1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和八年二月十六日(木曜日)
午後一時二十分開議
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議事日程 第十三號
昭和八年二月十六日
午後一時開議
第一 都市計畫法中改正法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第二 右議案の審査を付託すへき委員の選擧
第三 樺太地方鐵道補助法中改正法律案(政府提出) 第一讀會
第四 右議案の審査を付託すへき委員の選擧
第五 船舶安全法案(政府提出) 第一讀會
第六 船舶職員法中改正法律案(政府提出) 第一讀會
第七 右各案の審査を付託すへき委員の選擧
第八 米穀統制法案(政府提出) 第一讀會
第九 米穀需給調節特別會計法中改正法律案(政府提出) 第一讀會
第十 右各案の審査を付託すへき委員の選擧
第十一 外國爲替管理法案(政府提出) 第一讀會
第十二 右議案の審査を付託すへき委員の選擧
第十三 助産師法案(野中徹也君外二名提出) 第一讀會
第十四 刑の宣告猶豫に關する法律案(一松定吉君外五名提出) 第一讀會
第十五 水産會法中改正法律案(小池仁郎君提出) 第一讀會
第十六 水産會法中改正法律案(鈴木英雄君外三名提出) 第一讀會
第十七 地租法中改正法律案(松岡俊三君外四十四名提出) 第一讀會
第十八 地租法中改正法律案(小池仁郎君外四名提出) 第一讀會
第十九 地租法中改正法律案(工藤鐵男君外十一名提出) 第一讀會
第二十 地租法中改正法律案(金城紀光君外五名提出) 第一讀會
第二十一 地租法中改正法律案(伊禮肇君提出) 第一讀會
第二十二 不動産融資及損失補償法中改正法律案(木下成太郎君外十八名提出) 第一讀會
第二十三 郷又は町村祿高に對し公債證書給與に關する法律案(寺田市正君外四名提出) 第一讀會
第二十四 住宅組合法中改正法律案(船田中君提出) 第一讀會
第二十五 住宅組合に對し償還資金給與に關する法律案(船田中君提出) 第一讀會
第二十六 中央卸賣市場法中改正法律案(八田宗吉君外三名提出) 第一讀會
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001・秋田清
○議長(秋田〓君) 諸般ノ報告ヲ致サセマ
ス
〔書記官朗讀〕
一政府ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
(第二號)昭和七年度歲入歲出總豫算追加
案
(特第二號)昭和七年度各特別會計歲入歲
出豫算追加案
(以上二月十五日提出)
昭和七年法律第六號中改正法律案(昭和
七年度一般會計歲出ノ財源ニ充ツル爲公
債發行ニ關スル件)
(以上二月十六日提出)
一昨十五日貴族院ヨリ受領シタル政府提出
案左ノ如シ
小切手法案
〔左ノ報〓ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノ爲
玆ニ揭載ス〕
一議員ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
衞生組合法案
提出者
野田文一郞君小山谷藏君
加藤鯛一君中村繼男君
伊禮肇君
傳染病像防法中改正法律案
提出者
野田文一郞君小山谷藏君
加藤鯛一君中村繼男君
伊禮肇君
(以上二月十四日提出)
七尾氷見間鐵道敷設ニ關スル建議案
提出者栗原彥三郞君
中國又ハ四國ニ國立理化學大學設置ニ關
スル建議案
提出者
多木久米次郞君靑木雷三郞君
蔭山貞吉君
農具改良奬勵ニ關スル建議案
提出者
多木久米次郞君靑木雷三郞君
蔭山貞吉君
二見三田間鐵道敷設速成ニ關スル建議案
提出者
多木久米次郞君靑木雷三郞君
蔭山貞吉君
臺灣博多港間定期航路開始ニ關スル建議
案
提出者
吉田鞆明君宮川一貫君
樋口典常君原口初太郞君
米穀生產費調査ニ關スル建議案
提出者八田宗吉君
蠶業指導員設置助成金下付ニ關スル建議
案
提出者加藤知正君
信濃川漁梯改造ニ關スル建議案
提出者
增田義一君原吉郞君
佐藤與一君山田助作君
民間航空奬勵補助法制定ニ關スル建議案
提出者
永田良吉君上原平太郞君
中島知久平君原口初太郞君
原惣兵衞君土倉宗明君
江藤源九郞君八角三郞君
土井權大君內野辰次郞君
宮脇長吉君
(以上二月十四日提出)
彼杵早岐間縣道ヲ國道ニ編入ニ關スル建
議案
提出者
佐保畢雄君向井倭雄君
森肇君
一議員ヨリ提出セラレタル質問主意書左ノ
如シ
中小商工業者救濟ノ爲產業組合ニ對スル
特典撤廢竝之カ取締ニ關スル質問主意書
提出者磯部尙君
思想問題ニ關スル質問主意書
提出者
木下成太郞君內野辰次郞君
兒玉右二君小野寺章君
(以上二月十四日提出)
競馬取締及改善ニ關スル質問主意書
提出者本出義成君
(以上二月十六日提出)
一去十四日齋藤內閣總理大臣ヨリ左ノ通發
令アリタル旨ノ通牒ヲ受領セリ
遞信省管船局長淺野平二
第六十四囘帝國議會遞信省所管事務政府
委員被仰付
一去十四日衆議院規則第十五條但書ニ依リ
議長ニ於テ議席ヲ左ノ通變更セリ
二二四三土忠造君
二二五埼玉縣第一區
選出議員
三〇二望月圭介君
三〇三前田米藏君
三〇四小川平吉君
三〇五山本条太郞君
三〇六木下成太郞君
三一三中橋德五郞君
三二〇板谷順助君
一去十四日議長ニ於テ辭任ヲ許可シタル常
任委員左ノ如シ
第二部選出決算委員林平馬君
一去十四日特別委員理事補闕選擧ノ結果左
/細
傷痍軍人及戰公傷病死者遺族等ノ鐵道船
舶等乘車船優遇ニ關スル法律案(江藤源
九郞君外三名提出)委員
理事佐々木家壽治君(理事星廉平君
本月七日委員辭任ニ付其ノ補
關
一去十四日ニ於ケル特別委員ノ異動左ノ如
シ
造幣局工場及其ノ附屬設備ノ新營費ニ關
スル法律案(政府提出)外二件委員
辭任加藤鐐五郞君補闕篠原義政君
一昨十五日衆議院規則第十五條但書ニ依リ
議長ニ於テ議席ヲ左ノ通變更セリ
四〇埼玉縣第一區
選出議員
四高橋義次君
二二五廣瀨德藏君
一昨十五日常任委員補闕選擧ノ結果左ノ如
シ
第二部選出
決算委員川淵洽馬君(林平馬君補
關
一昨十五日常任委員理事補關選擧ノ結果左
(タン
決算委員
理事谷原公君(理事林平馬君昨
十四日委員辭任ニ付其ノ補闘)
一昨十五日ニ於ケル特別委員ノ異動左ノ如
シ
少年〓護法案(荒川五郞君外六十六名提
出)委員
辭任後藤脩君補闕佐藤洋之助君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X01419330216&spkNum=1
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002・秋田清
○議長(秋田〓君) 是ヨリ會議ヲ開キマス、
御諮リ致スコトガゴザイマス、行政執行
法中改正法律案外十二件委員長及司法代書
人法中改正法律案外四件委員長ヨリ、ソレ
ゾレ本日本會議中、委員會ヲ開キタイトノ
申出ガアリマシタ、之ヲ許可スルニ御異議
ゴザイマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X01419330216&spkNum=2
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003・秋田清
○議長(秋田〓君) 御異議ナシト認メ許可
スルニ決シマシタ、日稈第一、都市計畫法
中改正法律案ノ第一讀會ヲ開キマス-內
務大臣山本達雄君
第都市計畫法中改正法律案(政府
提出、貴族院送付)第一讀會
都市計畫法中改正法律案
都市計畫法中左ノ通改正ス
第一條中「市ノ區域內ニ於テ」ヲ「市若
ハ主務大臣ノ指定スル町村ノ區域內ニ於
テ」ニ改ム
製作家都市計畫區域ハ市又ハ前條ノ町
村ノ區域ニ依リ主務大臣之ヲ決定ス
主務大臣必要ト認ムルトキハ關係市町
村及都市計畫委員會ノ意見ヲ聞キ前項
ノ區域ニ拘ラズ都市計畫區域ヲ決定ス
ルコトヲ得
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
〔國務大臣男爵山本達雄君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X01419330216&spkNum=3
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004・山本達雄
○國務大臣(男爵山本達雄君) 玆ニ議題ト
相成リマシタ都市計畫法中改正法律案ニ付
キマシテ、其提出理由ノ〓略ヲ申上ゲマス、
都市計畫法ハ、現在デハ勅令ヲ以テ指定セラ
レマシタ市ノミニ適用セラレテ居ルノデア
リマスガ、都市計畫ヲ樹立スルコトハ、總
テノ市ヲ通ジテ其必要ガアリト考ヘマスノ
デ、市ニ對シマシテハ總テ本法ヲ適用スル
コトヽ致シタイト思フノデアリマス又町
村デアリマシテモ、現ニ都市トシテノ體裁
ヲ備ヘ、或ハ將來都市トシテ發展スルコト
ガ明瞭ニ豫想セラレマスルモノニ付キマシ
テハ矢張本法ヲ適用致シマシテ、都市計
畫ヲ樹立スルノ途ヲ拓クノ必要アリト考ヘ
ルノデアリマス、尙ホ都市計畫區域ハ現
行法ニ於キマシテハ總テ關係市町村及都
市計畫委員會ノ意見ヲ聽キマシタ上デ、內
閣ノ認可ヲ經テ決定致シテ居リマスガ、改
正案ニ於キマシテハ、此內閣ノ認可ヲ要セ
ザルコトヽシ、且ツ市町村ノ區域ニ依ラザ
ル都市計畫區域ヲ決定スル場合ニ限リ、關
係市町村等ノ意見ヲ聽キタル上決定スルコ
トニ改メマシテ、事務ノ簡捷ヲ圖ラントス
ル次第デアリマス、以上ハ本法律案ノ要旨
デアリマス、何卒御審議ノ上御協贊アラン
コトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X01419330216&spkNum=4
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005・秋田清
○議長(秋田〓君) 日程第二、右議案ノ審
査ヲ付託スベキ委員ノ選學ヲ議題ニ供シマ
ス
第二右議案ノ審查ヲ付託スベキ委員ノ
選擧発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X01419330216&spkNum=5
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006・上田孝吉
○上田孝吉君 本案ハ議長指名九名ノ委員
ニ付託セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X01419330216&spkNum=6
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007・秋田清
○議長(秋田〓君) 上田君ノ動議ニ御異議
アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X01419330216&spkNum=7
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008・秋田清
○議長(秋田〓君) 御異議ナシト認メマ
ス仍テ動議ノ如ク決シマシタ、日程第三、
樺太地方鐵道補助法中改正法律案ノ第一讀
會ヲ開キマス-拓務政務次官堤康次郞君
第三樺太地方鐵道補助法中改正法律
案(政府提出)第一讀會
樺太地方鐵道補助法中改正法律案
樺太地方鐵道補助法中左ノ通改正ス
第一條及第二條中「十年」ヲ「十五年」ニ改
ム
附則
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
〔政府委員堤康次郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X01419330216&spkNum=8
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009・堤康次郎
○政府委員(堤康次郞君) 只今議題トナリ
マシタ樺太地ナ鐵道補助法中改正法律案
ノ提出ノ理由ヲ說明致シマス、現在樺太
ニ於テ補助中ノ地方鐵道ハ、何レモ營業
開始後日尙ホ淺ク、殊ニ近年經濟界ノ不
況ニ伴ヒマシテ、其營業成績未ダ良好デ
ナイ有樣デアリマシテ、將來人口ノ增加
及產業ノ發展ナドヲ考慮ニ入レテモ尙ホ
當分獨立自營ノ域ニ達シ得ナイモノト認メ
ラレマスノデ、現行ヲ補助期間ノ經過後
モ尙ホ補助ヲ繼續スルノ必要ガアルノデア
リマス、仍テ此際右補助期間ノ限度十年ヲ
十五年ニ改正シ、以テ樺太ニ於ケル地方鐵
道ノ健全ナル發展ヲ期シタイト存ジマシ
テ本法律案ヲ提出シタ次第デアリマス、
御審議ノ上御協贊アランコトヲ希望致シマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X01419330216&spkNum=9
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010・秋田清
○議長(秋田〓君) 質疑ヲ許シマス-蔭
山貞吉君
〔蔭山貞吉君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X01419330216&spkNum=10
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011・蔭山貞吉
○蔭山貞吉君 私ハ只今提出セラレマシタ
ル樺太地方鐵道補助法中改正法律案ニ關シ
マシテ、二三ノ質疑ヲ試ミタイト存ジマス
第一ニ此樺太地方鐵道、卽チ樺太鐵道株
式會社及南樺太鐵道株式會社、此兩會社ト
尙ホ同地ニ在ル事業會社ノ關係ニ付テ御伺
シタイノデアリマス、此樺太鐵道株式會社
ハ富士製紙及王子製紙ガ主ナル資本主デア
リマス又南樺太鐵道株式會社ハ王子製
紙ガ主ナル資本主ノヤウデアリマス、兩會
社共ニ重役ハ關聯致シテ居リマシテ、會社
ノ名目ハ違フケレドモ、兩會社ハ殆ド同一
ト看做シテ宜サウデアリマスガ、而シテ樺
太ニ於ケル事業會社ノ主ナルモノヽ中、王
子製紙及富士製紙、樺太工業、是等ノ會社
ノ重役ハ、殆ド半數以上ハ此兩鐵道會社ト
兼ネテ居ルヤウニ思フノデアリマス偖テ
是等ノ事業會社ガ最初此鐵道ヲ建設サレ
タノハ所謂自己ノ營業ノ爲ニ此兩鐵道ヲ
建設サレタ如ク考ヘラレルノデアリマス、
卽チ此鐵道會社ノ創設以來ノ利益ヲ見ルト
云フト、大體ニ於テ最初ハ年八朱、次デ不
良ト雖モ年五朱ノ配當ヲ致シテ居ラレマ
ス而シテ此會社ガ事業不振ノ爲ニ自己獨
立自營ノ域ニ達セナイト云フ點デアリマ
ス、此點ニ付テ政府ハ左樣御認メニナッテ居
ルヤウデアリマスガ、併ナガラ是ハ從來決
算委員會ニ於テモ非常ナ問題ニナリマシタ
如ク、此森林ノ伐採ト相俟チマシテ、甚ダ
面白クナイ點ガ多々アルヤウニ考ヘルノデ
アリマス、此獨立自營ノ域ニ達セナイト云
フ點、之ヲ如何ニ御考ヘニナッテ居ルカ、殊
ニ此兩會社ト三製紙會社ノ關係ガ、果シテ
同一ノモノデアルナラバ、從來ノ製紙會社
ノ事業ノ利益ト云フモノハ、鐵道ノ方ニハ
損失ハアルケレドモ、製紙會社ノ利益ガ莫
大ニアッタト云フコトヲ考ヘラレルノデア
リマス
第二ニ、昨年來調査致シマシタ樣子ニ
依リマスト、買收ヲシテ貰ヒタイト云
フ所ノ會社ノ希望デアッタヤウデアリ
やっ、當時色々樺太廳ノ鐵道局事務所ノ
方ニ問合セマシタ所ガ、矢張買收ノ希
望ガアル、其買收ノ要領ヲ見マスルト、
買收シタ方ガ補助ヲ繼續スルヨリハ宜シ
イ、例ヘバ現在ノ補助額ハ年百十万乃至二
十万圓每年補助ヲシテ居ルソレヲヤルヨ
リハ寧ロ買收シタナラバ百万圓以下ニ減
ズル、斯ウ云フコトデアリマシタガ、鐵道
ノ買收ト云フモノガ非常ニムヅカシクナツ
タト云フ見地カラ、或ハ買收ヲ變更シテ
所謂補助ト云フモノニ變更サレタノデハナ
カラウカ、此點ヲ御伺シタイノデアリマス
尙ホ次ニハ樺太鐵道會社ハ、最初ハ敷香
ト云フ方面マデ延長スルベク出願ヲシテア
ル筈デアリマス然ルニ現在ハマダ其手前
ニ達シテ居ラナイ、ソレデ此補助ヲ與ヘタ
ナラバ、更ニ敷香マデ延長スルノカドウ
カ、此點デアリマス、進ンデハ或ハ露西亞ノ
國境マデ延長スル意思ガアルカ、兩會社ノ
爲ニ、又製紙會社ノ爲ニハ、或ハ一定ノ製紙
事業ノ利益ヲ得レバ宜シイノデアリマセウ
ガ、眞ニ地方ノ交通開發ノ爲ニハドウシ
テモ最初ノ出願通リニ延長サセル必要ガア
ルノデアリマス、又最近敷香ニ人組會社ヲ
設ケルト云フヤウナコトデ、或ハ其點ガ如
何ニナッテ居リマセウカ、尙ホ彼ノ地方ノ者
ガ非常ニヤカマシク申シテ居リマスルノ
ハ又アチラニ在官サレタ各位ガ色々申シ
テ居ラレルノハ、製紙會社或ハ鐵道會社、
ソレ等ノ會社ハ自己ノ利益ノミヲ計ッテ、
地方民ノ利益ヲ計ラナイ、例ヘバ大泊ノ市
街ノ如キハ非常ナ疲弊ヲシテ居ル、現在戶
數ガ五千ノ所ヲ、千戶モ今閉鎖ヲシテ居ル、
其開發ヲスル時ニハ政府ニ莫大ナル補助
ヲ要求シテ置キナガラ、今日旣ニ南樺太鐵
道、アノ方面ノ森林ヲ伐採シテ事業ガ不振
ニナッタト云フト、直チニ政府ニ相談ヲセズ
シテソレヲ閉鎖スル、サウシテ樺太ノ住民
ヲ非常ニ苦シメテ居ルト云フコトヲ、樺太
ノ各方面デ聞イタノデアリマス、又軍事及
交通上カラ考ヘマシテモ、東海岸ノ方ニ果
シテ此鐵道ヲ延バス方ガ宜イカ、西海岸ヲ
延バス方ガ宜イカ、此點ニ付テモ御伺ヒシ
タイノデアリマス偖テ好景氣時代ニ樺太ニ
ドン〓〓移民ヲ送リマシテ、又會社ノ事業
ノ發展ヲ援ケルト云フコトハ是ハ無理カ
ラヌコトデアリマスルガ、今日ノ如ク財政
上ニ大困難ヲ來シ、農村或ハ中小商工業者
ノ疲弊困憊シテ居ル今日、而モ此匡救ノ方
法モ十分デナイ今日ニ於キマシテ、果シテ
斯樣ナ大會社、餘リ缺損デナイ所ノ大會社
ヲ補助スルト云フコト、殊ニ十年ノ日子ト
云フコトハ最初カラ十年ハ補助ヲ受ケル
ガ、十年以後ハ受ケナイト云フ、チヤント
ソレダケノ規定ガ出來テ居ル、ソレヲ更ニ
五年ヲ延長スルト云フコトニナルト、國庫
ノ損失ハ六百万圓以上ニナルノデアリマ
ス此點ニ付キマシテ拓務當局ノ御考ヲ承
リタイノデアリマス、農村ノ疲弊ト云フコ
トヽ斯樣ナ事業家ヲ援助スルト云フコト
ト、此處ヲ能ク考ヘテ戴キタイノデアリマ
ス、尙ホ細カイ色々ノ調査モアリマスル
ガ、是ハ委員會ニ讓リマシテ、此程度ニ止
メテ置キタイト存ジマス
〔政府委員堤康次郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X01419330216&spkNum=11
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012・堤康次郎
○政府委員(堤康次郞君) 只今ノ蔭山君ノ
御質疑ニ對シマシテ御答ヲ致シマス第.
ノ點ハ樺太ノ此鐵道ノ大株主ハ、何レモ
製紙會社デアル是ハ事業ノ目的ノ爲ニ敷
設シタノデアルカラ、補助ノ必要ガナイヂ
ヤナイカト云フヤウナ論點デアルト記憶シ
タノデアリマス、事業ノ目的ノミニ敷設シ
タモノデアリマスルナラバ是ハ補助ヲシ
ナクテモ宜イト考ヘラレマス、併ナガラ此
樺太ノ鐵道ト申シマスルト、樺太鐵道ト南
樺太鐵道ノ二ツデアリマスガ、是ハ孰レモ
樺太ノ幹線ニ當ッテ居リマシテ、事業上ノ木
材ノ運搬モ致シマスルケレドモ併ナガラ
樺太全體ノ產業開發及交通ノ利便ノ爲ニ
モ、十分貢獻ヲ致シテ居ルノデアリマスル
ツ、寧ロ樺太全體ノ產業ノ開發、交通ノ利
便ト云フコトガ主タル使命ノヤウナ狀態
ニナッテ居ルノデアリマスカラ、是ハ相當補
助ヲスルコトガ當然デアルト考ヘテ居ルノ
デアリマス、樺太ニハ他ニ內幌鐵道ト云フ
ノガアリマシテ、是ハ十哩二ダケノ延長ヲ
有シテ居ルノデアリマスガ、是ハ專ラ炭坑
ノ石炭ヲ運搬スル爲ニ敷設セラレテ居ルノ
デアリマスカラ、是ニハ補助ハ致シテ居ラ
ナイノデアリマス、ソレカラ第二ノ樺太鐵
道ヲ補助スレバ、南新問カラ敷香マデヲ延
長シテ建設スルカドウカト云フ御尋デアリ
マシタガ、是ハ今測量ヲ致シテ居リマシ
テ、認可期間ガ、昭和十年十月迄トナッテ
居リマスカラ、無論建設スルモノデアラウ
ト考ヘテ居ルノデアリマス、ソレカラ第三
ニ製紙會社ハ自己ノ利益ノミヲ考ヘテ、
般ノ土地ノ住民ノ利益ト云フコトヲ、餘リ
考慮シナイノデハナイカト云フ御尋デアリ
マスガ其點ニ付キマシテハ拓務當局ト
致シマシテモ、十分ノ注意ヲ與ヘマシテ、
現在蔭山君ノ御述べニナリマシタ通リ、大
泊ハ工場ヲ閉鎖致シテ居リマスルノデ、非
常ニ疲弊ヲ致シテ居リマスソコデ木材拂
下ノ承認區域等ノ整理ヲシテ、工場ガ立チ
行クヨウニシテ、何トカ此工場ヲ開始サセ
ルヤウニ、當事者ヲ呼ビマシテ交涉ヲ樺
太長官ヲシテ致サセテ居ルノデアリマシ
テ、成ベク一般ノ住民ノ利益ヲ圖ルヤウニ
致シタイト考ヘテ居ルノデアリマス、ソレ
カラ第四ニ、企業者ハ大體十年デ收支計算
ガ償フ積リデ建設ヲシタノデアラウ、償ハ
ナイカラト言ッテ、之ヲ補助シテヤルノハド
ウカト云フ御趣旨ト記憶致シマシタガ、是
ハ非常ニ御尤ナ議論デアリマス、併ナガラ
獨リ樺太ノミナラズ內地、臺灣、北海道ナ
ドノ-北海道ハ內地デアリマスガ、鐵道
ノ補助ニハ大抵ノ振合ト云フモノガアリマ
シテ、內地ノ鐵道ハ營業開始ノ日カラ、十
箇年ト云フコトニナッテ居リマス、臺灣ハ營
業開始ノ日カラ、是モ矢張十箇年ト云フコ
トニナッテ居リマス、樺太ハ設立登記ノ日カ
ラ十年ト云フコトニナッテ居リマシテ、現ニ
樺太鐵道ナドハ、營業ヲ開始致シマシタノ
ガ昭和三年ノ十一月デアリマシテ、僅ニ六
箇年ヨリ經ッテ居ナイノデアリマス、朝鮮
モ設立登記ノ日カラ十五年ト云フコトニ
ナッテ居リマスガ、是ハ最初十年デアッタモ
ノヲ、五年延長シタノデアリマス、北海
道ハ營業開始ノ日カラ、最初カラ十五年
ト云フコトニナッテ居ルノデアリマスカ
ラ、是等ノ振合カラ見マシテモ、樺太ハ
僅ニ六年デ期限ガ切レタカラ、更ニ五年
ノ期間ヲ延長スルト云フコトハ無理モ
ナイ所デアラウト考ヘタノデアリマス、
ソレカラ御質問ノ內ニ、八分ノ補助ト云フ
コトガ多過ギハセヌカト云フヤウナ意味モ
含ンデ居ッタノデアリマスガ、是ハ樺太地方
鐵道ノ補助法ノ第五條ニ、補助金ノ年總額
ハ最高百二十万圓トスト、斯ウ云フ制限ガ
附ケテアリマスルノデ、現在ハ百二十万圓
ノ補助ノ範圍ニ於キマシテハ樺太鐵道ハ
昭和六年、七年、此二年度ハ五分ノ配當ヨ
リモ出來ナカッタノデアリマス、ソレカラ南
樺太鐵道ハ昭和六年ガ平均七分五厘、昭
和七年ガ平均五分八厘ヨリ配當ハ出來テ居
リマセヌ、尤モ此資本ヲ出シテ居リマスル
ノハ、主トシテ製紙會社デアリマスガ、樺太
全體ノ產業開發及交通ノ便利ニ「サービス」
シテ居ルノデアリマスカラ、此位補助ノ期
間ヲ延長スルコトハ妥當ナコトデアルト
政府ハ考ヘテ居ルノデアリマス、尙ホ詳細
ハ委員會ニ於テ御說明致シタイト存ジマス
(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X01419330216&spkNum=12
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013・秋田清
○議長(秋田〓君) 加藤鯛一君
〔加藤鯛一君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X01419330216&spkNum=13
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014・加藤鯛一
○加藤鯛一君 政府ハ樺太ニ於ケル地方鐵
道ハ、未ダ獨立自營ノ域ニ達セザルト云フ
理由ヲ以テ、補助期間ノ延長ヲスルト云フ
改正法律案ヲ御出シニナリマシタガ、然ラ
バ他ノ植民地ニ對スル御考ハ、ドウ云フ御
考ヲ有ッテ御出デニナルノデアリマスカ、例
ヘバ朝鮮鐵道ノ如キ、近々ニ此補助機關ガ
切レルコトニナッテ居リマス、之ニ對シマ
シテ、總理大臣ノ齋藤サンハ、以前朝鮮總
督時代ニ於テ是ハ延長スルモノデアルト
云フコトノ意思ヲ表示サレテ、會社ノ重役
ニ此意思ヲ通ジテ居ラレルト聞イテ居リマ
スガ果シテ左樣ナコトガアッタカドウカ、
又之ニ對シマシテ補助期間ヲ延長スル意思
ヲ、政府ハ有ッテ御出デニナリマスカ否ヤ、若
シ之ヲ延長スル意思ガ政府ニアリマスルナ
ラバ、此議會ニ御提案ニナリマセヌト間ニ
合ハナイノデアリマス、政府ハ次ノ議會ニ
於テモ間ニ合フト云フ御考カモ知レマセヌ
ガ、若シ次ノ議會ニ於テ、解散等ノ場合ガ
アリマシタ時ニハ、間ニ合ハヌコトニナル
ノデアリマスガ、此議會ニ完全ヲ期スル爲
ニ提案セントスル意思ガアリヤ否ヤ、又朝
鮮鐵道ハ御承知ノ通リニ、十年一日ノ如ク、
過去ニ於キマシテハ少シモ進步改善ノ見ル
ベキモノガナイノデアリマス此便々ダラ
リト致シマシテ、發達改善ノ見ルベキモノ
ガナイニモ拘ラズ、政府ハ年々莫大ナル補
助ヲ與ヘテ居リマスルガ、尙ホ〓後モ、少
シモ進步改善ノ見ルベキモノガナイ此鐵道
ニ對シマシテ、從來同樣ナ方法デ補助ヲ與
ヘントサレルノデアリマスカ、此鐵道ノ發
達改善ノ爲ニハ、何等カノ指導方針ヲ有ッテ
御出デニナリマスカ若シ政府ニ其指導方
針ガアリマスルナラバ併セテ此機會ニ承
リタイ、此事ヲ御尋スル次第デアリマス(拍
手)
〔政府委員堤康次郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X01419330216&spkNum=14
-
015・堤康次郎
○政府委員(堤康次郞君) 加藤君ノ御質疑
ニ對シテ御答致シマス、樺太ハ五年延長ス
ル朝鮮ニ對シテハドウ云フ考ヲ有ッテ居
ルカ斯ウ云フ御尋デアリマス、恐ラク朝
鮮モ樺太モ、同ジク植民地デアル以上ハ
同樣ニ法律案ヲ出スベキモノダト云フ御趣
旨ノ論點ト拜聽致スノデアリマスガ、實ハ
當局ト致シマシテハ、加藤君ノ其趣旨ニ依ツ
テ本案ヲ提出致シタノデアリマス、朝鮮モ
最初十年ト云フコトニナッテ居リマシタケ
レドモ、途中デ五年延長致シマシテ、十五
年トナッテ居ルノデアリマス、樺太モ十年デ
アリマスノヲ近ク期間ガ滿了致シマスノデ、
同樣ニ十五年ト致シタイト考ヘテ、御協贊
ヲ仰イダヤウナ次第デアリマス、尙ホ朝鮮
ノ鐵道ニ將來モ更ニ補助スルカ、セヌカ、
又補助ヲスルトスレバ如何ナル指導方針
ヲ以テ、經營爲サシムベキカト云フ御質問
デアリマスガ、是ハ本議會ニ提案致シマセ
ヌデモ、次ノ議會デモマダ間ニ合フノデア
リマスカラ·······(加藤鯛一君「解散ガアレバ
間ニ合ハナイデハナイカ」ト呼フ)只今愼重
ニ考慮ヲ致シテ居ルノデアリマス、指導方
針ト云フノハ言フマデモナク眞面目ニ
冗費ヲ節約致シマシテ、產業ノ開發、交通
ノ便利ト云フ趣旨ニ副ハシムルヤウニト云
フノガ是ガ當局トシテノ指導方針デアリ
ひく、尙ホ詳細ハ委員會ニ於テ申上ゲタイ
ト思ヒマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X01419330216&spkNum=15
-
016・秋田清
○議長(秋田〓君) 質疑ハ終局致シマシタ
日程第四、右議案ノ審査ヲ付託スベキ委員
ノ選擧ヲ議題ト致シマス
第四右議案ノ審査ヲ付託スヘキ委員
ノ選擧発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X01419330216&spkNum=16
-
017・上田孝吉
○上田孝吉君 本案ハ政府提出、鐵道敷設
法中改正法律案外四件ノ委員ニ、併セ付託
セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X01419330216&spkNum=17
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018・秋田清
○議長(秋田〓君) 上田君ノ動議ニ御異議
アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X01419330216&spkNum=18
-
019・秋田清
○議長(秋田〓君) 御異議ナシト認メマス、
仍テ動議ノ如ク決シマシタ-日程第五及
第六ハ共ニ關聯セル議案ナルニ依リ、括
議題ト爲スニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X01419330216&spkNum=19
