1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和八年三月二十五日(土曜日)午前十時十八分開議
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議事日程 第三十一號
昭和八年三月二十五日
午前十時開議
第一 請願委員長報告
第二 昭和八年度一般會計歳出の財源に充つる爲公債追加發行に關する法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第三 日本製鐵株式會社法案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第四 製鐵業奬勵法中改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第五 農村負債整理組合法案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第六 辯護士法中改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第七 法律事務取扱の取締に關する法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第八 南滿洲鐵道株式會社の株式引受に關する法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第九 刑事訴訟法中改正法律案(衆第二十四號)(衆議院提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第十 刑事訴訟法中改正法律案(衆第二十五號)(衆議院提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第十一 皇大神宮奉齋に關する建議案(公爵一條實孝君外十一名發議) 會議
第十二 豫定線鐵道名寄、羽幌間鐵道速成の請願 會議
第十三 大糸線鐵道速成の請願 會議
第十四 勳章年金及恩給受給者救濟の請願 會議
第十五 東海道本線鐵道東京、大磯間電車運轉に關する請願 會議
第十六 漁業組合新設の請願 會議
第十七 長崎縣北松浦郡生月村に漁港築設の請願 會議
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001・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 是ヨリ書記官ヲ
シテ報告ヲ致サセマス
〔瀨古書記官朗讀〕
昨二十四日本院ニ於テ可決シタル左ノ政府
提出案ハ卽日裁可ヲ奏請シ又可決ノ旨ヲ衆
議院ニ通知セリ
鐵道敷設法中改正法律案
帝國鐵道會計法中改正法律案
地方鐵道補助法中改正法律案
兩備鐵道株式會社所屬鐵道外四鐵道及兼
業ユ屬スル資產買收ノ爲公債發行ニ關ス
ル法律案
富山鐵道株式會社所屬鐵道中堀川新笹津
間經營廢止ニ對スル補償ノ爲公債發行ニ
關スル法律案
樺太地方鐵道補助法中改正法律案
輸出絹織物取締法中改正法律案
兒童虐待防止法案
重要美術品等ノ保存ニ關スル法律案
同日衆議院ヨリ左ノ政府提出案ヲ受領セリ
昭和八年度歲入歲出總豫算追加案(第二
號
昭和八年度各特別會計歲入歲出豫算追加
案(特第二號)
豫算外國庫ノ負擔トナルペキ契約ヲ爲ス
ヲ要スル件(追第二號)
昭和八年度一般會計歲出ノ財源ニ充ツル
爲公債追加發行ニ關スル法律案
同日本院ニ於テ修正議決シタル左ノ政府提
出案ハ卽日之ヲ衆議院ニ囘付セリ
恩給法中改正法律案
同日議員ヨリ左ノ議案ヲ提出セリ
皇大神宮奉齋ニ關スル建議案(公爵一條
實孝君外十一名發議)
同日衆議院ヨリ本院ノ送付ニ係ル左ノ政府
提出案ハ同院ニ於テ之ヲ可決シ奏上セル旨
ノ通牒ヲ受領セリ
宇品港域軍事取締法案
又衆議院ノ囘付ニ係ル左ノ政府提出案ハ同
日本院ニ於テ衆議院ノ修正ニ同意セサルコ
トヲ議決シタルヲ以テ卽日同院ニ對シ兩院
協議會ヲ開クノ請求ヲ爲シ又同時ニ本院協
議委員ノ數ヲ十名ト爲スニ決セル旨ヲ同院
ニ通知セリ
醫師法中改正法律案
同日委員長ヨリ左ノ報〓書ヲ提出セリ
日本製鐵株式會社法案可決報〓書
製鐵業奬勵法中改正法律案可決報告書
農村負債整理組合法案可決報〓書
辯護士法改正法律案修正報告書
法律事務取扱ノ取締ニ關スル法律案可決
報〓書
南滿洲鐵道株式會社ノ株式引受ニ關スル
法律案可決報〓書
刑事訴訟法中改正法律案(衆第二十四號)
否決報〓書
刑事訴訟法中改正法律案(衆第二十五號)
否決報〓書
同日醫師法中改正法律案兩院協議委員會ニ
於テ當選シタル正副議長ノ氏名左ノ如シ
議長侯爵細川護立君
副議長子爵靑木信光君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=1
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002・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 是ヨリ會議ヲ開
キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=2
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003・池田政時
○子爵池田政時君 此際日程ヲ變更セラ
レ、日程第六、第七ノ兩案ヲ劈頭ニ、引續
イテ日程第十一ヲ上程審議アラムコトノ動
議ヲ提出イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=3
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004・清岡長言
○子爵濟岡長言君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=4
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005・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 池田子爵ノ議事
日程變更ノ動議ニハ御異議ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=5
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006・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=6
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007・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 辯護士法改正法
律案、法律事務取扱ノ取締ニ關スル法律案、
政府提出、衆議院送付、第一讀會ノ續、委
員長報〓、子爵渡邊千冬君ノ登壇ヲ望ミマ
ス
辯護士法改正法律案
右別冊ノ通修正議決セリ依テ及報告候也
昭和八年三月二十四日
委員長子爵渡邊千冬
貴族院議長公爵德川家達殿
特別委員ノ修正ニ係ル部分
ノミヲ印刷シ其ノ他ハ之ヲ
略ス小字及-ハ修正ナリ
第五條左ニ揭グル者ハ辯護士タル資格
ヲ有セズ
·以上ノ刑
一懲役又ハ一年以上ノ禁錮。ニ處セ
ラレタル者
二懲戒ノ處分ニ因リ免官若ハ免職セ
ラレタル者、本法ニ依リ除名セラレ
タル者又ハ辨埋士法若ハ計理士法ニ
依リ業務ヲ禁止セラレタル者ニシテ
免官、免職、除名又ハ業務禁止後二
年ヲ經過セザル者
三禁治產者又ハ準禁治產者
四破產者ニシテ復權ヲ得ザル者
第十八條辯護士ノ事務所ハ所屬辯護士
會ノ地域內ニ之ヲ設クベシ
辯護士ハ如何ナル名義ヲ以テスルモ二
個以上ノ事務所ヲ設クルコトヲ得ズ但
シ他ノ辯護士事務所ニ於テ共同シテ執
コトヲ妨ゲズ
務スル場合ハ此ノ限ニ在ラズ
附則
本法ハ昭和十一年四月一日ヨリ之ヲ施行
ス
平法施行ノ際現ニ從前ノ規定ニ依リテ辯
護士タル資格ヲ有スル者ハ本法施行後ト
雖モ仍其ノ資格ヲ有ス
舊刑法ノ重罪ノ刑又ハ一年以上ノ禁錮ニ
處セラレタル者ハ第五條ノ規定ノ適用
ニ付テハ之ヲ懲役又ハ一年以上ノ禁錮
以上ノ刑
〓ニ處セラレタル者ト看做ス
從前ノ規定ニ依ル辯護士名簿ノ登錄ハ之
ヲ本法ニ依ル辯護士名簿ノ登錄ト看做ス
本法施行ノ際現ニ辯護士會ニ加入シ居ラ
ザル辯護士ニ付テハ本法施行ノ日ヨリ三
月內ニ從前ノ例ニ依リテ辯護士會ニ加入
スルニ非ザレバ其ノ登錄ハ效力ヲ失フ
辯護士會ニ關シテハ本法ニ依ル辯護士會
成立スルニ至ル迄ハ仍從前ノ例ニ依ル但
シ辯護士名簿登錄及登錄換ノ請求ノ進達
ニ關シテハ本法ニ依ル
本法施行ノ際現ニ存スル辯護士會ハ本法
施行ノ日ヨリ六月內ニ本法ニ依ル辯護士
會ヲ設立スル爲會則ヲ定メ司法大臣ノ認
可ヲ受クベシ司法大臣ハ認可ヲ爲シタル
トキハ辯護士會ノ名稱、事務所ノ所在地
及設立ノ年月日ヲ告示スベシ
前項ノ規定ニ依リテ辯護士會成立シタル
トキハ舊辯護士會ノ會員ハ當然新辯護士
會ノ會員ト爲リ舊辯護士會ニ屬シタル權
利義務ハ新辯護士會之ヲ承繼ス
本法施行ノ際現ニ二個以上ノ事務所ヲ有
スル辯護士ハ本法施行ノ日ヨリ六月內ニ
限リ之ヲ存續スルコトヲ得
法律事務取扱ノ取締ニ關スル法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及報
〓候也
昭和八年三月二十四日
委員長子爵渡邊千冬
貴族院議長公爵德川家達殿
〔子爵渡邊千冬君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=7
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008・渡邊千冬
○子爵渡邊千冬君 只今上程セラレマシタ
辯護士法改正法律案及法律事務ノ取扱ノ取
締ニ關スル法律案ニ付テ特別委員會ノ經
過及結果ヲ御報告申上ゲマス、先ヅ辯護士
法改正法律案ニ付テ申上ゲマスレバ此法
ハ辯護士ノ品位向上ト云フコトヲ主眼ト致
シマシテ、現行辯護士法ニ全部的ノ改正ヲ
加ヘタモノデアリマス、其改正ノ重要ナル
點ヲ申上ゲマスレバ、先ヅ第一ニ辯護士タ
ル資格ニ於キマシテ從來辯護士タルニハ民
法上ノ能力ヲ有スル成年ノ男子ニ限ラレテ
居ッタノデアリマスガ、改正案ニ於キマシ
テハ帝國臣民タル成年者デアレバ女子モ男
子ト同一條件ノ下ニ辯護士クルコトヲ得ル
コトニナッタノデアリマス、更ニ從來ノ辯
護士ハ高等試驗令ト成規ノ試驗ニ合格イタ
シマスト、直ニ辯護士トシテ法律事務ニ從
事スルコトヲ得タノデアリマスガ、改正案
ニ於キマシテハ試驗ニ合格シタノミデハ
辯護士ニナレナイノデアリマス、判檢事ニ
ナル者ハ一定ノ期間司法官試補トシテ修習
スルコトガ必要デアルト同ジク、辯護士ニ
ナルノニハ一年六箇月以上辯護士試補トシ
テ實務ノ修習竝ニ人格ノ修養ヲ致サナケレ
バナラナイコトニナッタノデアリマス、是
レ蓋シ辯護士ノ地位ノ向上ニ伴ヒマシテ、
人格ノ向上ヲモ圖ラネバナラヌト云フコト、
及現今ノ複雜化イタシマシタ法制ヲ解釋シ
之ヲ適用スルニ付キマシテハ單ニ一回ノ
學術試驗ニ合格シタノデハ不十分ナリト云
フ觀念カラ、斯ノ如キ改正ヲ致シタノデア
リマス、其他大體ニ於テ判事檢事ト同一ノ
資格タルコトヲ原則ト致シタノデアリマス、
次ニ辯護士會ニ付テ申上ゲマスト、此法律
案ニ於キマシテハ辯護士會ヲ公法人ト致シ
タコトデアルノデアリマス、從來モ辯護士
會ハ存在イタシテ居リマシテ、相當ノ財產
ヲ有シ、其他辯護士會トシテ幾多ノ事務ヲ
處理シテ居ッタノデアリマシテ、實質的ニハ
一ノ人格者タルガ如キ活動ヲ致シテ居ッタ
ノデアリマスガ、法律上ニ於テハ人格ヲ有ッ
テ居ラナカッタノデアリマス、然ルニ本案
ハ多年ノ要望ヲ以テ正當ノ事由アルモノト
致シ之ニ法人格ヲ認メタノデアリマス、
之ニ伴ヒマシテ辯護士會ノ自治統轄上必要
ナル各種ノ規定ガ設ケラレテ居ルノデアリ
マス例ヘバ辯護士會ノ秩序又ハ信用ヲ害
スル者ノ入會ヲ拒絕シ又ハ退會ヲ命ズル
等强制力ヲ有スル規定ガ設ケラレテアル
ノデアリマス
〔副議長公爵近衞文麿君議長席ニ著ク〕
其他從來ノ辯護士會ハ各地方裁判所檢事正
ノ監督ノ下ニアッタノデアリマスガ、改正
案ニ於キマシテハ司法大臣ノ直接監督ノ下
ニ置クコトニナッタノデアリマス、尙ホ是等
ノ改正ニ伴ヒマシテ、整理的ニ改正セラ
レタ箇所モアルノデアリマスガ、ソレ
等ハ殊ニ重要ナル點トモ思ハレマセヌカ
ラ之ヲ省略イタシマス、而シテ此改正案ニ
對スル衆議院ノ修正ノ箇所ハ少クナイノデ
アリマスガ其主ナル點ニ付テ二三申上ゲ
マスレバ、第一ハ資格ノ點デアリマス、政
府原案ニハ第五條第一項ニ「禁錮以上ノ刑
ニ處セラレタル者」トアルノデアリマスガ、
之ヲ「懲役又ハ一年以上ノ禁錮ニ處セラレ
タル者」ト修正ヲ致シタノデアリマス、卽チ
缺格條件ヲ緩和イタシタノデアリマス、次ハ
第十八條第二項ニ「辯護士ハ如何ナル名義
ヲ以テスルモ二個以上ノ事務所ヲ設クルコ
トヲ得ズ」トアリマスノニ之ニ但書ヲ加ヘマ
シテ、「但シ他ノ辯護士事務所ニ於テ共同シ
テ執務スル場合ハ此ノ限ニ在ラズ」ト修正
ヲ致シタノデアリマス、其他ノ修正ハ御手
許ニアリマス法案ニ付テ御承知ノ如ク、原
案ノ精神ト多大ノ背馳ナキ幾多ノ修正ガア
ルノデアリマス、次ニ法律事務取扱ノ取締
ニ關スル法律案ニ付テ申上ゲマスト、右ハ
非辯護士ノ取締ヲ主眼トスルモノデアリマシ
テ、非辯護士ガ他人間ノ訴訟事件ニ關シ、又
ハ他人間ノ非訟事件ノ紛議ニ關シマシテ、
代理、仲裁、和解等ヲ爲シマシテ、却テ他
人間ノ紛訌ヲ助長セシムルヤウナ弊ヲ取締
ラムトスルニアルノデアリマス、此法律案
ニ付キマシテハ衆議院ニ於キマシテ、
僅カノ修正ガアッタノデアリマスガ、皆政府
ノ同意ヲ得テ居ルノデアリマス、本委員會
ハ審査ニ先ダチマシテ、委員長ヨリ政府ニ
對シ、此兩法律案ニ對スル衆議院ノ修正ニ
ハ同意シタノデアルカ否ヤヲ確カメタノ
デアリマスガ、政府ハ第五條第一號ノ禁
錮以上ノ刑ニ處セラレタル者」トアルノヲ、
「懲役又ハ一年以上ノ禁錮ニ處セラレタル
者」ト爲シタ點、及ビ之ニ關聯スル修正ハ
絕對ニ同意スルコトガ出來ナイト云フ聲明
ガアッタノデアリマス、其理由ハ高等試驗令
ノ受驗資格ノ中ニハ、禁錮以上ノ刑ニ處セ
ラレタルモノハ缺格條件トセラレテ居ルニ
モ拘ラズ、其試驗ニ合格シテ其後ニ辯護士
タラムトシ又辯護士トナッタモノハ禁錮
ニ處セラレテモソレダケデハ失格ヲ致サナ
イ一年以上ノ禁錮ノ刑ニ處セラレナケレ
バ其資格ヲ失ハズト云フガ如キハ誠ニ不
合理デアルノミナラズ、改正ノ主眼デアリ
マス所ノ辯護士ノ品位向上ノ趣旨ト、著シ
ク背反シテ居ルカラト云フコトデアリマシ
タ、其他ノ修正箇處ニ付テハ、政府ハ大體同
意シタ旨ノ答辯ヲ得タノデアリマス、尙ホ委員
會ニ於キマシテハ幾多ノ質問ガアリマシタガ、
其中主要ナル點ヲ申上ゲマスト、司法大臣
ノ監督權ノ作用ト致シマシテ、衆議院デハ
司法大臣ガ辯護士會ニ解散ヲ命ジ得ルト云
フ其規定ヲ削除イタシタノデアリマスガ、
之ニ付テ斯ノ如キ規定ヲ存シテ置クコトハ
必要デハナイカ、例ヘバ辯護士會ノ會員全
部ガ法令ニ於テ取締ヲ要スルヤウナ、或種
ノ傾向ヲ有スルニ至ッタト假定シタ場合ニ、
之ヲ解散シ得ザルガ如キハ觀念上不相當デ
ハナイカ、又辯護士事務所ニ付キマシテ、
他ノ辯護士事務所ト共同執務スル場所モ事
務所ト認メルト云フコトハ種々不合理ナ
コトニナルデハナイカ、辯護士ハ如何ナル
名義ヲ以テモ二個以上ノ事務所ヲ設ケルコ
トガ出來ナイト云フ規定ガアルノデアリマ
スガ、其規定ノ精神ト反シテ居ルデハナイ
カト云フヤウナコトヲ、指摘質問イタシタ
ノデアリマス、之ニ對シ政府當局ハ、公法
人ニ付テハ主務大臣ニ於テ、之ニ解散ヲ命
ジ得ル規定ガ存在シテ居ルト云フコトハ是
ハ原則デアルケレドモ、辯護士會ハ一般ノ
公法人ニ較ベテ特殊的デアルノミナラズ、
辯護士會ニ解散ヲ命ズル場合ノ如キハ事實
上想像シ得ラレナイ所デアル、且ツ辯護士
會ガ解散スル場合ハ辯護士ノ登錄モ取消ス
コトニナッテ、辯護士ノ存在ヲ失フト云フコ
トニナリ、一地方裁判所管內ニ辯護士會ガ
唯一ツノミアル場合ニ於テハ、辯護士會ノ
解散ト共ニ其管內ニハ辯護士ガ一人モ存在
セザルコトニナリマシテ、訴訟ノ遲延ヲ來
タス等種々不都合ヲ生ズル虞モアリ、旁と
事實上ハ修正ノ通リニシテ監督上少シモ缺
クル所ガナイト云フコトヲ信ズルト云フコ
トデアリマシタ、又辯護士事務所ニ付テハ
共同執務場所ハ之ヲ事務所トハ認メナイ、
唯事務所ニ準ジテ法律事務ノ取扱ヲ爲スト
云フコトトスルト云フ聲明ヲ得タノデアリ
ママ、討議ニ入リマシテ一委員ヨリ修正ノ
動議ガ提出セラレタノデアリマス、其一ツ
ハ第五條第一號ノ「懲役又ハ一年以上ノ禁
鋼ニ處セラレタル者」トアルノヲ、政府原
案通リ「禁錮以上ノ刑ニ處セラレタル者」ト
修正スルコトデアリマス、其理由ノ要點
ハ本法ノ制定ニ依リマシテ辯護士ノ地位
ヲ向上セシメムトスルニ當フテ、禁錮以
上ノ刑ニ處セラレテモ其刑ガ一年以下デ
アレバ失格シナイト云フガ如キコトハ、
本法ノ精神ニ反スルノミナラズ政
府ガ衆議院ノ修正ニ同意シナイノハ
甚ダ當然ノコトデアッテ殊ニ此法案
ニ於キマシテハ辯護士會ノ監督ヲ司法大臣
ガ自カラスルト云フガ如キ、監督權ヲ最モ
愼重ニ發動セシメムトスル其時ニ當ッテ、法
律事務ヲ取扱フコトヲ其職務ト致シテ居ル
辯護士ノ失格條件ヲ緩和スルト云フガ如キ
企圖ハ斷然同意スルコトガ出來ナイト云
フノデアリマス、次ニ第十八條第二項ノ但
書ノ「他ノ辯護士事務所ニ於テ共同シテ執
務スル場合ハ此ノ限ニ在ラズ」ト云フ其衆
議院ノ修正ハ、本條第二項ノ「如何ナル名義
ヲ以テスルモ二個以上ノ事務所ヲ設クルコ
トヲ得ズ」ト云フ精神ト全ク相背反スルヤ
ウニ解釋セラルルノミナラズ、此但書ヲ附
加ヘタ其精神モ之ヲ想像イタシテ見マスル
ニ、他ノ辯護士事務所ニ於テ繼續的ニ執務
スルコトガ出來レバソレデ足レリトスルノ
デアッテ、必シモ之ヲ事務所ト云フコトニ致
サナクテモ宜シイト云フノガ其目的デアル
ト信ズルカラ、事務所ハ二個以上設置スル
コトヲ許サズシテ、而モ衆議院ニ於ケル修
正ノ目的ヲ達成セシムル爲ニモ但書ヲ改メ
マシテ、「但シ他ノ辯護士事務所ニ於テ執務
スルコトヲ妨ゲズ」ト改メタイト云フ修正
意見デアリマス、之ニ對シ第五條第一號ノ
修正意見ニ對シマシテハ只今申述ベマシ
タ理由ノ外ニ先刻申述べマシタ通リ、辯護
士試補タル爲ニ必要ナル成規ノ試驗ハ禁
錮以上ノ刑ニ處セラレタル者ハ其受驗資格
ヲ有セザルニ拘ラズ、辯護士タルニハ其條
件ヲ寬大ニスルハイケナイト云フ政府當局
ノ主張モ大イニ理由ガアルカラ、此修正意
見ニハ同意スルト云フ意見モアッタノデア
リマス、又第十八條ニ於キマシテハ修正意
見ニ贊成ノ意見ガアリマシテ、此二箇條ノ
修正ガ全會一致ヲ以テ成立イタシタノデア
リマス、之ニ於キマシテ第五條ノ修正ノ結
果附則第三項ニ於キマシテモ、矢張リコ
年以上ノ禁錮ニ處セラレタル者」トアルノ
ヲ唯「禁錮ニ處セラレタル者」ト改メ「懲
役又ハ一年以上ノ禁錮ニ處セラレタル者」
トアルノヲ「禁錮以上ノ刑ニ處セラレタル
者」ト政府原案通リニ修正セラレタノデア
リマス、其他ハ總テ衆議院送付ノ原案通リ
ニ可決確定イタシタノデアリマス、法律事
務取締ニ關スル法律案ハ何等ノ修正ナク、
衆議院送付ノ原案通リ可決確定イタシマシ
タ右御報〓申上ゲマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=8
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009・近衞文麿
○副議長(公爵近衛文麿君) 兩案ノ第二讀
會ヲ開クコトニ御異議ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=9
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010・近衞文麿
○副議長(公爵近衛文麿君) 御異議ナイモ
ノト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=10
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011・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直ニ兩案ノ第二讀會
ヲ開カレムコトヲ希望イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=11
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012・戸澤正己
○子爵戸澤正己君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=12
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013・近衞文麿
○副議長(公爵近衞文麿君) 西大路子爵ノ
動議ニ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=13
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014・近衞文麿
○副議長(公爵近衞文麿君) 御異議ナイモ
ノト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=14
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015・近衞文麿
○副議長(公爵近衞文麿君) 兩案全部ヲ問
題ニ供シマス、全部委員長ノ報〓通リデ御
異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=15
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016・近衞文麿
○副議(公爵近衞文麿君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=16
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017・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直ニ兩案ノ第三讀會
ヲ開カレムコトヲ希望イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=17
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018・戸澤正己
○子爵戸澤正己君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=18
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019・近衞文麿
○副議長(公爵近衞文麿君) 西大路子爵ノ
動議ニ御異存ゴザイマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=19
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020・近衞文麿
○副議長(公爵近衞文麿君) 御異議ナイト
認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=20
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021・近衞文麿
○副議長(公爵近衞文麿君) 第二讀會ノ決
議通リデ御異存ゴザイマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=21
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022・近衞文麿
○副議長(公爵近衞文麿君) 御異議ナイト
認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=22
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023・近衞文麿
○副議長(公爵近衞文麿君) 次ニ、只今政
府ノ同意ヲ得マシタカラ日程第十一ヲ議題
ニ供シマス一條公爵
皇大神宮奉齋ニ關スル建議案
右貴族院規則第六十九條ニ依リ提出候也
昭和八年三月二十四日
發議者
公爵一條實孝侯爵佐佐木行忠
伯爵松木宗隆子爵靑木信光
子爵毛利元恒內田重成
男爵千秋季隆男爵稻田昌植
藤田四郞菅原通敬
馬場錢金杉英五郞
贊成者
公爵鷹司信輔公爵山縣有道
公爵伊藤博精侯爵細川護立
侯爵中御門經恭侯爵德川賴貞
伯爵川村鐵太郞伯爵柳原義光
伯爵松平賴壽伯爵二荒芳德
伯爵橋本實斐子爵梅小路定行
子爵冷泉爲勇子爵西大路吉光
子爵渡邊千冬子爵白川資長
子爵〓岡長言子爵野村益三
子爵今城定政子爵西四辻公堯
子爵加藤泰通子爵吉田〓風
子爵立見豐丸子爵立花種忠
子爵秋月種英子爵片桐貞央
子爵大河內輝耕子爵岡部長景
子爵井伊直方子爵三室戶敬光
子爵松平保男子爵蒔田廣城
子爵秋元春朝子爵水無瀨忠政
子爵松平忠壽子爵富小路隆直
子爵裏松友光子爵森俊成
子爵織田信恒子爵岩城隆德
子爵大岡忠綱子爵高橋是賢
子爵土御門晴善子爵米倉昌達
子爵梅園篤彥子爵安藤信昭
子爵舟橋〓賢子爵松平康春
子爵綾小路護子爵高木正得
子爵三島通陽子爵近衞秀麿
大島健嘉納治五郞
眞野文二石塚英藏
織田萬男爵紀俊秀
若林賚藏川崎卓吉
男爵千田嘉平塚本〓治
男爵菊池武夫森賢吾
男爵井田磐楠男爵今園國貞
男爵金子有道男爵藤村義朗
男爵大藏公望男爵北島貴孝
男爵沖貞男男爵足立豐
男爵伊江朝助男爵關義壽
男爵岩村一六阪本釤之助
倉知鐵吉山岡萬之助
松本烝治宮田光雄
安立綱之田所美治
永田秀次郞丸山鶴吉
加藤政之助服部金太郞
稻畑勝太郞阿部房次郞
森平兵衛石川三郞
林平四郞下出民義
西本健次郞名取忠愛
久保市三郞上松泰造
金子元三郞藤原銀次郞
仲田傳之訟津村重舍
佐藤亀八郞鈴木幸作
松本勝太郞濱口儀兵衞
佐々木八十八三木與吉郞
小林嘉平治風間八左衞門
絲原武太郞大谷尊由
松岡潤吉瀨川彌右衞門
貴族院議長公爵徳川家達殿
皇大神宮奉齋ニ關スル建議
我カ國民的精神ト建國ノ歷史トニ鑑ミ皇
祖皇大神宮奉齋ノ御事ニ至リテハ更ニ施
設ノ完璧ヲ期スルノ要アルヲ認ム政府ハ
宜シク之カ方策ヲ調査〓究シ速ニ其ノ達
成ヲ期セラレムコトヲ望ム
右建議ス
〔公爵一條實孝君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=23
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024・一條實孝
○公爵一條實孝君 只今上程セラレマシタ
ル皇祖皇大神宮奉齋ニ關スル建議案ニ
付キマシテハ建議ノ本文ニ依リ事柄ハ明
白デアリマスルガ、發議者ノ一人ト致シマ
シテ、簡單ニ一言申述ベタイト存ジマス、
今ヤ我國ハ文字通リノ非常時デアリマス、
內ハ思想ノ動搖、財政經濟ノ行詰リ、外ハ
國際的孤立、內外共ニ此大難局ニ直面シテ
如何ニ處スベキヤ、邦家ノ前途眞ニ憂慮ニ
堪ヘザル所デアリマス、此時ニ當リマシ
テ、我と大和民族ノ傳統的意識ニ一大衝動
ヲ與ヘ、我ミヲシテ勇氣百倍前途ノ大光明
ヲ認メシムルモノハ畏クモ皇祖皇大
神ヲ信仰シ奉ル所ノ一大靈感ノ閃キデアリ
マく、弘安ノ昔、畏クモ龜山上皇御身ヲ以
テ、國難ニ代ハラセ給ハムト御祈願アラ
セ給フタ大御心、悲壯ナル御覺悟ヲ偲ビ奉
リ恐レナガラ今日是ト同ジ心、同ジ覺悟
ヲ以テ謹ミテ皇祖皇大神ノ御加護ヲ祈
願シ奉ル一大信念ノ下ニ、國ヲ擧ゲテ忠實
勤勉能ク艱難ニ耐ヘ、缺乏ヲ淩ギ、一五-
家ヲ君國ノ爲ニ捧ゲムトスル神人共ニ通ズ
ル至誠ノ動キガ、全國ノ津ミ浦ミマデ漲リ
渡ルコトヲ得マシタナラバ、玆ニ始メテ新
興大日本ノ基礎ヲ大磐石ノ如ク、番ニ克ク
現下ノ難局ヲ打開シ得ルノミナラズ、益〓皇
室ノ御繁榮、國光ノ宣揚ヲ拜シ奉ルコトハ
疑フノ餘地ナイノデアリマス、卽チ皇祖
皇大神靈ノ鎭座坐シマス伊勢ノ靈地、此
靈地ヲ中心トシテ、一層奉齋ノ諸施設ヲ完
成シ、以テ益〓忠君愛國ノ國民精神ヲ鼓舞作
興シ、進ンデ世界週照ノ大皇道ヲ中外ニ闡
明スルノ方途ニ出ヅルコトガ、實ニ時局對
策ノ根本義ナリト確信イタスノデアリマス
〔議長公爵徳川家達君議長席ニ復ス〕
私共ハ貴族院本來ノ使命ヲ深ク考慮イタシ
マシテ玆ニ本案ヲ提出イタシタノデアリ
やく、何卒滿場各位ノ御贊成アラムコトヲ
切望イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=24
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025・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 是ニハ發言ノ通
告ガゴザイマスカラ許シマス、三室戶子爵
〔子爵三室戶敬光君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=25
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026・三室戸敬光
○子爵三室戸敬光君 只今上程サレマシタ
ル建議案ニ付キマシテ、私ハ衷心ヨリ贊成ノ
意ヲ表スル者デゴザイマス、ソレニ付キマ
シテ聊カ所感ヲ陳述スルコトノ御許シヲ得
タイノデゴザイマス、謹デ按ジマスルニ、神
宮ト皇居トハ上古ニ於キマシテハ同殿同床
其所ヲ一ニ遊バサレマシタガ、崇神ノ御代
ニ至リマシテ御敬神ノ大御心ヨリ、其御別
チヲ生ジタコトハ歴史ノ上ニ於キマシテ、
又現實共私ガ承リ及ンデ居ル次第デゴザリ
マヽ、卽チ斯樣ナ次第デゴザリマスルカ
ラ、神宮ト皇居トハ二ニシテ一、又一ニシ
テ二ト申上ゲテモ差支ナカラウト考ヘマ
ス、斯樣ナ次第デアリマスルガ故ニ、神宮
ノ在ル所卽チ帝都、皇居ノ在ル所卽チ神都
ト致シマシテ、私共國民ハ國ヲ擧ゲ、民ヲ
擧リテ敬虔ノ誠ヲ致シ、其御稜威ト御尊嚴
ニ欽仰シ奉ル次第デゴザイマス、故ニ私共
ハ神都ニ參拜イタシマシテ、其刹那ニ於キ
マシテ幾度參拜イタシマシテモ、其尊サ、有
難サ、自ラ頭ハ下リ淚サヘ滲ミ出ルヤウ
ナ次第デゴザリマス、只今一條公爵ノ
理由ノ御說明ニモゴザリマシタ如ク、內
ハ思想ノ動搖、財政經濟ノ行詰リ、外ハ
國際的孤立ニ陷ラムトスルヤウナ大國難
ノ到來イタシテ居ル時機デゴザイマス、併
ナガラ我國民ハ傳統的ニ、斯カル國難ノ到
來イタシマス度每ニ、有難イコトニハ之ニ
打克ツ所ノ傳統的精神ヲ有ッテ居リマス、
此時ニ際シマシテ私共ハ神宮ヲ拜シマシテ、
萬感交ミ至ル間ニ於キマシテ、私ハ幾多ノ
御施設ニ對シマシテモ尙ホ斯クモアラマホシ、
斯クモアリタシト云フヤウナ感ガ起ルノデ
ゴザイマス、今私ガ本建議案ニ對シマシテ
贊成ヲ表シマスル意ヲ强ク致シマス爲ニ
私ノ感ジマシタ事柄數個ヲ簡單ニ申上ゲマ
ス、神宮ト申上ゲマスルガ、此御尊稱ニ付
キマシテハ我ミノ第二世、第三世ニ〓ヘマ
ス所ノ〓科書等ヲ閱覽イタシマスナラバ、
或ハ伊勢ノ神宮、或ハ伊勢ノ大神宮、或ハ
伊勢ノ皇大神宮、又或モノニハ伊勢ノ大廟
トサヘ書カレテ居リマシテ、〓科書ノ中ニ
於キマシテモ統一ヲ缺イテ居ルノデゴザイ
マス、私共ハ俗ニ御伊勢樣ト申シマシテ能
ク了解イタシマスガ、正シク申上ゲルコト
ニ付キマシテ、少クモ國民的〓科書ノ中ニ
於キマシテ、是等ハ速ニ統一ヲ願ヒタイノ
デゴザイマス、此事ハ同僚ノ毛利子爵ガ强
キ信念ヲ有ッテ居ラレマシテ、私共ニモ御話
ガアッタノデゴザイマス、今日時間ガアレバ
同君モ起タレルノデアリマスガ、今日ガ今
日デアリマスルカラ、斯樣ナコトデアッタ
ト申スコトヲ私カラ御紹介申上ゲマス、次
ハ伊勢內外宮ニ御直屬ノ別宮デゴザイマス、
