1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和八年三月十四日(火曜日)
午後一時二十四分開議
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議事日程 第二十五號
昭和八年三月十四日
午後一時開議
質問
一 我か民族力を衰耗銷磨しつつある三大弊事に關する質問(荒川五郎君提出)
二 沖繩縣振興に關する質問(高田耘平君提出)
三 足尾銅山鑛毒問題に關する再質問(栗原彦三郎君提出)
四 實業補習學校と青年訓練所との統合に關する再質問(山枡儀重君提出)
五 社會政策問題及思想問題に關する質問(鈴木正吾君提出)
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第一 震災被害者に對する租税の免除猶豫等に關する法律案(政府提出) 第一讀會
第二 右議案の審査を付託すへき委員の選擧
第三 日本製鐵株式會社法案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第四 製鐵業獎勵法中改正法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第五 穀類搗精製籾取締法案(荒川五郎君外二名提出) 第一讀會
第六 穀類搗精製粉取締法案(山本莊一郎君外二名提出) 第一讀會
第七 中央卸賣市場法中改正法律案(上田孝吉君外二名提出) 第一讀會
第八 司法保護法案(小林かなえ君外四名提出) 第一讀會
第九 輸出生絲販賣統制法案(胎中楠右衞門君外二名提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第十 日本蠶絲株式會社法案(胎中楠右衞門君外二名提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第十一 出版權法案(原夫次郎君外六名提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第十二 營業收益税法中改正法律案(木暮武太夫君外二名提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第十三 國務院創設に關する決議案(野田文一郎君外四名提出)
第十四 決議案(教育の根本的改革に關する件)(富田幸次郎君外十七名提出)
第十五 決議案(思想惡化の對策に關する件)(櫻内幸雄君外十七名提出)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02619330314&spkNum=0
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001・秋田清
○議長(秋田〓君) 諸般ノ報告ヲ致サセマ
ス
〔書記官朗讀〕
一政府ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
農業動產信用法案
漁業法中改正法律案
(以上三月十四日提出)
一政府ヨリ受領シタル答辯書左ノ如シ
衆議院議員荒川五郞君提出我カ民族力ヲ
衰耗銷磨シツツアル三大弊事ニ關スル質
問ニ對スル答辯書
衆議院議員高田耘平君提出沖繩縣振興ニ
關スル質問ニ對スル答辯書
衆議院議員栗原彥三郞君提出足尾銅山鑛
毒問題ニ關スル再質問ニ對スル答辯書
衆議院議員綾部健太郞君外二名提出朝鮮
ノ私設鐵道ニ關スル質問ニ對スル答辯書
衆議院議員山枡儀重君提出實業補習學校
ト靑年訓練所トノ統合ニ關スル再質問ニ
對スル答辯書
衆議院議員鈴木正吾君提出社會政策問題
及思想問題ニ關スル質問ニ對スル答辯書
(以上三月十四日受領)
我カ民族力ヲ〓耗銷磨シツツアル三大
弊事ニ關スル質問主意書
右成規ニ據リ提出候也
昭和八年二月二十七日
提出者荒川五郞
我カ民族力ヲ衰耗銷磨シツツアル三
大弊事ニ關スル質問主意書
我ガ民族ノ素質ヲ改善シ共ノ機能實力ヲ
向上セシムベク最善ノ努力ヲ拂フコトハ
我ガ民族ノ本宗デアラセラレル皇上ニ
對シ奉ル我等忠誠ノ第一義デアルノミデナ
ク實ニ祖國ノ傳統的光榮ヲ紹成シテ之ヲ
子孫ニ傳フル爲ノ最高ナル責務デアル況
ンヤ世界列國ノ競爭日ニ劇甚ヲ加へ殊ニ
對支ノ狀況ト謂ヒ對滿ノ前途ト謂ヒ延テ
ハ國際聯盟ヨリ對米露ノ關係等今ヤ我ガ
國ハ全ク空前ノ危機ニ瀕シテ居ルト云フテ
可ナル重大ノ秋國民ハ何モノヲ措イテモ
我ガ民族實力ノ維持向上ニ關シテハ全精
神ヲ傾注シテ努力スル所ナクテハナラナ
イコトハ實ニ謂フ迄モナイ所デアル
然ルニ何事ノ此ノ重大時機ヲモ顧ミズ自
ラ思ハズシテ我ガ民族ノ素質ヲ日ニ慘虐
暴殄セシメ或ハ僅カノ努力ヲ以テ改メ得
ベキ弊習ニ泥ミテ我ガ民族ノ實力ヲ日ニ
銷磨衰廢セシメツツアルコトヤ、國家民
族ノ前途ノ爲眞ニ寒心ノ至リニ堪ヘナイ
次第デアル
計等諸般弊習等ニシテ芟除改善スベキモ
ノ社會上〓育上政治上經濟上數フレバ多
多アル中ニ於テ其ノ最モ重大ナモノヲ擧
グレバ
第入學準備ノ爲彼等少年ノ幼冲ナ
心身ヲ壓虐戕害セシメツツアル
コト
第二學科過重ノ爲一般學徒ノ精力素
性ヲ消耗渴盡セシメツツアルコ
ト
第三榮養缺損ノ爲國民全體ノ身體機
能ヲ萎靡銷磨セシメツツアルコ
ト
此ノ三大弊事ナリト信ズル
抑〓育ノ事ハ學園ニ於ケル智能技術等ノ
學業ニ止マラズシテ身體機能ノ發達ニ關
スルコトモ均シク注意ヲ要スル最モ大切
ナル〓育ノ部類ニ屬シ隨テ國民榮養問題
モ極メテ重大ナル廣義ノ〓育問題ニシテ
實ニ此ノ三事項ハ國家構成ノ根本民族發
達ノ基礎ニ關係スル至重至要ノ大間題ナ
リト思考セラルルガ故ニ玆ニ謹ンデ誠意
ヲ披瀝シ敢テ政府ニ質問スル次第デアル
第入學準備ノ爲彼等少年ノ幼
冲ナ心身ヲ壓虐戕害セシメ
ツツアルコト
少年ノ入學準備ニ關シテハ朝野ノ間ニ夙
ニ其ノ弊害ノ甚シキヲ認メ我ガ當局者ハ
鉛意ニ之ガ排除ノ手段ヲ講ジツツアルモ
奈何セン實際ノ狀況ハ倍其ノ深刻ヲ加ヘ
彼等幼冲ナル少年ノ身體及思想情操ノ上
ニ甚大ノ惡影響ヲ與へ之ガ精力ヲ消耗セ
シメツツアルノ實狀ヲ知ルトキ眞ニ憂慮
ニ堪ヘザル次第デ世間ノ多ク其ノ弊害ヲ
認ムル者モ尙未ダ十分其ノ眞相ヲ認識ス
ルニ至ラナイガ爲之ガ排除ニ努力足ラズ
徹底ヲ缺クモノト思ハルルガ私ハ多年深
ク之ヲ憂ヒ曩ニ大正十二年三月第四十六
囘議會ニ衆議院ニ入學難緩和ニ關スル建
議案ヲ提出シ六箇條ノ事項ヲ政府ニ建議
シ其ノ後之ガ一部ハ採用實施ヲ得タルモ
ノモアレド私ハ爾來一層各方面ニ付之ガ
實狀及影響等ニ關シ調査スレバ調査スル
ホド〓究スレバ〓究スルホド倍其ノ弊害
ノ大ナルニ驚カザルヲ得ザルモノガアル
然ラバ現下準備〓育ノ狀況ハ如何ト言フ
ニソレハ試驗前ノ十日トカ二三週間トカ
言フ短時日間ノコトニアラズシテ第六學
年ニ於テハ勿論全學年ヲ通ジテ行ハルル
ノミデナク第五學年モ之ニ準ジテ行ハレ
更ニ第四、三學年ニ及ビ甚シキハ第二學
年デアル可憐ナル八九歲ノ小童ニ迄モ復
習ノ名義ニ依ッテ行ハレ過重ナ宿題ガ課
セラレ他日入學ガ出來ナイコトガアッテ
ハト早クヨリ鞭韃重壓ガ加ヘラルルガ如
キモアリテ或ル人ハ男子ヲ出產シテ喜ブ
代リニ他日ノ入學難ヲ考ヘテ今日ヨリ苦
勞ノ種ヲ加ヘタト嘆息シタリトノ實話ヲ
聞ク一タビ其ノ苦キ經驗ヲ嘗メタ者ハ或
ハサコソト肯カレル次第デアル
今第六學年ノ有樣ヲ略敍スレバ
一每日授業後日沒時迄ニ止マラズ夜
八時九時ニ及ブモ少クナイ甚シキハ
十時十一時頃ニモ及ブノガアル
二日沒點燈頃ニ歸宅スル者モ更ニ過
大ノ宿題ヲ與ヘラレテ夜間自宅デ深
更ニ及ブ迄モ學習ヲ强ヒラル
三更ニ甚シキハ早朝未明ニ登校サセ
テ始業前一時間位之ヲ行フモアル
四爲ニ村落ニテハ父兄ヤ雇人ガ提燈
ヲ以テ迎ヘ(一)又提燈ヲ以テ送ル
(三)等ノ實例ガアル
五日曜祭日及冬期休日ハ勿論夏期炎
〓ノ日ニモ登校サセテ勉强ヲ强ユル
等デ之ガ弊害ノ甚シキモノヲ抽言スレバ
一兒童ノ心身ヲ極度ニ狀害シテ其ノ
發達ヲ妨ゲ從ヲテ國民ノ體格ヲ低
下セシムルコト甚シク延テ思想感情
ノ乾燥荒廢ヲ來シ爲ニ他日成長ト共
ニ思想的偏倚ノ傾向ヲ胎ム虞モ閑却
スルコトガ出來ナイ
二國民〓育ノ精神及根柢ヲ破壞スル
コトガ少クナイ
1第六學年ノ如キハ正規ノ課程中
手工、圖畫、書方、體操、裁縫、
音樂等ノ學科ヲ無視シ此ノ時間ヲ
準備〓育ニ充テ專ラ受驗科目タル
讀方、算術、地歷、理科等ニ專心
努力セシメ國民〓育ヲ根柢ヨリ破
壞シテ顧ミナイ弊ガアル
2殊ニ科目ヲ〓育的ニ授クルコトヲ
爲サナイデ全ク試驗的局部的ニ〓
ユル爲國史ノ如キ國民精神ノ徹底
的涵養ニ力メネバナラヌモノ竝ニ修
身科ノ如キ其ノ薰陶德化ヲ唯一ノ
目的トスルモノニ就テモ往往唯解
答的諸誦的ニ授クル等國民〓育ノ
精神ハ全ク缺如スル憾ミガアル
3兒童ハ常ニ恐怖ト不安ト壓迫ト
ヲ感ゼシメラルルノミニ止マラズ
準備勉强ニ追ハレテ爲ニ團欒嬉笑
シテ相偕ニ和諧スル家庭的慰安ノ
時モナク世間ノコト〓土ノ情友朋
相歡談スルノ機會モナク全ク生キ
タ人間〓育ヲ受ケ得ル機會ト時間
トヲ奪ハレテ爲ニ情操ハ乾カラビ
氣性ハ焦躁的トナルノミ實ニ性情
ノ〓育上一大缺陷ヲ來シツツアル
4休日ノ登校ヲ他ニ氣付カレヌヤ
ウ人若シ問ハバ登校スルコトヲ詐リ
隱セト云ヒ含メルガ如キ其ノ他日
的ノ爲ニ手段ヲ選バズ又虛言ヲ吐
ク等ノ惡癖ヤ拔駈ノ功名心ニ驅ラ
ルル等醇眞ナル兒童ノ心情ヲ傷ツ
ケカノ人ノ子ヲ狀フコト少クナイ
又祝祭日ニ對スル國家的感情ノ養
成ヲ紊ルノ害モ認メザルヲ得ナイ
5五、六學年ヨリ受驗組ノ區別ヲ
爲スモアリテ爲ニ數年聞養ハレ來
ツタ兒童間ノ友情ヲ破リ受驗組ト
他生組トノ間ニ自ラ優劣貧富ノ階
級的嫉妬心ヲ醸成シ將來ノ國民融
合ノ慣習性ヲ害スル虞ガ多イ
三宿題勉强ノ惱ミヲ免レンガ爲自ラ
家庭〓師ヲ要求スルニ至リ父兄ノ負
擔ヲ重カラシム又父兄ヤ兒童ノ惱ミ
ニツケ込ンデ如何ハシイ所謂家庭〓
師業者ガ出來甘言虛構ヲ弄ブ等弊害
ノ大ナルモノガアル
準備上ノ利ヲ考へ遠方通學ノ爲電車
汽車等ニ賴ルモアリ其ノ負擔ト弊害
モ認メザルヲ得ナイ
準備入學ニ付特ニ私益ヲ得ン爲暗夜
ノ贈物其ノ他ノ卑劣手段等モ行ハレ
其ノ弊モ決シテ藐視スベキデナイ又
其レガ爲ニ〓師ヲシテ兎角功利的ニ
陷ラシムル虞モアル
四入學率ニ依リ小學校ノ優劣ヲ評ス
ル爲自然對校的ノ競爭心ヲ誘ヒ各校
長〓師間ニ忌ハシキ空氣ヲ釀成スル
ノ弊ガアル
極度ニ準備〓育ヲ施ス小學校ヘハ他
ヨリ轉校者ヲ生ジ其レガ爲其ノ校設
備ヲ變體的ニ過不足ナラシメ〓育設
備費ノ浪費ヲ招クニ至ル
斯樣ニ他區域ノ學校ニ通學セシムル
父兄ハ在籍地ノ學校ニ對シテ冷淡ナ
ルノミデナク却ツテ其レガ校長ノ學
校經營ニ障害ヲ及ボシ自然其ノ校長
モ弊害ヲ虞レツツモ準備〓育ニ努力
セザルヲ得ナイヤウニナル
五斯ヤウナ次第デ國法ニ忠誠ナ順良
ナル國民ノ養成ヲ旨トスベキ小學〓
師ガ學科ノ取捨轉換ヤ時間ノ延長等
ヲ行フテ恬然トシテ之ヲ顧ミザルハ
國法(小學校令、施行規則等)ヲ無視ス
ル點ヨリシテモ適サニ由由シキ問題
デ法ノ精神ニ反シ法ノ權威ヲ蹂躪ス
ルコトハ斷ジテ許スベキデナイ
準備〓育ノ弊害ガ斯ク甚大顯著デアルコ
トハ大要何人モ認ムル所デアリ且當局者
ヤ新聞雜誌等デモ之ヲ注意シ切言シツツ
アルニ拘ラズ何故ニ現ニ斯ク激甚ニ行ハ
レツツアルノデアルカト云フニ
一學校長ノ中ニ〓育的良心ト其ノ信
念トノ乏シイ者ガアツテ功名心又ハ
權勢慾ノ奴隷トナリテ拔駈ノ功名ヲ
爲サントスル陋劣ナル心事ニ起因ス
ルモアル
二受持〓師ノ功利的劣情ニ起因スル
モノモアリ又中ニハ善クナイト心ニ
咎メツツモ愛情ニ惹カサレ又弱者ニ
恩ヲ賣ル心カラ來ルモアラウ
三目的ノ爲ニ手段ヲ選バザル現代惡
風カラ〓育ニ無理解ナル父兄等ガ學
校ニ對シテ猥リニ準備〓育ヲ强要ス
ルニ因リ自然廣ク行ハルルニ至ル場
合モ少クナイ
四確キ信念アリ〓育的良心ニ富ム校
長モ此ノ父兄ノ要望ヲ容レナクテハ
兒童ヲ轉校セシメルノミデナク學校
全般ノ經營迄モ困難ナラシメルノ虞
アリ已ムナク恨ミヲ呑ミツツ大勢ノ
事情ニ引キヅラレテ行ク者モ相當ニ
多イ
五〓育行政ノ當局者ヨリ準備〓育ノ
撤廢ヲ嚴達シツツモ中ニハ其ノ效ナ
キ事項モアル等實際之ヲ遵奉セズシ
テ公然其ノ弊ノ行ハルルヲ看過シ中
ニハ之ヲ已ムヲ得ザルモノトシテ認
ムルガ如キ口吻ノ新聞記事ヲモ見ル
コトガアル等爲ニ自然其ノ弊ヲ甚シ
カラシメル因ヲモ爲ス
六採用學校ニ於テ校長ノ內申ヲ信用
セズシテ入學試驗成績ノミニ依リテ
之ヲ取捨シ又中ニハ試驗ノ設題ガ普
通的常識的ナラザルヨリ自然已ムナ
ク各方面ニ種種無用ノ心配ヲモ拂フ
テ準備セシムル必要ヲ感ズルモアル
等其ノ他一一擧グレバ種種ノ原因ガ
アル
以上ノ次第ニテ現下ノ狀況ハ文政當局者
モ其ノ令行ハレズシテ其ノ權威ヲ失墜シ
學校自身ニ於テモ全校〓育ノ統制ヲ妨ゲ
精神ヲ破リテ種種ノ批難ヲ受ケ殊ニ屑屑
無用ノ心配ニ精神ヲ勞シ又父兄ハ日夜ノ
不安ト同情トニ驅ラルル上ニ多大ノ失費
ヲ要スル等各方面トモ現ニ明瞭ナル損失
犠牲モ少クナイガ此等ハ尙忍ブベシトス
ルモ彼レ弱キ者兒童等ハ每日一荷ニ餘ル
正規ノ授業ヲ了リテ後更ニ日沒草燈迄モ
重荷ニ苦メラレ憂慮不安ノ念ニ壓セラル
ル重キ頭腦ヲ垂レツツトボトボト家路ニ
急グ其ノ可憐サ之ヲ見ル者誰カ一片同情
ノ淚ナキヲ得ルデアラウカ
家ニ歸リテ僅カニ食事ヲ爲シ了レバ親子
談笑嬉嬉ノ寸時モ惜ミテ直ニ宿題ニ取リ
掛リ幼腦ヲ深更迄モ痛メ其ノ疲レ果テテ
寢床ニ入ルモ未解決ノ宿題ヲ夢ニ見譫言
ヲ云フナド安眠以テ精ヲ補養スルコトモ
出來ズシテ翌朝ハ又播リ起サレテ眠リ不
足ノ眼ヲコスリツツ朝ノ準備-强イラ
レタ苦痛ノ場へ-更ニ焦躁ノ思ヒモテ
出テ行カネバナラヌ嗚呼悲慘ナル殺人〓
育ヨト叫バザルヲ得ナイデハナイカ
曩ニ準備〓育ノ撤廢ガ試驗地獄ナド痛烈
ナ名ヲ以テ囂囂トシテ天下ニ絕叫サレタ
ガ其ノ當時ヨリモ尙一層激甚ヲ極メツツ
アル今日ノ實狀ニ於テ斯ク泣クコトモ出
來ズ訴フルコトモ知ラナイ此ノ可憐ナル
弱者兒童ヲ救ハント努力スル者モナク此
ノ重大事ヲ雲烟過眼ニ付シツツアルハ是
レ何事ゾ
彼ノ支那民族ノ氣力ヲ消耗シタノハ科擧
ノ制ガ主原因ト稱セラル然ルニ今我ガ國
ニハ支那科擧ノ制ト比較ニモナラナイ重
壓ヲ而モ幼冲ナ第二ノ國民ニ加ヘ我ガ光
榮アル日本民族力ノ日ニ銷磨シユク此ノ
大弊害此ノ年年數十萬ノ罪ナクシテ牢獄
ニ懊惱セシメラレツツアル可憐ノ兒童ヲ
救ハザルハ眞ニ是レ天下ノ大不祥デアリ
民族發展ノ大打擊デアル
仍テ私共ハ一日モ速ニ之ガ對策救濟ノ途
ヲ立ツルノ急要ヲ絕叫セザルヲ得ナイ次
第デ差向直ニ實施勵行スベキ諸點ハ左ノ
事項ナリト思フ
小學校長ノ內申制度ヲ廢止スルコ
ト
此レハ此ノ法ヲ設ケタ當時ハ多少ノ
功果ガアッタガ現在デハ更ニ其ノ利
ナキノミデナク弊害ガ多イノデ既ニ
昨年ノ全國小學校長會議ニ於テモ之
ガ廢止ヲ答申シタノデアル
其ノ理由ノ主ナルモノヲ擧グレバ
1準備强制ニ兒童ヲ苦シメルコト
ヲ欲シナイ父兄ハ家庭デ自由ニ氣
樂ニ勉强サセタイト思フテモ內申
ノ評點ヲヨクシテ貰ハンガ爲ニ巳
ムナク他生ト共ニ競爭シテ學校準
備ヲシナタテハナラヌ
2內申ノ評點ヲヨクシテ貰ハンガ
爲阿諛賄賂等ノ不正ガ行ハレルコ
ト少クナイ
3校長トシテハ我ガ〓へ兒ノ不利
ニナル實際ノ事實ノ儘ヲ內申スル
ニ忍ビズシテ悉ク優點ヲ付スルガ
爲ニ受驗學校ハ更ニ內申ニ信用ヲ
置カナイ
4內申ノ爲ニ入學志望者ノ成績簿
ニ記入シテアル評點ヲモ書キ改ム
ルモノモアリ中ニハ二樣ノ帳簿ヲ
作ルガ如キ極端ナノモアル
5兒童ハ自分ノ成績通知簿ト異ナ
ル優點ヲ內申セラレ欺瞞虛僞ヲ〓
ヘラル甚ダ恐ルベキコトデアル
二入學設問ハ必ズ第六學年ノ材料ヨ
リ取ルコト
三合格者ノ出身校名ヲ發表セヌコト
四無理ヲシテ入學シタル者ハ在學中
半途退學スル者ガ少クナイ此ノ半途
退學者ヲ出身校別ニ每年公表スルコト
五〓育法規ノ絕對的遵奉ヲ嚴達シ違
法者ノ處分方法ヲ定メ之ヲ勵行スル
コト
六視學ヲ常ニ地方ニ派シ力ヲ之ガ矯
正ニ盡サシメルコト
七神戶市ニテハ絕對ニ準備ヲ禁止シ
タ爲巷間窃ニ之ヲ爲ス者アルヤ警察
力ヲ以テ壓迫シツツアリト此ノ種ノ
方法モ一考ヲ要ス
八各小學校長ノ申合規約ヲ立テ之ガ
勵行方法ヲ圖ルコト
九上級學校ノ入學試問ノ課題ヲ年次
調査シ批評發表スルコト
十通學ノ距離電車汽車等ニ關スル制
ヲ設ケ又轉校ノ爲表面的ノ寄留ヲ取
締ルコト
第二學科過重ノ爲一般學徒ノ精
力素性ヲ消耗渴盡セシメツツ
アルコト
天ハ決シテ無用ノ一物ヲモ造ラズ其ノ無
用トシ又ハ毒物トシテ捨テテ顧ミラレザ
ルモノハ是レ未ダ人ノ智慧ガ之ヲ發見ス
ルニ至ラナイノデ天下ノ森羅萬象何一ツ
トシテ役ニ立タナイモノハナイカラ之ヲ
一一〓究シテ其ノ效能ヲ聞明スル必要ア
ル以上ハ之ガ百科ノ學ハ勿論其ノ他之ニ
伴フ智育的又ハ技能的ノ諸學科ハ悉ク人
生ニ必要ナルハ謂フ迄モナイ
併シアレモ必要コレモ必要ト必要ノ方面
ヨリ言ヘバ自然科學モ精神科學モ何一ツ
除クベキモノナキハ勿論ナレド只限リア
ル人間ノ能力ヲ以テ限リナキ萬有ノ學社
會ノ現象ヲ悉ク一人ニテ〓究シ難キコト
ハ言フヲ要セヌ所デアルカラ一方ニハ學
徒ノ腦力體力ヲ測リ他方ニハ學科ノ難易
ト其ノ必要ノ程度トヲ考へ以テ課程ノ配
當取捨ヲ爲スコトハ極メテ必要大切ナコ
トデアル
然ルニ今日ノ學校ニ於ケル〓科ハ多ク社
會必要ノ方面カラノミ割出シ學徒ノ負擔
力如何ヲ考慮セザリシ嫌モアツテ從來既
ニ餘リニ學科ノ課程多キニ過ギ徒ニ學徒
ヲ重荷ニ苦シムルノミニテ爲ニ各科トモ
徹底ヲ缺キ無味ニ陷リ不消化ニ堕シテ所
謂半上落下ノ實用ナキ遊民ヲ造ルニ止マ
ルノ批難ハ事實ノ示ス所ナルニ拘ラズ今
尙舊態依然トシテ之ガ取捨改善セラルル
所殆ンド之レナキハ國家ノ前途民族ノ將
來ノ爲誠ニ大遺憾事ト言ハザルヲ得ナイ
次第デアル
之ニ加フルニ社會各般ノ情態ハ日ニ月ニ
倍複雜多岐トナリ雜音躁然トシテ怒號叱
咜變幻出沒恰モ走馬燈ノ如ク送迎ニ遑ア
ラズシテ更ニ之ヲ落付イタル氣分ニ導ク
ノ注意ナキノミカ今日ニテハ官廳ヤ學校
等ノ施設スラ一層之ニ拍車ヲ加フルガ如
キモノモアツテ悉ク皆活動映畫中ノ我タル
觀アル今日ノ四圍環境裏ニ何等心身ノ平
靜ヲ攪亂セラルル所ナク徐ロニ過重多難
ノ學科ニ勤マンコト誠ニ容易ノ業デナイ
況ンヤ入學競爭ノ大ナル難關ハ頑然トシ
テ前路ヲ壓迫シ更ニ就職難生活難ノ將來
ノ憂虞等人生ノ行路崎嶇險難ヲ思フテハ
精神身體共ニ剛實健强ノ者デモ或ハ焦躁
不安ノ念萠シテ動モスレバ忍苦ノ弦ハ弛
ンデ壯志時ニ挫ケントスルモアルデアラ
ウ
今日ノ中等學校ニ於ケル學科目ニテモ之
ヲ檢討講究セバ其ノ整理分合ノ餘地ハ決
シテ少シトシナイ第一ニ漢文ノ如キハ最
モ困難デアルニ拘ラズ更ニ英語ノ如キ重
荷ヲ課セラレテ居ル漢字漢語ハ今日ニア
リテハ全ク國字國語デアツテ國民タル者
ノ是非知ラナクテハナラナイモノナレバ
困難ナリトテ之ヲ放棄スルヲ得ナイ若シ
之ヲ忌避セントセバ日常ノ生活其ノ言動
ニモ大ニ支障ヲ生ズルニ至ル況ンヤ漢字
漢語之ヲ學ブノ困難ハ卽チ困難ナレドモ
英語等ト異イ漢字漢語ハ一一意義ヲ有シ
之ヲ學知スルト同時ニ智識進達ノ力ヲ與
ヘテ學術修業ノ功果ヲ得ルノデアルカラ
人生鍊磨向上ノ爲缺クコトノ出來ナイ必
要ノモノデアルコトヲ知ラネバナラヌ併
シ漢文其ノモノハ殆ンド英語ト共ニ學徒
ヲ苦シムルコト大ナルヲ以テ中等學校ニ
於テハ漢文ハ之ヲクヅシテ假名交リ文ニ
改メ以テ之ヲ學習シ易カラシムルヲ要ス
漢文ニ反シテ英語ノ如キハ之ヲ知ラザルモ
人生ノ行路ニ敢テ支障ナク殊ニ我ガ國ノ家
庭ノ常態カラ一般風俗習慣等全然相異ル
ヲ以テ之ヲ學知シ之ヲ修得スルニハ極メ
テ困難デアッテ決シテ漢字漢語ヨリ修メ
易イトハ言フコトガ出來ナイ現ニ今日中
等學生ガ上級學校ニ入ル爲ニ最モ苦心ス
ルモノノ一ハ英語デハナイカ而カモ其ノ
英語ハ國漢等ヨリ多クノ時間ヲ費シテ居
ルノヲ見テモ之ヲ知ルコトガ出來ル我ガ
國ノ學校ニ於テ我ガ國ノ用字用語ノ〓授
ヨリモ外國語ノ修學ニ多時間ヲ課スルト
ハ本末轉倒ノ甚シキモノデ或ル外人ハ我
ガ國ニ來リ此等ノ狀況ヲ觀テ日本ハ米國
ノ植民地カト言ヒタイト冷評シタコトヲ
聞イテハ實ニ冷汗三斗ヲ浴ビル感ガスル
ノデアル
今日大都市ニ於テスラ苦惱シテ修得シタ
ル中等學生ガ英語ヲ我ガ身ニ役立タス者
ハ少數デアルノニ況ンヤ山間地方ニ在ル
中等學校ノ如キハ實ニ十ガ一ニモ及バヌ
モノガ多イ有樣デ此ノ點ノミカラ言フモ
劃一ノ制度ヲ改善シテ伸縮彈力アラシメ
ルヤウニスルコトハ極メテ必要大切ノコト
デアル
況ンヤ英語ハ之ヲ以テ專門學校ヤ大學ヲ
經テ社會ニ出ヅル者モ亦諸種ノ國家試
驗ヲ通過シタル者モ多クハ試驗ノ爲ニ學
ブモ試驗後ニハ用ナキガ少クナイ例ヘバ
裁判官デモ辯護士デモ皆通譯ヲ用ヰツツ
アルデハナイカ此等ノ事實ヨリ考察スレ
バ英語ヲ獨立シテ役立タス者果シテ幾何
アリヤ勿論皆無ニアラザルハ言フ迄モナ
ク官吏ヤ學者竝ニ對外的實業家等其ノ數
相當ニ之レアルベシトスルモ之ヲ中等學
校ノ全卒業生ノ數ニ比スレバ殆ンド比較
ニナラナイ少數デアル
一小部分ノ進學希望者ノ爲ニ大多數ノ
者ノ腦力資力ヲ犠牲トシテ顧ミナイト言
フ法ガアルカ凡テノ事ハ多數ノ者ノ利益
幸福ヲ目標トセザルベカラザルニ最モ大
切ナ大多數ノ靑年ノ血ト力トヲ最少數ノ
者ノ爲ニ殉ゼシムルノ事實之ヲ果シテ何
ト評スベキカ
殊ニ外國語ニ多クノ力ヲ用ヰルノ結果自
然日本ノ國狀日本ノ家庭等我ガ存在ノ根
本ニ闘スル知識ニ疎クシテ之ト全ク制度
習慣成立ノ異ナル外國ノ事ガ多ク惱裏ニ
刻ミ付ケラレテ白然外國思想的トナリ外
國崇拜ニ陷リ甚シキハ我ガ團體ニ悖リ國情
ニ反スルヤウニモ堕スルニ至ルノデアル
以上ノ如キ現弊重害ニ鑑ミ速ニ學科ノ取
捨按排ヲ爲シテ之ガ運用上ノ彈力性ヲ有
セシメ英語ノ如キハ主トシテ之ヲ進學志
望者ニ課シ殊ニ中等學校ニテハ和文英譯ヲ
廢シ又漢文ハ原文ノ儘ニセズ之ヲ假名交
リ文ニ改メテ之ヲ課シ又國語ノ擬古文モ
之ヲ省キ以テ大多數ノ者ヲシテ大ナル無
用ノ苦惱ヨリ免レシメ一方ニハ日本歷史
ノ如キハ史實ヨリモ特ニ國家ノ進展變遷
ニ關スル重要ナル事項ニ止メ主トシテ國
體ノ根本觀念ヲ確立シ傳統的國民精神ヲ
扶植スルコトニ重キヲ置キ彼等精力ノ徒
消ヲ除イテ其ノ力ヲ大ニ此等必要ナ方面
ニ用ヰシメ以テ〓育精神ノ徹底ヲ圖ルコ
トガ必要デアル
然ルニ此等學科ノ取捨ニ關スル世人ノ論
議スル所ヲ見ルニ漢學者ハ漢學自己ノ立
場ヨリ又英學者ハ英學本位ノ主張ヨリ其
ノ他數學者理學者等各皆自己ノ立場利益
カラノミ主張シテ總體的ニ全般ノ利益ヤ學
徒ノ實情ヲ顧ミズ互ニ相確執シテ國家民
族ノ公ニ奉ゼンコトヲ思ハズ又學校ノ系統
等ノコトニ關シテモ大學ノ者ハ只大學ノ
便ヲノミ是レ謀リ中學小學ハ亦皆夫レ夫
レ自己ノ範圍ヲ主張シテ大局ヲ顧ミズシ
テ他ヲ斥クルガ如キ何レモ皆利己的ノ甚
シキモノデ大ニ之ガ猛省ヲ促サザルヲ得
ナイコトデアル
斯ヤウナ次第デアルカラ學校ハ靑年子女
ガ愉快ノ念ヲ以テ共ニ希望向上ニ勤ム感
謝ノ殿堂デアリ家庭ハ和諧ノ心ヲ以テ互
ニ交歡敬愛スル安慰ノ天國デナクテハナ
ラヌノニ苦難ナ多クノ學科ハ强課セラレ
又各〓師ハ徒ニ各受持學科ヲ何等ノ連絡
モナク統制モナク全ク斷片的注入的ニ之
ヲ無理强イニ語誦セシメテ彼等靑年ノ精
力浪費ヲ顧ミザル者多ク家庭モ亦放縱無
節制ニシテ團欒嬉笑ノ安慰モナク入ツテ
モ出テモ乾燥不渝快ノ間ニ重壓セラルル
彼等學徒ハ爲ニ他弱ノ者ハ自暴自棄ニ陷
リテ甚シキハ自殺スルニ至ルモアリ頴敏
ナル者ハ呪咀反抗的トナリ危險凶惡ノ徒
ト化スルモアル是レ寧ロ憫然ノ情ナキヲ
得ルデアラウカ前年來世人ヲ驚カシタ凶
逆ノ徒ノ殆ンド總テガ優秀者ノ入ルト言
フ官立大學ヤ專門學校ノ出身者デアリト
聞キテハ巨額ノ國費ヲ以テ國家ヲ破壞ス
ル危險ノ「リーダー」ヲ國家自ラ養成シツ
ツアリト言フテヨイ實ニ逆施倒行ノ甚シ
イコトデハナイカ
以上ノ如キ事實ニ當面シテ一時モ速ニ之
ガ整理改訂ヲ爲スベキ急要事ハ
一學科ヲ整理シテ學徒過重ノ負擔ヲ
輕減スルコト
二學科及時間ノ按排ニ伸縮ノ餘地ヲ
與ヘテ劃一ヲ除キ彈力性ヲ有セシム
ルコト
三英語漢文擬古文等ノ整理ヲ爲シ或
ハ之ヲ希望者ニノミ課シ又上級入學
受驗科目ヨリ除クコト
四各學科ノ連絡統制ヲ謀リ之ガ〓育
精神ノ徹底ヲ期スルコト
五專ラ書物上ノ學問ニ偏スルノ弊ヲ
改メ現實ニ卽シテ之ガ〓究ヲ爲スノ
便ヲ與フルコト
六記憶ト演繹トヲ主トセズシテ推理
ト歸納トニ力ヲ用フルヤウ指導スル
コト
七注入ニ專ラナル弊ヲ改メ學徒自身
ノ考察判斷ヲ行フ機會ヲ與フルコト
八餘リニ試驗ニ重キヲ置イテ卑劣心
ヲ誘致スル制度ヲ改善シテ各自天性
ノ暢達ヲ完ウセシムルコト
九修身ハ知ルコトニ重キヲ置カズ行
フコトヲ目標トシテ實行的ニ指導ス
ルコト
十中小學ノ歷史ハ煩細ナル史實ヨリ
モ國民精神ノ涵養ヲ主トスルコト
第三榮養缺損ノ爲國民全體ノ身
體機能ヲ萎靡銷磨セシメツ
ツアルコト
我ガ日本民族ガ義勇烈烈トシテ眞ニ忠魂
其ノモノガト思ハレル程愛國奉公ノ精神
ニ富メルコトハ近ク滿洲上海等ニ於ケル
壯烈鬼神ヲ泣カシメル偉績ニ徵スルモ明
カデアツテ實ニ世界驚異ノ的トナツテ居
ル然ルニ我ガ此ノ光輝アル日本魂モ若シ
之ヲ容ルル全般國民ノ身體機能ガ漸次危
弱銷磨シユイテハ之ヲ振起發揚スル精神
ノ强健性ヲモ亡失シテ外ニ向ツテ剛勇ナ
ル民族モ內ニ對シテ次第ニ衰敗センカヲ
怖レザルヲ得ザルコトハ苟モ國家民族ノ
前途ヲ思フ者ノ極メテ重大ノ關心事デア
ル
我ガ日本ノ土地ハ漸次氣候ガ溫暖ニナリ
ツツアリト稱セラルルニ近年次第ニ人人
ガ反テ厚服ヲ加ヘツツアル有樣ハ是レ卽
チ各人皮膚ノ軟弱ニナリユク事實ヲ語ル
モノデハナイカ皮膚ノ軟弱ハ卽チ機能肉
體ガ衰弱ニナツタ現レデアル又我ガ日本
人ノ齒ガ多ク丈夫デアツタコトハ明治ノ
初米國齒科醫ガ日本人ノ齒疾者ノ少イノ
ニ驚キ手ヲ空ウシテ歸國シタリト言フヲ
以テモ知ラレルコトデアル然ルニ近年ニ
至リ惡齒者滔滔トシテ殖エ今ヤ世界第一
ノ惡齒國タルノ狀況ヲ呈スルニ至ツタガ
齒ノ惡キハ身體筋骨ノ惡クナツタコトヲ
示スノデアルコトヲ知ラネバナラヌ
皮膚肉體ガ〓弱トナリ齒牙筋骨ガ脆惡ト
ナリ而シテ其ノ惡結果ガ所在ニ現レザル
道理ハナイ卽チ從來殆ンド聞カナカツタ
兵士ヤ學徒ノ日射病ニ冒サルル者ガ近年
倍增加スル事實ヲ見ルデアラウ神經衰弱
「ヒステリー」及近眼亂視ノ非常ナル增加
ヲ知ルデアラウ更ニ近頃弱視者ノ多イ初
耳ノ事實ニ驚クデアラウ統計ノ示ス所ニ
依レバ我ガ國小兒ノ死亡率ハ世界第一デ
アリ學校醫ノ言フ所ニ依レバ學生ノ四割
ハ悉ク初期ノ肺病ニ惱ミツツアリトノコ
トデ「エー±ヽ、トーマス」氏ノ如キハ
日本ヲ病人市場ト酷評シテ居ルデハナイ
カ
斯ヤウナ他弱ナ肉體ト脆惡ナ筋骨トヲ以
テ組ミ立テタ病的身體カラ如何シテ無病
健全ナ精神ガ生ズルデアラウカ勇武强剛
ナ氣力ガ出ルデアラウカヲ思フトキ實ニ
慄然トシテ膚ニ粟ヲ生ズルノ感ヲ致スノ
デアル憂心ノ情仲忡トシテ湧キ來ルノデ
アル
醫術治療ハ大ニ進步シ衞生保護ハ盛ニ設
備セラレツツアル文明進步ノ今日ニ於テ
向上改善セラルベキ筈ノ身體機能ガ何故
ニ年次速度ヲ加ヘテ斯ヤウニ惡變シツツ
アルノデアルカ此レハ言フ迄モナク之ヲ
養フ食物ノ變遷ガ第一ニ原因ヲ爲スノデ
アルコトハ多言ヲ要シナイ所謂養ヒハ體
ヲ變ユルノデアル而シテ其ノ我ガ國民ノ
食物中主要ノ常食ハ米デアルカラ人體機
能ノ低下惡變ハ是レ全ク米食上ノ惡慣習
ノ致シタルコトハ明カデアル故ニ句モ我
ガ民族ノ前途ヲ思フ者ハ此ノ米〓慣習ノ
檢討ヲ爲スコトガ必要デアルコトハ言フ
迄モナイ
我ガ國民ハ開闢以來米ヲ主要ノ常食トシ
テ來リ日本人ハ實ニ米デ養ハレ米デ育テ
ラレ所謂日本魂ハ米ノ精力カラ受クル魂
デアル米ハ實ニ人體諸般ノ機能細胞ヲ形
成シ健康長壽ニ要スル各種必要ノ榮養素
滋養分ヲ悉ク完全ニ適量ニ含有スル全ク
天惠ノ理想的食糧ナルニ拘ラズ元ト己ノ衣
ニモ堪ヘザル婉柔ナ後房安居ノ媛女等ガ自
然軟食ヲ希望スルヨリ何時ノ頃ヨリカ時
ニ春白シテ之ヲ供セラレ其レガ漸次ニ廣
ガリ白色快觀ノ目ヲ喜バシテ上流華奢ノ
一部ニ行ハルルニ至リシモノガ上ノ爲ス
所下之ヲ傚フ一般ノ人情ニ伴ヒ漸次春精
ノ弊風ヲ增長シ時ニ穫穰豐年ノ餘穀ヲ剩
スヤ倍精白ノ流行ヲ誘致シ遂ニ德川氏太
平ノ時ニ至リ一般遊惰華美ノ弊風ト共ニ
滔滔トシテ廣ク全國ニ普及スルニ至ツタ
モノデ決シテ何等生理上衞生上ノ如キ合
理的原因ニ依ツタノデナイコトハ勿論デ
アル
併シ其ノ始ハ精白スルト言フモ只人ノ手足
ヲ勞スル手杵足臼等ノ家庭小作業デアッタ
カラ今日カラ見レバ三分搗五分搗位ノモ
ノガ普通デ七分搗ニモ至ルガ如キハ極メ
テ稀デアツタラウカラ尙相當ニ滋養部分
ハ殘存シテ居タノデアルガ人人次第ニ勞
力ヲ省クコトヲ工夫シ所謂砂搗石粉搗ガ
所在ニ行ハルルニ至リ隨テ其ノ砂土ヲ〓
除スル爲徹底的ニ淘洗セザルヲ得ザルヲ
以テ滋養部分ハ殆ド多クヲ水溶シ捨ツル
ニ至リ更ニ機械ノ發達ト共ニ精白業者ノ
分業生ジ雪白ノ視覺ヲ喜バズ世人ノ希望
ヲ迎ヘテ競フテ極度ニ精白シ更ニ甚シキ
ハ此レニ白土ヲ裝加スルヤウニナリ倍不
合理非衞生的ニ堕スルノ惡弊ヲ馴致スル
ニ至ツタノデアル
此ノ惡弊ノ結果ハ爲ニ一方ニハ精白淘洗
ニ依ツテ亡失スル榮養素ヲ他ノ鳥獸魚肉
等ノ副食物ニ求メザルヲ得ザルニ至リ非
常ナ不經濟ニ陷フテ家計費ノ增大ヲ來シ
タノミデナク人工ノ調理的ニ加除スル副
食物ハ其ノ榮養量質ガ常ニ過不足ヲ免レ
ザルハ勿論到底玄米ノ天成自然ノ完全ナ
