1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
不動産融資及損失補償法案(政府提出)
昭和七年法律第六號中改正法律案(昭和七年度一般會計歳出の財源に充つる爲公債發行に關する件)(政府提出)
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會議
昭和七年八月二十八日(日曜日)午後一時二十九分開議
出席委員左の如し
委員長 金光庸夫君
理事 青木雷三郎君 理事 大崎清作君
理事 松尾四郎君
鈴木英雄君 坪山徳彌君
大石倫治君 武田徳三郎君
小笠原三九郎君 井阪豐光君
野田俊作君 勝正憲君
吉川吉郎兵衞君 中島彌團次君
豐田豐吉君 風見章君
出席政府委員左の如し
大藏政務次官 堀切善兵衞君
大藏省銀行局長 大久保偵次君
本日の會議に上りたる議案左の如し
不動産融資及損失補償法案(政府提出)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313026X00219320828&spkNum=0
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001・金光庸夫
○金光委員長 前囘ニ引續キ開會致シマ
ス、不動產融資及損失補償法案ヲ上程致シ
マス、審議ニ入ルニ先チマシテ、一寸御報
告致シテ置キマスガ、昨日小笠原委員ヨリ
委員長ノ手許マデ、政府ニ參考書ノ提出ヲ
要求シテ吳レト云フ御通告ガアリマシタノ
デ、委員長カラ政府委員ノ方ニ要求致シテ
置キマシタ、所ガ大分出揃ヒマシタノデ、
御手許ニ配付シテアル次第デアリマス、尙
ホ二三提出漏レガゴザイマス分ハ、適當ノ
時期ニ政府委員ヨリ其〓略ノ數字等ニ付テ
報告ナサルト云フコトノ御通告ガゴザイマ
シタ、左樣御承知ヲ願ヒマス、政府委員ニ
對シテ質問ヲ許スコトニ致シマス、通告ノ
順ニ依リマシテ武田君ニ先ヅ質問ヲ許シマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313026X00219320828&spkNum=1
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002・武田徳三郎
○武田委員 私ハ本案上程ノ際ニ本會議デ
二三ノ質間ヲ致シマシテ、大藏大臣ニ御
答辯ヲ御願致シタノデアリマスガ、未ダ
私ノ質問ノ趣旨、疑ノ趣旨ヲ十分ニ諒解
スルコトガ出來ナカッタノデアリマス、隨ヒ
マシテ本會議ニ於テ質問ヲシ、尙ホ諒解ヲ
十分得ナイ點ニ付テ改メテ御伺ヲ致シ、同
時ニ更ニ二三ノ疑ノ點ヲ御伺ヲ致シテ御答
辯ヲ願ヒタイト思フノデアリマス、私ハ私
ノ質問ノ趣旨ヲ申上ゲル前ニ、一應此重大
ナル法案ヲ審議スルニ當リマシテ、如何ナ
ル觀點ニ立ッテ審議ヲ進ムベキカト云フコ
トニ付テ、簡單ニ一言申上ゲテ見タイト思
フノデアリマス、申上ゲル迄モナク此法案
卽チ不動產ニ低資ヲ融通スルト云フ計畫
ハ、前議會ノ最終ノ場合ニ、吾々政友會ノ
方ヨリ提案ヲ致シマシタ時局匡救ニ關スル
決議案ノ趣旨ニ御據リニナッタモノト思フ
ノデアリマス、其匡救決議案ナルモノハ、
御承知ノ通リニ内容ハ四箇條ニ分レテ居ッ
タノデアリマシテ、其第一項ニ所謂通貨ノ
圓滿ナル流通ト云フ一項ガ最モ重要ナル事
項トシテ筆頭ニ揭グラレテアッタノデアリ
やく、其所謂通貨ノ圓滿ナル流通ナル第一
項ヲ具體化シタル種々ナル對案ノ中ノ一デ
アルト私ハ信ジテ居ルノデアリマスガ、其
當時此通貨ノ圓滿ナル流通ノ意味ヲ、提案
者タル政友會ヲ代表シテ島田俊雄君ガ說明
シテ居リマス、卽チ通貨ノ圓滿ナル流通ト
云フ意味合ハ、其文字通リノ意味以外ニ二
ツノ意味合ヲ含ンデ居ル、一ツハ通貨ヲ增
發スルコト、卽チ「インフレーション」デアリ
マス、而シテ其增發サレタル通貨ノ流通ヲ
圓滿ニスルト云フ二ツノ意味ヲ含ンデ居ル
ト云フ說明デアッタノデアリマス、尤モ其時
ニ民政黨ノ方デ御賛成ニナリマシタ御趣旨
ノ中ニハ、少シク異ッタ意味ヲ述ベラレテ贊
成サレタノデアリマスケレドモ、兎モ角提
案者タル政友會ノ說明ヲ基ト致シマシテ、
多クノ異論ナク、異論ナイノミナラズ、全會
一致デ是ガ通過ヲ致シマシタ、其通過ヲ致
シマシタ時ニ總理大臣ガ此決議案ニ對シテ
全ク同感デアルカラ、此決議案ノ趣旨ヲ出
來得ルダケ速ニ具體化シ、成案ヲ得タ上ニ
於テ成ベク早キ機會ニ於テ臨時議會ヲ開カ
ウト、斯ウ云フコトヲ其席上ニ於テ御辯明
ニナッタノデアリマス、隨テ私ノ考ヘル所デ
ハ、此決議ノ趣旨、卽チ「インフレーション」
ヲ惹起スト云フ意味ト、而シテ其增發サレ
タル通貨ノ流通ヲ圓滿ニセシムルト云フ二
ツノ觀點カラ、總テノ金融ニ關係スル所ノ
法案ニ取ッテハ考慮ヲ致シ〓究ヲ致スト云
フコトガ至當ノ任務デアルト、斯樣ニ考ヘ
テ居ルノデアリマス、惟フニ政府當局モ既
ニ總理大臣ノ御言明ニナッタコトデアリマ
スカラ、別ニ御異論ノアルベキ筈モナカラ
ウト存ズルノデアリマスカラ、私ノ質問モ
無論其二ツノ觀點ヲ基調ト致シマシテ、自
分ノ疑ヲ質スト云フ意味デアリマスカラ、
是モ豫メ御承知ヲ願ヒタイト思フノデアリ
や、、私ハ本會議ニ於キマシテ第一ニ斯樣
ナルコトヲ御伺ヲ致シタノデアリマス、本
案ノ目的ガ銀行ノ救濟ニアルカ、銀行ニ不
動產ヲ擔保ニ提供ヲシテ、借入ヲシテ居ル
債務者個人ヲ救濟スルノ意味デアルカト云
フ意味ノ御伺ヲ致シマシタノニ對シマシ
テ、大藏大臣ハ全然私ト同ジ御意見デアル
ヤウニ御答辯ニ相成ッタノデアリマス、但シ
銀行ヲ救濟スルコトハ軈テ其債務者個人ニ
結果ガ及ブノデアッテ、個人ヲモ救濟スル結
果ニ相成ルカラ、其目的ハ私ノ考ヘルノト
同一デアルケレドモ、銀行ヲ救フト云フコ
トデ結局同一ノ目的ガ達セラレル、斯樣ニ
御說明ニ相成ッタノデアリマス、私ハ此大臣
ノ御答辯ノ意味ヲ如何樣ニ解釋シテ宜シイ
カ、實ハ詳細ノ事ハ委員會デ御伺シタイ積
リデ其儘ニ質問ヲ打切ッテ居ッタノデアリマ
スガ、此大臣ノ御答辯ヲ考ヘテ見マスノニ、
二ツノ意味ニ解釋サレルカト私ハ考ヘルノ
デアリマス、第一ハ銀行ヲ救濟スル、卽チ
債務者ガ銀行ニ提供シテ居ル擔保ヲ更ニ融
資銀行ニ提供スル場合ニ於テハ、債務者ノ
同意ヲ得ルコトニナッテ居ル、此法律關係ハ
私ハ法律ノ事ハ能ク存ジマセヌガ、サウ云
フ順序ニナルサウデアリマスカラ、隨テ債
務者ノ同意ヲ得ル場合ニハ、債務者ハ利率
ニ於テモ從來ノ利率ヲ變更シテ、融資銀行
カラ銀行ニ融通ヲサレル所ノ利率、卽チ六
分二厘ニシテ貰ヒタイト云フコトヲ主張ス
ルデアリマセウシ、又返濟ノ期間ニ於テモ
十五年ト云フコトニナッテ居リマスレバ、同
樣ナ期間ニシテ貰ヒタイト云フコトヲ要求
スルノデアリマセウシ、其要求ニ應ゼラレ
ナケレバ、再擔保ニスルコトヲ債權者ハ承
知致サナイト云フコトニナルノデアリマス
カラ、軈テハ同一ノ效果ヲ其債務者ニ及ボ
スデアラウ、斯樣ナ意味ニ一ツハ取ラレル
ノデアリマス、今一ツハ此普通銀行ニ融資
銀行カラ融通ヲ付ケマスレバ、普通銀行ノ
融通力ガ增加シテ、隨テ一般ノ人々ニ貸出
ス能力ガ殖エテ來ルカラ、隨テ一般ノ人ニ
モ金融ガ滑カニナル結果ヲ見ルダラウ、斯
ウ云フ意味ニモ取レルノデアリマス、併ナ
ガラ私ノ考ヘマスノニハ、第一ノ意味ニ致
シマシテモ、銀行自身ト致シマシテハ六分
二厘ニ融資銀行カラ借リマシテ、債務者ニ
モ同一ノ利率デ貸セルト云フコトニナリマ
スレバ、從來デモ此不況ノ爲ニ債務者自身
ノ收得ガ頗ル減少シテ居ル爲ニ、銀行ニ對
シテ返濟モ出來ナケレバ、利子モ滯ッテ居ル
ト云フ狀態デアルノデアリマスカラ、將來
ニ亙ッテモ利子ノ滯リ勝チデアルト云フコ
トハ想像スルニ難クナイノデアリマス、而
シテ一方融資銀行ニ對シテハ、是ハ何ト云ッ
テ自分ノ責任ヲ以テ融資ヲ受ケタ以上ハ、
此利子ト云フモノハ几帳面ニ取ラレルト云
フコトハ已ム得ナイコトデアラウト思フノ
デアリマス、左樣ニ致シマスルト云フト、
銀行ハ成ベク自分ノ責任ニ於テ融資ヲ受ケ
ルコトヲ好マナイト云フ傾向ヲ現ハシテ來
ルヤウナコトニナリハスマイカ、隨テ手許
ノ相當緩カナ銀行ハ成ベク融資ヲ受ケナイ
ト云フ傾ニナル虞ハアルマイカト考ヘルノ
デアリマス、若シ左樣ニ致シマスト云フト、
低利資金ノ融通ヲ受ケヤウトスル銀行ハ、
極メテ貧弱ナ、サウシテ資力ノ不足ナ、手
許ノ頗ル困難ヲシテ居ル、或ハ間違フト預
金ノ取付ニデモ遭ハントスルヤウナ、非常
ナ貧弱ノ銀行ノミガ此融資ヲ受ケルコトニ
相成ッテ、手許ノ緩カナ相當有力ノ銀行ガ一
向此融資ヲ希望シナイ結果ニ陷リハスマイ
カ、左樣ニ致シマスルト云フト、同ジク不
動產ヲ擔保トシテ居ル債務者ヲ救濟スルノ
ガ目的デアルト言ヒナガラ、其債務者ヲ救
濟スル上ニ於テ甚シク不公平ヲ招クコトニ
ナリハスマイカト云フコトヲ私ハ虞レルノ
デアリマス
第二ノ意味ニ於テ、銀行ノ手許ヲ緩カニ
シ、地方ノ金融ヲ滑カニスルノ效果ト云ヒ
マシテモ、是ハ一應認メルコトガ出來マス、
併ナガラ今申シマシタヤウニ、貧弱ナ銀行
ガ此融資ヲ受ケルコトガ少ナイト云フ傾ガ
アルト致シマスレバ、此貧弱ナル銀行ナル
モノハ大部分他カラ多大ノ借入金ヲシテ居
ルノデアリマスカラシテ、先ヅ以テ其借入
金ノ返濟、卽チ親銀行カラ借リテ居ル金ノ
返濟ニ其受ケタル所ノ低利資金ヲ充當スル
コトハ、是ハ已ムヲ得ナイコトデアラウト
思フノデアリマス、勿論其一部分ハ預金ノ
拂戾ニモ應ズルモノデアリマセウガ、先ヅ
親銀行ノ方ニ借入金ヲ濟スト云フ傾ニナル
ノモ、是亦免レナイコトデアラウト思ノノ
デアリマス、左樣ニ致シマスト云フト、其
親銀行ノ大部分ハ東京其他ノ中央ノ大銀行
デアリマスカラ、其方ニ資金ガ還元シテシ
マッテ、所謂資金ト云フモノハ唯通ッテ行ク
ト云フダケデ、空廻リヲシテ、卽チ金ノ流
通ト云フコトハ名ノミデアッテ、其實ガ擧ラ
ナイト云フ結果ニナルノデハナイカ、斯樣
ニ私ハ思フノデアリマス、尙又本會議ニ於
ケル杉山君ノ質問ニ對スル大藏大臣ノ御答
辯ノ中ニ、斯ウ云フ融資ヲ要求スル銀行ト
云フ中ニハ休業銀行モ含ムカドウカト云フ
質問ニ對シテ、大藏大臣ノ御答辯ハ、休業銀
行ノ中デモ將來營業ヲ繼續シ得ル見込ノア
ル銀行ダケハ融資スルガ、サウデナイ休業
銀行ニハ融資ヲシナイ、斯ウ云フコトデア
ッタノデアリマス、サウシマスト云フト、休
業銀行ニ對シテ債務ヲ有ッテ居ル者ハ、全然
此融資ヲ受ケルノ機會ト特權トヲ失ッテシ
マフト云フヤウナ結果ニナリハスマイカ、
斯樣ナ意味合カラ申シマシテモ、此第一條
ニ於テ低資ノ要求ヲ「銀行ヨリ」ト云フ、銀
行ダケニ限ッテアルコトハ、銀行デナケレバ
出來ナイト云フコトニ銀行ヲ主トシテ居
ル、此第一條ノ規定ト云フモノハ、ドウモ
本案ノ目的ニ叶ハヌヤウニ私ハ疑ヲ尙ホ挾
ンデ居ルノデアリマスガ、此點ニ對シテ私
ノ疑ノ解ケルヤウニ、今一應ノ御說明ヲ煩
シテ、其上ニ次ノ質問ニ移リタイト思ヒマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313026X00219320828&spkNum=2
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003・堀切善兵衞
○堀切政府委員 只今ノ御質問ニ一應私カ
ラ御答申上ゲマス、此前ノ議會ノ政友會ノ
提案ニ對スル島田君ノ御說明ニ付テ只今御
述ニナリマシタ、非常ニ政府モ諒解致シテ
居ルノデアリマス、卽チ通貨ヲ商工業等ノ
產業ノ取引ノ爲ニ必要ナダケ增發ヲ致シ、
尙ホ其出シタ資金ハ出來得ル限リ圓滿ニ流
通致スヤウニ、斯樣ニ希望シテ居ルノデア
リマス、其流通ノ圓滿ガ缺ケテ居ッテ、是ガ
爲ニ經濟界ノ不況ノ一大原因ヲ爲シテ居ル
ノデアリマスカラ、之ヲ取除ク爲ニ種々ノ
方法ヲ政府ニ於テモ攻究致シ、又種々ノ案
ヲ提案致シタノデアリマスルガ、其中ノ一
ツトシテ此處ニ上ッテ居リマス不動產融資
及損失補償法モ提出サレタ次第デアリマシ
テ、是ハ武田君ノ御意見ノ通リデアリマス、
然ルニ此通リノヤリ方デハ果シテ流通ノ圓
滿ヲ期スル事ガ出來ルカドウカ、之ニ付キ
マシテハソレゾレ是ハ意見ノ相違モ多少ハ
アルダラウト思ヒマスルケレドモ、私共ハ
大體流通ノ圓滿ヲ期スル爲ニハ大變ニ是ハ
役ニ立ツ、斯樣ニ思ッテ居ルノデアリマス、
旣ニ本議場デモ質問應答ニ依テ明ニナリマ
シタ通リ、固定シテ居ル銀行ノ不動產ニ對
スル貸付ハ約十四五億アルノデアルガ、併
ナガラ其全部ガ全部皆固定シテ何トモ致方
ガナイト云フ狀況デモ是ハアルマイト考へ
ルノデアリマス、ソレデ具體的ノ例ヲ御擧
ゲニナリマシテ、斯ウ云フ場合ハ如何、斯
ウ云フ場合ハ如何ト云フ御說デアリマシタ
ガ、一寸私ソレヲ一々今能ク記憶致サナ
イノデ、甚ダ失禮デアリマスガ、モウ一度
チョイ〓〓ト簡單デ宜シウゴザイマスカラ、
此點ハドウ、此點ハドウト御話ヲ願ヒタイ
ト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313026X00219320828&spkNum=3
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004・武田徳三郎
○武田委員 私ハ實例ヲ擧ゲテ申シタノデ
ハナイノデアリマシテ、本會議ノ際ニ此融
資ノ目的トスル所ハ銀行ノ救濟ニアルカ、
債務者個人ノ救濟ニアルカト云フ意味ノ質
問ヲ大藏大臣ニ申上ゲタ場合ニ、大藏大臣
ハ私ト同樣ナ意見ヲ持ッテ居ルト云フ意味
ノ御答辯ガアッタノデアリマス、御迷惑デア
リマセウガ一寸申上ゲマス、斯ウ云フ御答
辯ガアッタノデアリマス、私ノ今申上ゲタヤ
ウナ質問ニ對シテ「成程手續トシテハ直接
銀行ノ固定シテ居ルモノヲ流動サセルト云
フノデスカラシテ、手續トシテハ第一ニ銀
行ニ掛ルノデアリマス、併シ其結果ハ皆個
人ニ行クノデアリマスカラ、ヤハリ單ニ銀
行其モノヲ救濟スルト云フノガ目的ニアラ
ズシテ、重點ヲ置イテ居ルコトハ、銀行ヨ
リ不動產ヲ抵當ニシテ借リテ居ル個人ノ重
荷ヲ輕クスルトカ、或ハ其融通ノ力ヲ付
ケルト云フコトニ結果ハナルノデアリマス
カラ、御考ト結果ニ於テハ變ラナイヤウニ
ナルト思フノデアリマスL斯樣ノ御答辯デ
アリマシテ、卽チ債務者個人ヲ救濟シ、其
融通力ヲ付ケルト云フ事ガ結局ノ目的デア
ル、斯樣ノ御答辯デアッテ、私ノ考ト歸スル
所ハ同一デアリマス、唯此御答辯ニ對シテ
私ハ其意味ニ於テ斯樣ナ風ニ解釋スルノデ
アラウカト云フコトヲ先程申上ゲタノデア
リマシテ、實例ヲ申上ゲタノデハナイノデ
アリマスガ、尙ホ私ノ質問ノ趣旨ヲ明ニス
ル爲ニ端的ニ申上ゲマスルナラバ、斯樣ナ
債務者個人ヲ救濟スルコトガ目的デアルト
云フコトデアリマスナラバ、茲ニ第一條ニ
於テ「日本勸業銀行、農工銀行又ハ北海道拓
殖銀行ハ銀行ヨリ左ノ方法ニ依ル不動產資
金融通ノ請求アリタル」)云々ト云フ所ニ、銀
行竝ニ其銀行ニ不動產ヲ擔保トシテ借入レ
タル債務者ヨリト云フ意味ヲ此處ヘ附加ヘ
ル方ガ此御趣旨ニ副フヤウニ思フガ如何デ
アリマセウ、斯ウ伺ッタ方ガ端的デ明白デア
