネテ、漸ク其
一成果ヲ見マシタ所ノ手形統一ノ事業ニ付
キマシテ、國際的ニ協力シテ行ク上ニモ、
責任ノアル立場ニアリマスルノデ、右批准
期限ノ定メアル關係ヨリ致シマシテ、今議
會ニ本法案ヲ提出シタ次第デアリマス
本法案ハ我ガ現行商法第四編中ノ、爲替
手形及約束手形ノ規定ノ部分ニ代ハルモノ
デアリマス、然ルニ之ヲ商法ノ一部改正ト
致シマセズシテ、別ノ法律ト致シマシタノ
ハ立法上竝ニ實際上ノ便宜ニ出デタモノ
ニ外ナラナイノデアリマス
其內容ハ第一編、爲替手形、第二編、約束
手形及附則ノ三ツノ部分ヨリ成立ッテ居リ
マシテ、其中第一編ト第二編ハ右手形統
一法ヲ飜譯シタル部分デアリマシテ、附則
ハ手形法ヲ施行スルニ必要ナル規定ノ外、
國際手形私法ノ規定ヲ包含シテ居リマス、
此國際手形私法ノ部分ハ、是モ統一法制定
條約ト同時ニ成立シタモノデアリマシテ、
是ト姉妹關係ニアリマスル手形ニ關シ、法
律ノ或ル牴觸ヲ解決スル爲ノ條約ニ基クノ
デアリマス
本法案第一編、第二編ノ部分ニ於テ、我
ガ現行商法ヨリ優レテ居ル點ノ尠クナイト
云フコトヲ申上ゲマシタガ、其極ク主要ナ
ルモノヲ申シマスレバ、手形上ノ前者ニ對
スル遡求ニ付キマシテ、擔保請求ト償還請
求ノ二ツノ權利ヲ認メルコトナク、償還請
求ノ一ツノ權利ノミヲ認メタコト、一覽拂
及一覽後定期拂ノ手形ニ利息文句ヲ認メタ
コト、質入裏書ヲ認メタコト、手形交換所
ニ於ケル手形ノ呈示ニ、支拂呈示タルノ效
力ヲ認メタコト、不可抗力ノ場合ニ遡求權
保全行爲ノ期間ノ仲長ヲ認メタコト等デア
リマスガ、此等ノ詳細ニ付キマシテハ、何
レ特別委員會ニ於キマシテ、御說明致ス機
會ガアラウト存ジマス、何卒愼重御審議ノ
上、速ニ御協賛アランコトヲ切望致シマス
(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00619320609&spkNum=3
-
004・秋田清
○議長(秋田一君) 本案ニ對スル質疑ヲ許
シマス-原夫次郞君
〔原夫次郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00619320609&spkNum=4
-
005・原夫次郎
○原夫次郞君 諸君、私ハ只今議題ト相
成ッテ居ル手形法ノ問題ニ付キマシテ、條約
ト法律トノ關係ニ付イテ、國務大臣ニ質疑
ヲ試ミントスルモノデアリマス、大體司法
大臣カラ提案ノ理由ヲ御說明ニ相成リマシ
タ如ク、併ナガラ說イテ審カデハナカッタ
ノデアリマスルガ、此提案ニ相成シタ手形法
ノ改正ハ、實ニ我ガ商法ノ大變革デアリマ
ス、現行商法ノ中デ最モ特殊ノ規定ヲ有ス
ル所ノ手形法ニ關スル規定ハ其重大ナル
改正ヲ爲サントセラレル趣意何處ニアル
カト申シマシタナラバ、私共ノ了解致シテ
居ル所ニ依リマスト、一昨年ノ六月七日-
貴族院ノ司法大臣ノ御說明ニ依ルト、條約
ヲ調印致シタノガ、一昨年ノ九月五日トア
リマスケレドモ、此條約文ノ原文ヲ見マス
ルト、一昨年ノ六月七日ニ調印ニ相成クテ
居ルヤウデアリマスルガ、兎ニモ角ニモ一
昨年ノ六月七日ニ「ジユネーブ」ニ於キマシ
テ、我ガ帝國全權ガ爲替手形及約束手形ニ
關シテ、統一法ヲ制定スル所ノ國際條約ニ
出發ヲ致シテ居ルノハ明カデアリマス、卽
チ此統一法ノ條約ニ於キマシテハ、未ダ曾
テ見ザル所ノ條約ノ規定方デアリマシ
テ、此條約ニハ第一附屬書ナルモノト、第
二附屬書ナルモノガク。付イテ居リマシテ、
第一附屬書ニ於キマシテハ、第一條乃至第
七十八條マデノ規定ヲ致シテ居ル、全ク爲
替手形及約束手形ノ方法規定自體ヲ、總テ
之ニ網羅ヲ致シテ居ル所ノ所謂統一法デア
リマス、次イデ又第二附屬書ナルモノヲ附
加致シマシテ、是ハ第一條カラ第二十二條
ニ亙ッテ居ルモノデアリマスルガ、玆ニ色々
ナ留保規定ヲ設ケマシテ、各國ガ此條約ヲ
批准スル場合ニ於テハ此第二附屬書ノ中
カラ留保スベキ條文ヲ選擇致シテ、批准ヲ
爲シテ宜シイト云フ規定ニ相成"テ居ルノ
デアリマス、デアリマスカラ、此條約ノ本
體カラ申シマシタナラバ、各國ニ於テ國內
法デ制定ヲ致ス所ノ法律ヲ國際會議ニ於テ
直接ニ規定ヲ設ケテ、而シテ條約ニ依ッテ
各國ガ皆此國際條約ニ規定シタル所ノ法律
ヲ、其儘各國ニ之ヲ制定セントスル所ノ條
約デアリマス、卽チ只今提案セラレタル所
ノ手形法ハ、全ク此條約附屬書ノ飜譯ガ、
玆ニ提案セラレタモノト見ルコトガ至當デ
アリマス、斯ノ如キ立法ノ歷史カラ申シマ
シタナラバ、私玆ニ我國ノ條約ト法律トノ
關係ニ付テ、我ガ憲法上ノ問題トシテ、責
任アル內閣國務大臣カラ言明ヲ得タイノデ
アリマス
大體私ハ此點ニ向"テ四箇ノ質疑ヲ試ミ
ルモノデアリマスルガ、其第一ニハ言フ
マデモナク憲法ニ於テハ、天皇ノ大權事項、
臣民ノ權利義務ニ關スル法律事項ニ分類ガ
致シテアリマスルガ、而モ、我國ノ天皇ハ
統治權ヲ總攬シ給フテ居ルノデアリマスル
カラ、法律ニ致シテモ、條約ノ締結權ニ致
シマシテモ、皆天皇ノ統治權ニ屬シテ居ル
ト云フコトハ申スマデモナイコトデアリ
マスルガ、併ナガラ天皇ガ國政ヲ臠ハシ遊
バス場合ニ於キマシテハ、法律ニ於テハ帝
國議會ノ協贊ヲ經テ、此統治權ヲ行ヒ給フ
ノデアリマスカラ、ドウシテモ帝國議會ノ
議ヲ經サセラレナケレバナラナイ、所ガ條
約ニ至リマシタナラバ、全ク天皇ノ大權ニ
屬シ、親ラ此條約ヲ締結シ遊バスノデアリ
マスル、玆ニ私ハ疑義ヲ有スルノデアリマ
ス、歐羅巴ノ國々ニ於キマシテハ、條約ニ
於キマシテモ色々ナ種類ガアッテ、國ト國ト
ノ關係ノミナラズ、條約自體ニ於テ、其
國ノ國民ニ直接覊東力ヲ持ツ所ノ條約ガア
ルノデアリマスカラ、總テノ條約ハ皆其
國ノ議會ノ議ヲ經ナケレバ締結スルコトハ
出來ナイト云フ憲法ノ規定ヲ持ッテ居ル國
國ガ多イノデアリマスケレドモ、我國ニ於
テハサウデハナイノデアリマス、是ニ於テ
カ、此條約ノ大權事項カラ見マシタナラバ
天皇ハ此度ノ此統一法ニ關スル條約ニ於キ
マシテモ、其條約ヲ御批准ニ相成リ、而モ
我國ノ明治四十年ニ公布セラレマシタル公
式令ニ依ッテ、國民ニ之ヲ公布致サレタル
場合ニ於テハ、國民ハ其條約ニ對シテ法律
ト同樣ナル服從ノ義務ヲ有シ、覊束力ヲ持
ツノハ當然デアリマス、斯ノ如キ條約ノ關
係カラ申シマシタナラバ國內法ニ瓦ル所
ノ此度ノ手形法ノ如キ法律ハ國內法デハ
ドウシテモ特別ナル法規ヲ、法律ヲ以テ制
定ヲ致サナケレバナラヌ、帝國議會ノ協贊
ヲ求メナケレバナラヌ、斯ウ云フ關係デア
ルト致シマシタナラバ、斯ノ如キ條約ハ
調印ヲ致スト、ソレカラ後如何ナル調和ノ
方法ヲ執ラルヽモノデアルカ、卽チ先ヅ其
調印ヲ致シマシタル所ノ條約ヲ、批准前ニ
於テ國內法ヲ先ヅ制定ヲ致スガ爲ニ、帝國
議會ノ協賛ヲ經ル所ノ法律ノ提案ヲ致スノ
デアルカ、或ハ又條約ハ條約トシテ、樞密
顧問ノ諮詢ヲ經テ、此條約ヲ批准セラルヽ
ト云フ方途ニ出デラルヽノデアルカ、而シ
テ條約ヲ締結セラレタ後ニ於テー條約ヲ
批准セラレタル後ニ於テ、更ニ國內法ヲ制
定セラレルト云フ方途ニ出デラレルノデア
ルカ、何レヲ先トシ何レヲ後トセラレルノ
デアルカ、今後ニ亙リ色々斯ノ如キ問題ガ
起クテ來ルニ相違ナイノデアリマスカラ、私
ハ此場合ニ於テ責任アル國務大臣カラ御答
辯ヲ得テ置キタイノデアリマス
第二ニハ若シ斯ノ如ク條約ハ條約デ批
准ヲセラレナケレバナラヌ、國內法ハ國內
法デ帝國議會ノ議ヲ經ナケレバナラヌト云
フ立場ニ置カルヽ場合ニ於キマシテハ、若
シモ條約ノ批准ヲ致サレテ、而シテ是ガ公
布ニ相成シテ、國民ハ之ニ對シテ覊束力ヲ有
シマシテモ、帝國議會ノ協贊ヲ經ル場合ニ
於テ、若シ色々ナル事情上カラ、此法律ヲ
協贊スル時ニ、其批准セラレタル條約ノ條
項ト相違スル協贊ヲ與ヘマシタル場合ニ於
テハ政府ハ如何ニ之ヲ處理セントスルノ
デアルカ、是ガ第二ノ質疑デアリマス、卽
チ條約ト法律トガ遂ニ矛盾スル場合ガナイ
トモ限ラナイノデアリマスガ、此場合ニハ
如何ニ之ヲ處理スルノデアルカ
第三ニハ、例ヘバ此度ノ如ク條約ハ未ダ
ソットシテ其儘樞密院ノ御諮詢ヲ奏請ヲ致
サナイ、斯ウ云フ場合ニ於テ、先ヅ先ニ此
手形法ト云フモノヲ議會ニ懸ケテ、議會ノ
協贊ヲ經テ、先ニ國內法ヲ拵ヘテ置イテ、
サウシテ後ニ樞密院ニ諮詢ヲ奏請スル斯
ウ云フ手續ヲ取ラル場合ニ於キマシテ
ハ帝國議會デハ此法律案ヲ審議ヲ致シ、
色々之ニ付テ意見ヲ述べ、或ハ修正ヲシナ
ケレバナラヌカモ知レナイ、サウ云フ場合
ニ於テ、後ニ大本ノ條約ガ樞密院ニ御諮詢
ニ相成シタ場合ニ於テ、樞密院ノ意見ト帝國
議會ノ意見トガ此間ニ相違致シタ場合ニ於
テハ、政府ハ之ヲ如何ニ處理スル考ヲ持ッテ
居ルノデアルカ、是ガ第三點デアリマス
第四點ト致シマシテハ、此手形統一法ノ
國際會議ニハ亞米利加、英吉利、露西亞ノ
如キ、我國ト手形關係ニ於テ關係ガ比較的
多イト見得ベキ諸外國ハ何レモ此萬國會
議ニハ加入ヲ致シテ居ナイノデアリマス
主ニ加入ヲ致シテ居ルノハ歐羅巴大陸ノ諸
國ガ多イノデアリマスガ、サウ致スト云フ
ト、我國ハ主ニ英、米、露西亞トハ手形ノ
統一ヲ缺イテ、其他ノ國々ト手形ヲ統一ヲ
致シテ、果シテ如何ナル實益ガアルノデア
ルカ、又我國ガ斯ノ多キ手形統一法ニ依。ツ
テ、自ラ進ンデ我國ノ法制ニ覊束ヲ受ケル
ガ如キ、拘束ヲ受ケルガ如キ國際會議ニ加
入スルニ至リタルノハ果シテ如何ナル所
ニ原因シテ、如何ナル所見ニ依ッテ斯ノ如キ
會議ニ加入ヲ致シタルモノデアルカ、是ガ
私ノ御尋致サントスル所ノ第四點デアリマ
ス
最後ニ只今提案ニナッテ居ル所ノ此手形
法ハ、殆ド百箇條程アル所ノ浩瀚ナル大法
興デアリマス、曩ニモ申上ゲマシタル如ク、
我ガ商法中ノ最モ主ナル手形ニ關スル大改
正ノ法典デアリマス、此大法典ヲ臨時議會
ニ於テ、餘ス所僅ニ數日ヨリカナイ今日御
提案ニ相成シテ、ドウシテ是ガ審議協賛ヲ得
ルコトガ出來ヨウト思ハレルノデアリマセ
ウカ、委員會ニ掛ケルト云フコトスラモ、
私共殆ド常識上カラ割出シマシテ、ドウシ
テ此百箇條ノ大キナ法案ヲ、鵜呑ミニスルコ
トガ出來マセウカ、是ハ萬國統一法ノ條約
ノ批准期間ガ、來ル九月一日デアルト云フコ
トノ故ヲ以テ、今日非常ニ御急ギニナルト云
フコトモ諒承ヲ致スノデアリマスガ、然ラ
バ旣ニ一昨年ノ六月カラ一一年有餘ヲ經過致
シテ居ル今日マデニ、何故ニ此法案ヲ議會ノ
協賛ヲ經ルヤウナ手順ニ、運バレナカッタノ
デアリマセウ、幸ニモ此度ハ臨時議會ガ召
集ニ相成シタノデアリマスルガ、若シモ此臨
時議會ガ召集ニ相成ラナカッタトスルナラ
バ其場合ニ於テハ、政府ハ果シテ此統一
法ニ付テ如何ナル手段ヲ執ラウト致シタノ
デアルカ、先ツ條約ノ批准ヲ致シテ置イテ、
而シテ國內法ハ追ッテ議會ノ開會ト同時ニ、
此法案ヲ提出シヨウト致シタノデアルカ、
其邊ノ事情ヲ承ッテ置キタイノデアリマス、
若モ此場合數日ノ間ニ、此大問題ヲ議了致
サナケレバナラヌト云フコトデアリマスルナ
ラバ是ハ委員會ニ懸ケルマデモナク本
會議デ鵜呑ミニ致セト云フコトノ御趣旨デ
アルト同樣ト思フノデアリマス、是ニ於テ
カ私ハ政府ハ斯ル國民ノ權利義務ニ重大
ナル關係ヲ有スル所ノ、而モ我國ニ於テ相
當ニ手形取引ニ付テハ、慣習ノ上ニ發達ヲ
致シ來ッテ居ルノミナラズ、又我國ノ從來行
ハレタル所ノ商法ニ付テハ、十分ナル關心
ヲ持チ來ッテ居ルノデアリマス、此場合ニ於
テ是ガ改正ヲ行ハントスル斯ノ如キ大法典
ニ向ヒマシテハ我ガ議院法ノ示スガ如ク
繼續委員ヲ設ケラレテ、而シテ具サニ此繼
續委員ニ依ッテ、愼重ナル審議ヲ爲サシメ、
而シテ更ニ其審議ガ終リマシテカラ、來ル
ベキ臨時議會-デモ御召集ニ相成ッテ、特
ニ此重大ナル法案ヲ議了ヲ致スト云フヤウ
ナ方途ニ出ヅルト云フコトガ、我ガ憲法政
治ノ運用ノ最モ宜シキヲ得タモノヂヤナイ
カト考フルノデアリマス、ドウデアッテモ此
大キナ法案ハ、此數日內ニ議了致サナイト
云フト、條約ノ方ニ不都合ヲ生ズルト言ウ
テ、無理押シニ此議會デ以テ協贊ヲ强ヒラ
レルト云フコトニ相成リマシタナラバ其
結果如何ト云フコトハ、私ガ玆ニ彼此レ申
スマデモナイ、サウ云フ點ニ向ッテ御親切ナ
ル國務大臣ヲ代表致サレタル方ニ依ッテ
御辯明ヲ求メタイノデアリマス、尙ホ案其
モノニ付テノ詳細ナル質問ニ至リマシタナ
ラバ、何レ委員會等ニ於テ御尋ヲ致シタイ
ト思フノデアリマス(拍手)
〔國務大臣小山松吉君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00619320609&spkNum=5
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006・小山松吉
○國務大臣(小山松吉君) 只今原君ヨリノ
御質問ニ對シテ御答ヲ致シマス、只今御質
問中ニ御述ニナリマシタ御言葉ニ依ッテ明
カデアリマスル如ク、我國ニ於キマシテハ、
條約ト條約ニ關係ノアル國內法トノ關係
ハ、外國トハ餘程違ッテ居リマス、原君ノ御
述ニナリマシタヤウニ、條約ハ憲法十三條
ニ依クテ大權事項デアリマスルカラ、條約ガ
成立致シマシタ後ニ、之ヲ御批准ニナッテ、ソ
レヲ國內ニ公式令ニ依ッテ公布スルト云フ
コトモ、一ツノ御意見カモ知レマセヌガ、
政府ト致シマシテハ條約ニ依ッテ成立ッテ
居リマスル或ル規定ガ、之ヲ國內ニ施行ス
ルニ當リマシテ、國內法トシテ制定スベキ
モノデアリマスルナラバ、是ハ議會ノ協贊ヲ
經ベキモノデアルト解シテ居ルノデアリマ
ス只今提出致シマシタ手形法案ハ條約
ニ依ッテ成立ッテ居ルモノデハアリマスルケ
レドモ、國內法ト致シマシテハ、現行商法
ノ爲替手形、約東手形ノ規定ニ代ルベキモ
ノデアリマシテ、又現行法ノ改正トナルベ
キモノデアリマス、仍テ政府ハ未ダ御批准
ヲ仰ガザル以前ニ於テ、國內法トシテ手形
法案ヲ議會ニ提出シタ次第デアリマス
次ニ御質問ノ第一第二ノコトヲ併セテ
申述ベマスルガ、然ラバドウ云フ調和ヲ執
ラルヽカト云フ御尋ニ對シマシテハ御批
准以前ニ於テ、議會ノ協贊ヲ經ルコトヲ必
要トシテ議會ニ出シタノデアリマス、斯ウ
御答ヲ致シマス
ソレカラ第三ニ對シテハ若シ帝國議會
ノ協贊ヲ求メマシテ、サウシテ帝國議會ニ
於テ修正セラルヽヤウナコトガアッタ場合
ニハドウデアルカト云フ御尋デアリマス
ルガ、其場合ニハ窃ニ考ヘマスルノニ條約
ノ御批准ニ支障ヲ生ズルノデハナカラウカ
ト思フノデアリマス
ソレカラ第四デアリマス、第四ノ點ハ、
英吉利、亞米利加及露亞西ハ之ニ加入シテ
居ナイ、然ルニ斯ウ云フ條約ニ加入シテ、
果シテ利益ガアルカト云フ趣旨ノ御尋デア
リマスルガ、英米兩國ハ特殊ノ事情ニ依テ
入ッテハ居リマセヌガ、此手形法案ハ現行法
ヨリモ英米ノ法理ヲ多ク採入レテ居ルノデ
アリマス、隨テ從來ノ法ニ比較シマスルト、
國際的ノモノデアルト云フコトハ言ヘヨウ
ト思フノデアリマス、手形ノ交通上現行法
ヨリハ確ニ利益アリト云フコトヲ、政府ハ
認メテ居ル次第デアリマス
ソレカラ第五ノ御質問ト致シマシテ、浩
瀚ナル手形法案ヲ短時日ノ此議會ニ提出シ
タノハドウ云フ譯デアルカト云フ御趣意
デアリマスガ、是ハ御尤ナ御質問デアリマ
シテ、政府ト致シマシテハ、調印以後、調査
準備ニ日時ヲ要シマシテ、遂ニ今日ノー
今議會ニ提出スルヤウニナフタ次第デアリ
マスルガ、併シ是ハ帝國議會ニ於テハ、法律
