1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和七年九月一日(木曜日)
午後一時十八分開議
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議事日程 第八號
昭和七年九月一日
午後一時開議
第一 罹災救助基金法中改正法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第二 右議案の審査を付託すへき委員の選擧
第三 製絲業法案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第四 産業組合中央金庫特別融通及損失補償法案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第五 産業組合法中改正法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第六 産業組合中央金庫法中改正法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第七 不動産融資及損失補償法案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第八 昭和七年法律第六號中改正法律案(昭和七年度一般會計歳出の財源に充つる爲公債發行に關する件)(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第九 母子扶助法案(小池四郎君提出) 第一讀會
第十 百貨店法案(野田文一郎君外二名提出) 第一讀會
第十一 大正十五年法律第二十四號中改正法律案(地方税に關する件)(野田文一郎君外二名提出) 第一讀會
第十二 航空法中改正法律案(永田良吉君提出) 第一讀會
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一 國務大臣の演説に對する質疑 (前會の續)
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〔左の報告は朗讀を經さるも參照の爲茲に掲載す〕
一議員より提出せられたる議案左の如し
道路法中特例に關する法律案
提出者
牧野賤男君 三上英雄君
中島守利君 坂本一角君
津雲國利君 中野勇治郎君
堀江正三郎君 中村繼男君
高木正年君 有馬淺雄君
耕地整理事業振興に關する建議案
提出者 田中祐四郎君
市俄古萬國博覽會參加に關する建議案
提出者 加藤知正君
名古屋市に少年審判所設置に關する建議案
提出者
瀬川嘉助君 田中善立君
加藤鐐五郎君
新潟驛改築に關する建議案
提出者
松木弘君 佐藤與一君
渡邊幸太郎君 山田助作君
出塚助衞君
絹織物消費税撤廢に關する建議案
提出者
青木精一君 坂本一角君
雪害地方國有林薪炭材拂下に關する建議案
提出者
高橋熊次郎君 松岡俊三君
助川啓四郎君 杉本國太郎君
青山憲三君
新潟北鮮間直通定期命令航路開始に關する建議案
提出者
松木弘君 出塚助衞君
加藤知正君 渡邊幸太郎君
佐藤與一君 山田助作君
増田義一君
(以上八月三十一日提出)
耕地整理事業振興に關する建議案
提出者
高田耘平君 荒川五郎君
(以上九月一日提出)
一議員より提出されたる質問主意書左の如し
非常時匡救醫療制度に關する質問主意書
提出者 清水留三郎君
南洋事業救濟に關する質問主意書
提出者 津崎尚武君
我か帝國の使命其の國號及國語竝青年教育振興に關する質問主意書
提出者 佐藤與一君
樺太に關する質問主意書
提出者 蔭山貞吉君 坂本一角君
河野通治贈位奏請に關する質問主意書
提出者 武知勇記君
新聞記事取締に關する質問主意書
提出者 世耕弘一君 玉置吉之亟君
我か帝國國名の稱呼使用に關する質問主意書
提出者 原夫次郎君 牧山耕藏君
國防に關する質問主意書
提出者 高橋壽太郎君
國際統一手形條約の批准状況に關する質問主意書
提出者 清瀬一郎君
(以上八月三十一日提出)
一昨三十一日委員長及理事互選の結果左の如し
通信事業特別會計法案(志賀和多利君提出)委員
委員長 向井倭雄君
理事
丸山浪彌君 坪山徳彌君
大神田軍治君
一昨三十一日に於ける特別委員の異動左の如し
通信事業特別會計法案(志賀和多利君提出)委員
辭任 水島彦一郎君 補闕 竹下文隆君
辭任 田中貞二君 補闕 山田佐一君
金錢債務臨時調停法案(政府提出)委員
辭任 鳩山秀夫君 補闕 増田金作君
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313242X00919320901&spkNum=0
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001・秋田清
○議長(秋田〓君) 是ヨリ會議ヲ開キマ
ス、日程第一、罹災救助基金法中改正法律
案ノ第一讀會ヲ開キマス-內務大臣山本
達雄君
第罹災救助基金法中改正法律案
(政府提出、貴族院送付)第一讀會
罹災救助基金法中改正法律案
罹災救助基金法中左ノ通改正ス
第四條中「營業稅」ヲ「營業收益稅」ニ改ム
第八條中第五號ヲ第六號トシ以下順次繰
下ゲ第四號ノ次ニ左ノ一號ヲ加フ
五埋葬費
第十二條ノ二埋葬費ハ災害ノ際死亡シ
タル罹災者ヲ埋葬スル費用ニ充ツ
第十五條第一項中「郡」ヲ削ル
第十五條ノ二罹災救助基金ノ貯蓄ガ勅
令ヲ以テ定ムル金額以上ニ達シ且地租、
營業收益稅及所得稅ノ附加稅ノ賦課ガ
明治四十一年法律第三十七號第一條乃
至第三條ノ制限ニ達シタル府縣ハ每年
度其ノ前前年度ニ於テ基金ヨリ生ジタ
ル收入ヨリ其ノ年度ノ救助費、管理費、
補助費及基金運用上ノ損失ヲ控除シタ
ル殘額ノ二分ノ一以内ノ金額ヲ限リ該
勅令所定金額ヲ下ルニ至ラザル範圍內
ニ於テ之ヲ救護法施行ニ要スル經費ニ
充ツルコトヲ得
第十七條第一項第三號中「大藏省預金」ヲ
「大藏省預金部」ニ改ム
附則
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス但シ第十
五條ノ二及左ノ各項ノ規定ハ昭和七年度
ヨリ之ヲ適用ス
當分ノ内罹災救助基金ノ貯蓄ガ第十五條
ノ二ノ規定ニ依ル勅令所定金額以上ニ達
シ目地租、營業收益稅及所得稅ノ附加稅
ノ賦課ガ明治四十一年法律第三十七號第
一條乃至第三條ノ制限ニ達シタル府縣ハ
特別ノ事情アル場合ニ於テハ內務大臣及
大藏大臣ノ認可ヲ受ケ第十五條ノ二ニ規
定スル殘額ヨリ同條ノ規定ニ依リ支出シ
タル費用ヲ控除シタル金額ヲ限リ該勅令
所定金額ヲ下ルニ至ラザル範圍內ニ於テ
之ヲ必要ナル經費ニ充ツルコトヲ得
昭和七年度乃至昭和九年度ニ限リ第十五
條ノ二及前項ノ規定ノ適用ニ關シテハ罹
災救助基金ノ貯蓄額ハ第三條ノ制限額ニ
依ルモノトス
(小字ハ貴族院修正)
罹災救助基金法中改正法律案中左ノ通修
正ス
附則
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス但シ第十
五條ノ二及左ノ各項ノ規定ハ昭和七年度
ヨリ之ヲ適用ス
當分ノ内罹災救助基金ノ貯蓄ガ第十五條
ノ二ノ規定ニ依ル勅令所定金額以上ニ達
シ且地租、營業收益稅及所得稅ノ附加稅ノ
賦課ガ明治四十一年法律第三十七號第一
條乃至第三條ノ制限ニ達シタル府縣ハ特
別ノ事情アル場合ニ於テハ內務大臣及大
藏大臣ノ認可ヲ受ケ第十五條ノ二ニ規定
スル殘額ヨリ同條ノ規定ニ依リ支出シタ
ル費用ヲ控除シタル金額ヲ限リ該勅令所
定金額ヲ下ルニ至ラザル範圍內ニ於テ之
〓社會事業ノ助成其ノ他
ヲ〓必要ナル經費ニ充ツルコトヲ得
昭和七年度乃至昭和九年度ニ限リ第十五
條ノ二及前項ノ規定ノ適用ニ關シテハ罹
災救助基金ノ貯蓄額ハ第三條ノ制限額ニ
依ルモノトス
〔國務大臣男爵山本達雄君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313242X00919320901&spkNum=1
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002・山本達雄
○國務大臣(男爵山本達雄君) 只今議題ニ
上リマシタ罹災救助基金ノ法律ハ施行以
來旣ニ三十有餘年ヲ經過シ、各道府縣ニ於
ケル基金ノ額ハ比年增加致シマシテ、本年
四月現在ニ於テハ總額九千百六十六万八千
圓餘ニ達シテ居ルノデアリマス、隨テ基金
ヨリ生ジマス收入モ、每年度約四百万圓餘
ニ上ッテ居ル狀況デアリマス、他面救助費其
他ノ必要經費ノ額ハ、大體基金收入ノ四分
ノ一ニ滿タズ、殘額ハ總テ之ヲ基金トシ
テ、貯蓄セラレテ居ル現況デアリマス、然
ルニ近年經濟界ノ不況ニ基キマシテ、道府
縣ノ財政ハ極度ニ窮乏ヲ〓グルニ至リマシ
タ關係上、是ガ緩和ノ一方策トシテ、罹災
救助ニ支障ヲ來タサヾル範圍ニ於キマシ
テ、相當ノ條件ノ下ニ基金收入ヲ、救護法施
行ニ要スル經費其他ノ必要ナル經費ニ使用シ
得ルノ途ヲ開キマスコトガ、此際極メテ必要
ナル事項デアルト考ヘマスノデ、此趣意ヲ以テ
本法ヲ改正致シタイト考ヘルノデアリマス、
尙ホ同法ニ規定スル救助費支出費目中
ニ新ニ埋葬費ヲ加ヘテ罹災者救濟上遺
憾ナキヲ期シマスルト共ニ、現行法ノ條
文ノ中ニハ若干字句ノ修正ヲ要スルモノ
モアリマスノデ、是等ノ點ニ關シマシテモ
此機會ニ於テ、併セテ改正ヲスルヲ適當ト
認メマシテ、本改正法律案ヲ提出致シマシ
タル次第デアリマス
尙ホ改正案ニ付キマシテハ、貴族院ニ於テ
附則第二項中ニ「必要ナル經費」トアリマシ
タモノヲ、「社會事業ノ助成其ノ他必要ナ
ル經費」ト云フ字句ニ修正ヲサレタノデア
リマス、右ハ本改正法律案ノ趣旨ト格別異。ツ
タル所ナク、畢竟之ヲ明瞭ナラシムルモノ
ト認メマシテ、政府ニ於テモ之ニ同意ヲ表
シマシタル次第デアリマス、何卒御審議ノ
上御協贊アランコトヲ望ミマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313242X00919320901&spkNum=2
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003・秋田清
○議長(秋田〓君) 質疑ヲ許シマス、守屋
榮夫君、
〔守屋榮夫君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313242X00919320901&spkNum=3
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004・守屋榮夫
○守屋榮夫君 只今議題ニ上ッテ居リマス
罷災救助基金法中改正法律案ニ關聯シマシ
テ、二三ノ重要ナル事項ニ付テ、內務大臣
カラ親シク御意見ヲ拜聽致シテ置キタイト
考ヘマス
其第一點ハ、本法改正ノ骨子タル罹災救
助基金ノ利子ヲ以テ、救護法施行ノ經費ニ
充用スルト云フコトニ關シテヾアリマス
救護法ハ昭和四年ノ四月二日公布セラレマ
シテ、本年ノ一月一日カラ實施サレテ居ル
ノデアリマス、其實施ノ狀況ニ就テ見マス
ト、殆ド不徹底デアル、而シテ救護法ノ趣
旨ト云フモノハ、殆ド實現サレテ居ナイト
言ッテモ宜シイ狀態ニナッテ居ルノデアリマ
ス、何故デアルカト申シマスナラバ、救護
法ノ主體ハ御承知ノ如ク、市町村デアリマ
シテ、其經費ニ對シテ府縣ハ四分ノ一、國
庫ハ二分ノ一ノ補助ヲスルト云フ建前ニ
ナッテ居ルノデアリマス、卽チ救護ノ責任
者タル市町村ガ發動スルコトニ依テ、初メテ
救護法ノ運用ト云フモノガ行ハレテ來ルコ
トニナルノデアリマスガ、今日ノ救護法ノ
主體タル市町村ノ財政狀態ト云フモノヲ見
マスト、窮乏ノ極ニ達シテ居ルノデアル、
隨テ救護費ト云フモノヲ計上シマシテモ、
殆ド之ヲ執行スルコトガ出來ナイ狀態ニ居
ルノデアリマス、ト同時ニ地方ニ於ケル財
政モ枯渴致シテ居リマスガ地方費トシテ
救護費ガ計上サレテ居ルニモ拘ラズ、ソレ
ガ實施ヲ見ルコトノ出來ナイ狀態ニ在ル、
故ニ國ノ方ニ於テ豫算ニ二百八十餘万圓ト
云フ多額ノ救護ノ補助費ヲ計上シテ居リマ
スガ、町村ノ實際ノ救護施設ガ活躍シテ居
ラナイ關係カラ致シマシテ、恐ラク今日ノ
狀態ト云フモノヲ繼續致シマスレバ、本年
度ニ於テモ是等ノ國庫ノ救護補助費ト云フ
モノハ、之ヲ全部使用シ切レナクシテ、翌年
度ニ繰越サナケレバナラヌト云フ實情ニナ
ルダラウト考ヘマス、實際今日ノ社會狀態
カラ考ヘマスト、不景氣ノ深刻ナルニ伴ヒ
マシテ、救護法ノ目標タル所ノ可憐ナル窮
民ト云フモノハ、非常ナル勢ヲ以テ增加シテ
居リマスシ、又救濟ヲ要望スルノ聲ハ巷ニ滿
チテ居ルノデアル、救護法ト云フモノハソ
レ等ノ人々ヲ救護スル目的ヲ以テ、制定サ
レタニモ拘ラズ、政府ガ市町村竝ニ地方ノ
財政狀態ト云フモノニ對シテ、考慮ヲ拂フ
ト云フヤウナ點ニ付テ缺ケテ居ル關係カラ
致シマシテ、救護法ト云フモノガ、今日ノ
ヤウナ不徹底ノ極ニ達シテ居ルノデアリマ
ス、今囘政府ガ罹災救助基金法ノ改正ヲ企
テラレマシテ、其利子ノ一部ヲ府縣ノ救護
費ニ使用スルト云フコトニナサレタト云フ
コトハ、洵ニ其點カラ考ヘマスト、救護法實
施ニ關スル府縣ノ救護費ト云フモノヲ補充
スル意味ニ於キマシテ、結構ナ改正デアル
ト考ヘマスガ、假ニ本案ガ通過致シマシタ
所ガ、其救濟ハ府縣ノ救護費ノ救濟ニ止マ
ルノミデアッテ、一番大切ナル町村ノ救護費
ヲ如何ニシテ支辨スルカト云フ途ニハ何
等觸レテ居ラヌノデアリマス、ソレガ解決
サレマセヌケレバ、要スルニ救護法ノ實施
ト云フモノハ活動スルコトガ出來ナイト云
フ狀態ニナルノデアル、卽チ一番大切ナノ
ハ如何ニシテ窮乏ノ極ニアル市町村ノ財政
狀態ヲ改善シテ、市町村ノ救護費ガ實際ニ
於テ使用シ得ル狀態ニ立到ルカト云フコト
ヲ考ヘル點ニアルノデアリマス、此點ニ付
テ內務大臣ハ果シテドウ云フ考ヲ持フテ居
ラレルノデアルカ、唯僅ニ府縣ノ救護費ノ
缺乏ヲ補フガ爲ニ本法ノ改正ヲ企テラレマ
シテモ、實際ノ救護ノ責任者デアル所ノ市
町村ノ財政狀態ト云フモノニ對シテ、何等
カノ施設ヲ講ゼラレマシテ、市町村ガ救護
費ト云フモノヲ使用シ得ル狀態ヲ速ニ實現
サレナケレバ、殆ド本法改正ノ效果ハナイ
ト云ッテ宜シイ、又此點ニ付テハ內務大臣
ニ於テ御考ガアラセラレルコトデアラウト
考ヘル、卽チ本法ノ改正ダケヲ爲サレテモ、
窮乏シテ居ル所ノ市町村ノ救護費ヲ如何ニ
シテ支辨スルカト云フ途ヲ講ジマセヌケレ
バ、本法ハ佛ヲ作フテ魂ヲ入レナイモノニ
ナッテ來ルノデアル、此點ニ付テ內務大臣
ハドウ云フ御考ヲ持フテ居ラレルカ、現ニ窮
乏ニ瀕シテ居ル所ノ市町村ノ救護費ヲ、如
何ニシテ支辨サレル御考デアリマスカ、其
邊ヲハッキリ御答ヲ願ッテ置キタイト思フノ
デアリマス
第二點ハ本法改正ノ中附則ノ改正デアリマ
スル所ノ、當分ノ間罹災救助基金ノ利子ハ
必要ナル經費ニ使用スルコトガ出來ル、貴
族院ノ方デ修正ガゴザイマシテ、社會事業
ノ助成ト云フ文字ガ入,タノニ對シテ、政
府ハ同意セラレテ居ルノデアリマスカラ、
其意味ニ關シマシテ御伺ヲ致シタイト考ヘ
やく、私設社會事業家ガ陰慘ナル下層社會
ノ第一線ニ立チマシテ、淚グマシイ奮鬪ヲ
續ケテ居ルト云フコトニ對シマシテハ、私
共ハ洵ニ感謝感激ノ情ニ堪ヘナイモノガア
ルノデアリマス、今日社會事業ガ進展致シ
マシテ、其一部ハ公營ニ移サレタモノモア
リマス、卽チ國家竝公共團體ノ經營ニ社會
事業ガ移サレテ、社會事業ノ公營化ト云フ
モノハ漸次進展シテ居ル狀態デアリマス、
併ナガラ斯ウ云フヤウナ社會事業ノ發展ヲ
生ジマシタニ付テモ、吾々ハ玆ニ至ル迄ノ
間ニ於テ、私設社會事業家ガ、斯ノ如キ氣
運ヲ釀成スルガ爲ニ、獻身的ノ努力ヲシタ
其效果ヲ沒却スルコトガ出來ナイト考ヘル
ソレバカリデハアリマセヌ、社會事業ノ
公營化ハ今日ノ如ク發展ヲシタノデアリマ
スルガ、尙ホ私設社會事業ノ活動ノ範圍ハ
十分ニ殘サレテ居ルノデアリマス、公營化
サレタ所ノ社會事業デハ其目的ヲ達スルコ
トガ到底出來ナイ分野ガ廣ク殘ッテ居ルノ
デアリマス、例ヘテ申シマスナラバ、不
良兒ノ感化事業デアルトカ、乳幼兒其他保
護ヲ要スル所ノ兒童ノ保護事業デアルトカ、
或ハ婦女子ノ保護事業デアルトカ、老衰竝
不具癈疾者ノ保護事業デアルトカ、或ハ施
療ノ事業デアルトカ、隣保事業デアルトカ、
融和事業デアルトカ、斯ウ云フヤウナ私設
社會事業ノ方面ト申シマスルモノハ、何ト
シテモ人類愛ニ燃エ、人道主義ニ立脚シテ
獻身的ノ努力ヲ拂シテ、晝夜ヲ分タズ奮闘
スル精神ヲ以テ立ッテ居ル社會事業家ノ活
動ニ俟タナケレバナラヌモノデアリマス、
規則ヅクメノ冷ヤカナル態度ヲ以テ臨ンデ
ハ、到底所期ノ目的ヲ達スルコトガ出來ナイ、
血アリ、淚アリ、痒イ所ニ手ノ屆ク親切ヲ
以テ經營シテ行クト云フコトガ、何ヨリモ
大切ナコトデアリマス、カルガ故ニ今日デ
モ此種ノ私設社會事業家ト云フモノハ相
當ノ數ニ上ッテ居リ社會ノ爲ニ多大ノ貢
獻ヲ致シテ居ルノデアリマス、昭和四年ノ
社會事業ノ年鑑ヲ見テモソレガ分ルカト思
ヒマス、公營ノ一千四百四十五ニ對シテ、
私設社會事業ト云フモノハ二千四百五十一、
其經費ニ付テ考ヘマシテモ、公營ガ八百
七十万圓デアリマスルガ、私營ハ三千三
百五十六万圓、斯ウ云フヤウナ多額ナル經
費ヲ支拂ハレテ居ルノデアリマス、然ルニ
大正九年以後ニ於ケル經濟界ノ不景氣ト云
フモノハ、斯ウシタ社會事業團體ノ收入ニ
對シテモ非常ナル減少ヲ與ヘマシタ、ソレ
ガ爲ニ是等ノ社會事業團體ハ現ニ非常ナル
窮境ニ立ッテ居ルノデアリマス、ソレナラ
仕事ヲ廢止シタラバト云フヤウナコトモア
ルカモ知レマセヌガ、是等ノ社會事業團體
ハ仕事ヲ廢止シヨウトシテモ廢スルコトノ
出來ナイ、切ナル事情ニ立ッテ居ルモノガ
多イノデアル、何故デアルカト申シマスト、
一度仕事ヲ廢止致シマスナラバ其溫キ
懷ニ抱カレテ居ル可憐ナル幼兒、老衰者、
失業者、不具癈疾者ト云フモノハ、其日カ
ラ路頭ニ迷ハナケレバナラヌト云フコトニ
ナルカラデアリマス、玆ニ社會事業關係者
ガ其仕事ヲ廢止シヨウトシテモ廢止スルコ
トノ出來ナイ、人道的ノ立場ガアリ、是ガ
爲ニ物質上、精神上非常ナル苦腦ヲ續ケテ
居ルト云フコトハ想像ニ餘リアルコトデ
アリマス、併シ其中ニハ切羽詰リマシテ、
數十年名譽アル歷史ヲ持ッテ居リマシタ所
ノ社會事業デ、仕事ヲ止メタモノモゴザイ
や、 、又現ニ斯ウ云フ窮迫ナル事情ニ立〃
テ居ル者モゴザイマス、恩賜財團デアル
所ノ濟生會ノヤウナ、資金ノ豐富ダト言ハ
レテ居ル社會事業團體デサヘモ、今日ハ其
窮狀ヲ訴ヘテ居ルノデアリマスカラ、其他
ノ私設社會事業ト云フモノガ、如何ニ窮迫ノ
狀態ニ在ルカハ、明白ナル事實デアリマス、
此不景氣ノ深刻ナルガ爲ニ生ジテ來テ居
ル所ノ窮民ノ救濟ニ付テ、痛切ニ其活躍ヲ
要望サレテ居リ、自分等モ十分ニ活動ヲシ
タイト考ヘテ居リマスルガ、其手ガ及バナ
イト云フヤウナ事情ニアルコトハ是ハ誰
人モ想像ノ出來ルコトデアリマス、玆ニ洵
ニ重大ナル社會問題ガアリ、恐ルベキ社會
不安ノ原動力ガ存在シテ居ルト思フノデア
リマス最近諸君モ御承知ノ通リニ、頻々
トシテ痛マシキ親子心中ト云フモノガ新聞
記事ヲ賑ハシテ居ルノデアリマス、卽チ昭
和五年七月カラ七年六月マデノ二箇年ノ計
數ヲ調ベタノヲ見マスルト、親子心中ノ件
數ハ四百九十三件ニ上リ、是ガ爲ニ犠牲ニ
ナリマシタ人ノ數ハ一千四百十九人ニ達シ
テ居ルノデアリマス、サウ云フ痛マシキ犠
牲者ガ生ズルニ至リマシタ事情ヲ考ヘルニ
付キマシテモ、何トカシテ斯ウ云フ方面ニ
活躍シヨウトシテ居ル社會事業、殊ニ私設
社會事業ノ財政的基礎ヲ確立致シマシテ、
其十分ナル活動ヲ促進スルト云フコトガ、
目下喫緊ノ要務デアルト信ズル次第デアリ
マス、內務大臣ガ玆ニ見ル所ガアリ、罹災
救助基金ノ利子ヲ使フニ當リマシテ、其、
部ヲ必要ナル經費トシテ、社會事業ノ助成
ニモ御使ヒニナルヤウセラレタコトハ、洵
ニ結構デアリマスルシ、貴族院ノ修正ニ同
意ヲサレタト云フコトモ、洵ニ結構デアル
ト考ヘマスガ、併シ之ヲ爲サル前ニ、內務
大臣ハモット自分ノ所管ノ事項ニ付テ親シ
ク御考ニナラレル必要ハナカッタノデアル
カ卽チ本案ノ改正ニ依テ生ズル社會事業
ノ助成ハ、地方費ノ助成デアリマス、現.
國費ニ於テ內務大臣ハ助成スベキ費用ヲ
持ッテ居ラレルノデアル社會事業調査奬
勵費ト云フノガソレデアル、數年前ニハ多
額ノ經費ヲ之ニ投ジテ、社會事業助成ノ爲
ニ御骨折ニナッテ居ラレタノデアリマスガ、
最近ニ於テハ其額ガ非常ニ減少シテ居ル、
サウシテ助成團體ノ數カラ申シマスト二
千數百ノ團體ノ中デ此恩典ニ浴スルモノ僅
ニ三百、其平均ノ補助金額カラ申シマスト、
僅ニ百三十圓ニ過ギナイ、總額カラ申シマ
スト僅ニ三万九千圓ニ過ギナイト云フ狀況
デアリマス、斯ノ如キコトデハ內務大臣ト
致シマシテ、社會事業ヲ助成スルト云フ精
神ヲ徹底スル上ニ於テ遺憾ナ點ガ少クナイ
ト考ヘルノデアリマス、地方費ノ補助ヲオ
ヤリニナルト云フ御考ヲ決定スル前ニ、自
分ノ所管ノ國費ニ付テ、從來通リ若クハ從
來以上ニ社會事業團體ニ對スル助成費ヲ考
慮シテ、之ヲ增額スルト云フコトヲ決定サ
レルコトハ範ヲ地方ニ示スト云フ上カラ
申シマシテモ、先ヅ最先ニ御考慮ニナラナ
ケレバナラヌト考ヘマスガ其點ニ付キマ
シテ内務大臣ノ御考ハドウデアルカ、其點
ヲ承ッテ置キタイノデアリマス
第三點ト致シマシテ、政府ハ此際社會事
業團體法ヲ制定シテ、社會事業ノ統制ヲ圖
ル御考ハナイカ、能ク私設社會事業團體ニ
對シテハ兎角ノ評ガアリマシテ、羊頭ヲ懸
ゲテ狗肉ヲ賣ルモノデアル、慈善ニ藉ロシ
テ私益ヲ貪ルト云フ非難ヲ聞クノデアリマ
ス、多數ノ社會事業團體ノ中ニ若干サウ云
フモノガアルコトハ、之ヲ否定スルコトガ
出來ナイト考ヘマス、併シ少數ノサウ云フ
者ガアル爲ニ、多數ノ社會事業團體ガ迷惑
ヲシテ居ルコトハ疑ノナイ事實デアリマス
カラ、此際助成ノ策ヲ取ラレマス際ニ、玉
石混淆ヲ止メテ、善キ者ハ之ヲ助ケ、惡キ
者ハ之ヲ斥ケルト云フ考ヲ以テ、統制ヲ御
加ヘニナルコトガ必要デアル、サウ云フ意味
カラ考ヘマシテ、社會事業團體法ヲ制定サ
レル御考ガナイカト云フコトヲ承ッテ置キ
タイノデアリマス
第四點ト致シマシテ、本法ノ附則ニ、社
會事業ノ助成ト云フモノハ「當分ノ內」ト制
限ガ付イテ居リマスカラ、此時期ヲ經過サ
レマシタ後ハ、必ズ其趣旨ニ基カレマシテ、
私設社會事業助成ノコトニ付テ、適當ナ處
置ヲ御採リニナル御考デアルト推察致シマ
ス、其點ニ付テハッキリ此處デ言明シテ戴
キタイト考ヘマスガ、如何デゴザイマス
カ
救護法ノ制定ハ一般國民ノ熱望シタ問題
デアル、其實績ヲ擧ゲルト否トハ大衆ノ死
活ニ關スル問題デアリマス、又社會ノ第一
線ニ立ッテ活動致シテ居リマス所ノ私設社
會事業團體ガ窮乏ノ狀況ニ在ルニ鑑ミマシ
テ、其財政的基礎ヲ確定致シマスト共ニ、彼
等ノ獻身的活動ヲ促進スルコトハ、今日切
迫セル大衆生活ヲ救濟シ、且ツ恐ルベキ社
會不安ヲ一掃スル所以デアルト考ヘマス、
隨テ此點ニ對スル內務大臣ノ御態度ハ其
影響スル所決シテ鮮少デハナイト考ヘマス
ガ故ニ、是等ノ諸點ニ關シマシテ、ドウカ
明確ニ御答辯アランコトヲ望ミマス(拍手)
〔國務大臣男爵山本達雄君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313242X00919320901&spkNum=4
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005・山本達雄
○國務大臣(男爵山本達雄君) 御答ヲ致シ
やく、此案ヲ提出致シマシタノニ付キマシ
テ、第一ニ罹災基金ノ餘リマシタル金ノ歲
入約四百万圓位ノ間デ、罹災基金ニ供給シ
得ルモノガ先ヅ百万圓、後ノ三百万圓ヲ以
テ、半分卽チ百五十万圓ヲ限テ救護基金
ノ方ニ用ヒ、尙ホ餘リノモノハ必要ナル資
金ニ使ヒ得ルコトニ致シマシテ、貴族院ニ於
テ「社會事業ノ助成」ト云フ文字ガ入リマシ
タノデゴザイマスガ、救護金ニ百五十万圓
ヲ極度トシテ用ヒタイト申シマス所以ハ
豫テ御承知アラセラレル如ク、救護法ハ折
角法律トナッタノデゴザイマスガ、其財源
ガ乏シウゴザイマシテ、今日迄完全ナ實行
ハ出來ナイヤウナコトニナッテ居ルノデゴ
ザイマス、然ラバソレニ對シテドウ云フ財
源ヲ提供スルカト申シマスト、只今ノ所デ
救護ニ用ヒル財源ヲ見出スコトニ難ジテ居
ル次第デアリマス
ソレカラ又私立社會事業、之ニ付キマシ
テハ只今御質問ノ如ク、此資金トシテハ前
ハ相當額ガアッタノデゴザイマス、多イ時
分ニハ五十万圓以上モアッタノデゴザイマ
スルガ、段々財政ノ都合、又公共的社會事
業ノ爲ニ必要ナル入用ガ段々アリマシテ、
知ラズ識ラズ減ジマシテ、今日デハ其資金
ガ三万九千圓ノ少額ニ減ジテ居ルノデゴザ
イマス、ソコデ今日社會事業ヲ益〓必要ト
スル狀況ニ際シマシテ、之ヲ何トカ考ヘタ
イト思フノデゴザイマスガ、如何ニセン其
財源ヲ只今見出スコトニ付テ、難ジテ居
ルノデゴザイマス、サウ云フヤウナ救護
ノ資金ニ付キマシテモ、又社會事業ノ資
金ニ付キマシテモ、今申述ベル如キ有樣デ
アリマスカラ、幸ヒ玆ニ罹災基金ニ於テ、
四百万ノ收入ノ內三百万ハ他ニ使ヒ得ルモ
ノガアリマシタカラ、之ヲ彼此レ財源ヲ探
シ、或ハ其法ヲ制定スル上ニ於テ、彼此レ
延シテ居ルヨリモ、今日ノ社會狀態ヲ考ヘ
ルトドウモ空シクシテ居レヌト云フヤウナ
コトヲ感ジマシテ、取敢ズ罹災基金ノ剩餘
ノ見込ノアルモノヲ以テ、サウ云フ社會事
業ノ方ニ振向ケテ、約三年間ノ期限ヲ以テ
之ヲ利用スルコトニ致シマシテ、其中御質
問ノ如キ團體ノ方モ亦、其資金ヲドノ點カ
ラカ調達シテ、其方ニ向ケルコトニ折角盡
力致シタイト思フノデゴザイマス、唯今日
ノ如キ急場トシテハ捨テ置ケヌ故ニ、其剩
餘ヲ以テ其方ニ支給致シマシテ、其間ニ財
源ニ付テモ大ニ〓究ヲシ、又法ノ制定ニ付
テモ〓究シタイト云フ積リデゴザイマス、
右御答ヲ致シマス
〔守屋榮夫君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313242X00919320901&spkNum=5
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006・守屋榮夫
○守屋榮夫君 只今內務大臣ノ御答辯ヲ承
リマシタガ、一番大切ナ點ニ付テハ何等御
答ニナラナカッタノヲ非常ニ遺憾ニ考ヘル
ノデアリマス、罹災救助基金ノ利子四百万
圓其內四分ノ一ヲ基金ノ管理費ニ使ヒマ
シテ殘ル所ノ三百万圓ノ內ノ半分ヲ、地
方ノ救護費ニ充當スルノデアリマスカラシ
テ、百五十万圓ト云フ金ハ、府縣ノ救護費
ノ足ラザル所ヲ補フト云フコトニナルノデ
アリマス、其點ニ付テハ私モ之ヲ諒承致ス
ノデアリマスガ、救護法ヲ實施スル主體ト
云フモノハ、御承知ノ通リニ市町村デアル、
救護ノ責任者ハ市町村デアリマスカラシ
テ市町村ノ救護費ト云フモノガ發動シテ
來マセヌト云フト、府縣ニ百五十万圓ノ金
ヲオヤリニナッタ所ガ、ソレガ使ヘナイ、又
政府ニ二百八十二万圓ト云フ補助費ヲ計上
シテアリマスガ、ソレモ使ヘナイ、救護法
施行ノ勅令ノ規定ヲ讀メバ、御分リニナリ
マスヤウニ、先ヅ市町村ガ發動シテ救護費
ト云フモノヲ支出シマシタナラバ其內ノ
四分ノ一ハ地方費カラ補助スル、二分ノ一
ハ國庫カラ補助スルト云フコトニナッテ居
ルノデアリマス、市町村ガ先ヅ百五十万圓
ノ救護費ト云フモノヲ使用スルト云フ事實
ガ起ヲタノデナケレバ、折角本法ノ改正ニ
依リマシテ、地方ニ與ヘマス所ノ救護費モ、
補助費トシテ御使ニナルコトハ出來ヌ、現
ニ豫算ニ計上シテアリマス所ノ國庫ノ補助
費二百八十二万圓モ、ソレヲ補助スルコト
ガ出來ナイコトニナルノデアリマス、其點
ヲドウ御考ニナリマスカ卽チ救護法發動
ノ根本タル市町村ノ救護費ト云フモノヲ、
如何ニシテ捻出サレル御考デアリマスカ、
其點ヲハッキリ承ッテ置キタイ、此事ガ非常
ニ重要デアリマス、ソレヲ御決メニナラズ
ニ、本法ヲ改正スルト云フコトハ羊頭ヲ
懸ゲテ狗肉ヲ賣ルト云フヤウナモノデア
ル殆ンド實行ガ出來ナイモノヲ、此處ニ
御出シニナッタト言ハレテモ、辯護ノ餘地
ガナイデアラウト思フノデアリマス、私共
ハドウカシテ救護法ヲ實施シテ欲シイ、窮
民ノ救助ノ爲ニ、救護法ノ精神ハ須ク速ニ
徹底サルベキデアルト思フガ、其責任者タ
ル市町村ノ財政ガ窮乏シ、救護費ト云フモノ
ヲ支出スルコトガ出來ナイ現狀ニアルノデ
アルガラ、ソレニ對スル救濟ノ方法ヲ立テ
ズニ、其上ニ在ル所ノ府縣ノ救護費ヲ賄。ツ
テヤルト、斯ウ言ッタ所ガ、ソレハ結局實
效ノナイコトデアル、水源地ニ水ハアル、
又府縣ハ配水管ガ來テ居ルガソノ水ヲ各人ノ
所ニ配給スベキ義務ヲ負フ市町村ガ、其配
給ノ施設ヲスル資力ガナイノガ現狀デアル
カラシテ、折角ノ水源池ノ貯水モ之ヲ利用
スルコトガ出來ナイ狀態ニアルノデアル
卽チ救護法不徹底ノ根本原因ハ、市町村ノ
救護費ガ賄ヒ切レナイト云フ點ニアルノデ
アリマス、其點ヲドウ御考ヘニナルカ、是
非何等カノ方法ヲ以テ是ガ解決ヲ爲スト云
フ決心ガ付カナケレバ、此案ハ審議シテモ
無駄デアルト考ヘル、其點ニ付テモット明確
ナル御答辯ヲ煩シテ置キタイト考ヘルノデ
アリマス、其他ノ諸點ニ付テハ御答辯ガゴ
ザイマシタ金ガナイカラ出セナイノデア
ルト、斯ウ仰セラレルコトハ、從來ノ政府
ノ當局者ガ議會ニ答辯サレル慣用語デアリ
マっ、私設社會事業團體ト云フモノガ、ド
ウシテモ助成サレナクテハナラヌ、今日ノ
時局ヲ匡救スル上ニ於テ助ケテヤラナクテ
ハナラヌト云フ誠意誠心ガゴザイマスルナ
ラバ、私ハサウ云フヤウナ辯解ヲナサル必
要ハナイト思フ、公債デ支辨スルト云フヤ
ウナ、現內閣ノ常套手段デ以テ、急場ニ瀬
シテ居ル所ノ社會事業團體ニ對シテ三年
間ヲ限フテ國庫ガ補助シテヤルト云フヤウ
ナ方策デアル筈デアル、デアルカラシテ、
財政ガドウダト云フヤウナコトヲ建前ト致
シマシテ、私共ノ眞面目ナル要求ヲ拒否サ
レヨウト云フコトハ頗ル不親切デアル、
ソレデハ私設社會事業團體ト云フモノガ、
アナタノ下ニ立ッテ、獻身的ノ努力ヲスル
ト云フ意氣ガ缺ケルデアラウコトヲ私ハ憂
ヘザルヲ得ナイノデアリマス、ドウカ第一
點ノ質問ニ對シテハ、更ニ明確ナル御答辯
アランコトヲ切望致シマス
〔國務大臣男爵山本達雄君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313242X00919320901&spkNum=6
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007・山本達雄
○國務大臣(男爵山本達雄君) 御答ヲ致シ
やく、只今御質問ノ地方團體、町村ニ付テ
ノ資金ノコトニ付テハ、私ハ實際承知致シ
マセヌノデゴザイマス、今政府委員ノ社會
局長官ニ承リマシタレバ、是ハ只今考究中
デアルト云フコトデゴザイマス、而シテ其
モノハ此罹災基金ノ中カラ廻シ得ルト云フ
コトデゴザイマスガ、ソレヲ以テ御答ト致
シマス、尙ホ御不審ガアリマスナラバ、政
府委員ヨリ御答申上ゲタ方ガ、尙ホ詳シク
テ御滿足ト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313242X00919320901&spkNum=7
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008・秋田清
○議長(秋田〓君) 質疑ハ終局致シマシ
タ、日程第二、右議案ノ審查ヲ付託スベキ
委員ノ選擧ヲ議題ト致シマス
第二右議案ノ審査ヲ付託スヘキ委員ノ
選擧発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313242X00919320901&spkNum=8
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009・上田孝吉
○上田孝吉君 本案ハ議長指名十八名ノ委
員ニ付託セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313242X00919320901&spkNum=9
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010・秋田清
○議長(秋田〓君) 上田君ノ動議ニ御異議
アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313242X00919320901&spkNum=10
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011・秋田清
○議長(秋田〓君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ-日程第
三、製絲業法案ノ第一讀會ノ續ヲ開キマス、
委員長ノ報告ヲ求メマス-委員長生田和
平君
第三製絲業法案(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報〓)
報〓書
一製絲業法案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ別紙ノ通修正スヘキモノ
ト議決致候此段及報〓候也
昭和七年八月三十一日
委員長生田和平
衆議院議長秋田〓殿
〔別紙〕
製絲業法案中左ノ通修正ス
第四條第一項及第二項中「一年」ヲ「二年」
三四人
附則第二項中「十年間」及但書ヲ削ル
附帶決議
一政府ハ時代ノ趨勢ニ鑑ミ原蠶種國家統
制生絲販賣統制其ノ他共同施設助成
ニ關スル法律案ヲ次期議會ニ提出シ以
テ蠶絲業根本政策ヲ確立シ併セテ本法
ヲシテ更ニ一段ノ效果アラシムベシ
〔生田和平君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313242X00919320901&spkNum=11
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012・生田和平
○生田和平君 只今議題ニナッテ居リマス
ル所ノ、製絲業法案ノ委員會ノ經過竝結果
ヲ御報〓致シマス、本案ハ我國貿易ノ大宗
タル生絲、其製絲法ニ統制ヲ與ヘテ、而シ
テ之ニ免許制度ヲ行ハウトスル案デアリマ
ス、政府ノ說明ヲ聽キマスト云フト、本邦ノ
製絲業ハ大小ノ企業ガ濫立致シマシテ、
朝絲價ガ非常ナル變動ニ遭ヒマスト云フ
ト、忽チ休業又ハ閉業ヲシナケレバナラヌ
コトニナルノデアリマス、爲ニ斯業ノ安定
ヲ妨ゲマスノミナラズ、延イテハ養蠶家ニ
累ヲ及ボスヤウナ虞ガアルノデアリマスカ
ラシテ是等ノ弊害ヲ矯正致シマスル爲
二、本法ノ免許制度ニセントスルト云フコ
トガ、說明ノ要點デアリマス
委員會ニ於ケル質問應答ノ主要ナル點ヲ
申上ゲマスレバ、靑木委員ヨリ、政府ノ提
案セル本法ハ蠶絲業ノ全體ニ付テ脈絡アル
統制政策ノ用意ガアルカ、又本法ハ蠶絲業
ニ對スル政府ノ統制政策ノ一ツノ現ハレデ
アルカ、又武田委員ヨリハ政府ノ蠶絲業
ニ對スル指導原理ハ統制政策デアラネバナ
ラヌ、然ルニ政府ハ販賣統制竝ニ原蠶種國
營等ニ對シテハ、何等ノ抱負經綸ヲ示サナ
イノハ、如何ナル理由ニ依ルノデアルカ、
ト云フ質問ガアッタノデアリマスガ、農林大
臣ハ全般的統制政策ヲ行フコトハ同感デア
ル、併シ他ノ法案ハ今尙ホ〓究中ニ屬シテ
居ル殊ニ販賣統制ニ付テハ外國ノコトモ
考ヘナケレバナラヌカラ、此際ハ製絲業法
ノ提案ニ止メタイト云フノデアリマシタ、
靑木、橫川、武田、近藤君等ノ各委員ヨリ
ハ釜數制限ノ基準ニ付テ、營業製絲ハ百
五十釜、組合製絲ハ百釜以上ニ規定セル所
ノ立案ノ根本理由ニ付テ、質問應答ガ重ネ
ラレタノデアリマス、本法ハ大資本家ヲ擁
護シ、小資本家ヲ壓迫シ、遂ニ絕滅ニ到ラ
シメ、養蠶家ニ不利ヲ來サシムル點ニ付
キマシテ、論戰大ニ努メタノデアリマス
ガ、政府ノ答辯ハ我國蠶絲業ノ現狀ニ照
シマシテ、以上ノ規定ヲ以テ適當ナリト主
張スルノデアリマシテ、此點ニ於キマシハ
各委員ノ滿足ヲ得ルコトハ出來ナカッタノ
デアリマス、橫川、武田委員等ヨリハ本
法實施ノ結果ハ大資本家ニ統一セラレル
コトヲ豫想セネバナラヌ、又將來絲價ガ非
常ナル暴落ヲシテ、製絲業者ガ機ニ臨ミテ
大掛リノ生產制限ヲ爲スヤウナ場合ガア,
タ時ニハ、政府ハ如何ナル方針ヲ以テ處置
スルカト云フコトヲ問ウタノデアリマスル
ガ、政府ノ答辯ハ此場合ニハ第三條ノ規
定ニ依リマシテ、監督取締ノ發動ヲ爲ス考
デアル、更ニ又本法ハ非常時ニ處スルコト
ヲ得ルモノデアルトノ答辯デアッタノデア
リマス
尙ホ他ノ委員ヨリノ質問中ニ、本法施行
後十年ノ後、營業製絲ハ百五十釜、組合製
絲ハ百釜、ソレ以下ノ製絲業者ノ失格規定
ニ付キマシテハ本案ガ餘リニモ大資本家
擁護、小資本家壓迫ニ傾キマシテ、由々シ
キ社會問題デアルト云フノデ、政府ニ對シ
テハ糾彈的質問ヲ發シタノデアリマス、卽
チ既設小工場者ノ既得權ヲ擁護セネバナラ
ヌコト、又大資本製絲業ノ將來ノ橫暴ニ處
スル用意ヲ持タネバナラヌコトヲ警告致シ
タノデアリマス、討論ニ入リマシテ、小山
委員ヨリ、政府ハ乾繭取引ノ普及ニ徹底方
策ヲ樹テル、又生繭期ニ於ケル大製絲業ノ
橫暴ニ備フル必要アルコトヲ痛論サレタノ
デス、加藤委員ヨリハ特ニ政府ニ對シテ
一、製絲家ノ金融ニ對シ政府ハ特ニ是ガ
圓滿流通ノ途ヲ講ズルコト
二、蠶絲業ノ各團體ニハ必ズ指導技術員
ヲ設置セシムルヤウ是ガ助成金交付ノ
