1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
製絲業法案(政府提出)
日本蠶絲株式會社法案(胎中楠右衞門君外二名提出)
原蠶種國營法案(胎中楠右衞門君外二名提出)
製絲業法案(胎中楠右衞門君外二名提出)
輸出生絲販賣統制法案(胎中楠右衞門君外二名提出)
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會議
昭和七年八月三十日(火曜日)午前九時二十七分開議
出席委員左の如し
委員長 生田和平君
理事 加藤知正君 理事 矢野晋也君
理事 小山邦太郎君
横川重次君 有馬淺雄君
近藤壽市郎君 白城定一君
青木精一君 百瀬渡君
川淵洽馬君 戸田由美君
武田徳三郎君 吉田鞆明君
山本愼平君
同日委員芦田均君辭任に付其の補闕として山本愼平君を議長に於て選定せり
出席國務大臣左の如し
文部大臣 鳩山一郎君
農林大臣 後藤文夫君
出席政府委員左の如し
農林省蠶絲局長 入江魁君
農林書記官 田淵敬治君
本日の會議に上りたる議案左の如し
製絲業法案(政府提出)
日本蠶絲株式會社法案(胎中楠右衞門君外二名提出)
原蠶種國營法案(胎中楠右衞門君外二名提出)
製絲業法案(胎中楠右衞門君外二名提出)
輸出生絲販賣統制法案(胎中楠右衞門君外二名提出)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006311922X00319320830&spkNum=0
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001・生田和平
○生田委員長 是ヨリ製絲業法ノ委員會ヲ
開キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006311922X00319320830&spkNum=1
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002・横川重次
○橫川委員 本議會ハ開院式ノ御詔勅ニモ
アリマス通リ、緊急ナル豫算及法律案ヲ提
出シタト云フ意味ニナッテ居リマス、緊急
ト云フ意味ハ、勿論時間的ニ急迫ヲ告ゲル
モノ、及事柄ノ必要性ノ緊迫ト云フ意味デ
アルコトハ申ス迄モナイコトデアリマス、
此見地ヨリスレバ、蠶絲業界ノ急ヲ救フト
云フ意味合ニ於キマシテ、種々ナル聯絡統
制アル所ノ案ガ玆ニ考慮セラルヽト思フノ
デアリマスガ、特ニ農林當局ガ此案ノミヲ
御提出ニナリマシタ理由ガ、爾ク時間的ニ
緊急ヲ要シ、又必要性ノ緊迫ヲ感ズルト云
フ意味デアリマセウカ、又第二ニ、此案ハ
現在資本主義經濟ニ對シ、或ル種ノ統制ヲ
加ヘテ行カナケレバナラヌト云フ新シキ見
地ノ下ニ、卽チ國家ノ力ヲ幾分ナリトモ資
本主義經濟ニ及ボシテ行クコトガ、寧ロ資
本主義ヲ堅實ニ發達セシムル所以デアルト
云フ見地ヲ以テ、所謂統制經濟ト云フ意味
ニ吾こ解シテ居リマスガ、左樣ナ見地カラ
御出シニナッタノデアリマスカ、此兩點ヲ
先ヅ伺ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006311922X00319320830&spkNum=2
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003・後藤文夫
○後藤國務大臣 製絲業法ヲ此際出シマシ
タ理由ハ、全體ノ蠶絲業統制ノ施設ノ是ガ
一角デアリマスルコトヽ、此問題ハ比較的
今日迄調査モ出來テ居リ、施行ノ上カラモ
大キナ難點ヲ見ズシテ、直チニ實施ニ著手
スルコトガ出來ル準備ガ出來テ居リマスコ
ト、第三ニハ過去ノ、殊ニ最近マデノ經驗
ニ於テ、蠶絲業界ノ景氣ノ好轉又ハ惡化
ガ、激烈ニ製絲業ノ亂立又ハ倒壞トナッテ、
養蠶業者ニ及シタ不利益モマザ〓〓ト今日
印象ニ殘ッテ居リマス、今日迄ノ景氣ニ於
キマシテハ、新ニ製絲業ヲ起サウトスル者
ガ比較的少イ有樣デアッタ、ソレナラバ急
ガヌデモ宜イデハナイカト云フ議論モゴザ
イマシタケレドモ、是ガアルト云フコト
ガ、格別一般ノ人ノ自由活動ニ大キナ不便
ヲ生セズシテ、此製絲業ヲ今後統制スルト
云フノニ非常ニ好イ時機デアル、殊ニ又製
絲業ガ一度好轉ヲシテ來ルト云フヤウナコ
トニナレバ、實ニ此亂立ノ弊ヲ恐ルヽノデ
アリマス、昨今ノ如キ狀況ハ、又過去ノ悲
慘ナ事例ヲ再ビ繰返スニ至ル端〓ヲ作ルノ
デハナイカト云フヤウナコトカラ、方 あ
法案ヲ此議會ニ於テ御協賛ヲ得テ實施ニ著
手スルコトガ、最モ便宜デアリ且必要デア
ルト考ヘタノデアリマス、其他ノ蠶絲業統
制ニ關スル諸施設ニ付テハ、昨日來御質問
ニ御答シテ居リマスルヤウニ、出來ル限リ
速ニ考究ヲ遂ゲテ、其確信ヲ得タルモノカ
ラ實施ヲシテ行キタイト思ッテ居ル譯デア
リマス
ソレカラ此製絲業免許制度ハ、資本主義
經濟ヲ更ニ改善シ且確保スル爲ノ統制經濟
ト云フ議論ガアルガ、其趣旨カラ實行シテ
居ルノデアルカト云フ御話デアリマス、左
樣ニ御觀察ヲ戴イテモ結構デアリマスル
ガ、吾ミハ特ニソレ程ノ理論的ノ基礎カ
ラ、此製絲業ノ統制ヲ考ヘタト申スヨリ
千、製絲業自體ガ蠶絲業界ニ及ボス全體ノ
影響、其モノノ實地ノ見地カラ之ヲ企テタ
ノデアリマシテ、御話ノヤウナ事柄ノ理論
ニ引付ケテ之ヲ說明スレバ、說明シ得ルモ
ノデモアルカト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006311922X00319320830&spkNum=3
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004・横川重次
○橫川委員 御當局ノ御說明ハ、昨日カラ
同樣ノ意味合ヲ伺ッタノデアリマスガ、尙
ホ自分ガ重ネテ御問致シマシタル所以ハ、
更ニ將來ニ於ケル御當局ノ御意向ノ存スル
所ヲ强ク拜聽致シタイト云フ意味合カラ、
卽チ吾こ國民ト致シマシテ、又蠶絲業關係
ノ者ト致シマシテ、御當局ノ意ノアル所ヲ
御伺シタイ、斯ウ云フ見地カラ重ネテ御質
問申上ゲタノデアリマスガ、不幸ニ致シマ
シテ、御當局ノ蠶絲業界ニ對シマスル認識
ト申シマスルカ、見解ト申シマスルカ、吾〓
ト稍〓異ナルモノガアルコトヲ痛感スルモ
ノデゴザイマス、其意味ハ、要スルニ此案
ハ比較的調査ガ整ッタガ故ニ、製絲業ノ亂
立ニ鑑ミテ、又其倒壞ニ鑑ミテ出シタ、斯
樣ナ御說ガアッタヤウデアリマシタガ、此
亂立デアルトカ乃至ハ倒壞デアルトカ云フ
コトハ、單ニ製絲家ガ澤山出來タガ故ニ、
倒レタト云フ意味デハナクシテ、製絲業界
及製絲販賣方面ニ於ケル種々ナル他ノ原因
ノ結果、玆ニ其結果トシテ製絲家ノ倒壞、
倒產ト云フコトニナッテ現レタモノデアリ
マシテ、直チニ製絲家ノ增設トカ、所謂亂
立トカ云フ御見解ノ下ニ起リマシタ製絲釜
數ノ增加ト云フコトガ、直接ニ製絲業界今
日ノ不況ヲ齎シタ所以デハナイノデアリマ
ス、斯樣ナ意味合カラ申シマスルナラバ、
下手ナ將棋指ノヤウニ、一手先ダケ考ヘ
テ、其由ッテ來タル所以ヲ考ヘナイ、所謂
臨床的ニノミ考ヘテ、其病根ヲ察セザルモ
ノデ、洵ニ御當局ノ見解ノ未ダ至ラザルコ
トヲ、甚ダ失禮ナガラ吾〓ハ遺憾トスルモ
ノデゴザイマスガ、然ラバ其比較的ニ調査
ガ整ッテ居タカラト云フ御話デアリマスル
ガ、其他ノ問題ニ付キマシテハ、御調査ハ
進ンデ居ルノデアリマスルカ否カ、吾こノ
〓究ニ依レバ、寧ロ難易ノ問題ニ非ズシ
テ、其需要性ノ强キカ否カト云フ問題デ、
御當局ハ當然此際奮ッテ御〓究ニナルベキ
問題デアルト思フノデアリマスガ、殊ニ本
議會ハ農村ノ窮迫ヲ救フト云フ意味合モア
リマシテ、農林省ノ背後ニハ五百五十萬戶
ノ農家ガ控ヘテ居ルノデアリマスカラ、何
處迄モ意ヲ强ウシテ、萬難ヲ排シテ進マレ
ルコトガ、是ハ當然デアルト思フノデアリ
マスガ、若シ御當局ガ左樣ナ見地ニ於キマ
シテ、御見解ニ於テ異ナルモノガアルトシ
タナラバ、其點ヲ御伺致シタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006311922X00319320830&spkNum=4
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005・後藤文夫
○後藤國務大臣 蠶絲業ノ全般ニ亙ル統制
ノ問題、之ニ依テ蠶絲業界ノ安定ヲ圖ル諸
施設ヲ講ズル問題ニ付テハ、當局モ十分ニ
必要ヲ認メテ考究ヲ致シテ居リマス、昨日
來御質問モアリマシタヤウニ、此蠶絲業全
般ノ問題ノ、殊ニ重點ノ大ナルモノデアル
輸出生絲ノ販賣ニ關スル統制ノ問題ノ如キ
ハ當局ニ於テモ十分ニ考究ヲ續ケテ居リ
マス、併ナガラ昨日申上ゲタヤウニ、是ハ
其遣方其仕組ハ色ミノ方法ガ考ヘラレマ
ス、又遣方次第ニ依テハ、其海外ニ於ケル
影響ヲモ深ク考慮シナケレバナラヌ點ガア
ル、當局ハソレ等ノ點ニ付テ十分ナ確信ノ
アル案ヲ得ルマデハ、製絲業全體ノ利益ノ
爲ニ、直チニ之ニ著手スル實行スルト云フ
コトヲ決定スル譯ニハ參リマセヌ、ソレ等
ノ問題ハ、此臨時議會ノ應急的ノ施設ヲ致
シマス際ニ間ニ合セテ致スト云フ譯ニハ參
リ兼ネルノデアリマス、唯當局ニ於テモソ
レ等ノ問題ヲ深ク考慮シ、進ンデソレ等ノ
解決ヲ致シタイト云フ考ヲ有ッテ居ルノデ
アルト云フコトヲ申上ゲテ置キタイト思ヒ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006311922X00319320830&spkNum=5
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006・横川重次
○橫川委員 蠶絲業界救濟ノ必要デアルコ
トハ、只今御話ノ如クデアリマス、ソレハ
將來ノ問題ニ付テヾアリマスガ、私共ヨリ
考ヘマスレバ、蠶絲業界ノ救濟乃至ハ整理
ノ爲ニ、旣ニ出サレマシタル設備乃至ハ法
案ト云フヤウナモノニ付キマシテモ、當然
此際必要ガアリマスナラバ、更ニ馬力ヲ掛
ケタ御當局トシテノ誠意ヲ示スコトガ至當
デアルト思フノデアリマスガ、大正十四年
ヨリ國家ノ統制ノ下ニ全國的ニ普及ヲ圖ル
目的ヲ以チマシテ、乾繭倉庫組合ト云フモ
ノガ出來テ居ルノデアリマスガ、其後時勢
ノ影響ヲ受ケマシテ、種々意ニ滿タザル所
ガアルノデアリマスガ、當然繭ヲ商品トシ
テ賣リ得ルヤウナ設備ニ擴大シテ行キマシ
テ、製絲家ノ負擔ヲ輕カラシメ、乃至ハ繭
價ノ動搖ヲ防グト云フコトガ、此際養蠶家
ニ取リマシテモ、製絲家ニ取リマシテモ、
非常ニ必要ナコトデアルト思フノデアリマ
スガ、御當局ニ於キマシテハ、來ルベキ議
會ニ於キマシテ、之ニ對スル十分ノ助成豫
算ヲ取ラレマシテ、是ガ普及徹底ニ志スト
云フコトノ御意思ガアリマスカドウカ、勿
論此乾繭倉庫組合ト云フモノハ、政友會ノ
高橋大藏大臣ガ曾テ農林大臣デアリマシタ
時代ニ於テ御發案ニナリマシテ、其後各歷
代ノ內閣ガ、其趣旨ニ付キマシテハ、贊成乃
至ハ敷衍ヲシテ來タモノデアリマスルガ、
未ダ徹底シナイト云フコトガ、其機能ヲ洵
ニ十分ナラシメザルモノガアルト思フノデ
アリマスガ、之ニ付キマシテ特ニ農林當局
モ御努力遊バサルヽノ意思アリヤ否ヤヲ御
伺シタイノデゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006311922X00319320830&spkNum=6
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007・後藤文夫
○後藤國務大臣 只今御尋ノ御趣旨ハ、吾ミ
ニ於キマシテモ至極御同感デアリマス、
唯先年來財政ノ狀況ガ惡クナリマシタ爲
ニ、折角支出シテ居リマシタ補助金モ、漸
次減額サレルト云フヤウナコトニナリマシ
テ、當局トシテモ洵ニ遺憾ニ考ヘテ居ルノ
デアリマス、此度御協賛ヲ得テ居リマスル
臨時ノ繭價對策トシテ保管ノ奬勵ヲ助長ス
ル、其他府縣ノ繭對策ニ對シテ相當ナ補助
ヲスルト云フヤウナコトモ、只今ノ御趣旨
ノ一端ニ副ハントシテ居ルヤウナモノデア
リマスルガ、斯ウ云フコトヲ致スニ付キマ
シテモ、御話ノヤウニ乾繭倉庫法ガ十分ニ
普及徹底シテ居リマスレバ、極メテ其仕事
ガ容易ニナルノデアリマス、其普及ガ未ダ
十分デナイ爲ニ、甚ダ不便ヲ感ズル譯デア
リマス、當局トシマシテハ出來ル限リ御趣
旨ノヤウニ努力ヲ試ミタイト思ッテ居リマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006311922X00319320830&spkNum=7
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008・横川重次
○橫川委員 當局ノ御意思ノアル所ヲ伺ヒ
マシテ、吾ミト致シマシテハ甚ダ心ヲ强ウ
スル者デアリマスガ、ドウゾ其趣旨ニ基キ
マシテ、來ルベキ議會ニ於キマシテハ十
分ナル豫算ヲ取ラレンコトヲ切ニ希望スル
次第デアリマス、ソレカラ私ハ本案ニ付キ
マシテ、尙ホ一點御伺ヲ致シタイト思ヒマ
ス、本案ノ根本的ノ趣旨ハ、要スルニ製絲
家ノ亂立ヲ防グ、斯樣ナ意味ノアルコトニ
諒解致シマスガ、若シ其意味ヲ徹底スル必
要ガアルト致シマスナラバ、御當局ニ於キ
マシテハ、玆ニ法ノ規定スル所ニ條件ヲ以
テ出願ヲ致シマシタ場合ニ於テモ、全體ノ
統制上產繭ニ比例シテ、其釜數ガ過剩ヲ見
ントスルヤウナ場合ニ於テハ條件ニ當嵌ッ
タ許可ノ申請ヲシマシテモ、之ヲ認可セザ
ル場合ガアリ得ルカドウカ、此點ヲ先ヅ御
伺致シタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006311922X00319320830&spkNum=8
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009・後藤文夫
○後藤國務大臣 ソレハナイ積リデアリマ
ス、大體此規格標準ヲ設ケルト云フコトニ
依テ自ラ行ハレル制限ヲ以テ、只今ノ所デ
ハ滿足スベキモノデアルト思ッテ居ルノデ
アリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006311922X00319320830&spkNum=9
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010・横川重次
○橫川委員 左樣ナ意味カラ申シマスナラ
バ軈テ玆ニ利潤ガ十分ニ含マレル場合ニ
於キマシテハ、相當ニ釜數ヲ殖ヤス志望者
ガ出テ來ルト思ヒマスシ、又新ニ事業ヲ起
サントスル者ガ出ヨウト思ヒマス、左樣ナ
結果ハヤハリ同樣ニ數ノ過剩ト云フコトヲ
招來スルモノデアルト思フノデアリマシ
テ、左樣ナ結果カラ致シマシテ、此業法ノ
目的ヲ全然達スルコトガ出來ナイノデハナ
イカ、斯樣ナ疑惧ヲ懷クモノデアリマス
ガ、御當局ニ於キマシテハ左樣ナ御考ハナ
イノデアリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006311922X00319320830&spkNum=10
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011・後藤文夫
○後藤國務大臣 御話ノヤウナ場合ガ生ジ
得ナイトハ申サレマイト思ヒマス、併ナガ
ラ此法律ガ狙ヒマス所ハ、モウキチ〓〓ト
計算的ニ釜數ト繭トヲ合セ、更ニ絲ノ需要
ノ方ヲ合セ、ドレダケノ釜數ガ全國的ニ必
要ダト云フコトヲ斷定シテ行ク譯ニハ、容
易ニ是ハ參リ兼ネルト思ヒマス、ヤハリ自
ラ伸縮ノ餘地ヲ存シナケレバナラヌ、殊
先程來御話モゴザイマシタヤウニ、蠶絲業
全體ニ亙ッテ、詰リ養蠶ノ所カラ販賣輸出
マヨハ之ヲキチット完全ナ統制ノ中ニ入レ
テシマッテヤルト云フコトニナリマスレバ、
其製絲業ノ構成ニ於キマシテ釜數幾ラ、其
增減ノ-年々幾ラヅヽ增シタリ減ジタリ
スルコトニ付テ、其全體ニ亙ッテ一人一個
ノ工場規格ノ制限ノミナラズ、其工場ニ於
ケル釜數ノ增減ノコトマデモ干涉スルコト
ガ考ヘ得ラレルカモ知レマセヌガ、私ハサ
ウ云フコトヲスルコトガ工業ノ進展、工業
ノ發達ノ爲ニモ、是非必要デアルト云フ所
ヘハ容易ニ參ルマイト思ヒマス、御話ノヤ
ウニ釜數ヲ唯一ツノ工場ニ付テ基準ヲ決メ
テ置クト云フダケデハ、外ノ工場ガ釜數ヲ
增スコトモ、亦其基準ニ食多め工場ガ景氣
ガ好ケレバ殖エルト云フ御心配ハ、御尤ダ
ラウト思ヒマス、ソレハサウ今ノ場合深ク
憂フルベキ事柄デハナイト思ヒマス、此基
準ニ依テヤルコトニ依テ、相當ノ目的ガ達
セラルヽト云フコトデ、先ヅ參ルノガ宜カ
ラウト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006311922X00319320830&spkNum=11
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012・横川重次
○橫川委員 御答ノ如クト致シマスルナラ
バ、全體的ニ釜數ノ殖エルコトハ問題デナ
イノデアリマス、左樣ナ見地カラ申シマス
ルナラバ、縱令御當局ガ今規格ニ依テ定メ
ントスル所ノ釜數以下ノ製絲家ト致シマシ
テモ、ソレニ相當スル乃至ハ相當以上ノ資
力ヲ以テ計畫スル者ガアルト致シマスルナ
ラバ、之ヲ拒否スルノ意義ハ成立シナイト
思フノデアリマス、其意味ハ大體製絲業ト
申シマシテモ、其地方ノ地勢ノ關係デアル
トカ、乃至ハ蠶繭ノ狀態デアルトカ、交通
ノ關係デアルトカ、左樣ナコトカラ自然ニ
發生スベキモノデアリマシテ、丁度集散ノ
盛ニナル所ニハ大都會ガ出來、集散ノ比較
的少イ所ニハ小都會ガ出來ルト同樣デアリ
マシテ、極メテ自然ノ發生ニ俟ツベキモノ
デアルト思ヒマス、又自然ニ反スル計畫ト
云フモノハ、要スルニ事業其モノニ確立性
ヲ缺クコトニナルデアラウト思ヒマスガ故
ニ、必シモ大規模デアルガ故ニ、ソレガ堅
實ナモノデアルト云フコトハ、到底斷ジ得
ナイモノデアルト思ヒマス、御當局ノ御答
辯カラ致シマスナラバ、當然ノ歸結トシテ、
比較的小ナル製絲家デアリマシテモ、之ヲ
拒否スルノ理由ハ、本法自體ノ論理カラ申
シマシテ、出來得ナイヤウニ思フノデアリ
マスガ、若シ私ノ見解ニ誤リガアルナラバ
御指摘アランコトヲ願ヒタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006311922X00319320830&spkNum=12
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013・後藤文夫
○後藤國務大臣 御話ノヤウナ筋合ノ點モ
アルト思ヒマス、ソレデ先程申上ゲマシタ
ヤウニ、釜數ヲ以テ工場ノ設置ニ一ツノ基
準ヲ置カウトスルノハ、其爲デアリマシ
テ、釜數ガ一定ノ基準ニ合ッテ居ルモノデ
アルナラバ是ハ許ス、許スコトニシタノデ
ハ殖エテ仕方ガナイガ、之ヲ如何ニスルカ、
斯ウ云フ御話デアリマス、隨テ釜數ノ少イ
ノハ、御話ノヤウナ場合モアルト思ヒマス
ガ、〓シテ申セバ不安定ナモノデ、其結果
ガ一面ニハ絲ノ亂賣値崩シトナリ、一面 一
ハ養蠶家ニ掛倒レヲ生ジタリ、或ハ工場デ
失業者ヲ出シタリシテ、色ミナ迷惑ヲ及ボ
シテ居ル、ソレデ釜數ニ基準ヲ置クコトニ
依テ、製絲業ノ安全ヲ圖リ、製絲業界ニ安
定ノ徵候ヲ齎シ得ルモノデアルト思フノデ
アリマス、若シ基準ヲ置カズシテ、拒否何
レデモスル、釜數ガ多イモノデアッテモ許
シテハイカヌ、又少クテモ適切ナルモノデ
アッタナラバ許シタラ宜イト云フコトニシ
マスレバ、免許制度ヲ以テ統制ヲ圖ラウト
云フコトハ出來ナイコトニナリマス、先ヅ
中頃ノ穩當ナ處、〓觀シテ適當ト思フ所ヲ
狙ッテスルト云フコトデ、製絲業ノ免許制
度ト云フモノヲ立テヽ行クヨリ外ニハナカ
ラウト思ッテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006311922X00319320830&spkNum=13
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014・横川重次
○橫川委員 御話ヲ伺ヒマスト矛盾ノ點ガ
非常ニ澤山アル、併シナガラ其矛盾ヲ指摘
致シマシタ所デ、結局議論若クハ見解ノ相
違ト云フコトニ依リマシテ、鳧ガ付クヤウ
ナコトニナルト思ヒマス、此以上其點ニ付
テ御問致シタクナイト思ヒマスガ、唯玆ニ
全體的ニ釜數ノ殖エルコトハ一向差支ナイ
ト云フ御見解デアリマス以上ハ、唯單ニ資
本ノ擴張トカ、釜數ノ擴張トカト云フコト
ニ依テ、其認可ヲ左右スルコトニナリマ
スレバ、當然是ハ資力アルモノ、力アルモ
ノ、比較的資本家的立場ニアルモノニ於
テ、初メテ其特權ヲ享受シ得ルコトニナリ
マシテ、ソレ以外ノ比較的農村ニ關係ノア
ルベキ小資本家乃至ハ地方的資本家ニ、機
會均等デアルベキ現代ニ於キマシテ、其
機會ヲ逸セシムルヤウナコトニナルノデア
リマシテ、何處マデモ此製絲業法ノ趣旨ニ
於キマシテ、現代社會ニ一致セザルモノガ
アルト私ハ考ヘルノデアリマス、併ナガラ
此點ハ姑ク措キマシテ、若シ茲ニ製絲家ガ
生產過剩ヲ難ゼラレルヤウナ時代ガ來マシ
テ、製絲家自體ガ生產制限ヲ圖リ、ソレモ
行ハレズニ國家ガ其統制ニ發動致シマシ
テ、生產制限ヲ國家ノ力ニ依リマシテ行ハ
シムルト云フ可能性ガアルコトハ、昨日御
話ガアリマシタガ、左樣ナ際ニ於キマシテ、
養蠶家ノ蒙ルベキ所ノ損失ニ付キマシテ
ハ、如何ニ御考ニナッテ居リマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006311922X00319320830&spkNum=14
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015・後藤文夫
○後藤國務大臣 其點ガ非常ニ重要ナ問題
デアラウト思ヒマス、市況ノ伸縮ニ依リマ
シテ、製絲業者ガ其生產ヲ或ル程度ニ收縮
スルト云フヤウナコトガ、是ガ直チニ大キ
ナ影響ヲ養蠶家ニ及ボスヤウナコトハアル
マイト思ヒマス、若シ可ナリ思切ッタ生產
制限ヲ製絲家ガヤルコトニナリマスレバ、
是ハ極ク短期デアレバ別デアリマスガ、長
期ニ亙リマスレバ、養蠶家ニ及ボス影響ト
云フモノハ容易デナイノデアリマス、作
タ繭ノ始末ガ付カヌノデアリマス、製絲業
ノ生產制限モ、時〓ノ波動ニ應ジテ自ラ自
然ニ行ハレル或ル程度ノモノハ、自然ノ儘
デ參ッテ直接大シタ不都合ハナイト思ヒマ
ス、併シ生絲ノ生產制限ヲ大規模ニ行フト
云フコトニナレバ、是ハ養蠶家ノ利害ト合
セテ考ヘナケレバナラヌ、決シテ是ハ行ハ
シムベキモノデナイト思ヒマス、併シ事情
已ムヲ得ズシテ、直チニ生產制限ヲ大規模
ニ行フ外ナシト云フ時ニハ、養蠶家ノ利益
ヲ考ヘタ後ニ、其事ヲ實行シナケレバナラ
ヌト思ヒマス、玆ニ製絲業法ガ、斯ノ如キ
稍異常ノ場合ニ對スル非常ナ處置ヲ爲シ得
ルガ爲ニ、統制條項ヲ入レテ居ルヤウナ譯
デアリマシテ、是ハ唯製絲ノ制限ヲスルコ
トヲ統制サセヤウト云フバカリデナク、徒
ニ大キナ制限ヲシヤウトスル時ニ於テモ、
亦當然考慮ヲシナケレバナラヌ、養蠶業者
ノ方ニ對スル處置ト相俟ツニ非ザレバ、是
ガ直チニ其事ヲ放任シ得ナイヤウナ場合モ
アルカト思フノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006311922X00319320830&spkNum=15
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016・横川重次
○橫川委員 製絲家ガ徒ニ多クノ生產制限
ヲ爲サントスルヤウナ狀態ガ惹起リマシタ
際、是ハ當然亞米利加ニ於キマスル消費ナ
リ需要ナリノ關係ヨリ起ルコトデアリマシ
テ、國內的ノ關係デハナイノデアリマスル
ガ、左樣ナ見地カラ申シマスルナラバ、絲價
ノ維持ト云フコトヲ主眼ニ置キマシテ、恐
ラク生產ノ制限ヲヤルモノト思考スルノデ
アリマスガ、左樣ナ際ニ於キマシテハ、又
左樣ナ事態ノ起ラザラムコトヲ期シテ、斯
樣ナ製絲業法ト云フヤウナモノ、卽チ認可
制度ト云フモノヲ設ケタノデアラウト思フ
ノデアリマスルガ、斯樣ナ事態ガ起リ得ル
コトヲ豫想スルコトガ、ソレ自體ニ於テ矛
盾デアルヤウニ思フノデアリマス、左樣ナ
見地カラ申シマスナラバ、此業法ナルモノ
ヲ更ニ一段ト趣旨ヲ徹底セシメマシテ、其
條件ヲ具備スルモノデアリマシテモ、全體
ノ釜數ニ於キマシテ、是ガ急激ノ增加デア
ルト云フヤウナ場合ニ於キマシテハ、或ル
場合國家ノ力ニ於テ其增加ヲ阻止スルト云
フヤウナ、未然ニ生產制限ヲ防グヤウナ態
度ニ出デラレテ、此本法ヲ運用セラルル御
意思ガアルカドウカ、乃至ハ左樣ナ生產制
限ヲシナケレバナラヌヤウナ狀態ニ於キマ
スル、所謂養蠶家ノ蠶繭ノ過剩、斯ウ云フ
ヤウナモノニ對シマシテ、御當局トシテハ
更ニ第二段ノ統制的見地ヨリノ、何等カノ
發動ヲ考慮ナサッテ居ラレルカドウカ、其點
ヲ御伺致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006311922X00319320830&spkNum=16
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017・後藤文夫
○後藤國務大臣 先程御話ノアリマシタ乾
繭倉庫ノ奬勵ノ如キ、又養蠶實行組合ノ聯
合ト云フヤウナモノヽ奬勵ノ如キ、或ハ原
蠶種ニ關スル一ツノ統制ノ如キ、或ハ桑園
ノ改植整理ノ如キ、殊ニ養蠶ノ問題ニナリ
マスルト云フト、爲スベキ方途ハ一ツデナ
ク、色〓ナ方面カラ參ラナケレバナラヌト
思ヒマス、殊ニ此前豫算委員會デモ誰方カ
ラカ御質問ガアリマシタガ、非常ナ激變ガ
製絲界ニ來ッテ、養蠶業者自身ニモ非常ナ困
惑ガ來ル、生絲ノ生產數量ハ非常ニ制限ス
ル外ナイコトニナルト云フヤウナ場合ニ
ハ、餘程思切ック養蠶對策ヲ講ジナケレバナ
ラヌト思ヒマス、其時期ガ又養蠶業其モノ
ニ於ケル統制整理、色ミナモノニ自分ノ力
ノ十分ニ充實シナイ限リニ於テハ、國家ハ
相當ナ力ヲ國家自身カラ發動シテ掛ラナケ
レバナラヌト思ヒマス、又其時期ガ色ミト
今後施行シマスル養蠶業者ノ統制、其他ノ
力ノ充實ト相俟チマスレバ、其時ノ方法ハ
自ラ違ッタ手段ニナルト思ヒマス、今豫メ其
場合ヲ豫想シテ、具體的ナ方法ハドウト
云フコトニハ行キ兼ネルト思フノデアリマ
ス、隨テ今御質問ノ、斯ウ云フ場合ガ來レ
バ、百五十釜以上ノモノデモ許サヌコトニ
スルカ、ソレモ或ハ其時期ニナレバ考ヘナ
ケレバナラヌカモ知レナイト思ヒマス、只
今ノ所デハ今此製絲業法ノ運用ノ手段トシ
テ、當局カラ昨日來御說明申上ゲテ居ルヤ
ウナコトデ參リマシテ、適當デアルト考ヘ
テ居ルノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006311922X00319320830&spkNum=17
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018・横川重次
○橫川委員 私ノ質問ハ此程度デ打切リタ
イト思ヒマス、世ニ伸縮關稅ト云フモノガ
ゴザイマスルガ、本業法ハ洵ニ伸縮的ナル
御見解ノ下ニ立テラレテ居ルヤウナ感ガ致
スノデアリマス、若シ其仲縮的デナイコト
ヲ豫想致シマスルナラバ、本法ハ之ヲ假令
施行致シマシテモ何等ノ效果ナク、寧ロ小
資本家ニ取リマシテ、乃至ハ地方資本家ニ
取リマシテハ、是ハ其機會ノ均等ヲ沒セシ
ムルヤウナ結果ニ相成リマシテ、及ス所上
ニ厚ク下ニ薄イヤウナ感モ致シマス、而モ
當局者ノ御態度ト致シマシテハ、唯易キニ
就ク、斯ウ云フヤウナコトガ種々ナル御說
明ノ中ヲ一貫致シマスル所ノ思想デアルヤ
ウニ思フノデアリマスルガ、其點私ハ甚ダ
遺憾ニ思フノデアリマス、斯樣ニ主トシテ