ラウカトモ思フノデアリマス、尙ホ私ハ此意
味ヲ明ニスル爲ニモウ一言併セテ御說明ヲ
煩シタイト思ヒマスルガ、此法案ヲ論ズル場
合ニ於テ多ク不動產資金化ト云フ言葉ガ頻
ニ使ハレテ居ル、私ハ是ハ言ヒ過ギカ知レマ
セヌガ、是ハ非常ニ間違ッタ御考デハアルマ
イカ、成程不動產ノ資金化ハ是ハ一ツノ手
段ニハ相成ルデアリマセウケレドモ、不動
產資金化ノ本流デハナイト思フノデアリマ
ス、不動產ノ資金化ハ旣ニ抵當證券法ニ依
テ完全ニ其途ガ立ッテアルノデアリマス、唯
ソレニ向ッテ多少變更ヲ加ヘレパ私ハ完全
ナモノニナルト思フノデアリマス、卽チ今
日主ニ不動產抵當證劵法ノ施行區域ヲ市街
地ト指定シテアルモノヲ、之ヲ全國ノ指定
地ニスレバ、是コソ洵ニ不動產ノ資金化ノ
是ハ本流デアルノデアリマス、故ニ不動產
資金化ガ本案ノ目的デアリマスルナラバ、
私ハ寧ロ無用ノ長物ト云フ言葉ハ言ヒ過ギ
デアリマセウケレドモ、此不動產抵當證劵
法ト云フモノガ若シ多少ノ缺點ガアリマス
ルナラバ、今申上ゲタヤウナ指定地ヲ擴ゲ
ルトカ、其他登記ノ方面ニ於テ便宜ニナル
ヤウニ修正ヲ加ヘルトカ云フコトデ、完全
ニ不動產ノ資金化ハ行ハレルモノデハアル
マイカ、斯樣ニ考ヘルノデアル、隨テ本案
ハ要スルニ大藏大臣ノ御答辯ノアリマシタ
ル通リ、私ノ又希望致シマシタル如クニ、
銀行ノ救濟、若クハ不動產ノ資金化ト云フ
コトハ勿論此意味ガナイデハアリマセヌ
ガ、今日銀行カラ不動產ヲ擔保トシテ借入
ヲ致シテ居ルモノハ多ク農家ガ多イノデア
リマスルガ、農家ハ近來ノ深刻ナル不況ノ
爲ニ所得ガ非常ニ減ッテ居ルノデアル、サウ
シテ利子ヲ拂ウコトガ出來ナイ、無論元金
モ返濟スルコトガ出來ナイト云ッテ苦シン
デ居ルノデアリマス、一方銀行ハ資金不足
ノ爲ニ此擔保ナルモノヲ先ヅ處分シヨウト
云ッテ債務者ヲ非常ニ責メテ居ルト云フ狀
態デアル、而シテ此擔保物ヲ處分スルト云
フコトニナリマスレバ、是ハ到ル所皆樣ノ
御承知ノ通リ、實際ノ時價ヨリモ尙ホ競賣
スル場合ニ於テハ非常ナ安イコトニ相成ッ
テ居ルノデアリマシテ、實ニ二束三文ト云
フ捨賣リニシテモ尙ホ所ニ依テハ不動產ヲ
處分スルコトガ出來ナイト云フヤウナコト
デ、非常ナ窮乏ニ陷ッテ居ルノデアル、而モ
不動產ヲ擔保トシテ普通銀行ヨリ融通ヲ受
ケテ居ル人達ト云フモノハ、地方ニ於ケル
所謂中產階級デアルノデアリマス、卽チ此
中產階級ト云フモノハ事實ニ於テ國家ノ根
幹ヲ成シテ居ルノデアリマスガ、中產階級
ヲシテ力ヲ養ハシメ、又相當ノ更生ヲセシ
ムルト云フコトハ、實ニ社會組織ヲ健全ニ
スル所以デアリ、又我國ノ生命ヲ非常ニ力
强クセシムル重大ナル是ハ楔子ニナルモノ
ト思フノデアリマス、斯樣ナ意味合ニ於テ本
案ハ計畫サレ發案サレタモノト私ハ信ジテ
居ルモノデアル、其意味合ニ於テ私ガ申上
ゲタヤウナ意味ヲ政府當局ニ於テモ御承認
下サルト云フコトデアリマスナラバ、今申
シタヤウナ條項ヲ第一條ニ加ヘラレテ、銀
行カラ融通ヲ請求サレルコトモ出來ル、債
務者個人カラモ請求スルコトガ出來ル、双
方共同ジ立場ニ於テ銀行ニモ債務者個人ニ
モ融通ノ途ヲ與ヘルコトガ出來ル、斯ウ云
フヤウニシタラ始メテ完璧デハアルマイ
カ、尙ホ何方ニ重キヲ置クカト云フナラバ、
銀行ヨリハ債務者個人ニ重キヲ置クト云フ
方針デ、立法ノ趣旨モ茲ニ在ルト云フコト
ヲ明ニシテ置クト云フコトガ、此場合最モ
必要デナカラウカト云フ意味カラ、私ノ質
問ヲ致シタノデアリマスルカラ、其趣旨ヲ
御諒承ノ上御答辯ヲ御願致シタイト思ヒマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313026X00219320828&spkNum=4
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005・堀切善兵衞
○堀切政府委員 今日不動產ヲ擔保ニ入レ
テ金融ヲシテ居ルモノハ主トシテ中產階級
ニ屬スル、是ガ國家ノ根幹ヲ成ス云々ノ點
ニ付キマシテハ、私共ハ全ク御同感デアル
ノデアリマス、併ナガラ此不動產資金ノ融
資損失補償法ハ、普通銀行ガ不動產ヲ擔保
トシ抵當トシテ融通ヲ致シマシテ、ソレガ
囘收ガ付カナイデ、是ガ爲ニ他ニ資金需要
ノ要求ガアッテモ之ニ應ズルコトガ出來ナ
イ或ハ一面ニ於テ預金者ヨリ預金ノ引出
ニ遇ッテ、容易ニ其要求ニ應ズルコトガ出來
ナイガ爲ニ、隨テ其銀行ハ店ヲ閉ヂナケレ
バナラヌト云フヤウナ風ニナッテ、益〓金融
界ノ圓滿ヲ缺クヤウニナッタカラ、此融通ヲ
付ケテヤルト云フニハ、ドウシテモ是ハ其
銀行ガ貸シテ居タモノデ、今取レナクテ困
ッテ居ル、ソレニ融通ヲ付ケテヤルト云フノ
ガ此本旨デハナカラウカト思フノデアリマ
ス、隨テ此一條ニアル通リ、銀行ヨリ要求
アッタ場合ニハ斯ウ々々致スト云フコトニ
致シテ置キマスガ、是ハ大藏大臣モ御說明
ニナッタ通リ、個人ノ債務者ガ銀行ニ話ヲシ
テ肩代リヲ要求スル場合ニハ、其銀行ガ之
ヲ引受ケテ宜シイ、サウシテ更ニ融資銀行
ニ請求シタ場合ニハ、融資銀行ハ融通スル
コトニナルノデアリマスカラ、結局ハ武田
君ノ御說ノ通リ、或ハ大藏大臣ノ說明ノ如
ク、ヤハリ個人ニモ是ガ及ブモノト考ヘル
ノデアリマス、況ヤ利子ガソレガ爲ニ安ク
ナルト云フヤウナ場合ニハ左樣デアリマ
ス、ノミナラズ一般ニ是ガ爲ニ金融ノ圓滿
ヲ期スルノガ目的デアリマスカラ、單ニ其
銀行ニ對スル債務者バカリデナク、不動產
ニ融通シテ困ッテ居ル銀行ニ融通ノ途ガ開
ケテ參レパ、其融通セラレタ金額ヲ以テ其
銀行ハ更ニ預金者ニ支拂フトカ、或ハ今迄
債權債務ノ關係ガナカッタ第三者ニモ更ニ
融通シ得ル力ヲ此處デ生ジテ參リマスカ
ラ、單ニ債務者ト限ラズ、一般的ニモ私共
ハ資金圓滿ノ融通ヲ期スルト云フ目的ニ適
フコトヽ考ヘル次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313026X00219320828&spkNum=5
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006・武田徳三郎
○武田委員 同一ナ質問ヲシテ甚ダ恐縮デ
アリマスガ、是ハ本案ノ目的ニ關スル重大
ナ事ノヤウニ思ヒマスカラ、モウ少シ御尋
ヲ致シタイト思ヒマス、今ノ政務次官ノ御
話ハ一應御尤デアリマス、ソレハ左樣ナ事
ヲ債務者カラ銀行ニ賴ンデ、銀行カラ請求
シテ貰フト云フコトハ勿論出來マセウ、然
ラバ債務者ノ方カラ要求スルコトヲ許シテ
置イテモ差支ナイデハナイカ、銀行ハ此融
資ヲ要求スル時ニ其擔保ヲ請求スルト云フ
爲ニハ、勿論債務者ノ同意ヲ得ナケレバナ
ラヌコトハ當然デアリマスケレドモ、此要
求スルコトヲ銀行ニノミ許スト云フコト
ハ、銀行ノ救濟ヲ主ナル目的トスルカノヤ
ウニ第一條ニ思ハレルノデアリマス、銀行
ガ好マナケレバ債務者ガ賴ンデモ要求シナ
ィ、要求スル權利ト言ヒマスカ、其手續ノ
上ニ於テハ「銀行ヨリ」トアリ、債務者ノ方
ヨリハ要求スルコトガ出來ナイコトニナッ
テ居リマス、所ガ銀行ニ內々賴込ンデ御情
デ要求シテ貰フコトハ出來マセウケレド
モ、法文ノ上ニ於テハ債務者ガ自分ノ銀行
ニ提供シテ居ル擔保ヲ融資銀行ニ肩代リシ
テ貰フト云フコトヲ要求スル權利ヲ與イテ
居ナイ、今政務次官ノ仰シヤル通リデアル
ナラバ、私ガ今申シタヤウニ「銀行ヨリ」ト
アルノヲ「銀行竝其不動產ヲ提供シテ擔保
トシテ居ル債務者ヨリ」ト、兩方同一ノ立
場ニ置クヤウナ法文ニシタラバ明瞭ニナル
ト思イマス、之ヲ銀行ダケニ限ッタノハドウ
云フ譯デアルカ、私ハ先程申シタヤウニ不
動產ノ資金化ト云フコトデアルナラバ、不
動產抵當ノ證券法ガドウシテモ本流デア
ル、ドウシテモ此法案ニ於テハ非常匡救ト
云フ意味ニ於テ、中產階級ノ不動產ヲ擔保
トシテ居ル人々ハ、今日實際上ノ問題トシ
テ非常ナ窮況ニ陷ッテ居ル、銀行カラハ責メ
ラレルシ、擔保物ヲ處分スレバ殆ド二束三
文ニナルト云フ、此狀態ヲ此儘ニシテ置イ
テハイカヌカラ、ソレヲ救濟スルト云フ强
イ意味ヲ茲ニ含ンデ居ルモノデハアルマイ
カト考ヘテ居リマス、ノミナラズ大藏政務
次官ノ仰シヤル如ク、又私ノ考ヘルガ如キ
方法ニ致シマシテモ、結局今政務次官ノ御
說明ニナッタヤウナ結果ニナルト思ヒマス、
卽チ此法案ニ規定シタヤウニ各個人ガ融資
銀行ニ肩代リシテ貰ッタ時ニハ其金ヲ勝手
ニ使フコトハ出來ナイノデアリマス、勿論
其債權銀行ニ必ズ全額ヲ返濟シナケレバナ
ラナイノデアリマスカラ、債權銀行自身ガ
直接融資銀行ヨリ融資ヲ受ケタト結果ニ於
テ少シモ變ラヌノデアリマス、唯〓普遍的ニ
融資ガ屆クト云フ便利ハアリマス、而シテ
一面ニ於テハ普通銀行ト、普通銀行カラ借
入レテ居ル債務者ガ同ジ立場ニ立ッテ居ル
ト云フコトヽ比較的多ク此低資ガ各方面
ニ行渡ルト云フ二ツノ便利ガアルト云フ利
得ハ、寧口私ノ申スヤウニスレバ其利便ガ
アルト私ハ考ヘマス、然ラバ若シ私ノ申上
ゲルコトガ相當デアルト云フコトニデアリ
マスナラバ、第一條ヲ今申シタヤウニスル
コトガ適當デハナイカ、斯樣ニ考ヘテ居リ
マス、今一應政府ノ御所見ヲ伺ヒタイト思
ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313026X00219320828&spkNum=6
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007・大久保偵次
○大久保政府委員 只今ノ御尋ハ銀行ト其
銀行ノ債務者ト云フ風ナ兩方ニ請求權ヲ與
ヘタラドウダト云フ御趣旨ノヤウニ私承リ
マシタガ、御話ノ通リニ銀行ガ融資銀行ノ
方ヘ請求ヲ致ス場合ニ於キマシテモ、此不
動產ガ自分ノ銀行ノ所有ノモノデアルナラ
バ、何人ニモ相談スル必要ハゴザイマセヌ
ガ、假ニ債權質、詰リ個人タル債務者ノ有ッ
テ居ル其不動產質デ行ク場合ニハ、ヤハリ
其不動產ヲ提供シタ債務者ノ承諾ヲ得ル
カ、若クハ民法ノ規定ニ依テノ通知ヲ致シ
マスカ、何レニシテモ債務者ノ或ル程度ノ
了解ガナケレバ實行出來マセヌノデ、其意
味カラ申スト、ヤハリ債務者ト交渉ガアリ
マスノデ、今肩代リノ場合ニ付テ仰セデア
リマシタガ、肩代リノ場合ニ於テハ銀行ガ
直接債務者ノ不動產ヲ融資銀行ニ取ッテ貰ッ
テ、其得タル金ヲ銀行ヘ戾シテ貰フト云フ
場合ハ、銀行カラ主トシテ請求スル場合ニ
ナリマセウシ、又債務者カラ先ニ氣ガ付キ、
先程政務次官カラ御話ノヤウニ、自分等モ
此恩典ニ浴シタイト云フ意味カラ融資ノ請
求ヲ銀行ニ相談スレバ、又其銀行モ自分モ
資金ヲ返シテ貰フ譯デスカラ、利得ニ於テ
ヤハリ之ニ應ジテ融資銀行ニ請求スルト云
フ建前ニナルダラウト思ヒマス、何レニ致
シテモ此法案ノ目的トシテ居ル所ハ、今日
普通銀行等ニ於テ固定シテ居ル不動產ノ解
放ト云フ方法ニ依テ地方ノ金融疏通ヲ圖ラ
ウ、其請求ヲスル人間ヲ銀行ニヤラセタナ
ラバ宜イカ、或ハ只今武田サンノ仰セノヤ
ウニ債務者タル、個人ニ與ヘタラ宜イカト
云フ手續上ノ問題ニナルダラウト思ヒマ
ス、銀行カラヤルニシテモ債務者ニ或程度
ノ了解ヲ得ナケレバナラヌ立場ニナリマセ
ウシ、ソレカラ請求者ニシテモ銀行ノ諒解
ヲ得ナケレバナラヌ、其擔保ニ入レテ居ル
物ノ解放ノ問題デスカラ、肩代リノ問題デ
スカラ、何レニシテモ其兩者ノ間ニハ水魚
ノ關係ガアリマスカラ、立法ノ建前カラ見
マシテ、大體ニ於キマシテ此不動產ヲ解放
スルト云フ立場カラ立法致シマスル場合ニ
ハ、手續上其銀行ヲ主體ニシテ考ヘテ行ク
方ガヤリ易クモアリマセウシ、殊ニ今度ハ
國家自身ノ補償ト云フ問題モ包含サレテ居
リマスカラシテ、各個人ノ要求スルモノヲ
一々許スト云フコトニナリマスト云フト、
何ガ故ニ他ノ方法ニナッテ居ルモノ、普通銀
行ノ擔保ニナッテ居ラナイモノ、各人ガ直接
勸業銀行ニ持ッテ行クノモアリマセウシ、農
工銀行ニ持ッテ行クノモアリマセウ、其他個
人ナリ會社ナリニ抵當ニシテ居ルモノモア
リマセウ、ソコマデ考ヘテ來レバ幾多ノ方法
モ考ヘラレマセウケレドモ、差當リ此法案
ノ目的トシテ居リマスル所ノ普通銀行、貯
蓄銀行等ニ於キマシテ固定シテ居リマス資
金ヲ通ジテ、其方ニ於キマシテ金融疏通ノ
途ヲ開カウト云フ、先程政務次官カラモ御
話ニナリマシタ金融疏通ノ一方法ニ此不動
產金融ヲ付ケテヤッテ行カウト云フ途ヲ選
ビマシタ譯デスカラ、其點ハ手續ノ上カラ
見テドウシテモ此方法ヲ採ル方ガ順當デア
ルト云フノデ、斯ウ云フヤウナ工合ニ吾々
立案致シマシタ譯デス、尙ホ抵當證券法ヲ
擴ゲレバ宜イヂヤナイカト云フ御趣旨モア
リマシテ、ソレモ一ツノ理窟デアルト思フ
ノデゴザイマスガ、唯此抵當證劵法ハ御承
知ノ通リ中々實際問題トシテ、又法規モ色
色厄介デゴザイマスカラ、一般的ニ普及シ
テ居リマセヌ、此制度ニ慣熟シテ居ラヌノ
ガ可ナリ多イノデアリマス、尙亦隨テ手數
モ相當煩雜デアリマスシ、又之ヲ施行シテ
行キマス上カラ見テモ色々費用其他ノ點モ
ゴザイマスノデ、只今御承知ノ通リ全國ノ
中ニ一部分シカ行ハレテ居リマセヌ、都會
ガ主ニナッテ居リマシテ、全國ニ行レテ居ラ
ナイノデ、之ヲ行フニハ相當ノ手續順序等
モアリマス、法制自身ガ可ナリ複雜シテ居
リマシテ、一般ノ慣熟ヲ近イ間ニ期待スル
ト云フコトモ困難デスカラ、色々ノ方法ヲ
考ヘマシタ擧句、此方法ガ先ヅ手取早ク行
クデアラウト云フ意味カラ立案致シタ譯デ
アリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313026X00219320828&spkNum=7
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008・武田徳三郎
○武田委員 銀行局長ノ御答辯ハ私ノ申シ
タコトニ多少誤解ガアリハシナイカト思フ
ノデスガ、私ハ何モ債務者ガ普通銀行カラ
其所有セル不動產ヲ擔保トシテ借入レテ居
ル以外ノ、例ヘバ興業銀行カラ借入レテ居
ルトカ、勸業銀行カラ借入レテ居ルトカ云
フモノヲ肩代リスルコトヲ勝手ニ要求セシ
メルト云フ意味ヂヤ毛頭ナイノデス、唯銀
行ガ要求スルト同ジ立場ニ個人ヲ置イタラ
ドウカ、斯ウ云フ意味デ申上ゲタノデアリ
マス、勿論範圍ハ普通銀行カラ不動產ヲ擔
保トシテ借入レテ居ル、其不動產ニ餘力ヲ
與ヘルト云フ意味ニ於テ何等變ル所ハナイ
ノデアリマス、唯個人ニモ要求權ヲ與ヘテ
置クト云フコトハ先程モ申ス通リ、此融資
ノ目的ヲ普遍的ニ行フ上ニ於テ非常ニ便利
デアル、ソレカラ若シ普通銀行ニ提供シテ
居ル擔保ガ其債務額ト稍〓匹敵シタ場合ニ
於テハ、議論ハ餘リ多クハナイデセウガ、
若シ其擔保額ガ少イト云フ場合ニハ、債權
銀行ハソレヲ若シ個人ニ肩代リヲセシメル
ト云フト、其不足ダケ無擔保デ自分ガ脊負
ハナケレバナラヌ、ダカラマア其儘ニシテ
置ケト云フ傾ガアリ易イト私ハ思フノデア
リマス、普通銀行ニ致シマスレバ今度ノ政
府ノ種々ナル御提案、其他財界ノ將來ヲ考
ヘマシテ、將來ハ不動產ノ値上リガアルダ
ラウト云フ見透シヲスルノハ當然デアリマ
