1. 会議録本文
本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。
-
000・会議録情報
昭和七年九月二日(金曜日)午前十時二十二分開議
━━━━━━━━━━━━━
議事日程 第八號
昭和七年九月二日
午前十時開議
第一 不動産融資及損失補償法案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第二 昭和七年法律第六號中改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第三 商業組合法案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第四 商品券取締法案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第五 山村住民救濟に關する請願(文書表第五十號) 會議
第六 傷痍軍人待遇改善の請願 會議
第七 中小商工業者救濟の請願 會議
第八 山村住民救濟に關する請願(文書表第六十號) 會議
第九 北海道千歳村に飛行場設置の請願 會議
第十 能登鐵道株式會社敷設鐵道買收の請願 會議
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006303242X00819320902&spkNum=0
-
001・近衞文麿
○副議長(公爵近衛文麿君) 書記官ヲシテ
報〓ヲ致サセマス
〔小林書記官朗讀〕
昨一日衆議院ヨリ左ノ政府提出案ヲ受領セ
リ
號外昭和七年九月三日
不動產融資及損失補償法案
昭和七年法律第六號中改正法律案
商業組合法案
商品劵取締法案
金錢債務臨時調停法案
農村負債整理組合法案
同日委員長ヨリ左ノ報告書ヲ提出セリ
請願委員會特別報告第三號
同日米穀需給調節特別會計法中改正法律案
特別委員會ニ於テ當選シタル正副委員長ノ
氏名左ノ如シ
委員長公爵山縣有道君
副委員長子爵井上匡四郞君
本日製絲業法案特別委員會ニ於テ當選シタ
ル正副委員長ノ氏名左ノ如シ
委員長伯爵兒玉秀雄君
副委員長男爵松岡均平君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006303242X00819320902&spkNum=1
-
002・近衞文麿
○副議長(公爵近衛文麿君) 是ヨリ本日ノ
會議ヲ開キマス此際諸君ニシテ御異議ガ
ナケレバ、日程ヲ變更シテ衆議院ヨリ送付
ニナリマシタ農村負債整理法案ヲ上程シタ
イト考ヘマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006303242X00819320902&spkNum=2
-
003・近衞文麿
○副議長(公爵近衞文麿君) 農村負債整理
組合法案、政府提出、衆議院送付、第一讀
會、後藤農林大臣
農村負債整理組合法案
右政府提出案本院ニ於テ修正議決セリ因
テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和七年九月一日
衆議院議長秋田〓
貴族院議長公爵德川家達殿
(小字及-ハ衆議院修正)
農村負債整理組合法案
農村負債整理組合法
第一章負債整理組合
第一條負債整理組合ハ隣保共助ニ依リ
組合員タル農業者、漁業者又ハ林業者
ノ負債ヲ整理シ其ノ經濟ノ更生ヲ圖ル
ヲ以テ目的トス
前項ノ負債ハ私法上ノ金錢債務ニシテ
組合設立前ニ生ジタルモノニ限ル
第二條負債整理組合ハ其ノ目的ヲ達ス
ル爲左ノ事業ヲ行フ
一組合員ノ負債償還計畫及經濟更生
計畫ノ樹立
二組合員タル債務者及其ノ債權者間
ニ於ケル負債ノ金額、利率、償還期
限、償還方法其ノ他ノ條件ノ緩和ニ
關スル協定ノ斡旋
三組合員ニ對スル負債整理資金ノ貸
付
四前各號ニ揭グルモノノ外組合員ノ
負債整理ニ必要ナル事業
前項第二號ノ斡旋ニ依リ協定成ラザル
トキハ負債整理組合ハ命令ノ定ムル所
ニ依リ市町村負債整理委員會ニ對シ其
ノ協定ノ斡旋ヲ請求スルコトヲ得前項
ノ事業ヲ行フ信用組合及命令ヲ以テ定
ムル法人ニ付亦同ジ
市町村負債整理委員會ノ組織、權限其
ノ他必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定
ム
第三條組合員ガ負債整理ノ爲其ノ所有地ヲ
處分スル場合ニ於テ組合員タル小作人其ノ
他ノ者ガ其ノ土地ヲ購入セントスルトキハ
負債整理組合ハ土地購入資金ノ貸付ヲ爲ス
コトヲ得
四
書房屋負債整理組合ハ法人トス
五
亀田県負債整理組合ハ一定ノ地區內ニ
居住スル者ヲ以テ之ヲ組織ス
前項ノ地區ハ部落其ノ他之ニ準ズル區
域ニ依ル但シ特別ノ事由アルトキハ町
村ノ區域ニ依ルコトヲ得
第六條出資一口ノ金額ハ金十圓トス
組合員ハ負債整理組合ヨリ借入ルル金額ノ
二十分ノ一以上ノ出資ヲ爲シ借入ノトキ其
ノ全額ヲ拂込ムモノトス但シ十圓未滿ノ端
數ハ之ヲ切上グ
七
第五條負債整理組合ヲ設立セントスル
トキハ設立者ハ命令ノ定ムル所ニ依リ
地方長官ニ設立ノ認可ヲ申請スベシ
前項ノ認可申請ヲ爲スコトヲ得ル期間
ハ本法施行ノ日ヨリ三年間トス
八負債整理組合設立申請書ニハ組合
第六條負債整理組合設立登記ノ申請書
原簿ヲ添附スベシ
ニハ各組合員ノ氏名及住所ヲ記載シタ
ル組合員名薄ヲ忝村スベシ
組合員ノ加入ニ因ル變更登記ノ申請書ニハ
組合員ノ加入ニ因ル變更登記ノ申〓書
無限責任ノ組合ニ在リテハ加入者ノ氏名住
ニハ加入者ノ氏名及住所ヲ記載シタル
所ヲ、保證責任ノ組合ニ在リテハ加入者ノ
組合員名薄ヲ添附スベシ
氏名住所及保證金額ヲ記載シタル組合原簿
ヲ添附スベシ
產業組合法第十六條ノ四第一項、第十六條
產業組合法第十六條ノ四第一項第十
ノ五及第十六條ノ六第一項ノ規定ハ組合原
六條ノ五第二項及第三項竝ニ第十六條
簿ニ之ヲ準用ス但シ第十六條ノ四第一項及
ノ六第一項ノ規定ハ組合員名簿ニ之ヲ準
第十六條ノ六第一項ノ規定ニ依リ第十六條
用ス但シ第十六條ノ四第一項及第十六
ノ三ノ規定中地方長官トアルハ事務所所在
條ノ六第項ノ規定ニ依リ準用トラルル
地ノ登記所トス
第十六條ノ三ノ規定申地方長官トアルハ
事務所所在地ノ登記所トス
九
博多負債整理組合ハ規約ノ定ムル所
ニ依リ其ノ組合員ヲシテ組合ノ負債償
還ノ一部ニ充ツル爲積立金ヲ醵出セシ
ムルコトヲ得
前項ノ積立金ノ管理、處分其ノ他必要
ナル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
負債整理組合ノ組織ハ無限責任及
保證責任ノ二種トス
十無限責任組合ニ在リテハ
第八條負債整理組合其ノ組合財產ヲ以
眞ノ
テ。債務ヲ完濟スルコト能ハザル場合
ニ於テハ負債整理組合ノ組合員ノ全員
ガシ保證責任組合
ハ連帶無限ノ責任ヲ負擔ス
ニ在リテハ組合財產ヲ以テ其ノ債務ヲ完濟
スルコト能ハザル場合ニ於テ組合員ノ全員
ガ出資額ノ外一定ノ金額(保證金額)ヲ限度
トシテ責任ヲ負擔ス
±
芝麻負債整理組合ノ組合員ハ命令ニ
別段ノ規定アル場合ヲ除クノ外總組合
員ノ三分ノ二以上ノ同意アルニ非ザレ
バ脫退スルコトヲ得ズ
脫退シタル組合員ハ脫退前ニ生ジタル
〓第二項
組合ノ債務ニ付前條〓ノ規定ニ依ル責
任ヲ負擔ス
十二
第一編負債整理組合ニ加入シタル組合
員ハ其ノ加入前ニ生ジタル組合ノ債務
第十條第二項
ニ付テモ亦第八條ノ規定ニ依ル責任ヲ
負擔ス
十三產業組合法第三條、第四條、第六
第十一條蠶絲業組合法第二十條第二
條、第七條、第九條第一項(第七號中剰餘金
十一條第二十三條乃至第二十六條及
處分ニ關スル規定ヲ除ク)、第十二條乃至第
第四十一條竝ニ產業組合法第六條第
十五條、第十七條第一項、第十八條乃至第二
三十九條第三項第四十九條、第六十
十一條、第二十三條乃至第三十八條、第三十
條第一項、第六十一條第六十五條、
九條乃至第四十二條、第四十八條、第四十九
第九十三條ノ二第五號及第九十四條ノ
條、第五十三條、第五十六條、第五十七條、第
規定ハ負債整理組合ニ之ヲ準用ス但シ
六十條乃至第六十二條(第六十二條第一項
產業組合法第六十條第一項及第六十一
第三號ヲ除ク)、第六十五條、第六十八條乃至
條中〓算ニ關スル現定ハ此ノ限ニ在ラ
第七十三條、第七十四條乃至第七十五條、第
ズ
九十三條ノ二及第九十四條、民法第四十五
條、第四十六條第二項、第四十七條、第四十八
條、第七十五條乃至第七十七條、第八十二條
及第八十三條、蠶絲業組合法第二十五條竝
ニ非訟事件手續法第三十五條、第三十六條、
第三十七條ノ二、第百十七條、第百十九條乃
至第百二十二條、第百三十六條乃至第百三
十八條、第百四十二條、第百四十三條、第百四
十七條乃至第百五十七條及第百七十五條乃
至第百七十七條ノ規定ハ負債整理組合ニ之
ヲ準用ス但シ產業組合法第九十三條ノ二第
一號中屆出トアルハ登記トシ第六十條及第
六十一條中精算ニ關スル規定ハ之ヲ準用セ
ザルモノトシ民法第四十五條第三項、第四
十六條第二項、第四十八條及第七十七條中
一週間トアルハ二週間トス
第十四條負債整理組合ト組合員トノ間ニ於
ケル住宅又ハ土地ノ所有權ノ移轉ニ關シテ
ハ地方稅ヲ課スルヲ得ズ
十五
第十二條負債整理組合ノ理事又ハ監事
何等ノ名義ヲ以テスルヲ問ハズ組合ノ
事業ノ範圍外ニ於テ貸付ヲ爲シ又ハ投
機取引ノ爲ニ組合財產ヲ處分シタルト
キハ一年以下ノ懲役若ハ禁錮又ハ千圓
以下ノ罰金ニ處ス
前項ノ規定ハ刑法ニ正條アル場合ニハ
之ヲ適用セズ
第二章負債整理組合中央金庫
第十六條負債整理組合中央金庫ハ法人トシ
其ノ主タル事務所ヲ東京市ニ置ク
負債整理組合中央金庫ハ從タル事務所ヲ置
クコトヲ得
第十七條負債整理組合中央金庫ノ組織ハ保
證責任トス
負債整理組合中央金庫ノ財產ヲ以テ其ノ債
務ヲ完濟スルコト能ハザル場合ニ於テハ組
合員ノ全員ハ其ノ出資額ノ外出資額ト同額
ノ金額ヲ限度トシテ責任ヲ負擔ス但シ政府
ノ責任ハ出資ニ止マルモノトス
第十八條負債整理組合中央金庫ノ業務左ノ
如シ
-負債整理組合ノ助成
二負債整理組合ニ對シ負債整理資金ノ調
達融通ヲ爲スコト
三命令ノ定ムル所ニ依リ負債整理事業ヲ
行フ法人ニ對シ負債整理資金ノ調達融通
ヲ爲スコト
四負債整理組合ノ預リ金ヲ爲スコト
第十九條負債整理組合中央金庫ノ出資一口
ノ金額ハ金百圓トス
第二十條政府ハ負債整理組合中央金庫ノ出
資三十萬口ヲ持チ設立當時ニ於テ出資額ノ
三分ノ一ヲ拂込ミ爾後每年三分ノ一宛ヲ拂
込ムモノトス
政府ハ公債ヲ交付シテ出資ノ拂込ニ代フル
コトヲ得此ノ場合ニ於テハ設立當時ニ出資
額ノ全額ニ相當スル額面ノ公債ヲ交付スル
モノトス
政府ハ前項ノ公債ヲ交付スル爲必要ナル公
債ヲ發行スルコトヲ得
第二十一條負債整理組合ハ負債整理組合中
央金庫ニ加入シ出資スルコトヲ要ス
第十八條第三號ノ組合法人ハ負債整理組合
中央金庫ニ加入シ出資スルコトヲ得
第二十二條負債整理組合ノ出資ハ負債整理
組合ガ負債整理組合中央金庫ヨリ借入ルル
整理資金ノ二十分ノ一以上トシ出資ノ全額
ヲ借入レト同時ニ拂込ムモノトス但シ百圓
未滿ノ端數ハ之ヲ切上グ
第二十三條負債整理組合中央金庫ハ政府ノ
出資ニ對シテハ剩餘金ノ配當ヲ要セズ
第二十四條負債整理組合中央金庫ハ出資拂
込濟額ノ二十倍ヲ限リ整理債劵又ハ割增附
整理債劵ノ發行ヲ爲スコトヲ得
整理債劵及割增附整理債劵ハ劵面額五圓以
上トシ無記名利札附トス
整理債劵及割增附整理債劵ノ發行ニ關シ必
要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
整理債劵及割增附整理債劵ニ對シテハ所得
稅及登錄稅ヲ免除ス
第二十五條負債整理組合中央金庫ハ負債整
理組合ニ對シ整理債劵ヲ以テ貸付ヲ爲スコ
トヲ得
第二十六條負債整理組合中央金庫ハ富籤ノ
發行ヲ爲スコトヲ得
富籤ノ發行ニ依ル收得金ハ負債整理組合ニ
利子補給助成金及損失補償トシテ交付シ其
ノ殘額ハ準備金トシテ積立ツルモノトス富
籤ニ關スル規定ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第二十七條負債整理組合中央金庫ニ於テ債
劵又ハ富籤ヲ發行セントスルトキハ主務大
臣ノ認可ヲ受クルコトヲ要ス
第二十八條負債整理組合中央金庫ニハ理事
長一名副理事長一名理事一一名以上監事二名
以上ヲ置キ主務大臣之ヲ任命ス
第二十九條產業組合中央金庫法 第三條、第
七條、第八條第一項、第十條、第十一條第二
項、第十二條、第十六條、第一一十一條、第二十
二條、第二十五條乃至第三十二條、第三十四
條及第三十五條ノ規定ハ負債整理組合中央
金庫ニ之ヲ準用ス
附則
第三十條本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ
之ヲ定ム
第三十一條登錄稅法第十九條但書中
「第十四號」ヲ「第十四號乃至第十六號」
ニ改メ同條ニ左ノ二號ヲ加フ
十五北海道府縣、負債整理組合
、負債整理組合中央金庫
。又ハ農村負債整理組合法第二條第
二項ノ信用組合若ハ命令ヲ以テ定ム
ル法人ガ負債整理資金貸付ノ爲ニス
ル抵當權ノ取得ノ登記
十六北海道府縣、負債整理組合
、負債整理組合中央金庫
〓又ハ農村負債整理組合法第二條第
二項ノ信用組合若ハ命令ヲ以テ定ム
ル法人ヨリ負債整理資金ノ貸付ヲ受ケ
タル者ガ其ノ貸付ノ條件ヲ具備セザ
ルニ至リタル場合ニ於ケル北海道府
〓負債整理組合中央
縣負債整理組合。又ハ農村負債整
金庫
理組合法第二條第二項ノ信用組合若
ハ命令ヲ以テ定ムル法人ノ所有權ノ
取得ノ登記
第三十二條主務大臣ハ負債整理組合中央金
庫設立委員ヲ任命シ設立ニ關スル一切ノ事
務ヲ處理セシムルモノトス
第三十三條設立委員ハ定款ヲ作成シ主務大
臣ノ認可ヲ受クルコトヲ要ス
第三十四條負債整理組合中央金庫ハ政府出
資ノ第一囘拂込アリタルトキ設立シタルモ
ノトス
負債整理組合中央金庫成立シタルトキハ設
立委員ハ其ノ事務ヲ理事長ニ引渡スモノト
ス
〔國務大臣後藤文夫君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006303242X00819320902&spkNum=3
-
004・後藤文夫
○國務大臣(後藤文夫君) 農村負債整理組
合法案提出ノ理由ヲ御說明申上ゲマス、我
國ニ於ケル農山漁家ノ負債ガ近時數年ニ
亙ル經濟界ノ不況ノ結果、益、其經濟ヲ壓
迫スルニ至リマシタ實情ニ鑑ミマシテ、農
山漁家ヲ匡救シ、其更生ヲ圖ル爲ニハ、農
山漁家ガ共同ノ力ニ依ッテ計畫的ニ、組織的
ニ其負債ヲ整理スルト云フ途ヲ立テルコト
ガ適切デアルト考ヘルノデアリマス、併ナガ
ラ斯ノ如クシテ負債ヲ整理イタシマス爲ニ
ハ隣保共助ノ精神ニ則リ、鞏固ナル團結
ヲ基礎トスルノデナケレバ、眞ニ負債ヲ漸
次整理シテ、負債カラ遁ガレルト云フ目的
ヲ達成スルコトハ困難デアリマス、故ニ玆
ニ負債整理組合ノ法制ヲ立テマシテ、部落
其他之ニ準ズル區域內ノ居住者ガ、誠實ニ
負債ノ整理ヲナサムトスル場合ニハ、負債
整理組合ヲ組織スルコトヲ認メテ、之ニ依ッ
テ如上ノ目的ノ達成ニ資セシメムトスルノ
デアリマス、斯ノ如ク組合ノ要スル負債整
理資金ニ付キマシテハ、組合自ラガ調達ス
ルコトハ勿論デアリマスケレドモ、其外ニ
於テ必要ニ應ジテハ國又ハ公共團體カラモ
低利且ツ長期ノ負債整理資金ヲ供給イタシ
タイ積リデアルノデアリマス、此法案ニ付
キマシテハ、衆議院ニ於テ色ミト修正ガ加
ヘラレマシタ、負債整理組合ヲ市街地ニ於
テモ設置スルヤウナコトニ致シ、其組織モ
無限責任ノ原案ノ外ニ、保證責任ヲ加ヘ、
又組合員ノ出資ヲ强制シ、其他二三ノ修正
ヲ致シテ居リマス、其以外ニ向ホ負債整理
組合中央金庫ニ關スル規定ガ加ヘラレテ居
ルノデアリマス、是等ノ修正案ノ中、負債
整理組合中央金庫ニ關シマシテハ、非常ナ
難點ガアリマスコトデ、是ハ容易ニ同意ヲ
致シ兼ネル譯デ、其他ノ條件ニ關シマシテ
モ色ミ考慮ヲ要スベキ點ガアルヤウニ思ハ
レルノデアリマス、何卒御審議ノ上、政府
原案ノ趣旨ニ御協賛アラムコトヲ切望イタ
シマス次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006303242X00819320902&spkNum=4
-
005・近衞文麿
○副議長(公爵近衞文麿君) 通〓ガゴザイ
マスカラ、岩城子爵ノ登壇ヲ願ヒマス
〔子爵岩城隆德科演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006303242X00819320902&spkNum=5
-
006・岩城隆徳
○子爵岩城隆德君 私ハ只今議題ニ上ボリ
マシタル所ノ農村負債整理組合法案ニ付
テ、私ハ農林大臣ニ御尋ネシタイ點ガアル
ノデアリマス、先ヅ私ハ質問スル前ニ、
應我ミガ此法律案ヲ審議スル前ニ、御確メ
ヲ當局ニシテ置キタイコトガアルノデアリ
マく、只今モ農林大臣ノ御說明ニ依リマシ
テ此農村負債整理組合法案ニ付キマシテ
ハ衆議院ニ於キマシテモ非常ナ議論ガ出
マシテ、遂ニ政府原案ニ對シテハ非常ナ修
正ニナッタノデアリマス、是ハ後デ質問ヲ致
シマス時ニ申上ゲタイト思フノデアリマス
ガ、此衆議院ノ修正ニ對シテハ、私ハ終始
贊成ノ意ヲ表スルモノデハナイノデアリマ
スルガ、此修正ニナリマシタコトニ對シマ
シー、只今提案理由ヲ御說明ニナル時ニ、
政府ハ此衆議院ノ修正案ニ對シテ、同意サ
レテ居ルノカ、或ハ絕對ニ反對デアルノカ、
ソレガ私ニハマダ判明シナイノデアリマス、
ソレデ此問題ハ當議會ニ於ケル所ノ法律
案竝ニ非常時時局匡救對策ノ案トシテハ
最モ私ハ重大ナル問題ダト思フノデアリマ
シテ、寧ロ現今貴衆兩院ニ於テ花ノ咲イテ
居ル所ノ率勢米價削除ノ問題ヨリモ、私
農村ニ取リマシテハ非常ナル所ノ私ハ重大
問題ダト存ズルノデアリマス、ソコデ後藤
農相ハ去月二十九日ノ議會散會後ニ於テ、
新聞記者ニ斯ウ云フコトヲ語ラレテ居ルノ
デアリマス、政友會ノ率勢米價削除竝ニ中央
金庫設立ノ二案、中央金庫ト申シマスノハ
此負債整理組合法案ニ對スル中央金庫ノ意
味デアリマシテ、此二案ニ對シマシテ、農
林當局トシテハ反對スル理由ハ委員會デ述
ベタ所デ明瞭ダケレドモ、政府當局トシテ
モ十分ナル確信ヲ以テ提案シタ政策ヲ飽ク
迄主張スルノハ當然デハナイカ、姑息ナ妥
協ニ應ズベキ性質ノモノデナク、假令齋藤
首相カラ話ガアッテモ所信ヲ抂ゲル考ハナ
イ、若シ政友會ノ絕對多數ニ依フテ、政友會
案ガ衆議院ヲ通過シテモ、政府トシテハ之
ニ承認ヲ與ヘルコトハ出來ナイ、貴族院ニ
於テモ矢張リ反對ノ旨ヲ說明スルヨリ外ハ
ナイト、新聞記者ニ語ッテ居ラレマス、其後
藤農林ノ御決意タルヤ、自分ノ位地、職ヲ
賭シテモ此問題ハ反對デアルト云フコトヲ、
新聞記者ニ語ラレテ居ルノデアリマス、ソ
コデ私ハ新聞記者ニハ斯樣ニ語ラレマシタ
ガ、只今ノ提案ノ理由ノ御說明ノ中ニ、衆
議院カラハ多大ノ修正ヲ加ヘラレタケレド
モ、政府ハ之ニ對シテ同意ハシ兼ネル、唯
同意ハシ兼ネルト云フダケデアッテ、衆議
院ノ此問題ノ委員會デ述べタ所デ明瞭ダト
云フコトヲ述ベラレテ居リマスルケレドモ、
私ハ此衆議院ノ委員會ノ經過ヲ新聞······速
記錄ハ未ダ我ミノ手ニ入リマセヌノデ詳シ
イコトハ分リマセヌガ、新聞記事デ見タ所
ニ依リマスルト云フト、少クモ私ダケハ少
シモ明瞭デナイノデアル、何處ガ、我とモ
只今先程モ申上ゲマシタ通リニ、衆議院ノ
修正案ナルモノニ對シテハ私ハ終始贊成
ノ意ヲ表シテ居リマセヌ、居リマセヌガ政
府ハドウ云フ理由ヲ以テ之ガ反對デアルカ、
如何ナル理由デ反對デアルカト云フコトガ
少シモ明瞭デナイノデアル而シテソレナラ
バ其反對ノ理由トシテ、反對デアルカラ政府
ハ政府原案ノ儘デ行クト云フコトデアルナ
ラバ、ソレニ對シテハ私ハ又意見ガアリマ
ス、又サウデナク、ドウモ絕對多數デ押サレ
テ居ルモノダカラ、巳ムヲ得ズ修正ニ同意
ヲシナケレバナラヌ、已ムヲ得ズ同意ヲス
ルト云フナラバ、其處ニ已ムヲ得ズ同意ヲ
スル所ノ又理由ガ私ハナケレバナラヌト思
ヒマス貴族院ガ斯ル曖昧ナル所ノ案ヲ我
我ニ押付ケラレテ、サウシテ我ミガ之ヲ眞
面目ニ審議スルト云フコトハ、甚ダ私ハ迷
惑ダト思フ、ソコデ私ハ先ヅ質問ヲスル前
ニ政府ガドノ點ニ反對デアルカト云フコ
トノ、具體的ノ理由ヲハッキリ私ハ御伺ヲ
致シマシテ、私ノ質問ニ移リタイト思ヒマ
ス先ヅ是ダケヲ先ニ御伺ヒ致シマス
〔國務大臣後藤文夫君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006303242X00819320902&spkNum=6
-
007・後藤文夫
○國務大臣(後藤文夫君) 只今岩城子爵カ
ラ衆議院ニ於ケル私ノ意見ノ表示ガハツ
キリ分ッテ居ラヌ、新聞記事ニ付テ色ミ御話
ガアリマシタガ、新聞記事ニ付テハ私ハ彼
此レ申シマセヌ、私ノ考ヲ傳ヘテ居ル所モ
アルシ、言葉ノ違ッテ居ル所モアルヤウニ思
ヒマス、ソレハ兎ニ角ト致シマシテ、本案
ニ關シテ衆議院ガ修正ヲ致シマシタ要點ニ
對スル意見ヲ申述ベロト云フコトデアリマ
ス、先程極ク梗〓ハ申シタ積リデアリマス
ガ、重ネテ茲ニ申上ゲタイト思ヒマス、政
府ハ負債整理組合ノ設置ニ關シテ法制ヲ立
テルト共ニ堅實ナル、立派ナル負債整理組
合ノ各地ニ出來ルコトハ希望イタシテ居ル
ノデアリマス、併ナガラ是レハナカ〓〓容
易ナコトデアリマセヌコトハ、先キニ說明
デ申シタ通リデアリマス、眞ニ立派ナル組
合デナケレバ、本當ノ負債整理組合ノ仕事
ハ出來ナイノデアリマス、ソコデ之ニ對ス
ル資金トシテハ、政府ハ出來ルダケ低利資
金ノ供給ヲ圖リタイト云フ考ヘデ居リマス、
然ルニ之ヲ以テ不十分デアルトシテ、中央
金庫ト云フモノヲ是ガ爲ニ設ケテ、割增附
ノ債劵ヲ發行シテ、尙ホ其外ニ富籤ヲモ發
行ノ權能ヲ加ヘ、ソレデ整理資金ノ調達ヲ
シヤウト云フノガ、衆議院ノ中央金庫ニ關
スル案ノ内容デアリマス、政府トハ所見ヲ
異ニ致シテ居リマス、政府ハ政府ノ考ヘテ
居ル所ヲ以テ今日デハ適當デアルト認メテ、
中央金庫ヲ設ケルト云フコトニハ贊同ヲ
致シ兼ネルノデアルト申シタノデアリマ
ス、其外負債整理組合ノ出來方ニ付テ色ミ
修正ガ行ハレテ居リマス、デ最初此負債整
理組合法案ハ、農村ニ於テコソ斯ウ云フコ
トガ行ハレルノデアル、從テ市街地等ニハ
斯ノ如キ方法ヲ以テ負債ノ整理ヲスルト云フ
コトハ事實適切デモナシ勿論行ハレ難イ
モノデアルト思フ見地カラ、農村負債整理
組合ト云フコトニ致シテアッタノデアリマス、
之ヲ都市ニモ及ボシテモ宜イヂヤナイカ、
出來ルナラバヤラシテモ宜イヂヤナイカト
云フコトガ、衆議院ノ修正ノ意見デアリマ
ス、政府ハ之ニ付キマシテハサウ云フコ
トハ餘リ行ハレ得ナイ、適切ナ方法デナイ
ト思ヒマスケレドモ、法案ガ行ハレ得ルコ
トニシテ置イテモ、大シタ差支ノアルコト
デハナイ、若モ出來得ルナラバサウ云フコ
トガ出來テモ宜カラウト思フノデアリマ
ス、次ニ組合員ノ責任ヲ、連帶無限ノ責任
デアルト云フコトニ、政府提出ノ原案ハナッ
テ居リマスガ、之ヲ更ニ保證責任ノ組合ヲ
モ設立シ得ルコトニ、衆議院デハ修正イタ
シタノデアリマスカ、政府ノ見ル所デハ
斯ノ如キ此共同ノ力ニ依ル負債ノ整理ハ、
各人ガ全幅ノ力ヲ擧ゲテ、御互ノ負債ヲ助
ケ合ノテ整理シテ行クト云フ所ニ整理組合
ノ眞精神ガアリ、又是ガ長イ間掛ッテ負債ヲ
償還シテ行ク、組合員ノ爲ノ組合デアリマ
スカラ、連帶無限ノ責任ヲ負フコトガ最モ
適當デアラウト考へテ居リマス、保證責任
ノ制度ヲ加ヘルコトハ此組合ノ力ノ弱イ
モノヲ作ルコトニナリハシナイカ、從テ整
理資金ヲ得ルコトニ於テモ保證責任ノ組
合ニ於テハ餘程困難デアラウト考ヘマス、
併シ此點ニ付テ保證責任ノ組合ガ出來得ル
コトニシテ置クト云フコトニ依ッテ、ソレデ
モ整理資金ヲ得ラレルト云フ組合ガアリマ
ス場合ニハ强ヒテ之ニ反對スル程ノコト
ハナイトハ思ッテ居リマス、其外組合員ニ出
資ノ强制ヲスルコトニ修正ガ行ハレテ居リ
マス、私共ハ出資ノ强制ハ、負債ヲ整理シ
ヤウ、自分ノ借金ヲサウシテ整理シテ行キ
タイト云フ組合ニスルコトハ適當デナイ
ト思ッテ居リマス、其外尙ホ二三ノ修正ガア
リマシタガ
〔議長公爵德川家達君議長席ニ著ク〕
ソレハ格別不同意ヲ唱ヘルヤウナ點モナ
カッタヤウニ思ヒマス、尙ホ細イコトニ付
テ、私玆ニ言ヒ落シタコトガ若シアリマス
レバ政府委員等カラ御說明ヲ申上ゲヤウ
ト思ヒマス
〔子爵岩城隆德君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006303242X00819320902&spkNum=7
-
008・岩城隆徳
○子爵岩城隆德君 只今後藤農相ヨリ先ヅ
私ガ衆議院ノ修正ニ對シテ、政府當局ハ如何
ナル具體的理由ガアッテ之ヲ反對サレルカ
ト云フコトニ付テ、先ヅ所信ヲ伺シタノデア
リマス、其御答辯ハ私ノ質問ノ要點ニチヨッ
トモ觸レテ居リマセヌ
(副議長公爵近衞文麿君議長席ニ著ク〕
私ノ伺ヒ方モ甚ダ當ヲ得テ居ラナカッタカ
モ存ジマセヌガ、頗ル私ハ遺憾ニ思ヒマス、
而シテ農村負債整理組合法案ノ要點ハ何處
ニアルカ、幾ラ農村ニ借入金ガアッテ、之ヲ
整理スルニ付テモ唯條文ヲ羅列シタダケデ
ハ整理ハ出來ナイノデアリマス、此農村負
債整理組合法案ノ重點ハ何處ニアルカト申
シマセバ、是ハ農村負債整理ニ要スル所ノ
資金ト云フモノガ私ハ明瞭デナケレバ、是
ハ如何ニ農村ニ負債整理組合ヲ作ラシテ
モ、決シテ私ハ其實ガ擧ラナイト思フノ
ハ是ハ私ノミナラズ常識上カラ考ヘテモ
私ハ當然ノコトト思フノデアリマス、ソレ
ハ先ヅ其程度ニシテ置キマシテ、政府ハ衆
議院ノ此修正ニ對スル所ノ、殊ニ整理組合
中央金庫ニ對シテハ反對デアルト云フコト
ヲ私ハ承知イタシタノデアリマス、ソコデ
先ヅ此問題ハ之ニ致シテ置キマシテ、政府
ハ原案ノ儘デ行クト云フ御考デアルコトヲ
中心ニ致シマシテ、私ハ質問ヲ致シタイト
思フノデアリマス、デ私ハ去ル五十九議會
ノ時ニ豫算總會ニ於キマシテ、其前年我〓
同僚ト、農村ガ今日疲弊シタノハ數年前ヨ
リデアルト云フコトハ各位モ御承知ノ通リ
デアルソコデ其當時ヨリ農村ヲ如何ニ救
濟スルカト云フコトガ輿論ノ重大ナル所ノ
問題トナッタノデアリマスルガ
〔議長公爵德川家達君議長席ニ復ス〕
兎ニ角如何ニ農村ヲ救濟スルニ付テモ机上
ノ論デハ駄目、實際ヲ見ルニ限ルト云フ所
カラ、我〓同僚ト共ニ農村ノ實情ヲ視察シ
テ步イタノデアリマス、ソコデ其實情ヲ視
察スル前ニモ、農村ニ於キマシテハ今議
會ニ於キマシテモ議政壇上ニ於キマシテ度
度同僚ノ各位ヨリ御論議ガアリマシタ通リ