ルニ及ブベクモアラズシテ爲ニ白米ヲ主
食トスルヨリ生ズル所謂白米病ニ罹ル者
滔滔トシテ全國ヲ襲フニ至ルノ狀況トナッ
タノデアル
現下ノ殆ンド全部ノ人人ハ兎角落付ガナ
クナッテ忍耐ガ乏シク根氣ガ續カナイデ早
ク倦怠ヲ感ズル等各自氣力體力ノ減耗ヲ
來セルコト多大ナルモ或ハ之ヲ世ノ中ガ
澆季トナリ變遷スルヲ免レナイ自然ノ運
行ナルガ如ク思ヒ恬トシテ顧省スル所ナ
キガ如キモ而カモ是レ全ク白米病ノ現ハ
レニテ之ガ爲ニ人人ノ事務ヤ學業ノ能率
ヲ減發スルノ損害果シテ幾何ゾ況ンヤ其
ノ嵩スル所各自ノ個性體質如何ニ因ッテ
或ハ脚氣トナリ或ハ痔トナリ或ハ肺患ト
ナリ腰疾トナル等疾病者ノ多キヲ致ス是
レ實ニ當然ノ結果ト言フベクカノ病人市
場ト痛罵セラレテモ殘念ナガラ之ヲ反駁
スル辭ハナイデハナイカ
以上ハ旣ニ實際ノ事實ニ徵シテ明白ノコ
トデアルガ尙玆ニ私ハ內外ノ博士專門家
等ガ〓究著述セル諸說中カラ其ノ要旨ヲ
抄取シテ以テ其ノ趣旨ヲ確實ニシタイ
ケレドモ餘リニモ長文トナルヲ虞レ左ニ
參考ノ爲私ガ獵涉講究シタ重ナル諸著說
ノ書名題目ノミヲ揭グ
一玄米ノ脚氣豫防ト糠ノ榮養效力
醫學博士遠山椿吉
一来食ノ改良醫學博士島薗順次郞
一種食〓究農學博士稻垣乙丙
一白米ヨリ生スル病氣
カシミヤー、フンク
一白米〓者ノ母乳ト小兒脚氣
パウル、フツシユー
一玄米ノ膓胃病效力
醫學博士南大曹
一玄米ト癌腫トノ關係
ボストン大學〓授バツカート博士
一榮養ノ〓究醫學博士大森憲太
一國民榮養講座
醫學博士高龜良樹
一榮養ノ本義醫學博士佐伯矩
一小兒脚氣ト糠ノ效力アンドレウス
一白米食トカルシウム缺乏ノ害
コルネツト
一オリザニンノ必要
農學博士鈴木梅太郞
一神カラ授ケラレタ有難ヒ玄米食
醫學博士二木謙三
一國民榮養ノ現在ト將來
醫學博士戶田正三
一玄米食ノ分析及榮養素量
陸軍糧秣本廠
一糠ト白米トノ成分ニ就テ
農科大學
一無砂及混砂搗精ニ依ル試驗
農林省
一白米病ニ就テ
醫學博士平石貞市
一肺結核豫防及治療ノ本道
醫學博士近藤乾郞
一眼ト榮養醫學博士田丸要槌
一日本ニ適スル衣〓住中山忠直
一めしのあぢはい村上純祥
一民族衞生醫學博士永井潜
一榮養問題ト齒ノ關係
日本齒科醫專校長中原市五郞
尙醫學博士戶出軍兵氏ノ「白米亡國論」ヲ
繙ケバ德川氏ノ中葉ヨリ白米食ノ盛行ト
共ニ脚氣病大ニ流行シ當時ノ皇漢醫中之
ガ〓究ニ力ヲ致セシ者少カラザル事實ヨ
リ下ツテ明治ノ後ニ至ッテモ内外ノ博士
大家ガ之ニ頭ヲ痛メシ跡ヲ敍シツツ項ヲ
分ヲテ博士ノ索旁〓究スル所ヲ合セ說キ
終リニ「白米禁止ニ關スル實際運動」ノ項
ニ於テ
我ガ國ニ於ケル白米禁止運動ハ極メテ
最近ノコトデアッテ斯ノ提議ノ始メテ
現レタノハ荒川五郞氏ノ玄米ニ關スル
提議案ヲ大正八年第四十一議會ニ提出
シタルニ始マリ島田三郞氏ハ大正十一
年夏始メテ禁砂問題ノ必要ナルヲ說キ
尾崎行雄氏ハ大正十四年穀類搗精取締
ニ關スル請願ヲ紹介シ更ニ同議會ニ於
テ荒川五郞氏ハ同趣旨ノ建議案ヲ提出
シタ
云云ト私ノ建議本文ヤ理由書及議事ノ經
過等ヲ揭ゲ而シテ博士ハ其ノ最後ニ於テ
以上述べ來ツタ數萬言ニヨリ今後數十
年、數百年ト白米ガ續ケラルルナラバ
日本國民ハ必ズ體力ノ上カラ衞生ノ上
カラ劣敗者トナリ亡國ノ基トナルニ至
ルト誰シモ考ヘルデアラウ卽チ吾人ガ
此論文ヲ敢テ公表スル所以デアル
ト結論シテ居ル所實ニ博士憂國ノ赤誠ニ
敬意ヲ表スルト同時ニ斯ヤウニ專門家ノ
說ク所全ク私共素人ノ思ヒ惱ム所ト毫モ
異ナル所ナク皮膚筋骨ノ耗弱身體精神ノ
衰退今日ノ實狀ヲ見ルトキ永ク此ノ程度
ニ停マルコトヲ誰カ斷言シ得ルデアラウ
カ旣往ニ考へ之ヲ將來ニ測ルハ今後倍急
速度ニ其ノ惡變ノ性狀ト其ノ數量ヤ範圍
ノ廣ク且大ヲ增加スルデアラウコトヲ思
フテハ何トシテモ是レ寸時モ徒過スルヲ
許サレナイ眞ニ由由シキ重大事デアル
斯樣ニ體力氣力ハ低劣シテ人人多ク焦躁
トナリ陰鬱トナリ能率擧ガラズ事功進マ
ズ不安重壓ヲ感ズルノ時一方ニハ世ノ中
ハ倍複雜繁忙トナリ之ニ加フルニ經濟難
生活難ハヒシヒシトシテ身邊ニ迫リ來リ
之ヲ防禦シ擊退スル氣力モナク哀レヤ人
生ノ敗亡者クラントスルトキ自然ニ人ヲ
嫉ミ世ヲ呪ヒ或ハ自暴自棄ニ陷リ危險凶
逆ニ墮スルニ至ル者アルコト是レ全ク其
ノ者ノ罪デアルヤ寧ロ先覺指導ノ地位ユ
在ル者ノ力足ラザルノ致ス所多キニ存ス
ルデハアルマイカ此ノ世相ヲ凝視シテ荀
モ國ヲ思ヒ人ヲ愛スル者ノ深憂ノ感ナキ
ヲ得ルデアラウカ
私ハ一身ヲ獻ゲテ〓育奉仕ニ盡サンコト
ヲ心ニ誓フテ以來最モ關心ニ堪ヘナイノ
ハ知能學藝ノコトヨリモ此ノ國民體力ノ
劣惡化デアツテ健康ナ身體ヲ造ラネバ健
全ナ精神ヲ宿スコトガ出來ザレバ此ノ國
民ヲ養フ主食ノ米ノコトニ關シテ大正八
年二月玄米〓ノ普及奬勵ノ建議案ヲ提出
シ專ラ之ガ普及ニ努メテ居タガ大震災ノ
當時白米ガ間ニ合ハナイノデ玄米ノ炊方
等モ知ラズ殊ニ一般焦躁不安ノ際ニ
玄米ヲ配給サレボロボロノ半炊飯ヲ
咀嚼モセズ嚥下スルト言フ有樣デ多クノ
人ニ一層玄米ハ實ニ喰ヒニクク又腹ノ具
合モ惡シキモノトノ實感ヲ與へ之ガ普及
ニ頓挫ヲ來シ已ムナク之ガ一時ノ經過ヲ
次善ニ維ガント思ヒ大正十四年三月榮養
主糧食ノ取締及奬勵ニ關スル建議案ヲ提
出シタ次第デ幸ニ此ノ建議ハ委員會モ本
會議モ滿場異議ナク通過シタカラ私ハ此
ノ建議ノ理由ヤ委員會ニ於ケル政府委員
トノ問答等ヲ始メ此ノ事ニ關スル請願記
事等ヲモ錄シテ「國民ノ保健及經濟ニ大
關係アル榮養主食糧問題」ト題シテ小册子
ヲ作リ之ヲ各方面ニ配呈シテ世人ノ注意
ヲ喚起センコトヲ圖ツタノデアル
此ノ頃ヨリ半搗米、胚芽米ノ榮養價値ニ
就テ醫學者ハ勿論其ノ他一般人士ノ論議
モ倍多ク遂ニ斯道ニ熱心ナル醫學博士二
木謙三氏ニ依リテ人間榮養ノ生命糧トナ
ルモノハ生性ヲ保テル食物デナクテハナ
ラナイカラ假令半搗七分搗ト雖モ既ニ器
械ニテ春虐セラルル以上ハ其ノ生性ヲ失
ヒ卽チ死米トナルヲ以テ人間ノ食糧ハ玄
米ニ限ルコトヲ公ニセラレ一方戶出、平
石其ノ他ノ諸博士ニ依リテ白米病ニ關ス
ル〓究ガ發表セラレ之ニ伴フテ玄米食ノ
炊キ方調理ノ〓究家モ續出シ殊ニ宮脇彥
三郞氏ノ如キハ東京榮養〓究會ヲ起シ專
ラ玄米ノ普及ニ努力スルニ至ッタノヲ見
テ私ハ昨昭和七年十二月宮腰氏ヲ誘ノテ平
沼樞密院副議長、山本內務大臣竝ニ床次
竹二郞氏等ノ共鳴ヲ求メテ其ノ連名ノ下
ニ玄米榮養食ノ講演及試食ノ會ヲ開キ
二木、白石兩博士ノ講演ヲ乞ヒタル所齋
藤總理大臣ノ如キハ刻下政務最モ多忙殊
ニ重大ノ時ナルニモ拘ラズ四時間以上モ
列席シテ聽講試食ヲ共ニシ且大ニ之ガ實
行普及ノ希望ヲモ演說セラレタ等私ハ此
等諸氏ガ國家民族ノコトヲ思パルル誠意
ニ對シテ眞ニ感謝ニ堪ヘザル所其ノ後私
ハ廣島ノ自宅ニテモ二囘又東京ニ於テモ
鳩山春子女史ヲ誘フテ同樣ノ會ヲ開イタ
ノミデナク各方面ノ會食宴會等殆ンド常
ニ玄米飯ヲ持參シテ試食ヲ求メ說明ヲ爲
シ居ルニ當リ玆ニ有力ナ實業家白石元次
郞氏ノ如キハ此ノ程日本工業俱樂部ニ多
數ノ知友ヲ招キテ試食宣傳ノ會ヲ開カル
ル等次第ニ共鳴者ヲ增シツツアルコトハ
是レ私共ノ大ニ意ヲ强ウスル所デアル
又二木謙三、平石貞市、村上連三、高木
逸磨、川崎禎太郞ノ五醫學博士ハ「玄米
ハ人體榮養上最モ完全」ナル旨ノ解說宣
明書テ發シ全國各地ノ醫學博士ヨリ續續
贊同ヲ申來リ今旣ニ三百四十餘名ニ及ン
デ居ルノデアルノハ斯道ノ專門家ノ誠意
アル態度トシテ私ハ敬意ヲ表スルノデア
ル
斯樣ナ次第デ私ハ此ノ國家ヲ濟ヒ民族ヲ
救フハ先ヅ何モノヲ措イテモ玄米食ノ古
ニ復シ之ガ普及ニ努力スルニ在ルコトヲ
思ヒ殊ニ今日國民經濟難思想難ノ時局ヲ
匡救スルノモ全ク此ノ玄米食ノ普及ヲ根
本ノ國策ナリト確信シ此ノ時此ノ際猶セ
ズ豫セズ一時モ速ニ玄米食ノ普及盛行ヲ
切望スル所以デアル
彼レ世界ノ自由國ヲ以テ誇ル米國デスラ
尙人民ノ嗜好ト自山トヲ抑ヘ一部ノ反抗
ヲ壓シテ迄斷乎トシテ禁酒ヲ嚴令シタデ
ハナイカ國家多大ノ收入ヲ犧牲トシテ迄
勇決以テ民族ヲ救ハントスル其ノ氣〓抱
負ハ今ヤ政情ノ變化之ヲ解クニ至ルトハ
言へ其ノ遠謀深慮ノ雄大ナルヲ美マザル
ヲ得ナイ次第デアル又「ヒリツピン」政府
ハ脚氣病ノ續出ヲ見ルヤ直ニ白米使用禁
止令ヲ發シ
爾今政府ヨリ糧食ノ官給ヲ受クル者ニ
對シ白米飯ノ使用ヲ嚴禁ス
玄米ヲ得ガタキ場合ニ於テ同量ノ「マ
ンゴー」ヲ以テ一日置キニ代用スルト
キハ白米ヲ使用スルコトヲ得而シテ政
府ハ此場合ニ「マンゴー」ガ白米ノ代用
トシテ確カニ使用セラレタルコトヲ以
テ滿足スベシ
若シ玄米及ビ「マンゴー」ノ何レヲモ得
ガタキ特別ノ場合ハ白米ヲ使用スルコ
トヲ得ルモ但シ此ノ場合ニ於テハ糠又
ハ其ノエキスヲ求メ得ル場合ハ醫師ノ
指定ノ下ニ白米ト共ニ之ヲ〓用スベシ
右ノ場合ニ於テ白米ヲ使用シタルトキ
ハ直ニ其ノ理由及事情ヲ具シ衞生監督
官ニ報告スベシ
ト嚴達シテ糧食官給者ニ勵行セシメ以テ
一般人民ニモ之ニ傚ハシムルヤウ促及ス
ルノ方法ヲ講ジテ居ル
彼レ「ヒリツピン」政府スラ此ノ如シデア
ル殊ニ米國ノ如、巨巨額ノ酒稅收入ヲ損シ
テ迄モ一旦之ヲ英斷セルニ比シテ我ノ此
ノ玄米食ハ國家ノ收入ヲ損スル所ナキノ
ミカ搗粉其ノ他ノ輸入ヲ減ジ諸般國費ノ
節約ヲ謀リ得ル所少カラザル上ニ民間副
食多費ノ節約利益ニ止マラズ疾病不能率
ノ損失ヲ免レ國家ノ進運經濟ノ上ニモ多
大ノ利益ヲ擧ゲ得テ何レノ方面カラ見テ
モ百利アツテ一損ナキ以上ハ之ヲ斷行勵
施スルニ於テ何ノ躊躇スル所アルベキヤ
世間ニハ人ノ常食嗜好ヲ壓スルハ困難ナ
リト說キ又政府者ニモ此ノ論アリテ其ノ
大ニ利益ナルヲ知リナガラモ尙且逡巡シ
テ之ヲ斷行スル能ハザレド併シ此ノ重大
時局ニ當リ斯ヤウナ瑣瑣タル小執ニ拘リ
其レスラ排除スルコト出來ズシテハ如何
シテ此ノ時局ヲ開轉シ民力ヲ作興スベキ
カ實ニ慷慨ニ堪ヘナイ次第デアル
況ンヤ白米食ハ國民天然ノ嗜好ニ出ヅル
ノデナクテ時弊ニ伴フタ一種ノ惡慣習ニ
止マルカラ決シテ天然ノ嗜好ヲ抑壓スル
ニアラズシテ時弊馴致ノ惡慣習ヲ改メン
コトヲ望ムノデ嗜好ト慣習トノ此ノ間ニ
大ナル區別ノアルコトヲ知ラナクテハナ
ラナイ
故ニ玄米食ノ普及ヲ圖ルノハ國民ノ嗜好
ヲ禁ズルニアラズシテ弊習ノ改善ヲ勸ム
ルノデアリ壓制スルニ非ズシテ之ヲ開導
スルノデアツテ而カモ少シク心ヲ用ヰレ
バ直ニ其ノ惠ニ浴シ其ノ利ニ需フテ一般
ノ大ニ安生ト愉快ト利益トヲ樂ミ得ルニ
至ルコト實ニ鏡ニカケテ覩ルガ如シ
故ニ政府ハ躊躇セズ依違セズ國家民生ノ
爲斷斷乎トシテ一日半時モ速ニ之ガ普及
ノ途ヲ講ジ先ヅ陸海軍隊ハ勿論其ノ他學
校病院施療院等常食官給ノ者ニ對シテ總
ベテ之ヲ玄米食ニ改メ同時ニ進ンデ廣ク
一般ニ普及方ニ關シ其ノ方法ヲ設ケラレ
ンコトヲ望ム
右三事項ニ對シ
文政當局ノ責任者タル文部大臣ハ
如何ノ所見對策ヲ有セラルルカ
二三事項トモ身體衞生ニ大關係アル
モノ隨テ其ノ當局タル內務大臣ハ如
何ニ考ヘラルルカ
三又剛健勇武ナル護國ノ干城ヲ育成
スベキ陸海軍大臣モ均シク重キヲ置
カレザルヤ
四尙國政全般ノ變理統制ニ任ゼラル
ル總理大臣ノ此等ニ對スル一般方針
如何
右及質問候也
昭和八年三月十四日
內閣總理大臣子爵齋藤實
衆議院議長秋田〓殿
衆議院議員荒川五郞君提出我カ民族力ヲ
衰耗銷磨シツツアル三大弊事ニ關スル質
問ニ對シ別紙答辯書差進候
〔別紙〕
衆議院議員荒川五郞君提出我カ民族力
ヲ〓耗銷磨シツツアル三大弊事ニ關ス
ル質問ニ對スル答辯書
從來少年ノ上級學校入學準備ニ關ス
ル弊害ノ尠カラザルモノアルヲ認メ曩
ニ中等學校入學者選拔ニ關スル制度ニ
改正ヲ加へ學校ニ於テ選拔ノ爲ニ行フ
考査ハ小學校ニ於ケル平素ノ〓育カ著
實ニ行ハレ兒童ヲシテ日々ノ課業ヲ規
律正シク學習セシムルニ於テハ良好ナ
ル結果ヲ現ハシ一時ニ急速ナル準備〓
育ヲ施スノ必要ナカラシムルガ如キ材
料方法ニ依リテ實施セシムルコトトシ
以テ小學校ニ於テハ小學校令ノ本旨ニ
依リテ國民〓育ノ實績ヲ擧クルコトニ
全力ヲ盡シ上級學校ニ於テハ性行實力
等ニ就キ公正ナル選拔ヲ行フヘキコト
ヲ期セシメツツアリ、之ニ依リ近時入
學準備ノ弊ハ漸次改善セラレツツアル
モノト認メ將來ニ於テモ尙此ノ趣旨ニ
依リ準備〓育ノ弊ヲ矯正スルコトニ力
メントス
二、學校〓育ニ於テハ國民生活上必要ナ
ル知德ヲ養成シ能力ヲ鍊磨スルヲ要ス
ルニ依リ其ノ〓育內容ハ國民生活ノ進
步、文化ノ發展ニ適應セザルベカラズ、
之ヲ以テ學校ニ於ケル學科課程ノ編制
ニ關シテハ之ガ需要ニ應ズルト共ニ生
徒ノ心身ノ發達ニ深ク留意シ負擔ノ過
重ヲ避クルコトニ付深甚ナル考慮ヲ加
へ必要ニ應ジ適當ナル改正ヲ施シツツ
アルモノナリ
三、イ我ガ國民ノ常食トシテ米ハ非常ニ
貴重ナル食料ナリ近時精白米ガ國
民一般ノ常食トナル傾向アリ、同
時ニ精白米ノ有スル榮養上ノ缺陷
(ヴイタミンBノ缺乏)モ學者ノ〓
究ニ依ッテ明白トナリ、其ノ缺陷ヲ
補ハンガ爲ニ胚芽米、七分搗米等
提供セラレタリ、而シテ單ニ化學
的成分ヨリ見レバ玄米ハ最モ勝レ
タル價値ヲ有スルトノコトナリ
從ッテ學校〓育ニ於テハ家事科等
ヲ中心トシテ此ノ點ニ關スル榮養
學上ノ理論ニ基キ兒童生徒ヲシテ
米ノ榮養ニ對シ正シキ理解ヲ與フ
ルコトニ力メ居レリ
ロ又學學寄宿舍ノ食事ニツキテハ直
接獻立上ノ指導ヲナサズト雖モ何
レモ精白米ノ缺陷ニツキテハ十分
承知セルヲ以テ各學校共其ノ食事
ハ原則トシテ胚芽米、七分搗米等
ヲ用ヒ、精白米ノ缺陷ヲ補フコト
ニ力メ居ルノ現狀ナリ
(ハ)又昨年九月ヨリ實施セル學校給食
臨時施設ニツキテモ、其ノ獻立ニ
於テ特殊ノ事情ナキ限リ米ヲ用フ
ル場合ニハ、〓ネ精白米ハ用ヒ居
ラズ
(ニ)米ハ精白スルコトニ因リテ、ビタ
ミンB、蛋白質、脂肪竝ニ灰分ヲ
多ク含有スル米ノ皮質及胚芽ヲ損
耗シ、之ニ依リテ米ノ榮養價ヲ減
損スルヲ以テ、副食物ヲ適當ニ配
合シ、榮養ノ補充ヲ爲スニ非ザレ
バ、榮養障害殊ニ我國ニ多キ脚氣
ノ誘因ヲ爲スノ惧アリ故ニ白米ノ
常食ハ榮養上之ヲ適當ナリト謂フ
コトヲ得ズ
玄米〓ニ付テハ搗減ノ憂ナク、從
テ化學的成分ニ於テハ優レ且白米
病ノ虞ナシト雖、又一面消化吸收
率ノ低クシテ、徒費量ノ大ナルコ
ト等ニ於テ相當缺陷ヲ有スルモノ
ト認メラル
要之、國民ノ常食トシテ玄米食ヲ
奬勵スベキヤ、將タ或ル程度ニ精
白シタル米ヲ奬勵スベキヤハ、保健
竝ニ經濟ノ兩方面ヨリ周到ナル調
査〓究ヲ遂ゲタル上斷定スベキモ
ノナルヲ以テ、內務省ニ於テハ榮
養〓究所ヲシテ銳意之ガ〓究ヲ爲
サシメツヽアリ、而シテ、現在迄
ノ同〓究所ノ調査ノ結果ハ、玄米
食ヲ以テ最モ推奬スベキモノト謂
フヲ得ズ
右及答辯候也
昭和八年三月十四日
文部大臣鳩山一
內務大臣男爵山本達雄
沖繩縣振興ニ關スル質問主意書
右成規ニ據リ提出候也
昭和八年二月二十八日
提出者高田耘平
沖縄縣振興ニ關スル質問主意書
沖繩縣ハ其ノ氣候、風土、交通等他ノ內
地ト非常ニ異ルヲ以テ今日ノ如ク內地ト
同一待遇ニテハ官吏ハ其ノ位置ニ安セス
其ノ職ニ安定セサル官吏ノ指導監督ヲ以
テシテハ產業助成ノ爲政府カ如何ニ多大
ノ支出ヲ爲スモ其ノ成果ヲ擧クルニ困難
ナルヤ明ナリ今ヤ政府ハ昭和八年度ヨリ
相當多額ノ支出ヲ爲シ以テ今日迄等閑ニ
付セラレタル沖繩縣ノ產業振興ニ著手セ
ムトス依テ此ノ際同縣官吏ノ待遇ヲ臺灣、
朝鮮ト同一程度ニ改善スルヲ以テ合理的
ニシテ根本的ナル同縣振興ノ方策ナリト
信ス政府ノ所見如何
右及質問候也
昭和八年三月十四日
內閣總理大臣子爵齋藤實
衆議院議長秋田〓殿
衆議院議員高田耘平君提出沖繩縣振興ニ
關スル質問ニ對シ別紙答辯書差進候
〔別紙〕
衆議院議員高田耘平君提出沖繩縣振興
ニ關スル質問ニ對スル答辯書
沖繩縣官吏ノ待遇改善ニ關シテハ從來相
當考慮シ居レルモ未ダ成案ヲ得ルニ至ラ
ズ今後尙篤ト考究ノ見込ナリ
右及答辯候也
昭和八年三月十四日
內務大臣男爵山本達雄
足尾銅山鑛毒問題ニ關スル再質問主意
書
右成規ニ據リ提出候也
昭和八年三月二日
提出者栗原彥三郞
足尾銅山鑛毒問題ニ關スル再質問主
意書
本員ハ曩ニ足尾銅山鑛毒ニ關スル質問書
ヲ提出シ政府ノ答辯ヲ得タルモ答辯其ノ
要領ヲ得ズ依テ巳ムヲ得ス玆ニ再質問ヲ
提出ス
內閣總理大臣ニ對スル質問
足尾銅山毒泥渣堆積場十八箇所ニ堆積ス
ル、植物及人畜ヲ害スル猛毒含有ノ毒泥
渣ハ之ヲ將來流出ノ憂ナキ程度ニ完全ナ
ル處置ヲ爲サムトスレハ現在ノ堆積量ニ
於テ其ノ經費四千五百八十八萬圓ヲ要ス
ト見積ラレ又之ヲ一時ニ處置セス唯流出
扞止作業ノミヲ行フモ其ノ經費年額三十
五萬圓以上ヲ要シ若完全ナル處置又ハ日
日必要ナル流出扞止作業ヲ怠ラハ飛驒國
一箇國ノ面積ニ相當スル舊被害地七十六
箇村ハ忽チ毒沙漠ト化スル虞アリ鑛業主
一朝廢山シタル場合ハ毒泥渣ノ處置又ハ
毒泥渣流出扞止作業ハ政府自ラ之ヲ行フ
モノナリヤ或ハ前鑛業經營者ヲシテ之ヲ
行ハシメムトスルヤ政府ノ所見如何
商工大臣ニ對スル質問
足尾銅山鑛業主古河ハ足尾銅山ノ經營資
金ハ以前五千萬圓以上ナリト稱シ來リシ
カ前年株式組織ト爲ス時資本金二千五百
萬圓ノ鑛業會社トシタリ然ルニ最近一方
ニ於テ增產計畫ヲ立テ其ノ準備ヲ爲シツ
ツアルニ拘ラス曩ニ其ノ資本金ヲ減少シ
テ一千萬圓ト爲シ更ニ資本金ヲ再減シテ
五百萬圓ト爲シ運轉資金ハ一切借入ニ仰
カムトスルノ意圖ヲ有スト聞ク是レ明ニ
損害賠償ノ原因發生シタル際之ヲ忌避シ
又廢山、休山等ノ場合會社無力ニシテ堆
積毒泥渣ノ處置竝毒泥渣流出扞止作業ヲ
爲スノ力ナシトシ其ノ經費支出ヲ國家ニ
轉嫁セムトスルノ陰謀ニ基クモノナリ政
府ハ之ニ對シ如何ナル監督ヲ爲シツツア
ルヤ
右及再質問候也
昭和八年三月十四日
內閣總理大臣子爵齋藤實
衆議院議長秋田〓殿
衆議院議員栗原彥三郞君提出足尾銅山鑛
毒問題ニ關スル再質問ニ對シ別紙答辯書
差進候
〔別紙〕
衆議院議員栗原彥三郡君提出足尾銅山
鑛毒問題ニ關スル再質問ニ對スル答辯
書
足尾鑛山ニ於ケル泥渣ノ處置ニ關シテハ
政府ハ常ニ周到ナル注意ヲ拂ヒ監督ヲ厲
行シツツアル所ニシテ現在泥渣散逸ノ虞
ナキモノト認ム
尙同鑛山ハ現在ノ稼行狀態ヨリ推察スル
ニ當分廢山スルコトナカルベキヲ以テ今
直チニ其ノ場合ニ於ケル對策ヲ攻究シ置
ク必要ナキモノト認ム
右及答辯候也
昭和八年三月十四日
內閣總理大臣子爵齋藤實
衆議院議員栗原彥三郡君提出足尾銅山
鑛毒問題ニ關スル再質問ニ對スル答辯
書
足尾鑛山ハ從來石炭鑛業及金屬鑛業ヲ兼
營スル資本金二千二百五十萬圓ノ古河
鑛業株式會社ニ屬シタリシガ本年三月一
日ヨリ同會社ハ資本金ヲ一千萬圓ニ減少シ
古河石炭鑛業株式會社ト改稱シテ石炭鑛
業ノミヲ經營スルコトヽナリタルト同時
ニ足尾鑛山其ノ他ノ金屬鑛業ハ資本金二
千萬圓ノ無限責任古河鑛業合名會社ノ事
業トナリタルモノニシテ之ガ爲足尾鑛山
堆積泥渣ノ處置ヲ爲スノ資力ニ別段ノ支
障ヲ及ボスコトナシト認ム
右及答辯候也
昭和八年三月十四日
商工大臣男爵中島久萬吉
朝鮮私設鐵道ニ關スル質問主意書
右成規ニ據リ提出候也
昭和八年三月二日
提出者綾部健太郞
外二名
朝鮮私設鐵道ニ關スル質問主意書
第一問
朝鮮ニハ鐵道國有法ノ施行ナキ爲從來
國ニ於テ敷設ヲ要シタル鐵道モ政府財
政ノ都合上便宜民營ニ委シ敷設經營サ
レタル結果トシテ現ニ營業セル私設鐵
道ノ多クハ國鐵代用ニ非サレハ國鐵培
養ノ犠牲的使命ヲ負ヒ形態上ハ民營ナ
ルモ其ノ實國營代行ノ鐵道トシテ性質
上內地ノ地方鐵道ト全然同一視スヘカ
ラサルモノト認メラルルカ政府ニ於テ
モ其ノ保護政策上ヨリ朝鮮私鐵ノ特異
性ヲ認メ居ラルルヤ所見如何
第二間
前段ノ如ク朝鮮ノ私設鐵道ハ國鐵代用
ニ非サレハ完全ナル國鐵培養ノ鐵道ナ
ルカ故ニ鐵道ノ根本經理ハ國私鐵道
ヲ區別シテ計算スヘカラサル關係ニ置
カレアルヲ以テ朝鮮ノ私鐵對策トシテ
ハ國營代行ノ趣旨ニ基キ買收ニ依リ漸
次國有化スルヲ原則トシ然ラサル場合
ハ補助ヲ繼續シテ或程度ニ其ノ自立ヲ
保證スルカ二者其ノ一ヲ擇ハサルヘカ
ラサルハ朝鮮私鐵ノ特異性ヨリ來ル當
然ノ歸結ナリト信スルカ政府ノ所見如
何
第三問
現在施行サレ居ル朝鮮私設鐵道補助法
ニ依レハ當該會社ノ每營業年度ノ益金
カ年八分ニ達セサルトキハ會社設立ノ
日ヨリ十五年ヲ限リ其ノ不足額ヲ補助
スルコトヲ得ト規定サレ一方ニ於テ補
給スヘキ豫算ノ最高額ヲ五百萬圓ト限
ラレ居ルモ元來補助法ハ言フ迄モナク
朝鮮總督カ補助ヲ行フ準據法ナルヲ以
テ當該會社ハ直接補助法ニ依リ補助ヲ
受クルモノニ非ス一ニ總督ノ指令ニ基
クモノニシテ其ノ補助率ハ六分ニ始マ
リ年ヲ追フテ七分八分ト順次增率サレ
補助ノ年總額モ最高二百五十萬圓ヲ三
百萬圓ニ增シ次テ四百五十萬圓ニ增加
シ其ノ後線路ノ延長ニ伴ヒ更ニ今日ノ
五百萬圓ニ增額シ補助期限ニ在リテモ
當初十箇年ト定メタルモ更ニ五箇年ヲ
延長シ現在ノ十五箇年ト爲セルカ如ク
從來補助ヲ受クル會社ノ必要ニ應シ都
度補助條件ヲ變更シ來リシ沿革的事實
ニ顧ミ而モ其ノ補助年限十五箇年ノ內
旣ニ十三年以上ヲ經過シ居ル以上ハ現
行補助法ニ依ル十五箇年八分ノ補助ハ
最早理論ニ非ス確固タル既定ノ事實ト
認ムルノ外ナシ政府ノ所見如何
第四間
若國家財政上ノ見地ヨリセハ自立性ニ
乏シキ朝鮮私設鐵道ニ對シ永年ニ亙
リ高率ノ補助ヲ續クルヨリ之ヲ低利ノ
事業公債ニ換價スルヲ得策ト考ヘラル
ルノミナラス朝鮮ニ於ケル私設鐵道ノ
運賃率ハ國鐵ノ運賃率ニ倍スルヲ以テ
國錢ニ統一セハ一般民衆ノ福利ニモ合
致スル故畢竟買收ハ政府財政ノ整理ト
社會政策上ノ施設ヲ兼ネ且鐵道國有化
ノ一般方針ニモ副フ實ニ一擧三得ノ良
策ナリ唯時節柄考慮サルヘキハ公債ノ
增發ナルモ此ノ點ニ付テモ會社ハ多ク
ノ社債ヲ有シ居ルヲ以テ交付公債ヲ以
テ社債ヲ償還セハ相殺サレテ憂フヘキ
通貨ノ膨脹又ハ金融市場ノ壓迫ヲモ來
ササルニ依リ結局朝鮮ノ私鐵對策トシ
テハ買收カ最效果的ナリト信セラル政
府ノ所見如何
第五間
朝鮮私設鐵道ノ大部分ハ昭和九年度ニ
於テ補助期限滿了ト爲ルモノナルカ前
段ノ趣旨ニ基キ補助期限ノ延長ニ關シ
補助法ノ改正案ヲ本期議會ニ提出サル
ル準備アルヤ否ヤ又補助期限ノ切迫ニ
依ル懸念ノ爲株式市價ニ惡影響ヲ與ヘ
延テ一般株主ハ勿論殊ニ多額ノ社債權
者及金融業者ニ不安ヲ感セシメ當面其
ノ借替ニ支障ヲ來シ居ル事情ノ如キハ
政府ニ於テモ特ニ考慮セラレ此ノ際殆
ト二百萬株ニ達スル之カ一般株主其ノ
他利害關係者ニ安定ヲ與フル爲是非今
期議會ニ改正案ヲ提出スルノ要アルモ
ノト信ス猶念ノ爲承知シ置キタキハ補
助法ノ改正ニ伴フ一般補助條件ニ付テ
ハ從來ノ如ク朝鮮私鐵ノ特異性ニ鑑ミ
內地地方鐵道ヨリモ比較的有利ニ定メ
ラルヘキモノト信シテ可ナリヤ政府ノ
所見如何
右及質問候也
本質問ニ對シテハ畫面ヲ以テ答辯アラムコ
トヲ望ム
昭和八年三月十四日
內閣總理大臣子爵齋藤實
衆議院議長秋田〓殿
衆議院議員綾部健太郞君外二名提出朝鮮
私設鐵道ニ關スル質問ニ對シ別紙答辯書
差進候
〔別紙〕
衆議院議員綾部健太郞君外二名提出朝
鮮私設鐵道ニ關スル質問ニ對スル答辯
書
朝鮮ニ於ケル私設鐵道ノ主ナルモノ
ハ交通上幹線ヲ爲スモノ多ク所謂國營
代行ノ性質ヲ帶ブルモノト謂フベク一
般ノ地方鐵道トハ其ノ趣ヲ異ニセルモ
ノアルヲ以テ之ガ助成發達ニ關シテモ
亦從來特殊ノ方針ヲ採リ來レルモノト
ス
二、朝鮮ニ於ケル私設鐵道ハ前述ノ如キ
特質ヲ有スルモノアルヲ以テ其ノ實情
ニ鑑ミ漸次買收スルヲ得策ト認メ曩ニ
議會ノ協贊ヲ經テ昭和一一年度ヨリ同六
年度ニ亙リ既ニ五線三三九粁六分(交
付公債額面二六、〇四〇千圓)ヲ買收
シタルガ將來ニ於テモ同樣ノ方針ニ依
リ事情ノ許ス限リ主要錢道線ノ買收ヲ
行ハムトスルモノナリ補助ノ點ニ關シ
テハ後述スル所ノ如シ
三、朝鮮ニ於ケル私設鐵道ノ補助ニ就テ
ハ大正三年度以降補助命令ノ形式ヲ以
テ補助開始以來補助率ニ就テハ六分ヨ
リ七分、八分ト順次增率シ大正十年朝
鮮私設鐵道補助法制定施行ニ方リテモ
補助率ハ從來通リ八分トシ補助年限ヲ
會社設立登記ノ日ヨリ十年、補助金年
總額最高限度ヲ二百五十萬圓ト定メタ
ルガ其ノ後會社ノ實情竝ニ各般ノ狀勢
ヲ考慮シ補助年限ヲ十五年ニ延長シ補
助金年總額最高限度モ順次遞增シテ現
行ノ五百萬圓ニ達セリ而シテ其ノ間右
ノ範圍內ニ於テ事情ノ許ス限リ私設鐵
道ノ發達助成ノ目的ヲ達スベク努メ來
レルモノナリ
四、朝觧ニ於ケル私設鐵道ノ買收ニ關シ
テハ第二項ニ於テ述べタル通トス
五、朝鮮ニ於ケル私設鐵道ノ特質竝ニ業
績ニ鑑ミ將來ニ於テモ尙相當保護助成
ノ方法ヲ講ズルノ必要ナルヲ認ム而シ
テ私設鐵道中ニハ昭和九年度ニ於テ補
助期限滿了スルモノアルヲ以テ旁々諸
般ノ事情ヲ考慮シ補助年限、補助率竝
ニ補助方法等ニ關シ目下愼重調査中ニ
屬スルヲ以テ之ガ改正ニ付テハ今期議
會ニ提出ノ運ビニ至ラズ
右及答辯候也
昭和八年三月十四日
拓務大臣永井柳太郞
實業補習學校ト靑年訓練所トノ統合ニ
關スル再質問主意書
右成規ニ據リ提出候也
昭和八年三月四日
提出者山枡儀重
實業補習學校ト靑年訓練所トノ統合
ニ關スル再質問主意書
實業補習學校ト靑年訓練所トノ統合ニ關
スル本員ノ質問ニ對スル鳩山文相及荒木
陸相連署ノ答辯書ヲ受領セリ然ルニ「靑
年訓練ノ實質ヲ毫モ低下セシムル虞ナキ
樣充分〓究ヲ遂ゲ度キ」カ爲ニ「相當時日
ヲ要スルハ巳ムヲ得ザル所」ナリトシテ
其ノ〓究ヲ要スヘキ內容ヲ明示セラレサ
ルヲ遺憾トス文部省ハ旣ニ「兩者ノ統合
ニ關スル草案ヲ作製シテ陸軍當局ニ內示」
セル由ナルカ故ニ文部省ハ之カ確信ヲ有
スルモノト考ヘラル若文部省カ未タ〓究
ヲ遂ケス確信ヲ有セスシテ之ヲ陸軍省ニ
提示セリトセハ文部省ハ甚タ輕卒不謹愼
ナリ本員ハ斯ノ問題ノ成行ニ關シテ政府
ノ答辯ニ依リ益〓不可思議ノ感ヲ深クセ
リ斯ノ問題ニ關心ヲ有スル者亦然ルヘシ
凡ソ立憲政治ノ下ニ於テ國民ノ要望スル
事項ニシテ政府カ直ニ之ヲ實現スル能ハ
サル場合ニ於テハ政府ハ其ノ見解ヲ天下
ニ明示シ國民ト共ニ之ヲ考究スヘキナリ
唯徒ニ調査中ナル抽象的言辭ヲ弄シテ一
時ヲ糊塗スヘキニ非ス調査中ナラハ其ノ
調査ヲ要スル問題其ノ俄ニ實施シ得ヘカ
ラサル理由ヲ公ニスヘキナリ依テ左記項
目ニ付明確ニ答辯セラレムコトヲ望ム
-文部省カ嚮ニ立案セルモノハ實施ス
ル能ハサル程度ノ重大缺陷ヲ有スルモ
ノナリヤ
二若然リトセハ文部省カ斯ル草案ヲ陸
軍省ニ提示セルハ輕卒ナリト言ハサル
ヲ得ス所見如何
三陸軍省ニ於テ兩者ヲ統合セル〓育施
設ノ名稱ヲ靑年學校トセムトスル文部
省案ニ反對シ靑年訓練所ナル名稱ヲ存
續セムコトヲ主張シ兩者ノ意見遂ニ一
致ヲ見ル能ハサル狀態ニアリトノ風說
世上ニ流布サル果シテ然ルヤ若然リト
セハ兩省各主張ノ理由如何
四陸軍省ハ統合施設ニ於テハ〓練ノ時間
數ノ他ノ學科時間數ニ比シテ從來ノ靑
年訓練所ニ於ケルヨリモ比率下ルカ故
ニ自然〓練カ輕視セラルル恐アリトシ
テ統合ニ反對セラルルトノ流說アリ果
シテ然ルヤ
五右ハ寧ロ事實ニ反シ他ノ學科ヲ多ク
履修スルコトニ因リ兵役ニ服スルノ素
質ヲ一層鞏固ニスル所以ナリト考ヘラ
ル所見如何
六陸軍省ハ我カ國靑年ノ訓練ハ軍人カ
主トシテ其ノ衝ニ當ルヘキモノナリト
シテ兩者統合ノ上ハ軍人ヨリモ〓員カ
寧ロ靑年訓練ノ中樞タルヘキニ付之ヲ
快シトセス是レ陸軍省カ兩者ノ統合ヲ
遷延セシメツツアル底意ナリト推察ス
ルモノアリ果シテ然ルヤ
七兩者統合ニ關スル世論ノ要望ハ夙ニ
數年前ヨリ起レルモノナリ而シテ文部
省ハ之カ利害得失ヲ考究シテ既ニ成案
ヲ得タリトスルニ陸軍省ハ尙之カ〓究
ニ相當時日ヲ要ストセラル陸軍省ハ世
論ヲ等閑ニ付シテ〓究ヲ怠リタルカ然
ラスムハ陸軍省側ニ於テ〓究ヲ要スヘ
キ重要問題ノ存スルカ何レカナラサル
ヘカラス前者ナルコトハ本員ノ之ヲ信
スルヲ好マサル所ナリ後者ナリトセハ
其ノ〓究ヲ要スル諸點ヲ世ニ示サルヘ
キナリ
右及再質問候也
昭和八年三月十四日
內閣總理大臣子爵齋藤實
衆議院議長秋田〓殿
衆議院議員山枡儀重君提出實業補習學校
ト靑年訓練所トノ統合ニ關スル再質問ニ
對シ別紙答辯書差進候
〔別紙〕
衆議院議員山枡儀重君提出實業補習學
校ト靑年訓練所トノ統合ニ關スル再質
問ニ對スル答辯書
實業補習學校ト靑年訓練所トノ統合ハ本
來靑年〓育上ノ重要事項ニシテ文部當局
ニ於テモ之ガ實現ニ當リ關係各方面ノ意
見ヲ參酌シテ其ノ方案ヲ定ムルヲ妥當ト
認メタリ而シテ靑年訓練所ハ陸軍當局ト
緊密ナル關係ヲ有スル施設ナルヲ以テ文
部當局ニ於テハ陸軍當局ト關係事項ニ就
キ豫メ協議セムガ爲右ニ關スル草案ヲ作
成シテ之ヲ陸軍當局ニ內示セルモノナリ
之ニ對シ陸軍當局ハ現下內外ノ情勢ニ顧
ミ靑年訓練ノ實質ヲ毫モ低下セシムル虞
ナキ樣統合ノ方案ニ關シ文部當局ト共ニ
充分〓究ヲ遂ゲ度意嚮ヲ有スルモノニシ
テ兩者ノ統合ノ實現ヲ遷延セシメントス
ルニアラザルコトハ言ヲ俟タズ
目下文部陸軍兩當局ニ於テハ兩者統合ノ
實現ノ爲愼重〓究ニ努メツヽアルモ〓究
事項ノ內容ニ就テハ未ダ發表ノ時期ニア
ラサルヲ遺憾トス而シテ再質問主意書中
ノ列記項目ノ一二及七ニ關シテハ上ニ
述ブル所ニ依リテ了解セラルベク又三乃
至六ニ關シテハ憶測ト思料スルヲ以テ玆
ニ所見ヲ述べ難シ
右及答辯候也
昭和八年三月十四日
陸軍大臣荒木貞夫
文部大臣鳩山一郎
社會政策問題及思想問題ニ關スル質問
主意書
右成規ニ據リ提出候也
昭和八年三月四日
提出者鈴木正吾
社會政策問題及思想問題ニ關スル質
問主意書
一世相險惡ナレハナル程政府ハ各般ノ
社會政策的施設ノ充實徹底ヲ期セサル
ヘカラス假令其ノ爲ニ相當巨額ノ經費
