1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和八年三月二十日(月曜日)午前十時十四分開議
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議事日程 第二十七號
昭和八年三月二十日
午前十時開議
第一 辯護士法改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第二 法律事務取扱の取締に關する法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第三 輸出絹織物取締法中改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第四 兒童虐待防止法案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第五 昭和八年法律第三號中改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第六 海軍工廠資金臨時補足に關する法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第七 舊韓國起業資金貸付の爲發行したる英貨興業債券の元利支拂爲替差損金補給に關する法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第八 重要美術品等の保存に關する法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第九 南滿洲鐵道株式會社の株式引受に關する法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第十 昭和五年度第一豫備金支出の件(承諾を求むる件)(衆議院送付) 會議(委員長報告)
第十一 昭和五年度特別會計第一豫備金支出の件(承諾を求むる件)(衆議院送付) 會議(委員長報告)
第十二 昭和六年度第一豫備金支出の件(承諾を求むる件)(衆議院送付) 會議(委員長報告)
第十三 昭和六年度特別會計第一豫備金支出の件(承諾を求むる件)(衆議院送付) 會議(委員長報告)
第十四 昭和六年度第二豫備金支出の件(承諾を求むる件)(衆議院送付) 會議(委員長報告)
第十五 昭和六年度豫備金外に於て豫算超過及豫算外支出の件(承諾を求むる件)(衆議院送付) 會議(委員長報告)
第十六 昭和六年度特別會計第二豫備金支出の件(承諾を求むる件)(衆議院送付) 會議(委員長報告)
第十七 昭和六年度特別會計豫備金外に於て豫算超過及豫算外支出の件(承諾を求むる件)(衆議院送付) 會議(委員長報告)
第十八 昭和七年度第二豫備金支出の件(承諾を求むる件)(衆議院送付) 會議(委員長報告)
第十九 昭和七年度特別會計第二豫備金支出の件(承諾を求むる件)(衆議院送付) 會議(委員長報告)
第二十 昭和七年度特別會計豫備金外に於て豫算超過支出の件(承諾を求むる件)(衆議院送付) 會議(委員長報告)
第二十一 工業組合法中改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第二十二 通信事業特別會計法案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第二十三 製絲業法中改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第二十四 震災被害者に對する租税の免除猶豫等に關する法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第二十五 刑法中改正法律案(衆議院提出) 第一讀會
第二十六 刑事判決宣告猶豫に關する法律案(衆議院提出) 第一讀會
第二十七 刑事訴訟法中改正法律案(衆議院提出) 第一讀會
第二十八 小作調停法中改正法律案(衆議院提出) 第一讀會
第二十九 借地借家調停法中改正法律案(衆議院提出) 第一讀會
第三十 司法保護法案(衆議院提出) 第一讀會
第三十一 警察官優遇に關する建議案(侯爵松平康昌君外五名發議) 會議
第三十二 秋田鐵道買收の請願 會議
第三十三 豫定線鐵道羽幌、遠別間鐵道速成の請願 會議
第三十四 北海道函館本線鐵道岩見澤驛改築の請願 會議
第三十五 未成年者飮酒禁止法の改正法制定に反對の請願 會議
第三十六 戰公傷病死者竝傷痍軍人の遺族扶助料に關する請願 會議
第三十七 北海道樺戸郡月形村に停車場設置の請願 會議
第三十八 函館本線鐵道深川、根室本線鐵道下蘆別間鐵道敷設の請願 會議
第三十九 北海道苫小牧漁港修築の請願 會議
第四十 北海道山越郡長萬部村に區裁判所出張所設置の請願 會議
第四十一 北海道石狩川架橋の請願 會議
第四十二 室蘭本線鐵道栗山驛、札幌郡廣島間鐵道敷設の請願 會議
第四十三 鍼灸醫師法制定の請願 會議
第四十四 北海道鴛泊港修築の請願 會議
第四十五 傷痍軍人待遇改善の請願 會議
第四十六 多度津港灣修築の請願 會議
第四十七 宮崎縣西諸縣郡飯野村に區裁判所出張所設置の請願 會議
第四十八 七尾線鐵道七尾、氷見線鐵道氷見兩驛間鐵道敷設の請願 會議
第四十九 下關埠頭施設の請願 會議
第五十 瀬戸内海國立公園區域擴張の請願 會議
第五十一 豫定線鐵道久慈、宮古間鐵道速成の請願 會議
第五十二 北海道小安海岸に船入澗築設の請願 會議
第五十三 愛知縣南設樂郡海老町に區裁判所出張所設置の請願 會議
第五十四 石炭鐵道運賃低減の請願 會議
第五十五 府縣社以下神社に對し神饌幣帛料國庫供進の請願 會議
第五十六 阿蘇國立公園區域擴張の請願 會議
第五十七 北海道留萌郡鬼鹿村に船入澗築設の請願 會議
第五十八 雄基港擴築の請願 會議
第五十九 函館本線鐵道倶知安、南小樽兩驛間鐵道敷設の請願 會議
第六十 北海道中川郡中川村に區裁判所出張所設置の請願 會議
第六十一 北海道虻田郡倶知安町に税務署設置の請願 會議
第六十二 郡山區裁判所管轄區域擴張の請願 會議
第六十三 一時金廢兵に關し恩給法中改正の請願(文書表第二百八十一號) 會議
第六十四 戰役殊勳者待遇改善の請願 會議
第六十五 小萩線鐵道速成の請願 會議
第六十六 一時金廢兵に關し恩給法中改正の請願(文書表第二百八十六號) 會議
第六十七 名寄區裁判所に旭川地方裁判所支部設置の請願 會議
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001・近衞文麿
○副議長(公爵近衞文麿君) 書記官ヲシテ
報〓ヲ致サセマス
〔瀨古書記官朗讀〕
去ル十七日本院ニ於テ可決シタル左ノ政府
提出案ハ卽日裁可ヲ奏請シ又可決ノ旨ヲ衆
議院ニ通知セリ
外國爲替管理法案
大正二年法律第九號中改正法律案
同日本院ニ於テ可決シタル左ノ衆議院提出
案ハ卽日裁可ヲ奏請シ又可決ノ旨ヲ衆議院
ニ通〓セリ
大正七年法律第四十三號中改正法律案
同日本院ニ於テ修正議決シタル左ノ政府提
出案ハ卽日之ヲ衆議院ニ送付セリ
擔保附社債信託法中改正法律案
同日委員長ヨリ左ノ報〓書ヲ提出セリ
工業組合法中改正法律案可決報〓書
製絲業法中改正法律案可決報告書
請願委員會特別報告第五號
同日六大都市ニ特別市制實施ニ關スル法律
案特別委員會ニ於テ當選シタル副委員長ノ
氏名左ノ如シ
副委員長岡田文次君
一昨十八日衆議院ヨリ左ノ政府提出案ヲ受
領セリ
昭和八年度歲入歲出總豫算追加案(分)
號
昭和八年度各特別會計歲入歲出豫算追加
案(特第一號)
豫算外國庫ノ負擔トナルベキ契約ヲ爲ス
ヲ要スル件(追第一號)
辯護士法改正法律案
法律事務取扱ノ取締ニ關スル法律案
輸出絹織物取締法中改正法律案
兒童虐待防止法案
昭和八年法律第三號中改正法律案
海軍工廠資金臨時補足ニ關スル法律案
舊韓國起業資金貸付ノ爲發行シタル英貨
興業債劵ノ元利支拂爲替差損金補給ニ關
スル法律案
重要美術品等ノ保存ニ關スル法律案
南滿洲鐵道株式會社ノ株式引受ニ關スル
法律案
同日議員ヨリ左ノ議案ヲ提出セリ
警察官優遇ニ關スル建講案(侯爵松平康
昌君外五名發議)
同日衆議院ヨリ左ノ議案ヲ提出セリ
刑法中改正法律案
刑事判決宣告猶豫ニ關スル法律案
刑事訴訟法中改正法律案
小作調停法中改正法律案
借地借家調停法中改正法律案
司法保護法案
同日委員會ニ於テ當選シタル正副委員長ノ
氏名左ノ如シ
農村負債整理組合法案特別委員會
委員長子爵野村益三君
副委員長男爵藤村義朗君
關稅定率法中改正法律案特別委員會
委員長子爵梅園篤彥君
副委員長男爵倉知鐵吉君
昭和五年度第一豫備金支出ノ件(承諾ヲ
求ムル件)特別委員會
委員長子爵裏松友光君
副委員長男爵德川喜翰君
同日衆議院ヨリ本院ノ送付ニ係ル左ノ政府
提出案ハ同院ニ於テ之ヲ可決シ奏上セル旨
ノ通牒ヲ受領セリ
小切手法案
同日委員長ヨリ左ノ報告書ヲ提出セリ
司法代書人法中改正法律案否決報告書
古物商取締法中改正法律案可決報告書
昭和五年度第一豫備金支出ノ件、昭和五
年度特別會計第一豫備金支出ノ件、昭和
六年度第一豫備金支出ノ件、昭和六年度
特別會計第一豫備金支出ノ件、昭和六年
度第二豫備金支出ノ件、昭和六年度豫備
金外ニ於テ豫算超過及豫算外支出ノ件、
昭和六年度特別會計第一一豫備金支出ノ
件、昭和六年度特別會計豫備金外ニ於テ
豫算超過及豫算外支出ノ件、昭和七年度
第二豫備金支出ノ件、昭和七年度特別會
計第二豫備金支出ノ件、昭和七年度特
別會計豫備金外ニ於テ豫算超過支出ノ件
(承諾ヲ求ムル件)可決報〓書
震災被害者ニ對スル租稅ノ免除猶豫等ニ
關スル法律案可決報告書
本日第九部ニ於テ豫算委員赤池濃君ノ補闕
選擧ヲ行ヒシニ其ノ結果嘉納治五郞君當選
セリ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X02719330320&spkNum=1
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002・近衞文麿
○副議長(公爵近衞文麿君) 是ヨリ會議ヲ
開キマス、日程第一、辯護士法改正法律案、第
二、法律事務取扱ノ取締ニ關スル法律案、政府
提出、衆議院送付、第一讀會、小山司法大臣
辯護士法改正法律案
右政府提出案本院ニ於テ修正議決セリ因
テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和八年三月十八日
衆議院議長秋田〓
貴族院議長公爵德川家達殿
辯護士法改正法生案
(小字及-ハ衆議院修正)
辯護士法
第一章辯護士ノ職務及資格
第一條辯護士ハ當事者其ノ他ノ關係人
ノ委囑又ハ官廳ノ選任ニ因リ訴訟ニ關
スル行爲其ノ他一般ノ法律事務ヲ行フ
コトヲ職務トス
第二條左ノ條件ヲ具フル者ハ辯護士タ
ル資格ヲ有ス
一帝國臣民ニシテ成年者タルコト
二辯護士試補トシテ一年六月以上ノ
實務修習ヲ了ヘ考試ヲ經タルコト
前項第二號ノ實務修習及考試ニ關スル
事項ハ司法大臣之ヲ定ム
第三條辯護士試補タルニハ成規ノ試驗
ニ合格スルコトヲ要ス
前項ノ試驗ニ關スル事項ハ勅令ヲ以テ
之ヲ定ム
第四條左ニ揭グル者ハ前二條ノ規定ニ
拘ラズ辯護士タル資格ヲ有ス
-判事又ハ檢事タル資格ヲ有スル者
二三年以上專任行政裁判所長官又ハ
專任行政裁判所評定官タリシ者
三三年以上陸軍法務官又ハ海軍法務
官タリシ者
第五條左ニ揭グル者ハ辯護士タル資格
ヲ有セズ
。懲役又ハ一年以上ノ
一〓禁錮以上ノ刑ニ處セラレタル者
二懲戒ノ處分ニ因リ免官若ハ免職セ
ラレタル者、本法ニ依リ除名セラレ
タル者又ハ辨理士法若ハ計理士法ニ
依リ業務ヲ禁止セラレタル者ニシテ
一
免官、免職、除名又ハ業務禁止後三
年ヲ經過セザル者
三禁治產者又ハ準禁治產者
四破產者ニシテ復權ヲ得ザル者
第六條外國ノ辯護士タル資格ヲ有スル
外國人ハ相互ノ保證アルトキニ限リ司
法大臣ノ認可ヲ受ケ外國人又ハ外國法
ニ關シ第一條ニ規定スル事項ヲ行フコ
トヲ得但シ前條ニ揭グル者ハ此ノ限ニ
在ラズ
三
第十八條第二項、第二十條及第二十二
六
條乃至第二十五條ノ規定ハ前項ノ認可
ヲ受ケタル者ニ之ヲ準用ス
司法大臣必要ト認ムルトキハ第一項ノ
認可ヲ取消スコトヲ得
第二章辯護士名簿
第七條辯護士タルニハ辯護士名簿ニ登
錄セラルルコトヲ要ス
第八條辯護士名簿ハ之ヲ司法省ニ備フ
第九條辯護士タラントスル者ハ其ノ入
會セントスル辯護士會ヲ經由シテ司法
大臣ニ登錄ノ請求ヲ爲スベシ
第十條辯護士辯護士會ノ所屬ヲ變更セ
ントスルトキハ新ニ入會セントスル辯
護士會ヲ經由シテ司法大臣ニ登錄換ノ
請求ヲ爲スベシ
前項ノ登錄換アリタルトキハ辯護士ハ
直ニ舊所屬辯護士會ニ之ヲ屆出ヅベシ
第十一條辯護士所屬辯護士會ヲ退會セ
ントスルトキハ其ノ辯護士會ヲ經由シ
テ司法大臣ニ登錄取消ノ請求ヲ爲スベ
シ
第十二條辯護士會ハ會ノ秩序又ハ信用
ヲ害スル虞アル者ノ登錄若ハ登錄換ノ
請求ノ進達ヲ拒絕シ又ハ退會ヲ命ズル
コトヲ得
第十三條前條ノ規定ニ依リ登錄若ハ登
錄換ノ進達ヲ拒絕セラレ又ハ退會セシ
メラレタル者ハ司法大臣ニ不服ノ申立
ヲ爲スコトヲ得
前項ノ場合ニ於テ司法大臣ハ審査委員
會ニ諮問シテ登錄若ハ登錄換ノ請求ノ
進達ヲ命ジ又ハ退會ノ命ヲ取消スコト
ヲ得
第十四條審査委員會ニ關スル事項ハ勅
令ヲ以テ之ヲ定ム
第十五條左ノ場合ニ於テハ司法大臣ハ
辯護士名簿ノ登錄ヲ取消スベシ
一辯護士國籍ヲ喪失シタルトキ
二辯護士第五條各號ノ一ニ該當スル
ニ至リタルトキ
三第十一條ノ規定ニ依リ登錄取消ノ
請求アリタルトキ
四辯護士退會セシメラレ又ハ除名セ
ラレタルトキ
五辯護士死亡シタルトキ
。總會ノ決議ニ因リ
六〓辯護士會解散シタルトキ
第十六條辯護士名簿ノ登錄、登錄換及
登錄取消ハ司法大臣之ヲ其ノ辯護士所
屬ノ辯護士會ニ通知スベシ
第十七條登錄ニ關スル事項ハ命令ヲ以
テ之ヲ定ム
第三章辯護士ノ權利及義務
第十八條辯護士ノ事務所ハ所屬辯護士
會ノ地域內ニ之ヲ設クベシ
辯護士ハ如何ナル名義ヲ以テスルモ二
個以上ノ事務所ヲ設クルコトヲ得ズ但
シ他ノ辯護士事務所ニ於テ共同シテ執務ス
ル場合ハ此ノ限ニ在ラズ
第十九條辯護士事務所ヲ設ケタルトキ
ハ直ニ之ヲ司法大臣及所屬辯護士會ニ
屆出ヅベシ事務所ヲ移轉シタルトキ亦
同ジ
第二十條辯護士ハ誠實ニ其ノ職務ヲ行
ヒ職務ノ內外ヲ問ハズ其ノ品位ヲ保持
スベシ
第二十一條辯護土又ハ辯護士タリシ者ハ其
ノ職務上知得シタル祕密ヲ保持スル權利ヲ
有シ義務ヲ負フ但シ他ノ法令ニ別段ノ規定
アル場合ハ此ノ限ニ在ラズ
二
第二十一條辯護士ハ所屬辯護士會ノ會
則ヲ遵守スベシ
三
第二十二條辯護士ハ正當ノ理由アルニ
非ザレバ法令ニ依リ官廳ノ命ジタル事
項及會則ノ定ムル所ニ依リ所屬辯護士
會ノ指定シタル事項ヲ行フコトヲ辭ス
ルコトヲ得ズ
四
第二十三條辯護士ハ左ニ揭グル事件ニ
付其ノ職務ヲ行フコトヲ得ズ
一相手方ノ協議ヲ受ケテ贊助ヲ爲シ
又ハ其ノ委囑ヲ承諾シタル事件
二相手方ノ協議ヲ受ケタル事件ニシ
テ其ノ協議ノ程度及方法ガ信賴關係
ニ基クモノト認メラルルモノ
三公務員トシテ職務上取扱ヒタル事
件
四仲裁手續ニ依リ仲裁人トシテ取扱
ヒタル事件
五
第二十四條辯護士ハ係爭權利ヲ讓受ク
ルコトヲ得ズ
六
第二十五條辯護士ハ事件ノ委囑ヲ承諾
セザルトキハ速ニ其ノ旨ヲ委囑者ニ通
告スベシ若通告ヲ怠リタルトキハ之ガ
爲生ジタル損害ヲ賠償スル責ニ任ズ
七
第二十六條辯護士ハ報酬アル公務ヲ兼
〓若ハ地
ヌルコトヲ得ズ但シ帝國議會。議員ト
方議會ノ
爲リ又ハ官署若ハ公署ヨリ特ニ命ゼラ
レ若ハ囑託セラレタル職務ヲ行フハ此
ノ限ニ在ラズ
辯護士ハ所屬辯護士會ノ許可ヲ受クル
ニ非ザレバ商業其ノ他營利ヲ目的トス
ル業務ヲ營ミ若ハ之ヲ營ム者ノ使用人
業
ト爲リ又ハ營利ヲ目的トスル法人ノ役
務執行社員、取締役
目若ハ使用人ト爲ルコトヲ得ズ
八
第二十七條前條ノ規定ハ實務修習中ノ
辯護士試補ニ之ヲ準用ス
第四章辯護士會
九
第二十八條辯護士會ハ法人トス
辯護士會ハ辯護士ノ品位ノ保持及辯護
士事務ノ改善進步ヲ圖ルヲ以テ目的ト
ス
三十
第二十九條辯護士會ハ地方裁判所ノ管
轄區域每ニ之ヲ設立スベシ但シ辯護士
會ニ屬スル辯護士三百名以上アル場合
ニ於テ其ノ中百名以上ノ者ハ同一地方
裁判所ノ管轄區域內ニ別ニ辯護士會ヲ
設立スルコトヲ得
第三十〓條辯護士會ヲ設立セントスル
トキハ會員ト爲ルベキ辯護士ハ會則ヲ
定メ司法大臣ノ認可ヲ受クベシ
辯護士會ノ設立アリタルトキハ前項ノ
辯護士ハ當然舊所屬辯護士會ヲ退會シ
其ノ會員ト爲ルモノトス
第十條ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用
ス
辯護士會會則ヲ變更セントスルトキハ
司法大臣ノ認可ヲ受クベシ
二
第三十一條司法大臣辯護士會ノ設立ヲ
認可シタルトキハ辯護士會ノ名稱、事
務所ノ所在地及設立ノ年月日ヲ〓示ス
ベシ
司法大臣辯護士會ノ名稱又ハ事務所ノ
所在地ノ變更ヲ認可シタルトキハ變更
ノ〓示ヲ爲スベシ
三
第三十二條辯護士會ノ代表者ハ一人ト
ス但シ代表者差支アル場合ニ於テ之ニ
代リテ辯護士會ヲ代表スベキ者ヲ置ク
コトヲ妨ゲズ
四
第三十三條辯護士會ハ司法大臣ノ監督
ヨルツ
五
第三十四條第三十〓條ニ規定スル場合ヲ
除クノ外辯護士名簿ニ登錄又ハ登錄換
ヲ受ケタル者ハ當然其ノ入會セントス
ル辯護士會ノ會員ト爲リ登錄換ヲ爲ス
場合ニハ舊所屬辯護士會ヲ退會スルモ
ノトス
六
第三十五條辯護士第十一條ノ規定ニ依
ル請求ニ因リテ登錄ヲ取消サレタルト
キハ當然所屬辯護士會ヲ退會シタルモ
ノトス
七
第三十六條辯護士會ハ辯護士試補ノ實
務修習ヲ擔當ス但シ司法大臣別段ノ規
定ヲ設ケタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
八
第三十七條辯護士會ハ官廳ヨリ諮問ヲ
受ケタル事項ニ付答申ヲ爲スベシ
辯護士會ハ司法事務ニ關シ官廳ニ建議
ヲ爲スコトヲ得辯護士ノ利害ニ關スル
事項ニ付亦同ジ
九
第三十八條辯護士會會則ニハ左ノ事項
ヲ記載スベシ
一名稱及事務所ノ所在地
二會ノ代表者其ノ他ノ機關ノ組織及
職務權限ニ關スル規定
三會議ニ關スル規定
四辯護士試補ノ實務修習ニ關スル規
定
五辯護士ノ報酬ニ關シ標準ヲ示ス規
定
六辯護士ガ委囑ヲ受ケタル事件ノ梗
〓及委囑者ノ爲ニシタル收支ヲ記載
スベキ帳簿ニ關スル規定
會員ノ風紀保持ニ關スル規定
|八七|七六
無資力者ノ爲ニスル法律相談及訴
訟扶助ニ關スル規定
八
九答申及建議ノ決議ニ關スル規定
十十會員ト委囑者トノ間ニ於ケル紛議
ノ調停ニ關スル規定
十一辯護士名簿ノ登錄及登錄換ノ請
求ノ進達ニ關スル規定
一
十二入會及退會ニ關スル規定
二
十三懲戒ノ申告ニ關スル規定
三
十四會費ノ徵收ニ關スル規定
四
十五資產ニ關スル規定
四十
第三十九條辯護士會ハ每年定期總會ヲ
開ク
辯護士會ハ必要アル場合ニ於テ臨時總
會ヲ開クコトヲ得
으
第四十〓條辯護士會ハ總會ノ日時、場所.
及議題竝ニ役員選擧ノ日時及場所ヲ豫
メ司法大臣ニ申〓スベシ
二
第四十一條司法大臣ハ辯護士會ノ總會
又ハ役員選擧ノ場所ニ臨席シ又ハ所部
ノ官吏ヲシテ臨席セシムルコトヲ得
三
第四十二條辯護士會ハ遲滯ナク總會ノ
決議竝ニ役員ノ就任及退任ヲ司法大臣
ニ申〓スベシ
四
第四十三條左ノ事項ハ總會ノ決議ヲ經
ベシ
一會則ノ變更
二豫算及決算
五
第四十四條辯護士會ノ會議法令若ハ會
則ニ違反シ又ハ公益ヲ害スルトキハ司
法大臣ハ其ノ決議ヲ取消シ、其ノ議事
スル
ヲ停止シ又ハ辯護士會ノ解散ヲ命ズル
コトヲ得
六
第四十五條辯護士會ハ辯護士ト委囑者
トノ間ニ紛議ヲ生ジタルトキハ當事者
ノ請求ニ因リ其ノ調停ヲ爲スコトヲ得
七
第四十六條辯護士會ハ司法大臣ノ認可
ヲ受ケ同一地方裁判所ノ管轄區域內ニ
於ケル他ノ辯護士會ト合併スルコトヲ
得
辯護士會合併シタルトキハ合併ニ因リ
テ解散シタル辯護士會所屬ノ辯護士ハ
當然舊所屬辯護士會ヲ退會シ合併後存
續シ又ハ合併ニ因リテ設立シタル辯護
士會ノ會員ト爲ルモノトス
第十條第一項ノ規定ハ前項ノ場合ニ之
ヲ準用ス
八
第四十七條司法大臣辯護士會ノ合併ヲ
ー
認可シタルトキハ合併後存續スル辯護
士會ニ付テハ變更ノ〓示ヲ爲シ、合併
ニ因リテ解散シタル辯護士會ニ付テハ
解散ノ〓示ヲ爲シ、合併ニ因リテ設立
二
シタル辯護士會ニ付テハ第三十一條第
一項ニ規定スル〓示ヲ爲スベシ
九
第四十八條辯護士會合併ヲ爲サントス
ルトキハ其ノ債權者ニ對シ異議アラバ
一月ヲ下ラザル期間內ニ之ヲ述ブベキ
旨ヲ催告スベシ
債權者ガ前項ノ期間內ニ異議ヲ述べタ
ルトキハ辯護士會ハ之ニ辨濟ヲ爲シ又
ハ相當ノ擔保ヲ供スルニ非ザレバ合併
ヲ爲スコトヲ得ズ
合併ニ因リテ解散シタル辯護士會ニ屬
スル權利義務ハ合併後存續シ又ハ合併
ニ因リテ設立シタル辯護士會之ヲ承繼
ス
五十
第四十九條辯護士會ハ左ノ事由ニ因リ
テ解散ス
一總會ノ決議
二合併
三三第四十四條ノ命令
前項第一號ノ總會ノ決議ハ司法大臣ノ
認可ヲ受クベシ
民法第七十三條乃至第七十六條、第七
十八條乃至第八十條、第八十二條及第
八十三條竝ニ民法施行法第二十六條及
第二十七條ノ規定ハ辯護士會ノ〓算ニ
關シ之ヲ準用ス
第五十〓條司法大臣ハ辯護士會ノ解散ノ
決議ヲ認可シ又ハ之ニ解散ヲ命ジタル
トキハ解散ノ〓示ヲ爲スベシ
二
第五十一條辯護士會ハ共同シテ特定ノ
事項ヲ行フ爲規約ヲ定メ司法大臣ノ認
可ヲ受ケ聯合會ヲ設立スルコトヲ得
第五章懲戒
三
第五十二條辯護士本法又ハ辯護士會會
則ニ違反シタルトキハ檢事長ハ司法大
臣ノ命ニ依リ又ハ其ノ認可ヲ受ケテ懲
戒開始ノ申立ヲ爲スベシ
辯護士會ハ會則ノ定ムル所ニ依リ懲戒
ヲ求ムル爲司法大臣又ハ檢事長ニ申告
ヲ爲スコトヲ得
四
第五十三條辯護士ノ懲戒ハ其ノ所屬辯
護士會ノ地域ヲ管轄スル控訴院ニ於ケ
ル懲戒裁判所之ヲ行フ
五
第五十四條懲戒ハ左ノ四種トス
一譴責
二千圓以下ノ過料
三一年以下ノ停職
四除名
前項ノ過料ノ裁判ノ執行ニ付テハ非訟
事件手續法第二百八條ノ規定ヲ準用ス
六
第五十五條懲戒ノ訴追ヲ受ケタル辯護
士ハ其ノ裁判確定スルニ至ル迄辯護士
會ヲ退會シ又ハ辯護士名簿ノ登錄換ヲ
請求スルコトヲ得ズ
辯護士會ハ懲戒ノ訴追ヲ受ケタル辯護
士ヲ退會セシムルコトヲ得ズ
七
第五十六條懲戒ノ事由アリタル時ヨリ
三年ヲ經過シタルトキハ懲戒開始ノ申
立ヲ爲スコトヲ得ズ
八
第五十七條本法ニ規定スルモノノ外懲
戒ニ付テハ判事懲戒法ヲ準用ス
附則
本法ハ昭和十一年四月一日ヨリ之ヲ施行
ス
本法施行ノ際現ニ從前ノ規定ニ依リテ辯
護士タル資格ヲ有スル者ハ本法施行後ト
雖モ仍其ノ資格ヲ有ス
〓一年以上ノ
舊刑法ノ重罪ノ刑又ハ。禁鋼ニ處セラレタ
意
ル者ハ第五條ノ規定ノ適用ニ付テハ之ヲ。九万
役又ハ一年以上ノ
鋼以上ノ刑ニ處セラレタル者ト看做ス
從前ノ規定ニ依ル辯護士名簿ノ登錄ハ之
ヲ本法ニ依ル辯護士名簿ノ登錄ト看做ス
本法施行ノ際現ニ辯護士會ニ加入シ居ラ
ザル辯護士ニ付テハ本法施行ノ日ヨリ三
月內ニ從前ノ例ニ依リテ辯護士會ニ加入
スルニ非ザレバ其ノ登錄ハ效力ヲ失フ
辯護士會ニ關シテハ本法ニ依ル辯護士會
成立スルニ至ル迄ハ仍從前ノ例ニ依ル
但シ辯護士名簿登錄及登錄換ノ請求ノ進
達ニ關シテハ本法ニ依ル
本法施行ノ際現ニ存スル辯護士會ハ本法
施行ノ日ヨリ六月內ニ本法ニ依ル辯護士
會ヲ設立スル爲會則ヲ定メ司法大臣ノ認
可ヲ受クベシ司法大臣ハ認可ヲ爲シタル
トキハ辯護士會ノ名稱、事務所ノ所在地
及設立ノ年月日ヲ告示スベシ
前項ノ規定ニ依リテ辯護士會成立シタル
トキハ舊辯護士會ノ會員ハ當然新辯護士
會ノ會員ト爲リ舊辯護士會ニ屬シタル權
利義務ハ新辯護士會之ヲ承繼ス
本法施行ノ際現ニ二個以上ノ事務所ヲ有
スル辯護士ハ本法施行ノ日ヨリ六月內ニ
限リ之ヲ存續スルコトヲ得
法律事務取扱ノ取締ニ關スル法律案
右政府提出案本院ニ於テ修正議決セリ因
テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和八年三月十八日
衆議院議長秋田〓
貴族院議長公爵德川家達殿
法律事務取扱ノ取締ニ關スル法律案
(小字及-ハ衆議院修正)
第一條辯護士ニ非ザル者ハ報酬ヲ得ル
目的ヲ以テ他人間ノ訴訟事件ニ關シ
又ハ他人間ノ非訟事件ノ紛議ニ關シ
〓鑑定、
〓代理、伸裁若ハ和解ヲ爲シ又ハ此等
ノ周旋ヲ爲スヲ業トスルコトヲ得ズ但
シ正當ノ業務ニ附隨シテ爲ス場合ハ此
ノ限ニ在ラズ
第二條何人ヲ問ハズ他人ノ權利ヲ讓受
ケ訴訟其ノ他ノ手段ニ依リ其ノ權利ノ
實行ヲ爲スコトヲ業トスルコトヲ得ズ
第三條辯護士ニ非ザル者ハ利益ヲ得ル
目的ヲ以テ辯護士事務所、法律事務所
其ノ他之ニ類似スル名稱ヲ使用スル
事務所ヲ設クルコトヲ得ズ
第四條第一條又ハ第二條ノ規定ニ違反
シタル者ハ一年以下ノ禁鋼又ハ千圓以
下ノ罰金ニ處ス辯護士此等ノ者ヨリ事
件ノ周旋ヲ受ケタルトキ亦同ジ
第三條ノ規定ニ違反シタル者ハ千圓以
下ノ罰金ニ處ス
附則
本法ハ昭和十一年四月一日ヨリ之ヲ施行
ス
〔國務大臣小山松吉君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X02719330320&spkNum=2
-
003・小山松吉
○國務大臣(小山松吉君) 只今議題トナリ
マシタ辯護士法改正法律案、提出ノ理山ヲ
御說明申上ゲマス、現行辯護士法ハ明治二
十六年ノ制定ニ係ルモノデアリマシテ、爾
來四十年ヲ閱シテ居ルノデアリマス、其間
司法制度ノ發達ト共ニ辯護士ノ數モ比年增
加イタシマシテ、現行法制定當時千六百人
內外デアリマシタノガ、今日ニ於テハ六千
人ニ近キ數ヲ數フルニ至ッタノデアリマス、
申ス迄モナク辯護士ハ司法機關ノ一ト致シ
マシテ、司法事務ノ運用上重要ナル地位ト
職責トヲ有スル者デアリマスガ、時運ノ進
步ニ伴ヒマシテ、司法事務ハ複雜ヲ加ヘ來,フ
タノデアリマスカラ、其職責ハ益、重要性ヲミ
帶ブルニ至ッタノデアリマス、是等ノ狀勢ヨ
リ致シマシテ、本案改正ノ議ハ屢、當議會ノ
問題トモナリマシテ、政府ニ於テモ亦改正
ノ必要ヲ認メマシテ其準備ヲ致シマシタ、
大正十一年十月、司法省內ニ辯護士法改正
調査委員會ヲ設置イタシマシテ、朝野ノ學
識及經驗アル人ミニ御依賴イタシマシテ
調査ニ著手イタシタノデアリマス、同調査
會ハ爾來愼重ニ〓究ヲ進メ、囘ヲ重ヌルコ
ト七十八囘、昭和二年十月五日ニ至リマシ
テ、辯護士法改正綱領五十六箇條ヲ議決イ
タシマシテ、之ヲ司法省ニ答申イタシマシ
タ、依テ司法省ニ於キマシテハ更ニ該綱
領ニ對シ裁判所檢事局及辯護士會ノ意見ヲ
徵シマシタル上ニ、愼重熟議ノ結果、本改
正案ヲ決定イタシタノデアリマス本改正
案ノ主要ナル目的ハ辯護士ノ地位ノ向上
ト、辯護士事務ノ改善進步ヲ圖ルニアルノ
デアリマスルガ、玆ニ改正條項中重要ナル
二三ノ點ニ付テ御說明ヲ申上ゲマス、第
ハ辯護士ノ職務ノ範圍デアリマス、現行法
ハ辯護士ノ職務範圍ヲ裁判所ニ於ケル行爲
ニ限定イタシテ居リマス、然ルニ本案ニ於
キマシテハ其範圍ヲ擴張イタシマシテ、裁
判所外ノ一般法律事務ニ及ボシタノデアリ
やく、辯護士ノ最モ重要ナル職務ガ裁判所
內ニ於ケル訴訟行爲ニ存スルコトハ、辯護
士ガ重要ナル司法機關ノ一タル地位ヨリ來
ル當然ノ歸結デアリマシテ、此點ハ現行法
ト異ナル所ハナイノデアリマスケレドモ、
唯時勢ノ進步ハ國民ノ法律生活ヲ爲ス上ニ
於テ、裁判所外ニ於テモ辯護士ノ援助ヲ必
要トスル場合ガ多クナッテ參ッタノデアリマ
ス、依テ本案ハ現在ノ社會狀態ニ適合セシ
ムル趣旨ニ於テ、辯護士ノ職務ノ範圍ヲ擴
張スルコトヲ以テ適當ト認メタ次第デアリ
やく、第二ハ辯護士タル資格ニ付テデアリ
やく、辯護士タル資格ニ付キマシテモ重大
ナル改正ヲ加ヘマシテ、其資格ハ原則トシ
テ判事檢事ト同一ニ致シタノデアリマス、
從來ハ成規ノ試驗ニ合格イタシマスルト、
直ニ辯護士トナルコトヲ得タノデアリマス
ルガ、近時ノ辯護士事務ハ可ナリ複雜デア
リマスカラ、唯一囘ノ學術試驗ニ合格イタ
シマシタバカリデハ遺憾ナク其事務ヲ處
理スルコトハ甚ダ困難デアリマス、御承知
ノ如ク司法事務ノ運用ヲ圓滑ニシ、處理ノ
迅速ナルコトヲ要スルニハ單リ判事檢事
ノミナラズ、之ニ干與スル辯護士等ガ、諸
般ノ法律及手續ニ熟達イタシテ居ルコトヲ
必要トスルノデアリマスカラ、辯護士試補
トシテ實務ヲ修習セシムルコトト致シマシ
タ而シテ試補トシテ修習セシムルコトハ
單ニ實務ノ修習ノミデハナク、法律ノ期待
イタシマスル品位ト德行トヲ保持シテ社
會ノ信用ヲ得ル法曹ヲ養成セムトスルコト
ヲ眼目ト致シテ居ルノデアリマス、近時辯
護士ノ社會上ノ地位ガ向上イタシマシテ、
辯護士ニ對スル世人ノ尊敬ト信賴トヲ增シ
テ來タノデアリマスルカラ、將來辯護士タ
ラムトスル者ハ誠實ニ其職務ヲ執行イタ
シマシテ、其品位ヲ保持スベキ素質ヲ養成
スル必要ガアルノデアリマス、依テ本案ハ
成規ノ試驗ニ合格イタシマシタ後ニ、更ノ
一年六月以上辯護士試補トシテ、品位ノ陶
治ト實務ノ執行トニ付キ適當ノ修習ヲ爲サ
シメマシテ、其考試ニ合格スルニ非ザレ
パ辯護士タルノ資格ヲ得ルヲ得ズト定メ
タノデアリマス、第三ハ婦人ノ辯護士ヲ認
メタコトデアリマス、辯護士タルモノハ男
子ノミニ限ラレテ居ッタノデアリマシタガ、
本案ニ於キマシテハ婦人モ男子ト同等ナル
條件ノ下ニ、辯護士タルコトヲ得ルコトニ
致シタノデアリマス、第四ハ辯護士會ニ法
人格ヲ認メタ點デアリマス、此事ハ在野法
曹年來ノ主張デアリマシテ、辯護士會現在
ノ情勢ニ照シマシテ、誠ニ適切ノ要望ト認
メタノデアリマス、依テ本案ニ於キマシテ
ハ辯護士會ヲ法人ト致シマシテ、從來所屬
地方裁判所ノ檢事正ノ監督ヲ受ケテ居リマ
シタノヲ、司法大臣ノ監督ヲ受ケルモノト
致シマシテ、其會ノ統制、辯護士ノ品位向
上、及ビ辯護士事務ノ改善進步ヲ圖ル上ニ
於キマシテ、必要ト認メタル各種ノ事項ヲ
其權能トシテ認メタノデアリマス、以上述
ベマシタル點ガ改正ノ主要ナル點デアリマ
シテ、其他ノ規定ハ〓ネ右ノ改正ニ伴ヒマ
シテ、法規ノ整理上現行法ニ改正ヲ加ヘマ
シタモノデアリマス、之ヲ要スルニ本案ハ
辯護士ノ品位向上ト、辯護士事務ノ改善進
步ヲ圖リマシテ、司法事務ノ補助機關トシ
テノ其職能ヲ十分ニ發揮セシムルト共ニ、
辯護士ヲシテ國民ノ法律生活上、善良ナル
援助者タラシムルコトヲ期スル爲ニ、適切
且ツ必要ナルベシト思料イタシマシタル幾
多ノ條規ヲ制定イタシタ次第デアリマス、
次ニ法律事務取扱ノ取締ニ關スル法律案ニ
付テ、其提案理由ヲ御說明申上ゲマス、是
ハ辯護士ニ非ズシテ辯護士ノ職務ニ類似ス
ル行爲ヲ業ト爲ス者ニ對スル取締規定デア
リマス辯護士ノ數ガ少カリシ時代ニ於キ
マシテハ一般國民ハ辯護士ニ非ズシテ法
律上ノ知識ヲ有スル者ノ助言ヲ求メタノデ
アリマシテ、殊ニ簡易ノ事項ニ付キマシテ
ハ種々ノ事情ヨリシテ、辯護士以外ノ者ニ
依賴スルヲ寧ロ便宜トシテ居ッタノデアリ
や 、而シテ現在此種ノ業務ニ從事スル者
ガ、全國ヲ通ジテ可ナリ多數ニ上ボッテ居
ルノデアリマス、是等ノモノガ國民ノ法律
上ノ助言者トシテ存在シ、甚シキ弊害ノナ
キ限リ之ヲ排斥スベキデハナイト思ハレル
ノデアリマスルガ、時代ノ趨勢ニ伴ヒ次第
ニ種々ノ弊風ヲ生ジマシテ、多數ノ者ノ中
ニハ不法ノ行動ヲ敢テシ、法律ヲ無視シテ
顧ミザルモノアルニ至リマシテ、現今ニ
アリマシテハ其弊ニ堪ヘザル狀況ニ立至ヲ
タノデアリマス、從テ從來ハ各府縣ノ大部