ニ、今日農村ニ於テ最モ困〃テ居ル所ノ問題
ハ公租公課ノ重壓ニ苦シメラレテ居ルト
云フコトデアリマス、モウ一ツハ農村ニ於
キマシテ莫大ナル所ノ負債ノアルト云フコ
トデアリマス、モウ一ツハ所謂主要農產物ノ
價格ガ下落ヲシタト云フコトデアリマス、
ソコデ此農村ノ負債ニ付キマシテハ我と
ガ實情ヲ視察スル前ニモ、是ハ莫大ナ負債
ガアルト云フコトハ大凡豫測ヲシテ參ッタ
ノデアリマスケレドモ、實際ニ參リマシテ
實情ヲ聞イテ見マスルト云フト此負債ノ
額ト云フモノハ我ミノ豫想以上デアッタト
云フコトニ對シテハ、私ハ少クトモ非常ニ
驚イタノデアリマス其負債ノ原因ニ付キ
マシテハ色ミアルデアリマセウ、併シ兎ニ
角農村ノ負債ハ今日ニ於キマシテハ勸業
銀行ノ調査ニ依リマシテモ、農村ダケデモ
五十二億位ハアル、ソコデ五十九議會ノ時
ニ私ハ豫算總會ニ於テ其當時ノ政府當局ニ
質問ヲシタノデアリマス、デ此農村ニ於ケ
ル所ノ五十億内外ノ負債ト云フモノヲ何ト
カシテヤラナケレバ、此足枷ガアッテ、之ヲ
何トカ解決シテヤラナケレバ農民ニ自力
デ立テノ、或ハ今日ノ言葉デ言ヘバ自力更
生デ行ケノト言ッタ所デ、到底ムツカシイ、
故ニ此農村負債ヲ少クモ整理シテヤラナケ
レバ農村ハ獨リ步キガ出來ナイカラ、政府
當局ニ於テハ其對策ニ付テハドウ云フ御考
ヲ持ッテオ出デニナルカ、ソレヲ御答辯ヲ願
ヒタイト云フコトヲ私ハ豫算總會ニ於テ要
求シタノデアリマス、所ガ當時ノ農林大臣
ハ私ニ對シテ斯ウ云フ答辯ヲサレタノデ
アリマス、昭和六年二月二十五日ノ豫算總
會議事速記錄ノ六號二十五頁ヲ御覽ニナル
ト明瞭デアリマス、兎ニ角其時ノ御答辯ノ
要旨ハ私ノ質問ヲシタ通リ農林當局ニ於
テモ約四十五億カラ五十億位ハ農村ノ負債
ハ當時アルダラウト云フコトヲ明言サレタ
ノデアリマス、ソコデ此整理ノ方法ニ付テ
ハ農林當局ニ於テハ是非之ヲ整理シナケレ
バナラヌト思フ、ドウシテモ之ヲ整理シテ
ヤラナケレバ、農村ハ決シテ獨リ步キハ出
來ナイ、故ニ農林當局ハ眞劍ニ此整理ノ方
法ニ付テハ今調査ヲ折角シテ居ル所デア
ル、併シ農村ノ負債ニ付テモ色ミ原因ガア
ルノデ、此種類ニ付テモ亦農村ノ此負債ヲ
持ッテ居ル所ノ人ノ關係ニ付テモ、能ク其
原因ヲ調査シテ、必要ナル所ノ負債ニ對シ
テハ大藏大臣ト能ク協議ヲシテ、議會ガ終ク
タナラバ何等カ此負債ノ整理ノ實ヲ擧ゲタ
イト云フコトヲ明カニ私ニ對シテ御答辯ニ
ナッタノデアリマス、ソコデ私ハ尙ホ其時ニ
農林大臣ニ御願ヲ致シマシテ、政府當局ガ
此農村ノ負債整理ニ付テ眞劍ニ御調査ヲ下
サッテ、議會直後ニ大藏大臣ト協議ヲシテ、
此負債整理ノ實ヲ擧ゲルト云フコトノ御言
明ニ對シテハ私ハ頗ル敬意ヲ拂ヒ、必ズヤ
近キ將來ニ於テ農村ノ負債ノ整理ノ實ヲ必
ズ擧ゲテ戴キタイト云フコトヲ、私ハ御願
ヲ致シテ置イタノデアリマス、ソコデ愈、
今議會ニ於キマシテ、約二年ノ間農林當局
ニ於テハ、此農村負債整理問題ト云フコト
ニ付テ愼重ニ誠意ヲ持フテ、必ズ此負債整理
組合法案ナルモノヲ御提出ニナルダラウト
云フコトヲ私ハ豫期シテ居ッタノデアリマ
ス、所ガ愈〓此今議會ニ御提出ニナッタ所ノ農
村負債整理組合法案ヲ見マスルト云フト
私ハ實ニ豫期ニ反シテ非常ニ私ハ落膽ヲ致
シタノデアリマス、其落膽シタル所ノ所以
ハ、先程モ申上ゲマシタ通リニ、此政府原案
ノ農村負債整理組合法案ハ、唯條文ヲ羅列
シタダケノモノデアリマシテ、如何ニシテ
農村ノ負債ヲ整理スルカト云フ所ノ重點ヲ
外レテ居ルノデアリマス、先程カラモ申上
ゲマシタ通リニ、各位モ御承知ノ通リ此農
村負債ト云フコトハ現今ノ社會問題トシ
テ私ハ非常ニ重大ナル所ノ問題デアルダラ
ウト私ハ思ヒマス、政府ハ今議會ニ於キマ
シテハ此農村ノ疲弊ト云フコトヲ痛感サレ
テ、非常對策トシテ、追加豫算トシテ莫大
ノ金ヲ計上サレタノデアリマス、其莫大ナ
金ヲ計上サレテ、農村ノ救濟トシテハ昨日
モ前田子爵カラ御話カアリマシタ通リ、普
通土木事業、竝ニ農村ノ土木事業ト云フ莫
大ナル金ヲ使ッテ、農村ノ救濟ヲシヤウト云
フ御案デアリマス、政府ハ今議會ニ於キマ
シテモ、我ミ同僚ノ中カラ、政府ノ應急對
策ハ枝葉末節デハナイカ、今日ノ農村ヲ救
濟スルニハ先程モ申上ゲマシタ通リ、農村
ノ最モ苦ンデ居ルノハ此公租公課ノ重壓
ニ苦シメラレテ居ルコトデアリマス、從テ
此農村ノ公租公課ヲ輕減スル意思ハナイ
カ、或ハ此負備整理ニ對シテモ御質問ガア
リマシタ、或ハ主要農產物ノ統制ト云フコ
トニ對シテモ御質問ガアリマシタ、是等ノ
根本ノ對策ヲ樹テルニアラズンバ、枝葉末
節ノ應急匡救策ヲ、數億万圓ノ金ヲ積ンダ
所デ農村ハ救濟サレヌノデハナイカ、何故
此根本對策ヲ樹テナカッタンダト云フコト
ノ御質問ノアッタ時ニ、政府當局ハ今囘ハ
根本對策ニハ觸レヌ、併シ根本對策ニ觸レ
ナイト云フモノノ、根本對策モ無イデハナ
1、其無イデハナイト云フコトガ、此農
村負債整理組合法案ヲ提出サレタト云フコ
トヲ以テ言ヒ遁レテ居ラレルノデアリマ
ス、私ハ政府ニ於テ本當ニ農村ヲ救濟スル
ト云フ所ノ眞實ノ誠意ガアルナラバ枝葉
末節タル所ノ實行モムヅカシイ所ノ非常時
應急對策トシテ、莫大ナル所ノ豫算ヲ計上
サレタ、サウ云フコトヲ私ハサレル必要ハ
ナイ、本當ニ誠意ガアルナラバ此非常時農
村ノ救濟對策トシテハ此農村負債整理組
合法案ダケデモ私ハ結構ダト思フ是ダケ
デモ本當ニ眞實ニ農村ノ負債ヲ整理ヲシテ
ヤラウト云フコトデアッタナラバ、政府ニソ
レダケノ誠意ガアッタナラバ私ハ農村ハ
是ダケデモ私ハ浮上ルト思フノデアリマ
ス、而シテ現在五十億以上、內外モアル所
ノ此農村ノ負債ノ利子ダケデモ大變デアリ
やく、政府ヨリ御貸付ニナッテ居ル所ノ低
利資金、是ハ利息ハ安イノデアリマスルケ
レドモ、農村ニ於キマシテハ此低利資金ハ
政府ニ於テハ數年前ヨリ、是ハ私ニ言ハセ
ルト、政黨內閣ノ是ハ人氣取リダト思フノ
デアリマスガ、低利資金ヲ貸スト云フ聲バ
カリデ、少シモ何億、何十万ノ低利資金ヲ
貸ス······貸スト云フコトノ放送ハスルケレ
ドモ、實際ニハ其低利資金ト云フモノハ農
民ノ手ニハ實際渡ラナイ、何故渡ラナイカ、
私ガ申上ゲル迄モナク其貸付條件竝ニ貸付
ノ方法ガムツカシイノデ少シモ實ガ擧ラナ
イ、併シ兎ニ角農村ニ對スル所ノ政府カラ
御貸付ニナッタ所ノ利息ハ安イモノデアリ
マリ、併シ個人竝ニ其他ヨリ借リテ居ル所
ノ利息ト云フモノハ非常ニ高イノデアリマ
シテ、御承知ノ通リ私ガ申上ゲル迄モナク
一割以上、甚シキニ至ッテハ二割以上ノ利息
ノ金ヲ借リテ居ル、從テソレ等總テノ利息
ヲ平均シテモ、私ハ一割五分位ニハナルト
思フ、ソコデ之ヲ、一戶當リニ約千圓位內
外ノ借金ガ今日アルノデアリマスルカラ、
農家ハ一戶デ此負債ノ利子ダケデモ、年ニ
百五十万圓內外ノモノヲ拂フテ居ルノデア
リマス、此利息ノ年ニ百五十万圓ヲ拂フト
云フコトハ是ハ農村ニ對シテハ實ニ血ノ
淚ノ出ル程ノ思ヒデアリマス、今日農村ノ
公租公課ガ非常ナ重壓デアル、此公租公課
ニハ苦シメラレテ居ル、誠ニ不均衡デアル
ト云フヤウナコトヲ申シマスルケレドモ、
公租公課ドコロノ騒デハアリマセヌ、年十
百五十万圓ノ利息ヲ拂フト云フコトハ容易
デナイノデアリマス、然ルニ今日政府ノ御
提案ニナッテ居ル所ノ農村非常對策トシテノ
應急策デ、農村ガ一戶當リドノ位潤フカト申
シマスト、昨日モ此壇上デ前田子爵ノ言ハレ
タ通リニ約二十圓デアリマス、二十圓デ以テ
此農村ノ最モ苦ンデ居ル所ノ負債ノ利息ノ
百五十圓ト比較イタシマスルト、實ニ大ナ
ル差ガアルノデアリマス、迚モ一戶二十圓
位ノ救濟費デハナカ〓〓農村ハ私ハ救ハレ
ナイ、救ハレルドコロデハナイ、到底ムヅ
カシイト私ハ思フノデアリマス、其二十圓
モデス、是ガ一戶平均農民ノ手ニ二十圓デ
モ實際ニ渡ルナラ結構デアリマス、併シ私
ハ政府ノ應急對策ノ農村土木事業ト云フコ
トガ、實際政府ノ考ヘテ居ラレルヤウニ、
是カラ先キ七箇月ノ間ニ、アノ莫大ノ金ヲ
消化シ切レルカ、シ切レナイカト云フコト
ニ付テ、私ハ非常ナ疑義ヲ持,タノデアリ
マス、故ニ私ハ此間カラ實地ニ實ハ各地ヲ
視察シテ步イタノデアリマス、昨日モ前田
子爵ニ對シテ山本内務大臣ハ此壇上ニ於テ
御答辯ヲサレマシタ、其御答辯ヲ伺ヲテ居
リマスルト云フト、私ハ實ニ歎カハシイト
思ッタノデアリマス、大臣ノ御職掌柄御忙シ
クテ、誠ニ實地ヲ御視察ニナル暇モナイデ
アリマセウガ、全ク今日內務所管ノ土木事
業ガ、實際ニドウ云フヤウニ行ハレテ居ル
カ、或ハ農村ニ於ケル所ノ農村ノ土木事業
ト云フモノハ實際ニドウ云フヤウニ行ハ
·レテ居ルカト云フコトヲ全ク御存ジナイノ
ダト私ハ思ッタ、斯ル實際ヲ知ラナイデ以
テ、應急對策トシテ莫大ノ金ヲ與ヘテ、卽
座ニ此七箇月ノ間ニ消化シ切レルト斯ウ思
ハレルノモ、實際ヲ知ラナイカラダト思ッ
テ、私ハ御無理ノナイコトダト思ヒマシ
タ、私ハ極ク最近ニ各位ノ御承知ノ通リ全
國ノ用排水ノ工事費ノ約半額以上モ使ッテ
居ル所ノ埼玉縣ヘ行ッタノデアリマス、埼玉
縣ヘ參リマシテ、埼玉縣ニ於テハ非常ニ大
キナ用排水ノ事業ヲ長年月ノ年度割デヤフ
テ居リマス、御承知ノ通リ二百何十万、或
ハ百何万ト云フヤウナ大工事ヲ數年ノ繼續
事業デヤッテ居リマス、其私ハ實際ヲ見ニ參
リマシタ、實際ヲ見ニ參ッテ私モ驚イタ、假
ニ熊谷ノ先キニ去年カラ始メタ所ノ大里用
水ト云フノガアリマス、其大里用水ハ是ハ
今マデ埼玉縣ノ用排水ノ事業ヲヤッテ居ル
仕方ト變ヘマシテ、是ハ土木請負業者ニ請
負ハシテ居ルノデアリマス、其他ノ大ナル
所ノ用排水ノ事業ハ總テ縣直營デヤッテ居
リマシテ、農村ノ農民ヲ農閑期······農事ノ
閑ノ時ニ雇ッテ參リマシテ土功ノ工事ヲサ
シテ居ルノデアリマスルガ、此大里用水ハ
チヨット趣キガ違ヒマシテ、隧道ヲ造ッテ「コ
ンクリート」デヤッテ居リマス、從ヒマシテ
ドウモ「コンクリート」ヲ······隧道ヲ作ルノ
ニ「コンクリート」デヤッテ居ルノデハ、慣レ
ナイ所ノ農民デハドウシテモ出來ナイ已
ムヲ得ズ是ハ土木請負業ニ宛ガッタノデア
リマス、ソコデ其處ニ居リマス技師ニ、實
際ニ仕事ニ携ッテ居ル方ニ私ハ伺ッタノデア
リマス、今度政府ニ於テ應急對策トシテ農
村土木事業ヲ計畫サレテ居ルガ、而シテ其
農村土木事業ハ土木請負業者ニハ請負ハセ
ヌト云フ話デアルガ、サウ云フコトガ實際
ニ出來ルデセウカ、總テ農民ヲ使フト言。ツ
テ居ラレルガ、サウ云フコトガ出來ルデセ
ウカト云フコトヲ私ハ主任ノ技師ノ御方ニ
伺ッタ、所ガサウ云フコトハ到底出來マセ
ヌ、ノミナラズ今日マデノ用排水ノ事業ダ
ケデモ年度ヲ繰越スコトガ非常ナモノ、昨
日モ前田子爵カラ其御話ガアリマシタ、而
シテ今度ノ應急豫算ヲ七箇月ノ間ニ莫大ナ
金ヲ使フト云フコトニ對シテハ、今日マデ
モ非常ナ弊害ガ起ッタガ、今日マデ所ノ弊
害ヂヤナイ、非常ナ弊害ガ起ルダラウト思
ヒマス、ノミナラズ七箇月ノ間ニ消化ガ出
來ナイノデ、總テ是ハ長年月ニ繰越スコト
ニナルダラウト思ヒマスト云フコトヲ言ッ
テ居ラレタノデアリマス、是ガ私ハ本當ダ
ラウト思フ、ソコデ先程モ申上ゲマシタ通
リニ、假ニ政府ガ計畫サレタ所ノ事業ガ此
七箇月ノ間ニ消化サレテモ、農家一戶ニ對
シテハ二十圓ヨリ潤ハナイノデアリマス、
ノミナラズ實情ニ於テハ二十圓潤フドコロ
カ、私ハ繰越シテ十圓ニモナラナイダラウ
ト思フ、十圓ニナレバマダ結構、目覺メタ
ル所ノ農村ニ於キマシテハヽ政府ニ於テ補
助金ヲ吳レテ、四分ノ一ダケハ農村ガ負擔
スル、ソレモ今日ニ於テハ負擔モ出來ナイ
ダラウカラ、政府ガ低利資金ヲ貸シテヤル
カラ、農村デ土木事業ナリ、農村土木事業ヲ
起セト云フコトヲ縣廳カラ御達シガアッタ、
ソコデ昨日モ前田子爵カラ御話ノアッタ通
リニ、地方ニ於テハ其爲ニ醜運動ガ起ヲタ、
所ガ目覺メタル所ノ農村デハ、私ノ聞キ及
ンダ所ニ於テハ既ニ縣ニ對シテ斷フテ來
タ所ガアル、政府カラ低利資金ヲ貸シテ戴イ
テ事業ヲシロト云フコトハ誠ニ有リ難イ、
有リ難イケレドモ、今日ニ於テハ農村ハ莫
大ナ負債ヲ持クテ居ル、政府カラ貸シテ戴ク
低利資金ハ利息ハ安イガ、兎ニ角低利資金
ヲ貸シテ戴イテモ、又借金ニナリマス、我
我ガ此以上ニ借金ヲ背負フト云フコトハ
到底忍ビ得ラレマセヌカラ、是ハ御斷リ申
スト云フコトノ、旣ニ目覺メタル農村モアッ
タト云フコトヲ私ハ聞イテ來タノデアリマ
ス、斯ル狀態デアリマスカラ、今日非常時
應急對策トシテ、農村ヲ救濟スルト政府ニ
於テ言明サレタル所ノ此豫算ト云フモノ
ハ到底私ハ農村ニ潤ハナイモノダト思フ
ノデアリマス、假ニ政府ガ言ハレル通リ潤。ラ
テモ僅カナモノデアラウト思フ、斯樣ナ狀
態デアリマスカラ、寧ロ私ハ斯ル人氣取ノ
政黨ガ······政治ガ、散散國民ヲ欺瞞シタ所
ノ、國民ヲ欺イタ所ノ、又弊害ノ多イ所ノ農
村土木事業、或ハ普通ノ土木事業ニ依ッテ、
農村ヲ救濟スルト云フヤウナコトハ私頗
ル疑惧ニ堪ヘナイノデアリマス、寧ロソレ
ヨリモ、本當ニ政府當局者ガ、爲政家ガ、
農村ヲ救濟スルト云フノナラバ、私ハ此農
村負債整理組合法案ト云フモノヲ完全ニシ
テデス、農村ヲ救濟スルト云フコトニ、眞
劔ニ私ハ考ヘテ戴ケバ、ソレデ私ハ澤山ダ
ト思フ位ニ存ジテ居ルノデゴザイマス、斯
ルコトヲ、私ガ今マデ御話ヲ申上ゲタヤウ
ニ、此農村負債整理ト云フコトハ、農村ニ取
リマシテハ實ニ重大性ノモノデアルト云フ
コトハ私ガ申上ゲル迄モナイノデアリマ
ス、ソコデ政府ハ決シテ此農村負債整理組
合ニ、此條文ノ上ニハ······政府原案ノ條文
ノ上ニハ、資金ノ明示ハナイ、資金ノ明示
ハナイケレドモ、必要ニ應ジテ低利資金ヲ
貸シテヤルンダト云フコトヲ言ハレルノ
デアリマス、成程、事業ノ、此農村負債整
理ノ進行ニ依ッテ、低利資金ヲ貸スト云フコ
トハ本當カモ知レヌケレドモ今マデ私ハ
低利資金ノ貸付ノ狀況ヲ見、經過ヲ見マス
ト云フト、必シモ政府ノ言フコトヲ私ハ信
ゼラレナイト思フ、斯ル曖昧ナルコトニ依。フ
テハ、此農村ノ負債整理ト云フコトハ、私
ハ絕對ニ出來ナイト思ヒマス、私ハ此農村
負債整理組合法案ニ付キマシテモ、非常ニ
衆議院ニ於テモ問題ニナリマシテ、衆議院
ノ修正案ニ對シテハ先程モ御話ノヤウニ政
府ハ反對デアル、其反對ノ理由ヲ私ハ具體
的ニ伺ヒタイト云フコトヲ申上ゲタノデア
リマス、假ニ農村負債整理中央金庫ヲ拵ヘ
タラバ其中央金庫ノヤリ方ハ富籤ヲス
ル、其富籤ガイケナイノダ、或ハ金ヲ集メ
ルト云フケレドモ、斯ル農村ガ疲弊シテ居
ル時ニハ金ガ集ラナイノダ、ソレダカライ
ケナイノダ、何カソコニ具體的ノ方法ガナ
ケレバ、唯政府原案ノ儘デ行クト云フコト
デアッタナラバ、是ハ私ハ政府ガ無理ヲ言ッ
テ居ル、誠ニ條文ヲ羅列シタバカリデ、私
是程今日國民ヲ欺瞞シ、農民ヲ欺瞞スル所
ノ法案ハナイト思フ、ノミナラズ資金ノ伴
ハナイ所ノ、實行不可能デアル所ノ此法律
案ヲ、我ミニ協贊ヲ與ヘロト云フノハ是
ハ私ハ甚ダ議會ヲ輕蔑シタモノダト思フノ
デアリマス、故ニマダ御尋ヲ申上ゲルニ付テ
ハ私ノ主張ヲ申上ゲタイノデアリマスケ
レドモ、時間ヲ取リマスカラ、私ハ項目ニ
依ッテ政府ニ御質問ヲシタイト思フノデア
リマス、第一ハ政府ノ原案ニ依ッテ、政府
ノ言ハレルヤウナロトデ、低利資金ヲ融通
スルト言ハレマスルガ、政府ハドノ位ノ金
ヲ融通スルノカ、ソレヲ御明答ヲ願ヒタ
イノデアリマス、此〓通ヲドノ位ニスル
カト云フコトヲ、私御伺ヒスルノハ假
我ミガ事業ヲスルニ付テモ、玆ニ資本金ナ
リ何ナリノ明示ガナケレバ、事業ニ掛ルコ
トガ出來マセヌ、第一條ニアル通リ、農村負
債整理組合ハ隣保共助ニ依ッテ組合員タル
農業者、漁業者、又ハ林業者ノ負債ヲ整理
シ、其經濟ノ更生ヲ圖ルヲ以テ目的トスル、
目的ハハッキリシテ居リマス、誠ニ結構デ
ス、此御趣意ニ付テハ私ハ少シモ異存ハア
リマセヌガ、此目的······所期ノ目的ヲ達セ
シムルニハ玆ニ我ミガ事業ヲスルト同ジ
ク、定款ヲ幾ラ作ッテモ其處ニ資本金ガ明カ
デナケレバ事業ニ取リ掛ルコトガ出來マセ
ヌ、殊ニ其金ハ常識上カラ考ヘテモ、政府
ガ低利資金ヲ融通スルト云フナラバ、ソレ
ハドノ位融通スルノカ、何モ農村負債整理
ヲスルノニ農村負債整理中央金庫ヲ立テル
必要ガナイ、其融通ノ金ガハッキリシテ居
レバ私ハ安心シテ農村ノ人達ハ、此負債整
理組合ト云フモノヲ政府ガ强要シナイデ
モ私ハ出來ルト思ヒマス、併シ我ミニシ
テモ、我ミ貴族院ニ對シテ之ヲ審議シロト
言ハレテモ、私ハ其點ガハッキリシナケレバ
私ハ審議スルコトハ出來ナイト思フノデア
リマス故ニ政府ハドノ位ノ金ヲ融通スル
御考デアルカト云フコトヲ第一ニ御聽キシ
タイノデアリマス、第二ニハ、衆議院ニ於
キマシテハ其融通ノ額モハッキリ申サレマ
セヌシ、其融通ノ內容ト云フヤウナモノニ
付テモ詳細ニ御明示ガナイノデアリマス、
私ハ政府ガドノ位ノ金ヲ融通サレテ、其融
通ノ内容ヲ詳細ニ御明示ヲシテ戴キタイノ
デアリマス、若シモ此融通ノ額ナリ、或ハ
融通ノ內容ナリト云フモノヲ御明示スルコ
トガ御出來ニナラナイトスレバ是ハ全ク
私ハ政府ガ此一夜漬ノ、根本對策ガ今議會
ニ出ナイト云フコヲヲ非難サレル風避ケ
ノ······風當リノ强イ其風避ケニ、國民ヲ欺瞞
スル爲ニ御出シニナッタトシカ私ハ思ヘナ
イノデアリマス、故ニ衆議院ノ委員會ニ於
テ其場當リノ言譯ニ、唯ソレハ仕事ノ進行
ニ依ッテ決メルンダト云フヤウナ、サウ云
フ御言ヒ遁レデナク、此貴族院ニ於キマシ
テハハッキリ其點ヲ御明示願ヒタイト私ハ
思フノデアリマス、尙ホ負債整理組合ニ、
若シモソレガ御明示モ出來ズ、其内容モ御
話ガ出來ナイト云フコトデアッテ、此。負債
整理組合ノ負債整理ニ充ツル所ノ資金ガ無
イトキニハドウ云フコトダ、私ハ全ク農民ニ
對シテ政府ノ信用ヲ失フト云フコトニ私ハ
ナルト思フノデアリマシテ、是ハ將來ニ對
スル非常ニ重大ナル所ノ私ハ問題ダト思ヒ
やく、斯ル無責任ナル所ノ此法律案ヲ提示
ヲサレルト云フコトハ私ハ實ニ無責任モ此
上ナイ、甚シイモノダト私ハ思フノデアリ
マン、而シテ其資金ガナカッタナラバ決シ
テ組合ト云フモノハ、常識上考ヘテモ組織
サレナイト云フコトヲ私ハ思ヒマス、又先
程モ申上ゲタ通リニ、農村ノ負債ノ利子ト
云フモノハ非常ニ高イモノデアリマスル
ガ、是ガ非常ニ問題デアリマス、之ヲ資金
ガ供給ガナカッタナラバ是ハ私ハ此負債整
理組合ヲ拵ヘテ相談協議ヲスルナンテ云フ
コトハ、到底出來ナイモノダト私ハ思セマ
スガ、政府ノ御考ハドウデアルカ、ソレヲ御
伺シタイノデアリマス、尙ホ先程カラモ申上
ゲタ通リニ、政府ノ原案ト云フモノハ誠ニ
不徹底デ、無責任此上ナイモノデアリマシ
テ、此法案ハ協贊サレルニシタ所デ實行ノ
伴ハナイモノデアリマスルカラ、私ハ實ニ
空文ニ等シキ所ノ案デアルト思フノデアリ
マツ、從テ政府ハ今日急イデ此負債整理ヲ
シナケレバ無論農村ハ困リマス、困リマス
ガ、コンナ空文ヲ出サレテハ尙ホ困リマス、
從テ完全ナモノニ······少シ時期ハ遲レテモ
完全ナモノヲ御提出ニナッタ方ガ私ハ宜イ
ト思ヒマスルカラ、完全ナモノニシテ、之
ヲ撤囘サレル所ノ意思ハナイカト云フコト
ヲ私ハ政府ニ御尋ネシタイノデアリマス、
何故サウ云フコトヲ私ガ伺フカト云フ
ト、今朝ノ各位モ御承知ノ通リ、朝日新聞
ニ斯ウ云フコトガ出テ居リマス、私モ新聞
ニ出ル前ニ外カラ聞キ及ンダノデアリマス
ルガ、幸ニ新聞ニ出テ居リマスルカラ、私
ハ此新聞ノ一節ヲ讀ンデ御參考ニ供シタイ
ト思ヒマス、其新聞ノ中ニ「此負債整理組合
法案ノ樂屋裏ヲ覗イテ見ルト、當初農林省
ガ負債整理案ノ立案ニ方ッテ、眞先ニ考ヘタ
ノハ必ズシモ政友案ト同樣ノモノデハナ
カッタラウガ、資金關係ハ中央金庫デヤルト
云フ案ダッタ、ソレガ髙橋藏相ノ容レル所
トナラズ、又三土鐵相ナドモ反對シ、次善
ノ案トシテ府縣ニ對スル國家補償案ダッタ
ガソレモ駄目、議會ニ御目見エシタノハ農
林當局ガ最モ氣乘リ薄ダフタ組合法案一本
ダケダッタノデアル、是デ議會ノ荒浪ヲ乘切
ルニハ、初メカラ政府丸ニ艤裝ガ足リナカッ
タノデアル、扨テ元ニ戾シテ政友會案ニモ
難點ガアル」云々、斯ウ云フコトガアリマス、
ソコデ私ハ只今申上ゲタ通リニ農林當局ニ
於テハ五十九議會ノ時ニ於テ色ミ私ガ質問
イタシマシテ、其御答辯ヲ得タ通リニ、眞
劍ニ誠意ヲ以テ農村整理ヲシヤウト云フ御
考ハ少クモ私ハ有ッタト思フ、故ニ農林事務
當局ニ於テハ其以後二年間誠心誠意立案
ヲサレテ、其得タ所ノモノハ今日御提出
ニナッタ政府原案ノヤウナ空文ニ等シキモ
ノデナカッタト云フノハ、此新聞紙ニ依。フ
テモ分ルノデアリマス、故ニ私ハ政府ニ於
テハ先程モ申上ゲマシタ通リ、此空文ニ等
シキモノヲ御引込メニナッテ、成程農村ニ於
テハ是ハ負債整理ガ出來ナイト云フコトハ
非常ニ困リマス、困リマスガ寧ロ完全ナモ
ノヲ時機ガ遲レテモ御出シ下サレタ方ガ農
民ハ非常ニ私ハ喜ブト思フノデアリマス、
故ニ政府ニ於テハ之ヲ撤囘サレル所ノ御意
思ガナイカト云フコトヲ、私ハ最後ニ御尋
ネ致シタイト思フノデアリマス
〔國務大臣後藤文夫君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006303242X00819320902&spkNum=8
-
009・後藤文夫
○國務大臣(後藤文夫君) 御質問ニ御答ヘ
致シマス、其前ニ色ミ御議論ガゴザイマシ
タガ、此負債整理組合法案ヲ以テ農村負債
ノ全部ヲ整理シヤウトシテ居ルノデハナイ
ト云フコトハ先程モ申上ゲタ通リデアリマ
ス、農村負債ノ整理ハ唯一箇ノ方法ノミヲ
以テ全部ニ直ニ行ハレルト云フ譯ニハ參リ
兼ネルモノダラウト思ヒマス、政府ガ別ニ
低利資金ノ償還ノ條件ヲ緩和シタヤウナコ
ト不動產ノ固定ノ流動化、產業組合ノ固
定貸ノ流動化ト云フヤウナ施設ヲ講ジマス
ルコト、又各般ノ地方土木事業其他ノ事業
ヲ行ヒマスルコト、或ハ低利金ノ政策、是
等幾多ノ方法ガ相俟ッテ農村ノ金融ヲ緩和
シ農村ノ資力ノ狀態ヲ改善ヲシテ、是等
ガ色ミナ途カラ此農村ノ人達ノ、負債ノ整
理ニモ役立ツコトデアラウト思フノデアリ
Vく、併シ其外ニ尙ホ負債整理組合ト云フ
ヤウナ方法ニ依フテ、現ニ農村デハ負債ノ整
理ガ行ハレテ居ル所ガアルノデゴザイマ
ス、是等ノ負債整理組合ニ依リ共同ノ力
デノ負債整理、之ニ一ツノ基準ヲ與ヘ、便
利ヲ圖ルサウシテ斯ウ云フヤリ方ガアル
ノダト云フテ、廣ク之ヲナサムトスル者ニ
規矩準繩ヲ與ヘルト云フコトハ、此方法ニ
依リ負債ノ整理ヲ促進スル所以デアルト思
フノデアリマス、負債整理組合法案ハ其趣
旨デ立案サレテ居ルノデアリマス、之ニ資
金ノコトガ書イテナイト云フコトハ、何ニ
モ負債整理組合法案ノ缺點デハナイト思フ
ノデアリマス、併ナガラ負債整理法組合ガ
出來レバ自カラ負債ノ整理資金ガ要ルデ
アラウト云フコトハ、無論豫想サレルコト
デアリマス、デ政府ニ於キマシテモ負債整
理組合ニ對シテ低利ナ資金ヲ供給シテヤリ
タイト云フ考ハ持ッテ居ルノデアリマス、
併ナガラ今申シマシタヤウナ次第デアリマ
シテ、負債整理組合ニ幾何ノ資金ガ要ル
カ、而シテ政府ガドレダケノ資金ヲ之ニ供
給シテヤリ得ルカ、低利資金ヲ供給シテ
ヤリ得ルカト云フヤウナコトハ今マダ
資金ノ方ノ必要ノ見極メモ付カズ、其外
預金部等ニ於キマシテモ、各種ノ應急施設
其他ニ要スル低利資金ノ關係ヲ早ク決メナ
ケレバナリマセヌ、今後出來ル負債整理組
合ニ對スルモノハ、ソレヲヤッテ後デナケレ
バハッキリシタ見極メハツキマセヌ、從テ負
債整理組合ノ爲ニ供給シ得ル政府低利資金
ノ金額ヲ確定的ニ決メテ居リマセヌ、唯之
ニ向ッテ出來ルダケノ低利資金ヲ出サウト
云フコトヲ決メテ居ル譯ナノデアリマス、
ソレカラ融通ノ內容ハドウデアラウカ、多
分融通ノ方法ニ付テ御聞キノコトデアラウ
カト思ヒマス、之ガ融通ノ方法ハ府縣ヲ通
シテ組合ニ貸付サセルト云フコトニ、大體
イタシタガ適當デアラウト云フ風ニ思フテ
居リマスルガ、マダ確ト具體的ナ方法ヲ定
メテハ居リマセヌ、ソレカラ負債整理組合
ヲ作ラセテ、斯ウ云フ法案ヲ出シテ、サウ
シテ是ガ十分ナ資金ガナイト云フ時ニナレ
バ農民ガ非常ニ失望落膽シテ來ルデアラ
ウト云フ風ナ御話ガアリマシタガ、是ハ負
債整理組合ニ依ッテ、負債ノ整理ヲ全部、先
程ノ御話ノアッタ何十億トカ云フ整理ヲ全
部シテヤルノダト云フヤウナコトデ參リマ
シテ、若シ其資金ガナイトナッタナラバ、非
常ナ失望落膽ヲ生ズルデアラウト思ヒマス、
併シ此負債整理組合法ニ依ル負債整理組合
ハ、先程申シマシタヤウニ幾多ノ方法、色
色ナ方面カラ流レ集マッテ農村ノ負債ヲ緩
和スル間ニ於テ、又一個ノ方法トシテ斯ウ
云フコトヲ行ッタラ宜カラウト云フコトデ
立テテ居ル方法デアリマス、之ニ依クテ出來
ル限リ資金ノ融通ヲ致シマスコトニナリマ
スレバ農村ノ方デモ負債整理ニ少カラザ
ル便益ガ生ズルデアラウト思ヒマス、特キー
御懸念ノヤウナコトハナイデアラウト思ヒ
やく、ソレカラ資金ガナケレバ調停等ヲヤ
ラウトシテモ出來ヌノデハナイカ、ソレハ
負債整理組合法ヲ此ニ作,テ行ク場合ニ、負
債ノ整理資金ヲドウスルカト云フヤウナコ
トヲ考ヘテ調停モ致シマセウガ、併シ調停
スルニハ整理資金ト云フヨリモ寧ロ負債
整理償還ヲシヤウトスル人ノ償還能力ノ問
題ナノデアリマス、償還能力ト債權者ノ方
ノ立場トヲ見合セテ、ソコデ償還ノ計畫ガ
立ツノデアリマス、償還ノ計畫ガ立ッテ、玆
ニ負債整理資金ノ必要ナ金額ト云フモノガ
組合ニ於テ割出サレテ來ルダラウト思フノ
デアリマス、ソレカラ空文デハナイカト云
フヤウナ御批評ガアリマシタガ、是ニハ只
今マデ申上ゲタ御說明デ御答ガ出來テ居ル
ト思ヒマス、最後ニ新聞ノ記事ヲ御引用ニ
ナリマシテ、政府ハ此政府案ノ儘ノモノハ
撤囘スルノ意思ガナイカドウカト云フ御話
デアリマシタガ、撤囘スルノ意思ハゴザイ
マセヌ、新聞ノ報ジマスル所ヲ土臺ニシテ、
私ハ此席デ議論ヲ致シタクゴザイマセヌ
唯農林省デハ只今出シテ居リマスル案ヲ此
場合ニ於ケル各般ノ方面、又國家財政ナゾ
ノ方面、色ミナ所カラ考へマシテ、最モ適切
デアルト考ヘマシテ、之ヲ政府ノ議トシテ
議會ニ提出ヲ致シタ次第デアリマス、左樣
御承知ヲ願ヒタイト存ジマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006303242X00819320902&spkNum=9
-
010・岩城隆徳
○子爵岩城隆德君 此席カラ御許ヲ願ヒマ
ス、只今私ノ質問ニ對シテ後藤農相カラ御
答辯ガアリマシタ、私モ只今農相ガ言ハレ
マシタ如ク、農村ノ今日アル負債ノ五十億
內外ト云フモノヲ、全部ヲ此負債整理組合
法案ニ依ッテ解決ガ出來ルト云フヤウナコ
トハ毛頭私ハ思ッテ居リマセヌ、唯先程モ申
上ゲタ通リニ、此負債整理組合法案ニ負債