ヲ要スルモノハ社會的變革ヲ豫防スル
保險料トシテ忍ムテ支辨スヘキナリ然
ルニ政府ハ却テ非常時ニ藉ロシテ少額
ノ經費ヲ以テ實施シ得ヘキ幾多ノ社會
政策的施設ヲ放擲シテ顧ミサル如キ態
アルハ奇怪至極ト言ハサルヲ得ス
政府ハ今期議會ニ失業保險法、賃銀保
護法、商店法及小作法等ヲ提出スルノ
意思アリヤ
二明治製糖株式會社ノ脫稅問題ニ對ス
ル政府ノ處置ハ國民ノ納稅義務觀念ヲ
惡化シ延テ憂フヘキ社會思想ノ醱酵ヲ
助長スル虞アリト信ス政府ノ所見如何
右及質間候也
昭和八年三月十四日
內閣總理大臣子爵齋藤實
衆議院議長秋田〓殿
衆議院議員鈴木正吾君提出社會政策問題
及思想問題ニ關スル質問ニ對シ別紙答辯
書差進候
〔別紙〕
衆議院議員鈴木正吾君提出社會政策問
題及思想問題ニ關スル質問ニ對スル答
辯書
現下ノ社會狀勢ニ鑑ミ政府ハ社會政
策ノ必要ヲ痛感シ其ノ施設ノ實現擴充
ニ努力シツツアリ卽チ昨年一月一日ヨ
リ施行セラレタル救護法ノ實施ハ我國
救貧行政上ノ一新紀元ヲ劃シタルモノ
ト謂フヘク之ニ伴ヒ罹災救助基金法ヲ
改正シ救護法ノ實施ヲ圓滑ナラシムル
ト共ニ其ノ他私設社會事業ノ助成等ニ
モ本基金ヲ充當シ得ルノ途ヲ拓キ又軍
事救護法ノ運用ニ依リ事變關係ノ陸海
軍下士兵卒及其ノ遺家族ノ救護ニ付テ
モ亦遺憾ナキヲ期シツツアリ又失業ノ
防止救濟ニ關シテハ失業應急事業其ノ
他ノ公共土木事業、農業土木事業等ノ
起興ニ依リ生活困窮者ノ應急的救濟ヲ
爲スト共ニ其ノ根本的方策ニ關シテハ
失業對策委員會ヲシテ調査〓究ヲ行ハ
シメ尙地方改善、公益質屋等ニ關スル
時局匡救事業ノ遂行ニ依リ勞働者其ノ
他ノ小額所得者ノ生活安定ヲ圖リ更ニ
勞働者ノ福利增進ニ關シテハ工場法、
鑛業法、健康保險法等ノ實施ニ加フル
ニ昨年一月勞働者災害扶助法ノ制定ニ
依リ工場鑛山ニ於ケル勞働者ノミナラ
ス屋外勞働者ニ對シテモ同樣ノ福利增
進ヲ圖リ得ルコトトナレリ尙各種ノ社
會政策的立法中兒童虐待防止法ハ旣ニ
成案ヲ得テ今期議會ニ提出シタルカ其
ノ他失業保險法、賃銀保護法、商店法、
小作法等ニ付テハ目下銳意調査〓究中
ナリ
ニ、明治製糖株式會社ノ脫稅問題ニ對ス
ル政府ノ處置ハ豫算委員會其ノ他ニ於
テ屢〓政府ノ說明シタル通ナリ
右及答辯候也
昭和八年三月十四日
大藏大臣高橋是〓
內務大臣男爵山本達雄
農林大臣後藤文夫
〔左ノ報告ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノ爲
玆ニ揭載ス〕
一昨十三日貴族院ニ於テ本院ノ送付ニ係ル
左ノ政府提出案ヲ可決シタル旨同院ヨリ
通牒ヲ受領セリ
造幣局工場及其ノ附屬設備ノ新營費ニ關
スル法律案
昭和八年度一般會計歲出ノ財源ニ充ツル
爲公債發行ニ關スル法律案
大阪帝國大學工學部設置ニ付帝國大學特
別會計及官立大學特別會計ノ關涉ニ關ス
ル法律案
朝鮮事業公債法中改正法律案
樺太事業公債法中改正法律案
貨幣法中改正法律案
船舶安全法案
船舶職員法中改正法律案
日本興業銀行法中改正法律案
一政府ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
震災被害者ニ對スル租稅ノ免除猶豫等ニ
關スル法律案(以上三月十一日提出)
一議員ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
製造煙草ノ輸出ニ關スル建議案
提出者
山崎猛君上野基三君
鈴木英雄君助川啓四郞君
寺田市正君宮澤裕君
酒造稅法中〓酒ノ造石稅率等改正ニ關ス
ル建議案
提出者中野種一郞君
京都市內國有鐵道高架改築ニ關スル建議
案
提出者
中野種一郞君鷲野米太郞君
鈴木吉之助君
(以上三月十日提出)
一去十一日特別委員理事補闕選擧ノ結果左
ノ如シ
衆議院議員選擧法中改正法律案(政府提
出)委員
理事作田高太郞君(理事〓水德太郞
君本月九日委員辭任ニ付其ノ
補闕)
一去十一日議長ニ於テ選出シタル委員左ノ
如シ
南滿洲鐵道株式會社ノ株式引受ニ關スル
法律案(政府提出)委員
野田俊作君內田信也君
門田新松君兼田秀雄君
志賀和多利君船田中君
春名成章君仙波久良君
上原平太郞君津崎尙武君
今井健彥君小林絹治君
增田義一君鵜澤宇八君
海野數馬君松尾四郞君
豐田豐吉君古屋慶隆君
東京都制案(政府提出)委員
濱田國松君中島守利君
磯部尙君伊藤仁太郞君
津雲國利君本田義成君
野方次郞君有馬淺雄君
田子一民君深澤豐太郞君
瀨川嘉助君鈴木吉之助君
水島彥一郞君沼田嘉一郞君
上田孝吉君喜多孝治君
中井一夫君坂本一角君
高木正年君小山松壽君
戶井嘉作君川橋豐治郞君
枡谷寅吉君松田竹千代君
前田房之助君中村繼男君
福田虎龜君
農村負債整理組合法案(政府提出)委員
大口喜六君出井兵吉君
坪山德彌君增田金作君
佐々木家壽治君西方利馬君
松岡俊三君山本莊一郞君
加藤知正君匹田銳吉君
服部岩吉君森田福市君
伊藤皆次郞君貝谷眞孜君
森肇君佐藤重遠君
熊谷巖君助川啓四郞君
高田耘平君山本厚三君
藤井啓一君岡田喜久治君
松田正一君武知勇記君
猪股謙二郞君後藤亮一君
中田正輔君
一去十一日ニ於ケル特別委員ノ異動左ノ如
輸出絹織物取締法中改正法律案(政府提
出)委員
辭任立川太郞君補闕一瀨一二君
辭任栗原彥三郞君補関中村繼男君
衆議院議員選擧法中改正法律案(政府提
出)委員
辭任後藤亮一君補關由谷義治君
營業收益稅法中改正法律案(木暮武太夫
君外二名提出)委員
辭任堀川美哉君補闕小林錡君
一昨十三日齋藤內閣總理大臣ヨリ左ノ通發
令アリタル旨ノ通牒ヲ受領セリ
內閣書記官長堀切善次郞
法制局長官黑崎定三
第六十四囘帝國議會政府委員被仰付
一昨十三日委員長及理事互選ノ結果左ノ如
南滿洲鐵道株式會社ノ株式引受ニ關スル
法律案(政府提出)委員
委員長野田俊作君
理事
門田新松君兼田秀雄君
海野數馬君豐田豐吉君
東京都制案(政府提出)委員
委員長濱田國松君
理事
本田義成君瀨川嘉助君
喜多孝治君川橋豐治郞君
枡谷寅吉君福田虎龜吉
農村負債整理組合法案(政府提出)委員
委員長大口喜六君
理事
西方利馬君貝谷眞孜君
森肇君武知勇記君
猪股謙二郞君後藤亮一君
一昨十三日特別委員委員長補關選擧ノ結果
左ノ如シ
都市計畫法中改正法律案(政府提出、貴族
院送付)委員
委員長堀川美哉君(委員加藤鐐五
郞君昨十三日委員長辭任ニ
付其ノ補國)
一昨十三日特別委員理事補開選擧ノ結果左
ノ型
造幣局工場及其ノ附屬設備ノ新營費ニ關
スル法律案(政府提出)外二件委員
理事中川觀秀君(理事野中徹也
君昨十三日委員辭任ニ付其ノ
補闕)
一昨十三日ニ於ケル特別委員ノ異動左ノ如
シ
造幣局工場及其ノ附屬設備ノ新營費ニ關
スル法律案(政府提出)外二件委員
辭任野中徹也君補闕中川觀秀君
辭任鈴木正吾君補閱野中徹也君
輸出絹織物取締法中改正法律案(政府提
出)委員
辭任福田虎龜君補闕栗原彥三郞君
衆議院議員選擧法中改正法律案(政府提
出)委員
辭任西岡次郞君補闕三上英雄君
營業收益稅法中改正法律案(木暮武太夫
君外二名提出)委員
辭任庄晋太郞君補闘木暮武太夫君
農村負債整理組合法案(政府提出)委員
辭任岡田喜久治君補關林平馬君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02619330314&spkNum=1
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002・秋田清
○議長(秋田清君) 是ヨリ會議ヲ開キマ
ス、御諮リ致シマス、第五部選出建議委員
久山知之君、常任委員辭任ノ申出ガアリマ
ス、許可スルニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02619330314&spkNum=2
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003・秋田清
○議長(秋田〓君) 御異議ガナケレバ許可
シマス、其部ノ諸君ハ速ニ補關選擧ヲ行
ヒ、御屆ケアランコトヲ王ミマス-本日
ノ日程ニ揭ゲマシタ質問ハ何レモ政府ヨ
リ答辯書ヲ受領致シマシタ、仍テ日程ヨリ
之ヲ省キマス答辯ニ對スル意見陳述ハ
適當ノ機會ニ通〓順ニ依リ許可致シマ
ス-日程第一震災被害者ニ對スル租稅
ノ免除猶豫等ニ關スル法律案ノ第一讀會ヲ
開キマス-大藏大臣高橋是〓君
第震災被害者ニ對スル租稅ノ免除
猶豫等ニ關スル法律案(政府提出)
第一讀會
震災被害者ニ對スル租稅ノ免除猶豫等
ニ關スル法律案
第一條政府ハ震災(昭和八年三月三日
ノ震災及之ニ伴フ火災又ハ海嘯ヲ含ム
以下同ジ)ニ因ル被害者ノ震災地ニ於
テ納付スベキ昭和七年分第三種所得稅
第四期分ニ付命令ノ定ムル所ニ依リ之
ヲ免除スルコトヲ得
第二條政府ハ震災ニ因リ著シク利用ヲ
妨ゲラレタル土地ニ付命令ノ定ムル所
ニ依リ其ノ地租ヲ免除スルコトヲ得
第三條政府ハ震災地ニ於テ納付スベキ
昭和八年分ノ第三種所得稅、個人ノ營
業收益稅及乙種資本利子稅ニ限リ課稅
ニ關スル申〓及申請竝ニ課稅標準ノ決
定ニ關シ命令ヲ以テ特例ヲ設クルコト
ヲ得
第四條政府ハ震災地ニ於テ昭和八年三
月三日以後ニ納付スベキ租稅ニ付命令
ノ定ムル所ニ依リ其ノ徵收ヲ猶豫スル
コトヲ得
第五條第一條、第三條及前條ノ震災地
ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第六條第一條又ハ第二條ノ規定ニ依リ
免除セラルル租稅ハ法令上ノ納稅資格
要件ニ關シテハ免除セラレザルモノト
看做ス
前項ノ規定ハ北海道地方稅及縣稅ニシ
テ震災ニ因リ減免セラルルモノニ付之
ヲ準用ス
附則
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
〔國務大臣高橋是〓君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02619330314&spkNum=3
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004・高橋是清
○國務大臣(高橋是〓君) 玆ニ只今議題ト
ナリマシタ震災被害者ニ對スル租稅ノ免除
猶豫等ニ關スル法律案ノ說明ヲ致シマス
去ル三月三日ノ三陸地方ニ於ケル震災ハ、
相當激甚デアリマシテ、殊ニ之ニ伴フ海嘯
ハ一層其慘禍ヲ大ナラシメマシタ被害
者ニ對シマシテハ洵ニ同情ニ堪ヘナイ次
第デアリマス、被害者中ニハ國稅ノ納稅者
ニシテ、土地ノ損傷、家屋ノ倒壞流失、家
財共他營業用商品、原料品等ノ滅失毀損
等ノ爲ニ、租稅ノ負擔力ヲ滅殺セラレタル
者ガ少クナイノデアリマス、租稅負擔力ノ
減殺セラレタル場合ノ救濟方法ニ關シマシ
テハ、現行法中ニモ一部其規定ガアリマス
ルケレドモ、震災ノ如キ非常災害ニ對應ス
ル方法ト致シマシテハ、十分デアリマセヌノ
デ、從來モ震災ノ場合ニ於キマシテハ租
稅ノ免除猶豫等ニ關シ、特ニ救濟ノ方法ヲ
講ジタル例ガアルノデアリマスルガ、今囘
モ亦特ニ是ガ救濟ノ方法ヲ講ズルノ必要ア
リト認メマシテ、本案ヲ提出致シタ次第デ
アリマス、何卒御審議ノ上、速ニ協賛アラ
ンコトヲ希望致シマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02619330314&spkNum=4
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005・秋田清
○議長(秋田〓君) 質疑ヲ許シマス-菅
原傳君
〔菅原傳君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02619330314&spkNum=5
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006・菅原傳
○菅原傳君 只今提案セラレタル法案ハ、
實ニ此災害ニ對スル人情味ノアル意義ア
ル最モ結構ナル案ト私ハ思フノデゴ
ザイマス、是ト關聯シテ災害救濟ニ
關スルコトニ付テ二三分間極ク簡單
ニ、政府ノ御意見ノアル所ヲ質問スルコト
ノ御許シヲ願ヒタイノデゴザイマス、今囘
ノ災害ハ極ク大キク大雜把ニ言ウテ見マ
シテモ、實ニ大ナルモノデアル、死ンダ人
ガ數千人デアリマス、サウシテ家屋ノ流失、
倒壞モ數千デアリマス、其外漁船漁具、色
色ノ損害ト云フモノハ、實ニ大ナルモノデ
ゴザイマス、當局ニ於カレテハ固ヨリ旣
ニ正確ニ御承知ト思ヒマスガ、私ハ地方ノ
當局ナリ其他ヨリ聞及ンダ所ヲ、極ク〓略
的ニ申シテ見マスレバ今度ノ災害地デモ、
最モ被害ノ甚大ナル所ハ岩手縣ノヤウニ思
フノデアリマス、實ニ岩手縣ハ死ンダ人ガ
四千五百有餘人ト云フノデアリマス、實實
大ナルモノデアリマス、サウシテ家屋ノ流
失、倒壞モ四千何百軒ト云フノデアリマ
ス、其外漁船漁具ノ損害、是ハ又大シタ莫
大ノモノデアリマス、宮城縣ガソレニ次グ
ノデアリマスガ、死者約三百餘人デゴザイ
やく、サウシテ家屋ノ倒壞流失モ千三百
餘、無論漁船漁具ノ紛失流失、是モ大ナル
モノデゴザイマス是等地方ノ當局ナドノ
考ニ依リマスレバ、復舊事業トシテモ、岩
手縣ノ如キハ三千何百万ト云フ巨額ヲ要ス
ルト云フ、宮城縣モ次イデ五百万位要ル、
靑森縣ハ其次ニナリマスケレドモ、人命モ
失ヒ、又損害モ中々僅少デハナイノデアリ
マく、今度ノ海嘯ノ如キハ、北海道ニマデ
モ幾分及ンダト云フコトデ、實ニ被害ハ甚
大ナルモノデゴザイマス、其外ニモ東北三
縣ニハ滿洲ニ出征シテ居ル軍人ノ家族等
モアリマシテ、是等ノ事ヲ思ヒマスレバ、
實ニ感慨無量ナコトデゴザイマス、政府ニ
於カレテモ、固ヨリ是等ノ點ニ御考慮アッ
テ、旣ニ地租ノ免除ナリ猶豫等ノ提案モセ
ラレタ、是ハ實ニ結構デアリマスガ、今申
上ゲタル死者或ハ家屋ノ流失、港灣其他壞
レタ所ヲ救濟スルト云フコトハ固ヨリ政
府ニ於テモ必ズ御考ノコトヽ思フ、死ンダ
人ハ固ヨリ蘇ラセル譯ニハ參リマセヌケレ
ドモ、物質的ノコトハ是非是ハ復舊或ハ
ヨリ以上ニ更生スルヤウニ、御願シタイノ
デゴザイマス、斯ク考ヘテ見マスレバ、政
府ニ於カレテモ、必ズ救濟ノ方法ヲ講ジテ
居ラレルト思フノデアリマスガ、幸ニ吾々
立法者トシテ考ヘレバ、議會ハ今開會中デ
アリマス、議會開會中デナケレバ、或ハ豫
備金トカ、或ハ色々ソレ〓〓政府ニ於テモ
御考慮アルト思ヒマスケレドモ、如何ニモ
會期モモウ十日ニ迫ッテ居リマスケレドモ、
地震、海嘯、斯ウ云フ場合ニハ又應急ノ策、
殊ニ今立法府ガ開カレテ居ル場合デアリマ
スルカラ、政府ノ見ル所ヲ議會ニモ御諮ヒ
ニナッテ、サウシテ是等災害ノ人民ヲ救フコ
トニ爲シテ頂戴シタイノデアリマス、要ス
ルニ私ナドノ希望ハ此場合是非追加豫算
ヲ御出シ下サレテ、是等ノ困ッテ居ル人々ヲ
救フヤウニ御願シタイ、別ニ私ハ理窟張ッテ
申シマセヌケレドモ、代議政治ノ御代デア
リマスカラ、出來ルナラバ開會中ニ人情味
ノアル、意義アル立憲的態度ヲ以テ、是非
此救濟ヲ爲シ下サレンコトヲ、地方ノ爲ニ
モ立法府ノ一員トシテモ御願スル次第デ
アリマス、是非追加豫算ヲ此議會ニ御提出
下サレンコトヲ望ミ、此邊ニ付テ政府ノ御
意嚮ノアル所、御意見ノアル所ヲ御伺致シ
タイ次第デゴザイマス(拍手)
〔國務大臣高橋是〓君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02619330314&spkNum=6
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007・高橋是清
○國務大臣(高橋是潘君) 只今菅原君ヨリ
御尋ノ事ニ付テ御答ヲ致シマス、此點ニ付
キマシテハ、主トシテ內務、農林兩省ニ於
テ、實際ノ取調ヲ取急イデ居ル次第デアリ
マく、此取調ガ結了致シマシタナラバ、早
速其手續ヲ執ル積リデアリマスカラ、此段
御答致シテ置キマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02619330314&spkNum=7
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008・秋田清
○議長(秋田〓君) 日程第二、右議案ノ審
査ヲ付託スヘキ委員ノ選擧ヲ議題ト致シマ
ス
第二右議案ノ審査ヲ付託スヘキ委員
ノ選擧発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02619330314&spkNum=8
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009・上田孝吉
○上田孝吉君 本案ハ議長指名十八名ノ委
員ニ付託セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02619330314&spkNum=9
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010・秋田清
○議長(秋田〓君) 上田君ノ動議ニ御異議
アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02619330314&spkNum=10
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011・秋田清
○議長(秋田清君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ-日程第
三及第四ハ、同一委員ニ付託シタル議案ナ
ルニ依リ、一括議題ト爲スニ御異議アリマ
セヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02619330314&spkNum=11
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012・秋田清
○議長(秋田〓君) 御異議ナシト認メマ
ス、日程第三、日本製鐵株式會社法案、日
程第四、製鐵業奬勵法中改正法律案、右兩
案ヲ一括シテ第一讀會ノ續ヲ開キマス、委
員ノ報告ヲ求メマス-委員長若宮貞夫君
第三日本製鐵株式會社法案(政府提
비第一讀會ノ續(委員長報〓)
第四製鐵業奬勵法中改正法律案(政
府提出)第一讀會ノ續(委員長報〓)
報〓書
一日本製鐵株式會社法案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和八年三月十一日
委員長若宮貞夫
衆議院議長秋田〓殿
附帶決議
一本合同ノ目的ヲ達成シ得ルヤ否ヤハ
主トシテ出資財產ノ評價如何ニ依ル故
ニ政府ハ本會社ニ參加スヘキ各製鐵事
業者ノ出資財產ニ付特ニ其ノ撰擇及評
價ヲ嚴正ニスヘシ
二製鐵所ト八幡市其ノ他直接關係市町
村トノ特殊ノ沿革及將來ノ緊密ナル關
係ニ鑑ミ政府ハ是等市町村ニ對スル措
置ニ付遺憾ナキヲ期スヘシ
報〓書
一製鐵業奬勵法中改正法律案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報告候也
昭和八年三月十一日
委員長若宮貞夫
衆議院議長秋田〓殿
〔若宮貞夫君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02619330314&spkNum=12
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013・若宮貞夫
○若宮貞夫君 特別委員會ノ經過竝ニ結果
ヲ報告申上ゲマス、此委員會ハ連續九囘開
會セラレマシテ、委員諸君ハ極メテ熱心ニ
審議ヲセラレテ、多クノ質疑應答ガ重ネラ
レタノデアリマスガ、玆ニ其中自ラ審査ノ
中心トナリマシテ、多クノ問答ガ重ネラレ
タ數點ニ付テ、〓要ヲ報告申上ゲタイト思
フノデアリマス
其第一ハ、官營ノ製鐵所ハ、我國ノ製鐵工
場中設備ガ最モ整ヒ、成績モ最モ良好デア
ル、之ニ反シテ民間ノ工場ハ官業ニ比較
シテ設備モ劣リ、又成績モ不良デアル然
ルニ今俄ニ之ヲ合同シテ民營ニ移サントス
ル其理由ハ、何レニ在リヤト云フ問題デア
リマスルガ、此事ハ申ス迄モナク本案ノ根
本義トナルモノデアリマスルガ故ニ、自然
此點ニ質問ノ多クガ集中セラレタト云フコ
トハ、洵ニ故アル次第デアリマシテ、今其
質問ノ要點ヲ覺類ヲ綜合シテ申上ゲテ見マ
スルト云フト大體八項日ニ分レルヤウニ
思ハレルノデアリマス、卽チ其一ツハ成
績ガ良好デアル所ノ官業ヲ出資シテ、之ヲ
民間ノ事業ト合同スル、其結果ハ民間ノ不
良會社ヲ救濟スルト云フコトノ弊ニ陷ル虞
ナキヤ否ヤ、其二ハ官民ノ設備ヲ如何ニ
選擇ヲスルカ、又其評價ハドウ云フ風ニス
ルノデアルカ、嚴正ナル評價ガ果シテ爲シ
遂ゲ得ラレルヤ否ヤト云フコト其三ハ
合同ノ結果果シテ生產費ヲ低下スルコトガ
出來ルカドウカ、其四ハ民間ノ會社ヲド
ノ範圍ニマデ合同ヲセシムル計畫デアルカ、
其計畫ハ果シテ可能性ヲ帶ブルヤ否ヤ、其
五ハ滿洲ニ於ケル製鐵業ヲ併セテ合同セ
シメナケレバ、完全ナル計畫ト申スコトガ
出來ナイ、日滿間ニ於ケル所ノ斯業ノ統制
ハ如何ニシテ之ヲ爲シテ行ク積リデアル
カドウカ、其六ハ製鐵業ニ對シテ只今賦
課サレテ居ル所ノ保護關稅、此保護關稅ハ
合同ト共ニ之ヲ輕減撤廢スルノ必要アリト
認ムルガ、政府ノ所見ハドウデアルカ、其
七ハ、技術ノ點カラ見テ、又ハ原鑛石若ク
ハ石炭ヲ取得スルト云フ上カラ見テ、民間
ニ移スト云フコトハ、何等カノ支障ヲ生ゼ
ザルヤ否ヤ、其八ハ、國防上ノ見地カラ見
テ、民營ニ移スト云フコトガ、何等カノ支
障ヲ生ゼザルヤ否ヤ、斯ウ云フ大體八項目
ニ分類スルコトガ出來ルノデアリマシテ、
是等ニ對スル政府ノ答辯ヲ要約シテ申上ゲ
テ見マスルト云フト、先ヅ我國ニ於ケル重要
ナル基礎均工業デアル製鐵業ヲ、早ク確立
シナケレバナラヌト云フコトガ、目下ノ急
務デアルコトハ勿論デアル、所ガ諸外國ニ於
テハ大規模ノ組織、大規模ノ設備ヲ以テ相當
ノ統制ガ行ハレテ居ル、之ニ反シテ我國ニ於
テハ官業ト民業ト分立ヲシテ居リ、又民業ト
民業ト對立ヲシテ居リ、動トモスレバ互ノ間
ガ競爭ニ陷ラントスル、斯ル現狀ヲ以テシテハ、
到底外國ノ競爭ニ對抗スルコトハ不可能デ
アル、況ヤ海外ニ進出スルト云フコトハ
勿論不可能ト申サナケレバナラヌノデアル、
此目的ヲ達スル爲ニハ是非トモ官民ノ
大合同ヲ行ァテ、設備ノ重複投資ヲ整理シ、
事業ヲ合理化シテ、生產費ヲ低下セシムル
必要ガ目前ニ迫"テ居ルノデアル、偖テ然ラ
バ其合同ノ方式ハドウシタラバ宜シイカ
ト云フコトヲ案ジテ見マスルニ、大體三ツ
ノ方式ガ考ヘ得ラレル、其一ツハ民間ノミ
ヲ合同セシムルト云フコト、其二ハ民業ヲ
買收シテ官業ニ合同スルト云フコト、其三
ハ本案ノ如クニ官業ヲ出資ニ充テ、之ヲ民
營ニ移スト云フ、大體此三ツノ方式ガ案出
セラレ得ルノデアルガ、其第一ノ民業ノミ
ヲ合同セシムルト云フコトハ、種々ナル事情
ニ制セラレテ、從來屢、之ヲ試ミテ悉ク失
敗ニ終ッテ居ル、此事績ニ鑑ミテ不可能デア
ル、然ラバ第二ノ民業ヲ買收シテ官業ニ合
同ヲスルコトハ如何カト云フニ、今日ノ財
政ノ現狀ニ鑑ミルト云フト是亦不能ト申
サナケレバナラヌ、ソコデ本案ノ如クニ官
業ヲ出資ニ充テヽ、此出資ヲ中心トシテ、
民間ノ設備ヲ合同セシメヨウトスル、此方
法ヲ採ルノ外ニ途ハナイノデアル、而シテ
合同ノ目的ハ言フマデモナク、整理ヲ圖リ
統制ヲ圖リ、合理化ヲ圖ルト云フコトデ
アルガ故ニ、官業モ民業モ共ニ同ジ標準ニ
依ッテ極メテ嚴重ナル評價ヲ爲シテ官民
ノ設備ノ間ニ適當ナル比率ヲ保タシメ、資
本額一ヲ整理收縮センコトヲ期スルモノデ
アッテ、極メテ嚴正ナル評價ヲ行ハシムルト
云フコトノ爲ニハ、特ニ評價審査委員會ヲ
構成シテ、其審査ヲ經セシムルモノデアル
ガ故ニ、決シテ一部ノ人ガ憂フルガ如キ、
民間救濟ノ弊ニ陷ル虞ガナイト確信ヲスル、
斯樣ニ整理ヲ遂ゲテ參レバ、生產費ハ可ナ
リ之ヲ低下スルコトガ出來ルノデアル、合
同ノ目的トシテ居ル所ノ民間ノ會社ハ、年
產額三万五千瓲以上ノ設備ヲ有シテ居ル所
ノ十一社ヲ目標トシテ居ルノデアルガ、
是ハ種々ナル事情ノ下ニ、一時ニ十一社ヲ
合同セシムルコトハ困難デアルガ故ニ、先
以テ銑鐵製造ノ五會社ヲ合同セシメテ、其
他ノモノハ順次合同ニ導イテ、終ニ十一社
全部ニ及バントスルモノデアッテ、此計畫ハ
決シテ不能デアルトハ思ッテ居ラナイ、滿洲
ノ製鐵業ハ現在ノ實情ニ照シテ見ルト、直
チニ此合同ニ入レルト云フコトハ困難デア
ル、ソレ故ニ滿洲ハ滿洲方面ニ於テ合同セ
シメテ、日滿間ニ於テハ特殊ノ連繫機關ヲ
設ケテ、互ノ間ノ聯絡統制ヲ圖ル積リデア
ルノダ、關稅ニ付テハ事業ノ基礎ガ確立
スルニ伴ウテ、漸次低減撤廢ニ及ブ精神デ
アルケレドモ、今直チニ之ヲ實現スルコト
ガ出來ナイ情勢ニ在ルカラシテ、此度ハ約
百万圓ノ奬勵金ヲ廢止スルト云フコトニ止
メテ關稅ハ暫ク其儘ニシテ置ク積リデア
ル、技術ニ付テハ官業ヲ民營ニ移スト雖
モ、是ガ爲ニ技術ヲ低下スルト云フ虞ハ絕
對ニナイト信ズル、又原鑛石及石炭ノ取得
ト云フコトニ付テモ、何等支障ノナイモノ
ト信ジテ居ル、斯樣ニ答辯セラレテ居ルノ
デアリマス、尙ホ又國防ノ問題ニ付キ
マシテハ陸軍竝ニ海軍兩大臣ガ出席
セラレテ、國防上必要デアル所ノ條件
ヲ附シテアルカラシテ、其方面ニ於テハ何
等差支ナイト認ムル旨ノ答辯ガアッタノデ
アリマス
此場合特ニ一ツ附加ヘテ置カナケレバナ
ラヌト思ヒマスルノハ、評價審査委員會ノ
構成ニ關スル一事デアリマスガ、政府ハ此
評價審査委員會ハ官吏及學識經驗アル者
ヲ以テ組織スルト云フコトヲ申述ベテ居ツ
タノデアリマス、此點ニ關シテ政友會ノ內
田信也君ヨリ特ニ質問セラレマシテ、評價
ト云フコトガ此問題ノ中心デアルト云フコ
ト、竝ニ數十年ニ亙リ多額ノ國帑ヲ投ジタ
所ノ此官業ヲ、民營ニ移スト云フコトニ付
テ極メテ重要性ヲ帶ビルト云フコトニ鑑
ミテ當然評價委員會ノ中ニハ、貴衆兩院
議員ヲ參加セシムベキモノト信ズルガ、政
府ノ所見ハ如何デアルカト云フ質問ヲセラ
レタノニ對シテ、政府ハ全然同感デアル、
其通リ取計フ積リデアルト言明セラレタコ
トデアリマス、第二ノ點ハ、官營ノ製鐵所
及其附屬炭坑等ニ於ケル從業員ノ待遇、及
福利施設ヲ低下スルノ虞ナキヤ否ヤト云フ
問題デアリマスルガ官營八幡製鐵所ニ從
事致シテ居ル所ノ多數ノ從業員、此多數ノ
從業員ニ、官業ヲ民業ニ移スト云フコトガ
傳ハルト、非常ナ衝動ヲ與ヘタコトデアリ
マスカラシテ、自然此問題ニ付テ相當多ク
ノ質問ガ集中サレタト云フコトハ、又洵ニ
已ムヲ得ヌ次第ト考へルノデアリマス、此
點ニ付テ政府ハ、各種各階級ノ從業員ニ對
スル待遇竝福利ニ關スル諸般ノ施設ハ、現
在ヨリモ毫モ低下スルコトナキヤウ、新會
社ヘ十分ノ引繼ヲ爲シ、且ツ監督權ヲ行使
シテ萬遺憾ナカラシムル積リデアルト言
明ヲ致シテ居ルノデアリマス、第三ノ點ハ
官民ノ工場、炭坑等ノ在ル所ノ市町村、其
市町村トノ關係竝ニ合同會社ニ對スル地方
稅ノ賦課ニ關スル問題デアリマスルガ、是亦
所在市町村ニ對シテハ歲入ノ上ニ於テ、
又情誼ノ上ニ於テ、頗ル密接ナ關係ノアル
點デアリマスルカラ、玆ニ相當質問ガ集中
セラレタノモ、亦洵ニ故アリト思フノデア
リマス、其質問ノ要點ヲ揭ゲテ見マスト云
フト、一ツニハ、官營ノ製鐵所及附屬炭坑
地元市町村ニ對シ、從來製鐵所ヨリ助成金
ヲ支給シテ居ルガ、是ハ將來ドウナルノデ
アルカ、又保護ノ趣旨デ、市町村ハ製鐵業
ニ對スル營業收益稅、所得稅等ノ附加稅ヲ
徵收シ得ザル規定ト相成ッテ居ルガ、合同後
ニ於テハ相當利益ヲ生ズルト云フノデアル
カラシテ、此事ニ鑑ミテ地方稅ヲ徵收セシ
メテモ宜イト思フガ、政府ノ考ハドウカ、第
三ノ點ハ財產取得稅ヲ賦課シ得ザル規定
ト相成ッテ居ルガ、是ハ地元ノ收入ニ相當影
響ノアル問題デアルガ、政府ハ是等ニ付テ
何等カ考慮スル所ナキヤ、此三點ニ歸著ス
ルノデアリマスルガ、此問題ニ對スル政府
ノ答辯ハ製鐵業保護ノ趣旨ニ基ク課稅減
免ノコトハ是ハ從來通リニ繼續スル積リ
デアル、併ナガラ製鐵所竝民間ノ工場カラ、
從來市町村ニ支拂ヒ來ヲタ所ノ助成金或ハ
寄附金等ハ從來通リ必ズ之ヲ交付セシム
ル積リデアル、又附加稅ノ徵收ニ付テモ、
現ニ室蘭市ノ如クニ、附加稅ノ徵收ヲ許可
シテアルモノニ對シテハ、引續イテ是ガ賦
課ヲ許可スル積リデアルト云フコトヲ言明
セラレテ居ルノデアリマス、其他以上申述
ベタ重要ナル諸點ニ關聯派生致シテ、或ハ
生產費ノ内外ノ比較ニ付テ、或ハ工場設備
ノ適否ニ付テ、或ハ原鑛生產地竝ニ取得ノ
數量ニ付テ、或ハ原鑛ノ分析的貧富ノ別、
或ハ化學的特徵等ニ付テ、或ハ原鑛ノ貯藏
量ニ付テ、或ハ副產物ニ付テ、等々、極メテ
有益ニシテ參考ニ値スル所ノ質疑應答ガ、
重ネラレタノデアリマスガ、此際逐一報告
申上ゲ兼ネマスルガ故ニ、ソレ等ハ速記錄
ニ就テ御覽置キヲ願ヒタイノデアリマス
討論ノ場合ニ於キマシテ、政友會鈴木英
雄君カラシテ、二項目ノ附帶決議ヲ附シテ
贊成スル旨ヲ陳述セラレマシタ、其二項目
ノ附帶決議ト云フモノハ、玆ニ之ヲ朗讀致
シマス
附帶決議
一本合同ノ目的ヲ達成シ得ルヤ否ヤハ
主トシテ出資財產ノ評價如何ニ依ル故
ニ政府ハ本會社ニ參加スヘキ各製鐵事