ニ精通セラルヽ各位ノ澤山居ラルヽコトデ
アリマスカラ、ドウゾ十分御審議ノ上デ、
御意見ヲ御述べ下サイマシテ、御審議セラ
レルコトニ於テハ、政府ハ決シテ異存ハナ
イノデアリマス、十分ニ御審議ヲ願ヒマシ
テ、御協贊ヲ請フ次第デアリマス、是ダケ
御答致シテ置キマス
〔原夫次郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00619320609&spkNum=6
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007・原夫次郎
○原夫次郞君 只今ノ御答辯ニ對シマシ
テ、私ハ尙ホ一點ダケ明瞭ニ致シテ置キタ
イト思フノデアリマスルガ、ソレハ此國內
法ヲ制定スル場合ニ於テ、若シモ帝國議會
デ、此條約ノ殆ド飜譯文トモ申サルヽ所ノ、
此改正案ニ修正ガ行ハレタル場合ニ於キマ
シテハ、後ニ來ルベキ御批准ニ對シテ支障
ヲ來スダラウ、是ダケノ御答辯デアッタノデ
アリマスル、私其點ニ向ッテ、此後ニ御批准
ニ支障ヲ來スト云フコトハ、御批准ガ出來
ナイト云フ意味ニモ解セラルヽノデアリマ
ス、又若シモ吾々ハ此萬國會議ノ條約ノ飜
譯法案ヲ押付ケラレテ、ソレデ直グ協贊ヲ
與ヘマシタ場合ニ、今度ハアベコベニ條約
本體ガ樞密院ノ議ニ懸リマシタル場合ニ於
テ、樞密院ノ議論ガ、或ハ修正ヲ要スルト
云フコトニ至リマシタ場合ニ於テハ、何
モ陛下ノ御裁可ニ依ルモノデアリマスル
カラ、統治權ノ下ニ總攬、統一ヲ致サレル
ノデアリマスケレドモ、其間ノ矛盾ト云フ
モノニ付テ、政府ハ如何ナル責任ヲ持タナ
ケレバナラヌカ、此一點ガ疑問ニ殘ルノデ
アリマス
ソレカラ又司法大臣ノ御說明ヲ聽キマス
ト云フト、貴族院ニ於テモサウデアリマ
スルガ、此條約ノ統一法ニ關スル部分ハ
法制審議會ノ議ニ懸ケテアル、其同意ヲ得
テ居ルト云フコトデアリマスガ、サウスル
ト樞密院ニマダ御諮詢ニナラナイ前ニ、此
條約ガ法制審議會ノ内議ニ付シテ居ルト云
フコトデアリマシタナラバ、吾々ハ我國ノ
外務大臣カラ帝國議會ニ向ッテ、斯ノ如キ國
內法ニ關スル條約ハ、何モ祕密ハナイノデア
リマスカラ、此帝國議會ニ於テ之ヲ公ケニ
致シテ、豫メ國民ニ對シテ之ヲ示サレルト
云フコトガ、何故出來ナカッタデアリマセ
ウ、此點ニ向シテモ御尋ヲ致シテ、是デ私ノ
質問ヲ終リマス(拍手)
〔國務大臣小山松吉君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00619320609&spkNum=7
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008・小山松吉
○國務大臣(小山松吉君) 再度ノ御質問ニ
對シテ御答致シマス、法制審議會ニ懸ケテ
置キナガラ帝國議會ニ提出シナカッタノハ、
ドウ云フ譯デアルカト云フ御尋デアリマス
ルガ、重要ナル法案ハ普通ノ手續ト致シマ
シテ、法制審議會ニ先ニ懸ケルノデアリマ
スカラ、サウ云フ順序ニナリマシタ次第デ
アリマス
ソレカラ御批准ガナカッタ時、樞密院ニ於
テ修正セラレタ時ハ、ドウ云フ責任ヲ執ル
カト云フ御話デアリマスガ、ソレハ將來ノ
事デアリマシテ、其時ニ至リマシテ政府ハ
考ヘル積リデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00619320609&spkNum=8
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009・秋田清
○議長(秋田〓君) 質疑ハ終局致シマシ
タ、日程第二、右議案ノ審査ヲ付託スベキ
委員ノ選擧ヲ議題ニ供シマス
第二右議案ノ審査ヲ付託スヘキ委員
ノ選擧発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00619320609&spkNum=9
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010・上田孝吉
○上田孝吉君 本案ハ議長指名十八名ノ委
員ニ付託セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00619320609&spkNum=10
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011・秋田清
○議長(秋田〓君) 上田君ノ動議ニ御異議
アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00619320609&spkNum=11
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012・秋田清
○議長(秋田〓君) 御異議ナシト認メマス、
仍テ動議ノ如ク決シマシタ-日程第三、
柳河軌道株式會社所屬軌道補償ノ爲公債發
行ニ關スル法律案、第一讀會ノ續ヲ開キマ
ス、委員長ノ報〓ヲ求メマス-委員長豐
田收君
第三柳河軌道株式會社所屬軌道補償
ノ爲公債發行ニ關スル法律案(政府
提出)第一讀會ノ續(委員長報〓)
報〓書
一柳河軌道株式會社所屬軌道補償ノ爲公
債發行ニ關スル法律案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和七年六月七日
委員長豐田收
衆議院議長秋田〓殿
〔豐田收君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00619320609&spkNum=12
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013・豐田收
○豐田收君 柳河軌道株式會社所屬軌道補
償ノ爲公債發行ニ關スル法律案ノ委員會ノ
經過竝ニ結果ヲ御報〓致シマス、政府ニ對
シテ補償其他ニ關スル質疑ガアリマシタ
其疑ヲ質シタル結果、大體妥當ト認メマシ
テ、全會一致ヲ以テ可決致シマシタ、詳細
ハ速記錄デ御覽ヲ願ヒタイト思ヒマス(拍
手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00619320609&spkNum=13
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014・秋田清
○議長(秋田〓君) 本案ノ第二讀會ヲ開ク
ニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00619320609&spkNum=14
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015・秋田清
○議長(秋田〓君) 御異議ナシト認メマス、
本案ノ第二讀會ヲ開クニ決シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00619320609&spkNum=15
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016・上田孝吉
○上田孝吉君 直チニ本案ノ第二讀會ヲ開
キ、第三讀會ヲ省略シテ、委員長報告ノ通
リ可決セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00619320609&spkNum=16
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017・秋田清
○議長(秋田〓君) 上田君ノ動議ニ御異議
アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00619320609&spkNum=17
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018・秋田清
○議長(秋田〓君) 御異議ナシト認メマス、
仍テ直チニ第二讀會ヲ開キマス
柳河軌道株式會社所屬軌道補償ノ爲公
債發行ニ關スル法律案第二讀會(確定議)
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00619320609&spkNum=18
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019・秋田清
○議長(秋田〓君) 第三讀會ヲ省略シテ、
委員長報告通リ可決確定シタルコトヲ宣〓
シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00619320609&spkNum=19
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020・上田孝吉
○上田孝吉君 議事日程變更ノ緊急動議ヲ
提出致シマス、第一號、昭和七年度歲入歲
出總豫算追加案、特第一號、昭和七年度各
特別會計歲入歲出豫算追加案及豫算外國庫
ノ負擔トナルベキ契約ヲ爲スヲ要スル件ヲ
議題トシ、委員長ノ報〓ヲ求メ、其審議ヲ
進メラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00619320609&spkNum=20
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021・秋田清
○議長(秋田〓君) 上田君ノ動議ニ御異議
アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00619320609&spkNum=21
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022・秋田清
○議長(秋田〓君) 御異議ナシト認メマス、
仍テ日程ハ變更サレマシタ-第一號、昭
和七年度歲入歲出總豫算追加案、特第一號、
昭和七年度各特別會計歲入歲出豫算追加
案、豫算外國庫ノ負擔トナルベキ契約ヲ爲
スヲ要スル件、右ヲ一括シテ議題ト爲スニ
御異議アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00619320609&spkNum=22
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023・秋田清
○議長(秋田清君) 御異議ナシト認メマス、
三案ヲ一括シテ議題ト致シマス、委員長ノ
報〓ヲ求メマス-豫算委員長大口喜六君
(第一號)昭和七年度歲入歲出總豫算追加
案
(特第一號)昭和七年度各特別會計歲入歲
出豫算追加案
豫算外國庫ノ負擔トナルベキ契約ヲ爲ス
ヲ要スルノ件
報〓書
一(第一號)昭和七年度歲入歲出總豫算追
加案
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報告候也
昭和七年六月九日
豫算委員長大口喜六
衆議院議長秋田〓殿
報〓書
一(特第一號)昭和七年度各特別會計歲入
歲出豫算追加案
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和七年六月九日
豫算委員長大口喜六
衆議院議長秋田〓殿
報〓書
一豫算外國庫ノ負擔トナルベキ契約ヲ爲
スヲ要スル件
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和七年六月九日
豫算委員長大口喜六
衆議院議長秋田〓殿
〔大口喜六君登壇〕
(「國務大臣ハドウシマシタ」ト呼フ者
アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00619320609&spkNum=23
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024・秋田清
○議長(秋田〓君) 國務大臣ハ直グ出席サ
レマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00619320609&spkNum=24
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025・大口喜六
○大口喜六君 只今上程サレマシタ第一
號〓昭和七年度歲入歲出總豫算追加案、特
第一號、昭和七年度各特別會計歲入歳出豫
算追加案、豫算外國庫ノ負擔トナルベキ契
約ヲ爲スヲ要スル件ニ付キマシテ、豫算委
員會ノ經過竝ニ結果ヲ御報〓致シマス、豫
算委員會ハ去ル二日委員長、理事ノ選擧ヲ
行ヒマシテ、委員長ニ私、理事ニ鈴木英雄
君、西方利馬君、矢野晋也君、松山常次郞
君、〓瀨規矩雄君、野中徹也君、工藤鐵男
君森峰一君、中野寅吉君ノ九君ガ御當選
ニ相成リマシタ、其中中野君ハ中途ニ於テ
辭任致サレマシテ其補闕トシテ福田關次
郞君ガ御當選ニナリマシタ、爾來委員會ハ
今九日マデ審議ヲ續ケマシタガ、質疑應答
ハ極メテ愼重ニ行ハレタノデアリマス、質
疑者ハ長島隆二、小川〓太郞ノ御兩君ヲ初
メ、二十五六名ノ多キニ達シマシタガ、其
範圍ハ極メテ廣汎ニ亙リマシテ、財政竝ニ
經濟ニ關スル問題、外交ニ關スル問題、思
想ニ關スル問題ヲ初メ、最近ニ發シマシタ
事件等ニ付キマシテモ、詳細ナル質疑應答
ガ行ハレマシタ、殊ニ現今ニ於ケル經濟界
ノ窮況ニ對シテハ、如何ニシテ之ヲ打開匡
救スベキヤニ付テ、屢。熱心ナル質疑應答
ガ繰返サレタノデアリマス、延テ失業救濟
問題、產業政策、金融政策、爲替ニ關スル
問題等ニ付キマシテモ、質疑應答ガ重ネラ
レタノデアリマス、ソレカラ滯貨生絲處分
問題ニ付キマシテモ、相常ニ質疑應答ガ繰
返サレマシタ、更ニ外交問題トシテ、滿蒙
ニ關シマシテハ勿論、支那ニ關シマスル問
題ニ付テ、頗ル詳細ナル質疑應答ガ行ハレ
タノデアリマス、更ニ憲政運用ニ關スル件
ヲ初メ、政府ノ政治的諸方針ニ對シテモ、
種々ノ方面ニ向フテ質疑應答ガ行ハレマシ
タガ、其質疑竝ニソレニ對スル政府ノ答辯
ニハ緊要ニシテ有益ナリト思考セラレル
モノガ少カラズ考ヘラレマスガ、一々其內
容等ニ付キマシテ玆ニ御報〓致シマスルコ
トハ餘リニ長時間ヲ要スルト考ヘマスガ
故ニ、之ヲ速記錄ニ讓ルコトニシタイト存
ジマス、而シテ委員會ハ質問終了後討論ニ
入リマシテ、政友會ノ靑木精一君ヨリ原案
全部ニ贊成スル而シテ其理由ハ本會議ニ
於テ陳述スベシトノ意思ヲ表明セラレマシ
ク、次ニ民政黨ノ前田房之助君モ亦原案全
部ニ對シ贊成ノ意思ヲ表明致サレマシタ
ガ、政府ニ對スル希望ト致シマシテ
政府ハ將來ニ於テ財政計畫ヲ確立シ、
收支ノ均衡ヲ圖ルニ努力スベシ
二、減債基金繰入一部停止ハ豫算中ニ織
込マレタルヲ以テ之ニ同意ス、併シ政
府ハ成ベク速ニ是ガ復舊ヲ圖ルベシ
三、產業振興土木費ハ失業救濟ノ目的ヲ
モ達シ得ルヤウ遺憾ナキヲ期スベシ
此御希望ガ述ベラレマシタ、併シ此御希
望ニ付キマシテハ決議ヲ要スベキモノデ
アリマセヌカラ、採決ニハ加ヘナイコトニ
致シタノデアリマス、而シテ採決ノ結果、