整理ニ對スル所ノ資金ト云フモノガナカッ
タ時ニハ政府ノ低利資金ニ對スル御緩和
ト云フヤウナコトハ私モ萬々承知イタシ
テ居リマスルガ、其以外ノ負債ニ對スル利
息ガ高イト云フコト、是ハ此高イ利息ヲ輕
減スルト云フコトガ私ハ非常ニ重大ナル問
題ダト思ヒマス、其高イ利息ヲ輕減ヲスル、
其協議ヲスルニモ、或ハ相談ヲスルエモ、
政府カラノ負債整理ニ對スル所ノ資金ノ私
ハ大小ニ拘ラナイト思フ、兔ニ角政府ガ負
債整理ニ對シテハ是ダケノ資金ヲ私ハ預
金部ノ今日ノ狀況デハ莫大デナクトモ私
ハ金ガ低利資金デ貸セルカドウカト云フコ
トヲ疑ッテ居ル位ノモノデアリマスカラ、決
シテ大小ハ問ハナイ、兎ニ角今日ニ於テハ
政府ハ是レ〓〓ノ資金ヲ此負債整理ニ對シ
テハ融通シテヤルト云フコトノ御明示ガ
アッタナラバ、私ハ非常ニ農民ハ安心シ、サ
ウシテ此負債整理ノ實ヲ擧ゲルコトガ私ハ
出來ルト思フノデアリマス、併シ只今ノ御
答辯ニ對シマシテハ、私ハ今日此處ニ於テ
反駁ヲ致シマセヌ、又機會ガアリマシタナ
ラバ私ハ農相ニ尙ホ引續イテ伺ヒタイコト
ガアリマスガ、只今ハ是デ質問ヲ打切ルコ
トニ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006303242X00819320902&spkNum=10
-
011・阪本さん之助
○阪本釤之助君 マダ岩城子爵ノ外ニ御通
告ガゴザイマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006303242X00819320902&spkNum=11
-
012・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 通〓ガゴザイマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006303242X00819320902&spkNum=12
-
013・阪本さん之助
○阪本釤之助君 アリマスカ、ソレデハ終
リマシタラチヨット簡單ナコトデゴザイマ
ス、御許ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006303242X00819320902&spkNum=13
-
014・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 大河内子爵·····発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006303242X00819320902&spkNum=14
-
015・大河内輝耕
○子爵大河內輝耕君 私此案ニ付テ農林
大臣ニ二點バカリ質問イタシタイ、第一點
ハ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006303242X00819320902&spkNum=15
-
016・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 登壇ヲ願ヒマス
〔子爵大河内輝耕君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006303242X00819320902&spkNum=16
-
017・大河内輝耕
○子爵大河內輝耕君 其第一點ハ、只今
岩城子爵ノ御話ニナリマシタ、是ノ資金ガ
必要デアルト云フコトハ一應御尤ダト思ヒ
マスドウシテモ是ハ資金ガナケレバナラ
ヌト思フ、ソレデ又資金ガ必要デアルト云
フコトト、政府ガ之ニ對シテ十分ニ出來得
ル限リノ援助ヲ與ヘテヤルト云フ方針ヲ示
シサウ云フ腹ヲ見セルト云フコトハ是
ハ必要ダラウト存ジマス、併シ一方カラ申
シマシテ、幾ラ金ヲ出シテヤルト云フヤウ
ナコトヲ示スト云フコトハデス、是ハ其多
クノ債權者ノ中ニハ質ノ惡イ債權者モアリ
マスシ有力ナ後援者ガアッテ、幾ラ金ヲ出
シテヤルト云フヤウナコトニナレバ、却ッテ
是ハ負債整理ヲスベキモノモ、取レルモノ
ナラモット取ッテヤラウト云フヤウナコトカ
ラ、却ッテ弊害ニナリハシナイカ、寧ロ債權
者ト話シ合ッテ、惡イ債權者ハ叩ケルダケ叩
イテ置イテ、其上デ初メテ金ヲ出スヤウナコ
トニデモ決メタ方ガ却ッテ宜イヤウナ考ヘ
モシマスノデ、決シテ私ハ今ノ御趣旨ニ反
對シテ居ルノデハアリマセヌガ、念ノ爲ニ
一應御質シヲシテ置キタイ、ソレカラ次ニ
負債整理ニ關聯シマシテ伺ヒタイノハ昨
日米穀法ノ改正ニ當リマシテ、第四條ノ三
項ヲ取ッテシマウアノ衆議院ノ修正ニ於テ、
アノ三項ヲ取リマシタ爲ニ、買上ゲハ時價
ニ依ッテ買上ゲヲスル、時價ニ準ジテ買上ゲヲ
スルト云フ規定ガナクナフテシマッテ、何デ
買上ゲテモ差支ナイヤウニナッタヤウニ思
ハイアレハ上山君モ御說明ニナリマシタ
通リニ、貴族院ノ意向デ入ッテ來タ、貴族院
デ入レタト云フコトハ別問題ト致シマシテ
モ、アノ規定ヲ取ッテシマウト云フコトニナ
リマスレバ米價ハ安定シナイ、其爲ニ此負
債整理ナドニ對シテハ、非常ナ妨害物ニナ
ラウト思フ、又一方カラ言ヒマスト云フト、
啻ニ農村ニ害ガアルバカリデナク、アレノ
爲ニ投機ヲ誘發シテ來テ、社會上、風〓上
カラ言ッテモ非常ニ害ヲ來スモノヂヤナイ
カト私ハ存ジマスル、折角人心ガ斯ウ安定シ
テ來ヤウト云フ場合ニ、アヽ云フモノガ出
テ來テ、又ミ投機市場ニ色ミナ波瀾ヲ起サ
シメル、無用ナ波瀾ヲ起サシメルコトハ此
際謹シムベキコトデアルシ、又永遠ノ制度
トシテモ謹シムベキコトデアルト私ハ考ヘ
ラレル、修正ニ付キマシテモ政府ニ於テモ
色ミ御審議ノコトト存ジマスル、外ノコトモ
色〓伺ヒタイノデアリマスガ、是ハ米穀法
ノコトデゴザイマスカラ、此際伺フベキコ
トデナイト思ヒマスカラ、唯今ノ點ダケヲ
御伺ヒ致シタイ
〔國務大臣後藤文夫君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006303242X00819320902&spkNum=17
-
018・後藤文夫
○國務大臣(後藤文夫君) 大河內子爵ノ御
尋ニ御答ヘ致シマス、第一ニ負債整理組合
ノ整理資金ノコトデアリマス、負債整理組
合ガ負債ノ調停ヲシテ、債權者債務者ノ間
ニ負債條件ノ緩和ヲ圖フテ、玆ニ組合員ノ將
來ノ經濟的ノ更生ト、併セテ自分ノ負債ガ
永遠ニ、長年月ニ亙ッテ漸次解消シテ行ク
ト云フ方法ヲ講ズル、是ガ負債整理組合ノ
仕事デアリマス、從テ資金ガ此處ニ是ダケ
アル、ソレデ先ヅ負債整理ヲ企テヤウ、債
務者ノ將來ノ償還能力如何ト云フヤウナコ
トニ拘ハラズニ、資金ノ方デ負債整理ノ計
畫ヲ樹テルト云フコトハ、是ハ順序ガ〓倒
ンテ居ルト思フノデアリマス、若シサウ云
フコトデアリマスルト、今大河內子爵ノ御
話ノヤウナ疑念ガ隨分生ジ勝デアッテ、整
理資金ハ貸付ケラレタガ、組合員ハ其ヤウ
ナ金額デ此處ヘ收マリガ付イタノデハ將
來ノ償還ト云フコトガ非常ナ不安ニナッテ
來ルト云フコトニナルト、負債ガ整理サレ
ナイコトニナルト思フ、ソレカラ第二ノ點
ハ子爵カラモ御話ノアリマシタヤウニ、今
此場合ニ御答スルノガ適當デアルカドウカ
トハ思ヒマスガ、簡單ニ御答ヘ致シマス、
米ヲ時價デ買フト云フコトデナイ、時價ニ
モ拘ラズ買フコトガ出來ルト云フヤウニ致
シマスコトハ、是ハモウ非常ニ憂フベキ結
果ヲ生ズルニ相違ナイ、子爵ノ仰セラレル
通リデアルト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006303242X00819320902&spkNum=18
-
019・阪本さん之助
○阪本釤之助君 極ク簡單ナ問デアリマス
カラ此席デ私質問イタシマス、此衆議院送
付ノ案ヲ見マスルト政府ノ原案トハ換骨脫
胎デハマダ當ラナイ、マルデ變"テシマッタ
ト言フテ宜シイ、ソレガ若シ貴族院ヲ通過
シテ法律ニデモナリマシタ時ニハ非常ナ
範圍ニ亙フテ行ハレルコトニナルノデアリ
マスガ、此農村ノ救濟ト云フコトデ······此
案ノ可否ハ唯今申シマセヌ、私共多少疑義
ガゴザイマスガ、農村ト云フノデアルカラ
マア宜カラウト考ヘテ居リマシタガ、是ガ
一般ノ人ノ、或ハ市ニ住居シテ居ル小商人
ナドデモ此組合ヲ作ルコトガ出來ルト云フ
コトニナルト、是ハ獨リ農林大臣ノ所管バカ
リデナイ、ドウシテモ內務大臣ガ之ガ責任
ヲ持タナケレバナラヌコトニナッテ來ル、商
工大臣ハ勿論ノコト、是ハ衆議院ガ修正ヲ
致シテ本院ヘ廻ッテ、マダ物ニハナッテ居リ
マセヌガ、兎ニ角最早貴族院ノ議ニカカリマ
スレバ國務大臣ハ責任ヲオ持チエナラナケ
レバナラヌノデアリマスガ、生憎內務大臣
ハ今オ出デニナラヌノデスガ、商工大臣ハ
オ出デアリマスカラ、商工大臣ハ此案ヲ
如何ニ御覽ニナッテ居ルカ、段々御說明ハ
農林大臣ガ色ミ御說明ニナッテ居リマスガ、
場合ニ依ッテハ商工大臣モ御答辯ニナラナ
ケレバナラヌコトニナッテシマッタ、內務大
臣モ實ハ非常ナ責任ヲ御感ジニナラナケレ
バナラヌコトト思ヒマスガ、內務大臣ノ御
答ハ何カノ機會ニ承ハルコトニシテ、差向
キ商工大臣ハ此案ヲ如何ニ御覽ニナルカ、
又此案ガ只今申シマシタ通リ農村デアルカ
ラ宜イケレドモ、市ノ小借家住ヒノヤウナ
人ガ、斯ウ云フ組合ヲ作ッテヤルト云フコ
トハ危險千萬デアルト思ヒマスガ、如何ニ
商工大臣ハ御覽ニナッテ居ルカト云フコト
ヲ御答辯ヲ願ヒタイ
〔國務大臣男爵中島久萬吉君演壇ニ登
ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006303242X00819320902&spkNum=19
-
020・中島久萬吉
○國務大臣(男爵中島久萬吉君) 只今阪本
君カラ衆議院ノ本案ニ對スル修正ニ付テノ
御尋ガゴザイマシタ、只今農林大臣カラ先
程御說明ガゴザイマシタ通リニ、此法案ノ
適用ヲ各種ノ階級ニ擴充イタシマスルニ付
キマシテハ、筋ト致シマシテ別ニ異議ヲ唱
ヘルモノデモナイト思ヒマスカラ同意イタ
シマシタ次第デゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006303242X00819320902&spkNum=20
-
021・阪本さん之助
○阪本彰之助君 意外ナ御答辯ヲ伺ヒマシ
タガ、諄イヤウデゴザイマスガ、モウ一應
念ノ爲ニ伺ッテ置キマス、是デ見マスルト
農村ト云フモノハ御承知ノ通リ何ト申シテ
モ安定シテ居ルノデスカラ、其組合ノ農民
同志ガ斯ウ云フコトヲスルト云フコトハ
時ニ依ッテハ餘リ危險デナイカモ知レマセ
ヌガ、都會ノ地ナドニ居リマスル者ノ、假
令一年以上其處ニ安定シテ居ル人デアッテ
モ、ソレガ之ヲ作リマシテ互ニ負債ノ責任
ヲ負フナドト云フコトハ、偶、此法律ノ爲
ニ非常ナ有害ヲ催スコトデアリマスガ、商
工大臣ハ一向差支ナイト申シテ居ル、ソレ
程ナラ初メカラ農村ナドヽ云フ字ヲ冠セズ
ニオヤリニナッタラドウカト思ヒマス、最
早御答辯ニハ及ビマセヌガ、甚ダ意外ナ御
答辯ヲ伺ヒマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006303242X00819320902&spkNum=21
-
022・東園基光
○子爵東園基光君 只今議題ニナッテ居リ
マス農村負債整理組合法案ハ重要ナル案ト
存ジマスノデ、十五名ノ委員ニ付託セラレ
ムコトヲ希望イタシマス、尙ホ此選擧ハ議
長ノ御指名ヲ願ヒタイト存ジマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006303242X00819320902&spkNum=22
-
023・植村家治
○子爵植村家治君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006303242X00819320902&spkNum=23
-
024・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 東園子爵ノ動議
ニ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006303242X00819320902&spkNum=24
-
025・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認
メマス、本案ハ米穀法中改正法律案ノ特別
委員ニ付託イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006303242X00819320902&spkNum=25
-
026・岩倉道倶
○男爵岩倉道倶君 私ハ議事ノ進行ニ付テ
簡單ニ發言イタシタイト思ヒマス、簡單デ
ゴザイマスカラ此席カラ申上ゲマス、今日
一日ニ會期ガ盡キマスニ拘ラズ、重要ナル
法案ガ續々ト日程ニ上ボッテ居リマス、御質
疑ガ〓心ニアルト云フコトハ無論結構ナコ
トデアリマスガ、同時ニ日程ノ進行ヲ圖ッテ
私ハ戴キタイト思フ、相成ルベクハ政府ノ
說明ヲ聽キマシテ、先ニ特別委員氏名ヲ御
指名ニナリマシテ、後ニ質問ヲ全部一〓ニ
シテ御聽ニナルト云フヤウナ方法ヲ採ッテ
戴キマスレバ、議事ノ進行上非常ニ私ハ便
宜カト思ヒマスノデ、議長ニ於テ御考慮ニ
ナラムコトヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006303242X00819320902&spkNum=26
-
027・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 岩倉男爵ノ今ノ
御趣意ハ能ク議長ニハ分リマセヌガ、委員
ノ指名ヲ致シテ、其後デ固メテ質疑ヲスル
ト云フノデスカ、モウ一應明瞭ニ御述べヲ
願ヒタイト思ヒマス、今ノハ其事ヲ議場ニ
諮ルノデアリマスカ、議長ニ其事ヲ御申述
ベニナッタノデアリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006303242X00819320902&spkNum=27
-
028・岩倉道倶
○男爵岩倉道倶君 私ハ議長ニ於テ御考慮
ヲ願ヒタイト云フコトヲ申上ゲマシタ、議
場ニ御諮リニナラウト、各派交涉ニ御諮リ
ニナラウト、其方法ハ議長ニ御願シテ、議
長ニ於テ御考慮ヲ願ヒタイト云フコトヲ御
願シタノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006303242X00819320902&spkNum=28
-
029・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 委員付託後ニ一
括シテ質疑ト云フヤウナコトハドウ云フコ
トデスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006303242X00819320902&spkNum=29
-
030・岩倉道倶
○男爵岩倉道倶君 私ハ議院法ノ詳細ハ心
得マセヌケレドモ、昨日モ前田子爵ノ質問
ニ依ッテ半日ヲ潰サレテ、又今日モ一議員ノ
質問ニ依ッテ殆ド半日潰サレ、重要ナ日
程ハ次〓控ヘテ居リマスガ、會期ハ今日一
日シカナイ、然ルニ進行狀態ハ惡イト云フ
情勢ガ釀サレテ居ル、其事ニ付テ御考慮ヲ
願ヒタイ、纒メテ言ヘバサウナンデス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006303242X00819320902&spkNum=30
-
031・前田利定
○子爵前田利定君 只今岩倉男爵カラ私ノ
名前ヲ御指シニナリマシテ甚ダ不都合ナ
ル議事ノ進行狀態ニナッテ居ルト云フコト
ヲ仰セニナリマシタ、又私ノ演說ノ爲ニ半
日ヲ潰サレタ、斯樣ナ仰セデアリマス、私
ハ決シテ演說ニ依ッテ半日ノ時間ヲ潰シタ
トハ考ヘテ居リマセヌ、又豫ネテ各派カラ
出マシタ貴族院規則ノ改正ノ委員會ニ於キ
マシテモ、質疑ハ大約一時間見當ト云フヤ
ウナコトハ話合ッタコトモアルノデス是
ハ公式ノ此議會デ諮リマシタ時間ノ制限デ
ハアリマセヌケレドモ、私モ其邊ハヨク心
得マシテ、モット申述ベタイコトモ實ハ差
控ヘマシテ、約一時間以内ニ終ラセタイト
自分ハ信ジテ居リマス、無論會期切迫ノ折
デアリマスカラシテ、議事ノ進行ノ敏ナラ
ムコトハ私モ岩倉男爵ト同樣ニ考ヘテ居リ
マリ、サレバト申シテ政府ノ諸案ニ對シマ
シテ、質疑ヲ懷イテ居ルモノガ質疑モ致サ
ナイデ、何デモ早ク鵜呑ミニシテ、一瀉千
里ニ議事ヲ進メナケレバナラヌト云フコト
ハ私ニ於テハ考ヘラレマセヌノデアリマ
ス、只今ノ岩倉男爵ノ御提案中ニ私ニ關シ
タ部分ニ付キマシテ、玆ニ一應釋明申上ゲ
テ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006303242X00819320902&spkNum=31
-
032・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 只今岩倉男爵ノ
御述べニナリマシタコトハ一應御尤モニ
ハ存ジマスガ、一體本院規則第七十四條ヲ
議員諸君ニ於テ能ク御讀ミヲ願フテ置キタ
イト思ヒマス「前條ノ手續ヲ終リタルトキ
ハ政府又ハ衆議院ヨリ提出シタル議案ハ之
ヲ委員ニ付託スヘシ」斯ウ云フコトガ明文
ガアルノデゴザイマスカラ、豫ネテヨリ議
長ハ議案ノ說明ガ濟ミマシタナラバ直ニ
委員ニ付託スベキモノト考ヘテ居リマシタ
ガ、慣例上種々ノ質疑ガ出マスノデ、ソレ
ヲ議長ガ濫リニ議員諸君ノ發言ノ權ヲ奪フ
ヤウニ見エマシタラ甚ダ不本意デゴザイマ
スカラ、御許シヲ致シテ居ッタノデゴザイ
やく、質疑ノコトニ付テ議長ニ考慮セイト
云フ御言葉ヨリハ御同僚諸君ノ御考慮ヲ
御願ニナッタ方ガ目的ヲ達スルダラウト考
ヘマス、此位デ、議長カラ申述ベルコトハ
其外ナイト考ヘマス、議員諸君ノ御考慮ヲ
煩ハシタク考ヘマス、是ヨリ日程ニ移リマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006303242X00819320902&spkNum=32
-
033・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 日程第一、不動
產融資及損失補償法案、第二、昭和七年法
律第六號中改正法律案、政府提出、衆議院
送付、第一讀會、堀切大藏政務次官
不動產融資及損失補償法案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議
院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和七年九月一日
衆議院議長秋田〓
貴族院議長公爵德川家達殿
不動產融資及損失補償法案
不動產融資及損失補償法
第一條日本勸業銀行、農工銀行又ハ北
海道拓殖銀行(以下融資銀行ト稱ス)ハ
銀行ヨリ左ノ方法ニ依ル不動產資金融
通ノ請求アリタル場合ニ於テ金融ノ疏
通ヲ圖ル爲必要アリト認ムルトキハ大
藏大臣ノ定ムル所ニ依リ當該銀行又ハ
其ノ債務者ニ對シ資金ノ融通ヲ爲スコ
トヲ得
-當該銀行ノ不動產又ハ不動產抵當
附債權(抵當證劵ヲ含ム)ヲ擔保トス
ル貸付
二當該銀行ニ對スル不動產ヲ抵當ト
スル債務ノ辨濟ノ爲ニ當該不動產ヲ
抵當トスル貸付
第二條融資銀行ガ前條ノ規定ニ依ル融
通ヲ爲スハ本法施行ノ日ヨリ三年トシ
其ノ融通ノ期限ハ本法施行ノ日ヨリ十
五年ヲ超ユルコトヲ得ズ
第三條融資銀行ガ第一條ノ規定ニ依ル
融通ヲ爲ス場合ニ於ケル貸付金額ハ日
本勸業銀行法第十八條及第三十一條ノ
二第二項中第十八條ヲ準用シタル規定
又ハ農工銀行法第十條及第七條ノ三第
二項中第十條ヲ準用シタル規定ニ拘ラ
ズ其ノ擔保タル不動產又ハ其ノ擔保タ
ル債權ニ附隨スル抵當權ノ目的タル不
動產ニ付鑑定シタル價格以內トス
第四條日本勸業銀行法第十四條第三項
及第十四條ノ二ノ規定、同法第十四條
第二項及第三十一條ノ二第一項ノ規定
中貸付年限及償還方法ニ關スルモノ
農工銀行法第六條ノ二及第七條ノ規
定同法第六條第二號及第七條ノ三第
一項ノ規定中貸付金額貸付年限及償還
方法ニ關スルモノ竝ニ北海道拓殖銀行
法第七條第一項第二號及第七條ノ二ノ
規定中貸付年限及償還方法ニ關スルモ
ノハ第一條ノ規定ニ依ル融通ニハ之ヲ
適用セズ
融資銀行ガ第一條ノ規定ニ依ル融通以
外ノ融通ヲ爲ス場合ニ於テ第一條ノ規
定ニ依ル融通ノ額ハ日本勸業銀行法又
ハ農工銀行法ニ規定スル貸付金額ノ制
限ノ計算上之ヲ算入セズ
第五條融資銀行ハ第一條ノ規定ニ依ル
融通ヲ爲ス爲必要アルトキハ日本勸業
銀行法第三十四條第一項、農工銀行法
第二十六條第一項又ハ北海道拓殖銀行
法第十二條第一項ノ制限ニ拘ラズ債劵
ヲ發行スルコトヲ得
融資銀行ガ第一條ノ規定ニ依ル融通以
外ノ融通ヲ爲ス爲債劵ヲ發行スル場合
ニ於テ第一條ノ規定ニ依ル融通ヲ爲ス
爲發行スル債劵ノ額ハ日本勸業銀行
法、農工銀行法又ハ北海道拓殖銀行法
ニ規定スル債劵發行額ノ制限ノ計算上
之ヲ算入セズ
第六條政府ハ第一條ノ規定ニ依ル融通
ヲ爲シタルニ因リテ融資銀行ガ損失ヲ
受ケタルトキハ融資銀行ニ對シ一億圓
ヲ限リ其ノ損失ヲ補償スルノ契約ヲ爲
スコトヲ得
前項ノ損失ヲ決定スル基準ハ大藏大臣
之ヲ定ム
第七條第一條ノ規定ニ依ル〓通ヲ爲シ
タルニ因リテ融資銀行ノ受ケタル損失
及其ノ額ハ不動產融資損失審査會之ヲ
決定ス
不動產融資損失審査會ノ組織及權限ハ
勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第八條第六條第一項ノ契約ニ基キ政府
ガ融資銀行ニ對シテ支拂フベキ損失補
償金ハ國債證劵ヲ以テ之ヲ交付スルコ
トヲ得
第九條政府ハ前條ノ規定ニ依リ交付ス
ル爲必要ナル額ヲ限度トシ公債ヲ發行
スルコトヲ得
第十條本法ニ依リ交付スル國債證劵ノ
交付價格ハ時價ヲ參酌シテ大藏大臣之
ヲルト
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
本法施行前大藏省預金部ノ引受ニ係ル債
劵資金ヲ以テ融資銀行ノ爲シタル資金ノ
融通ニシテ第一條ノ規定ニ依ル融通ニ相
當スルモノハ之ヲ第一條ノ規定ニ依ル融
通ト看做ス
昭和七年法律第六號中改正法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議
院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和七年九月一日
衆議院議長秋田〓
貴族院議長公爵德川家達殿
昭和七年法律第六號中改正法律案
昭和七年法律第六號中左ノ通改正ス
第一條中「一億六千六十萬圓」ヲ「三億二
千二百六十萬圓」ニ改ム
附則
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
參照
昭和七年法律第六號ハ昭和七年度一般會
計歲出ノ財源ニ充ツル爲公債發行ニ關ス
ル法律ナリ
〔政府委員堀切善兵衞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006303242X00819320902&spkNum=33
-
034・堀切善兵衞
○政府委員(堀切善兵衞君) 只今議題トナ
リマシタル不動產融資及損失補償法案ニ付
テ御說明申上ゲマス、時局匡救ニ關シマシ
テハ特ニ前議會ニ於テ御決議ニナッテ居ル
次第モアリマシテ、政府ニ於キマシテモ種
種對策ヲ考究立案致シタノデアリマスル
ガ、要スルニ現下ノ如キ時局ニ際シマシテ
ハ諸般ノ對策ノ併用實施ニ依リテ初メテ
效果ヲ期待シ得ルノデアリマスルガ、就中
是等對策中ノ根本手段タル金融ノ圓滿ヲ期
スル爲ニハ通貨ノ供給ヲ容易ナラシムル
コトト相駢ンデ金融機關ノ內部ニ於テ、旣
ニ不動產ニ固定セル資金ヲ流動化シ、其活
動ヲ圓滿ナラシムルコトガ極メテ必要ナコ
トト信ジ、政府ハ玆ニ本案ヲ提出シタ次第
ヂアリマス、卽チ日本勸業銀行、農工銀行
又ハ北海道拓殖銀行ハ、銀行ヨリ不動產又
ハ不動產抵當附債權ヲ擔保トスル貸付ヲ爲
スコト、又ハ其銀行ヨリ不動產ヲ抵當トシ
テ借入ヲ爲シテ居ル債務者ニ對シテ、肩替
リノ爲ノ貸付ヲ爲スコトノ要求ヲ受ケマシ
タ場合ニ於テ、金融ノ疏通ヲ圖ル爲メ必要
デアルト認メタル時ハ是等ノ不動產銀行
ヲシテ常軌ニ依ラザル貸出ヲ爲サシメ、以
テ其目的ヲ達セシムルト共ニ、他方之ニ依
リ日本勸業銀行、農工銀行又ハ北海道拓殖
銀行ガ損失ヲ蒙リ、爲ニ其地位ヲ危クスル
ガ如キコトナカラシメムガ爲ニ、是等ノ不
動產銀行ニ對シテ國家ガ一億圓ヲ限リ、其
損失ヲ補償スベキヲ約スルノハ、此際誠ニ
必要已ムベカラザル處置ト考ヘル次第デア
リマス、又其損失決定ヲ公正ナラシムル爲
ニ、勅令ヲ以テ不動產融資損失審査會ヲ置
クコトトシ、而シテ日本勸業銀行、農工銀
行又ハ北海道拓殖銀行ニ對スル補償ハ、公
債交付ヲ以テ之ヲ爲スコトヲ得ルモノト致
シマシタ、尙ホ本法ニ依ル融資ノ資源ニ付
キマシテハ、今後三年間ニ政府ヨリ低利資
金五億圓ヲ是等ノ不動產銀行ニ供給スル豫
定デアリマスノデ、融資銀行ガ本法ニ依リ
融資ヲ爲シ得ル期間モ之ニ應ジ、本法施行
ノ日ヨリ三年ト致シタイト考ヘマス、何卒
御審議ノ上速ニ御協贊アラムコトヲ希望イ
タシマス、次ニ議題トナリマシタ昭和七年
度一般會計歲出ノ財源ニ充ツル爲メ、公債
發行ニ關スル法律中改正法律案提出ノ理由
ヲ說明イタシマス、前會ノ帝國議會ニ於キ
マシテ昭和七年度一般會計歲出ノ財源ニ充
ツル爲メ一億六千六十万圓ヲ限リ公債ヲ發
行スルコトヲ得ル法律ノ成立ヲ見タノデア
リマスガ、今囘ノ時局供給等ニ關スル經費
總額一億六千三百四十万餘圓ノ中、歲出ニ
伴フ普通歲入ヲ以テ支辨スル金額六十一万
餘圓ヲ差引キタル一億六千二百七十八万餘
圓ハ、今日ノ場合其財源ヲ公債ニ依ルノ外
アリマセヌ、而シテ其中八十一万餘圓ハ既
定ノ法律ニ依リ道路公債ヲ發行シ、其他ノ
一億六千百九十七万餘圓ハ所謂歲入補塡公
債ノ發行ヲ必要トスルコトハ、先キニ昭和
七年度追加豫算ノ大要ヲ說明イタシマシタ
際ニ申述ベテ置キマシタ通リデアリマシ
テ、其發行ノ爲ニハ昭和七年法律第六號中
ノ公債發行限度ヲ改正增額スルノ必要ガア
リマス、右ノ理由ニ依リ本法律案ヲ提出シ
タ次第デアリマスカラ、何卒御審議ノ上御
