1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和八年三月七日(火曜日)
午後一時十六分開議
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議事日程 第二十二號
昭和八年三月七日
午後一時開議
質問
一 中小商工業者救濟の爲産業組合に對する特典撤廢竝之か取締に關する質問(磯部尚君提出)
二 競馬取締及改善に關する質問(本田義成君提出)
三 長野縣下教育界竝青壯年層に現れたる極左檢擧に關する質問(戸田由美君提出)
四 左傾運動取締に關する質問(世耕弘一君外一名提出)
五 陸軍造兵廠東京工廠小倉市移轉に關する質問(小池四郎君提出)
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第一 關税定率法中改正法律案(政府提出) 第一讀會
第二 昭和七年法律第四號中改正法律案(輸入税の從量税率に關する件)(政府提出) 第一讀會
第三 右各案の審査を付託すへき委員の選擧
第四 辯護士法改正法律案(政府提出) 第一讀會
第五 法律事務取扱の取締に關する法律案(政府提出) 第一讀會
第六 右各案の審査を付託すへき委員の選擧
第七 大正二年法律第九號中改正法律案(裁判所管轄區域に關する件)(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第八 小作調停法中改正法律案(牧野賤男君外九名提出) 第一讀會
第九 借地借家調停法中改正法律案(牧野賤男君外九名提出) 第一讀會
第十 刑事訴訟法中改正法律案(原夫次郎君外九名提出) 第一讀會
第十一 刑事訴訟法中改正法律案(原夫次郎君外十名提出) 第一讀會
第十二 民事訴訟法中改正法律案(中野勇治郎君外九名提出) 第一讀會
第十三 度量衡法中改正法律案(山下谷次君外二名提出) 第一讀會
第十四 度量衡法中改正法律案(武知勇記君外五名提出) 第一讀會
第十五 度量衡法中改正法律案(野田文一郎君外一名提出) 第一讀會
第十六 簡易森林火災保險法案(小山邦太郎君外十七名提出) 第一讀會
第十七 營業收益税法中改正法律案(木暮武太夫君外二名提出) 第一讀會
第十八 大正十五年法律第五十二號中改正法律案(土地區劃整理に伴ふ清算金に關する件)(安藤正純君外五名提出) 第一讀會
第十九 家祿賞典祿給與未濟に關する法律案(宮川一貫君外五名提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第二十 郷又は町村祿高に對し公債證書給與に關する法律案(寺田市正君外四名提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第二十一 大正七年法律第四十三號中改正法律案(地種變更免租年期に關する件)(木下成太郎君外十七名提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第二十二 原蠶種國家管理法案(胎中楠右衞門君外一名提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第二十三 古物商取締法中改正法律案(山本芳治君外二名提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第二十四 地方鐵道及軌道に對する地方税免除に關する法律案(本多貞次郎君外一名提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第二十五 地方鐵道及軌道に對する地方税免除に關する法律案(鵜澤宇八君外三名提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第二十六 衞生組合法案(野田文一郎君外四名提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第二十七 衞生組合法案(上田孝吉君外十四名提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第二十八 衞生組合法案(田中祐四郎君外六名提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第二十九 傳染病豫防法中改正法律案(野田文一郎君外四名提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第三十 傳染病豫防法中改正法律案(上田孝吉君外十四名提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第三十一 傳染病豫防法中改正法律案(田中祐四郎君外五名提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第三十二 國務院創設に關する決議案(野田文一郎君外四名提出)
第三十三 決議案(教育の根本的改革に關する件)(富田幸次郎君外十七名提出)
第三十四 決議案(思想惡化の對策に關する件)(櫻内幸雄君外十七名提出)
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001・秋田清
○議長(秋田〓君) 諸君、諸般ノ報告ヲ致
サセマス
〔書記官朗讀)
一政府ヨリ受領シタル答辯書左ノ如シ
衆議院議員磯部尙君提出中小商工業者救
濟ノ爲產業組合ニ對スル特典撤廢竝之カ
取締ニ關スル質問ニ對スル答辯書
衆議院議員木下成太郞君外三名提出思想
問題ニ關スル質問ニ對スル答辯書
衆議院議員本円義成君提出競馬取締及改
善ニ關スル質問ニ對スル答辯書
衆議院議員牧山耕藏君提出朝鮮ノ鐵道政
策ニ關スル質問ニ對スル答辯書
衆議院議員牧山耕藏君外一名提出輸出百
合根ニ關スル質問ニ對スル答辯書
衆議院議員戶田山美君提出長野縣下〓育
界竝靑壯年層ニ現レタル極左檢擧ニ關ス
ル質問ニ對スル答辯書
衆議院議員世耕弘一君外一名提出左傾運
動取締ニ關スル質問ニ對スル答辯書
衆議院議員中川觀秀君外一名提出米國布
哇及加州各港ニ於ケル日本船員ニ對スル
不法檢疫ニ關スル質問ニ對スル答辯書
衆議院議員中川觀秀君外一名提出高級船
員養成ニ關スル質問ニ對スル答辯書
衆議院議員小池四郞君提出陸軍造兵廠東
京工廠小倉市移轉ニ關スル質問ニ對スル
答辯書
(以上三月七日受領)
中小商工業者救濟ノ爲產業組合ニ對ス
ル特典撤廢竝之カ取締ニ關スル質問主
意書
右成規ニ據リ提出候也
昭和八年二月十四日
提出者磯部尙
中小商工業者救濟ノ爲產業組合ニ對
スル特典撤廢竝之カ取締ニ關スル質
問主意書
商工大臣農林大臣ニ對スル質問
近時中小商工業者ノ疲弊困態其ノ度ヲ極
ム其ノ素因一ニシテ足ラスト雖產業組合
ノ進展ト壓迫トニ因ル所甚大ナルモノア
リ產業組合モ商工業者ト齊シク利潤ヲ目
的トスル營業團體ナルニ國家ハ之ニ偏頗
ナル擁護ヲ與ヘ之カ保護助成ニ努ムルカ
爲ニ國家ノ中堅クル中小商工業者ヲ驅テ
自然沒落ノ道程ヲ迪ラシム政府ハ公正ノ
觀念ニ立脚シ產業組合ニ對スル不合理偏
頗ナル特惠ヲ撤廢シ中小商工業者ト產業
組合ト全ク平等ナル立場ニ於テ自由ノ經
濟戰ヲ行ハシムヘキ時期ニ到達シタリト
思惟セサルヤ
農林大臣ニ對スル質問
政府ハ近時購買組合及購買組合聯合會カ
自主的相互扶助ノ機關タル本分ヲ忘レ盛
ニ不正競爭ヲ敢テシ市價ヲ攪亂シ商取引
ヲ阻碍シツツアル不當背法ノ行爲ニ對シ
何故ニ之カ取締ヲ勵行セサルヤ
政府ハ現在購買組合及購買組合聯合會カ
農家ニ對シ一般肥料業者ヨリモ、ヨリ廉
價ニ、ヨリ良キ肥料ヲ配給シ居レリト思
惟スルヤ
大藏大臣ニ對スル質問
政府ヘ公租公課ヲ免除スル產業組合、商
業組合ノ進展ハ中央、地方ニ亙リ中小商
工業者ノ營業ヲ衰徴セシメ其ノ結果國家
ノ財政上ニ及ホス影響ノ甚大ナルモノア
リ更ニ中小商工業者カ配給上ノ圓滑ヲ期
スル爲消費スル運輸、電信、電話料等國
庫財源ニ寄與スル點ニ於テ漸次大ナル缺
陷ヲ釀シツツアルコトヲ如何ニ考慮スル
ヤ
右及質問候也
昭和八年三月七日
內閣總理大臣子爵齋藤實
衆議院議長秋田〓殿
衆議院議員磯部尙君提出中小商工業者救
濟ノ爲產業組合ニ對スル特典撤廢竝之カ
取締ニ關スル質問ニ對シ別紙答辯書差進
候
〔別紙〕
衆議院議員磯部尙君提出中小商工業者
救濟ノ爲產業組合ニ對スル特典撤廢竝
之カ取締ニ關スル質問ニ對スル答辯書
商工大臣、農林大臣ニ對スル質問ニ
對スル答辯
產業組合ハ一切ノ職業ニ亙ル中小產者
ノ相互組織ニ依リ其ノ產業又ハ經濟ノ
維持發達ヲ圖ルヲ目的トシ全然利潤ヲ
目的トセザル公益的團體ニシテ其ノ事
業ハ組合員ニ限ルヲ原則トシ現ニ農林
水產業者三百七十八萬人中小商工業者
八十二萬人等約五百萬人ノ中小產者之
ニ加入シ現下ノ異常ナル經濟不況ニ直
面シ何レモ之ニ依リ等シク其ノ產業經
濟ノ維持ニ努力シツツアル次第ニシテ
之ニ對シ所得稅、營業收益稅等ノ免除、
低利資金ノ供給又ハ助成金ノ交付等ヲ
爲スハ蓋シ必要且ツ妥當ナル制度ニシ
テ之ヲ撤廢スベキモノニ非ズト認ム
ニ、農林大臣ニ對スル質問ニ對スル答辯
產業組合ノ投機的行爲ノ禁止ニ付テハ
法律ハ制裁ヲ以テ之ニ臨ミ又常ニ監督
ニ付遺憾ナキヲ期シツツアル所ニシテ
購買組合及購買組合聯合會ガ特ニ投賣
等不正競爭ヲ敢テシ市價ヲ攪亂シタル
ガ如キ事實ハ之ヲ認メズ
政府ハ昭和五年度以來肥料配給改善ノ
一方策トシテ產業組合及其ノ系統機關
ヲ中心トセル施設ヲ實施シツツアル次
第ナルガ其ノ經過ヲ觀ルニ肥料ノ品質
ノ適正、價格ノ公正ヲ期スル上ニ於テ
大體所期ノ目的ヲ達成シツツアリト思
考ス
三、大藏大臣ニ對スル質問ニ對スル答辯
產業組合及商業組合ヲ營利團體ト同樣
ニ取扱フコトハ妥當ナラズ此等團體ニ
對シテハ其ノ性質ニ鑑ミ適當ナル保護
ヲ加フルノ必要アリト雖他面之ガ中小
商工業者竝ニ國家財政ニ及ボス影響等
ニ付テハ政府ハ篤ト實情ヲ調査シタル
上適當ノ措置ヲ講ズベシ
右及答辯候
昭和八年三月七日
大藏大臣高橋是〓
農林大臣後藤文夫
商工大臣男爵中島久萬吉
思想問題ニ關スル質問主意書
右成規ニ據リ提出候也
昭和八年二月十四日
提出者木下成太郞
外三名
思想問題ニ關スル質問主意書
本員ハ主トシテ思想問題ニ關シ內閣總理
大臣、外務大臣、內務大臣、司法大臣、
文部大臣、陸軍大臣及海軍大臣ニ對シ左
ノ質問ヲ爲サムト欲ス
一頃者日蘇兩國間ニ不可侵條約締結ノ
可否ニ關シ說ヲ爲ス者アリ而シテ過般
本議院ニ於テ內田外務大臣ハ不可侵條
約ノ締結ハ未タ可否何レトモ其ノ時機
熟セストノ所見ヲ陳へラレタル如キモ
今思想上ノ見地ヨリ之ヲ觀レハ我カ邦
共產黨ノ跋扈ハ策源ヲ蘇聯邦ニ發セル
ハ數次ノ共產黨事件ニ鑑ミテ明ナリ然
ルニ近時蘇支兩國ノ國交囘復シテ支那
共產黨ノ跳梁ニ機會ヲ與ヘタリ若今、
日蘇不可侵條約ノ實現ヲ見レハ彼此ノ
交通頻繁ナルト共ニ思想的交涉亦一層
ノ利便ヲ生スヘク斯クテ我カ邦ノ思想
界ニ新憂ノ因ヲ釀スコトナキヤヲ虞ル
右ニ對スル齋藤內閣總理大臣及內田外
務大臣ノ所見如何
二一月二十一日貴族院ニ於テ二荒伯爵
ノ思想問題ニ關スル質問ニ對シ齋藤內
閣總理大臣、鳩山文部大臣、荒木陸軍大
臣、大角海軍大臣、永井拓務大臣ノ爲
セル答辯ヲ聽クニ何レモ質問者ト等シ
ク日本ノ建國精神、〓育勅語、軍人勅
諭ノ御趣意ヲ以テ國民乃至軍隊ノ〓化
ヲ圖ルヘシト言ヘルハ本員亦感ヲ同シ
ウスル所ニシテ日本人タルモノハ忠孝
ノ大道ニ則リテ一切ノ行動ヲ規制スヘ
キハ勿論ナルモ只如何ニシテ〓育勅
語、軍人勅諭ノ御精神ヲ具現體得セシ
ムヘキカ其ノ〓育方法ノ具體策ニ關シ
テハ未タ政府ノ所信ヲ聽ク能ハサリシ
ハ甚タ遺憾ナリ
克ク日本建國精神、〓育勅語、軍人勅
諭ノ御趣意ヲ奉體スレハ人心安定シテ
我カ金〓無缺ノ國體ヲ繁榮セシムヘキ
ハ疑ナキ所ナリ然ルニ思想問題ヲ生シ
タルハ其ノ〓育方法ニ於テ缺クル所ア
リシニ非スヤ之ニ對スル政府ノ成案如
何
惟フニ思想界混亂ノ現代日本ニ於テ獨
リ軍隊ト司法官乃至警察官トハ畫忠至
誠ノ精神ト堅實ナル組織網トヲ以テ世
界ニ誇負セル所ナリシモ嚮ニハ所謂五·
一五事件ノ不祥事ヲ激成シテ陸海軍
軍紀ニ汚瀆ヲ點鐵シ又近クハ司法省不
祥事件ニ依リ神聖ナル裁判官中ヨリ赤
化主義者ヲ出シテ相共ニ天下ノ耳目ヲ
聳動セシメ榮譽アル右兩組織ニ龜裂ヲ
生セシメタリ更ニ今次ノ共產黨檢擧ニ
際シテ文部省直轄ノ最高學府ノ〓授ニ
シテ黨ノ指導ニ活躍セル事實ヲ暴露セ
リ斯ノ如キハ獨リ今囘ノミナラス過去
ニ於テ又現任〓授中ニモ我カ國體ト相
容レス或ハ軍隊ヲ蔑視シ或ハ國民思想
ヲ軟化シ惡化セシムルカ如キ思想ヲ抱
懷シテ之ヲ言論ニ表ハシ靑年學生延テ
ハ社會民心ニ惡影響ヲ及ホシツツアル
者アリ爲ニ一部ノ論者ハ帝大經法文學
部ヲ以テ日本赤化ノ總本山ナルカ如ク
呼稱シ其ノ廢止ヲスラ主張スル者アリ
以上ノ如ク其ノ統督スル部下ヨリ恐ル
ヘキ思想的犯罪者ヲ輩出シ或ハ危險ナ
ル言論ヲ爲シツツアルニモ拘ラス之カ
統督者ニ於テ何等責任ヲ感セサルカ如キ
態度ヲ爲シ且之カ防止策ニ關シ何等眞
實ナル具體策ヲ示サスシテ果シテ言フ
カ如キ建國精神ヲ發揮セシメ勅語、勅
諭ノ御趣旨ニ副フヘキ〓化〓養ヲ爲シ
得ヘキヤ嗟嘆ナキ能ハス是等ニ對スル
政府ノ所見如何
五箇條ノ御誓文ニハ「智識ヲ世界ニ求
メ大ニ皇基ヲ振起スヘシ」トアリ今智
識ヲ世界ニ求メムトシテ帝國大學ヲ造
リ畏レ多クモ却テ皇基ヲ危キニ陷シ入
ルルハ果シテ日本建國ノ精神ヲ發揮シ
タリト言フヲ得ヘキカ
〓育勅語ニハ「我カ臣民克ク忠ニ克ク
孝ニ億兆心ヲ一ニシテ世々厥ノ美ヲ濟
セルハ此レ我カ國體ノ精華ニシテ〓
育ノ淵源亦實ニ此ニ存ス」トアリ今己
レ惡ヲ爲セハ之ヲ社會ノ罪ニ歸シ權利
ノミ主張シテ義務ヲ行ハス不忠不孝ヲ
以テ利ヲ計リ勞資相爭ヒテ醜態ヲ演ス
ルノ思想瀰漫セルハ果シテ我カ國體ト
相容ルルト言フヘキカ此ヲ以テ〓育ノ
淵源ヲ得タリト言フヘキカ更ニ勅語ニ
「學ヲ修メ業ヲ習ヒ以テ智能ヲ啓發シ德
器ヲ成就シ」トアリ今學校ニ入リテ思想惡
化スルハ〓授ニ當フテ聖旨ヲ奉體シタル者
ト言フヘキカ又勅語ニ「進テ公益ヲ廣
メ世務ヲ開キ常ニ國憲ヲ重シ國法ニ遵
ヒ」トアリ今公益ヲ害シ世務ヲ塞キ國
憲ヲ紊リ國法ニ悖ル徒群ヲ爲スハ畏レ
多クモ我カ皇祖皇宗ノ盛德烈威ニ對シ
奉リ又我等カ祖先ノ醇風美俗ニ對シ何
ノ顏アツテ政府ハ文〓ノ任ニ當ルヤ文
〓ノ振興ハ皇道政治ノ第一義ニシテ國
家萬年ノ大計ナリ此處ニ政府ノ成案ヲ
聽カサルヘカラス
鳩山文部大臣ハ一月二十三日貴族院ニ
於テ二荒伯爵ノ質問ニ答辯シテ武ノ
明治大帝ノ賜パリマシタ〓育勅語ハ
若シ之ヲ外國人ニ讀マシタナラバ理解
ハ出來ナイ、ケレドモ此〓育勅語ハ日本
人ニシテ初メテ能ク了解スルコトガ出
來ルノデアリマス」ト申サレタリ勅語
ニハ「斯ノ道ハ······之ヲ古今ニ通シテ
謬ラス之ヲ中外ニ施シテ悖ラス」ト仰
セラル本員ハ勅語ノ大精神ハ古今東西
恆常ノ眞理ニシテ内外ノ別ナシト考フ
文部大臣ノ見解如何
更ニ文部大臣ハ「今日ノ思想界ノ弊風ヲ
無クナスニハ〓育勅語ノ大精神ヲ〓育
ノ力ニ依リ、或ハ一般ノ協合シタル努
力ニ依ツテ本ニ返スト云フコトガ、非
常ナ效果ヲ擧ゲルノデハナイカ知ラ
ン」ト申サレタリ本員ハ眞ニ〓育勅語
ノ大精神ヲ揚ケテ之ヲ危險思想ノ上ニ
加フレハ猶水ノ火ヲ消スカ如シト考フ
文部大臣ノ見解如何
又一月二十六日貴族院ニ於ケル加藤政
之助氏ノ質問ニ對シ鳩山文部大臣ハ
「學校ノ總テノ學科擔任〓師ヲシテ學
生生徒ノ思想善導ヲ行ハシムル方針ナ
リ」トノ意ヲ答辯シタリ總テノ〓師ヲ
シテ思想善導ヲ行フ能力ヲ與ヘ方法ヲ
整一ナラシメ以テ之ヲ指導スル思想主
任〓師トシテ我カ國體ニ醇化セル儒學
ヲ〓究セル〓師ヲ各學校ニ配屬スルハ
文部大臣ノ計畫遂行上極メテ有效適切
ナリト信ス文部大臣ノ見解如何
一月二十一日齋藤内閣總理大臣ハ其ノ
演說ニ於テ「近時危險思想ノ取締ニ付
テハ政府ニ於テモ十分考慮シ遺算ナ
カラムコトヲ期シテ居リマスケレド
モ、防遏ハ極メテ困難ナコトデアリ
マス」ト申サレタリ此ハ現下ノ思想
界ニ對シ政府ハ完全ナル文〓擔當
ノ力ナシトノ謂ナルカ總理大臣ヨリ自信
ナク成算ナクシテ天下ノ民ニ人心安定
ヲ大呼スルトモ何ノ益カ之有ラム更ニ
總理大臣ハ「今後モ益〓政治、〓育、其
他各方面ニ於テ、思想ノ善導ニ努力シ、
不祥事ノ根絕ヲ期シタイト思ヒマス」
ト述ヘラレタリ政府ハ果シテ如何ナル
政治〓育ヲ施設セラレタルヤ空言ハ以
テ天下ノ難ヲ救フニ足ラス今日ハ非常
時ナリ明日ヲ期スヘカラス卽座ニ如何
ナル對策ヲ施設シ抱負セラルルヤ本員
ノ切ニ聽カムト欲スル所ナリ大東文化
學院ニ於テハ智識ヲ世界ニ求メ大ニ皇
基ヲ振起スル爲旣ニ東洋政治學ナル新
學科ヲ創設實施シ居レリ之ニ對スル內
閣總理大臣ノ見解如何
要之政府ハ完全ナル文〓擔當ノ成案ヲ
有スルヤ
先日ヨリノ總理大臣又文部大臣ノ口調
ヨリ察スルニ政府ハ日本建國精神、〓
育勅語、軍人〓諭ノ大精神ヲ以テスル
モ猶且思想問題ヲ解決スルニ足ラスト思
料スルヤ我カ國ハ建國以來三千年日本
國體精神ヲ以テ元冦ノ如キ明治維新ノ如
キ明治二十七八年戰役更ニ明治三十七
八年戰役ノ如キ之ヲ今日ニ比較スレハ
假令非常時ト稱スレトモ遙ニ比較シ難
キ程ノ難局ヲモ克服シテ皇運ヲ隆昌ナ
ラシメ來レリ近ク其ノ國體精神ヲ如實
ニ表現セルモノハ五箇條ノ御誓文、勅
語、勅諭是レナリ令日ノ如キ時局ニ陷
リタルハ御誓文、勅語、勅諭ヲ奉體スル
コト厚カラス國體精神ノ涵養發揮十分
ナラサルニ出ツト察ス若今日ニ於テ一
旦翻然トシテ國體精神ノ涵養發揮ノ方
向ニ轉シ方法ヲ誤ルコトナクムハ大勢
ノ挽囘難事ニ非ス皇天后土未タ日本帝
國ヲ棄テサルヤ明ナリ政府ノ考察ノ徹
本ヲ望ム政府ハ今日文〓ノ任ニ當ル者
カ皆何レモ遺憾ナク日本建國精神、〓
育勅語ノ大精神ヲ奉體實現シ居レリト
思料スルヤ以上ニ付總理大臣、文部大
臣、陸軍大臣、海軍大臣ノ所見ヲ問フ
三赤化思想取締ノ必要上嚮ニ治安維持
法ヲ制定シ後其ノ科刑ヲ改メテ同法ノ
違反者ヲ死刑ニ處シ得ルノ重刑罰主義
ヲ採レルニモ拘ラス數次ノ共產黨事件
ニ於テ檢擧者數ヲ遞增シツツアルノ事
實ハ抑何事ヲ物語リツツアリヤ而シテ
其ノ原因トスル所ハ法ニアリヤ將又他
ノ社會的事情ニアリヤ總理大臣、、內務
大臣及司法大臣ノ所見ヲ問フ
四文部省ハ〓ニ精神文化〓究所ヲ設置
シテ以テ古典〓育ヲ〓究セシメ健實ナ
ル〓究生ヲ養成シテ國民精神涵養ニ資
スル所アラムトスルカ如キモ多數ノ直
轄專門學校等ニ於テ赤化主義著ヲ頻出
シツツアル現狀ニ於テ果シテ右〓究所
ノ實效ヲ擧ケ得ルヤ否ヤ大ナル疑ナキ
能ハス由テ文部省ハ右〓究所ト相俟テ
今一段ト古典〓育ノ普及徹底ヲ圖ルノ
意思ナキヤ
例之中學校女學校實業學校ハ勿論高等
專門學校ニ於テ漢文、國語、歷史等ノ
科目ニ力ヲ注キ利便主義〓育ヲ排シテ
鍛鍊主義〓育ニ依リテ生徒學生ノ精神
發奮ノ方法ヲ講スヘシ
右ニ關シ文部大臣ノ所見ヲ問フ
右及質問候也
本質問ニ對シテハ書面ヲ以テ答辯アラ
ムコトヲ望ム
昭和八年三月七日
內閣總理大臣子爵齋藤實
衆議院議議長秋田〓殿
衆議院日木下成太郞君外三名提出思想
問題ニ關スル質問ニ對シ別紙答辯書差進
候
〔別紙〕
衆議院議員木下成太郞君外三名提出思
想問題ニ關スル質問ニ對スル答辯書
日「ソ」不侵略條約ノ締結ハ各般ノ
事情ニ顧ミ未ダ其ノ時機熱シ居ラザル
モノト認ムルモノナル處政府ハ之ガ締
結ト我國ノ共產主義運動トノ關係ニ關
スル問題ニ就テモ深ク考量ニ入レ居ル
次第ナリ
二現下ノ狀勢ニ於テ我カ同胞中雜然タ
ル詭激ノ思想ニ迷ハサレ日本建國ノ精
神、〓育勅語ノ大精神ニ徹セス我國體
ニ戾ル言行ヲ敢テスルモノヲ生ゼシメ
ツツアルハ誠ニ遺憾トスル所ニシテ我
國民タルモノノ深ク反省セザルベカラ
ザル所トス我陸軍ニ於テ軍隊〓育ニ任
ジ或ハ學校〓育ニ參與シ或ハ〓ニ在テ
靑年訓練ニ從フモノハ何レモ我建國ノ
理想竝〓育勅語竝軍人ニ賜リタル勅諭
ノ聖旨ニ基キ日夜其ノ職務ニ盡瘁シツ
ツアリ唯此等多數ノモノノ內未ダ其ノ
徹底ノ程度ニ關シ十全ナラザルモノナ
キニ非ザルハ深ク省慮セザルベカラザ
ル所ナルモ目下全力ヲ盡シテ皇軍意識
ノ擴充ニ努メ之カ徹底ヲ圖リ尙關係當
局ト連絡協同シテ其ノ根本方法ノ實施
ニ努メ速ニ其ノ目的達成ヲ期シツツア
リ
〓育勅語、軍人勅諭ノ御精神ヲ體得シ
建國精神ヲ徹底セシムルコトニ就テハ
各指導者ノ垂範實踐ヲ本旨トシテ銳意
努力シ來リシニ拘ラズ一般社會狀勢ノ
不安思想的動搖等ノ刺戟ヲ受ケ海軍部
內ヨリモ思想的犯行者ヲ出スニ至リシ
コトハ眞ニ遺憾トスル所ナリ
御說ノ如ク我ガ國カ過去ニ於テ數次ノ
國難ヲ克服シテ皇運彌々隆盛トナレル
ハ炳タル國史上ノ事實ニシテ指導宜シ
キヲ得バ現下ノ思想的危機ヲ說却シテ
發展ノ一路ニ轉ズルコト難キニアラザ
ルハ信ジテ疑ハザル所ナリ
海軍トシテハ右ノ信念ニ基キ目下銳意
外部ヨリスル危險思想侵潤ノ防遏ニ努
ムルト共ニ部內一般ニ對シ誠心誠意勅
語、勅諭ノ大精神ヲ徹底セシメ以テ過
去ノ如キ不祥事ノ再起ナカランコトヲ
期シツツアリ
尙思想問題ノ解決ニハ此際官民一致ノ
協力ヲ切望スル次第ナリ
三治安維持法改正ノ結果其ノ刑罰加重
セラレタルニ拘ラズ同法違反者依然ト
シテ跡ヲ絕ツニ至ラズ却テ被檢擧者ノ
遞增ヲ見ツツアルハ事實ニシテ其ノ原
因ハ主トシテ經濟界ノ不況其ノ他內外
ニ於ケル社會事情ニ因ルモノト認メラ
ルルモ治安維持法ニ依ル取締ニ付テモ
十分考慮シ違算ナカランコトヲ期シツ
ツアリ
四現下ノ思想問題ニ關シテハ我ガ國建
國ノ精神ヲ明カニシ又〓育勅語ノ御趣
旨ヲ奉體シテ之ヲ學校〓育、社會〓育
等ノ上ニ徹底セシムルハ謂フマデモナク
最モ根本的方策ニシテ之ニ依リテ現下
ノ思想界ノ弊風ヲ矯正善導シ得ベキモ
ノナルコトハ之ヲ確信シテ疑ハザルナ
リ而シテ斯ノ如キコトハ從來〓育施
設ノ上ニ於テ其ノ實現ニ努力シ來リタ
ル處ナレドモ近時社會思想ノ動搖ニ伴
ヒ外來ノ詭激ナル思想ノ侵入ヲ見、遂
ニ現在ノ如キ思想問題ヲ生ジ〓育勅語
ノ御趣旨ニ反スルガ如キ者ヲ出スニ至
リタルハ最モ遺憾トスルトコロナリ、
今後ハ一層敍上ノ點ニ留意シ益々之等
國民トシテノ根本的ナル〓育ニ關シ其
ノ方法ヲ〓究シ以テ十分ナル效果ヲ擧
ゲンコトヲ期シツツアリ
文部省直轄學校ノ〓授ノ內ヨリ共產黨
事件ノ關係者ヲ出シタルコトハ甚ダ遺
憾ニ堪ヘザル所ナリ、凡ソ此等ノ指導
的地位ニ在ル學者ノ思想學問ハ現時ノ
如キ思想界ノ實狀ニ在リテハ特ニ注意
ヲ要スベキハ明白ナルヲ以テ文部省ニ
於テハ將來一層十分ナル調査ヲ爲シ我
ガ國體觀念國民精神ノ大本ヲ謬ラシメ
ザル樣考慮シ居レリ
而シテ斯ル事件ヲ惹起シタルコトハ當
局者トシテハ最モ遺憾トスル處ニシテ
將來此等ノ事件ニ鑑ミ其ノ弊風ヲ矯正
スルノ點ニ就テ最善ノ努力ヲ拂ヒツツ
アリ〓育ニ關スル勅語ノ御趣旨ハ我ガ
國民ノ履ムベキ最高ノ道ナルト同時ニ
廣ク人ノ守ルベキ眞ノ道ニシテ卽チ古
今ニ通ジテ謬ラズ中外ニ施シテ悖ラザ
ル大道ナリ、從テ斯ノ道ハ我ガ日本國
民ニ於テ又我ガ國ノ歷史ニ於テ最モ明
カニ現ハレ居ル所ナレドモ之ヲ廣ク外
國人ニ及スモ亦其ノ履ムベキ眞ノ道ナ
ルコトヲ確信スルモノナリ
學校ニ於テハ獨リ修身科ノ〓員ヲシテ
生徒ノ思想ノ善導ニ當ラシムルノミナ
ラズ凡テノ〓師ヲシテ思想ノ方面ニ關
スル十分ナル理解ヲ有セシメ全校〓員
協力シテ其ノ效果ヲ擧ゲシメザルベカ
ラズ儒學ハ東洋精神文化ノ精髓ヲ傳ヘ
タルモノニシテ思想善導上ニモ大ニ力
アルモノナル事ヲ認ム卽チ今日各學校
ニ於テ漢文ニ關スル學科目ヲ設ケラレ
居ル所以ニシテ政府ニ於テハ將來斯ノ
如キ學科目ノ〓授ヲシテ益々共ノ效果
ヲ收メシメンコトヲ期シ居レリ
之ヲ要スルニ我ガ國體、我ガ國民精神
ノ眞義ヲ發揚シ〓育勅語ノ趣旨ヲ奉能
シテ〓育ノ上ニ十分徹底セシムルノ方
法ヲ講ズルハ思想善導上ノ根本的方法
ナリト思料ス故ニ文部省ニ於テハ各學
校ニ於テ此ノ方面ニ關スル精神〓育ヲ
一層十分ナラシムルコトヲ期スルト同
時ニ國民精神文化〓究所ヲ設置シ先ヅ
全國師範學校〓員等ヲシテ我ガ國建國
ノ精神、我ガ國體觀念ニ就キテノ〓養
信念ヲ十分ナラシムル等出來得ル限リ
ノ方法ヲ講ジツツアリ又我ガ國ノ古典
ヲ〓究シ以テ我ガ國民文化ノ基ヲ明カ
ニスルハ最モ肝要ナル事項ニシテ之ヲ
各學校ノ〓員ニ徹底セシメントスル國
民精神文化〓究所ノ事業ハ卽チ古典〓
育ノ眞ノ普及ヲ圖ル所以ナリト思料
ス、尙中等諸學校ニ於テハ歷史、漢文、
國語等ノ科目ニ力ヲ注ギ又生徒ノ心身
ノ鍛鍊ヲ重ンズルコトハ極メテ肝要ナ
リト思料ス
右及答辯候
昭和八年三月七日
內閣總理大臣子爵齋藤實
內務大臣男爵山本達雄
外務大臣伯爵內田康哉
陸軍大臣荒木貞夫
文部大臣鳩山郞
司法大臣小山松吉
海軍大臣大角岑生
競馬取締及改善ニ關スル質問主意書
右成規ニ據リ提出候也
昭和八年二月十六日
提出者本田義成
競馬取締及改善ニ關スル質問主意書
現今競馬倶樂部ノ組織及競馬施行ニ
關シ不法不當ナル行爲ノ行ハレツツア
ルハ畢竟競馬ニ關スル事項ヲ農林省ノ
一局下ニ於テ專行スルヨリ生スル弊ナ
リト信ス競馬ノ施行ハ國家ノ重大ナル
事業ノ一ニ屬シ其ノ監督ハ特ニ嚴肅ナ
ルヲ要ス故ニ之ヲ陸軍省ニ移管シテ其
ノ改善發達ヲ期スルヲ至當ナリト信ス
之ニ對スル農林大臣ノ所見如何
二、昭和二年中山競馬倶樂部理事長肥田
金一郞ハ時ノ農林大臣山本悌二郞閣下
ニ陳情書ヲ提出セリ該陳述書ハ神戶市
乾新兵衞ト中山競馬倶樂部トノ醜關係
ヲ具陳シ縷縷其ノ倶樂部成立ニ關スル
不法不正ヲ摘出シ乾新兵衞ト其ノ一黨
カ如何ニ惡辣不法ナルカヲ詰ツテ密ニ
倶樂部關係ヨリ乾ト其ノ一黨ヲ追出サ
ムト相謀リタルモノノ如ク或ハ「神戶
市乾新兵衞氏ハ其ノ金融事業ノ目途ニ