農村ノ疲弊、中小商工業者ノ困憊ト云フ上
ニ於テ、議會ガ開カレマシタ趣意ニ鑑ミテ
見マシテモ、農林省ノ背後ニ於キマシテハ、
絕對多數ト思ハレル國民ガ付イテ居ルノデ
アリマスカラ、如何ニ大藏省ガ財布ノ口ヲ
締メマシテモ、何處迄モ其信念ニ向ヒマシ
テ、寧ロ難事ニ就クト云フ御考ヲ以チマシ
テ御進ミヲ願ヒタイト思フノデアリマス
ガ、其點甚ダ關係御當局ノ態度ニ付キマシ
テ、遺憾ノ意ヲ表明致シマシテ、私ノ質問
ヲ打切ルコトニ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006311922X00319320830&spkNum=18
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019・加藤知正
○加藤委員 私ハ先ヅ第一ニ御尋申上ゲタ
イノハ、昨今御承知ノ如ク絲價ガ彌ガ上ニ
モ暴騰致シマシテ、今ヤ一千圓臺ヲ突破致
シテ居ルヤウナ次第デアリマス、長イ間悲
慘ナル狀態ニ苦シンデ居マシタ蠶絲業者ハ
漸ク愁眉ヲ開イテ、此一大福音ニ接シタコ
トヲ非常ニ喜ンデ居ル次第デアリマス、併
ナガラ其反面ニハ、今斯ノ如ク絲價ハ暴騰
シタケレドモ、此反動ガ直チニ來リハセヌ
カ、萬一左樣ナコトガアッテハ、全ク東ノ間
ノ喜デ、再ビ悲慘ノ狀態ヲ繰返シテ苦シマ
ナケレバナラヌ、是ニ於テ一面ニハ之ヲ喜
ブト同時ニ、又一面ニハ之ヲ心配スルト云
フヤウナ狀態ノ下ニアル當業者ガ中〓少ク
ナイノデアリマス、是ニ於テカ多クノ人と
ハ一體此絲價ノ斯ノ如ク急激ニ暴騰致シ
タ原因果シテ何處ニアルカ、又此反動ガ直
チニ來リハセヌカ、此點ニ付テ責任アル方
ノ御意見ヲ伺ヒタイト云フコトハ、恐ラク
二百萬蠶絲業者ノ希望スル所デアラウト思
フノデアリマス、故ニ之ヲ大臣ニ御尋申上
ゲルト云フコトハ、少シク無理ナ質問ノヤ
ウニ思ヒマスルケレドモ、併ナガラ當業者
ト致シマシテハ、是非共之ヲ伺ヒタイト云
フ希望ヲ持ッテ居ルノデアリマスルシ、又
政府當局ニ於カセラレマシテモ、必ズヤ多
クノ人とヲシテ、此點ニ付テ十分ノ調査
ヲセシメラレテ居ルコトヽ信ズルガ故ニ、
此機會ニ於キマシテ大臣ノ口ヲ通シテ、此
絲價ノ昂騰致シタ原因、竝ニ此反動ガ直チ
ニ來ルカドウカ、將來ニ對スル所ノ御意見
ヲ伺ヒマシテ、サウシテ多數當業者ノ安心
スルヤウニ致シタイト思フ次第デアリマス
カラ、ドウカ大臣ハ之ヲ諒トセラレテ、此
點ニ付テ先以テ御意見ノアル所ヲ御話下サ
ルヤウニ御願申上ゲタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006311922X00319320830&spkNum=19
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020・後藤文夫
○後藤國務大臣 御尋ハ洵ニ御尤ナ御懸念
デアルト思ヒマス、是マデ吾ミノ調ベマシ
タ所ニ依テモ、觀測ト之ニ伴フ見解トヲ中
上ゲル外ハナイト思ヒマス、殊ニ將來ノコ
トヲ完全ニ豫測スルコトハ中ニ困難デアリ
マスガ、是迄ノ吾こノ知リ得タ所ニ依テ、
只今ノ見解ヲ一應申上ゲテ見マスレバ、今
日絲價ガ著シク騰貴シマシタ原因ハ、第
ニ亞米利加ニ於ケル需要ノ增加シタコトデ
アリマス、亞米利加一般ノ經濟界ガ、何ト
ナク景氣ガ底ヲ突イテ上向キ掛ケタヤウナ
形ガ現ハレテ居リマス、之ニ付テモ其將來
ニ付テ色こナ觀測ガ行ハレテ居ルヤウデア
リマスガ、サウ云フ結果モアリマセウカ、
兎ニ角絲ノ需要ハ殖エマシテ、絲相場ガ亞
米利加ニ於テハ非常ニ手堅ク騰リ始メテ居
ル、今度ハ供給ノ側デアル、我國ニ於テハ
先年來蠶絲界ノ不況其他ノ爲ニ、養蠶ノ縮
小ガ行ハレ、繭ノ產額ガ減ジテ居リマス、
隨テ又生絲ノ產額モ減ジテ居リマス、是ハ
自然ニ一ツノ減產ガ行ハレテ居リマス、供
給ノ方ハ頗ル手堅イ有樣デアリマス、此需
給關係ガ今日ノ絲價ヲ好轉セシメタ、只今
ノ所デハ基礎ヲナシテ居ルヤウデアリマ
ス、ソレニ加ヘテ爲替相場ノ益〓安クナッテ
居リマスコト、此爲替相場ノ安クナッテ居
リマスルコトハ、需給關係サヘ手堅カッタ
ナラバ、早ク現ハレテ居ラナケレバナラヌ
コトデアッテ、寧ロ絲價ニハ好影響ヲ及ボ
シテ居ラナケレバナラナイノデアリマスケ
レドモ、御承知ノ通リ多量ノ滯貨生絲ト云
フヤウナモノガアッテ、此爲替相場ノ變動
カラ來ル自然ノ絲價ノ統制ヲ常ニ抑壓シテ
居ッタヤウナコトデアリマス、幸ニ前議會
デ御協贊ヲ經マシテ、之ヲ市場カラ取除ク
コトガ出來マシタ爲ニ、此爲替相場ノ下落
ト實際ノ需給關係トノ自然影響ガ市況ニ現
ハレテ來ルヤウニナッテ、是等ノ原因ガ只
今ノ所デハ絲價ヲ騰貴セシメルニ至ッテ居
リマス、絲價ノ將來ハ今ノ所デハ可ナリ手
堅イト見込マレテ居ルノデアリマス、併ナ
ガラ將來ノコトハ何トモ測リ兼ネル場合ガ
アリマスルシ、此際蠶絲業ノ關係者ト致シ
マシテハ、全般ニ亙ッテ此好景氣ニ唯浮カ
レテ徒ニ乘ズルト云フヤウナコトガアッテ
ハナラヌト思フノデアリマス、斯ウ云フ機
會ニ於テコソ過去ノ苦イ經驗ヲ考ヘテ、養
蠶業ノ方ノ人モ唯好クナッタカラ、又過去
ノヤウニ折角桑畑ヲ食料用品ノ畑ニ切換ヘ
ヤウトシタノヲ、又止メテ桑ニシテ養蠶ヲ
ドン〓〓ヤラウト云フヤウナ、寧ロ養蠶ノ
增產ノ傾向ニナラザルヤウニ注意スルコト
ガ必要デアリマス、他ノ產業等ヲ成ベク加
味シテ、養蠶ノ自然ノ堅實ナル地步ヲ今
日カラ用意シテ置クト云フコトガ必要デア
ルト思ヒマス、又製絲業ニ於テモ、好ク
ナッタト云フノデ、ドン〓〓亂立ヲスルト
云フヤウナコトノナイヤウニスルコトガ、
今日必要デアルト思ヒマス、此好景氣ヲ見
テ寧ロ警戒シ、用心スルト共ニ、將來ニ備
ヘルノ氣分ヲ各方面ニ全體ニ亙ッテ確カリ
ト持ッテ戴キタイ、斯ウ云フヤウナ考ヲ持ッ
テ居ル譯デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006311922X00319320830&spkNum=20
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021・加藤知正
○加藤委員 只今大臣ノ御意見ヲ伺ヒマス
ト、第一ハ亞米利加ノ需要增加、今一ツハ
內地ノ產繭額ノ減少、是ト同時ニ爲替相場
ノ低落、斯ウ云フコトガ關聯シテ今日ノ絲
價ノ〓騰ヲ促シタノデアル、斯樣ニ仰セラ
レルヤウデアリマスガ、私共モ定メシサウ
云フコトデアラウカト想像致シテ居ルノデ
アリマス、之ニ付キマシテ一應御伺シタイ
ノハ、亞米利加ノ生絲ノ需要增進ハ、亞米
利加ノ景氣恢復ノ結果デアリマセウカ、或
ハ其他ノ原因ガアッテ斯ノ如キ需要ヲ增加
シタノデアリマセウカ、此點ニ付テノ御調
査モ出來テ居ルコトヽ考ヘマスカラ御伺ヲ
申上ゲタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006311922X00319320830&spkNum=21
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022・後藤文夫
○後藤國務大臣 亞米利加ノ需要增進ハ、
只今知リ得タ情報ニ依リマスト、ヤハリ實
際ノ需要ノ增加ニ伴ッテ居ルヤウデアリマ
ス、機屋ガ相當ニ景氣ガ好ク絲ヲ仕入レテ
來ル、絲バカリデナク、生絲ト相竝ンデ參リ
マス人造絹絲ノ如キモ、ヤハリ同ジヤウナ
需要ノ增加、値段ノ騰貴ヲ見テ居ルヤウデ
アリマス、ソレガ絲ノ市場ニ反響シテ居ル
ト云フ有樣デアルト云フヤウニ聞知ッテ居
リマス、尙ホ又他ニ細カイ材料ガアレバ何
レ當局ノ方カラ御答致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006311922X00319320830&spkNum=22
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023・加藤知正
○加藤委員 左樣致シマスト、詰リ亞米利
加ノ景氣ガ恢復シタモノト見テ宜シウゴザ
イマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006311922X00319320830&spkNum=23
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024・後藤文夫
○後藤國務大臣 亞米利加ノ景氣ガ恢復シ
タノデアルト見テ宜イカ、ドウデアルカト
云フ全般ノ問題ニナルト、マダ餘程今日疑
問ヲ抱イテ居ル人ガ多イヤウデアリマス、
併シ實際ニ品物ノ需要ガボツ〓〓殖エテ居
ルト云フコトハ事實デゴザイマス、亞米利
加ノ景氣ガ幾ラカ底ヲ突イテ上向キ掛ケタ
ノデハナイカト云フヤウナ判斷ヲスル人ガ
多イノデアリマス、併ナガラ一方ニハ亞米
利加ノ株ナドノ騰貴ハ、大統領選擧前ノ一
ツノ操作ニ基イテ居ルモノデアルト云フヤ
ウナコトモ言ハレテ居リマス、株界ノ景氣
ガ亦一體ノ產業界ニ色ミナ影響ヲ及ボシテ
居ルノデハナイカト云フコトヲ言フ人モア
リマス、併シ絲ノ需要ノ增加ノ原因ガ、機
屋ノ絲ニ對スル需要ノ增加デアリマス、其
機屋ノ見込ハヤハリ實際ノ織物其他人造絹
絲ノ增加等ヲ見込ンデ居ル上カラ考ヘマス
ト、幾ラカ亞米利加ニ於ケル購買力ニ勢ガ
突ッ掛ケテ來テ居ルノデハナイカト思ハレ
ルノデアリマス、直チニ亞米利加ノ景氣ガ
ドン〓〓好轉シテ行クノダト云フヤウナ、
樂觀的ノ觀察ハ私共ハ致シ兼ネマスケレド
モ、只今ノ實情ハサウ云フコトデアルヤウ
ニ思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006311922X00319320830&spkNum=24
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025・加藤知正
○加藤委員 內地ノ產繭額ノ減少ハ、農林
省ノ調査ニ依リマスト、確カ一割六分デアッ
タカト思ヒマスガ、數字ガ違ッタラ御直シ
ヲ願ヒマス、確カ其樣ナ御發表デアッタカ
ト思ヒマス、所ガ實際ニ依ルト二割以上ハ
減少ト云フコトヲ、各大製絲家ハ異口同音
ニ言ッテ居リマス、兎ニ角內地產繭額ノ
大減少ハ免レヌコトヽ考ヘテ居ルノデアリ
マスガ、更ニ關係スル所ハ、支那ノ產繭額
デアルト考ヘルノデアリマス、吾〓ノ聞ク
所ニ依ルト、支那ノ產繭額ハ、一昨年ニ比
ベマシテ昨年ハ殆ド半額デアル、所ガ其昨
年ニ比ベテ本年ハ尙ホ一層ノ減少デアルト
云フコトヲ聞イテ居リマスガ、是ハ果シテ
事實デアルカドウカ、斯ウ云フ方面ノ御調
査ガ付イテ居ルコトヽ思ヒマスカラ、入江
蠶絲局長カラ御伺申上ゲタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006311922X00319320830&spkNum=25
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026・入江魁
○入江政府委員 大體御話ノ通リデゴザイ
マシテ、支那方面ニ於キマシテハ、色〓ナ事
情カラ申シマシテ、其產額ガ昨年ヨリ非常
ニ惡イト云フコトモ、半減シテ居ルト云フ
ヤウナコトマデモ聞イテ居リマス、隨テソ
レニ對シテ輸出奬勵ヲ圖ルトカ、奬勵金ヲ
出シテ生產奬勵ヲスルト云フヤウナ方面ニ
ハ、支那デモ努メテ居ルヤウニ聞及ンデ居
リマス、ソレカラ伊太利、佛蘭西デアリマ
スガ、此方面ニ於キマシテモ、寧ロ日本ノ
絲ガ非常ニ安クナッタト云フコトニ支配サ
レマシテ、其結果生產ガ非常ニ減ジテ來
タ、生產シテモ値段ガ安クテ賣レナイ、斯
ウ云フ關係ヲ以チマシテ、伊太利、佛蘭西
ニ於テハ非常ニ苦シミマシテ、隨テ伊太利
ノ如キハ一貫目幾ラ、向フデハ「リラ」ト
ナッテ居リマスガ、一貫目ニ對シマシテ何
「リラ」ヲ出ストカ云フ風ナ細イ調ガ來テ居
リマスガ、サウ云フ風ニ一貫目ニ對シテ、
換算シマスト約七十錢位ノ奬勵金ヲ出シテ
居ル、斯ウ云フ風ニシテ自國ノ生產ヲ奬勵
スルト同時ニ、伊太利、佛蘭西等ノ織物業
ハ互ニ關係ヲ持チマシテ、出來ルダケ奬勵
スルト云フ風ニ致シテ居ッテモ尙ホ生產ガ
少イ、斯ウ云フコトガ日本ノ絲ニ好轉ヲ
面ニ於テ齎シタモノデナイカト云フコトヲ
今考ヘテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006311922X00319320830&spkNum=26
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027・加藤知正
○加藤委員 大臣ノ御意見ト云ヒ、又蠶絲
局長ノ只今ノ御話ト云ヒ、何レモ絲價ガ此
上共反動的ニ大暴落ヲ來スヤウナ心配ハナ
イヤウニ思フノデアリマス、所デ全國ノ養
蠶家ハ、此際大イニ秋蠶ニ向ッテ掃立ヲ致
シタイト云フ希望ヲ持ッテ居ルヤウデアリ
マスガ、如何ニセン桑園ノ用意ガ足リナ
イ、生產制限ト云フヤウナ聲ニ驚カサレ
テ、大分桑ヲ引拔イタ處モアルヤウニ聞イ
テ居ル、又天候ヤ害蟲等ノ關係モアッタ爲
メデアリマセウカ、此秋蠶用ノ桑園ガ思フ
ヤウニハ行カナイト云フ關係ノアル所へ、
更ニ一面ニハ蠶種ガ非常ニ供給不足ニナッ
テ居ル、是ハ蠶種業組合ガ曩ニ三割ノ減少
ヲ申合セタ關係カラデモアリマセウガ、蠶
種ノ供給ガ著シク不足ヲ告ゲテ居ル、デア
リマスカラシテ、種ガアッテモ桑ガナクテ困
ル者、桑ガアッテモ蠶種ガナクテ掃立テ得ナ
イ者ガ少クナイヤウデアリマスカラ、秋蠶
ノ繭モ案外減少スルカモ知レマセヌ、斯樣
ナ際ハ一本ノ桑樹モ大切ト云フコトニナル
ノデアルカラ、當業者ノ中ニハ斯樣ニ申シ
テ居ル者ガアル、政府ハ此度ノ臨時議會ニ
三百七十萬圓ノ桑園整理改植費ヲ要求シテ
居ルケレドモ、昨今ノ如ク蠶絲業界ガ好轉
シツヽアッテ、更ニ其前途ニ心配ガナイト
云フコトナラバ、此費用ヲ他ノ奬勵費ニ振
リ向ケテ貰ヒタイ、殊ニ關西方面ニ於ケル
蠶絲業者ノ如キハ、桑園整理改植ヨリモ、
寧ロ此金ヲ蠶絲業ノ技術員設置ノ奬勵費ニ
向ケテ貰ッタ方ガ、ドレダケ結構デアルカ
分ラヌト云フヤウナコトヲ申シテ居ルノ
デアリマス、絲價ガ斯ノ如ク好轉シテ見ル
ト、斯樣ナ希望ヲ持ツノモ一應ハ尤ノヤウ
ニ思ハレマス、併ナガラ既ニ豫算ニ桑園ノ
整理改植トシテ御計上ニナッタモノヲ、今
更變更ノ出來ヤウ筈モナク、又現在我國ノ
桑園狀態ニ照シマシテ、決シテ無用ノ計畫
デナイ以上ハ、當業者ニ左樣ナ希望ヲスル
者ガアッタト云ッテ、直チニ之ヲ採上ゲラレ
ヌコトハ申ス迄モゴザイマセヌ、併ナガラ
永イ間不況ニ苦シンダ蠶絲業者トシテ、斯
カル希望ヲ此際起スノモ尤ト思フノデアリ
マスガ、之ニ對シテ政府當局トシテハ如何
樣ニ御考デアリマセウカ、此際一ツ農林大
臣ノ御意見ヲ伺ッテ置キタイト思フノデア
リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006311922X00319320830&spkNum=27
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028・後藤文夫
○後藤國務大臣 只今同業者ノ中ニ段々起
キツヽアル希望デアルト云フコトノ御話ガ
アリマシタガ、當然起リサウナ事柄デアル
ト思ヒマス、併ナガラ私共ノ見解ト致シマ
シテハ、此際絲ガ景氣ガ好クナルカラト云ッ
テ、非常ニ桑園ヲ殖シ增產ヲスルト云フコ
トハ、目先ニハ利益ノ如ク見エルケレド
モ、結局吾〓ノ希望スル所ハ、養蠶業者ノ
手取ノ金ト申スヨリモ、經濟費ヲ差引イタ
實益ガ如何ナル所ニ落著クカ、此實益ノ大
キイ所ガ主眼デアル、若シサウ云フ際ニ
時ノ景氣ニ乘ジテ、將來モ增產ヲ計畫スル
ト云フヤウナコトガアリマスト、其增產ハ
絲ノ相場ニ又非常ニ惡イ影響ヲ及ボシテ、
結局增產ハシテモ繭ノ値ガ安イ爲ニ、生產
量ガ比較的多クテモ、其利益ハ遙ニ少イ利
益ヲ得ルニ至ル、斯ウ云フ事實ハ、今年ノ
狀況ガ實際ニ吾ミニ〓へテ居ルノデアリマ
ス、其點ハ十分養蠶業者ニ對シテモ警告ヲ
與ヘナケレバナラヌト思ッテ居リマス、御
話ノヤウニ桑園ノ整理改植ト云フヤウナコ
トハ、一面ニハ生產費ヲ下ゲ、一面ニハ無
暗ニ增產スルコトノナイヤウニ致ス爲ニ、
是ハ是非實行シテ行キタイト吾〓ハ考ヘテ
居リマスガ、唯其外ニ養蠶ノ技術者其他ノ
充實ヲ圖ルト云フコトハ、御話ノ通リニ非
常ニ緊急ナコトデアルト思ヒマス、當局ニ
於テモ豫テサウ云フコトニ力ヲ致シタイト
云フ考ヲ持ッテ參ッテ居ルノデアリマスガ、
何分ニモ財政上ノ都合デ、今日マデ十分ナ
コトガ出來ズニ居リマス、今後トモ其點ニ
努力致シタイト考ヘテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006311922X00319320830&spkNum=28
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029・加藤知正
○加藤委員 絲價ガ千圓臺ヲ突破致シマシ
タ爲ニ、關西ノ或ル大製絲家ノ如キハ、昨
日入手致シマシタ報道ニ依リマスト、-日
ニ四萬五千圓以上ノ純益ガ擧ガルト云フコ
トデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006311922X00319320830&spkNum=29
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030・生田和平
○生田委員長 加藤君、御說明デスガ、今
農林大臣ハ他ニ行カンナラヌサウデアリマ
スカラ、成ベク簡單ニ御願シタイト思ヒマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006311922X00319320830&spkNum=30
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031・加藤知正
○加藤委員 マダ大分アルノデスガ-ソ
レデハ後廻シニ致シマセウカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006311922X00319320830&spkNum=31
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032・生田和平
○生田委員長 マダ澤山アルデセウカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006311922X00319320830&spkNum=32
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033・加藤知正
○加藤委員 マダ一時間以上御伺シナケレ
バナリマセヌカラ···発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006311922X00319320830&spkNum=33
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034・生田和平
○生田委員長 ソレデハ一寸御伺致シマ
ス、製絲業ヲ統制經濟ニ移スト云フコトハ、
私共認メテ居ルノデスガ、此法案ノ結果ハ
大資本家擁護ニナルト思ヒマス、大資本家
ニ統制セラレル結果ニナルト思ヒマス、此
附則ノ十年ヲ待タズシテ、小サイモノハ段
段潰レテシマッテ併合セラレル、又十年後
ニ於テハ、此製絲業ト云フモノモ、結局紡
績業ト云フコトニナルノデハナイカト考ヘ
ラレテ居リマス、恐ラク政府ノ方デハ、百
五十釜三十萬圓位ノ基準デ御覽ニナッテ居
ルケレドモ、十年後ニハ其十倍ノ三百萬
位デナケレバヤレヌデハナイカト云フ私見
ヲ持ッテ居リマス、紡績業ハ御承知ノ如ク
綿花ヲ外國カラ求メマスカラ、原料ヲ買フ
コトニ付テハ生絲トハ違フ、製絲工場ノ方
ノ工賃ノ問題ハ、是亦紡績業デモ今ノ通リ
弊害ヲ認メテ居ラヌカラ、生絲業ニ於テモ
非常ナル弊害ハ生ジナイ、唯原料ヲ買フ時
ニ、大製絲家ノミニナッタ場合ニ於テ、繭
ノ高下ノ値段ヲ確定シテ安ク買ウヤウナコ
トガ少クゴザイマセヌ、私共ノ經驗ニ依リ
マシテモ、旣往ニ於テ屢〓サウ云フ事ヲ製絲
家ハ中合セテヤッテ見タコトガアルガ、何
時モ實行出來ナカッタ、何時モ破レルノデ
アリマスケレドモ、本法ガ實施セラレテ後
ニ、段々小製絲家ガ潰レテ大製絲家ガー
具體的ニ言ヘバ鐘紡ノ如キ、或ハ片倉ノ如
キ、アヽ云フヤウナ大製絲家、大資本家ニ
統制セラレタ時ニハ繭ヲ安ク買ハウ、斯ウ
云フ申合ヲ公然デハナクシテ密ニスル場合
ガナシトセヌ、私共經驗ノ上カラサウ云フ
コトガアリ得ルト思フ、サウ云フ際ニ於
テ、只今農林大臣カラ横川君ノ質問ニ御答
ニナッタガ、第三條ノ「統制上必要ナル事項
ヲ命ズルコトヲ得」之ニ對シテサウ云フ非
常時ノ場合ノ取締、監督ト云フコトヲ御考
ニナッテ居ルデアラウト思フノデアリマス
ガ、私ノ憂ヘテ居ルヤウナ問題ガ、繭ノ値
段バカリデナシニ、其以外ノ事ガ生ジハシ
ナイカト思フノデアリマス、其取締ニ對シ
テ政府ハ相當ノ御用意ガナケレバナラヌト
思フノデアリマスガ、何カ御考ニナッテ居
ラレマスカ、其點ヲ承ッテ置キタイト思ヒ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006311922X00319320830&spkNum=34
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035・後藤文夫
○後藤國務大臣 サウ云フ場合モ政府ハ相
當ナ働キヲシナケレバナラスト思ッテ居リ
マット、サウ云フコトニ對應スル爲ニハ、養
〓家ノ間ノ統制モ相當今後ニ進メテ行カナ
ケレバナラヌ、各方面利害ヲ異ニスルモノ
ノ間ノ調節ヲ計ルコトガ、養蠶業ノ統制ノ
問題トシテ又非常ニ大キナ問題ヲ生ジテ來
ルト思フ、併シ御話ノヤウニ大資本ニ製絲
業ガ段々集中セラレテ行クデアラウト云フ
傾向モゴザイマセウト思ヒマスルガ、叉、
面ニハ製絲組合等ノ發達ヲモ出來ル限リ計
リタイト思ッテ居リマス、製絲業ガ唯無暗
ニ大資本ノ方ヘ集中サレテ、其結果ガ寧ロ
養蠶業ヲ壓迫スルト云フヤウナコトノナイ
ヤウニスルコトニモ、諸種ノ方法ヲ今後ニ
於テ考ヘテ行カナケレバナラヌト思ヒマ
ス、製絲業法ニ於ケル統制ニ關スル命令ヲ
發スルコトガ出來ルト云フコトハ、主トシ
テ規格ノ統一ノ問題デアリマストカ、製造
又ハ販賣等ニ關ヌル問題ニ付テ、製絲業者
ハ自治的ナ統制ヲ希望スルノデアリマス
ガ、サウ云フ力ノ及バナイ事ノ起リマス場
合ヲ想像致シマスト、一面ニ於テ先程カラ
申上ゲタヤウニ、逆ニ製絲家ガ結合ノ力ニ
依テ利害ノ立場ヲ異ニスル他ノ者ヲヒドク
壓迫シテ行カウト云フ場合ニモ、何等カノ
力ヲ發揮シ得ルヤウニ致シタイ、斯ウ云フ
ヤウニ考ヘテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006311922X00319320830&spkNum=35
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036・生田和平
○生田委員長 モウ一ツ御尋致シマス、現
在ノ製絲業界ノ有樣ヲ實例デ見マスト、假
ニ片倉ノ如キハ、御法川式ト云フ「パテン
ト」ヲ買收シテヤッテ居ル、將來此製絲業ノ
技術上ノ發達ト云フモノハ色〓アルダラウ
ト思フ、技術上ノ發達ハ色〓アルダラウト
思フガ、其時ニ小製絲家ハ此專賣權ヲ買フ
コトガ出來ナイノデ、大資本家ノミガ買
フ、斯ウ云フヤウナ結果ニナルト、小製絲家
ハ利益ト云フモノヲ擧ゲルコトガ出來ナ
イ、現ニ片倉デハ之ニ依テ高ク賣ッテ居ル
ノデアリマスカラ、他ノ製絲家ガ儲ケヌデ
モ、是等ノ製絲家ハ儲ケテ居ル、又郡是ハ
他ノ方法デ非常ニ成績ヲ擧ゲテ居ルカラ、
是等ト競爭スルコトガ出來ナクテ、小製絲
家ハ倒サレテ大資本家ニ併合セラレテ居
ル、又三百萬釜、五百萬釜ヲ大製絲家ト云ッ
テモ、實際ハ小製絲家ニナッテシマフノデ
アルカラ、此法案ヲ拵ヘル以上ハ、ドウシ
テモ將來大製絲家ノ橫暴ヲ抑ヘルト云フ强
イ力ヲ此法ハ持ッテ居ラナケレバナラヌト
考ヘル、政府ハサウ云フ御決意或ハ御用意
ガアルカ、モウ一度承リタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006311922X00319320830&spkNum=36
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037・後藤文夫
○後藤國務大臣 小サイ製絲家ガ、餘リ小
サクテハ困リマスノデ、此法案ハサウ云
フ趣旨ヲ考ヘテ居ルノデアリマス、丁度
中小商工業者ニ付テ今日起キテ居ル問題
ガ、ヤハリ其儘製絲業ノ間ニモ起リ得ル問
題デアリマス、成ベク中小ノ製絲家ガ聯合
ノ力、共同ノ力ヲ發揮スルコトニ依テ、大
規模ノ製絲家ト相當ナ程度ニ競爭ガ出來、
併立シテ行ケルト云フコトニ至ランコトヲ
政府トシテハ希望シテ居ルノデアリマス、
此附則等ヲ設ケマシタ精神モ其處ニアルノ
デアリマス、尙ホ更ニ御話ノヤウナ、大製
絲業ガ蠶絲業全體ノ上ニ非常ナ橫暴ナ働キ
ヲスルト云フヤウナコトガ起リマスレバ、
ヤハリ政府ハ其力ヲ以テ相當ナ制肘ヲ加ヘ
ナケレバナラヌ場合ガアリ得ルダラウト思
ヒマス、サウ云フ場合ニ處スルニモ、只今
申シタ統制上ノ命令ヲ發スルト云フ事柄
ガ、此條文ノ適用ノ出來ル限リニ於テハア
ルノデハナカラウカト思フノデアリマス、
併シ唯徒ニ小サキ、色ミノ場合ノ變動ニ依
テ動キマス形勢ニ、一々政府ノ力ヲ以テ干
渉シテヤルト云フコトハ不穩當デアリマス
カラ、其統制ノ爲メノ命令ト云フコトハ、
容易ニ發動ヲサセルベキモノデハナイト思
ヒマス、唯非常ナ事柄ガ起リマス場合ニ
ハ、發動致シタイ積リデ居ルノデアリマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006311922X00319320830&spkNum=37
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038・生田和平
○生田委員長 分リマシタ、ソレカラ法ノ
運用ニ付テ一二點、第一條ニ、本法ニ於テ
製絲業者トハ命令ヲ以テ規定スル者ヲ除ク
ノ外器械生絲ノ製造ヲ業トスル者、其次
ハ器械生絲ノ製造工場ヲ有スル產業組合
云々トアリマス、產業組合ノ方ハ製造工場
ヲ有スルト書イテアリマスガ、第一項ハ工
場ヲ有スルトハ書イテナイノデアリマス、
是ハ實例ヲ申スト、此不況時デ工場ヲ所有
シテ居ル者ガ休ンデ居ル者、或ハ賃借ヲシ
テ居ル者ガアル、其賃借シテ居ル者ニ對シ
テ、本法ノ附則ニ依テ認可ヲ受ケタル者ト
看做スト云フコトニナルト、工場ヲ持ッテ
居ル人ハ製造權ガ將來無クナッテシマフノ
デス、是ハドチラヲ主トシテ製絲業者ト云
フ條文ヲ當篏メテ運用ニナルノデアリマセ
ウカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006311922X00319320830&spkNum=38
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039・入江魁
○入江政府委員 第一條ニ於キマシテ、第
一項ノ要點ニアリマス器械生絲ノ製造ヲ業
トスルト書キマシテ、第二項ノ方ニ於キマ
シテ器械生絲ノ製造工場ヲ有スルト書キマ
シタ所以ハ、此器械生絲ノ製造ヲ業トスル
ト書キマシタコトニ付キマシテハ、製絲業
者必シモ工場ヲ持ッテ居ル者デハナイト云
フ建前デ出發致シテ居ルノデアリマス、第
二項ノ方面ニ於キマシテハ、斯ウ云フ場合
ヲ豫想シテ居リマス、販賣業組合ト云フヤ
ウナモノガゴザイマシテ、工場ハ持ッテ居
リマセヌガ、其產業組合ノ販賣組合ヲ利用