途ヲ講ズルコト
三、繭取引ノ公正ヲ期セシムル爲ニ繭ノ
檢査所ノ發達ニ對シ大ニ助成ノ方法ヲ
講ズルコト
四、乾繭取引ノ徹底的方策ヲ樹ツルコト
以上ノ四點ヲ强調セラレタノデアリマス
次イデ政友會ノ靑木委員ヨリ、次ノ如キ修
正竝ニ附帶決議ノ動議ガ提出セラレマシ
ク、其修正案ハ第四條第一項中「一年」トア
ルヲ「二年」ニ改ム、同條第二項中「一年」ト
アルヲ「二年」ニ改ム、附則中「十年間」ヲ削
除附則但書削除、附帶決議トシテ
「政府ハ時代ノ趨勢ニ鑑ミ原蠶種國家統
制生絲販賣統制、共ノ他共同施設助成
ニ關スル法律案ヲ次期議會ニ提出シ以テ
蠶絲業根本政策ヲ確立シ、併セテ本法ヲ
シテ更ニ一段ノ效果アラシムベシ」
ト云フ附帶決議ノ動議ノ提出ガアッタノデ
アリマス、此動議ニハ別ニ說明ハナカッタ
ノデアリマスルガ委員會ニ於ケル質問應
答ノ模樣ヨリ、斯樣ノ意味ガ含マレテ居ル
ノデアリマス、卽チ修正ノ要旨ハ第四條ニ
於テ免許ヲ受ケ、事業ヲ一年以內ニ開始セ
ザルモノ、竝ニ引續キ一年以上事業ノ全部
又ハ一部ヲ爲サザルモノニハ免許ノ取消
又ハ制限ヲ加ヘントスル原案ヲ、甚ダ苛酷
ナリト致シマシテ、例ヘバ新ニ本法ノ適用
ヲ受ケマシテ、會社ヲ組織スル目的ニ依
リ發起人ノ名ニ於テ許可ヲ受ケタル場合
ニ、免許後ニ於テ株式ヲ募集セネバナラヌ、
工場ノ建設モセネバナラヌ、又多數ノ男女
エモ雇入レネバナラヌ、更ニ原料繭ノ買入
モセネバナラヌ、原料繭ニ至リマシテハ
春繭時期ニ多量ノ買入ヲ必要トスルノデア
リマス故ニ相當ノ時日ヲ要スル、又第二
ノ項目デハ製絲業ハ最近兩三年ノ如キ非
常ナル不況ノ時代ニ於キマシテ、僅ニ一年
間營業ヲ休止致シマシタ爲ニ、其免許ヲ取消
シ又ハ制限ヲ附スルト云フコトハ、如何ニモ
製絲業者ニ對シテ苛酷ノ立法デアルト致シ
マシテ、之ニ對シテモ原案ノ「一年」トアル
ヲ各〓「二年」ニ緩和致シタノデアリマス、
附則ニ於テ「十年間」ノ削除竝ニ但書ノ削除
但書ト云フノハ「但シ本法施行ノ日ヨ
リ十年以内ニ命令ノ定ムル條件ヲ具備シ主
務大臣ノ認可ヲ受ケタル者ニ限リ其ノ期間
經過後ト雖モ仍免許ハ其ノ效力ヲ有ス」卽
チ十年以後ニハ改メテ認可ヲ受ケネバナラ
ヌノデアリマス、若シ例ヘバ五十釜ノ製絲
業者ガ、十年後ニ於テ其儘工場ノ擴張ガ出
來ヌ場合ニハ免許ハ取消サレル百五十
釜以下デアリマスルカラ、百四十九釜デモ
同ジク免許ヲ取消サレルノデアリマス、是
等ノコトモ甚ダ製絲業者ニ取リマシテ、苛
酷ナ扱ヒデアルト致シマシテ、之ニ修正ヲ
加ヘタノデアリマス、卽チ此結果ハ全國
ニ亙ル多數ノ小製絲工場ハ此修正ノ爲ニ、
永久ニ其營業權ヲ認メラレ、先祖ヨリ傳來
ノ製絲業者ハ此法律ニ依フテ取消サレル
コトハ更ニナイノデアリマス一言ニ言ヘ
バ既得權ハ認メラレタノデアリマス、附帶
決議ノ要旨ハ亂雜ナル原蠶種ヲ、國家統
制ノ下ニ統一ヲ圖リ更ニ生絲販賣統制政
策ヲ樹立シ、絲價ノ安定ヲ圖リ、共同施設
ノ助成、共同荷造、共同乾繭場ノ助成等、
養蠶家竝ニ小製絲家ノ利益ヲ擁護スル等、
全面的ニ蠶絲業ノ根本政策ヲ確立セント欲
スル次第デアリマス、採決ノ結果ハ政友
民政、國同トモ一人ノ反對ナク、修正及附
帶決議、竝ニ修正以外ノ爾餘ノ政府案全部
ニ對シテ、滿場一致ヲ以テ可決セラレタノ
デアリマス委員會ハ直チニ政府ニ對シマ
シテ、右修正案竝ニ附帶決議ニ付キ贊否ノ
意見ヲ質シタノデアリマスルガ、政府ハ委
員會ノ決議ニ贊成ノ意思ヲ表明シ、尙ホ附
帶決議ニ對シテハ、次期ノ議會ニ提案スル
コトニ努力スル旨ヲ言明セラレタノデアリ
せき、以上ハ委員會ノ大略ノ御報〓デアリ
マスガ、尙ホ詳シイコトハ速記錄デ御覽ヲ
戴キタイノデアリマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313242X00919320901&spkNum=12
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013・秋田清
○議長(秋田〓君) 質疑ハアリマセヌ、是
ヨリ討論ニ入リマス-近藤壽市郞君
〔近藤壽市郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313242X00919320901&spkNum=13
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014・近藤壽市郎
○近藤壽市郞君 諸君、私ハ只今玆ニ議題
トナッテ居リマスル製絲業法案ニ關シマシ
テ、委員長ノ御報〓ニナリマシタ通リ、政
府提出ノ原案ニ修正ヲ加ヘタル、卽チ委員
會ノ決議ニ贊成スル者デアリマス、成ベク
簡單ニ其理由ヲ申上ゲ、滿場諸君ノ御贊成
ヲ仰ギ、サウシテ可決確定致シタイト存ズ
ルモノデアリマス
本案ハ製絲業ヲ免許制度ト致シ、政府監
督ノ下ニ絲價ノ統制ヲ圖リ、行詰マレル製
絲界ノ刷新打開ヲ目的トスル法案デアリマ
ス、此免許制度ト云フコトニ付キマシテハ
多少意味コソハ違ヒマスルケレドモ、勇士
角既ニ當業者間ニ於キマシテモ、十數年間
ヨリ唱ヘ來ヲテ居ル問題デアリマス、ソレカ
ラ前內閣ニ於キマシテモ、時ノ山本農林大
臣ハ將ニ議會ニ提出セント立案セラレタト
云フコトヲ聞及ンデ居ルノデアリマス殊
ニ生絲ハ我國ニ於ケル輸出中ノ第一位ヲ占
メテ居リマシテ而モ是ガ原料ハ農村ニ最
モ深キ關係ヲ有ヲテ居リマス、卽チ養蠶家ガ
飼育生產スル所ノ繭、卽チ生絲ノ原料ハ其
値段ニ依テ絲價ガ定マルカト申シマスル
ト、サウデハナクシテ、絲價ノ高低ニ依テ
繭ノ値段ガ決定サレルト云フコトニナッテ
居リマスカラ、又製絲家ノミ之ヲ保護スル
目的デ決スベキ問題デハナイト思フノノデ
アリマス、單純ニ考ヘマスト、輸出貿易ノ
生絲ヲ製造スル上ニ於テ製絲家ヲ督勵シ
サウシテ〓究ニ〓究、改良ニ改良ヲ加ヘテ
是ガ統制ヲ圖リ、而シテ海外ニ輸出シ、以
テ品質ノ向上ヲ圖リ、市場ニ聲價ヲ博シマ
え い隨テ高價ニ賣行クカラ、其結果ハ
繭ノ値段ニ影響ヲ及ボシ、卽チ養蠶家ノ上
ニ於テモ惠マレルト云フ道理デハアリマス
ケレドモ決シテサウ云フ單純ナル問題ニ
ハナラヌノデアリマス、政府ガ今囘提出致
シマシタアノ原案通リデ、可決確定致スコ
トニナリマスト、多クハ大製絲家ヲ保護ス
ルコトニナリマシテ、小製絲家ヤ養蠶家ノ
大不利益ヲ被ルコトニナルノデアリマス
本案ノ骨子ハ統制上政府ニ於キマシテハ施
行規則トシテ、製絲業者ノ免許釜數ノ最小
限度ヲ營業製絲ニ於キマシテハ只今委
員長ノ報告ニナリマシタ如ク百五十釜ヲ最
小限度トシ、組合製絲ニ於テハ百釜ヲ最小
限度トシ、本法施行後既設業者中、所謂小
製絲家ト稱スル百五十釜以下ノ業者ガ、本
法案附則中ノ十年以内ニ於キマシテ共同施
設ヲ爲シタル業者ニ於テハ三百釜トスル
ト云フコトニ決定シテ居ルト云フノデアリ
き り、是ハ私ハ大ニ怪シカラヌト思ヲ、百
五十釜ト云フコトヲ限定サレタナラバ、共
同製絲家ト雖モ、或ハ寄合ヲタ者ト雖モ、玆
ニ合併スル以上ハ百釜デ私ハ宜シイト思フ
ノデアリマス、ソレヲ成ベク大キク、成ベク
政府ハ有效ニ扱ヒタイト云フ爲ニ、三百釜
ト云フコトガ內規ニナッテ居ルト云フコト
ヲ聞及ンダノデアリマスケレドモ、此三百
釜ハ兎ニ角措キマシテ、今委員長ガ述ベラ
レタ如ク、此政府ノ出シタ原案ニ依リマス
ト云フト、今日ノ農村ノ疲弊困憊ニ至ッテ
居ル時ニ際シテ、斯樣ナ深切味ノナイ、養
蠶家ニ不利益ニナル、小製絲家ヲ殺スヤウ
ナ、大製絲家ノ「ブルヂヨア」階級ニ取ッテ
有利ナル案デアルト云フコトハ私共ハ怪
シカラヌ次第デアルト云フノデ、農林大臣
ニ此事ヲ大ニ質疑ヲ致シマシタ(拍手)所ガ
只今委員長ノ言ハレル通リ、農林大臣ニ於
カレテモ多少此國民ノ聲ト云フコトハ耳ニ
シテ居ラレルコトト見エマシテ到頭農林
大臣モ降參ノ旗ヲ揚ゲテ、此修正案ニハ贊
成ヲシテモ宜シイカノ如キ口吻ヲ漏シマシ
タカラ、私ハ今申上ゲタ委員長提出ノ案ニ
賛成スル次第デアリマス、今申上ゲマシタ
通リ此規定ニ依リマスト云フト、小製絲
家ガ向フ十年間ニ於テ百五十釜以上ニ規模
ヲ殖スカ、又ハ共同施設ヲシテ立ツカ、斯
ウ云フコトデナイ以上ハ、倒レテシマフノ
デアリマス其百五十釜以下ノモノヽ戶數
ガ全國ヲ通ジマシテ約二千三百戶ニ及ン
デ居ル、此釜數ガ十一万五千釜デアリマス、
其他ニ百五十釜以上ノモノヲ申シマスレ
バタッタ五百戶シカナイノデアリマス、釜
數ハ十七万釜デアリマシテ、千二百四十釜
ガ製造家ノ最高デアリマス、此比例ヲ以テ
言ヒマシテモ、多數小製絲家ノ不利益ニナ
ル案ヲ出スト云フコトハ、今日吾々ハ忍ビ
ナイノデアリマス、小製絲家ハ御承知デモ
ゴザイマセウケレドモガ、先祖傳來ト申
スト、製絲ガ始ヲテカラ左樣ニ長イ歷史デ
ハアリマセヌガ、三代モ四代モ〓究ニ〓究
ヲ重ネテ參リマシテ、サウシテ中ニハ優等
ナル所ノ輸出貿易トナル絲ガ、五十釜ノ製
絲カラモ出ルノデアリマス、ソレカラ尙ホ
模範製絲工場モアルノデアリマスルガ、之
ヲ犧牲ニ供シテ、十年間經テバオ前ノ首ヲ
斬ルゾト、斯ウ云フモノヲ出スノハ慘酷デ
アルト、斯ウ思フノデアリマスルガ故ニ、
今日是等ヲ考慮致シマシテ、サウシテ此提
出案ニ修正ヲシタ譯デアリマス、ソレニ附
屬致シマシテノ修正ハ、第四條ハ一年ヲ二
年トスルノハ只今委員長ノ御報告ニナッタ
通リ、當然デアリマス、會社ヲ設立セント
シテモ、或ハ百五十釜ノ製絲ヲ企業致サン
ト致シマシテモ、一年ノ經ツノハ早イモノ
デ、認可ヲ取ッテカラ器械ヲ買入レ、敷地ヲ
買ヒ、建築シ、總テノコトヲ致スマデニハ
一年ヲ經過シテシマフ、シテ見マスルト此
一年ガ經過スレバ效力ヲ失ウト斯ウ云フ
風ニナリマシタノデハ法ガ有ッテ無キガ
如ク、ドウシテモ此法ト云フモノハ實行ス
ル時日ノアルダケノモノヲ、玆ニ定メテ置
カナケレバナラヌ筈ナノデアリマスカラ
此二年ニ贊成スル次第デアリマス、今小製
絲家ヲ倒シマシテ、ソレデ養蠶家ニ何等ノ
影響ガアルカ、絲ヲ統制シ、サウシテ製絲
家ノ製絲ノ統一ヲ圖ルト云フコトハ宜イデ
ハナイカ、是ガ何デ「ブルヂヨア」ノ案デア
ルカ、何ガ大製絲家ノ利益ノ案デアルカト
斯ウ申シマスルガ、玆ニ大ニ理由ガアルノ
デアリマス、小製絲家ハ先ヅ私共ノ地方デ
申シマスルト云フト小製絲家ガ繭ノ買入
ヲシテ置クベキ餘裕ハナイノデアリマス
是ハ本會議ニ於テドナタカノ質問ニ言ハレ
タヤウニ考ヘテ居リマスルガ、微弱ナル所
ノ養蠶家ガ如何ニ今日養蠶ガ發達致シマシ
テ飼育上ニハ學理ニ、實驗ニ富ンデ參リ
マシテ良イ繭バカリヲ作ルト申シマシテ
モ中ニハ天候ニ冒サレテ「ビシヨ」繭ノヤ
ウナモノモ出來マス、ソレカラドンナ學理
ヲ應用致シマシテモ失敗ト云フコトガアル
ノデアリマス、而モソレノ多クハ尋常科位
卒業シテ居ル農家ノ微弱ナル養蠶家ニ多イ
ノデアリマス斯ウ云フ「ビショ」繭ダトカ
下等繭等ヲ製造致シマシタ時ニ、百五十釜
以上ノ大製絲家ハ是等ニ向フテハ見向モ
致サヌノデアリマスガ、ソコニ行クト此小
製絲家ガ參リマシテ、ソレ等ノ繭ハ直チニ
相當ノ値段ヲ以テ引取ッテ吳レルト云フ、玆
ニ有利ナコトガアルノデアリマス、現ニ私
ノ地方ノミナラズ、長野縣ト云ハズ、群馬
縣ト云ハズ、全國ニ亙ッテ此例ハアルコト
ト思フノデアリマス
以上ノ理由ニ於キマシテ、附則ヲ修正
シ目ツ第四條ノ中ヲ修正シ、附帶決議ヲ
委員會デ致シマシタカラ、吾々ハ之ニ贊成
ヲスルモノデアリマス、現在ノ製絲家ハ釜
數ノ如何ニ拘ラズ、何レモ是ガ認可ヲ認メ
ルコトニ致シマシス、サウシテ尙ホ此處デ
私ハ當局ニ希望ヲ述べテ置キマスガ、施行
細則ニ至リマシテハ吾々議員ノ容喙スル
所デハナイノデゴザイマセウガ、要スルニ
此法律ガ有意義ニ適用セラレテ、大製絲家
ト云ハズ、小製絲家ト云ハズ、養蠶家ト云
ひく、何レノ方面ニ對シマシテモ救濟保
護サルヽヤウニ御考慮ヲ煩シタイノデアリ
やく、本案ハ多年唱道シ來リマシタル重大
ナル、而モ蠶絲界ニ於ケル一大革命トモ稱
スベキ案件デアリマスカラ、諸君滿場一致
ヲ以テ御贊成アランコトヲ偏ニ冀フ次第デ
アリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313242X00919320901&spkNum=14
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015・秋田清
○議長(秋田〓君) 小山邦太郞君
〔小山邦太郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313242X00919320901&spkNum=15
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016・小山邦太郎
○小山邦太郞君 私ハ只今上程セラレタル
製絲業法案ニ對シマシテ、委員長報告通リ
贊成ノ意ヲ表スルモノデアリマス、蠶絲業
ニ對スル國策樹立ノ要望ハ、其蠶絲業ノ我
ガ國民經濟ヘノ重要性ニ鑑ミマシテ吾等
ノ同僚ヨリ本議場ヲ通ジマシテ、幾度カ繰
返シ叫バレタ主張デアリマス、此度提案セ
ラレマシタル本法律案ハ、蠶絲業國策全體
ノ上カラ見マスルナラバ、僅ニ其一部ニ過
ギマセヌ、是ハ甚ダ遺憾デアリマス、併ナ
ガラ假令其一部ト雖モ國策ヘノ第一步ヲ踏
出シタルモノデアルト云フコトハ認メ得
ルノデアリマス、勿論私共ノ冀フ所ハ、殊
ニ今日ニ於テ輸出生絲ノ販賣ニ對スル統
制、之ニ依テ統制ナキ輸出生絲ノ現在ノ狀
勢カラ起リマスル亂騰激落、隨テ生ズル斯
業ノ不安ヲ取除キ、同時ニ又原蠶種ノ國家管
理ヲ斷行スルコトニ依テ、品種ノ統一竝ニ
改善ニ資スル、同時ニ養蠶業者ノ爲ニハ其
生產サレマシタル繭ヲ公平ニ取引セラルヽ
ヤウニ、其繭ノ品位檢査ヲ恰モ現在生絲ニ
對シテ行ヒツヽアルソレノ如ク、或ハ國家、
或ハ地方自治體、其他ノ團體ヲシテ繭ノ品
位檢査ヲ普及セシメテ、其品物相當ノ取引
ヲ行ハシムルヤウニ導クコトガ大切デア
ル同時ニ其生產品ノ處理ニ對シマシテ
ハ一方ニ於テ組合製絲ヲ奬勵スルト同時
二、乾繭取引ノ普及ヲ圖リマシテ、一部分一
生繭ノ生產時期ニ、市場ヲ目懸ケテ殺到致
シテ參リマス爲ニ、動モスレバ壓迫サレ
勝ナル不自然ナル繭價ノ下落ヲ未然ニ防イ
デ、養蠶家ヲシテ自身ノ生產シタ繭ノ處分
ノ時機ヲ自由ニ選擇シ得ルノ便ヲ與ヘルコ
トハ極メテ大切ナル處置デアルト思フノ
デアリマス、斯ノ如キコトハ現下ニ於ケル
蠶絲業界ノ缺陷ヲ匡救スル、有效適切ナル
手段デアルト信ズルノデアリマス、而シテ
之ニ對シマシテハ幸ニ政府モ略〓其意見ヲ
同ジウシテ隨テ之ニ對シテハ極力其〓
究ヲ急ギ、調査ヲ進メテ近ク確信アル成
案ヲ得テ議會ニ提案セラルヽト云フ、誠意
アル御意見ノ發表ガアリマシタノデ、殊大
今日政府ノ提案セラレマシタル豫算ヲ見マ
シテモ、此晩秋蠶竝ニ秋蠶ニ對シマシテ
ハ乾燥ニ對スル費用ノ補給ヲサヘ計畫セ
ラレテアル事實ニ鑑ミマシテ、私共ハ此度
ノ法律案ハ、將ニ蠶絲業救濟ノ國策樹立ノ
上ニハ不十分デアルケレドモ、國策樹立ヘ
ノ一步ヲ進メタモノトシテ喜ビ、之ニ贊成
ヲ致シタル次第デアリマス、宜シクドウゾ
(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313242X00919320901&spkNum=16
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017・秋田清
○議長(秋田清君) 戶田由美君
〔戶田由美君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313242X00919320901&spkNum=17
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018・戸田由美
○戸田由美君 私モ只今ノ委員長ノ報〓ニ
對シマシテ、極メテ簡單デハアリマスル
ガ、贊成ノ意ヲ表シタイト存ズルノデアリ
マス政府ノ提案ニ係リマスル製絲業法案、
吾々委員會ガ全會一致ヲ以テ修正ヲ致シ、
之ニ希望條件ヲ添ヘマシタル此案ハ、洵
我ガ製絲業ニ對シマシテ有效論切ナル解決
ヲ、與ヘルコトヲ信ズルニ吝デナイノデア
リマス、既ニ近藤、小山兩君ヨリ委員長ノ
報告ニ對シマシテ贊成ノ御演說ガアリマシ
テ、十分ニ吾々ノ贊意ヲ書シテ居ルヤウニ
仔ズルノデアリマスルガ、唯私ハ其贊成ノ
意ヲ表スル中心點ヲ、他ノ方面ニ求メタイ
ト存ズルノデアリマス、先桂來、或ハ又世
上ニハ、本製絲業法案ニ對シマシテヽ動モ
スレバ大資本家、大製絲家ノ擁護案デアル
トカ或ハ弱小劣勢ノ小資本家ヲ壓迫スル
事ニ依テ、其影響スル結果ガ、只サヘ疲弊
困態致シテ居リマスル地方養蠶家、農民ニ
重大ナル禍ヲ及ボストカ云フ批評ガ、非常
ニ多イノデアリマスガ、私共ハ我國ノ貿易
ノ中心ヲ成シマスル-卽チ最近我國ノ對
外貿易ガ非常ナル逆調ヲ呈シマシテ、我ガ
國家ノ財政經濟ニ重大ナル影響ヲ及スコト
ヲ心配致サレテ居ル場合ニ於キマシテ、最
近僥倖ニモ絲價ノ非常ナル回復暴騰ニ依リ
マシテ、最近一箇月ノ我國ノ逆調ノ對外貿
易ガ、一躍三千數百万圓、直チニ回復致シ
タト云フ、此貿易ノ「バランス」ニ重大ナル
影響ヲ與ヘル所ノ製絲ノ問題ニ付キマシテ
ハ、資本家ヲ中心トスルトカ、或ハ小製絲
家ヲ中心トスルトカ云フヤウナ、區々タル
方面ヨリ之ヲ考察致サズシテ、國家ノ重要
產業トシテ、大處高處ヨリ之ヲ論斷政シタ
イト考フルノデアリマス、而シテ私ノ此建
前カラ申シマスレバ結局我國ノ蠶絲業法
ノ根本政策ハ、製絲業其モノヽ內容ノ確立
ト充實トニ、之ヲ置カナケレバナラナイト
考フルノデアリマス、固ヨリ蠶絲業ノ根本
政策カラ申シマスレバ、獨リ製絲業其モノ
ニ付テ考慮ヲ費スノミナラズ、先程來論ゼ
ラレマシタ所ノ蠶種ノ問題ニ付キマシテ
モ、販賣統制ニ關シマシテモ、悉ク之ヲ一
貫致シタ脈絡ノ下ニ、大國策ヲ樹テンケレ
バナラナイノデアリマスルガ、飜ッテ考ヘテ
見マスレバ、如何ニ優良ナル繭ヲ製造致シ
マシテモ、如何ニ優秀ナル蠶種ニ依テ養蠶
業ヲ經營致シマシテモ、製絲家ノ基礎ガ不
安定デアリ、動搖ヲ致シテ居リ、而シテ薄
弱ナル基礎ノ下ニ立ッテ、其製絲家ノ產出シ
タル生絲ガ優良品ナラザル限リハ、我國ノ
生絲貿易ハ決シテ振興致シマセヌ、其結果
我國ノ養蠶業者ニ對スル非常ナル損害ハ
之ヲ救フコトガ出來ナイト云フコトハ私
ガ諄ク申上ゲル迄モナイ事デアルト信ズル
ノデアリマス、故ニ目下ノ蠶絲業ニ對シマ
シテ、吾々ガ最モ考ヘナケレバナラナイ問
題ハ製絲業其モノヽ基礎ノ堅實ナルコト
ト其內容ノ充實スルコト、隨テ其基礎ノ
下ニ於キマシテ、優良ナル統一セル多量ノ
生絲ヲ產出スルト云フコトニナクテハナラ
ナイト考ヘマシテ、此目的ノ爲ニ今囘政府
ガ其製絲業ノ基礎ヲ確立シ、充實セシムル
爲ニ、群小ノ弱勢ノ製絲家ノ亂立ヲ防グノ
意味ニ於テ、本案ヲ提出セラレタト云フコ
トハ吾々ガ最モ政府ノ蠶絲業ニ關スル政
策ニ信賴ヲ致シテ、本案ヲ贊成致シタ所以
デアリマス(拍手)
製絲家亂立ノ弊害ヲ防ガヌ爲ニ、如何ナ
ル影響ヲ及ボシテ居ルカト云フコトハ私
ガ諄ク申上ゲル必要モナイト存ズルノデア
リマス、今期議會コソ農民若クハ中小商工
業者ノ當面ノ疲弊困憊ヲ救ハンガ爲ニ直
接是等ノ問題ニ觸レテ居ッテ、蠶絲業問題
稍こ閑却サレテ居ルガ如キ狀態デアリマ
スルガ、僅カ二箇月前ノ第六十一一議會ニ於
ケル議會ノ中心問題ハ何デアッタカト申
シマスレバ申ス迄モナイ國家國民ニ數千
万圓ノ損害ヲ與ヘマシタ彼ノ滯貨處分ノ問
題デアッタノデアリマス、當時ノ議會ハ內外
ヲ通ジテ囂々タル論議ヲ惹起シマシテ、實
ニ生絲問題ガ、國家國民ニ對シテ如何ニ重
大ナルモノデアルカト云フコトハ明瞭デ
アルノデアリマス、而シテ斯ノ如キ大問題
ヲ起シマシタノハ、最近ノ思想ト致シマシ
テ、放縱無節制ナル自由產業思想ガ、斯樣
ナ結果ヲ招來致シマシテ、遂ニ十九万梱ノ
生產過剩ノ滯貨生絲トナッタト云フコトヲ
考ヘマスレバ玆ニ政府ガ蠶絲業ニ對シマ
シテ、統制案ヲ提案サレタト云フコトハ、洵
ニ機宜ノ處置デアルト考ヘルノデアリマス、
最近僥倖ニモ生絲ガ百斤千圓臺以上ニ暴騰
致シマシタガ、玆ニ吾々ノ憂フベキ業界ノ
狀況ハ、再ビ二十釜、五十釜、百釜以下ノ群小
製絲家ガ、亂立セントスルノ傾向ノ現ハレ
デアリマシテ、斯ノ如キ事ヲ無制限ニ、無
統制ノ下ニ置キマスルナラバ軈テ是等ノ
資本ノ薄弱ナル、基礎ノ不鞏固ナル製絲家
ガ、養蠶家ニ對シテ如何ナル損害ヲ與ヘル
カ、又ハソレ等ノ製絲業ニ從事致シマスル
男女ノ從業員ニ對シテ、如何ナル狀態ヲ起
シマスカト云フコトハ、諸君ガ恐ラク御想
像下サルコトデアラウト考ヘルノデアリマ
ス、我ガ長野縣ニ於キマシテハ、昨年來製
絲業家ノ非常ナル打擊ニ依リマシテ、殊ニ
弱勢ナル小製絲家ノ非常ナル窮境ニ依リマ
シテ、從業員ハ之ニ從業スルコトヲ嫌フノ
デアリマス、但シ其父兄ハ只サヘモ窮迫シ
テ居リマスル各家庭ノ生計ヲ維持スル爲
ニ、口稼ギニナレバ宜シイカラ、製絲家へ
行ッテ貰ヒタイト云フコトヲ、其工男工女
ニ只管賴ムノデアリマスルガ、此父兄ノ懇
願ニ對シマシテ、其子弟ノ男女從業員ハ、自
分ガ長イ間苦勞ヲシテ働イテモ、唯口稼ギ
ト云フダケナラバ、吾々ハ苦勞シテ製絲從
業員トナルコトヲ欲シナイト云フノデ、重大
ナル家庭爭議ヲ起シマシテ、玆ニ我國ニ於
テ由々シキ思想上ノ問題モ起ルト云フコト
ニ、相成ッテ居ルノデアリマス、其甚シキニ
於キマシテハ口稼ギハ嫌ダト云フ其弱點
ニ附込ミマシテ、或ハ思想上ノ方面ヨリ、
或ハ其他ノ方面ヨリ致シマシテ、妙齡ナル
婦女子ヲ誘拐致シマシテ、遂ニ彼等ヲシテ
知ラズ識ラズノ間ニ、實ニ恐ルベキ害毒ヲ
有スル或ル方面ニ堕落セシメントスル者
ガ、多イノデアリマス、恐ルベキ私娼ヲ警
察官ガ檢擧致シマスレバ、製絲工女ガ多數
アッタト云フヤウナ事實ガ、非常ニアリマ
シテ、吾々長野縣民ハ此事柄ニ對シマシテ、
洵ニ頭腦ヲ痛メテ居ルノデアリマス、現內
閣ニハ幸ニ致シマシテ、地上ニ咲ク無名ノ
一輪ノ花ニマデ、重大ナル意義ヲ認メル閣
僚ガ居ラレルノデアリマス、現内閣ハ此長
野縣ノ闇ニ彷徨フ解語ノ花ニ對シテモ、是
亦重大ナル意義ヲ御發見ニナリマシテ、
本案ノ其效果ニ於テ十分徹底ヲ期スルダケ
ノ、將來御監督アランコトヲ切ニ希望致シ
てい、是レ私ノ贊意ヲ表シタ所以デアリマ
ス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313242X00919320901&spkNum=18
-
019・秋田清
○議長(秋田〓君) 討論ハ終局致シマシ
タ、本案ノ第二讀會ヲ開クエ御異議アリマ
セヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313242X00919320901&spkNum=19
-
020・秋田清
○議長(秋田〓君) 御異議ナシト認メマ
ス、本案ノ第二讀會ヲ開クニ決シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313242X00919320901&spkNum=20
-
021・上田孝吉
○上田孝吉君 直チニ本案ノ第二讀會ヲ開
キ、第三讀會ヲ省略シテ委員長報告通リ、
可決セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313242X00919320901&spkNum=21
-
022・秋田清
○議長(秋田済君) 上田君ノ動議ニ御異議
アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313242X00919320901&spkNum=22
-
023・秋田清
○議長(秋田濤君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ直チニ第二讀會ヲ開キ、議案全部
ヲ議題ト致シマス
製絲業法案第二讀會(確定議)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313242X00919320901&spkNum=23
-
024・秋田清
○議長(秋田清君) 別ニ御發議モアリマセ
又、第三讀會ヲ省略シテ委員長報告通リ可
決確定致シマシタ(拍手)-只今政府ヨリ、
滿洲方面ノ治安狀況ニ關スル報〓ノ爲メ、
發言ヲ要求セラレマシタ、之ヲ許シマ
ス-荒木陸軍大臣
滿洲方面ノ治安狀況ニ關スル報〓
〔國務大臣荒木貞夫君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313242X00919320901&spkNum=24
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025・荒木貞夫
○國務大臣(荒木貞夫君) 最近滿洲方面ヨ
リ屢、南滿鐵道ノ沿線其他ニ匪賊ガ襲來
ヲ致シマスルコトノ情報ガアリマスルコト
ト、今朝又號外ヲ以テ可ナリ誇大ナ狀況ガ、
報告ヲセラレテ居リマスルノデ、色々御心配
ヲセラレテ居ル方々モアリマスルカラ、此機
會ニ貴重ナル時間ノ一部ヲ拜借致シマシテ、
前議會以後ノ北滿方面ノ狀況ト併セテ、御
報告ヲ申上ゲタイト存ジマス
北滿方面ニ於キマシテハ、前、第六十二
議會ニ於キマシテ御協贊ヲ得マシタ、豫算
ニ基キマシテ、騎兵旅團其他多クノ機動部
隊ヲ派遣ヲ致サレマシテ、其騎兵旅團、鐵
道隊、飛行隊ト云フヤウナ機動部隊ノ奮鬪
ニ依リマシテ、其活動ガ非常ニ敏活ニナリ
マシタ爲ニ、著々其效果ヲ收メツヽアッタ
ノデアリマス、御承知ノ如クニ滿洲方面
ハ殊ニ北滿方面ノ今囘匪賊ヲ討伐致シマ
スル方面ハ、地形ガ非常ニ錯綜ヲ致シテ居
リマスルノミナラズ、交通ガ極メテ不便デ
アリマス其上ニ二十年以來ノ豪雨ニ遭遇
ヲ致シマシタ爲ニ、軍ノ活動ハ非常ニ困難
ヲ感ジタノデアリマス、道路ハ非常ニ泥濘
ニナリマスルシ、河川ハ悉ク渡河點ヲ失ヒ
マスルシ、大キナ火砲ハ殆ド之ヲ搬送スル
コトガ出來ナイ爲ニ、後方ニ置カナケレバ
ナラヌ、置ケバ此處ニ守備隊ヲ殘サナケレ
バナラヌト云フヤウナ各種ノ狀況、其他宿
營休養、是ハ彼ノ地ニ御出ノ方ハ御承知ノ
通リニ、甚ダ疎薄ナ人口ノ地方デアリマス
ル爲ニ、是等ニ對シテモ非常ナ困難ヲ感ジ
マシタガ、兎ニ角總テノ艱難ニ打勝チマシ
テ、討伐ヲ決行致シマシタ爲ニ、或ハ糧食
ハ飛行機カラ之ヲ送ル、詰リ空中カラ鑵詰
其他ヲ投下致シテ、ソレヲ地上デ拾ッテ討
伐ニ從事スルト云フヤウナ光景ヲ呈シタノ
デアリマス、併ナガラ第○○師團ガ主トシ
テ之ニ當リマシタガ、其奮闘ニ依リマシテ、
五月十五日黑河ヲ拔ケ出シマシテ、滿洲國
竝ニ皇軍ニ對シマシテ抵抗ヲ致シテ居リマ
シタ馬占山ハ、遂ニ其根據地黑河ニ歸ルコ
トヲ得ズ致シマシテ、二箇月ノ後、卽チ七
月ノ末、二十九日ニ安固鎭ノ附近、卽チ哈爾
賓ノ東北方-山地デアリマスガ、此地點
ニ於キマシテ終ニ戰死ヲ致シマシテ、玆ニ
其方面ノ巨頭ヲ失ヒマシタ、其他ノ者ハ遂
次歸順ヲ申出デマシテ、今日ノ所ニ於キマ
シテハ僅ニ其殘黨ガ「ソヴイエツト」露西
亞ト滿洲國ノ國境附近ニ、其餘喘ヲ保ヲテ
居ルダケデアリマシテ、此方面ノ討伐ハ玆
ニ一段落ヲ〓ゲタコトヽ存ジマシテ、洵
御同慶ノ至リデアリマス、之ヲ御報告申上
ゲマス(拍手)尙ホ馬占山ノ戰死ニ付キマシ
テハ屢〓疑ハレタノデアリマスガ、軍ニ於
キマシテハ最後迄其證據ヲ固メマスル爲
ニ、色々調査ヲ致シマシタ結果、其埋葬ヲ
致シテ居リマシタ所ノ地點、竝ニ是等ノ遺
品等モ皆悉ク手ニ入リマシテ、先般是ハ叡
覽ニ達シタヤウナ次第デアリマシテ、何レ
其中ニハ各位ノ供覽ニ呈スルコトガ出來ヨ
ウト存ジテ居ル次第デアリマス
次ハ南滿方面デアリマスルガ、南滿方面、
卽チ鐵道沿線、其附近ニ於キマシテハ大刀
會匪、共產匪、竝ニ天津附近ニ根據ヲ持ノテ
居リマスル東北政權ノ殘黨、卽チ張學良ノ政
權等ノ操縱ニ依リマスル東北抗日救國會、
是等ノ者ガ最近ニ非常ナ活動ヲ致シタノデ
アリマス
多少詳細ニ亙リマスルガ、只今御話モア
リマシタノデ若干申上ゲマスルガ、是ハ七
月ノ六日頃カラ活動ヲ始メマシテ、其總數
約十五万ト稱セラレテ居リマス、是ハ稱セ
ラレテ居リマスルノデ、果シテ十五万人居
ルカ居ナイカ能ク分ラヌノデアリマスガ、
十五万、之ヲ五軍ニ分ケマシテ、其一團ハ
遼西方面、卽チ錦州方面ニ行動ヲ致シ、第
二軍ハ遼南方面、卽チ營口方面ニ策動ヲ致
シ、第三軍ハ遼東方面、卽チ奉天方面ニ策動
ヲ致シ、第四軍、第五軍ハ各、吉林方面竝ニ
通遼ノ方面ニ行動ヲ致シマシテ、七月ノ末カラ
八月ノ中旬乃至八月ノ下旬、今日ニ至ル迄活
動ヲ繼續致シテ居ルノデアリマス、八月下旬遼
東方面ニ策動致シテ居リマスル其一部ガ、
今囘奉天附近ヲ騒ガシタノデアリマシテ、
其囘數ハ此二箇月間ニ於テ遼東方面、卽チ
奉天ノ沿線ニ於テ約二十囘、吉林ノ方面ニ
於キマシテ約十五囘、併シ此兵力ノ出テ參
リマスモノハ新聞ニ報ゼラレル如ク數千
ノ集團ハ致シテ居ラナイノデアリマス、五
百位ヲ最大ト致シマシテ、最小ノモノニ至ッ
テハ三十、四十ト云フヤウナ數ニナッテ、
沿線ヲ荒シテ居リマス、之ニ對シテ北滿方
面ニ全力ヲ注イデ居リマシタ爲ニ、南滿方
面ハ稍、手薄デアッタ爲ニ、獨立守備隊ハ
寡兵ヲ以チマシテ、殆ド畫夜ノ分チナク此
討伐ニ從事ヲ致シマシテ、兎モ角モ今日ノ
治安ヲ維持シテ居ッタノデアリマス
今囘奉天方面ニ參リマシタモノハ、新聞
ノ報告ガ誇大デアリマスルノデ、此二十八
日卽チ先月ノ二十八日ニ參リマシタモノハ、
夜ノ十一時半頃ニ約百二十名ノモノガ、三
方面ヨリ不意ニ奉天ヲ襲フタノデアリマ
ス、奉天ノ東方竝ニ東北方面ヲ襲ヒマシタ
ガ、是ハ守備隊ニ依テ間モナク擊退ヲ致サ
レマシタガ奉天東方ノ兵工廠附近ニ參リ
マシタ者ハ、支那ノ舊東北政權ノ格納庫デ
アリマスル飛行機庫ヲ襲ヒマシテ、此處ニ
格納致シテ居リマシタ、殆ド廢機同樣ニ致
シテ居ッタサウデアリマスガ格納ノ飛行機
約十二三臺、格納庫ト共ニ燒失致シマシタ
以外ニハ大ナル損害ハ無イノデアリマ
ス今朝來ノ奉天ノ襲撃ニ付キマシテハ
只今電話ヲ以テ直チニ狀況ヲ問合セマシタ
ガ、昨夜約百名バカリノ者ガ奉天ヲ襲擊シ
テ參リマシタケレドモ、擊退致シタニ過ギ
ナイ、何等其他ニ不安ハナイト、只今マデ
ノ情報ニ於テハ入ッテ居リマス
ソレカラ滿洲ノ地域ト匪賊ノ關係デアリ
マスガ、御承知ノ如クニ滿洲ノ地方ハ、此
事變前ニ於キマシテモ、絕エズ馬賊ノ跳梁
ヲ極メテ居ノタ地方デアリマシテ、其馬賊
ノ跳梁ノ狀態ハ彼ノ地方ニ御住居ノ方ハ
萬々御承知ノ如ク、豫想外ニ彼方此方ニ出
沒ヲスルノデアリマス、故ニ之ヲ全ク掃滅
ヲ致シマスル爲ニハ、可ナリノ困難ト又多
クノ時間、其他秩序ノ恢復ト相俟タナケレ
バ容易ニ行ハレヌコトヽ存ジマスルガ、
只今ノ所ハ討伐ト共ニ各種招撫ノ方法ヲ
執リマシテ、卽チ之ヲ招キ之ヲ歸順セシメ
マシテ、此方法ヲ執ッテ居ルノデアリマス
ガ、玆ニ遺憾ナコトニハ、熱河方面ニ於キマ
スル所ノ舊東北政權ノ兵團デアリマス、卽
チ湯玉麟ノ部下デアリマスルガ、是ハ天津
方面ニ於キマスル所ノ張學良ト致シマシテ
ハ、卽チ舊東北政權ト致シマシテハ、此處
ヲ根據ト致シマシテ、抗日會ノ義勇軍等ヲ
用ヒテ、滿洲禍亂ノ策動ヲ致シマスル爲ニ、
之ニ依リマシテ只今申上ゲマシタヤウナ
南滿方面ノ抗日會ガ、各方面ニ策動スルト
云フヤウナ狀況ガアリマスルノデ、之ニ對
シマシテハ今日北滿方面ノ狀況ノ鑑定ト共
二、ソレ〓〓考案ヲ廻ラシマシテ、此方面
ノ處置ヲ執ルコトニ致シテ居リマスルガ、
之ニ依テ遠カラズ此方面モ、何トカ處置ヲ
致シタイト考ヘテ居リマス、唯此方面ノコ
トニ付キマシテハ天津方面ノ張學良トノ
關係モアリマスルノデ、國際的ニモ政治的
三·、極メテ複雜ナル關係ガアリマスル爲
ニ、是等ヲ考慮致サネバナラヌ狀況ニアリ
マスルノデ、ソレ〓〓是等ノ方面ニ對スル
策案ヲ、愼重ニ〓究ヲ致シマシテ、處置ヲ
執ルコトニ致シテ居リマス
次ハ朝鮮國境方面デアリマスルガ、御承
知ノ如ク間島方面ノ兵匪ハ悉ク鎭定ヲ致シ
テ居リマセヌコトハ甚ダ遺憾デアリマス
ルガ、此方面モ御承知ノ通リニ、歷史的ニ
モ地理的ニモ、馬賊トハ非常ナ關係ガアリ
マスルノデ、匪賊ハ此方面ニ多クノ根據ヲ
持っテ居ルヤウナ關係モアリ、其上ニ兵力
ノ不足ノ爲ニ、此方面ニ向ッテハ十分ノ兵
力ヲ今日マデ割クコトガ出來ナカッタノデ
アリマスルガ、最近ニ於テハ朝鮮方面ヨリ、
一部ノ部隊ヲ此方面ニ派遣ヲ致シマスルト
共ニ、是等ノ交通道路ヲ悉ク扼シマシテ、
補給等ヲ保障致シマシテ、此方面ノ鎭定ヲ
期シテ居リマス、近ク此方面モ鎭定シ得ル
コトヽ考ヘテ居リマス
次ニハ治安維持ノ方法ニ付テ一言此際申
上ゲテ置キタイト思ヒマスガ、色々御心配
ヲ掛ケマシテ、兵力ガ不足デハアルマイ
カ、或ハ長ク滿洲ノ地ニ皇軍ヲ置イテ色
色ナ內外ノ關係ニ困難ヲ生ジナイカト云フ
ヤウナ、色々ナ心配ガアリマスガ、只今ノ
所デハ一般ノ國防上ノ關係ヲモ顧慮シナケ
レバナラヌ狀況ニアルノデアリマス、先般
本會議竝ニ委員會ニ於テ段々御質問等モア
リマシタガ如クニ、滿洲方面ハ合法的ニ獨
立ヲ致シマス、其以後ニ於キマス所ノ國際
關係ヲ能ク考慮致シマスルト、軍部當局ト
致シマシテハ一般的ノ國防モ考ヘナケレ
バナラヌコトニナッテ居リマス、此一般的ノ
國防上ノ關係、及只今申シマシタ內外ノ狀
況等ヲモ考慮致シマシテ、只今ノ所デハ出
來得ルナラバ、現在ノ兵力ヲ以テ滿洲方面
ノ治安維持ヲ致シタイト、色々工夫ヲ致シ
テ居リマス、是ガ爲ニ兵力編組ノ上ニ色々
ナ變更ヲ致シマシテ、以テ滿洲ノ現在ノ狀
況ニ適應スルヤウニ、ソレ〓〓統帥部ニ於
テ〓究致シテ居リマスノデ、近ク、殊ニ來
年度ノ、是等ノ方面ニ付キマシテハ案ヲ具
シマシテ、或ハ通常議會ニ御協贊ヲ仰グヤ
ウナコトニ至ルコトヽ存ジテ居リマスノ
デ、是等ニ依フテ滿洲方面ノ一定セル治安
維持ノ方法モ、早春解決スルコトヽ存ジテ
居リマス、固ヨリ單ニ兵力ヲ以テノミナラ
ズ、或ハ政略上ノ方法、或ハ招撫、愛撫ト
云フヤウナコトヲ以チマシテ、是等ヲ併セ
マシテ、只今申シマシタ兵力編組ニ於ケル
所ノ工夫、及其他ノ統帥方面ノ〓究ニ基イ
テ、今後ノ治安維持ノ方法ヲ考ヘタイト存
ジテ居リマス、固ヨリ狀況ノ變化ハ明日モ
窺知レナイノデアリマスカラ、只今御報告
ハ申上ゲマスガ、此狀況ノ變化ニ依リマシ
テハ增兵ノ用意モアリマスノデ、是等ニ
付キマシテハ其機會ニ於テ御報告申上ゲ、
御協賛ヲ仰ギタイト存ジテ居リマス
此時機ニ一言北滿ノ水害ノ狀況ヲ申上ゲ
テ置キタイト思ヒマスガ、新聞紙上ニ於テ
御承知ノコトヽ思ヒマスガ、今囘ノ水害ハ
二十年來ノ事デアリマシテ、其地域ハ北滿
ノ三分ノ一ニ亙フテ居リマシテ、北滿方面ニ
於ケル約二十万人ノ避難民ハ恰モ本日想
ヒ起ス關東ノ大震火災ノヤウナ、其日ノ衣
食ニ困窮シテ居ルト云フ有樣ヲ呈シマシ
タ、其上ニ傳染病「コレラ」等ガ段々ニ流行
致シマスノデ、是等ノ處置ニ付キマシテハ
十分ノ考慮ヲ拂ッテ居ル次第デアリマスガ、
出先ノ陸軍ト致シマシテハ、今日滿洲國ガマ
ダ建設勾々ノ際デアリマシテ、十分ノ基礎
ノ固ッテ居ラヌ時ニ、此機會ニ災害ヲ受ケ、
長ク馬占山ノ跳梁ニ委シテ居ノタ地方デア
リマスガ爲ニ、色々流言蜚語ガ飛ンデ居リ
マスガ、只今ノ所デハ現在ノ北滿ニ在ル兵
力ヲ以テ、兎モ角モ馬占山以後及水害以後
ノ事ニ付テ善處致シマシテ、然ル後ニ北滿
及熱河ノ方ニ對スル策案ヲ、只今御報〓申
上ゲタヤウニ致シタイト考ヘテ居リマス、唯
此際ニ威武ハ十分ニ示シマシタガ、吾々日
本人ノ斯ウ云フ際ニ於キマスル同情、其他愛
撫ノ方法ヲ以チマシテ、此避難民ニ對シマ
シテ十分手厚イ方法ヲ執リタイト思ヒマシ
テ政府ニ於テ考究致シテ居リマス、是等
ノ點ニ付テモ、日滿共存共助ニ基キマシテ
色々又御配慮ヲ煩ハシタイト存ジテ居ル次
第デアリマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313242X00919320901&spkNum=25
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026・秋田清
○議長(秋田〓君) 直チニ日程ノ議事ニ入
リマス-日程第四乃至第六ハ同一委員
ニ付託シタル議案ナルニ依リ、一括議題ト
爲スニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313242X00919320901&spkNum=26
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027・秋田清
○議長(秋田〓君) 御異議ナシト認メマ
ス、卽チ日程第四、產業組合中央金庫特別
融通及損失補償法案、日程第五、產業組合
法中改正法律案、日程第六、產業組合中央
金庫法中改正法律案、右三案ヲ一括シテ第
一讀會ノ續ヲ開キマス、委員長ノ報〓ヲ求
メマス-委員長樋口典常君
第四產業組合中央金庫特別融通及損
失補償法案(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報〓)
第五產業組合法中改正法律案(政府
提出)
第一讀會ノ續(委員長報告)
第六產業組合中央金庫法中改正法律
案(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報告)
報告書
一產業組合中央金庫特別融通及損失補償
法案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報告候也
昭和七年八月三十一日
委員長樋口典常
衆議院議長秋田清殿
附帶決議