原案全部ハ出席委員ノ滿場一致ヲ以テ、可
決確定致サレタノデアリマス、此段御報〓
ニ及ビマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00619320609&spkNum=25
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026・秋田清
○議長(秋田〓君) 是ヨリ討論ニ入リマ
ス-長島隆二君
〔長島隆二君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00619320609&spkNum=26
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027・長島隆二
○長島隆二君 諸君、私ハ昭和七年度歲入
歲出總豫算追加案外二件ニ關シマシテ、只
今委員長ノ御報〓ニアリマシタ通リ、政府
提案ニ贊成ヲ致スモノデアリマス、簡單ニ
其理由ヲ申上ゲタイト存ジマス
本年度豫算、此追加豫算ハ必然的ニ必要
ナモノデアリマス內外ノ情勢カラ鑑ミマ
シテ、ドウシテモ之ヲ認メル必要ガアルト
考ヘマス、殊ニ吾々ト致シマシテハ、此追加
豫算、是ハ政友會內閣時代ニ於キマシテ編
成シタル追加豫算案、其他ヲ其儘踏襲致シ
タモノデアリマシテ、此豫算ノ成立ハ卽
チ吾々ノ財政上ノ計書實現ノ一步ヲ爲スモ
ノデアリマスカラ、此意味ニ於テ私ハ此
成立ヲ希望致スノデアリマス(拍手)尙又追
加豫算ヲ實行豫算ト併セマシテ考ヘルノ
ニ其內容ニ於テ、目下必要ナル幾多ノ經
費ヲ含ンデ居ルノデアリマス、今日大切ナ
ルノハ產業ノ振興デアリマス、モウ一ツハ
失業ノ救濟デアリマス、是ハ現在ノ經濟狀
態カラ見マシテ、ドウシテモ力ヲ入レナケ
レバナラヌノデアリマス、此點ニ付キマシ
テ、從前ハ寧ロ經費ヲ緊縮致シ、必要ナル
事業モ或ハ中止、繰延スルト云フ方針ノ下
ニ、豫算ガ編成サレマシタガ、今度ノ實行
豫算竝ニ追加豫算ヲ併セテ見マスルト、其
點ニ於テ一大變化ガアルノデアリマス(拍
手)マダ十分トハ勿論申ス譯ニハ行キマセ
ヌ、時ガ極メテ切迫シタル短時日ノ間ニ作,
タモノデアリマスルカラ、十分デハゴザリ
マセヌガ、緊縮ノ方針ヲ一轉致シテ、一方
ニ於テハ斯ウ云フ機會ニ、將來產業ノ發展
ノ本ニナルベキ事業ノ計畫ヲ樹テルコト
竝ニ失業者ノ極端ニ多イ、此不安ナル狀態
ニ對シマシテ、失業救濟ニ力ヲ入レラレタ
ト云フコトハ、私ハ豫算編成上非常ナル變
化デアリマシテ、大ニ之ヲ歡迎スベキモノ
デアルト考ヘルノデアリマス(拍手)
內容ヲ少シ申上ゲマスレバ內務省關係ニ
於キマシテ、治水事業費繰上又ハ追加、六
百二十四万圓アリマス、港灣改良費、是ガ
二百七十九万圓アリマス、道路改良費ガ千
八百十二万圓計上サレテ居リマス、又其他
ニ中小ノ河川改良費、是ガ四百十七万圓計
上サレテ居リマス、或ハ地方ノ港灣改良費、
是ガ百十万圓、失業救濟事業補助、是ハ地
方ノ事業デアリマスルガ、其補助ガ三百六
十九万圓計上サレテ居ルノデアリマス、斯
ウ云フモノヲ合計致シマスルト、內務省關
係ニ於キマシテ、產業ノ發展、事業ノ仲展、
又ハ失業救濟ノ爲ノ經費ガ三千六百十三万
圓計上サレテ居ルノデアリマス、之ニ此事業
ニ伴フ地方費ヲ加ヘマスルト、四千三百十
七万圓ニナルノデアリマス、是ハ內務省關
係ダケデアリマスルガ、治水ノ事業、港灣
ノ改良、道路ノ改良、或ハ又中小河川ノ改
良地方港灣ノ改良、失業救濟事業ノ補助、
斯ウ云フコトハ皆地方ノ非常ニ希望致ス所
デアリ、又日本ノ今日ノ經濟界ニ取フテ、
最モ急ヲ要スル事業デアルト私ハ確信シテ
疑ハザル者デアリマス(拍手)
其外農林省ニ於キマシテ、農村振興費其
他ニ於テ、六百三万圓計上致シテ居リマス、
遞信省ニ於キマシテ、失業救濟費五十五万
圓ヲ計上致シテ居リマス、帝國鐵道特別會
計ニ於キマシテ、建設改良費ノ方デ增加致
シテ居ルノガ二千百二十一万圓デアリマ
ス、其外色々ナモノガアリマスルガ、斯ウ
云フ經費ヲ計上致シ、之ヲ實現致シマスレ
バ私ハ今日ノ日本ノ經濟界ガ萎縮致シテ
居リマスル此時ニ於テ、多少總テノ狀況ヲ
一轉スル是ガ原因ニナルト信ズルノデアリ
マス(拍手)
又今度ノ追加豫算ノ中ニハ、政友會ノ產
業五箇年計畫ヲ實現スル第一步ト致シマシ
テ、商工省及農林省ニ於キマシテ、產業振
興計畫著手ニ關スル經費モアリマス、是ハ
經費ノ高ハ洵ニ少イノデアリマスルケレド
モ段々是ガ進展致シマシテ、政友會ノ產
業計畫實現ノ端ヲ成スモノデアルノデアリ
マく、斯ウ云フ風ニ豫算ノ內容ヲ見マスル
ト、今日ノ日本ノ經濟界カラ見マシテ、ド
ウシテモ實現セナケレバナラヌ必要ノア
ル、緊急已ムヲ得ザル經費ノミ計上致シタ
モノト私ハ考ヘルノデアリマス
尙又序ナガラ申上ゲマスルガ、追加豫算
デアリマセヌガ實行豫算ノ方面ニ於キマ
シ六、色々經費ノ都合ヲ立テマシテ、裁判
所復活ガ實現サレテ居ルノデアリマス、卽
チ地方裁判所支部權限復舊經費、ソレカラ
事務停止區裁判所ノ復舊、斯ウ云フモノガ實
行豫算ニ於キマシテ復活サレテ居ルノデア
リマス、是ハ小サナ問題ノヤウデアリマス
ルガ、緊縮財政ノ下ニ地方ノ裁判所ガ或ハ
廢サレ、或ハ停止サレテ居リマシテ、地方
ノ人々ガ非常ニ不便ヲ感ジ、苦痛ヲ愬ヘテ
居クタノデアリマス、斯ウ云フモノガ今度ノ
實行豫算ニ於テ復活サレタト云フコトヲ見
マシテモ、以前ノ緊縮豫算ガ如何ニ實際ノ
必要ヲ顧ミズシテ、無茶苦茶ナコトヲ致シ
タカ、今度ノ實行豫算竝ニ追加豫算ニ依。ツ
テ、段々地方ノ困難ガ除去サレルカト云フ
コトガ、是デ明白ニ證明サレルト思フノデ
アリマス(拍手)大體ニ於キマシテ財政計畫
ハ、今度ノ實行豫算竝ニ追加豫算ニ依シテ
方向ヲ一轉致シタノデアリマス、無論或ル
時代ニ於テハ緊縮財政ノ必要ナコトモアリ
やく、併ナガラ民政黨內閣時代ノ緊縮財政
ハ餘リ極端デ、程度ヲ行キ過ギタト、私ハ
遺憾ナガラ評セザルヲ得ナイノデアリマス
(拍手)其結果ニ付キマシテハ多ク申上ゲマ
セヌ、現在ノ產業ノ非常ナル困難、農村ノ
非常ナル困難、殆ド救フベカラザル狀態ニ
陷リマシタコトハ全ク程度ヲ超シマシタ
ル緊縮財政、或ハ消極經濟政策ノ結果デア
ルコトハ明白デアリマス(拍手「ノー〓〓」)
之ニ對シテ反對ノ御意見ノ御方モアリマス
ルガ、天下萬人皆之ヲ認メテ疑ハザル所デ
アリマス(拍手「ノ-〓〓」)
今度ノ追加豫算ニ於テ滿洲事件費ガ計上
サレテ居リマス、是ハ私共滿腔ノ熱意ヲ以
テ之ニ贊成ヲ致ス者デアリマス、滿洲ニ於
ケル我軍ノ行動ハ實ニ立派ナル事績ヲ擧
ゲマシタ、世界ノ歷史ニ傳ヘルニ足ル立派
ナ働キデアリマス、其事件費ニ對シマシテ、
吾々ハ喜ンデ之ニ贊同致スノデアリマス、
唯滿洲問題ニ付キマシテハ吾々ハ非常ニ
重キヲ措イテ居ル、日本ノ生命線ナリトシ
テ、國民ガ大犠牲ヲ拂シテ之ニ當ノテ居ルノ
デアリマス、又經濟上カラ觀マシテモ、日
本ト滿洲トガ一體トナリ、經濟的ノ關係ヲ
作ラナケレバナラヌ、此意味ニ於キマシテ
滿洲經營ガ完全トハ申シマセヌデモ、ドウ
ヤラ目的ヲ達スルヤウナ方向ニ進ムコトヲ
吾々ハ期待致スノデアリマス、現在ノ滿洲
ノ狀態ニ於テハ遺憾ナガラマダ治安平靜
ヲ缺ク點モアリマス、斯ウ云フ方面ニ付テ
ハ、今後大ニ力ヲ注グ必要ガアルト思フノ
デアリマス、又滿洲ノ關係ハ支那ニ關係ガ
アリマス、或ハ露西亞ノ關係等ガアリマス
斯ウ云フ關係ニ於キマシテ、滿洲ノ治安ノ
動搖ヲ致ス時代モアラウト思ヒマス、斯ウ
云フ點ニ於テモ政府ハ力ヲ注グ必要ガアラ
ウト考ヘルノデアリマス
殊ニ滿洲ノ經營ニ付テハ唯軍事行動ダケ
デハ十分デナイト考ヘル、無論急速ニハ參
リマセヌガ、矢張滿洲ノ經營ニ對シテハ
軍事上ノ働キニ伴フ政治上ノ働キ、或ハ經
濟上ノ働キヲ加ヘマシテ、滿洲ノ治安ガ其
方面カラモ維持セラレ、又滿洲ニ於ケル人
民ガ其方面カラ幸福ヲ增進致シ、又更ニ其
關係カラ致シマシテ、我國ガ滿洲ニ經濟的
發展ヲ圖ルト云フコトガ、滿洲問題終局ノ
目的デアルト私ハ考ヘルノデアリマス(拍
手此事件費ニ贊同ヲ致シマスルト共ニ、
滿洲經營ニ對シ政府ガ大ニ力ヲ注グコトヲ
希望スルノデアリマス
其點カラ觀マスレバ、滿洲新國家ヲ如何
ニ扱フカ、滿洲新國家ニ對シテ如何ナル援
助ヲ與ヘルカト云フコトモ大問題デアリマ
ス又日本ノ滿洲ニ於ケル活動ヲ如何ニ統
一アルモノニスルカ、或ハ其方針ヲ日本ノ
國策ト最モ一致シタルモノニ致スカト云フ
コトニ付テハ政府ガ此機會ニ於テ大ニ考
慮ヲセラレンコトヲ希望シテ已マヌノデア
リマス財政々策ニ伴フテ經濟政策ガ矢張
變ラナケレバナラヌト考ヘマス、消極財政
ニ伴フニ消極經濟ガアリマス、今度ノ財政
政策ハ積極ト申スト如何デアリマスカ知ラ
ヌガ、兎ニ角今迄ノ消極方針ヲ變ヘマシ
テ、豫算ハ追加豫算ヲ加ヘマシテ十七億八
千万圓ニ上ッテ居リマス、公債發行額ハ五
億万圓ヲ超シテ居ルノデアリマス、斯ウ云
フヤウナ財政狀態ニ對シマシテハ、矢張經
濟ガ同ジヤウナ方針ヲ以テ進マナケレバナ
ラヌノデアリマス、財政ダケハ積極デアツ
テ經濟ガ消極デハ、ソコニ破綻ガ起リマス、
ドウシテモ自ラ積極的デナケレバナラヌノ
デアリマス、之ヲドウ云フ言葉デ說明ヲシ
タラ宜シイカ、色々ナ說明モ出來マセウガ
大體ニ於キマシテ經濟政策ノ一方ニ於テハ
「インフレーション」ヲ加味致スト云フコト
ハ、必然起ラナケレバナラヌ大事ナ問題デ
アルト私ハ考ヘルノデアリマス(拍手)其點
ニ付キマシテ政府ノ十分ナル決心ヲ私ハ促
ス者デアリマス
此點ニ於キマシテ豫算總會ニ於テ高橋大
藏大臣ニ御質問ヲ致シマシタガ、ドウシテ
モ日本ノ物價ハ今ノ儘デハイケナイ、今日
ノ狀態デハ物ヲ作ッテモ損ニナリ、米ヲ作ッ
テモ損ニナリ、繭ヲ作ッテモ損ニナル全
國ノ多數ノ農民ガ斯ウ云フ狀態ニ置カレ
地方ノ經濟ガ斯ウ云フ不安定ナル狀態ニ在
テハ經濟界ノ囘復ハ到底出來ナイト云フ
コトヲ私ハ申シタノデアリマス、其點カラ
見マスト、矢張物價ヲ或ル程度マデ囘復セ
シメナケレバナラヌノデアリマス、商工業
ノ發達ニ對シマシテモ、色々ナ施設經營モ
アリマスガ、商工業發達ノ一番ノ必要條件
ハ物ヲ作レバ儲カル、物ヲ賣レバ儲カル
ト云フ狀態ヲ作ルコトガ先決問題デアルト
考ヘルノデアリマス(拍手)其點ニ於キマシ
テ以前ノ經濟政策ハ全ク其途ヲ誤リマシタ、
私ハ擧國一致內閣ノ下ニ於テ、共ニ之ヲ援
ケテ居リマスル民政黨ニ、敢テ此際批難ヲ
加ヘマセヌ、唯今マデノ消極經濟ニ於テ非
常ナル不結果ニ陷リ、非常ナル事態ヲ生ジ
タト云フコトダケハ、玆ニ申上ゲナケレバ
ナラヌト思フノデアリマス(拍手)デ此考ヲ
以テ大藏大臣ニ質問致シマシタ所ガ、大藏
大臣ハ極メテ婉曲ナル言葉デアリマシタガ、
之ヲ認メラレタノデアリマス、爲替デハナ
イ、或ハ物價デハナイ、併シ人間ノ勤勞ヲ
認メナケレバナラヌ、働ケバ〓ヘルヤウニ、
儲カルヤウニシナケレバナラヌ、斯ウ云
フコトヲ最モ力强イ言葉ヲ以テ申サレタノ
デアリマス、其言葉ヲ反面カラ見マスレ
バ生產物ハドウシテモ引合フヤウナ値段
ニ囘復シナケレバナラヌト云フ、吾々ノ政
策ト少シモ違ヒハナイト思フノデアリマス
(拍手)此政策ハ今度ノ豫算ヲ實行スル上ニ
於テ極メテ必要デアリマス、ドウカ現內閣
ニ於キマシテハ經濟政策モ矢張豫算ノ方
針ト同ジヤウナ積極的デ進マレンコトヲ、
希望シテ已マナイノデアリマス(拍手)又財
政方針ニ於キマシテモ、經濟政第ニ致シマシ
テモ、忌ムベキノハ動搖スルト云フコトデ
アリマス、多少無理ニナリマシテモヽ一貫
シタル方針デ進ムト云フノガ宜シイノデア
ル、此點カラ申シマスルト、民政黨ノ諸君
ガ內閣ヲ組織セラレタル當時ニ於テ、多少
ノ其處ニ困難或ハ違算ガ現ハレマシテモ
其政策ヲ遂行ニ努メタト云フコトニ對シテ
ハ、私敬意ヲ表スルノデアリマス、併ナガラ
二年半ノ經驗デ、モウ是デハイケナイ、財
政モ經濟モ方針ヲ根柢カラ一轉セナケレバ
ナラヌト云フ必要ガ生ジ、現內閣ニ於テ其
方針ノ下ニ、吾々ノ財政政策ヲ踏襲セラレ
テ豫算ヲ編成サレタ、其方針ノ下ニ今經濟
政策ヲ執リツヽアルノデアル、卽チ保證準
備ノ擴張、保護關稅ノ設定、或ハ不動產ニ
對スル金融ノ途等、是レ吾々ガ執リマシタ
積極經濟政策ノ踏襲デアリマス、旣ニ吾々
ノ此政策ヲ踏襲サレタル以上ハ、之ヲ變更
シテハ相成ラヌト私ハ確信ヲ致スノデアリ
マス(拍手)若シ一度方針ガ變ッタノニ、是
ガ又近イ中ニ動搖スルト云フコトデアリマ
シテハ、我國ノ經濟界ハ、到底安心シテ、
事業經營ニ當ルコトハ出來ナイト云フ虞ガ
アルノデアリマス、是ハ議論ノ問題デハア
リマセヌ、事實ノ問題デアリマス、世間ハ
此方針ヲ以テ一貫スルコトヲ希望シテ居ル
ノデアリマス、其方針ガ動搖スルト云フ虞
ガアリマスレバ、直チニ經濟界ニ惡イ影響
ガ反映スルノハ最近ノ事實ヲ以テモ證明
セラレルト思フノデアリマス、此方針ハド
ウカ變ヘズニ進ンデ貰ヒタイノデアリマ
ス、次ノ豫算編成ヲ此內閣ガスルヤ否ヤ、
ソレハ私ハ知リマセヌ、併シ其機會ガ若シ
假ニアルト致シマスレバ、又豫算編成ニハ
近イ時機ニ著手シナケレバナラヌノデアリ
マスカラ、次ノ豫算編成モ吾々ノ政策ヲ踏
襲セラレンコトヲ望ミ、又經濟政策ニ致シ
マシテモ、多少世ノ中ニ囂々タル議論ハア
リマシテモ、俗論ヲ顧ミズ、私ハ積極的ノ
方針ヲ以テ勇往邁進セラレンコトヲ希望シ
テ巳マヌノデアリマス(拍手)
此意味ニ於キマシテ、私ハ只今議題トナッ
テ居リマスル政府提案ニ贊成ヲ致シ連
是ガ可決セラレンコトヲ希望致ス者デアリ
マス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00619320609&spkNum=27
-
028・秋田清
○議長(秋田〓君) 川崎克君
〔川崎克君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00619320609&spkNum=28
-
029・川崎克
○川崎克君 只今議題トナッテ居リマスル
昭和七年度ノ追加豫算外二件ニ對シマシ
テ、贊成ノ意ヲ表スルノデアリマスルガ、
豫算委員會ニ於キマシテ、希望決議ヲ提出
致シテ置キマシタ數點ニ付キマシテ、此機
會ニ於テ其理由ヲ申述べテ置キタイト存ズ
ル譯デアリマス
本年度ノ追加豫算ニ對シマスル私共ノ態
度ハ現內閣ヲ支持シテ居リマスル政治上
ノ關係ト、齋藤內閣ガ成立ヲ致シマシテ、
間モナイ時デアリマシテ、吾々ノ希望要求
ヲ此豫算案ニ入ルヽノ遑ガアリマセヌカラ
シテ、其政治上ノ理由ニ於テ、私共ハ此豫
算案ヲ認ムルコトガ、其一ツデアリマス
第二ハ經濟上ノ理由ト致シマシテハ、
金輸出禁止下ニ於キマシテノ財政計畫ト致シ
マシテ、其結果已ムヲ得ズ豫算ニ計上セラ
レマシタモノハ承認ヲ與ヘナケレバナラ
ヌコトニナル譯デアリマス、卽チ爲替ノ
下落ニ伴ヒマスル爲替ノ交換差損金ノ如
キ、二千七百万圓ヲ計上致シテ居リマスル
ガ是亦此意味カラ承認ヲ與ヘナケレバナラ
ヌ譯デアリマス、臨時事件ト致シマシテ、滿
洲ノ事件費其他ノ必要已ムヲ得ズト稱セラ
レテ居リマスル公債、其中ニハ赤字公債モ
アリマスケレドモ、五億數千万圓ニ對シマス
ル利拂約二千五百万圓ノ如キモ、是亦非常
事件ノ大部分已ムヲ得ザルモノトシテ承認
ヲ與ヘナケレバナラヌト思フノデアリマス、