ス、故ニ其擔保ヲシテ肩代リヲスルト云フ
コトハ此儘デハアリ勝ダト云フノハ勿論デ
アリマス、隨テ此法案ノ目的、卽チ融資ヲ
普遍的ニ浸潤セシムルト云フ意味合ニ於
テ、ドウシテモ私ノ申上ゲタヤウニシナケ
レバ、其處ニ幾多ノ不便ガアリハシナイカ、
斯ウ云フ懸念カラ寳ハ御伺致シタノデアリ
マス、尙ホソレニ對シテ御答辯ヲ願ヘマス
レバ御說明ヲ願ヒタイト思ヒマスシ、又ソ
レ以上申上ゲルト云フコトハ或ハ意見ノ相
違ニナルカモ知レマセヌカラ、若シ御答辯
下サラヌト云フコトデアレバ、其次ノ質問
ニ移リタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313026X00219320828&spkNum=8
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009・大久保偵次
○大久保政府委員 大體今仰セノヤウナ工
合ニ普通銀行ノ方デ自分ノ方カラ先ニ立ッ
テヤリマス時ニモ、債務者ノ方ニ或ル程度
ノ諒解ヲ得ナケレバナリマセヌ、債務者ノ
方ガ假令ソレヲ希望致シマシテモ、債權者
ノ諒解ナシニハヤハリ是ハ實行出來ナイ問
題ダラウト思フノデアリマス、ソレデ請求
權ヲ債務者ニ與ヘテ置テモ、ヤハリ銀行ノ
承諾ヲ得ナケレバ是ハ實行ハ出來ナイコト
ニナリマスカラ、其點ハ餘リ大シテ私等ハ
實行上不便ガナイノヂヤナイカト云フ考デ
居リマス、普通銀行ノ方ハ融資銀行ノ方ニ
承諾ヲ與ヘタ爲ニ一番抵當ヲソレニ取ラレ
テ、自分等ハ無擔保ニナリマスカラ欲シナ
イダラウ云フ御話デアリマシタガ、ヤハリ
普通銀行ノ方デハ其不動產ニ付キマシテ二
番トカ、又一番ニ餘リガアレバ共同デ行キ
マセウ、相當ノ其處ニ權利保全ノ途ハ講ジ
マセウト思ヒマスカラ、其點ハ個人ニ權利
ヲ與ヘテモ結局普通銀行ト協調シテヤッテ
行カナケレバナラヌ問題ニナルカラ、其與
ヘル形ニ於テハ餘リ大シタ私等ニハ差ハナ
イノデハナイカ、結局手續ヲドチラニスル
方ガ便利デアルカト云フ間題ニ歸著致シマ
スノデ、普通銀行ト融資銀行トノ聯絡ニ依
テ却テヨリ圓滿ニ運ンデ行クノヂヤナイダ
ラウカ、斯ウ云フヤウニ思ッタノデアリマ
ス、或ハ是以上ハ意見ニナルカモ知レマセヌ
ケレドモ、大體サウ云フヤウナ趣旨デ此法
案ハ此處ニ書イデゴザイマスヤウニ、第
條ノ第一項ノ方ハ直接銀行ガ不動產擔保デ
貸シマス場合、第二ノ方ハ肩代リニ依テ個
人ノ方ニ利益ガ直接ニ及ビマス場合、斯ウ
云フヤウナ工合ニ書イテ居リマスノデ、實
際ノ働キニ於テハ餘リ大シタ差ハアルマイ
ト思ヒマス、唯手續上ノ問題ニ於キマシテ
大體不動產資金化ト云フコトハ、抵當證劵
法ニ於キマシモ此前ノ勸業銀行ノ手ヲ踏ミ
マシテ、普通銀行ノ聯絡ヲ取リマシタ趣旨
ニ見マシテモ、ドウシテモ金融機關ト金融
機關トノ間ノ聯絡ニ依テ此金融ノ疎通ノ途
ヲ圖ッテ行クト云フノガ吾々ハ建前ノヤウ
ニ考ヘルノデアリマス、結果ニ於テハ餘リ
大シタ差ハナイヤウニ思フノデアリマス、
其點ニ於テハ意見ノ相違ト云フコトニ歸著
スルカモ知レマセヌガ、吾々ハ今日マデ考
ヘテ居リマシタ金融機關ヲ通ジテ金融疏通
ノ途ヲ圖リマス上カラハ、ヤハリ此普通銀
行ト融資銀行トノ間ノ聯絡ニ依テ疏通ヲ圖
ルト云フコトガ一番便利ノヤウニ考ヘテ居
ル次第デアリマス、其點ドウゾ御諒承願ヒ
タイト思ッテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313026X00219320828&spkNum=9
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010・武田徳三郎
○武田委員 今ノ點ハモウ是以上ハ意見ノ
相違ニナリマスカラ此點ニ止メマシテ、次
ニ此補償額ノ點ニ付テ伺ヒマス、本會議ニ
於キマシテモ此補償額ノ一億ト云フノハ卽
チ政府ノ御豫定ニナッテ居ル融資總額五億
ニ對シテ二割ニ當ッテ居ルノデアリマス
ガ、ソレハ其目的ヲ達スル上ニ於テ餘リニ
小額デアルマイカト云フ質問ヲ致シタノデ
アリマスガ、所ガ大藏大臣ハ此數字上ノ問
題ハ政務次官ヨリ詳細ニ數字ノ上カラ說明
セシメルト云フ御答辯デアリマシテ、之ヲ
委員會ニ於テ伺ハウト思ッテ居ッタノデアリ
マスカラ、此場合此根據ヲ伺ヒタイト思フ
ノデアリマスガ、私ノ考ヘマス所ニ依リマ
スト、如何樣ナ數字上ノ根據ハアリマスカ、
是ハ承ッタ上デナケレバ何トモ判斷ヲ致シ
兼ネマスケレドモ、今日ノ融資銀行ヲ大體
勸業銀行トシテ取ッテ考へテ見マスト、勸業
銀行ハ御承知ノ通リニ擔保ニ取ルベキ不動
產ノ大體時價ヲ見積リマシテ、サウシテソ
レノ六掛ニシテ、ソレヲ本當ノ勸業銀行ノ
取ル時價ト認メ、更ニソレニ六掛ニシテ貸
付ヲシテ居ルト云フ、所謂六六法ト云フ方
法ヲ採ッテ居ルノデアリマス、是ハ極端ナ例
カモ知レマセヌガ、少クトモ時價ト評定サ
レタモノニ對シテ六掛位シカ貸サヌノデア
リマス、場合ニ依テ七掛ト云フノハ殆ドナ
イカト私ハ思フノデアリマス、是ハ六掛ニ
セヨ七掛ニセヨ、今度ノ融資トハ其間ニ於
テ約三割四割ハ少ク貸付テアルノデアリマ
ス,ソレヲ今度ノ法案ニ依テ時價一杯マデ
貸スト云フコトニナリマスト、從來勸業銀
行ノ貸付ケタ慣例カラ見マスナラバ、三割
乃至四割ノ危險ヲ負擔シテ居ル貸シ方ヲシ
ナケレバナラヌト云フコトニナルノデアリ
マス、サウシマスト二割ノ補償ヲ受ケテモ、
勸業銀行トシテハ從來ノ貸付方ヨリハ尙ホ
一割乃至二割ノ危險ヲ負擔シナケレバナラ
ヌコトニナルノデアリマスカラ、此融資ノ
目的ガ私ハ達シナイト思フノデアリマス、
故ニ少クトモ勸業銀行ガ現在貸シテ居ル程
度位ナ危險ヲ政府ニ於テ補償スルト云フコ
トデナケレバ、本案ノ目的ハ達セラレナイ
モノデアルト私ハ思フ、故ニドウシテモ三
割若クハ四割位ノ補償ヲスルト云フコトハ
是ハ當然ナ事デアル、先程モ本案ノ目的ニ
付テ申上ゲタ時ノヤウニ、私ハ此融資ヲ完
全ニ政府ノ豫定通リニサレルト云フコトハ
中々容易デナイト實ハ見テ居ル、是ハ私一
人ノ考デハアリマセヌ、從來ノ實例ニ徵シ
テモ是ハ當局ノ十分御承知ノ通リデアル、
從來ノ低利資金ト云フモノハ滿足ニ行ッタ
モノハ一ツモアリマセヌ、現ニ此不動產融
資ノ目的デ二億圓ト云フ計畫ヲ御立テニ
ナッテ、其中ノ五千萬圓ヲ取敢ズオヤリニ
ナッタ實例カラ考ヘレバ直ニ分ルコトデア
ル、非常ニ失敗デアル、失敗ト云フコトハ
穩當デナイケレドモ、其目的通リニ行カナ
イ是ハ中々困難ノ事デアルノデアリマス、
ソレハ私共第一ニ「インフレーション」ト云
フ觀點カラ考ヘレバ、ソレ等ノ點ガ重要ナ
點デアリマシテ、若シ是ガ豫定通リニ五
億ト御計畫ニナッタモノガ五億ヲ萬遍ナク
貸付ケテ、其金ガ一般ニ浸潤スルト云フコ
トニナラナケレバ、「インフレーション」ノ目
的ハ到底達スルコトハ出來ナイノデアリマ
ス,シテ見マスルト云フト、是ハドウシテ
モ計畫通リニ適當ニ是ガ實現スルト云フコ
トニ向ッテハ餘程考慮ヲ加ヘテ見ナケレバ
ナラヌ、勿論其實際上ノ手心ニモ依リマス、
併ナガラ其方法ニ取ッテモ豫メ十分ナ考慮
ヲ加ヘテ置カナイト云フト、私ハ是ハ實現
スルコトハ頗ル困難デアラウト思フノデア
リマス、左樣ナ意味合カラ申シマスレバ、
若シ現在勸業銀行ガ時價ヨリハ三割四割ヲ
少ク貸付シテ居ルト云フコトデアリマスナ
ラバ、其三割四割以上ノ危險ヲ政府ニ於テ
補償スルト云フ位ナ大膽ナヤリ方デナケレ
バ、是ハ中々實際ニ於テ融資ヲ實現スル事ハ
困難デハナイカト、斯樣ニ思フノデアリマ
ス、其點ハ何レニシマシテモ二割、一億圓
ト云フノハ極メテ少額デアッテ、斯樣ナル事
デハ私ハ此目的ハ全然達セラレナイト云フ
事ヲ確信スル者デアリマスルノデ、此點ニ
付テ御伺スルノデアリマスガ、若シ適當ナ
數字的根據ガアリマスルナラバ、先ヅ以テ
ソレヲ御示シヲ願ヒタイノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313026X00219320828&spkNum=10
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011・大久保偵次
○大久保政府委員 一億圓ト云フ補償額ハ
總貸高ニ對シテ二割ニ當ル、二割ノ補償デ
ハ實行ガムゾカシイデハナイカト云フ御質
問ノヤウニ承リマシタガ、此補償額ハ見方
ニ依テハ仰セノヤウナ場合モ隨分アルダラ
ウト思ヒマス、併ナガラ今度ノ法律ノ建前
ハ普通銀行ノ貸シテ居ル債權額ヲ其儘ニ融
資銀行ガ融通シテヤルト云フ建前ニハナッ
テ居リマセヌ、此法案ノ第三條ニ於キマシ
テ書イテアリマス通リニ、其鑑定價格ハヤ
ハリ資融銀行ノ鑑定價格ニ依リマシテ、唯
從前ノ通リ、今仰セニナリマシタ通リ、全
體ノ價格ノ中ノ三分ノ二シカ貸サナイ、三
分ノ一ハ貸サナイト云フ風ナ所ヲ、三分ノ
一ヲ引キマセヌデ丸掛デ貸ス、要スルニ價
格相當ノモノハ其價格ダケ貸シテヤル、斯
ウ云フヤウナ建前ニナッテ居リマス、仍テ只
今御話ノ通リ、又本會議ニ於テモ問題ニナ
リマシタヤウニ、從前ノ高イ時代ノ不動產
ノ價格ヲ其儘ニ普通銀行等ガ取ッテ居ルモ
ノト見マシテ、ソレヲ融資銀行ガ其儘ニ應
ズルナラバ、成程大體ニ於テハ御說ノヤウ
ナ事柄ニナルダラウト思ヒマス、併ナガラ
必シモ今日普通銀行ノ取ッテ居リマス所ノ
債權價格ヲ目當ニ鑑定價格ニスルト云フノ
ハ實際問題トシテ如何カト思フノデアリ
マイ、ソレデ不動產ノ方ノ價額ハ御承知ノ
通リ大分變遷ガアリマシテ、今日ノ價格ハ
餘程數字ノ上カラ見マシテモ、マア是ハ大
體推測ニ亙ル譯デスケレドモ、方々專門的
ノ人ガ推測シタ所カラ見マシテモ、相當ノ
價格ニ下ッテ來テ居リマス、其價格ニ基キマ
シテ融資銀行ガ鑑定ヲ致シマス、從前三分
ノ二以内ト云フコトニナッテ居リマシテモ、
大體ニ損失ヲ見ナイデ來テ居リマスガ、今
度ハ此法律ニ依リマシテ丸掛ニ貸シマス譯
デゴザイマス、其範圍內ニ於テハ相當ノ危
險率モ踏マナケレバナラヌ、ソレ等ノ事情
ヲ考ヘマシテ、大體ニ見當ヲ二割ト付ケマ
シタ次第デゴザイマス、此程度ヲ以テ此目
的ヲ達シ得ルト云フヤウニ見マシタ譯デア
リマス、或ハ私ガ誤解致シテ居リマシタラ
尙ホ御尋ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313026X00219320828&spkNum=11
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012・武田徳三郎
○武田委員 銀行局長ハ私ノ質問ノ趣旨ヲ
能ク御諒解下サッテ居ナイヤウニ考ヘルノ
デアリマスガ、私モ勿論融資銀行ハ普通銀
行ガ債務者ニ貸シテ居ル全額ヲ貸スト云フ
コトデナイコトハ、私ハ千萬承知シテ居リ
マス、唯玆ニ肩代リノ場合ニ於キマシテモ、
或ハ銀行ニ融資スル場合ニ於キマシテモ、
其處ニアル所ノ不動產ヲ現在ノ時價ニ見積
リマシテ、ソレヲ一杯ニ貸スト云フ場合
ニ、勸業銀行ガ現ニ貸出ヲシテ居ルヤウニ、
現下ノ時價ニ六掛ナリ七掛デ貸ス場合ノ事
ヲ考ヘテ見マスレバ、其處ニ明ニ勸業銀行
ナリ其他ノ銀行ハ-融資銀行ハ三割乃至
四割ノ危險ヲ負擔シテ居ルト云フ事ハ、是
ハ論議ノ餘地ガナイト思ヒマス、然ラバ
少クトモ現在勸業銀行ガ貸付ケルニ於テ、
現在貸付ケテ居ルヨリハ有利ノ立場ニ立タ
セナイ、現在ト同ジ立場ニ立タセルト致シ
マシテモ、三割ナリ四割ナリノ危險ダケハ
政府ガ負擔シテヤルト云フコトハ、是ハ當
然ノ事デハアリマセヌカ、若シ補償シナイ
ト云フ建前ナラ格別デスガ、補償スルト云
フ建前ナラバ、特別ノ政府ノ意圖ニ依テ斯
樣ナル非常時匡救ノ爲ニ勸業銀行ニ低資ヲ
貸シテヤル、更ニソレヲ一般ノ銀行ニ貸シ、
若クハ債務者ニ貸付ケルト云フコトハ、是
ハ勸業銀行ガ進ンデヤル事柄デハナイノデ
アリマス、政府ノ意圖ニ從ッテヤルノデア
リマスルカラ、自分ガ從來ヤッテ居ル仕來
タリト違ッテ居ル危險ヲ負擔シテ、政府ノ政
策ニ依テ之ヲ行フト云フナラバ、其不利ナ
立場ニ立ツダケノ危險ハ政府ガ補償シテヤ
ルト云フコトハ當然ノコトデハアリマスマ
イカ、斯樣ナ質問ヲ致シタノデアリマス、
現在今申上ゲル通リ二三割乃至四割ノ危險
ヲ、勸業銀行ハ從來ノ自己資金デ貸付ケル
ヨリハヨリ多クノ危險ヲ負擔シテ居ルノデ
アリマス、ソレヲ何故ニ三割四割ノ危險ヲ
負擔シテ居ルノニ、二割ト云フ風ニナスッタ
ノデアルカ、ソレヲ私ハ伺フノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313026X00219320828&spkNum=12
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013・大久保偵次
○大久保政府委員 只今ノ御話カラ見マス
ト云フト、全體ノ普通銀行ノ不動產ニ付キ
マシテ勸業銀行ガ特ニ鑑定價格一杯マデ行
クカラ、其處ニ旣ニ三割ナリノ差ヲ生ズル、
ソレヲ二割ト限ッテハ少イデハナイカト云
フ御說ノヤウニ承リマス、私等ノ方デハ其
點ニ付テハ全額-全債務者ノ全損ニ皆均
一ニ來ルト云フ計畫ヲ立テヽ居リマセヌ、
其處ガ見解ノ異ナル所デハナイカト思ヒマ
ス、ソレデ今日マデ各債務者ニ付テ普通銀
行ナリ、殊ニ特殊銀行ナリガ貸出ヲシテ居
リマス中ニ、斯ウ云フ風ナ不動產ノ貸出ニ
付テ三十年間バカリ行ッテ居リマス實績カ
ラ見マシテ、今日ノ此不況ガ或ハドウ云フ
風ニナルカ、前途ノ見込ハ立チマセヌガ、
兎ニ角此法案ノ目的トシテ居リマスヤウ
二、是ハ十五年モ先ニ續キ得ル制度デゴザ
イマス、其間ニ於キマシテハ、經濟上ニ於
テ相當ノ恢復ヲ豫定スルノモ强チ無理デハ
ナカラウ、各種ノ點ト、ソレカラ今迄ノ實
驗トヲ標準ニ致シマシテ、今日五億ノ金ヲ
貸シマス場合ニ、其モノガ悉クノ債務者カ
ラシテ三割ノ損失ガ起ルモノトハ考ヘテ居
リマセヌ、其點ニ付テハ相當ノ步引ヲ私等
ノ方デハ致シテ居リマス、其點ガ或ハ御見
解ト異ナルヤウニ思ヒマスガ、吾々ノ方ハ
ソレ等ノ種々ノ點ヲ考ヘマシテ、大體ニ於
テ此程度デ宜カラウト云フノデ達觀的ニ二
割ニ致シマシタ、其基ク所ノ取方ハ仰セノ
ヤウナ御趣旨ニ取レバモット是ハ殖エルト
云フコトガ理論的ニナルカモ知レマセヌ
ガ、私等ノ方デハ全損ニナルト云フ見方デ
ハアリマセヌ、大體ニ於テ、債務者ノ關係
ニ於テハ相當ニ此債務ノ履行ヲヤッテ行ク
場合モ少ナカラズアリマス、大體ハソレデ
アリマス、其處ヲ見ル率ガ、或ハ御趣旨ノ點
ト私等ノ點ト異ナッテ居ルヤウニ思ヒマス、
其率ノ點ニ付テハ恐ラク意見ノ相違カトモ
思ッテ居リマス、左樣御諒承ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313026X00219320828&spkNum=13
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014・武田徳三郎
○武田委員 今ノ點ハドウカモウ少シク嚴
正ニ、敢テ斯ウ云フ問題ヲ取ッテ議論ヲス
ルコトハ甚ダ好マヌコトデアリマスガ、是