-
020・秋田清
○議長(秋田〓君) 御異議ナシト認メマス
仍テ日程第五、船舶安全法案、日程第六、
船舶職員法中改正法律案、右二案ヲ一括シ
テ第一讀會ヲ開キマス-遞信大臣南弘君
第五船舶安全法案(政府提出)
第一讀會
第六船舶職員法中改正法律案(政府
提出)第一讀會
船舶安全法案
船舶安全法
第一條日本船舶ハ本法ニ依リ共ノ堪航
性ヲ保持シ且人命ノ安全ヲ保持スルニ
必要ナル施設ヲ爲スニ非ザレバ之ヲ航
行ノ用ニ供スルコトヲ得ズ
第二條船舶ハ左ニ揭グル事項ニ付命令
ノ定ムル所ニ依リ施設スルコトヲ要ス
一船體
二機關
三帆裝
四排水設備
五操舵、繋船及揚錨ノ設備
救命及消防ノ設備
七六居住設備
八衞生設備
九航海用具
十危險物其ノ他ノ特殊貨物ノ積附設
備
+一荷役其ノ他ノ作業ノ設備
十二雷氣設備
十三前各號ノ外主務大臣ニ於テ特ニ
定ムル事項
前項ノ規定ハ左ニ揭グル船舶ニハ之ヲ
適用セズ
一總噸數五噸未滿ノ船舶
二漁權ヲ以テ運轉スル舟其ノ他主務
大臣ニ於テ特ニ定ムル船舶
第三條遠洋區域ヲ航行スル船舶又ハ近
海區域ヲ航行スル總噸數百五十噸以上
ノ船舶ハ命令ノ定ムル所ニ依リ滿載吃
水線ヲ標示スルコトヲ要ス但シ漁獵、
曳船、海難救助、浚渫又ハ測量ニノミ
使用スル船舶其ノ他十務大臣ニ於テ特
ニ滿載吃水線ヲ標示スル必要ナシト認
ムル船舶ハ此ノ限ニ在ラズ
第四條左ニ揭グル船舶ハ無線電信法ニ
依ル無線電信ヲ施設スルコトヲ要ス
一遠洋區域又ハ近海區域ヲ航行スル
總噸數千六百噸以上ノ船舶
二遠洋區域又ハ近海區域ヲ航行スル
旅客船(十二人ヲ超ユル旅客定員ヲ
有スル船舶)
三總噸數百噸以上ノ漁船
前項ノ規定ニ依リ無線電信ノ施設ヲ要
スル船舶ト雖モ航海ノ目的其ノ他ノ事
情ニ依リ主務大臣ニ於テ巳ムコトヲ得
ズ又ハ必要ナシト認ムルトキハ之ヲ施
設スルコトヲ要セズ
第五條船舶所有者ハ第二條第一項ノ規
定ノ適用アル船舶ニ付同條第一項各號
ニ揭グル事項、第三條ノ船舶ニ付滿載
吃水線、第四條ノ船舶ニ付無線電信ニ
關シ命令ノ定ムル所ニ依リ左ノ區別ニ
依ル檢査ヲ受クベシ
初メテ航行ノ用ニ供スルトキ又ハ
第十條ニ規定スル有效期間滿了シタ
ルトキ行フ精密ナル檢査(定期檢査)
二定期檢査ト定期檢査トノ中間ニ於
テ命令ノ定ムル時期ニ行フ簡易ナル
檢査(中間檢査)
三臨時ニ特殊ノ用途ニ使用スルトキ
行フ檢査(特殊船檢査)
四前各號ノ外主務大臣ニ於テ特ニ必
要アリト認メタルトキ行フ檢査BAS
時檢査)
主務大臣ハ命令ノ定ムル所ニ依リ中間
檢査ヲ受クルコトヲ免除スルコトヲ得
第六條本法施行地ニ於テ製造スル長サ
三十メートル以上ノ船舶ノ製造者ハ第
二條第一項ノ規定ノ適用アル船舶ニ付
同條第一項第一號、第二號及第四號ニ
揭グル事項、第三條ノ船舶ニ付滿載吃
水線ニ關シ船舶ノ製造ニ著手シタル時
ヨリ檢査(製造檢査)ヲ受クベシ但シ主
務大臣ニ於テ已ムコトヲ得ズ丈ハ必要
ナシト認ムルトキハ此ノ限ニ在ラズ
本法施行地ニ於テ製造スル長サ三十メー
トル未滿ノ船舶ノ製造者ハ其ノ船舶
ニ付命令ノ定ムル所ニ依リ前項ノ製造
檢査ヲ受クルコトヲ得
本法施行地ニ於テ製造スル船舶用機關
ノ製造者ハ備附クベキ船舶ノ特定前ト
雖モ其ノ機關ニ付命令ノ定ムル所ニ依
リ檢査ヲ受クルコトヲ得
前ニ項ノ規定ニ依ル檢査ニ合格シタル
事項ニ付テハ命令ノ定ムル所ニ依リ前
條ノ檢査ヲ省略ス
第七條第五條又ハ前條第一項若ハ第二
項ノ規定ニ依ル檢査ハ主務大臣ノ特ニ
定ムル場合ヲ除クノ外船舶ノ所在地ヲ
管轄スル管海官廳之ヲ行フ
前條第三項ノ規定ニ依ル檢査ハ船舶用
機關ノ所在地ヲ管轄スル管海官廳之ヲ
行フ
第八條主務大臣ノ認定シタル日本ノ船
級協會(以下單ニ船級協會ト稱ス)ノ檢
査ヲ受ケ船級ノ登錄ヲ爲シタル船舶ニ
シテ旅客船ニ非ザルモノハ其ノ船級ヲ
有スル間第二條第一項第一號乃至第五
號第十號乃至第十二號ニ揭グル事項
及滿載吃水線ニ關シ管海官廳ノ檢査ヲ
受ケ之ニ合格シタルモノト看做ス
第九條管海官廳ハ定期檢査ニ合格シタ
ル船舶ニ對シテハ其ノ航行區域(漁船
ニ付テハ從業制限)、最大搭載人目、制
限汽壁及邁載吃水線ノ位置ヲ定メ船舶
檢査證書ヲ交付ス
管海官廳ハ特殊船檢査ニ合格シタル船
舶ニ對シテハ特殊船檢査證書ヲ交付ス
管海官廳ハ第六條ノ規定ニ依ル檢査ニ
合格シタル船舶又ハ船舶用機關ニ對シ
テハ合格證明書ヲ交付ス
前條ノ船舶ニ付船級協會ノ定メタル制
限汽壓及滿載吃水線ノ位置ハ管海官廳
ニ於テ之ヲ定メタルモノト看做ス
第十條船舶檢査證書ノ有效期間ハ四年
トス但シ命令ヲ以テ定ムル小形船ニ付
テハ四年以內ニ於テ管海官廳ノ定メタ
ル期間トス
船舶檢査證書ハ主務大臣ノ特ニ定ムル
場合ニ於テハ其ノ有效期間滿了後五月
迄ハ仍其ノ效力ヲ有ス
船舶檢査證書ハ中間檢査又ハ臨時檢査
ニ合格セザル船舶ニ付テハ之ニ合格ス
ル迄其ノ效力ヲ停止ス
第八條ノ船舶ノ受有スル船舶檢査證書
ハ其ノ船舶ガ當該船級ノ登錄ヲ抹消セ
ラレ又ハ旅客船ト爲リタルトキハ其ノ
有效期間滿了ス
第十一條船舶ニ付管海官廳ノ檢査ヲ受
ケタル者檢査ニ對シ不服アルトキハ其
ノ事由ヲ具シ主務大臣ニ再檢査ヲ申請
スルコトヲ得
再檢査ヲ申請シタル者ハ主務大臣ノ許
可ヲ受クルニ非ザレバ關係部分ノ原狀
ヲ變更スルコトヲ得ズ
第十二條管海官廳ハ必要アリト認ムル
トキハ何時ニテモ當該官吏ヲシテ船舶
ニ臨檢セシムルコトヲ得此ノ場合ニ於
テハ當該官吏ハ其ノ身分ヲ證明スベキ
證票ヲ携帶スベシ
管海官廳ハ本法ニ違反シタル事實アリ
ト認ムルトキハ船舶ノ航行停止其ノ他
ノ處分ヲ爲スコトヲ得
第十三條船舶乘組員二十人未滿ノ船舶
ニ在リテハ其ノ二分ノ一以上、其ノ他
ノ船舶ニ在リテハ乘組員十人以上ガ命
令ノ定ムル所ニ依リ當該船舶ノ堪航性
又ハ居住設備衞生設備其ノ他ノ人命ノ
安全ニ關スル設備ニ付重大ナル缺陷ア
ル旨ヲ申立テタル場合ニ於テハ管海官
廳ハ其ノ事實ヲ調査シ必要アリト認ム
ルトキハ前條第二項ノ處分ヲ爲スコト
ヲ要ス
第十四條日本船舶ニ非ザル船舶ニシテ
左ニ揭グルモノニハ勅令ヲ以テ本法ノ
全部又ハ一部ヲ準用ス
本法施行地ノ各港間又ハ湖川港灣
ノミヲ航行スル船舶
二日本船舶ヲ所有シ得ル者ノ借入レ
タル船舶ニシテ本法施行地ト其ノ他
ノ地トノ間ノ航行ニ從事スルモノ
三前各號ノ外本法施行地ニ在ル船舶
第十五條主務大臣ニ於テ前條第三號ニ
揭グル船舶ノ所屬地ノ本法ニ該當スル
法令ヲ相當ト認メタルトキハ之ニ基キ
タル船舶ノ堪航性又ハ人命ノ安全ニ關
スル證書ハ本法ニ依リ交付シタル證書
ト同一ノ效力ヲ有ス
前項ノ規定ハ本法ニ依リ交付シタル證
書ノ效力ヲ認メザル國ニ屬スル船舶ニ
付テハ之ヲ適用セズ
第十六條船舶ノ堪航性及人命ノ安全ニ
關シ條約ニ別段ノ規定アルトキハ其ノ
規定ニ從フ
第十七條滿載吃水線ノ標示ヲ隱藏、變
更又ハ抹消シタル者ハ百圓以上二千圓
以下ノ罰金ニ處ス
第十八條船舶所有者又ハ船長左ノ各號
ノ一ニ該當スルトキハ船舶所有者及船
長ヲ百圓以上二千圓以下ノ罰金ニ處ス
船舶檢査證書ヲ受有セズシテ船舶
ヲ航行ノ用ニ供シ又ハ特殊船檢査證
書ヲ受有セズシテ船舶ヲ特殊ノ用途
ニ使用シタルトキ
二航行區域ヲ超エ又ハ從業制限ニ違
反シテ船舶ヲ航行ノ用ニ供シタルト
キ
三制限汽壓ヲ超エテ汽罐ヲ使用シタ
ルトキ
四最大塔載人員ヲ超エテ旅客其ノ他
ノ者ヲ搭載シタルトキ
五滿載吃水線ヲ超エテ載荷シタルト
キ
六無線電信ノ施設ヲ要スル船舶ヲ其
ノ施設ナクシテ航行ノ用ニ供シタル
トキ
七中間檢査ヲ受クベキ場合ニ於テ之
ヲ受ケズシテ船舶ヲ航行ノ用ニ供シ
タルトキ
八前各號ノ外船舶檢査證書ニ記載シ
タル條件ニ違反シテ船舶ヲ航行ノ用
ニ供シ又ハ特殊船檢査證書ニ記載シ
タル條件ニ違反シテ船舶ヲ特殊ノ用
途ニ使用シタルトキ
九管海官廳ノ許可ヲ受ケズシテ檢査
ヲ受ケタル事項ニ變更ヲ爲シ又ハ其
ノ事項ニ變更アリタルニ拘ラズ適當
ノ措置ヲ爲サズシテ船舶ヲ航行ノ用
ニ供シタルトキ
第十九條詐僞其ノ他不正ノ行爲ヲ以テ
第九條ニ揭グル證書ヲ受ケタル者ハ一
年以下ノ懲役又ハ千圓以下ノ罰金ニ處
ス
第二十條船舶所有者又ハ船長第十二條
又ハ第十三條ノ規定ニ依ル處分ニ違反
シタルトキハ千圓以下ノ罰金ニ處ス
第二十一條正當ノ事由ナクシテ當該官
吏ノ臨檢ヲ拒ミ、妨ゲ若ハ忌避シ又ハ
其ノ尋問ニ對シテ答辯ヲ爲サズ若ハ虛
僞ノ陳述ヲ爲シタル者ハ五百圓以下ノ
罰金ニ處ス
第二十二條船舶乘組員虛僞ノ申立ヲ爲
シ管海官廳ヲシテ第十三條ノ規定ニ依
ル調査ヲ爲サジメタルトキハ五百圓以
下ノ罰金ニ處ス
第二十三條船級協會ノ職員第八條ニ揭
グル船舶ニ付第二條第一項第一號乃至
第五號、第十號乃至第十二號ニ揭グル
事項又ハ滿載吃水線ノ檢査ニ關シ賄賂
ヲ收受シ又ハ之ヲ要求若ハ約束シタル
トキハ三年以下ノ懲役ニ處ス因テ不正
ノ行爲ヲ爲シ又ハ相當ノ行爲ヲ爲サザ
ルトキハ一年以上十年以下ノ懲役ニ處
ス
前項ノ場合ニ於テ收受シタル賄賂ハ之
ヲ沒收ス若シ其ノ全部又ハ一部ヲ沒收
スルコト能ハザルトキハ其ノ價額ヲ追
徵ス
第二十四條船級協會ノ職員ニ前條ニ揭
グル檢査ニ關シ賄賂ヲ交付、提供又ハ
約束シタル者ハ三年以下ノ懲役又ハ三
千圓以下ノ罰金ニ處ス
前項ノ罪ヲ犯シタル者自首シタルトキ
ハ其ノ刑ヲ減輕又ハ免除スルコトヲ得
第二十五條本法及本法ニ基ク命令ニ依
リ船舶所有者ニ適用スベキ罰則ハ其ノ
者ガ法人ナルトキハ理事、取締役其ノ
他ノ法人ノ業務ヲ執行スル役員ニ之ヲ
適用シ國又ハ道府縣市町村其ノ他ノ公
共團體ガ船舶所有者ナルトキハ之ヲ適
用セズ
第二十六條本法及本法ニ基ク命令中船
舶所有者ニ關スル規定ハ船舶共有ノ場
合ニ在リテ船舶管理人ヲ置キタルトキ
ハ之ヲ船舶管理人ニ、船舶貸借ノ場合
ニ在リテハ之ヲ船舶借入人ニ適用シ又
船長ニ關スル規定ハ船長ニ代リテ其ノ
職務ヲ行フ者ニ之ヲ適用ス
第二十七條船舶ノ衝突豫防ニ關シ船舶
ノ遵守スベキ船燈ノ表示、航法、信號
其ノ他必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ
定ム
前項ノ船舶ニハ海軍艦船ヲモ包含ス
第二十八條危險物ノ運送禁止、遭難者
救助、救命艇手、操練及操舵命令ニ關
スル事項竝ニ危險及氣象ノ通報其ノ他
船舶航行上ノ危險防止ニ關シ必要ナル
事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第二十九條前二條ニ規定スル事項ヲ除
クノ外地方長官ハ第二條第一項ノ規定
ヲ適用セザル船舶ノ堪航性及人命ノ安
全ニ關シ主務大臣ノ認可ヲ受ケ必要ナ
ル規則ヲ設クルコトヲ得
附則
第三十條本法施行ノ期日ハ第二條第一
項第十一號ニ關スル規定、同條同項第
十二號ニ關スル規定、第二十七條ノ規定
竝ニ他ノ一般規定ニ付各別ニ勅令ヲ以
テ之ヲ定ム
第三十一條船舶檢査法、船舶滿載吃水
線法、船舶無線電信施設法及明治六年
第二百九十二號布告ハ前條ノ一般規定
施行ノ日ヨリ海上衝突豫防法ハ第二
十七條ノ規定ノ施行ノ日ヨリ之ヲ廢止
ス
第三十二條第二條第一項ノ規定ハ左ニ
揭グル船舶ニハ當分ノ內之ヲ適用セズ
一總噸數二十噸未滿ノ帆船
二總噸數二十噸未滿ノ漁船
三平水區域ノミヲ航行スル帆船
第三十三條船舶滿載吃水線法ニ依リ滿
載吃水線ノ標示ヲ要セザリシ船舶ニシ
テ本法ニ依リ其ノ標示ヲ要スルモノニ
付テハ命令ノ定ムル所ニ依リ滿載吃水
線ニ關スル檢査ヲ受クル迄之ヲ標示セ
ザルコトヲ得
第三十四條本法施行前ニ生ジタル事項
ニ付テハ仍舊法ニ依ル但シ船級協會ノ
認定其ノ他命令ヲ以テ定ムル事項ニ付
テハ此ノ限ニ在ラズ
第三十五條船舶檢査法ニ依リ船舶檢査
證書若ハ假證書ヲ受有スル船舶又ハ之
ヲ受有セズシテ航行ノ用ニ供スル船舶
ニハ左ノ各號ノ一ニ該當スルニ至ル迄
船舶檢査、滿載吃水線及無線電信施設
ニ關シ仍舊法ニ依ル
航行期間滿了ノ爲船舶檢査法ニ依
リ檢査ヲ受クベキトキ
二船舶檢査法ニ依リ船舶檢査證書又
ハ假證書ヲ受有セズシテ航行ノ用ニ
供シ得ザルニ至リタルトキ
三船舶満載吃水線法ニ依リ滿載吃水
線ノ指定ヲ受クベキトキ
第三十六條前條ノ船舶同條各號ノ一ニ
該當スルニ至リタルトキハ命令ノ定ム
ル所ニ依リ檢査ヲ受クベシ
前項ノ檢査ニ合格シタル船舶ニハ船舶
檢査證書ヲ交付ス但シ其ノ有效期間ハ
四年以內ニ於テ管海官廳ノ定メタル期
間トス
前項ノ有效期間ノ滿了ハ第五條第一項
ノ規定ノ適用ニ付テハ之ヲ第十條ニ規
定スル有效期間ノ滿了ト看做ス
第三十七條他ノ法令中航路定限、遠洋
航路、近海航路、沿海航路又ハ平水航
路トアルハ各之ヲ航行區域、遠洋區域、
近海區域、沿海區域又ハ平水區域トス
船舶職員法中改正法律案
船舶職員法中左ノ通改正ス
第一條第一項但書ヲ左ノ如ク改ム
但シ船舶安全法第二條第一項ノ規定ヲ
適用セサル船舶ハ此ノ限ニ在ラス
第八條第一項中「船舶賃貸借」ヲ「船舶貸
借」ニ、「賃借人」ヲ「船舶借入人」ニ改
ム
第九條第二項中「賃借人」ヲ「船舶借入人」
三四人
第九條ノ二中「船舶檢査法第十七條ニ揭
クル外國船舶」ヲ「日本船舶ニ非サル船舶
ニシテ船舶安全法第十四條各號ニ揭クル
モノ」ニ改ム
第九條ノ三中「又ハ臺灣總督」ヲ削ル
第九條ノ四地方長官ハ船舶安全法第二
條第一項ノ規定ヲ適用セサル船舶ニ於
テ船舶職員ニ該當スル職務ヲ執ル者ノ
資格ニ關シ遞信大臣ノ認可ヲ受ケ必要
ナル規則ヲ設クルコトヲ得
第一號表(其ノ一)及(其ノ二)中「航路」ヲ
「航行區域」ニ、「平水航路」ヲ「平水區域」
ニ「沿海航路」ヲ「沿海區域」ニ、「近海
航路第一區」ヲ「近海區域」ニ、「遠洋航路又
ハ近海航路第二區」ヲ「遠洋區域」ニ改ム
第一號表(其ノ一)遠洋航路又ハ近海航路
第二區帆船二百噸未滿ノ項免狀種類ノ欄
中「丙種船長免狀(近海航路第二區ニ限
ル)」及「丙種運轉士免狀(近海航路第二區
ニ限ル)」ヲ削ル
附則
本法施行ノ期日ハ各條ニ付勅令ヲ以テ之
ヲルチノ
〔國務大臣南弘君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X01419330216&spkNum=20
-
021・南弘
○國務大臣(南弘君) 只今議題トナッテ居
リマスル船舶安全法案竝ニ船舶職員法中改
正法律案ノ提出ノ理由ヲ御說明申上ゲマ
ス、近時海運界竝ニ造船事業ノ長足ナル進
步ニ伴ヒマシテ、船舶ノ安全保持ニ關シマ
スル各般ノ施設ハ、其進步極メテ著シイモ
ノガアリマス、各國齊シク是ガ取締法規ノ
整備ニ努メテ居ル狀況デアリマス、殊ニ昭
和四年及昭和五年ニ於キマシテ、海上ニ於
ケル人命ノ安全ノ爲ノ國際條約及國際船舶
滿載吃水線條約ガ成立致シマシテ、旣ニ多
數ノ主要海運國ニ於キマシテ、其批准ヲ了
シマシテ、本年一月一日ヨリ之ヲ實施致シ
テ居ル狀況デアリマス、我國モ亦此條約ノ
調印國ト致シマシテ、且又本邦ノ世界海運
界ニ於ケル位置カラ見マシテモ、速ニ之ヲ
實施致スコトガ適當ト考ヘルノデアリマ
ス又一面ニ於キマシテ、我國ニ於ケル船
舶ノ安全ニ關スル現行取締法ガ多岐多端ニ
亙ッテ居リマシテ、是ガ運用上極メテ不便ノ
點ガ多イノデアリマス、就中是等取締法ノ
根幹ヲ成シテ居ル所ノ船舶檢査法ハ制定
以來旣ニ長年月ヲ經過致シテ居リマシテ、
規定ノ內容ガ今日ノ實際ニ副ヒ難イ點ガ多
多アルノデアリマス、仍テ此際兩條約ノ實
施ニ差支ナイヤウニ其內容ヲ取入レマシ
テ、是等關係法規ヲ整理統一致シテ、且ツ
之ニ適當ノ改正ヲ加へマシテ、玆ニ船舶安
全法案ヲ提出致シタ次第デアリマス
次ニ船舶職員法中改正法律案提出ノ主ナ
ル理由ハ此法律中ニ前ニ御說明申上ゲマ
シタ所ノ、船舶安全法施行ノ曉ニ於キマシ
テ、當然廢止セラルベキ船舶檢査法ノ規定
ヲ引用シテ居リマスノデ、之ヲ改メテ船舶
安全法ノ規定ニ依リマスル必要ヲ生ジタ點
デアリマス、尙ホ其序ヲ以テ若干輕徵ノ修
正ヲ加ヘテアルノデアリマス、兩法案提出
ノ理由ハ以上申上ゲタ通リデアリマス、何
卒御審議ノ上御協賛アランコトヲ希望致シ
マス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X01419330216&spkNum=21
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022・秋田清
○議長(秋田〓君) 質疑ヲ許シマス-風
見章君
〔風見章君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X01419330216&spkNum=22
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023・風見章
○風見章君 第一ニ本案ニ關シマシテ質問
ヲ致シタイコトハ、勿論本案ノ最後ノ目標
ハ我國海運業確立ノ基礎ヲ固メヤウトス
ルニ在ルノデアリマスカラ、サウ云フ見地
ニ於テハ、私共ハ船舶ノ年齡、卽チ船齡ニ
適當ナル制限ヲ加ヘルコトガ必要デアルカ
ラ、本法ノ中ニハ此點ニ關シテ相當ノ規定
ヲスルコトガ、當然デハナイカト思フノデアリ
マス、政府當局ハ此點ニ關シテ、如何樣ニ御考
ニナッテ居ルカ、第二ハ此法案ニ關聯シテ、是非
トモ政府當局ニ尋ネテ置カネバナラヌノデ
アリマスガ、船舶ノ安全ヲ期スル爲ニハ、
勿論其途ハ澤山アルニ相違ナイガ、其根本
ノ一ツハ、船舶ヲシテ常ニ新陳代謝スルノ
途ヲ與ヘテ置クト云フコトガ、最モ大切デ
アラウト私共ハ思フノデアリマス、斯ウ云
フ意味ニ於キマシテ、前議會ニ通過シタル
船質改善助成法ノ如キハ、其目的ハ洵ニ結
構デアル、其目的ハ洵ニ結構ダガ、併シ私
共ノ見ル所デハ折角結構ナル目的ノ下ニ
作リ上ゲラレタル法案デアリマスルケレド
モ、法案共モノヽ實際ニ行ハレテ居ル、狀
態ヲ考ヘテ見マスルト、成程七年度ニハ、
約五万噸ハ計畫通リニイッタヤウデアリマ
スケレドモ、八年度ニ於テハ、十万噸ノ計
畫デアルト云フニ拘ラズ、僅ニ六万噸位シ
カ實現出來ナイヤウナ情勢ニ在ルト云フコ
トヲ聞クノデアリマスガ一體ドウシテ斯
ウナッタノデアルカ、ソレハ申ス迄モナク
彼ノ法案ガ出來テ以來、爲替相場ノ下落、
其他ノ事情ニ依ッテ、海運界ガ非常ニ活氣付
イテ來タ、ソレガ爲ニ前ノ計畫デハ只今
申上ゲタ船質改善助成法ニ依ッテ、船ヲ解體
シテ、新シイ船ニシテ欲シカッタモノモ、此
海運界ノ好況ニ伴レテ、ドシ〓〓航海ニ就
テシマッタ、卽チ解體スル船ガ無クナッテシ
マッタ、ソレガ爲ニ十万噸ノ計畫ヲ十分ニ今
年度ニ於テモ實現スル可能ガナイ、斯ウ云
フヤウナ結果ニナッテ居ルノデアリマスガ、
大體此計畫ハ一千万圓ノ國庫補助ガアルノ
デアリマスカラ、重大ナル、大キイ計畫ニ
ナッテ居ルノデアリマスルガ、而モサウ云フ
ヤウナ情勢デアリマスカラ、折角ソレ程ノ
補助ヲシテ居リナガラ、此法案ハ實際ノ效
果ヲ發揮シテ居ラナイ、私共ノ考デハ無論
日々ニ世ノ中ハ變化シテ居ルノデアルカラ、
政府當局ハ不斷ニ情勢ノ變化ニ應ジテ適當
ノ施設ヲ講ズルノガ、其常然ノ責任デアル、
曩ニハ此計畫ガ役ニ立チサウデアッタケレ
ドモ、後ニ情勢ガ變化シテ、解體スル船ガ
無クナッテシマフヤウチ情勢ニ入ッテ來タ、
斯樣ナ情勢ニ入ッテ來タ以上ハ、之ニ適應シ
タル新シキ途ヲ講ズルコトガ當然デアル、
サウ云フヤウナ考ヘ方カラ申シマスレバ、
殊ニ我國ニ於テハ海運業ハ特別ニ重大視サ
ルベキ理由ガアルコトハ四面環海ノ日本
デアルト云フ事實カラダケデモ明白デアル
ノミナラズ、現在ノ爲替相場、其他ノ情勢
カラ申シマスレバ此處デ思フ存分ニ海運
界ガ活動スレバ恐ラク驚クベキ收入ヲ日
本國民ハ海外カラ擧ゲルコトガ出來ル、斯
ウ云フヤウナ情勢ニナッテ居ル、然ルニサウ
云フヤウニスルニハ船ガ足ラナイ、足ラナ
ケレバ何トカシナケレバナラヌ、所ガ今ノ
船質改善助成法ノ如キデハ其效果ヲ發揮
スルドコロカ、却テ其計畫ガ十分ニ其機能ヲ發
揮スルコトガ出來ナイ、斯ウ云フ情勢ニ入。ツ
テ居ルノデアルカラ、私共ハ現在ノ世界ノ
海運界ノ情勢カラ見マシテモ、斯ウ云フ場合
ニハドシ〓〓安イ海外ノ船ヲ輸入シ來ッテ、
此活躍ヲ促シテ、或ハ海運市場ノ確保ニ努メ、
或ハ海員ノ失業者ヲ救濟スル、斯ウ云フヤウ
ナコトヲスルノガ、當然デハナイカト思ヒ
マスケレドモ、聞ク所ニ依ルト、政府當局
ハ非常ニ安イ海外ノ船-日本デ現在造レ
バ一噸百八十圓位ニ付ク、然ルニ相當ナ船
ヲ外國カラ輸入スレバ、噸十五圓位デ手ニ
入ル、斯ウ云フヤウナ狀勢ニ入ッテ居ルノ
デアルカラ、此ノ船ノ輸入ヲ奬勵スルコソ、
政府當局ノ當然ノ措置デアルベキデアルニ
拘ラズ、或ハ當局ハ却テ此輸入ヲ制限セン
トスル計畫ガアル、斯樣ニ私共ハ聽クノデ
アリマス、是ハ非常ナ間違ダト思フ、飛ン
デモナイ間違デアル、斯ウ私共ハ斷定シテ
宜カラウト思フ、元來先刻申上ゲタ如ク、
船質改善助成法ニ關シマシテハ、其後ノ日
本ノ內外ノ情勢ガ、此法律ノ機能ヲ十分ニ發
揮シナイヤウニナッタノデアルカラ、政府ハ
新ナル途ヲ考ヘルベキガ當然デアルニ拘ラ
ズ、ソレハ其儘ニシテ置イテ、今度ハ斯ウ
云フ法律ヲ出ス、此事實ハ、折角ノ計畫ガ
機能ヲ發揮シテ居ナイニ拘ラズ默ッテ見テ
居ルト云フノデアルカラ、此事實ノ中ニ私
共ハ政民兩黨諸君ニ依ッテ支持サルヽ現內
閣ノ、所謂作リッ放シ、ヤリッ放シ、頰冠リ
主義ノ一端ガ現レタモノトシテ、私共ハ非
常ニ遺憾ニ堪ヘナイノデアリマス、國際貸
借改善ノ見地カラ申シマシテモ、我國ノ海
運市場ノ足場ヲ確保スルコトハ、平常ノ場
合ニ於テモ最モ重要デアルノミナラズ、現
在ノ如ク商品ニ於テハ、「コンモデイテイ
ー」ニ於テハ列國共所謂自給自足ノ傾向
ニ入ラントスルヤウナ情勢ニアルノデアリ
マスカラ、特ニ今日ノ如キ場合、海運界ノ
活氣ヲ促シテ、之ニ依ッテ國際貸借ノ改善
ヲ圖ルト云フコトハ、我國トシマシテハ最
モ賢明ニシテ、同時ニ速ニ爲サナケレバナ
ラナイ途デアル私共ハ斯樣ニ考ヘルノデ
アリマスルガ、斯ウ云フヤウナ船質改善ノ
先ノ法律ニ關シマシテモ、此法律ノ機能ヲ
不可能ナラシメ、更ニ輸入船舶ノ制限ヲス
ル、斯ウ云フヤウナ、事實ノ一面ニハ問題
ガ潜ンデ居ルト世間デハ言ハルヽノデアリ
や 、ドウ云フ問題ガ潜ンデ居ルカト言ヘ
バ、外國ニ安イ船ガアル、國家ノ爲ニハ輸
入シタ方ガ宜イノダガソレガ入っテ來ル
ト船價ガ下ル、船價ガ下レバ、此船ニ融
通シテ居ル銀行業者ガ困ル、政府ハ是等金
融業者ノ壓迫ニ出遭フテ、肚ノ中デハ成程
船舶輸入ノ制限ヲ撤廢シテ海運市場ヲ確
保シ海員ノ失業者ヲ救濟シタ方ガ宜イ
ノダガ、金融業者ノ此壓迫ノ爲ニ、心
モナク船舶ノ輸入ヲ制限セントスルヤウナ
方ニ向ハザルヲ得ナクナッタノダ、斯ウ云フ
話ヲ私共ハ聞カサレルノデアリマスガ、如
何ナル法律ガ生レマシテモ、其法律ノ背後
ニ斯ウ云フ暗イ噂ガ立ツヤウデアッテハ斷
ジテ許スベカラザルコトデアリマスカラ、
私ハ此法案ニ關聯シテ、今申上ゲタ、殊
日本ノ今船質ノ改良ノ問題、全海運業ノ根
本方針ヲ爲ス所ノ問題デアリマスカラ關
聯シテ此船舶ノ輸入ニ關シ、一切ノ制限ヲ
撤廢シテ、安イ船ヲドシ〓〓日本ニ入レ、
因テ以テ世界海運市場ノ確保ヲ爲サントス
ルコトニ關シ、政府ニハサウスル御意思ア
リヤナシヤヲ質問政シマス(拍手)
〔國務大臣南弘君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X01419330216&spkNum=23
-
024・南弘
○國務大臣(南弘君) 只今ノ風見君ノ御質
問ニ御答辯致シマス第一問ハ船舶ノ年齡
ニ關スル御質問デアリマス、洵ニ御尤ナ御
質問トハ考ヘマスルガ、事實問題トシテハ
非常ナ困難ナ問題デアリマシテ、現在ニ於
キマシテハ年齡ノ斟酌ヲ致シマシテ、相當
古クナリマスレバ、遠洋航路カラ近海航路
ニ廻サセルヤウニ致シテ居リマス、又船舶
ノ檢査ニ於キマシテモ、寛嚴其宜キヲ得マ
シテ事實上差支ナイト認メテ居リマスノ
デ、本案ノ中ニ船齡ヲ規定スルコトハ致サ
ナカッタヤウナ次第デアリマス、第二間ハ、
船舶輸入ノ一切ノ障壁ヲ撤廢スルヤ否ヤ、
之ニ關聯致シマシテ、昨年臨時議會ニ於テ
協賛ヲ得マシタ所ノ、船質改善ノ實績ニ付
テノ御尋デアリマスガ、昨年臨時議會ニ於
テ協贊ヲ經マシタ船質改善ノ、其後ノ進行
ニ付テ申上ゲマスレバ、既ニ今年度ニ於テ
五万噸新造スル計畫ニナッテ居リマスルガ
旣ニ申請ノ認可ヲ致シマシタ分ガ十隻デ、
七万三千噸ニナッテ居リマス、此超過額ハ明
年度ヘ繰越ス計畫ニ致シテ居リマス又之
ニ對ウテ解體スベキ船舶トシテ申請ニナ
リマシタモノハ三十六隻アリマシテ、此
噸數ガ十五万五千噸ニナッテ居リマス、斯ノ
如ク今年度ニ於テハ旣ニ豫定ヲ超過致シ
テ居ルヤウナ有樣デアリマス又八年度ニ
於キマシテモ、旣ニ申込ノアリマスルモノ
ガ十三万噸ニナッテ居リマス、豫定ハ豫算ノ
計畫デハ十一万噸デアリマス、御心配ニナ
ルヤウナ支障ハ毫モ來シテ居リマセズ、却
テ超過致シテ居ルヤウナ實狀デアリマスカ
ラ、此事實ヲ御了承願ヒタイト思ヒマス
ソレカラ外國船輸入ニ關スル、總テノ障壁
ヲ撤廢スルコトニ付テノ御意見デアリマシ
タガ、御意見トシテハ一應御尤ノヤウニモ
承リマシタガ、昨年船質改善法ノ御協贊ヲ
得マシタ趣旨カラ考ヘマシテ、日本ニ千噸
以上ノ船デ二十五年以上ノ年齡ヲ經過シ
タモノガ、八十八万噸モアルヤウナ現狀ニ顧
ミマシテ、將來日本ノ海運業ニシテ世界ト
競爭スルニハ是等ノ古船ヲ何トカ始末ヲ
シ、之ニ代ヘルニ優秀船ヲ以テシナケレ
バナラヌト云フコトガ、海運界ノ一致シ
タ意見デアリマシタ、之ニ付キマシテハ
造船業者竝ニ海運業者及海員ノ團體ノ意見
ヲ徵シマシタガ、殆ド全部一致シタ意
見デアリマス、是等ノ意見ヲ基礎トシ
テ、昨年臨時議會ニ於テ提案ヲ致シマシテ
皆樣方ノ御協賛ヲ得タヤウナ次第デアリマ
ス、此趣旨カラ見マシテ、今日更ニ古船ヲ外
國カラ輸入スルト云フコトハ、吾々當局ト
シテ贊成シ難イ所デアリマス、又現在ノ海
運界ノ實狀ヲ顧ミマシテモ、昨年末ニ於キ
マシテ爲替下落ノ爲ニ海運界ガ多少ノ刺
戟ヲ受ケマシテ、運賃其他ニ於キマシテ値
上リヲ致シマシタガ、最近ニ於テハ更ニ下
向キニナッテ來タヤウナ次第デアリマス、且
又現在日本ノ一千噸以上ノ船ニ於テ、本年
ノ一月ニ繫船セラレテ居ルモノガ二十一万
噸モアルヤウナ次第デアリマス、又歐羅巴
其他ノ遠洋航路ハ日本ノ現在ノ船腹ノ關係
ニ於キマシテモ、今日古船ヲ輸入スル必要
ハ毫モナイト信ジマス、且又是等ノ輸入セ
ラルヽ古船ハ世界各國ガ大戰爭中竝ニ共
以後ニ拵ヘタ、最モ粗惡ナル船デアリマシ
テ是等ノ船ヲ各國共、「ダンピング」ヲ致シ
テ居ルヤウナ次第デアリマス、斯ノ如キ船
ヲ日本ニ輸入セラルヽト云フコトハ日本
ノ海運界ニ取リマシテハ、決シテ吾々ハ贊
成シ能ハザル所デアリマス、是デ私ノ答辯
ヲ終リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X01419330216&spkNum=24
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025・秋田清
○議長(秋田濟君) 日程第七、右各案ノ審
査ヲ付託スヘキ委員ノ選擧ヲ議題ト致シマ
ス
第七右各案ノ審査ヲ付託スヘキ委員
ノ選擧発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X01419330216&spkNum=25
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026・上田孝吉
○上田孝吉君 兩案ヲ一括シテ議長指名十
八名ノ委員ニ付託セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X01419330216&spkNum=26
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027・秋田清
○議長(秋田済君) 上田君ノ勳議ニ御異議
ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X01419330216&spkNum=27
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028・秋田清
○議長(秋田濟君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ-日程第
八及第九ハ關聯セル議案ナルニ依リ、括