業者ノ出資財產ニ付特ニ其ノ選擇及評
價ヲ嚴正ニスヘシ
二製鐵所ト八幡市其ノ他直接關係市町
村トノ特殊ノ沿革及將來ノ緊密ナル關
係ニ鑑ミ政府ハ是等市町村ニ對スル措
置ニ付遺憾ナキヲ期スヘシ
此二ツノ附帶決議ヲ附シテ贊成スル旨ヲ、
鈴木君カラ陳述ヲセラレタノデアリマス
次デ民政黨ノ松本忠雄君カラシテ、五項
目ノ希望條項ヲ附シテ原案ニ贊成シ、併セ
テ只今朗讀致シタ鈴木君ノ附帶決議ニ贊成
ノ旨ヲ陳述セラレタノデアリマス、而シテ
此松本君ノ希望條項ハ、本會議ニ於テ委員
長ヨリ之ヲ報告セヨトノ要求デアリマシタ
ガ故ニ、玆ニ希望條項ヲ朗讀致シマス
希望條項
本計畫ノ實行ニ當リ合併豫定會社ノ
全部併合ヲ實現スルコトヲ要ス
二、本會社ノ創立ニ當リ設備改廢ノ計畫
ヲ樹テ合理化ノ徹底ト共ニ極力生產費
ノ低減ヲ期スベシ
三、政府ハ本會社ノ成立ニ伴ヒ速ニ鐵鋼
關稅ノ減廢ヲ斷行スベシ
四、滿洲國ニ於ケル製鐵業トノ統制ニ關
シ更ニ適當ノ方策ヲ講ズベシ
五、地方公共團體財政ノ實狀ニ鑑ミ製鐵
業奬勵法ヲ改正シ地方稅徵收ノ途ヲ開
クベシ
次ニ國民同盟ノ風見章君カラシテ、警告ヲ附
シテ原案ニ贊成スル旨、竝ニ政友會ノ鈴木英雄
君提出ノ附帶決議ニ贊成ノ旨ノ陳情ガアッ
テ討論ヲ終ッタノデアリマス、而シテ採
決ニ付キマシテハ、政友會鈴木英雄君提出
ノ決議ハ、是ハ單ナル希望デハアリマセヌ
デ、本案ニ附帶シタ所ノ、權威アラシムル
趣旨ノ決議デアリマスルガ故ニ、本案ノ採
決ト特ニ引離シテ、此點ニ付テモ採決ヲ行ツ
タノデアリマス、而シテ本案ノ採決ノ結果
ハ、全會一致ヲ以テ原案ヲ可決セラレ、又政
友會鈴木英雄君提出、附帶決議二項目ニ付
テ特ニ決議ヲ行ヒマシタ、是亦全會一致ヲ
以テ可決セラレタノデアリマス、以上經過
竝ニ結果ヲ御報告申上ゲマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02619330314&spkNum=13
-
014・秋田清
○議長(秋田〓君) 是ヨリ討論ニ入リマ
ス、通〓順ニ依ッテ發言ヲ許シマス-小
池四郞君
〔小池四郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02619330314&spkNum=14
-
015・小池四郎
○小池四郞君 本案ニ反對ヲ表明致シマス
產業ノ發展カ國家全體ノ利益ニ貢獻スルヤ
否ヤト云フ問題ハ其產業ノ經營ガ國家全
體ノ利益ヲ目標トシテ經營サレテ居ルカド
ウカ、或ハ又此產業ノ經營ガ、單ニ主トシ
テ營利追求慾ヲ唯一ノ原動力トシテ經營サ
レテ居ルカドウカト云フ、此問題ニ依ッテ
決定サレルモノト信ジテ居リマス、政府ガ
苟モ日本ノ產業、而モ製鐵ト云フヤウナ重
要產業ノ動向ニ關與シヨウト致シマスルナ
ラバ尠クモ以上ノ見解ノ上ニ立脚シテ事
ヲ爲スベキダト是亦私ハ信ジテ居リマス、
國家全體的ノ利益ヲ目標トシテ產業ヲ經
營スルト云フ其形態ハ、ソレハ色々アルト
私共考ヘテ居リマス、例ヘバ國有、國營ノ
經營形態、是亦適當ナル一ツノ形態デアリ
マセウ、或ハ國營ニアラズトモ、民營デアッ
テモ其間ニ國家ノ强力ナル管理權ト云
フモノガ行使サレマスナラバ、是モ亦一ツ
ノ適切ナル形態ナリト私共ハ考ヘマス、要
スルニ現段階ニ於キマシテ實現ガ可能デア
リ、而モ今言ッタヤウナ國家的利益ヲ求メ
得ラレルト云フ所ノ目的ガ完全ニ達シ得ラ
レヽバ、以テ足レリト私共ハ考ヘテ居リマ
ス、委員會ニ於キマシテ、私共幾多ノ質疑
答辯ヲ承リマシテ、吾々ハ斯ウ云フコトハ
知リ得タノデアリマス、政府ガ今囘本案ヲ
提出セラレマシタ所ノ意圖ハ氣持ハ
其氣持ガ實現サレルカドウカト云フコトハ
自ラ別ノ問題ト致シマシテ、氣持ダケハ
少クモ此法案ガ提出サレヨウト云フ其以前
ニ一般國民ガ考ヘテ居リマシタモノト幾
分違ッテ、或ハ又前囘ニ出シマシタ所ノ合同
案、二三年前ニ噂ニ上リマシタ合同案ノ意圖
トハ相當ニ違ヲテ、資本ノ合同ニ依ヶテ、資本主
義的ナ獨占形態ヲ形成セントスルモノデハ
ナイト云フ意圖ダケハ、私共認メ得ルノデ
アリマス卽チ民間會社ノ水膨レ資本ヲ、相
當ニ之ヲ切下ゲテ、或ハ二分ノ一或ハ三
分ノ一ニマデ切下ゲテ生產費ヲ引下ゲ
鐵鋼ノ値段ヲ相當ニ是モ下ゲヨウトシ、或
ハ配當ヲ相當ニ是モ制限ヲ致シマシテ、或
ハ色々ノ設備ヲ整ヘ增證計畫ヲ可能ナラ
ンメ、或ハ國防上ノ要求ニ付テ相當ノ準備
ヲ整ヘルコトヲヤラウト致シ、或ハ從業員
ノ待遇條件、或ハ勞働條件ニ付テハ相當
是モ考慮スルト云フヤウナ意思ヲ、特別委
員會ノ質疑應答ノ結果、私ハ認メ得ラレタ
ノデアリマス私共ハソレニ關シマスル限
リ、此政府ノ意圖ハ極メテ正シイト信ジテ
居リマス、併ナガラソレハ飽迄今日偶、商
工大臣ノ任ニ在ラレル中島商工大臣ノ、善
良ナル意圖ニ止マルノデアリマス、私ハ此
點ガ大問題ダト思ヒマス、若シ現商工大臣
ノ斯ノ如キ國家的意圖ガ、約束通リ將來ニ
亙ッテ-此日本製鐵株式會社ト云フモノ
ハ永遠ニ存續スルモノト信ジマスガ、是ガ
將來ニ亙ッテ、今ノヤウナ氣持ガ實現サレマ
スル爲ニハ、單ニ現在ニアリマスル所ノ中
島商工大臣ノ國家的意義ト善良性ダケデ
ハ私ハ不足ナリト信ジテ居リマス、若シ
此意圖ガ永遠ニ繼承サレル爲ニハ此計畫
者ノ意圖ガ其儘何モノニモ阻マレズシテ、
伸ビヤカニ是ガ將來繼承、承認サレテ參リ
マス爲ニハ、其計畫實行ノ任ニ當リマス所
ノ人ガ、永遠ニ今日ノ權力ノ地位ヲ確保シ
テ居ラナケレバナラヌト私ハ信ジマス、是
ガ條件デアリマス、併ナガラ事實ヲ考ヘテ
見マスル時ニ、現中島商工大臣ハ、勿論永
遠ニ今日ノ權力ヲ確保スルモノデハアリマ
セヌ、恐ラク政變一度來ルナラバ、商相ハ
又今日ノ地位ヲ去ラナケレバナラナイ立場
ニアルノデアリマス、而モ商相ハ居テモ
居ナクテモ構ハナイト云フナラバ議會ガ
今日特別委員會ニ於テ、アレダケ熱心ニ論
議サレマシタ特別委員會ノ意思ト云フモノ
ガ、是ガ將來トモ日本製鐵株式會社ノ事業
經營ニ對スル方計ヲ拘束スルモノナリト
私共ハ考ヘルコトモ出來ナイノデアリマス、
勿論本會社成立ノ當時ニ於キマシテハ、過
般ノ特別委員會ノ意思ト云フモノハ十分
ニ尊重サレルト信ジマス、ケレドモソレハ
創立ニ關スル程度ニ止リマシテ、將來此會
社ガ事業ノ經營ヲ續ケテ行キマスル際ニ、議
會ガ其時々ニ適宜ニ時機ヲ失ハズシテ、其
會社ノ經營方針ニ關與致スト云フコトハ
不可能ダト私ハ信ジマス、然ラバ成立ノ時
ハ兎ニ角トシテ、將來ニ於テ斯ノ如キ不安
ガアルト致シマスルナラバ、若シ將來ニ於
キマシテ、現中島商工大臣ト反對ノ意見ヲ
持ッテ居ル人ガ、商工大臣ノ椅子ニ坐ッテシ
マッタト致シマスルナラバ、今日ノ中島商
相ノ意圖ト云フモノハ、唯畫餅ニ歸スルダ
ケダト私ハ信ズルノデアリマス、其點ニ對
シテ私共ハ甚シイ𣏌憂ヲ本案ニ對シテ持ツ
者デアリマス、若シ商相ノ意思ニ反シマシ
テ、例ヘバ將來ノ會社ノ首腦部ガ本案
ガ成立致シマスルト、將來會社ノ事業方針
ト云フモノハ、主トシテ會社ノ重役、首腦
部ニ一任サレル形ニナルノデアリマス、其
後參加シテ參リマス所ノ--製鐵會社ノ評
價等ハソレハ重役ニ一任サレルノデ、成
立當時ダケハ資產評價委員會ガ評價致シマ
スルガ、其後一段落付キマシタ後ノ新參加
會社ノ評價ハ、是ハ重役ニ一任サレルコト
ニナリマス、此重役ガ其參加サレマシタ所
ノ會社ノ評價ヲ、極メテ不當ニ、緩慢ニシ
テ見タリ、高率配當ヲ定メテ賣値ヲ引上ゲ
テ見タリ、其他設備ノ改善ヲ怠リ、國防上
ノ用意ヲ缺キ、勞働條件ヲ低下シテ、搾取
ヲ是レ事トスルト云フヤウナ場合ニ立至リ
マシテ、而モ其時ノ監督官廳ノ大臣ハ不
幸ニシテ現商相ト相反シテ、其會社首腦部
ト相通謀スルガ如キコトガ偶、アリマシタ
ナラバ、今日商相ガ考ヘテ居ラレマスル事
或ハ特別委員會ノ要求致シマシタ所ノ重大
意圖ハ全ク打碎カレテシマフ以外ニ私ハ
ナイト、斯ウ考ヘルノデアリマス、ソレ故
ニ私共ハ特別委員會ニ於テモ特ニ發言ヲ求
メマシテ、將來此會社ガ、今日ノ善良ナル
國家的意圖ヲ繼承致シマスル爲ノ條件ト致
シマシテ、將來トモ國民ノ總テノ意思ヲ出
來ルダケ完全ニ反映セシメテ、其意圖ノ下
ニ此會社ガ運轉經營シテ行ケマスル爲ニ、
今日ヨリ大方針ヲ決定スル所ノ、製鐵國家
管理委員會ノ設置ヲ私共ハ要求シタノデア
リマス、併ナガラ商工大臣ハ其必要ナシト
シテ之ヲ拒絕致シマシタ、私共ハ斯ウ云フ
强力ナル國家管理委員會ヲ作ヲテ、其國家管
理委員會ノ中ニハ、當該所管ノ大臣、或ハ當
該會社ノ首腦部、或ハ需要者側、或ハ勞働者
側或ハ軍部關係者、一切ノ者ヲ其處ニ代
表ヲ入レマシテ、ソレガ嚴正ナル會社ノ根
本方針ヲ決定スルト云フ、管理委員會ノ設
置ヲ私共ハ要求スルノデアリマス、ソレハ一
切ノ重要ナル會社ノ事項、例ヘバ業務擔當
首腦者ノ選任ハ其管理委員會デスル、事業ノ
創設及事業ノ方針、國防上ノ要求、利益金
ノ處分、社債ノ取極、或ハ關稅其他競爭者ニ
對スル處置、原料購入ニ關スル根本方針、
共後參加致シマスル所ノ會社ノ資產ノ評價、
或ハ勞働條件ヲ如何ニスルカト云フヤウ
ナ、根本問題ヲ決メサセル必要ガアルト私
ハ信ズル、例ヘテ見マスルト、斯ノ如キ嚴
正ナル委員會ガ存在致シマセヌナラバ先
程委員長ノ報〓ガゴザイマシタ時ニ問題ニ
ナリマシタガ、將來必要ナル石炭ヲ三井、
三菱ノ大手筋カラ之ヲ購入シナケレバナリ
マセヌガ、出來上リマス所ノ會社ノ首惱部
ニハ商相ノ言明ニ依レバ三井三菱ノ株主
モ、是亦重役トシテ參加ヲスルト聞イテ居
リマス、此三井三菱ノ重役ヲ會社内ニ有チ
ナガラ、三井三菱カラ安價ナル所ノ石炭
ヲ、果シテ將來モ買ヒ得ルヤ否ヤ、是ハ大
キナ問題ダト私ハ存ジマス、然ルニ輪西、
兼二浦、釜石等ノ鑛石ヲ有ッテ居リマス所
ノ鑛山ハ、今度ハ買收ヲ致サヌト云フコト
ニ決定致シタノデアリマスガ、此鑛山ヲ買
收致サズシテハ此三ツノ民間會社ノ價値
ト云フモノハ極メテ薄弱デアリマス、而モ
今囘購入セザル、此鑛山カラ出マス所ノ原
鑛石ヲ、會社ガ契約ヲシテ之ヲ購入スルト
云フコトヲ聞イテ居リマスガ、其價格ヲ如
何ニスルカト云フ間題ハ會社ノ事業ガ良
クナルカ、ナラナイカト云フコトニ取ッテ
重大ナル「フアクター」ナリト私ハ信ズル
或ハ今迄ノ狀態デ致シマスルナラバ、銑鋼
一貫作業ト云フモノハ北海道、朝鮮或ハ
釜石ノ如キ、邊鄙ナ處ニ一貫作業ヲ行ッテ
居リマスルガ、將來一貫作業ハ此製鐵業
ガ科學工業ノ母ナリト云フ立場カラ、果シ
テ斯ノ如キ邊鄙ナル處ニ一貫作業ヲ發展セ
シメテ可ナリヤ、或ハ京濱、或ハ阪神ノ如
キ、科學工業ノ發展地ニ於テ、此一貫作業
ヲ發展セシムルコトガ、國策上可ナリヤト
云フヤウナ問題ヲ決定スルノハ誰ガ一體
スル、是等ノ重大ナ問題ヲ、總テ將來ノ會
社ノ重役ニ一任スルト云フコトハ本法案
提出ノ意圖デアル、日本ノ製鐵業ヲ國家的
利益ノ下ニ誘導セントスル所ノ意圖ニ相
反スル結果ヲ齎スモノナリト、私共ハ信ズ
ルノデアリマス、斯ウ云フ意味ニ於キマシ
テ、私共ハ計會社ノ成立ノ意圖ヲ是トハ致
シマスルガ、此意圖ガ將來繼承實現セラル
ルヤヲ、甚シク疑ハザルヲ得ナイト信ズル
ノデアリマス、此點ニ付キマシテ、提案者
タル所ノ政府ハ、斯ノ如キ懸念アレバコ
ツ、政府ハ許可權、命令權、監督權ヲ留保
シテアル、之ニ依フテ斯ノ如キ懸念ハ解消
セラレルデアラウト云フ答辯ガアリマシ
タ、併ナガラ私共ハ監督權、命令權デ以
テ、一切ノ民間ノ事業ガ國家的利益ニ背反
セズシテ運轉セラレルト云フノナラバ、何
ノ必要アッテ第一囘ニ資產評價ノ爲ニ評價
委員會ト云フ委員會ヲ作ル必要ガアリヤ
ト、反問セザルヲ得ナイノデアリマス、大
臣ガ監督權、命令權ヲ有チマスルナラバ
資產評價委員會ノ必要ハナイ、資產評價ガ
間違ヲタナラバ、大臣ノ監督權デ之ニ取消サ
シメレバ宜イノデアリマス、然ルニ最初ニ
於キマシテ、嚴正ナル委員ノ選任ヲ致シマ
シテ、評價委員會ヲ作ルト云フコトハ、一ニ
其評價ガ一般ノ信賴ヲ得ルニ足ルコトヲ示
シ、權力ニ依ッテ邪マナルコトナカラシメル
コトヲ一般ニ安心セシメンガ爲メノ手段
ナリト私ハ信ズル此意味ト同ジヤウニ
單ニ評價委員會ニ非ズシテ、未來永遠會社
ノ重要ナル方針ヲ決定スベキ、强力ナル國
家管理委員會ノ設立ヲ私ハ必要ト致シマ
ス、特ニ私ガ斯ノ如キ國家管理ノ形態ヲ取
ラナケレバナラナイト申シマスノハ本法
案ノ如キハ我國ニ於テ初メテ現レタル所ノ
經營形態デアリマス、今マデノ民營ヲ一切
集メマシテ、之ヲ獨占的ナ姿ニシテ、而モ
國家ガ之ニ、其程度ノ差コソアレ、管理ヲ
ショウト云フ形態ハ、之ヲ以テ私ハ嗃矢ト
ナスト信ジマスサレバコソ愼重ナル考慮
ヲ私ハ此際ニ必要ナリトスル、而モ世間ハ
マダ日本ノ產業ノ將來ハ、如何ナル形態
ニナルコトヲ適當ナリヤト云フコトニ付
テ、一般輿論ハ熱シテ居ラナイト私ハ信ズ
ル、是カラノ形態ハ、決シテ今マデノヤウ
ナ自由主義經濟デハイケナイ、國家管理
ノ力ガ加ハラナケレバナラナイト云フコト
ガ、國民一般ノ輿論デアリマスルナラバ、
强テ强力ナル管理委員會ノ必要ハナイカモ
知レナイ、ケレドモ世間ハ未ダ斯ノ如ク熟
シテ居リマセヌ、新シキ此產業ノ形態ヲ逆
二、隙アレバ即潰サウト云フ所ノ力ガ、イ
マ日本製鐵株式會社法案ノ周圍ヲ繞ッテ、力
强ク押寄セテ居ルト云フ姿ヲ私ハ見ル、本
法案ガ提出サレマスルトキニ私ハ聞イタノ
デアリマス、三井三菱ガ此會社ニ合併ヲ
サレナケレバナラナイ、而モ其三井三菱ガ
所有シテ居リマスル會社ノ評價ハ、極メテ
嚴正ニ切下ゲラレルト云フコトヲ聞キマス
ルヤ、同時ニ本法案ヲ流產セシメンガ爲ニ、
陰ニ陽ニ本法案ノ提出ニ反對シタ事實ヲ私
ハ知ッテ居リマス、今日、本法案ガ國家管理
ノ形態ヲ取ルベキコト、ソレガ次第ニ議會
ノ中デ是認サレテ參リマシタノヲ見テ、此
反對勢力ハ今日鳴リヲ鎭メテ居リマスガ、
若モ將來此會社ヲ、此會社ノ重役ト其時々
ノ商工大臣ニ、私共ガ白紙デ之ヲ御委セシテ
シマッタナラバ、斯ノ如キ反對勢力ハ、必ズ本
會社ヲ取卷イテ、此形ノ出來上リ掛ケタ國
家管理ノ形態ノ縒ヲ戾スニ違ヒナイ、斯ウ
私ハ信ズルノデアリマス、而モ本法案ハ商
工大臣ガ提案サレタ、現內閣全部ノ閣僚ガ
一致シテ出サレタカドウカハ私ハ疑ハザル
ヲ得ナイ、日本ノ產業ノ將來ハ、斯ノ如キ
形態ニナラナケレバナラナイト云フ信念ヲ
御有チニナル方ハ、現內閣中果シテ何人ノ大
臣アリヤヲ疑ヒマス、齋藤總理大臣ノ如キ
ハ斯ノ如キ形態ノ產業形態ガ何モノデア
ルカト云フ、其價値ヲサヘ皆目知ラナイノ
デハナイカトサヘ私ハ疑フ、斯ウシタ中ニ
在ッテ、四面一切敵ノ中ニ在ッテ、新シキ形態
ノ產業ガ出發セントシテ居リマス、私ハ此
意味ニ於キマシテ、本法案ハ其意圖是ナリ
ト致シマスルガ、將來ニ向ッテ國家管理ノ實
績ヲ擧ゲ得ラルヽ所ノ保證ノ附イタ、卽チ
强力ナル國家管理委員會ノ組織ナキ所ノ本
案ニハ、殘念ナガラ反對セザルヲ得ナイト
信ズルノデアリマス、以上簡單ナガラ、反
對ノ理由ニ代ヘマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02619330314&spkNum=15
-
016・秋田清
○議長(秋田〓君) 岸田正記君
〔岸田正記君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02619330314&spkNum=16
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017・岸田正記
○岸田正記君 諸君、私ハ只今委員長報告
ノ通リ、本案ニ對シマシテハ二項目ノ附帶
決議ヲ附シマシテ、政府提出ノ原案ニ贊成
スルノ意思ヲ表明スル者デアリマス、申
上ゲルマデモナタ、我國ノ今日ノ製鐵業
ノ現狀ト云フモノハ、甚ダ世界ノソレニ
比べマシテ劣弱ナル地位ニ在ル、卽チ其
生產額ニ付テ考察致シテ見マシテモ、斯
界ノ最高記錄ヲ示シマシタ昭和四年度ノ
統計ニ付テ觀察致シテ見マシテモ、世界ノ
銑鐵總產額九千八百万瓲、鑛材一億二千万
〓之ニ比較致シマシテ、我國ハ僅ニ鐵鋼
ノ產額ハ、其二%ニシカ當ラヲイヤウナ狀
態デアル、之ヲ各國ノ生產額ニ比較シテ見
マシテモ、英國ニ對シテハ五分ノ一、獨逸
ニ對シテハ八分ノ一、亞米利加ニ對シマシ
テハ正ニ二十五六分ノ一ニシカ當ラザリシヤ
ウナ實績ヲ示シテ居ッタノデアリマス、一國
產業、軍備ノ基本的材料デアリマスル此鐵
鋼ト云フモノガ、斯ノ如ク我國ニ於テハ劣
弱ナル所ノ狀態ニアルト云フコトハ、洵
寒心ニ堪ヘヌ次第デアリマスルガ、而モ斯
ノ如キ斯業ノ不振ノ狀態ニアル此根本原因
ハ何處ニアルカ、此點ヲ先ヅ觀察スル必要
ガアルノデアリマス、斯業不振ノ第一ノ原
因ハ言フ迄モナク、我國ノ製鐵業ニ於キ
マシテハ、中小數多ノ企業ガ分立對立致シ
テ居リマシテ、其間何等ノ統制殆ドナキ狀
態ニアル、第二ニハ、斯業ニ對スル投下資
本、殊ニ外部負債ガ甚ダ過大デアリマシテ、
爲ニ今日事業資金ノ堅實性ヲ缺イテ居ル、
第三ニハ、言フ迄モナタ、多年打續キマス
ル所ノ我國ノ經濟界ノ不況、此爲ニ我國ノ
製鐵業ト云フモノハ、自力合理化ノ途ヲ失
ヒマシテ、今日或ハ不完安ナル生產設備ノ
狀態ノ儘ニアル、或ハ其生產能力不足ノ狀
態ノ儘ニアル、此三ツノ點ガ斯業不振ノ根
本原因デアルト、私ハ信ジテ居リマス、故
ニ此重大ナル工業發展ヲ期シマスルニ付キ
マシテハ、是等ノ事業ノ根紙ニ横ハル所ノ禍
根缺陷ヲ一掃スルニ非ザレバ、到底其目
的ヲ達スルコトハ出來ナイノデアリマス、
之ニ付キマシテハ、色々ナ手段方法モ論ゼ
ラレテ居ル、併ナガラ何ト申シマシテモ、
今日ノ我國ノ製鐵業ノ狀態、經濟界ノ實精、
是等カラ制斷致シマシテ、全國ノ中小幾
多ノ製鐵企業ニ對シテ、其自力更生ヲ求メ
ル、是ハ到底不可能ナコトデアリマス、殊
ニ又極端ナル保護關稅ノ政策、或ハ今日ノ
製鐵奬勵法ヲ徹底的ニ擴大施行致シマシタ
所ガ、是デモ到底其目的ヲ達スルコトハ不
可能ナノデアリマス、唯一ツ殘サレテ居リ
マスル問題ハ、中小幾多ノ製鐵業ノ一大合
伺ヲ行フテ、サウシテ之ニ所謂統制經濟ノ妙
諦ヲ發揮シテ、一國一業主義ノ理想ニ邁進
スル、是ヨリ外ニ斯業根本ノ發展策ハナイ
ト私ハ信ジテ居ル次第デアリマス、今囘政
府ノ提案セラレマシタル日本製鐵株式會
社、此法案ハ正ニ斯ノ如ク我國ノ製鐵業ノ
根柢ニ橫ヲテ居ル缺陷ヲ排除シテ、サウシテ
其劃期的ノ發展策ヲ期スル所ノ根本方針ニ
基イテ立案セラレタモノデアリマシテ、以
下數項ニ分チマシテ、私ハ本案ヲ支持スル
所以ノモノヲ說キマシテ、サウシテ本案贊
成ノ趣旨ヲ明ニセントスル次第デアリマ
ス
先ヅ第一ニハ前申上ゲマシタ通リニ、
今日ノ我國ノ製鐵業ノ根柢ニ橫ッテ居ル禍
根缺陷ハ、中小幾多ノ製鐵業ガ互ニ相分立、
對立致シマシテ、其間ニ殆ド統制ガナイ、
此缺陷ヲ排除致ス爲ニハ、日本製鐵株式會
社ノ組織經營ノ方針ニ於キマシテハ、御存
ジノ如クニ八幡製鐵所、此堅實ナ今日基礎
ニアル八幡製鐵所ヲ中心ト致シマシテ、第
一次ニハ民間五社ヲ之ニ合併ヲシ、續イテ
近キ將來ニ於キマシテ、民間十一社ノ製鐵
業者ヲ之ニ合同致シマシテ、而モ其資本金
ハ三億五千万圓、サウシテ殆ド全國ノ生產
界ノ八割ヲ占メルマデノ此製鐵業合同ヲ行
ヒマシテ、之ニ依ッテ所謂統制經濟ノ妙諦
ヲ發揮ショウトシテ居ルノデアリマス言
フマデモナク、我國ノ斯業ノ今日マデノ經過
ヲ見マスルト、御存ジノヤウニ歐洲大戰亂當
時マデハ、我國ニ於キマシテハ、事業ハ甚ダ
振ハナカッタ、所ガ歐洲大戰亂ニ依リマシテ、經
濟界ハ一時非常ナ好景氣ヲ呈シテ來タ、之
ニ乘ジマシテ、雨後ノ筍ノ如クニ製鐵業ガ
起ッテ來テ、大正二年當時ニ於キマシテハ、
僅ニ製鐵業二十一社、資本金二億圓ニ過ギ
ナカッタ事業ハ、歐洲大戰亂當時ニ至リマシ
テ、俄ニ資本金或ハ製鐵會社ノ數ハ數倍致
シマシタケレドモ、戰後經濟界ガ非常ナ疲
弊ニ陷リ、此打撃ヲ受ケマスルヤ、御存ジ
ノ如クニ製鐵業ハ非常ナ經營困難ニ陷フタ、
而モ是等ノ製鐵業ハ、此困難ナル狀態ノ中
ニ互ニ分立致シマシテ、其間僅ニ販賣上ニ
於テノ統制ヲ取ッテ居ルノニ過ギナイ狀態
デ、或ハ原料ノ買入、或ハ生產デアルト
カ、或ハ運嚴デアルトカ、是等ノ點ニ付キ
マシテハ、殆ド何等ノ統制組織ヲ有ッテ居
ラナイヤウナ狀態デアル、斯ク致シマスル
結果ハ、或ハ設備費ノ二重投下トナリ、或ハ
設備ノ過不足ヲ來シ、或ハ徒ラナル御互ノ
競爭ヲ致シマスル結果ガ、自ラ生產費ノ過
重トチッテ來マシテ、今日市價ノ安定ヲ缺
キ、事業ガ衰ヘテ來ルノミナラズ、消費者
一般ニ對シテモ多大ノ迷惑ヲ掛ケテ居ルヤ
ウナ狀態デアリマス、是ガ故ニ此缺陷ヲ排
除スルニアラザレバ、到底斯業更生ノ目的
ヲ達スルコトハ出來ナイ、是等ノ點ニ付キ
マシテハ、歐米ノ先進國ニ於テモ十二分ニ
留意ヲ致シマシテ、御存ジノ如クニ亞米利
加ノ如キハ、旣ニ千九百一年十四億弗ノ資
本ヲ以テ「ユー·エス·スチール·コトポレー
シヨン」此製鐵界ノ大合同ヲ行ッテ居ル、或
ハ又獨逸ノ如キハ千九百二十六年ニ、アノ
鋼材合同會社ヲ作ッテ、八億馬克ノ資本ヲ以
テ斯界ノ合同ヲ行ッテ、益〓其擴充ヲ圖ッテ
居ル、是等ノ實例ニ徵シマシテモ、我國ノ
今日ノ事業ノ根柢ニ横ハッテ居ル缺陷、小
企業ノ分立、不統制、此缺陷ヲ排除シテ眞
ニ劃期的ノ發展ヲ期スル爲ニハ、ドウシテ
モ本案ノ如クニ日本製鐵株式會社ノ創立ニ
依リマシテ、斯業ノ一大合同ヲ行ヒ、系統
的ニ、統一的ニ、大規模ニ事業ヲ經營管理
スル、此方策ニ出ヅルコトガ、斯業更生ノ
第一ノ對策デアルト私ハ信ジテ居ル次第デ
アリマス
續イテ第二ノ缺陷ヲ補ヒマスル本法案
ハ、御存ジノ如クニ、今日日本ノ製鐵業ハ
投下資本ガ甚ダ多イ、殊ニ非常ニ澤山ノ外
部負債ヲ負ッテ居ル、是ガ前申上ゲマシタ
ヤウニ、歐洲大戰亂、其後ノ經濟界ノ打撃
ニ因リマシテ經營困難ニ陷リ、爲ニ此資本
的ノ合理化ヲ圖リ、整理ヲ行フ機會ヲ失ッテ
シマッタ、此爲ニハ、今日睡眠狀態ニアル多
クノ設備ガ殘サレテ居ルノデアル、之ヲ加
奈陀ナドノ實例ニ較ベマシテモ、同ジ生產
能力ヲ有スル會社ニ於キマシテモ、日本ノ
四ニ對シテ加奈陀ハ僅ニ一ノ割合ヲ以テ、
立派ニ同ジ生產量ヲ擧ゲテ居ルヤウナ狀態
デアル、特ニ又外部負債、借入金デアリマ
ストカ、或ハ社債デアルトカ、是等ノモノ
ハ非常ニ多クノ額ニ達シテ居リマシテ、今
日御存ジノヤウニ、合同ノ目標トサレテ居
ル民間十一社ノ如キハ、其合計八千八百二
十餘万圓カラノ負債ヲ有シテ居ル、其固定
財產ノ評價額ニ於キマシテハ、正ニ千四百
四十万圓カラノ過重ノ負債ヲ負ッテ居ル、年
六分ノ金利ト見マシテモ、五百三十万圓カ
ラノ金利ヲ支拂ハナケレバナラヌ、斯ノ如
キ利息ノ負擔或ハ減價償却ニ對スル負擔、
是等ハ悉ク生產費ノ過重トナッテ來、是ガ
今日我國ノ製鐵業ノ經營ノ困難ニ陷ッタ
所ノ、最モ大キナ原因デアリマスガ故
ニ、此點ニ鑑ミマシテ斯業ノ更生ヲ期スル
ニハ、ドウシテモ此負債ヲ整理シ、サウ
シテ投下資本ヲ整理緊縮スル、是ヨリ外ニ
方法ハナイ、日本製鐵株式會社ハ此點ニ
著眼ヲ致シマシテ、先ヅ民間業者及八幡製
鐵所カラ出資致シマスル財產ニ付キマシテ
ハ御存ジノヤウニ稼高式、或ハ複成式、
是等ノ方法ニ依リマシテ嚴肅ニ出資財產ヲ
整理シ、而モ其算定額ニ對シテ三分ノ二、
或ハ五分ノ三、斯ノ如キ緊縮率ヲ掛ケテ資
產ヲ整理致ス、サウシテ之ニ依ッテ各會社
ガ出資スル額ニ對シテ割當テラレル所ノ
株、此受株ニ依ッテ、各會社ハ今日マデノ莫
大ナ負債ヲ整理シテ行ク、斯ウ致シマシテ、
一面ニ於テハ多年ノ我國ノ斯業ノ根柢ニ
橫フテ居ル癌腫トモ言フベキ此負債ノ整理
ヲシ、一面ニ於テハ〓新ナ、サウシテ水膨
レノ取レタ、緊縮サレタ資金ヲ以テ行ッテ
行ク、此堅實ナル基礎ノ上ニ社債或ハ借入
金ヲ民間カラ起シマシテ、サウシテ事業經
營ヲヤッテ行クノデアリマスカラ、斯ノ如ク
ニシテ初テ我國ノ製鐵業ノ資本的基礎ガ華
固ニナリ、斯クシテ初テ今日マデノ我國ノ
製鐵界ノ衰へテ居ル根本原因ヲ、排除スル
コトガ出來ルノデアリマス、是ガ第二ニ私
ガ日本製鐵株式會社法案ニ贊成スル所以デ
アリマス
第三ノ點ハ、御存ジノ如クニ今日マデ多
年打續ク不景氣ノ爲ニ、我國ノ民間製鐵業
ト云フモノハ、自力更生ノ力ガナカッタ、時ニ
不足ノ儘ナル生產能力、不完全ナル儘ノ製
鐵設備、此狀態ノ儘ニ續イテ來テ居ッタ、是
ガ今日ノ缺陷デアル、而モ今日ノ我國ノ鐵鋼ノ
需要ノ狀態ハドウデアルカ、昭和四年ノ最高
記錄ヲ示シタ時ニ考ヘテ見マシテモ、二百
七十万瓲ト一年ノ需要ハ考察シナケレバナ
ラヌ、而モ產業界或ハ軍事、是等ノ今日ノ
實情カラ將來ヲ考察致シマスト云フト、ド
ウシテモ昭和二十二年ニハ五百五十万瓲ノ
需要量アルコトヲ考察シナケレバナラヌ、
然ルニ今日ノ狀態ニ於キマシテハ、我國ノ
斯業ノ生產能力ト云フモノハ、僅ニ九〇%ノ設
備能力シカナイヤウナ狀態デアル、之ヲ思ヒ
マスレバ、此生產能力ノ擴充ト云フコトハ、
最大ノ急務デアル、而モ二百七十万瓲一箇
年ノ生產能力ヲ完備スルニ付テハ、少クト
モ五千三百三十万圓ノ生產設備費ガ要ル、
五百五十万瓲ノ生產能力ノ設備ヲスルニ
ハ二億圓ノ資金ガ要ル、斯ノ如キハ今日
ノ儘ナル民間會社ニ任シテ置イテハ、望ミ
得ベカラザルコトデアリマシテ、殊ニ生產
界ノ非常ナ不完全ナル設備、銑鋼一貫ノ設
備等ニ付テハ、洵ニ海外ニ對シテ恥カシキ
狀態ニアル、是等ノ點ニ於キマシテ生產能
力ノ擴充、或ハ設備ノ改善等ニ付キマシテ
ハ、ドウシテモ斯業ノ一大合同ヲ行ヒ、堅
實ナル資金ヲ以テ之ニ當ル、是ヨリ外ニ方
法ハナイ次第デアリマシテ、是レ卽チ私ガ
第三點ト致シマシテ、日本製鐵株式會社法
案ニ贊成スル次第デアリマス
而モ第四ノ問題ト致シマシテハ、此日本
製鐵株式會社ヲ民間事業トシテヤッテ行ク
ベキカ、或ハ國家ガ非常ナ管理權ヲ之ニ持,
テ、サウシテ殆ド官營ノ狀態ニ等シキ程度
デヤッテ行クベキカ、是等ニ付テハ幾多ノ議
論ガアル、只今小池君ノ如キハ國家管理委
員會ヲ設ケテ、之ニ對シテ十分國家ノ權力ヲ
加フベキデアル、斯ク主張サレタ、此點ニ
付キマシテハ、私共ハ小池君ノ御意見ニ對
シテ贊意ヲ表スルコトガ出來ヌノミナラズ、
斯ノ如キハ斷ジテ此事業合同ノ趣旨ヲ貫徹
スル所以デナイト、信ジテ居ル次第デアリ
マス、何故カト申シマスト云フト、今日日
本ノ製鐵業更生ノ爲ニハ、鐵及鋼ガ如何ナ
ル商品デアルカト云フコトヲ考ヘナケレバ
ナラヌ、言フ迄モナク鐵鋼ハ世界的生產、
世界的ノ消費、此國際的商品、而モ此國際
商品ヲ生產シ、販賣シ、管理經營ヲ行フ、
此製鐵業ニ於キマシテハ、徒ニ國家ノ大ナ
ル權力、此掣肘ヲ受ケ、難カシイ規則、堅
苦シイ規約、是等ノ制限ヲ受ケテハ到底此
世界ノ競爭ニ打勝ツコトハ出來ヌノデア
ル、卽チ先ヅ第一ニハ此製鐵會社ノ今日迄
ノ有力ナル經營者、是等ノ經驗ヲ有ヲテ居
ル所ノ民間ノ人々、或ハ八幡製鐵所-官
營製鐵所ノ老練達識ノ士、是等ヲ網羅致シ
マスト共ニ、更ニ多ク在野ノ斯界ニ於ケル
經驗知識ヲ持ツ者、是等ノ高材逸足ヲ網羅
シテ、サウシテ純民間事業ト致シマシテ、
世界ノ經濟狀態、或ハ我國ノ軍備、經濟ノ
實情、是等ニ適合致スヤウニ、臨機應變、
自由自在ニ經營方針ヲ行ハシメル爲ニハ、
堅苦シイ國家管理委員會ナドノ掣肘ヲ受ケ
テ、常ニ規約ヅクメノ狀態ニ置クコトヲ離
レテ、民營事業ニ移スコトハ、斯業發展ノ
根本策デナケレバナラヌト私ハ信ジテ居ル
次第デアリマス、特ニ之ヲ資本調達ノ點カ
ラ申シマシテモ、官營ノ事業、或ハ國家管
理委員會ノ審査ヲ、悉ク一ツ〓〓ノ仕事ニ
對シテ受ケネバナラヌ、斯ノ如キ狀態ニ於
キマシテハ、到底時ノ會社ノ狀態、四圍ノ
經濟實情、之ニ適合シタヤウナ金融運轉ハ
不可能デアル、或ハ甚シキハ國家管理ヲ唱
ヘル人々モアル、國家管理、卽チ其資金ヲ
公債ニ俟ツト云フヤウナ事ガアリマスナラ
バ、今日ノヤウナ比較的公債ノ濫發時代ト
モ謂フベキ時代デアリマシテモ、此製鐵業
ニ對シテ、更ニ公債ヲ募ッテ之ヲ經營スル
ト云フヤウナコトハ、國家財政ノ見地カラ
申シマシテモ、甚ダ憂フベキコトデアリマ
ス、之ニ反シマシテ民間ヨリ社債或ハ借入
金ヲ行ヒ、此純民間カラ資本調達ノ方法ニ
依リマスト云フト、時ノ經濟界ノ實情、民
間ノ金融實情、是等ニ適合シタヤウニ臨機
應變ノ金融調達ヲ行ヒ、以テ會社ノ發展ヲ
圖ルコトガ出來ル、是等ノ點ニ付キマシテ
モ、私ハ本事業ガ純粹ノ民間事業トシテ行
ハレルコトハ、斯業發展ノ最モ大切ナル點
デアルト信ジテ居リマス
是等ノ實情カラ申シマシテ、本事業ハ何
ト申シテモ國營ノ滴當デナイト云フコトハ
勿論ノコト、國家管理審査委員會ノ如キモ
ノヲ設ケテ、極端ナル國權ノ發動ヲ之ニ加ヘ
テ、此活潑ナル所ノ、サウシテ自由ナル、
圓滑ナル活動ヲ掣肘スルガ如キコトハ、斯
界ノ爲ニ取ルベカラザルコトデアルト信ジ
テ居リマス、而モ小池君ノ御意見ニ依リマ
スト云フト、今日ノ此法案ノ精神ハ宜カラ
ウケレドモ、此精神ヲ產ミ出シタ所ノ歷代
內閣、或ハ今日本法案ノ誕生ニ際シテ最
モ苦心サレ、努力サレタル所ノ、中島
商相ノ此立派ナル精神ガ、其儘永遠ニ
繼續スルコトハ不可能デアラウガ故ニ、
此精神ヲ永續セシムル手段ト致シテ、國
家管理委員會ヲ設ケル必要ガアルトノ御意
見デアルヤウニ承ッタノデアリマスケレド
モ、併シ此爲ニハ日本製鐵株式會社ニ於キ
マシテハ、株式ノ過半數ハ國家ガ之ヲ掌握
致シテ居ル、サウシテ政府ガ適當ナル代表
者、或ハ民間、或ハ軍部、或ハ學界、是等
ノ識見ヲ有チ、知識ヲ有ツ方面カラ適材ヲ