分ニ於テ府縣令ニ依リ其取締ヲ致シテ居ル
次第デアリマス、依テ機會ニ於テ法律ヲ以
テ其取締ヲ属行スルコトハ、最モ適切デア
ルト考ヘマシテ、本案ヲ提出シタ次第デア
リマス、終リニ兩法案ノ施行期日ニ付テ一
言申上ゲマスルガ、從來裁判所外ニ於テ法
律事務ニ從事イタシテ居リマシタモノハ
其全部ガ悉ク不法ノ行爲ヲ爲シタノデハナ
イノデアリマシテ、社會ノ一部ノ人々ノ要
求ニ依リマシテ、其業務ニ從事シ來ッタノ
デアリ,マスルカラ今一朝ニシテ其業務ヲ禁
止スルコトハ其當ヲ得ザルヤニモ考ヘラレ
Vく、故ニ辯護士法ノ施行ニ依リマシテ直
ニ之ヲ禁遏スルコトナク、轉職等ノ爲メ適
當ノ機會ヲ與フルヲ相當ト致シマスル關係
上、三箇年後ニ於テ施行スルコトト致シタ
次第デアリマス、從テ兩法案ハ如上ノ理由
ニ依リマシテ、同時施行ヲ必要ト致シタ次
第デアリマス、何卒政府ノ意ノ存スル所ヲ
十分ニ御酌取リ下サイマシテ、愼重御審議
ノ上御協賛アラムコトヲ希望イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X02719330320&spkNum=3
-
004・近衞文麿
○副議長(公爵近衛文麿君) 特別委員ノ氏
名ヲ書記官ヲシテ朗讀イタサセマス
〔瀨古書記官朗讀)
辯護士法改正法律案外一件特別委員
公爵山縣有道君子爵渡邊千冬君
子爵織田信恒君木場貞長君
男爵德川喜翰君藤澤幾之輔君
板谷宮吉君岩田宙造君
大西虎之介君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X02719330320&spkNum=4
-
005・近衞文麿
○副議長(公爵近衞文麿君) 日程第三、輸
出絹織物取締法中改正法律案、政府提出、
衆議院送付、第一讀會、中島商工大臣
輸出絹織物取締法中改正法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議
院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和八年三月十八日
衆議院議長秋田〓
貴族院議長公爵德川家達殿
輸出絹織物取締法中改正法律案
輸出絹織物取締法中左ノ通改正ス
第十二條本法ハ第二條乃至第五條ノ規
定ヲ除クノ外輸出人造絹織物ニ付之ヲ
準用ス
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
本法施行前ニ重要輸出品取締規則ニ依ル
檢査ニ合格シタル輸出人造絹織物ハ第十
二條ノ規定ニ依リ準用スル第一條ノ規定
ニ拘ラズ之ヲ輸出スルゴトヲ得
〔國務大臣男爵中島久萬吉君演壇ニ登
ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X02719330320&spkNum=5
-
006・中島久萬吉
○國務大臣(男爵中島久萬吉君) 只今議題
ト相成リマシタル輸出絹織物取締法中改正
法律案提出ノ理由ヲ簡單ニ申上ゲマス我
ガ輸出人造絹織物ハ近年著シキ發達ヲ遂ゲ
マシテ、其輸出ハ年ト共ニ旺盛ニ向ヒツツ
アリマスルガ是等ノ輸出增進ニ伴ヒマシ
テ、本邦中小產業ノ宿弊ト致シマシテ、動
モスレバ粗製濫造ノ弊ニ陷リ、漸次品質ノ
低下ヲ來シマシテ、海外ニ於テ不評ノ聲ヲ
聞クニ至リマシタノデ、政府ハ取敢ズ應急
ノ措置ト致シマシテ、昭和六年十二月以
降、重要輸出品取締規則ニ依リマシテ、縣
又ハ組合團體ヲシテ輸出檢査ヲ施行セシメ
マシテ、粗製品ノ輸出ノ取締ヲ致シテ參フ
タノデアリマス、然ルニ其後ノ情勢ヲ見マ
スルノニ、人造絹織物ノ輸出ハ益〓增加ノ
趨勢ニアリマスルガ、其半面ニ於テハ粗製
濫造ノ弊ガ漸ク顯著ニナッテ參リマシテ、此
儘ニ進ミマスルナラバ遂ニハ海外ニ於ケ
ル我ガ人造絹織物ノ聲價ヲ失墜スルニ至ル
ノデハナイカト虞レルノデゴザイマス彼
ノ歐羅巴大戰當時ノ好景氣ニ際シマシテ
本邦重要製品ノ輸出ガ激增イタシマシタ
所、幾許モナク粗製濫造ノ弊ニ陷リマシ
テ、折角ノ好販路ヲ失フニ至リマシタ經驗
ニ徵シマシテモ、此際速ニ粗製濫造ニ關シ
適切ナル方策ヲ講ジマシテ、將來ニ悔ヲ貽
サナイヤウニ致シマスルコトガ、我ガ輸出
貿易振興上最モ緊切ノ事項ト信ズルノデゴ
ザイマス、依テ輸出絹織物取締法ノ改正ヲ
行ヒ、輸出人造絹織物ニ對シマシテ輸出
絹織物ニ準ジマシテ新ニ國營檢査ノ制度ヲ
立テマシテ、輸出檢査ノ統一厲行ヲ期シ、
我ガ輸出人造絹織物ノ海外ニ於ケル聲價ノ
維持向上ヲ圖ラムト致シタノデゴザイマ
ス、是レ本案ヲ提出イタシマシタ所以デゴ
ザイマス、何卒愼重御審議ノ上御協贊ヲ賜
ハラムコトヲ御願ヒ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X02719330320&spkNum=6
-
007・阪本さん之助
○阪本彰之助君 商工大臣ニ御尋ネシタイ
コトガゴザイマス、餘リ長クゴザイマセヌ
ガ、是カラ御許シ願ヘマセウカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X02719330320&spkNum=7
-
008・近衞文麿
○副議長(公爵近衞文麿君) 宜シウゴザイ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X02719330320&spkNum=8
-
009・阪本さん之助
○阪本釤之助君 只今當局大臣ノ御說明ニ
ナリマシタ通リノ次第ト心得テ居リマス、
近來人造絹絲ノ織物ハ非常ニ增加ヲ致シマ
シー、今日デハ立派ナ重要輸出品ノ一ニ
ナッタト承知シテ居リマスルガ故ニ、此取締
ハ是モ必要ナコトト存ジマスルガ、只今商
工大臣ノ御述ベニナック通リ、昭和六年カラ
是マデノ絹織物同樣ニ、府縣營又ハ組合等
ニ於キマシテ相當ナ檢査ヲ行ッテ居ルヤウ
デアリマス、此絹織物檢査ト云フコトハ隨
分モウ久シイコトデアリマシテ、ソレノ
府縣若クハ組合等ニ於キマシテ熟練ヲ致シ
マシテ、相當ニ效果ハ擧フテ居ルノデアリ
マスルカラ、此度ノ人造絹絲ノ織物ニ付キ
マシテモ、今暫ク縣營、若クハ組合ノ檢査
ニ御委セヲ願ヲテ、御監督ニナッテモ行キハ
シナイカトモ考ヘマスルガ、併シ是ハ大事
ナコトデアリマスルカラ國營デヤラウト仰
シヤレバ、强ヒテ是ニ反對スル事柄デモナ
イカト存ジマスルガ、當業者ニ取ッテハ相
當ニ、是ハ色ミナ關係ノ重イ所ノコトノヤ
ウニ承知イタシテ居リマス、衆議院ニ於キ
マシテハ、之ヲ決議スルニ當リマシテ、斯
樣ナ附帶決議ヲ致シテ居ルヤウデアリマ
ス、一ガ「現ニ輸出人造絹織物ノ檢査ヲ爲
ス組合、其ノ聯合會、公益法人、又ハ道
府縣カ本法ニ基ク命令ノ定ムル所ニ依リ
整理前ノ檢査ヲ爲シタルトキハ輸出絹織
物檢査所ハ之カ檢査ヲ爲ササルコト」重
複ニハヤラヌト云フヤウナ趣意ノ衆議院
ノ意見ノヤウデアリマス、ソレカラ第二ニ
ハ「檢査手數料ニ付テハ適當ニ輕減ヲ期
スルコト」、政府ガ徵スル所ノ檢査手數
料ヲ成ルダケ安クシテ貰ヒタイ、第三ハ
「檢査ノ施行ニ關シテハ簡易迅速ヲ圖リ
以テ取引ニ遺憾ナカラシムルコト」、斯ウ云
フ希望決議ヲ添ヘマシテ、本案ヲ通過シテ
居ルヤウデアリマス、ソレニ付キマシテ、
商工大臣ハ斯樣ナ言明ヲ致シテ居ル趣キデ
アリマス、一ハ附帶決議第一項ニ關シテハ
命令中ニ明カニ之ヲ規定スル、尙ホ整理後
ノ檢査ニ於テ不合格トナフタ原因ガ、明カニ
整理前檢査ノ施行ニ基ク場合ニ於テハ之
ガ責任ニ關スル取締規定ヲ命令中ニ設ケル、
第二ハ、其手數料ニ付テハ誠意ヲ以テ附帶
決議ニ副フヤウニスル、第三ニハ、附帶決
議第三項ニ付テハ、決議ニ副フヤウ適當ナ
ル規定ヲ設ケル積リダ、斯樣ナ言明ヲサレ
テ居ルト云フコトヲ承知イタシマスルガ
本案ハ尙ホ貴族院デハ今日ガ初メテデアリ
マス、是ヨリ特別委員ニ於キマシテ相當ノ
審議ヲ重ネ、相當ノ決定ヲ見ルコトト存ジ
マスルガ、豫メ承知イタシテ置キタイノハ
商工大臣ガ衆議院ニ於テ此附帶決議ヲ認メ
ラレマシテ、而シテ言明セラレタル事柄ガ、
無論變ル筈ハアリマセヌガ、是ガ我ガ貴族
院ニ對シテモ、是ト同樣ノ御言明ヲナサル
モノト承知イタシテ、之ヲ審議イタシテ宜
シイカ、非常ニ關係ノアルコトデアリマス
ラ、商工大臣ガ衆議院ニ於テ述べラレタル
言明ハ、何等變更ハナイノデアルカト云フ
コトヲ一應伺ッテ、置キタイノデアリマス
〔國務大臣男爵中島久萬吉君演壇ニ登
ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X02719330320&spkNum=9
-
010・中島久萬吉
○國務大臣(男爵中島久萬吉君) 阪本サン
ノ御尋ネデゴザイマスルガ、勿論貴族院ニ
對シテモ、同樣ノ考ヲ以テ臨ミマス心得デ
アリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X02719330320&spkNum=10
-
011・近衞文麿
○副議長(公爵近衞文麿君) 本案ハ製絲業
法中改正法律案外二件ノ特別委員ニ付託イ
タシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X02719330320&spkNum=11
-
012・近衞文麿
○副議長(公爵近衛文麿君) 日程第四、兒
童虐待防止法案、政府提出、衆議院送付、
第一讀會、齋藤政務次官
兒童虐待防止法案
右政府提出案本院ニ於テ修正議決セリ因
テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭利八年三月十八日
衆議院議長秋田〓
貴族院議長公爵德川家達殿
(小字及-ハ衆議院ノ修正ナリ)
兒童虐待防止法案
兒童虐待防止法
第一條本法ニ於テ兒童ト稱スルハ十四
歲未滿ノ者ヲ謂フ
第二條兒童ヲ保護スベキ責任アル者兒
童ヲ虐待シ又ハ著シク其ノ監護ヲ怠リ
因テ刑罰法令ニ觸レ又ハ觸ルル虞アル
場合ニ於テハ地方長官ハ左ノ處分ヲ爲
スコトヲ得
一兒童ヲ保護スベキ責任アル者ニ對
シ訓誠ヲ加フルコト
二兒童ヲ保護スベキ責任アル者ニ對
シ條件ヲ附シテ兒童ノ〓血護ヲ爲サシ
ムルコト
三兒童ヲ保護スベキ責任アル者ヨリ
兒童ヲ引取リ之ヲ其ノ親族其ノ他ノ
私人ノ家庭又ハ適當ナル施設ニ委託
スルコト
前項第三號ノ規定ニ依ル處分ヲ爲スベ
キ場合ニ於テ兒童ヲ保護スベキ責任ア
ル者親權者又ハ後見人ニ非ザルトキハ
地方長官ハ兒童ヲ親權者又ハ後見人ニ
引渡スベシ但シ親權者又ハ後見人ニ引
渡スコト能ハザルトキ又ハ地方長官ニ
於テ兒童保護ノ爲適當ナラズト認ムル
トキハ此ノ限ニ在ラズ
第三條地方長官ハ前條ノ規定ニ依ル處
分ヲ爲シタル場合ニ於テ必要アリト認
ムルトキハ兒童ガ十四歲ニ達シタル後
ト雖モ一年ヲ經過スル迄仍其ノ者ニ付
前條ノ規定ニ依ル處分ヲ爲スコトヲ得
第四條前二條ノ規定ニ依ル處分ノ爲必
要ナル費用ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ本
人又ハ其ノ扶養義務者ノ負擔トス但シ
費用ノ負擔ヲ爲シタル扶養義務者ハ民
法第九百五十五條及第九百五十六條ノ
規定ニ依リ扶養義務ヲ履行スベキ者ニ
對シ求償ヲ爲スヲ妨ゲズ
第五條前條ノ費用ハ道府縣ニ於テ一時
之ヲ繰替支辨スベシ
前項ノ規定ニ依リ繰替支辨シタル費用
ノ辨償金徵收ニ付テハ府縣稅徵收ノ例
一枚八
本人又ハ其ノ扶養義務者ヨリ辨償ヲ得
ザル費用ハ道府縣ノ負擔トス
第六條國庫ハ勅令ノ定ムル所ニ依り道
府縣ノ負擔スル費用ニ對シ其ノ二分ノ
一以內ヲ補助ス
第七條何人ト雖モ左ノ各號ニ揭グル行
爲ヲ爲スコトヲ得ズ
1-不具畸形ノ兒童ヲ觀覽ニ供スルコト
仁兒童ヲシテ乞食ヲ爲サシメ又ハ兒
童ヲ用ヒテ乞食ヲ爲スコト
三輕業、曲馬其ノ他之ニ類スル危險
ナル業務ニシテ主務大臣ノ定ムルモ
ノニ兒童ヲ用フルコト
七輕業、曲馬又ハ戶戶ニ就
第貮地方長官ハ戶戶ニ就キ又ハ道路
キ若ハ道路ニ於テ行フ諸藝ノ演出若ハ物品
ニ於テ諸藝ヲ演ジ又ハ物品ヲ販賣スル
販賣〓及行爲
業務其ノ他ノ業務〓ニシテ兒童ノ虐待
ニ涉リ又ハ之ヲ誘發スル虞アルモノニ
付必要アリト認ムルトキハ兒童ヲ用フ
ルコトヲ禁止シ又ハ制限スルコトヲ得
〓及行爲
前項ノ業務〓ノ種類ハ主務大臣之ヲ定
ム
八
製作地方長官ハ第二條若ハ第三條ノ
規定ニ依ル處分ヲ爲シ又ハ前項第一項
ノ規定ニ依ル
禁止若ハ制限ヲ爲ス爲必要アリト認ム
ルトキハ當該官吏又ハ吏員ヲシテ兒童
ノ住所若ハ居所又ハ兒童ノ從業スル場
所ニ立入リ必要ナル調査ヲ爲サシムル
コトヲ得此ノ場合ニ於テハ證票ヲ携帶
セシムベシ
九
第一條本法又ハ本法ニ基キテ發スル命
令ノ規定ニ依リ地方長官ノ爲ス處分ニ
不服アル者ハ主務大臣ニ訴願スルコト
ヲ得
第十一條第七條ノ規定又ハ第八條第一
項ノ規定ニ依ル禁止若ハ制限ニ違反シ
タル者ハ一年以下ノ懲役又ハ千圓以下
ノ罰金ニ處ス
兒童ヲ使用スル者ハ兒童ノ年齡ヲ知ラ
ザルノ故ヲ以テ前項ノ處罰ヲ免ルルコ
トヲ得ズ但シ過失ナカリシ場合ハ此ノ
限ニ在ラズ
八
第十二條正當ノ理由ナクシテ第九條ノ
規定ニ依ル當該官吏若ハ吏員ノ職務執
行ヲ拒ミ、妨ゲ若ハ忌避シ又ハ其ノ尋
問ニ對シ答辯ヲ爲サズ若ハ虚僞ノ陳述
ヲ爲シ又ハ兒童ヲシテ答辯ヲ爲サシメ
ズ若ハ虛僞ノ陳述ヲ爲サシメタル者ハ
五百圓以下ノ罰金ニ處ス
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
〔政府委員齋藤隆夫君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X02719330320&spkNum=12
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013・齋藤隆夫
○政府委員(齋藤隆夫君) 內務大臣ハ少シ
病氣デ缺席デゴザイマスルカラシテ、私カ
ラシテ代ハリマシテ提案ノ趣旨ヲ說明イタ
シマス、現時我國ノ實情ヲ見マスルニ、兒
童ニ對スル各種ノ虐待事實ハ往々社會ノ耳
目ヲ聳動セシメツツアルト共ニ、兒童ノ身
心發達上ニ甚シキ弊害ヲ伴フ虞アル特殊業
務等ニ、兒童ヲ使用スルノ事實モ亦尠カラ
ズ見聞スルノデアリマス、而シテ是等ノ事
實ハ何レモ兒童ノ健康ヲ害ヒ、性能ノ發達
ヲ妨グルハ勿論、國家ノ將來ニ贖ヒ難キ損
失ヲ與ヘツツアルコトハ誠ニ想像ニ餘リア
ル所デアルノデアリマス、殊ニ近時財界ノ
不況ニ伴ヒ、兒童ニ對スル此種ノ虐待ハ一
層增加シ、其性質モ亦著シク苛酷ヲ加フル
ノ領向ニ在ルノデアリマス、然ルニ從來是
等ノ虐待行爲ノ豫防又ハ救濟ニ關シマシテ
ハ、民法刑罰法令等ノ中ニ若干ノ制裁規定
ヲ存スルニ止マリ、虐待ノ積極的防止及ビ
發見セラレタル被虐待兒童ノ保護救濟等ニ
關シマシテハ、何等方法ノ定メアルモノナ
キ狀態デアッタノデアリマス、政府ニ於キ
マシテハ敍上ノ實情ニ鑑ミマシテ、今囘特
ニ兒童ノ虐待防止ノ爲メ法規ヲ制定スルノ
急務ナルヲ思ヒマシテ玆ニ本法案ヲ提出
スルニ至リマシタ次第デアリマス、今本法
案ノ內容ノ重モナ點ニ付テ申述べマスレ
バ第一ハ兒童ヲ保護スベキ責任アル者
ガ兒童ヲ虐待シ、又ハ著シク其監護ヲ怠リ
タル場合ニ於キマシテハ
〔議長公爵德川家達君議席ニ著ク〕
地方長官ヲシテ兒童保護ノ責任アル者ニ對
シ訓戒ヲナシ、又ハ其監護ニ付テ條件ヲ附
スルコトヲ得セシムルト共ニ、必要アル場
合ニ於キマシテハ兒童ヲ親權者若クハ後見
人ニ引渡シ、又ハ私人ノ家庭若クハ適當ナ
ル施設ニ委託スルコトヲ得セシメ、兒童ノ
保護〓養ニ付テ十分ナル注意ヲ加フルコト
ト致シタイノデアリマス、第二ハ輕業曲
馬其他ノ業務及行爲ニシテ、兒童ノ虐待ニ
互リ又ハ之ヲ誘發スル虞アルモノニ付テ
ハ地方長官ヲシテ兒童ヲ用ヒルコトヲ禁
止シ又ハ制限シ得ルコトトナシ周到ナ
ル監督ヲ加ヘテ兒童虐待ノ事實ノ發生ヲ
未然ニ防止スルコトト致シタノデアリマ
ス、本法案ハ以上ノ如ク虐待ヲ蒙リタル兒
童保護ノ爲メ處分、及ビ特殊ノ業務、行
爲ニ關スル兒童便用ノ禁止制限ヲ重點ト致
シマシテ、之ニ附隨シテ其保護處分ニ要ス
ル費用ノ徵收及負擔竝ニ罰則等ニ關シテ、
若干ノ必要ナル規定ヲ設ケタノデアリマ
ス、尙ホ本法案ニ付キマシテハ衆議院ニ於
キマシテ一部修正セラレタノデアリマス、
卽チ政府原案第七條ノ規定ニ關スル修正デ
アリマス、其要旨ハ政府原案第七條ノ規定
ハ輕業、曲馬等兒童ノ心身ノ發達ニ著シ
キ障碍ヲ與フル如キモノニ、兒童ヲ用フル
コトヲ絕對ニ禁止スルモノデゴザイマシタ
ガ、衆議院ニ於キマシテハ之ヲ多少緩和イ
タシマシテ、政府原案ノ第八條ノ規定ノ如
ク地方長官ニ於テ兒童ノ虐待ニ涉リ又ハ之
ヲ誘發スル虞アル業務及行爲トシテ必要ア
ル場合ニハ兒童ノ使用ヲ禁止制限シ得ル
コトトセラレタノデアリマス、右ノ修正ハ
其根本ニ於キマシテハ政府立案ノ趣旨ト著
シク異ルコトハナイデアリマス、ノミナラ
ズ現下社會ノ實情ニ鑑ミマシテ、本法案ハ
實施スルノ必要アルト考ヘマシタノデ、政
府ト致シマシテモ之ニ同意ヲ表シタ次第デ
アリマス、繰返シテ申シマスルガ、兒童ニ
對スル虐待ノ防止ハ實ニ風〓道德ノ根柢ニ
關スル問題デゴザイマスルシ、社會文化ノ
核心ニ觸ルル所以デゴザイマシテ、苟モ等
閑ニ付スルコトヲ許サナイ所デアリマス、
何卒御審議ノ上速ニ御協贊ヲ與ヘラレムコ
トヲ切望イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X02719330320&spkNum=13
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014・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 別ニ質疑等發議
者ガナイト認メマスカラ、本案ノ特別委員
ノ氏名ヲ書記官ヲシテ朗讀イタサセマス
〔小林書記官朗讀〕
兒童虐待防止法案特別委員
公爵伊藤博精君子爵白川資長君
子爵三島通陽君嘉納治五郞君
男爵井田磐楠君小坂順造君
金杉英五郞君宮坂作衞君
澁澤金藏君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X02719330320&spkNum=14
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015・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 日程第五、昭和
八年法律第三號中改正律案、第六、海軍
工廠資金臨時補足ニ關スル法律案、第七、
舊韓國起業資金貸付ノ爲發行シタル英貨
興業債劵ノ元利支拂爲替差損金補給ニ關ス
ル法律案、政府提出、衆議院送付、第一讀
會、堀切大藏政務次官
昭和八年法律第三號中改正法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議
院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和八年三月十八日
衆議院議長秋田〓
貴族院議長公爵德川家達殿
昭和八年法律第三號中改正法律案
昭和八年法律第三號中左ノ通改正ス
第一條中「六億五千九百五十萬圓」ヲ「六
億七千七百十萬圓」ニ改ム
附則
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
〔參照〕
昭和八年法律第三號ハ昭和八年度一般
會計歲出ノ財源ニ充ツル爲公債發行ニ
關スル法律ナリ
海軍工廠資金臨時補足ニ關スル法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議
院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和八年三月十八日
衆議院議長秋田〓
貴族院議長公爵德川家達殿
海軍工廠資金臨時補足ニ關スル法律案
政府ハ海軍工廠資金ニ不足アルトキハ三
千萬圓ヲ限リ借入金ヲ爲シ臨時之ヲ補足
スルコトヲ得
附則
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
舊韓國起業資金貸付ノ爲發行シタル英
貨興業債劵ノ元利支拂爲替差損金補給
ニ關スル法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議
院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和八年三月十八日
衆議院議長秋田〓
貴族院議長公爵德川家達殿
舊韓國起業資金貸付ノ爲發行シタル英
貨興業債劵ノ元利支拂爲替差損金補給
ニ關スル法律案
第一條政府ハ日本興業銀行ガ舊韓國起
業資金貸付ノ爲發行シタル政府保證第
十三囘英貨興業債劵ノ未償還額百三萬
五千三百磅ノ償還又ハ其ノ昭和七年十
二月二日以後ノ利子支拂ヲ爲ス場合ニ於
テ之ニ要スル邦貨金額ガ其ノ償還社債
ノ額面金額又ハ支拂利札ノ劵面金額ヲ
英貨一磅ニ付九圓七十六錢三厘ノ割合
ヲ以テ換算シタル金額ニ比シ多額ナル
トキハ其ノ超過額ニ相當スル金額ヲ限
度トシ同行ニ對シ補給金ヲ交付スルコ
トヲ得
前項ノ補給金額ハ朝鮮總督之ヲ定ム
第二條前條ノ補給金ハ國債證劵ヲ以テ
之ヲ交付スルコトヲ得
第三條政府ハ前條ノ規定ニ依リ交付ス
ル爲必要ナル額ヲ限度トシ公債ヲ發行
スルコトヲ得
第四條本法ニ依リ交付スル國債證劵ノ
交付價格ハ時價ヲ參酌シテ大藏大臣之
可愛い
附則
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
〔政府委員堀切善兵衞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X02719330320&spkNum=15
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016・堀切善兵衞
○政府委員(堀切善兵衞君) 只今議題トナ
リマシタ昭和八年法律第三號中改正法律案
提出ノ理由ヲ說明イタシマス、昭和八年一
般會計歲入不足ノ補塡ニ關シマシテハ今
期帝國議會ニ於テ之ガ爲メ公債ヲ發行スル
コトヲ得ル法律ノ成立ヲ見タノデアリマス
ルガ、別途提出イタシマシタ昭和八年度歲
入歲出總豫算追加第一號ニ計上セル經費ノ
財源トシテ、普通歲入三百六十萬餘圓、借
入金三千萬圓及前年度剩餘金繰入千三百三
十萬餘圓、合計四千六百四十六萬餘圓ノ外、
千七百五十四萬圓ハ今日ノ場合之ヲ公債ニ
依ルノ外アリマセヌ、之ガ爲メ昭和八年法
律第三號中ノ公債發行限度ヲ擴張スルノ必
要ガアリマシテ、本案ヲ提出シタ次第デア
リマス、何卒御審議ノ上御協贊アラムコト
ヲ希望イタシマス、次ニ議題トナリマシタ
海軍工廠資金臨時、補足ニ關スル法律案、提
出ノ理由ヲ說明イタシマス海軍工廠資金
ハ現在ノ狀態ニ於テ一時不足ヲ生ズルト
考ヘラレマスル爲メ、三千萬圓ヲ限リ臨時
之ヲ補足イタサムトスルノデアリマス、而
シテ之ガ財源ハ借入金ニ依ルヲ適當ト認メ
マスルノデ、木案ヲ提出シタ次第デアリマ
ス、何卒御審議上御協贊アラムコトヲ希望
イタシマス、次ニ議題トナリマシタ舊韓國
起業資本貸付ノ爲發行シタル英貨興業債劵
ノ元利支拂爲替差損金補給ニ關スル法律
案、提出ノ理由ヲ說明イタシマス、日本興
行銀行ハ明治四十一年政府保證ノ下ニ、英
佛ニ於テ英貨興業債劵ヲ發行シ、其手取金
ヲ以テ舊韓國政府ニ對シ起業資金ノ貸付ヲ
爲シタノデアリマスガ、其後韓國併合ニ伴
ヒ、貸付金ノ元利支拂義務ハ同國政府カラ
朝鮮總督府特別會計ニ移屬セラレ今日ニ至
タノデアリマス、右貸付金竝ニ其資源トシ
テ發行シタ英貨興業債劵ノ償還期限ハ昭和
八年十二月一日ニ到來スルノデアリマスガ、
元來本貸付金ニ關シテハ、日本興業銀行ハ
事實上單ニ資金ノ調達及融通ノ仲介機關タ
ラシメラレタルニ過ギザルコトハ當時ノ
實情竝ニ貸付契約ノ趣旨ニ鑑ミ明白デアル
ト認メラレマスカラ、本貸付金ニ關シ、日
本興業銀行ニ損失ヲ被ラシムルガ如キコト
ハ之ヲ避ケナケレバナリマセヌ、從テ本貸
付金ノ資源タル英貨興業債劵ノ現在額百三
萬五千三百萬磅ノ今後ニ於ケル元利支拂ニ
要スル爲替差損金ハ、之ヲ政府ヨリ同行ニ
對シテ補給スルコトガ妥當デアルト考ヘマ
ス、又右ノ補給金ハ財源ノ都合上國債證劵
ヲ以テ交付スルコトガ適當デアルト認メラ
レマスカラ、之ガ爲ニ玆ニ本法律案ヲ提出
イタシタ次第デアリマス、何卒御審議ノ上
御協贊ヲ與ヘラレムコトヲ希望イタス次第
デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X02719330320&spkNum=16
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017・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 只今堀切政府委
員ノ說明セラレマシタ三案ノ特別委員ノ氏
名ヲ書記官ヲシテ朗讀ヲ致サセマス
〔小林書記官朗讀〕
昭和八年法律第三號中改正法律案外二件
特別委員
侯爵西〓從德君伯爵橋本實斐君
子爵松平忠壽君男爵沖貞男君
石渡敏一君大橋新太郞君
仲田傳之舩君金岡又左衞門君
瀨川彌右衞門君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X02719330320&spkNum=17
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018・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 日程第八、重要
美術品等ノ保存ニ關スル法律案、政府提出、
衆議院送付第一讀會、鳩山文部大臣
重要美術品等ノ保存ニ關スル法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議
院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和八年三月十八日
衆議院議長秋田〓
貴族院議長公爵德川家達殿
重要美術品等ノ保存ニ關スル法律案
第一條歷史上又ハ美術上特ニ重要ナル
價値アリト認メラルル物件(國寶ヲ除
ク)ヲ輸出又ハ移出セントスル者ハ主
務大臣ノ許可ヲ受クベシ但シ現存者ノ
製作ニ係ルモノ、製作後五十年ヲ經ザ
ルモノ及輸入後一年ヲ經ザルモノハ此
ノ限ニ在ラズ
第二條前條ノ規定ニ依リ其ノ輸出又ハ
移出ニ付許可ヲ要スル物件ハ主務大臣
之ヲ認定シ其ノ旨ヲ官報ヲ以テ〓示シ
且當該物件ノ所有者ニ通知スベシ
前項ノ規定ニ依リ認定ノ告示アリタル
トキハ賣買、交換又ハ贈與ノ目的ヲ以
テ當該物件ノ寄託ヲ受ケタル占有者ハ
其ノ認定アリタルコトヲ知リタルモノ
ト推定ス
第三條主務大臣第一條ノ規定ニ依リ許
可ノ申請アリタル場合ニ於テ許可ヲ爲
サザルトキハ許可申請ノ日ヨリ一年ヨ
リ長カラザル期間內ニ常該物件ヲ國寶
保存法第一條ノ規定ニ依リテ國寶トシ
テ指定シ又ハ前條ノ規定ニ依ル認定ヲ
取消スベシ
第四條認定、其ノ取消及第二條ノ規定
ニ依ル認定物件ノ所有者ニ付變更アリ
タル場合ノ屆出ニ關スル事項ハ命令ヲ
以テ之ヲ定ム
第五條主務大臣ノ許可ナクシテ第二條
ノ規定ニ依ル認定物件ヲ輸出又ハ移出
シタル者ハ三年以下ノ懲役若ハ禁錮又
ハ千圓以下ノ罰金ニ處ス
附則
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
〔國務大臣鳩山一郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X02719330320&spkNum=18
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019・鳩山一郎
○國務大臣(鳩山一郞君) 重要美術品等ノ
保存ニ關スル法律案ノ提案ノ理由ヲ說明申
上ゲマス、歷史上又ハ美術上、特ニ重要ノ
價値アル物件ヲ國內ニ存置イタシマスコト
ハ之ヲ學術〓究ノ立場カラ見マシテモ、
亦國民精神作興若クハ美的情操涵養ノ上
カラ考ヘマシテモ誠ニ肝要ナ事柄ト申サナ
クテハナリマセヌ、然ルニ從來國寶ニ關シ
マシテハ國寳保存法ガ制定セラレテ居リマ
スルガ國寶タルノ資格ヲ有チナガラ、未
ダ其指定手續ノ濟ンデ居ラヌ貴重ナ物件ガ
自由ニ海外ニ持運ビノ出來ル狀態ニ在ルノ
デアリマス、然ルニ近時圓爲替安、其他ノ
事情ニ依リマシテ、是等ノ貴重ナル美術品
等デ海外ニ流出セムトスルノ危險ニ曝サレ
テ居ルモノガ尠クナイノデアリマス、ソレ
故ニ此際歷史上又ハ美術上特ニ重要ナ價値
アル物件ニ付キマシテハ急速ニ之ヲ調査
認定イタシマシテ、其輸出又ハ移出ヲ取締
ル必要ガアルト考ヘマシテ本案ヲ提出イタ
シマシタ次第デアリマス、何卒御審議ノ上
御協議アラムコトヲ御願ヒ政シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X02719330320&spkNum=19
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020・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 之ニ質疑ノ通告
ガゴザイマス、岡部子爵ニ發言ヲ許シマス
〔子爵岡部長景君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X02719330320&spkNum=20
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021・岡部長景
○子爵岡部長景君 私ハ玆ニ議題トナリマ
シタル重要美術品ノ保存ニ關スル法律案ノ
上程ヲ機會ト致シマシテ、平素憂慮シテ居
リマシタル點ニ關シテ、一言總理大臣閣下
ニ對シテ御質問ヲ致シタイト存ズルノデア
リマスガ、只今總理大臣ハ豫算委員會ノ方
ニオ出デダサウデアリマシテ此席ニ御見エ
ニナリマセヌカラシテ、委細ハ速記錄ニ付
テ御覽ヲ戴イテ、其上デ總理大臣ノ御答辯
ヲ戴キタイト考ヘテ、一言此處ニ所懷ヲ述
ベサシテ戴キタイ次第デアリマス、近頃爲
替安ニ乘ジマシテ、只今文部大臣ノ御話ニ
ナッタ通リニ、未ダ國寶ニ指定セラレテ居リ
マセヌ所ノ日本ノ重要美衛品ガ惜シゲモナ
ク外國ニ流出スルト云フコトハ實ニ遺憾
ニ感ジテ居ッタ次第デアリマス、此際ニ於テ
政府ガ此國寶保存法ノ補充トシテ、此度此
法案ヲ提出セラレテ、古美術品等ノ海外ニ
逃避スルノヲ防止シテ、長ク是等ノモノヲ
我國ノ誇リトシテ之ヲ國內ニ留メテ置クト
云フ途ヲ講ゼラレルノハ誠ニ機宜ニ適シ
タ措置ト深ク喜ンデ居ル次第デアリマス、
我國ニ現存イタシマスル重要美術品ハ、我
我ノ祖先ノ心血ヲ注イデ作ッタル製作品デ
アルカ、或ハ支那其他ヨリ招來セラレマシ
タ所ノ東洋美術ノ精華トモ稱スベキモノデ
アリマシテ、古來之ヲ珍重シテ來タ所ノモ
ノデアリマスルカラシテ實ニ國民ノ精神
ト云フモノハ此美術品ノ上ニモ遺ッテ居ル
ノデアリマシテ、是ガ精神ノ作興維持ノ上
カラシテ、極メテ重要ナル資料デアルノデ
アリマス、デ我ガ日本ハ申スマデモナク上
ニ萬世一系ノ皇室ヲ戴イテ居リマスルシ
又世界無比ノ國體ト實ニ光輝アル歷史ト
ヲ有フテ居ルノデアリマシテ、又此歷史ヲ生
ミ出シタ所ノ我〓ノ環境ヲナシテ居ル自然