議題ト爲スニ御異議ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X01419330216&spkNum=28
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029・秋田清
○議長(秋田濟君) 御異議ナシト認メマ
ス仍テ日程第八、米穀紙制法案、日程第
九、米穀需給調節特別會計法中改正法律案、
右二案ヲ括シテ第一讀會ヲ開キマス-
農林大臣後藤文夫君
第八米穀納制案案(政府掲出)
第一讀會
第九米穀需給調節特別會計法中改正
法律案(政府提出)第一讀會
米穀統制法案
米穀統制法
第一條政府ハ米穀ノ數量又ハ市價ヲ調
節シ米穀ノ統制ヲ圖ル爲本法ニ依リ米
穀ノ買入及賣渡ヲ行フ
第二條政府ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ每
年米穀ノ最低價格及最高價格ヲ公定シ
之ヲ〓示ス
前項ノ最低價格及最高價格ハ勅令ノ定
ムル所ニ依リ米穀生產費、家計費及物
價其ノ他ノ經濟事情ヲ參酌シテ之ヲ定
ム
前項ノ規定ニ依リ定メタル最低價格又
ハ最高價格ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ物
價ノ變動著シキ場合又ハ米穀ノ需給狀
況ニ著シキ變動ヲ生ジ若ハ生ズルノ虞ア
ル場合ニ於テハ之ヲ改定スルコトヲ得
第三條政府ハ前條ノ最低價格又ハ最髙
價格ヲ維持スル爲勅令ノ定ムル所ニ依
リ最低價格ニ依ル賣渡ノ申込又ハ最高
價格ニ依ル買入ノ申込ニ應ジテ米穀ノ
買入又ハ賣渡ヲ爲ス
第四條政府ハ道府縣ヨリ該地域外ニ又
ハ朝鮮若ハ豪灣ヨリ內地ニ移出スル米
穀ノ數量ヲ月別平均的ナラシムル爲勅
令ノ定ムル所ニ依リ出廻期ニ於テ米穀
ノ買人ヲ爲シ出廻期後ニ於テ米穀ノ賣
渡ヲ爲スコトヲ得
前項ノ買入又ハ賣渡ノ價格ハ時價ニ準
據シテ之ヲ定ム
第五條政府ハ必要ニ應ジ所有米穀ノ貯
藏、買換、交換、加工及整理ノ爲ニス
ル賣渡竝ニ輸入ヲ目的トスル米穀ノ買
入及輸出ヲ目的トスル米穀ノ賣渡ヲ爲
スコトヲ得
前項ノ買入又ハ賣渡ノ價格ハ時價ニ準
據シテ之ヲ定ム
第六條政府ハ米穀ノ買換ヲ爲サントス
ル場合ニ於テ必要アリト認ムルトキハ
命令ノ定ムル所ニ依リ買換ニ代ヘ買換
ノ爲賣渡ヲ爲サントスル米穀ヲ道府縣
ニ對シ貸付スルコト」ヲ得
第七條米穀ノ輸入又ハ輸出ハ勅令ニ別
段ノ定アル場合ヲ除クノ外政府ノ許可
ヲ受クルニ非ザレバ之ヲ爲スコトヲ得
ズ
第八條政府ハ米穀ノ統制ヲ圖ル爲特ニ
必要アリト認ムルトキハ勅令ノ定ムル
所ニ依リ期間ヲ指定シ粟、高粱又ハ黍
ノ輸入ヲ制限スルコトヲ得
第九條政府ハ米穀ノ綺制ヲ圖ル爲特ニ
必要アリト認ムルトキハ勅令ヲ以テ期
間ヲ指定シ米穀、粟高粱又ハ黍ノ輸
入稅ヲ增減又ハ免除スルコトヲ得
第十條米穀生產費、家計費竝ニ米穀其
ノ他ノ穀物ノ生產高、現在高、移動及
價格ノ調査ニ關シ必要ナル事項ハ命令
ヲ以テ之ヲ定ム
第十一條政府ハ前條ニ規定スル事項其
ノ他米穀ノ統制ニ關シ必要ナル事項ヲ
調査スル爲特ニ必亜アリト認ムルトキハ
米穀其ノ他ノ穀物ノ生產者、取引業者、
倉庫業者其ノ他占有者ニ對シ必要ナ
ル事項ノ報告ヲ命ジ又ハ官吏若ハ吏員ヲ
シテ其ノ營業所、會庫其ノ他ノ場所ニ臨
檢シ帳簿物件ヲ檢査セシムルコトヲ得
前項ノ場合ニ於テハ當該官吏又ハ吏員
ハ其ノ身分ヲ證明スル證票ヲ携帶スベ
シ
第十二條第七條ノ規定ニ違反シテ米穀
ヲ輸入若ハ輸出シ又ハ第八條ノ規定ニ
依ル制限ニ違反シテ粟、高粱若ハ黍ヲ
輸入シタル者ハ五千圓以下ノ罰金ニ處
シ其ノ米穀、粟高粱又ハ黍ヲ沒收ス
若シ其ノ全部又ハ一部ヲ沒牧スルコト
能ハザルトキハ其ノ價額ヲ追徵ス
營業者未成年者又ハ禁治產者ナルトキ
ハ前項ノ罰則ハ之ヲ法定代理人ニ適用
ス但シ營業ニ關シ成年者ト同一ノ能力
ヲ有スル未成年者ニ付テハ此ノ限ニ在
ラズ
營業者ハ其ノ代理人、戶主、家族、雇
人共ノ他ノ從業者ガ其ノ業務ニ關シ第
七條ノ規定又ハ第八條ノ却定ニ依ル制
限ニ違反シタルトキハ自己ノ指揮ニ出
デザルノ故ヲ以テ其ノ處罰ヲ免ルルコ
トヲ得ズ
法人ノ代表者其ノ他ノ從業者法人ノ業
務ニ關シ第七條ノ規定又ハ第八條ノ規
定ニ依ル制限ニ違反シタルトキハ其ノ
罰則ヲ法人ニ適用ス
第十三條第十一條第一項ノ規定ニ依ル
命令ニ違反シ又ハ常該官吏若ハ吏員ノ
職務ノ執行ヲ妨ゲタル者ハ五百圓以下
ノ罰金ニ處ス
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
米穀法ハ之ヲ廢止ス
本法施行前米穀法第三條ノ規定ニ依リ爲
シタル許可ハ本法第十條ノ規定ニ依リ之
ヲ爲シタルモノト看做ス
本法施行前ニ米穀法ノ罰則ヲ適用スベキ
行爲アリタルトキハ本法施行ノ後ト雖モ
仍其ノ罰則ヲ適用ス
米穀需給調節特別會計法中改正法律
案
米穀需給調節特別會計法中左ノ通改正ス
第一條中「又ハ貯藏ヲ」「貯藏又ハ貸付」ニ
改ム
第四條ノ三中「四億八千萬圓」ヲ「七億圓」
ニ改ム
第六條中「貯藏」ヲ「貯藏貸付」ニ改ム
附則
本法ハ米穀給制法施行ノ日ヨリ之ヲ施行
ス
〔國務大臣後藤文夫君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X01419330216&spkNum=29
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030・後藤文夫
○國務大臣(後藤文夫君) 米穀統制法案提
案ノ理由ヲ御說明申上ゲマス、我國ニ於ケ
ル米穀ノ數量及價格ノ調節ニ關シマシテハ、
從來主トシテ米穀法ノ運用ニ依ッテ之ヲ行
ヒマシテ、大正十年同法ノ施行以來、前後
三囘ニ亙ル改正ニ依リマシテ、漸次其機能
ヲ擴充シテ參ッタノデアリマスルガ、我國ニ
於ケル諸般ノ米穀事則ノ變化ハ從來ノ調
節方法ニ依リマシテハ其情勢ニ順應シテ
眞ニ有效適切ナル米穀政策ヲ遂行スルニハ
不十分ナリトセラレルニ至ッタノデアリマ
ス、是ニ於キマシテ政府ハ米穀ノ數量及
價格調節上、更ニ有力ナル益制制度ヲ樹立
スルノ必要ヲ認メマシテ、昨年十一月以來
米穀締制調査會ヲ設置シ、之ニ對シ米穀統
制ニ關スル方策ヲ諮問致シマシタ、同調査會
ハ各委員ノ多大ナル努力ニ依リマシテ、本
年一月其調査ノ結果ヲ答申スル運ビニ相成
リマシタ、政府ニ於テハ右答申ヲ適當ト認
メマシテ、之ニ基イテ本案ヲ提出スルコト
ニ相成ッタ次第デアリマス、其大要ヲ申上ゲ
マスレバ、政府ハ每年米穀ノ最低價格及最
高價格ヲ公定致シマシテ右ノ公定價格ヲ
維持スル爲ニ、最低價格ニ依ル賣渡ノ申込、
又ハ最高價格ニ依ル買入ノ申込ニ應ジテ、
米穀ノ買入又ハ賣渡ヲ爲スコトニ依ッテ、米
價ヲ常ニ公定價格ノ範圍內ニアラシムルコ
トニ努メントスルノデアリマス、又道府縣、
朝鮮又ハ臺灣ヲ通ジマシテ、出來秋ニ於テ
米穀ガ市場ニ殺到スルコトヲ防止スル爲ニ、
政府ニ於テ米穀ノ買入ヲ行ヒ、北管外移出
數量ヲ月別平均的ナラシムル方策ヲ講ジヨ
ウトスルノデアリマス、尙ホ米穀ノ統制ヲ
圖ル爲ニ、從來ノ如ク米穀ノ輸出入ノ許可
制度、及米穀又ハ粟ノ輸入稅ノ增減免除ノ
制度ヲ設ケマスル外、更ニ必要ト認メマス
ル場合ニハ粟高粱、又ハ黍ノ輸入ノ制
限及高粱又ハ黍ノ輸入稅ヲ增減免除スルコ
トヲ得ルコトニ致シタノデアリマス、何卒
御審議ノ上御協賛アランコトヲ希望致シマ
ス
尙ホ關聯致シマシテ米穀需給調節特別會
計法中改正法律案ヲ提出致シマシタ此理
山ヲ簡單ニ申上ゲマス、只今御說明申トゲ
マシタ米穀論制法ノ機能ヲ發揮シ、圓滑ナ
ル施行ヲ圖ラントスル爲ニハ現行米穀需
給調節特別會計法ノ資金ダケデハ不十分デ
アリマス、是ガ爲ニ右資金ノ限度ヲ擴張致
サントスルノガ改正案ノ趣旨デアリマス、
尙ホ米穀ノ貸付ニ關シマシテ、規定ヲ整ヘ
ル必要ガアリマスノデ、是ヲモ加ヘテ致シ
タノデアリマス、何卒兩突、其御審議ノ上御
協贊アランコトヲ希望致シマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X01419330216&spkNum=30
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031・秋田清
○議長(秋田〓君) 質疑ノ通告ガ多數アリ
RV、順次之ヲ許シマス-河野一郞君
〔河野一郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X01419330216&spkNum=31
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032・河野一郎
○河野一郞君 私ハ只今上程ニナリマシタ
米穀給制法案竝ニ米穀需給調節特別會計法
中改正法律案ニ對シ、左ノ三項ノ質疑ヲ致
サントスル者デアリマス、卽チ其第一ト致
シマシテハ、本案ハ如何ナル需給推算ヲ基
礎トシテ立案ヲシタカ、將來米ハ供給過剩
デハナイカ、又生產給制ノ必要ト之ヲ實
施セザル理由如何、第二ハ最低價格ノ基準
ヲ生產費ヲ基礎トシテ農村ハ救濟サレル
カ、第三ハ肥料對策ヲ何故提案セヌカト
云フ三點ニ付テ質疑致サントスル者デアリ
マス、今囘ノ米穀統制法案ハ政府ガ前議
會ニ於キマシテ吾々ノ要望ニ基キマシテ、
米穀ニ對スル根本的ノ對策ヲ樹立セントス
ルガ爲ニ、政府ハ相當ノ犠牲ヲ拂ッテ、少ク
トモ從來ノ米穀法トハ趣ヲ異ニシ米穀ノ
數量調節竝ニ價格ノ安定ニ對シテ根本的ニ
相當徹底ヲ期スル目的ヲ以テ樹テラレタモ
ノト信ズル者デアリマス
然ルニ先ヅ第一ニ私ノ疑問ト致シマス
點ハ、此根本對策ガ如何ナル需給計數ヲ基礎
トシテ樹テラタレカト云フ對デアリマス、
卽チ三年先、五年先ニ於ケル內地、朝鮮、
臺灣ハ勿論、近キ將來ニ於テ經濟統制ノ徹
底ヲ期シナケレバナラヌ所ノ滿洲ニ於ケル
米穀需給數量ヲ如何ニ推算セラレテ、此根
本方策ガ樹テラレタカト云フ問題デアリマ
ス、私ハ此推算ノ基礎ガ確乎タル計數ノ上
ニ立案セラレタルモノデナイトスルナラバ
卽チ今日世間一般カラ全ク無用ノ長物デア
ルトカ、厄介物デアルトカ云フヤウニ言ハ
レテ居リマスル所ノ現行米穀法ト同樣ノ轍
ヲ履ム虞ガアルモノト信ズル者デアリマス、
卽チ現行米穀法ハ、其立案ノ當初ニ於テハ、
當時大藏大臣デアラレマシタ、又農商務大
臣デアラレマシタ現高橋大藏大臣、山本内
務大臣等ノ人々ニ依テ作ラレタモノデアリ
マシテ、當時政府ハ此法案ハ米ノ安イ時
ニ買ッテ高イ時ニ賣ルノデアルカラ、決シテ
損失ヲ掛ケルモノデハナイ、立派ニ將來米
價ノ安定ヲ期スルコトモ出來ルシ、米穀ノ
需給モ圓滑ヲ期スルコトガ出來ルト云フ意
味ヲ御言明ニナッタノデアリマス、然ルニ其
法案ガ數年ナラズシテ、直チニ行詰ッテシ
マッテ、米ノ價格ヲ維持スルコトモ出來ナ
ケレバ、又ハ數量ノ調節ニモ困難ヲ來スト云
フヤウナ結論ニナッタノデアリマス、此法律
ガサウシタ結果ニナッタト云フ其根本ノ原
因ハ、當時朝鮮竝ニ臺灣ニ於ケル米ノ生產
ニ付テ、其需給推算ノ基礎ヲ誤タ爲ニ斯
ウシタ結果ニナッタト私ハ信ジテ居リマス、
私ハ先ヅ第一ニ此點ニ付テ政府ニ御伺致
シテ置キタイノデアリマス、卽チ我國ニ於
テハ人口增加ノ趨勢ニ比シテ、食糧增產ガ
之ニ伴ハナイトスル觀念ガ、從来一般朝野
ノ人士ノ頭ヲ支配シテ居ッタノデアリマス、
然ルニ事實ハ之ニ反シマシテ、米ハ供給不
足ドコロカ、却テ反對ニ近時每年供給過剩
ニナッテ居ルノデアリマス最近三箇年間
ノ統計ニ付テ考ヘテ見マスト、外米ノ輸入
ヲ極力壓迫シテ、制限致シマシタニモ拘ラ
ズ、每年其端境期ニ於キマシテハ、米穀ノ
理想持越高ト致シマスル五百万石ヲ遙ニ超
過致シマシテ、八九百万石ノ持越高ニナッテ
居ルノデアリマス、此事實ガ常ニ米價ヲ壓
迫致シマシテ、農村ニ對シテ多大ノ不利益ヲ
蒙ラシテ居ルノデアリマス、此點ニ付キマ
シテハ農村及財界ガ最近ノ不景氣ノ爲ニ
米ノ消費ガ減退シタ、ソレニ原因スルモノ
ダト云フ議論ヲスル人モアリマスガ、是八
朝鮮及臺灣ニ於ケル所ノ、米ノ增產ノ結果
ニ外ナラヌノデアリマス、此事實ハ朝鮮、
臺灣ニ於ケル米ノ生產增加ノ趨勢竝ニ內地
ニ對スル朝鮮、臺灣ヨリノ移入米ノ狀況ヲ
調ベテ見マスト、直グ分ルノデアリマス、我
國ノ一般ノ人ガ尙ホ米ノ供給不足ヲ信ジテ
居ルト云フコトハ、近年植民地ニ於ケル是等
ノ米ノ增產ノ傾向ヲ、輕視シテ居ルノニ外ナ
ラナイノデアリマス、植民地デアリマ
ス、是等朝鮮臺灣ニ於キマシテハ
外米ヲ澤山ニ入レテ、乃至ハ粟デアリ
マストカ、高梁ヲ入レテ、サウシテ自分ノ
所デ作ッタ米ヲ內地へ持ッテ來ルカラ、ソレ
ニ對スル制限ヲスレバ足リルト云フ意見モ
アリマスケレドモ、是ハ決シテサウデハナ
イノデアリマス、最近ニ於テハ朝鮮、臺灣
ニ於ケル外米ノ輸入モ、非常ニ減ッテ來テ居
ルノデアリマス、而モ朝鮮ノ如キハ米ノ
栽培ノ事情ヲ調ベテ見マスト、內地ニ比較
致シマシテ頗ル幼稚ニシテ、粗放ナル米作
ヲ致シテ居リマス、而モ段當リノ米ノ收穫
ヲ調ベテ見マスルト昭和六年度ニ於キマ
シテ九斗五升ニ過ギナイノデアリマス內
地ノ二石前後ニ較ベマシタナラバ、僅ニ其
半額ニモ足リナイノデアリマス、此朝鮮ニ
於ケル米作ガ、將來增產ノ目的ヲ以テ耕地
ノ擴張ヲスルトカ、是等ノ改良ヲスルトカ
云フヤウナコトヲヤリマセヌデモ、現在ノ
耕地段別ニ對シテ、朝鮮人乃至ハ其土地ニ
於ケル米作者ガ、少シ心ヲ入レテ肥料ノ改
良ヲ致シマストカ、乃至ハ其他ノ點ニ付キ
マシテ改革ヲ致シマス時ニハ直チニ五割
位ノ增產ヲスルコトハ、數年ヲ俟タズシテ
實現スルコトヽ私ハ信ジテ居リマス、若モ
是ガ五割ノ增產ヲ致シマシタナラバ朝鮮
ニ於テハ現在ヨリモ直チニ、七百五十万石
前後ノ增加ト云フ數字ノ米ガ玆ニ生レテ來
ルノデアリマス、サウナリマシタ時ニ、今囘
政府ガ提案サレマシタ所ノ、米穀締制法案
乃至ハソレニ關聯致シマシタ需給調節ノ特
別會計法案ヲ以テ、之ニ對スル對策ノ完全
ヲ期スルコトガ出來ルカドウカ、此點ニ付
テ私ハ疑ヲ有ツ者デアリマス、更ニ此上ニ
滿洲ニ於ケル將來ノ米ノ問題ニ付テ考ヘテ
見マスト、內地ニ於ケル米ノ需給ハ從來
ノ如ク供給不足ナリトシテ樂觀シテ居ル譯
ニ絕對ニ行カナイノデアリマス、然ルニ米
穀統制法案モ、從來ノ米穀法ト其點ニ於テ
聊カ觀念ヲ同ジニ致シテ居リマシテ、今後
米穀ノ供給ガ過剩ニナルト云フ點ニ對ス
ル、對策ヲ怠ッテ居ルヤウニ私ハ考ヘルノ
デアリマス、政府ト致シマシテハ、季節的
ニ米ノ調節ヲスルトカ、又ハ年次的ニ米ノ
調節ヲスルトカ言ッテ居リマスガ、是等ノコ
トモ、結局ニ於テ內地ニ於ケル米ノ需給ノ
關係ガ超過致シマシテ、玆ニ多大ノ米ノ過
剩ヲ來スト云フコトニナッタ場合ニハ、季節
的ノ調節モ年次的ノ調節モ、全ク根本カラ
破綻ヲ來スト云フ結論ニナルト云フコト
ヲ、私ハ信ズル者デアリマス、私ハ此法案
ノ立案ノ當初ニ於キマシテ、政府ノ內部ニ
於キマシテハ、米ノ生產統制ヲ、此米穀統
制法案ノ中ニ一項ヲ加ヘナケレバナラヌト
云フ議論ガ、中々旺デアッタト云フコトヲ聞
イタノデアリマス、此生產統制ニ關シテ十
分留意セナケレバ、只今私ガ申上ゲタヤウ
ナ點ニ、支障ヲ來スト思フノデアリマスガ、
ソレガ聞ク所ニ依リマスト、拓務省乃至ハ
朝鮮總督府、臺灣總督府ノ反對ニ遭ヲテ
此點ヲ實行スルコトガ出來ナカッタト云フ
コトヲ聞イテ居リマスガ、農林當局ト致サ
レマシテハ、此生產締制ヲ加ヘズシテ、
此米穀統制法案ノ完備ヲ期スルコトガ出
來ルカドウカト云フコトガ、私ノ第一ノ
質問ヲ發スル所以デアリマス
第二ト致シマシテハ最低價格決定ノ問
題デアリマス、本法案ニ依リマスレバ、此細
則ヲ勅令ニ讓フテ居リマスカラ、詳シクハ分
リマセヌガ、其最低價格ノ根本基準ハ、內地
米穀生產費ノ平均價格ニ讓フテ居ルコトハ事
實デアリマス、私ハ此點ニ對シテ多大ノ疑問
ヲ有ッテ居リマス、卽チ米ノ生產費ノ平均ヲ
以テ、最低價格ト致シマシタ時ハ、農家ハ米
價ガ最低價格ニアル時ハ、何等ノ利潤ヲ得
ルコトガ出來ナイノデアリマス、詰リ米ヲ
作ッテ賣ッタ時ニ、一文ノ儲ナシニ、只働キ
ヲシナケレバナラヌ結果ニナルノデアリマ
ス、サウシタ時ニ農村ハドウ云フ結果ニナ
ルダラウカト心配スルモノデアリマス、卽チ
政府ハ最近ノ機會ニ於キマシテ負債整理法
案ヲ提出ニナルト云フコトモ聞イテ居リマ
ス、併シ此法案ニ於キマシテ、生產費ヲ基
準トシテ米價ノ最低基準ト致スナラバソ
コニ農村ハ何等ノ利潤ヲ得ルコトナクシテ、
負債整理ノ何處カラ一體財源ヲ產出スカト
云フ點ニ矛盾ヲ來シハセヌカト私ハ考ヘル
ノデアリマス、而モ農民ノ如ク頗ル利益ノ
薄イ商賣ヲシテ居リマス者ガ、一度不慮ノ
災難ニ罹ッタト云フヤウナ場合ニハ、其最モ
大ナル收入ヲ得ベキ米價ガ、斯ウシタ法律
ニ依ッテ、最低價格ヲ生產費トスルト云フコ
トニ決定ヲセラレマスナラバ、ドウシテソ
コニ農村ハ幸福ナル生活ガ出來ルダラウカ
ト云フ點ニ付テ、多大ノ疑問ヲ有ツモノデ
アリマス而モ本法ニ依レバ、數量調節ノ
爲ニ出〓期ニ於キマシテ、時價ヲ以テ買上
ゲルト云フコトニナッテ居リマス、其結果ハ
朝鮮デアルトカ、臺灣デアルトカ云フ生產
費ノ非常ニ安イ地方ニ對シテハ、特別ノ恩
惠ガ與ヘラレルノデアリマス、然ルニ大都
市ノ附近ニ於ケル比較的生產費ノ高イ地方
ノ米ハ是等朝鮮、臺灣ノ生產費ノ安イ地
方ノ米ノ〓迫ヲ受ケマシテ、大都市附近ノ
農村ハ非常ナル困窮ニ陷ルコトヽ私ハ考へ
やっ、而モ朝鮮ノ如キハ其生活費ガ非常
ニ安イ、公租公課ガ安イ、其他總テノ點カ
ラ行キマシテ、地價モ非常ニ內地ニ較ベレ
バ安イト云フ爲ニ、簡單ニ計算致シマシテ
モ、内地ノ米ノ生產費ニ較ベマシタナラバ
五圓乃至八圓ノ開キガアルノデアリマス
五圓乃至八圓ノ開キノア〓朝鮮ノ米ヲ、時
價ヲ以テドン〓〓政府ガ買上ゲルト云フコ
トニナリマシタナラバソコニ內地ノ大都
市附近ノ、生活程度ノ向上シテ居リマス地
方ノ農民ハ米作ニ依ッテハ將來斷ジテ自
己ノ經濟ヲ保ッテ行クコトガ出來ナイト云
フ結論ニナルト私ハ考ヘマス(拍手)デアリ
マスルカラ、政府ハ若シ此法案ヲ此儘實施
セントスルナラバ、是等大都市附近ノ農村
ニ對シテ、特別ノ何等カノ施設ヲスル必要
ガアルト考ヘル者デアリマスガ、ソレニ對
スル農林大臣ノ御所見ヲ承ッテ見タイト考
ヘマス
第三ト致シマシテハ、政府ハ何故ニ肥料
ニ對スル對策ヲ提案シナイカト云フ點デア
リマス、米價ガ安定セラレルコトハ農村
經濟ノ安定ノ基調デアルコトハ勿論申上ゲ
ルマデモアリマセヌ、併ナガラ肥料價格ノ
安定モ、亦農家ノ如ク現金支出ノ頗ル少イ
經濟ニ於キマシテハ其現金支出ノ大部分
ヲ肥料代ニ依ッテ占メテ居ルノデアリマス、
此肥料代ノ暴騰ト云フコトハ寧ロ米價ヲ
安定シテ貰フヨリモー而モ最近ノ此經濟
界ノ實情ニ依ッテ、米モ肥料モ高クナラウ
トシテ居ル時ニ之ヲ抑ヘヨウトスルナラ
バ、米價ノ最低値段ヲ抑ヘテ貰ハントスル
此法律ヨリモ寧口暴騰シテ居ル肥料ニ對
シテ、何等カノ政策ヲシテ貰フコトガ、眞
ニ農民ノ要求スル所デアリマス(拍手)私
ノ調査致シマス所ニ依レバ、昭和六年十
一月ト、昭和七年十二月トノ米ト肥料ノ
最モ中心ノ價格ヲ爲シテ居リマス硫安ト
ノ、物價指數ノ比較ハ、米ガ百四十八ガ百
九十三ニ騰貴致シマシテ、三〇%ノ騰貴デ
アルノニ對シ、硫安ハ五十四ガ九十三ニ騰
貴致シマシテ、七二%卽チ倍以上ノ騰貴率
ヲ示シテ居ルノデアリマス、此事實ヲ以テ
見マスナラバ、政府ガ眞ニ農村ヲ思ヒ農
民經濟ヲ考慮スルナラバ寧ロ米穀政策ヨ
リモ、先ヅ先ニ肥料對策ノ確立ヲスルコト
ガ大切ダト私ハ考ヘルノデアリマス(拍手)
而モ肥料價格ノ昂騰ノ原因ハ、政府ノ政策
ニ依ル爲替ノ下落、竝ニ內地ニ於ケル少數
ノ肥料製造會社ノ組合ヲ作リマシタ、其配
給組合ニ依ル人爲的引上策ノ結果デアッテ、
當然政府トシテ此人爲的引上策ニ對シテ、
何等カノ處置ヲシナケレバナラヌ責任ガア
ル問題デアリマス、吾々ハ玆ニ豫斷致シマ
スノニ、本法案施行ニ依フテ農家經濟ハ
米價ノ生產費維持ニ依ル消極的安定ヲ見ル
コトハ出來マスカモ知レマセヌガ、他面ニ
於テハ近キ將來、少クトモ今年ノ四月五月
頃カラハ肥料市價ハ暴騰ヲ致シマシテ、
非常ナル農村ヲ困窮ニ陷レ、農民ハ政治ヲ
罵リ、政府ヲ怨ムコトガ非常ニ大ナル時期
ヲ招來スルコトヽ私ハ固ク信ジテ居リマス、
デアリマスルカラ、敢テ此點ニ對シテ、農
林大臣ノ率直ナル御答辯ヲ御願スル次第デ
アリマス(拍手)
〔國務大臣後藤文夫君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X01419330216&spkNum=32
-
033・後藤文夫
○國務大臣(後藤文夫君) 第一ニ本案ノ目
標トスル米穀ノ需給ノ關係ニ付テ御尋ガゴ
ザイマシタ、米穀ノ需給ノ推算ハ、大體ニ
於キマシテ現在マデ進ンデ參リマシタ內地
竝ニ朝鮮、臺灣ノ米穀生產、內地ノ消費ノ
狀況等ヲ基礎ニシテ考ヘタノデアリマス、
只今河野君カラ、將來ノ米穀生產ノ增加ノ
趨勢ニ付テ、御懸念ノ御尋ガアリマシタ、
此事ニ付キマシテモ、相當ニ考慮ハ致シタ
ノデアリマス、今囘ノ米穀締制法案竝ニ需
給特別會計法ノ資力ノ增加ヲ以テ、今後差
當リ豫想セラルベキ米穀ノ需給狀況ニ應ジ
テ、米穀ノ價、數量ノ調節ヲ統制スルコト
ガ出來ルト考ヘテ居ルノデアリマス、朝鮮
及ビ臺灣ニ於テ、米穀ノ生產ガ近年著シク
增加シタコトハ、御話ノ通リデアリマス、
是ハ各種ノ增產計畫ノ結果デアリマス、今
後ニ於テモ同ジヤウナ規模ノ增產計畫ガ、
ドシ〓〓行ハレルコトデアリマスレバ又
幾年カ經ツ中ニ非常ナ增產ヲ見ルニ至ル虞
ハアルト思ヒマス、今後朝鮮、臺灣等ニ於
キマシテモ、增產計畫ノ相當ナ調節ヲ圖ル
必要ハアルト思フノデアリマス御承知ノ
如ク米穀統制調査會ニ於キマシテモ、將來
ノ生產ヲ統制スルト云フ問題ハ、喧シク論
議セラレタノデアリマス、唯之ヲ本法案ノ
中ニ入レルノハ適當デアリマセヌシ、又生
產統制ノ問題ハ、非常ニ複雜ナル關係ヲ有ッ
テ居リマス、別箇ニ深ク攻究スル必要ガア
ルト云フ趣旨ヲ以チマシテ、統制調査委員
會ハ此生產統制ノ事ヲ今後十分ニ攻究シ
テ方策ヲ樹テロト云フ答申ノ一項ヲ附加
シテ參フテ居ルノデアリマス、政府ニ於キマ
シテモ此趣旨ニ基キ、將來ノ生產ヲ綺制ス
ル問題ニ付テハ、深ク攻究ヲ致シタイト
思ッテ居リマス、此米穀法案ノ運用ヲ、長
ク十分ノ效力ヲ發揮セシメル爲ニハ
面ニ於テ今後ノ生產ト云フ問題ニ、相當ナ
注意ヲ拂ハナケレバナラヌト云フコトハ御
說ノ通リ考ヘテ居リマス、唯我國ノ米穀需
給ノ狀況ハ一時ノ增產ヲ以テ直チニ將來
ミ益〓唯サウ云フ傾向ノミ殖エルノデアルト
云フコトニ考ヘル譯ニモ參リマセヌ、人口
ノ增加ノ趨勢ト、國土ノ面積ノ關係等カラ、
又或ル時期ニ於テハ米穀ノ不足ヲ生ズル
コトモ、恐ラク考ヘナケレバナラヌノデア
リマス、今後ノ米產ノ計畫實施ノ進行ヲ、
ドウ云フ程度ニ調節スルカト云フ事ハ、餘
程愼重ナ攻究ヲ要スル問題デアリマス今
後各關係ノ方面ト十分ナル攻究ヲ遂ゲタイ
ト考ヘテ居ルノデアリマス
次ニ生產費ヲ最低價格ヲ定メル基準ノ要
件トスルコトニ付テノ御尋ガアリマシタ、
成程生產費ノ調査ハ、之ヲ商品トシテ扱ッタ
場合ニ、幾ラノ利潤ガ生ズルカト云フ、其利
潤ノ問題ヲ生產費ニハ加ヘテ居リマセヌ、
併ナガラ大體生產費ヲ計算スルニハ、相當
ナル決ッタ觀念ガアルノデアリマス、尤モ
今日マデノ米穀法ノ運用ニ於テ執ッテ參リ
マシタ生產費ノ調査方法ニ付テハ今後尙
ホ改善ノ餘地ノアル點ニ付テハ改善ヲ致シ
タイト考ヘテ攻究ヲ致シテ居リマス大
體生產費ヲ以テ最低價格ヲ定メル基準ノ要
件ト致シマスルノハ最低價格ヲ定メル爲
デアリマス、玆ニ利潤トカ何トカ云フ觀念
ヲ入レル譯ニハ參リ兼ネルカト思ヒマス、
勿論生產費ハ全國ノ米ニ於テ中庸ノ生產
費ガ計算シテ出サレル譯デアリマスルカ
ラ、是レ以下ノ生產費ノ米ニ付テハ、相當
又ハ十分ノ利潤ノ得ラレルモノガアリマ
ス、併シ其半面ニハ生產費ノ高イ處デハ
生產費ノ償ハナイモノモ出テ來ルノデアリ
マス斯ウ云フコトニ關聯シマシテ、又別
ニ一體ニ物價ノ趨勢ヲ見テ參ラナケレバナ
リマセヌ、生產費ト物價トヲ見合セテ考ヘ
マスルト、米ガ矢張リ商品トシテノ性質ヲ
失ヒマセヌ限リハ米ニ依ッテ大キナ利潤
ノ擧ル場合モアリ、擧ラナイ場合モ出テ來
ル、併シ大體ニ於テ、著シイ米價ノ低落ニ
依ッテ困ルコトノナイヤウニ、米價ヲ相當ノ
程度ニ維持スルト云フ今囘ノ新制度ハ過
去ノ制度ニ較ベテ非常ニ有力ナ手段ト相
成ッテ參ルト思ヒマス、尙ホ此出廻リ調節ニ
依ッテ數量ノ調節ヲ致スガ、ソレハ時價デ買
フノデアルカラシテ、生產費ノ安イ處デハ
相當好イ値段デ買ハレルガ、都會ノヤウナ
生產費ノ高イ地方ノ米ニ付テハ餘リ好イ
影響ヲ與ヘル譯ニモ參ラナイヂヤナイカト
云フヤウナ御話ガアリマシタ、是ハ數量調
節ハ季節的ニ米ガ市場ニ殺到シテ、米價
ヲ酷ク壓迫スルノヲ避ケヨウトスルノデア
リマス、成ルベク一年中ノ米價ノ平準ヲ得
サセテ參ル趣旨デアリマス、隨テ大都市附
近トカ、又其他ノ大キナ米穀生產地等ニ於
ケル米穀生產者ガ、米穀ニ依ッテ得ル收入ノ
々實ヲ圖ラウト云フ爲ニハ色々ナ自治的
統制其他ノ方法ヲ樹テ、又ソレニ政府モ助
力ヲ與ヘテ、成ベク値頃ノ好イ時ニ米ヲ賣ヲ
テ行クヤウナ途ノ立ツコトガ必要デアルト
考ヘテ居ルノデアリマス
第三ニ肥料ノ對策ノコトニ付テ御話ガア
リマシタ、肥料對策ニ付テハ當局ニ於テ
モ早クカラ苦心ハ致シテ居ル所デアリマ
ス、今日肥料ガ暴騰致シテ居ルコトハ御話
ノ通リデアリマス併ナガラ昨年ノ夏アタ
リニ於ケル肥料ノ値段ハ、非常ナ暴落ヲ致
シテ居ッタノデアリマス、農家ノ生產費、殊
ニ金錢支出ノ大部分ヲ占メル肥料ガ安イト
云フコトハ、農家ニ取ッテハ實ニ結構ナコト
デアリマシテ吾々モ常ニソレヲ希望致シ
テ居ルノデアリマスノデ、今日ノ場合金肥
ノ節約ヲ出來ル限リ農家ガヤルコトヲ、當
局ニ於テモ大ニ奬勵シテ居リマス、色々ナ
助成ノ施設モ致シテ居リマス、併シサウ
云フ事ノミヲ以テ、金肥ノ需要ヲ十分ニ調
整スルコトハ出來ナイト思ヒマス隨テ金
肥ノ高イト云フコトニ付テハ吾々モ深ク憂
ヘテ居リマスルガ、一方肥料ノ購入ヲスル
生產者ノ側ニ於テ、成ベク金肥ノ節約ヲ圖
リ、一面ニ於テハ其他ノ高イ肥料カラ、比
較的安イ肥料ヘ變リ得ルモノハ變ルト云フ
ヤウナ、各種ノ方策ガ行ハレテ、金肥ノ高
イコトニ對スル生產費ノ調節ヲ致スコトガ
出來ヨウト思フノデアリマス、尙ホ進ンデ
今御話ノアリマシタヤウナ高イ肥料ニ對シ
テ、肥料ノ値段ヲ安クセシムルヤウナ、有
效適切ナル方策ト云フコトニ付テハ、當局
デモ色々考ヘテ見テ居リマスルケレドモ、
未ダ具體的ナ良イ實行的ナ案ヲ得ルマデニ
至ッテ居ナイヤウナ次第デアリマス
〔河野一郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X01419330216&spkNum=33
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034・河野一郎
○河野一郞君 只今ノ御答辯デアリマスガ、
先ヅ第一ニ生產費ノ中ニ利潤ヲ加ヘル必要
ガナイカト云フ點ヲ御問シマシタ所ガ、利
潤ヲ加ヘル譯ニハ行カヌト云フ御答デアッ
タノデアリマスス併シ若シ今ノ農林大臣
ノヤウナ御答辯ニ依リマスト、將來農民ハ如
何ニ努力シ、研究ヲ致シマシテ、農村ノ經
濟ヲ改善シ、米作ノ改良進步ヲ圖〃テ、米ノ
生產費ヲ下ゲレバ下ゲル程米價ヲ安クスル、
自分デ〓究シテ生產費ヲ下ゲレバ、下ゲル
ダケ米ノ値段ヲ下ゲテシマフ、自分デ働イ
テ白分ノ身ヲ食フト云フコトニナリマシテ、
米ノ生產ノ改良トカ、進步トカ云フコト
ガ非常ニ此爲ニ阻碍サレルモノト思ヒマス
ガ、此點ハ如何デアリマスカ、第二ハ此法
案ヲ立テルニ當リマシテ、私ハ先程中上ゲ
マシタヤウニ、推算ノ基礎ヲ確實ニシナケ
レバ現行米穀法ト同一ノ轍ヲ履ムカラ申上
ゲマシタ、所ガ只今ノ農林大臣ノ御答辯ニ
依リマスルト、ドウモ推算ノ基礎ニハッキ
リシタ數字的根據ガナイヤウニ承フタノデ
アリマス、ソレデ此點ニ付キマシテハ岩
シアリマスナラバ、此機會ニ率直ニ、五箇
年後ノ内地朝鮮及臺灣ニ於ケル推算ノ數字
ヲ、旣ニ御調ガアルト思ヒマスカラ、御答
願ヒタイト思ヒマス、肥料ノ點ニ付キマシ
テモ、尙ホ意見ガアリマスガ、何レ別ノ機會
ニ讓ルコトニ致シマス
〔國務大臣後藤文夫君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X01419330216&spkNum=34