シー、サウシテ之ヲ組合員ガ利用スル、サ
ウ云フ風ナ場合モアリマスノデ、意義ニ於
テハ全然同ジデアリマス、唯御尋ノヤウ
ナ、例ヘバ玆ニ賃貸ヲシテ居ル場合デハナ
カラウカト存ジマスガ、第一條ノ場合ニ於
キマシテハ、兩方トモ製絲業者ト斯ウナル
ノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006311922X00319320830&spkNum=39
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040・生田和平
○生田委員長 モウ一ツ第四條ノ免許ヲ受
ケタル日ヨリ一年以內ニ事業ヲ開始セザル
云々トアリマスガ、假ニ本法ニ依テ此適用
ヲ受ケテ出願ヲシテ許可ヲ受ケルト-假
ニ株式會社デ許可ヲ受ケルト、其株ヲ募集
シナケレバナラヌ、工場ヲ建テナケレバナ
ラヌ、繭ヲ仕入レナケレバナラヌ、斯ウ云フ
コトニナルト、一年以內ニハ實際ニヤレナ
イコトガ多イダラウト思フノデアリマス、
サウ云フ場合ニ此許可ヲ取消スカ、又其次
ノ項ニ於テモ、一年以上其事業ノ全部又ハ
一部ヲ爲サヾルトキハ取消シ又ハ制限ヲス
ル云々トアリマスガ、是モ此處二三年來ノ
非常ナ不景氣ノ場合ニハ、實際一年位休ム
コトモアルト思ヒマス、若シ休メバ其事業
ガ直チニ取消サレルト云フコトニナルト、
當業者ハ非常ニ迷惑ヲスルト思フノデアリ
マスガ、此點ハ如何デアリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006311922X00319320830&spkNum=40
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041・後藤文夫
○後藤國務大臣 御懸念デアリマスガ、是
ハ取扱ノ手續ノ上デ、正式ニ認可ヲ受ケテ
カラ一年ト云フコトデアリマスカラ、恐ラ
ク今申シタヤウナ餘裕ハ、普通ニスルモノ
デアリマスレバ、特別ナ事情デ出來ナカッ
タリ、又ハ故意ニ引延バシタリスルヤウナ
モノデアリマスト、サウハ參リマスマイケ
レドモ、誠意ヲ以テ仕事ヲヤッテ行クノデ
アリマスト、大シタ不便ナク行ケルモノニ
ナルノデハナイカト思ヒマスガ、尙ホ手續
ノコトニ付テ、何カ事務ノ方デ申上ゲルコ
トガアリマスレバ申上ゲルコトニ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006311922X00319320830&spkNum=41
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042・生田和平
○生田委員長 私ハ是デ宜シウゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006311922X00319320830&spkNum=42
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043・武田徳三郎
○武田委員 此際若シ時間ガアリマスナラ
バ、私共ノ提案ノ說明ノ機會ヲ御與ヘ願ッ
タ方ガ、審議上御便宜デハアリマスマイカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006311922X00319320830&spkNum=43
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044・生田和平
○生田委員長 只今武田君ヨリ胎中楠右衞
門君外二名提出ノ製絲業外三件ノ說明ヲ致
シタイト云フ御希望ガアルノデスガ、說明
ヲ許シテ差支アリマヒヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006311922X00319320830&spkNum=44
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045・生田和平
○生田委員長 武田君、御說明ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006311922X00319320830&spkNum=45
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046・武田徳三郎
○武田委員 私共カラ提案シテ居リマス蠶
絲業統制ニ關スル法案ハ四ツアルノデゴザ
イマスガ、ソレハ總テ蠶絲業全體ニ亙ッテ
關聯シタル統制案デアリマシテ、便宜上一
括シテ說明ヲ致シタイト思フノデアリマス
カラ、左樣御承知ヲ願ヒタイト思ヒマス、
先ヅ第一番ニ吾ミガ統制ヲ必要トスル理由
ヲ簡單ニ申上ゲテ、サウシテ各案ニ付テ說
明ヲ致シタイト存ジマス、單リ蠶絲業ノミ
ニ拘ラズ、一切ノ產業ニ對シテ適當ナル統
制ヲ加ヘルト云フコトハ、是ハ殆ド今日ノ
輿論デアルト思フノデアリマス、唯其統制
ノ方法ニ於キマシテハ、所謂自治的ノ統制
ニ委スコトモアリマセウシ、或ハ政府ガ之
ニ多少ノ干涉ヲ加ヘテ、大體ハ自治的ニ統
制セシムルト云フ方法モアリマセウ、又或
ハ政府ガ權力ヲ以テ其統制ニ當ルト云フ方
法モアルノデアリマス、重要產業統制法ノ
如キハ、其丁度中間ニ位シタモノデアルヤ
ウニ思フノデアリマス、吾ミハ此蠶絲業ニ
關シテハ、左樣ナ當業者ノ自治ニ委カスト
云フ統制デハ、到底不滿足デアルト思フノ
デアリマス、是ハ申ス迄モナク蠶絲業ハ大
體ニ於テ外國貿易ニ依存シテ居ルモノデア
リマス、外國ニ對シテ十分ナル統制ヲ付
ケルト云フコトニ付キマシテハ、相當强力
ナ統制デナケレバ效果ガナカラウト思フノ
デアル、勿論餘リ國家ノ力ヲ加ヘ過ギルト
云フコトガアリマスルト云フト、感情的ニ
或ハ利害ノ衝突ノ結果、貿易上ノ相手方ノ
國ニ於テ、一方的ノ報復的ニ何等カ計畫サ
レナイトモ限リマセヌカラ、其場合ハ適當
ナ考慮ヲ要スルノデゴザイマスルケレド
モ、兎ニ角相當强力ナ統制ヲ付ケナケレ
バ完全ナルモノニナッテ行カナイダラウ
ト云フ見解ニ基イテ、吾〓ハ立案ヲ致シタ
ノデアリマス、ソレデ蠶絲業ノ統制ニ當ッ
テハ、其統制ノ目的ガ何レニアルカト云フ
コトヲ、先ヅ第一ニ考ヘナケレバナラヌト
思フノデアリマス、吾〓ハ此蠶絲業ノ統制
ハ、蠶絲業ノ生產者ヲ救濟スルト云フコト
ガ目的デナケレバナラヌト思フノデアリマ
ス、蠶絲業ノ生產者ト中セバ、勿論養蠶家
ト製絲家デアリマス、更ニ蠶絲業ニ關係シ
テ、其出來タ生產物、卽チ生絲ノ配給ト云
フコトニ當ッテ居ル當業者モ勿論アルノデ
アリマス、ソレハ何デアルカト云フナラバ、
卽チ今日デ申シマスルナラバ問屋ト輸出商
デアリマス、是ハ私ガ詳シイコトヲ申上ゲ
ル必要モナイヤウナコトデアリマスルガ、
今日ノ日本ノ蠶絲業ノ實狀ハ、此生產者ト
配給業者トノ間ノ利害ハ一致シテ居ル點ガ
極メテ少クシテ、利害ガ對立シテ居ル點ガ
多イノデアリマス、是ハ何レノ產業ニ於テ
モ、サウ云フ傾向ガアルカ知レマセヌガ、
殊ニ此蠶絲業ニ於テハ此ガ著シイノデア
ル、是ハ勿論皆サンモ御承知ノ通リデアリ
マスルカラ、私ハ多クヲ申シマセヌガ、併
シ其由ッテ來ル所ハ何デアルカト云フト、
一ツハ製絲業者ハ亂立ト中シマスカ、割合
ニ數ガ多イ、而モ其中ニハ小サイ製絲業者
ガ多クテ、資力ノ不足ノ爲ニ亂賣ノ傾向ガ
アル、ソレノミナラズ此資力ノ少イ生產業
者ハ、多ク問屋ニ死命ヲ制セラレテ居ル、
或ハ資金ヲ借リテ居ルトカ、其他ノ關係上、
死命ヲ制セラレテ居ルト云フヤウナ關係カ
ラ、其利害ハドウモ一致シナイノヂヤナイ
カ、而モ配給ヲ主トシテ居ル所ノ問屋其他
ノ輸出業者ト云フモノハ、要スルニ利益サ
ヘアレバ宜イノデアッテ、必シモ價格ノ高
イノヲ望ム譯デハナイノデアリマス、卽チ
價格ガ絕エズ變動ガ多ケレバ、其間ニ利ヲ
得ルコトガ出來ルト云フ狀況カラ、安ケレ
バ安イデ儲ケ、高ケレバ高イデ儲ケル、サ
ウシテ價格ノ安定ヲ希望シテ居ナイ、斯ウ
云フ實情ニアルノデアリマシテ、斯樣ナ意
味ニ於テモドウシテモ利害ガ對立致シテ居
ルノデアリマス、然ルニ蠶絲業ノ將來ヲ考
ヘテ見マスルト云フト、蠶絲業ノ發達ト云
フ見地カラ見マスルト、何ヨリモ重要ナコ
トハ價格ノ安定デナケレバナラヌノデアリ
マス、價格ノ安定ガアリマスレバ、製絲業
者ガ安定シ、隨テ又養蠶業者モ大體ノ見當
ガ付キマスルカラ、自分ノ經營ノ上ニ於テ
非常ナ便宜ガアリ安心ガアル、サウシテ安
ンジテ資木ヲ投下スルコトモ出來ルト云フ
狀態デアリマスルガ、今日ハ皆サン御承知
ノ通リ、殆ド製絲業者ノ一種ノ投機事業ノ
ヤウニナッテ居ルノデアリマス、又製絲業
者ハ殆ド投機的ノ考ヲ有ッテ居ルノデアリ
やって、其證據ニハ、製絲業者ニシテ實際ニ
神戶、橫濱ノ〓算市場ニ手ヲ出サナイ者ハ
一人モナイト云フ是ハ實情デアル、斯樣ニ
製絲業ガ不安定ノ下ニ投機事業ト化スト云
フコトハ、斯業ノ發達ノ爲ニ非常ナ害ノア
ルコトハ申ス迄モナイ、恐ラク是ハ製絲業
ニ害ヲ與フルノミナラズ、是ハ延テ養蠶業
者ニ非常ナル損害ヲ與ヘテ居ルノデアリマ
シテ、是ハ十分農村ノ救濟トカ匡救トカ云
フヤウナ見地カラシテモ、最モ此邊ニ向ッ
テ吾〓ハ注意ヲセナケレバナラヌト思フノ
デアリマス、旣ニ製絲業ト云フモノガ一種
ノ投機事業ニナッテ居リマスル結果、其購
繭ヲドウスルカト云フコトハ、製絲業者ト
シテハ重大ナル問題デアル、ソレデ其購繭
ノ方法トシテ、普通ノ製絲業者ノ執ッテ居
ル手段ハ、第一ハ生產者ニ先貸ヲシテ置ク
ト云フコトガ一ツノ手段デアル、モウ一ツ
ノ手段ハ、繭ノ買入前ノ賣崩シ其他ノ手段
ヲ執ッテ、生絲ノ値段ヲ下ゲテ、サウシテ
生絲ノ値ガ安イカラト云フ理由デ、養蠶業
者ノ生產シタ繭ノ値段ヲ叩クト云フコト
ガ、普通ニ行ハレテ居ル今日ノ狀態デアル、
其爲ニ養蠶業者ハ生絲價格ノ不安定ト云フ
爲ニ、非常ナル損害ヲ受ケテ居ルノデアリ
マス、勿論製絲業者モ損害シテ居ルガ更ニ
製絲業者以上ニ養蠶業者ハ非常ナル不利益
ヲ受ケテ居ルノデアリマス、此一例ハ非常
ナ蠶絲業界ノ大恐慌ヲ來シタ場合ニ於テ
モ、結局スル所一時ハ製絲業者ガ非常ナ損
害ヲ蒙ムルガ、其損害ハ軈テ次ノ繭ノ買入
ニ於テ、之ヲ養蠶業者ニ轉嫁シテ居ルト云
フ事ガ事實デアリマス、ダカラ蠶繭絲業ガ
非常ナル困難ニ陷ッタ場合ニ、最後ノ負擔者
ノ誰デアルカト云フト、養蠶業者デアルト
云フヤウナ實情ハ、是ハ斯業ノ實際ニ注目
シテ居ル人ノ齊シク認ムル所デアル、要ス
ルニ是ハ單リ蠶絲業ノミナラズ、一般ノ其
他ノ農業ニ致シマシテモ、最後ノ負擔ハ農
業家ニ歸スルコトハ免レ得ナイ今日ノ實情
デアリマシテ、所謂農業家ト云フモノガ、
總テ工業家、商業家ノ搾取ノ下ニ呻吟シテ
居ルト云フコトガ今日ノ實情デアリマスル
ガ、殊ニ養蠶業ト致シマシテハ甚シク、養蠶
業者ハ此搾取ノ苦シイ運命ノ下ニ今日ハ呻
吟シテ、是ガ軈テ養蠶ヲ主トスル農家ノ疲
弊困憊ノ重大ナル原因ヲ成シテ居ルト云フ
コトモ、是ハ爭フベカラザル事實デアルト
思フノデアリマス、斯樣ナ次第デアリマス
ルカラ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006311922X00319320830&spkNum=46
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047・生田和平
○生田委員長 武田君、一寸發言中デアリ
マスガ、アナタノ御話ハ大分長イト思ヒマ
ス、今文部大臣ノ代リニ政務次官ガ見エマ
シタ、ソレデ有馬君ガ五分間バカリ質問シ
タイサウデアリマスカラ、御讓リヲ願ヒマ
ス-有馬君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006311922X00319320830&spkNum=47
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048・有馬淺雄
○有馬委員 西ケ原ノ高等蠶絲學校ニ付テ
デアリマスガ、アノ學校ハ大正十七年、卽
チ昭和三年ニ移轉スルコトニナッテ居リマ
シタガ、其後段々延ビマシテ、昭和十四年
カラ十七年迄ト云フコトニナッテ居リマス
ガ、御承知ノ通リ高等蠶絲學校ノ所在地タ
ル瀧野川西ケ原ハ、蠶絲業及養蠶ノ上ニ於
テ最モ適當シタ所デアッタニ拘ラズ、最近
ハ土地ノ發展ニ伴ヒ、殊ニ工場等ノ關係
上、空氣共他ニ於テモ不都合ヲ感ズル良ク
ナイ場所デアル、又桑園等一切ノ事柄カラ
考ヘマシテモ、一日モ早ク-旣ニ移轉ス
ルト云フ計畫デアルナラバ、之ヲ移轉スル
方ガ、蠶種ノ試驗上又養蠶ノ試驗上ニ於テ
最モ宜イト思フノデアリマス、又土地發展
ノ上ニ於テモ、移轉スルト云フコトヲ公表
サレテ、段々ニ之ヲ延期サレルト云フヤウ
ナコトハ、非常ニ弊害ガ多イノデアリマス
シ、土地ノ發展上ノ障碍ニナルノデアリマ
スカラ、ドウカ一日モ早ク之ヲ移轉シテ貰
ヒタイ、旣ニ計畫サレテ、延期スル又延期
スルト云フコトデハ、洵ニ雙方ニ於テ宜シ
クナイシ、而モ此際ニ於テ蠶絲業法案ヲ出
スト云フコトガ、時代ニ適應セル最モ良イ
案ダト考ヘル際ニ於キマシテ、色〓之ヲ指
導スル所ノ機關デアル學校ト云フモノニ付
テハ、一日モ早ク確立セラレンコトヲ望ム
ノデアリマスガ、文部當局ニ於テハ、ドウ
云フヤウナ御都合ニナッテ居リマスルカ、
又更ニサウ云フコトニ依リマシテ、一日は
早ク移轉シテヤラウト云フ樣ナ御心持ガ、
此處ニ湧出ラレハシナイカ、斯ウ云フコト
ヲ伺フノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006311922X00319320830&spkNum=48
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049・東郷實
○東郷政府委員 御答致シマス、只今御話
ノヤウニ、震災復舊費ヲ以テ改築スルコト
ニナッテ居リマスガ、ソレガ財政緊縮ノ結
果繰延ニ繰延ヲ致シテ居リマシテ、現在西
ケ原ノ學校ハ、昭和十七年カラ著手スルコ
トニナッテ居ルコトハ、只今仰セノ通リデ
アリマス、震災復舊事業ノ大體ノ順序ガ、
震災ニ罹ッタモノヲ先ニスルコトニナッテ
居リマスノデ、西ヶ原ハ震災ニ罹ッテ居ナ
イト云フヤウナ關係カラ、一番後廻シニ
ナッテ居ルヤウナ實情デアリマスガ、學校
ノ校舍ガ非常ニ古イコト、又只今御話ノヤ
ウナ、色ミノ點ニ於テ不便ノアルコトハ、
當局トシテモ能ク承知致シテ居リマス、殊
ニ私共先日實際ヲ見テ、其校舍ノ非常ニ古
クテ且ツ狹隘デアリ、其他〓育ノ上ニ於テ
色こノ不便ノアルコトモ、實際見テ承知致
シテ居ル次第デアリマシテ、非常ニ學校當
局ニ對シテモ同情致シテ居リマスルシ、又
〓育ノ上カラモ、出來ルダケ早ク移轉スル
コトガ適當ト認メテ居リマス、其意味ニ於
テ、成ベク出來ルナラバ、何トカシテ適當
ナ方法ヲ講ジタイト、今折角心配中デアリ
やく、是ダケノコトヲ申上ゲテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006311922X00319320830&spkNum=49
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050・有馬淺雄
○有馬委員 政府デサウ云フヤウナ御心持
デアリマスルナラバ結構デアリマスルガ、
特ニ御注意申上ゲテ置キマスガ、町村併合
ト云フヤウナ、斯ウ云フヤウナ矢先ニ、旣
ニ候補地ヲ買收シテアルニ拘ラズ、一ケク
土地ヲ遊バシテ置イテ、一方ニ今利用セラ
レントスル此土地ヲ斯ウヤッテ置クコトハ、
國家經濟ノ上ニ於テモ不利益デアルカラ、
町村併合ノ此矢先、人氣ガ勃興シテ居ル此
際ニ移轉シテ、此土地ヲ賣却スルコトガ
擧兩得デアル、土地發展上又〓育上ニモ結
構デアリマスカラ、一日モ早ク其御心持
ヲ、更ニ熱ヲ加ヘラレマシテ御實行アラン
コトヲ希望シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006311922X00319320830&spkNum=50
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051・加藤知正
○加藤委員 之ニ關聯シテ一寸-只今政
府委員ノ御答ニモアリマシタ樣ニ、東京高
等蠶絲學校ハ非常ニ腐朽ヲ致シテ居ルノミ
ナラズ、現在ノ場所ガ、蠶絲業〓育ノ上カラ
見マシテモ非常ニ缺陷ガ多イコトハ、爭ハ
レナイ事實ニナッテ居リマス、サウ云フヤ
ウナ次第デアリマシテ、一日モ速ニ是ガ移
轉ヲサセナケレバ、如何ナル方面カラ見マ
シテモ宜シクナイコトハ分ッテ居ルノデア
リマスルガ、ソレガ漸ク昭和十四年ニ著手
シテ十七年ニ完成スルト云フヤウナコトニ
ナッテ居リマスレバ、此先十年間モ經タナ
ケレバ移轉後ノ完成ヲ見ル事ガ出來ナイ、
斯ウ云フ次第デアリマスカラ、冀クバサウ
云フヤウナ急ニ迫ッテ居ル此學校ノ狀態
ヲ、文部當局モ既ニ御承知ノ事柄デアリマ
スル以上ハ、一面カラ云ヘバ學生〓養ノ爲
ニナリ、一面カラ云ヘバ此際失業者救濟ノ
意味ニモ相成ルノデアリマスルカラシテ、
冀クバ昭和八年度カラ此移轉工事ノ開始ノ
出來ルヤウニ、特ニ一ツ御考慮ヲ戴キタイ
ト思フノデアリマスルガ、此點ニ付キマシ
テ、更ニ政府委員ノ御考ノアル所ヲ御伺致
シタイト思フ次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006311922X00319320830&spkNum=51
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052・東郷實
○東郷政府委員 先程中上ゲタヤウナ趣旨
ヲ以テ、文部省ト致シマシテモ、出來ルダ
ケ努力致ス方針デヤッテ見ル積リデスガ、
併シ來年度カラ必ズ實現スルト云フコト
ヲ、今此處ニ御約束ハ出來マセヌ、成ベク
御趣旨ニ副フヤウ努力致スト云フコトダケ
申上ゲテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006311922X00319320830&spkNum=52
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053・百瀬渡
○百瀨委員 議事進行ニ付テ-只今政府
提出ノ製絲業法案ノ審議中デ、質問ガ昨日
來繼續サレテ居リマス、尙ホ午後ニ亙リマ
シテモ幾多ノ質問ガ繼續サレルコトヽ信ズ
ルノデアリマス、此委員會ニ於テ政友會提
出ノ製絲業法案、及之ニ關聯スル所ノ日本
蠶絲株式會社法案、及原蠶種國營法案、更
ニ輸出生絲販賣統制法案、此四案ノ提案理
由ノ說明ガ只今爲サレツヽアルノデアリマ
ス、政府ノ提案ニ對スル質問モ終ラナイ中
ニ、更ニ議員ヨリ提出ノ案ニ付テ質問ガ
起ルヤウナ場合ニ、政府ノ提案ト議員ノ提
案トノ兩案ニ對スル質問ガアリマスト云フ
ト、非常ニ混同スルノデアリマス、之ニ付
テハドウ云フ風ナ順序デ進行爲サレル御考
デアリマスカ、此場合ニ於テ承ッテ置ク方
ガ好都合デアルト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006311922X00319320830&spkNum=53
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054・生田和平
○生田委員長 只今ノ御問御尤デアリマス
ルガ、武田君ヨリ說明致シマスル四案ハ、
先刻其說明ヲ許可スルニ御異議ガナイカト
諮レバ、御異議ナイト云フコトデアリマシ
タカラ、大體此委員會ノ御意見ガサウナッ
タモノト信ジテ進行致シテ居ルノデアリマ
ス、尙ホ議事ノ整理ニ付キマシテハ、及ブ
限リ盡力致シマシテ、混同シナイヤウニ努
メル積リデアリマスカラ、左樣御承知ヲ願
ヒタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006311922X00319320830&spkNum=54
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055・武田徳三郎
○武田委員 先程ノ說明ヲ續ケテ申上ゲマ
ス、先程申上ゲマシタル如ク、今日ノ蠶絲
業界ノ最モ必要ナル事柄デアリ、蠶絲業ニ
關係アル業者ヲ救濟スルト云フ重點ト云フ
モノハ、價格ノ安定ト云フコトニアルノデ
アリマス、是ハ先程申上ゲタ通リデアリマ
ス、併シ或ハ斯樣ナ意見モナイデハナカラ
ウカト思フノデアリマスガ、一昨年以來ノ
此蠶絲業界ノ不況ト云フモノハ、要スルニ
亞米利加ノ需要ガ減ッタノデアル、亞米利加
ノ不況ガ玆ニ影響シタノデアルカラ、單二
今私ガ申上ゲタヤウナ理由ガ主ナルモノト
シテ、統制ノ必要ヲ高調スルノハ、少シク
當ラヌト云フヤウナ意見ヲ有ッテ居ル人モ
アルヤニ聞イテ居リマス、併シ私共ノ見ル
所ヲ以テスレバ、實ハ左樣ナル意見ニハ合
致致シテ居ラナイ、私ノ申上ゲルコトヲ寧
ロ事實ハ裏書シテ居ルノデアリマス、成
程亞米利加ハ不況デアッタニハ相違ナイ、
併ナガラ實際ノ統計ヲ見レバ、此不況間ニ
於テモ、亞米利加ノ需要ハ決シテ減ッテ居
ラナイノデアリマス、卽チ昭和元年ニ於テ
日本カラ亞米利加へ輸出シタ生絲ハ五十萬
俵デアッタニ拘ラズ、昨年ノ輸出生絲ノ總
額ハ五十九萬幾ラト云フコトニ承知致シテ
居リマス、故ニ此價格ガ非常ニ下落シタ、
隨テ不安定ヲ惹起シタコトハ、勿論價格ノ
下ッタコトヽ、價格ノ不安定ト云フコト、
ハ、少シク意味ガ違ヒマスケレドモ、今日
ノ場合ニ於テ價格ガ甚ダ下落シタコトハ、
蠶絲業ノ不安定デアリマスカラ、先ヅ其點
ニ付テ申上ゲタノデアリマスガ、是ハ決シ
テ此需要ノ減ッタコトガ原因デハナイノデ
アリマス、之ニ付テ論ズレバ色〓論點ガ
アルデアリマセウガ、簡單ニ申シマスレ
バ、此數字ガ示シテ居ルノデアリマシテ、
ドウシテモ是ハ此供給ノ方面ニ何等カノ缺
陷ノアルコトガ見エルト思フノデアリマス
ガ、此供給ノ方法ノ缺陷ト云フコトハ、先
程申上ゲタ蠶絲業界ニ於テ、生產業者ト配
給業者トノ間ノ利害ノ對立、或ハ小製絲家
ガ澤山アッテ、之ヲ亂賣致ストカ、先程色
色中上ゲタ、サウ云フヤウナコトガ主ナル
原因デアラウト思フ、隨テ生絲ノ價格ヲ相
當ナ程度ニ維持スルト云フコト、又價格
ノ安定ヲ計ル途ヲ講ジナケレバ、我國ノ蠶
絲業ト云フモノハ、到底將來ノ發達ヲ期ス
ルコトハ出來ナイト思フ、併シ考ヘテ見ナ
ケレバナラヌコトハ、左樣ナ目的ニ副フダ
ケノ統制ガ出來ルデアラウカ、可能性ヲ
持ッテ居ルカドウカト云フ問題デアリマ
ス、私ハ之ニ向ッテ十分可能性ガアル、他
ノ產業ニ增シテ、ヨリ以上ニ可能性ガアル
ト思フノデアリマス、何トナレバ是亦御承
知ノ通リ、殆ド生絲ノ一番ノ需要者ハ亞米
利加デアル、、殆ド世界デ使フ所ノ生絲ノ大
部分ト云フモノハ亞米利加デ使ハレテ居ル
ガ、其內ノ九割乃至九割五分ト云フモノ
ハ、我國カラ供給シテ居ルノデアリマス、
卽チ世界ノ生絲產業ノ覇權ヲ我國ガ握ッテ
居ルノデアリマス、之ヲ言葉ヲ換ヘテ申シ
マスレバ、生絲ニ對スル獨占權ヲ我國ハ
持ツテ居ルノデアリマス、隨テ我國ガ適當
ナル統制ノ途ヲ講ジマスナラバ、世界ノ生
絲ノ値段ト云フモノハ適當ニ安定シ、隨テ
此蠶絲界ハ安定スルト云フ、最モ合理的ナ
統制ガ行ハレル、我國ハ最モ都合ノ好イ
狀態ニ置カレテ居ルノデアリマス、然ラバ
如何ナル統制ヲ講ズルカト云フ點ニナリマ
スガ、最初ヨリ申上ゲタ通リニ、私共ト致
シマシテハ、單ニ當業者ノ自治ニ委カスコ
トデハ、到底完全ナル統制ヲ行フコトハ
出來ナイト吾〓ハ考ヘルノデアリマス、ソ
レハ更ニ此統制ノ具體案ニ至ッタ時ニ申上
ゲヤウト思フ、斯樣ナ次第デアリマシテ、
吾〓ノ信ズル所ノ、蠶絲業ニ加ヘントスル
統制方法ノ中心ハ、價格ノ安定ト云フコト
ニアルト思ヒマス、是ハ想フニドナタモ御
異論ノナイコトデアラウト思フ、既ニ價格
ノ安定ト云フコトハ〓絲業統制ノ重點デ
アリ、中心點デアリマスルナラバ、先ヅ販
賣ノ統制ト云フコトヲ第一ニ考ヘナケレバ
ナラヌ、此販賣ノ統制ヲシテ價格ノ安定ヲ
計ル爲ニ必要デアルナラバ、其他ノ統制モ
共ニヤルト云フコトハ自然ノ順序デアラウ
ト思フ、ソレデ私ハ先ヅ今申上ゲルヤウニ
販賣ノ統制ト云フコトヲ、此統制ノ有スル
中心點トシテ立案ヲ致シタノデアリマシ
テ、販賣ノ統制ヲ完全ナラシムルコトハ、
製絲業ノ方ノ統制モシナケレバナラヌ、又
製絲業ノ原料ハ申ス迄モナク繭デアル、繭
ハ養蠶家ノ生產スルモノデアリマスカラ、
是亦養蠶ノ方ニ取ッテモ相當ナ統制ヲシナ
ケレバ是ハ完結シナイ、斯ウ云フ順序ニナ
ルノガ當然ノ事柄デアラウト思フ、最初カ
ラ私ガ申上ゲタ如ク、統制ノ中心點ガ價格
ノ安定ニアルコトヲ御認メ下サル以上ハ、
ドウシテモソレデナケレバナラヌト思フノ
デアル、斯樣ナ見地カラ私共ハ政府ノ此度
ノ御提案ニ對シテハ、甚ダ遺憾ノ情ニ堪ヘ
ナイノデアリマス、昨日私カラモ農林大臣
ニ其點ニ向ッテ御伺ヲ致シタノデアリマス
ケレドモ、農林大臣ノ御答辯デハ甚ダ不滿
足デアリマシタ、啻ニ不滿足デアルノミナ
ラズ、農林當局トシテハ甚ダ不親切、冷淡
ト云フ感ニ堪ヘナイノデアリマス、私ノ昨
日ノ質問ニ對シテ、農林大臣ハ大體ニ於テ
御同感デアルガ、他ノ販賣統制其他ノ養蠶
ノ統制ト云フヤウナコトハ、中ミ及ボス所
ノ利害ガ多イカラ、十分ニ〓究シテ居ラ
ナイト云フ御答辯デアル、ソレニ對シテ然
ラバ吾ニノ提案ニ對シテ兩院ガ協賛ヲ表サ
レタ場合ニ、農林大臣ハ之ニ御同意ニナル
カト云フ質問ニ對シテハ、之ヲ否定ノ意味
ニ於テノ御答辯ガアッタノミナラズ、アナタ
方ノ御提案ノ法案ハ能ク見テ居ラナイト云
フ、殆ド放言ニ類スルコトヲ言ッテ居ラレ
ルノデアリマス、私ハ甚ダ遺憾千萬デアル
ト思フ、苟モ議員ガ重要法案ヲ提案シテ、
旣ニ二日モ三日モ經ッテ居ルノニ、當局者
ハマダ其案ヲ見テ居ラナイト云フニ至ッテ
ハ、洵ニ此蠶絲業ニ對シテ不親切極マッタ
ル態度デアルト私ハ思フ、口ニハ統制ノ必
要ヲ唱ヘ、今調査中デアルト言ハレルケレ
ドモ、一向熱ガナイ、此統制ニ對シテ眞ニ
蠶絲業ヲ救ハントスル誠意、適當ナ統制ヲ
シヨウト云フ誠意ガナイト私ハ考ヘマス、
吾ミノ提案ガ出マシタナラバ、何ヨリモ
之ニ向ッテ檢討ヲ加ヘ、其案ガ果シテ當局
ノ憂ヘラレルガ如キ、當局ノ調査未ダ足ラ
ザル點ニマデ及ンデ居ルカ居ナイカ、吾ミ
ノ調査ガ不十分デアルカラ、此案デハ直チ
ニ同意スルコトガ出來ナイカドウカト云フ
コトハ、何ヨリモ先以テ檢討致サレテ、相
當ナ考慮ヲシテ置カナケレバナラヌ筈デア
リマス、旣ニ此案ガ委員會ニ掛ッテ討議セ
ラレントスル刹那ニ至ッテモ、其案ヲ見テ
ナイカラ、何トモ言ヘナイト云フヤウナ、
不親切極ッタコトヲ當局大臣ガ御答辯ニナ
ルノデハ、一體此蠶絲業ノ統制ト云フモノ
ニ向ッテ何等ノ確信ナイモノト言ハナケレ
バナラヌ、何等ノ主張ガナイト言ハナケレ
バナラヌ、調査〓究シテ居ルト云フヤウナ
コトハ、空念佛デアルト申サナケレバナラ
ヌト私ハ思フノデアリマス、私ハ農林當局
ガ蠶絲業ノ統制ト云フモノニ向ッテ冷淡不
親切デアリ、何等ノ確信ガナイト云フコト
ニ向ッテハ洵ニ遺憾千萬デアル、殊ニ今日
我國ノ現狀ハドウデアリマスカ、事ミシク
申上ゲル迄モナク、洵ニ非常匡救デアリ、
繭ト米ニ依テ時局ヲ匡救スルヨリ仕方ガナ
イト云フコトハ明白ナ事實デアッテ、今度
ノ臨時議會ハ繭ト米ノ臨時議會デアルト言
ハレテ居ル程デアル、然ルニ此重大ナ時局
ニ於テ、最モ重大ナル蠶絲業ノ興廢ニ特別
ノ關係ヲ持ッテ居ル統制案ニ對シテ、斯樣
ナ不親切ナル態度ヲ執ッテ居ラレル農林當
局ヲ相手ニシテ考ヘテモ仕樣ガナイト思
フ、仍テ私ハ委員諸君ニ、政府案デアルト
云ッテ特ニ之ニ力ヲ入レルコトニ向ッテ、私
ハ敢テ異論ハ申シマセヌケレドモ、吾こノ
提案ハ相當苦心ヲ重ネタモノデアリマス
シ、又今農林當局ガ斯樣ナル態度ヲ執ッテ
居ラレルニ於テハ、願クハ吾ミノ提案ニ
向ッテ更ニ御熱心ナル態度ヲ以テ御檢討ヲ