依リ瞬然同倶樂部ニ因緣ヲ生シタルモ
ノニ有之面モ其ノ隱然タル因緣ハ倶樂
部定款ノ明文ニ遠反セル行爲ニ基因ス
云々」、或ハ「醜聞續出シテ遂ニ心アル
世人ヲシテ同倶樂部ヲ解散スルニ若カス
トマテ思ハシメ所謂小人玉ヲ抱イテ
罪アリ云々」、或ハ「乾氏カ會員ヲ整理シテ
其ノ入退會ヲ爲サシメタルハ全然一時
ノ便宜ニ基ケルコトニ係リ唯其ノ結果
ノ良好ナル場合ニ於テノミ暫ク主務官
廳モ之ヲ默認セラレタルモノ」ト記シ
主務官廳タル農林省カ中山競馬倶樂部
ニ對スル監督ノ嚴肅ナラサル點迄モ暴
露セリ斯ル陳情書ヲ一度農林省ニ提出
シタルコトアル肥田カ其ノ後乾ト其ノ
一黨トノ間ニ特種ノ諒解ヲ得タルト見
エ現在ニ於テハ乾ノ走狗ノ如ク番頭ノ
如ク而モ同倶樂部理事長ノ地位ニ居ル
ハ社會正義ノ見地ヨリスルモ許スヘカ
ラサルモノナリ尙之ト同時ニ其ノ虚僞
ヲ默過スル當局ノ措置ニ付テハ吾人ハ
疑念ヲ抱カサルヲ得ス之ニ對スル農林
大臣ノ所見如何
三、競馬倶樂部會員ノ入會及退會ハ最
モ嚴正公平ナラサルヘカラス然ルニ
前項ノ陳情書ノ一節ニモアル如ク中山
倶樂部ノ會員ノ入會ハ一ニ乾一派ノ
壟斷ニ依リ總テ乾一己ノ利益トナル
會員ノミヲ入會セシメ倶樂部自體
ノ利益トナル會員ハ一名モ入會セシ
メス以テ乾ノ利益ノ會員ノミヲ其儘今
日迄認メ置クハ不當ナラスヤ而モ理事
長肥田金一郞ハ右ノ不正不當ナル事實
ヲ默認シテ何等恥チサルハ不都合モ甚
シキ措置ニシテ到底嚴正公平ハ期シ難
シ農林當局亦之ニ對シ何等彈壓ヲ下サ
スシテ之ヲ放置スルハ其ノ責任重大ナ
リト信ス之ニ對スル農林大臣ノ所見如
何
四、競馬施行ニ依ル倶樂部ノ收得金流用
ニ關シテハ當然主務官廳ノ許可ヲ受ク
ヘキモノナルニ昭和四年春中山競馬倶
樂部理事橋本信次郞退會ノ際ニ於テ其
ノ功勞金トシテ金四萬圓ヲ不當ニ支出
シテ之ヲ隱蔽セリ然ルニ農林當局ハ漸
ク昭和七年十一月ニ至リ此ノ事實ヲ發
見シ單ニ理事長ノ名ニ於テ之ヲ補塡セ
シメ以テ之ヲ糊塗セリ斯ル不法ナル行
爲ヲ爲セル者ヲシテ理事長ノ重要職務
ヲ續行セシムル農林當局ノ措置ハ許ス
ヘカラサルモノナリト信ス農林大臣ノ
明答ヲ求ム
五、斯ル不法不正ナル行爲アルニ拘ラス
農林當局ノ監督行屆カサル原因ハ農林
省カ其ノ退官セル者ヲ競馬倶樂部ニ採
用セシムルヨリ生スル私緣關係ノ弊ニ
シテ是レ綱紀肅正上由由シキ重大問題
ナリト信ス之ニ對スル農林大臣ノ所見
如何
六、競馬ノ審判ハ嚴正公平ニシテ決シテ
私心ヲ挟ムヘカラサルモノナルニ昭和
七年秋季中山競馬會第三日卽チ十一月
二十一日ノ第六速步競走ニ於テ一著セ
ル「ジユウライ」號ノ失格問題ヲ惹起シ
タルコトアリ此ノ競走ニ於ケル13/4
ウライ」號ノ一著ハ絕對正當ニシテ觀
衆黨場一人トシテ其ノ失格ヲ是認スル
者ナカリキ然ルニ倶樂部理事者ハ遂ニ
失格ヲ確定シ大衆ノ種種ナル抗議ニ對
シテハ不當ニモ遁辭ヲ以テ葬リ一時ヲ
糊塗シテ何等恥ツル所ナシ實ニ理事者
ノ無責任言語道斷ニシテ是亦理事長タ
ル肥田金一郞ノ重大責任ナリ
人格上ニ多大ノ疑念アル理事長肥田金
一郞ノ言ヲ信シテ大衆ノ絕對ニ首肯ス
ヘカラサル審判ヲ認メタル農林當局ノ
措置ハ是認セラルヘキモノナリヤ若萬
人ノ利害關係ノ最深キ大衆カ不當ト認
メ承認セサル審判ヲ理事長肥田金一郞
一人ノ鑑識ヲ是トシ大衆ノ鑑識ヲ非ト
シテ無法ナル不正審判ヲ行使スルハ社
會風〓上及思想上ニ害ナキモノト認ム
ルヤ之ニ對スル農林大臣ノ所見如何
七、以上ノ如ク現在ニ於ケル競馬界ハ理
事者自ラ公然不法不當ナル行爲ヲ敢テ
シ農林當局亦取締嚴ナラサルヲ以テ其
ノ腐敗モ甚シ故ニ本員等ハ競馬ノ改善
及嚴正ナル監督ヲ痛感スル所以ナリ若
之ヲ現時ノ儘放置セムカ競馬法ノ精神
ハ全ク有名無實ニ終リ延テハ國家ノ安
寧秩序ヲ保持スル能ハサルヲ以テ寧ロ
競馬法ヲ廢止スルヲ適當ナリト信ス之
ニ對スル農林大臣ノ所見如何
右及質問候也
昭和八年三月七日
內閣總理大臣子爵齋藤實
衆議院議長秋田〓殿
衆議院議員本田義成君提出競馬取締及改
善ニ關スル質問ニ對シ別紙答辯書差進候
〔別紙〕
衆議院議員本田義成君提出競馬取締及
改善ニ關スル質問ニ對スル答辯書
一、競馬倶樂部ノ組織及競馬ノ施行ニ付
テハ競馬法ニ基キ嚴正公正ナル監督ヲ
爲シ居レリ而シテ其ノ所管ニ付テハ現
行通リヲ適當ナリト認ム
二、昭和二年中山競馬倶樂部常務理事ク
ル肥田金一郞ヨリ陳情書ノ提出アリタ
ルハ車實ナルモ倶樂部會員ノ入退會及
役員ノ選任等ニ關シ何等違法ト認ムヘ
キ點無ク又當局ニ於テ虛僞ヲ默過シタ
ル事實ナシ
三、競馬倶樂部ハ民法第三十四條ニ依ル
公益法人ニシテ之ニ對シ競馬法ニ依ル
競馬施行ノ許可アリタルモノナルヲ以
テ現行ノ競馬法及民法上ヨリ觀レハ會
員ノ入退會ニ付テハ倶樂部ノ自治ニ任
スヲ建前トスルモ競馬法ノ趣旨ニ鑑ミ
倶樂部事業ノ遂行ニ付テハ常ニ嚴重ナ
ル監督ニ努メ其ノ圓滿ナル發達ヲ期シ
ツツアリ
四、倶樂部退職理事ニ對スル慰勞金假拂
ノ件ニ付テハ當局ニ於テ倶樂部ノ會計
檢査ヲ爲シタル結果右假拂ノ事實ヲ發
見シタルモノニシテ其ノ不當支出ナル
コトヲ認メタルヲ以テ理事者ノ責任ニ
於テ之ヲ補塡セシメ且嚴重ナル注意ヲ
加ヘテ其ノ將來ヲ戒飭シ置キタリ
五、競馬但樂部ノ役職員中ニハ農林省其
ノ他官廳ノ職員タリシモノアルモ右ハ
競馬ニ關スル知識經驗ヲ有スル爲倶樂
部ノ囑望ニ依リ其ノ職ニ轉シタルモノ
ニシテ之カ爲私緣關係ニ依リ監督上ニ
累ヲ及ホシタルカ如キ事實ナシト認ム
六、速步競走ニ於テハ競走中駈歩ニ依リテ
凍度ニ利益ヲ得タル馬ハ勝馬タルノ資
格ヲ失フコト竝ニ右審判ハ開催執務委
員長、馬場取締、決勝率判係、走路審判
係等ヲ以テ構成スル審判機關ノ決定ス
ヘキモノナルコトハ競馬施行規程ノ明
白ニ規定スル所ナリ本件「ヂユウライ」
號失格ノ決定ハ觀衆ヨリ數百米遠方ニ
在ル走路審判係ガ其ノ目前ヲ通過スル
「ヂユウライ」號ニ付判定シタル所ニ基
クモノニシテ結局正規ノ機關ニ依リ決
定シタル上ハ之ヲ是認スルノ外ナキモ
ノトス
七、競馬ノ監督ニ付テハ競馬法ノ精神ニ
基キ從來ヨリ嚴正公平ナル監督ヲ爲シ
來レルモ競馬事業ノ隆盛ニ伴ヒ益〓其
ノ監督ニ留意スルト共ニ競馬ノ改善ヲ
圖リ競馬法ノ立法趣旨ヲ發揮スルニ努
メムトス
右及答辯候
昭和八年三月七日
農林大臣後藤文夫
朝鮮ノ鐵道政策ニ關スル質問主意書
右成規ニ據リ提出候也
昭和八年二月十七日
提出者牧山耕藏
朝鮮ノ鐵道政策ニ關スル質問主意書
第東洋ノ平和ト帝國ノ安寧ヲ維持ス
ル上ニ於テ如何ニ朝鮮カ重大ナル使命
ヲ有スルカハ今更喋喋ノ要ナク滿洲國
新興ノ今日更ニ朝鮮ノ產業開發上將又
國防上交通ノ普及發達ノ必要ナルハ言
ヲ須フルヲ要セサル所ニシテ現下世界
大勢ノ推移ヨリシテ愈益其ノ必要ヲ痛
感スルハ敢テ識者ヲ俟ツ迄モナキ所ナ
リ此ノ見地ヨリシテ第五十一回議會ニ
貴族院及衆議院ニ提出セラレタル左記
建議案ニ對シ政府ハ如何ナル考慮ヲ拂
ヒ如何ナル〓究ヲ爲シタルカ
大正十五年第五十一囘議會貴族院
ニ提出セラレタル建議案(本會議、滿
場一致可決)
發議者
淺田德則男爵福原俊丸
山之内一次西久保弘道
佐竹三吾
贊成者
公爵近衞文麿外三十七名
朝鮮ニ於ケル鐵道ノ普及促進ニ關ス
ル建議
朝鮮ニ於ケル產業ノ振興文化ノ開發竝
國防及警備ノ爲更ニ一層鐵道ノ普及促
進ヲ圖ルハ頗ル緊要ノ事タリ依テ政府
ハ速ニ鐵道網ノ調査ヲ完了シ之カ敷設
ノ計畫ヲ樹立スルト共ニを設鐵道ノ助
長發達ニ付適切有效ナル方策ヲ講セラ
レムコトヲ望ム
右建議ス
二大正十五年第五十一囘議會衆議院
ニ提出セラレタル建議案(各派聯合
提出、日程ニ上リタルモ議決ニ至ラ
ス)
提出者
牧山耕藏箕浦勝人
川原茂輔山本条太郞
松田源治松山常次郞
橫山金太郞西英太郞
本多貞次郞高木益太郞
野田俊作湯淺凡平
佐藤潤象河崎助太郞
田中讓
贊成者
元田肇外百四十五名
朝鮮ニ於ケル鐵道ノ普及促進ニ關ス
ル建議
東洋現下ノ情勢ニ鑑ミ朝鮮ノ統治國防
警備產業ノ振興文化ノ開發上朝鮮ニ於
ケル鐵道ヲ普及促進セシムルノ要アリ
政府ハ速ニ左記數項ヲ實行セラレムコ
トヲ望ム
-朝鮮ニ於ケル樞要ナル鐵道ハ國
有ト爲スノ根本方針ヲ樹立シ樞要
ナル私設鐵道ハ漸次之ヲ買收スル
コト
二朝鮮ニ於ケル鐵道敷設ニ關スル
法律ヲ制定シ豫算ノ確定セル旣定
計畫ノ外略二千哩ノ鐵道敷設ヲ今
後十八年以內ニ完成スヘキ計畫ヲ
確立スルコト
三現行朝鮮私設鐵道補助法ノ八分
補給ヲ改善シ未成線ノ速成ヲ圖ル
コト
右建議ス
第二然ルニ政府ハ以上ノ建議アリタル
ニ拘ラス議會ノ協賛ヲ經タル朝鮮國有
鐵道ノ所謂十二年計畫ナルモノノ年度
割二千五百萬圓ハ實施後幾何モナク半
減セラレ昭和七年度ニ於テ僅ニ三百萬
圓ヲ復活シ年額千五百五十萬圓ヲ計上
シタルノミニテ爲ニ十一一年計畫ノ根本
ハ破壞セラレ滿洲國新興ノ今日尙依然
トシテ姑息ナル建設ニ甘ムスルカ如キ
ハ餘リニ朝鮮ヲ輕視シ日鮮併合ノ詔勅
ノ御趣旨ニモ反スルモノト謂フヘキモ
ノニシテ政府ハ斯ノ如キ狀況ヲ以テシ
テ尙且國防上及產業上遺憾ナシトスル
カ如何
政府ハ或ハ十二年計畫ハ後年度ニ於テ
年度割ヲ增加シ既定年度內ニ完成スヘ
シト謂フヘキモ這ハ一ノ詭辯ニシテ後
年度ニ於テ朝鮮ノ鐵道建設費トシテ年
額五千萬圓乃至六七千萬圓ヲ支出スル
ト謂フカ如キハ事實不可能事ナリト認
ム
更ニ政府ハ昭和七年度ニ於テ約七億圓
又本年度豫算ニ於テ約十億圓ノ公債ヲ
發行シ非常救濟又ハ軍備整備ヲ斷行セ
ムトスル今日僅僅一千萬圓乃至二千萬
圓ノ支出ヲ吝ミ朝鮮ニ於ケル緊要ナル
施設ヲ怠ルカ如キハ餘リニ首尾ニ專ラ
ニシテ肝要ナル中央部ヲ無視スルモノ
ナリ之ヲ人口ノ割合ヨリスルモ內地六
千萬ニ對シ朝鮮二千萬ナルヲ以テ彼此
權衡ヲ失スルモノト思ハサルカ之ニ對
スル政府ノ所見如何
第三政府ハ右兩院ノ主張ニ基キ朝鮮ノ
私設鐵道中ノ全部又ハ一部ヲ買收スル
意思アリヤ
朝鮮ニ於ケル私設鐵道ハ內地私鐵トハ
趣ヲ異ニシ國有線代行ノ使命ヲ有スル
モノナルヲ以テ政府ハ適當ノ時機ニ於
テ之ヲ買收スヘキハ常然ノ措置ニシテ
旣ニ今日迄モ二三線路ノ買收ヲ實施シ
來レリ蓋是レ其ノ根本方針ニ從フモノ
ナルハ勿論更ニ年年八分ノ補助ハ五分
若ハ夫レ以下ノ低利ナル交付公債ヲ以
テ買收シ得ヘク政府ハ其ノ間三分若ハ
夫レ以上ノ支出減ヲ爲シ得ルノミナラ
ス產業上ヨリスレハ私鐵運賃ハ國有線
ノ倍額以上ニシテ之ヲ國有ニ移スコト
ニ於テ運賃ハ半減セラルルノミナラス
更ニ國有線ノ遠距離低減法ニ依リ一層
低減シテ產業ノ開發ニ貢獻スルコト偉
大ナルヘク更ニ又年年不足ヲ告クル虞
アル法定ノ補助金不足ノ補充トモナル
ヘク所謂一擧三得ノ利アリ然ルニ政府
ハ之ニ對シ未タ何等提案ナキ理由如何
第四更ニ政府ハ第五十回議會ニ於ケル
貴族院豫算委員會左記希望決議、第五
十一囘議會ニ貴衆兩院ニ提出セラレタ
ル第一項ノ建議案末項、第五十二囘議
會衆議院ニ提出セラレタル左記法律案
ニ付如何ナル考慮ヲ拂ヒ又ハ〓究シタ
ルコトアリヤ
-大正十四年第五十囘議會貴族院ニ
於ケル大正十四年度豫算案ノ委員會
希望決議
私設鐵道ノ發達普及ヲ圖ルハ朝鮮開
發ノ爲極メテ緊要ナリ而シテ現行法
ニ依ル補助ノ方法ヲ以テシテハ豫期
ノ目的ヲ達スルコト困難ナリト認メ
ラルルヲ以テ政府ハ更ニ調査ノ上適
切ナル方法ヲ講セラレムコトヲ望ム
二昭和二年第五十二囘議會衆議院ニ
提出セラレタル朝鮮私設鐵道補助法
中改正法律案(政友會及民政黨ヨリ
同一法律案提出、委員會兩案併合滿
場一致可決、本會議審議未了)
提出者
本田義成秋田寅之介
松山常次郞
贊成者
志賀和多利外四十七名
提出者
荒川五郞高木益太郞
服部英明大島要三
大津淳一郞鷲野米太郞
牧山耕藏大園榮三郞
寺田市正佐藤潤象
湯淺凡平
贊成者
斯波貞吉外百四十九名
朝鮮私設鐵道補助法中左ノ通改正ス
第一條ニ左ノ一項ヲ加フ
前項ノ場合ニ於テ拂込資本金ニ對ス
ル益金ノ百分ノ二ヲ限度トシ會社ノ
每營業年度ニ於ケル益金ノ二分ノ一
ハ之ヲ益金ヨリ控除ス
第五以上ノ如ク朝鮮ノ鐵道問題ニ對シ
テハ第五十囘議會以來第五十二回議會
ニ涉ル三箇年間貴衆兩院ハ之ヲ重要問
題トシテ屢決議又ハ建議ヲ爲シ其ノ方
針ヲ瞭ニシ居レリ然ルニ當局者ハ全然
朝鮮鐵道
千圓
資本金五四、五〇〇
株
株式總數一、〇九〇、〇〇〇
人
株主數五、三六一
株
內內地株式數七七七、五二七
割
右割合七·一三
人
內地株主數三、九八六
割
右割合七·二五
千圓
社債一七、五〇〇
借入金七、一五五
(右ノ內京南鐵道ノ株主九人此ノ株
數五萬株ハ帳簿上ハ在鮮者ナレトモ
事實ハ東京在住者ナリ)
以上ノ如ク株式總數合計百九十三萬株
ニ對シ內地人所有株式ハ百四十八萬千
五百三株卽チ七割七分八厘約八割ハ內
之ニ耳ヲ藉サス机上ニ放擲シテ顧ミサ
ルカ如キ實績アルハ院議ヲ無視シ輿論
ヲ閑却シタルモノト謂フモ敢テ過言ニ
非ス政府ノ所見如何
第六朝鮮私設鐵道中ノ重ナル朝鮮鐵
道京南鐵道及金剛山電氣鐵道ノ三社
ハ一二年後ニ補助期間滿了スト聞ク然
ルニ政府ハ未タ議會ニ之カ改正案ヲ提
出シ居ラス内地ノ私設鐵道ハ收益第一
主義又ハ各地方地方ノ利害ニ依リ其ノ地
方ノ人士カ主トナリ敷設セラレタルモノ
ナレトモ朝鮮ノ私設鐵道ハ然ラス政府
豫算ヲ以テシテハ急速ニ豫定ノ敷設ヲ
爲シ能ハサルカ爲特ニ有利ナル條件ヲ
以テ內地資本家ヲ勸誘シテ敷設セシメ
所謂國有鐵道ノ代行者タラシメ將來漸
次之ヲ買收スル目的ヲ以テ遂行シ來リ
タル所ナリ現ニ朝鮮ニ於ケル私設鐵道
ノ實際ヲ見ルニ昭和七年十二月末ニ於
ケル資本及株式ノ狀況ハ左ノ如シ
京南鐵道金剛山鐵道南朝鮮鐵道
千圓千圓千圓
一〇、〇〇〇一二、〇〇〇二〇、〇〇〇
株株株
二〇〇、〇〇〇二四〇、〇〇〇四〇〇、〇〇〇
人人人
一、七九〇一、四〇三六九八
株株株
一四七、七三八一七四、二三八三八二、〇〇〇
割割割
七·三九七·二六九·〇五
人人人
一、四〇〇一、一一八四四二
割割割
七·七七七·九七九·五五
千圓千圓
六、五〇〇三、〇〇〇
千圓
四、〇〇〇一、二五〇二六、
地株主ナルヲ見テモ如何ニ朝鮮ノ私鐵
カ補助ヲ目的トシテ內地人カ應募シタ
ルモノナルカヲ知ルニ足ル再言セハ朝
鮮私鐵カ單ニ內地ノ夫レノ如ク地方的
利害ニ依ルニ非ス將又鐵道夫レ自身ノ
利害ヲ目的トシテ投資セラレタルモノ
ニ非ス當局ノ慫慂ニ依リ補助ニ意ヲ安
ムシテ投資シタルモノナルコトヲ窺知
スルニ足ル況ヤ歷代ノ當局亦屢補助ヲ
明言シ期間延長モ亦已ムナキモノナリ
トノ意見ヲ洩シ居ル所ナルニ拘ラス時
期切迫ノ今日尙提案ノ模樣ナキハ如何
ナル所見ニ基クカ
第七政府ニ於テ若現行朝鮮私設鐵道補
助法改正ノ意思アリトセハ其ノ滿期ニ
對スル延長期間ハ凡ソ幾何トスル意ナ
ルカ將又補助率又ハ補助方法等ニ付テ
如何ナル意見ヲ有シ居ルヤ
內地ニ於テハ政府補助ノ外會社ハ自己
ノ收益中百分ノ二迄ハ補助ニ加ヘテ配
當ヲ爲スコトヲ得ト規定セラレ卽チ七
分ノ配當ヲ爲スコトヲ得北海道ニ於テ
ハ大正九年八月法律第五十六號(北海
道拓殖鐵道補助ニ關スル法律)及大正
十一年四月勅令第百九十七號(昭和二
年勅令第二百六十六號改正)ニ依リ左
記ノ補助ヲ設ケ居レリ
大正十一年四月勅令第百九十七號
(北海道ニ於テ經營スル地方鐵道
及軌道ノ補助ニ關スル件)
第一條北海道ニ於テ經營スル地方
鐵道又ハ軌道ノ每營業年度ニ於ケ
ル益金カ建設費ニ對シ年八分ノ割
合ニ達セサルトキハ大正九年法律
第五十六號ニ依リ其ノ不足額ヲ補
給スルコトヲ得但シ補助金ハ建設
費ニ對シ年九分ニ相當スル金額ヲ
超ユルコトヲ得ス
卽チ北海道ハ八分益金ト一分ノ缺損補
助ト合セ九分ノ補給ヲ認メ居レリ然ル
ニ朝鮮ハ八分ノ釘付ニシテ若會社カ缺
損シタル場合ハ八分以下トナルヘキコ
トアルモ八分以上トナルコトハ全然爲
シ得サル規定ナリ政府ハ朝鮮ヲ以テ北
海道ヨリ重要ナラスト見ルカ將又北海
道以下ノ補助ニテ十分ナリト認ムルヤ
如何
第八朝鮮私鐵ノ補助ハ大正七年從來六
分ナリシモノヲ七分ニ增加シ更ニ大正
八年之ヲ八分ニ改正シタルモノニシテ
其ノ主旨ハ一ニ朝鮮ノ開發卽チ國有線
ノ代行タラシメムト欲スルニ外ナラス
補助法カ內地ノ夫レト異ル所以ノモノ
蓋故ナキニアラス抑朝鮮ノ如キ必要ナ
ル未開地ノ鐵道ヲ內地ト同一視シ單ニ
其ノ收支狀況ノミヲ以テ云々スルカ如
キコトアリトセハ認識ノ不足モ亦甚シ
キモノニシテ鐵道ニ依ル未墾地ノ開拓
產業ノ發達生產ノ增加等ヲ參酌シテ以
テ立論スヘキハ言ヲ俟タサル所ナリ
此ノ見地ヨリシテ朝鮮ノ私鐵ハ適當ノ
時機ニ於テ順次買收シテ國有ニ移スヘ
キハ勿論ニシテ之カ補助ノ如キモ大ニ
考慮ヲ加ヘサルヘカラサル所ナリ假ニ
近キ將來ニ於テ低金利時代到來ノコト
アリトシテ萬一八分ノ補助ヲ一擧ニ六
分乃至五分ニ低下スルカ如キコトアラ
ムカ由山敷大事ニシテ株式ノ市價ハ忽
ニ暴落シ補助ヲ信賴シテ投資セル內地
人ヲシテ一大損失ヲ被ラシムルノミナ
ラス第六項中既述シタル如ク社債、借
入金合計四千二百餘萬圓ハ補助期限ノ
切迫ト共ニ借替不能ニ陷ラシメ內地經
濟界ニ一大衝動ヲ惹起セシムル虞尠カ
ラス若政府ニシテ補助率變更ノ意思ア
リトセハ深ク此ノ點ヲ考慮シ八分ハ七
分トシ經濟界ノ狀勢ニ應シ適正ナル條
件ノ下ニ漸次改正スルノ途ニ出テサル
ヘカラス
獨リ之ニ止マラス貴衆兩院ノ主張ノ如
ク補助率ノ變更ニ當リテハ之ヲ改善シ
彈力性アル配當可能ノ途ニ出テサルヘ
カラス卽チ內地及北海道ノ補助法ト同
樣一定ノ步合ヲ限り會社ノ益金ハ補助
金ニ加ヘテ配當ヲ爲シ得ルコトトスル
ハ一ハ會社ヲシテ懸命努力ニ依リ收益
ノ增加經費ノ節約ニ努力セシムル一助
トモナリ一擧兩得ノ措置ナリト信ス右
ニ對スル政府ノ所見如何
右及質問候也
本質問ニ對シ書面ヲ以テ明確ナル答辯
アラムコトヲ望ム
昭和八年三月七日
內閣總理大臣子爵齋藤實
衆議院議長秋田〓殿
衆議院議員牧山耕藏君捍出朝鮮ノ鐵道政
策ニ關スル質問ニ對シ別紙答辯書差進候
〔別紙〕
衆議院議員牧山耕藏君提出朝鮮ノ鐵道
政策ニ關スル質問ニ對スル答辯書
第朝鮮ニ於ケル國有鐵道ノ建設ニ就
テハ第五十二議會ニ十一一ヶ年間ニ約
一、六〇〇粁ノ鐵道ヲ完成スベキ計畫
案ヲ提出シ其ノ協贊ヲ經目下實施中ニ
シテ既ニ開業セルモノ四四五粁目下工
事中ニ屬スルモノ約三三一粁アリ
私設鐵道ノ助成ニ就テハ從來ノ補助費
最高年額ノ限度四百五十萬圓ニテハ不
足ヲ〓グルニ至レルヲ以テ第五十八議
會ノ協贊ヲ經テ前記最高限度ヲ五百萬
圓ニ增額シタリ而シテ補助法施行後卽
チ大正十年度以降ニ於テ敷設セラレタ
ル私設鐵道ハ其ノ延長一、二二三粁餘
ニ達シ其ノ內約七三〇粁ハ昭和二年度
以降ニ於テ敷設セラレタルモノナリ
尙私設鐵道ノ買收及私設鐵道補助法ノ
改正ニ關シテハ後述スル所ノ如シ
第二朝鮮國有鐵道延長十二年計畫ハ昭
和十三年度ヲ以テ終了スベキ豫定ヲ以
テ昭和二年度ヨリ著手セル處中途ニシ
テ偶々財界ノ變動ニ遭遇シ政府ノ財政
ノ緊縮、特別會計公債半減等ノ方針ヲ
執ルノ已ムナキニ至リ其ノ結果本計畫
モ多少ノ繰延ヲ餘儀ナクセラレ昭和十
五年度ニ於テ終了ノ豫定ニ變更シタル
モノナリ、然レ共其ノ後ニ於テモ事情
ノ許ス限リ速成ニ努メ昭和七年度ニ於
テハ豫定年割額ニ對シ六十二議會ニ於
テ三百萬圓、六十三議會ニ於テ更ニ百
萬圓ヲ追加シ之ガ促進ヲ圖レリ、今後
ニ於テモ〓圍ノ狀況ヲ考慮シ速成ヲ期
スル方針ナリ
第三朝鮮ニ於ケル私設鐵道ニハ國營代
行ノ特質ヲ有スルモノアルヲ以テ其ノ
實情ニ鑑ミ之ヲ買收スベキモノト認メ
曩ニ第五十二議會ノ協贊ヲ經テ昭和二
年度ヨリ六年度ニ亙リ旣ニ五線三三九
粁六分(交付公債額面二六、〇四〇千
圓)ノ私設鐵道ヲ買收シタルガ今後ニ
於テモ此ノ方針ニ依リ事情ノ許ス限リ
之ガ買收ヲ行ハムトスルモノナリ
第四、五、六、七、八朝鮮ニ於ケル私
設鐵道ノ主ナルモノハ交通ト幹線ヲ爲
スモノ多ク所謂國營代行ノ性質ヲ帶ブ
ルモノト云フベク一般ノ地方鐵道トハ
其ノ趣ヲ異ニセルモノアルヲ以テ之ガ
助成發達ニ關シテモ亦從來特殊ノ方針
ヲ採リ來リタルモノナリ而モ朝鮮ニ於
ケル產業經濟ノ發達ハ未ダ顯著ナル域
ニ達セズ從テ私設鐵道ノ收益モ極メテ
僅少ナル實情ニ在リ故ニ今後ニ於テモ
私設鐵道ニ對シテハ相當保護ヲ與フル
ノ必要ナルヲ認ムト雖其ノ方法等ニ就
テハ改正ヲ要スベキ野アリト思惟ス而
シテ私設鐵道中ニハ九年度ニ於テ補助
期限滿了スルモノアルヲ以テ旁々諸般
ノ事情ヲ考慮シ補助年限、補助方法竝
ニ補助率等ニ關シ目下愼重調査中ニ屬
スルモ之ガ改正ニ付テハ今期議會ニ提
出ノ運ビニ至ラズ
右及答辯候
昭和八年三月七日
拓務大臣永井柳太郞
輸出百合根ニ關スル質問主意書
右成規ニ依リ提出候也
昭和八年二月十八日
提出者牧山耕藏
外一名
輸出百合根ニ關スル質問主意書
從來觀賞用トシテ英米ニ需要セラルルモ
ノノ內其ノ八割ヲ供給シ國際貸借改善ニ
資スルモノ年額約三百萬圓ニ達スル我カ國
特產百合球根(其ノ球數二千萬球)ニ關シ
昨昭和七年四月以降過去ニ於ケル輸出商
ノ橫暴ヲ排シ其ノ覊絆ヨリ脫セムトシテ三
菱商事株式會社ト連繫握手シタル生產者
六千人(其ノ球數一千萬球)ニ對シ商工省
當局ハ敢テ商人擁護ヲ目標トシ輸出百合
根ノ品質改善ニ名ヲ藉リ、三菱商事ト生
產者鹿兒島縣永良部產業組合トノ間ニ契
約成立セシ昭和七年四月十日ヲ過クル僅
ニ十二日ヲ出テスシテ遽遽然トシテ輸出
商ニ依リ日本百合根輸出組合ヲ組織シタ
ルニ直ニ輸出組合法ヲ適用シ而モ當時商工
昭和七年七月十九日
同二十日
次第之ヲ通知スルノ慣例ナリ)
同自二十一日組合加入問題折衝ノ爲檢査セス
至二十八日
同三十日
ムヘキ約束成立ス
同八月一日
二日檢査員ノ出張ナシ
同同三
日
日
日
同同同同同九八六五四日檢査員三名ニテ檢査球數
日檢査員三名ニテ檢査球數
日檢査員出張ナシ
省ヲ介シテ三菱ト妥協交涉ノ半恰モ輸出
期ニ直面セル七月二日突如トシテ輸出組
合法第九條ニ依ル强制命令ヲ〓示スルニ
至レリ
玆ニ於テ覺醒セル生產者ハ大擧商工省ニ
陳情スル一方日本百合根輸出組合ノ實際
ノ狀況ヲ監視セルニ果然輸出組合カ自己
擁護ノ爲ニ其ノ與ヘラレタル檢査權ヲ濫
用シ敢テ不當不正ノ手段ヲ弄ヘル事實ヲ
暴露スルニ至レリ卽チ同組合長ハ埼玉縣
本庄町ニ於テ公開ノ席上地方ノ生產者ニ
對シ
三菱關係ノ百合ハ其ノ檢査ニ苛酷ナル
モ諸君ノ分ハ最緩ナルヘク拔檢査ノ適當
ナル方法ヲ以テ通檢セシムヘシ
トノ趣旨ヲ演說シタルコトアルカ三菱ト
契約セル永良部產業組合ノ百合根ニ對ス
ル輸出組合ノ檢査ハ其ノ實績左ノ如クニ
シテ正シク組合長所說ニ副フモノアルヲ
明示セリ
五十萬球ノ檢査申請ニ對シ檢査ヲ行ハス
前日ノ申請ニ對シ督促シタルニ申請書ニ船名、行先判明セサ
ルニ付檢査申請書受理シ難シト爲ス(從來船名、行先ハ決定
九州生產者陳情團ト商工省當局トノ間ニ卽時檢査ヲ履行セシ
商工省ノ斡旋ニ依リ最近ニ檢査開始ノコトト爲レル旨組合側
ヨリ通知アリシノミニテ檢査員ノ出張ナシ
檢査員三名出張檢査ヲ開始シタルモ永良部種ノ變種ヲ含ミ居
ルトテ檢査中止トス仍テ永良部種ノ變種ト純種トノ區別ヲ質
セシニ對シ何等明確ナル解答ヲ與フル能ハス
組合ノ都合ニ依ルトテ檢査員出張セス
當日組合理事宅ニ不幸アリタル理由ニ依リ檢査員出張セス
三、三〇〇球
八、三八〇球
同十日午前中檢査員二名ニテ檢査球數
球ニ上レリ
同十一日午前中檢査員一名ニテ檢査球數
午後橫濱稅關總務課長、
檢査員一名ニテ檢査球數一六、
同十三日
リトシテ檢査セス
午後商工省黑田貿易課長外一名、
同十五日
球全部午前中ニテ再檢査而シテ合格如上
ノ檢査實績ヲ以テスレハ永良部百合五百
萬球全部ノ檢査ニハ實ニ一箇年ノ日子ヲ
要スヘク而シテ其ノ遲延ハ悉ク日本百合
根輸出組合ノ故意ト作爲ニ出テタルモノニ
シテ之カ爲ニ檢査施行中ニ萎凋或ハ品質
低下ヲ來シ輸出不能ニ陷レルモノ實ニ百
萬球ヲ算シ其ノ關係者ハ勿論國家的ニ被
レル損失著大ナルヲ思フヘキナリ而シテ
這ノ事實ニ對シ商工省當局ハ
-檢査ニ對スル設備ノ不完全ナリシ
ニ因リ
二檢査ニ不正ナカリシ
所以ヲ揚言辯護スルニ力メタリト雖實際
ハ上記ノ如ク例ヘハ其ノ日ニ於ケル來場
立會者ノ如何ニ依リテ檢査球數忽ニシテ
增減セルカ如キ一事ヲ以テシテ推シテ知
ルヲ得ヘク更ニ又親シク實況ヲ調査シタ
ル生產者代表ニ依テ却テ
設備ハ申請球數ニ對シ十分ニシテ
二檢査ハ不正極マレルモノナリシコ
ヲ確認セラレ其ノ結果九月十五日神奈川
縣廳主催全國百合根協議會席上滿場ノ意
二、九六〇球
午後橫濱稅關植物檢査課長外四名實況視察竝生產者代表四名
同樣視察セシニ同シク檢査員二名ニテ檢査球數一二、〇三〇
六〇〇球
同植物檢査課長、同輸出係長臨場シ
種種檢査員ニ對スル質問ヲ爲シタル中特ニ不合格品ニ付質シ
タルニ解答不能而シテ檢査ニ立會人アリシ當日午後ニ於テハ
〇〇〇球ニ上ル
午前中檢査員四名ニテ檢査球數六〇〇球殘餘ハ全部病蟲害ア
農林省技師外一名、横濱稅
關植物檢査課長外三名竝生產者代表五名來場、既ニ組合側檢
査員退場後ナリシカ種種實際ニ付テ質疑應答ヲ爲シ檢査ノ最
不當ナル事實ヲ確認スルニ至レリ
前前日病蟲害アリトシテ檢査不合格トセシ球數一一一、〇〇〇
見一致、日本百合根輸出組合ノ不當ヲ糺
彈スルニ至レリ當日ノ出席者左ノ如シ
商工省貿易局貿易課長黑田鴻五
同商工事務官諸井桃二
同商工技師綾部小太郞
農林省農務局農林事務官小山田光一
同農林技師藤卷雪生
橫濱稅關總務課長杉基
同植物檢査課長狩谷精
同總務課輸出係主任川崎英雄
神奈川縣知事橫山助成
同內務部長古川靜夫
同商工課長西岡廣吉
同商工主事川島直次郞
同同屬三宅秋太
農務課長堀江浩
同農林技師內山長吉
同農林技手白井明
同農林技手臼田逸夫
北相百合根栽培組合長小谷荻三郞
東京府內務部農林主事木村喜太郞
農林技手小山田一郞
東京府農會技師牛込寛次
西多摩郡輸出百合根栽培組合副組合
長正親梅吉
南多摩郡輸出百合根栽培組合長
大貫常吉