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035・後藤文夫
○國務大臣(後藤文夫君) 生產費ノ計算ニ
利潤ヲ入レナイデハ生產者ハ生產費ヲ安
クスレバ安クスルダケ、米ノ値ガ安クナル
ト云フコトニナルデハナイカ、全ク利益ヲ
得ルヤウナ機會ガナイヤウニナルノデハナ
イカト云フ御話デアリマス、ソレハ生產費
ト云フ觀念ノ中ニ、利潤ト云フモノヲ入レ
テ計算ヲ出ス譯ニ行カナイト申シタノデア
リマス、生產費ノ中ニハ、農家ガ得ラルベ
キ總テノ費用費用ト云フノハ農家ノ勞
力モ入リマス、使ッタ資本ノ利潤モ入リマ
ス、サウ云フコトカラ、唯商業上ノ値ガ高
カッタリ安カッタリスル、是ハ利潤ヲ生產費
ノ計算ノ中ニ入レル譯ニハ行カヌト申シタ
ノデアリマス、農家ノ爲ニ最低ノ生產費ト
云フモノヲ確實ニ維持シテ、相當ナ收入ヲ
常ニ保タシテ、ソレ以下ノ不利ナ狀況ニ置
クマイトスル米穀統制法ノ精神ハ全ク農
家ノ保護ヲ致サウトスル點ニアルノデアリ
やっ、ソレカラ需給推算ノ五箇年先ノ計數
ガアルナラバ出セト云フ御話デアリマス
ガ、當局ニ於テモ、將來ノ見透シノ色々ナ
計數ハ持ヲテ居リマスガ、此處ニハ數字ハ持
合セテ居リマセヌカラ、若シ御必要デアル
ナラバ他ノ機會ニ於テ御示シテモ宜イト
思ヒマス、唯五箇年後ノ推算ト云フコト
ハ需給會計ノ資力ノ計算ノ上ニモ之ヲ見
ルコトハ必要デアリマスケレドモ、大體米
穀ノ需給ガ最近數年間ニ現ハレタ現象ヲ追
ウテ將來ヘ參リ、一方ニハ生產統制ノ施設
ガ合理的ニ行ハレテ、生產ガ相當ニ調整サ
レルト云フコトニナレバ、今囘ノ米穀統制
法ト需給會計ノ資力ノ增加ニ依ッテ、先ヅ大
〓ナ事柄ニハ應ジテ米價ノ維持ヲ圖リ、又
米價ノ無暗ニ騰貴スルノヲモ防グコトガ出
來ルト考ヘテ居ルノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X01419330216&spkNum=35
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036・秋田清
○議長、秋田〓君) 白神邦二君
〔白神邦二君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X01419330216&spkNum=36
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037・白神邦二
○白神邦二君 同僚河野君カラ只今質問ヲ
致シマシタ其中ニ、私ノ質問ト稍〓〓複致
シテ居ル點モアリマスルカラ、私ハ極メテ
簡單ニ農林大臣ニ承リタイト思フノデアリ
やく、政府ガ御提案ニ相成リマシタル米穀
統制案ナルモノハ曩ニ第六十三議會ニ於
キマシテ、吾々ガ來ルベキ此六十四議會
卽チ本議會ニ於テ、必ズ農村ノ困窮ヲ救フ
ベキ十分ナル確乎タル案ヲ御提出アランコ
トヲ望ンデ置イタ譯デアリマシテ、又政府
當局ニ於カセラレマシテモ之ニ御同意ニ相
成ッテ、サウシテ今囘此案ヲ御提出ニ相成ク
タモノト存ズルノデアリマス、然ルニソレ
ガ此統制案デアリマスルトスルナラバ洵
ニ不徹底極マルモノデアル、此爲ニ私共ハ
非常ニ期待ニ反シタルコトヲ遺憾ト致スノ
デアリマス、何レ詳シキコトハ委員會等ニ
於テ御尋ヲ致シマスルガ、先ヅ其中ノ一一
ヲ拾ノテ御伺ヲ致シテ見タイト思ヒマス、農
村ノ現狀ハ私ガ今申上ゲマスルマデモナ
ク、殆ド困憊其極ニ達シテ居ルコトハ、旣
ニ何人モ之ヲ承認セラレテ居ル、卽チ之ヲ
救ハンガ爲ニ、主要農傘物デアル所ノ米穀ノ
價格ヲ維持スルト云フコトサウシテソレ
ニ依ッテ幾分デモ農家ヲ救ウテヤル、增收
ヲ圖フテヤルト云フコトニ出發致シタノガ
趣旨デアリマス、サウシテ又相當ノ利益ヲ
得セシメテ、御承知ノ農村ノ多額ナルア
ノ自債ヲ徐々ニ整理ヲセシメントスルノガ
吾々ノ本旨デアリマス、卽チ是等ノ實現ヲ
吾々ハ希望シテ、本案ニ對シテハ多大ナル
期待ヲ持クテ居ッタノデアリマスルガ、前
申シマスル如ク、此案ノ內容ヲ見マシテ、
甚ダ不徹底ナルコトヲ遺憾ニ存ジテ居ルノ
デアリマスルガ、政府ハ其根本ノ趣旨ヲ、
果シテ其農村ノ救濟ト云フコトニ置カレ
マシタカ、或ハ米價ノ調節ト云フ、唯簡
單ナル意味ニ置カレマシタカ、之ヲ第一ニ
私ハ御尋ヲ致シタイノデアリマス、米價調
節ト云フヤウナコトハ旣ニ今日ニ至リマ
スルマデノ例ガ澤山アリマス、又現在ニ於
キマスル所ノ、アノ米穀法ノ效果ノ如何ニ
アリマスルカト云フコトモ旣ニ農林大臣
モ能ク御承知ノコトデアリマス斯樣ナ過
去ノ米價調節トカ、米穀法ノ運用ト云フモ
ノハ洵ニ失敗ノ跡ノミデ、殆ド取ルニ足
ラザルモノデアッタト云フコトハ、是ハ過言
デハアリマセヌ、其一例ヲ申シテ見マスル
ナラバ、遠クハ仲小路農相時代ニハ、米價ノ
暴騰ヲ防ガントシテ大ナル失敗ヲヤッテ居
ル、サウシテ又其後ノ政府ガ續イテ引上ヲ
ヤッテ居リマスルケレドモ、引上ゲントスル
所ノ米ノ買上ハ、何時モ失敗ヲ繰返シテ居ル
コトモ是亦事實デアリマス、現在迄ニ繰
越サレテ居リマス損失金ト云フモノモ、亦
實ニ莫大ナルモノデアルト私共ハ思フノデ
アリマス、尠クトモ二億圓以上ハ既ニ損失
トシテ出シ、現在又政府ガ御持チニナッテ居
ル所有米、此米ヲ又現在ニ於テ賣拂ッテ〓
算致シマシタ時ニハ是亦其損失ハ莫大ナ
ルモノデアルサウシテ見マスト、今後政
府ハ七億圓ノ金額ノ中ヨリ幾許ヲ引去ッテ、
殘リノ如何ナル程度ノ金額ヲ以テ此對策ヲ
爲サル御考デアルカ、是等モ併セテ御聞キ
政シタイト思ヒマス、サウシテ其金額ノ大
略デ宜シウゴザイマスケレドモ、今迄ノ損
失ニ對シテ、旣ニ使ヒ果サレテ赤字ニナッ
テ居リマスモノト、サウシテ現在アリマス
政府ノ所有米ノ損失、是等ヲ引イタ後ノ、
今後ニ處スベキ資金ガ幾許殘リマスカ、之
ヲ農林大臣ヨリ一應伺ッテ置キタイノデア
リマス
私等ガ考ヘマスト、本案ハ吾等ノ熱望シ
テ居ル所ハ全ク其趣旨ヲ取去ラレテシマヒ
マシテ、失敗ノ歷史ノアル所ノ任意調節ガ、
始ド其根本ニナッテ居ルノデハナイカ、又
前ニ河野君ガ中シマシタ如ク、殆ド前ノ米
穀法ト何等相違シテ居ナイ、何處ガ違ッテ居
ルカト云ヘバ或ハ罰則等ノ點ニ於テハ兎
ヤ角ト非常ニ詳シク出テ居リマスケレドモ、
其實體ノ上ニ於テハ、現在ノ米穀法ト何等
變リガナイ、左樣ナモノデアリマスト前
ニ河野君ノ言ウタ如ク、生產費ト云フモノ
ニ依ッテ米ヲ農家カラ買上ゲルモノデアル
ナラバ農家ト云フモノハ之ニ依ッテ一錢
一厘モ利潤ヲ得ルコトハ出來ナイ、全ク之
ハ米價ヲ定メテシマッテ、上ト下トヲ局限シ
タ場合ニ於テハ、農家ハ米價ガ少シデモ上ツ
テ儲ケントスル時ニハ又上カラ壓迫スル
コトニナッテ、農家ノ爲ニ非常ナ不利益デ
アッテ、農家ヲ救フト云フヨリ、寧口壓迫ス
ル結果ニ相成ルコトヲ御承知ニナラネバナ
ラヌト思ヒマス、此意見ハ吾々ノ見解ノ相
違デアルト思ヒマスカラ、農林大臣ノ御意
見ヲ承リタイノデアリマス
ソレカラ御承知ノ通リ米價ノ暴騰ナルモ
ノハ其騰貴ヲスル場合ニハ一一ツノ理由ガ
アリマス、一ハ不作ノ年デアリマス、不作
ニ因ッテノ騰貴、今一ツハ一般ノ景氣ノ囘復
ニ因ル騰貴、此二ツノ場合デアリマスガ、
其時農家ハドウ云フ立場ニ相成ルカト云フ
コトヲ考慮ニ入レテ置カレヌト、非常ナル
間違ヒニナルト私ハ信ズルノデアリマス、
御承知ノ通リ一段ノ田ニ於テ一石獲レル米
ガ、不作ノ爲ニ七斗ニナッタ時ニハ、其生產
費ト云フモノハ石當リ非常ナ多額トナリ、
ソレガ上値ヲ限定サレテ居リマス場合ニハ、
農家ハ非常ナ損失ヲ招クノデアリマス、又
同時ニ景氣ガ囘復シテ、米價ガ高クナル場
合ニハ農家ノ生活ト云フモノハ御互ト同
ジデ、商人モ、官吏モ、農民モ、生活費ト
云フモノハ同ジヤウニ高マルノデアリマ
ス其時ニ農家ハ獨リ苦境ニ陷ルノデアリ
マスルガ、是モ農林大臣ハ如何御考ニナッテ
居リマスカ、又農村ノ救濟ト云フコトニ根
本ノ趣旨ガ置カレテ居ルヤウナコトガ、先程
ノ答辯ノ中ニアリマシタガ、果シテ左樣デ
アリマスナラバ、生產費ヲ割込マヌ保障ヲ、
國家ノ力デ致サレルト云フコトハ勿論デア
リマスガ、若シ大豐作ノ場合ニ於テ、其使
ヒマスル金ガ無クナッタ時ニハ、私ガ前ニ尋
ネマシタ所ノ資金ガ、政府ニ於テモ無限ノ
モノデハナイダラウト思フ、其時ニ於テハ
政府ハ如何ナル御處置ヲ御執リニナル積リ
デアリマスルカ、又此米ヲ御賣リニナルト
云フ場合ニ於テ、少イ米ヲ又賣ッテ、其米價
ヲ抑壓スルダケノ方法ハ他ニアリマスル
カ、當局ニ於テハ吾々ノ想像スルト同ジク、
今迄ノ米穀法ト云フモノニ基準ヲ取ッテオ
ヤリニナッタモノデアッテ、實際ニ於テ他ニ
名案ガナカッタノダラウト思フ、サウシテ今
迄ノ米穀法ノ委員ト云フヤウナ人々ニ依リ
マスルト云フト成程有名ナル學者、政治
家、其他ノ人々ガ居ラレマスルケレドモ
更ニ實際家ト云フモノガ之ニ加ッテ居ラヌ
結果、兎角議論ガ唯机上ノモノニナッテ居
ル此案其モノモ机上ノ論ニ近イモノデ
アッテ、實際ニ於テハ洵ニ行ヒ難イヤウニ
私共ハ信ズルノデアリマスルガ、農林大臣
ハ如何ナル御考ヲ有ッテ居ラレルカ、以上申
述ベマシテ、アトハ何レ委員會ニ於テ御尋
致シマス
〔國務大臣後藤文夫君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X01419330216&spkNum=37
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038・後藤文夫
○國務大臣(後藤文夫君) 第一ニ此度ノ新
統制法案ノ、最低ノ價格ヲ定メテ米價ノ下
値ヲ維持シヨウト云フノハ、固ヨリ御話ノ
如ク、農民ノ立場ヲ安固ナラシメヨウトス
ル趣旨デアリマス、現在ノ米穀法ト趣ガ餘
程違ッテ居ルノデアリマス、現在ノ米穀法ハ
下ノ基準ヲ定メマシテ、基準ヲ割ラナケレ
バ買發動ガ出來ナイ、共買發動ヲスル時デ
モ時價デ買フ、基準ヨリ二圓下ッテモ三圓
下ッテモ其値デ買フト云フノデアリマス、此
度ノ方法ハ最低價格ヲ公定致シマシテ、最
低價格デ買フノデアリマス最低價格以下
ニ米ノ値段ノ下ルコトヲ防止シヨウトスル
ノデアリマス、唯第二ノ御尋ニアリマシタ
ヤウニ、資金ガ幾ラアルカト云フコトガ、
自ラ其力ヲ制限スルノデハナイカ、ソレハ
制限スル譯デアリマス、併ナガラソレニ對
シテハ十分ノ資金ヲ以テ臨マウトシテ居ル
ノデアリマス、是迄ノヤウニ買ッテモ宜ケレ
バ買ハヌデモ宜イ、買フ値段ハ安ケレバ安
ク買フノダト云フノデハアリマセヌ、決メ
タ値段ヲ以テ買フト云フコトニ依ッテ、決メ
タ値段ヨリモ下ラセマイトスルノデアリマ
ス、資金ハ十分ノ準備ガナケレバナリマセ
又、資金ノ計算ノ細カイコトハ委員會等
デ申上ゲルコトニ致シタイト思ヒマス、今
囘ノ需給特別會計法ノ改正ニ依リマシテ、
七億圓ノ借入限度ヲ定メルノデアリマス、
現在借人ヲシテ居リ、或ハ米穀器トナッテ
居ル金額ヲ除イタ餘力ハ約四億三千万圓、此
四億三千万圓ノ資金ヲ以テ此法案ノ出發ヲ
始メヨウ、此法案實施ノ時ニ其資力ヲ備ヘテ
掛ラウトシテ居ルノデアリマス、是マデ米穀
法ノ備ヘタ資金ノ金額トハ餘程ニ違ヒガ
アルノデアリマス、此力ヲ以テ致シマス
レバー大體ノ推算カラシテ、本法ノ有力
ナ實施ガ出來ルモノト信ジテ居ルノデア
リマス、米價ノ騰貴ニハ不作ノ爲ノ騰貴
ト、物價ノ上ッタ爲ノ騰貴トガアル此騰
貴シタ場合ニ、生產費ト云フモノダケヲ見
テ行クヤウデハ非常ニ困ルヂヤナイカ
又上値ト云フヤウナモノガアッテ、上値ヲ
調節サレテ、折角米ノ上ルコトニ依ッテ農家
ハ俗リヲ得ヨウトスル場合ニ、ソレヲ抑ヘ
ラレテハ困ルヂヤナイカト云フヤウナ御尋
ガアリマシタ、之ニ付テハ唯生產費ト云フ
モノダケヲ見レバ、サウ云フ風ナ場合ノ起
ルコトガアリマス、矢張一般物價ト云フヤ
ウナモノヲ見、經濟界ノ趨勢ヲ見テ、公定
價格ト云フモノヲ定メナケレバナラヌノハ
ソレガ爲メデアリマス、隨テ最高値段ト云
フモノヲ、最低値段ニ餘リ近付ケテ作ヲテ
置キマスレバ如何ニモ御話ノヤウニ農
家カラ見マシテモ甚ダ不公平ナ扱ヒヲ受ケ
ルコトガ起リマス、最高値段ト云フモノヲ
矢張合理的ナ所ニ定メテ置カナケレバナラ
ヌト考ヘルノデアリマス、若シ大豐作ガアッ
テ、非常ニ米ノ供給ガ多クナッタ時分ニハ
資金ガナクナッテ、金ガナクナルト云フト
モウ仕方ガナクナルヂヤナイカト云フヤウ
ナ御話デアリマスガ、大體今囘ノ統制法ト
併セテ需給會計法ノ改正ハ相當ナ豐作ガ
アリマシテモ、之ニ應ジテ米價ノ公定價格
ヲ維持スルコトガ出來ルヤウニ考ヘテ立案
致シテ居リマスル、若シ想像モ及バナイヤ
ウナ、非常ナ大豐作ガアルト云フヤウナコ
トガアリマスレバ、是ハ或ハ現在ノ資力ヲ
以テハ應ジ得ナイヤウナ場合ガ起ルカモ知
レマセヌ、併ナガラ斯ノ如キ異常ノ際ニハ
又異常ノ方法ヲ講ジナケレバナラヌモノデ
アラウト存ジマス、大體起リ得ベキ普通ノ
豐作、其他ノ場合ニ於ケルノニ應ズルノ十
分ナ準備ヲ致シテ置クコトヲ以テ、現在ト
シテハ滿足スルノ外ハナイト思フノデアリ
さく、ソレカラ上値ヲ維持スル爲ニモ米ヲ
賣ラナケレバナラヌガ米ガナイ時ハ仕方
ガナイヂヤナイカ、是ハ御說ノ通リデアリ
やく、政府ガ其時ニ持フテ居ル手持米及政
府ガ手ニ入レ得ル外米其他ノ米ヲ以テ、之
ニ應ジナケレバナラヌノデアリマス、是モ
通常想像シ得ベキ場合ニ於テハ、政府ガ相
當ナ米ヲ平素ニ於テ持チ、又需給ノ推算カ
ラシテ相當ナ輸入米ナリ、又政府ガ米買上
ノ準備ヲシテ置クト云フヤウナ方法ニ依ツ
テ、此上値ニ應ズルコトガ出來ルト思フノ
デアリマス、今囘ノ新綺制案ハ過去ニ於
テモ米穀統制ニ付テ各種ノ意見ガアリマス
シ、又曩ノ臨時議會等ニ於テモ議會ノ御希
望等ガアリマシテ、出來ル限リ現在ニ於テ
實行シ得ベキ有力ナル米穀統制ノ策ヲ見出
サウト致シマシテ、專門家、實際家等ノ集
マラレタ會合ニ於テ得マシタ現在ノ實行
シ得ベキ最モ有力ナル案トシテ、此法案ヲ
立案致シタヤウナ譯デアリマス、大體豫テ
ノ皆樣ノ御希望ノ趣旨ニ應ズル爲ニ作ッタ
ノガ、其精神デアリマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X01419330216&spkNum=38
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039・秋田清
○議長(秋田〓君) 村松久義君
〔村松久義君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X01419330216&spkNum=39
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040・村松久義
○村松久義君 諸君、只今議題ニ相成ッテ
居リマスル米穀統制法案ハ、從來ノ米穀政
策ニ對シマシテ、其一步ヲ進メタルモノト
シテ欣快ニ存ズルモノデアリマス、而シテ
吾々ハ此法案ノ目的ヲ逹成セシムルコトヲ
考ヘマスルガ故ニ、二三ノ重要ナル問題ニ
關シテ、質問ヲ致シテ見タイト思フノデ
アリマス(拍手)
政府ハ曩ニ現行米穀法ノ改正ヲ目論
見マシテ、主務省ニ米穀部ヲ置キ、又
顧問會ヲ開キ、更ニ朝野及各政黨ノ選
集メマシタル委員ヲ以テ組織致シマシ
タル、米穀統制調査委員會ナルモノヲ設
署致シタノデアリマスル、而シテ此調査
會ニ於キマシテ、米穀專賣法案、米穀管
理法案、其他二ツノ參考資料ヲ提供致シテ
諮問ヲ致シタノデアリマスルガ、其結果ト
致シマシテ、最後ニ殘サレタルモノガ此法
案デアッタノデアリマスルガ、卽チ政府ニ於
カレマシテハ此最後ニ殘サレタル公定案
コソ、實際ニ實行ノ可能ナモノデアリ、米
穀專賣法案或ハ米穀管理法案ノ如キハ實
行不可能ナモノトシテ之ヲ捨テラレタノデ
アルカドウカヲ御伺致シタイノデアリマス、
果シテ然リト致シマスルナラバ、此最後案
トシテ殘サレマシタル此法案デアリマスル
ダケニヨリ以上ノ興味ヲ懷カザルヲ得ナ
イノデアリマス、私ノ
〔〓言スル者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X01419330216&spkNum=40
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041・秋田清
○議長(秋田〓君) 靜肅ニ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X01419330216&spkNum=41
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042・村松久義
○村松久義君(續) 私ノ理會スル所デハ、
公定價格ノ主眼ト致シマスル所ハ、生產者
ト消費者ノ特殊事情ヨリ生ジマスル矛盾ヲ
解決シ、農業、工業ヲ調和セシメタル上ニ
於テ、公正ナル價格ヲ發見スルニアルト思
フノデアリマスル、卽チ理想論トシテ申シ
マスルナラバ、今日ノ社會ノ總テノ階級ニ
對シマシテ、ナケレバナラヌ價格、アラシ
メナケレバナラヌ價格ヲ發見スルニアルト
信ズル次第デアリマスルケレドモ
〔發言スル者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X01419330216&spkNum=42
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043・秋田清
○議長(秋田〓君) 靜肅ニ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X01419330216&spkNum=43
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044・村松久義
○村松久義君(續) 實際政治ノ運用ト致シ
マシテハ今日ノ社會經濟、財政ノ事情等
ヨリ考究致シマシテ、何ガ最モ保護セラレ
ナケレバナラヌカニ、重點ヲ置クベキモノ
デハナイカト信ジテ居ル次第デアリマスル、
此法案ニ於キマスル最低ノ價格ヲ見マス
レイ、ソレハ生產費ト物價其他ノ事情ヲ參
酌シテ之ヲ決定スルコトニ相成クテ居ル
ノデアリマスル、物價其他ノ經濟事情ヲ參
酌スルト云フコトハ一般ノ物價ニ現レマ
シタル景氣ノ消長ナリ、或ハ特殊ノ經濟事
情例ヘバ肥料ノ極端ナル暴騰ト云フガ如
キ事情ヲ參酌シマシテ、最低生產費ヲ引上
ゲントスル用意デアルト解釋ヲ致サナケ
レバナラヌノデアリマスル、若シ左樣デア
ルト致シマスルナラバ、洵ニ結構ナル案デ
アルト言ハナケレバナラヌノデアリマスル
ガ唯其物價竝ニ其他ノ經濟事情ヲ參酌ス
ルト云フコトガ、果シテ具體的ニ之ヲ述べ
マスルナラバ、如何ニ參酌スルノデアルカ
ト云フ點ニ對シマシテハ、總テ之ヲ勅令ニ
讓ッテ居ル次第デアリマスル、私共ハ其何デ
アルカヲ茲ニ御示ヲ願ヒタイトハ思ヒマセ
ヌケレドモ、玆ニ一ツ今日ノ疲弊致シテ居
リマスル農民經濟ノ狀態ヲ以テ致シテ參リ
マスレバ、ゝ
唯單ニ從來ノ支拂ヒマシタル生
產費ヲ償却シタリト云フダケデハ到底其
經營ヲ永續スルコトハ出來ナイ程ノ、悲慘
ナル狀態ニ立至ッテ居ルコトデアリマスル、
從來トテモ農民ハ其再生產費トモ申スベ
キ次年度ノ生產費ハ殆ド之ヲ借入ヲ以テ
ヤッテ參ッタノデアリマス、隨テ、或ル方面
ニ於キマシテハ食料ニ於テ、亦肥料ニ於
キマシテ、實ニ三四割ノ高利ヲサヘモ貪ラ
レテ居ッタ、是ガ今日農家六十億ノ借金ノ相
當部分ヲ成シテ居ルデアラウト云フコトハ
想像ニ難クナイ次第デアリマスル、卽チ若
シ生產費ノ外ニ、物價及其他ノ經濟事情ヲ
參酌致シマスルナラバ、農家ノ再生產費ニ
關スル考慮ヲモ當然爲スベキデハナイカ
ト信ジテ疑ハザル次第デアリマスル(拍手)
而モモウ一ツノ事情ヲ指摘スルコトガ出來
ルト思フノデアリマスル、ソレハ諸君ノ御承
知ノ如クニ、今日ノ農產物價ト農村需要品
價格トノ間ニハ、所謂「シエーレ」ト唱ヘラレ
テ居リマスル鋏狀的ノ價格差ヲ有シテ居ル
ノデアリマスル是ガ農家經濟ニ於ケル再
生產費〓込ノ一因ヲ成シテ居ルコトハ、爭
フコトノ出來ザル點デアリマスルガ、若シ
今後ニ於キマシテ「インフレーション」ガ具
體化スルガ如キコトアリト致シマスルナラ
バ此鋏狀的ノ價格差ガ益、其開キヲ擴大
致シテ參リマスルコトハ、內外過去ノ歷史
ヲ通ジテ見マシテ、一點疑ノナイ點デアル
ト言ハナケレバナラヌノデアリマス
斯ノ如ク致シマシテ農家ノ經濟狀態ニ
對シマシテ、眞ノ認識ヲ有シマスルナラバ、
而シテ再生產費ノ食込ガ不可避的ノ事情デ
アルト云フコトヲ認識セラレマスナラバ
當局ハ此物價及其他ノ經濟事情ト云フ條項
ヲバ活用セラレマスルコトヲ希望スルト
同時ニ、現當局ニ於キマシテ、果シテ此點
ニ關シ如何ナル御考ヲ有シテ居ラレマスル
カヲ、明ニセラレンコトヲ希望スル次第デ
アリマス(拍手)
次ニ私ハ公定價格ノ維持手段ト致シマシ
テ、買上ノ義務ガアルト思フノデアルシ、
而シテ同時ニ季節的ノ出廻リノ數量調節ヲ
致シテ居ルノデアリマスルガ、此點ニ關シ
マシテ疑ヲ有シテ居リマスルガ故ニ、御尋
ヲ致シテ見タイノデアル、本法ニ依リマス
レバ公定價格ヲ維持致シマスル外ニ、更ニ
內地ニ於テハ道府縣ヨリ移出セラレマス
ル穀物ニ對シテ、月別平均ナラシメマスル
爲ニ、季節調節ヲ爲ス、ソレハ時價ニ依ル
買上デアルト云フコトニ相成ッテ居リマス
而シテ此公定價格維持ノ爲ニハ
第三條ニ示シテ居リマスル如クニ、
最低價格ニ依ル買上ノ申込ニ對シマシテ
ハ必ズ買上ノ義務ヲ負擔シテ居ルモノデ
アルト見ナケレバナラヌノデアリマス、然
ラバ斯ノ如クマデシテ義務付ケラレ、而シ
テ最低價格ヲ維持セント致シテ居リマスル
外ニ、尙ホ季節的調節ノ爲ノ買上ガ必要デ
アルカドウカニ關シマシテ、疑ナキ能ハザ
ルモノデアリマス、政府ニ於カレマシテ
ハ一年ノ或ル時期ニ於キマシテハ、公定
價格以外ノ價格ヲ希望セラレテ居ルノデア
リマスガ、若シ果シテ然リト致シマスルナ
ラバ、基準ヲ二重ニ附スル虞ガアルノデハ
ナイカト疑ハザルヲ得ナイノデアリマス
更ニ從來ノ買上ノ例ヲ見マスレバ、大體所
謂出廻期デアリマスル十一二月ヨリ、翌年
ノ二月ニ買上ヲセラレテ居リマスルノガ
大多數デアリマシテ、其他ハ殆ド例外デア
ルト言ハナケレバナラヌノデアリマス、然
ラバ此時期ニ於テ時價ニ依ル買上ノ出動ニ
及ンダナラバ、結局無基準ナル買上ノ發動
ニ還元スルノ虞レハナクハナイノデハナカ
ラウカト考ヘザルヲ得ナイ、米穀法ノ沿革
ヲ考ヘテ見マスレバ、從來無基準ノ買上ノ
出動ガ度々行ハレ、其弊ニ堪ヘザルガ爲
二、玆ニ基準ヲ制定スルニ至ッタ次第デア
リマス、無基準還元ノ虞レアリトスル、此
季節的ノ買上ニ關シマシテ、政府ノ御所見
ヲ質シタイノデアリマス
更ニ私共ガ看逃スコトノ出來ナイ點ト云
フノハ此季節的調節ニ付キマシテハ却
テ米價ノ安定ヲ阻碍スルノミナラズ、更ノ
進ンデハ米價ノ飜弄ヲ、政府自ラ之ヲ行フ
ノ結果ニ至ルコトナキヤヲ懸念致シテ居ル
次第デアリマス、恐ラク政府ニ於カレマシ
テハ此季節的ノ出廻リ數量調節ト云フコ
トヲ以チマシテ、價格調節ノ爲ニ必要ナル
手段デアルトノ御考デアルト思ヒマス、併
ナガラ結果ノ甚シキ場合ヲ想像シテ見マス
ルナラバ、出廻期ニ於テ最高ノ値段ニ近キ
モノヲ以テ買上ゲルコトガアルカト思ヒマス
レバ、或ル場合ニ於テハ最低ノ値段ニ近キ
モノヲ以テ、之ヲ賣出サナケレバナラナイ
ト云フガ如ク、結局其安定ヲ求メツヽ、遂ニ
安定ノ途ニ達スルコトガ出來ナイヤウナ事
情ガ發生スルノデハナカラウカ、十分ニ吟
味シナケレバナラヌ點デアルト思フノデア
リマス(拍手)
要スルニ季節的ノ調節ノ結果トシテハ、
或ハ第一ニ基準ヲ紊スコトガナイカドウカ、
米價ノ動搖ヲ來スコトガナイカドウカ、
公定價格ノ基礎ヲ危クスルコトガナイカド
ウカ、更ニ無用ニ國費ヲ浪費致シマシテ、
其結果トシマシテ、本法案ノ有"テ居リマ
スル强大ナル威力ヲサヘ失墜スルコトノ虞
ガナイカドウカニ關シマシテ、明快ナル御
答辯ヲ得タイト思フノデアリマス(拍手)
尙ホ私ハ此季節的ノ調節ニ關聯致シマシ
テ、運用ノ方面ニ付テ御尋ヲ致シタイノデ
アリマス、事ハ洵ニ些々タル問題デアルカ
ノ如キコトデアリマスケレドモ此運用ノ
如何ニ依リマシテハ、實ニ農民ノ多數ニ於
テ非常ナル不平不滿ノ原因タリト言ハナケ
レバナラヌノデアリマスルガ故ニ、此點ヲ
御尋致シタイト思フ、季節的ノ調節ニ對シ
マシテハ、恐ラク今日ノ斯ノ如キ農家ノ疲
弊ヲ以テ致シマスルナラバ、絕對的ニ現金
ガ必要デアルト云フ點ヨリ致シマシテ、從
來ハ唯米價安ノ爲ニ手放スコトヲ欲セザル
人々ニ於テサヘモ、尙且ツ非常ナル勢ヲ以
テ之ヲ手放サントスルデアラウト思フ、貧
農デアリマスルナラバアルダケニ、其念ノ
熾烈ナ事ヲ思フ次第デアリマス、私共ハ諸
君ト共ニ斯ノ如キ貧農ニ對シマシテ現金
ヲ摑マシメタイト考ヘテ居ル次第デアリマ
スケレドモ從來ノ如クニ買上ヲ致シマス
ル場所ガ、全國僅ニ六箇所或ハ七箇所ニ過
ギナイ、又買入ノ條件ト致シマシテモ、五
十俵以上ニ非ザレバ之ヲ取扱ハズト云フガ
如キ、過酷ナル條件ヲ附シテ居ラレタノデ
アリマスルナラバ到底地方ニ偏在致シマ
スル農民竝ニ貧農階級ノ人々ニ於テハ、是
ノ買上ヲ希望スルト雖モ、到底其目的ヲ達
スルコトガ出來ナイノデハナイカト考ヘザ
ルヲ得ナイノデアリマス、一部ノ大地主、
或ハ中間ノ仲買商人ノ手ニノミ委ネラレテ
居リマシテ、實際ニ現金ヲ必要トシマスル
貧農其他ノ人々ニ及ブコト少キモノデアル
ト致シマシタナラバ、是ハ運用ノ上ニ於テ、
其實際的效果ヲ失ッテシマフ結果デアルト
言ハナケレナラヌノデアリマス、此點ニ
關シマシテ、政府ニ於カレマシテハ此買
上ノ場所ヲ增設スルカ、又買入ノ條件ヲ緩
和スルカ否カ等ニ關シマシテノ、御答辯ヲ
得タイト思フ次第デアリマス
(拍手)
〔國務大臣後藤文夫君〓壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X01419330216&spkNum=44
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045・後藤文夫
○國務大臣(後藤文夫君) 再生產費ト云フ
見地カラ、一般經濟界ノ事情ノ變化ヲ、米
價ノ公定ヲスル時ニ考ヘナケレバナラヌデ
ハナイカト云フ御尋ガアリマシタ、一般經
濟界ノ變化、殊ニ一般物價ノ趨勢ノ變化等
ニ應ジテ、公定價格ノ定メ方ヲ考ヘナケレ
バナラヌト考ヘルノデアリマス、是ガ法案
ニサウ云フコトガ規定シテアル所以デアリ
マス、御話ノヤウニ細カニ再生產費ト云フ
モノヲ見テ、其再生產費ニ旨ク調節ガ取レ
ルヤウニ參ルト云フコトハ、中々困難
デアラウト思ヒマスルガ、一般ノ經濟事情
ト云フモノカラ、最高最低價格ヲ考ヘテ參
リマスルト云フコトモ必要ナノハ御話ノ
趣旨ノヤウニモ矢張考へラレルト云フコト
ニナルコトデアラウト思ヒマス、ソレカラ
公定價格ヲ維持スル以上ハ、季節的ノ調節
ハドウ云フモノデアルカ、基準ヲ二重ニス
ルト云フヤウナコトニナルノデハナイカト
云フヤウナ御話デアリマスガ、是ハ全ク別
ノコトデアリマス、公定價格ハ最高ト最低
ヲ定メマシテ、此範圍內ニ米價ヲ在ラシメ
ヨウトスルノデアリマス、季節的ノ調節
ハ季節的ニ出廻ガ殺到シテ、米價ニ大キ
ナ變動ヲ起スト云フノガ常例デアリマス、
之ニ對シテハ是迄モ色々ナ方法ニ依ッテ、
農家ガ出廻ヲ自ラ調節ヲシテ、成ベク月別
平均的ニ市場ニ米ノ現ハレルヤウニシタイ
ト云フコトデ、政府ニ於テモ、亦地方ニ於
テモ努力致シテ參ッテ居ルノデアリマス、昨
年ハ臨時立法トシテ、朝鮮カラ内地ヘ參リ
マス米ヲ成ルベク月別平均的ナラシメル爲
ニ、朝鮮デ米ヲ買フト云フヤウナ方法モ設
ケタノデアリマス、是等在來行ハレマシタ
方法ノ趣旨ヲ一層徹底セシメテ、政府ニ於
テモ市場へ出廻ル米ヲー-各府縣カラ、朝
鮮臺灣邊リカラ出廻ル米ヲ季節的ニ調節
ヲシテ米穀ノ供給ヲ平準ナラシメヨウト
努ムルノデアリマス、此事柄ハ公定價格ノ
維持ト云フコトヽ併セテ行ハレテ、玆ニ米
ノ需給、米ノ價ト云フモノガ平準ヲ得テ
生產者カラ見テモ、消費者カラ見テモ、都
合ノ好イ關係ニ相成ルヤウニ致シタイト云
フ考デアリマス、ソレカラ季節的ノ調節ヲ
ヤルト、却テ米價ノ安定ヲ妨ゲルヤウニナ
ルノデハナイカ、米價ガ非常ニ高クナッテ、
最高價格ニ達スルヤウナ場合デモ、尙ホ買