本法ニ據ル貸出利率ハ低金利時代ニ卽シ
郵便貯金利子改訂以後ニ於テハ相當低下
セラレムコトヲ望ム
報〓書
一產業組合法中改正法律案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ別紙ノ通修正スヘキモノ
ト議決致候此段及報告也
昭和七年八月三十一日
委員長樋口典常
衆議院議長秋田〓殿
〔別紙〕
產業組合法中改正法律案中左ノ通修正ス
附則第二條中「三箇年」ヲ「五箇年」ニ改ム
附帶決議
政府ハ預金部資金ヲ以テ貸付ケタルモノ
及今後借替又ハ新ニ貸付クルモノニ對シ
テハ改訂郵便貯金利率ヲ基準トシテ利率
ヲ低下セラレムコトヲ望ム
報〓書
一產業組合中央金庫法中改正法律案(政
府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報告候也
昭和七年八月三十一日
委員長樋口典常
衆議院議長秋田〓殿
〔樋口典常君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313242X00919320901&spkNum=27
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028・樋口典常
○樋口典常君 只今上程サレマシタ產業組
合中央金庫特別融通及損失補償法案外二件
ノ委員會ノ經過ノ〓要及結果ヲ簡單ニ御報
告申上ゲマス、此三案ハ互ニ關聯シテ發動
スルコトニナッテ居ルノデアリマス、就中特
別融通ハ、現在全國ノ信用組合聯合會及信
用組合ニ於テ貸出シテ居ル所ノ金額ガ十億
圓ヲ超エテ居ルノデアリマス、其中固定シ
テ居ルモノガ三億圓ト云フコトニ相成ッテ
居リマス、其固定シテ居ル所ノ債權ヲ資金
化シマシテ、サウシテ融通ノ圓滿ヲ圖ル爲
ニ、政府ハ此際三箇年間ニ一億圓、本年度
ニ於テ二千五百万圓ヲ貸出シテ、中央金庫
ヲシテ右ノ信用組合ニ特別融通ヲ爲サシ
メ、之ニ依テ生ズル同金庫ノ損失ハ三千万
圓ヲ限ヲテ補償スルト云フ案デアルノデア
リマス、其外ノ二案ハ、組合及金庫ノ實質
ヲ改善シ其機關ノ活動ヲ全カラシムル爲
ノ改正法案デアリマス、委員會ハ四囘ニ亙
リマシテ、每回數時間ヅヽ極メテ熱心ニ
委員諸君ノ質疑或ハ論議ガ行ハレタノデア
リマス其論點ノ主ナルモノハ、融通資金
及其運用ニ關スルコト、利率ニ關スルコ
ト、組合ノ組織ニ關スルコト、組合竝金庫
ノ機能ヲ充實、活動ニ關スルコト等デアリ
マシタ、發言セラレタル諸君ハ、豫テ產業
組合ニ密接ナル關係ヲ保チ、且ツ斯道ニ造
詣深キ方々デアリマシタ、卽チ丹下茂十郞
君、石川又八君、磯部〓吉君、畑七右衞門君、
星島二郞君、戶田虎雄君、高橋熊次郞君、
野中徹也君、栗原彥三郞君、西脇晋君、櫻
井兵五郞君、橫山金太郞君等デアリマシタ
洵ニ此諸君ニ依フテ有益ナル御意見ヲ承ル
コトヲ得マシタノハ感謝ニ堪ヘマセヌ、而
シテ其論議ハ歸著スル所ハ略〓同一デア
リマシタ唯野中徹也君ヨリ產業組合法中
改正案ニ付テ、產業組合法ノ第二條第一項ニ
但書ヲ加フトアル、其條項ヲ、全部削除スル
ト云フ修正動議ガ出マシタノデアリマス、
是ハ野中君ト栗原君ノ御二人ダケノ贊成デ
アッタ爲ニ、少數デ否決ニ相成リマシタ要
スルニ吾々ハ產業組合ノ如キ國本的組織的
ニ發達シツヽアルモノニ對シテハ國家ハ
尙ホ一層努力ヲ拂フベキモノナリトノ堅キ
信念ヲ有スル者デアリマスルカラ、法案ニ
ハ素ヨリ滿足デアリマセヌケレドモ、國民
ガ焦眉ノ急トシテ要望スル所ノ通貨ノ流
通農村負債ノ整理、此趣旨ニ適合スルモ
ノトシテ、贊成ヲ致シタノデアリマス、斯
樣ナ意味ヲ以テ二箇ノ附帶決議ト一箇ノ修
正ヲ加ヘテ、前申シタ產業組合法中ノ第二
條ノ但書ヲ除クノ外ハ全會一致ヲ以テ可
決致シマシタ、今玆ニ附帶決議及修正ノ點
ヲ朗讀致シマス
產業組合中央金庫特別融通及損失補償
法案ニ對スル附帶決議
本法ニ據ル貸出利率ハ低金利時代ニ卽シ
郵便貯金利子改訂以後ニ於テハ相當低下
セレムコトヲ望ム
產業組合法中改正法律案ニ對スル修正
附則第二條中「三箇年」ヲ「五箇年」ニ改ム
附帶決議
政府ハ預金部資金ヲ以テ貸付タルモノ及
今後借換又ハ新ニ貸付クルモノニ對シテ
ハ改訂郵便貯金利率ヲ基準トシテ利率ヲ
低下セラレムコトヲ望ム
此修正及附帶決議ハ滿場一致ヲ以テ可
決致サレマシタ、斯樣ニ言葉ハ穩カデアリ
マスルガ、極メテ强キ精神ガ此附帶決議ニ
ハ籠ッテ居ルト云フコトヲ御承知ヲ顯ヲテ置
キマス、此修正及附帶決議ニ對シテハ政
府委員モ皆同意サレマシタ、產業組合中央
金庫法中改正案、是ハ原案通リ可決致シマ
シタ、甚ダ簡單デアリマスルガ、玆ニ謹ン
デ御報告ヲ申上ゲマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313242X00919320901&spkNum=28
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029・秋田清
○議長(秋田〓君) 質疑ノ通〓ハアリマセ
又、直チニ討論ニ入リマス、通〓順ニ依テ
發言ヲ許シマス、野中徹也君
〔野中徹也君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313242X00919320901&spkNum=29
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030・野中徹也
○野中徹也君 私ハ今上程セラレマシタ三
ツノ法律案ノ中ニ於キマシテ、產業組合中
央金庫法、產業組合中央金庫特別融通竝損
失補償法案、此二ツニ對シマシテハ、今委
員長ノ御報〓ノ通リ、滿腔ノ贊意ヲ表スル
者デアリマス、併ナガラ他ノ一ツデアリマ
スル、卽チ產業組合法中改正法律案ニ對シ
マシテハ、反對ノ意ヲ表サウト考ヘテ居ル
ノデアリマス、初メ私共ガ此產業組合法中
改正法律案ヲ通覽致シマシタ所、其中ニ於
キマスル改正要點ニ於キマシテハ、私共ノ
適當ナリト考ヘル數箇所ノ點ヲ見出シタノ
デゴザイマス、併ナガラ此改正案ノ骨子ト
モ言フベキ、只今委員長報告ノ第一條第一
項ノ次ニ左ノ但書ヲ附スト云フ、卽チ產業
組合ノ組織變更ノ問題ニ關シマシテハ、洵
ニ疑義ヲ持フテ居ッタノデゴザイマス、卽チ
此但書ヲ加フト云フ事柄ハ、從來ハ無限責
任、有限責任竝保證責任ト云フ三ツノ變,
タ所ノ責任組合ガ存立シタノデアリマスル
ガ、此三ツノ變リマシタ所ノ組合ノ中ニ於
キマシテ、從來有限責任デアリマシタモノ
ヲ、唯二ツノモノダケノ例外ヲ求メマシ
テ、他ノ有限責任組合ハ、悉ク無限又ハ保
證責任組合ニ變更スベシトノ提案ナノデア
リマス、而シテ其二ツノ例外ト云フノハ
卽チ一ハ市街地信用組合、一ハ卽チ消費組
合デアリマス、此市街地信用組合及消費組
合ヲ例外ト致シマシテ、他ノ組合ハ悉ク前
ニ申シマシタ無限責任組合、或ハ保證責任
組合ニ改ムベシトノコトデゴザイマス、此
點ニ付キマシテハ、私共ハ甚ダ疑義ヲ持,
テ居ノタノデアリマス、而シテ私共ガ此問題
ニ對シテ疑ヲ持クテ居ルバカリデハナク、其
處ニ出席ヲ致シテ居リマシタ政友會ノ委員
諸君ノ大部分ノ方々モ此根本的組織ノ改
正ニハ疑ノ眼ヲ以テ居,タノデアリマシタ、
現ニ最後ノ政友會ヲ代表シテ演說セラレマ
シタ星島二郞君モ此組織變更ノ問題ニ關
シテハ甚ダ疑ヲ持ヲテ居ルノデアル、併ナガ
ラ此提案ノ趣旨ハ恐ラク特別融通法ト相
竝ンデ、何等カノ意味ヲ以テ提案セラレタ
モノデアラウカラ、之ニ同意スルノデアル
ト言ヒ譯ヲ付ケテ同意ヲセラレテ居ルノ
デアリマス又現ニ此處デ委員長ガ自ラモ
御報告ノ通リ、此組織變更ニ對シテハ疑ヲ
持フテ居ルト云フコトヲ御話ニナッテ居リマ
ス、左樣ニ致シマシテ此組織變更ノ問題ニ
關シマシテハ私ハ疑ノ眼ヲ以テ政府委員
ト幾度ガ此問題ニ關シテ折衡ヲ重ネタノデ
アリマス、質問應答ヲ重ネタノデアリマ
ス、而シテ其質問應答ノ重ナルニ連レマシ
テ、益〓私ハ此改正案ガ何レヲ要點トシテ
改正スベキコトニ相成ッタノデアルカト云
フコトニ對シテ疑ヲ强ウ致シタノデアリマ
シタ、其結果ト致シマシテ、只今委員長報
告ノ通リ、私ハ此第二條第一項ノ但書ヲ加
フト云フ追加ヲ、全部削除スベシトノ修正
意見ヲ提出致シタノデアリマス、併ナガラ贊
成ノ者ハ僅カ二名デゴザイマシテ私共ハ破
レマシタ、修正意見ガ破レルナラバ、其根
本的問題ガ吾々ト見解ヲ異ニ致シテ居リマ
スカラ、私共ハ之ニ反對セザルヲ得ナイノ
デアル、而モ私共ノ反對ガ幸ニ皆樣方ノ御
同情ヲ得、本會議ヲ通過致シマシテモ、特
別融通ニハ何等ノ影響ヲ及ボサナイノデア
ル、何故カナレバ私ガ之ニ對スル反對ヲ致
シマスル骨子ハ改正ニ反對デアリマスル
ガ故ニ、現狀ノ組合ハ其儘殘ルノデアル、卽
チ現狀ノ組合ニ對スル特別融通ハ、依然ト
シテ融通セラルヽコトデアリマスカラ假
令本會議ニ於キマシテ私ノ反對意見ガ通過
致シマシテモ組合救濟ノ實ハ擧り得ルノ
デゴザイマス、斯樣ナ意味ニ於キマシテ私
ハ本案ニ反對ヲ致サウトスル次第デアリマ
ス、ソコデ私共ガ寔ニ不審ニ考ヘマスノ
ハ委員會ノ席上ニ於キマシテハ、私共ト
意見ヲ同ウ致シマシタ所ノ政友會ノ委員諸
君ガ、ニ愈、最後ニ決ヲ採ル時ニ當リマシ
テ、本改正案ニ贊成ヲナサッタコトガ、私共
ニ言ハセルナラバ議員ノ良心カラ考ヘテ見
テ、寔ニ疑ハザルヲ得ナイノデアリマス(拍
手)或人ハ言ヒマス、此本改正案ガ通過スル
ニ至ッタノハ、所謂米穀法中改正法律案ニ於
キマシテ、政友會ガ悉ク此方面ニ全力ヲ注
イダガ爲ニ此方面ヲ蔑ロニシ、構ハズニ置
イタ爲ニ、是ガ通過シタノデアルト云フ說
ヲ爲ス人ガアルノデアリマス、果シテ然リ
トスルナラバ、此本案ノ通過ハ卽チ政友會
ノ諸君ノ遊〓ニ依テ通過致シタモノデアリ
マシテ、此本案ヲ遊〓ニスルガ如キ、又國民
多數ニ迷惑ヲ感ゼシムルガ如キハ、吾々議
員ノ職責トシテ寔ニ皆樣ノ爲ニ遺憾トスル
次第デアリマス、斯樣ナ意味合ニ於キマシ
テ私共ハ之ニ對スル所ノ反對ノ決意ヲ致
シタノデアリマス、而シテ反對ノ理由ト致
シマシテハ、第一ニ政府ハ產業組合ノ發展
ニ關スル事實ノ認識ヲ缺イテ居ルト思ハレ
ルノデアリマス私共ハ委員會ニ於ケル質
問應答ノ中ニ於キマシテ、產業組合發展ノ
事實ヲ、特ニ政府ノ吳レマシタ資料ニ依テ
問ヒ質シマシタ、卽チ明治三十六年以降昭
和六年ニ至ルマデニ於テ、其初メノ中ニ於
テハ無限責任組合ハ增加ノ形跡ヲ辿ヶタ、
卽チ大正四年ニハ二千八百四十三ト云フ多
數ニ上リマシタガ、昭和六年ニ於キマシテ
ハ一千三十ト云フ、三分ノ一ノ減少ニナッタ
ノデアリマス、而シテ保證責任組合モ、當
初ニ於キマシテハ二百七十七ノ多數デアリ
マシタガ、昭和六年ニハ二百三十一ト減少
シテ居ル、然ルニ有限責任組合ハ、初メノ
中ニ於キマシテハ僅ニ五百九十デアリマシ
タガ、年々其數ガ增加致シマシテ、昭和六
年ニ於キマシテハ實ニ一万二千九百十ト云
フ、全組合數ノ九一「パーセント」ニ及ンデ
居ルノヂアリマス、此事實ハ要スルニ無限
責任組合竝ニ保證責任組合ノ缺點ヲ現ハス
ト共ニ、有限責任組合ガ國民ノ輿望ニ一致
シテ居ルコトヲ物語ルモノデハナイカト考
ヘタノデアリマス(拍手)之ヲ以チマシテ政
府委員ニ質問ヲ致シマシタ所ガ、政府委員
ノ曰ク、成程有限責任組合ハ增加致シマシ
タガ、有限責任組合ヲ組織スルノハ非常ニ
簡單デアリマス、簡單デアリマスルガ故ニ
斯樣ニ增加シタノデアリマスルガ、若モ有
限責任組合ガ無クナッタ時ニ於テハ、恐ラ
ク保證責任組合ガ增加スルデアラウ、斯ウ
言フノデアリマス併ナガラ私ハ此政府ノ
答辯ハ甚ダ常識ヲ缺イテ居ルノデハナカラ
ウカト考ヘル何トナレバ、例ヘバ此處ニ
三ウノ井ヲ無條件ニ、而モ無償デ提供セラ
レタトスル、其一ツガ鰻丼デアリ、其一ツ
ガ親子丼デアリ、其一ツガ味噌汁ヲ盛ッタ所
ノ丼デアルトスル、シテ見ルナラバ、是ガ
無償デ皆樣方ノ前ニ提供セラレマシタ時
ニ、恐ラク通常ノ人ハ-特別ノ趣味ノア
ル人ハ別デアリマスガ、通常ノ人ハ先ヅ鰻
丼ヲ食ベルデセウ、而シテ若シ鰻井ヲ出サ
ナイト云フ時ニナリマシタナラバ其時ニ
ハ親子丼ヲ食ベルデセウ、是ハ卽チ私共ノ
通常ノ常識デ、何レヲ取ルベキカト云フコ
トハ容易ニ分ルノデアル、今日ニ於キマシ
テハ有限責任組合、無限責任組合、保證責
任組合ト云フ三ツガアリマスルガ、其中ニ於
キマシテ國民ノ多數ハ、喜ンデ有限責任組合
ヲ取ッテ居ル、是ハ卽チ要スルニ前ニ中シマ
シタ通リ、簡單デアルニ非ズシテ、要ハ此組
合ガ國民ノ嗜好ト申シマスルカ、國民ノ要望
ニ適應シテ居ルガ爲デアルト私ハ考ヘル、
此組合制度ト云フモノハ、是ハ國民ノ要求ニ
依テ成立シタモノデハアリマセヌ、其發達
ノ歷史ヲ見マスレバ、初メニ於キマシテハ當
局ガ外國ニ於キマスル所ノ制度ヲ模倣致シ
マシテ、我國ニ持ッテ參リ、之ヲ國民ニ指導
シタモノデアリマス、而シテ明治三十六年
ニ此組合ガ始ッテ以來、過去三十年ノ歷史ニ
依テ、日本ノ國民ト云フ者ハ有限責任組合
ガ最モ可ナリト信ジテ、之ヲ取ッテ居ルノデ
アル、現在ニ於テモ、例ヘバ沖繩縣ニ於キマ
シテハ、今日無限責任組合カラ有限責任組合
ニ段々變リツヽアル事實ガアルデハアリマ
セヌカ、是レ卽チ日本國民ノ要求スル所ガ
有限責任組合ニシテ、無限デモナケレバ、
保證デモナイト云フ所ノ實際ノ證據デアラ
ウト私ハ考ヘル、斯樣ナ意味合ニ於キマシ
テ、此時突如ト致シマシテ、有限責任組合
ヲ止メテ、無限又ハ保證ニスル如キハ卽
チ國民ノ向フ所ヲ政府ハ知ラズ、人心ノ趨
クベキ所ヲ見ザル所ノ不明ノ人デアラウト
私ハ考ヘルノデアル
第二ニ政府ハ產業組合ノ運用ニ關シテ
認識ガ不足デアル、私ハ此無限責任組
合、或ハ有限責任組合、何レデモ同ジ
デゴザイマスルガ、今日所謂產業組合
ト云フモノハ割合不振デアリマス、不
振デアリマスカラ、不振ノ根據何レニアリ
ヤト問ヒマシタ所ガ、政府ノ曰ク、產業組
合ノ資金ガ僅少デアル、而モ有限責任組合
ニ於テハ理事者ガ連帶ニ依テ借金ヲス
ル、ソレデアリマスカラ其迷惑ノ爲ニ自然
脫退者ガ生ジテ、其爲ニ產業組合ガ不振デ
アルト言ハレテ居ル、併ナガラ私ガ見マス
ルノニ、此產業組合ノ不振ハ資本金額ノ多
額デアル、或ハ少ナイト云フノデハナイ、
又理事者ガ迷惑デアルトカ、迷惑デナイ
トカ云フコトデハナカラウト思フ、卽チ現
在產業組合ガ不振ノ理由ハ、組織ノ問題ニ
非ズシテ、私ハ人ノ問題デハナカラウカト
考ヘル、若シ夫レ無限責任組合ガ、是ガ最
モ責任ノ重大ナ組合デアッテ、所謂信用程度
ト致シマシタナラバ最モ大ナルモノデゴ
ザイマセウ、併ナガラ此無限責任組合ノ中
二、吾々ハ幾多ノ所謂事業不振ノ組合ヲ見
出シテ居ルノデアル、保證責仕組合ノ中ニ
於テモ亦同樣デアル、果シテ然リトスルナ
ラバ、今時ニ於キマスル產業組合ノ不振ハ
資本ノ問題デモナケレバ信用ノ問題デモ
ナイ、要ハ卽チ人ノ問題デアラウ、所謂理
事者ノ頭ノ働キ樣ガアルカナイカニ依テ決
セラルヽモノデハナカラウカト考ヘル、勿
論政府モ多少此點ニ於キマシテハ御注意
ヲセラレテ居ルヤウデゴザイマス、今度ノ
豫算ニ於キマシテハ、理事者養成ノ爲ニ約
三万圓バカリノ金額ガ提出セラレルヤウデ
アリマス、斯樣ニ政府自身スラ現時ノ產業
組合ノ不振ハ組織ニアラズシテ、人ニア
ルト云フコトヲ御自覺ニナッテ居ル、果シテ
然リトスルナラバ何ガ故ニ養成セラルベ
キ所ノ適當ナル良イ理事者ガ、活社會ニ出
ルノヲ俟タズニ、急イデ有限責任組合ヲ此
處デ滅亡セシメントスルモノデアルカ、私ハ
甚ダ政府ノ意ノアル所ヲ疑ハザルヲ得ナイ
第三ニ政府ハ此有限責任組合ヲ消滅セシ
ムルコトニ依テ、將來ニ於ケル農村ノ負債
ヲ重ネ、又農村ニ於キマスル紛擾ノ種ヲ蒔
クモノデアリマス、前ニ申シマシタ通リ、
產業組合ノ不振ハ、一ツニ人ノ問題モアリ
マスルガ、又他面ニ於テハ避クベカラザル
財界ノ不況ガ其原因ノ一ツヲナシテ居ルノ
デアリマス、而シテ今時ニ於キマシテハ
兎モ角モ經濟狀態ガ轉〓シテ參リマスルカ
ラ、或ハ今日ガドン底デアリマシテ、將來
ハ好クナルデアリマセウガ、何時カハ又今
日ノヤウナ不況時代ヲ現出シナイトモ限ラ
ナイ、其場合ニ於テ、例ヘバ保證責任組合
ニ於テスラ二倍ノ負擔ヲ農村ニ及ボスモノ
デアル、今日產業組合ノ解散、或ハ〓算ノ
手續ニ依テ幾多ノ零碎ナル資金ヲ醵出致シ
マシタ所ノ組合員ガ、其組合費ヲ拂フコト
ガ出來ズニ競賣ニナルトカ、或ハ强制執行
ノ悲ムベキ事實ヲ現出シテ居リマスルコト
ハ恐ラク皆樣方ガ能ク御存ジノコトヽ信
ズル、果シテ然リトスルナラバ、斯樣ナ非
常手段ハ要スルニ御互同志ニ對スル所ノ
闘爭ヲ生ゼシムルモノデアリ、而シテ恐ラ
ク理事者ガ執行者デアリマセウカラ、此理
事者ガ家屋ヲ競賣スルヤウナコトガアリマ
スナラバ其競賣サレタ人ハ必ズヤ其理事
者ヲ恨ンデ、子々孫々ニ至ルマデ恨ヲ貽ス
デアリマセウ、卽チ斯樣ニ致シマシテ有限
責任組合デアリマスルナラバ、出資金額デ
別ニ關係ガナイノデアリマスカラ濟ミマス
ノニ、更ニ今度保護デアルトカ、無限ト云
フヤウナモノヲ、而モ政府ガ法律ヲ以テ强
ルヤウナ時ニナッタナラバ、此產業組合不振
ノ場合ニ於キマシテハ到ル處ノ農村ニ此
悲ムベキ事實ガ現出スルデアラウト私ハ信
ズルノデアル、ソレデアリマスルカラ、此
政府ノ原案ハ、卽チ將來ニ於ケル農村ノ負
擔ヲ重カラシメテ、且ツ紛擾ノ種ヲ蒔クコ
トデアラウト信ズルノデアリマス
第四ニ政府ノ此法律案ノ提出ハ有產者ノ
脫退ヲ生ジマシテ、組合ノ發達ヲ阻害スル
虞ガアルノデアリマス、勿論私共ノ此質問
ニ對シマシテハ、政府ハ左ニアラズト主張サレ
マシタ、所謂理事ノ連帶保證デナイノデア
ルカラ、有產者ガ此處ヨリ脫退スルコトハ
ナイデアラウト言ハレテ居リマス、併ナガ
ラ例ヘバ保證責任組合ノ場合ヲ考ヘテ御覽
ナサイマシ、保證責任組合ハ、解散ノ場合ニ
於キマシテ倍額ノ金ヲ出シテ、今迄ノ債務
ニ充テルノデアル、卽チ換言スルナラバ
株式會社ニ於テ二分ノ一拂込ニ相當スルモ
ノデアリマス、果シテ然リトスルナラバ
保證責任組合ニナリマシテモ、特ニ所謂財
產上ニ於テ信用ガ增ストハ私共ハ考ヘラ
レナイ、果シテ然ラバ一般ノ債權者ト云
フモノハ、今迄ノ組合ニ金ヲ貸シタト同
樣ニ、理事者ノ連帶責任ヲ要求シ、理事者
ノ個人保證ヲ要求スルデアリマセウ、果
シテ然ラバ、此保證責任組合ヲ作ルコトニ
依リマシテ、決シテ今迄ハ有限責任ニ加ハ
リマシタ者モ恐ラク此保證責任組合ニハ加
入シナイデアリマセウ、然ラバ有產者ノ脫
退ヲ玆ニ生ジマシテ、政府ノ考ヘテ居リマ
スル所トマルデ異ッタ現象ヲ現ハスモノ
デハナカラウカト私共ハ恐レルノデアル
第五ニ例外規定ヲ設ケマシタコトハ、法
律ノ規格上カラ見テ宜シクナイコトデアラ
ウト思フ、總テ法律ト云フモノハ私ガ申
上ゲルマデモナク、同一ノ性質、同一ノ狀
態ノモノナラバ、同ジ法律ヲ以テ統一ヲ致
シマシテ、例外ヲ設ケナイト云フコトガ原
則デアル、然レバコソ、今日所謂法律ノ簡
單化ト云フモノガ叫バレテ居ル理由デア
ル、然ルニ政府ハ此特例ヲ設ケマシテ、所
謂法律ノ簡單化ヲ破ラウトシテ居ルノデア
ルソレノミナラズ、政府ハ農事實行組合
デアリマスルトカ、養蠶實行組合デアリマ
ストカ云フ組合類似ノ組合ヲ認メテ、一個
人ト致シマシテ、產業組合ノ一員ニ爲シ、產
業組合員ト同一ノ利益ヲ享受セシメヤウト
シテ居ルデハアリマセヌカ、果シテ然リト
スルナラバ一方ニ於テハ事柄ヲ集ムベキ
努力ヲ致シ、一方ニ於テハ之ヲ除外スベキ
除外例ヲ設ケタコトハ卽チ是ニ於テ政府
ノ政策ノ矛盾ヲ暴露スルモノデハナカラウ
カト私ハ考ヘルノデアル(拍手)殊ニ市街地
信用組合ト云フモノガ、特別ニ成績ガ優良
デアルナラバ、是ハ又特別デゴザイマス、
併ナガラ政府ガ自ラ言フ所ニ依リマシテ
モ、市街地信用組合ノ中ニ於キマシテモ
不良ナル卽チ固定貸ノ多イ所ノ組合ガ澤山
アル、果シテ然ラバ、農村ニ於キマシテモ、
固定貸ノ多イ所ノ不良ナル產業組合ガアル
ト共ニ、都市ニモ亦同樣デアルトスルナラ
バ、同一ノ狀態デハナイカ、都市ニモ亦不良
ナルモノガアリ、町村ニモ亦不良ナルモノ
ガアルトシタナラバ、此產業組合ノ程度ハ
同一デハナイカ、此同一デアルニ拘ラズ、
之ヲ一方例外視シヨウトハ、如何ナル根據
ニ基クモノデアルカ、私ハ甚ダ怪マザルヲ
得ナイノデアリマス
第六ニ私ハ政府提出ノ態度ガ面白クナイ
ト考ヘル、政府提出ノ時機ガ宜シクナイト
考ヘル、勿論今度中央金庫法中改正法律案、
或ハ產業組合中央金庫特別融通法ト云フヤ
ウナモノヲ出シマシタノハ產業組合自身
カラ、或ハ大藏省ノ預金部カラ低利資金ヲ
出シマシテ、現在疲弊困憊ノ中ニ沈淪シテ
居リマスル產業組合ヲ救濟センガ爲ニ出シ
タモノデゴザイマセウ、卽チ此組合ヲ救濟
センガ爲ニ出シタ時ニ時モ折、前ニ申シ
マシタ斯ル理論薄弱ナル、理論ノ徹底セザ
ル所ノ產業組合法中改正法律案ヲ出シタノ
ハ果シテ如何ナル理由ニ基クカ、此態度
ハ丁度今眼ノ前ニ溺レヨウトシテ居ル所ノ
人ガ居ル、將ニ死ナントシテ居ル所ノ人ガ
アル、其溺レヨウトスル人ヲ救ヒニ參リマ
シタ時ニ、若モオ前ガ金ヲ出スナラバ、則
チ產業組合ガ組織ヲ變更スルナラバ、オ前
ヲ救ッテヤラウト云フ、所謂死ニ瀕セントス
ル人ニ條件ヲ付ケテ救濟スル如キ、人道上
ヨリ見テ如何ニモ無慈悲ナ案デハナカラウ
カト私ハ考ヘル(拍手)斯樣ナ意味合カラ考
ヘマシテ、私共ハ此態度、此時機ガ洵ニ宜
シクナイト考ヘマス、政府ガ若モ眞ニ產業
組合ヲ救濟セントスルナラバ何ガ故ニ率
直ニ、無條件ニ救濟ヲシナイカ、昔カラ弱
者ヲ憐ムノハ武士道ノ華ト言ハレテ居ル、
若シ眞ニ苦ンデ居ル產業組合ヲ助ケル意思
ガ政府ニアリトスルナラバ、政府ハ無條件
ニ助ケテコソ、本當ニ政府ノ有難味ガ分ル
モノデハナカラウカト私ハ考ヘル(拍手)
斯樣ナ意味合ニ於キマシテ、此法律案ノ
提出ハ要スルニ單ナル債權者保護ニシカ
過ギヌ、故ニ私ハ以上併セマシタル六ツノ
理由ニ依リマシテ、此產業組合法中改正法
律案ノ提出ガ、時宜シキヲ得ズ、而モ、政
府ノ法律案ノ內容其モノガ矛盾撞著デア
ル、實情ニ適セナイガ故ニ、本案ノ改正ニ
對シテ反對ノ意思ヲ表シタノデゴザイマス
(拍手)而モ其反對ノ案ガ、皆サン方ノ御協
贊ニ依リマシテ、幸ニ本會議ヲ通過致シタ
トシマシテモ、現在ノ產業組合ト云フモノ
ハ其儘殘シテ居ルノデアリマスカラ、特別融
通資金ヲ與ヘルニ何等ノ不備モナケレバ、
何等ノ缺クル所ハナイノデアリマス、ソレ
デアリマスカラドウカ皆樣方ハ眞ニ農村信
用組合ノ狀態ヲ考ヘ、泥棒ノヤウナ所ノ政
府ノ提案ニ御贊成ナラヌヤウ、切ニ御願致
シマシテ、反對ノ理由ヲ申上ゲタ次第デゴ
ザイマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313242X00919320901&spkNum=30
-
031・秋田清
○議長(秋田〓君) 丹下茂十郞君
〔丹下茂十郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313242X00919320901&spkNum=31
-
032・丹下茂十郎
○丹下茂十郞君 諸君、只今上程ニナッテ
居リマスル三案ニ付キマシテハ、委員長報
告ノ通リ、卽チ產業組合中央金庫特別融通及
損失補償法案ニ付キマシテハ、附帶條件ヲ附
ケマシテ原案ニ、產業組合法中改正法律案
ニ付キマシテハ、附則第二條ノ三箇年トア
ルノヲ五箇年ト修正致シマシテ、而シテ之
ニ附帶決議ノ事項ヲ附シタル其他ノ原案、
竝ニ產業組合中央金庫法中改正法律案ニ對
シマシテハ、唯特ニ一個ノ希望ヲ申述べテ、
其他ハ總テ原案ニ贊成致スモノデアリマス
只今國民同盟ノ野中君ニ依リマシテ、洵
ニ該博ナル產業組合ノ御議論ヲ拜聽致シマ
シタ、野中君ガ此政府案ニ反對セラルヽコ
トハソレハ御勝手次第デアリマス、併シ
政友會ノ委員ガ皆反對デアッタ反對デアッタ
ガ遂ニ贊成スルコトニナッタノハ何カ政
治家トシテノ良心ニ恥ヅル所ガナイカト云
フヤウナ御言葉デアッタ、殊ニ米穀法ニ集中
シテ居ッタカラ、遂ニ此產業組合中央金庫法
ノ問題ガ拔ケテシマッテ、何ダカ遊〓ノヤウ
ニ扱ッタト云フ御話デアル、是ハ少シ愼ンデ
戴キタイ、甚ダ失禮デアリマスガ、政友會
ハ三百名アリマスカラ、七ツヤ八ツノ委員
會ニ手ガ拔ケテ出來ナイト云フヤウナ、ソ
ンナヘマナコトハ致シマセヌ、ソレ〓〓擔
任致シテ居リマスカラ、其委員會ハ委員會
デチヤント始末ヲ附ケテ居リマス、サウ云
フ詭辯ヲ弄スルヤウナコトハ寧ロアナタ
ノ方ガ政治上ノ良心ニ恥ヅル所ガアリハシ
ナイカト思フ、質問中ニ於テ、質問スルコ
トガ、是ガ悉ク反對デアッタカラ、ソレヲ
贊成シタニ依テ政治的ノ良心ガ麻痺シタ
ト、サウ云フコトヲ此議場デ堂々言ハレル
ト云フコトハ此議會政治ヲ革正スル上ニ
於テ、甚ダ愼マナケレバナラヌコトヽ私ハ
思フ、私モ產業組合ニハ明治三十四年ノ組
合法發布當時カラ關係シテ居リマスカラ、
又暇ガアッタラ野中君ト御相談致シマス
カラ來テ下サイ諸君、政府ハ此國家非常
時ノ匡救策トシテ、低金利政策ノ徹底ヲ期
スルト云フコトハ洵ニ結構デアリマスガ、
ソレガ爲ニ郵便貯金ノ利率ノ非常引下ヲ行
フコトニ相成リマシテ、十月一日カラ之ヲ
實施スルト云フコトデアリマス、現在ノ郵
便貯金ノ利率ハ、申スマデモナク年四分二
厘デアリマスガ、此四分二厘ノ郵便貯金ノ
利率ハ急轉直下一分二厘ノ大引下ヲ行フ
コトニ相成ッタノデアリマス、殊ニ現在ノ四
分二厘ノ利率ハ從前長ク四分八厘デ置カ
レマシタモノガ、曩ニ濱口內閣ノ當時、義
務〓育費國庫負擔金ヲ一千万圓增額ニ相成
リマシタル時ニ、其財源ニ充當セラレテ、
四分八厘カラ六厘ヲ減ジテ、今日ノ四分二
厘ト云フコトニ相成ッタノデアリマス、當時
世間デハ斯樣ニ申シマシタ、政府ハ右ノ手
ニ一千万圓ノ國庫負擔金ノ增額ヲ與ヘテ、
左ノ手デ所謂庶民階級ノ手ヨリ郵便貯金ノ
利息ニ於テ六分ヲ奪ヒ取ッタト稱ヘタノデ
アリマス、卽チ今日ノ四分二厘ハ當時此欺
瞞政治ノ現レデアッタコトハ、國民ノ今尙ホ
新シイ記憶ニアルコトヽ思フノデアリマ
ス斯ノ如クシテ四分二厘ニ低下致シマシ
タル郵便貯金ノ利率ハ、今囘非常時匡救ノ
名ノ下ニ、庶民階級ノ極メテ零碎ナル貯金
ノ利息カラ、三割減額ヲ斷行スルト云フコ
トハ是ハ甚ダ亂暴ナル處置デハナイカト
私共ハ考ヘラレル、去ル二十六日ニ貴族院
ニ於キマシテ、柳澤伯爵ガ暴擧デアルト云
フコトヲ言ハレマシタガ、之ニ對シテ政府
ハ何等ノ返ス言葉モナカッタヤウデアリマ
ス、現在郵便貯金ハ三十億ニ垂トトシシマ
シテ、此一分二厘ノ利下ト云フモノハ、凡
ソ三千六百万圓ニ相成リマス、此利下問題
ニ付テノ數字的ノコトハ、最早此處デ彼此
レ贅言ヲ繰返ス必要ハアリマセヌガ、FAI
郵便貯金ハ農商工業其他中小產業者、俸給
生活者及勞働者、所謂庶民階級ノ粒々辛苦
ニ屬スル所ノ、卽チ零碎ナル貯蓄的預金ノ
結晶デアリマスカラ、國民ニ勤儉貯蓄ヲ奬
勵スル意味ニ於テモ、特ニ一般金融的ノ預
金ト金利ヲ同一ニ見ルコトハ出來ナイモノ
デアルト思フノデアリマス、殊ニ最近我財
界ノ危機ニ直面致シマシテ、銀行ノ信用ガ
極度ニ低下致シマスト同時ニ、漸次加速度
ヲ以テ郵便貯金ガ激增ヲ致シテ來マシタコ
トハ事實デアリマシテ、隨テ之ニ反比例ヲ
シテ銀行ノ預金ガ段々減ジテ行ク、是ガ爲
ニ金融資本家ガ苦痛ヲ訴ヘテ居ルコトハ尤
ナ次第デハアリマスルガ、併シ金融資本家
ヲ擁護スル爲ニ、此零碎ナル國民ノ貯金カ
ラ、餘リニ亂暴ニモ大キナ利下ヲ行フト云
フコトハ考ヘナケレバナラヌコトヽ思フ
ノデアリマスルガ、併ナガラ今日ハ眞ニ國
家非常時デアリマスルカラ、多數ノ國民ガ
此重大ナル犠牲ニ甘ンジテ、苦痛ヲ忍ンデ
行キマスル以上ハ政府ハ其預金部ノ資金
運用上ニ付テ最モ忠實ニ、大ニ意ヲ用ヒテ、
其利下斷行シタ所ノ意義ヲ全ウシナケレバ
ナラヌト信ズル者デアリマス(拍手}チ政
府ガ低金利政策ニ徹底スルト云フコトデア
ルナラバ、先ヅ請フ隗ヨリ始メヨ政府ガ
此預金部ノ低利資金ヲ運用スル所ノ資金ノ
融通ニ大ナル利下ヲ致シテ掛ルト云フコ
トガ最モ必要デハナカラウカト思フ、
然ルニ只今上程ニナッテ居リマスル此中
央金庫特融ノ利率ヲ聽イテ見マスルト
云フト年五分六厘、年三分ノ郵使貯金ヲ利
用致シマスル所ノ特融ガ、年五分六厘デア
ル、之ニ對シテ勸業銀行ガ五厘或ハ又農工
銀行ガ五厘ト云フヤウナ手數料ヲ取リマス
レバ、相當ニ高率ニ相成ルノデアリマス
ガ、此點ニ對シマシテハ吾々ハ委員會ニ於
キマシテモ十分政府ニ意ノ在ル所ヲ質シマ
シテ、附帶決議ヲ致シタ次第デアリマス
殊ニ齋藤首相ガ貴族院ニ於テ述べラレマシ
タル事柄ヲ見マシテモ、其利下ヲ爲シタル
コトハ自ラ貸付ケテ行ク所ノ利率ヲ引下
ゲテ、而シテ低金利政策ニ徹底スルト云フ
意味デアリマスル以上ハ、今日將ニ定メラ
レントスル此特融一億圓ニ對スル所ノ利率
ノ今一段ノ低下ヲ圖ルト云フコトガ最モ
必要デアルト考ヘマシテ、私ハ此附帶決議
ニ强イ意味ヲ含マシテ、政府ニ考慮ヲ望ム
次第デアリマス、更ニ今一ツ產業組合法中
改正法律案ニ付キマシテ、只今野中君ニ依
リマシテ有限責任ヲ保證責任ニ變更スルト
云フコトニ對シテハ大ナル反對ノ御議論
ガアッタノデアリマス、御議論ノ一部分ニ付
テハ私共ハ必シモ反對スルモノデハナイ
ガ、我國ノ產業組合ハ、御承知ノ通リ明治
三十四年カラ起シテ、當時政府ハ主トシテ
無限責任ト保證責任ヲ奬勵致シタノデア
ル、段々組合ガ進ンデ參リマシタ結果、
時無限責任ガ非常ナ數ニ發達ヲ致シマシタ
ガ、是ハ又組合員ヲ勸誘シ、加入ヲ容易ニ
スル上ニ於テハ有限責任ノ方ガ便宜デアル
爲ニ、爾來有限責任ガ殖テ來テ、又漸次無
限責任ガ有限責任ニ組織ヲ變更スルモノガ
殖テ來テ、現在ハ有限責任ガ一万三千、無
限責任ガ一千三十、保證責任ガ二百三十幾
ツト云フ斯ウ云フ數ニナッテ居リマス、併
シ組合ノ信用ヲ保持スル上ニ於キマシテ
ハ有限責任ヨリモ保證責任ノ宜イコトハ
申スマデモナク、最近聯合會等ノ設立ヲ見
マスルモノハ殆ド保證責任ト相成ッテ居
リマスルシ、又一般產業組合會ノ議論ガ、
今後保證責任デナクテハイケナイト云フ意
見ガ、漸次進ンデ出來テ居ルヤウニ考ヘマ
ス、併ナガラ、是ハ斯ウ云フ重大ナ變革デ
アル卽チ今度ノ產業組合法中改正業ノ
骨子ヲ成シテ居ル、此組織ノ變更ト云フ
コトハ是迄產業組合法ノ改正ガ屢〓行ハ
レマシタガ其中デ最モ重大ナル變革デア
リマスガ、其有限責任組織ヲ全廢致シテ、
之ヲ保證責任ニ變へテシマフト云フコト
ハ頗ル難事デアリマス、ソレヲ三年間ニ
行ッテシマフト云フコトハ、甚ダ私ハ組合
ニ對シテ不親切デアルト考ヘマス、ヤルコ
トハ必要デアルガ、假スニ相當ノ時日ヲ以
テシテ、而シテ漸次保證責任ニ更改スルコ
トガ大切デアルト考ヘマシテ、此修正案ニ
贊成ヲスル次第デアリマス(拍手)
只今野中君ノ議論デ行キマスト、有限責
任ヲ保證責任ニ變ヘテモ今後低利資金其
他取引ノ關係ニ付テハ、必ズ個人保證ヲ取
リ、或ハ理事ノ個人保證ニ依ラナケレバイ
ケナイト云フコトヲ述ベラレタノデアリマ
スルガ、當局ノ說明ヲ聽キマスレバ從来
低利資金其他ノ資金ノ運用等ニ付テ、何時
モ先キニ立ツ理事者ノ個人保證ヲ取ル爲
ニ、段々有力ナ人ガ尻込ンデ、後ニ殘ッタ
者ハ資格ニ乏シイモノガ多ク、隨テ組合ノ
不振ト云フコトニナル、之ヲ當局ハ憂ヘテ
居リマス而モ今後三年間ニ、卽チ修正ニ
依テハ五年間ニ有限責任ガ保證責任ニ相成
ルト云フコトニ決定致シマスレバ今後低
利資金其他ノ資金融辿ノ場合ニ於テ、一々
個人保證ヲ取ラセナイデ、組合ニ利用サス
ト云フコトヲ當局ハ言明致シテ居リマスカ
ラ、其意味ニ於キマシテモ、今日非常時匡
救ノ必要上、更ニ此特融ノ融通ヲサレル場
合ニ當リマシテハ洵ニ已ムヲ得ナイ次第
ト考ヘテ之ニ贊成シタ次第デアリマス(拍
手)
尙ホモウ一ツ附加ヘテ置キタイノハ、中
央金庫法ノ中ニ相當ノ改正ヲ希望シテ居ル
ノデアリマスガ、ソレハ何デアルカト云ヘ
バ從來中央金庫ニハ餘裕金ガ一時的ニ非
常ニダブル時ガアルノデアリマスガ其餘
裕金ヲ利用スル上ニ於テ甚ダ遺憾ノ點ガ少
クナイノデアリマス、將來其運用上ニ付テ
ハ相當ニ政府ニ於テモ考慮ヲ拂ハレマシ
テ或ハ支部ノ增設、若ハ手形交換所ニ加
入スルコトノ出來ルヤウニ、更ニ又一時的
「コール」ノ開始ノ出來ルヤウニ、法制上ノ
改正ヲ希望スルノデアリマス、是モ特ニ記
錄ニ留メテ政府ニ要求シテ置ク次第デアリ
マス
更ニ此機會ニ大藏當局ニ一言申上ゲテ置
キタイノデアリマス、從來地方產業資金、
殊ニ政府ノ預金部ノ資金ヲ運用スル其資金
ノ融通ガ、大體勸業銀行、農工銀行ヲ經由
シテ居ルノデアリマスガ、其貸付金ノ運用
ニ付テ、常ニ地方ニ於テハ不平不滿ガ多イ、
勸業銀行ニ對シ借入ヲ申込メバ、吏員ヲ數
名派遣シテ、何日モ何日モ實地調査ヲシテ、
サウシテ最後ニ御斷リニナル、又銀行ヘ行
ケバ行員ガ頗ル不親切デ、官僚的デ甚ダ迷
惑スルト云フコトヲ時々地方カラ申シテ參
リ、材料モ相當アルノデアリマス、近イ例
ヲ申シマスト、最近或ル耕地整理組合ガ借
入ヲ申込ンダ、ソコデ勸業銀行員ヲ何名カ
出シテ五日間調ベタ、實地ノコトモ何モ分
ラナイ人ガ五日間モ掛ッテ居ルノダカラ
向フノ組合デ相當經費ヲ拂ッテ、ソレニ付
テ調査ヲシナケレバナラヌ、其結果遂ニ拒
絕ヲ致シテ來タ、更ニ農工銀行ニ申込メバ
農工銀行ハ能ク事情ヲ知〓テ居ルカラ立所ニ
貸シテ吳レタ、ソレデ近頃勸業銀行ノコトヲ
官僚銀行ト言"テ居ル者ガアル、特殊銀行ノ
監督官廳デアル大藏當局ハ能ク御注意ヲ
助け今度ノ特融ノ貸付等ニ對シマシテ、
最モ簡單ニ、最モ迅速ニ、サウシテ、最モ
親切ニ取扱フヤウニ、當局ヨリ特ニ注意セ
ラレンコトヲ希望スルモノデアリマス
以上大體ノコトヲ申上ゲマシテ、委員長
ノ報〓ノ通リ贊成ヲスルモノデアリマス
(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313242X00919320901&spkNum=32
-
033・秋田清
○議長(秋田〓君) 西脇晉君
〔西脇音君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313242X00919320901&spkNum=33
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034・西脇晉
○西脇晋君 私ハ只今議題ニ相成ッテ居リ
マス三案ニ付キマシテ、委員長ノ報告通リ
贊成ヲ致シマス、最モ造詣深キ丹下君カラ
諄々トシテ贊成ノ意見ヲ御述ニナリマシタ
カラ、是レ以上申述ベルノハ屋上屋ヲ架ス
ル嫌ヒガアリマスカラ、唯一言申上ゲタイ
ト思フノデアリマス
時局匡救ノ方法ニ付キマシテハ色ミア
リマスルガ、米ノ問題ト、蠶絲ノ問題、中小
農工商ノ負債ノ整理、續イテハ金融ノ疏通
ヲ圖ル、此問題ガ一番重要性ヲ持ヲテ居ル
ト思フノデアリマス、殊ニ負債整理ヲシタ
バカリデハイケナイ、金融ノ疏通ヲ圖ラナ
ケレバ時局ノ匡救ハ斷ジテ出來ナイト思
フノデアリマス、產業組合ノ固定資金ガ非
常ニ多クナッテ居ル、非常ニ滯貸ガアッテ、
中小農工商ノ產業ト經濟トヲ破壞シテ居ル
ト云フコトガ、非常ナ問題デアリマス、地
方ノ經濟ノ非常ニ振ハナイ、時局ノ一番困ッ
テ居ルコトハ玆ニアルト斷言シテモ宜シイ
ノデアリマス、只今議題ニ相成ヶテ居リマ
ス三案ハ、其中デ中央金庫ノ特融ト、損失
補償、此問題ハ資金ヲ硫通スルト云フ問題
ニ付テ解決ノ一ツデアルト考ヘマス、ソレ
故ニ私モ此三案ニ贊成スルノデアリマスル
ガ、殊ニ政府ニ御注意ヲシ、希望ヲ申上ゲ
タイノハ此間ノ委員會ノ說明ニ依リマス
ル、特融ノ利息ハ五分六厘デアル、甚ダ
高イノデアリマス、殊ニ最近日本銀行ハ貸
付日步ヲ下ゲテ居ル、日本銀行創設以來ノ
初メテノ低金利デアリマス、郵便貯金ハ十
月一日カラ三分ニ下ゲル、斯樣ナ日本ノ大
勢デ金融界ハ益〓低金利ニ進ミツヽアル
此際ニ五分六厘ト云フヤウナ高イ利息ヲ以
テ、特融ノ利息ヲ定ムルコトニ內定シテ居
ルト云フノナラバ、其特融ノ目的ノ殆ド半
分位ハ失ッテ居リハシナイカト思フノデア
リマス、ソレ故ニ愈、此法案ガ通ッテ實行
セラレル場合ニ於テハ附帶決議ニアリマ
ス如ク、利息ヲ非常ニ安クシテ時局匡救ノ
目的殊ニ金融ノ疏通ヲ圖ルト云フ大ナル
目的ニ適フヤウニ、金利ヲ下ゲルコトヲ考
究シナケレバ斷ジテナラナイト思ヒマス
第二點ハ產業組合法ノ改正デアリマス
ガ、是亦丹下君ガ詳細ニ野中君ノ說ヲ反駁セ
ラレマシタカラ申上ゲマセヌガ、唯一言申上
ゲタイ、野中サンハアノ死ンダ統計ヲ以テ
現在保證責任ノ組合ガドレダケアル、有限
責任ノ組合ガドレダケアルト仰シヤイマス
ガ、ソレヨリカ最近ニ於キマシテ產業組
合ノ中央會、道府縣ニ於ケル所ノ聯合會ノ
幾多ノ議決、是等ノ議決ガ政府ニ向ッテ
日本ノ產業組合ハ之ヲ變へテ、保證責任及無
限責任ニシテ吳レト云フ〓列ナル所ノ要望
ガ農林省ニハ山程モ澤山ニ陳情書ガ出テ
居ル此事實ヲ知ラレヌト云フコトハ最
モ認識不足ノ甚ダシイモノデアル(拍手)之
ヲ以テ見マシテモ日本ノ產業界ノ空氣ハ之
ヲ保證責任·····
〔發言スル者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313242X00919320901&spkNum=34
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035・秋田清
○議長(秋田〓君) 野中君、靜肅ニ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313242X00919320901&spkNum=35
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036・西脇晉