同副組合長武藤勘次郞
同幹事田澤莊藏
同幹事古谷萬龜
埼玉縣農務課長代理農林技師
近藤三衞
農林技手石橋神雄
埼玉縣百合根同業組合兒玉郡支部長
富岡仁三郞
同幹事佐藤良。
同大里郡支部長內田条三郞
同幹事〓水直吉
同秩父郡副支部長半田選
同比企郡支部幹事岩澤留吉
千葉縣農林主事大庭恭
群馬縣農林技師折原左手又
同多野郡百合根組合長布施亀十郞
同多野郡百合根副組合長
坂口克次
同副組合長小暮字市
同生產者代表赤松義光
栃木縣農林技師蘇原豹作
同安蘇郡三好村百合根組合長
山口光一郞
山梨縣北都留郡上原町農會技手
八卷郎
同北都留郡輸出百合根栽培組合長
岩瀨光康
同理事大村檮〓
同理事廣瀨季壽
佐賀縣農林主事補成富功
同東松浦郡農會副會長坂本茂助
鹿兒島縣農林技師野崎岩雄
同永良部百合根同業組合長
山口定善
日本百合根輸出組合長鈴木〓藏
同副組合長新井〓
瓜生留吉
同同理 理事事田中幸太郞
同理事高木作太郞
同監事坂田武雄
同監事堤兼吉
大槻〓太郞
岡崎安永
日本百合根輸出組合技術員
伊東孝三郞
三菱商事株式會社本店農產部長
秋山昱禧
同農產部竹內良男
同農產部藤野〓太郞
同橫濱支店長鬼澤英夫
此ノ間ノ消息ハ右協議會ノ議事錄ヲ參照
セラルルニ於テ自ラ明明白白タルヘシ
日本百合根輸出組合ニ對シ輸出組合法第
九條適用ニ就テハ農林省トシテ七月四日
貿易參與會議席上ニ反對意見アリシヲ傳
ヘラレ而シテ該組合ニ輸出檢査權付與ニ
關シ前後ノ事情ヨリシテ商工省官吏ト組
合トノ間ニ何等カノ因緣相絡ルモノアル
カ如キ疑惑ヲ生ムニ至リタルハ眞ニ遺憾
禁シ難キモノアリ
之ヲ要スルニ
第二商工省カ日本百合根輸出組合設立
認可ニ當リ眞ニ貿易改善ヲ目標トシ他
意ナカリシモノナリヤ如何
第二他意ナカリシモノトシテ商工省ハ
不良品種ノ輸出共ノモノハ現日本百合
根輸出組合員ニ依リテ輸出セラレタル
モノナルヲ認メサルカ而シテ若他ノ第
三者カ不良品種ヲ輸出シタリトセハ其
ノ事實ヲ證スヘキ資料ヲ示サレタシ
第三又日本百合根輸出組合員ノ中ニハ
契約栽培ナル所謂手作ニ依ル自己生產
品アリ其ノ生產品ハ損益打算ノ關係上
不良品ト雖敢テ之ヲ優良品トシテ輸出
シツツアル實情ニ付調査セシヤ如何
第四更ニ生產者ヨリ輸出百合球根買上
ニ際シテハ優良品種ノミ撰別摘出スル
ヲ例トセルカ然ラスシテ生產者ヨリ特
ニ不良品種ヲ買上タル事實アリト認ム
ルカ若アリトスレハ其ノ事例ヲ示サレ
タシ
第五商工省トシテ從來自ラ不良品種ノ
輸出ヲ敢テセル日本百合根輸出組合ノ
組成分子カ組合設立ノ認可ニ依リテ直
ニ其ノ弊ヲ改メ優良品ノミノ輸出ヲ見
ルニ至ルヘシト憶斷セシハ認識不足ニ
ハ非サリシカ況ヤ檢査其ノモノカ輸出
組合ノ意圖ニ依テ左右セラルル輸出檢
査ノ方式下ニ於テヲヤ
第六日本百合根輸出組合規約中ノ檢査
料ハ之ヲ適正ナリト認ムルヤ如何
第七日本百合根輸出組合規約中檢査料
一箱ニ付組合員三十錢組合員以外其ノ
十倍三圓トアリシヲ認メタル根據如何
第八而シテ其ノ後ニ於テ右檢査料ヲ組
合員六十錢組合員外三圓ト變更セシメ
タル理由如何
第九更ニ又之ヲ組合員六十錢組合員外
一圓五十錢ニ改メシメタル根據如何
第十以上ノ如ク六箇月ニ達セサル短時
日ノ間ニ於テ二度三度最重要ナルヘキ
檢査料ノ變更ヲ爲サシメタルハ其ノ餘
リニ朝令暮改ノ感ヲ深カラシムルモノ
アリ當局ノ所見如何
第十一前述ノ朝令暮改ハ單ニ日本百合
根輸出組合員外ノ輸出ヲ阻止セムカ爲
ノ作爲ニ發シ故ラニ組合員ニ比シ十倍
ヲ課スル不條理ヲ敢テセムト試ミタル
ニ非サルカ然ラハ其ノ期スル所貿易改
善ノ標榜ノ範圍ヲ超脫シ徒ニ從來ノ輸
出商擁護ノ私心ニ出テタリト斷セラルル
モ辯疏ノ餘地ナカルヘク從テ遂ニ變更
頻頻組合員ノ檢査料ハ却テ之ヲ倍加シ
組合員外ニ對シテハ之ヲ半減セシムル
ノ已ムヲ得サル結果ヲ招來シタルニハ
非サルカ如何
第十二百合根ノ全國輸出數量八萬五千
箱トシテ之ヲ輸出組合員ノミニ依テ輸出
サルルト見ルモ其ノ檢査料金五萬一千
圓ニ達スヘキカ當局ハ右手數料ノ支途
ニ付如何ナル考慮ヲ以テ臨メルカ
第十三檢査料ハ其ノ性質上何等カノ形
式ニ依リ生產者タル農民ニ轉嫁セラル
ルヲ免レサルヘキモノニシテ之カ支途
ハ自ラ制セラルヘク檢査ニ要スル經費
乃至組合維持等ニ充ツヘキ正當ノ經費
以外ニ出テサルヲ原則トスヘシ然ルニ昭
和七年度ニ於ケル支途ニ至テハ頗ル不
純ノモノ多キヲ疑ハレツツアリ當局ニ
於テ其ノ內容ヲ調査セルモノアリヤ
第十四尙組合員外ノ檢査料ヲ高額ニセ
ル所以ハ組合ニ於テ特ニ施設ヲ要スル
モノアリト爲セルカ昭和七年度中ニ於
ケル施設果シテ如何
第十五右檢査料ノ支途ニ付世上ノ疑惑
ヲ去リ且之ヲ妥當爲ラシムル爲計理士
ヲ用ヒ檢査セシムルノ意思ナキヤ
第十六各種ノ事情ヲ綜合スレハ檢査料
ハ組合員二十錢組合員外一一十五錢ニ低
減シテ可ナルヘキ數字的根據アリ當局
ノ所見如何
第十七昭和七年七月四日貿易參與會議
ニ於ケル農林省提出ノ輸出百合根ニ對
スル意見書ハ輸出組合法第九條ヲ日本
百合根輸出組合ニ適用スルニ付反對ヲ
表明シタルモノト確聞ス其ノ全文ヲ示
サレタシ
第十八昭和七年九月十五日商工省ノ勸
告ニ依リ神奈川縣廳主催ノ下ニ開カレ
タル全國輸出百合根協議會ノ經過ニ關
スル神奈川縣廳ヨリノ報告ヲ示サレタ
シ
第十九輸出百合根ハ其ノ性質上販賣統
制ヨリモ寧ロ生產統制ヲ先トスヘシ之
ニ對シ當局ノ採ラムトスル具體的方針
如何
第二十此ノ際生產者ノ自覺ト〓結ニ依
テ現ニ其ノ統制ニ不斷ノ努力ヲ爲シツ
ツアルモノアリ之ヲ指導助成シ以テ其
ノ目的ヲ達成セシムヘキ適當ノ措置ヲ
講スルノ意思ナキヤ
右及質問候也
本質問ニ對シテハ書面ヲ以テ答辯アラ
ムコトヲ望ム
昭和八年三月七日
內閣總理大臣子爵齋藤實
衆議院議長秋田〓殿
衆議院議員牧山耕藏君外一名提出輸出百
合根ニ關スル質問ニ對シ別紙答辯書差進
候
〔別紙〕
衆議院議員牧山耕藏君外一名提出輸出
百合根ニ關スル質問ニ對スル答辯書
本邦輸出百合根ハ北米合衆國ヲ主タル販
路トシ尙英國其ノ他歐洲諸國等ニ仕向ケ
ラレ專ラ觀賞用ニ供セラルルモノニシテ
其ノ輸出額ハ昭和六年ニ於テ二千四百萬
球、約百九十三萬圓、昭和七年ニ於テ約
二千六百萬球、約百九十三萬圓ナリ而シ
テ本邦百合根ノ生產ハ年々增加ノ傾向ニ
在ルモ海外ニ於ケル需要ハ近年經濟界不
況ノ爲減退ノ傾向ニ在ル處本邦輸出業者
間ニ從來統制ナカリシ爲自然激甚ナル賣
込競爭行ハレ徒ニ價格ノ低落ヲ來シ意イ
テハ粗惡品輸出ノ弊ニ陷リ本品ノ聲價ヲ
失墜スルノ虞顯著トナレルニ依リ輸出業
者等ハ團體的統制ニ依ル弊害除去ノ必要
ヲ認メ昭和七年二月輸出組合ノ設立ヲ計
畫シ同年四月設立ノ認可ヲ受ケタルモノ
ナリ
尙質問ノ點ニ對シテハ
第一乃至第四本組合設立ノ認可ハ貿易
振興上必要ナリト認メタルモノニ外ナ
ラズ而シテ從來競爭濫賣ノ結果組合員
ノ內外ヲ問ハズ不良品ノ輸出ノ弊アリ
タルニ鑑ミ之ガ矯正ヲ圖ルノ必要アリ
タルモノニシテ不良品ノ輸出ハ檢査ニ
依リ之ガ取締ヲ受クルモノナリ
第五輸出組合ノ檢査ニ付テハ輸出組合
法ニ基キ監督官廳ノ監督ヲ受クベキモ
ノナルヲ以テ本組合ニ依ル輸出檢査ハ
不適當ナルモノト認メズ
第六乃至第十六檢査料ニ付テハ組合員
ト非組合員トノ間ニ差等アルハ出資ノ
有無等ヨリ見テ當然ノ結果ナリ而シテ
此等ノ檢査料額ハ檢査施行ノ内容竝ニ
斯業ノ實情等ヲ考慮シテ決定セラレタ
ルモノニシテ今後ノ檢査料額ニ關シテ
ハ尙檢査事業施行ノ經過ヲ見テ考慮ス
ベキモノトス
檢査料金ノ支途ニ就テハ原則トシテ事
業年度ノ經過後ニ提出セラルベキ決算
報〓ニ基キ調査監督スル方針ニシテ本
組合ノ檢査料金ノ支途ニ付特ニ疑アリ
ト認メズ
第十七昭和七年七月貿易局參與會議ニ
於ケル農林省提出ノ意見書ナルモノナ
シ
第十八官廳部內ノ往復文書ハ公表ノ限
ニアラズ
第十九生產統制ニ關シテハ當業者ヲシ
テ販路ノ如何ヲ考慮スルコトナク徒ニ
生產增加ヲ圖ルコトナカラシムル樣指
導スルノ要アルヲ認ム
第二十目下ノ處經費ノ關係上助成スル
コト困難ナリ
右及答辯候
昭和八年三月七日
商工大臣男爵中島久萬吉
農林大臣後藤文夫
長野縣下〓育界竝靑壯年層ニ現レタル
極左檢擧ニ關スル質問主意書
右成規ニ據リ提出候也
昭和八年二月十八日
提出者戶田由美
長野縣下〓育界竝靑壯年層ニ現レタ
ル極左檢擧ニ關スル質間主意書
最近長野縣下小學校〓員、中等學校在
學學生竝一般靑壯年層中ヨリ共產主義者
タルノ嫌疑及實行運動 加ノ故ヲ以テ檢擧
セラレタル者靑壯年層ニ於テ數百名小學
校〓員ニ於テ數十名學生間ニ於テ同シク
數十名ヲ算スルニ至リタルハ眞ニ驚愕戰
慄スヘキ聖代ノ一大不祥事ニシテ而モ被
疑者中ニ國民〓育ノ重責ニ任スヘキ者斯
ノ如ク多數ヲ包含シ尙且日ヲ追フテ其ノ
數ヲ加ヘムトスル狀勢ニ在ルハ寸刻モ看
過スヘカラサル國家ノ一大事ニシテ之カ
監督指導ニ任スヘキ內務大臣文部大臣更
ニ總理大臣ノ責任ハ極メテ重大ナルモノ
アルヲ感セサルヘカラス依テ政府ハ左ノ
諸點ニ關シ速ニ責任アル明答ヲ與ヘラレ
ムコトヲ望ム
一前記ノ如キ事實果シテ存セリトセハ今
日迄ニ檢擧セラレタル者果シテ何名ナ
リヤ小學校〓員、學生、一般靑壯年者
各別ニ明示セラレタシ
一輕率ナル檢擧ハ前途有爲ノ靑壯年竝學
生ノ將來ヲ再起シ得サル迄ニ傷ケ更ニ
國民〓育ノ重責ニ當ル〓員ニ致命傷ヲ
負ハセ其ノ弊毒ノ及フ所實ニ恐ルヘキ
モノナシトセス當局ハ果シテ如何ナル
方針ト確信トヲ以テ今囘ノ檢擧ニ處シ
ツツアルカ
一然リト雖神聖ナル我カ國體ト相容レサ
ル極左不逞ノ徒ニ對シテハ其ノ地位職
務ノ如何ヲ問ハス秋霜烈日ノ態度ト心
境トヲ以テ之カ根本的掃除ヲ斷行セサ
ルヘカラス當局ハ果シテ如何ナル胸算
ヲ藏セリヤ
一前述ノ一大不祥事ハ果シテ如何ナル根
源ヨリ發生セリト當局ハ認メ居ルヤ其
ノ禍根ヲ斷タスシテ其ノ成果ヲ正サム
ト欲スルハ木ニ緣リテ魚ヲ求ムルニ等
シ其ノ發生原因ノ認識如何ハ實ニ獨リ
長野縣下ニ對スルノミニ止ラス我カ國
全體ニ對スル政府當局ノ責任ヲ問フ根
柢ヲ爲スモノト言ハサルヘカラス依テ
各主務大臣ハ近時我カ國ニ續出スル之
等不祥事件ノ發生原因ニ關シ其ノ所信
ヲ率直明確ニ指示セラレタシ
右及質問候也
昭和八年三月七日
內閣總理大臣子爵齋藤實
衆議院議長秋田〓殿
衆議院議員戶田由美君提出長野縣下〓育
界竝靑壯年層ニ現レタル極左檢擧ニ關ス
ル質問ニ對シ別紙答辯書差進候
〔別紙〕
衆議院議員戶田由美君提出長野縣下〓
育界竝靑壯年層ニ現レタル極左檢擧ニ
關スル質問ニ對スル答辯書
二月四日以來長野縣ニ於テ檢擧取調
ヲ爲シタル治安維持法違反被疑者數ハ
次ノ如シ
小學校〓員九五名
學生五名
一般靑壯年者一〇九名
計二〇九名
檢擧ニ際シ其ノ方途ヲ誤ランカ其ノ
弊毒ノ恐ルベキコト言ヲ俟タザル所ナ
ルヲ以テ當局ニ於テハ最モ愼重ナル態
度ヲ以テ之ニ當リ過誤ナキヲ期シツツ
アリ
一、之ト共ニ苟モ國體ト相容レザル不穩
ノ徒ニ對シテハ其ノ地位職務ノ如何ヲ
問ハズ根本的掃除ヲ斷行スベク著々之
ヲ行ヒツツアリ、而シテ之ト同時ニ一
方ソノ善導矯正ニ就テモ極力盡力シツ
ツアリ
一學校職員、學生生徒、其他ノ者ガ極
左思想ヲ抱クニ至ル原因ニ就テハ各種
ノ方面ヨリ之ヲ觀察セザルベカラザル
モ畢竟現下思想界ノ動搖、社會ノ狀
勢、深刻ナル極左運動、本人ノ性格、境
遇等ヨリ來ルモノト見ザルベカラズ、
從ッテ政府ニ於テハ廣ク學校〓育竝ニ
社會〓育ニ於テ一層國體觀念ノ徹底ヲ
圖ルト同時ニ凡ユル機會ト方法トニ依
リ地方當局者ヲシテ必要ナル對策ヲ講
ゼシメ或ハ全國的ニ思想講習會ヲ開
催シ、或ハ國民精神文化〓究所ニ於テ
師範學校〓員ニ對シテ國民精神ヲ徹底
セシメ又極左運動ノ實況ヲ知ラシメテ
之ヲ警戒セシムル等ノ方法ヲ講ジツツ
アリ、尙學生生徒ニ對シテハ一面ニ於
テ嚴重ナル取締ノ方法ヲ講ズルト同時
ニソノ指導訓育ニ留意シ夫々必要ナル
機關ヲ設ケ施設ヲ行ヒ銳意ソノ實效ヲ
收ムルニ努力シツツアリ
右及答辯候
昭和八年三月七日
內務大臣男爵山本達雄
文部大臣鳩山郎
司ヲ大臣小山松吉
左傾運動取締ニ關スル質問主意書
右成規ニ據リ提出候也
昭和八年二月十八日
提出者世耕弘
外一名
左傾運動取締ニ關スル質問主意書
近時左傾運動深刻化シ從テ其ノ取締亦嚴
重ヲ加フルト雖是等主義者ハ更ニ巧妙ナ
ル用語ヲ用ヒテ暗ニ主義ノ宣傳實行ヲ爲
ス者多多アリ依テ之カ取締ニ付特別ニ留
意セサルヘカラス玆ニ以上ノ理由ニ依リ
左記ノ件ニ付質問ス
一左傾ノ宣傳ト實行トノ區別如
何
左傾運動ニ於ケル宣傳ハ夫レ自體カ實行
ナリ卽チ「宣傳卽實行ナリ」之ニ對スル當
局ノ取締竝所見如何
二帝國主義反對運動(反帝運動)
帝國主義反對運動ニ對シ當局ハ其ノ運動
ノ箇箇ノ內容ニ付時ニ觸レ取締ヲ爲シツ
ツアリト雖未タ帝國主義反對運動夫レ自
體ヲ總體的ニ絕對禁止ノ態度ニ出テサル
ヲ遺憾トス帝國主義トハ君主主義ノ義ナ
リトハ美濃部博士モ同樣ニ解釋シ居レリ
然ラハ帝國主義反對運動ハ君主主義ノ反
對運動ナルカ故ニ斯ノ如キ運動ニ對シテ
ハ我カ國體ノ尊嚴ノ上ヨリモ斷シテ之ヲ
所斷セサルヘカラス之ニ關シ當局ノ所見
如何
三シンパ(シンパアサイザー)ノ
解釋竝現在ニ於ケル之等取締ニ
付テノ實情如何
世間ニ於テ右傾ノ事件ニ付テハ黑幕者ト
稱ヘル場合左傾ノ場合ハ「シンパ」ト言フ
ヲ通例トス「シンパ」トハ日本語ニ於テ同
情者ト一般ニ解シ居レリ若「シンパ」ヲ同
情者ト解釋スルトセハ日本語ノ同語義ハ
「情ヲ同シクスル者」ト解スルヲ正當トス
ヘク史記ニモ明記サレ居レリサレハ「シ
ンパ」ハ此ノ語意ヨリスレハ當然刑法上
共犯或ハ事情ニ依リ準正犯トシテ取扱ハ
サルヘカラス若之ニ至ラサル行爲ニ屬ス
ト雖少クトモ「シンパ」ノ觀念ヲ斯ノ如キ
立場ヨリ觀察取締ヲ爲スヲ至當トスヘシ
又今日左傾運動ノ實際的實情ヨリ論斷ス
ルモ斯ク解セサルヘカラス右ニ關シ當局
ハ如何ナル所見ヲ有スルヤ
右及質問候也
昭和八年三月七日
內閣總理大臣子爵齋藤實
衆議院議長秋田〓殿
衆議院議員世耕弘一君外一名提出左傾運
動取締ニ關スル質問ニ對シ別紙答辯書差
進候
〔別紙〕
衆議院議員世耕弘一君外一名提出左傾
運動取締ニ關スル質問ニ對スル答辯書
一宣傳ハ左傾運動ニ於ケル有力ナル方
法トシテ用ヒラルル所ナルヲ以テ苟ク
モ國體ヲ變革シ又ハ私有財產制度ヲ否
認スルコトヲ目的トスル結社ノ擴大强
化ヲ目的トスルモノナルニ於テハ治安
維持法第一條違反ノ罪トシテ取締ヲ勵
行シツツアリ
二我國左傾運動ニ於ケル所謂反帝運動
ハ日本共產黨ノ目的遂行ノ爲ニスル行
爲ト認メラルルヲ以テ治安維持法違反
ノ罪トシテ處斷シ居レリ
三所謂「シンパサイザー」トハ左傾運動
ニ對シテ同情的行爲ニ出ツル者ヲ謂ヒ
之ニ對シテハ治安維持法ノ相當法條ヲ
夫々適用處斷シ居レリ
右及答辯候
昭和八年三月七日
內務大臣男爵山本達雄
司法大臣小山松吉
米國布哇及加州各港ニ於ケル日本船員
ニ對スル不法檢疫ニ關スル質問主意書
右成規ニ據リ提出候也
昭和八年二月二十二日
提出者中川觀秀
外一名
米國布哇及加州各港ニ於ケル日本船
員ニ對スル不法檢疫ニ關スル質問主
意書
亞米利加合衆國各港ニ入港スル我カ國船
舶乘組員ハ一九一七年制定及一九二四年
改正ノ米國移民法ノ當該條項竝一九三〇
年ノ移民規則第じ項「外國船員」ノ規定ニ
基キ同國各港ニ入港ト同時ニ身體檢査ヲ
受クルコトトナリ居ル次第ナル所「外國
船員」ノ定義ハ前記移民規則第七項ニ於
テ「外國船員ナル名稱ハ總テノ外國ノ港
及土地ヨリ亞米利加合衆國ニ到著スル總
テノ船舶ニ雇傭サルル旨船員名簿ニ登錄
サレタル凡ユル職務ノ外國人ヲ言フ」ト
規定シアル以上單ニ有色船員又ハ日本船
員ノミニ限ルヘキモノニ非ス又前記移民
法及移民規則ハ單ニ加州ニ於テノミ適用
實施スヘキモノニ非スシテ亞米利加合衆
國聯邦各港ニ於テ實施スヘキモノナルヘ
ク又外國船員ニ對スル身體檢査ノ方法及
程度ハ前記移民規則第七項ニ依リ外國船
客ニ對スルモノト同樣ナルヘキ筈ナルニ
拘ラス最近我カ國ヨリ「ホノルル」、「サン
フランシスコ」及「ロスアンゼルス」等布
哇及加州諸港ニ入港スル我カ國船舶(日
本郵船會社、三井船舶部、國際汽船會社、
川崎汽船會社等)乘組員ニ對スル前記各
港ニ於ケル檢疫官ノ態度ハ左記諸點ニ於
テ極メテ非合法、非人道、不合理、不正
義ナルコトヲ暴露セルモノニシテ右ハ察
スル所最近ニ於ケル日本ノ對滿洲强硬政
策ニ對スル犬糞的復讐意識ノ末梢的表現
ト考ヘラル
前記各港ニ入港スル日本船員ニ對シ
テ該港檢疫官ハ全員ヲ甲板ニ整列セシ
メ花柳病保有ノ有無ヲ檢證スルト稱シ
テ細密ナル恥部檢査ヲ爲シツツアルコ
二而モ「花柳病」又ハ該病ニ對スル前記
ノ非人道的檢査ハ何等移民法乃至移民
規則ニ於テ之ヲ明示シ居ラサルコト
三又斯ノ如キ身體檢査ハ「船員ニ對ス
ル身體檢査ハ船客ニ對スルモノト同樣
ナルヘシ」ト爲ス移民法及移民規則ノ
規定ニ背反スルモノナルコト
四更ニ斯ル非人道的檢査ハ實ニ日本船
員ノミニ實施シ日本人以外ノ外國船員
ニ對シテハ何等實施シ居ラサルコト
五更ニ斯ノ如キ亂暴ナル身體檢査ハ
「ホノルル」及加州諸港ニ於テノミ施行
サレ其ノ他ノ聯邦各州諸港ニ於テ實施
サレサルノミカ「ホノルル」ニ於ケル檢
査程度ハ加州ニ於ケル夫レニ比シ輕重
緩急アリ不統一、不均一ヲ暴露シツツ
アルコト
六一方日本各港ニ入港スル亞米利加船
舶乘組員ニ對シ我カ國檢疫官ハ曾テ斯
ル非人道的檢査ヲ斷行シタルコトナキ
コト
顧フニ斯ノ如キハ桑港「ロスアンゼルス」
港、「シヤトル」港、「ホノルル」港共ノ他
ノ亞米利加合衆國海港ニ於ケル檢疫官カ
移民法適用ヲ强調スルニ名ヲ藉リ其ノ實
移民法ノ精神ヲ逸脫飛躍セル非人道極マ
ル身體檢査ヲ强行スルモノニシテ邦船乘組
船員ニ對シ名狀スヘカラサル侮辱ト憤激
トヲ與ヘツツアリ亞米利加官憲ノ此ノ不
當ノ檢疫ハ引續キ益其ノ度ヲ高メ萬一此
ノ現狀ヲ此ノ儘放置スルトキハ其ノ結果
トシテ同國官憲及同國民ト邦船船長トノ
間ニ恐ルヘキ不祥事ノ突發スルコトナキ
ヲ保シ難キコトヲ憂慮スヘキ程度ニ迄邦
船船員ノ反感ト忿懣トカ〓揚シツツアル
現狀ニアリ更ニ其ノ後ノ情報ニ依レハ米
國當局ハ此ノ不當ノ檢疫ハ敢テ邦船乘組
員ニ對シテノミ執行サルルモノニハ之レ
ナシト陳辯シ居ルモ同地方ニ航行スル我
カ國船舶ニ付テハ
一會社及船長ニ於テ乘組員ノ脫船ヲ防
止スル意味ニ是テ普通船員全部ノ上陸
ヲ禁止シ居ルコト從テ一九三〇年制定
ノ移民規則第七條ニ基ク身體檢査會
通船員全部ヲ甲板ニ羅列セシメ白日ノ
下衆人稠座ノ裡ニ細密ナル恥部檢査ヲ
爲スカ如キ)ヲ爲ス必要ナキコト
二又假ニ米國官憲ニシテ邦船乘組員ノ
上陸禁止ハ移民法ニ依ルモノニ非ス日
本船ノ船主及船長ノ意思ニ依ルモノナ
ルヲ以テ同國官憲トシテハ移民法ノ命
スル檢疫ヲ爲スコトハ毫モ差支ナシト
セムヤモ計リ難キモ然ラハ日本郵船會
社大阪商船會社ノ如キハ各船ニ船醫
ヲ有シ日本發航當時ハ勿論航行中ニ於
テモ常ニ乘組員ノ健康診斷ヲ勵行シ亞
米利加海港ニ入港スル直前ニ於テハ移
民法ニ於テ禁止サレ居ル疾病ノ有無ヲ
嚴重ニ調査シ其ノ結果ニ付テハ之ヲ健
康報告書ニ記載シ海港檢疫官ニ提出ス
ル手續ヲ取リツツアルヲ以テ檢疫官ニ
シテ邦船船醫ノ報〓ヲ信用スル限リ特
ニ全員ヲ上甲板ニ整列セシメ日中細密
ナル恥部檢査ヲ斷行スル必要ナキコト
ト信ス
依テ右ノ如キ平等、正義、均一ノ精神ニ
反シ我カ國民ノ權利ト自尊心トヲ甚シク
傷クルコト多大ナル斯ル行爲ニ對シ外務
當局ハ如何ナル對策ヲ講シ又ハ講セムト
セラルルカ又我カ出先官憲ニ對シ如何ヤ
ウ訓令ヲ發シ又ハ發セラルルヤ
右及質問候也
本質問ニ對シテハ至急明確ニ書面ヲ以
テ答辯アラムコトヲ改王ム
昭和八年二月七日
內閣總理大臣子爵齋藤實
衆議院議長秋田〓殿
衆議院議員中川觀秀君外一名提出米國布
哇及加州各港ニ於ケル日本船員ニ對スル
不法檢疫ニ關スル質問ニ對シ別紙答辯書
差進候
〔別紙〕
衆議院議員中川觀秀君外一名提出米國
布哇及加州各港ニ於ケル日本船員ニ對
スル不法檢疫ニ關スル質問ニ對スル答
辯書
政府ハ曩ニ質問ト同趣旨ノ陳情ニ接シタ
ルニ依リ直ニ本邦側關係汽船會社等ニ就キ
調査ヲ進メタル處其報告ニ據レハ特ニ本
邦船員ニ對シ差別的取扱ヲ爲セルモノナ
ルヤ否ヤハ未タ之ヲ詳ニセサルモ過當ト
思惟セラルル事案アリタルニ付キ早速在
外關係帝國領事ニ對シ事實ノ詳細ナル調
査ヲ命スルト共ニ右ノ如キ事實アルニ於
テハ嚴ニ米國官憲ノ反省ヲ促スヘキコト
ヲ訓令セリ。
右及答辯候
昭和八年三月七日
外務大臣伯爵內田康哉
高級船員養成ニ關スル質問主意書
右成規ニ據リ提出候也
昭和八年二月二十二日
提出者中川觀秀
外一名
高級船員養成ニ關スル質問主意書
世界不況ノ深刻ハ容易ニ好轉セス海運界
亦其ノ例ニ洩レス失業船員ノ數夥シク就
中高級船員ハ年年輩出スル各種商船學校
卒業生ノ爲ニ一層憂苦ヲ增シツツアリ斯
ノ如キ狀勢ハ一日モ放擲シ置クヲ許サス
速ニ之カ匡救ヲ策セサルヘカラス卽チ之
カ對策ノ一端トシテ高級船員養成ノ調節
ヲ爲スヘキナリ依テ左記二三當局ノ所見
ヲ問フ
-昭和七年七月二十五日鳩山文部大臣
ハ特ニ公立商船學校所在地ノ各地方長
官ヲ招集シ船員失業防止ノ一方策トシ
テ當時已ニ募集人員半減ヲ決定セル官
立高等商船學校ニ倣ヒ公立商船學校ニ
於テモ本年四月ノ新學期ヨリ募集人員
ヲ半減セムコトヲ勸〓シ且其ノ整キ廢
合ヲ慫慂セリト聞ク果シテ右ハ事實ナ
リヤ
二聞ク所ニ依ルニ某公立商船學校ハ前
項文部大臣ノ勸〓ヲ容レス本年四月入
學セシムヘキ募集人員ヲ半減セス全然
昨年度ト同數ノ人員ノ募集ヲ發表セシ
由ナリ文部當局ハ此ノ事實ニ對シ如何
ナル處置ヲ執ラムトスルカ
三本年二月十四日附ヲ以テ第一項ノ趣
旨ニ全然反對ナル結果ヲ招來スヘキ精
神ノ下ニ立案セラレタル請願書カ十一
會ナル團體員ヨリ提出セラレタルカ文
部當局ハ此ノ請願趣旨卽チ現在ノ公立
商船學校卒業者ニ對シ更ニ高等ノ學術
技能ヲ修得セシムル特別〓育機關ヲ設
置シ其ノ修業者ニ對シテハ官立高等商
船學校卒業者ト同等ノ待遇ヲ與フヘシ
ト言フニ對シ文部竝遞信當局ノ意見ハ
如何
右及質問候也
本質問ニ對シテハ書面ヲ以テ至急明確
ニ答辯アラムコトヲ望ム
昭和八年三月七日
內閣總理大臣子爵齋藤實
衆議院議長秋田〓殿
衆議院議員中川觀秀君外一名提出高級船
日養成ニ關スル質問ニ對シ別紙答辯書差
進候
〔別紙〕
衆議院議員中川觀秀君外一名提出高級
船員養成ニ關スル質問ニ對スル答辯書
最近海運界ノ不況ニ伴フ高級船員失業者
增加ノ傾向ニ鑑ミ之カ對策トシテ其ノ養
成人員ヲ制限スルノ必要ヲ認メ官立高等
商船學校ニ就テハ昭和七年度後半ヨリ旣
ニ募集人員ヲ半減シ公立商船學校ニ對シ
テハ昭和八年唐募集人員ヲ凡ソ半減セシ
ムル方針ヲ以テ之ヲ指示シ各校共其ノ指
示ニ從ヒ實行シツツアリ尙佐賀縣立商船
學校ハ本年三月限リ廢止スルコトニ決定
シ旣ニ之ヲ認可シタリ
公立商船學校卒業者ニ對シ高等ノ學術技
能ヲ修得セシムル特別〓育機關ヲ設置ス
ルコト竝ニ其ノ修業者ニ對シ官立高等商
船學校卒業者ト同等ノ待遇ヲ與フルコト
ニ關シテハ考慮シ居ラス
右及答辯候
昭和八年三月七日
文部大臣鳩山郎
遞信大臣南弘
陸軍造兵廠東京ユ廠小倉市移轉ニ關ス
ル質問主意書
右成規ニ據リ提出候也
昭和八年二月二十三日
提出者小池四郞
陸軍造兵廠東京工廠小倉市移轉ニ關
スル質問主昌書
去ル二月八日豫算委員第四分科會ニ於テ
杉山元治郎代議士ノ爲シタル陸軍造兵廠
東京工廠小倉市移轉ニ關スル質問ニ對ス
ル陸軍當局ノ答辯ヲ一層明確ニスルノ必
要ヲ痛感シ此ニ左記事項ニ就キ質問ス
-本年度中ニ小倉市ニ移轉セシムヘキ
職工定員數(延人員ニ非ス)
二同シク將校軍屬數
三移轉ニ要スル全經費ノ內三分ノ二ニ
相當スルモノヲ本年度中ニ實施シ殘ノ
三分ノ一ハ後年度ニ廻ストノコトナル
カ後年度廻ノ分ハ昭和九年度中ニ實施
完了ノ見込ナリヤ
右及質問候也
昭和八年三月七日
內閣總理大臣子爵齋藤實
衆議院議長秋田〓殿
衆議院員小池四郞君提出陸軍造兵廠東
京工廠小倉市移轉ニ關スル質問ニ對シ別
紙答辯書差進候
〔別紙〕
衆議院議員小池四郞君提出陸軍造兵廠
東京工廠小倉市移轉ニ關スル質問ニ對
スル答辯書
本年度中小倉市ニ移轉セシムヘキ職
工數ハ七〇〇乃至八〇〇名ノ豫定ナリ
(延人員ニ非ス)
二、同シク將校軍屬數ハ約一〇〇名ナリ
三、後年度廻シノ經費ハ昭和十八年度マ
テニ實施完了ノ豫定ナリ
右及答辯候
昭和八年三月七日
陸軍大臣荒木貞夫
〔左ノ報告ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノ爲
玆ニ揭載ス〕
一議員ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
購買組合ニ對スル保護撤廢竝取締ニ關ス
ル建議案
提出者
磯部尙君西岡竹次郞君
上田孝吉君
東京大島間電話開通ニ關スル建議案
提出者
牧野賤男君三上英雄君
岡本一巳君
大島ニ中央氣象臺附屬測候所設置ニ關ス
ル建議案
提出者
牧野賤男君三上英雄君
岡本一巳君
伊豆七島ニ府縣制竝町村制施行ニ關スル
建議案
提出者
三上英雄君牧野賤男君
岡本一巳君
川俣浪江間鐵道速成ニ關スル建議案
提出者
佐藤庄太郞君菅野善右衞門君
靑海泊間國道改修ニ關スル建議案
提出者
鈴木義隆君高見之通君
福岡市ニ陸上飛行場設置ニ關スル建議案
提出者吉田鞆明君
栃木縣立煙草試驗場國營移管ニ關スル建
議案
提出者
高田耘平君岡田喜久治君
神崎川及猪名川改修ニ關スル建議案
提出者
蔭山貞吉君喜多孝治君
萬國博覽會開催ニ關スル建議案
提出者
竹澤太一君植原悅二郞君
本多貞次郞君大山斐瑳麿君
金光庸夫君
(以上三月四日提出)
佐原鹿島間國營自動車運輸開始ニ關スル
建議案
提出者今井健彥君
生保內橋場間鐵道速成ニ關スル建議案