別宮ハ其數ガ十四ゴザイマシテ、何レモ尊
キ神ミデゴザイマス、帝室ノ御扱モ此別宮
ニ付キマシテハ臨時ノ御祭、恒例ノ御祭、
奉幣、御造營ノコトハ本宮ニ準ジテ遊バサ
レル大切ナ御宮デゴザイマス、併シ此御宮
ニ對スル國民ノ意識ガ甚ダ不十分デアリマ
ス又申上ゲテハ失禮デアリマスルガ、國
家ガ之ニ對シテ我ミニ認識ヲ深メル爲ノ御
仕事モ必シモ徹底イタシテ居ラヌト思フノ
デアリマス、其三ツ四ツノ別宮ハ畏クモ
天照大神ノ荒魂ヲ御祀リ申上ゲテ居ルヤウ
ナ次第デアリマス、攝津ノ西宮附近ニアル
同ジ天照大神ノ荒魂ヲ御祀リ申上ゲテ居ル
廣田神社ハ官幣大社デアラセラレルノデア
リマス、若シ別宮ニアラズシテ獨立ノ御宮
デアッタナラバ、必ズ左樣ニ御定メニナルカ
ト恐察イタス次第デゴザイマス、斯樣ナ次
第デアリマスカラ此別宮ト云フモノニ對ス
ル國民的意識ガモウ少シハッキリナルヤウ
二、何等カノ方法ガ講ゼラレルナラバ誠ニ
結構ナコトト考ヘル次第デゴザイマス、次
ハ神宮ノ御境域ノ擴張デゴザイマス、御境
域ハ後ニ大キイ山ヲ負フテ居リマスカラ大
變廣イヤウデハゴザイマスルガ、實際平地ハ
極ク少イノデゴザイマス、參道モ一本デゴ
ザイマス、是等ハ何トカ致シマシテ今少シ方法
ガアラウカト考ヘラレルノデゴザイマス、又五
十鈴川ノ流ハ昔ヨリ天壤無窮ノ國體ノ永遠
ナルニ譬ヘマシテ流レ盡キセナイ川ト我
我ハ申シテ居ルノデゴザイマス、其川ハ〓
キコトハ〓クゴザイマスルガ、尙ホ一層〓
メル必要ガアラウト考ヘマス、又神宮ノ御
直屬ノ御山、卽チ神路山共他ニ至リマシテ
ハ往昔ハ此山カラ產出イタシマスル所ノ
材ヲ以チマシテ、御造營ノ材ニ供セラレタコ
トヲ承ァテ居リマス、今日ハ木曾ノ御料林ヨ
リ之ガ御用ニ充テラレルヤウデアリマスガ、
其近クニソレダケノ山ガアルノデアリマス
ガ故ニ、此山カラモ斯樣ナ材ガ搬出サレ得
ルヤウナ方法ヲ、今日ニ講ジテ置クト云フ
コトモ必要デアラウカニ考ヘルノデゴザイ
マく、又神宮ハ御承知ノ通リ今日ト申シマ
シテモ、所謂衞士ト云フモノガ御守リ申上
ゲテ居ルノデアリマスガ、時勢ノ進運、社
會ノ狀勢カラ考ヘマシテ、御威嚴ヲ彌增ス
上カラ考ヘマシテモ、唯衞士ノ御守リ申上
ゲテ居ルニ止メズ、軍隊ガ御守リ申上ゲル
ト云フヤウナコトモ考ヘ得ルノデゴザイ
マス、又最初ニ私ガ申上ゲマシタル如ク神
宮ノ在ス所、卽チ神都デアリマスルカラ、
此御膝元デアル所ノ宇治山田市ト云フモノ
ヲ、今少シ神都タル都ノヤウニ計畫スル必
要ガアラウト思ヒマス、其方法等ニ付キマ
シテハ今直ニ斯ク〓〓ト決スル譯ニハ參リ
マスマイガ、考ヘテ見マスレバ今申上ゲタ
個々ノ事柄ハ、何レモ重要ナルコトト存ズ
ルノデアリマス、玆ニ於キマシテ是等ニ對
シテ如何ニ處置ヲ致シテ宜シイモノデゴザ
イマスルカ、是ハ最モ大切ナモノデアリマ
スルカラ、一人二人ノ意見ニ依ッテ國家千
年ノ策ヲ定メルト云フ譯ニハ參リマセヌカ
ラ、ドウゾ政府ニ於カレマシテ取急ガレ
テ、斯カル事柄、尙ホ是ヨリ生ズル所ノ幾
多ノ事柄ニ付キマシテ、愼重〓究ヲサレル
所ノ調査機關樣ノモノヲ御設ケニナリマシ
テ、其結果ニ基イテ直ニ其實現ヲ見ルヤウ
ニ致サレタイノデゴザイマス、先日當議場
ニ於キマシテ先輩タル阪谷男爵ガ、來ルベキ
昭和十五年、卽チ皇紀二千六百年ヲ記念ス
ル爲ニ非常ニ意義アル御發言ガゴザイマシ
タ私共ハソレ等ノコトト相共ニ關聯イタ
シマシテ、本建議案ノ趣旨ヲ十分政府ニ於
テ之ヲ御了得ニナリマシテ、其設備、其方
法等ヲ此機會ニ於テ講ゼラレムコトヲ切望
シ滿腔ノ熱誠ヲ捧ゲマシテ本建議案ニ贊
成ヲ申上ゲル次第デゴザイマス、尙ホ此機
會ニ於キマシテ總理大臣ヨリ此件ニ關シテ
御所見ヲ伺フコトガ出來マシタナラバ、
段ト光榮ニ考ヘル次第デゴザイマス
〔國務大臣子爵齋藤實君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=26
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027・齋藤實
○國務大臣(子爵齋藤實君) 本案ニ付キマ
シテハ政府ニ於キマシテモ篤ト〓究ヲ致
シマシテ御期待ニ成ルベク副フヤウニ致
シタイト云フ考ヲ持っテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=27
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028・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 他ニ發言モナイ
ト認メマスカラ本建議案ニ付テ採決ヲ致シ
マス、建議案ニ同意ノ諸君ノ起立ヲ請ヒマ
ス
〔總員起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=28
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029・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 全會一致ト認メ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=29
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030・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 是ヨリ日程第一
ニ戾リマス、請願委員長報告
〔子爵〓岡長言君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=30
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031・清岡長言
○子爵濟岡長言君 請願委員會ノ第三囘報
〓、卽チ昭和八年三月十四日ヨリ三月二十
四日マデノ御報告ヲ致シマス、請願委員會
ハ三月十七日、三月二十日ノ二囘開會イタ
シマシタ、請願委員分科會ハ、第一分科會
ハ三月十三日ノ一囘、第二分科會ハ三月十
四日ノ一囘、第三分科會ハ三月十三日ノ一
囘、第四分科會ハ三月十四日、三月十八日
ノ二囘、合計五囘開會イタシマシタ、請願
文書表報告ハ、第八囘ヲ三月十五日ニ、第
九囘ヲ三月二十二日ノ二囘請願委員會特
別報告ハ第五號ヲ三月十七日ニ、第六號
ヲ三月二十日ノ二囘イタシマシタ、請願書
受領件數ハ二十三件、之ニ連署イタシテ居
リマスル人名數ハ八千百九十四名デゴザイ
マヽ、次ニ審査ノ經過及結果ヲ御報〓イタ
シマス、第二囘委員長報告ノ際文書表ニ未
揭載ノ件數二十四件、第二囘委員長報〓後
受領イタシタル件數二十三件、之ヲ合計イ
タシマスルト四十七件デゴザリマス、此
外ニ第二囘委員長報告ノ際文書表ニ揭載
シタルモノノ中、審査未了ニ屬スルモノ
百五十六件、之ヲ合計イタシマスルト總
計二百三件ト相成リマス、而シテ之ガ審
査ノ結果、院議ニ付スベシト議決イタシタ
ルモノ、卽チ採擇イタシタルモノ五十九件、
院議ニ付スルヲ要セズト議決イタシタルモ
ノ卽チ採擇セズト決シタルモノ九件、而
シテ是ガ請願ハ、第二百二號、第二百十六
號第二百六十五號、第二百九十三號、第
二百九十五號、第二百九十七號、第二百九
十八號、第二百九十九號、第三百五號ノ九
件デゴザリマス、尙ホ審査未了ニ屬スルモ
ノ百三十五件デゴザイマス、以上ハ昭和八
年三月二十四日午後四時締切迄ノ御報告デ
ゴザイマス、次ニ請願審査ノ總御報告ヲ致
シマス、請願委員會開會ハ七囘、請願委員
分科會ハ、第一分科會ハ八囘、第二分科
會第三分科會、第四分科會ハ各六囘ヅツ
開キマシテ、合計二十六囘デゴザイマス、
請願文書表報〓ハ九囘、請願委員會特別報
〓ハ六囘、請願書受領件數三百五十四件、
之ニ連署イタシテ居リマスル人名數ハ四十
六萬九千三百六十七名デゴザリマス請願
文書表ニ揭載イタシタル件數ハ三百五十四
件、是ガ審査ノ結果、院議ニ付スベシト議
決イタシタルモノ百九十四件、院議ニ付ス
ルヲ要セズト議決イタシタルモノ二十五
件、審査未了ノモノ百三十五件デゴザリマ
ス以上ハ昭和八年三月二十四日午後四時
締切迄ノ御報告デゴザリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=31
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032・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 日程第二、昭和
八年度一般會計歲出ノ財源ニ充ツル爲公債
追加發行ニ關スル法律案、政府提出、衆議
院送付、堀切大藏政務次官
昭和八年度一般會計歲出ノ財源ニ充
ツル爲公債追加發行ニ關スル法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議
院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和八年三月二十四日
衆議院議長秋田〓
貴族院議長公爵徳川家達殿
昭和八年度一般會計歲出ノ財源ニ充
ツル爲公債追加發行ニ關スル法律案
政府ハ昭和八年度一般會計歲出ノ財源ニ
充ツル爲他ノ法律ニ依リ起債シ得ル金額
ノ外六百三十萬圓ヲ限リ公債ヲ發行シ又
ハ借入金ヲ爲スコトヲ得
前項ノ規定ニ依ル公債ノ發行價格差減額
ヲ補塡スル爲必要アル場合ニ於テハ前項
ノ制限以外ニ公債ヲ發行シ又ハ借入金ヲ
爲スコトヲ得
附則
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
〔政府委員堀切善兵衞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=32
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033・堀切善兵衞
○政府委員(堀切善兵衛君) 只今議題トナ
リマシタ昭和八年度一般會計歲出ノ財源ニ
充ツル爲公債追加發行ニ關スル法律案提出
ノ理由ヲ說明イタシマス、昭和八年度歲入
歲出總豫算及同追加第一號ニ伴フ一般會計
歲入不足ノ補塡ニ關シマシテハ、旣ニ今期
帝國議會ニ於テ之ガ爲公債ヲ發行スルコト
ヲ得ル法律ノ御協賛ヲ經タノデアリマスル
ガ、別途提出イタシマシタ同年度歲入歳出
總豫算追加第二號ニ計上セル經費ノ財源ニ
付キマシテモ亦、今日ノ場合之ヲ公債ニ依
ルノ外アリマセヌノデ、本法律案ヲ提出シ
タ次第デアリマス、尙ホ本法律案ハ前述ノ
昭和八年度歲入歲出總豫算追加第一號ニ伴
フ昭和八年法律第三號中改正法律案ノ公布
セラルル以前ニ公布イタス必要ガアリマシ
タ爲、右ノ法律ヲ改正スルノ形式ニ依ラズ
シテ別ノ法律案ト致シタ次第デアリマス
何卒御審議ノ上御協贊アラムコトヲ希望イ
タシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=33
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034・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 此法律案ニ付テ
ハ政府ヨリ議院法第二十七條但書及第二十
八條但書ニ依リ緊急議決ノ要求ニ接シマシ
タ、就キマシテハ先ヅ三讀會ノ順序ヲ省略
スルノ件ヲ御諮リ致シタイト存ジマス讀
會ノ順序ヲ省略スルコトニ同意ノ諸君ノ起
立ヲ請ヒマス
〔起立者多數〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=34
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035・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 三分ノ二以上ト
認メマス、次ニ委員ノ審査ハ政府ノ要求ニ
依リ之ヲ行ハザルコトニ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=35
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036・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 本案全部ヲ問題
ニ供シマス、全部原案ニ同意ノ諸君ノ起立
ヲ請ヒマス
〔起立者多數〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=36
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037・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 過半數ト認メマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=37
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038・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 日程第三、日本
製鐵株式會社法案、第四、製鐵業奬勵法中
改正法律案、政府提出、衆議院送付、第
讀會ノ續、委員長報告、井上子爵
日本製鐵株式會社法案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報告候也
昭和八年三月二十四日
委員長子爵井上匡四郞
貴族院議長公爵德川家達殿
製鐵業奬勵法中改正法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報〓候也
昭和八年三月二十四日
委員長子爵井上匡四郞
貴族院議長公爵德川家達殿
〔子爵井上匡四郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=38
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039・井上匡四郎
○子爵井上匡四郞君 只今議團トナリマシ
夕日本製鐵所株式會社法案及製鐵業奬勵法
中改正法律案ノ二案ハ去ル十五日特別委員
ニ付託セラレマシテ、翌十六日直ニ正副委
員長ノ選擧ヲ終リ、其後日曜祭日ヲ除キマ
ス外ニ於キマシテハ時間ノ許シマス範圍
ニ於キマシテ愼重審議ヲ遂ゲタノデアリマ
ス、漸ク昨日ノ午後ニ至リマシテ本案ハ可
決イタスベキモノト多數ヲ以テ決定イタシ
マシタ、只今其委員會ノ中ニ起リマシタ主
要ナル質疑應答ニ付テ御報〓イタシタイト
存ジマス、勿論此質疑應答ハ非常ニ多種多
岐ニ亙ッテ居リマスルカラ、到底玆ニ全部ヲ
綱羅シテ御報告イタスコトハ不可能デアリ
マスルノデ、大體其概要ニ止メルコトヲ御
許シヲ願ヒタイト思ヒマス、此原案ノ趣旨
ハ其當時商工大臣ヨリ此處デ御說明ガアリ
マシタノデアリマスルガ、之ヲ〓約イタシ
マスルト云フト、要スルニ將來我國ニ於テ
安價良質ノ鐵材、鋼材ヲ多量ニ供給スルト
云フコトガ目的デアルノデアリマス、將來
增加スル所ノ又增加セネバナラヌ所ノ需
要ニ付テ不都合ノナイヤウニ、十分ナル供
給ヲ爲シ得ルヤウニ、且又其供給ヲ出來ル
ダケ廉價ニシ得ルヤウニ、又進ンデ只今迄
製鐵業ハ特別ナル國家ノ保護ノ下ニアッタ
ノデアリマスルガ、其保護ヲ必要トセザル
ヤウニ、進ンデハ其製品ヲ將來ハ海外ニ之
ヲ輸出シ得ルヤウナ程度ニ迄發達セシメム
ト企圖スルコトガ此案ノ趣旨ナノデアリマ
ス、現在日本ノ製鐵業界ガ如何ナル狀態ニ
アリマスルカト申シマスルト、大戰後一時
多量ノ鐵材ノ需要ニ依リマシテ、民間ノ製
鐵所ガ勃興イタシタノデアリマス、現在ノ
官業ト民業ノ分野ハ大體ドウ云フ有樣ニア
ルカト申シマスルト云フト、銑鐵製造業ニ
於キマシテハ官業卽チ八幡製鐵所ガ、民業
ト比較イタシマシテ著シク優勢ナ位置ヲ占
メテ「居ルノデアリマス、之ニ反シマシテ鋼
材ノ製造業ニ於キマシテハ、民間ノ製造額
ノ方ガ官業ノ八幡製鐵所ノ製造量ヨリモ
稍、多量ヲ占メテ居ルト云フヤウナ狀態デ、
官民ノ分野ガ行ハレテ居ルノデアリマス。
全體ト致シマシテ本邦ノ需要額ガ少イ場合
ニ於キマシテハ、國內ノ設備ヲ以テ大體之
ヲ供給スルコトガ出來ルノデアリマスル
ガ、例ヘバ昭和四年ノ如キ好景氣時代ニ於
キマシテ、鐵材ノ需要ガ非常ニ多額ニ上ボ
リマシタ場合ニ於キマシテハ、尙ホ五十萬
瓲以上ノ鋼材ノ輸入ヲ必要ト致シマシ
テ、金額ニ於キマシテ一億五千萬圓以上
ノ輸入ヲ必要トスルト云フヤウナ狀態ニ
アルノデアリマス、又營業ノ成績ノ點カ
ラ考ヘマスト云フト、此數字ガ示シマス
ル如ク製銑業卽チ銑鐵ヲ製造イタシマスル
民間ノ業務ハ甚ダ振ハナイノデアリマス
成績不良デアルノニ反シマシテ、鋼材ヲ製
造イタシマスル所ノ民間業者ハ必シモ不成
績デナイノデ、相當ノ成績ヲ擧ゲテ居ルモ
ノガ相當アルノデアリマス、斯ウ云フ狀態
ノ下ニ只今述ベマシタヤウナ目的ニ到達イ
タシマス爲ニハ民間ノ製鐵所ト云フモノ
ハ戰後ノ好景氣ニ乘ジマウテ其互ヒノ間
ハ勿論官業ノ八幡製鐵所トノ間ニモ、如何
ナル統制モナク唯發達シタル民業デアリマ
スル爲ニ、今日ニ於キマシテハ種々ノ設備
ガ重複イタシマシテ、此結制ガ完全ニ行ク
コトガ甚ダ困難ナル狀態ニアルノデアリマ
〓、將來ノ完全ナル製鐵業ノ發達ヲ企圖イ
タシマス爲ニハ、此無秩序ニ發達イタシマ
シタ所ノ此民間ノ製鐵所ヲ或統制ノ下ニ
置クト云フコトノ必要ヲ感ジマシテ、政府
ハ今囘此提案ヲ爲シタノデアリマス、卽チ
民間ノ製鐵業ト政府ノ製鐵所ト合同イタシ
マシテ一ノ半官半民ノ大製鐵會社ヲ作ラ
ウト云フノガ、第一ノ日本製鐵株式會社法
案デアルノデアリマス、從テ質問ハ第一ニ
此合同問題ニ付テノ質問ガ多々アッタノデ
アリマス、此中ニモ種々ノ方面カラ合同ト
云フコトニ付テノ論議的ノ質問ガ行ハレテ
居リマス、先ヅ八幡製鐵所ノ官業ノ立場カ
ラ之ヲ民營ニ移スノ必要ヲ感ズルノデアル
カト云フヤウナ質問デアリマス、八幡ノ官
業製鐵所ト致シマシテハ創立以來三十數年
間何ノ支障モナク順境ナル發達ヲ今日マ
デハ續ケテ參クテ、今日ノ狀態ハ頗ル好良ナ
ル狀態ヲ呈シテ居ルノデアリマス、從テ官
業ノ立場カラ致シマシテ、何モ今日之ヲ民
業ニ移ス必要ヲ感ジテ居ルノデハナイ、併
ナガラ將來ノ發展ヲ企圖イタシマス爲ニハ
多額ノ資金ヲ要スルノデアリマス、現ニ此
合同案ガ成立イタシマシタ曉ニ於キマシテ
ハ
〔副議長公爵近衛文麿君議長席ニ著ク〕
直ニココ數年ノ間ニ一億圓バカリノ投資ヲ
必要トスルコトガ目睫ノ間ニ迫ヲテ居ルト
云フヤウナ狀態デアリマシテ、之ヲ特別會
計ニ於テ求ムルコトハ非常ニ困難デアル、
廣キ一般市場ニ於テ豐饒ナル資金ノ下ニ將
來ノ擴張ヲ計畫スルコトガ至當デアル、又
官民對立ノ狀態ニ於キマシテハ物價ノ變
動ニ依フテ價格ヲ一定シテ市場ニ出スト云
フコトガ、非常ニ困難ナル狀態ニ餘儀ナクサ
レルノデアリマス、稍詳シク申シマスレ
バ需要ガ少ク供給過多ナル場合、卽チ不
景氣ノ場合ニ於キマシテハ、民間業者ハ不
必要ニ物ヲ安ク賣リ始メテ參ルノデアリマ
ス、從テ八幡製鐵所モ已ムヲ得ズ不必要以
上ニ之ヲ安ク賣ルコトヲ餘儀ナクサレル、
反對ニ需要過多ニシテ供給ノ少ナイ場合、
卽チ物ノ高イ場合ニ於キマシテハ、民間業
者ハ必要以上ニ物ヲ高ク賣リ始メルノデア
リマス、官業ハ之ヲソレ程高ク賣ル必要ハ
認メナイノデアリマスルガ、八幡製鐵所ガ
其場合ニ安ク物ヲ賣リ始メマスト云フコト
ハ單ニ中間業者ヲ利益スルノミデアッテ、
需要者ニ決シテ安イモノガ其手ニ入ラナイ
ト云フヤウナ狀態ニ在ルノデアリマス、
デアリマスルカラ將來ノ發展ヲ企圖イタシ
マスル爲ニハ八幡製鐵所自身ノ立場カラ
ハ民業ニ移スト云フコトノ必要ヲ感ジナイ
ノデアリマスルガ、發展ノ上カラハ之ヲ民
業ニ移シテ、半官半民ノ會社トシテ統制的
ニ活動シ得ル機能ヲ與ヘルト云フコトガ必
要デアル、又合同ニ關シテ何故民間ノミガ
合同スルコトガ出來ナイノデアルカト云フ
ヤウナ質問モアルノデアリマス、是ハ現在
ニ於テハ、政府ガ民業ヲ保護奬勵シテ居ル
ノデアリマシテ民業トノ間ニハ或協定
ヲ以テ對立シテ居ルノデアリマス、サウデ
アリマスルカラ現在民業ノミガ合同スルト
云フコトニ對スル刺㦸ガ少シモナイノデア
リマス、現在ノ儘ニ之ヲ置キマシタラ民
業ハ決シテ合同スル機運ニハ到底到達スル
コトハナイノデアリマシテ、業界ノ過半數
ヲ制シテ居ル所ノ八幡製鐵所ガ中心ニチッ
テ民業ヲ糾合スルニアラザレバ、合同ノ機
運ハ現在ニ於テハ起ラナイト云フ答辯デア
リマス、又合同ヲ半官半民ノ會社ニスルコ
トナクシテ、寧ロ全部ノ製鐵業ヲ官營ニス
ル方ガ宜イノデハナイカト云フヤウナ合同
論モアッタノデアリマス、是ハ一般ノ產業政
策トシマシテ政府ノ見ル所ハ、斯ノ如キ重
要產業ヲ政府ノ官業トシテ、將來永ク經營
スルト云フコトハ如何ナモノデアラウカ
政府ノ見ル所ニ於テハ斯ノ如キモノハ現
在ノ提案ノ如キ半官半民ノ會社トシテ、將
來ノ發展ヲ企圖スルコトガ適當デアルト云
フ政府ノ見解デアルノデアリマス、又合同
ハ民間會社ノ救濟デハナイカ、是ハ合同ニ
付キマシテハ後程御話イタシマスルガ、民
間會社ハ多大ノ犧牲ヲ拂ハナケレバ合同ノ
目的ハ達シ得ナイノデアリマス、此犠牲ヲ
拂ハセルト云フコトハ決シテ民間會社ヲ救
濟スルノデハナイ、併ナガラ合同ノ結果ト
致シマシテ、此切下ゲテ合同イタシマシタ
民間會社ハ、ソレニ依ッテ將來利益ヲ得ルヤ
ウニナルノデアリマスルカラ、其點カラ考
ヘマスルト救濟ニハナルノデアリマスル
ガ、案ノ目的ハ救濟ヲ目的トシテ出發イタ
シタルモノデハナイト云フ答辯デアリマ
ス、又合同ニ依ッテ製品ノ價格ヲ低下セシム
ルコトガ豫期ノ如ク出來ルノデアルカ是
ハ種々ノ數字ヲ以テ示サレテ居ルノデアリ
マスルガ、統制ノ下ニ大工業ガ行ハレルコ
トニ依ッテ、非常ナル利益ヲ得ルト云フコ
トノ數字的ノ答辯ヲ得テ居リマス、又軍事
的ニ軍事工業トシテ最モ重要ナル製鐵業ガ、
半官半民ト雖モ官ノ手ヲ離レテ、民間ト合
同スルト云フコトニ依フテ、軍事的ニ不都合
ハ起ラナイノデアルカト云フコトニ付キマ
シテハ陸海軍大臣ノ出席ヲ求メマシテ其
答辯ヲ求メタノデアリマス、兩大臣トモ此
將來出來ル所ノ半官半民ノ新會社ニ於テ
ハ、現在ノ八幡製鐵所ト少シモ異ナル所ナ
ク且又廉價ニ鋼材ヲ供給シ軍事ニ對ス
ル〓究其他ハ從來ノ如ク之ヲ繼續シテ、決
シテ軍部ニ對シテ不都合ヲ與ヘヌト云フコ
トノ答辯ヲ得テ居ルカラ之ニ同意ヲシタノ
デアル、又軍部トシテ決シテ半官半民ノ會
社ガ軍部ニ利益ガアルト云フ點カラ同意シ
タノデハナイト云フ御答辯デアルノデアリ
やく、合同ノ成功、不成功ト云フコトハ只
今チヨット述ベマシタ如ク、此民間會社ノ合
同スル其合同價格ニ全ク依ルノデアリマ
ス、成功不成功ハ此一點ニ歸スルコトガ非
常ニ多イノデアリマスルカラ、從テ評價問
題ト云フモノニ付キマシテ非常ニ反復質問
ガ繼續サレテ居ルノデアリマス、先ヅ合同
シタル會社ノ資本ガドノ位デアレバ、合同
會社ハ將來利益ヲ以テ稼業スルコトガ出來
ルカ、他ノ言葉ヲ以テ之ヲ言ヒ現ハシマス
レバ、鋼材一瓲ヲ生產スル設備費ガ幾ラデ
アッタラバ、將來此合同會社ハ有利ニ稼業ス
ルコトガ出來ルノデアルカト云フ根本數字
ノ決定ヲ必要トスルノデアリマス、此數字
ノ出タ細カイコトハ速記錄ニ讓リマシテ、
政府ハ鋼材一瓲ニ對スル設備費ガ百二十圓
ト云フ數字ヲ以テ適當ナリト認メテ居ルノ
デアリマス、ソレデアリマシテ、此百一一十圓
ニ近クナルヤウニ民間會社ノ資本ヲ切下ゲ
テ合同セシムルト云フコトデアルノデアリ
マス、併ナガラ此切下ゲルト云フコトニ付テ
ハ、或物差シヲ用ヒナケレバナラナイノデア
リマス、其物差シヲドウ云フ尺度ヲ用フルカ
ト云フコトニ付キマシテハ、政府ハ此處ニ或
提案ヲ示シテ居ルノデアリマス、是ハ現在
現存シテ居リマス所ノ工場ヲ今新シク送ッタ
ラバ幾ラデ是ガ出來ルカ、之ヲ復成式ノ價値ト
申スノデアリマス、玆ニ之ヲ假リニ「ビー」
ト名ヅケマス、次ハ稼高式ニ依ル價値、現
存ノ傭高カラ六分ノ利子ヲ以テ逆算イタシ
マシタ價値デアルノデアリマス、之ヲ稼高
式價値ト申スノデアリマス、之ヲ假リニ「シ
ー」ト申シマス、合同會社ノ直接ニ影響スル
數字ハ此稼高ニアルノデアリマスカラ政
府ハ此稼高ノ方ノ價値ヲ復成式ノ價値ノ二
倍ト認メマシテ、「シー」ノ稼高ヲ二倍ニシ
マシテ、復成式ノ「ビー」ト加へマシテ、卽
チ「ビー」「プラス」二「シー」ト云フモノヲ三
デ割ック價値ヲ出スノデアリマス、併ナガラ
此價値ハマダ鋼材瓲當リ百二十圓ニ近クナ
ラナイノデアリマスルカラ、モット之ヲ切
下ゲネバナラナイ、此價値ニ又三分ノ二ヲ
掛ケマシテ、稍、百二十圓ニ近イ數字ニ之
ヲ持ッテ來ルト云フ、之ヲ特別委員會デハ商
工大臣ガ方程式ト云フ言葉ヲ以テ言ッテ居
ラレルノデアリマスガ、斯ウ云フ方程式ヲ
以チマシテ、此方程式ノ尺度ヲ以テ各私設
會社ノ設備ヲ評價スルノデアリマス玆
又多クノ質問的〓究、議論モ行ハレテ居ル
ノデアリマス、此尺度ハ是ハ唯暫定的ノモ
ノデアルノデアリマシテ、將來此合同ヲ實
行イタシマスル場合ニ於キマシテハ、評價
審査委員ト云フモノガ出來ルノデアリマス
ルガ、其評價審査委員ニ於テ、此尺度ハ將
來〓究スルモノデアルノデアッテ、是ハ決シ
テ確定的ノモノデハナイト云フ答辯デアル
ノデアリマス、從テ八幡製鐵所ノ出資額モ
現在ニ於テハ、此方式ニ依テ數ヘラレタ所
ノ算出サレタ所ノ價格ガ出テ居ルノデア
リマスガ、其價格ト云フモノハ決シテ確定
的ナモノデハナイノデアリマシテ、將來評
價審査委員會ニ於キマシテ、此公式ノ採用
仕方ニ依リマシテ、其價格ニ變化ヲ及ボス、
卽チ國家ノ財產ガ將來變化ヲ受ケルト云フ
狀態ニアルノデアリマス、今迄ノ或質問者
ハ今迄政府ガ出資ヲ致シマシテ、半官半
民ノ會社ヲ作ッタ場合モ多々アッタノデアル
ガ、其場合ニ政府ノ出資如ガ不確定デアル
場合ガアッタカドウカ、現在迄ノ政府ノ見ル
所デハ斯ウ云フ例ハナイノデアリマス、必
ズ政府ノ出資額ハ幾ラデアルト云フコトガ
初メカラ確定シテ居ッタ、然ルニ今囘ノ場合
ハ將來ニ於テ評價委員ニ於テ、是ハ査定
サレルモノデアルノデアリマシテ、幾ラニ
ナルカ分ラナイノデアル、併ナガラ大體ノ
主義トシマシテ、稼高ガ重モナ勢力ヲ持ツ
ト云フコトヲ見マスレバ政府ノ製鐵所ハ
稼高ガ非常ニ宜イノデアリマスカラ、現在
ノ帳簿面ノ政府ノ財產ヨリ減ルコトハナイ
ト云フ答辯デアルノデアリマス、併ナガラ
確定ノ數字ガ幾ラニナルカト云フコトハ
是ハ將來評價委員會ニ掛ケテ、其結果ヲ商
工大臣ガ認可シテ決定スベキ問題ニナルノ
デアリマス、其仲評價ニ付テハ澤山ノ質問
ガアリマスルガ、大體此程度ニ止メテ置キ
ママ、會社ノ創立ノ徑路ハドウ云フ風ニナ
ルカ、創立ノ徑路ハ創立委員ト云フモノト、
只今申シマシタ評價審査委員ト云フモノガ
出來ルノデアリマス、此創立委員ト云フノ
ハドウ云フ人ヲ以テ任命スルカ、是ハ各省
ノ高等官及財界、商工業界ノ有力ナル人ヲ
以テ創立委員ニ任命スル且ツ是ハ相當多
數ニ上ボル見込デアル、合同スベキ各會社
カラ二三人ノモノヲ此創立委員ニ······イヤ
ソレハ違ヒマシタ、取消シマス、只今申シマ
シタヤウニ各省ノ高等官及財界及商工業界
ノ有力ナル人ヲ以テ創立委員ヲ組織スル、
評價委員ハ各省ノ高等官、學識經驗アル者、
貴衆兩院議員ヲ以テ之ヲ構成スル、大體二
十名以内デアルト云フヤウナ答辯デアッタ
ノデアリマス、會社ノ組織ニ付キマシテハ、
是亦非常ナル熱心ナル質問ガアッタノデア
リマス、現在アリマス所ノ二三ノ半官半民
ノ會社ハ甚ダ寒心スベキ狀態ニアルデハナ
イカ、此製鐵新會社モ將來ハ同ジヤウナ徑路
ヲ踏ムノデハナイカ、適切ニ申シマスレバ
政府ノ更迭每ニ其首腦者ガ更迭スルト云フ
コトニナルノデハナイカ、之ニ對シテ商工
大臣ハ無線電信株式會社ノ形式ヲ採ル、
卽チ其社長ハ任命制度デナクシテ認可制度
ニ依ル、株主總會ニ於テ社長ヲ選擧シ其
選擧サレタ人ヲ商工大臣ガ認可スルノデア
ル、ソレデアルカラ株主ノ意思ガ十分之ニ
反映シテ、決シテ將來ニ又サウ云フ不都合
ハナイ、又重役ヲ二重制度ニスル、假リニ
立法部ト行政部ト申シマシテ、立法部ニ於
テハ大體會社ノ方針ニ付テ立法部ニ於テ
之ヲ決定イタシマシテ行政部卽チ現
業ニ與ルモノハ此方針ニ依ッテ現業
ヲ遂行シテ行ク、兩々相俟テテ間ニ決シテ
間違ノナイヤウニシテ行クコトガ出來ルノ
デアル、此立法部ニハ現在ノ民間ノ會社ノ
重役ヲ二三人宛網羅スルノデアッテ、政府ハ
全體ノ數ノ四分ノ一バカリノ人ヲ此中ニ入
レルノデアル、之ニ對シテモ色ミナ議論ヤ
質問ガ行ハレタノデアリマス、政府ノ出資
額ハ現在ノ所ニ於キマシテハ、先キノ方程
式ニ於テ計算シタ所ニ依リマスト云フト、
大體新會社ノ三分ノ二ノ出資額ニナリマシ
テ、民間ハ三分ノ一ニナルノデアリマス、
其三分ノ二ノ出資ヲ爲スモノガ此立法部ニ
四分ノ一ダケヨリ代表者ヲ出サヌト云フコ
トハ、不都合デハナイカト云フヤウナ質問
モアッタノデアリマス、併ナガラ政府ハ他ニ
監督權ヲ有ッテ居ルノデアルカラ、ソレデ
差支ナイダラウト云フ政府ノ答辯デアリマ
ス、デ此二重組織ニ依ッテ現在或種ノ半官半
民ノ會社ガ陷フテ居ルヤウナ弊ニ陷ルコト
ヲ防止シ得ベシトノ當局ノ言明デアルノデ
アリマス、其他鑛石、石炭ノ供給、副產物、
附帶事業ニ對スル將來ノ施設、八幡職工ノ
給與若クハ能率、將來ノ取扱方ニ對シテノ
質問等ガアルノデアリマスガ、是ハ省略イ
タシマス、次ニ此法案ニ付キマシテ第五條
及第十條ノ關係ニ付キマシテノ質問デアリ
マス
〔議長公爵德川家達君議長席ニ復ス〕
五條ハ政府ガ株式總數ノ二分ノ一ヲ超エル
株ヲ所有スルコトヲ命ジテ居ル條文デアル
ノデアリマス、現在ニ於キマシテハ政府ノ
持株ハ三分ノ二以上ニナルノデアリマスカ
ラ斯ノ如キ問題ハ起ラナイノデアリマスル
ガ、將來段々民間ノ出資額ガ增加イタシマ
シタ場合ニ於キマシテ、又增資ヲ要スル場
合ガ起ッタト假定イタシマス、此場合ニ於キ
マシテ政府ハ現物出資ヲ必要トスル狀態ニ
マデ立至ッテ居ルト假定イタシマスルト、總
會ニ於キマシテ政府ハ株主トシテ增資ニ贊
成シ、商工大臣ハ之ニ認可ヲ與ヘル而シ
テ其豫算ヲ議會ノ協贊ヲ求メテ來ル、此法
案ニ依ッテ政府ハ二分ノ一以上ノ株ヲ持ツ
コトヲ命ゼラレテ居ルノデアリマスカラ、
ソレニ依ッテ議會ノ協贊權ヲ拘束スルコト
ハナイノデアルカドウカ、之ニ對シマシテ
ハ理論的ニハ此五條ハ一定ノ數以上ノ株式
ヲ所有スルコトヲ命ジタモノデアリマシ
テ、之ヲ引受ケテモ、必シモ拂込マナケレ
バナラナイト云フコトニハ取レナイノデア
ル、從テ此五條ニ依ッテ、議會ノ協贊權ヲ拘
束スルト云フヤウナ風ニ取ルコトハ是ハ不
穩當デアルダラウ、從テ其場合豫算ノ支出
ヲ求メラレマシタ場合ニ於キマシテ、議會
ハ之ヲ否決スルコトハ議會ノ自由デアル
否決サレマシタ場合ニ於キマシテハ此五條
ハ成立シナイコトニナルノデアリマシテ、
五條ハ其場合ニ於テハ空文ニ屬スルコトニ
ナルサウ云フ場合ハ有リ得ルガ、政府ハ
サウ云フ行爲ハシナイデアラウ、併ナガラ
理論的ニハサウ云フコトガ有リ得ルノデア
ルト云フ政府ノ答辯デアッタノデアリマス、
討論ニ至リマシテ贊否兩論ガ闘ハサレタノ
デアリマスガ今日ハ通〓ガアリマシテ兩
方ノ御意見ガ此處ニ發表サレルコトト思ヒ
マスカラ、私カラ玆ニ御紹介スルコトハ差
控ヘマス、採決ニ至リマシテ多數ヲ以テ本
案ハ可決スベキモノト決定イタシマシタ、
次デ一委員カラ希望決議ノ申出ガアリマシ
ク、其希望決議ヲ茲ニ讀上ゲマス
一製鐵業合同ニ際シ資產ノ評價ハ極メ
テ重要ナル關係ニアルヲ以テ之カ評價
ヲ公正且合理的ナラシムル爲政府ハ製
鐵事業審査委目會ノ構成及資產評價ノ
決定ニ關シテ愼重ナル考慮ヲ拂ハレム
コトヲ望ム
二、日本製鐵株式會社成立後同社ノ經營
宜キヲ制スルニハ之カ經營ノ衝ニ膺ル
重役其ノ人ヲ得サルヘカラサルハ勿論
適材ヲシテ永ク其ノ地位ニ在ラシメ內
閣ノ更迭アル每ニ其ノ人ヲ替フルカ如
キ弊害ヲ防止スル爲政府ニ於テ深甚ナ
ル考慮ヲ費サレムコトヲ望ム
三、製鐵合同後ニ於テモ會社ハ技術上ノ
試驗〓究ニ付十分ナル用意ヲ拂ヒ且陸
海軍ノ軍需品ニ關スル需要ニ對シ不利