協贊アラムコトヲ希望イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006303242X00819320902&spkNum=34
-
035・東園基光
○子爵東園基光君 只今議題トナッテ居リ
マスル日程第一、日程第二ハ、何レモ重要
ナル案ト認メマスルニ依リ、是亦十五名ノ
委員ニ付託セラレ、尙ホ其選擧ハ議長ニ一
任イタシタイト存ジマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006303242X00819320902&spkNum=35
-
036・植村家治
○子爵植村家治君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006303242X00819320902&spkNum=36
-
037・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 東園子爵ノ動議
ニ御異存ゴザイマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006303242X00819320902&spkNum=37
-
038・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 御異議ナイト認
メマス、特別委員ノ氏名ヲ書記官ヲシテ朗
讀ヲ致サセマス
〔小林書記官朗讀〕
不動產融資及損失補償法案特別委員
侯爵細川護立君伯爵二荒芳德君
子爵靑木信光君子爵大河內輝耕君
佐藤三吉君男爵四條隆英君
三井〓一郞君塚本〓治君
男爵小畑大太郞君男爵深尾隆太郞君
加藤政之助君木村〓四郞君
中村圓一郞君根本祐太郞君
小林嘉平治君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006303242X00819320902&spkNum=38
-
039・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 日程第三、商業
組合法案、第四、商品劵取締法案、政府提
出、衆議院送付、第一讀會、中島商工大臣
商業組合法案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議
院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和七年九月一日
衆議院議長秋田〓
貴族院議長公爵德川家達殿
商業組合法案
商業組合法
第一條商業者ハ其ノ商業ノ改良發達ヲ
圖ル爲共同ノ施設ヲ爲ス目的ヲ以テ商
業組合ヲ設立スルコトヲ得但シ特別ノ
事情アルトキハ二種以上ノ商業者ヲ以
テ之ヲ設立スルコトヲ得
前項ノ商業者ノ範圍ニ關シ必要ナル事
項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第二條商業組合ハ法人トス
第三條商業組合ハ左ノ事業ヲ行フコト
ヲ得
一組合員ノ取扱商品ノ仕入、保管、
運搬其ノ他組合員ノ營業ニ關スル共
同施設
二組合員ノ營業ニ關スル統制
三組合員ノ營業ニ關スル指導、〓究、
調査其ノ他組合ノ目的ヲ達スルニ必
要ナル施設
組合ハ前項ノ事業ノ外組合員二五、
其ノ營業ニ必要ナル資金ノ貸付又ハ
組合員ノ貯金ノ受入ヲ併セ行フコトヲ
得
第一項ニ揭ゲタル組合ノ施設ハ組合員
ノ利用ニ支障ナキ場合ニ限リ組合員ニ
非ザル者ヲシテ命令ノ定ムル所ニ依リ
之ヲ利用セシムルコトヲ得
第四條商業組合ハ其ノ名稱中ニ商業組
合ナル文字ヲ用フベシ
商業組合ニ非ザルモノハ其ノ名稱中ニ
商業組合ナル文字ヲ用フルコトヲ得ズ
第五條商業組合ハ定款ノ定ムル所ニ依
リ其ノ經費ノ一部ヲ組合員ニ分賦スル
コトヲ得
第六條商業組合ハ定款ノ定ムル所ニ依
リ定款違反者ニ對シ過怠金ヲ課スルコ
トヲ得
第七條商業組合定款ノ定ムル所ニ依リ
組合員ノ營業ニ關スル統制ヲ行フ場合
ニ於テハ之ニ關スル規程ヲ定メ行政官
廳ノ認可ヲ受クベシ其ノ規程ヲ變更セ
ントスル場合亦同ジ
第八條營業上ノ弊害ヲ豫防シ又ハ矯正
スル爲必要ト認ムルトキハ行政官廳ハ
商業組合ニ對シ必要ナル施設ヲ命ズル
コトヲ得
第九條營業上ノ弊害ヲ豫防シ又ハ矯正
スル爲特ニ必要ト認ムルトキハ行政官
廳ハ商業組合ノ組合員又ハ其ノ組合ノ
組合員ニ非ズシテ其ノ組合ノ地區內ニ
於テ組合員タル資格ヲ有スル者ニ對シ
其ノ組合ノ統制ニ從フベキコトヲ命ズ
ルコトヲ得
第十條本法ニ依リ登記スベキ事項ハ登
記前ニ在リテハ之ヲ以テ第三者ニ對抗
スルコトヲ得ズ
第十一條本法ニ依リ登記スベキ事項ハ
其ノ事實ノ生ジタル後二週間以内ニ之
ヲ登記スベシ
登記スベキ事項ニシテ行政官廳ノ認可
ヲ要スルモノハ其ノ認可書ノ到達シタ
ル時ヨリ登記ノ期間ヲ起算ス
第十二條商業組合ヲ設立セントスルト
キハ豫メ地區ヲ定メ其ノ地區內ニ於テ
組合員タル資格ヲ有スル者ノ過半數ノ
同意ヲ得テ創立總會ヲ開キ定款其ノ他
必要ナル事項ヲ定メ役員ヲ選任シ行政
官廳ノ認可ヲ受クベシ但シ組合員タル
資格ヲ有スル者ノ營業ノ種類二以上ア
ルトキハ各其ノ過半數ノ同意ヲ得ルコ
トヲ要ス
前項ノ同意ヲ得ルコト能ハザルトキト
雖モ特別ノ事由アル場合ニ於テハ行政
官廳ノ認可ヲ受ケ創立總會ヲ招集スル
コトヲ得
第十三條創立總會ニ於ケル議決及役員
ノ選任ハ設立同意者ノ三分ノ二以上ノ
同意ヲ以テ之ヲ爲ス但シ設立同意者ノ
營業ノ種類二以上アルトキハ各其ノ三
分ノ二以上ノ同意アルコトヲ要ス
第十四條設立同意者ハ創立總會ニ於テ
代理人ヲ以テ其ノ議決權ヲ行フコトヲ
得但シ設立同意者ニ非ザレバ代理人タ
ルコトヲ得ズ
代理人ハ代理權ヲ證スル書面ヲ差出ス
ベシ
第十五條商業組合ノ定款ニハ左ノ事項
ヲ記載スベシ
一目的
二名稱
三地區
事務所ノ所在地
組合員タル資格ニ關スル規定
七六五四組合員ノ加入及脫退ニ關スル規定
出資一口ノ金額及其ノ拂込ノ方法
八剩餘金ノ處分及損失分擔ニ關スル
規定
九準備金ノ額及其ノ積立ノ方法
十組合員ノ權利義務ニ關スル規定
十一事業及共ノ執行ニ關スル規定
十二役員ニ關スル規定
十三會議ニ關スル規定
十四會計ニ關スル規定
十五存立ノ時期又ハ解散ノ事由ヲ定
メタルトキハ其ノ時期又ハ事由
第十六條商業組合ハ出資ノ第一囘ノ拂
込アリタル後二週間以內ニ各事務所ノ
所在地ニ於テ設立ノ登記ヲ爲スベシ
登記スベキ事項左ノ如シ
一前條第一號乃至第三號、第七號及
第十五號ニ揭ゲタル事項
二事務所
三出資ノ總口數及拂込ミタル出資ノ
總額
四第十九條ノ組合ニ在リテハ各組合
員ノ氏名又ハ名稱、住所及保證金額
五設立認可ノ年月日
六理事及監事ノ氏名及住所
前項ニ揭ゲタル事項中ニ變更ヲ生ジタ
ルトキハ其ノ登記ヲ爲スベシ但シ前項
第三號ニ揭ゲタル事項ニ付テハ每事業
年度末日ノ現在ニ依リ事業年度終了後
一月以內ニ登記ヲ爲スコトヲ得
第十七條組合員ハ出資一口以上ヲ有ス
ベシ
組合員ノ有スベキ出資口數ハ五十口ヲ
超ユルコトヲ得ズ但シ特別ノ事由アル
トキハ定款ノ定ムル所ニ依リ之ヲ增加
スルコトヲ得
第十八條組合員ノ責任ハ第五條ノ規定
ニ依ル費用負擔ノ外其ノ出資額ヲ限度
トス
第十九條商業組合ハ定款ノ定ムル所ニ
依リ組合財產ヲ以テ其ノ債務ヲ完濟ス
ルコト能ハザル場合ニ於テ組合員ノ全
員ガ其ノ出資額ノ外一定ノ金額(保證
金額)ヲ限度トシテ責任ヲ負擔スルモ
ノト爲スコトヲ得
第二十條組合員ハ總組合員ノ五分ノ一
以上ノ同意ヲ得テ會議ノ目的タル事項
及其ノ招集ノ理由ヲ記載シタル書面ヲ
理事ニ提出シテ總會ノ招集ヲ請求スル
コトヲ得
理事ガ正當ノ理由ナクシテ前項ノ規定
ニ依ル請求アリタル後二週間以內ニ總
會招集ノ手續ヲ爲サザルトキハ請求者
ハ行政官廳ノ認可ヲ受ケ之ヲ招集スル
コトヲ得
第二十一條商業組合ニハ理事及監事ヲ
置クベシ
理事及監事ハ總會ニ於テ組合員中ヨリ
之ヲ選任ス但シ組合設立當時ノ理事及
監事ハ創立總會ニ於テ設立同意者ノ中
ヨリ之ヲ選任スベシ
特別ノ事由アルトキハ理事又ハ監事ハ
組合員又ハ設立同意者ニ非ザル者ヨリ
之ヲ選任スルコトヲ得此ソ場合ニ於テ
ハ其ノ選任ニ付行政官廳ノ認可ヲ受ク
ベシ
第一項ノ規定ニ依ル役員ノ外定款ノ定
ムル所ニ依リ他ノ役員ヲ置クコトヲ得
第二十二條組合員ハ總會ニ於テ各一個
ノ議決權ヲ有ス但シ定款ノ定ムル所ニ
依リ一人ニ付議決權總數ノ十分ノ三ヲ
超エザル範圍內ニ於テ出資口數ニ應ジ
二個以上ノ議決權ヲ有セシムルコトヲ
得
第二十三條經費ノ一部ヲ組合員ニ分賦
スル商業組合ニ在リテハ具ノ經費ノ收
支豫算及分賦收入方法ハ總會ノ議決ヲ
經ベシ但シ組合設立當時ノ經費ノ收支
豫算及分賦收入方法ハ創立總會ニ於テ
之ヲ議決スベシ
前項ノ總會ノ議決ハ總組合員ノ半數以
上出席シ其ノ議決權ノ四分ノ三以上ヲ
以テ之ヲ爲スベシ但シ定款ニ別段ノ定
アルトキハ此ノ限ニ在ラズ
第二十四條組合員タル資格ヲ有スル者
商業組合ニ加入セントスルトキハ組合
ハ正當ノ理由ナクシテ加入ニ困難ナル
條件ヲ附シ又ハ其ノ加入ヲ拒ムコトヲ
得ズ
第二十五條組合員ハ命令ノ定ムル所ニ
依リ一定ノ期間前ニ豫〓ヲ爲シ商業組
合ノ承諾ヲ得タル場合ニハ事業年度ノ
終ニ於テ脫退スルコトヲ得
組合ハ正當ノ理由ナクシテ前項ノ承諾
ヲ拒ムコトヲ得ズ
第二十六條行政官廳必要ト認ムルトキ
ハ商業組合ニ對シ經費ノ收支豫算、其
ノ分賦收入方法又ハ定款ノ變更ヲ命ズ
ルコトヲ得
第二十七條組合ノ事業若ハ組合財產ノ
狀況ニ依リ其ノ事業ノ繼續ヲ困難ナリ
ト認ムルトキ又ハ組合ノ行爲ガ法令、
定款若ハ行政官廳ノ命令ニ違反シタル
トキ若ハ公益ヲ害スル虞アルトキハ行
政官廳ハ左ノ處分ヲ爲スコトヲ得
一總會ノ決議ノ取消
二役員又ハ〓算人ノ解任
三組合ノ事業ノ停止
四組合ノ解散
第二十八條商業組合聯合會ハ所屬ノ商
業組合及商業組合聯合會ノ共同ノ目的
ヲ達スル爲之ヲ設立スルコトヲ得
聯合會ハ商業組合又ハ商業組合聯合會
ヲ以テ之ヲ組織ス
聯合會ハ法人トス
第二十九條商業組合聯合會ヲ設立セン
トスルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ所
屬ノ各組合及聯合會ニ於テ選任シタル
創立委員ヲ以テ創立委員會ヲ開キ定款
其ノ他必要ナル事項ヲ定メ役員ヲ選任
シ行政言廳ノ認可ヲ受クベシ
第三十條創立委員會ニ於ケル議決及役
員ノ選任ハ創立委員總數ノ三分ノ二以
上ノ同意ヲ以テ之ヲ爲ス
第十四條ノ規定ハ創立委員ニ付之ヲ準
用ス
第三十一條商業組合聯合會ノ理事及監
事ハ總會ニ於テ所屬ノ組合及聯合會ノ
理事又ハ監事ノ中ヨリ之ヲ選任ス但シ
聯合會設立當時ノ理事及監事ハ創立委
員會ニ於テ之ヲ選任スベシ
特別ノ事由アルトキハ理事又ハ監事ハ
所屬ノ組合及聯合會ノ理事又ハ監事ニ
非ザル者ヨリ之ヲ選任スルコトヲ得此
ノ場合ニ於テハ其ノ選任ニ付行政廳
ノ認可ヲ受クベシ
第三十二條商業組合ニ關スル規定ハ第
三十七條ノ規定ニ依リ準用シタル產業
組合法第三十八條ノ二ノ規定ヲ除クノ
外商業組合聯合會ニ付之ヲ準用ス但シ
第三條中組合員トアルハ所屬ノ組合、
聯合會及組合員トス
第三十三條設立ノ登記ハ理事及監事ノ
全員ノ申請ニ因リテ之ヲ爲スベシ
申請書ニハ定款及創立總會、總會又ハ
創立委員會ノ決議錄、出資ノ總口數ヲ
證スル書面、出資ノ第一囘ノ拂込アリ
タルコトヲ證スル書面竝ニ理事及監事
ノ資格ヲ證スル書面ヲ添附スベシ
第三十四條事務所ノ新設、移轉其ノ他
登記事項ノ變更ノ登記ハ理事又ハ〓算
人ノ申請ニ因リテ之ヲ爲スベシ但シ合
併又ハ出資一口ノ金額若ハ保證金額ノ
減少ニ因ル變更ノ登記ハ理事及監事ノ
全員ヨリ之ヲ爲スベシ
申請書ニハ申請人ノ資格ヲ證スル書面
及登記事項ノ變更ヲ證スル書面ヲ添附
スベシ但シ前ニ登記ノ申請ヲ爲シタル
申請人ガ同一登記所ニ前項ノ申請ヲ爲
ス場合ニ於テハ其ノ資格ヲ證スル書面
ヲ添附スルコトヲ要セズ
出資一口ノ金額又ハ保證金額ノ減少ノ
登記申請書ニハ前項ニ規定スル書面ノ
外本法ニ依リ催〓ヲ爲シタルコト及異
議ヲ述ベタル債權者アル場合ニ於テハ
之ニ對シ辨濟ヲ爲シ又ハ擔保ヲ供シタ
ルコトヲ證スル書面ヲ添附スベシ
第三十五條解散ノ登記ハ合併ニ因ル解
散ノ場合ニ於テハ解散シタルトキノ理
事及監事ノ全員、其ノ他ノ場合ニ於テ
ハ〓算人ノ申請ニ因リテ之ヲ爲スベ
申請書ニハ解散ノ事由ヲ證スル書面及
理事ガ〓算人タラザル場合ニ於テハ申
請人ノ資格ヲ證スル書面ヲ添附スベ
シ
前條第三項ノ規定ハ合併ニ因ル解散ノ
登記ノ申請ニ付之ヲ準用ス
商業組合ガ命令ニ因リテ解散シタルト
キハ登記所ハ行政官廳ノ囑託ニ因リテ
登記ヲ爲スベシ
第三十六條〓算結了ノ登記ハ〓算人ノ
申請ニ因リテ之ヲ爲スベシ
第三十七條民法第四十四條第一項、第
四十五條第二項第三項、第四十八條、
第五十條、第五十二條第二項、第五十
三條乃至第五十五條、第五十九條、第
六十條、第六十一條第一項、第六十二
條、第六十四條、第六十六條、第七十
條、第七十三條、第七十四條及第七十
八條乃至第八十一條、非訟事件手續法
第百三十八條、第百三十八條ノ三、第
百四十一條乃至第百五十一條ノ六、第
百五十四條乃至第百五十八條、第百六
十五條、第百七十五條、第百七十六條及
第百七十八條竝ニ產業組合法第五條、
第六條、第十條、第十一條第一項、第
十二條、第十八條乃至第二十二條、第
二十四條、第二十六條乃至第三十一條
ノ二、第三十三條、第三十四條ノ二第
一項、第三十五條乃至第三十七條、第三
十八條ノ二乃至第四十六條、第四十八
條、第五十一條乃至第五十八條、第六十
條、第六十條ノ二、第六十二條(第一項
第四號ヲ除ク)、第六十三條第一項、第
六十三條ノ二乃至第六十五條、第六十
六條第一項、第六十七條、第六十八條、
第七十條乃至第七十三條ノ三、第七十
四條第一項、第七十四條ノ二第一項、
第七十七條第三項、第七十八條、第九
十六條、第九十七條及第百四條ノ規定
ハ商業組合ニ付之ヲ準用ス但シ民法第
四十五條第三項及第四十八條第一項中
一週間トアルハ之ヲ二週間トシ產業組
合法中主務大臣、地方長官又ハ監督官
廳トアルハ之ヲ行政官廳トス
第三十八條左ノ場合ニ於テハ商業組合
ノ理事、監事又ハ〓算人ヲ十圓以上五
百圓以下ノ過料ニ處ス
本法ニ依リ行政官廳ノ認可ヲ受ク
ベキ場合ニ於テ其ノ認可ヲ受ケザル
トキ
二本法ニ依ル登記ヲ爲スコトヲ怠リ
又ハ不正ノ登記ヲ爲シタルトキ
三行政官廳又ハ總會若ハ總代會ニ對
シ不實ノ申立ヲ爲シ又ハ事實ヲ隱蔽
シタルトキ
四本法ニ依リ行政官廳ノ徵スル報〓
ヲ差出サズ又ハ其ノ檢査ヲ拒ミ其ノ
他行政官廳ノ命令又ハ處分ニ從ハザ
ルトキ
五本法ニ依ル總會又ハ總代會ノ招集
ヲ怠リタルトキ
六本法ニ依リ事務所ニ備置クベキ書
類ヲ備ヘザルトキ、其ノ書類ニ記載
スベキ事項ヲ記戴セズ若ハ不正ノ記
載ヲ爲シタルトキ又ハ正當ノ理由ナ
クシテ其ノ閱覽ヲ拒ミタルトキ
七本法ニ違反シテ組合員ノ持分ヲ拂
戾シタルトキ
八本法ニ違反シテ組合ガ組合員ノ持
分ヲ取得シ又ハ質權ノ目的トシテ之
ヲ受ケタルトキ
九本法ニ違反シテ破產ノ宣告ヲ請求
セザルトキ
十本法ニ違反シテ出資一口ノ金額若
ハ保證金額ヲ減少シ、第三十七條ノ
規定ニ依リ準用シタル產業組合法第
五十八條ノ責任期間ノ短縮ヲ爲シ又
ハ組合ノ合併ヲ爲シタルトキ
十一本法ニ依ル公〓ヲ爲スコトヲ怠
リ又ハ不正ノ公〓ヲ爲シタルトキ
十二〓算ノ場合ニ於テ本法ニ違反シ
テ辨濟ヲ爲シ又ハ組合財產ノ分配ヲ
爲シタルトキ
十三法令又ハ定款ニ違反シテ剩餘金
ヲ處分シタルトキ
十四組合ノ目的ニ非ザル營利事業ヲ
爲シタルトキ
第三十九條第四條第二項ノ規定ニ違反
シタル者ハ十圓以上二百圓以下ノ過料
三四八、
第四十條非訟事件手續法第二百六條乃
至第二百八條ノ規定ハ前二條ノ過料ニ
付之ヲ準用ス
第四十一條第九條ノ規定ニ依ル行政官
廳ノ命令ニ違反シタル者ハ五百圓以下
ノ罰金ニ處ス
商業者ハ其ノ代理人、戶主、家族、同
居者、雇人其ノ他ノ從業者ガ其ノ營業
ニ關シ前項ノ命令ニ違反シタルトキハ
自己ノ指揮ニ出デザルノ故ヲ以テ其ノ
處罰ヲ免ルルコトヲ得ズ
第四十二條前條ノ罰則ハ商業者ガ法人
ナルトキハ理事、取締役其ノ他ノ法人
ノ業務ヲ執行スル役員ニ、未成年者又
ハ禁治產者ナルトキハ其ノ法定代理人
ニ之ヲ適用ス但シ營業ニ關シ成年者ト
同一ノ能力ヲ有スル未成年者ニ付テハ
此ノ限ニ在ラズ
第四十三條商業組合ノ證票若ハ檢査證
ヲ不正ニ使用シタル者、行使ノ目的ヲ
以テ證票若ハ檢査證ヲ僞造若ハ變造シ
タル者又ハ僞造若ハ變造ノ證票若ハ檢
査證ヲ使用シタル者ハ三年以下ノ懲役
又ハ五百圓以下ノ罰金ニ處ス
第四十四條商業組合ノ理事、監事若ハ
〓算人又ハ檢査員其ノ職務ニ關シ賄賂
ヲ收受シ又ハ之ヲ要求若ハ約束シタル
トキハ二年以下ノ懲役ニ處ス因テ不正
ノ行爲ヲ爲シ又ハ相當ノ行爲ヲ爲サザ
ルトキハ五年以下ノ懲役ニ處ス
前項ノ場合ニ於テ收受シタル賄賂ハ之
ヲ沒收ス若シ其ノ全部又ハ一部ヲ沒收
スルコト能ハザルトキハ其ノ價額ヲ追
徵ス
第四十五條前條第一項ニ揭ゲタル者ニ
對シ賄賂ヲ交付、提供又ハ約束シタル
者ハ二年以下ノ懲役又ハ五百圓以下ノ
罰金ニ處ス
前項ノ罪ヲ犯シタル者自首シタルトキ
ハ其ノ刑ヲ減輕又ハ免除スルコトヲ
得
第四十六條第四十三條ニ揭ゲタル罪ハ
刑法第三條ノ例ニ、第四十四條ニ揭ゲ
タル罪ハ刑法第四條ノ例ニ從フ
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
本法施行ノ際商業組合ニ非ズシテ其ノ名
稱中ニ商業組合ナル文字ヲ用フルモノハ
本法施行後六月以內ニ其ノ名稱ヲ變更ス
ルコトヲ要ス
第三十九條ノ規定ハ前項ノ期間內之ヲ前
項ニ揭ゲタルモノニ適用セズ
登錄稅法第十九條第七號中「重要輸出品
工業組合、重要輸出品工業組合聯合會又
ハ輸出組合」ヲ「工業組合、工業組合聯合
會商業組合、商業組合聯合會、輸出組
合又ハ輸出組合聯合會」ニ、「重要輸出品
工業組合法」ヲ「工業組合法、商業組合法」
三六六
印紙稅法第四條第一項第十一號中「重要
輸出品工業組合、重要輸出品工業組合聯
合會又ハ輸出組合」ヲ「工業組合、工業組
合聯合會、商業組合、商業組合聯合會、
輸出組合又ハ輸出組合聯合會」ニ改ム
商品劵取締法案
右政府提出案本院ニ於テ修正議決セリ因
テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和七年九月一日
衆議院議長秋田〓
貴族院議長公爵德川家達殿
(小野町)、(後のノイエート)
商品劵取締法案
商品劵取締法
第一條商品劵ヲ發行スル者ハ命令ノ定
ムル所ニ依リ每年二囘ノ一定日現在ニ
二
於ケル商品劵發行額ノ三分ノ一以上ノ
金額ニ相當スル國債ヲ供託スベシ但シ
商品劵發行額ガ命令ノ定ムル額ヲ超エ
ザルトキハ此ノ限ニ在ラズ
前項ノ商品劵發行額ハ商品劵ノ引換未
濟ノ金額ニ依ル
第二條商品劵ノ所有者ハ商品劵ノ引換
未濟ノ金額ヲ限度トシテ前條ノ供託物
ニ付他ノ債權者ニ先チ辨濟ヲ受クルノ
權利ヲ有ス
前項ノ權利ノ實行ニ關シ必要ナル事項
ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第三條前二條ノ商品劵ハ劵面ニ金額ヲ
表示シタルモノニ限ル
第四條主務大臣ハ商品劵ノ發行ニ關シ
取締上必要ナル命令ヲ發スルコトヲ得
第五條主務大臣必要アリト認ムルトキ
ハ商品劵ノ發行者ニ對シ報告ヲ命ジ又
ハ當該官吏ヲシテ帳簿其ノ他ノ物件ノ
檢査ヲ爲サシムルコトヲ得
第六條商品劵ノ發行者第一條ノ規定ニ
違反シタルトキハ千圓以下ノ罰金ニ處ス
第七條左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ三
百圓以下ノ罰金ニ處ス
-第四條ノ規定ニ依ル命令ニ違反シ
タル者
二正當ノ理由ナクシテ第五條ノ規定
ニ依リ命ゼラレタル報〓ヲ爲サズ若
ハ虛僞ノ報告ヲ爲シ又ハ同條ノ規定
ニ依ル檢査ヲ拒ミ、妨ゲ若ハ忌避シ
タル者
第八條商品劵ノ發行者ハ其ノ代理人、
戶主、家族、同居者、雇人其ノ他ノ從
業者ガ其ノ營業ニ關シ本法又ハ本法ニ
基キテ發スル命令ニ違反シタルトキハ
自己ノ指揮ニ出デザルノ故ヲ以テ其ノ
處罰ヲ免ルルコトヲ得ズ
第九條本法ニ依リ商品劵ノ發行者ニ適
用スベキ罰則ハ其ノ者ガ法人ナルトキ
ハ理事、取締役其ノ他ノ法人ノ業務ヲ
執行スル役員ニ、未成年者又ハ禁治產
者ナルトキハ其ノ法定代理人ニ之ヲ適
用ス但シ營業ニ關シ成年者ト同一ノ能
力ヲ有スル未成年者ニ付テハ此ノ限ニ
在ラズ
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
本法施行ノ際現ニ商品劵ヲ發行スル者ハ
本法施行ノ日現在ニ於ケル商品劵發行額
ニ依リ第一條ノ供託ヲ爲スベシ此ノ場合
ニ於ケル供託ハ命令ノ定ムル所ニ依リ分
割シテ之ヲ爲スコトヲ得
〔國務大臣男爵中島久萬吉君演壇ニ登
ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006303242X00819320902&spkNum=39
-
040・中島久萬吉
○國務大臣(男爵中島久萬吉君) 簡單ニ商
業組合法案提ノ理由ヲ申上ゲマス、我國現
今ノ經濟界不況ハ、產業ノ有ラユル部門ニ及
ビマシテ、其影響ガ頗ル甚大ナルモノガア
ルノデゴザイマス、就中中小商業者ノ困窮
ハ殊ニ甚シキモノガアリマシテ、是ガ救濟
ハ最モ緊急ヲ要スルモノト認メラレマスル
ガ、是等中小商業者窮迫ノ原因ヲ繹ネテ見
マスルノニ、一般財界不況ノ影響ニ依ルコ
ト大ナルコトハ勿論デゴザイマスルガ、
面又中小商業自體ノ組織經營上ニモ各種ノ
缺陷ガアリマシテ、且ツ當業者ガ如何ニモ
多數ノ爲ニ其間統制ナク、無謀ノ競爭ヲ敢
テ致シマシテ、從テ業務ノ安定ヲ失ヒ、金
融上常ニ梗塞ヲ免レ能ハザル所ニ由來スル
所モ亦多キモノト認メラレルモノデゴザイ
マス、從來政府ニ於テモ之ガ匡救ノ爲ニ、
低利資金ノ融通其他ノ施設ニ銳意努力シツ
ツアル所デゴザイマスルガ、是ガ根本的對
策ト致シマシテハ、新タニ中小商業者ノ適
切ナル組合制度ヲ樹立イタシマシテ、以テ
各種ノ經濟的共同施設ヲ爲サシメマシテ、
組合ノ鞏固ナル統制ノ下ニ、相亙ノ規律統
制ヲ維持セシメマシテ、又金融疏通ノ機關
タラシムルコトガ現下ノ中小商業者ノ窮狀
ヲ打開シ、其自力更生ヲ圖ルニ最モ緊急ナ
ル方法ト認メタル次第デアリマス、是レ本
法律案ヲ提出イタシマシテ、御審議ヲ願フ
ニ至レル所以デアルノデアリマス、願クハ
速ニ御協賛アラムコトヲ希望イタシマス、
引續キマシテ商品劵取締法提出ノ理由ヲ申
上ゲマス商品劵ノ發行竝ニ利用ハ我國
特殊ノ慣習ニ依リマシテ著シキ發達ヲ遂ゲ
マシタ、全國ニ於ケル發行總額ハ相當巨額
ニ達スルモノト認メマス而シテ百貨店ノ
如キ大商店ハ之ニ依ッテ營業上多大ノ利益
ヲ亨受シ來レル所デゴザイマシテ、此點ガ
從來中小商業者ノ競爭上最モ苦痛トスル所
デゴザイマスルガ故ニ、此際是等ノ中小商
業者ノ苦痛ヲ緩和スルコトハ緊要デゴザイ
マスルノミナラズ、又一面ニ於テハ現在商
品劵發行者ノ責任ニ關シマシテ、何等ノ法
制モ存セザル結果、發行者ノ破產又ハ營業
停止ニ際シマシテ、商品劵所有者ニ不測ノ
損害ヲ被ラシメタ實例ニ鑑ミマシテ、商品
劵發行者ノ責任ヲ保證セシムルコトガ又必
要ト認メタ次第デゴザイマス、依テ新ニ法
律ヲ制定イタシマシテ、商品劵發行者ヲシ
テ供託ヲナサシムルト共ニ、其發行ニ付テ
必要ナル取締ヲ致サムトスルノデゴザイマ
ス、是レ本案ヲ提出スル所以デゴザイマ
ス、尙ホ併セテ申上ゲテ置キマスガ、本案
ニ對シマシテハ衆議院ニ於テ第一條ノ商品
劵發行額ニ對スル國債ノ供託割合ヲ原案ニ
於テ三分ノ一ト致シタモノガ、之ヲ二分ノ
一ニ增額スルノ修正ガ行ハレマシタ、併セ
テ申上ゲテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006303242X00819320902&spkNum=40
-
041・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 特別委員ノ氏名
ヲ書記官ヲシテ朗讀ヲ致サセマス
〔小林書記官朗讀〕
商業組合法案特別委員
侯爵西〓從德君伯爵橋本實斐君
子爵高橋是賢君男爵伊藤文吉君
阪本釤之助君室田義文君
渡邊千代三郞君藤原銀次郞君
山崎龜吉君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006303242X00819320902&spkNum=41
-
042・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 書記官ヲシテ報
告ヲ致サセマス
〔小林書記官朗讀〕
本日委員會ニ於テ當選シタル正副委員長ノ
氏名左ノ如シ
產業組合中央金庫特別融通及損失補償法
案特別委員會
委員長子爵前田利定君
副委員長水野鍊太郞君
米穀法中改正法律案特別委員會
委員長伯爵柳原義光君
副委員長男爵稻田昌植君
本日議員ヨリ左ノ議案ヲ提出セリ
市俄古萬國博覽會參加ニ關スル建議案(伯
爵樺山愛輔君外二名發識)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006303242X00819320902&spkNum=42
-
043・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 休憩ヲ致シマシ
テ午後ハ一時三十分ヨリ開會イタシマス
午前十一時五十八分休憩
午後一時四十一分開會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006303242X00819320902&spkNum=43
-
044・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 是ヨリ報〓ヲ致
サセマス
〔山本書記官朗讀〕
本日委員長ヨリ左ノ報告書ヲ提出セリ
市町村立尋常小學校費臨時國庫補助法案
可決報告書発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006303242X00819320902&spkNum=44
-
045・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 是ヨリ午後ノ會
議ヲ開キマス、陸軍大臣ヨリ發言ヲ求メラ
レマシタ、荒木陸軍大臣
〔國務大臣荒木貞夫君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006303242X00819320902&spkNum=45