願ヒタイト思フノデアリマス、先ヅ大體私
共ハ現在ノ日本ノ蠶絲業ニ向ッテ是非共統
制ヲ加ヘナケレバナラヌト云フ、大體ノ理
由ヲ申上ゲタノデアリマスガ、更ニ各案ニ
付テ簡單ニ御說明ヲ申上ゲマス、先程申上
ゲマシタル如ク、吾ミノ統制ノ中心點ハ販
賣統制ニアリマス、隨テ此販賣統制法案竝
ニ之ニ伴フ所ノ日本蠶絲株式會社法案ト云
フモノニ付テ、大體御說明ヲ申上ゲマス
此販賣統制ニ付キマシテハ色ニナル御議
論ガ當然起ラウト思フノデアリマス、又現
ニ各方面カラ、御說ヲ承ッテ居ル、或ハ是
ハ當業者ノ自治的ノ方法ニ依テ統制スル方
ガ宜イト云フ御意見モアルノデアリマス、
成程ソレガ完全ニ出來マスナラバ、私モ敢
テ異論ハナイノデアリマスガ、私ハ之ニ向ッ
テ三箇ノ理由カラ困難デアルト思フノデア
リマス、併ナガラ其前ニ一寸申上ゲテ置キ
タイコトハ、勿論此自治的ノ統制ノ仕方モ、
決シテ不可能トハ私ハ申サヌノデアリマ
ス、現ニ產業組合製絲ト云フモノ、卽チ普
通ノ組合製絲ト云ハレルモノハ、是ハ一種
ノ統制デアリマス、當業者自治的ノ統制デ
アリマス、養蠶家ガ加工ヲ致シ、販賣ヲモ致
シテ居ルト云フコトデ、是ハ完全ナル統制
ヲ致シテ居ルノデアル、又政府カラ戴イタ
參考資料ニ付テ見マシテモ、此統制ガ相當
效果ヲ擧ゲテ居ル、卽チ賣上ニ於キマシテ
モ、組合製絲ノ賣上ノ方ガ、營業製絲ノ
賣上ヨリハ、相當良イ値デ賣ッテ居ルノデ
アリマス、是ハ決シテ私ハ惡イトハ申サナ
イ、吾〓ノ考カラスレバ、益〓組合製絲ヲ助
長シナケレバナラヌト考ヘマス、併シ今日
ノ蠶業界ノ現狀カラ行キマスレバ、組合製
絲ト云フモノハ、日本ノ製絲業ノ中ノ極ク
僅カナ部分デアリマス、其中二割カ二割五
分位ニシカ達シナイデアラウト私ハ記憶シ
テ居リマス、今此處ニ詳細ナル統計ハアリ
マセヌカラ、是ハ後カラ申上ゲテモ宜シイ
ガ、何レニシテモ極メテ僅ナ部分デアル、
又其組合製絲ガ未ダ發達シナイト云フ理由
トシテ、ドウシテモ營業製絲ト組合製絲ト
云フモノハ併立スベキ運命ニアルコトハ、
是亦皆樣ノ御異論ノナイコトデアラウト思
フノデアリマスルカラ、ドウシテモ此組合
製絲ト云フ方法ヲ完全ナラシメテ、之ニ依
テ統制ヲスルト云フコトハ、是ハ又企テル
コトノ出來ナイコトデアラウト思フノデア
リマスルガ故ニ、ドウシテモ他ノ方法ニ依
テ統制ノ途ヲ講ジナケレバナラヌト思フノ
デアリマス、然ラバドウ云フ譯デ此自治的
ノ統制ガイケナイカト申シマスルト云フ
ト、此蠶絲業ノ關係者ト云フモノハ、私ガ
申ス迄モナク非常ナ數ニナッテ居ルノデア
リマス、故ニ此總テノ蠶絲業關係者ヲ網羅
シテ、之ヲ自治的ニ統制スルト云フコト
ハ、是ハ到底現實ノ問題ト致シマシテハ實
行出來ナイコトデアラウト思フノデアリマ
ス、假ニ是ハ百步ヲ讓ッテ、長イ時間掛ッテ
政府ガ奬勵致シマシタナラバ出來ルト假
定ヲ致シマシテモ、今日ノ實際ハ左樣ナ氣
長イコトヲ言ッテ居ルコトヲ許サヌ實情デ
アリマス、何ヨリモ先以テ販賣ノ上ニ統制
ヲ加ヘテ價格ノ安定ヲ致サナケレバ、日本
ノ蠶絲業ト云フモノハ、頗ル困難ナル狀態
ニナッテ來ルノデアリマス、マア一口ニ言
ヒマスルナラバ、日本ノ蠶絲業ト云フモノ
ハ、今日ハドッチカト云フト、最早成年期ガ
過ギテ稍老年期ニ入ッテ居ルノデアリマ
ス、暮色蒼然ト云フ狀態ガ今日現ハレテ居
ルノデアリマス、卽チ或ハ人絹ノ壓迫ト
カ、種々ナルコトニ於テ、左樣ナル狀態ニ
ナッテ居ルノデアリマス、故ニ私ハドウシ
テモ、之ニ向ッテ急速ニ有效ナル統制ヲ加
ヘント致シマスルナラバ、ドウシテモ自治
的ノ統制デハイケナイカラシテ、之ヲ完全
ニ一ツ政府ノ力ヲ以テ統制ヲスルト云フ途
ニ出デナケレバ、統制ノ實ハ擧ラヌト思フ
ノデアリマス、ノミナラズ此數ガ多イト云
フノミデハナイ、先程モ中上ゲタルヤウニ、
此蠶絲業關係ノ業者間ニ於テ利害ガ對立
シテ居ルト云フ事實ハ、先程申上ゲタヤウ
ナ譯デアリマス、卽チ生產業者ト配給業者
ノ間ニ利害ガ對立致シ居ル、其對立ヲドウ
シテモ之ヲ解クコトガ出來ナイノデアリマ
ス、組合製絲ノ方法ヲ以テ生產業者自ラ販
賣統制ヲスルニ非ザレバ、到底之ヲ解クコ
トガ出來ナイト云フコトガ今日ノ實狀デア
リマス、又モウ一ツ重大ナル自治的ノ統制
デハイケナイト思フコトハ、殊ニ主トシテ
亞米利加ニ依存シテ居ル所ノ我ガ蠶絲業ト
致シマシテハ、獨占的ニヤルコトニ付テハ
餘程考慮ヲ拂ハナケレバナラナイ、若シ當
業者ノ自治的ノ統制ニ一任致シタト云フコ
トデアリマスナラバ、其他ノ統制ヲ見テモ
分ルヤウニ、ドウシテモ當業者ノ自治的ノ
統制ト云フコトハ獨占的デアリマスカラ、
唯價格ノ吊上ノミヲ主ニスル傾キノアルコ
トハ、是ハ道理ノ上ニ於テモ、亦今日種々ナ
ル統制ノ行ハレテ居ル實際ニ於テモ明カデ
アル、然ルニ亞米利加ニ對シテ獨占ヲ利用
シテ、價格吊上ト云フコトノミニ力ヲ注グ
ト云フ統制ハ、亞米利加ニ如何ナル影響ヲ
及ボスデアリマセウ、先程農林大臣ガ橫川
君ノ質問ニ答ヘラレタ中ニ、外國トノ關係
ヲ考慮シナケレバナラヌト言ハレタノハ、
其點デアラウト私ハ推測シテ考ヘテ見タノ
デアリマスガ、是ハ相當考慮シナケレバナ
ラヌ事柄デアリマス、日本ガ獨占的、利己
的ニ、唯價格ヲ引上ゲルト云フコトヲ以テ
統制ヲシテ居ル、而モ先程申上ゲマシタ通
リ、日本ハ殆ド世界ノ蠶絲業界ニ於テ獨占
ノ位置ヲ占メテ居ルノデアリマスカラ、其
獨占ノ位置ヲ占メテ居ルコトニ依テ、紊リ
ニ價格ヲ引上ゲテ亞米利加ノ消費者ヲ苦シ
メルト云フヤウナ狀態ニナッタト云フコト
ニ相成リマスルト、必ズヤ亞米利加ハ我ガ
日本ノ蠶絲業ニ向ッテ報復的ノ手段ヲ執ル
ノデアリマス、故ニ此統制ト云フモノヲ當
業者ノ自治的統制ニ委スコトハ、日本ノ蠶
絲業ノ前途ニ向ッテ、非常ナル危險ヲ孕ン
デ居ルト思フノデアリマス、啻ニ其點ノミ
ナラズ、益〓日本ノ蠶絲業ヲ盛ナラシムル
ト云フコトハ、勿論國內的ニモ販賣ヲ盛
ナラシメ、市場ヲ擴張スルト云フコトガ必
要デアリマスルシ、又其可能性モ十分アリ
マスケレドモ、今日私ガ申上ゲル迄モナ
ク、日本ニ出來ル所ノ生絲ノ八割五分ト云
フモノハ輸出デアッテ、地遣ト云フモノハ
僅ニ一割五分カソコラシカナイノデアル、
シテ見ルト云フト、日本ノ蠶絲業ノ運命ハ
懸ッテ輸出生絲ニアルト言ハナケレバナリ
マセヌカラ、是ハドウシテモ亞米利加ニ更
ニ益〓輸出ヲ盛ニシ、人絹其他ニ對抗シテ
十分ナル效果ヲ擧ゲルト云フコトヲ考ヘナ
ケレバナラヌト思フノデアリマス、成程今
日ハ日本ハ獨占的ノ位置ニアリマスルケレ
ドモ、支那ノ如キアノ廣イ地域デ、多クノ
人デ以テ、而モ勞力ノ極メテ安イ所ノ養蠶
國ガアルニ依テハ、晏然トシテ居ッテ、今
日ノ獨占的位置ヲ永久ニ占メラレルト思フ
コトハ、是ハ非常ナル危險ガ伴フコトデア
ラウト思フノデアリマス、故ニ或意味ニ於
テ價格ノ安定ヲ圖ルコトハ必要デアリマス
ケレドモ、獨占的ノ位置ヲ利用シテ、禮
價格ノ吊上ノミニ腐心スルコトハ、我ガ蠶
業界ノ將來ニ向ッテ深ク考慮ヲ要スベキ點
デアルト思フノデアリマス、斯樣ナル意味
ニ於テ、此當業者ノ自治的ノ統制ニ一任シ
テ、利己的ナ統制ヲヤラスト云フコトハ、
ドウシテモ此日本ノ蠶絲業ノ特異性ニ鑑ミ
テ、私ハ餘程考慮ヲ加ヘナケレバナラヌ點
デアルト思フノデアリマス、斯樣ナ意味合
ニ於テ、ドウシテモ政府ガ直接其衝
リ、然ラザレバ民間ト政府トガ相應ジテ、主
トシテ政府ノ指導監督ノ下ニ統制ヲスルト
云フ手段ヲ執ラナケレバナラヌト思フノデ
アリマス、吾ミガ此輸出生絲販賣統制法
案、竝ニソレニ伴ッテ日本蠶絲株式會社法
案ト云フモノヲ提出シタノハ、斯ル理由ニ
依ルノデアリマシテ、此點ハ深ク委員諸君
カラ、吾こノ提案シタコトデナケレバ、眞ニ
此統制ノ實ヲ擧ゲルコトハ出來ナイト云フ
趣旨ニ付テ、深キ御考慮ヲ願ヒタイト思ヒ
マシテ、特ニ此點ヲ御願ヲ致ス次第デアリ
マツ、偖然ラバ吾〓ガドウ云フコトヲ致ス
カト申シマスルト云フト、先ヅ輸出生絲販
賣統制法案ノ方カラ申シマスレバ、此條文
ニアリマス如ク、生絲ノ販賣輸出ハ日本蠶
絲株式會社カ、又ハ大日本生絲販賣組合聯
合會ニ委託スルニアラザレバ、販賣若クハ
輸出ヲスルコトヲ得ズト云フノガ其中心ノ
趣旨デアリマス、少シ私ハ玆ニ申上ゲテ置
キタイコトハ、先程申上ゲタ通リ、我國ノ生
絲ハ組合製絲ト營業製絲ニ分レテ居ルノデ
アリマスガ、組合製絲ハ先程申上ゲタ如
ク、極メテ製絲業ノ一部分デアリマスルケ
レドモ、其結果ハ極メテ良イノデアリマ
ス、今是ハ發達ノ過程ニアルノデアリマシ
テ、是ハ出來ルダケ助長シテ、組合製絲ヲ
發達セシムルヤウニ力ヲ添ヘナケレバナラ
ヌ狀態ニアルノデアリマスルガ、此組合製
絲ハ組合製絲間デ今玆ニ書イテアリマスル
大日本生絲販賣組合聯合會ト云フモノヲ
作ッテ、此點ニ依テ販賣ト輸出ヲヤッテ居
ルノデアリマシテ、其效果ハ相當擧ッテ居
ルノデアリマスルカラ、ソレデ是ハ組合製
絲ハ組合製絲トシテ、現ニ適當ナ效果ヲ擧
ゲテ居ル販賣方法ニ任シテ置イタ方ガ宜カ
ラウト云フ考デ、日本蠶絲株式會社ノ方ニ
斯ウ云フモノヲ認メタノデアリマスルガ、
併シ是ハ必シモ之ヲ固執スルト云フ意味デ
ハナイノデアリマシテ、斯業ニ堪能ナル委
員諸君ノ間ニ於キマシテ、ヤハリ一ツニシ
テ統制シタ方ガ宜カラウト云フ御意見ガ多
ケレバ、勿論左樣ナ御修正ヲ加ヘラレテ
モ、吾〓ハソレニ向ッテ何等遺憾ノ意ハナ
イノデアリマス、唯今申上ゲマシタヤウナ
事情カラシテ、斯ウシタ方ガ或ハ宜イカ知
ラヌト云フ位ナ程度デ斯樣ニ致シタノデア
リマス
ソレカラ其次ニ日本蠶絲株式會社法案ノ
大要ヲ申上ゲマスレバ、是ハ大體ニ於テ法
案ニ於テ御分リデアリマスカラ、多ク申シ
マセヌガ、其要點ノ一二ヲ一ツ御注意願フ
爲ニ申上ゲテ見タイト思ヒマス、第一ハ蠶
絲會社ハ生絲ノ販賣ト竝ニ輸出ヲモ此場合
是非ヤラシタイ、斯ウ云フヤウナ考デアリ
やく、或ハ今日ノ實際カラ云フト、新シイ
會社ヲ起シテ、販賣ハヤッテモ、輸出ノコ
トマデヤルト云フコトハ、隨分困難デハア
ルマイカ、斯樣ナ實際上ノ見地カラノ御疑
モアラウト思ヒマスガ、是ハ吾ミモ相當其
點ニ向ッテハ考慮致シタノデアリマシテ、
尤ノ考デアルトハ思ヒマスケレドモ、併シ
將來ノ統制ト云フコトニ取ッテ考ヘテ見マ
シテ、此統制會社ヲシテ、單ニ現在ノ取締
ヲヤルヤウナコトダケニ止メテ置クト云フ
コトヲ致シマスルナラバ、此統制ガ完全ニ
行カナイト思ヒマス、況ヤ輸出業者モ亦配
給業者ノ一人デアッテ、再三申上ゲタ如ク、
生產業者トハ間と利害ノ相反シタ立場ニア
ルノデアリマスカラ、眞ニ統制ヲ致スト云
フコトニ致シマスナラバ、ドウシテモ此輸
出業者ノ輸出ノ事業ヲモ日本蠶絲株式會社
ニ行ハシメルト云フコトデナケレバ、此統
制ガ完全ニ行カナイト、斯樣ニ考ヘタノデ
アリマス、但シ今日ノ場合ニ於キマシテハ、
此實際ニ於テ、輸出業ト云フモノハ頗ル困
難デアル、卽チ紐育ニ於テノ事情モ能ク知
ラナケレバナラヌ、又向フニ於テノ相當ノ
設備モシナケレバナラヌト云フコトデアリ
マスカラ、實際ニ於テハ困難デアリマス
ガ、併シ是ハ便法ト致シマシテ、現在行ハ
レテ居ル所ノ有力ナル輸出業者ヲ其代理商
ニ指定スルカ、或ハ特約代理店ニスルヤウ
ナ方法ヲ以テ、其缺陷ヲ補フコトモ決シテ
困難デハナイノデアリマスカラ、斯樣ニ法
文ニ規定致シマシテモ、其缺陷ヲ補ヒ得ル
途ハ如何樣ニモアルコトデアリマスカラ、
私共ハ差支ナイト考ヘテ居ルノデアリマ
ス、次ニハ資本金額ヲ六千萬圓トシタコト
デアリマス、是ハ深イ根據ガアッテヤッタコ
トデハアリマセヌ、唯今日ノ現狀ト致シマ
シテ、ドウシテモ先程申シマスヤウニ、半
官半民ニシテ、政府ハ此指導監督ノ衝ニ主
トシテ當ラナケレバ、十分ナル統制ガ出來
ナイト云フ見地カラ半官半民ニ致シマシ
タ、サウシテ其資金ヲ半分宛ニシタ方ガ宜
シイ、斯ウ云フ見地デアリマスガ、偖現在
ニ於テモ、今日ハ財政困難ノ際デアリマス
カラ、餘リ多クノ資金ヲ政府カラ支出セシ
ムルヤウナ案ヲ作リマシテモ、實際問題ト
シテハ困難ガ伴フト云フ一ツノ缺點ト、
ツハ民間ニ於テモ頗ル困難ナ狀態デアリマ
スルカラ、餘リ多クノ資金ヲ民間カラ集メ
ルト云フコトヲ計畫致シマシテモ、是亦頗
ル困難デアラウト思フノデアリマス、所ガ
現ニ帝蠶會社ト言ハルヽ一種ノ-統制會
社デモアリマセヌガ-一時的ノ生絲ノ値
段ヲ調整スルト云フ會社ノアルコトハ、皆
サン御承知ノ通リデアリマス、併シ是ハ今
吾〓ノ信ズルヤウナ統制會社ガ出來マスレ
バ、此帝蠶會社ト云フモノハ當然必要ノナ
イ會社デアリマス、是ハ現ニ五百萬圓ノ資
本デ四分ノ一ノ拂込デアリマスカラ、是ハ
新會社ニ合併セシムルト云フ考デアリマ
ス、更ニ問屋業者ヲ其儘ニシテ置クト云フ
コトハ出來マセヌカラ、問屋業者ヲシテ、現
在ノ暖簾ヲ相當ニ値踏ミヲ致シマシテ、之
ヲ新會社ノ株式ヲ以テ其暖簾代ニ當テヽ、
サウシテ此仲間ニ入レテシマヘバ、利害ガ
一致シテ問屋業者ヲ救フコトモ出來ヨウ、
斯ウ云フ考デ、是ハ極ク大雜把ナ話デアリ
マスガ、吾〓ノ法案デハ、約一千萬圓位ナコ
トニ補償ヲシテヤッタラ宜カラウカ、ソレヲ
直チニ株式ニ振替ヘタラ宜カラウト、斯樣
ニ考ヘタノデアリマス、サウシマスト帝蠶
會社ト問屋業者デ千五百萬圓、其他ノ當業
者ハ千五百萬圓ヲ支出スルト云フコトニ致
シマスレバ、三千萬圓デ、政府ノ支出ト共
ニ六千萬圓ニナル、ソレデ政府ノ出資ハ取
敢ズ其半額ニ致シマシテ、サウシテ更ニ政
府ノ現在持ッテ居ル、橫濱ニ於テ生絲檢査
所ニ關係致シテ-ソレト別ニシテ宜イ所
ノモノハ、私ノ承ル所ニ依レバ約三百萬圓
位ノモノハアルサウデアリマスカラ、ソレ
ヲ現物出資ト致シマシテ、現在政府カラ千
五百萬圓ノ現物出資ヲシテ貰フ、サウシテ
後カラ五百萬圓宛三箇年ニ亙ッテ出資ヲシ
テ貰フ、三箇年ノ後ニハ政府ニ完全ニ三千
萬圓ノ出資ヲシテ貰フト云フ計畫ニ致シマ
スト、卽チ民間ガ今日疲弊ノ場合デアリマ
スルカラ、其出資額ヲ當分四分ノ一ト致シ
テ置キマシテ、三千二三百萬圓、ソレニ帝
蠶會社ノ合併ノ資金モアリマスカラ、約四
千萬圓位ナ資金ガ醵出出來ルノデアリマ
ス、運轉ノ資金ガ出來ル譯デアリマス、斯
ウ致シマスレバ、一箇月約五萬梱ノ輸出ヲ
致シマスレバ、之ヲ大體八百圓ト見テ、四
千萬圓ノ資金ガアレバ、ドウニカ賄フコト
ガ出來ル、尙ホ必要ノ場合ハ、此政府ノ半
分ヲ持ッテ居ル所ノ會社デアリマスルカラ、
信用ハ極メテ强イノデアリマス、又獨占的
ノ會社デアリマスカラ極メテ此會社ノ信用
ハ强イモノト思ヒマスルカラ、相當安イ利
子デ融通ヲ、從來ノ關係ノ如ク正金銀行其
他カラ資金ヲ受ケルコトガ出來マセウ、又
場合ニ依テハ政府ノ都合ガ付キマスナラ
バ蠶絲業ノ將來ノ爲ニ、是等ニ向ッテ低
利資金ヲ融通シテ下サルトカ何トカ出來マ
スルナラバ、單リ此新會社ノミナラズ、蠶絲
業全體ニ向ッテ頗ル好都合ニ行クデアラウ、
今日蠶絲業ノ最モ困ル所ノモノハ金融ノ問
題デアリマスカラシテ、是等モ考ヘテ見マ
スト、此今吾ミノ計畫シタルヤウナ半官
半民ノ會社ニ致スト云フコトハ、金融ノ上
カラ見テモ極メテ有利ナ立場ニナルデハア
ルマイカ、斯ウ云フヤウニ考ヘルノデアリ
マス、ソレカラモウ一ツ申上ゲタイコトハ
社長及副社長ハ主務大臣之ヲ命ズト云フコ
トニナッテ居ルノデアリマスガ、是ハ或ハ
御異論ガアルカモ知レマセヌガ、是ハ私共
ハ最初ニ申上ゲタ通リ、今日ノ此蠶絲業ヲ
統制スル上ニ於テハ、ドウシテモ餘リ當業
者ノ意見デ之ヲ採用スルヤウナコトハ實際
實情ニ適シナイ、政府ハ眞ニ斯業ノ立場カ
ラ、又國家的ナ立場カラシテ、之ヲ指導監督
スルト云フ意味ニ於テ、其會社ノ中心ニナ
ルベキ社長副社長ハ政府ガ指名スル、任命
スルト云フ方ガ適當デアラウトシテ、斯樣
ニヤッタノデアリマス、更ニ尙ホ會社ニ評
議員會ト云フモノヲ置イタラ宜カラウト云
フコトハ、是ハ統制ヲ致シテ有ユル方面ノ
-卽チ製絲業者ニモ宜ク、養蠶業者ニモ
宜ク、又輸出ニ對シテ外國ノ事情モ十分適
切ニ斟酌スルト云フヤウナコトニ取リマシ
テハ、左樣ナ事柄ニ取ッテ堪能ノ人ヲ補助
者トシテ、ソレノ意見ヲ聽ク機會ヲ作ルト
云フコトハ、此事業ノ發達ノ爲ニ極メテ必
要ナコトデアルマイカト云フコトデ、評議
員會ト云フ制度ヲ設ケタノデアリマス、ソ
レカラ尙ホ此處デ一ツ私ハ此會社ノ最モ誇
トスベキ、吾ミノ會社ノ誇トスベキ點ニ付
テ皆樣ノ御諒解ヲ願ヒタイ、ソレハ第十六
條ニアルノデアリマス、卽チ株主ニ對シテ
普通ノ六分ノ配當ヲ致シタ外ニ、尙ホ利益
ノアリマスル場合ニ於テハ、其會社ノ株主
デアッテ、其會社ニ生絲ノ販賣ヲ委託シタモ
ノニ付テハ、五分ニ當ル程度ヲ限度ト致シ
マシテ、今ノ割戾的ノ利益ノ分配ヲ致スト
云フ點ガ、洵ニ私ハ之ヲ誇トスル-ト云
フト甚ダオカシイデスガ、吾ミノ此統制會
社ノ得意ノ點デアルト云フ點ヲ御諒解願ヒ
タイノデアリマス、是ハ吾〓ハドウ云フ所
カラ考ヘタカト申シマスレバ、先程モ申上
ゲマシタ所ノ組合製絲ノ點カラ考ヘタノデ
アリマス、組合製絲ノ最モ吾こノ尊重スル
所以ノモノハ、養蠶家自身ガ組合ッテ、製絲
モヤレバ販賣モヤリ、輸出モヤル、隨テ其受
ケル所ノ利益ハ、結局スル所養蠶業ニマデ
均霑スル、斯ウ云フノガ組合製絲ノ最モ特
徵デアリ、吾〓ノ組合製絲ヲ推奬スル所以
デアリマス、ソレデ此最モ尊ブベキ點ヲド
ウシテ取レルカト云フコトヲ考案致シテ、
斯樣ナコトニ致シテ、此會社ガ或程度以上
ノ利益ノアッタ場合ニハ、其利益ヲ製絲業
者ニモ均霑セシムルト云フ意味ニ於テ、此
割戾ニ類シタ制度ヲ設ケタノデアリマス、
是ニ於テ一ツノ議論ガ起ルデアラウト思
フ、ソレハ宜シイ、製絲業者ニ割戾的ノ利益
ヲ拘露セシムルト云フコトハ宜シイガ、養
蠶家ハドウスルカ、養蠶家カラ繭ヲ賣ッタ
ノニ對シテ、製絲業者ニ利益ノアッタ場合
ニ、養蠶家ニモ利益ノ割戾ヲシナケレバナ
ラヌヂヤナイカト云フ議論ガ起ル、ソレモ
尤ノコトデアッテ、吾〓モ如何ナル方法ニ
致シタナラバ、此點ニ取ッテ、養蠶業者ニ
モ利益ヲ均霑セシメルカト云フコトニ、非
常ニ考慮ヲ加ヘテ見タノデアリマスケレド
モ、是ハ實際問題ト致シマスルト云フト、ド
ウモ養蠶業者ト云フモノハ殆ド二百萬戶モ
アルト云フ多數デアリマス、ソレヲドノ人
ガドノ會社ニ何貫目賣ッタト云フコトマデ
記錄シテ置イテ、サウシテソレニ其利益ヲ
割戾スト云フコトハ、中〓是ハ實際問題ト
シテハ行フコトハ出來ナイノデアリマス、
遺憾ナガラ養蠶業者ニ割戾シノ制度ト云フ
モノハ、此法案ノ上ニ現ハスコトハ出來ナ
イノデアリマスガ、單ニ斯ウ云フ考案ヲ持ッ
テ居ルノデアリマス、政府ハ更ニ別種ノ事
情政策ノ上カラシテ養蠶組合ト云フモノ
ヲ作ラシテ、サウシテ繭ノ販賣ハ養蠶組合
ト製絲業者トガ團體的ノ「バーゲン」ヲス
ルト云フヤウナコトニ致シマスレバ、初メ
テ此養蠶業者ニモ利益ヲ均霑セシムル、割
戾ノ方法ニ依テ利益ヲ均霑セシムルノ途ヲ
執ルコトガ出來ルデアラウ、斯樣ニ考ヘテ
居ルノデアリマシテ、是ハ別ノ方法ヲ以テ
是非日本全國ノ養蠶業者ニ、其土地々々ニ
於テ養蠶組合ト云フモノヲ作ラシメテ、サ
ウシテ團體的ノ商談ヲ行ハシメルト云フヤ
ウナ方法ニ致シタイ、斯樣ニ考ヘテ居ルノ
デアリマス、ソレデモウ一ツ此處デ皆樣ノ
御諒解ヲ願ヒタイコトハ、第十六條ノ條文
ニ示サレテアリマスル如クニ、利益ノ特別
ニ上ッタ場合ニ於テハ、其利益ヲ均霑セシ
メルコトハ、株主デアッテ此會社ニ生絲ノ
販賣ヲ委託シテ居ルト云フコトニナッテ居
ル、サウスルト云フト株主ニ非ズシテ委託
ヲシタ所ノ製絲業者ハドウスルカト云フ問
題ガ起ルノデアリマス、是ハ吾とハ製絲業
者ハ强制的デハアリマセヌガ、總テ假令一
株デモ宜イカラシテ、苟モ製絲業者ハ總テ
會社ノ株主ニナッテ貰フト云フ前提ノ下ニ、
斯ウ云フ方法ヲ立テタノデアリマス、勿論
强制的デハアリマセヌカラ、必シモ總テガ
入ルト云フコトニハ出來マセヌケレドモ、
私共ノ考カラ致シマスレバ、今ノヤウナ方
法デアリマスレバ、極メテ安全デアッテ、サ
ウシテ利益ノアッタ場合ニハ、自分ノ所ニ
ソレヲ割戾シテ貰ヘルト云フコトニナリマ
シタナラバ、一株位ハ-如何ナル貧弱ナ
ル製絲業者デアッテモ、之ニ加入サレルト
云フコトハ十分可能性ガアルト私ハ思フ、
故ニ吾こノ前提ト致シマシテハ、苟モ製絲
業ニ從事シテ居ラレル方ハ、假令一株デモ
二株デモ宜イカラ、必ズ此株主ニナッテ貰
ヒ得ルト云フ前提ノ下ニ、斯ウ云フ立法ヲ
致シタト云フコトヲ御承知置ヲ願ヒタイ、
萬一實際ニ於テサウ云フコトハ出來ナイ、
小製絲家ガ澤山アル、會社ニ入ラナイ製絲
家ガアッタト云フヤウナ場合ガアリマシタ
ナラバ其割戾ノ方法ハ別ニ此定款ニ於テ
規定ヲシテモ差支ナカラウト云フコトニ考
ヘテ居ルノデ、大體ニ於テハ今申上ゲタヤ
ウナ考カラ第十六條ヲ決定シタ譯デアリマ
ス、先ヅ吾ミノ此蠶絲株式會社ノ構成ニ付
テ主トシテ御注意ヲ願ヒタイ點ハ、今申上
ゲタ程度ノコトデアリマス
ソレカラ是デ此蠶絲株式會社ノ方ハ終ッ
タノデアリマスガ、其次ニハ製絲業法ノコ
トデアリマス、製絲業法ニ於キマシテハ、政
府ノ提案ト吾〓ノ提案ニ於テハ、餘リ多ク
ノ相違ガナイノデアリマスカラ、多クノ說
明ヲ要サヌト思フ、一口ニ申セバ先程申上
ゲタ統制ノ趣旨ニ適フヤウニ、免許制度ニ
シタ方ガ宜イト云フコトニ止ッテ居ルノデ
アリマス、是ハ旣ニ大體豫メ政府ノ御說明
ニ依テ御諒解ニナッテ居ルノデアリマシテ、
唯問題ハドノ位ノ程度デ、免許制度ノ條件
ヲドウスルカト云フコトガ、昨日來ノ質問
ノ要點ニナッテ居ルノデアリマス、吾ミノ
腹案ト致シマシテハ、普通ノ營業者ニ取ッ
テハ百五十釜、組合製絲ニ取ッテハ百釜ト
云フヤウニスルノガ、妥當デナイカト考ヘ
タノデアリマス、唯政府案ト違フ所ハ、此
附則ニ於テ吾とハ條件ヲ具ヘタ所ノ製絲業
者モ十年ノ後ニ於テハ其免許ヲ取消ス、斯
ウ云フ事ニナッテ居リマスガ、政府案ニ於
テハソレニ條件ヲ附ケテ、其條件ヲ滿シタ
場合ニ於テハ免許ヲ與ヘタモノト看做スト
云フ點ガ異ナルノデナリマス、吾ミモ此小
製絲業者ヲ其儘ニシテ捨置イテ、ドンナ困
難ニ陷ッテモ宜イト云フヤウニ考ヘテ居ル
ノデハナイノデアリマシテ、十箇年間ニ於
テ相當ナル奬勵ヲ致シマシタナラバ、是ハ
合同若クハ合併其他ノ方法ニ依テ、此條件
ヲ滿サレルヤウナ程度ニナリ得ルデアラウ
ト考ヘテ居ルノデアリマス、故ニ此點ニ取ッ
テ小製絲業者ヲ保護スルト云フコトハ、極
メテ重大ナルコトデアリマシテ、昨日來ノ
質問應答ヲ拜聽致シマシテモ、委員諸君ノ
最モ力ヲ入レテ御論ジニナッテ居ル點ノヤ
ウニ思フノデアリマスカラ、吾とハ必ズ是
ハ先ヅ合併ガ出來ルデアラウト云フ豫想ノ
下ニ、斯樣ナ附則ヲ付ケタノデアリマス、
併シソレニハ困難ナ事情ガアルト云フコト
デアリマスレバ、如何樣ニ御修正下サッテ
モ、之ヲ政府案ノ如クニ御修正下スッテモ、
吾ミハ何等固執ハ致サヌノデアリマス、玉
成スルト云フ上ニ於テハ、委員諸君ノ御意
向ニ從テ、決シテ之ヲ固執スル意味デモ
何デモナイノデアリマスカラ、ソコヲ惡シ
カラズ御諒解ヲ願ヒマス
其次ニハ原蠶種國家管理法案デアリマ
ス、是モ極メテ簡單ノ事デアリマシテ、餘
リ多クノ說明ヲ申上ゲルノ必要ハナイノデ
ハアルマイカト思ッテ居リマスガ、唯一言
吾とガ原蠶種ノ國營管理ト云フコトヲ必要
トスル根本思想ヲ、一言申上ゲテ置キタイ
ト思ヒマス、私共ノ考ヘル所ニ依リマスル
ト云フト、先程モ一寸申上ゲマシタガ、我
國ノ〓絲業ハ今ヤ其發達ノ絕頂ヲ少シ過ギ
タヤウニ實ハ考ヘルノデアリマス、隨テ
是以上發達シナイトハ申シマセヌ、有ユル
方法ヲ以テ更ニ發達スルヤウニ助長シナケ
レバナラヌコトハ當然デアリマスガ、併ナ
ガラ凡ソ產業ニ於テハ、旭日昇天ノヤウニ
上リ坂ニアル場合ト、又下リ坂ニアル場合
トガアルノハドウシテモ免レナイ、上リ坂
ニアル場合ハ、上リ坂ニアル場合ノヤウ
ニ、計畫ヲ樹テナケレバナラヌ、下リ坂ニ
アッタ場合、卽チ守勢ノ場合ニハ、守勢ノ方
法ニ依ルヤウナ方案ヲ樹テナケレバナラヌ
ノデアリマス、吾ミハ日本ノ今日ノ蠶絲業
ハ守勢ノ時期ニ達シテ居ルノデハアリマス
マイカ、斯樣ニ考ヘルノデアリマス、其意
味ハドウ云フコトデアルカト云フト、人絹
ト云フモノガ非常ナル速度ヲ以テ發達ヲ致
シテ居リマス、而モ近來ノ人絹ト云フモノ
ハ、私ハ當業者其他ノ實際家カラ承ッテ見
ルト、殆ド天然絹絲ト變ラナイヤウナ、彈
力ノ上ニ於テモ其他ノ上ニ於テモ變ラナイ
ヤウナモノニナッテ居ル、ソレデ値段ハ最
モ高イ時デモ、天然絹絲ハ日本ノ生絲ノ三
分ノ一デアルト云フヤウナ狀態デアリマス
ルカラ、ドウシテモ或ル程度迄人絹ニ壓迫
サレルト云フコトハ免レナイ事柄デアルト
覺悟シテ、對策ヲ講ジナケレバナラヌト思
フノデアリマス、ノミナラズ又先程モ一寸
一言觸レマシタガ、今日ハ支那ノ生絲ト云
フモノハ怖レルニ足ラヌノデアリマスガ、
兎ニ角支那ノ生絲ト云フモノハ、勞力賃ガ
非常ニ安イノデアリマス、又桑モ安イノデ
アリマス、卽チ原料ハ非常ニ安イノデアリ
マスカラ、生產費ガ從テ安クナルノデア
リマス、此安イ支那ノ生絲ヲ相手トシテ、
我國ノ蠶絲業ノ將來ヲ考ヘテ見マスルト、
ドウシテモ我國ノ生絲ト云フモノハ、量ニ
於テ增スト云フコトヨリハ、質ニ於テ優秀
ナモノヲ造上ゲ、サウシテ値段ヲ良クス
ル、斯ウ云フコトデナケレバナラヌト思フ
ノデアリマス、斯樣ナ意味ニ於テ、卽チ此
日本ノ生絲ト云フモノハ、量ヲ增スコトハ
勿論閑却スルト云フ意味ヂヤアリマセヌ
ガ、量ヨリハ質ニ重キヲ置クト云フ方針ニ
於テ、此養蠶業ヲ指導シナケレバナラヌ、
斯樣ニ考ヘルノデアリマス、斯樣ナ意味合
ニ於テ、必ズシモ量ヲ增スト云フコトヲ主
トセズシテ、値段ノ如何ニ依テハ、寧ロ生
產制限ヲ或ル程度迄シテ、量ヲ少クシテモ
質ヲ良クスル、サウシテ適當ノ値頃ニ維持
シテ養蠶業ヲ救フト云フ方面ニ統制ノ目的
ヲ向ケナケレバナラヌ、斯樣ニ考ヘルノデ
アリマス、此目的カラ致シテ、ドウシタラ
宜イカト云フト、色ミナ外ノ方面モアリマ
セウガ、一番效果的デアッテ簡易ニ行ハル
ルモノハ、原蠶種ノ國營ト云フ事柄デアル
ト思フノデアリマス、今日御承知ノ如ク
ニ、日本ノ蠶種ト云フモノハ八百種ノ多キ
ニ上ッテ居ルサウデアリマス、其中デ優良種
ト言ハレルモノハ、漸ク十種シカナイト云
フコトデアリマス、斯樣ナ雜然トシタ澤山
ノ而モ質ノ惡イ所ノ蠶種ヲ以テ養蠶ヲ致
シマシテハ、ドウシテモ品質ノ揃ッタ所ノ
繭ガ出來ル譯デハナイ、原料ノ惡イ繭ヲ
使ッテ良キ生絲ヲ造ラウトシテモ、是ハ不
可能ノコトデアリマスカラ、ドウシテモ此
點ニ向ッテ思切ッタ一大改善ヲ加ヘナケレバ
ナラヌト云フコトハ、思フニ何人モ異論ノ
ナイ所デアラウト思ヒマス、仍テ斯樣ナ意
味ニ於テ、政府自ラガ此天然蠶種ト云フモ
ノヲ國營ト致シ、サウシテ之ヲ各府縣ニ配
布シテ、府縣カラ更ニ原蠶種ヲ造ッテ、此蠶
種製造業者ニ相當ナ値段デ賣渡ス、若クハ
原蠶種製造業者ニ政府ガ相當安イ値デ、之
ヲ賣渡スト云フコトニ致シマシタナラバ、
今申上ゲタ量ヨリ質ニ重キヲ置イテ、良キ
生絲ヲ値ヲ良ク賣ルト云フ意味ニ於テモ、
亦必要ノアル場合ニ於テハ、此生產ニ向ッ
テ相當ノ制限ヲ加ヘルト云フ意味ニ於テ
モ、原蠶種ガ本デアリマスカラ、之ヲ政府
ハ自ラ國營ト致シマシテ、此養蠶業者ニ配
布スル上ニ於テモ、生產制限ノ上ニ於テ
モ、質ヲ向上セシメル上ニ於テモ、極メテ容
易ニ其目的ヲ達スルコトガ出來ヤウ、斯樣
ニ考ヘマシタノガ原蠶種國家管理法案ノ趣
旨デアルノデアリマス、是デ大體不十分ナ
ガラ私共提案ノ全部ニ亙ッテ一應ノ說明ヲ
シタ譯デアリマスガ、尙ホ御質問ニ應ジテ
御答ヲスルコトニ致シタイ、此場合私ノ希
望ヲ一言申上ゲテ置キタイト思フノデアリ
やく、旣ニ政府案ノ蠶絲業法ハ殆ド八分通
リカ九分通リハ質問ガ終ッタヤウナ狀態デ
アリマスガ、吾ミノ提案致シマシタ蠶絲業
法モ、思フニ此質問ニ於テ或ハ盡キテ居ル
カモ知レマセヌ、併シ多少ノ御質問ハ勿論
アラウト思ヒマスケレドモ、併シ私共ノ
考ハ先程最初ニ力ヲ入レテ御說明申上ゲテ
御諒解ヲ願ヒマシタ如ク、此蠶絲業ノ統制
ト云フコトハ、到底一ツヲ以テハ完全ニ行
カヌノデアリマス、是ハドウシテモ組織的
二、寧ロ有機的ニ、吾こノ提案シタ-少
クトモ吾こノ提案シタ四ツニ亙ル所ノ法案