入ヲ數量調節デヤル、又米價ガ下ッタ場合
デモ、尙ホ數量調節デ賣ルト云フコトヲヤ
ルト云フコトニナッテ、却テ安定ヲ妨ゲヤセ
ヌカ、是ハ極端ナ場合ノコトデアリマス、
大體ニ於キマシテハ季節的ノ出廻調節ニ
依フテ需給ノ平準ヲ圖ッテ隨テ又米價モ平
準ニナルト云フ作用ガ行ハレルノデアリマ
ス、極端ノ場合ニ、餘リニ高イ所ニ居ル、
モウ上値ニ近付イタト云フコトニナッタ所
デハ、買フコトヲ止メナケレバナリマセ
又、又下値ニ近付イタト云フ所デハ賣ルコ
トヲ止メナケレバナリマセヌ、ソレハ自ラ
一定ノ基準ガ立テ得ルコトヽ思フノデアリ
マ人
尙ホ最後ニ季節的調節ノ爲メノ買上ノ場
所ノ增設、條件等ニ付テドウ云フ考ガアル
カ、是ハ獨リ季節的調節ノ爲メノミデハア
リマセヌ、公定價格維持ノ爲メノ買上賣渡等
ノ爲ニモ、只今ノ米穀事務所ノ數デハ足リ
ナイ積リデアリマス、相當ノ數ハ增設ヲ致
ス積リデアリマス、買上其他ノ條件ノ事ニ
付テ御話ガアリマシタガ、大體相當ナ數ノ場
所ヲ設ケテ、其處デ買上賣渡等ヲヤルコト
ニ依ッテ、全體ノ米價ニ自ラ影響ガ生ズルノ
デアリマシテ、個々ノ農民、殊ニ御話ニナッ
タ貧農ト云フヤウナ人達ニモ、其影響ハ自
ラ至ルノデアリマシテ、個々ノ農家ニ就テ、
個々ノ買上ゲルト云フヤウナ譯ニハ無論參
リマセヌシ、實際ノ買上ノ場所及方法ハ自
ラ制限セラレル所ガアルコトハ是ハ實施
上已ムヲ得ナイノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X01419330216&spkNum=45
-
046・秋田清
○議長(秋田〓君) 由谷義治君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X01419330216&spkNum=46
-
047・由谷義治
○由公義治君 私ノ質問ヲ進メマス便宜
上、簡單デアリマスカラ一言ダケ此席カ
ラ農林大臣ニ質問スルコトヲ御許シヲ願ヒ
マス
〔「登壇々々」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X01419330216&spkNum=47
-
048・秋田清
○議長(秋田清君) 御登壇ヲ望ミマス
〔山谷義治君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X01419330216&spkNum=48
-
049・由谷義治
○由谷義治君 質問ヲ進メマス便宜上、農
林大臣ニ對シテ二ツノ點ニ付テ先ヅ御尋ヲ
シタイノデアリマス、第一ハ本法ニ謂フ
最高最低價格ノ値幅ハドノ程度ヲ豫想サレ
テ居リマスカ、恐ラク本法ノ施行ニ依ッテ、
施行細則ガ決定セラレルト考ヘマスガ、之
ニ對シマスル大體ノ見當ノ具體的發表ヲ御
願シタイノデアリマス、モウ一ツハ先刻
ドナタカノ質問ニアッタヤウデアリマスガ、
七億圓ニ增額サレマシタ後ノ米穀資金ノ內
譯デアリマス、缺損、固定シテ居ル資金、
將來發動シ得ル可能力ヲ持ツ資金、此內譯
ニ付テ一應御答辯ヲ御願シテ置キマス
〔國務大臣後藤文夫君壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X01419330216&spkNum=49
-
050・後藤文夫
○國務大臣(後藤文夫君) 最高最低價格ノ
値幅ハ何程ニナルカト云フコトハ具體的
ニハ申上ゲラレマセヌ、相當ナ幅ガ必要デ
アルト思ヒマス、併シ又無暗ニ廣イノデハ
イケナイト思ッテ居ルノデアリマス、米價ノ
全體ノアリカガ高イ場合ニハ値幅ハ自ラ
廣イダラウト思ヒマス、又米價ノアリカガ
低イ場合ニハ値幅ハズット低イデアラウト
思ヒマス、是ハ米穀統制法ニ定メテアリマ
スル公定價格ノ決定ヲ致スアノ方法ニ從ヒ
マシテ、相當ナ所ニ定メナケレバナラヌト
考ヘテ居リマス、ソレカラ需給特別會計法
ノ金額ノ御尋ハ、私能ク今伺ヒ兼ネタノデ
アリマスルガ、此米穀法ノ大體ノ施行ハ
施行ノ準備等ノ關係ガアリマシテ今年ノ
十一月カラト云フコトニ致シタイ積リデ居
リマス、其施行ヲ始メル時期ニ於ケル米穀
資金ノ餘力ハ約四億三千万圓ト云フ計算
ニ相成ルノデアリマス、何カ色々ナ細カイ
御尋ガアレバ、又他ノ機會ニ御答致スコト
ニ致シマス
〔中谷義治君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X01419330216&spkNum=50
-
051・由谷義治
○由谷義治君 私ハ此重大ナ米穀統制法案
ヲ中心ト致シマシテ、五ツノ點ニ付テ政府
ノ意見ヲ明確ニ聞イテ置ク必要ヲ痛感スル
ノデアリマス、第一ハ米穀統制ト云フ文
字ガ示シテ居リマス政府ノ謂フ所ノ、統制
觀念ノ內容實質ニ關スル本質的ナ質問デア
リマス、第二ハ將ニ可決サレントシテ居ル
所ノ本法ガ實施ニナッタ曉、果シテ所期ノ
目的ヲ達スルコトガ出來ルカト云フ、本法
ノ實行可能ニ關スル質問デアリマス、第三
ハ農村問題ヲ主トシテ、本法ノ實施ガ相
當程度マデ農村ヲ救フニ足ルカ否カノ質問
デアリマス、第四ハ、と屢〓問題ニナル所ノ
生產費ノ基準建前ニ關シテ、深刻ナ立場ニ
於ケル小農ノ利害ヲ代表スル意味ニ於テノ
質問デアリマス、更ニ第五ハ、肥料ノ問題ニ關
聯シテ質問ヲ申上ゲタイト考ヘテ居リマス、
後藤農林大臣ノ答辯ヲ最初カラ拜聽シテ居
リマスト、如何ニモ多クヲ語ラズシテ、問題ノ
核心ヲ外ノ方ニ逃ガシテ行キタイ風ナ、官僚
的答辯ガ多々アルコトヲ痛感シテ居リマス、
ドウゾ吾々ノ主張ニ對シマシテハ胸襟ヲ披
イテ、意見ノ扞格ハ仕方アリマセヌケレド
モ、少クトモ政府ノ所信ヲ大膽率直ニ御答
アランコトヲ豫メ註文シテ置キマス
第一ノ質問ハ政府ノ所謂締制ナル文字
ガ示ス所ノ內容ハドウカデアリマス、率直
ニ申シマスト今日ノ自由放任經濟ニ向ツ
テ政府ハ相當勇敢ナ戰ヲ宣セントスルモ
ノデアルカ、相當大膽ナ修正ヲ行ハントス
ルモノデアルカト云フ質問デアリマス、先
般此壇上デ政友會ノ領袖東君ガ、本法ノ提出
ヲ豫見スル意味ニ於テノ農村問題質質ガ
アリマシタガ、東君ニ依リマスルト、米價
公定制度ナルモノハ、我國經濟機構ノ大變
革ダト言ッテ居ラレマス、更ニ言葉ヲ繼イ
デ、自由經濟ノ組織カラ一躍シテ笠制經濟
ニ進ム劃期的立法ダトモ申サレテ居リマ
ス、世間ハ此米穀給制法案ニ對シテ樣々ナ議
論ヲシテ居ル、此米穀紛制ニ對シテ一番反
對ノ立場ニアル米穀取引所同盟聯合會ノ如
キハ愬ヘテ參リマシタ、元來國家ノ統制ニ依
ル米價公定ノ如キハ、其精神ニ於テ根本的
ニ現行商業機能ト背馳スルモノガアル、日
本商工會議所亦之ニ追隨シテ曰ク、政府ハ
我國農村窮乏ノ根本的ノ原因ト、我國國民
經濟機構ノ現狀ニ鑑ミ、廿種國家權力過信ニ
基ク米穀統制策ハ之ヲ排除シ須ラク現行米
穀法ノ適正ナル運用ニ俟ッテ云々ト申シテ居
リマス、更ニ又米穀取引所同盟聯合會ハ米穀
ノ調節ヲ主眼トスルモノナルヲ以テ、新法
律ニ絲制ナル名稱ヲ附スルノハ妥當ナラズ
トノ主張ヲシテ居リマスケレドモ、彼等統
制ヲ恐レルコト虎ノ如キモノガアリマス
ガ、此米穀給制法案ハ、ソレ程ノ强イ力ヲ
有ッテ居ルカドウカ、同時ニ東代議士ノ言フ、
强イ形容詞ニ依ッテ代表サレマス程ノ權威
アル內容ヲ有ツカドウカ、私ハ此問題ハ獨
リ農村問題ノミナラズ、獨リ米穀問題ノミ
ナラズ我ガ日本ノ全面的經濟機構ニ於
テ、極メテ重要ナル指導精神ヲ有ツモノデ
アルト考ヘマスル故ニ、農林大臣ニ向ッテ
極メテ大膽卒直ニ聞キタイノデアリマス(拍
手)吾々ハ斯ウ思フ、近來世ノ中ノ不景氣
ト、國民大衆ノ非常ナル貧乏窮迫カラ經濟
ヲ何トカセネバナラヌ、斯ウ言ッタ强イ叫ビ
聲ガ所謂統制經濟ノ具體的名前トナッテ天
下ニ喧傳サレテ居リマス、政黨モ主張ス
ル、學者モキ張スル、商賣人モ主張スル、
評論家モ無論主張スル統制經濟大流行デ
アリマスガ、凡ソ如何ナル主張デモ一ツノ
指導精神ガ大流行ヲ來ス時ハ一番危險デア
ル締制經濟ノ蔭ニ隱レテ「インチキ」統制
ヤ、胡麻化シ綺制ヤ、或ハ詐欺紛制マデモ
働カントスル徒輩ガ天下ニハナイデハナイ
ノデアリマス、此意味ニ於テ私ハ政府ノ言
フ統制觀念ヲ聞ク前提トシテ、吾々ノ考付イ
タ原理ヲ一應申上ゲテ置キタイ、吾々ノ議論
ハ一切ガ是カラ出發スルコトヲ能ク御了承
ヲ御願シテ置キタイ、資本主義經濟ノ行詰
リ、言換ヘマスレバ、資本主義經濟ノ精神デ
アル所ノ自由放任經濟ノ行詰リデアリマス、
サウシテ此行詰リヲ一番早ク敏感ニ知ッタ
ノハ、實ハ資本主義ノ殿堂ニ住ム人々デア
リマス、彼等ハ卽チ自由競爭ノ非ヲ悟フタ、
彼等ハ卽チ御互ニ放任經濟ニ陷ルノ非ヲ
悟ノタ、是ニ於テカ巨大資本ヲ擁スル者ガ經
濟活動ノ壟斷ヲ考ヘタ「カルテル」「トラス
ト」「コンバイン」「シンヂケート」、組合ニ
依ル力ノ結成ニ依ッテ、自由競爭ニ對スル制
裁掣肘ヲ考出シタ、卽チ今日ハ一方ニハ
自由主義ノ經濟ガアリ、一方ニハソレト對
立スル反對ノ立場ニ在ル所ノ資本家ニ依ル
統制經濟ガ、御互ニ交錯亂舞ヲシテ居ル時
代デアリマス、世間往々ニシテ此資本家ノ
統制其モノヲ以テ、所謂統制經濟ト考ヘル
弊風ガアル、思フニ今日ノ經濟問題ハ
方ニ於テハ此資本主義本來ノ自由主義ノ破
綻ヲ見、更ニ一方ニ於テハ巨大資本ノ「カ
ルテル」「トラスト」等ニ依ル獨占形態ノ擴
大强化カラ來ル所ノ、非常ナル民衆壓迫ノ
統制經濟ヲ見ル限リ、吾々ノ考方ハ更ニ之
ヲ飛躍シタ所ノ辨證法的ニ申シマスルナラ
バ資本主義ノ自由放任ト、資本主義的營
利絲制トヲ「ジンテーゼ」スル所ノ之ヲ綜合
シ之ヲ統一シ、之ヲ飛躍スル所ノ新シキ
統制經濟ガ生レナケレバナラヌ、吾々ノ謂
フ統制經濟ハ是レデアリマス、稱シテ營利
統制、之ニ反對スル所ノ公益統制デアリマ
ス國民統制ト申シテモ宜シイ、吾々ハ斯
ウ云フ考カラ綺制經濟原理ヲ常ニ國家ノ爲
ニ考ヘテ居ルノデアリマスガ、而モ此考方
ハ吾々ノ獨創デハアリマセヌ、是ハ歷史的
必然デモアリマスシ、歷史的可能デモアリ
マスシ、更ニ又政策的當爲トシテ、今後ノ日本
ノ政治問題ニ大キナ光明ト權威ヲ投ジ、來
ルベキ次ノ時代ヲ指示ス指導精神ノ中心ヲ
成スモノト考ヘルノデアリマス、斯ウ言ッ
タ考方カラ、國民同盟ガ經濟參謀本部ノ設
立ヲ主張シ、或ハ又ソレニ至ル實行手段ト
シテ法的統制ヲ考ヘツヽアルノモ、全ク此
所以ニ出發スルノデアリマスガ此建前カ
ラ吾々ハ米ノ問題ヲ考ヘテ見タイ、一方ニ
於テハ賣手デアリマス、一方ニ於テハ買手
デアリマス、利害ノ正面衝突ハ當然デア
ル、生產者トシテノ農民、消費者トシテノ
都市住民、此利害得失ノ相反シタモノヲ一
片ノ法律ニ依フテ片ヲ付ケヨウト思ヒマシ
テモ、餘程面倒ナ事件デアリマス、此米ノ
*問題ニ對シテ、所謂公益統制的ナ見地カ
ラ吾々ノ考ヲ申シマスナラバ、勿論共實
行ニ對シマシテハ、非常ニ强イ決心ト、非常
ニ大膽ナ努力ヲ要スルノデアリマスガ賣
手ニ向ッテモ損ヲサセナイ、買手ニ向ツテ
モ損ヲサセナイ、モット直接的ニ言ヒマス
レバ農民ニ對シテハ生產費ノ補助ヲス
ル、消費者ニ對シテハ相當程度ノ安イ物ヲ
消費サス、斯ウ言ッタ國家ノ費用ヲ此間ニ
勇敢ニ投下シテ、初メテ米ノ問題ノ解決ガ
付クデアラウト考へマスガ、現實ノ政治問
題トシテ、私ハソレヲ中スノデハナイ
唯斯ウ言ッタ考方カラ本法ノ統制觀念ヲ檢
討シマシテ、若シ本法ノ精神ガ吾々ノ謂フ
公益統制ノ精神ニ一步デモ前進スル場合ニ
於テハ吾々ハ贊成ヲスルノヲ吝マナイ、
唯本法ガ近來流行ノ統制經濟ニカブレテ、
政府ノ責任ヲ糊塗セントスルヤウナ〓
チキ」統制デアル場合ニ於テハヽ吾々ハ斷
ジテ敬意ヲ拂フコトハ出來ナイノデアリマ
ス、私ハ此意味ニ於テ本法ノ條文ヲ一讀致
シマシタガ、極メテ不可解ナル點ヲ二野發
見シテ居リマス、第一點ハ、先程御尋ヲシ
マシテ農林大臣ガラ明確ナ御答ガ出來ナイ
ト云フ答辯ヲ得タ最高最低價格ノ値幅ノ問
題デアリマス、世間デハ一石ニ付テ八圓乃
至九圓ノ開キガアルダラウト言ッテ居リマ
ス、若シ本法ノ値幅ノ想定ガ一石八圓、九
圓ヲ想像スルコトニナリマスナラバ、何ノ
公定ゾヤト言ハザルヲ得ヌ、苟モ公定デア
リマス、公定ハ一ツアッテ、二ツアルモノ
ヂヤナイ、現行ノ評判ノ惡イ率勢米價ト異
ナル所ガナイノデアリマス、斯ノ如キ不徹
底ナル公定價格ヲ公定ト云フナラバ是ハ
公定ノ美名ヲ借稱スルモノデアル、私ハ政
府ニ向ッテ强ク御考ヲ願ヒタイノデアリマ
ス、米價ノ統制ニ依ッテ、米價變動ノ値幅
ノ縮小ヲ恐ルヽ取引所、或ハ取引所ノ背景
ヲ成ス所ノ財閥ニ對シテ、政府ハ相當ニ遠
慮ヲシテ居ルノデハナイカ、相當ノ媚ヲ賣,
テ居ルデハナイカ政府ノ謂フ統制觀念ハ
今日ノ自由主義經濟ヲ何等手ヲ著ケルコト
ノ出來ナイ、唯世間胡麻化シノ絲制法デハ
ナイカト云フ點デアリマス、兩黨ヲ基礎ニ
スル所ノ所謂非常時內閣ノ諸君ガ、一取引
所ノ財閥ニ迎合スルモノトハ考ヘマセヌケ
レドモ、此議會ノ初メニ當田ツテ政府ハ新聞ヲ
通ジテ發表シテ居ッタ、此議會ニハ高利貸
征伐法案ヲ出スト言,テ居ッタ、ソレガ出マ
セヌ、此議會ノ會期ノ濟ムマデ出サウモア
リマセヌ、之ニ向ッテモ世間ハ評判ヲシテ居
ル、アレハ高利貸ノ大キナ背景ヲ成ス財閥
ノ腕ガ政府ニ伸ビタ結果ダト言ッテ居ル、果
シテ然ラバ、政府ハ斯ウ云フ問題ニ付テハ
自分ノ持ヲタ法案ヲ墮胎シタ嫌疑ト、前科ヲ
持ッテ居ル、隨テ吾々ハ政府ノ米穀統制法ニ
現ハルヽ所ノ米ノ値幅ノ問題ニ付テモ、强
イ疑ヲ當然起サネバナラヌノデアリマス、
國民生活ノ必需品タル、農村經濟ノ基本タ
ル米價ヲ投機思惑ノ具ニ供シ、不健全ナル
取引所ノ自由ニ依ッテ、不當ノ價格變動ヲ
招來シ、全日本ヲ不安ナラシメル狀態ニ對
シテ、吾々ハ眞劍ナル再吟味ヲ必要トシマ
ス、之ヲ此儘ニシテ置イテ何ノ結制經濟デ
アルカト言ハザルヲ得ヌ、而モ世間ノ事實
ヲ見ルナラバ、近年米價ノ値幅ハ自由放任、
市場ニ其儘ニシテ置イテモ段々縮小スル傾
向ヲ持ッテ居リマス、深川市場ノ中米標準相
場ノ一例ヲ取ッテ參リマシテモ、昭和六年米
穀年度ニ於テ、最高最低ノ値幅ハ四圓七十錢
デアリマスガ、昭和七年度米穀年度ニ於ケル、
最高最低ノ値幅ハ五圓九十錢デアリマス
然ルニ博奕打專門ノ〓算市場ニ於テハ、殆
ド此倍ノ値幅ヲ示シテ居ル、投機者流ノ買
占或ハ賣崩、#是等ニ依フテ價格ノ變動ヲ來シ、
サウシテ此變動カラ來ル所ノ投機利益ヲ獲
得ハ斷ジテ社會ノ幅社トハ一致シナイ、
吾々ハ之ニ向フテ斷々乎トシテ排擊スルコ
トガ、今日ノ時務ノ中ノ最大ナルモノデア
代
ルトサヘ考ヘラレルノデアリマス(拍手)ソ
コデ政府ニ問ウテ置キマスガ、本法ノ値幅
ヲ擴大スルコトハ依然タル自由主義經濟
ノ最モ惡イ所ヲ維持シヨウトスル觀念デア
ルカドウカ、更ニ進ンデ政府バ今日ノ米穀
ノ取引所ヲ廢止スル意思ハナイカドウカ、
此點デアリマス
更ニ吾々ハ政府ノ統制觀念ニ對シテ、法
制的ナ意味カラ申シマシテモ、一ツノ疑問
ヲ要求サレテ居ルノデアリマス、ソレハ米
穀法ノ條文ヲ通ジマシテ、罰則規定ニ於テ
極メテ缺クルモノアルヲ發見スルノデアリ
やく、何故カト申シマスナラバ、米ノ輸出
入ニ對シマシテハ政府ハ相當嚴重ナ罰則
ヲ以テ臨ンデ居リマス然ルニ內地米ノ政
府ノ公定相場ヲ紊ラントスル行爲ニ對シマ
シテハ、何等ノ罰則規定ガナイ、是ハ畢竟
今日ノ思惑商人、投機財閥、彼等ニ對シテ
儼然タル法的統制ヲ現ハシ得ナイモノデ
アッテ、吾々ハ政府ノ無誠意無責任ナル統制
觀念ノ暴露ヲ見ルコトヲ衷心カラ遺憾ト致
シマス(拍手)是等ノ點ニ依リマシテ、政府
ハ何ガ故ニ米價公定ノ觀念ニ於テ最高最低
ノ値幅、而モ先刻ノ農林大臣ノ言葉ヲ藉リ
テ申シマスナラバ成ベク廣イ意味ニ於テ
ノ値幅ヲ認容スルト云フコトヽ更ニ政府ノ
公定スベキ米價ヲ紊ル行爲ニ對シテ罰則規
定ヲ設ケナイト云フコトガ、果シテ統制觀
念トドウ云フ連絡ヲ時ツカ、之ニ對シマシ
テ明確ナ答辯ヲ顧ヒマス(拍手「譁聽ハ出來
ヌ」ト呼フ者アリ)謹聽出來ヌト云フコトハ
甚ダ遺憾デアリマス、一體旣成政黨ノ諸君
ハ自分達ダケ先ニ質問シテ置イテ、後カ
ラ唯一ノ野黨ノ質問ニ對シテ、左樣ナ熊度
ヲ持タレルコトハ甚ダ遺憾デアリマス拾
手
(「要點ヲ外レテ居ル」ト呼ヒ其他發言
ズル者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X01419330216&spkNum=51
-
052・秋田清
○議長(秋田濟君) 靜肅ニ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X01419330216&spkNum=52
-
053・由谷義治
○由谷義治君(續) 斷ジテ外レテ居リマセ
ヌー-第二ニ於テハ本法ノ實行力ガ果シ
テアルカナイカノ問題デアリマス米穀專
賣制度ヲ行ハザル限リ、資本主義經濟ノ下
ニ於テハ米ダケヲ獨立セシメテ、特別ノ
經濟狀態ニ置クコトハ不可能ナリトノ議論
ガアリマスガ、是ハ別問題ト致シマシテ、
唯政府ガ此米穀統制法案デ最高最低ノ價格
ヲ維持セントスルニ當ヲテ、政府ノ有スル四
億圓バカシノ融通資金ガ、果シテ完全ニ其
役目ヲ果スカ果サナイカノ質問デアリマ
ス、苟モ現行米穀法ニ代ッテ、此締制法案ヲ
實行セントスル以上ハ政府ニ於テ相當强
イ決心ノアルコトハ當然想像サレルノデ
アリマス併ナガラ是バカシノ資本デ、若
シ取引所或ハ財閥等ガ大キナ思惑ヲスル
時ニ、果シテ政府ハ之ニ向ッテ相場ノ上
ノ賣向ヒ、相場ノ上ノ買向ヒガ山來ル
カドウカ、言換ヘテ言ヘバ、政府ハ第一
段ニ中シマシタ、罰則規定ヲ全然持タズシ
テ、今持ツダケノ資金ニ依ッテ、果シテ政府
ノ考ヘル所期ノ目的ヲ達成スルノニ十分ナ
リト思フカドウカ、此點ニ關シマシテ明確
ナル答辯ヲ要求シテ置キマス(拍手)
更ニ第三ハ一番重要ナ、此法案ニ依ッテハハ
村ガ果シテ救ハレルカノ間顔デアリマス
之ニ對シマシテハ先刻村松君ノ質問モアッ
タヤウデアリマシタシ、其一部ニ四聯シテ
河野君ノ質問モアッタヤウデアリマシタガ、
私ハ一番大切ナ問題ト考ヘマスカラ、少シ
詳シク申上ゲタイノデアリマス、本法ノ實
施ニ依ッテ、農民ハ積極的ニ農村購買力ヲ增
進スルコトガ出來ルカノ問題、少クトモ消
極的ニ、今ノ窮迫貧乏ガ多少デモ緩和サレ
ルカノ問題デアリマス、私達農村非常時ヲ展
望スル時ニ、其今日ノ貧乏窮迫ノ大キナ原
因ハ言フマデモナク一ハ農產物ノ暴落デ
アリ、一ハ農村消費經濟ヲ脅ス所ノ商品ノ
騰貴デアリマス、而モ此問題ニ拍車ヲ掛ケ
タノガ、先刻村松君ノ御主張ニナリマシタ
鋏狀價格差ノ問題デアリマス、少クトモ政
府ガ特ニ非常時內閣ノ看板ノ下ニ於ケル
政府ガ、農村匡救ニ對シテ相當ニ眞劍ナ決
意ヲ持ッテ居ノタナラバ、此米穀統制法案ト
竝行的ニ、不可分ノ關係ニ於テ、重要農產
物ノ價格統制ヲ考ヘテ居ッタ筈デアリマス、
更ニ又農村ノ消費經濟ヲ脅ス所ノ、一般商
品ニ對スル價格ノ統制ヲ考ヘテ居フタ筈デ
アリマス、更ニ又「セーレ」ノ問題ノ解決方
法トシテ、農村ノ組合運動ニ對シテ、モット
眞劍ナ方法ヲ考ヘテ居フタ筈デアリマス、然
ルニ此法案ヲ單リ獨立シテ出シテ、他ノ不
可分ノ關係ニアル農村匡救ニ對スル一切ノ
法案ヲ忘レタコトニ對シマシテハ政府ノ
責任決シテ輕カラズト思フノデアリマス
(拍手)一方ニ於テハ、農林省ト商工省ガ、硫
安肥料ヲ問題ニシテ、喧嘩ヲスルト云フ醜態
ヲ暴露シテ居ル、是ハ先達ノ東君ノ演說デ
モ、ハッキリ指摘サレテ居ッタノデアリマスガ、
私共此機會ニ於テ農林大臣ヲ中心ニシテ、
政府ノ時局匡救策、特ニ農村匡救策ニ對ス
ル一ツノ疑問ヲ持ツノデアリマス、ソレハ
何カト申シマスレバ、政府ノ經濟運動トシ
テ世間ニ其存在ヲ認メラレテ居ルモノハ
唯僅ニ農村ノ自力更生運動デアリマス、自
力更生トハ何カ、大ニ働ケ、大ニ金ヲ貯メ
ロデアリマセウガ、吾々地方ニ參リマスト、
自力更生ノ相談ニ列席シタ縣廳ノ役人、農
會ノ幹部、町村ノ首腦者ガ歸ル時ニハ自
力更生ノ會計ニ於テ料理屋ニ上ルヤウナ醜
態ヲ屢〓見ルノデアリマスガ、此問題ヲ彼此
レ言フノデハナイ、政府ノ謂フ所ノ自力更
生運動ノ有ツ經濟的內容ハドウカノ問題デ
アリマス、結局一生懸命ニ働イテ品物ヲ造ラ
ウデアリマス、同時ニ自分ノ物ハ成ベク使フマ
イノ觀念、言換ヘルナラバ、自力更生的生產增
加ト、自力更生的消費節約デアリマス、今日ノ
不景氣ノ原因デアル生產ト消費トノ「アン·
バランス」ニ更ニ一段ノ拍車ヲ掛ケルモノ
ガ、政府ノ自力更生運動ノ經濟的解決デア
ルト言ハザルヲ得ヌ、コンナコトヲヤッテ
居ッタラ益〓不景氣ハ深刻ニナリマス日
本ノ農村ハ自力自救的自殺運動ニ陷ルコト
ガナイトハ言ヘナイ(「其通リ」ト呼フ者ア
リ)少クトモ自力更生運動ニ對スル政府ノ
經濟的觀念ガ何處ニアルカモ、此機會ニ伺ツ
テ置キマス
ソコデ問題ハ此法律ニ歸ルノデアリマス
ガ、今物價騰貴ノ必然性ニアルコトハ政
友會ノ諸君モ、民政黨ノ諸君モ御認メデア
ラウト考ヘル··
〔「モウ宜カラウ」「要點ヲ言ヘ」其他發
言スル者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X01419330216&spkNum=53
-
054・秋田清
○議長(秋田〓君) 靜肅ニ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X01419330216&spkNum=54
-
055・由谷義治
○由谷義治君(續) 此物價騰貴ノ途中ニ於
テ、所謂物價上〓期ニ於テ、米ノ相場ダケ
ヲ公定シテ釘付ケサスコトガ果シテ農民
ノ爲ニ得デアルカ、損デアルカ、物ノ高クナ
ル時ニハ「セーレ」ノ開キハアリマシテモ、
米モ次第ニ高クナッテ參リマス、此場合特ニ
米ダケニ米價ノ統制ヲ考ヘルコトガ、果シ
テ農村ノ得デアルカ損デアルカヾ、極メテ重
大ナル問題デアリマス現ニ農家ハ米ノ相
場ヲ公定シテ貰"テモ、肥料ガ高クナレバ困
ルト言ッテ居ル、斯ウ云ッタ物價上昂期ノ途
中ニ於テ、此米穀絲制法案ノ審議ヲスルコ
トハ御互ノ責任極メテ重大ナルコトヲ御
痛感ヲ願ヒタイノデアリマス、吾々ハ此意
味ニ於テ政府ニ伺ヒタイノデアリマスガ、
本法ノ第二條ニ於テ、政府ハ米價ノ公定ヲ
スルニ付テハ、從來ノ米ノ生產費ト家計費
ノバー新ニ物價其他ノ經濟事情ヲ參酌シ
テト云フ條項ヲ入レテ居リマス、更ニ又第
二條ノ第二項ニ於テ、一旦公定サレタル米
價ト雖モ、物價ノ變動著シキ場合ニ於テ
ハ之ヲ改定スル條文モ置イテ居リマス、
ソコデ政府ハ從來ノ生產費以外ニ、物價ノ
變動ガ米價ノ上ニ相當ナ働キ掛ケル分量ヲ
持ツト云フ建前ニ於テ、少クトモ-一般農
產物ノ統制策ヲ採ラナクテモ、或ハ農家ノ
消費經濟ノ代償ヲスル所ノ一般生產品ニ放
任政策ヲ採ルトシテモ、少クトモ物價ノ變
動ニ順應シテ直チニ、迅速ニ、機敏ニ米價
ヲ變更シ得ルヤウナ「スライデイング·スケ
ール」ト申シマスカ、米價變動ノ彈力性ニ對
シテ、相當思切ッタ覺悟ガアルカナイカ
私ハ之ヲ聞キタイノデアリマス、若シ本法
ガ從來ノ非難累積セル米穀法ト同ジヤウナ
建前ニ立ッテ、斯ウ云ッタ農民經濟ノ一番肝
腎ナ所ニ觸レヌナラバ、結局微溫不徹底ノ
立法精神ト言ハザルヲ得ナイ、農民ハ之ニ
依ッテ自分達ノ反抗ヲ抑ヘル爲ニ、政府ガ欺
瞞的ナ「カムフラージ」政策ヲ執ッタノダト申
シマシテモ、政府ハ斷ジテ辯解ノ辭ナシト思
フノデアリマス、私ハ繰返シマシテ第三ノ論
點トシテ、米穀統制法ガ果シテ農民ニ對シ
テ多少デモ具體的ナ利益ヲ齎スカドウカニ
付テ、米價ノ彈力性ニ關スル政府ノ意見ヲ
特ニ御聞キシテ置キタイノデアリマス
更ニ第四ハ生產費ノ問題デアリマス、併
シ此生產費ノ問題ハ、只今マデ政友民政兩
黨ノ諸君カラ御話ニナッタ事ニハ觸レテ居
リマセヌ、吾々ハ米價ノ生產費ニ對シテ二
ツノ大キナ疑問ヲ有ツノデアリマス第5
ハ、今日市場ニ取引ノ豫想サレル三千万石、
或ハ三千三百万石ノ米穀數量ノ中デ、其半
分ガ地主階級ノ賣却米デアルトスルナラバ
其半分ハ本當ニ農業ヲスル所ノ、本當ノ耕
作者ノ賣米デアルト考ヘナケレバナリマセ
又、此場合米價ノ最低價格ガ幾ラデアラ
ウトモ、直接生產費ノ負擔カラ遠ザカッテ
居ル地主階級ノ米ノ相場ヲ考ヘルコトハ、
第二義ノ問題デアリマシテ、自分デ直接
生產費用ニ投資ヲシテ、之ニ依ッテ自分ノ
飯米ト、同時市場ニ賣出ス餘剩米ヲ
得ル爲ニ、營々トシテ働ク所ノ農家ノ其
經濟ニ關シマシテ、政府ノ生產費ノ査定
ガ、ドノ程度ニ及ブカノ問題デアリマス、
モウ少シ別ノ言葉デ申シマスナラバ、例
バ十石ノ收穫ヲ得ル農家アリト致シマシテ、
五石ハ自家用米トシテ保存致シマス、殘リ
ノ五石ヲ市場ニ賣出シタ時ニ、其市場ニ出
ル米ノ生產費ノ査定ハ、農家ノ自家用米ト
シテ保存スル所ノ米ニ對スル生產費ハ、何
等觸レナイカノ問題デアリマス、モウ少シ
進ンデ申シマスナラバ、自家用米ノ生產費
ニ對シテ、販賣用ノ米ノ生產費ノ中カラ、
相當ナ負擔ヲ負ハシメルカ否カノ問題デア
リマス、此問題ハ恐ラク我國農村ノ一番大
切ナ小農ノ問題、殊ニ現金ノ支出ニ脅サ
レテ「セーレ」ノ壓迫ニ沈淪シテ居ル所ノ
我國小農ノ多數大衆ニ對シテ、極メテ重大
ナ生活ノ基礎ヲ決定スベキ問題デアルト考
ヘマス故ニ、私此觀念ニ於テ政府ノ所信ヲ
承リタイノデアリマス
更ニ又モウ一ツノ點ハ、生產費ノ利潤間
題デアリマスガ、是ハ河野君モ御話ニナリ
マシタシ、村松君モ御述ベニナリマシタガ、
吾々ハ政府ノ農業方針トシテ、農家ノ經濟
ヲ何處マデモ儲ケノ無イ建前ニ置クコトハ、
日本ノ農業ノ將來ニ對シテ、非常ナル危險
ヲ强化スルモノデアルコトヲ痛感スルノデ
アリマス、政府ハ最低價格ニ於テ缺損ヲシ
ナイト云フ建前ヲ採ル以上、通常ノ米價ハ
其上ヲ一圓、二圓、三圓上廻フテ居ル、ダカラ
是ガ卽チ農家經濟ノ利潤デアルト云フタ風
ノ說明ガアルカモ知レマセヌガ、此利益ノ
薄イ而モ堅實ナル農業經濟ノ利潤ヲ、極
メテ不安定ナル自由經濟ノ市場ニ放任スル
所ニ、政府ノ農業政策ノ一大缺陷アリト思
フノデアリマス、少クトモ政府ハ生產費ノ
査定ニ於テ、相當利潤ヲ其中ニ認メル意思
ニ關シテ、多少トモ誠意ガアルカナイカ、
河野君ニ對スル御答辯モアリマシタガ、繰
返シテ御尋ヲシタイノデアリマス、私共將
來我國ノ農業政策ガ或ハ繭ノ價
格ヲ公定シ或ハ麥ノ價格ヲ公定
スルヤウナ場合ヲ想定致シマシテモ、
農業經濟ノ基礎ノ利潤ヲ認メナイト云フコ
トハ、是ハ畢竟日本ノ農村非常時ヲ未來永劫
ニ繼續スルモノデアリマシテ、農村經濟ヲ
無間地獄ニ墮スヤウナ、甚ダ怪シカラヌ政
策デアルコトヲ常ニ痛感シテ居ルカラ、此
質問ヲ發スルノデアリマス、更ニ本日ハ商
工大臣ガ御見エニナリマセヌカラ、國務大
臣トシテノ農林大臣ニ御聽キシテ置キマス
ガ、先般來屢、と繰返サレタ肥料ノ問題デアリ
さく、特ニ最近農村經濟ヲ脅威シテ居ル所
ノ硫安肥料ノ問題ニ對シマシテ、最近ニ於
テ全國購買組合聯合會、所謂全購聯カラ陳
情ヲ持ッテ來テ居リマス、帝國農會ニ於テモ一
ツノ主張ヲシテ居ルノデアリマスガ、少
クトモ硫安ノ最高價格ヲ決定スルコト、或
ハ硫安組合會ヤ販賣會社ガ賣止メ、賣惜ミ
ヲ爲サヾルヤウニ、暴利取締令ノ適用ヲス
ルコト、斯ウ云ッタ直接農民ニ關係ヲ有ツ所
ノ團體ノ要求ニ對シマシテ、政府ハドノ程
度マデ考ヘテ居ルカドウカ、之ニ關シマシ
テ私繰返シテ答辯ヲ要求スルノデアリマ
ス、以上第一點カラ第五點ニ關シマシテ、
ドウゾハッキリシタ御答ヲ御願シタイノデ
アリマス、後藤農林大臣ハ從來名聲噴々タ
ルモノガアルノデアリマス私特ニ答辯ヲ
期待シテ此壇ヲ降ル者デアリマス(拍手)
〔國務大臣後藤文夫君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X01419330216&spkNum=55
-
056・後藤文夫
○國務大臣(後藤文夫君) 統制ト云フ言葉
ノ意義ニ付テ色々御話ガアリマシタ、米穀
統制法ノ定メテ居ル行キ方ハ是ハ一ツノ
統制デアルト考ヘテ居リマス、唯然ラバ
上値、下値ニ付テ法律的ニ制限ヲ設ケテ居
ラヌ、ソレデハ十分ニ行カナイデハナイカ
ソレデハ統制ラシクナイト云フヤウナ御意
味カトモ取レマスガ、法律ノ制限ヲ設ケル
コトハ考究サレタ問題デアリマスケレド
モ、實際ノ場合ヲ考ヘマスルト唯小サナ
反則ヲ追廻スコトニ止ッテ、矢張資力ヲ以テ
十分ニ應ズルコトガ出來ナケレバ其目的
ヲ達スルコトガ出來ナイノデアリマシテ、
資力ガ之ニ應ジ得レバ、十分ナ目的ヲ達ス
ルコトガ出來ルト思ッテ、法律ノ制限ヲ採
用シナカッタノデアリマス、ソレカラ値幅ノ
コトニ付テ御話ガアリマシタガ、段々御話
ノオシマヒノ方ニモ御心配ニナリマシタヤ