ハドッチカラモ冷靜ニ御考ヲ願ヒタイノデ
アリマス、先程モ申上ゲタル通リニ、私ハ
此融資ヲスルト云フコトハ、政府ノ御豫定
通リノ融資ヲ實現スルト云フコトハ極メテ
困難ダト思フノデアリマス、餘程注意ヲ拂
ヒ又實際上ノ手續ニ於テモ注意ヲ拂フノ
ハ勿論デアリマスルガ、種々ナル出來得ル
ダケ合理的ナ方法ニ依テ便宜ヲ與ヘナケレ
バ中々實行ガ出來ナイ、斯ウ思フノデアリ
マス、勿論今銀行局長ノ御話ノ通リニ、二
割ダカラト云ッテ二割ヲ損スルモノトハ私
ハ勿論考ヘマセヌ、考ヘマセヌガ、併シ貸
ス中間ニ立ッテ融資ヲ引受ケル勸業銀行ナ
リ其他ノ銀行ノ立場ニ立ッテ御覽ニナッタラ
ドウデアリマセウカ、アナタ御自身ニ勸業
銀行ノ總裁ナリ、貸付ノ當局者トシテ御考
ヲ願ヒタイノデアリマス、自分自身ノ資金
デ貸スヨリハ、不利ナ貸方ヲセヨト云ッテ、
果シテ眞劍ニ貸シマセウカ、或ハ二割ト云ッ
タカラ損失ハソレ以内デ止マルカモ知レマ
セヌ、併シ現在自分ガ不動產ノ時價ヨリハ
三割若クハ四割ヲ引イテ貸シテ居ル、是ガ
若シ銀行局長ガ仰シヤルヤウナラバ、モット
餘計貸シテ宜イノデアル、多少ノ危險ナト
云フ考デアレバコソ、三割四割ヲ貸シテ居
ルノデアリマセウ、サラバト云ッテソレハ
三割四割損ニハナリマセヌケレドモ、其處
ニ安全率ヲ置イテ、三割四割少ク貸シテ居
ルノデアリマス、ソレガ現在ヤッテ居ル勸
業銀行ノ實際デアリマス、勸業銀行ハ六億
五千萬圓貸シテ居リマスガ、皆サウ云フ方
法デ貸シテ居ル、然ルニ政府ノ御趣旨ニ從ツ
テ貸シテ居ルノニ、自分ハ負擔率ヲ餘計シ
テ、尙ホオ前貸付ケロト云ッテ、果シテ熱心
ノ程度ハドウデアリマセウカ、シナイトハ
言ヒマスマイケレドモ、飽マデ政府ノ御趣
旨ニ副フヤウニ努力シナケレバナラヌ、或
ハ努力ヲシテモ實際貸出ハ困難デアルカト
思ヒマス、然ラバ成ベク政府ノ政策ヲ實現
スルヤウニ御努メニナルコトガ然ルベキモ
ノデアリマス、此一億ノモノガ二億、二億
ノモノガ三億トナスッタカラト云ッテ、ソレ
ダケ必ズ出シテヤラナケレバナラヌモノデ
ハナイ、實際ニ於テ損失ガ確定シタ場合ニ
ヤルノデアリマスカラ、法律ニ於テ成ベク
裕リヲ置イテ、融資銀行ニ安心ヲシテ、出
來ルダケ大膽ナ貸付ヲセシムルヤウニ仕向
ケルコトガ、此政策實現ノ上ニ於テ然ルベ
キデハアリマセヌカ、何モ之ヲ二億、三億
ト法律ニ御掲ゲニナッテモ、少シモ政府トシ
テ損害ハ掛カルベキモノデハナシ、唯ヨリ
多ク融資銀行ニ安心ヲ與ヘ、サウシテ大膽
ニ政府ノ御趣旨ニ副フヤウニ努メシムルノ
便利ガアルト云フダケデアリマスカラ、サ
ウナスッタ方ガ適當デハアリマスマイカ、況
ャ今私ノ申上ゲルヤウニ、勸業銀行ヲシテ、
今現在ヤッテ居ル其餘計ナ危險ヲ三割ナリ
四割ナリ負擔セシムルト云フコトデアリマ
スナラバ、政府ハ其負擔セシムル程度ノ危
險ヲ補償ナサルト云フコトモ、合理的デモ
アルト思フノデアリマス、合理的ニシテ且
ツ政府ノ御趣旨ガ徹底スルヤウナ方法デア
リマシタナラバ、此二割ヲ三割ナリ四割ナ
リニ御增額ニナリマスコトハ、當然ノ結論
デアルマイカト私ハ左樣ニ考ヘルノデアリ
マヽ、其點ニ向ッテ重ネテ御意見ヲ承リタ
イノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313026X00219320828&spkNum=14
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015・大久保偵次
○大久保政府委員 武田サンノ御承知ノ通
リニ、補償額ガ殖エルコトモ確ニ融資銀行
ニ於テヨリヤリ易クナルト云フコトノ點
ハ、私モ全ク是ハ多々益〓辨ズルデアラウ
ト考ヘルノデアリマス、其點ニ付テハヨリ
ヤリ易クナルト云フコトニ付テハ、敢テ理
論上異議ヲ申上ゲル譯デハゴザイマセヌデ
スガ、唯ドノ程度ガ穩當デアルカト云フ點
ニ歸著スルノデハナイカト思ヒマス、現在
ノヤリ方ハ御承知ノ通リニ三分ノ二以内デ
貸シテ居リマス、ソレデ今日色々ナ實驗上
カラ見マシテ、勸業銀行其他不動產銀行ノ
ヤリ方カラ見マシテ、之ヲ全額マデヤッタ
カラト云ッテ、此全額ガ直チニ全損ト見ルカ
ドウト云フコトニ付テ、私等ハ計算上ドウ
モサウハ認メラレマセヌ、貸出ノ全體ノ中
ニハ實驗上カラソレ〓〓ノ危險率モ皆當業
者ニ於テモ考ヘテ居リマス、今日是等ノ計
數ヲ緩和致シマスニハ、色々ナ分子ヲ綜合
致シマシテ、結局ハ達觀ト云フモノヲ加ヘ
ルノデアリマセウケレドモ、ソレ等ノ方面
カラ見マシテ決メマスノデ、三分ノ一ニ之
ヲ擴ゲルカラ悉ク皆損失ニナルト云フノハ
是ハ損失ノ方カラ見レバ極ク安全率デアリ
マセウガ、併シ又補償ト云フコトハヤハリ
國家カラ見マスルト、時局非常ノ際デモア
リマスルシ、無論此方法モ執ッタ譯デゴザ
イマスルケレドモ、是等ノ數字ニ於テハ出
來ルダケ之ヲ合理的ニ決メテ行クト云フコ
トモ、亦考ヘナケレバナラヌカト思フノデ
アリマス、實際ニ於テソレ等ノ危險率ヲ見
マス標準ガ、悉ク三分ノ一擴ゲタカラシテ
全損ニナルト云フ風ナ見方デハナク、大體
サウ云フ風ナ推定法ヲ用ヒマシテモ、此程
度デ稍〓宜カラウ、穩當ナ所デアラウ、望ム
ベクンバ此點モ餘リ多クハシナイ方ガ宜カ
ラウト云フ風ナ趣旨モゴザイマシテ、大體
ニ於テ之ヲ妥當ナ所ニ考ヘテ居ルノデアリ
マス、勸業銀行當事者等ニ於テモヤハリソ
レ〓〓此案ニ付テハ實ハ相談ヲ致シテ見マ
シタガ、大體ニ於テ此案デヤッテ行カウト云
フ風ニ話合モ致シテ居ル次第デアリマス、
恐ラクヤル銀行ニ於キマシテモ是ヨリモヨ
リ以上ノ安全瓣ガ出來ルナラバ、無論多イ
コトニ如クコトハナカラウト思ヒマスケレ
ドモ、此程度デ以テ實際上サシタル支障モ
ナイノデアラウト云フヤウナ見据ガ付キマ
シテ、斯ウ云フ計數ヲ出シマシタ次第デゴ
ザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313026X00219320828&spkNum=15
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016・武田徳三郎
○武田委員 ドウモ銀行局長ノ仰シヤルコ
トガ私ニハ益〓解セヌノデアリマスガ、何モ
二割ト決メタカラト云ッテ、二割ヲ必ズ出サ
ナケレバナラヌト云フコトハナイ、ソレハ
最高限度ヲ決メタノデアリマスカラ、是ハ
二割ト決メタカラ二割ヲ必ズ出スト云ウタ
ナラバ、仰シヤル通リニ色々ナ達觀モシナ
ケレバナラヌシ、色々ナ方面カラ觀察シナ
ケレバナラヌガ、是ハ二割ト決メテモ、實
際ノ損失ハ委員會ニ於テ決定スルノデアリ
マスカラ、二割ト決メテモ三割ト決メテモ、
國家ハ必ズソレダケ損失ニナルト云フ譯デ
ハナイ、唯政府ノ政策ヲ實現シ、實施スル
上ニ於テドチラガ便利カト云フ問題デアリ
やく、ソレデ之ヲ合理的ニ決メルト云フコ
トニナレバ、何處ラ邊リニ決メタラ宜イカ、
多々益〓辨ズルト云フモノデハナイノデア
ラウト思ヒマス、ソレハ多々益〓辨ズルト
云フ今ノ御言葉カラ言ヘバ、昭和二年ノ如
ク全額ヲ補償スルト云フコトニナッタラ、ソ
レコソ所謂多々益〓辨ズルデアラウガ、私ハ
サウ申スノデハアリマセヌ、之ヲ如何ナル
コトガ合理的デアルカト言ヘバ、先程モ申
上ゲタヤウニ、現在勸業銀行ガ事實ニ於テ
行ッテ居ルヤリ方ト、政府ガ新ニ勸業銀行ヲ
シテ融資セシムル方法トノ其差ダケノ危險
ヲ負擔スルト云フコトガ、ヨリ以上ニ合理
的デハアリマスマイカ、私ハサウ考ヘルノ
デ、其事ヲ伺ッタノデアリマス、又實際問題
カラ云フト、勸業銀行ノ當局者トモ御相談
ニナッタト云フノデアリマスカラ、是ハ洵ニ
結構ナコトデアリマスガ、併シ一面私ノ聞
ク所ニ依リマスルト、是ハ政府ニ對シテ御
話ニナルコトヽ吾々民間ノ者ニ話サレル言
葉トハ大分違ッテ居ル、是ハ中々困難ダト
言ッテ居リマス、是ハ容易ニ實現ハシナイ
ト云フコトヲ私ハ聞イテ居ル、現在ノ此勸
銀其他ノ特殊銀行ノ貸付ニ取ッテハ、是ハ
政府當局モ屢〓御聞キニナッタデアリマセウ
ガ、色々ナル方面カラ不平ガアルノデアリ
マヽ、中々之ヲ實際ニ於テ能ク貸付ケルト
云フコトニ付テハ、實際ニ困ッテ居ル者ハ中
中借ラレナイ、私ハ最初ニ銀行ヲ目的トス
ルカ、債務者ダケヲ目的トスルカト云フヤ
ウナコトニ付テ、甚ダ煩シク御伺シタノモ
サウ云フコトガ一ツハアルノデアリマス、
ドウモ今迄ノヤリ方ハ勸業銀行ナドハ成ベ
ク貸シ易イ、樂ナ、貸シテモ貸サナクテモ宜
イヤウナト言ッテハ語弊ガアルカモ知レマ
セヌガ、不動產擔保ト云ヒナガラ、事實ハ
不動產ノミヲ目標トシナイデ、對人信用モ
成ベク加味シテ、成ベク損ノ行カナイヤウ
ナ、貸シ易イ者ニ貸スト云フヤウナ傾向ガ
多クアルノデアリマス、隨テ實際此融資ヲ
受ケネバナラヌ、受ケルコトヲ熱心ニ希望
シ、受ケル爲ニ助カルト云フヤウナ人ハ融
資ヲ受ケナイト云フ實例ガ多クアルノデア
リマス、今度ノコトハ初メテヾアリマスカ
ラ結果ヲ見ナケレバ分リマセヌガ、從來ノ
實例カラ見ルトサウ云フコトハ往々ニシテ
アリマス、是ハアベコベノ言葉デ言ヘバ呑
舟ノ魚ハ遁ゲテシマッテ、雜魚ガ引掛カルト
云フヤウニ、ソレハ丁度アベコベノコトデ
アリマスガ、春舟ノ魚ハ旨クヤッテ雜魚ハ一
向有難味ヲ受ケヌト云フ事實ガ今日アルノ
デ、ソレ故ニ私ハ茲ニ本案ノ上ニ於テ債務
者個人ヲ目標トスルト云フコトヲハッキリ
ナサル方ガ宜イト云フ意味デ第一問ヲ發シ
タノデアリマスガ、併シ是ハ既ニ終ヘタコ
トデアリマスカラ、重ネテ中ス譯デハアリ
マセヌケレドモ、兎ニ角實際ニ於テ勸業銀
行ガ實施ヲ爲ス場合ニ於テ、今當局ガ仰シ
ヤルヤウニ、是デ差支ナイト申サレタカド
ウカ知リマセヌケレドモ、是ハ私ハ餘程斟
酌ヲ加ヘナケレバ之ヲ實現スルト云フコト
ハ頗ル困難ダラウト思ヒマス、況ヤ之ヲ如
何ナル程度ニ損失補償額ヲ決メルコトガ合
理的カト云ヘバ、私ガ申上ゲマシタ通リニ、
現在勸業銀行ガ實際行ッテ居ル以上ニ負擔
スル危險ノ程度ヲ補償額トスルト云フコト
ガ合理的デハナイ、斯樣ニ考ヘルノデアリ
マスガ、煩シイコトデアリマスケレドモ、
若シ更ニ御〓示下サル點ガアリマスレバ伺
ヒタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313026X00219320828&spkNum=16
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017・大久保偵次
○大久保政府委員 私ノ方デモ大體繰返ス
ヤウナコトニナリマスノデ、甚ダ恐縮デゴ
ザイマス、危險率ヲ幾ラニ見ルカト云フコ
トニ付テ御話ノヤウナ工合ニ、今後新シク
之ヲヤラセルノデアルカラ、其鑑定價格ノ
擴ガッタ分ハ之ヲ全損ト見タラ宜カラウト
云フ御趣旨モ一理アルコトデモゴザイマス
ガ、併シ實際ノ問題ト致シマシテ、吾々ノ
方デ從前ノ統計其他ノ點カラ見マスト、擴
ゲマシタ債務者ニ悉ク是ダケ全損ニ來ルダ
ラウトハドウシテモ思ハレマセヌ、ソレハ
大體ニ於テヤハリ過去ノ實際、其他今迄ノ
不動產ニ對スル實狀等カラ見マシテモ、全
損ノ步合ニ或ル程度マデ實際ノ經驗ヲ加
ハー、之ニ相當妥當性ヲ付ケテ行ッテ、擴ゲ
タ分ダケ全部是ハ危險デアルト云フ計算ハ
ドウモ立テ惡イヤウニ考ヘルノデアリマシ
テ、只今モ御話ノ通リ、今マデノヤリ方ニ
付キマシテハ成程ソレハ堅過ギタト云フ點
モゴザイマセウガ、併ナガラ不動產ノ價値
其他ノ將來ヲ見マシテ、今後十五箇年間ニ
起リ得ベキ諸種ノ原因ヲ考ヘマシテ、又
面國家ノ損害ト云フモノハ出來ルダケ妥當
性ノ所ニ納メタイト云フ風ナ趣旨カラ見マ
シテ、今迄ノ實狀カラシテ客觀ヲ加ヘマシ
テ、是等ニ相當ノ步引ヲ致シマシタ結果、茲
ニ二割ト云フ數字ガ出マシタノデ、此點ダ
ケニ付テハドウモ計數ノ上カラ吾々ハ此點
ニ相當ノ實行性ガアリ、或ハ又御說ノ通リ
實際ノ局ニ當ル人間ハ、是ヨリ以上ノコト
ヲ希望シテ居ルカモ知レマセヌガ、先ヅ現
在ノ時局ニ於キマシテ實行シ得ル程度ハ此
邊ガ妥當ノ所デアラウト云フ風ナ趣旨デ計
算ヲ致シマシタ次第デアリマス、ドウカ左
樣御承知ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313026X00219320828&spkNum=17
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018・中島彌團次
○中島委員 私モ質問シタイ點ガ澤山アリ
マスガ、今銀行局長ノ御話ヲ承ッテ居リマシ
テモ、ドウモソコガ吾々ニモ徹底致シマセ
又、本會デモ申上ゲマシタ通リ、千圓ノ物
ガ貸付當時カラ見ルト半分ニナッテ、五百圓
ニナッテ居ル、又其五百圓ダケノ時價ヲ全部
貸シテ吳レテモ、旣ニ是ハ半分シカ貸シ得
ナクナッテ居ルカラ、ソレヘ以テ行ッテ三分
ノ一ト三分ノ二ニ分ケテ、危險負擔ヲスル
ト云フコトニナッテ居リマスト云フト、此二
割ト云フモノガ非常ニ小サクナッテ來ル、多
分當局ノ御考デハ平價切下デモヤラレルヤ
ウナコトデモ想像セラレテ、若クハ物價ガ
高クナッテ不動產ノ値ガ上ッテ、其價格ガ元
ノ通リニ戾ルト云フヤウナ點デモ御考ニ
ナッテ、曩ニ此二割ト云フ危險負擔ヲ、實ハ
今デハ是ハ四割五割ニモシナケレバイカヌ
ノデアルガ、後ニナルトサウ云フモノガ騰
ルト云フ點ヲ見込ンデヤッテ居ルノデアリ
マセウカ、ソレカラ不動產價格ノ騰落指數
ト普通ノ物價、日常ノ生活品ハ是ハ別デア
リマスケレドモ、此物價ノ騰落ノ指數トハ、
私共ノ〓究シタ所ニ依リマスト、不動產ト
云フモノハ騰ルノモ遲イシ、下ガルノモ亦
遲クナッテ居ルヤウナ數字ヲ持ッテ居リマ
ス、政府ハ其數字的ノ根據ニ依リマシテ、
從來ノ過去ノ不動產ノ騰落ノ指數ガ、將來
ニドウ云フヤウナ影響ヲ以テ此「インフレ
ーション」政策ト物價騰貴、購買力ノ增進
ト云フヤウナ現內閣ノ政策ヲ對照サレマシ
テ、此騰リ方ニ付テ如何ナル見込ヲ持ッテ
居ラレマセウカ、ソレガ分ッテ來マスト云フ
ト、武田君ヤ又吾々ノ問ハント欲スル所ノ
コトモ亦諒解ガ出來ルカモ知レヌノデアリ
マスガ、其點ヲ數字的ニ算出ノ根據ヲ明快
ニサレマシテ、唯借金五億ノ二割卽チ一億
圓ダケノ補償ヲスルノダト云フダケノ所謂
客觀的ノ根據デナクシテ、、武田君モ屢〓仰セ
ラレマシタ如クニ、是ハ非常ニ重大問題デ
アリマスノデ、私モ本會デ申シマシタガ、
十六億ノ中ノ三分ノ一ノ此五億ガ「インフ
レーション」ニナルカナラヌカト云フコト
ガ、現內閣ノ政策ノ殆ド重點デアルト吾々
ハ考ヘル、果シテ然ラバ是ガイケナクナッタ
ナラバ、十六億ノ三分ノ一ガ消エテ飛ンデ
了フ、サウシテ鼬ゴッコミタイナコトニナッ
テ居ル、是ガイカヌデハナイカ、是ガ旨ク
行ケバインフレーション」ガ又起ッテ來ル
因ニナッテ、不動產ノ價格ガ騰ッテ來ル因ニ
ナリ、是ガイケナクナレバ騰ラヌ因ニナッ
テ來ルデアリマセウ、此不動產二割ト云フ
補償ガ一ツノ或意味ニ於ケル「ブレーキ」ニ
ナッテ居ル、「ハンドル」ニナッテ居ル、槓杆
作用ニナッテ居ルト私ハ思フ、サウスルト此
點ニ付キマシテハ吾々トシテハ、極メテ眞