美モ世界ニ冠絕シテ居リマスルシ、又文
化、殊ニ精神文化ニ於キマシテハ、歐米ニ
比シマシテ遙ニ卓越シタルモノガアルノデ
リマス、政府ハ或ハ國體ノ擁護、或ハ歷史
ノ〓授、又此自然美トカ、又文化ノ保存ニ
付キマシテハソレ〓〓方策ヲ講ジテ居ラ
レルノデアッテ、誠ニ是ハ然カナケレバナラ
ナイト考ヘマスルガ、明治以來一部國民ノ
間ニハ歐化主義ニ陷リマシテ、外物崇拜ノ
思想ト云フモノガ滔々トシテ風ヲナシテ居
ルノデアリマス、近年殊ニ此甚シキヲ加へ
テ居リマス、勿論彼レノ長ヲ採リマシテ我
ガ短ヲ補ヒ、國家ノ進展ニ資スルト云フコ
トハ是ハ當然ノコトデアリマスルケレド
モ、徒ニ歐米ノ模倣ヲ是レ事トシテ、漸次
日本精神ト云フモノヲ失ヒツツアルト云フ
ノハ誠ニ〓嘆ノ至リデアリマス單リ軍事
ニ至リマシテハ是ハ我國ハ古來尙武ノ國
トシテ强キ確信ヲ······信念ヲ有シテ居ルノ
デアリマスルカラ、未ダ曾テ外侮ヲ受ケタ
コトハアリマセヌガ、文物、制度乃至思想方
面等ニ至リマシテハ、今申シマシタ通リ外
物崇拜ノ結果トシテ、種々其現ハレガ多ク
現ハレテ居ルノデアリマス、例ヘバ議院制
度ノ如キ、或ハ刑法、刑事訴訟法其他諸般
ノ法制ノ如キ、又〓育方面ニ於キマシテハ
中等學生ニ對シテ英語其他ノ外國語等ヲ、
必修課目トシテ多クノ時間ヲ取ッテ居リマ
ス爲ニ、日本ノ認識或ハ信念ヲ深カラシム
ルヤウナ、多クノ課程ヲ省略シナケレバナ
ラナイヤウナ實情ニナッテ居ルノデアリマ
ス、又其他日本ノ慣行ヲ無視シ、或ハ日本
ノ實情ニ卽シナイモノガ多々アリマシテ、
ソレガ或ハ餘リ行キ過ギテ、國民精神ガ其
爲ニ段々ニ薄ライデ行クト云フヤウナ虞ノ
アルモノガ枚擧ニ遑ガナイノデアリマス、
彼ノ法律ヲ以テ「メートル」法ヲ强制シテ、
日本ノ古來慣用シ來テ居ル所ノ尺貫法ヲ廢
シテ、一般國民ノ日常生活ヲ混亂ニ陷レル
ト云フヤウナコトハ實ニ其最モ甚シイ惡
例デアルト考ヘルノデアリマス、又近頃思
想方面ニ於テ、我ガ國體ヲ忘レテ共產露西
亞ヲ謳歌スルヤウナモノガ出來マシテ、實
ニ危險、矯激ナル思想ヲ懷イテ居ル者ガ輩
出スルニ至リマシタノハ實ニ是等ノ我ガ
外物崇拜ノ思想系統ノ、極端ナル現ハレデ
アルト考ヘルノデアリマシテ、御同樣誠ニ
憂慮ニ堪ヘナイ次第デアリマス、今囘政府
ガ此重要美術品ノ海外逃避防止ノ爲ニ、此
法ヲ設ケラレマシタル御趣意ハ至極結構ナ
モノデアルト考ヘラレマスルケレドモ、是
ハ寧ロ末節デハナイカト考ヘルノデアリマ
ス、更ニ〓〓重要ナル又喫緊ナル問題ハ
此崇高ナル日本精神其モノノ海外ニ逃避ス
ルト云フコトヲ防グコトニ付テ、根本的ノ
御考慮ヲ願ハナケレバナラナイコトデアル
ト考ヘルノデアリマス、其方法ニ付キマシ
テハ多々アリマセウガ、ナカ〓〓是ハ物質
ノ方ト違ヒマシテ、容易ノ業デハナイノデ
ハアリマスルケレドモ、ドウカ官民ガ協力
シテ、此日本精神ノ何處ニアルカト云フコ
トヲ篤ト熟考シ、又檢討シマシテ、其結果
得タル所ノ結論ハ、日本精神ノ琴線ニ觸レ
タル改革維新ヲ圖ルノ外ハナイト考ヘルノ
デアリマス、是ハ斷行スル外ナイト考ヘル
ノデアリマス政府ニ於テハ宜シク此
歐化主義ニ偏シタル所ノ諸般ノ制度、文
物等ニ一大斧鉞ヲ加ヘテ文〓ヲ根本
的ニ改革シテ、日本精神ノ作興ト云フコト
ヲ飽ク迄モ努メラレルコトヲ切ニ希望スル
次第デアリマス、是亦今日ノ非常時局ヲ打
開スル唯一ノ途デハナイカト密カニ考ヘテ
居ル次第デアリマス、是ハ簡單デゴザイマ
スルケレドモ、自分ガ年來深ク憂慮シテ居
ル所デアリマシテ、政府ニ於テモドウカ此
趣旨ヲ以テ此法案提出ノ御精神ヲ更ニノ
大イニ擴大セラレマシテ、日本精神、此形
而上ノ最モ崇高ナル日本精神ノ保存ト云フ
コトニ付テ、大イニ御考慮ヲ煩ハシタイト
思フノデアリマス、此點ニ付キマシテ總理
大臣ノ固キ御決心ガドノ邊ニアルカ、ソレ
ヲ承ハリタイト思フノデアリマシテ、玆
質問ヲ致シタ次第デアリマス(拍手)
〔國務大臣子爵齋藤實君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X02719330320&spkNum=21
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022・齋藤實
○國務大臣(子爵篇藤實君) 岡部子爵ノ御
質問ニ對シマシテ御答ヲ致シマス、御質問
ノ御趣旨ハ誠ニ御同感デアリマス、併シナ
ガラ玆ニ簡單ニ其具體的ノコトヲ申上ゲル
コトノ出來ナイ問題デアリマスカラ、篤ト
此點ニ付キマシテハ考慮ヲ拂ヒマシテ、御
質問ノ御趣旨ニ副フヤウニ致シタイト考ヘ
やく、左樣····発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X02719330320&spkNum=22
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023・岡部長景
○子爵岡部長計君 簡單デアリマスカラ一
言此處カラ發言ヲ許シテ戴キタイト思ヒマ
ス、只今總理大臣閣下カラ御答辯ヲ戴キマ
シテ、又趣旨ニ於テ御贊同下スッタコトハ
誠ニ本懷ノ至リニ存ズル次第デアリマス
此事ニ付キマシテハドウカ首相ニ於テモ御
〓究ノ上、更ニ政府部內全般ヲ通ジテ、隈
ナク其御精神ヲ徹底セラレマシテ、ドウカ
此大イナル、重要ナル問題ニ付キマシテ、
其御趣旨ノ有終ノ美ヲ擧ゲラレムコトヲ切
ニ希望シテ已マナイ次第デアリマス、一言
希望ヲ申上ゲマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X02719330320&spkNum=23
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024・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 他ニ發言者モナ
イト認メマスカラ、本案ノ特別委員ノ氏名
ヲ書記官ヲシテ朗讀ヲ致サセマス
〔小林書記官朗讀〕
重要美衛品等ノ保存ニ關スル法律案特別
委員
侯爵細川護立君子爵三室戶敬光君
竹林賚藏君男爵千秋季隆君
竹越與三郞君宮田光雄君
田所美治君磯貝浩君
米原章三君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X02719330320&spkNum=24
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025・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 日程第九、南滿
洲鐵道株式會社ノ株式引受ニ關スル法律
案、政府提出、衆議院送付、第一讀會
南滿洲鐵道株式會社ノ株式引受ニ關ス
ル法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議
院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和八年三月十八日
衆議院議長秋田清
貴族院議長公爵德川家達殿
南滿洲鐵道株式會社ノ株式引受ニ關ス
ル法律案
第一條政府ハ現ニ所有スル南滿洲鐵道
株式會社ノ株式ノ外更ニ其ノ株式額面
一億八千萬圓ヲ引受クルコトヲ得
前項ノ規定ニ依ル株式引受ハ株式申込
證ヲ以テスルコトヲ要セズ
第二條前條第一項ノ規定ニ依リ株式ヲ
引受ケタルトキハ政府ハ其ノ引受ノ日
ニ於テ南滿洲鐵道株式會社ノ發行ニ係
ル英貨社債額面四百萬磅ノ元利支拂義
務ヲ承繼ス此ノ場合ニ於テハ大正九年
法律第三十四號ニ依リ政府ノ引受ケタ
ル株式ニ付株金二百八十四萬四千圓、
前條第一項ノ規定ニ依リ政府ノ引受ケ
タル株式ニ付株金三千六百二十萬八千
圓ノ拂込アリタルモノト看做ス
第三條前條ノ英貨社債ノ元金償還會
入銷却ノ方法ニ依ル場合ヲ除ク)又ハ
利子支拂ニ要シタル邦貨金額ガ其ノ償
還社債ノ額面金額又ハ支拂利札ノ劵面
金額ヲ英貨一磅ニ付九圓七十六錢三厘
ノ割合ヲ以テ換算シタル金額ニ比シ多
額ナルトキハ其ノ超過額ニ相當スル金
額ヲ南滿洲鐵道株式會社ヨリ政府ニ納
付シ少額ナルトキハ其ノ不足額ニ相當
スル金額ヲ政府ヨリ南滿洲鐵道株式會
社ニ交付ス
前項ノ元金償還又ハ利子支拂ニ要シタ
ル邦貨金額ノ計算方法其ノ他必要ナル
事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
附則
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
〔國務大臣永井柳太郞君演壇ニ登ル)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X02719330320&spkNum=25
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026・永井柳太郎
○國務大臣(永井柳太郞君) 只今議題トナ
リマシタル南滿洲鐵道株式會社ノ株式引受
ニ關スル法律案、提出ノ理由ヲ說明イタシ
タイト存ジマス、滿洲國成立以來內外ノ情
勢ニ鑑ミマスルニ、滿洲國ノ經濟開發ハ極
メテ緊要デアリマシテ、南滿洲鐵道株式會
社ノ使命ハ、從來ニ比シテ一層重大ナルモ
ノガアルニ至ッタノデアリマス、而シテ南滿
洲鐵道株式會社ノ滿洲國ニ於ケル新規鐵道
ノ建設、旣設鐵道ノ改良、其他緊要ナル附
帶事業ノ爲ニ巨額ノ資金ヲ調達セナケレバ
ナラナイコトニナッタノデアリマス、從テ今
囘其資本金額ヲ總額八億圓ト爲ス必要ヲ認
メタノデアリマス、之ガ爲ニ新ニ三億六千
萬圓ヲ增加スルコトニ致シタノデアリマス
ガ、此增資株式ノ內半數ハ南滿洲鐵道株式
會社事業ノ國家的性質ニ鑑ミマシテ、政府
ニ於キマシテ之ヲ引受クルコトニ致シタイ
ト存ズルノデアリマス、政府ノ株金拂込ノ
方法ニ付キマシテハ、現ニ同社發行ニ係ル英
貨社債額面四百萬磅ノ元利支拂ノ義務ヲ政
府ニ於テ繼承シ、之ヲ以テ政府ガ只今持ッテ
居リマスル未拂込株式及今囘引受ケムト致
シマスル株式ノ株金拂込ノ一部ニ充當スル
コトヲ適當ト認メマシタノデ、之ニ關スル
本法律案ヲ提出イタシマシタ次第デゴザイ
マス、何卒審議ノ上御協贊ヲ賜ハラムコト
ヲ希望イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X02719330320&spkNum=26
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027・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 質疑ノ通告ガゴ
ザイマス、兒玉伯爵ニ質疑ノ發言ヲ許シマ
ス
〔伯爵兒玉秀雄君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X02719330320&spkNum=27
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028・兒玉秀雄
○伯爵兒玉秀雄君 只今議題ニナリマシタ
南滿洲鐵道會社增資案ニ對シマシテ、其審
議ニ先ダチ政府ノ意見ヲ確メテ置キタイト
思フノデアリマス、御承知ノ通リ此南滿洲
鐵道會社ハ日露戰爭直後ニ於キマシテ、阪
谷男爵ノ建策ニ基イテ計畫セラレマシタ
ル組織デアリマス、爾來玆ニ三十年、滿
鐵ノ活動誠ニ甚シイモノガアリマシテ、
今日ノ盛況ヲ見テ居ルノデアリマス日
今拓務大臣ヨリ御說明ニナリマシタル
通リニ、今日ノ、現代ノ政治的關係カラ
見。マシテ、滿鐵ノ使命ハ將來ニ於テ愈、ミ
重要性ヲ加フル事柄ハ申ス迄デモナイノデ
アリマス、此重要性ニ應ゼムガ爲ニ、玆
四億ノ增資ヲ致シ、更ニ四億ノ社債募集ノ
權限ヲ與ヘムトスル次第デアリマス、誠
私ハ時宜ニ適シタル政策ト考ヘテ居ルノデ
アリマスルガ、啻ニ滿鐵ノ資金ヲ增加シマ
シタノミニ於キマシテハ、決シテ政府ノ庶
幾スル所ノ滿鐵ノ重要性ヲ解決スルコトハ
出來ナイト私ハ思フノデアリマス、其內容
組織ニ向ッテ、此機會ニ於テ一大改革ヲ加
フルノ必要ガアルト私ハ考ヘテ居リマス
御承知ノ通リニ滿鐵ハ其沿線ニ向ッテ附屬
地ヲ有ッテ居リマス、此附屬地行政ハ警察行
政ヲ除キマスル外、助長行政ニ屬スル部分
ハ滿鐵ノ主管ニ屬シテ居ルノデアリマス
而シテ滿鐵ガ之ヲ經營イタシマスルノニ
ハ年來巨額ノ資金ヲ投ジテ居ルノデアリ
マス其結果ト致シマシテ之ヲ滿鐵創立當
時ノ狀態ト、今日ノ文化向上ノ有樣ヲ比較
スルナラバデス、誠ニ夢ノ如キ感ガアルノ
デアリマス、卽チ〓育制度ニ於キマシテハ
小學校ヨリ大學ニ至ルマデ、衞生設備ニ於
キマシテハ各所ニ病院ヲ設ケ、其外道路竝
ニ衞生ニ屬スル諸般ノ助長行政ヲ經營シテ
居ルノデアリマス、現ニ今年度ニ於キマシ
テモ千四百萬圓ノ金ヲ費シテ居ルノデアリ
やく、此滿鐵附屬地ニ於キマス行政、之ヲ
國ニ移管セムトスル所ノ議論ハ從來度ミ
アッタノデアリマス、併ナガラデス、是人
滿鐵ノ內部ノ事情ト財政上ノ關係ヨリ致シ
マシテ、今日マデ實現シ兼ネテ居ルノデア
リマス、併ナガラ玆ニ滿鐵ガ大イニ將來ニ
發展セムトシ、且又今日ノ滿洲國ノ事態ニ
鑑ミマシテ、此機會ニ於テ此附屬地行政ヲ
國ニ移管スルノ必要ヲ私ハ感ズルノデアリ
そく、其切實ナルコトヲ感ズルノデアリマ
ス、之ヲ政治上ノ見地カラ見マスルナラバ
デス、私ノ最モ從來憂ヘト致シテ居リマス
ル所ハ普通〓育ニアルノデアリマス我ガ
生命線ニ立ッテ第二世トシテ働クベキ所ノ
子供ハ其國民〓育ハ其本能性ノ〓育ハ
之ヲ一營利會社ガ營ンデ居ルト云フコトデ
アリマス、〓育ノ根本ニ顧ミテ速ニ是ハ國
家ノ事業トシテデス、此普通〓育ヲ移スト
云フ事柄ハ當然ノコトト私ハ考ヘテ居ルノ
デアリマス、內地ニ於テハ勿論ノコト、此第
一線ニ立ツテ働クベキ第二世、殊ニ精神〓
育ニ向ッテ重キヲ置カナケレバナラヌ此時
代ニ適應スルガ爲ニハ、少クトモ普通〓育
ハ今日ヨリ直ニ國ニ移管ヲシテ、之ヲ經營
セシムルト云フコトノ必要ヲ私ハ切實ニ感
ズルノデアリマス、從ヒマシテ文化〓育ニ
屬スル所ノ部分、卽チ大學ノ如キ所ノモノ
ハ敢テ私ハ之ヲ國ニ移管シロトハ申シマセ
又、併ナガラデス、行政統一ノ點カラ見マ
シタナラバ、少クトモ國民〓育ニ屬スル所
ノ部分、竝ニ土木衞生ニ關シマスル所ノ此
助長行政ニ關スル部分ハ之ヲ國ニ移管ス
ルガ當然ノコトト私ハ思フノデアリマス、
又一面ニ於テ經濟方面カラ之ヲ見マスルナ
ラバ此四億ノ外債社債、之ヲ或ハ內地ニ
求メ、或ハ外國ニ求メル場合ガアルノデゴ
ザイマセウ、先年滿鐵ガ外債ヲ募集セムト
シテ米國ニ交涉シマシタル其時ニデス、米
國ノ資本家ノ最モ怖レル所ノモノハ此附属
地行政ニアッタノデアリマス、私ハ考ヘマ
ス米國ノ如キ資本尊重ノ最モ强イ國民ノ
頭カラ見マスルナラバ一營利會社ガ斯ノ
如ク不生產的事業ヲ永久ニヤッテ居ルト云
フ事柄ハデス、如何ニモ不安ノ念ニ堪ヘナ
イノデアラウト思フノデアリマス、蓋シ此
附屬地行政ニ、年ニ少クトモ千四百萬圓ノ
經常費ヲ費シテ居ル、此附屬地行政ハ滿鐵
ノ財的信用ヲ國際的ニ失墜シテ居ル唯一
ノ原因ニナッテ居ルノデアリマス、此癌
ヲ除キマセヌケレバ、今後四億ノ社債ヲ募
集セムトスル場合ニ於テ、殊ニ之ヲ海外ニ
求メムトスル場合ニ於テハ大ナル私ハ障
碍ニナルデアラウト云フ事柄ヲ憂フル者デア
リマス、此意味ニ於キマシテ滿鐵ノ今囘ノ
增資ヲシテ、其運用ヲ滑カニシテ、滿鐵ノ
資產ヲ充實ナラシムル點ヨリ見テモ、此附
屬地行政ハ速ニ國ニ移管スルノ至當ナルヲ
感ズル者デアリマス、此意味ニ於キマシテ
附屬地行政、殊ニ下級行政ヲ此際速ニ滿鐵
ヨリ國ニ移管スルノ必要ヲ私ハ感ジマスガ
故ニ、此增資案ヲ審議スルニ當リマシテ、
政府ニ於テ果シテ其用意アリヤ否ヤト云フ
事柄ヲ伺ッテ見タイト思フノデアリマス、次
ニ只今拓務大臣ノ御說明ニモアリマシタ通
リニ、今囘滿鐵ハ從來滿洲國ノ經營ニ屬シ
テ居リマシタル鐵道ノ、委託經營ヲ受ケル
コトニ相成ッタノデアリマス、此鐵道ノ分量
カラ申シマスナラバ正ニ從來ノ滿鐵本線
ニ倍加シテ居ルノデアリマス、而シテ其鐵
道ノ內容ヲ見マスルナラバデス、玆ニ滿鐵
ト殆ド因果關係ノ最モ深キモノガアルノデ
アリマス、此事情カラ考ヘテ見マスルナラ
バ、玆ニ適當ナル時期ニ於テ滿鐵ノ組織ヲ
一變イタシマシテ、玆ニ日滿合辨ノ株式會
社ニスルノ用意アリヤ否ヤト云フコトノ事
柄ヲ私ハ政府ニ伺フテ見タイト思フノデア
リマス、御承知ノ通リニ今囘新設セラレマ
シタル滿洲航空會社、此航空會社ハ日滿合
辨ノ事業デアリマシテ、而モ滿洲國ノ法人
デアルノデアリマス、而シテ我こガ考ヘル
滿洲國ト我國ノ設備トノ間ニ、最モ早ク連
絡ヲ取ラナケレバナラヌノハ通信事業デア
ルト思フノデアリマス、此通信事業ニ付テ
モ恐ラクハ將來玆ニ日滿合辨ノ一ツノ新シ
キ機關ヲ見出サナケレバナラヌト云フ機會
ニ到著シテ居ルノデハナイカト私ハ考ヘテ
居ルノデアリマス、旣ニ航空交通ニ於テ日
滿合辨ノ組織ヲ得、通信事業ニ於テ又其趣
旨ヲ同ジクシテ居ルナラバ玆ニ殘サレタ
モノハ所謂鐵道交通デアリマス、此鐵道交
通ヲ一團トシテ日滿合辨ノ一大株式會社ニ
スルト云フ事柄ハ之ヲ財政的ノ方面カラ
見マスルナラバ其資本ノ增大ヲ來シ、其信
用ノ擴大ヲ致シマシテ、而シテ新會社ノ活
動力ト云フモノハ愈、玆ニ大ヲ加ヘテ、只
今拓務大臣ノ言ハレマシタル所ノ趣旨ヲ貫
徹スルノニ一層容易デアルト私ハ思フノデ
アリマス、又交通行政ノ上デ見マスルナラ
バ此移管サレテ居ル所謂委託經營ノ形ヲ
變イタシマシテ、本然タル株式會社ニ致シ
マスルナラバ、其連絡運輸ノ滑ラカニナル
ト云フ事柄ハ申ス迄モゴザイマセヌ、斯ク
考ヘテ見マスルナラバ此滿鐵會社ハ將來
適當ナル時期ニ於キマシテ其組織ヲ一變イ
タシマシテ、日滿合辨ノ一大株式會社トス
ルノ用意アリヤ否ヤト云フ事柄ヲ私ハ政府
ニ確メテ見タイト思フノデアリマス、蓋シ
滿洲國ニ對シマスル所ノ對策ハ色ミアリマ
セウ、併ナガラ私ノ信ズル所ヲ以テ致シマ
スルナラバ一面ニ於テハ我ガ權益ヲ確保
シ我ガ義務ヲ誠實ニ履行スルト同時ニ、
飽ク迄モ滿洲國建設ノ歷史ヲ尊重イタシマ
シ六、其面目ヲ尊重スルト云フ事柄ガ、是
レ蓋シ滿洲國ニ對シマスル永久親善ノ形ヲ
密接ナラシムル、根本指導方針ト私ハ考へ
テ居ルノデアリマス、此意味ニ於キマシテ
只今私ハ此滿鐵ノ增資案ヲ議スルニ先ダチ
マシテ、其癌トナルベキ所ノ滿鐵附屬地ノ
行政ヲ國ニ移管シ、更ニ適當ナル時期ニ於
テ滿鐵ノ組織ヲ一變スルノ用意アリヤ否ヤ
ト云フ事柄ヲ政府ニ確メテ、以テ本案審議
ノ便ニ致シタイト思フノデアリマス(拍手)
〔國務大臣永井柳太郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X02719330320&spkNum=28
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029・永井柳太郎
○國務大臣(永井柳太郞君) 只今兒玉伯カ
ラ日滿共存共榮ノ遠大ナル見地ニ基イタ
御質問ガゴザイマシテ、其御趣旨ニ對シマ
シテハ同感ニ存ズル次第デゴザイマス、殊
ニ只今私ノ說明イタシマシタ提案ヲ、大體
ニ於テ御認メ下サレル意味ニ於テノ御質問
ト云フコトヲ有難ク存ジマス、御質問ノ第
一ハ南滿洲鐵道株式會社ノ、附屬地ノ行
政ニ關スルコトデアリマシテ、附屬地行政
ヲ滿鐵カラ國家ノ手ニ收メテ、〓育、衞生、
土木ノ如キモノヲ、滿鐵ニ依ラズ政府ノ直
接ノ仕事ニスル方ガ、〓育ノ精神ヲ徹底セ
シムル上ニ於テモ、亦滿鐵ノ經濟的信用ヲ
確立スル爲ニモ適切デハナイカト云フ御意
見デアッタヤウニ存ジマス、御承知ノ通リニ
滿鐵ノ附屬地行政ニ關シマス〓權利ハ只
今兒玉伯モ御話ニナリマシタ通リ、舊露西
亞カラ我國ガ滿鐵ヲ繼承スルニ至リマシタ
其當時ノ國際條約ニモ密接ナル關係ヲ有ツ
テ居ルコトデアリマスルシ、又滿鐵自身ノ
財政ニモ密接ナル關係ヲ持ッテ居ルノデゴ
ザイマシテ、是ハ可ナリ複雜ナル內容ヲ持ッ
テ居ルノデゴザイマス、固ヨリ滿鐵ノ附屬
地ニ於キマスル〓育其他ノコトガ、今日滿
鐵ニ依ッテ行ハレテ居ルノデアリマスガ政
府ト致シマシテハ滿鐵ノ國家的使命ニ鑑ミ
マシテ、滿鐵附屬地ニ於ケル〓育等ハ全ク
政府直接ノ、政府直屬ノ學校ニ於ケルト同
ジヤウニ、十分滿鐵ノ國家的使命ニ基ヅク
〓育ヲ行ハシメテ居ルノデアーマスノデ、
是等ノ只今兒玉伯爵カラ御話ニナリマシタ
ヤウナ諸種ノ問題ハ是ハ今直ニ政府トシ
テハ解決スルコトガ適當デアルカドウカ
ト云フコトヲ、十分ニ考慮シナケレバナラ
ナイノデアリマス、色ミ只今申上ゲマシタ
ヤウナ、條約上、財政上、種々ナル關係ガア
リマスノデ、是等ノ點ヲ十分考慮イタシマ
シテ、假令滿鐵ガ附屬地行政ノ衝ニ當ヲテ
居リマシテモ、其行政ノ方針ニ於キマシテ
ハ、政府ノ要求スル國家的使命ニ悖ルコト
ノナイヤウニ、十分指導モシ、監督モシナ
ケレバナラヌト考ヘテ居リマスルガ、又之
ヲ滿鐵カラ政府ニ收メルコトガ出來ルト致
シマシテモ、其實現ニ付テハ色ミ重要ナ間
題ノ考慮ガ必要デアルト考ヘマス、此點ニ
付キマシテハ政府トシテハ、十分〓究ヲ致
シテ見ル積リデゴザイマス、唯今日迄モ滿
鐵ハ相當現在ノ制度ノ下ニ於テ、〓育ニ於
キマシテモ、衞生ノコトニ於キマシテモ其
使命ニ悖ラナイ努力ヲシテ居ッテ、政府モ亦
ソレヲ努力セシムルヤウニ十分督勵シテ
居リマシタコトダケハ御諒承ヲ願ヒタイト
存ジマス、第二ニ滿鐵ノ事業ヲ日滿兩國政
府ノ合辦事業トスルコトガ適切デアルト云
フ御意見デゴザイマシテ、此意見ハ日滿共
存共榮ノ遠大ナル見地カラ見マシテ御尤モ
ニ存ジマス、現ニ今日ノ法規ノ下ニ於キマ
シテモ、滿鐵ハ日滿兩國ノ資本ヲ入レテ經
營スルコトガ出來ルヤウニナッテ居ルノデ
ゴザイマシテ今囘ノ增資ニ於キマシ
テモ、若シ滿洲國政府ガソレヲ承諾ス
ルナラバ、我ミハ滿洲國政府ノ資本ヲモ
共ニ迎ヘタイト思ヒマス又滿洲國民ノ
中デ資本ノ公募ニ應ジタイト云フモノガア
レバ我ミハ喜ンデ之ヲ迎へタイト考ヘテ
居ルノデアリマス、サウシテ出來ルダケ日
滿兩國ノ協力ノ範圍ヲ擴大シテ行キタイト
云フコトハ至極同感ニ存ジマス、兒玉伯ノ
御意見ノ中ニハ鐵道ノ如キモノハ之ヲ委託
經營トセズシテ、寧ロ滿洲國政府ノ現物出
資トスルト云フヤウナ意味ノコトモ含ヽレ
テ居ッタヤウデアリマスガ、是等ノ點ニ付キ
マシテハ今日ハ滿洲國政府ニ於テ既ニ鐵追
ヲ國有トシテ、之ヲ經驗アリ實力アルモ
ノニ委託經營スルト云フコトガ決定サレ
テ、一部分ハ法律ニモナッテ居ルノデアリ
マスカラ、今直ニサウ云フ事實ヲ實現スル
コトハ困難デアルカトモ思ヒマスルガ、此間
題モ亦日滿兩國ノ將來ノ爲ニハ十分〓究シ
ナケレバナラナイ有意義ナル問題デアル
ト、斯樣ニ考ヘテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X02719330320&spkNum=29
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030・兒玉秀雄
○伯爵兒玉秀雄君 簡單デアリマスカラ此
席カラ······只今拓務大臣ヨリ御懇切ナル御
說明ヲ得マシテ誠ニ感謝イタス次第デアリ
やく、此問題ハ滿洲國開發ニ對シマスル重
大ナ關係ノアル問題デアリマス、而シテ今
日國際的ニ考ヘテ見マシテ此滿洲國ニ關シ
マスル問題ノ解決ハ實ニ我國全般ノ問題
ト申シテモ宜イト考へテ居リマス、從ヒマ
シテ政府當局ニ於キマシテハ十分御〓究ノ
上ニ、機會ヲ逸セズシテ適當ナル措置ニ出
デラレムコトヲ切ニ希望シテ、私ハ質問ヲ
終リマス
〔男爵菊池武夫君發言ノ許可ヲ求ム〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X02719330320&spkNum=30
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031・徳川家達
○議長公爵德川家達君) 菊池男爵ハドウ
云フコトデゴザイマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X02719330320&spkNum=31
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032・菊池武夫
○男爵菊池武夫君 質問ヲ致シタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X02719330320&spkNum=32
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033・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 質疑ヲナサレタ
イ、質疑デスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X02719330320&spkNum=33
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034・菊池武夫
○男爵菊池武夫君 ハイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X02719330320&spkNum=34
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035・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 宜シウゴザイマ
ス、菊池男爵
〔男爵菊池武夫君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X02719330320&spkNum=35
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036・菊池武夫
○男爵菊池武夫君 私ハ滿鐵ノ增資法案
ノ大滿鐵主義ト云フコトニ政府ガ主義ヲ
オ立テニナリマシテ玆ニ此法案ガ現ハレ
マシタニ付キマシテハ日滿經濟統制ト云
フコトガ之ニ依ッテ適當ニ行ハレテ參ルノ
デアラウカドウカ、私ハ大イナル弊害ヲ助
長イタシマシテ、遂ニ日滿兩國ノ間ニ更ニ
關稅障壁ガ打立テラレタリ、取除ケラレタ
リスルヤウナ事情ニ參ルノデハナカラウ
カ、斯ウ考ヘルニ依リマシテ、之ニ關スル
前途ノ御見透シヲ拜聽イタシマシタ上ニ
本案ヲ審カニ〓究イタシテ見タイト思フノ
デゴザイマス、抑ミ日滿統制經濟ト云フコ
トニ付キマシテハ、客年五月以來拓務大臣
閣下トモ數囘御目ニ懸リマシタト思ヒマス
ル、筆記シタモノヲ御覽ニ入レテ、後デ御
郵送ヲ願ッタコトサヘモゴザイマスル、又內
田閣下ニモ夙ニ申上ゲマシテ、マダ滿鐵總
裁トシテ御入閣ニナルコトノ御決心ノ付イ
タ當時カラ、書イタモノヲ以テ談話ノ代リ
ニ御覽ニ入レタ程デアリマシテ、私ノ當時
カラノ意中ハ審カニ御承認ノコトト思ヒマ
スル遂ニ大减鐵主義ト云フヤウナモノデ
ハ、非常ナ危險ガアルデハナイカト云フコ
トハ、具サニ御〓究ニナッタコトト信ズルノ
デゴザイマス、一體滿鐵ト云フモノガ貢獻
ヲ致シマシタコトモソレハ固ク信ジマス
ル、併シ私ガ在滿中ズット見テ居リマシタ所
ニ依リマスレバ、非常ナ缺點モアルノデゴザ
イマス、現ニ吉會線ノ如キモ、今日マデ出來
ナカッタ所以ハ實ハ滿鐵ノ反對ニ會ッタモノ
ト信ジマス、其外政治的ニ種々ナル弊害ノ事
實ゴザイマスルコトハ明カデゴザイマス、
彼ノ會計檢査ハ行ハレマシテモ、議會ニハ
決算トシテ參リマセヌカラ分ラヌノデゴザ
イマス、ソコデ此度大滿鐵主義、先ヅ硫安
ヨリ御決定ニナッタヤウニ思ハレマスル、是
ハ陸軍ハ硝酸ガ欲シイト云フコトハ山ミデ
ゴザイマスルカラ、陸軍モ同意シタノヂヤ
ラウトハ思ヒマスルケレドモ、結構デゴザ
イマス、併ナガラ國ノ前途、此世界ノ現在
ノ經濟ノ動向、「ブロック」經濟ト云フ風ニ參
リマシテ、我〓內ハドウシテモ自給自足、
日滿姉妹國ガ相提携一丸トナリマシテ、我
我ノ生存ヲ確保スルト云フコトニ根本ノ御
方針ガ定ッテ、是ヨリ割出サレマシタル御
政策ガ出テ來ナイデハ先キ申上ゲマシタ
ヤウナ關稅障壁ノ明ケ立テト云フヤウナコ
トニ行キハ致シマスマイカ、モット露骨ニ申
上ゲマスレバ此硫安問題ニ致セ、其他ノ
產業ニ致セ、總テガ日本ノ政治ト影響ヲ致
シマス、短簡ニ申セバ民政黨ハ滿鐵、政友
會ハ內地產業ト言ッタヤウナコトニナリマ
シテ必ズ爭ヒノ起ルベキ此處ニ根源ヲ有
ツノデゴザイマス、現在ニ於キマシテモ旣
ニ大連汽船ノ六艘ニ付テ遲信省ト拓務大臣
トノ間ニハ御扞格ガアルヤウニ新聞ニモ書
イテゴザイマス、我國ノ造船ノ奬勵ノ上カ
ラハ、誠ニ立派ナ日本ノ船ガ出來ルコトヲ
御望ミダラウト思ヒマス、併ナガラ大連汽
船トシマシテハ今之ヲ安ク買込ミマシテ、
他日羅津、敦賀間ノ航路ヲ獨占イタシマス
ナラバ、滿鐵トシテハ結構太ルコトデゴザ
イマセウ、是ハ滿鐵ノドウセ傍系會社デゴ
ザイマスカラ、滿鐵ト言ハレテモ一言ナイ
話デアル、斯樣ナ風ニシテ經濟ノ統制ト云
フコトガ出來ナイヤウナ基礎ガ玆ニ養ハ
1、八億ト云フ大會社ニナルノデゴザイマ
ス、ソレデスカラドウシテモ滿鐵ノ機構ト
云フモノガ先ヅ打變へラレマシテ、此大財
源ヲ與ヘテ處置セラレナイ限リニハ必ズ
ヤ國家ノ前途ニ頗ル憂フベキ事態ガ到來イ
タシマシテ、滿洲ノ產業ニ依フテ日本ガ著
シク脅威ヲ受ケテ、日本ノ產業家ガ政治的
ニ非常ナ活動ヲスルト云フヤウナコトガ
起ッテ來ルコトヲ、私ハ眼前ニ見ルノデゴ
ザイマス、是等ニ關シテ果シテ十分ノ御成
算ガゴザイマセウカ、此處ガ憂慮ニ堪ヘヌ
ノデゴザイマス、尙ホ詳細事實ヲ申上ゲマ
シテ逐一證據立テ申上ゲルノハ時間ヲ浪
費スルコトト思ヒマスカラ是デ私ノ質問ヲ
終リマス
〔國務大臣永井柳太郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X02719330320&spkNum=36
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037・永井柳太郎
○國務大臣(永井柳太郞君) 只今菊池男爵
カラ御話ニナリマシタ通リ、滿鐵ノ過去ノ
長キ歷史ノ間ニハ種々ナル非難ガ、其經營
方針ニ關シマシテ行ハレタノデゴザイマ
ス、其非難ノ中ニハ當ルモノモアリ當ラザ
ルモノモアリマスガ何レニシテモ滿鐵ガ
單ナル營利會社トシテデナク、國家的使命
ヲ有スル會社トシテ、眞劍ニ其使命ノ爲ニ
努力セヨト云フコトガ、一般ノ希望デアッタ
ト存ジマス、滿鐵ガ此度增資ヲスル結果、或
ハ內地ノ生產業ト不當ナル競爭ヲスルヤウ
ナ事業ガ擴大サレテ、日滿兩國間ニ於ケル
關稅問題其他ノ紛糾ヲ惹起シハシナイカト
云フヤウナ、菊池男爵ノ御意見ハ一應御尤
モニ存ジマス、併ナガラ政府ト致シマシテ
ハ滿鐵ノ經營イタシマスル事業ハ
〔副議長公爵近衞文麿君議長席ニ著ク〕
只今モ申上ゲマシタヤウニ其國家的使命ニ
鑑ミマシテ、從來ノ運送業、ソレニ附帶イ
タシマシテ日滿兩國ノ國防上、又經濟的存
立上、不可分ノ特殊關係ヲ有ッテ居リマ
ス種類ノ產業ヲ營ムト云フノガ其主眼デ
ゴザイマシテ、同時ニ滿鐵ハ又決シテ滿
洲ニ於ケル產業ヲ壟斷ヲスルノデハナク、
滿洲國自身ガ世界ニ聲明イタシマシタヤ
ウニ門戶ヲ開放シテ、外國ノ資本ニ對シテ
モ決シテ排他的デナク、同時ニ日滿兩國