ウニ、値幅ヲ非常ニ狹クシマスレバ農家
ノ爲ニ如何ニナルカト云フヤウナコトモ餘
程懸念デアリマス、今日ノ場合唯一本ノ値
段デ行クト云フヤウナ公定デアリマスレバ
色々御議論ノヤウナ說モ起ルト思ヒマスル
ガ、最高ト最低ヲ定メテ、其間ニ米價ヲ追
込マウトスル考デ參リマスル時ニハ今囘
ノ法案ガ大體其目的ヲ達シヨウトシテ居ル
モノデアルト考ヘテ居ルノデアリマス、ソ
レカラ農村ヲ救フコトガ此法案デ出來ルカ
ドウカ是ハ私ハ相當出來ルモノデアルト
考ヘマス、ソレカラ此公定ノ制度デハ米價
ノ彈力性ガドウデアルカ、此彈力性ト云フ
コトガ、先程御說明申上ゲタヤウニ、値幅
ヲ無暗ニ狹クスル譯ニ行カナイ、又無暗ニ
廣クシテハ公定ノ意味ヲ成シマセヌノデ、
相當ナ所ニ公定ヲシナケレバナラヌト申シ
タ所以デアリマス
ソレカラ生產費ニ關聯シテ利潤ノコトノ
御話ガアリマシタガ、是ハ先程モ申上ゲマ
シタヤウナ譯デ、生產費ト云フ觀念ヲ立テ
花月さん利潤ト云フモノヲ考ヘルコトガ
非常ニムヅカシイト申シタノデアリマス、
肥料ノコトニ付テモ色々御尋ガアリマシタ
ケレドモ、是ハ先程河野君ノ御質問ニ對シ
テ可ナリ詳シク申上ゲタ積リデアリマスカ
ラ、御了承ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X01419330216&spkNum=56
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057・由谷義治
○由谷義治君 簡單デスカラ此席カラ·····発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X01419330216&spkNum=57
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058・秋田清
○議長(秋田濟君) 許可致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X01419330216&spkNum=58
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059・由谷義治
○由谷義治君 只今ノ農林大臣ノ答辯ハ
悉ク私ノ質問ニ對シテ的ガ外レテ居リマ
ス、失禮デゴザイマスガ、何レ適當ナ機會
ニ、モット徹底シタ質問ヲ繰返サウト考ヘマ
スカラ、ソレマデニ只今ノ私ノ質問ノ速記
錄ヲ能ク御精讀ヲ御願シテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X01419330216&spkNum=59
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060・秋田清
○議長(秋田〓君) 杉山元治郞君
〔杉山元治郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X01419330216&spkNum=60
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061・杉山元治郎
○杉山元治郞君 私ハ政府ガ提案致シマシ
タ本法案ニ對シマシテ極ク簡單ニ質間ヲ
致シテ見タイト思ヒマスモウ大分多クノ
方ガ色々質問致シマシタカラ、私ハ出來ル
ダケ重複ヲ避ケテ、質問ヲ試ミタイト思フ
ノデアリマス、米價ヲ適當ニ維持シ、之ヲ
統制スルノ必要アリマスコトハ生產者カ
ラ見マシテモ亦消費者カラ見マシテモ
必要ナコトハ申ス迄モナイコトデアリマス、
所ガ從來ノ米穀法ガ、之ニ對シテ十分ノ
力ヲ發揮シナイ、斯ウ云フコトカラ致シマ
シテ、色々改正モゴザイマシタガ、遂ニ先
般ノ臨時議會ニ於テ、米穀需給調節特別會
計法中改正法律案ノ中ニ附帶決議トナッテ
詰リ其附帶決議ノ第二項ニ「政府ハ現行米
穀法ニ不備缺陷アルヲ認メ速ニ根本方策ヲ
立ツル必要アルコトヲ聲明セラレタリ政
府ハ速ニ現下ノ國情ニ鑑ミ米穀ニ關スル根
本方策ヲ樹立シ之ヲ次ノ通常議會ニ提案ス
ヘシ」恐ラク此約束ニ從ッテ政府ハ此法律案
ヲ御出シニナッタコトヽ思ヒマスガ、此法律
案ヲ出シマスル前ニ、ドナタカモ仰シヤッタ
ヤウニ、政府ハ米穀調査委員會ニ三ツノ案
ヲ示シテ居ル、卽チ米穀專賣法案、米價公
定案、米穀管理案、斯ウ云フ三ツノ案ヲ示
シテ、サウシテ調査ヲ願ッテ居ッタト云フコ
トデアリマスガ、色々其道ノ權威デアリマス
ル所ノ人達ガ答申致シマシタ結果ガ、此法
案デアルト云フコトヲ、今後農林大臣カラ
同ッタノデアリマスガ、米穀對シマスル所
ノ根本方策ト云フモノハ、私ハ寧ロ米專賣
デナカッタカト思フノデアリマス、然ルニ拘
ラズ此統制案ト云フモノガ、最モ良イモノ
ダト御說明ガアリマシタガ、私ハ此三ツノ
御示シニナッタ中デ、ドウ云フ意味カラ致シ
マシテ、ドウ云フ特長利益ガアルガ故ニ、
此統制案ニナッタカ、此點ヲ私共ハッキリ聽
カシテ戴キタイト思フノデアリマス
第二ニ今最低價格、最高價格ノ値幅ノ御
話ガゴザイマシタガ、最低最高ト云フモノ
ヲ決メテ居リマスル以上、ソコニ一ツノ基
準價格ト云フモノガナケレバナラヌト思フ
ノデアリマス、基準價格ノ決定ヲ致シマスル
内容トシテ、生產費、家計費、物價其他ノ經濟
事情ト云フコトヲ書イテ居リマスルガ、先ヅ
第一ニ伺ッテ見タイト思ヒマスルコトハ此
基準價格ニ對シマスル所ノ値幅ニ付テ、出
來ルダケ廣クト云フヤウナ御話デアリマシ
タガ、此前ノ米穀法デハ約一割ト云フヤウ
ナ御決メデアッタヤウニ考ヘルノデアリマ
スガ、サウ云フヤウナ、ハッキリトシタ所ノ
決メ方ヲ持ッテ居ルノカドウカ、ソレカラ其
基準價格ヲ決メマスル內容ハ、是ハ申ス迄
モナイコトデアリマシテ、一般經濟ノ事情
ト特ニ米ガ過不足ノ問題デアリ、定期
市場思惑ノ問題、斯ウ云フモノハ米價ノ
變動ヲ司ル所ノモノデアリマスガ、私ハ
次ニ伺ッテ見タイト思フコトハ、此米價ノ
變動致シマスル所ノ、今申上ゲタ三ツノ
內容カラ考ヘテ見マス時ニ、農林大臣ノ
仰セニナリマシタ四億圓ソコ〓〓ノ金デ、
果シテ旨ク統制ガ付クカドウカ、譬ヘテ申
シマスト云フト、昭和五年度ノヤウニ、アヽ
云フ豐年饑饉ト云フヤウナ場合ガ參リマス
ト云フト、僅カノ金デハ之ヲ維持スルコト
ハ困難デアル、ソレニ世界經濟ノ行詰リト
云フヤウナモノガヤッテ來ル、或ハソコニ思
惑師ガ付ケ込ンデ來ル、斯ウ云フヤウニ二ツ
ニツノ原因カ重ヲテ參リマスト云フト、サウ
シタ場合ニ、今御話ノヤウナ金額デハ旨ク
行クデアラウカドウカ、ソレカラ基準價格
ノ問題デアリマスガ、-今生產費ノ問題
モゴザイマシタガ、生產費ノ問題ニ付テハ、
從來ノ農林省ノヤッテ居ル遺方デ、大體適當
ト認メルト云フ御話ガアッタガ、此基準ノ價
格ニナル所ノ生產費ガグラ付キマスルコト
ハ米ヲ賣リマスル者、買ヒマスル者ニ取。ツ
テ、大分影響ガ大キイト思フノデフリマス
ガ、從來ノ生產費ノ調べ方-其內容トシ
テハ材料費、勞力費、原價償却費、地代、
斯ウ云フ四ツノ條項ヲ大體內容ト致シマシ
テ、生產費ヲ拵ヘテ居ルヤウデアリマスガ、
實ハ其内容ノ中デ最モ困難ナモノハ、後藤
農林大臣モ御承知ノヤウニ、肥料ノ中デモ、
自家肥料ヲドウ云フヤウニ評價スルカ、家
族ノ勞働賃銀ヲドウ云フヤウニ評價スル
カ、土地資本利子ノ評價ヲドウ云フ標準デ
ヤルノカ、斯ウ云フ三ツノ點ハ非常ニ困難
ナ問題デアリマシテ、此困難ナ點ヲ權威ア
ル所ノ人達ガ適當ニ決メテ居ルト云フノデ
アリマスルガ、一體自家肥料ノ評價、家族
勞働賃銀ノ評價、土地資本ノ評價ト云フモ
ノニ付テ、ドウ云フヤウナ標準ヲ以テ農林
省ハオ遣リニナッテ居ルノデアルカ、譬ヘテ
申シマスト云フト、自給肥料ノ評價ニ付テハ、
大工原銀太郞博士ノヤウナ專門家ガ立テ
居ル方法ヲ採ノテ居ルノカドウカ、地代論ノ
如キハ中スマデモナイヤウニ、隨分ト面倒
ナ意見デアルヤウデアリマスガ、ソレヲ唯
小作料ト云フヤウナ、單純ナ目安カラシテ
決メテ居ルノカドウカ、此決メ方如何ニ依フ
テ大分基準價格ニ相違ガ出テ來マスノデ、
私共ハ篤ト此點ヲ伺ッテ置カナケレバ、先刻
ノ御話ノヤウニ、是ガ本當ニ農村ノ救濟ニ
ナルカドウカト云フ問題ニ、影響シテ來ル
ト思フノデアリマス、ソレカラ政府ハ、第
四條ニ於キマシテ、道府縣カラ他ニ移出ス
ル場合、或ハ朝鮮、臺灣カラ內地ニ移出ス
ル場合、月別デ平均ニスルト云フコトデア
リマスガ、單ナル是ハ縣ダケノ移出入ヲ統
制スルト云フコトダケデ、果シテ本當ニ米
ノ統制ガ出來ルカドウカ、寧ロモット區域
ヲ大キクシテ、丁度米專賣私案ニ、胎中サ
ンガ御話ニナッテ居ルヤウニ、日本全國ヲ九
ツナリ、十ノ區分ノヤウニ區分致シマシテ、
其中ニアル所ノ米ノ過不足ヲ旨ク統制スル
ト云フヤウナ方法デナクシテハ、締制ハ出
來ナイデハナイカ、又月々ニ賣ルト云フコ
トデアッタナラバ、先ノ由谷サンノ御話ニア
リマシタガ、本當ノ勤勞農民ハ十二月、
一月、二月、斯ウ云フ三箇月間ニ大部分
ノ米ヲ賣ルノデアリマスカラ、北恩典ニ
浴シ、又ソレニ依ッテ本當ノ統制ノ恩惠
ヲ受ケルコトハ出來ルカドウカ、私ハ斯
ウ云フヤウナ點ニ付テ御伺致シクイ、マ
ダ色々アルノデアリマスケレドモ、重複
スル點モアリマスカラ、是デ私ノ質問ヲ終フ
テ置キタイト思ヒマス
〔國務大臣後藤文夫君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X01419330216&spkNum=61
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062・後藤文夫
○國務大臣 後藤文夫君)專賣案、管理案、
其他幾多ノ案ガ當局ニ於テモ、調査會ニ於
テモ〓究サレタノデアリマス、調査會ノ結
論トシテ答申ニナリマシタ、政府ノ立案ノ
基礎ニナリマシタ現在ノ米穀結制案ハ、現
在ノ事情及將來ノ事情ノ下ニ實行ヲスルコ
トノ出來ル最モ有力ナ案デアルト考ヘラレ
タ譯デアリマス、サウ云フ趣旨デ此案ヲ提
案スルコトニナリマシタ、生產費ノ調査內
容ニ付キマシテ、色々御話ガゴザイマシタ、
生產費ハ只今ノ調査ノ通リデ宜シイトハ私
ハ申シテ居リマセヌ、生產費ノ調査內容ニ
付テハ、更ニ十分ナ攻究ヲ遂ゲテ、改善ヲス
ベキ點ガアレバ改善ヲ致シタイ積リデ居リ
や 、唯、今御擧ゲニナッタ個々ノ項目ニ
付テノ御意見ニ付テハ、今直チニ何トモ申
シ兼ネマス、御贊成シ兼ネル點モアルシ、
又考慮スベキ點モアルヤウニ思ヒマス、ソ
レカラ最後ノ月別平均的ナラシムルヤウ
ニ、數量ヲ調節シテ行クト云フコトハ、唯
道府縣ト云フヤウナコトデハイカヌ、モット
大キィ區域デヤッタ方ガ宜イデハナイカ、ソ
レモ一ツノ御意見デアルヤウニ思ヒマス、
併ナガラ今吾々ガ行ハウトシテ居ル季節的
出廻ノ調節ヲ致スノニハ、各道府縣及朝鮮、
臺灣等ノ、管外移出ノ數量ト云フモノハ、過
去ノ經驗等カラ割出シマシテ、凡ソ月別平
均的ニ市場ニ米ガ參リマスヤウニ按排ヲシ
テ、一ツノ標準ニ依ッテ米ノ買入ヲヤリ、又
賣下ヲシテ行クト云フコトデ、相當ナ目的
ガ達セラレルノデ、ソレヲ以テ先ヅ滿足シ
テ宜カラウト考ヘテ居ルノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X01419330216&spkNum=62
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063・杉山元治郎
○杉山元治郞君 簡單デスカラ一寸此處カ
?発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X01419330216&spkNum=63
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064・秋田清
○議長(秋田濟君) 杉山元治郞君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X01419330216&spkNum=64
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065・杉山元治郎
○杉山元治郞君 今農林大臣ノ御話デハ、
專賣案ナリ、公定案ヨリモ、本案ハ現在及
將來ニ宜イト思フカラシタノダ、私ハ其宜
イト云フノハドウ云フ所ガ宜イノカト云フ
コトヲ、一應聽カシテ戴キタイト云フコトヲ
御願シタノデス
〔國務大臣後藤文夫君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X01419330216&spkNum=65
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066・後藤文夫
○國務大臣(後薩文夫君) 色々ナ案ニ付テ
ノ可否ヲ、理想的ニ、又ハ理論的ニ彼此レ
ト私ハ申上ゲタノデハアリマセヌ、實行シ
得ベキ案トシテ、只今提案致シマシタモノ
ガ最モ有力ナル案デアルト、斯ウ考ヘテ出
シタノデアルト申シタノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X01419330216&spkNum=66
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067・秋田清
○議長(秋円〓君) 質疑ハ終局致シマシタ
日程第十、右各案ノ審査ヲ付託スヘキ
委員ノ選擧ヲ議題ト致シマス
第十右各案ノ審査ヲ付託スヘキ委員
ノ選擧発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X01419330216&spkNum=67
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068・上田孝吉
○上田孝吉君 兩案ヲ一括シテ議長指名二
十七名ノ委員ニ付託セラレンコトヲ望ミマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X01419330216&spkNum=68
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069・秋田清
○議長(秋田濟君) 上田君ノ動議ニ御異議
アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X01419330216&spkNum=69
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070・秋田清
○議長(秋田〓君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ動議ノ如ク決シマシター·日程第
十一、外國爲替管理法案ノ第一讀會ヲ開キ
マス-大藏大臣高橋是〓君
第十一外國爲替管理法案(政府提出)
第一讀會
外國爲林管理法案
外國爲替管理法
第一條政府ハ命令ノ定ムル所ニ依リ左
ニ揭グル取引又ハ行爲ヲ禁止又ハ制限
スルコトヲ得
外國通貨又ハ外國爲替ノ取得又ハ
處分
二通貨、金地金、金ノ合金若ハ金ヲ
主タル材料トスル物ノ輸出又ハ金貨
幣ノ鑄潰又ハ毀傷
三外國ニ對スル送金ニシテ前二號ニ
包含スル方法ニ依ラザルモノ
四外國ニ於テ爲シタル委託ニ基キ本
邦內ニ於テ爲ス支拂
五外國爲替相場ノ取極
六外國通貨ヲ以テ表示スル證劵、債
權又ハ債務ノ取得又ハ處分
七信用狀ノ發行又ハ取得
八外國居住者ニ信用ヲ與フル行爲
九證劵ノ輸出又ハ輸入
十價額ノ全部又ハ一部ニ付外國爲替
ヲ取組マザル貨物ノ輸出
第二條政府ハ命令ノ定ムル所ニ依リ前
條ノ禁止又ハ制限ニ關係アル事項ニ付
報〓ヲ徵シ又ハ帳簿其ノ他ノ檢査ヲ行
フコトヲ得
第三條政府ハ命令ノ定ムル所ニ依リ外
國爲替ニ關スル取引ヲ日本銀行其ノ他
政府ノ指定スル者ヲ相手方トスル場合
ニ限定スルコトヲ得
第四條政府ハ命令ノ定ムル所ニ依リ金
地金、外國通貨、外國爲替又ハ外國通
貨ヲ以テ表示スル證劵若ハ倩權ヲ有ス
ル者ニ對シ自ラ之ヲ處分スベキコト又
ハ日本銀行其ノ他政府ノ指定スル者ニ
賣却スベキコトヲ命ズルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ政府ノ指定スル者ニ
賣却スベキコトヲ命ジタル場合ノ賣却
價額ハ外貨評價委員會ノ定ムル所ニ依
ル
外貨評價委員會ノ組織及權限ハ勅令ヲ
以テ之ヲ定ム
第五條第一條又ハ第三條ノ規定ニ基キ
テ發スル命令ヲ以テ規定スル取引又ハ行
爲ノ禁止又ハ制限ニ違反シタル者ハ三
年以下ノ懲役若ハ禁錮又ハ一萬圓以下
ノ罰金ニ處ス但シ當該取引又ハ行爲ノ
目的物ノ價額ノ三倍ガ一萬圓ヲ超ユル
トキハ罰金ハ當該價額ノ三倍以下ト
ス
前條ノ規定ニ基キテ發スル命令ニ依ル
金地金其ノ他ヲ處分シ又ハ賣却スベキ旨
ノ政府ノ命ニ從ハザル者ハ一年以下ノ
禁錮又ハ當該金地金其ノ他ノ價額ノ二
倍以下ノ罰金ニ處ス
第二條ノ規定ニ基キテ發スル命令ニ違
反シ報告ヲ爲サズ、虛僞ノ報告ヲ爲シ、
帳簿其ノ他ノ檢査ヲ拒ミ又ハ帳簿書
類ノ隱蔽不實ノ申立其ノ他ノ方法ニ依
リ檢査ヲ妨ゲタル者ハ六月以下ノ禁錮
又ハ五千圓以下ノ罰金ニ處ス本法ニ基
キテ發スル命令ニ依リ政府ニ提出スル
許可ノ申請書其ノ他ノ書類ニ虚僞ノ記
載ヲ爲シタル者亦同ジ
第六條法人ノ代表者又ハ法人若ハ人ノ
代理人、使用人其ノ他ノ從業者ガ共ノ
法人又ハ人ノ業務ニ關シテ前條ノ違反
行爲ヲ爲シタルトキハ行爲者ヲ罰スル
ノ外其ノ法人又ハ人ニ對シ亦前條ノ罰
金刑ヲ科ス
第七條本法ノ罰則ハ本法施行地ニ本店
又ハ主タル事務所ヲ有スル法人ノ代表
者代理人、使用人其ノ他ノ從業者ガ
本法施行地外ニ於テ爲シタル行爲ニモ
之ヲ適用ス本邦施行地ニ住所ヲ有スル
人又ハ其ノ代理人、使用人其ノ他ノ從
業者ガ本法施行地外ニ於テ爲シタル行
爲ニ付亦同ジ
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
資本逃避防止法ハ之ヲ廢止ス
本法施行前舊法ノ罰則ヲ適用スベカリシ
行爲ニ付テハ仍舊法ニ依ル
〔國務大臣高橋是〓五登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X01419330216&spkNum=70
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071・高橋是清
○國務大臣(高橋是清君) 只今議題トナリ
マシタ外國爲替管理法案ニ付キ提案ノ理由
ヲ說明致シマス、本邦ノ對外爲替相場ハ
一昨年末金輪出ノ再禁止以來漸次低落シテ、
昨年十一月以來遂ニ對米二十弗マデニ至リ
マシタ、爲替相場ノ斯ノ如キ低落ハ、我ガ
國際貸借ノ現狀ニ照シテ、其實勢ニ副ハザ
ルモノト言ハネバナリマセヌ、是ハ主トシ
テ現下ノ國際關係ノ不安ト、通貨增發ノ懸
念等ヲ多分ニ織込ミタル一種ノ人氣相場デ
アリマシテ、若シ何等ノ對策モ講ゼズ、之
ヲ各人ノ自由ニ放任シテ置キマシタナラバ、
資本ノ外國逃避ト、圓ニ對スル內外ノ思惑
トニ依リ、爲替相場ノ低落動搖ハ、今日ヨ
リ遙ニ甚シカッタノデハナイカト考ヘルノ
デアリマス、幸ニシテ曩ニ第六十二議會ノ
御協賛ヲ經テ、昨年七月ヨリ施行致シタル資
本逃避防止法ガ、能ク其效果ヲ奏シ、資本ノ
國外逃避ヨリ生ズベキ惡影響ヲ、今日ノ程
度ニ阻止シ得タコトハ、邦家ノ爲メ慶ブベキ
コトヽ信ジテ居ル次第デアリマス、併ナガラ
資本逃避防止法ハ、資本ノ外國逃避、殊ニ本
邦外貨債買付ノ形ニ於ケル、資本ノ流出ヲ防
止スルコトヲ主眼トシテ、外國貿易共他正常
ノ取引ニハ、成ベク障碍又ハ煩累ヲナカラ
シメンコトヲ旨ト致シマシタノデアリマス
ルカラ、爲替ノ思惑取引ヲ排除シ、或ハ資
本ノ逃避防止ノ徹底ヲ期スル上ニハ、尙ホ
遺憾トスル點ガ少クナイノデアリマス、加
之國際經濟關係ノ現狀ヲ見マスルニ、大多
數ノ國家ハ爲替管理、又ハ貿易管理ヲ行ヒ、
或ハ關稅ヲ高クナラシムル爲ニ種々ノ手段
ヲ講ジテ、自國產業經濟ノ保護ヲ圖ルニ
汲々トシテ居リマシテ、今後ノ成行ハ容易
ニ豫測シ得ザルモノガアリマス、我國ニ於
キマシテモ、將來世界經濟ノ動キニ應ジ、
相當ノ對策ヲ講ズルノ必要ガ生ズルコトモ
豫期シナケレバナリマセヌ、以上ノ理由ニ
依リマシテ、政府ハ內外情動ノ推移ニ應ジ
命令ヲ以テ外國爲替取引ノ全般ニ亙リ、適
當ナル取締ヲ爲シ得ベキ權限ヲ得テ置クノ
必要ガアリマスノデ、玆ニ本法案ヲ提出シ
タ次第デアリマス、尙ホ金ノ輸出ニ付テハ、
從來大藏省々令其他ノ命令ヲ以テ取締ッテ
居リマシタガ、其罰則ノ輕キニ失シ、取締
上遺憾トスル所ガアリマスノデ、更メテ本
法中ニ之ヲ規定シ、以テ違反ニ對シ嚴罰ヲ
以テ臨ミ得ルノ途ヲ開クコトニ致シマシ
タ、何卒御協贊ヲ與ヘラレンコトヲ希望致
シマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X01419330216&spkNum=71
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072・秋田清
○議長(秋田濟君) 是ヨリ通〓順ニ依リ質
疑ヲ許シマス-武田德三郞君
〔武田德三郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X01419330216&spkNum=72
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073・武田徳三郎
○武田德三郞君 諸君、爲替ノ變動ガ我ガ
經濟ニ重大ノ影響ノアルコトハ申ス迄モア
リマセヌ、今外國爲替管理法案提案ノ理由
ヲ大藏大臣ヨリ承リマシタ、先ヅ大藏大臣
ガ我國ノ爲替政策ニ對シテ、如何ナル根本
上ノ御所見ヲ御持チニナルカト云フコトノ
二三ヲ簡單ニ御伺ヲ致シマシテ、其內容ニ
互ッタ詳細ナルコトハ委員會ニ於テ伺フコ
トニ致シタイト存ジマス
私ガ申上ゲル迄モナク、金ノ輸出ヲ禁止
致シタト云フコトハ、金貨本位ノ自働的調
整ヲ抛ッタト云フコトデアリマス、ソレ故ニ
金ヲ再禁止致シマシタ場合ニ於テハ、爲替
ガ下落スルト云フコトハ當然ノ事デアルノ
デアリマス、故ニ本來カラ中シマスルナラ
バ、金ノ再禁止ノ法律ヲ出スト同時ニ、必
ズ爲材管理ノ法案ガ之ニ伴フノガ相當デア
ルト私ハ思フノデアリマス(拍手)併シ我ガ
高橋大藏大臣ハ爲替ニ對シテハ放任主義
ヲ執ルト云フヤウニ承フテ居ルノデアリマ
スルガ、是ハ敢テ更メテ左樣ナコトヲ玆ニ
御聲明ニナッタ譯デハアリマセヌケレドモ、
先日ノ本會議ニ於ケル大口君ノ質問ニ對ス
ル御答辯ヲ承リ、又川崎君ノ質問ニ對スル
御答辯ヲ承ッテモ、左樣ナ御考デアルヤニ
私ハ思フノデアリマス、是ニ於テ私ハ一ツ
承ッテ見タイノデアリマス
第一ニ承ッテ見タイコトハ、大藏大臣ハ此
爲替管理法案ヲ實施スル上ニ於テ、如何ナ
ル效果ヲ御期待ニナッテ居ルカト云フコト
ヲ承リタイノデアリマス、之ヲ別ノ言葉ヲ
以テ申シマスルナラバ、爲替ノ安定ヲ此法
案ニ依ッテ御期待ニハナラヌノデアラウカ
ト、斯樣ナコトヲ承ルノデアリマス、大藏
大臣ハ屢〓爲替ト云フモノハ安定スルコト
ハ出來ナイモノデアル、一國ノ貨幣ト他ノ
貨幣トノ比較デアルガ故ニ、一國ノ貨幣ノ
價値ヲ安定セシメテモ、相手方ノ國ノ貨幣
ガ動ク場合ニ於テハ安定ハ困難デアル、况
ヤ今日ハ世界ノ大部分ノ國ガ、金ノ輸出ヲ
禁止シテ居ルノデアルガ、日本ノ貨幣ノ價
値ヲ何レノ國ヲ相手トシテ安定スルカ、恰
モ暖簾ト腕押ヲスルガ如キモノデアル、
斯樣ニ仰セラレテ、サウシテ只今ノ提
案ノ理由ノ中ニ於キマシテモ、本案ハ思
惑ニ因ル所ノ騰貴竝ニ思惑ニ因ル所ノ資
本ノ逃避ト云フコトヲ防グ爲デアル、前ノ
資本逃避防止法デハ未ダ徹底セザル所ガア
ル、故ニ更ニ擴大强化シテ此二ツヲ防グノ
デアル、斯樣ニ仰セラレタノデアリマス、
サウシマスト爲替ヲ或點ニ於テ安定スルコ
トハ本案ノ目的デナク、タ斯樣ナルコトハ
出來得ベキコトデナイト云フヤウナ、御意
見ノヤウニ承ッテ居ルノデアリマス、私ハ此
點ニ向ッテ實ハ反對ノ考ヲ有ッテ居ルノデア
リマスガ故ニ承ルノデアリマスガ、成程金
ノ輸出ヲ再禁止シタ當時ニ於キマシテハ
或ハ二十五弗トカ、或ハ三十弗トカ云フコ
トヲ標準ニ置キマシテ、安定セシムルト云
フコトハ困難デモアリ、又無理デモアッタデ
アリマセウ、併シ其後段々ト下落ニ次グニ
下落ヲ以テ致シマシテ、今日ノ二十弗ノ關
門ヲ保ツカ保タナイカト云フ時ニ於テ、尙
ホ思惑ダケヲ取締リ、アトハ實勢ノ赴ク所
ニ其儘委シテ置クト云フコトハ、私ハ今日
我國ノ爲替ノ將來ヲ考へマスルナラバ、色
色ナル方面ニ於テ將來下落スルノ趨勢コソ
多カレ、是ガ逆ニ騰貴スルト云フ趨勢ハ
近キ將來ニ於テハ見ルコトハ出來ナイノデ
アリマス、故ニ政府ガ或ル安定ノ目標ヲ定
メルコトヲセヌト云フコトガ明ニナリマス
ナラバ、將來爲替ハ段々下落スルト云フ趨勢
ヲ何人モ認メマスガ故ニ、是ガ卽チ見込ノ
爲ニ輸入ガ超過スルト云フコトニナッテ、
ソレガ又爲替ヲ下落セシムル原因ニ相成ル
ノデアリマス、昨年ノ春ニ於テ輸入ガ案外
超過シタト云フコトハ、爲替ガ將來下ルデ
アラウカラ、早ク輸入爲替ヲ釘付ニジヨウ
トシタコトガ、其重大ナル原因デアッタコ
トハ、敢テ私ノ申ス必要ノナイ事柄デアリ
マス、今日尙ホ爲替ガ或ル程度ニ安定スル
コトガ困難デアルト云フコトニ相成リマス
ルナラバ、同一ノ現象ハ又近ク發生スルデ
アラウト云フコトヲ、私ハ惧レル者デアリ
さく、而シテ現ニ英吉利ノ如キニ於キマシ
テモ、成程爲替ヲ釘付ニスルコトハ、是ノ、
出來得ベキコトデモアリマスマイシ、又必
シモ希望スベキ事柄デハナイト存ジマス、
多少ノ幅ハ之ヲ認メルニ致シマシテモ、或
ル程度ノ安定點ヲ保ツト云フコトニ非ザレ
バ我國ノ國民經濟ト云フモノニ向フテハ、
安定ヲスルコトハ出來ナイノデアリマス、
爲替ガ物價ニ左右セラレルコトハ當然デア
リマスケレドモ、ソレト同時ニ物價ハ爲替
ニ左右サレテ居ルノデアリマス、今日我國
ノ物價ノ騰貴シタル所以ハ何デアリマセウ、
決シテ「インフレーシヨン」ノ爲デハナイノ
デアリマス、今日皆樣御承知ノ通リニ「イ
ンフレーション」ハ事實ニ於テ少シモ現レ
テ居リマセヌ、今日ノ物價ノ騰貴ハ爲替ノ
下落ニアルト云フコトハ、是ハ經濟ニ關係
シテ居ル者ハ皆一致シタ見解デアリマス、
然ラバ此物價ガ高クナルト云フコトヽ爲替
ガ下ルト云フコトハ、何レガ先ニナリ、何
レガ後ニナルニ致シマシテモ、何レモ因果關
係ヲ致シマシテ、益〓爲替ヲ下落サセルト
云フコトハ今日ノ事實ガ示ス通リデアリ
マス、故ニ英吉利ノ如キハ、金再禁止ノ法令
ヲ出スト同時ニ、爲替管理令ヲ同時ニ實行
ヲ致シマシテ、サウシテ今日ニ於テハ大體
ニ於テ、對米三弗二十五仙ヲ最低ト致シマ
シテ、最高三弗五十仙ヲ標準ト致シテ、安
定ヲ圖ラント致シテ居ルノデアリマス、
私ハ我ガ經濟ノ現狀ヲ考ヘマシテ、又爲替
ノ近キ將來ノ趨勢ヲ考ヘマス上ニ於テ、
我ガ經濟ノ安定ト發達ヲ圖ラント致シマ
スルノニハ、ドウシテモ或ル目標ヲ定メ
テ、ソレニ依ッテ政府ハ爲替ノ安定ヲ圖ルコ
トニ、全力ヲ擧ゲテ努力スルモノデアルト
云フコトヲ、國民ニ知ラシムルト云フコ
トハ、軈テ是ガ爲替下落ヲ止メル大ナ
ル力ニナルモノデハアルマイカト考フル
ノデアリマス、斯ウ云フヤウナ意味合ニ於
テ、大藏大臣ハ此法案ニ依フテ爲替ヲ安定
セシムルヤウニ、此法案ヲ施行セラルヽ所
ノ意思アリヤ否ヤヲ、第一點トシテ承リタ
イノデアリマス
第二點トシテ承リタイコトハ、勿論爲替
ヲ或ル程度ノ幅ニ安定セシムルト云フコト
ニ於キマシテハ、此法案ダケデハ到底駄目
ノコトハ明白デアリマス、之ニ對シテ吾々
ハ英吉利ガ試ミマシタル如キ、所謂「イク
オーリゼーション·アッカウント」ナルモノ、
我國デハ平價衡平資金制度ト申シテ居リマ
スルガ、斯樣ナ制度ヲ御執リニナッタラバ
ドウデアラウカ、斯樣ニ思フノデアリマス
ルガ、此點ニ向ッテ大藏大臣ノ御意見ヲ承
リタイ、此平衡資金制度ノコトニ付キマシ
テハ、先般吾黨ノ大口君ヨリ質問ガアッタ
ノデアリマス、共場合大藏大臣ハ斯樣ニ御
答辯ニナリマシタ、平衡資金制度ト云フモ
ノヲ有效ニ行フト云フノニハ、其前提トシ
テ平價ノ切下ヲ如何ナル程度ニスルカト云
フ目標ヲ定メナケレバ出來ルモノデハナ