位ハ、之ヲ不可分的ノモノト見テ之ニ檢討
ヲ加ヘ、御〓究ヲ願ハナケレバ、之ヲ切離
シテ一部分々々々ニ行ッテ見テモ、甚ダ效
果的デナイト思フノデアリマス、隨テ吾ミ
ハドウシテモ蠶絲業ニ統制ヲ加ヘルコト
ハ宜シイト云フコトニ意見ノ御一致ガ願ヘ
ルモノデアリマスナラバ、ドウシテモ販賣
統制ト云フモノヲ中心トシテ、蠶絲業竝原
蠶種國營案ト云フ、此蠶絲業ノ全般ニ亙ル
統制案ヲ一ツノ連絡アルモノトシテ、是ノ
審議ノ御進メヲ願ハナケレバ、效果的ナ統
制案ヲ得ルコトハ出來ナイト思フノデアリ
マス、其御便宜ハ委員長ノ適當ナ御配慮ニ
任スノ外ハアリマセヌガ、私ハ是ハ不可分
的ナモノ、一聯ノモノ、ドウシテモ脈絡ヲ
付ケナケレバナラナイモノトシテ、之ヲ是
非共一〓ニ御審議ヲ進メテ願フヤウニ致シ
タイト云フ希望ヲ併セテ申上ゲテ、私ノ說
明ヲ終リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006311922X00319320830&spkNum=55
-
056・生田和平
○生田委員長 休憩致シマス、午後ハ一時
カラ此委員會ヲ開キマス、左樣御承知ヲ願
ヒマス
午前十二時休憩
午後一時三十九分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006311922X00319320830&spkNum=56
-
057・生田和平
○生田委員長 開會致シマス、午後ノ委員
會ハ、政府提出ノ製絲業法案竝ニ胎中楠右
衞門君外二名提出ノ製絲業法案ハ、同一議
案デアリマスカラ、此際一括シテ此二案ノ
ミ上程シタイト思ヒマスガ、御異議ハアリ
マセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006311922X00319320830&spkNum=57
-
058・生田和平
○生田委員長 然ラバ左樣致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006311922X00319320830&spkNum=58
-
059・横川重次
○橫川委員 私ノ質問ハ政府提出ノ此法案
ニ對シテ一二法文上ノ質疑ヲ要スル點ヲ申
上ゲタイト思ヒマス、認可ニ關スル法文中
ニ於キマシテ、旣ニ許サレタル製絲業者ノ
增釜ヲ申請シテ參リマシタ際ニ、之ニ對ス
ル當局ノ許可ノ御方針ヲ承リタイ、是ガ
點ソレカラ既ニ許サレタル業者ニシテ、
將來資金ノ狀態ヤ、經營ノ狀態ガ認可ノ條
件ニ合致セザルヤウニナッタ場合、卽チ非
常ナ損失ヲ〓ゲテ、資產ガ惡クナッタトカ、
乃至ハ其他十分條件ニ合致シナイヤウナ事
ガ起ッタ場合ニハ、之ニ對シテ當局ハ之ヲ
取消スカドウカ、此點ヲ一ツ、ソレカラ旣ニ
得タ權利者ガ、何等カノ事情ニ依テ、他〓
其權利ヲ轉賣シヨウトスル場合ノ御方針如
何、是ハ旣ニ質問ガアッタカモ知レマセヌ
ガ、此三點ヲ先ヅ御伺ヒ致シタイト思ヒマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006311922X00319320830&spkNum=59
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060・入江魁
○入江政府委員 第一點ノ御尋ノ增釜ノ場
合ニ於キマシテハ、ソレニ付テ調査致シマ
シテ、相當ノ設備等ヲ備ヘマシタラ認可致
シマス方針デアリマス、第二ノ釜數ガ減ジ
タヤウナ場合デアリマス、其場合ニ於キマ
シテハ、第六條ニ依テ旣ニ主務大臣ヨリ其
狀況等ヲ詳シク調ベマシタ上ニ於キマシ
テ、ソレガ引續イテ四條ニナリマスガ、尙ホ
此方ノ注意監督等ノ點ニ付キマシテ、色こ
ノ點カラ出來ナイ、而モソレガ一年以上
續クト云フヤウナ場合ニ於キマシテハ、ソ
レガ却テ製絲業全般ノ上ニ害ヲ與ヘルト云
フヤウナ場合ニハ、取消スト云フ考ヲ有ッ
テ居リマス、ソレカラ最後ノ御尋ノ權利讓
渡ノ場合ニ於キマシテハ、斯ウ云フコトニ
考ヘテ居リマス、大體附則ノ承繼ト云フ所
ニ於キマシテ之ヲ認メル方針デアリマス、
併シ昨日モ一寸申上ゲテ置キマシタガ、合
併トカ、包括デアリマストカ云フモノハ認
メマス、大體同業者ノ讓渡ハ當然認メル、
併シサウデナイモノハ、新免許ノ方針ヲ執
リタイ、斯ウ云フ考ヲ有ッテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006311922X00319320830&spkNum=60
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061・横川重次
○橫川委員 第一番目ノ增釜ノ場合ニ於キ
マシテハ、是ハ五十釜、百釜乃至ハ百五十
釜デモ、所要ノ釜數以上ノモノデアレバ差
支ナイ譯デアリマスカ、此增加ノ場合モ、
矢張リサウ云フ意味合ニナリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006311922X00319320830&spkNum=61
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062・入江魁
○入江政府委員 十デモ二十デモ差支ナイ
考ヲ持ッテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006311922X00319320830&spkNum=62
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063・横川重次
○橫川委員 ソレカラ第五條ニ關スルコト
デアリマスガ、例ヘバ製絲家ガ手先ノ者ヲ
使ッテ繭ヲ集メマシタ際ニ、其繭代金ヲ、
正シカラザル理由ノ下ニ養蠶家ニ支拂ヲ遲
延シタリ、乃至ハ未拂ヲシタト云フヤウナ
場合ニ於テハ、御當局ハ之ニ對スル處置ハ
ドウ云フコトニ御考ヘニナッテ居リマス
カ、若シ是ガ第五條ノ公益ヲ害スト云フヤ
ウナ條項ニ當篏マルモノデアリマスカドウ
カ、之ヲ御伺ヒ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006311922X00319320830&spkNum=63
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064・入江魁
○入江政府委員 ·昨日モ此點ニ付テ申上ゲ
タノデアリマスガ、繭代金ヲ支拂ハナイト
云フコトハ、賃銀不拂ノ場合ト矢張性質ハ
同ジカト考ヘテ居リマス、是ハ一製絲家ト
一養蠶家トノ間ニサウ云フ場合ガアルトシ
テ、斯ウ云フコトヲ以テ直ニ公益ヲ害スル
ト云フコトノ公益ニハ當ラナイ、唯是ガ全
般的ニ及ブ場合デ、何カ製絲業ノ團體ト云
フヤウナモノガ、一般的ニ擧ッテヤルト云
フコトニナリマスレバ、其關係カラ致シマ
シテ、公益ト云フヤウナコトニ及ンデ行ク
デハナカラウカ、サウ云フ意味デ昨日私ハ
賃銀ノコトニ付テ申上ゲテ置イタノデアリ
マスガ、此公益ト云フコトハ、法制ノ技術ノ
上カラ解釋シテ、事實上ニ適用スルコトハ
先ヅ無イデハナカラウカト考ヘテ居リマ
ス、今御尋ノヤウナ點ニ付キマシテハ、別
ニ製絲業者取締ノ方ニ依リマシテ相當命令
ヲ發シ、或ハ注意ヲ致シ、ソレニ應ジナイ
場合ハ此製絲業取締法デヤッテ行カウ、斯ウ
云フ考ヲ持ッテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006311922X00319320830&spkNum=64
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065・横川重次
○橫川委員 或ハ私ノ質問ノ要旨ガ不徹底
デアッタカモ知レマセヌガ、或ル一ツノ製
絲家ガ、中間ニ手先ノ數人ヲ使ッテ、多クノ
養蠶家カラ繭ヲ集メマス、サウ云フ場合
ニ、多クノ養蠶家ガ繭代金ノ支拂ヲ受ケル
コトガアリ得ルコトデアリマス、斯樣ナ事
ハ延取引ヲヤル場合ニ種々認メルノデアリ
マスガ、其以外ニ故意ニ繭代金ヲ支拂ハナ
イヤウナ場合ニハ、不測ノ損失ヲ受ケルト
云フコトガアリ得ル譯デアリマス、サウ云
フ場合ヲ御尋シタ譯デアリマス、ソレカラ
前ニ質問ノ第二ノ中ニ於キマシテ、若シ旣
ニ許サレタル所ノ製絲家ガ、其資產ノ狀態
ガ非常ニ惡クナリマシテ、斯樣ナ事態ヲ惹
起スヤウナ事モ想像セラレルノデアリマ
ス、サウ云フヤウナ際ニハ製絲家タルノ資
格ニ既ニ缺クルモノデアラウト思ヒマス
ガ、斯樣ナモノハ御取消ニナル譯デアルカ
ドウカ、此點モ併セテ御答ヲ願ヒタイノデ
アリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006311922X00319320830&spkNum=65
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066・入江魁
○入江政府委員 其點ニ付キマシテハ、實
ハ製絲業法ト云フ法律ヲ制定致スニ付キマ
シテ、私共考ヘテ居リマシタコトハ、製絲
業者ノ基礎ヲ成ベク完全ニセシメタイ、サ
ウシテ今御話ノヤウナ、養蠶家ニ迷惑ヲ掛
ケナイヤウニシテ行キタイ、斯ウ云フコト
ニ立脚致シテ居リマス、ソレデ然ラバ今御
話ノヤウニ、或ル仲買ナドガ介在致シマシ
テ、サウシテ養蠶家ニ迷惑ヲ掛ケル例ガ往
往アルノデアリマス、サウ云フ點ニ付キマ
シテハ、出來ルダケ製絲業者ノ方ノ取締ト
云フヤウナ點カラ、相當忠告ヲ致シ、取
締ッテ行キタイ、尙ホソレニ付キマシテ、
今御話シタヤウニ、資本狀態モ惡クナッテ
來、到底經營ガ出來ナイ、斯ウ云フヤウナ
コトニナリマス場合、少クトモ營業ノ成績
ト云フヤウナ點ニ付テモ、工場ヲ休ンダ
リ、或ハ又始メタリスルト云フヤウナコト
ニナリマスレバ、何トカシナケレバナラナ
イカト思ヒマス、併シサウ云フコトニ付テ
ハ兎ニ角營業シテ居リマス者ノ狀態ヲ、
一片ノ取締法デ止メサシタリ、取消シタリ
スルノモドウカト考ヘマスノデ、其點ニ付
キマシテハ、十分此法律ノ精神ヲ發揮致シ
マシテ、從來ヨリ一層其點ヲ注意シテ行キ
タイ、サウ云フ意味ニテヤッテ行キタイト
云フ考ヲ持ッテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006311922X00319320830&spkNum=66
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067・横川重次
○橫川委員 モウ一點ダケ伺ヒマス、現在
休業ヲシテ居リマスル製絲家ガ相當數多ク
アラウト思ハレマスガ斯樣ナ者ハ、此法案
ガ成立致シタト致シマスルト、ソレ〓〓開
業ノ運ヲシテ、認可ヲ得ルト云フコトニ相
成ラウト思ヒマスガ、ソレハ一年間ノ範圍
內ニ於テ開業ヲスレバ、認可ノ形式ナシニ
モ製絲業者タルコトヲ認メテ戴ケル譯デゴ
ザイマセウカ、其點ヲ伺ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006311922X00319320830&spkNum=67
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068・入江魁
○入江政府委員 此法律ヲ施行シマスルニ
當リマシテ、嚴密ナル營業者、卽チ製絲
工業者ガ休ンデ居ル時ハ、當然屆出ヲシ
テ、サウシテ製絲業ト看做ス、斯ウ云フ考
デアリマス、隨テ其後ニ於キマシテ、一年
ヲ過ギテ手續ヲスルト云フコトガ發生スル
ト其問題ガ起ル、斯ウ考ヘテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006311922X00319320830&spkNum=68
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069・百瀬渡
○百瀨委員 政府提出ノ製絲業法案ト、政
友會ノ方デ御提出ニ相成リマシタ製絲業法
案ト、一括シテ今議題ニナッテ居リマスル
カラ、此場合ニ政友會側ノ提出案ニ對シマ
シテ、一二ノ質問ヲ試ミテ置カウト思ヒマ
ス、昨日來政府案ニ對シテ、各委員ヨリ、
各方面ヨリ御質問ガアリマシテ、之ニ對ス
ル政府案ノ內容ハ殆ド之ヲ知悉スルコトガ
出來タノデアリマス、而シテ本日政友會案
ノ御提案ニ對シテ、武田議員ノ御說明ヲ拜
聽致シマスルト云フト、殆ド其內容ガ相等
シキモノデアル、唯附則ニ於テ多少異ッタル
點ガアルガ、大部分同一內容デアルト云フ
ヤウナ御說明デアッタノデアリマス、果シ
テ然リト致シマスナラバ、政友會案ニ於キ
マシテモ認可基準、卽チ營業製絲ノ釜數百
五十、組合製絲ノ百釜ト云フ此基準ハ、
吾〓ノ見ル所デハ大資本主義ノ擁護デアッ
テ、小製絲家ノ壓迫トナル、其點ニ付テ非
常ナ疑義ヲ有シテ居ル者デアリマスガ、矢
張政友會側ノ御質問ニ付テ檢討シマシテ
モ、私ト同ジヤウナ考ヲ持ッテ居ル御意見
附ノ御質問モアッタヤウニ存ジマスガ、其
點ハ決シテ資本主義ノ擁護トモナラズ、又
小資本家ノ壓迫トモナラナイ、此程度ガ最
モ理想的デアリ、合理的デアルト云フ御考
ノ下ニ、此基準ヲ御定ニナル御方針デアル
カドウカ、言葉ヲ換ヘテ言ヘバ、政府案ノ
內容ト其意見ヲ異ニシナイト云フ御意見デ
アリマスカドウカ、其邊ヲ此場合ニ伺ヒマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006311922X00319320830&spkNum=69
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070・武田徳三郎
○武田委員 只今ノ御質問ニ御答ヲ致シマ
ス、私ハ私ノ提案ノ說明中ニ、大體政府ノ
提案ト餘リ相違ガナイト申シタノハ、形
現レタコトヲ申シタノデアリマシテ、或
精神ニ於テ、政府ハドウ云フ御意見デアリ
マスカ、或ハ相違シテ居リマスカ、私ノ申
上ゲルコトヲ御聽取下サレバ明カニナラウ
ト思ヒマスガ、私共ガ免許制度ヲ取リマシ
タコトハ、決シテ資本主義擁護ノ爲メデハ
ナイト云フコトヲハッキリ申上ゲテ置キマ
ス、然ラバドウ云フ理由デ免許制度ヲ取ッ
タカト云フト、第一ハ此製絲業ヲシテ出來
ルダケ合理的ノ經營ヲセシメタイ、斯ウ云
フコトデアリマス、ソレハ實ハ率直ニ申
上グレバ、其程度ハ如何ナルモノデアルカ
ト云フコトハ、實ハ吾こハ素人デアリマス
カラ、十分ニ之ヲ具體的ニ精密ナルコトヲ
數字的ニ說明スルコトハ出來ナイノデアリ
マス、併ナガラ總テノ工業ハ、工業ノ性質
ニ依テ其「スケール」ノ大小ト云フモノハ自
ラアルノデアリマス、吾ミハ專門家ニ色〓
サウ云フ點ヲ調査サセタリ、又實際家ニ
付テ承ッテ見ルト、一般製絲業ヲ今日ノ實
情ニ於テ最モ合理的ニ經營シ得ル程度ハ、
二百釜乃至四百釜ト聞イテ居リマス、大製
絲家ト雖モ、ソレヲ合理的ニセンガ爲ニ全
體トシテ何百釜若クハ何千釜ト云フ工場ヲ
持ッテ居リマスケレドモ、ソレハ部分的ニ
大抵二百釜位、若クハ百五十釜位、多クモ
三四百釜位ノ幾ツカニ工場ヲ分ケテ居ルト
云フヤウニ聞イテ居リマス、又實際吾ニノ
拜見スル所モ、サウ云フヤウニナッテ居ル
ヤウニ感ジテ居ルノデアリマス、ソレデ日
本ノ蠶絲業ヲ盛ナラシムルト云フコトハ、
個人々々ノ營業者ヲモ、其利害ヲ無視スル
コトハ出來ナイコトハ常然デアリマスケレ
ドモ、日本ノ〓絲業全體ヲシテ、其經營ヲ
合理的ナラシムルト云フコトハ、日本ノ蠶
絲業全體トシテ考ヘナケレバナラヌコトデ
アリマシテ、御承知ノ如ク、又私ノ說明中
ニモ詳シク中上ゲタ如クニ、日本ノ蠶絲業
ハ、私ハ國內的ノ產業デナクシテ、全然外
國貿易ヲ主トスル、卽チ事實カラ申シマス
ナラバ亞米利加ニ依存シテ居ル產業デアリ
やく、隨テ是ハ唯一部ノ人ノ利害ト云フコ
ト、其事業ガ合理的ニ行カナイト云フコト
ニナリマスルト、此事業ノ前途ニ暗影ヲ與
ヘルコトニナルノデアリマス、故ニ何トシ
テモ、之ヲ合理的ニ進メルト云フコトガ、
第一ノ方法デアラウ、斯樣ニ考ヘテ居ルノ
デアリマス、併シ此二百釜ガ最モ合理的ダ
ト云フコトヲ聞イテ居リマスケレドモ、百
五十釜若クハ百釜位デモ、斯ウ云フコトハ
尺度デ計ルヤウナ譯ニ行カナイカラ、實際
ノ經驗カラ言ヘバ、先ヅ百五十釜位デモ相
當ニ合理的ニ出來ル、又少シク忍ブナラバ
百釜位デモ、之ヲ二百釜ノモノト比較スレ
バ、幾ラカ不便ノ點モアルケレドモ、サウ
大シタコトモナイト云フ說モ伺ッテ居ルノ
デアリマス、ソレデ一面ニ於テハ成ベク其
最小限度ノ條件ヲ以テ致スト云フコトハ、
今日現存シテ居ル蠶絲業者ニ對シテ便利ヲ
與ヘル所以デアルト考ヘマシテ、理想的ニ
ハ二百釜デアッテモ、ソレヨリ非常ナ不便
ガナイモノナラバ、幾分便宜ヲ與ヘル方ガ
宜カラウト云フ意味デ百五十釜トシタノデ
アリマス、是ハ勿論施行規則ニ定メル譯デ
アリマスガ、サウ云フ見當ヲ付ケタノデア
リマス、ソレカラ組合製絲ハ、是亦御承知
ノ如クニ今日ハ發達ノ過程ニアリマシテ、
出來ルダケ之ヲ奬勵スル意味ニ於テ、便宜
ノ處置ヲ執ッタ方ガ宜カラウ、組合製絲ニ
於テ釜數ヲ多クスルト云フコトハ、其組合
ヲ造ル上ニ於テ、種々ナル困難ガ伴フト云
フコトヲ考慮致シマシテ、營業製絲ヨリハ
五十釜、少クシタ方ガ宜カラウ斯樣ニ考ヘ
タ譯デアリマス、ソレカラ又小製絲家ニ及
ボス影響ニ至リマシテハ、尙ホ眼前ノ事實
トシテハ、現ニ玆ニ營業製絲家ガヤッテ居
ラレルノデアリマスカラ、ソレハ少シク御
迷惑モアリマセウ、併ナガラ日本ノ蠶絲業
ヲ合理的ニシ、且販賣ノ上ニ於テモ、先程
販賣統制ノ點ニ付テ說明申上ゲタル如ク、
販賣ヲ統制スルト云フコトニ取ッテハ、勢
ヒ製絲業者ニモ或ル程度ノ統制ヲ加ヘナケ
レバナラヌ、サウシナイト、卽チ價格ノ安定
ヲ得ルコトハ困難デアリ、又價格ヲ適當ナ
程度ニ維持シテ行クコトモ困難デアリマ
ス、結局全體カラ,言ッテ價格ノ安定、相當
程度ノ維持ガ行ハレナイナラバ、廻リ〓ッ
テ小製絲業者モ隨テ非常ナ損害ヲ受ケル譯
デアリマス、小製絲業者ヲ保護スル意味ニ
於テモ、目前ノ多少ノ不利益ハ忍ンデ、玆
ニ相當ナル條件ノ下ニ統制ヲ加ヘタラ宜カ
ラウ、斯ウ云フ二ツノ意味カラ出發致シタ
ノデアリマス、ソレカラ當面ノ製絲業者ヲ
保護スル途ト致シマシテハ、私共ノ案ニ依
リマスト、先程申上ゲタヤウニ、十箇年ノ
猶豫期間ノ間ニ之ヲ增加セシムル、資力ノ
アル者ハ相當擴張シテ行ク、サウデナイ者
ハ合併若クハ相當ノ助力ヲ與ヘテ合併セシ
ムルカシテ此條件ニ合ハセル、卽チ合理的
ノ經營ヲセシムルヤウニ助長スル、斯ウ云
フ精神カラヤッテ居ルノデアリマスガ、政
府ノ方デハ合併ト云フコトハ困難デアルカ
ラ、共同施設ノ下ニ同一ノ效果ガ擧ガルナ
ラバ其儘許可シテモ宜カラウト云フ政府
ノ意見ノヤウデアリマス、是モ御尤ナ譯デ
アリマスカラ、ソレハ私ノ方デハ固執シナ
イト申スノデアリマス、大體今申上ゲタヤ
ウナ趣旨カラ吾〓ノ提案ヲ致シタ譯デアリ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006311922X00319320830&spkNum=70
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071・川淵洽馬
○川淵委員 此釜數ニ關聯シテ一寸御伺致
シタイト思ヒマスガ、組合製絲ヲ造ル際ニ
於テ、組合デ資金ヲ出ス、ケレドモ經驗ガ
少イ爲ニ經驗ノアル者ニ實際ノ事業ヲヤラ
サウト云フヤウナコトモ起ッテ來ル、言換ヘ
ルト信用組合邊リノ金ノ餘分ナモノヲ集メ
テ、之ニ依テ組合製絲ノ固定資本ト致シマ
シテ組合製絲ヲヤッテ行キタイ、併シ適當
ナ經營者ガナイト云フヤウナコトノ爲ニ、
專門家タル製絲業者ノ手ニ依テ經營ヲシテ
貰ハウト云フコトガ起リ得ル、又サウ云フ
コトハ地方ノ狀況ニ依テハ奬勵シテモ宜イ
デハナイカト思フノデアリマスガ、農林當
局ハドウ考ヘテ居ラレマスカ、其際ニ於キ
マシテ斯ウ云フコトヲ將來豫想シテ、ソレ
モ見込アルモノハ助長シテヤラウト云フ御
考デアリマスナラバ、其際ノ釜數ハ工場本
位トシテ、固定資本ヲ投ジタ組合製絲ノ百
釜ニ置カレルカ、或ハ百五十釜ニ置カレル
カ、政府當局ト政友會案兩方ノ御意見ヲ
伺ッテ見タイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006311922X00319320830&spkNum=71
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072・入江魁
○入江政府委員 政府ニ於キマシテハ、今
ノ製絲業ノ小製絲工場ト云フ方面ニ於キマ
スルト、此不景氣デ繭ノ値ガ下リ、絲ノ値
ガ下ルト云フヤウナ傾向ノ時ニハ、御話ノ
如ク休ム工場ガ多クナッテ參ルノデアリマ
ス、又一方ニ於キマシテ組合製絲ト云フ方
面カラ考ヘマスト、大體昨日申シマシタ
ガ、固定資本ニ非常ニ金ヲ掛ケマスト、隨
テ是ガ營業ノ上ニ於テ色ミナ不都合ガア
リ經營ガ旨ク行カナイト云フ實情ニアリ
マスコトハ御述べニナッタヤウナ狀態デア
ルノデアリマス、隨テ今ノ御尋ノヤウナコ
トニ付キマシテハ考究ヲ致シテ居ルノデア
リマスガ、殊ニ今私共調査致シテ居リマス
ノハ、組合製絲ノ發達シナイト云フコト
ハ、一ツハ今申上ゲマシタ固定資本ニ金ガ
掛ルト云フコトデハナカラウカ、サウ云フ
コトカラ考ヘマシテ、今休ンデ居ル工場等
ニ委託致シマシテ之ヲヤルナラバ、先ヅ行
クヤウナ場合ガアルノデハナカラウカ、例
ヘバ今川淵サンノ御話ノ如ク、聯合ト云フ
ヤウナ形ニナルノデアリマスガ、サウ云フ
モノニ對シテモ、今調査シテ居リマシテ、
數ハ餘程ゴザイマス、實際ニ卽シテヤッテ居
リマスモノガ、現在數府縣ニ行ハレテ居ル
ト聞イテ居リマスガ、サウ云フモノニ付テ
徹底的ニ調査ヲ致シマシテヤッテ見タイ、而
シテ今御話ノ如ク其場合百五十ト見ルヤ、
百ト見ルヤト云フノデアリマスガ、大體組
合ノ方面ノ委託ヲ受ケテ居ルト云フモノナ
ラバ、ヤハリ百釜デ宜クハナイカト考ヘテ
居リマス、實ハ其點ヲ今〓究シテ居リマシ
テ、寧ロ奬勵シテヤッテ見ヨウト云フ頭デ
居ルノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006311922X00319320830&spkNum=72
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073・武田徳三郎
○武田委員 只今ノ御尋ニ御答致シマス
ガ、結論ハ今ノ政府ノ御答辯ト同ジデアリ
マス、要スルニ先程ドナタカノ質問ノ際申
上ゲタヤウニ、合理的經營ト云フコトガ主
デアリマスカラ、組合製絲デアラウトモ、
營業製絲デアラウトモ、理想カラ申スナラ
バ二百釜ガ適當デアルガ、ソレヲ組合製絲
ト營業製絲トノ間ニ五十釜ノ差ヲ置イタノ
ハ、組合製絲ト云フノハ組合ノ仲間ヲ造ッ
テ、規模ノ大キイモノヲ造ルト云フコトハ
今日ノ實情トシテハ困難デアラウ、ソレヲ
奬勵スル意味ニ於テ五十釜少クシタト云フ
コトデアルノデアリマスカラ、ソレデ此委
託製絲ト云フヤウナモノニ、私ハ實情カラ
申シタナラバ、實際ノ調査ヲ致シテ居リマ
セヌカラ知リマセヌガ、委託製絲ト云フヤ
ウナモノハ、詰リ比較的一時的ノコトデ、
永久ニハ委託製絲ニシテ置クト云フ譯ノモ
ノデハナカラウト思フノデアリマス、若シ
單純ニ委託製絲デヤルト云フヤウナコトデ
アリマスルト、此業態自身竝ニ其他ノ技術
的ノコトニ於テ特殊ノ〓究ヲスルト云フヤ
ウナコトモナクナルデアリマセウシ、眞·
其業ヲ發達セシメテヤルト云フコトナラ
バ、自分自身デ工場ヲ持ッテ、特殊ノ施設
ト特殊ノ方法ヲ以テ之ニ〓究ヲ加ヘルト云
フコトデナケレバ、完全ナル工場ニナラヌ
ト思ヒマス、詰リ何等カノ便法トシテ、委
託製絲ヲヤル、今蠶絲局長ノ御話ノ如ク、
差當リ多クノ固定資本ヲ要スルト云フコト
ニナルト、組合ハ出來ヌ、マア約束ハ工場
ヲ造ルニシテモ、取敢ズ委託製絲ヲスルト
云フヤウナコトカラ出發スルモノト思フノ
デアリマス、サウシテ見マスト、所謂組合
製絲ヲ助長スル意味合ニ於テ、普通ノ組合
製絲ノ釜數ヲ標準トスルト云フコトハ當然
ノ歸結デアラウト斯樣ニ考ヘテ居ル次第デ
アリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006311922X00319320830&spkNum=73
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074・百瀬渡
○百瀨委員 尙ホ一寸御尋致シマスガ、只
今ノ御說明ニ依リマスト云フト、總テ蠶絲
業ハ合理的ナ統制ヲ望ムノデアルガ、此製
絲業法ニ於テモ合理的ニ之ヲ要求スルモノ
デアルガ、併ナガラ政府ノ提出ニナラレタ
其內容ト大シタ相違ハナイノデアルカラ、
多少異ッテ居ル點ガアッテモ、ソレハ固執ス
ルモノデナイ、要スルニ政府案ノ內容ト殆
ド同一デアルト云フコトニ解釋ヲシテ宜シ
イノデスカ、其點ヲモウ一度伺ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006311922X00319320830&spkNum=74
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075・武田徳三郎
○武田委員 御答致シマス、大體仰セノ通
リデアリマスガ、此條項ニ於キマシテハ、
能ク之ヲ拜見致シマスルト云フト、吾こハ
立法技術ニ於テ頗ル缺クル所ガアルモノデ
スカラシテ、此政府ノ提案ヲ拜見致シマシ
テ、成程吾ミノ方デ少シ缺ケテ居ルト思フ
ヤウナ點モアリマス、又同時ニ政府案ニ於
テハ、少シク餘リ考へ過ギタト思フヤウナ
點モアルノデアリマス、併シ大體ニ於テ立
法ノ趣旨、竝ニ其規定ノ方法ニ於テハ大差
ナイト信ジテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006311922X00319320830&spkNum=75
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076・百瀬渡
○百瀨委員 ソレデハ多岐ニ涉ッテ質問申
上ゲマスト云フト、時間モ相當ニ要スル關
係モアリマスルノデ、此場合ニ政友會ノ提
出ノ本案ト、政府ノ法律案トノ異ル點ダケ
ニ付テ、御意見、御主張ノ異ナル點ダケニ
付テ、豫メ御說明ヲ伺ッテ置キタイト思フ
ノデアリマス、サウスルコトガ一番簡明デ
アリ、其點ニ付テノミ吾ミハ審議スレバ宜
シイノデアリマスカラ、サウ云フ著シク
異ッタル點ガアリマスルナラバ、其點ダケ
ヲ指摘シテ御說明ヲ願ヒタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006311922X00319320830&spkNum=76
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077・武田徳三郎
○武田委員 今申上ゲマスルヤウニ、大體
ノ趣旨ハ免許制度ト云フコトガ中心ニナリ
マシテ、後ハ取締トカ何トカ云フ附隨的ノ
コトデアリマスカラ、大體ノ趣旨ガ同一デ
アレバ、サウ大ナル相違ガアル譯ハアリマ
セヌガ、一二ノ例ヲ取ッテ見マスト、政府
提案ノ第六條ニ於テ檢査ヲスル官吏······
「前項ノ場合ニ於テハ當該官吏ハ其ノ身分
ヲ證明スベキ證票ヲ携帶スベシ」ト云フコ
トガ書イテアル、是ハ親切ノ規定デアラウ
ガ、併シ立法技術的ニ見テ、斯ル規定ハ施
行規則ニ讓ッテ【差支ナイモノト思ヒマス、
吾ミハ是ハ必要ハ認メマスケレドモ、斯ウ
云フコトハ施行細則ニ讓ル方ガ宜イト思ッ
テ吾〓ノ案ニハナイノデアリマス、唯吾〓
トシテ少シク遺漏デアルト思ッテ居ルノハ、
第十條ノ點デアリマス、罰則ニ關シテ製
絲業者ハ其ノ代理人、戶主、家族、同居者、