面目ニ〓究シテ、當局ニ於テモ七千萬同胞
ニ是ガ徹底スルヤウニ十分ニ御說明ヲ願ハ
ナケレバ、吾々ノ背後ニ居ル七千萬同胞ト
云フモノハ、是ガ將來ドウナルカト云フコ
トニ付テ、非常ナル心配ヲシテ居ルト思フ
ノデアリマスカラ、サウ云フ點ニ關シマシ
テノ御說明ヲ願ヒタイト思フノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313026X00219320828&spkNum=18
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019・大久保偵次
○大久保政府委員 實ハ此計數ニ付キマシ
テハ、色々ノ見方モアリマスガ、當局ノ持ツ
テ來マシタノハ、大體ソレ〓〓ノ理由ヲ以
テ決メテ居リマスケレドモ、斯ウ云フ風ナ
目安ハ、結局ハ客觀ヲ用ヒナケレバ決ラヌ
問題デアリマスカラ、斯樣ナ席ニ於テ一々
吾々ノ考ヘテ居ル所ヲ說明スルノモ如何カ
ト考ヘテ居リマシタケレドモ、武田サンカ
ラモ色々ノ方面ニ亙ッテ仰シヤイマスノデ、
私カラモ或ル點マデソレデハドウ云フ考ヲ
持ッテ居ルカ、大體ノ考ダケヲ一ツ申上ゲテ
見タイト思フノデアリマス、全國ノ不動產
ノ狀態ヲ見マスト云フト、是モ大體ハ推測
ヲ加ヘタル統計デアラウト思ヒマスガ、世
界大戰前ノ計數ヲ假ニ百ト致シマスト云フ
ト、其値上リノ狀態ハ、一寸記憶デ申上ゲ
マスカラ少シ違フカモ知レマセヌガ、ソレ
ヲ百ト致シマスト云フト、大正六七年位カ
ラ統計ヲ始メテ居リマシテ、大正十一年、
十二年頃ニハ二百九位ノ程度ニ上ッテ來テ
居リマス、ソレカラ大正十三年頃カラ漸落
シ始メテ來マシテ、最近ハ約百三十五位ノ
數字ニナッテ來テ居リマス、ソレデ其物價ノ
高低ト較ベテ、不動產ノ方ノ指數ニ付テハ
必シモ同一ノ數字ニナッテ居ナイコトハ今
中島サンノ言ハレタ通リデアリマス、將來
不動產ノ値ガドウ云フ風ナ工合ニ向フカト
云フコトニ付テハ、只今中島サンカラ御話
ノヤウニ、一般政策ノコトモ無論影響ヲ受
ケルコトデアリマセウガ、サウ云フ風ナ直
接ノコト、平價切下トカ云フヤウナ直接ノ
コトヲ考ヘマセヌデ、不動產ノ値段ノ狀況
ヲ吾々ノ方デ推測シテ見テ、今日マデ下ッテ
來テ居ル此値段ガ將來ドウナルカ、良クナ
ルカ、或ハヨリ惡クナルカ、何レニシマシ
テモ非常ナ差ハナカラウト云フ風ニ吾々ハ
考ヘテ居リマス、過去十年間ニ於テハ時價
ト勸業銀行ノ鑑定價格等ニ於テハ非常ナ差
ガアッタコトハ先程武田サンノ仰シヤッタ通
リデアリマス、ケレドモ今後ノ不動產ノ價
格ニ付テハ、過去ニ於テ非常ナ差ガアッタ
時程ノ差ハナカラウ、サウ云フ風ナコトモ
一ツノ標準ニシテ吾々ハ勘案シタノデアリ
マス、ソレカラ又勸業銀行等ニ於テ過去十
年ナリ、相當ノ期間ノ實績カラ見タル延滯
步合、色々困ッテ居ル始末ノ工合ナドモ考
ヘテ見マシテ、景氣ノ好イ時分ニハ、勸業
銀行ニ付テ申シマスレバ延滯歩合ト云フモ
ノハ〇·四位ノ程度デ、殆ド一分ニモ當ラナ
イ、併シソレガ漸次上ッテ來ルト云フ傾向
デアリマス、ソレガ農工銀行、北海道拓殖
銀行等ニ至リマシテハ、勸業銀行等ヨリ稍〓
高イ率ニ於テ其傾向ガ現レテ居リマス、最
高ノモノニ於テハ一割近クノ率ヲ示シテ居
リマス、是等ハ世間ノ景氣不景氣ニ依テ餘
程變っテ來ル計數デゴザイマス、固ヨリ各種
ノ政策等ノ影響モアリマセウガ、吾々ハ斯
ウ云フヤウナ數字ノ傾向ト云フモノヲモ或
ル程度ニ於テ勘案ノ基礎ニシテ居ルノデア
リマス、ソレデ勿論大戰前ノヤウニ非常ニ
好イ數字ヲ示スニハ至ラズトモ、是迄ノ最
惡ノ數字ト云フモノヲ今後十五年ナリ相當
ノ間續ケテ行クトモ考へテ居リマセヌ、ソ
コデサウ云フヤウナコトモ頭ニ入レ、又銀
行デ鑑定シテ居リマシタ實績カラモ段々勘
案致シマシヲ、假ニ今日五億ノ金ガ出ルト
致シマシテ、其損失ノ來ルベキ部分ハ全額
ヲ見積ル必要モナカラウト思ヒマシテ、大
體ニ於テ四分ノ一見當ヲ見積ッタラ宜カラ
ウト云フノデ計算ヲ立テヽ居リマス、勿論
其額ニ付キマシテハ、二十五「パーセント
ニナリマスカラ、今マデノ〇·四トカ何トカ
云フ率デハアリマセヌガ、色々ノ點カラ見
マシテ大體四分ノ一ニ見タラ宜カラウ、ソ
レニ不動產ノ價格ノ餘計ニナル點モ考ヘマ
シテ、其損失ノ三分ノ一近クノモノモ勘案
致シ、其他又全體カラ見ルト云フト、元金バ
カリノ計算デモイケマセヌ、利息ノ點モ今
言ヒマシタヤウナ大體ノ標準ヲ勘案致シマ
シテ計算ヲ取ラナケレバナリマセヌ、又融
資銀行ノ受ケル手數料等ニ付テモ、ソレ等
ノモノモ見ナケレバナリマセヌ、全體ノ年
數モアルコトデアリマスカラ、其年數ニ割
當テヽ見ルコトモ實際ノ場合トシテハ必要
デアル、サウ云フヤウナ各種ノ點ヲ總括シテ
見マスト、大體ニ於テ此數字ニ近イモノガ
出テ參リマス、其數字ヲ基礎ト致シマシテ、
稍〓「ラウンドナンバー」ヲ用ヒマシテ、ソ
コニ一億圓ト云フヤウナ數字ヲ出シタノデ
アリマス、是等ノ數字ノ基礎ニ付キマシテ
ハ、吾々ノ方ニ於テハ相當ノ理論ヲ以テ考
ヘタ積リデアリマス、併シ何ト申シマシテ
モ今說明致シマス通リ、結局ハ斯ウ云フ風
ナコトハ見方ニ依ルコトデアリマスカラ、
或程度マデハ、ヤハリ達觀ヲ加ヘナケレバ
ナリマセヌ、其達觀ハ又色々ノ分子ガ元ニ
ナリマスノデ、其分子ノ爲ニ相當動クコト
ニナリマスカラ、大體吾々ノ考ノ標準ヲ御
參考ニ申上ゲマシテ、其考カラ吾々ハ計算
ヲ取リマシタト云フコトヲ申上ゲル次第デ
アリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313026X00219320828&spkNum=19
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020・中島彌團次
○中島委員 今ノ私ノ質問ニ對シマシテ局
長ノ御答ニナッタ所ニ依リマスト云フト、將
來ノ不動產ハ大體ニ於テ今日トハ餘リ非常
ナ差ハナカラウト云フヤウナコトヲ標準ト
サレテ居ラレルヤウデアリマスガ、ソレナ
ラバヤハリ大正三年ノ百ニ對スル百三十五
ト云フヤウナ見當デ、ズット續イテ行クモノ
ト見テノ計算ガ根本トナッテ、茲ニ二割ト云
フ補償額ガ出來タト斯ウ解釋シテ宜シウゴ
ザイマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313026X00219320828&spkNum=20
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021・大久保偵次
○大久保政府委員 不動產ノ價格ハ極ク計
算ノ達觀ノ一材料デアリマス、ソレガ唯一
ノ根據ニナッテ吾々ノ計算ヲ拵ヘタノデハ
アリマセヌ、吾々ノ唯一ノ-寧ロ直接ノ
根據ト云フノハ幾ラバカリガ損失ニナルノ
デアラウカ、拾五年ノ間ニ債務者ニ依テ與
ヘラレル所ノ損失、其原因ヲ勘案スル上ニ
於テ、不動產等モ勘案致シタ次第デアリマ
ス,不動產ノ價格ハ寧ロ間接ノ計算ニナッ
テ居リマス、直接ノ計算ハ擔保ニ於テハ大
體ニ於テ債務者ノ中ノ四分ノ一位ガ損害ヲ
與ヘル原因ニナルダラウ、ソレノ根柢ヲ爲
ス所ノ不動產ノ價格等モ標準ニ用ヒマシタ
ケレドモ、ソレハ間接ノ標準ニナッテ居ル
次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313026X00219320828&spkNum=21
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022・中島彌團次
○中島委員 相當上ルモノト見テ行ッテ、サ
ウシテ延滯シテ行クモノト見レバ、此現在
ノ二割デ宜イカモ知レマセヌ、ソレデモマ
ダ私共ハ少イト思ヒマスケレドモ、併シソ
レヲ相當上ルモノト見、或ハ大體百三十五
ノ指數ヲ續ケテ行クト見テ、延滯歩合ト云
フモノモ今仰シヤラレマシタ通リ、元金ノ
〇·四デ行クトスレバ、此二割ノ補償ノ步合
ヲ決メタト云フコトガ逆ニナッテ來ルヤウ
ニ思フ、上レバ其價格モ增シテ行クシ、不動
產取引モ多クナッテ行クシ、又一方ニ於テハ
債務者ノ擔保力モ增シテ來マセウシ、ソコ
ラアタリノ點ガ吾々ニハドウモハッキリ呑
込メマセヌガ、現在ノ見當デ大體行クモノ
トスレバ、ドウモ二割デハ少イト武田君モ
再三御質問ニナッタガ、逹觀ノ材料デアルト
言ハレマスガ、達觀ノ材料ト雖モ是ハ相當
ナヤハリ數字ノ動キガ基礎トナッテ來タ達
觀ノ材料デナケレバイカヌト思ヒマスガ、
上ラナイ、大體違ハヌ、是デ押シ通シテ行
カレルガ、上ルモノナラバ私共ハ是デ宜カ
ラウト考ヘテ居リマスガ、元ノ價格ガ御承
知ノ通リ今ノ不動產貸付ノ價格ノ大部分
ハ、大正七年、八年、九年、十年頃ノ好景氣ノ
最中ノ半分ニ減ッテ居ル、ソレヲ標準トシテ
其鑑定價格デ現在ヤッテ行クト云フノデア
ルカラ、鑑定價格一杯貸シテモ貸付當時ノ不
動產價格ノ半分ニモ行カナイ、ソレガ上ラ
ヌモノト見テ行ケバ、餘程不動產融資ノ關
係カラ考ヘマシテ、是ハ武田君モ仰シヤラ
レタ如ク、五億ヲ民間ニ浸潤サスト云フコ
トハ益〓吾々ハ疑惑ヲ深ウスル次第デアリ
マス、上ルモノト見テ相當ナ-百三十五
乃至百四十ニナリ、元ノ二百ニ近クナッテ來
ル、若クハソレニ近クナラナイデモ相當ナ
所マデ上ッテ行クト云フコトナラ、補償割合
ガ少イト云フコトモ亦私共ハ呑込メルノデ
アリマスガ、達觀材料ト致シマシテモ、少シ
杜撰ニ失シハシナイカト思ヒマス、甚ダ失
禮ナ言葉デアリマスガ、其點モウ一應御說
明ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313026X00219320828&spkNum=22
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023・大久保偵次
○大久保政府委員 其損失ノ計數ヲ採リマ
スニハ色々ナ見方ガアルダラウト思ヒマス
ノデスガ、吾々ノ採用致シテ居リマシテ大
體此見當ガ宜カラウト云フ風ナコトヲ決メ
マシタ逹觀ノ材料ヲ大體申上ゲマシタ次第
デアリマス、今日ニ於キマシテモ價格ハ幾
ラ上向キノ場合デモ、延滯ト云フコトハ免
レマセヌノデス、是ハ全體ノ大勢ヲ申シマ
スノデスカラ、不動產ノ値段ノ統計等ニ付
キマシテモ、大體ノ統計的數字ヲ申上ゲマ
スノデスガ、實際ノ營業者ノ眼カラ見マス
ト云フト、如何ニ計數的ニハ物價ガ上向キ
ノ場合ニ於テモ、ヤハリ個々ノ取引ニ付テ
ハ危險率ト云フモノヲ見ナケレバナラヌ譯
デアリマス、是ハ其率ヲ見ル標準ハ或ル點
マデハヤハリ一種ノ業務上ノ客觀ニ結局ハ
歸著スルデアラウト思ヒマスカラシテ、吾
吾ノ採リマシタ材料ノ大體ヲ申上ゲマシタ
次第デアリマス、今迄ヤッテ居リマシタ分ヨ
リモ今度ノ分ハ、先程カラ武田サンノ仰シ
ヤッタ通リ、鑑定價格ヲ多ク見テ居ルダケソ
レダケキチント損ガ行クノデハナイカト云
フヤウナコトハ、一ツノ理論トシテハ私ハ
確カダラウト思フノデス、ソレダケヲ見テ
行キマスレバ、三分ノ一ト云フ見方ヲスレ
バ、五億圓ノ三分ノ一ダケ損失ニナッテ行
クノダ、斯ウ云フ風ナ見方モ一ツノ見方ダ
ラウト思フノデアリマス、併ナガラ吾々ノ
方デハ、サウ云フ見方モ一ツアリマスケレ
ドモ、大體ニ於キマシテ先程申シマシタ
通リ標準ヲ全損トハ見マセヌ、其全損ト見
ナイ理由ハ、斯ウ云フ風ナ理由モアルノダ
ト云フコトヲ說明致シマシタノデス、之ヲ
全損ト見マスルトカ云フコトハ、吾々ノ方
ノ標準ダケヲ御說明申上ゲテ居ルコトニ一
ツ御諒解ヲ願ヒタイト田心ッテ居リマス、是ハ
意見ニ依リマシテハ全損ヲ見タ方ガ全然宜
シイト云フ御議論モ或ハアルカモ知レマセ
ヌ、吾々ノ方ニ於キマシテハ、大體ニ於テ
今迄ノ各種ノ原因ヲ綜合致シマシテ、四分
ノ一見當ヲ以テ今後損ニ歸スル分デアルダ
ラウ、ソレニ更ニ利子トカ手數料トカ云フ
方面ノ分子モ考ヘマシテ、出テ來マシタ數
字ヲ勘案致シマシテ、之ニ基イテ一億圓ト
云フ「ラウンド·ナンバー」ノ出テ來マシタ
其結果ガ五億圓ニ對シテ二割ト、斯ウ云フ
風ナ數字ニナリマス事情ヲ申上ゲマスダケ
ノコトデ、其達觀ノ數字ニ付テドウモ頭カ
ラシテ是ハヤハリ減ッタダケソレダケ丸々
損ト見タラ宜イヂヤナイカ、斯ウ云フヤウ
ナ御議論モ一ツノ御議論デアルダラウト思
ヒマス、吾々ノ方ハ勘案致シタ方法ハ三分
ノ一ト見タノデハナクシテ、色々計算シテ、
大體四分ノ一標準ニ取リマシテ、ソレニ利
息手數料ノ損ニナルモノヲ勘案致シマシ
テ、略〓一億圓ニ近イモノガ出テ來マシタ、
此一億圓ヲ五億圓ニ對シテ見マスト略〓二
割見當ニナルト云フコトヲ申上ゲマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313026X00219320828&spkNum=23
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024・中島彌團次
○中島委員 是ニ參考トナルベキ從來ノ政
府補償ノ場合ト致シマシテ、特別融通ノ此
前ノ昭和二年ニ於テ若槻内閣倒レ、田中內
閣ガ出來マシタ時ニ、三土大藏大臣ト井上
日銀總裁ガ實行サレマシタ際、アノ當時ノ見
込ニ依リマスト、大體其當時高橋サンガ議
會ニ於テ御演說ナサイマシタ所ノ速記錄ニ
依テ見テモ、約五十億位ノ見當ノ貸付ガア
ルダラウ、ソレノ一割ト見テ五億位デ補償
シタラ宜イト云フ風ニナッテ居ッタヤウニ私
ハ承知シテ居リマス、ソレデ中々殺倒シテ、
各銀行カラ色々擔保物件ヤ何カヲ澤山持ツ
テ來ラレテ、御承知ノ通リ有價證券トカ或
ハ手形、其他不動產モ一億二千三百萬モア
リマスガ、ソレカラ鑛山、債劵、船舶、或
ハ又骨董品マデ御取リニナッテ居ルト云フ
コトヲ聞イテ居リマスガ、ソレニシマシテ
モ中々ヤカマシクテ、アレダケノ非常時ノ
時ニ於テ、殆ド銀行ガ取付ケヲ喰ッテ居ル
ヤウナアノ始末、其全額ヲ補償スルノデア
ラウ、アレハ利息ガ一錢四厘ト承知シテ居
リマシタガ、今ダト公債擔保デスカラ四分
三厘位ニナリマセウカ、ソレデモ中々ムヅ
カシクテ、全額補償デヤルノデ、漸ク六億
八千六百萬圓ダケガ融通スルコトニナリマ
シタ、サウ云フヤウナ工合ニ五十億ト決定
シテ居ルノガ五億ニナッテ居ルト云フ調子
デスカラ、是ガ五億貸出シテ居ルナラヤハ
リ其一割ト見テモ五千萬圓位出ルノヂヤナ
イカ、全額補償ノ場合サヘ是デアルカラ、
二割ノ補償デアルト云フト五千萬位私共ハ
出ヤセヌカト思フ、斯ウ云フヤウニナッテ
來マスト云フト、全ク畫餅ニ等シイヤウナ
計畫ニナリヤセヌカト云フコトヲ心配致シ
テ居ルノデアリマス、武田君モ本會ニ於テ
モ述ベラレ、今モ縷々御述ニナリマシタガ、
此點ハ特別融通ノ狀況カラ御話下サイマシ
テ、特別融通ノ囘收ノ成績ノ惡イコトハ大
藏省ノ當局ハ御承知デアリマセウガ、其成
績カラ考ヘテ、餘リ補償額ヲ多クスルト云
フト中々容易ニ是ガ囘收モ出來ナイシ、又
先ノ固定ヲ多クスルト却テ弊害ガ多クナル
ト云フ意味ニ於テ、補償額ヲ少クシタノデ
アリマセウガ、其過去ノ實績ヲ標準ト致シ
