1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和八年二月三日（金曜日）午前十時十七分開會発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006402685X00419330203&spkNum=0
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001・松平康昌
○委員長(侯爵松平康昌君) 前會ニ引續キ
マシテ都市計畫法中改正法律案特別委員會
ヲ開キマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006402685X00419330203&spkNum=1
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002・川村鐵太郎
○伯爵川村鐵太郞君 私昨日此前ノ委員會
ニ申上ゲマシタガ、詰リ衞生施設ニ付テ、都
市計畫トノ關係ニ付テ、衞生ノ問題ノ一例ト
致シマシテ、塵芥投棄場ヨリ發生セル瓦斯ニ
付テ極ク簡單ニ申上ゲマシタガ、此事實ニ
付テ北海道帝國大學ノ衞生學〓室ニ於テ發
表サレタ事實ニ基イテ、私ハ申シタノデア
リマス、卽チ此書キマシタモノガゴザイマ
スガ、之ヲ、此間ノ話ト一〓ニ關聯シテ居
ルコトデアリマスカラ、相當長イモノデア
リマスカラ、委員長ノ御許シヲ受ケマシテ、
之ヲ速記ニ揭ゲテ置キタイト思ヒマス、御
許シガ願ハレマセウカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006402685X00419330203&spkNum=2
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003・松平康昌
○委員長(侯爵松平康昌君) 御諮リ致シマ
スガ、特別御異議ガナケレバ委員長ハ差支
ナイト考ヘマスガ、如何デゴザイマセウカ、
皆サンニ特ニ之ニ付テ··
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006402685X00419330203&spkNum=3
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004・松平康昌
○委員長(侯爵松平康昌君) ソレデハ宜シ
ウゴザイマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006402685X00419330203&spkNum=4
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005・川村鐵太郎
○伯爵川村鐵太郞君 ソレデハ之ヲ一ツ御
願ヒシテ置キマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006402685X00419330203&spkNum=5
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006・松平康昌
○委員長(侯爵松平康昌君) 尙ホ此外ニ御
質問ハゴザイマセヌカ······御質問ガナケレ
バ、御質問ナシト認メマシテ一應質問ヲ打
切リマシテ、此法案ニ付テ少シク皆サンニ
御意見ノ交換ヲ願ヒタイト思ヒマスノデ、
懇談會ニ移スコトニシテハ如何デゴザイマ
スカ
〔「贊成ト」呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006402685X00419330203&spkNum=6
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007・松平康昌
○委員長(侯爵松平康昌君) 宜シウゴザイ
マスカ······ソレデハ一應休憩イタシマス、
速記ヲ止メテ··
午前十時二十一分休憩
午前十時五十八分開會発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006402685X00419330203&spkNum=7
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008・松平康昌
○委員長(侯爵松平康昌君) 委員會ヲ再會
イタシマス、大體御質問ガナイヤウデアリ
マスカラ討論ニ移リタイト考ヘマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006402685X00419330203&spkNum=8