○西脇晉君(續) 而シテ無限責任ニスルト
云フコトガ、產業界ノ是ガ聲デアルノデア
リマス(拍手)ソレデアリマスカラ私ハ、政
府ノ原案ニ大贊成ヲスルノデアリマス、其
他申上ゲルコトハアリマセヌ、卽チ委員長
ノ報告通リニ、只今議題ニナッテ居リマス
ル原案ニ贊成致ス次第デアリマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313242X00919320901&spkNum=36
-
037・秋田清
○議長(秋田君君 是ニテ討論ハ終局致シ
マシタ、採決ノ便宜上、先ヅ產業組合法中
改正法律案ノ、第二讀會ヲ開クヤ否ヤヲ御
諮リ致シマス、本案ノ委員長報〓ハ修正デ
アリマス、本案ノ第二讀會ヲ開クニ御異議
アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313242X00919320901&spkNum=37
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038・秋田清
○議長(秋田〓君) 御異議ナシト認メマ
ス、本案ノ第二讀會ヲ開クニ決シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313242X00919320901&spkNum=38
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039・上田孝吉
○上田孝吉君 直チニ本案ノ第二讀會ヲ開
カレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313242X00919320901&spkNum=39
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040・秋田清
○議長(秋田濟君) 上田君ノ動議ニ御異議
アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313242X00919320901&spkNum=40
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041・秋田清
○議長(秋田清君) 御異議ナシト認メマ
ス直チニ第二讀會ヲ開キ、議案全部ヲ議
題ト致シマス
產業組合法中改正法律案第二讀會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313242X00919320901&spkNum=41
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042・秋田清
○議長(秋田清君) 採決ヲ致シマス本案
ノ委員長報〓ノ修正ノ點ニ、贊成ノ諸君ノ
起立ヲ求メマス
〔贊成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313242X00919320901&spkNum=42
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043・秋田清
○議長(秋田〓君) 起立多數、委員長報告
ノ修止ノ點ハ可決サレマシタ、其ノ他ノ部
分ハ原案ノ通リ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313242X00919320901&spkNum=43
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044・秋田清
○議長(秋田一君) 御異議ナシト認メマス
其他ノ部分ハ總テ原案ノ通リ決シマシタ、
是ニテ本案ノ第二讀會ハ終了致シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313242X00919320901&spkNum=44
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045・上田孝吉
○上田孝吉君 直チニ本案ノ第三讀會ヲ開
カレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313242X00919320901&spkNum=45
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046・秋田清
○議長(秋田〓君) 上田君ノ動議ニ御異議
アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313242X00919320901&spkNum=46
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047・秋田清
○議長(秋田〓君) 御異議ナシト認メマ
ス、直チニ本案ノ第三讀會ヲ開キ、議案全
部ヲ議題ト致シマス
產業組合法中改正法律案第三讀會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313242X00919320901&spkNum=47
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048・秋田清
○議長(秋田清君) 別ニ御發議モアリマセ
ヌ第二讀會議決ノ通リ可決確定致シマシ
タ(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313242X00919320901&spkNum=48
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049・秋田清
○議長(秋田渚君) 次ニ產業組合中央金庫
特別〓通及損失補償法案、產業組合中央金
庫法中改正法律案、此兩案ヲ一括シテ第二
讀會ヲ開クヤ否ヤヲ御諮リ致シマス兩案
ノ委員長報告ハ何レモ可決デアリマス、兩
案ノ第二讀會ヲ開クニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313242X00919320901&spkNum=49
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050・秋田清
○議長(秋田行君) 御異議ナシト認メマ
ス兩案ノ第二讀會ヲ開クニ決シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313242X00919320901&spkNum=50
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051・上田孝吉
○上田孝吉君 直チニ兩案ノ第二讀會ヲ開
キ第三讀會ヲ省略シテ委員長報告ノ通リ、
可決セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313242X00919320901&spkNum=51
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052・秋田清
○議長(秋田清君) 上田君ノ動議ニ御異議
アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313242X00919320901&spkNum=52
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053・秋田清
○議長(秋田〓君) 御異議ナシト認メマ
ス直チニ兩案ノ第二讀會ヲ開キ、議案ノ
全部ヲ議題ト致シマス
產業組合中央金庫特別融通及損失補償
法案第二讀會(確定議)
產業組合中央金庫法中改正法律案
第二讀會(確定議)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313242X00919320901&spkNum=53
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054・秋田清
○議長(秋田〓君) 別ニ御異議モアリマセ
又、第三讀會ヲ省略シテ兩案共委員長輩告
ノ通リ、可決確定致シマシタ(拍手)日程第
七、第八ハ同一委員ニ付託シタル議案ナルニ
依リ、一括議題トナスニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313242X00919320901&spkNum=54
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055・秋田清
○議長(秋田〓君) 御異議ナシト認メマ
ス、卽チ日程第七、不動產融資及損失補償
法案、日程第八、昭和七年法律第六號中改
正法律案、右二案ヲ一括シテ第一讀會ノ續
ヲ開キマス、委員長ノ報〓ヲ求メマスー
委員長金光庸夫君
第七不動產融資及損失補償法案金
府提出)第一讀會ノ續(委員長〓〓
第八昭和七年法律第六號中改正法律
案(昭和七年度一般會計歲出ノ財源
ニ充ツル爲公債發行ニ關スル件)(政
府提出)第一讀會ノ續(委員長報告)
報告書
一不動產融資及損失補償法案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和七年八月三十一日
委員長金光庸夫
衆議院議長秋田〓殿
希望條項
一昭和七年度融資豫定額一億圓ハ必要ニ
應シ之ヲ增額スルコト
一銀行債務者ヨリ融資ノ申出アリタルト
キハ銀行カ之ヲ拒否スルコトナキ樣政
府ニ於テ十分ノ監督ヲ爲スコト
一銀行カ融通ヲ受クル場合ハ債務者ニ對
シ利率ヲ相當低減セシムルコト
報告書
一昭和七年法律第六號中改正法律案
(昭和七年度一般會計歲出ノ財源ニ充ツ
ル爲公債發行ニススス件件)(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭科七年八月三十一日
委員長金光庸夫
衆議院議長秋田〓殿
〔金光庸夫君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313242X00919320901&spkNum=55
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056・金光庸夫
○金光庸夫君 私ハ只今上程サレマシタ二
案ノ中、先ヅ不動產融資及損失補償法案ノ
委員會ニ於ケル審議ノ〓末ヲ御報〓致シマ
ス委員會ハ八月二十七日ニ開カレマシテ、
政府委員カラ提案理由ノ說明ガアリマシ
タ後ニ、審議ニ入ッタノデアリマス、此法案
ノ立法ノ要旨ハ、第一現在全國ニ於ケル普
通銀行及貯蓄銀行ノ所有不動產竝不動產抵
當貸付債權十六億餘万圓ヲ目標トシマシ
テ、之ニ對シ五億圓ヲ流動セシムル目的ヲ
以テ、日本勸業銀行ト農工銀行及北海道拓
殖銀行ヲシテ融資ヲ爲サシメマシテ、之二
依テ金融ノ疏通ヲ圖ラントスルモノデアリ
マス、第二其目的ヲ達スル爲メ貸付金額ハ
評價額ノ全額ヲ貸出スコトヽシ、其他融資
銀行ノ制限諸規定ヲ緩和擴張致シマシテ、常
軌ニ依ラザル活動ヲ爲サシメルコト第三
融資銀行ノ損失ニ對シテ一億圓ヲ限リ政府
ニ於テ之ヲ補償スルコト等ノ諸點デアリマス
委員會ニ於キマシテハ委員諸君ト政府委
員トノ間ニ種々有益ナル質問應答ヲ重ネ
ラレタノデアリマスガ、其主要ナル點ヲ擧
ゲテ見マスレバ先ヅ融資ノ請求ヲ爲スニ
ハ、銀行ニ限ッテ、信託會社ヲ認メナイト云
フ理由ハドウ云フ譯デアルカ之ニ對シテ
政府ノ答辯ハ信託會社ハ不動產ノ金融ヲ
本來ト使命トシテ居ルモノデアッテ、銀行ト
全然其性質ヲ異ニスルト云フノデアリマシ
タ、其次ニハ融資總額ヲ五億圓ト豫定シタ
ノハ不動產金融ノ現狀ニ鑑ミマシテ、少
キニ失セズヤト云フ問ニ對シテ、政府ノ答
辯ハ全國ニ於ケル普通銀行及貯蓄銀行
ノ資金ノ、不動產ニ固定シテ居ル實狀ヨリ
産觀シマシテ五億圓デ十分デアル、是デ
十分金融ノ疏通ヲ圖リ得ル見込デアルト云
フノデアリマシタ、次ニハ政府ノ損失補償
額ヲ一億圓ト定メタノハ甚シク過少デハ
ナイカ到底是デハ融資銀行ノ十分ナル活
動ヲ期待シ難イカラ、政府ハ之ヲ增額スル
意思ハナイカ、五億圓ニ對シテ一億圓、卽
チ二割程度デアルガ、之ヲ三割程度若クハ
三分ノ一程度マデ增額スル意思ハナイカト
云フ質問ニ對シマシテハ政府ニ於テハ此
損失補償額ハ不動產銀行ニ於ケル長キ間ノ
實績カラ勘案シテ見積,タモノデアッテ、融
資總額ノ二割ヲ以テ十分且ツ妥當デアルト
信ズル、斯ウ云フ答デアリマシタ、其次ニ
ハ融資ノ貸附利率ヲ年六分二厘ト豫定シタ
ノハ高キニ失スル嫌ヒガアル、政府ハ低
金利政策ヲ採ラントスル上カラモ、之ヲ低
減スル意思ハナイカト云フ問ニ對シマシテ
ハ此融資ニ充ツベキ資金ハ融資銀行ノ發
行スル債劵ヲ、預金部デ引受ケルコトニナツ
テ居ルノデアリマスガ、預金部デハ其資金
計畫ノ上ニ於テ此債劵ノ引受利率ハ公債ノ
利廻タル五分六厘以下トスルコトハ出來ナ
イ卽チ此五分六厘ニ融資銀行ノ手數料六
厘ヲ加算シテ年六分二厘ト決定シタノデア
ル、又現在ニ於ケル全國ノ不動產貸附ノ利
率ヨリ見ルモ、此程度ニ於テ大體妥當デア
ルト思惟セラレルト云フ答辯デアリマシ
タ、次ニ五億圓ノ融資ノ內、本年度ニ融資
スル金額ハ一億圓デアルト云フコトデアル
ガ、是ハ見方ニ依テハ本年度ニ於テ五億圓
全額デモ融資シナケレバナラヌ性質ノモノ
デハナイカ、ソレガ一億圓ニ止マルト云フ
コトハ少イデハナイカト云フ問ニ對シテハ、
政府ハ預金部ノ資金ノ融通計畫モアリマ
スコトデ、增額ハ甚ダ困難デアルト云フ答
辯デアリマシタ、次ニ此法案ニ依レバ銀行
ノミカラ融資ノ申出ヲスルノデアッテ債
務者カラ直接融資銀行ニ融資ノ申出ヲス
ルコトガ出來ナイ事ニナッテ居ルガ若
シ債務者カラ債權銀行ニ融資ノ申出ヲシテ
モ、銀行ガ承諾シナケレバ結局目的ヲ達ス
ルコトガ出來ヌカラ、此金ガ債務者ノ下ノ
方マデ滲透スルコトガ出來ナイヂヤナイカ、
斯ウ云フ問ニ對シテ、政府ハ銀行ガ融資ヲ
申込ム場合ハ債務者ノ承諾ヲ要スルノデ
アルカラ、債務者ノ申出ニ付テハ債權銀行
ヲ經由スルノハ當然デアル、ト云フ答辯デゴ
ザイマシタ、其次ハ銀行ガ融通ヲ受ケマシタ
場合ニハ六分二厘デ銀行ガ融通ヲ受ケテ
モ債務者ノ方ニハ金利ヲ下ゲテヤラナイ
事ニナッテ居ルノデアリマス、尤モ債務者ガ
直接肩代リヲシタ場合ニハ債務者ハヤハ
リ十五年以内六分二厘デ借リルコトガ出來
マスケレドモ、債權銀行ガ勸銀ナリ農工銀行
ナリカラ借リタ場合ニハ銀行ハ六分二厘
デ融通ヲ受ケマスケレドモ債務者ノ方ニ
ハヤハリ從來通リ一割內外モノ高イ利子ヲ、
其儘低減サレナイノデアリマスカラ、是
ハ六分二厘デ借リタナラバ其儘ニ債務者
ノ方ニ六分二厘ニ下ゲテヤルト云フコトニ
スベキデハナイカト云フ質問モアリマシタ
ガ、併シソレヲ悉ク六分二厘ニ下ゲテヤル
ト云フコトニナレバ、取扱フ銀行ノ手數料
モナイデハナイカト云フヤウナ意見ノモノ
モゴザイマシタ、之ニ對シテハ政府ハ相當
ノ考慮ヲ拂フヤウナ答辯デゴザイマシタ、左
様ナ譯デゴザイマシテ、質問終了後、昨日討
論ニ入リ、採決ニ移リマシタ結果、全會一致
ヲ以テ此法案ハ可決致シマシタ
次ニ政友會ノ靑木委員カラ次ノ希望條項ヲ
決議スベシトノ提議ガアリマシタ、其條項ハ
第一、昭和七年度融資豫定額一億圓ハ
必要ニ應ジ之ヲ增額スルコト
第二、銀行ノ債務者ヨリ融資ノ申出アリ
タルトキハ銀行ハ之ヲ拒否スルコトナキ
ヤウ政府ニ於テ十分ノ監督ヲナスコト
第三、銀行ガ融資ヲ受クル場合ハ、債務
者ニ對シ利率ヲ相當低減セシムルコト
ト云フ三項デアリマス、之ニ對シテ政府
委員ハ出來ルダケ御希望ニ副フヤウ努力致
シマスト云フ意見ノ陳述ガアリマシテ、採
決ノ結果此希望條項ハ全會一致、可決致シ
マシタ次第デアリマス
次ニ昭和七年法律第六號中改正法律案ノ
委員會ニ於ケル審議ノ〓末ヲ御報〓致シマ
ス本案ハ昭和七年度一般會計歲出ノ財源
ニ充ツル爲メ、所謂赤字公債發行ニ關スル法
律ノ改正案デアリマシテ、前囘ノ議會ニ於キ
マシテ、一億六千六十万圓ヲ限度トシテ、公
債ヲ發行シ得ル法律ノ成立ヲ見タノデアリ
マスガ、今囘ノ時局匡救ニ關スル經費總額
一億六千三百四十万餘圓ノ內、歲出ニ伴フ
普通歲入ヲ以テ支辨スルモノ、及既定ノ法
律ニ依テ道路公債ヲ發行スルモノ、合計百
四十餘万圓ヲ差引キマシテ、其他ノ一億六
千百九十七万餘圓ハ、歲入補塡公債ノ發行
ノ爲ニ、發行限度ノ改正增額ヲ必要トスル
モノデアリマシテ、政府ト委員ノ間ニ質問
應答ヲ重ネタル後、討論ニ入リマシテ、滿
場一致原案通リ可決セラレタル次第デアリ
マス、此段御報告申上ゲマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313242X00919320901&spkNum=56
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057・秋田清
○議長(秋田浩君) 質疑ノ通〓ハアリマセ
ヌ、直チニ討論ニ入リマス、通〓順ニ依リ
發言ヲ許シマス-小笠原三九郞君
〔小笠原三九郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313242X00919320901&spkNum=57
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058・小笠原三九郎
○小笠原三九郞君 私ハ只今上程サレマシ
タル二案ニ付キマシテ、委員長報告通リ贊
成ノ意ヲ表シ、特ニ不動產融資及損失補償
法ニ付キマシテハ、其附帶條項ト共ニ、全
ク委員長報告通リ贊成ノ意ヲ表スル者デア
リマス極ク簡單ニ理由ヲ申述ベマス
本法案ハ不動產融資及損失補償法トナフ
テ居ノテ、廣ク一般的ニ不動產ニ融資スルカ
ノ如ク見エルノデアリマスルガ、其實限ラ
レタル、所謂普通銀行及貯蓄銀行デ、既ニ
貸出ヲ爲シテ居ル所ノ不動產ニ對シテノ
ミ、融資ヲセラレルト云フ譯合デ、或ハ是
ハ普通銀行ノ現狀、特ニ本年三月名古屋地
方ヲ中心トシテ起レル金融恐慌等ニ刺戟セ
ラレタル結果、出來タ法案カト考ヘルノデ
アリマスルガ、私共ト致シマシテハ今日
不動產資金化ノ聲ガ、單ニ是等既ニ貸出サ
レタルモノニ限ラズ、一般不動產ニ對シテ
澎湃トシテ輿論ノ聲ガ、不動產ノ資金化ヲ
叫ンデ居ル際デアルカラ、モット徹底的ナ
ル不動產資金法案ヲ、要望シタノデアリマ
スルガ、本案モ亦政府ノ他ノ提出諸案ノ如
クニ、甚ダ不徹底ナルヲ免レナカッタノハ、
私共ノ洵ニ遺憾トスル所デアリマス(拍手)
併ナガラ私共ト致シマシテハ、本案モ是レ
ナキニ優ルノミナラズ、全國六百三十ノ普
通銀行、八十八ノ貯蓄銀行ニ取リマシテ
ハ相當福音デアラウト信ジラルヽ理由ガ
アリ、且ツ目下休業中ノ銀行ニシテ開店ヲ
要望シテ居ルモノニ取ァテハ、非常ニ有益デ
アラウト考ヘマスルノデ、私共ハ一日モ早
ク本融資法案ガ成立ヲシテ、其活用ヲ見テ、
現下時局匡救ノ一端ニナランコトヲ熱望ス
ル趣旨ヨリ、本案ニ贊成ヲ致シテ居ル者デ
アリマス(拍手)
希望條項ノ第一ハ、昭和七年度融資金額
一億圓トアルノヲ、更ニ必要ニ應ジテ增額
セラレタイト云フコトデアルノデアリマ
ス、橋大藏大臣ノ說明ニ依ルト、此融資總
豫定金額ハ五億圓デアッテ、內本年度ニ一億
圓明年度、明後年度ニ二億圓ヅヽト云フ
コトデアルノデアリマスルガ、現下ノ時局
ヨリ見レバ寧ロ本年度ニ於テ得ルダケ多
額ノ、一億以上二億デモ三億デモ、出來得
ルダケ多額ノ貸出ヲ、必要トスル事情ニ迫
ラレテ居ルコトヲ痛感シマスルノデ、私共
ハ政府ニ於テハ預金部ノ資金ヲ適當ニ按
排ヲセラレテ、本年度ニ於テ出來得ルダケ
多額ノ貸出ヲ爲サレンコトヲ、希望スルモ
ノデアリマス
第二ニハ、銀行債務者ヨリ融資ノ請求ガ
アッタ場合ニ、之ヲ拒否シナイヤウニト云
フ希望デアリマス、一體債權債務ト云フモ
ノハ債權者債務者ノ兩方ノ當事者ノ間ニ
出來テ居ル契約デアルニ拘ラズ、債權者ハ
其契約ノ一方ノ當事者ニシテ、重大ナル責
任アルコトヲ忘レ、動モスレバ債權者ノ利
益一方ノミニ依テ、物事ヲ處理セントスル
傾向ガアルノデアリマス、故ニ債務者ガ此
申出ヲ爲シタ場合ニハ之ヲ拒否セズ、此六
分二厘ト云フガ如キ融資ヲ、債務者ニモ亦
出來得ルダケ均霑セシメタイ趣旨ヨリ、本
希望條項ヲ附シタ次第デアリマス
第三ニ、銀行ガ融資ヲ受ケマシタ場合
ニ、之ヲ債務者ニ及ボサレタイ、詰リ六分
二厘ニテ融資ヲ受ケタ場合ハ、出來得ルダ
ケ其率ニテ已ムヲ得ザル場合デモ、手數料
トシテ多額ヲ取ラヌヤウニト云フ、私共希
望ヲ附シタ次第デアリマス、本融資ノ性質
ガ銀行及其債務者ノ救濟ニアルノデアリマ
スカラ、銀行ガ旣ニ自分ノ凍結セル所ノ不
動產ヲ資金化シ得テ、尙ホ其上ニ多額ノ手
數料ヲ取ルヤウナコトガアッテハ、本案ノ趣
旨ニ甚ダ副ハザルモノガアリマスノデ、特
ニ此希望決議ヲ附シテ、銀行業者ノ我利我
利ヲ警メテ置ク次第デアリマス(拍手)
次ニ是ハ附帶決議ニナッテ居リマセヌガ、
特ニ希望シテ置キタイノハ此貸出ガ出來
マスト云フト、五億圓ガ全額貸出サレタル
場合ニハ、實ニ手數料ト致シマシテ、三百万
圓ヲ融資銀行ハ年々獲得シ得ルコトニナル
ノデアリマス、若シ左樣ナコトガアルト云フ
ト、是等融資銀行ニ於キマシテハ、是等ノ
償補ガ付イテ、而モ十分ナル利益ヲ擧ゲ得
ル不動產融資ニノミ沒頭ヲシテ、在來ノ業
務ガ怠慢ニナリハセヌカト云フコトデアリ
やっ、申ス迄モナク全國四百五十億ノ不動
產中、今日擔保トナルモノガ一一百五十億位
アリ、僅ニ五十六億圓シカ資金化サレテ居
ラナイ、而モ其五十六億中、勸業銀行等ハ
過去三十箇年間ニ僅ニ十三億ヲ出シテ居ル
ニ過ギナイノデアリマス、左樣ナコトデア
リマシテ、且ツ今日是等不動產銀行ノ債劵
發行ハ、漸ク飽和狀態ニ近付イテ居ルカニ
考ヘルノデアリマスガ故ニ、動モスレバ其
固有本來ノ業務ヲ怠リハセヌカト云フ恐レ
ガアルノデアリマス、若シ左樣ナコトガア
リマスト、本融資法案ガ出來タガ爲ニ、旣
ニ銀行ヨリ借リテ居ル者ハ救ハレルガ、今
後不動產ノ資金化ヲ要望スル者ハ、一層ノ不
便ヲ感ジナケレバナラヌト云フコトニナツ
テ、寧ロ不動產融資其モノヽ目的ヲ、阻害
スルコトニナリハセヌカト懸念スルノデア
リマス、ソレデアリマスカラ大藏當局ニ於
カレテモ、勸業銀行初メ是等不動產銀行ニ
對シテ、嚴重ナル監督ヲ加ヘテ、既ニ手數
料モ相當ナコトデアリマスルガ故ニ、行員
其他ノ諸機關ヲ殖シテ、以テ現下ノ時局ニ
善處セラレルヤウニ、特ニ御注意ヲ喚起致
シタイト考ヘルノデアリマス(拍手)尙ホ一
點利率ノ點デアリマスルガ、利率六分二厘
ハ目下ノ狀況トシテ已ムヲ得ナイカモ分ラ
ナイノデアリマスルガ、旣ニ先程モ御話ガ
出タ通リ、郵便貯金ハ三分ニ引下ゲル三
分ト云フト實際ノ利廻ハ恐ラク二分五厘以
下デアリマス、此二分五厘以下ノ資金ヲ持ッ
テ居ルノデアリマスカラ、是等預金部資金
構成ノ變化ニ伴ヒマシテ、漸次六分二厘ノ
利率ヲ低下セラレンコトヲ、特ニ此點ヲ併
セテ御願申上ゲテ置クモノデアリマス
最後ニ一言致シマス、法ト云フモノハ形
デアッテ、魂ハ之ヲ實行スル人ノ如何ト云フ
コトデアリマス(拍手)今日此法案ガ出來
テ、五億圓ノ融資ガ天下ニ浸潤スルガ爲ニ
ハ、大藏當局ニ於カレテモ、是等融資銀行
タル不動產銀行ニ於テモ、眞ニ時局ノ狀態
ヲ正視シテ、以テ國難打開ノ一助トスルノ
誠意ヲ以テ、是ガ衝ニ當ラレルノデナケレ
バナラヌト云フコトヲ、特ニ此處ヨリ御願
申上ゲテ置ク次第デアリマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313242X00919320901&spkNum=58
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059・秋田清
○議長(秋田〓君) 松尾四郞君
〔松尾四郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313242X00919320901&spkNum=59
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060・松尾四郎
○松尾四郞君 諸君、私ハ只今上程サレテ
居リマスル不動產融資及損失補償法ニ對シ
マシテ、只今委員長ヨリ報告ニ相成リマシ
タ通リ、私ハ贊成ヲ致ス者デアリマスルガ、
此法案ノ運用ニ付キマシテハ、此機會ニ於
テ一言致シテ置キタイト存ズルノデゴザイ
マく、不動產ガ銀行ニ焦ゲ付キニナリマシ
テ、銀行ノ不動產固定貸ト云フモノヽ整理
ニ惱ンデ居ルト云フコトハ今日我ガ金融
界ニ於キマシテ非常ナ惱ミトナッテ居リマ
ス、此處ニ政府ガ著眼ヲサレマシテ、此計
畫ヲ進メラレタノガ、本年ノ五月ニ預金部
ノ不動產融資ト云フコトヲ御實行ニナッタ
ノデアリマシタ、其預金部ノ不動產融資ハ、
二億圓ヲ目標トシテ、差詰メ五千万圓ヲ貸
出スト云フ計畫デアラレタノデアリマシ
テ、各府縣ニ通牒ヲ發セラレマシタガ、之
ニ對シテ七百四十七万圓ノ申込ガアッタダ
ケデアリマス、今日不動產ノ資金化ヲ叫ビ、
何トカシテ此不動產ノ固定貸ノ整理ヲ致シ
タイ、恰モ早天ニ水ヲ望ムガ如クニ、國民
ガ要望シテ居リマス時ニ、五千万圓出スト
云フ政府ノ腹ガ極ッタニモ拘ラズ、七百四十
七万圓ヨリ申込ガナカッタト云フコトハ、其
政府ノ計畫ニ一大認識不足ガアラレタノデ
アリマス、私ハ其計畫ヨリ今囘ハ一步モ百
步モ進ンダ所ノモノデナケレバナラヌト
思ッテ居ルノデアリマスガ、此法案ハ五
月ノ預金部不動產融資ノ政府ノ計畫サレマ
シタノヨリ進ンダ點ハ卽チ異ッタル點ハ
二點アルノデアリマス、一ツハ一億圓ノ國
家損失補償ノ點ト、一ツハ金利ヲ安クシテ
居ルト云フ點デアルノデアリマスルガ、此
一億圓ノ損失補償ガ、融資ヲ受ケテ居ル銀
行ニ恩典ヲ受ケラレナイヤウニナッテ居ル、
是ハ政府當局ノ運用如何ニモ依ルノデアリ
マセウガ、玆ニ非常ナ「デリケート」ナ問題
ガアリマシテ、私ハ此損失補償ヲ銀行ガ受
ケル場合ハ、非常ニ少イト思フノデス、今
日銀行ノ不動產貸ノ貸付金額ト云フモノ
ハ數年前ノ好況時代ノ金額デアルノデア
リマス、只今ノ此本案ニ依リマスル評價額、
卽チ鑑定額ト云フノハ、現在ノ時價デアリ
ママ、サウ致シマスト玆ニ非常ナ差ガ起ル
ノデアリマス、私共ノ地方ハ山林地帶デア
リマスガ、山林ノ値段ト云フモノハ時
ヨリハ四分ノ一ニ暴落シテ居リマス、一万
圓ノ山林ハ二千五百圓ニナッテ居ルノデス、
サウ致シマスト一万圓ノ不動產ニ對シ七掛
貸シテ居ッタ、例ヘバ七千圓貸シテ居ッタト
致シマスト其不動產ニ對シテ、今度ノ融
資銀行ハ、現在ノ時價、卽チ二千五百圓ト云
フ評價ニナリマスノデ、此評價一抔貸シテ
貰ッテモ此間ニ四千五百圓ト云フ差ガアリマ
シテ、此四千五百圓ハ銀行ガ赤字ヲ出シテ
損ヲスルカ、或ハ債務者ニ永久ニ其債務ガ
殘ルカト云フヤウナ、甚ダ不徹底ナ狀態ニ
陷ルノデアリマシテ、其場合ニ國家ガ損失
ヲ補償スルト云フ狀態ニナッテ居リマスケレ
ドモ、事實ニ於テ此不動產ヲ處分致シマシ
テモ、此不動產ヲ處分シテ、融資銀行ヨリ受
ケタル所ノ融資金額ト、不動產ノ處分トノ差
ニ於テ不足ガ起ッタ時、初メテ銀行ガ損ヲス
ルノデアリマス、其不足ガ起ッタ時ハ、ヤハ
リ今融資ヲ受ケテ居ル所ノ銀行ハ債務ガ
殘ルノデアリマスカラ、必ズヤ銀行ガ個々
ニ決濟ヲシマス、サウ云フコトニナルト銀
行ハ其決濟ノ義務ヲ負フ、若シ此決濟ヲシ
ナイ時ハ永久ニ大藏省ノ閻魔帳ニ載ルノ
デアリマスカラ、サウ云フ不名譽ハ殘シタ
ウハナイト思フ、銀行ハ必ズヤ其僅カノ不
足金位ハ支拂ヲスル、斯ウ云フコトニナリ
マスカラ、國家ガ其場合ニ融資銀行ニ補償
ヲ出スト云フ場合ガ少クナリマス、サウ致
シマスト、折角此處ニ一億圓ノ損失補償ト
云フ一ツノ條件ヲ設ケラレマシテモ、融資
ヲ受ケル普通銀行ガ其恩典ニ浴スルト云フ
コトハ想像シ得ナイ狀態モ起ルト思フノデ
ス、勿論是ハ運用如何ニ依ルト思フノデア
リマスケレドモ、左樣ニ考ヘマスルト、此
前ノ五月ノ預金部ノ融資ヲヤラレマシタ時
ノ條件ト、餘リ今日變ッタ進ンダモノデハ
ナイノデアリマス、又モウ一ツノ金利ノ點
ガ、八朱ヨリ今度ハ六朱二厘ニナッテ居リ
V ·前ノ預金部ノ融資ハ八朱デアリマシ
タガ、今度ハ六朱二厘、一朱八厘ハ下ッテ
居リマスケレドモ、是カラノ我國ノ狀態ハ
段々低金利政策ニ入リマシテ、金利ト云フ
モノハ益〓下ッテ行ク狀態デアル、現ニ郵
便貯金ハ三分ニ利下ヲ致シマシタ、日本銀
行ハ金利ノ引下ヲ旣ニ發表致シテ居リマ
ス、低金利政策ニ入ル時ニ、前ハ八朱デア
リマシタ、今度ハ六朱二厘デアリマスカ
ラ、此間ニ相當下ッテ居リマスケレドモ、飛
付ク程有利ナモノトハ思ヘナイノデアリマ
ス(「簡單」「簡單」ト呼フ者アリ)簡單ニヤリ
マス-サウ云フ狀態カラ考ヘマスト、私
ハ此前ニ甚ダ不成績デアリ、不評判デアリ
マシタ預金部ノ融資ノ時ノ狀態ト、變ラナ
イヤウナ狀態ニ入リマシタ時ニハ茲ニ亦
不動產固定貸ト云フモノヽ制度ガ停頓致シ
やっ、此點ヲ私ハ憂ヘルノデゴザイマス
是ハ勿論政府當局ノ運用如何ニ依ルコト
信ズルノデゴザイマスルガ、此前ノ失敗ノ
時ニ鑑ミラレマシテ、何卒此法案ノ實施ニ
當リマシテハ、先刻小笠原君ヨリモ申述ベラ
レマシタヤウニ、本當ニ今日ノ不動產貸制
度ガ出來マスルヤウニ、誠心誠意何卒今日
ノ金融界ノ救濟ノ爲ニ御努力下サルコト
ヲ、私ハ切ニ希望致ス次第デアリマス、此
希望ヲ申上ゲマシテ、私ハ本案ニ贊先ヲ致
シマス
モウ一ツハ、昭和七年度法律第六號中改
正法律案、此法律案ニ對シマシテハ委員長
ノ報告通り贊成致シマス、今日時局匡救ノ
爲ニ諸般ノ對策ガ決定セラレマシタル以上
ハ當然此財源ヲ公債ニ求メナケレバナラ
ヌノデアリマスカラ、餘リ公債ノ增發ト云
フコトハ財界ニハ好イ影響ハ殘サヌノデア
リマス、吾々何時マデモ澤山ノ負擔ヲ國民
ニ殘サレルト云フコトハ面白ク思ヒマセヌ
ケレドモ、今日時局匡救ノ爲ニ此諸般ノ對
策ガ決定セラレマシタ以上、當然是ハ巳ム
ヲ得ナイコトデアマリスカラ、此公債增發
ノ法律ニハ贊成致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313242X00919320901&spkNum=60
-
061・秋田清
○議長(秋田活君) 風見章君
〔風見章君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313242X00919320901&spkNum=61
-
062・風見章
○風見章君 私共ノ國民同盟モ、此二案ニ
贊成致シマス、併ナガラ贊成ノ趣旨ニ關シ
マシテハ政友會竝ニ民政黨ノ諸君トハ自
ラ趣ヲ異ニスル點ガアリマスカラ、其點ヲ
簡單ニ說明ヲ申上ゲテ、本案ニ贊成ノ意ヲ
表シタイト思フノデアリマス
本案ニ關シ或ハ本會議ニ於テ、又ハ委員
會ニ於テ重ネラレタル質疑應答ノ內容ヲ吟
味シテ行キマスルト、本案提出ノ理由ノ中
ニハ金融ノ疏通ヲ圖ル爲デアル、斯ウ云フ
ヤウニ聞イテ居リマスガ、私共ハ金融ノ疏
通ヲ圖ルト云フ意味ヲ以テハ本案ハ效果
ガ甚ダ疑ハシイ、斯ウ考ヘザルヲ得ナイノ
デアリマス、寧ロ質疑應答ニ依テ明ニサレ
タル內容カラ申シマスレバ、焦ゲ付イタ不
動產抵當ヲ、國家補償ノ力ニ依テ解放シテ
ヤルノデアルガ、解放シテヤッタガ故ニ、銀
行ニ餘裕ガ出來ルトマデハ行カナイ、卽チ金
融疎通ノ目的マデハ行カナクテ、唯焦ゲ付
イタル不動產抵當債權ノ爲ニ弱リ切シテ居
ル、愚圖々々シテ居レバ將ニ倒レントスル
銀行ヲ一寸抱キ起シテヤル、卽チ不良銀行
ノ救濟ノ意味ニ於テシカ、此法ノ效力ハ發
揮シナイモノデアル、私共ハ斯ノ如ク此
法案ニ對シマシテ考ヘルノデアリマス、元
來政府當局者ノ希望スル如ク、斯ノ如キ方
法ニ依テ今日ノ金融ノ疏通ヲ圖ルト云フコ
トハ、寧ロ甚シイ間違デアル、若シ政府當
局ガ斯ンナ方法ニ依テ金融疏通ガ圖レルト
思フナラバ、ソレハ甚シイ所謂認識ノ錯誤
デアル、認識ノ錯誤ニアラズンバ卽チ金
融ノ疏通ヲ圖ルト云フ羊頭ヲ懸ゲテ不良銀
行ヲ救濟スルニ過ギナイ、狗肉ヲ賣ラント
スルノ甚シキ間違デアル(拍手)私共ハ斯ノ
如ク批判セザルヲ得ナイノデアリマス、若
シ果シテ能ク金融疏通ヲ圖ルノ目的ヲ達セ
ントスルナラバ本議會ニ提出シタル私共
ノ提唱スル所ノ、所謂統制銀行ヲ實現スル
ニアラズンバ、眞ニ金融疏通ノ途ヲ圖ルコ
トガ出來ナイ(拍手)私共、ハ斯ノ如キ堅キ信
念ニ立ツモノデアリマスルガ、本案ニ贊成
セラレタル政民兩黨ノ諸君、竝ニ政府當局
ニ於テ、果シテ能ク不動產問題ヲ取扱→テ、
之ニ依テ金融疏通ヲ圖ラントスルナラバ
我黨ノ提唱シタル統制銀行案ノ實現ニ向ツ
テ、ソコニ提携斡旋セラレンコトヲ、私ハ
衷心カラ勸〓セザルヲ得ナイノデアリマス
(拍手)卽チ本案ハ曩ニ述ベタヤウナ意味ノ
モノデアリマスルガ、併ナガラ非常時デア
リマスカラ、非常時對策ノ一ツノ小サイ部
分トシテハ、ソレダケノ意義ガアルコトヲ
認ムルノデアリマス、卽チ非常時對策ノ一
小部分トシテノ意味ニ於テ、私共ハ贊成ス
ルノデアリマシテ、ソレ以外ノ意味ニ於テ
贊成スルノデハナイ
最後ニ此法案ニ依テ利益ヲ受ケル者ハ、
私共ノ解釋ニ依リマスレバ、國民中ノ極メ
テ少數者デアリマスルカラ、是ガ運用ニ當
リマシテハ、先刻來政民兩黨ノ諸君カラモ
極メテ嚴重ナル監督ガ必要ダ、斯樣ニ要望
サレマシタガ、特ニ私共ハ此內容ノ乏シイ
法案、而モ國家補償ト云フガ如キ非常手段
ニ依テ、此法ノ運用ヲ行ハントスルノデア
リマスカラ、是ノ運用ニ當リマシテハ政
府當局ハ宜シク嚴重ナル監督ヲシテ、吾々
ガ從來屢、聞イタ如キ依怙偏頗ノ沙汰ニ依
テ、此融資ガ融通セラレヌヤウ、十分ナル監
督ヲセラレンコトヲ、特ニ私共ハ此機會ニ於
テ政府當局ニ要求シテ置キタイノデアリマ
ス(拍手)私共ハ政友會ノ諸君ガ提唱シタル
希望條件ニ關シマシテ滿腔ノ贊意ヲ表シマ
ス、政府當局ハ宜シク此希望條件ノ目的ニ
副フ爲ニ十分一層監督ヲ嚴重ニサレンコト
ヲ希望致シマス、以上簡單デアリマスガ、
私共ノ此問題ニ關スル大體ノ趣意ヲ說明申
上ゲテ本案ニ贊成スル趣意ヲ申上ゲル次
第デアリマス
〔拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313242X00919320901&spkNum=62
-
063・秋田清
○議長(秋田〓君) 討論ハ終局致シマシ
タ此兩案ハ一括シテ第二讀會ヲ開クヤ否
ヤヲ御諮リ致シマス本案ノ第二讀會ヲ開
クニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313242X00919320901&spkNum=63
-
064・秋田清
○議長(秋田〓君) 御異議ナシト認メマ
ス、兩案ノ第二讀會ヲ開クニ決シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313242X00919320901&spkNum=64
-
065・上田孝吉
○上田孝吉君 直チニ兩案ノ第二讀會ヲ開
キ、第三讀會ヲ省略シテ、委員長報告ノ通
リ可決セラレムコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313242X00919320901&spkNum=65
-
066・秋田清
○議長(秋田済君) 上田君ノ動議ニ御異議
アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313242X00919320901&spkNum=66
-
067・秋田清
○議長(秋田清君) 御異議ナシト認メマ
ス直チニ兩案ノ第二讀會ヲ開キ議案全部
ヲ議題ト致シマス
不動產融資及損失補償法案
第二讀會(確定議)
昭和七年法律第六號中改正法律案(昭和
七年度一般會計歲出ノ財源ニ充ツル爲公
債發行ニ關スル件)第二讀會(確定議)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313242X00919320901&spkNum=67
-
068・秋田清
○議長(秋田〓君) 別ニ御發議モアリマセ
ヌ、第讀會ヲ省略シテ兩案共委員長報告
通リ可決確定致シマシタ
〔拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313242X00919320901&spkNum=68
-
069・上田孝吉
○上田孝吉君 書事程變更ノ緊急動議ヲ
提出致シマス、卽チ此際政府提出、商業組
合法案及商品劵取締法案ヲ一括議題ト爲
シ委員長ノ報告ヲ求メ、其審議ヲ進メラ
レンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313242X00919320901&spkNum=69
-
070・秋田清
○議長(秋田〓君) 上田君ノ動議ニ御異議
アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313242X00919320901&spkNum=70
-
071・秋田清
○議長(秋田〓君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ日程ハ變更セラレマシタ、卽チ商