マシテ、今日ノ場合ニ付テノ御說明ヲ願ヒ
タイノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313026X00219320828&spkNum=24
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025・大久保偵次
○大久保政府委員 只今特別融通ノ先例ヲ
引カレマシテ、色々御話ヲ承リマシタ次第
デスガ、特別融通ノ場合ハ御承知ノ通リ、
預金支拂ニ充ル爲ニヤルト云フコトガ原則
ニナッテ居リマシタ、目的ニ於キマシテ既ニ
今日ノ法律ノ目的トスル所ト違ッテ居リマ
ス、アノ當時ハ預金支拂ヲ標準ニシテ居リ
マシタ、成程今御話ニナリマシタ通リニ、
此法律制定ノ當時ニ於キマシテノ對照ニ致
シテ居リマシタ預金ノ額ハ大體サウ云フ風
ナ說明ニナッテ居ッタカノヤウニ私モ承知致
シテ居リマス、今度ハ目標ガサウ云フ風ナ
方面ヂヤナクテ、金融疏通ト云フ風ナ方面
デアリマスルカラシテ、今ノ特別融通ノ方
ノ目的ヨリモ相當廣イ、又積極的ノ意味ヲ
是ハ有ッテ居ルダラウト思フノデゴザイマ
ス、デ融資銀行ノ損得ノ問題カラバカリ申
シマスレバ、今御話ニナリマシタ通リ補償
額以內ニ之ヲ止メテ置ケバ、最モ安全ナ方法
デアルカト思フノデアリマス、ソレデマア
此前ノ特別融通ニ付テモ世上ニハサウ云フ
風ナ議論モアリマスルノデスガ、併ナガラ
此勸業銀行等ノ不動產金融機關ニ於キマシ
テハ、サウ云フ風ナ預金支拂ノ爲ニドウ斯
ウスルト云フノハ銀行ノ目標デアリマセ
ヌ是等ノ銀行ハ主トシテ不動產乃至ハ產
業振興ノ爲ニ努力スベキ立場ニアル特殊銀
行デゴザイマスカラシテ、普通銀行等ノ實
例ニ於キマシテモ、專ラ其不動產ヲ標準ニ
持ッテ參リマス、吾々ノ方カラ見マスルト、
之ヲ過去ノ例ノ如ク、補償ノ限度デ止メル
ト云フ風ナヤリ方ハ全然考ヘテ居リマセヌ
ノテ、是非一ツ是ハ不動產銀行ノ使命ニ依
リマシテ其普通ノ業務ト致シマシテ、不動
產ニ對スル融通ヲヤラセル、但シ其ヤリ方
ハ、時局ニ鑑ミ、現在ノ實情カラ見マシテ、
或ル程度ノ危險ヲ考ヘテ、ソレヲ國家ガ補
償スル、サウシテ今ノヤッテ居ル働キヲ十分
ニ活用サセルト云フヤウナ建前カラ出テ居
リマスカラシテ、不動產ニ付テハ相當ノ長イ
間ノ經驗及ソレニ付テノ前途ノ見越シモ、
融資銀行自身ニ於テ持ッテ居リマス、勸業銀
行及十九ノ農工銀行、北海道拓殖銀行、是
等ノ二十一ノ銀行ニ於キマシテ、今日マデ
ヤッテ居リマシタヤリ方カラ見テ、是ダケノ
補償ヲシタナラバ相當ニ伸ルト云フヤウナ
積リデ提案致シマシタ次第デゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313026X00219320828&spkNum=25
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026・中島彌團次
○中島委員 此場合特融ノ場合ニ於キマシ
テモ預金ノ拂出デアリ、又一方ノ目的ハ預
金者ノ救濟ガ目的ニナリマシタケレドモ、
實際ニ實行サレタ後ニ於キマシテハ、預金
ハチットモ拂出サレテ居ナイ、サウシテ預
金モ減ッテ居ナイ、入ッタ金ハ何處へ行ッタ
カト申シマスルト、其銀行カラ他ノ目的ニ、
詰リ貸出ニ使ハレタノモアリマセウシ、ソ
レカラ大部分ハ日本銀行へ歸ッテ來マシテ、
或ル意味ニ於テハ日本銀行ノ救濟ニナッテ
居ルノデス、私細カイ數字ヲ持ッテ居リマ
スガ、特融ニ依テ救ハレタ銀行ト云フト、
寧ロ日本銀行ニナッテ居ル、アノ當時ノ日本
銀行ノ數字ヲズット眺メテ見マスルト、日本
銀行カラ貸シテ居ッタ不良ノ貸出ノ肩代リ
ニナッテ居ル、此場合モ亦立法ノ目的ガ特融
ト同ジヤウナ工合ニ、別ノ方面ニ向ッテ行キ
ヤシナイカ、今大久保局長カラ仰セラレタ
ヤウナ工合ニ、地方マデ浸潤シテ行カナイ
デ-銀行ニ貸付ケル、其銀行ノ得タ金ハ
實際ハ地方民ニハ行カナイ、殆ド地方ニハ
質草ハナイ、皆擔保ニ入ッテ居ル、殆ド固定
シテ居ルカラ、コンナ問題ガ出テ來ル、サ
ウスルト借リニ行ッテモ貸シテ吳レヤシナ
イ、普通銀行ハ中々貸サナイ、結局ハ外ノ
親銀行ヘ預金デ預ケル、サウスレバ又日本
銀行ヘ戾ッテ來ル、或ハサウデナクテモ外ノ
投資ノ爲ニ良イ方面ニ持ッテ行ク、或ハ其他
眞ニ救濟セラルベキ此中小商工業者ニ對ス
ル不動產ノ金融ト云フモノハ出來ナイ、先
程武田君モ言ハレタノデアリマスガ、ソレ
ガ何時モノ特融ノ場合カラ考ヘマシテモ、
立法ノ趣旨ガ分ラヌ、政府ノ方針ガ徹底シ
ナイ、此場合モ必ズヤサウナルヂヤナカ
ラウカ、一ツノ銀行救濟ニナッテ、是ガクル
クル廻ッテ、結局日本銀行へ入ッテ來テ、日
本銀行ノ預金トナリ、潜在通貨ニナッテシ
->,實際通貨ト云フ言葉ガ善イカ惡イカ
知リマセヌケレドモ、實際上ノ通貨トシテ
ノ、所謂現有通貨トシテグル〓〓廻ルノデ
ハナイ、是ハ私一人ノ考ヘデハナク、銀行
業ニ關係シテ居ル者ニ付キマシテ澤山當ッ
テ見マシタガ、是ハ決シテ徹底スルモノデ
ナク、銀行ノ救濟ニナリ、而モ更ニソレガ
不良銀行ノ救濟ニナリ、而モソレガ段々
上へ上ッテ參ッテシマッテ、「インフレーショ
ン」ノ空廻リ、下ヘ行カナイデ上デグル〓〓
廻ッテ居ッテ、何ニモナラナイト云フヤウナ
意見ガ當業者ノ間ニ頗ル確信ヲ以テ私共聞
カサレテ居ルノデアリマス、サウ云フコト
ニ付キマシテドウ御考ニナリマセウカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313026X00219320828&spkNum=26
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027・大久保偵次
○大久保政府委員 今ノ御尋ニ對シマシテ
ハ、多少今マデ實驗致シマシタ、五月ニ發
表ニナリマシタ二億圓デ差當リ五千萬圓ト
云フノヽ實行狀況ヲ申上ゲテ見レバ御諒解
ヲ得ルカト思フノデアリマス、是ノ方ハ先
程モ誰方カノ御話ニナリマシタヤウナ工合
ニ、實際ノ效果ハ十分ニ擧ゲテ居リマセヌ、
或ル程度ノ效果ハ擧ゲテ居リマス、大體表
ニ擧ゲテ居リマスノハ七百五十萬圓バカリ
實ニ殖エテ居ルト云フ表ヲ差上ゲテアル次
第デアリマスガ、是ガ今中島サンノヤウナ
御心配ノ要ラナイ證據ハ、是ハ銀行自體ニ
貸シマス分ト、肩代リノ分ト二ツアリマス、
實際ニ於テドチラガ餘計行ハレルカト云フ
事實問題ニ歸著スルノデアリマス、過去ノ
七百五十萬圓バカリ出マシタ分ヲ見マシテ
モ、其利率ハ此成功ヲ妨ゲタ原因ノ重大ナ
ル一ツト言ハレテ居リマスガ、八分デアリ
マリ、ソレニ於テスラモ殆ド大部分ハ個人
ノ方ニ廻ッテ居リマス、御承知ノ通リ今マデ
勸業銀行等ノ不動產銀行ハ、地方銀行ニ直
接ノ取引ガアリマセヌデシタガ、漸ク昨年
ノ通常議會ニ於キマシテ、普通銀行トノ間
ニ債權授受ノ方法ニ依テ取引ガ出來ルヤウ
ニナリマシタ、ソレマデハ實際問題トシテ
ハ殆ド普通銀行ト不動產銀行トノ關係ハナ
カッタノデアリマス、ソレデ今度始メテ預
金部ノ資金ヲ出シマシタノデスケレドモ、
今御心配ニナルヤウナ金ヲ、勸業銀行其他
ノ不動產銀行カラ普通銀行ハ借リテ居リマ
セヌ、ソレデ貸シマス分ハ、是カラノ新シ
イ貸出ニ依リマスノミナラズ、是等ノ不動
產金融機關ハ、一ツノ銀行ニ對シテ、唯サウ
何百萬ト云フヤウナ、或ハ何千萬圓ト云フ
モノヲ一遍ニヤッテ行クト云フ譯ニ行キマ
セヌカラ、勢ヒ銀行ニ貸ス分量モ相當ノ程
度ニ之ヲ制限スル結果ニナリマス、實際ノ
問題トシテハ、サウシテ茲ニ肩代リト云フ
コトヲ誘ヒ出ス原因ニナリマス、肩代リト
ナルト、六分二厘ト云フモノハ八分四厘ヨ
リモ安クナルカラ、此法案ハ非常ニ肩代リ
ヲ誘致スルダラウト私ハ思ヒマス、今日マデ
不動產銀行ト普通銀行トノ間ニハ、別段日
本銀行ト普通銀行ト云フヤウナ工合ニ取引
關係ガナカッタノト、殊ニ肩代リノ場合ニ
於テモ、利息ガ安クナルト云フ風ナ意味カ
ラ、相當是ハ個人ヲ相手トスルト云フ結果
ニナルデアラウ、既ニ出マシタル七百五十
萬圓ノモノニ付キマシテモ、大部分ハ是ハ
肩代リ資金ナノデアリマス、デスカラ今ノ
ヤウナ御心配ハ大體ニ於テ此制度ニ於テハ
ナイ、併シ此前ニ大藏大臣モ言ハレマシタ
通リ、色々ノ點ニ付テ此法制ハ監督上ニ付
テモ注意シナケレバナラヌ、デ今仰シヤッ
タヤウナ事柄等ニ付キマシテモ、色々ノ弊
害ハ豫想シテ、ソレカラ取締ルベキ規準等
ハ、第一條ニ書イテアリマス大藏大臣ノ命
令ニ依リマシテ、十分ニ取締ッテ行キタイ
ト云フコトハ考ヘテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313026X00219320828&spkNum=27
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028・中島彌團次
○中島委員 普通銀行ハ勸銀カラ借リテ居
ナイト申シマシテモ、殊ニ北海道拓殖銀行
ノ問題ニナリマスト、北門銀行ト云フ殆ド
北海道拓殖銀行ト同ジ銀行ガアリマス、サ
ウ云フ方而カラ考ヘテ見マスト、例ヘバ茲
ニ北門銀行カラ金ヲ借リテ居ッテ、サウシテ
此融資ヲ受ケルト致シマスト、ソレハ勸銀
ヤ農工銀行カラ直接私ナラ私ガ借リテ居ル
ト、私ハ融資ガ受ケラレナイコトニナリマ
ス、六分二厘ノ適用ハ出來ナイ、北門銀行カ
ラ借リテ居ルノハ出來ルコトニナッテ居リ
マス、所ガ北門銀行其モノハ北海道拓殖銀
行ト同ジモノデアル、向フカラ金ヲ持ッテ
來テ貸シテ居ル、殊ニ東京邊リデハ、北海
道拓殖銀行ハ營業ガ出來ナイモノデアリマ
スカラ、北門銀行ニヤラシテ居ル、サウナツ
テ來マスト、茲ニ問題ガ起ッテ來ル。私ノ聞
キタイノハ北海道拓殖銀行カラ金ヲ渡シ
テ、ソレカラ北門銀行ガ外ノ人ニ貸シテ居
ルト云フコトニナッテ來ルト、ソコニ問題
ガ起ッテ來ル、ソレガ一ツト、モウ一ツハ債
務者直接ニ中間銀行卽チ勸銀及農工銀行ニ
言ウテ行ク譯ニ行カヌ、是ハ銀行ノ請求ニ
依テヤルコトニナッテ居ル、銀行ガ請求スル
コトニナッテ居ル、銀行ノ方カラ考ヘテ見ル
ト、重役關係ノ人々デアルトカ、或ハ懇意
ナ人デアルトカ云フヤウナ、大體サウ言ッ
テハ何デアリマスガ、銀行ノ人ニ御馳走シ
テ餘程親密ニナラナケレバ貸シテ吳レナ
1、殊ニ田舍ノ銀行ニナルト待合ニデモ連
レテ行ッテ色々御馳走デモシナケレバ貸サ
ナイト云フコトニナッテ來ルト、普通銀行カ
ラ中間銀行ヘ請求シテ來ル人ト云フモノ
ハ、重役關係ノ人々ガ私ハ多クナッテ來ハ
シナイカト考ヘル、サウシテ下ッテ來タ六
分二厘ノ金ハ何處ニ持ッテ行クカト云フト、
ソレ等ノ人ニバカリ融通シテヤルトカ、外
ノ方ニ投資スルトカ、或ハ其他不良債權ヲ
乘替ヘル、ソレカラ又銀行ガ直接ニヤリマ
ス場合ニハ、金ガ下ッヲ來マシテモ預金ノ
拂戾ハヤラナイ、或ハ債務者ニ對シテ何ト
カカントカ口實ヲ設ケテ、其借リマシタ安
イ六分二厘ノ金ヲ持ッテ來テソレヲ外ノ方
ニ廻スト云フコトハ、當業者ニ付キマシテ
私共耳ニ胼胝ノ出來ル程何處ニ行キマシテ
モ聞カサレルノデアリマスカラ、私共實際
銀行ヲ經營シテ居リマセヌカラ、其間ノ消
息ガ果シテ眞デアルカドウカ分リマセヌ
ガ、今私ノ述ベマシタヤウナ事實ガ頻繁ニ行
ハレルト致シマスナラバ、是ハドウシテモ
個人ノ肩代リガ少イト思フ、今局長ノ仰シ
ヤッタヤウナ工合ニ是迄ヤッタ二億ノ內七百
五十萬圓程ガ出テ居ル、大分個人ノ肩代リ
ガ多イト仰シヤッタケレドモ、此場合ト今度
ノ場合トハ大分違フ、範圍モ廣クナッテ來
テ居リマスシ、金額モ大キクナッテ居ルシ、
利率モ少イ、八分ト六分二厘ノ場合トハ利
用サルベキ範圍ガ餘程違ッテ來ルデアラウ
ト思フ、此一例ヲ以チマシテ今度ノ計畫ニ
當篏メルト云フコトハ大變ニ困難デアリ無
理ダト私ハ考ヘマス、サウナッテ來マスト云
フトヤハリ「インフレーション」ノ空廻リデ、
結局下迄ハ徹底セズ、金ハ廻リ廻ッテ日銀
ノ懷ニ入ッテ行クノデハナイカト云フヤウ
ナコトヲ私共ハ心配シテ居ル、或ハ又上ノ
中間銀行ニ入ッテ行クノデハナイカ、此點ニ
付テ大藏省ノ方ハドレダケノ監督ヲスルノ
カ、細カイ契約其他ノ方法デ以テヤラレル
ノデアラウガ、是モヤリ方ニ依テハヤレヌ
コトモナイデセウ、ソレハ監督ガ行屆クカ
行屆カヌノ問題デアリマセウガ、一ツ〓〓
貸付ケル人々ニ付テ大藏省ガ監督ヲサレル
譯ニモ行キマスマイ、コヽ等邊リ銀行監督
上ノ建前カラ考ヘマシテ、之ヲ立法ノ目的
ニ副ハスト云フヤウナコトハドウ云フ方法
デヤラレルカ、其點ニ付テ一ツ御答ヲ願ヒ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313026X00219320828&spkNum=28
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029・大久保偵次
○大久保政府委員 今度ノ制度ニ付キマシ
テモ、只今仰シヤルヤウナ弊害ハ、前以テ
十分ニ準備ヲシナケレバナラヌト云フコト
ハ、吾々ノ方ニ於テモ氣付キマシテ、是ハ
今後取締ッテ行ク一ツノ間題ト致シマシテ
モ、此融資ニ依リマシテ當該銀行ノ一部特
殊關係ノ取引者ノミニ便宜ヲ與ヘルガ如キ
ハ、十分ニ取締ル方法ヲ立テヽ行キタイト
思ッテ居ルヤウナ次第デアリマス、其後ニ於
キマシテ大體ニ於テ普通銀行ト中間銀行ト
ハ餘リ關係ガゴザイマセヌコトハ、先程說
明申上ゲマシタ通リデアリマス、北海道拓
殖銀行ニ付テ御述ベニナリマシタガ、此點
ニ付テモ十分ナル取締方法ヲ命令致シテ居
リマスヤウナ次第デゴザイマス、ソレ等ノ
點ニ付テハ此取引ニ付テ殊ニ心配ニナラナ
イヤウニ取計ッテ行ク積リデアリマス、左樣
御承知ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313026X00219320828&spkNum=29
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030・中島彌團次
○中島委員 其ノ重役關係其他ニ付テ結局
北門銀行或ハ拓殖銀行關係ニ付テ取締ッテ
行クト云フノデスガ、其方法ハドウ云フ風
ナ方法デオヤリニナルノデセウカ、其點ガ
餘程此五億萬圓ガ下ニ沈ムカ沈マヌカト云
フコトニ付テモ重大ナル關係ヲ及ボシテ行
クノデアリマス、今ノ二割ガ多イカ少イカ
ト云フコトハ武田君ト私モ同感デアリマシ
テ、ドウモ私モ少イヤウニ思フ、是ハ何ボ
論ジマシテモ水掛論ニナリマスガ、殊ニ此
勸業銀行、農工銀行、及北海道拓殖銀行ハ
ドノヤウナ方法デ監督サレテ行クノカ、此
北海道拓殖銀行ハ北海道ニ於テハ普通銀行
ト相當取引ガアルヤウニ記憶シテ居リマス
ガ、勸業銀行、農工銀行ハ普通銀行ト一般
ニ取引ガ少イ、少ナケレバ少イ程重役關係
モ分ラナケレバ、營業狀態モ分ラナイ、大
口ノ取引ノコトモ分ラナイ、斯ウナッテ來マ
スト何ヲ以テ今私ガ前ニ質問申上ゲマシタ
ヤウナ點ニ付テ十分ニ御監督ガ出來ルノデ
アリマセウカ、私ハ恐ラク其方法ハナカラ
ウト考ヘマス、從來ノ取引銀行デアッテ、此