-
046・荒木貞夫
○國務大臣(荒木貞夫君) 過般來南滿方面
ノ兵匪ノ跳梁ニ付キマシテ屢、新聞等ニ報道
ヲ致サレマス、尙ホ數日前ニ於テハ奉天ヲ
襲擊ヲシタト云フコト、又昨日ハ號外ヲ以チ
マシテ奉天附近ニ於テ可ナリ激烈ナル匪賊
ノ襲撃ガアッタヤウニ傳ヘラレテ居リマス
ルノデ、各方面ニ於キマシテ御不安ヲ感ジ
テ居ル點モアリマスルノデ、此機會ニ於キ
マシテ一應第六十二議會以後ノ滿洲方面ノ
治安ノ情況ニ付テ申上ゲタイト存ジマス、
第六十二議會ニ於キマシテ御協賛ヲ經マシ
タ豫算ニ依リマシテ爾後統帥部ニ於キマ
シテハ滿洲方面ノ實情ニ適スル各種ノ機動
部隊、卽チ騎兵旅團或ハ自動車隊、飛行隊
ト云フヤウナモノヲ派遣ヲ致シマシテ、之
ニ依リマシテ作戰方面ノ活動力ヲ增進イタ
シマシタコトト、又北滿方面ノ國際關係等
モ顧慮イタシマシテ、多少作戰用兵ノ上ニ
統帥關係ニ於テ工夫ヲ致シマシタコト、是等
ニ依リマシテ逐次北滿方面ニ於ケル所ノ集
團兵匪ノ掃蕩ニ從事シテ居ッタノデアリマ
シテ、御承知ノ如クニ北滿方面ノ今囘集團
兵匪ノ居リマシタ方面ハ、地形ガ極メテ錯
雜ヲ致シテ居リマス、交通ハ極メテ不便デ
アリマス、其上ニ今年ハココ二十年來ニナキ
豪雨ニ遭遇ヲ致シマシテ、道路ハ泥濘デア
リ、各河川ノ渡河點ハ殆ド氾濫ノ爲ニ徒涉
シ得ナイ、斯樣ナ關係ニ於キマシテ可ナリ
困難ヲ感ジテ居リマシタ、尙ホ其上ニ宿營
給與ノ關係ニ於キマシテハ一望殆ド村落
モナイト云フヤウナ地方デアリマスル爲
ニ、宿營ニ付テハ殆ド露營ニ次グニ露營ヲ
以テシテ居リマスルコト、又濕地等ノ關係モ
アリマスルコト、更ニ斯樣ナ爲ニ輜重及ビ
大キナ火砲ハ此方面ニ運ブコトガ出來ナイ
ト云フヤウナ關係カラ空中輸送ヲ以テ、糧
食ヲ空中ヨリ投下イタシマシテ、其空中ヨ
リ投下セラレマシタ糧食ヲ以チマシテ給與
ヲ補ヒツツ討伐ヲ繼續イタシテ居リマシタ
ガ、此方面ニ派遣ヲ致サレマシタル新タナ
ル兵〓ハ任務ノ重大ナルコトヲ考ヘマシ
テ、晝夜兼行討伐ニ從事ヲ致シマシテ、五月
十五日ニ滿洲ト「ゾヴイヱット·ロシヤ」ノ國
境ニアリマスル所ノ黑河カラ出動ヲ致シテ
參リマシタル所ノ馬占山ノ兵團ニ對シマシ
テ、ココ二箇月ノ日子ヲ費シマシテ、七月ノ
二十九日ニ遂ニ再ビ黑河ニ歸ラシメズシテ、
哈爾賓ノ東北方ノ山地内ニ於キマシテ急追
ヲ致シマシタ結果、玆ニ之ヲ掃滅イタシマ
シテ、新聞等ニモ傳ハッテ居リマシタ如ク、
一時其行衞ハ、馬占山ノ行衞ハ不明デアリ
マシタガ、搜索ヲ致シマシタ結果、安古鎭ノ
近邊ニ於テ埋葬サレテ居リマシタ、戰死ヲ
致シマシタコト、殊ニ是等ノ遺物書簡等ニ
依リマシテ、其點ガ明カニナリマシテ、明
カニ馬占山ヲ頭首ト仰ギマス所ノ北滿ノ兵
匪ハ、玆ニ先月······七月ノ末ヲ以チマシテ
全部掃蕩イタサレタノデアリマス、是ガ爲
ニ頭首ヲ失ヒマシテ、北滿方面ノ各種ノ兵
匪ハ續々歸順ヲ致シテ參ルヤウナ狀態デア
リマシテ、唯今ノ所デハ僅ニ其一部ノモノ
ガ國境方面ニ餘喘ヲ保フテ居ルニ過ギナイ
狀況ニアリマスノデ、尙ホ是等ノ馬占山ノ所
持イタシテ居リマシタ所ノ各種ノ書簡其他ノ
遺品ニ付キマシテハ、過般天覽ニ達シマシ
テ、何レ近ク皆樣方ノ御覽ニ供スル機會モ
アラウト存ジテ居ル次第デアリマス、斯ノ
如ク致シマシテ北滿ノ集團兵匪ハ、玆ニ鎭
定ヲ致シマシタコトハ、洵ニ御同慶ノ至リニ
堪ヘナイト存ジテ居リマス、次ハ南滿方面
デアリマスガ、南滿方面ハ此方面ニ於キマ
ス所ノ大刀會匪竝ニ共產黨匪、此外ニ天津
ニ根據ヲ置キマス所ノ舊東北政權ノ首腦ニ
依ッテ操縱ヲセラレテ居リマス東北抗日救
國會、及ビ之ニ伴ヒマス所ノ義勇軍ニ依リ
マシテ、盛ニ治安ヲ攪亂サレテ居フタノデ
アリマス、此數ハ七月ノ上旬ニ於キマシテ
ハ約十五万ト稱セラレテ居リマシタ、之ヲ
五軍ニ分タレマシテ、其第一軍ハ遼西方面
卽チ錦州方面ニ於テ活動ヲシ、第二軍ハ遼
南方面卽チ營口方面ニ於テ活動ヲ致シマ
ス、第三軍ハ遼東方面卽チ奉天ヲ中心ト致
シマシタ鐵道沿線ニ於テ活躍ヲシ、其他ノ
第四、第五軍共ニ或ハ吉林方面、或ハ通遼
方面ト云フ方面ニ活動ヲ致シマシテ、七月
ノ上旬カラ八月ノ上旬ニカケテハ遼南方面
ノ匪賊ヲ掃蕩ヲ致シマシタ、八月ノ中旬ニ
於キマシテハ吉林方面ノ匪賊ヲ掃蕩ヲ致シ
マシタ、八月下旬ニ至リマシテ通遼方面及
奉天方面ノ匪賊ノ活躍ガアリマシテ、其一
部ガ一昨昨日及數日前ニ報道ヲセラレタモ
ノデアリマス、此方面ノ皇軍ノ兵力ハ、北
滿方面ニ主力ヲ注イデ居リマシタ爲ニ十分
デナカッタノデアリマスルガ、能ク沿道ノ
守備兵ハ任務ヲ果シマシテ、大凡各方面共
ニ二十囘前後ノ兵匪ノ襲擊ヲ見タノデアリ
マスルガ、是等ハ逐次平定ヲ致サレマシテ、
只今ノ所此方面ニ於テモ大キナ兵團ノ活躍
ト云フモノハ目下ノ所豫期ガ致シ兼ネル
情勢ニアルノデアリマス、卽チサウ云フヤ
ウナ危險ヲ餘リ見ナイノデアリマス、昨
昨日竝ニ數日前ニアリマシタ奉天附近ノ兵
匪ハ新聞ガ多少誇大ニ報ゼラレテ居ルノ
デアリマシテ、僅ニ百數十名ノ者ガ奉天附
近ヲ襲撃ヲ致シマシテ、其際ニ兵工廠附近
ニアリマシタ舊東北政權ノ戰利品デアリマ
スル飛行機格納庫ヲ襲ヒマシタモノガ之ニ
放火ヲ致シマシテ、其爲ニ十數臺ノ格納シ
テ居リマシタ押收飛行機ガ燒失ヲ致シマシ
タコトガ可ナリ誇大ニ傳ヘラレタノデアリ
マく、此飛行機ハ押收ヲサレタ儘格納ヲサ
レテ居ルノデアリマシテ、只今ノ所殆ド使
用ニ堪ヘナイモノデアリマシテ、軍ノ戰鬪
能力ニハ何等ノ關係モ及ボシテ居リマセ
又、又昨日傳ヘラレマシタ所ノ兵匪ハ昨
日モ特ニ直接ニ電話等ヲ以テ調査ヲ致シマ
シタガ、約百名ノ者ガ奉天附近ニ參リマシタ
ノデ、是ハ速ニ掃蕩ヲサレテ居リマシテ
何等不安ガナイト云フコトヲ報告シテ參,
テ居リマスノデ、本日モ公報ガ參ッテ居リ
マスガ、其以後何等ノ報告ニ接シマセヌ、
此際ソレ以上ニ何等不安ノコトハナイト考
ヘテ居リマス、南滿方面ノ狀況ハ今後トモ
ニ多少ノ兵匪ノ活動ハアラウト存ジマスル
ガ、只今マデノ狀況ニ於キマシテハ數日
傳ヘラレルヤウナ不安ノ情勢ハナイモノト
判斷ヲセラレテ居リマス、次ハ〓河方面デ
アリマスルガ、御承知ノ如クニ只今御報〓
申上ゲタヤウナ情勢デハアリマスルガ、滿
洲ノ地域ハ可ナリ廣大デアリマスルコト
ト此事變以前ニ於キマシテモ兵匪ノ頭領
ハ可ナリアッタノデアリマスルノデ、之ヲ
全然安定イタシマスルト云フコトハ可ナリ
ノ日子ヲ要スルコトト存ジマスルガ、今日
ノ所ニ於キマシテハ最モ其原因トナリマス
ルモノハ天津附近ニ根據ヲ持チマスル舊東
北政權ノ策動デアリマスルノデ、熱河方面
ハ是等ノ策動ノ爲ニ根據地トナリマスルコ
トト、將來ノ舊東北政權ノ地盤トシテ之ヲ
保持イタシテ置キタイト云フヤウナ關係カ
ラ張學良ヲ中心ト致シマスル所ノ舊東北
政權ハ、熱河ノ國境附近ニ多少ノ兵力ヲ集
中イタシマシテ、目下〓河ノ頭領デアリマ
スル湯玉麟ヲシテ其去就ヲ決スルコトノ出
來ナイヤウニ致サセマシテ、之ニ附近ノ兵
匪等ヲ操縱イタサセマシテ、只今申上ゲマ
シタヤウニ五軍ヲ編成ヲ致サセマシテ、攪
亂ヲ致シテ居ルヤウナ次第デアリマス、併
ナガラ此方面ニ於キマスル舊東北政權ヲ根
據ト致シマスル所ノ策動モ、同方面ニ出動
ヲ致シテ居リマスル所ノ兵團モ、我軍ノ兵
團モアリマスルコト、又昨今馬占山ノ掃滅
ニ依リマシテ、士氣ノ上ニ非常ナ影響ヲ及
ボシテ居リマスルコトト、是等ニ依リマシ
テ今日直ニ此方面ニ於テ危險ヲ感ズルヤウ
ナコトハナイトハ存ジテ居リマスルガ、今
後ノ此方面ニ對スル所ノ注意ハ怠ルコトノ
出來ナイ情勢ニアリマス、之ニ對シマシテ
出來得ル限リ速ニ熱河方面ノ治安ノ維持ハ
致シタイノデアリマスルガ、天津方面ニ於
キマシテハ國際ニ於テ可ナリ複雜ナ點ガア
リマスルコトト、又滿洲方面ニ於キマスル
一般ノ政治的ノ關係モアリマスル爲ニ、今
日直ニ此方面ニ對シテ處置ヲ取ルト云フコ
トハマダ其機ニ到達セラレテ居ラヌヤウ
ナ狀況ニナッテ居リマス、此一般ノ治安ノ維
持ノ方法ニ付テハ、最後ニ御報告ヲ申上ゲ
マスルカラ、熱河方面ノ點ニ付テハ此點
ニ於テ省略イタシテ置キマス、次ハ朝鮮國
境方面デアリマスルガ、朝鮮國境方面デア
リマスルガ、朝鮮國境、殊ニ間島方面ニ關
シマシテハ、是ハ歷史的ニモ、地理的ニ
モ、匪賊ノ根柢ハ深イノデアリマシテ*殊
ニ地形モ錯雜ヲ致シテ居リマスルコトト、
只今申上ゲマシタヤウニ、北滿ニ主力ヲ集
中イタシテ居リマスル關係カラ、此方面ニ
十分手ガ伸ビナイノデ、最近マデ此方面ノ
鎭定ガ出來マセヌコトハ、誠ニ遺憾ニ存ジ
チ居ル次第デアリマス、只今ノ所ハ朝鮮國
境方面ヨリ出動ヲ致シマシテ要點ヲ抑ヘ更
ニ間島方面ト外部トノ交通ノ要衝ヲ悉ク抑
ヘマシテ、補給其他ノ自由ヲ奪ッテ近ク
此方面ニ對スル平定ヲ期シタイ考ヲ持ッテ
居リマス、其間ニ北滿方面ノ兵力ノ餘裕等
ヲ得マスレバ重ネテ此方面ニ對シテ治安
ノ維持モ出來ルコトニナラウト考ヘテ居リ
マく、大體、北滿、南滿、熱河及朝鮮國境
方面ノ狀況ハ、只今申上ゲマシタヤウナ次
第デアリマスルガ、今後此治安維持ノ方法
ニ付キマシテハ此時期ニ一言申上ゲテ置
キマスルガ、色ミ增兵ノ御激勵ノ言葉モア
リマスルシ、又速ニ鎭定セヨト云フ御忠言
モ多々アリマスルノデ、萬々承知ハ致シテ
居リマスルガ、此際考ヘナケレバナリマセ
ヌコトハ、先般外務大臣カラ演說ノアリマ
シタ如ク、滿洲ノ今後ノ情勢ノ變化ニ應ジ
マシテハ可ナリ我ミモ覺悟イタサネバナ
ラヌ點モアリマスルノデ、是カラ一般的ノ
情勢ヲ見マシチ、一般ノ上カラノ國防ノ點
モアリマスルコトト、此最モ機微ナル國際
關係ニ處シマシテ、國際關係ノ情勢ニ付テ
モ大ナル判斷ヲ致シマシテ、是カラ一般ノ
情勢ヲモ考ヘナケレバナラヌノデアリマス
ルノデ、只今ノ所デハ、出來得ベクンバ現
下ノ有樣ノ儘デアリマスルナラバ、現有勢
力ヲ以テ、現在ノ治安維持ヲ十分ニ執リタ
イト考ヘルノデアリマシテ、是等ニ對スル
所ノ方案ヲ考ヘテ居ル次第デアリマス、是
ガ爲ニ逐次情勢ニ應ジマスル如クニ、兵力
編組ヲ變更イタシマシテ、情勢ニ適應スル
ヤウニ攻サシテ、現有ノ兵力ヲ以テ、成ル
ベク滿洲方面一般ニ治安維持ニ任ジタイト
考ヘラレマシテ統帥部方面ニ於テハ是等整
備方法ニ付テ、目下考究中デアリマスルノ
デ、是等ノ點ニ付キマシテハ或ハ他日豫
算方面ニ於テ御協賛ヲ願フヤウナ點モアラ
ウト存ジマスルノデ、此點ニ付キマシテハ
玆ニ此時機ニ於テ御願ヲ致シテ置ク次第デ
アリマスデ固ヨリ御承知ノ如クニ武力ノ
ミヲ以テ滿洲ノ治安維持ヲ致スト云フコト
ハ甚ダ拙ナルモノデアリマスルノデ、其他
ノ政治上ノ關係、又地方ノ兵匪ノ招撫ノ方
法、歸順ノ方法等ヲ併セテ之ヲ行ヒマシテ、
成ルベク速ニ其平定ヲ期シタイト考ヘテ居
リマス、從ヒマシテ熱河方面ニ對シマシテ
ハ、今後ノ情勢ノ推移ヲ考へマシテ近ク之
ニ對スル所ノ方策モ決定ヲセラルルコトト
存ジマス、デ固ヨリ只今申上ゲマシタル如
クニ、用兵ノ關係ニ於キマシテハ、狀況ハ
如何ニ變化イタシマストモ、之ニ應ズルダ
ケノ準備ヲ致サナケレバナラヌノデアリマ
シテ、此狀況ノ變化ニ伴ヒマシテ、起ッテ參
リマス所ノ一般ノ狀況ニ對シマシテハ何
時タリトモ之ニ應ジマシテ處置ヲスル所ノ
用意ヲ十分ニ致シテ居リマスルノデ、左樣
ナ萬々一ノコトガアリマシテモ、之ニ對シ
テ只今ノ所何等遺算ナキヲ期シテ居ル次第
デアリマス、只今申上ゲマシタヤウナ情勢
ニ於キマシテ、北滿ハ旣ニ平定ヲ致シマス、
滿洲一般ニ對シテハ只今ノ所取別ケテ御報
告ヲ申上ゲルヤウナ不安ナ狀態ハゴザイマ
セヌガ、情勢ノ變化ガゴザイマスノデ、之
ニ適應スル如ク總テノ整備ヲ致サセマシ
テ又萬々一狀況ノ變化ニ應ジマシテ危急
ヲ要スル場合ニハ之ニ對スル處置モ致シ
テ居リマスルノデ、此邊ノ點ヲ十分御了承ノ
上ニ、今後政府ト致シマシテ執ルベキ方策
ニ付キマシテハ機ヲ見マシテ御協賛ヲ仰
グヤウナ場合モアラウト存ジマスルノデ、
之ニ付キマシテハ重ネテ御協贊ノコトヲ切
ニ願フテ置キマス、此機會ニ於キマシテ治
安維持ト關係ガアリマスルノデ、北滿方面
ノ水害ノ狀況ヲ一應申上ゲテ置キマス、最
早新聞ニ於テ御承知ノ點デアリマスルノ
デ、重ネテ詳細ニ申上ゲル必要モナイト存
ジマスルガ、殆ド全滿洲、北滿ノ三分ノ一
ノ地方ニ浸水イタシマシテ、哈爾賚ノミニ
於テモ約二十万人ノ被害者ガ今日苦ンデ居
ル情勢デアリマス、其上ニ之ニ伴ヒマス所
ノ流行病、殊ニ「コレラ」病ガ流行イタシマス
ノデ、出先陸軍ト致シマシテハ)滿洲國ガ建
國以來マダ日モ淺ク、北滿ニ於テハ馬占山
ノ跳梁ガ、最近マデ致シテ居ヲタコトデアリ
マスシ、他ノ一面ニ於テハ反滿洲國ノ策動
モ可ナリ猛烈デアリマスルノデ、此狀況ニ
於キマシテ、此水害ヲ受ケマシタ爲ニ、流
言蜚語等モ段々傳ハリマスルノデ、是等ヲ
取締リ以テ北滿方面ニ於ケル所ノ治安維
持ニ努力ヲ致シテ居リマス、此地方ニ於キ
マス所ノ皇軍ノ威武ハ旣ニ親シク此地方ニ
及ンデ居リマスルガ、未ダ皇國ノ德化ハ及
ンデ居リマセヌノデ、斯樣ナ時期ニ於キマ
シテ日滿兩國ノ共存共榮ノ目的、竝ニ滿洲
ニ對シマスル所ノ我國ノ大キナル抱負ノ下
ニ、出來得ル限リ斯樣ナ機會ヲ捉ヘマシテ、
十分ノ德ガ及ビマシテ恩威竝ビ行ハレテ、
以テ北滿ノ平定ヲ期シタイト考ヘテ居リマ
シテ、政府ニ於キマシテハ是等ニ對スル處
置モ勿論執ッテ居ル次第デアリマスルガ、
尙ホ此時機ニ於キマシテ此方面ニ對シマス
ル只今ノ處置ニ付キマシテハ、又機ヲ見マ
シテ十分ノ御高配ヲ仰ギタイト存ズル次第
デアリマス、玆ニ短簡デアリマスルガ北滿
ノ爾後ノ情況ヲ御報告申上ゲル次第デアリ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006303242X00819320902&spkNum=46
-
047・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 此際御諮リヲ致
シタイコトハ前刻書記官ヲシテ報告ヲ致
サセマシタ衆議院ヨリ送付ニ相成リマシタ
政府提出ノ金錢債務臨時調停法案ノ第一讀
會ヲ開キタイト考へマス議事日程追加ニ
付テ御異議ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006303242X00819320902&spkNum=47
-
048・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006303242X00819320902&spkNum=48
-
049・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 金錢債務臨時調
停法案、政府提出、衆議院送付、第一讀會、
小山司法大臣
金錢債務臨時調停法案
右政府提出案本院ニ於テ修正議決セリ因
テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和七年九月一日
衆議院議長秋田〓
貴族院議長公爵德川家達殿
(小字及-ハ衆議院修正)
金錢債務臨時調停法案
金錢債務臨時調停法
第一條負債ノ整理ニ依リ誠實ナル債務
者ヲ更生セシムル爲債權者債務者ノ互
讓ヲ必要トスルトキハ當事者ハ本法ニ
依リ調停ノ申立ヲ爲スコトヲ得
第二條調停ノ申立ハ昭和七年七月三十
一日以前ニ發生シタル私法上ノ金錢債
務ニシテ金額千圓ヲ超過セザルモノニ
付之ヲ爲スコトヲ得但シ小作料其ノ他
小作關係ヨリ生ジタルモノ及地代、家
賃其ノ地借地借家關係ヨリ生ジタルモ
ノニ付テハ此ノ限ニ在ラズ
前頃ノ金額ニハ附帶ノ利息、韋約金、
費用又ハ手數計ノ額ヲ算入セズ旣ニ元
本ニ組入レタル此等ノモノニ付亦同
|ジ
第一項ノ金額ヲ超過スル債務ニ付調停
ノ申立アリタル場合ト雖モ裁判所調亭
ヲ爲スヲ甲當ト認メ目相手方ニ異議ナ
キトキハ調停ヲ爲スコトヲ得相手方期
日ニ出頭シテ事件ノ內容ニ付陳述ヲ始
メタルトキハ異義ナキモノト看做ス
第三條調停ノ申立ハ相手方ノ住所、居
所、營業所若ハ事務所ノ所在地ヲ管轄
スル區裁判所又ハ當事者ノ合意ニ依リ
テ定ムル區裁判所ニ之ヲ爲スコトヲ要
ス
調停ノ申立ヲ受ケタル裁判所相當ト認
ムルトキハ決定ヲ以テ事件ヲ他ノ區裁
判所ニ移送スルコトヲ得管轄權ナキ裁
判所ガ調停ノ申立ヲ受ケタルトキ亦同
前項ノ決定ニ對シチハ不服ヲ申立ツル
コトヲ得ズ
第四條本法ノ調停ニ關シテハ借地借家
調停法第二條、第四條ノ二、第六條
〓、第八條
〓乃至第二十三條及第二十六條乃至第
三十二條ノ規定ヲ準用ス
第五條當事者及利害關係人ハ自身出頭スル
コトヲ要ス但シ辯護士又ハ裁判所ノ許可
ヲ受ケタル代理人ヲ出頭セシムルコトヲ
得
裁判所ハ何時ニテモ前項ノ許可ヲ取消スコ
トヲ得
六
第五條事件ガ性質上調停ヲ爲スニ適セ
ズ又ハ當事者不當ノ目的ヲ以テ濫ニ調
停ノ申立ヲ爲シタリト認ムルトキハ裁
判所ハ決定ヲ以テ調停ノ申立ヲ却下ス
八
第七條第二項ニ該當スルトキ其ノ他調
停ヲ爲スニ適當ナラザル事情存スルト
キ亦同ジ
調停委員會前項ノ事由アリト認ムルト
キハ調停ヲ爲サズ
七
事業調停ノ申立ヲ受理シタル事件ニ
付訴訟ガ繋屬スルトキ又ハ裁判所ノ職
權ヲ以テ事件ガ調停ニ付セラレタルト
キハ受訴裁判所ハ決定ヲ以テ調停ノ終
八
了又ハ第比條ノ規定ニ依ル裁判確定ニ
至ル迄訴訟手續ヲ中止スルコトヲ得
調停事件ノ繋屬スル裁判所ハ申立ニ因
リ決定ヲ以テ擔保ヲ供シ又ハ供セシメ
ズシテ强制執行手續又ハ競賣法ニ依ル
シ破產申立ニ付テハ
競賣手續ヲ一時停止スルコトヲ得
破產宣告ノ決定ヲ一時猶豫スルコトヲ得
前項ノ場合ニ於テ裁判所ハ特ニ必要ト認ム
ルトキハ擔保ヲ供セシムルコトヲ得
民事訴訟法第百十二條、第百十三條、
第百十五條及第百十六條ノ規定ハ前項
ノ擔保ニ之ヲ準用ス
第一項及第二項ノ決定ニ對シテハ不服
ヲ申立ツルコトヲ得ズ
八
電源調停委員會ニ於テ調停成ラザル
場合ニ裁判所相當ト認ムルトキハ職權
ヲ以テ調停委員ノ意見ヲ聽キ當事者雙
方ノ利益ヲ衡平ニ考慮シ其ノ資力、業
務ノ性質、既ニ債務者ノ支拂ヒタル利息
手數料內入金等ノ額其ノ他一切ノ事情
ヲ料的シテ調停ニ代ヘ利息、期限其ノ
他債務關係ノ變更ヲ命ズル裁判ヲ爲ス
コトヲ得此ノ裁判ニ於テハ債務ノ履行
其ノ他財產上ノ給付ヲ命ズルコトヲ得
銀行其ノ他官廳ノ監督ヲ受ケテ金融業
務ヲ取扱フ者ノ債權ニ付テハ其ノ業務
存續
ノ機構ヲ害スル虞アルトキハ前項ノ裁
判ヲ爲スコトヲ得ズ
九
第八條前條ノ規定ニ依ル裁判ハ調停事
件ノ繫屬スル裁判所ニ於テ非訟事件手
續法ニ依リ之ヲ爲ス
十八
電話第七條ノ規定ニ依ル裁判ニ對シ
テハ卽時抗〓ヲ爲スコトヲ得其ノ期間
ハ之ヲ二週間トス
前項ノ卽時抗〓ハ執行停止ノ效力ヲ有
ス
十一入
第十條第七條ノ規定ニ依ル裁判確定シ
タルトキハ其ノ裁判ハ裁判上ノ和解ト
同一ノ效力ヲ有ス
十二
第十一條調停委員又ハ調停委員タリシ
者故ナク評議ノ〓末又ハ調停主任、調
停委員ノ意見若ハ其ノ多少ノ數ヲ漏泄
シタルトキハ千圓以下ノ罰金ニ處ス
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
本法ハ本法施行ノ日ヨリ三年間其ノ效力
ヲガメ
本法失效ノ際ニ於テ必要ナル經過規定ハ
勅令ヲ以テ之ヲ定ム
〔國務大臣小山松吉君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006303242X00819320902&spkNum=49
-
050・小山松吉
○國務大臣(小山松吉君) 只今議題トナリ
マシタル金錢債務臨時調停法案ニ付テ御說
明申上ゲマスル、經濟界不況ノ現狀ニ鑑ミ
マシテ、之ヲ打開スルノ一方法ト致シマシ
テ負債整理ニ依リマシテ、中小農商工業者
其他一般誠實ナル債務者ニ、自力更生ノ機
會ヲ與ヘマスル爲ニ、債權者債務者ニ互讓
ノ途ヲ開クノ必要アリト認メマシテ、玆
本法案ヲ提出イタシマシタ次第デゴザイマ
ス、デ其內容ノ大體ヲ申述ベマスレバ、調
停手續ハ當事者ノ申立ニ依リ開始セラルル
ノデアリマシテ、申立ヲ爲シ得ル事項ハ
昭和七年七月三十一日以前ニ發生イタシマ
シタ金錢債務ニ關スルモノニ限ルノデアリ
マス
〔副議長公爵近衞文麿君議長席ニ著ク〕
調停ノ手續ニ付キマシテハ大體借地借家調
停法ヲ準用イタシタノデアリマスケレド
モ本法ノ目的ト致シマスル所ヲ一層效果
アラシムル爲ニ調停ノ成立ヲ致シマセヌ場
合ト雖モ、裁判所ガ相當ト認メマシタ時ハ、
職權ヲ以テ調停委員ノ意見ヲ聽キマシタ後
ニ各般ノ事情ヲ斟酌イタシマシテ、當事者
雙方ノ利益ヲ公平ニ考慮イタシマシテ、債
務關係ノ變更ヲ命ズル裁判ヲ爲スコトヲ得
ルモノト致シタノデアリマス、尙ホ本法案
ハ時局匡救ノ一方法トシテ施行セムトスル
者デアリマスルカラ、其施行期間モ他ノ匡
救施設ト同樣之ヲ三年間ト致シタノデアリ
マジ、政府提出ノ原案ニ於キマシテハ
千圓以下ノ金錢債務ニ付テノミ本法ヲ適用
スルコトト致シタノデアリマシタガ衆議
院ノ修正ニ依リマシテ右金額ノ制限ハ撤廢
セラルルコトナリマシタ、其ノ他二三ノ
點ニ付テノ修正ガアッタノデアリマスルガ、
政府ハ右修正ニハ遺憾ナガラ贊成イタシ難
イノデアリマス、何卒愼重審議ノ上原案ニ
御贊成アラムコトヲ請ヒマス
〔議長公爵德川家產君議長席ニ復ス〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006303242X00819320902&spkNum=50
-
051・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 本案ニ對シテ質
疑ノ通〓者ガゴザイマスカラ順次發言ヲ許
シマス-大城兼義君
〔大城兼義君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006303242X00819320902&spkNum=51
-
052・大城兼義
○大城兼義君 私ハ金錢債務臨時調停法案
ニ付キマシテ、極メテ簡單ニ質問ヲ致シタ
イト思フノデアリマス右問題ハ極メテ重
大ナル問題ト考ヘルノデアリマス、該調停
法中ニ無盡モ拘束ヲ受ケルヤウニアリマス
ルガ、私ハ無盡ノ掛金ヨリ生ジタル債權ハ
其法案中ニ加フベキ性質ノモノデハナイト
思フデアリマス、小作料ハ該法案ヨリ除外
サレテ居ルノデアリマスルガ、無盡ノ掛金
ヨリ生ジタル債權ハ小作料ヨリモ尙ホ一層
强キ意味ヲ以テ除外サレナケレバナラヌト
思フノデアリマス、其理由ハ無盡業法第一
條及第十三條ノ條文ニ照シマシテ明カデア
ルト思フノデアリマス、其條文ヲ讀ンデ見
レバ自ラ御了解ニナルト考ヘラレルノデア
リマス、今其條文ヲ讀ンデ見タイト思ヒマ
ス、無盡業法ノ第一條ニ斯ウ云フコトガア
リマス「本法ニ於テ無盡ト稱スルハ一定ノ
口數ト給付金額トヲ定メ定期ニ掛金ヲ拂込
マシメ一口每ニ抽籤入札其ノ他類似ノ方法
ニ依リ掛金者ニ對シ金錢ノ給付ヲ爲スヲ謂
フ」、斯ウアリマス、是ハ無盡ノ方トシテハ
口數モ定ッテ居レバ掛金額モ定ッテ居リ、給
付金額モ定ッテ居レバ加入者一團ノ口數
モ確定シテ居ルノデアリマス、ソコデ給付
ハ抽籤入札每ニ是非給付ヲシナケレバナラ
ヌ所ノ義務ヲ有フテ居ル次第デアリマス
故ニ是ヨリ外ニ手ヲ入レル方法ハ何モナイ
ノデ、之ニ手ヲ入レルトスレバ其機構ガ亂
レテ來ルデスカラ、決シテ手ヲ入レル所ノ
モノデハナイ性質ノモノト思フノデアリマ
ス、ソレカラ第十三條ニ「無盡業者ハ無盡
ノ缺口又ハ掛金ノ拂込ヲ爲ササル者アル場
合ト雖第一囘ノ抽籤入札ノ後ハ給付金額ヲ
減少シ又ハ掛金額ヲ增加スルコトヲ得ス」、
此條文トシテモ今讀上ゲマシタ通リニ、一
通抽籤入札ノ初同ノ開會ヲ致シマシタナラ
バ、掛金額ヲ增ストカ云フコトモ出來ナイ、
其半面ニ減ラスト云フコトモ無論出來ナイ
意味ニナルト思フ、給付金額トシテモ極ッ
タモノデアッタラチヤント其初囘ノ抽籤入
札ニ依シテ極マルデスカラ、其後ハ變更ハ
許サナイト斯ウナッテ居ル、然ラバ之ニ何モ
手ヲ入レル餘地ハナイ、所デ之ニ手ヲ入レ
ルトスレバ其機構ガ亂レテ來ルカラ、ドウ
シテモ之ニ手ヲ入レルト云フコトハ許サナ
イト思フノデアリマス、ソレ故ニ無盡ノ掛
金ヨリ生ズル所ノ債權ハ小作料見タヤウニ、
此限リニ在ラズト云フ、該法案ノ第二條
ニ列記スルコトヲ希望スル次第デアリマ
ス、之ニ付キマシテ司法大臣ノ誠意ノ御答
辯ヲ煩ハシタイノデアリマス、次ニ無盡ノ
業態ニ付キマシテ極ク〓略ノ狀況ヲ申述べ
テ見タイノデアリマス、無盡業者ノ狀況、
無盡ノ會社ノ數ハ二百七十會社アルノデア
リマス、無盡加入者ノ數ガ二百万ロアルノ
デアリマス、掛金契約ノ總額ガ十四億圓餘
アルノデアリマス、給付金、給付未濟口數
是ハ未ダ給付ヲ受ケナイ所ノ口數ガ百万口
アルノデアリマス、旣ニ給付金ノ給付ヲ受
ケタ口數ガ同ジク百万口アルノデアリマ
ス一箇年ノ給付ノ金額ガ二億八千万圓ア
ルノデアリマス、一箇年間ニ給付ヲスル口
數ガ四十万口アルノデアリマス、抑、無盡
ハ大正四年業法施行以來日尙ホ淺シト雖
モ、年々歲々長足ノ發達ヲ遂ゲ來リ、前述
ノ如ク契約高ニ於テ十四億ト云フ數字ヲ示
シ又一箇年ノ給付金額ガ二億八千万圓
ヲ算スルニ至リマシタノハ財界ニ一大驚
嘆ヲ與ヘタル次第デアリマス、尙ホ無盡ハ
地方ニ於テ人口一人當リ百圓若クハ百五十
圓ノ契約高ヲ示シツツアルノデアリマスル
カラ、近キ將來ニ於キマシテ七十億ニ達スル
ナラムト私ハ信ズルノデアリマス、國家ト
致シマシテモ、此無盡業ヲ庶民金融機關ト
シテ大イニ重ンズベキ事柄ト思フノデアリ
マく、尙ホ無盡業ハ自分ノ資本金ヲ運用ス
ルモノニ非ズシテ、單ニ無盡ノ加入者ノ金
錢ノ取扱ヲ爲シテ居ル所ノ、所謂無盡ノ管
理人若クハ加入者間ノ調節係トモ言フベキ
ヤウナ立場ニアルト思フノデアリマス、而
モ無盡收支計算表ト云フモノニ依ッテガフ
チリ切詰メラレタ所ノ箱入ノ數字ニ依。ッテ
取扱ッテ居ルノデアリマス、若シ之ヲ調停法
ニ依ッテ掛金額ガ減少スルコトガアッタナラ
バ、給付金ニ不足ヲ生ジマシテ、之ガ爲メ
營業者ハ給付難ニ陷ヲテ加入者ニ損失ヲ及
ボシ、遂ニ財界ノ紊亂ヲ來スニ至ルモノト
私ハ思フノデアリマス、斯ノ如ク其實質上
ヨリ見ルモ、無盡掛金ヨリ生ジタル財源ハ
此限リニ在ラズト少クトモ小作料ト同樣
ニ該法案第二條ニ列記スベキ事柄ト思フノ
デアリマス、依ッテ前申述ベタ通リニ司法
大臣ノ御答辯ヲ煩ハシタイノデアリマス
〔國務大臣小山松吉君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006303242X00819320902&spkNum=52
-
053・小山松吉
○國務大臣(小山松吉君) 只今ノ大城君
ノ御質疑ニ對シテ御答ヘ致シマス、無盡ニ