雇人其他ノ從業者ガ本法又ハ本法ニ基キテ
發スル命令ニ違反シタルトキハ自己ノ指揮
ニ出ザルノ故ヲ以テ其ノ處罰ヲ免ルヽコト
ヲ得ズ」ト云フヤウナコトハ、成ベク是ニ
規定シテ置ク方ガ立法技術ノ上カラ言ッテ
モ亦然ルベキコトデアルト斯樣ニ考ヘテ居
リマス、又政府案ニ於キマシテ、第五條デ
ス、是ハ昨日モ色と御質問申シマシタガ、
「公益ヲ害シ若ハ害スル虞アリ」ト云フコ
トハ頗ル是ハ疑ハシイヤウナ條項デアッ
テ、元來工場法ニ於テ公益ヲ害スルトカ其
他色ミノ業界ニ於テモ、事業者ニ於テハ公
益ヲ害スルヤウナ時ニ於テハソレヲ取締ル
ト云フコトハ、何モ製絲業ニ限ラズ、ソレ
ハソレ〓〓外ノ法律デ取締ル方法ハ十分ア
ルト吾〓ハ考ヘテ居ル、然ルニ玆ニ公益ヲ
害スト云フヤウナ、非常ナ疑ハシキ、色こ
ナル解釋ノ出來ルヤウナコトヲ玆ニ規定ヲ
設ケルト云フコトハ、ソレハ是ガアッタカ
ラ非常ニ害ガアルトハ申シマセヌガ、其必
要ヲ認メナイト私共ハ思ッテ居ルノデアリ
マス、隨テ第五條ノ如キ規定ハ、削除シ
テ然ルベキモノデハナイカト斯樣ニ考ヘテ
居リマス、ソレ等ガ主ナル相違ノ點デアリ
マシテ、根本ニ於キマシテハ大ナル相違ハ
アリマセヌ、此說明ノ時ニモ中上ゲタ通リ
ニ、實體的ニ相違ノアルモノハ此附則ノ
點デアラウト考ヘテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006311922X00319320830&spkNum=77
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078・百瀬渡
○百瀨委員 政友會ノ御說明ハ詳細先刻承
リ、尙ホ政府案ト異ナル點ニ付テモ、只今
武田議員ヨリ御說明ガアッタノデアリマ
ス、政府案ト政友會提出案トノ其內容ニ於
テ意見ノ異ル點ハ、政府委員ニ於カレテモ
御聽キノ通リデアリマス、其點ニ付テ政府
委員トシテハドウ云フ風ナ御考ヲ持ッテ居
ラレマスカ、只今ノ武田議員ノ御意見ニ對
シテ、政府委員ノ御意見ヲ伺ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006311922X00319320830&spkNum=78
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079・入江魁
○入江政府委員 此六條ニ於ケル第二項
ハ、寧ロ要ラナイノデハナイカ、或ハ施行
令等ノ手續上ノ問題デアルト云フ御話デア
リマスルガ、是ハ立法事項デアリマシテ、
大體總テノ法律ニ之ヲ書イテ居リマスノ
デ、私共ハ立法事項トシテ當然此處ニ入ル
ベキモノト考ヘテ居リマス、ソレカラ第五
條ノ「公益ヲ害シ若ハ害スルノ虞アリ」ト
云フコトハ、全ク武田サンノ御話ノ通リニ、
無暗ニ之ヲ、何ト申シマスカ適用スルト云
フコトハ、非常ニ是ハ問題デハナイカト云
フ昨日カラノ御話、靑木サンカラモ御話ガ
アリマシタノデ、詳シク私ハ申上ゲテ置キ
マシタ、又今日モ私申上ゲテ置キマシタ
ノデアリマスルガ、大體ニ於テ斯ウ云フ
條文ヲ適用スルコトハ殆ドナイノデハナカ
ラウカ、詰リ公益ヲ害スル虞アリト云フコ
トノ生ズルコトハ、大體ニナイノデハナカ
ラウカ、但シ何ガ故ニ然ラバ斯ウ云フヤウ
ナモノヲ入レタカト申シマスルト、第三條
ニ於テ統制上必要ナル命令ヲ爲シ得ルト云
フコトガ書イテアリマス、サウ云フ關係カ
ラ致シマシテ、是モ昨日申上ゲマシタヤウ
二、非常時ノ場合ニ成ベク利用スベキモノ
デ、サウ云フ場合ニ此統制ニ從ハナイト云
フヤウナ場合ガ生ズルト云フコトニ相成リ
マスルト、玆ニ何等カノ制裁規定ガアリマ
セヌト、何等ノ效力ガナイト云フコトニナ
リマスノデ、其意味カラ、第三條ニ伴ヒマ
シテ第五條ニ於テ「公益ヲ害シ若ハ害スル
虞アリ」ト云フコトガ必要ナ規定ニナッテ居
リマスノデ、私共ハ其意味ニ於テ重大ナル
規定デアルト斯ウ考へテ居リマス、ソレカ
ラ附則ノ方面ニ於キマシテハ、寧ロ私共ノ
提案致シマシタモノガ生溫イヤウニ、武田
サンカラ御覽ニナリマスト、御感ジニナル
ノデハナカラウカト思フノデアリマスガ、
此點ハ昨日來種々御質問ニ依リマシテ御答
申上ゲマシタヤウニ、大體現在ニ於テ營業
ヲシテ居リマスルモノヲ、故ナクシテ十年
間過ギテシマッタナラバ、之ヲ營業者デ無
クシテシマフト云フコトハドウデアラウ
カ、寧ロ是ハ出來ルナラバ、現在ノ實情ニ卽
スルト申シマスカ、或ル意味ニ於キマシテ、
昨日御話ガゴザイマシタガ、先祖傳來御ヤ
リニナッテ居リマス工場ト云フヤウナモノ
ヲ、相當ノ施設計畫ヲ致シマシテ、獎勵ヲ
シテ、サウシテ經營セシムルコトガ宜イノ
ヂヤナカラウカ、斯ウ云フコトカラ致シマ
シテ、此附則ノ上ニ於キマシテ、十年後ト
雖モ或ル條件ヲ備ヘテ居リマスルモノハ存
續セシメタイ、昨日諄〓シク申上ゲテ置キ
マシタガ、例ヘバ地遣絲ノヤウナモノシカ
製造シナイ工場、斯ウ云フ風ナモノニ付キ
マシテモ、或ル程度ノ釜數ニ限リマシテ認
メテ行ク、斯ウ云フ風ニシタ方ガ穩當デハ
ナカラウカ、斯ウ云フ趣旨デ立法致シタ次
第デゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006311922X00319320830&spkNum=79
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080・小山邦太郎
○小山委員 政友會提出ノ製絲業法ニ付テ
デアリマスガ、提案者ノ御說明ニ依テモ明
瞭致シテ居リマス通リ、其精神ニ於テハ、
政府提出ノ法律案ト殆ド一致シテ居ルモノ
デアル、立法技術上ノ取扱ノ點ニ於テ、或
ハ條文ノ末節ニ於テ、多少ノ相違ハアル
ガ、是ハ敢テ固執スルモノデナイト云フ迄
ノ御話ガアルノデアリマスカラ、何ヲ好ン
デ私ガ再ビ提案者ニ、變ッタ點ヲ、御質問ス
ル必要ガアリマセウカ、自ラ考ヘマシテモ
サウ思フノデアリマス、併ナガラ他ノ點ハ
別ト致シマシテ、ドウ見テモ非常ナ相違ト
思ヒマスルノハ、今政府委員ノ御說明ニモ
アリマシタ此附則ノ點デアリマシテ、政府
提出ノ附則ニ依リマスレバ「十年以內ニ命
令ノ定ムル條件ヲ具備シ主務大臣ノ認可ヲ
受ケタル者ニ限リ其ノ期間經過後ト雖モ仍
免許ハ其效力ヲ有ス」效力ヲ繼續セシムル
ト云フ風ニ一方ハナッテ居リマスガ、政友
會案ニ於テハ、全然十年ノ後ハ其免許ヲ取
消サレテシマフ、營業權ガ無クナル、無ク
ナッテモ合理的ノ合同若クハ合併ヲ奬勵シ
テ、之ニ依テ處理スル、斯ウ云フ御話デア
リマスカラ、ソレデ事濟ムナラバ、寧ロソ
レノ方ガ徹底シテ居ルト私モ思フノデアリ
ひぐ、併ナガラ如何ニ合同ヲ奬メ、合併ヲ
奬勵致シマシテモ、合併シ能ハザルモノガ
アルト思フ、殊ニ今日業者ノ間ニハ五十釜
內外ノ、國用ヲ主トシテ居ル者ニ對シテ
ハ、全然度外ニ之ヲ置イテ貰ヒタイト云フ
業者ノ熱烈ナル要望ガアリ、又其心持ヲ酌
シント同ジク政友會ノ加藤君竝ニ近藤君ア
タリカラ、熱心ニ其主張ラ述ベラレ、御希
望モアルノデアリマスガ、私モ同感デアル
ノデアリマス、其點ハ政友會ノ何レノ條項
ヲ見マシテモ、施行細則ニ依テサウ云フ取
扱ヲサレルトシテモ、其餘裕ガナイヤウニ
思フノデアリマスガ、ソレハ何レニ致シテ
千、先程御話ノ通リ、根本精神ニ於テ相違
ガナイノダカラ、多少ノ所ハ妥協モ出來、
讓步モ出來ルノダト云フ御意見カラ致シ
テ、寧ロ是ハ政友會ノ案ヲ政府ノ附則ノヤ
ウナモノニ取扱フ、サウ云フヤウナコトニ
致シマシテモ、提案者ニハ御異議ハナイト
云フコトデアルカドウカ、或ハソレハイケ
ナイノデアルカ、之ヲ一ツ伺ッテ置キタイ
ノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006311922X00319320830&spkNum=80
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081・青木精一
○靑木委員 議事進行ニ付テ-只今小山
委員カラ、武田君ノ御說明ニナッテ居ル案
ヲ、政友會案ト呼バレテ居リマスガ、是一
政友會ノ有志議員ノ提出デゴザイマシテ、
政友會ノ黨議ニ依テ提出サレタモノデ
ナイ、其誤解ダケヲ解イテ戴キタイト思ヒ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006311922X00319320830&spkNum=81
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082・武田徳三郎
○武田委員 只今ノ御質問ニ御答致シマス
ガ、大體御質問ノ通リデアリマス、私共ハ
先程申上ゲマシタ如ク、十箇年ノ間ニ此百
釜ナリ百五十釜ト云フモノガ、合理的ノ組
織デアッテ、其ノ方ガ最モ有利ナ經營ガ出
來ル、斯ウ思ヒマスノデ、政府ハ其合同ヲ
種々ナル手段ヲ以テ奬勵致シ、其合同ニ便
宜ヲ與ヘルト云フコトニ致シマシタナラ
バ、十箇年ノ間ニハ合同ガ出來ルデアラウ
ト云フ豫想ノ下ニ、斯樣ナ附則ヲ付ケタノ
デアリマス、併ナガラ此同僚委員諸君ノ中
ニ、實際ニ通ジタ、私ヨリモヨリ以上ニ
深ク實際ニ通曉サレタ方〓ガ澤山御有リニ
ナルコトデアリマスカラ、皆樣ノ御意向
ガ、之ヲ政府案若クハ其他ニ變更シタ方ガ
宜カラウト云フ御意向ガ澤山デアリマスナ
ラバ、決シテ私ハ最初申上ゲルヤウニ、固
執スルモノデハアリマセヌ、適當ナ修正ガ
アルナラバ、何時デモソレニ服從スルダケ
ノ用意ガアルト云フコトヲ、御承知置キヲ
願ヒタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006311922X00319320830&spkNum=82
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083・近藤壽市郎
○近藤委員 諸君カラ細カナ所マデ御質問
ガアリマシテ、モウ御尋スル要ハナイヤウ
デアリマスケレドモ、胎中君及武田君等カ
ラ提出致シマシタ此同案ニ付テ、一言確メ
テ置キタイト思ヒマスカラ御尋スルノデア
リマスガ、昨日モ政府當局ニ御尋致シマシ
タ通リ、五十釜以下ノモノ、卽チ國用向ノ
製絲家ト云フモノヲ除外シテハ置ケナイ
カ、五十釜以上ト百五十釜トノ間ノモノ
ハ、此十年云々ノ附則ニ適用ヲシテモ、五十
釜以內ノモノハセメテ殘ス御意思ハナイ
カ、此場合サウシテ中シ受ケタイト云フコ
トヲ本員ハ言ッタノデアリマス、ソレニ付キ
マシテモ、武田君ニ御尋致シマスルノハ、
政府ガ若モ細則ニ於テ五十釜以下ノモノハ
除外スル、此法律ニ適用セズト言ハレテ
モ、武田君ノ方デハ、ソレハ飽ク迄固執ヲ
セズニ、緩和シテ下サル、斯ウ云フ御意思
デアリマスカ、之ヲ一應確メテ置キタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006311922X00319320830&spkNum=83
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084・武田徳三郎
○武田委員 是ハ昨日モ國用、詰リ地遣絲
ト輸出絲トヲ區別スルト云フ議論ガ澤山ア
リマシタガ、理窟ノ上ニ於テハ兎モ角、實
際ニサウ云フ區別ガ出來マスナラバ、洵
結構ナコトダト思ヒマスケレドモ、是ハ私
共二、三實地ニ關係ノアル方〓ニ色と聞イ
テ見タノデアリマスガ、座繰ト器械トデ云
フナラバ、座繰ハ殆ンド九分九厘マデ地遺
絲デアルト云フコトハ言ヒ得マスガ、併シ
昨日ドナタカノ御質問ニモ、座繰サヘモ輸
出絲ガアルト云フコトデアリマシテ、中こ
地遣絲ト輸出絲トヲ區別スルト云フコト
ハ、座繰デサヘ多少困難ガ其處ニアルト云
フ位デアリマスカラ、器械製絲ニ付テハ、
地遺絲ト輸出絲トヲ區別スルト云フコトハ
極メテ困難ノヤウニ思フノデアリマス、若
シ是ガ何等カノ方法デ、地遣絲ト輸出絲ガ
機械ノ性能ニ依テ區別サレルヤウナモノデ
アリマスナラバ、ソレヲ區別シテ、地遣絲
ニ於テハ制限ヲ置カヌト云フヤウナコトガ
極メテ望シイコトダト思ヒマスガ、ドウモ
ドウ考ヘテ見マシテモ、私ノ知レル範圍內
ニ於テハ之ヲ區別スルコトハ困難ノヤウニ
思フノデアリマス、サウ致シマスト、區別
スルコトガ出來ヌト云ヘバ、五十釜以下ハ
地遣絲ハ多イカラ、此制限外ニ置カウト
云ッテモ、ドウモ私ハソレハ一寸困難デハナ
カラウカト思フ、況ンヤ實際吾〓ハ此統制
ノ見地カラ申シマスト、斯樣ナ小サイ製絲
業者ガ、私ノ提案說明ノ中ニモ申上ゲタ如
ク、事實上ニ於テ橫濱神戶ノ問屋ニ隷屬シ
テ、資金ヲソレカラ借リルト云フヤウナコ
トデ、自分ノ思フヤウナ値賣リヲスルコト
モ出來ズ、又隷屬ノ關係ノミデナク、資金
ガ足ラナイカラシテ、投賣リヲシナケレバ
ナラヌト云フコトデ、販賣ノ統制ヲ紊シ、
濫賣ノ基ヲナス者ハ、多クハサウ云フ小製
絲家ニアルノデアリマス、勿論稀ニハ小製
絲家ノ中ニモ、資力モ十分デアリ、技術モ
優秀ノ人ガナイデハアリマスマイケレド
モ、ソレハ例外デアッテ、大體ヲ申セバサ
ウ云フ弊害ガ小サナ製絲家ニアル、ソレヲ
矯正スルト云フコトガ此統制ノ目的デアリ
マスカラ、地遣絲ト輸出絲ヲ、技術的ニ
ハッキリ區別スルト云フコトガ出來ルト致
シマスレバ、今ノ近藤君ノ御話ノヤウニシ
テ異論ハアリマセヌガ、ドウモ吾こノ知ル
限リニ於テハ、其區別ハ出來ナイト云フ印
象カラ、ドウモ先程來說明致シマシタヤウ
ナ程度デ、統制ヲ致スノ外ハ途ガナカラウ
ト、斯樣ニ考ヘテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006311922X00319320830&spkNum=84
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085・近藤壽市郎
○近藤委員 ソコガ一寸提案者ノ武田君ト
私共トハ意見ガ違フ點デアルノデ、武田サ
ンノ言ハレルニハ、地遣絲ト貿易品トナル
絲ト見分ガ付ケバ之ヲ區別スルガ、見分ヲ
付ケルコトガ出來ヌ位ノモノガ出ルノデス
カラ、此統制ヲ圖ル云々ト云ハレルノデア
リマスガ、近頃小サイ、細カイ所ノ製絲業
者カラ、貿易品ニナル優良品ガ出テ、大製
絲家ヨリモ立派ナモーノガ出來ルナラバ國
利國益トシテ大ニ奬勵シテヤラセネバナ
ラヌ位ノモノデアル、ソレヲ制裁ヲ加へ、壓
迫ヲ加ヘテ、大キイ規模ノ大製絲家ニヤラ
セナクテハナラヌト云フコトハ、以テノ外
ノ問題デアル、ソレデアリマスカラ今仰シ
ヤッタ言葉ガ、私ノ聽キヤウガ惡カッタカ
ハ知レナイケレドモ、聽キヤウガ惡イト致
シマスレバ、ソコハ意見ノ相違デアリマス
ガ、其意見ハ別ト致シマシテ、ドウカ提案
者ニ於カレテハ、是ハ一寸私ガ勝手カモ知
レマセヌガ、政府ガ假ニ細則ヲ出シテ、五
十釜以下ノモノハ除外例ニスルコトガ出來
ナイト仰シヤッテモ、同志卽チ武田君等ノ
發案者ハ、私共ノ意ノアル所ヘ、ドウカ固
執セズニ御贊成ヲ願ヒタイト云フコトヲ、
政府ヨリ同僚デアルカラ、同黨員デナクテ
千、假ニ民政黨ノ中カラデモ、是ハ國民ノ
代表タル議員ノ中カラ出テ居ルノデスカ
ラ、此意義ヲ以テ近イ方ニドウカ御加盟ヲ
願ヒタイト云フ意味ヲ以テ質問ヲシタ譯デ
アリマスカラ、ドウカ成ベク私ノ意志ニ副
フヤウニ御願ヒシタイト思ヒマス、私ハ是
デ質問ヲ打止メテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006311922X00319320830&spkNum=85
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086・加藤知正
○加藤委員 土井、胎中、武田ノ三君ヨリ御
提出ニ係ル製絲業法案ニ私ハ贊成者ノ一人
ニナッテ居リマスガ、實ハ永ミ旅行ヲ致シ
テ居リマシテ、旅行先カラ歸ッテ見マスト出
來上ッテ居リマシテ、之ガ私共ノ農政會ノ
總會ニ附議セラレマシタ、其際私ハ多少質
問ヲ致シタイヤウナ箇條モアッタノデアリ
マスケレドモ、何レ玆ニ建議案トシテ現ハ
レルノデアルカラ、其際十分質問ヲ致シテ
見タイト考ヘテ居ッタ次第デアリマス、所
ガ先刻來段々提案者ノ一人タル武田君ト、
其他ノ諸君トノ質問應答ヲ伺ッテ居リマス
ル中ニ、提案者タル武田君ノ御意見ハ、政府
案ト全然之ヲ同一ニ取扱ハレテモ宜シイ、
又修正其他モ若シアッタ場合ニ於テハ之ニ
應諾スルニ吝ナラヌモノデアル、斯ウ云フ
意味ノ御答辯デアッタヤウニ考ヘラレマス、
ソコデ議事ノ進行上之ヲ政府案ト同一ノモ
ノトシマスル以上ハ、旣ニ政府案其モノニ
對シテ、其質問モ一ト通リ濟ンデ、唯私ノ
農林大臣ニ對シテノ質問ダケガ殘ッテ居ル
譯デアリマスカラシテ、成ルベク速ニ一ツ
大臣ニ此所ニ御出席ヲ戴キタイト思フノデ
アリマス、併シ只今負債整理組合ノ方へ御
臨席ニナッテ居ルト云フコトヲ伺フノデア
リマスガ、大體何時頃此所へ御出席ニナル
デアリマセウカ、委員長カラ大臣ニ一ツ確
メテ戴キタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006311922X00319320830&spkNum=86
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087・生田和平
○生田委員長 一寸速記ヲ止メテ下サイ
〔速記中止〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006311922X00319320830&spkNum=87
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088・生田和平
○生田委員長 ソレデハ休憩致シマス、時
間ハ後カラ申シマス
午後二時三十一分休憩
午後四時五十九分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006311922X00319320830&spkNum=88
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089・生田和平
○生田委員長 開會致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006311922X00319320830&spkNum=89
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090・加藤知正
○加藤委員 私ハ農林大臣ニ對シテ詳シク
御尋申上ゲタイノデアリマスケレドモ、大
分時間モ切迫シテ居リマスカラ、成ベク要
領ヲ摘ンデ御尋スルコトニ致シマス、ソコ
デ先ヅ以テ御伺致シタイノハ武田君ノ販賣
統制ニ關スル質問ニ對シマシテ、農林大臣
ハ假令此案ガ貴衆兩院ヲ通過致シマシテ
モ政府トシテハ同意スル譯ニハ行カナイト
云フ意味ノ御答辯ガアッタヤウニ承知シテ
居リマスガ、左樣承知致シマシテ宜シウゴ
ザイマセウカ、先ヅ以テソレヲ一ツ御伺シ
タイノデス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006311922X00319320830&spkNum=90
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091・後藤文夫
○後藤國務大臣 其案ノ內容ニ付テノ提出
者ノ御議論ナリ何ナリヲ能ク伺ッテ見ナケ
レバ、直チニハッキリシタ判斷ヲ此處デ申
上ゲ兼ネマスルケレドモ、大體カラ申シマ
スレバ、マダ愼重ナル考究ト計畫トヲ要ス
ルモノアル斯ウ云フ案ガ、假ニ宜イトシマ
シテ、實行スル場合モアラウト思ヒマス
ガ、斯ウ云フ案ニ直チニ御同意ヲスルト云
フ事ハ出來兼ネルダラウト存ズルノデアリ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006311922X00319320830&spkNum=91
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092・加藤知正
○加藤委員 若シ同意シ兼ネル場合ガアッ
タト致シマスレバ、今囘ハ巳ムヲ得ヌト致
シマシテモ、政府ト致シマシテハ販賣統制
ニ關スル事ノ必要ナル事ハ兎ニ角御認メノ
コトヽ考ヘル次第デアリマスルカラ、此次
期ノ通常議會マデニ、今カラ準備ヲスレバ
御提案ナサル事ガ出來ヨウト考ヘルノデア
リマスルガ、其點ニ付テ農林大臣ハ如何樣
ニ御考デアリマセウカ之ヲ伺ヒタイノデス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006311922X00319320830&spkNum=92
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093・後藤文夫
○後藤國務大臣 先ニモ申上ゲマシタヤウ
ニ、此生絲ノ販賣統制ノ機關ヲ一ツノ法
人、半官半民ノ會社ノヤウナモノニ求メル
トカ、或ハ當業者ノ自治的組織協定ニ依テ
作リ上ゲルトカ、ソレ等ニ付テモ色〓考究
スベキ問題ガアルト思ヒマス、又外國ノ關
係モ深ク考慮シナケレバナリマセヌ、隨テ
吾ミガ此確信ノアル成案ヲ得テ議會ニ提出
スル事ガ何時ニナルデアラウカト云フ、其
時期ヲハッキリ申上ゲル譯ニハ參リマセ
ヌ、又實際考究ノ結果ハ、色ミナル大キナ
難點トナリ、ソレガ却テ日本ノ蠶絲業ノ現
狀ニ卽シテハ、工合ノ惡イト云フヤウナ事
ヲ發見スレバ、容易ニ著手ノ出來ナイト云
フ事ニナルカモ知レマセヌ、唯吾〓ノ氣持
トシマシテハ、銳意サウ云フ點モ、他ノ統
制ノ諸政策ト併セテ考究シテ、出來ルダケ
速ニ、此次ノ通常議會ニデモ出シ得ルモノ
ガ出來マスレバ、是非是モ出シタイト、斯
ウ云フ風ニ考ヘテ居ル譯デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006311922X00319320830&spkNum=93
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094・加藤知正
○加藤委員 マダ武田君其他ノ諸氏ノ提案
セラレタ內容ニ付テ、十分檢討ヲ致シマセ
ヌケレドモ、吾ミノ一應拜見致シタ所デ
ハ、餘程至難ノ所ガアリハセヌカト思フ點
モアルノデアリマスルガ、兎ニ角サウ云フ
ヤウナ事ヲ實現スルノニハ、中ミ容易ナラ
ヌ事デアルガ、ソレヨリモ吾ミガ多年主張
シテ居リマスル現物市場ヲ橫濱ニ設定スル
ト云フ事、是ガ一番早道デアリハセヌカ、
是ナラバ輸出商ト雖モ、亦問屋ト雖モ、製
絲家其他ト雖モ、恐ラク之ニ反對スル者ハ
ナカラウト思フ、縦シ假ニアッタ所デ、販賣
統制案ヨリモ餘程樂ニソレヲ突破スル事ガ
出來ヨウト考ヘルノデアリマスルガ、希ハ
クハ政府當局ニ於テハ、其販賣統制等ニ付
テ御考ヘ下サルト同時ニ、併セテ此現物市
場ト云フ事ニ付テ十分一ツ御考ヘ下サイマ
シテ、是非速ニ其實現ヲ期スルヤウ御努力
アラン事ヲ希望スル次第デアリマス
此問題ハ此程度ニ致シテ置キマシテ、更
ニ御尋申上ゲタイノハ、本法ノ蠶絲業ニ影
響スル範圍ハ、極メテ廣イト思フノデアリ
やっ、單リ是ハ製絲業者ノミデハアリマセ
又、二百萬ノ蠶絲業者全體ニ及ボスベキ重
大ナ法案デアルト考ヘルノデアリマスル
ガ、ソレヲ此議會ニ御提案ナサルニ先チマ
シテ、何故ニ日本中央蠶絲會ニ御諮問ナサ
ラナカッタカト云フ事ヲ私ハ御尋申上ゲタ
イ、昨日タシカ近藤委員カト思ヒマシタ
ガ、蠶絲局長ニ對シマシテ此樣ナ質問ヲセ
ラレマシタ、所ガ蠶絲局長ハ、元ノ中央蠶
絲會ニ諮問シテアルノダカラト云フ、斯ウ
云フ、意味ノ御答ガアッタヤウニ承知致シ
テ居リマス、成程此製絲業法案ニ付テハ、
以前ノ蠶絲業同業組合中央會ニ諮問セラレ
タ事ハ、事實デアル、併ナガラソレハ以前
ノ事デ、其時代ト今日トデハ餘程周圍ノ事
情ガ變ッテ居ルノミナラズ、中央會ガ答申ヲ
致シマシタモノト、今囘ノ政府ガ提案セラ
レマシタモノトハ、大分相違ガアル、例へ
バ釜數ノ如キ、或ハ資本ノ如キサウ云フヤ
ウナ色ミナ點ニ於テ相違ガアリマスカラ、
今日民間ノ諮問機關トモ言ッテ宜シイ立派
ナ日本中央蠶絲會ト云フ〓體ガ出來テ居ル
以上ハ、ソレニ對シテ一應ノ御諮問アッテ
當業者ノ最近ニ於ケル意向ガドノ程度ニア
ルカト云フ事ヲ確メラレテ然ルベキデアル
ト思フ、然ルニ其事ナクシテ茲ニ直チニ此
議會ニ御提案ナサルト云フコトハ、一體ド
ウ云フ譯デアッタカト云フコトヲ此機會ニ
伺ッテ置キタイノデアリマス、尙ホ吾こカラ
考ヘルト、ドウモ此蠶絲業組合法ナルモノ
ハ、政府ハ產ミ放シニシテ、殆ド繼子以上
ノ取扱ヲシテ居ルヤウニ思ハレル、ソレハ
本會議ニ於テモ申上ゲタノデアリマスガ、
是ガ施設運用ト云フコトニ付テノ費用サヘ
モ計上セズニ、是等ニ對シテ何等ノ助成モ
シナイ、サウシテ法律ニ依テ組織セラレタ
團體ニ對シ斯ウ云フヤウナ重要法案ヲ何等
ノ諮問モシナイト云フヤウナコトデアリマ
ス、サレバ、何ガ爲ニ蠶絲業組合法ナルモ
ノヲ五十九議會ニ於テ、咄嗟ノ間ニ之ヲ通
過セシメナケレバナラナカッタト云フコト
ヲ、今日ニナッテ之ヲ疑ハザルヲ得ナイヤ
ウナ次第デアルノデアリマス、此點ニ對シ
マシテ農林大臣ハ一體ドウ云フ御考デアル
カ、併セテ其點モ一ツ御伺ヒヲ申上ゲテ置
キタイノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006311922X00319320830&spkNum=94
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095・後藤文夫
○後藤國務大臣 製絲業法ノ提案ニ先ダッ
テ、中央蠶絲會ニ諮問ヲシナカッタノハドウ
云フ譯カト云フコトデゴザイマスガ、是
先ニ殆ド實體ヲ同ジウスルト考ヘラレマス
ル、蠶絲業同業組合中央會ニ諮問ヲ致シマ
シテ、其答申ヲ得テ居リマス、大體其趣旨
ニ近イ法案ガ出來テ居リマス、ソレハ旣ニ
時日ヲ經過シテ居リマス、昨今又新ナルモ
ノガ出來テ居ルノデハナイカト云フ御話デ
アリマスガ、正式ニ中央蠶絲會ニ諮問ハ今
囘ハ致シマセヌケレドモ、中央蠶絲會ノ意
嚮ノアル所モ、略〓確メ得テ居ルト思ッテ
居ルノデアリマス、今囘臨時議會ガ開カレ
ルニ當リマシテ、此法案ヲ提出スルノ準備
ニ急ヲ要シマシタノデ、ソレ迄ノ手續ヲ執
ラナカッタト云フ譯デアリマス、併ナガラ
後段ニ御話ノアリマシタヤウニ蠶絲業組合
法ヲ出シテ、蠶絲業ノ關係組合ノ働キニ付
テハ、一向力ノ入レ方ガ足ラヌデハナイカ
ト云フコトデアリマスルガ、吾〓ノ趣旨ト
スル所ハ決シテサウデハアリマセヌ、蠶絲
業組合法ノ考ヘテ居リマス各種ノ組合ガ、
十分ナル機能ヲ發揮スルコトヲ希望シテ居
ルノデアリマス、唯是迄財政其他ノ關係上
カラ、十分ニ之ニ物質的ノ援助ヲスルト云
フヤウナコトガ出來マセヌデシタガ、今囘
モ臨時豫算ニ於テ十分ナコトハ出來マセヌ
ケレドモ、養蠶組合等ノ活動ヲ促ス爲ノ中
央會ヘノ助成等モ致サウト考ヘテ居ルノデ
アリマス、デ今後ニ於キマシテモ、蠶絲業
關係ノ組合ノ進步發達ニハ、出來ル限リノ
努力ヲ拂ヒタイ、之ヲ重要ニ考ヘテ行キタ
イト思ッテ居ルノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006311922X00319320830&spkNum=95
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096・加藤知正
○加藤委員 現ニ本案ニ對シマシテハ、養
蠶家ヲ代表致シテ居ル多數府縣ノ聯合會長
ガ先般集マリマシテ、極力之ニ反對ノ意思
サヘモ現ハシテ居ルヤウナ次第デアリマ
ス、若シ是ガ中央蠶絲會ニデモ御諮問ニナ
リマシテ、政府ノ提案セラレル意思ノ存ス
ル所ガ能ク分ッテ居リマスナラバ、左樣ナコ
トモナカッタデアラウト私ハ考ヘル次第デ