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009・大森佳一
○男爵大森佳一君 私ハ意見ヲ述べタイト
思ヒマス、本改正案ハ先ヅ時流ニ應ズル趣
旨カラ見テ、我ミハ之ヲ是認シテ可決ヲ致
シタイト云フ考デアリマスルガ、質問ノ時
期ニ於キマシテ、色ミ御尋ヲ致シマシタシ、
其上審議ヲ致シマシタ結果、我〓ノ意思ノ
アリマスル所ヲ、可決スルト同時ニ表明イ
タシタイ、ソレハ御承知ノ如クニ、各委員
ヨリモ、又私ヨリモ、種々都市計畫法ノ運
用上餘程政府當局ニ於テ、確實ニ法ノ要求
スル所ニ從ッテ遺憾ノナイヤウニ、徹底シテ
ヤッテ行カネバナラナイト云フ考ヲ持ッテ居
リマシテ、其心配ノ上カラ實ハ本改正案ノ
事項ニ付テ懸念ヲ致シテ居ッタ譯デアリマ
スルガ、先般來政府委員、最後ニ內務大臣
ノ言明モアリマスルシ、此都市計畫法運用
上ニ於テ確實ナ統制ヲ付ケテ、サウシテ法
ノ要求スル所ニ従ッテ行ッテ、十分遺憾ノナ
イヤウニスルト云フコトニ信賴イタシマシ
テ、此案ヲ可決シタイ、サウシテ其關係ヲ、
我ミト致シマシテ決議ニ依リマシテ表明イ
タシタイ、其案ハ讀ミマセウカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006402685X00419330203&spkNum=9
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010・松平康昌
○委員長(侯爵松平康昌君) ドウゾ······発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006402685X00419330203&spkNum=10
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011・大森佳一
○男爵大森佳一君 讀ミマス
本改正案ハ時運ニ應スルノ主旨ニ出ツ
ト雖現下都市計畫法運用ノ實際ニ徵スル
ニ動モスレハ都市ニ於ケル諸般ノ企業施
設ニ對シ法ノ要求スル規律統制ヲ缺クノ
傾向アリ都市將來ノ爲遺憾尠カラス殊ニ
本改正ニ依リ法ノ適用範圍ヲ擴張スルニ
至リテハ尙更這般ノ用意ヲ加フルノ要ア
リ
政府ハ宜シク右ニ關シ考慮ヲ遂ケ速ニ適
當ノ方法ヲ講セラレムコトヲ望ム
斯ウ云フ決議案ヲ附シテ見タノデアリマ
ス、是ダケノ處置ヲ講ジマシテ可決ヲスル
ヤウニ致シタイト云フ意見デアリマスルガ
何卒各位ニ於テ御贊成アラムコトヲ希望シ
テ已マナイ次第デアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006402685X00419330203&spkNum=11
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012・川村鐵太郎
○伯爵川村鐵太郞君 私モチヨット一言申
上ゲタイト思ヒマス、全然私モ大森男爵ノ
御意見ニ共鳴スル次第デアリマス、殊ニ衞
生各種ノ施設ト云フモノガ都市計畫ニ最モ
必要ナル事項デアリマスカラ、將來ニ於テ
成ルベク此方面ノコトハ政府ニ於テ十分御
考慮アラムコトヲ希望シテ已マヌノデアリ
マス、私ノ申上ゲマスコトハ大森男爵ノ御
意見ノ中ニ悉ク網羅サレテ居リマスカラ、
更ニ之ヲ重複イタシマスカラ申上ゲマセヌ
ガ、單ニ大森君ノ御意見ニ全然同意ヲ表ス
ルト云フコトヲ申上ゲテ置キマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006402685X00419330203&spkNum=12
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013・松平康昌
○委員長(侯爵松平康昌君) 特ニ御意見ハ
ゴザイマセヌカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006402685X00419330203&spkNum=13
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014・大森佳一
○男爵大森佳一君 此案ガ若シ幸ニ御決議
ニナリマシタ上ハ、委員長ニ於カレマシテ
此趣旨ノアリマスル所ヲ本會議ニ於カレ
テ相當ニ、適當ニ御報告ニナラムコトヲ私
希望シテ已マヌノデアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006402685X00419330203&spkNum=14