唯玆ニ私共ガ甚ダ遺憾ニ存ジマスルコト
ハ實行豫算、追加豫算ヲ通ジマシテ、今
度ノ歲入ノ缺陷ヲ補フガ爲ニ、悉ク之ヲ赤
字公債ニ求メラレマシテ、一億六千万圓ト
云フモノガ計上セラレテ居ルノデアリマ
ス、此中ニハ先程申上ゲマシタ事件費ニ伴
ヒマス所ノ、公債ノ利拂モ入ッテ居リマス、
一體事件ノ爲ニ要シマス費用ハ已ムヲ得
ズ公債ニ仰グト致シマシテモ、利拂ノ如キ
ハ永遠ニ亙ル所ノ歲出ヲ見ナケレバナラヌ
モノデアリマスルカラシテ、斯樣ナモノハ
成ダケ恒久的財源ニ仰イデ、之ヲ公債ニ求
メナイ方針ヲ御執リニナルコトガ適切デ
アッタニ拘ラズ、事件費公債ノ利拂マデ悉ク
公債ニ仰ガレタト云フコトハ、我國ノ財政
ノ基礎ヲ危クスルモノデアルト謂ハナケレ
バナラヌノデアリマス(拍手)私共ハ歲入ノ
豫算ニ對シマシテ、今度ノ見積ヲサレテ居
ル標準ガ、本年ノ二月ノ一般好況時代デアツ
タ物價指數ヲ標準ニ出テ來テ居ルノデアリ
やっ、又其好況時代ノ指數ヲ標準トシテ歲
入ノ見積ガ立テラレテ居ルノデアリマス
此事自體ガ歲入ノ何時デモ議論ニナリマス
所ノ、歲入不足ヲ生ズル所ノ原因ニナッテ現
ハレルコトハ明デアリマスガ、豫算ノ均衡ヲ
保ツ上ニ於テ、歲入ノ缺陷ノアルモノハ悉
ク公債ニ仰グト云フ行キ方ハ、是ハ甚ダ宜
シクナイノデアッテ、曩ノ議會ニモ申上ゲマ
シタ如ク、歲入ノ缺陷ヲ公債ニ仰イデ置イ
テ、搗テヽ加ヘテ減債基金制度ヲ停止セラ
レルト云フヤウナコトハ公債ニ對スル募
債條件ヲ不利益ナラシムルコトニ依ッテモ、
非常ナル損失デアルカラ、是ハ成タケ早ク
囘復ヲセラルヽコトヲ希望致シタノデアリ
マスガ、今度ノ希望條件ノ中ニモソレヲ加
ヘテ、一日モ早ク減債基金制度ノ復活ヲ希
望スルト云フコトヲ、條件ニ加ヘタイト思
フノデアリマス、先程カラ長島君ノ御演說
ヲ拜聽致シマスト、玆ニ提出セラレテ居ル
所ノ豫算ハ實行豫算、追加豫算ヲ合セテ
十七億八千四十万圓、所謂積極的ノ豫算デ
アッテ、民政黨內閣ノ緊縮豫算ニ較ブルナラ
バ、天地霄壤モ啻ナラザル相違ガアルト云
フヤウナ意味ノ演說ヲ爲サレタノデアリマ
ス、私ハ長島君ニ對シマシテ、數字ヲ明ニ
シテ其內容ノ大アラマシノコトヲ申上ゲ
タイト思フノデアリマス
若槻內閣ノ編成致シマシタ豫算ハ十四億
七千八百万圓デアリマシタ、今度ノ豫算ニ
較ベマスト云フト、三億二百四十万圓ノ相
違ガアリマス、其三億二百四十万圓ト云フ
數字ノ伸ビタコトヲ押ヘテ、是ガ卽チ積極
豫算デアリ、是ガ政友會ノ政策ヲ織込マレ
タルモノナリト仰セニナルノデアリマスル
ガ、三億二百四十万圓ノ中ニハ、三月、四月
ノ事件費ト共ニ合セレバ軍事費ノ費用ガ
二億五千万圓ト云フモノガアルノデアリマ
ス、其中カラ二億五千万圓ヲ差引クナラバ
幾ラ殘ルカト言ヘバ、後ハ五千万圓內外シカ
殘リマセヌ、其五千万圓內外ノ中デ、先程申
上ゲタ政友會ノ時代ニ金ノ輸出禁止ヲ爲サ
レタ結果、爲替ガ下ッテ、其爲替ノ差損金ト
云フモノガ二千七百万圓現ハレテ居リ今
度ノ事件費ノ公債ガ二千五百万圓現ハレテ
居ルノデアリマスルカラ、之ヲ差引クナラ
バ三億万圓ノ增加金額ト云フモノハ殆ド
此數字ニ依ッテ無クナッテシマフノデアル
(拍手)ドウ云フ所ヲ押ヘラレマシテ、積極
豫算デアルト仰セニナルカ知リマセヌケレ
ドモ、長島君ノ此壇上ニ於テ御述ニナリマ
シタル理由ノ中ニ、產業振興ノ土木費、內
務省所管ニ於テ三千六百万圓、河川港灣道
路ノ修築、改築ニ努メル費用ハ是ハ地方
民ニ潤ヒヲ持タスモノデアッテ、是ガ本當ノ
失業救濟デアルト御唱ヘニナリマシタガ
若槻內閣ノ時ニ所謂失業救濟ト云フ、適切
ナル農民ノ要求ニ基イテ、失業救濟費トシ
テ計上セラレタモノハ三千五百万圓アルノ
デアッテ、政友會ノ經費トハ僅カ百万圓ノ相
違シカナイノデアリマス(拍手)又農林省所
管ニ於テハ、六百万圓ノ產業振興ニ對スル
經費ヲ計上セラレタト言ハレマスケレドモ、
其經費モ亦形ヲ變ヘテ、六百有餘万圓ト云
フモノハ農林省所管ノ豫算トシテ若槻内
閣ノ時ニ計上セラレテアッタノデアッテ、單
ニソレハ衣ヲ更ヘタノニ過ギナイノデアリ
マリ、斯樣ナ內容ニ對シマシテ、私共
ハ
〔發言スル者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00619320609&spkNum=29
-
030・秋田清
○議長(秋田〓君) 靜肅ニ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00619320609&spkNum=30
-
031・川崎克
○川崎克君(續) 其上ニ若シ强テ其理由ヲ
御擧ゲ致スナラバ農林省ニ於テハ五千万
圓ノ低利資金ヲ融通致シテ、農村ノ救濟ノ
爲ニ充テル、失業救濟ノ爲ニ充テル經費ト
シテ、預金部ノ金ヲ流用シテ補助費ガ計上
セラレテアッタノデ、今度ノ內閣デ之ヲ切捨
テラレマシタ結果、五千万圓ト云フ低利資
金ガ、當然地方ニ潤フノヲ沮止セラレタト
云フダケデモ、寧ロ反對ニ、積極豫算ノ反
對ヲ行カレタト云フコトニナルト云フコト
ハ明カデアルト謂ハナケレバナラヌノデ
アリマス(拍手)又緊縮豫算ヲ根本カラ御攻
擊ニナリマシテ、民政黨ノ豫算ハ緊縮デア
ル政友會ノ豫算ハ積極デアルト云フコト
ヲ仰セニナリマシタガ、此處ニ出テ居リマ
スル所ノ實行豫算、追加豫算ノ內容ヲ仔細
ニ御點檢ニナレバ能ク分リマス、若槻内閣
ノ時分ニ、所謂經費ノ節約
〔發言スル者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00619320609&spkNum=31
-
032・秋田清
○議長(秋田〓君) 靜肅ニ··発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00619320609&spkNum=32
-
033・川崎克
○川崎克君(續) 節約繰延費用ト致シマシ
テ、七千六百万圓ノ節約繰延ヲ行フコトニ
ナッテ居リマシタガ、今度ノ豫算デ是ガ六千
ツ四百万圓ニ減シテ居リマス、緊縮ヲスル程度
ガ千二百万圓ハ成程減ッテ居リマスルケ
レドモ、大體ハ緊縮ヲ基礎トシタ豫算ヲ立
テラレタト云フコトハ繰延節約ヲ骨トシ
テ、此豫算案ガ出來上ッテ居ルト云フコト
ハ爭フベカラザル事實デアルト謂ハナケ
レバナラヌノデアル(拍手)私ハ斯樣ナ意味
ニ於キマシテ、長島君ノ御說ニ對シテハ根
本カラ意見ヲ異ニスル譯デアリマス、先程
長島君ノ御演說ノ中ニ、產業五箇年計畫ノ
コトモ御述ニナリマシタケレドモ、政友會
ハ曾テ在野ノ時代ニ產業五箇年計畫ヲ高唱
セラレマシテ、其案ハ一一一度變ッテ居リマス
ルカラ、最後ノ變ヲタ案ハ承知致シマセヌ
ケレドモ、最初ハ輸入ヲ防遏スル爲ニ六億
圓、輸出ヲ增加スル爲ニ二億圓、先ヅ八億
圓ト云フ見當ヲ置イテ、產業ノ振興ヲ圖ル
ト云フ計畫デアッタノガ、後ニ數字ハ變ッテ
居リマシテモ、產業五箇年計畫ト云フモノ
ガ、我ガ產業界ニ非常ナル曙光ヲ齎スベキ所
ノ、尨大ナル計畫デアルト云フコトハ、爭フコ
トガ出來ナカッタニ拘ラズ、今度ノ豫算案ニ
於テハ農林省、商工省ニ於テ、僅ニ數十万
圓ノ豫算ヲ計上シタノミデアルニ至ッテハ、
此五箇年計畫ノ實行ト云フコトニ對シテ、
甚ダ不誠意デアッタト云フコトヲ證明シテ居
ルト思フノデアリマス(拍手)右手ニハ產業
五箇年計畫ヲ高唱セラレ、左手ニハ五千万
圓減稅ヲ唱ヘラレタノデアルケレドモ、此
赤字ノ出デ居ル歲出入ノ豫算ヲ眺メラレ
テ、何時五千万圓減稅ガ出來ルカ、國民ノ
前ニ公約セラレタ五千万圓減稅ト云フモノ
ガ、何處ニ飛去ッタカ分ラナイ狀態ニ在ル
ト謂ハナケレバナラナイノデアル(拍手)
先程長島君ハ財政ヲ御論ジニナッタ後デ、
此積極政策ニ依ル財政計畫ヲ立テタ、此積
極政策ノ財政計畫ヲ立テタ基礎ハ積極的
ノ經濟政策デナケレバナラヌ、是ハ尤モ-
其通リデアリマセウ、ソンナラバ其積極的
ノ財政經濟計畫ト云フモノハ如何ナルモ
ノヲ御指シニナッテ居ルノデアリマスルカ、
成程政友會內閣ガ出來タ其晩ニ實行セラレ
タモノハ、金ノ輸出禁止デアリマス、輸出禁
止ヲ行ウタナラバ、直チニ爲替ガ下ル、爲替
ノ下ッタ結果國內ノ物價ハ上ッテ、國外ノ
物價ガ下ッテ、サウシテ經濟界ニ刺戟ヲ與ヘ
テ貿易ヲ好轉サスノデアルト云フコトヲ言
ハレマシタケレドモ、爲替ハ成程下リマシ
タケレドモ、其反動ヲ受ケテ一時ハ貿易關
係ノ物價ハ上ッタケレドモ、ソレハ僅カ一二
箇月デアッテ、三月以降ハ物價ガ段々下ル傾
向ヲ示シテ居ッテ、所謂爲替ノ下落ニ依ル所
ノ物價ノ騰貴ト云フモノガ現ハレテ來ナ
カッタノハ購買力ノ附カナイ經濟界ニ向ク
テ、單ニ貨幣價値ノミ下ッタ所デ、物價ノ騰貴
ニ永續性ノナイコトヲ、明白ニ證據立テラ
レタト思フノデアル(拍手)又通貨ノ膨脹ニ
依ッテ、通貨ノ膨脹ノ結果ハ物價ガ上ルモノ
ト御覽ニナッテ居クタヤウデアリマスルケレ
ドモ是亦「インフレーション」ヲ起シタ所
デ、物價ハチットモ上ラナイノミナラズ、出
タ紙幣ハ還ッテ來ルト云フヤウナ狀況ハ、是
ハ何處ニ其根源ガアルカト言ヘバマダ消
費力ヲ持タナイ所ノ國民、購買力ヲ持タナ
イ國民、所謂需要家ノ懷ガ肥エナイ先ニ、物
價ノミ上ゲヨウト云フ政策ヲ執ラレタコト
ガ、間違デアルト云フコトヲ證據立テヽ居
ルノデアリマス(拍手)私共ハ斯樣ナ意味ニ
於テ、此頃危險ニ思ハレマスコトハ平價
切下ヲオヤリニナルト云フヤウナコトモ論
ゼラレテ居リマスルガ、假ニ平價切下ヲヤ
ルト言フナラバ、此豫算案ト云フモノハ
殆ド是ハ實行不可能ニ陷ルコトハ明カデア
ルト謂ハナケレバナラヌ、吾々ハ此豫算案
ヲ承認スル前ニ當ッテ、平價切下ノ行ハレザ
ルモノト云フ條件ノ下ニ、此豫算案ヲ承認
スルノ外ハナイト思フノデアリマス(拍手)
最後ニ一言申上ゲタイコトハ、此追加豫
算ノ中ニ計上セラレマシタル滿洲事件費ニ
對シマシテハ滿洲國ノ治安ヲ維持スル爲
ニ、適切ニ其目的ニ向フテ費用ヲ御使ヒヲ
願ヲテ、サウシテ一日モ早ク滿洲國ノ治安ガ
維持セラレテ、サウシテ日滿ノ經濟關係ガ
滑カニ、又國交關係ガ滑カニ參ルヤウニ、
政府ニ於テ盡力セラレンコトヲ希望致シマ
シテ、此案ニ同意ヲ致スモノデアリマス
(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00619320609&spkNum=33
-
034・上田孝吉
○上田孝吉君 三案ニ對スル討論ハ、此程
度デ終局セラレンコトヲ望ミマス
〔「贊成」ノ聲起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00619320609&spkNum=34
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035・秋田清
○議長(秋田〓君) 上田君ノ動議ニ御異議
アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ノ聲起ル)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00619320609&spkNum=35
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036・秋田清
○議長(秋田〓君) 御異議ナシト認メマス、
仍テ三案トモ討論ハ終局致シマシタ-是
ヨリ採決ニ入リマス、玆ニ三案ヲ一括シテ
採決ヲ致シマス、委員長報告ニ贊成ノ諸君
ノ起立ヲ求メマス
〔總員起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00619320609&spkNum=36
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037・秋田清
○議長(秋田〓君) 起立總員-三案ハ委
員長報告ノ通リ全會一致ヲ以テ可決確定シ
タルコトヲ宣告致シマス
〔拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00619320609&spkNum=37
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038・上田孝吉
○上田孝吉君 議事日程變更ノ緊急動議ヲ
提出致シマス、卽チ政府提出、兌換銀行劵
條例中改正法律案、日本銀行納付金法案、
日本銀行參與會法案、及資本逃避防止法案
ヲ一括シテ議題トシ、委員長ノ報告ヲ求メ、
其審議ヲ進メラレンコトヲ望ミマス
〔「贊成」ノ聲起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00619320609&spkNum=38
-
039・秋田清
○議長(秋田〓君) 上田君ノ動議ニ御異議
アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ノ聲起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00619320609&spkNum=39
-
040・秋田清
○議長(秋田〓君) 御異議ナシト認メマス、
仍テ日程ハ變更セラレマシタ、兌換銀行券
條例中改正法律案、日本銀行納付金法
案、日本銀行參與會法案、資本逃避防止法
案、右ヲ一括シテ第一讀會ノ續ヲ開キマス、
委員長ノ報〓ヲ求メマスー委員長山崎達
之輔君
兌換銀行劵條例中改正法律案(政府提
田第一讀會ノ續(委員長報告)
日本銀行納付金法案(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報告)
日本銀行參與會法案(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報告)
資本逃避防止法案(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報告)
報告書
一兌換銀行劵條例中改正法律案(政府提
〓
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和七年六月九日
委員長山崎達之輔
衆議院議長秋田〓殿
報〓書
一日本銀行納付金法案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和七年六月九日
委員長山崎達之輔
衆議院議長秋田〓殿
報告書
一日本銀行參與會法案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和七年六月九日
委員長山崎達之輔
衆議院議長秋田〓殿
報告書
一資本逃避防止法案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和七年六月九日
委員長山崎達之輔
衆議院議長秋田〓殿
〔山崎達之輔君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00619320609&spkNum=40
-
041・山崎達之輔
○山崎達之輔君 只今議題トナリマシタル
兌換銀行券條例中改正法律案外三件ノ委
員會ノ經過及結果ヲ御報告申上ゲマス、委