不便ナカラシメムコトヲ望ム
此希望決議ヲ採決イタシマシテ大多數ノ贊
成ヲ得、又商工大臣ハ此希望決議ニ十分副
フヤウニスルト云フコトノ言明ヲ得タノデ
アリマス、次ハ製鐵業奬勵法中改正法律案
デアリマスルガ、是ハ國家ガ製鐵業ヲ保護
イタシマスル爲ニ、所謂銑鋼一貫作業ニ對
シマシテ、其銑鐵ニ對シテ相當ノ補助ヲ與
ヘテ居ッタノデアリマス、此新會社ガ成立イ
タシマシタ場合ニ於キマシテハ此目的ハ
旣ニ到達セラレルノデアリマシテ、國家ノ
保護ヲ必要トセザル程度ニ達シ得ルノデア
リマスルカラ、此保護ノ規定ヲ改正シヤウ
ト云フ案デアリマシテ、是ハ又多數ヲ以テ
可決セラルルコトニナリマシタ、大略右ヲ
以テ報告ヲ終リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=39
-
040・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 書記官ヲシテ報
告ヲ致サセマス
〔小林書記官朗讀〕
本日委員長ヨリ左ノ報〓書ヲ提出セリ
昭和八年度歲入歲出總豫算追加案(第二
號)、昭和八年度各特別會計歲入歲出豫算
追加案(特第二號)、豫算外國庫ノ角擔ト
ナルベキ契約ヲ爲スヲ要スル件(追第二
號可決報〓書発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=40
-
041・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 是ニテ休憩イタ
シマス、午後ハ一時三十分ヨリ開會イタシ
マス
午前十一時四十八分休憩
午後一時五十一分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=41
-
042・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 書記官ヲシテ諸
般ノ報〓ヲ致サセマス
〔角倉書記官朗讀〕
本日兩院協議委員議長ヨリ左ノ報告書ヲ提
出セリ
醫師法中改正法律案兩院協議會成案成立
報告書
本日本院ニ於テ修正議決シタル左ノ政府提
出案ハ卽日之ヲ衆議院ニ囘付セリ
辯護士法改正法律案
本日衆議院ヨリ左ノ議案ヲ提出セリ
產師法案
大正十五年法律第五十二號中改正法律案
住宅組合ニ對シ償還資金給與ニ關スル法
律案
住宅組合法中改正法律案
本日政府ヨリ左ノ答辯書ヲ受領セリ
貴族院議員公爵近衞文麿君外一名提出榊
原農場ニ關スル質問ニ對スル答辯書
本日委員長ヨリ左ノ報告書ヲ提出セリ
少年〓護法案修正報告書
〔左ノ質問主意書及答辯書ハ朗讀ヲ經
サルモ參照ノタメ玆ニ載錄ス〕
奉天榊原農場ニ關スル質問主意書
第五十九囘帝國議會ニ於テ貴衆兩院
ハ該農場主榊原政雄提出ノ請願ヲ採擇
シ右土地ハ囘收スベキモノト議決セラ
レタリ(附屬書類第一號貴族院ノ意見
書、同第二號衆議院ノ意見書參照)政
府ハ此院議ヲ尊重セラルヽモノト思惟
ス猶本件ハ國防上考慮スベキモノト思
考ス是ニ對シ政府ノ取ラレタル處置如
何
二、本件土地ヲ囘收スベキ理由ニツキテ
ハ昭和六年三月陸軍省小磯軍務局長ガ
貴族院ノ請願委員會ニ於テ詳細說明セ
ラレタルトコロナリ政府ハ是ニ對シ今
日モ意見ノ變更ナキヤ
三、榊原政雄ハ本件土地全部ヲ獻ジテ國
難救濟ノ一助エ資セントシ右土地ノ全
利益ノ五割ヲ國防ニ、壹割五分ヲ前〓
朝皇室正統者ニ、參割五分ヲ日滿靑年
〓育費其他尊皇興國運動ニ獻ズル條件
ヲ附シ旣ニ此土地ヲ安田銕之助中佐ニ
贈與シ以テ國家奉仕ノ誠意ヲ明ニセリ
政府ハ本件土地囘收ヲ速成スル意思ナ
キヤ
右議院法第四十八條ニ依リ及質問候也
昭和八年三月十五日
提出者
公爵近衞文麿公爵一條實孝
贊成者
公爵山縣有道侯爵大隈信常
侯爵佐佐木行忠侯爵德川賴貞
侯爵松平康昌伯爵松木宗隆
伯爵柳原義光子爵梅小路定行
子爵冷泉爲勇子爵白川資長
子爵〓岡長言子傳西四辻公堯
子爵秋月種英子爵大河內輝耕
子爵富小路降直子爵裏松友光
子爵秋田重季子爵土御門晴善
子爵松平康春子僻綾小路護
男爵平野〓祥男爵四條降英
男爵菊池武夫男爵沖貞男
男爵稻田昌植男爵加藤成之
男爵山根健男久米田新太郞
仲田傳之舩吉田羊治郞
鈴木幸作
附屬書類第一號
官報號外、昭和六年三月二十七日(六
九二頁所載)
第五十九囘
帝國議會貴族院議事速記錄第四十號
意見書
奉天榊原農場ノ旣得權囘復ニ關スル件
京都市左京區下鴨泉川町平民榊原政
雄呈出
右ノ請願ハ奉天榊原農場四千五百餘萬坪
ハ帝國滿蒙發展ノ總根據地トシテ奉天城
及ヒ滿鐵奉天附屬地ヲ包圍スル無二ノ重
要地點ナルニ曩ニ支那官憲ヨリ若干權益
ト交換スルト詐稱シ全然詐罔手段ニ依リ
不法占據ノ厄ニ遭ヘリ爾來我出先官憲ニ
對シ再三權益保全ノ請願ヲ爲スモ當該官
憲ヨリ支那官憲ニ對シ何等旣得權囘復ノ
手續無キハ甚タ遺憾ナルニ依リ速ニ之カ
適當ノ對策ヲ講セラレタシトノ旨趣ニシ
テ貴族院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキモノ
ト議決致候因テ議院法第六十五條ニ依リ
別册及送付候也
昭和六年三月二十六日
貴族院議長公爵德川家達
内閣總理大臣濱口雄幸殿
附屬書類第二號
官報號外、昭和六年三月三十一日(三十
七頁所載)
●衆議院議事速記錄第三十四號ノ請
願
請願特別報告第三七八號
意見書
請願文書表第一〇五九號
榊原農場既得權囘復ノ請願
京都市左京區下鴨泉川町六番地榊
原政雄呈出(紹介議員森田茂君)
右請願ノ要旨ハ請願人榊原政雄カ租借權
ヲ有スル奉天榊原農場ハ面積四千五百餘
萬坪ニ及ヒ奉天城及滿鐵附屬地ヲ包繞シ
帝國滿蒙發展ノ總根據地トシテ無二ノ重
要地タリ然ルニ曩ニ支那官憲ノ爲ニ空シ
ク不法占據セラレタルヲ以テ當局ノ保護
ヲ申請スルコト再三ナリシカ未タ支那官
憲ニ對スル之カ占有囘復ノ手續ヲ取ラサ
ルハ甚タ潰憾トスルトコロナリ依テ右既
得權囘復ノ爲速ニ適當ノ處置ヲ講セラレ
タシト謂フニアリ
衆議院ハ其ノ趣旨ヲ至當ナリト認メ之ヲ
採擇スヘキモノト議決セリ依テ議院法第
六十五條ニ依リ別册及御送付候也
昭和六年三月二十五日
衆議院議長藤澤幾之輔
內閣總理大臣濱口雄幸殿
昭和八年三月二十五日
內閣總理大臣子爵齋藤實
貴族院議長公爵德川家達殿
貴族院議員公爵近衞文麿君外一名提出榊
原農場ニ關スル質問ニ對シ別紙答辯書差
進候
貴族院議員公爵近衞文麿君外一名
提出榊原農場ニ關スル質問書ニ對
スル答辯書
一榊原農場ト稱セラルル土地ニ關シテハ之
ガ權利ノ取得及保全ノ經緯竝對支關係上
極メテ複雜且不明確ナル事情伏在シ我出
先官憲ニ於テ之ガ囘收ノ途ヲ講ゼムトス
ルモ該土地ノ全部ガ農場主ノ完全ナル既
得權タルノ事實ヲ立證スベキ充分ニシテ
且公正ナル根據ヲ作ル上ニ多大ノ困難ヲ
伴ヒタルモノナリ尤モ該土地中農場主ノ
完全ナル權利タルコト明白ナリシ水田百
餘町ニ付テハ支那側屋次ノ不法侵害ニ對
シ我總領事ニ於テ其都度之ガ排除ニ努メ
以テ其ノ保全ヲ完ウシ得タル次第ナリ
ニ、昭和六年三月陸軍省軍務局長ガ貴族院
請願委員會ニ於テ說明セル所ハ該土地ガ
軍事上著目スベキ地點タルコト竝該土地
ガ依然日本人ノ手ニ保留セラルルコトト
ナラバ化合ナリトノ趣旨ニシテ此點ニ關
シテハ政府ハ今日ニ於テモ意見ノ變更ナ
シ
三、政府ハ固ヨリ故無クシテ邦人ノ正當ナ
ル權益ノ侵害ヲ看過スルモノニ非ズ本件
ニ關シ第五十九回帝國議會ニ於テ貴衆兩
院ノ議決セラレタル所ハ諒トスルモ該土
地ノ囘收問題ハ之ヲ交涉スル上ニ於テ前
記ノ如キ難點アルノミナラズ其後ニ於ケ
ル滿洲ノ政治的變革ニモ鑑ミ更ニ愼重ニ
考究スルノ要アリト思考シ居レリ
右及答辯候也
昭和八年三月二十五日
外務大臣伯爵內田康哉
陸軍大臣荒木貞夫
拓務大臣永井柳太郞発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=42
-
043・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 是ヨリ午後ノ會
議ヲ開キマス
〔靑木周三君發言ノ許可ヲ求ム〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=43
-
044・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 靑木君ハドウ云
フコトデスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=44
-
045・青木周三
○靑木周三君 私ハ只今······午前ノ會議ニ
於キマシテ議題トナリマシタ日本製鐵株式
會社法案ニ付テ、委員長ノ報告中ノ分ラヌ
點ヲ、少シク質問イタシタイト思ッテ居リ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=45
-
046・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 靑木周三君ハ、
先刻ノ特別委員長ノ報告中ニ不明ノ點ガア
ルカラ、委員長ニ對シテ質疑ヲ爲サリタイ
ト云フ、御希望デスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=46
-
047・青木周三
○靑木周三君 左樣デゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=47
-
048・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 宜シウゴザイマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=48
-
049・青木周三
○靑木周三君 極ク簡單デゴザイマスカラ
此席カラ御許シヲ願ヒタイノデアリマス
會期切迫ノ折柄質問ヲ重ヌルコトハ頗ル遠
慮スベキコトダト考へマスルケレドモ、此
議案ニ對スル、委員會ノ議事ハマダ速記ガ
參リマセヌカラ十分ニ知ルコトガ出來マセ
ヌ甚ダ遺憾デゴザイマスルガ、茲ニ一ツ
質問シタイト思ヒマスル、委員長ノ報〓頗
ル簡明デアリマシテ能ク分リマシタコトヲ
感謝イタシマスルガ、其中デ私ガ能ク了解
シ得ナカッタ點ハ、此製鐵株式會社法案ニ於
キマシテ、何等政府ノ出資ノ金額ガ法律ニ
規定シテナイ、其爲ニ將來增資ヲスル場合
ヲ考ヘテ見マスルト云フト、御承知ノ通リ
ニ鐵ノ株式ト云フモノハ······鐵ノ値段ト云
フモノハ非常ニ騰落ガ多イ、從ッテ株式ニ
於キマシテモ相當ニ騰落ガ多イト考ヘラレ
マン、デアリマスカラシテ、或ル場合ニ於
キマシテハ、非常ニ株ノ値段ノ騰貴シタ場
合ニハ、民間ノ株主ハ多クハ增資ヲ希望ス
ル場合ガ多イダラウト思フ、其際ニ若シ政
府ガ矢張リ民間ノ株主ト同一ニ、民間ノ株
式ノ「プレミアム」ノ附クコトヲ援助シタイ
爲ニ、政府ガ之ニ對シテ增資ノ許可ヲ與ヘ
ルサウシテ政府モ株式ノ引受ヲスル、
斯ウ云フ場合ヲ想像イタシテ見マスル
ト、此增資ト云フモノニハ政府ガ許可
ヲ與ヘルカラシテ、直チニ其增資ノ效
力ガ生ズル引受ヲスルカラシテ引受ノ義
務ヲ生ズル、斯ウ云フ場合ニ於キマシ
テ、政府ハ其爲ニ豫算ヲ提出スルト云フ
ト、議會ノ豫算協賛權ニ對シテ何等カノ拘
束ヲ與ヘハシナイカ、斯ウ云フ點ガ一ツ
ト、ソレカラ又將來民間ノ株式ト、政府ノ所
有スル所ノ株式ガ、約同數ニ近ヅイタ時ニ、
政府ガ之ニ對シ引受ヲスルコトヲ拒ンダナ
ラバ、法律ニ規定シテアル所ノ、二分ノ一
ノ株式ヲ所有スルコトヲ要スト書イテアル
其「要ス」ト云フ法律ニ對シテ、實行ヲ·
法律ノ命令ニ從ハナクチヤナラヌ場合
ニハ政府ガ豫算ヲ提出シタ時ニ、議會ノ
同意ガナケレバ之ヲ變更スルコトガ出來ナ
イト云フヤウナ拘束ヲ受ケハシナイカ、斯
ウ云フ質問ガ委員會デアッタト云フコトヲ
承ッタシ、新聞デモ稍、ソレニ似タコトガ
書イテアッタノデアリマスルガ、ソレニ對ス
ル所ノ政府ノ答辯ニ付テ委員長ノ報告セラ
レタ所ハ私少シク明瞭ニ了解スルコトヲ
得ナカッタノデアリマス、或ハサウ云フ場合
ニハソレハ豫算ノ拘束······豫算審議權ヲ
拘束ハシナイガ、或ハ第五條ノ二分ノ一ノ
株式ヲ所有スルト云フ法律ガ空文ニ歸スル
デアラウト云フヤウナ答辯ヲシタトモ書イ
テアルシ、或ハ商工大臣ハ、サウ云フ場合
ハアリ得ルカモ知ラナイケレドモガ稀有ナ
場合デアルカラシテ、此程度ニ於テ滿足ス
ルト、斯ウ云ッタヤウナ答辯ヲセラレタト
云フヤウナコトモ新聞ニ見エマスル、法律
ヲ制定スル時ニハ總テノ點ヲ考慮シテ萬
遺算ナキヲ期スベキデアル、殊ニ近來ノ政
治上ノ爭ノ場合ニ於キマシテハ屢、內閣
ノ當路者ガ政策ヲ誤ルコトガアリ得ルコト
デアリマス、斯ウ云フ點ニ付テハ法律ヲ
以テ十分ニ嚴格ニソレヲ防イデ置クノガ必
要デアラウト思フ、然ルニ此程度ニ於テ滿
足スルト云フヤウナ御答辯ガアッタヤウニ
新聞デ見マスルシ、委員ノ或ル人カラモ承
リマスルノデ、若シサウ云フヤウナコトデ
アッタノデアルカト云フコトヲ伺ヒタイノ
デアリマスルガ、是ハ委員長ニ御答辯ヲ煩
ハスヨリハ政府ノ當局者カラシテ其點ヲ
明カニセラレムコトヲ希望イタシマス
〔國務大臣男爵中島久萬吉君演壇ニ登
ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=49
-
050・中島久萬吉
○國務大臣(男爵中島久萬吉君) 只今靑木
君カラ委員會ニ於ケルコトニ關シマシテ
御尋ガゴザイマシタ、此點ハ昨日委員會ニ
於テ多少論議的ナ質疑應答ガゴザイマシ
タ私ガソレニ對シテ御答申上ゲマシタル
趣旨ハ成程法律ノ上カラハ今御尋ニ相成
リマシタヤウナ疑義ノ存スル餘地ノアルヤ
ニモ見エマスルケレドモ、此主務大臣デア
リマスル商工大臣ハ同ジク此法案ニ於ケル
財政關係事項ノ主務大臣デアリマスル大藏
大臣トノ交涉及ビ其同意ナクシテ財政關係
事項ニ對スル認可ヲ與フルガ如キコトハ
事實上想像スルコトガ出來マセヌ所デゴザ
イマスルカラ、私ガ御答ヘ申上ゲマシタ趣
旨ハ右考ヘマスル所ニ依リマシテ、本案
ノ規定ヲ以テ實際上差支ナイト認メマ
スル斯ウ御答ヘ申上ゲマシタノデゴザイ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=50
-
051・上山滿之進
○上山滿之進君 只今ノ御答辯ニ關聯イタ
シマシテ重ネテ御尋ヲ致シタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=51
-
052・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 宜シウゴザイマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=52
-
053・上山滿之進
○上山滿之進君 此席ヨリ御許シ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=53
-
054・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 大キナ御聲デ願
ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=54
-
055・上山滿之進
○上山滿之進君 商工大臣ハ、昨日ハ成程
質問者ノ言フヤウナ疑義モ生ズル虞レガア
ルケレドモ、事實上サウ云フコトハナイカ
ラ宜シイ、斯ウ答ヘタト云フ御話デアリマ
シタ私モ委員ノ一人デゴザイマシテ親シ
ク質問應答ヲ聽イテ居リマシタ、商工省ノ
御答ハ頗ル明瞭ヲ缺イテ居リマス、ソレカ
ラ法制局長官ガ出席セラレマシテ、法制局
長官ノ答辯ハ極メテ明カデアル、サウシテ
疑義ガアルトカ無イトカト云フコトニ非ズ
シテ、當然第五條ノ規定ハ空文ニ歸スルコ
トガアル、斯ウ云フコトヲ明言セラレマシ
テ、商工大臣ハ之ニ對シテ矢張リ同意見デ
アルト斯ウ仰シヤッタノデアリマス、ソレデ
商工大臣ハサウ云フ場合ハ稀有デアルカラ、
容易ニ起ラナイカラ是デ宜シイ、斯ウ云フ
コトヲ御答ヘニナリマシタ、是ハ若シサウ
デナイト仰シヤレバ速記錄ヲ以テ伺フヨリ
外ハ途ガアリマセヌガ、多分ソレハ認メル
ト斯ウ仰シヤルノダラウト思フ、只今ノ御
答辯ニ依ッテハ、其點ガハッキリ致シマセヌ
カラ、今一應商工大臣ノ御說明ヲ煩シマス
〔國務大臣男爵中島久萬吉君演壇ニ登
ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=55
-
056・中島久萬吉
○國務大臣(男爵中島久萬吉君) 私ガ昨日
委員會ニ於テ御答ヘ申上ゲマシタ點ハ法
律上ノ見解ニ於テハ法制局長官ノ見解ニ同
意イタシマス、唯只今申上ゲマシタ通リ
ニ、此法案ノ實行ニ伴ヒマシテ主務大臣デ
ゴザイマスル商工大臣ト致シマシテハ此
本案ニ於ケル財政關係事項ノ等シク主務大
臣デアリマス所ノ大藏大臣トノ御協議其御
同意ナクシテ財政關係事項ニ對スル認可
ヲ與フルコトガ出來ヌト思ウテ居リマスニ
依乃、其見解ニ依リマシテ昨日事實上想
像シ能ハザル所デアルカラ、先ヅ本案ノ規
定ハ之ヲ以テ實行上ニ差支ナイモノト認メ
マスル、斯ウ申上ゲタノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=56
-
057・上山滿之進
○上山滿 進君事實上斯ウ云フコトハ起
ラナイカラト仰シヤルノト、稀有ノ場合デ
アルカラ、稀有ノ場合ニハアルケレドモ、
稀有デアルカラ宜シイト云フノトハ違ヒマ
ス、昨日ハ明カニ、稀有ノ場合デアル故ニ
此法案ハ其通リデ宜シイ、斯ウ仰シヤッタノ
デアリマスガ、只今ハ事實上サウ云フ場合
ハ起ラナイト、斯ウ絕對ニ······事實ノ上カ
ラ絕對ニ否認サレルノデアリマス、ソレデ
ハ昨日ノ御答辯ト今日ノ御答辯ト違ヒマス
ガ、ソレデ宜シウゴザイマスカ、明カニシ
テ戴キタイ、昨日ノ御答辯ガ誤デアッタト
云フノデアリマスカ、如何デアリマスカ、
何故ニ昨日ト今日ト御答辯ガ違フノデアリ
マスカ
〔國務大臣男爵中島久萬吉君演壇ニ登
ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=57
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058・中島久萬吉
○國務大臣(男爵中島久萬吉君) 再應御答
ヘ致シマス、昨日私ガ申上ゲタ趣旨ハ稀
有ト云フ字ヲ使ッタト私ハ思ヒマセヌケレ
ドモ、或ハ使ヒマシタト致シマシテモ、私
ノ心持ハ事實上サウ云フコトハ想像スルコ
トガ出來マセヌカラ、本案ノ規定デ事實上
差支ナイト認ムト、斯ウ申ス趣旨デゴザイ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=58
-
059・上山滿之進
○上山滿之進君 誠ニ殘念ナ遺憾ナ御答辯
ヲ伺ヒマシタ、昨日仰セラレタコトヲ今日
ハ御取消シニナルヤウナ御答辯デアル、斯
ウナル上ハ仕方ガアリマセヌカラ速記錄
ヲ以テ重ネテ御答ヲ煩シマス、明カニシテ
戴キタイ、此場合ハアルアルケレドモ是
ハ稀デアルト云フコトヲ仰シヤッタ、稀デモ
何デモ兎ニ角アルト云フコトハ御認メニ
ナッタノデアル、之ヲ今日飜サレルト云フコ
トハ私ハドウシテモ分ラナイ、只今速記
錄ハ手許ニアリマセヌカラ、如何シタラ宜
イカ私ハ分リマセヌガ、兎モ角モ速記錄ヲ
以テ明カニシテ戴カナケレバ、議事ノ進行
ハ出來ナイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=59
-
060・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 是ヨリ通〓順ニ
依リマシテ發言ヲ許シマス、上山君ノ登壇
ヲ望ミマス
〔上山滿之進君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=60
-
061・上山滿之進
○上山滿之進君 私ハ只今上程ニナッテ居
リマス兩法案ニ反對ノ意見ヲ有スル者デゴ
ザイマス、其反對ノ理由ヲ述べマス前ニ
只今御聽キノ通リノ商工大臣トノ質問應答
ニ付テ一言申シテ置キタイ、明カニ商工大
臣ハ昨日特別委員會デ、稀有ノ場合デアル、
增資ノ場合ニ於テ政府ノ持株ガ二分ノ一ニ
缺ケルコトガアルト思フケレドモ、ソレハ
稀有ノ場合デアルト云フコトヲ明カニ申サ
レタノデアリマス、只今ハ稀有トハ申サヌ
ト云フ風ナ御答辯デアリマス、事實上起ラ
ナイ、斯ウ仰シヤッタノデアリマス、併シ事
實上ト云フ問題ニ付テモ意見ハアリスマガ、
是ハ別トシテ、兎モ角モ昨日ノ特別委員會
デ仰セラレタコトヲ今改メラレタヤウニ見
エマス何レ後程速記錄ヲ調べマシテ、更
ニ諸君ノ御判斷ヲ願フ機會ガアルダラウト
思ヒマス、此製鐵合同ノ問題ハ今日ハ合
同ト云フ形デ出テ居リマスケレドモ、本來
製鐵所拂下ト云フ問題ノ形ニ於テ現ハレタ
ノハ旣ニ二十數年以前デアリマス、詰リ
官營ノ製鐵所ガ成績ガ好クナイ時ニハ問題
ニナリマセヌ、成績ガ擧ガッテ來テ段々有望
ナ工業デアラウト云フコトノ見据ヱガ付イ
テカラ製鐵所拂下ト云フ問題ガ起ッテ來タ
ノデアリマス、是ハ先達テ此議場ニ於テ私
ガ質問ノ際述ベタ所デアリマス、所ガ其後
主トシテ歐洲大戰ノ結果鐵ノ景氣ガ非常ニ
好クナリマシタ爲ニ、澤山ニ民間ノ製鐵業
ガ起リマシタ、起ッテ其民間ノ製鐵業ハ一
時ノ景氣ハ兎モ角トシテ、景氣ガ惡クナル
ト甚ダ振ハナクナッテ來タノデアリマス、ソ
コデ何トカシテ貰ヒタイ、何トカ救濟シテ
貰ヒタイト云フコトガ盛ニ起ッタ聲デアリ
マス、ソレデ其救濟ノミガ目的デアルトハ
申シマセヌケレドモ、救濟ヲスルト云フコ
トモ蓋シ一ツノ大キナル目的ニナッテ居ル
ト思フ、其救濟ノ目的ヲ持ッテ居ル合同案
ガ此度出タノデアリマス、政府ハドコ迄モ
救濟デナイト言ハレマスケレドモ、ソレハ
モウ事實ヲ見レバ明カニ救濟ニナルノデア
リマス、民間會社ガ合同ヲスルト犠牲ヲ拂
フカラ救濟ヂヤナイト斯ウ云フコトヲ政府
ハ仰シヤッタノデアリマスケレドモ、犠牲ヲ
拂フト云フノハ多大ナ資本ヲ要シ高イ設
備費ガ掛カッテ、ソレデ今デハマルデ役ニ立
タヌ、價値ノナイ資本ニナッテ居ルノガ澤山
ニアル、ソレヲ切下ゲルコトガ犠牲ヲ拂フ、
斯ウ云フコトニナルノデアラウト思フノデ
アリマス、是ハモウ價値ノナイモノヲ切捨
テルト云フコトハ、何ノ犠牲ニナルノデア
リマセウ、價値ノナイモノヲ切捨テルノハ
當リ前ノ話デアリマスカラ、何等犠牲デナ
イ、痛クモ痒クモナイ、能ク政府ハ此產業
統制ヲシナケレバナラヌ、又產業ノ合理化
ヲシナケレバナラヌト云フコトヲ度〓繰返
サレテ、サウシテ此合同案ノ理由トサルル
ノデアリマスケレドモ、統制トカ合理化ト
カ云フコトハ大體ニ於テ宜イコトデアリマ
スケレドモ、ソレハ理想ナンデアッテ、理想
ト現實ハ必シモ一致スルモノデハナイノデ
アリマス、無論是ハ申上ゲル迄モナク諸君
ノ萬々御承知ノコトデアル、現實ヲ扱フノ
ニハ現實ニ立脚シナケレバナラヌ、理想ヲ
以テ唯現實ヲ斷行スルト云フコトハアルベ
カラザルコトデアルト思フ、大體私ハ製鐵
事業ノ如キハ官營ガ宜シイ、斯ウ云フ論ヲ
持ッテ居ルノデアリマス、重工業ト申シマス
カ、重工業タル製鐵事業ノ如キモノハ、原
則トシテ官營ガ宜シイ、蓋シ私ハ此コトハ
世界ノ大勢デアルト考へル、「ナシヨナリゼ
ーシヨン」ト申シマスカ、サウ云フ風ニ世
界ノ大勢ガ向ヒツヽアルト思ヒマス、ソレ
ニ我國デハ幸ニシテ製鐵事業ノ官營デアル
ノヲソレヲ民業ニ移シテシマフト云フコト
ハ倒行道施ト評セザルヲ得ナイノデアリマ
ス、ソレカラ尙ホ我國ニ於ケル製鐵事業ト
云フモノノ現狀ハドウデアルカト云フコト
ニ顧ミマシテモ、製鐵所官營ヲ繼續スベキ
モノデアルト思フ、現ニ現存シテ居リマス製
鐵事業ノ中デ、官營ノミガ成績ヲ擧ゲテ居ル、
見事ナ成績ヲ擧ゲテ居ルノデアリマス、今
日ハ鐵ノ値段ガ聊カ騰,テ來マシタカラ、或
ル會社ハサウデナイヤウニ見エテ居リマス
ケレドモ、併シ是ハ一時ノ景氣デアラウト
思フ、官營事業ガ早ク設立サレテ、長イ年
月ノ間其當局者ノ努力ニ依ッテ非常ナ發達
ヲ遂ゲ、非常ス有利ニ作業ヲシテ居ル、又
其官營事業八幡製鐵所ガ日本ニ於ケル最
モ大キナ製鐵工場デアリマス、民間ノ會社
ハ今日ノ場合ニ於テハ、一二ノ例外ハアリ
マセウケレドモ、普通ニハ誠ニ經營不振デ、
事業不振デ、經營困難デアルト云フコトハ、
皆サンノ御承知ノ通リデアルト思フ、何故
ニ官營ノ製鐵所ダケガ有利ニ事業ガ行ハレ
テ居ルカト云フコトノ原因ニ付テハ
之ヲ玆ニ申述ベマセヌ兎モ角モ現在ノ
事實ニ於テハサウデアル是デ見テモ
私ハ官營ヲ續ケルノガ営然デアル、斯ウ云
フ風ニ思ヒマス、尙ホ私ヨリ政府ニ質問ヲ
致シマシタ一項ニ、製鐵所獨自ノ立場カラ
之ヲ民營ニ移ス必要ガアルカト云フコトヲ
聽キマシタラ、ソレハ無イト云フ極メテ明
瞭ナ答辯ヲ得マシタ、ソレハ先刻委員長ノ
報〓ノ中ニモゴザイマシタ、唯初メノ頃ニ
政府ガ答辯セラレタ中ニハ、民營ニ移サナ
ケレバ、將來擴張ノ資金ヲ得ルコトガ出來
ナイ、ムヅカシイ、斯ウ云フコトヲ一ツノ
理由トシテ民營論ヲ唱ヘラレタノデアリマ
ス、ケレドモ其點ハ私ガ再三質問ヲ致シマ
シタ結果、詰リ私ノ質問ノ要旨ハ民間ノ
資金ヲ何ニモ集メナイデモ、政府自ラ公債
ヲ發シタラ宜イヂヤアリマセヌカ、所ガ公
債ハ中ミ容易ニ發シラレナイトカ、又今ノ
經濟狀態デハサウ云フコトハ適當デナイト
カ御答辯ガアリマシタケレドモ結局ハ通
信事業特別會計ノ如キモ、事業公債デアル
ニ付キ、矢張リ其擴張ハ公債ヲ以テヤルト、
斯ウ云フコトニナッテ居ルノデアルカラ、何
ニモ通信特別會計ハ宜シイガ、製鐵事業ガイ
ケナイト云フ理窟ハナイト云フコトヲ推詰
メマシタラバ、政府ハ私ノ意見ヲ默認サレ
タト思ヒマス、併シ默認スルトハ仰シヤリ
ハシナイノデアリマスカラ、默認セラレタ
ト思ヒマスガ、兎ニ角ソレニ對シテ、ソレハ
イケナイト云フコトノ、御答辯ハナイノデ
アリマス、色々ナ點ヲ考ヘマシテ、此製鐵
事業ハ矢張リ官營ヲ繼續スルガ宜イト思
フ尙ホ今一ツ、陸海軍ハ今ノ官營製鐵所
ヲ以テ、陸海軍ノ軍器ノ研究及製作ニ、不便
ガアルカト云フコトモ、私ノ問ニ對シテ何等
不便ヲ感ジナイト斯ウ仰シヤッタノデアリ
やく、サウシテ將來民業ニ移ルト色ニ御困
リデハナイカト云フコトヲ伺ヒマシタラ
バ、ソレハ十分ニ監督ヲスル、商工省デモ、
早ク······一口ニ言ヘバ、大丈夫ト云フカラ
ソレデ同意シタノダ、斯ウ云フコトデアリ
マス、是ハ各、人ノ意見ノ分ルル所デアリ
マスケレドモ、私ノ考デハ矢張リ官業デ
ヤッテ居ル方ガ軍器ナドノ〓究製作モ便利
デアル、民業ノ方ガ不便デアル、斯ウ云フ
風ニ感ジマス、若シ本案ガ成立ヲテ、サウシ
テ民間ノ今度合同サレタ製鐵所ニ對シテ、
陸軍海軍ハ、其試驗ヲサセ、又製作ヲサス、
之ニ付テ可ナリ私ハ困難ヲ感ジラレルト思
フノデアリマス、少クトモ會社ト陸海軍ト
ノ間ニ、相應ニ紛糾ヲ······紛雜ヲ私ハ生ズ
ルコトト思フノデアリマス、是モ矢張リ官
營ヲ續ケル方ガ宜イト斯ウ云フ私ノ理由
デアリマス、委員長ノ報告中ニ、政府ノ趣意
ハ安價、値段ガ安クテ、質ガ良クッテサ
ウシテ澤山ニ、サウ云フ安價ニシテ良質ナ
ル鐵ヲ多量ニ生產スルト云フコトガ合同ノ
目的デアル、斯ウ云フ御說明デアリマシタ、
安價ニシテ、良質ニシテ、サウシテ其分量
ガ非常ニ多大ナル鐵ヲ出スト云フコトニ
誰モ不贊成ヲ言フ者ハナイノデアリマス、
是ハ此理由ハ何モ官營ヲ廢メテ民業ニ移サ
ナケレバ安價ニナラヌ、良質ニナラヌ、良
質ノモノガ得ラレナイ、多量ニ出來ナイト
云フモノデハナイノデ、官業自體デ擴張シ
テモ十分ニ出來ルノデアリマス、殊ニ官業
自體デモ擴張スルガ、併シ現在アル民業ヲ
モ併セタイト云フノナラバ、官營ヲ中心ニ
シテ、サウシテ民業ヲ合同スレバ宜シイ、何
モ官業ヲ廢メテ民業ニ移シテヤラナケレ
バナラヌト云フコトハナイノデアリマス、
能ク統制々々ト云フコトハ此頃流行言葉デ
アリマス、何ダカ主ナル鐵ノ工場ハ總テ一
ツノ會社デ持ツヤウニシタイト云フ風ニ聞
エルノデアリマスケレドモ、事實ハ政府ノ
計畫ニ依リマシテモ初メハ五社ダ、次ニハ
十一社ダケ、其外ハ入レナイ、其外ニマダ
可ナリ大キナ會社モアリマス、矢張リ合同
會社ト外ノ會社ト對立······トハ申シマセ
又、併立スルト云フ現象ハ政府モ認メテ居
ル、澤山ニ併セナケレバイカヌト云フコト
ハ暫ク承認イタシマシテモ、是ハ官營ノ儘
デヤッテ置イテ、サウシテ官營ニ買收ヲシテ宜
シイ、斯ウ云フ風ニ私共ハ思フ、私ハ此合同ニ
反對ノ根本ノ理由ハ只今中上ゲタ通リデア
リマスガ、偖テ之ヲヤリマスト色〓規定ノ上デ
不都合ガ起ヲテ來ル、第一最モ心配ヲ致シマ
スノハ資產評價ノコトデアリマス、資產評價ノ
表ヲ政府カラ參考ノ爲ニ提出ヲサレマシ
タ、是モ先程委員長ノ報〓ノ中ニゴザイマ
シタガ此表ニ依リマスト、評價基準トデ
モ申シマセウカ、評價ノ基礎ニナル事柄ガ
書イテアルノデアリマス、所ガ此基礎タル
モノハ大體ニ於テ宜シイト云フ御說明ハア
リマシタケレドモ、結局實行ノ上ニ於テハ
ドウナルノカ分ラナイ、言葉ヲ換ヘテ言ヘ
バ我とハ數億ノ價ヲ有スル製鐵所ガ幾ラ
ニ民間會社ニ下ゲラレルノカト云フコトヲ
知ラナイ譯デ、ナゼ此評價基準ダケハセ
メテ明カニシ、又正確ナモノニシテ、サウ
シテ我と議員トシテ······國ノ財產ヲ官民合
同ノ會社へ渡シテシマウ、ドノ位デ渡スト
云フコトヲ何故決メナイノデアリマスカ、
政府ハ如何ニ製鐵所ノ資產價格ヲ切下ゲテ
モ製鐵所ノ帳簿價格以下ニナルコトハナ
!、斯ウ云フコトデアリマシタケレドモ、
帳簿價格以下ニナルコトハナイカラ安心シ
タラ宜カラウ、製鐵所ハ議會ニ提出シテ居
ル財產表ヨリ下ルコトハナイ、安心シタラ
宜カラウ、斯ウ云フ風ニ思ハレル、又ソレ
デナケレバサウ云フ御言葉ハ要ラナイ筈デ
アリマスガ、併シ是ハ皆樣モ御承知ノ通リ
ニ、國有財產ト云フモノハ酌當ナド致シマ
セヌカラ、サウ正確ニ積ッテハナイ、現ニ製
鐵所デモアノ製鐵所所有ノ土地ハ幾ラデ買
ヒマシタカ、蓋シ非常ニ安イ値段デ買ヲテ、
今ハ大變高クナッテ居ル、斯樣ニ、數字ハ今
覺エマセヌケレドモ、或ル程度迄ハ値段ハ
上リマシタガ、偖テ本當ノ時價ニハ上ッテ
居ラヌ、總テ國有財產ハ之ニ類似ナコトガ
シテアル、サウ云フモノデアルニ拘ラズ、
國有財產表ニ揭ゲテアル、値段ヨリハ安クナ
ラヌカラ安心セイト云フコトハドウシテ
受取レルノデアリマセウカ、要スルニ幾何
デ製鐵所ノ國有財產ヲ拂下ゲルト云フコト
ハ分ッテナイノデアリマス、ソレガ分ラヌ儘
デ我ミハ議決ヲシナケレバナラヌト斯ウ云
フコトニナル、幾ラト云フカッキリシタ正
確ノ數字ヲ申スノデアリマセヌ、大體ニ於
テ斯ウ云フ基準デヤル、斯ウ云フ評價ノ基
準デヤル、斯ウ云フコトガ分レバ澤山デア
リマスガ、ソレサヘ分ラヌ、サウシテソレ
ハ何處デ決マルカト云ヒマルスト、評價審査委
員會ト云フモノデ決マル評價審査委員會
ガ最終ノ決定力ヲ持ヲテ居リマス、但シ形式
ノ上デハ何レ諮問機關デアリマセウケレド
モ實質ニ於テハ最終ノ決定權ヲ持フテ居
ル、デ其評價審査委員會ガ決定スル迄ハ何
モ分ラナイ、斯ウ云フコトヲドウモ見逃ス
譯ニハ參リマセヌ、殊ニ評價審査委員ニハ
貴衆兩院議員ヲ加ヘルト云フコトデアリマ
スケレドモ、資產評價ト云フコトハ資產評
價デアリマシテ、何モ政府的ノ見解ヲ挟ム
必要ハナイ、ドコ迄モ資產評價ハ資產評價ニ
相違ナイ、デアルカラ其評價ヲスル審査委員
ニハ、事業ノ經營及ビ製鐵ノ技術ニ深イ經驗
ノアル人ヲ以テ充テレバ宜シイ、又ソレ以外
ノ者ヲ以テ充テルト云フコトハ宜シクナイ、
評價委員會ガ政治的解決ヲヤラレテハ誠ニ
困ル、政治的解決ヲヤラレルト云フコトノ
弊害ハモウ詳シク述べナイデモ想像ニ餘
リアルト考ヘルノデアリマス、蓋シ此評價
委員會ハ盛ニ民間ノ會社ガ運動ヲスルト、
私ハ想像······今カラ豫想スル者デアリマ
ス、現ニ民間ノ會社ノ人達ハ、傳ヘ聞ク所
ニ依レバ結局評價ガ自分ノ方ニ有利デア
レバ合同スルケレドモ、有利デナケレバ合
同ハ出來ナイ、斯ウ言"テ居ルサウデアリマ
ス又是ハ其民間會社ノ立場トシテハ尤
モナルコトデアッテ、決シテ不道理トハ思ハ
又、ソコデ此法案ガ成立チマシテ、政府ハ
少クトモ五會社ヲ合同シナケレバ、早ク言
ヘバ面目ガ立タナイ、合同ヲアセル、ソコ