提出者
小山田義孝君八角三郞君
長濱驛改築ニ關スル建議案
提出者
服部岩吉君〓水銀藏君
仙波久良君
帝國圖書館完成ニ關スル建議案
提出者
河上哲太君山下谷次君
木村正義君倉元要一君
(以上三月六日提出)
耕地擴張改良事業ノ振興ニ關スル建議案
提出者
高橋熊次郞君竹下文隆君
助川啓四郞君
地方財政調整交付金制度設定ニ關スル建
議案
提出者
栗原彥三郞君中田正輔君
(以上三月七日提出)
一議員ヨリ提出セラレタル質問主意書左ノ
如シ
實業補習學校ト靑年訓練所トノ統合ニ關
スル再質問主意書
提出者山枡儀重君
社會政策問題及思想問題ニ關スル質問主
意書
提出者鈴木正吾君
(以上三月四日提出)
一去四日齋藤內閣總理大臣ヨリ左ノ通發令
アリタル旨ノ通牒ヲ受領セリ
內務書記官坂千秋
第六十四囘帝國議會內務省所管事務政府
委員被仰付
一去四日常任委員補關選擧ノ結果左ノ如シ
第一部選出
決算委員靑山憲三君(鈴木吉之助
君補闕)
一去四日特別委員理事補關選擧ノ結果左ノ
如シ
鐵道敷設法中改正法律案(政府提出)委員
理事林平馬君(理事〓水德太郞
君去四日委員辭任ニ付其ノ補
〓
通信事業特別會計法案(政府提出)委員
理事門田新松君(理事山本愼平君
去四日委員辭任ニ付其ノ補
闕
一去四日ニ於ケル特別委員ノ異動左ノ如シ
鐵道敷設法中改正法律案(政府提出)委員
辭任〓水德太郞君補關鵜澤宇八君
辭任小池仁郞君補闕佐藤啓君
通信事業特別會計法案(政府提出)委員
辭任山本愼平君補闕門田新松君
一昨六日委員長選定ノ結果左ノ如シ
少年〓護法案(荒川五郞君外六十六名提
出)委員
出版權法案(原夫次郞君外六名提出)小
委員
委員長星島二郞君
一昨六日ニ於ケル特別委員ノ異動左ノ如シ
少年〓護法案(荒川五郞君外六十六名提
出)委員
辭任山本芳治君補關野依秀市君
輸出絹織物取締法中改正法律案(政府提
出)委員
辭任佐保畢雄君補闕野依秀市君
原蠶種國家管理法案(胎中楠右衞門君外
一名提出)委員
辭任飯塚春太郞君補闕木檜三四郞君
恩給法中改正法律案(政府提出)委員
辭任八角三郞君補閱上原平太郞君
衆議院議員選擧法中改正法律案(政府提
出)委員
辭任立川太郞君補闕久山知之君
工業組合法中改正法律案(政府提出)委員
辭任小高長三郞君補闕金光庸夫君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02319330307&spkNum=1
-
002・秋田清
○議長(秋田清君) 是ヨリ會議ヲ開キマ
ス、此際御報告申上ゲタイコトガアリマス
諸君、我ガ忠勇ナル滿洲派遣軍ハ滿
洲國軍ト協力致シマシテ、熱河方面ノ兵匪
ヲ討伐シ、去ル四日其本據タル承德ニ入リ
兵匪討伐ノ軍事行動ハ一段落ヲ〓ゲタノデ
アリマス、此赫々タル戰績ヲ表ハシマシタ
ルコトハ、洵ニ日滿兩國ノ爲メ、御同慶ニ堪
ヘヌ次第デアリマス(拍手)議長ハ本院ヲ代
表致シマシテ滿洲國及關東軍ニ對シテ、
祝詞竝ニ感謝ノ電報ヲ發シマシタ、玆ニ之
ヲ朗讀シテ諸君ノ御諒承ヲ請ヒマス
滿洲國ニ對スル熱河ノ兵匪掃討ニ付祝
電
熱河方面ノ禍亂鎭定シ、貴國ノ治安寧靜ニ
歸シタルヲ喜ビ、玆ニ本院ヲ代表シ同慶
ノ意ヲ表ス
是ハ滿洲國ニ對シテ發シタ電報デアリマ
ス、次ヘ
關東軍ニ對スル熱河ノ兵匪掃蕩ニ付感
謝祝電
帝國ノ忠勇ナル派遣軍ハ滿洲國軍ト戮力シ
テ熱河ノ兵匪ヲ掃蕩シ以テ滿洲國ノ寧靜
ニ貢獻セリ玆ニ本院ヲ代表シテ祝詞ヲ呈
シ併セテ其ノ勞劬ヲ感謝ス
是ハ關東軍ニ對シテ發シタ電報デアリマ
ス(拍手)以上御報告申上ゲマス-只今大
藏大臣ヨリ米國金融界ノ變動ニ關シ報〓ノ
爲メ發言ヲ求メラレテ居リマス、之ヲ許シ
マス-大藏大臣高橋是〓君
〔國務大臣高橋是〓君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02319330307&spkNum=2
-
003・高橋是清
○國務大臣(高橋是〓君) 先刻秋田議長閣
下ヨリ私ニ對シテ、衆議院ノ各派協議會ニ
於テ相談ノ結果、今囘ノ米國ノ財界ノ變動
ニ付テ、大藏大臣ヨリ報告ヲシテ貰ヒタイ
ト云フ御希望ガアリマシテ、私ハ之ヲ喜ン
デ御請ケヲシタノデアリマス、此米國ノ財
界ノ變動ニ付キマシテハ、私ガ直接海外ヨ
リ受ケマス所ノ電報等ヨリハ、モット詳シク
種々ノコトガ新聞ニ出テ居ルノデス(發言
スル者アリ)-甚ダ失禮デゴザイマスガ、
私聲ガ少シ出ナイヤウデゴザイマスカ
ラ、御諒承ヲ願ヒマス
〔發言スル者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02319330307&spkNum=3
-
004・秋田清
○議長(秋田〓君) 靜肅ニ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02319330307&spkNum=4
-
005・高橋是清
○國務大臣(高橋是清君)(續) 先ヅ大統領
ガ布告ヲシタ其要點ヲ要約シテ見マスト云
フト、第一ハ本月六日ヨリ九日ニ至ル四日
ノ間、全國銀行ノ休業デアリマス、第二ハ休
業期間中絕對ニ金ノ絵出ヲ禁止スル、第三
ハ休業期間中、手形交換所證劵ノ使用ヲ許
ス、是ハ手形交換所ノ證劵ノ使用ト申スノ
ハ私ガ說明ヲスル迄モナク御承知デアリ
マセウガ、銀行ガ休業シテ居ルノデアリマ
スカラ、手形交換所組合銀行ノ引受ニ依。ツ
テ、紙幣ニ代ル手形ヲ手形交換所カラ出シ
テ、サウシテ商業上其他ニ於テノ不便ヲ除
〃、其意味デス、第四ハ休業期間中新ナル
預金ニ對シテハ、其受ケタ銀行ガ之ヲ特別
信託勘定ト云フモノヲ設ケテ扱フ、第五ハ
休業期間中ト雖モ銀行ノ請求ニ依ッテハ
般銀行ノ事務取扱ヲ許ス-政府ノ認可ヲ
得レバ其銀行ニ依ッテハ許ス、此五項目ガ詰
リ大統領ノ布告サレタ要點デアリマス、然
ルニマダ今日デハ米國政府ノ議會ニ提出ス
ル案ガ、ドウ云フモノデアルカト云フコト
ハ其內容モ判明シナイ、又今後米國全體
ノ民心ノ歸嚮ヲ推斷スルト云フコトモ今日
ハ難カシイ、サウ云フ折柄デアリマスカ
ラ、大藏當局トシテハ、此米國ノ財界變動
ニ付テ、將來ニ對シテノ意見ヲ述ブルコト
ハ愼マネバナラヌ、先ヅ靜ニ事態ノ動ク所
ヲ見テ、其時々必要ナコトヲ我國トシテ
ハ、處理シナケレバナラヌト云フニ止マル、
唯望ム所ハ米國モ金本位ナドヲ離脫シナイ
デ名案ヲ出シテ早ク經濟界ヲ、唯國內的
ノミナラズ世界的ニ安定サスルヤウニ努力
アランコトヲ、偏ニ祈ッテ居ル次第デアリマ
ス
偖テ左樣ナ譯デアリマスルカラ、倫敦ナ
ドデモ色々有名ナ銀行家經濟學者ナドガ、
ドウナルダラウカト云フ、前途ノ暗示カラ
推測シテ居ルコトガ中々多イノデアリマ
ス、隨テ其注意ヲ惹イテ居ル所ハ、華盛頓
府デ政府ノ當局者モ、ソレカラ有名ナ銀行
ノ首腦者モ、議會ニ於ケル領袖連モ皆彼處ニ
第九、種々會合ヲシテ考究ヲシテ居ルノ
デアリマス、斯ウ云フ人々ノ會合ニ依ッテ、
世間ニ漏レル所ノ問題ハ何カト云フト
第一、金輸出禁止、或ハ金ノ輸出ヲ許ス
ガ、同時ニ殆ド禁止的ノ課稅ヲスル、斯ウ
云フ案モアルラシイ、全ク金ノ輸出ヲ禁ズ
ルカ、或ハ許ス場合ニ於テハ禁止的同樣ノ
重稅ヲ之ニ課スルト云フ案モ、噂ニ上ッテ居
ル、併シ此案ニ對シテハ銀行家ヤ實際ノ經濟
通ノ人々ハ、之ニ反對シテ居ルト云フコト
デアリマス
第二ハ米國內ニ於テ金貨若クハ金塊ヲ死
藏シテ居ル者ニ對シテ、二割餘ノ課稅ヲシ
タラ宜カラウト云フノモ、一ツノ案ニナッテ
居ルヤウデアリマス
第三ハ銀行ニアル一般民ノ預金ニ對シ
テ、一時其預金者ニ對シテ保證ヲ與フル爲
ニ、サウ云フ責任ヲ持ツ會社ヲ建テタラ宜
カラウ、而シテ其會社ノ株ニハ、一般ノ銀
行家ガ此株ニ應募シタラ宜カラウ、斯ウ云
フ案モアル、是ハ先年我國ニ於テ、銀行ノ
取付ノ起ッタ時ニ、政府ハ五億圓ノ保證ヲシ
テ、預金者ニ安心ヲ與ヘタノト筋道ハ同ジ
デアリマス、唯〓政府ガ直接保證ニ立タズシ
テ、銀行ガ株主タル所ノ一ツノ會社ヲ新ニ
設ケテ、其會社ヲシテ一般ノ預金者ニ對シ
テ、保證ヲサセタラ宜カラウト云フ案ナノ
デアリマス
第四ニハ手形交換所組合ニ於テ、其組合
ノ銀行ニ、卽チ固定シテシマッタ資本、其資
本ハ直グニ金ニナラヌカラ、其銀行ノ凍結
シタ資本ニ對シテ、手形交換所ガ、ソレヲ
擔保ニシテ融通手形ヲ出シテヤル、斯ウ云
フ論ガ第四デアリマス、サウ云フモノモ相
談ニ上ッテ居ル、斯ウ云フコトデアリマス
ソコデ紐育ニ於キマシテハ、手形交換所
組合ハ、旣ニ火曜日ニ於テ、銀行ガ再ビ店
ヲ開ク場合ニ於テ、使用スル所ノ手形ヲ發
行スル計畫ヲ進メテ居ル、又賃銀ノ支拂ノ
爲ニ、其資金ヲ引出ス取極ヲモ出シツヽア
ル、斯樣ニシテ特ニ出ス所ノ手形ハ、額面
一弗以上ノモノトスル、サウシテ其額面デ
銀行間ニ於テ取引ヲスル、ソレカラ紐育ノ、
丁度我國ノ造幣局ニ當ル、其處デ金ヲ精鍊
シテ其純分ヲ定メテヤル、之ニ對シテ何時
モ金ヲ持ッテ行ッテ、ソレガ目方ガチヤント
精鍊ヲシタ上ニ、分レバ多寡ヲ問ハズシテ
金劵ヲ渡シタモノデアル、ソレガ今度ハ一
口ニ對シテ、五千弗マデハ宜イガ、五千弗
以上ニナルト云フト、向フカラ持ッテ來タ
金ダカラシテ、代リノ金ヲ精鍊シタモノヲ
ヤルノハ當然デアルガ、其代金トシテハ聯
邦ノ準備紙幣ハ受取ラナイト云フノデスカ
ラ、是モ餘程窮窟ニナッテ來ル、是モ矢張五
日ニ聲明シテ居ルモノデ、「ロンドン·タイ
ムス」アタリニ載ッテ居リマス、是ハ華盛頓
ニ出テ居ル英國ノ通信員カラ「ロンドン·タ
イムス」ヘ電報シタモノデアリマスガ、大
統領ハ對敵通商法ト云フノデスガ-是ハ
何カ一字拔ケテ居ルト思フ、詰リ戰爭中ニ
大統領ガ自由ニ處置スルコトノ出來ル法律
ガ前ニアル、アレデセウ、「對敵通商法ニ依
リ與ヘラレタル特權ニ基キ金輸出ハ大藏省
ノ許可ヲ受クベシトノ命令ヲ發スベシトノ
助言ヲ受ケタリ」大統領ガサウ云フ助言ヲ
受ケテ、「或ル方面ニ於テハ大統領ノ此法律
採用ヲ確信シ居レリ」是ハ最近ノ報告デス、
丁度我國デモ政府ノ許可ヲ得レバ、輸出ガ
出來ルト云フヤウナ譯デ、絕對ニ金ノ輸出
ヲ禁ズルト云フニ非ズシテ、或ハ大藏省ノ
許可ヲ受ケレバ金ノ輸出ヲスルコトヲ許
スト云フヤウナコトガ宜イト云フコト
ヲ、大分大統領ニ進言スル者ガアッテ、
恐ラク大統領ハサウ云フ方法ヲ採ルノ
デハナイカト云フ、是ハ豫想ナンデス、
ソレカラ又對內的ニハ金貨ノ支拂ヲ停止ス
ル、前ニ申シマシタ死藏金ニハ課稅ヲス
ル、爲替ノ投機ニ付テハ、非常ナ取締ヲ嚴
重ニスル計畫モアル、ソレカラ新規ニ何カ
制限ヲ設ケテ、國立銀行ノ新規ニ受入レル
預金ニ對シテハ、政府ガ保證ヲシタラ宜カ
ラウト云フ案モアルサウデアリマスケレド
モ、是ニハ大分反對說モアルト云フコトデ
アル、詰リ各地ノ銀行家ヲシテ預金者ニ安
心ヲ與ヘテ、其銀行ノ破綻ノナイヤウニ、
經濟界ノ安定ヲ圖ル爲ニ、サウ云フ措置ヲ
爲ス意見モアルノデアリマス、是ニハ相當
又反對モアルト云フ、斯ウ云フ情報デス、
ソレカラ又倫敦邊リデハ亞米利加ノ新大
統領ノ就任演說ニ對シテハ、實ニ此難局ニ
直面シテ率直ニ實情ヲ述ベテ、敢然トシテ
其責任ヲ引受ケタ、サウシテ政策ノ大要ヲ
聲明シタト云フコトニ對シテハ皆賞讃ヲ
シテ居ル、唯此「適當ナ、併ナガラ堅固ナ
通貨」、英語デ言フト「アディクエート·
バット·サウンド·カーレンシー」此一句ノ解
釋ガ中々ムツカシイ、色々ノ解釋ガアル、
紐育邊リノ人々ノ意見ハ、是ハ「インフレー
ション」ヲ否認シタモノダ、斯ウ解釋シテ居
ル、是ハ確カ「デモクラット」黨ハ「インフレ
ーション」ニハ反對ノ態度ヲ常ニ執ッテ居ッ
タト思ハレルガ、併ナガラ又一說ニハ、兎ニ
角此意味ト云フモノハ、銀行ノ信用ヲ十分ニ
確ニスル、又資本ノ逃避ニ對シテハ、嚴重ナ
監督ヲスル、其意味デ此「アディクエート·
バット·サウンド·カーレンシー」ト云フコト
ヲ言ウタノダト、解釋シテ居ル人モアルガ、
結局是ハ通貨ノ統制デアリマセウ、ソコデ
我國ニ於キマシテモ御承知ノ通リ、今日
モ爲替銀行ハ爲替ノ取引ヲシマセヌ、休ン
デ居ル、然ルニ倫敦デハ米國弗ニ對スル分
ヲ除イテ、他ノ國々ニ對シテハ、矢張爲裕
相場ヲ今日カラ立ツルヤウニナッテ居ル、之
ヲ捨置キマスト云フト、我國ノ爲替相場ハ
矢張歐羅巴ノ市場ノ左右スル所トナル、例
ヘバ亞米利加ノ休日前ニ於キマシテハ、
磅ニ對シテ亞米利加ノ爲替相場ハ三弗四十
六仙デアッタガ、一躍一弗モ下ッタ譯デ、若シ
休業前ノ相場カラシテ假ニ米貨ガ-弗ガ
一割下ルト見レバ、三弗八十仙餘ニナリマス、
サウスルト日英ノ爲替相場一志二片四分
ノ一ノ基礎ヲ以テ換算シマスト云フト、日
本ノ圓ニ對シテ亞米利加ノ弗ハ二十二弗十
六仙トナル、假ニ一割ニ止ラズシテ一割五
分米貨ガ下ル、弗ガ下ル、サウシテ英米ノ
爲替相場ガ四弗トナル、サウシテ矢張日英
ノ間ノ相場ヲ一志二片四分ノ一ノ基礎ニ依ッ
テ換算シマスト云フト、日米ノ爲替相場ガ
二十三弗七十五仙ト云フコトニナル、之ヲ
ドウモ捨テヽ置クト云フコトハ、詰リ東洋
ノ爲替、日本ノ爲替ト云フモノガ、他國ニ
依ッテ自由ニ左右サレル、ソレ故ニ今日モ能
ク皆相談ヲシマシテ、明日カラハ矢張我國
ニ於キマシテモ磅ヲ先ヅ基トシテ、磅ノ連
絡ノアル國々ニ對シテ、矢張印度ナリ何ナ
リニ對シテ爲替相場ヲ立テル、但シ米國ニ
對シテハ是ハ出來ナイ、向フガ定マラナケ
レバ出來ナイ、サウ云フ方針ヲ執ルコトニ
相談ヲ纒メマシテ、之ニ依ッテ我國ハ我國
ノ相場ト云フモノヲ、我國ノ銀行ガ主トシ
テ之ヲ支配シテ行クト云フヤウナ位置ニ置
キタイ、斯ウ考ヘテ居ル、ソレデ先ヅ餘リ
激變ノナイコトヲ望ムノデアリマスルカ
ラ、去ル土曜日ニ於テ磅ト圓トノ爲替相
場モアル、ソレヲ矢張基礎トシテ、ソレヲ
基準トシテ段々ニ其爲替相場ノ自然ノ動
キニ從ッテ、成ベク激變ノナイヤウニシ
テ行クト云フコトニ、相談ヲ纒メタノデア
リマス、是ハ必ズサウナケレバナラヌト私
ハ考ヘテ居ル、而シテ一般ノ國民トシテ
ハ今日ハ今御報〓シタヤウナ歐米ノ有
樣デアリマスルカラ、何人ト雖モ前途斯
ウナルト云フコトヲ、確ニ見込ヲ立テ
言フコトハ、マダ出來ナイ譯デアル、ソレ
故ニ貿易業者モ製造業者モ、外國ニ關スル
營業ヲ爲シテ居ル者ハ、餘程コヽハ注意シ
テ、一步々々十分ノ用心ヲシテ、自分ノ商
賣ヲシナケレバナラヌ、徒ニ浮薄ナ考ヲ起
シタリ、輕卒ナ振舞ヲ爲シタリシテ、大ニ
山氣ヲ出シタナラバ、或ハ僥倖デ當ルカモ
知レマセヌガ、又其反對ニヒドイコトニナ
ルノデアルカラシテ、國民全體ニ望ムノハ、
ドウカサウ云フ事ノナイヤウニ、此場合ハ
一步々々用心ヲシテ進マネバナラヌ、而シ
テ此米國ノ恐慌モ、是ヨリ惡クナルト云フ
コトハナイ、是ヨリ好クシヨウト皆掛ヲテ
居ル、獨リ米國バカリヂヤナイ、英國モ其
通リデアル、世界的ニモ此經濟的ノ不況ヲ
打開シナケレバナラヌト云フコトハ皆望ン
デ居ル、ソレ故ニ我ガ商賣人モ製造人モ、
米國ニ對シテ、目前直グニ景氣ガ直ヲテ好ク
ナルト云フコトハ言ヘヌケレドモ、前途ハ
サウ悲觀シナクテ宜カラウ、落著ク所ニ落
著イテ必ズ繁昌スル、若シ米國ニシテ通貨
ガ殖エタ、通貨ガ殖エテソレデ落著ケバ
矢張向フデハ購買力ガ盛ニ殖エル、隨テ貿
易ノ上ニモ好クナル、サウ云フ結果ニナル
ノデアリマスルカラシテ、今コヽデ慌テ
騷グト云フ時デハナイト私ハ考ヘル、ドウ
カ皆サンヲ通シテ、此議場ヲ通ジテ、國民
一體ニ餘計ナ苦勞心配ヲシテ騒グコトヲ止
メテ、前途好クナルノダト云フ信念ヲ起シ
テ、銘々步ム所ハ一步々々大事ヲ取ッテ進
ムヤウニ、指導シテ行キタイト考ヘテ居リ
マス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02319330307&spkNum=5
-
006・秋田清
○議長(秋田〓君) 只今政府ヨリ、長野
長崎兩縣下ニ於ケル事件ニ付キ、報〓ノ爲
メ發言ノ通〓ガアリマス、尙ホ之ニ對シ祕
密會議ヲ要求セラレマシタ、仍テ是ヨリ會
議ノ公開ヲ停メマス、傍聽人ノ退場ヲ命ジ
マス
長野長崎兩縣下ニ於ケル事件ニ付キ報〓
ノ件
〔午後一時四十九會祕密會ニ入ル〕
〔午後三時二十一分祕密會ヲ終ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02319330307&spkNum=6
-
007・秋田清
○議長(秋田〓君) 是ヨリ會議ヲ公開致シ
や、 、傍聽人ヲ入場セシメマス、諸君、御
著席ヲ希望致シマス--祕密會議ニ於キマ
シテハ山本內務大臣、鳩山文部大臣及小
山司法大臣ヨリ、長野長崎兩縣下ニ於ケ
ル事件ニ付キ報〓ヲ聽取リ、尙ホ之ニ對シ
テ質疑應答ガアリマシタ-本日ノ日程ニ
揭ゲマシタ質問ハ、何レモ政府ヨリ答辯書日程第二、昭和七年法律第四號中改正法律
ヲ受領致シマシタ、仍テ日程ヨリ之ヲ省キ案、右兩案ヲ一括シテ第一讀會ヲ開キマス
マく、答辯ニ對スル意見陳述ハ、適當ノ機-堀切大藏政務次官
會ニ通〓順ニ依リ許可致シマス-日程第
一及第二ハ關聯セル議案ナルニ依リ、括第一關稅定率法中改正法律案(政府
議題ト爲スニ御異議アリマセヌカ提出)第一讀會
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕第二昭和七年法律第四號中改正法律発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02319330307&spkNum=7
-
008・秋田清
○議長(秋田〓君) 御異議ナシト認メマス、案(輸入稅ノ從量稅率ニ關スル件)
仍テ日程第一、關稅定率法中改正法律案、(政府提出)第一讀會
關稅定率法中改正法律案
關稅定率注別表輸入稅表中左ノ通改正ス
第百三十五號ノ二ノ次ニ左ノ一號ヲ加フ
一三五ノ三麻黃無稅
第百七十四號ノ次ニ左ノ一號ヲ加フ
一七四ノ二生酒石無稅
第六百七號ノ二ノ次ニ左ノ一號ヲ加フ
六〇七ノ三學
粉狀ノモノ每斤一六·〇〇
百百斤五·五〇
二其ノ他每
第六百十二號第一項已ノ五ニヲ左ノ如ク改ム
ニ丸太及割材
ニノ一長十八メートルヲ超
工、末口ノ直徑三十
センチメートルヲ超
エサルモノ無稅
ニノ二長十メートルヲ超エ、
末口ノ直徑三十セン
チメートルヲ超エサ
ルモノ每立方メートル二·〇〇
ニノ三其ノ他每立方メートル二·五〇
同號第一項癸ヲ左ノ如ク改ム
癸其ノ他
イ厚二百ミリメートルヲ超エサ
ルモノ每立方メートル五·五〇
ロ其ノ他(丸太及割材ヲ含ム)每立方メートル二·〇〇
第六百十七號ノ次ニ左ノ一號ヲ加フ
六一七ノ二骨灰
第六百四十六號中「骨灰、」ヲ削ル
附則
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
昭和七年法律第四號中改正法律案
昭和七年法律第四號中左ノ通改正ス
別表輸入稅表番號第六百五號ノ項ノ次ニ左ノ一項ヲ加フ
六〇七ノ三蒟蒻芋
同第六百十二號ノ項中ニノ二ヲ左ノ如ク改ム
ニノ二
ニノ三其ノ他
癸其ノ他
イ
ロ其ノ他(丸太及割材ヲ含ム)
附則
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
〔政府委員堀切善兵衞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02319330307&spkNum=8
-
009・堀切善兵衞
○政府委員ヘ堀切善兵衞君) 只今議題トナ
リマシタ關稅定率法中改正法律案ノ說明ヲ
致シマス、政府ハ改正法律案ニ揭ゲラレテ
居リマス各品ニ關スル輸入稅率改正ノ要否
ニ付キ、關稅調査委員會ニ諮問致シマシタ
所、成案ヲ得マシタノデ、玆ニ本改正案ヲ
提出致シタ次第デアリマス、改正案ノ品目
ハ、木材外四品デアリマシテ、政府ハ是等
物品ノ生產、輸入及需給等ノ狀況ニ鑑ミ、
現行稅率ハ現下ノ實情ニ適セザルモノト認
メ、本改正法律案ヲ提出致シタ次第デアリ
マス、尙ホ詳細ナル點ニ關シマシテハ、委
員會ニ於テ御說明ヲ致ス考デアリマス、何
卒御審議ノ上速ニ御協賛ヲ與ヘラレンコト
ヲ希望致ス次第デアリマス
次ニ昭和七年法律第四號、輸入稅ノ從量
稅率ニ關スル法律中改正法律案ニ付テ御說
無稅
長十メートルヲ超エ、末口ノ直徑三十センチメート
ルヲ超エサルモノ
厚二百ミリメートルヲ超エサルモノ
明申上ゲマス、政府ハ只今御說明申シマシ
タ關稅定率法中改正法律案ニ依リ、此際差
當リ措置スルヲ適當ト認メマシタ物品ニ關
スル稅率ノ改正案ヲ提出致シタノデアリマ
スガ、是等品目中、新ニ從量稅率ヲ按配シ
タルモノニ對シマシテハ其生產、輸入竝
ニ需給關係等諸般ノ狀況ヲ勘案致シタル上、
是ガ關稅率ヲ定メタノデアリマスカラ、
自然本法ノ別表ニ揭ゲラレタル諸品ト同樣
ニ取扱フベキモノト認メマシテ、本改正法
律案ヲ提出致シタ次第デアリマス、尙ホ詳
細ノ點ニ關シマシテハ、委員會ニ於テ御說
明ヲ致ス考デアリマス、何卒御審議ノ上速
ニ御協賛ヲ與ヘラレンコトヲ希望致ス次第
デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02319330307&spkNum=9
-
010・秋田清
○議長(秋田〓君) 日程第三、右各案ノ審
査ヲ付託スヘキ委員ノ選擧ヲ議題ト致シマ
ス
第三右各案ノ審査ヲ付託スヘキ委員
ノ選擧発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02319330307&spkNum=10
-
011・上田孝吉
○上田麦吉君 兩案ハ一括シテ安達謙藏君
外一名提出、地租ノ免除ニ關スル法律案外
三件ノ委員ニ併セ付託セラレンコトヲ望ミ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02319330307&spkNum=11
-
012・秋田清
○議長(秋田清君) 上田君ノ動議ニ御異議
アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02319330307&spkNum=12
-
013・秋田清
○議長(秋田濟君) 御異議ナシト認メマ
ス、依テ動議ノ如ク決シマシタ、日程第四
及第五ハ同種議案ナルニ依リ、一括議題ト
爲スニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02319330307&spkNum=13
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014・秋田清
○議長(秋田濟君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ日程第四、辯護士法改正法律案、
日程第五、法律事務取扱ノ取締ニ關スル法
律案、右兩案ヲ一括シテ第一讀會ヲ開キマ
ス-司法大臣小山松吉君
第四辯護士法改正法律案(政府提出)
第一讀會
第五法律事務取扱ノ取締ニ關スル法
律案(政府提出)第一讀會
辯護士法改正法律案
辯護士法
第一章辯護士ノ職務及資格
第一條辯護士ハ當事者其ノ他ノ關係人
ノ委嘱又ハ官廳ノ選任ニ因リ訴訟ニ關
スル行爲其ノ他一般ノ法律事務ヲ行フ
コトヲ職務トス
第二條左ノ條件ヲ具フル者ハ辯護士タ
ル資格ヲ有ス
帝國臣民ニシテ成年者タルコト
二辯護士試補トシテ一年六月以上ノ
實務修習ヲ了ヘ考試ヲ經タルコト
前項第二號ノ實務修習及考試ニ關スル
事項ハ司法大臣之ヲ定ム
第三條辯護士試補タルニハ成規ノ試驗
ニ合格スルコトヲ要ス
前項ノ試驗ニ關スル事項ハ勅令ヲ以テ
之ヲ定ム
第四條左ニ揭グル者ハ前二條ノ規定ニ
拘ラズ辯護士タル資格ヲ有ス
一判事又ハ檢事タル資格ヲ有スル者
二三年以上專任行政裁判所長官又ハ
專任行政裁判所評定官タリシ者
三三年以上陸軍法務官又ハ海軍法務
官タリシ者
第五條左ニ揭グル者ハ辯護士タル資格
ヲ有セズ
-禁錮以上ノ刑ニ處セラレタル者
二懲戒ノ處分ニ因リ免官若ハ免職セ
ラレタル者、本法ニ依リ除名セラレ
タル者又ハ辯理士法若ハ計理士法ニ
依リ業務ヲ禁止セラレタル者ニシテ
免官、免職、除名又ハ業務禁止後三
年ヲ經過セザル者
三禁治產者又ハ準禁治產者
四破產者ニシテ復權ヲ得ザル者
第六條外國ノ辯護士タル資格ヲ有スル
外國人ハ相互ノ保證アルトキニ限リ司
法大臣ノ認可ヲ受ケ外國人又ハ外國法
ニ關シ第一條ニ規定スル事項ヲ行フコ
トヲ得但シ前條ニ揭グル者ハ此ノ限ニ
在ラズ
第十八條第二項、第二十條及第二十二
條乃至第二十五條ノ規定ハ前項ノ認可
ヲ受ケタル者ニ之ヲ準用ス
司法大臣必要ト認ムルトキハ第一項ノ
認可ヲ取消スコトヲ得
第二章辯護士名簿
第七條辯護士タルニハ辯護士名簿ニ登
錄セラルルコトヲ要ス
第八條辯護士名簿ハ之ヲ司法省ニ備フ
第九條辯護士タラントスル者ハ其ノ入
會セントスル辯護士會ヲ經由シテ司法
大臣ニ登錄ノ請求ヲ爲スベシ
第十條辯護士辯護士會ノ所屬ヲ變更セ
ントスルトキハ新ニ入會セントスル辯
護士會ヲ經由シテ司法大臣ニ登錄換ノ
請求ヲ爲スベシ
前項ノ登錄換アリタルトキハ辯護士ハ
直ニ舊所屬辯護士會ニ之ヲ屆出ヅベシ
第十一條辯護士所屬辯護士會ヲ退會セ
ントスルトキハ其ノ辯護士會ヲ經由シ
テ司法大臣ニ登錄取消ノ請求ヲ爲スベ
シ
第十二條辯護士會ハ會ノ秩序又ハ信用
ヲ害スル虞アル者ノ登錄若ハ登錄換ノ
請求ノ進達ヲ拒絕シ又ハ退會ヲ命ズル
コトヲ得
第十三條前條ノ規定ニ依リ當錄若ハ登
錄換ノ進達ヲ拒絕セラレ又ハ退會セシ
メラレタル者ハ司法大臣ニ不服ノ申立
ヲ爲スコトヲ得
前項ノ場合ニ於テ司法大臣ハ審査委員
會ニ諮問シテ登錄若ハ登錄換ノ請求ノ
進達ヲ命ジ又ハ退會ノ命ヲ取消スコト
ヲ得
第十四條審査委員會ニ關スル事項ハ勅
令ヲ以テ之ヲ定ム
第十五條左ノ場合ニ於テハ司法大臣ハ