關スル金錢債務ヲ除外シナイノハドウ云フ
譯デアルカト云フ御趣意ノヤウデアリマス、
其前ニ一言申上ゲテ置キマスノハ、本法案
第二條ノ但書ニ小作料其他小作關係ヨリ生
ジマシタモノヲ除外イタシマシタノハ、小
作料ガ全然調停ノ目的トナラナイト云フ趣
意デハナイノデアリマシテ、此臨時調停法
デハ除外シテ居リマスルガ、別ニ小作調停
ニ關スル法律ガアリマシテ、其法ヲ適用シ
テ取扱フベキモノダト云フ考デアリマス、
要スルニ小作關係ヨリ生ジマスルモノハ、
專門ノ知識ヲ要スルト云フ意味デ但書ヲ設
ケタ次第デアリマス、無盡業ニ付キマシテ
ハ此法案ハ〓究ヲ致シタノデアリマス、只
今御質疑ノ際ニ第二ノ事項トシテ御述ベニ
ナリマシタ無盡會社ノ狀況デアリマスル
ガ、只今我國ニ於テ官廳ノ監督ヲ受ケテ居
リマスル無盡會社、此無盡會社ノ狀況ハ丁
度只今御述ベニナリマシタト同ジヤウナコ
トヲ、私ハ無盡會社ノ代表者ノ方ヨリ承ハッ
タノデアリマスデ其承ハリマシタ話ノ趣
旨ト、御提出ニナリマシタ材料等ハ此法案
ヲ司法省ニ於テ在野ノ法曹其他ニ協議ヲ致
シマスル際ニ〓究ノ資料ニ供シタノデアリ
マく、デ御話ノ如ク無盡ハ極メテ微妙ナル
關係ニ於テ成立ッテ居ルノデアリマスカラ、
此法案ノ解釋ト致シマシテ、一應申上ゲル
コトノ出來マスルノハ、無盡ノ未ダ給付金
ヲ受領セザル、受取ラザル加入者ノ掛金拂
込債務ノ如キハ本法ニ所謂、性質上調停
ヲ爲スニ適セザルモノト云フノニ當ルト思フ
ノデアリマス、卽チ第五條ニ是ハ當リマシ
テ、此申出ガアリマシタナラバ却下ヲナ
スベキモノデアルト解シ得ラレルノデアリ
マス、併ナガラ既ニ給付金ヲ受取リマシタ
加入者ノ掛金拂込ノ債務ハ、必シモ右ノ如
ク斷定イタシ難イノデアリマスルカラ、其
場合ニ於テハ其業務ノ機構ヲ害スル虞アリ
ヤ否ヤト云フコトヲ考ヘマシテ、ソレニ依ッ
テ調停ヲナス、調停又ハ裁判ヲナスベキヤ
否ヤヲ決シタイト考ヘテ、此法案ノ規定
ヲ設ケタノデアリマス、御承知ノ如クニ第
七條第二項「其ノ他官廳ノ監督ヲ受ケテ金
融業務ヲ取扱フ者ノ債權ニ付テハ其ノ業務
ノ機構ヲ害スルノ虞アルトキハ前項ノ裁判
ヲ爲スコトヲ得ズ」ト、此規定ニ當ルノデ
アリマス、只今ノ御尋ノ趣旨ハ十分考慮イ
タシマシテ、此第二項ヲ設ケタノデアリマ
ス、只今申述べマシタコトニ付テ御質疑ノ
第二モ御了解ニ相成ッタコトト存ジマス、
是ダケヲ御答ヲ申シテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006303242X00819320902&spkNum=53
-
054・大城兼義
○大城兼義君 私ハ聲ガ大キイカラ此方
デ······此業務ノ機構ヲ害スル虞アルトキハ前
項ノ裁判ヲ爲スコトヲ得ズト斯ウアリマス
ルガ、サウスルト機構ハドノ程度マデニ至ッ
タナラバ害スル、害シナイト云フコトハ別
段ニ定ッテ居ナイモノデアリマス、今日ノ場
合不景氣ノドン底ニ入ッテ無盡ノ掛金ノ延
滯ノ額ガ約五分ニ當ッテ居ル時デアリマス
ルガ、其五分ト云フタラバ十四億圓ノ五分
デアリマスカラ、ソレガ五分トシタラ七千
万圓ニ當ルノデアリマス、ソレカラ又外ニ
無盡ノ缺ロトナッテ居ル其口數ガ約一割ア
ルト云フコトデアリマス一割デ四十万口
デアリマス、斯ル業態ニ陷フテ居ル今日ニ
於テ、若シ夫レ業務ノ機構ヲ害セザル限リ
ニ於テ調停ノ部分ニ入レル、斯ウ云フ風ニ
ナルトスレバ、其調停ニハ誠實ナルモノト
シテ入レル、誰モ自カラ不誠實ノモノト云
フコトハ看板ニハ書イテナイ、皆誠實ナモ
ノトシテ申出ル、申出ル前ニ既ニモウ滯納
勝ニナルト思フノデアリマスガ、然ラバ此法
案ヲ以テ業務思想ヲ破壞スル所ノ國民ヲ造
ルト思フノデアリマス、故ニ今二百万口モ
アル無盡會社ニ於テ、此法ヲ此儘置クトス
レバ大分掛金ノ未納ヲスル人ガ殖エテ來ル
ト思フノデアリマス、故ニ初メカラ此業法
デ以テ取締ノテ居ル所ノ十分ナル法律ガア
ルカラ、別段ニソレニ手ヲ觸レル必要ハナ
イト考ヘル次第デアリマス、先程司法大臣
ガ仰シヤイマシタガ、ソレニハ小作料ヤ何
カハ別ニ調停法ガアルカラ是デ以テ取締ッ
テ居ル、故ニアレハ除外シタ斯ウ云フ御
言葉デアリマス、所ガ無盡モ今斯ノヤウナ
モノデ無盡法デ取締"テ居ル第十三條ニ確。ツ
カリ取締ッテ居ル、ソレニ持ッテ來テ手ヲ入
レル必要ハナイ、ドッチモ同ジモノダト思
フ、矢張リ取締法或ハ調停法トシテモ何モ
大シテ手ヲ入レル必要ノナイ所ヘ徒ラニ手
ヲ入レテ、サウシテ天下ヲ惡化セシメルト
云フ必要ハ更ニナイト思フ、此故ニ全部ニ
至ッテ私ハ無盡ハ除外サレタイトハ言ヒマ
セヌ、何カト云フタラ無盡會社ニ依ッテハ惡
辣ナ人モ居ッテ、或ハ拂戾スベキ金錢ガア
ルニ拘ラズソレヲ澁ッテ出サヌノガアッタナ
ラバ、是ハ大イニ其調停法ニ掛ケテ取締ルベ
シト斯ウ思フ、所ガ無盡ノ掛金ヨリ生ジタ
所ノ債權其モノヲ、少シモ手ヲ入レルコト
許ヲサナイ、之ニ手ヲ入レルトスレバ是ハ
病ガ生ズルノデ、掛金者ガ甘ヘテ來テ、ソ
レカラ調停法ニ掛カラウトシテ、ドウシテ
モ未納勝チニナルト云フコトハ火ヲ睹ルヨ
リモ明ラカデアルト思フ、初メカラ火ヲ睹
ル如タ明ラカデアルナラバ、何故ソンナ有
害無益ナコトヲスルカト斯ウナル、ソレ故
ドウシテモ掛金ヨリ生ズル所ノ債權其モノ
ハ丁度其小作料見タイナ工合ニ除外シテ
ヤルノガ至當デハナイカト思フ、ソレハ今
讀ミマシタ所ノ無盡法ニモ確然ト取締ガ
アッテ、掛金ハ動カスベカラザルモノデアル、
給付金ハ動カスベカラザルモノデアルト斯
ウ云フコトヲ言ヒ切ッテアルノニソレヲ何
故ニ之ニ定メルカ、頗ル是ハ成ッテ居ナイ、
故ニ是ケダハ是非除外例ヲ入レテ貰ヒタイ
ト私ハ希望シテ置ク次第デアリマス之二
付テ其意見ヲ求メル次第デアリマス、左樣
御聽取リアラムコトヲ希望イタシマス
〔國務大臣小山松吉君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006303242X00819320902&spkNum=54
-
055・小山松吉
○國務大臣(小山松吉君) 再度ノ御尋ニ御
答ヘ致シマス、御質問ニ關スル部分ダケニ
付テ簡單ニ申上ゲマスガ、第七條ノ第二項
ニ「業務ノ機構ヲ害スル虞アルトキハ」ト申
シマスノハ、是ハ各箇ノ事件ニ付キマシテ、
其局ニ當ッテ裁判ヲ致シマスル當局者ガ、之
ヲ見ルヨリ外ニハ方法ガナイノデアリマシ
テ只今一々此場合ヲ申上ゲルコトハ困難
デアリマス、ソレカラ此案ハ御言葉ニ依リ
マスト、債務者ガ何カ借金棒引デモスル爲
ニ便宜ナ案デアルヤウニ御解釋ノヤウデア
リマスガ、第一條ニ書イテアリマスヤウニ
此案ニ依クテ更正セシメラレルモノハ「誠實
ナル債務者」デアリマスカラ、不誠實ナル債
務者、借金棒引ノ意圖ヲ有ヲテ居ル者ハ此
案デハソレハ調停ヲシテヤラナイト云フ考
デ居ルノデアリマス、尙ホ此案デハ債權者
モ亦調停ノ申立ガ出來ルノデアリマシテ、
債權者ノ方ヨリ債務者ニ對シテ働キカケマ
シテ、サウシテ債務者ガナカ〓〓應ズルヤ
ウナコトノ出來ナイ事情ニアリマスモノ
ヲ、互ニ話ヲ仕合"テ五讓ノ結果、債務ノ辨
濟ガ圓滑ニ行クト云フ場合モ考ヘテ居ルノ
デアリマス、無盡業者ハ御言葉ノヤウニ總
テガ適當ナル無盡業者ノミデアルトハ私モ
考ヘテ居ナイノデアリマシテ、此法案ヲ審
議イタシマスル際ニ、衆議院ニ於テモ無盡
業者ガ隨分ヒドイコトシヲテ、掛金ノ取立
ヲシテ居ルト云フコトヲ申シテ居ノタ委員
モゴザイマシタ、ソレデアリマスカラ法律
ニ於テ全然除外スルト云フコトハ、法ノ規
定トシテハ到底爲シ難イノデアリマス、ソ
レダケ申上ゲテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006303242X00819320902&spkNum=55
-
056・大城兼義
○大城兼義君 今司法大臣ノ仰シヤル所ニ
依レバ債務者モ債權者モ兩方保護スル積
リデアルト是ハ私モ否認ハ致シマセヌ、
併シ今日ノ場合ニ於キマシテ何ヲ意味シテ
此議會ヲ開イテアルカ、匡救問題トシテ何
ヲ意味シテ開イテアルカト申シマスレバ
卽チ債務者ヲ多ク助ケルト云フ意味ヨリ生
ジテ居ルコトト思フノデアリマス、所ガ當
局トシテハ債權者モ或場合ニ於テハ助カ
ルソレハ無論解釋ハサウ出來ルト思ヒマ
ス、私モソレハ百中一二、十中二三ハアル
ト思ヒマス、余ハ大小輕重ヲ以テ論ジテ居
ル、ソンナニ皆絕對的ニアルモノデハナイ
ノデスカラ何事デモ······ソレハ幾ラカ債權
者ノ助カル場合ハアルデセウケレドモ、多
クノ場合ニ於テ、國民一般ニ考ヘテ居ル今
囘ノ議會ノ色ミノ諸問題モ、皆疲弊困憊セ
ル所ノ詰リ國民ガ救濟ヲ受ケル爲ニ開カレ
テ居ルト考テ居ル、私等モサウ思ッテ居ル、
故ニ何ト言ッテモ債務者ガ助カルト云フ意
味ヨリ生ジテ居ルノデスカラシテ、此場合
ニ於キマシテ此掛金ヨリ生ズル所ノ債權
ハ除外スルト云フコトヲシナイ限リハ害
アッテ利益ハナイト思フ、先程カラ幾度モ申
上ゲテアルカラ、再ビ繰返ス必要ハアリマ
セヌ、所デ要スルニ何ト言ッテモ無盡業法
デ十分ニ取締ラレテ居ル所ノ無盡業ガ、掛
金ヲ集メテ給付ヲシテ、掛金ガ集マラナケ
レバ此給付ハ出來ナイ、ソレヲ調節シテ減
ラストスレバ、ソレダケ不足ヲ生ズル譯デ
アルカラ給付ハ出來ナクナル譯デアル、給
付ガ出來ナクナッタナラバ先程カラ申ス通
リ加入者ノ損失ヲ招ク、今二百万カラアル
所ノ加入者ガ、大分困ルト云フコトニナル
ノデアル、故ニドウシテモ此掛金ニハ觸レ
ナイデモ別段ニ差支ナイト思フ、差支ガナ
イ所ヘ持ッテ來テ其調停ノ方ニ入レテ、サウ
シテ平地ニ波ヲ起サシテ、加入者ヲシテ惡
化セシムル必要ハナイト思フ、何處マデモ
是ハ掛金ヨリ生ズル所ノ債權ハ是非是ハ除
外シテ行カナケレバナラヌト私ハ思フノデ
アリマス、又義務觀念ト云フノガ責任ヲ
負ヒ義務ヲ與ヘラレテ居ルモノデアルデス
カラシテ、是ハ無盡ノ取締法デ十分デア
ル、所デソレニ持ッテ來テ又更ニ要ラヌト
手ヲ觸レテ來ルトスレバ詰リ此義務觀念ガ
何處マデモ破壞サレ、實ニドウモ困ッタコ
トニナルト、我ミハ何處マデモソレハ憂慮
シテ已マナイ次第デアリマス、ソレデ〓育
ノ根本カラ申シマシテモ、人ノ物ヲ借リタ
ラ返ス、金ヲ借リタラ返ス、其義務觀念ヲ
堅ク養成スルト云フコトハ是ハ國民トシ
テ〓育ノ一大要件デアルト思フノデアリマ
ス、此意味ヨリ致シマシテモ十分ニ取締ラ
レテ居ル所ノ無盡法ニ別段ニ手ヲ入レル必
要ガナイ、併シ私ハ全部ニ亙ッテ約束ガ
受ケタクナイトハ言ヒマセヌ、唯掛金ダケ
ハドウシテモソレハ無盡ノ命デスカラ、ソ
レヲ取リ損ッタラ給付ガ出來ナイ、又モウ一
ツ司法大臣ノ仰ッシヤル言葉ニ、ドウモ無盡
業者ハ加入カラ掛金ヲ取ルノニ非常ニヒド
イコトヲシテ居ルト云フコトデアルガ、無
盡ハ掛金ヲ集メテ給付ヲ爲ス仕事デアルカ
ラ、貯蓄銀行ヤ產業組合ノヤウニ、金ガナ
ケレバ貸サヌデモ宜イト云フノトハ違フ、
何處マデモ給付ヲシナケレバナラヌ掛金
ヲ取ッテ給付シテ其義務ヲ果サナケレバナ
ラヌ、法律ノ命令デアルカラドウシテモ給
付ヲシナケレバナラヌ、掛金ヲ集メテ每日
入札ノ方法ニ依ッテ給付ヲナスノガ仕事デ
スカラ、若シソレヲ力强ク取リ立テヲシナ
イ場合ニ於テハ給付ハドウスルカ、司法大
臣ハ片方ニ義務ヲ强制シテ、片方ノ義務ヲ
忽ニスル、斯ウ云フ風ノ意味合ニモナル、
昔カラ惡人ト云フタナラバ權利ヲ主張シ、
義務ヲ果サナイ人ヲ惡人ト言フタ、然ラバ
惡人ヲ作ルモノハ、是ハ甚ダ不合理ナ話デ
アル、故ニドウシテモ此取立ヲ爲シテ給付
ヲ爲スト云フコトハ甚ダ良イコトデアル、
何處迄モ取立テヲ爲シテ義務ヲ果サシメ
テ、又自分ノ義務ヲ行フト斯ウ云フ風ニナッ
テ行カナケレバナラヌ、是ハ無盡業者ガ掛
金ヲ取立テルコトヲ隨分ヒドイコトヲシテ
居ルト云フヤウナ話ハ是ハ不合理ノ話デ
アルト思ヒマス、是ハ十分ニ······是ハ力ヲ
盡シテ取立テナケレバナラヌ、何レノ方面
ニ於キマシテモ稅ヲ取立テル能力ガナイ人
ナラバ取換ヘナケレバナラヌ、無能力者ダ
カラ取換ヘナケレバナラヌ、十分ニ力ヲ盡
ベキ人デアルナラバ是ハ喜ブベキコトデア
ル発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006303242X00819320902&spkNum=56
-
057・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 大城君ニ御注意
ヲ致シマスガ、今御述べニナッテ居ルノハ
本案ニ對スル御意見ノヤウニ議長ハ伺ヒマ
スガ、再ビ質疑ヲ爲サル御積リダラウト思
ヒマスガ、成ルベク質疑ノ範圍ニ御止メヲ
願ヒタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006303242X00819320902&spkNum=57
-
058・大城兼義
○大城兼義君 是ハ質疑ノ範圍デアリマ
ス、矢張リ今ノ御答〓ニ對スル又質疑ヲ致
スト云フ次第デアリマス、ドウゾ斯樣御了
承ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006303242X00819320902&spkNum=58
-
059・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 議長モ議長ノ希
望ヲ大城君ニ於テ御了承ヲ請ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006303242X00819320902&spkNum=59
-
060・大城兼義
○大城兼義君 兎ニ角今述べテ居ルノハ問
題外デナクシテ、其範圍內ニ於テ質問ヲシ
テ居ルノダカラ御了承ヲ願ヒマス、是デ以
テ質問ハ今述ベタ通リデアリマスルガ、ド
ウゾ其邊ハ司法大臣宜シク御了承ヲ願ヒマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006303242X00819320902&spkNum=60
-
061・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 岩田宙造君ノ登
壇ヲ望ミマス
〔岩田宙造君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006303242X00819320902&spkNum=61
-
062・岩田宙造
○岩田宙造君 私ハ本案ニ對シマシテハ多
大ノ疑惑、疑問ヲ有ッテ居ル者デゴザイマ
スガ、午前ノ會議ニ於キマスル議長竝ニ岩
倉男爵ノ御注意ノ趣旨ヲ服膺イタシマシ
テ、其根本ニ關スル點ノミニ付キマシテ、
短カイ時間ニ簡單ニ御尋ヲシタイト考ヘル
ノデアリマスルノデ、ドウゾ暫クノ時間ヲ
御與ヘ願ヒタイノデアリマス、私ハ第一ニ
伺ヒタイノハ、本案ハ先刻モ司法大臣ノ御
說明ニ依リマシテモ、時局ヲ救濟スル一ツ
ノ手段トシテ出シタモノデアルト云フコト
デアリマシテ、固ヨリ然ルベキモノト考
ヘルノデアリマスガ、併ナガラ此調停ト云
フコトニ依リマシテ、金錢債務ノ調停ト云
フコトニ依リマシテ、ドウシテ時局ガ救
濟出來ルノデアリマスカ、是ガ第一ノ疑問
デアリマス、申ス迄モナイコトデゴザイマ
スルガ、調停ト云フコトノ本來ノ意味ハ、
何カ當事者ノ間ニ爭ガゴザイマシテ、其
爭ヒヲ裁判所デ以テ極メル代リニ、簡易ナ
手續デ調停デ極メテシマハウト云フノガ、
卽チ裁判ニ代ル簡單ナ手續ガ本來ノ調停ノ
趣旨デアルノデアリマス、デ金錢債務ニ付
キマシテ當事者間ニ爭ヒガアル、裁判所ニ
持ッテ行ッテハ費用ガカカルシ、時間ガ長引
クカラ調停デ手短カニ簡單ニ極メテシマハ
ウ、是ハ全體カラ見レバ極メテ結構ナコト
デアリマス、併ナガラソレガ何故ニ經濟國
難ノ時局ヲ救フ手段ニナルノデアリマセ
ウ、寧ロ簡單ニ早ク爭ヒガ濟ンデ執行ガ出
來ルト云フコトハ、債權者ハ便デアルカモ
知レマセヌ、併ナガラ寧ロ債務者ハソレニ
依ッテ困リマスマイカ、何時デモ訴訟ノ長
引クノハ債務者ガ多クノ場合ハ訴訟ヲ引伸
バスノデアリマス、是ハ早ク裁判ガ片著ケ
バ債務者ハ困ルカラデアリマス、デアリマス
カラ唯調停法ト云フ······調停法ト云フ本來
ノ意義カラ考ヘマスルナラバ、調停法ニ依。ツ
テ債務者ガ救濟ヲサレルト云フコトハ甚ダ不
可思議ノコトデアルノデアリマス、玆ニ於
テ此法案ハ名ハ調停法ト云フケレドモ、之
ニ依ッテ企圖セムトスル目的ハ別ニアルノ
デハナイカ、卽チ債務ヲ棒消シニスルト
カ、延期スルトカ卽チ棒引ナリ、「モラトリ
アム」ト云フコトガ、此調停ノ名ヲ冠シタ實
體デアルノデハナイカト云フ疑ガ起ルノデ
アリマス、政府當局ハ新聞ノ傳フル所ニ依
リマシテモ、先刻ノ司法大臣ノ御說明ニ依
リマシテモ、本案ハ棒引案デハナイト仰シ
ヤルノデアリマス、延期案デナイトハ仰シ
ヤイマセヌカ、恐ラクハ同ジ意味デゴザイ
マセウ、債務者ノ唯債務ヲ遁レルト
カ、債務ヲ引延バスト云フコトヲ目的
トシタ法案デハナイト仰シヤル、ソレナラ
バ何處ニ此法案ニ依ッテ債務者ガ救濟ヲ受
ケルト云フコトガアルノカ、私ハ甚ダ惑フ
ノデアリマス、棒引キト云フコトガ語弊ガゴ
ザイマスルナラバ、要スルニ債務ノ免除、
債務者ガ救濟ヲ受ケルト云フコトハ他カラ
債務ヲ辨濟スル金ヲ借リルコトガ出來ル、
然ラズンバ一部若クハ全部ノ免除ヲ受ケ
ル、或ハ延期ヲ受ケル、ソレデナケレバ債
務者ハ利益ハ得ナイノデアリマス、併ナガ
ラ最初カラ債務ノ一部若クハ全部ノ免除ヲ
目的トシ、若クハ引延シヲ目的トスルヤウ
ナ不誠實ガ、債務者ヲ保護スルノハ本案ノ目
的ニアラズト仰セラレルノデアリマス、然
ラバ本案ノ目的ハ債務調停法ニ依ッテ早ク
事件ヲ片著ケテ費用ヲ掛ケズ、時間ヲ掛ケ
ズシテ早ク債權ノ調停ガ出來ルト云フ外ニ
ハ意味ヲ爲サヌコトニナルノデアリマス、
從テ斯樣ナ意味デゴザイマスルナラバ、本
案ニ依ッテ時局救濟ノ意味デ債權者、殊ニ少
額債權者ヲ救助スル積リデアルト云フ趣旨
ハ如何ニシテ達セラレルカト、第一ニ疑問
ノ起ル所以デアリマス、デアリマスカラ私
ハ窃ニ考ヘマスルノニ、當局ハ棒引案デハ
ナイ、「モラトリアム」案デナイト仰シヤイ
マスルケレドモ、其實ハ棒引案デアル、「モ
ラトリアム」案デアルト思フノデアリマス、
ト申シマスルノハ御承知ノ通リニ外ノ調停
法、商事調停法ニ於キマシテモ、借地借家
調停法ニ於キマシテモ、小作調停法ニ於キ
マシテモ、其調停ニ持出スニハ先ヅ當事者
ノ間ニ權利上ノ爭ヒガナケレバナラヌノデ
アリマス、爭ヒノ無イモノヲ調停ニ持出ス
ト云フコトハ許サレテ居ラヌノデアリマ
ス、爭ヒガアリマスルカラ其權利上ノ爭ヒ
ヲ裁判所デ長イムヅカシイ手數ニ依ッテ決
定スル代リニ、簡單ニ調停デ決メヤウト云
フノガ外ノ調停法ノ趣旨トスル所デアリマ
ス、併ナガラ此調停法ト云フ名前ハ、調停
法ト云ヒマスルケレドモ、爭ヒノアルコト
ヲ要件トシテ居ラヌノデアリマス、デアリ
マスカラ此點ニ於キマシテハ、私ハ調停法
ハ名前ガ甚ダ人ヲ誤ルノデハナイカト考ヘ
ママ、爭ハナクテモ權利義務ニ少シモ爭ヒ
ガナイ、債權者ノ方ハ貸シタト云ヒ、債務
者ハ借リタト云ヒ、期限ガ來テ居ルト言ヒ、
期限ガ來テ居ルト言フ、當事者間ニ毫モ爭
ヒガナイ、サウ云フ場合デアリマシタナラ
バ、外ノ調停法デハ調停ニ持來スコトハ出
來ナイノデアリマス、ドウカ爭ヒハナイケ
レドモ、負ケテ貰ヒタイトカ、或ハ延期シ
テ貰ヒタイトカ云フコトハ、外ノ場合ナラ
バ調停法ニ持出スコトハ出來ナイノデアリ
やっゝ、併ナガラ本案ハソレガ出來ルノデア
リマス、何ノ爭ヒガナクテモ調停ニ持出ス
コトガ出來ル、何ノ爲ニ持出スカト云ヘバ
爭ヒガアリマセヌガ、是ハ今困ルカラ少シ
負ケテ貰ヒタイ、或ハ延期シテ貰ヒタイト
云フコトガ言ヘレバコソ、本案デ爭ヒガナ
クテモ調停ニ持出スコトガ出來ルトナッテ
居ルノデアリマス、デアリマスカラ本案ノ
本案タル所以ハ、本案ノ生命ハ何處ニアル
カト云ヘバ、實ハ免除ト延期ニアルノデア
リマス、卽チ通俗ノ言葉デ言ヘバ棒引案ト
云フ所ニ本案ノ生命ガアルノデアリマス、
ソレヲ除イテハ本案ノ生命ノ特質ハナイノ
デアリマス、デアリマスカラ司法當局ハ棒
引案デナイト仰シヤイマスケレドモ、言葉
ガ惡イナラバ······サウ仰シヤルニ拘ラズ、
是ガ矢張債務ノ免除案デアリ延期案デア
ル、假ニ是ハ暫ク司法當局ノ言葉ニハ反シ
マスケレドモ、其實質カラ見マスト、是人
債務ノ免除案デアリ、「モラトリアム」案デ
アル、延期案デアルト見マシテ、サウシテ
之ヲ調停ニスルト云フコトガ果シテ適當デ
アルヤ否ヤ、調停ニ依ッテ眞ニ救濟セラレ
ムトスル所ノ小債務者ガ、之ニ依ッテ救濟
ガ出來ルカドウカト云フコトヲ考ヘテ見マ
スルト云フト、其點ニ於テモ頗ル疑問ガア
ルノデアリマス、本當ニ救濟ヲ受ケヤウト
云フヤウナ少額ノ債務者ハ、自分ガ此調停
所······裁判所ニ出掛ケテ、サウシテ此調停
ノ手續ヲスルト云フコトニハ、多クノ場合
ハ不適當ナ人デアリマス、殊ニ農村ニ於テ
僅カノ借金ヲシテ居ル者ガ、區裁判所ヘノ
コ〓〓出掛ケテ、殊ニ本案ニ依リマスレバ
代理ハ特別ノ許可ヲ受ケナケレバ許サレナ
イコトニナッテ居リマスカラ、本人自分ガ出
掛ケナケレバナラヌ、本人自分ガ裁判所ニ
出掛ケテ事情ヲ訴ヘテ、サウシテ救濟ヲ受
ケルト云フコトハ、實ハ私ハ不可能ナコト
デアルト思フノデアリマス、デアリマスル
カラ之ニ依ッテ眞ニ之ヲ利用スル人間ハ、都
會ナリ町村ニ於キマシテモ、比較的口ノ利
ケルヤウナ人間ダケガ之ヲ利用スル、サウ
シテ事實ニ於キマシテハ實ハ惡イ人間ガ之
ヲ利用スルト云フコトニナル、正直ナ人間
ハ多クノ場合ニハ斯ウ云フコトヲ裁判所ニ
マデ出掛ケテ、サウシテ裁判所ニ於テ事實
ノ了解ヲ得ルト云フコトハナカ〓〓出來ナ
イノデアリマス、出來ナイノデアリマスル
カラ本當ニ當事者ガ其處ヘ出掛ケテ行シタ
ト致シマシテモ、當事者ガ相對シテソコデ
事情ヲ述べテ、相反スル所ヲ御互ニ主張ス
ル場合ニ、其處デ聞イテ居ラレル裁判所ナ
リ調停員ニ、成程尤モダト首肯サレルノハ、
正直ナ人間ヨリ不正直デモ少シ狡イ人間ノ
方ガ多クノ場合勝ヲ制スルノデアリマス、
ソレモ訴訟事件カ何カデ長イ間色ミスッタ
モンダヲヤッテ居ル中ニ裁判所ガジット見テ
居ッテ、是ハ一方ハ氣ノ毒ダ、一方ハ正直ダ
ト云フコトヲ見ラレルコトハ、ソレハアリ
得ルコトデアリマス、併ナガラ最初カラ調
停ヲ看板ニシテ、其處へ呼ビ集メタ人間ガ、
其處デ一應ノ事情ヲ其處ヘ持ッテ來ル、ソ
レダケヲ見テ、是ハ勿論調停デモ證據調モ
出來ルコトニナッテ居リマスガ、是ハ裁判
ノ證據調トハ全ク違フノデアリマスカラ、
極ク上ッ面ノコトデアリマスカラ、其上"
面ノコトデ當事者ノ正直ナリヤ否ヤ、精神
ト眞相ト云フモノハ中〓分ルモノデナイノ
デアリマス、デアリマスカラ結局之ニ
依ッテ利益ヲ受ケル人間ト云フモノハ、
實ハ法律デハ保護シタクナイ不正直ナ
者ガ之ニ依ッテ免レルト云フコトガ落チ
デハナイカト思フノデアリマス、例ヘバ
玆ニ一ツノ問題ガ起ッテ參リマシテ、一方ハ
千圓貸シタト言フ、一方ハ千圓借リルコト
ハ借リタケレドモ、是ハ外ノ關係デ既ニ
差引ガ付イテ居ルトカ、或ハ旣ニ是ハ返シ
テアルトカト言フヤウナコトガ爭ヒニナリ
マシタ場合ニ、サウシテ實際ハ是ハ外ノコ
トデ差引ガ付イテ居ル、或ハ返シタト云フ
コトハ、其方ガ事實デアリマシテ、正在二十
コトヲ言ッテ居ル場合デアリマシタナラバ、
裁判所ガ中ヲ取ッテマア是ハ五百圓拂ッタラ
宜カラウト云フ調停案ヲ出サレマシタ場合
ニ、債務者ハソレヲ承諾スルカドウカト云
フコトヲ考ヘテ見マスト、無論現ニ濟ンデ
居ルト云フコトガ正直デアルナラバ、到底
五百圓ニ應ズルコトハ出來ナイ、其調停ニ
應ジナイト云フコトハ當然ノコトデアリマ
ス、其場合ニハ此法案ニ依リマスルト云フ
ト、裁判所ノ意見デドウモ債務者ハサウ云
フケレドモ是ハ怪シイ、千圓ノ實際債務ハ、
旣ニ消滅シテ居ルカドウカト云フコトハ怪
シイト云フコトデアリマスレバ、裁判所ノ
意見ニ債務者ハ不承諾デアッテモ、五百圓拂
ヘト云フ裁判ヲスルコトガ出來ルコトニ
ナッテ居ルノデアリマス、而シテ之ニ不服デ
アッテモ、其債務者ハ是ハ裁判所ニ持出シ
タナラバ自分ハ必ズ勝テルノダ、アノ證人モ
調べ此證人モ調ベテ貰ヘバ必ズ勝テル、
一文モ拂ハズ濟ムノダト確信シテ居リマシ
テモ、是ハ五百圓拂へト云フコトヲ命令サ
レレバ、服從シナケレバナラヌコトニナッテ
居ルノデアリマス、尤モ其手續ト致シマシ
テハ、ソレニ不服デアルナラバ抗告ヲシテ
上ノ裁判所ニ異議ヲ云フコトノ途ダケハ開
ケテアリマスガ、上ノ所へ持ッテ行キマシタ
所デ、矢張リ同ジコトヲ繰返スノデアリマ
スカラ、段々事情ガ分ラナクナッテ來ルノ
デアリマシテ、サウシテ本當ノ裁判ヲスル
ノデナイカラ、矢張リ多クノ場合ニハ同ジ
コトニナッテ來ル外ハナイノデアリマス、
斯樣ナ關係ニナッテ參リマスト云フト、其當
人カラ言ヒマスルト誠ニ遺憾至極ノ譯デア
リマス、是デ當リ前ノ裁判ヲ受ケテ、サウ
シテ十分ノ證據ヲ擧ゲルナラバ自分ハ一文
モ拂ハンデ濟ムノニ、ドウモ是ハモウ五百圓
拂ヘト云フコトヲ言ハレタカラ已ムヲ得ヌコ
トニナルノデアリマス、玆ニ於テ私ハ第二
ノ疑問ガ起ルノデアリマス、斯樣ナモノコ
ソ憲法ノ二十四條ニ於テ保護シテゴザイマ
スル「日本臣民ハ法律ニ定メタル裁判官ノ裁
判ヲ受クルノ權ヲ奪ハルヽコトナシ」ト云ッ
テ、憲法二十四條ニ保障セラレテ居ルノ
ハ、斯ウ云フ場合ニ適切ニ當ルモノデハナ
イカト思フノデアリマス、若シ果シテサウ
デアルト致シマスナラバ、或ハ法律ノ技巧
ノ上デ、形式上ノ辯明ハ出來ルカモ知リマ
セヌガ、少クトモ憲法ノ精神ニ於キマシテ
ハ、裁判官ノ裁判ヲ受ケルト云フ臣民ノ權
利ヲ、之ニ依ッテ奪フト云フ實質上ノ精神
上ノ結果ヲ生ズルモノデハナイカト云フ疑
問デアリマス、此點ニ付キマシテ當局ニ御
伺ヲシタイト考ヘマスルノハ、案ノ第七條
ニ、調停ノ申立ヲ受理シタ調停委員會ニ於
テ調停成ラザル場合ニ、裁判所相當ト認ム
ルトキハ職權ヲ以テ調停ニ代ヘ、債務關係
ノ變更ヲ命スル裁判ヲ爲スコトヲ得、今ノ
ヤウナ場合ニ五百圓拂ヘト云フ裁判ヲスル
コトガ出來ルト云フ、此「裁判ヲ爲スコト
ヲ得」ト云フコトハ、是ハ憲法二十四條ニ所
謂裁判ニ當ルノデアルト云フ御解釋デアリ
マセウカ、ダカラ矢張リ裁判デアルノダ、
是ハ憲法二十四條ノ裁判ヲスルノダカラ、
其裁判ヲスル手續ガ善イカ惡イカハ別問題
トシテ、卽チ憲法ニ謂フ裁判ニ當ルノダカ
ラ、憲法違反デハナイト云フ御意見デゴザイ
マセウカ、若シサウデアルトスルナラバ、私
ハ其精神ニ於テハ頗ル不都合ナモノデハナ
イカト思フノデアリマス、斯樣ナ次第デゴ
ザイマシテ、本案ハ名ハ調停ト申シマスル