ニ運動ガ起ッテ來ル、其運動ノ餘地ヲ自由ニ
此法律ノ規定デハ與ヘテ居ルノハドウ云
フモノデアリマセウ、ソレデ私ハ特別委員
會ノ第二讀會ノ場合ニ、修正案ヲ提出イタ
シマシタ、最初ニハ勿論全體ニ於テ、根本
ニ於テ反對デアリマスカラ、反對論ヲ述べ
マシテ、是ガ潰レマシタノデ、其次ニハ修
正案ヲ提出イタシマシタ、其修正案ノ一箇
條ハ、資產評價ノ基準ヲ法律ヲ以テ設ケヨ、
セメテソレダケデモ將來ノ憂フベキ弊害ヲ
除カウト云フノデアリマシタケレドモ、是
モ殘念ナガラ否決ニナリマシタ、如何ニモ
私ハ此案ノ立テ方ガ分リマセヌ、只今ノヤ
ウニ資產ノ評價ガ如何樣ニデモ出來ルヤウ
ニ法律デ拵ヘテ置イテ、サウシテ審査委員
會ノ決定ニ依ヮテ何トデモナルヤウニシテ
置イテ、サウシテ民間會社ヲ釣ルト申シテ
ハ少シ話弊ガアルカモ知レマセヌガ、民間
會社ト話ヲ付ケル餘地ヲ取ァテ居ル、民間會
社ニ旨イモノヲ片手デ見セ付ケテ居ルノデ
アリマス、是ヘ向ッテ來ル、サウシテ今度ハ
別ナコトデアリマスガ、片方デハ民間會
社ヲ威嚇シテ居ルノデアリマス、威嚇ト云
フコトハ何ダト申シマスト、製鐵業奬勵
法中ノ改正ヲ致シマシテ、奬勵金ヲ全廢ス
ルノデアル、這入ヲテ來レバ宜シイガ、這
入ッテ來ナケレバ、奬勵金ハヤラヌゾ、斯ウ
云フコトニナル、尤モ這入ッテ來テモ奬勵
金ハ貰ヘマセヌケレドモ、ソレハ今度ハ片
方ノ評價ノ方デウマイコトガ出來ル、何
モ·····此製鐵會社ニ合同シナイモノハ唯奬
勵金ヲ捲上ゲラレルダケニナル、之ニ付テ
モ質問ヲ致シマシタ、ナゼ此奬勵金ヲ廢メ
ルト云フコトヲ同時ニ出サナケレバナラヌ
カト云フコトヲ質問ヲ致シマシタケレド
モ、ドウモ能ク要領ヲ得マセヌ、簡單ニ申
シマスト、奬勵金ノ規定ハ何圓以下···
「以下」ト云フコトニナッテ居リマス、實ハ
政府ノ考デ如何樣ニモ定メラレル、ソレデ
何モ之ヲ今一氣ニ奬勵金ヲ廢メテシマハナ
イデモ宜イ、ノミナラズ今度ノ合同會社ガ
出來タラバ、大變ニ直グニ生產費ガ下ガル
ト云フ風ナ御話ガアリマスケレドモ、是
ハ私マダ能ク了解イタシマセヌ、併シ生產
費ガ假ニ下ガルトシテモ、是ハマダ未知數
デアル、未知數デアッテ、ソレデ此出ス奬勵
金ノ方ハ何圓以下ト云フノデアリマス、凡
ソ宜シク其時機ヲ見テ奬勵金ノ法律ヲ改メ
タラ宜イノデ、此際一〓ニ同時ニ改メナケ
レバナラヌト云フコトハナイト私ハ思フ、
斯ウ云フ風ニ片方デハウマイコトヲ見セテ
置イテ、片方デハムヅカシイコトヲ見セテ、
サウシテ兩方デ攻メ寄セテ合同サセヤウ、
斯ウ云フ筋ニドウモナッテ居ル、ソレカラ今
一ツ反對ノ理由ハ、合同會社ノ組織ニ付テ
デアリマス合同會社ノ重役ハ株主ガ選擧
シテ政府ガ認可ヲ與ヘル、斯ウ云フ組織ニ
ナッテ居リマスガ、偖テ此結果ハドウナリマ
セウカ、少クトモ二分ノ一ノ株主ヲ持フテ居
ル政府、又現在ノ所デハ或ハ三分ノ二ニナ
ルデアラウト云フ多大ノ數ノ株ヲ持ッテ居ル、其
政府ガ重役ノアレニ付テ認可權ヲ行使スル、
ドウニデモ斯ウニデモ政府ノ思フ通リニナ
ルノデアリマス、是ハ名ヲ指シテ申シテハ
誠ニ相濟ミマセヌヤウナ氣モ致シマスケレ
ドモ、諸君ハ滿鐵ノ長イ歴史ヲ御覽ニナル
ト直チニ御分リニナルト思フ、殆ド政變ノ
アル度ニ重役ハ更ルノデアリマス其爲ニ
ドレダケ滿鐵會社ナルモノハ損害ヲ蒙ルカ
分リマセヌ、其前者ノ覆轍ヲ更ニ踏襲シヤ
ウト云フ此度ノ合同案ニ付テハ、非常ニ私
憂フル者デアリマス、之ニ付テ政府ニ質問
ヲ致シマシタ、滿鐵ノ前例ガアルノダ、又
滿鐵以外ニモマダ澤山ニ例モアルヤウデア
リマス、要スルニ政府ガ絕對ノ力ヲ以テ重
役ヲ勝手ニ動カスコトノ出來ルト云フ制度
デハ憂慮ニ堪ヘヌ、之ニ對シテ、政府ハサウ
云フコトヲ起ラセナイト云フ何カ腹案ガア
リマスカト云フコトヲ聽キマシタケレドモ、
要スルニ政府モ心配スルガ、非常ニ心配シ
テ居ルケレドモ、良イ案ガナイ、斯ウ云フ
コトニ歸著シタノデアリマス、尤モ其間ニ
ハ無線電信會社ノ例ナンド商工大臣ガ擧ゲ
ラレテ居リマシタケレドモ、是ハ無線電信
會社ノ例ハ當嵌ラヌ、無線電信會社ノ重役
ノ選定ニ付テハサウ立派デハナイト云フヤ
ウナ質問ガ出マシテ、之ニ對シテハ別ニ商
工大臣ハソレハ立派ナ選任デアッタトハ
仰シヤラヌノデアリマス、兎モ角モドウナ
ルデアラウ、折角商工大臣ノ言ハレル統制
ヲヤッテ合理化シヤウトスル此大キナ製鐵
會社ニ、政變ノ度每ニ色ミ交迭ガ起ル、交
迭シナイマデモ種々ノ文句ヲ付ケテ困ラス
ト云フコトデアッタナラバ、到底此製鐵業ハ
健全ナ發達ヲ將來ニ遂グルコトハ出來ヌ、
斯ウ云フ風ニ考ヘルノデアリマス、以上ノ
理由デ私ハ此兩案ニ反對イタシマス、ケレド
モ私ハ一步ヲ讓ノテ、私ノ言フ總テノ論ガ通
ラナイカラトテソレマデ言フノヂヤアリマ
セヌ、兎モ角モ斯ウ云フ大事ナ問題ヲ一朝
一夕ニ無理押シニ通シテ行カウト云フコト
ハ非常ニ無理デアル無理押シニ通シテ行
カウト云フコトハ非常ニ不都合ガ生ズル
デ少クトモ此議會ニ於テハ之ヲ議決セズシ
テ、徐ニ考究ノ餘地ヲ與ヘタイ、斯ウ云フ
ノデアリマス、私ハ併シ此官營ヲ民業ニ移
スコトハイケナイト思ヒマス、官營ヲ民業
ニ移サナイデモ、官營ヲ官營トシテサウシ
テ民間ノヲ買收スレバ宜イ、ソレデモ合同
ニナルノデアリマス、ケレドモ根本論ハ暫
ク措キマシテモ······百步ヲ讓フテモ、此場合
ニ之ヲ急イデ通スモノデハナイ、是ダケナ
重大ナ法案ヲ、會期ガ三分ノ二經過シタ時初
メテ衆議院ニ提出サレテ、サウシテ貴族院
ニ〓フテ來タ、サウシテ是デ審査セイト云フ
コトハ餘リニモ私無理ダト思フノデアリ
さく、又サウ云フ無理ハ我〓議員ダケニ政
府ハ强ヒラレルノデナクシテ、カナリ之ニ
關係シタ官廳ノ人ミニモ無理强ヒデアッタ
ト見エテ、先刻問題ニナッテ居リマス第五條
ノ規定ノ如キ、規定ヲ明カニ置イテ居リナ
ガラ、ソレガ空文ニナルコトガアル、空文
ニナルコトガアルト云フコトヲ政府ガ明瞭
ニ認メナケレバナラヌヤウナ審査ノ不十分
ナ點ガ原案ニアルノデアリマス、サウ云フ
意味ヲ以テ私ハ此兩案ニ反對ヲ致シマス、
ドウゾ諸君ノ御贊成ヲ切ニ希望イタス次第
デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=61
-
062・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 是ヨリ通〓順ニ
依リマシテ、四條男爵ニ發言ヲ許シマス、
同君ノ登壇ヲ望ミマス
〔子爵四條隆英君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=62
-
063・四條隆英
○子爵四條隆英君 私ハ先刻特別委員長ヨ
リ御報告ニナリマシタル如ク、三箇ノ希望
條件ヲ附シテ政府ノ原案ニ贊成スル者デア
リマス、只今私ノ畏敬スル先輩上山君ヨリ
縷々本案ニ反對スル意見ノ御開陳ガアリマ
シタ、甚ダ其所見ヲ異ニスルコトヲ遺憾ニ
存ズル次第デゴザイマス、併シ上山君ノ御
所見中ニ於キマシテモ、將來其運用上ニ於
テ生ズルコトアルベキ弊害ヲ御憂慮ナリマ
シテ、本案ニ反對ノ意向ヲ御述ベニナリマ
シタ點ニ付キマシテハ
(副議長公爵近衞文麿君議長席ニ著ク〕
誠ニ一應ハ御尤ト考ヘル點モアルノデアリマ
スルガ、ソレニモ拘リマセズ私ガ本案ニ贊意ヲ
表シマスルノハ、更ニ經濟上竝ニ國防上、誠ニ重
要ノ特異性ヲ有シテ居ルガ爲デゴザイマ
ス、抑〓鐵ハ人類生活ニ必要ナル根柢ヲナスモ
ノデアリマシテ經濟上竝ニ國防上非常ニ必
要ナルモノデアッテ此鐵ヲ生產シマスル所
ノ製鐵事業ガ、產業上ハ勿論文化ノ發達、
延イテハ國運ノ進展ニ影響······關係スル所
ノ頗ル重大ナルモノデアルコトハ彼ノ豊
富ナル石炭又ハ鐵鑛ニ惠マレタル製鐵事業
ノ先進國デアリ、世界ニ雄飛ヲ致シマシタ
所ノ彼ノ英國ノ興隆カ雄辯ニ物語ッテ居リ
マスコトハ、餘リニモ明瞭デアリマスルガ故
ニ、今更私ハ事新シク之ニ付テ述ブル必要
ハナイト存ジマスルガ近代化學工業ノ發
達ニ伴ヒマシテ、此化學工業ト製鐵事業ト
ガ結付キマシテ、更ニ〓〓一層經濟上竝ニ
國防上重要性ヲ增加シテ居ルノデアリマ
ス製鐵事業ノ生產物デアリマス所ノ銑鐵
竝ニ鋼材ノ生產費ヲ低下イタシマシテ漸
次是ガ低廉ニ供給サレルニ至リマシタ所ノ
事情ハ一面ニ於キマシテハ技術ノ改良、
發達又ハ從業員ノ熟練、其他幾多ノ原因ハ
ゴザイマセウケレドモ、其重要ナル一部ハ
實ニ此副產物ノ利用囘收ニ基イテ居ル所ガ
少ナカラザルモノアルヲ信ズルノデアリマ
ス、例ヘバ假ニ銑鐵ヲ百萬瓲製造イタシマ
スルトシマスレバ、玆ニ所謂「コークス」爐
ノ廢殘物ヨリ「ベンゾール」ノ九千瓲、ト
ルオール」ノ二千七百瓲、又肥料タルベキ
硫酸「アンモニヤ」ノ一萬六千瓲、其他「キ
シロール」デアリマスカ、或ハ「アンスラシ
ン」デアリマストカ、或ハ石炭酸デアリマ
ストカ、「ピッチ」デアリマストカ、幾多ノ副
產物ヲ囘收シ得ルノデアリマシテ、其價格ハ
凡ソ三百萬圓ヲモ囘收シ得ルニ至リマス、
而シテ是等ノ副產物デアリマス所ノ「ベン
ゾール」デアリマストカ、或ハ「トルオール」
或ハ「アンスラシン」、是等ハ何レモ化學工
業中ノ基本工業デアリ、所謂「キー·インダ
ストリー」ト云ハレル染料工業ノ成立ヲ助
ケルノデアリマシテ殊ニ海外ヨリ輸入ス
ルコトノ困難デアル所ノ「ベンゾール」モ、
是ナクシテハ到底染料ノ製造ヲスルコトガ
出來ヌ位ニ、斯ノ如キ重要ナル使命ヲ果ス
ノデアリマス、是ガ一面ニ於キマシテハ〓
防上ニ於テ缺クベカラザル所ノ極メテ重要
ナル染料工業ハ、製鐵事業ノ存在ナクシテハ
到底存在ヲ許サヌノデアリマス、デ又此「モー
ター·バンゾール」デアリマストカ、或
「トルオール」ノ如キハ飛行機用ノ燃料トシ
テ、或ハ自動車用ノ燃料トシテ、軍事上ニ
非常ニ必要ナルモノニナルノデアリマシ
テ現ニ此滿洲事件ニ於テ是等ガ十分ニ活
用セラレタルコトハ其必要性ヲ如實ニ物
語ッテ居ルノデアリマス、其他此副產物ノ性
質ニ依リマシテ、種々ノ工業ガ矢張リ成立
ヲ見ルノデアリマシテ、斯ノ如ク製鐵工業
ガ確立スルト云フコトハ極メテ必要ナル
經濟上ノ事情ヲ充タスコトハ勿論、國防上
ノ見地カラ致シマシテモ、國家トシテ一日
モ之ヲ忽諸ニ付スルコトノ出來ナイモノデ
アルト私ハ信ズルノデアリマス、斯樣ナ重
要性ヲ帶ビテ居リマスガ、日本ノ現在ノ製
鐵事業ハドウデアルカト申セバ、先程委員
長ヨリ詳細ニ我國ノ製鐵事情ヲ御紹介ニ
ナッテ居リマスカラ、私ハ管々シク之ニ付テ
申述ベマセヌガ、兎ニ角我ガ國ニ於キマス
現在ノ民間事業ガ不振デアルト云フコト
モ、實ハ歐洲戰亂時ニ急遽勃興イタシマシ
タ所謂各種ノ鐵工場ガ、間モナク戰後ノ不
況ニ禍セラレ、爾來引續キ不況ニ次グニ不
況ヲ以テシ、今日不振ノ狀況ニ陷,テ居ル
ノデアリマシテ、必シモ或ハ設備ガ役ニ立
タヌトカ、或ハ從業者ガ熟練ガ足ラヌト云
フヤウナ意味デハナクシテ、寧ロ當時ニ總
テ物價ノ非常ニ急騰イタシテ居リマシタ時
代ニ設立サレタ結果、資本ノ過大ニ惱ミ
又借入金ノ多キガ爲ニ苦シンデ居ルノデア
リマシテ、若シ是等ノ製鐵業ガ所謂八幡製
鐵所ト合同イタシマスレバ、其間ニ於キマ
シテ設備ノ過不及ノ缺點ヲ除キ、又過大ニ
惱ンデ居ル不必要ナ資本ハ之ヲ切リ捨テ
玆ニ初メテ我國ニ存立サレナケレバナラヌ
所ノ製鐵工業ガ有利ニ其基礎ヲ固メテ行ク
コトガ出來ルノデアリマス、先程上山君ヨ
リ重工業ハ官業デアルコトヲ理想トスルト
云フ御意見デゴザイマシタガ、此點ニ付キ
マシテハ遺憾ナガラ私ハ所見ヲ異ニスルノ
デアリマス、成程製鐵所ガ成立イタシマシ
タ時ノ事情ハ官營デナケレバ我國ニ製鐵
工業ヲ成立セシムルコトハ困難デアッタト云
フ事情ハ固ヨリモ認メマス、併ナガラ從來ノ
沿革ヲ考ヘテ見マシテモ、我國ノ如ク歐米
各國ヨリモ後レテ各種ノ產業ニ目覺メマ
シタ國ニ於キマシテハ其起リハ何レモ皆
官業デアリマス、今日澤山ノ重要鑛山又ハ
其他ノ工業モ、是ハ何レモ其當初ノ所謂官
業ヲ以テ出發イタシタノデアリマスルガ、
我ミノ大先覺者デアル伊藤公ノ英斷ナル處
置ニ依リマシテ、是等ガ民業ニ移サレ、而
シテ今日ノ發展隆昌ヲ見テ居ルノデアリマ
ス、併ナガラ製鐵業ニ至リマシテハ我國
ニ初メテ製鐵業ガ起リマシタ卽チ明治三十
四年ノ頃ニ於テハ製鐵所ニ於テモ日產僅
ニ百六十噸ノ爐ヲ處置スルニ非常ナ困難ヲ
感ジタノデアリマス勿論今日ノ隆盛ヲ來
シマシタコトハ是等ノ業ニ携ハラレタ經
營ノ任ニ當ッタ方、又ハ技術ヲ擔當セラレタ
人ノ苦心慘澹ノ結果デアルト云フコトハ勿
論デゴザイマスケレドモ、其當時ノ事情ニ
於テハ、民間ニ是ガ成立スルノ餘地ガ無カッ
タコトデアッテ、今日マデ是ガ官營トシテ繼
續セラレテ居ルト云フコトハ一ニ是等ノ
事情ニ起因シテ居ルモノト私ハ考ヘルノデ
アリマス、デ必シモ官營デナケレバナラヌ
トハ私ハ考ヘヌノデアリマシテ、成程官營
製鐵所獨自ノ見解カラ見マスナラバ或ハ
之ヲ今直チニ民業ニ移スノ必要ハナイカモ
知レマセヌケレドモ、之ガ爲ニ民間ノ所謂
過大ナル過剰資本ヲ切リ捨テ、而シテ何等
保護救濟ニ墮スルコトナク、而モ我ガ製
鐵業ノ基礎ヲ鞏固ナラシムルガ爲ニ、之ヲ
民業トシテ合同スルコトモ何等差支ハナイ
ト私ハ考ヘルノデゴザイマス、其他又運用
上ニ於テ生ズルコトアルベキ種々ノ弊害ニ
付テ御心配ニナリマシタ點ハ、誠ニ敬意ヲ
表スルノデアリマスケレドモ、要スルニ是
等ノ運用ノ良否如何ト云フコトハ、結局其
人ヲ得ルヤ否ヤニ存スルノデアリマシテ、
人ヲ得ザルニ於テハ、常ニ諸般ノ支障ヲ來
スコトハ是ハ今更申スマデモナイコトト
存ズルノデアリマス、故ニ私共ハ此運用上
ニ付テハ特ニ深甚ノ注意ヲ拂ハルベキ爲ニ、
希望條件ヲ附シタ次第デアリマス、今ヤ我
國ノ傳統的ノ精神デアル東洋平和ノ確保ヲ
期シ延イテ世界ノ恒久的平和ニ貢獻セム
トスル國是ヲ世界ニ闡明セラレマシテ而
シテ此深遠ニシテ且崇高ナル帝國ノ方針ヲ
貫徹セムトスルコトヲ期セラレテ居ルニ際
シマシテ、基礎工業タルベキ製鐵工業ノ確
立ヲ見ルニ至ルト云フコトハ誠ニ時ヲ得
タル事柄デアリマシテ、私共ハ本案ノ成立
スルコトヲ衷心ヨリ希望スル次第デアリマ
シテ、本案ニ贊成スル意ヲ玆ニ表明イタシ
マス次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=63
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064・上山滿之進
○上山滿之進君 先刻ノ質問ノ續キヲ致シ
タイト存ジマスガ·発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=64
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065・近衞文麿
○副議長(公爵近衞文麿君) 宜シウゴザイ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=65
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066・上山滿之進
○上山滿之進君 先刻商工大臣ニ對シテ質
問ヲ致シマシタ事柄ハ皆サンモ御承知ノ通
リデアリマス商工大臣ノ今日答辯サレタ
コトハ、五條ガ空文ニナルヤウナコトガ、
理論ハ別トシテ、事實上起ラナイ、斯ウ云
フコトノ御答辯ニナリマシタ、昨日委員會
デ伺ッタノハサウデハナクク2稀有ナ場合
デアル、極ク稀ナ場合デアルカラ深ク考ヘ
ル必要ハナイ、斯ウ云フ風ニ仰シヤッタ、只
今速記錄ヲ取寄セテ見マシタガ、何分浩瀚
デゴザイマスカラ、稀有ノ場合ト仰シヤッタ
所ガ見付カリマセヌ、見付カリマセヌガ
稀有ノ場合ト同ジ意味ノコトヲ仰シヤッテ
オイデニナリマス、チョット讀上ゲマス、「國
務大臣男爵中島久萬吉君、只今法制局長官
カラ述ベマシタ通リニ、サウ云フ場合ハ餘
程起リニクイコトデアラウト思ヒマスルノ
デ、大體私ハ此法律案ヲ以テ、先ヅ大體ソレ
ニ關スル萬一フ場合ヲ考察イタシマシテ、先
ヅ是デ適當デアル、斯ウ思ウテ居リマス」、
此言葉ハ、「餘程起リニクイ」ト云フコトハ
稀有ト云フコトト同ジコトデアル、稀有ト
云フコトハ確カニ仰シヤッテ居ラレマスガ、
今チヨット見當リマセヌノデスガ、是デモモ
ウ澤山デアリマス、サウスルト餘程起リニ
クイ場合ト云フコトハ、起ルコトガアル場
合ヲ想像シナケレバイケナイ、是ハ何故ト
申シマスカト云フト非常ニ重大ナ點デア
リマス、五條ガ空文ニナルヤウナコトガ絕
對ニ無イ、事實上絕對ニ無イト云フコトト
ソレカラ有ルハ有ルガ、極メテ稀ナ場合デ
アル稀ナ場合ダカラ法律ヲ立法スル
場合ニ顧ミナイデ進ンデ行カウト云フ
ノト事實ニ於テサウ云フ場合ハ起ラヌ
カラ、理論ハ兎モ角トシテ、顧ミナイ
ト云フノト、非常ニ違フノデアリマス、確
カニ有ルト政府ハ答辯シテ居ラレル、少イ
ト云フトコトヲ仰シヤッタガ、有ルト云フコ
ヲ答辯シテ居ラレマス、其點ヲ明カニシ
テ置キマス、サウ云フ場合ハ餘程起リニク
イデアラウト思ヒマス、斯ウ御答ニナッテ
居リマス、態こ御答辯ヲ煩ハサナイデモ、
私ハ速記錄ヲ此所デ讀上ゲマシタカラ、是
デ今日ノ御答辯ヲ御取消ニナルコトト思ヒ
マス
〔國務大臣男爵中島久萬吉君演壇ニ登
ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=66
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067・中島久萬吉
○國務大臣(男爵中島久萬吉君) 私モ只今
玆ニ速記錄ヲ取寄セテ見テ居リマシタラバ
丁度上山君カラ御讀上ゲニ相成リマシタ通
リ、「餘程起リニクイコトデアラウト思ヒマ
スルノデ」ト申シテ居リマス、是ハ私ト致
シマシテハ餘程控へ目ニ申上ゲタ言葉デゴ
ザイマシテ、大體カラ御考ヘ戴キマシテモ
政府ノ出資ノ義務ヲ伴ヒマスル增資ノ認可
ト申シマスヤウナ點ニ相成リマスレバ、豫
メ大藏當局ト協議ノ上デ其支出ニ對シマシ
テ議會ノ協贊ヲ得タル上ニ之ヲ行ヒマスル
コトガ當然デゴザイマシテ、斯ノ如キ手續
ヲ經ズシテ濫ニ認可ヲ行ヒマスル如キコト
ハ先ヅ私ト致シマシテハ私ノ常識ト致
シマシテモ有リ得ベカラザルコトデゴザイ
マスルノミナラズ、斯ノ如キ不當ノ事態ノ
發生ヲ前提ト致シマシテ立法イタシマスル
如キコトハ妥當ニアラズト考ヘテ居ル次第
デゴザイマス、是ハ昨日委員會ニ於テ御答
へ申上ゲマシタ所ト全ク同一ノ趣旨デゴザ
イマシテ、何卒私ノ趣旨ノ存スル所ヲ斯ノ
如クニ御了解藏キタイト申スコトヲ重ネテ
御願ヒ申上ゲテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=67
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068・上山滿之進
○上山滿之進君 成ルベクサウ云フ不都合
ノ起ラナイヤウニスルト云フコトハ是ハ
當然ノコトデアリマスルガ、ソレヲ今言フ
テ居ルノデハナイノデ、起リ得ルト云フ
又非常ニ稀ナ場合ト云フ風ニ御考ヘニナッ
テ居リマスルケレドモ必シモ稀デハナイ
ラシイノデアリマス、併シ其點ハ私玆ニ詳
シク申シマセヌガ、起リ得ル、稀有ナ場合ダ
ケレドモ起ル、其場合ニハ二分ノ一以上ノ
株式ヲ所有スルコトヲ要スト云フ規定ガ空
文ニナッテ、二分ノ一以上ノ株式ガ持テナ
イト云フコトニナル、サウ云フ場合ガ起ル
ト云フノデアリマスカラ、注意ヲシテ起サ
ナイヤウニスルト云フコトハ是ハマア普
通ニ考ヘルノデアルガ、法律論ヲ我ミハシ
テ居ルノデ、其點ダケ明カニシテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=68
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069・近衞文麿
○副議長(公爵近衞文麿君) 靑木周三君
〔靑木周三君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=69
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070・青木周三
○靑木周三君 私ハ此案ニ反對ノ意見ヲ有
スルモノデアリマス固ヨリ根本ノ主義ニ
於テ反對スル者デハナイノデアリマス、併
ナガラ是ハ鐵ニ對スル所ノ國策ノ最後ノ場
面デアリマス、日本ノ、我國ノ製鐵事業ニ
關シテ、此國策ヲ如何ニスルカト云フコト
ヲ論ゼラレルコトハ旣ニ久シイコトデア
リマス、大正十四年三派內閣ガ出來マシタ
時ニ、高橋農商務大臣ハ此鐵鋼ニ對スル國
策ノ〓究、調査ヲ目的トシテ委員會ヲ組織
セラレ、私ハ其當時ニ此委員會ニ關係ヲシ
テ居リマシテ、ソレ以來諸種ノ調査會ガ出
來マシテサウシテ此コトガ論ゼラレマシ
テ、遂ニ時機ガ熟シタト見エテ、今囘此製
鐵合同案ガ議會ニ提出セラレルニ至ッタノ
デアリマス、是ハ只今モ申シマスル通リニ
此國策ヲ定メル所ノ最後ノ時機デアリマ
ス、デアリマスルカラシテ此場合······既
ニ屢〓〓究セラレタコトデアリマスケレド
モガ、此場合ニ於テ輕卒若クハ生硬ナル所
ノ案ヲ作ッテ、サウシテ百年ニ悔ヲ貽スヤウ
ナコトガアッテハ誠ニ遺憾ノ次第デアリマ
スルデアリマスルカラシテ、此案ニ對シ
テ相當ニ〓究ヲセラレムコトヲ望ムノデア
リマス、私ハ此案ニ對シテ、玆デ反對意見
ヲ述ベルコトハ誠ニ心苦シイノデアリマ
ス、デアリマスルケレドモガ、今申シマス
ル通リニ、此案ガ果シテ十分ニ〓究セラレ
テ萬遺算ナキヲ期シテアルカト云フコトヲ
少シク申述ベテ、皆樣ノ御〓究ヲ煩ハシタ
イノデアリマスル、私ハ常ニ考ヘテ居リマ
スルノニ、此貴族院ハ、衆議院ニ於テ政爭
ガ非常ニ劇シイ時ニハ貴族院ハ十分ナル注
意ヲ拂フテ案ヲ審査シナクチヤナラヌ、併ナ
ガラ今日ノ如ク無風狀態ニ於ケル場合ニ於
テハ貴族院ハ尙ホ愼重ナル能度ヲ以テ案
ヲ〓究シナケレバナラヌト思フノデアリマ
ス、總テノ厖大ナル豫算ニ付テモ、悉ク皆
樣ガ贊成演說ヲナサル、內容ハ反對デアル
ケレドモガ其案ガスラ〓〓ト通ッテ行クト
云フヤウナコトハ、誠ニ百年ノ大計ヲ定メ
ル時ニハ、非常ナ危險ヲ孕ムモノデハナイ
カト云フ考デアルノデアリマス、何故私ガ
此案ニ對シテ反對スルコトガ心苦シイカト
申シマスルト云フト、先程モ申シマシタ通
リニ、大正十四年ニ、三派內閣ノ時ニ此國
策ガ議セラレル時ニ、私共ハ結局ハ製鐵所
ヲ民營ニ移シテ、サウシテ民營デ合同シナ
ケレバ、將來外國品ヲ驅逐スルヤウナコト
ハ出來ナイ、デアルカラシテ何トカシテ方
法ヲ講ジテ民營ニ移サウヂヤナイカト云フ
コトヲ決議シテ、而モ私ハ其時ニ出來マシ
タ小委員會ニ於キマシテハ、色ミナ合同案
ヲ諸君ガ〓究セラレテモ、決シテ今ノ民間
ノ合同······會社ダケヲ合同スルト云フ案ヲ
練ヲテモ、ソレハ行ハレナイ、若シ合同ガ必
要デアルナラバ、現在ノ八幡ノ製鐵所ヲ、
何モ關係ナシニ民營ノ組織ニシテ、サウシ
テ其資本ノ中ヘ持ッテ行フテ、民間ノ資本ヲ
吸收シテ、然ル後ニ來ルモノハ來イト云フ
態度ヲ以テ合同スルニアラザレバ、此國策
ハ行ハレナイ、非常ニ間ヌルイヤウデアル
ケレドモ、ソレガ一番早道デアルト斯ウ
云フコトヲ論ジタノデアリマス、ソレハ其
當時ニ於キマシテハ稍〓突飛ナ議論デアリ
マシタケレドモガ、結局今日此案ガ出來タ
ノハ、其時カラ孕ンデ居ッタノデアラウト思
フノデアリマス、デアリマスルカラシ
テ、此案ハ其當時カラ私ガ主張シタ所ノ案
デアル、併ナガラ······ソレデアリマスル
カラシテ、此案ニ反對スルト云フコトハ私
ノ主張デハナイ、デアリマスケレドモ
ガ、今申シマスル通リニ、ソレナレバ此製
鐵株式會社案ト云フモノガ完全デアルカ
ナイカト云フコトハ、最後ノ場面デアリマ
スルカラ、一通リ檢討スルコトガ必要デ
アラウト云フノデ、玆ニ反對意見ヲ述べ
ル所以デアリマス、此法律ハ色ミノ事情
モゴザイマセウ、果シテ八幡製鐵所ヲ民營
ノ組織ニ移スカドウカト云フコトノ、廟議
ガ決マル迄ニハ、カナリ困難デアッタヤウニ
見エル、デアリマスルカラシテ、會期ガ三分
ノ二ヲ經過シタ時ニ初メテ此案ガ衆議院ニ
提出セラレタト云フヤウナ次第デアリマシ
テ、恐ラクハ十分ナ準備ガ整ヲテ居ナカッタ
ノヂヤナイカト云フコトヲ憂フルノデアリ
マス、デアリマスルカラ、私カラ申シマス
ルト云フト、此案ハ相當ニ不出來ナ所ガア
ルノデアリマス、法律案トシテ相當ニ不出
來ナ所ガアルノデアリマス、デアリマスル
カラシテ國民ガ從ッテ不安ノ念ヲ懷クト云
フコトハ已ムヲ得ナイ、今日委員會ニ於テ
ハ僅ニ伊澤君ト上山君トガ反對セラレタ
ノデアリマスケレドモガ、其議論ヲ伺ッテ
見テモ、カナリ不安ヲ懷カザルヲ得ナイ、
相當ニ此問題ニ感興ヲ持ッテ居ル者ハ頗ル
不安ヲ懷カザルヲ得ナイト考ヘルノデアリ
VV、デアリマスカラシテ、若シ斯樣ナ不
安ヲ果シテ國民ガ持ッテ居ルナラバ、或ハ諸
君ガ何ボカノ不安ヲ懷カレルデアルナラ
バ私ガ此問題ニ關係シテカラ旣ニ七八年
モ經過シテ居ル今一年カ二年延バスト云
フコトハ決シテ國策ヲ誤ルモノデハナイ
ノデアル、デアリマスカラシテ、相當ニ〓
究シテ······此案ヲ遂行セラレルニシテモ、
相當ニ〓究シタ後ニ實行セラレルコトガ、
國家ノ爲ニ必要デアラウト考ヘルノデアリ
やく、デ私ガ感ズル所ノ不安ノ點ヲ指摘シ
マシテ諸君ノ御參考ニ供シタイト思ヒマ
スル、第一番ノ不安ノ點ハ、此製鐵株式會
社案ト云フモノハ合同ヲ前提トシタ所ノ
民營デアルノデアリマス、私ガ先程申シマ
シタノハ合同ガ目的デハアルケレドモ
ガ、法律ガ合同ヲ要求シナイ所ノモノヲ拵
ヘタ方ガ近道デアラウト考ヘタノデアリマ
ス、然ルニ此案ハ合同ヲ前提トシテ出來テ
居ルノデアリマス、デアリマスルカラシテ、
ソレニ胚胎シタ所ノ不安ヲ感ゼザルヲ得ナ
イモノガ二三アルノデアリマス、此案ハ最
初五社、五ツノ會社ヲ目標トシテ作ラレタ
ラシイノデアリマス、五社ト申シマスルノ
ハ輪西ノ製鐵所、釜石ノ製鋼所、東洋製鐵
九州製鋼、三菱ノ兼二浦ノ製鐵所、斯ウ云。フ
タヤウナ······此外ニ三菱ノ經營ニ係ルモノ
ガ、小サナモノガアリマセウガ、斯ウ云ッタ
ヤウナモノヲ目標トシテ出來タノデアル、
其後ニ此頃ニ至リマシテ、十一社モ亦合同
スルヤウナ機運ニアルト云フコトガ傳ヘラ
レテ居ルノデアリマス、デ此五社ノ中ノ或
ル部分ノ大キナモノハ、是ハ政府ガ八八艦
隊ヲ造ル爲ニ、相當ナ設備ガナケレバ、此
八八艦隊ガ完成出來ヌヂヤナイカ、相當ナ
富豪ハ宜シク製鐵所ヲ拵ヘテ、此際ニ處スベ
キデアルト云フコトヲ勸誘シテ作ラシタモ
ノガアル、其後ニ八八艦隊ト云フモノハ軍
縮會議ニ依ッテ潰レテ、サウシテ其爲ニ是等
ノ製鐵會社ト云フモノハ全ク需要ヲ失ッタ、
其機械ト云フモノハ丸デ遊ンデ居ルノデア
ル、何等カノ事件ガ起レバ動キマセウケレ
ドモ、永久ニ遊バントスルヤウナ狀態ニア
ルノデアル是ハ政府トシテモ相當ニ考ヘ
テヤラナクチヤナラヌコトデアルト私ハ考
ヘマスル、デサウ考ヘルト同時ニ、此案ガ
五社ヲ目的トスルモノデアルト言ハレルト
云フコトハ、何トナクソコニ不安ヲ感ズル
ノデアリマスル是ハ決シテ其現在ノ政府
ノ諸公ヲ疑フノデモ何デモナイノデアル、
所ガ斯樣ナコトハ十分ニ〓究ヲ積ンダ上デ
ナケレバ行フベキコトデナイト考ヘルノデ
アリマス、此案ハ斯ノ如ク合同ヲ前提トシ
テ居リマスルカラシテ、此案ガ出來マスル
ト云フト政府ハ必ズ合同ヲシナケレバ
此法律ニ對シテ責任ヲ持ツ、是ハ上山
君モ論及セラレタヤウデアリマスルガ、合
同シナケレバ恐ラク此法律ノ必要ガナ
イノデ、只今八幡ノ製鐵所ト東洋製鐵、九
洲製鋼位ヲ合併シタノデアルナラバ、恐ラ
クハ斯ウ云フ案ハ見ラレナイノデアル、少
クトモ目標トシテ居ル所ノ五社ヲ合同シナ
クテハナラナイ、其合同ヲサセルト云フコ
トハ法律ガ出來ルト云フト、少々ノ御無
理ハ聽イテモ合同ヲサセナクチヤナラヌ
斯ウ云フ點ガ此法律ニ對スル所ノ不安ヲ懷
ク所ノ一デアリマス、是ハ後ニ論ズル所ガ
アリマセウト考ヘマスルガ、斯樣ナル次第
デアリマスルカラシテ、此案ノ生立カラシ
テ何分カノ不安ヲ感ゼザルヲ得ナイノデア
リマスル、ソレカラ又御承知ノコトデアリ
マスルケレドモガ、話ノ序ニ申サナケレバ
ナラヌノハ、現在ノ製鐵所ハ一般ニ申シマ
スル製鐵所ト云フモノヲ二ツニ區分スルコ
トガ出來マスル、其今申シマスル所ノ五ツ
ノ會社ト、ソレカラ他ノ會社ト云フモノハ、
ハッキリ或ル區別ガアル、其他ノ會社ト申
シマスルモノハ多クハ此鋼、製鋼ニ······「ス
チール」ニ重キヲ置イテ居ル會社デアル、サ
ウシテ此五ツノ會社ト云フモノハ製鋼ヲ致
シマスルヨリカ、銑鐵ニ主力ヲ置イテ居ル
所ノ會社デアル、今「スチール」ノ會社ハ相
當ナ計畫ヲ有ノテ居ルノデアリマス、サウ
シテ又「スチール」ノ會社ハ後ニ出來タモノ
ガ多クテ、資本ノ額ガ稍、こ少イノデアリマ
ス、此五ツノ會社ハ先キニ出來タモノデア
リマスルシ、色ミナ事情ガアリマシテ、頗
ル資本額ガ大キイ、然ルニ銑鐵ハ印度ノ競
爭ヲ受ケテ頗ル困ッテ居ル、斯ウ云ッタヤウ
ナ狀態ニアルト云フコトガ矢張リ不安ヲ懷
ク所ノ一ツノ原因デアリマスル、デ私ハ斯
ウ云フ不安ヲ懷クト云フコトハ政府ニ私
曲ガアルト云フコトヲ論ズルノデハアリマ
セヌ、之ヲ除ク方法ガアルノニ、其途ガ盡
シテナイト云フ點ヲ私ハ不安ト論ズルノデ
アリマスル、ソレハ次ニ述ベムト欲スル所
ノモノデアリマスルガ、ソレハ此法律ニ
政府ノ出資ノ金額ガ明示シテナイ點デアリ
マスル是ハ明示シテアルナラバ、總テノ
今マデ論ズル所ノ不安ノ大部分ハ除去スル
コトガ出來ルデアラウト思フノデアリマス
ル、此案ト云フモノハ、實ハ先程モ上山君
モ論ゼラレタル通リニ、製鐵所ヲ民間ノ會
社ニ拂下ゲルノデアル、出資額カラ申シマ
スルト云フト、二億一千萬圓、先程ノ述べ
ラレタ所ノ色ミノ計算法カラ言ヒマスル
ト三億八千萬圓ニモ上ボル所ノ財產ヲ民
間ノ會社ニ拂下ゲル、幾ラデ拂下ゲルカト
云フコトヲ法律ニ明記シテナイト云フコト
ガ、私ハ甚ダ不安ヲ生ズル所ノ原因デアラ
ウト思フノデアリマス、デ是ハ勿論總テノ
財產ヲ賣拂フ場合ニハ、多クノ場合、法律
ヤ豫算デ規定シテナクテ、政府ニ權限ガ委
任シテアル、此場合ニ於テモ製鐵所ノ拂下
ヲ政府ガ相當ナ方策ヲ通ジテ價格ヲ決メル
ノデアルナラバ、安心シテ可ナリヂヤナイ
カト云フ御議論モアリマセウ、併ナガラ今
申シマスル通リニ、復成式ト申シマシテ、
今此會社ヲ拵ヘタラ·······此製鐵所ヲ拵ヘタ
ラ何ボ掛ルカト云フ計算カラ、其中原價償
却ヤ何カヲ引イタモノカラ勘定イタシマシ
テモ一億六千萬圓、稼高カラ申シマスルト
云フト、稼高デ今ノ六分ノ金利デ以テ還
元シタ所ノ資產價格ヲ申シマスルト、三億
二千九百萬圓ト云フ位ノ財產デアリマス
其財產ヲ出資ノ目的物トスルノデアル、サ
ウシテ拂込ニ充テルノデアリマスル、是ハ
政府ニ委任スルノニ餘リ大キナバカリデナ
シニ、法律ノ原則カラ考ヘマシテモ是ハ
ドウシテモ議會ノ協贊ヲ經ベキ所ノ性質ノ
モノデアラウト私ハ考ヘルノデアリマス、
ナゼサウデアルカト云フノニ是ハ此財產
ヲ民間ノ會社ニ賣ッテ、賣ヲテ得タ所ノ代價
ヲ拂込ニ充テルノデアリマス、デアリマス
ルカラシテ、賣ッタ歲入ヲ以テ拂込ト云フ
歲出ニ充テルノデアリマス、歲入ヲ以テ歲
出ニ充ツベカラズト云フノガ會計法ノ原
則ソレヲ是ハ唯現物川資ト云フ名デアル
ケレドモガ、法律上ノ性質ヲ考ヘマスルト
云フト、賣ッテ得タ所ノ代價ヲ株式ノ拂込ニ
充當スルノデアリマス、デアリマスルカラ
シー、賣ルコトガ假ニ歲入豫算デアッテ、政
府ニ委任シテ然ルベキモノト云フテモ、之
ヲ歲出トシテ拂込ヲスル所ノ行爲ハ、普通
ノ場合デアルナラバ豫算ヲ以テ定メルサ
モナケレバ會計法ノ原則ニ對スル所ノ例外
トシテ、是ハ此出資額ハ幾ラ〓〓デアルト
云フコトヲ法律ニ明記スルト云フノガ、私
ハ執ルベキ所ノ手段デアッタダラウト思フ、
若シ恐ラクハ現今ノ政府デモ十分ニ暇ガ
アッタナラバ、此手續ヲ執ラレタニ違ヒナ
イト思フ、然ルニ功ヲ急ガレタモノデアル
カ、此手續ヲ後廻シニ致シマシテ、サウシ
テ此法律ヲ先ヘ出シテ、サウシテ其價格ハ
評價委員會デ評價サシテヤルノデアルカラ
ト、斯ウ云フコトニナッテ居ルノデアリマ
ス、評價委員會ト云フモノハ勿論勅令デ
權限ヲ規定セラレマスケレドモガ結局諮
問機關デアッテ、是ハ商工大臣ガ恐ラクハ御
定メニ······主務大臣トシテ御定メニナルン
デアラウト思ヒマスルガ、斯樣ナコトハ先