辯護士名簿ノ登錄ヲ取消スベシ
辯護士國籍ヲ要失シタルトキ
二辯護士第五條各號ノ一ニ該當スル
ニ至リタルトキ
三第十一條ノ規定ニ依リ登錄取消ノ
請求アリタルトキ
四辯護士退會セシメラレ又ハ除名セ
ラレタルトキ
五辯護士死亡シタルトキ
六辯護士會解散シタルトキ
第十六條辯護士名簿ノ登錄、登錄換及
登錄取消ハ司法大臣之ヲ其ノ辯護士所
屬ノ辯護士會ニ通知スベシ
第十七條登錄ニ關スル事項ハ命令ヲ以
テ之ヲ定ム
第三章辯護士ノ權利及義務
第十八條辯護士ノ事務所ハ所屬辯護士
會ノ地域內ニ之ヲ設クベシ
辯護士ハ如何ナル名義ヲ以テスルモ二
個以上ノ事務所ヲ設クルコトヲ得ズ
第十九條辯護士事務所ヲ設ケタルトキ
ハ直ニ之ヲ司法大臣及所屬辯護士會ニ
屆出ヅベシ事務所ヲ移轉シタルトキ亦
同ジ
第二十條辯護士ハ誠實ニ其ノ職務ヲ行
ヒ職務ノ内外ヲ問ハズ其ノ品位ヲ保持
スベシ
第二十一條辯護士ハ所屬辯護士會ノ會
則ヲ遵守スベシ
第二十二條辯護士ハ正當ノ理由アルニ
非ザレバ法令ニ依リ官廳ノ命ジタル事
項及會則ノ定ムル所ニ依リ所屬辯護士
會ノ指定シタル事項ヲ行フコトヲ辭ス
ルコトヲ得ズ
第二十三條辯護士ハ左ニ揭グル事件ニ
付其ノ職務ヲ行フコトヲ得ズ
一相手方ノ協議ヲ受ケテ贊助ヲ爲シ
又ハ其ノ委囑ヲ承諾シタル事件
二相手方ノ協議ヲ受ケタル事件ニシ
テ其ノ協議ノ程度及方法ガ信賴關係
ニ基クモノト認メラルルモノ
三公務員トシテ職務上取扱ヒタル事
件
四仲裁手續ニ依リ仲裁人トシテ取扱
ヒタル事件
第二十四條辯護士ハ係爭權利ヲ讓受ク
ルコトヲ得ズ
第二十五條辯護士ハ事件ノ委囑ヲ承諾
セザルトキハ速ニ其ノ旨ヲ委囑者ニ通
告スベシ若通告ヲ怠リタルトキハ之ガ
爲生ジタル損害ヲ賠償スル責ニ任ズ
第二十六條辯護士ハ報酬アル公務ヲ兼
ヌルコトヲ得ズ但シ帝國議會議員ト爲
リ又ハ官署若ハ公署ヨリ特ニ命ゼラレ
若ハ囑託セラレタル職務ヲ行フハ此ノ
限ニ在ラズ
辯護士ハ所屬辯護士會ノ許可ヲ受クル
ニ非ザレバ商業其ノ他營利ヲ目的トス
ル業務ヲ營ミ若ハ之ヲ營ム者ノ使用人
ト爲リ又ハ營利ヲ目的トスル法人ノ役
員若ハ使用人ト爲ルコトヲ得ズ
第二十七條前條ノ規定ハ實務修習中ノ
辯護士試補ニ之ヲ準用ス
第四章辯護士會
第二十八條辯護士會ハ法人トス
辯護士會ハ辯護士ノ品位ノ保持及辯護
士事務ノ改善進步ヲ圖ルヲ以テ目的ト
ス
第二十九條辯護士會ハ地方裁判所ノ管
轄區域每ニ之ヲ設立スベシ但シ辯護士
會ニ屬スル辯護士三百名以上アル場合
ニ於テ其ノ中百名以上ノ者ハ同一地方
裁判所ノ管轄區域內ニ別ニ辯護士會ヲ
設立スルコトヲ得
第三十條辯護士會ヲ設立セントスルト
キハ會員ト爲ルベキ辯護士ハ會則ヲ定
メ司法大臣ノ認可ヲ受クベシ
辯護士會ノ設立アリタルトキハ前項ノ
辯護士ハ當然舊所屬辯護士會ヲ退會シ
其ノ會員ト爲ルモノトス
第十條ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用
ス
辯護士會會則ヲ變更セントスルトキハ
司法大臣ノ認可ヲ受クベシ
第三十一條司法大臣辯護士會ノ設立ヲ
認可シタルトキハ辯護士會ノ名稱、事
務所ノ所在地及設立ノ年月日ヲ〓示ス
ベシ
司法大臣辯護士會ノ名稱又ハ事務所ノ
所在地ノ變更ヲ認可シタルトキハ變更
ノ告示ヲ爲スベシ
第三十二條辯護士會ノ代表者ハ一人ト
ス但シ代表者差支アル場合ニ於テ之ニ
代リテ辯護士會ヲ代表スベキ者ヲ置ク
コトヲ妨ゲズ
第三十三條辯護士會ハ司法大臣ノ監督
コル ウ
第三十四條第三十條ニ規定スル場合ヲ
除クノ外辯護士名簿ニ登錄又ハ登錄換
ヲ受ケタル者ハ當然其ノ入會セントス
ル辯護士會ノ會員ト爲リ登錄換ヲ爲ス
場合ニハ舊所屬辯護士會ヲ退會スルモ
ノトス
第三十五條辯護士第十一條ノ規定ニ依
ル請求ニ因リテ登錄ヲ取消サレタルト
キハ當然所屬辯護士會ヲ退會シタルモ
ノトス
第三十六條辯護士會ハ辯護士試補ノ實
務修習ヲ擔當ス但シ司法大臣別段ノ規
定ヲ設ケタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
第三十七條辯護士會ハ官廳ヨリ諮問ヲ
受ケタル事項ニ付答申ヲ爲スベシ
辯護士會ハ司法事務ニ關シ官廳ニ建議
ヲ爲スコトヲ得辯護士ノ利害ニ關スル
事項ニ付亦同ジ
第三十八條辯護士會會則ニハ左ノ事項
ヲ記載スベシ
一名稱及事務所ノ所在地
二會ノ代表者其ノ他ノ機關ノ組織及
職務權限ニ關スル規定
三會議ニ關スル規定
四辯護士試補ノ實務修習ニ關スル規
定
五辯護士ノ報酬ニ關シ標準ヲ示ス規
定
六辯護士ガ委囑ヲ受ケタル事件ノ梗
〓及委囑者ノ爲ニシタル收支ヲ記載
スベキ帳簿ニ關スル規定
七會員ノ風紀保持ニ關スル規定
八無資力者ノ爲ニスル法律相談及訴
訟扶助ニ關スル規定
九答申及建議ノ決議ニ關スル規定
十會員ト委囑者トノ間ニ於ケル紛議
ノ調停ニ關スル規定
十一辯護士名簿ノ登錄及登錄換ノ請
求ノ進達ニ關スル規定
十二入會及退會ニ關スル規定
十三懲戒ノ申〓ニ關スル規定
十四會費ノ徵收ニ關スル規定
十五資產ニ關スル規定
第三十九條辯護士會ハ每年定期總會ヲ
開ク
辯護士會ハ必要アル場合ニ於テ臨時總
會ヲ開クコトヲ得
第四十條辯護士會ハ總會ノ日時、場所
及議題竝ニ役員選擧ノ日時及場所ヲ豫
メ司法大臣ニ申告スベシ
第四十一條司法大臣ハ辯護士會ノ總會
又ハ役員選擧ノ場所ニ臨席シ又ハ所部
ノ官吏ヲシテ臨席セシムルコトヲ得
第四十二條辯護士會ハ遲滯ナク總會ノ
決議竝ニ役員ノ就任及退任ヲ司法大臣
ニ申告スベシ
第四十三條左ノ事項ハ總會ノ決議ヲ經
ベシ
會則ノ變更
二豫算及決算
第四十四條辯護士會ノ會議法令若ハ會
則ニ違反シ又ハ公益ヲ害スルトキハ司
法大臣ハ其ノ決議ヲ取消シ、其ノ議事
ヲ停止シ又ハ辯護士會ノ解散ヲ命ズル
コトヲ得
第四十五條辯護士會ハ辯護士ト委囑者
トノ間ニ紛議ヲ生ジタルトキハ當事者
ノ請求ニ因リ其ノ調停ヲ爲スコトヲ得
第四十六條辯護士會ハ司法大臣ノ認可
ヲ受ケ同一地方裁判所ノ管轄區域內ニ
於ケル他ノ辯護士會ト合併スルコトヲ
得
辯護士會合併シタルトキハ合併ニ因リ
テ解散シタル辯護士會所屬ノ辯護士ハ
當然舊所屬辯護士會ヲ退會シ合併後存
續シ又ハ合併ニ因リテ設立シタル辯護
士會ノ會員ト爲ルモノトス
第十條第一項ノ規定ハ前項ノ場合ニ之
ヲ準用ス
第四十七條司法大臣辯護士會ノ合併ヲ
認可シタルトキハ合併後存續スル辯護
士會ニ付テハ變更ノ〓示ヲ爲シ、合併
ニ因リテ解散シタル辯護士會ニ付テハ
解散ノ〓示ヲ爲シ、合併ニ因リテ設立
シタル辯護士會ニ付テハ第三十一條第
一項ニ規定スル〓示ヲ爲スベシ
第四十八條辯護士會合併ヲ爲サントス
ルトキハ其ノ債權者ニ對シ異議アラバ
一月ヲ下ラザル期間內ニ之ヲ述ブベキ
旨ヲ催告スベシ
債權者ガ前項ノ期間內ニ異議ヲ述ベタ
ルトキハ辯護士會ハ之ニ辨濟ヲ爲シ又
ハ相當ノ擔保ヲ供スルニ非ザレバ合併
ヲ爲スコトヲ得ズ
合併ニ因リテ解散シタル辯護士會ニ屬
スル權利義務ハ合併後存續シ又ハ合併
ニ因リテ設立シタル辯護士會之ヲ承繼
ス
第四十九條辯護士會ハ左ノ事由ニ因リ
テ解散ス
一總會ノ決議
二合併
三第四十四條ノ命令
前項第一號ノ總會ノ決議ハ司法大臣ノ
認可ヲ受クベシ
民法第七十三條乃至第七十六條、第七
十八條乃至第八十條、第八十二條及第
八十三條竝ニ民法施行法第二十六條及
第二十七條ノ規定ハ辯護士會ノ〓算ニ
關シ之ヲ準用ス
第五十條司法大臣ハ辯護士會ノ解散ノ
決議ヲ認可シ又ハ之ニ解散ヲ命ジタル
トキハ解散ノ〓示ヲ爲スベシ
第五十一條辯護士會ハ共同シテ特定ノ
事項ヲ行フ爲規約ヲ定メ司法大臣ノ認
可ヲ受ケ聯合會ヲ設立スルコトヲ得
第五章懲戒
第五十二條辯護士本法又ハ辯護士會會
則ニ違反シタルトキハ檢事長ハ司法大
臣ノ命ニ依リ又ハ其ノ認可ヲ受ケテ懲
戒開始ノ申立ヲ爲スベシ
辯護士會ハ會則ノ定ムル所ニ依リ懲戒
ヲ求ムル爲司法大臣又ハ檢事長ニ申〓
ヲ爲スコトヲ得
第五十三條辯護士ノ懲戒ハ其ノ所屬辯
護士會ノ地域ヲ管轄スル控訴院ニ於ケ
ル懲戒裁判所之ヲ行フ
第五十四條懲戒ハ左ノ四種トス
一譴責
二千圓以下ノ過料
三一年以下ノ停職
四除名
前項ノ過料ノ裁判ノ執行ニ付テハ非訟
事件手續法第二百八條ノ規定ヲ準用ス
第五十五條懲戒ノ訴追ヲ受ケタル辯護
士ハ其ノ裁判確定スルニ至ル迄辯護士
會ヲ退會シ又ハ辯護士名簿ノ登錄換ヲ
請求スルコトヲ得ズ
辯護士會ハ懲戒ノ訴追ヲ受ケタル辯護
士ヲ退會セシムルコトヲ得ズ
第五十六條懲戒ノ事由アリタル時ヨリ
三年ヲ經過シタルトキハ懲戒開始ノ申
立ヲ爲スコトヲ得ズ
第五十七條本法ニ規定スルモノノ外懲
戒ニ付テハ判事懲戒法ヲ準用ス
附則
本法ハ昭和十一年四月一日ヨリ之ヲ施行
ス
本法施行ノ際現ニ從前ノ規定ニ依リテ辯
護士タル資格ヲ有スル者ハ本法施行後ト
雖モ仍其ノ資格ヲ有ス
舊刑法ノ重罪ノ刑又ハ禁錮ニ處セラレタ
ル者ハ第五條ノ規定ノ適用ニ付テハ之ヲ
禁錮以上ノ刑ニ處セラレタル者ト看做ス
從前ノ規定ニ依ル辯護士名簿ノ登錄ハ之
ヲ本法ニ依ル辯護士名簿ノ登錄ト看做ス
本法施行ノ際現ニ辯護士會ニ加入シ居ラ
ザル辯護士ニ付テハ本法施行ノ日ヨリ三
月內ニ從前ノ例ニ依リテ辯護士會ニ加入
スルニ非ザレバ其ノ登錄ハ效力ヲ失フ
辯護士會ニ關シテハ本法ニ依ル辯護士會
成立スルニ至ル迄ハ仍從前ノ例ニ依ル
但シ辯護士名簿登錄及登錄換ノ請求ノ進
達ニ關シテハ本法ニ依ル
本法施行ノ際現ニ存スル辯護士會ハ本法
施行ノ日ヨリ六月內ニ本法ニ依ル辯護士
會ヲ設立スル爲會則ヲ定メ司法大臣ノ認
可ヲ受クベシ司法大臣ハ認可ヲ爲シタル
トキハ辯護士會ノ名稱、事務所ノ所在地
及設立ノ年月日ヲ告示スベシ
前項ノ規定ニ依リテ辯護士會成立シタル
トキハ舊辯護士會ノ會員ハ當然新辯護士
會ノ會員ト爲リ舊辯護士會ニ屬シタル權
利義務ハ新辯護士會之ヲ承繼ス
本法施行ノ際現ニ二個以上ノ事務所ヲ有
スル辯護士ハ本法施行ノ日ヨリ六月內ニ
限リ之ヲ存續スルコトヲ得
法律事務取扱ノ取締ニ關スル法律案
第一條辯護士ニ非ザル者ハ報酬ヲ得ル
目的ヲ以テ他人間ノ訴訟事件ニ關シ又
ハ他人間ノ非訟事件ノ紛議ニ關シ代
理、仲裁若ハ和解ヲ爲シ又ハ此等ノ
周旋ヲ爲スヲ業トスルコトヲ得ズ但シ
正當ノ業務ニ附隨シテ爲ス場合ハ此ノ
限ニ在ラズ
第二條何人ヲ問ハズ他人ノ權利ヲ讓受
ケ訴訟其ノ他ノ手段ニ依リ其ノ權利ノ
實行ヲ爲スコトヲ業トスルコトヲ得ズ
第三條辯護士ニ非ザル者ハ利益ヲ得ル
目的ヲ以テ辯護士事務所、法律事務所
共ノ他之ニ類似スル名稱ヲ使用スル事
務所ヲ設クルコトヲ得ズ
第四條第一條又ハ第二條ノ規定ニ違反
シタル者ハ一年以下ノ禁鋼又ハ千圓以
下ノ罰金ニ處ス辯護士此等ノ者ヨリ事
件ノ周旋ヲ受ケタルトキ亦同ジ
第三條ノ規定ニ違反シタル者ハ千圓以
下ノ罰金ニ處ス
附則
本法ハ昭和十一年四月一日ヨリ之ヲ施行
ス
〔國務大臣小山松吉君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02319330307&spkNum=14
-
015・小山松吉
○國務大臣(小山松吉君) 只今議題トナリ
マシタル辯護士法改正案ノ提案ノ理由ヲ御
說明申上ゲマス、現行辯護士法ハ明治二十
六年ノ制定ニ係ルモノデアリマシテ、爾來
四十年ヲ閱シテ居ルノデアリマス、其間司
法制度ノ發達ト共ニ、辯護士ノ數モ比年增
加致シマシテ、現行法制定當時千六百人內
外デアリマシタノガ、今日ニ於テハ六千人
ニ近キ數ヲ算フルニ至ッタノデアリマス、中
ス迄モナク辯護士ハ司法機關ノ一ト致シマ
シテ、司法事務ノ運用上重要ナル地位ト職
責トヲ有スルモノデアリマスルガ、時運ノ
進步ニ伴ヒマシテ、司法事務ハ複雜ヲ加ヘ
來ッタノデアリマスカラ、其職責ハ益〓重要
性ヲ帶ブルニ至ッタノデアリマス、是等ノ情
勢ヨリ致シマシテ、本法改正ノ議ハ、屢
當議會ノ問題トモナリ、政府ニ於テモ亦改
正ノ必要ヲ認メマシテ、其準備ヲ致シマシ
タ、大正十一年十月、司法省內ニ辯護士
法改正調査委員會ヲ設ケマシテ、朝野ノ學
識及經驗アル人々ニ御依賴致シマシテ、調
査ニ著手〓シタノデアリマス、同調査會
ハ爾來愼重ニ〓究ヲ進メマシテ、囘ヲ重
ヌルコト七十八囘、昭和二年十月十五日ニ
至リマシテ、辯護士法改正綱領五十六箇條
ヲ議決致シマシテ、之ヲ司法省ニ答申致シタ
ノデアリマス、仍テ司法省ニ於テハ、更ノ
該綱領ニ對シ、裁判所、檢事局及辯護士會
ノ意見ヲ徵シマシタル上ニ、愼重熟議ノ結
果、本改正案ヲ決定致シタノデアリマ
ス、本改正案ノ主要ナル目的ハ、辯護士ノ
地位ノ向上ト、辯護士事務ノ改善進步ヲ圖ル
ノニアルノデアリマスルガ、玆ニ改正條項
中ノ重要ナル二三ノ點ニ付テ御說明ヲ申上
ゲマス
第一ハ辯護士ノ職務ノ範圍デアリマスル
ガ、現行法ハ辯護士ノ職務ノ範圍ヲ、裁判
所ニ於ケル行爲ニ限定致シテ居ルノデアリ
そく、然ルニ本案ニ於テハ其範圍ヲ擴張
致シマシテ、裁判所外ノ一般法律事務ニ及
ボシタノデアリマス、辯護士ノ最モ重要ナ
ル職務ガ、裁判所內ニ於ケル訴訟行爲ニ存
スルコトハ辯護士ガ重要ナル司法機關ノ
一タル地位ヨリ來ル常然ノ歸結デアリマシ
テ、此點ハ現行法ト異ル所ハナイノデアリ
マスケレドモ、唯、時勢ノ進步ハ、國民ノ
法律生活ヲ爲ス上ニ於テ、裁判所外ニ於キ
マシテモ、辯護士ノ援助ヲ必要トスル場合
ガ多クナッテ參ノタノデアリマス、仍テ本案
ハ現在ノ社會狀態ニ適合セシムル趣旨ニ於
テ、辯護士ノ職務ノ範圍ヲ擴張スルコトヲ
以テ適當ト認メタ次第デアリマス
第二ハ辯護士タルノ資格デアリマスガ、
辯護士タル資格ニ於キマシテモ、重大ナル
改正ヲ加ヘマシテ、其資格ハ原則トシテ判
事檢事ト同一ニ致シタノデアリマス、尙ホ
辯護士ニナリマスルノニハ、辯護士試補ト
シテ事務ヲ修習セシムルコトニ致シタノデ
アリマス、一年六箇月以上辯護士試補トシ
テ、品位ノ淘冶ト實務ノ執行トニ付テ、適
當ナ修習ヲ爲サシムルヲ必要ト認メタ次第
デアリマス
ソレカラ第三ハ、婦人ノ辯護士ヲ認メタ
コトデアリマス、從來辯護士タル者ハ、男
子ノミニ限ラレテ居ッタノデアリマシタガ、
本案ニ於テハ婦人モ男子ト同等ナル條件ノ
下ニ、辯護士タルコトヲ得ルコトニ致シタ
ノデアリマス
第四ハ、辯護士會ニ法人格ヲ認メタ點デ
アリマス、從來ハ辯護士ハ、所屬地方裁判
所ノ檢事正ノ監督ヲ受ケテ居リマシタノ
ヲ、司法大臣ノ監督ヲ受クルモノト致シマ
シテ、其會ノ統制、辯護士ノ品位向上及辯
護士事務ノ改善進步ヲ圖ル上ニ於キマシテ、
必要ト認メタル各種ノ事項ノ執行ヲ、其權
能トシテ認メタノデアリマス
以上述べマシタ點ガ改正ノ主要ナル點デ
アリマシテ、其他ノ規定ハ〓ネ右ノ改正ニ
伴ヒマシテ、法規ノ整理上現行法ニ改正ヲ
加ヘマシタモノデアリマス、之ヲ要スルニ
本案ハ辯護士ノ品位向上ト、辯護士事務ノ
改善進步ヲ圖リマシテ、司法事務ノ補助機
關トシテノ其職能ヲ十分ニ發揮セシムルト
共ニ、辯護士ヲシテ國民ノ法律生活上、善
良ナル援助者タラシムルコトヲ期スル爲
ニ、適切且ツ必要ナルベシト思料致シマシ
タル、幾多ノ條規ヲ制定致シタ次第デアリ
マス
次ニ法律事務取扱ノ取締ニ關スル法律案
ニ付テノ提案理由ヲ御說明申上ゲマス、是
ハ辯護士ニ非ズシテ、辯護士ノ職務ニ類似
スル行爲ヲ業ト爲ス者ニ對スル取締規定デ
アリマス、辯護士ノ數ガ少ナカッタ時代ニ
於キマシテハ、一般國民ハ辯護士ニ非ズシ
テ、法律上ノ知識ヲ有スル者ノ助言ヲ求メ
タノデアリマシタ、殊ニ此簡易ノ事項ニ付
キマシテハ、種々ノ事情ヨリシテ、辯護士
以外ノ者ニ依賴スルコトヲ、寧ロ便宜トシ
テ居ッタノデアリマス、而シテ現在此種
ノ業務ニ從事スル者ガ、全國ヲ通ジテ可ナ
リ多數ニ上ッテ居ルノデアリマス、是等ノ
者ガ、國民ノ法律上ノ助言者トシテ存在
シ、甚シキ弊害ノナイ限リハ、之ヲ排斥ス
ベキデハナイトモ思ハレルノデアリマスガ、
時代ノ推移ニ伴ヒマシテ、次第ニ種々ノ
弊風ヲ生ジマシテ、多數ノ者ノ中ニハ不法
ノ行動ヲ敢テシテ、法律ヲ無視シテ顧ミナ
イ者ガアルヤウニナッタノデアリマス、現今
ニ在リマシテハ、其弊ニ堪ヘザル情勢ニ立
至ッタノデアリマス、隨テ從來府縣ノ大部
分ニ於テモ、府縣令ニ依ヶテ其取締ヲ致シ
テ居ル次第デアリマス、仍テ此機會ニ於キ
マシテ法律ヲ以テ其取締ヲ厲行スルコトヲ
最モ適當デアルト考へマシテ、本案ヲ提出
致シタ次第デアリマス
終リニ此兩法律ノ施行期日ニ付テ一言致
シテ置キマスガ、從來裁判所外ニ於テ法律
事務ニ從事致シマスル者ハ、其全部ガ不
法ノ行爲ヲ爲シタ者デハナイノデアリマシ
テ、社會ノ一部ノ人々ノ要求ニ依リマシ
テ、其業務ニ從事シ來ッタノデアリマスカ
ラ、今一朝ニシテ其業務ヲ禁止致シマスル
ノハ、其當ヲ得ザルヤニモ考ヘラレマス、
故ニ辯護士法ノ施行ニ依リマシテ、直チニ
之ヲ禁遏スルコトナク、轉職等ノ爲メ適當
ノ機會ヲ與フルノヲ相當ト致シマスル關係
上、三箇年後ニ於テ此法案ヲ施行スルコト
ニ致シマシタ次第デアリマス、隨テ兩法案
ハ只今述ベマシタ理由ニ依リマシテ、同時
施行ヲ必要ト致シタ次第デアリマス、詳細
ハ委員會ニ於テ御說明申上ゲタイト思フノ
デアリマス、政府ノ意ノ在ル所ヲ十分御酌
取ノ上、愼重御審議ノ上御協贊アランコト
ヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02319330307&spkNum=15
-
016・秋田清
○議長(秋田濟君) 質疑ヲ許シマス-一
松定吉君
〔一松定吉君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02319330307&spkNum=16
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017・一松定吉
○一松定吉君 只今御提案ニナリマシタ辯
護士法改正法律案竝ニ法律事務取扱ノ取締
ニ關スル法律案ニ對シマシテ、只今司法大
臣ノ御說明ニ相成リマシタ點、竝ニ其以外
ニ於キマシテ、私共ノ疑ノ存スル所ヲ質シ
テ置キタイト思フノデアリマス
第一ハ、此辯護士法改正法律案ト、法律
事務取扱ノ取締ニ關スル法律案トヲ、二ツ
ニ御分ケニナッタ理由ヲ私ハ承リタイノデ
アリマス、此點ニ對シマシテ司法省ガ、大
正十三年ニ委員會ヲ御作リニ相成リマシ
テ、サウシテソレ等ノ人ニ御諮問ニ相成リ
マシタ所ノ委員會案、竝ニ此委員會カラ司
法省ニ上申致シマシタ所ノ、其原案ヲ基礎
ト致シマシテ、司法省ガ更ニ變更ヲ致シマ
シタ司法省ノ變更案、及其後ニ司法省ガ法
制審議會ニ之ヲ審議セシムベク、御廻シニ相
成リマシタ辯護士法改正案、斯ウ云フヤウナ
案ニ對シマシテハ、此法律事務取扱ノ取締ニ
關シマスル法律案ニ規定セラレテ居リマス
ル事柄ハ、其第二條ニ明定セラレテ居ッタ
ノデアリマス、然ルニ今囘此趣旨ヲ全ク二
ツニ分ケマシテ、別々ニ御提案ニ相成ッタ
ノハ、如何ナル理由デアルノデアリマセウ
カ、之ヲ明ニ政シテ置キタイノデアリマス
何故私ガ斯ノ如キ質問ヲ致スカト言ヒマ
スルト、司法大臣ノ御說明ニ相成リマシタ
ヤウニ、今日辯護士ニ非ズシテ辯護士ノ業
務ヲ取扱ヒマスル者ガ、全國ニ其數ガ非常
ニ多イノデアリマス、是等ノ者ガ今日社會
ニ幾多ノ害毒ヲ流シツヽアリマスルコト
ハ是ハ公知ノ事實デアリマシテ、司
法大臣ニ於カレマシテモ、旣ニ御認メニ
相成クテ居ル所デアリマス、是等ノ者ガ自
分ノ職業ヲ失フト云フ立場ニ置カレマス
ル結果、一大團結ヲ作リマシテ、自分等
ニ不利益ナル法律ノ實施期間ヲ遲レシ
メ、或ハ此法案ノ通過ヲ阻害スルト云フ
ヤウナコトガ、必シモナイトハ言ヘナイ
ノデアリマス、サウ云フ時ニ於キマシテ、
二ツニ切離サレテ居リマスル爲ニ、辯護士
法ト云フモノガ制定セラレ、施行セラレタ
ニ拘ラズ、所謂辯護士ニ非ズシテ法律事務
ヲ取扱フ者ノ仕事ト云フモノハ、依然トシ
テ法律ガ正シク認メナイニシテモ、默認セ
ラルヽト云フガ如キ結果ヲ得マスルナラ
バ全ク辯護士法改正ノ趣旨ニ背反スル結
果ヲ見ルノデアリマス、故ニ私ハ辯護士ニ
非ズシテ、法律事務ヲ取扱ヒマス者ノ取締
規定ハ今迄ノ委員會案、司法省ノ變更案、
辯護士法改正案等ノ第二條ニ規定致シテ置
イタヤウニ、本法ノ中ニ併セテ規定スルコ
トノ方ガ、最モ機宜ニ適シタル處置デアル
ト考ヘルノニ、之ヲ切離サレタ理由ガ分ラ
ナイノデアリマス、此點ヲ明ニ御說明ヲ御
願致シマス
其次ニハ特ニ司法大臣カラ御說明ガアリ
マシタガ、本法ガ施行セラルヽト云フコト
ニナレバ、昭和十一年ノ四月一日カラ施行
セラルヽト云フコトニ相成ルノデアリマス
ガ、何故ニ三年間ノ期間ヲ存スルカト云フ
點ニ對シテノ御說明ハ是等ノ辯護士ニ非
ザル者ガ俄ニ職務ヲ失フト云フコトニナ
リ、所謂失業者ノ地位ニ置クト云フコトハ
氣ノ毒デアルガ故ニ、三箇年ノ期間ヲ置イ
テ、其間ニ適當ナル業務ニ轉ゼシムル餘地
ヲ與ヘタトノ御說明デアリマシタガ、若シ
左樣ナ意味デアリマスルナラバ、現ニ是等
ノ者ガ法律事務ニ從事シテ居ル其仕事ノ終
ルマデ、特ニ其仕事ノミニ限定ヲシテ、相當
ノ期間ヲ與ヘレバ宜シイノデアリマシテ、
三箇年ト云フ期間ヲ一般的ニ御認メニ相成
リマシテ、公然此三年間ハ大手ヲ振ッテ法
律事務ヲ取扱フコトガ出來ルト云フガ如キ
コトハ、折角此辯護士法ヲ改正スル所ノ大
精神ニ背馳スルノデハアリマスマイカ、此
點ニ對シテノ御明答ヲ伺ヒタイノデアリマ
ス
其次ニハ〓護士ノ資格ニ關シテヾアリマ
ス、第二條ニ「帝國臣民ニシテ成年者タル
コト」トアリマス爲ニ、大臣御說明ノ如ク、
婦人ガ辯護士タルノ資格ヲ得、婦人辯護士
ヲ見ルコトノ出來マスルコトハ吾々ハ贊
成デアリマスガ、旣ニ婦人ニシテ辯護士タ
ルコトガ出來マスルナラバ、同ジ立法ノ精
神ヲ擴ゲマシテ、檢事ニモ判事ニモ、婦人
ノ檢事、婦人ノ判事ト云フモノヲ認メルコ
トガ、最モ適當デアルト考へルノデアリマ
スガ、此點ニ對シマシテ近キ將來、之ヲ立
案スル御趣旨ガアルノデアリマセウカ、如
何デアリマセウカ、其點ヲ伺ッテ置キタイ
ノデアリマス
ソレカラ第五條ニ禁錮以上ノ刑ニ處セラ
レタル者ハ辯護士タルノ資格ヲ失フト云
フコトニ規定セラレテ居リマス、只今ノ現行
法ハ、列擧主義デアリマシテ、破廉恥罪ヲ犯
シタ者デ、而モ定役ニ服スル者、卽チ〓役
刑ニ服シタ者デナケレバ、辯護士タル資格
ヲ喪失シナイコトニナッテ居リマス、而シテ
其事ハ所謂司法省案、委員會案、變更案、皆
其通リニ列擧シテ居リマシテ、懲役刑以上ノ
者デナケレバ、辯護士タル資格ハ失ハナイト
云フコトニナッテ居ルニ拘ラズ、此度ノ改正
案ノ、禁錮以上ノ刑ニ處セラレタル者ハ辯
護士タル資格ガナイト云フコトハ、餘リ
ニ一足飛ニ、ソレ等ノ資格ニ加ヘル制限ガ
過重デハアリマスマイカ、若シ斯樣ナ案ガ
通過致スト云フコトニ相成リマスト、辯護
士デアル者ガ選擧運動ニ從事スルト云フヤ
ウナ場合ニ、誤ヲテ選擧違反ニ問ハレルヤウ
ナコトガアルト、直チニ辯護士タル資格ヲ
失ッテシマフト云フコトニナレバ、折角辯護
士タル資格ヲ得テ、サウシテ國民ノ權利擁
護ニ當ッテ居ル者ガ、一朝過誤ノ爲ニ資格ヲ
失フト云フガ如キコトハ、少シク苛酷ニ失
スルヤウニ考ヘルノデアリマスガ、此點ニ
對シテ司法省ハ何カ御考慮ガアルノデアリ
マセウカ、其點ヲ伺ッテ置キタイノデアリマ
ス
其次ハ辯護士ノ權利義務、第三章ニ辯護
士ノ權利及義務ト云フコトヲ記載シテ居,
テ、第十八條カラ二十七條マデ十箇條ノ規
定ガアリマスガ、此中ハ全部義務デアッテ、
權利ハ一箇條モナイ、是ハ一體ドウ云フ譯
デアリマセウカ、權利義務ト規定シテ置キ
ナガラ、義務ダケ規定シテ、權利ガナイト
云フノハドウ云フ譯デアルカ、此點ニ對シ
マシテハ、彼ノ委員會案及司法省ノ變更案
等ニハ、辯護士ハ祕密ヲ守ラナケ·バナラ
ヌ所ノ義務ヲ有スルト同時ニ、祕密ヲ守ル
權利ガアルト云フコトノ規定ガアリマス、
ソレヲ全ク削除致シテシマヒマシタ爲ニ、
權利ト云フモノハ全ク認メラレナク、唯義
務ダケガ茲ニ現レテ居ルト云フコトニナル
ノデアリマスガ、此點ニ對シマシテハド
ウ云フ御考デ斯樣ナル立案ヲ爲サッタノデ
アリマセウカ、其點ヲ承ッテ置キタイノデア
リマス、或ハ民事訴訟法及刑事訴訟法ニ、
祕密ヲ守ル所ノ義務ガ規定セラレテ居リ、
サウシテ相當ニ是等ノモノハ擁護セラレテ
居ルカラ、特ニ辯護士法ニハ必要ハナイノ
デアルトノ御見解デアリマスルナラバ、ソ
レハ少シク皮相ノ見解デアルヤウニ考ヘル
ノデアリマス、何トナレバ、刑事訴訟法ノ
祕密嚴守ノ義務、是ハ其本人ガ承諾サヘス
レバ、祕密ヲ守ル必要ガナクナルノデアリ
マス、民事訴訟法ニ於キマシテハ、祕密ヲ
守ル義務ガ免除セラレタナラバ、祕密ヲ守
ラヌデ宜イト云フコトニナルノデアリマス、
斯ウ云フヤウナコトハ辯護士道德ニ反スル
ト云フ考ヲ以テ-國民ガ辯護士ニ色々ナ
祕密ヲ打明ケテ、サウシテ一身ヲ託スル、
法律上ノ相談ヲ持掛ケルト云フヤウナコト
ガ、法ノ力ニ依ッテ破壞セラルヽト云フガ如
キ結果ヲ招來スルコトヲ憂ヘルノデアリマ
ス、此點ニ對シマシテハ矢張祕密ヲ嚴守ス
ル所ノ權利ヲ辯護士ニ與ヘタ方ガ宜イノデ
アリマスガ、之ヲ御省キニナリマシタノハ
如何ナル理由デアリマセウカ、其點ヲ承ッテ
置キタイノデアリマス
ソレカラ其次ニハ、辯護士ノ事務所ハ二
箇所以上持ツコトガ出來ナイト云フコトニ
ナッテ居リマス、今日辯護士ガ自分ガ一箇所
ノ事務所ヲ持ッテ居リナガラ、他ニ自分ノ名
義ヲ貸シテ辯護士ニ非ザル者ヲ住ハセテ、
サウシテ色々ナ事務ヲ執ラセマス爲ニ、幾
多ノ弊害ヲ招來スルト云フコトノアルコト
ハ私共痛嘆致シテ居リマス、斯ノ如キコ
トハドウシテモ之ヲ取締ラナケレバナラヌ
必要ガアリマスケレドモ、今日例ヘバ私ガ
大阪ニ居ノテ辯護士事務ニ從事シテ居ル、東
京ニ自分ガ出テ來ルコトヲ幸ニ、東京ニ於