網羅シテ、サウシテ國家管理委員會ト實質
的ニ同ジヤウナ、斯業ニ對シテ國家ノ立場
ヲ能ク考慮シ、國家的ノ識見ヲ以テ之ニ當
ル人ヲ、株式會社ノ代表者ニ加ヘルコトガ
出來マスレバ、徒ニ管理委員會、此名ニ囚
ハレルコトナク致シマシテ、十二分ニ國家
管理ノ實ハ擧ゲ得ルモノデアルト、私ハ信
ジテ居リマス、是等ノ點カラ申シマシテモ、
國家管理委員會ガ設ケラレザルガ故ニ、本
法案ニ對シテ反對スルト云フガ如キハ、徒
ニ偏狭ナル理論鬪爭ノ遊戯ニ過ギザル所論
デハナイカト、私ハ思フ次第デアリマス
(拍手)是等ノ實情ニ依リマシテ、私ハ本法
案ガ其發展ノ根本策ト致シマシテ、今日マ
デノ我國ノ斯業ノ根柢ニ橫ッテ居ル幾多ノ
缺陷ヲ排除スルニ、最モ適切ナル政策デア
リ、而シテ之ヲ民營ニ委ネテ、能ク八幡製
鐵所ヲ中心ニ、衰ヘテ居ル各會社ヲ合同シ
テ、十二分ニ鞏固ナル基礎ノ上ニ其發展ヲ
圖リ、自由自在ニ經濟界ノ實情ニ適合シ、
世界ノ實情ニ適合シタヤウナ經營ヲ行ハシ
ムル爲ニモ、民業ヲ以テ行ハシムル趣旨ス
織込ンデ居リマス日本製鐵株式會社法案ガ、
最モ斯業發展ノ爲ニハ適切ナル國策ナリト
斷定シテ憚ラザル次第デアリマス(拍手)
併ナガラ私ハ此法案ノ價値ト云フモノハ、
以上申上ゲタヤウナ精神ヲ法文ノ上ニ書キ
表ハシテ居ル此表現的ノ條文ヤ、或ハ辭句、
此形式、以テ本法案ノ實效或ハ成果ヲ豫測
スルコトハ早計デアルト信ジテ居リマス、
此一點ニ至リマシテハ、私ハ小池君ト意見
ヲ異ニスル者デハアリマセヌ、問題ハ此法
案ノ條文、辭句、是等ノ形式ニアラズシテ、
此日本製鐵株式會社ヲ如何ニ實際ニ於テ創
設シ、如何ニ之ヲ運用實行スルカ、此實行
ノ問題ニアルト信ジテ居リマス、特ニ本法
案ノ本當ノ生命ヲ發揮シ、其實效ヲ擧ゲル
ニ付キマシテハ、第一ノ問題ハ何ト致シマ
シテモ出資評價ノ問題デアリマス、卽チ官
營八幡製鐵所ヲ初メト致シマシテ、第一次
ニハ民間五社、續イテハ民間十一社、是等
ノ各製鐵會社或ハ製鐵所ノ合同ヲ行フテ、先
ヅ其資金ヲ決メテ行クノデアリマスガ、此
出資財產ノ評價ト云フコトニ當リマシテ、
其當ヲ失シ、其嚴正ヲ失,タナラバ、本法
案ノ價値ハ全然零トナッテ來ルト云フコト
ハ言フマデモナイ次第デアリマス、何ト
ナレバ、今日旣ニ民間ニ於テモ、此點ニ付
テハ幾多ノ疑惑ヲ豫メ有ッテ居ル人々スラ
アルト云フコトハ、何處ニ其疑惑ノ問題ガ
存シテ居ルカ、言フマデモナク、是ハ民間
各製鐵會社ノ現狀ハ、前申上ゲマシタヤウ
ニ頗ル經營困難ノ狀態ニ立至ッテ居リ、睡眠
狀態ノ儘ニ置カレテ居ル所ノ固定財產ガ澤
山アル、是等ノモノヲ、此一大合同ニ際シ
マシテ無條件デ、而モ評價ノ嚴正ヲ失シテ、
八幡製鐵所ト相合シテ、其資金ト致シマス
ル如キコトアリト致シマスルト、玆ニ大キ
ナル禍根ヲ將來ニ貽スコトニナッテ來ルノ
デアリマス、卽チ或ハ審査委員ノ能力、或
ハ公正、是等ノ點ニ於キマシテ嚴正ヲ失
シ、公平ヲ失シ、或ハ醜惡ナル所ノ裏面運
動ナドニ依リマシテ、如何ハシキ審査評價
ガ行ハレル如キコトガアルニ至リマシテハ、
徒ニ是等合同ノ名ニ依フテ弱體民間會社ヲ、
八幡製鐵所ヲ犠牲ニ致シテ救濟スルト云フ
結果ニナッテ來ルノデアル、然ラバ出來上〃
タ所ノ、此日本製鐵界ノ劃期的發展ヲ期ス
ルヲ目的トスル合同製鐵所ト云フモノハ、
徒ニ今日マデノ數多クノ民間ボロ會社ニ代
ユルニ、一大水膨レ合同會社ノ出現トナリ、
此事ハ取リモ直サズ、此大キナル劃期的ノ、
我國斯界發展ノ根本策ヲ期スベキ此日本製
鐵會社ノ、眼目ヲ失スルモノデアルト云フ
コトハ、洵ニ遺憾ニ堪ヘザルノミナラズ、
此點ハ社會政策ノ見地、或ハ財政的ノ見地
カラ申シマシテモ、許スベカラザル所デア
リマスガ故ニ、先ヅ出資財產ノ評價ノ嚴正
公平ト云フコトニ付キマシテハ、十二分ノ
注意ヲ拂フベキモノデアルト云フコトヲ、
吾々ハ附帶條件ノ第一項目ト致シマシテ、
嚴肅ニ政府當局ニ要求致シテ置ク次第デア
リマス
續イテ附帶決議ノ第二點ハ御承知ノヤ
ウニ、今日マデ八幡製鐵所ト緊密ナル關係
ヲ有フテ居ル八幡市、及其他ノ關係市町村、
是等ニ對シマシテ、合同ニ際シテノ適切ナ
ル善後處置ヲ誤ルコトナク、善處セラレン
コトヲ希望シ、之ヲ絕對ノ要件トシテ要求
致シテ置ク次第デアリマス、旣ニ委員長カ
ラモ申サレタ通リ、八幡市及其他ノ關係市
町村ト云フモノハ、今日マデ八幡製鐵所ガ
呱々ノ聲ヲ擧ゲテ以來、幾十年ノ間煤煙騷
音ノ裡ニ、能ク精神的ニ、物質的ニ、此八
幡製鐵所ノ事業ヲ助ケテ幾多ノ犠牲ヲ拂
ヒ、其發展ノ上ニ多大ナル貢獻ヲ拂ッタト
云フコトハ、諸君御存ジノ通リデアル、而
モ斯ノ如キ過去ノ緊密ナル關係ハ、唯此合
同ニ依フテ卒然トシテ打切ルベキモノデハ
ナク、將來此緊密ナル關係ヲ續ケ、精神的、
物質的ノ措置ヲ誤ルコトナク繼續致ジマシ
テコソ、初メテ此地方民ノ無形ノ、或ハ有
形ノ援助ガ、將來ニ於テ期待セラレルノデ
アリマス、斯クシテ初メテ此合同會社ノ中
心ヲ成ス、中軸ヲ成ス八幡製鐵所ノ-民
間事業トナリタリトハ言ヒナガラ、其事業
ノ發展ガ期待出來ルト思フノデアリマス、
此意味ニ於キマシテ、今囘ノ合同ノ機會ニ
際シテ此地方ノ人々ハ、特ニ又炭坑地方ノ
人々モ、如何ニ政府ガ從來ノ關係ニ對シテ
措置ヲ執ルカト云フコトニ付テ、非常ニ衝
動ヲ受ケ、不安ヲ有〓テ居ル、併ナガラ此點
ニ付キマシテハ、以上申上ゲタヤウナ事情
ニ鑑ミマシテ、政府ハ能ク從來ノ緊密ナル
關係、將來ノ發展ニ對シテ十一一分ノ考慮ヲ
拂ハレマシテ、從來マデノ助成金ノ關係、
或ハ學校、水道其他ノ福利施設ノ關係、或
ハ炭坑地方補償ノ關係、是等ノ點ニ付キマ
シテモ從來ト變ルコトナク、十二分ノ溫キ、
サウシテ恩惠アル所ノ施設等、此關係ヲ持
續セラレルコトハ、獨リリ方方ノ福利ニ關係
スル問題ノミナラズ、日本製鐵株式會社ガ
眞ニ國民的ノ衷心ヨリノ後援、衷心ヨリノ
發展ヲ冀フ此心持、此無形ノ大キナル基礎
ノ上ニ立ツ所以デアルト信ジマスガ故ニ、
此點ニ對シマシテハ、政府ハ特ニ其處置ヲ
誤ルコトナキヤウ、十二分ノ善處ヲ拂ハレ
ンコトヲ、此際嚴肅ニ第二ノ附帶決議ノ條
件トシテ希望致シ、要求致ス次第デアリマ
ス
以上申上ゲタヤウナ二箇ノ附帶決議ヲ附
シマシテ、而シテ此日本製鐵株式會社ガ、
以上申上ゲタヤウナ、幾多ノ今日マデノ我
國ノ製鐵界ノ根柢ニ橫ッテ居ル此缺陷、此禍
根ヲ排除致シマスルコトヲ得マスルナレ
バ、玆ニ初メテ我國ハ今日マデノ劣弱ナル
製鐵業界ノ此淺マシキ有樣、此實情カラ
脫却致シマシテ、眞ニ劃期的ノ斯業ノ基
礎ヲ確立シ、將來ヘノ發展ヲ期待シ得ル
モノデアルト私ハ信ジテ居ル、願クハ滿
場諸君ニ於カレマシテモ、是等ノ點ニ付
テ十二分ノ御諒解ヲ賜リマシテ、此二箇
ノ附帶決議ヲ、政府ガ能ク實施スルコ
トヲ條件ト致シマシテ、以上ノ趣旨ニ基イ
テ、本事業ノ眞ニ將來ヘ掛ケテノ發展ヲ期
スル爲ニ、諸君ノ一致ノ御贊成ノ下ニ、國
家百年ノ大計ヲ此際ニ樹立セシムル、此意
味合ニ於キマシテ、諸君一致ノ本案ニ對ス
ル御贊成ヲ冀〓テ、此壇ヲ降ル次第デアリマ
ス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02619330314&spkNum=17
-
018・秋田清
○議長(秋田〓君) 龜井貫一郞君
〔龜井貫一郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02619330314&spkNum=18
-
019・亀井貫一郎
○龜井貫一郞君 私共ハ本案ニ對シテ反對
ノ意思ヲ表明致ス者デアリマス、若宮委員
長ノ極テ條理整然タル、至レリ盡セリノ御
報〓ヲ拜承致シマシタ、又只今ハ岸田議員カ
ラノ、極メテ民營ニ付テハ、一面理路整然
タル御話ヲ伺ヒマシタ、本會議ニ於ケル質
疑應答、委員會ニ於キマスル質疑應答ヲ通
ジテ、政府當局ノ意圖セラルヽ所ガ何デア
ルヤト云フコトモ、亦明瞭ニ諒得スルコト
ヲ得タノデアリマス、デアルニ拘ラズ、私
共ハ是等ノ御議論ヲ伺ヒマシテモ、果シテ
議院ガ政府ノ意圖ヲ認メ、之ヲ此形ニ於テ
實現セントセシムルノ努力ガ、果シテ成功
スルヤ否ヤニ付テハ、心中一片ノ疑念ガ拂拭
シ去レナイノデアリマス、政府當局ノ御意
嚮ヲ伺ッテ見マスレバ、ソレハ斯ウデアリマ
ス
日本ノ銑鋼業ハ、米國ヤ獨逸ニ較ベテモ
決シテ負ケルモノデハナイ、但シ今ノ狀態
ハ、歐洲大戰爭當時ノ濫設會社モアルカラ、
之ヲ整理シ、サウシテ生產費ヲ低減シテ行
ケバ、行ク〓〓ハ銑鐵モ二十圓見當ニハナ
ルダラウ、サウシテ國內フ需要ハ、幸ヒ
大隈內閣ノ時ニ引イタ銑鋼ノ需要曲線ノ通
リニ、段々ト需要ガ殖エテ居ルカラ、二百
七十万瓲モモウ直キデアル、イヤ三百五十
万瓲モ軈テ來ル、ノミナラズ海外ニ對スル
販路モ開ケテ來ル、安ク作レテ需要ガ多ク
ナル、ダカラ此企業ハ算盤ガ採レル、三千
万圓ノ儲ケガアルダラウ、ダカラ其基礎ニ
於テ此銑鋼業ト其所在工業都市ノ關係モ圓
滿ニ行ク、又從業員ト傭主ノ關係モ旨ク行
〃、サウシテ玆ニ一ツ三億三千万圓ト云フ
大會社ニ、勞資協力ノ立派ナ典型ヲ開イテ
見タイ、又此會社ハ大キナ公益的事業デア
ルカラ、國家ノ統制力、監督ト云フモノモ
一ツ加ヘテ、サウシテ民間事業ノ獨創力ニ
國家ノ監督權ト云フモノヲ併セテ、一ツ茲
ニ面白イ新規模ノモノヲヤッテ見タイ、是
ハ出來ルモノデアル、斯樣ナコトガ政府ノ
御意圖デアルト、私ハ漸クニシテ拜承ヲ致シマ
シタ、其限リニ於テハ洵ニ結構デアリマス、
又岸田議員ノ御贊成ノ演說ノ御趣意モ、其
處ニアラレルコトヽ私ハ信ジハ致シマス、
ダガ率直ニ申上ゲマスレバ、漢文ノ古イ言
葉ニ「夫レ然リ或ハ夫レ然ラン然レドモ」ト
云フ言葉ガアリマスルガ、洵ニ御意圖ハ夫
レ然リ或ハ夫レ然ラン、ケレドモ是ガ果シ
テ今ノ此御立案ノ形態デヤッテ行ケルカ行
ケナイカト云フコトガ間題デゴザイマス、
是ガヤッテ行ケレバ、是ハ洵ニ立派ナ御意圖
デゴザイマスガ、現代ノ政治經濟ノ機構ノ
下ニ於テ、此案デハ是ハ薔薇色ノ天國ノ夢
ト相成ラザルヲ得ナイノデアリマス
吾々ノ考ハ、最早前日ノ多クノ機會ニ於
テ申述ベマシタシ、議會ノ審議ヲ極メテ嚴
肅ニ致シマス意味ニ於キマシテ、最早多々
縷々申述ベハ致シマセヌ、極メテ簡單ニ約
四點バカリニ要約ヲシテ申上ゲタイノデゴ
サイマス、ダガ只今ノ岸田議員ノ御言葉ノ
中ニ、國營論ニ付テノ誤解ガアラセラレル
ヤウニ考ヘマスカラ、ソレヲ一言ダケ先以
テ附加ヘテ置キマス、實ハ國營ガ宜イカ民
營ガ宜イカト云フ議論ハ、正直ニ申上ゲレ
バ、是ハ十年前ノ議論デアル、今日ハモウ
其「レッテル」ヲ指シテ、是ハ「シトロン」ダ
是ハ「サイダー」ダト云フ時代デハナイノデ
アリマス、問題ハ官吏ノ精神デ、サウシテ
民間事業ノ自由サデヤッテ行クノニ、如何ナ
ル形態ガ宜イカト云フノガ中心問題デア
ル、此中心問題ニ今提案サレテ居ル此法律
案ガ、ピッタリ來テ居ルカ居ラナイカ、問題
ハソレダケデアリマス、御承知ノ通リデゴザ
イマスガ、國營論ニモ、昔ハ必ズ國有ヲ前
提トスル國營論カ唱ヘラレマシタ、是レ必
シモ惡イト申上ゲルノデハゴザイマセヌ、
委員會ニ於ケル鈴木委員ノ御質問ニモ、公
債自體ニ於テ生產公債デアルカラ、出シテ
モ宜イトモ思ハレルト云フ御議論モゴザイ
マシタ、是モ一ツノ國營論デゴザイマス、
モウ一ツノ國營論ハ、今日ノヤウニ現物出
資ヲサセナガラ、民間ノ金融モ吸收シナガ
ラ、其要點ニ於テハ、一ニハ國家ガ經營權
ヲ握ルト云フコトヽ二ニハ國家目的ニ副
ウテ事業ヲ經營セントスル人ヲ、身分ニ於
テ、身上ニ於テ保障シテ居ル人ヲシテ働カ
シムルト云フ、此ノ二大要點ヲ備ヘルモノ
ヲ稱シテ、吾々ノ國營原則ト謂フノデアリ
マス、隨テ國營トハ必シモ繁文褥禮ノ規則
ヅクメデヤルトハ〓ラナイノデアリマス、
ソコデ今日ノ會社ヲ民營デアルト云フノハ、
是ハ會社ニ於テ經營ヲ擔當セラレル人ノ身
分ノ議論デアリマス、確ニ本會社ノ株ノ半
數以上ハ國家ガ持ッテ居ルノデアリマス、ダ
カラ抽象的ノ「レッテル」ハ、是ハ會社ト云フ
名前ガ「シトロン」ダト見エマスルガ、しら
テル」ヲ剝イデ見レバ「サイダー」ト云フ國
營ニナッテ居ル、是ハ確ニ國營デアリマス、
デアリマスガ、重大ナル點ハ、是ハ經營ニ
當ル當事者ノ精神ト其保障デアリマス、官
吏ハ國家目的ニ副フ所ノ精神ヲ以テ、サウ
シテ國營事業ヲ經營スル、又其爲ニ身分上
ノ保障ガアリマス、此精神ヲ持ツ爲メノ身
分上ノ保障ヲ、此經營ニ當ル者ガ與ヘラレ
アリヤト云ヘバ、是ハ此法案ニ於テハ斷ジ
テナイノデアリマス、此點ガ重點ニナルト
思ヒマス
ソコデ問題ハ、自ラ第一點ノ人ノ問題デ
ゴザイマス、手前共ガ敢テ諄々シイコトヲ申
上ゲル必要モナク、今日ノ大キナ資本主義
企業ニ於ケル一ツノ矛盾ハ、企業ガ大キク
ナレバナル程、之ヲ經營シテ行ク所ノ人ノ
企業能力ガ伴ハズシテ、自ラ此仕事ガ行詰ル
ト云フノガ、今日ノ大キナ事業ノ共通ノ缺點
デアル、企業經營ノ能力ト、事業ノ大規模ナ
ルニ依ッテ、之ヲ國家目的ト竝行セシムル所
ノ社會意識ヲ有ッタ人ガナイノデアリマス、
ソコデ今度出來ルモノガ出來マスレバ、此
會社ハ恐クハ三億三千万圓位ノ資本ニナル
デアリマセウ、斯クナルトスレバ、之ヲ正
直ニ考ヘテ、斯ウ云フ會社ノ經營ニ當ッテ、
一方ニ於テ企業經營ノ活潑性、彈力性、獨
創性ヲ有チナガラ、之ヲ國家目的ニ竝行セ
シメテ行ケル人ガ、一體今ノ日本ニ居リマ
スカ、私ハ之ヲ御反問シナケレバナラヌ、
日本ノ實業界ノ現情ヲ考ヘテ見マスレバ、
此實業界モ段々良クハナフテ來テ居リマス
ガ、大體時期ヲ分ケテ見マスレバ、日本ノ
實業界ノ代表的人物ハ、三ツノ段階ヲ經テ
變ラテ來ツヽアルト考ヘルノデアリマス、直
接ニ名前ヲ引キマスルノモ失禮デアリマス
ガ、惡イ意味デナク、代表人物トシテ引例
ヲ致シマスレバ、日本實業界ニ於ケル第一
期ノ典型的人物ハ、或ハ大川平三郞君、或
ハ根津嘉一郞君ノヤウナ、所有ト云フコト
ガ事業經營ノ中心精神トナッテ居ル所ノ、所
有ノ上ニ立ツ事業經營者デアリマス、第二
ノ時期ノ代表者ハ、廣イ大キイ經營管理ト
云フコトヲ考ヘナガラモ、尙ホ一國一城ノ
所有ト云フコトノ上ニ坐"テ、其上ニ於テ、
其外ノ他ノ範圍ノ經營權ヲ持ノテ事業ノ經
營ヲ考ヘテ行カウト云フ人々デアリマス、
卽チ藤原銀次郞君等ニ表現セラルヽ人物ノ
一團デアリマス、第三ニ、〓後來ルベキ所
ノ經濟界ニ實際必要ナル人物ハ、更ニ他ノ
型デアリマス、例ヘバ「ユー·エス·スチー
ル」ノ「ヂヤッヂ·ゲーリー」ガ、澁澤サンノ
自宅ヲ訪問セラレマシタ時ノ會話ノ御話ハ、
私共ハ洵ニ興味アルコトヽ考ヘマス、澁澤
サンガ歡迎ノ辭ニ於テ「ゲーリー」トモ言フ
ベキ人ガ、自分達ノヤウナ中產階級ノ家
ニ能ク來テ吳レテ喜バシイト云フコトヲ言
ハレタサウデアリマス、飛鳥山ノ邸宅ハ吾
吾カラ見レバ中產階級デハナイ、ダガ澁澤
サンハ、其精神ニ於テ中產階級トシテ事業
ヲ經營シテヤッテ行クノガ、實業精神デア
ルト云フコトヲ力說サレル點ニ於テ、今モ
尙ホ意味ガアルノデアリマス、是ガ「ゲー
リー」ガ「ユー·エス·スチール」ノ「カーネ
ギー」ノ時代ヲ承ケテ、其仕事ニ新ラシイ精
神ヲ注込ンデヤッテ來タト云フコト、相照應
シテ、一種ノ妙味ガアルノデアリマス、簡
單ニ申セバ、官業ニ於ケルト同ジヤウナ精
神デヤレルカト云フコトデアリマス、今日
官業ニ於キマスル勞資ノ安定ト云フコトハ、
一ツハ、ハッキリ申上ゲマスルガ、勞働者
ノ家ハ小サイガ、長官ノ家モ大シテ大キク
ハナイ、民間資本家ニ於ケルガ如ク、勞働
者ノ家ガ豚箱ノヤウデ、社長ノ家ハ金殿玉
樓デアル、サウ云フヤウナ比較觀念ハ、官
業ニ於テハ少クトモアリ得ナイノデゴザ
イマス、官吏ノ如ク、極メテ講遜ナル生活
程度デ生活シナガラ、サウシテ一方、內、全
日本ノ製鐵產業ヲ背負ヲテ立ツノニ謙々抑
抑トシテ、而モ外、字內ノ製鐵事業ニ通曉
シテ居ル人、斯ノ如キ事業的有能者ニシテ、
且ツ精神家ヲ併セタル者ヲ今日求メナケレ
バ、此會社形態ト云フモノハ成立モシナケ
レバ、眞ノ運用モサレナイノデアリマス、
ソレデ人ガナイト吾々ガ考ヘルノガ第一點
デアリマス
尙ホ一寸補足ヲ致シマスガ、デアルカラ斯
ウ云フ冒險ヲヤルヨリモ、先ヅ大體國家目
的ヲ念トスル精神ヲ主トシ、官吏白體ヲシテ
經營ニ當ラセツヽ、又一方其官業ノ束縛的
規定ヲ撤廢シツヽ、製鐵所ヲ存續擴大シ、
增產モヤリ、之ヲ盛立テヽ行フタラ、其方ガ
宜カラウ、斯ウ云フコトガ言ヒ得ルト思フ
ノデアリマス、第二ノ點ハ、下級當事者ノ
問題デアリマス、私ハ斯ウ云フコトヲ申
上ゲタイ、甚ダ率直デアリマスルガ、恐ラ
ク此製鐵合同ガ出來上リマスルマデノ五箇
年間ハ、マダ宜シイデアリマセウ、其後ノ五
箇年モマダ宜シイデアリマセウ、ダガ其十
年ノ後、否十年經過シナイ中ニハ、恐ラク
今囘出來上リマシタ日本製鐵株式會社ハ國
營、更ニ進ンデ國有ニシロト云フノガ輿論
バカリデナク、恐ラク實際政治ノ問題ニナ
リ得ルト私ハ確言ヲ致シマス、是ガ時代ノ
「テンポ」デアル、今日之ヲ以テ最新ノ案ト
御考ニナルトモ、此形ノ如キハ時代ニ措イ
テ行カレルト私ハ確信ヲ致シテ居リマス、
時代ノ信念カラ申シマスル此見透シガ間違
ヒマシタナラバ、御目ニ掛ラナイトマデ思
ウテ、申上ゲルノデアリマス、問題ハ下級
當事者ノ問題デアリマス、何故サウ云フ議
論ガ起ルカト云ヘバ、是デアリマス、恐ラ
ク今後十年ノ間ニ、今製鐵事業ヲ指導シテ
居ラッシヤル方ハ、此精神デ之ヲヤラウト云
フ後繼者ヲ持ツコトガ出來ナイデアリマセ
ウ、此仕組デハ政府ノ意圖セラルヽ所ヲ行
ヒ得ル人ヲ養成シ得ナイノデアリマス、私
ハ斯樣ニ確信ヲ致シマス、簡單ニ申上ゲレ
バ斯ウデス、日本製鐵會社ニ例ヘバ商工省
ノ若手有能ノ官吏ガ誰ガ入ッテ來マスカ、
入ッテ來マセヌ、學窓ヲ出テ役所ニ入リマ
ス者ハ、ヤハリ國家目的ヲ意識シ、之ニ
生ヲ貢獻セントシテ官吏タル者デアリマ
ス、ソレガ製鐵會社ニ入リマスカ、官吏タ
ル身分ハ無クナル、國家行政ノ他ノ部分ニ
進入シ得ル保障ガナクナル、今日マデ製鐵
所ガ兎ニモ角ニモ民間ノ模範トシテ好成績
ヲ擧ゲテ參ッテ居ル所以ノモノハ、商工省
ノ若手官吏ノ有能ノ人ガ、製鐵所デ眞面目
ニ二三年働イテ、業績ヲ擧グルコトガ出來
レバ、製鐵所ニ燻ラズトモ、更ニ官吏トシ
テ他ニ進路ガアルト云フノガ、常ニ製鐵所
ノ空氣ヲ一新シ、時代ニ適應シタ施設ヲ
和え、製鐵所ガ他ノ民業ニ對シテ、其典型
トシテ今日マデヤッテ來タ所以デアルト私
ハ言ハナケレバナラヌ、ソレガ今後製鐵所
ガ會社ニナッテシマッタナラバ、商工省有能
ノ若手ハ誰ガ入ルカ、誰モ入ラナイ、サウ
シテ製鐵會社ニ入ルノハ、甚ダ失禮ナ申分
デハアリマスルガ、或ハ日本航空株式會
社、或ハ無線電信會社ノヤウニ、商工省ヤ
遞信省ノ古手デアリマス、本會社ハ商工省
ノ姥捨山ノヤウニナルノデアリマス、サウ
スレバ若イ者ヲ一體何處カラ入レテ行ク
カ、民間カラ-詰リ實業會社カラ若イ者
ヲ入レテ來ルノ外ハナイ、其處カラ若イ者
ヲ入レテ來ルト云フコトニナリマストドウ
ナルカ、苟モ政治ニ志シ、或ハ官吏ヲ志シ
タ者ハ、國家目的ノ下ニ分ニ相當スル行動
ノ場所ヲ與ヘラレ、其場所デ御奉公セント
スル意圖カラ、サウナルノデアリマス、然
ルニ之ニ反シ、今日ノ社會通念トシテハ、
實業界ニ入リマスル者ハハ其成功ノ基準又
ハ目標ハ、要スルニ資產的成功デアリマ
ス、是ハ今日ノ通念デアリマス、サウ云フ
若イ者ヲ入レテ參リマスレバ、此製鐵會社
ノ下部當事者ト云フモノハ、段々要スルニ
自分ノ金儲ケ、算盤本位、良ク往ッテ會社
ノ算盤本位ノモノニナッテ參リマス、問題
ハ上ノ決裁ガ大事カ、下ノ立案實施ガ大事
カト言ヘバ、ソレハ上ノ決裁モ大事デハゴ
ザイマスガ、下ノ立案實施ガ一層大事デア
リマス、ダカラ私ハ商工省ハ大事ナコトヲ
御落シニナッタト考ヘマス、例ヘバ陸軍省ハ
私立學校ニモ軍事〓官ヲ、其本官ノ儘配置
ヲ致シテ居リマス、或ハ內務省デハ、內務
省官吏ニシテ地方ノ自治團體ニ職ヲ奉ジタ
者ニハ、恐ラク恩給年限ヲ加算サレマスル
上ニ、更ニ其地方自治團體カラ退キマスレ
バ、又之ヲ再ビ內務省系統デ採用スルノ途
ヲ拓イテ居リマス、セメテ商工省ガ有爲
ナル人材ヲ官界カラモ推シ入レルコト
ヲ必要ト信ジ、サウシテ官吏トシテノ
國家目的ヲ中心意思トスルノ行動ヲ爲サシ
メテ、一方ニハ會社ノ形態デ、役所式拘束
ヲ離レテ潑溂タル所ヲヤラセテ行カウト云
フ御意圖デアルナラバ、此一大事ヲ御忘レニ
ナッタト云フコトハ、吾々トシテハ遺憾千萬
デアルト言ハナケレバナリマセヌ、形ハ會
社デモ、過半數ノ株ヲ國家ガ持チ、又官吏
又ハ半官吏ノ身分ヲ有スル人ガ經營ニ當ル
トセバ、私共モ之ヲ國營ト認メマス、是無
クンバ監督ハアルトモ一營利會社デアリマ
ス、而モ監督ノ樣式ハ不親切デス、本會社
ハチグハグナ二頭ノ馬デアリマス、斯ウ云フ
風ニ考ヘテ參リマスレバ、段々段々下級ノ當
事者ガ金儲ケヲシヨウ、實業界ニ於テ出世
ヲシヨウト云フ考ノ者バカリガ入ッテ來マ
シテ、サウシテ本來ノ意圖ニ副フヤウナ訓
練ガ出來ナイト云フコトニナッテ參リマス
しく、自ラ從業員ニ與フル思想影響ハ惡イ
ト言ハナケレバナリマセヌ、是ハ田尻議員
モ、田島議員モ言ハレマシタヤウニ、今日
ノ官業ニ貫イテ居ル精神ハ、假令賃銀ハ安
クトモ「親方日ノ丸」ノ精神ガ、其能率ヲ擧
ゲテ居ルト言ハナケレバナラナイ、或ハ方
方ノ勞務部長ガ、或ハ方々ノ工場課長ガ「親
方日ノ丸」ノ精神ヲ棄テヽ、段々自分モ會
社モ儲ケヨウト云フ、營利追求ノ念ノ者デ
充ツルト云フコトニナリマスレバ、全體ノ
勞働問題ハ一體如何ニ相成リマスルカ、吾
吾ハ商工省ハ大事ナコトヲ御忘レニナッタ
ト思ヒマス、私ハ卒直ニ申シマス、迂ッカリ
此儘ニシテ置キマスレバ、當分現當局ガ居
ラレル間ハ宜イカモ知レマセヌ、ダガ必ズ
ヤ其中ニ餘所ニ人ガ捌ケテ行カナイ結果
ハ、製鐵會社ノ人心ニ萎靡沈滯ヲ來シ、下
手ニ行キマスレバ、勞務部長ガ總務部長ノ
地位ヲ狙ヒ、總務部長ガ長官ノ後釜ヲ狙フ
ト云フ風ニナッテ、ソレガ內部ノ抗爭ノ原因
タラザルナキカヲ、日本製鐵會社ノ將來ノ
爲ニ憂ヘザルヲ得ナイノデアリマス
第三ノ點ハ、旣ニ岸田議員カラモ申サレ
マシタカラ、モウ簡單ニ致シマスルガ、要
スルニ此問題ハ、何モ今買收ニ依ル國營合
同ヲスル必要ハナイト云フ仰セデアリマ
ス、私モ今何モ買收シタ方ガ宜イトハ申シ
マセヌ、併シ何分ニモ此法案ニ依レバ會社
ノ儲ケガ三千万圓デアリマス、故ニ之ヲ此
儘ニシ、特別會計ヲ突張ッテ置イテ、三千八
百万圓ノ公債又ハ融資ヲ付ケル、サウシテ
製鐵所ガ段々增產ヲヤッテ行ケバ宜イノデ
アリマス、一般會計ノ中ニ其益金ヲ入レル
コトハ、是ハ良イ惡イト云フコトハ議論ガ
ゴザイマシタガ、是ハ入レテモ宜イ、國家
ノ財政ガ今日甚ダ窮乏ノ際、是ハ入レテモ
宜イ、現ニ其三千万圓ノ少クトモ三分ノ二
ハ、政府持株ニ配當サレルコトニナッテ居
ルデハアリマセヌカ、サウシテ其三分ノ一
ハ、卽チ一千万圓ハ、此法案ニ依リマスレ
バ、三井、三菱、一般株主ニ捧ゲルコトニ
相成ルノデアリマス、之ヲ率直ニ申シマス
レバ、金融資本家ニ對シテ、今マデ儲カラ
ナカッタ製鐵業ニ、製鐵所ト云フ「プラス」ノ
財產ヲ提供シテ、儲口ヲ與ヘテヤルト云フ
コトニ相成ルノデアリマス、ソンナコトヲ
爲サルヨリモ、一番簡單ナ方法ハ、中島商
工大臣モ此間マデヤッテ居ラレマシタ產業
合理局ノ力ヲ强クシ、今日ノ會社ニ於テオ
ヤリニナラウト爲サイマスル監督權ノ力ヲ
强クシ、サウシテ現存スル會社ヲ、今オヤ
リニナラウトスル位ノ評價ニ切下ヲ爲サ
リ、斯クテ其會社ガ生キテ來マスレバ「カル
テル」ノ生產分野ノ統制モ出來テ參リマス、
サスレバ、ソコデ政府ガ御世話ヲ御燒キニ
ナッテ、預金部ノ金ナリ興銀ノ金ヲ釜石ニ
モ貸スシ、或ハ兼二浦ニモ貸スコトヽシマス
レバ、政府ノ統制ガ自ラ出來テ來ル、サウシ
テ商工大臣ガ能ク御使ヒニナリマスル、所謂
時ノ妙用ニ依リマシテ、漸次堅實ナル國家
本位ノ眞ノ合同ガ出來上リ得ルト私ハ考ヘ
ルノデアリマス、岸田君ノ自力整理ヲ助ク
ルノ道ハ、必シモ會社的合同ニ限ラヌノデ
アリマス、此方法ハ執リ得ルノデアリマス、
必シモ私ハ今直グニ買收シロト言フノデハ
ナイ、併シ又買收論ニモ無論理論ハアルト
思ヒマス、現在ノ斯ウ云フ巨額ノ不生產公
債ノ中ニ一ツノ生產公債ガアル、而モソレ
ガ三千万圓儲カル公債デアルト云フコトハ、
決シテ日本公債ノ價値ニ對シテ惡イ影響ハ
ナイト考ヘマス
第四點ハ、簡單ニ申シマスレバ、御承知
ノ通リ是ハ銑鋼ニ於キマシテ、所謂生產系
統ノ合理化ヲ遂行シ、銑鋼一貫作業ヲ行ヒ、
單種多產ヲ爲シ、サウシテ銑鐵工業部門ノ
八割ヲ占ムル獨占トシテハ、是デ完成ヲス
ルノデアリマス、ダガ是ダケデハ駄目デア
ル、是ハ委員會ニ於テ風見代議士、或ハ岸
代議士カラ度々ノ御質問ガアッタ所デアリ
マスルガ、ドウシテモ之ヲ完成シヨウト致
シマスレバ、他ノ部門ノ統制ヲ前提又ハ條
件ト致シマス、戰爭ノ時バカリヲ考ヘズ、
平時ニ於テモ矢張原料タル鑛石、原鑛石ヲ
廉價ニ確保セント致シマスルナラバ、鑛山
投資統制ヲ必要ト致シマス、例ヘバ南洋ノ
「ロンピン」デアルトカ「ケママン」トカ、或
ハ「ヅングン」デアルトカ「バトバハ」「ジユ
ライ」ト言ッタヤウナ、此方ノ方面ニ矢張投
資ヲシナケレバナラヌ、投資ヲシテ日本ノ
船ニ積ンデ來ナケレバ駄目デアル、何故カ
ト言ヘバ、サウ致シマセネバ、原鑛石値段
ノ爲替關係ニアル變動ガ大トナリマス、斯
ク致シマスレバ、原鑛石ノ値段ガ爲替ガ影
響致シマスル幅ハ、南洋ニ於ケル勞銀ダ
ケニ限ラレルノデアリマス、ダカラ原鑛
政策ヲ永遠ニ確定セント致シマスルナラ
バ-例ヘバ吾々ノ傳承スル所ニ依リマスレ
バ、單ニ馬來半島バカリデハナイ「サラワッ
ク」ニシテモ「ボルネオ」ニシテモ「パーセン
テーヂ」ノ高イ鑛石ガアル由デアリマス、是
等ニ於ケル原鑛投資政策ノ確立ガ、第一ノ
條件デアリマス、第二ハ所謂石炭ノ統制デ
アリマス、是ハ委員會デモ問題ニナリマシ
テ、多クノ代議士ガ〓心ニ御討論ニナリマ
シタ通リ、或ハ撫順、或ハ本溪湖、或ハ筑
豐、或ハ北海道ト云フ風ニ、大體鐵ト石炭
トノ關係ヲ竝行シテ、統制ヲヤッテ行カネ
バナラナイ、サウシテ第三ハ、更ニ出來上
リマシタ安イ銑鐵、或ハ半作品ヲ用フル所
ノ精密機械工業ノ統制デアリマス、第四ハ、
銑鋼一貫作業カラ出ル所ノ、或ハ銑鐵生產
カラ出ル所ノ化學工業、化學工業ノ統制ヲ
ヤラナケレバ何等意味ヲ成サナイノデアリ
マス、所ガ此原鑛投資統制及石炭統制、化
學工業統制、精密機械工業統制ハ、是ハ現
下ノ經濟問題ノ重大問題デアリマス、之ヲ
ドウデアリマスカ、正直ナ所、現內閣ハ果
シテ是等ヲヤッテ行ケルデアリマセウカ、現
内閣ガ是等ヲオヤリニナル見込ハ、私ハ持ッ
テ居ラヌノデアリマス、サウスレバ現內閣
ノ中デ、タッタ一ツ先ニ者共續ケト言ッテ飛
出シタ政策ガ、日本製鐵株式會社法案デア
リマス、他ノ者ハ續カヌノデアリマス、隨
テ本案ハ其意圖ハ兎モ角モ、事實ハ反對勢
力ノ爲ニ直チニ討死スルコトハ明デアリマ
ス、外ノ方ノ統制ト一〓ニ參ラナケレバナ
リマセヌ、簡單ニ申シマスレバ、此法案ハ
現内閣ト致シマシテハ--失禮ナ申分デハ
ゴザイマスガ、鳶ガ鷹ヲ生ンダヤウナ氣持
ガスル、此鷹ハ餘程强ク致シテ置カヌト、
他ノ兄弟ガ皆鳶デアリマスルカラ、孤軍奮
鬭シテモ鷲ノ爲ニ喰ベラレテシマヒマス、全
體ノ計畫經濟ニ於テ跛デアリマス、其中デ本
會社ダケガ計畫經濟ノ統制力ノ先頭ニ出ル
トスルナラバ、全體ノ他ノ部門ノ軈テ來ル
ベキ統制ト共ニ、國家權力ニ依ル監督權ヲ
モット强クシテ置カナケバレナラヌノデア
リマス
モウ一ツ程附加ヘマスガ、今日歐洲大戰
爭後ノ政府ノ監督權ト云フモノハ、命令、
解任、取消、或ハ認可ト云フ消極的監督權
バカリデハナク、積極的監督權ト云フモノ
ヲモ認メテ居ルコトハ、商工大臣御承知ノ
通リデアリマス、指導的管理權ヲ認メテ居
ルコトハ御承知ノ通リデアル、サレバコソ
私ハ監督委員會ヲ唱ヘ、小池君ハ國家管理
委員會ヲ唱ヘラレマシタ、今日官業ニ於テ
スラ、消極的監督權ヲ行フ監督官廳ト、積
極的監督權ヲ行フ管理官廳トノ、別ヲ設ク
可シト云フ議論ガアリマス、從業員ノ下カ
ラ上ヘノ監督乃至管理ヲ留保シツヽモ、是
デハ足リナイト私ハ思フノガ第四點デアリ
やく、斯ウ云フ風ニ全體ノ統制ガ出來ズ、
先ニ出來ルモノガ、國家權力ノ監督ガ弱ク
或ハ親切デナイトスレバ、外ノ產業部門ニ
景氣ガズット出テ來テ、鐵鋼ノ需要ガドン
ドン出テ來レバ、自ラ不必要ナル生產設備
ノ擴大及商品ノ過剩生產ヲヤルノハ決フテ
居ル、サウシテ又ソレガ不景氣ニナリ、需
要ガ急ニ減退スルコトニナレバ、是ハドウ
シテモ心其處ニ在ラズトモ、非常ナル從業
員ノ馘首、減給ヲ行ハナケレバナラヌコト
ニ相成ル、斯ウ云フ點ニ於テ、吾々ハ商工
大臣ガ本當ニ誠意ヲ有ノテ居ラレルコトハ、
少クトモ信賴致シマスルガ、百ノ御約束ヲ
爲サラウトモ、千ノ御約束ヲ爲サラウト
モ、全體ノ統制ガ旨ク行カズ、之ヲ先ニ出
シテ「者共續ケ」ト言ハレテ先陣ヲ切ラレタ
所デ、此統制ガ、上、國家權力ガ弱ク且ツ
不親切デ、下、事ニ當ル者ガ國家目的ニ
副ヲタ統制意思カラ逸脫シ得ルナラバ大變
デス、事業界ハ今後決シテ薔薇色ノ道バカ
リデハゴザイマセヌ、殊ニ評價ニ於キマシ
テ、複成價値ニ取ラレマシタ物價標準ハ、
昨年ノ十月ノモノデアリ、或ハ稼高價値ニ
於テ取ラレマシタノハ、昨年ノ十月ヲ基準
トスル前六箇月ノ期間デアル、此間ハ相當