民間ノ者ガ十分活動ノ出來ル機會ハ
是ハ出來ルダケ滿鐵トシテモ尊重スル方針
デゴザイマス、只今大滿鐵主義ト云フ御言
葉モアリマシタガ、決シテ滿鐵ガ滿洲ノ重
要ナ產業ヲ全部聾斷スルト云フ譯デハナク、
日滿兩國ノ民間ノ事業ナドガ滿洲ニ行ハレ
マスル場合ニ、燃料、動力ト云フ如キモノ
ヲ供給スルヤウナ場合モ、出來ルダケ滿鐵
ガ之ヲ廉價ニ供給シテ、其民間ノ事業ヲ助
長スルト云フコトモ、亦滿鐵ノ國家的使命
ノ一デアルト云フヤウニ考ヘテ居リマス、
今日菊池男爵ノ御話ノ通リニ滿洲ニ起リマ
スル產業、又運送業ト內地ノ產業、運送業
トノ間ニ、利害ノ衡突ニ付テ心配スベキ問
題ガ起ラナイコトモゴザイマセヌ、併シ是
等ノ問題ヲ日滿兩國ノ間ニ於ケル共存共榮
ノ大局カラ見マシテ、兩國政府ガ協力ス
ベキコトハ協力シ、或ハ兩國政府ニ依ラナ
イデモ事業ノ關係者ダケデ協議シテ解決
シ得ルコトハ事業ノ關係者ダケデ協議ヲ
遂ゲマシテ十分日滿兩國共存共榮ノ精神
ニ悖ラナイヤウ之ヲ解決シテ行ク方針デア
リマス
〔議長公爵德川家達君議長席ニ復ス〕
其點ニ於テハ政府ト致シマシテモ、十分努
力ヲ致シタイト考ヘテ居ルノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X02719330320&spkNum=37
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038・菊池武夫
○男爵菊池武夫君 此席カラ述ベサセテ戴
キマス、只今ノ御答辯ニ依リマスレバ滿
鐵ハ信用シテ大丈夫ノヤウニ見エマス、ソ
レデ私ハ滿鐵ノコトニ關シテハ、由來信用
イタサヌ所ノ事實ヲ澤山有ッテ居ル、有リト
有ラユルモノ、權利義務ノ觀念ヨリ外ナイ
結果ニ見エルト思ヒマスカラ······統制ハ相
當ノ相談ヅク、相談ヅクデハ統制デハアリ
マセヌ、私共ソレヲ憂ヘルガ故ニ更ニ統制
ニ努メタイ、結局申シマスレバ鐵、石炭ノ
問題デアル、九州ノ炭ヲ如何ニシテ活カス
ノデアル、九州ノ固定勞働者ヲ如何ニ活カ
スノデアルカト云フヤウナコト、併セテ兩
國ノ石炭ノ問題ト云フモノガ解決セラレテ、
先達テモチヨット總理ニ申上ゲマシタ通リ、
油ノ問題デモ御解決ノ試驗サヘ濟ンデ居ラ
ヌヂヤナイカ、羅針盤ノ修繕サヘモナサル
途ヲ御覽ニナラヌヤウナ御豫算ヲ如何ニナ
サルト云フコトヲ私ハ申シタノデアル、サ
ウ云フ點、鐵ニ致シマシテモ前途ニ於テ日
本本來ノ產物竝ニ滿洲、朝鮮、是等ノ諸生
產ヲ見マシテ、玆ニ日滿ノ共同一致ト云フ
コトニナラナケレバナラヌノデアリマス
ダカラシテ私共申シマスヤウニ、第一日本
銀行ト滿洲中央銀行ト束ネテ何故「シンジ
ケート」ヲ御作リニナラヌ、是ガ金融機關
トシテオヤリニナラヌカ、今後此門戶ヲ開
放シテ世界ノ金融ヲ集中セヨト私ハ具體的
ニ申上ゲタ、詳カニ申上ゲタ、斯樣ニシテ
初メテ行クノデゴザイマシテ、滿鐵ガ是非
今ノヤウナコトヲヤッテ居ラヌト云フヤウ
ナコトハ斷ジテナイ、幾ツカニ分割サレマ
シテモ宜シイ、或ハ或程度ニ限ラレマシテ
モ宜シイ、滿洲トノ契約ハ如何ヤウニデモ
出來マス、決シテ今日對外的ノ關係、サウ
云フヤウナコトカラ美名ヲ保持シヤウ、姑
息ニ切拔ケヤウト云フヤウナコトデ、我國
ノ長キ生存ノ光ヲ見ヌノデアリマス、ソレ
デゴザイマスカラ、此公債ヲ可決スルノハ
屁デモナイコトデゴザイマセウケレドモ、
此事ハ延イテ日本國ノ生存、滿洲國ノ生存、
此二ツニ係ルモノデアッテ、延イテ世界ノ此
後ノ趨向ニ偉大ナル影響ヲ及ボス所ノモノ
デアル、輕々ニ今頃之ヲ議題ニオ出シニナツ
テ、會期切迫ノ折ニ、サウシテ之ヲ根本的
ニ御〓究ナサラヌト云フガ如キコトハ實
ニ私ハ淚ガ出ル程情ケナク思ッテ居ルノデ
アリマス、昨年五月以來念頭ニ持,テ居ッタ
ノデアル、何時出ルカ、何時出ルカ、極ク
最近ノ話デアル、滿鐵ノ增資ヲ御決メニナッ
タノハ先月ノ末頃デアリマセウ、株主總會
デ御延バシニナッテ居ルト私共ハ推察スル、
成ルベク遲蒔キニナッタトシカ思ハレヌノ
デアル、細カニ申シマセヌ、硫安會社ノコ
トハ、今日ノ株ノ引受ハ、ソレ等ガ何萬株
ヲ如何ニ背負フカト云フ事實ニ入リマシテ、
此處ニ申上ゲルコトハ避ケマスルガ、マダ只今
ノ御說明ニ依ッテ私ハ承服シ得ザルモノデアル
コトヲ申上ゲマシテ質問ヲ打切リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X02719330320&spkNum=38
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039・池田政時
○子爵池田政時君 只今議題ニ上ボリマシ
タ南滿洲鐵道株式會社ノ株式引受ニ關スル
法律案ハ極メテ重要ナル法律デアリマス
ルガ故ニ、此特別委員ノ數ヲ十五名トシ、
其指名ヲ議長ニ一任スルコトノ動議ヲ提出
イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X02719330320&spkNum=39
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040・清岡長言
○子爵清岡長言君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X02719330320&spkNum=40
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041・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 池田子爵ノ動議
ニ御異存ゴザイマセスカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X02719330320&spkNum=41
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042・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 御異議ナシト認
メマス、特別委員ノ氏名ヲ書記官ヲシテ朗
讀ヲ致サセマス
〔瀨古書記官朗讀〕
南滿洲鐵道株式會社ノ株式引受ニ關スル
法律案特別委員
侯爵佐佐木行忠君伯爵兒玉秀雄君
子爵前田利定君子爵西尾忠方君
男爵鍋島直明君芳澤鎌吉君
坂西利八郞君男爵松岡均平君
男爵大藏公望君倉知鐵吉君
加藤政之助君鈴木幸作君
野村德七君山上岩二君
大谷尊由君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X02719330320&spkNum=42
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043・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 日程第十ヨリ第
二十迄、承諾ヲ求ムル件、衆議院送付、會
議、委員長報〓、裏松子爵
昭和五年度第一豫備金支出ノ件、昭和
五年度特別會計第一豫備金支出ノ件、
昭和六年度第一豫備金支出ノ件、昭和
六年度特別會計第一豫備金支出ノ件、
昭和六年度第二豫備金支出ノ件、昭
和六年度豫備金外ニ於テ豫算超過及豫
算外支出ノ件、昭和六年度特別會計第
二豫備金支出ノ件、昭和六年度特別會
計豫備金外ニ於テ豫算超過及豫算外支
出ノ件、昭和七年度第二豫備金支出ノ
件、昭和七年度特別會計第二豫備金支
出ノ件、昭和七年度特別會計豫備金外
ニ於テ豫算超過支出ノ件
右承諾スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報〓候也
昭和八年三月十八日
委員長子爵裏松友光
貴族院議長公爵德川家達殿
〔子爵裏松友光君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X02719330320&spkNum=43
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044・裏松友光
○子爵裏松友光君 只今議題ニナリマシタ
ル昭和五年度第一豫備金支出ノ件外十件ノ
特別委員會ノ經過竝ニ結果ニ付テ御報〓ヲ
致シマス委員會ハ一昨日開キマシタ、正
副委員長ノ選擧ニ次ギマシテ直ニ會議ニ移
リマシタ、政府當局ノ說明ヲ求メマシタ所
ガ、此承諾案十一件ハ政府ヨリ提出シタル
モノデゴザイマシテ、ソレハ昭和五年カラ
七年ノ間ニ亙ッテ居ルモノデゴザイマス、其
金額ハ總計一億六千十七萬七千五百十七
圓、之ヲ年度別ニ致シマスレバ昭和五年
度ニハ八百八十八萬二千四百十三圓、昭和
六年度ニハ一億三千二百六十一萬六千六十
九圓、昭和七年度ニハ一千八百六十七萬九
千三十五圓デゴザイマス直ニ質疑ニ移リ
マシタガ、質問ハ極メテ少クゴザイマシタ、
其二三ヲ擧ゲマスレバ恩給ノ件、外國在
勤俸ノ件、家畜傳染病豫防費ノ件竝ニ昭和
七年一月ニ衆議院解散ニ伴ヒマシテ、總選
擧ヲ行ヒマシタ其諸費用ノ件、斯ノ如キモ
ノデゴザイマシテ、質問應答極メテ簡單デ
ゴザイマシタ直ニ討議ニ移リマシタガ
大體ニ於キマシテ已ムヲ得ザルモノデアル
ト云フヤウニ皆サンノ御意見ガゴザイマシ
テ、採擇ニ入リマシタ所ガ、全會一致ヲ以
テ承諾スルコトニ可決イタシマシタ、右簡
單ナガラ御報告申上ゲマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X02719330320&spkNum=44
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045・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 只今特別委員長
ノ報告セラレマシタ各案共、一括シテ議題
トナスコトニ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X02719330320&spkNum=45
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046・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認
メマス、各案ニ承諾ヲ與フルコトニ御異議
ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X02719330320&spkNum=46
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047・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認
メマス是ニテ休憩イタシマス、午後ハ一時
三十分ヨリ開會イタシマス
午前十一時五十七分休憩
午後一時四十六分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X02719330320&spkNum=47
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048・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 是ヨリ報〓ヲ致
サセマス
〔角倉書記官朗讀〕
本日委員長ヨリ左ノ報告書ヲ提出セリ
昭和八年度歲入歲出總豫算追加案(第)
號)、昭和八年度各特別會計歲入歳出豫算
追加案(特第一號)、豫算外國庫ノ負擔ト
ナルベキ契約ヲ爲スヲ要スル件(追第一
號可決報告書発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X02719330320&spkNum=48
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049・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 是ヨリ午後ノ會
議ヲ開キマス本日關直彥君、行政執行法
中改正法律案外六件特別委員ヲ、稻畑勝太
郞君、農村負債整理組合法案特別委員ヲ、何
レモ病氣ニ付キ辭任ノ申出ガゴザイマシ
ク、許可スルコトニ御異存ゴザイマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X02719330320&spkNum=49
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050・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認
メマス、關直彥君ノ補闕トシテ安立綱之君
ヲ、稻畑勝太郞君ノ補闕トシテ小林嘉平治君
ヲ指名イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X02719330320&spkNum=50
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051・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 此際議事日程變
更ニ付キ御諮リヲ致シマス、議事日程ヲ變
更イタシマシテ、是ヨリ直ニ昭和八年度歲
入歲出總豫算追加案、第一號、昭和八年度
各特別會計歲入歲出豫算迫加案、特第一號、
豫算外國庫ノ負擔トナルベキ契約ヲ爲スヲ
要スル件、追第一號ノ會議ヲ開キタイト存
ジマス、御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X02719330320&spkNum=51
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052・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認
メマス、柳澤豫算委員長ニ發言ヲ許シマス
一昭和八年唐歲入歲出總豫算追加案(第
ザ
一昭和八年度各特別會計歲入歲出豫算追
加案(特第一號)
一豫算外國庫ノ負擔トナルベキ契約ヲ爲
スヲ要スル件(追第一號)
右衆議院ヨリ受領シタル各案ヲ審査シ總
テ衆議院議決案ノ通可決スヘキモノナリ
ト議決セリ依テ及報〓候也
昭和八年三月二十日
委員長伯爵柳澤保惠
貴族院議長公爵德川家達殿
〔伯爵柳澤保惠君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X02719330320&spkNum=52
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053・柳澤保惠
○伯爵柳澤保惠君 只今上程セラレマシ
タル三案ヲ束ネテ御報〓申上ゲマス、先ヅ
第一號ヨリ申上ゲマス、昭和八年度歲入
歲出總豫算追加ト致シマシテ計上セラレ
マシタル金額ハ歲入歲出トモ同額デゴザ
イマス、其額ハ六千四百一萬九百二十八圓
デゴザイマス、此豫算ハ各省ニ皆跨フテ居
リマス、是ヨリ百萬圓以上ニ付キマシテ
歲出ノ重モナモノヲ申上ゲマス、歲出經常
部デ大藏省ニ於キマシテハ國債整理基金
特別會計へ繰入ノ增加、是ガ六百十八萬三
千四百二十五圓デゴザイマス歲出臨時部
外務省ニ於キマシテハ、滿洲事件ニ關スル
救恤交付金、是ガ三百萬圓デゴザイマス
內務省デハ北海道農漁山村振興ニ關スル經
費、五百五十二萬三千七百十九圓、北海道
水害復舊ニ關スル經費、三百六十三萬四百
八十九圓、兵庫縣外十六縣災害土木費補助、
是ガ七百二萬二千九百圓、海軍省デハ艦
艇竝ニ建造物等風水害其他復舊費ガ百萬
圓、海軍工廠資金臨時補足ニ要スル經費ガ
三千萬圓、農林省、繭共同保管助成ニ關ス
ル經費ガ百十三萬四千圓、拓務省、東洋拓
殖株式會社補給金ガ百五十萬圓、是等ニ對
シマスル歲人經常部ノ重モナルモノヲ申シマ
ス、是モ百萬圓以上ヲ申上ゲマス、滿洲宛
小句郵便物增加ニ伴フ切手收入ノ增加、是
ガ百七十三萬四千九百七十一圓、ソレカラ
歲入臨時部デ重モナルモノヲ申上ゲマス、
百萬圓以上·····歲入補塡ノ財源ニ充ツベ
キ公債金ノ增加ガ千七百五十四萬二千五百
九十五圓、海軍工廠資金臨時補足ノ財源ニ
充ツベキ借入金三千萬圓、前年度剩餘金繰
入千三百三十萬四千三圓、次ニ特第一號ニ
移リマス、是ハ造幣局外十一特別會計ニ跨,
テ居リマシテ、是ハ此處ニ明細ニ出テ居リ
マスカラ金額ヲ一々申上ゲマセヌ、或ハ一
般會計ニ繰入レルノモゴザイマス、又一般
會計ヨリ受入レルノモゴザイマス、又特別
會計自身デノ借入金モゴザイマス、又特別
會計相互間ノ受入ヤ繰入モゴザイマス、詳
細ハ此豫算追加ニ讓リマシテ、申上ゲルコ
トヲ省略イタシマス、追第一號、是ハ別ニ
說明スルコトモゴザイマセヌ、利子補給ニ
關スル件デアリマシテ、一般會計中內務、
拓務兩省ニ關係シテ居ルノデアリマス、委
員會ニ於キマシテハ總テノ諸省ニ跨ガル經
費ニ付テノ審議ヲ分科ニ移サズシテ、委員
會ニ於テ審議スルコトニ相成リマシタ、唯
質問ガ一件ゴザイマシタ、ソレハ此第一號
ニゴザイマス衆議院建議案常任委員設置ニ
關スル經費、是ハ金額ハ僅カデアリマシテ、
此金額ニ付テノ質問デハゴザイマセヌガ、
此名目ガ甚ダ穩カデナイ、衆議院建議案常
任委員ト云フノハ是ハ此處ニ書上グベキ
モノデハナイ、是ハ何トカ變ヘタラドウダ
ラウ、大分之ニ付テ二三質疑ガ重ネラレマ
シタガ、當局者ハ此名目デ差支ナイト思フ
ト云フ御返事デゴザイマシタ、討論ニ入リ
マシテ一員ガ發言イタサレマシタ其大要
ヲ申上ゲマスト、此度國際聯盟トノ關係ガ
皆樣御承知ノヤウニナリマシタノデ、何レ
近キ將來ニ聯盟ヨリ脫退ト云フコトハ起ル
デアラウ、從テ我國モ孤立ノ狀態ニナルダ
ラウ、併ナガラ將來聯盟ヨリ何カ我國ニ對
シテ持チ掛ケテ來ルモノモアルト思フ、聯
盟ニハ色ミ委員會ガ出來ルガ、其委員會ニ
於キマシテ、中ニハ滿洲不承認ノ問題モ
出ルデアラウ、經濟封鎖其他「ボイコット」
ニ關スル問題モ出ルデアラウ、從テ日本ニ
對スル惡化ノ狀態モ現ハレテ、決シテサウ
良イ影響ヲ與ヘルコトハナイダラウ、斯ウ
云フヤウナ場合ハ我ミハ旣ニ多少考慮シテ
居ッタノデアル、ソレ故豫算委員會ニ於テ
燃料問題、石油問題ニ付テ質問イタシ、應
答ヲ重ネ、隨分論議ヲシタノデアルガ、之
ニ付テ我ミノ希望ハ、政府モ同感ノ模樣
デ諒承シタヤウニ考ヘラレル、故ニ近
キ將來ニ於テ非常時ノ場合ニ處スル特別
ノ委員會ガ出來ルヤウニ思フガ、是モ政
府モ御同感デアラウト信ズル、而シテ此實
行ニ付テハナカ〓〓經費ガ多額ニ要ル譯
デアルケレドモ、之ニ付テモ總理大臣ハ委
員會ニ於テ、十分考慮スルト云フコトヲ申
サレタノデアリマス、就テハ大藏大臣モ十
分此點ヲ考ヘテ貰ヒタイ、兵備改善費ニ付
テハ御同意デアッテ巨額ノ歲出ヲ見タノデ
アルガ此兵備改善費以上ニ此重要性ヲ有
スル費目ニ付テハ、十分努力セラレテ奮發
シテ戴キタイト云フ希望ヲ述ベマシテ贊
成ノ意見ヲ述ベラレタノデアリマス、其以
外ニハ何等御陳述モゴザイマセヌデ、採決
ニ入リマシタ所、全會一致ヲ以テ三案トモ
可決ニ相成リマシタ、此段御報告申上ゲマ
ス
〔男爵阪谷芳郞君發言ノ許可ヲ求ム〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X02719330320&spkNum=53
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054・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 阪谷男爵ハ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X02719330320&spkNum=54
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055・阪谷芳郎
○男爵阪谷芳郞君 總理大臣ニ質問デゴザ
イマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X02719330320&spkNum=55
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056・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御質疑デスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X02719330320&spkNum=56
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057・阪谷芳郎
○男爵阪谷芳郞君 ハイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X02719330320&spkNum=57
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058・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 宜シウゴザイマ
ス
〔男爵阪谷芳郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X02719330320&spkNum=58
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059・阪谷芳郎
○男爵阪谷芳郞君 本日ハ皇紀二千六百年
ノ奉祝ノ豫算ノコトデ、總理大臣ニ御尋イ
タシマス、神代ノコトハ暫ク之ヲ措キマシ
テ、人皇ノ世トナリテ第一代神武天皇、神
日本磐余彥火火出見尊ガ皇國ノ基礎ヲ大和
橿原ニ定メ給ヒ、皇位ニ卽カセラレテヨリ
今日マデ皇統連綿、實ニ二千五百九十三
年、其間多少ノ盛衰アリト雖モ國政ハ常ニ
一步ハ一步ヨリ進ミ、明治天皇ノ御世ニ至
リマシテ、全世界ニ涉リ大々的國光ノ宣揚
ヲ見、以テ昭和ノ御世ノ今日ニ至ッタノデ
アリマス、我ミ大和民族ハ悉ク神武天皇
及其御子孫ノ洪大ナル恩波ニ浴シ、此大八
洲瑞穗ノ國ニ安居イタシ、血族蕃殖シテ世
界人類中最優等ノ位置ニ立ツ優秀民族トナ
リ、理智道德ニ富ミ、學藝農工業ニ熱達
シ、自由平等ノ政治ヲ有スル鞏固ナル大强
國ヲ成スニ至ッタノデアリマスル就中上ニ
一天萬乘ノ君ヲ戴キ、下ニ忠勇無雙ニシテ
血納ヲ同ウスル六千餘萬ノ中堅民族ト、二
千餘萬ノ朝鮮臺灣合同民族トヲ有シ、古來嘗
テ他國ノ征服ヲ受ケタルコトナク、皇國ノ
領土ヲ略奪サレタルコトナキヲ以テ誇リト
スル所ノ、光輝アル歷史ヲ有スルコトハ
洪大無邊ナル皇恩ノ賜モノデアルコトヲ最
モ痛感スル次第デアリマス、今ヤ其光輝ア
ル歴史ガ二千六百年ノ齡ヲ重ネムトスルニ
至ッテハ、實ニ國民擧ゲテ其始祖タル神武天
皇ノ宏大ナル御偉業ヲ感謝セザルヲ得ザル
次第デアリマシテ、我ミハ幸ニ今日ノ聖代
ニ生レ、此無比ノ光輝ヲ有スル年紀ニ遭遇
スルコトヲ悅ビ、全力ヲ盡シテ盛大ニ奉祝
記念ノ誠意ヲ表シ、我ミノ作リタル記念事
業ヲ永ク後世ニ傳へ、後世子孫ヲシテ我〓
ノ忠誠ナル事蹟ヲ永遠ニ記憶ニ存セシメ、
以テ益、皇威ヲ發揚シ奉リ、我ガ國體ノ尊
嚴ト我ガ大和民族永久繁榮ノ根源ノ深ク尊
キヲ忘レザラシメムト欲スルモノデアリマ
ス、尙ホ一言附加ヘテ置キマスガ、昭和十
五年迄ニハ七ケ年アルノデアリマスガ、御
記念事業ノ種類如何ニ依リマシテハ其調
査設計、工事、製作等ニ、少クトモ六七年
ヲ要シ、今日既ニ遲キヲ感ズル次第デアリ
マシテ、政府ニ於テ速ニ調査ニ著手スルニ
アラザレバ、或ハ間ニ合ハヌ虞レガアルノ
デアリマス、尙又記念事業ノ種類方法ニ付
テハ固ヨリ調査ノ結果ニ俟タネバナラヌ
ノデアリマスガ、其中一ツハ適當ノ場所
ヲ選ビ幾千年ノ後マデ傳フベキ堅固
ナル記念建造物、又一ツハ世界全般ニ
亙リ注意ヲ喚起シ、我國ニ多數ノ觀光
者ヲ引寄スベキ性質ノモノ、此二ツハ是
非選ニ洩レザル樣希望スル次第デアリマ
ス、右ノ如キ全國擧ゲテノ記念奉祝ハ、決
シテ之ヲ各個思ヒ思ヒノ民間有志ノ計畫ニ
放任シテ置クベキモノデハナイ、宜シク政
府ニ於テ調査會ヲ設ケ篤ト調査ヲ遂ゲシ
メ、其報告ヲ待フテ統制シテ、準備實行ニ著
手スベキモノデアル、恰モ往年明治天皇御
崩御ノ後、政府ガ明治神宮建設ノ爲ニ奉祀
調査會ヲ設ケラレタノト同樣ノモノデアル
ト思フノデゴザイマス、本員ハ右ノ如ク考
ヘルノデゴザイマシテ、之ニ付キマシテ政
府ニ於テ、何等カ御考ガアルヤ否ヤ、御所
見ガ伺ヒタイノデアリマシテ、此事ヲ總理
大臣ニ御尋ヲ致シマス
〔國務大臣子爵齋藤實君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X02719330320&spkNum=59
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060・齋藤實
○國務大臣(子爵齋藤實君) 阪谷里爵ノ御
質問ニ御答へ致シマス誠ニ意義ノアル御
質問デアリマシテ、具體的ナコトヲ玆ニ御
答辯ハ致シ兼ネマスルケレドモ、政府ト致
シマシテ此事ニ付キマシテハ、篤ト調査ヲ
致シマシタ上ニ具體的ナコトニ及ビタイト
思ッテ居リマス、御趣意ハ御同感デアリマス
カラ左樣卸承知ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X02719330320&spkNum=60
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061・阪谷芳郎
○男爵阪谷芳郞君 誠ニ滿足イタシマス、
ドウゾ是非此事ニ付テハ御實行ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X02719330320&spkNum=61
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062・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 他ニ御質疑モナ
イト認メマスカラ、討論ニ移リマシテ、通
告ニ依リマシテ金岡又左衞門君ニ發言ヲ許
シマス、同君ノ登壇ヲ望ミマス
〔金岡又左衞門君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X02719330320&spkNum=62
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063・金岡又左衞門
○金岡又左衞門君 私ハ本案ニ對シマシ
テ、唯一言大藏大臣ニ希望ヲ申述べマシ
テ、贊成ノ意ヲ表スル者デアリマス、昭和
八年度ノ追加豫算六千四百萬圓ヲ、之ヲ先
キニ決定イタシマシタル豫算ニ合計ヲ致シ
マスルト、實ニ二十三億圓ヲ突破スルモノ
デアリマシテ、之ニ對スル公債額ハ約半額
ニ垂々トスルノ狀勢デアリマス、誠ニ國家
財政ノ前途容易ナラザルモノガアルノデア
リマス、曩ニ二十二億三千九百萬圓ト云フ
大豫算ガ一厘一毛ノ削減ヲ見ルコトナク、
貴衆兩院ヲ通過イタシマシタル所以ノモノ
ハ是ハ固ヨリ非當時局ノ致ス所デハアリ
マスケレドモ一面又高橋大藏大臣ノ老練
ニシテ識見アリ、而モ德望兼備ノ此大藏大
臣ノ信認ヲ致シタルコトガ、玆ニ協贊ヲ與
ヘラレタル一原因デアルト私ハ信ジテ居リ
マス、當時貴衆兩院ニ於キマシテ盛ンニ質
問ヲ發セラレタノデアリマス、此際增稅ヲ
シ、公債發行ノ緩和ヲ圖リ、收支ノ均衡ヲ
保ツト云フ見地ノ下ニ盛ンニ質問ヲ發セラ
レマシタガ、大藏大臣ハ之ニ對シテ斷然ト
シテ反對ヲセラレタノデアリマス、今ハ增
稅ノ時期デハナイ、國民ハ今病氣ニ罹ヲテ
居ル、此病體ヲ癒シ之ニ力ヅケルコトニ於
テ、然ル後ニ增稅モ考慮ヲスル、稅制財政
ノ整理モ考慮スルト云フコトヲ御聲明ニ
ナッタノデアリマス、故ニ今後國民ノ病體
ヲ癒シ之ニ力ヅケヲスルト云フコトガ、今
後大藏大臣ノ練達ナル手腕ニ俟タナケレバ
ナラナイノデアリマス、大藏大臣ノ抱負經
綸ニ俟タナケレバナラナイト信ジテ居リマ
ス、我ミハ高橋大藏大臣ノ今後ノ手段ニ付
テ、大ナル期待ヲ有シテ居ルモノデアリマ
ス、然ルニ此程世間傳フル所ニ依リマスル
ト、又新聞紙上ノ報道イタシテ居ル所ニ依
リマスルト、高橋大藏大臣ガ本議會終了後
ニ於テ職ヲ罷メラレルト云フコトヲ報道サ
レテ居ルノデアリマシテ、是ハ甚ダ心外ト
スル所デアリマス、先般阪谷男爵ガ此壇上
ニ於テ述ベラレタ御演說ニ、我國ノ豫算ハ
借金政策ヲ以テ編成ヲサレテアルガ、イザ
支拂ト云フコトニナルト靑菜ニ鹽デアル、
是ガ誰ガ引受クルノデアルカ、大藏大臣ニ
於カレマシテハ今後益、自重加餐セラレ
テ、我國財政ノ爲ニ一段ノ御配慮ヲ願フ
ト云フコトヲ、阪谷男爵ガ病軀ヲ提ゲテ
此壇上ニ立タレマシテ、國家ヲ憂フルノ
餘リ警告ヲ發セラレタノデアリマス、私
ハ斯ク御尋ネ致シマスルナラバ、大藏大臣
ハ左樣ナ意思ナシト、簡明ニ御答ニナル
コトハ是ハ明白デアリマス、併ナガラ苟
モ風評ニ風評ヲ生ミ、東西大新聞ニ於キマ
シテ連日之ヲ報道スルコトニ至リマシテ
ハ恐ラク全國民ノ之ヲ聽カムトスル所デ
アルト信ジマスルガ故ニ、大藏大臣ニ於カ
レマシテハ、今後ドノヤウナコトガアッテ
モ、假令如何ナル事情ガアリマシテモ、職
ヲ罷メラレルヤウナコトナク、當初聲明ヲ
セラレマシタルガ如ク、國民ノ病體ヲ癒
シ、之ニ力ヅケルコトニ於テ、所謂抱負經
綸ヲ斷行セラレムコトヲ切ニ希望スルモノ
デアリマス、私ハ此際一言卑見ヲ呈シマシ
テ本案ニ贊成ヲ表スルモノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X02719330320&spkNum=63
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064・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 他ニ發言者モナ
イト認メマスカラ、只今豫算委員長ノ報〓
セラレマシタ豫算案全部、一括シテ議題ト
ナスコトニ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X02719330320&spkNum=64
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065・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認
メマス、豫算案全部ニ同意ノ諸君ノ起立ヲ
請ヒマス
〔總員起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X02719330320&spkNum=65
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066・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 全會一致ト認メ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X02719330320&spkNum=66