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015・松平康昌
○委員長(侯爵松平康昌君) 畏リマシタ、
特ニ御意見ガナイヤウデアリマスガ、先ヅ
ソレデハ大森男爵カラ御出シニナリマシタ
此希望決議ニ付キマシテ採決ヲシタイト考
ヘマスカラ、之ヲ本委員會ノ希望決議トス
ルコトニ御異議ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006402685X00419330203&spkNum=15
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016・松平康昌
○委員長(侯爵松平康昌君) 全會一致デ本
委員會ノ希望決議トスルコトニナリマシ
タ、ソレデハ此改正法律案其モノニ付テ決
ヲ採リタイト思ヒマスガ、御異議ゴザイマ
セヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006402685X00419330203&spkNum=16
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017・松平康昌
○委員長(侯爵松平康昌君) 只今御可決ニ
ナリマシタ希望決議ヲ附シマシテ此政府案
ヲ通過サスコトニ御異議ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006402685X00419330203&spkNum=17
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018・松平康昌
○委員長(侯爵松平康昌君) 全會一致ヲ以
テ通過イタシマシタ、委員會ハ是ニテ散會
イタシマス
午前十一時六分散會
參照ハ追テ追錄トス
出席者左ノ如シ
委員長侯爵松平康昌君
副委員長次田大三郞君
委員
伯爵川村鐵太郞君
子爵森俊成君
男爵金子有道君
男爵大森佳一君
中村純九郞君
津村重舍君
松本勝太郞君
政府委員
內務書記官飯沼一省君
塵芥投棄場ヨリ發生セル瓦斯ニ就テ
靑木市太郞
木村正一
佐々木憲介
北海道帝國大學醫學部衞生
學〓室(主任井上〓授)
(昭和六年十月二十六日受付)
〓言及ビ文獻
著者等ハ曩ニ「塵芥投棄場ニ於ケル塵芥
ノ變化ニ就テ」ナル表題ノ下ニ塵芥ノ腐敗
經過竝ニ其機轉ニ就テ述ベタリ1)。本編ニ
於テハ其塵芥投棄場ヨリ發生セル瓦斯ニ就
テ〓究セリ。
今日迄ノ文獻涉獵スルニ塵芥投棄場ニ於
テ發生スル瓦斯ニ就テ〓究セシ業績ハ著者
等ハ寡聞ニシテ之ヲ見ザリキ。只岡崎氏(2)
ガ塵芥ノ腐敗作用ニ就テ〓究シ各種ノ厨芥
ヲ硝子容器ニ入レ、之ヲ各溫度ニ於テ腐敗
セシメ發生セル腐敗瓦斯卽チ炭酸瓦斯、硫
化水素、竝ニ「アムモニア」ヲ一定時間每ニ
定量シ、是ヲ以テ厨芥ノ腐敗狀態ヲ比較考
究シ、其何レノ瓦斯ガ腐敗經過ト並行スル
カ、卽チ何レノ瓦斯ヲ以テ腐敗ノ標尺トナ
シ得ルカヲ闡明ニセントシテ〓究セル業績
ハアルモ、塵芥投棄場ヨリ如何ナル瓦斯ガ
發生スルカト言フ問題ニハ觸レザリキ。尙
同氏ノ成績ニ就テ述ブレバ、硫化水素ハ混
合厨芥ノ腐敗中ニハ相當量發生スルモ腐敗
經過トノ間ニハ一定ノ關係ヲ見出シ難ク、
「アムモニア」ハ混合厨芥ニテハ腐敗ノ極期
ニ到リ少量發生スルモ爾後ハ殆ンド同量ヲ
發生シ、腐敗終了後モ減少セズ。炭酸瓦斯
ハ各種厨芥ノ何レニ在リテモ三瓦斯中最モ
多量ニ發生シ、且ツ腐敗經過トノ關係最モ
明カニシテ比較的克ク之ト並行セリ故
著者ハ厨芥ノ腐敗經過ノ標尺トシテ炭酸瓦
斯ヲ以テスルヲ便宜ナリト報〓セリ。
以上述ベタル如ク塵芥投棄場ヨリ發生セ
ル瓦斯ノ種類ニ就テ〓究セシ業績ハ極メテ
少シ故ニ著者等ハ之ニ就テ〓究試驗シ聊カ
得タル處ヲ玆ニ發表シ諸賢ノ御批判ヲ仰ガ
ントス。
第一章試驗場所ノ沿革
著者等ノ試驗セル函館市塵芥投棄場ノ沿
革ニ就テ調査シタルモ詳カナラズ。今其〓
略ニ就テ述ベン。函館市ハ日々排出セラル
ル塵芥ヲ市ノ東海岸ニ當ル東川町海岸ニ明
治十九年以來投棄シ、其後明治三十四年ヨ
リハ汚物掃除法ニ依リテ塵芥ヲ同所ニ投棄
シ爾來今年ニ至ルマデ約四十年間ノ長年月
ニ亙レリ。此塵芥投棄ノ最初ノ目的ハ海水
ノ浸入ヲ防グタメ防波堤ヲ造ラントスルニ
在リキ。此事業ニ成功セル某氏ハ其功勞ヲ
表彰セラレ藍綬褒章ヲ授與セラレタリト謂
フ.然ルニ其後人口增加シ都市モ次第ニ發
展擴大スルニ連レ、日々投棄セラルル塵芥
ノ量モ益々增加シ來リ、此四十年間ニ膨大
ナル塵芥ノ山ヲ形成スルニ至レリ。卽チ最