員會ニ付託サレマシタ法案ハ四件デゴザイ
マスガ、何レモ金輸出禁止後ニ於ケル經濟
上ノ情勢ニ基キマシテ、必要トナリマシタ
ル諸對策ノ金融的基礎ヲ、創成セントスル
案デアリマシテ、四案ソレ〓〓相互關聯致
シテ居リマス、第一ノ兌換銀行劵條例中改正
法律案ハ、從來保證發行額一億二千万圓デ
アリマシタモノヲ、十億圓ニ擴張致ス案
デゴザリマス、更ニ又制限外發行ノ法案
ニ付キマシテモ改正ヲ加ヘントスル案デア
リマス、日本銀行ノ納付金法案ハ、兌換銀行
劵發行制度ノ改正ニ件ヒマシテ、日本銀行
ノ純益ガ非常ニ增加ヲ致シマスルカラ、納
付金制度ヲ設ケマシテ、其調節ヲ取ラント
スル趣意デアリマス、參與會法案ハ矢張金
融制度ノ改正ニ伴ヒマシテ、日本銀行ト金
融界竝產業界トノ聯繫ヲ密接ナラシメテ、
金融統制ニ資セントスル趣意デアルヤウデ
アリマス、資本逃避防止法案ハ、一昨年來
內外證劵ノ利廻ノ開キガ增大致シマシタル
結果、動モスレバ海外ニ我ガ資本ノ流出ス
ル虞ガ漸次加ハルノ傾向ガアリマス、隨テ
是ガ取締ノ方法ヲ講ジマスル趣意ヲ以テ、
此法案ハ成ッテ居ルヤウデアリマス、何レモ
先程申上ゲマシタヤウナ、金融上ノ基礎ヲ
創成セントスル重要法案デゴザイマシテ、
委員會ニ於キマシテハ國務大臣、政府委
員ト委員各位ノ間ニ、極メテ有益ナル質問
應答ガ重ネラレタノデアリマス、主トシテ
御質問ニナリマシタル方ハ田中貢君、森
田福市君、中村三之亟君、鈴木富士彌君、
駒井重次君、前田房之助君、小川〓太郞君、
中井一夫君、是等ノ諸君ガ主トシテ御質問
ヲナサレタノデアリマス、總テノ御質疑ハ
極メテ有益デゴザイマシタガ、玆ニ一々御
紹介ヲ申上ゲマスルコトハ、甚ダ煩雜デア
ルト思ヒマスカラ、願クバ速記錄ニ依ッテ御
覽ヲ願ヒタイト思ヒマス
斯樣ニシテ三日ニ亙リマシテ、質疑應
答ヲ重ネマシタル結果、滿場一致ヲ以テ
委員會ハ、原案ヲ承認致シマスコトニナ
リマシタ、尤モ委員ノ中デ此法案ニ付キ
マシテ、兌換銀行劵條例中改正法律案ニ對
シマシテハ、斯樣ナ希望ノ御申出ガアリマ
シタ、單ナル財政上ノ便宜ヨリ異常ナル通
貨ノ膨脹ヲ誘致シ、以テ財界ニ禍根ヲ貽サ
ザルヤウ深甚ノ注意ヲ拂ハレタイ、資本逃
避防止法案ニ對シマシテハ本法ノ實施ニ
當リテハ資本逃避防止ノ實ヲ擧ゲ、國際
貸借改善ニ資スベク、最善ノ努力ヲ拂ハレ
タイ、斯樣ナ希望ヲ或ル委員ヨリ御述ニナ
リマシタガ、是ハ委員會トシテ別ニ議題ト
致サナイト云フコトニ相成リマシテ宋に
對シマシテハ先程申上ゲマシタル通リ、
全員一致ヲ以テ贊成ニ相成ァタ譯デアリマ
ス、以上御報告ヲ申上ゲマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00619320609&spkNum=41
-
042・秋田清
○議長(秋田濟君) 先ヅ兌換銀行劵條例中
改正法律案、日本銀行納付金法案、日本銀
行參與會法案、此三案ノ第一一讀會ヲ開クヤ
否ヤヲ御諮リ致シマス、三案ノ第二讀會ヲ
開クニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00619320609&spkNum=42
-
043・秋田清
○議長(秋田〓君) 御異議ナシト認メマス、
三案ハ第一一會會ヲ開クニ決シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00619320609&spkNum=43
-
044・上田孝吉
○上田孝吉君 直チニ本案ノ第二讀會ヲ開
キ、第三讀會ヲ省略シテ、委員長報告ノ通
リ可決確定セラレンコトヲ望ミマス
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00619320609&spkNum=44
-
045・秋田清
○議長(秋田〓君) 上田君ノ動議ニ御異議
ナシト認メマス、仍テ直チニ三案ノ第二讀
會ヲ開キマス
兌換銀行劵條例中改正法律案
第二讀會(確定議)
日本銀行納付金法案第二讀會(確定議)
日本銀行參與會法案第二讀會(確定議)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00619320609&spkNum=45
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046・秋田清
○議長(秋田〓君) 第三讀會ヲ省略シテ三
案トモ、委員長ノ報〓ノ通リ可決確定シタ
ルコトヲ宣告致シマス(拍手)次ニ資本逃避
防止法案ノ第二讀會ヲ開クヤ否ヤヲ御諮リ
致シマス、本案ノ第二讀會ヲ開クニ御異議
アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00619320609&spkNum=46
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047・秋田清
○議長(秋田〓君) 御異議ナシト認メマス、
本案ノ第二讀會ヲ開クニ決シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00619320609&spkNum=47
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048・上田孝吉
○上田孝吉君 直チニ本案ノ第二讀會ヲ開
キ、第三讀會ヲ省略シテ、委員長ノ報〓通
リ可決確定セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00619320609&spkNum=48
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049・秋田清
○議長(秋田〓君) 上田君ノ動議ニハ御異
議ナシト認メマス、仍テ直チニ第二讀會ヲ
開キマス
資本逃避防止法案第二讀會(確定議)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00619320609&spkNum=49
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050・秋田清
○議長(秋田〓君) 御異議ガナケレバ第三
讀會ヲ省略シテ、委員長ノ報〓ノ通リ可決
確定シタルコトヲ宣告致シマス-日程第
四恩給法中改正法律案ノ第一讀會ヲ開キ
やく、提出者ノ趣旨辯明ヲ許シマス-提
出者林路一君
第四恩給法中改正法律案(松實喜代
太君外一名提出)第一讀會
恩給法中改正法律案
思給法中左ノ通改正ス
第百三條第一項中「屯田兵ノ現役」ノ下ニ
「及之ニ準スヘキ屯田兵役」ヲ加フ
附則
本法ハ大正十二年十月一日ヨリ本法ニ該
當スヘキ者ニ之ヲ適用ス
〔林路一君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00619320609&spkNum=50
-
051・林路一
○林路一君 提案者ノ一人ト致シマシテ、
只今上程セラレテ居リマスル恩給法中改正
法律案ノ、堤出ノ趣旨ヲ辯明致シマス、本
案ハ恩給法ノ第百三條第項中「屯田兵ノ現
役」トアリマスル下ニ「及之ニ準スヘキ屯田
兵役」ヲ加フ、是ガ改正ノ要旨デアリマス、
而シテ此改正ハ大正十一一年十月一日ヨリ適
用セントスルモノデアリマス嘗テ本案ハ
第五十二議會及第五十六議會ニ於テ本院ヲ
通過致シマシタケレドモ、不幸ニシテ貴族
院ニ於テ審議未了ノ爲ニ、未ダ其成立ヲ見
テ居ラヌノデアリマス、旣ニ諸君御承知ノ
如ク、北海道ノ屯田兵現役服役期間ハ大
正十二年ノ法律改正ニ依リマシテ、其現役
期間恩給年限中ニ通算セラレルコトニナッ
タノデアリマス、然ルニ豫備役期間中ノ者
ハ、無論此改正ヨリ除外致シテ居リマスル
ガ、屯田兵ノ豫備役期間中ハ其服役ノ狀
態ガ現役ト同樣デアッタノデアリマス、故ニ
此豫備役期間ヲ、恩給ノ現役期間ト同樣ニ
通算シナイト云フコトハ甚ダ不公平デア
リマスガ故ニ、此改正ニ依リマシテ、曩ニ
改正セラレテ其恩典ニ浴シマシタル屯田兵
ト同樣ニ、此改正ニ依ッテ此不公平ヲ矯正致
シタイト思フノデアリマス、何卒御審議ノ
上、本案ニ對シテ御贊成アランコトヲ御願
申上ゲマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00619320609&spkNum=51
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052・秋田清
○議長(秋田〓君) 本案ニ對シテハ質疑ノ
通〓ハアリマセヌカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00619320609&spkNum=52
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053・上田孝吉
○上田孝吉君 本案ハ政府提出、昭和七年
法律第號中改正法律案外六件ノ委員ニ併
セ付託セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00619320609&spkNum=53
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054・秋田清
○議長(秋田〓君) 上田君ノ動議ニ御異議
アリマセヌカ-御異議ナシト認メマス、仍
テ動議ノ如ク決シマシタ、日程第五、負債
整理組合法案ノ第一讀會ヲ開キマス、提出
者ノ趣旨辯明ヲ許シマス-提出者鷲野米
太郞君
第五負債整理組合法案(鷲野米太郞
君外五名提出)第一讀會
負債整理組合法案
負債整理組合法
第一條本法ニ於テ負債整理組合ト稱ス
ルハ組合員ノ協力ニ依リ組合員ノ負債
ヲ整理シ其ノ經濟狀態ノ改善ヲ目的ト
シテ設立スル社團法人ヲ謂フ
第二條負債整理組合ハ市町村ノ地域ヲ
以テ其ノ設立區域トス但シ事情ニ依リ
市町村內ノ一地域ヲ以テ設立區域ト爲
スコトヲ得
第三條負債整理組合ニハ諸稅及公課ヲ
課セス
負債整理組合員ト組合トノ間ニ於ケル
負債整理ニ基ク組合員ノ行爲ニ付亦同
シ
第四條產業組合法中產業組合ニ關スル
規定ハ本法ニ別段ノ規定アルモノヲ除
クノ外負債整理組合ニ付之ヲ準用ス
第五條負債整理組合ハ其ノ目的ヲ達ス
ル爲左ノ事業ヲ爲スコトヲ得
-組合員ノ經濟狀態ノ調査
二負債整理ニ關スル計畫立案
三負債整理ノ助成指導
四整理資金ノ調達及貸付
五組合員ノ爲ニスル預リ金
六組合員ノ生產品ノ代理販賣
七組合員ノ生活竝產業ノ改良ニ關ス
ル指導
八其ノ他組合ノ目的ヲ達成スルニ必
要ナル施設
第六條負債整理組合ノ組合員タル者ハ
市町村ノ住民ニシテ勅令ノ定メタル資
格ヲ有スル者タルコトヲ要ス
第七條市町村長ハ勅令ノ定ムル所ニ依
リ市町村ノ負債整理調査會ヲ設置シ市
町村住民ノ負債ヲ調査スヘシ
市町村長ニ於テ其ノ市町村住民ノ有ス
ル負債カ勅令ノ定ムル條件ニ該當スル
トキハ遲滯ナク負債整理組合設立ノ準
備ニ著手スヘシ
第八條負債整理組合ヲ設立セムトスル
者ハ前條ノ規定ニ依ル市町村長ノ設立
準備ヲ俟タスシテ定款ヲ作リ市町村長
ニ差出シ其ノ承認ヲ求ムルコトヲ得
第九條市町村長ハ市町村ノ地域內ニ於
ケル負債整理ニ關スル事務ヲ管掌スル
モノトス
第十條政府ハ本法施行ノ日ヨリ五箇年
間ニ負債整理資金トシテ金十億圓ヲ年
三分五厘ノ利率ヲ以テ特殊機關ヲ通シ
負債整理組合ニ貸付クルモノトス
貸付ニ關スル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定
ム
第十一條政府ハ負債整理資金ヲ調達ス
ル爲ニ籤札附整理公債ヲ發行スルコト
ヲ得
第十二條政府ハ負債整理資金及損失補
償資金ヲ得ル爲ニ籤札ヲ發賣スルコト
ヲ得
第十三條政府ハ特殊機關ヲシテ負債整
理資金ヲ得ル爲ニ籤札附整理債劵ヲ發
行セシムルコトヲ得
第十四條政府ハ特殊機關ヲシテ第十二
條ノ籤札ノ發賣ヲ爲サシムルコトヲ
得
第十五條前四條ニ關スル細則ハ勅令ヲ
以テ之ヲ定ム
第十六條負債整理組合ハ擔保ヲ徵セス
シテ三十箇年以內ノ年賦償還貸付ヲ爲
スコトヲ得但シ組合員一人ニ付二千圓
ヲ超ユルコトヲ得ス
第十七條組合員カ擔保ヲ提供スルトキ
前條但書ノ制限ニ拘ラス二万圓迄貸付
クルコトヲ得ルモノトス
第十八條負債整理組合ノ貸付利率ハ年
四分以下トス
前項ノ步合ヲ超過スルトキハ監督官廳
ノ認可ヲ受クルコトヲ要ス
第十九條負債整理組合ハ組合員ニ貸付
ニ際シ貸付金ノ一割ヲ控除シ之ヲ償還
資金ノ一部トシテ別途ニ積立テ運用ス
ルモノトス
第二十條前四條ノ貸付ニ關スル事項ハ
命令ヲ以テ之ヲ定ム
第二十一條負債整理組合ノ整理案ニ對
シ同意セサル債權者アルトキハ其ノ債
權者ニ對スル債務ハ契約條件ノ如何ニ
拘ラス三箇年据置三十箇年年賦償還利
率年五分ノ計算ヲ以テ債務ノ決濟ヲ爲
シ得ルモノトス
第二十二條負債整理組合ノ統制ヲ圖ル
爲道府縣ニ負債整理組合聯合會ヲ中央
ニ負債整理組合中央會ヲ設立ス
第二十三條負債整理組合聯合會及負債
整理組合中央會ハ法人トス
第二十四條負債整理組合聯合會及負債
整理組合中央會ニ關スル規定ハ勅令ヲ
以テ之ヲ定ム
第二十五條負債整理組合及負債整理組
合聯合會ハ大藏大臣地方長官及北海道
長官之ヲ監督ス
負債整理組合中央會ハ大藏大臣之ヲ監
督ス
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
〔鷲野米太郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00619320609&spkNum=54
-
055・鷲野米太郎
○鷲野米太郞君 私ハ提出者ノ一人ト致シ
マシテ、只今議題ニ供セラレマシタ負債整
理組合法案提出ノ理由、及案ノ大要ヲ申上
ゲタイト仔ジマス、農村ノ困憊ノ狀態ハ
今更私ガ喋々スルヲ要セヌノデアリマス、
併シ其ノ困憊ハ農村ノミナラズ都市ニ於
キマシテモ、中小商工業者其他ノ者ノ經濟
的痛苦ト云フモノハ蓋シ尋常ノ事デハナ
イノデアリマス、サウシテ農村ト都市ヲ通
ジテ、我國ノ國民、特ニ中層以下ノ農商工
其他ノ各階級ガ、負債ノ爲ニ苦ンデ居ルト
云フコトハ、實ニ非常ナモノデアリマス、
其爲ニ產業ハ振ハズ、國民ノ購買力ハ全ク
枯渴シマシテ、益〓。國國ノ經濟ハ萎靡沈滯、
行詰リノ極ニ達セント致シテ居ルノデアリ
マス、昨今農村ノ救濟運動ガ澎湃トシテ起ッ
テ參ッタノデアリマスルケレドモ、私共ハ旣
ニ早ク今日アルヲ豫見シ、農村ノ負債ノ整
理其他ノ非常緊急ノ手段ヲ執ラナカッタ
ナラバ非常ナ事態ニナルダラウト考ヘマ
シテ、前內閣時代ニ於キマシテ、大ニ此點
ニ對スル調査ヲ致シテ居ッタノデアリマス、
併シ不幸ニシテ兇變ニ依リ前內閣ガ倒レタ
爲ニ、吾々ハ政府案トシテ負債整理、其他
ノ重大非常案件ノ提案ヲスルコトノ機會ヲ
失ッタノデアリマス、ソコデ有志相謀ッテ非
常時ニ處スル一ツノ手段ト致シマシテ、最
モ緊要ナル負債整理組合法案ヲ提出シタヤ
ウナ次第デアリマス、世間負債整理ノ爲ニ
借金ノ棒引ヲセヨ、或ハ半減ヲセヨト云フ
コトガ言ハレテ居ルノデアリマスルケレド