業組合法案、商品劵取締法案、右二案ヲ一
括シテ第一讀會ノ續ヲ開キマス委員長ノ
報告ヲ求メマス-委員長磯部尙君
商業組合法案(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報告)
商品劵取締法案(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報〓)
報〓書
一商業組合法案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報告候也
昭和七年九月一日
委員長磯部尙
衆議院議長秋田〓殿
附帶決議
政府提出ノ商業組合法及商品劵取締法ハ
時局匡救ノ目的ニ副ハザルモノトス依テ
政府ハ窮迫セル中小商工業者ノ爲ニ速ニ
左ノ對策ヲ斷行スヘシ
一中小商工業者ノ爲ニ新ニ適切ナル國家
損失補償ヲ條件トスル金融制度ヲ設ク
ルコト
二營業收益稅免稅點ノ引上ケ等中小商工
業者ノ爲ニ負擔輕減ヲ計ルコト
三商工業者負擔整理ノ爲ニ適當ナル制度
ヲ設クルコト
報告書
一商品劵取締法案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ別紙ノ通修正スヘキモノ
ト議決致候此段及報〓候也
昭和七年九月一日
委員長磯部尙
衆議院議長秋田〓殿
〔別紙〕
商品劵取締法案中左ノ通修正ス
第一條中「三分ノ一」ヲ「一一分ノ一」ニ改ム
希望條項
第四條ノ命令中ニ百貨店ノ發行スル商品
劵ノ一枚ノ金額ハ金五圓以上タルコトヲ
要スル旨ヲ規定スルコト
〔磯部尙君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313242X00919320901&spkNum=71
-
072・磯部尚
○磯部尙君 商業組合法案ト商品劵取締法
案ニ對シマスル委員會ニ於ケル審議ノ〓末
ヲ御報〓致シマス、此二法案ハ時局匡救ノ
目的ヲ以テ商工省ヨリ提出サレマシタル、
唯二ツノ重要法案デアルノデアリマスケレ
ドモ、時局匡救ト申シマスレバ、農山漁村
ノ庶民諸君ガ甞メテ居ラレマス疲弊困態ノ
程度ト遜色ナキ都市ニ於ケル中小商工業者
ノ疲弊困憊ノ爲ニ、多クノ考慮ガ拂ハレナ
ケレバナラヌ筋合デアルト思フニ拘ラズ、
農村負債ニ關シテハ整理組合法案ガ提出セ
ラレテ居リマスノニ、商工省カラハ都會ニ
於ケル中小商工業者ノ爲ニ、最モ苦ンデ居
リマス負債整理ニ關スル何等ノ片鱗ヲモ窺
ヒ得ル法案ガ提出サレテ居ラヌノデアリマ
ス、此商業組合法案ト云フモノガ提出セラ
レマシテ、政府ハ成ベク此商業組合ト云フ
モノニ低利ノ資金ヲ融通スル意思デアルガ
如ク申立ッテ居ラレマスケレドモ、此商業組
合法案ノ成否-是ガ通過致シマシテ、商
業組合ト云フモノガ組織サレマシタカラト
云ッテ、是ガ爲ニ特ニ低利ノ資金ヲ融通セラ
レルト云フ制度ニハナッテ居ラヌノデアリ
V 、五千万圓ノ低利資金ト云フモノハ
商業組合タルト否トニ拘ラズ、本法ノ通過
スルト否トニ拘ラズ、中小商工業者ノ爲ニ
融通セラレル金額デアルト云フコトハ、之
ヲ推測シ得ラレルノデゴザイマスケレド
モ、此商品劵取締法案ノ成否ガ、其點ニ直
接交渉ヲ持ツトハ見受ケラレナイノデアリ
マス、陸軍省、海軍省ノ如キ官省ニアッテモ、
今日ノ中小商工業者ニ對スル同情カラ、人
情味カラ、數千万圓ノ豫算ヲ切盛リサレテ
居リマスノニ、監督行政ヲ掌ル商工省デア
ルトハ申シナガラ、豫算ト致シマシテハ僅
ニ三十九万圓、法律案ト致シマシテハ僅
ニ此二法案ヲ提出スルニ止ッテ居ルト云フ
コトハ商工大臣ノ經綸温蓄ニ付テ吾々ハ
疑ナキ能ハザル者デアリマス、而シテ此借
金ノ爲ニ苦ンデ居ル負債整理ニ付テハ何
等御考ガナイカト云フコトヲ質問致シマス
ルト、ソレハ考ヘテ居ル、通常議會迄ニハ
何等カノ方策ヲ考ヘテ提案スル考デアルト
云フコトヲ言明セラレテ居ルノデアリマシ
テ、斯ノ如クナラバ六菖十菊ノ憾ドコロデ
ゴザイマセヌ、藥ヲ御盛リニナッタ時分ニ
ハ病人ハ旣ニ死ンデ居ルノデアルマイカ
ト思フノデアリマス、中小商工業者ノ負擔
モ、甚ダ重イノデアリマス、吾々ガ唯見渡
シマシタダケデモ、營業收益稅ノ免稅點ト
云フモノヲ斟酌スルト云フヤウナコトモ、
直チニ吾々ノ眼底ニハ映ズルノデアリマス
カラ、斯樣ナルコトニ付テモ、商工大臣ハ
何等カノ御考ガナイカト云フコトヲ伺ヒマ
スト是モ考ヘテ居ル、次期ノ議會迄ニハ
相當案ヲ提出スルデアラウト云フコトヲ申
出ラレテ居ルノデアリマス、〓心ナル委員
諸君ノ御質問ハ數日ニ亙テ審議ヲ盡サレ
タノデハアリマスルケレドモ、此商業組合
法其モノノ立法精神ニ觸レタモノハ殆ド無
カッタノデアリマス、何トナレバ時局匡救ヲ
標榜シテ提出セラレタル此法案ニ、時局匡
救ト云フ精神ハ毫末モ汲出スコトガ出來ナ
カッタカラデアリマス、僅ニ法案ノ內容ニ
入ッテ、第三條第二號ノ組合員營業ノ統制
中ニ、組合ノ價格協定ヲ含ムカ否カト云フ
御質問ニ對シテ、ソレハ含ムト云フコトデ
アル然ラバ大正五年六月ノ農商務省次官
通牒ヲ以テ、重要物產同業組合ノ價格協定
禁止ノ通牒ハ撤廢スルノ意思アリヤ否ヤト
云フ質問ガ出マシタノニ對シテ、將來撤廢
スル意思ハ有ッテ居ルケレドモ、今日ハ未ダ
其運ニ立至リ居ラヌト云フコトヲ答ヘラレ
タノデアリマス、又百貨店ハ此組合法ノ統
制中ニ入ルモノデアルカ否カト云フコトニ
對シマシテモ、ソレハ入ルト云フコトヲ御
答ニナッタノデアリマス、案其モノヽ內容ニ
對シテハ質問應答ハ此位ノモノデアッタ
ノデアリマス、委員ノ一人ハ商工大臣ニ對
シテ、時局匡救ヲ標榜シテ出サレマシタル
此二法案ト云フモノガ左樣ナルコトハア
リマスマイケレドモ、若シ萬一否決セラレ
タヤウナ場合ニ於テ、商工大臣ハ眞ニ國民
ノ爲ニ、中小商工業者ノ爲ニ遺憾ヲ禁ジ得
ヌト云フ御考ガ、本當ニ出テ參リマスカ否
カト云フ御尋ヲシタ者モアルノデアリマ
ス、商工大臣ハ其場ヲ濁サレテ、唯通過セ
ンコトヲ望ムト云フコトノ一遍ノ御挨拶ガ
アッタニ止ッテ居ルノデアリマス、而シテ中
小商工業者ヲ今日ノ衰微ト不振ノ境遇ヨリ
助ケ出サンガ爲ニ多クノ質問ガ出タノデア
リマス、例ヘバ產業資金貸付ニ關シテ道府
縣六大都市ノ補償限度ヲ引上ゲ、同時ニ低
利資金融通條件ヲ緩和スルノ意思アリヤ否
ヤト云フ質問ガ出マシタ、卽チ補償限度ヲ
引上ゲテ融通條件ヲ緩和スルノ意思ガ政府
ニアルト云フコトヲ言明サレタノデアリマ
ス、爲替相場安定ノ爲ニ、委員會設置ノ意
思アリヤ否ヤヲ御質問ニナリマシタノニ對
シ六、商工省內ニ適當ナ機關ヲ設置スル考
デアルト云フコトヲ御答ニナッタノデアリ
マス、又輸出補償制度ノ地域ノ擴張ヲ行ヒ、
竝ニ補償金額增大ノ御意思アリヤ否ヤト
云フコトノ御尋ヲ致サレタ方ガアリマシタ
ノニ對シテ、其意思モアルト云フコトヲ申
立テラレテ居ルノデアリマス、商工大臣ハ
斯ノ如キ經綸ヲ有シ、斯ノ如キ抱負ヲ有ッテ
居ラルヽノデアリマス、然ルニ此時局匡救
ノ爲ニ大切ナル經綸抱負ト云フモノハ、棚
ノ上ニ束ネラレテ、私共カラ致シマシタナ
ラバ殆ド時局匡救ト云フモノニ何等ノ關
係ガナイデハナイカ、何等ノ因果關係ガナ
イデハナイカト思ハレルヤウナ、此商業組
合法案ガ出タト云フコトハ、商工大臣ノ爲ニ
惜マザルヲ得ヌト思フノデアリマス、而シ
テ此內容ニ至リマシテハ、何カ新味ガナイ
カト、私ハ滿遍ナク此法文ヲ讀ンデ見マシ
タ所ガ、其中ニ近頃流行ノ言葉デアル統制
ト云フ文字ガ加ヘラレテ居ルコトヲ見タノ
デアリマス、是ハ今日迄ノ信用組合、或
產業組合、或ハ同業組合、或ハ準則組合等
ニ無イ文字デゴザイマシテ、是ガ活字ノ上
ニハ浮上ッテハ居リマスケレドモ、是ダケノ
新機軸シカ、此法案ニ窺ヒ知ルコトガ出來
ナイヤウナ、洵ニ貧弱ナ法案デアルコトヲ
委員諸君ハ痛切ニ感ゼラレタヤウニ私ハ認
メタノデアリマス、是ニ於テ本委員會ハ
只今申述べマスルガ如キ附帶決議ヲ付ケマ
シテ、澁々デハアリマスルケレドモ滿場一
致、政友會モ、民政黨モ、國民同盟モ、殘
ラズ一人ノ御異議者ナク此決議案ヲ通過議
決致シタノデアリマス、其附帶決議ヲ讀ミ
上ゲマス
附帶決議
政府提出ノ商業組合法及商品劵取締法ハ
時局匡救ノ目的ニ副ハサルモノトス依テ
政府ハ窮迫セル中小商工業者ノ爲ニ速ニ
左ノ對策ヲ斷行スヘシ
一中小商工業者ノ爲ニ新ニ適切ナル國家
損失補償ヲ條件トスル金融制度ヲ設ク
ルコト
二營業收益稅免稅點ノ引上ケ等中小商工
業者ノ爲ニ負擔輕減ヲ計ルコト
三商工業者負債整理ノ爲ニ適當ナル制度
ヲ設クルコト
是ダケガ商業組合法案ニ對スル附帶決議デ
アリマス
次ニ商品劵取締法案ニ付キマシテハ、是
ハ少シバカリ時局匡救ニ因果關係ヲ及ボス
法案デアリマス百貨店ト、都市ニ於ケル中
小商工業者トノ間ニ扞格セル思想ハ、今ヤ
尖銳化致シテ居ルノデアリマス、政府者ト
致シマシテハ、何等カ此間ニ介在シテ居ル
此激シイ氣象、激シイ空氣ヲ緩和スルニア
ラザレバ、先日某百貨店ニ於テ腹ヲ十文字
ニ切ッタ中小商工業者ガアリマシタガ、サ
ウ云フ犧牲者ガ現レルノデアリマス、斯
ウ云フコトガ再々出テ參リマスト、如何ナ
ル危險狀態ニ至ラヌトモ限ラヌノデアリマ
スカラ、今日ノ如キ切迫セル時局ニ際シテ
ハ、此法案ノ必要ヲ感ゼザルヲ得ヌノデア
リマス、而シテ之ニ對シテハ色々議論
ガゴザイマシタ、百貨店ノ商品劵ヲ全廢ス
ベシト云フ議論モアッタノデアリマスガ、社
會ノ現狀ニ鑑ミマシテ、或ル種ノ制限ヲ加
から、此商品劵ヲ認メル外ナイト吾々委員
ハ考ヘタノデアリマス、サウ致シマシテ此
商品劵取締法案ノ第一條ニ、商品劵發行額
ノ「三分ノ一以上」トアルノヲ「二分ノ一以
上」ト修正致シタノデアリマス、原案ノ三分
ノ一ハ貯蓄銀行ノ例ヲ取ッテ定メタノデ
アリマスガ、吾々ノ委員會ニ於ケル修正意
見ノ根據ハ經濟界ニ於ケル現時ノ狀態ヨ
リシテ、確カニ二分ノ一以上トスル方ガ合
理的デアルト認メタニ外ナラヌノデアリマ
ス、而シテ第四條ニ依リ、商工當局ハ命令
ヲ出スコトガ出來マス、其中ニ色々ナ取締
規定ヲ設ケルコトニナッテ居リマスガ、其命
令ヲ出シマス際ニ、百貨店ノ發行スル商品
劵ノ一枚ノ金額ハ金五圓以上ト云フコトヲ
命ズル旨ノ規定ヲ置カレンコトヲ希望條件
トシテ提出致シタノデアリマシテ、少クト
モ此條件ダケハ商工當局モ其必要ヲ認メ
テ、必ズ其規定ヲ設ケル旨ノ內意ヲ委員會
ニ漏サレタノデアリマス、斯ノ如キ筋合デ
アリマシテ、商業組合法案ハ無キヨリ增シ
デアラウト云フダケノ考カラ、全會一致ヲ
以テ之ヲ可決致シマシタ、商品劵取締法案
ハ是ハナクテハナラヌモノデアッテ、尙
ホ一遍出シテ見タ上デ、其成績ニ鑑ミテ、
吾々モ〓究シテ見ヤウデハナイカト云フ立
場ヲ以テ、本案ヲ滿場一致ヲ以テ可決致シ
マシタ、右委員會ノ〓末ヲ御報告致シマス
(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313242X00919320901&spkNum=72
-
073・秋田清
○議長(秋田〓君) 此兩案ニ付テハ質疑及
討論ノ通告ニ接シテ居リマセヌ、兩案ノ第
二讀會ヲ開クニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313242X00919320901&spkNum=73
-
074・秋田清
○議長(秋田清君) 御異議ナシト認メマ
ス、兩案ノ第二讀會ヲ開クニ決シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313242X00919320901&spkNum=74
-
075・上田孝吉
○上田孝吉君 直チニ兩案ノ第二讀會ヲ開
キ、第三讀會ヲ省略シテ委員長報告ノ通リ
可決セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313242X00919320901&spkNum=75
-
076・秋田清
○議長(秋田〓君) 上田君ノ動議ニ御異議
アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313242X00919320901&spkNum=76
-
077・秋田清
○議長(秋田〓君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ直チニ第二讀會ヲ開キ、議案全部
ヲ議題ト致シマス
商業組合法案第二讀會(確定議)
商品劵取締法案第二讀會(確定議)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313242X00919320901&spkNum=77
-
078・秋田清
○議長(秋田〓君) 別ニ御發議モナイヤウ
デアリマス、第三讀會ヲ省略シテ委員長報
告通リ、可決確定致シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313242X00919320901&spkNum=78
-
079・上田孝吉
○上田孝吉君 此際暫時休憩セラレンコト
ヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313242X00919320901&spkNum=79
-
080・秋田清
○議長(秋田〓君) 上田君ノ動議ニ御異議
アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313242X00919320901&spkNum=80
-
081・秋田清
○議長(秋田〓君) 御異議ナシト認メマ
ス、暫時休憩致シマス
午後五時一分休憩
午後六時三分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313242X00919320901&spkNum=81
-
082・秋田清
○議長(秋田〓君) 休憩前ニ引續キ會議ヲ
開キマス-上田孝吉君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313242X00919320901&spkNum=82
-
083・上田孝吉
○上田孝吉君 議事日程變更ノ緊急動議ヲ
提出致シマス、卽チ此際政府提出、金錢債
務臨時調停法案ヲ議題ト爲シ、委員長ノ報
〓ヲ求メ、其審議ヲ進メラレンコトヲ望ミ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313242X00919320901&spkNum=83
-
084・秋田清
○議長(秋田〓君) 上田君ノ動議ニ御異議
アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313242X00919320901&spkNum=84
-
085・秋田清
○議長(秋田済君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ日程ハ變更セラレマシタ、政府提
田、金錢債務臨時調停法案ノ第一讀會ノ續
ヲ開キマス、委員長ノ報告ヲ求メマス-
委員長岩崎幸治郞君
金錢債務臨時調停法案(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報〓)
報告書
一金錢債務臨時調停法案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ別紙ノ通修正スヘキモノ
ト議決致候此段及報〓候也
昭和七年九月一日
委員長岩崎幸治郞
衆議院議長秋田〓殿
〔別紙〕
(小字及-ハ委員會修正)
金錢債務臨時調停法
第一條負債ノ整理ニ依リ誠實ナル債務
者ヲ更生セシムル爲債權者債務者ノ互
讓ヲ必要トスルトキハ當事者ハ本法ニ
依リ調停ノ申立ヲ爲スコトヲ得
第二條調停ノ申立ハ昭和七年七月三十
一日以前ニ發生シタル私法上ノ金錢債
務ニシテ金額千圓ヲ超過セザルモノニ
付之ヲ爲スコトヲ得但シ小作料其ノ他
小作關係ヨリ生ジタルモノ及地代、家
賃其ノ地借地借家關係ヨリ生ジタルモ
ノニ付テハ此ノ限ニ在ラズ
前項ノ金額ニハ附帶ノ利息、違約金、
費用又ハ手數料ノ額ヲ算入セズ旣ニ元
本ニ組入レタル此等ノモノニ付亦同
|ジ
第一項ノ金額ヲ超過スル債務ニ付調停
ノ申立アリタル場合ト雖モ裁判所調停
ヲ爲スヲ目當ト認メ目相手方ニ異議ナ
キトキハ調停ヲ爲スコトヲ得相手方明
日ニ出頭シテ事件ノ內容ニ付陳述ヲ始
メタルトキハ異議ナキモノト看做ス
第三條調停ノ申立ハ相手方ノ住所、居
所、營業所若ハ事務所ノ所在地ヲ管轄
スル區裁判所又ハ當事者ノ合意ニ依リ
テ定ムル區裁判所ニ之ヲ爲スコトヲ要
ス
調停ノ申立ヲ受ケタル裁判所相當ト認
ムルトキハ決定ヲ以テ事件ヲ他ノ區裁
判所ニ移送スルコトヲ得管轄權ナキ裁
判所ガ調停ノ申立ヲ受ケタルトキ亦同
前項ノ決定ニ對シテハ不服ヲ申立ツル
コトヲ得ズ
第四條本法ノ調停ニ關シテハ借地借家
調停法第二條、第四條ノ二、第六條
〓乃至第二十三條及第二十六條乃至第
〓第八條
三十二條ノ規定ヲ準用ス
第五條當事者及利害關係人ハ自身出頭スル
コトヲ要ス但シ辯護士又ハ裁判所ノ許可
ヲ受ケタル代理人ヲ出頭セシムルコトヲ
得
裁判所ハ何時ニテハ前項ノ許可ヲ取消スコ
トヲ得
六
第五條事件ガ性質上調停ヲ爲スニ適セ
ズ又ハ當事者不當ノ目的ヲ以テ濫ニ調
停ノ申立ヲ爲シタリト認ムルトキハ裁
判所ハ決定ヲ以テ調停ノ申立ヲ却下ス
八
第七條第二項ニ該當スルトキ其ノ他調
停ヲ爲スニ適當ナラザル事情存スルト
キ亦同ジ
調停委員會前項ノ事由アリト認ムルト
キハ調停ヲ爲サズ
七
當作調停ノ申立ヲ受理シタル事件ニ
付訴訟ガ繋屬スルトキ又ハ裁判所ノ職
權ヲ以テ事件ガ調停ニ付セラレタルト
キハ受訴裁判所ハ決定ヲ以テ調停ノ終
八
了又ハ第七條ノ規定ニ依ル裁判確定ニ
至ル迄訴訟手續ヲ中止スルコトヲ得
調停事件ノ繋屬スル裁判所ハ申立ニ因
リ決定ヲ以テ擔保ヲ供シ又ハ供セシメ
ズシテ强制執行手續又ハ競賣法ニ依ル
シ破產申立ニ付テハ
競賣手續ヲ一時停止スルコトヲ得
破產宣告ノ決定ヲ一時猶豫スルコトヲ得
前項ノ場合ニ於テ裁判所ハ特ニ必要ト認ム
ルトキハ擔保ヲ供セシムルコトヲ得
民事訴訟法第百十二條、第百十三條、
第百十五條及第百十六條ノ規定ハ前項
ノ擔保ニ之ヲ準用ス
第一項及第二項ノ決定ニ對シテハ不服
ヲ申立ツルコトヲ得ズ
八
第七條調停委員會ニ於テ調停成ラザル
場合ニ裁判所相當ト認ムルトキハ職權
ヲ以テ調停委員ノ意見ヲ聽キ當事者雙
方ノ利益ヲ衡平ニ考慮シ其ノ資力、業
務ノ性質、既ニ債務者ノ支拂ヒタル利息
手數料內入金等ノ額其ノ他一切ノ事情
ヲ斟酌シテ調停ニ代ヘ利息、期限其ノ
他債務關係ノ變更ヲ命ズル裁判ヲ爲ス
コトヲ得此ノ裁判ニ於テハ債務ノ履行
其ノ他財產上ノ給付ヲ命ズルコトヲ得
銀行其ノ他官廳ノ監督ヲ受ケテ金融業
務ヲ取扱フ者ノ債權ニ付テハ其ノ業務
存續
ノ機構ヲ害スル虞アルトキハ前項ノ裁
判ヲ爲スコトヲ得ズ
九
第八條前條ノ規定ニ依ル裁判ハ調停事
件ノ繫屬スル裁判所ニ於テ非訟事件手
續法ニ依リ之ヲ爲ス
十八
第九條第七條ノ規定ニ依ル裁判ニ對シ
テハ卽時抗〓ヲ爲スコトヲ得其ノ期間
ハ之ヲ二週間トス
前項ノ卽時抗〓ハ執行停止ノ效力ヲ有
ス
十一八
第十條第七條ノ規定ニ依ル裁判確定シ
タルトキハ其ノ裁判ハ裁判上ノ和解ト
同一ノ效力ヲ有ス
十二
第十一條調停委員又ハ調停委員タリシ
者故ナク評議ノ〓末又ハ調停主任、調
停委員ノ意見若ハ其ノ多少ノ數ヲ漏泄
シタルトキハ千圓以下ノ罰金ニ處ス
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
本法ハ本法施行ノ日ヨリ三年間其ノ效力
マヨハ
本法失效ノ際ニ於テ必要ナル經過規定ハ
勅令ヲ以テ之ヲ定ム
〔岩崎幸治郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313242X00919320901&spkNum=85
-
086・岩崎幸治郎
○岩崎幸治郞君 只今上程セラレマシタ金
錢債務臨時調停法案ニ付キマシテノ委員會
ノ經過竝ニ結果ヲ御報〓申上ゲマス、委員
會ニ於キマスル質問ハ幾多アルノデゴザイ
マスルケレドモ、大體重要ナルモノハ三ツ
ニ分ケルコトガ出來ルト存ジマスル、第
ハ金錢ノ制限ニ關係スルモノ、第二ハ債務
ノ性質ト態樣ニ關係スルモノ、第三ハ調停
ノ目的ト他ノ手續トノ關係ノ、此三ツニ分
ケルコトガ出來ルノデアリマス、委員諸君
ヨリ金錢債務ノ千圓ヲ超過セザルト云フ法
文ノ制限ヲ置イタノハドウ云フ譯デアル
カト云フ御質問ガゴザイマシタ、政府ノ答
辯セラレル所ハ、昭和四年ニ於ケル農林省
ノ調査ニ依ルト、自作農ノ借金ノ平均ガ千
五百圓ニナッテ居ル、自他作農ノ借金ノ平均
ハ一千五十圓ニナッテ居ル、小作人ノ借金
ノ平均ハ五百圓デアル、デアルガ故ニ先ヅ
千圓ト押へタナラバ、大體ニ於テ農村ニ於
ケル負債ノ整理ハ出來得ルデアラウト思ッ
テ居ルト云フ御答辯デゴザイマシタ
次ニ此金錢債務ノ性質態樣ニ關係致シマ
スル質問ノ上カラ申シマスルト、此債務ハ
民事ニ限ルノデアルカ、商事ヲモ亦含ムノ
デアルカト云フ質問ニ對シマシテ、政府ハ
勿論商事モ民事モ皆此中デヤルノデアル、
但シ小作料、借地借家カラ出テ來ル所ノ債
權債務ニ付テハ、是ハ本法ガ關係シナイ、
斯ウ云フコトヲ御答辯ニ相成リマシタ
次ニ此調停ノ目的ト他ノ事件トノ關係ニ
付テノ質問ガアリマシテ、商事調停ニ一面
入ッテ居ッテ、而シテ此調停ニ又入ッテ來タ場
合ニ於テハ裁判所ハ如何ナル取扱ヲスル
カト云フ質問デアリマス、此質問ニ對シマ
シテ、政府ハ兩者並行スルコト毫モ差支ナ
シト云フ答デゴザイマシタ
ソレカラ此債務ガ假ニ確定判決ヲ經タル
債務デアッタ場合ニ於テハ、調停ハ如何ニ
之ヲ取扱フカト云フ質問ニ對シテ、確定判
決ヲ經タル金錢債務デアッテモ、或ハ和解
成立後ノ金錢債權デアッテモ、若クハ調停
ニ依テ和解ノ成立シタルモノニ付テモ、何
ニ付テモヤルノデアルト云フ御答辯デアリ
マシタ、其理由トセラルヽ所ハ、本件調停
ハ多ク辨濟ノ方法ニ付テノ調停デアルノデ
アルカラ、何等確定判決ヲ經タルモノニ付
テモ差支ガナイト云フ御意見デアッタノデ
アリマス、是ガ私ノ認メマシタル重大ナル
質問デアリマシテ、其他ニ尙ホ幾多ノ質問
ガアッタノデアリマスケレドモ、是ハ洵ニ
恐縮デゴザイマスルケレドモ、委員會ノ速
記ニ就テ御調ヲ願ヒタイノデゴザイマス、
斯ノ如ク致シマシテ、本案ニ付テノ討論ニ
移リマシタ所ガ、修正案ガ三ツ出テ來タノ
デアリマス
第一ノ修正案ハ政友會所屬ノ委員カラ提
出サレタノデアリマシテ、此修正ノ眼目ハ、
第一ニ金額一千圓ニ達セザル債權ト云フ、
此觀念ハ法文カラ取ッテシマフ「千圓ニ
達セザルモノ」ト云フ文字ヲ削除スル、而シ
テ小作料、借地借家ニ付テノ例外モ撤廢シ
テ、何モ斯モ此調停デ以テヤリ得ルヤウニ
スルト云フノガ第一點ノ修正デゴザイマ
ス、第二點ハ本件ハ强制調停デアッテ、調停
成ラザル場合ニ於テハ裁判所ハ裁判ヲ以
テ爭ヒヲ決メ得ルノデアルガ故ニ、辯護士
ヲ代理人トスルコト毫モ差支ガナイ、否寧
ロ辯護士ヲ代理人トセシムルコトガ便宜デ
アラウ、本體ノ筋トシテハ當事者自身ノ出
頭ガ必要デアルケレドモ辯護士ヲ代理人
トスルノハ一向差支ガナイト云フ修正デゴ
ザイマス、此他ノ修正ハ字句及條文ノ配列
ニ關係スルモノデゴザイマスカラ、私ハ諄
ク玆ニ申上ゲマセヌ
第二ノ修正ハ民政側ノ諸君カラ提出サレ
マシタ修正デゴザイマシテ、此修正ハ唯辯
護士ガ輔佐人トナル場合ニ於テハ裁判所
ノ許可モ調停委員會ノ許可モ要シナイ從
來辯護士ガ代理人トナルコトニ付テハ、裁
判所ノ許可デ行ケタノデアリマシタガ、此
修正ニ依リマスルト裁判所若クハ調停委
員會ノ許可ガアッタ場合ニ於テハ代理ガ出
來得ル、輔佐人ハ辯護士ノ職權トシテ許可
ヲ得ナクテモ出來得ルト云フ點ガ修正ノ重
點ニナッテ居リマス
第三ノ修正案ハ、是ハ國同側カラ御出シ
ニナリマシタ修正案デゴザイマシテ、此修
正案ハ「金額千圓ヲ超過セサル」ト云フ點ハ
觸レナイデ、ソレハソレデ宜シイ、併ナガ
ラ裁判所ガ相手方ノ意見ヲ聽イテ、事件ガ
調停ニ適スル相當ナモノデアルト認メタ場
合ニ於テハ幾ラ巨額ノ金錢デアッテモ調
停ガ出來得ルト云フ修正デゴザイマス、ソレ
以外ニ辯護士ヲ代理人ニスルト云フ修正ニ
付キマシテハ政友會側カラ出サレタ修正
ト同一デゴザイマス、又字句ノ點ニ付キマ
シテ政友會ノ修正ハ、第七條ノ中ノ「機構
ヲ害スル」ト云フ「機構」ノ文字ヲ「存續」ト
修正シテゴザイマスガ、此點ニ付キマシテ
モ、國同ノ修正ハ同一デアリマス、而シテ先
程申上ゲマシタ小作料、借地借家カラ生ズ
ル所ノ債權ニ付テノ調停モ、ヤハリ本調停
ニ包含セシメルト云フ點モ、政友會ノ修正
ト同一デアリマス、簡單ニ申シマスレバ
第一條ノ但書ハ之ヲ取ァテシマフ、斯ウ云
フ點ハ皆樣同樣デアリマスケレドモ、唯
ツ遺ッタ點ハ、千圓ヲ超エザルモノヲ原則
トスルガ、裁判所ガ相手方ノ意見ヲ聽イテ、
事件ガ調停ニ相當ナリト認メル場合ニ於テ
ハ金額ニ拘泥シナイト云フコトニ修正サ
レタ點ガ、此修正ノ重點デゴザイマス
ソコデ修正案ニ對シマスル提案者ノ理由
ヲ簡單ニ御紹介申上ゲマスルト云フト政
友會ノ修正案ニ對スル提案ノ理由ハ、金錢
債務ヲ千圓ニ達セザルモノト云フコトニ制
限スルト云フコトハ社會ノ通念デアル差
別待遇撤廢ト云フコトニ支障ヲ來ス、簡
單ニ申セバサウ言ハレルノデアリマス、卽
チ千圓ニ達セザル少額ノ債權者、寧ロ債務
者ト同樣ニ苦ンデ居ル者ハ壓迫ヲ受ケルケ
レドモ、然ラザル債權者ガ壓迫ヲ受ケナイ
ト云フヤウナ立法ニハ、吾々ハ贊成スル譯
ニハ行カナイト、斯ウ言ハレルノデアリマ
ス(拍手)ソレカラ代理人ノ選任ノ件ニ付キ
マシテハ旣ニ强制シテマデ調停スルモノ
デアル以上ハ、代理人ヲ出廷セシメタ所デ、
裁判所ガ調停人ノ意見ヲ聽イテ調停裁判ヲ
シテシマヘバ宜イノデアルカラ、毫モ代理
人差支ナシ、辯護士ハ權利トシテ當事者ノ
代理人ヲ爲シ得ル途ヲ開カナケレバナラナ
イ、卽チ民事訴訟法ノ通念ヲ此調停法ニモ
採ラナケレバナラヌト云フコトノ理由デ以
テ、辯護士ノ代理人タルノ許可ヲ修正シテ
入レタノデアリマスサウ云フコトノ理由
ヲ主張セラレマシタ民政側ノ修正案ニ付テ
ノ御理由ハ、修正其モノガ頗ル簡單デアリ
マス如ク、又頗ル簡單デアリマシテ、從來
ノ實際ノ手續ハ辯護士ノ代理人ハ裁判所ハ
之ヲ默認致シテ居ルノデアル、隨テ裁判所
ト調停委員會ガ許可スル場合ニ於テハ代
理人タルコト一向差支ナシノミナラズ辯
護士ガ輔佐人トナルコトハ當然ノ權利ト
シテ裁判所若クハ調停委員會ノ許可ヲ得ナ
イデモ、其途ヲ開カンケレバナラナイト云
フ點カラ御修正ニナッタノデアルト云フ提
案ノ理由ヲ御說明ニナリマシタ
ソレカラ國同ノ提案ニ付キマシテ、提案
ノ御理由トナッテ居リマスル所ノモノハ
金額ヲ千圓ニ制限スルコトハ是ハドチラ
カト云ヘバ餘リ變手ヲ擧ゲテ贊成ハナイケ
レドモ、併ナガラ若シ此金額ノ制限ヲ撤廢
スルト云フコトニナレバ洵ニ調停裁判所
ノ事務ガ煩雑ヲ來スデアラウ、寧ロ是ハ此
儘ニシテ置イテ、相手方ノ意見ヲ聽イテ、
持ッテ來タ當該事件ニ付テ、調停ヲ爲スニ
相當デアルト認メタモノヽミヲ、金額ガ千
圓ヲ超過シテ尙ホ調停ニ入ルコトニスルコ
トガ相當デアルト云フ提案ノ理由ヲ御說明
ニナッタノデゴザイマス
是ニ於テ採決ニ入リマシタ、先ヅ政友會
ノ修正案ガ政府ノ原案ニ一番遠イノデゴザ
イマス、之ヲ採決致シマシタ所ガ多數デゴ
ザイマシタ、修正意見ニ多數ノ贊成ガアッ
タノデアリマス次ニ民政ノ修正案ヲ決議
ニ諮ヒマシタ所ガ、是ハ少數デ否決サレマ
シタ、國同ノ修正案ニ付キマシテモ、是亦
少數デ否決サレタ次第デゴザイマス、頗ル
簡單デゴザイマスルケレドモ、之ヲ以テ私
ノ報告ト致スノデゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313242X00919320901&spkNum=86
-
087・秋田清
○議長(秋田〓君) 本案ノ委員長報告ハ修
正デアリマス、尙ホ一松定吉君及井上剛一
君ヨリ成規ニ依リ各〓修正案ガ提出サレテ
居リマスル、仍テ便宜上討論ハ第二讀會ニ
於テ修正案ノ趣旨辯明ヲ聽キマシタル上
ニ於テ、之ヲ許可致シタイト思ヒマス、何
卒右樣御諒承ヲ乞ヒマス-本案ノ第二讀
會ヲ開クニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313242X00919320901&spkNum=87
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088・秋田清
○議長(秋田〓君) 御異議ナシト認メマ
ス、本案ノ第二讀會ヲ開クニ決シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313242X00919320901&spkNum=88
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089・上田孝吉
○上田孝吉君 直チニ本案ノ第二讀會ヲ開
カレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313242X00919320901&spkNum=89
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090・秋田清
○議長(秋田〓君) 上田君ノ動議ニ御異議
アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313242X00919320901&spkNum=90
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091・秋田清
○議長(秋田〓君) 御異議ナシト認メマス、
直チニ本案ノ第二讀會ヲ開キ、議案全部ヲ
議題ト致シマス
金錢債務臨時調停法案第二讀會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313242X00919320901&spkNum=91
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092・秋田清
○議長(秋田〓君) 此場合修正案ノ趣旨辯
明ヲ許可スルノデアリマスガ、何レモ趣旨
辯明省略ヲ申出デラレマシタ-是ヨリ討
論ニ入リ、通〓順ニ依リ發言ヲ許シマス
一松定吉君
〔一松定吉君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313242X00919320901&spkNum=92
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093・一松定吉
○一松定吉君 諸君、只今上程セラレテ居
リマス金錢債務臨時調停法ニ對シマシテ、我
黨ハ同案中第四條ノ或ル一部ヲ修正シ第五
條ヲ新ニ設ケマシテ、政府提案ニ係リマス
第五條以下ノ法條ヲ順次繰下ゲルコトニ致
シタノデゴザイマスガ以下其修正ノ趣旨辯
明ヲ討論ノ中ニ織込ミマシテ申上ゲタイ考
デアリマス、暫ク御〓聽ヲ御願致シマス
本案ハ御承知ノ如ク一人ノ區裁判所ノ判事
ガ自由ニ債務ノ內容ヲ變更スルコトノ出來
ル案デアリマス、斯ノ如キ性質ヲ帶ビテ居ル
法案デアリマスルガ故ニ、此議案ノ審査ニ
當リマシテハ、十分愼重審議シナケレバナ
ラナイコトハ申スマデモナイノデアリマス
唯一片ノ道理ダトカ、或ハ人氣取リダトカ、
宣傳ダトカ云フヤウナ意味ニ取扱フベキモ
ノデナイコトモ亦當然デアリマス、此意味
ニ於キマシテ我黨ハ此案ニ對シテハ矢張原
案ノ「千圓」ト云フ金額ヲ適當ト致シ、政友
會ノ修正ニ係リマス金額無制限論ニハ反對
ヲ表スルノデアリマス、又第二條ノ所謂小
作ニ關シマスル調停法竝ニ借地借家ノ調停
法ハ、本案カラ適用ヲ除外スルト云フ原案
ヲ維持致シマシテ、政友會案ノ此兩調停法
ハ本案ト併用スルヤウニスルト云フ、但書
削除ノ修正案ニハ反對デアリマス、又第四
條中ノ所謂借地借家調停法準用ニ係リマス
當事者、利害關係人ガ調停ニ出頭致シマス
ル場合ニ於テ、辯護士ヲ代理人トスルコト
ガ出來ルカドウカト云フ、此修正案ニ對シ
マシテハ、我黨ハ是マデ調停法中ニ採用セ
ラレテ居リマスル所ノ本人出頭主義、代理
人許可主義ニ對シマシテハ、不都合ガア
ルコトヲ認メマスカラ、此點ニ對シマシ
テハ同ジク本人ノ出頭主義ヲ原則トシ、
辯護土ハ裁判所ノ許可ヲ受ケテ代理人タ
ルコトヲ得、但シ本人ガ法律智識ニ乏シ
イ場合、若クハ特ニ顧問的相談ヲ持掛ケ
ル必要ノアルヤウナ場合ニハ、專門家デ
アル辯護士ヲ輔佐人トシテ、共ニ調停裁
判所ニ出頭スルコトノ出來ルヤウニ修正ス
ルコトガ機宜ニ適シタルコトデアリ、且ツ
是ガ調停法ノ眞ノ運用ニ適合シタル處置デ
アルト考ヘマシテ此第四條中ノ借地借家
法第七條ノ規定ヲ準用スルコトヲ止メマシ
テ、新ニ第五條ヲ設ケテ本人出頭ヲ原則ト
シ、裁判所ノ許可ヲ受ケタル場合ニハ、辯
護士ガ代理人トナルコトガ出來ル、又本人
ハ何時デモ輔佐人ト共ニ調停裁判所ニ出頭
スルコトガ出來ル、輔佐人ハ裁判所ノ許可
ヲ得テ出ルノデアルガ、辯護士ハ許可ハ要
ラヌ、當然輔佐人トシテ出ル權限ガアルト
云フヤウニ修正シタノデアリマス、其次ニハ
例ノ第七條ノ二項ノ所謂「機構ヲ害スル虞」
云々ノコトニ關シマシテハ、同ジク原案ヲ
維持致シマシテ、政友會ノ修正案デアリマ
ス「存續ヲ害スル虞」ト云フ點ニハ反對ノ意
ヲ表明スルノデアリマス、今是等ノ點ニ對
シマシテ我黨ノ主張ノ正シキ理由ヲ開陳致
サントスルノデアリマス
諸君、政友會ノ修正案タル無制限ニスル
ト云フコトニ致シマスルナラバ、千圓ハ勿
論五千圓、一万圓、十万圓、百万圓、所謂
底ナシニ制限ナシニ本法ノ適用ヲ受ケルト
云フコトニナルノデアリマスカラシテ、吾
吾ハ斯ノ如キ案ニ對シマシテハ反對セザル
ヲ得ナイノデアリマス、何故ニ反對シナケ
レバナラナイカト言ヒマスト、幾多ノ不條
理ノ點、幾多ノ缺點ヲ此修正案中ニ見出ス
故ニ反對ヲスルノデアリマス、純理論カラ
申シマスルナラバ、契約自由ノ原則ニ基キ
マシテ、個人ガ法ノ保護スル範圍內ニ於テ
自由ニ契約ヲ締結致シテ居ル、此契約ニ依
リマシテ債權者ハ法ノ保護ヲ受ケテ債權ノ
實行ヲヤルコトガ出來ル、債務者ハ法ノ强
制ヲ受ケテ債務ノ履行ヲシナケレバナラナ
イト云フ覺悟ヲ有"テ居ル場合ニ於キマシ
テ、區裁判所ノ一判事ガ其契約ノ内容ヲ自
由ニ變更スルト云フコトニナッタナラバ、契
約自由ノ原則ハ全ク破壞セラレテシマフノ
デアリマス
次ニ又裁判制度ノ原則カラ考ヘテ見マシ
テモ、諸君モ御承知ノ如ク、裁判ハ原被兩
告ガ法廷ニ立"テ專門家ヲ代理人トシテ互
ニ黑白ヲ爭ヒ、證據ノ申請ヲ爲シ、口頭辯
論ヲ經マシテ、而モ公開ノ席ニ於テ黑白ヲ
決セラルヽノデアリマス、之ニ對シマシテ
敗訴ノ判決ヲ受ケタ者ハ、其判決ニ對シテ
上訴卽チ控訴上〓ノ方法ニ依テ不服ヲ申立
テ、更ニ覆審ヲ求ムルコトガ出來ルニ拘ラ
ズ、本件ノ如キハ其事ナクシテ、唯一人ノ
區裁判所ノ判事ノヤッタ決定ニ對シテ、
種輕便ナル抗〓ト云フ方法ニ依テノミ保護
セラルヽト云フ變則的規定デアリマスルガ
故ニ、裁判ノ原則カラ申シマスルナラバ
裁判ノ原則ヲ破壞スル法規デアルト云フコ
トニナルノデアリマス、ソレバカリデハア
リマセヌ、本法ヲ適用スルコトニ依リマシ
テ國民道德ト云フモノハ破壞セラルヽ虞ガ
アリ、又經濟上ノ危機ヲ孕ム虞ガアリ又
國民思想ヲ惡化セシムルノ虞ガアルノデマ
リマス、故ニ平時ニ於テハ斯ノ如キ法案
ト云フモノハ之ヲ施行スベキモノデハア
リマセヌ、斯ノ如キ法案ハ已ムヲ得ザル時
ニノミ限ッテ施行シナケレバナラナイノデ
アリマス、若シ斯ノ如キ幾多ノ弊害ノ伴フ
法案ヲ平時ニ、若クハ必要ノナイ時ニ實施
スルト云フコトデアッタナラバ之ニ對シ
テハ何人モ不都合デアルトシテ攻擊シナイ
者ハナイデアリマセウ、此意味ニ於キマシ
テ、今日ノ如ク所謂農漁山村、中小商工業
者ノ疲弊困憊ヲ此儘ニシテ置イテハナラナ
イ、此窮狀ヲ打開スルノニハ、何等カノ方
法ヲ講ジナケレバナラナイト云フヤウナ、
非常時ノ場合ニ於テノミ、斯ノ如キ法案ハ
施行セラレルノデアリマス、ソレナラバ成
タケ弊害ノ少イヤウニ、成タケ其適用期間
ノ短イヤウニ、成タケ是ガ範圍ヲ縮小スル
ヤウニスルコトハ、所謂國ヲ憂フル士ノ當
ニ努メナケレバナラヌ責任デアルト私ハ考
ヘルノデアリマス、此意味ニ於キマシテ、
無制限ヨリモ制限ノアルコトヲ尊シトシ、
其制限ノ中ニ於キマシテモ、多額ノ金錢債
務ヨリモ少額ノ金錢債務ヲ保護スルト云フ
意味ニ於テノミ、之ヲ適用シナケレバナラ
ナイト私ハ考ヘテ居ルノデアリマス、然ラ
バ如何ナル程度ノモノヲ之ニ依フテ救濟ス
レバ宜イカト云フコトニ對シマスルト、唯
金額ヲ無制限ニシナケレバナラナイト云フ
ダケデハイケマセヌ、今日吾々ガ此時局匡
救ノ爲ノ議會ニ於テ、是等ノ下層階級、是
等ノ窮民、是等生活ニ喘イデ居ル人々ヲ救
フ爲ノ非常時內閣、非常時議會ニ於キマシ
テノ此非常立法ハ、ドノ程度ノモノヲ救
濟スルコトガ最モ妥當性ヲ有〃テ居ルモノ
デアルカト云フ點ニハ何カ根據ヲ見出サ
ナケレバナラヌノデアリマス、此意味ニ於
キマシテ、農林省ガ昭和四年ニ調査ヲ致シ
タモノガ此處ニアリマス、之ニ依リマスル
ト、小農若クハ自作農若クハ自作農デアリ
且ツ小農デアリマスル者ノ箇年ニ於ケル
負債、是等ノモノヲ此表カラ拾ヒ出シテ見
マスルト、一年ニ於テノ借金ト云フモノガ、