高三十四尺、最低二十尺、延長四百間ニ亙
レリ。斯クノ如キ塵芥ノ山ガ市ノ海岸ニ堆
積セラルルコトハ單ニ衞生上ノミナラズ、
都市ノ美觀ヲ害シ、加フルニ近年コノ塵芥
投棄場ヨリ自然發火スルコト一年間ニ數十
囘ニ及ベルタメ屢々消防夫ノ出動ニ依リテ
消火シタル等種々ノ問題ヲ起セリ。此處ニ
於イテ市當局モ大都市ノ風上ニ在ル塵芥ノ
山ヲ取リ除カントノ計畫ヲ樹テ、本年三月
末ニ之ガ除去ニ著手セリ。之ガ爲メニ海岸ニ
護岸工事ヲ施シ塵芥ハ總テ海上ニ投棄スル
コトトセリ(本誌第十年第五號ノ作業著
手前後ノ圖參照)然ルニ作業進行シ塵芥ノ
山ガ表層ヨリ次第ニ掘リ下ゲラレ表面ヨリ
二米突以下卽チ醱酵ノ旺盛ナル層ニ到達セ
リ.此處ニ至リ惡臭ノ瓦斯發生シ作業中ノ
人夫逹ハ頭痛、呼吸困難又ハ眩暈等ヲ訴ヘ
作業困難トナレリ。尙ゴムノ地下足袋ガ僅
カ三日位ニテ腐蝕シ破損シ、更ニ著用セル
股引半纒ノ類モ同樣ニシテ、其耐久力ハ普
通勞働時ノ三分ノ一ニ過ギズト謂ヘリ新
聞記事參照)。然カモ此ノ瓦斯ハ市中ニ瀰
散シ、市民其惡臭ニ苦シミタリ。尙コノ塵
芥投棄場ノ極ク近クニ小學校アリ、同校ノ
職員生徒ハコノ惡臭瓦斯ノタメニ頭痛甚ダ
シク又咽喉ガ刺戟セラレ咳ヲ惹起セシメ一
時ハ小學校ヲ休校セシメントシタル程ニシ
テ當時函館市ノ一問題トナレリ當時ノ函館
ノ二新聞ノ記事ヲ此處ニ記シ、其ノ發生セ
ル瓦斯ニ就テノ實況ヲ示サントス。
函館每日新聞記事(3)四月八日
東川町護岸工事。流石ノ勞働者モ逃ゲ出
ス。東川町講岸工事ハ目下旺ニ地均シ塵芥
處理ヲ行ツテ居ルガ山積サレル塵芥ノ惡臭
ト「メタンガス」ノ發生ニ依リ從業人夫ハ病
氣ニ罹リ倒レルモノ多ク工事初期ハ一囘平
均百人餘ノ人夫募集ヲ見タルガ仕事ニ堪エ
兼ネ逃ゲ出スモノ多ク昨今漸ク數十人位ノ
從業者ナキ由デ殊ニ勞働服ヤ靴ナドハ臭氣
ト「メタンガス」ニ依リボロボロトナルノ
デ一日賃金七十錢乃至八十錢デハ間ニ合ハ
ヌト言フ不平ナド出デ失業勞働者洪水ノ今
日流石ノ勞働者モ辟易ノ體デアル。
函館新聞記事(1)四月十二日
足袋ヲ腐ラス。耐エラレヌ臭氣。次ニ勞
働狀態ダガ人モ知ル魔ノ堤防、何シロ數十
年來投ゲ捨テラレテハ蓄積シタ尨大ナル塵
芥ガ凝ツテ堤防トナツテ居ルノダカラ取除
クニ「ツルハシ」ヲ入レルト例ノ發大作用
ヲ持ツ「メタンガス」ヤ其ノ他種々ノ有害
「ガス」ガ發生シ、中ヘ踏込ムトハイテ居ル
高丈ガ僅カ三日位デ腐ツテ切レテシマフ。
普通ノ勞働者ナラバ一足デ一ケ月モ持ツモ
ノガ月ニ十足近クモ要ルノデ······身ニ付ケ
テ居ル股引ヤ半纒ノ類モ之ニ準ジ平常ノ勞
働ノ三分ノ一シカ耐久力ガナク、カテテ加
ヘテゴミノ深部ニナル程「ガス」ガ猛烈デ日
日數人ノ卒倒者ヲ出シ眼モアテラレヌ有樣
トテ普通ノ健康體ヲ持ツ人間ノ鼻デハ其臭
氣ダケデモ我慢ガ出來ヌト云フノデアル。
「マスク」ヲ使用セヨ。
コンナ調子ダカラ失業者救濟ノタメ職紹
ノ斡旋シタル人夫タチモ去ル八日等三十人
モヤツタウチデ現場ヘハイツタ者僅カニ九
人、三分ノ二以上ハ一目見テ逃ゲ出シテシ
W. .ソシテ現場デ仕事ニ就イタ九人ノウ
チ三人ハ途中デ我慢ガ出來ズニ歸ツテ了ツ
タト言フ狀態、昨今ハ每日職紹カラヤツタ
人夫ノウチ平均二割シカ就職シナイソウデ
話ニナラナイ。勞働者ハ失業シテ居ナガラ
自ラ職ヲ嫌ツテ撰リ食ヒスルコトモ惡イガ
彼等モ人間デアル限リ多少ハ健康ト衞生ト
ヲ考ヘテヤルベキダカラゴミヲ取除キノ間
ダケハセメテ「マスク」デモカケサセテヤリ
使用者ノ方デ考慮シテヤルベキダト頻リニ
力說スル人モ出テ來テル。
四月十六日(5)護岸工事ノ毒瓦斯第二東川
校ヲ襲フ。處ガ問題ハ働ク人夫達バカ
リデナク附近ノ住家ハコノ臭イ匂ヒニ惱マ
サレテ殊ニ東風ノ吹ク時ハ一層甚ダシク住
民達ノ健康ニ影響少ナカラズト苦シンデ居
ル。更ニ由々シキ問題ノ發生ハ第二東川小
學校ヲ「メタン」瓦斯ガ襲フテ生徒達ノ健康
ヲ害シツツアルガ實ニ驚イタ。同校ノ久慈
校長ハ十五日午後市役所ノ校長會議出席ニ
當リ野崎學校衞生主事ヲ訪ネ事情ヲロ頭陳
述シ市ノ調査方ヲ願ヒ出タ。ソレニ依ルト
春ノ聲ト共ニ東風吹ク日ガ多ク地熱ノ溫リ
ガ立チ込メ初メテ昨今校內ハ非常ニ臭氣ガ
漂ヒ多少ノ强弱ハアルモ連日ニ亙ルノデ何
カト調査ノ結果護岸工事ヨリ襲フ「メタン」
瓦斯ノ臭氣ト判明斯クスルウチニ兒童中ニ
夥ダシク嘔吐ヲスル者多ク眩暈ヒスルモノ
ナド續出シタガ結果ハ何レモ「メタン」瓦斯
ノタメト判明シタ。然シマダ卒倒シタ者ハ
無イガ結果ヲ想像スルモ心寒サヲ感ズベク
此儘デハ授業繼續ハ容易ナラザル模樣デ殊
ニ生徒ノ保健上野崎氏ハ頗ル重大視シテ居
ル。
四月十七日(3)東風ガ吹クト頭工合ガ惡イ。
··發生瓦斯ニ依ツテ惱マサレテ居ル事ハ