イ、然ルニ今日ノ狀況ニ於テ、自分ノ見ル
所デハ、何時ニナッタラ如何ナル程度デ切
下ガ出來ルカト云フコトノ見當ガ付カナイ
カラ、此所謂平衡資金制度ト云フモノニ向ラ
テハ今考慮シテ居ラナイ、斯樣ナ御答辯
デアッタノデアリマス、蓋シ大藏大臣ノ斯樣
ナ御答辯ノ意味ノ中ニハ、此平衡資金制度
ト云フモノヲ、切下ノ目標ナシニ實行シタ
場合ニ於テハ、此制度ノ爲ニ運用シタル資
金ノ損害ヲ國家ガ負擔スルノ危險ガ、將來
ニアルデアラウト云フ御懸念カラ、斯樣ナ
御說ガ出タカト思フノデアリマス、是ハ尤
デアリマス、若シ二十五弗デ濟マウト、或
ハ二十五弗デ切下ガ出來ヨウト、稍、見當ヲ
付ケタ時ニ、是ガ二十弗ニナッタト致シマ
スルナラバ、其爲ニ運用シタル所ノ資金ノ
損害ハ、國庫ガ負擔スルノ外ハナイノデア
リマスルカラ、斯樣ナ御懸念カラ出タ所ノ
御議論デアリマスルナラバ、吾々モ首肯ス
ルコトガ出來ルノデアリマス、併ナガラ少
クトモ是ダケノ事ハ決定的ニ言ヒ得ルト思
フノデアリマス、如何ナル事情ノ下ニモ、
將來我國ノ貨幣制度ヲ金本位ニ復活スル場
合ニ於テハ、或ル程度ノ本位切下ヲスルノ
ハ已ムヲ得ナイコトデアルト云フコト
ハ、是ハ何人モ異論ガナカラウカト思フノデ
アリマス、サウシマスルト云フト、其爲ニ
多少ノ損害ヲ國庫ガ假令負擔スルノ已ムヲ
得ナイヤウナ事情ガアリマシタト致シマシ
テモ、左程重大ナル損害ヲ國庫ニ負擔セシ
ムルコトハアルマイト私ハ思フノデアリマ
ス、相場ノコトデアリマスルカラ分リマセ
ヌケレドモ、損害ハ假ニアッタト致シマシ
テモ、我ガ貨幣制度ノ安定ノ爲ニ、相當ノ
犧牲ヲ拂フト云フコトハ、是ハ已ムヲ得ナ
イコトデアルカト思フノデアリマス、唯問
題ハ一ツ殘ッテ居ルノデアリマス、其資金ヲ
如何ニスルカト云フ問題デアリマス、是ハ
平衡資金制度ノコトニ向クテ、今日色々ノ論
議ガ世ノ中ニ議論サレテ居リマスルガ、結
局スル所、問題ハ資金ノ問題デアリマス、併
シ私ハ大藏大臣ニ於テ大ナル御決心ガアリ
マスルナラバ、此資金ヲ得ルコトハ左マデ困
難デナカラウカト思フノデアリマス、何トナ
レバ先月政府ノ發表サレマシタル、昨年ノ七
月一日ニ於テ我ガ邦人ノ手ニ持ッテ居ル所ノ
外貨公債、又外國證券、竝ニ預金、貸付ノ總
額ガ十六億圓ニナッテ居リマス、此預金竝ニ
貸付金ト云フモノハ、想フニ爲替銀行ノ爲替
資金トシテ備ヘテ居ルモノデアラウト思ヒ
マスルカラ、此資金ヲ利用スル、動員スル
ト云フコトハ出來マスマイ、又邦貨公債ハ
八億八千万圓程アリマスルケレドモ、是尺
今日皆樣御承知ノ通リ、我國ノ外貨公債ト
云フモノハ、外國ニ於テ殆ド買手ガナイト
言ッテモ宜イヤウナ狀態デ、値段ハ非常ニ暴
落ヲ致シテ居ルノデアリマスルカラ、之ヲ
動員シテ資金ヲ作ルト云フコトハ勿論困難
デアリマス、併ナガラ我ガ邦人ノ手ニ依ッテ
持ヲテ居ラルヽ所ノ外國ノ國債ガ二億圓アル
ノデアリマス、地方債ガ千三百万、社債
ガ二千九百万、株式ガ一億四百万、計三億
五千餘万圓ノモノハ、動員スレバ出來ル所
ノモノガアルノデアリマス、而モ是ハ外國
ノ國債デアリマスルガ故ニ、英吉利ナリ、
亞米利加ナリ、佛蘭西ナリノ國債デアリマ
スルガ故ニ、直チニ之ヲ正貨ニ換へルコト
ノ出來ル性質ノモノデアリマスルカラ、之
ヲ適當ナ範圍ニ動員致シマスルナラバ、先
程申上ゲタル所ノ平衡資金制度ノ或ル程度
ノ資金ヲ得ルコトハ、決シテ困難デナカラ
ウト思フノデアリマス、然ラバ資金制度ハ
如何ナル額ノ資金ヲ要スルカト云フコト
ハ是ハ各〓ノ見當デ、容易ニ一致イタシ
マセヌガ、今日論ゼラレル所ノモノハ、多
クモ三億アッタナラバ、爲替安定ノ爲ニ「オ
ペレーシヨン」ヲヤルニ十分デアラウト云
フ說ガ、我國ノ學者、實際家ニ於テ論ゼラ
レテ居ルノデアリマス、假ニ三億圓ト致シ
マシテモ、今申上ゲタ通リニ、此外國ノ國
債、其他株式ト云フモノガ三億以上邦人ノ
手ニ在ルノデアリマスルカラ、前ノ資本逃
避防止法ノ規定ニ依リマシテ、之ヲ動員致
シマスルナラバ、今日ハ此爲替ノ下落ニ向ツ
テ相當ノ效果ガ現レテアッタラウト思フ
ニモ拘ラズ、我ガ大藏大臣ハ何ノ見ル所ア
ラセラルヽノカ、昨年七月一日ニ資本逃避
防止法ガ制定サレテ、其第三條ニ於テ外貨
評價委員ト云フモノヲ置カナケレバナラヌ
コトニナッテ居ルニモ拘ラズ、此法案ガ實施
セラレテ四箇月ノ間、此重要ナル機關ガ作
ラレテ居ナイト云フヤウナコトニ至ッテハ
我ガ大藏大臣ハ此爲替管理ニ向ッテ如何ナ
ル程度ノ御熱心ガアルカト云フコトヲ、私
ハ疑ハザルヲ得ナイノデアリマス(拍手)斯
樣ナ理由ヲ以チマシテ、大藏大臣ハ平衡資
金制度ト云フモノヲ、此場合御設置ニナル
ノ御意思アリヤ否ヤト云フコトヲ伺フノガ
第二點デアリマス
ソレカラ爲替ノ對策ノ方針ヲ決メマスル
ニ當リマシテハ、今日ノ爲替ガ如何ナル原
因ニ依ッテ下落シタモノデアルカト云フコ
トヲ正確ニ知ルコトガ、第一ノ手段デアル
ト思フノデアリマス、恰モ病人ヲ癒スニ當
リマシテハ、先ヅ其病源ヲ診斷スルト云
フコトガ、何ヨリモ必要デアリマスルガ
如クニ、爲替對策ハ爲替下落ノ新原因ト
云フモノヲ知ルコトナシニハ、適切ナル
對策ヲ講ズルコトハ出來マイト私ハ考ヘ
マン、此點ニ向ッテ大藏大臣ハ、先日明年
度ノ豫算ノ御說明ノ末段ニ於テ、二ツノ
御說明ヲ吾々ニ與ヘラレマシタ、第一ハ滿
洲事件ノ爲デアル、第二ハ將來「インフレー
シヨン」ガ起ルダラウト云フコトガ、爲替
相場ノ中ニ織込マレタノデアル、斯樣ニ申
サレタノデアリマス、此御說明ニ對シテハ
吾々ハ何等ノ異存ガアリマセヌ、一々御尤
ノコトデアル、併ナガラソレダケガ爲替相
場下落ノ原因デアルデアリマセウカドウデ
アリマセウカ、私ハ其外ニ尙ホ重大ナ一二
ノ點ガアルヤウニ思フノデアリマス、先日
總理大臣竝ニ國務大臣ノ施政方針ノ演說ニ
對スル質問ノ中ニ於テ、民政黨ノ川崎君ノ
質問ニ對スル大藏大臣ノ御答辯ノ一節ニ、
斯樣ナル事ガアッタノデアリマス、歐米ノ爲
替ノ下落スル原因ト、我國ノ爲替ノ下落ス
ル原因トハ、全ク違フテ居ル條件ノ下ニ立ク
テ居ルノデアル、故ニ歐米ノ說ヲ鵜呑ミニ
シテ、之ヲ我國ニ適用セントシテモ適用サル
ルモノデハナイ、然ラバ如何ナル狀態ニ於テ
異ルカト云フナラバ、歐米ノ國々ハ御互ニ
亂レ合ッテ短資ガ放下サレツヽアル、英吉利
ノ短資ガ佛蘭西ニ行キ、佛蘭西ノ短資ガ米
國ニ行キ、米國ノ短期資金ガ獨逸ニ行クト
云フヤウナ譯デ、錯綜ヲ致シテ居ル、故
一國ノ財政ニ多少ナリ不安ガアルト云フコ
トニナルト、將來ドウナルデアラウカト云
フ懸念ノ爲ニ、短期資金ハ忽チ取出サレテ
シマフノデアル、英吉利ガ金再禁止ヲスル
ノ已ムヲ得ザルニ至ッタ所以ノモノモ、亦是
等ノ原因カラデアル、今日亞米利加ガ或ハ
金再禁止ヲシヤシナイカト云フヤウナ懸念
ヲ有ッテ居ルノモ此爲デアル、佛蘭西ガ最
近頗ル困難ニナッテ居ルノモ此爲デアル、之
ヲ直チニ我國ニ持フテ來テ適用シテ、我國ノ
爲替下落ニ當嵌メントシテモ、ソレハ大ナ
ル誤リデアル、是等ノ事情ヲ考ヘテ見ルト
云フト、歐米ニ於テハ財政ノ均衡ヲ得ナイ
ト云フコトハ、爲替相場下落ノ重大ナ原因
ニ相違ナイケレドモ、我國ニ於テハ斯樣ナ
ルコトハ決シテナイノデアル、財政ノ均衡
如何ト云フコトハ、爲替相場ニ影響スルモ
ノデナイ、斯樣ナル御說明デアッタノデア
リマス、大藏大臣ノ此御說明ハ、或點ニ於
テ吾々ハ了解ヲ致スコトハ出來マス、惟フ
ニ川崎君竝ニ民政黨ノ諸君ハ、高橋大藏大
臣ノ此御說明ニ於テ深ク〓ヘラルヽ所ガ
アッタデアラウト思フ(「ノー〓〓」)併ナガ
ラ私ハ半バハ大藏大臣ノ御說明ハ適切デア
リマスルシ、民政黨ノ蒙ヲ啓クニ十分デアッ
タトハ思ヒマスケレドモ、又少シク御考ヘ落
シノコトガナカッタデアラウカト存ジマス、何
故ナラバ大藏大臣御自身ガ、滿洲事件ガ紛
糾シテ來タ事柄ガ、我國ノ爲替相場下落ノ
重大ナル原因デアルト仰シヤル以上、財政
ノ均衡ヲ得ナイト云フコトハ、少シモ爲替
相場ニ影響ガ無イト仰シヤルコトハ、ドウ
シテモ辻褄ガ合ハヌノデアリマス、滿洲問
題ガ非常ニ面倒ニコンガラカッテ來テ、ソ
レガ爲替相場ノ下落ノ原因ニナッタト云フ
コトハ、如何ナル事ヲ意味スルノデアリマ
セウカ、滿洲問題ノ將來ノ進農ノ爲ニ、我
國ハ非常ナ澤山ノ公債ヲ出サナクテハナラ
ヌデアラウ、其結果「インフレーシヨン」ガ
起ルデアラウ、斯樣ナ意味合ニ於テ、ソレ
ガ織込マレテ、我國ノ爲株相場下落ノ原因
ニナッタノデハアリマスマイカ、是ハ私一個ノ
意見デハナイ、英國ノ最モ信賴スベキ有力ナ
ル「スタチスト」ト云フ雜誌ノ主筆モ、同一ノ
事ヲ十月カ十一月ノ、我國ノ爲替ガ將ニ二
十弗ノ關門ヲ破ラントシタ其時ニ、彼ハ其雜
誌ニ於テ斯樣ナ意味ノコトヲ申シテ居リマス、
日本帝國ハ支那ガ他日統一ヲ保ヲタ場合ニ
於テハ、滿洲ヲ背負込ンデ、其爲ニ非常ナ
困難ニ陷ルデアラウ、況ヤ滿洲ハ廣漠ノ地
デアリ、今日非常ニ荒廢シテ居ル、之ヲ整
理シテ相當ナモノニ復活セウムル迄ニハ
非常ナ財政上ノ負擔ヲシナケレバナルマイ、
況ヤ滿洲問題ニ付テハ、日本ハ他ノ帝國主
義ノ國家ト對立スルノ巳ムヲ得ナイヤウナ
事情ガ起フテ來ルデアラウ、斯樣ナ場合ニ於
テ日本ノ豫算難ト云フモノハ、恐ルベキ事
ニ相成ルデアラウ、今日ノ日本ノ爲替ガ非
常ニ下落シタト云フコトハ、此事實ヲ證明
スルモノデアルト云フコトヲ、彼ハ言ッテ居
ルノデアリマス、私ハ此「スタチスト」ノ議論
ハ、全ク理由アル事デアラウト思フノデア
リマス、斯樣ニ考ヘマスト、大藏大臣ガ此
爲替下落ノ原因ニ向ヲテ、財政上ノ關係ガ無
イ、財政的ノ均衡ヲ得テ居ルカ否カト云フ
コトハ何等ノ關係ガ無イト云フコトハ
一面ノ眞理デアルト同時ニ、更ニ深ク御考
ヘヲ願ヒマスレバ、必シモ全面ノ眞理デナ
イト云フコトモ、御了解下サルデアラウト
思フノデアリマス、併ナガラ此問題ニ對シ
マシテハ、或ハ吾々ト大藏大臣トハ、全然
所見ヲ異ニスルカモ知レマセヌガ、我黨ハ
旣ニ豫算宋議ノ際ニ當ッテ附帶決議ヲ致シ
テ居リマス、財政ノ健全ナル組織ヲ得ルニ
非ザレバ、總テノ經濟界ニ向フテ進步發達ヲ
期セラレザルノミナラズ、我國ノ今日最モ
憂フベキ所ノ爲替ノ下落ヲ誘發スルト云フ
意味合ニ於テ、卽チ財政的建直ヲ其附帶決議
ニ於テ要求シタル所以ノモノハ.今申上ゲ
タヤウナ意味カラ出發ヲ致シタモノデアル
ノデアリマス、仍テ此點ニ付テ大藏大臣ノ
御所見ヲ伺ヒタイト思フノデアリマス、是
ガ第三點デアリマス
第四點ニ於キマシテ、私ハ爲替管理ノ內
容ニ付テ少シク御伺ヲ致シタイト思ヲノデ
アリマス、私ノ所見ヲ以テ致シマスレバ、
爲林管理ノ內容ハ三ツニ分レルベキモノト
思フノデアリマス、卽チ第一ハ爲各相場ノ
投機ヲ阻止スルト云フコトデナケレバナラヌ、
第二ハ資本ノ逃避ヲ防止スルト云フコトデ
ナケレバナラヌ、第三ハ輸出入ニ統制ヲ加
ヘルト云フコトデナケレバナラヌ、斯ウ思
フノデアリマス、然ルニ今御提出ニナッテ
居ル所ノ提案ヲ拜見致シマスルト云フト
第一ト第二ノ、卽チ資本ノ逃避ヲ防グ途、
竝ニ爲替投機ヲ阻止スルノ途ハ、殆ド遺憾
ナク記載サレテアルト言ッテモ宜イト思フ
ノデアリマスルガ、第三ノ輸出入ノ統制ニ
付テハ、極メテ不十分ノヤウニ感ゼラル
ノデアリマス、或ハ政府ハ此第一條ノ第一
號ニ於テ、外國爲替ノ取得又ハ處分、第七
號ニ於テ信用狀ノ發行又ハ取得、此二ツノ
條項ニ依ッテ、或ル程度マデ輸出入ヲ統制
シ得ルト云フ御考デアルカモ知レマセヌガ、
成程爲替ノ取得ト云フモノ、賣買ト云フモ
ノヲ、之ヲ制限禁止スルト云フコトニ致シ
マスルナラバ、輸入ヲ或ル程度マデ阻止ス
ルコトハ中來マセウ、又信用狀ノ發行ト云
フコトニ向ッテ、相當ノ制限ヲヲヘルト云
フコトデアリマスルナラバ、輸出ヲコ·コ
トロール」スルコトモ出來ルデアリマセウ、
併ナガラ是ハ全然手心ニ屬スルモノデアリ
マス、甚ダ不完全ナモノデアリマス、若シ當局
者ガ適當ナル措置ヲ執ラナカッタナラバ、此
輸出入ノ商人ニ向フテ如何ナル損害、如何ナ
ル迷惑ヲ與ヘルカ分ラナイ事柄デアラウト
思フノデアリマス、ノミナラズ此間接的ノ
統制デハ、決シテ十分ノ事ハ行ハルヽ譯ノ
モノデハナカラウト私ハ思フノデアリマ
ス、ノミナラズ斯樣ナ重大ナル利害關係ヲ
規定スル場合ニ於キマシテ、眞ニ大藏大臣
ガ本案ノ中ニ於テ、輸出入ノ統制ヲ致サウ
ト云フ御意思カアリマスルナラバ、斯樣ナ
國民ニ向ッテ重大ナル損害ヲ與ヘ、重大ナ
ル影響ヲ與ヘル所ノ條項ハ、之ヲ命令ニ委
任スベキモノデハ斷ジテナカラウト思フノ
デアリマス、少クトモ其輪廓ダケハ法律ヲ
以テ規定スベキモノデアルト思フノデアリ
さい、仍テ私ハ大藏大臣ニ、輸出入ノ統制
ト云フモノヲ、本法ニ依ッテ統制スルダケノ
御意思ガアルノデアルカ、ナイノデアルカ、
斯ウ云フコトヲ承リタイノガ第四點デアリ
マス
最後ニ承リタイコトハ、本法ハ內地ニ於
テ適用サルヽコトハ言フマデモアリマセ
又、併ナガラ御承知ノ通リ、今日大連「マ
ーチヤント」ト言ハレマシテ、大連ノ爲替
市場ト云フモノハ、投機ノ本源ニナッテ居ル
ノデアリマス、爲替ノ投機ガ大連ヲ元トシ
テ、上海ノ商人ト相提携ヲ致シテ、我國ノ
爲替ヲ翻弄シテ居ルト云フ事實ハ、今日世
間周知ノ事實デアリマス、幸ニ大連ノ在ル
所ノ關東州ハ、我ガ政權ノ下ニ在リマス、
故ニ本法ノ效果ヲ全カラシムル上ニ於テ
ハ之ヲ關史州竝ニ滿鐵附屬地ニ施行スル
ト云フコトガ、最モ必要デナイカト私ハ思
フノデアリマスルガ、大藏大臣ハ此點ニ向ラ
テ、如何ナル御考ヲ御持ニナッテ居ルカト
云フコトヲ伺ヒタイノデアリマス、以上簡
單デアリマスルケレドモ、此五點ニ付テ御
說明ヲ煩シマスルナラバ、洵ニ仕合セト存
ジマス(拍手)
〔國務大臣高橋是〓君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X01419330216&spkNum=73
-
074・高橋是清
○國務大臣(高橋是〓君) 御答ヲ致シマ
ス、第一ハ本法實施ニ付キ如何ナル效果ヲ
期待スルカ、爲替ノ安定ヲ期待スルヤ、斯
ウ云フ意味ノ御質疑ト拜聽シマシタ、本案
ノ趣意ハ、現在ノ資本逃避防止法デハ、十分
ニ其目的ヲ達シ得ナイ點ガアルノデ、完全
ニ其防止ヲスル必要カラ起リ、隨テサウ云
フ拔穴ガアルノヲ塞イデシマヘバ、自然ト
其結果ハ矢張此爲替ノ安定ニ寄與スルコト
ニナルノデアリマスルカラシテ、唯完全ニ
此爲替ヲ安定スルト云フコトハ、容易ノコ
トヂヤナイ、此事ハ屢、問ハレ、私モ屢、是
マデ答ヘテ居ル、唯今日爲シ得ル所ハ、成
ベク爲替ノ動搖ノ程度ヲ甚シカラシメザ
ルヤウニ致シタイ、度々申ス通リ爲替相場
ノ動クコトハ、是ハ日本ノ唯一國ノ力デハ
出來ナイ仕事ナンデアル、其動搖ノ激騰激
落ノナイヤウニ、變動ガアッテモ、ソレガ小
サナ範圍、狹イ範圍ニ止マルヤウニシタイ
ト云フノガ希望デアリマス、一體最初カラ
申シテ居ル通リ、一國ノ爲替相場ト云フモ
ノハ他國ニ對シテハ其國ノ生產力ニ基ク
ノデアル、是ハ申スマデモナイ話、ダカラ
長イ期間ニ於テハ、假令其國ガ金本位ヲ
離脱シテ居リマシテモ、外國ニ對シテ輸出
スルモノト、外國ヨリ輸入スルモノトノ權
衡ガ得ラレテ、此支拂受入ニ於テ差ガナクナ
レバ、其時ノ爲替相場ノ定マルノガ、卽チ
是ガ自然ニ定マル所デアル、若シ幸ニシテ
我國ガ外國ヨリ品物デ受取ル以外ニ、現金
ヲ以テ受取ルト云フヤウナ立場ニナリマシ
タナラバ、我國ノ今日ノ如ク兌換ヲ禁止シ
テ居ル紙幣ニ對シテモ、外國ノ金貨其モノ
ノ値ハ下ルヤウニナルコトハ當然ナ話デア
r、此不換紙幣デアル所ノ紙幣ガ、却テ亞
米利加ノ弗ニ對シテ高クナルト云フコト
ハ、是ハ當然サウ云フ結果ニナルノデア
ル、ソレ故ニ此法案ノ目的ハ必ズ爲替相
場ヲ安定スルト云フコトヲ、直接ノ目的ト
シテ居ルノデハアリマセヌ
ソレカラ第二ハ、爲替平衡資金制度ガ宜
イガ、之ヲ採用スルノ意思ガアルカ無イカ
ト云フ御尋デアリマス、サウシテ英國ノ例
モ御引キニナリマシタ、爲替平衡資金ト云
フノハ、英吉利デヤックコトデアリマス、ア
ノ時ノ英國ノ事情トシテハ、思惑ニ依ッテ
爲椿相場ノ騰貴ヲスルコトヲ抑ヘル目的デ
アッタ、下ガルノヲ防グノデハナイ、上ルノ
ヲ防グ、故ニ下ルト云フ傾向ノ時ニハ殆
ド英國政府ハ爲替相場ニ對シテハ放任シテ
居ル、何等手ヲ入レナイ、サウシテ國內ノ
經濟ヲ整理セントシテ居ル、今日ニ於テモ、
矢張リ其方針ハ變ラズニ居ルヤウニ見受ケ
ラレマス、我國ニ於テ平衡資金制度ヲ用ヒ
ロト云フ御希望ハ、今日デハ此儘棄テヽ置
イタラ、我國ノ爲替相場ハ何處マデ下ルカ
知レヌカラシテ、ソレヲ下ラナイヤウニ、
國民ニ對シテモ一定ノ標目ヲ示シテ、モウ
政府ハ是ヨリ爲替相場ハ下ゲナイノダ、サ
ウシテ安心ヲサセル、其爲ニ必要ナ資金制
度ヲ設ケタラ宜カラウト云フ御希望ノヤウ
デアリマス、而シテ政府ハ其意思ガアルヤ
ト云フ御尋デアリマス、遺憾ナガラ政府ハ
今日サウ云フヤウナ意思ハナイノデアリマ
ス而シテ其資金ニ於テ、今日我ガ外貨公
債及債劵類ヲ除イテ、法人ガ純然タル外國
ノ公債、若クハ株劵、社債等ヲ持ッテ居ル者
ガアル、其金高ガ、凡ソ三四億モアル、之ヲ動
員シテ、サウシテ此爲替平衡資金ニ用ヒタラ
宜カラウ、斯ウ云フ御意見デアリマス、御意
見ガ惡イトハ私ハ別ニ咎メナイ、ケレドモ
此法人ガ持フテ居ル所ノ純然タル外國ノ有
價證劵ト云フモノハ、今如何ナル働キヲシテ
居ルモノデアルカ、何人ガ多ク之ヲ持フテ
居ルモノデアルカ、保險會社ト云ヒ、銀行ト
云ヒ、日々其業務ヲ營ム上ニ於テ必要ナ資
金トシテ持ッテ居ルノデアル、若シ之ヲ取上
ゲテ、單ニ邦貨ノ公債、社債ダケニシテ置
イタラ、今日金融ハ出來ナイノデアリマス、
左樣ナ不自由ヲ掛ケテ、之ヲ動員シテ、資
金ヲ調達シテ見タ所ガ、此資金ガ缺乏シテ
來タラドウスルノデス、殊ニ今日ノ時勢
デ-最早前年、其時來ラザルニ、金解禁ヲ
シテ、我國ノ正貨ガ六七億圓出タト云フ苦
イ經驗ヲ我ガ國民ハ嘗メテ居ルデハアリマ
セヌカ、偶、左樣ナ無理ヲシテ三割位ノ資
金ヲ以テ爲替相場ヲ維持スルナゾト云フコ
トハ、其苦イ經驗ヲ忘レタ話デアリマス
ソレカラ第三ニハ爲替下落ノ原因ニ付
テ色々御說ガアリマシタ、私ハ此財政ノ歲
入歲出ノ均衡ヲ得ザルト云フコトガ、直接
爲替下落ノ原因トナル譯デハナイト云フ意
味ノ御答ハシマシタ、併シ何等關係ガナイ、
ソンナ亂暴ナコトハ言ハナイ、外ノ國デハ
ソレガアル、先刻質問者モ仰セニナッタ通
リ、短期ノ資金ヤ何カヾ互ニ入込ンデ入フテ
居ルカラ、一國ノ財政ノ收支ノ均衡ガ失ハ
レヽバ、或ハ其國ハ金貨本位ヲ離脫シハセ
ヌカ、或ハ又資本逃避ヲ防グ爲ニ、金ノ輸
出禁止ヲセヌカト云フ懸念カラシテ、短期
ニ投資シテアッタ資金ナドヲ、ズンズン引
上ゲルヤウナコトガアルノデアリマスカ
ラ、苟モ歐米ノ間ニ於テ、從來ノ習慣ト、
信用トニ依ッテ、互ニ遊ンデ居ル金ヲ最モ有
利ニ働カセヨウト云フノデ、其國ノ信用程
度ニ依ッテ、時々資金ノ移動ガアルノデアリ
さく、サウ云フ國情ニアル爲ニ、歐米ハ
層苦ンデ居ル、我國ハサウ云フ事ガナイ、
ソレ故ニ歐米ニ於テ資本家ガ其國ノ財政ノ
收支均衡如何ト云フコトニ付テ、種々心配
スルガ如クニ、我國ノ財政ノ收支如何ト云
フコトニ付テ重キヲ置イテ考ヘテハ居ラヌ
ト云フ意味デ、私ハ申上ゲタノデアリマス、
勿論財政不均衡ノ爲ニ彼等モ-外國人モ、
ドウモ矢張公債ヲ發行シテ歲出ヲ補塡シテ
行ク、如何ニモ巨額ナ公債ガ出ル、ソレニ依フ
テ必ズ通貨ガ膨脹スルダラウ、卽チ物ニ對
シテモ圓ノ價ガ非常ニ下落スルデアラウ、旣
國內ノ物資ニ對シテ其國ノ通貨ガ下落スル
ト云フコトヲ考ヘレバ、對外爲替ニ於テ、
無論其圓ガ外國貨幣ニ對シテ下落スルト云
フコトヲ豫想スルコトハ是ハ難カラヌコ
トデアル、サウ云フ意味ニ於テ間接ニ、卽
チ皆サンガ能ク仰シヤル「インフレーショ
ン」日本モ此「インフレーシヨン」ヲヤッテ、
非常ナ通貨膨脹ヲシテ、遂ニハ圓ガ唯對外
ドコロデハナイ、對內ノ物資等ニ付テ下落
シテ行クデアラウト云フコトヲ豫想スレ
バ、將來日本ノ爲替相場ハ益、下落スルデ
アラウト云フコトニ考ヲ及ボスノハ是ハ
無理カラヌ話デアル、サウ云フ影響ハアリ
マセウ、併シ段々內地ノ事情、貿易ノ關
係、我ガ農村及事業界ノ建直リト云フモノ
ガ段々現レテ來レバ、サウ云フ懸念モ段々
外國人ニ對シテモ薄ライデハ來ル譯デアリ
やく、一〓ニ豫算ノ權衡ヲ得ナイコトガ、
直チニ爲替相場ノ下落ヲ促ガスト云フ卽斷
ハ出來ナイ、但シ間接ニハ今申シタ通リ
ニ、外國人ノ方カラ考ヘレバ、サウ云フコ
トモ思ハレルデアラウト云フコトハ考ヘラ
レマス、ソレ故ニ成ベク政府トシテハ、爲
替相場ノ變動ヲ、全ク無カラシムルヤウニ
ハ、是ハ今日不可能デアリマスルガ、其變
動ノ範圍ヲ成ベク狭クシタイ、斯ウ云フコ
トニ努力シテ居ルノデアリマス
第四ハ、外國貿易ノ統制ヲドウスル、ド
ウ云フ程度ニ此法律ニ依ッテ貿易ノ統制ヲ
スルノカト云フ御尋デアル、豫テ申ス通
リ、出來ルダケ貿易上ニ於テハ自由ニ働カ
セ、輸出スル者モ、輸入スル者モ、成ベク
銘々ノ營業上ノ算盤上ニ適フコトハ、自由
ニ働カセタイト云フノガ、私ノ希望ナノデ
アル、ソレ故ニ必要ノナイ程度ニマデ、彼
等ノ働キヲ拘束スル考ハ毛頭ナイノデア
ル、成ベク彼等ノ働キニ、卽チ輸出入貿易
上ニ於テノ支障ニナルコト、妨ゲニナルコ
トハ致シタクナイト云フノガ元々ノ觀念デ
アリマス、併ナガラ前申ス通リ、何レノ國
デモ斯ウ云フ場合ニナッテ來マスト云フト、
金ヲ持ッテ居ル人、資本ヲ持ッテ居ル人ハ、
世界中一番安全ナ所ヘ其資本ヲ移シタイト
云フコトハ、是ハ人情デアル、ソレデ或ハ
其移スノニ付テハ現金デ送ルノモアリ、
爲替デ送ルノモアル、或ハ品物デ送ルノモ
アル、ソレヲサセタクハナイ、シテハナラ
ヌト云フノガ此法律ノ趣旨デアル、目的デ
アル、今ノ資本逃避防止法ダケデハ殘念
ナガラ十分ニ其處マデ徹底シテ行ク譯ニ行
カナイカラシテ、今日提出シタ所ノ此管理
法ト云フモノニ依ッテ、イザト云フ場合ニ
ハ、其時ニ適當ナ處置ガ速ニ執リ得ラレル
ヤウニ、權能ヲ承認シ戴キタイト云フ精
神デアルノデアリマス、實際是ガ行ハレル
時ニ至ッテモ、今ノヤウナ狀況デアリマス
レぐ、殆ド實際ノ働キハ、今日ノ資本逃避
防止法ニ依ッテ決メラレタコトヽ殆ド變リ
ハナイ、唯其中ニ罰則ヤ何カデ、省令等ニ
依ッテ設ケラレタ取締ハ、罰ガ輕イ爲ニ一
向其效力ガナイト云フヤウナコトハ、矢
張此法律ニ依ッテ罰ヲ重クスルト云フヤ
ウナ必要ガアリマシテ、サウ云フ所ノ
變化ハアリマス、併シ日々ノ變化ノ事デ
アリマスルカラ、餘所ノ國デドウ云フコト
ヲスルカ分ラヌ、先日來何處カデ私ハ言ヒ
マシタガ、今日ノヤウナ世界ノ有樣デアリ
マシタナラバ、吾々ノ希望スル貿易ノ自由
ト云フコトニ反シテ、益〓窮屈ニナッテ、
或ハ物々交換ノ原理ニ戾クテ、貿易ヲ管理
シナケレバナラヌト云フヤウナコトニナラ
ヌトモ限ラヌ、ドウ云フ風ニ動イテ來マス
カ、獨リ日本バカリデハナイ、各國共ニ之
ニ付テハ大イニ苦心ヲシテ、此打開ノ策ヲ
考究シテ居ルガ、其見透シガ今以テ付カヌ
ノデアリマス、此時ニ當,テ、或ハ先方ノ、
我ガ貿易ニ對シテノ仕打ニ依ッテハ、此方デ
モ亦ソレニ對スル相當ノ對抗ノ處分ヲシナ
ケレバナラヌト云フヤウナ必要ガ起ラヌ
トモ限ラヌ、其場合ニ於テ、或ハ臨時ニ
議會ヲ召集シテ協贊ヲ經テ之ヲ行フト云フ
ヤウニ、サウ云フ時間ヲ與ヘラレナイ時ガ
往々生ズルノデアラウ、如何ナル事ガ生ジ
テモ、サウ云フ場合ニ於テ違算ナキコトヲ
期シテ此法案ヲ出シタノデアリマス、左樣
ニ御承知ヲ願ヒタイ(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X01419330216&spkNum=74
-
075・秋田清
○議長(秋田〓君) 中島彌團次君
〔中島彌團次君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X01419330216&spkNum=75
-
076・中島彌團次
○中島彌團次君 爲替管理法案ガ提出サレ
マシテ、只今高橋大藏大臣カラ提案ノ理由
ニ付テ承リマシタガ、今申サレマシタ所ニ
依リマスルト云フト、金ノ輸出再禁止以來
爲替ガ暴落致シテ、二十弗內ニナッタ、サ
ウシテソレハ我國ノ圓ノ實力ニ-所謂實
勢ニ副ウテ居ナイ、又將來ドウ云フコトガ
起フテ來ルカモ知レナイ、隨テ本法案ヲ提
出致シテ實勢ニ戾スト共ニ、將來ノ非常ナ
場合ニ對スル出動ノ準備ヲシタイ、卽チ下
ガルノヲ止メタイト云フヤウニ承リマシタ
ノデアリマスルガ、果シテ左樣ニ解釋シテ
宜シイノデアリマセウカ、此爲替管理法案
ガ玆ニ提出サレマシタコトニ付キマシテ
ハ、私共ト致シマシテハ洵ニ喜バシイ次第
デアリマス、高橋大藏大臣ハ爲替相場ノ安
定ノコトニ付テ質問ヲサレマスト云フト、
爲替相場ト云フモノハ安定ハ出來ナイノデ
アッテ、暖簾ト腕押シスルヤウナモノデア
ルト云フコトヲ、常ニ言ハレテ居フタノデ
アル其御方ガ、爲林管理法案ヲ玆ニ提出
サレルヤウナコトニマデ至リマシタコト
ハ、餘程ノ是ハ心境ノ變化デアリマシテ、
是ハ金輸出再禁止以來我黨ガ唱ヘ來ッタ所
ノ政策ノ實現ヲシテ戴イタヤウナモノデ、
洵ニ國家ノ爲ニ欣幸ニ堪ヘナイ所デアリマ
ス、更ニ六十二議會ニ於キマシテハ、政友
會ノ諸君ニ於カレマシテハ、平價五分ノ一
切下ヲ主張サレ、爲替ハ何處マデ下ッテモ
宜イヤウナ御考ヲ持タレテ居フタ方モアッタ
ヤウニ承リマシタ、友黨政友會ノ方々ガ今
日ニ於キマシテハ、豫算ノ附帶決議ノ中ニ
於キマシテ、爲替ノ安定ヲセニヤナラヌト
云フ文句ヲ附加ヘルニ至リマシタノハ、全
ク我黨ノ政策ト其符節ヲ合シタ如キ現狀ニ
ナルノデアリマス(拍手)斯ウ云フヤウニ考
ヘテ參リマスト云フト爲替ノコトニ付キマ
シテ、政友會モ民政黨モ、此內閣ヲ擁護致
シマシタノハ、卽チ殆ド此一點ニ於キマ
シテハ完全ニ一致シテ居ルト云フコトヲ
私共ハ感ズル次第デアリマス(拍手)是レ
卽チ我黨ガ今日マデ一箇年間鬪ッテ來マシ
テ、世論ヲ喚起シ、卽チ國論ノ結果ガ玆
ニ到達シタルモノデアルト云フコトハ
私ガ此壇上カラ斷言シテ憚ラナイ次第デア
リマス(拍手)爲替ノ問題ガ非常ナ重大ナル
問題デアルコトハ武田君モ申サレマシタ、
高橋大藏大臣ニ於キマシテモ、亦申サレマ
シタノデアリマシテ、豫算總會及其他ノ委
員會、分科會ニ於キマシテノ、質問應答ノ
狀況ヲ見マシテ、常ニ此問題ニ觸レテ居ル
點カラ考ヘマシテモ、亦國民ガ齊シク此點
ニ付テ非常ナ關心ヲ持ッテ居リマス、所ガ現
在我國ノ爲替ノ狀態ヲ見マシタナラバ、確
ニ二十弗ト云フ所ハ、實勢以下ニ在ルコト
ハ事實デアリマス、ノミナラズ又國際政局
ノ將來ヲ考ヘテ見マスルナラバ、將來ハド
ウナルカ分ラナイ、外交問題カラ致シマシ
テモ、殆ド昨日及一昨日ノ財界ハ、恐怖人
氣ニ襲ハレテ居リマス、如何ナル程度ニ立
至フテ來ルカ分ラナイ、爲替卽國家ト云フヤ
ウナ、重大問題ニナッテ來ルカ分リマセヌ、
此秋ニ當リマシテ本案ヲ提出サレマシテ、
政府ガ廣汎ナル權限ヲ得ラレテ、而シテ此
權限ニ依ヲテ、何時デモ出動ガ出來ルヤウナ
コトニナッタト云フコトハ、洵ニ結構ナコト
デアリマスルガ、私共ガ非常ニ此法案ヲ吟
味シテ見マスルニ、流石ニ富田理財局長、
靑木國庫課長ガ作ラレタダケアリマシテ、
精細ニ各國ノ立法例等モ調ベマシテ、能ク
出來テ居リマス、サウシテ出來ルダケ爲替
ニ關係スル所ノ範圍內ノコトニ付キマシテ
ハ網羅サレテ居リマスルガ、併ナガラ玆
ニ問題トナリマスルノハ、之ヲ非常ニ嚴密
ニ適用致シマシタナラバ、商取引ヲ妨害致
ジ、更ニ又我國ノ輸出入貿易ニ對シマシテ
干、重大ナル妨害ニナッテ來ルコトハ、是ハ
明デアリマス、然レドモ出動ノ時機ヲ誤ッ
タナラバ、朝ニタヲ測ルベカラザル爲替相
場ノ今日ノ變動ノ狀態カラ考ヘマシタナラ
バ、大變之ヲ暴落セシメテ、一タビ二十弗
以下ニ落シタトスルナラバ、是ガ十五弗ニ
下リ、十弗ニ下リ、若クハ五弗トナル、之
ヲ又二十弗以上ニ上ゲルト云フコトハ容易
ノコトデハナイ、ソコデ一タビ出動ノ時機
ヲ誤ルカ誤ラヌカト云フコトハ、是ハ非常
ナ法ノ運用ヲ致シマス點ニ付キマシテハ
重大ナル點デアリマシテ、後ニ述ベマスル
ガ、私共ノ考、及ビ調査〓究致シマシタ所
ニ依リマスト云フト、資本逃避防止法ニ付
キマシテモ、幾分其出動ノ時機ヲ誤ッタガ
爲ニ、二十弗ニマデ落シテ居ルコトガアリ
マス、完全ニ資本逃避防止法ト云フモノヲ、
旨ク運用シテ居フタナラバ-色々ナ原因
カラ爲替暴落ヲ來シタコトモアリマセウケ
レドモ、二十弗マデ落サナクトモ濟ンデ
居フタト云フ點ハ、確ニ私ハ證據ヲ擧ゲ