年末ニ於テ九百十七圓七十錢二厘ト云フコ
トニナッテ居リマス、是ハ昭和四年ノ調査
ニ係ルモノデアリマスガ、ソレヨリモット
新シイモノヲ私ノ調査シタ所ニ依テ發表致
シマスルナラバ本年ノ七月現在ニ於キマ
シテ、地方長官ガ調査シタ所ニ依リマスル
ト地主ノ借金ハ三千五百十六圓デアリ、
自作農ノ借金ハ千二百十九圓デアリ、小作
農及自作農ヲ兼テ居ル者ノ借金ハ七百八十
八圓デアリ、小作農ノ借金ハ三百九十三圓
デアルト云フコトニナッテ居リマス、又農
家負擔整理實行事例調査ニ依ルモノカラ拾
ヒ出シテ見マスルナラバ、自作農ノ借金ハ
千六百五十圓、自作兼小作農ノ借金ハ千百
三十圓、小作人ノ有スル借金ハ五百二十圓、
ソレカラ農家經濟調査ニ依ルモノハ、自作
農ハ千九十圓、自作兼小作農ハ千百七十二
圓小作農ハ七百八十二圓、之ヲ平均致シ
マスルト、地主ハ三千五百十六圓、自作農
ハ千三百十九圓、自作及小作農ハ千三十
圓、小作農ハ五百六十圓トナルノデアリ
せい、而モ是ハ其農家一戶當リノ負債ノ
額デアリマシテ、是ハ數口ノ債務ガ合計
セラレテ此樣ニナッテ居ルノデアリマス、ソ
レナラバ是等ノ金額ヲ數口ニ還元致シマシ
タナラバ一口ハ悉ク千圓以下ノ負擔ニナ
ルノデアリマス、之ヲ十分ニ呑込ンデ居ラ
ネバイケマセヌ、是ガ所謂農家ニ對シマス
ル負債ノ金額デアリマス、又商工省ガ昨年
六月東京市內ノ卸小賣業者七万六千二百二
十二營業所ニ對シマシテ調査致シタ結果ニ
依リマスルト、一營業所平均九百八十二圓
ノ負債ト云フコトニナリマス、是モ數口ノ
借金ガ合計セラレテ九百八十二圓デアリマ
スルガ故ニ、之ヲ數口ノ債務ニ還元シテ見
マシタナラバ、悉ク千圓以下ノ少額債務ヲ
負擔スルニ過ギナイノデアルト云フコトガ
明ニナルノデアリマス、諸君、此樣ニ考ヘ
マスルナラバ今日ノ農漁山村竝ニ中小商
工業者ノ窮乏ヲ救濟スルコトヲ目的ト致シ
テ居リマスル此金錢債務臨時調停法ノ一口
ノ金額ハ、千圓ト云フコトヲ基準ニスレ
バ、是等ノモノハ十分ニ救濟ノ出來ルト云
フコトガ明ニナルノデアリマス、然ルニ無
制限ニシナケレバ債務者ノ全部ヲ救濟スル
コトガ出來ナイ、此樣ナコトデハ不徹底デ
アルト云フ政友會ノ修正ハ是等ノモノヲ
十分調査〓究シナイ缺點ガアリ千圓ニスレ
バ債務者ノ救ハレルモノト救ハレナイモノ
トガアル、故ニ其債務者ノ全部ヲ救濟スル
ノニハ、金額ノ制限ヲ撤廢シナケレバナラ
ナイト云フ一片ノ理論カラ割出サレタ所ノ
案デアリマシテ、是ハ今日ノ此時局匡救内
閣ノ提案セラレテアリマスル各種法案ニ依
リマシテモ明ナルガ如ク、日本全國ノ窮乏
者一人殘ラズ之ヲ救護スルト云フコトニハ
ナッテ居ナイノデアリマス、理想ト致シマシ
テハ、サウ云フヤウニシテ、同ジ陛下ノ赤
子デアルモノヲ救濟シ、一人デモ救ハレザ
ルモノナカラシムルコトハ政治家トシテ
當然考ヘナケレバナリマセヌガ、ソレハ國
ノ財政ノ許ス程度ニ於テデナケレバナリマ
セヌ、又他ニ是ヨリモ尙且ツ急ヲ要スル場
合ガアル時ニ於テ、豫算ガ許サナイ、財政
ガ許サナイト云フヤウナ時ニハ急ナモノ
ヲ先ニシ、然ラザルモノハ徐ロニ〓究調査
シテ之ガ救濟ノ途ヲ講ズルモ決シテ時期ノ
遲レタルモノト言フコトハ出來ナイノデア
リマス、昨日三木君ノ豫算委員長ヲ經テ當
局ニ尋ネテ貰ヒタイト言ハレタ彼ノ所謂失
業者、又ハ勤勞階級者「サラリーマン」等ノ
二千万人餘ノ同胞者ニ對スル匡救ノ豫算
ノ無カリシコトハ〓歎ニ堪ヘナイ、此點ヲ
政府ニ確メテ貰ヒタイト言ハレタコトハ
時宜ニ適シタル質問デアッタノデアリマス
ガ是モ無イ袖ハ振レナイト云フ立前カラ
致シマスルナラバ是亦已ムヲ得ナイモノ
デアリマス、卽チ斯様ニ窮民ノ中デモ、急
ニ救ハナケレバナラナイモノト、多少時期
ハ遲レテ宜イモノトノアルコトヲ考ヘルナ
ラバ、今農漁山村及中小商工業者中ノ千圓
以下ノ借金ヲ負ウテ居ル者ガ殆ド全部デア
ル時ニ於キマシテ、先ヅ之ヲ國家財政ノ許
ス範圍內ニ於テ匡救スルト云フコトハ機宜
ニ適シタル法案ナリト言ハナケレバナリマ
セヌ、(拍手)此意味ニ於キマシテ政友會案
ノ無制限ニスルト云フコトニ對シマシテ
ハ私共直チニ贊成スルコトハ出來ヌノデ
アリマス、ソレバカリデハアリマセヌ、若
シ之ヲ無制限ニスルト云フコトニナリマシ
タナラバ妥當性ノ方面カラ考ヘマシテ
モ一區裁判所ノ判事、今マデ千圓以下ノ
事件ノ取扱ヲシテ居ッタ、借地借家若クハ
小作ニ關シマスル調停ハ別トシテ、區裁判
所ノ一判事ニ制限ナク數万圓、數百万圓ノ
金錢債務ヲ勝手ニ內容ヲ變更スルコトヲ許
シ、而モソレニ對シテハ裁判上、吾々ニ與
ヘラレタル上訴ノ方法ニ依ル不服ノ申立ヲ
許サヌ、單ニ一ツノ抗〓ニノミ依テ、不服
ノ申立ガ出來ルト云フヤウナ不徹底ナ妥當
性ヲ缺イタ所ノ取扱ヲ、此一判事ニ委ネル
ト云フコトハ如何デアリマセウカ、此點モ
政友會諸君ニ於テ大ニ御考慮願ヒタイノデ
アリマス、ソレバカデハアリマセヌ、若シ
之ヲ政友會案ノ如ク金錢ノ程度ヲ無制限ト
云フコトニ致シマスルト、實際取扱ノ上ニ
如何ナル影響ヲ及ボスカト云フコトヲ調査
シテ見マシタガ、大正十五年カラ昭和五年
マデノ五箇年間ノ地方裁判所ニ提起セラレ
マシタ千圓ヲ超過スル事件ハ、二万七千四
百四十三件ト云フコトニナリマス、是ハ五
箇年間ノ平均ノ件數デアリマスルカラ、今
後三年間ニ此樣ニナルカナラナイカ分リマ
セヌガ、兎ニ角事ヲ判斷スルニ對シマシテ、
今マデノ統計ヲ基礎トシテ判斷スルト云フ
コトハ間違ッタ判斷ノ仕方デハナイノデ
アリマスカラ之ヲ前提ト致シマシテ、此二
万七千四百四十三件ト同ジ位ノ事件ガ、悉ク
區裁判所ニ調停ノ申立ヲサレルト云フコト
ニナッタト假定致シマスルナラバ、一體ド
ウ云フヤウナコトニナルノデアリマセウ
カ、昨日本院ヲ通過致シマシタ此非常時調
停法ノ豫算ト云フモノハ此千圓ヲ超過ス
ル事件ガ地方カラ區ニ移ルト云フコトハ豫
期シテ居ナイ所ノ豫算デアリマスルガ爲
ニ、更ニ此點ヲ考ヘテ見ルコトニナリマス
ルト、此案ガ通過セラレルト云フコトニナ
リマスルト云フト、百人ノ判事、三百人ノ書
記百万圓ノ金ガナケレバ運用ガ出來ナイ
ト云フコトニナルノデアリマス前ニ申シマ
シタヤウニ政府ノ原案千圓以下ノ小口債務
ハ其全部ガ本法原案通リト致シマシテモ
匡救ノ目的ヲ達成スルコトノ出來ルニ拘ラ
ズ、尙ホソレ以上百万圓ノ金ヲ此方面ニ使ッ
テ小口債務者以外ノ債務者全部ヲ救ハネバ
ナラヌト云フコトハ如何デアリマセウカ、
私共ノ考ヲ以テスレバ他ニ尙ホ急ヲ要スル
失業者ノ救濟等ニ對シマシテ、此豫算ヲ廻
スコトノ方ガ最モ急デハナカラウカト考へ
ラレルノデアリマス斯ウ云フヤウニ考ヘ
マスル時ニ於キマシテ、私共ハ此無制限ノ
修正ニハ絕對ニ反對シナケレバナラヌノデ
アリマス、又第二條ノ第三項ニ依リマスル
ト千圓ヲ超過スルモノニ對シマシテ調停
ノ申立ヲシタ場合ニ於テモ、裁判所ガ適當
ト認ムル時ニハ之ヲ調停スルコトガ出來ル
ノデアリマスカラ、政友會案ノ如ク無制限ニ
シナクテモ此法條ヲ都合好ク運用致シマス
ルナラバ、必ズ相當金額ノ債務調停ガ出來
ルコトヽ思フノデアリマス、若シ政友會ノ
修正案ノヤウニナレバ將來或ハ「モラトリ
アム」ト云フヤウナモノヲ豫想シ、或ハ借
金ノ棒引案ト云フヤウナ程度ニマデ立至ル
惧ナシトセズ、卽チ政友會ノ無制限論ハ斯
ル極端ナル政策ト紙一枚デ、危險千萬ノ案デ
アルト私ハ斷言シテ憚ラヌノデアリマス
(拍手)此意味ニ於キマシテ私ハ此金額ノ制
限ヲ撤廢スルト云フコトニハ反對デアリマ
ス、其次ノ第四條ノ辯護士ヲ代理人トスル
コトヲ原則トシテ居ラレル政友會ノ案ハ、如
何カト思フノデアリマス
(「君ハ辯護士ヂヤナイカ」ト呼フ者ア
リ
サウデス、私ハ辯護士デス、辯護士デアリ
マスガ故ニ、辯護士ガ法律ノ規定ニ據ラズ
シテ、委任ニ依テ當然代理人トナルコトガ
出來レバ辯護士ノ立場カラスレバ利益デ
アル、ケレドモ吾々ガ國政ヲ談ズル上ニ於
テハ、自分ノ職務ガ辯護士デアルト云フコ
トノミニ關心スルコトハ出來マセヌ、先ヅ
自分ノ立場ハ後〓シトシテ、國家國民ノ爲
ヲ考ヘルト云フコトガ眞ノ政治家デアルト
云フコトヲ私ハ考ヘテ居ルノデアリマス、
サウ致シマスレバ調停ト云フモノノ本旨
ハ本人ヲ呼出ス、所謂本人出頭ヲ原則ニス
ルト云フコトガ調停ノ進行ニ最モ必要デア
ルコトハ今日マデノ實例ニ徵シテ明デアリ
V 、但シ辯護士ガ代理人ニナルト云フコ
トニハ反對デハナイ、本人ガ出ラレナイ時
三、裁判所ノ許可ヲ受ケテ辯護士ガ代理
人ニナル、本人ガ出ル時ニ一人デハ心細イ
カラ、法律上ノ知識ガ乏シイカラ、相談相
手ガ要ルト云フヤウナ時ニハ、辯護士ニ賴
ンデ輔佐人トシテ共ニ出テ貰フト云フコト
ニスレバ法律ノ運用ノ上ニ於テ差支ナイ
ノミナラズ、調停ノ目的ヲ達成スルニハ、
最モ妥當ナル方法デアルト考ヘルノデアリ
マヽ、次ニ政友會ハ此第二條ノ所謂小作調
停法又ハ借地借家調停法ヲ本法ノ適用ヨリ
除外スルト云フ但書ノ規定ヲ削除シ、商事
調停法ト同ジヤウニ本法ノ適用ト併用スル
ト云フ修正案ハ、一鷹御尤デアリマスガ、
是ハ先刻私ハ委員會ニ於テ申述ベタ通リ、
小作調停ニ對シマシテハ單純ナ金錢調停
ト同樣ニハ參リマセヌ、團體的デアリ集
團的デアリ、調停ガ一地方全部ニ及ブ
コトアリ、其調停ノ結果ガ他ノ府縣ノ小
作人ニマデ影響スルコトアリテ、重大
ナル危機ヲ胎ムコトノアルコトハ、小作爭
議ニ關係シタコトノアル辯護士諸君ハ能ク
承知シテ居ルノデアリマス、又小作調停ニ
ハ地主小作人ノ總代ガ出席シ、或ハ小作
官ガ立合ヒ、普通ノ調停ニ見ルコトノ出來
ナイヤウナ圓滿ナル解決方法ヲ講ジテ實績
ヲ擧ゲテ居ルノデアリマスカラ、之ヲ單純
ナル此非常時立法デアル金錢債務臨時調停
法ト併用スルト云フ議論ハ、小作關係ノ調
停ノ實際ヲ知ラザル愚論ナリト斷ゼザルヲ
得ナイノデアリマス、又此借家借地ノ問題ニ
致シマシテモサウデアリマス、地主ト借主、
家主ト借家人、斯ウ云フ者ノ間ニハ、種々
協調ヲ保ヲテ行カナケレバナラナイモノガ
アルシ、又集團的ノ場合モアリマシテ、色
色ノ問題ガ複雜シテ居ルノデアリマスカラ
ヤハリ是ハ原案ノ通リニ本法カラ除外シ
テ、唯單純ナル商取引ニ依ル商事調停法ノ
ミヲ本法ト併用スルト云フ此政府案ハ最
モ機宜ニ適シタル案デアルト信ジマスカラ
シテ、私共ハ此政府案ニ贊成スルノデアリ
マス、殘リマス所ハ第七條第一一項ノ所謂機
構ト云フ問題デアリマス、此問題ハ政友會
ノ諸君ノ仰セニナルヤウニ、法律上ノ新熟
語デアリマスカラ、解釋上多少ノ疑議ヲ持
ツコトモアリマセウガ、解釋ノ統一ハ左ノ
ミ困難デハアリマセヌカラ餘リ弊害ハナ
イト思フノデアリマス、之ヲ政友會ノ修正案
ノ如ク、存續ヲ害スル虞アルト云フコトニ
直スト云フコトニナリマスト、銀行會社等
ノ官廳ノ監督ヲ受ケテ居ル金融業者ガ、立
行クコトガ出來ナイト云フ瀕死ノ狀態ニ行
クマデハ此法文ノ適用ヲ受ケ、モウ致命傷ト
云フ狀態ニ陷ルト云フ時ニ、初メテ本法ノ適
用カラ除外サレルト云フコトニナルノデア
リマス、左樣致シマスト、經濟界ニ及ボス
影響ハ實ニ甚大デアリマス、大藏省ガ斯樣
ナ修正ニハ贊成出來ナイト云フテ居ルサウ
デアリマスガ尤モノコトヽ思フノデアリマ
ス、私ハヤハリ機構卽チ機能構成ヲ害スル
虞アル場合ニハ本法ヲ適用セズ、卽チ機能
ヲ害シ、構成ヲ害スルト云フヤウコトヲ認
定シ得ベキ場合ニハ之ヲ適用セズ、然ラザ
ル場合ニハ本法ヲ適用スルト云フコトニ
シ是ガ適用ハ裁判官ニ一任シ、最モ微妙
ナ働キヲ爲サシメ、以テ本法ヲ善處妙用セ
シムルト云フコトガ此法案ノ性質ニ適合ス
ルノデアルト云ハレタ政府委員ノ解釋ハ
最モ傾聽スベキ價アルト考ヘルノデアリマ
スカラ、此「機構ヲ害スル虞」ト云フコト
ハ依然此儘ニ存置スルコトガ宜イト思フ
ノデアリマスカラ、之ニ對シマスル政友會
ノ「存續ヲ害スル」ト云フ修正ニ付テハ吾々
ハ反對ヲ致スノデアリマス
之ヲ要スルニ本法ハ所謂農漁山村、中小
商工業者ノ今日生活ニ喘イデ居ルト云フヤ
ウナ窮乏ノ地位ニアル人ヲ、非常時ニ於テ
三年間之ヲ助ケテ救濟シテヤルト云フ案デ
アリマスルガ故ニ、此一口千圓ノ程度ニ於ケ
ル金額ニ限定スルト云フコトニ於テハ少
シモ異議ハナイノデアリマス、唯問題ハ裁
判官ガ之ヲ運用スル時ニ於テ、運用ヲ誤レ
バドノヤウナ名法律ヲ新規ニ制定致シマ
シテモ眞ノ效能ヲ發揮スルコトガ出來ナイ
ノデアリマスカラ、司法大臣ガ委員會ニ於
テ說明致シマシタヤウニ、全國ノ之ニ當ル
所ノ判事ヲ集メテ、十分ノ注意ヲ與ヘ運
用上缺陷ノ生ジナイヤウニ、間違ノ出來ナ
イヤウニシ、而モ監督ヲ嚴重ニシテ、此匡救
ノ目的ヲ達成シタイト云フ當局ノ言明ヲ信
ジ、原案ニ對シマシテハ、此第五條ヲ新ニ
入レルト云フコトノミニ止メテ、政友會案
ニ反對シ、政府ノ原案中唯五條ヲ新ニ設ケ
ルコトヽシテ、政府案ヲ支持致スノデアリ
やく、ドウゾ諸君ノ御贊成ヲ御願致シマシ
テ降壇致シマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313242X00919320901&spkNum=93
-
094・秋田清
○議長(秋田〓君) 小林錡君
〔小林錡君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313242X00919320901&spkNum=94
-
095・小林かなえ
○小林錡君 諸君、私ハ委員長御報〓ノ修
正案ニ贊成政シマシテ、民政黨竝ニ國民同
盟提出ノ修正案ニ反對スル者デアリマス、
少シク吾々同志ガ提出致シマシタ修正案ノ
理由ヲ釋明シ、同時ニ兩黨ヨリ提出セラレ
マシタル修正案ノ誤レル所以ヲ辯明シタイ
ト思フノデアリマス
諸君、只今一松君ノ御演說ヲ聽イテ居リ
マスト、洵ニ本案ニ臨ム所ノ基調、態度ト
云フモノガ、吾々ト根柢ニ於テ違,テ居ル
ト云フコトヲ私ハ先ヅ第一ニ斷言シナケレ
バナラヌノデアリマス(拍手)諸君、今期ノ
議會ハ御承知ノ如ク、前議會ニ於キマシテ
我黨ノ島田俊雄君ヨリ提出サレマシタ所謂
四大綱目ニ對シテ、非常匡救ノ案ヲ立ツベ
キ議會デアリマス、而シテ此金錢債務調停
ニ關スル問題ト、農村負債整理ニ關スル所
ノ二ツノ法案ハ、此四大綱目ノ中ノ第二位
ニ位シテ居ル所ノ、最モ重要ナル案デアル
ノデアリマス、卽チ當時島田氏ノ演說ノ一
部トシテ、今日此行詰レル農村、或ハ中小
工商業者ノ負債ヲ徹底的ニ整理ヲシナケレ
バナラヌ、之ヲ徹底的ニ整理ヲスルト云フ
コトハ言ヒ換ヘレバ債務ノ棒引ヲスル、
或ハ「モラトリアム」ヲ施行スル、併ナガラ
之ヲ直チニ行ト云フコトニナレバ、世界共
通ノ制度デアル所ノ私有財產制度ヲ覆スコ
トニナル、併ナガラ少クトモ之ニ近イ所ノ
法案ヲ立テナケレバ、到底今日ノ窮迫セル
農漁山村及都會ノ中小工商業者ヲ救フコト
ハ出來ナイト云フコトヲ指摘サレテ居ルノ
デアリマス、故ニ此意味ニ於テ本案ニ臨ム
ナラバ、吾々ハ今日全ク負債ノ重荷ニ押ヘ
付ケラレテ、其日ノ生活ニスラ苦ンデ居ル
所ノ是等ノ負債者ヲ根柢ヨリ救フト云フコ
トニ、根本的態度ヲ置カナケレバナラヌノ
デアリマス(拍手)卽チ此政府提出ノ原案カ
ラ見マスルト、又民政黨竝ニ國民同盟ヨリ
提出セラレマシタル修正案ニ依リマシテ
モ、金額ヲ千圓ト限ッテ居ルト云フコトハ、
全ク此基調ヨリ外レテ居ルモノト言ハナケ
レバナラヌト私ハ思フ(拍手)
諸君、凡ソ此實體ノ權利ニ關スル法律ト
云フモノハ極メテ特殊ノ場合ヲ除クノ外
ハ國民全部ニ同一ノ作用ヲ爲スモノデナ
ケレバナラヌノデアリマス(拍手)、是ガ憲
法上ニ於ケル自由デアリ、又平等ノ眞ノ意
義デアリ、吾々國民ノ共ニ享クベキ法上ノ
地位デアリマス、卽チ一千圓ト云フ額ヲ限ッ
テ、一千圓以下ノ債務者ヲ或點マデ保護ス
ルト云フコト、換言スレバ一千圓以下ニ
對スル債權者ニ、或ル程度ノ損害ヲ與ヘル
ト云フコトハ此一部ノ人々ニ苦痛ヲ强ヒ
ルコトデ、而モ是ヨリモ富裕ナ生活ヲシテ
居ル所ノ人々ニ損害ヲ與ヘナイヤウニ保護
スルト云フ、洵ニ本末ヲ〓倒シテ居ル法案
ト言ハナケレバナラヌト私ハ思フ(拍手)凡
ソ此法案カラ見マスルト、是ハ創設的ノ效
力ハアリマスルケレドモ、確認的ノ效力ノ
アル法律デハナイノデアリマス、故ニ此問
題ニ付テ決セラレルノハ、其債權債務ノ基
本的ノ存在デハナクシテ、此存否ニハ爭ヒ
ガナイガ、千圓トスルカ、八百圓トスルカ、
一万圓トスルカ、九千圓トスルカト云フ
支拂ニ關スル所ノ問題デアリマスルカラ、
假令一万圓デアリマシテモ、極メテ簡易ナ
事件ガアルノデアル、又一松君ガ極メテ小
ナリト言ハレル二百圓、三百圓ノ債務デアツ
テモ、貧乏人カラ云ヘバ、洵ニ殆ド其總財
產ヲ失ハナケレバナラヌト云フヤウナ重大
ナ問題デアル、實ニ此法案ニ於テハ金錢ノ
多寡ト云フコトハ直チニ以テ事ノ難易ヲ
定メル所ノ標準トハナラヌノデアリマス
(拍手)而モ此一千圓ニ限ルト云フコトハ
結論ヨリ言ヒマスレバ、私ハ所謂小額債務
者ト同ジヤウニ苦ンデ居ル小額債務者ヲ苦
シメル所ノ法案デアルト思フノデアル、何
トナレバ私ノ手許ニアル一ツノ調ベニ依リ
マシテモ、是ハ愛知縣ノ六ツ美ト云フ村ノ
調ベデアリマスルガ、此村ノ農民諸君ノ負
債ノ全部ガ、六十万圓バカリアルノデア
ル、此中ノ殆ド大部分ト云フモノハ、信用
組合デアルトカ、或ハ銀行デアルトカ云フ
ヤウナ、公共的ノ團體或ハ法人カラ借リテ
居ルモノデアッテ、僅ニ殘リノ十數万圓ト
云フモノガ是ガ所謂個人ニ對スル負債、卽
チ個人カラ借リテ居ル所ノ債務デアル、而
モ是等ノ債權者ト云フモノハ、此報告ニ依
ルト云フト殆ド其村ニ住ンデ居ル所ノ人
人ノミデアル、卽チ此村ノ比較的暮シノ裕
ナ人々ノ預金シテ居ル金ヲ借リテ居ル、或
ハ自分ノ田地ヲ擔保ニ入レテ、サウシテ自
分ノ村ノ金持カラ借リテ居ルノデアル、是
等ノ自村內ノ債權者モ打續ク不況ノ爲メ此
債務ガ支拂ハレズ、公課公租其他ノ負擔ノ重
壓ニ堪ヘズ、疲弊困憊シテ居ル、卽チ是等
ノ中產者ハ小額債務者ガ困ッテ居ルト同ジ
ヤウナ苦痛裡ニアルノデアル、故ニ私ハド
ウシテモ此小額債權者ノミニ此苦痛ヲ與ヘ
ルト云フコトハ理論上ニ於テモ非常ニ誤
レルモノデアルト思フノデアリマス
又先程一松君ハ色々ノ統計ヲ擧ゲテ述べ
ラレタノデアリマスルケレドモ、先程委員
長ガ報告セラレマシタ中ニアッタヤウニ、責
任アル政府ノ當局者ガ委員會ニ於テ吾々ニ
述ベラレタ所ハ、農村民ノ負債ハ自作農ハ千
五百圓、自他作農ハ千五十圓、小作農ハ五百
圓、此平均率ガ出テ居ルノデアル、之ニ依リテ
見ルコトモ決シテ間違ヲタコトデハナイノデア
ル、若シ果シテ政府ノ答ガ眞ナリトスレバ、自
他作農千五十圓、自作農千五百圓ト云フ平均
ノ負債ヲ持フテ居ル人ハ、直チニ此第二條ノ適
用ヨリ除外サレルト云フ不當ナル立場ニアル
ノデハアリマセヌカ、又モウ一ツノ例ヲ採ク
テ言ヘバ、若シ千圓ニ限ラレルナラバ、玆ニ
甲ナル者ガアッテ、其下ノabcノ三人ニ各
千圓ヅヽヲ貸シテ居ルト致シマス、此千圓
ヅヽノ小額債權ハ勿論此法律ノ適用ヲ受ケ
テ、調停法ノ强制調停ヲセラレルノデアル
ガ、之ヲ若シ甲ナル者ガ更ニ乙ナル者カラ
三千圓ヲ借リテ是等ノ三人ニ貸シタトスレ
バ此三千圓ハ千圓ヲ超過スルノ理由ヲ以
テ、此調停法ノ適用ヲ受ケナイノデアル、
卽チ此中間者、卽チ所謂中產階級ガ下ノ借
主カラ窘メラレ、上ノ三千圓ノ債權者カラ
ハ壓迫セラレテ、其爲メ其力ヲ上ニ伸スコ
トガ出來ナイト云フ、不當ナル結果ニ到達
スルノデアリマス、是ハ都會ニ於ケル所ノ
中小商工業者間ニモ絕エズ起ル所デアラウ
ト私ハ信ジテ居ルノデアリマス卽チ小賣
商ガ自分ノ下ニ色々ノ債務ヲ持。ッテ居ル、是
等ノ債務ハ小額ナル所以ヲ以テ此調停法ノ
强制調停ヲ受ケルガ、其上ノ問屋カラ借リ
テ居ル所ノ千圓以上ノ負債ニ對シテハ何
等此恩惠ヲ受ケルコトガ出來ナイカラ、大
ナル資本家ニ押付ケラレ、下ノ弱キ人々ニ
ハ吊下ガラレテ、サウシテ此憐ナル中產階
級ト云フ者ハ窘メラレ拔クト云フノガ民政
黨ノ案デアル
此外理論上カラ言"テモ、私ハ幾ラデモ論
駁スベキ點ガ多イノデアル、又法文其モノ
カラ見マシテモ、第八條ノ第二項ニ、所謂
銀行業者デアルトカ、或ハ保險業者デアル
トカ云フヤウナ、政府ノ監督ヲ受ケテ居。
テ、而モ一般ノ經濟界ニ影響ヲスルガ如キ
機構ヲ有テ居ル者ニ對シテハ、特別ノ扱ガ
出來ルト云フコトニナッテ居リマスカラ、是
等ノ者ニ對スル債務ハ多ク多額デアルト見
マスルナラバ一松君ノ憂ヘラレルヤウナ
所ノ心配ハ除キ得ルノデアリマス、而モ第
五條ノ第一項ノ後段ニ「第八條第二項ニ該
當スルトキ其ノ他調停ヲ爲スニ適當ナラザ
ル事情存スルトキ亦同ジ」トシテ、若シ多額
ナル債務デ調停ニ困難ヲ感ズル場合ガアル
ナラバ又若シ不當ナル理由ヲ以テ爭フ場
合ガアッタナラバ此規定ニ依テドン〓〓調
停ヨリ除外スレバ宜イノデアル、卽チ一松
君ハ實ニ此國家ノ非常時ト云フモノヲ忘レ
テ、洵ニ平常時ニ於ケル立法ノ如キ觀念ヲ
持ッテ居ルノデアル、若シサウ云フ觀念ヲ
以テ此法案ニ對セラレルナラバ國民諸君
ハ如何ニ民政黨ニ對シテ非難ヲシ落膽ヲス
ルデアラウカト云フコトハ、一松君ガ靜ニ
胸ニ手ヲ置イテ考ヘルナラバ、直チニ御分
リニナルデアラウト思フ、宜ナル哉、委員
會ニ於キマシテハ一松君首メ民政黨ノ委
員諸君ハ吾々ノ意見ニ悉ク贊成デアリマシ
ク、私ハ斯ウ云フ個人ニ關スルコトハ言ヒ
タクナイカラ言ハナイ積リデ居リマシタケ
レドモ、一松君ノ議論ヲ聽イテ居ルト、如
何ニモシヤア〓〓トシテ其毒舌ヲ弄セラレ
ル、私ハ議會振肅、公黨ニ對スル面目トシ
テモ、之ヲ一言セザルヲ得ナイノデアル、
委員會ニ於テ民政黨ノ委員諸君五名ハ、殆
ド終始吾々ノ意見ニ贊成ヲサレテ居ッタ、殊
ニ一昨日ノ如キハ吾々ガ此修正案ヲ見セタ
ラ、全部贊成ヲサレテ、一松君ハ何ト言ハ
レタ洵ニ贊成ダ、是デ大丈夫纒マル、出
來ルナラバ政友民政一〓ニ行キタイ、今一
寸幹部室ニ歸ッテ幹部ニ相談ヲシテ來テ御
答ヲスルカラ、十分間バカリ待ッテ吳レト
云フノデアル、ソレカラ三十分バカリ經。ツ
テ來テ何ト言ハレタカ、是ハ明日ハ必ズ一
致スルト思フ、但シ代議士會ニ掛ケルマデ
待シテ貰ヒタイ、斯ウ云フコトデ別レタノ
デアル、而モ其後何等挨拶ナクシテ、其後
殆ドマルデ吾々ノ考ヘナイヤウナ態度ニ出
ラレタト云フコトハ餘程深ク考ヘテ貰ハ
ナケレバ、私ハ議會ノ公黨間ニ於ケル所ノ
交涉ヲ侮辱スルモノダト思フ、民政黨ニ於
カセラレテモ眞鍋君ノ如キ良心ノアル方
ハ遂ニ板挾ミニナッテ、今日自分ハ委員ヲ
辭スル外ハナイト言ッテ、委員ヲ辭セラレタ
デハアリマセヌカ、是ヨリ見マシテモ金
額ヲ無制限ニスルト云フコトハ殆ド當初
カラ委員間ニ議論ガナカッタノデアリマス、
而モ尙ホ一言申上ゲタイコトハ政府ノ當
局ニ於カセラレテモ、初メハ此無制限ト云
フ考デ居ラレタラシイ、サウシテ之ニ依テ豫
算マデモ組マレタト云フコトデアル、政府
委員ノ或人ガ、名前ハ言ヒマセヌガ、或人
ガ初メノ案ガ一番宜イ、洵ニ初メテ美人ダ
ト思ッタ女ガ一番美人デアルト同ジダト言
ハレタ、之ヲ以テ見マシテモ、如何ニ此第
二條ノ金額ニ制限ヲ置クト云フコトガ不徹
底デアリ、理論ニ遠ザカッテ居ルカト云フ
コトガオ分リダト思フ、卽チ衡平ナル負債
整理ガ出來ナイ案デアルト云フコトヲ、諸
君ハ能ク〓〓御承知アリタイト思フノデア
リマス
第二ハ代理人ノ問題デアリマス、此代理
人ノ問題ニ付キマシテハ詳シク申ス必要モ
アリマセヌガ、旣ニ第二條ニ於ケル金額ノ
制限ヲ取去リマシテ、無制限ニ此法律ノ適
用ヲ受ケルト云フコトニナリマスレバ辯
護士ヲ代理人ニスルト云フコトハ是ハ當然
デアリマス、卽チ普通ノ調停事件ニ於キマ
シテモ、辯護士ト云フ專門家ガ加ハッテ、此
間ニ介在スルト云フコトハ大體ノ場合ニ
於テ當事者ニ事件ノ內容ヲ理解セシムルコ
トニ易ク、調停ガ極メテ仕易イノガ當然ノ
事理デアリマス、而モ第八條ニ依リマシテ
調停ガ成ラザル時ハ、殆ド强制的ノ裁判ヲ
行ハレルノデアリマスカラ、素人ノミニ依
テ最後ノ裁判ヲ與ヘサセルト云フコトハ洵
ニ憂フベキコトデアリ氣ノ毒ナコトデア
ルノデアリマス、故ニ專門家デアル所ノ辯
護士ヲ加ヘルト云フコトハ是ハ辯護士ノ
職責ニ對シテモ當然ノコトデアリ、又職業
保護ト云フコトニ對シテモ、當然ノ論斷ト
言ハナケレバナラヌノデアリマス、國民同
盟ノ諸君モヤハリ此辯護士ノ代理ト云フコ
トハ、吾々ト同一ノ意見ヲ持"テ居ラレルノ
デアリマス、唯民政黨ガ初メノ意見ガ急ニ
變リマシテ、司法省ガ內々吾々ニ輔佐人ナ
ラバ無條件トスルコトニ同意シテモ宜イト
言ハレタコトガアルガ、其輔佐人ト云フコ
トニ民政黨ガ修正サレタト云フ所ヲ見ルト
誠ニ肯ケル點ガアルノデアリマス
次ニハ第七條ノ擔保ノ問題デアリマス、
卽チ調停事件ノ繋屬スル裁判所ハ、申立ニ
依テ決定ヲ以テ强制執行手續トカ、競賣法
ニ據ル競賣手續、或ハ破產申立ニ擔ル破產
宣告ノ決定、一時此手續ヲ停止スルコトガ
出來ルヤウニスルノガ宜イト思フ、調停ト
云フコトガ片方ニ掛ッタ時ニ於テハ、强制執
行デアルトカ、競賣手續デアルトカ、破產
宣告ノ決定ヲ一時停止シテ置クト云フコト
ハ債務者保護ノ上カラ當然デアリマスカ
ラ、是ハ何處迄モ置カナケレバナラヌト云
フ吾々ハ考ヲ持ッテ居ルノデアルガ、而モ是
等ノ人々ニ擔保ヲ供セシメルト云フコト
ハ債務者ヲ救フト云フ本法律ノ精神カラ
云ッテモ甚ダ酷デアル、斯ウ云フコトカラ
色々議論ヲ致シマシタガ、若シサウ云フコ
トニナレバ裁判所ハ殆ド悉ク是等ノ手續
ノ停止ハシナイダラウト云フ話モ出テ、吾
吾モ其點ヲ考ヘマシタ結果、前項ノ場合ニ
於キマシテ、裁判所ガ特ニ必要ダト思ッタ
時ニハ擔保ヲ提供サセルコトガ出來ルト
云フコトニシ、本則トシテハ擔保ヲ提供サ
セヌデモ、一方ニ調停ノ問題ガ起タ夕ニ
ハ差押ヘラレタ所ノ差押ノ手續、或ハ强
制競賣、或ハ破產宣告ト云フコトヲ一時停
止サセルト云フコトニ依テ、初メテ重壓ニ
苦メル負債者ヲ救フコトガ出來ルノデアル
ト思フノデアリマス(拍手)
次ニ國民同盟カラハ、第八條ノ「調停ニ代
へ利息、期限其ノ他債務關係ノ變更ヲ命ズ
ル裁判ヲ爲スコトヲ得」ト云フ文句ノ中デ、
「利息、期限其ノ他」ヲ取レト云フ申出デア
リマシタ、是ハ洵ニ一應當然トモ思ハレマ
ス、何故ナラバ此例示的ノ言葉ガアル爲ニ
如何ニモ元本ニ對スル問題ガ觸レテ居ラヌ
ヤウニ思ハレルノデアリマス、併ナガラ此
條文カラ見マスルナラバ、「債務關係ノ變更
ヲ命ズル」ト云フ此言葉ノ中ニ、利息ハ固ヨ
リ、期限ノ問題、元本ノ問題モ含ンデ居ル
モノト解スルコトハ決シテムヅカシクナイ
ノデアリマスカラ、又是ハ含ムベキ問題
デアルカラ、私ハ强イテ井上君ノ心配サ
レル迄モナイコトヽ思フノデアリマス、
卽チ、一時世界大戰以後ノ好景氣時代ニ物
ノ値段ガ上ッテ、金ノ値打ト云フモノガ下ッ
タ當時ニ於ケル金額ト、物ノ値ヲ下ゲラレ
テ金ノ値打ヲ上ゲラレタル今日トニ於ケル
所ノ金錢ニ對スル價格、所謂金錢價値カラ
見マシテモ、斯ウ云フ調停法ガアッテ、玆
ニ公平ナル雙方ノ亙讓ニ依テ債務ヲ片付ケ
ルト云フコトハ是ハ寔ニ現在ノ窮追セル
時局ニ於テハ最モ私ハ大切ナルコトト思フ
ノデアリマス(拍手)
而シテ其第八條ノ第二項ノ「機構」ト云フ
言葉ト「存續」ト云フ言葉デアリマス、此第
二項ノ「銀行其ノ他官廳ノ監督ヲ受ケテ金
融業務ヲ取扱フ者ノ債權ニ付テハ其ノ業務
ノ存續ヲ害スル虞アルトキハ前項ノ裁判ヲ
爲スコトヲ得ズ」ト云フ、所謂銀行ヤトカ信
託會社トカ云フモノヲ除外シタ規定ハ純理
ヲ貫クナラバ私一個人ノ意見トスレバコ
ンナ條項ハ取去ルノガ當然デアルト思フ、
何故ナラバ小額債權者卽チ個人タル小額債
權者ハ、債務者カラノ申立ニ依テ調停ニ應
ジナケレバナラヌ、而モ資本ノ集團デアル
所ノ銀行デアルトカ、信託デアルト云フヤ
ウナ大キナ會社ハ、此調停法ノ適用ヲ受ケ
ナイデ、洒蛙々々トシテ居ラレルト云フコ
トハ、是ハ現在ノ國民思想カラ言ヒマシテ
モ、大衆ヲ苦メナガラ而シテ資本家ヲ擁護
スルト云フコトニナルノデアルカラ、是ハ
私ハ當然除クベキ問題デアルト思ヒマシタ
ケレドモ、色々ノ意見ガゴザイマシタ結果
「機構」ト云フ言糞ヲ「存續」トシヨウト云フ
コトニ落著イタノデアリマス、所謂「機構」
ト云フ言葉ハ政府內ノ新シイ人ガ、近來頻
ニ翻譯語トシテ使ハレル言葉ヲ「ハイカラ」
式ニ使ハレタノデアラウケレドモ「機構」ト
云フ言葉ハ極メテ「デリケート」ナ意味ヲ
持ッテ居ル卽チ「デリケート」ナ意味ヲ
持ッテ居ルト云フコトハ、人ノ解釋ニ依テ
本體ガ色々ニ變ルト云フコトニナリマス、
苟モ一般大衆ノ基準トナルベキ法律ヲ、所
謂文學、藝術ナラバ別デアルガ、斯ウ云フ
ヤウナ妙ナ言葉ヲ使フト云フコトハ宜シク
ナイ意味ヲ曖昧ニスル、ソコデ「存續ヲ害ス
ル虞」卽チ斯ウ云フ場合ニ銀行ガ之ヲヤレ
バ、非常ナル銀行ノ存否ニ影響シテ來ル、
存續ニ影響シテ來ルト云フ場合ニハ此調
停法ヲ適用シナイト云フコトガ、是ガ國家
社會、一般財界ノ爲ニ必要デアルナラバ、
是ハ國家社會ノ爲ニ個人ノ利益ヲ蹂躙シナ
ケレバナラヌ、卽チ國家ハ國家自身ノ存立ノ
爲ニ個人ノ權利ト云フモノヲ最小限度ニ侵
害スルト云フコトハ、是ハ已ムヲ得ナイコ
トデアルカラ、此場合ニハ小ノ虫ヲ殺シテ
大ノ虫ヲ活カスト云フコトニスルコトガ、
現在ノ社會ノ機構トシテハ當然デアラウト
云フコトデ、吾々ハ斯ウ云フ修正案ヲ出シ
タノデアリマス
以上述べマシタ所ニ依リマシテ、大體私
ガ此委員長報告ノ修正案ガ、最モ現在ノ日
本ノ狀況ニ卽スルモノデアルト云フコト
ハ、御贊同下サルコトヽ思ヒマスルガ、先
程一松君ガ言ハレタヤウニ、斯ウ云フ場合ニ
九十万圓百万圓ト云フ大金ヲ此法律ノ實施
ニ使フノハドウカ、失業救濟ヲヤッタ方ガ
宜イデハナイカト云フヤウナ意味ノコトヲ
言ハレタヤウニ思フガ、如何ニ私ハ同君ガ
認識不足ノ頭ヲ以テ······本日此窮迫セル一
般大衆ガ非常ナル負債ノ重荷ヲ背ウテ、喘
ギ々々餓死線上ヲ彷徨シテ居ルト云フ今日
ニ對セラレルコトヲ遺憾ニ思フ、タッタ九十
万ノ金ヲ以テ、民衆ノ此苦痛ノ一部デモ緩
和出來ルナラバ、此百万圓ハ千万圓、一億、
二億ニモ當ルデハアリマセヌカ、斯ウ云フ
認識不足ノ頭ヲ以テ、今日ノ我ガ國內ニ於
ケル所ノ農村民諸君、殊ニ一松君ノ膝元デ
アル所ノ、大阪ノ中小商工業者諸君ニ對セ
ラレルナラバ如何デアラウ、私ハ國民ハ決
シテ之ヲ許スマイト思フ(拍手)私ハモット
進ンダ負信整理ヲ爲スベキデアル、寧ロ借
金棒引マデモ行ッテ宜イト云フ位ノ考ヲ持
テ居ルノデアリマスケレドモ、島田君ノ言
ハレルヤウニ之ヲ直チニ行ハウト云フコト
ハ、如何ニモ急激ニ經濟機構ヲ害スコトニ
ナリマスカラ、甚ダ是デモマダ不十分デア
ルケレドモ、今日ハ是デ行クヨリ致方ガナ
イノデ、之ニ贊成シタ所以デアリマス
而モ裁判所ニ於テハ非常ニ事件ガ殖エル
カラ到底九十万圓デハヤッテ行ケナイト云
フ點ニ、非常ナ憂ヲ持ッテ居ラレルヤウデ
アリマスルガ、假令金額ガ無制限ニナリマ
シテモ、先程申シマシタヤウニ、小作ニ關
スル問題、借地借家ニ關スル問題、商事調
停ニ關スル問題、此種ノ事件、卽チ今日裁
判所デ扱シテ居ル事件ガ此調停法ノ中ニ流
込ンデ來ル、而モ先程一松君ノ述べラレタ
大正十五年カラ何年カニ△口計五万七千幾ラ
ト言ハレマシタガ、是等ノ事件モ調停法ノ
中ニ流込ムカラ、ソレダケ減ルニ違ヒナ
イ、ソレハ固ヨリ全部流込ムトハ言ヘマセ
又、殖エテハ來ルデセウ、此調停法ノ事件
ヲ合シテ總事件數ハ殖エテ來ルデアリマセ
ウケレドモ、ソンナニ五百何十万圓ト云フ
大豫算ヲ以テヤラナクトモ立派ニ出來ル
コトヲ私ハ斷言致シマス、若シ費用ガ足ラナ
ケレバ豫備金ノ支出ヲシ、又ハ次ノ議會ニ
追加豫算ヲ出セバ宜イデハアリマセヌカ
諸君、國家ノ非常時ニ當ッテハ獨逸ノ如キ
ハ憲法デサヘ停止シテ居ル、况ヤ是ガ實體
法ニ觸レルカラ區裁判所ノ判事ニヤラシテ
ハナラヌトカ、管轄ガ如何デアルトカ、此
非常時ニ斯ウ云フ考ヲ持ッテ居ラレルニ至ッ
テハ全ク考ノ基調ガ私共トハ違ノテ居ル、
現ニ借地借家ノ調停手續法ニ於キマシテ
モ、金額ニ制限ナク、區裁判所判事ガ取扱"
テ居リマスカラ、本法ニ金額ノ無制限ヲ認
メルノハ決シテ權衡ヲ失スルモノデハアリ
マセヌ
之ヲ要スルニ一松君ノ言ハレタ點ニハ
意ヲ止メテ之ヲ駁論スルダケノ理論上ノ價
値ヲ見出シ得ナカッタコトヲ同君ノ爲ニ悲
ムノデアリマス(拍手)井上君ハ是カラ意見
ヲ述ベラレマセウケレドモ、國民同盟ト云
フヤウナ政界ニ向ッテ新シキ氣運ヲ以テ立
タレタ所ノ政黨ガ、何故ニ理論ト實際ニ適
スル吾々ノ意見ニ贊同セラレナイノカヲ私
ハ同黨ノ爲ニ甚ダ遺憾ニ思ハザルヲ得ナイ
ノデアリマス(拍手)何卒諸君ガ虛心坦懷ニ
私ノ述ブル所ヲ御理解下サレマシテ、此難
局ニ當リ、奮テ御贊同アランコトヲ切ニ御
願致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313242X00919320901&spkNum=95
-
096・秋田清
○議長(秋田〓君) 井上剛一君
〔井上剛一君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313242X00919320901&spkNum=96
-
097・井上剛一
○井上剛一君 私ハ本案ニ對シマシテ修正
意見ヲ提出致スモノデアリマス、其辯明ヲ
致シマスニ先チマシテ修正ノ箇所ダケヲ簡
單ニ申上ゲマス(「簡單々々」)御要求ナクト
モ私ハ極メテ直截簡明ニ皆サンノ頭ニ深刻
二人ッテ戴ケルヤウニ申上ゲル覺悟デアリ
マス
第二條第一項中「但シ」以下ヲ削除致スモ
ノデアリマス、是ハ政友會モヤハリ其御意
向ノヤウデアリマス、同條ノ第三項中ニ「裁
判所調停ヲ爲スヲ相當ト認メ且相手方ニ異
議ナキトキハ」トアリマスノヲ、我ガ同盟ハ
「裁判所ハ相手方ノ意見ヲ聽キ調停ヲ爲ス
ヲ相當ト認ムルトキハ」ト修正致スモノデ
アリマス、而シテ「第四條」ヨリ「第六條乃
至第二十三條」トアル、其六條ノ下ニ「第八
條」ヲ加ヘルノデアリマス、第五條ヲ新設致
シマシテ、是ハ代理關係デアリマスガ、「當
事者及利害關係人ハ辯護士ニ代理ヲ委任シ
タル場合ヲ除クノ外自身出頭スルコトヲ要
ス但シ已ムコトヲ得ザル事由アル場合ニ於
テハ裁判所ノ許可ヲ受ケ代理人ヲシテ出頭
セシムルコトヲ得」ト第五條ヲ新設致スノ
デアリマス、隨テ原案ノ第五條ヲ第六條ト
シテ、以下順次此條項ヲ繰下ゲルノデアリ
マく、尙ホ原案ノ第七條第一項中ニ「利息、
期限其ノ他債務關係ノ變更ヲ命ズル」ト云
フ其上ノ「利息、期限其ノ他」ト云フ七文字
ヲ削除致スノデアリマス、是ハ矢張政友會ノ
修正案ト同一デ「存續」ト修正致スノデアリ
マス、尙ホ原案ノ第五條中ニ「第七條第二
項」トアリマスノヲ「第八條第二項」第六條
第九條第十條中ノ「第七條」トアリマスノハ
何レモ「第八條」ト修正致スノデアリマス
是カラ私ノ說明ガ簡單デアリマスカラ暫
ク御〓聽ヲ願ヒタイ、第一一條中ノ「小作料其
ノ他小作關係ヨリ生ジタルモノ及地代、家
賃其ノ他借地借家關係ヨリ生ジタルモノニ
付テハ此ノ限ニ在ラズ」之ヲ削除致シマシ
タ所以ノモノハ色々此問題ニ付テハ議論
モアリマス、或ハ小作料トカ、借地借家料
トカ云フヤウナコトデアルト、內容ガ頗ル
複雜シテ居ッテ、到底調停ニ適セナイカラ
ヤハリ是ハ除外例ニ存置シテ置イタ方ガ宜
イト云フ議論モアルヤウデアリマスガ、吾
吾ノ見ル所ニ依リマスト、若シ其調停ヲ求
メル內容ガ複雜シテ居ルモノデアレバ、第
五條ニ於キマシテ「事件ガ性質上調停ヲ爲
スニ適セズ又ハ當事者不當ノ目的ヲ以テ濫
ニ調停ノ申立ヲ爲シタリト認ムルトキハ裁
判所ハ決定ヲ以テ調停ノ申立ヲ却下ス」ト
云フ儼トシテ玆ニ一ツノ殆ド制裁條項トモ
謂フベキ規定ガ存シテ居ル、此規定ヲ適用
スルナラバ如何ニ地代金或ハ家賃其他小
作料等ノ調停ヲ求メル其內容ガ複雜シテ
居ッタト雖モ、直チニ却下スルコトガ出來ル
ノデアル、其他極ク簡單ニ協調ノ出來ルモ
ノデアリマスルナラバ其申立ヲ容レテヤ
ルコトガ、最モ私ハ現在ノ時局ニ卽シタル
所ノ方法デアルト思フノデアル、而モ商事
調停ニ關シテハ是ハ除イテ居ル、唯借地借
家法ニ關スル、或ハ小作調停法ニ關スル分
ダケヲ除ク理由ハ那邊ニアルカ、私ハ殆ド
其立法ノ根據ヲ疑ハザルヲ得ヌ、故ニ私ハ
之ヲ削除スルコトガ最モ妥當ニシテ、而モ
現在ノ非常時ニ於テハ最モ是等ノ種餘ガ多
イノデハアルマイカ之ヲ此法律ニ於テ救
濟シテヤルデナケレバ、此法律ハ御承知ノ
通リ只今私ガ修正致タシマシタ第七條ノ第
一項ノ末項ニ「債務關係ノ變更ヲ命ズル」所
ノ裁判モ出來ル、所ガ借地借家調停法、處理
法、竝小作調停法ニ於テハ、債務關係ノ變更
ヲ命ズル所ノ裁判ヲスルコトガ出來ナイ、
然ラバ現在ノ時局ニ於テ是等ノ自由裁量ヲ
得ベキ制度ノ下ニ調停ヲ致シテ貰フト云フ
コトガ、當事者ガ如何ニ利益ヲ其間ニ受ケ
ルコトガ出來ルカト云フコトハ、多言ヲ要
スルマデモナイト私ハ思フノデアリマス、
故ニ此但書ヲ削除致シマシタ點ハ、先ヅ此
位ノ程度ニ止メ置キマス
而シテ吾々ガ此千圓ノ原案ヲ認メマシタ
所以ノモノハ先刻一松君ヨリ議場ニ御報
告ニナリマシタガ、私モヤハリ大正十五年
以後五箇年ノ一千圓以上ノ地方裁判所ニ繫
屬スル所ノ件數ノ調査ヲ致シタノデアリマ
ス、是等ヲ見マスルト、假ニ其事件ノ平均
額ノ三分ノ一ガ此調停ニ加ハルモノト致シ
マスルナラバ、昨日本院ヲ通過致シマシタ
豫算ハ九十五万圓、サウシテ其內容ハ裁判
所判事ガ百十五名、書記ガ四百六十六名ノ
增員デアリマシテ、是等ノ非常ニ增加スベ
キ調停案件、之ヲ目前ニ見ルナラバ此豫
算デハ到底圓滿ナル調停ヲスルコトガ出來
ナイ、是等ヲ參酌致シマシテ千圓ヲ認メタ
イノデアリマスガ併シ千圓デハ私共ハ滿
足ハ出來ナイ、是ニ於テカ同條ノ第三項ハ
「第一項ノ金額ヲ超加スル債務ニ付調停ノ
申立アリタル場合ト雖モ」原案ハ「裁判所調