ケレドモ、外ノ調停法トハ全ク違っテ居ル、
外ノ調停法ニハ爭ヒガアル場合ニ、ソレヲ
調停シテヤルト云フノデアリマスルガ、本
案ハ債權ノアル者ニ向,テハ債權ノ一部若
クハ全部ヲ捧引キヲシ、債務ヲ何等負擔シ
テ居ラヌ人ニデモ裁判所ノ意見ニ依ッテ債
務ヲオ前拂ヘト云フコトヲ命ズルコトガ出
來ル法律デアルノデアリマス、是ハ調停法
ト申シマスルカラ、皆其調停ナル名前ニ騙
サレテ區裁判所ニ行クト云フコトハ、成ル
ホド尤モノヤウニシテ何人モ疑ハナイノデ
アリマス、併ナガラ實質ガ斯樣ナモノデア
ルト云フコトニ思ヒ至ッタラ如何ナモノデ
ゴザイマセウ、債權ヲ持ッテ居ル者ハ立派
ナ證明方法ヲ持ッテ居〓テモソレハ顧ミズニ、
オ前ハ半分負ケテシマヘト云ッテ、財產權ヲ
全然奪ハレルノデアリマス、債務者ノ方ト
シテモ本當ノ裁判ヲ受ケレバ一文モ拂ハヌ
デモ濟ム、少シモ債務ハナイノニ拘ラズ、
オ前ハ五百圓拂ヘト言ハレレバ拂ハナケレ
バナラヌ、是ハ負擔ヲ課セラレル、國家ノ
稅金ヲ課セラレルナラバ、ソレハ國ノ爲メ
デアリマスガ、惡辣ナル惡人ニ言ヒ掛リヲ
付ケラレテ、前ニ自分ノ受取ッタ受取リヲ
失ヲタガ爲ニ、ソレニ乘ゼラレテ惡イ債權
者ノ爲ニ五百圓ミス〓〓拂ハナケレバナラ
ヌ、斯ウ云フヤウナ暴君ニ等シイヤウナ仕
事ヲ區裁判所ノ判事ニサセルト云フコトニ
考ヘテ見マシタナラバ如何デゴザイマセウ
カ、如何ニモ不都合千萬ノコトノヤウニ私
ハ考ヘルノデアリマス、千圓ノ金額ニシテ
モ然リ、況ヤ衆議院ノ改正ノ如ク其制限ヲ
セザルニ於キマシテハ、殊ニ甚シイモノガ
アルト信ズルノデアリマス、其次ニ······澤
山疑問ヲ持ッテ居リマスガ、モウ一ツダケ
御許シヲ願ヒタイノデアリマス、ソレハ附
則ニ「本法ハ本法施行ノ日ヨリ三年間其效
力ヲ有ス」トナッテ居ルノデアリマス、先刻
ノ大臣ノ御說明モアッタヤウデアリマシタ
「三年間其效力ヲ有ス」ト云フコトノ意味
ハ、此法律ニ依ッテ調停ノ手續ヲナス期間ガ
三年間ト云フ意味デゴザイマセウカ、多分
サウダラウト思フノデアリマス、或ハ此法
律ニ依ッテ致シマスル調停若クハ調停ニ代
ル裁判、ソレハ矢張リ三年間シカ效力ヲ持
タヌト云フ意味デアリマセウカ、此法律ガ
働イテ居ルノハ三年間デアルケレドモ、此
法律ニ依ッテ出來上ッタ調停若クハ裁判ノ效
力ハ永遠ニ繼續ヲスル、唯此法律ガ働ク間
ガ三年間ト云フ意味デ恐ラクハサウデアラ
ウカト考ヘルノデアリマスガ、其ドチラノ
意味デアルカヲ伺ヒタイノデアリマス、若
シ此法律ガ働クノハ三年間、此法律ニ依ク
テ出來タ調停又裁判ハ是ハ永久ニ續クノ
グ、多分サウダラウト考へマスルガ、サウ
デアリトシマスルナラバ、或ハ少シ行キ過
ギタモノデハナイデアリマセウカ、今時局
困難デ、現在ノ狀態デハ債務ヲ辨濟シロト
言ヲテモ、是ハ不能ヲ强ヒルノデアルカラ、
之ヲ救濟スルト云フ、臨時ニ救濟ヲスルト
云フノガ本案ノ目的デアルノデアリマス、
三年經テバ立派ニ債務ノ辨濟ヲ爲シ得ルヤ
ウナ時勢ニナリ得ルダラウト云フ豫想ノ下
ニ出來テ居ルノデアリマス、然ラバ此時局
三年間ノ苦シイ間ガ是デ濟ムナラバ宜イノ
デハアリマスマイカ、三年間經ッテ後ハ立派ニ
經濟界ハ恢復ヲシテ、幾デモ拂フコトノ出
來ル狀態ニナルニ拘ハラズ、是デ決メテモ
ウ永久ニ其債務ヲ免レルト云フコトハ、此
目的ヲ超越シタモノデハナイカト考ヘラレ
ル、一體ナラバ三年間「モラトリアム」ヲス
レバ是デ救濟ヲ受クベキ者ハ、ソレ以上滿
足ナコトハナイデアラウト思フノデアリマ
ス、併ナガラ三年間ノ「モラトリアム」ト云
フモノハ容易ノコトデ行ハレナイカラト云フ
ノデ、其範圍內デ是ハ出來テ居ル趣旨デア
ラウト思フノデアリマス、其範圍內デ出來
テ居ル趣旨デアルニモ拘ハラズ「モラトリ
アム」以上ノ效果ヲ生ズルト云フコトハ、不必
要ニ人ノ權利義務ヲ侵害スルト云フ結果ヲ生ズ
ルノデハアリマスマイカ、三年間少クトモ猶豫シ
テヤレバ宜シイ、殊ニ極端ナル場合ヲ想像イ
タシマスルト云フト、三年ノ期間滿了ニ際シ
マシテ、斯ウ云フ問題ヲ提起シテ調停ヲ受ケ
タ極ク極端ナル場合ヲ想像スレバ、今日漸
ク調停ヲ受ケタ、或ハ裁判ヲ受ケタ、所ガ
明日カラモウ此期間ハ滿了スルノダ、今日
受ケナイモノハ明日カラモウ立派ニ拂フベ
キモノデアルノガ、今日受ケタ爲ニ永久ニ
其權利關係ガ之ニ依ッテ變更ヲサレルト云
フコトハ、甚ダ不都合ノヤウニ考ヘルノデア
リマス、無論斯樣ナ場合ニハ其調停ナリ裁
判ナリハ、餘程斟酌ハサレルコトダラウト
ハ考ヘマス、モウ明日デ此期間ガ滿了スル
ト云フヤウナ場合ニハ斟酌ハサレルト思ヒ
マスガ、併ナガラ理窟ヲ極端ニ言ヘバサウ
云フコトモアリ得ルノデアリマス、サウ云
フコトノアリ得ルト云フ餘地ヲ殘シテ置ク
ト云フコトハ、不必要ニ此法律ノ範圍ノ擴
張シタノデハナイカト思フノデアリマス、
要スルニ私ガ只今伺ヒタイト考ヘマスルノ
ハ、只今申シマシタ通リニ、第一ハ一體此
調停法ト云フモノニ依ッテ、ドウシテ時局
ガ、此債務者ガ救ハレルノデアルカ、債務棒
引ト云フコトヲ別ニシテ、棒引ナリ延期ナ
リ、ソレガ主眼デナイト云フコトニ致シマ
シタナラバ、如何ニシテ此調停ニ依ッテ債
務者ガ救濟ヲサレルノデアルカ、第二ハ此
調停ニ代ハルベキ裁判ト云フコトハ、少ク
トモ其精神ニ於テ、憲法ニ於テ、裁判官ノ
裁判ヲ受ケル權利ヲ保障シテ居ルカ、憲法
ノ精神ニ違反スルモノデハナイカ、第三ハ
此三年間、三年間實ハ延期ノ目的ヲ達スレ
バ宜イノデアル、然ルニ之ヲ永久權利關係
ヲ或ハ有ル者ノ權利ヲ奪ヒ、無イ者ニ權利
ヲ與ヘルト云フヤウナコトヲ永久ニスルト
云フコトハ、此時局匡救手段タル本法ノ目
的ヲ超越シタモノデハナイカト云フ三點ニ
付テ御尋ヲシタイノデアリマス、質問ノ要
點ハ右ノ三點デゴザイマスルガ、尙ホ一言
附加ヘテ申述ベテ置キタイト考ヘマスルノ
ハ、先刻ノ御質問ノ中ニモアッタヤウデア
リマスルガ、一體今日ノ時局ハ私共カラ考
ヘマスレバ、皆ガ自分ノ義務ヲ怠ル、法律
ヲ尊重シナイ、義務ヲ怠ルト云フコトガ今
日ノ通弊ノヤウニ考ヘルノデアリマス、デ
アリマスルカラ、司法省、殊ニ司法當局ト
致シマシテハ法律尊重、法律上ノ義務ヲ嚴
守スルト云フ觀念ラ一般ニ植付ケルコトガ
最モ必要ナルコトデハナイカ、然ルニ本法
ノ如ク眞ニ救濟ヲ必要トスルモノエハ、其
目的ヲ達スルノニ不十分デアッテ、動モスレ
バ惡人ニ其惡辣ノ手段ヲ行フ一ツノ便利ヲ
供スルヤウナ虞レノアル法案ヲ出スト云フ
コトガ、非常ニ間違ヒデハナイカト思フノ
デアリマス、自力更正ト云フコトハ最モ必
要ナルコトデアリマスルガ、申ス迄モナク
自力更生ト云フコトハ、要スルニ責任觀念
ニ基イテ自分ノ義務ヲ履行スルト云フコト
デアル、今日ノ世ノ中ハ、殆ド我ミ皆働イ
テ居リマスルノハ、皆責任觀念ニ基イテ自
分ノ義務ヲ履行シテ居ルノデアリマス、市
中ニ於ケル人モ其通リ、農村ニ於ケル人モ
其通リ、皆自分ノ義務ヲ履行シナケレバナ
ラヌト思ヘバコソ汗水ヲ垂ラシテ働イテ居
ルノデアリマス、然ルニ懷ロ手ヲシテ自分
ノ義務ヲ履行セズニ、人ノ力ニ依ッテ、恩惠
ニ依ッテ自分ノ責任ヲ免カレヤウト云フヤ
ウナコトハ、是ハ極ミ已ムヲ得ナイ場合ニ、
極メテ絕對的ノ例ノ場合ニ於テノミ認メラ
レルモノデ、斯ノ如キ其目的ヲ達スルカド
ウカ分カラナイヤウナ法案デ、サウ云フ間
接ニ人ノ心ノ緊張ヲ緩ルメルヤウナ法案ト
云フモノハ、サウ云フ大體觀念カラ見マシ
テモ、極メテ此時機ニ不適當ナ法案デハナ
イカト考ヘルノデアリマス、餘リ時間ヲ取
リマスト又御叱リヲ受ケルカト考ヘマスカ
ラ、是ダケノコトヲ御答辯ヲ願ヒタイト思
ヒマス
〔國務大臣小山松吉君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006303242X00819320902&spkNum=62
-
063・小山松吉
○國務大臣(小山松吉君) 只今岩田君ヨリ
御質疑ガゴザイマシタ、其第一點ハ此法案
ニ依フテドウシテ時局ガ救ハレルカ、債務者
ノ救濟ガ出來ルカト云フ御尋ネデアリマ
ス、先刻本案ノ說明ヲ致シマスル時ニ申シ
マシタ如ク、此金錢債務臨時調停法ハ、現
在ノ經濟界不況ノ此時局ニ鑑ミマシテ、之
ヲ打開スル一方法トシテ、負債ノ整理ヲス
ルコトニ依リマシテ、中小農商工業者其他
一般誠實ナル債務者ニ、自力更生ノ機會ヲ
與ヘヤウト云フ趣旨デアリマス、岩田君ニ
對シテ詳シク申上ゲル必要ハナイト思フノ
デアリマスルガ、只今ノ民事訴訟ナルモノ
ハ其效果ヲ擧ゲルコトガ極メテ困難デアリ
マス、民事訴訟法ヲ改正イタシマシテ、訴
訟ノ進行ヲ圖"テ居リマスルケレドモ、訴訟
ヲ致シマスルト、マア債務者側カラ申シマ
スレバ、債務者ノ滿足ヲ得ルヤウナ結果ノ
得ナイコトモ多イノデアリマス、甚シキニ
ハ債權者ガ訴訟代理人ヲ賴ンデ訴訟ヲシマ
シテモ、其結果ヲ得ナイ、ソレモ長イ間事
件ハ引伸パサレテ、而シテ判決ヲ受ケル、
判決ヲシマシタ後ハドウナルカト云フト、
同一ノ村ニ於テアレバ自分ヲ訴ヘタノダ、
自分ノ家ニ强制執行ヲ掛ケタト云フヤウナ
コトニ依ッテ、農村ノ隣保共助ノ精神ヲ破壞
スルノデアリマス、デ是ハ我ガ日本ノミデ
ハナイノデアリマシテ、近來歐羅巴ノ法制
ノ〓究ヲシテ居リマスルモノガ現在ノ民事
訴訟、英吉利ハ別デアリマス、民事訴訟ハ
行詰ッテ居ル、何トカ打開シナケレバイカ
ヌ、訴訟ヲ致シマスルト本人ガ傍聽シテ居〃
テ申シマスルノニ、度ミ是ハ聞クノデアリ
マスガ、自分ノ賴ンダ金錢ノ爭ヒヲシナイ
デ、辯護士ハ民事訴訟法ノ議論ヲシテ居ル
千圓貸シタトカ、五百圓貸シタト云フ訴
訟デアルノニ、抗辯ヲ爲シ此訴訟ノ書方ガ
惡イト言フノデ二度モ、三度モ法廷ヲ開ク
ト言フヤウナコトバカリシテ居ルト云フヤ
ウナ狀況デアリマスルカラ、現在ノ民事訴
訟法ノ適用ニ依ッテ、負債ノ整理ヲスルト
云フコトハ到底望ミ得ラレナイト考ヘタ譯
デアリマス、一面ニ於テハ大正十三年大震
火災後ニ實施イタシマシタ、此大震火災後
東京附近ヲ地區ト致シテヤリマシタ借地借
家ノ非常ナ紛議ヲ、訴訟ニ依ッテハ到底解決
スルコトヲ得ヌト考ヘマシテ、借地借家調
停法ニ依フテ非常ナ好イ成績ヲ擧ゲテ居ル
ノデアリマス、ソレニ鑑ミテ今日ノ農村其
他中小商工業者ノ負債ヲ何トカシテ整理
シナケレバナラヌト云フ立場カラ見マシ
テ、一方ニ於テハ負債整理組合等ノ案モア
リマスルガ、裁判所ガ今迄ノヤウニ權利義
務一點張リデヤッテ居ル時デハナイ、民事
訴訟法ノミニ依フテ解決ヲスル時デハナイ
ト云フコトニ著眼イタシマシテ、此法案ヲ
立案イタシタ譯デアリマス、是ハ「モラト
リアム」デアルトカ、棒引デアルト云フヤ
ウナ御說モアリマシタ、サウ云フ風ニ見ラ
レル、併シ當局ハサウデナイト云フケレド
モ、サウデアルト云フ風ニ御解釋ノヤウデ
アリマスガ、決シテサウデハナイノデアリ
やく、岩田君ノ憂ヘテ居リマスヤウニ、義
務觀念ノ之ニ依フテ消滅シ、又ハ義務觀念ヲ
無クスルヤウナ傾向ヲ生ズルト云フコト
ハ、御同樣憂フベキコトデアリマスカラ、
此法案ニ依ッテ調停ヲシテ、サウシテ自力
更生ノ途ヲ開イテヤラウト考ヘテ居リマス
モノハ、誠實ナル債務者デアリマス、借金
ヲ踏倒サウ、「モラトリアム」ニ依ッテ何時
迄モ拂ハズニ居ラウト云フヤウナ者ハ、此
法ニ依ッテハ救濟ハシタクナイノデアリマ
ス、サウ云フ趣意デアリマシテ、今詳シク
申上ゲルノハ恐縮デアリマスガ、農村ノ狀
況ナドヲ調ベテ見マスルト、眞ニ債務ヲ辨
濟シタイト思ヒマシテモ、前ニ買ヒマシタ
田地ノ代金又ハ肥料ノ代金、其代金ナドノ
計算ガ能ク出來ナイ人ガアリマス、債權者
ノ方カラ期限ガ切レタカラシテ證文ヲ書換
合、利子ガ滯ッテ居ルカラ利子ヲ元本ニ
入レロト云フヤウナ風デ債務ハ增加シテ行
クノデアリマス、是ハ到底辯護士諸君ニ賴
ンデハ救濟ハ出來ナイコトデアルト我ミハ
考ヘタ、サウ云フ次第デアリマスカラ、此
際ハ所謂非常時デアリマシテ、臨時調停法
ト云フモノニ依ッテ、是ハ救濟スルノガ適
當ダト云フ趣意ニナッタ譯デアリマス、是
ハ詳シク申上ゲマセヌデモ、岩田君ハ御承
知デアラウト思フノデアリマス、第二ノ御
尋ネハ此第七條ニ依ル裁判ト云フモノハ、
是ハ憲法上違反ニナルノデハナイカト云フ
御趣意デアリマス、是ハ議論ヲ致シマスレ
バ隨分議論ノ種子ニナルコトカト思ヒマ
ス、併ナガラ司法省ガ之ヲ立案イタシマス
ルノニハ、前例ノナイコトヲヤ,タ譯デナ
イノデ、大正十三年ノ法律十六號ト申シマス
ルモノハ、借地借家臨時處理法デアリマス、
是ハ矢張リ地代、家賃、敷金其他ノ條件ガ
著シク不當デアリマス時分ニ、其雙方ノ債
務關係ヲ公平ナラシムル爲ニ、裁判所ガ條
件ノ變更ヲ命ジテ裁判ヲ爲スコトガ出來ル
趣旨デアリマシテ、是モ矢張リ卽時抗告ヲ
許シテ、同法律ハ大正十三年ヨリ五箇年間
施行シテ、是モ相當ナ成績ヲ擧ゲテ居ル臨
時ノ法律ガアリマス、之ニ做フタノデアリ
マスカラ、此時ニ於テ憲法違反論ガ出テ居
ナイノデアリマスカラ、今度ノ法律ヲ憲法
違反ト云フコトハ私ハ考ヘナイデモ宜シ
イ、又憲法違反ニ非ズト信ジテ居ルノデア
リマス、第三ノ御尋ネハ三年間延期シナイ
デ、永久延期スルコトニナリ、永久ニ權利
關係ヲ變更シ、債務關係ニ變更スルト云フ
コトガ不當デアルト云フ御話デアリマス
ガ、臨時ノ處理法ヲ作リマス場合ニ於テハ、
ドウモサウ云フ結果ニナルダラウト思フノ
デアリマス、御尋ネノ此三年間ト云フノハ
本法施行ノ日ヨリ三年間其效力ヲ有ストア
リマス、ソレカラ三年間調停ノ申立テヲ債
權者又ハ債務者ハ爲スコトヲ得ト云フ趣意
デアリマス、一旦爲シマシタ調停ハ和解ノ
效力ヲ有ス、裁判モ又卽時抗〓ヲ爲シタ後
ニ確定イタシマスレバ、矢張リ確定力ヲ持
ツ裁判デアリマスカラ、ソレハ三年間デナ
イコトハ是ハ申上ゲルマデモナク御承知ノ
通リデアラウト思フノデアリマス、尙ホ本
法ノ必要ナル經過規定ハ勅令ヲ以ッテ定メ
ルコトニナッテ居リマス、尙ホ最後ニ御意見
ト致シマシテ、司法部ハ斯ウ云フ時局ニ際
シテモ權利義務ヲ尊重スル觀念ヲ忘レナイ
ヤウニ、サウ云フ趣旨ヲ何處マデモ尊重ス
ベキデアルト云フコトハ是ハ御同感デアリ
ママ、ソレデ私共司法部ニ居リマスルモノ
ハ此法案ヲ、斯ノ如キ法案ヲ作ッテハドウ
カト云フ民間ノ聲ガ大分アリマシタ際ニ、
非常ニ考ヘタノデアリマス、熟慮ニ熟慮ヲ
重ネマシタ結果、唯司法省ノ意見ト云フコ
トデハ色ミナ議論ガ起ルコトヲ虞レマシ
テ、在野法曹、東京ノ辯護士會長、又ハ其
他ノ有識者、學者、經驗ノアルヤウナ人ノ
御意見モ聞キ、司法部內ノ相當ナ人ガ集リ
マシテ、數囘是ハ意見ヲ纒メテ、斯ウ云フ
風ニナッタ譯デアリマス、ソレダケ申上ゲテ
御答ト致シテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006303242X00819320902&spkNum=63
-
064・岩田宙造
○岩田宙造君 簡單デゴザイマスカラ此席
カラ一言ダケ······憲法ノ違反ナリヤ否ヤト
云フ點ニ關シマシテ、只今借地借家臨時處
理法ノ前例ガアルト云フ御答辯デゴザイマ
シタガ、借地借家臨時處理法ハ是ハ東京竝
ニ神奈川ニ於キマスル地震ノ爲ニ生ジマシ
タ非常ナ狀況ノ變化ニ對シマシテ、借地借
家ノ條件ヲ一時變更スル必要ガアルノデ、
其實體法ヲ定メル趣旨デ出來テ居ルノデア
リマス、名前モ調停法トハ言ッテ居リマセヌ、
デアリマスルカラ民法ノ一部變更ト見テモ
差支ヘナイ法律デアルノデアリマス、併ナ
ガラ本案ハ純然タル調停法ト云フノデアリ
マシテ、手續法デアリマス、デアリマスル
カラ其立法ノ精神ニ於キマシテ、兩者間ニ
ハ非常ナ相違ガアルト云フコトダケヲ申上
ゲテ置キマシテ、只今ノ質問ハ此程度デ打
切リタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006303242X00819320902&spkNum=64
-
065・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 是ニテ通告者ハ
終了ヲ〓ゲマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006303242X00819320902&spkNum=65
-
066・土方寧
○土方寧君 簡單ニ御質問ヲ致シタウゴザ
イマス、此處デ宜シウゴザイマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006303242X00819320902&spkNum=66
-
067・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 宜シウゴザイマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006303242X00819320902&spkNum=67
-
068・土方寧
○土方寧君 私ハ岩田君ノ兎角ノ御議論モ
ゴサイマシタガ、我國ノ現狀ニ照ラシ、斯
ノ如キ調停法ハ時宜ニ適シタモノト信ジテ
贊成スルモノデアリマスガ、此法律ガ實施
セラレルニ付キマシテハ、其人間、裁判官
ガ大切デアル、其點ニ付テ伺ヒタイ、何レ
裁判所ノ事務ガ殖エマスカラ、增員ニナル
コトデアラウト思ヒマス、確カ豫算ニモ增
員ノ費用ガ御要求ニナッテ居ルカト思ヒマ
ス、併ナガラ區裁判所ノ判事ト云フモノ
ハ、多クハ任官後年數ノ新シイモノデアリ
やく、全體ニ我國ノ裁判官ノ仕組ト云フモ
ノハ、裁判官ニナル際ニハ初メハ地方ノ小
サイ所ニ参リマシテ、區裁判所ニ行フテ數
年ヤッテ、ソレカラ地方裁判所、控訴院、大
審院ト年數ヲ重ネルニ從ッテ昇等昇級、上ニ
行ク、鰻登リニ梯子段ヲ上ボルヤウニナッ
テ居リマス、下ヘ行ク程經驗ノ足ラヌ人デ
アル、此調停法ノ如キハドウモ少シ世故ニ
長ケタ功勞ノアル人ガ必要デアラウト思ヒ
マス、兎ニ角マア今ノ日本ノ裁判所ハ理窟
ニ偏シテ居ル、實情ニ適シナイト云フ批判
モアル場合デアリマスカラ、斯ウ云フ純粹
ナ理窟一方ノ裁判デナイモノニハ、老巧ナ
裁判官ヲ置クコトガ必要ト思ヒマス、唯、
今ノ制度ガドウ云フコトニナリマスカ、ソ
レハ私ニハ分リマセヌ、少クトモ地方裁判
所ノ部長ニモナル位ノ經歴ヲ經タ人ヲ、裁
判所トシテハ待遇上困ルカ知レマセヌガ、
何カソコニ特例ヲ設ケテデモ、ドウカ少シ
經驗ヲ有スル、年モイッテ世ノ中ノコトガ
分ッテ居ルヤウナ人ニ、此事件ヲ扱ハセルト
云フヤウニ出來ナイモノデアリマスカ、ソ
レヲ承リタイ、ソレガ望マシイノデアリマ
ス
〔國務大臣小山松吉君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006303242X00819320902&spkNum=68
-
069・小山松吉
○國務大臣(小山松吉君) 只今ノ御尋ネニ
御答へ致シマス、御尤モノ御尋ネデゴザイ
マシテ、司法部ト致シマシテモ今囘此法案
ガ通過イタシマスルト、事務停止ニナリマ
シタ裁判所ガ復活イタシマス場所ニ配置イ
タシマスル人ト共ニ、百十五名判事ヲ增員
スルコトニナッテ居リマス、御承知ノ通リ下
級ノ判事ハ〓シテ若イノデアリマシテ、又
區裁判所ノ判事ハ下級デアリマスカラ、此
點ニ於テ非常ニ此法ノ運用ヲ苦慮シテ居ル
ノデゴザイマスガ、先日來色〓考ヘマシ
テ、判事ニ對シマシテ此時局匡救ノ「エツ
センス」タル臨時債務調停法デアリマスカ
ラ、能ク話ヲ致シマシテ適當ノ事務ニ慣レ
マシタ人ヲ暫ク此農村所在ノ區裁判所ニ
ヤッテ貰フ積リデアリマス、ソレニ付キマシ
テハ此法案ガ通過イタシマスレバ監督官ヲ
招集イタシマシテ、又適當ナ場所ニ於テ、
此事務ヲ執リマス者ノ訓練ヲスルヤウニ、
修習ヲ致シマスヤウナ方法モ講ジマシテ、
十分成績ヲ擧ゲルヤウニ努力イタス考ヘデ
居リマス、ソレダケヲ申上ゲテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006303242X00819320902&spkNum=69
-
070・松本烝治
○松本烝治君 一言簡單ニ此處カラ伺ヒタ
イ、先程司法大臣ノ御說明ニ依リマスル
ト、此法案ニ對シマシテ、衆議院デ修正ガ
アッタノデアリマス、依テ修正可決サレタ、
其修正サレタモノガ本院ニ送付サレテ來テ
居ルノデアリマス、之ニ對シテ司法大臣ハ
此修正ニハ政府ハ反對デアルト云フヤウナ
御話デアリマシタガ、何シロ本院ニ送付サ
レテ居ルモノハ修正サレテ來タモノデアリ
やく、先程來ノ司法大臣ノ御說明ヲ伺ヒマ
スト、常ニ此修正前ノ條文トシテ擧ゲラレ
テ居ル、例ヘバ第八條ヲ第七條ト稱シ、其二
項ハ是ハ重要ナ規定デゴザイマスガ、此重
要ナ規定中ニ「其ノ業務ノ機構ヲ害スル」ト
書イテアリマシタノガ修正サレテ、「存續
ヲ害スル」トナッテ居リマス、是ハ大變意味ガ
違ッテ參ル、然ルニモ拘ラズ、機構ヲ害スル
ト云フコトノ、元ノ通リノコトニシテ御說
明ガアッタ、又第二條ニ於キマシテ「小作料其
他小作關係ヨリ生ジタルモノ」ヲ除外シテ
居リマシタノガ、是ハ前ノ案デアリマス、
修正ニ依フテサウ云フ除外ガナクナッテ居ル
ノデアリマス、然ルニ恰モサウ云フ除外ガ
アルカノヤウニ御說明ナリマシタ、是ハド
ウ云フモノデアルカ、チヨット分リ兼ネル、
而シテ此修正中最モ重大ナモノハ金額ノ制
限ヲ取ッテシマッタコトデアリマス、私ハ此
金額千圓ヲ超過セザルモノニ付テノミ本法
ガ適用サレルト云フコトナラバ、或ハ本法
ハ多少ノ意義アリト思ヒマス、此制限ガ無
クナッテシマッテハ大變ナコトニナラウト考
ヘテ居ル、又實際カラ申シマシテモ、制限
ガ數千万、數百万ノ金錢債務ニ付テモ尙ホ
本法ノ適用ガアル、而シテソレハ區裁判所
ノ判事ガ勝手ニ半分ニデモ何ニデモ出來ル
ノダト云フコトニナリマシテハ、大變ナコト
ニナリマスシ、ノミナラズサウ云フコトニ
ナリマシテハ、今取リマシタ豫算デハ迚モ
出來ナクナルノデハナイカト思ヒマス、是
レ卽チ先程來衆議院ノ修正ニ反對デアルト
仰ッシヤッタ所以ト思ヒマス、併シ是ハ何シ
ロ修正サレテ來テ居ルノデアリマスカラ、
若シ此修正サレタ通リデモ尙ホ宜シイト云
フ御趣意デアルノカ、先程來頻リニ此案ノ
通過ヲ望マレルヤウニ私ハ伺ッテ居ル、サウ
云フ御答辯ハ、此修正サレタモノノ通過ヲ
望マレルモノト私ハ思ハナイノデアリマ
ス、此修正サレタモノデモ尙ホ通過ヲ望マ
レルノデアルカドウカト云フコトダケヲ簡
單ニ御答ヲ願ヒタイ
〔國務大臣小山松吉君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006303242X00819320902&spkNum=70
-
071・小山松吉
○國務大臣(小山松吉君) 御答ヘ致シマス
ガ、政府ト致シマシテ······此修正ハ金錢債
務ヲ無制限ニ致シタノデアリマシテ、只今
御話ノアリマシタ第七條ノ修正ハ八條ニ
ナッテ居リマスル條文デアリマスガ、此關係
ニ於キマシテモ、其他ノ條文トノ關係ニ於
キマシテモ、甚ダ差支ヲ生ズルト考ヘテ居
リマス、此法ノ運用ノ上ニモ是デハ法ノ實
行ニ困難デハナイカト考ヘテ居ル位デアリ
マスカラ、政府ト致シマシテハ、原案ノヤ
ウニ金額ヲ改メルコトヲ實ハ切望シテ居ル
譯デアリマス、ソレダケ申上ゲテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006303242X00819320902&spkNum=71
-
072・松本烝治
○松本烝治君 只今ノ御答辯デ原案ト仰ツ
シヤイマシタガ、原案ハ私ハ此修正ヲ可決
シテ送付サレタモノト思フノデアリマス、
政府ノ提出サレタ元通リニナルコトヲ望ム
ト云フ御趣意ト思ヒマス、而シテ私ノ伺フ
タノハ、サウナラナイノナラバ止メテ貰ヒ
タイト云フ御趣意デアルカ、或ハサウナラ
ナイデモ、卽チ此修正サレタ所ノ案デモ、
尙ホ通過ヲ望マレルト云フ御趣意カ、先程
來ノ御說明ガ何ダカ此案ヲ是非通シテ貰ヒ
タイト云フヤウニ聞エテ居アタノデ、御趣意
ガチヨット分リ兼ネルノデ伺ッテ居ルノデア
リマス
〔國務大臣小山松吉君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006303242X00819320902&spkNum=72
-
073・小山松吉
○國務大臣(小山松吉君) 御答へ致シマ
ス言葉ガ惡ウゴザイマシタガ、修正案通
リデハ絕體ニ困ルト迄ハ申上ゲルノヂヤナ
イノデアリマス、此修正案ノヤウデアリマ
シテハ、此法ノ運用ニ差支ヲ生ズルト云フ
コトヲ考ヘテ居リマシテ、ソレデ政府案ノ通
過スルコトヲ希望イタスト云フ趣意ヲ申上
ゲタノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006303242X00819320902&spkNum=73
-
074・松本烝治
○松本烝治君 ドウモ徹底シタ御答ヘデア
リマセヌガ、此際ハ是デ止メテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006303242X00819320902&spkNum=74
-
075・徳川家達
○議長公爵(德川家達君) 報〓ヲ致シマ
ス書記官ヲシテ特別委員ノ氏名ヲ御報告
ニ及ビマス
〔小林書記官朗讀〕
金錢債務臨時調停法案特別委員
侯傅德川義親君子爵渡邊千冬君
子爵近衞秀麿君木場貞長君
男爵德川喜翰君關直彥君
金子元三郞君鵜澤總明君
高廣次平君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006303242X00819320902&spkNum=75
-
076・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 特別委員會ニ於
テ當選セラレマシタ正副委員長ノ氏名ヲ書
記官ヲシテ朗讀ヲ致サセマス
〔瀨古書記官朗讀〕
本日委員會ニ於テ當選シタル正副委員長ノ
氏名左ノ如シ
不動產融資及損失補償法案特別委員會
委員長伯爵二荒芳德君
副委員長男爵深尾隆太郞君
商業組合法案特別委員會
委員長伯爵橋本實斐君
副委員長男爵伊藤文吉君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006303242X00819320902&spkNum=76
-
077・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 議事ノ都合上暫
時休憩ヲ致シマス
午後三時四十三分休憩