テ法律事務ヲ執リ、東京ニ於テ依賴者ノ鑑
定ヲシ、依賴者ニ色々ナ事ヲ〓ヘテヤリ、
色々訴訟事務ヲ相談スルコトガ出來ナイト
云フコトニナルナラバ、宿屋ニ於テ六法全
書ヲ開イテ相談ニ與ルト云フヤウナコト
モ、出來ナイコトニナルノデアリマセウ
カ、是ハ所謂モグリヲ征伐スル爲ニ必要
ナコトニハナリマスケレドモ、甲ノ辯
護士ガ、他ノ土地ニ住ンデ居ル乙ノ辯
護士ノ事務所デ、協同シテ事務ヲ執ルト云
フヤウナ場合ニハ、何モ弊害ガナイヤウニ
思フノデアリマスガ、サウ云フ時モ此第十
八條ノ第二項ノ制裁ヲ受ケルト云フコトニ
ナルノデアリマセウカ、此邊ヲ明ニシテ置
キタイノデアリマス
其次ハ、第二十六條ノ「辯護士ハ報酬ア
ル公務ヲ兼ヌルコトヲ得ズ」トアリマス、
帝國議會議員ハ此限ニ在ラズトアリマスケ
レドモ、今日公共團體デアリマス道府縣、
市町村等ノ議員ハ、實際ハ實費辨償ト云フ
コトニナッテ居ル所ガ多イノデアリマスケ
レドモ、府縣ニ依リマシテハ其實費ノ辨償
ヲ報酬ト云フ名義ノ下ニ支給致シテ居ルノ
デアリマス、サウ致シマスルト、斯ウ云フ
ヤウナ報酬ヲ受ケテ居リマスル爲ニ、辯護
士ノ地位ニ居ル者ガ議員タルコトガ出來ナ
イト云フガ如キコトハ、是ハ考慮セナケレ
バナラヌコトデハアリマスマイカ、此點モ
一ツ承ッテ置キタイノデアリマス
其次ニハ、法律事務ノ取扱ニ關シマスル
此第一條デアリマス、之ニ依リマスルト
鑑定ヲ爲スコトヲ除外シテ居リマス、辯護
士ニ非ザル者ガ他人間ノ訴訟事件ニ關シ、又
ハ他人間ノ非訟事件ノ紛議ニ關シテ代理、
仲裁若ハ和解ヲスルトカ、或ハ周旋ヲ爲ス
コトヲ業トスルコトヲ禁ズルノハ結構デア
リマスガ、何故鑑定スルコトヲ御許シニナ
ルノデセウカ、御許シニナルト云フコトニ
ナレバ、折角辯護士ニ非ザル者ヲ取締ル法
ノ精神ハ、勝手ニ鑑定ヲスルト云フ名義ノ
下ニ蹂躪ラレルヤウニ考ヘルノデアリマス
カラ、此鑑定ヲ除外シタ理由ヲ承フテ置キ
タイノデアリマス
尙ホ但書ノ「正當ノ業務ニ附隨シテ爲ス
場合ハ此ノ限ニ在ラズ」トアリマスケレド
モ、正當ノ業務ニ附隨スルト云フノハ、
體ドンナコトデアリマセウカ、所謂法律事
務ニ從事スル所ノ辯護士ニ非ザル者ガ、正
當ノ業務ニ附隨シテ、報酬ヲ目的トシテ是
等ノ仕事ヲスルト云フコトガアリマスナラ
バ、承ッテ置キタイノデアリマス、或ハ警察
ノ人事相談所、市ノ法律相談所、興信所、
信託會社、金融業者ト云フヤウナモノガ或
ハソレニ當嵌マルト云フ御見解カ存ジマセ
ヌケレドモ、サウ云フモノハ所謂報酬ヲ目
的トシテヤッテ居ル仕事デハナイヤウニ考
ヘルノデアリマスカラ、此但書ノヤウナモ
ノハ無イノデハナカラウカ、此點ニ付テ承ッ
テ置キタイノデアリマス
〔國務大臣小山松吉君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02319330307&spkNum=17
-
018・小山松吉
○國務大臣(小山松吉君) 只今一松君ノ御
質疑ニ御答致シマス、第一ノ辯護士法ト法
律事務取扱ノ取締ニ關スル法トヲ分ケマシ
タ理由デアリマスガ、是ハ辯護士ノ品位向
上ヲ圖リマスルガ爲ニ、辯護士法ヲ改正致
シタ趣意デアルノデアリマシテ、辯護士ニ
非ズシテ辯護士ノ業務ニ類スル行爲ヲ爲ス
者ヲ取締リ、ソレヲ辯護士法ノ規定ノ中ニ
入レマスルコトハ、如何ニモ形ガ面白クナ
イノデアリマス、御說明ノアリマシタ前
ノ辯護士改正委員會ノ案ニハ、サウ云フ風
ニゴザイマシタガ、段々〓究致シテ見マス
ルト、醫師法其他ノ法律ノヤウニ、簡單ニ
書クコトガ出來ナイノデアリマス、御承知
デアリマセウガ、法律事務取扱ノ取締ニ關
スル法律案ノ第二條「他人ノ權利ヲ讓受ケ」
云々ト云フ規定ノ如キハ、辯護士法ニ書イ
テハ餘リ上品デナイト云フ感ジガアルノデ
アリマス、ソレカヲ尙ホ是マデ府縣ノ大部分
ニ於テ取締法令ヲ設ケテ居リマシタ、之ヲ整
理スル必要ガアリマスル爲ニ、辯護士法ト分
ケタ譯デアリマス、二ツニ致シタノデアリマ
ス、ソレカラ第二ハ、三年間ノ期間ヲ置キマ
シタノハ、說明致シマシタ如ク、轉業ノ爲ノ
便宜トシテ認メタ譯デアリマス、是ハ御承
知ノ今度ノ辯護士法ハ、辯護士ノ職務ヲ非
常ニ廣ク擴張致シマシタカラ、此法律事務
取扱ノ取締法ニ依ッテ今度取締ラレマス人ヲ、
或ル意味ニ於テ保護スル必要ガアル、之ヲ
三年間ヲ相當ト見タ譯デアリマス
其次ニ婦人ノ判事、檢事ノコト、是ハ未
ダ考ヘテ居リマセヌ、ソレカラ第四ハ、禁
鋼以上ノ刑ニ處セラレタ者ヲ辯護士ニシナ
イノハ失當デアルト云フノデアリマスガ、
是ハ委員亡デ詳シク申上ゲマスガ、斯ウ云
アヤウナ資格ヲ定メマシタノハ、高等試驗
令其他デ皆禁錮以上ノ刑トナッテ居リマス
カラデアリマス、第五ハ、第三章ニ辯護士
ノ權利義務ト規定シテ置キナガラ、權利ト
云フモノハナク、義務ダケ負フト云フコト
ニナッテ居ルガドウカト云フノデスガ、是ハ
御述ニナリマシタ民事訴訟法及刑事訴訟法
ノ規定デ以テ十分デアルト思ヒマス、第六
ノ事務所ノコトデアリマスガ、是ハ矢張一
箇所ニスル必要ガアリマシテ、斯ウ云フ規
定ヲ設ケタノデアリマス、法律事務カラ鑑
定ヲ除キマシタ點ハ、是ハ政府ト致シマシ
テ長イ間〓究ヲ致シマシテ、法律事務取扱
ノ取締ニ關スル法律案第一條ニ於テ鑑定ヲ
削リマシタ點デアリマス、是モ委員會デ申
上ゲマスガ、第一條ノ但書「正當ノ業務ニ
附隨シテ」ト云ヒマスルコトハ「正當ノ業
務」ト云フ文字ハ刑法ノ三十五條ニ規定ガ
アリマシテ、〓念ガ略、定ッテ居リマス、之
ニ附隨シテ爲シマス行爲ニ付キマシテモ、
御例示ニナリマシタ人事相談所、ソレ等ノ
モノモ入ル、其他或ル會社ノ行爲等ニモ入
ルモノモアルノデアリマス、併シ事ハ專門
ニ亙リマスカラ、是ハ委員會デ御說明ヲ申
上ゲタ方ガ結構ダト思ヒマス、ソレダケ御
答致シテ置キマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02319330307&spkNum=18
-
019・一松定吉
○一松定吉君 簡單デアルカラ自席カラ發
言致シマスコトヲ御許願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02319330307&spkNum=19
-
020・秋田清
○議長(秋田〓君) 許可致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02319330307&spkNum=20
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021・一松定吉
○一松定吉君 只今ノ司法大臣ノ御答辯ニ
對シマシテハ、尙ホ幾多ノ疑問ヲ有シテ居
リマスケレドモ、詳細ハ委員會ニ於テ改メ
テ質問スルコトニ致シマシテ、是デ打切リ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02319330307&spkNum=21
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022・秋田清
○議長(秋田〓君) 日程第六、右各案ノ審
査ヲ付託スヘキ委員ノ選擧ヲ議題ト致シマ
ス
第六右各案ノ審查ヲ付託スヘキ委員
ノ選擧発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02319330307&spkNum=22
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023・上田孝吉
○上田孝吉君 兩案ヲ一括シテ議長指名十
八名ノ委員ニ付託セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02319330307&spkNum=23
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024・秋田清
○議長(秋田〓君) 上田君ノ動議ニ御異議
アリマセヌ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02319330307&spkNum=24
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025・秋田清
○議長(秋田〓君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ-日程第
七、大正二年法律第九號中改正法律案ノ第
一讀會ノ續ヲ開キマス、委員長ノ報〓ヲ求
メマス-委員長鳩山秀夫君
第七大正二年法律第九號中改正法律
案(裁判所管轄區域ニ關スル件)(政
府提出)第一讀會ノ續(委員長報〓)
報告書
一大正二年法律第九號中改正法律案(裁
判所管轄區域ニ關スル件)(政府提
出)
右ハ本院ニ於テ別紙ノ通修正スヘキモノ
ト議決致候此段及報〓候也
昭和八年三月四日
委員長鳩山秀夫
衆議院議長秋田〓殿
〔別紙〕
大正二年法律第九號中改正法律案別表裁
判所管轄區域表中左ノ通修正ス
前橋地方裁判所ノ部新田區裁判所管轄區
域中山田郡ノ内「境野村」ヲ削ル
山形地方裁判所ノ部酒田區裁判所管轄區
域中山形縣ノ內「飽海郡」ノ上ニ「酒田市」
フォンク
〔鳩山秀夫君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02319330307&spkNum=25
-
026・鳩山秀夫
○邊山秀夫君 只今議題トナリマシタ法律
案ノ委員會ノ經過ヲ簡單ニ御報告申上ゲマ
ス、此法律案ハ裁判所ノ管轄ヲ變更スルコ
トヲ目的トシマシタ法律案デゴザイマシ
テ、從來行政區劃ノミヲ基準トシテ裁判所
ノ管轄ヲ定メテ居リマシタノヲ、今囘交通
ノ便宜、地方民ノ便宜ヲ圖ッテ、管轄ヲ定メ
ルト云フ方針ヲ政府ニ於テ採ラレテ、其方
針ニ基イテ、僅ニ五ツデゴザイマスガ、五
ツノ區裁判所ノ管轄ヲ變更スル案ヲ出サレ
タノデアリマス、法案ハ大部ニナッテ居リ
マスガ、其大部分ハ、裁判所構成法ノ施行
規則ノ第三條ニ依リマシテ、町村ノ廢止併
合ガアリマスト、是ガ當然區裁判所ノ管轄
ニ及ブト云フ、第三條ノ規定ニ依ッテ旣ニ
變更セラレタモノヲ、法文ニ現シタニ過ギ
ヌノデアリマス、委員會ニ於テハ、此政府
ノ新ナル方針ヲ適當ト認メマシテ、而シテ
又今囘ノ法案ニ包含セラレテ居リマス所ノ
變更案ハ、右ノ方針ニ適スルモノト認メマ
シテ、全部全會一致ヲ以テ實質上ハ原案通
リ決定致シタノデアリマス、然ルニ是ガ修
正決議ニナッテ居リマスノハ、此法案提出
後、本年二月境野町ガ桐生市ニ合併セラレ
マシテ、又酒田ガ市ニナリマシタ爲ニ、此
告示ガ二月中ニ出マシテ、四月一日カラ是
ガ施行セラレルコトニナリマシタノデ、其
點ハ當然先程申シマシタ裁判所構成法ノ規
定ニ據リマシテ、變更セラレルノデアリマ
スカラ、法文上修正シタニ過ギヌノデアリ
マく、尙ホ此際一言申シテ置カネバナリマ
セヌコトハ、此政府ノ新ナル方針ニ基イ
テ、交通ノ便宜ト云フコトニ依リマシテ、
區裁判所ノ管轄區域ヲ定ムルト云フコトニ
ナリマスルト、今囘政府提案ノモノノミニ
限ルノデハナイノデアリマシテ、自分ノ所
モ斯ウ云フ風ニ變ヘテ吳レト云フヤウナ希
望ガ大分出マシタノデアリマスルガ、政府
ニ於キマシテハ、今囘ハ最モ疑ナキモノヽ
五ツダケヲ提案シタノデアフテ、今後モ調査
ヲ繼續シマシテ、逐次議會ニ、希望ニ副フ
ヤウナ提案ヲスルト云フ言明ヲ委員會ニ於
テシマシタノデ、之ヲ速記錄ニ留メルコト
ニ致シマシテ、原案通リ-實質上ハ原案
通リ、形式上ハ修正決議トシテ全會一致ヲ
以テ可決致シマシタ次第デゴザイマス、右
御報〓致シマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02319330307&spkNum=26
-
027・秋田清
○議長(秋田清君) 本案ノ第二讀會ヲ開ク
ニ御異議アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02319330307&spkNum=27
-
028・秋田清
○議長(秋田〓君) 御異議ナシト認メマ
ス、本案ノ第二讀會ヲ開クニ決シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02319330307&spkNum=28
-
029・上田孝吉
○上田孝吉君 直チニ本案ノ第二讀會ヲ開
キ第三讀會ヲ省略シテ委員長報告ノ通リ可
決セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02319330307&spkNum=29
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030・秋田清
○議長(秋田清君) 上田君ノ動議ニ御異議
アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02319330307&spkNum=30
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031・秋田清
○議長(秋田〓君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ直チニ第二讀會ヲ開キ、議案全部
ヲ議題ト致シマス
大正二年法律第九號中改正法律案(裁
判所管轄區域ニ關スル件)
第二讀會(確定議)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02319330307&spkNum=31
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032・秋田清
○議長(秋田〓君) 別ニ御發議モアリマセ
又、第三讀會ヲ省略シテ委員長報告通リ可
決確定致シマシタ(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02319330307&spkNum=32
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033・上田孝吉
○上田孝吉君 議事口程變更ノ緊急動議ヲ
提出致シマス、卽チ此際政府提出、通信事
業特別會計法案ヲ議題ト爲シ、委員長ノ報
〓ヲ求メ、其審議ヲ進メラレンコトヲ望ミ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02319330307&spkNum=33
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034・秋田清
○議長(秋田〓君) 上田君ノ動議ニ御異議
アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02319330307&spkNum=34
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035・秋田清
○議長(秋田〓君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ日程ハ變更セラレマシタ、通信事
業特別會計法案ノ第一讀會ノ續ヲ開キマ
ス、委員長ノ報告ヲ求メマス-委員長志
賀和多利君
通信事業特別會計法案(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報〓)
報〓書
一通信事業特別會計法案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報告候也
昭和八年三月七日
委員長志賀和多利
衆議院議長秋田〓殿
〔志賀和多利君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02319330307&spkNum=35
-
036・志賀和多利
○志賀和多利君 通信事業特別會計法案ノ
委員會ノ經過竝ニ結果ヲ御報告申上ゲマス、
本案ニ付テハ前後五囘ニ亙リマシテ委員會
ヲ開キマシタ、問題ト相成リマシタノハ、
一ツハ本特別會計ガ一般會計ト如何ナル關
係ヲ有スルカ、又他ノ一ツハ、此特別會計ヲ
以テシテ、果シテ事業改善ノ目的ヲ達スル
コトガ出來ルカト云フ二點ニアッタノデア
リマス、一般會計ノ關係ニ至リマシテハ、
現在一般會計ハ非常ナル、容易ナラザル場
合ニ遭遇シテ居ル、卽チ赤字公債ヲ以テ歲
計ノ支辨ヲヤラナケレバナラヌ場合ニナッ
テ居ルノニ、比較的堅實ナル財源デアル所
ノ此通信事業ノ收益ヲ、一般會計ヨリ切離
シテ特別會計トスルコトハ、卽チ一般會計
ノ基礎ヲ危ウスルモノデハナイカト云フ質
問デアッタノデアリマス、之ニ對シマシテ政
府當局ノ答辯ハ、ソレハ如何ニモ左樣ナ疑
ガアル、故ニ本法第四條ニ於テ、一般會計
ニ對スル繰入金-年々ノ色々ナ計算ノ基
礎ノ下ニ、年々ノ繰入金ノ最高額八千二百
万圓ト云フモノヲ規定シテ、其中ニ於テ、
各年度ノ豫算ニ於テ其繰入額ヲ決定シテ、
一般會計ヘ繰入レルコトニスル、卽チ從來
ト何等異ッタル點ハナイノデアルカラシテ、
一般會計ノ基礎ヲ危ウスル點ハ毫末モナイ
ノデアル、斯樣ナ答辯デアリマシタ、續イ
テ起リマシタノハ、左樣ニ特別會計ヲヤッタ
ト云フコトニナレバ、從來特別會計ノ弊害
トシテ認メラレテ居ル所ノ、或ハ人件費ノ
增加、或ハ國債ノ濫發、卽チ特別會計ハ、
從來ノ例トシテ、此會計ヲ設ケラレタル爲
ニ、人件費ガ多クナルト云フ嫌ヒガアルノ
デアル、本會計ニ於テモ左樣ナ虞ガアルデハ
ナイカ、又本法規定ノ結果トシテ、公債竝
ニ借入金ガ出來ルコトニナッテ居ルノデア
ル、之ヲ濫用スル虞ガアルデハナイカ
ト云フコトノ質問ガアッタノデアリマ
ス、政府當局ハ斷言シテ申シマシタ、人件
費ニ付テハ斷ジテ左樣ナ增加ヲ見ルヤ
ウナコトハ致サヌ、又公債借入金等ノ
增額ニ至ッテハ、決シテ事業ノ改善以外ニ
左樣ナルコトヲ爲スベキ筋デハナイ、其建前
ニ於テ本法ヲ設定スルコトヲ計畫致シタ次
第デアルト云フ言明ナノデアリマス、而
シテ又事業改善ノ關係ニ至リマシテハ、旣
ニ一般會計ニ八千二百万圓、最高度ノ繰入
金ヲスルト云フコトナラバ、何ニ依ッテ通
信事業ノ將來ニ於ケル改善計畫ガ出來ルノ
デアルカ、又從業員ノ待遇ノ改善ガ出來ル
ノデアルカ、斯樣ナ質問ニ對シマシテ、政府
當局ハ如何ニモ尤ナ話デアルガ、併ナガ
ラ經濟的ノ施設改善竝ニ事業ノ合理化ノ〓
究ノ結果ト、而シテ特別會計ニナッタト云
フ從業員ノ緊張シタル氣分ニ基イテ、相當
ナル成績ヲ擧ゲ得ル見込ガアッテ、此特別會
計案ヲ立テタノデアル、左樣ナ次第デ、本
特別會計ハ、殆ド多年ノ長キ遞信省ニ於ケ
ル縣案ニナッテ居ッタ問題デアルカラシテ、此
案ガ通過ヲ致シタ場合ニ於テハ、從業員ノ氣
分モ全ク違ッテ參リ、而シテ經濟的ノ施設モ
出來ル、此事業ノ合理化モ亦爲シ得ルコト
ノ易々タル機會ガ到來スルデアラウカラ、
之ニ基イテ十分ナル成績ヲ擧ゲ得ルコトガ
出來ルト云フノデアリマス、更ニ又一般會
計ニ大ナル繰入金ヲスルト云フヤウニナッ
タ以上ハ、從來一般會計ニ對シ要求ヲシテ
充シ能ハザリシ、例ヘバ營繕費ノ如キ、地
方ノ郵便局等ニ於テハ隨分ボロナ局舍ガ
アル、斯樣ナルモノヲ急速ニ改善スルコト
ハ出來ヌデハナイカト云フ議論モアッタノ
デアリマス、之ニ對シマシテ、如何ニモ尤
千萬デアル、併ナガラ從來一般會計ノ關係
ニ於テ、遞信省ノ營繕費ニ支辨セラレマシ
タル最近五箇年間ノ經過ヲ見マスルト、昭
和五年ニ於テ僅ニ少額ノ營繕費ガ支辨サレ
マシタダケテ、其他ニ於テハ殆ド災害復舊
工事費以外ニハ、何等營繕費ノ出タコトガ
ナイノデアル、隨テ今後ニ於テ前申シマシ
タ通リ、事業ノ經濟化經濟的施設、或ハ合
理化的施設、其他從業員ノ氣分ノ緊張ニ依,
テ利益ヲ擧ゲ得タ所ノモノハ、斯樣ナル所
謂ボロ局舍ノ修繕等ノ費用ニ向クベキ餘
地ガ著々出來テ參ル見込デアルカラシテ、
此點モ從來ノ一般會計ニ繫屬シテ居ルヨリ
ハ、非常ニ右利ナ傾向ヲ有スルノデアル、
其他通信事業、卽チ電信或ハ郵便竝ニ電話
等ノ事業ノ擴張計畫ニ至フテモ、今適當ナル
施設ヲ致シテ居ルノデアルガ、此施設モ亦
自ラヤリ易クナッテ參ルノデアルカラ、事
業改善ノ關係ニ至ッテハ、將來ニ於テ此特別
會計ニ甚ダ望ヲ囑スルコトガ多イト云フ政
府ノ答辯デアッタノデアリマス
以上種々ノ質問應答ヲ經マシテ、本日午
後更ニ會議ヲ開キマシテ、討論ノ結果、政
友會ニ於キマシテハ喜多孝治君、民政黨ニ
於キマシテハ勝正憲君、國民同盟ニ於キマ
シテハ伊豆富人君、各派ノ委員ヲ代表セラ
レマシテ、何レモ贊成ノ意ヲ表セラレマシ
テ、全員一致ヲ以テ本案ハ可決スベキモノ
ナリト決定ヲ致シマシタ、此段御報告致シ
マス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02319330307&spkNum=36
-
037・秋田清
○議長(秋田〓君) 討論ノ通〓ガアリマ
ス、順次之ヲ許シマスー-向井倭雄君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02319330307&spkNum=37
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038・向井倭雄
○向井倭雄君 簡單デアリマスカラ當席ヨ
リ發言ヲ御許シヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02319330307&spkNum=38
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039・秋田清
○議長(秋田濟君) 許可致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02319330307&spkNum=39
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040・向井倭雄
○向井倭雄君 本通信事業特別會計法案
ハ、遞信事業ノ改善發達ヲ圖リマス上ニ、
最モ適切ナル事柄ト存ジマス、故ニ私ハ之
ニ對シテ贊成ノ意ヲ表シマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02319330307&spkNum=40
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041・秋田清
○議長(秋田〓君) 勝正憲君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02319330307&spkNum=41
-
042・勝正憲
○隣正憲君 簡單デゴザイマスカラ議席ヨ
リ發言ヲ御許シヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02319330307&spkNum=42
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043・秋田清
○議長(秋田〓君) 許可致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02319330307&spkNum=43
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044・勝正憲
○勝正賓君 通信事業ヲ特別會計ト致シマ
シテ、其事業ノ合理化ヲ圖リ、且ツ長年月
ニ亙ル計畫ヲ確立致シマシテ、此事業ノ施
設ノ改善ヲ致スト云フコトニ付キマシテハ、
何人モ異論ノアル筈ハナイノデアリマス
カラ、吾々ハ非常ニ贊成デアルノデアリマ
ス、唯考ヘナケレバナリマセヌコトハ今
日我國ハ財政上非常ナル窮乏ノ立場ニ立ッ
テ居リマス、其非常ニ窮乏シテ居ル所ノ
財政ノ、其歲入ノ極メテ大ナル部分ヲ占メ
テ居ル所ノ此通信收入、卽チ昭和八年度ノ
豫算ニ於キマシテモ、二億四千万圓ノ通信
收入ガ豫算シテアルノデアリマス、卽チ歲
入ノ大宗デアル所ノ租稅收入ノ五億九千万
圓ニ比較致シマスレバ、殆ド三分ノ一以上
ノ數字ヲ示シテ居リ、又此事業ニ屬スル所
ノ固定資產ヲ計算シテ見マシテモ、約七億
ニ達シテ居ル、非常ニ大キナモノデアリマ
ス、斯ノ如キ重大ナル事業ヲ特別會計ト致
シマシテ、若シ會計ノ經理運用上宜シキヲ
得ザル場合ニ於キマシテハ直チニ累ヲ一
般會計ニ及ボシマシテ、爲ニ我國ノ財政ニ
不測ノ缺陷ヲ生ズル虞ガアルノデアリマ
ス、ソレデ吾々ハ此特別會計ノ設定ト云フ
コトヽ同時ニ、其弊害ノ防止ト云フコ
トニ付キマシテ、十分ニ政府ノ覺悟ヲ
質サナケレバナラナカッタノデアリマ
ス、ソレデ吾々ハ特別會計ノ設定ニ伴フ
所ノ最モ大キナル弊害ハ、直チニ人件
費ガ不當ノ膨脹ヲ來スト云フコトデアリマ
ス、之ニ對シマシテ遞信大臣ハ、是ハ極力
人件費ノ膨脹ヲ避クルト云フ、ハッキリシタ
答辯ヲセラレタノデアリマス、ソレカラ又
是ガ特別會計ニナリマスト、公債ノ發行ガ
非常ニ容易クナル爲ニ、公債ノ發行ガ濫ニ
流レマシテ、累ヲ一般會計ニ及ボスノ虞ガ
アル、ソレヲ防グノ覺悟ガアルカト云フコ
トヲ政府ニ質シマシタ所、遞信大臣ハ、ハッ
キリ之ヲ十分ニ防止スル覺悟ガアルト云フ
コトヲ答辯サレマシタ、又將來財政ノ必要