停ヲ爲スヲ相當ト認メ且相手方ニ異議ナキ
トキ」ニ於テノミ調停ガ千圓以上ハ出來ル
ノデアル(拍手)故ニ吾々ハ相手方ノ意見ヲ
聽イテ、サウシテ裁判所ノ自由裁量ノ下ニ
是ガ調停ヲ相當ト認ムル場合ニ於テハ、ソ
レヲ受理スルト云フコトニ依テ大ニ緩和ス
ルコトガ出來ヤウト、斯樣ニ確信致スモノ
デアリマス(「モウ分ッタ」ト呼フ者アリ)簡
單ニヤル積リデアリマスガ、訥辯デアリマ
スカラ、暫ラク御辛抱ヲ願ヒマス-而シ
テ現在ノ農漁山村、中小商工業者、マダソ
レバカリデハアリマセヌガ、一口ニ言ヘバ
中產階級以下ノ者ヲ救フト云フ上ニ於テ、
私ハドウシテモ此除外例ヲ設クルノ必要ガ
アル、是レ卽チ私共ガ相手方ノ意見ヲ聽イ
テ、裁判所ガ必要ト認メタル場合ニ於テハ、
之ヲ採用スルト云フコトニスルコトガ最モ
妥當ナリト信ジテ居ル者デアリマス
而シテ其次ハ代理關係デアリマスガ、是
ハ私ハ多ク申ス必要ハナイ、故ニ之ヲ省略
致シマスルガ、兎ニ角調停ノ目的ヲ達成セ
シムル方法トシテ、最善ノ方法ヲ選ンダノ
ガ、ヤハリ政友會ノ主張ト同ジヤウデアリ
やく、少シ文句ガ違ッテ居ルヤウニ思ヒマ
スガ、兎ニ角其調停ノ目的ヲ達成スル上ニ於
テ、最モ適當ナル方法トシテハ、辯護士ヲ
シテ許可制度ニ依ラザル代理權ヲ認メタ所
以デアリマス、ソレカラ第七條第一項ノ「利
息、期限其ノ他」ノ文字ヲ削リマシタノハ
此法文ニ依レバ「其ノ他債務關係ノ變更ヲ命
ズル裁判ヲ爲スコトヲ得」ト云フノデアリ
マスカラ、利息モ、期限モ、利益モヤハリ債
務關係トシテ、是ハ駄文蛇足デアルト存ジ
テ之ヲ削除シタノデアリマス、而シテ第七
條第二項ノ「業務ノ機構」是ハ委員長報告ノ
說明ヲ援用致シマシテ、私ハ之ヲ省略スル
コトニ致シマス、
以上ノ理由ニ依リマシテ、我ガ同盟ノ修
正案ハ最モ穩健ニ致シマシテ、而シテ國民
全體ガ大ニ歡迎スベキ修正案ナリト信ズル
ノデアリマス(拍手)滿場諸君ニ於カセラレ
マシテモ、何卒御贊成アランコトヲ切ニ御
願致シマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313242X00919320901&spkNum=97
-
098・秋田清
○議長(秋田〓君) 討論ハ終局致シマシ
タ、採決ニ付キ一言致シマス、委員長報告
ト、一松定吉君提出ノ修正案、及井上剛一君
提出ノ修正案トノ間ニハ共通ノ點モアリ
マスガ、便宜上各案ヲ各、不可分ノモノトシ
テ、各別ニ採決致シマス-採決ニ入リマ
ス、井上君提出ノ修正案ニ贊成ノ諸君ノ起
立ヲ求メマス
〔贊成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313242X00919320901&spkNum=98
-
099・秋田清
○議長(秋田〓君) 起立少數、井上君提出
ノ修正案ハ否決セラレマシタ、次ニ一松君
提出ノ修正案ニ贊成ノ諸君ノ起立ヲ求メマ
ス
〔贊成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313242X00919320901&spkNum=99
-
100・秋田清
○議長(秋田〓君) 起立少數、一松君提出
ノ修正案ハ否決セラレマシタ、次ニ委員長
報告中、修正ノ部分ニ贊成ノ諸君ノ起立ヲ
求メマス
〔贊成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313242X00919320901&spkNum=100
-
101・秋田清
○議長(秋田〓君) 起立多數、委員長報告
中ノ修正ノ點ハ可決サレマシタ、其他ノ部
分ハ原案ノ通リ御異議アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313242X00919320901&spkNum=101
-
102・秋田清
○議長(秋田〓君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ其他ノ部分ハ原案ノ通リ決シマシ
タ-是ニテ本案ノ第二讀會ハ全部終了致
シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313242X00919320901&spkNum=102
-
103・上田孝吉
○上田孝吉君 直チニ本案ノ第三讀會ヲ開
カレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313242X00919320901&spkNum=103
-
104・秋田清
○議長(秋田〓君) 上田君ノ動議ニ御異議
アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313242X00919320901&spkNum=104
-
105・秋田清
○議長(秋田〓君) 御異議ナシト認メマ
ス、直チニ本案ノ第三讀會ヲ開キ、議案全
部ヲ議題ニ致シマス
金錢債務臨時調停法案第三讀會
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313242X00919320901&spkNum=105
-
106・秋田清
○議長(秋田〓君) 別ニ御發議モアリマセ
又、仍テ本案ハ第二讀會議決ノ通リ可決確
定致シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313242X00919320901&spkNum=106
-
107・上田孝吉
○上田孝吉君 議事日程變更ノ緊急動議ヲ
提出致シマス、卽チ此際政府提出、農村負
債整理組合法案ヲ議題ト爲シ、委員長ノ報
告ヲ求メ、其審議ヲ進メラレンコトヲ望ミ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313242X00919320901&spkNum=107
-
108・秋田清
○議長(秋田〓君) 上田君ノ動議ニ御異議
アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313242X00919320901&spkNum=108
-
109・秋田清
○議長(秋田〓君) 御異議ナシト認メマ
ス仍テ日程ハ變更セラレマシタ政府提
出、農村負債整理組合法案ノ第一讀會ノ續
ヲ開キマス、委員長ノ報告ヲ求メマス-
委員長大口喜六君
農村負債整理組合法案(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報〓)
報〓書
一農村負債整理組合法案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ表題ヲ「負債整理組合法案」
ニ改メ別紙ノ通修正スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和七年九月一日
委員長大口喜六
衆議院議長秋田〓殿
(小字及-ハ委員會修正)
農村負債整理組合法
第一章負債整理組合
第一條負債整理組合ハ隣保共助ニ依リ
組合員タル農業者、漁業者又ハ林業者
ノ負債ヲ整理シ其ノ經濟ノ更生ヲ圖ル
ヲ以テ目的トス
前項ノ負債ハ私法上ノ金錢債務ニシテ
組合設立前ニ生ジタルモノニ限ル
第二條負債整理組合ハ其ノ目的ヲ達ス
ル爲左ノ事業ヲ行フ
一組合員ノ負債償還計畫及經濟更生
計畫ノ樹立
二組合員タル債務者及其ノ債權者間
ニ於ケル負債ノ金額、利率、償還期
限、償還方法其ノ他ノ條件ノ緩和ニ
關スル協定ノ斡旋
三組合員ニ對スル負債整理資金ノ貸
付
四前各號ニ揭グルモノノ外組合員ノ
負債整理ニ必要ナル事業
前項第二號ノ斡旋ニ依リ協定成ラザル
トキハ負債整理組合ハ命令ノ定ムル所
ニ依リ市町村負債整理委員會ニ對シ其
ノ協定ノ斡旋ヲ請求スルコトヲ得前項
ノ事業ヲ行フ信用組合及命令ヲ以テ定
ムル法人ニ付亦同ジ
市町村負債整理委員會ノ組織、權限其
ノ他必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定
ム
第三條組合員ガ負債整理ノ爲其ノ所有地ヲ
處分スル場合ニ於テ組合員タル小作人其ノ
他ノ者ガ其ノ土地ヲ購入セントスルトキハ
負債整理組合ハ土地購入資金ノ貸付ヲ爲ス
コトヲ得
四
要臣負債整理組合ハ法人トス
五
第四條負債整理組合ハ一定ノ地區內ニ
居住スル者ヲ以テ之ヲ組織ス
前項ノ地區ハ部落其ノ他之ニ準ズル區
域ニ依ル但シ特別ノ事由アルトキハ町
村ノ區域ニ依ルコトヲ得
第六條出資一口ノ金額ハ金十圓トス
組合員ハ負債整理組合ヨリ借入ルル金額ノ
二十分ノ一以上ノ出資ヲ爲シ借入ノトキ其
ノ全額ヲ拂込ムモノトス但シ十圓未滿ノ端
數ハ之ヲ切上グ
七
製作所負債整理組合ヲ設立セントスル
トキハ設立者ハ命令ノ定ムル所ニ依リ
地方長官ニ設立ノ認可ヲ申請スベシ
前項ノ認可申請ヲ爲スコトヲ得ル期間
ハ本法施行ノ日ヨリ三年間トス
八負債整理組合設立申請書ニハ組合
第六條負債整理組合設立登記ノ申請書
原簿ヲ添附スベシ
ニハ各組合員ノ氏名及住所ヲ記載シタ
ル組合員名簿ヲ添附スベシ
組合員ノ加入ニ因ル變更登記ノ申請書ニハ
組合員ノ加入ニ因ル變更登記ノ申〓書
無限責任ノ組合ニ在リテハ加入者ノ氏名住
ニハ加入者ノ氏名及住所ヲ記裁シタル
所ヲ、保證責任ノ組合ニ在リテハ加入者ノ
組合員名簿ヲ添附スベシ
氏名住所及保證金額ヲ記載シタル組合原簿
ヲ添附スベシ
產業組合法第十六條ノ四第一項、第十六條
產業組合法第十六條ノ四第項第十
ノ五及第十六條ノ六第一項ノ規定ハ組合原
六條ノ五第二項及第三項竝ニ第十六條
簿ニ之ヲ準用ス但シ第十六條ノ四第一項及
ノ六第一項ノ規定ハ組合員名簿ニ之ヲ準
第十六條ノ六第一項ノ規定ニ依リ第十六條
用ス但シ第十六條ノ四第一項及第十六
ノ三ノ規定中地方長官トアルハ事務所所在
條ノ六第一項ノ規定ニ依リ準用セラルル
地ノ登記所トス
第十六條ノ三ノ規定中地方長官トアルハ
事務所所在地ノ登記所トス
九
第一章負債整理組合ハ規約ノ定ムル所
ニ依リ其ノ組合員ヲシテ組合ノ負債償
還ノ一部ニ充ツル爲積立金ヲ醵出セシ
ムルコトヲ得
前項ノ積立金ノ管理、處分其ノ他必要
ナル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
負債整理組合ノ組織ハ無限責任及
保證責任ノ二種トス
十無限責任組合ニ在リテハ
(鬼打)負債整理組合其ノ組合財產ヲ以
其ノ
テ。債務ヲ完濟スルコト能ハザル場合
ニ於テハ負債整理組合ノ組合員ノ全員
ガシ保證責任組合
、連帶無限ノ責任ヲ負擔ス
ニ在リテハ組合財產ヲ以テ其ノ債務ヲ完濟
スルコト能ハザル場合ニ於テ組合員ノ全員
ガ出資額ノ外一定ノ金額(保證金額)ヲ限度
トシテ責任ヲ負擔ス
十一
第九條負債整理組合ノ組合員ハ命令ニ
別段ノ規定アル場合ヲ除クノ外總組合
員ノ三分ノ二以上ノ同意アルニ非ザレ
バ脫退スルコトヲ得ズ
脫退シタル組合員ハ脫退前ニ生ジタル
〓第二項
組合ノ債務ニ付前條。ノ規定ニ依ル責
任ヲ負擔ス
十二
第十條負債整理組合ニ加入シタル組合
員ハ其ノ加入前ニ生ジタル組合ノ債務
第十條第二項
ニ付テモ亦第八條ノ規定ニ依ル責任ヲ
負擔ス
十三產業組合法第三條、第四條、第六
第十一條蠶絲業組合法第二十條第二
條、第七條、第九條第一項(第七號中剩餘金
十一條、第二十三條乃至第一一十六條及
處分ニ關スル規定ヲ除ク)、第十二條乃至第
第四十一條竝ニ產業組合法第六條、第
十五條、第十七條第一項、第十八條乃至第二
三十九條第三項、第川十九條、第六十
十一條、第二十三條乃至第三十八條、第三十
條第一項、第六十一條、第六十五條
九條乃至第四十二條、第四十八條、第四十九
第九十三條ノ二第五號及第九十四條ノ
條、第五十三條、第五十六條、第五十七條、第
規定ハ負債整理組合ニ之ヲ準用ス但シ
六十條乃至第六十二條(第六十二條第一項
產業組合法第六十條第一項及第六十一
第三號ヲ除ク)、第六十五條、第六十八條乃至
條中〓算ニ關スル規定ハ比ノ限ニ在ラ
第七十三條、第七十四條乃至第七十五條、第
ズ
九十三條ノ二及第九十四條、民法第四十五
條、第四十六條第二項、第四十七條、第四十八
條、第七十五條乃至第七十七條、第八十二條
及第八十三條、蠶絲業組合法第二十五條竝
ニ非訟事件手續法第三十五條、第三十六條、
第三十七條ノ二、第百十七條、第百十九條乃
至第百二十二條、第百三十六條乃至第百三
十八條、第百四十二條、第百四十三條、第百四
十七條乃至第百五十七條及第百七十五條乃
至第百七十七條ノ規定ハ負債整理組合ニ之
ヲ準用ス但シ產業組合法第九十三條ノ二第
一號中屆出トアルハ登記トシ第六十條及第
六十一條中精算ニ關スル規定ハ之ヲ準用セ
ザルモノトシ民法第四十五條第三項、第四
十六條第二項、第四十八條及第七十七條中
一週間トアルハ二週間トス
第十四條負債整理組合ト組合員トノ間ニ於
ケル住宅又ハ土地ノ所有權ノ移轉ニ關シテ
ハ地方稅ヲ課スルヲ得ズ
十五
第十二條負債整理組合ノ理事又ハ監事
何等ノ名義ヲ以テスルヲ問ハズ組合ノ
事業ノ範圍外ニ於テ貸付ヲ爲シ又ハ投
機取引ノ爲ニ組合財產ヲ處分シタルト
キハ一年以下ノ懲役若ハ禁錮又ハ千圓
以下ノ罰金ニ處ス
前項ノ規定ハ刑法ニ正條アル場合ニハ
之ヲ適用セズ
第二章負債整理組合中央金庫
第十六條負債整理組合中央金庫ハ法人トシ
其ノ主タル事務所ヲ東京市ニ置ク
負債整理組合中央金庫ハ從タル事務所ヲ置
クコトヲ得
第十七條負債整理組合中央金庫ノ組織ハ保
證責任トス
負債整理組合中央金庫ノ財產ヲ以テ其ノ債
務ヲ完濟スルコト能ハザル場合ニ於テハ組
合員ノ全員ハ其ノ出資額ノ外出資額ト同額
ノ金額ヲ限度トシテ責任ヲ負擔ス但シ政府
ノ責任ハ出資ニ止マルモノトス
第十八條負債整理組合中央金庫ノ業務左ノ
如シ
-負債整理組合ノ助成
二負債整理組合ニ對シ負債整理資金ノ調
達融通ヲ爲スコト
三命令ノ定ムル所ニ依リ負債整理事業ヲ
行フ法人ニ對シ負債整理資金ノ調達融通
ヲ爲スコト
四負債整理組合ノ預リ金ヲ爲スコト
第十九條負債整理組合中央金庫ノ出資一口
ノ金額ハ金百圓トス
第二十條政府ハ負債整理組合中央金庫ノ出
資三十萬口ヲ持チ設立當時ニ於テ出資額ノ
三分ノ一ヲ拂込ミ爾後每年三分ノ一宛ヲ拂
込ムモノトス
政府ハ公債ヲ交付シテ出資ノ拂込ニ代フル
コトヲ得此ノ場合ニ於テハ設立當時ニ出資
額ノ全額ニ相當スル額面ノ公債ヲ交付スル
モノトス
政府ハ前項ノ公債ヲ交付スル爲必要ナル公
債ヲ發行スルコトヲ得
第二十一條負債整理組合ハ負債整理組合中
央金庫ニ加入シ出資スルコトヲ要ス
第十八條第三號ノ法人ハ負債整理組合中央
金庫ニ加入シ出資スルコトヲ得
第二十二條負債整理組合ノ出資ハ負債整理
組合ガ負債整理中央金庫ヨリ借入ルル整理
資金ノ二十分ノ一以上トシ出資ノ金額ヲ借
入レト同時ニ拂込ムモノトス但シ百圓未滿
ノ端數ハ之ヲ切上ク
第二十三條負債整理組合中央金庫ハ政府ノ
出資ニ對シテハ剰餘金ノ配當ヲ要セス
第二十四條負債整理組合中央金庫ハ出資拂
込濟額ノ二十倍ヲ限リ整理債劵又ハ割增整
理債劵ノ發行ヲ爲スコトヲ得
整理債劵及割增附整理債劵ハ劵面額五圓以
上トシ無記名利札附トス
整理債劵及割增附整理劵ノ發行ニ關シ必要
ナル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
整理債劵及割增整理債劵ニ對シテハ所得稅
及登錄稅ヲ免除ス
第二十五條負債整理組合中央金庫ハ負債整
理組合ニ對シ整理債劵ヲ以テ貸付ヲ爲スコ
トヲ得
第二十六條負債整理組合中央金庫ハ富籤ノ
發行ヲ爲スコトヲ得
富籤ノ發行ニ依ル收得金ハ負債整理組合ニ
利子補給助成金及損失補償トシテ交付シ其
ノ殘額ハ準備金トシテ積立ツルモノトス富
籤ニ關スル規定ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第二十七條負債整理組合中央金庫ニ於テ債
劵又ハ富籤ヲ發行セントスルトキハ主務大
臣ノ認可ヲ受クルコトヲ要ス
第二十八條負債整理組合中央金庫ニハ理事
長一名副理事長一名理事二名以上監事二名
以上ヲ置キ主務大臣之ヲ任命ス
第二十九條產業組合中央金庫法第三條、第
七條、第八條第一項、第十條、第十一條第二
項、第十二條、第十六條、第二十一條、第二十
二條、第二十五條乃至第三十二條、第三十四
條及第三十五條ノ規定ハ負債整理組合中央
金庫ニ之ヲ準用ス
附則
第三十條本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ
之ヲ定ム
第三十一條登錄稅法第十九條但書中
「第十四號」ヲ「第十四號乃至第十六號」
ニ改メ同條ニ左ノ二號ヲ加フ
十五北海道府縣、負債整理組合
、負債整理組合中央金庫
。又ハ農村負債整理組合法第二條第
二項ノ信用組合若ハ命令ヲ以テ定ム
ル法人ガ負債整理資金貸付ノ爲ニス
ル抵當權ノ取得ノ登記
十六北海道府縣、負債整理組合
、負債整理組合中央金庫
〓又ハ農村負債整理組合法第二條第
二項ノ信用組合若ハ命令ヲ以テ定ム
ル法人ヨリ負債整理資金ノ貸付ヲ受ケ
タル者ガ其ノ貸付ノ條件ヲ具備セザ
ルニ至リタル場合ニ於ケル北海道府
〓、負債整理組合中央
縣負債整理組合。又ハ農村負債整
金庫
理組合法第二條第二項ノ信用組合若
ハ命令ヲ以テ定ムル法人ノ所有權ノ
取得ノ登記
第三十二條主務大臣ハ負債整理組合中央金
庫設立委員ヲ任命シ設立ニ關スル一切ノ事
務ヲ處理セシムルモノトス
第三十三條設立委員ハ定款ヲ作成シ主務大
臣ノ認可ヲ受クルコトヲ要ス
第三十四條負債整理組合中央金庫ハ政府出
資ノ第一囘拂込アリタルトキ設立シタルモ
ノトス
負債整理組合中央金庫成立シタルトキハ設
立委員ハ其ノ事務ヲ理事長ニ引渡スモノト
ス
附帶決議
政府竝特殊金融機關ノ貸付金ハ低利ノモ
ノト借替ヘシメ且償還年限ヲ延長セシム
ルヲ以テ急務ナリト認ム政府ハ其ノ趣旨
ニ依リ速ニ適切ナル處置ヲ爲スヘシ
〔大口喜六君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313242X00919320901&spkNum=109
-
110・大口喜六
○大口喜六君 政府提出、農村負債整理組
合法案ニ付キマシテ、委員會ノ經過竝ニ結
果ヲ御報〓致シマス、當委員會ハ去ル二十
八日ニ委員長竝ニ理事ノ互選ヲ行ヒマシ
テ、委員長ニ私、理事ニ〓瀨規矩雄君、佐
竹直太郞君、西方利馬君、箸本太吉君、多
田滿長君、岡田喜久治君ノ六君ガ御當選ニ
ナリマシタ、然ルニ本委員會ヘハ本案ノ外
ニ秦豐助君外二十三名提出ノ負債整理組合
中央金庫法案ガ併託ニ相成ッテ居リマシタ
ガ、極メテ是ガ本案ト密接ナル關係ヲ有シ
マスルモノデアルノデ、此兩案ヲ一括シテ
議題トシタノデアリマス、隨テ勢ヒ此場合
本案ニ關聯シマス點ハ負債整理組合中央
金庫法案ニ關シマシテモ、一通リハ御報〓
致シマスコトガ適當デアルト考ヘルノデア
リマス、併シ質疑應答ハ極メテ多岐ニ亙シ
テ居リマスノデ、其中ニ付キマシテ特ニ重
要ナリト考ヘマスル數點ニ付キマシテノミ
御報告スル考デアリマス
先ツ政府提出ノ農村負債整理組合法案ニ
付テ申シマスガ、此法案ニ付キマシテ殆ド
質問者全部カラ痛烈ニ繰返サレマシタノ
ハ所要資金ノ額ト其供給方法トデアリマ
シタ、然ルニ政府ハソレニ對シマシテ、所
要資金ノ額ガ幾ラニナルカ其見積リハ付イ
テ居リマセヌ、隨テ必要ヲ認ムレバ、出來
ルダケ預金部カラ低利資金ヲ出シタイト云
フ考デ居ルノデアリマスト答ヘラレテ居リ
マス、然ラバ立派ナ組合ガ出來テ資金ガ必
要デアルト云フトキニ、政府ノ低利資金ガ
之ニ應ジ切レナイト云フ場合ニハ如何ニス
ル考デアルカト云フ質問ニ對シマシテ、政
府ハ其場合ハ其時ノ狀況デ更ニ考ヘネバナ
ラヌト思ヒマスガ、是ハ一般ノ財界ノ狀況
ナリ、政府ノ財政ノ狀況、預金部ノ狀況、
色々ノモノヲ見合セテ、其時ニ決スベキ問
題デアルト思フノデアリマスト答ヘラレマ
シタ、サウシテサウ云フ場合ハ比較的確實
デアルト認ムル組合ニ對シテ、按分的ニ資
金ヲ出スコトニスルノ外ハナイト云フ意味
ヲモ述ベラレテ居ルノデアリマス、隨テ委員諸
君カラハ斯ル案ヲ提出シナガラ、果シテド
レダケノ組合ガ出來ルカ、ヤッテ見ナケレ
バ分ラナイ、ドレダケノ資金ヲ必要トスル
カ分ラヌト云フコトハ、實ニ不思議千萬デ
アルト云フ意味ノ質問ガ盛ニ起リマシタ
ガ、政府ハ唯前同樣ノ答ヲ繰返ヘサレタノ
デアリマシタ、ソコデ最後ニ大藏大臣ノ出
席ヲ要求致シマシテ、ソレニ對スル答辯ヲ
求メマシタガ、大藏大臣ハドレダケノ資金
ガ要ルト云フヤウナコトニ付テハ、マダ何
モ話ヲ受ケテ居ラヌ、併シ此法案ガ成立ヲ
シテ資金ノ融通ヲ必要トスル場合ハ、出來
得ル限リ預金部カラ利低資金ヲ出スコトハ
話合ノテ居ルト云フ意味ヲ答ヘラレタノデア
リマス、ソレカラ其資金供給ノ方法デアリ
マスガ、ソレニ付テ政府ノ答辯ハ、地方自
治體ニ府縣ヲ通ジテ貸與ヘルト云フノデア
リマシタガ、ソレデハ其都度先以テ府縣會
ノ議決ヲ要スルコトデアルノミナラズ、損
害ノアァタ場合ハヤハリ府縣ガ負ハネバナ
ラヌコトニナルノデアル、隨テ實行上ハ極
メテ困難ガ伴フモノデアルコトハ明確デア
ル、ソレニハドウシテモ金融上ノ中樞機
關、卽チ中央金庫ノヤウナモノガ必要デハ
ナイカト云フ質問ガ、屢〓繰返サレタノデ
アリマス
更ニ農林大臣ハ、此負債整理組合ノ根本
方針ニ關シマシテ、斯ウ云フコトヲ答ヘラ
レテ居リマス、隣保共助ノ精神デ、最寄ノ
者ガ集"テ自分達ノ負債ヲ整理シテ行カウ
ト云フ所ニ、重點ヲ置イテ居リマス、又斯
ウ云フコトヲモ答ヘラレテ居リマス、堅實
ナル組合ノ發達ト云フモノハ、サウ急速ニ
行クモノデハナイ、サウ急速ニ行ッタノデ
ハ本當ニ堅實ナ組合ガ澤山出來ルモノデ
ハナイト、斯ウ述ベラレタノデアリマス、
ソレニ對シマシテ質問者諸君カラハ、此負
債整理ノ問題ハ、第六十二議會ニ於ケル時
局匡救決議中四大項目ノ一ツデアル、隨テ
此非常時ニ方ッテ、時局匡救ノ對策トシテ、
最モ重要ナルモノヽ一ツデアルコトハ申ス
マデモナイ、隣保共助ト云フコトハ固ヨリ
大切ナコトデアルガ、ソレダケデ今日ノ農
村ハ到底救ハレナイコトハ明瞭デアル、ソ
コニ特別ノ施設ガナクテハナラナイト考ヘ
ルト云フ意味ノ意見ガ、盛ニ述べラレタノ
デアリマス
次ニ負債整理組合中央金庫法案ニ付キマ
シテモ申上ゲテ置キタイト考ヘマスガ、ソ
レニ對シマシテ主ニ行ハレマシタ質問應答
ハ富籤發行ノ件デアリマシタ、富籤ヲ發
行スルコトハ所謂善良ナル風俗ヲ害シ、國
民ノ射倖心ヲ咬ルモノデハナイカト云フ質
問モアリマシタガ、提出者ヨリハ富籤モ方
法ニ依リマシテハ決シテソレ程ニ恐ルベキ
モノデハナイ、現ニ行ハレテ居ル馬劵ナド
ニ較ベレバ寧ロ此法案デ考ヘテ居ル所ハ弊
害ノ少イモノデアル、之ヲ諸外國ニ見テモ
斯ル例ハ少クナイ、殊ニ非常ノ時局ニ方ッ
テソレヲ匡救スル爲ノ一方法デアリトスレ
バ、決ノテ排斥スベキモノデハナイト云フ
意味ヲ敷衍サレタノデアリマス、ソレニ對
シマシテハ更ニ他ニ適當ナ方法ガアッテモ、
尙ホ且ツ富籤ノ發行ヲ固執セラルヽカト
云フ意味ノ質問ガアリマシタガ、提出者ハ
ソレニ對シマシテ、此負債整理組合ノ目的
ヲ貫徹スル爲ニハ、ドウシテモ組合ニ對シ
テ利子ノ補給竝ニ其損失補償トシテ、或ル
程度ノ補助ヲ與ヘネバナラヌ、其財源トシ
テ他ニ方法ガナイト認メルカラ、此方法ヲ
擇ブニ至ッタノデアル、幸ニ政府ガ利子補
給ナリ、損失補償ナリヲスルト云フコトニナ
レバ敢テ富籤ヲ行ハネバナラヌト云フモ
ノデハナイトノ意見ヲ答ヘラレテ居リマ
ス、ソレニ付キマシテ司法大臣ノ出席ヲ要
求致シマシテ、政府ノ所見ヲ尋ネマシタガ、
司法大臣ハ最初富籤ノ發行ニハ同意ガ出來
兼ネル旨ヲ答ヘラレマシタ、サウシテ後ニ
ハ考慮セヌデモナイヤウニ言ハレマシタ
ガ、ソレニ對シマシテ或ル委員ヨリ第六十
二議會ニ於キマシテ、同ジ負債整理組合法
案ノ委員會ニ於テ、木村刑事局長ガ答辯サ
レマシタ事實ヲ引用シテ、再ビ司法大臣ノ
意見ヲ確メラレマシタ、其結果司法大臣ハ
一應其時ノ事實ヲ調査セラレマシタ上デ、
前ニ申シマシタ木村刑事局長ノ答辯、卽チ
斯ウ云フ事デアリマス「籤札附ノ公債ノ發
行ト致シマスレバ、司法省限リノ考ト致シ
マシテハ、旣ニ前例モアルコトデアリマス
カラ別ニ異議ヲ持チマセヌ、ソレカラ籤札
ノ發賣ニ付キマシテモ、目的ノ方カラ考ヘ
テ見、又現在ノ非常時ニ鑑ミマシテ、或ル
一定ノ期間ニ限リマシテ籤札ヲ出スト云フ
コトニ付テハ、先ヅ原則トシテハ司法省デ
ハ別段異議ハアリマセヌ」(拍手)「唯其內容
ヲドウ云フ風ニスルカ、一口幾ラニスルカ、
或ハ其當リ籖ノ步合ヲドノ位ニスルカ、尙
ホ當リ籖ノ額ヲドノ程度ニ決メテ行クカト
云フ點ニ付テハ、司法省トシテハマダ定ッ
タ〓究ヲシテ居リマセヌ、此法案ニ依リマ
スレバ、何レソレ等ノ事情ハ勅令ヲ以テ御
定メニナルヤウデアルカラ、能ク其事情ヲ
承ッタ上デナケネバ、今積極的ノ意見ハ述
ベラレヌト思ヒマス」ト、木村刑事局長ノ
述べラレマシタ此答辯ノ全部ヲ司法大臣ハ
承認サレタノデアリマス(拍手)是ハ御參考
ニナラウト考ヘマシテ此場合申述べマス
以上申述ベマシタ所ハ質疑應答中ノ一部
分デアリマスガ、質疑ハ昨日ヲ以テ終了ト
相成リマシテ、本日愈。討議ニ入ッタノデ
アリマス、討議ニ於キマシテ政友會ノ助川
啓四郞君、民政黨ノ高橋守平君、國民同盟
ノ後藤亮一君、此三君ヨリ各、修正意見ガ
提出ニナリマシタ、是ハ何レモ法文ノ各條
項ニ亙ルモノデアリマシテ、頗ル複雜ニナッ
テ居リマス、隨テ茲ニ一々ソレヲ申述プル
コトヲ省キマスガ、其〓要ヲ申述べマスト、
助川君ノ案ハ、政府案ニ對シマシテ「農村負
債整理組合法」トアル其「農村」ノ二字ヲ削
リマシテ、此法案ヲ農村ノミニ限ラズ、
般ニ適用サレルコトヽシタノデアリマス、
ソレカラ政府案デハ組合ノ組織ヲ無限責任
ト致シテ居リマスガ、ソレヲ保證責任トス
ルコトモ出來ルヤウニシヨウト云フノデア
リマス、更ニ政府案ノ第二章ト致シマシテ、
中央金庫ニ關スル規定ヲ設ケタノデアリマ
ス、其中央金庫ニ關スル點ハ大體ニ於テ
秦君外二十三名提出ノ案ニ一致致シテ居リ
マスガ、其中ニ於キマシテモ更ニ二三修正
サレタ點ガアリマス
高橋君提出ノ修正意見ハ政府案ノ無限責
任ヲヤハリ保證責任デモ宜イト云フコトヽ
シヨウト云フノデアリマシテ、其點ノ趣旨
ニ於キマシテハ助川君ノ意見ト一致スルヤ
ウニ考ヘマス、又後藤君ノ修正意見ハヤハ
リ政府案ヘ中央金庫ニ關スル規定ヲ加ヘラ
レマシタノデ、其大體ハ助川君ノ案ト略、
一致シテ居リマスガ、籤札ヲ二箇年ニ限ル
ト云フヤウナ所ニ多少ノ相違ガアリマス、
又組合ノ組織ニ付キマシテハ無限責任ノ外
ニ保證責任、有限責任ヲモ加ヘタイト云フ
ノデ、保證責任ヲ加ヘルコトニ付キマシテ
ハ政友會、民政黨案ト一致スルノデアリ
マス
ソコデ各修正案ヲ互ニ一ツモノト見マシ
テ採決致シマシタガ、高橋、後藤兩君ノ修
正案ハ少數デ否決サレマシタ、助川君ノ修
正案ハ多數ヲ以テ可決致サレタノデアリマ
ス
尙ホ御報〓致シタイトハ、其決議ニ伴ヒ
マシテ政友會ノ助川君ヨリ左ノ附帶決議ノ
提出ガアリマシタ、卽チ「政府竝ニ特殊金
融機關ノ貸付金ハ低利ノモノト借換ヘシ
メ、且償還年限ヲ延長セシムルヲ以テ急務
ナリト認ム、政府ハ其趣意ニ依リ速ニ適切
ナル處置ヲ爲スベシ」ト云フノデアリマス、
是ハ採決ノ結果多數ヲ以テ可決ニ相成リマ
シタ
ソレカラ民政黨ノ高橋君ヨリモ希望トシテ
左ノ條項ヲ述べラレマシタ、卽チ「一、負債
整理ニ要スル資金ハ其必要ニ應ジ低利資金
ノ融通ヲ爲スコト、二、右低利資本ハ最低
利率ニ依ルコト、三、負債整理組合ノ運用
ヲ完クスル爲メ、其組合ノ損失ニ對シ補償
ノ方法ヲ講ズルコト、四、負債整理組合ノ
事業遂行ニ爲ニハ中樞機關ヲ設クルコト」
ト云フノデアリマス、提出者ノ說明ニ依リ
マスト、負債整理組合ノ事業遂行ノ爲ニハ
其中樞機關ガ必要デアルコトヲ認メルト云
フノデアリマス、其點ハ大體ニ於テヤハリ
政友會竝國民同盟ガ中央金庫ヲ設ケヨウト
云フ提案ノ趣意ト一致スルノデアリマス、
サウシテ富籤ニ對シマシテモ全然反對デハ
ナイガ、尠カラズ疑義ヲ有シテ居ルカラ、
此場合急速ニ他ノ案ニ贊成ガ出來兼ル、仍
テ政府ヲシテ十分調査ノ上發案セシメタイ
トノ意向ノヤウニ私ハ承知致シタノデアリ
マス、何レ之ニ付キマシテハ其派ノ御方カ
ラ後ニ詳シク申述ベラレルコトヽ考ヘマス
カラ、是レ以上ハ私ハ申シマセヌ、此高橋
君ノ御希望ニ付キマシテハ、別ニ決議ヲ要
スルモノデアリマセヌカラ、採決致サナカッ
タノデアリマス
以上ヲ御報告ト致シマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313242X00919320901&spkNum=110
-
111・秋田清
○議長(秋田〓君) 本案ノ委員長報告ハ修
正デアリマス、尙ホ松本忠雄君及後藤亮一
君ヨリ各々成規ニ據リ修正案ガ提出セラレ
テ居リマス、故ニ便宜上討論ハ第二讀會ニ
於テ修正案ノ趣旨辯明ヲ聞キマシタル上
デ、之ヲ許可致シタイト思ヒマス、左樣御
諒知ヲ乞ヒマス-本案ノ第二讀會ヲ開ク
ニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313242X00919320901&spkNum=111
-
112・秋田清
○議長(秋田〓君) 御異議ナシト認マメ
ス、仍テ本案ハ第二讀會ヲ開クニ決シマシ
タ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313242X00919320901&spkNum=112
-
113・上田孝吉
○上田孝吉君 直チニ本案ノ第二讀會ヲ開
カレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313242X00919320901&spkNum=113
-
114・秋田清
○議長(秋田〓君) 上田君ノ動議ニ御異議
アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313242X00919320901&spkNum=114
-
115・秋田清
○議長(秋田〓君) 御異議ナシト認メマ
ス、直チニ本案ノ第二讀會ヲ開キ議案全部
ヲ議題ト致シマス
農村負債整理組合法案第二讀會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313242X00919320901&spkNum=115
-
116・秋田清
○議長(秋田〓君) 此場合修正案ノ趣旨辯
明ヲ許可スルノデアリマスガ、何レモ省略
ノ申出ガアリマス、仍テ是ヨリ討論ニ入リ
マス、通告順ニ依リ其發言ヲ許可致シマス
-松本忠雄君
〔松本忠雄君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313242X00919320901&spkNum=116
-
117・松本忠雄
○松本忠雄君 今日農民トナク、商工業者
トナク、負債ノ重壓ニ苦ンデ居ルコトハ最
早言語ヲ用ヰズシテ御互ニ最モ能ク知ッテ
居ル所ノ事實デアリマス、此負債ノ重壓カ
ラ多數ノ惱メル者、苦メル者ヲ救フト云フ
コトハ、今日ノ時局匡救ノ一ツノ重要ナル
所ノ方法デアリ、且ツ此臨時議會ノ持ツ所ノ
大キナル使命ノ一ツデアルコトハ申スマデ
モアリマセヌ、此方法ノ一ツトシテ政府ハ
本議會ニ農村負債整理組合法ヲ御提案ニ
ナッタノデアリマス、吾々ハ此政府ノ提案
ニ對シテ、只今大口委員長ヨリ極メテ明瞭
ニ御述ニナッタ、吾々民政黨ノ修正案、卽チ
政府原案ノ第八條ニ保證責任ヲ認メルト云
フ所ノ修正案、更ニ吾々ハ希望意見トシテ
述ベタ所ノ四箇條ノ希望ノ意見ヲ附シテ政
府原案ニ贊成ノ意ヲ表シ、而シテ委員長報
告ニ反對ノ意ヲ表セントスル者デアリマ
ス
負債整理ハ洵ニ重要ナ問題デアリマスル
ガ、而モ之ヲ成シ遂ゲルコトハ頗ル困難デ
アリマス、困難デアリマスルガ、此困難ナ
問題ヲ成シ遂ゲル所ノ途ハ自ラ具ッテ居ル
ト信ジマス、其方法ノ第一ハ、此負債整理
ノ爲ニ適當ナル機關ヲ作ルコトデアリマ
ス、而シテ其第二ハ此作リ上ゲタ機關ヲ適
當ニ指導スルコトデアリマス、更ニ第三ハ
此出來上ヲタ機關ニ對シテ資金ノ融通ヲ爲
スコトデアリマス、更ニ第四點ハ、此出來上〃
タ機關ガ將來仕事ヲ爲シテ行ク上ニ於テ政
府トシテ、地方トシテ適當ナル援助ヲ與ヘ
ルト云フ所ノ途以外ニハ吾々ハナイコトヲ
確信致スノデアリマス、而シテ政府ノ提案
シタ農村負債整理組合法ハ此第一ノ機關ヲ
具ヘル所ノ案デアリマス、吾々ハ政府ガ此
負債整理ノ問題ノ爲ニ此機關ヲ具ヘヨウト
スル其政策ニ對シテハ、滿腔ノ熱意ヲ擧ゲ
テ之ニ贊成スルニ吝カナラザル者デアリマ
ス、此機關ノ出來タ上ニハ之ヲ適當ニ指導
シ、誘抜スルト云フコトガ最モ重要ナル仕
事デアリマスルガ、政府ハ此農村負債整理
組合法ニ於テ、市町村ニ負債整理委員會ナ
ルモノヲ設ケテ、此指導ノ途ヲ一ツ開イテ
居リマス、併シ吾々ハ是ノミヲ以テ足レリ
トスルノデハアリマセヌ、國ニ於テモ、地
方ニ於テモ更ニ全國ノ有志家、有識者ガ御
互ニ力ヲ添ヘテ、之ヲ指導スルコトガ急務
デアルト確信シマス、斯ノ如クニシテ機關
ガ具ハリ、指導ヲスル途ガ具ノテ、然ル後
ニ之ニ資金ヲ提供スルコトガ必要デアリマ
ス、所謂渠成シテ水到ルノデアリマス、政府
ノ此負債整理組合法ハ之ニ依テ渠ヲ成スノ
デアリマス、其處ニ水ニシテ到ラナカッタ
ナラバ、其目的ヲ達スルコトハ出來ナイノ
デアリマス、吾々ハ此出來上ッタ組合ニ對
シテ政府カラ必要ナル所ノ低利資金ヲ供給
スルコト、而モ其資金ハ最モ安イ利息デナ
ケレバナラナイト云フコトヲ主張スル者デ
アリマス、要求スル者デアリマス
是レ吾々ガ希望決議ノ第一ニ於テ資金ノ
融通ヲ要望シ、其第二項ニ於テ利率ノ低率
ナランコトヲ要求シタ所ノ所以デアリマス、
併ナガラ是ノミニ依テ負債整理ノ事業ヲ達
成セシメントシテモ、ソレハ望ンデ得ベカ
ラザル事デアリマス、此負債整理組合ガ將
來ニ於テ事業ヲ進メテ行ク上ニ、國トシテ
地方トシテ、之ニ對シテ相當ナル所ノ援助
ヲ與ヘルコトヲ要スル、卽チ負債整理組合
ガ損失ヲ來シタ場合ニハ、國ニ於テ、或
地方團體ニ於テ、之ニ適當ナル所ノ援助ヲ
與ヘルト云フコトガ必要デアリマス、是レ
吾々ガ希望條項ノ第三ニ於テ負債整理組合
ノ運用ヲ全クスル爲ニ、其組合ノ損失ニ對
シ補償ノ方法ヲ講ズル事ト云フ一項ヲ擧ゲ
タ所以デアリマス、此希望條項ヲ付シテ吾
吾ハ本案ニ贊我スル者デアリマス、吾
吾ハ斯ノ如クシテ政府ノ提案ニハ贊成致
スノデアリマスルガ、不幸ニシテ只今
委員長ヨリ報〓セラレタル所ノ修正案ニ
向ッテハ反對セザルヲ得ナイノデアリマ
ス、吾々ガ此修正案ニ反對スルノ第一點
ハ、此政府ノ提案ノ農村負債整理組合
法ヲ改メテ、單ナル負債整理組合法トシテ、
之ヲ農村ト都市トニ共通セシメヨウトスル
コトガ、是レ吾々ノ反對セントスル所ノ第
一點デアリマス、吾々ハ今日都市ノ中小商工
業者、其他ガ負債ノ重壓ニ苦ンデ居ル事ヲ
能ク知ッテ居リマス、吾々モ之ヲ救濟スル
途ノ最モ必要デアル事ヲ痛感スル一人デア
リマス、併ナガラ農村ノ負債整理ト都市生
活者ノ負債整理トハ自ラ其途ヲ異ニ致サ
ナケレバナラヌノデアリマス(拍手)現ニ政
府ノ提案シタル所ノ農村負債整理組合法ハ、
隣保共助ノ精神ニ基イテ、農村ニ定住シテ
居ル所ノ其居所ヲ變ヘナイ、其生活ノ本據
ヲ變ヘナイ所ノ土ニ親ンデ居ル所ノ農民ノ
負債ヲ整理スル事ヲ重要ナル所ノ目的トシ
テ居リマス、之ニ對シテ都會ニ生活スル所
ノ人々ニ對シテハ、所謂同業共助ノ精神ニ
則ラナケレバナラヌト云フコトヲ吾々ハ確
信スルノデアリマス、隣保共助ノ精神ニ則ク
テ整理シナケレバナラナイ農村民ノ負債ヲ
同業共助ノ精神ニ則ッテ負債ヲ整理スベキ
所ノ商工業者ノ負債ト同ジク、之ヲ同ジ型
ノ中ニ入レルト云フコトガ、軈テハ其目的
ヲ混同セシメ、此新ナル所ノ負債整理組合
ノ事業ヲ混同セシメテ、其目的ヲ達スルコ
ト能ハザルコトヲ吾々ハ恐レザルヲ得ナイ
ノデアリマス(拍手)現ニ吾々ハ此修正案ヲ
見テ其感ヲ深ク致サナケレバナラヌノデア
リマス、吾々ハ政友會ノ諸君ガ非常ナル御
精勵ヲ以テ此法案ヲ修正セラレタル其努
ニ向ッテハ、敬意ヲ表スルニ吝カナラザル
者デアリマス、併ナガラ此負債整理組合法
ヲ修正スルニ當シテ、第一條ニ依然トシテ
隣保共助ノ精神ニ依ルト云フ政府案ノ眼目
デアル此文字ヲ存シタ其事ガ、卽チ同業共
助ノ精神ニ則ルベキ所ノ商工業者ノ負債ヲ
整理スルニ適當ナラズト云フ所ノ結論ヲ導
キハシナイカト云フコトヲ吾々ハ第一ニ恐
ルヽノデアリマス(拍手)更ニ又此政友會ノ
修正案ノ條項第五條ヲ見レバ、或ハ部落ヲ
單位トシ、或ハ町村ヲ單位トスルヤウナ精
神ニ依テ此負債整理組合ヲ認メントスルコ
トハヤハリ其半面ニ於テ、農村ヲ中心トス
ル所ノ政府ノ立案ノ精神ヲ直チニ商工業者
ニ及ボサントスル所ノ、其矛盾ガ玆ニ現ハ
レテ居ルノデハナカラウカト感ゼザルヲ得
ナイノデアリマス(拍手)殊ニ吾々農民ト、
中小商工業者ノ負債ヲ同ジ機關ニ依テ、同
ジヤウニ整理セントスル其事ガ、或ハ農民
ノ爲ニ商工業者ヲ犠牲ニスルカ、或ハ商工
業者ノ爲ニ農民ヲ犠牲トセザルカニ至ラザ
ルナキヤヲ憂ヘルデアリマス(「ノー〓〓
拍手)吾々ハ嘗テ農林省ノ分離ヲ最モ熱心
ニ主張セラレタル所ノ政友會ノ諸君ガ、今
此負債整理ノ問題ニ付テ、農林ト商工トヲ
同ジク之ヲ合セントスル其態度ハ、大ナル
矛盾ガアルト云フコトヲ指摘セザルヲ得ナ
イノデアリマス
次ニ吾々ハ此政友會ノ諸君ノ修正案ノ中