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067・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 工業組合法中改
正法律案、政府提出、衆議院送付、第一讀
會ノ續、伊集院子爵
工業組合法中改正法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報告候也
昭和八年三月十七日
委員長子爵伊集院兼知
貴族院議長公爵德川家達殿
〔子爵伊集院兼知君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X02719330320&spkNum=67
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068・伊集院兼知
○子爵伊集院兼知君 只今議題ト相成リマ
シタ工業組合法中改正法律案ノ委員會ニ於
ケル模樣ヲ御報告イタシマス、委員會ハ去
ル十日ニ第一囘ヲ開キマシテ政府當局ノ說
明ヲ承ハリマシタ、續イテ質問ヲ致シタノ
デアリマス、其後二回開キマシテ、都合三
囘ニ亙ッテ愼重ニ審議ヲ致シ、其結果本案ハ
可決スベキモノト相成っタノデアリマス、
本改正案ノ趣旨ニ付テ簡單ニ申上ゲテ見ヤ
ウト思ヒマス、其一ツハ現行法ノ第八條ニ
改正ヲ加フルコトデアリマス、卽チ條文中
ノ「工業組合ノ組合員ニ非ザル」云々トアル
ノヲ「組合又ハ其組合員ニ非ズシテ」云々ト
スルノデアリマス、又末文ニ「取締又ハ制
限ニ依ラシムルコトヲ得」トアルノヲ「制限
ニ從フベキコトヲ命ズルコトヲ得」上皮ふ
ルノデアリマス、此意味ハ近來組合ガ益、
發展增加イタシテ參フタ爲メ、其締制ニ關シ
其效果ヲ十分ニスル爲メ、組合員ニモ統制
服從ノ命令ヲ發シ得ルヤウニ致シタノデア
リマス、現行法ヨリモ嚴重ニ致シタノデア
リマス、次ニ改正案ノ第四十二條ニ命令ノ
違反者ニ對スル制裁トシテ、是マデ過料デ
アッタノヲ改正案デハ罰金刑ニシタノデア
リマス、是ハ他ノ組合法トノ釣合モアリ、
又前ニ申シマシタ如ク嚴重ニスルコトガ必
要デアル爲ニ斯樣ニ致シタノデアリマス
今一ツハ此改正案ノ最モ重大ナ點デアルノ
デアリマスソレハ第七十四······間違ヒマ
シタ、第四十七條ニ於テ、工業組合中央會
ヲ認ムルコトニナルノデアリマス、其譯ハ
昨年ノ七月創立セラレマシタ工業組合中央
會ヲ法制上根據アル團體タラシメ、其活動
ニ便ナラシムルト共ニ、之ニ適當ナ監督ヲ
加ヘテ行カウトスルノデアリマス、以上ノ
三點ガ此改正ノ主ナルモノデアリマス、委
員會ニ於ケル質問應答ノ主ナルモノヲ申上
ゲテ見ヤウト思ヒマス、工業組合ハ同業組
合又ハ產業組合ニ如何ナル差異ガアルカト
云フ御間ヒデアリマシタ、之ニ對シテ當局
ノ答ハ同業組合ナルモノハ營業上ノ整害
ヲ矯正スル消極的事業、主トシテ檢査ヲ行
フ組合デアルガ、是デハ中小工業ノ改善
發達ヲ圖ルニハ不十分デアッテ、又中小工業
者ノ經濟ノ振興ヲ圖ル爲ニハドウシテモ組
合ニ於テ共同的ニ經濟事業ヲヤラネバナラ
ナイ爲ニ、工業組合デハ消極的ナ檢査事業
ノ外、積極的ニ經濟事業ヲ行ヒ得ルヤウニ
ナッテ居ルノデアリマス、又產業組合ニ於テ
ハ大體經濟的事業ヲ行フコトガ認メラレテ
居リマスガ、元來產業組合制度ハ主トシテ農
村ノ更新ト云フコトヲ目標トシテ立案サレ
テ居ルノデ、此制度ヲ其儘工業者ニ適用ス
ルコトハ不適當ノ所ガ少ナカラザルモノガ
アリマス、故ニ工業組合ハ同業竝ニ產業組合
ノ長所ヲ採,テ組織サレテ居ルノデアル、故
ニ似タ所モアルガ大イニ異フテ居ルト云フ
コトデアリマシタ、次ニ產業組合ニ對スル
保護奬勵ト、工業組合ニ對スル保護奬勵ト
ハ如何ナル差異ガアルカ、答ハ制度上兩組
合ニ對スル保護奬勵ハ全ク同樣デアルト云
フコトデアリマシタ、工業組合ヲ通ジテ中
小工業者ニ金融ノ便宜ヲ與ヘタ成績ハドウ
デアルカト云フ問ニ對シ、工業組合ニハ其
事業資金トシテ昭和三年度ヨリ六年度マデ
ニ預金部カラ組合ニ直接融通シタ金額ハ三
百萬圓アル、尙ホ組合ガ昭和六年ノ法律改
正ノ結果、組合員ニ金融ヲナスコトヲ認メ
ラレテ居ルノデアルガ、施行ノ日淺キ爲メ
今日之ヲ行フ所ノ組合ハ極メテ少イガ、漸
次增加シツツアル傾キデアルト云フコトデ
アリマシタ、又農家ノ副業トシテ製造加工
等ヲ行フ者モ、工業組合ニ加入シ得ルモノ
ト認メルカドウカト云フ間ニ對シテ、是
一律ニ抽象的ニ定ムルコトハムツカシイガ
實際ノ場合ニハ北實情ニ鑑ミ處置ヲスルコ
トニナッテ居ルト云フコトデアリマシタ、質
疑ヲ終リマシテ討論ニ入リマシタ、一委員
カラ此案ニ付テ贊成ノ御意見ヲ述べラレタ
ノデアリマス、一同之ニ贊意ヲ表シ、採決
ノ結果ハ全會一致ヲ以テ可決ト相成リマシ
タ是デ報告ヲ終リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X02719330320&spkNum=68
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069・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 本案ヲ第二讀會
ニ移スコトニ御異存ゴザイマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X02719330320&spkNum=69
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070・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X02719330320&spkNum=70
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071・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直ニ本案ノ第二讀會
ヲ開カレムコトヲ希望イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X02719330320&spkNum=71
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072・清岡長言
○子爵〓岡長言君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X02719330320&spkNum=72
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073・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 西大路子爵ノ動
議ニ御異議ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X02719330320&spkNum=73
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074・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X02719330320&spkNum=74
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075・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 本案全部ヲ問題
ニ供シマス、全部原案ニ御異議ゴザイマセ
ヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X02719330320&spkNum=75
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076・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X02719330320&spkNum=76
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077・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直ニ本案ノ第三讀會
ヲ開カレムコトヲ希望イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X02719330320&spkNum=77
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078・清岡長言
○子爵濟岡長言君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X02719330320&spkNum=78
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079・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 西大路子爵ノ動
議ニ御異仔ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X02719330320&spkNum=79
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080・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X02719330320&spkNum=80
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081・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 第二讀會ノ決議
通リデ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X02719330320&spkNum=81
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082・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X02719330320&spkNum=82
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083・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 通信事業特別會
計法案、政府提出、衆議院送付、第一讀會
ノ續、委員長報告、大久保侯爵ノ登壇ヲ望
ミマス
通信事業特別會計法案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報〓候也
昭和八年三月十六日
委員長侯爵大久保利武
貴族院議長公爵德川家達殿
〔侯爵大久保利武君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X02719330320&spkNum=83
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084・大久保利武
○侯爵大久保利武君 本委員會ノ經過及結
果ヲ御報告申上ゲマス、本案ハ過日本會議
ニ於テ當局大臣ヨリ御說明ニ相成リマシタ
如ク、遞信省所管ノ中デ郵便、電信、電話
ニ關スル事業ヲ一般會計ヨリ移シテ通信事
業特別會計ヲ設置スルト云フ案デゴザイマ
ス、以テ通信事業ノ改善發達ヲ圖ルト同時
ニ、一般會計ニ向ラテ通信事業ヨリ得ル所ノ
收入ヲ一般會計ニ納付イタシマスルコトデ
アッテ、其金額ハ向フ十箇年ニ亙ッテ八千二
百萬圓ト云フ最高限度ヲ設ケテ納付スルト
云フ案デゴザイマシテ、一般會計ト特別會
計トノ關係及通信事業ノ擴張改善ニ關スル、
國家國民ノ爲ニ誠ニ重要ナル法案デゴザイ
マスル、委員會ハ都合五囘開キマシテ、最
モ愼重ニ且ツ熱誠ヲ以テ審議イタシタノデゴ
ザイマス、委員會ニ於ケル質疑ハ重モニ一般
會計ト特別會計トノ關係、卽チ特別會計ヲ設
置イタシマシタ上ニ事業運用ノ上カラ起ル所
ノ弊害、又種々ノ疑問ニ對スル質疑ガ最モ多
ク行ハレタノデゴザイマス、本法案ノ第四條ニ
揭示サレマスル八千二百萬圓以内ニ於テ、每
年十箇年一般會計ニ特別會計ヨリシテ納付
スルト云フ、此點ガ質疑ノ最モ多ク行ハレ
タ問題デゴザイマスル、種々重要ナ質疑ガ
ゴザイマシタガ、一々御報〓申上ゲルノモ
煩雑デゴザイマスルカラシテ、速記ニ付テ
御覽ヲ願フコトニ致シマシテ、最モ多ク行
ハレマシテ、各委員間ニ討議ヲ重ネマシタ
一二ノ質疑ヲ御報告申上ゲマス一ツノ質
問ト致シマシテハ今日ノ此國家財政ノ窮
乏イタシテ、赤字公債ヲ以テ國家財政ヲ支
辨イタサナクチヤナラヌ此誠ニ財政窮乏ノ
際ニ當ノテ、八千二百萬圓ヲ最高限度トシテ
シマウト云フコトハ、一般會計ニ累ヲ及ボス
ヤウナコトハナイカ、モウ少シク時期ヲ待ラ
テ此特別會計ノ法案ヲ提出スルト云フコト
ニシタ方ガ宜クハアルマイカ、今日ハ最モ
此一般會計ノ上ニ付テ重キヲ置カナケレバ
ナラヌ時期デアルノニ、今日俄ニ此法案ヲ
設ケテ特別會計ヲ設置スルト云フコトハ、
時期ヲ得ナイデハナイカト、又特別會計ヲ
設ケルト云フト兎角經費ノ上ニ付テ、人件
費ノ如キ、膨脹ヲ來タシ、事業經營ノ上ニ
付テ放漫ニ流レ易イコトガ、特別會計ノ事
業ニ於テ多ク見ル所デアルガ、サウ云フ憂
ヘハナイデアラウカ、又本法案ニ依ルト云
フト八千二百萬圓ヲ最高限度トシテ、每年國
庫ニ、一般會計ニ納付スルト云フコトニナ
ルト云フト、通信事業ノ改善又擴張ト云フ
コトガドウシテモ遲レ勝チニナッテ、一般
會計ニ、法律ニ明記シテ此金額ヲ一般會計
ニ納付スルト云フコトニナッテハ、肝腎ナ通
信事業ノ改善發達ノ資金ヲ得ルコトニ困ル
コトニナッテ、勢ヒ公債ヲ募集シテ以テ一
般會計ニ御奉公スル、自ラ通信事業ノ改善
發達ヲ圖ルト云フ上ノ資金ヲ得ルコトニ窮
スルノ餘リニ、公債濫發ト云フコトニ流レ
ル憂ヘハナカラウカト云フ質疑ガ多ク行ハ
レマシタノデス、又本法案ニ伴フテ、提出
サレマシタ參考資料ノ如キハ甚ダ不備不
十分ハ免レヌ、提出ニナリマシタ參考資料
ノ如キハ、收支ノ勘定、卽チ每年通信事業
カラ得ル所ノ收入ソレニ對スル支出ト云
フコトガ、僅ニ二年三年シカ明記シテナイ
ノデ、ドウシテモ斯ウ云フ大問題ヲ調査審
議スルニハ、モウ少シ遡ッテ十年トカ長イ
間ノ經過ヲ見テ、以テ此重大法案ヲ審議ス
ルト云フコトデナケレバナラヌガ、甚ダ參
考トシテ提出サレタ材料ノ如キハ不十分デ
アル、迚モ斯ウ云フ大問題ヲ議スルニ付テ、
斯ウ云フ材料デハ審議スルコトニ甚ダ苦シ
ムト云フ非難モ出テ參クタノデアリマス、ソ
コデ色ミ質疑イタシマシタ所、政府ニ於テ
ハ本法案ノ提出ニ當ッテハ此材料等ヲ調査
〓究シテ提出スルト云フコトニ付テ、尙ホ
財務當局トノ間ニ交涉ヲ十分重ネテ、調査
〓究シナクチヤナラヌコトガマダ多々アル
コトハ政府モ認メテ居ル、其爲ニ一年間猶
豫ヲ置イテ九年度ヨリ實施スルコトニシテ、
一年間猶豫ヲ置イテ、其一年間ニ於テ尙ホ
詳細ニ調査〓究シテ、具體的ナ案ヲ具シテ
次ノ議會ニハ提出スル積リデアルノデ、此
本囘ノ提出ニ際シテハ不十分ナ材料タルコ
トヲ免レナイコトハ政府ニ於テハ之ヲ認メ
ルノデアル、併ナガラ公表ヲ憚ルコトニ付
テモ尙ホ遞信當局ニ於テ腹案ハ色〓アルト
云フコトデアリマシテ、其爲ニ一囘ハ速記
ヲ中止イタシマシテ懇談會ノ席上ニ於テ、
腹藏ナク政府ト委員トノ間ニ質疑應答ヲ重
ネテ、法案ノ審議ヲ進メタノデアリマス
斯ノ如ク種々ノ重要ナル質疑應答ガ重ネラ
レマシタガ、是等ニ對シテ政府ヨリノ答辯
ハ〓括シテ申上ゲマスレバ通信事業特
別會計ヲ設置スルト云フコトハ遞信省ニ於
テ長イ間ノ宿題デアッテ、歷代ノ大臣モ之
ニ手ヲ著ケマシタガ、種々ノ關係ヨリシテ
荏苒今年ニ及ンデ居ルノデアルガ、ドウシ
テ斯ウ云フ國家財政窮、之ノ際ニ斯ウ云フ法
案ヲ出シタカト云フト一方ニ於テ近來不
景氣ヲ每年重ネテ居ルニ拘ラズ、每年通信
事務ト云フモノハ非常ニ頻繁ヲ極メ、事務
ハ益、每年々々進ンデ、又通信事業ヨリ得ル
所ノ收入モ決シテ減ルコトハナクシテ、通
信事業ハ年々非常ナ事務ノ增加ヲ來シテ居
ル從テ從業員、通信事業ニ從事シテ居ル
從業員、二十萬人ノ從業員ト云フモノハ非
常ニ苦ンデ、或ハ携帶スル分量ノ上、又配
達人ノ誠ニ氣ノ毒ナヤウニ負擔ガ重クナ
ルシ、又從ッテ改良スベキ種々ノ事業モ一
般會計ノ每年々々緊縮ノ折柄デ、十分改善、
維持、修繕、改良ヲ行フコトガ出來ナイ、
此儘ニシテ打捨テ置ケバ通信事業ハ爲ニ非
常ニ澁滯ヲ來シ、海底電信ノ如キハ屢〓之
ヲ中止シナクチヤナラヌト云フヤウニ、誠
ニ公衆ノ通信事業ニ甚シキ不便不利ヲ來シ
テ、到底打捨テ置クコトノ出來ナイ今日ニナッ
タノデアッテ、漸ク財務當局ト交渉ヲ重ネテ、
八千二百萬圓ノ最高限度ヲ設ケテ、每年議會
ノ協贊ヲ經テ特別會計ヨリ納付スルコトニシ
タノデアル、又八千二百萬圓ト云フ額ハ、來
ル十一年度ヨリシテ、目下ノ所デハ七千六七百
萬圓ノ每年ノ收支殘額ガアルノデ、一般會
計ニ納付スルコトニナッテ居ルガ、十一年度
ニナレバ旣ニ發行シタ公債ノ事業ノ上カラ
シテ出ル所ノ利益ヲ四百萬圓加ヘテ八千
二百萬圓ト云フモノハ現ニ見込ノアル納付
金額デアル是ダケハ國家財政ノ狀況ヲ顧
ミテ、特別會計ヨリシテ納付シ得ル十分ノ
見込ガ付イタノデ斯ウ云フ限度ヲ設ケタ
ノデアル、然ラバ斯カル巨額ノ納付金ヲ一
般會計ニ納メテ、ドウシテ通信事業ノ改良
發達ガ出來ルカト云フノニ、遞信事業ノ性
質ヨリシテ擴張、改善ヲ行ヘバ忽チ直グニ
收入ノ得ラレル性質ノモノデアッテ、他ノ特
別會計ト違ッテ、通信事業ハ其年度ヨリシテ
收入ノ得ラルル見込ノアルモノデアル、例
ヘバ切手ノ收入デアルトカ、建設費ノ負擔
デアルトカト云フヤウナ、直ニ收入ノアル性
質ノ事業デアルノデ、其事業カラ得タル所
ノ資金ヲ以テ通信事樣ノ改善、發達ヲ期ス
ルニ付テハ十分見込ガアルシ、又大イニ其
點ニ於テハ努メル積リデアル、又特別會計
ヲ設置スルト云フト、豫算執行ノ上ニ付テ
一般會計ヨリモ餘程便宜ガアルシ、且又從
業員モ特別會計ニ移フタト云フコトニナレ
バ、餘程緊張シテ氣分モ違ノテ、能率ヲ擧ゲ
ル上ニ付テモ、督勵シテ行ク上カラモ十分
通信事業ノ改善、發達ヲ期シ得ル見込デア
ル又公債ノ濫發トカ或ハ又此營業ノ放漫
ニ流レルトカ、人件費ノ膨脹トカ云フヤウ
ナコトモ御尤モナ御質問デアルガ、其點ニ
於テハ十分將來ニ於テ常局ニ於テハ自ラ戒
メ、督勵シテ行ク積リデアル、又特別會計
ニ移シタ趣意ハ一般會計ニ於テヤッテ居,
タ其種々ナ缺點ヲ補フテ、將來營業ヲヤル積
リデアル、所謂營業本位デ、政府事業トシ
テ色〓缺點ノアルコトハ當局ニ於テモ認メ
ルガ、特別會計ニ移セバ初メテ民間ノ營業
ト同ジヤウニ、營業本位デ進ムコトガ出來
ルノデアッテ、此一般······特別會計ヲ設ケタ
趣意モ、營業本位デ將來大イニヤッテ行クト
云フコトガ一ツノ大ナル目的デアルノデア
ルカラシテ、營業ノ上ニ付テ放漫ニ流レル
トカ云フヤウナコトハ努メテ之ヲ避ケテ、
本法律ノ趣旨ヲ徹底ヲシテ行ク上ニ付テ、
遺憾ナキヲ期スル積リデアルト云ア答辯デ
アッタノデアリマス、又一委員ヨリシテ斯ウ
云フ質問ガアリマシタ、ソレハ通信事業ヲ
特別會計ニ移シテ將來ヤラレルニハ、通信事
業ノ能率ヲ擧ゲテ、出來ルダケ弊害ヲ矯メ
テ、本案ノ趣旨ヲ徹底シナケレバナラヌ
ガ、過去ノコトヲ······通信事業ヲ考ヘルト
云フト、種々ノ弊害モアッタガ、中ニモ政黨
ノ弊ガ通信事業ノ上ニ付テ大分現ハレテ、
甚シク世間ノ非難ニナッテ居ルコトガアル、
卽チ郵便局長ノ人選デアルトカ、或ハ選擧
ニ付テ郵便局長ナリガ之ニ關與シテ、爲
更迭ヲ見ルト云フヤウナコトガアッテ、甚シ
ク此通信事業ノ能率ヲ擧ゲ、公正ヲ期スル
上ニ付テ非難ノアッタコトガアルガ、通信事
業特別會計ヲ設置シテ、特ニ此通信事業ノ
公正ナル發達改善ヲ行フ上ニ付テハ是等
ノ弊害ガ將來ニナイヤウニシテ貰ハヌト云
フト、折色特別會計ヲ設ケテモ、從來ノ弊
ヲ繰返スト云フコトニナッテハ甚ダ遺憾デ
アルノデ、此點ニ付テ政府ノ質言ヲ得タイ
ト云フコトデアリマシタ、之ニ對シテ遞信
大臣竝ニ政務次官ヨリシテ言明ガアリマシ
テ御尤モナ御注意デアッテ、深ク將來ニ此
點ハ自ラモ戒メ且ツ督勵シテ、此弊ノナイ
ヤウニスルト云フ言明ガゴザイマシタ、其
他色ミナ重要ナ質疑ガアリマシタガ是ハ速
記ニ讓リマシテ、······質疑ヲ打切リマシテ
討論ニ入ッタノデアリマスルガ、各委員ヨリ
シテ種々ノ意見ガ出タノデアリマスガ要
スルニ本案ハ八千二百萬圓ヲ限度トシテ特
別會計ヲ設ケルコトハ、其時期ニ於テモ一
ツノ疑問ハアルシ、且ツ斯ウ云フ限度ヲ設
ケナクテモ、第四條ノ限度ト云フコトハ制
除シテ、彈力アル納付金額ニシテ置イテ
寧ロナイ方ガ宜イカトモ思フ、又特別會計
ヲ設ケテ通信事業ヲ經營スル上ニ付テハ
種々ノ免レ難イ特別會計ニ於テ多ク見ル所
ノ弊害ニ付テ疑問モアル、併ナガラ政府ノ本
案ヲ出サレタ趣旨ニ於テハ聊カモ異議ハナイ
ノデアルカラシテ、質疑應答ノ間ニ現ハレマ
シタ所ノ委員ノ注意、希望等ハ能ク尊重シテ
貰フテ、遺憾ナイヤウニ期シテ貰ヒタイト云フ
コトニ於テ、本案ニ付テハ何等反對ナキ意
見ガ陳述サレマシタノデアリマス、一二ノ
委員ヨリシテ附帶決議ヲ之ニ附シタラドウ
カト云フ議モアリマシタ卽チ八千二百萬
圓ト云フ最高限度ノ此一般會計ヘ納付スル
金額ハナカ〓〓通信事業ノ收入ノ上カラ
言フト巨額ナル金額デアル、諸外國ニ於テ
通信事業特別會計ヲ設ケテ居ル所ガアルガ、
其收入ノ上カラシテ一般會計ニ納付スルソ
レ等ノ金額ニ比ベルト云フト、今囘第四條
ニ設ケタル八千二百萬圓ト云フモノハ非常
ニ割高ニナッテ居ル、或ハ虞ル是ダゲノ
金額ヲ一般會計ニ納付スル爲ニ、肝腎ノ通
信事業ノ改善擴張ト云フコトガ行ハレヌ虞
ガナイデハナイ、通信事業ノ如キハ將來國
家國民ノ爲ニ大イニ能率ヲ擧ゲテ改善發達
ヲヤッテ貰ハナクチヤナラヌモノデアルカ
ラシテ、一般會計ノ財政ノ餘裕ノ許ス曉ニ
ハ成ベク繰入額ト云フモノヲ減ジテ貰ヒ
タイト云フ趣意ノ附帶決議ヲ附シタラト云
フコトガ、一二ノ委員カラ出マシタケレド
モ、委員會ニ於テ討議ノ結果是ハ附帶決議
トセズシテ、委員長報告ノ中ニ此事ヲ入レ
テ政府ノ將來本法案取扱ノ上ニ付テ、深ク
注意シテ貰フト云フコトニシタラ宜カラウ
ト云フコトニナッテ、附帶決議トハセズシ
テ、全會一致デ本法案ノ可決ヲ見タ譯デゴ
ザイマス、是ダケヲ御報告イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X02719330320&spkNum=84
-
085・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 本案ニハ質疑ノ
通〓者ガゴザイマスカラ發言ヲ許シマス
大河內子爵
〔子爵大河內輝耕君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X02719330320&spkNum=85
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086・大河内輝耕
○子爵大河內輝耕君 只今委員長ノ御報告
ハ非常ニ詳細ニ、又御深切ニ御述べ下サイ
マシテ大體ノコトハ能ク分リマシタ、別
念ヲ推ス必要モゴザイマセヌガ、一應大藏
大臣ノ御意見ヲ伺ヒタイト存ジマス、第5
ハ此特別會計ノ設置後、一般會計へ納付サ
レル金額ニ付キマシテハ、政府ノ御見込ト
シテ承ッタ所ハ、昭和九年度ガ約七千七百萬
圓、同ジク十年度ガ約七千八百萬圓、十一
年度以降ガ八千二百萬圓、大體斯ウ云フコ
トデアルト云フコトデゴザイマス固ヨリ
多少ノ端數ハ計算上移動ヲ生ジテ參リマ
スサウデハアリマスルガ、少クトモ此金
額カラ百萬圓減ジタ、卽チ昭和九年度ニ於
テハ七千六百萬圓、十年度ニ於テハ七千七
百萬圓、十一年以降ニ於テハ八千百萬圓、
是レ以上ノ納付金ハ必ズアルモノト、斯樣
ニ了解シテ宜シウゴザイマスカ、ソレガ第
一四、又第二ハ郵便料金ノ引上ト云フコト
ニ付テ大藏大臣ハ御考慮ニナッテ居ルト云
フコトヲ伺ッテ居リマスルガ若シ將來此
引上ガ行ハレルヤウナ場合ニ付テハ此法
案四條ニ規定シテ居ル八千二百萬圓ノ最高
限度ハ變ヘラレテ、是レ以上ニ增額セラレ
ルモノト斯樣ニ承知イタシテ宜シウゴザ
イマスカ、尙ホ第三點ト致シマシテハ、過
日阪谷男爵ガ御述べニナリマシタ通リ、日
本ノ財政立直シニ付キマシテ、特別會計ヲ
整理シテ成ルベク一般的ノ財源ノ調達ヲ計
畫スル必要ガアルコトハ勿論ダト存ジマス
ルガ、其際ニ於キマシテ本法案ニ依ッテ設
ケラレル通信事業特別會計ニ付キマシテ
モ、外ノ特別會計同樣調査セラレルモノ
ト斯樣ニ解釋イタシテ宜シウゴザイマス
ルカ、以上三點ニ付キマシテ大藏大臣ノ御
答ヲ得タイト存ジマス
〔國務大臣高橋是〓君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X02719330320&spkNum=86
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087・高橋是清
○國務大臣(高橋是〓君) 只今大河內子爵
ノ御質疑、三點共ニ御解釋ノ通リデ宜シウ
ゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X02719330320&spkNum=87
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088・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 本案ノ第二讀會
ヲ開クコトニ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X02719330320&spkNum=88
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089・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X02719330320&spkNum=89
-
090・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直ニ本案ノ第二讀會
ヲ開カレムコトヲ希望イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X02719330320&spkNum=90
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091・清岡長言
○子爵〓岡長言君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X02719330320&spkNum=91
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092・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 西大路子爵ノ動
議ニ御異存ゴザイマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X02719330320&spkNum=92
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093・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X02719330320&spkNum=93
-
094・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 本案全部ヲ問題
ニ供シマス、全部原案ニ御異存ゴザイマセ
ヌカ······議長ハ諸君ニ願ヒタイコトハ御
異議ガナケレバ異議ナシト、ドナタデモ宜
シウゴザイマスカラ御述ヲ願ヒタイ、議長
ノ整理上困リマス
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X02719330320&spkNum=94
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095・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X02719330320&spkNum=95
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096・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直ニ本案ノ第三讀會
ヲ開カレムコトヲ希望イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X02719330320&spkNum=96
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097・清岡長言
○子爵清岡長言君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X02719330320&spkNum=97
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098・徳川家達
○議長(公爵德川〓達君) 西大路子爵ノ動
議ニ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X02719330320&spkNum=98
-
099・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X02719330320&spkNum=99
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100・徳川家達
○議長、公爵德川 達君)第二讀會ノ決議
通リデ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X02719330320&spkNum=100
-
101・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X02719330320&spkNum=101
-
102・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 製絲業法中改正
法律案、政府提出、衆議院送付、第一讀會ノ