事實デアリマス。東風ガ吹ク時ハ殊ニ烈シ
イ三月末ノ學年末ノ休業中ニ事務室ニアツ
タ職員中ニハ頭工合ガ惡イ人ト咽喉ヲ痛メ
タ人ガアッタ。······今ノ處デハコノ爲メニ病
人ハ出マセンガ發作的ニ身體ニ異狀ヲ來タ
スコトハ孰レモ感ジサセラレテ居リマス。
何分大人ノ身體デサヘ斯ク感ズルノデスカ
ラ子供ニモ影響シナイデハ居リマセン。
以上ノ記事ニ依リ如何ニ其處ヨリ發生セ
シ瓦斯ガ惡臭ナリシカ又人體ニ對シテ如何
ニ有害ニ作用セシカヲ窺ヒ知ルコトヲ得ベ
シ。此處ニ於テ著者等ハ函館市ニ赴キ此塵
芥投棄場ヨリ如何ナル瓦斯ガ發生セルカヲ
〓究セリ。
第二章試驗方法竝ニ試驗成績
第一節瓦斯採取方法
塵芥投棄場ノ各層ヨリ發生セル瓦斯ノ採
取ニハ直徑約3糎、長サ4米ノ瓦斯鐵管ヲ
打チ込ミ、此ノ鐵管ノ上部ニハ二連球ヲ連結
シ鐵管中ノ瓦斯ヲ吸引スル裝置トナセリ
硝子管ノ下部ニハ「ゴム」管ヲ連結シ長ク埀
下セシメタリ。鐵管ノ下部ハ尖銳トナシ塵
芥層中ニ打チ込ミ易カラシメ、尙下部ニハ無
數ノ小孔ヲ開ケ瓦斯ガ充分鐵管內ニ充滿シ
得ル樣ニナセリ。斯クノ如キ鐵管ヲ塵芥層
中ニ打チ込ミ任意ノ層ヨリ瓦斯ヲ二連球ニ
依リテ吸引シ罎中ニ捕集セリ。定量方法ニ
就テハ各章ニ於テ述ベン。
第二節臭氣竝ニ反應
臭氣ハ極メテ惡臭ニシテ暫ク嗅グコトヲ
得ザル獨特ノモノニシテ腐敗臭ナリ。尙且
ツ刺㦸性アリ。
反應ハ可檢瓦斯ヲ捕氣罎中ニ採取シ、之
ニ蒸餾水ヲ入レ振盪シ、之ニ瓦斯ヲ吸收セ
シメ其反應ヲ見タルニ强「アルカリ」性ヲ呈
セリ。此「アルカリ」性反應ハ瓦斯中ニ含有
セラルル「アムモニア」ニ由ルコトヲ知レ
リ
第三節炭酸瓦斯(〇〇2)
炭酸瓦斯ノ毒性ニ關シテハ今日迄
Pettenkoffer以下Flugge,Haldane,W
Benedict〓其他ノ學者ノ〓究ニヨリ略究明
セラレタルガ如シ。BenedictFMiler〓
ニ依レバ、〇〇2ノ含量0.5-2.0%·印度線·
ルモ不快感ナク、然シ此際運動スレバ不快
ヲ感ズ。唯〇〇〓ノ濃度ガ5-7%ニ達スル
時ハ呼吸困難、眩暈、耳鳴等ノ症狀ヲ呈
シ、一〇-11%ニ達スレバ頭痛、惡心等ノ症
狀ヲ呈ス。而シテ炭酸瓦斯ハソレ自身ノ毒
要
第二弾〓〓〓〓〓〓時計3CBN3
〇〇N車0.915%2.18%
第一表ニ示ズガ如ク塵芥堆積層ノ表面ヨ
リ3cm下ノ層ニハ〇〇2ノ發生量ハ少
〃、2米突ニ達スルト相當多量ニ發生シ、
4米突下ニテハ最多量ノ〇〇〓ヲ發生
ス。尙此層附近ニテハ溫度70。〇位ナリ
キ。岡崎氏ノ說ヲ以テ律スレバ此4米突
下ハ最モ腐敗ノ旺盛ナル層ナリト言ヒ
得ベシ。此層ヨリ發生スル○○3量ニテハ
人ヲシテ呼吸困難、眩暈、頭痛等ヲ惹起セ
シメ得ベシ。7米突下ニテハ次第ニ其發生
量ハ減少シ、地表ヨリ60cmナル深層ニテ
ハ〇〇〓ノ發生量ハ少量ナリ。尙降雨アリシ
翌日ニハ雨水塵芥層中ニ滲透シ、醱酵旺
盛トナレリ。隨ツテ〇〇2ノ發生量モ多量
トナレリ。卽チ9.68%ニ達シ通常ノ發生
性ハ極メテ少ク、〇〇』ノ多寡ハ實際問題ト
シテハ單ニ空氣汚染ノ標尺トシテノミ重要
ナル意義ヲ有スルコトハ周知ノ事ナリ。
〇〇ニノ測定方法
鐵管ヨリ吸收セラレタル瓦斯ヲ先ヅ硫酸
中ニ通ジ、斯クシテ導カレタル瓦斯ヲ一定
容積ノ罎中ニ捕集シ〓ettenkoffer氏法ニヨ
リテ測定セリ。瓦斯捕氣罎ハ塵芥投棄場ヨ
リ發生セル〇〇2量餘リニ多キトキハ容積
700cc位ノ小ナル捕氣罎ヲ使用セリ。
試驗成績
塵芥投棄場ノ各層ヨリ發生セル瓦斯中ノ
○○〓量ヲ測定シタルニ次ノ如キ成績ヲ得タ
リ
1※
4日コヨ地表ヨリ
60cm上圖
降雨後
この8%7.99%0.653%0.502%
量ノ大約5倍ニ增量セリ。
第四節酸化炭素(〇〇)
酸化炭素ノ毒性ノ〓念
森田及西村(3)兩氏ハ石油瓦斯ノ各暖爐及
火鉢等ニヨル煖房ノ際發生スル室內酸化炭
素量ニ就キ詳細ナル〓究ヲ發表セリ。0由
之觀之諸工場ノミナラズ微量ノ酸化炭素
(0.01-0.03%)ハ吾人ガ日常生活ニ於イテ
屢々遭遇シツツアルモノノ如シ。而シテ如
斯微量ノ酸化炭素ハ吾々人類ニ有害ナリヤ
否ヤハ重要ナル問題ニシテ今日迄ニ諸學者
ニ依リテ〓究セラレタリ。COノ毒性ハ赤
血球毒ニシテ「ヘモグロビン」ト結合シテ酸
化炭素「ヘモグロビン」(CO-Hb)トナリ、
赤血球ト酸素トノ結合量ヲ甚ダシク減少セ
シムル外、神經毒(0.03-0.04%以上ニ於
イテノミ見ラル)或ハProtoplasma毒性ナ
リト稱セラレタリ。然レドモ特殊毒性說ト
其否定說トアリテ實驗的ニハ否定說堅キモ
ノアリ。中毒症狀ニ就テ略述セン。急性酸
化炭素中毒ニ罹レル動物ノ症狀ハ比較的定
型的ニシテ三ツノ時期ヲ經過ス。(1)麻痺期