モ、其言ヤ快ハ快ニシテ、是ハ言フコトハ
易イケレドモ、愈、行フコトハ困難デ、而モ
其禍害ノ及ブ所測リ知ルベカラザルモノガ
アルカラ、斷ジテ行フコトハ出來ナイノデ
アリマス、併ナガラ農村ト言ハズ、都市ト
言ハズ、中層以下ノ各階級ノ大キナ負債ノ
重壓ヲ、取除イテヤラナカッタナラバ、此重
壓カラ國民ヲ解放シテヤラナカッタナラバ、
如何ニ積極政策ヲ行ヒマシテモ、日本銀行
ノ兌換發行制度ノ改正ヲ行ヒマシテモ、各
種ノ積極的政策「インフレーション」政策ヲ
執リマシテモ、私ハ我ガ國民經濟ノ振興ヲ
見ルコトガ出來ナイモノト存ジマス、負債
ヲ整理シ、其他緊急ナ案件ノ解決ヲシテ
地方ニ購買力ガ起ッテ、金ガ地方ニ止マッテ、
都會中心地ニ資金ガ逃避シナイヤウナ手段
ヲ以テシテ、始メテ我國ノ本當ノ經濟ノ建
直シヲ見ルコトガ出來ルト、私ハ信ジテ疑
ハナイノデアリマス
本案ノ大要ヲ申シマスレバ、負債整理ノ
手段トシテ、我國ノ全國ニ亙ッテ市町村ヲ單
位トシ、若クハ事情ト場合ニ依リマシテハ
町村ヨリモ更ニ小サナ區域ヲ單位トシテ、
全國的ニ負債整理組合ヲ設置サセテ、組合
員ノ協力ニ依ッテ組合ヲ組織セシメテ、國家
ガ之ニ對シテ非常ナ援助ト指導ヲ與ヘテ、
組合員ノ負債ヲ整理スルト共ニ、農村竝ニ
都市ノ中層以下ノ各階級ノ經濟狀態ノ改善
ヲ計ッテ、ソレデ以テ此目的ヲ達シヨウト云
フノデアリマス、私共ノ意見ト致シマシ
テ、本案第十條ニ示シテアル所ニ依リマス
ト云フト、國家ハ十億圓ヲ五箇年間ニ支出
シー、而モソレハ非常ナ低利デ、年三分五
厘ノ低利ヲ以テ特殊機關ヲ通ジ負債整理組
合ニ貸付ケル、之ヲ借リ受ケタ所ノ組合
ハ主トシテ無擔保又ハ擔保附デ、三十年
以內ノ年賦償還、月割取立ノ方法デ、四分
以下ノ最低利率ヲ以テ組合員ニ貸付ケテ
高利短期ノ負債ヲ長期最低利債ニ借替整理
セシメヨウト云フノデアリマス、其爲ニハ
非常ニ多額ナル資金ヲ要スルコトデアリマ
スルカラ、其資金トシテ國ハ十億ノ金ヲ出
スガ、·其十億ノ金ヲ出スト致シマシテモ、
尋常ノ手段デ此資金ヲ得ルコトハ容易デハ
ナイノデアリマスカラ、其國ノ貸付ケルベ
キ所ノ貸付資金ニ付テハ其資金ノ一部又
ハ全部ヲ得ル爲ニ、又其貸付ノ爲ニ損失ヲ
考ヘナケレバナラヌ、其損失ノ補償、或ハ
其他ノ機關カラ負債整理組合ニ資金ヲ貸付
ケル際ニ、普通ノ場合低利デ貸付ケルコト
ガ出來ナイノデ、利子ノ補給ヲシナケレバ
ナラヌト云フ場合ガ起テテルルノデアリマ
ス、其樣ナ各種ノ資金ヲ得ル爲ニハ、政府ハ
籤札附ノ整理公債ヲ發行スルコトモシナケ
レバナラヌ、又負債整理ノ爲ニ、特ニ中央
ニ庶民金融機關ノ如キモノヲ設ケタイト考
ヘマシテソレヲ特殊機關ト此處デ稱シテ
居ルノデゴザイマスガ、其特殊機關ヲ通ジ
テ籤札ノ附イタ所ノ、整理債劵ヲ發行サス
ト云フコトモ必要デアラウト考ヘマス、又
籤札附ノ整理公債デハナク、又籤札附ノ整
理債劵デモナク、單ニ國又ハ國ガ或ル機關
ヲ指定シテ籤札、卽チ富籤ノ發賣ヲセシメ、
資金ヲ集メル必要ガアルト私ハ存ジマシテ、
其事ヲ十條以下十五條ニ亙ッテ規定ヲ致シ
タノデゴザイマス、富籤ノ行爲ニ付キマシテ
ハ、現在ニ於キマシテハ刑法第二十三章ノ百
八十七條ニ富籤ヲ禁止シテ、處罰スル所ノ規
定ガアルノデゴザイマスノデ、此點ニ付キマ
シテ前內閣ノ司法當局ト吾々ハ、屢〓交涉ヲ
續ケマシテ、社會政策的ニ大ナル所ノ意義ノ
アル庶民ノ負債整理ヤ、失業救濟ノ資金ヲ
得ル爲ニハ富籤ヲ發賣スルノモ、世界ノ大勢
上巳ムヲ得ナイコトデアルカラ、ソレヲ承
認スルト云フ內諾ヲ得タノデアリマス、ソ
レデ私共ハ次ノ議會ニ、引續キマシテ社會
政策的施設ノ財源ヲ得ル爲ニ、或者ガ富
籤行爲ヲ爲スモ罪トナラナイト云フ意味ノ
法律案ヲ、議會ニ提出致シタイト云フ考デ
アリマスカラ豫メ御諒承ヲ御願致シマス
多少長クハナリマスケレドモ、姑ク籤札卽富
籤ニ付テノ說明ヲ聽イテ戴キタイト存ジマ
ス
富籤ノ發行ニ付キマシテ、我國ニ於テハ
今日モ色々ト非難スル人モアルヤウデアリ
マスケレドモ、歐羅巴諸國ヤ其他ノ諸國ノ
實例ヲ見マスト、最近財政ノ困難ノ爲ニ、
色々ノ資金ヲ得ルノニ非常ニ困ッテ居ルカ
ラ、國家ハ勿論地方團體、市町村ノ末ニ至
ルマデ、慈善事業ハ勿論、學校デアルトカ
病院デアルトカ道路下水デアルトカ云フガ
如キ、公共的ノ事業ノ建設財源ヲ富籤ニ依。ツ
テ得テ居ルト云フコトハ既ニ是レ皆樣ノ
御承知ノコトデアラウト考ヘルノデアリマ
ス、富籤ハ射倖心ヲ挑發シ、社會風〓上害
ガアルカラトテ、之ヲ非難スル人ガアルノ
デアリマスケレドモ、非常ノ場合ニハ非常
ノ對策ガナケレバナラヌノデアリマス、今
日ノ我國ノ財政窮乏ノ際ニ、破天荒ナル十
億圓ノ支出ヲ五箇年間ニ敢テヤラナケレバ
ナラヌト云フ大計畫ノ下ニ、負債整理ヲ全
國的ニ行フトスルナラバ、相當ノ思切ッタ非
常手段ヲ執ラナケレバナラヌト考ヘルノデ
アリマス、斯ウ云フ意味カラ籤札ノ發賣、
及籤札附公債、及債劵ヲ發行スルコトモ已
ムヲ得ナイ所デアラウト考ヘルノデアリマ
ス、サウシテ私ガモウ一言皆樣ニ申上ゲタ
イノハ、現時ノ不況ニ呻吟シテ、沈滯シテ
居ル所ノ社會人心ニ對シ籤札ヲ發賣スル、
或ハ籤札附ノ公債ナリ債劵ヲ發行スルト云
フコトハ、社會人心ニ對シ一種ノ刺戟ヲ與
ヘ、其結果經濟界ノ活況ノ一動機トモナラ
ウト考ヘルノデアリマスル、獨逸デアルト
カ、或ハ伊太利デアルトカ、佛蘭西ナリ、
和蘭ナリ、其他ノ歐洲諸國ノ富籤ニ對スル
國民ノ熊度ノ實際ヲ御承知ニナッテ居ル方
方ハ、私ノ中上ゲルコトヲ否トハ仰シヤラ
ヌコトヽ考ヘルノデアリマス、更ニ申上ゲ
タイノハ籤札發賣ハ、所謂無產階級其他ノ、
經濟的不遇ニ依ッテ絕望ノ極、現代ノ資本
主義社會ヲ呪ウテ、動モスルト云フト危險
思想ヲ抱カントスル所ノ大衆ニ、僅カ五圓
デアルトカ、十圓デアルトカ云フヤウナ小
額ノ資金ヲ以テ、或ハ五万圓、或ハ十万圓、
二十万圓ノ巨富ヲ得セシムルト云フ所ノ、
唯一ノ機會ヲ與ヘルト云フコトデアリマス、
此一點ヲ見マシテモ、單ニ射倖心ヲ挑發
スルト云フ所ノ弊害ノミヲ以テ、籤札卽チ
富籤、及籤札ヲ附ケル所ノ公債或ハ債劵ヲ
否定スルコトハ、理由ノナイ所デアラウト考
ヘルノデアリマス、況ヤ籤札ノ發賣其他
或ハ籤札附公債等ニ依ッテ得タル所ノ其
資金ト云フモノハ負債整理ト云フ最モ我
國刻下重要ナル所ノ、現下ノ急務デアル所
ノ、其負債整理ノ資金トシテ、之ヲ活用スル
ノデアリマスカラ、私ハ之ヲ否定スル理由
ハナイト考ヘルノデアリマス、籤札附ノ公
債ニ付テ一寸御參考迄ニ申上ゲマスナラバ、
籤札附ノ公債ハ嘗テ千九百年、今ヨリ三十
二年前ニ、佛蘭西政府ガ巴里ニ於テ世界大
博覽會ヲ開設スルニ要スル資金ヲ得ル爲ニ
之ヲ利用シテ非常ニ成功シタノデアリマ
ス是ハ皆樣御承知デゴザイマセウカラ詳
言ハ致シマセヌ、又最近日、極ク最近ノコ
トデアリマスル、獨逸ノ財政ハ非常ナ困難
デアル日本ノ或ハ三倍モ五倍モ獨逸ノ經
濟財政ハ困難デアラウト考ヘルノデアリマ
スガ、獨逸ガ財政ノ非常時對策トシテ、失
業救濟デアルトカ、其他ノ社會事業ノ資金
トシテ、財源ヲ得ル所ノ手段トシテ普通
ノ公債デハ財源ヲ得ルコトガ出來ナイカラ、
公債ニ富籤札ヲ附ケル所ノ法律ヲ制定シタ
ト云フコトハ、是ハ旣ニ皆サンノ御承知ノ
コトヽ存ズルノデアリマスガ、唯御參考迄
ニ申上ゲルノデアリマス、此案ノ內容ニ付
テ申シマスレバ、非常ニ多岐ニ亙ッテ居ル
ノデゴザイマスケレドモ、大體ニ於テ產業
組合ノ規定ヲ準用スルヤウニ致シマシタ爲
ニ、事柄ハ澤山含マレテ居ルノデアリマス
ルケレドモ、條文ハ僅カ二十五條ノ本文
ト、附則一條デ以テ記載スルコトガ出來タ
ノデアリマス、案ノ内容ニ付テ詳細申上ゲ
タイノデゴザイマスルケレドモ、餘リ諄々シ
クナルモノデゴザイマスルカラ、唯其一二
ノ最モ肝要ナ點ダケヲ申述ベタイト存ジマ
ス、資金ヲ得ル所ノ方法ニ付テハ、旣ニ申
上ゲタ通リデアリマスカラ一切省略ヲ致シ
マス
貸付方法デゴザイマスルガ、貸付方法ハ
成ベク長期ニ亙ッテ、三十年迄ノ年賦償還、
之ヲ認メル、其償還年限ハ三十年迄認メル
ト致シマシテ、而モ利子ガ安クナケレバド
ウスルコトモ出來ナイカラ安ク、非常ニ安
〃、四分以下デ以テ貸スコトガ出來ルヤウ
ニ致シタイト存ズルノデアリマス、サウシ
テ擔保ガアルナラバ結構デアリマスケレド
モ、成ベク擔保ヲ有タナイ所ノ農民、其他
ノ一般大衆ノ爲ニモ、負債ヲ整理シテヤラ
ナケレバナラヌノデアリマスルカラ、償還
能力サヘアルナラバ、擔保ノナイ者デモ組
合員一人ニ付二千圓ヲ限テ、貸付ケルコト
ニ致シタノデアリマス、擔保ガアルナラバ
二万圓ヲ限度トシテ貸付ケルノデアリマス、
何故ニ二万圓ヨリ以上デモ擔保ガアルナ
ラバ貸サナイカト申シマスレバ今日ノ中
產階級以下ノ負債整理ハ約二万圓ヲ目安
トスレバ十分出來ルト考ヘテ居ルカラデア
リマス、ソレ以上ノ、中農以上ノ者ノ負債
整理ノ手段トシテハ、獨逸ノ「ランドシヤフ
ト」ノヤウナ土地金融組合ヲ設置スルノガ、
簡便デハナイカト考ヘテ居ルノデアリマ
ス、ソレカラ負債整理組合ノ目的事業ニ付
キマシテハ、第五條ニ「負債整理組合ハ其
ノ目的ヲ達スル爲左ノ事業ヲ爲スコトヲ
得」ト致シマシテ、一、組合員ノ經濟狀態
ノ調査、二、負債整理ニ關スル計畫立案、
三、負債整理ノ助成指導、四、整理資金ノ
調査及貸付、五、組合員ノ爲ニスル預リ金、
六、組合員ノ生產品ノ代理販賣、七、組合
員ノ生活竝產業ノ改良ニ關スル指導、八
其ノ他組合ノ目的ヲ達成スルニ必要ナル施
設、ト斯ウ云フヤウニ致シテ置キマシタカラ、
先ヅ遺漏ナク自由ナ十分ナル所ノ活動ガ出
來テ、負債整理ノ目的ヲ達スルニ十分デア
ラウト考ヘルノデアリマス
更ニ最後ニ皆樣ノ御注意ヲ御願致シタイ
ノハ、第二十一條ノ規定デアリマス、第二
十一條ニハ「負債整理組合ノ整理案ニ對シ
同意セサル債權者アルトキハ其ノ債權者ニ
對スル債務ハ契約條件ノ如何ニ拘ラス三箇
年据置三十箇年年賦償還利率年五分ノ計算
ヲ以テ債務ノ決濟ヲ爲シ得ルモノトス」ト
アリマス、此規定ハ多少酷ノヤウデハアリ
マスルケレドモ、非常ノ手段トシテ負債整
理組合ヲ設置セシメテ、國家ガ非常ナル犠
牲ヲ拂ハレテ、不自由ナル中カラ資金マデ
與ヘテヤラウト云フナラバ是位ノ規定ヲ
以テ不同意ノ債權者ヲ押ヘテモ、差支ヘナ
カラウト考ヘルノデアリマス、其他申上ゲ
ナケレバナラヌ點ハ澤山アルノデゴザイマ
スルガ御迷惑ト存ジマスルノデ省略致シ
マスルガ、ドウカ皆樣ハ愼重審議十分ノ御
〓究ヲ遂ゲ、時局ニ鑑ミラレマシテ、速ニ
御協贊ヲ賜ランコトヲ御願致スノデゴザイ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00619320609&spkNum=55
-
056・秋田清
○議長(秋田〓君) 本案ニ對シ質疑ノ通〓
ハアリマセヌ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00619320609&spkNum=56
-
057・上田孝吉
○上田孝吉君 本案ハ政府提出、絲價安定
融資擔保生絲買收法案外一件ノ委員會ニ併
セ付託セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00619320609&spkNum=57
-
058・秋田清
○議長(秋田〓君) 上田君ノ動議ニ御異議
アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00619320609&spkNum=58
-
059・秋田清
○議長(秋田〓君) 御異議ナシト認メマス、
仍テ動議ノ如ク決シマシター日程第六、
中央卸賣市場法中改正法律案ノ第一讀會ヲ
開キマス、提出者ノ趣旨辯明ヲ許シマ
ス-提出者土倉宗明君
第六中央卸賣市場法中改正法律案
(土倉宗明君提出)第一讀會
中央卸賣市場法中改正法律案
中央卸賣市場法中左ノ通改正ス
第六條主務大臣ハ中央卸賣市場開設者
ノ意見ヲ聞キ其ノ中央卸賣市場ノ取扱
品目ニ付當該指定區域內ニ於テ中央卸
賣市場類似ノ業務ヲ爲ス市場ノ閉鎖ヲ
命スルコトヲ得中央卸賣市場ノ取扱品
目ヲ追加スルトキ亦同シ
附則
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
〔土倉宗明君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00619320609&spkNum=59
-
060・土倉宗明
○土倉宗明君 本法改正ノ目的ハ、第六條
ノ規定ニアリマスル閉鎖命令ハ、中央卸賣
市場業務開始後ニ於テモ、當該指定區域內
ニ於テ、中央卸賣市場類似ノ業務ヲ爲ス所ノ
市場ノ閉鎖ヲ命ズルコトヲ得ルト云フコト
ニ致シタイト云フノガ、本法改正ノ目的デ
アルノデアリマス、其理由ハ中央卸賣市場
ガ設ケラレテ居ル其區域內ニ類似ノ業務
ガー盛ニ卸賣市場ト類似ノ業務ヲ營ミマ
シテ、折角設ケラレテ居リマスル所ノ市場
ノ機能ヲ阻害スルノ虞ガアリマスルカラ、
卽チ本法第六條ノ規定ノ中カラ「主務大臣ハ
中央卸賣市場開設者ノ意見ヲ聞キ其ノ中央
卸賣市場ノ取扱品目ニ付當該指定區域內ニ
於テ中央卸賣市場類似ノ業務ヲ爲ス市場ノ
閉鎖ヲ命スルコトヲ得中央卸賣市場ノ取扱
品目ヲ追加スルトキ亦同シ」斯樣ニ致シタ
イト考ヘルノデアリマス、何卒御審議ノ上
御贊同アランコトヲ希望致シマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00619320609&spkNum=60
-
061・秋田清
○議長(秋田〓君) 本案ニ對シテ質疑ノ通
告ハアリマセヌ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00619320609&spkNum=61
-
062・上田孝吉
○上田孝吉君 本案ハ議長指名九名ノ委員
ニ付託セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00619320609&spkNum=62
-
063・秋田清
○議長(秋田〓君) 上田君ノ動議ニ御異議
アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00619320609&spkNum=63
-
064・秋田清
○議長(秋田済君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00619320609&spkNum=64
-
065・上田孝吉
○上田孝吉君 此際暫時休憩セラレンコト
ヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00619320609&spkNum=65
-
066・秋田清
○議長(秋田〓君) 上田君ノ動議ニ御異議
アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00619320609&spkNum=66
-
067・秋田清
○議長(秋田〓君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ此場合暫時休憩致シマス