續、委員し報告、子爵松平直平君
製絲業法中改正法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報〓候也
昭和八年三月十七日
委員長子爵松平直平
貴族院議長公爵德川家達殿
〔子爵松平直平君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X02719330320&spkNum=102
-
103・松平直平
○子爵松平直平君 製絲業法中改正法律案
ノ特別委員會ノ經過竝ニ結果ヲ御報〓イタ
シマス、先ヅ此本案ノ提出ノ理由ニ付キマ
シテ〓略申上ゲマス、從來本邦ニ於キマシ
テ重要ナル製品トナッテ居リマスル製絲ニ
付キマシテハ此改善發達ヲ圖ル爲ニ六十
三議會ノ協贊ヲ經マシテ製絲業法ト云フモ
ノガ制定サレマシタ、ソレガ其施設ノ一ツ
デアリマスルガ製絲業經營ニ付キマシテ
ハ相當ノ規模ヲ有シ又將來堅實ニナリ得ル
モノニ對シマシテ、之ニ免許ヲ與ヘテ居,
タノデアリマス、不健全ナル小規模ノ工場ノ
出現ヲ成ルベク阻止イタシマシテ、斯業ノ健
全ナル發達ヲ圖ラムト致シタノデアリマス、
併シ現在ノ小規模工場ハ依然トシテ今尙ホ
存續シテ居リマス、又存續ヲ認メラレテ居
リマス關係上、何等カ適當ナル方法ヲ以テ
之ヲ改善ヲスル必要ガアリマスルノデ、
斯業ノ現狀ニ鑑ミマシテ、中小業者ガ團
體ヲ作リ、共同ノ施設ヲ爲シマシテ、品質
ノ改善及生產費ノ低減ヲ圖リ、堅實ナル
發達ヲ爲スコトガ緊要ナル方法ノ一ツデ
アリマス、旣ニ昭和七年度ヨリ共同施設ノ
奬勵助成ニ著手イタシマシテ、漸次共同施
設ノ方向ニ其氣運ハ進ンデハ居リマスルケ
レドモ製絲業者ガ團體ヲ組織スルニ付キ
マシテハ其目的ヲ達成セシムルニ是マデ
法制ガゴザイマセヌノデ、共同施設ノ健全
ナル發達ヲ促シマシテ、其不備ナル點及奬
勵ノ上ニ不便ガアリマスカラシテ、此改正
ニ於キマシテ中小製絲業者ガ改善、發達ヲ
圖ル爲ニ共同施設ヲ爲ス團體ヲ作リマシテ、
新タニ生絲共同施設組合ナル制度ヲ設ケタ
ノデアリマス、其組合ノ組織ニ付キマシテ
ハ蠶絲業一般ノ利害ヲ考慮イタシテ必要
ナル監督ヲ爲サムトスルモノデアリマス
共同施設組合制度ノ骨子ドモ申スモノハ
次ノ數項ニ互ッテ居ルノデアリマス、中
小業者ハ···組合ハ社團法人デナケレバ
ナラヌ、組合事業トシテハ組合員ノ製造
シタル生絲ノ販賣ヲ爲スノ外、營業ニ必
要ナル物ノ共同購入、.)共同設備ノ設置及
資金ノ貸付、製絲ノ檢査、事業經營ニ關ス
ル指導調査〓究、三ガ組合員ハ一定ノ出資ヲ
ナスコト四、組合ノ組織ハ無限責任、有
限責任、保證責任ノ三種トスルコト、五、
組合ニハ所得稅營業收益稅及登錄稅ヲ課セ
ザルコト、六組合ハ勸業銀行、農工銀行
及北海道拓殖銀行ノ貸付ノ相手方トシテ認
メラルルコト七、行政官廳ハ組合ニ對シ
必要ナル監督ヲナシ、決議ヲ取消シ、理事
監事〓算人ノ解任、事業ノ停止、組合解散
ノ處分ヲナスコトガ出來ル、是ガ大體ノ骨
子デアリマス、尙ホ此外ニ產業組合製絲ニ
付キマシテハ別ニ機關ガアリマスル關係上、
本組合制度ニ依ラシメザルコトト致シタノ
デアリマス、玉絲製絲業者ハ免許制度ニ依
ラシメザルコトデアリマスガ、本組合制度
ハ玉絲製絲業者ニ取リマシテ最モ適切ノ施
設デアリマスカラ、本組合ヲ設立スルコト
ヲ得ルコトニ規定ヲシタノデアリマス、是
ガ本案ノ大體ノ趣旨デアリマス、本案ニ付
キマシテ質問モ相當ゴザイマシタケレド
モ、其中ノ重モナルモノ二三ヲ申上ゲマス
レバ、昨年製絲業法ガ施行ニナッタガ其後
ノ成績ハドウデアルカ、政府當局ノ答ニ、
製絲工場ノ數ハ約三千二百、外ニ座繰モ多
數アル、十釜以上五十釜ノ工場ガ二千六百、
百五十釜以上ノモノガ約六十アル、將來ハ
少クトモ相當ノ規模ヲ有スルモノデナケレ
バナラヌノデ、漸次其小工場ヲ整理スル考
ヘデアル、又一委員ハ製絲業者ガ組合ニ加
入スルノハ强制デアルカ或ハ任意デアル
カ、又經費ノ負擔ハドウスルノデアルカト、
政府當局ノ答ニ、任意加入デアル、組合
員ガ經費ヲ負擔シテモ共同施設運用上差支
ヘナイ程度デアルト信ズル、又最近米國ノ
金融恐慌ガ起ヲタ爲ニ、是ガ經濟上ニ及ボス
影響ハ甚大デアルト思フガ、特ニ米國織物
業者モ打擊ヲ蒙リ、我ガ製絲業ニモ波及シ
テ居ルト思フガ實際ハ如何デアルカト云フ
間ニ對シテ、生絲ハ米國ニ對シテ重大關係
ヲ有スル我ガ輸出品ナルコトハ申ス迄モナ
イ、米國ノ織物業者及消費者ノ好況ト否ト
ハ直ニ我ガ製品ノ上ニ影響ヲ有スル、今囘
米國金融恐慌ノ打擊ハマダ蒙ッテ居ラヌケ
レドモ、種々之ニ對スル對策ハ目下考慮中
デアルト云フコトデアリマシテ、尙ホ從來
日本ノ輸出業者ト在米支店トノ連絡ガ甚ダ
遺憾ノ點ガアルノデ、昨年ヨリ政府ハ調査
委員ト云フ名ヲ以テ米國ヘ派遣ヲシテ、種
種〓究調査ヲ目下イタシテ居ルト云フコト
デアリマシタ、次ニ生絲ノ價格ハ或時ハ急
騰シ、或時ハ急落ヲスル、是ハ米國商人ノ
商策モアラウシ、又爲替相場ノ變動ニ依ル
コトモアルダラウ、又其他ノ原因モアルダ
ラウケレドモ、其價格安定ニ付テ種々考慮
ヲ要スル必要ガアル、日本ノ生產費トシテ
ドノ位デアレバ米國ノ消費ニ應ジ得テ宜シ
イモノデアルカ、其答ニ此問題ハナカ〓〓
難問題デアルガ、大體ニ於テ一貫目四圓二
十九錢位ノ平均デナケレバ日本トシテ引合
ヒハシナイ、生絲一俵七百五十圓乃至八百
圓位ガ適當デアラウ、デ米國ノ消費側カラ
申セバ人絹ノ三倍半ニナルト、生絲需要ガ
減少ヲ今日マデシテ居ル、最近ノ趨勢デハ
人絹ノ價格ノ二倍デ滿足セネバナルマイト
考ヘル、又爲替關係モ考慮シナケレバナラ
ヌカラシテ、生絲一貫目四圓位ト考ヘル、
其他質問モゴザイマシタケレドモ是ハ省
略ヲ致シマス、討論ニ入リマシタガ別
是ト云フ反對意見モゴザイマセヌ、委員ノ
一人ヨリ此改正案ノ趣旨ハ能ク了解ヲシタ
カラシテ本改正案ニハ贊成デアル併ナガ
ラ一二希望ガアルカラト云フノデ希望ヲ
述ベラレマシタ、其希望ノ一ツハ製絲技
術ニ熟達シタ女工ヲ色ミナ手段方法ヲ以テ、
諸方カラ奪ヒ合フト云フ傾向ガ、漸次各方
面ニ現ハレテ來テ居ル、之ニ對シマシテハ
何トカ優遇方法ニ關シ、將來成ルベク孰練
シタル女工ガ同一工場ニ勤續スルヤウニ考
究ヲシテ貰ヒタイ、乾燥機ノ不足シテ居ル
工場ガ多數アルヤウニ思フガ、改正法ノ精
神ニ依ッテ、共同施設ニナレバ、成ルベク
具有スルコトニ留意ヲシテ貰ヒタイ、ソレ
デ採決ノ結果、全會一致ヲ以テ可決ヲ致シ
マシタ、右御報告申上ゲマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X02719330320&spkNum=103
-
104・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 本案ノ第二讀會
ヲ開クコトニ御異存ゴザイマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X02719330320&spkNum=104
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105・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X02719330320&spkNum=105
-
106・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直ニ本案ノ第二讀會
ヲ開ラカレムコトヲ希望イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X02719330320&spkNum=106
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107・清岡長言
○子爵濟岡長言君 替成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X02719330320&spkNum=107
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108・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 西大路子爵ノ動
議ニ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X02719330320&spkNum=108
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109・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X02719330320&spkNum=109
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110・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 本案全部ヲ問題
ニ供シマス、全部原案ニ御異存ゴザイマセ
ヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X02719330320&spkNum=110
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111・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X02719330320&spkNum=111
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112・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直ニ本案ノ第三讀會
ヲ開カレムコトヲ希望イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X02719330320&spkNum=112
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113・清岡長言
○子爵濟岡長言君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X02719330320&spkNum=113
-
114・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 西大路子爵ノ動
議ニ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X02719330320&spkNum=114
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115・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X02719330320&spkNum=115
-
116・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 第二讀會ノ決議
通リデ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X02719330320&spkNum=116
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117・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X02719330320&spkNum=117
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118・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 震災被害者ニ對
スル租稅ノ免除猶豫等ニ關スル法律案、政
府提出、衆議院送付、第一讀會ノ續、委員
長報〓、中御門侯爵ノ登壇ヲ望ミマス
震災被害者ニ對スル和稅ノ免除猶豫等
ニ關スル法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報〓候也
昭和八年三月十八日
委員長侯爵中御門經恭
貴族院議長公爵德川家達殿
〔侯爵中御門經恭君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X02719330320&spkNum=118
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119・中御門經恭
○侯爵中御門經恭君 震災被害者ニ對スル
租稅ノ免除猶豫等ニ關スル法律案ニ付キマ
シテ、特別委昌會ノ經過竝ニ結果ヲ御報告申
上ゲマス、本案ハ去ル三月三日三陸地方ニ起
リマシタ震災及ビ之ニ伴フ海嘯火災ニ依リ
マシテ被リマシタ被害者ニ對スル租稅免除
猶豫等ヲ行ヒマス爲ノ法律案デアリマシ
テ、內容ハ六箇條ヨリ成ッテ居リマシテ、第
三種所得稅第四期分ノ免除課稅ニ關スル申
告及申請竝ニ課稅標準ノ決定ニ特例ヲ設ケ、
是ガ緩和ヲ圖リ、又ハ租稅徵收ノ猶豫規定及
納稅ニ對スル資格要件ヲ免除ニ依リマシテ
變更セナイ規定ヲ設ケマシタ等、皆ナ是等
ハ命令ニ依ッテ、ソレ〓〓速ニ詳細調査決
定ヲ致シ、直ニ救濟スルト云フ法案デゴザ
イマス本案ハ大體丹後震災ノ場合ノ先例
ニ則リマシテ立案セラレタモノデゴザイマ
ス、其救濟額モ大體約三十萬圓ト云フコト
デゴザイマス、本案ハ最モ機宜ニ適シタル
法案デアリ、且ツ出來得ル限リ早ク決定成
立イタシマシテ震災地方ノ民心ヲ安定セシ
ムルノ必要ガゴザイマスノデ、委員會ニ於
キマシテハ何等異議ナク、滿場一致可決ヲ
致シマシタ、右御報告申上ゲマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X02719330320&spkNum=119
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120・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 本案ノ第二讀會
ヲ開クコトニ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X02719330320&spkNum=120
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121・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X02719330320&spkNum=121
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122・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直ニ本案ノ第二讀會
ヲ開カレムコトヲ希望イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X02719330320&spkNum=122
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123・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 動議者ニハ贊成
ヲ要シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X02719330320&spkNum=123
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124・二荒芳徳
○伯爵二荒芳德君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X02719330320&spkNum=124
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125・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 西大路子爵ノ動
議ニ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X02719330320&spkNum=125
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126・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X02719330320&spkNum=126
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127・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 本案全部ヲ問題
ニ供シマス、全部原案ニ御異存ゴザイマセ
ヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X02719330320&spkNum=127
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128・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X02719330320&spkNum=128
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129・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直ニ本案ノ第三讀會
ヲ開カレムコトヲ希望イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X02719330320&spkNum=129
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130・佐々木八十八
○佐々木八十八君 贊成
〔「贊成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X02719330320&spkNum=130
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131・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 西大路子爵ノ動
議ニ御異仔ゴザイマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X02719330320&spkNum=131
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132・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X02719330320&spkNum=132
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133・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 第二讀會ノ決議
通リデ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X02719330320&spkNum=133
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134・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X02719330320&spkNum=134
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135・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 刑法中改正法律
案刑事判決宣告猶豫ニ關スル法律案、刑
事訴訟法中改正法律案、衆議院提出、第
讀會
刑法中改正法律案
右本院提出案及送付候也
昭和八年三月十八日
衆議院議長秋田〓
貴族院議長公爵德川家達殿
刑法中左ノ通改正ス
第二十五條ノ二左ニ記載シタル者罰金
ノ言渡ヲ受ケタルトキハ情狀ニ因リ裁
判確定ノ日ヨリ一年以上三年以下ノ期
間內其執行ヲ猶豫スルコトヲ得
前ニ罰金以上ノ刑ニ處セラレタル
コトナキ者
二前ニ罰金以上ノ刑ニ處セラレタル
コトアルモ其執行ヲ終リ又ハ其執行
ノ免除ヲ得タル日ヨリ五年以內ニ罰
金以上ノ刑ニ處セラレタルコトナキ
者
第二十六條中「刑ノ執行猶豫」ヲ「懲役又
ハ禁錮ノ執行猶豫」ニ、「前條第二號」ヲ
「第二十五條第二號」ニ改ム
第二十六條ノ二左ニ記載シタル場合ニ
於テハ罰金ノ執行猶豫ノ言渡ヲ取消ス
可シ
猶豫ノ期間內更ニ罪ヲ犯シ罰金以
上ノ刑ニ處セラレタルトキ
二猶豫ノ言渡前ニ犯シタル他ノ罪ニ
付キ罰金以上ノ刑ニ處セラレタルト
キ
三第二十五條ノ二第二號ニ記載シタ
ル者ヲ除ク外猶豫ノ言渡前他ノ罪ニ
付キ罰金以上ノ刑ニ處セラレタルコ
ト發覺シタルトキ
刑事判決宣告猶豫ニ關スル法律案
右本院提出案及送付候也
昭和八年三月十八日
衆議院議長秋田〓
貴族院議長公爵德川家達殿
第一條裁判所ニ於テ審理ノ結果被告人
ノ性格、年齡及境遇竝犯罪ノ情狀及犯
罪後ノ情況等ニ因リ判決ノ宣告ヲ爲サ
サルヲ相當ト認ムルトキハ決定ヲ以テ
一年以上五年以下ノ期間內其ノ宣〓ヲ
猶豫スル旨ノ言渡ヲ爲スコトヲ得
檢事及被告人ハ前項ノ決定ニ對シ卽時
抗告ヲ爲スコトヲ得
第二條判決宣告猶豫ノ言渡アリタルト
キハ勾留セラレタル被〓人ニ對シテハ
放免ノ言渡アリタルモノトス
第三條左ノ場合ニ於テハ裁判所ハ檢事
ノ請求ニ因リ判決宣告猶豫ノ言渡ヲ取
消スコトヲ得
被〓人カ宣〓猶豫ノ期間中ニ犯シ
タル罰金以上ノ刑ニ處セラルヘキ罪
ニ依リ公判ニ付セラレタルトキ
二其ノ他被〓人ニ著シク宣告猶豫ノ
決定ヲ爲シタル趣旨ニ反スル行狀ア
リタルトキ
第四條判決宣告猶豫ノ期間內ハ公訴ノ
時效ハ進行セス
第五條判決宣告猶豫ノ言渡取消アリタ
ルトキハ裁判所ハ更ニ刑事訴訟法ノ規
定ニ從ヒ判決ノ言渡ヲ爲スヘシ
第六條判決宣告猶豫ノ言渡ヲ取消サル
ルコトナクシテ猶豫ノ期間ヲ經過シタ
ルトキハ被〓人ニ對シ免訴ノ言渡アリ
タルモノト看做ス
第七條判決宣告猶豫ノ言渡アリタルト
キハ私訴ニ付テハ其ノ裁判所ノ民事部
ニ移ス言渡アリタルモノトス
第八條本法ニ依ル卽時抗〓ニ付テハ刑
事訴訟法ノ規定ヲ準用ス
刑事訴訟法中改正注律案
右本院提出案及送付候也
昭和八年三月十八日
衆議院議長秋田〓
貴族院議長公爵德川家達殿
刑事訴訟法中左ノ通改正ス
第二百一條第三項ヲ削ル発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X02719330320&spkNum=135
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136・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 只今議長ガ議題
ト致シマシタ法律案三件ハ行政執行法中
改正法律案外六件ノ特別委員ニ付託イタシ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X02719330320&spkNum=136
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137・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 小作調停法中改
正法律案、借地借家調停法中改正法律案、
司法保護法案、衆議院提出、第一讀會
小作調停法中改正法律案
右本院提出案及送付候也
昭和八年三月十八日
衆議院議長秋田〓
貴族院議長公爵德川家達殿
小作調停法中左ノ通改正ス
第十六條當事者、總代及利害關係人ハ
自身=頭シ又ハ辯護士ヲ代理人トシテ
出頭セシムルコトヲ要ス
前項ノ代理ニ付テハ民事訴訟法中訴訟
代理人ニ關スル規定ヲ準用ス
借地借家調停法中改正法律案
右本院提出案及送付候也
昭和八年三月十八日
衆議院議長秋田〓
貴族院議長公爵德川家達殿
借地借家調停法中左ノ通改正ス
第七條當事者及利害關係人ハ自身出頭
シ又ハ辯護士ヲ代理人トシテ出頭セシ
ムルコトヲ要ス
前項ノ代理ニ付テハ民事訴訟法中訴訟
代理人ニ關スル規定ヲ準用ス
第二十二條中「第七條第一項但書第二
項、」ヲ削ル
司法保護法案
右本院提出及送付候也
昭和八年三月十八日
衆議院議長秋田〓
貴族院議長公爵德川家達殿
司法保護法
第一條左ニ揭クル者ニシテ其ノ必要ア
リト認ムルトキハ本法ニ依リ之ヲ保護
ス
刑ノ執行ヲ終リ又ハ刑ノ執行ノ免
除ヲ得タル者
二假釋放ヲ許サレタル者
三刑ノ執行ヲ停止セラレタル者
四刑ノ執行ヲ猶豫セラレタル者
五起訴猶豫又ハ微罪釋放ノ處分ヲ受
ケタル者
六其ノ他ノ刑事處分ヲ受ケタル者
前項各號ニ該當スル者ノ家族ニシテ保
護ノ必要アリト認ムルトキハ本法ヲ準
用ス
第二條他ノ法令ニ依リ保護處分ニ付セ
ラレタル以外ノ者ニ對シテハ其ノ意ニ
反シ保護ヲ行ハス
第三條保護事務ハ司法大臣ノ管理ニ屬
ス
第四條地方裁判所所在地ニ地方保護局
ヲ置ク
必要アルトキハ地方保護分局ヲ置クコ
トヲ得
第五條地方保護局ノ設置、廢止及管轄
ニ關スル規定ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第六條地方保護局內ニ保護事務ニ關ス
ル諮問機關ヲ置ク
諮問機關ノ組織竝職務ニ關スル規定ハ
命令ヲ以テ之ヲ定ム
第七條地方保護局長ハ保護事務ノ援助
ヲ爲サシムル爲其ノ地方ニ於ケル適當
ナル者ニ保護委員ヲ囑託スルコトヲ得
第八條地方保護局長ハ保護ノ認定ヲ爲
スニ當リ父兄親族其ノ他保護ヲ委託ス
ルニ適當ト認ムル者ニ出頭ヲ求メ保護
ヲ受クル者ノ利益ノ爲保護ヲ勸說シ又
ハ保護ニ必要ナル事項ヲ指示スルコト
ヲ得
第九條保護司ハ保護ヲ受クル者又ハ將
來保護ヲ受ケムトスル者ニ對シ召喚同
行其ノ他保護ニ必要ナル事項ノ遵守ヲ
命スルコトヲ得
第十條地方保護局長及保護司ハ其ノ職
務ヲ行フニ當リ公務所又ハ公務員ニ對
シ必要ナル共助ヲ求ムルコトヲ得
第十一條保護團體ヲ設置セムトスル者
ハ地方保護局長ヲ經由シ司法大臣ノ認
可ヲ受クルヲ要ス
第十二條前條ニ依リ認可ヲ受ケタル保
護團體ハ正當ノ理由ナクシテ保護ノ委
託ヲ拒ムコトヲ得ス
第十三條保護ノ種類左ノ如シ
-生業助成
二融和調停
三輔導援護
前項各條ノ保護ノ範圍程度及方法ハ命
令ヲ以テ之ヲ定ム
第十四條保護ハ保護ヲ受クル者ノ居宅
ニ於テ之ヲ行ヒ保護司ノ觀察ニ付ス
第十五條地方保護局長居宅保護ヲ爲ス
コト能ハス又ハ之ヲ適當ナラスト認ム
ルトキハ保護團體ヲシテ保護ヲ受クル
者ヲ收容セシメ又ハ私人ノ家庭若ハ適
當ナル施設ニ收容ヲ委託シ之ヲ保護セ
シメ保護司ノ觀察ニ付ス
第十六條保護ノ要否ハ地方保護局長之
ヲ決定ス但シ他官廳ヨリ保護ノ依賴ア
リタルトキハ特別ノ事由ナキ限リ之ヲ
拒否スルヲ得ス
第十七條二府縣以上ニ跨リ保護移動ヲ
要スルトキハ關係地方保護局長協議ノ
上之ヲ決定ス
第十八條保護期間ハ二年以內トス但シ
必要アルトキハ之ヲ延長スルコトヲ得
第十九條保護ノ解除竝保護期間ノ延長
ハ地方保護局長之ヲ決定ス
第二十條地方保護局ノ經費ハ國庫ヨリ
之ヲ支辨ス
第二十一條國庫ハ命令ノ定ムル所ニ依
リ保護施設ノ建築費、設備費、維持費
竝收容費ヲ補助ス
第二十二條保護國體ノ用ニ供スル土地
建物ノ權利ノ取得又ハ所有權ノ保存ノ
爲ノ登記ニ付テハ登錄稅ヲ課セス
第二十三條保護團體ノ用ニ供スル土地
建物ニ對シテハ租稅其ノ他ノ公課ヲ課
セス但シ有料ニテ之ヲ使用セシメタル
者ニ對シテハ此ノ限ニ在ラス
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
本法施行ノ際現ニ保護事業ヲ經營スル保
護團體中司法大臣ノ指定シタルモノハ本
法ニ依リ認可セラレタルモノト看做ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X02719330320&spkNum=137
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138・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 此三案ハ行政執
行法中改正法律案外九件ノ特別委員ニ付託
イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X02719330320&spkNum=138
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139・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 警察官優遇ニ關
スル建議案、松平侯爵外五名發議、會議、
建議案ノ朗讀ハ省略イタ、シテ御異存ゴザイ
マセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕
〔左ノ建議案ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノ
タメ茲ニ載錄ス〕
警察官優遇ニ關スル建議案
右貴族院規則第六十九條ニ依リ提出候也
昭和八年三月十八日
發議者
侯爵松平康昌伯爵柳原義光
上山滿之進男爵深尾隆太郞
石渡敏菅原通敬
贊成者
公爵一條實孝伯爵鷹司信輔
侯爵西〓從德侯爵大久保利武
侯爵細川護立侯爵中御門經恭
侯爵佐佐木行忠伯爵小笠原長幹
伯爵酒井忠克伯爵黑木三次
伯爵酒井忠正伯爵橋本實斐
子爵靑木信光子爵冷泉爲勇
子爵大久保立子爵井上匡四郞
子爵曾我祐邦子爵白川資長
子傳池田政時子爵〓岡長言
子爵今城定政子爵新庄直知
子爵加藤泰通子爵伊東二郞丸
子爵保科正昭子爵岡部長景
子爵三室戸敬光子爵東園基光
子爵秋元春朝子爵松平忠壽
子爵西尾忠方子爵裏松友光
子爵森俊成子爵鍋島直繩
子爵岩城隆德子爵土御門晴善
子爵舟橋〓賢子爵松平康春
佐藤三番水上長次郞
男爵坂本俊篤石塚英藏
男爵平野長祥男爵鍋島直明
男爵斯波忠三郞有吉忠
芳澤謙吉男爵四條隆英
男爵東久世秀雄若林賚藏
內田重成男爵北大路實信
男爵今枝直規坂西利八郞
川村竹治男爵千田嘉平
太田政弘塚本〓治
男爵菊池武夫男爵千秋季隆
男爵淺田良逸男爵黑田長和
男爵岩倉道倶桑山鐵男
男爵今園國貞男爵金子有道
男爵赤松範男爵藤村義則
男爵小畑大太郞男爵松岡均平
男爵有地藤三郞男爵高崎弓彥
男爵大藏公望男爵東〓安
男爵渡邊汀男爵北島貴孝
男爵伊藤邸男爵足立豐