午後八時二十一分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006303242X00819320902&spkNum=77
-
078・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 是ヨリ書記官ヲ
シテ、諸般ノ報〓ヲ致サセマス
〔山本書記官朗讀〕
本日衆議院ヨリ左ノ議案ヲ提出セリ
傷痍軍人及戰公傷病死者遺族等ノ鐵道船
舶等乘車船優遇ニ關スル法律案
大正十五年法律第五十二條中改正法律案
道路法中特例ニ關スル法律案
銀行法中改正法律案
本日委員長ヨリ左ノ報告書ヲ提出セリ
製絲業法案可決報告書
產業組合中央金庫特別融通及損失補償法
案可決報〓書
產業組合法中改正法律案可決報〓書
產業組合中央金庫法中改正法律案可決報
告書
不動產融資及損失補償法案可決報告書
昭和七年法律第六號中改正法律案可決報
告書
商業組合法案可決報告書
商品劵取締法案可決報〓書
昭和七年度歲入歲出總豫算追加案(令)
號
昭和七年度各特別會計歲入歲出豫算追加
案(特第一號)
豫算外國庫ノ負擔トナルベキ契約ヲ爲ス
ヲ要スル件(追第(B)
豫算外國庫ノ負擔トナルベキ契約ヲ爲ス
ヲ要スル件(追第二號)可決報告書発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006303242X00819320902&spkNum=78
-
079・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 休憩中內閣總理
大臣ヨリ、九月三日マデ一日間、帝國議會
會期延長ヲ命ゼラル旨ノ詔書ヲ傳達セラレ
マシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006303242X00819320902&spkNum=79
-
080・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 是ヨリ休憩前ニ
引續キマシテ開會イタシマス、議事日程追
加ノ件ニ付キ御諮リヲ致シマス、昭和七年
度歲入歲出總豫算追加案第一號、昭和七年
度各特別會計歲入歳出豫算追加案特第一
號豫算外國庫ノ負擔トナルベキ契約ヲナ
スヲ要スル件、追第一號、豫算外國庫ノ負
擔トナルベキ契約ヲナスヲ要スル件、追第
二號、此豫算案第四案ヲ此際議シタイト存
ジマス、御異議ガゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006303242X00819320902&spkNum=80
-
081・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 御異議ナイト認
メマス、豫算委員長柳澤伯爵ノ登壇ヲ望ミ
マス
一昭和七年度歲入歲出總豫算追加案第
(譲)
一昭和七年度各特別會計歲入歲出豫算追
加案(特第一號)
一豫算外國庫ノ負擔トナルベキ契約ヲ爲
スヲ要スル件(追第一號)
一豫算外國庫ノ負擔トナルベキ契約ヲ爲
スヲ要スル件(追第二號)
右衆議院ヨリ受領シタル各案ヲ審査シ總
テ衆議院議決案ノ通可決スヘキモノナリ
ト議決セリ依テ及報〓候也
昭和七年九月二日
委員長伯爵柳澤保惠
貴族院議長公爵德川家達殿
〔伯爵柳澤保惠君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006303242X00819320902&spkNum=81
-
082・柳澤保惠
○伯爵柳澤保惠君 是ヨリ豫算委員會ニ於
キマスル議事ノ經過竝ニ結果ヲ簡單ニ御報
道申上ゲマス、此四案ノ說明ハ、先日大藏
大臣ヨリ本席ニ於テ詳細ニ述ベラレマシタ
ノデ、私ハ再ビ玆ニ其計數等ヲ繰返シテ申
上ゲルコトヲ致シマセヌ、豫算委員會ハ二
日開キマシタガ、本會議ニ於テ大藏大臣ノ
御說明ガアリマシタニ付キマシテ、別ニ豫
算委員會ニ於キマシテハ當局ノ御說明モゴ
ザイマセヌ、豫算委員會ニ於キマシテハ分
科會ニ移スコトヲ止メマシテ、總テ委員會
ニ於テ議事ヲ進行スルコトニ決定イタシマ
シタ、是ヨリ質問ノ次第ニ付キマシテ大
要ヲ申上ゲマス、質問ノ箇條ハ相當多數
デゴザイマシテ、各自ニ跨シテ居リマス
ガ、唯海軍、司法、遞信、鐵道、此四省
ニ對シマシテハ何等質疑モゴザイマセ
ヌデシタ、私ハ先ヅ初メニ大藏方面ニ對
シマスル所ノ問答ノ大體ヲ申上ゲマス、今
日ハ時間ガゴザイマセヌデ私ハ分類ヲ避ケ
マシテ、各省ニ分ケマシテ其議事ノ進行ヲ
申上ゲマス、初メニ申上ゲルノハ大藏方面
デゴザイマス、大藏方面ニ於キマシテ色ミ
細カイ御質問モゴザイマシタガ、之ヲ綜合
イタシマスレバ先ヅ財政計畫ニ關スル件、
來年度ノ豫算ニ關スル件、爲替問題、低金
利政策、平價切下ゲト云フヤウナモノガ主
ナル題目トナルノデアリマス、財政計畫ニ
付キマシテハ、確カ本會議ニ於キマシテモ
御質問ガゴザイマシタト心得テ居リマスル
ガ、何等此計畫ニ付テハ、當局ハ具體的ノ
發表ヲサレテ居リマセヌ、又來年度ノ豫算
ニ付キマシテモ、何等片鱗ヲモ伺フコトガ
出來ナカッタノデアリマス、之ニ付テ御質
問ガ出タノデアリマスルガ、或ハ議員ノ御
方ノ中ニ大藏大臣ガ議場以外所ミデ何ヤラ
財政計畫ニ當ルヤウナコトヲ斷片的ニ御話
ニナッタコトガアリマスルデ、左樣ナ斷片
的ノコトモ御話ニナッタナラバ、此委員會ニ
於テモ御話ニナッタラ如何デアルカ、何モ御
話ガナカッタナラバナサラヌデ宜イケレド
モ、斷片的ノコトヲ伺フタト云フ以上ニハ、
本委員會ニ於テモナスッタラ宜カラウト云
フコトガ出マシタガ、ソレニ對シマシテハ
大藏大臣ハ別ニ左様ナコトヲ言ッタ覺エハ
ナイ、何カサウ云フ具體的ノコトガ出タ場
合ニハ、其名目位ハ言ッタコトガアルケレド
〓、別ニ財政計畫ノ片鱗トモ看做スベキコ
トヲ言ッタコトハナイト云フコトニ伺ッタノ
デアリマス、從テ增稅計畫ナドニ付テノコ
トモ別ニ何等今考慮シテ居ラヌト云フコト
デゴザイマシタ、從テ八年度ノ豫算ニ對シ
マシテモ、何等之ニ觸レテ申サレタコトハ
ゴザイマセヌ、併ナガラ此前ノ議會ニモ申
サレマシタガ、八年度ノ豫算ニハ矢張リ赤
字公債ハ出ル、是ハ到底避クベカラザルモ
ノデアルト云フコトヲ申サレタノデアリマ
スガ、此度ニ於キマシテモ矢張リ八年度ノ
豫算ニ對シテハ赤字公債ハ若干アルデアラ
ウ、是ハ免ルベカラザルコトデアルト云フ
コトデゴザイマシタガ、其他別ニ、特ニ申
上ゲルヤウナコトハ伺ヒマセヌデシタ、爲
替問題ニ付キマシテハ現今御承知ノ通リ、
二月前ト今日ト比べマシテ、對米爲替
ガ十弗モ下ッテ居ル場合デアリマス、非
常ニ變化ヲ見ル問題デアリマスノデ、之
ニ付テ將來ノ對策如何ト云フヤウナコ
トニ付テノ御質問モアリマシタガ、大
藏大臣ハ此問題ハ先ヅ對外的ニ見ルノ
モ宜カラウ、又對內的ニ見ネバナラヌノ
デアル、對外的ニ見レバ成程二月前カラ十
弗モ下ッテ居ルガ、其割合ニ對內的二五、
テ見テ、物價ノ變動ト云フモノハ非常ニ少
イモノデアル、故ニ對外ノ方ノ事柄ノミヲ
以テ、對內ノコトヲ律スル譯ニハ參ラヌ、
從テ今日物價ノ低下モ左程ヒドクナイノデ
アル、故ニ杞憂ヲ懷カルガ如クニ是ガ社會
ノ各階、各層ヲ通シテ、上下共ニ混亂狀態
ニ陷ルナドト云フコトハ、自分ハ考ヘテ居
ラヌト云フ御話デゴザイマシタ、尙ホ低金
利政策ニ對シマシテモ、成程郵便貯金ノ利
子モ下ゲ、銀行預金ノ利子モ下ゲ、始終サ
ウ云フヤウナ方面ニ御考慮ガ行ハレテ居ル
ノデアリマスルガ、併ナガラサウカト申シ
テ公債ノ率マデモ下ゲルト云フコトハ、今
ハ考ヘテ居ラナイト云フコトデゴザイマス、
ソレカラ平價切下ノコトモ出マシタガ、
是ハ金ノ輸出解禁トノ關係ノアル問題デ
アッテ、今日ノ場合平價切下ノコトハ自分
ハ考慮シテ居ラヌ、能ク佛蘭西ノ例ヲ引ク
ヤウデアリマスガ、日佛ト餘ホド狀態ガ違
フノデアル、日本ト佛蘭西トハ狀態ガ違フ
ノデアル、佛蘭西ノヤッタヤウナコトノ儘
ニハ參ラヌト云フコトデアリマス、要スル
ニ是ハ平價切下ハ今日其時機ニ非ズト云フ
御返事ノヤウデゴザイマス、要スルニ是等
ノ問題ニ對シマシテハ、常ニ申サレマスノ
三、何レモ時ヲ藉スニアラザレバ根本的
ノ立案ハ出來ナイ、時ヲ藉スニアラザレバ
ト申サレテ居ルノデアリマス、但シ其時ハ
何時來ルノデアリマスカ分リマセヌガ、若
シ左樣ナ時ガ來ナケレバ又其時ニ何トカ考
ヘネバナラヌト云フヤウニ伺ッタノデゴザ
イマス、次ニ外務方面フコトニ移リマス、
主ニ是ハ支那、印度ニ關スルコトデアリマ
スルガ、支那ニ於キマスル所ノ排日或ハ排
日貨ト云フ問題ハ中〓消エマセヌデ、現ニ
支那ノ〓科書ニモ排日ノコトガ隨分謳ハレ
テ居ルノデゴザイマス、斯樣ナコトニ付テ
ノ心配ハ誰シモ懷ク所デゴザイマスルガ、
外務大臣ハ之ニ對シマシテ、勿論是ハ重大
ナ問題デアッテ、決シテ等閑ニ付シテハ居ラ
ナイ、是ハ重大問題デアル故ニ、常ニ對策
ヲ怠ラヌト云フ御言明デゴザイマシタ、ソ
レカラ印度ハ輸出スル品物、御承知ノ通リ
印度ニハ綿布ガ澤山參リマス、デ印度ニ於
キマシテハ今日ノ新聞ニモゴザイマスル
ガ、關稅ヲ引上ゲ、先般引上ゲテ又引上ゲ、
又將來引上ゲルデアラウト云フ情勢デアル
ノデゴザイマス、デ本邦ヨリ印度ヘ出マス
所ノ綿布ハ、金額デ六七千万圓ニ上ボルノ
デアリマシテ、又印度カラ本邦ヘ這入リマ
スル所ノ棉花ハ、是ガ金額ニ積ッテ一億圓
程ニナルノデアリマス、而モ日本カラ這入
リマス所ノ綿布ニ對シテハ、現今ハ五割ニ
ナッテ居ル、又圓價ガ低落スレバ將來亦是
ガ殖エルカモ知レヌノデアリマス、斯樣ニ
致シマシテ高イ稅ヲ拂ッテ向フニ出ス、向フ
カラハ棉花ガ這入リマスケレドモ、其棉花
モ高ク買ハネバナラヌ、一方高ク買フ上ニ
稅ガ高クナッタ、是デハ彼我ノ貿易上ニ影響
ガアリマスノデ、之ニ付テハ外務當局ハ極
力外交手段ニ依ッテ談判、交涉サレ、又交涉
中デアルト云フコトヲ聽キマシタ、次ニ內
務ノ方面ニ移リマス、內務ノ方面ニ於キマ
シテハ今般ノ地方ニ於キマスル土木費、是
ガ相當巨額ニ上ボッテ居リマスルノデ、之ニ
付テ御質問ガアッタノデアリマス、內務省ニ
地方長官其他地方官憲ガ招集サレマシテ、
色ミ大臣ノ訓令、訓辭ヲ承ハッテ、ソレニ皆平
伏シテ歸ルヤウデアリマスルガ、事實ハ之
ニ反シマシテ、是マデ地方ニ歸ラレマスト
矢張リ色ミノ關係、或ハ有力ナ人物等ノ動
キニ依ッテ、本省ノ命令通リ行ハレヌコト
ガ多々アルノデアリマス、ソレニ付テ皆御
心配ニナッテ居ルノデアリマスガ、現大臣ハ
其事モ憂慮セラレマシテ、左樣ナコトノナ
イヤウニ、十分本省ノ意思ガ徹底セラレテ、
全ク其土地ノ救濟ニナルヤウニ心掛ケヤ
ウ、他カラ一時ニ來ル所ノ勞働者或ハ風來
ノ稼ギ人ト云フヤウナ者ニ均霑スルコトハ
努メテ避ケテ、土地ノ者ヲ霑ハセルヤウナ
コトニ依クテ、救濟ノ一端ヲ施行シヤウト云
フ御考ノヤウニ承ハッタノデアリマス、次ハ
文部省方面ニ移リマス、相當質問ガゴザイ
マシタガ、是モ簡單ニ申上ゲテ置キマス、
第一ハ思想及風〓問題ニ關スル質問デアリ
やく、之ニ付テハ當局者ノ指導啓發ノ方法
等ニ付キマシテ御質問ガアリマシタガ、當
局者ハ〓育勅語ノ精神ヲ能ク說明ヲ致シ
テ、ソレニ依ッテ色ミ人とニ依ッテ手段方法
ヲ變ヘテ、善導スルコトニ努メテ居ル、大
體ノ御話ハ左樣デゴザイマス、ソシカラ次
ハ義務〓育費國庫負擔ノ增加、是ハ先年モ
ゴザイマシタガ現今モ又殖エルノデゴサイ
V 、是デ以テ貧弱村ノ〓員ノ俸給其他ヲ
支辨スルコトニナッテ居ルノデアリマスル
ガ、中ミソレガサウ參リマセヌ、增額サレ
テモ〓員ノ俸給不拂ガ隨分アルノデゴザイ
V 、而モソレガドウ云フモノカ兔角他ノ
方面ニ惡用セラレルト云フノデ、此〓育費
ノ補助ハ何等效果ノナイコトガ隨分アルノ
デアリマス、斯樣ナ勢ヒデ行ク以上ニハ、
殆ド義務〓育費ノ補助ハ農村救濟同樣ニナ
リ、〓育ト云フ名ヲ以テモ其實ハ稅ノ未納
或ハ不納等ノ方面ニ之ガ向ケラレルヤウニ
ナッテ、完全ナ目的ヲ達シテ居ラヌト云フ
ヤウナ狀態ガアリマスノデ、之ニ付テ當局
者ニ充分ノ注意ヲ與ヘラレタノデアリマ
ス、實際斯樣ナ風デハ甚ダ困ルカラ將來流
用ノナイヤウニ、殊ニ時局ノ際デアルカラ
全ク其費途ヲ他ニ向ケナイヤウニシテ貰ヒ
タイト云フ御希望ガアリ、當局者モソレハ
了承サレタノデアリマス、尙ホ大學卒業生
ノ未就職ノコトデアリマス、大學ノ〓育ヲ
受ケマス者ハ、官ニ於キマシテ、又個人、
父兄ノ上ニ於キマシテ、各約千圓位ハ使ッ
テ居リマスカラ先ヅ二千圓程カヽル、而シ
テ卒業シタ者ガ先ヅ荒イ數字デアリマス
ガ、七割ガ未就職デアリ、三割ガ就職スル
狀態デアル、斯樣ナ風ニナッテ居ル、折角金
ヲカケテモ何ニモナラヌデハナイカ、寧ロ
學校ノ整理等ガ必要ヂヤナイカト云フヤウ
ナ御議論ガ出タノデアリマス、ソレニ付テ
ハ大學等ノ整理ノコトハ御話ガアリマセヌ
ガ、學校ノ整理ニ付テハ考慮スル、又考慮
シテ居ルト云フコトデアリマシタ、ソレカ
ラ女子〓育······女子〓育ニ付テハ餘リ今迄
改革等ガナイ、男子ノ〓育ニ付テハ相當之
ガ考慮サレテ色ミ改革サレテ居ルケレドモ、
女子ノ〓育方面ニ付テハ殆ド何モシテ居ナ
イト云フコトニ付キマシテハ、今日高等女
學校ノ改正ニ付テ現今立案サレテアル、ソ
レデマア此方デ女子〓育ノ方ノ改善モ出來
ヤウト云フ御話デゴザイマシタ、ソレカラ
不就學者ノ調ベガ甚ダ不完全デアル、獨逸
邊リデハ一万人ニ對シテ幾ラト云フノガ、
日本デハ百人ニ付テ幾ラ〓〓、勿論此百人
ニ對スル九十九位デアリマスガ、此率ハ是
ハ全體ノ數字ノ觀察ニアラズシテ、代表數
ノ觀察ノ結果デアルカラシテ、是ハ將來十
分ニ全體ニ付テノコトヲ見テ貰ヒタイ、又
聾啞〓育ニ付テモ是ガ餘リ普及シテ居ラヌ
ヤウデアルカラ、之ニ付テモ考慮ヲ廻ラサ
レタイト云フコトデ、當局者ハ其進言ヲ諒ト
セラレタノデアリマス、次ニ農林商工方面
ニ移リマス、是モナカ〓〓長クカヽリマシ
タガ極メテ簡單ニ申上ゲマス、元來、從前
物價ノ低下ヲ考ヘタ政策ガ禍ヲシテ今日ニ
及ンダノデアルラカシテ、須ラク農產物價
格ノ引上ハ必要デアル、是ガ農民救濟ノ一
ニナルモノデアルガ故ニ、政府ハ率勢米價
ナドト云フコトヲ固執シテ此點ニ付テ、米價
ノ調節ヲ時局ニ對シテ十分ニ考究シナイ
カ、時局デアルカラ、平時トハ違フノデア
ルカラシテ、此場合ハ率勢米價ニ付テモ考
ヘタラ宜イダラウト云フコトデアリマシタ
ガ、是ハ率勢米價ト云フモノハ米ノ値ノ標
準ヲ決メルノデアッテ、單ニ率勢米價ニ依〃
テ決メルノデナイ、御承知ノ如ク一方ニハ
生產費、一方ニハ生計費、是ガ僅カ二厘何程
デアリマス、此兩方ノ指數ヲ能ク調ベテ、
之ヲ兩方ニ調節シテアルノデアルカラ、今
日斯樣ナ場合デアッテモ基準ヲ見ルト云フ
コトハ必要デアルカラシテ、先ヅ之ニ依ッテ
米價ノ調節ヲ行フト云フコトデアリマシ
ク、何レ精シイコトハ他ノ委員會ニ於テモ
アリマスカラ、是ダケデ止メテ置キマス、漁村ノ
救濟ニ付キマシテハ、今囘豫算ニモ計上サレ
テ居リマスルガ、機船底曳網、此漁業ノ取締ノ
勵行ノ支出ガ若干出テ居リマス、是ハ僅カデア
リマスルガ、是デモ漁民ノ餘程救濟ニナル
サウデアリマス、而モ此外ニハ尙ホ漁業權
ノ擴張ヲ助長シ、或ハ新設スルト云フコト
モ必要デアルガ、ソレニ付テハ漁業法ヲ改
正セナケレバナラヌノダカラシテ、之ニ付
テノ改正ヲシテ貰ヒタイト云フコトデアリ
マシタガ、別ニハッキリハ承ハリマセヌガ、
是モ相當考慮スルト云フ意味ニ承ハリマシ
ク、尙ホ細イコトデハ種油業者ノ苦痛ノ狀
態ヲ長ミト述べラレマシテ、此救濟ニ付テ
陳情的ナ說ガアリマシタガ、之ニ付テハ大
藏方面、農林方面、其他ノ關係官廳ト相談ヲ
シテ見テ何トカシヤウト云フ御返事デアリ
マシタ、中小商工業者ノ救濟ノコトデアリ
マスガ、是モ今般豫算ニ現ハレテ居リマス
ルガ、是ハ國家ノ補償ニ非ズシテ地方處理
ニナッテ居ル、何故ニ地方ニ處理サスノデア
ルカ、國家ノ處理ニセヌカト云フコトニ付
キマシテハ、當局者ハ國家ノ補償ノコトモ
考ヘテハ見タガ先ヅ差當リ地方ノ方ニ委ス
ト云フコトデアリマシタ、ソレカラ商業組
合法ノ運用ニ付キマシテハ、若干ノ豫算ガア
リマスガ少イヤウデアルト云フ御質問ニ對
シマシテ、是ハ輕少デハアルガ、先ヅ當分
其位デ宜シカラウト云フコトデアリマシ
ク、尙ホ國際見本市ノコトニ付キマシテ
モ、日本デ開イタラドウデアルカト云フコ
トノ御話ニ對シマシテハ當局者モ是ハ矢
張リ御考ノ中ニアリマシテ、具體的ニハ申
サレマセヌガ、サウ云フコトモ考ヘテ居ル
ト云フコトデアリマシタ、次ニ拓務方面ニ
移リマス、南洋群島開發ニ付テノ御質問竝
ニ南洋水產助成費ノ計上ニ付テノ御質問デ
アリマシタ、是ハ御承知ノ如クニ農林省、
外務省、是等ノ二省ノ協力ガナケレバ、單
ニ拓務省バカリデモ隨分遺憾ノコトガゴザ
イマス、又南洋方面ニ屬領ヲ有フテ居リマ
ス所ノ外國ノ諒解モ要リマス、又ソレ等ノ
官憲トノ接觸モ要リマス、斯ウ云フ所ノ
人、竝ニ前申上ゲタ他ノ一一省トノ協調ヲ保〃
テ、之ニ付テノ開發ヲ圖ルト云フ仰セデア
リマシタ、南洋水產助成費ハ不幸ニシテ今
囘現ハレマセヌデシタガ、「是モ何レ近キ將
來ニ、或ハ來年ノ豫算ニ出サレルト云フ思
召デゴザイマシタ、最後ハ陸軍大臣ニ對ス
ル質疑デアリマス、是ハ先日宮城縣下ニ於
キマシテ經濟學博士永井亨氏ガ演說サレタ
コトガアリマス、其演說ノコトニ對シマシ
テ土地ノ在〓軍人會ガ決議シテ、甚ダ言論ヲ
壓迫スルガ如キ所ノ文句ヲ具備シテアルノ
デアリマス、此詳シイコトハ私ハ此處デ申
シマセヌ、詰リ演說者ニ對シテ餘リニ酷イ
所ノ壓迫ヲ加ヘルヤウナ決議ヲ作ッテ、イツ
何日迄ニ返事セヨト云フヤウナコトガアッ
タノデアリマス、之ニ付テハ陸軍大臣ハ全
ク事實ヲ御承知ガナイ、アリマセヌノデ是
ハ取調ノ上デ善處シヤウト云フ、ソレダケ
ノ御返事デアリマシテ、續イテ次ニ懷抱
セラレタ所ノ御意見ニ付テノ御話ヲ承ハ
リマシタ、先ヅ質問ハ大體是ニ止メマシ
ク、唯最後ニ申上ゲタイノハ首相ニ對ス
ル御希望ガアリマシタ、是ハ本會議ニ於テ
或委員ノ言ハレマシタコトデアリマスル
ガ、近來益〓閣內ノ不統一ガアルヤウニ思
フ、ドウゾ是ハ大イニ擧國一致ノ實ヲ示シ
テ貰ヒタイト云フ御希望ガ出マシタノデア
リマス、此外別ニ豫算其他ノ三件ニ對シマ
シテ、計數上ノ御質問ハ何等ゴザイマセヌ
デシタ、ソレデ討論ニ入リマシタ、討論ニ入
リマシテ一員ノ御發言ガアリマシタ、ソレ
ハ斯樣ナ意味デアリマス、時局匡救ニ關
スル豫算トシテハ隨分是ハ不徹底デアル、併
シ今日ノ場合無キニ優ルモノデアルカラシ
テ、抂ゲテ是ニハ贊成スルガ、其實行ニ際シ
テハ政府ハ十分留意シテ、誤リノナイヤウニ
進行シテ貰ヒタイ、斯樣ナ意味ノ御忠言的御
希望ガゴザイマシタ、其他何等ノ發言モゴ
ザイマセヌデ、四案トモ通過イタシマシタ、
甚ダ簡單デゴザイマスルガ、私ハ是デ報〓
ヲ終リマス、何卒御贊成ヲ希望イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006303242X00819320902&spkNum=82
-
083・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 只今柳澤豫算委
員長ノ報告セラレマシタ豫算案ヲ一括シ
テ議題トナスコトニ御異存ゴザイマセヌ
カ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006303242X00819320902&spkNum=83
-
084・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006303242X00819320902&spkNum=84
-
085・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 全部ヲ問題ニ供
シマス、全部原案ニ同意ノ諸君ノ起立ヲ願
ヒマス
〔總員起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006303242X00819320902&spkNum=85
-
086・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 全會一致ト認メ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006303242X00819320902&spkNum=86
-
087・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 日程第五ヨリ第
十マデ、請願會議
意見書案
山村住民救濟ニ關スル件
愛媛縣周桑郡千足山村長佐伯團三郞
外四名呈出
右ノ請願ハ近時山村ノ窮狀甚シキニ依リ
林產物販賣擴張斡旋事業ノ國營又ハ縣
賛、木材價格ノ引上、林地林木ニ對スル
低利資金ノ供給ニ依リ林業者ノ負債整
理、山林賣却ニ對スル所得稅ノ低減等請
願人等所案ノ如ク速ニ實行セラレ以テ山
村ヲ救濟セラレタシトノ旨趣ニシテ貴族
院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキモノト議決
致候因テ議院法第六十五條ニ依リ別册及
送付候也
昭和七年月日
貴族院議長公爵德川家達
內閣總理大臣子爵齋藤實殿
意見書案
傷痍軍人待遇改善ノ件
廣島市中島新町平民〓員楠原仙太郞
外四十二名呈出
和歌山市南休賀町士族商狩谷彌太郞
外七名呈出
北海道紋別郡瀧上村平民無職石立芳
太郞外十六名呈出
右ノ請願ハ近時傷痍軍人ノ待遇改善ニ關
シ傷痍軍人特別扶助令制定セラレタリト
雖モ未タ一時金癈兵重症者ヲ永續的ニ優
遇シ得サルニ依リ速ニ兵役義務者及癈兵
待遇審議會答申案中記載ノ如ク一時金癈
兵ニ對シ恩給法律ノ制定竝ニ鐵道乗車等
ノ特典ヲ付與セラレタシトノ旨趣ニシテ
貴族院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキモノ議
決致候因テ議院法第六十五條ニ依リ別册
及送付候也
昭和七年月日
貴族院議長公爵德川家達
内閣總理大臣子爵齋藤實殿
意見書案
中小商工業者救濟ノ件
東京市本〓區本〓一丁目平民藥劑師
阿部恒雄外四百六十八名呈出
右ノ請願ハ財界不況ノ際中小商工業者竝
ニ庶業者ハ百貨店ノ重壓ヲ被リ今ヤ窮迫
ニ陷レルニ依リ政府ニ於テ低利資金ノ無擔
保貸付、各種政府關係債務ノ支拂延期及
ヒ低利借替、百貨店法ノ制定竝ニ公私設
市場ノ對策、一般購買力ノ增進策ヲ講セ
ラレ之ヲ救濟セラレタシトノ旨趣ニシテ
貴族院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキモノト
議決致候因テ議院法第六十五條ニ依リ別ノ
册及送付候也
昭和七年月日
貴族院議長公爵德川家達
内閣總理大臣子爵齋藤實殿
意見書案
山村住民救濟ニ關スル件
岐阜縣武儀郡下牧村農高橋鯛治郞外
九名呈出
右ノ請願ハ木材及ヒ繭價ハ暴落シ山村住
民ノ窮狀甚シク到底自力甦生モ望ミ難ク
思想上深憂ニ堪ヘサルニ依リ政府ニ於テ
負債ノ整理、通貨流通ノ圓滑、林業制度
ヲ改正シテ林木保護價格ノ調節、公課負
擔ノ輕減、山村振興補助制ノ擴張、繭
價維持方法ノ制定、政府貯藏米ノ廉賣等
請願人等所案ノ如キ救濟方法ヲ講セラレ
タシトノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體
ハ採擇スヘキモノト議決致候因テ議院法
第六十五條ニ依リ別册及送付候也
昭和七年月日
貴族院議長公爵德川家達
内閣總理大臣子爵齋藤實殿
意見書案
北海道千歲村ニ飛行場設置ノ件
北海道千歲郡千歲村長鹿目德親呈出
右ノ請願ハ北海道千歲郡千歲村字ママチ
原野ハ平坦ナル廣野ニシテ地質硬ク重量
ノ車輪モ沒入セス軍事竝ニ交通上飛行場
建設地トシテ本道唯一ノ好適地ナルニ依
リ今次ノ空輸計畫ニ際シ同原野ヲ貫通ス
ル浦河線地方費道ト北海道鐵道トノ中間
ニ在ル地域ヲ飛行場豫定地ニ選定セラレ
タク尙ホ必要ナル土地ハ無償提供ヲモナ
シ得ヘシトノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ
大體ハ採擇スヘキモノト議決致候因テ議
院法第六十五條ニ依リ別冊及送付候也
昭和七年月日
貴族院議長公爵德川家達
内閣總理大臣子爵齋藤實殿
意見書案
能登鐵道株式會社敷設鐵道買收ノ件
石川縣羽咋郡北邑知村長山本九左衞
門外五十名呈出
右ノ請願ハ私設能登鐵道ハ曩ニ地方開發
ノ爲メ沿線各町村民協力シテ專ラ之カ建
設經營中ナリシニ拘ラス近時財界不況ノ
爲メ經營困難ナルノミナラス關係民ノ困
窮一方ナラサルニ依リ同鐵道ヲ國有ニ移
管シ以テ鐵道本來ノ機能ヲ充實シ地方ノ
福利增進啓發振興ニ資セラレタシトノ旨
趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘ
キモノト議決致候因テ議院法第六十五條
ニ依リ別冊及送付候也
昭和七年月日
貴族院議長公爵德川家達
内閣總理大臣子爵齋藤實殿発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006303242X00819320902&spkNum=87
-
088・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 是等ノ請願ハ請
願委員長ノ報告通リデ御異存ゴザイマセヌ
カ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006303242X00819320902&spkNum=88
-
089・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナシト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006303242X00819320902&spkNum=89
-
090・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 明日ノ議事日程
ハ本院彙報ヲ以テ御通知ニ及ビマス、本日
ハ是ニテ散會イタシマス
午後八時四十八分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006303242X00819320902&spkNum=90
4. 会議録のPDFを表示
この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。