ニ商工大臣ハ官制ヲ以テ準備委員會ヲ拵ヘ
テ、サウシテ評價委員會ニ掛ケテ、此製鐵
所ノ資產ハ幾ラデアルト云フコトヲ御定メ
ニナッテ、ソレヲ法律ニ代ヘテ、此出資額ヲ
以テ合同スルノデアル、斯ウ云フコトニナス〃
タナラバ何等ノ不安ヲ國民ハ感ジナイ
デ、恐ラクハ斯樣ナ議論ハ上山君ガ心
配セラレルヤウナ議論ハ恐ラクハ玆デハ起
ラナカッタデアラウト思ヒマスル、先程ノ問
題トナリマシタ增資ノ場合デモ、是ガ法律
ニ金額ガ規定シテアルナラバ、之ヲ增資ス
ル場合ニハ法律改正ノ手續ヲ以テシナケレ
バナラヌカラ、決シテ今ノヤウナ心配ハ起ラ
ナ、イデアラウト私ハ考へルノデアリマス
是ハ便宜論カラ致シマシテモ、其法律ニ金
額ヲ規定シテ置クノガ當リ前デアッタラウ
ト思フノデアリマス、第一此政府ガ合同會
社ヲ作ルト云フ場合ニ、一番大切ナ事ハ資
本金デアル、ソレデ資本金ノ金額ガ何ンボ
ニナルノデアルカ、凡ソドウ云フ方式ヲ以
テ他ノ合同會社ノ資產ノ計算ヲスルノデア
ルカト云フコトガ規定シテナイト云フコト
ハ誠ニ根本ガ議會ノ協贊ニ依ッテ定マル
ノデナイ、斯ウ云フコトニナルノデアリマ
ス、貴族院ノ速記錄ヲ私ハ拜見スル遑ガア
リマセヌガ、衆議院ニ於キマシテ論議セラ
ルル所ノ多クノ問題ハ、資本金ヲ幾ラニス
ルノデアルカ、如何ナル計算ニ依ッテスルノ
デアルカト云フコトヲ繰返シ〓〓質問セラ
レテ、政府モ色ミノ答辯ヲセラレマシタケレ
ドモガ、結局衆議院ノ諸君ハドウ云フ資本
ノ額ニナルノデアルカト云フコトニ付テ〓
念スラモ得ルコトガ出來ナカッタラウト思
フ、ソレハ今申シマスル通リニ或ル計算ニ
依レバ一億六千萬圓、或ル計算ニ依レバ三
億二千萬圓、政府ガ査定シタモノガ一億六
千萬圓トカ八千萬圓トカ、斯ウ云ッタヤウナ
形ニナッテ居ルノデアリマシテ、其間ヲ或
ハ二ヲ掛ケ或ハ三ヲ掛ケ、或ハ二デ割ルト
カ三デ割ルトカ、色ミノ方法ヲ盡サレマス
ケレドモ、結局二ガ三ニナルカ、三ガ二ニ
ナルカト云フコトハ其時ノ裁量ノ問題デ
アル其方式ハ非常ニ能ク出來テ居ルト思
フ、其製鐵所ノ中ノ準備トシテハ十分ニ整〃
テ居ノタンデアラウト思フケレドモガ、之
ヲドウ云フ風ニ裁量スルカト云フ所ノ政治
的ノ決定ニ對シテ、議員ハ何等ノ喙ヲ容レ
ルコトガ出來ナイコトニナッテ居ル、是デハ
議會ガ不安ヲ懷カザルヲ得ナイト私ハ考ヘ
ルノデアリマス、次ニ第三ノ我ミガ不安ヲ
感ズル點ハ會社ノ營經者ノ選任ノ方法ガ
法律ニ定メテナイ點デアリマス、是等ハ勿
論定款ニ依フテ普通ニ選擧セラレテ、ソレヲ
認可スル方法ガ執ラレルノデアルト云フ說
明デアリマスカラ、法律ノ文面ヲ見マシテ
モ、左樣デアラウト考へルノデアリマスガ、
段々承ハリマスルシ、又先程委員長ノ報告
ニ依リマシテモ、此會社ハ二ツノ機關ヲ持ッ
テ居ル、意思機關ト申シマスルカ、決議機
關ト申シマセウカ、委員長ハ立法機關ト言
ハレマシタガ、サウ云ッタヤウナ「ボード」
ガ一ツ出來マシテ、ソレガ大體總テノ經濟
上ノ方針、經營上ノ方針ヲ決定シテ、ソレ
ヲ執行機關ナル重役會ニ移ス、其「ボード」
ノ決定ニ從ッテ重役ハソレヲ執行スル、斯
ウ云ッタヤウナ形ニナルラシイ、ソレデ商
工大臣ハサウ云フ風ニシヤウト言ハレルノ
デアルデアリマスルガ、サウシテソンナ
ラバ此所謂立法機關ト申シマスカ、意思機
關ト申シマスルカ、其機關ノ組織ハドウ云
フ風ニスルカト云フト、政府ガ四分ノ一ノ
「ボード」ヲ持ッテ、サウシテ四分ノ三ヲ民間
會社カラ出ス、斯ウ云フノデアリマス、ソ
レデ此株式會社ノ意思ノ決定、總テノ經營
方針ト云フモノノ全權ハ民間ノ會社カラ選
出セラレタ所ノ取締役ニ依ッテ決定セラレ
ル、勿論重要ナ定款ノ變更ニ涉ルトカ、拂
込トカト云フヤウナ事ハ悉ク商工大臣ノ
認可ヲ經ルノデアリマセウケレドモガ、日々
ノ營業上ノ方針ト云フモノハ此「ボード」ニ
於テ決定セラレルコトニナルノデアル、共
「ボード」ノ決定權ト云フモノハ、四分ノ三
ノ投票權ヲ握ッテ居ル所ノ民間ノ會社ガ恐
ラクハ支配スルデアラウト思フノデアル、
是ハ先程ト山君ガ頻ニ憂慮セラレタ所ノ、
此半官半民ノ會社ガ政府ノ更迭スル度ニ重
役ヲ變更セラレル、社長ヲ變更セラレルト
云フヤウナコトヲ防グ爲ニ、頗ル有效ナル
所ノ案デアラウ、ソレニ對スル對策トシテ
案出セラレタ所ノ方法デアラウト考ヘルノ
デアリマスルガ、併ナガラ上山君モ指摘セ
ラレタ通リニ三分ノ二ノ出資ヲシテ居ル
所ノ政府ガ、三分ノ一ノ出資ヲシテ居ル所
ノ民間ノ會社ノ人ニ依ッテ支配セラレルト
云フコトハ株式會社ノ觀念ニ背ク、斯樣
ナコトデ國民ガ不安ヲ懷カナカッタナラバ··
私ハ寧ロソレヨリハ假令第二ノ滿鐵ニナ,
テモ、政府ノ意思ト云フモノガハッキリ、
政府ノ營業方針ト云フモノガハッキリ此會
社ニ現ハレルコトヲ欲スルノデアリマス、
大體民間ニ於キマシテハ、半官半民ノ會社
ヲ組織シテ、資本ハ凡ソ同額ニ支出シテ、
政府ノ株ニ對スル配當ハ損ノアル時ニハ減
ジテ、民間ノ人ノ持株ニ對シテハ配當ヲ普
遍ナラシメ、サウシテ其重役ハ政府ノ欲ス
ル儘ニサセナイノデ、民間ノ人ニ選出サセ
ヤウト云フヤウナ考ノ流レガ民間ニアルコ
トヲ歷々ト讀ムコトガ出來ルノデアル、先
程委員長ノ報告セラレタ所ノ重役會ノ組織
ト云フモノハ此流レカラ案出サレタ所ノ、
モノデアラウト思フノデアリマス、併ナガ
ラ株式會社ノ株主權ノ行使ガ左樣ナ不均衡
ナル所ノ形デ以テ行ハレルト云フコトハ
株式會社ノ觀念ニ背ク、若シサウ云フコト
ガ必要デアルナラバ、政府ノ持株ヲ全部
デアルカ、或ハ相當ナモノヲ、賣拂ッテ
シマッタ方ガ私ハ然ルベキモノダト思フ
法律ニハ二分ノ一ノ株式ヲ所有スルコトヲ
要スト書イテアル、二分ノ一ノ株式ヲ所有
スルコトヲ要スト書ク所以ノモノハ、其會
社ニ對スル所ノ全權ノ支配權ガ政府ノ持株
ニ依ッテ支配サレナクチヤナラヌト云フコ
トガ必要デアルカラコソ、二分ノ一ノ株式
ヲ所有スルコト、ヲ要スト書クノデアラウト
思フ、委員長ノ報告ニ依ル所ノ政府ノ說明
ニ依リマスト云フト、政府ハ取締役會ニ於
テ假令少數デアッテモ、他ニ有力ナル所ノ監
督機關ヲ持ッテ居ルカラシテ、ソレデ十分デ
アル、斯ウ言ハレルノデアリマスケレド
モ、監督機關ト云フモノハ左樣ニ一々ドコ
ヘデモ出テ行ッテ「ミル」ヲ据付ケルトカ、鐵
ノ値段ヲ何ボニシヤウトカ、ドノ程度ニ於
テ他ノ會社ト協調シテ行カウト云フコトマ
デ、監督機關ト云フモノハ指圖ガ出來ルモ
ノヂヤナイ、サウ云フコトハ悉ク取締役會
デ以テ決メラレルモノデアル、サウ云フモ
ノガ一々政府ノ選出シタ所ノ取締役ハ少
數デ葬ラレルト云フコトニナリマスマト云
フト、國民ガ之ニ對シテ不安ヲ懷カズニ居ラ
レマセウカ、此點ハ私ハ尙ホ甚シキ此法律
ニ於ケル所ノ缺點デハナイカト考ヘルノデ
アリマス、政府ガ他ニ監督機關ヲ有スルカ
ラシテ差支ナイト言ハレルノハ今ノ認可
權モアリマセウガ、他ノ一ツハ監理官ノ規
定ガ法律ニ規定シテアリマス、監理官ト云
フモノハ豫テ私モ私ノ部下ニ滿鐵ノ監理官
ヲ有シテ居リマシタコトガアリマシタケレ
ドモ、此監理官ノ力ト云フモノハ誠ニ微弱
ナモノデアリマス、殆ド是ハ申譯ニ過ギナ
イモノデアリマス、其當時或ル······關東長
官デアリマシタカ、政府デアリマシタカ、
關東長官ヲ以テシテモ、滿鐵ノ監督ト云フ
モノハ十分ニ行フコトガ出來ナイト云フコ
トヲ歎ジテ居ッタ位デアリマス、一局長位ノ
程度ノ人ガ監理官トナッテ居タカラト云ッタフ
テ、ソレガ何等ノ取締役會ニ代ル程ノ力ヲ
持ツモノデナイト云フコトハドナタモ恐ラ
クハ御承知デアラウト思フノデアリマス、
斯樣ニ思ヒマスルト云フト、私ハ政府ガ株
主權ノ行使ヲ十分ニ行フト云フコトガ此
半官半民ノ會社ノ經營ニ有害デアルナラ
バ半官半民ノ會社ト云フモノ、其モノガ
私ハ間違ッテ居ルンダラウト思フ、政府ノ株
主權ニ以テ行ッテ制限ヲ加ヘテ、サウシテ
是ガ半官半民ノ會社、而モソレガ二分ノ一
以上ノ株式ヲ持っテ居ルト云フヤウナ狀態
デアリマシテハ是ハ何ト申シマスルカ、
我ミノ常識デハ判斷スルコトガ出來ナイ、
斯樣ナ不安ナ狀態デアッテ、此法律ヲ强行ス
ルト云フコトハ恐ラクハ將來ニ私ハ憂ヲ
遺スモノデアラウト考ヘルノデアリマス
最後ニ此點ハ上山君ガ十分ニ論ゼラレタ點
デアリマスルガ、國營ガ宜イカ民營ガ宜イ
カト云フ問題モ十分ニ〓究シテ置カナクチ
ヤナラヌ、然ルニ此問題ニ付テノ〓究ガ私
ハ十分デナカッタノヂヤナイカト思フノデ
アリマス、人ハ同ジコトヲ長イコトヤッテ
居リマスト倦キガ來ル、恐ラクハ此政府ノ
諸君モ官營デ以テ製鐵所ヲ長クヤッテ居ラ
レテ、色ミノ不便ヲ感ゼラレタノデ、此官
營ニ倦キタノデアラウト思フノデアリマ
ス、實際憲法デアルトカ、會計法デアル
トカ議會デアルトカ、或ハ官吏ノ服務
紀律デアルトカ云フヤウナコトハ此製
鐵所ノ如キ事業ニ携ハル人ニ對シテハ相
當ニ倦キサセル所ノ邪魔物デアルコトヲ否
ムコトハ出來ナイノデアリマス、私モ
鐵道ニ携ハッテ居リマス時ニ、非常ナ不祥ナ
事件ガ突發シマシテ、官吏ガ減俸ニ反對シ
テ非常ナ騒ギヲ起シタ時ニ、私モ嫌氣ガ差
シタ、如何ニモ斯樣ナ狀態デ以テ鐵道ヲ經
營シテ居ルト云フト、鐵道ハサウ大シタ國
家ニ害ヲ及ボサヌケレドモ、官吏ガ斯ノ如
キコトニナルト云フト、他ノ官吏ニマデ此
風ガ及ンダナラバ恐ラクハ國家ガ破壞セラ
レルデアラウ
〔議長公爵德川家達君議長席ニ復ス〕
斯ウ云フ風ニ考ヘテ嫌氣ガ差シタ、サウシ
テ獨逸ノヤウナ風ニ鐵道ヲ民營ニシタラド
ウカト云フヤウナコトモ調査ヲ始メタコト
ガアリマスル、ソレデ私ハ斯樣ナ色ミノ東
縛ノ官吏服務紀律デアルトカ、憲法デアル
トカ、會計法デアルトカ、豫算デアルトカ、
議會デアルトカ云フ、色ミナ束縛ノ下デ以
テ製鐵所ノヤウナ事業ヲ行フト云フコト
ハ非常ニ不便デアルカラシテ、何トカモ
ウ少シ自由ナ天地デ以テ此事業ヲ盛大ニ
行ッテ見タイト考ヘラレルコトハ、私ハ尤デ
アラウト思フ、併ナガラ何ゾ知ラン、此製
鐵所ノ諸君ガ左樣ナモット自出ナ働キヲシ
タイト考ヘテ居ル今ノ仕事ハ誠ニ行キ目
ニ行カヌ仕事デアルト考ヘテ居ル中ニ、非
常ニ偉大ナル功績ヲ遺シテ居ルノデアリマ
ス、現ニ上山君カラ論ゼラレマシタケレド
毛カタ此製鐵所ハ開設以來多少ノ盛衰興亡
ハアリマシタケレドモガ、頗ル〓調ニ發達
シテ來テ居リマシテ、大正十四年ニ民營ニ
移ス所ノ準備ヲ致シマシテ製鐵所ノ會計
法ヲ改正シテ特別會計ニ致シマシテ、民間
ノ人ニモ明カニ其收支計算ガ分ルヤウナ方
法ヲ講ジマシテ、ソレカラシテ現在ノ長官
竝ニ技監ノ如キ者ガ製鐵所ニ入ラレマシ
テ大イニ色ミ束縛ヲ受ケ或ハ不便ヲ忍ン
デ、是デハ迚モ國家ノ製鐵事業ヲ盛大ニス
ルコトハ出來ヌト云フ厭氣ガ差ス程束縛ノ
下ニ於テ此成績ハ如何デアルカト云フト
隆々タルモノデアル、現在ノ世界中ノ製鐵
所ノ中デ以テ最モ優秀ナ所ノ一ツノ製鐵所
デアルト私ハ考ヘルノデアリマス、サウシ
テ一方ニ於キマシテハ是ト相竝ンダ所ノ民
間ノ事業ハドウダト考へルト云フト、恐ラ
ク比較ニナラヌ程成蹟ガ惡イ、是ニハ色ミ
ノ事情モアリマセウケレドモガ、兎ニ角出
來上ッタ所ノ成績ト云フモノハ甚シキ相違
ガアル、民間ノ人ハ往々ニシテ役人ヲ罵倒
スル癖ガアル役人ハ仕事ガ出來ナイ、ア
ア云フ風ナ「レッド·テーピズム」デハ仕事ニ
ナラヌト云フコトヲ常ニ罵倒スルノデアリ
マスケレドモガ、十年十五年ノ成績ヲ比べ
ルト決シテ劣ッテ居ナイ、サウシテ見マス
ルト云フト、是ニハ何カ考フベキ或ルモノ
ガアルト考ヘザルヲ得ナイ、私ノ考ニ依リ
マスト云フト、是ハ製鐵所ノ官吏、上ハ長
官ヨリ下ハ職工ニ至ルマデ國家ニ對シテ働
クノデアル、國家ヲ背負ッテ立ッテ居ル氣分
デ働イテ居ル、何等ノ私利私慾ヲ考ヘナイ、
自分ガ働ク所ノモノハ全身捧ゲテ國家ヲ利
益スル、何等資本家ノ懷ロニ入ルノデナイ、
斯ウ云フ考ガ、言フト言ハヌト、其下ニ潜
ンデ居ル、是ガ報酬ヲ求メル所ノ心モ少ナ
イト云フノデ斯樣ナ成績ガ隆々トシテ擧
ガッテ居ルノデアラウト思フ、固ヨリ今日ノ
如ク製鐵所ガ其人ヲ得タコトハ言フ迄モナ
イダラウト思ヒマスケレドモ、斯樣ナ僅ナ
所ノ俸給地位ヲ以テ、斯樣ナ優秀ナル所ノ
役人ヲ集メルコトガ出來ル、恐ラクハ官營
デナケレバ出來ナイコトデアラウト思フ、
資本ハ固ヨリ生產ノ必要條件デアリマシ
テ、資本ハ合同ニ依ッテ大ナレバ大ナル程
效力ヲ發揮スルノデアリマス、デアリマス
ルカラシテ斯樣ニ合同シテ民間ノ資本·····
民間會社トナッテ資本ガ多クナレバナル程
仕事ハ仕易クハナリマセウケレドモガ、
此資本ト云フモノニ對スル所ノ、何ト言ヒ
マスカ、何トナク厭ナ念慮ト云フモノハ益ミ
增大シテ來テ、思想ガ險惡ニナッテ行ク
ノヂヤナイカ知ラヌト思フ、只今申上ゲマ
シタ所ノ大正十四年頃ハ、製鐵所ニハ大キ
ナ疑獄事件ガ起フテ、如何ニモ世間ヲ騒ガシ
タ一二年後ノコトデアリマス、斯樣ナ賄賂
ヲ取ッテ請託ヲ容レルト云フヤウナコトハ
沙汰ノ限デアリマスケレドモガ、裁判官ノ
ヤウナ嚴格サヲ以テ、サウシテ民間ノ會社
ト竝ンデ此製鐵事業ヲ營ミ、販賣ヲスルト
云フヤウナコトハ如何ニモ私ハ不便デア
ラウト其當時ニ考ヘマシタ、又民間ノ資本
モ段々ニ良イ投下所ヲ失ッテ來ルノデアル
カラ、又斯樣ナ事業ハ國防トカ何トカ云フ
ヤウナコトヲ考ヘルノニハ民間デ製鐵事
業ヲヤッテ居ッタッテ、一向其點ニ於テハ
私共不便ハ無イト考ヘルノデアルカラシ
テ、勿論其民間ノ事業トシテ製鐵所ヲ拂下
ゲル、ト云フト語弊ガアリマスケレドモガ、
民間會社ト合同シタガ宜カラウト考ヘタノ
デアリマス、然ルニ段々ニ今日ニ至ッテ來
マスト云フト、私ハ甚ダ取捨ニ迷フノデア
リマス、私自身ノ考モ、民營ガ宜イカ、國
營ガ宜イカト云フ點ニ付テハ寧ロ現在ノ
時ニ於キマシテハハッキリトシタ考ガ無
イノデアル、斯樣ナ製鐵所ガ成績ヲ擧ゲタ
ト云フコトハ、先程モ申シマシタ通リニ
製鐵所ノ幹部ニ其人ヲ得テ、ソレ等ノ幹部
ガ奮闘努力セラレタ結果デアリマスガ殊
ニソレ等ノ人ハ是ガ若シ民間デアッタナラ
バ資本ヲ得ルコトモ容易デアルシ、モンハ
自由ナル働キガ出來ルト考ヘラレルノハ
私ハ無理デハナイト思ヒマスケレドモガ、
併ナガラ其昭和二年カラ今日ニ至リマスル
所ノ五箇年ノ間、製鐵所ノ資產ハドレ位殖
ヘタカト申シマスト、凡ソ四千六百八十萬
圓殖エテ居ルノデアル、民間ノ會社ハ其間
ニハ恐ラクハ何等ノ增資ヲスルコトガ出
來ナカッタデアラウト思ヒマスガ、政府デア
ルナレバコソ是ダケノ擴張ヲシ得ルノデア
ル、デアリマスカラシテ私ハ必シモ是ガ官
營デアルナラバ仕事ガ出來ニクイトハ現在
考ヘテ居ラヌノデアル、此點ハ私ノ決定的
ノ意見ヲ申上ゲルコトノ出來ナイコトヲ遺
憾ト致シマシテ、私ハ今デモ此民營論ニ贊
成シテ居ルノデアリマスケレドモガ、此點
ハ尙ホ十分ニ討議考量シナケレバ矢張リ國
民ノ不安ヲ去ルコトガ出來ナイデアラウト
思フ、恐ラクハ此問題ニ付テ關心ヲ持タ
レル所ノ識者ハ矢張リ私ト同樣ニ此點ニ
付テハ尙ホ〓究ノ餘地ガアルコトヲ考ヘラ
レルデアラウト思フ、官營ヲ民營ニ移スト
云フコトハ至極ヤサシイ、是ハ恐ラクハ何
時デモ出來ルノデアル、併ナガラ民營ヲ官
營ニ移スト云フコトハ甚ダ困難デアル、今
迄ノ製鐵委員會ニ於テ、調査會ニ於テ、此官
營ニシタラドウダト云フコトヲ考ヘルコト
トノ出來ナカッタコトハ、民營ヲ官營トスルト
云フコトニ非常ナ困難ガ伴フカラデアルノ
デ、同ジ合同ヲスルコトニナレバ何方へ持ツ
テ行ッテモ宜イ譯デアル、デアルケレドモガ
民營ヲ官營ニスルト云フコトハ寧ロ言フ
ベクシテ行フノニハ頗ル難イ、鐵道ノ國有
トカト云フヤウナコトヲ致シマスルケレド
モガ中〓容易ナコトデハ民營ヲ官營ニスル
コトハ運バナイデアリマスルカラシテ此
問題ハ今急イデ決定シナクテモ、一年カ二
年······二年トハ申シマセヌガ一年アレバ
是迄ニ來タノデアリマスルカラシテ、十分
結論ヲ得ルコトガ出來ルダラウト思ヒマス
ルカラシテ、此點ヲ十分ニ〓究シテ置ク、
〓究シテ極メルコトガ必要デアラウト思フ、
私ハ此中島商工大臣ガ責任問題ヲ起スヤウ
ナコトヲ好マナイノデアリマス、此商工大
臣ニ對シテハ何等ノ不安ヲ有ッテ居ナイ、何
等ノ不信ヲ有フテ居ル者デナイノデアリマ
ス、併ナガラ私ハ此合同ガ、合同ハ政府デ
モ五箇年ヲ期シテ居ラレル、中島商相ノ在
任中ニ此合同ガ完成スルト云フコトハ如何
ニシテモ考ベルコトガ出來ナイノデアリマ
スルカラシテ、私ハ是迄持ッテ來ラレタノハ
中島商工大臣ノ功績デアリマスガ、敢テ之
ヲ異常ニ御急ギニナル必要ハナイノデアリ
マスルカラシテ、此點ヲ此製鐵國策ノ最後
ノ場面ヲ愼重ニスル爲メ、今一年ヲ御延バ
シニナッテ、輿論ニモ〓究ノ餘裕ヲ與ヘ、議
員ニモ考慮ノ餘地ヲ與へルト云フコトガ、
私ハ此問題ヲ處理スル上ニ最モ必要ナコト
デアラウト思フ、私ハ是ガ今極メナケレバ
ナラヌト云フ程ノ、大急ギデ極メル必要ハ
少シモナイト思フ、此委員會ニ於テ非常ナ
貴重ナル所ノ質疑應答ガアッタノデアリマ
ス其質疑應答ハ固ヨリ此議場デ委員長ノ
報〓ニ依ッテ十分盡スコトハ出來ナイコト
ハ明カデアル、私共ハ其片鱗ヲモ實ハ伺フ
コトガ出來ナイデ此問題ヲ處理シナクチヤ
ナラヌ、私ハ斯樣ニ輕卒ニ事ヲ決スル必要
ハ一ツモナイ、十分ニ速記錄ヲモ讀マレタ
上デ、各自ノ御意見ヲ以テ御極メニナル程
ノ餘裕ヲ與ヘラレテ、是程ノ大問題ヲ決ス
ルニシテハ如何ニモ不備デアル、斯ウ考ヘ
ル者デアリマス、先程モ申シマシタ通リニ
此問題ニ關シテハ根本的ノ反對スル所ノ意
見ハマダ確定シテ居リマセヌガ、事ヲ愼重
ニスル爲ニ此議場ニ於テハ一タビ此案ヲ否
決セラレテ、モウ一度出直シテ來ルト云フ
コトガ私ハ必要デアルト思フ、此問題ニ關
シテハ委員會ニ於キマシテモ先程モ述ベマ
シタ通リ、上山君ト伊澤君トガ主トシテ反
對セラレマシテ、此議場ニ於テ伊澤君ハ是
非反對論ヲ述べタイト考ヘテ居ラレルノデ
アリマスルガ、伊澤君ハ御承知ノ人モアリ
マセウシ、御承知ノナイ方モアリマセウガ、
入齒ガ動イテ誠ニ演說ガ不便デアルカラシ
テ、代ッテ君ガ反對論ヲ述べテ吳レト云フ御
話デアリマシテ、私ハ伊澤君ノ代辯ヲスル
ノデアリマセヌ、私ハ獨自ノ意見ヲ以テ反
對論ヲスルノデアリマスルケレドモガ斯
樣ナ私ノ不得手ナ問題ニ付テ反對論ヲ述べ
ルニ至ッタ理由ハソコニアルノデアリマス、
其點ハ御了承ヲ願ヒタイト思フ、私ノ反對
論ハ是デ終リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=70
-
071・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 是ニテ通告者ハ
終リマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=71
-
072・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 別ニ他ニ發議モ
ナイト認メマスカラ、本案ニ付テ採決ヲ致
サウト存ジマス、兩案トモ第二讀會ニ移ス
ベシトスル諸君ノ起立ヲ請ヒマス
〔起立者多數〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=72
-
073・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 過半數ト認メマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=73
-
074・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直ニ兩案ノ第二讀會
ヲ開カレムコトヲ希望イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=74
-
075・戸澤正己
○子爵戸澤正己君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=75
-
076・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 西大路子爵ノ兩
案ノ二讀會ヲ直ニ開クト云フ動議ニ同意ノ
諸君ノ起立ヲ請ヒマス
〔起立者多數〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=76
-
077・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 過半數ト認メマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=77
-
078・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 兩案全部ヲ問題
ニ供シマス、全部原案ニ御異存ゴザイマセ
ヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=78
-
079・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=79
-
080・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直ニ兩案ノ第三讀會
ヲ開カレムコトヲ希望イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=80
-
081・戸澤正己
○子爵戸澤正己君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=81
-
082・徳川家達
○護長(公爵德川家達君) 西大路子爵ノ動
議ニ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=82
-
083・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=83
-
084・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 兩案トモ第二讀
會ノ決議通リデ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=84
-
085・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=85
-
086・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 此際諸君ニ御諮
リ致シマス、御異議ガナケレバ日程ヲ變更イ
タシマシテ追加豫算案三案竝ニ醫師法兩院
協議會ノ成案ヲ議シタイト存ジマス、念ノ
爲メ此際申上ゲマスガ、產師法案、大正十
五年法律第五十二號中改正法律案、住宅組
合法中改正法律案、住宅組合ニ對シ償還資
金給與ニ關スル法律案、少年〓護法案委員
長報告書、醫師法中改正法律案兩院協議委
員議長報告書ハ文書函ニ配付ヲ致シテ置キ
マシタ念ノ爲ニ申上ゲテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=86
-
087・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 豫算委員長柳澤
伯爵ノ登壇ヲ望ミマス
一昭和八年度歲入歲出總豫算追加案第
二號)
一昭和八年度各特別會計歲入歲出豫算追
加案(特第二號)
一豫算外國庫ノ負擔トナルベキ契約ヲ爲
スヲ要スル件(追第二號)
右衆議院ヨリ受領シタル各案ヲ審査シ總
テ衆議院議決案ノ通可決スヘキモノナリ
ト議決セリ依テ及報告候也
昭和八年三月二十五日
委員長伯爵柳澤保惠
貴族院議長公爵德川家達殿
〔伯爵柳澤保惠君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=87
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088・柳澤保惠
○伯爵柳澤保惠君 只今上程セラレマシタル
三案ハ御承知ノ通リ三陸地方ノ災害復舊ニ
關スル追加豫算竝ニソレニ關係イタス契約
ニ關スル件デゴザイマス、先般ノ三陸地方
ニ於キマスル震害、水害、火災等ニ對シ、
速ニ復舊ノ途ヲ講ゼラレタキ希望ハ地元ノ
人ミハ勿論ノコト、本院ニ於テモ然リデ
アッタト考ヘテ居リマス、幸ニ昨日右復舊
ニ關シマスル三案ガ衆議院ヨリ廻リマシタ
ノチ、豫算委員會ヲ本日午前ニ開キ、分科
ニ移スコトヲ省略イタシマシテ審議イタス
コトニ相成リマシタ、昭和八年度歲入歳出
總豫算ノ追加トシテ計上セラレマシタル金
額ハ第二號案ニゴザイマス通リ、歲入歲
出各、、六百三十萬九千七百三十四圓デゴザ
イマス、歲出經常部ニ於キマシテハ大藏省
所管ノミデ國債整理基金特別會計ヘ繰入レ
ノ增ガ十八萬九千五百圓、歲出臨時部ニ於
キマシテハ內務省、陸軍省、海軍省、司
法省、文部省、農林省、商工省、遞信省ノ
八省ニ關係シテ居リマスガ、十萬圓以上ノ
モノヲ申シマスト、歲出臨時部ニ於キマシ
テ、內務省所管ニ於テ三陸地方震災善後諸
施設ニ關スル經費、是ガ二百四十六萬八千
百四圓デゴザイマシテ、是ガ六ツノ項目ニ
分レテ居リマス、其中ノ大キナ額ト申シマ
スモノハ震災土木費補助、是ガ二百萬九千
九百圓デゴザイマス、次ニ農林省所管ニ關
シマスル經費ハ三百十九萬四千四十七圓、
是ガ四項目ニ分レテ居リマスガ、最モ巨額
ナ分ハ三百十六萬四千四百二十五圓デゴザ
イマス、是ハ產業復舊助成ニ關スル經費デ
ゴザイマス、此外ノ六省ニ於キマシテハ左
シタル巨額ノ經費ガゴザイマセヌノデ是ハ
略シマス是等ニ對シマスル財源ハ相變ラ
ズ全部公債ニ依ルノデゴザイマス、卽チ歲
入臨時部ニ於テ公債金ノ增加ト致シマシ
テ、歲出全部ニ對スル額ガ出テ居リマス、
特第二號及追第二號ハ何レモ只今簡單ニ
申上ゲマシタル第二號ニ關係ノアル金額デ
ゴザイマス、右ノ豫算ハ全クノ應急復舊ノ
經費デゴザイマシテ、過去ニ起リマシタ三
陸被害ノ狀況ヤ竝ニ最近ニ起リマシタ災害
ニ鑑ミマシテ、種々ノ方面ニ於ケル恒久的
施設竝ニ對策等ニ關シマシテハ追〓此調
査ヲ進メラレマシテ實行ニ著手セラルル御
考ヘデアリマスガ農林方面ニ於キマシテ
ハ先ヅ半箇年位ノ間ニ調査ヲ終ルト云フ
御見込デアリマス、又御承知ノ通リ今囘ノ
災害ハ割合ニ人的被害ハ少イノデアリマシ
テ、物的被害ガ極メテ多イノゴザイマス、
此邊ノ事實ヲ十分ニ考慮ニ入レ、其防止策
ヲ十分考究スル筈デアルト云フヤウナ政府
ノ御答辯ニ依ッテ見マスルト、是又遠カラザ
ル中ニ、對策ヲ御實行ニナルモノト推察イタ
シマシタ、右申上ゲマシタ外ニ政府ハ低利
資金融通ノ途ヲモ開クノデアリマス、此資
金ハ目下マダ未定デハゴザイマスガ、千二
百萬圓位ト考ヘテ居ラレマス、其中ノ百九
十萬圓程ハ利子ノ補給ニ充テルノデ、殘リ
千萬圓ノ半分ハ地方ノ負擔トナリマス、殘
リノ分ハ地方ガソレヲ借入レマシテ仕事ヲ
スル、其內容ニ付テハ目下調査中デアルト
云フコトデゴザイマス、次ニ申上ゲタイコ
トハ海嘯災害豫防調査及地震ノ調査〓究ノ
件デゴザイマス、之ニ付キマシテハ內務省
ニ於テ二萬圓、農林省ニ於テ二萬圓、文部
省ニ於テ一萬五千圓、合計三省ニ跨ガリマ
シテ五萬五千圓ノ支出ガゴザイマス、是ハ
今囘ノ災害ニ關スル調査竝ニ〓究費デゴザ
イマスガ、將來ハ進ンデ各地樞要ナル地點
ニ測候所ノ設備ヲ增加シ、是等ノ災害豫防
ノ途ヲ開クヤウニシテハドウデアラウト云
フ一委員ノ質問ニ對シ··尙ホ本邦ニ於
ケル地震學ノ進步ハ世界周知ノ事實デアル
以上、此方面ノ努力ノ考ヘハナイカト云フ
御質問ニ對シマシテ······之ニ類似ノ御質疑
ハ嘗テ本會議ニ於テモ現ハレマシタガ文
部當局ハ十分考慮シテ見ヤウガ、今日ハ未
ダ測候所增設ノコトハ考ヘテ居ラヌト云フ
御返事デゴザイマシタ、如何ニモ地震學ノ
進步ニ對スル認識ガ御不足デアルヤウニ推
察セラレマシタ、此外ニハ內務省ニ於キマ
スル震災土木費ノ內容、農林省ニ於キマス
ル產業復舊助成ニ關スル經費ノ內容ニ付テ
質疑應答ガゴザイマシタ、只今申上ゲタコ
トガ質疑應答ノ大要デゴザイマス、最後ニ
討論ニ入リマシタガ、政府デ能ク調査々々
ト申サレマス其調査ノ速ニ決定セラルルコ
ト、又測候所ノ增設モ速ニ實行セラレタイ
ト云フ御希望ガ出マシタ、此三案トモ異議
ナク可決セラレマシタ、右御報告申上ゲマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=88
-
089・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 只今豫算委員長
柳澤伯爵ノ報告セラレマシタ豫算案三案ヲ
一括シテ議題トナスコトニ御異存ゴザイマ
セヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=89
-
090・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認
メマス、豫算案三案トモ原案ニ御異存ゴザ
イマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=90
-
091・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=91
-
092・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 是ヨリ醫師法中
改正法律案兩院協議會ノ成案ヲ議題ト致シ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=92
-
093・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 細川侯爵ノ登壇
ヲ望ミマス
醫師法中改正法律案
右別册ノ通兩院協議會成案成立セリ依テ
及報告候也
昭和八年三月二十五日
醫師法中改正法律案兩院協議委員議長
侯爵細川護立
貴族院議長公爵德川家達殿
醫師法中改正法律案兩院協議會成
案
第四條ノ二醫師ニ非ザル者(公共團體
ヲ除ク)診療所ヲ開設セムトスルトキ
ハ命令ノ定ムル所ニ依リ地方長官(東
京府ニ在リテハ警視總皿)ノ許可ヲ受
クベシ
前項ニ規定スルモノノ外診療所ニ關シ
必要ナル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
〔侯爵細川護立君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=93
-
094・細川護立
○侯爵細川護立君 醫師法中改正法律案ノ
兩院協議會ノ結果、委員會ノ經過竝ニ結果
ヲ御報告イタシマス、協議會ハ成規ノ手續
ヲ經マシテ今朝十時半開會イタシマシタ、
僅カ一ツノ質問應答ノ後直ニ小委員ニ付託
スベシト云フ動議ガ出マシテ之ヲ小委員ニ
付託イタシマシタ、各、三名ノ小委員デア
リマス、小委員諸君ハ熱心ニ雙方ノ意ノア
ル所ヲ披瀝サレマシテ、正午過ギマスル頃
成案ヲ得タノデアリマス、其成案ヲ協議會
ニ報告サレタノデアリマス、其成案ハ旣ニ
御手許ニ廻ッテ居ルト存ジマスガ、尙ホ一
應玆ニ讀ミ上ゲマス
醫師ニ非ザル者(公共團體ヲ除ク)診療所
ヲ開設セムトスルトキハ命令ノ定ムル所
ニ依リ地方長官(東京府ニ在リテハ警視
總監)ノ許可ヲ受クベシ
前項ニ規定スルモノノ外診療所ニ關シ必
要ナル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
斯樣ナ案デアリマス、小委員長ヨリ協議會
ニ報〓サレマシタ際ニ、何レモ之ニ對シマ
シテ何等ノ議論モアリマセヌ、全會一致
ヲ以テ可決サレタノデアリマス、此段御報
告申上ゲマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=94
-
095・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 兩院協議會成案
ニ同意ノ諸君ノ起立ヲ請ヒマス
〔總員起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=95
-