鐵ノ需要ノ增サントシタ時代デアリマス、
寧ロ吾々ガ取ッテ戴キタイノハ、過去五六
年間ニ於ケル所ノ需要ノ最モ引込ンダ、最
モ不景氣ノ時代ノ底ヲ取ァテ戴キタイ、二百
七十万瓲需要標準ノモノデアッテハナリマ
セヌ、更ニ不景氣ノ時代ノ稼高ト、其時代
ノ物價ニ依ル複式價値ヲ御考ニナラナケレ
ベナラヌトマデ、吾々ハ考ヘテ居ル位デア
リマス、今後ノ鐵鋼業ノ將來ノ展望ハ、商
工大臣ノ御考ニナル程、決シテ薔薇色ノ道
許リデハナイノデアリマス、千九百三十五
年ニ鐵鋼界ニ景氣ガ出ルト云フコトハ、或
ハ亞米利加ノ鐵鋼業者モ言フテ居ル所デア
リマセウガ、私ハ斯ノ如キ一路向上ノ單純
ナ道デハナイト思フ、波ガゴザイマス、波
ヲ越エテ、一方從業員ヲ預リ、一方國家產業
ノ目的ヲ達シテ參リマスルノニハ、是デハ
ドウシテモ不足デアリ、懸念ニ堪ヘヌト信
ズルノデアリマス、私共ノ反對ハ遺憾ナガ
ラ恐ラク破レルデアリマセウ、破レルデハ
アリマセウガ、私共ノ微意ハ、恐ラク本案
ニ御贊成ニナル御方ニモ、其或點ニ於キマ
シテハ、御諒解ヲシテ戴ケル點ガアルト私
共ハ考ヘテ居リマス、吾々ハ之ニ反對ハ致
シマス、是ハ破レルデアリマセウ、ケレド
モ私ノ拙キ表現ヲ致シマシタル反對ノ
要旨ヲ、モット更ニ巧ニ此處ニ居ラレ
マスル各代議士ノ腹ニ織込マレテ居ル
ト信ジマス、國家產業統制ノ重要目的、從
業員ノ待遇條件ト福利施設ノ向上、及將來
従業員ト事業主ガ對立セズシテ、眞ニ國
家產業ニ協力ヲシテ行クト云フ仕組ノ實現、
工場ト工業都市ノ圓滿ナル關係、本法案
ニ依ッテ商工大臣ハ是等ヲ實現シ居ルト言ッ
テ居ラレマス、其事ノ上ニ於テ、若シモ一
步ヲ御誤リニナリマスルナラバ、是ハ重大
ナル事態ヲ招致スルコトヲ御警告申上ゲナ
ケレバナリマセヌ、願クハ、吾々ノ反對論
ハ少數デ破レルデアリマセウ、デモアリマ
セウガ、反對ノ要旨ノ廉々ハ、此中デ贊成
ヲ爲サル方々モ腹ノ中デハ一應ハ、アノ點
此點ハ懸念デアッテ、吾々モ突張リタイト御
考ニナッテ居ルト思フ、其廉々ハ商工大臣モ
委員會ニ御出席デ、十分御諒承デ居ラッシ
ヤイマスルカラ、其點ニ付テハ少クトモ次
善三善ノ御考慮ヲ以チマシテ、此案ニ善處
ヲ期セラレナケレバ、將來重大ナル事ニナ
ルコトヲ、吾々ハ重ネテ御警告致シマス
要スルニ民間出資ヲ含ミ、民間資金ヲ吸
收シナガラ、官業形態ノ下ニ官業人ヲ以テ
運用シツヽ、官規ノ拘束ヲ離レタ自由ナル
經營形態ヲ考フルコト可能ナルノミナラ
ズ、其方法ヲ以テスルヲ可トスルト云フノ
ガ要旨デアリマス、他ニモ申上ゲタイコト
ガアリマスガ、以上四點ノ要旨ヲ以テ、本
案ハ其意圖ハ兎モ角モ、現代政治經濟機構
ノ下ニ於テ、此方法論ヲ以テ實現シ得ズト
爲シ、反對論ニ代ヘタイト考ヘルノデアリ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02619330314&spkNum=19
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020・秋田清
○議長(秋田濟君) 櫻井兵五郞君
〔櫻井兵五郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02619330314&spkNum=20
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021・櫻井兵五郎
○櫻井兵五郞君 諸君、私ハ數箇ノ希望條
項ト、二箇ノ附帶決議ニ同意ヲ致シマシテ、
本案ニ贊成ノ意ヲ表スル者デアリマス、先
刻來本案ニ反對ヲ致サレマスル所ノ、小池
君竝ニ龜井君ノ御說ヲ謹ンデ拜聽致シマシ
タ、併ナガラ私ハ其御趣旨ヲ伺ヒマスルト、
大體政府ノ企圖致シマスル所ノ趣旨ニ付キ
マシテハ、御兩君共ニ之ヲ諒トセラレ、御
贊成ノヤウデアリマス、小池君ガ政府ノ意
圖ハ之ヲ諒トスル、龜井君モ其樣デアリマ
シタ、龜井君ノ御說ノ中ニハ、或ハ官營存
續論デアルカト疑ハルヽ點モアリ、總テヲ
合併シテ國營デヤル方ガ宜イカト云フ御趣
旨ノ議論モアッタヤウデアリマスルケレド
モ、亦最後ニ至ッテ此案ガ成立シタ場合ニ
善處セヨト云フ、政府ニ對シテ親切ナル御
注意マデアック位デアリマス、ソコデ私ハ兩
君ノ御意思ニ依リマスルト云フト、我ガ製
鐵業ノ現狀ニハ確ニ不滿ヲ懷イテ居ラレル、
ソレデアルノニ之ニ反對ヲセラレルト云フ
コトハ、或ル期間ダケノコトカハ知リマセ
ヌケレドモ、現狀ヲ肯定セラレル所ノ矛盾
モアリマス、デアリマスルカラ、是ハ寧ロ
修正ヲ可トセラルヽ問題デナイカト思ッタ、
反對ニ非ズシテ修正セラレル方ガ適當デア
ル、斯樣ニ考ヘマシタ次第デアリマスルガ
故ニ、尊敬ヲ致シマスル御兩君ノ折角ノ御
議論デハアリマスルケレドモ、私共ガ本案
ニ贊成ヲ致ス所ノ理由ヲ、自ラ訂正スル所
ノ理由トハナラナカッタノデアリマス、故ニ
私ハ是ヨリ進ンデ、少シク私ガ本案ヲ支持
致シマスル所ノ理由ヲ、明ニシタイト思フ
ノデアリマス
私共ハ本案ニ對シマシテ、最モ大切ナリ
トシテノ狙ヒ所ハ、原價ノ低減ヲ圖ルト云
フ一事ガ一點、今一點ハ、如何ナル場合ニ
モ潤澤ナル量ノ供給ヲ確保スル所ノ途ヲ講
ズル、是ガ二點デアルノデアリマス、鐵鋼
ノ問題ハ非常ニ大切デアッテ、是ガ或ハ文化
ノ基ヲ成シテ居ルトカ、產業ノ基本デアル
ト云フヤウナ議論ハ私ハ此場合致シマセ
ヌケレドモ、サウ云フ譬ハ此處ニ省キマス
ケレドモ、少クトモ我國ノ產業界ヲ眺メテ
見マシテ、之ヲ整理ヲ致シテ、今一般國際
經濟ニ向フテ飛躍ヲ遂ゲシムルト云フ途ハ、
ドウシテモ鐵鋼ノ問題ヲ前提問題トシテ解
決ヲシナケレバナラヌト云フ信念ニ、私共
ハ到達ヲ致スノデアリマス、然ラバソレハ
ドウシテ解決ヲスルカト云ヘバ、唯一點、
前申上ゲタ如何ニシテ此原價ヲ下ゲ得ルカ
ト云フ方策問題ガ、其焦點トナルノデアリ
やっ、ソコデ政府ノ此度ノ案ヲ見マスルト
云フト、本業ノ特質デアリマスル所ノ系統
的ノ大經營組織、或ハ完全ナル統制ト云フコ
トヲ企圖スルガ爲ニ、旣設ノ本事業ヲ殆ド
全部合同スルト云フコトガ、其目的ノ一ツ
トナッテ居リマス、合同ノ目標ハ銑鐵ノ全
部、鋼材ハ約八割ニナッテ居リマス、アトノ二
割ハドウシテ殘サレルカト申シマスルト、是
ハ他ノ事業ニ附著ヲシテ取去ルコトガ出來ナ
イ狀態ニ在ル、サウシマスレバ製鐵工業ニ對
スル所ノ旣存設備ノ能力ヲ全部、之ヲ合同ス
ルト云フコトヲ政府ガ目的トシテ居ラレル、
是ハ私共非常ニ結構ナコトヽ思ッテ贊成ス
ル理由ノ一ツデアリマス、ソレカラ其次ニ
ハ、合理化ノ徹底ヲ圖ルコトヲ目的トシテ
居ルコトハ、當然ノコトデアルト思フノデ
アリマス、ソレカラ資本ノ整理ヲスルト云
フヤウナコトデ、先ヅ從來ノ整理ヲ完全ニ
遂ゲヨウト云フコトモ、其目的ニナッテ居
ルノデアリマス、是等ノ點ハ旣ニ私ガ前ニ
申上ゲタ、原價ノ低減ヲ致シマスルニ付テ
必要ナ條件デアル、其必要條件ヲ政府ガ皆
數ヘ擧ゲテ居ラレル、斯樣ニ信ジテ本案ニ
贊成ヲ致スノデアリマス、併ナガラ此案ニ
付テ率直ニ其缺點トモ稱スベキコトヲ申セ
バ、此案ニハ具體的ノ計畫內容ガ伴ッテ居
ラナイ、是ガ吾々ニ不安ヲ與フル所ノ一事
デアルノデアリマス、ソコデ私共ハ附帶決
議ニ同意ヲシタリ、或ハ希望條項ヲ述ベザ
ルヲ得ナイト云フコトニナルノデアリマス
以下私ガ其希望條項ヲ述ベルコトニ依リマ
シテ、一層私共ノ主張ガ明ニナルコトト思
フノデアリマス、希望條項ノ文章ハ委員長
カラ御讀ミニナリマシタカラ、文章ヲ讀ム
コトハ私ハ玆ニ略シマスルガ、先ヅ其第一
項ノ意味ハ、政府ガ此合併豫定會社ノ併合
ヲ實現スルコトヲ要ス、是ガ希望條項ノ第
一項デアリマス、何故斯樣ニ申シマスカト
言ヒマスト、政府ノ御說明ニ依〃テ伺ヒマ
スルト云フト、本案ガ成立ヲ致セバ、銑鐵五
社ハ是ハ直チニ合併出來ル見込ガアルト、
斯ウ仰セラレル、私共モ左樣ニ信ジマス、
所ガ殘リノ銑鐵一社竝ニ鋼材ノ八割ハ五箇
年ノ間ニ何トカナラウ、是ハナルカモ知レ
マセヌケレドモ、此點ガドウモ私共ハ不安
ヲ懷カザルヲ得ヌ點デアリマス、是ガ若シ
合併ガ出來ナケレバ、此案ノ筋書ノ大切ナ
ル點ガ、一ツ崩レテシマウノデアリマス、
原價ノ低減ノ目的ガ損ハレテシマウノデア
リマス、ソレ故ニ私共ハ之ヲ强要スルノデ
アリマス、斯ウ云フ國家ノ大目的ヲ達スル
ノニハ、政府ハ餘程强イ腹ヲ御持チニナル
必要ガアルト思フ、現ニ國有鐵道ノ例ニ見
テモ明デアリマス、國家ガ其目的ヲ達スル
爲ニハ、民間ニ許シタ特許年限ニ達シナイ
中ニデモ、鐵道國有ガ行ハレタデハアリマ
セヌカ、遠慮ヲ爲サル必要ハナイ、是非必要
ダト思ッタラ、敢然トシテオヤリニナル方ガ、寧
ロ事端ヲ繁クシナイ所ノ利益ガアルト私ハ考
ヘル位デアリマス、ソレ故ニ此點ハドウシテ
モ政府ガ是非目標ノ合同ヲ實現シテ見セル
ト云フ、强イ腹ヲ以テ進マレタイ、此事ヲ吾
吾ハ希望ノ一項トシテ申述ベザルヲ得ナイ
第二ノ希望條項ハ、創立ニ當,テ設備改
廢ノ計畫ヲ立テ、サウシテ合理化ノ徹底
ヲ期セラレタイ、是モ矢張原價ヲ低減スル
技術方面ヨリスル唯一ノ方法デアルト私共
ハ考ヘル、此點ニ關シ若シ政府ガ之ニ對ス
ル事業計畫書ナリ、設備改廢ニ關スル具體
的計畫案ヲ出サレテ居ラレルナラバ、私共
ハ斯樣ナコトヲ申上ゲル必要ガナイ、然ル
ニ政府ハ單ニ合理化ノ徹底ヲ圖ルト云フ御
說明ヲ爲サッテ居ルダケデアリマス、私共ハ
是ガ合同致シマシテモ、相當ナ何千万或ハ
一億圓位ヲ要スルカモ知レマセヌガ、ソレ
程ノ設備ノ改廢ヲ行ハナケレバ、ドウシテ
モ製鐵事業ノ現狀ヲ根本的ニ改革シテ、サ
ウシテ原價ノ低減ヲ齎ラスト云フコトハ出
來ナイト、斯ウ深ク考フルノデアリマス、
現ニ當局ノ御說明ノ中ニモ、三百瓲爐ト五
百瓲爐ノ能率ハ是々デアル、原價ニ是ダケ
ノ影響ガアルト斯ウ申シテ居ラレル、嘗テ
ノ合同計畫ノ中ニハ、合同ガ出來レバ直
チニ進ンデ七百瓲爐ヲ造ルト云フ計畫
ガアッタカモ知レヌト思フノデアリマ
スガ、何レニシマシテモ思切ッタ設備ノ
改廢計畫ヲ立テナケレバナラヌト思フノデ
アリマス、此點ガ民間會社ナドガヤッテ居
リマスルト、出來惡イ點デアリマス、幸ニ
シテ官民合同ノ特殊ノ會社ヲ作ッテ、資金
ノ心配ガナイノデアリマスカラ、此場合ニ
於ケル問題ハ單ニ金利ノ問題ト-使ヘバ
尙且ツ是ハ使用出來ルケレドモ、此能率ノ
モノヲ使フヨリハ之ヲ捨テヽ、サウシテ新
ニ資金ヲ要シテモ、金利トノ見合ヒガドウ
ナルカト云フコトノ判斷ヲ致セバ、玆ニ進
ンデ此改廢ヲスルコトガ宜イト云フ判斷ハ
直チニ付クト思フ、又斯クスルコトニ依ッテ
ノミ國家ノ目的ヲ充シ、吾々國民生活ノ改
善ヲスル途ガ開ケテ來ルト思フ、此點ガ要
點デアルニ拘ラズ、尤モ政府ニハ其腹案ガ
アルカモ知レマセヌ、知レマセヌケレドモ、
私共ガ具體的ニ之ヲ知リ得ナカッタト云フ
コトヲ遺憾ニ考ヘマシテ、特ニ之ヲ希望條
項ノ一項トシテ加ヘタ次第デアリマス
第三項ハ、合同會社ガ出來タ後ニ、成ベ
ク速ニ鐵鋼關稅ノ減廢ヲ斷行セラレタイト
云フコトデアル、是ハ洵ニ當然ナコトデア
リマス、現在ノ我ガ產業ノ根幹ヲ成ス所ノ
鐵鋼-國民生活ノ根柢ヲ培ッテ居ル所ノ
鐵鋼ガ、現在ノ價格ハ抑、如何ナル性質ノ
モノデアリマセウカ、是ハ製鐵業自體ノ業
務カラ生レテ來テ居ル所ノ正當ノ價格デハ
ナイ、是ニハ關稅ガ加ヶテ居ル、國稅、地方
稅ノ免除ガ加ッテ居ル、製鐵事業材料ノ輸入
ノ免稅ガ行ハレテ居ル、製鐵奬勵金ガ加ッテ
居ル、斯ノ如クシテ繼ギ足シヲシテ此價格
ヲ引上ゲテ居ルノデアル、是ハ全ク幽靈ノ
如キ價格-國家ノ犠牲ト、消費者ノ負擔
ニ依リマスル所ノ幽靈的ノ價格デアル、商
工大臣ハ輸出ニマデ進ムト言ハレマシタ
ガ、私モソレハ結構ナ御考デアルト思フ、
遠キ將來ノコトヲ考ヘテ見マスレバ、我國
ハ一大製鐵國トシテ起ル所ノ要素ヲ持ッテ
居ルト考ヘマス、考ヘマスケレドモ、現在
ノ價格ガ斯ノ如ク數ヘ來レバ、七重ノ保護
ヲ以テ成立ッテ居ル、七本ノ支柱ニ支ヘラレ
テ居ル、此價格ヲ目ノ前ニ置イテ、商工大
臣ノ理想ヲ實現スルト云フコトハ、餘程ノ
努力ヲ要スル、私ハ本案說明ノ劈頭ニ於
テ、商工大臣ガ此不自然ナル價格ヲ正當ニ
引返スコトガ目的ダト言ッテ貰ヒタカッタノ
デアリマス、私共ハ原價ノ引下ガ行ハレテ
開稅ガ撤廢セラレ、安イ鐵鋼ガ供給セラレ、
量ニ於テ國防ヲ確保スルノミナラズ、產業
ノ基礎ガ固メラレ、國民生活ニ潤ヒヲ與ヘ
ルコトノ出來ナイヤウナモノデアルナラ
バ、此合同案ハ形式的ナモノトシテ、吾々
ハ何等ノ價値ガナイモノデアルト考ヘル、
デアリマスカラ此點ハ、政府ノ御說明ハ實
ハ大膽ナル御言明デハナイ、將來サウナッテ
行ケバ關稅ハ減廢セラルベキモノデアルト
云フ原則ヲ、御示シニナッテ居ルダケデア
ル、是デハ不滿足デアル、ドウカ是ハ一ツ
本當ノ目標トシテ揭ゲテ、銳意御努力ヲ願
ヒタイ、是ガ私共ノ希望ヲ申上ゲル第三ノ
理由デアリマス
第四ハ、滿洲國ニ於ケル邦人經營若クハ
支那人トノ共同出資ニ依ル所ノ製鐵業ト、
今囘ノ合同計畫トヲ一ツニセラレナカッタ
點デアル、是ハ私ハ實ニドウ云フ理由ニ基
クノデアルカ理解出來ナクテ、商工大臣ニモ
御尋ヲ致シ、陸海軍大臣ニモ御尋ヲ致シマシ
タガ、ドウモ要領ヲ得ナイノデアリマス、
其理由トシテ說明セラレル所ハ、何ンダカ細
カイ小サナ問題デ、殆ド私ハ理由ニナラナ
イ、理由ノ解釋ニ苦シムノデアリマスガ、
是ハ今ノ場合仕方ガアリマセヌ、仕方ガア
リマセヌケレドモ、此事業ノ性質ニ鑑ミテ
完全ナル統制ヲ期セラレ、將來色々ナル面
倒ナ禍根ヲ絕ツト云フ考カラ致シマシタナ
ラバ、政府ハ進ンデ更ニ〓〓適當ノ方策ヲ
講ジ、是モ合同ノ中ニ加ヘルト云フ方針ヲ
執ラレルコトガ必要デアルト考ヘマスルガ
故ニ、玆ニ希望ノ第四項トシテ之ヲ揭ゲマ
シタ次第デアリマス
次ニ希望條項ノ第五項デアリマス、是ハ
從來ハ地方稅モ共ニ免除シテ居リマシタ
ガ、斯ノ如キ場合デアルカラ製鐵業奬勵法
ヲ改正シテ、地方稅ダケハ取リ得ル途ヲ開
イタラ宜カラウ、斯ウ云フ希望デアル、國
ガ製鐵業ヲ保護シヨウト思ッタラ、他ニ方法
ガアルト思フ、地方公共團體ハ此事業ガア
ルガ爲ニ、交通ニ、衞生ニ、其他幾多ノ義
務的ノ負擔ヲ爲サナケレバナラヌ、ソレヲ
國家全般ノ目的ノ保護ノ爲ニ、一地方ニ義
務的ノ施設ヲシナケレバナラヌノニ對シ
テ、其途ヲ補フ所ノ稅金ヲ取ルコトガ出來
ナイト云フヤウナ方法ニシテ置クコトハ、
是ハ從來ト雖モ間違デハナカッタカト思フ、
デアリマスカラ此點ハ政府ガ留意シテ改正
ヲセラレタイト云フノガ、希望ノ第五項デ
アリマス
ソレカラ二箇ノ附帶決議、是ハ政友會ト
全ク同樣ノ考デアリマシテ、私共ハ委員會
ニ於テ政友會ノ鈴木君ノ御提議ニ贊成ヲ致
シタノデアリマス、其一ツハ、先程モ岸田
君カラ述ベラレマシタ通リ、評價ノ問題デ
アル、此評價ヲ過大ニ見積ッタナラバ、是ハ會
社ノ永久ノ癌デアル、併シ是ハ何レカト申
シマスレバ、過大ニ見積ラレル恐レガ十分
ニアル、故ニ過大ニ見積ラレルコトノナイ
ヤウニ、吾々ハ十分ノ警戒ヲ拂ハナケレバ
ナラヌ問題デアルト思フノデアリマスガ、
政府ノ示サレタ參考案ニ依リマスト、製鐵
所ナドハ現在ノ帳簿價格以上ニ評價ヲセラ
レヨウト云フ御意思ノヤウデナイカト私ハ
考ヘル、サウ云フ必要ガアリマセウカ、國
ガ總テノ產業ノ基礎ヲ爲ス、國民生活ノ基
礎ヲ爲ス此問題ヲ解決スルニ當ッテ、之ヲ一
ツノ單ナル政府ノ收入目的ノ營利事業カノ
如キ見解ノ下ニ、今會社ヲ作ルノダカラ、
之ニ利益ヲ出シテ評價ニ加ヘタイト云フヤ
ウナ吝ナ考ヲ有ツ必要ガ何處ニアルノデア
リマス、唯民間會社トノ比例ノ場合ニ於
テ、之ヲ不公平ニ見積ヲテハ困ルガ、併シ民
間會社ヲ是レ以上ニ安ク見積ルコトガ出來
ヌカラ、已ムヲ得ズ製鐵所モ利益ヲ出シテ
見積ルト云フガ如キ場合デアルナラバ、ソレ
ハ餘リニ勇氣ノナイ考デアル、私ハ是ガ行ク
ベキ途デアル、執ルベキ正シキ方途デアルト
判斷セラレタナラバ、ソレニ向ッテ勇敢ニ
邁進ヲセラレナケレバナラヌ、斯樣ニ考ヘ
テ、鈴木君ノ此御提議ニハ尤デアルト考ヘ
テ、贊成ヲ致シタ次第デアリマス
ソレカラモウ一ツノ附帶決議、卽チ「製
鐵所ト八幡市其ノ他直接關係市町村トノ特
殊ノ沿革及將來ノ緊密ナル關係ニ鑑ミ」云
云ノ項目デアリマス、是ハ八幡ニ於ケル製
鐵所ト八幡市ノ關係デアルトカ、或ハ大牟
田ニ於ケル三井ノ事業ト大牟田市ノ關係デ
アルトカ云フ問題、是ハ全ク其事業ガ起,
タ爲ニ、其大都市ガ出來タノデアリマス、
三十何年前ニハ一農漁村デアリマシタモノ
ガ、人口十七万ヲ有スル八幡市ト、人口八
万ヲ有スル大牟田市ガ出來タト云フヤウナ
譯デ、事業トノ關係ハ全ク有機的ニ離スコ
トガ出來ナイ關係ヲ生ジテ居ル、一度政府
ガ此處置ヲ誤ルナラバ、十七万市民ノ生活
ニ激變ヲ起ス虞ガアル、製鐵事業ハ大切デ
アリマスガ、同時ニ國家ノ目的ノ上ヨリ致
シマシテ、是等ノ有機的關係ニアル市民
生活ノ上ニ、若シ手落ノ結果不幸ナル事
態ヲ齎スナラバ、遺憾至極ト言ハネバナ
ラヌ、故ニ此點ハ十分ニ注意シテ適當ニ
善處セラレタイト云フコトガ、私共ノ主
張ノ要點デアリマス、而シテ最後ニ何カ
小池四郞君ガ、今度ノ案ト從來歷代內
閣ガ考ヘタ案トハ、餘程違ッテ居ヲテ、國
家的目的ノ意圖ガ變"テ居ル、其點ヲ是
認スルト云フ御說ガアッタヤウニ聽取リマ
シタガ、是ハ何カノ御間違デアラウト思フ
ノデアリマス、前時代カラノ案ト變クテ居
ル所ハ、商工大臣ガ委員會デ言明セラレテ
居ル通リ、單ニ政府ノ一億圓ノ補償ガ無ク
ナッタト云フコト、竝ニ關稅ノ問題ガ解決
セラレテ居ルカラ、其點ガ變ヲテ居ルト云
フコト、此二點ニ過ギナイト私ハ考ヘテ居
ル、是ハ附加ヘタル問題デアリマスガ、小
池君ノ間違ヲ正シテ置ク次第デアリマス、
以上述べマシタル理由ニ依リマシテ、私
玆ニ本案ニ贊成シ、本案ガ完全ニ實現セラ
レテ、我ガ國民經濟上ニ於ケル此大問題ヲ
而モ不況ノ機會ニ解決シ、以テ國民經濟飛
躍ノ速進ヲ期セントスルモノデアリマス、龜
井君ハ何カ鳶ガ鷹ヲ生ンダトカト政府ノ此
企圖ヲ御褒メニナッタ、サウ御褒メニナル位
ナラバ、龜井君ハ當然贊成セラレナケレバ
ナラヌ、褒メテ置イテ反對トハ、世間デハ
例ノ無イコトデアリマス、故ニ前ノ反對ヲ
飜サレテ、龜井君モ當然本案ニ贊成セラレ、
本案ガ滿場一致ヲ以テ通過スルコトヲ確
信致シマシテ、此壇ヲ降ル次第デアリマス
(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02619330314&spkNum=21
-
022・秋田清
○議長(秋田〓君) 岸衞君
〔岸衞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02619330314&spkNum=22
-
023・岸衞
○岸衞君 私ハ只今議題ニナッテ居リマス
ル日本製鐵株式會社法案竝ニ製鐵業奬勵法
中改正法律案、此兩案ニ對シマシテ、我ガ
國民同盟ヲ代表致シマシテ、贊成ノ意見ヲ
述ベント欲スル者デアリマス(拍手)
本案ノ內容ニ付キマシテハ、旣ニ論議シ
盡サレテアリマスルガ、此內容ニ付キマシ
テハ、幾多ノ不備缺陷ガ存シテ居ルノデア
リマス、第一ニ日本製鐵株式會社ガ半官半
民ノ形態ヲ備ヘテ居ルコトデアリマス、我
ガ同僚諸君ハ此案ニ對シマシテ、官營トカ
民營トカ、斯ウ云フ議論ヲ爲サッテ居ラレ
マスケレドモ、私ハ是ハ純然タル官營デモ
勿論ナク、又純然タル民營デモ勿論ナイト
云フコトヲ考ヘルノデアリマス、先程龜井
君ハ「シトロン」ト「サイダー」トヲ以テ、此
例證ヲ爲サッテ居ラレマシタケレドモ、私
ハ此案ハ純然タル「サイダー」デモ、亦「シ
トロン」デモナイ、丁度「サイダー」ト云フ
官營ト「シトロン」ト云フ民營、此二ツヲ
混ゼ合シタル「コクテール」ノ如キモノデア
ル、斯ウ考ヘル、私ハ假ニ之ヲ名付ケテ中
島「コクテール」ト申シテモ差支ナイト思フ、
甚ダ口當リハ宜シイケレドモ、生一本デナ
イ點ヲ遺憾ニ思フノデアリマス、諸君、半
官半民ノ會社ニハ、旣ニ滿鐵ニ於テ其例ヲ
見ル如ク、幾多ノ弊害ガ存在シテ居ルノデ
アリマス、其最モ尤ナルモノハ何デアルカ
ト申シマスナラバ、內閣ノ更迭每ニ首腦部
ガ更迭ヲ致シマシテ、隨テ其經營方針ニ大
動搖ヲ來スト云フコトデアルノデアリマス
(拍手)我國ノ製鐵業ガ折角合同ハ致シマシ
テモ、內閣ノ更迭每ニ其經營方針ヲ變更スル
ガ如キコトガアリマスナラバ、洵ニ由々シ
キ大事ナリト私ハ言ハザルヲ得ナイト思フ
ノデアリマス(拍手)此意味ニ於キマシテ、
半官半民ノ此經營ニ對シテハ、吾々ハ聊カ
不滿ヲ感ズル者デアリマシテ、百尺竿頭一
步ヲ進メテ、寧ロ純然ト民營ナラバ民營、
官營ナラバ官營トヤッタ方ガ宜シイト、斯ウ
考ヘテ居ルノデアリマス、併ナガラ既ニ此
形態ヲ以テ當局者ハ十分ナリト御考ヘニ
ナッテ御提出ニナリマシタカラ、暫ク其成行
ヲ監視致シマシテ、斯ル情弊ノ生ゼザラン
コトヲ、吾々ハ國民ト共ニ大ニ監視セント
欲スルモノデアリマス(拍手)
第二ハ民間ノ諸會社ヲ合同セシメル上ニ
於キマシテ、政府ハ何等ノ强制權ガナイト
云フ點デアリマス、政府ハ先ヅ纒リ易キ五
社ヲ合同ヲ爲シ、次デ五箇年以內ニ他ノ六
社ヲ併合セシメントスル計畫デアリマス
ルガ、此合同ニ付キマシテハ、何等ノ
政府ニ强制權ガナイノデアリマスルカラ、
國家權力ノ發動ガナイノデアリマスルカ
ラ、唯風ノ間ニ間ニフワリ〓〓ト合同ヲ
期待スルニ過ギナイノデアリマシテ、私ハ
其會社ノ利害關係、又其時ノ事情等ニ依
リマシテハ、或ハ政府ノ期待スルガ如
キ、此會社ノ實現ハ決シテ容易デナイト考
ヘルノデアリマス、而シテ政府ガ唯單ニ合
同ヲ促進スル所ノ唯一ノ武器ト致シマシテ
ハ、奬勵金ヲ廢シ、サウシテ非合同會社、
卽チ「アウトサイダース」ヲ遠捲キニ壓迫セ
ントスルノデアリマシテ、斯ル手段ハ恰モ
繼母ノ繼子窘メニ類スルモノデアリマシテ、
正々堂々ノ手段方法ヲ缺イテ居ルコトハ、
甚ダ遺憾ニ堪ヘナイノデアリマス(拍手)先
程岸田君ガ御述べニナリマシタガ、國家權
力ガ加ハラナイノガ宜シイト云フ御意見デ
アル、櫻井君ハ、當然モウ少シ力强イ統制
力ヲ持ツベキデアルト云フコトヲ御主張ニ
ナリマシタガ、私ハ此點ニ於キマシテハ櫻
井君ト同樣、政府ガ漠然ト統制其モノハ考
ヘテ居リマスケレドモ、進ンデ確乎タル勇
敢ナル、此自由主義ニ對スル所ノ修正ノ方
法ヲ缺イテ居ルト云フコトガ、本案ニ於テ
一大缺陷ナリト考ヘル次第デアリマス、併
シ當局ハ合同ニ對シマシテハ、十分ノ成算
ヲ有〃テ居ルト云フコトヲ聲明シテ居リマ
スルカラ、吾々ハ暫ク假スニ時ヲ以テセン
トスルモノデアリマス、若シ政府ガ將來此
民間十一社ノ合同ニ失敗ヲ致シマスルナラ
バ、此日本製鐵株式會社ノ成立ノ根本意義
ヲ滅却スルコトニナルノデアリマスルカラ、
政府ノ責任ハ極テ重且ツ大ナリト言ハザル
ヲ得ナイノデアリマス
第三點ハ生產費ノ切下ノ問題デアリマス、
政府ハ合同ノ上ハ生產費ノ十分ナル切下ヲ
行ヒマシテ、銑鋼各一瓲ニ對シマシテ約五
圓ノ切下ヲ期シテ居ルノデアリマス、果シ
テ豫期ノ成績ヲ擧ゲ得ルヤ否ヤ、私ハ大ニ
憂慮ナキ能ハヌノデアリマスガ、况ヤ政府
ガ聲明シテ居ル如ク、三千万圓ノ巨利ヲ一
年ニ生ミ出スガ如キハ、蓋シ畫ニ描キタル
餅ノ如キモノデアリマシテ、到底吾々ノ首
肯シ得ナイ所デアリマス、併ナガラ政府ハ
此點ニ於キマシテモ、十分ナル確信ヲ披瀝
シテ居リマスカラ、暫ク之ヲ認容致シマシ
テ、若シ豫期ノ成績ヲ裏切ル如キコトガア,
タナラバ、政府ハ其責任ヲ何トスルカ、十
分愼重ニ豫期ノ成績ヲ擧ゲラレンコトヲ、
私ハ玆ニ警〓ヲ致ス者デアリマス、而シチ
此生產費ノ切下ノ目的ハ、當然從業員竝ニ
消費者階級ノ福利ヲ、第一ニ目的トシナケ
レバナラヌト考ヘルノデアリマス、若シ此
會社ガ單ニ合同ノ上ニ於キマシテ、資本ノ
擴大强化ニ終リ、獨占事業ノ擴大强化ニ終
ルヤウナコトガアッテ、消費者階級竝ニ從業
員ノ福利ヲ無視スルガ如キコトガアッタナ
ラバ、吾々ハ之ニ對シ非常ナル關心ヲ以テ、
大ニ將來鬪ハナケレバナラヌ時期ガ來ルト
云フコトヲ言明スルノデアリマス
第四點ハ從業者ニ對スル待遇ノ問題デア
リマス、政府ハ八幡製鐵所ノ從業員ニ對シ
マシテ、何等失業者ヲ出サズ、又合同前ト
同樣ノ待遇ヲ爲スコトヲ約束シテ居ルノデア
リマス、併ナガラ吾々ヲ以テ見ルナラバ、八
幡製鐵所從業員ニ對シマシテ、合同前ト同ジ
ヤウナ待遇ヲ爲スト云フコトハ頗ル怪シカラ
ヌ、政府ハ此合同ニ依リ一年ニ三千万圓ノ巨
利ヲ得ルト云フコトヲ聲明シテ居ル以上ハ、合
同シタ上ハ此巨利ヲ先ヅ第一ニ從業員ニ宛行
ハナケレバナラヌ、然ラバ今日ヨリモヨリ良キ
待遇ヲ八幡製鐵所ノ從業員ニ與ヘルト云フコ
トガ、本旨デナケレバナラヌト私ハ考ヘルノデア
リマス、而シテ合同ニ當リマシテハ、少ク
トモ從業員ノ中デ、今迄功勞ノアッタ者ニ
對シテハ、株ヲ分讓スル位ノ肚ハ政府ニアッ
テ欲シイ、サウシテ又此新會社ガ出來ルナ
ラバ、重役ノ一人ハ少クトモ此從業員ノ中
ヨリ出シテ、而シテ勞資協調ノ目的ヲ達セラレ
ンコトヲ切望スルノデアリマス、尙ホ八幡市其
他工場ノ所在地ニ於キマシテハ、今迄ノ特
典ヲ保留スルコトハ勿論デアリマスケレド
〓、更ニ進ンデ地方町村ノ困憊セル今日ノ
狀態ニ鑑ミマシテ、地方稅ヲ賦課スルコト
ニ對シ、將來政府ハ其意ヲ致サレンコト
ヲ、此場合希望シテ置クノデアリマス
第五ハ世間往々本案ヲ指シマシテ、ボロ
會社ノ救濟ニアラズヤト非難サレル點デア
リマス、私ハ中島商工大臣ノ人格ニ顧ミマ
シテ、斯ル事ナキヲ確信スル者デアリマス
ガ、此案ガボロ會社ノ救濟ニ終ルカ終ラナ
イカト云フ分岐點ハ、何處ニアルカト申シ
マスルナラバ、卽チ決議事項ニアルガ如ク、
民間會社ノ資產ガ評價審査委員會ニ於テ、
ドノ程度マデ切下ゲ得ラレルカ、得ラレナ
イカト云フ、此點ニ存スルノデアルト考ヘ
ルノデアリマス、吾々ハ政府ノ揚言スル如
〃、三分ノ二ニ其資產ヲ切下ゲルコトガ出
來マシタナラバ、決シテ本案ハボロ會社ノ
救濟ニ終ルモノデナク、國家ノ爲メ大ニ慶
賀スベキ案デアルト考ヘマス、若シ之ニ反
シテ審査會ニ於テ情實纒綿、其評價ヲ寛ニス
ルガ如キコトガアリマシタナラバ、畢竟本
案ハ卽チ世間非難ノ如ク、ボロ會社ノ救濟
案ト化シマシテ、折角ノ鐵統制案ノ前途ニ
暗雲ヲ漲ラスコトニナルノデアリマスカ
ラ、政府ハ特ニ此點ニ付キマシテ留意セラ
レンコトヲ熱望スルノデアリマス(拍手)
第六點ハ滿洲ニ於ケル製鐵業ト本會社ノ
聯絡統制ニ關スル點デアリマス、政府ハ此
點ニ關シマシテ、遺憾ナガラ未ダ萬全ノ策
ヲ講ジテ居リマセヌ、吾々ハ滿洲ニ於ケル
所ノ製鐵業ガ、政府ノ言フガ如ク外國ノ事
デアルカラト言ウテ、唯徒ニ無統制ノ儘
ニ放棄シテ置ク譯ニハ行カナイノデアリ
マス、否、此兩者ハ恰モ車ノ兩輪ノ如ク、鳥
ノ兩翼ノ如キ關係デアリマス、此兩者ノ
統制ヲ無視シテハ、我國ノ眞ノ製鐵業ノ
統制ハ斷ジテナイノデアリマス、此見地
カラ致シマシテ、政府ハ此機會ニ於テ一日
モ早ク、其促進ヲ期セラレンコトヲ切望ス
ルノデアリマス
以上申述べマシタル通リ、此法案ハ未ダ
幾多ノ不備不滿ノ點ガアリマスルケレド
モ、吾々同志ガ敢テ此案ニ贊成ヲ致シマス
ル所以ハ、第一ニ八幡製鐵所ヲ民營ニ移ス
上ニ於キマシテ、國防上何等ノ支障ナシト
云フ軍部ノ保證ヲ得テ居ルコトガ、其理由
ノ一ツデアリマスルガ、更ニ進ンデ吾々國
民同盟同志ガ、本案ニ贊成スル所ノ一大眼
目ハ、我國ノ重要基本工業タル鐵ノ合同統
制ガ、故意カ偶然カ、意識的カ無意識的カ
分リマセヌガ、兎ニ角ニモ吾々同志ガ立黨
以來常ニ天下ニ絕叫シテ居リマスル所ノ統
制經濟主義ニ、全タ其軌ヲ一ニシテ居ル點
ガ、卽チ吾々ガ敢テ此案ニ贊同スル所以デ
アリマス、本案ハ今迄ノ自由主義經濟ニ對
スル所ノ修正改善デアリマシテ、全ク新シ
キ經濟機構ノ下ニ組立ラレタルモノデ、現
在ノ經濟界ニ於ケル所ノ一大革命トシテ、
私ハ許シテモ差支ナイト思フノデアリマ
ス、卽チ本案ハ單ナル鐵ノ合同統制ト云フ
意味デハナクテ、現在ニ於ケル自由主義經
濟ニ對シ、修正改善ノ一石ヲ投ジタルモノ
トシテ、相當意義アル立案デアル、斯ウ考
ヘテ居ルノデアリマス諸君、今ヤ自由主義
經濟ハ全ク行詰ッテ居リマス、此行詰リヲ
打開シテ、何等カノ方法ヲ講ジナケレバ、
明ニ我ガ經濟界ハ破綻ニ導カレ、延テ思想
上ノ惡化ハ益、激シカラントシテ居ルノデア
リマス、吾々同志ハ玆ニ顧ミル所ガアリマ
シテ、此經濟界ノ行詰リヲ打開シ、思想ノ
惡化ヲ防ギ、サウシテ妖雲ヲ披イテ天日ヲ
拜スル、其方法ハ此統制經濟以外絕對ニナ
キコトヲ信ジマシテ、立黨以來常ニ天下ニ
呼號致シマシテ、天下大衆ノ共鳴ヲ得テ居
ル次第デアリマス、今玆ニ無氣力ニシテ、
半死半生ノ埀死ノ齋藤內閣ガ、其臨終ニ方
リマシテ、今ハノ際ニ方リマシテ、斯ノ如
キ經濟上ノ一大新紀元ヲ劃スベキ所ノ重要
法案ヲ出サレマシタルコトハ、先程龜井君
ガ言ハレマシタ通リ、蔦ガ鷹ヲ生ンダ、或
ハ瓜ノ蔓ニ茄子ガ生ッタトデモ申シマセウ
カ、兎ニ角意識的デアッテモ、無意識的デ
アリマシテモ、何カノ戶惑ヒデアッテモ、全
タ我黨ノ政策ト一致スル點ニ於キマシテ、
私ハ國家ノ爲ニ慶賀ニ堪ヘナイト思フノデ
アリマス、而モ過當ナル配當ヲ抑制スルト
云フ點ニ於キマシテハ、一般大衆ノ利益ヲ
先ニシマシテ、サウシテ資本ノ營利ヲ避
ケントスル點ニ於キマシテハ、其經營方針
ニ新機軸ヲ出シタルモノデアリマシテ、是レ
單ナル營利統制經濟デハナイ、此我黨ノ主