上、郵便料金ノ增加等ノ場合ニ於キマシテ
ハ、北收入ヲ一般會計ノ納付金ニ全部廻ス
積リデアルカト云フコトヲ質問致シマシタ
所ガ、是モ政府ガ確ニ左樣ニ致スト云フコ
トノ答辯ガア,タノデアリマス、斯樣ニ致
シマシテ、吾々ハ井特別會計ノ設定ニ伴フ
所ノ弊害ヲ、政府ガ十分ノ覺悟ヲ以テ防止
スルト云フ言明ヲ得タノデ、其結果本案ニ
贊成ヲ致ス者デアリマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02319330307&spkNum=44
-
045・秋田清
○議長(秋田〓君) 伊豆富人君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02319330307&spkNum=45
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046・伊豆富人
○伊豆富人君 簡單デアリマスカラ議席ヨ
リ發言ヲ御許シヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02319330307&spkNum=46
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047・秋田清
○議長(秋田〓君) 許可致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02319330307&spkNum=47
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048・伊豆富人
○伊豆富人君 吾々モ此通信事業ノ現在ノ
狀態ガ、其施設ニ改善擴張ヲ加ヘナケレバ
ナラヌト云フヤウナコトヽ、更ニ從業員ノ負
擔ガ極メテ過重デアリマスカラ、是ガ輕減
ヲ圖ルノ必要ハ承認致シテ居ルノデアリマ
ス、併ナガラ只今ノ如ク一般會計ニ屬シテ
居リマシテハ、到底其改善擴張、待遇ノ改
善ト云フヤウナコトハ不可能デアルト云フ
コトモ、亦之ヲ理會スルコトガ出來ルノデ
アリマス、ソレ故ニ之ヲ特別會計ニ致シマ
スレバ、其目的ヲ逹セラルヽト云フコトハ
明デアリマスカラ、通信事業其モノヽ見地
カラ致シマスレバ、特別會計ハ洵ニ結構ナ
コトヽ信ズルノデアリマス、併ナガラ吾々
ノ懸念致シマシタ所ハ、一般會計トノ關係
デアルノデアリマス、今日財政ノ建直シト
云フコトハ目前ニ迫ッテ居ルコトデアリマ
ス、併ナガラ吾々ハ現内閣ニ財政ノ建直シ
ヲ期待スルモノデハアリマセヌ、ケレドモ財
政ノ建直シト云フコトハ當然日前ニ迫クテ
居リマスコトデアリマス、其際ニ於キマシ
テ、此通信事業ノ如キ社會ノ進運ニ伴ウテ
增收ノアルベキ、彈力性ノアル所ノ財源ヲ、
此際切離スト云フコトハ、一般會計ニ對シ
テ大ナル支障ヲ生ジ、財政ノ建直シニ對シ
テ大ナル支障ヲ生ジハシナイカト云フコト
ヲ縣念致シタノデアリマスガ、委員會ニ於
ケル屢次ノ說明ニ依リマシテ、其懸念ハ一
掃サレルコトガ出來タノデアリマス、卽チ
八千二百万圓以內ト云フ、通信事業ノ收入
ヲ一般會計ニ繰入レラレル金額ハ、通信事
業益金ノ全額デアリマシテ、又他日財政建
直シノ時ニ、增稅ガ考慮サレル時ニハ同
時ニ通信料ノ値上ヲモ考慮サレルデアラウ
シ、サウ云フ場合ニハ更ニ繰入額ノ改訂ヲ
行フテ、財政建直シニ支障ナカラシメルト云
フ當局ノ態度モ判然スルコトガ出來タノデ
アリマスカラ、吾々ハ本案ニ贊成致ス者デ
アリマス、又遞信大臣ノ說明ニ依リマスレバ、
特別會計ニナッタガ爲ニ、從業員ノ氣分ガ緊
張シテ、能率ガ增進スル、仕事ガ合理化スル、
經濟化スルト云フヤウナコトヲ仰セラレタ
ノデアリマスガ、之ニ反シテ又反對ノコト
モ吾々ハ憂慮セザルヲ得ナイノデアリマス、
今日或種ノ特別會計ノ如ク、其特別會計ニ
屬シテ居ル所ノ官吏若クハ現業員ノ待遇ガ、
他ノ一般會計ニ屬シテ居ル所ノ官吏、官業
勞働者ノ待遇ニ比シテ、非常ナ懸隔ガ
アル、斯樣ナ狀態デアリマスルガ、遞信
當局モ、最初ノ間ハ非常ニ緊張シテ居ラル
ルデアリマセウガ、將來他ノ特別會計ニアフ
タガ如ク、色々ノ待遇上ノ權衡ガ不權衡ニ
ナルヤウナコトガアリマシテハ、其際ニ種
種ノ弊害ガ生ズルト云フコトモ、今日ヨリ
豫想サレナイデモナイ事柄デアリマスカラ、
此點ニ付キマシテハ常局者ニ於キマシテ
モ、十分ノ用意ヲ以テ指導サレンコトヲ、
サウ云フ希望ヲ以テ本案ニ贊成致ス者デア
リマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02319330307&spkNum=48
-
049・秋田清
○議長(秋田清君) 討論ハ終局致シマシ
ク、本案ノ第二讀會ヲ開クニ御異議アリマ
セヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02319330307&spkNum=49
-
050・秋田清
○議長(秋田濟君) 御異議ナシト認メマ
ス、本案ノ第二讀會ヲ開クニ決シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02319330307&spkNum=50
-
051・上田孝吉
○上田老吉君 直チニ本案ノ第二讀會ヲ開
キ、第三讀會ヲ省略シテ委員長報告ノ通リ
可決セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02319330307&spkNum=51
-
052・秋田清
○議長(秋田濟君) 上田君ノ動議ニ御異議
アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02319330307&spkNum=52
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053・秋田清
○議長(秋田〓君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ直チニ第二讀會ヲ開キ、議案全部
ヲ議題ト致シマス
通信事業特別會計法案
第二讀會(確定議)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02319330307&spkNum=53
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054・秋田清
○議長(秋田〓君) 別ニ御發議モアリマセ
又、第三讀會ヲ省略シテ、委員長報告通リ
可決確定致シマシタ(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02319330307&spkNum=54
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055・上田孝吉
○上田孝吉君 議事日程變更ノ緊急動議ヲ
提出致シマス、卽チ此際日程第十九乃至第
三十一ヲ繰上ゲ上程シ、逐次其審議ヲ進メ
ラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02319330307&spkNum=55
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056・秋田清
○議長(秋田濟君) 上田君ノ動議ニ御異議
アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02319330307&spkNum=56
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057・秋田清
○議長(秋田清君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ日程ハ變更セラレマシタ、日程第
十九及第二十ハ、同一委員ニ付託シタル議
案ナルニ依リ、一括議題ト爲スニ御異議ア
リマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02319330307&spkNum=57
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058・秋田清
○議長(秋田濟君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ日程第十九、家祿賞典祿給與未濟
ニ關スル法律案、日程第二十、〓又ハ町村
祿高ニ對シ公債證書給與ニ關スル法律案、
右兩案ヲ一括シテ第一讀會ノ續ヲ開キマス、
委員長ノ報〓ヲ求メマス-委員長松山常
次郞君
第十九家祿賞典祿給與未濟ニ關スル
法律案(宮川一貫君外五名提出)
第一讀會ノ續(委員長報告)
第二十〓又ハ町村祿高ニ對シ公債證
書給與ニ關スル法律案(寺田市正君
外四名提出)
第一讀會ノ續(委員長報告)
報告書
一家祿賞典祿給與未濟ニ關スル法律案
(宮川一貫君外五名提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和八年二月二十五日
委員長松山常次郞
衆議院議長秋田〓殿
報〓書
一〓又ハ町村祿高ニ對シ公債證書給與ニ
關スル法律案(寺田市正君外四名提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報告候也
昭和八年三月二日
委員長松山常次郞
衆議院議長秋田〓殿
〔松山常次郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02319330307&spkNum=58
-
059・松山常次郎
○松山常次郞君 初ニ家祿賞典祿給與未濟
ニ關スル法律案ノ委員會ニ於ケル經過竝ニ
結果ニ付テ御報告ヲ致シマス、明治初年ニ
各藩カラ明治政府ガ引繼ギマシタル士族及
卒族ノ家祿賞典祿ハ、明治九年ニ金祿公債
ヲ以テ換算シテ交付セラレタモノデアリマ
スルガ、其貰ヒ方ニ、貰ヒ不足ガアルト云
フ、ヤカマシイ議論ガアリマシテ、盛ニ請
願ガ出テ來タモノデアル、ソレヲ訂正スル
爲ニ、明治三十年法律第五十號ト云フモノ
ガ制定セラレタノデアリマス、此法律ノ實
施ニ付キマシテハ、明治四十二年法律第二
十一號、大正八年法律第三十四號ト云フモ
ノガ制定セラレマシテ、反覆丁寧ニ其實施
ニ付テ注意ガ加ヘラレタノデアリマス、所
ガ行政裁判所ノ判決ノ結果ニ依リマスルト、
此明治三十年法律第五十號ノ規定スル所ニ
依レバ、明治九年ノ金祿公債以後ノコトニ
付テ、是ハ規定シテ居ルモノデアッテ、明治
三年藩政施行カラ明治九年ニ至ル間ノ貰ヒ
不足ニ付テハ、之ヲ規定シテ居ルモノデナ
イカラ、如何トモスルコトガ出來ナイト云
フコトニナッテ居ルノデアリマス、卽チ此法
律案ハ、明治三年カラ明治九年ニ至ル六箇
年半間ノ貰ヒ不足ヲ修正スル爲ノ法律案デ
ゴザイマス、之ニ付キマシテハ委員會ニ於テ
モ非常ニ委員諸君ガ熱心ニ審議〓究ヲセ
ラレタノデアリマス、又民間ニ於キマシ
テモ、四十年來此問題ニ付テ〓究ヲ致シ
テ居リマスル熱心ナル〓究家ガアリマシ
テ、委員諸君ハソレ等ノ人ノ意見ヲモ徵
シ、非常ニ熱心ニ之ヲ〓究致シタノデア
リマス、是ハ旣ニ衆議院ヲ通過スルコト
ガ四囘、此度ハ五囘目デアリマス、此情
勢デ行キマスルナラバ、限リナク此法律
案ガ出テ來ルト云フ虞モアルノデアリマシ
テ、何トカ之ニ付テ結末ヲ付ケクラドウカ
ト云フ委員諸君ノ意見ガ多カッタノデアリ
マス、其金額ニ付テ調ベテ見マシタ所ガ、
明治三十年ニ制定セラレマシタル法律案ニ
依レバ、一千万圓ノ公債ガ之ニ充テラレテ
居ルノデアリマス、然ルニ今日マデ之ニ支
出セラレタモノガ約五百万圓デ、約五百万
圓ト云フモノガ殘ッテ居ルノデアリマス、ソ
レカラ今行政裁判所ニ於テ尙ホ審理中ノモ
ノガ約三百万圓アルト云フコトデア「リマ
ス、ソレヲ見マシテモ、尙ホ二百万圓ノモ
ノガ殘ヲテ居ルト云フ、斯ウ云フ事實ヲ確メ
得タノデゴザイマス、ソレカラ明治三十年
法律第五十號ト云フモノハ、其書方ガ極メ
テ曖昧デアリ、明瞭ヲ缺クノデゴザイマ
ス、確ニ其制定當時ノ趣旨ニ反スル結果ヲ
見テ居ルコトハ事實デゴザイマス、其一例
ヲ申シマスレバ、此明治三十年法律第五十
號ガ實施セラレルヤウニナッテ、之ニ依ッテ
與ヘラレルコトニナッタ公債ガ、僅ニ三十七
万圓デゴザイマス、明治四十二年法律第二
十一號ガ出テ、行政訴訟ノ途ヲ開イタノ
デ、四百万圓ト云フモノガ決ッタノデアリ
マく、是カラ申シマシテモ、確ニ此法律ハ
書キ方ガ曖昧ナ爲ニ、初ノ趣旨ガ實行セラ
レテ居ラナイト云フコトヲ認メルノデアリ
そく、ソレカラ色々古老ノ說ヲ聽キマシ
タ、是ハ少シ畏多イコトデアリマスガ、御
參考ニナルト思ヒマスカラ申上ゲマス、此
明治三十年法律第五十號ガ決リマシタ時
ニ、御裁可ヲ仰グ爲ニ時ノ大藏大臣松方サ
ンカ、明治天皇ノ御前ヘ出タ時ニ、一千万
圓デ士族ノ跡始末ガ出來ルカト云フ御下問
ガアッタサウデゴザイマス、若シ足リナイ時
ニハ追加スル積リデアリマスト云フコトヲ
申上ゲタト云フコトヲ、其當時ノ士族ガ傳
ヘ聞イテ、明治大帝ノ有難イ思召ニ非常ニ
感激シタト云フコトデアリマス、然ルニ其
後北〓事變トカ、日露戰爭トカ云フ事ガアフ
テ、ソレガ爲ニ政府モ幾分カ手控ヲシタノ
デアリマセウ、其實施ノ結果ハ今申シマス
ヤウニ、僅カ三十七万圓ヨリ與ヘラレナ
カッタト云フ事情ガアルノデアリマシテ、此
法律ハ確ニ其文面ノ上ニ於テ曖昧ナコトガ
アルノデアリマス、斯ウ云フヤウナ事情ヲ
考ヘマシテ、委員諸君ハ、此際何トカシテ
此結末ヲ付ケタガ宜カラウ、斯ウ云フ意見
ガ多カッタノデアリマス、此意味ニ於テ委員
會ニ於テハ之ヲ通過セシムベキモノト云フ
意味ニ於テ、全會一致ヲ以テ可決致シタ次
第デゴザイマス
次ニ〓又ハ町村祿高ニ對シ公債證書給與
ニ關スル法律案ニ付テ御報告ヲ致シマス、
是ハ鹿兒島縣ノ士族卒ニ關スルモノデゴザ
イマス、鹿兒島縣ニ於キマシテハ、明治維新
ノ際ニ於テ〓及〓侍ト云フ者ガ城下侍ニ較
ベテ、其勤勞ニ對シテ酬ヒラレル所ガ少イ
ト云フ不平ガ非常ニ强カッタサウデゴザイマ
ス明治三十年法律第五十號ガ制定セラレ
ルニ付テハ、是等ノ鹿兒島縣ノ人々ガ中心ト
ナッテ、之ニ付テ色々運動ヲ致シタサウデア
リマス、然ルニ此法律ガ先程申シマスヤウ
二、極メテ書キ方ガ曖昧デアル爲ニ、其結
果ヲ見ルコトガ出來ナカッタ、卽チ鹿兒島縣
ノ場合ハ〓祿高ト云フモノデアル、〓又ハ
町村ニ對シテ與ヘラレタ祿デアルカラ、士
族卒ガ個人トシテ之ヲ請求スルコトガ出來
ナイト云フ、行政裁判所ノ判決ノ結果ヲ見
タノデアリマス、ソレデ折角骨ヲ折ッタ鹿
兒島縣ノ〓侍ト云フモノハ、一文モ之ヲ貰
フコトガ出來ナカッタ、ソレデ既ニ亡クナラ
レタ萩亮君ガ、此家祿賞典祿ト云フ、前ノ
法律案ニ付テ非常ニ奔走ヲセラレタ、續イ
テ又寺田市正君ナド、鹿兒島縣ノ代議士諸
君ガ、此問題ニ付テ永イ間盡力シテ吳レテ、
段々〓究ヲシテ來ルト、家祿賞典給與未濟
ニ關スル法律案デモ、鹿兒島縣ノ〓侍ハ貰
フコトガ出來ナイト云フコトガ分ッテ來タ
ノデ、玆ニ始メテ此法律案ヲ提出スルコト
ニナッタノデアリマス、卽チ是ハ初メテ此處
ニ出テ來タモノデアリマスケレドモ、サウ
云フ經路ヲ以テ現レテ來タモノデアリマス
カラ、是亦通過セシムベキモノト云フ意味
ニ於テ、全會一致ヲ以テ委員會ハ可決ヲ致
シタ次第デアリマス、玆ニ之ヲ報〓致シマ
ス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02319330307&spkNum=59
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060・秋田清
○議長(秋田清君) 兩案ノ第二讀會ヲ開ク
ニ御異議アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02319330307&spkNum=60
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061・秋田清
○議長(秋田〓君) 御異議ナシト認メマ
ス、兩案ノ第二讀會ヲ開クニ決シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02319330307&spkNum=61
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062・上田孝吉
○上田孝吉君 直チニ兩案ノ第二讀會ヲ開
キ、第三讀會ヲ省略シテ委員長報告ノ通リ
可決セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02319330307&spkNum=62
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063・秋田清
○議長(秋田〓君) 上田君ノ動議ニ御異議
アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02319330307&spkNum=63
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064・秋田清
○議長(秋田〓君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ直チニ兩案ノ第二讀會ヲ開キ、議
案全部ヲ議題ト致シマス
家祿賞典祿給與未濟ニ關スル法律案
第二讀會(確定議)
〓又ハ町村祿高ニ對シ公債證書給與ニ
關スル法律案第二讀會(確定議)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02319330307&spkNum=64
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065・秋田清
○議長(秋田〓君) 別ニ御發議モアリマセ
又、第三讀會ヲ省略シテ兩案共委員長報告
通リ可決確定致シマシタ-日程第二十一、
大正七年法律第四十三號中改正法律案ノ第
一讀會ノ續ヲ開キマス、委員長ノ報〓ヲ求
メマス-委員長菅原傳君
第二十一大正七年法律第四十三號中
改正法律案(地種變更免租年期ニ關
スル件)(木下成太郞君外十七名提出)
第一讀會ノ續(委員長報牛ロ)
報〓書
一大正七年法律第四十三號中改正法律案
(地種變更免租年期ニ關スル件)(木下
成太郞君外七名提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和八年二月二十七日
委員長菅原傳
衆議院議長秋田〓殿
〔菅原傳君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02319330307&spkNum=65
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066・菅原傳
○菅原傳君 大正七年法律第四十三號中改
正法律案委員會ノ經過及結果ヲ簡單ニ申上
ゲマス、一體此四十三號ト云フノハドウ云
フ法律カト申セバ、北海道ニ於ケル國有地
ノ拂下ヲ受ケ、其土地ノ免租期間中ニ於テ
其土地ヲ開墾シ、或ハ開墾ニ等シキ勞費ヲ
加ヘ、地目變換シタル場合ニ於テハ更
ニ二十年間以內地種變更、免租期間ト云
フコトノ許可ヲ與ヘラレテアルノデアリマ
ス、是ハ四十三號ノ法律、ソレヲドウ云
フヤウニ改正スルカト申シマスレバ、御料
地ノ場合ニ於テハ此事ガナイノデアリマ
ス、地種變更、免租期間ガ與ヘラレテナイ
ノデアル、是ハ甚ダ權衡ヲ失スル、故ニ御
料地ノ場合ニ於テモ國有地、未開地拂下ノ
場合ト同樣ニ、地種變更、免租期間ヲ與ヘ
ルコトニシタイト云フノガ改正ノ趣意デア
ルノデアリマス、此點ニ付テ政府委員トモ
質問應答致シマシタガ、政府ニ於テモ大體
此改正案ニ贊成ヲ表シタノデアリマス是
ニ於テ委員會ハ審議ノ結果、滿場一致此案
ヲ贊成可決致シタノデアリマス、此段御報
告致シマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02319330307&spkNum=66
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067・秋田清
○議長(秋田〓君) 本案ノ第二讀會ヲ開ク
ニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02319330307&spkNum=67
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068・秋田清
○議長(秋田濟君) 御異議ナシト認メマ
ス、本案ノ第二讀會ヲ開クニ決シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02319330307&spkNum=68
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069・上田孝吉
○上田孝吉君 直チニ本案ノ第二讀會ヲ開
キ、第三讀會ヲ省略シテ委員長報告ノ通リ
可決セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02319330307&spkNum=69
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070・秋田清
○議長(秋田清君) 上田君ノ動議ニ御異議
アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02319330307&spkNum=70
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071・秋田清
○議長(秋田〓君) 御異議ナシト認メマ
ス、仮テ直チニ第二讀會ヲ開キ、議案全部
ヲ議題ニ供シマス
大正七年法律第四十三號中改正法律案
(地種變更免租年期ニ關スル件)
第二讀會(確定議)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02319330307&spkNum=71
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072・秋田清
○議長(秋田〓君) 別ニ御發議モアリマセ
ヌ、第三讀會ヲ省略シテ委員長報告通リ可
決確定致シマシタ(拍手)-日程第二十二、
原蠶種國家 理法案ノ第一讀會ノ續ヲ開キ
マツ、委員長ノ報告ヲ求メマス、委員長武
田德三郞君
第二十二原蠶種國家管理法案(胎中
楠右衞門君外一名提出)
第一讀會ノ續(委員長報〓)
報告書
一原蠶種國家管理法案(胎中楠右衞門君
外一名提出)
右ハ本院ニ於テ別紙ノ通修正スヘキモノ
ト議決致候此段及報告候也
昭和八年三月一日
委員長武田德三郞
衆議院議長秋田〓殿
〔別紙〕(小字及-ハ委員會修正)
原蠶種國家管理法案中左ノ通修正ス
第一條國ハ原原蠶種ヲ製造シ命令ノ定
ムル所ニ依リ道府縣又ハ自家用ニ限リ蠶
種製造者ニ之ヲ配付ス
主務大臣ハ必要ニ應シ適當ト認ムル設備ヲ
有スル者ニ對シ原原蠶種ノ製造ヲ命スルコ
トヲ得
前
第二條第一條ノ規定ニ依リ國ノ配付ス
ヘキ原原蠶種ノ品種ハ蠶品種選定委員
會ノ議ヲ經テ主務大臣之ヲ定ム
〓品種選定委員會ノ組織及權限ハ勅令
ヲ以テ之ヲ定ム
ハ選出シ
第三條主務大臣〓蠶種製造者ノ保有ス
タルニシテ。モノア
ル蠶品種ヲ特ニ優良ト認ムル。トキハ
ル買收
蠶品種選定委員會ノ議ヲ經テ之ヲ第一
シ其スル
條ノ規定ニ依リ國ノ配付スヘキ原原蠶
製造ノ用ニ供
種ノ品種トシテ指定スルコトヲ得蠶種
製造者ニ非サル者ノ選出シタル蠶品種ニシ
テ優良ナリト認ムルモノアルトキ亦同シ
買收竝其ノ價格ニ關シ必要ナル事
前項ノ規定ニ依リ指定セラレタル蠶品
項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
種ハ命令ノ定ムル所ニ依リ國ニ於テ之
ヲ買收スルコトヲ得
第七條蠶種ノ移輸入又ハ移輸出ヲ爲サ
ムトスル者ハ主務大臣ノ許可ヲ受クヘ
シ
關閉
前項ノ許可ニ〇必要ナル事項ハ命令ヲ
以テ之ヲ定ム
附帶決議
政府ハ蠶絲業ノ現狀ニ鑑ミ養蠶指導
員設置ニ對シ速ニ之カ助成ノ途ヲ講ス
ヘシ
二政府ハ人造絹絲ノ急速顯著ナル發展
ニ鑑ミ速ニ天然絹絲ノ新ナル科學的經
濟的綜合〓究ニ對シ最善ノ施設ヲ爲ス
ヘシ
〔武田德三郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02319330307&spkNum=72
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073・武田徳三郎
○武田德三郞君 只今議題トナリマシタ原
蠶種國家管理法案ノ委目會ノ經過竝ニ結果
ヲ御報告申上ゲマス、本案ハ極メテ簡單ナ
法律デアリマスルケレドモ、北蠶絲業ニ及
ボス結果ハ極メテ重大ナルモノガアルノデ
アリマス、先ヅ本案ノ大要ヲ申上ゲマスナ
ラバ、卽チ原原種ヲ國家自ラガ製造致シマ
シテ、之ヲ道府縣竝ニ自家用ニ限ヲテ蠶種
製造者ニ配付致シ、而シテ〓等ヲシテ原種
ヲ造ラシメテ、更ニ其原種ヲ蠶種製造家ニ