間ニ於テ密接ナル關係ガアリ、相當ノ調査
デモ出來テ居レバ又ソレハ別デアリマセ
ウ、斯ウ云フヤウニ觀察シテ見マスト云フ
ト、ドウ云フヤウナ方法デ取締ッテヤッテ行ク
カト云フコトガ重大ナル點ニナッテ居リマ
スカ、局長ガ仰セラレルノハ單ニ取締ラレ
ル、嚴正ニ公平ニヤッテ行クト云フダケノ
御考ダケヲ述ベラレタヤウデアリマスガ、
ソレヲ一ツドノヤウナ方法デヤラレルノデ
アリマセウカ、銀行監督ト銀行檢査ト云フ
ヤウナコトニ付キマシテ、銀行檢査モ御承
知ノ通リ事後檢査デアッテ事前檢査ハヤッテ
居ナイ、唯臺灣銀行、朝鮮銀行デアリマス
ガ、此二銀行ダケニ付テハ監理官ガ出張シ
テ行ッテ、サウシテ惡イ債權ニハ貸サヌヤウ
ナ工合ニ相談ニ與ッテ居リマスガ、後ハ皆事
後檢査ノヤウナ關係ニナッテ居ルノデアリ
マスガ、ドウシテヤッテ行クノデアリマセ
ウカ、其點ニ付キマシテ私共ガ非常ニ疑問
ニ思ッテ居リマス
ソレカラソレト關聯致シマシテ全國ノ普
通銀行ノ數、其中デ七百何ボアルト私共記
憶シテ居リマスガ、其不良銀行デアッテ、不
動產ガ固定シテ救濟シナケレバナラヌ銀行
ヲドレ位ノ見當ニ見テ居ラレルノデアリマ
スカ、其銀行ガ何ボアルカ、又貯蓄銀行ハ
何ボアッテ-貯蓄銀行ハ割合ニシッカリシ
テ居ルガ、其中ニモ惡イ銀行ガ十カ十五ハ
アリマセウガ、此銀行ノ方ニハドウ云フヤ
ウニシテ此融資ヲ廻シテ行クノデアルカ
ソレカラ無資格銀行ガアリマス、合併若
クハ減資スルニ非ザレバ殆ド持テナイト云
フ銀行ガアリマス、是等ノ銀行ハ何ボアッ
テ、コヽ等邊リニドノ位ノ融資ノ必要ガ起ツ
テ來ルカ大藏省ノ帳面ノ中デハ各銀行ノ中
僅ニ七百カ八百迄ノ銀行デアリマスルガ、
ウント多クテ九百位ノモノハ全體ノ數量カ
ラ言ヒマシテモ殆ド戶別的ニ檢查ノ結果ガ
御分リニナッテ居ルニ違ヒナイ、此處ニ於テ
銀行名ヲ擧ゲテ是々ヤッテ吳レト云フコト
ヲ申上ゲレバ、ソレハ銀行ノ信用ニ關スル
カラ私共サウ云フコトハ要求シマセヌガ、
大體ノ銀行數カラ見マシテ融資ノ對照ハド
レダケノ數ガ其融資ヲヤルベキ銀行デアル
カト云フ所カラ出テ來マスト、自ラ五億萬
ト云フモノガ大體銀行數ノ何處々々ヘ分配
サレルト云フコトノ見當ガ付イテ來ルノデ
アリマス、サウスルト其銀行ノ不動產ヲ持ッ
テ居ル所ノ債權ノ固定數モ亦自ラ各銀行カ
ラ分ッテ來ルダラウト思ヒマス、ソレカラ
算用シテ行キマスト、是ガドウ云フヤウニ
徹底シテ行クカ、私本會デ述べマシタヤウ
ナ工合ニ、三井、三菱、安田、住友或ハ第
一銀行トカ行フヤウナ十一ノ「シンヂケー
ト」銀行、是等ハ不動產貸付ヲヤッテモ差支
ハナカラウト思ヒマスカラ、コンナモノヲ
除外シテシマヒマシテ、銀行數カラ精細ニ
茲ニ吟味シテ參リマシタナラバ、此今囘ノ
融資ガ何處ニ落チテ行クカ、ドレ位ノ程度
デ落チテ行ッテ、一銀行當リニドレ位落チテ
來ルカト云フコトカラ換算シテ見マスト云
フト、此五億ガ下ニ徹底スルカシナイカト
云フコトノ結論ガ私ハ自ラ得ラレテ來ルダ
ラウト思ヒマス、甚ダ複雜ナル〓究ノ要求
デアリマスケレドモ、若シ大藏省ニ此方面
ノ御見當ガ御付キニナラレテ居ルナラバ、
今ノ銀行ノ數ノ上カラ言ッテ、固定シテ居ル
不動產ノ程度カラ申シマシテ、ソレカラ御
說明下サイマスナラバ、又吾々モ武田君ノ
質問セラレタ點モ自ラ了解シテ來ルダラウ
ト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313026X00219320828&spkNum=30
-
031・大久保偵次
○大久保政府委員 只今ノ御尋ノ前段ハ如
何ニシテ弊害ヲ取締ルカト云フヤウナ御趣
旨デゴザイマシタ、ソレ〓〓ノ融資銀行ニ
ハ監理官ガアリマシテ、非常ナ精細ナル表
ヲ取ッテ監督シテ居リマスバカリデナク、事
前ニ於テモ今御擧ゲニナッタ銀行ノミナラ
ズ、相當程度ニ於テ此頃ハ監督ヲ勵行致シ
テ居リマス、ノミナラズ此頃ハ普通銀行ニ
對シマシテモ、旣ニ御話ノ中ニモ出マシタ
通リ、全國一般ニ精細ナル檢查ヲ遂ゲマシ
テ、銀行ノ實情ニ付テハ相當明ニナッテ居リ
マスノミナラズ、銀行法規ガ改正ニナリマ
シテ、重役竝ニ其關係者ノ取引ニ付テハ、
年ニ四囘拵ヘマス所ノ監査書ニ於テ、必ズ
ソレヲ明記スルト云フ風ナコトニナッテ居
リマス、ソレデソレ等ノ實際問題カラ見テ
モ、相當ニ弊害ガ除カレルヤウナ組織ニナッ
テ居リマスカラシテ、特殊銀行ニ於キマシ
テ惡イコトヲシヨウニモ、ソレ等ノ點ニ付
テハ餘程困難ナ實情ニナッテ居ルダラウト
思フノデアリマス、併シ監督ノ方ノ實際ノ
問題ト致シマシテハ、是ハ御注意ノ點ハ正
ニ敬承シナケレバナラヌ點デアリマスカ
ラ、十分ニ尙ホ實行ノ出來マスヤウニ注意
ヲ致ス積リデアリマス
第二ノ點ニ付キマシテハ、全國ノ銀行數
ハ幾ラデアルカ、ソレニ對シテドノ位ノ見
當ヲ持ッテ居ルカト云フ御尋デゴザイマシ
タガ、最近ノ統計デハ全國曹通銀行ハ六百
三十トナッテ居リマス、貯蓄銀行ハ八十八デ
アリマス、六百三十ノ中ニ無資格銀行ガ幾
ラアルカト云フ御尋デアリマシタガ、今日
ノ數デハモット減ッテ居リマスガ、無資格銀
行ハ最近ノ統計表ニ出マシタノハ百七アリ
マスガ、其中ニ二十數行ハモウ既ニ資格變
更ノ手續中デゴザイマス、實際問題トシテ
今殘ッテ居ルノハ八十餘リデアリマス、其八
十餘リノ中デ六十行バカリハ近クソレ〓〓
ノ手續ヲ取ルヤウニ、ソレ〓〓申請トカノ
手續進行中ノモノデゴザイマス、是等ノ銀
行ノ六百三十ト、貯蓄銀行ノ八十ト云フノ
ガ今度ノ此融資ヲ受ケル銀行ノ目標デゴザ
イマス、其總計ガ此間カラ申シマス通リ、
貸付金ニ於キマシテ十四億二千九百六十六
萬三千六百三十一圓、昨年ノ下期ノ十二月
末ノ計數デゴザイマス、其中ニ支拂ヲ停止
シテ居リマスモノヽ債權額ガ八千九百十萬
六百三十三圓ト云フ數字ニナッテ居リマシ
テ、是等ハ御手許ニ差上ゲテ居リマス表ノ
中ニ載ッテ居リマス、其中ニ付キマシテ融資
銀行ハ三色ニナッテ居リマス、勸業銀行ト農
工銀行ト、北海道拓殖銀行デゴザイマス、
勸業銀行ハ今日ハ農工銀行ニ合併致シマシ
タ關係上、全國ニ相當ノ數ノ支店、出張所
ヲ持ッテ居リマス、農工銀行ハ今日十九縣ニ
アリマス、北海道拓殖銀行ヲ入レマシテ、
勸業銀行以外ノ融資銀行ガ二十ニナリマ
ス、其貸出ノ實情カラ見マシテ、其力カラ
見マシテ、大體ニ於テ勸業銀行ト他ノ二十
行トガ稍〓匹敵シテ居ル趨勢ヲ示シテ居リ
マス、例ヘバ不動產貸出ニ付キマシテモ、
先程武田サンガ仰シヤッタ通リ、勸業銀行ガ
六億六千萬貸シテ居リマスレバ、他ノ二十
ノ銀行デモ稍〓ソレニ匹敵スル六億六千萬
近クノモノヲ貸シテ居リマス、色々ナ力ガ
稍〓兩方似タヤウナ形ニナッテ居リマスカ
ラ、今度ノ融資補償法ノ問題ヲ取扱フニ付
キマシテモ、大體ニ於テソレ等ノ實力ヲ
頭ニ置キマシテ、且又各地方ノ金融疏通ノ
實情ヲ緩和致シマシテ、出來ルダケ公平ニ
是等ヲ配分シテ行クト云フ仕組ニ考ヘテ居
リマス、左樣御承知ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313026X00219320828&spkNum=31
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032・武田徳三郎
○武田委員 私ハ先程伺ッテ居ッタコトデア
リマスガ、モウ一寸伺ヘバ其點ダケハ終ル
ノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313026X00219320828&spkNum=32
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033・中島彌團次
○中島委員 私ノハ後ニ保留シテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313026X00219320828&spkNum=33
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034・青木雷三郎
○靑木委員 一寸關聯シタコトデ······私ハ
實ハ本法ノ問題ト致シマシテ、勿論他ニモ
重要ナ點モアルヤウデアリマスガ、大體金
額ノ問題ガ此委員會ノ重要性ヲ帶ビルデハ
ナイカト思フノデアリマス、其意味カラ申
セバ、中島君カラ詳シク尋ネラレマシタノ
デアリマスガ、此問題ガ大體諒解ガ出來レ
バ此議事ノ進行モ非常ニ早イコトヽ思ヒマ
スカラ、更ニ私モ關聯シタ問題ヲ御尋致シ
マヾ、ソレハ第七條ニモ規定ガアルノデア
リマスガ、只今局長ノ御說明ニ依リマスト、
一億圓ト云フ金ハ私共ノ考ヘル所ニ依リマ
スト、取扱銀行卽チ融資銀行ガ一億圓以上
ノ若シ損失ヲスルヤウナ場合ニハ、或ハ取
扱上ノ缺點カラ來タノダカラ、是ハ融資銀
行ニ負擔サシテモ宜シイト云フヤウナコト
デ、一億圓限度ノ御決定ニナッタノデアリマ
スカ、又ハ色々御說明ニナッタヤウニ一億圓
デ十分デアルト云フコトデアリマスカ、此
點ヲ一ツ御伺シタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313026X00219320828&spkNum=34
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035・大久保偵次
○大久保政府委員 立案致シマシタ趣旨
ハ、特殊銀行ト雖モ相當ノヤハリ堅實サヲ
持タセナケレバナリマセヌカラ、特殊銀行
ニ此仕事ノ爲ニ特ニ損失ヲ與ヘテモ構ハヌ
ト云フ趣旨ニハ考ヘテ居リマセヌ、特殊銀
行ノ執務上デ受ケタ損失ハ、出來ルダケ大
體ニ於テ之ヲ補償スル、斯ウ云フ建前デゴ
ザイマス、消極的ニ鑑定ノ費用デアルトカ、
其他色々仕事ヲスル爲ニ努力シナケレバナ
ラヌ部分ガアリマス、鑑定ノ手數料モ取ル
ナトカ、成ベク融資ノ方面ヲ圓滑ニスル爲
ニ色々費用ノ上ニ於テ、相當ニ勉强シナケ
レバナラヌ分ガゴザイマスノデアリマスカ
ラ、ソレ等ノ實行上ニモ特殊銀行ニ於テ時
局ニ鑑ミテ人ヲ增ストカ、或ハ調査鑑定ノ
手數料ハ取ルナトカ、其他色々ナ勉强振リ
乃至ハ色々ノ經費ノ點ニ付キマシテ特殊銀
行ガ相當ノ御奉公ヲシナケレバナラヌト云
フ地位ニアルト思ッテ居リマス、旣ニ過日預
金部カラ出シマシタ二億圓カラ差當リ五千
萬圓ノ融資ヲ致シマス際ニ於キマシテモ、
時局ノ上カラ是等ノ費用等ニ付キマシテハ
特殊銀行ニ對シテ御奉公シロト云フ風ナ意
味デ指圖ヲ致シマシタノデアリマス、併ナ
ガラ此業務ヨリ生ズル所ノ直接ノ損害ヲ是
等ノ銀行ニ負擔サセルト云フコトハ、ヤハ
リ特殊銀行ノ堅實サノ上カラ見マシテ考慮
スベキ問題デアリマスカラ、其點迄ハ負擔
サセルト云フ積リニハ考ヘテ居リマセヌ、
大體算出致シマス基準ハ是カラ考ヘナケレ
バナラヌノデアリマスガ、今迄ノ先例等ヲ
考ヘマシテ、大體融資銀行ノ損失ハ此關係
ニ於テ、此程度デ以テ「カバー」ガ出來ルモ
ノデアル、隨テ融資銀行ニハ此問題カラ積
極的ニ損失負擔ノ必要ハナイ、斯ウ考ヘテ
居リマス次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313026X00219320828&spkNum=35
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036・青木雷三郎
○靑木委員 サウ致シマスレバ武田君ガ先
程御話ニナッタ第七條ノ大部分ハ若シ此金
額ヲ殖シテ置イテモ、銀行ガ眞面目ニヤッ
テ、サウシテ一億五千萬圓ノ負擔ガ出來レ
バ、ソレガ爲ニ立法上ノ理由ガ通ル譯デア
リマス、例ヘバ之ヲ一億五千萬圓トカ二億
圓トカニシテ置キマシテ、何カ當局トシテ
損害トカ、不利益トカアルデアリマセウカ、
其點ヲ御尋致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313026X00219320828&spkNum=36
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037・堀切善兵衞
○堀切政府委員 一面カラ申セバ補償ノ限
度ハ成ダケ餘計ニシテ、本法ノ適用ヲ成ダ
ケ大キク致シタイト云フ希望ハ是ハ十分私
共考ヘマスガ、同時ニ又國家トシテ此補償
ハ國民全體ノ將來負擔ニ歸スベキ問題デア
リマスカラ、一面カラ言ッテハ出來得ルダケ
之ヲ少クシナケレバナラヌトモ考ヘテ居ル
ノデアリマス、兩方ノ是ハ相衝突シテ居ル
利害關係ニナリマスノデ、之ヲ決定スルコ
トハ頗ルムヅカシイノデアリマス、先ヅ私
共ハ一億圓程度ガ相當デナイカト考ヘマシ
タ次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313026X00219320828&spkNum=37
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038・青木雷三郎
○靑木委員 是ハ繰返サレタ御答辯テアリ
マスガ、私共ハサウ云フ心配ハナイカラ十
億圓計上シテモ宜イ、十五億圓計上シテモ
宜イト云フコトヲ申上ゲルノデハナイノデ
アリマス、本法ノ精神ガ時局匡救ノ目的デ
ヤッテ居ルノデアリマスカラ、又局長ノ御說
明ニナリマシタヤウニ取扱銀行ニハ是ガ爲
ニ損ヲ掛ケルヤウナコトガアッテハイケナ
イカラ、損ヲ掛ケルコトガアリマスト致シ
マスト、武田君ヤ中島君ガ心配ヲ致シテ居
リマスヤウニ、折角此法ガ實施サレマシテ
モ活用ガ出來ナイト云フ事情ニ相成リマス
シ、又取扱ノ上ニ於キマシテ、第七條ノ嚴
格ナ規定モアルノデアリマスカラ、此程度
ノ金額ヲ先ヅ假ニ相當ナ金額ト思ヒマス、
私ハ金額ノ程度ニ對シマシテハ色々又御相
談ガ出來ルヤウニ思ヒマスガ、相當ノ金額
ニシテ置クナラ私共ハ心配ハナイト考ヘマ
ス、又若シ眞ニ此法律ガ活用サレマシテ、少
々金額ガ殖エルコトニ相成リマシテモ、此
立法上ノ精神ハ達シ得ルヤウナコトニ相成
ルノデアリマス、此點ニ對シマシテ一億ト
云フ金額ノ算定ハソレデ宜カラウ、斯ウ云フ
程度ノモノデアッテ、若シソレ以外ニ貸出ヲ
スルヤウナコトガアレバ、ソレハ融資銀行ノ
損害ニナルモノデアルト云フコトニナレバ、
尙更此金額ニ裕リヲ置イテ-私共カラ見
レバ裕リデハナイ、必要デアリマスガ、當
局者ノ方カラ見レバ裕リデアリマス、サウ
云フコトニシテサウシテ實際ニ融資銀行ヲ
シテ活用ヲヤラセ、サウシテ實際本法ノ目
的ヲ達スルヤウニシタノガ宜イデハナイカ
ト云フコトヲ考ヘルノデアリマスガ、是ハ
ソレ以上進ミマスト議論ニナリマスカラ差
控ヘルノデアリマスガ、要スルニ私共ハ取
扱銀行ニハ損失ヲ掛ケナイノミナラズ、相
當ノ手數料迄渡シテ是等ノ點ニ付テ取扱ヲ
敏活ニシ、簡易ニスルト云フ目的デアリマ
ス以上、ドウシテモ此金額ニ對シマシテハ
當局ニ於テ御一考ヲ願ハナケレバナラヌト
云フコトヲ中上ゲマシテ、私ノ質問ヲ終リ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313026X00219320828&spkNum=38