アリマス、兎ニ角サウ云フヤウナ次第デア
リマス、ソコデ只今承ル所ニ依リマスレバ、
此組合團體ニ對シテ、多少ナリトモ物質的
ノ助成ヲ致スベク、追加豫算ニモ之ヲ計上
シテ居ルト云フ御話デアリマスガ、洵ニ其
御趣意ノ存スル所ハ之ヲ諒ト致シマスル
ガ、併ナガラ此團體ガ十分ノ活動ヲ致シマ
スルノニハ、彌ガ上ニモ政府ノ一層ノ御助
成ヲ戴カナケレバ、十分ノ働キノ出來ナイ
事ハ明ニ分ッテ居リマスカラ、尙ホ通常議會
迄ニハ、此點モ篤ト御考慮下サイマシテ、十
二分ニ活動ノ出來マスルヤウニ御助成アラ
ムコトヲ切ニ希望スル次第デアリマス、次
ニ御伺申上ゲタイノハ、本案ヲ見マスト云
フト、第一條ヲ初メ、命令ヲ以テ規定スル
トカ、命令ヲ以テ之ヲ定メルト云フヤウナ
工合ニ、總テヲ命令ニ讓ラレテ居ルノデ、
一寸之ヲ何箇所アルカト勘定シテ見ルト、
十一箇所命令ノ文字ヲ使ッテ重要ナ事柄ハ
悉ク命令ニ讓ッテアル、僅カ十一條カラ出
來テ居ル所ノ此法律案ノ一條每ニ命令ガア
ルカト思フヤウニ、數多ク命令ニ之ヲ讓ッ
テ居ラルヽト云フコトハ、一體ドウ云フ譯
デアラウカ、吾ミカラ之ヲ見ルト云フト、
何モ命令ニ讓ラナクトモ、本法ニ規定セラ
レテ然ルベキモノガ澤山アルヤウニ考ヘテ
居ル、ソレヲ皆命令ニ讓ッテ居ル、之ヲ敢
テ惡ク解釋スル譯デハアリマセヌガ、政府
當局ガ狡ク考ヘテ、面倒ナ事柄、或ハ又他
日自分等ガ意ノ儘ニ致シタイト云フヤウ
ナ事柄ハ皆之ヲ命令ニ讓ッテ居ルノデアル
ト、斯樣ニモ推測スルコトガ出來ルノデア
リマシテ、殆ド本案ノ骨子トスベキ重要ノ
點ハ、悉ク政府ノ掌中ニ其權力ヲ收メテ居
ルヤウニ思ハレル、サウシテ見マスト詰リ
本法ガ此議會ヲ通過致シマシタ後ニ於テ、
卽チ一ツノ完全ナル法律トシテ施行セラレ
夕以後ニ於ケル、我國ノ製絲業者ト云フモ
ノハ、殆ド活殺ノ大權ヲ政府ノ手ニ握ラレ
テシマッテ、殺サレヤウガ活サレヤウガ、
モウ政府ノ考一ツデアルト、斯樣ニモ取レ
ルノデアリマス、シテ見ルト、本案ノ如キ
ハ極論スレバ國家社會主義者ノ唱フル所ノ
モノヲ其儘此處ニ實現シテ居ルカノ如ク考
ヘラレル、後藤農林大臣ハ、國家社會主義
ヲ御認メニナッテ斯樣ナ法律案ヲ提出サレ
タノデアリマスカ、其邊ノ所ヲ一應御尋ヲ
致シテ置キタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006311922X00319320830&spkNum=96
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097・後藤文夫
○後藤國務大臣 本案ニハ命令ト云フ文字
ガ、御說ノ通リ澤山出テ居リマスルガ、主
トシテ御懸念ヲ御持チニナルノハ、第
條、第二條及附則ノ命令デアラウト思ヒマ
ス、此第一條ノ如キハ、ヤハリ原則ヲ揭ゲ
テ居ルノデアリマス、一條ノ一項、二項ト
モ、其例外ニナルモノヲ現ハス場合ニ命令
ニ讓ラウト致シテ居ルノデアリマス、製絲
業ノ業態モ、色〓今後ノ變遷モアリマセウ
シ、只今ノ事情ニ卽シテ考ヘタコトガ、他
日又變ヘナケレバナラヌコトモ起ルデアリ
マセウ、決シテ當局者ガ自由勝手ガ出來ル
ト云フ意味デハナク、原則ニ例外ヲ付ケ
ル、狭イ意味ニ於テノ命令ノ自由ヲ法律ニ
存シテ置カナケレバナラヌト考ヘタノデア
リマス、殊ニ又命令ニ依テ、頗ル細カイコ
トモ場合ニ依テ定メナケレバナラヌコトモ
アリマスノデ、之ヲ一々法律ニ現ハス譯ニ
行カナイト考ヘタカラデアリマス、別段ニ
特別ニ何トカ指導精神ヲ特ニ立テヽ此法案
ヲ作ッタト云フヤウナ譯デハゴザイマセヌ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006311922X00319320830&spkNum=97
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098・加藤知正
○加藤委員 本案ノ提出ノ理由ニ付キマシ
テ、農林大臣ハ本會議ニ於テモ御說明ニナ
リ、又私ノ質問ニ對シマシテモ、其他ノ同
僚諸君ノ質問ニ對シテモ、同樣ナル御答ヲ
繰返サレテ居ルノデアルガ、卽チ本會議ニ
於ケル本案ノ御說明中ニ、大小ノ企業ガ濫
立シテ居ル、就中小規模ノ工場ガ濫立スル
ト云フコトハ、甚ダ宜シクナイト、斯樣ニ
仰シヤッテ居ル、ソコデ私ガ伺ヒタイノ
ハ、此製絲ニ於ケル大企業ト云フノハドノ
位ノ程度ヲ大企業ト謂ハレルノデアルカ、
又小企業ト謂ハレルノハドノ位ノ程度ヲ小
企業ト謂ハレルノデアリマスカ、此間ノ大
臣ノ御說明カラ言ヒマスト云フト、百五十
釜、是ガ卽チ限度ノヤウニ思ハレル、百五
十釜以上ガ卽チ大企業デアリ、百五十釜以
下ガ小企業ノヤウニ思ハレル、而シテ百五
十釜ヲ限度トシテ經營スルノガ、卽チ是ガ
理想的ノヤウニモ御話ガアッタ、卽チ私ノ
質問ニ對シテ、是ガ理想的云々ト云フ御答
ガアッタノデアリマスルガ、此邊モ一應農
林大臣ノ御意見ノ在ル所ヲ承ッテ置キタイ
ト考ヘル次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006311922X00319320830&spkNum=98
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099・後藤文夫
○後藤國務大臣 大體御話ノ通リデアリマ
ス、只今ノ製絲業ノ現狀ニ於キマシテハ、
先ヅ百五十釜ト云フ所ガ見當デアラウト考
ヘテ居リマス、併ナガラ百五十釜以上ガ大
企業ダトハ必シモ言ヘマセヌ、百五十釜ハ
合理的ナ器械製絲ノ工場トシテノ最モ下ノ
境ニ近イモノデアラウト考ヘテ居ルノデア
リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006311922X00319320830&spkNum=99
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100・加藤知正
○加藤委員 左樣致シマスト云フト、百五
十釜以上ナラバ、釜數ノ多イ程合理的デア
ルト云フ事ニナルノデアリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006311922X00319320830&spkNum=100
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101・後藤文夫
○後藤國務大臣 必シモサウトハ考ヘマセ
ヌ、ドレ程ノ釜數ノ所ガ現狀デ一番合理的
ニ經營スルコトガ出來ルカト云フコトハ、
判斷スル事ガ容易デアリマセヌ、先ヅ百五
十釜位デアレバ、合理的ノ經營ヲスルノニ
極メテ不便ノ少イモノデアラウト考ヘテ居
ルノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006311922X00319320830&spkNum=101
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102・加藤知正
○加藤委員 サウスルト詰リ百五十釜ガ標
準デアリマシテ、ソレガ卽チ一番合理的デ
アル、斯樣ニ解釋シテ宜シイノデスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006311922X00319320830&spkNum=102
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103・後藤文夫
○後藤國務大臣 ソレガ一番合理的ダト申
スノデハアリマセヌガ、合理的經營ヲ爲ス
ニ堪へ得ル、先ヅ下ノ方ノ境デハアルマイ
カ、其他ノ企業ニ於テモ、小規模ノモノニ
致シマシテモ、共同施設其他ノ事ヲヤリマ
スレバ合理化シタ仕事ヲヤルコトガ出來
ルデアラウガ、併シ單一ノ工場ノヤウニ行
キマセヌデセウシ、ソレデ現在アル百五十
釜以下ノモノヽ救濟モ、相當ナ辨法ヲ茲ニ
考慮シテ居ルノデアリマスガ、併シ先ヅ今
後出來ルモノニ付キマシテハ、百五十釜ト
云フ所ガ、合理的ノ經營ノ出來ル、只今ノ
製絲業ノ狀況ニ於テハ下ノ境ニ相當スルモ
ノデアラウ、斯ウ考ヘテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006311922X00319320830&spkNum=103
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104・加藤知正
○加藤委員 ドウモ私ノ頭ノ惡イ爲カ、能
ク御說明ノ趣旨ガハッキリ致シマセヌ、合理
的ト云フヤウナ御言葉ヲ御使ヒナサル以上
ハ、詰リ此釜數ガ色ミアル、色とアルノデ
アルカラシテ、百五十釜ガ一番合理的デア
ルカドウカ、若シソレガ合理的ノ一番下ニ
近イトスルナラバ、其上ガアルニ違ヒナ
イガ、其上ノ幾釜ガ合理的デアルカ、大臣
ノ御考ナサル合理的施設デアルナラバ-
無論比較的デアリマス、比較的是ガ一番理
想的デアリ、一番合理的デアルト云フ、此
點ヲ私ハ伺ヒタイノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006311922X00319320830&spkNum=104
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105・後藤文夫
○後藤國務大臣 當局ノ者ノ考デハ百五十
カラ三百位ノ間ガ只今ノ製絲業ノ狀況ニ於
テハ合理的ニ爲スニ都合ノ好イ規模デアル
ト見込ンデ居ルノデアリマス、併ナガラソ
レ以上ノ工場ニ於テモ、亦資本ノ大キイ
事、又設備ノ共通的ニ出來ル事ニ依テ、
他ノ點ニ於テ合理的ナ程度ノ高イモノトシ
テ維持シテ行クコトモ出來ルデアラウト思
ヒマスケレドモ、今ノ現狀デ、大體或ル工
場ヲ見渡シマスト云フト、百五十カラ三百
位ト云フ所ガ工合ノ好イ工場ノヤウニ思ハ
レルノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006311922X00319320830&spkNum=105
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106・加藤知正
○加藤委員 濫立ト云フコトヲ屢〓仰シヤ
ルガ、此濫立ト云フコトハ定メシ數字ノ上
カラ見テ仰シヤルコトヽ思フノデアリマス
ガ、大臣ノ御言葉カラ考ヘルト百五十釜カ
ラ三百釜ノ範圍ニアル製絲場ハ濫立デハナ
クテ、其以下ノモノハ詰リ濫立ト云フ風ニ
解釋サレルノデアリマスガ、ソレデ宜シウ
ゴザイマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006311922X00319320830&spkNum=106
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107・後藤文夫
○後藤國務大臣 百五十釜ト云フ一應ノ基
準ヲ置キマシテ、新タニ出來ルモノヲ統制
致シマスレバ、サウ澤山ナ工場ガ續々ト起
リ得ルト云フ譯ニハ參ランデアラウ、相當
ナ資金ヲ要スルノデアリマスカラ、隨テ製
絲工場ガ濫立スルコトヲ阻止スル事ガ出來
ル、斯ウ申スノデアリマス、百五十釜以上ノ
モノハ、幾ツ出來テモ濫立デナイト云フノ
デハアリマセヌ、ソレガ無暗ニ出來レバヤ
ハリ濫立デアリマスルケレドモ、其邊ニ基
準ヲ置イテ統制ヲシテ參リマスレバ、濫立
ガ相當ニ防ゲルデアラウト云フ趣旨デアリ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006311922X00319320830&spkNum=107
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108・加藤知正
○加藤委員 ソレハ未來ニ屬スル事デアリ
やく、詰リ此提案ノ趣旨ノ辯明ニ、大小ノ
企業ガ濫立シマシテ、就中小規模ノ工場ガ
甚ダ多數ヲ占メテ居ル、詰リ小規模ノ工場
ノ濫立ト云フ事ノ意味ガ茲ニ現ハレテ居
ル、ソコデ私ハ大臣ノ仰シヤル大企業トカ
小企業トカ云フコトハ、何處ガ標準ニナル
ノデアルカト云フコトヲ御尋ネ申上ゲタ、
所ガ百五十釜カラ三百釜ト云フ御話デア
ル、サウスルト詰リ濫立ト云フ事ハ、卽チソ
レ以下ノモノガ詰立ト云フ事ニナルヤウニ
思ハレルガ如何デアリマセウカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006311922X00319320830&spkNum=108
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109・後藤文夫
○後藤國務大臣 當局カラ實際ノ計數ヲ申
上ゲテモ宜シイノデアリマスガ、百五十釜
カラ二百釜マデノモノニ濫立或ハ濫廢ト申
シマスカ、起キタリ倒レタリト云フ事ノ非
常ニ數ガ多イノデアリマス、詰リ此邊ニ無
統制ニ起キテハ倒レテ行クト云フ弊害ガ多
ク存シテ居ルト云フコトヲ事實上認メラレ
ルノデアリマス、百五十釜以上ハ、ソレ程
起伏常ナキト云フコトニハ參ラナイ、此事
實ヲ推シマシテ、百五十釜ト云フコトヲ立ッ
タ譯デアリマヌ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006311922X00319320830&spkNum=109
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110・加藤知正
○加藤委員 定メシ詳細ナル御調査モアル
コトヽ思ヒマスルガ、私共ノ頂戴シマシタ
製絲業ノ免許制度ニ關スル參考資料ヲ拜見
スルト、大正十四年度カラ昭和六年迄ノ七
箇年ノ間、農林省ニ於テ御調査ニナッタノガ
アリマスガ、ソレニハ十釜カラ五十釜マ
デ、此ノ間ニ出來タ工場數ガ二百九十、
五十釜カラ百釜マデガ二百十二、百釜カラ
三百釜マデガ二百十一、三百釜カラ五百釜
マデガ三十四、五百釜カラ七百釜マデガ
六、七百釜カラ千釜マデハ增減ガナイ、千
釜以上ハ三個減少シテ居ル、斯ウ云フ狀態
ニナッテ居リマス、ソコデ此間ニ於ケル新
工場ノ出工合ヲ調ベテ見ルト、今大臣ノ理
想的デアルト仰シヤッタ百五十釜前後ノ工
場ニ中ミ新設ガ多イノデアリマス、卽チ只
今申シマシタ統計ニ依リマスト、百カラ三
百位マデ新設工場ガ二百十一出來テ居ル
カラ、之ヲ十釜カラ五十釜ノ新設工場ニ較
ベマシテモ僅ニ七十九箇ノ違ヒニ過ギマセ
ヌ、而シテ五十釜カラ百釜マデノ二百十二
ニ較ベテ見テモ、僅ニ七十八ノ違ヒニ過ギ
ナイノデアリマス、斯樣ナ數字ニ依テ見ル
ト詰リ大臣ノ理想トセラルヽ所ノ釜數デ
モ、新工場ガ濫立ヲシテ居ルト申サネバナ
リマセヌ、ソレヲ濫立ト言ハナイデ百五十
釜以下ノモノヲ濫立ト仰シヤルノガ、吾〓
ニハ殆ドソレガ分ラナイ、新設工場ノアル
ト共ニ廢業工場モ相當アルニ相違ナイ、其
數ハ私共ニハ分ッテ居リマセヌケレドモ、
出來タ數カラ考ヘテ見ルト、恐ラク廢業ノ
數モサウ大差ハナイモノト思フ、此起伏興
廢ト云フモノハ、必シモ百五十釜以下ニノ
ミ多イトハ言ヘナイ、ソレヲ百五十釜以上
ノモノニハ濫立ガナイ、ソレ以下ハ濫立ダ
ト云フヤウナコトヲ斷定的ニ仰シヤルヤウ
ナ心持ガスルノデアリマス、是ハ一體ドウ
云フ譯デアリマセウカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006311922X00319320830&spkNum=110
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111・入江魁
○入江政府委員 數字ニ亙リマスノデ私カ
ラ御答致シマスガ、大體大臣ガ御答ヘニナ
リマシタ通リデアリマシテ、昨日モ私此點
ニ付テ一寸申上ゲタト存ジマスガ、百五十
釜以下ノ工場ニ於キマシテハ、統計上ニ示
ス點ニ於キマシテ新設竝ニ体廢ト云フ上ニ
於キマシテ、非常ニ多イノデアリマス、御
手許マデ差上ゲテアル表ノ中ニモゴザイマ
スガ、假ニ昭和六年ヲ申上ゲマスト、百五
十釜以下ノ工場ニ於キマシテ百四十四、ソ
レガ新設ノ方デゴザイマス、ソレカラ百五
十釜以上ノ方ニナリマスト、極ク僅カデア
リマシテ九ツシカナイ、ソレカラ今度ハ廢
業ヲシタ方ハドウ云フ風ニナッテ居ルカト
申シマスト、昭和六年ニ於テ廢業致シタ
モノガ百五十釜以下ノモノハ百七十六、百
五十釜以上ニ付テハ十七、斯ウ云フ風ニナッ
テ居リマス、サウ云フ風ニ著シク百五十釜
ヲ境ト致シマシテ違ヒガアリマス、是カラ
見マスト十釜以上五十釜ニナルトモット甚
シイ、百七十六ノ中デ休廢致シマシタモノ
ガ百五十五、斯ウ云フ事ニナッテ居リマス、
是ガ卽チ先程來申上ゲテ居リマス製絲業ノ
工場ノ濫立サレルト云フ事デ、是ガ爲ニ被
ル養蠶家ノ損害等モ著シイモノデアル、斯
ウ云フ事情デアリマシテ、其他昨日一寸申
上ゲテ置キマシタガ、或ハ輸出檢査ノ上ニ
於ケル不合格ノ場合ガ多イトカ云フヤウナ
事モアリマス、左樣御諒承ヲ願ッテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006311922X00319320830&spkNum=111
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112・加藤知正
○加藤委員 ソレハ一昨年ヤ昨年、若クハ
本年ヲ其例ニ御取リニナルノハチト無理ダ
ト思ヒマス、何故カト云フト、御承知ノ通
リ一昨年來非常ナ不況ニ遭遇致シテ居ル、
斯ウ云フ時ニ於テハ、片ッ端カラドン〓〓
倒レルノハ當リ前ノ話デ、何モ濫立ノ結果
トハ言ヘナイ、濫立シタカラサウ云フモ
ノガ潰レルトハ言ヘナイ事情ガアル、其事
情ハ何デアルカト云フト、經濟上ノ關係、
モット端的ニ言ヘバ資本ノ關係デアルト私
ハ考ヘル、併ナガラ政府當局ハ單ニ資本ノ
關係ノミデハナイ、濫立ノ結果ダ、此濫立
ノ結果ハ資本ノミノ關係デハナクシテ、經
營上ノ關係ガアルト御認メナラバ、其邊モ
一ツ伺ヒタイノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006311922X00319320830&spkNum=112
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113・入江魁
○入江政府委員 是ハ昭和六年ノ統計ヲ申
上ゲタノデアリマスガ、私共持ッテ居リマ
ス表ノ昭和三、四五、六年度ヲ比較致シ
マスト昭和三年ニ於テハ、モット多イノデ
アリマス、サウ云フ風デアリマシテ、勿論
今御述ベニナリマシタヤウナ工場ヲ經營
致シマスニハヤハリ資本ノ點ニ於キマシテ
非常ニ重大ナ關係ヲ持ッテ居ルト考ヘマス、
隨テ小サナ工場ニ於キマシテハ、資本モ割
合ニ少イカラ、言換ヘレバ百五十釜以上ノ
モノニ比較スルト少イカラ、出來ルノモ早
イ、併シソレハ無理ヲシテヤル爲ニ、高イ
利子ノ金ヲ借リル、ソレガ偶〓今日ノヤウ
ナ狀態ニナッテ、絲ノ値段ガ下ッテ來ル爲
ニ、經營上ニ於テ高利ヲ借リテ居ル關係上
旨ク行カナイ、是ハ私共ノ方デ四年每ニ工
場ノ實態調査ヲ致シテ居リマスガ、之ニ基
キマシテモ、工場ノ經營ヲ合理化シナケレ
バナラヌコトヲ痛切ニ感ジテ居リマス、是
ガ只今申シマシタ百五十釜以下ニ殊ニ多
イ、隨テ將來製絲工場ト云フモノガ出來マ
スル場合ニ於キマシテハ、出來ルダケ合理
的ナモノヲ拵ヘサセル、サウシテ養蠶家ノ
迷惑ニナラナイヤウニト、斯ウ云フコトニ
基準ヲ置イタ次第デゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006311922X00319320830&spkNum=113
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114・加藤知正
○加藤委員 昭和六年バカリデナク、昭和
三年モ中〓酷イ、斯ウ云フ御話デアリマス
ガ、ソレハ御承知ノ通リ昭和二年ノ銀行ノ
「パニック」ノ影響デアリマシテ是モ因ッテ
來ル原因ガアル、サウ云フ特殊ノ事情ヲ以
テ、左樣ナ事ヲ仰シヤルノハ少シク御無理
ト考ヘルノデアリマス、ソレハソレト致シ
マシテ、今經營ヲ合理化云々ト云フ御話デ
アリマスガ、サウスルト百五十釜以上ナラ
バ其經營ハ合理的ニ行ッテ居ル、デアルカ
ラシテ、啻ニ資本關係ノミデナクシテ、サ
ウ云フヤウナ經營組織ガ合理的ニ行ッテ居
ルカラ倒レルモノモ少イ、ソレガ百五十釜
以下ニナルト、割合ニ合理的ニ經營ガ出來
テ居ラナイカラ倒レルモノガ多イ、斯ウ云
フ風ナ御說明ノヤウニ伺ヒマシタガ、其點
ハ如何デゴザイマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006311922X00319320830&spkNum=114
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115・入江魁
○入江政府委員 私ガ申上ゲマシタノハ大
體ニ於キマシテ、基礎ガ安定シテ、サウシ
テ恆久性ヲ持ッテ居ルヤウニスルニハ大體
百五十釜見當カラ三百釜位ノモノガ最モ良
イデハナカラウカ、勿論今御話ノヤウニ、
百五十釜以下ノ工場ニ於キマシテモ、最モ
優秀ナ工場モ見受ケラレマス、或ハ三百釜
以上ノ工場ニ於キマシテモ、相當優秀ナ工
場ガアルノデアリマス、併シ今日製絲業ノ
實際ノ狀況ヲ見マスト、大體ニ於キマシテ
大キナ製絲工場ニ於キマシテモ、釜數ニ於
テハ百五十カラ三百位ノモノヲ單位ニシ
テ、斯ウ云フ實際上ノ經驗ニ基イテヤッテ
居ル方ニ於テモ、サウ云フコトニナッテ居
ル、斯ウ云フ色〓ノ點カラ考ヘマシテ、百
五十釜ガ最モ合理的デアルト考ヘタ次第デ
アリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006311922X00319320830&spkNum=115
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116・加藤知正
○加藤委員 餘リムヅカシイ事ヲ言フコト
ヲ止メマシテ、詰リ百五十釜乃至三百釜マ
デト云フモノハ、是迄ノ例ニ依レバ合理的
ニ一番ヨクヤッテ居ル、其他ハ比較的惡イ
モノガ多イ、デアルカラシテ詰リ百五十釜
以上三百釜ノモノハ合理的デアルト云フコ
トニ考ヘテ宜シウゴザイマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006311922X00319320830&spkNum=116
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117・入江魁
○入江政府委員 左樣デコザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006311922X00319320830&spkNum=117
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118・加藤知正
○加藤委員 ソコデ伺ヒマスガ、農林省ニ
於テ調査ヲヤラレタ四年、五年ノ兩年度ニ
亙ッテ、少カラザル費用ヲ投ジテ御調査ニ
ナッタ實態調査ガアル、之ヲ拜見シマスト
云フト、中〓政府當局ノ仰シヤルヤウナモ
ノデハナイ、卽チ百釜未滿、ソレカラ百釜
乃至百五十釜、百五十釜乃至二百釜、二百
釜乃至二百五十釜、二百五十釜乃至三百釜、
三百釜乃至五百釜、五百釜以上、斯ウ云フ
風ニ致シマシテ、サウシテ總工場數四百七
十二ニ付テ御調査ニナッテ居ル、ソコデ此
調査ノ內容ヲ中上ゲマスト、一釜當リノ建
坪數、購入原料ノ繭代、一釜當リノ生絲生
產高、一年間一日平均、ソレカラ副產物、
生產高百斤ニ對スル生絲販賣價格、百斤ニ
對スル生絲生產費、百斤ニ對スル借入金ノ
金利、此項目ニ別ケテ御調ベニナッテ居ル
ノデアリマス、一々數字ガ此處ニ擧ッテ居
リマスカラ、之ヲ讀ムト一番ハッキリシマ
スガ、時間ガアリマセヌニ依テ、之ヲ止メ
マス、之ヲ見ルト云フト、百釜未滿ノ製絲
工場デアリマシテモ、百釜以上ノ製絲工
場ト、別ニ大シタ變リハナイ、一長一短、
兩方トモ同ジヤウナモノデアル、卽チ百五
十釜以上三百釜以內ト云フノガ理想デアル
ト云フコトヲ特ニ指摘シ得ルモノガナイ、
若シアルナラバ承リタイ、是ハアナタ方ノ
方ノ御調デアル、此御調ニ依テ見レバ、
長一短デ、略〓同樣ナ成績デアル、ソレヲ
百五十釜以上三百釜以內ガ一番合理的デア
ルトカ、理想的デアルトカ、之ニ依テ基準
ヲ定メルト云フコトハ、ドウ云フモノデア
リマセウカ、此點ガドウモ承知出來マセヌ
ノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006311922X00319320830&spkNum=118
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119・入江魁
○入江政府委員 工場ノ實態調査ノ點ニ付
キマシテ私共ノ差上ゲマシタ材料ニ基キマ
シテ御述ベニナリマシタガ、其通リデゴザ
イマス、唯其點カラ私共考ヘマスルノニ、
勿論之ヲ以テ全般ヲ推シテ、正確ナモノデ
アルト云フコトモ言フ譯ニハ行カヌト存
ジマス、何故カナラバ、調査致シマシタ工
場數ト云フモノハ、昭和四年ニ四百八十
二、昭和五年ニハ三百六十七、斯ウ云フ大
體ノ見當ヲ付ケテヤリマシタノデス、ソレ
ヲ以テ全般ヲ推スト云フコトハ非常ニ困難
カト思ヒマス、併シ調査致シマシタ所カ
ラ、大體斯ウ云フ點ハ窺ハレルダラウト思
ヒマス、昭和四年度ニ於キマシテ、假ニ百釜
未滿ノ工場ニ付テ、利益ニナッテ居ルカ、損
ニナッテ居ルカト云フコトヲ大體調ベテ見
マスト、假ニ百釜未滿ノ工場百十九ニ付イ
テ見ルナラバ、利益ノ工場ハ僅ニ七、利益デ
ナイ工場ハ百十二ト云フ風ニナッテ居リマ
ス、ソレカラ昭和五年度ニ於キマシテモ、
百釜未滿ノ工場百三十八ヲ調ベテ見マスル
ト、利益ノモノガ四十八、利益デナイノガ
九十、斯ウ云フヤウナ割合デアリマス、勿
論調ベタ工場ノ如何ニ依リマシテ、何ト申
シマスカ、利益ノナイ所バカリヘ行ッタト
云フコトニナルカモ知レマセヌガ、サウ云
フ狀態カラ見マスト、大體ノ觀察ハ出來ル
ノデハナイカト思ヒマス、是ハ餘程加藤サ
ンノ方ガ私ヨリモ能ク御存ジノコトヽ存ジ
マスノデ、申上ゲル必要モナイカモ知レ
マセヌガ、大體相當ノ規模及ビ資本ヲ有シ
テ、相當ノ經營者ガアルト云フ工場ニ於テ
コソ、初メテ合理的經營ガ出來ルノヂヤナ
カラウカ、隨テ小サイモノガ總テ惡イト云
フコトハ申上ゲマセヌ、只今ノヤウナ色〓
ナ點カラ考ヘテ見マシテ申上ゲタノデアリ
マスガ、殊ニ輸出致シマスル場合ニ於キマ
シテハ、一荷口千斤トナッテ居リマス、之
ヲ百五十ノ工場ニ致シマスト、一箇月三囘
平均、サウスルト年ニ三十六囘シカ出來ナ
イ、僅ニソレ位ノモノデアリマス、ソレガ
五十釜、或ハ二十トカ三十トカ云フコトニ
ナリマスト、一荷口千斤ノ生產モナイト云
フ譯デアリマス、サウスルナラバ、輸出檢
査ノ上ニ於テ、荷物ガ不揃デアル、斯ウ云
フ結果ニ陷ルノデアリマス、サウ色ミナ點
カラ綜合シテ考ヘマシテ、大體ニ於テ百五
十釜位ヲ見當トスルナラバ、誤リナカラ
ウ、斯ウ云フコトヲ申上ゲマスノデ、決
シテ其以外ニ良イ工場ガナイトカ、惡イ
工場ガアルトカナイトカ言ッタノデナク
テ、大體ノ標準ヲ付ケタ次第デゴザイマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006311922X00319320830&spkNum=119
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120・加藤知正