張致シテ居リマス所ノ公益統制經濟主義其
モノト合致スルモノデアリマシテ、吾々ガ本
案ニ對シマシテ衷心ヨリ贊成ノ意ヲ表スル
モノハ、卽チ此主義ニ合致シテ居ルガ故デア
ルノデアリマス(拍手)斯ノ如ク本員等國民同
盟ノ同志ガ、本案ニ贊成ヲ致シマスル所ノ
動機ハ、經濟界ニ新生命ヲ喚起スベキ主義
ノ問題ニ、其論據ヲ置イテ居ルノデアリマ
スガ、政民兩黨ノ諸君ハ、松本君ガ過日委
員會ニ於テ述ベラレマシタル通リ、唯吾々
ハ現内閣ヲ信賴スル與黨デアルガ故ニ贊成
スルト云フノデアリマシテ、此行詰レル資
本主義ニ對シマシテ何等ノ自覺ナク、唯漫
然ト之ヲ贊成スルガ如キコトハ、吾々ノ此
案ニ贊成スルノト、其意義ヲ異ニスルト云
フコトヲ私ハ揚言スルノデアリマス(拍手)
先程小池君竝ニ龜井君ガ、最モ傾聽ニ値ス
ル所ノ反對論ヲ御述べニナッテ居リマスル、
私ハ其中ニハ或ハ贊成ヲ致スモノモアリマス
ル、例ヘバ小池君ノ國家管理委員會ノ設
置ノ如キハ、是ハ當然斯ノ如キ管理ノ機關
ガ將來生レテ來ナケレバナラヌト思フノデ
アリマスルガ、龜井君ガ斯ノ如キモノハ現
內閣ニ依ッテハ出來ナイ、將來ノ內閣ニ依ッ
テモ出來ナイト云フコトヲ慮ラレテ居リマ
スルガ、次ノ吾々ハ安達內閣ニ於テ、此案
ヲ實現セント欲スルモノデアリマス、先日
ノ本會議ニ於キマシテ、民政黨ノ林君ハ、
政友會ノ放漫政策ヲ嗜メラレマシタガ、反
對ニ極端ナル緊縮政策ニ付キマシテモ、
吾々ハ苦イ經驗ヲ嘗メテ居ルノデアリマス
ル、放漫政策モ緊縮政策モ、共ニ國家ノ非
常時ヲ救フニ足リマセヌ、將又現在亞米利
加ニ於キマスル所ノ「テクノクラシー」ノ如
キモ、旣ニ自殺ヲシテ居ルノデアリマス、
是ニ於テ此非常時局ヲ救フベキモノハ、何
ヲ置イテモ外ニハナイ、我黨ノ主張スル所
ノ公益統制經濟以外ニハ、斷ジテ我國ノ經
濟界ヲ救ヒ、思想ノ善導ヲ完ウスベキ所ノ
政策ハナイト云フコトヲ私ハ斷言スルソデ
アリマス(拍手)當局ハ宜シク百尺竿頭一步
ヲ進メテ、唯單ニ鐵ノミナラズ、石炭、電
氣其他ノ重要產業ニ、此統制ヲ用ユベキデ
アリマス
最後ニ斯ル半官半民ノ會社ニハ、滿鐵ノ
例ニアリマスル通リ、各方面ノ魔ノ手ガ延
ビ易イノデアリマスルガ、現ニ世間デハ旣
ニ此會社ニ對シテ、重役ノ割込ノ豫約サヘ
シテ居ル者ガアルト傳へテ居ルノデアリマ
ス、洵ニ奇々怪々千萬デアッテ、吾人ノ寒心
ニ堪ヘナイ所デアリマスル、然ルニ之ヲ抑
制スルニハ、唯僅ニ課長級ノ若イ管理官ヲ
置イテ、之ヲ管理セシムルト云フニ過ギナ
イノデアリマス、私ハ此日本製鐵會社法案
ノ中デ、管理權ガ十分ニ政府ニナイト云フ
コトガ、此法ノ一大缺陷ナリト考ヘルノデ
アリマスルガ、政府ハ將來此改正ニ留意致
サレンコトヲ切望スルノデアリマス、吾人
ハ玆ニ新ニ光明ト希望ヲ浴ビテ生レ出デ
居リマス所ノ此日本製鐵株式會社ガ、過去
ノ半官半民ノ會社ニ於ケルガ如ク、各方
面特ニ旣成政黨ノ餌食トナリ、喰物トナ
リ、其好餌トナッテ、完全ナル發達ヲ阻マ
レルコトナキヲ、國民ト共ニ監視スルコト
ヲ聲明致シマシテ、玆ニ本案ニ贊成ノ意ヲ
表スル次第デアリマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02619330314&spkNum=23
-
024・秋田清
○議長(秋田〓君) 討論ハ終局致シマシ
ク、兩案ノ第二讀會ヲ開クニ御贊成ノ諸君
ノ起立ヲ求メマス
〔贊成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02619330314&spkNum=24
-
025・秋田清
○議長(秋田清君) 起立多數、仍テ兩案ノ
第二讀會ヲ開クニ決シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02619330314&spkNum=25
-
026・上田孝吉
○上田孝吉君 直チニ兩案ノ第二讀會ヲ開
キ、第三讀會ヲ省略シテ、委員長報〓ノ通
リ可決セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02619330314&spkNum=26
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027・秋田清
○議長(秋田〓君) 上田君ノ動議ニ御異議
アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02619330314&spkNum=27
-
028・秋田清
○議長(秋田清君) 御異議ナシト認メマ
ス、直チニ兩案ノ第二讀會ヲ開キ、議案全
部ヲ議題ト致シマス
日本製鐵株式會社法案
第二讀會(確定議)
製鐵業奬勵法中改正法律案
第二讀會(確定議)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02619330314&spkNum=28
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029・秋田清
○議長(秋田清君) 別ニ御發議モアリマセ
又、第三讀會ヲ省略シテ、兩案トモ委員長
報告通リ、可決確定致シマシタ(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02619330314&spkNum=29
-
030・上田孝吉
○上田孝吉君 議事日程變更ノ緊急動議ヲ
提出致シマス、卽チ此際政府提出、農業動
產信用法案、政府提出、漁業法中改正法律
案ヲ議題トシ、其審議ヲ進メラレンコトヲ
望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02619330314&spkNum=30
-
031・秋田清
○議長(秋田〓君) 上田君ノ動議ニ御異議
アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02619330314&spkNum=31
-
032・秋田清
○議長(秋田〓君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ日程ハ變更セラレマシタ、農業動
產信用法案、漁業法中改正法律案、右兩案
ヲ一括シテ第一讀會ヲ開キマス-農林大
臣後藤文夫君
農業動產信用法案(政府提出)第一讀會
漁業法中改正法律案(政府提出)
第一讀會
農業動產信用法案
農業動產信用法
第一章總則
第一條本法ニ於テ農業トハ耕作、養畜
又ハ養蠶ノ業務及之ニ附隨スル業務ヲ
謂フ
水產動植物ノ採捕若ハ養殖又ハ薪炭生
產ノ業務及之ニ附隨スル業務ハ本法ノ
適用ニ關シテハ之ヲ農業ト看做ス
第二條本法ニ於テ農業用動產トハ農業
ノ經營ノ用ニ供スル動產ヲ謂フ
前項ノ農業用動產ノ範圍ハ勅令ヲ以テ
之ヲ定ム
第三條本法ノ先取特權又ハ農業用動產
ノ抵當權ヲ取得スルコトヲ得ル者ハ信
用組合及勅令ヲ以テ定ムル法人ニ限ル
第二章農業經營資金貸付ノ先取
特權
第四條信用組合其ノ他勅令ヲ以テ定ム
ル法人ガ農業ヲ爲ス者ニ對シ左ニ揭グ
ル行爲ヲ爲スニ必要ナル資金ノ貸付ヲ
爲シタルトキハ其ノ債權ノ元本及利息
ニ付債務者ノ特定動產ノ上ニ先取特權
弓貝
一農業用動產又ハ農業生產物ノ保存
二農業用動產ノ購入
三種苗又ハ肥料ノ購入
四蠶種又ハ桑葉ノ購入
五薪炭原木ノ購入
六命令ヲ以テ定ムル水產養殖用ノ種
苗又ハ餌料ノ購入
前項ノ法人ガ農事實行組合、養蠶實行
組合其ノ他勅令ヲ以テ定ムル法人ニ對
シ其ノ農業用動產ヲ保存シ又ハ購入ス
ル爲ニ必要ナル資金ノ貸付ヲ爲シタル
トキ亦前項ニ同ジ
第五條農業用動產保存資金貸付ノ先取
特權ハ貸付ヲ受ケタル資金ヲ以テ保存
シタル農業用動產ノ上ニ存在ス
農業生產物保存資金貸付ノ先取特權ハ
貸付ヲ受ケタル資金ヲ以テ保存シタル
農業生產物ノ上ニ存在ス
前二項ノ先取特權ハ農業用動產又ハ農
業生產物ニ關スル權利ヲ保存、追認又
ハ實行セシムル爲ニ必要ナル資金ノ貸
付ニ付テモ亦存在ス
第六條農業用動產購入資金貸付ノ先取
特權ハ貸付ヲ受ケタル資金ヲ以テ購入
シタル農業用動產ノ上ニ存在ス
第七條種苗又ハ肥料ノ購入資金貸付ノ
先取特權ハ貸付ヲ受ケタル資金ヲ以テ
購入シタル種苗又ハ肥料ヲ用ヒタル後
一年內ニ之ヲ用ヒタル土地ヨリ生ジタ
ル果實ノ上ニ存在ス尙桑樹ノ肥料購入
資金貸付ノ先取特權ニ在リテハ其ノ果
實タル桑葉ヨリ生ジタル物ノ上ニモ亦
存在ス
第八條蠶種又ハ桑葉ノ購入資金貸付ノ
先取特權ハ貸付ヲ受ケタル資金ヲ以テ
購入シタル蠶種又ハ桑葉ヨリ生ジタル
物ノ上ニ存在ス
第九條薪炭原木購入資金貸付ノ先取特
權ハ貸付ヲ受ケタル資金ヲ以テ購入シ
タル薪炭原木ヨリ生產シタル薪炭ノ上
ニ存在ス
第十條水產養殖用種苗購入資金貸付ノ
先取特權ハ貸付ヲ受ケタル資金ヲ以テ
購入シタル種苗ヲ養殖シタル物ノ上ニ
存在ス
水産養殖用餌料購入資金貸付ノ先取特
權ハ貸付ヲ受ケタル資金ヲ以テ購入シ
タル餌料ヲ用ヒテ養殖シタル物ノ上ニ
存在ス
第十一條先取峠權ノ優先權ノ順位ニ付
テハ農業用動產又ハ農業生產物ノ保存
資金貸付ノ先取特權ハ動產保存ノ先取
特權ト、農業用動產又ハ薪炭原木ノ購
入資金貸付ノ先取特權ハ動產賣買ノ先
取特權ト、種苗若ハ肥料、鸞種若ハ桑
葉又ハ水產養殖用ノ種苗若ハ餌料ノ購
入資金貸付ノ先取特權ハ種苗肥料供給
ノ先取特權ト看做ス
第三章農業用動產ノ抵當權
第十二條農業用動產ハ農業ヲ爲ス者又
ハ農事實行組合、養蠶實行組合其ノ他
勅令ヲ以テ定ムル法人ガ信用組合又ハ
勅令ヲ以テ定ムル法人ニ對シテ負擔ス
ル債務ヲ擔保スル場合ニ限リ之ヲ目的
トシテ抵當權ヲ設定スルコトヲ得
農業用動產ノ抵當權ニハ本法其ノ他ノ
法令ニ別段ノ定アルモノノ外不動產ノ
抵當權ニ關スル規定ヲ準用ス但シ民法
第三百七十八條乃至第三百八十七條ノ
規定ハ此ノ限ニ在ラズ
第十三條農業用動產ノ抵當權ノ得喪及
變更ハ其ノ登記ヲ爲スニ非ザレバ之ヲ
以テ善意ノ第三者ニ對抗スルコトヲ得
ズ
前項ノ規定ハ登記ノ後ト雖モ民法第百
九十二條乃至第百九十四條ノ規定ノ適
用ヲ妨ゲズ
第一項ノ登記ニ關シ必要ナル事項ハ勅
令ヲ以テ之ヲ定ム
第十四條抵當權ノ目的タル農業用動產
ノ所有者ガ之ヲ讓渡セントスルトキハ
命令ノ定ムル所ニ依リ其ノ讓受人ニ對
シ抵當權ノ存在スル旨ヲ告知スルコト
ヲル大
前項ノ規定ハ抵當權ノ目的タル農業用
動產ヲ他ノ債務ノ擔保ニ供セントスル
トキニ之ヲ準用ス
第十五條抵當權ノ目的タル農業用動產
ノ所有者ガ之ヲ讓渡シ又ハ他ノ債務ノ
擔保ニ供シタル場合ニ於テハ遲滯ナク
前條ノ〓知ヲ爲シタル旨ヲ抵當權者ニ
〓知スルコトヲ要ス
抵當權ノ目的タル農業用動產ニ付第三
者ガ差押ヲ爲シタル場合ニ於テハ其ノ
所有者ハ遲滯ナク其ノ旨ヲ抵當權者ニ
告知スルコトヲ要ス
第十六條先取特權ト農業用動產ノ抵當
權ト競合スル場合ニ於テハ抵當權者ハ
民法第三百三十條ニ揭グル第一順位ノ
先取特權者ト同一ノ權利ヲ有ス
第十七條農業用動產ノ抵當權ノ實行ニ
關シ必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定
ム
第四章罰則
第十八條抵當權者ニ損害ヲ加フル目的
ヲ以テ抵當權ノ目的タル農業用動產ヲ
損傷シ又ハ隱匿シタル者ハ一年以下ノ
懲役又ハ千圓以下ノ罰金ニ處ス但シ所
有者ノ意思ニ反シテ損傷シタル者ニ付
テ刑法ニ依ル
第十九條抵當權ノ目的タル農業用動產
ノ所有者抵當權者ニ損害ヲ加フル目的
ヲ以テ該動產ニ關シ讓渡、質入其ノ他
抵當權ヲ侵害スベキ行爲ヲ爲シタルト
キハ一年以下ノ懲役又ハ千圓以下ノ罰
金ニ處ス
前項ノ動產所有者ノ代表者又ハ代理人
本人ノ爲ニ前項ノ行爲ヲ爲シタルトキ
亦同ジ
第二十條前二條ノ罪ハ〓訴ヲ待テ之ヲ
論ズ
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
登錄稅法第三條ノ六ノ次ニ左ノ一條ヲ加
フ
第三條ノ七農業用動產ノ抵當權ニ關ス
ル登記ヲ受クルトキハ左ノ區別ニ從ヒ
登錄稅ヲ納ムヘシ
一抵當權ノ取得
債劵金額千分ノ二
但シ稅額金二十錢未滿ナルトキハ
二十錢トス
二抹消シタル登記ノ囘復
農業用動產每一箇金十錢
三假登記
農業用動產每一箇金十錢
四附記登記
農業用動產每一箇金五錢
但シ一件ニ付稅額金一圓ヲ超ユル
トキハ一圓トス
五登記ノ更正、變更又ハ抹消
農業用動產每一箇金十錢
但シ一件ニ付稅額金一圓ヲ超ユル
トキハ一圓トス
漁業法中改正法律案
漁業法中左ノ通改正ス
第十五條漁業權又ハ入漁權ノ各共有者
ハ他ノ共有者ノ三分ノ二以上ノ同意ア
ルニ非ザレバ其ノ持分ヲ處分スルコト
司饔大
第十五條ノ二漁業權又ハ入漁權ノ各共
有者ガ其ノ共有ニ屬スル漁業權又ハ入
漁權ヲ變更セントスル場合ニ於テ他ノ
共有者ノ住所又ハ居所分明ナラザルト
キハ勅令ノ定ムル所ニ依リ裁判所ノ許
可ヲ以テ其ノ者ノ同意ニ代フルコトヲ
得
第十八條第二項中「若ハ家資分散」ヲ削ル
第二十八條中「分割、變更」ヲ「分割シ其
ノ他變更シ」ニ改メ同條ニ左ノ一項ヲ加
フ
第十五條ノ二ノ規定ハ漁業權ヲ分割シ
其ノ他變更セントスル場合ニ於テ登錄
シタル入漁權者ノ住所又ハ居所分明ナ
ラザル場合ニ之ヲ準用ス
第三十三條中「漁場ノ標識ノ建設」ノ下ニ
「又ハ漁具ノ標識ノ設置」ヲ加フ
第三十四條第一項第五號中「遺棄」ノ下ニ
「又ハ漏泄」ヲ加ヘ同項第六號ノ次ニ左ノ
一號ヲ加フ
七水產動植物ノ移植ニ關スル制限又
ハ禁止
同條第三項中「製品及漁具」ヲ「製品、漁
具及第一項第七號ノ水產動植物」ニ改ム
第三十五條第一項ヲ左ノ如ク改ム
汽船「トロール」漁業、母船式漁業、汽
船捕鯨業又ハ機船底曳網漁業ハ命令ノ
定ムル所ニ依リ主務大臣ノ許可ヲ受ク
ルニ非ザレバ之ヲ營ムコトヲ得ズ
第四十二條第三項中「市制」ヲ削リ「市町
村」ヲ「町村」ニ改ム
第四十三條第二項中「漁業ニ關スル」ヲ
「漁業又ハ其ノ經濟ノ發達ニ必要ナル」ニ
改メ同條第三項中「漁業組合ハ」ノ下ニ
「本法ニ別段ノ規定アル場合ヲ除クノ外」
ヲ加フ
第四十三條ノ二漁業組合ハ左ノ事業ヲ
行フコトヲ得
一水產動植物ノ蕃殖保護其ノ他漁場
ノ利用ニ關スル施設
二船溜、船揚場、漁礁其ノ他組合員
ノ漁業ニ必要ナル設備ノ設置
三組合員ノ漁獲物其ノ他ノ生產物ノ
加工、保藏、運搬又ハ販賣ニ關スル施
設
四組合員ノ漁業又ハ其ノ經濟ノ發達
ニ必要ナル物又ハ資金ノ供給ニ關ス
ル施設
五組合員ノ遭難防止又ハ遭難救恤ニ
關スル施設
六前各號ニ揭グルモノノ外組合ノ目
的ヲ達スルニ必要ナル施設
前項ニ揭グル組合ノ施設ハ組合員ノ利
用ニ支障ナキ場合ニ限リ組合員タルコ
トヲ得ザル者ヲシテ命令ノ定ムル所ニ
依リ之ヲ利用セシムルコトヲ得
第四十三條ノ三前條第一項第三號又ハ
第四號ノ事業ヲ行フ漁業組合ハ組合規
約ノ定ムル所ニ依リ組合員ニ出資ヲ爲
サシムルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ組合員ニ出資ヲ爲サ
シムル漁業組合(漁業協同組合)ノ組合
員ハ出資一口以上ヲ有スベシ
出資一口ノ金額ハ均一ニ之ヲ定ムベシ
出資一口ノ金額ノ最高限ハ命令ヲ以テ
之ヲ定ム
第四十三條ノ四漁業組合ハ組合規約ノ
定ムル所ニ依リ其ノ經費ヲ組合員ニ分
賦スルコトヲ得
第四十三條ノ五第四十三條ノ二第一項
第三號又ハ第四號ノ事業ヲ行フ漁業組
合ノ組織ハ無限責任、有限責任及保證
責任ノ三種トス
無限責任ノ組合ニ在リテハ組合財產ヲ
以テ其ノ債務ヲ完濟スルコト能ハザル
場合ニ於テ組合員ノ全員ガ連帶無限ノ
責任ヲ負擔シ有限責任ノ組合ニ在リテ
ハ組合員ノ全員ガ經費負擔額ノ外其ノ
出資額ヲ限度トシテ責任ヲ負擔シ保證
責任ノ組合ニ在リテハ組合財產ヲ以テ
其ノ債務ヲ完濟スルコト能ハザル場合
ニ於テ組合員ノ全員ガ其ノ出資額又ハ
經費負擔額ノ外一定ノ金額(保證金額)
ヲ限度トシテ責任ヲ負擔ス
第四十三條ノ六無限責任又ハ保證責任
ノ漁業組合ヨリ脫退シタル組合員ハ脫
退前ノ組合債權者ニ對シ其ノ脫退ヲ登
記シタル後二年間前條第二項ノ規定ニ
依ル責任ヲ負擔ス
第四十三條ノ七新ニ無限責任又ハ保證
責任ノ漁業組合ニ加入シタル組合員ハ
其ノ加入前ニ生ジタル組合ノ債務ニ付
テモ亦第四十三條ノ五第二項ノ規定ニ
依ル責任ヲ負擔ス
第四十三條ノ八漁業協同組合ハ命令ノ
定ムル所ニ依リ行政官廳ノ許可ヲ得テ
自ラ漁業ヲ營ムコトヲ得
第四十三條ノ九漁業協同組合ハ組合規
約ノ定ムル所ニ依リ組合ノ地區內ニ住
所ヲ有スル者ニシテ漁業者ニ非ザルモ
ノヲ組合員ト爲スコトヲ得
第四十三條第四項ノ規定ハ漁業者ニ非
ザル組合員ニハ之ヲ適用セズ
第四十三條ノ十漁業組合ハ組合規約ノ
定ムル所ニ依リ組合規約ニ違反シタル
組合員ニ對シ過怠金ヲ課スルコトヲ得
第四十四條漁業組合聯合會ハ所屬ノ漁
業組合及漁業組合聯合會ノ共同ノ目的
ヲ達スル爲行政官廳ノ許可ヲ得テ之ヲ
設立スルコトヲ得
漁業組合聯合會ハ法人トス
漁業組合聯合會ハ第四十三條ノ二第一
項第三號若ハ第四號ノ事業ヲ行フ漁業
組合又ハ漁業組合聯合會ヲ以テ之ヲ構
成ス
漁業組合聯合會ノ組織ハ有限責任及保
證責任ノ二種トス
第四十三條第三項、第四十三條ノ二、
第四十三條ノ三第二項乃至第四項、第
四十三條ノ四、第四十三條ノ五第二項、
第四十三條ノ六、第四十三條ノ七及前
條ノ規定ハ漁業組合聯合會ニ之ヲ準
用ス但シ第四十三條ノ二中組合員トア
ルハ所屬ノ組合、聯合會及組合員トス
第四十五條中「營業稅」ヲ「營業收益稅」ニ
改ム
第四十八條第三號ヲ左ノ如ク改ム
三解散又ハ事業ノ停止
第四十九條中「管理、」ノ下ニ「構成者ノ權
利義務及加入脫退、組織變更、」ヲ加フ
第四十九條ノ二漁業組合又ハ漁業組合
聯合會ノ役員何等ノ名義ヲ以テスルヲ問
ハズ組合若ハ聯合會ノ事業ノ範圍外ニ
於テ貸付ヲ爲シ又ハ投機取引ノ爲ニ組
合若ハ聯合會ノ財產ヲ處分シタルトキ
ハ一年以下ノ懲役若ハ禁錮又ハ千圓以
下ノ罰金ニ處ス
前項ノ規定ハ刑法ニ正條アル場合ニハ
之ヲ適用セズ
第五十八條第二項申「漁獲物及漁具ハ之ヲ
沒收ス」ヲ「漁獲物、製品及漁其ハ之ヲ沒
收スルコトヲ得」ニ、「價額ヲ追徵ス」ヲ
「價額ヲ追徵スルコトヲ得」ニ改ム
第五十九條中「汽船「トロール」漁業」ノ下
ニ「又ハ母船式漁業」ヲ、「汽船捕鯨業」ノ
下ニ「又ハ機船底曳網漁業」ヲ加へ「罰金ニ
處シ」ヲ「罰金ニ處ス此ノ場合ニ於テハ」ニ、
「漁獲物及漁具ハ之ヲ沒收ス」ヲ「漁獲物、
製品及漁具ハ之ヲ沒收スルコトヲ得」ニ、
「價額ヲ追徴ス」ヲ「價額ヲ追徵スルコト
ヲ得」ニ改ム
第六十一條中「漁場」ノ下ニ「又ハ漁具」ヲ
加フ
附則
第一條本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之
ヲルエ
第二條本法施行前ヨリ引續キ第四十三
條ノ二第一項第三號又ハ第四號ノ事業
ヲ行フ漁業組合ハ本法施行ノ日ヨリ五
年ヲ限リ其ノ組織ニ關シ第四十三條ノ
五ノ規定ニ依ラズ仍從前ノ規定ニ依ル
コトヲ得
第三條本法施行前ニ設立シタル漁業組
合聯合會ハ本法施行ノ日ヨリ五年ヲ限
リ其ノ構成者及組織ニ關シ第四十四條
第三項及第四項ノ規定ニ依ラズ仍從前
ノ規定ニ依ルコトヲ得
前項ノ聯合會ニシテ前項ノ期間內ニ其
ノ構成者及組織ニ關シ第四十四條第三
項及第四項ノ規定ニ依ル聯合會ト爲ラ
ザルモノハ其ノ期間滿了ノ日ニ於テ解
散ス
第四條印紙稅法第四條第一項第十一號
中「產業組合聯合會、」ノ下ニ「漁業組合、
漁業組合聯合會、」ヲ加フ
〔國務大臣後藤文夫君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02619330314&spkNum=32
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033・後藤文夫
○國務大臣(後藤文夫君) 農業動產信用法
案提出ノ理由ヲ申述べマス、農村漁村ニ於
ケル金融ノ現狀ニ鑑ミ、農漁業者ノ擔保力
ノ增加ヲ圖リ、其生產資金供給ノ圓滑ヲ期
スル爲メ、新ニ先取特權及農業用動產ノ抵
當權ニ關スル制度ヲ創設致シマシテ、以テ
信用組合等ニ依リ農漁業金融ノ圓滑ヲ圖ル
ニ資スルコトヽ致ス爲ニ、玆ニ農業動產信
用法案ヲ提出致シタ次第デゴザイマス、本
法案ノ要旨ハ、第一ニ農業及漁業等ノ經營
用品ノ購入等ニ必要ナ資金ノ貸付ヲ爲シタ
場合ニ於ケル、特別ノ先取特權ヲ認ムルコ
トヽ致シマス、第二ニ、農業者及漁業者等
ノ債務ノ擔保ニスル爲メ、農業者及漁業者
等ノ其業ノ經營ニ用ユル重要ナル動產ノ上
ニ、抵當權ヲ設定シ得ルコトヽ致シマス、
第三ニ、以上ノ先取特權又ハ農業用動產抵
當權ヲ取得シ得ルモノハ、信用組合其他特
定ノ法人ト致シマシタ、以上ガ要旨デゴザイ
マス、何卒御審議ノ上、御協贊アランコト
ヲ希望致シマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02619330314&spkNum=33
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034・秋田清
○議長(秋田〓君) 質疑ヲ許シマス、風見
章君
〔風見章君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02619330314&spkNum=34
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035・風見章
○風見章君 只今議題ニナリマシタ政府
提出ノ法案ニ關シマシテ、三四當局ニ質問
ヲ致シマス
第一點ハ本案ヲ何故モット早ク上程シナ
カッタカト云フ點ニアルノデアリマス、大體
今度ノ議會ニ於キマシテハ、會期切迫シマ
シテカラ幾多ノ重要法案ガ出サレタ、重要
法案ヲ會期切迫ノ時期ニ際シテ出シテ、而
モ緊急上程ヲシテ、內容ヲ未ダ〓究セザル
ニ直グニ議題ニ上セル、斯ウ云フヤウナコ
トニ對シテハ、其議案ニ對シテ吾々ハ本當
ニ審議出來ル筈ノモノデハナイ、デアリマ
スルカラ、政府トシテハ苟モ吾々議員ノ審
議權ヲ尊重セントスル考ガ毛頭デモアル以
上ハ、斯ノ如キ農村漁村ニ重大ナル關係ヲ
有スル法案ヲ出スノニ、其日ニ議案ヲ配ッテ
其日ニ緊急上程スル、斯ウ云フヤウナ態度
ニ出ルコトハ、正ニ吾々議員ノ審議權ヲ輕
ンズル所以デアリマスカラ、甚ダ怪シカラ
ヌト思フ(拍手)此點ニ關シテ政府當局ノ辯
明ヲ要求スル、最早餘命幾何モナイ內閣ダ
カラ、ソンナ內閣ニ斯ウ云フ嚴重ナ質問ヲ
スルコトハ心苦シイヤウニ感ズルノダガ、
フラ〓〓內閣ニ對シテ言フコトハ心苦シク
感ズルコトデアルケレドモ、併シ規律上默フ
テ居ラレマセヌカラ、當局ノ辯明ヲ要求ス
ル(拍手)
第二點ハ、此法案ハ金融ノ圓滑ヲ圖ルノ
ダト云フ、一體現內閣ハ金融ノ圓滑ト云フ
コトヲ、一個ノ形容詞ト心得テ居ルノデハ
ナイカ、私ハサウ思ハナイ、何トナレバ、
此法案ニ現ハレタル實質ハ、金融ノ圓滿ヲ
圖ラウト云フノデハナイ、少シバカリノ借
金ノ圓滿ヲ圖ルノデアル、金融ノ圓滿ヲ
圖ルコトヽ借金ノ圓滿ヲ圖ルコトヽハ、
自ラ類ヲ異ニスル(拍手)一體金ヲ借リル
コトノ途ヲ圖フテヤルガ、農漁村民ニ對シ
テ、拂フ途ハドウシテ吳レルノダ、コッチ
ノ方ニハチットモ手ヲ觸レテ居ラヌデハ
ナイカ、元來今日ノ金融逼迫ハ、金ガ借
リラレナクテ逼迫シタノデハナイ、金融ノ
途ガナイカラ逼迫シタノデハナク、多年ノ
誤ヲタ政治ノ結果、農民ノ生活ガ非常ニ逼
迫シテ來テ、借金サヘ返セナイト云フ
所ニ、金融逼迫ノ根本ノ原因ガアルノ
デハナイカ、苟モ此點ニ些少デモ考ガ
及ンダナラバ、現在農漁村ニ對シテ大
切ナコトハ、僅カバカリノ金融ノ途ヲ圖ル
コトヂヤナイ、農具トカ農產物、ソンナ物
ニ抵當權ヲ設置スルト云フ、枝葉末節ノ問
題デハナクテ、農業ヲシテ不利ナラシメタ
幾多ノ原因ヲ取除クコトガ、金融ノ圓滿ヲ
圖ル根本ノ仕事デナケレバナラヌ、大體私
共ハ此金融ノ圓滿ヲ圖ラントスル現內閣ノ
政策ニ關シテ、總テサウデアルガ、根本ニ
觸レナイ、膏藥貼リナノデアル、根本ノ所
ニ一體何ガ觸レテ居ルノデアルカ、此間米
穀統制法案ガ出テ來タ、アレハ米穀統制法
ヂヤナイ、大體アノ法案ハ、國民ノ食糧政
策ノ問題ト、農民ヲ救ハントスル米穀政策
ノ問題トゴッチヤニ、混同シテ考ヘテ居ル
カラ、アヽ云フ不徹底ナ統制法ガ生レテ來
タ譯デアル(拍手)恐ラク農林省ト雖モ、現
內閣ト雖モ、アノ米穀統制法案ニアッテハ、
國民ノ食糧政策ト米穀政策トヲ取違ヘタノ
ダト云フ位ハ分ッテ居ルダラウト思フ、此點
ニ付テモ米穀生產者ハ、アレデ助カリハシ
ナイ、アノ法案ガアル爲ニ、是ヨリ好クナ
ル、是ヨリ惡クナルコトヲ、幾ラカ喰止メ
ル位ノ力ハアルカモ知レマセヌケレドモ、
農民ヲ助ケル、積極的ニ好クスルト云フヤ
ウナ效能ガ達セラレナイト云フコトハ、諸
君モ御承知ダラウト思フ(拍手)或ハ負債整
理組合法案ト云ヒ、何處マデ徹底シタ所ガ
アルノダ、大體農民ノ金融ヲ圓滿ニスル、
斯ウ云フコトヲ考ヘルナラバ、肥料ノ統制
ヲヤルトカ、農具ノ統制ヲヤルトカ、自ラ
徹底シタ根本ノ途ニ入ッテ來ナケレバナラ
ヌ筈デアル、漁業問題デモサウダ、水產銀
行一ツナイノダカラ、サウ云フヤウナ銀行
デモ作ルト云フナラバ話ハ分ルケレドモ、
サウヂヤナイ、サウ云フ根本ノ問題ハ一切
投ゲヤリニシテ、頬被リデ見ナイ振リシテ
同じ、全ク膏藥貼リ同然ノ案ヲ出シテ、之
ニ「レッテル」ヲ貼ッテ、金融ノ圓滿ヲ圖ル、
是ハ飛ンデモナイ胡麻化シ政策ダト思フ
(拍手)一體今度ノ米國ノ金融恐慌ニ關シマ
シテハ、是ガ我國ニ自ラ重大ナ影響ヲ與ヘ
テ來ルコトハ申ス迄モナイ、特ニ農村ニ對
シテ惡イ打擊ヲ與ヘルデアラウト云フコト
モ見透シガ付ク、成程「ルーズヴェルト」
ハ色々ノ政策ヲヤッテ居リマスケレドモ、
併シ彼レ「ルーズヴェルト」モ、米國不況ノ
根本原因ニハチットモ觸レハシナイ、例ヘ
バサウヂヤナイカ「トラクター」ヤ「コンバ
イン」ニ依ル農業生產革命ニ依ル土地問題
ノ解決、農具問題ノ解決、是等ノ根本問題
ニハチットモ觸レナインダカラ、今度ノ金
融恐慌ハチヨット止メタ所ガ、ソレデ米國
ノ財界ハ好クナリハシナイ、好クナラナ
ケレバ、其影響ハ日本ニ來ル、來レバ先ヅ
第一ニ農村ニ來ル、現內閣ハ私ガ今申上
ゲタ如キ米國ノ財界ヲ見透シテ、是デハ軈
テ日本ノ農村モモット惡クナルダラウ、
モット惡クナッタラ、又借金ガ必要ニナッテ
來ルダラウ、其場合ニ吾々ニハ何モ策ガ
ナイカラ、何モ之ヲ防グベキ方法ガナイカ
ラ、何モ方法ガナイカラト言ッテハ、國民ニ
相濟マナイヤウナ氣持ガスルト云フノデ、
農民ガ一層借金スル必要ヲ認メ、其借金ノ
途ハ何處ニモ開ク所ガナイカラ、此邊ノ所
デチヨット借金ノ途ヲ開イテ胡麻化サウ、斯
ウ云フヤウナ態度デハナイカト、私共デス
ラ疑ハザルヲ得ナイノデアリマス(拍手)
第三ノ點ハ一體現內閣ハ斯ウ云フモノ
ノ爲ニ借金ノ途ヲ開イテヤルト云フノダカ
ラ、如何ニモ親切ノヤウダガ、借リタ金ヲ
一體何處デ返ヘサセヨウトスルノカ、現內
閣ノ無策無能ヲ隱ス政策ノ一ツニ自力更生
ガアル、自力更生ガ出來ル位ナラ負債整理
組合等ハ要ラヌ、借金ヲ拂ッテ吳レト一體誰
ガ賴ムカ、自力更生ガ出來ナクナッタカラ、
負債整理組合ヲ作ッテ借金ヲ整理サセナク
テハナラヌ、斯ウナッタノデハナカラウカ、
一體國民ノ自力更生ノ心、是ハ別ナ言葉デ
言ヘバ、自主獨立ノ觀念デアル、此觀念ハ
大ニ奬勵シナクテハナラヌ、大ニ尊敬シナ
クテハナラヌ、併ナガラ國民ガ自力更生ヲ
シヨウト、自分デ働イテ自分ノ運命ハ自分
デ開拓シヨウトスル、此尊ブベキ農村ノ農
民ノ氣持ヲ、自己ノ政策ノ何モナイコトヲ
テレ隱サウトシテ、此自力更生ノ心ヲ、政
策ノナイト云フ自分達ノ、何ト言フカ、無
能無力、之ヲ蔽ハントシテ、此自力更生ノ
精神ヲ利用セントスル如キハ、國民ノ自
尊心ヲ冒瀆スル所以デアリ、私共ハ斷ジテ
採ラナイノデアリマス、現內閣ノ命ヲチヨッ
トバカリ延バスニハ、役ニ立ツカ知レマセ
ヌケレドモ、斯ノ如ク國民ノ尊重スベキ精
神ヲ政策ニ利用セントスル如キハ、國家百
年ノ後ニ禍ヲ貽スモノデアリマスカラ、私
共ハ斯ウ云フ意味ニ於テ、政府ノ自力更生
策ニ斷シテ贊成シ難イノデアリマス、大體
ニ於テ現內閣ガ此案ヲ出シマスノハ、自力
更生ノ餘地ガ無イニ拘ラズ、自力更生トヤッ
テシマッタカラ、今更取消ス譯ニハ行カナ
イ、何トカ共處ヲ胡麻化サウト云フノデ、
卽チ此方ノ方ニ借金ノ途ヲ開イテヤルカラ
金ヲ借リロ、ソコデ自力更生シロト云フ、
斯ウ云フサモシイ根性カラ出タノデハナイ
カト思ヒマスガ、此點ニ對スル現內閣ノ考
方ハドウナノダ
モウ一ツ聞キタイコトハ、斯ウ云フヤウ
ナ物マデモ借金ノカタニシテ、抵當權ノ設
定ヲ許ス、斯ウナッテ來タナラバ、同時ニ農
業ニ關スル種々ナル保險制度ヲ設ケルコト
ガ、常識上ニ於テモ當然デアル、寧ロ其方
ガ根本策ナノデス、然ルニ其方ハ知ラヌ顏
シテヤラヌ、此間多分政友會ノ諸君ノ提案
ダト思ヒマスガ、民政黨モ吾々共モ色ミ妥
協シタ結果、農業保險制度ノ案ガ衆議院ヲ
通過シテ居ル、現內閣ハ衆議院ノ提案ヲ俟
タズ、農業保險ノ如キハ率先シテ自ラ立案
提案スベキモノデアル、然ルニソレハヤラ
ナイ、サウ云フ根本的ノコトテハヤラズシ
テ、單ニ斯ウ云フ法案ダケヲ出シテ知ラヌ
顏ヲシテ居ル、私ハ現内閣ガ農村救濟若ク