配付シテ實種ヲ造ラシメテ、之ヲ養蠶家ニ
配付スル、斯ウ云フ趣旨デアルノデアリマ
ス、今申上ゲタ過程ニ依ッテ、强健ニテ優良
ナル蠶種ヲ一般ニ配付シテ、其結果生繭ヲ
統一シ、以テ生絲ノ品質ヲ統一シヨウト云
フノガ此法案ノ目的デアルノデアリマス、
委員會ニ於キマシテハ委員諸君ハ極メテ熱
心ニ、又有益ナル質問應答ヲ提案者竝ニ政
府トノ間ニ致サレマシタ、詳細ナルコトハ
速記錄ニ於テ御承知ヲ願フコトヽ致シマシ
テ、共重要ナル質問應答ノ一二ヲ御紹介ス
ルニ止メタイト存ジマス
第一ハ、此法案ニ依シテ蠶種ヲ統一スルト
云フコトデアルガ、其目的ハ單ニ蠶種ノ統
一ニ止マルノデアルカ、或ハ中小蠶種業者
ヲ救濟スルノ意味ヲモ含ンデ居ルノデアル
カト云フコトヽ今一ツハ之ニ依フテ生產
制限ヲ企圖スルモノデアルカドウカ、斯樣
ナ質問デアリマス、之ニ對シテ提案者ハ
主ナル目的ハ勿論蠶種ノ統制ニ依フテ生繭
ヲ統制シ、ソレヲ原料トスル所ノ生絲ヲ統
一スルノデアル、併ナガラ其結果ハ軈テ中
小蠶種製造業者ヲモ救濟スルコトニ相成ル
デアラウ、今日ノ蠶種製造者ト云フモノ
ハ大製造者ニ壓迫サレテ、非常ナ困難ナ
狀態ニナッテ居ル、其困難ナ狀態ニ陷ノテ居
ル所以ノモノハ、大ナル蠶種製造業者ハ、
同時ニ製絲業者デアッテ、サウシテ自己
獨特ノ品種ヲ持フテ居ルノデアル、而シ
テソレヲ祕密ニシテ、一般ニ配付スルノ機
會ヲ與ヘナイノデアル、而モ資力十分デア
ルカラ宣傳ニ多大ノ金ヲ使フ爲ニ、中小蠶
種業者ハ非常ナ壓迫ヲ蒙ッテ居ルノデアル、
然ルニ本案ヲ實行サルヽ上ニ於キマシテハ、
其原原種ヲ國家ガ配付シテ、之ヲ先程申上
ゲタヤウナ過程ニ於テ、蠶種製造者ノ手ニ入
ルヽコトガ出來ルノデアリマスカラ、結局
同一ナ原原種ヲ用ヒテ、サウシテ熱心ニ其
技術ニ熟練シテ居ル人デアリマスルナラ
バ、如何ナル小資本ノ蠶種業者ト雖モ、其
業務ヲ繁榮セシムルコトガ出來ルコトニ相
成ルカラ、其結果ト致シマシテ、中小蠶種
業者モ同ジク救ハルヽコトガ出來ル結果ニ
相成ル、第三ハ、此法案ニ依ッテ生產ヲ制
限スル日的ガアルカドウカト云フコトニ於
キマシテハ原原種ト云フモノハ蠶種ニナ
ルマデニ三四年ノ間ヲ經ルノデアリマスルカ
ラ、原原種ヲ國家ガ製造スルト云フコト自
身ヲ以テ、生產ヲ制限スルト云フコトハ困
難デアル、併ナガラ政府ニ本案ノ第八條
ニ於テ、必要ノアル場合ニ於テハ、政府ハ
養蠶ニ向テテ相當ナ制限ヲ加ヘルコトヲ得
ルト云フ權限ヲ與ヘテ居ルノデアリマスル
カラ、此法律ノ働キニ依ッテ、是非共必要デ
アルト云フヤウナ時期ノアル場合ニ於テ
ハ、生產ノ制限ヲ爲スコトモ出來ル、併ナ
ガラ是ハ餘程非常ノ場合デナケレバ此法律
ノ働ヲ發動スル意味ハナイノデアリマス、
ケレドモ此養蠶界ノ事情ニ於テ、或ハ左樣
ナ場合ガナイトモ限ラナイノデ、サウ云フ
權限ヲ政府ニ與ヘル意味ノ條項ガアルカ
ラ、此法案ニ於テ必要ナ時ハ、生產制限ト
云フコトノ意味ノ含マレテ居ルコトハ事實
デアル、併ナガラ本案ノ主要ナ目的ハ其處
ニアラズシテ、最初ニ中上ゲタ通リ、蠶種
統制ニ依フテ繭ヲ統制シ、同時ニ生絲ヲ統制
シ、品質ヲ給制スルト云フコトニアッタト云
フ答辯デアッタノデアリマス、次ノ質間ハ政
府ニ對スル質問デアリマシテ、政府ハ蠶種
ノ統制ヲ必要ト認ムルヤ否ヤト云フコトガ
一ツデアリマス、若シ之ヲ必要ト認ムルナ
ラバ、政府ハ何故ニ此法案ト同樣ナ法律案
ヲ今期議會ニ提出シナカッタカ、昨年第六十
三議會ニ於テ、同ジク原蠶種ノ法案ガ審議
サレタ場合ニ於テ、委員會ニ於テ此事ヲ政
府ニ質問シタ場合、出來得ルダケ早キ時期
ニ於テ提案スルト云フコトヲ政府ハ言ッタ
デハナイカ、然ルニ此度此提案ヲ見ナイト
云フコトハ甚ダ遺憾デアルガ、政府ノ意見
ハドウデアルカト云フ質問デアッタノデア
リマス、此質問ニ對シテ農林大臣ノ答ハ、
政府モ蠶種ヲ統制スルト云フコトハ我國
〓業界ノ現狀ニ於テ極メテ必要デアルト云
フコトヲ認メル、併ナガラ今日直チニ提案
ヲシナカッタト云フ理由ニ付テハ、蠶業界ノ
前途ニ於テハ非常ナ憂慮スベキモノガア
ル、深ク此根本ニ立歸ッテ見直シテ〓究ヲシ
ナケレバナラナイヤウナ實情ニアルト思フ、
左樣ナ意味合ニ於テ、政府ハ未ダ確信アル
成案ヲ得ナイノデアル、ソレ故ニ遺憾ナガ
ラ本期議會ニ提案スルコトガ出來ナカッタ
ノデアル、斯樣ナ答辯ガアッタノデアリマ
ス、此答辯ニ對シテ委員諸君ノ多數ハ、極
メテ不滿足ナ意ヲ表明セラレテ、政府ハ旣
ニ蠶種統制ノ必要ヲ痛感シテ居ルト云フコ
トヲ言明シテ居リナガラ、蠶絲業ノ根本ノ
方針ニ於テ見直スノ必要ガアルカラ、此法
案ヲ出サナイト云フコトハ理由ニナラヌデ
ハナイカ、統制ガ旣ニ必要デアルト云フコ
トデアルナラバ、締制ニ關スル法律ヲ成立
セシメテ置イテ、而シテ其統制ハ如何ナル
方面、如何ナル目標ニ向ッテ之ヲ行フノデ
アルカト云フコトハ、徐ロニ〓究シテ差支
ナイコトデアル、旣ニ統制ノ必要ヲ認メテ
置キナガラ、其統制ニ關スル法律ヲ提案シ
ナイト云フコトハ農林大臣トシテ蠶絲業
ノ發達ニ向ッテ極メテ不熱心デアルト言ハ
ナケレバナラヌ、農林大臣ハ旣ニ我ガ蠶絲
業ノ根本ハ非常ナ困難ナ狀態ニ立至ッテ居フ
テ、我ガ蠶絲業ノ革新ト云フコトニ向ッテ一
段ノ努力ヲシナケレバナラヌト云フコトヲ
自ラ之ヲ認メナガラ、之ニ對スル法案ヲ提出
シナイト云フコトハ、甚ダ怠慢デアッテ、蠶絲業
者トシテハ遺憾ニ堪ヘナイト云フ質問ガアッタ
ノデアリマスガ、政府ハ依然トシテ先程申
上ゲタヤウナ前言ヲ繰返シテ居ルニ止ッテ
居フタト云フ事實デアリマス、左樣ナ次第デ
アリマシテ、次ニ討論ニ移ッタノデアリマ
ス、討論ニ際シマシテ政友會ノ生田君ヨリ
修正ノ動議ガ提出サレマシタ、ソレハ第一
條ノ二項ト致シマシテ「主務大臣ハ必要ニ
應シ適當ト認ムル設備ヲ有スル者ニ對シ原
原蠶種ノ製造ヲ命スルコトヲ得」ト云フ一
項ヲ加ヘタイト云フ修正デアリマシタ、其
修正ノ趣旨ハ本案ノ原案ニ於キマシテハ
原原蠶種ハ總テ國家ガ獨占的ニ製造スルト
云フコトニ相成ッテ居ルノデアリマスガ、
現在ノ蠶種製造界ニ於キマシテ相當ナ設備
ヲ有ッテ居ルモノハ澤山アル、ソレ等ニ對シ
テ政府ハ原原種ノ製造ヲ委託スルト云フ
コトニ致シマスルナラバ現在アル所ノ設
備ヲ無用ニシナイト云フ利益ガアルト同時
ニ、政府ニ於キマシテモ過渡的ノ施設ト致
シマシテ、差當リノ費用ヲ減ズルコトヲ得
ルノ便利ガアル、斯樣ナ理由カラ此修正案
ガ提出サレタノデアリマス、尙ホ原案提出
者タル加藤知正君ヨリ、ニ、三ノ字句ノ修
正ニ關スル提案ガアリマシタ、是ハ此報〓
ニアル通リニ御承知ヲ願ヒタイノデアリマ
ス、而シテ委員諸君モ此修正ヲ認メテ、其
修正サレタモノヲ原案トシテ認ムルコトニ
相成ッタノデアリマス、其結果ト致シマシ
テ、討論ニ移リマシテ、生田君ノ修正ニ對
シテ討論ヲ致シタノデアリマスルガ、加藤
知正君ハ斯樣ナ希望ヲ述ベテ此修正案ニ贊
成ノ旨ヲ表サレマシタ、ソレハ、今日ノ我
國ノ養蠶業ニ於キマシテ、養蠶指導員ト云
フモノハ極メテ必要デアル、然ルニ各町村
ニ於テ此養蠶ノ指導員ト云フモノハ十分ニ
配置サレテ居ナイ、之ニ伺ッテ政府ハ相當
ノ補助ヲ與ヘテ貰フ方ガ適當デアラウト思
フト云フノガ希望ノ第一デアリマシタ、第
二ハ今日我國ノ養蠶業竝ニ製絲業ニ取ッテ、
最モ考慮ヲ要スルモノハ、人絹ノ發達デア
ル、此人絹ノ發達ニ對シテ養蠶業竝ニ製絲
業ノ十分ナル、進ンダル所ノ〓究ヲ要スル
時代ニナッテ來テ居ルノデアル、是ハ獨リ技
術的ニノミ〓究ヲ要スルノミナラズ、經濟
的ニモ併セテ〓究ヲ要スル時代デアルカ
ラ、經濟的竝ニ技術的ノ綜合的〓究ノ設備
ヲ十分ニシテ貰ヒタイ、斯樣ナ希望デアル
ノデアリマス(「簡單々々」)之ニ對シマシテ
民政黨ノ小山君ヨリ、全然加藤君ノ希望ニ
ハ同感デアル、併シ之ヲ一個ノ希望トセズ
シテ、之ヲ附帶決議トシタイト云フ御意向
デアリマシタ、加藤君モ希望ヨリハ附帶決
議ニスルト云フコトデアルナラバ尙更贊成
デアルカラ、自分ノ希望決議ト云フモノヲ
取消シテ、之ヲ附帶決議トスルコトニ贊成
ヲ表スル、斯樣ナコトデアリマシテ、此附
帶決議ヲ附ケテ原案修正案ヲ全員一致ヲ以
テ可決致シタ次第デアリマス、其附帶決議
ヲ玆ニ讀上ゲマス
附帶決議
一政府ハ蠶絲業ノ現狀ニ鑑ミ養蠶指導
員設置ニ對シ速ニ之カ助成ノ途ヲ講ス
ヘシ
二政府ハ人造絹絲ノ急速顯著ナル發展
ニ鑑ミ速ニ天然絹絲ノ新ナル科學的經
濟的綜合〓究ニ對シ最善ノ施設ヲ爲ス
ヘシ
斯樣ナ附帶決議ヲ以テ滿場一致可決ニ相
成ッタ次第デアリマス、右御報告申上ゲマス
(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02319330307&spkNum=73
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074・秋田清
○議長(秋田清君) 通〓順ニ依リ、討論ノ
爲ノ發言ヲ許シマス-生田和平君
〔生田和平君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02319330307&spkNum=74
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075・生田和平
○生田和平君 只今議題ニ相成フテ居リマ
ス所ノ、原蠶種國家管理法案ニ對シテ、委
員長ノ報告ノ通リ贊成ノ意ヲ述ベル者デア
リマス、極ク簡單ニ申上ゲマス、蠶絲業ハ
我國ノ重要產業デアルコトハ、私ガ申上ゲ
ルマデモアリマセヌ、其盛衰ハ直チニ國民
經濟ニ影響スル重大問題デアリマス、殊
三千万民衆ノ多大ナル關心ヲ有ツモノデア
リマス、生絲ハ今國際商品トシテ如何ナル
地位ニアルカト申シマスレバ、世界ニ於ケ
ル輸出國ト致シマシテハ日本ガ第一デア
リマス、併ナガラ其內容ニ至リマシテハ
實ハ疲弊困憊氣息奄々タルモノガアルノデ
アリマス、何故斯樣ニ相成ッタカト云フコト
ヲ檢討致シマスレバ、第一ニ內ニアリマシ
テハ、多年明治、大正ヲ通ジテ餘リニモ好
況ニ慣レマシテ、蠶絲業全體ヲ通ジテ亂雜、
無秩序ニ相成ッテ居ッタコトガ一ツノ原因デ
アリマス、今一ツハ、人造絹絲ノ壓迫ヲ受
ケテ居ッタコトガ大ナル理由デアッタノデア
リマス、然ラバ如何ニスレバ宜イカト申シ
マスレバ、先ヅ第一ニ此無秩序、無統制ヲ
整理スルト云フコトヽ、今一ツハ人造絹絲
ニ對抗スル策ヲ立テルコトヨリ外ニナイノ
デアリマス、斯樣ニ考察ヲ致シマスルト、
本案ノ必要ハ自ラ認識セザルヲ得ナイコト
ニナルト考ヘルノデアリマス、諸君、生絲
ノ最大需要國タル米國、此米國ノ機業家ハ
我ガ生絲ニ對シ如何ナル事ヲ要望シテ居
ルノデアリマセウカ、其一ツハ纖度ノ均齊
デアリマス、第二ノ點ハ生絲ノ價額ノ安定
デアリマス、纖度ノ均齊ハ是ハ〓種ノ改良
ニ俟ツヨリ外ニナイノデアリマス、生絲ノ
價額ノ安定ハ、是ハ餘程ムヅカシイ問題デ
アリマスケレドモ、今米國ニ於ケル價額ハ
ドウ云フ關係ニナッテ居ルカト申シマスレ
バ御承知ノ如ク今ヨリ數年前ニハ、人造
絹絲ト我ガ生絲トノ價額ノ差ハ、一對四デ
アッタ、卽チ生絲ノ價額ノ四分ノ一デアリマ
シタガ、最近ノ亞米利加ニ於ケル生絲ト
人造絹絲ノ價額ノ差ハ生絲ニ對スル二
分ノ一ニナッテ居ルノデアリマス、ソ
コデ米國ノ機業家ハ只今ハ決シテ生絲ノ
高イコトヲ憂ヘズシテ、寧ロ其價額ノ高低
甚シク、常ニ不安ト危險トニ襲ハレテ居リ
マシテ、安ンジテ機業ニ就クコトガ出來ヌ
ト云フコトヲ主張致シテ居ルノデアリマ
ス、故ニ我國ト致シマシテハ、纖度ノ優良
絲ヲ出スト云フコトヽ價額ノ安定ト云フ
コトニ力ヲ注ガナケレバナラヌト信ズルノ
デアリマス、原蠶種國家管理法案ナルモノ
ハ、實ハ旣ニ天下ノ輿論ハ決シタト申シテ
モ差支ナイノデアリマス、昨年六十三議會
後、政府ハ國家管理要項ト題スル七項目ニ
亙ル諮問案ヲ、中央蠶絲會ニ交付シ、中央
蠶絲會ハ學者、銀行家、當業者ノ權威ヲ集
メマシテ、連H審議ヲ遂ゲマシタ結果、成
案ヲ得テ政府ニ答申ヲ致シテ居リマスルコ
トハ、皆樣御承知ノ通リデアリマス、其內
容ハ本案ト殆ド大差ナイノデアリマシテ、
當業者間ニ於ケル先ヅ一致セル意見ト見テ
差支ナイノデアリマス、世上偶、異論ヲ挾
ム者モアリマスケレドモ、ソレハ單ニ個人
ノ利害問題ヨリ發足シテ居ル、殆ド取ルニ
足ラザル議論デアルト私ハ考ヘテ居ルノデ
アリマス、昨年當議會ニ於キマシテ、製絲
業法ノ附帶決議事項トシテ、次期ノ議會ニ
本案ヲ提出スルコトヲ促シ、政府亦之ヲ同
意致シテ居ルニモ拘リマセズ、遂ニ其提出
ヲ見ナカッタノデアリマス、吾々同僚ノ質問
ニ對シマシテハ、農林大臣ハ時流ニ超越セ
ル政策ヲ持ヲテ居ル如ク仄メカシ、或ハ持タ
ザルガ如キ言葉ヲ用ヒ、或ハ蠶絲業ニ對シ
テ理會ヲ持チ、認識ヲ持,テ居ル如クニモ言
ハレルノデアリマスガ、又ソレガ無イヤウ
ニモ見エルノデアリマス、至極曖昧模糊タ
ル言葉ヲ以チマシテ、本議會ニ製絲業統制
案ヲ出サヌコトヲ申譯ヲシテ居ルノデアリ
やく、本員等ノ洵ニ遺憾トスル所デアリマ
ス、今ヤ我ガ蠶絲業ハ世界的不況ノ外ニ、
人造絹絲ノ重壓ヲ受ケ、最近實ニ米國ノ經
濟恐慌ノ爲ニ、更ニ憂フベキ狀況ニアルノ
デアリマス、此時ニ當リマシテ、斯業ノ亂
雜無統制ハ、愈〓之ヲ混亂ニ導キマシテ、其
不利實ニ算フルニ遑ナイノデアリマス、斯
樣ナ次第デアリマスルカラ、本案ハ時代ニ
適切ナル最モ必要ナル案ト存ジマスルカ
ラ、速ニ全會一致ヲ以テ御贊成アランコト
ヲ希望致シマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02319330307&spkNum=75
-
076・秋田清
○議長(秋田〓君) 百瀨渡君
〔百瀨渡君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02319330307&spkNum=76
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077・百瀬渡
○百瀨渡君 本員ハ原蠶種國家管理法案ノ
上程サレマシタル此場合ニ於キマシテ、委
員會ノ修正竝ニ附帶決議案ニ對シテ、贊成
ノ意見ヲ簡單ニ申述べントスル者デアリマ
ス(拍手)原蠶種ノ國家管理ハ、當業者ハ勿論、
斯業關係各種團體ノ要望スル所デアリマシ
テ、曩ニ農政審議會時代ニ於キマシテ、國家
管理ニ對スル審議ヲ幾囘トナク重ネタル結
果、農政審議會ニ於キマシテモ、國家管理ノ
必要ヲ認メ、殊ニ先刻委員長ノ報告モアリ
シ如ク、前議會ニ於キマシテ、政府ハ來ル
ベキ議會ニ於テ、必ズ其提案ヲスルト云フ
コトヲ言明サレマシタニモ拘リマセズ、今
日ニ至ルモ未ダ其發案ヲ見ザルコトハ、洵
ニ貿易ノ大宗タル蠶絲業ノ現在及將來ニ對
シテ、甚ダ遺憾トスル所デアリマス、斯ノ
如キ經緯ニアルニモ拘ハラズ、何故ニ政府
ハ是ガ發案ヲ躊躇シテ居ルカト云フコトニ
付キマシテ、委員會ニ於テハ、屢〓政府當
局ニ質シタノデアリマスルガ、政府當局ト
致シマシテハ、現在ノ蠶絲業及將來ノ蠶絲
業ニ想到スル時ニ、旣定ノ方針若クハ現在
政府ガ持合セテ居ル所ノ既定計畫ノミニ
依ッテ、是ガ施設ヲ爲スコトガ果シテ妥當デ
アルカドウデアルカ、今日ノ蠶絲業ノ狀態
及將來ノ蠶絲業ニ付テ、更ニ々々一層進ン
ダル所ノ調査〓究ヲ遂ゲテ、而シテ根本政
策トモ謂フベキモノヲ樹立スル必要ガアル
デハナカラウカ、斯樣ナ見地ヨリ目下折角
考慮中ニ屬シテ居ルノデ、旁、發案ヲ見ル
ニ至ラナカッタ、斯樣ナ辯明ヲサレテ居ルノ
デアリマス、洵ニ其通リデアリマシテ、私
ハ今日ノ我國ノ蠶絲業ハ全ク危機ニ直面シ
テ居ルモノト謂ハナケレバナラナイト思フ
ノデアリマス(拍手)殊ニ我國製絲ノ唯一ノ
需要地デアリマスル所ノ、米國ニ於ケル經
濟狀態ノ動搖ハ、如實ニ之ヲ物語ルニ餘リ
アルモノト謂ハナケレバナラナイノデアリ
マス(拍手)斯樣ナ場合デアリマスルカラ、
養蠶業ヲ以テ專業トスル所ノ農村ハ勿論ノ
コトデアリマス、又養蠶業ヲ以テ唯一ノ副
業トシテ居リマスル所ノ農村ニ於キマシテ
モ、洵ニ昨今不安ニ襲ハレマシテ、前途ヲ
甚シク憂慮シツヽアルノデアリマス、デア
リマスルカラシテ、政府當局ト致シマシテ
モ、此場合ニ決シテ晏如タルヲ許サナイノ
デアリマス、政府ハ進ンデ自ラ全國一一百數
十万ノ養蠶家ノ爲ニ、玆ニ根本的蠶絲業ノ
政策ヲ樹立致シマシテ、其嚮フ所ヲ示シ、
而シテ之ヲ指導スルト云フコトガ、最モ喫
緊ノコトヽ存ズルノデアリマス(拍手)殊ニ
最近ノ情勢カラ見マシテ、蠶絲業ノ改良ス
ベキ、卽チ改善スベキ點ハ多々アルノデア
リマスルガ、就中數百種ニ亙ル所ノ蠶品種
ノ、此雜駁ナル所ノ種類ヲ整理統一ヲ致シ
マシテ、優良ナル蠶品種ニスルト同時ニ、
一面ニハ更ニヨリ以上ノ優良蠶種ヲ發見ス
ルコトニ努メナケレバナラナイノデアリマ
シテ、啻ニ優良品種ヲ產出スルニ努ムルノ
ミナラズ、一面ニハ非常ノ場合ヲ豫想致シ
マシテ、生產ノ制限ニモ備へナケレバ
ナラナイノデアリマス、此意味ニ於キ
マシテ、蠶種ノ國家管理ハ洵ニ目下蠶絲業
ノ喫緊事デアリ、而シテ急要事デアルト
吾々ハ信ズルノデアリマス(拍手)更ニ吾々
ハ〓絲業政策ノ根本ヲ樹立致シマシテ、一
般養蠶家ニ其向フ所ヲ知ラシメル、卽チ指
導員ヲ設置致シマシテ、サウシテ養蠶實行
組合ノ機能ヲシテ、遺憾ナカラシムルト云
フコトハ、洵ニ目下執ルベキ方策ノ第一ト
考ヘテ居ルヤウナ次第デアリマス(拍手)
次ニ政友會ノ生田君ヨリモ提唱サレタ所
デアリマスルガ、我國ノ天然絹絲ハ、人造
絹絲ノ壓迫ヲ受ケテ、非常ナル脅威ヲ感ジ
テ居ルノデアリマス、而モ近年人造絹絲ハ
異常ナル所ノ發達進出ヲ致シテ居ルノデア
リマス、之ニ對シマシテ、我國ト致シマシ
テハ、ドウシテモ天然絹絲ノ進ムベキ道
ヲ-方策ヲ講ズルノガ必要デアリマス
ル、卽チ一面ニハ科學的ニ、又經濟的ニ、
綜合的〓究ヲ必要トスルノデアリマス、此
故ニ吾々民政黨ト致シマシテハ、委員長ノ
報〓通リ、番ニ是等ノ重點ヲ希望ニ止メズ
シテ、附帶決議ト致シテ、而シテ委員會ハ
全會一致ヲ以テ修正竝ニ附帶決議ヲ決定シ
タヤウナ次第デアリマス、何卒御贊成アラ
ンコトヲ希望致シマス(拍手)甚ダ簡單デハ
アリマスルガ、以上ヲ以チマシテ贊成ノ意
見ト致シマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02319330307&spkNum=77
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078・秋田清
○議長(秋田〓君) 小山谷藏君
〔小山谷藏君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02319330307&spkNum=78
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079・小山谷藏
○小山谷藏君 私ハ只今委員長ノ報告ヲ拜
聽致シマシテ、感激ノ餘リ、今此演壇ニ
立ッテ簡單ニ贊成ノ意ヲ明ニ致シタイト思
フノデアリマス、委員長ノ報告ヲ拜聽致シ
マシテ、政府ハ此農村ノ最モ重大ナル問題
ノ一ツデアル蠶絲業、蠶種問題ニ關シ、未
ダ其成案ヲ得ナイ、蠶絲業ニ關シテハ根本
的ノ〓究ヲ致サナケレバナラヌガ、未ダ其
成案ヲ得ナイ、故ニ政府案トシテ之ヲ提出
スルニ至ラナカッタト云フコトヲ聞クニ至ッ
テハ、眞ニ後藤農林大臣ノ爲ニ之ヲ惜ムス
デアリマス、私ガ申上ゲルマデモナク、本
日吾々ハ高橋大藏大臣ヨリ、亞米利加ノ金
禁止ニ關スル報告ヲ拜聽致シタノデアリマ
ス、吾々ガ此報告ヲ拜聽スルト同時ニ、直
チニ聯想致シマスル問題ハ、我國農村ノ所
謂貨幣經濟ノ根本ヲ成ス此蠶絲、生絲ノ問
題ガドウナルカト云フコトデアリマス、ド
ウシテ昨年ノ九月所謂農村救濟ノ臨時議會
ヲ召集サレナケレバナラヌ、狀態ニ陷ッタ
ノデアルカ、私ガ申上ゲル迄モナク、農村、
殊ニ繭生絲ノ暴落ト云フコトガ、遂ニ長野
縣其他所謂養蠶經濟ヲ主トシテ居リマスル
所ノ農村地方ノ疲弊困態ガ、臨時議會ヲ召
集シナケレバナラヌト云フ事態ニナッタコ
トハ、私ガ申上ゲル迄モナイノデアリマス、
而シテ時恰モ吾々ハ本日此議場ニ於テ、
高橋大藏大臣カラ亞米利加ニ於ケルアノ金
融恐慌ノ狀態ノ報〓ヲ聽キマシタ時ニ、日
ヲ同ウシテ此案ガ今上程セラレ、而シテ委
員長ノ報告ヲ伺ヒマスルト云フト、政府ハ
何等ノ準備ガナイト云フ、怠慢モ茲ニ至ッテ
極マレリト謂ハナケレバナラヌノデアリ
マス、而シテ此重大ナル問題ヲ審議セント
欲スル時ニ、私ハ委員長ニ對シテ、時ガ時
デアルガ故ニ、詳細ナル報告ヲ求メタ時ニ、
委員長ノ報告ヲ簡單々々トハ何タル態デア
リマセウ、私ガ憂フルノハ、亞米利加ノ今
日ノアノ所謂金融恐慌ハ、明日直チニ我國
ノ農村ニ反映シテ、又再ビ農村救濟ノ臨時
議會ヲ開カナケレバナラヌト云フコトヲ憂
フルノデアル、私ハ此意味ニ於テ本案ニ熱
烈ナル贊意ヲ表シ、提案者諸君ニ對シテ能
ク此案ヲ出シテ吳レタ、而シテ委員諸君ガ
アノ附帶決議ヲ以テ之ヲ決定セラレタル其
勞ニ對シテ感謝ヲ表スル、政府ハ必ズヤ之ヲ
實行スルト云フ決心ヲ以テ、所謂此案ヲ〓
心ニ御考究アランコトヲ切望致シマシテ、
玆ニ贊意ヲ表スル者デアリマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02319330307&spkNum=79
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080・秋田清
○議長(秋田〓君) 討論ハ終結致シマシタ、
本案ノ第二讀會ヲ開クニ御異議アリマセヌ
カ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02319330307&spkNum=80
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081・秋田清
○議長(秋田〓君) 御異議ナシト認メマ
ス、仮テ本案ノ第二讀會ヲ開クニ決シマシ
タ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02319330307&spkNum=81
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082・上田孝吉
○上田孝吉君 直チニ本案ノ第二讀會ヲ開
キ、第三讀會ヲ省略シテ委員長報告ノ通リ
可決セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02319330307&spkNum=82
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083・秋田清
○議長(秋田〓君) 上田君ノ動議ニ御異議
アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02319330307&spkNum=83
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084・秋田清
○議長(秋田〓君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ直チニ第二讀會ヲ開キ、議案全部
ヲ議題ト致シマス
原蠶種國家管理法案第二讀會(確定議)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02319330307&spkNum=84
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085・秋田清
○議長(秋田〓君) 別ニ御發議モアリマセ
ヌ、第三讀會ヲ省略シテ、委員長報告ノ通
リ可決確定致シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02319330307&spkNum=85
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086・上田孝吉
○上田孝吉君 殘餘ノ日程ヲ延期シ、本日
ハ是ニテ〓會セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02319330307&spkNum=86
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087・秋田清
○議長(秋田〓君) 上田君ノ動議ニ御異議
アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02319330307&spkNum=87
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088・秋田清
○議長(秋田〓君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ動議ハ可決セラレマシタ、次會ノ
日程ハ公報ヲ以テ御通知致シマス、本日ハ
是ニテ散會致シマス
午後五時二十分散會
衆議院議事速記錄第二十二號中正誤
頁段行誤正
四三九四二四資本在荷)(資本在荷)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02319330307&spkNum=88
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