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039・武田徳三郎
○武田委員 私ハ補償ノ事ニ付テ簡單ニ承
リマス、此度ノ御提案ハ融資銀行ヲシテ不
動產ノ評價ヲ成ベク寛大ナラシムルト云フ
御趣旨ノヤウニ伺ッテ居リマス、是ハ極メテ
結構ナコトヽ思ヒマス、之ヲ寛大ニスルニ
アラザレバ到底-先程中島君カラ御話モ
アリマシテ、私ハ御禮申上ゲテ居ルノデア
リマスガ-本案ヲ實行シテモ困難デア
ル、豫定ノ融資ヲ實現シテ眞ニ金融ノ疏通
ヲ圖ルト云フコトモ困難デアルト思ヒマ
ス、而シテソレヲ寛大ニスルト云フコトハ
ドウ云フ風ニシテ寛大ナラシムルヤウナ御
腹案ガアリマセウカ承リタイ、或ハソレハ
手心デアルトカ、或ハ何等カ訓令ノヤウナ
モノヲ出シテ御ヤリニナルノカ、又ハ從來
ノ勸業銀行ノ見積方法ヲ特ニ改メシムルヤ
ウナ手段ヲ御執リニナルノカ、幸ニ寛大ナ
見積リガ出來ルト云フコトニ相成リマスレ
バ洵ニ仕合セデアリマスガ、サウシマスト、
先程繰返シテ申シタ譯デアリマスガ、其寛
大ニ見積ッタ全額ヲ貸付ケルト云フコトニ
ナリマスカラ、ドウシテモ其處ニ、勸業銀
行デ現在行ッテ居ルヨリ危險ノ率ガ多クナ
ルト云フ結果ハ免レナイノデアリマス、サ
ウスルト私ガ最初ニ申上ゲタヤウニ、今度
ノ貸方ハ三割乃至四割餘計負擔ヲスル、現
在ニシテモ相當寛大デアルノニ更ニ寛大ナ
貸方ヲスルト、更ニ危險率ガ多クナルト云
フコトニナリマスカラ、一億圓ノ補償額デ
ハ少クハナイカト云フ結論ニ到達スルヤウ
ニ思フノデアリマス、ソレデアルカラ評價
ヲ寛大ニスルト云フコトハ、ドウ云フ方法
デ御ヤリニナルカト云フコトヲ承ルト同時
ニ、ソレニ關聯シテ後段申上ゲタコトニ付
テ一應御說明ヲ願ヒタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313026X00219320828&spkNum=39
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040・大久保偵次
○大久保政府委員 二億圓ノ中差當リ五千
萬圓出シテ、融資補償法ニ付キマシテ出來
ルダケ簡單ナ手續ヲスルヤウニ致シタイ、
今迄ノヤウナ工合ニ長ク掛ッテ煩瑣ニナッテ
居ッテハ、金ヲ借リニ行ク者ハ非常ニ困ル、成
ベク簡單ニ、出來ルナラバ机上鑑定ヲ用ヒタ
イ、不動產銀行等デハ、何處ノ村ハドノ位、
何處ノ何某ハドノ位ト云フ、大體ノ標準ガ
分ッテ居リマスカラ、既ニ勸業銀行カラデモ
發表致シマシタヤウナ工合ニ、一應机上鑑
定ヲ用ヒマシテ、ソレニ依テ或程度ノ融資
ヲ至急ニヤル、手續ヲ非常ニ簡單ニスル、
尙又實際ニ臨ンデ之ヲスル場合ニモ、或ハ
調査手數料デアリマストカ、或ハ鑑定費デ
アリマストカ、色々ナ費用ヲ取ラナイ、又
迅速ニ手續ヲシナケレバナラヌ、且又鑑定
等ニハ斯道ノ人間モ相當加ッテ目的ヲ達ス
ルヤウニト云フ風ナ條件ガ含ッテ居リマス
ガ、法律上カラ申シマスト、今度ノ鑑定價
格ト云フモノハ先程述べマシタ通リ、第三
條ノ鑑定價格ハ現行法ノ勸業銀行法ヲ見マ
スト、第十八條及第三十一條、農工銀行法
ヲ見マスト第七條ノ三及第十條、斯ウ云フ
ヤウナ從前ノ鑑定價格ノ三分ノ二以内トス
ルト云フノヲ之ヲ全額迄行ケルト云フコト
ニ致シマシタ、此點ダケハ法規上鑑定價格
ノ改定ナノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313026X00219320828&spkNum=40
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041・武田徳三郎
○武田委員 サウシマスト、成ベク評價ヲ
寛大ニスルト云フ意味ハ鑑定料ヲ取ラナイ
トカ、迅速ニ事ヲ運ブトカ、煩瑣ナ手續ヲ
成ベク簡單ニスルト云フ意味ダケデアリマ
シテ、從來ノ評價ノ方法ニ多少ノ變更ヲ加
ヘテ成ベク評價ヲ緩カニスルト云フ、詰リ
今迄ノヤウナ嚴格ニセズシテ、多ク見積ル
ト云フヤウナ意味ハ含マレテ居ナイノデア
リマスカ、從來勸銀ノヤリ方ト云フモノハ
ソレ〓〓規定モアリマセウシ、内規モアリ
マセウガ、ドウモ實際ノ市價ヨリハ少シ見
積方ガ辛イト一般ニ言ハレテ居ル、ソレデ
此度ハ成ベク多ク貸出ヲシ、危險ニ陷ラナ
イ範圍内ニ於テ貸出ヲスル、尙ホ危險ガア
ルコトヲ慮ッテ補償ヲヤルコトニナッテ居ル
ノデスガ、其補償ト云フ意味ニ於テハ從來
ノ評價ヨリハ、評價ノ手續ノ簡易ト云フノ
ミデナク、評價ソレ自身ヲ寛大ニスル意味
ガ含マレテ居ルモノト承知シタノデアリマ
スガ、今ノ局長ノ御話カラスレバ鑑定料ヲ
取ラヌトカ、机上鑑定ヲシテ成ベク貸付方
ヲ早クスルト云フ手續上ノ便宜ト云フダケ
ニ止ッテ居ルモノデアリマセウカ、サウスル
ト吾々ノ考ヘテ居ッタノヨリハ少シク違フ
ヤウニ思ヒマスガ、ソコヲ一ツ明ニ承リタ
イト思フノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313026X00219320828&spkNum=41
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042・大久保偵次
○大久保政府委員 法律上ノ問題ト致シマ
シテハ、三分ノ二デアッタノヲ全額マデ行キ
マスカラ、此點ニ付テハ鑑定價格、貸付價
格ノ擴張ニナルノデアリマス、ソレ以外ノ
鑑定ノ手心ニドウ云フコトヲ用ヒルカト云
フヤウナ問題ニナリマスト、是ハ融資銀行
ト不動產銀行ノヤリマス事柄デアリマシ
テ、今日ソレヲ特ニ不必要ニ辛ク見ルト云
フコトハイケナイ、ソレハ此前ノ二億圓ノ
場合ニモ出來ルダケ評價鑑定ヲ事實ニ近カ
ラシムルヤウニヤレト云フ注意的ノ命令ハ
行ッテ居リマスガ、此際補償ガ付イテ居ルカ
ラ是ダケ寛大ニヤレト云フヤウナ積極的ノ
意味合ハ、此法規ニハ含ンデ居リマセヌ、
此法規ノ範圍內ニ於テハ三分ノ二ガ全額ニ
ナッタダケデゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313026X00219320828&spkNum=42
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043・武田徳三郎
○武田委員 サウシマスト法規上ニ付テハ
局長ノ御說明デ滿足致シマスガ、實際ハ多
少此評價ニ何カ內訓的ナ方法カ、或ハ御監
督ノ上カラシテ成ベク評價ヲ寛大ニスルト
云フヤウナ御處置ヲ御執リ下サル御意思デ
アルノデアリマスカ、又サウデナク、今承
ルト五千萬圓ノ時ノヤウニ實際ニ遠ザカラ
ナイヤウニセヨト云フ位ナ、御注意位ノ程
度デスカ、ソレハ當然ナ話デ、元來市價ニ
遠ザカラナイヤウニト云フコトハ改メテ言
フ迄モナイコトデ、當局ガ既ニ勸銀其他ニ
對シテサウ云フ御注意ノ訓令ヲ御出シニナ
ルト云フノハ、勸銀ノ評價ト云フモノハ少
シ辛過ギル、實際ノモノヨリハ辛過ギルト
云フコトカラシテ、今度少シ寛大ニセヨト
御注意ニナッタモノデアリマセウガ、其點カ
ラ見テモ大藏當局御自身旣ニ勸銀ノ評價ト
云フモノハ、少シク穩當ヲ缺イテ居ル、餘
リニドウモ辛過ギルト云フコトヲ御認識ニ
ナッテ居ルト謂ハナケレバナラヌ、サウ致シ
マスト何等カ監督上ノ作用ニ依テ、若クハド
ウ云フ機關デアルカ私ハ存ジマセヌガ、兎
モ角適當ナ手段ヲ以テ從來ヨリハ評價ヲ-
-不動產ノ評價ヲ寛大ニセシムル、手續ノ
簡易ノミナラズ、實質ニ於テモ寛大ニセシ
ムルト云フ御趣旨ガアルノデアリマスカ、
ナイノデアリマスカ、吾々ノ希望カラ致シ
マスレバ、是非從來ヨリハ寬大ニセシムル
ヤウニ御配慮ヲ願ヒタイト云フ希望ヲ持ッ
テノ御伺デゴザイマス、其點如何デスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313026X00219320828&spkNum=43
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044・大久保偵次
○大久保政府委員 サウ云フ風ナ御希望ハ
所々方々カラ出テ居リマスノデ、其御希望
ニ付テハ出來ルダケ當事者ニモ考ヘサセル
ト云フ趣旨ニ於キマシテハ、私全ク同感デ
アリマス、此問題バカリデナク、一般的ニ
勸業銀行ノ貸出ニ付テハ其點ヲ注意致シテ
居ル次第デアリマス、唯御尋ガ此貸付ダケ
特別ニ扱フカト云フヤウナ御趣旨デアリマ
スガ、今ノ勸銀ニ對スル世評ハ此問題バカ
リデナク、一般的ニ御話ノヤウナコトガア
リマスノデ、一般的ニ辛過ギル、不必要ニ
辛過ギル、ソレハ成ベク不必要デナイヤウ
ニヤラシテ行キタイ、唯此問題ダケニ付テ
別格ニ取扱フカト言ヘバ、ソレハ中々困難
ナ問題デゴザイマスカラ、法律ソレ自身ニ
於テ是ヲ擴ゲマシタ、斯ウ云フヤウナ次第
デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313026X00219320828&spkNum=44
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045・武田徳三郎
○武田委員 先程モ一寸伺ヒマシタガ、休
業銀行ノコトデアリマス、今囘休業銀行ノ
中將來復活シ得ル見込ノモノニアッテハ融
資ヲスル、見込ノナイモノハ融資ヲシナイ
ト云フ、斯ウ云フ御答辯デアリマシタガ、
サウシマスト云フト、其數ハドノ位アリマ
スカ、休業銀行ノ數ハ先程承リマシタケレ
ドモ、將來復活シ得ル銀行ハドノ位アルカ
ト云フコトハマダ承リマセヌガ、其數ハ兎
モ角ト致シマシテ、復活ノ見込ノナイ休業
銀行ニ對シテ不動產ヲ擔保ニ借入ヲシテ居
ル債務者ト云フ者ハ、如何ナル場合ニ於テ
モ此恩惠ニ與ルコトガ出來ナイヤウナコト
ニナルト思ヒマスガ、併シ一面カラ言ヘバ
其休業銀行ニ對シテ提供シテ居ル不動產ニ
肩代リヲシテ貰ッタカラト云ッテモ、融資銀
行ハ何等ノ損害モナク、又債務者ハソレダ
ケ助カルノデアリマス、ヤハリ利子モ安ク
期限モ長ク肩代リシテ貰フノデアリマスカ
ラ助カルノデアリマスガ、隨テ營業ノ見込
ノナイ休業銀行ト雖モ破產ノ場合ニ債權ヲ
取ッテ債務ニ充當シナケレバナラヌノデア
ルカラ、肩代リヲシテ貰フタ方ガ休業銀行モ
助リ、債務者モ助ルノデアリマス
ソレデ此規定ノ中カラ將來復活ノ見込ノ
ナイ休業銀行ニ對シテハ貸出ヲシナイト云
フコトニナッタノハドウ云フ譯デアリマス
カ、コレハ氣ノ毒ノヤウニ思フバカリデナ
ク不公平ノヤウニモ考ヘラレルノデアリ
マスガ、ソレハドウ云フコトニナリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313026X00219320828&spkNum=45
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046・大久保偵次
○大久保政府委員 休業銀行ノ數ニ付キマ
シテハ御手許ニ差上グテアル表ノ中ニ書イ
テゴザイマス、其休業銀行ノ中デ幾ラガ復
活スルデアラウカドウデアラウカト云プ御
尋ニ對シテハ、今銳意整理案ヲ作成シツ
アリマス、是ハ銀行ノ內部ノ整理案、竝ニ
色々ナ理由デ以テ例ヘバ重役ノ誠意ニ依リ
マシテ、其他又預金者ノ互讓等ニ依リマシ
テ、整理案ト云フモノガ立ツ譯デゴザイマ
シテ、ソレヲ適確ニ是ダケト云フコトヲ豫
言スルコトハ出來マセヌ、遺憾ナガラ將來
ニ於テモ見込ノアルモノ幾ラト云フコトハ
申上ゲ兼ル次第デアリマス、休業銀行中復
活ノ見込ガナイモノニ付テモ其恩典ヲ及ボ
シタラ宜イヂヤナイカ、殊ニ肩代リノ場合
ニ於テハ何等利害關係ガナイヂヤナイカト
云フヤウナ御趣旨デアリマスガ、其點ニ付
テハ相當色々攻究致シマシタガ、第一ニ休
業銀行ハ破產法上ドウ云フ地位ニ立ツカト
云フ點ガ問題ニナルノデアリマス、大審院
ノ判例ニモ必ズ決ッテ居ルト云フ譯デモア
リマセヌガ、大體最近ノ判例ハ休業銀行ハ
一種ノ支拂停止デアル、要スルニ破產ノ前
提デアルト云フ風ニナッテ居リマス、融資銀
行ガ之ニ對シテ爲シタルモノハ御承知ノ通
リ破產法ニ依リマシテ無效ニナリマス、ソ
レデ契約ソレ自身ガ取消サレルヤウナモノ
ニナリマシテ、其關係ハ法律的ニ極メテ面
倒デアリマス、現ニ融資銀行ノ中デハサウ
云フ風ナ事情カラ致シマシテ休業銀行ガ整
理確定スレバ、是ハ別問題デアリマスガ、
整理確定ガ出來ナイ休業銀行ニ付テハ、法
律上ノ難點ガアルト云フコトヲ今〓究致シ
テ居ル次第デアリマス、大體ニ於テハ大審
院ノ判例ハサウ云フ風ナ判例モ多イヤウデ
アリマス、此點ハソレ等ノ意味ガ一ツト、
ソレカラ更ニ金融疏通ト云フ意味カラ致シ
マシテモ、旣ニ將來見込ノナイト云フ問題
ニ付テ、サウ云フ風ナ銀行ガ金融ノ疏通ノ
上ニ稗益スル點ハ割合ニ少ナイヂヤナイカ
ト云フヤウナ[實情ノ考モアルノデアリマ
ス,旁々法律上ノ問題、ソレ等ノ事情カラ
休業銀行ノ融資銀行カラ受ケル場合ハ成ベ
ク整理更生ノ見込ノアルモノヲ目安ニシテ
置キタイ、斯ウ說明ヲ申上グタノデアリマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313026X00219320828&spkNum=46
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047・武田徳三郎
○武田委員 私ハ尙ホ二三質問ガアルノデ
アリマスガ、尙ホ繼續シテ御答下サルノデ
アレバ質問ヲ繼續致シマス、時間ガナケレ
バ明日ニ保留シタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313026X00219320828&spkNum=47
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048・金光庸夫
○金光委員長 ソレデハ明日ニナサッテハ
如何デゴザイマスカ-本日ハ此程度デ止
メマシテ、次囘ニ於テ質問ヲ繼續スルコト
ニシタイト思ヒマス、宜シウゴザイマスカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313026X00219320828&spkNum=48
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049・金光庸夫
○金光委員長 ソレデハ質問ハ留保シテ置
キマス、次囘ノ開會ノ日時ハ公報ニテ御承
知ヲ願ヒマス、本日ハ是ニテ散會致シマス
午後四時一分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313026X00219320828&spkNum=49
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