2痙攣期37假死期ノ三期ナリ。人間ノ中毒
症狀ニ於テ酸化炭素中毒初期ノ最モ先ニ表
ハルル徴候ハ森田氏〓ニ依レバ頭痛ナリト
謂ヒ、漸次中毒進行スルニ連レ耳騒鳴、眩
暈、惡心、嘔吐等初期ノ現象ナリ。顏面紅
潮ヲ呈シ、外觀上恰モ酪酊シテ居ル有樣ニ
見エ、斯クシテ失神シ遂ニ痙攣ヲオコシ、
假死ニ陷ル。此假死期ニナルト手足ノ運動
障害ノ外ニ知覺麻痺ガ特有ナリ。次ノ時期
ニハ死スルカ或ハ死ヨリ免カルルカニ在リ。
又多クハ覺醒後ニハ記憶力消失ス。幸運ニ
シテ死ヲ免カルル時ト雖モ恢復後色々ノ嫌
フベキ病氣ヲ惹起スルコトアリ。卽チ血管
壁及神經節細胞ノ榮養障害ナリ。故ニ血管
破裂、痴呆症、腦脊髓軟化、麻痺、耳聾、
失語症、健忘症、多發性神經炎、舞踏病多
發硬變、ヒステリー性啞等種々ナル續發症
ヲ生ズルコトアリ。尙特ニ高度ニシテ持續
スル貧血又ハ腎臟炎ヲ起スコト有リトノ報
告アリ。尙○○中毒ノ限界量ニ就キ爲野
氏(0)ハ其指針トナルベキハ網狀赤血球ノ出
現程度ニシテ○○毒性限界量ハ0.01%ナ
リトセリ。○○ノ慢性中毒ノ場合生體ニ及
ボス影響ハ瓦斯代謝異常、物質代謝異常、
中毒尿中ニハ蛋白ニ伴ヒ常ニ糖ヲ有シ、血
液ニ變狀ヲ來ス。諸種動物ハ酸化炭素ニ依
リテ中毒死ヲキタス。其致死量ハ西村氏(11)
ニヨレバ2時間ノC)吸入ニテ死スル最少
限度量ハ十姉妹ハ○25%、雀ハ〇.%%、小
鼠ハ〇.3-0.4%ニシテ犬ハ〇.5%ナリキ。
而シテ海狽ハ1.0%ニシテ死シ、家兎ハ
1.3%ニテ絕命セリ。卽チ小鼠ハ血中ノ
CO-Hb量ガ約「0%ニ達セシ場合ニ死シ、
犬ハ86%、家兎ハ88%ノ血色素ガ○○ニ
ヨリテ飽和セラレタル場合ニ死セル結果ト
ナレリト報〓セリ。以上ノ如クCOハ動物
ニ對シテ極メテ毒性强シ。
試驗方法
可檢瓦斯ノ採取方法ハ先ヅ鐵管ヲ塵芥層
中ニ打チ込ミ之ヨリ導キタル「ゴム」管ヲ瓦
斯吸收罎ニ連續セリ。最初ノ吸收罎ニハ
Aetzkaliノ小片ヲ滿シ。不飽和炭化水素、
硫化水素、無水亞硫酸、其他還元性瓦斯ヲ
吸收除去シ、次ノ吸收罎ニハ濃硫酸ヲ入レ、
炭化水素化合物竝ニ「アムモニア」等ヲ吸收
セリ斯クノ如クニ處置セラレタル瓦斯ハ最
後ニ10立ノ捕氣罎中ニ水ヲ充滿シコノ水
ヲ流出セシムルコトニ依リテ捕氣罎中ニ檢
體ヲ置換シ、コノ瓦斯ニ就テ〇〇ヲ檢查セ
リ
定性試驗
〇〇ノ定性試驗方法トシテ以下ノ三方法
ヲ行ヘリ。
(1)Franzenu.Mayer氏法卽チ黃色血
滷鹽法、家兎ノ脫纖維血液aneニNew
黃色血滷鹽溶液「...CCヲ加ヘ、之ニ
ノ醋酸ヲcn加ヘ、之ヲ可檢瓦
斯中ニ一定時間放置スルトキハ血液ハ
赤褐色ヲ呈セリ。之ニ依リテCCノ存
在ヲ知レリ。
(2)次ニ亞「クロールパラヂウム」ヲ以テ
濡シタル濾紙ノ黑變スルコトニ依リテ
〇〇ノ存在ヲ知レリ。
(3)更ニ空氣中ノ○○ノ微量精密測定法
トシテ家原氏(5)ハ「マウス」竝ニ小禽ヲ
用ヒ、血中ノCO-Hb量ヨリ空氣中ノ
〇〇ノ濃度ヲ測定スル方法ハ化學的鑑
識法ヨリ遙カニ有利ナリトセリ。著者
等ハ二匹ノ「マウス」ヲ數個ノ金網製
籠ノ中ニ入レ之ヲ塵芥堆積層ノ橫ニ掘
リタル孔中ニ入レ置キ其狀態ヲ觀察セ
リ。然ルニ「マウス」ハ孔中ニ入レラレ
タル直後ニハ不安狀態ニナリ籠中ヲ遁
走ヒントシテ馳驅シ、次第ニ運動不活
潑食慾不振トナリ、食餌ハ之ヲ取ラ
ザリキ。二日間察シタルニ三日目ニ九
匹ハ浮浪者ニヨリテ盜マレ殘リノ二匹
ハ之ヲ試驗室ニ持チ來タルニ翌日二匹
共ニ斃死セリ。コノ「マウス」ノ死ノ原
因ハ果タシテCCニ依ルヤ否ヤハ血液
署
青山第一弾謀菜キニ3cmに〓
〇〇圖0.05°/CO○○○ge
第二表ニ示スガ如ク表層ニモCOハ發生
シ、2米突、4米突、7米突ト次第ニ深層
ニ至ルニ從ツテ其發生量ヲ增加シ、極メテ
深キ層ニテハ其發生ヲ見ザリキ。前述ノ如
ク爲野氏ハ酸化炭素中毒限界量ヲ〇.01%ナ
リトセリ。之ニ依レバ第二表ニ示スガ如ク
此塵芥投棄場ノ2米突ノ深層ヨリ發生セル
○○量ハ中毒ヲ起サシムル限界內ニ在リ。
更ニ進ムトキハ○○量ハ增加スル故ニ此處
ヨリ發生スル瓦斯ハ極メテ危險ナリト言ヒ
得ベシ。此處ニ興味アルコトハ○○發生量
ハ他ノ〇〇〓マン·N11等等發生量ト其ノ趣
ヲ異ニセル處ナリ。卽チ○○以外ノ瓦斯ハ
ノ檢査出來得ザリシ故ニ斷定シ難キ
モ、是等ノ狀態ヨリ總合シテ按ズルニ
塵芥投棄場ヨリ發生セル瓦斯ハ「マウ
ス」ニ對シ極メテ有毒ナルコトヲ知レ
リ
定量方法
〇〇ノ定量方法ニハ種々ノ方法アルモ著
者等ノ場合ハ出張先ナレバ遺憾ナガラ極メ
テ簡便ナル方法卽チFoder氏〓略定量方
法ニ依リテ測定セリ。卽チ可檢氣體ノ滿サ
レタル罎中ニ亞「クロールパラヂウム」液ヲ