096・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 全會一致ト認メ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=96
-
097・池田政時
○子爵池田政時君 此際日程ヲ追加シ、大
正十五年法律第五十二號中改正法律案ヲ上
程シ、其審議ヲ進メラレムコトヲ望ムト云
フ勳議ヲ提出イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=97
-
098・戸澤正己
○子爵戸澤正己君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=98
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099・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 池田子爵ノ議事
日程追加ノ動議ニ同意ノ諸君ノ起立ヲ請ヒ
マス
〔起立者多數〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=99
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100・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 過半數ト認メマ
ス、政府ノ同意ヲ得マシタ
大正十五年法律第五十二號中改正法律
案
右本院提出案及送付候也
昭和八年三月二十五日
衆議院議長秋田〓
貴族院議長公爵徳川家達殿
大正十五年法律第五十二號中左ノ通改正
ス
第三條第一項中「〓算金ニ付利子ヲ附シ
五年ヲ超エサル期間」ヲ「〓算金ニ付利子
ヲ附シ昭和八年四月一日ヨリ五年ヲ超エ
サル期間」三郎人発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=100
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101・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 特別委員ノ氏名
ヲ書記官ヲシテ朗讀ヲ致サセマス
〔瀨古書記官朗讀〕
大正十五年法律第五十二號中改正法律案
特別委員
侯爵佐佐木行忠君子爵白川資長君
子爵豐岡圭資君男爵關義壽君
宮田光雄君丸山鶴吉君
各務鎌吉君金子元三郞君
岩崎〓行君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=101
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102・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 日程第五、農村
負債整理組合法案、政府提出、衆議院送付、
第一讀會ノ續、委員長報告、野村子爵
農村負債整理組合法案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報告候也
昭和八年三月二十四日
委員長子爵野村益三
貴族院議長公爵德川家達殿
〔子爵野村益三君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=102
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103・野村益三
○子爵野村益三君 農村負債整理組合法
案、現內閣ハ昨年ノ八月ニ開カレマシタ臨時
議會ニ於テ、本法案ト趣旨ヲ同ジクスル、而
モ同ジ名ノ法案ヲ提出イタサレマシタ、是ガ
衆議院ニ於テ審議ヲセラレマスル時ニ、衆
議院ハ之ニ修正ヲ加へマシテ、先ヅ本案ニ
關スル農村ノ二字ヲ削リ、負債整理組合ノ
組織ヲ無限或ハ保證責任ト致シマシテ、尙
ホ新ニ負債整理組合中央金庫ヲ設クルコト
ト致シ、而シテ負債整理組合ヲシテ此中央
金庫ニ加入出資セシムルコト等ト改メマシ
タ之ヲ本院ニ送付イタシマシタガ、本院
之ニ修正ヲ加フルニ及ンデ兩院協議會ノ開
會ヲ要求イタシ、結局本院ハ兩院協議會ノ
成案卽チ衆議院修正案ヲ否決シ去ッタコト
ハ皆樣方ノ御記憶ノ通リデアリマス今囘
提出ニ係ルモノハ當時ノ事情或ハ要求等ヲ
彼此レ斟酌ヲ致シマシテ、其採ルベキモ
ノハ取入レ、關係當局ト十分ノ協議ヲ致
シマシテ、左樣ナ譯デアルノデ、會期切
迫ノ今日ニ及ンデ漸ク之ガ提案ヲ見タト云
フ次第ナノデアリマス、本案ノ内容ハ殊更
此處デ御紹介ハ申シマセヌガ、三章、三十
四條及附則ヨリ成立チマシテ、而モ隣保共
助ノ精神ニ終始スルコト、負債償還ハ經濟
更生ト不可分タルベキコト此二ツノ事項
ハ本案ヲ一貫スル重要ナル事柄デアルノデ
アリマス特別委員會ハ三日間ニ互フテ質
疑應答ヲ試ミマシタ、ナカ〓〓質疑ハ澤山
ゴザイマシタガ、其大略ヲ御紹介申上ゲマ
スト、第一ハ立法ノ根本觀念、第二ハ負債
ニ付テデアリマス、農漁山村負債ノ總額、
之ヲ推定スルノ方法竝ニ種類、而シテ負債
サルベキ債權ノ總額、斯ウ云フヤウナ事柄
ニ付テ質疑應答ガアリマシタ、第三ニハ根
本骨子デアル所ノ負債整理組合、是等ニ付
キマシテモ其配置ヲ如何ニスルカ、部落區
域ヲ可トスルカ、町村區域ヲ可トスルカ、
組合員ガ之ニ加入出資スルコトニ付キマシ
テ加入脫退竝ニ除名ノ規定ニ付キマシ
テ無限責任、保證責任、竝ニ其補償追加
額ニ付キマシテ、尙ホ償還計畫ト更正計畫
ニ付キマシテ、進ンデ負債整理組合ノ働キ、
卽チ負債整理組合ノ機能ニ關シマシテハ、
償還計畫、負債ノ整理サルベキ限度及其種
類償還計畫ノ立チ得ザルモノニ對スル處
置、惡辣ナル債權者ニ對スル處置、脫退者
ノ立場、償還確保ノ方法、斯ウ云フヤウナ
事柄ニ付テ詳細ナル質疑ヲ致サレタノデア
リマス、其他ノ機關ニ付キマシテハ市町村
負債整理委員會、金錢債務臨時調停委員
會、ソレ等ノ組織權限等ニ付テ、尙ホ進ミ
マシテ、特融、所謂特融二億圓ヲ以テ果シ
テ足レリトスルカ、竝ニ特融ノ順序、進ンデ
補償ノ問題デアリマスガ、損失決定ノ基準、
損失審査會ノ組織權限及六千萬圓ノ損失金
額ヲ以テ足レリトスルカ、ドウデアルカ、
尙ホ六千萬圓以上ノ損失ヲ及ボシタ時ニハ
如何ニ之ガ責任ヲ何ノ方面ガ取ルノデアル
カ、竝ニ內務大臣ガ三千萬圓ノ補償ヲ贊成
セラレタ理山、斯樣ナルコトニ付テモ詳シ
ク質疑應答ガ交換サレマシタ、尙ホ大切ナ
コトハ市町村ノ負擔能力ニ關シテ所謂四
分ノ一、一千五百萬圓ノ負擔ハ今日ノ疲弊
セル町村ニ於テ果シテ其負擔ニ堪ヘ得ラル
ベキヤ否ヤ、其他ノ本法ヲ施行イタシマス
上ニ樣〓ノ施設ヲ。要スルノデアラウ、共施
設ト致シマシテハ利子ノ補給ハ如何デア
ル、負擔ノ輕減ヲ爲ス意思ハナイカ、竝ニ
土地ノ證劵化ノ問題ハ如何ヤウニ考慮イタ
ス、低利資金デアリマスガ其利子ノ程度ハ
如何、備荒貯蓄ヲ奬勵スルノ意思アリヤ否
ヤ、農業上ノ保險ニ付テハ如何樣ニ考ヘテ
居ルカ、竝ニ諸機關ヲ指導監督スルコトニ
付キマシテ詳シイ質疑應答ガゴザイマシ
ク、尙ホ提案ノ時期ニ付テハ先刻申上ゲタ
通リデアリマスガ、施行ノ時日ニ付テハ當
局者ノ言ハレル所ニ依リマスト、成ルベク
早ク之ヲ施行イタシ、八月ノ下旬、遲クモ
九月ニハ之ヲ執行イタシテ十月ニハ融通ニ
取掛カルベキ積リデアルト云フ答辯デアリ
マシタ、斯樣ナル澤山ノ質疑應答ヲ便宜上
要約シテサウシテ御紹介ヲ申上ゲマス本
法ハ所謂臨時立法デアッテ且ツ農山漁村ノ
根本立直シニ關スル重要政策デアルガ、元
元非常立法ニ屬スルモノナルコトハ當局
ハ立案當時ニ於テ十分ニ考慮シタ、尙ホ其
上ニ農林審議會ニ於テ是亦愼重ナル審議ヲ
加ヘラレタモノデアル、是ガ先刻申上ゲ
ク本法立案ニ對スル根本觀念ニ付テノ應
答デアリマス、次ニハ農漁業家ノ負擔ノ
種類ニ付テ、明確ニ之ヲ區別スルコトハ出
來ナイ、其總數モ亦推定ニ依ルモノデア
ルケレドモ、其中ニ整理ヲ要スベキト思ハ
レル額ハ約六億圓デアル、之ニ對シテ償
還計畫ヲ立テ緩和ノ協定ヲ斡旋スレバ、
特融二億圓、卽チ整理ヲ要スベキ額ノ三割
ヲ以テ先ヅ〓〓足レルモノト思考スル、次
ニハ負債整理組合ハ約六十町村内ニ部落區
域ニ依ッテ設置セウメ、是ニハ債務者債權者
其他ノ人ミ等三四十名ヲ加入セシメ、所謂
隣保共助ノ精神ニ基キ、最モ眞面目ニ又最
モ力ヲ入レシメテ償還更生兩計畫樹立ノ
下ニ整理ノ目的ヲ遂ゲシメル、次ニハ是ハ
先刻御紹介イタシマシタガ、所謂償還更生
兩計畫ハ不可分ノ關係ニアルコト、進ンデ
負債ノ整理ヲ受クベキ者ハ各部落ノ中小農
漁業者ト致シマシテ、其金額ハ一人先ヅ三千
圓ヲ限度トシ、所謂償還確保ノ方法ヲモ講
ジ、特別融通ニ依リテ比較的長期ニ亙リテ、
償還更生卽チ生活ノ根本立直シヲ實行セシ
メル、進ミマシテ組合員ノ保證責任限度ハ
適當ニ考慮ヲ加ヘル、尙ホ大體負債整理組
合ニシテ整理ノ目的ヲ達成シ得ベシト考ヘ
ルケレドモ、尙ホ此外ニ市町村負債整理委
員會、金錢倩務臨時調停法ノ機能ニ依ルヲ
得セシムルコト、次ニハ特融ハ二億圓ヲ以
テ足レリトスル、補償ハ損矢決定基準、損
失審査會等ノ審査ト相俟ヲテ、結局六千萬圓
ノ損失ヲ越スコトナクシテ濟ムベシト思料
スル市町村ノ負擔一千五百萬圓ト云フノ
モ、之ヲ市町村ニ平均ニ分ケマスト二千五
百圓ニ當ル程度デアッテ、且ツ長期ニ亙ルモ
ノデアルカラシテ甚シキ重荷ヲ負ハセルコ
トニハナルマイ、利子補給負擔輕減及土地
ノ證劵化ノ如キハ、今俄ニ之ヲ實現セシム
ルト云フコトガ出來ナクテモ、特別融通ハ
成ルベタ低資ニ依リマシテ、尙ホ備荒貯蓄
ノ如キモ之ヲ奬勵シ農漁業保險ノ如キモ
成ルベク早ク之ヲ實現セシメタイノデ、且
又農漁村經濟更生計畫トモ終始シテ、諸機
關、殊ニ負債整理組合ヲ監督指導シ、所期
ノ目的ヲ遂行イタシタイ、而シテ本法ノ施
行期日竝ニ提案ノコトニ付キマシテハ先刻
申上ゲタ通リデアリマス、特別委員會ハ以
上ノ如キ質疑應答ニ三日ヲ費シマシテ二
十四日ニ質疑ヲ終ヘテ討議ニ入リマシタ、
討議ニ入リマシテハ別ニ反對ノ議論ハ出マ
セヌデゴザイマシタガ、其贊成ノ論旨ハ、搔
摘ンデ申スト大約次ノ通リデアリマス、本
法ハ形式ニ於テハ略ボ整ヘルヤウニ思ハ
ル、併シ其內容ヲ仔細ニ檢討イタシマスル
ト幾多ノ缺陷アルコトヲ認メル、併ナガラ
斯カル場合今俄ニ之ヲ修正スルト云フコト
モ出來ナイコトデアルシ、且ツ農漁山村ノ
逼迫セル現狀ニ鑑ミマシテ、共精神ノ作興、
其自力更正ニ幾多ノ貢獻アルベキコトヲ思
ヒ、又當局者ノ努力且ツ法案內容ノ不備ヲ
モ整ヘラルベキコトヲモ期待シテ、玆ニ之
ヲ贊成スルト云フコトニアッタノデアリマ
スガ、之ニ引續イテ幾多色ミ樣ミノ希望ガ
出タノデアリマス、其希望事項モ殆ド十指
ヲ屈スルニ達シタノデアリマスガ、其中デ
極メテ重要ナル二三ヲ御紹介ヲ致シタウ存
ジマス、尙ホ御希望ノ事柄モ結局質疑應答
ノ際ニ、質疑ヲサレタ趣旨ヲ敷衍サレタ
モノガ多イノデアリマス、又力說サレタ
ノモ多イノデアリマス、本法施行ニ際シ
テハ能ク地方ノ特殊事情ヲ考察セラレタ
イ、本法ノ非常立法デアル所ノ趣旨ヲ能
ク能ク地方ニ徭底セシメテ、地方ノ人ヲシ
テ徒ニ依賴心ヲ助成シムルコトノナイヤウ
二、從テ地方ニ不良ノ影響ヲ及ボスコト
ノナイヤウニ致シタイ、農漁山村今日ノ
窮乏ヲ救濟スルニハ精神ノ作興、經濟殊ニ
消費經濟ノ改善ト兩々相俟チ相依ルコトヲ
必要トスル、若シ本法ノ運用ヲ過ッタナラ
バ或ハ思想惡化ノ導火線ニニナルカモ知
レナイノデアル、本法ノ運用其宜シキヲ得
テ、精神ノ作興、殊ニ責任觀念ヲ增進セシ
ムルコトニ致シタイ、又サウアルベキ筈デ
アル、政府ノ反復力說セラルル所ノ隣保共助
ノ精神ノ徹底、諸機關ノ指導監督ニ何レモ
十分ノ努力ト注意ヲ拂,テ萬遣算ナキコト
ヲ期セラレタイ、尙ホ一委員ヨリハ本法ハ
又農漁山村振興ノ一策ト認メル、從來質疑
應答ヲ拜聽イタシマスト、農村其モノニ對
シテ終始理想的ノ觀察ヲ下シ、此根本觀察
ノ下ニ總テノ論議ヲ試ミラレルヤウデア
ル、併ナガラ今日ノ農村ハ必シモ理想的ノ
モノノミ存スルノデハナイ、所在幾多ノ缺
陷ヲ認メラルルノデアル、斯ウ云フモノヲ
中心ト致シタナラバ、果シテ豫期ノ精神ノ
作興、經濟ノ更生、延イテ負債ノ整理ガ豫
期ノ如クニ遂行セラルルヤハ疑問デアル、
サレバ政府ハ能ク農漁山村ノ眞相ヲ考察シ
テ、一切且ツ特殊ノ事情ヲ究メ、斯クシテ
本法所期ノ目的ヲ達成スルヤウニ考慮竝ニ
努力ヲ望ムソレカラ由來負債ノ總額ハ五
十億圓ニモ上ボルコトデアルカラシテ、其
利子ヲ考ヘテ見テモナカ〓〓容易デナイ、
決シテ時日ノ推移ヲ許サレザルモノガアル
ノデアル、本法ハ成ルベク速ニ施行セラレ
タイ、斯ウ云フノガ御希望ノ中ニ重モナモ
ノデアリマス、斯樣ナ御希望ガアリマシ
テ、出席委員ノ全會一致ヲ以テ此法案ヲ可
決ヲ致シマシタ、終リニ農林大臣ノ御挨拶
ガアリマシテ、極ク打明ケタ御話ガアリマ
シタ、其點ヲ聊カ御紹介ヲ申上ゲマセウ、
農林大臣ハ種々考慮スベキ諸點ヲ示サレ
タコトハ衷心カラ感謝スル所デアリマス
何分ニモ本法ハ新シキ施設ノコトデアルノ
デ、昨年來考究ハ致シマシタガ、種々ノ事
情ガ御話ニ依リマシテ或ハ氣ノ付カナカフ
タ點、若クハ考慮ノ未ダ至ラザリシ點ヲ諒
承スルコトヲ得タコトハ、重ネ〓〓感謝ニ
堪ヘナイ所デアル、御示シニ依ッテ十分ニ
考慮ト努力トヲ加ヘマセウ、左樣ナ御挨拶
デアリマシテ、玆ニ本特別委員會ノ審議ヲ
完了イタシタノデアリマス、以上報告ヲ終
リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=103
-
104・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 本案ヲ第二讀會
ニ移スコトニ御異存ゴザイマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=104
-
105・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=105
-
106・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直ニ本案ノ第二讀會
ヲ開カレムコトヲ希望イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=106
-
107・戸澤正己
○子爵戸澤正己君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=107
-
108・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 西大路子爵ノ動
議ニ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=108
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109・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=109
-
110・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 本案全部ヲ問題
ニ供シマス、全部原案ニ御異存ゴザイマセ
ヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=110
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111・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=111
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112・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直ニ本案ノ第三讀會
ヲ開カレムコトヲ希望イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=112
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113・戸澤正己
○子爵戸澤正己君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=113
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114・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 西大路子爵ノ動
議ニ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=114
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115・徳川家達
○議長 公爵徳川家達君)御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=115
-
116・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 第二讀會ノ決議
通リデ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=116
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117・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=117
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118・大久保利武
○侯爵大久保利武君 本員ハ此際ニ日程ヲ
變更シテ、少年〓護法案ヲ上程セラレマシ
テ、審議ヲ進メラレムコトノ動議ヲ提出イ
タシマス、何卒諸君ノ御贊成ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=118
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119・大河内輝耕
○子爵大河內輝耕君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=119
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120・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 大久保侯爵ノ議
事日程變更ノ動議ニ御異存ゴザイマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=120
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121・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=121
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122・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 少年〓護法案、
衆議院提出、第一讀會ノ續、委員長報告、
特別委員長大久保侯爵ノ登壇ヲ望ミマス、
政府ノ同意ヲ得マシタ
少年〓護法案
右別冊ノ通修正議決セリ依テ及報〓候也
昭和八年三月二十五日
委員長侯爵大久保利武
貴族院議長公爵德川家達殿
(小字及-ハ特別委員修正)
少年〓護法
第一條本法ニ於テ少年ト稱スルハ十四
〓ニシテ不良行爲ヲ爲シ又
歲ニ滿タザル者〓ヲ謂フ
ハ不良行爲ヲ爲ス虞アル者
第八條第一項第二號ノ場合ニ於テハ其
ノ年齡ヲ十八歲未滿トス
第二條北海道及府縣ハ少年〓護院ヲ設
置スベシ
前項少年〓護院ノ數及收容定員ハ命令
ヲ以テ之ヲ定ム
國ハ必要ノ場所ニ少年〓護院ヲ設置
ス
國立〓護品ニハ〓護事務ニ從事スル職
員養成所ヲ附設スルコトヲ得
第三條少年〓護院ニ於ケル〓護ノ本旨、
〓科、設備及職員ニ關スル事項ハ勅令
ヲ以テ之ヲ定ム
少年〓護院內ニ少年鑑別機關ヲ設
第四條道府縣ハ刺令ノ定ムル所ニ依リ
クルコトヲ得
少年鑑別機關ヲ設置スルコトヲ得
第五條道府縣ノ設置スル少年〓護院及
少年鑑別機關ハ地方長官、國立少年〓
護院ハ内務大臣之ヲ管理ス
第六條道府縣ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ
少年〓護ノ爲少年〓護委員ヲ置クベシ
第七條國道府縣ニ非ザル者本法ニ依ル
〓護ヲ目的トスル少年〓護院ヲ設置セ
ントスルトキハ內務大臣ノ認可ヲ受ク
ベシ
第八條地方長官〓左記各號ノ一ニ該當
スル者アルトキハ之ヲ少年〓護院ニ入
院セシムベシ
一少年ニシテ不良行爲ヲ爲シ又ハ不
良行爲ヲ爲ス虞アリ且適當ニ親權又
ハ後見ヲ行フモノナキ者
二少年ニシテ親權者又ハ後見人ヨリ
入院ノ出願アリタル者
三少年審判所ヨリ送致セラレタル者
地方長官ハ前項第一號及第二號ニ該
ヲ爲ス
當スル者ニ對シ前項ノ處分ノ外適
ノ外之ヲ少年〓護委員ノ觀察ニ付スルコト
當ナル施設若ハ家庭ニ委託シ又ハ少年
ヲ得
〓護委員ノ監督ニ付スルコトヲ得
第九條內務大臣ハ前條第一項第一號又
ハ第二號ニ揭グル者左記各號ノ一ニ該
當スルトキハ之ヲ國立〓護院ニ入院セ
シムルコトヲ得
一性狀特ニ不良ニシテ地方長官ヨリ
入院ノ申請アリタル者
二前號ニ該當セズト雖特ニ入院ノ必
要アリト認メタル者
ハ第八條第一項第一號又
第十條地方長官必要アリト認ムルトキ
ハ第二號ニ該當スル在院者ヲ何時ニテモ條
ハ少年〓護院ヲ退院シタル者ニ對シ適
件ヲ指定シテ假ニ退院セシムルコトヲ得
當ノ保護監督ヲ行フベシ
前項ノ假退院者ハ之ヲ家庭其ノ他適當ナル
施設ニ委託シ又ハ少年〓護委員ノ觀察ニ付
スルコトヲ得
假退院者ハ之ヲ在院者ト看做ス
假退院者ニシテ指定ノ條件ニ違背シタルト
キハ地方長官ハ之ヲ復院セシムルコトヲ得
少年ノ在院期間及觀察期間ハ少年
第十一條內務大臣又ハ地方長官必要ア
ノ滿二十歲ニ至ル迄トス但シ第八條第三號
リト認ムルトキハ前三條ノ處分ヲ解除シ
又ハ第四號ニ該當スル者ハ此ノ限ニ在ラズ
又ハ變更スルフトヲ得
內務大臣又ハ地方長官ハ在院者
第十二條第八條乃至第十條ノ規定ニ依
ニ對シ〓護ノ目的ヲ達シタリト認ムルトキ
ル處分ハ其ノ處分ヲ受クル者滿二十歲
ハ之ヲ退院セシムルコトヲ得
ニ達スル迄之ヲ繼續スルコトヲ得
第十三條學校長、市町村長、少年〓護委
員又ハ警察署長第八條第一項第一號ニ
該當スル者アリト認ムルトキハ之ヲ地
方長官ニ具申スベシ
第十四條地方長官、警察署長又ハ市町
村長必要アリト認ムルトキハ第八條第
一項第一號ニ該當スル者ノ處分決定ニ至
ル迄一時保護ノ爲適當ナル施設若ハ家
庭ニ委託スルコトヲ得仍警察署長ニ於
テ特ニ必要アリト認ムルトキハ五日ヲ
超エザル期間假ニ留置ヲ爲スコトヲ得
前項ニ依リ警察署長ニ於テ行フ留置ハ
他ノ收容者ト分離スベシ
第十五條少年〓護院長ハ在院者ニ對シ
親權ヲ行フ但シ親權者又ハ後見人アル者
ノ財產管理ニ付テハ此ノ限ニ在ラズ
第十六條內務大臣又ハ地方長官ハ本人
又ハ扶養義務者ヨリ在院委託及一時保
護ニ要シタル費用ノ全部又ハ一部ヲ徵
收スルコトヲ得
前項費用ノ徵收ハ必要ニ應ジ納付義務
者ノ居住地又ハ財產所在地ノ地方長官
又ハ市町村長ニ之ヲ囑託スルコトヲ得
第一項ノ費用ヲ指定ノ期限內ニ納付セ
ザル者アルトキハ國稅徵收法ノ例ニ依
リ處分スルコトヲ得
第十七條第八條乃至第十一條ノ處分ヲ
受ケタル者ノ親族又ハ後見人ハ入院後
六箇月ヲ經過シタル場合其ノ處分ノ解
除又ハ變更ヲ內務大臣又ハ地方長官ニ
出願スルコトヲ得
第十八條第八條第九條第十一條又ハ第
十六條第一項及第三項ノ處分ニ不服ア
ル者及前條ノ出願ヲ許可セラレザル者
ハ訴願ヲ提起スルコトヲ得
第十九條道府縣ノ設置スル少年〓護院
及少年鑑別機關〓第十條ノ保護監督少
年〓護委員。一時保護及地方長官ノ爲シ
タル委託ニ關スル費用ハ道府縣ノ負擔
トス
市町村長第十四條ノ一時保護ヲ爲シタ
ルトキハ其ノ費用ハ市町村費ヲ以テ一
時之ヲ立替フベシ
第二十條國庫ハ前條第一項ノ規定ニ依
ル道府縣ノ支出ニ對シ勅令ノ定ムル所
六
ニ依リ四分ノ一乃至二分ノ一ヲ補助ス
第七條ノ規定ニ依リ認可セラレタル少
年〓護院ノ支出ニ付亦前項ヲ適用ス
第二十一條第七條ノ規定ニ依リ認可ヲ
受ケタル少年〓護院ノ用ニ供スル土地
建物ニ對シテハ地方稅ヲ課セズ但シ有
料ニテ之ヲ使用セシメタル者ニ對シテ
ハ此ノ限ニ在ラズ
第二十二條內務大臣及地方長官ハ第七
條ノ規定ニ依リ認可ヲ受ケタル少年〓
護院ヲ監督シ之ガ爲必要ナル命令ヲ發
シ又ハ處分ヲ爲スコトヲ得
第二十三條第七條ノ規定ニ依リ認可セ
ラレタル少年〓護院本法若ハ本法ニ基
キ發スル命令又ハ認可ノ條件ニ違反シ
タルトキハ內務大臣ハ認可ヲ取消スコ
トヲ得
第二十四篠少年〓護院長ハ在院中所定
ノ〓科ヲ履修シ性行改善シタル者ニ對
シテハ其ノ退院後ニ於テ尋常小學校ノ
〓科ヲ修了シタル者ト認定スルコトヲ
得但シ少年〓護院ノ〓科ハ小學校令ニ
遵據シ文部大臣ノ承認ヲ經ルコトヲ要
ス
前項ノ認定ヲ受ケタル者ハ他ノ法令ノ
〓尋常
適用ニ關シテハ○小學校ヲ卒業シタル
者ト看做ス
第二十五條本法中町村又ハ町村費トア
ルハ町村制ヲ施行セザル地ニ在テハ之
ニ準ズベキモノトス
第二十六條少年ノ〓護處分ニ付セラレ
タル事項ハ之ヲ新聞紙其ノ他ノ出版物
ニ揭載スルコトヲ得ズ
前項ノ規定ニ違反シタルトキハ新聞紙
ニ在リテハ編輯人及發行人、其ノ他ノ
出版物ニ在リテハ著作者及發行者ヲ三
月以下ノ禁錮又ハ百圓以下ノ罰金ニ處
ス
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
感化法ハ之ヲ廢止ス
少年法ニ依ル保護處分ノ實施セラレザル
地區ニ限リ第一條第一項ノ年齡ハ之ヲ十
八歲未滿トス
本法施行ノ際現ニ存スル國立感化院及道
府縣立感化院ハ之ヲ本法ニ依リ設置シタ
ル少年〓護院ト看做シ其ノ在院者ハ之ヲ
本法ニ依リ入院セシメラレタルモノト看
做ス
本法施行ノ整現ニ存スル代用感化院ハ之
ヲ第七條ノ規定ニ依リ認可ヲ受ケタル少
年〓護院ト看做シ其ノ在院者ニシテ感化
法第五條ノ規定ニ依リ入院セシメラレタ
ルモノハ之ヲ本法ニ依リ入院セシメラレ
タルモノト看做ス
本法施行ノ際道府縣立感化院ノ設置ナキ
道府縣ハ本法施行ノ日ヨリ五年以內ニ少
年〓護院ヲ設置スルコトヲ要ス
〔侯爵大久保利武君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=122
-
123・大久保利武
○侯爵大久保利武君 只今上程ニナリマシ
タ少年〓護案ノ特別委員會ニ於ケル經過
竝ニ結果ヲ御報告申上ゲマス、本案ハ〓議
院提出ノ議案デゴザイマシテ、先ヅ本案ノ
主ナル要點ヲ申上ゲマシタ方ガ順序トシテ
宜カラウト存ジマスル、少年〓護法案ハ感
化法ノ改正案デゴザイマシテ、此法案ガ成
立イタシマスレバ感化法ハ廢止サレマシテ、
感化法ニ代ルベキ法律ニナルノデゴザイ
やっ、感化法ハ明治三十三年ノ制定デゴザ
イマシテ、爾來幾多ノ不備ヲ感ジテ居リマ
シタガ、其改正ノ機會ヲ得ズシテ今日マデ
經過イタシテ居ルノデアリマスルガ、其不
備ノ點ヲ補ヒマシテ本案提出ノコトニナリ
マシタノデ、其主ナル要點ヲ、會期切迫ノ折
柄デゴザイマスルカラシテ、極ク簡單ニ申
上ゲマスト〓護院ハ是マデノ感化院トシ
テ國立ノ感化院、公立ノ感化院、又私立
ノ感化院トシテ統制ヲ保ッテ居ラナカッタノ
デアリマスガ、今囘ノ改正ニ際シマシテ、
悉ク認可ヲ經テ感化院ハ設置スル、又旣設
ノ感化院モ同樣デアリマスル、ソレカラ鑑
別機關ヲ設ケルト云フコトガ一ツノ要點ニ
ナッテ居リマス、御承知ノ如ク、感化院ニ收
容イタシマスル不良少年ハ其體質及性
能、又家庭ニ於ケル境遇ノ上カラ色ミノ方
法ヲ以テ感化ヲスル必要ガアルノデ、其鑑
別ヲスル機關ヲ設ケルト云フコトガ一ツノ
要點デアリマス又新タニ院外〓護ノ途ヲ
開イテ居ルノデアリマス、是マデハ感化院
內ニ於テ感化〓育ヲ致スコトニナッテ居リ
マシタガ、新タニ院外ノ〓護ヲ施シ得ルコ
トニナッテ居リマシテ、爲ニ少年〓護院
云フモノヲ設ケルコトガ一ツノ要點ニナア
テ居リマス、又是マデ感化院ニ於テ〓育ヲ
施ス上ニ付テハ義務〓育ノ恩典ガ及ブコ
トガ出來ナカッタノヲ、新タニ相當ノ施設ヲ
致シ、文部省ノ認可ヲ得テ義務〓育ヲ終了
ノ出來ルヤウニナッタノガ一ツノ點デアリ
VV、又感化院收容ノ處分ヲ受ケタ事項ヲ
一切新聞雜誌等ニハ揭載シナイ、卽チ一度
世上ニ斯ウ云フコトガ現ハレルト云フト
將來感化ノ上ニ付テ甚ダ不利益ナコトガ多
イノデゴザイマスカラシテ、一切揭載ヲ制
裁ヲ設ケテ禁止スルト云フコトガ改正ノ主
ナル要點ニナッテ居ルノデアリマス、特別委
員會ニ於キマシテハ、此法案ハ御承知ノ如
〃、少年法ト極メテ密切ナ關係ヲ持ッテ居
ル法案デアリマシテ、卽チ十四歲ヲ限度ト
シテ、十四歲以上ハ少年法ニ依ッテ矯正シ、
又十四歲以下ノ不良少年ハ感化院ニ於テ保
護〓育ヲスルト云フコトニナッテ居ルノデ
アリマシテ、司法省ノ關係ガ極メテ多イノ
デアリマス、御承知ノ通リ、感化法ハ內務
省ノ所管デアリマスノデ、內務省ノ意見ヲ
求メマシタ所、此感化法ノ不備ナコトハ旣
ニ多年ノ宿題ニナッテ居ルノデ、既ニ昭和元
年ニ社會事業大會ニ於テ感化法ノ改正ハ認
メラレマシテ、是非トモ感化法ノ改正ヲ必
要ト致スコトニ內務省ニ於テモ認メラレマ
シテ、昭和二年ニ社會事業調査會ヲ設ケマ
シテ、關係各省ノ委員竝ニ民間ノ感化院關
係者ヲ網羅シテ、愼重ニ〓究調査ヲシタ成
案ガ出來テ居ルノデアリマス、デ今囘此衆
議院提出ノ法案ハ其法案ヲ骨子トシテ
出來テ居ルノデアッテ、大體ニ於テ內務
省ハ此成立ヲ見ルト云フコトニナレバ
是マデ感化法ノ不備ヲ感ジテ居ッタコトガ
大イニ改正サレテ、極メテ成績ヲ擧ゲル
上ニ付テハ望ムベキ案デアルト云フコトデ
アリマス、司法省ノ意見ハ色〓ゴザイマ
シタガ、最モ此親權ノ行使ト云フコトガ司
法省ニ於テハ多年問題トシテ居ラレタノデ
アッテ、卽チ此感化法ノ原案ノ八條ニ於テ親
權ヲ行フ者ノ適當ニ親權ヲ行ッテ居ルカ居
ラヌカ、適當ニ親權ヲ行ッテ居ラヌ者デア
レバ、感化院ニ收容シ得ルト云フコトニナッ
テ居リマスカラ、此親權ノ行使ハ少年法ニ
於テハ極メテ鄭重ニ、相當ノ裁判、相當ノ
司法處分ニ依フテ親權ノ保障ハ出來テ居ル
ガ感化法ニ法テハ適當ニ、適當ト云フ判
斷ハ地方長言、行政官ノ裁量ニ依ルノデアッ
テ、甚ダ親權保障ノ上カラ、自由保障ノ上
カラシテ往々弊ヲ生ミ易イコトデアルシ
殊ニ此少年〓護院ヲ設ケテ、是ガ親權マデ
立入ッテ行使スルト云フコトニナルト親權
保障ノ上ニ付テ民法トノ關係ヨリ面白カラ
ヌコトデアルカラシテ、此適當ニ親權ヲ行
使スル所ノ地方官、行政官ノ裁量ト云フコ
トガ最モ考慮ヲ要スル點デアルト云フコト
ニ重キヲ置カレタノデアリマス、ソコデ委
員會ニ於キマシテハ連日ニ亙リマシテ、最
モ熱心ニ各委員ハ政府委員竝ニ大臣ニ伺〃
テ質疑應答ヲ重ネタノデアリマス、デ本案
ノ如キハ司法省ノ意見モアリマスルシ、餘
程熟議ヲ凝ラシ、十分ノ〓究調査ヲ經テ審
議スベキモノデアルト云フコトハ各委員モ
之ヲ深ク諒シテ最モ熱心ニ連日ニ亙ッテ
審議イタシタノデアリマス、司法省ニ於キ
マシテモ、此感化法ハ甚ダ不備デアルト云
フコトハ夙ニ之ヲ認メテ居ルノデ、根本的
ニ之ヲ改正スル必要ガアルノデ、他日大イ
ニ〓究調査シテ、成ルベク少年法ト相俟ッ
テ不良少年ノ感化保護ノ實ヲ擧ゲタイト云
フコトヲ考ヘテ居ルト云フ御意見モアリマ
シタノデ、然ラバ其時期ハ何時頃ニナルノ
カト云フコトニ於テハ司法當局ハ此民法
ノ法制審議會ヲ設ケテ、折角民法ノ改正ノ
御審議ニ著手シテ居ルノデ、民法ノ親族編
ニ於ケル改正ノ結果、所謂親權問題ニ付テ
ハ餘程改正ヲ見ルコトデアルカラシテ、
サウ云フコトヲ考ヘテ他日根本的ニ之ヲ改
正シタイト云フ意見モ、改正スル必要モ認
メテ居ルト云フコトデアリマシタ、サスレ
バ此根本的ニ之ヲ改正スルト云フコトハ
各委員ノ間ニモ最モ望ムベキコトデアリマ