男爵長基連男爵高木謙喜一寛
男爵松尾義夫男爵中村
男爵近藤滋彌男爵橋元一輝
精正
男爵關義壽男爵三須
男爵松平外與麿男爵稻田昌植
男爵肝付兼英男爵佐藤達次郞
男爵渡邊修二男爵杉溪由言
男爵加藤成之男爵岩村一木
男爵德川喜翰竹越與三郞
倉知鐵吉山岡萬之助
宮田光雄室田義文
中川小十郞靑木周三
次田大三郞松村義、
大塚惟精服部金太郞
大橋新太郞菊池恭三
林平四郞大川平三郞
下出民義白勢春三
上郞〓助田村新吉
磯貝浩名取忠愛
岸〓.三橋彌
油井德藏吉田羊治郞
字野勇作鵜澤總明
田中德兵衞小林嘉平治
山本米三絲原武太郞
靑木才次郞水野甚次郞
金岡又左衞門岩崎〓行
大谷尊由澁澤金藏
貴族院議長公爵德川家達殿
警察官優遇ニ關スル建議
警察官ニシテ國家ノ治安秩序ヲ保持スル
爲挺身克ク其ノ任ヲ全ウセル功績者ニ對
シ國家ノ待遇未タ全カラサルノ憾アリ政
府ハ此ノ點ニ鑑ミ速ニ適當ナル方途ヲ講
セラレムコトヲ望ム
右建議ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X02719330320&spkNum=139
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140・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認
メマス、柳原伯爵ノ登壇ヲ望ミマス
〔伯爵柳原義光君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X02719330320&spkNum=140
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141・柳原義光
○伯爵柳原義光君 警察官優遇ニ關スル建
議案ノ發議者ノ一人トシテ、簡單ニ其提出ノ
意味ノアル所ヲ御說明イタシタイト考ヘマ
スル此建議案ニ書イテゴザイマス通リ、
極メテ此意味ハ簡單デアリマスル、卽チ警
察官ニシテ國家ノ治安秩序ヲ保持スル爲挺
身克ク其ノ任ヲ全ウセル功績者ニ對シ國家
ノ待遇未タ全カラサルノ憾アリ政府ハ此ノ
點ニ鑑ミ速ニ適當ナル方途ヲ講セラレムコ
トヲ望ム」簡單ニ申セバ全ク是ダケノ意味
ナノデアリマス、去リナガラ暫ク趣旨ノア
ル所ヲ敷衍シテ、暫ク諸君ノ御〓聽ヲ煩ハ
シタイト考ヘマス諸君モ能ク御存知アラ
セラレル通リ、警察官ノ職務ハ社會ノ安寧
秩序ヲ維持シ、人命財產ノ保護ヲシ、般
民衆ノ幸福ヲ增進スル所ノ重大ナル責任ヲ
有スルモノデアルコトハ、私共ノ申迄モナ
イコトデアリマスル、然ルニ時勢ノ進步ト
社會狀態ノ複雜スルニ連レマシテ、其警察
官ノ任務モ亦頗ル複雜ニ相成ヶテ、又危險性
モ大イニ加ハッタノデアリマスル、卽チ試
ミニ申セバ街頭人馬織ルガ如キ中ニアッテ、
巧ニ交通整理ヲ致スト云フヤウナコトモ、
是レ卽チ命賭ケノ作業デアルノデアリマ
ス、其以外ニ例ヘバ身ニ防禦ノ武器ヲ持
テ居リマシテモ、決死ノ覺悟ヲシタル所ノ
强盗又ハ死ニ物狂ヒノ共產主義者又ハ銀行
ヲ襲擊スル兇暴ナル「ギヤング」、或ハ又表
ニ右傾ヲ飾ッテ標榜イタシテ居リマスニモ
拘ラズ、不法暴行ヲナス者ヲ逮捕スルガ如
キコトニ至リテハ全ク所謂死線ヲ超エタ
ル獻身的ノ働キデアッテ、相當ノ度胸ト努
力ヲ要スルコトハ申ス迄モナイコトデアリ
マシテ、其勞苦ハ戰時ニ於ケル軍隊ノ働キ
ト同樣ナリト申シテ敢テ不可ナキ程度ノモ
ノデアルト私ハ思フノデアリマスル卽チ
警察官ノ努力ハ、不眠不休ヲ要スルモノデ
アリマシテ、ソレアルガ故ニ一般民衆ヲシ
テ枕ヲ高ウシテ安心セシメルコトガ出來ル
ノデアリマス、又或ハ一般民衆ノ生命財產
ヲ保護セラレテ、其堵ニ安ンゼシムルコト
モ出來得ルノデアリマス、殊ニ身ヲ挺シテ
生命ヲ捨テル覺悟ヲ致シテ兇暴ナル惡漢ヲ
逮捕スルガ如キ場合ニハ或ハ惡漢ノ兇器
ノ爲ニ斃レ、或ハ重傷ヲ負フ者ガ近來殊ニ
多イノデアリマスルコトハ私ノ申スマデ
モナク皆樣方ガ能ク御存ジノコトト考ヘル
ノデアリマス、是等ノ職ニ殉ジタル者ノ警
察官ノ功績ハ、誠ニ偉大ナモノデアルト云
フコトハ是モ亦申スマデモナイ次第デアリ
マスル、然ルニ其報ユル所ハ誠ニ比較的手
薄デアルノハ啻ニ警察官自身ノミナラズ
我國治安ノ現狀及將來ニ對シテ、誠ニ遺憾
千萬ト致ス所デアルノデアリマスル、又其
警察官ノ俸給等モ近來ハ稍、增額セラレタ
ノデアリマスルケレドモマダ〓〓不完全
デアルノデアリマスル、又其社會上ノ地位
ノ如キモ決シテ高クナイノデアリマシテ
現ニ敍勳ヲ奏請スル途ヲ開カレタニモ拘ラ
ズ、其恩命ニ浴スル者ハ曉ノ星ノ如ク極メ
テ寥々タルモノデアルコトハ是亦皆樣ノ
能ク御承知アラセラルル所ト考ヘマスル、
誠ニ遺憾千萬ナ次第デアリマスル、此手薄
キ待遇ヲ向上改善シテ、サウシテ國家ヨリ
シテ其重大ナル責務ニ相當スル報酬ヲ與ヘラ
レムコトヲ希望イタスノガ卽チ是レ本案ヲ提
出イタシタル所ノ主眼デゴザイマスル、而
シテ本年ノ三月一日ヨリ巡查身分保障ニ關
スル巡査分限令ト云フモノガ實施サレタノ
デアリマスル、其内容ハ政局ノ變轉若ハ事務
ノ便宜ニ依ッテ、濫リニ其職ヲ免ゼラレナイ
ト云フ規定デアリマシテ、卽チ警察官ノ地位
ノ安固ヲ保障イタシタモノデアリマス、又同
時ニ巡査懲戒令ト云フモノガ實施セラレタ
ノデアリマスル、是ハ警察官ガ懲罰ヲ受ク
ベキ場合ヲ明カニ規定イタシタノデアリ
マシテ此二ツノ規定ニ依リマシテモ幾分
カ其地位ノ安固ヲ得タト申スコトモ出來ル
ノデアリマスルケレドモ、之ヲ歐米ノ警察官
ニ比較イタシテ見ルト、マダ〓〓以テ其待
遇ガ極メテ手薄イ憾ミガアルノデアリマス
ル、又近時朝野ノ有識者ガ相寄リマシテ財團
法人東京警察後援會ト云フモノヲ設ケラレ
テアルノデアリマスルガ、是ハ警察官トシ
テノ殊勳者、功績ノ大ナル者ヲ表彰スル會
デアリマシテ、旣ニ此第一囘ヲ表彰式ハ去
月二十八日ニ擧行セラレタ趣デアリマシ
テ、感謝狀等ヲ贈フタヤウニ承フテ居ルノデ
アリマスル、誠ニ是ハ結構ナコトデアリマ
スルケレドモマダ〓〓此程度ヲ以テ滿足
スルコトハ到底出來ナイノデアリマスル
又警察ノ部內ニ於テ相互救濟方法ヲ講ジツ
ツアルコトモ承ッテ居ルノデアリマスケレ
ドモ是モ其規模ガ極メテ小規模デアリ
マシテ、滿足スル程度ニハ勿論參ラナイノ
デアリマスル、又警察官ガ疾病ニ罹リタル
際ノ此診療ノ爲ニ、東京警察病院ト申スガ
如キモノガアリマシテ、其警察官若ハ其家
族マデモ此便益ニ浴シ得ル規定ニナッテ居
リマスルケレドモ、是モ承ハル所ニ依ルト
其規模ガ頗ル狭小デアリマシテ、マダ〓〓
以テ優遇セラレタト云フヤウナ域ニマデニ
ハ到底參ラザル憾ミガアリマスル、故ニ是
非共此以前ニ於テ政府ガ大イニ考慮ヲ加ヘ
テ治安保持ノ爲ニ率先身ヲ挺シ能ク其任
務ヲ遂行シ、就中其職ニ殉ジタル者ノ如キ
警察官ヲ優遇シテ、其當人ノミナラズ、其
死後ニ於テモ遺族ヲ優遇スル途ヲ講ズルノ
ガ最モ必要ナルコトト信ズルノデアリマス
ル、ソレカラ警察官ノ殉難シタル者ノ靈ヲ
祭ル爲ニ、彌生神社ト云フ神社ガ出來テ居
リマシテ、一年ニ一度大祭ガアルノデアリ
マスルケレドモ、此際ニ於ケル參拜者ナド
モ緣故者デアルカ又ハ警察官ニ限ッテ、
般ノ國民ガ之ニ對シテ甚ダ無關心ノ狀態デ
アリマスルノハ是ハ又頗ル遺憾千萬ノコ
トデアリマスル願クバ是モ靖國神社ノ祭
典ニ女グガ如キ意味ノ祭リトシテ、國民一
般ガ念頭ニカケテ參拜ヲシテ、殉難セル警
察官ノ靈ニ敬仰ノ誠意ヲ表スルヤウニ致シ
タイモノデアルヤウニ考ヘルノデアリマス
ル、併シ終リニ臨ンデ敢テ一言イタシタイ
コトガアルノデアリマスル、卽チ警察官ヲ
優遇スルト共ニ、又一方ニ於テハ深ク戒メ
タイコトモ數ミアルノデアリマスル、勿論
此數多キ警察官ノ中ニハ或ハ此職權ヲ濫用
シテ良民ヲ苦シメ、多大ノ損害ヲ掛ケ或ハ
有罪無罪未定ノ被疑者ニ暴行ヲ加ヘテ、極
端ナルハ拷問致死ノ嫌疑ヲ發生流布セラル
ル場合モ折ミ實ハアルノデアリマスル斯
ウ云フコトノ多イノハ誠ニ遺憾千萬デア
リマスル此點ノ如キハ將來大イニ注意シ
テ只今述ベマシタガ如キコトノナイヤウニ
アルコトヲ只管私ハ希望イタスノデアリマ
スル、卽チ其態度ハ飽迄モ法規ニ······警察
官ノ態度ハ飽迄モ法規ニ基イテ、治安維持
法又ハ刑法或ハ其他ノ法規ニ則リテ、其態
度ハ公明正大デアラヌケレバナラヌト存ズ
ルコトハ申スマデモナイコトデアリマス
ル、而シテ民衆ヲシテ深キ信賴ヲ置カシム
ルヤウニ公明正大ナル所ノ態度ヲ執ラナケ
レバナラヌコトハ是亦申スマデモナイコト
ト考ヘルノデアリマスル、前段ニ於テ大層
甘イコトヲ申シマシタカラ稍こ少シ苦味ノ
アル苦言ヲ玆ニ添ヘテ置ク次第デアリマス
ル、而シテ玆ニ又最モ喜バシク感ジマスル
コトハ、近來ノ警視總監ハ大分此治安警察
ニ重キヲ置クヤウナ傾キガアルノデアッテ、是
ハ誠ニ結構ナコトデアリマスル、昔ハ此警視
總監ガ高等政治ノ急先鋒トナッテ、就中議會
開會中ハ陰ニ陽ニ貴業兩院議員又ハ朝野ノ
政客ト隨時隨所ニ於テ接觸シテ、サウシテ此
治安警察ガ稍、疎カニ相成ッタヤウナ傾キガ
往々アッタノデアッテ、是ハ誠ニ遺憾千萬ナ
コトデアッタノデアリマスル、併ナガラ只
今ハ先ヅ斯ノ如キコトハ稍〓無クナッタヤウ
デアリマシテ、是ハ過去ノ語リ草ト相成ッタ
ノデアリマスルカラ、私モ此點ハ深クハ咎メ
マセヌ、過去ニ於テハ斯ウ云フヤウナコト
ガアッタノデアリマスルガ、只今ハ治安警察
ニ沒頭セラルルヤウニ相成ッタノデアリマ
スルカラ、此點ハ誠ニ結構ナコトト思フノ
デアリマスル、昔ハ隨分此議會開會中ハ私
共ノ宅ニマデモ警察ノ高等係トカ云フ者ガ
參リマシテ、拙者如キ者ノ政治的ノ動作ヲ
モ探ルヤウナコトガアッタノデアリマシテ、
誠ニ迷惑シタコトモアッタノデアリマスル
ガ、近來ハ大層サウ云フコトガ少クナッタノ
デアリマスル、卽チ上警視總監ノ爲ス所ヲ
傚ッテ、此下ニアル所ノ警察官ガ良クナッタ
ト云フコトハ誠ニ結構ナコトト私ハ考ヘル
ノデアリマスル、而シテ又輦穀ノ下タル帝
都ノ警察官ノ爲ス所ハ、直ニ地方ノ警察官
ニ影響スルノデアリマスル、故ニ一般ノ警
察官ノ此傾向ハ大層良イ事ト私ハ信ズルノ
デアリマスル、卽チ警察官本來ノ使命タル
治安警察ニ專念スルハ誠ニ國家ノ爲メ慶
賀スベキコトト思ヒマスル、始終續イテ斯
ノ如クアリタイト私ハ思フノデアリマス
シ恐ラク滿堂ノ諸君モ御同感ト信ジマス
ル而シテ更ニ終リニ臨ンデ特ニ申上ゲ
タイノハ先頃畏クモ陛下ガ警視廳ニ行
幸アラセラレテ、具サニ警察ノ各般ノ狀態
ヲ親シク樹ハセラレタノデアリマスル、卽
チ近時ノ警察ノ事務ノ重要大切ナルコトヲ
深ク思召サレテ、行幸アラセラレタルモノ
カト密カニ私ハ拜察シ奉ルノデアリマス、
依テ警察官ハ特ニ其職務ノ重要ナルコトヲ
自覺シテ、卽チ其立場ニ於テ大イニ努力シ
テ國家ニ盡スノ誠意ヲ一層スベキコトト私
ハ考ヘルノデアリマスル致シテ又我〓立
法ニ携ハル者ト致シマシテハ前述ノ如ク
國家ガ警察官ニシテ治安秩序ヲ保持スル爲
ニ、挺身能ク其任ヲ全ウセル功績者ニ對シ、
其待遇ガ甚ダ全タカラザル憾ミアリト認メ
マスルガ故ニ、卽チ此建議ヲ致シテ、政府
當局ヲシテ此點ニ鑑ミ、優遇ノ途ヲ速ニ講
ゼラルルコトヲ切望イタシテ息マヌ次第デ
アリマスル、偶〓警察官ノ事ニノミ申上ゲ
マシタガ、例ヘバ消防夫、刑務所員ノ如キ
モ恰モ警察官ノ如キ職務ヲ執ルモノデゴザ
イマスルガ故ニ、此警察官ノ優遇ガ實施セ
ラルルコトニ相成リマシタナラバ消防夫
刑務所員ト雖モ其惠ニ均霑スルコトヲ私ハ
希望スル次第デアリマスル、是ハ玆ニ添ヘ
テ置ク次第デゴザイマス、大體此建議案ヲ
發議シタ大要ヲ申上ゲタ次第デアリマス
ル、尙ホ此建議案ト類似ノ建議案ガ衆議院
ニモ提出イタサレマシテ、卽チ衆議院モ政
黨政派ヲ超越シテ贊成、發議者ガアリマシ
テ提出イタサレマシテ······サア、可決ニナ
リマシタカ、ナリマセヌカ、其點ハ少シク
只今記憶イタシテ居リマセヌガ蓋シ可決
ニ相成ッタコトノヤウニ存ジマス、然レバ
是ハ獨リ貴族院ノミナラズ、衆議院ノ聲モ
アルノデアリマスカラ、國民全體ノ聲デアル
ト信ジテ差支ナイノデアリマスル、何卒私
ハ此案ノ成立スルコトヲ偏ニ希望スル次第
デアリマスル、滿堂ノ諸君ニ於カレマシテ
モ何卒、成立スルヤウニ御贊成ヲ偏ニ仰グ
次第デゴザイマスル発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X02719330320&spkNum=141
-
142・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 是ニハ通〓ガゴ
ザイマスカラ發言ヲ許シマス、松村君
〔松村義一君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X02719330320&spkNum=142
-
143・松村義一
○松村義一君 私ハ本建議案ニ贊成イタス
者デゴザイマス、贊成ノ理由ハ警察官ノ實
情其モノニ在ルノデアリマス、卽チ今日ノ
警察官ノ實情ヲ見マスルト、如何ニモ此建
議案ガ提出セラレマシタコトガ尤モ千萬デ
アリ、私ノ如キモ提出者諸君ノ御提案ニ敬
意ヲ表スルト同時ニ、自ラ進ンデ贊成シナ
ケレバナラヌト云フ感ヲ懷カザルヲ得ナイ
ノデゴザイマス、此事ニ付キマシテハ大森
男爵ガ最近特ニ詳シク調査セラレマシテ、
其結果ヲ私共ニ御示シ下スッタノデゴザイ
マス
〔副議長公爵近衞文麿君議長席ニ著ク〕
私ハ此御調査ニ依リマシテ啓發スル所ガ少
クナカッタノデゴザイマスルカラ、此大森君
ノ御調査其他ニ基キマシテ警察官ノ實情ヲ
申述ベマシテ、贊成ノ意思ヲ明カニ致シタ
イト存ズルノデゴザイマス、警察官ノ職務
ハ只今柳原伯ヨリ御述ベニナリマシタヤウ
ニ、國家ノ安寧秩序ヲ維持シ、各個人ノ生
命、身體、財產、其他ノ權利利益ヲ安全ニ
防護イタシマシテ、行政警察ノ目的ヲ達ス
ルニアリマスルト同時ニ、犯罪ヲ檢擧シ證
據ヲ蒐集シ犯人ヲ逮捕スル等、司法警察ノ
事務ヲ管掌スルノデアリマスルカラ、其職
務ハ國家ニ對シ誠ニ重要デアリ、又其範圍
ハ廣汎デアルノデアリマス、從テ日常ナス
仕事ハ極メテ繁劇デアルノデアリマス、巡
査ノ勤務ハ每日勤務ノモノト、隔日勤務ノ
モノトガアルノデアリマスガ、巡査配置及
ビ勤務〓則ニ依リマスルト、每日勤務ノモ
ノハ八時間乃至十二時間、隔日勤務ノモ
ノハ十四時間乃至十八時間ト規定セラレテ
居リマス、併ナガラ實際ニ於キマシテハ
何レノ地方ニ於キマシテモ、規定標準ノ最
高限度ヲ超ユル勤務ニ服スル情況デアリマ
ス一例ト致シマシテ警視廳ノコトヲ申上
ゲマス、警視廳ニ於キマシテハ派出所員ハ
三部勤務ニナッテ居リマシテ、日勤、當番及
非番ノ三ツヲ順次ニ繰返シテ勤務スルノデ
アリマスルガ、口勤ノ時ハ八時間勤務、當
番ノ時ハ二十五時間勤務、デアリマス、而
シテ非番ノ日ハ休養ガ出來ルカト申シマス
ルトナカ〓〓左樣ニハ參ラヌノデゴザイマ
ス、此處ニ集會ガアル、又何處其處ニ示威
運動ガアルト云フヤウナ場合ニハ必ズ召
集セラレルノデゴザイマス、又人ミノ忙ガ
シイ時期、例ヘバ年ノ暮トカ云フヤウナ場
合ニハ警察官ハ總出デ警戒ニ當ルノデゴ
ザイマス、又人ミガ遊覽ヲスル場合ニモ亦
警戒ニ行カナケレバナラヌノデゴザイマ
ス、卽チ人ノ忙ガシイ時ニモ、人ノ遊ブ時
三、、警察官ハ常ニ忙シイノデゴザイマス
ル殊ニ近來各種警察事故ノ頻發スルニ伴
ヒマシテ其警戒、警備、其他幾多臨時勤
務ニ服スルコトヲ必要ト致シマシテ、實際
ニ於キマシテハ每日ノ平均勤務時間ハ十三
時間カラ十四時間ニ亙ルノ實情デゴザイマ
ス、日曜ハドウカト申シマスルト警察官
ニハ日曜モ祭日モナイノデゴザイマス、殊
ニ外勤巡査ハ極メテ僅カノ公休日ヲ與ヘ
ラレマスル外、一年中殆ド無休日デアルノ
デゴザイマス、而モ社會ハ常ニ動イテ居ル
ノデゴザイマス、警察事故ハ何時如何ナル
場合ニ起ルカモ分リマセヌカラ、宿舍ニ歸フ
テ休養ヲシテ居リマシテモ、何時召集セラ
ルルカモ分ラヌノデゴザイマス警察官ハ
如何ナル時モ自分ノ身體ガ自分ノ自儘ニナ
ラヌノデゴザイマス、不眠不休ト云フ言葉
ハ先程モ柳原伯ノ仰セラレマシタ通リ、全
ク警察官ノ代名詞ト申シテモ差支ナイノデ
ゴザイマス、此劇職ニアル警察官ニ對シマ
シテ、國家ハドノヤウナ報酬ヲ拂フテ居リ
マスルカ、暫ク簡單ニ給與ノコトヲ申上ゲ
テ見タイト思ヒマス、俸給ニ付テ申上ゲマ
スト、最近ノ實際、支給額ノ調ベヲ見マス
ルト、警視ハ年千四百圓、警部ハ月ニ七十
五圓、警部補ハ月ニ六十一一圓、巡査ハ四十七
圓ノ平均ニナッテ居ルノデゴザイマス、重要
ニシテ繁劇ナル職務ニ對シテ、其報酬ハ菲薄
デアルト申サナケレバナラヌノデゴザイマ
ス、非番ノ際召集セラレマスルコトハ、巡査ニ
取リ誠ニ苦痛デアリマス、唯餘リ度ミデゴザ
イマスルカラ彼等ハ其苦痛ニ馴レテ居ルダ
ケデゴザイマス、而シテ非番召集ノ時ハ手
當ヲ出スコトニナッテ居ルノデゴザイマス、
規定ニ依リマスルト二圓以內ト云フコトニ
ナッテ居リ、結構ナル報酬ト見エルノデアリ
マスガ、事實ハ全ク是ト異リマシテ、三時
間未滿ハ一文モ與ヘヌノデゴザイマス、三
時間以上ニ達シマス場合ハ給與スルノデゴ
ザイマスガ、實際支給額ハ極メテ僅少デゴ
ザイマス、私ハ詳細ニ取調ベテハ居ラヌノ
デゴザイマスルケレドモ、警視廳ノ例ヲ申
シマスルト、三時間以上ハ三十錢、六時間
以上ハ四十五錢、九時間以上ガ六十錢ト云
フコトデアリマシテ而モ其額スラモ成ル
ベク出サヌ方針デアル、又出シテモ成ルベ
ク少ク出スト云フ方針ノヤウデゴザイマ
ス、國家民人ノ爲ニ身命ヲ賭スルノ氣魄ハ
警察精神ノ根蔕デアリマス而シテ警察官
吏ハ常ニ此精神ニ依リマシテ職務ニ從事シ
テ居ルノデゴザイマス、從テ職務ノ爲ニ傷
痍ヲ受クルコトモゴザイマセウ、又職務ニ
因リ傳染病ニ感染スルコトモゴザイマセ
ウ、固ヨリ職務ニ殉ズルコトモ度ミアルノ
デゴザイマス巡査ガ職務ノ爲メ傷痍ヲ受
ケ、又ハ疾病ニ罹リマシタル場合ハ治療費
ヲ受クルノデアリマスガ、其外ニ治療二十
日以上ニ亙リマシタ場合ニハ月俸一箇月分
ニ相當スル救助料ヲ給與サレルノデゴザイ
ママ、若シ其傷痍、疾病ニ因リマシテ、職
ニ堪ヘズ退職イタシマシタル時ハ、月俸三
箇月分ダケヲ、而モ其一時金ヲ受クルニ過
ギヌノデアリマス、職ニ殉ジタル時ニハ弔
祭料ヲ受ケマスガ、其額ハ月俸六箇月分ニ
過ギヌノデアリマス、是等ノコトハ巡査看
守療治料及弔祭料給與令ニ依ヶテ規定ヲセ
ラレテ居ルノデゴザイマスガ、此勅令ハ明
治三十四年ニ發布セラレタモノデゴザイマ
シテ、今日ノ時勢ニハ適合セヌノデゴザイ
そく、此外財團法人警察協會ヨリ職務上
傷痍ヲ受ケ又ハ疾病ニ罹ッテ退職イタシマ
シタ者ニハ月俸三箇月分、兇賊逮捕等ノ職
務ニ因ッテ死亡イタシマシタ時ハ月俸四箇
月分ヲ受クルダケデアルノデゴザイマス、
次ニ殉職イタシマシタル者及職務上ノ傷痍ニ
因リ癈疾者トナッテ退職イタシマシタル者
ノ實例二三ヲ申上ゲテ見タイト存ジマス、
警視廳巡査田中五郞ハ昨年五月十五日首
相官邸警戒勤務ニ從事シテ居リマシタ際
ニ、犬養首相殺害ノ目的ヲ以テ數名ノ暴漢
ガ闖入イタシマシタ
(議長公爵德川家達君議長席ニ復ス〕
御承知ノ通リ何レモ拳銃ヲ擬シテ肉薄シタ
ノデアリマス、同巡査ハ首相ノ身邊警護ノ
爲ニ敢然トシテ之ガ阻止ニ努メマシタガ
遂ニ狙擊セラレマシテ腹部ニ致命的ニ貫通
銃創ヲ負フテ、其場ニ昏倒ヲ致シタノデゴ
ザイマス、其後治療ヲ加ヘタノデアリマス
ルガ、同月二十六日遂ニ死亡イタシマシ
ク、之ニ對スル給與ハ、恩給法ニ基ク遺族
扶助料年額三百八十二圓ノ外、一時金トシ
テ弔祭料五百七十六圓デアリマス、長崎縣巡
査下平庄平ハ、昭和七年四月十三日、佐世保
管內派出所勤務中、暴漢闖入シタリトノ屆
出ヲ受ケマスルヤ、直ニ現場ニ駈付タノデ
アリマスガ、暴漢ハ刄渡リ二尺四寸ノ拔身
ノ日本刀ヲ突立テマシテ家人ヲ威嚇シテ居
リマシタカラ、同巡査ハ之ヲ穩ニ鎭撫セム
トシタノデアリマス、所ガ暴漢ハ矢庭ニ所
持ノ日本刀ヲ以テ、同巡査ノ頭部ニ斬付ケ
タノデゴザイマス、下平巡査ハ斷ジテヒル
マリ、逃走セムトスル暴漢ヲ追ヒ二町餘リ
ヲ追跡格鬪イタシマシテ、二十四箇所ノ重
傷ヲ負ヒ、遂〓其職ニ殉ジタノデゴザイマ
ス、之ニ對シ遺族扶助料ハ年額二百三十二
圓デアリ、弔祭料ハ三百四十八圓デアリマ
シタ、警視廳警部補高木新平ハ昭和三年十
月二日、淺草警察署管內ニ共產堂首魁三田
村四郞等ノ潜伏シテ居リマスコトヲ探知イ
タシマシテ、同僚ト共ニ之ガ逮捕ニ向ヒマ
シタ、三田村ハ用意ノ拳銃ヲ以チマシテ狙
擊イタシマシタ爲ニ、高木巡査ハ下顎骨ニ
重傷ヲ負フタノデアリマスガ、中〓之ニ屈
シマセヌ、殘念ナガラ三田村ハ捕リ逃ガシ
タノデアリマスケレドモ、其同志森田京子
ヲ逮捕シタノデアリマス、其後其重傷ノ爲
メ遂ニ不具癈疾ト相成リマシテ、翌昭和四
年六月退職スルノ巳ムナキニ立至ッタノデ
ゴザイマス、之ニ對シマシテハ恩給法ノ
規定ニ依リマシテ普通恩給ト增加恩給ト
ヲ受ケタノデゴザイマスガ、一時金ト致シ
マシテハ救助料月俸三箇月ニ相當スル額ヲ
受ケタニ過ギマセヌ、次ニ賞與ニ付テ申述
ベタイト存ジマス、以上ノ三人ハ特別賞與
ヲ受ケテ居リマス、其額ハ首相官邸警戒ノ
田中巡査ハ二百五十圓、下平長崎縣巡査ハ
三百圓、高木警部補ハ二百圓デアリマス
警察賞與ハ警察賞與規則ニ依リ規定セラレ
テ居リマス、特別賞與ハ功勞拔群、一般ノ龜
鑑トナルベキモノニ對シマシテ三百圓以內
ト規定セラレテ居リ、非常異變ニ際シ、又ハ
其他特ニ重大ナル危險ヲ冐シタル場合ニ於
キマシテハ五百圓以內ト規定セラレテ居
リマス、身命ヲ賭シテ國家ノ治安ノ爲ニ盡
シタル者ニ對スル賞與ト致シマシテ三百
圓若クハ五百圓ハ餘リニ輕少デアリマス、
殊ニ此尊キ犠牲者ニ對シマシテ最高ノ金額
ヲ値切リ下ゲル必要ガ何處ニアリマセウ
カ、私ハ右ノ如キ場合ニ於キマシテ、其所
屬長官ノ心事ヲ了解スルニ苦シムノデゴザ
リマス、是等ノ場合ニ於キマシテ名譽ヲ表
彰スベキ動章ハ之ヲ賜フテ居ラヌノデゴザ
イマス、警察官吏ガ特定ノ勳功ニ依フテ敍
勳ノ恩典ニ浴シマシタルコトハ極メテ稀デ
ゴザイマシテ最近數年ノ間ニ於キマシテ
ハ昭和六年ニ大阪府警部越智〓吉ト申ス者
ガ共產黨事件ニ關シ、勳ハ等瑞寶章ヲ賜ハ
リマシタル例ガアルノミデアリマス、是ガ
唯一ノ例デゴザイマス、巡査ニ付キマシテ
ハ其例ハ一ツモゴザイマセヌ、永年勤續ニ
依ル所謂定期敍動ハ警察官吏中警部補以上
ハ一般文官ト同樣デアリマシテ、巡査ハ待
遇官吏デゴザイマスカラ在職二十九年又ハ
三十年經チマシテ勳八等ニ敍セラレル內
規デゴザイマス、特別賞ヲ受ケマシタル警
察官吏デゴザイマシテ、功勞拔群一般ノ龜
鑑トナルベキ者ニ對シマシテハ、功勞徽章
ヲ附與スルノ制度ガアリマシテ、以上ノ三
人ノ犠牲者ハ是ガ給與ヲ受ケテ居ルノデゴ
ザイマス、此制度ハ明治四十三年ノ勅令ニ
依リマシテ定メラレタルモノデゴザイマシ
テ、功勞徽章ハ警察官ニ對シマシテハ恰モ
金鵄勳章ノ如キモノデアリマスガ、內務大
臣ガ之ヲ附與スルモノデゴザイマシテ、本
制度實施以來今日マデ此功勞徽章ヲ受ケマ
シタル者ハ總數百九十名デアリマスガ、現
ニ此黴章ヲ受ケテ在職イタシテ居リマスル
者ハ警察官總數六萬四千人ノ中七十五名デ
アリマス、而シテ警部補、巡査ニ限リマ
シテ本徽章ヲ受ケマシタル場合ニハ在
職中月額僅カ二十圓以下ノ功勞加俸ヲ給
セラレルノ規定デアリマス、併シ實際支
給セラレテ居リマスル額ハ、平均八圓三
十二錢ニ過ギヌノデアリマス、而モ警部
ハ徽章ヲ受ケルコトハ出來ルノデゴザイ
マスガ、功勞加俸ヲ受ケルコトハ出來ナ
イデノデゴザイマス故ニ警部補、巡査デ
アッテ功勞加俸ヲ受ケテ居リマシタ者ガ警
部ニ昇進イタシマスト云フト、其加俸ハ之
ヲ取上ゲラレテシマヒマス、此コトハ誠ニ
不都合ナル結果ト相成ルノデゴザイマス、
尙ホ此徽章ハ警察官吏ニ附與セラレルモノ
デゴザイマスカラ、警察官吏ヲ止メマスレ
ハ佩用スルコトガ出來ナイノデゴザイマ
ス、功績顯著ナル警察官ニ對シマシテ、其
待遇ガ十分デナイコトヲ實證イタシマスル
爲ニ、更ニ一例ヲ附加ヘマス、靜岡縣警部
補樽松朝一ハ昨年十月三十日熱海ニ於キ
マシテ、日本共產黨員檢擧ニ際シマシテ、
同僚ト共ニ決死隊員ニ加フテ逮捕ニ向フタノ
デゴザリマス、室內ニ居リマシタ黨員ハ拳
銃ヲ擬シテ身構ヘヲ致シマシタ、同警部補
ハ毫モ躊躇セズ猛然ト之ニ迫ッテ行キマシ
タ兇漢ハ直ニ發砲イタシマシタ爲ニ、警
部補ハ心臟部及腹部等ニ三發ノ銃彈ヲ受ケ
タノデゴザイマスガ、幸ニ防彈具ヲ著用シ
テ居リマシタカラ是ガ爲ニ負傷ハ免レマシ
ク、而シテ尙ホ憤然兇漢ニ組付イテ行ッタ
ノデゴザイマス、ソレガ爲ニ右膝ノ關節部
ニ貫通銃創ヲ負ヒ步行ノ自由ヲ失フニ至ル
迄、奮鬪ヲ續ケタノデゴザイマス、此警部補
ノ勇敢ナル行動ハ遂ニ獰猛ナル兇漢ノ銳鋒
ヲ挫クコトガ出來マシテ、同僚全員ノ奮鬪
ト相俟ッテ、黨員十一名ノ逮捕ヲ見タノデ
ゴザイマス、之ニ對スル表彰ハ功勞徽章ヲ
附與セラレマシタノト、特別賞與一百圓ヲ
給與セラレタダケデアリマシタ以上ハ內
地ニ於ケル實例デゴザイマスルガ、內地ニ
於キマシテモ、此外警察官ガ公共ノ爲ニ身
命ヲ抛ッテ努力イタシマシタ功績ヲ著シタ
ル實例ハ枚擧ニ遑ガナイノデゴザイマス
植民地ニ於キマシテハ例ヘバ朝鮮國境ノ
警備ニ當ル者、滿洲ニ於キマシテ鐵道沿線
ヲ警戒スル者、臺灣ノ蕃地勤務ニ當ル警察
官ノ如キハ、常ニ重大ナル危險ニ曝サレテ
居リマシテ、チヨットノ油斷ヲ許サザルノ
狀況ニ置カレテアルノデゴザイマスルカラ、
斯ノ如キ實例ハ一層多イノデゴザイマス、
殊ニ最近兇暴ナル行爲ガ頻々トシテ起リマ
スル實情ヨリ見マスル時ハ將來ハ益、:實例
ガ多ク相成ルデアラウト思ハレルノデゴザ
イマス、然ルニ是等警察官ノ努力ニ對シマ
シテ、其功績ニ報イ若クハ給與ヲナス所ニ
缺クル所ガゴザイマスルコトハ誠ニ遺憾ニ
堪ヘナイノデゴザイマス、此實際ニ鑑ミマシ
テ警察官ニ對シ氣ノ毒デアルト云フヤウナ
趣旨カラ、近來心アル人ミハ寄附ニ依フテ
財團ヲ組織シ、其優遇ヲ圖ル計畫ヲ立テツ
ツアルヤウデゴザイマス、是ハ美擧デゴザ
イマス、良イコトデゴザイマス、併ナガラ
個人ノ是等ノ計畫ハ往々ニシテ弊害ヲ生ズ
ル虞ナシトシナイノデゴザイマス、卽チ寄
附募集ニ際シテ弊害ガ起ルコトモゴザイマ
セウ、一例ヲ申シマスレバ、警察官ノ職務
ハ人ノ權利自由ニ關係ヲスルコトガ多イノ
デアリマスカラ、殊更其募集ニ應ジテ警察
官ノ歡心ヲ得ムトスルヤウナ者モ出テ參ラ
ヌトモ限ラヌノデゴザイマス、是ハ公正ナ
ルベキ警察官ヲ毒スル所以デナケレバナリ
マセヌ、又表彰ノ方法ニ於キマシテモ當
ヲ得ナイ場合ガナキコトヲ保證シ難イノデ
ゴザイマス、全然私心ナイ是等ノ計畫ハ結
構ナルコトデハアリマスガ、其善良ナル計畫
三···其計畫ノ進行中之ヲ毒スルヤウナ事
態ヲ生ズル虞ガナイトモ限リマセヌノデ
細心ナル注意ヲ要スルノデゴザイマス、
警察官ハ國家公共ノ爲ニ努力ヲ續ケル
ノデアリマスカラ、國家公共團體ニ於
テ是ガ給與ヲ十分ニシテ、是ガ表彰ヲ
完全ニスルコトガ當然デアリ、斯ク致ス
コトガ益、是等警察官ヲシテ、公平ニ〓
廉ニ犧牲的活動ヲ續ケシムル所以ト信ズ
ルノデゴザイマス、大體警察官ガ個人若ク
ハ私設團體カラ物ヲ受領スルコトハ出來ル
ダケ避クベキコトデゴザイマス、何トナレ
バソレガ弊害ヲ生ズル原因ヲナスカラデア
ルノデアリマス、其代リ國家ハ是等警察官
ニ對シマシテ待遇ヲ厚クシナケレバナラヌ
ト思フノデゴザイマス、次ニ小サイ問題ノ
ヤウデゴザリマスルガ、先キニ申述べマシ
夕非番召集竝ニ其手當ノコトヲ申上ゲマ
ス、非番召集ノ度數ガ餘リ重ナリマスルコ
トハ酷使デゴザリマス、固ヨリ今日社會ノ
實情ハ警察官ヲ要スルコトガ益〓甚シク相て
成リマスルノデ、之ヲ廢スル譯ニハ固ヨリ
參リマセヌ、併ナガラ餘リ度數ガ多クナル
ヤウデアリマスナラバ、或ハ勤務方法ノ改
善ニ依リ、或ハ定員ヲ增加イタシマシテ、
之ヲ緩和スベキデアリマス又召集スル場
合ニハ之ニ對シテ手當ハ相當デナケレバナ
リマセヌ、規定ハ二圓以內トアルニ拘ラ
ズ、實際ハ旣ニ申述べマスル通リ極メテ少
額デアリマス、其少額サヘモ出來ルダヶ出
サヌ方針ヲ執リ、又出シテモ成ルベク少ク
出スト云フ方針ヲ執ルガ如キハ、斷ジテ人
ヲ使用スル道デナイノデゴザリマス監督
ハ嚴格デナケレバナリマセヌ、同時ニ能ク
働ク者ニ對シマシテハ相當ナル待遇ヲシナ
ケレバナラヌノデゴザリマス、玆ニ初メテ
綱紀ノ振肅ガ行ハルルノデゴザリマス、警
察官ハ柔順デアリマスカラ不平ハ申シマセ
ヌ彼等ハ昔ノ武士ノ氣質ヲ體シテ居ラナ
ケレバナリマセヌ、報酬ノ多寡ニ依リマシ
テ職務ヲ二三ニスルガ如キ虞ハ毫モナイノ
デアリマス、併ナガラ不滿ヲ訴フル者ニハ
無理ナルコトデモ其言分ヲ通シ、默シテ爭
ハヌ者ニハ氣ノ毒デアリ不都合ナル狀態ト
雖モ、之ヲ放任ヲスルト云フガ如キハ不公
平デアリマス不公平デアリマス、ソコニ
綱紀頽廢ノ原因ガ存在スルノデゴザイマ
ス、更ニ身命ヲ犠牲ニシ、或ハ兇賊ト戰
ビ、或ハ水火ヲ辭セズ、或ハ危險ナル傳染
病ノ豫防ニ努ムルコトハ職務トハ言ヒナガ
ラ身ヲ殺シテ仁ヲ爲スモノデゴザリマシ
テ現今帝國軍人ガ滿洲ノ野ニ寒サト戰
ヒ、困苦缺乏ニ堪ヘ匪賊ノ掃蕩ヲナスノ
働キト何等選ブ所ハナイノデゴザリマス
共ニ神ノ如キ尊イ心情ニ基クノデアリマ
ス、之ニ對シマシテハ國家ハ表彰ヲ完全ニ
シ十分ノ給與ヲナスコトハ當然デアリマ
ス、然ルニ是等ノ場合ニ於キマシテ先刻申
述べマスル通リ現行ノ功勞徽章、功勞加俸、
特別賞與、給與料、弔祭料何レモ不徹底不
十分デアリマス殊ニ警察官ニシテ國家公
共ノ爲ニ盡シ、功績顯著ナル者ハ多イノデ
アリマス、其中身命ヲ犠牲ニシタル者モ尠
クナイノデアリマス、ソレニモ拘ラズ警察
官ニシテ敍勳ノ詮議ニ與リタル者ハ最近數
年ノ間警部補ノ中唯一人ニ止マッテ居リ警
部補、巡査ノ中ニハ一人モナイト云フコト
ハ國家トシテ表彰ノ途ニ缺クル所甚シト申
サナケレバナリマセ職務ノ爲メ身命ヲ
抛ツコトハ職務上當然デアリマス、職務ニ
斃レル者誰カ表彰給與ヲ豫メ期待イタシマ
セウ、殊ニ給與ノ金額ノ如キハ是等警察官
ノ何等意ニ介セザルモノデアルコトヲ確信
イタシマス、彼等モ亦武士デアルノデアリ
マス、ソコニ心情ノ尊サガ一層窺ハレルノ
デゴザリマス、而シテ其尊イ心ヲ有チ、正
當ニ職務ヲ遂行シタル者ニ對シマシテハ
十分ナル表彰給與ヲナシ、又殉職者ノ遺族
扶助ヲ完全ニ致シテ後顧ノ憂ヘヲナカラシ
ムルコトハ國家當然ノ責任デゴザイマ
ス、斯ノ如クニシテ皇國ノ精神ヲシテ永
遠ニ光輝アラシムルコトガ出來ルノデゴ
ザイマス終リニ附加ヘテ申上ゲマス
消防官吏、監獄官吏ニシテ職務ノ爲ニ身體
ヲ傷ケ、生命ヲ奪ハレタル者ニ對シマシテ、
同樣ノ處置ヲ受ケルベキコトハ先程柳原
伯ノ御話ノヤウニ當然デアリマスガ
特ニ玆ニ申上ゲタイノハ、消防夫ノコトデ
ゴザイマス、消防夫ハ義務ニ依ッテ强制セラ
ルルコトナク、自カラ進ンデ志願ヲシテ消
防ニ從事スル、所謂義勇的ナモノデゴザイ
マく、平素何等ノ報酬ヲ受ケテ居リマセ
又、唯出火、出水等ノ際、現場ニ出場イタ
シマス時ニハ、僅カナル手當ヲ受クルニ過
ギヌノデゴザイマス、而モ身命ヲ賭シテ防
火防水ニ努力イタシマシテ、癈疾者トナ
リ、又殉職スルコトモアルノデアリマス、
是等ノ場合ニ於キマシテ從來國家ガ之ヲ表
彰給與イタシマシタコトハ殆ド無イト申シ
テ宜イノデゴザイマス、官吏ニアラズトモ
國家ニ盡ス其働キ、其犠牲ノ精神ニ至リマ
シテハ何等異ナル所ハナイノデゴザイマ
ス、是等ノ者ニ對シマシテモ將來大イニ考
フベキ必要ガアルト思フノデアリマス、以
上私ハ現狀ヲ申述ベマシテ本案ニ贊成ノ意