以テ濡シタル濾紙(長サ6cm,幅0.6cm)ヲ
吊シ、其黑變セル時間ヲ以テ○○ノ含量ヲ
Eoder氏〓算法ニ依リテ測定セリ。
試驗成績
塵芥投棄場ノ各層ヨリ發生セル(○)量ハ
大略次ノ如シ。
n*
A一=a地表ヨ順一
60CEト
0.2-0.30goCaseCO1
醱酵ノ最モ旺盛ナル處、卽チ4米突下ニ於
テ最多量ニ發生セルニ拘ラズ、〇〇二四分子
ハ醱酵ノ旺盛ナル處ヨリ更ニ下層卽チ醱酵
ノ稍終熄セル層、7米突下ニ於テ其發生量
ガ最大ナルコトナリ。此處ニ於テ著者等ノ
按ズルニ塵芥投棄場ノ表層ハ空氣ノ流通良
ク從ツテ酸化作用充分ニ行ハレ、有機物ガ直
チニ〇〇トトルルニ反シ之ヨリ深層ニ於テハ
酸素ノ供給惡シク故ニ酸化作用不充分ニシ
テ有機物ガ直チニCO2ニマデ酸化セズシ
テ酸化ノ途中ナル○○トナリテ存在スルナ
ラント思惟セラル。
第五節「アムモニア」(〓〓〓)
「アムモニア」ハ種々ナル含窒素有機物ノ
分解ニ依リテ生ズルモノニシテ汚穢物ノ堆
積停滯シタル處ニ發生シ、殊ニ分解ノ盛ニ
行ハルル時ニ發生スルモノナリ。「アムモ
ニア」ハ直接健康ヲ害スルコト無キモ間接
ニ其臭氣ニ依リテ食慾ヲ害シ又深呼吸ヲ妨
グル等ノ害アリ。若シ〇〓。〓〓ノ「アムモニ
ア」ヲ含ムトキハ直チニ不快ヲ感ズルモ〇.3
-〇.50/00マデハ慣ルレバ耐ヘ得ルニ至ル。
試驗方法
鐵管ヲ塵芥投棄場ニ打チ込ミ、之ヨリ捕
通知〓〓〓〓〓〓キニ3cmN〓
NH3〓0.039%CO3.615%CO
第三表ニ示スガ如クマヨハ發生量ハ表層ハ
極メテ少ク、2米突下ハ相當多量ニ發生
シ、4米突下卽チ醱酵ノ最モ旺盛ナル處ニ
テハ最多量ニ發生セリ。7米突下ニテハ其
發生量ハ次第ニ減少スルヲ見タリ。
第六節硫化水素(SH2)
硫化水素ハ有機物ノ分解ニ依リテ生ジ、
普通便所、下水等ノ周圍ノ空氣中ニ存在
ス普通ニテハ大害ナケレドモ時トシテハ
中毒ヲオコスコトアリ。0.10/30マデ其中
ニ耐ヘ得ラルレドモ長ク居ルトキハ諸粘膜
ノ刺戟症狀ヲ呈シ、倦怠、頭痛、眩暈、嘔吐
等ヲキタシ、多量ニ存在スレバ卒倒スルコ
トアリ。
試驗方法
定性試驗
瓦斯採取鐵管ヨリ捕氣罎ニ採取セル瓦斯
氣罎中ニ瓦斯ヲ導キ定規硫酸50ccヲ入
ン、罎ヲ廻轉シツツ良ク振盪シ罎中ノ「ア
ムモニア」ヲ悉ク吸收セシメタリ。コノ「ア
ムモニア」ヲ吸收セル硫酸溶液ニ苛性曹達
溶液ヲ加ヘテ弱「アルカリ」性トナシ、之二
ネスレル試藥ヲ入レ一般水中ノNH3定量
法ニ準ジ比色法ニ依リテ定量セリ。
試驗成績
塵芥投棄場ノ各層ヨリ發生セル「アムモ
ニア」量ハ次ノ如シ。
111*
4BI.地表ヨ画一
60CINト
6.030/000.0683°CO0.0562%CO
ニ就テ試驗セリ。
(1)醋酸鉛溶液ヲ以テ濡シタル濾紙片ヲ
可檢瓦斯中ニ吊下ゲ置キ其黑變セルヲ
以テcmノ存在ヲ知レリ。
(2)更ニ「ナトリウムニトロプルシツド」
ノ「アムモニア」性溶液ニ濡シタル濾紙
片ハ堇紫色ヲ呈セリ。之ニ依リテモ
SH2ノ存在ヲ知レリ。
定量方法
捕氣罎中ニ1100定規沃度溶液ヲ50cc入
レ罎ヲ廻轉シツツ良ク振盪シテ罎中ノ〓H〓
ヲ悉ク沃度溶液ニ吸收セシメテJodometrie
ニヨリテ測定セリ。
試驗成績
塵芥投棄場ノ各層ヨリ發生セルcm量
ハ次ノ如シ。
第二〓〓中気30B13-
田申0.074%0.147%CO
第四表ニ示スガ如ク表層ニ於イテハSH2
ノ發生量ハ極メテ少ク、深層ニ進ムニ連レ
テ其發生量ヲ增加シ、2米突竝ニ4米突下
卽チ酸酵ノ最モ旺盛ナル層ニ於イテハ多量
ニ發生ス。之ヨリ以下ノ層ハ次第ニ其量ヲ
減少スルヲ見タリ硫化水素ハ他ノ瓦斯ニ
比シテ其發生量ハ少ナカリキ。
第七節燃燒性瓦斯
塵芥投棄場ヨリ發生セル瓦斯中ニハ炭化
水素瓦斯卽チ「メタン」「エタン」等燃燒性瓦
部
第二弾條菜牛角3CB四日
燃燒性瓦斯量3.4-4.4%4.4-5.5%
第五表ニ示スガ如ク表層ニテモ燃燒性瓦
斯ハ多量ニ存在シ、2米突、4米突下ノ層ハ
最多量ニ存在ス。卽チ醱酵ノ旺盛ナル層ニ
於イテハ最多量ニ存在セリ。然ルニ地表ニ
テハ燃燒性瓦斯ノ存在ヲ認メザリキ。
附言
此塵芥投棄場ヨリ半町程隔リタル處ニ前
述ノ新聞記事中ニ見ラルル小學校アリ。コ
ノ小學校ノ庭園ニ樹木ヲ植ヱタルニ中々生
長セズ。大抵ハ枯死セリ。之ハ海岸近クナ
ル爲メニ潮風ニ依ルモノト思ヒ、海風ニ當
リテ生長セル樹木ヲ此處ニ移植シタルニ數
ケ月ニシテ之等モ亦枯死セリ。然ルニ建築
物ノ蔭ニ在リテ東風ノ影響ヲ餘リ蒙ラザル
處ニハ樹木ハ生長セリ。之ハ塵芥投棄場ノ
旦発
1三Tel地表ヨニ
60cm上層
0.149%CO0.087%CO0.073°CO
斯ノ存在スルモノナルベクタメニ自然發火
ニ際シ、發火ノ誘引トナルモノハコノ燃燒