午後三時三十二分休憩
午後四時十六分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00619320609&spkNum=67
-
068・秋田清
○議長(秋田〓君) 休憩前ニ引續キ會議ヲ
開キマス、日程第七、大正十二年法律第五
十二號中改正法律案ノ第一讀會ノ續ヲ開
キマス委員長ノ報〓ヲ求メマス、委員長
原惣兵衞君-理事靑木雷三郞君
第七大正十二年法律第五十二號中改
正法律案(司法官試補及辯護士ノ資
格ニ關スル件)(原惣兵衞君外七名提
出第一讀會ノ續(委員長報告)
報〓書
一大正十二年法律第五十二號中改正法律
案(司法官試補及辯護士ノ資格ニ關ス
ル件)(原惣兵衞君外七名提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和七年六月八日
委員長原惣兵衞
衆議院議長秋田〓殿
〔靑木雷三郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00619320609&spkNum=68
-
069・青木雷三郎
○青木雷三郞君 只今上程セラレマシタ大
正十二年法律第五十二號中改正法律案ノ
委員會ノ經過及其結果ニ付キマシテ、極メ
テ簡單ニ御報告申上ゲマス、本案ハ御承知
ノ通リニ辯護士ノ受驗資格ニ關シマスル法
律案デゴザイマス、委員會ノ審議ニ當リマ
シテハ、政府ノ意見ヲ徵シタノデゴザイマ
スガ、政府ト致シマシテハ、旣ニ特例ノ上
ニ延期ヲシ來ッタモノデヲリマスルカラ、積極
的ニ之ニ贊意ヲ表スルト云フコトハ困難デ
アルケレドモ、受驗者ノ現狀ニ徵シマシテ
ハ、頗ル同情ニ値スルモノガアルト云フ意
見デアッタノデゴザイマス、只今デモマダ二
千人ノ受驗生ト云フモノガゴザイマシテ、
サウシテ是等ノ人々ハ每年〓學更ニ勉强ヲ
續ケマシテ、今日ハ家業ノ傍ラ其他色々苦
學ヲ致シテ、此試驗ニ應ジテ參ッテ居ルノデ
ゴザイマス、二千人ノ受驗生ト二千人ノ家
族トヲ救濟シマスル所以ノモノハ、社會政
策ノ上ニ於キマシテモ、必要缺クベカラザ
ル問題デアラウト思フノデアリマス、委員
會ニ於キマシテハ此點ニ對シマシテ非常
ナル贊意ヲ表シマシテ、滿場一致原案ノ通
リ可決致シタ次第デゴザイマス、右御報〓
ヲ申上ゲマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00619320609&spkNum=69
-
070・秋田清
○議長(秋田済君) 本案ノ第二讀會ヲ開ク
ニ御異議アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00619320609&spkNum=70
-
071・秋田清
○議長(秋田〓君) 御異議ナシト認メマス、
本案ノ第二讀會ヲ開クニ決シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00619320609&spkNum=71
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072・上田孝吉
○上田孝吉君 直チニ本案ノ第二讀會ヲ開
キ、第三讀會ヲ省略シテ委員長報〓ノ通
リ可決セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00619320609&spkNum=72
-
073・秋田清
○議長(秋田〓君) 上田君ノ動議ニ御異議
ナシト認メマス、仍テ相チニ第二讀會ヲ開
キマス
大正十二年法律第五十二號中改正法律
案(司法官試補及辯護士ノ資格ニ關ス
(近)第二讀會(確定議)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00619320609&spkNum=73
-
074・秋田清
○議長(秋田〓君) 第三讀會ヲ省略シテ、
委員長報告通リ可決確定致シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00619320609&spkNum=74
-
075・上田孝吉
○上田孝吉君 議事日程追加ノ緊急動議ヲ
提出致シマス、卽チ此際政府提出、昭和七
年法律第一號中改正法律案、昭和七年度
一般會計歲出ノ財源ニ充ツル爲公債發行ニ
關スル法律案、行政整理又ハ軍備整理ニ際
シ退官退職シタル者等ニ交付スル公債發行
ニ關スル法律案、昭和七年度以降國債償還
資金ノ繰入一部停止ニ關スル法律案、國債
ノ價額計算ニ關スル法律案、及恩給ノ減額補
給及停止ニ關スル法律案ヲ一括シテ議題ト
ナシ、委員長ノ報告ヲ求メ、其審議ヲ進メ
ラレンコトヲ望ミマス
(「贊成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00619320609&spkNum=75
-
076・秋田清
○議長(秋田〓君) 上田君ノ動議ニ御異議
アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00619320609&spkNum=76
-
077・秋田清
○議長(秋田〓君) 御異議ナシト認メマス、
仍テ日程ハ追加セラレマシタ、昭和七年法
律第一號中改正法律案、昭和七年度一般會
計歲出ノ財源ニ充ツル爲公債發行ニ關スル
法律案、行政整理又ハ軍備整理ニ際シ退官
退職シタル者等ニ交付スル公債發行ニ關ス
ル法律案、昭和七年度以降國債償還資金ノ
繰入一部停止ニ關スル法律案、國債ノ價額
計算ニ關スル法律案、恩給ノ減額補給及停
止ニ關スル法律案、右六案ヲ一括シテ第一
讀會ノ續ヲ開キ、委員長ノ報告ヲ求メマ
ス-委員長岡田忠彥君
昭和七年法律第一號中改正法律案備
洲事件ニ關スル經費支辨ノ爲公債發行
ニ關スル件)(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報告)
昭和七年度一般會計歲出ノ財源ニ充ツ
ル爲公債發行ニ關スル法律案(政府提
出)第一讀會ノ續(委員長報〓)
行政整理又ハ軍備整理ニ際シ退官退職
シタル者等ニ交付スル公債發行ニ關ス
ル法律案(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報告)
昭和七年度以降國債償還資金ノ繰入一
部停止ニ關スル法律案(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報告)
國債ノ價額計算ニ關スル法律案(政府
提出)第一讀會ノ續(委員長報〓)
恩給ノ減額補給及停止ニ闘スル法律案
(政府提出)第一讀會ノ續(委員長報〓)
報〓書
一昭和七年法律第一號中改正法律案(滿
洲事件ニ關スル經費支辨ノ爲公債發行
ニ關スル件)(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報告候也
昭和七年六月九日
委員長岡田忠彥
衆議院議長秋田〓殿
報〓書
一昭和七年度一般會計歲出ノ財源ニ充ツ
ル爲公債發行ニ關スル法律案(政府提
円
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報告候也
昭和七年六月九日
委員長岡田忠彥
衆議院議長秋田〓殿
報〓書
一行政整理又ハ軍備整理ニ際シ退官退職
シタル者等ニ交付スル公債發行ニ關ス
ル法律案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和七年六月九日
委員長岡田忠彥
衆議院議長秋田〓殿
報告書
一昭和七年度以降國債償還資金ノ繰入一
部停止ニ關スル法律案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報告候也
昭和七年六月九日
委員長岡田忠彥
衆議院議長秋田〓殿
報〓書
一國債ノ價額計算ニ關スル法律案(政府
提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和七年六月九日
委員長岡田忠彥
衆議院議長秋田〓殿
報〓書
一恩給ノ減額補給及停止ニ關スル法律案
(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和七年六月九日
委員長岡田忠彥
衆議院議長秋田〓殿
〔岡田忠彥君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00619320609&spkNum=77
-
078・岡田忠彦
○岡田忠彥君 只今ニ相成リマシタ諸法案
ノ委員會ノ始末ヲ搔摘ンデ申上ゲマス
〔「國務大臣ハドウシタ」「總理大臣ハド
ウシタ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00619320609&spkNum=78
-
079・秋田清
○議長(秋田〓君) 總理大臣ノ出席ヲ求メ
マス-總理大臣ノ出席ラ求メテ置キマシ
タ、委員長ハ報告ヲ御進メヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00619320609&spkNum=79
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080・岡田忠彦
○岡田忠彥君(續) 只今上程ノ諸法案委員
會ノ始末ヲ搔摘ンデ御報告申上ゲマス委
員會ハ政府提出ノ諸法案、卽チ第一ニ滿洲
事件費ニ關スル經費支辨ノ爲、更ニ一億九
千二百五十万圓ヲ限リ公債發行ノ限度ヲ
增加スル件、第二、昭和七年度一般會計歲
出ノ財源ニ充ツル爲他ノ法律ヨリ起
債シ得ル金額ノ外一億六千六十万圓ヲ限リ
公債ヲ發行シ、又ハ借入金ヲ爲スコトヲ得
ルノ件、第三、行政整理又ハ軍備整理ニ際
シ退官退職シタル者等ニ交付スル爲二千五
百四十万圓ヲ限リ公債發行ニ關スルノ件、第
四、昭和七年度以降國債償還資金ノ繰入一
部停止ニ關スル件、第五、國債ノ價額計算
ニ關スル件、卽チ所謂公債ノ優遇案、第六、
恩給ノ減額、補給及停止ニ關スル件、卽チ
昭和六年六月一日以降、改正規定ニ依リ減
俸セラレタル者ハ減俸セラレザリシモノ
ト看做シテ、恩給竝ニ一時金ノ增給又ハ追
給ヲ爲スノ件、其他一項、以上六案ノ審議ニ
當リ、前後四囘ニ亙リ開會ヲ致シマシタ、
デ其間西脇、中村、池田、〓水ノ諸君、又委
員外ニ於テ大山君ノ御質問ガアリマシテ、
當局トノ間ニ應答ヲ重ネラレマシタ、其內
主ナルモノ二三御報告ヲ致シマシテ、其他
ハ委員會ノ速記ニ就テ御諒承ヲ願ッテ置キ
マス
減債基金ノ積立ハ從來ノ應募者ニ對スル
一種ノ公約デアルニ依ッテ、之ヲ廢止スルコ
トハ穩カデナイデハナイカト云フ質問ニ對
シマシテ、藏相ハ公約ニ依ッタモノデハナ
イ、公約ハナイノデアルト云フ所以ヲ歷
史的ニ說明セラレ、又一方ニ積立テ一方ニ
於テ發行スルヨリハ、繰入額ヲ一部停止ヲ
致シテ、ソレダケノ額ニ於テ公債ノ發行ヲ
抑制スルト云フ方ガ、今日ノ時宜ニ適シタ
モノデアルト云フ御答辯デアリマシタ、又
減債基金積立ノ制度ハ將來ニ於テ成ベク
速ニ復活スルト云フ御答辯デアリマシタ
滿洲事件費ノ件ニ付テハ滿洲ノ新國家
ヲシテ多少ノ負擔ヲ爲サシメルコトハ如何
デアルカ、政府ニ其意思ガアルカト云フ質
問ガアリマシテ、之ニ對シテハ、此事件ト云
フモノハ、抑、日本ノ國防ノ爲メ、日本ノ治
安ノ爲ニ起シタモノデアル故ニ、今日ニ於
テハ我國ニ於テ自ラ其治安ノ維持ニ任ジ
其經費ヲ持ツベキモノデアルト云フ御答辯
デアリマシタ、所謂赤字公債ノ件ニ付テハ
關稅ヲ以テ多少ノ增收ヲ圖ル以外ニ於テ、
直接稅ニ對シテモ之ヲ增加スル意見ハナ
イカト云フ質問デアッテ、ソレニ對シテハ我
國ニ於テハ今日何處ニモ直接稅ヲ增額スル
所ノ地ハナイ、公債ノ公募ヲ止メルノモ、亦
成ベク民間ニ生產ノ資金ヲ殘サンガ爲デア
ル、增稅ノ基ヲ造ルト云フコトガ、政府ノ
目標デアルト云フ答辯デアリマシタ
公債ノ優遇案ニ付テハ、國債ノ價額ヲ財
產目錄ニ記載スルニ、標準發行價格又ハ取
得ノ際ノ時價ニ依ルコトニシタナラバ、將
來時價ノ下ッタ場合ニ、所謂蛸配當ヲ爲スノ
虞ガナイカト云フ質問デアリマシテ、又此
惡習慣ガ一般ノ有價證劵、商業手形ニモ及
ブ虞ハナイカト云フコトデアリマシタ、之
ニ對シテ政府ノ答辯ハ、營業者ハ自ラ堅實
ヲ圖ラナケレバナラヌモノデアル、又ソレ
ゾレ監督ノ法ヲ設ケテアルガ故ニ、左樣ナ
ル虞ハナイ、國債ハ他ノ有價證劵ト異ッテ、
國家ト生存ヲ一ニシテ居ルモノデアル、公
債ガ一時下ッテ、半期々々ノ計算ヲ爲ス場合
ニ、一々之ヲ償還シナケレバナラヌコトデ
アッタナラバ非常ナ不便デアリ、公債ヲ買
フ人ノ爲ニ不安デアル、此法律ニ依ッテ市價
ノ安定ヲ期シ、仍テ以テ公債ノ市價ヲ高メ
ル所以デアル-維持スル所以デアルト云
フコトノ御答辯デアリマシタ、然ラバ〓算
ノ時ニ發行價格ヲ以テ之ヲ計算スル或
日本銀行ノ貸出ニ付テモ此趣旨ヲ適用ス
ル、或ハ納稅ニ於テモ此趣旨ヲ適用スルコ
トニナッタナラバ、一層ノ優遇デハナイカ
ト云フ質問ニ對シテハ今日ハマダソレ程
ノ必要ヲ認メテ居ナイ、先ヅ此程度ニ於テ
法律ノ反映ヲ見ルコトガ適當デアルト思フ
ト云フコトデアリマシタ
又國債ノ優遇案ニ關シテ今一ツノ質問ハ
(「總理ハドウシタ」ト呼フ者アリ)標準発行
價格又ハ取得ノ際ニ於ケル時價ガ額面額ト
異クテ居ル場合ニ於テハ、其差額ヲ償還マデ
ノ期間ニ於テ割當テ、之ヲ每期ノ價額ニ加
減ヲ致シテ評價ヲスルト云フ一項ヲ加ヘテ
ハドウデアルカ、卽チ所謂均等利廻計算法
ヲ適用シテハ如何デアルカト云フ質問デア
リマシタガ、是ハ如何ニモ尤ナル御意見デ
アル、併ナガラ先ヅ只今ノ案ニ依ッテ實行ヲ
致シテ見タ上ニ於テ、此考ト云フモノハ
今後保險會社其他ノ關係ニ付テ十分考慮ヲ
致シテ、實現ヲ期シタイト思フト云フコト
ノ答辯デアリマシタ
其他滿洲事件費ニ聯關ヲ致シテ、事件費
將來ノ見込、滿洲新國家ノ將來、或ハ日〓、
日露其他ノ戰費トノ關係等ニ付テハ、祕密
會ニ於テ詳細ナル應答ガアッタ譯デアリマ
ス、斯ノ如ク致シマシテ、案ハ滿場一致之
ヲ可決致シタ譯デアリマス、之ヲ御報告申
上ゲマス(拍手)
〔「總理ハドウシタ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00619320609&spkNum=80
-
081・秋田清
○議長(秋田〓君) 齋藤總理大臣ハ公務上
院外ニ在リマシテ、程ナク登院スル趣デア
リマス、併シ他ノ國務大臣ハ御覽ノ通リ、
多數列席セラレテ居リマスルカラ、此儘審
議ヲ進メラレンコトヲ望ミマス-是ヨリ
討論ニ入リマス、小谷節夫君
〔小谷節夫君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00619320609&spkNum=81
-
082・小谷節夫
○小谷節夫君 私ハ只今上程セラレテ居リ
マスル昭和七年法律第一號中改正法律
案、卽チ滿洲事件ニ關スル經費支辨ノ爲公
債發行ノ件外五件ニ對シテ贊成ノ意ヲ表
ジ、政府提案通リ、卽チ只今ノ委員長報告
通リ、可決確定セラレンコトヲ望ム者デア