テ、證明ガ出來ルト考ヘマス(拍手)
ソコデ私共ノ問ヒタイ所ハ、本法案ニ付
キマシテ極ク具體的ニ-要スルニ本法案
ト云フモノハ、武田君ノ言ハレマシタ爲替
平衡資金ノ問題、金ガナイカラ日本ノ國ハ
出來マセヌ、在外正貨デモアッテ、而シテ動
員ガ出來ルヤウナ金ヲ澤山持っテ居レバ、コ
ンナ法案ハ要ラナイ、其金デ爲替ノ調節ハ
出來ルガ、今日ハ在外正貨モナケレバ、高
橋大藏大臣モ今言ハレマシタヤウナ工合ニ、
動員スルベキ所ノ金モナイ、又セラレタラ
困ル、殊ニ輸出資金ト云フモノニ對シテ動
員ヲスルナラバ-輸出資金ヲ外國「ビル」
ニ動員スレバ、手許不便ニナッテ來マスカ
ラ爲替ガ却テ下リマス、サウシテ其資金ヲ
以テ爲替ヲ引上ゲレバ、之ハ元ノ「プラス、
マイナス、ゼロ」ニナッテ參リマス、斯ウ云
フコトカラ考ヘマシタナラバ、爲替平衡資
金制度ト云フモノハ、今日ハ容易ニ行フコ
トハ出來ナイト考ヘル、併ナガラドンナコ
トガアッテモ、爲替ヲ元ニ引上ゲナケレバナ
ラヌ、爲替ノ下ガルコトヲ防ガナケレバナ
ラヌト云フ時ニハ、ソレハ非常時ノ場合ニ
ハ、是ハ爲替平衡資金制度亦已ムヲ得ナイ
時機ガ來ルカモ知レナイ、今日ノ場合デハ、
是ハムヅカシカラウト考ヘル、此金ノ無イ
時ニハ、金ノ無イ方法ニ依ッテ、爲替管理法
ヲ適用スル外、爲椿ノ下ガルノヲ止メルト
同時ニ、又實勢力ニ戾スコトハ出來ナイデ
アラウト私ハ信ジマス
ソコデ本法案ハ非常ニ廣汎ナル範圍ニ
於テ大藏大臣ガ權限ヲ握ッテ居リマス、譬へ
テ申上ゲマスナラバ、本法案ノ重點ガ何處
ニアルカト申上ゲマスナラバ、第一爲替ノ
集中主義ヲ執ッテ居ル、自由賣買ヲ禁止シ
テ、日本銀行其他ニ爲替ノ集中主義ヲ執ル
ト云フコトハ本法案ノ是ガ第一ノ要點デ
アルト云フコトヲ私ハ痛感致シマス、第二
ハ爲替ノ取得及處分、之ヲ取締リ制限セン
トシテ居ル、卽チ不必要ナル先物及思惑ノ
取締ヲ、此點ニ於テ制限シヨウトシテ居ル、
是ガ第一條ニアリマスルガ、第三ガ荷爲替
ノ取締デアリマス、第四ハ爲替相場ノ取極
デアリマス、卽チ公定相場マデモ行クコト
ヲ此法案デハ豫想シテ居ル、第五ハ逆爲替
ノ取締、資本逃避防止法ニハナカッタノデ
アリマス、第六ガ內地居住者ニ對スル信用
狀ノ發行取締ヲ、資本逃避防止法ニ於テハ
無カッタガ、玆ニ於テ新ニ設ケマス、更ニ第
七ノ點ニ於テハ證劵ノ輸出ヲ取締ッテ居
ル、資本逃避防止法ニ於テハ輸入ダケヲ取
締ッテ居フタ、第八ハ是ハ法律上ノ解釋デア
リマスガ、法律解釋ト致シマシテ、本法案
ヲ解釋シテ見マシタナラバ、爲替管理ヲ通
ジマシテ貿易管理ニマデ行ケルヤウナ工合
ニナッテ居ルト私共ハ解釋致シマス
大體是等ノ點ガ本法案ノ重點デアルト考
ヘルガ、是ダケ庸汎ナル範圍ニ亘ル所ノ政
府ノ權限ヲ、此本議會ニ於テ與ヘルト致シ
マスナラバ、來ルベキ所ノ問題ハ、國民ガ
聞キタイ所ノ問題ハ、何デアルカト申シマ
シタナラバ、ドノ程度ニ於テ、ドノ階段ヲ
設ケテ本法案ヲ實施スルノデアルカ、本法
案ニ載ヲテ居ル所ノ今申上ゲマシタ所ノ七
八點ノ重大事項ニ付テ、直チニ實施スベキ
事項ハ何處デアルカ、更ニソレバカリデナ
ク、將來爲替ノ變動ノ狀況ニ於テ、是レノ
ノ程度ノモノハ實施スルノデアル、又實施
シナイノデアル、卽チ命令ニ依ルノハ、ド
ノ程度ニマデ委任スルノデアルカト云フ、
其範圍ヲ示シテ戴カナケレバ、國民ハ枕ヲ
高クシテ居ラレナイト私共ハ考ヘルノデア
リマス(拍手)ソコデ第一ニ私共ノ問ヒタイ
點ト致シマシテハ、爲替集中主義ノ規定ハ
直チニ實施スル積リデアルヤ否ヤ、日本銀
行其他ニ爲替ヲ集中致シマスルト云フコト
ガ、是ガ一番私ハ目下ノ爲替ノ需給狀態ヲ
知ルコトニ付キマシテ、重大ナル、此點ガ、
懸フテ力ガアルカト私共ハ考ヘルノデアリ
マス、今日爲替相場ノ狀態ヲ見マスルニ、
大藏省ノ方ニ於キマシテハ、銀行間ノ取引
ニ付キマシテハ、昨日ノ取引ヲ翌日大藏省
ヘ報告スルコトニナテッ居ル、ソレハ分リマ
ス、銀行間以外ノモノハ本月分ノモノヲ
月報告スルコトニナリマシテ、一月遲レ
ルヤウナ壯態ニナッテ居リマス、斯ウ云フヤ
ワナ爲替ガ非常ニ動搖ガ激シクテ、而モ將來
ニ於キマシテ、日本ノ外交的方面ヤラ、日
本ノ内部ニ於ケル財界ノ狀況等、豫算ノ膨
脹、其他「インフレーション」政策等色々ナ
點カラ考ヘマシタナラバ、爲替ガドウ動ク
カ、殆ド見据エガ付カナイ、大藏大臣ガ此
間ノ議會ノ質問應答ノ時ニモ屢〓繰返サレ
マシタ如クニ、外交ニ於テモ、財政ニ於テモ、
經濟ニ於テモ、爲替ニ於テモ、殆ド見据ガ
付カナイト云フ今日デアリマシタナラバ、
爲替ノ需要ト供給ト云フモノガ、其日ニ一
目ニ明ニナルト云フ仕組ニシテ置クト云フ
コトガ、今日ノ場合私ハ目下ノ急務デナケ
レバナラヌト考ヘマス、此點カラ考ヘマシ
テ、爲替集中主義ヲ日本銀行ニ依フテ遣ラ
シマスルト云フコトガ、今日是ハ早イト云フ
人モアリマセウ、商取引ヲ非常ニ妨害シ、
貿易業者ハ嫌ヒマセウ、爲替銀行亦嫌ヒマセ
ウガ、此點ニ關シマシテハ委任等ノ方法ニ
依リマシテ、不便ヲ感ズル點ニ付キマシテ
ハ幾重ニモ是ハ除ク方法ガアリマス、目
下此集中主義ヲ第一ニ實行サレマシテ、爲
替ノ狀態ト云フモノ、卽チ我ガ收支ノ狀況
ト云フモノガ直チニ明カニナルヤウニシテ
置ケバ、公定相場ノ問題モ、先物引取ノ間
題モ、ソレカラモウ一ツハ思惑ノ問題モ、
是サヘ握クテ居レバ全般ニ於テ明デアル、私
ハ直グ是等ヲ止メルコトガ出來ルト考ヘマ
スルガ、此點ニ付キマシテ、高橋大藏大臣
ハ如何ナル御考ヲ御有チニナッテ居ルノデ
アリマセウカ、恐ラク政府ハ今日此必要ハ
ナイ、將來ニ於テモウ少シ事態ガ急迫シテ
來マシテ、二十弗以下ニドンノ〓下リ出シ
テ來タ時デナケレバ、此法ハ實行シナイト
云フコトヲ御答ニナルデアラウト私ハ想像
致シマスガ、併ナガラ私共ノ考カラ致シマ
シテハ、今日ノ外交狀態、今日ノ經濟狀態
ヲ考ヘマシタナラバ、必ズヤ此點ニ付キマ
シテ、今直チニ實行スルト云フコトガ、最
モ策ノ得タルモノデアルト云フコトヲ信ズ
ル者デアリマス(拍手)
第二ノ點ニ付キマシテハ、第一條ノ一デ
アリマス、卽チ外國爲替ノ取得又ハ處分ト
ナッテ居リマスルガ、多分此條項ノ中ニ含マ
レテ居リマス問題ハ、不必要ナル先物ノ取
引ノ制限若クハ取締ト云フコトヽ爲替ノ思
惑ト云フコトヲ、此點ニ於テ制限シ若クハ
取締ラントシテ居ルモノト私ハ考ヘマス、
是モ直チニ御實行ナスッタ方ガ宜シイト考
ヘルノデアリマスガ、此點ニ付キマシテ、
高橋大藏大臣ノ御所見ハ如何デアリマセウ
カ、昨年九月以來爲替ガ一一十弗ニ落込ミマシ
タコトニ付キマシテハ、爲替相場ノ所謂實際
上ノ需要供給ト云フ範圍外ニ於キマシテ、
不必要ニ綿ノ買付ノ如キハ、殆ド一箇年ニ
互ルマデノ-短イモノハ三箇月、甚シキ
ハ一箇年若クハ十箇月ト云フヤウナ先物ノ
取引ヲシタガ爲ニ、爲替ガ二十弗ニ落込ン
デ參ッタノデアリマス、更ニ「インター·バ
ンク」間ニ於テ「インター·バンク·ビヂネス」
卽チ銀行間ノ取引ニ於テ、非常ニ爲替相場
ノ思惑ヲヤリマシクガ爲ニ、又下落サシメ
マシタ點ガアリマス
〔議長退席、副議長著席〕
是等ノ點ハ直チニ取締ル必要ガアルト思ヒ
マスルガ、此法案ガ貴衆兩院ヲ通リマシテ
實施セラレマシタ時ニ於キマシテハ是ハ
直チニ私共ハ實施スベキデアルト考ヘマス
ルガ、大藏大臣ハ如何ニ御考ニナルノデア
リマセウカ
ソレカラ第三點ト致シマシテハ、是ハ無
爲替ノ問題ヲ禁止シテアリマス、無爲替ノ
問題ニ付キマシテハ資本逃避防止法ニ於
キマシテハ、是ハ禁止シテ居ナイ、第六十
三議會ニ於キマシテ、我黨ノ田中博士カラ
質問シマシタコトニ依リマシテ、此無爲替
ト云フコトニ初メテ政府ガ氣ガ付イテ、無
爲替ト云フモノニ依ッテ、資本逃避ガ行ハ
レルト云フコトヲ發見セラレタヤウナ次第
デアッテ、調査シテ見タ所ガ、政府ハ今日
マデ無爲替ハナイト云フコトヲ斷言セラレ
テ居リマスルケレドモ、私共ガ調査シマシ
タ所ニ依リマスト、昨年九月カラ十二月マ
デニ掛ケマシテ、無爲替ト云フモノガ、非
常ナ勢ヲ以テ行ハレ、資本逃避ヲシ出シタ
ト云フコトハ、是レ天下公知ノ事實デアフ
テ、恐ラク貿易及無爲替ニ關係シテ居ル人
人デ、此點ニ付テ知ラナイ人ハ一人モナイ、
知ラナイ者ハ大藏省若クハ高橋大藏大臣
ダケデアルト言ウテ宜イト私ハ考ヘマス
(拍手)而モ此無爲替タルヤ今日ハ無イ、何
故無イカト云ヘバ、爲替ガ二十弗若クハ二
十一弗見當デ安定シテ居ルカラ無イ、而シ
テ下ル傾向ヲ持ッテ來マシタナラバ、直チニ
此無爲替ハ出テ參リマス、其無爲替ガ一時
ハ臨時的無爲替デアリマシタガ、最近ハ經
常的無爲替ニナッテ參リマシテ、例ヘバ百万
圓ノ生絲ヲ亞米利加ニ輸出シタト致シマシ
テモ、二十万圓、二割ダケヲ向フニ置イテ、
アト八十万圓ダケヲ取寄セテシマッテ、何時
モ二割ヅヽズツト繼續シテ置イテ置キマシ
テ、是ガ甚シイ時ニハ爲替市場ニ對シテ、
七八千万圓ニ近イ所ノ無爲替ノ金額ガ現ハ
レテ居ル、是ハ實際貿易業者、自分ガ無爲替
ニ依ッテ資本逃避ヲヤッテ居ル人カラ、私共ハ
〓究シテ參ッタノダカラ、是程眞實ナコトハ
ナイト確信シテ參リマシタ、此無爲替ニ付
キマシテモ、直チニ是ハ實施スベキモノダ
ト考ヘルノデアリマスガ、大藏大臣ハ如何
ナル御考ヲ御有チニナッテ居ルノデアリマ
セウカ
ソレカラ第四點ト致シマシテハ、武田
君カラ御質問ガアリマシタカラ、私ハ詳ク
ハ申上ゲマセヌ、卽チ此法律ヲ讀ンデ見マ
スルト、爲替ヲ通ジテ貿易管埋ヲ行ハレル
ヤウナ法文ニナッテ居ルノデアリマスガ、果
シテ其積リデアルカ否ヤ、又ハソレデナイ
トシタナラバ單行法律デ外國デハ貿易管
理ヲ行ッテ居リマスガ、貿易管理ヲ行ハナ
ケレバナラナイヤウナ時ガ來タ場合ニ於テ
ハ、如何ナル方法ヲ執ラルヽカ、單行法
デヤルノデアルカ、此法律デヤルノデアル
カト云フコトダケヲ、私ハ承ッテ置ケバ宜
シイ
ソレカラ第五點ト致シマシテ私ノ承リタ
イ所ハ、今マデ資本逃避防止法ニ於キマシ
テモ、此爲替管理法案ニ於キマシテモ、非
常ナ用意周到ナ注意ヲ以テ、其資本ノ逃避
ト云フコトヲ防イデ居ラレルノデアリマス
ケレドモ、玆ニ一大缺陷ヲ私ハ發見スル
ノデアリマス、ソレハ爲替思惑及資本逃避
ノ目的ヲ有ッタ所ノ資金ニ對スル貸付ノ取
締及制限ヲ、政府ハ何故ニ漏シテ居ルノデ
アルカ、是ガ民間ニ於テモ重大ナル問題ト
ナッテ居リマシテ、某貿易會社ガアッテ、某
銀行ガアリマス、資金ハ自山自在ニナッテ
居リマス、金ノ貸手ガアルカラ資本ヲ逃避
スル人ガアルノデアリマス、金ノ貸手ガア
ルカラ爲替ノ思惑ヲヤル人ガアルノデアリ
やく、此根本ヲ取締リマシタナラバ、弘
資本逃避モ爲替ノ思惑モ、共ニ是ガ止リ易
イモノデアルト考ヘル、換言スレバ、爲替
思惑ノ取締ト資本逃避ノ拔本塞源ノ方法ヲ
講ズルコトガ、今日爲替相場ノ低落ヲ防ギ、
爲替ノ實勢力ヲ元ニ戾ス私ハ根本問題デ
アルト思フノデアリマス、之ニ付キマシテ
ハ銀行若クハ會社ニ對シテ檢査ヲセナケレ
バイカヌトカ、或ハ煩雜デアルカラムヅカ
シイトカ、資本ガ如何ナル用途ニ向フテ使ハ
レテ居ルカ不明デアルトカ云フヤウニ反
對論者モアリマスケレドモ、是ハ帳簿ヲ檢
査シ、資本ノ行方ヲ調査致シマシタナラバ、
掌ヲ指スガ如クニ明カナル問題デアリマシ
テ、取締ノ點ニ付キマシテハ、何等此點ニ
付テ私ハ心配ガナイト云フコトヲ考ヘル一
人デアリマス
ソレカラ其次ニ於キマシテ私ノ質問致シ
タイ點ハ現行資本逃避防止法ハ、僅ニ昨年
作ラレマシテ一年以上經ッテ居ナイ、其實施
ノ狀況ヲ見マスルニ、帳簿ヲ檢査シタリ、
帳簿ヲ取ッタリ、若クハ報〓ヲ取ッタダケデ
アリマシテ、大體ニ於テ統計ヲ取ッタニ過ギ
ナイ、殆ド大藏省ノ理財局ハ立派ナ明文ノ
法律ヲ持チナガラ、傳家ノ寶刀トシテ餘リ
出動シテ居ラナイ、理財局ハ統計局ノ感ガ
アッテ、監督局ニナッテ居ナカッタノデアリマ
ス、私共ハ役人ヲ咎メマセヌ、何トナラバ
役人ノ數ガ足ラズ、組織ガ狭小デアル、貨幣
ノ取引ハ世界ノ各地ニ於テ行ハレテ居リマ
ス、此世界ノ各地ニ於テ行ハレテ居ル貨幣
ノ取引ニ對シマシテ、十分ナル取締ヲ爲ス
ニ付キマシテハ、重要ナル都市ニ於テ、其
他ノ世界各地ノ要所ニモ人ヲ配置シ、若ク
ハ出來ナケレバ日本銀行若クハ正金銀行ノ
支店等ノ人ニ囑託致シマシテ、人員ヲ殖ヤ
シ、組織ヲモウ少シ大キナモノニシナケレ
バ現行法ガ十分ニ取締ガ出來ナイト同樣
ニ此爲替管理法案モ亦將來一片ノ空文ニ
ナルノデナイカト云フコトヲ、私共ハ心配
シテ居ル一人デアルノデアリマス
以上ノ點ニ付キマシテ高橋大藏大臣ヨリ
明快ナル御答辯ヲ得マシタナラバ、洵ニ幸
福ニ感ズル次第デアリマス、私ノ質問ノ要
旨ハ此處ニ書イテ置キマシタカラ、高橋大
藏大臣ガ之ヲ御讀ミ下サレマシテ、御答辯
下サレマシタナラバ洵ニ結構デアリマス
(拍手)
〔國務大臣高橋是〓君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X01419330216&spkNum=76
-
077・高橋是清
○國務大臣(高橋是〓君) 簡單ニ御答ヲ致
シマス、第一ハ本法案ニ基ク權限施行ノ程
度及範圍ハドウダト云フ御尋デアリマス
ガ、是ハ其時ノ必要ニ應ズルモノニシテ、
豫メ此處デ明言スベキモノデハアリマセ
ヌ
第二ハ爲替重心主義、是ハ直チニ實行シ
タラドウダ、現狀ニ於テ直チニ實行スル必
要ハマダナカラウト思ッテ居リマス
第三ハ先物取締ノ制限ヲ直チニ實行スル
カト云フ御問デアリマスルガ、今此處デ明
言ヲスルコトハ出來マセヌ、マダ其必要ヲ
ソレ程ニハ感ジテ居リマセヌ
ソレカラ第四ハ、無爲替ノ取締、是ハ無
爲替ハ絕對ニナイトハ私ハ言ッタコトハナ
イ、併シ非常ナ巨額ナモノガ無爲替デ行,
テ居ルト云フコトヲ承リマシタカラシテ、
詳細ニ實際ニ付テ取調ヲサセマシタケレド
モ、其實際ハ質問者ノ言ハレルガ如キ、巨
額ナ無爲替ハ行ハレテ居ラナイノデアリマ
ス
第五ハ、貿易管理ヲ行フ時ニ、本法ニ依
ルカ又ハ單行法律ヲ出スノカト云フ御尋デ
アリマス、大體本法ニ依ッテ取締ルコトガ
出來ルヤウニ大體出來テ居リマス、而シテ
本法ニ依ッテ爲シ得ルモノハ本法ニ依ルノ
デアリマシテ、其以外必要ガ起ッテ本法ニ
據リ難キモノハ、其時ニ又單行法律ヲ出ス
ト云フヤウナコトニナリマス
第六ハ、思惑ヲ行フ資金ノ貸付ヲ取締ル
意思ガナイカ、資金ノ貸借ヲ行フニ當リマ
シテ、是ハ思惑ヲヤル金ダト言ロテテ乘乘ヲテ
出ル者ハ一人モナイノデス、是ハ實行困
難、斯樣ナコトヲシナクトモ、此爲替管理
法ニ依ッテ、時々必要ナ手段ヲ採フテ參リマ
スレバ、今ノ御心配ニナルヤウナコトハ餘
リナクシテ濟ムト考へテ居リマス、是ダケ
御答致シマス
〔中島彌團次君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X01419330216&spkNum=77
-
078・中島彌團次
○中島彌團次君 只今私ノ質問致シマシタ
點ニ付キマシテ、高橋大藏大臣カラ御答ニ
ナリマシタガ、私共甚ダ不滿足ニ感ズル次
第デアリマス、何トナラバ、是ダケ廣汎ナ
ル權限ヲ政府ニ與ヘタ所ノ法律案ヲ出シテ
置キナガラ、ドレダケノ範圍內ニ於テ今日
是ガ出動ヲスルノデアルカ否ヤト云フ點ニ
付キマシテ、何等ノ御示シガナイト云フコ
トガ、是レ卽チ財界ニ向フテ最モ不安ヲ與
ヘト私ハ重大ナル原因デアルコトヲ痛感
スル次第デアリマス、此點ニ關シマシテ、
國民ノ權利自由ニ關スル重大ナル法案ガ現
レテ居ルニ拘ラズ、ソレヲ何時ドノ範圍ニ
於テ實行スルカト云フ點位ナコトニ付キマ
シテハ、高橋大藏大臣ハ此議會ヲ通ジテ天
下ニ聲明スル責任ト養務ガアルト云フコト
ヲ、私ハ痛感スル次第デアリマス
更ニ私ガ問ヒマシタ思惑賣買ト云フコト
ニ付テハ、ドウスルカト云フ點ニ付キマシ
テ、高橋大藏大臣ヨリ御答辯ガナカッタ、其
點ハドウ致シマスルカ、再ビ御尋シテ置キ
マス、先物ノ點ニ付キマシテハアリマシタ
ガ、思惑ノ點ニ付キマシテハナカッタノデア
リマス、更ニ無爲替ノ點ニ付キマシテ、無爲替
ガ斯ノ如ク巨額ノ資金ニ上ッテ居ナイ、實地
ヲ調査シタ所、ナイトハ言ハヌガト云フコト
デアルガ、大藏省ガ果シテ檢查ヲシタコトガ
アリヤ否ヤ、何故ニ大藏省ハ五大銀行其他
爲替取引ヲヤッテ居ル銀行ヲ檢査シナイカ、
ソコガ私共不思議ニ堪ヘナイ、檢査ノ權力
ヲ持チナガラ資本逃避防止法ヲ實行スル所
ノ點カラ考ヘマシテ、チットモ檢査シテ居
ルト云フコトヲ私共ハ聞カナイ、苟モ法ガ
アレバ法ヲ守ル所ノ手段方法ヲ講ズルト云
フコトハ私ハ當然ノ責任デナケレバナラ
ヌト考ヘル、此點カラ考ヘマシテ統計ヲ取
ルダケガ政府ノ能デハナイ、締計以外ニ遡ノ
テ、卽チ銀行ノ檢査、資本逃避防止ノ目的
カラ檢査スルト云フコトナラバ、直チニ檢
査スレバ、直チニソコデ資本ガ逃避シテ居
ルカ居ナイカ、ドノ御客ガドウ云フヤウナ
取引ヲシテ居ルカト云フコトガ、直チニ私
ハ明ニナルト考ヘル、此點ニ付テ-何故
ニヤラナカッタカト云フ點ニ付キマシテ、高
橋大藏大臣ニ私ハ再質問スル所以デアリ
マス
更ニモウ一ツノ點ニ付キマシテハ、資本
ガ思惑ノ爲ニ使ハレテ居ルノデアルカ、或
ハ資本ガ思惑ノ爲ニ使ハレテ居ナイノデア
ルカト云フコトハ、借リニ來ル人ハソンナ
事ハ言ヤセヌト云フコトヲ申サレマシタケ
レドモ、會社ト銀行ガ殆ド同一經濟狀態ニ
アル所ニ於キマシテ、資本逃避ヲスルトス
ルナラバ、思惑ノ爲ニヤルカ、若クハサウ
デナイ爲ニヤルカ、資本逃避ノ爲ニヤルカ
位ナコトハ、三歲ノ童子ト雖モ是ハ知ッテ
居ルベキ筈デアルト私ハ考ヘル、調査シナ
クトモ、何處カラ資金ガ出テ來テ、ソレガ
如何ニ思惑ニ使ハレテ居ルカ、如何ニ資本
逃避ニ使ハレテ居ルカト云フ點ニ付キマシ
テハ、是ハ一見明瞭デアリマシテ、此點ヲ
取締ラナケレバ、資本逃避防止法デモ、爲
替管理法デアリマシテモ、決シテ十分ナル
活動ハ出來ナイト云フコトヲ、私ハ玆ニ斷
言致シマシテ、高橋大藏大臣ニ再ビ答辯ヲ
促ス次第デアリマス(拍手)
〔國務大臣高橋是〓君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X01419330216&spkNum=78
-
079・高橋是清
○國務大臣(高橋是濟君) 思惑取引ト云フ
コトハ、是ハ無論取締ルノデアリマス、ソレ
カラ其他ハモウ御答スル必要ハナイノデア
リマス、唯先刻ノ御答ノ中ニ思惑ト云フコ
トガ漏レマシタカラ、ソレダケ補足シテ置
キマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X01419330216&spkNum=79
-
080・植原悦二郎
○副議長(植原悅二郞君) 野中徹也君
〔野中徹也君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X01419330216&spkNum=80
-
081・野中徹也
○野中徹也君 私ガ問ハント致シマスルコ
トハ多々アリマス、又此法案ノ根本趣旨ニ
關スル事柄ニ付キマシテ、政府ノ所見ヲ聽
キタイト思ヒマスル點ハ多々アリマスル
ガ、是等ノ問題ハ要スルニ吾々ノ主張ハ
吾々ノ主義ニ依フテ判斷セラルベキ問題デ
アリマスルカラ、勢ヒ長時間ヲ要サナケレ
バナリマスマイ、故ニ私ハ本日ハ此根本的
問題ニ付キマシテノ質疑ハ止メマス、又同
時ニ私ガ聞カント致シマスル事ニ於キマシ
テ、既ニ中島君ヨリ聞カレマシタコトモア
ルシ、或ハ武田君ヨリ聞カレマシタルコト
モアリマスカラ、サウ云フ重複スル問題ニ
關シテハ今日申上ゲマセヌ、唯極メテ簡單
ニ三ツノ點ニ付キマシテ、細カイ問題デハ
アリマスルガ、其問題ニ對スル政府ノ答辯
ヲ求メタイト考ヘマス
一ツハ、高橋大藏大臣ハ此爲棒管理法ノ目
的ハ、爲替ノ安定ニ非ズシテ、資本逃避ノ取
締ニアルト云フコトヲ言ッテ居リマスルガ、
私ハ今日ハ根本論ヲ言フノデアリマセヌ、條
文上ニ現ハレタ所ニ依リマスレバ、卽チ從來
ノ資本逃避防止法ニ依リマシテモ、取締ガ
十分出來タノデハナカラウカ、然ルニ其取
締ヲスルト云フコトノ目的ニ非ズシテ、爲
替ノ安定ヲ希望スルガ故ニ、特ニ第一條ノ
第五號、或ハ第七號、第九號、第十號ト云
フヤウナ規定ヲ設ケタノデハナカラウカ、
此事實的證明ニ依ッテ見ルナラバ、大藏大
臣ノ說明ハ資本逃避ノ取締デアルカノ如キ
狀態ヲ示シナガラ、眞實ニ於キマシテハ依
然ト致シマシテ、爲替ノ安定ヲ期待スルモ
ノデアラウト私ハ信ズルノデアリマス、故
ニ重ネテ此問題ニ對シマシテ、果シテ大藏
當局ハ爲替管理ノ眞個ノ目的ハ、爲替安定
ニアリヤ否ヤト云フ點ニ付キマシテノ御答
辯ヲ求メテ見タイト考ヘマス
更ニ此法案ノ內容ヲ審查致シテ見マスレ
バ、洵ニ大資本家ニ便宜ヲ與ヘマシテ、所
謂小資本家ニ對シマスル所ノ便宜ヲ與ヘル
コトヲ缺ク點ヲ見出スノデアリマス、ソレ
ハ卽チ第一條ノ第七號ニアリマスル「信用
狀ノ發行又ハ取得」ト云フコトデアリマ
ス、此外國貿易ガ信用狀ニ依リマシテ取引
セラレマスコトハ、皆様ノ御承知ノ通リデ
アル、信用狀ナシニヤラレマスルヤウナ取
引ハ、大體ハ大資本家ニ依ッテノミ行ハレ
ルコトデアリマス、然ルニ此法律ニ依リマ
シテ、信用狀ノ發行又ハ取得ト云フコトヲ
政府ノ管理ニ委ネルナラバ、其信用狀ヲ取
得スルニ當ノテ相當ノ時間ヲ要スルデアリマ
セウ、或ハ正金銀行、或ハ日本銀行、更一
大藏當局ノ認可ヲ得ルニ至リマスルナラ
バ其時間ハ可ナリ掛ルト見ナケレバナラ
又、殊ニ今日ニ於キマシテ色々ナ仕事ノ上
カラ見マシテモ、官僚ノ間ニ於キマスル事
務澁滯ハ吾々ガ幾度カ苦イ經險ヲ嘗メテ
居ル通リデアル、ソレデアリマスカラ、私
共ハ若シモ此信用狀ノ發行又ハ取得ト云フ
ノガ、如何ナル所ニ於キマシテ是ガ許可、
或ハ認可ノ方式ガ取ラレルカドウカハ分リ
マセヌガ、若シモ信用狀ヲ發行スルニ當リ
マシテ、非常ナ時間ヲ要スルナラバ、要ス
ルニ輸出入ニ對シテハ大資本家、卽チ信
用狀ナクシテモ輸入シ得ルヤウナ大資本家
ノミヲ擁護スルモノニシテ、事實商賣ノ都
合上カラ見テ、直チニ輸入シナケレバナラ
ヌト云フヤウニ考ヘテ居ル所ノ小資本家ヲ
擁護スルモノデナイト云フコトヲ、吾々ハ
玆デ發見ヲ致シテ居ルノデアリマス、故
此問題ニ關シマシテ、信用狀ノ發行竝ニ取
得ニ對シマシテハ、思フニ大資本家ノ擁護
デアルト思ヒマスルガ、之ニ對スル政府ノ
意思ハ何處ニアルカ、此問題ヲ承リタイト
考ヘマス
第三ニ、武田君カラ一應御質問ガアリマ
シタラシウゴザイマス、ソレハ此爲替管理
法ノ施行地域ノ問題デゴザイマス、眞個ニ
爲替管理ヲ行ハントスルナラバ、勿論日本
ノ內地ニ於キマスル所ノ爲替管理ヲ爲ス
バカリデナクテ、日本ノ貨幣制度ノ施行セ
ラレテ居リマスル或ハ關東州、或ハ滿鐵附
屬地内ニ於キマシテモ、當然此管理法ヲ施
行スベキガ當リ前デアリマセウ、併ナガラ
私ハ是ダケニ於キマシテハ、マダ所謂爲替
管理ノ實ヲ擧ゲ得ルコトハ出來ナイデアラ
ウト思フ、何故カトナレバ、成程大連或ハ
滿鐵附屬地ニ於キマシテハ、日本ノ此法
律ノ適用ヲ受ケルカモ知レマセヌガ、
朝滿鐵沿線ヲ離レテ數里ノ所ニ参リマス
ルナラバ、此法律ノ適用ヲ受ケルコトガ
出來ナイ、故ニ武田君ノ質問ノ通リ、唯
單ニ關東州或ハ滿鐵附屬地ノミナラズ、寧
ロ是ハ日滿兩國ノ間ニ此爲替管理法ノ問題
デ協議ヲ致シマシテ、而シテ此案ノ徹底的
遂行ヲ期スルヤウニナラナケレバ、眞ニ此
案ノ目的ヲ達スルコトハ出來ナイコトデア
ラウト思フ、故ニ私ハ大藏當局ニ向ッテ御
伺ヲスル、果シテ政府ハ此爲替管理法ノ施
行地域ト致シマシテ、關東州、滿鐵附屬地ニ
之ヲ及ボスノミナラズ、滿洲國ト協定ヲ致
シマシテ、更ニ此爲替管理ノ實ヲ擧ゲルヤ
ウナ意思アリヤ否ヤ、此問題ニ付キマシ
テ、極メテ單簡ニ大藏當局ノ意響ヲ求メタ
イト考ヘマス、其他澤山アリマスルガ、何
レ委員會ノ席上ニ讓リマシテ、極メテ單簡
ニ今ノ三問題ニ關シマシテ、大藏當局ニ御
質問ヲ申上ゲマス
〔國務大臣高橋是〓君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X01419330216&spkNum=81
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082・高橋是清
○國務大臣(高橋是清君) 第一ハ本法案ハ
爲替ノ安定ヲ目的トスルカト云フ御問デア
リマスガ、爲替ノ安定モ固ヨリ出來得ル範
圍ニ於テハ期待スルノデアリマス、第二ハ
信用狀ノ取締ハ大資本家擁護ニアラザル
カ、是ハ信用狀ハ差當リ貿易ニ關係ノナキ
モノヲ取締ルノデアリマス、貿易ニ關係ア
ル場合ニ於テモ、資本ノ大小ニ依ッテ取扱
ヲ異ニスルト云フコトハナイノデアリマ
ス、第三ハ關東州ニ取締令ヲ施行スルカ、
是ハ關東州ニモ施行スルコトヲ可ト認ムル
ノデアリマスルガ、關東州ノ通貨ノ制度上
ノ特徴モアリ、內地同樣ノ取締モ困難ナ點
モアルヤウデアリマスルノデ、目下關係方
面ト協議中デアリマス、又滿洲國トノ協定
ノ意アリヤト云フ御尋デアリマスルガ、目
下ノ所ハマダ其考ハアリマセヌ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X01419330216&spkNum=82
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083・植原悦二郎
○副議長(植原悅二郞君) 是ニテ質疑ハ終
リマシタ-日程第十二、右議案ノ審査ヲ
付託スヘキ委員ノ選擧ヲ議題ト致シマス
第十二右議案ノ審査ヲ付託スヘキ委
員ノ選擧発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X01419330216&spkNum=83
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084・上田孝吉
○上田孝吉君 本案ハ議長指名十八名ノ委
員ニ付託セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X01419330216&spkNum=84
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085・植原悦二郎
○副議長(植原悅二郞君) 上田君ノ動議ニ
御異議アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X01419330216&spkNum=85
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086・植原悦二郎
○副議長(植原悅二郞君) 御異議ナシト認
メマス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X01419330216&spkNum=86
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087・上田孝吉
○上田孝吉君 殘餘ノ日程ヲ延期シ、本日
ハ是ニテ散會セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X01419330216&spkNum=87
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088・植原悦二郎
○副議長(植原悅二郞君) 上田君ノ動議ニ
御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X01419330216&spkNum=88
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089・植原悦二郎
○副議長(植原悅二郞君) 御異議ナシト認
メマス、仍テ動議ハ可決セラレマシタ、次
會ノ日程ハ公報ヲ以テ通知致シマス、本日
ハ是ニテ散會致シマス
午後六時二十三分散會
衆議院議事速記錄第十三號中正誤
頁段行誤正
二〇三四五短期市ニ短期市場ニ
二〇四四七政府、財政、行政、財政、
二〇五一二アル云フコトアルト云フコ
)·トハ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X01419330216&spkNum=89
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