スガ、此法案ハ又一方考ヘテ見マスルト云
フト、內務省ニ於テハ前申上ゲル如ク、
昭和元年以來ノ長イ問題デアッテ、而モ感化
院關係者ハ其不備ノ爲ニ十分ノ成績ヲ擧
ゲルコト出來ズ、而モ今日ノ此世相ニ鑑ミ
マスト云フト、不良少年ノ跋扈、又家庭ニ
於ケル不和ヲ起シ社會ノ安寧ヲ紊スト云フ
ヤウナコトハ、頻々トシテ今日現ハレテ居
ルノデ、今日ノ時勢ニ於テ一人デモ不良少
年ノ少クナルヤウニト云フ多年ノ熱望デ
アッテ、殆ド此社會事業ノ······社會ニ於テ
ハ感化院ノ、感化法ノ不備、又其改正ノ必
要ト云フコトハ多年間題ニナッテ居ルノデ、
出來得ルコトデアレバ今日迄進ンダノデア
ルカラシテ、法案ノ制定ヲ見ルコトニシタ
方ガ宜クハアルマイカト云フコトデ、司法、
内務政府委員ニ向ヒ、又大臣ニ向ヒマシテ、
此法案ニ對スル質問應答ヲ進メマシテ若
シ此兩者ノ間ニ合致スル意見デモアレバ
之ヲ見出シ以テ相當本案ニ付テ考慮ヲ費シ
タイト云フコトデ、段々連日ニ亙リ、又懇
談會ヲ重ネマシテ、質問應答ヲ致シタノデ
アリマス、其結果司法省ノ意見ノアル所、
又內務省ノ之ニ對スル意見ノアル所モ略ボ
會得スルコトガ出來マシタノデ、本委員會
ハ質問應答ハ連日ニ亙フテヤリ盡シテ、漸ク
今申上ゲタ如ク兩省ノ意見モ會得出來マシ
タカラシテ、討論ニ移クタノデアリマス討
論ニ移リマシテカラ一委員ヨリシテ、兩省
ノ意見ヲ能ク考慮イタシマシタ其修正案ヲ
提出サレタノデアリマシテ、チヨット讀上
ゲマス
第一條第一項ヲ左ノ通改メ第二項ヲ削ル
本法ニ於テ少年ト稱スルハ十四歲ニ滿
タザル者ニシテ不良行爲ヲ爲シ又ハ不
良行爲ヲ爲ス虞アル者ヲ謂フ
第四條ヲ左ノ通改ム
少年〓護院ニ少年鑑別機關ヲ設クルコ
トヲ得
第八條ヲ左ノ通改ム
地方長官ハ左記各號ノ一ニ該當スル者
アルトキハ之ヲ少年〓護院ニ入院セシ
ムベシ
一少年ニシテ親權又ハ後見ヲ行フモノ
ナキ者
二少年ニシテ親權者又ハ後見人ヨリ入
院ノ出願アリタル者
三少年審判所ヨリ送致セラレタル者
四裁判所ノ許可ヲ得テ懲戒場ニ入ルベ
キ者
地方長官ハ前項第一號及第二號ニ該當
スル者ニ對シ前項ノ處分ヲ爲スノ外之
ヲ少年〓護委員ノ觀察ニ付スルコトヲ
得
第十條ヲ左ノ通改ム
地方長官ハ第八條第一項第一號又ハ第
二號ニ該當スル在院者ヲ何時ニテモ條
件ヲ指定シテ假ニ退院セシムルコトヲ
得
前項ノ假退院者ハ之ヲ家庭其ノ他適當
ナル施設ニ委託シ又ハ少年〓護委員ノ
觀察ニ付スルコトヲ得假退院者ハ之ヲ
在院者ト看做ス
假退院者ニシテ指定ノ條件ニ違背シタ
ルトキハ地方長官ハ之ヲ復院セシムル
コトヲ得
第十一條ヲ左ノ通改ム
少年ノ在院期間及觀察期間ハ少年ノ滿
二十歲ニ至ルマデトス但シ第八條第三
號又ハ第四號ニ該當スル者ハ此ノ限ニ
在ラズ
第十二條ヲ左ノ通改ム
內務大臣又ハ地方長官ハ在院者ニ對シ
〓護ノ目的ヲ達シタリト認ムルトキハ
之ヲ退院セシムルコトヲ得
第十七條中「第十一條」ヲ「第十條」ニ改ム
第十八條中「第十一條」ヲ「第十條」ニ改ム
第二十條中「四」ヲ「六」ニ改ム
第十九條中「第十條ノ保護監督ヲ」ヲ削ル
第二十四條第二項中「小學校」ヲ「尋常小
學校」ニ改ム
附則第三項中「第一條第一項」ヲ「第一條」
ニット
斯ウ云フ條文ノ修正案デゴザイマス、此要
點ヲ申上ゲマスト云フト、第一條ノ第一項
ノ改正ハ「本法ニ於テ少年ト稱スルハ、十四
歲ニ滿タザル者ニシテ不良行爲ヲ爲シ又ハ
不良行爲ヲ爲ス虞アル者ヲ謂フ」、原案ニハ
單ニ少年トアッタノデアリマスルガ、第一條
ニ先ヅ本法ニ於テ所謂少年トハ斯ウ云フモ
ノデアルト云フコトヲ總括的ニ設ケタ方ガ
宜カラウト云フ意味デアリマス、ソレカラ
少年ノ鑑別機關ヲ何處ニ置クカト云フコト
ガ原案ニ於テハ不明瞭デアルノデ、少年〓
護院內ニ置クト明カニ之ヲ明記シタ譯デア
リマス、第八條ハ此點ガ先程申述ベマシタ
親權關係ニ最モ重見ナ改正デアリマス、第
八條ニハ先刻申述べマシタ適當ニ親權ヲ行
フカ如何ト云フコトヲ地方長官ガ之ヲ認定
シテ感化院ニ送ルコトニナッテ居リマスガ、
此適當ト云フ文字ヲ削リマシテ感化院ニ地
方官ガ送致スル不良少年ハ親權又ハ後見ヲ
行フモノナキモノニ限ルト云フコトニ致シ
タノデアリマス、ソレデ此親權ノ問題ハ只
今ノ修正案ニ於キマシテハ、司法當局ノ最
モ心配サレタ點ガ全ク此改正ニ依ッテ除カ
レタ譯デアリマス、ソレカラ此八條ノ改正
ノ中ニ原案ニハ少年〓護院ノ監督ト云フコ
トニナッテ居ッタノデアリマス、監督ト云フ
コトニナッテ居リマスレバ、院長ハ親權ヲ行
使スルコトガ出來ルノデアリマシテ、少年〓
護院ノ監督院ト云フト矢張リ少年〓護院ガ親
權ノ行使ヲシ得ルコトニナリマスノデ、監
督ト云フコトハ止メマシテ觀察······觀察ハ
事物ヲ觀察スルト云フアノ觀察デアリマス、
是ハ少年法ニ用ヒラレテ居ル言葉デアリマ
シテ、少年〓護院ガ觀察ヲシ卽チ不良少
年ノ行狀又ハ模樣ヲバ能ク觀察シテ、サウ
シテ其狀況ヲ院長ニ報告シテ相當ノ方法ヲ
以テ〓護スル、卽チ監督ト云フコトヲ止メ
マシテ觀察ト云フ文字ニ之ヲ改メタノデア
リマシテ、此點モ司法省ノ最モ御心配ニナッ
テ居ル弊ノ出易イ憂ヘヲ除クコトニナッタ
ノデアリマス、ソレカラ第十條ノ改正ハ現
行法ニ於テ假退院ノ規定ハアリマスルガ
今囘衆議院ノ提出議案ニハ假退院ト云フコ
トガ全ク除カレタノデアリマスガ、是ハ復
活スルコトニナリマシタ、ソレカラ第二十
條デアリマス、第二十條ノ「四」ヲ「六」ニ改
ム簡單ナ文字デアリマスガ、此點ヲ玆ニ
說明申上ゲル必要ガ大イニアルノデアリマ
ス、衆議院ノ提出議案ハ第二十條中ノ國庫
補助ノ率ヲ上ゲテアルノデアリマス、是迄
ハ六分ノ一トナッタノヲ、國庫補助ノ率ヲ四
分ノ一ニ上ゲタノデアリマス、然ルニ委員
會ニ於キマシテハ、斯ウ云フ國家ノ財政ニ
鑑ミマシテ、此際ニ斯ウ云フ補助率ヲ上ゲ
ルト云フコトハ滴當デナカラウト云フコト
デ、現行通リノ國庫補助率ニ致シタノデア
リマス、其他ハ「小學校」ヲ「尋常小學校」ニ
改メ、唯單ニ〓議院ノ提出議案ニハ小學校
トアッタノデアリマスガ、小學校ト云フト高
等小學校モ入リマスノデ、〓常小學校ト明
ラカニスベキモノト云フコトデ、尋常小學校
ト改メタノデアリマス、其他ハ多クハ條文ノ
整理デアリマス、此改正······條項ヲ改正イ
タシマシタ結果、條文ノ整理ヲ致シタノデ
アリマシテ、要スルニ連日司法大臣又政府
委員ニ向フテ質疑應答ヲ重ネテ、是ナラバ一
致サレル案デアラウト云フコトデ此修正案
ヲ提出ニナリマシテ、此修正案ニ付テ司法
竝ニ內務ノ政府委員竝ニ大臣ニ向フテ意見
ヲ求メタノデアリマスルガ、此案デアレバ
先ヅ差支ハナイ、勿論他日根本的ノ改正ヲ
スル考ヘハアルガ、現行ノ感化法ヨリ數步
進ンダ案デアッテ先ヅ此案ナラバ政府デモ
差支ナイト云フ言明ヲ得タノデアリマス、
デサウ云フ手續ヲ致シマシテ此修正案ニ對
シマシテ、各員ヨリシテ贊成ノ意見ガ出マ
シテ、結局全會一致ヲ以チマシテ此修正案
通リニ此案ハ決定イタシタノデアリマス、
唯茲ニ此際ニ改メテ中上グベキ事柄ハ、此原
案ニ「本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定
ム」トナッテ居リマス、此法案ガ實施サレル
コトニナリマスレバ矢張リ多少ノ經費ノ增
額ヲ來タシマスノデ、國庫補助ノ上ニ付テ
大イニ關係ガアルノデアリマスガ御承知
ノ如ク國家財政ノ今日、我ガ貴族院ニ於テ
モ大イニ前途ニ鑑ミマシテ、旣ニ建議モ致
シテ居ル譯デアルノデ、國家ノ財政ト云フ
コトニ付テハ大イニ考ヲシナクチヤナラヌ
今日デアルノデアリマス、委員會ニ於キマ
シテハ本法ノ施行ニ付テハ此本法案成立ニ
ナリマシテモ、直ニ此法案ヲ實施ヲ見ルト
云フコトハ深ク思ヒヲ致サナケレバナラヌ
コトデアルカラシテ、國庫ノ財源ノ餘裕ノ
出來タ曉ニ政府ニ於テ本法實施ノ期日ニ付
テハ御考慮ヲ廻ラシテ、然ルベク御計ラヒ
ヲ願ヒタイト云フ意味ノ決議ヲ致シマシ
テ、此點ハ本會議ニ特ニ御報告申上ゲテ、
我ミ委員ノ意ノ存スル所ヲ明カニ委員長ヨ
リシテ御報告申上ゲルト云フコトニナッタ
ノデアリマスルカラシテ、本法案ノ實施ニ
付テハ他日國家財源ノ餘裕ノ付イタ時ニ、
本法案ノ實施ニ付テハ然ルベク御考ヲ願フ
ト云フ音味デアリマスノデ、此點ヲ併セテ
申上ゲテ置キマス、以上ヲ以テ委員會ノ經
過竝ニ結果ヲ御報告イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=123
-
124・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 木案ヲ第二讀會
ニ移シテ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=124
-
125・徳川家達
○議長(公爵徳川家逵君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=125
-
126・清岡長言
○子爵濟岡是言君 直ニ本案ノ第二讀會ヲ
開カレムコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=126
-
127・戸澤正己
○子爵戸澤正己君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=127
-
128・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 〓岡子爵ノ動議
ニ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=128
-
129・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=129
-
130・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 直ニ本案ノ第二
讀會ヲ開キマス、本案全部ヲ問題ニ供シマ
ス、全部委員長ノ報〓通リデ御異存ゴザイ
マセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=130
-
131・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=131
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132・清岡長言
○子爵〓岡長言君 直ニ本案ノ第三讀會ヲ
開カレムコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=132
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133・戸澤正己
○子爵戸澤正己君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=133
-
134・徳川家達
○議長(八爵德川家達君) 〓岡子爵ノ動議
ニ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=134
-
135・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=135
-
136・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 第二讀會ノ決議
通リデ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=136
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137・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=137
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138・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 日程第八、南滿
洲鐵道株式會社ノ株式引受ニ關スル法律
案政府提出、衆議院送付、第一讀會ノ續、
委員長報告、兒玉伯爵
南滿洲鐵道株式會社ノ株式引受ニ關ス
ル法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報〓候也
昭和八年三月二十四日
委員長伯爵兒玉秀雄
貴族院議長公爵德川家達殿
〔伯爵兒玉秀雄君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=138
-
139・兒玉秀雄
○伯爵兒玉秀雄君 南滿洲鐵道株式會社ノ
株式引受ニ關スル法律案ノ委員會ノ經
過竝ニ結果ヲ御報告申上ゲマス委員
會ハ開會スルコト四回デアリマス、殊ニ第
二囘ノ委員會ハ朝カラ午後ノ四時迄祕
密會ヲ開キマシテ、政府トノ間ニ腹藏ナ
ク質疑應答ヲ重ネマシタ、其結果ト致シマ
シテ本案ノ內容ヲ透明ニスルコトヲ得タノ
デアリマス、唯祕密會ノ性質上其內容ヲ本
會ニ報告スルノ機會ヲ許サナイノヲ最モ遺
憾トスル所デアリマス、此點ハ特ニ諸君ノ
御了承ヲ願ヒタイト思ヒマス、本案ノ內容
ハ滿洲國ノ成立ニ伴ヒマシテ、會社ハ滿洲
國內ニ於キマスル既設ノ鐵道經營、及ビ新
規鐵道ノ建設及經營ヲ引受ケマシタル旁、こ、
港灣、河川等ノ事業ニモ當ルコトトナリマ
シタノミナラズ、又將來滿洲國ニ於キマス
ル重要產業ノ經營及投資ニ關シテモ、滿鐵
會社ヲシテ其任ニ當ラシムルヲ適當ト認ム
ルモノガ少クナイノデ、是等ノ新事業ノ遂
行ニ巨額ノ資金ヲ要スルコトトナッタノデ
アリマス、昭和八年度以降支出スベキ金額
ノミヲ見マシテモ、既設鐵道ノ改良及整理
ニ要スル金額ガ約三千六百餘萬圓アリマ
ス、新規ニ建設スベキ三線ヲ要スル金額、
六千三百餘萬圓、羅津、築港及鐵道建設費
二千六百餘萬圓等、一億六千九百餘萬圓ヲ
要スルノ計算トナリマス、其外滿洲國ノ委
託ニ基キマシテ、建設スベキ新線、玆ニ鐵
道以外ノ重要產業ノ開發ニ關シマシテ更
ニ一層ノ巨額ノ資金ヲ要スル次第デアリマ
ス、御承知ノ通リニ滿鐵會社ハ創立當時ノ
資本ハ二億圓デアリマシタガ、大正九年、
歐洲大戰後ノ經濟狀態ニ應ズル爲ニ、之ヲ
四億四千萬圓ニ增資イタシマシタ、今囘滿
洲ニ於キマスル新事態ニ適應ズル爲ニ新タニ
三億六千萬圓ヲ增資シテ、資本總額八億萬
圓トスルノ必要ヲ認ムルニ至ッタノデアリ
マス而シテ同會社創立以來ノ方針ト致シ
マシテ、同會社ノ事業ノ國家的性質ニ鑑ミ
マツテ、其半額卽チ一億八千萬圓ハ政府自
ラ之ヲ引受クルノ權利ヲ留保スルコトトナッタ
ノデアリマス、而シテ差當リ政府ノ出資ト
致シマシテハ滿鐵第十九囘英貨社債四百萬
磅ヲ政府ニ肩替リヲ致シマシテ其換算額
三千九百餘萬圓ヲ以テ、舊株ノ拂込、及新
株ノ一部ノ拂込ニ充當スルノ必要ヲ認ムル
爲ニ本案ハ提出セラレタノデアリマス、其
結果ト致シマシテ、會社ノ資金調達可能額
ハ社債募集額ヲ合シマシテ、合計六億五千
餘萬圓トナリマス、此六億五千餘萬圓ガ今
後十年間ニ於キマシテ、滿鐵ガ鐵道事業竝
ニ各種滿洲ニ於ケル產業開發ノ資金トシテ
使用シ得ベキ所ノ總額デアリマス、委員會
ニ於キマスル質疑ノ詳細ハ、之ヲ速記錄ニ
讓リマシテ其重モナルモノヲ申上ゲルコト
ニ致シマス、政府ハ民間ノ株金拂込ト同時
ニ併行シテ其拂込ヲ實行スル積リガアルカ
否ヤ、之ニ對シマシテ政府ハ今日ノ財政狀
態ニ於テハ、或ハ民間ノ拂込ト併行シ難キ
事情ヲ考慮シテ、既ニ勅令ヲ以テ之ガ必要
ナル特例ヲ設ケルコトニシタト答辯シテ居
リマス、又滿洲國ニ對シテ政府ハ如何ナル
程度ノ財的援助ヲ爲スノ意向デアルカ、政
府ハ先ヅ滿鐵ヲ通シテ經濟的ノ援助ヲ致ス
ノミナラズ、必要ニ應ジテ政府自ラモ滿洲
國ニ對シ、直接援助ヲ與ヘ、或ハ協力シテ其
發達ヲ努ムルノ意向ナリト述べテ居リマ
ス、政府ハ民間ノ滿洲投資ヲ容易ナラシム
ル爲ニ、最低限度ニ於テ配當ヲ保證スルノ
意思ハナイカ、政府ハ會社ノ經營ノ將來ヲ
考察スルノニ、民間持株ニ對シテ八分、政
府持株ニ對シテ四分四厘餘ノ配當ハナシ得
ベキ確信ヲ有スルガ故ニ、現行法ニ於テ保
證セル以外、別ニ配當ノ保證ノ要ナシト考
ヘテ居ルト答辯シテ居リマス日滿經濟統
制ニ關スル政府ノ意見ニ付テノ質問ニ付キ
マシテハ政府ハ是ハ極メテ大切ナル問題
デアリマシテ、而シテ實際的ニハ類ル困難
ノ伴フ問題デアリマス、目下根本方針ニ付
キマシテハ關係各省間ニ於テ協議中デアリ
マスルガ、大體日滿兩國間ノ經濟統制ニ關
係イタシマシテハ兩國ノ當局者ト合議ニ
於テ其方法ヲ講ズルコトトシ而シテ本邦
人ノ滿洲ニ於ケル經營事業ニ付キマシテ
ハ政府獨自ノ力ヲ以テ之ガ直接統制ヲ期
シ得ルニ依リマシテ、專ラ相互扶助ノ精神
ニ依リマシテ、國家ノ使命ニ一致セシムル
ヤウ根本政策ト致シマシテ或ハ之ガ爲ニ
ハ將來ニ於テ國家ガ法制ノ力ニ依リマシ
テ、實效ヲ擧グル必要ガアルヤモ知レナイ
ト云フ答辯デアリマス、但シ差當リノ實行
方法ト致シマシテハ當業者間ニ於キマシテ
生產分配、或ハ價格ノ協定ニ依ッテ、之ガ利
害ノ衝突ヲ避クルヲ最モ穩健ナル方法ト考
フル旨述べテ居リマス、從來滿鐵ガ滿洲ニ於
ケル事業ヲ壟斷シテ一般ノ民業ヲ壓迫スル
ノ弊ヲ認ムルガ、之ニ對シテ政府ノ所見如何
トノ質問ニ對シテハ、政府ハ滿鐵ノ使命ノ國
家的性質ヲ存スルニ鑑ミマシテ、同社ノ經營
スベキ事業ハ、第一、國防上特ニ重要ナル產
業、第二、基本的產業ノ二ツニ集中セシメテ、
其他一般ノ企業ニ對シマシテハ進ンデ民間
ノ事業ノ進出ヲ歡迎スベク、而シテ滿鐵ニ
於テ試驗的ニ計畫シタル新事業ニシテ、有
利ナルモノニ對シマシテハ之ヲ民業ニ移管
スルノ方針ニ依ッテ、一般民間ヲシテ自由ニ
滿洲ノ資源ノ開發ニ當ラシムベク、將來決
シテ滿鐵ガ其利益ヲ壟斷スルガ如キコトハ
ナカラシムルト云フ答辯デアリマス、新株
募集ニ關スル方針ニ關シマシテ、政府ハ新
株ノ募集ニ付テモ成ルベク大衆ニ對シ滿洲
ニ關心ヲ有セシムルノ趣旨ニ基イテ、從來
トハ方法ヲ異ニシ、民間ノ持株三百六十萬株
ノ中、先ヅ舊株二株ニ對シ新株一株ヲ割當
テ別ニ二十萬株ハ之ヲ滿鐵叶員ニ、而シ
テ殘リ百二十萬株ヲ公募スルコトニ取扱フ
旨ヲ答辯シテ居リマス、最後ニ特ニ諸君ノ
御注意ヲ促シタイノハ次ノ質問デアリマ
ス、滿鐵ハ八億ノ資本ヲ有スル世界稀ニ見
ル大會社デアル、業務ノ種類モ鐵道事業ハ
勿論、各種ノ企業、竝ニ附屬地行政マデモ
管掌シテ居ル、其規模ノ頗ル廣大ナルベキ
次第ナルガ、政府ハ猶ホ現在ノ組織ヲ以テ
差支ナシト考ヘテ居ルカ又ハ之ニ變更ヲ
加フルノ意思ハナイノデアルカ、政府ハ御
質問至極御尤モノ御意見デアリマス今囘
ノ增資ニ伴ヒマシテ、事業ノ擴大ニ適應ス
ル爲ニ、滿鐵自身ニ於テ其組織ノ改善ヲ考
慮スベキハ勿論ノコト、政府ニ於キマシテ
モ、是ト同時ニ事業ノ擴大ニ拌フテ一層能
力ヲ擧ゲルヤウニ組織ノ點ハ十分考ヘタ
イト言明シテ居リマス又滿鐵ニ對スル命
令書ハ會社創立當時ノモノニ係ッテ、新時
代ニ伴ハザルモノト認ム、政府ハ新タニ命
令ヲ發スルノ意思ナキヤト云フ質問ニ對シ
マシテモ、政府ハ至極御同感デアリマス、
三大臣ノ命令書ハ御說ノ通リニ歷史的ノ
產物デ、今日ノ時勢ニ適合シマセズ、運輸
業ヲ中心トシテ、之ガ附帶事業トシテ、或
種ノ企業ヲ認ムルノミニテハ、增資ノ目的
ニ副ハザル虞ガアリマスノミナラズ、滿洲
國承認後ノ日滿兩國ノ資本上ノ關係モ從來
トハ異ッテ參リマシテ、滿洲國ノ獨立ヲ認メ
タ意味ノ修正ヲモ其中ニ加フルノ必要アル
ガ如クニ思ハレマス、從テ新時代ニ適應ス
ルヤウ、滿鐵ノ根本法規ヲ修正スルノ必要
ハ政府ニ於テモ之ヲ認メテ出來ルダケ早
キ機會ニ〓究シテ、修正ヲ致シタイト考フ
ル旨ヲ述べテ居リマス、其外滿鐵ニ依リマ
スル借款、竝ニソレ以外ノ借款ニ關スル質
問等、重要ナル質問ガ繰返サレテ居リマス
ケレドモ、此際之ヲ省略シテ置キマス、斯
クテ質問ヲ終リマシテ、討議ニ移リマシ
タ一委員ヨリ意見ノ陳述ガゴザイマシ
ク、其要旨ハ、帝國ハ旣ニ世界ニ魁ケテ强
烈ナル正義、信念ノ下ニ、滿洲國ノ建國ヲ
承認シ日滿議定書ニ基イテ我ガ獨力ヲ以
テ滿洲國ノ治安竝ニ開發ノ衝ニ當リ、專念
極東平和ノ確保ニ努メツツアル今日デアリ
マス、從テ滿洲ニ於ケル國防上ニ於テモ、
富源開發上ニ於テモ言葉ヲ換ヘテ申シマ
スレバ、日滿兩國ノ平和、幸福ヲ增進スル
爲ニ、先以テ既設ノ滿鐵會社ヲシテ、最善
ノ方策ヲ講ゼシムルコトハ極メテ便宜デ
モアリ、且又緊要事タルコトハ申ス迄モナ
イノデアリマス、從テ滿鐵ノ使命ハ從來ヨ
リ一層重大トナリ、而シテ此度ノ增資モ亦
鐵道、港灣、水道、殖產等ノ新事業ヲ計畫
セラレタルモノデアリマスケレドモ、其目
的ヲ達成スルノ當然ノ道行デアリマス之
ガ爲ニ巨額ノ增資ヲナスコトノ必要巳ムベ
カラザルコトト思考セラルルノデアリマ
ス、唯之ニ付テハ政府ハ一面同社ニ對シ、
從來ノヤウナ繁文縟禮トモ言フベキ煩瑣ナ
ル手續ヲ省キ、當事者ヲシテ機ニ臨ミ變ニ
應ジ、所謂機宜ノ措置ヲ執リ、自由ニ其快
腕ヲ揮ヒ得ルヤウニナサシムルト共ニ、其
ノ他面世界有數ノ大會社トナッタ滿鐵ノ業
務上、殊ニ資金ノ運用、重要ナル出納課目
ノ取扱等ニ付テ放漫ニ流ルルコトナキヲ期
シ兎角風聞ヲ惹起セザルヤウ、又所謂黨
弊ナリ或ハ今日ノ時勢ニ於ケル通弊ニ陷ラ
ザルヤウ、豫メ指導監督スルノ方法ヲ樹立
シテ、業務遂行上遺憾ナク、又如上ノ重大使
命ヲ遺憾ナク達成スルヤウ、期セラレタイ
ト云フ意味ヲ以チマシテ、本案ニ贊成スル
モノデアルト右ニ付キ希望決議ヲ添フル
旨ヲ述べラレテ居リマス、又他ノ委員ハ本
案ノ趣旨ハ祕密會等ニ於テ明瞭ニナッタガ、
本案ハ最モ完全ナル案トハ申上ゲ兼ネマス
ガ、唯現在ノ滿洲ノ事態ニ卽シテ差當リ此
案位ノ所ガ最モ當ヲ得タルモノト存ジマス
カラ、本案ニ贊成ヲ表シ、且ツ希望決議ニ付
テモ全然贊成スル旨ヲ述ベラレテ居リマ
ス、更ニ他ノ委員ハ滿鐵ノ過去ニ於キマシ
テハ相當缺陷ガアッタ、ソレ故ニ夙ニ改革ノ
必要ガアッタノデアルガ、況ヤ今囘ノ增資
ニ際シテハ過去ノ弊害ヲ矯正スベク完全ナ
ル機關ヲ立ツルコトハ最モ必要デアル、然
ルニ今大臣ノ說明ニ依レバ過去ノ命令ニ於
テ足ラザル所ガアレバ、新ニ完全ナル命令
ヲ出ス積リデアル、又其組織ニ付テモ現在
ノ組織ヲ改革シ十分ナ監督整理ノ出來ル機
構ニ爲スノ御話ガアリマシタ、此政府ノ言
明ヲ信賴シテ本案ノ通過ヲ希望スル旨ヲ述
ベラレマシタ、又他ノ委員ヨリハ政府ニ
於テハ單ニ今囘ノ滿鐵增資ニ依ッテ、滿洲國
ノ經濟建設ノ援助ヲ爲スト云フコトヲ以テ
全部トスルコトナク、有ユル方法ニ依フテ
滿洲國ノ財的援助ヲ努メラレタシトノ希望
ヲ述べテ本案ニ對シテ贊成ヲセラレテ居
リマス、斯ノ如ク意見ノ交換ガアリマシテ
採決ニ入リマシタ、採決ニ入リマシテ本案
ハ全會一致ヲ以テ全部原案通リ可決セラ
v、次イデ希望決議ヲ可決セラレマシタ、
希望決議ヲ申上ゲマス
南滿洲鐵道株式會社ノ使命ノ愈、重大ト
ナルニ鑑ミ且今囘增資ニ伴フ新計畫ノ遂
行ニ關シ最善ノ方策ヲ講セシムル爲政府
ハ一面同社ニ對シ煩瑣ノ手續ヲ省キ當事
者ヲシテ機宜ノ措置ヲ執ルヲ得セシムル
ト共ニ他面其業務ノ放漫ニ流ルルヲ防ク
樣公正ナル指導監督ノ方法ヲ樹立シ以テ
萬遺憾ナキヲ期スヘシ
之ヲ以テ委員會ノ報〓ヲ終リマス
〔土方寧君發言ノ許可ヲ求ム〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=139
-
140・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 土方君ハドウ云
フコトデアリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=140
-
141・土方寧
○土方寧君 簡單デアリマスカラ此席デ質
問ヲ致シタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=141
-
142・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 質問ノ通告ガア
リマスカラ、通告ガ濟ミマシタラバ其時ニ
願ヒマセウ、是ニハ菊池男爵ヨリ質疑ノ通
告ガゴザイマス菊池男爵ニ發言ヲ許シマス
〔男爵菊池武夫君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=142
-
143・菊池武夫
○男爵菊池武夫君 本員ハ先般ノ質問ニ續
キマシテ委員會ヲ拜聽イタシマシタ、要ス
ルニ政府ノ本案ニ對スル十年計畫ト云フヤ
ウナモノノ根本ガ、確立シテ居ラナイト私
ハ感ジマシタノデアリマス、現ニ我〓共ガ
考ヘマシテ若シ滿洲ノ日滿關係ニ於キマ
シテ、十年計畫ヲ以テ交通、產業、サウ云フ
コトヲ完全ニ樹立サレルト云フナラバ今
日カラ其總テノ〓ガ見エテ居ラネバナラヌ
ト思ヒマス
〔副議長公爵近衛文麿君議長席ニ著タ〕
サウシテ、ドレヲ先ニシドレヲ後ニシ、何レ
ヲ急ギ何レヲ緩ウスルト云フヤウナコトガ
ハッキリ見エテ居ラネバ本當ノ計畫ト申サ
レヌ、僅カ五百萬圓デ十年計畫ト云フ風ニ
ヤラレルト云フヤウナコトハドウモヲカシ
イ、本當ノ是ハ策ガ樹立シテ居ラヌノデア
ル、斯ウ云フ風ニ考ヘラレルノデアリマス、
現ニ私共ハ將來ノ日滿ト云フモノガ一ツノ
經濟的「ブロック」ト云フヤウナ形ニ立チマ
スナラバ、圖滿江口附近ヲ以テ日本ノ大阪
ニ譬フベク、大連ヲ以テ長崎ト見ルベキモ
ノト考ヘルノデアリマス、斯樣ナ風ニ考ヘ
マスルト、圖滿江口ノ經營ト云フモノハ、
正ニ大阪トシテ日本カラモ何カ輸出ナサラ
ネバナラヌ、唯向フカラ發達スルカラト云
ウテ、大臣物ヲ御貰ヒナサルノミデハ日本ハ
金ガ無クナル、斯ウ云フコトニナリマセウ、
ドウシテモ物ヲ出サネバナラヌ、何ヲ出ス
ベキカト云フヤウナコトガ、第一ニ決セラ
レナケレバナラヌ問題デアル、ソレハ我ミ
素人ガ考ヘマシテモ、漁業ノ如キハ日本
人トシテハ根本的ニ重要ナ事柄ノ輸出ノ一
ツダト思フ、ソレデスカラアノ江口ニ明ニ
大漁港、中央漁港トデモ名ヅケテ宜シイヤ
ウナモノノ設計ガ見エネバナラヌ、是モド
ウモハッキリ出テ居リマセヌ、ソレカラ
先達モ申上ゲマシタヤウニ飛行機寫眞モ
何モ御撮リニナラヌノデアリマスカラ、結
局「チヤビ」鑛ノ金鑛ト云フヤウナ名高イモ
ノモ、イマダニハッキリシタコトハ御分リ
ニナラヌノデアリマス、サウシテ產業トカ
工業トカ仰セラレテ片腹痛ク存ジマス私
ノ承ハル所デハアレハ露西亞人ガ發見シタ
モノデアリマシテ、アレガ砂金デナクテ本
當ノ鑛脈デアリマス、七ツアルト聞イテ居
リマスガ兎ニ角飛行機ノ上カラ本當ニ撮
影ナサッテ、技師ガ行フテ沿岸ヲ御步キナサッ
タナラバ宜イ、ドレダケアルカト云フコト
ハハッキリスルノデアル、飛行機カラ露頭ガ
見エヌナラ見エヌデ宜シイ、探索ノ方法ガ
新ニ立ツ、派遣隊ト云フヤウナモノヲ新ニ
オヤリニナル方法、其編成組織ト云フヤウ
ナモノガ、モウ座敷デ極マル譯デアリマ
ス、斯樣ナ風ニ何等探究セズシテ置イテ、
サウシテ其夢ノ如キ案ヲ辿ッテ、十年計畫ト
云フヤウナ風ニ仰ッシヤルコトガ、如何ニモ
私ハ不思議ニ存ズルノデアリマス、石炭液
化ト云フヤウナコトモアルヤウデアリマス
ガ、之ヲ直ニ水素添加ト云フヤウナコトデ
ゴザイマスレバ高壓鳶溫度ニ置キマシテ
而モ高價ナル水素ノ添加ヲセネバナラヌ、
德山デ御試驗中ヤニ承ハルノデアリマス
ガ、經濟的所謂工業化シテ價値アリヤ否
+、イマダニ是ガマダ極マラヌ、斯ウ云フ
コトモ情ケナイ、從ヒマシテ石炭乾餾ト云
フヤウナコトノ御試驗ガ御現ハレニナラナ
ケレバナラヌ、ソレハスルト仰シヤルカモ
知レマセヌケレドモ、日本ハ一番重要ナノ
ハ豐筑ノ炭鑛ヲ活カスト云フコトデアリマ
ス私共ハ「ボタ」「ズリ」石炭ヲ諸共ニ乾餾
シマシタナラバ、經濟的ニ九州ノ炭鑛ヲ活
カス工風ガアラムカト貧弱ナガラ二三年
ノ間沒頭イタシタノデゴザイマス、九州ノ
炭鑛ト云フモノハ粗惡ナ炭鑛デ炭層ガ小サ
ィ、從テ褐炭モ石炭モ諸共ニ掘ッテ、サウシ
テ之ヲ油ニ化シテ行ク、或ハ良イ石炭カラ
「コールライト」ヲ取ッテ宜シイ、其外「ケミ
カル」ニ幾ラモ出ルコトハモウ御承知ノ通
リデアル、サウ致シマシタナラバ炭鑛ハ
九州炭ハ單リ炭鑛ノ價値ノミノ問題デハア
リマセヌ、アスコノ坑夫ハ農ト半分ノ者ガ
澤山アリマス、從テ土地ニ固定シテポンド
テンステンデイヒ」トデモ申スベキモノデ
アリマス、之ヲナカ〓〓滿洲ニ急ニ御移シ
ニナルノ何ノト言フノハソレハ口バカリ
デ、決シテ容易ニ移ルベキ素質ヲ持ヲテ居
ラヌノデアリマス、又林業家ガ澤山ゴザイ
マス、此松ト云フモノハ皆坑木ニ充ツルモ
ノデアル、從ヒマシテ九州ノ林業家ト云フ
モノハ皆反對デアル、此處ラニドウシテモ
根本的ニ日滿ノ關係ト云フモノガ考慮セラ
レテ計畫ガ立ッテ居ラナケレバ、六億何千
萬ト云フヤウナ、私ハ生レテカラ初メテ承
ルヤウナ大キナ金ガ何ニナル、急ニ御出シ
ニナルノデハゴザイマスマイ、追ッテ逐次御
變更ニナル御心ラシイノデスガ、ソコラガ
ドウモ頗ル賴リナイモノデアル、マア其他
「マグネサイト」ト云フヤウナコトニ致シマ
シテモ、是ハ陸軍關係ガゴザイマシテ、陸
軍デハ私ハ今ノ所硫安ガ出來レバ御滿足デ
ハナカラウカ、「マグネサイト」ヤ「アルミ
ナ」ト云フヤウナモノハナカ〓〓滿鐵ナド
デ引合ハヌモノヲ急ニヤル氣遣ヒハゴザイ
マセヌ、ロバカリダラウト思フノデス、實
際又朝鮮ニモゴザイマス、是ハ硫苦土ガ違
フノデアリマス、一方ハ結晶デアルトカ、
一方ハサウデナイトカ云ッテ、ナカ〓〓是
ハムヅカシイ問題デアリマシテ、私ハ能ク
存ジマセヌケレドモ、ドチラガ廉ク出來ル
ノヤラ、又全量ガ幾許アルノデアルノヤ
ラ、斯ウ云フコトナドモドウシテモ何等カ
試驗ヲシテ、都合ノヨイモノハ民間エヤル
ンダト仰シヤッテ居ルカラ、サウ云フ風ナコ
トノ金使ヒガモウ現ハレテ來ナケレバナラ
ヌ、デ私ハ今度ノ政府ノ御計畫ニ關スル露
頭ヲ見マスルト云フト、頗ル「パーセン
テージ」ノ惡イ露頭ガ現ハレテ居ル、故
ニ此計畫ハイカナイト申スノデアリマス、
又金ノコトガ一番重大デ、日滿ガ本當ニ
兄弟ナラバ金ガ遠ッテ居ルト云フコト
ハナイ、金カ銀カドチラカニナサラナ
ケレバナラヌ、貨幣ノ統一ト云フコトガ
現ハレテ居ラナイ、サウ云フ譯デアリマス
カラ、政府自カラガ御踏出シニナラナケレ
バナラヌト豫テカラ申シテ居ッタノデスガ、
貧弱ナコトデゴザイマス、日本內地ノ方デ
ハ爲替ハ逃ゲレヨガシニ何時マデモ御ヤリ
ニナル、今日十八億ノ金ガ出タト私ハ承ッテ
居リマスガ斯ウ云フ風デゴザンスシ是
ハ迚モコンナ僞善的ナ計畫デハ到底本當ノ
日滿ノ計畫ト云フモノハ出テ來ナカラウト
思フ滿鐵ノ又賴ムベカラザルコトハ先
達モ兩端ヲ擧ゲテ置キマシタ、ソレハマア
滿鐵デ一番臭イノハ駐備費ト云フ金デアリ
マス、何百萬圓今度御組ミニナリマシタカ、
先達ハ又特ニ小サイ駐備費ヲ御組ミニナ,
タト承ッテ居リマス、其他ニ機密費ト云フヤ
ウナモノモアル、ココラニ蟲ガ附キマシ
テ、従來政黨屋ガ喰ヒ付イタリ、色ミナ所
ニ參リマス、今度アタリデモ此重大ナ問題
ガ新聞ノ種ニ一ツモナラヌヂヤゴザイマセ
ヌカ、私ハ此邊ガ臭イト思フ、新聞ニ議論
ニナラズ、エライ問題ニナラナイ、ソレハ
金持ニハ敵ヒマセヌ、山來關東長官ナドガ
滿鐵ヲ監督スル、迚モ出來ルコトデハナ
イ、金ノ少イヤツガ多イヤツヲ監督指導ス
ル、ソレハ出來ルモノデナイ、我儘放題ノ
有樣デス、實際駐備費ナント云フモノハ餘
リ感心シマセヌ金デスガ、今日ハ餘リ要ラ
ヌト思ヒマスケレドモ、必要モアッタノデ
セウ、マアコンナコトデ一番惡イ駐備費ノ
使ハレタ例ヲ擧ゲレバ蒙古王サンニ貸シ
タ金、マア澤山アル一ツ二ツ三ツ四ツ
五ツ位アリマスナ、是ハマア王サンノ名前
マデ言フノハ可哀相デスカラ······(笑聲)コン
ナ金ナドハ碌ナ所ニ行,テ居ラヌ、私ハ明カ
ニ存ジテ居ル、皆デ寄ッテタカッテ分ケタ金
ダ、王樣モ嘗メタニハ嘗メタ其他マヅイ
貸出シバカリ、斯ウ云フコトガアリマスカ
ラ、滿鐵ト云フモノハ信賴出來ヌ、此方ガ反
省シテ御進ミニナル、ソンナコトハゴザイ
マセヌ、一度法律ガ出來レバ權利義務、ナ
カナカヤリハ致シマセヌ、ソレハ後デ叩カ
ウト思ッタッテ、權力ノ强イモノニハ容易ニ
行クモノヂヤゴザイマセヌ、必ズグニヤ〓〓
ト叩キニ行ッタ人ガ軟カニナッテ歸ルニ極?