リマス、私ハ曾テ此演壇ニ於テ、僅ニ百五
十万圓ノ事業公債ノ問題ニ付テ、反對黨ノ
非常ナル惡罵嘲笑ノ裡ニ、一一十分間ノ議論ヲ
費シタコトガゴザイマス、併ナガラ今囘ノ
數億ノ此公債ニ對シマシテハ一ハ滿洲及
上海ニ出征致シマシタル陸海將士ノ勞ニ酬
ユル爲ニ、又此陸海將士ヲシテ後顧ノ憂ナ
カラシメル爲ニ、又滿洲國及中華民國ニ對
スル日本ノ權益ガ如何ニ重要ナモノデアル
カト云フコトヲ自覺シテ居リマスル爲ニ、
更ニ今日ノ國狀ニ於テ已ムヲ得ザルモノト
認メマシテ平生非募債主義ヲ主張シテ御
出デニナリマスル方々モ、悉ク之ニ御贊成
ヲナサッテ居ルノデゴザイマス、私ハ議論セ
ンガ爲ニ議論スルノデハゴザイマセヌ、斯
ノ如ク結論ノ分クテ居リマスル問題ニ對シテ
ハ簡單ニ贊成ノ意ヲ表スレバ宜イト思フ
ノデゴザイマス、唯日〓戰爭、日露戰爭ノ
場合ニ於テ、十万ノ生命ヲ犠牲トシ、數十
億ノ國帑ヲ費シマシタ其借金ガ、公債トシ
テ殘ッテ居リマス、然ルニサウ云フ犧牲ヲ拂
ヒナガラモ、政府ノ處置ガ當ヲ得ナケレバ、
多クハ軟弱外交ニ依ッテ日本ノ國威ヲ失墜
ジ國權ヲ傷ケテ居ルコトガ夥シイノデア
リマス(拍手)私ハ此際政府當局ハ必ズ國
民ガ斯ノ如ク苦ンデ居リマスル際ニ、斯ウ
云フヤウナ問題ニ對シテ協贊ヲ與ヘルト云
フ、其眞意ヲ諒解セラレテ、滿洲國ニ對シ
テモ、或ハ中華民國ニ對シテモ、立派ニ日
本ノ國權ヲ維持シ、國威ヲ發揚シ、決シテ
國民ノ期待ニ背カナイヤウナ有終ノ美ヲ濟
シテ吳レルデアラウト云フコトヲ信ジマシ
テ、其意味ニ於テ私ハ滿場一致可決確定セ
ラレンコトヲ望ム者ゴザイマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00619320609&spkNum=82
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083・秋田清
○議長(秋田〓君) 西脇晉君
〔西脇晉君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00619320609&spkNum=83
-
084・西脇晉
○西脇告君 現內閣ハ、昭和七年度ニ於キ
マシテ交付公債、新規公債、借換公債ヲ合
セマシテ、八億千万圓ノ大ナル公債ヲ發行
スルノデアリマス、年度末マデ參リマスル
ト從來ノ公債ト合セマスルト約七十億圓
ノ多キニ達シマシテ、實ニ公債ノ洪水モ生
ズル位デアリマス、今後每年、滿洲ノ事件
モアリマスシ、財政上ノ缺陷ヲ補フ爲ニ
赤字公債モ出ス必要ガアルヤウニ思ヒマス、
サウスレバ年々巨額ノ公債ヲ發行センケレ
バナラヌ、數年ナラズシテ或ハ百億ニ垂ン
トスルヤウナ憂ガアルノデアリマス、斯樣
ナ場合ニハ公債ノ價格ヲ維持シ、我國ノ財
政上ノ信用ヲ保持シ、公債所有者ニ對シテ
安心ヲ與ヘルト云フヤウナ必要カラ、償還
ニ對スル方法ハ、ドウシテモ公債政策トシ
テハ考ヘンケレバナラヌト思フノデアリマ
ス、民政黨ハ從來成ベク公債ヲ財源ニシナ
イト云フ財政經理ノ方策ヲ執リマシタ、而
シテ減債ノ爲ニ積立ツル所ノ基金制度ヲ確
立致シマシテ、大隈內閣ノ時ニ現在ノ制度
ノ根柢ヲ爲ス所ノ、前年度ノ初メニ於ケル
公債總額ノ万分ノ百十六ダケヲ積ンデ置イ
テ、少クトモ三千万圓ヲ下ラザル金ヲ積ン
デ置イテ、サウシテ公債價格ノ維持ヲシ、
殊ニ外國債ニ對スル關係カラ言ッテ、我國ノ
信用ヲ保持スルト云フ政策ヲ執ッテ來タノ
デアリマス、昭和二年ニハ若槻内閣ノ時ニ
於キマシテ、前々年度ノ繰越金ガアル場合
ニハ、其四分ノ一ヲ下ラザル範圍內ノ金ヲ、
矢張公債償還ノ資金ニ充テルト云フ新シイ
政策ヲ執ッテ參ッタノデアリマス
然ルニ今日ノ如ク、斯樣ナ公債ガ段々多
ク出マス場合ニ於キマシテハ成ベク財政
ノ繰廻シヲシテ、償還ノ方法ヲ立テンケレ
バナラヌノデゴザイマスガ、只今議題ニナッ
テ居リマスル所ノ諸法案ノ中デ、減債基金
ノ繰入ヲ三分ノ二ダケ停止スルト云フ此法
案ハ洵ニ公債ガ多額ニ發行サレ、又將來
殖エルト云フヤウナ財政ノ狀態ニ在ル場合
ニ於テハ餘程是ハ考ヘンケレバナラヌト
思フノデアリマス(拍手)然ルニ斯樣ナル減
債基金ノ繰入ヲ三分ノ二マデ停止サレルト
云フコトハ洵ニ私共ハ遺憾ト考ヘルノデ
アリマス、併ナガラ是ハ若シ減債基金全部
ヲ破壞シテ、全部減債基金ノ繰入ヲヤラナ
イト云フコトニナリマスレバ、私共ハ大ニ
考ヘンケレバナラヌノデアリマスルガ、三
分ノ一ダケハ殘シテ置クト云フ程度ノモノ
デアリマスルカラ、吾々ハ大ニ考ヘルノデ
アリマス、而シテ先日ノ此法案ノ委員會ニ
於キマシテ私ハ、減債基金制度ハ將來ドウ
ナサル積リデアルカト云フコトヲ大藏大臣
ニ御質問申上ゲマシタ所ガ、高橋大藏大臣
ハ明ニ、將來財政ガ何トカナルナラバ此制
度ハ復舊スルノデアルト、明ニ申サレマシ
タコトヲ私ハ大ニ信ズルノデアリマス、私
ハ一日モ早ク是ガ復舊ノ狀態ニナルコトヲ
希望スルノデアリマス吾々ノ主義カラ申
シマスルト、其點ハ非常ニ遺憾ト致シマス
ルガ今日ノ此非常ノ際ニ於キマシテ擧國
一致內閣ガ出來テ、吾々ガ之ヲ支持シマス
以上ハ已ムナク遺憾ナガラ此法案ニ贊成
スル次第デアリマス(拍手)
〔發言スル者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00619320609&spkNum=84
-
085・秋田清
○議長(秋田清君) 靜肅ニ······発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00619320609&spkNum=85
-
086・西脇晉
○西脇管君(續) 其意味ヲ以チマシテ、減
債基金以外ノ公債ニ關スル法律案ニ對シマ
シテハ、全部贊成スル次第デゴザイマス、
此意味ニ於キマシテ原案ニ贊成致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00619320609&spkNum=86
-
087・秋田清
○議長(秋田〓君) 討論ハ終局致シマシタ、
茲ニ上程セル六案ノ委員長報告ハ何レモ可
決デアリマスルカラ、一括シテ第二讀會ハ開
クヤ否ヤヲ御諮リ致シマス、六案ノ第二讀
會ヲ開クニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00619320609&spkNum=87
-
088・秋田清
○議長(秋田秀君) 御異議ナシト認メマス、
第二讀會ヲ開クニ決シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00619320609&spkNum=88
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089・上田孝吉
○上田孝吉君 直チニ第二讀會ヲ開キ、第
三讀會ヲ省略シテ委員長報告通リ可決セラ
レンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00619320609&spkNum=89
-
090・秋田清
○議長(秋田清君) 上田君ノ動議ニハ御異
議ナイモノト認メマス、直チニ六案ノ第二
讀會ヲ開キマス
昭和七年法律第一號中改正法律案(南
洲事件ニ關スル經費支辨ノ爲公債發行
ニ關スル件)第二讀會(確定議)
昭和七年度一般會計歲出ノ財源ニ充ツ
ル爲公債發行ニ關スル法律案
第二讀會(確定議)
行政整理又ハ軍備整理ニ際シ退官退職
シタル者等ニ交付スル公債發行ニ關ス
ル法律案第二讀會(確定議)
昭和七年度以降國債償還資金ノ繰入一
部停止ニ關スル法律案
第二讀會(確定議)
國債ノ價額計算ニ關スル法律案
第二讀會(確定議)
恩給ノ減額補給及停止ニ關スル法律案
第二讀會(確定議)
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00619320609&spkNum=90
-
091・秋田清
○議長(秋田〓君) 第三讀會ヲ省略シテ、
六案トモ委員長報告通リ可決確定シタルコ
トヲ宣告致シマス
〔拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00619320609&spkNum=91
-
092・上田孝吉
○上田孝吉君 議事日程追加ノ緊急動議ヲ
提出致シマス、卽チ此際政府提出絲價安定
融資擔保生絲買收法案及絲價安定融資損失
善後處理法案ヲ一括シテ議題トシテ、委員
長ノ報〓ヲ求メ、其審議ヲ進メラレンコト
ヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00619320609&spkNum=92
-
093・秋田清
○議長(秋田〓君) 上田君ノ動議ニ御異議
アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00619320609&spkNum=93
-
094・秋田清
○議長(秋田清君) 御異議ナシト認メマ
ス仍テ日程ハ追加セラレマシタ、絲價安
定融資擔保生絲買收法案、絲價安定融資損
失善後處理法案、右ヲ一括シテ第一讀會
ノ續ヲ開キマス、委員長ノ報〓ヲ求メマ
ス-委員長宮古啓三郞君
絲價安定融資擔保生絲買收法案(政府
提出)第一讀會ノ續(委員長報〓)
絲價安定融資損失善後處理法案(政府
提出)第一讀會ノ續(委員長報告)
報告書
一絲價安定融資擔保生絲買收法案(政府
提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報告候也
昭和七年六月九日
委員長宮古啓三郞
衆議院議長秋田〓殿
附帶決議
政府ハ本案ニ依ル滯貨生絲ノ處分ヲ以テ
足レリトセス速ニ斯業ニ對スル根本策ヲ
樹立シ以テ繭絲價ノ安定向上ヲ圖ルヘシ
右決議ス
報〓書
一絲價安定融資損失善後處理法案(政府
提出)
右ハ本院ニ於テ可決スへキモノト議決致
候此段及報〓假也
昭和七年六月九日
委員長宮古啓三郞
衆議院議長秋田〓殿
〔宮古啓三郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00619320609&spkNum=94
-
095・宮古啓三郎
○宮古啓三郞君 絲價安定融資擔保生絲買
收法案外一件ノ委員會ノ經過竝ニ結果ヲ御
報告申上ゲマス、此二ツノ法案ハ所謂滯
貨生絲ヲ處分致シマシテ、蠶絲業界ノ癌ヲ
除イテ、サウシテ絲價ノ安定ヲ圖ルト云フ
目的ヲ以テ提出セラレタモノデアリマス、
元來本年ノ四月中ニ、政府ハ同樣ノ目的ヲ
以チマシテ、絲價委員會ノ議ヲ經テ、括
賣却ノ斷行ヲ認可致シタノデアリマスル
ガ諸般ノ事情ノ變化ノ爲ニ、其契約ノ本
旨ニ從フ履行ガ困難トナリマシテ、當事者
ガ合意ノ上ニ解約ヲ致シテ、サウシテ認可
ヲ政府ニ申請シテ、政府ハ絲價委員會ノ議
ヲ經マシテ之ヲ認可致シタノデアリマス
ガ、蠶絲界ノ趨勢ハ、之ヲ此儘ニ致シテ置
クコトヲ許シマセヌデ、此二ツノ法案ノ提
出トナッタモノデアリマス、此二ツノ法案ノ
内、絲價安定融資擔保生絲買收法案ハ卽
チ所謂滯貨生絲ヲ政府ニ買上ゲル案デアリ
マスシソレカラ絲價安定融資損失善後處
理法案ハ、政府ニ買上ゲマシテモ、尙ホ生
ズベキ所ノ損失補塡ヲ致シマス法案デアル
ノデアリマス委員會ニ於キマシテハ、此
兩案ガ國家ニ巨額ノ損失ヲ及ボシマス重大
ナ法案デアリマスガ爲ニ、愼重ニ審議ヲ致
シマシタ、色々ナ質問モゴザイマシタ、其
詳細ハ速記錄ニ讓リマシテ、此處デハ省略
致シマス要スルニ今日ノ場合ニ於キマシ
テハ洵ニ已ムヲ得ザルモノト考ヘマシ
テ、滿場一致デ可決ヲ致シマシタ、尙ホ絲
價安定融資擔保生絲買收法案ニ對シマシテ
ハ一ノ附帶決議ヲ致シタノデアリマス、
其決議ハ斯樣デアリマス「政府ハ本案ニ依
ル滯貨生絲ノ處分ヲ以テ足レリトセス速ニ
斯業ニ對スル根本策ヲ樹立シ以テ繭絲價ノ
安定向上ヲ圖ルヘシ」斯樣ナ附帶決議デア
リマス、之ニ對シマシテハ後藤農林大臣ニ
於キマシテ、其期待ニ副フヤウニ努力スル
旨ノ言明ガゴザイマシタ、左樣ナ次第デ滿
場一人ノ異議モナク決議ニナッタノデアリ
マスカラ、ドウゾ本會議ニ於テモ滿場一致
御贊成ヲ願ヒマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00619320609&spkNum=95
-
096・秋田清
○議長(秋田〓君) 兩案ノ第二讀會ヲ開ク
ニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00619320609&spkNum=96
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097・秋田清
○議長(秋田〓君) 御異議ナシト認メマ
ス、第讀會ヲ開クニ決シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00619320609&spkNum=97
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098・上田孝吉
○上田孝吉君 直チニ兩案ノ第二讀會ヲ開
キ、第三讀會ヲ省略シテ委員長報告ノ通リ
可決セラレンコトヲ望ミマス
(「贊成」「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00619320609&spkNum=98
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099・秋田清
○議長(秋田〓君) 上田君ノ動議ニ御異議
ナシト認メマス、直チニ第二讀會ヲ開キマス
絲價安定融資擔保生絲買收法案
第二讀會(確定議)
絲價安定融資損失善後處理法案
第二讀會(確定議)
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00619320609&spkNum=99
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100・秋田清
○議長(秋田〓君) 第三讀會ヲ省略シテ、
兩案トモ委員長報告通リ可決確定致シタコ
トヲ宣〓致シマス
〔拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00619320609&spkNum=100
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101・秋田清
○議長(秋田〓君) 本日ノ日程全部及追加
日程ハ玆ニ之ヲ議了致シマシタ、次囘ノ日
程ハ公報ヲ以テ御通知致シマス、本日ハ是
ニテ散會
午後四時四十七分散會
衆議院議事速記錄第五號中正誤
頁段行誤正
六五三七恨本對策根本對策
六六一三七配村配付発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006213242X00619320609&spkNum=101
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