ヲ表スル者デゴザイマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X02719330320&spkNum=143
-
144・小林嘉平治
○小林嘉平治君 時間ガエラウ過ギテ參リ
マシタノデ、私ハ此席カラ簡單ニ要點ダケ
ヲ申上ゲタイト思ヒマスガ、如何デゴザイ
マセウカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X02719330320&spkNum=144
-
145・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 宜シウゴザイマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X02719330320&spkNum=145
-
146・小林嘉平治
○小林嘉平治君 警察官ノ如何ニ責務ガ重
イカト云フコトハ、私ガ改メテ申上ゲル迄
モナイノデアリマス、先刻來ノ御演說ヲ聽
キマシテモ一層其感ヲ深ク致シマス、就キ
マシテハ私共ハ常ニ巡査ト云フ名前ガ貧弱
ナ名前デアリマス、此職責ニ副フ所ノ名前
デナイト云フコトヲ痛切ニ感ジテ居ルモノ
デアリマス、中ニハ此名前ヲ以テ輕蔑ノ言
葉ニ代ヘル人モアル現狀デアルノデアリマ
ス、殊ニ私共農村ニ住ンデ居リマスト一
人ノ巡査ガ一村ノ治安ノ維持ニ當ッテ居ル
ノデアリマシテ、此一人ノ巡查ガ警察ノ者
ヲ代表シテ居ルノデアリマス、其巡査ノ人
格ト云フモノハ直グニ農村ニ反映シテ參ル
ノデアリマス近頃此村ハ風儀ガ大變善ク
ナッタ、賭博ハ大變少クナッタト云フコトヲ
見マスト、實際巡査ガ變ッテ居ル、其反面
ノコトガ屢〓惡イコトヲ持チ來タサレルコ
トモズット見テ居ルノデアリマス、是ハ地
方ニ住ンデイラッシヤル御方ハ私ト感ヲ一
ニシテイラッシヤルト思フノデアリマス、私
ハ十數年來自分共知リ合ヒノ當路ノ方ニハ
能ク御話モ申上ゲテ、如何ニモ其通リデア
ルト云フ御返事ハ承ハルノデアリマスケレ
ドモ、イマダニ實現イタシマセヌ、近頃或
ハ巡査ノ服裝ガ少シ似合ハシクナイト云フ
コトデ、ヨリ良イ服裝ニモセナケレバナラ
ヌト云フ御議論モ行ハレテ居ルノデアリマ
ス、併シ何等經費ヲ要シナイ、豫算ニ關係
シナイ、此問題ガイマダニ解決出來ナイト
云フコトハ非常ニ私遺憾ニ存ジテ居リマ
ス、殊ニ先年今ノ兵士、一等卒、二等卒ト
云フヤウナ名前ガ適當デナイト云フノデ兵
ト云フ······上等兵、二等兵、又ハ一等兵ト
云フ名前ヲ用ヒルコトニ相成リマシタ、又
監獄ト云フ名前ガ適當デナイト云フノデ、
我ミハ必シモ是ハ改メル必要ハナイト思ヒ
マスガ刑務所ト云フ名前ニ變リマシタ、
所謂名ハ實ノ賓デアリマス、今日ノ巡査ト
云フ名前ハ重大使命ヲ帶ビテ居ル役人ニハ
副ハナイ名前デアルト私ハ痛感ヲ致シテ居
ルノデアリマス、何ニモ豫算ニ關係ノナ
イ、斯ウ云フ問題ガ何ガ故ニ今日マデ解決
ガ出來ナイカ、私ハ齋藤政務次官ガイラッシ
ヤイマスノデ、卒直ニ申上ゲマシテ本案ニ
贊成スルト同時ニ此希望ヲ申上ゲテ置キマ
スノデアリマスガ、如何ニ御感ジニナルカ
ト云フコトヲ承ハリタイノデアリマス、是
デ私ノ發言ヲ終リト致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X02719330320&spkNum=146
-
147・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 他ニ發言者モナ
イト認メマスカラ、本建議案ニ付テ採決ヲ
致シマス、建議案ニ同意ノ諸君ノ起立ヲ請
ヒマス
〔總員起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X02719330320&spkNum=147
-
148・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 全會一致ト認メ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X02719330320&spkNum=148
-
149・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 日程第三十二ヨ
リ第六十七マデ請願、會議
意見書案
秋田鐵道買收ノ件
秋田縣鹿角郡花輪町長淺利佐助外九
名呈出
右ノ請願ハ私設秋田鐵道ハ地方開發上須
要ノ線路ニシテ就中十和田湖ニ達スル捷
徑ナルニ拘ラス近時花輪線鐵道ノ開通ニ
伴ヒ經濟的打擊著シク延テ關係地方民ノ
困難尠カラサルモノアルニ係リ之ヲ買收
セラレタシトノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意
ノ大體ハ採擇スヘキモノト議決致候因テ
議院法第六十五條ニ依リ別册及送付候也
昭和八年月日
貴族院議長公爵德川家達
内閣總理大臣子爵齋藤實殿
意見書案
豫定線鐵道羽幌、遠別間鐵道速成ノ件
北海道留萌郡留萌町平民公吏赤石忠
助外千百九十六名呈出
右ノ請願ハ北海道苫前郡羽幌町ヨリ初山
別村ヲ經テ天鹽郡遠別村ニ至ル豫定線鐵
道ヲ敷設スルハ沿線地方ニ於ケル豐富ナル
水陸資源ノ開發上資スルコト大ナルノミ
ナラス札沼線鐵道ノ完通ト相俟テ運輸交通
竝軍事上亦須要ノ線路ナルニ依リ速ニ之
ヲ實現セラレタシトノ旨趣ニシテ貴族院
ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキモノト議決致
候因テ議院法第六十五條ニ依リ別册及送
付候也
昭和八年月日
貴族院議長公爵德川家達
内閣總理大臣子爵齋藤實殿
意見書案
北海道函館本線鐵道岩見澤驛改築ノ件
北海道空知郡岩見澤町長高柳廣藏呈
出
右ノ請願ハ函館本線鐵道岩見澤驛ハ北海
道ニ於ケル樞要驛ナルニ拘ラス其ノ設備
不十分ニシテ今日ノ發展ニ相應セス利用
者ノ不便尠カラサルニ依リ本年度ニ於テ
同驛ヲ改築セラレタシトノ旨趣ニシテ貴
族院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキモノト議
決致候因テ議院法第六十五條ニ依リ別册
及送付候也
昭和八年月日
貴族院議長公爵德川家達
内閣總理大臣子爵齋藤實殿
意見書案
未成年者飮酒禁止法ノ改正法制定ニ反
對ノ件
秋田縣仙北郡豐川村商池田惣太郞外
五百四十五名呈出
秋田縣山本郡能代港町商金佐吉外三
百五十八名呈出
秋田縣雄勝郡湯澤町酒造業高久多吉
外九百六十五名呈出
秋田縣雄勝郡山田村農武石太五右衞
門外九百十九名呈出
高知市細工町工竹村豐之助外七千九
百三十七名呈出
石川縣金澤市長町公吏高松與吉郞外
千六百二十一名呈出
群馬縣群馬郡長尾村商金井岩太郞外
二千十五名呈出
宮崎縣那珂郡油津町宮崎縣酒造組合
聯合會長渡邊與七呈出
群馬縣新田郡太田町酒造業太刀川又
吉外千七百五十名呈出
群馬縣勢多郡粕川村酒造業柳澤竹次
郞外千三百二十四名呈出
滋賀縣大津市平民富田八郞呈出
群馬縣利根郡川場村農高井伴作外千
五百八十四名呈出
群馬縣吾妻郡原町商阿部勝平外千四
百二十二名呈出
右ノ請願ハ飮酒ハ古來儀禮竝慰安上效果
アルニ拘ラス單ニ過飮ノ弊害ノミヲ標榜
シテ之ヲ禁止セムトシ殊ニ二十歲乃至二
十五歲ノ者ニ對シテモ亦未成年者飮酒禁止
法ノ改正法律案ヲ提出セムトスルハ甚遺
憾ナルニ依リ同法案ハ之ヲ否決セラレタ
シトノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ
採擇スヘキモノト議決致候因テ議院法第
六十五條ニ依リ別册及送付候也
昭和八年月日
貴族院議長公爵德川家達
内閣總理大臣子傳齋藤實殿
意見書案
戰公傷病死者竝傷痍軍人ノ遺族扶助料
ニ關スル件
千葉市本町平民無職上野慶造外八名
呈出
岡山市西中島町平民商持田儀一外三
十六名呈出
右ノ請願ハ戰死者、公傷病死者及戰公傷
痍者ノ遺族ニシテ生活上窮境ニ陷レル者
アルハ國民思想涵養上甚潰憾ナルニ依リ
其ノ扶助料ヲ增額シ以テ其ノ生活ヲ安定
セシムルト共ニ恩給法實施以前死亡ノ戰
公傷者ニ對シ死亡當時同一戶籍內ニ在リ
タル寡婦ニモ亦扶助料ヲ支給セラルルヤ
ウ恩給法ヲ改正セラレタシトノ旨趣ニシ
テ貴族院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキモノ
ト議決致候因テ議院法第六十五條ニ依リ
別册及送付候也
昭和八年月日
貴族院議長公爵德川家達
內閣總理大臣子爵齋藤實殿
意見書案
北海道樺戶郡月形村ニ停車場設置ノ
件
北海道樺戶郡月形村農石本熊一郞外
二十一名呈出
右ノ請願ハ未成線鐵道札沼線鐵道桑園、
石狩沼田兩驛ノ中間ニ位スル北海道樺戶
郡月形村字札比內ハ戶口逐年激增セルノ
ミナラス附近一帶ノ產業進展ニ伴ヒ物資
ノ集散亦夥多ナル等停車場設置ノ恰適地
ナルニ依リ同鐵道ノ開設ト共ニ同地内ニ
之カ實現ヲ圖ラレタシトノ旨趣ニシテ貴
族院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキモノト議
決致候因テ議院法第六十五條ニ依リ別册
及送付候也
昭和八年月日
貴族院議長公爵德川家達
內閣總理大臣子爵齋藤實殿
意見書案
函館本線鐵道深川、根室本線鐵道下蘆
別間鐵道敷設ノ件
北海道空知郡音江村長川合新三郞外
三名呈出
右ノ〓願ハ根室本線鐵道下蘆別驛ヨリ上
カハキ
川郡神居村及空知郡音江村ヲ經テ函館本
線鐵道深川驛ニ達スル鐵道ハ十勝地方ト
留萌港トヲ連絡スル捷徑ナルノミナラス
其ノ沿線地方ニハ豐富ナル農產、畜產及
鑛產ノ資源ヲ有シ交通上竝產業開發上必
須ナルヲ以テ速ニ之ヲ敷設セラレタシト
ノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ採擇
スヘキモノト議決致候因テ議院法第六十
五條ニ依リ別册及送付候也
昭和八年月日
貴族院議長公爵德川家達
內閣總理大臣子爵齋藤實殿
意見書案
北海道苫小牧漁港修築ノ件
北海道勇拂郡苫小牧町長飯田誠一外
千七十二名呈出
右ノ請願ハ北海道東海岸ノ中央ニ位スル
勇拂郡苦小牧町ニ漁港ヲ築設スルハ鐵道
ノ整物ト相俟テ豐富ナル海田ノ開發上急
務ナルニ拘ラス未何等ノ對策ナキハ斯業
ノ發達上甚遺憾ナルニ依リ速ニ之ヲ實現
セラレタシトノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意
ノ大體ハ採擇スヘキモノト議決致既因テ
議院法第六十五條ニ依リ別册及送付候也
昭和八年月日
貴族院議長公爵德川家達
内閣總理大臣子爵齋藤實殿
意見書案
北海道山越郡長萬部村ニ區裁判所出張
所設置ノ件
北海道山越郡長萬部村平民桑原常吉
君外五十五名呈出
オシヤマンペ
右ノ請願ハ北海道山越郡長萬部村ハ近時
交通機關ノ發達ニ伴ヒ戶口激增シ從テ登
記事務夥多ナルニ拘ラス管轄登記所ヲ距
ルコト遠ク住民ノ不利不便尠カラサルハ
遺憾ナルニ依リ速ニ同村字長萬部市街地
ニ函館區裁判所出張所ヲ設置セラレタシ
トノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ採
擇スヘキモノト議決致候因テ議院法第六
十五條ニ依リ別册及送付候也
昭和八年月日
貴族院議長公爵德川家達
内閣總理大臣子爵齋藤實殿
意見書案
北海道石狩川架橋ノ件
北海道空知郡砂川町長野口陳吉外十
二名呈出
右ノ請願ハ北海道空知郡砂川町字奈井江
市街地ヨリ樺戶郡浦臼村ニ通スル地方費
道ヲ橫斷スル石狩川ノ渡船場ニ橋梁ヲ架
設スルハ從來密接ノ關係アル對岸相互ノ
運輸交通上ノミナラス產業上亦資スルト
コロ大ナルニ拘ラス今尙不安不便ナル渡
船ニ賴レルハ地方發展上遺憾ナルニ依リ
速ニ國費ヲ以テ之ヲ施行セラレタシトノ
旨趣ニシテ皆族院ハ廟意ノ大體ハ採擇ス
ヘキモノト議決致候因テ議院法第六十五
條ニ依リ別册及送付候也
昭和八年月日
貴族院議長公爵德川家達
内閣總理大臣子爵齋藤實殿
意見書案
室蘭本線鐵道栗山驛、札幌郡廣島間鐵
道敷設ノ件
北海道夕張郡長沼村長渡邊喜惣治呈
出
右ノ請願ハ室蘭本線鐵道栗山驛ヨリタ張
郡長沼村ノ中部ヲ經テ札幌郡廣島村ニ達
スル鐵道ヲ敷設スルハ沿線地方ニ於ケル產
業ノ開發上ニ貢獻スルノミナラス運輸交通
上亦緊要ノ線路ナルニ依リ速ニ之ヲ實現
セラレタシトノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意
ノ大體ハ採擇スヘキモノト議決致候因テ
議院法第六十五條ニ依リ別册及送付候也
昭和八年月日
貴族院議長公爵德川家達
内閣總理大臣子爵齋藤實殿
意見書案
鍼灸醫師法制定ノ件
大阪市北區南森町士族鍼灸業車戶喜
一郞呈出
右ノ請願ハ我邦ニ於ケル鍼灸術ハ古來國
民保健上貢獻スルトコロ多ク近年其ノ進
步發達著シク今ヤ全科醫師ニ於テモ治療
ノ一科トセラルルニ際シ鍼灸醫師トシテ
モ亦其ノ素質ヲ向上セシムルト共ニ益斯
術ノ〓究ニ盡瘁セシムルヤウ醫師法ニ準
シテ適當ナル鍼灸醫師法ヲ制定セラレタ
シトノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ
採擇スヘキモノト議決致候因テ議院法第
六十五條ニ依リ別册及送付候也
昭和八年月日
貴族院議長公爵德川家達
内閣總理大臣齋藤實殿
意見書案
北海道鴛泊港修築ノ件
北海道利尻郡爲泊村平民森下吉次郞
外二百七十二名呈出
右ノ請願ハ北海道利尻島ニ在ル爲泊港ハ
天然ノ良港ニシテ近時航海業ノ進展及漁
業ノ勃興ニ伴ヒ出入船舶激增セルニ際シ
更ニ其ノ東方ニ一條ノ防波堤ヲ築設セム
カ容易ニ其ノ完璧ヲ期スル所以ナルニ依
リ速ニ國費ヲ以テ之ヲ實現シ以テ船舶航
行ノ安全竝連絡上ノ圓滑ニ資セラレタシ
トノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ採
擇スヘキモノト議決致候因テ議院法第六
十五條ニ依リ別册及送付候也
昭和八年月日
貴族院議長公爵德川家達
内閣總理大臣子爵齋藤實殿
意見書案
傷痍軍人待遇改善ノ件
香川縣木田郡川島町平民農小野坂喜
三郞外四名呈出
群馬縣新田郡木崎町平民農櫻井確藏
外十五名呈出
東京市荏原區小山町平民請負業石川
金太郞外二十名呈出
右ノ請願ハ曩ニ傷痍軍人特別扶助令ノ制
定アルモ未一時金癈兵中ノ重症者ニ對シ
永續的優遇ナキニ依リ速ニ兵役義務者及
癈兵待遇審議會答申案中ノ一時金癈兵ニ
對シ恩給ノ制定竝鐵道乘車ノ特典付與等
ヲ講セラレタシトノ旨趣ニシテ貴族院ハ
願意ノ大體ハ採擇スヘキモノト議決致候
因テ議院法第六十五條ニ依リ別册及御送
付候也
昭和八年月日
貴族院議長公爵德川家達
內閣總理大臣子爵齋藤實殿
意見書案
多度津港灣修築ノ件
香川縣仲多度郡多度津町平民商堀佐
一外千二百八十二名呈出
右ノ請願ハ香川縣多度津港ハ古來重要港
灣トシテ喧傳セラレ今ヤ海陸交通機關ノ
整備ニ伴ヒ集散貨客殷賑ヲ極メ將來產業
上及軍事上須要ナルモ現在ノ規模狹小ニ
シテ時代ノ推移ニ適應セサルニ依リ之カ
修築ヲ企圖スルモ到底微力ナル町財政ニ
テ達成シ難キヲ以テ嚮ニ本町會ノ議ヲ經
テ內務省ヘ提出セル程度ニ修築セラルル
ヤウ國費ヲ以テ補助セラレタシトノ旨趣
ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキ
モノト議決致候因テ議院法第六十五條ニ
依リ別冊及御送付候也
昭和八年月日
貴族院議長公爵德川家達
內閣總理大臣子爵齋藤實殿
意見書案
宮崎縣西諸縣郡飯野村ニ區裁判所出張
所設置ノ件
宮崎縣西諸縣郡飯野村士族農柏木有
光外千四百二十五名呈出
右ノ請願ハ宮崎縣西諸縣郡飯野村ハ戶口
稠密ニシテ登記事務逐年激增セルニ拘ラ
ス管轄登記所ノ位置不適當ニシテ住民ノ
不利不便尠カラサルニ依リ同村ヲ管轄區域
トスル都城區裁判所出張所ヲ同地內ニ設
置セラレタシトノ旨趣ニシテ貴族院ハ願
意ノ大體ハ採擇スヘキモノト議決致候因
テ議院法第六十五條ニ依リ別册及送付候
也
昭和八年月日
貴族院議長公爵德川家達
內閣總理大臣子爵齋藤實殿
意見書案
七尾線鐵道七尾、氷見線鐵道氷見兩驛
間鐵道敷設ノ件
石川縣鹿島郡七尾町平民公吏須原文
吉外百二名呈出
右ノ請願ハ七尾線鐵道七尾、氷見線鐵道
氷見ノ兩驛間ニ鐵道ヲ敷設スルハ經濟上
相互密接ノ關係アル富山縣ト能登トノ兩
地方ヲ連絡スル捷徑ナルノミナラス殊ニ
七尾港ノ發展ト相俟テ產業竝運輸交通上
貢獻スルトコロ大ルニ依リ速ニ之ヲ實現
セラレタシトノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意
ノ大體ハ採擇スヘキモノト議決致候因テ
議院法第六十五條ニ依リ別册及送付候也
昭和八年月日
貴族院議長公爵德川家達
内閣總理大臣子爵齋藤實殿
意見書案
下關埠頭施設ノ件
下關市長松井信助外一名呈出
右ノ請願ハ下關港ハ釜山ト相對シ國際連
絡上重要港トシテ其ノ整備改善ヲ圖ルハ
當面ノ急務ナルニ拘ラス同港ノ施設ハ舊
態尙存續シテ到底現代ノ利用ニ適應セス
不便尠カラサルハ遺憾ナルニ依リ下關驛
ノ改築及鐵道用地ノ擴張、水深十一米突ノ
埠頭ノ築造竝關釜連絡埠頭ノ整理等ヲ速
ニ施行セラレタシトノ旨趣ニシテ貴族院
ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキモノト議決致
候因テ議院法第六十五條ニ依リ別册及送
付候也
昭和八年月日
貴族院議長公爵德川家達
内閣總理大臣子爵齋藤實殿
意見書案
瀨戶內海國立公園區域擴張ノ件
香川縣三豐郡高室村長田代八郎外三
十一名呈出
右ノ請願ハ香川縣三豐郡觀音寺町ニ在ル
琴彈公園ハ白砂靑松ノ海濱ニ面シ且史蹟
豐ナル附近一帶ノ勝地ト共ニ屋島及寒霞、
溪等ト併稱セラレ觀光者ノ累年增加スル
トコロナルニ依リ瀨戶內海國立公園ノ區
域ニ編入セラレタシトノ旨趣ニシテ貴族
院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキモノト議決
致候因テ議院法第六十五條ニ依リ別册及
送付候也
昭和八年月日
貴族院議長公爵德川家達
內閣總理大臣子爵齋藤實殿
意見書案
豫定線鐵道久慈、宮古間鐵道速成ノ件
岩手縣九戶郡野田村長宮澤五平外六
百二十四名呈出
右ノ請願ハ豫定線鐵道久慈、宮古間鐵道
ハ三陸沿岸地方ニ於ケル豐富ナル海陸資
源ノ開發上貢獻スルトコロ大ナルノミナ
ラス運輸交通竝國防上亦須要ノ線路ナル
ニ依リ速ニ之ヲ敷設セラレタシトノ旨趣
ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキ
モノト議決致候因テ議院法第六十五條ニ
依リ別册及送付候也
昭和八年月日
貴族院議長公爵德川家達
內閣總理大臣子爵齋藤實殿
意見書案
北海道小安海岸ニ船入濶築設ノ件
北海道龜田郡戶井村平民漁業永井繁
太外二名提出
右ノ請願ハ北海道龜田郡ハ元來函館市ニ
接近シ從テ海產物販路上多大ノ便益ヲ有
シ且豐富ナル昆布及鰯ノ漁場トシテ有名
ナルニ拘ラス海岸線ニ屈曲乏シク一朝風
浪ニ際會セハ漁船避難ニ由ナク爲ニ人命
及漁獲物ノ損失甚シキハ遺憾ナルニ依リ
同郡戶井村ノ中央小安海岸ニ船入潤漁港
ヲ築設シ以テ斯業ノ發展ニ資セラレタシ
トノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ採
擇スヘキモノト議決致候因テ議院法第六
十五條ニ依リ別册及送付候也
昭八和年月日
貴族院議長公爵德川家達
内閣總理大臣子爵齋藤實殿
意見書案
愛知縣南設樂郡海老町ニ區裁判所出張
所設置ノ件
愛知縣南設樂郡海老町長竹下儀一呈
出
ナミシダラエビ
右ノ請願ハ愛知縣南設樂郡海老町ハ同郡
ノ北端ニ位スル要衝ニシテ近時鐵道ノ開
通ニ伴ヒ登記事務激增セルニ拘ラス管轄
田口登記所ハ距離遠ク住民ノ不利不便尠
シデ
カラサルニ依リ同町、鳳來寺町、作手村
ミネ
ノ一部及北設樂郡段嶺村ヲ管轄區域トス
ル區裁判所出張所ヲ同町ニ設置セラレタ
ク尙其ノ敷地竝廳舍ハ地元町ヨリ安價ニ
提供スヘシトノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意
ノ大體ハ採擇スヘキモノト議決致候因テ
議院法第六十五條ニ依リ別册及送付候也
昭和八年月日
貴族院議長公爵德川家達
內閣總理大臣子爵齋藤實殿
意見書案
石炭鐵道運賃低減ノ件
北海道夕張郡夕張町士族會社員高洲
一郞呈出
右ノ請願ハ北海道ニ於ケル石炭鐵道運賃
ハ曩日引上ケラレタルママ今日ニ及ヒタ
ルモノニシテ他ノ貨物運賃ニ比シ高率ナ
ルノミナラス財界不況ニ際シ石炭鑛業ノ
經營ヲ益困難ナラシメ今ヤ其ノ過重ノ負
擔ハ延テ消費者竝一般商工業者ニ多大ノ
脅威ヲ議ス等遺憾甚シキニ依リ速ニ同運賃
ヲ低減シ以テ斯業ノ進展ニ資セラレタシ
トノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ採
擇スヘキモノト議決致候因テ議院法第六
十五條ニ依リ別册及送付候也
昭和八年月日
貴族院議長公爵德川家達
内閣總理大臣子爵齋藤實殿
意見書案
府縣社以下神社ニ對シ神饌幣帛料國庫
供進ノ件
宮崎縣西臼杵郡高千穗町長神殿勇策
外八名呈出
右ノ請願ハ全國ニ於ケル府縣社以下ノ神
社ハ其ノ維持經營ヲ單ニ氏子住民一部ノ
負擔ニ委ネ最重要ナル祭典ニ關シテハ國家
ノ之ヲ顧ミサルノ嫌アルハ甚遺憾ナルニ
依リ國庫ヨリ神饌幣帛料ヲ供進セラレ以
テ國民思想ノ涵養ニ資セラレタシトノ旨
趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘ
キモノト決議致候因テ議院法第六十五條
ニ依リ別冊及送付候也
昭和八年月日
貴族院議長公爵德川家達
內閣總理大臣子爵齋藤實殿
意見書案
阿蘇國立公園區域擴張ノ件
宮崎縣西臼杵郡吾千穗町長神殿勇策
外三名呈出
右ノ請願ハ宮崎縣西臼杵郡高千穗町ヲ中
心トスル五ヶ瀨川上流ノ峡谷所謂神都高
千穗峽ハ風光ノ明媚ト景勝ノ雄大トヲ具
備セルノミナラス附近ニハ建國創業ノ祖
神ヲ初メ奉リ其ノ他地理的竝歷史的共ニ
阿蘇神宮ニ由緒深キ靈域多キヲ以テ同峽
ヲ阿蘇國立公園ノ區域ニ編入セラレタシ
トノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ採
擇スヘキモノト議決致候因テ議院法第六
十五條ニ依リ別册及送付候也
昭和年月日
貴族院議長公爵德川家達
内閣總理大臣子爵齋藤實殿
意見書案
北海道留萌郡鬼鹿村ニ船入潤築設ノ件
北海道留萌郡鬼鹿村平民農板垣末吉
外三十二名呈出
右ノ請願ハ北海道留萌郡鬼鹿村ハ日本海
ニ面スル鰊漁業地ニシテ近次沖合漁業發
展ニ努ムルモ未漁船ノ繫留及避難ニ恰當
ノ漁港ナク一朝風浪ニ際會セムカ人命竝
漁獲物ノ損失尠カラサルハ遺憾ナルニ依
リ速ニ同村ニ船入澗ヲ築設セラレタシト
ノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ採擇
スヘキモノト議決致候因テ議院法第六十
五條ニ依リ別册及送付候也
昭和八年月日
貴族院議長公爵德川家達
内閣總理大臣子爵齋藤實殿
意見書案
雄基港擴築ノ件
朝鮮咸鏡北道慶興郡雄基邑士族中村
直三郞呈出
右ノ請願ハ歐亞連絡上將來幹線トナルヘ
キ敦圖鐵道ノ開通ニ備フル爲這般羅津灣
築港ノ說ヲ聞クモ同灣ハ未何等ノ施設ナ
キ空原ニシテ其ノ工程ニ相當ノ日子ヲ要
シ到底目睫ニ迫レル同開通ニ利用シ難ク
之ニ反シテ雄基港ハ旣ニ多大ノ施設ヲ備
へ交通上竝軍事上應急ノ用ニ供スルヲ得
ヘク且工費モ僅少ナルニ依リ速ニ雄基港
擴築ヲ企圖セラレタシトノ旨趣ニシテ貴
族院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキモノト議
決致候因テ議院法第六十五條ニ依リ別册
及送付候也
昭和八年月日
貴族院議長公爵德川家達
内閣總理大臣子爵齋藤實殿
意見書案
函館本線鐵道倶知安、南小樽兩驛間鐵
道敷設ノ件
北海道虻田郡倶知安町公吏大橋千次
郎外千七百七十七名呈出
タツチヤン
右ノ請願ハ爾館本線鐵道倶知安驛ヨリ北
海道余市郡赤井川村明治鑛山ヲ經テ南小
樽驛ニ達スル鐵道ハ沿線地方ニ於ケル豐富
ナル農產、林產及鑛產ノ資源ヲ開發スル
ノミナラス運輸交通上亦須要ノ線路ナル
ニ依リ速ニ之ヲ敷設セラレタシトノ旨趣
ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキ
モノト議決致候因テ議院法第六十五條ニ
依リ別册及御送付候也
昭和八年月日
貴族院議長公爵德川家達
内閣總理大臣子爵齋藤實殿
意見書案
北海道中川郡中川村ニ區裁判所出張所
設置ノ件
北海道中川郡中川村士族公吏川越武
躬外九百四名呈出
右ノ請願ハ北海道中川郡中川村ハ地域廣
大ニシテ近時戶口增殖シ產業、交通亦發
達セル爲登記事務夥多ナルニ拘ラス管轄
名寄區裁判所美深出張所ヲ距ルコト遠ク
住民ノ不利不便尠カラサルニ依リ同村字譽
平ニ名寄區裁判所出張所ヲ設置セラレタ
ク尙所要建物ハ旭川區裁判所ヲ深川出張
所ト同一ノモノヲ建築シアルヲ以テ寄附
又ハ有料貸付ノ兩者孰レトモ指示ニ從フ
ヘシトノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體
ハ採擇スヘキモノト議決致候因テ議院法
第六十五條ニ依リ別册及御送付候也
昭和八年月日
貴族院議長公爵德川家達
内閣總理大臣子爵齋藤實殿
意見書案
北海道虻田郡倶知安町ニ稅務署設置ノ
件
北海道虻田郡倶知安町公吏大橋千次
郞外千百七十七名呈出
右ノ請願ハ北海道虻田郡倶知安町ハ鐵道
開通以來附近一帶ト共ニ戶口激增シ產業
亦著シク進展セルニ拘ラス未稅務署ノ設置
ナク住民ノ不利不便尠カラサルハ遺憾ナル
ニ依リ速ニ岩內、古宇ノ兩郡、虻田郡ノ
內後志支廳所管ノ町村及磯谷郡南尻別村
ヲ管轄區域トスル稅務署ヲ同町ニ新設セ
ラレタシトノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ
大體ハ採擇スヘキモノト議決致候因テ議
院法第六十五條ニ依リ別册及送付候也
昭和八年月日
貴族院議長公爵徳川家達
内閣總理大臣子爵齋藤實殿
意見書案
郡山區裁判所管轄區域擴張ノ件
福島縣郡山市長和田潤呈出
右ノ請願ハ郡山區裁判所管轄區域ヲ擴張
シテ白河區裁判所管轄ノ岩瀨、石川ノ二
郡及福島區裁判所管轄ノ安達郡ノ內本宮
町外九箇村ヲ移管スルハ元來郡山市ト前記
地方ト商取引上相互密接ノ關係ヲ有スルノ
ミナラス今ヤ鐵道完通シタルニ依リ交通
上ノ利便モ亦到底現管轄裁判所ニ至ルノ
比ニアラサルヲ以テ之ヲ實現セラレタシ
トノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ採
擇スヘキモノト議決致候因テ議院法第六
十五條ニ依リ別冊及送付候也
昭和八年月日
貴族院議長公爵德川家達
内閣總理大臣子爵齋藤實殿
意見書案
一時金癈兵ニ關シ恩給法中改正ノ件
鹿兒島市鹽屋町平民無職花園小右衞
門外十五名呈出
右ノ請願ハ文武官ノ恩給ハ漸次改正セラ
レタルニ拘ラス軍人傷痍者ノ大半ハ單ニ
一時金ヲ受ケタルノミニシテ生活上何等
ノ保障ナク爲ニ今ヤ窮境ニ陷レルモノ尠
カラサルハ國民士氣振興上甚遺憾ナルニ依
リ速ニ一時金癈兵待遇改善審議會ノ答申
案中未實施ニ至ラサル恩給法中改正、無
給者ニ對スル待遇改善及軍人傷痍記章ニ
依ル國有鐵道無賃乘車ノ恩典ニ浴セシメ
以テ優遇安全ノ途ヲ講セシメラレタシト
ノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ採擇
スヘキモノト議決致候因テ議院法第六十
五條ニ依リ別册及送付候也
昭和八年月日
貴族院議長公爵德川家達
内閣總理大臣子爵齋藤實殿
意見書案
戰役殊動者待遇改善ノ件
廣島縣賀茂郡廣村平民農下迫照吉呈
出
高知縣高岡郡須崎町平民農高橋繁馬
外三百六名呈出
右ノ請願ハ金鵄勳章年金ハ曩ニ一部ノ增
額ヲ見タルモ尙俸給、恩給其ノ他ノ給與
ニ比シ其ノ額匹儔セス斯クテハ士氣振興
上遺憾ナルニ依リ同年金ハ此等諸給與ト
同比率ニ改正增額セラルル等戰役殊勳者
優遇ノ途ヲ講セラレタシトノ旨趣ニシテ
貴族院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキモノト
議決致候因テ議院法第六十五條ニ依リ別
册及送付候也
昭和八年月日
貴族院議長公爵德川家達
内閣總理大臣子爵齋藤實殿
意見書案
小萩線鐵道速成ノ件
山口縣萩市長豐田勝藏外八名呈出
右ノ請願ハ未成線鐵道小萩線鐵道ヲ敷設
スルハ沿線地方ニ於ケル產業ヲ開發スル
ノミナラス山陽、山陰ノ兩線ヲ連絡スル
ニ依リ萩港ト相俟テ海陸運輸交通上資ス
ルトコロ大ナルニ拘ラス近時既定計畫ヨリ
削除セラルルヤニ聞ク斯クテハ國防上亦
遺憾甚シキニ依リ速ニ同計畫ニ基キ之ヲ
實現セラレタシトノ旨趣ニシテ貴族院ハ
願意ノ大體ハ採擇スヘキモノト義決致候
因テ議院法第六十五條ニ依リ別冊及送付
候也
昭和八年月日
貴族院議長公爵德川家達
内閣總理大臣子爵齋藤實殿
意見書案
一時金癈兵ニ關シ恩給法中改正ノ件
鹿兒島市和泉屋町平民無職有村宗之
烝呈出
右ノ請願ハ一時金癈兵及無償癈兵ハ生活
上ノ保障ナク窮境ニ陷レルモノアルハ國
民士氣振興上遺憾ナルニ依リ速ニ恩給法
ヲ改正シ以テ優遇安定ノ途ヲ講セシメラ
レタシトノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大
體ハ採擇スヘキモノト議決致候因テ議院
法第六十五條ニ依リ別册及送付候也
昭和八年月日
貴族院議長公爵德川家達
內閣總理大臣子爵齋藤實殿
意見書案
名寄區裁判所ニ旭川地方裁判所支部設
置ノ件
北海道上川郡名寄町長石丸瀧藏呈出
右ノ請願ハ北海道名寄區裁判所ハ其ノ管
轄區域廣大ニシテ近時戶口ノ增加、產業
ノ勃興著シク從テ司法事件逐年激增セル
ニ拘ラス管轄旭川地方裁判所ヲ距ルコト
遠ク住民ノ不便尠カラサルニ依リ同區裁
判所ニ名寄、稚內區裁判所ノ管轄區域ヲ
總轄スル地方裁判所甲號支部ヲ設置セラ
レタシトノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大
體ハ採擇スヘキモノト議決致候因テ議院
法第六十五條ニ依リ別册及送付候也
昭和八年月日
貴族院議長公爵德川家達
内閣總理大臣子爵齋藤實殿発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X02719330320&spkNum=149
-
150・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 是等ノ請願ハ採
擇スルコトニ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X02719330320&spkNum=150
-
151・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認
メマス、明後二十二日午前十時ヨリ開會イ
タシマス、議事日程ハ彙報ヲ以テ御通知ニ
及ビマス、本日ハ是ニテ散會イタシマス
午後四時十八分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X02719330320&spkNum=151
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