テ居リマス、サウ云フ譯デゴザイマスカラ、
私ハドウデモ是ハ今ニ於テ法律ト云フモノ
デピッシヤリシテ置カヌト、碌ナコトハナイ
ツ、况シテ私ハ政府ニ信賴ヲ深ク置カヌノ
デゴザイマス、ソレハ只今可決ニナリマシ
タ兒童、小兒ノ何トカ法案、アレナドモ一
體內務省ガ出シテ、大藏省ガ撥ネテ、ソン
ナ金ハナイト云フト、裏カラ〓ハシテ衆議
院提出デヤッテ來テ可決、斯ウナッテ居ル
ソレデ勅令ヲ以テ定ムト云フヤウナ譯ニ
ナッテ、何時ヤルノカ、僞善法デアリマス
矢張リ名バカリ美ニシテ、何時カラ行フト
云フコトハハッキリセヌヤウナ法律デアリ
やく、私共斯ウ云フコトヲ僞善ト本當ニ名
ヅケタイ、政府者ト云フモノハ如何ニモ僞
善ヲナサル者デアル、ダカラ信賴出來ナイ、
私共ハ今迄非常ニ信賴ヲシテ居ッタノデス
實際ハ先達テカラ是ハヲカシイゾト
頗ル頭ニピント來マシテ以來、······實際信ヲ
置カナクナリマシタ、今ノ法律デモサウ云フ
法律ノ裏ノ方ガ氣ガ付ク、表ハ存ジマセヌガ
裏バカリ見エルト云フ風ニ、私ノ氣ガ違フ
ノカ、結局アナタ方政府ガナサル御心事ガ
私ニハ分ラヌ、私ハ〓護院ニデモ入レテ戴
キタイ一人デアリマス、衆議院ヲ豫算ガ通
過シテ來タトカ、ソンナコトハ理由ニナラ
ヌノデス、是モ何ダカ辯護士ニナル爲ニ、
當然選擧違反ヲ犯シタ者デモナレルヤウニ
ト云フヤウナ頭カラ國法ヲ犯サント欲スル
決議ガ、此處デヒックリ返タタラルハ變
快ニ存ジテ居リマス、斯ウ云フヤウナ世ノ
中デアル、ドウシテ是ガ私共ガ政黨政法ナド
ト云フモノヲ信賴出來ルモノデアリマス
カ、新聞デ承ハレバ近ク現内閣ハヒックリ
返ヘルト云フヤウニ危ク書カレテゴザイマ
ス、今度參ル者ハ必ズ政黨ノ人デ、斯ウ云
フ腐ッタ方ミニ依ッテ政治ヲ行ハレル、滿鐵
ナント云フモノハ好イ喰付キ所デ、蛭ガ附
イタヤウニ喰付クノデアル、ソレデ一般ニ
斯ウ云フヤウナコトガ行ハレル時ニハ、何
等ノ權威ナク機密ガ漏洩シ、而モ私共ガ民
間デ承ッタ所ニ依レバ國務大臣ノ名前マデ
分ッテ居ル、「コピイ」ヲ渡シテ居ル新聞ノ名前
モ分ッテ居ル斯ウ云フ風ニ裏カラ見ルト何
處ニ綱紀ガ立ッテ居リマスカ、斯樣ナ風デ
ゴザイマスカラ今日モ法律サヘ通レバ宜シ
イコトヂヤト、私ハ斯樣ナ有樣ニ道德的ニ
不信任ヲ懷イテ居ルノデゴザイマスカラ、
モウ一遍此法律ハ引ッ込メテ御出直シニナッ
タラ宜イ、今之ヲ決定スルコトハイカヌ、
ソコデ陸軍大臣ニ伺ヒタイノハ鐵道ヲ附ケ
ル金ト、ソレカラ硫安會社ノ奴ガ確保サレ
レバ何モ御心配ハナイヂヤナイカト思フ、
斯ウ云ヲコトデ自分ハ陸軍大臣ニ御尋ネ致
シマシテ、ハッキリト何モ今日通過イタサ
ヌデモ、何モ御止メニナッテモ差支ナイ國
ノ重大ナル利權デゴザイマスカラ、臨時議
會ヲ御召集ニナッテ、六十萬七十萬御使ヒ
ニナッテモ、國ノ基本ガ確デアルト言ヘバ安
イデハゴザイマセヌカ、何度デモ御召集ニ
應ジテ罷リ出マスチットモ我ミ心配ハナ
イ、今日急イデ此案ヲ決メナケレバナラヌ
ト云フコトハナイ、此前ノ大キナ農村案デ
スカ、アア云フモノデモ急ニ御決メニナル
必要ハ少シモナイト思ヒマス、實際救護法、
匡救豫算ト云フモノヲ御決メニナリマシタ、
百姓ハ困ッテ居ル家ハソレハ澤山ゴザイマ
スゾ、道ヲ附ケル爲ニ自分ノ田ヲ埋メル、
狹イ田ニシテ道ヲ新タニ造ル、備中アタリ
ヘ行ッテ御覽ナサイ、非常ニ評判ノ惡イ所モ
アルノデス、サウ云フ風デゴザイマスカラ
何モ御急ギニナッテ此豫算ヲ皆御通シニナ
ルト云フコトハナイト私共考ヘル、サウ云
フ譯デゴザイマスカラ改メテ御出シニナル
ヤウナ御工風ヲナサイマシテ御出シニナ
ラムコトヲ希望シマシテ、反對意見ヲ此處
ニ申シテ置キマス、若シ私ガ滿足スルヤウ
ニ御聽カセ下サイマシタラ起立イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=143
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144・荒木貞夫
○國務大臣(荒木貞夫君) 只今ノ菊池男爵
ノ御質疑ニ御答へ致シマスルガ、御質疑ノ
內容ハ寧ロ監督廳デアル拓務省ノ關係デゴ
ザイマスルガ、陸軍關係ニ於テ鐵道ト硫安
ダケデ宜カラウト云フ御質問ノヤウデアリマス
カラ、陸軍ダケカラ申シマスルナラバ硫安
モ餘リ陸軍ニ直接關係ガナイヤウニ考ヘル
ノデアリマスガ、今日陸軍ノ見地ト致シマ
シテハ滿洲ニ於ケル所ノ治安竝ニ國防ノ安
固ヲ期スル爲ニハ一刻モ猶豫ナラナイノデ
アリマシテ、今日旣ニ稍、遲レテ居ルト申
シテモ宜イノデハナイカト思フノデアリマ
ス、資金ノ缺乏モアラウト思ヒマスルシ、
又其他技術關係ニ於テ若クハ天候ニ於テ
支配サレル點モアラウト存ジマスルカラ、
一刻モ早ク所要ノ經濟竝ニ鐵道ニ連繫ヲ致
シテ居リマスル線ガ敷設ヲセラレ、道路ガ
開發セラレ、更ニ滿洲方面ニ於テ使用セラ
レマスル所ノ國防資源ノ開發等ガ一刻モ早
クナリマスルコトハ單ニ日滿兩國ノ間ノ
經濟問題、又ハ滿洲直接若クハ內地直接ノ
問題ノミナラズ、軍部關係ト致シマシテモ
最モ歡迎スル所デアルノデアリマス從ヒ
マシテ滿洲ガ今日計畫ヲ致シテ居リマスル
所ノ鐵道敷設竝ニ之ニ伴フ所ノ各種ノ開發
事業ト云フモノモ、國防上固ヨリ歡迎スル
所デアリマスノデ、十年計畫ニナッテ居ル
コトハ私共トシテ敢テ歡迎ハ致シテ居リマ
セヌ、若シ出來得マスルナラバ二年デモ、
一年デモ速ニ是等ノ點ガ實現セラレムコト
ヲ希望スルノデアリマスルガ、是等ハ資金
ノ關係竝ニ技術其他ノ關係ニ於テ十年計畫
トセラレタコトデアリマシテ、此時勢ノ變
化ニ應ジテハ或ハ滿鐵ノ方面ニ於テモ此事
業ヲ繰上ゲテヤッテ戴クコトニナルダラウ
ト思フノデアリマスルガ、斯ウ云フ點ニ於
テ陸軍關係ト致シマシテハ今日ノ資金、寧
ロヨリ多クノ資金ヲ以チマシテ速ニ滿洲
方面ニ於ケル所ノ總テノ開發ナリ、交通ノ
施設ナリ、通信ノ施設ナリ、是等ヲヤッテ
戴カムコトヲ切望イタシテ居ルノデアリマ
ス、現ニ今囘ノ熱河ノ平定其他治安ノ恢復
ニ伴ヒマシテ、爲スベキ仕事ガ多々アルヤ
ウデアリマシテ、滿鐵方面ニ於テハ是等ニ
付テ寧ロヨリ多クノ資金ヲ考ヘルヤウニナ
ルノデハナイカト考ヘル位デアリマス、陸
軍ニ關スル限リニ於キマシテハ今囘ノ滿鐵
ノ增資ハ、一刻モ早ク之ヲ實施ヲ致スヤウ
ニト云フコトヲ希望イタスノデアリマシ
テ、鐵道ト硫安ダケヲ以テ滿足スル譯ニハ
行カヌノデアリマスル、ドウゾ御了承ヲ願
ヒタイ
〔國務大臣永井柳太郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=144
-
145・永井柳太郎
○國務大臣(永井柳太郞君) 只今菊池男爵
ノ憂國ノ御熱誠カラ出ヅル御質問ヲ謹聽イ
タシマシタ、拓務省ニ關スル御質問ハ大體
ニ於テ二箇條デアッタト思ヒマスル、第一ハ
滿鐵ノ爲ニ莫大ナ增資ヲスルケレドモ事
業ノ經營ニ對スル順序ガ立ッテ居ラナイ、
斯樣ナ點ニ關シテ御非難ガアッタト思ヒ
マく、併ナガラ滿鐵ニ於キマシテハ交通
事業モ、其他ノ事業モ總テ順序ヲ立テ
テ之ヲ行フ方針ニナッテ居リマス、現ニ鐵
道ニ關シマシテモ、國防上且ツ產業上最モ
重要ト思ヒマスル部分カラ事業ヲ始メマシ
テ、次第ニ其他ノ部分ニ移ルヤウニ計畫ヲ
立テテ居リマス、又只今菊池男爵ハ陸軍
トシテハ鐵道ト硫安トアレバ滿足スルデア
ラウト御話ニナリマシタ程、國防上カラ申
セバ鐵道ト硫安トガ重大ナ意義ヲ有フテ居
ルノデアリマセウ、其菊池男爵ガ特ニ重要
デアルト御述ベニナリマシタ鐵道ト硫安ト
ハ、此度ノ增資ニ伴ッテ最初ニ著手スル事業
デゴザイマスサウ云フヤウニ總テ順序ヲ
立テテ十年ノ計畫ヲ致シテ居ルノデゴザイ
VV、又金鑛、森林等ニ付テハ基礎調査
ガ出來テ居ナイデハナイカト云フ御言葉デ
ゴザイマシタガ、此金鑛ニシテモ森林ニシ
テモ、基礎調査ノ必要デアルコトハ全ク御
同感デゴザイマス、併ナガラ最近マデハ御
承知ノ通リ匪賊ガ橫行シテ居リマシテ十
分ニ其調査隊ヲ進メルコトガ出來ナカッタ
ノデアリマシテ、其匪賊ノ危險ガ次第ニ薄
ラグニ從ヒマシテ、日本ノ方デハ滿洲國ト
モ了解ヲ遂ゲマシテ、是等ノ必要ナル基礎
調査ヲ進ムベク旣ニ準備モ出來テ居ルノデ
アリマス、石炭液化ノ如キモ固ヨリ必要ト
考ヘテ居リマシテ、是ハ早クカラ只今菊池
男爵ノ御話ノ通リ德山ニ於テ專門家ヲシテ
〓究サセテ居ルノデアリマスルガ、是ガ豫
期ノ如ク廉價ニ生產スル見込ガ立タナイノ
デ、其生產ノ方法ニ付テ今一層ノ〓究ヲ遂
ゲ得タナラバ之ヲ現實ノ事業ニ移シタイ
ト云フ考カラ、此度ノ計畫ノ中ニモ其〓算
ヲ見込ンデ計上イタシテ居ル次第デゴザイ
マス、固ヨリ、日本ノ化學ノ知識ガ不十分
デアルカラサウ云フ〓究モ遲レルノダト
云フ、ソコマデ突込ンデノ御質問デアレバ、
ソレハ如何ニモ同感デアリマシテ、尙ホ一
層其化學的ノ知識ノ進步ニハ、御互ニ協力
シナケレバナラヌト存ジテ居リマス、大體
ニ於テ滿洲ニ莫大ナル金ヲ投ズルガ、日
本カラハ何モ輸出ハシナイノデハナイカ、
唯先方ニ金ヲ投ズルダケデハナイト云フヤ
ウナ御非難モゴザイマシタガ、兎ニ角從來
ノヤウナ誠ニ不完全ナル狀態ニ於キマシテ
モ、日滿兩國ノ間ニハ相當ニ貿易ハ著シイ
進步ヲシテ居リマシテ、日露戰爭後、御承
知ノ通リ約二十倍ノ貿易ノ增加ヲ見テ居ル
ノデアリマスルガ、今後滿洲ニ對シテ莫大
ナル資本ガ投ゼラレ、富源ガ開發サレ、滿
洲國ノ購買力ガ增加イシタマスレバ、內地
カラ滿洲ニ對スル輸出貿易モ亦益〓盛大ニ
ナルコトハ必然デアルト考ヘテ居リマス、
デ大體ニ於テ決シテ漠然ト計畫ヲ立テテ、
貴重ナル國民ノ膏血トモ申スベキ莫大ナル
金額ヲ、無意味ニ滿洲ノ野ニ投ズルガ如キ
輕率ナルコトハ致サナイ積リデアリマシテ、
其用途ニ付キマシテハ國家百年ノ大計ノ上
カラ考慮イタシマシテ過チナキヲ期シテ居
ル次第デアリマス、ソレカラ第二ノ滿鐵
ノ過去ニ於テ種々ナル非難ガアッタガ、之ヲ
監督シテ國家的使命ヲ全ウセシムルト云フ
コトハ是ハ事實、言ウテモ中〓行ハレナ
イ、金ノ無イ者ガ金ガアル者ヲ監督スルナ
ドト云フコトハ出來ナイ、ト云フ御言葉デ
アリマシタケレドモ、私ハ日本國民ガ左程
ニ黃金萬能デアルトハ思ヒマセヌ、假令金
ヲ持ッテ居ラナクテモ、金ヲ持ッテ居ル者ヲ
十分ニ監督ヲシ、國家ノ爲ニ過チナカラシ
ムルダケノ精神ハ日本國民ハ持ッテ居ル
コトト思ヒマス、滿鐵ノ單ナル營利ダケノ
點カラ考ヘレバ、或ハ起サナイ方ガ宜イ仕
事ガアルカモ知レマセヌ、採算ノ上ダケカ
ラ考ヘレバ差控ヘタ方ガ利益ナ仕事ガアル
カモ知レナイ、併シ其採算ヲ超越シ、營利
ノ考ヲ棄テテモ、尙ホ國家ノ爲ニ必要ナル
事業ヲ計畫サセテ居リマスノハ、明カニ金ヲ
持タナイ者デモ、國家ノ爲ニハ、金ヲ持フテ居ル
者ヲ抑へ得ル證據デアリマス、私ハ日本國民ハ
金ダケデ支配サレルヤウナモノデアルト云
フ程、日本國民ヲ輕ンズルコトハ出來マセ
又、君國ノ爲ニハ金ヲ持タナクテモ、立
派ニ金ヲ持ノテ居ル者ヲ支配シテ行ク潑溂
タル精神ヲ持ッテ居ルト思ヒマス、此點ハ御
安心ヲ願ヒタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=145
-
146・菊池武夫
○男爵菊池武夫君 只今拓務大臣カラ色ミ
御答辯ガアリマシタガ、私ハ國民ガ全部金
デバカリ動クトモ申上ゲマセヌガ、特ニ御
役人樣ヤ政黨屋サント云フ人ノコトヲ私ハ
申上ゲテ居ルノデアリマス
〔議長公爵德川家達君議長席ニ復ス〕
ソレカラ旣ニ此問題ニ付テ久シキ前カラ考
慮シテ居リマシタコトヲ、此前申上ゲタヤウ
ナ譯デアリマスガモチット懇ロナ〓究ノ
方法モアルダラウト思ヒマス、次ニ今日此
會期切迫ノ折ニ於テ、辛ウジテ二三十分ノ
餘裕ヲ以テ唯胸中ノ不平ヲ現ハス位ノコト
デ終ッテ、是ガ可決サレルト云フコトヲ私ハ
悲觀スルノデアリマス、ソレカラ先ッキノ水
素添加ノ問題デアリマス、此水素添加ナン
ト云フモノハ引合ハヌカラ、低溫乾餾ニナ
サル、其低溫乾餾ノ方法ノ費用ガ一向豫算
ニ見エナイヂヤナイカ、斯ウ云フノガ質問
デスガ、モウ强ヒテ承ハラヌデモ宜シウゴ
ザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=146
-
147・兒玉秀雄
○伯爵兒玉秀雄君 菊池男爵ノ御質問ニ對
シマシテ、委員長ト致シマシテ一言申シテ
置キタイト思ッテ居リマスガ···発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=147
-
148・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 宜シウゴザイマ
ス
〔伯爵兒玉秀雄君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=148
-
149・兒玉秀雄
○伯爵兒玉秀雄君 菊池男爵ノ御質問デス
ガ、委員長ト致シマシテ特別委員會ノ經過
ヲ御報告申上ゲマシタノデ、大體特別委員
會ノ空氣ハ御了解下サッタコトト、私ハ信
ジテ居ッタノデアリマス、委員會ニ於キマシ
テモ、過去ノ滿鐵ニ對シマシテハ、菊池男爵
ト憂ヲ同ジクシテ居フタ點ガ少ナクナイノ
デアリマス、此點ニ付キマシテハ、只今私
ガ御報告申上ゲマシタ質疑應答竝ニ意見ノ
陳述ニ於テ明カニ菊池男爵モ御了解下サ
ルコトト私ハ信ジテ居リマス而シテ政府
ハ滿鐵ニ對シマシテ將來公正ナル指導
監督モシ且又此增資ニ對シマシテ其費途
ノ瀬戸ライト法則コトニ付テ、誠意アル所
又組織ニ對シマシテモ出來ル
上海有用汽车海南大海鮮大豆腐命令書モ必要ガア北京市公安局西城分局
宜シイト迄、說明ヲシテ居ルノデアリマス
從ヒマシテ此政府ヲ信賴イタシマシテ
特別委員ハ希望決議ヲ附シマシテ、(水壓)
贊成スベキモノナリト決議シタノデアリマ
ス幸ニシテ私ノ報告ノ足ラザル所ガア
リマスレバ只今私ガ申上ゲル意味ニ於テ
十分御諒解ヲ願ヒタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=149
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150・菊池武夫
○男爵菊池武夫君 只今ノ仰セノ通リ附帶
決議ナドヲ致サネバナラヌト云フヤウナコ
トガ私ハ誠ニ情ケナイコトデアルノデゴ
ザイマス而シテドウシテモ又法律以外ニ
ハナカ〓〓此德義ナドデ御出ニナッタ例
ヲ見ヌノデゴザイマス、況シテ此頃政府ノ何
時迄續クカ分ラヌト論議サレル矢先憲政
ノ常道ヤラ又兩政黨ノ方々ガ政權ヲ御壟
斷ナサル曉ニハ嘸カシヲカシナコトニナ
ル唯私ノ憤慨デゴザイマスカラ、惡カラ
ズ御諒承ヲ願ヒタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=150
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151・土方寧
○土方寧君 極ク簡單デゴザイマス、此處
デドウカ御許シヲ願ヒタイ滿鐵增資ノ方
法ト致シマシテ新株發行中民間ノ引受ケ
ルベキモノノ中デ私考ヘル所デハ
ベク滿洲人ニ應募セシメ株主ニスルト中華特集团有限公司
コトガ日滿人間ノ利
コトニナリ尙ホ滿鐵ガ增資サレ、廣イ所
ニズットソレガ地方ニ繫ガル滿鐵線ヲ連
鎻トスルコトガ將來日滿兩國ノ爲ニ宜カラ
ウト思ヒマスガ、政府ハ成ルベク滿洲人ニ
新株ヲ引受ケシメル御趣意デアルカドウ
カ私ハサウアリタイト思ヒマス、又私ハ
誠ニ迂遠デアリマスガ、現在ノ所デ滿洲人
ヒ
マスガ北京市公安局海淀分局事ニ依ッタラ日本ニ國コア伺ル
者デナケレバ株主ニト
ニナッテ居ルカモ知レヌ知ラヌ一覽大众行动力バ伺ヒ
マスサウナッテ居レ開業が設けるカルパナ
ラヌト思ヒマス
私ノ考デハ成ルベク新株ハ滿洲人ニ引受ケ
シメルト云フコトニシタラ彼等ト我ミノ
共通ノ利益······利益ガ共通デナケレバドウ
シテモ兩國民ノ爲ニ、ナラヌト思ヒマスカ
ラ此點ヲ伺ヒマス
〔國務大臣永井柳太郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=151
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152・永井柳太郎
○國務大臣(永井柳太郞君) 土方博士ノ御
ノ御趣旨ハ至極同感ニ存ジマス現在
へ滿洲人テ株主ニナッテ居ル者ハゴザイマ
セヌ併シ新株ノ募集ニ際シマシテハヽ之
ヲ今御話ノ通リ滿洲國人ノ間ニ於テモ廣ク募
リマシテ事實ニ於テ日滿兩國人ガ滿鐵ヲ
中心トシテ協力スルト云フ精神ヲ現ハシ
タイト存ジテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=152
-
153・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 他ニ發言モナイ
ト認メマスカラ本案ニ付テ採決ヲ致シマ
ス本案ヲ第二讀會ニ移シテ御異議ゴザイ
マセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=153
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154・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=154
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155・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直ニ本案ノ第二讀會
ヲ開カレンコトヲ希望イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=155
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156・清岡長言
○子爵濟岡長言君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=156
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157・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 西大路子爵ノ動
議ニ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=157
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158・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=158
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159・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 直ニ第二讀會ヲ
開キマス原案全部ヲ問題ニ供シマス全
部原案ニ御異存ゴザイマセヌカ
八一〓mナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=159
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160・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=160
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161・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直ニ本案ノ第三讀會
ヲ開カレンコトヲ希望イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=161
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162・清岡長言
○子爵〓岡長言君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=162
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163・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 西大路子爵ノ動
議ニ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=163
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164・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=164
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165・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 第二讀會ノ決議
通リデ御異存ゴザイマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=165
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166・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=166
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167・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 此際日程追加ニ
關スル件ヲ御諮リヲ致シマス先刻衆議院
ヨリ送付セラレマシタ產師法案住宅組合
法中改正法律案、住宅組合ニ對シ償還金給
與ニ關スル法律案ノ第一讀會ヲ開キタイト
存ジマス、御異議ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=167
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168・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=168
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169・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 是等ノ法案ハ大
正十五年法律第五十二號中改正法律案ノ特
別委員ニ付託イタシマス
產師法案
右木院提出案及送付候也
昭和八年三月二十五日
衆議院議長秋田〓
貴族院議長公爵德川家達殿
產師法
第一條產師トハ助產ヲ業ト爲ス者ヲ謂
フ
第二條產師タラントスル者ハ二十歲以
上ノ女子ニシテ左ノ資格ヲ有シ內務大
臣ノ免許ヲ受クルコトヲ要ス
一高等女學校卒業者又ハ之ト同等以
上ノ學力ヲ有スル者ニシテ內務大臣
ノ指定シタル產師學校ヲ卒業シタル
者
二外國ノ產師學校ヲ卒業シ又ハ外國
ニ於テ產師免許ヲ受ケタル者ニシテ
命令ノ規定ニ該當スル者
三產師試驗ニ合格シタル者
產師試驗ハ內務大臣之ヲ行フ
產師試驗ノ受驗資格ハ命令ヲ以テ之ヲ定
ム
第三條聾者、啞者、盲者又ハ精神病者
ニ對シテハ產師ノ免許ヲ爲スコトヲ得
ズ
墮胎ノ罪其ノ他產事ニ關スル罪又ハ禁
鋼以上ノ刑ニ處セラレタル者ニ對シ
ハ產師ノ免許ヲ爲、產婦、梅姑叉ハ脂
第四條產師ハ姙婦產婦、
兒生兒ニ異常アリト認ムルトキハ直
ニ醫師ノ診療ヲ請ハシムベシ自ラ其ノ
處置ヲ爲スコトヲ得ズ但シ臨時應急ノ
處置ハ此ノ限ニ在ラズ
第五條產師ハ自ラ臨產又ハ檢案セズシ
テ死產證書又ハ死胎檢案書ヲ交付スル
コトヲ得ズ
第六條產師ハ何等ノ方法ヲ以テスルヲ
問ハズ業務上技能、經歷又ハ命令ノ定
ムル事項ノ廣〓ヲ爲スコトヲ得ズ
第七條產師ハ產簿ヲ備へ十年間之ヲ保
存スベシ
第八條產師ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ道
府縣產師會ヲ設立スベシ
道府縣產師會ハ日本產師會ヲ設立スル
コトヲ得
產師ハ土地ノ狀況ニ依リ郡市區產師會
ヲ設立スルコトヲ得
產師會ハ法人トス
產師會ハ命令ノ定ムル所ニ依リ產事衞生
ノ改良發達ヲ圖ルヲ以テ目的トス
前各項ノ外產師會ニ關シ必要ナル事項
ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第九條產師第三條第一項ニ該當スルト
キハ其ノ免許ヲ取消スベシ
產師墮胎ノ罪其ノ他業務ニ關スル罪又
ハ禁錮以上ノ刑ニ處セラレタルトキハ
免許ヲ取消シ又ハ期間ヲ定メテ業務ヲ
停止スルコトアルベシ其ノ免許前ニ係
ル場合亦同ジ
本條ノ取消處分ヲ受ケタル者ト雖改悛
ノ情顯著ナルトキハ再免許ヲ爲スコト
ヲ得
本條ノ處分ハ內務大臣之ヲ行フ但シ第
二項ノ處分及第三項ノ再免許ヲ爲ス場
合ハ中央衞生會ノ審議ヲ經ルコトヲ要
ス
第十條第二條ノ免許ヲ受ケズシテ助產
ノ業ヲ爲シタル者又ハ第四條乃至第七
條ノ規定ニ違反シタル者ハ百圓以下ノ
罰金又ハ科料ニ處ス業務停止中ノ產師
ニシテ助產ノ業ヲ爲シタル者亦同ジ
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
本法施行前產婆名簿ニ登錄セラレタル者
ハ本法ニ依リ產師ノ免許ヲ受ケタルモノ
ト看做ス
本法施行前地方長官ヨリ業務ノ地域及期
限ヲ定メテ假ニ產婆ノ業ヲ免許セラレタ
ル者ハ本法施行後ト雖尙其ノ效力ヲ有シ
且其ノ有效期限ハ申請ニ依リ之ヲ更新ス
ルコトヲ得
本法施行ノ際從前ノ規定ニ依リ產婆名簿
ニ登錄ヲ受クル資格ヲ有スル者及本法施
行後五年內ニ從前ノ規定ニ依リ產婆名簿
ニ登錄ヲ受クル資格ヲ得タル者ハ第二條
ノ規定ニ拘ラズ產師ノ免許ヲ受クルコト
ヲ得
住宅組合法中改正法律案
右本院提出案及送付候也
昭和八年三月二十五日
衆議院議長秋田〓
貴族院議長公爵德川家達殿
住宅組合法中左ノ通改正ス
第十二條ニ左ノ但書ヲ加フ
但シ其ノ貸付金ノ利率ハ政府カ郵便貯
金ニ付スル利息ノ最高率ヲ超ユルコト
ヲルチ、
住宅組合ニ對シ償還資金給與ニ關スル
法律案
右本院提出案及送付候也
昭和八年三月二十五日
衆議院議長秋田〓
貴族院議長公爵徳川家達殿
住宅組合法ニ依ル住宅組合ニシテ左ノ各
號ノ事由ニ因リ北海道地方費府縣又ハ
市町村ヨリ貸付ヲ受ケタル住宅資金ノ元
利金ノ償還ヲ爲シ得サルモノニ付テハ政
府ハ其ノ限度ニ於テ組合ニ對シ償還資金
ヲ給與ス
-住宅滅失シタルモ保險金ノ支拂ヲ得
サルトキ
二組合員死亡シ其ノ相續人曠缺セルト
キ
三組合員其ノ住所又ハ居所ヲ去リテ現
ニ生死不明トナリタルトキ
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=169
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170・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 日程第九、刑事
訴訟法中改正法律案衆議院提出第一讀
會ノ續委員長報告、第十刑事訴訟法中
改正法律案衆議院提出第5會ノ續
委員長報告、鷹司公爵ノ登壇ヲ望ミマス
刑事訴訟法中改正法律案
右否決スヘキモノナリト議決セリ
依テ及報〓候也
昭和八年三月二十四日
委員長公爵鷹司信輔
貴族院議長公爵徳川家達殿
刑事訴訟法中改正法律案
右否決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報〓候也
昭和八年三月二十四日
委員長公爵鷹司信輔
貴族院議長公爵德川家達殿
〔公爵鷹司信輔君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=170
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171・鷹司信輔
○公爵鷹司信輔君 私ハ只今提案ニナリマ
シタ刑事訴訟法中改正法律案ノ特別委員會
ニ於ケル審査ノ經過竝ニ結果ノ御報〓ヲ致
シマス先ヅ第一ニ第二十四號ノ方カラ申
上ゲマス本案ハ衆議院提出ノ法案デゴザ
イマシテ刑事訴訟法中第百十三條ニ改正
ヲ加ヘントスルモノデゴザイマス其要旨
ハ二點ゴザイマシテ其一ツハ拘留ノ更新
決定ヲスル場合ニ必ズ理由ヲ附スルコ
ト第二ハ現在拘留ノ更新ハ二箇月ヅツデ
更新シテ參リマスノヲ一ケ月ヅツニ改メン
トスルノデゴザイマス是ニ付キマシテ政
府ノ意見ハ、北改正案ニハ反對デアルト云
理由ハ拘留ノ更新決定
ガンダムランキング所トーン法人ヲル以降ハハハ行方法現行法
必ズ理由ヲ附セナケレ
バナラナイノデゴザイマス而シテ拘留ノ
原因ハ、住所不定、罪證湮滅及ビ犯人ノ逃
走ノ三ツノ場合ニ限ラレテ居ルノデゴザイ
マスカラ、拘留ノ理由モ亦此三ツノ場合ノ
外ニ用デナイノデゴザイマス但シ現在全
國ノ取扱振リハ稍こ區々ニ涉リマシテ、又理
山ノ記載ガ簡單ニ過グル感ガアルノデゴザ
イマスノデ、是等ノ點ハ將來訓令ヲ电シテ
改ムル積リデアル、又更新ノ決定ヲ一箇月ニ
改ムルコトニ付テハ拘留ハ多ク重大犯人
カ又ハ事件ガ極メテ複離ナ際ニ爲サルルモ
ノデアリマスカラ現在ノ二箇月ヲ以テシ
テモ尙ホ足ラナイ虞ガアルノデゴザイス
最近ハ刑事事件ガ段々複雜ニナッテ參リ
マスノデ今日之ヲ一箇月每ニ更新スルト
云フコトハ到底贊成スルコトガ出來ナイト
云フノデゴザイマス委員會ニ於キマシテ
ハ政府委員竝ニ委員ノ間ニ種々質問應答ガ
重ネラレマシテ、又必要ナル審査資料モ要
求シテ愼重ニ審議イタシマシタ結果本案
ハ之ヲ否決スベキモノト決定イタシマシ
タ次ニ第二十五號ノ審査ノ結果竝ニ經過
ヲ申上ゲマス本案モ要議院ノ提出ニ係リ
マシテ刑事訴訟法中第二十九條ヲ削除セ
ントスルモノデゴイマス、同條ハ訴訟ヲ遲
延セシムル目的ノミヲ以テ爲シタルコト明
白ナル忌避ノ申立ハ決定ヲ以テ之ヲ却下ス
ベキコトニナッテ居リマス、政府當局ノ意見
ハ本改正案ニハ反對デアリマシテ元來忌
避權ノ行使ヲ許ス場合ハ刑事訴訟法第二十
四條ノ除斥ノ原因ノ存在スル場合トソレ
ト一般的ニ偏頗ノ虞アル場合、此二ツノ場
低脂/ 肉汁然ルニ今除斥ノ原因又ハ
ニ拘ラス徒ラニ裁判ノ審理
ヲ妨ゲル目的ヲ以テ忌避ノ申請ヲ爲シタル
トキハ之ヲ却下スルコトガ出來ナイコトニ
ナリマスサウナレバ裁判ハ停頓シ、到底
訴訟ノ迅速ト正確ナル運行等ガ出來ナイコ
トニナリマスカラ、 、
フノデゴザイマス
質疑應答ヲ重ネタル結果、本案モ否決スベ
キモノト決定イタシマシタ尙ホ詳細ノコ
ト·速記錄デ御覽ヲ願ヒマス委員會ノ
報告ハ是デ終リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=171
-
172・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 只今鷹司特別委
員長ガ報〓セラレマシタ兩案トモ、一 はク.
テ議題ト爲スコトニ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=172
-
173・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認
メマス兩案ヲ第二讀會ニ移スベシトスル
諸君ノ起立ヲ請ヒマス
〔起立者無シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=173
-
174・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 起立者ゴザイマ
セヌ故ニ兩案トモ否決セラレマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=174
-
175・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 書記官ヲシテ報
告ヲ致サセマス
〔瀬古書記官朗讀〕
本日大正十五年法律第五十二條中改正法律
案特別委員會ニ於テ當選シタル正副委員長
ノ氏名左ノ如シ
委員長侯爵佐佐木行忠君
副委員長宮田光雄君
本日委員長ヨリ左ノ報告書ヲ提出セリ
大正十五年法律第五十二號中改正法律業
可決報告書発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=175
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176・池田政時
○子爵池田政時君 此際日程ヲ變更シ、大
正十五年法律第五十二號中改正法律案ノ委
員長報告ヲ追加セラレムコトノ動議ヲ提出
イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=176
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177・清岡長言
○子爵〓岡長言君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=177
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178・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 池田子爵ノ議事
日程追加ノ動議ニ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=178
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179・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=179
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180・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 大正十二年法律
第五十二號中改正法律案、衆議院提出、第
一讀會ノ續、委員長報告
大正十五年法律第五十二號中改正法律
案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報告候也
昭和八年三月二十五日
委員長侯爵佐佐木行忠
貴族院議長公爵德川家達殿
〔侯爵佐佐木行忠君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=180
-
181・佐佐木行忠
○侯爵佐佐木行忠君 只今日程ニ上ボリマ
シタ大正十五年法律第五十二號中改正法律
案ノ特別委員會ノ經過竝ニ結果ヲ御報告申
上ゲマス本案ハ衆議院提出デアリマスル
ガ爲ニ、委員會ニ於キマシテハ、先ヅ委員ヨ
リ政府ノ所見ヲ問ハレタノデアリマス其
際ニ政府ハ本案ノ趣旨ヲ說明セラレマシ
ソレヲ先ヅ御紹介申上ゲマス本
紫シハース十二年一ノ關東大震災ノ後ニ區劃整
理ヲ行フ其結果ト致シマシテ惡イ土地
ト良イ土地トガアリマシテソレヲ互ニ
交換スルト云フヤウナ場合ニ於キマシテ
惡イ土地ニハ一定ノ代金ヲ拂フ、又良イ土
地カラハ一定ノ代金ヲ施行者ニ納メルト
云フコトニナッテ居ッタノデアリマスルガ
其代金ヲ納付イタシマスルノニ卽時ニ納
付スルト云フコトガ當然ノヤウデアリマス
ルガ其當時ノ狀況上ソレハ誠ニ氣ノ毒
分納ヲ認メタノデア
其分納ノ期限ガ施行者ガ國ニ關ス
バイナリーグ又東京市ニ關ス
東京都港区西南部粉謝システムハ
卽チ昭和十二年
"text "〓〓ドキドメ
政府ニ於キマシテハ尙ホ目下ノ狀
又納付者
モ氣ノ毒デアルト云フコトデ考慮ノ結果
ハ政府ハ本案ニ對シテハ異議ガ無イト云
フコトデアッタノデアリマス、又他ノ委員ヨ
旣ニ分納金ヲ完納シテ居ル者トソレカ
八國大利ガイカーモ領記書法 書法人不動
、其點ハ考慮シタノデアルガ如何ニモ
氣ノ毒ナ狀況デアルガ故ニ、此案ニハ同意
スルノデアルト云フ答辯ガアタノデアリ
マス尙ホ質問モゴザイマシタガ之ヲ省
略イタシマシテ御報告申上ゲマセヌ、討論
ヨニ一人リマツテ本案ハ昨年モ衆議院ヨリ提出
セラレタノデアルガ其當時ハ審査未了ニ
ナッタノデアル、又請願等モ每年提出セラレ
テ居ルノデアルガ本年ハ政府モ本案ニ對
シテ御同意デアルヤウデアルカラ我ニト
シテモ贊成デアルト云フ御意見ガアッタ
ノデアリマス依テ採決ノ結果全會一致ヲ
以テ本案ハ可決セラレタノデアリマス右
御報告申上ゲマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=181
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182・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 本案ヲ第二讀會
ニ移スコトニ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=182
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183・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=183
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184・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直ニ本案ノ第二讀會
ヲ開カレムコトヲ希望イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=184
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185・清岡長言
○子爵〓岡長言君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=185
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186・徳川家達
○議長(公爵徳川家達君) 西大路子爵ノ動
議ニ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=186
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187・徳川家達
○議長(公爵德川〓達君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=187
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188・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 本案全部ヲ問題
ニ供シマス全部原案ニ御異存ゴザイマセ
ヌカ
〔〔異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=188
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189・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=189
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190・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直ニ本案ノ第三讀會
ヲ開カレムコトヲ希望イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=190
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191・清岡長言
○子爵清岡長言君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=191
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192・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 西大路子爵ノ動
議ニ御異存ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=192
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193・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=193
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194・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 第二讀會ノ決議
通リデ御異存ゴサイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=194
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195・徳川家達
○議長(公爵德川家違君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=195
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196・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 日程第十二ヨリ
第十七マデ請願會議
意見書案
豫定線鐵道名寄、羽幌間鐵道速成ノ件
北海道上川郡名寄町長石丸瀧藏呈出
右ノ請願ハ豫定線鐵道名寄、羽幌間鐵道
ハ沿線地方ニ於ケル豐富ナル鑛產及林產
ノ資源ヲ開發スルノミナラス幌加內線鐵
道ト相俟テ運輸交通上亦重要ノ線路ナル
ニ拘ラス近時其ノ建設計畫ヲ中止セラル
ルヤニ聞クハ地方開發上遺憾ナルニ依リ
速ニ同計畫ニ基キ敷設セラレタシトノ旨
趣ニシテ貴族院ハ頴意ノ大體ハ採擇スヘ
キモノト議決 候因テ議院法第六十五條
ニ依リ別册及送付候也
昭和八年月日
貴族院議長公爵德川家達
内閣總理大臣子爵齋藤實殿
意見書案
大糸線鐵追速成ノ件
新潟縣西頸城郡糸魚川町長小林鹿郞
外三名呈出
長野縣北安曇郡大町長平林秀吾外四
名呈出
右ノ請願ハ未成線鐵道大糸線鐵道ハ沿線
地方ニ於ケル資源ヲ開發スルノミナラス
表裏日本ヲ連絡スル緊要ノ線路ナルニ拘
ラス近時財政堅縮ノ爲同鐵道ノ完通時期
ヲ延期セラルルヤニ聞ク斯クテハ產業
交通竝國防上遺憾ナルニ依リ速ニ之ヲ實
現セラレタシトノ旨趣ニシテ貴族院ハ願
意ノ大體ハ採擇スヘキモノト議決最候因
テ議院法第六十五條ニ依リ別册及送付候
也
昭和八年月日
貴族院議長公爵德川家達
內閣總理大臣子爵齋藤實殿
意見書案
勳章年金及恩給受給者救濟ノ件
臺灣豪北市樺山町平民無職三村鷹藏
外九名呈出
右ノ請願ハ動章年金及恩給ノ受給者ニシ
テ往往經濟上ノ爲世俗ノ所謂恩給年金立
替ト稱スル高利債權者ニ虐ケラルル者ア
ルハ甚遺憾ナルニ依リ向後個人間ノ代理
受領ヲ禁スルト共ニ、國家ニ於テ低利資
金ヲ融通ン↓全國信用組合ヲシテ貸附セシ
メ以テ窮厄スル該常者ヲ救濟セラレタシ
トノ旨趣ニシテ貴族院ハ顳意ノ大體ハ採
擇スヘキモノト議決致候因テ議院法第六
十五條ニ依リ別册及送付候也
昭和八年月日
貴族院議長公爵德川家達
内閣總大臣子爵齋藤實殿
意見書案
東海道本線鐵道東京、大磯間電車運轉
ニ關スル件
神奈川縣平塚市長鈴木〓壽外五名呈
出
右ノ請願ハ東京、橫濱兩都市ノ近郊トシ
テ所謂湘南地方一帶ハ近時長足ノ發展ヲ
遂ケ交通益繁劇ナルニ拘ラス省線列車ノ
運轉ノミニテハ囘數少ナク沿道住民ノ不
利不便甚シキニ依リ東海道本線鐵道東
京大磯間ニ於ケル旣設路線ヲ利用シ更
ニ各驛停車ノ省線電車ヲ運轉シテ利便ヲ
圖ラレタシトノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意
ノ大體ハ採擇スヘキモノト議決致候因テ
議院法第六十五條ニ依リ別冊及送付候也
昭和八年月日
貴族院議長公爵德川家達
內関總理大臣子爵齋藤實殿
意見書案
漁業組合新設ノ件
北海道龜田郡戶井村漁業伊藤鶴松呈
出
右ノ請願ハ北海道龜田郡戶井村漁業組合
ハ創立以來相當ノ年月ヲ經過シタルニ拘
ラス何等漁業發展上資スルコトヲ得サル
ハ畢竟區域廣汎ニ過キ統制至難ノ爲ナル
ハ甚遺憾ナルニ依リ字小安ヲ同組合ヨリ
分離シテ新ニ一ノ組合ヲ創設セシメラレ
タシトノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體
ハ採擇スヘキモノト議決致〓因テ議院法
第六十五條ニ依リ別册及送付候也
昭和八年月日
貴族院議長公爵德川家達
內閣總理大臣子爵齋藤實殿
意見書案
長崎縣北松浦郡生月村ニ漁港開設ノ件
長崎縣北松浦郡生月村漁業白石音三
郞外百二十七名呈出
イキツキ
右ノ請願ハ長崎縣北松浦郡生月村ハ從來
屈指ノ漁場トシテ水產物ノ漁獲多ク且近
年大型漁船ノ流行ニ伴ヒ舊時小規模ノ防
波堤ニテハ到底風潮避難ノ用ヲ便セス斯
クテハ水產奬勵上甚遺憾ナルニ依リ昭和
八年度ニ於テ同村ニ漁港ヲ修築セラレタ
シトノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ
採擇スヘキモノト議決致候因テ議院法第
六十五條ニ依リ別册及送付候也
昭和八年月日
貴族院議長公爵德川家達
内閣總理大臣子爵齋藤實殿発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=196
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197・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 是等ノ請願ハ請
願委員長ノ報告通り採擇スルコトニ御異存
ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=197
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198・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=198
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199・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 內閣總理大臣ヨ
リ通牒ニ接シマシタカラ、書記官ヲシテ朗
讀ヲ致サセマス
〔小林書記官朗讀〕
昭和八年三月二十五日
內閣總理大臣子爵齋藤實
貴族院議長公爵德川家達殿
通牒
本月二十六日貴族院ニ於テ帝國議會閉院
式執行被仰出候発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=199
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200・徳川家達
○議長(公爵德川家達君) 是ニテ散會イタ
シマス
午後六時二十八分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006403242X03119330325&spkNum=200
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