ノ第二章、所謂中央金庫ノ設置其モノニ向ク
テ反對セザルヲ得ナイノデアリマス吾々
モ希望條項ノ第四點ニ於テ負債整理組合ノ
事業遂行ノ爲ニハ一ツノ中樞機關ヲ設ケル
ト云フ所ノ主張ヲ明ニシテ居リマス、併ナ
ガラ吾々ハ此政友會ノ修正案ニ擧ゲラレテ
アル所ノ此中央金庫ニ向ッテハ、反對セザ
ルヲ得ナイノデアリマス、何故ニ吾々ガ反
對ヲシナケレバナラナイカト云フ所ノ理由
ヲ玆ニ明ニ致シマス
吾々ガ中央金庫ニ反對致シマスル所ノ第
一點ハ今日此負債整理組合ノ出來ル其時
ニ、慌テヽ中央金庫ヲ作ル必要ノナイト云フ
點デアリマス(「ノー〓〓」、拍手)此負債整
理組合ガ出來テモ、負債整理組合ガ眞ニ仕
事ヲ始メテ、眞ニ活動ヲ開始スルマデニハ、
其間ニ吾々ハ相當ノ日子ヲ要スルト思フノ
デアリマス、然ラバ今日何モ慌テヽ中央金
庫ヲ玆ニ設クルノ必要ハナイノデアリマ
ス、殊ニ此短期ナル所ノ臨時議會ニ、斯ノ
如キ法案ヲ提出シテ、遽カニ慌テフタメイ
テ之ヲ議決スル所ノ必要ハナイノデアリマ
ス、嘗テ產業組合ガ出來テ、十分ナル働キ
ヲ始メテ、然ル後ニ政友會ノ諸君ガ提議シ
テ產業組合ノ中央金庫ヲ作ラレタト云フコ
トハ吾々ノ記憶ニ今尙ホ新ナル所デアリ
マス(拍手)吾々ハ嘗テ政友會ノ諸君ガ產業
組合ノ活動期ニ入ッテ、其後ニ產業組合中央
金庫ヲ御作リニナッタト同ジヤウニ、此負
債整理組合ガ相當ナル仕事ヲ始メタ後ニ中
央金庫ヲ作ラレテモ、敢テ遲キニ失セズト
云フコトヲ確信致スノデアリマス(拍手起
リ發言スル者多シ)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313242X00919320901&spkNum=117
-
118・秋田清
○議長(秋田〓君) 靜肅ニ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313242X00919320901&spkNum=118
-
119・松本忠雄
○松本忠雄君(續) 是レ吾々ガ中央金庫案
ニ反對スル第一點デアリマスルガ、更ニ第
二點トシテ反對シナケレバナラナイコトハ、
斯ノ如キ機關ヲ作ル場合ニハ負債整理
組合、而シテ其中樞機關タルベキ所ノ機關
トハ統一シタル意識聯絡アル所ノ精神ニ依
テ作ラレナケレバナラヌト云フコトデアリ
マス、負債整理組合法ハ政府之ヲ起草シ、
中央金庫法ハ政友會之ヲ起案シ、恰モ木ニ
竹ヲ接グヤウナ作リ方ニ依テ、吾々ハ此仕
事ヲ完全ニ爲シ遂ゲルコトハ出來ナイト確
信ヲ致ス(拍手)是レ吾々ガ此政友會ノ修正
案ニアル中央金庫法ニ向ッテ反對セザルヲ
得ナイ所ノ第二點デアリマス
更ニ吾々ガ此中央金庫法ニ對シテ反對致
シマス所ノ第三點ハ、此中央金庫ニ對スル
所ノ資金ノ募集、其他ノ活動ノヤリ方ニ付
テヾアリマス、中央金庫ハ其資金ノ調達方
法トシテ、出資額ノ二十倍ニ相當スル所ノ
整理債劵若ハ割增金附債劵ノ發行ヲ認メテ
居ルノデアリマス、吾々ハ此負債整理組合
中央金庫ガ拂込金ノ二十倍ニ相當スル所ノ
整理債劵若クハ割增金付債劵ヲ發行セント
シテモ、果シテ斯ノ如キコトガ爲シ遂ゲ得
ラレルカドウカト云フコトニ對シテ、大ナ
ル疑問ヲ持タザルヲ得ナイノデアリマス
(拍手)今日勸業債劵ノ發行額ハ、拂込資本
額ノ十倍ニ制限サレテ居ル所ノ實狀、而モ
其勸業債劵ノ發行ニシテモ、今日ノ事情ニ
於テハ實際上ニ於テ爲スコト能ハザル所
ノ現狀ニ於テ、此負債整理組合ガ出資額ノ
二十倍ニ相當スル債劵若クハ割增金付債劵
ヲ發行セントシテモ、畢竟是ハ口ニ言ッテ
而モ手ニ行フコト能ハザル結果ニ陷ルノデ
ハナカラウカト云フコトヲ憂慮スルノデア
リマス(拍手)
更ニ吾々ハ此中央金庫ニ對シテ、政友會
ノ諸君ガ富籤ヲ發行セントスル計畫ヲ持セ
ラレル點ニ付テハ、寧ロ其大膽ナルニ驚カ
ザルヲ得ナイノデアリマス(拍手)政友會諸
君ノ御計畫ニ依レバ富籤ノ發行額ハ一年
正ニ一億圓デアリマス、而シテ其當リ籤ハ
最高額十万圓ヲ目標トシテ居ラレルト說明
サレテ居リマス、サウシテ其一億圓ノ富籤
ノ發行ニ依ッテ、三千万圓ノ利得ヲ得ラレ
ヤウトスルノガ、是ガ政友會諸君ノ計畫デ
アリマス、吾々ハ今日斯ノ如キ富籤ヲ發行
スルコトガ、世道人心ニ與ヘル影響ノ大ナ
ルコトヲ思ハザルヲ得ナイノデアリマス、
吾々ハ曾デ第五十九議會ノ當時ニ、其當時
ノ濱口內閣ガ、競馬法ノ改正ヲシタコトヲ
記憶シテ居リマス、其競馬法ノ改正ガ、射
倖心ヲ挑發シ、世道人心ニ惡影響ヲ與ヘル
憂ナシヤトシテ、此壇上ニ立ッテ論ゼラレ
タ其人ハ、政友會諸君其人達デハナカッタ
カ(「ノー〓〓」拍手)彼ノ五十九議會ニ於テ
競馬法ノ改正ニ贊成ヲシ、政友會ヲ代表シ
タ川島正次郞君ガ、此壇上ニ於テ御演說ヲ
サレタト云フコトハ、速記錄ニ明瞭デアリ
マス
〔「脫線」「反對センガ爲メノ反對」ト呼
ヒ其他發言スル者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313242X00919320901&spkNum=119
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120・秋田清
○議長(秋田〓君) 靜肅ニ-靜肅ニ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313242X00919320901&spkNum=120
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121・松本忠雄
○松本忠雄君(續) 民政黨內閣ガ、競馬法
ヲ改正セントシタ時ニスラ、是ガ世道人心
ニ影響ヲ與ヘルコトヲ憂慮セラレタ政友會
ノ諸君ガ、今日十万圓ノ賞金ヲ懸ケテ債劵
ヲ發行セントスルガ如キハ、世道人心ニ與ヘ
ル影響更ニ大ナルモノアルコトヲ吾々ハ憂
ヘザルヲ得ナイノデアリマス、更ニ又吾々
ハ一年ニ一億圓ノ富籤ヲ發行スルコトガ、日
本ノ財界ニ與ヘル影響如何ヲモ思ハザルヲ
得ナイノデアリマス、政友會ノ諸君ハ、郵
便貯金ノ利子ヲ引下ゲ、我ガ日本ノ經濟界
ヲ低金利政策ニ導クト云フコトニ付テ、頗
ル御熱心ナル方々デアリマス、吾々ハ此點
ニ付テハ贊成致ス者デアリマスルガ、一方
ニハ郵便貯金ノ利息ヲ引下ゲタ、而シテ一
方ニハ高イ利息ヲ以テ富籤ヲ發行シタト云
フヤウナコトニナッタナラバ···
〔發言スル者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313242X00919320901&spkNum=121
-
122・秋田清
○議長(秋田〓君) 靜肅ニ-大石君注意
シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313242X00919320901&spkNum=122
-
123・松本忠雄
○松本忠雄君(續) 諸君ノ主張スル低利金
利政策ト逆行シ、日本ノ經濟界ニ一大惡影
響ヲ齎ラスト云フコトヲ吾々ハ信ゼザルヲ
得ナイノデアリマス(拍手)諸君ガ斯ノ如キ
射倖心ヲ-斯ノ如キ投機心ヲ土臺トスル
ヤウナ法律案ヲ出スコトハ今將ニ負債ヲ
整理シテ、一方ニ負債ニ苦シム人間ヲ作ル
結果ニ陷ルト云フコトヲ吾々ハ憂慮致シマ
スルガ故ニ、敢テ此點ニ向ッテハ反對セザ
ルヲ得ナイノデアリマス(拍手)是ガ吾々ガ
政友會ノ此中央金庫法ニ反對スル所以デア
リマスルガ、吾々ハ今日··
〔發言スル者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313242X00919320901&spkNum=123
-
124・秋田清
○議長(秋田清君) 靜肅ニ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313242X00919320901&spkNum=124
-
125・松本忠雄
○松本忠雄君(續) 此負債整理ノ問題ニ付
テ最後ニ一言シナケレバナラナイノデアリ
マス世ノ中ノ一部ニハ、負債整理ニ付テ
ハ借金棒引、若クハ借金棒引ニ近イヤウナ
方法ニ依ッテ、之ヲ爲サナケレバナラナイ
ト云フコトヲ主張セラルヽ所ノ人々ガアリ
マス、是等ノ論者ハ、債權者ノ利益ハ如何
ニ蹂躪シテモ構ハナイ、唯債務者ノ利益サ
ヘ圖レバ宜イト、斯樣ニ主張セラルヽヤウ
ニ見エルノデアリマス、吾々ハ此借金棒引
論ガ、日本ノ經濟界ノ機構ニ一大危機ヲ齎
ラスモノデアルコトヲ確信致シマシテ、夙
ニ借金棒引論ニ反對シテ來タ者デアリマ
ス、然ルニ政友會ノ提案サレタ所ノ負債整
理組合法ヲ見レバ、借金棒引ニ類スルヤウ
ナ主張ハ、一點ダモ之ヲ發見スルコトハ出
來ナイノデアリマス、吾々ハ政友會ノ諸君
ガ昔日ノ主張ヲ改メテ、斯ノ如キ日本經濟
界ノ機構ヲ危クルヤウナ主張ヲ捨テヽ吾
々民政黨ノ主張ニ聽從セラレタルコトヲ、
政友會ノ爲ニ、日本ノ經濟界ノ爲ニ之ヲ悅
バザルヲ得ナイノデアリマス(拍手)吾々ハ
此政友會ノ變說改論ガ、セメテモ日本ノ經
濟界ニ齎ラス一大收穫デアルコトヲ信ジテ
已マナイノデアリマス(拍手)吾々ハ今日ノ
此多數ノ農民、商工業者ノ苦ンデ居ル負債
ヲ整理シテ、之ヲ救濟スルト云フ〓意ニ付
テハ敢テ諸君ニ劣ラザルモノデアリマ
ス、併ナガラ吾々ハ適法ニ、合法的ニ、次第
ヲ逐ウテ此目的ヲ達成セントスルノデアリ
やっ、殊ニ鬼面人ヲ驚カシテ多數民衆ノ歡
心ヲ買ウテ、而モ其實質ニ於テハ何等ノ結
果ヲ齋ラスコトノ出來ナイヤウナ此委員長
報告案ニ對シテハ、全然之ニ反對シ、進ン
デ政府ノ提案ヲ或ル修正ノ下ニ維持セント
スル、是レ吾々ノ主張デアリマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313242X00919320901&spkNum=125
-
126・秋田清
○議長(秋田〓君) 助川啓四郞君
〔助川啓四郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313242X00919320901&spkNum=126
-
127・助川啓四郎
○助川啓四郞君 財界ノ不況ハ洵ニ甚シキ
モノガアリマシテ、農村其他ニ於テハ負債
ノ重壓ニ苦シミ、中小農商工業者ハ是ガ
爲ニ言フニ忍ビザル難澁ヲ致シテ居ルノデ
アリマス、思フニ負債ノ整理ヲ致シマスル
コトハ、精神的ニモ經濟的ニモ、自力ヲ更
生ノ力ヲ作ラシムルモノデアラウト思フノ
デアリマス、負債ノ桎梏ニ身動キナラヌ者
ニ對シマシテ、自力更生ヲ說キ、生活ノ改
善、產業ノ合理化ヲ說キマスルコトハ、恰
モ千斤ノ重荷ヲ背負ハセテ、千里ノ道ヲ走
レト說クト同ジヤウナモノデアリマシテ、
餘リニ無理ナコトダト申サナケレバナリマ
セヌ、或ハ高物價政策ニ依リマシテ、又景
氣ガ恢復致シマスレバ、自カラ負債ノ重壓
ハ解消セラレルノデアルト申サルヽ方々モ
アルノデアリマスガ、思フニ今日ハ(ぼ)
タモノモ取ルコトガ出來ナイ、借リタモノ
モ返スコトガ出來ナイ、抵當物權ハ之ヲ處
分シヨウトシテモ買手ガナイ、卽チ今日ハ
ドウニモ斯ウニモ動キノ付カナイ狀態ニア
ルノデアリマシテ、負債ノアリマスル者モ、
此負債ノ爲ニ父祖傳來ノ田畑ヲ人手ニ渡サ
ナケレバナラナイト云フヤウナコトモアリ
マセズ、又住ミ慣レタ家屋敷ヲ振リ捨テヽ、
他〓ニ流浪シナケレバナラナイト云フヤウ
ナ氣遣モナイノデアリマス、卽チ今日ハ危
機ヲ孕ンダ安靜狀態トモ申シマセウカ、農
村ノ機構ガ破壞セラレントスルガ如キ狀態
ニナッテ居ルノデアリマス、然ルニ債權者
ハ景氣ノ恢復ヲ鶴首シテ待ッテ居ルノデア
リマシテ、購買力ノ恢復ヲ待ッテ抵當物權
ノ處分ヲシヨウト、其日ヲ待ッテ居ルノデ
アリマス、負債ヲ持ッテ居リマス者ハ、一昨
年ノ期日ノ來タモノモ之ヲ借替ヘルコトガ
出來ナイデ居ルノデアリマス、又去年ノ期
日ノモノモ之ヲ借替ヘルコトガ出來ナイデ
居ルノデアリマス、又去年ノ期日ノモノモ
之ヲ借替ヘルコトガ出來ナイデ居ルノデア
リマシテ、澤山ノ負債ハ悉ク返濟期日ヲ
過ギテ、猶豫相成リ兼ネル狀態ニアルノ
デアリマス、一朝景氣ガ恢復シテ參リマ
シテ、其際直チニ債權者ガ債權ノ整理ヲ
スルト云フコトニナリマシタナラバ、我
國ノ農村ノ中小農業者ハ、全ク此債權整理
ノ爲ニ將棋倒シニナルデアラウコトヲ吾々
ハ心配致スノデアリマシテ、卽チ此時コソ
ガ眞ノ農村ノ危機ト呼バルヽ時デアリマシ
テ、私ハ此場合負債整理ノ爲ニ、大ナル決
心ヲ以テ、徹底的ノ計畫ヲ樹ツルコトガ必
要デアルト思フノデアリマス、卽チ吾々ハ
好景氣策ヲ樹テマスルト相竝ンデ、是ト同
一ノ重要サヲ以テ、負債整理ノ計畫ガ樹テ
ラレナケレバナラナイト考ヘテ居ルノデア
リマス、然ルニ負債整理ニ對スル政府ノ爲
サントスル所ヲ見マスルニ、僅カニ負債整
理組合法ヲ制定致シマシテ、僅カノ豫算ヲ
計上シテ、負債整理委員會ニ補助シヨウト
云フノガ、現政府ノ爲サントスル施設ノ總
テデアルノデアリマス、負債整理法ノ制定
ニ對シマシテハ、低利資金ノ準備モアリマ
セズ、又利子補給、損失補償ニ對シテハ、
何等ノ用意ヲ持フテ居ナイノデアリマス、
內容空虛、無力、無價値、恰モ空手形ノ如キ
モノデアルト申サナケレバナラナイノデア
リマス(拍手)農林大臣ハ、追々樣子ヲ見テ、
資金ノ都合ヲ付ケヤウト申サレテ居ルノデ
アリマス、總理大臣ハ、負債整理組合ハ隣
保相助ノ力ニ依フテ、貸借條件ヲ緩和スル
コトガ主タル目的デアル、資金ノ融通ハ附
隨ノ問題デアルト、斯樣ニ申サレテ居ルノ
デアリマス、又大藏大臣ハ、負債整理組合
ヲ設ケルコトハ負債整理ノ指導ヲ爲サン
トスルモノデアル、斯樣ニ申サレテ居ルノ
デアリマス、政府ノ意ノ在ル所ハ、吾々ノ
志トハ天地霄壤ノ隔リガアリ、國民ノ期待
ヲ裏切ルコト甚ダシキモノガアルコトヲ知
リマシテハ洵ニ驚キ入ッタノデアリマス、玆
ニ於テ吾々ハ修正案ヲ提出スルノ巳ムヲ
得ザルニ立至ッタノデアリマス、六十二議
會ニ於キマシテ、本院ハ全會一致ヲ以テ、
政府ガ大ナル決意ヲ以テ負債整理ヲ爲スベ
シトノ決議ヲ致シタノデアリマス、サウシ
テ政府ハ之ヲ諒承サレタノデアリマスガ、
吾々ノ修正ハ、政府ノ諒承シタル此院議ヲ、
政府ヲシテ實行セシメントスルノ外、他意
ガ無イノデアリマス、斯ノ如クシテ又灼熱
セル國民ノ要望ニ副ヒ得ル所以ノモノデア
ルト信ズルノデアリマス、修正ノ事項ニ付
キマシテハ、委員長カラ詳細御報告ガアツ
タノデアリマスガ、其最モ大ナルモノハ、
負債整理組合ノ中樞機關トシテ、中央金庫
ヲ設ケヨウト云フノガ、其最モ主眼トスル
點デアルノデアリマス、此中央金庫ヲ設ケ
ント致シマスノハ、第一ニ政府ハ只今申上
ゲタヤウニ、負債整理ニ關シテ何等ノ資金
ノ準備ガ無イノデアリマス、ソレデハ負債
整理組合ノ活動ハ出來ズ、負債整理ノ出來
得ル筈ハナイノデアリマシテ、中央金庫ヲ
設ケテ、負債資金ノ調達融通ヲシヨウト云
フノガ、第一デアルノデアリマシテ、第二
ハ、負債整理組合ニ對シテ利子ノ補給、損
失補償ノ途ヲ講ジタイト考ヘテ居ルノデア
リマス、負債整理ノ資金ニ對シマシテ、何
等ノ準備ノ無イ政府ニ於キマシテハ、利子
補給、捐失補償等ニ付テハ、勿論何等ノ心
掛モナイノデアリマス、私ハ此利子補給、
損失補償ガナクシテ、農村其他ノ負債ノ整
理ヲスルト云フコトハ、到底是ハ望ンデ出
來得ナイ所デアル、斯樣ニ思フノデアリマ
シテ、吾々ハ玆ニ中央金庫ヲ設ケマシテ、
負債整理ニ對スル資金ヲ調達スル、更ニ利
子補給、損失補償ノ途ヲ講ズル、卽チ負債
整理ニ關スル機關ノ整備ヲ圖リ、而シテ徹
底的ナ負債整理ノ計畫、負債整理ノ施設ヲ
致シタイト考ヘテ居ルノデアリマス、此吾
吾ノ計畫ニ對シマシテ、吾々ノ修正案ニ對
シマシテ、只今松本君カラ反駁ノ御意見ガ
アッタノデアリマスガ、吾々ハ松本君ノ反
對意見ニ對シテ同意ヲスル譯ニハ行カナイ
ノデアリマス、松本君ハ本案ハ隣保團結
ノ精神ヲ以テ編成サレタ法律デアルガ、之
ニ對シテ農村ノミニ限ラズニ、市町村モ之
ヲ含メヤウトスルノハ、立法ノ精神ニ伴,
テ居ナイカノヤウニ申サレテ居ッタノデア
リマスガ、私共ハ都市ノ商工業者ニ、隣保
共助ノ精神ガアッテナラナイトハ考ヘラレ
ナイノデアリマス(拍手)都市ニ於テモ隣保
相助ノ美風ヲ作リマスコトハ、極メテ必要
ナコトデアラウト思フノデアリマス、殊ニ
吾々ハ農村、漁村、山村ノ負債ノ整理ト等
シク、中小商工業者ニ對スル負債ノ整理モ
必要デアルト致シマシテ、六十二議會ニ之
ヲ政府ニ要望致シタノデアリマスガ、此度
ノ議會ニ、中小商工業者ニ對スル負債整理
ニ付テハ、何等ノ途ガ政府デハ計畫サレテ
居ナイノデアリマス、斯カル場合ニ於テ、
此法律ノ上ニ中小商工業者モ認メ、等シク
此恩典ニ浴セシメタイト考ヘルコトハ、蓋
シ當然ノコトヽ思フノデアリマス(拍手)
更ニ此農村ノミト限定致ス時ハ、地方小
都市ノ商工業者モ、此恩典ニ與カルコトガ
出來得ナイノデアリマスガ、私共ハ地方小
都市ニ於テ、神社ヲ中心トシ、或ハ佛閣ヲ
中心トシテ、報德社其他ノ名前ニ於テ、現
在負債整理ニ極メテ良好ナル成績ヲ擧ゲテ
居ルモノヲ聞イテ居ルノデアリマス、政府
ノ提案ノ如クニ致シマスレバ是等ノ地方小
都市ニ於テ、現在良好ナル成績ヲ收メテ居
ルモノモ、此法律ノ上カラ認メ得ラレナイ
ト云フヤウナ結果ニナルノデアリマス、吾
吾ハ此意味ヨリ致シマシテ、故ラニ「農村」
ノ二字ヲ付ケテ置クト云フコトノ不合理ヲ
考ヘテ、之ヲ削除致シタノデアリマス(拍
手)又松本君ハ、產業組合中央金庫ガ後カ
ラ生レタヤウニ、負債整理組合中央金庫
モ、負債整理組合ノ澤山出來テカラ、後カ
ラ出カシテモ宜イノデハナイカト云フコト
ノ御意見デアッタノデアリマスガ、現在ノ如
ク資金ハ一文ノ準備モ出來テ居ナイ、又利
子補給、損失補償ノ計畫モナイヤウナ狀態
デ、果シテ負債整理組合ガ澤山ニ出來ルデ
アリマセウカ、吾々ハ負債整理組合ヲ作ル
ガ爲ニ、玆ニ資金ノ準備ガ必要デアル、利
子補給、損失補償ノ計畫ガ必要デアル、是
ダケノ金ヲ準備シテ、斯クノ如ク利子ヲ補
給シ、損失ヲ補償スル、サウシテ全國民ニ
呼ビ掛ケテ、サウシテ徹底的ニ負債整理ノ
計畫ヲ樹テヤウト云フノガ吾々ノ考デアル
ノデアリマス、資金ノ準備モシナイ、利子
補給、損失補償ノ準備モシナイ、サウシテ
居テ負債整理組合ガ出來タナラバ、ソレカ
ラ後ニ中央金庫ヲ拵ヘテ、サウシテ松本君
ノ言ハレル所ニ依レバ、其中央金庫ハ資金
ノ調達、利子補給、損失補償ノ仕事ヲヤル
ンダ、斯ンナ馬鹿氣タ、アベコベノ考ハナ
イノデアラウト思フノデアリマス(拍手)又
松本君ハ、此法律ハ政府デ作ッタモノダ、サ
ウシテ中央金庫ハ政友會デ編ンダモノデア
ル、同ジ精神デ出來ナケレバ、木ニ竹ヲ接
イダヤウナモノデ、本當ニシックリシナイ
ト云フヤウニ言ハレタノデアリマスガ、私
ハ左樣ニ考ヘテ居ナイノデアリマス、卽チ
國家ノ意思機關デアル此立法府ニ於テ、法
律ハ決定サレルノデアリマシテ、此方ノ分
ハ政府ノ分、此方ノ分ハ政友會ト云フヤウ
ナ、一ツノ法律ニ木ト竹ヲ接ガルト云フヤ
ウナコトハ有リ得ベキコトデハナイノデア
リマス(拍手)
更ニ松本君ハ負債整理組合中央金庫ガ、
二十倍ノ債劵ヲ發行スルコトハ當ヲ得ナイ
ト云フコトヲ言ハレタノデアリマス、成程
勸業銀行、興業銀行或ハ產業組合中央金庫
ハ、何レモ十倍ヲ限度トシテ債劵ヲ發行ヲ
致シテ居ルノデアリマシテ、之ユ對シテ負
債整理組合中央金庫ガ二十倍ノ債劵ヲ發行
スルト云フコトハ、多キニ過グルガ如クデア
リマスガ、併シ負債整理組合中央金庫ハ、
吾々ノ考ト致シマシテハ、保證責任ノ組合
デアルノデアリマス、隨テ有限責任ノ、他
ノ法人ト同一ニ律スルコトハ誤ッテ居ル、殊
ニ負債整理組合中央金庫ノ資金ノ融通ヲ致
シマスノハ、此負債整理組合ニ限ルノデア
リマシテ、此負債整理組合モ、無限責任又
ハ保證責任ノ法人デアルノデアリマスカ
ラ、既ニソレ自身ガ保證責任デアル、貸付
スル相手方ガ保證責任若クハ無限責任デア
ル、斯樣ニ於キマシテ勸業銀行或ハ興業銀
行等ノ倍ノ、二十倍ノ債劵ヲ發行セシムル
ト云フコトハ蓋シ當然ナコトデアルト私
ハ思フノデアリマス(拍手)
富籤ノコトニ付テ色々御話ガアッタノデ
アリマスガ、大部分ハ私ノ私案ニ對スル御
批評デアッタノデアリマス、先達テ私ガ自
分ノ私案デモ話セト言ハレタノデ、最高限
度ノ場合ノ私案ヲ申上ゲタノデアリマス
ガ、私ノ私案デアリマシテ、政友會ノ黨議
デモナク、又此法案ノ實施ノ上ニ何等約束
サレテ居ル事項デハナイノデアリマシテ、
其事ニ對シテハ故ラニ此席上ニ於テ論議ヲ
スルノ必要ガナカラウト思フノデアリマ
ス、尙吾々ハ此富籤ノ案ヲ取ルニ付キマシ
テハ、極メテ愼重ニ考慮ヲ致シタノデアリ
マシテ、松本君ノ言ハルヽヤウナ、ソンナ
輕卒ナ考カラ起キタノデハナイノデアリマ
ス、吾々ハ此負債整理ノ爲メノ國策樹立ノ
必要ナルコトヲ既ニ本心ヨリ考ヘマシテ、
是ガ爲ニ愼重ニ調査〓究ヲ重ネテ參クタノ
デアリマスガ、ドウシテモ此負債整理ノ爲
ニハ損失補償、利子補給ノ途ガ備ハルノデ
ナケレバ、到底農村其他ノ負債ノ整理ヲス
ルコトガ出來ナイ、卽チ此財源ニ行詰リマ
シテ、吾々ハ調査ニ際シテ一步先ニ進ムコ
トガ出來ナイ狀態ニ陷フタノデアリマス、此
場合ニ當リマシテ富籤ニ思ヒヲ起シテ、而
モ之ニ付キマシテハ、司法當局ノ御考ガド
ウデアラウカト云フコトヲ考ヘマシテ、四
月ノ末ニ司法省ニ參リマシテ、ソレカラ數
囘折衝ヲ重ネマシタ結果、司法當局ニ於キ
マシテモ、農村其他ノ負債ノ實ニ重大性ニ
鑑ミラレマシテ、是ガ整理ノ爲メナラバ富
籤モ己ムヲ得マイト云フコトノ御言明ヲ得
マシタガ爲ニ、吾々ハソレニ力ヲ得マシ
テ、利子ノ補給、損失補償ハ此富籤ノ發行
ニ依ッテヤルト云フコトニ依リマシテ、此損
失補償、利子補給ノ財源ヲ得テ、之ニ依ッ
テ吾々ハ負債整理ノ計畫ヲ立テ、而シテ平
素ノ吾々ノ考ニ基キマシテ、此度ノ修正案
ヲ提出シタノデアル次第デアリマス、吾々
ハ今日ヲ以テ非常ノ場合デアルト考ヘテ居
ルノデアリマス、更ニ農村其他ノ負債ノ整
理ノ爲ニハ、尋常一樣ノ月並ノ考デハ、到
底其目的ヲ達成スルコトガ出來ナイ、此際
非常手段ニ訴フルモ已ムヲ得ナイト私共ハ
信ジテ居ルノデアリマス(拍手)農村其他ニ
於ケル負債ノ整理ハ利子ノ補給、損失ノ補
償ガナクテハ徹底的ニ之ヲ整理スルコトガ
出來得ナイノデアリマス、而シテ是等ノ財
源ヲ何處ニモ求ムルコトガ出來得ナイト致
シマスレバ、富籤ニ財源ヲ求ムル亦已ムヲ
得ナイコトダト思フノデアリマス(拍手)之
ニ向ッテ反對サルヽ方々ハ、要スルニ尋常平
時ノ心事ヲ以テ今日ヲ眺メ、農村ヲ律セント
スルモノデアリマシテ、吾々トハ甚シク認
識ヲ異ニ致シテ居ルモノト申サナケレバナ
ラナイノデアリマス(拍手)農村其他ノ負債
ノ整理ガ喫緊重大ナル性質ヲ有スルモノデ
アルト云フコトヲ申述ベマシテ、贊成ノ意
ヲ表スル次第デアリマス(拍手)
〔後藤亮一君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313242X00919320901&spkNum=127
-
128・後藤亮一
○後藤亮一君 只今議題トナッテ居リマス
農村負債整理法案ニ對スル吾々ノ主張ヲ簡
單ニ申述ベマス、吾々ハ一箇ノ修正意見ヲ提
出致シタノデアリマス、此修正意見ハ先程委
員長ヨリ御報告ガアリマシタ通リ、政友會案
ト略〓相似テ居ルノデアリマスルガ、多少
內容ニ異シタ所ガアリマスルノデ、玆ニ獨自
ノ意見ヲ說明致シマシテ、吾々ノ主張ヲ明
ニシタイト考ヘマス(拍手)長イノデアリマ
スルカラ、修正案ハ讀ミマセヌ、唯、要點
ノ二三點ヲ申シマスレバ、農村負債整理組
合法トアリマスル點モ、政友會案ト同ジク
農村ノ二字ヲ取リマシテ、負債整理組合法
ト致シタノデアリマス(拍手)唯〓其表題ニ
於テ、負債整理組合竝ニ負債整理組合中央
金庫法ト致シタノデゴザイマス、此點ハ政
友會ニ於キマシテハ、唯〓負債整理組合法ト
アリマスノデ、是デモ明カデアリマスルガ、
此點ハハッキリト負債整理組合竝ニ負債整
理組合中央金庫法ト致シタ方ガ、ハッキリス
ルモノデアルト斯樣ニ信ジテ居ルノデアリ
マス(拍手)
次ニ修正ノ箇所ハ第八條デアリマス、第
八條ノ責任ノ點デアリマスルガ、政友會案
モ民政黨案モ共ニ無限責任ノ外ニ保證責任
ヲ併セ用ヒテ居ラレルノデアリマスルガ、
吾々ハ現在ノ產業組合法ガ用ヒテ居リマス
ル如ク、各〓其好イ所ニ從ッテ之ヲ採用ス
レバ宜イト云フ見地カラ、無限責任、有限
責任、保證責任ノ三ツヲ併セ採用シタノデ
アリマス(拍手)
其次ニ富籤ノ點ニ付テ一言致シマス、吾
吾ノ案ニ於キマシテハ、單ニ富籤附債劵ト
云フコトニ致シタノデアリマスルガ、政友
會ノ單ナル富籤發行ト云フコトニ對シテ
モ、必ズシモ吾々ハ反對スル者デハナイノ
デアリマス、ソレハ之ヲ使用スル所ノ目的
ト及其場合ガ、今日ノ如キ非常時デアルト
云フコトヽ、其方法等宜シキヲ得タナラバ、
必ズシモ吾々ハ反對スベキモノデナイト云
フ主張ヲ有ッテ居リマス(拍手)ケレドモ唯
此場合、吾々ハ尙ホソコニ一點ノ疑義ヲ持
チマシテ、單ナル富籤ヲ發行スル程度デア
ルカドウカト云フ點ニ對シテ、寧ロ富籤附
債劵トノミ致シタ方ガ妥當デナイカト云フ
見地ヨリ、富籤附債劵ヲノミ採用致シタノ
デアリマス、是等ノ點ガ大體ニ於テ政友會
ト異ッテ居ル點デアリマシテ、其他ハ大同
小異デアルノデアリマス、唯吾々ガ此修正
案ヲ提出シ、吾々ノ玆ニ至ル迄ノ主張ノ經
過ヲ極ク簡單ニ申述ベテ見タイト思ヒマス
(拍手)
今日ノ議會ハ申ス迄モナク、農村及中小
商工業者ノ窮迫セル此窮狀ヲ、拙速ニ救濟
スルト云フコトガ、此議會ノ大ナル使命デ
アルコト申迄モナイノデアリマス(拍手)而
シテ此議會ノ目標ト致シマスル所ハ、前議
會ニ於キマシテ、大體本院ガ決議致シテ居
ルノデ明カデアリマス、然ルニ今囘政府ノ
提案致シマシタ所ノ諸案件ヲ檢討シテ見マ
スルニ、殆ド吾々ガ前議會ニ於テ議決致シ
マシタル所ノ其目的ヲ、多少トモ滿足サセ
吳レテル所ノモノガ殆ドナカッタト申シテ
モ過言デハナカラウト存ジマス、或ル意味
ニ於キマシテハ、本議會ハ國民ノ窮迫セル
狀態ニアル此負債整理ヲバ、最モ有效適切
ニシテヤルト云フコトガ、此議會ノ使命デ
アルトマデ、私申シテ差支ナイカト考ヘラ
レマス(拍手)然ルニ若シモ此重大ナル所ノ
目的ガ達セラレナイト云フコトデアリマシ
タナラバ、ソレハ甚シキ國民ノ不幸デアル
ノミナラズ、更ニ國民ガ一層ノ失望落膽ヲ
スルモノナリト確信スル者デアリマス(拍
手)然ルニ政府ノ提出致シマシタル所ノ農
村負債整理組合法ヲ檢討シテ見マスレバ、
吾々ノ期待ハ盡ク裏切ラレテ居ルノデアリ
マス(拍手)平常時ニ於キマシテハ、或ハ事
務的ニ唯頭デノミ總テノ對策ガ作ラレヽバ
宜イノカモ分リマセヌ、併ナガラ今日ノ如キ
非常時ノ匡救ヲ目的トシテ居ル場合ノ政府
ノ政策ハ、頭デノミ單ニ事務的ニ作ルト云
フコトデハ、迚モ碌ナ對策ガ出來ルモノト
ハ考ヘラレナイノデアリマス(拍手)飽クマ
デ腹デ大膽ニ作ルニアラズンバ、或ハ多少
ノ後ニ於ケル非難ヲ顧慮スルガ如キニ於テ
ハ、到底此非常時對策ヲ作ルコトハ困難デ
アルト、私ハ考ヘテ居ルノデアリマス(拍
手)瀕死ノ病人ニ會ヒマシテハ、、思ヒ切ッテ
劇藥ノ注射ヲシナケレバ、蘇生ヲ致サナイ
ノデアリマス、甚ダ僣越ナ言葉デアルカ知
リマセヌガ、現內閣ハ此非常時ノ對策ヲ遂
行スベキ使命ヲ負フタノデ、變態ナガラ茲
ニ成立ヲ致シタノデアリマス、然ルニ若シ
モ此非常時ノ對策、殊ニ一番中心トナッテ
居リマス所ノ、國民負債ノ整理ヲスルコト
ガ出來ナカッタナラバ、現內閣ノ成立ハ甚ダ
シク意義ヲ減殺スルモノト考ヘルノデアリ
マス、政府提案ノ負債整理組合ヲ一言ニシ
テ批評致シマスレバ形體ハ備ヘテ居ルケ
レドモ、更ニ生命ノ通ヲテ居ラナイ案デア
ルト申シテモ、必シモ獨斷デナイト考ヘマ
ス(拍手)第一ニ政府ガ自力更生ノ見地カ
ラ隣保共助ノ趣旨ヲ中心トシテ此組合ノ組
織ニ成功セント致シテ居ルノデアリマスル
ガ、隣保共助ト云フ精神ハ吾々モ同感デア
リマス、併ナガラ單ナル隣保共助ハ、其言
フ事ヤ善シ、其行フ事ヤ難シト云フコトヲ
考ヘナケレバナラヌノデアリマス〔拍手)極
ク少數ナル特殊ノ人ヲ除キマシテハ、昔カ
ラサウ申シテ居リマス、恆產無キ者恆心無
シ、衣〓足ッテ禮節ヲ知ルト云フ事ヲ申シ
テ居リマスルガ、是ハ實ニ千載ヲ一貫セル
眞理デアルト云フコトヲ忘レテハナラヌノ
デアリマス、然ルニ衣〓ナキ者ニ禮節ヲ强
イテ見マシテモ、ソレハ瀬死ノ重病患者ニ
對シテ西式健康法ヲ强イルヤウナモノデア
リマシテ、到底相談ニナラヌノデアリマス
(拍手)吾々ハ政府ノ謂フ所ノ自力更生モ、
隣保共助モ、洵ニ結構デアリマスルガ、先
ヅ與ヘテ後ニ自力更生ヲ說キ、與ヘテ後ニ
隣保共助ヲ說クニ於テ初メテ是等ノ意義ガ
ハッキリト致スノデアリマス(拍手)
委員會ニ於キマスル所ノ農林大臣ノ御說
明ヲ聽キマスルト云フト、是ハ先程カラ申
サレテ居リマスル通リ、殆ド組合法ヲ作ッテ
モ、其資金ノ當テト云フモノガ一ツモナイ、
ドウシテ組合法ニ對シテ資金ヲ融通シテヤ
ルト云フ所ノ確信ガ更ニナイノデアリマ
ス、又先程委員長ノ御言葉ニモアリマシタ
如ク、之ヲ貸出スニ付テドウシテ貸出ス考
デアルカト聞キマスルト、ソレハ先ヅ低利
資金ヲ各府縣ヘ貸シテヤル、各府縣ハ責任
ヲ以テ之ヲ組合ニ貸スノダ、若シ損失ノア
ル場合ニハ縣ガ其損失補償ノ任ニ當ルノダ
ト、斯ウ云フ御說明デアリマス、今ヤ各府
縣共地方ト同ジク非常ニ疲弊ヲ致シテ居ル
ノデアリマス、然ルニ國庫ハ懷手ヲシテ居〃
テ、サウシテ各府縣ニノミ其責任ヲ轉嫁サ
シテ、此負債整理ヲ爲ササウトスルガ如キ
ハ、是ハ單ナル畫餅ニ過ギズシテ、實行ノ
出來ナイコトハ明ナ事實デアリマス(拍手)
又預金部ノ資金ノミニ於テ、大體ニ之ヲ處
理シヨウトスル考デアリマスガ、併ナガラ
預金部ノ資金モ限リガアル、若シモ成績好
ク堅實ナル此負債整理組合ガ各地ニ澤山出
來テ、其要求ガ相當ニアリマシタ場合ニ、
堅實ナル所ノ整理組合デアッタナラバ、當然
之ヲ認メテ其要求ニ應ジナケレバナラヌノ
ダガ、其場合ニ預金部ノ資金ガ若シ足リナ
カッタラドウスルカト言ウテモ、之ニ答フ
ル所ナイノデアリマス、斯ノ如キ殆ド其資
金ト云フコトニ付テハ、何等ノ茲ニ確信ヲ
持タナイノミナラズ、私ガ非常ニ奇怪ニ感
ジマシタコトハ、最後ノ委員會ニ於キマシ
テ大藏大臣ガ御出席ニナリマシタ其場合
ニ、他ノ委員ノ諸君カラ此農林省ヨリ提案
サレテ居ル負債整理組合法ニ對シテ、大藏
大臣ハ其資金ノ融通ヲ將來シテヤルコトニ
對シテ、諒解ヲシテ居ラレルノカドウカト
云フ質問ガアック、其時ニ大藏大臣答ヘテ曰
〃、實ハワシハ能ク知ランノデ、大方終ヒ
頃ニ慌テヽ出タヤウナコトデ一向ワシハ話
ヲ聞イテ居ラヌ、政友會ノ誰ヤラカラ、ソ
ンナ話モ聞イタガ、ト言ッテ居ラレル、甚
ダ吾々ハ失望スルノデアリマス、今ヤ國民
ノ大ナル期待ヲ受ケテ、而モ此內閣ノ大ナ
ル使命ノ一ツデアルベキ此負債整理案ナル
モノガ、唯主務大臣或ハ主務省ノミニ於テ、
一夜作リト申シテハ甚ダ失禮デアリマスケ
レドモ殆下急速ノ間ニ出タ爲ニ、其資金
ノ當テスラモナカッタノデナカラウカト云
フコトノ疑ヲ、吾々ニ持タスルニ至ッタト
云フコトハ、甚ダ吾々ノ遺憾ニ感ズル所デ
アリマス(拍手)
以上ノ私ノ申上ゲマシタコトヲ綜合シテ
申シマスレバ、現在ノ政府ノ提案ハ、旣
其根幹ニ於キマシテ何等ノ信念ヲ有セザル
所ノ、對案デアルト申シテ差支ナイノデア
リマス(拍手)是レ私ガ曩ニ形體ハ備フテ居。
テモ、生命ノ通ハザル所ノ案デアルト申シ
タ所以デアリマス、吾々ノ主張ハ吾々ノ特
ニ持ッテ居リマスル所ノ對案ハ、旣ニ我ガ同
志ヨリ、多ク總テノ場合ニ於テ述ベテゴザ
イマスルシ、又今囘建議案トシテモ此議會
ニ出シテ居リマスルカラ、玆ニ私ハ是等ノ
コトヲ省キマス
唯最後ニ一言申上ゲタイコトハ、政府ハ
此農村及中小商工業者ノ負債ヲ整理スルト云
フコトハ、何ダカ個人々々ノ借金ヲ整理シ
テヤルコトデアッテ、ソンナニマデ多ク國家
ガ力ヲ直接ニ入レナケレバナラヌト云フ筈
ハナイト云フ意味合ノ、吾々ハ說明ヲ聽イ
テ居ルノデアリマス、所ガ是ハ思ハザルノ
甚シキモノデアリマシテ、今ヤ農村ノ窮乏
ヲ救ヒ、農村ノ箇々ノ借金ノ重壓ヲ除イテ
ヤリ、中小商工業者ノ是等ノ窮迫ヲ除ク所
以ノモノハ、是レ農村ヲ救濟シ、中小商工
業者ヲ救濟スルノミデナイ、軈テ我ガ國家
ヲ救フ所以デアルト云フコトヲ考ヘナケレ
バナラヌ(拍手)斯ル主張ニ於キマシテ、吾
吾ハ決シテ尙ホ吾々ノ修正案ニ於テモ滿足
デアルトハ思ッテ思リマセヌケレドモ、今囘
此修正案ヲ提出致シタ所以デアリマス、ド
ウカ滿場ノ御贊成ヲ御願致シマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313242X00919320901&spkNum=128
-
129・秋田清
○議長(秋田〓君) 討論ハ終局致シマシ
タ、採決ニ付キ一言致シマス、委員長報告
ト、松本君提出ノ修正案及後藤君提出ノ修
正案トノ間ニハ、共通ノ點モアリマスガ、
便宜上各案ヲ各々不可分ノモノトシテ、各
別ニ採決致シマス、採決ニ入リマス-後
藤亮一君提出ノ修正案ニ贊成ノ諸君ノ起立
ヲ求メマス
〔贊成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313242X00919320901&spkNum=129
-
130・秋田清
○議長(秋田〓君) 起立少數、後藤君提出
ノ修正案ハ否決セラレマシタ、次ニ松本君
提出ノ修正案ニ贊成ノ諸君ノ起立ヲ求メマ
ス
〔賛成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313242X00919320901&spkNum=130
-
131・秋田清
○議長(秋田〓君) 起立少數、松本君提出
ノ修正案ハ否決セラレマシタ、次ニ委員長
報告中、修正ノ部分ニ贊成ノ方ノ起立ヲ求
メマス
〔贊成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313242X00919320901&spkNum=131
-
132・秋田清
○議長(秋田〓君) 起立多數、委員長報告
中ノ修正ノ點ハ可決サレマシタ、其他ノ部
分ハ原案ノ通リ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313242X00919320901&spkNum=132
-
133・秋田清
○議長(秋田〓君) 御異議ナシト認メマ
ス、其他ノ部分ハ原案ノ通リ決シマシタ、
是ニテ本案ノ第二讀會ハ終了致シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313242X00919320901&spkNum=133
-
134・上田孝吉
○上田孝吉君 直ニ本案ノ第三讀會ヲ開カ
レンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313242X00919320901&spkNum=134
-
135・秋田清
○議長(秋田〓君) 上田孝吉君ノ動議ニ御
異議アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313242X00919320901&spkNum=135
-
136・秋田清
○議長(秋田〓君) 御異議ナシト認メマ
ス、直ニ本案ノ第三讀會ヲ開キ、議案全部
ヲ議題ト致シマス
農村負債整理組合法案第三讀會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313242X00919320901&spkNum=136
-
137・秋田清
○議長(秋田〓君) 別ニ御發議モアリマセ
又、本案ハ第二讀會議決ノ通リ、可決確定
致シマシタ
〔拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313242X00919320901&spkNum=137
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138・上田孝吉
○上田孝吉君 國務大臣ニ對スル質疑ハ次
囘ノ議事日程終了後繼續スルコトヽシ、殘
餘ノ日程ハ之ヲ延期シ、直チニ散會セラレ
ンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313242X00919320901&spkNum=138
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139・秋田清
○議長(秋田〓君) 上田君ノ動議ニ御異議
アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313242X00919320901&spkNum=139
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140・秋田清
○議長(秋田〓君) 御異議ナシト認メマ
ス、次囘ノ日程ハ公報ヲ以テ御通知致シマ
ス、本日ハ是ニテ散會致シマス
午後九時三分散會
衆議院議事速記錄第八號中正誤
頁段行誤正
一三六三一八一箇村僅ニ一箇村一戶
當リ僅ニ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006313242X00919320901&spkNum=140
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