性瓦斯ノ存在ニヨルモノト思惟セラル。
試驗方法
コノ燃燒性瓦斯ハ燃燒法ニ依リテ定量セ
リ。卽チIIaldsbe氏裝置ニヨレリ。
試驗成績
塵芥投棄場ヨリ發生セル燃燒性瓦斯量ハ
次ノ如シ。
西要
4B7B地表ヨ一
60AllieT
5-5.5%1.1-2.7%1
上ヲ吹キ來ル海風ノ影響ナリト思惟セラ
ル卽チ塵芥投棄場ヨリ發生セル瓦斯ガ植
物ニモ有害ニシテ其發育ヲ阻止セシメタル
ニ由ルコトハ明カナリ。尙同小學校ノ校長
ノ經驗ニ依レバ樹木中此處ニ生長シ得ル
モノハ「タマツバキ」、「山桑」、「グミ」、「ハ
マナス」等ナリト。
考察
四十餘年間塵芥ヲ投棄シ堆積セル場所ノ
各層ヨリ發生セル瓦斯ニ就テ分析試驗ヲ行
ヒタル結果、炭酸瓦斯、酸化炭素、「アムモ
ニア」、硫化水素、燃燒性瓦斯等ヲ證明シ得
タリ、是等ノ諸瓦斯ニ就テ其發生狀態ヲ見
ルニ酸化炭素ヲ除ク總テノ瓦斯ハ醱酵ノ最
モ旺盛ナル層ヨリ多量ニ發生スルヲ見タリ。
然ルニ酸化炭素ハ醱酵ノ最モ旺盛ナル處ヨ
リモ尙下層ニ於イテ多量ニ發生スルヲ見タ
リ。其發生セル瓦斯中炭酸瓦斯ハ最モ多量
ニ發生シ次ハ「アムモニア」、燃燒性瓦斯、
酸化炭素ノ順序ニ發生量少ク、硫化水素ハ
最少量ナリキ。是等ノ瓦斯ハ有毒性瓦斯ニ
シテ尙是等ノ瓦斯ノ混在スルトキハ其毒性
ハ更ニ强カルベシ。就中酸化炭素ハ猛毒ナ
ルコトハ旣ニ述ベタル如クニシテ、而モ中
毒ヲ起シ得ルニ充分ナル量發生シ居レリ。
又植物モ此瓦斯ニ曝サルル時ハ枯死スルヲ
見タリ。加之此瓦斯ハ極メテ惡臭ナリキ。
故ニ前述ノ新聞記事モ信ジ得ベキ點多シト
思惟セラル。
此處ニ於イテ按ズルニ塵芥ヲ陸上ニ投棄
スル際ニ其處ニ發生セル瓦斯ハ人體竝ニ動
物體ノミナラズ植物ニモ有害ナリ尙且ツ
塵芥ヲ以テ埋立テタル土地ニ家屋ヲ建築シ
居住スル場合ハ保健上極メテ考慮ヲ要スル
モノナルコトヲ窺知シ得。
總括竝ニ結論
函館市塵芥投棄場ヨリ發生セル瓦斯ノ分
析ニ當リ次ノ如キ成績ヲ得タリ。
(1)臭氣ハ極メテ惡臭ニシテ獨特ノ腐敗
臭ニシテ刺㦸性ヲ有ス。
(2)炭酸瓦斯ハ發生瓦斯中最多量ニシ
テ、特ニ醱酵ノ旺盛ナル層、卽チ4米
突下ハ最モ多量ニ發生ス。深層ニ行ク
ニ從ツテ發生量ハ減少セリ。
(3)酸化炭素ハ表層ニ於イテモ尙發生
シ、醱酵ノ旺盛ナル層ニ至ルニ隨ヒ次
第ニ其量ヲ增加シ、尙更ニ深層卽チ7米
突下ハ其最多量ヲ發生セルヲ見タリ。
然ルニ最深部ニハソノ發生ヲ見ザリキ。
之ハ他ノ瓦斯ト趣ヲ異ニスル處ナリ。
(4)「アムモニア」ハ其發生量ハ炭酸瓦斯
ニ次イデ多量ニ發生セリ。醱酵ノ最モ
旺盛ナル層ニ於イテハ其發生量最モ多
ク、其レ以下ノ深層ニ行クニ從ヒ其量
ヲ減少セリ。然レドモ最深層ニ於イテ
モ尙存在セリ。
(5)硫化水素ハ發生瓦斯中最少量ナリ
〓。醱酵ノ旺盛ナル層竝ニ其レ以上ノ
層ニテハ最多量ニ發生シ、ソレ以下ノ
層ニテハ次第ニ其量ヲ減少セリ。然レ
ドモ最深層ニ於イテモ尙存在セリ。
(6)燃燒性瓦斯ハ多量ニ發生セリ、醱酵
ノ最モ旺盛ナル層ニ於イテハ最多量ニ
發生スレドモ、コレ以上ノ層ニテハ略
同量ノ發生量ヲ見タリ。尙深層ニ行ク
ニ從ヒ、ソノ發生量ヲ減少シ最深層ニ
於イテハ其發生ヲ見ザリキ。
(7)塵芥投棄場ヨリ發生セル瓦斯ハ以上
ノ瓦斯ノ混合ナル故ニ極メテ有毒ナリ。
就中猛毒ナル酸化炭素ヲ發生スルコト
ハ注意ヲ要ス。
擱筆スルニ臨ミ御指導ト御校閱トヲ賜リ
タル恩師井上〓授ニ深甚ノ謝意ヲ表シ竝ニ
本〓究ニ於テ多大ノ御援助ヲ與ヘラレシ北
海道廳衞生課長木村眞之助博士、函館警察
署ノ御厚志ニ對シ深ク感謝ノ意ヲ表ス。
文獻
(1)木村、靑木、佐々木·北海道醫學雜
誌第10年第5號。22岡崎·國民衞生、第
四卷、1251頁。3〓函館每日新聞··第二42
4號、昭和6年4月8日。(4)函館新聞:第
12823號昭和6年4月12日。6)館館新
聞··第12827號、昭和6年4月16日。(6)函
館新聞··第160K0號、昭和6年4月17日。
()ParkPublicHealthcheHygiene
1928,a.288.(8)森田、西村·國國衞生、
第三卷、第九號、1300頁。(9)森田·日本
微生物學會雜誌、第16卷、第11號、1.2.6.
0)爲野:國民衞生、第6卷、1194頁。
(1
(11)西村·國民衞生、第4卷、336頁。(12)
家原·國國衞生、第3卷、1497頁。発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006402685X00419330203&spkNum=18
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