○加藤委員 只今局長ノ御說明ニ依リマス
ト云フト、成程實態調査ノ成績ハソレニ間
違ナイ、ケレドモ昭和四年ニ於テハ、四百
七十二デアルト云フヤウナコトヲ仰シヤッ
テ、ソレニ依テドウモ全般ヲ推測スル譯ニ
行カナイ、斯ウ云フ御話デアル、一體百五
十釜以上三百釜以內ト云フヤウナコトハ、
何ヲ標準トセラレタカ、只今千斤云々ノ御
話モアリマスケレドモ、ソレデハ私ハ小サ
ナ工場其モノガ、荷ロガ纒ラナイカライケ
ナイト云フ風ニ解釋ヲセナケレバナラヌコ
トデアリマスガ、假令小サナ工場ト雖モ、方
法ニ依テ荷口ヲ纒メ得ラレルト思フ、唯
製絲工場デ之ヲ求メルト云フコトハ困難デ
アリマセウ、併ナガラ豫テ御話ノアリマシ
タ如ク、共同輸出ノ方法ニ依テ、必ズ荷口
ト云フモノハ纒メ得ラルヽニ違ヒナイ、經
營主ノ如何トカ、資本ノ如何ト云フヤウナ
御話ガゴザイマシタガ、是ハ大キナ製絲
工場デアリマシテモ、小サナ製絲工場デア
リマシテモ同ジコトデス、却テ私ハ大キナ
製絲場ヨリモ、小サナ製絲場ノ方ガ、眞面目
ニ實際的ニ之ヲヤル上ニ付テハ效果ガ寧ロ
大規模ノモノヨリモ宜シイト考ヘテ居ル譯
ナンデアリマス、デスカラ百五十釜ト云フ
ヤウナコトヲ標準ニ爲サル根據ガ、非常ナ
不確實デアルト言ハナケレバナラナイ、此
實態調査ニ依テオヤリナサッタナラバ、マダ
宜イケレドモ、是ハ僅ニ四百七八十ノ工場
ニ付テ調ベタモノデアルカラ、ソレハ標準
ニスル譯ニハ行ナカイ、唯一般的カラ考ヘ
テ、人物ノ如何、資本ノ如何、ソレカラ經營
方法ノ如何、其荷ロガ如何ト云フ樣ナコト
カラ推測シテ、百五十釜位ガ宜カラウカト
云フヤウナ御話デアリマスケレドモ、是ハ
洵ニボンヤリシタ話ナンデアリマス、サウ
云フ譯デアリマシテ、寧ロ私ハサウ云フヤ
ウナ大キナ所ニ標準ヲ置カナイデ、小サナ
所ニ標準ヲ置イテ、サウシテ之ヲオヤリナ
サルト云フコトガ本當ヂヤナカラウカ、殊
ニ日本ノ蠶絲業ト云フモノハ、豫テ申上ゲ
マスルヤウニ大製絲工場ガ果シテ日本ノ蠶
絲業ノ爲ニナッタカ、小製絲工場ガ日本ノ蠶
絲業ノ爲ニナラナイカト云フコトヲ考ヘテ
見マスルト、吾〓ハ大ニ疑ナキヲ得ナイ、
農林當局モ既ニ御承知デアリマセウガ、最
近ニ於キマシテ、吾こノ調査ニ依テ見マス
ルト云フト、山十製絲、石川組、小口組、
山丸製絲、信越製絲、長野製絲、既ニ廢業
シタカ、又將ニ廢業セントスルヤウナ狀態
ニアルモノ、斯ウ云フヤウナ大製絲工場ガ
澤山アル、是等ノ釜數等ヲ調ベテ見ルト、
中〓多イ、山十ノ如キハ一萬四千百五十
九、石川組ハ二千九百五十七ニナッテ居ル、
小口組ハ七千七十五ニナッテ居ル、山丸製
絲ハ三千七百四十四ニナッテ居ル、長野製
絲ノ如キハ一千百十八ニナッテ居ル、信越
製絲ノ如キハ五百六ニナッテ居ル、斯ウ云
フヤウナ大製絲家ガ倒レタ場合ニ於テ、其
世ノ中ニ與ヘル損害、迷惑ト云フモノハ、
到底小製絲家ガ百戶二百戶倒レタ以上ノ損
害、迷惑ヲ與ヘテ居ル、サウ云フヤウナ實
情カラ考ヘテ見マスルト云フト、大製絲ヲ
奬勵スルト云フコトヨリモ、寧ロ小製絲ヲ
奬勵スル方ガ宜シイ、小製絲ヲ奬勵シテ荷
ロヲ纒メル途ガナケレバ是ハ別問題デア
ル、ケレドモ荷口ヲ纒メル途ガアルニモ拘
ラズ、何ヲ好ンデ大製絲ヲ奬勵ナサルカ、實
際上カラ考ヘテ御覽ナサイ、五十釜、百釜
ノ方ガ、ドレダケ宜イカ分ラナイ、越後ニ
於ケル鈴木製絲場ノ如キハ百二十釜ノ時代
ニ於テハ、全國ニ於ケル有數ナ模範工場デ
アッタ、ソレガ長岡製絲ヲ合併シテ二百五
十釜ニシマストイケナイ、サウシテ既ニア
レダケノ大ボロヲ出シテ居ル、三百萬圓カ
ラノ負債ヲ拵ヘテ、昨今其整理ニ苦ンデ居
ルト云フヤウナ狀態ニナッテ居ル、是ハ大
規模ニシタバカリナンデアル、今農林大臣
ノ仰シヤル百五十釜以上三百釜以內、理想
ニ近イ二百五十釜ニシタノデアル、其百五
十釜以上三百釜以內ニシタガ、アノヤウナ
狀態ヲ呈シテ居ル、シテ見マスルト云フ
ト、詰リ農林當局ガ將來標準トセラルヽ所
ノ百五十釜云々ハ、何等ノ根據ガナイモノ
ト言ハナケレバナラヌ、唯簡單ニ之ヲヤラ
レタモノト言ッテモ宜シイ、サウ云フ薄弱
ナモノヲ根據ト致シテ、サウシテ此重要ナ
ル製絲業法案ヲ實施セラレルト云フコト
ハ、是ハ危險千萬ト言ハナケレバナラヌ、
此點ニ付テ私ハ農林大臣ノ御所見ヲ伺ヒタ
イノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006311922X00319320830&spkNum=120
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121・後藤文夫
○後藤國務大臣 當局ノ今日迄調査シマシ
タ所ニ依リマスレバ、百五十釜ト云フ所ヲ
大體基準ニスルコトガ適當デアラウ、此法
案ノ施行ニ當ッテ、新タナル免許ニ對シテ
此邊ヲ基準デ行カウト考へテ居リマスガ、
段々御說モアリマスノデ、吾ミガ若シ思ヒ
及バナイ點ガアリマスレバ、此法律ノ實施
ニ當ッテ基準ヲ定メル上ニ篤ト考究シテ見
タイト思ヒマス、只今ハ大體百五十釜ト云
フコトヲ基準トシテ差支ナイカト考ヘテ居
リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006311922X00319320830&spkNum=121
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122・加藤知正
○加藤委員 幾度伺ッテモ同樣ナ御說明デ
アリマシテ、甚ダ私ハ不滿足デアリマス
ケレドモ、此問題ニ付テハ此程度デ止メマ
ス、只返ヘス〓〓モ申上ゲテ置キマスガ、
大製絲家必シモ有利デハナク、又小製絲家
必シモ不利デハアリマセヌカラ、此點ニ付
テハ篤ト御考慮ヲ願ヒタイト考ヘマス、
體此釜數ト云フコトガ洵ニ當テニナラヌト
云フコトハ、昨日モ私ガ蠶絲局長ニ申上ゲ
マシタ、一釜デアリマシテモ一口カラ三十
口マデアル、斯ウ云フヤウニ多數ノ口數ノ
アルモノニ對シテ、漠然ト釜數ヲ標準ニ置
クト云フコトハ、其當ヲ得ナイト思ヒマ
ス、隨テ生絲生產量ニ於テモ、口數ノ多イ
モノト少ナイモノデ差ガアル、全國平均カ
ラ云フト、百五十匁ト申シテ居リマスガ、
多イモノハ四百四十匁モ繰ルヤウナ次第デ
アリマスカラ、釜數ヲ標準ニスルコトハ
誤ッテ居ルト思フ、此事ニ付テ局長ニ御伺
ヒシマスト、成程サウダケレドモ、監督ス
ル上ニ於テ、一人ノ工女ガ三釜監督セヤウ
ト四釜監督セヤウト、其釜數ノ多少ハ言ハ
ナイ、卽チ一人ノ工女ガ監督シ得ルモノヲ
一釜ト見做スト云フ御說明ガアッタヤウニ
承知シテ居ル、併シ是ハ如何ニモ間違ッタ考
ダト思ヒマスガ、是ハ洵ニ重要ナコトデア
リマスカラ、私ノ聽キ誤リカモ知レマセヌ
ガ、此際局長カラ改メテ御答ヲ願ヒタイト
思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006311922X00319320830&spkNum=122
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123・入江魁
○入江政府委員 私ノ申上ゲタノハ、大體
ニ於テ一人ノ繰絲者ニ對スルモノヲ一釜ト
見マシタ、一人デ三釜モ四釜モ監督シテ居
ルト云フノデハアリマセヌ、只今ノ大體ノ
狀況カラ見マスト、今ノ生產能力ト云フモ
ノヲ考ヘマスレバ、サウ大差ハナイ、故ニ將
來非常ニ器械ガ發達シテ、澤山ノ生產ヲス
ルヤウニナレバ、其場合ニ於テハ相當考慮
スベキ問題デ、施行細則ノ上ニ於テモ考へ
ナケレバナラヌト云フコトヲ申上ゲタ次第
デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006311922X00319320830&spkNum=123
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124・加藤知正
○加藤委員 此問題ハ此程度ニシテ置キマ
ス、更ニモウ一ツ、極メテ重要ナコトヲ
伺ッテ置キマス、蠶絲業組合法ガ既ニ通過
シ、實施サレテ居ル、殊ニ又本案ガ通過ス
レバ直ニ實施セラレルデアラウト思フ、斯
樣ニ道具立ガ出來マシテモ、實際ニ於テ其
效果ヲ收メナケレバ、百ノ法律ガアッテモ
何ノ用モ成サナイノデアリマスカラ、此點
ニ付テ十分效果アラシメナケレバナラヌノ
デアリマスガ、ソレニハ養蠶製絲ノ各團體
ガ、此法律ノ運用宜シキヲ得セシメル爲
ニ、本氣デ働カナケレバナラヌ、其團體ノ
働キヲ十分ニセシメルニハ、立派ナ中心人
物ガ必要デアル、而シテ其中心人物トシテ
ハ、豫テ申上ゲマシタ指導員ヲ必要トスル
ノデアリマス、ソレデ此指導員ノ設置ニ付
テ、此前ノ議會ニ特ニ建議ヲ致シタノデア
リマシテ、是非共之ヲ實現シテ貰ヒタイト
思ッテ居リマシタガ、今囘蠶絲局關係ノ豫
算ヲ拜見致シマスト、更ニ此技術指導員費
ト云フヤウナモノガ計上サレテ居ラナイヤ
ウニ思ヒマス、此點ニ付キマシテ私ハ甚ダ
遺憾ノ念ヲ禁ズルコトガ出來マセヌ、指導
員ヲ置イテ、各團體ガ本氣ニナッテ働キマス
レバ、時局匡救ノ如キ何等心配ハ要ラナイ
ト思フ、農家ノ負債整理ヲヤカマシク言
ヒ、負擔輕減ヲヤカマシク言フ、昨日モ大
臣ニ質問スル積リデ、出席ノ御約束ヲシマ
シタガ、負債整理ノ方ノ委員會ノ爲ニ約束
ヲ反古ニサレタ、其位負債整理ガ重大視サ
レテ居リマスガ、今日此指導員ノ下ニ地方
ノ各〓體ガ一生懸命ニ働キマスレバ、負債
整理モ、負擔輕減モ、收入增加モ、決シテ心
配ハ要ラナイ、サウ云フ重要ナモノヲ何故
ニ閑却シテ、豫算ヲ御計上ニナラナカッタ
カ、之ヲ一ツ伺ヒタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006311922X00319320830&spkNum=124
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125・後藤文夫
○後藤國務大臣 蠶絲業組合法ヲ制定致シ
マシテ、農〓組合等ノ設置ヲ奬勵致シマシ
ク、ソレニ付テ洽ク技術員等ヲ置クコトハ
洵ニ希望スル所デアリマス、當局ニ於テモ
昨年來切實ナル希望ヲ以テ財政當局ト交渉
ヲ重ネマシタガ、何分ニモ御承知ノ通リノ
財政狀況デアリマス爲ニ、今日マデ其方面
ノコトガ十分ニ出來兼テ居リマス、此際何
故急イデヤラナイカト云フ御尋デアリマス
ガ、何分各種ノ豫算ヲ提出シテ、財政上ノ
狀況ト睨ミ合セテ、出來ルダケ努力ヲ拂ッ
テ居リマスガ、不幸ニシテ未ダ實現スルニ
至リマセヌケレドモ、今後ニ於テ出來ルダ
ケ努力シテ見タイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006311922X00319320830&spkNum=125
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126・加藤知正
○加藤委員 ドウカ次ノ通常議會ニハ、何
ヲ置イテモ此指導員設置ノ實現ヲ希望致シ
マス、尙ホ質問ガアリマスガ、私一人デ占
領スルコトハ諸君モ御迷惑デアリマセウカ
ラ、此程度デ止メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006311922X00319320830&spkNum=126
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127・山本愼平
○山本委員 農林大臣ハ大變御多忙デ御氣
ノ毒デアリマスガ、私ハ大體論ニ付テ是非
今度ノ匡救案ノ本統ノ一人男デアラレル農
林大臣ニ伺ッテ置カナケレバナラヌ、時間
モアリマセヌカラ、一問一答式デナク、ズッ
ト纒メテ述ベマスカラ、其要點要點ニ付テ
御隨意ニ御答辯下サレバ、ソレデ結構デア
リマス、私ノ農林大臣ニ御伺ヒシタイ心持
ハ、攻擊的ノ立場デモアリマセヌシ、又揚
足ヲ取ル心持モコザイマセヌ、本當ニ吾ミ
百姓議員ノ立場カラ考ヘマシテ、今度ノ時
局案ニドレダケノ一貫シタル主張、若クハ
何カ「カテゴリー」ノヤウナモノヲ抱イテ
ソレデ行カウトシテオ出デニナルカ、私ノ
見ル所ニ依リマスレバ、私ノ意見モ多少加
ハルデアリマセウガ、此非常時ト云フ所ノ
認識ガ、大體病氣ガ何處ニアルカ、其病氣
ヲ狙ッテ、農林大臣ハ相當ノ「メス」ヲ御
下シニ相成ッタデアリマセウガ、其「メス」
ヲ下スベキ箇所ハ、私ヲシテ云ハシムル
ナラバ、數個ノ點ニアルダラウト思フ、卽
チ第一ハ農村ト云フモノハ今ノ所資本主義
經濟ノ下ニ於キマシテハ、ドウシテモ是ハ
國家ノ力ニ依テ助成シナケレバ發達致シマ
セヌ、少クトモ今ノ立場デハ商工業ガ資本
主義ノ寵兒デアリマシテ、農業ト云フモノ
ハ此資本主義制度ノ下デハ十分ノ發達ハ國
家統制ノ力ニ依ルニアラズンバ、發達シナ
イ立場ニアリマス、其立場ヲ十分ニ御承知
ニナッテ、サウシテ非常時局ト云フコトガ
ソレカラ流出シテ來ル、又此立場カラ一切
ノ問題ガ解決サレナケレバナラナイ、卽チ
此製絲業法ノ如キモノモ、製絲家ノ倒レタ
リ起キタリスルコトノ頻繁ト云フ事ノ結果
ハ、販賣統制ノ上ニ最モ重大ナ影響ヲ及ボ
スノデアリマシテ、農產物ノ價格ノ引上ト
云フ一番中心問題ノ上ニ、重大ナ影響ヲ及
ボスカラ、百五十人百五十釜以下ハ新シク
許サヌト云フ一ツノ統制法ガ出來タノデア
ラウト思ヒマス、其點ガ一番重イ點デアラ
ウト思ヒマスガ、サウ云フ風ナ統制經濟ノ
下ニ、農村ヲ助長シテヤラウト思召ス場合
ニ於キマシテハ、モウ少シ此時局ニ對スル
徹底的ノ御施設ガナケレバナラヌ筈ダト思
ハレル、是ハ先程加藤君ノ御話ノ中ニモア
リマシタガ、何故販賣統制ト云フ方ニ、困
難デハアリマセウガドノ位デモ手ヲ御著ケ
ニナラヌカ、殊ニ生絲ノ現物市場ニ對スル
御〓究ガ、モウ少シ具體的ニ外ヘ現ハレ
ナカッタカ、斯ウ云フ問題ガ一番重要ナ問
題デアルト考ヘラレルノデアリマス、僅二
製絲業法デ百五十釜以上、ソレ以下ハ許サ
ヌト云フ位ノ販賣統制デハ、到底此時局ニ
對スルコトガ出來ナイト思ハレル、又先程
以來農林大臣ハ、隨分負債整理組合デ色ミ
ナ、而モ同一ノ質問デ、御迷惑ノヤウデ
アリマシタガ、私モ此點ニ付テヤハリ同一
ノ主張カラ伺ッテ見タイノハ、農業ト云フ
モノハ資本主義制度ノ下デハ發達シナイカ
ラ、國家ノ統制ノ力デ之ヲ發達サセルト云
フコトヽ、モウ一ツ重大ナコトハ、此時局
ニ對シマシテハ、貨幣價値ノ動搖ト云フコ
トデアリマス、モウ少シ具體的ナ言葉ヲ使
ヒマスナラバ、金本位ノ破綻デアリマス、
歐羅巴ノ大戰以來、金ノ値打ガ甚シク動搖
ヲ致シマシテ、殆ド物價ノ上ニ金本位ラシ
イ統制力ヲ失シテ了ッタコトハ、是ハ周知
ノ事實デアリマス、此影響ハ世界的デ、勿
論日本モ影響ヲ受ケマシテ、非常ナ物價ノ
動搖ヲ來シタ、殊ニ日本ハ大正九年三月十
五日以來ノ財界混亂、ソレカラ大正十二年
ノ關東大震災、ソレカラ又昭和二年ノ金融
恐慌ニ引續イテ、昭和四年ノ農業恐慌、ソ
レガ今年ニ及ンデ最モ酷イ場合ニナッタノ
デアリマス、此場合ニ於テ、時局ニ對ス
ル病氣ノ一番ノ原ハ、貨幣價値ノ動搖、
卽チ物價ノ亂高下ガ、其原因ヲナシテ居
ル、而シテ其亂高下ノ中デ最モ多クノ影
響ヲ及シタモノハ、債權債務ノ關係ニ於
ケル經濟正義ノ觀念ガ打壞サレタコトデ
アリマス、經濟正義ト云フヤウナ一種ノ
抽象的ノ言葉ヲ使ヒマスノハ、百圓ヲ借
リタモノハ百圓ヲ返サナケレバナラヌ、
併ナガラ貨幣ト云フモノハ、唯尺度デア
リマシテ、物々交換ガヤハリ吾〓ノ交換
經濟ノ中樞デアル、然ルニ大正九年ノ
月頃ニハ、生絲ガ四千百七十圓迄行ッテ、
サウシテ今年ノ六月一日ニハ三百九十圓ト
云フ所迄落チテ居ル、是レデハ十分ノ一ニ
足ラナイ、大正九年ニ借金ヲシタ者ハ、繭
ヲ假ニ一貫目借リタトスレバ、昭和七年ノ
六月一日ニハ、繭ヲ十貫目返サナケレバナ
ラヌ、ソレヲ貨幣ノ標準デ計ルカラ、値段ガ
百圓トカ十圓トカ云フコトニナリマスガ、
物々交換ノ、物ノ本質ニ還ッテ負債ヲ計算
致シマスレバ、大正九年ニ繭一貫目借リ
タ者ハ、此七年ノ六月一日ニハ十貫目返サ
ナクテハナラヌ、斯ウ云フ風ニ負債義務ノ
上ニ、不當ガ生レテ居ルノデアリマス、之
ヲ匡正シテ行クト云フコトガ、國家トシテ
ノ統制力ノ上ニ一番必要ナコトデアリマ
ス、其點ニ於テ所謂負債整理組合、或ハ負
債整理組合ニ對スル國家ノ補償ト云フコト
ガ、當然ノ事實トシテ生レ出ル、百圓借リ
テ百圓返スノハ當リ前ダト云フ、ソレハ少
シ古イ觀念デアリマシテ、百圓ノ購買力
ガ、今日デハ十圓ノ購買力シカナイト云フ
場合ニ於キマシテハ、此貨幣價値ノ動搖ニ
對シマシテハ、國家ハ相當ノ責任ヲ以テ之
ニ補償作用ヲ與ヘテ行クト云フコトハ、是
ハ當然過ギル位當然ナコトデアリマス、之
ガ經濟正義ノ立場ニ於テハ、何人デモ主張
サルヽ事實デアリマスガ、多クハ之ガ見逃
ガサレテ居リマス故ニ、司法省ノ立案サレ
テ居ル所ノ負債調停法ニ於キマシテモ、裁
判所ノ判事ハ丁度英國ノ不文法デ、判事ハ
辯護士ヲ三年以上シタ者デナケレバナレナ
イコトニナッテ居ルガ、サウ云フ老巧ナ判事
ヲ使ヒマスレバ、負債整理ノ裁定ヲスル
場合ニ、物價指數ニ依テ或ル程度迄是デ裁
判ヲスルト云フコトハ、當然ノ行キ方デナ
ケレバナラナイ、其立場カラ考ヘテ見マス
ルナラバ、負債整理組合法ヲ、若シ農林大臣
ガ御出シニナルトスレバ、必ズ之ニ國家ノ
補償ガ付隨シテ、サウシテ經濟正義ノ觀念
ヲ取戾サナケレバナラヌ、卽チ貨幣價値ノ
動搖ニ對スル國家統制經濟ガ、之ニ及バナ
ケレバナラヌト云フノガ此時局匡救ノ上ニ
是非ナケレバナラヌ大切ナ點デアリマス、
繰返シテ申シマス、第一點ハ資本主義經濟
下ニ於ケル農村ヲ匡救スルニハ、國家ノ統
制ガ必要デアル、第二ニハ貨幣價値ノ動搖
ニ對スル今日ノ時局匡救ニハ、同ジク國家
ノ補償ガ必要デアル、此二ツノ主張ヲ以テ
此時局ニ對スルニアラズンバ、到底眞實ナ
ル農村生活、若クハ商工業生活ニ何物ヲモ
與ヘルコトガ出來ナイダラウト思フノデア
リマス、農林大臣ハ種々ノ點ニ御苦勞ニナッ
テ、今度ノ問題ニ於ケル一人者トシテ、隨分
御迷惑ノ點ガアラウト思ヒマス、モット露骨
ノ言葉ヲ使ヒマスナラバ、大藏大臣ノ責任
ニ屬スルコト迄、多分ニ被ッテ御出デニナル
カモ知レマセヌ、是ハ實ニ御氣ノ毒ナコト
ニ存ジマス、デアルカラシテ、私ヲシテ云
ハシムレバ、寧ロ農林大臣ハ露骨ニ、實ハ
負債整理組合ニ付テハ大藏省ト相談シタ
ガ、大藏省ハドウシテモ聽カヌ、大藏省ハ
個人主義經濟ノ立場ニ立ッテ、此貨幣價値
ノ暴落ナドニ對スル國家ノ補償ナント云フ
コトハ、考ヘテ居ラナイ、サウ云フ立場カ
ラ、隨分農林大臣ハ御答ニナッタノデアリ
マセウガ、私ヲシテ言ハシムルナラバ、寧
ロ農林大臣ハ露骨ニ、俺ハ實ハ大藏大臣ニ
求メタケレドモ、大藏大臣ハ肯カナカッタ、
斯ウ仰シヤッタ方ガ、寧ロ私ハ本當ハ宜イノ
ヂヤナイカト思フ、決シテソレガ爲ニ內閣
ノ統一トカ不統一トカ云フ問題ニハ及バヌ
ト思フ、サウ云フ風ニ露骨ニ、ザックバラ
ンニ國民ノ前ニ御話下サッテ、俺ハ是ダケ
努力シタケレドモ、ドウモ舊イ「オーソドッ
クス」的ノ經濟學ヲ奉ジテ居ル人〓ノ間ニ
ハ、個人主義經濟ガ一番中心デ已ムヲ得ナ
カッタト言ヘバ、玆ニハッキリ何モノカ得ラ
レマス、サウシテ又國民トシテ聲ヲ揚グベ
キ點ノ見當モ付イテ參リマス、斯ウ云フコ
トヲ農林大臣ハ爲サラナイ、一人デ罪ヲ背
負ッテ御立チニナルヤウデアリマスガ、此
二點ニ觸レラレナイ時局匡救案ト云フモノ
ハ、多クハ不徹底、多クハ實際ノ意味ヲ成
サナイノデハナイカ、斯ウ云フ認識ヲ私ハ
有ッテ居リマスガ、甚ダ抽象的デハアリマ
スケレドモ、此二點ニ對スル農林大臣ノ御
考ヲ、簡單デ結構デス、御話ヲシテ下サル
ナラバ、此匡救案ノ本議場ニ現ハレル時ニ
於ケル、少クトモ私ノ去就ニ重大ナ影響ヲ
持ツダラウト思フノデアリマス、而シテ單
リ私ノミニアラズシテ、深甚ニ政權ナドノ
コトハ少シモ考ヘナイ、內閣ガ何處へ行カ
ウガ、ドウシヤウガ考ヘナイ、偏ニ國家民
人ノ爲ニ深甚ニ、眞劍ニ、唯如何ニシテ此
難局ヲ切拔ケラレルカト云フコトヲ考ヘテ
居ル大部分ノ人、而シテ吾〓百姓議員ヲ滿
足セシメ得ルダラウト思フノデアリマス、
ドウカ露骨ナ、而シテコダハリノナイ立場
ニ於テ御話下サルナラバ、大變結構ダト思
フノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006311922X00319320830&spkNum=127
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128・後藤文夫
○後藤國務大臣 只今時局匡救ノ策ヲ立テ
ルニ當ッテノ根本ノ方針、或ハ精神ト云フ
モノヽ置キ方ニ於テ、御懇篤ナ御議論、併
セテ御質問ガゴザイマシタ、御趣意ノアル
所ハ能ク諒解致シタノデアリマスルガ、私
共ガ今囘ノ匡救案ヲ立ツルニ當リマシテ、
國家ガ相當ナ力ヲ玆ニ發露シテ來ナケレバ
ナラヌト云フコトハ十分ニ考ヘタノデアリ
マス、普通ノ單純ナル產業振興、或ハ單純
ナル企業的ノ成果ト云フモノノミヲ見ルノ
デナクシテ、此農林土木事業、內務省系統
土木事業等ヲ行ハウトシマシタノモ其爲デ
アリマス、尤モ是等ノモノハ、殊ニ農林土
木事業ノ如キハ、併セテ將來ノ產業的效果
ヲ深ク考慮致シタノデアリマス、ソレカラ
不動產融資ノ補償デアリマストカ、產業組
合ノ固定資金ノ流動化ノ國家補償デアリマ
ストカ云フヤウナ事柄モ、ソレ等ノ見地カ
ラ發足ヲ致シテ居リマス、唯其外ノ尙ホ根
本的ナ產業上ノ各種ノ統制ト云フ問題ガア
ルノデアリマス、是ハ時局ノ匡救ニモナ
リ、根本策ニモナルト云フモノガアルコト
モ承知シテ居リマス、併ナガラ直ニ恆久的
ニ觸レルモノニナリマシテハ、單純ナル目
前ノ時局匡救ノ外ニ、國家永遠ノ利害ト云
フモノヲ考ヘテ來ナケレバナリマセヌ、之
ヲ火急ニ輕ミシク、此臨時議會ニ大急ギデ
出スト云フヤウナ譯ニモ參リ兼ネタノデア
リマス、先程資本主義經濟ノ下ニ於ケル今
日ノ農村ハ非常ニ困ル事情ニアルンダト云
フヤウナ御話ガアリマシタ、只今ノ、特
資本主義經濟ト云フヤウナ言葉デ申スガ宜
イカドウカ存ジマセヌガ、今ノ產業界ノ狀
況ニ於テ、農村ガ比較的薄弱ナ位置ニ居ル
ト云フコトモ私ハ認メマス、殊ニ我國ノ農
業經營ガ、小サナ規模ノ農業デアル、是ガ
今日ノ產業界ノ組織ノ中ニ、頭ヲバラ〓〓
ニ突込ンテ居ルト云フヤウナ狀態ガ、ッ
ニハ非常ナ農村ノ不利益ヲ來シテ居ルト思
フノデアリマス、之ニ對シテ農業者ト云フ
モノガ一種ノ組織ト統制トヲ漸次持ッテ來
ナケレバナラヌト云フコトヲ考ヘマス、ソ
レト同時ニ矢張農業ニ付テ、各種ノ國家的
ノ統制ガ漸次行ハレテ行カナケレバナラヌ
ト云フコトモ考ヘルノデアリマス、貨幣價
値ノ下落ト、之ニ對スル經濟的ト申シマス
カ、或ハ社會的ト申シマスカ、正義觀念ヲ
加ヘテ、貨幣價値ノ變動ニ處スル何カノ方
法ガ要ルデハナイカト云フヤウナ趣旨ノ御
話モアリマシタ、是ハ現在ノ經濟ノ仕組ニ
於テハ、之ヲ直ニ端的ナル方法ニ依テ處理
シヨウトスルコトハ、却ッテ經濟的混亂ヲ
惹起スル虞ガアリマス、矢張色ミナ方法ニ
依テ、是ガ或ル程度ニ是正サレルト云フコ
トヲ以テ、現在ニ卽シタ問題トシテ滿足ヲ
シナケレバナラヌト思フノデアリマス、政
府ガ色ミナ低利資金ノ融通、又償還條件ノ
緩和ヲ計リ、其他今ノ不動產融資、產業組
合ノ融資、或ハ補償、ソレカラ負債整理組
合ヲ設ケテ農村ノ經濟更生ト共ニ負債整理
ニモ便宜ヲ圖ル幾多ノ方法ガ竝ビ行ハレ、
又最初ニ申シマシタ土木事業ノヤウナモノ
ニ依テ、資金ガ地方ニ放出サレ、或ハ賃銀
トシテ廣ク行亙ッテ、潤ッテ來ルト云フヤウ
ナ各種ノ方法ガ行ハレ、又ハ低金利政策ト
云フモノガ行ハレテ、玆ニ自然ニ貨幣價値
ノ變動カラ來ル所ノ好マシクナイ結果ガ、
或ル程度ニ是正サレルト云フコトヲ圖ッテ
居ルヤウナ譯デアリマス、根本ノ御趣旨ニ
於テハ著シキ差ガナイト思ヒマスガ、現實
ノ場合ノ問題トシテハ、國家ノ財政ノ狀
況又國內ノ一般經濟社會ノ狀況等ヲ見
テ、現實ノ問題トシテ實行致シマス、時ノ
手段方法ガ、只今吾〓ノ立テタヤウナコト
ニ相成ッテ居ル譯デアリマス、農林大臣ト
シテハ一個ノ見解ヲ持チ、ソレガ又政府ノ
他ノ部局トノ談合ガ、ドウデアッタト云フ
ヤウナコトモ、卒直ニ話シタラドウカト云
フ御話デアリマスルケレドモ、私ガ議會ニ
於テ申上ゲマスルコトハ、政府ノ決定シタ
ル方針ヲ申上ゲテ居リマスノデ、私ノ意思
モ全然今マデ申上ゲテ居ル通リデアリマシ
テ、其道行ニ色ミナ攻究ヲ遂ゲマシタ經過
ハ、私ハ此處デ申上ゲルコトニ致サウト考
ヘマセヌシ、ソレハモウ過去ニ於ケル經過
デアリマシテ、私共ノ立テマシタ今ノ場合
ニ處スル現實ノ問題トシテノ適切ナル案ハ
議會ニ提出シテ、每日御諒解ヲ願ッテ居ル案
其モノデアルコトヲ御承知ヲ願ヒタイト思
ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006311922X00319320830&spkNum=128
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129・山本愼平
○山本委員■極ク簡單デアリマスカラ伺ッ テ置キマスガ、貨幣價値ノ動搖ニ對スル是
正ノ方法トシテ、私ハサウ云フ抽象的論ヲ
スルノデハアリマセヌノデ、其是正ヲスル
方法トシテ、負債ノ上ニハドウシテモ國家
ノ補償ガ必要デアル、負債整理組合ト云フ
モノガ其資金ヲ出シ、及ビ之ニ國家ノ補償
作用ヲ加ヘルニアラズンバ、全然無意味デ
アルト云フ所ニ重キヲ置イテ居ルノデアリ
マスガ、農林大臣ハ屢〓是ハ御答ニナッテ居
ルヤウデアリマスガ、資金及國家ノ之ニ對
スル補償作用ト云フヤウナコトヲ御考ニ
ナッタコトガアリマスカ、アリマセヌカ、ソ
レヲ伺ッテ置ケバ宜シイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006311922X00319320830&spkNum=129
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130・後藤文夫
○後藤國務大臣 補償ト云フヤウナコトハ
考ヘタコトハアリマセヌ、資金ノコトハ考
ヘマシタ、デ其結論ハ、低利資金ヲ出スト
云フコトニ相成ッテ居ル譯デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006311922X00319320830&spkNum=130
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131・青木精一
○靑木委員 只今議題トナッテ居リマスル
製絲業法案外一件ニ對スル所ノ質問ハ此程
度ニ於テ御打切ニナランコトヲ希望致シマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006311922X00319320830&spkNum=131
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132・生田和平
○生田委員長 靑木君ノ動議ニ御異議アリ
マセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006311922X00319320830&spkNum=132
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133・生田和平
○生田委員長 御異議ナシト認メマス、仍
テ質問ハ打切ラレマシタ、本日ハ是ニテ
閉會致シマス、次囘ハ公報ヲ以テ御通知申
上ゲマス
午後六時二十二分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006311922X00319320830&spkNum=133
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