ハ漁村救濟ニ對シテ、幾何ノ誠意アルヤヲ疑
ハザルヲ得ナイノデアリマス(拍手)
次ノ點ハ、大體現在ノ-我國ニ於テ
モサウデアリマスガ、世界ヲ通ジテノ
新シキ法律ノ通念カラ申シマスレバ、本
案ニ依ヲテ金融ノ對象物トナッテ居リマ
スモノハ、差押サレナイヤウニ、法律ニ
依フテ擁護シテヤルコトガ當然デアル、
只今ノ法案ニ依ッテ金融ノ對象物トナッテ居
ル物ガ、差押サレタナラバ、農民ハドウシ
テ生キテ行クノダ(拍手)勞働者ノ足ニ抵當
權ヲ設定シ、手先ニ抵當權ヲ設定スル如キ、
殘酷ナヤリ方デアル、斯ウ云フ物ヲ抵當ニ
金ヲ借ルノダ、現內閣ハ飛ンデモナイ政治
バカリヤッテ居ル、ロデハ農村ノ救濟ト云
フコトヲ言ッテ居リナガラ、米國ノ不景氣ガ
ヤッテ來テ、一時ニ農作物ガ下落シテ、金ガ
拂ヘナイト云フ時分ニ、本案ニ依フテ抵當
權ヲ設定サレタモノヲ差押ヘラレタナラバ、
一體農民ハドウシテ拂フノダ、現在ノ法律
ノ通念カラ言ヒマシテモ、斯ウ云フコトハ
間違ヲテ居ル、差押ヘラルヽ時ニナッテモ、
ソレハ差押ヘラレナイヤウニ法律制度ヲ設
ケルコトガ、私共ハ當然デナケレバナラヌ
ト思フ、然ルニ斯ウ云フ馬鹿々々シイ法律
ヲ作ッテ、農村救濟ダト云フノデアルカラ、
私共ハ現内閣ノ時代錯誤的ナ考ヘ方ニ寧ロ
呆レ返ラザルヲ得ナイ、農林當局ハ此點ニ
關シテ此法案ハ時代錯誤デアルト考ヘテ居
ラナイカ
最後ニ此法案ハ最初ノ分ハ「農業」トダケ
アッテ「農漁」ト書イテナイ、何故「農漁」ト
ヤラナカッタカ、極メテ簡單ナ質問ノヤウデ
アリマスルケレドモ、現內閣ハ此法案ノ題
目ニ漁業ノ漁ノ字ヲ落シタ、此點ハ落シタ
ト云フ氣持ニ於テ、私共大ニ問題ニシナケ
レバナラヌコトガアルト思ヒマスルカラ、
此點ヲ農林大臣ニ質問スル
詰リ以上私ガ質問セントシタコトヲ要約
シテ申シマレバ、何故是程ノ重大ナ案ヲ今
頃上程シテ、而モ緊急上程シテ、法案ガ今
朝配ラレテ、ヤット見テ、此法案ニ關スル
私共ガ內容ヲ知ッタヤウナコトデアッテハ、
吾々ノ議員ノ審議權ヲ無視スルモノデア
ル、誰デモ同感ダラウト思フ、苟モ衆議院
ニ議席ヲ有フテ居ル者ナラバ、斯ウ云フ馬
鹿馬鹿シイコトヲサレテ、審議權ガ重ンゼ
ラレタト思フ者ハ、唯ノ半カケデモ私ハア
ルマイト思フ、此點ニ關シテ政府ハ、衆議
院ノ審議權ヲ無視シタト思ハナイカドウカ
ニ關スル質問、第二ハ、金ヲ借リルコトヲ
世話シテヤッテ居ルノハ宜イガ、此借リタ金
ヲドウスレバ返セルト思ッテ居ルカ、此點ガ
ー、何故同時ニ農業保險制度ヲ實現シナ
イカ、此點ガ一ツ、斯ウ云フ法案ニ依ッテ
示サレタル金融ノ對象物ノ如キハ、差押ヘ
サレナイヤウニスルノガ當然ダト思フガ、
農林當局ハサウ思ハナイカ、其次ハ自力更
生ノテレ隱シノ政策ニ對シテ、何トカ彌縫
シタイト云フサモシイ根性カラ提案シタノ
デアルカナイカ、其次ハ何故漁業ノ「漁」ノ
字ヲ入レナカッタノカ、此點ニ關シ農村當
局ノ明快ナル答辯ヲ求メマス、答辯ニ依ッテ
ハ重ネテ質問致シマス(拍手)
〔國務大臣後藤文夫君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02619330314&spkNum=35
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036・後藤文夫
○國務大臣(後藤文夫君) 只今議題トナフ
テ居リマスル今一ツノ法案、漁業法中改正
法律案提出ノ理由ヲ先ニ說明致シマス、漁
業法中改正法律案ヲ提出スルニ至リマシタ
ノハ、現在ノ漁業法ニ於テ認メテ居リマス
ル漁業組合ハ、漁業者ノ共同ノ團體デアリ
マシテ、漁村ニ於ケル重要ナル機關デアリ
マス、從來漁業權又ハ入漁權ノ主體トナリ、
又組合員ノ爲ニ漁業ニ關スル各種ノ共同施
設ヲ行ッテ參リマシタガ、現行ノ規定ノ下
ニ於キマシテハ、漁村ノ經濟團體トシテノ
機關ヲ十分ニ發揮スル上ニ、尙ホ遺憾ノ點
ガアルノデゴザイマス、故ニ是ガ機能ヲ擴
充シ、漁業組合ヲシテ眞ニ隣保共助ノ精神
ニ基キ、漁村ノ中樞機關トシテ活動スルニ
便ナラシメマスルコトハ、漁村經濟ノ更生
ヲ圖ルノ方途ト致シマシテモ、極メテ肝要
デアルト考ヘルノデアリマス
又時勢ノ變遷、漁業ノ進步ニ伴ヒマシ
テ、現行漁業法中水產動植物ノ蕃殖、保護、
漁業取締ニ關スル事項、其他ニ付キマシテ
モ、亦改正ヲ要スル點ガアルノデアリマス、
仍テ漁業法中改正法律案ヲ提出致シマシタ
其要旨ヲ簡單ニ申上ゲマス
第一ニ、漁業組合ノ目的ヲ擴張致シマシ
テ、新ニ組合員ノ經濟ノ發達ニ必要ナル共
同ノ施設ヲ爲シ得ルコトヽ致シマシタ
第二ニ漁業組合ノ一種トシテ漁業協同組
合ナル出資團體ヲ新ニ認メマシテ、特定ノ
經濟施設ヲ爲シ得ルモノトシ、其組織ヲ無
限責任、有限責任及保證責任ノ三種ト致シ
タノデアリマス、又之ト同時ニ、同種類ノ
施設ヲ爲ス漁業協同組合ニアラザル組合ノ
組織ハ、無限責任又ハ保證責任ノ二種ト致
シマシタ
第三ニ、漁業組合聯合會ハ、前述ノ特定
ノ經濟施設ヲ行フ漁業組合又ハ漁業組合聯
合會ヲ以テ設定シ得ルコトヽ致シマシテ、
其組織ハ、有限責任又ハ保證責任ノ二種類
ト致シタノデアリマス
第四ニ水產動植物ノ蕃殖保護、漁業取締
ニ關スル規定ニ必要ナル改正ヲ加ヘマシタ
第五ニ、漁業權又ハ入漁權ノ處分等ニ關
スル規定ニ付テ是正ヲ加ヘタノデアリマ
ス、以上ハ本案ノ要旨デアリマス、何卒御
審議ノ上御協賛アランコトヲ望ミマス
次ニ風見君ノ質問ニ御答致シタイト存ジ
やっ、農業動產信用法案ノ提出ハ、豫テ當
局ニ於テ苦心調査ヲ致シテ居ッタ問題デア
リマス、併ナガラ是ハ政府部內、他ノ省ト
色々關聯ノアル法案デアリマス爲ニ、法案
ノ調査ニ手間ガ取レタノデアリマス、併シ
事柄ハ比較的簡單ナ事柄デアリマス、折角
準備ガ整ヒマシタ以上ハ、此法案ヲ提出致
シマシテ、成ルベク速ニ實現ヲ圖リタイト
云フ趣旨デ提案ヲ致シタ譯デアリマス、此
法案ガ農業者、或ハ漁業者等ノ借金ヲ寧ロ
容易ニシテ、却テ困ラセルノデハナイカ、
サウシテソンナ品物ノ差押マデサレルヤウ
ナコトニナッテ、却テ困ルデハナイカト云
フ誤解ガ、動モスルト此法案ニ生ズルノデ
アリマス、所ガ全ク事實ハサウ云フ譯デハ
ナイノデアリマス、現在或ハ賣渡抵當ト云
フヤウナ方法デ、家畜等ヲ事實上抵當ニシ
テ金ヲ借リル場合モアリマス、或ハ漁船等
ガ出漁致シマス際ニ、色々ノ品ヲ借リテ參
リマシテ、歸リニ漁獲物デ拂フト云フコトモ
行ハレテ居リマス、斯ウ云フ方法ノナイガ
爲ニ、動產ノ占有ヲ移サズニ金ヲ借リルコ
トニ、色々ノ惡イ條件ガ伴フ場合ガ多イノ
デアリマス、此方法ガ立チマスレバ、サウ
云フコトガ行ハレテ、不利益ナ條件デ金ヲ
借リルコトヲ免レシメルコトガ出來ルノデ
アリマス、實施ノ場合ヲズット考ヘマスト、
決シテ弊害ノ起ル問題デハナクシテ、現在
ノ農民漁民ノ資金ノ融通、殊ニ生產資金ノ
融通ノ場合ニ、寧ロ便利ノ開カレル問題ナ
ノデアリマス、唯何人ニ對シテモ、斯ウ云
フ方法デ金ガ借リラレルコトニシテ置キマ
スルト、弊害ノ生ズル虞ガアリマス、隨テ
是等ノ方法デ金ヲ借リ得ル、貸シ得ル主體
ト云フモノハ、產業組合其他ノ法人ニ限ル
ト云フコトニ致シテアルノデアリマス、是
ハ我國バカリデナク、各國デ行ハレテ居リ
マシテ、相當ナ效果ヲ奏シテ居ル方法ナノ
デアリマス、此案ハ何カ農村救濟ニ宜イ案
ガ無イノデ、胡麻化シニ出シタノデハナイカ
ト云フヤウナ御非難ガアリマシタガ、決シ
テサウ云フモノデハアリマセヌ、サウ云フ
點ニ付テノ言葉ヲ重ネテノ色々ナ御非難ハ、
全然私ハ承認スルコトハ出來マセヌカラ、
御返シヲ致シタイト存ジマス
ソレカラ保險ハヤッタラ宜イヂヤナイカ、
保險ハヤッタラ宜イコトデアリマス、斯ウ云
フ方法ト共ニ、保險ノ行ハレルコトヲ吾々
モ希望致シマス、サウシテ保險ニ付テハ、
今日色々調査ヲ致シテ居リマスルガ、マダ
此議會ニ提案スル程ニハ參ラナカッタノデ
アリマス、ソレカラ是ハ時代錯誤デハナイ
カト云フ御話ガアリマシタガ、斯ノ如ク時
代ニ順應シタ案デアリマシテ、決シテ時代
錯誤デハゴザイマセヌ、ソレカラ農業ノ文
字ヲ使ッテ漁業ヲ入レナカッタノハドウ云フ
譯カ、是ハ法案ノ第二條ニ、漁業ト云フモノ
ヲ、此法案デ認メルコトニチヤント書イテ
アルノデアリマシテ、農業ト云フ意味ハ、
原始產業ノ意味デ揭ゲタノデアリマシテ、
農村漁村ノ住民ノ生業ヲ大體現ハス積リデ
書イテアルノデゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02619330314&spkNum=36
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037・風見章
○風見章君 議長発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02619330314&spkNum=37
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038・秋田清
○議長(秋田〓君) 簡單ナラバ議席デモ宜
シウゴザイマス······
〔風見章君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02619330314&spkNum=38
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039・風見章
○風見章君 只今農林大臣ノ答辯ニ依リマ
スルト、何故モット早ク程出シナカッタカト
云フコトニ對スル答辯トシテハ、苦心調査
シテ居ッタノデ手間ガ取レマシタ、斯ウ云フ
譯デアル、苦心調査シテ手間ガ取レタコト
ハ怠慢デハナイカ、大體此位ナ法案ヲ、今
申上ゲタ如クソンナ意味デ出スナラバ、農
村問題ハ去年カラデアル、議會劈頭ニ出シ
テモ宜イ筈デアル、私ハ斯ウ云フモノヲ今
頃ニナッテ出スコトハ、審議權ヲ輕ンズル所
以デハナイカ、斯ウ云フコトヲ尋ネタ譯デ
アリマス、尤モ吾々ノ審議權ヲ輕ンジタカ
輕ンジナイカ、斯ウ云フ重大ナ質問ニ對シ
テ、農林大臣ガ答辯出來ナイコトハ當リ前
カトモ思フ、モウ一ツ此法案ニ依ッテ借金ヲ
スル條件ヲ改善スルノデアル、斯ウ云フ答
辯デアッタ、借金スル條件ヲ改善スルト云フ
ナラバ、金融ノ圓滿ヲ圖ルナント云フ、デ
カイ「レッテル」ヲ貼ラズニ借金改善法案
ダト言ッタラ宜イヂヤナイカ、サウ云フ大キ
イ言葉ヲ揭ゲテ來テ、內容ノ貧弱ナルモノ
ヲ以テスルコトハ、卽チ羊頭ヲ懸ケテ狗肉
ヲ賣ル類デアル、羊頭狗肉ノ政策ガ、大體
現內閣ノ附物デアル、何デモ彼デモ話ハ大
キイケレドモ、政民兩黨ノ與黨諸君デモ、
條件ヲ附ケタリ、嫌味ヲ附ケナクチヤ贊成
出來ナイヤウナ、宜イ加減ナ案シカ出サナ
イヂヤナイカ、私共ハ農林大臣ノ答辯サレ
ル如キ意味ナラバ、金融ノ圓滿ヲ圖ルナン
ト云フ、大藏大臣ガ言フヤウナコトハ言ハ
ズニ、農村ノ借金ノ條件ヲ幾ラカ改善シタ
イト思フカラ出シマシタト、斯ウ言フナラ
バ幾分納得スル點ハアル、サウ云フ駄法螺
ヲ吹イテハ相濟マヌゾト云フコトヲ、私ハ
警告シテ居ル譯デアリマス(拍手)何故「漁」
ト云フ字ヲ入レナカッタカ、此私ノ質問ニ對
シテハ、法案ノ中ニ漁業ト入ッテ居ルカラ宜
イデハナイカト、斯ウ言フ、サウヂヤナイ、
私ハ斯ウ言フノデアリマス、大體日本ノ漁
業ハ農村ノ副業ヂヤナイ、副業ニシテ居ッテ
ハイケナイ、我國ノ特殊ナル情勢カラ考ヘ
テモ、本當ハ漁業省位ハ疾ウノ昔ニ出來テ
居ッテモ宜イ筈デアル、多年鎖國狀態ニ置カ
レタル日本ノ政治家ガ、口ニハ四面環海ト
言ヒナガラ、狹イ田地ニバカリ考ヲ囚ハレ
テシマッテ、大切ナ漁業問題ヲ忘レテ居ッタ、
其因襲的考ガ、此法案ノ一端ニモ現レテ來
テ、農漁業ト言ッタラ宜サヽウナモノデア
ルノニ、農業デ片付ケテシマウ、サウ云フ
ナラバ何故農林省ト言フカ、漁業ガ我國ニ
取ッテ大切ナル產業デアルコトヲ考ヘタナ
ラバ、同時ニ又常ニ農業ノ保護ナル名ノ下
ニ、漁村ガ保護サルヽコトニ關シテハ、全國多
數ノ漁民ハ常ニ甚ダシク憤慨シテ居ル譯ナ
ノデアル、繼子扱ヒニサレタガ如キ感ジヲ有ッ
テ居ルコトハ、諸君ノ中ニモ漁民ニ接觸
スル者ガアルダラウカラ御存知ダラウト思
フ、漁業問題ニ熱心ナノハ、國民同盟ダケ
デアル筈ハナイ、政民兩黨ト雖モ此點ニ關
シテハ十分ナ關心ヲ拂フベキ筈ナノデア
ル、拂フナラバ、漁民ノ氣持ヲ買ッテヤル
位ハ當然ナコトデアル、ソレガ當然ナラバ
何モ漁業ノ「漁」ノ字ヲ儉約スル必要ハナイ
デハナイカ(拍手)ノミナラズ農林大臣ガ眞
ニ能ク漁業行政ニ關シマシテモ本當ニ親切
ナラント欲スレバ、漁民ノ獨立性モ尊重シ
テ、此法案ニ關シテモ中ニ文字ヲ入レル以
上ハ、更ニソコニ現シテ「農漁」トヤルノガ
當然デハナイカ、ヤラナイ所ニアナタ方
ハ、ロデハ何ト言ッテモ、腹ノ中デハ漁業ヲ
以テ農業ニ附隨スルモノダト云フ、德川時
代ノ當時ノ如キ考ヲ以テ、今日ノ農村ニ臨
ミツヽアル、此時代錯誤ノ考ガ現レテ居ル
コトヲ證明シテ居ルノダト斯ウ私共ハ考ヘ
ザルヲ得ナイ
更ニ農林大臣ハ、私ガ現内閣ノ各般ノ施
設ニ關シテ批判シタコトニ對シ、之ヲ御返
却スルト云フ譯ダガ、返却ハアナタノ與黨
デアル民政黨ナリ政友會ナリニ返却スルガ
宜シイ、私共ハ返却サレル義理ハナイガ、
何レ巨細ノコトハ委員會ニ於テ質問シマス
カラ、私ノ質問ハ是デ打切リマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02619330314&spkNum=39
-
040・秋田清
○議長(秋田〓君) 右各案ノ審査ヲ付託ス
ヘキ委員ノ選擧ヲ議題ト致シマス
右議案ノ審査ヲ付託スヘキ委員ノ選擧発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02619330314&spkNum=40
-
041・上田孝吉
○上田孝吉君 兩案ヲ一括シテ議長指名十
七名ノ委員ニ付託セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02619330314&spkNum=41
-
042・秋田清
○議長(秋田〓君) 上田君ノ動議ニ御異議
アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02619330314&spkNum=42
-
043・秋田清
○議長(秋田〓君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02619330314&spkNum=43
-
044・上田孝吉
○上田孝吉君 議事日程變更ノ緊急動議ヲ
提出致シマス、卽チ此際政府提出、製絲業
法中改正法律案ヲ議題トナシ、委員長ノ報
〓ヲ求メ、其審議ヲ進メラレンコトヲ望ミ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02619330314&spkNum=44
-
045・秋田清
○議長(秋田清君) 上田君ノ動議ニ御異議
アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02619330314&spkNum=45
-
046・秋田清
○議長(秋田〓君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ日程ハ變更セラレマシタ、政府提
出製絲業法中改正法律案ノ第一讀會ノ續
ヲ開キマス、委員長ノ報告ヲ求メマス-
委員長武田德三郞君
製絲業法中改正法律案(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報告)
報〓書
一製絲業法中改正法律案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和八年三月十四日
委員長武田德三郞
衆議院議長秋田〓殿
希望條項
政府ハ從來ノ方針ヲ繼續擴充シ乾繭取引
ノ普及ヲ圖リ以テ養蠶業者ヲシテ生繭處
理ノ合理化ヲ徹底セシムヘシ
〔武田德三郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02619330314&spkNum=46
-
047・武田徳三郎
○武田德三郞君 製絲業法中改正法律案ノ
委員會ノ經過竝ニ結果ヲ御報〓申上ゲマス
昨年六十三議會ニ於キマシテ、此製絲業
法ガ制定サレマシタノデアリマスガ、ソレ
ハ我國ノ製絲業ニ統制ヲ加ヘル目的ヲ以テ、
免許制度ニ致シタノデアリマス、併シ其當
時百五十釜以下ノ小製絲業ハ十箇年ノ猶豫
期間ヲ與ヘルト云フ原案デアッタノデアリ
マシタガ、衆議院ニ於テ其制限ヲ撤廢スル
修正案ガ通過シタノデアリマス、政府モ之
ニ同意ヲ致シテ、現行法ト相成ッタノデア
リマス、其結果ト致シマシテ、我國ノ製絲
業ハ、極メテ小規模ノモノガ非常ニ澤山ニ
現存シテ居ルト云フ狀態ニナッテ居ルノデ
アリマス、斯樣ナ狀態ニ於キマシテハ、我
國ノ製絲業ニ適當ナル統制ヲ加ヘテ、斯業
ノ發達改善ニ資スルコトガ、頗ル困難ナ狀
態ニ相成ッテ居ルノデアリマス、是ニ於テ
此弱小ノ多數ノ製絲業者ニ、適當ナル統制
ヲ加フルノニ、共同施設ヲ奬勵致シマシテ、
之ニ奬勵金ヲ附與スルト云フコトハ、最モ
適切ナル施設デアルト云フコトデ、此改正
案ガ提出ヲサレタノデアリマス、
委員會ニ於キマシテモ、各派ハ總テ此共
同施設ヲ適當ナルモノト認メマシテ、質問
應答モ僅カニ一囘ニシテ終ッタノデアリマ
ス、今日討論ヲ致シマシタル結果、政友會ノ
橫川君ヨリ希望條項ヲ附シテ、本案ニ贊成
スルト云フ意見デアリマシタ、其希望條項
ヲ申上ゲマス
政府ハ從來ノ方針ヲ繼續擴充シ乾繭取引
ノ普及ヲ圖リ以テ養蠶業者ヲシテ生繭處
理ノ合理化ヲ徹底セシムヘシ
斯樣ナ希望ヲ附シテ原案ニ贊成ノ意見ヲ表
明サレマシタ、之ニ對シマシテ、民政黨ノ
田中君モ、同樣ナ意見ヲ以テ贊成ノ意ヲ表
明サレマシタ、又國民同盟ノ戶田君モ同樣
ナ意見ヲ發表サレマシテ、同ジク贊成ノ意
ヲ表サレマシタ、斯クシテ採決ノ結果、全
會一致本案ヲ可決致シタ次第デアリマスカ
ラ、何卒皆サンノ御贊成ヲ得ルヤウニ御願
ヲ致シマス、以上御報告致シマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02619330314&spkNum=47
-
048・秋田清
○議長(秋田〓君) 本案ノ第二讀會ヲ開ク
ニ御異議アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02619330314&spkNum=48
-
049・秋田清
○議長(秋田濟君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ本案ノ第二讀會ヲ開クニ決シマシ
タ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02619330314&spkNum=49
-
050・上田孝吉
○上田孝吉君 直ニ本案ノ第二讀會ヲ開キ、
三讀會ヲ省略シテ委員長報告ノ通リ可決セ
ラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02619330314&spkNum=50
-
051・秋田清
○議長(秋田〓君) 上田君ノ動議ニ御異議
アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02619330314&spkNum=51
-
052・秋田清
○議長(秋田〓君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ直チニ第二讀會ヲ開キ、議案全部
ヲ議題ト致シマス
製絲業法中改正法律案
第二讀會(確定議)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02619330314&spkNum=52
-
053・秋田清
○議長(秋田〓君) 別ニ御發議モアリマセ
又、第三讀會ヲ省略シテ、委員長報告通リ
可決確定致シマシタ(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02619330314&spkNum=53
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054・上田孝吉
○上田孝吉君 議事日程變更ノ緊急動議ヲ
提出致シマス、卽チ此際日程第九乃至第十
二ヲ繰上ゲ上程シ、逐次其審議ヲ進メラレ
ンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02619330314&spkNum=54
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055・秋田清
○議長(秋田〓君) 上田君ノ動議ニ御異議
アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02619330314&spkNum=55
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056・秋田清
○議長(秋田〓君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ日程ハ變更セラレマシタ、日程第
九及第十ハ同一委員ニ付託セラレタル議案
ナルニ依リ、一括上程スルニ御異議アリマ
セヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02619330314&spkNum=56
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057・秋田清
○議長(秋田濟君) 御異議ナシト認メマ
ス、日程第九輸出生絲販賣統制法案、日程
第十日本蠶絲株式會社法案ヲ一括シテ議題
ニ供シ、第一讀會ノ續キヲ開キマス、委員
長ノ報告ヲ求メマス-委員長武田德三郞
君
第九輸出生絲販賣統制法案(胎中楠
右衞門君外二名提出)
第一讀會ノ續(委員長報〓)
第十日本蠶絲株式會社法案(胎中楠
右衞門君外二名提出)
第一讀會ノ續(委員長報〓)
報〓書
一輸出生絲販賣統制法案(胎中楠右衞門
君外二名提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和八年三月十日
委員長武田德三郞
衆議院議長秋田〓殿
報〓書
一日本蠶絲株式會社法案(胎中楠右衞門
君外二名提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和八年三月十日
委員長武田德三郞
衆議院議長秋田〓殿
〔武田德三郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02619330314&spkNum=57
-
058・武田徳三郎
○武田德三郞君 輸出生絲販賣統制法案竝
ニ日本蠶絲株式會社法案ノ委員會ノ經過竝
ニ結果ヲ御報告申上ゲマス
此兩案ハ關聯ヲ致シタ法案デアリマシ
テ、卽チ我國ノ現在ノ生絲ノ販賣ノ狀況ハ
頗ル非合理的ノモノデアリマシテ、所謂橫
濱神戶ニ於ケル少數ノ問屋業者ハ、製絲
業者ノ委託ヲ受ケテ、之ヲ輸出業者ニ販賣
ヲ致シテ居ルト云フ實情デアリマスルガ、
其輸出業者ハ僅ニ二三ノ有力者ニ依ッテ事
實上輸出ヲサレテ居ルモノデアリマシテ、
而モ資力ハ頗ル厖大ナルモノデアリマス、
然ルニ之ヲ對抗スル所ノ
(議長退席、副議長著席〕
問屋業者ト云フモノハ、其數モ頗ル多クア
リ、資力モ極メテ薄弱ナルモノデアルノデ
アリマス、而シテ此販賣ニ當リマシテハ、
對等ノ立場ニ於テ商賣ヲスルコトガ困難
ナ實情ニナッテ居ルノデアリマス、同時
ニ又我國ノ製絲業者ト云フモノハ、頗ル
資力ノ少イ、「スケール」ノ小イ、多數ノ製
絲業者ニ依ッテ現在經營サレテ居ルノデ
アリマス、而モ是等ノ少數ノ製絲業者ハ、
其資力ノ不十分ナル點カラ、又少シク
相場ガ下ルト云フヤウナ傾向ノアル場合
ニ於テハ、賣急ギノ結果濫賣ノ弊ガ今日ニ
於テ現ハレテ居ルノデアリマス、是ガ爲ニ
製絲業者モ非常ナ困難ノ狀態ニ陷リ、問屋
モ亦隨テ困難ノ狀態ニ陷,テ居ルト云フノ
ガ現狀デアリマス、啻ニ我國ノ生產者ガ、
斯樣ナ實情ニ於テ困難ヲ感ジテ居ルノミナ
ラズ、需要者タル亞米利加ノ機屋竝ニ生絲
業者モ、斯樣ナ實情ニ於テ生絲ノ相場ガ非
常ナ亂高下ヲ致スコトヲ迷惑ガッテ居ルト
云フコトハ、今日ノ實情デアリマス、亞米
利加ノ機屋其他ノ製絲業者ハ、多少値段ハ
高クテモ宜イカラ、相場ノ亂高下ノナイヤ
ウニ、日本ノ生絲ノ相場ノ安定センコトヲ
希望シテ居ルコトハ今日ノ實情デアリマ
ス、此實情ニ副ハンガ爲ニ、我國ノ生絲ノ
販賣ヲ合理化シ、之ニ相當ナ統制ヲ加ヘタ
イト云フノガ、本案提出ノ主ナル目的デア
ルノデアリマス、同時ニ先程申上ゲマシタ
ル如ク、今日橫濱、神戶ニ於ケル問屋ト云
フモノハ、頗ル弊害ノ多イ賣買ノ仕方ヲ致
シテ居ルノデアリマシテ、而モ弱イ製絲業
者ニ取リマシテハ其手數料ガ一定シテ居ナ
イト云フヤウナ實情ニ相成リマシテ、小ナ
ル製絲業者程、餘計ナ手數料ヲ拂ハナケレ
バナラヌト云フ窮狀ニ陷,テ居ルノデアリ
マヽ、然ルニ本案ノ趣旨カラ申シマスルト
云フト、半官半民ノ會社ニ致シマシテ、產
業組合ノ精神ヲ酌取ッテ、利益ヲ目的トセザ
ル所ノ會社トシテ、此經營ヲセシメヨウト
云フノガ本案ノ趣旨デアリマスルカラ、其
結果手數料ヲ減ズルコトモ出來ルト云フ結
果ニ相成ルノデアリマス、尙ホ又今日ノ問
屋ハ、一二ヲ除キマシテハ、其資力ハ頗ル
薄弱デアリマシテ、製絲業者ニ金融ヲ致ス
上ニ於テ頗ル不滿ノ點ガ多イノデアリマ
ス、然ルニ此計畫ノ如クニ致シマスルナラ
バ、卽チ資力ノ十分ナル半官半民ノ會社デ
アリマスルカラ、其資本ノ充實セル點カラ
申シマシテモ、亦信用ヲ利用シ得ル點カラ
申シマシテモ、製絲業者ニ製絲ノ金融ヲ與
ヘル上ニ於テ、極メテ合理的ニ、極メテ便
宜ナ方法ヲ用フルコトガ出來ルヤウニ致シ
タイト云フノガ本案ノ主ナル趣旨デアルノ
デアリマス、斯樣ナ次第デアリマシテ、本
案ハ我國ノ製絲業竝ニ蠶業全體ノ統制ノ根
本ヲ爲スモノデアリマシテ、極メテ重大ナ
ル意味ヲ有ノテ居ル所ノ法案デアルノデア
リマス
委員會ニ於キマシテハ、數日ニ亙リマシ
テ、委員諸君ノ間ニ極メテ熱心ニ、且ツ又
有益ナル質問應答ガ、提案者竝ニ政府委員
ト、委員間ニ行ハレタノデアリマス、其詳
細ナルコトハ速祀錄ニ於テ御承知ヲ願フコ
トヽ致シマス、其中最モ必要ナル一二ノ點
ダケヲ御紹介致スコトニ止メテ置キタイト
思ヒマス
第一ノ質問ハ、民政黨ノ方カラ發セラレ
タノデアリマシテ、此本案ヲ見ルト云フ
ト、販賣ヲ統制スルト云フケレドモ、此組
織ニ於キマシテハ、單ニ問屋ヲ合同セシメ
タト同ジヤウナ結果ニ相成ルノデハナイ
カ、又斯樣ナ組織ノ下ニ於テ、生絲ノ價格
ノ維持竝ニ安定ヲ圖ルコトガ出來ルカドウ
カ、斯樣ナ質問デアリマス、是ニ對シテ提
案者ノ答辯ハ本案ノ本來ノ目的ガ、
價格ノ維持統制安定ニ在ルノデハナ
イ、先程本案ノ趣旨ヲ說明致シマシタル
如キ次第ヲ提案者カラ述ベラレマシテ、
此法案ノ主ナル目的ト云フモノハ、販
賣ヲ合理化サスト云フコトニアルノデア
ル、隨フテ經濟ノ實情カラシテ、生絲ノ値ガ
自然ニ上リ、自然ニ下ルト云フコトヲ敢
テ阻止セントスルノデハナイ、唯不自然ノ
亂高下ダケヲ防グト云フコトガ、此案ノ目
的デアルノデアルカラ、必シモ價格ノ維持
安定ト云フコトハ、本案ノ目的デアルノデ
ハナイ、斯樣ナ答辯デアリマシタ、ソレデ
尙質問者ハ、然ラバ本案ノ如キ組織ニ依ラズ
トモ、現在行ハレテ居ル所ノ問屋ヲ免許制
度ニシタナラバ、同一ノ結果ヲ得ラレルデ
ハナイカ、若クハ又地方ノ製絲業者ノ出荷
組合ニ法人格ヲ與ヘテ、サウシテ共同販賣
ヲセシムルヤウナ方法ヲ執ッタナラバ、同一
ノ結果ヲ得ラルヽデハナイカ、何故ニ殊更
ニ半官半民ノ會社ヲ作ッテ、政府ガ多大ノ負
擔ヲシナケレバナラヌト云フヤウナ案ヲ
作ッタノデアルカ、斯樣ナ質問デアリマス、
是ニ對シテ提案者ハ、成程質問者ノ意見ニ
對シテハ、提案者モ反對ハナイ、併ナガラ
今日我國蠶絲業ノ狀態ト云フモノハ、非常
ナ危急ナ立場ニ立ッテ居ルノデアッテ、左樣
ナ暢氣ナコトヲ言ッテ居ラレルモノデハナ
イ、出荷組合モ適當デアルケレドモ、日本
ノ今日ノ實情ヲ見ルト言フト、是ガ左樣ナ
統制アル販賣ヲ致スマデニ其組織ヲ完了セ
シムルニハ、如何樣ニ政府ガ奬勵努力ヲ致
シマシテモ、三年ヤ五年ニ於テ、出荷組合
ガ完全ニ全國ニ亙ッテ是ガ行ハレテ、由テ
以テ共同販賣ヲ致シテ、統制ヲ加ヘルト云
フヤウナコトハ、中々企圖スルコトハ出來
ナイノデアル、斯樣ナ答辯デアリマス、又
間屋組合ノコトニ付テハ、ゾレヲ免許制度
ニスルカシナイカト云フコトハ、決シテ提
案者トシテハ異論ガナイ、併ナガラ本案ノ
目的ソレ自身ガ、問屋ヲ合同セシムルト云
フコトデナイノデアルカラ、問屋制度ヲ如
何ニ改良スルカト云フコトハ、本案ニ對ス
ル的外レノ質問デアル、斯樣ナ答辯デアリ
そく、更ニ政友會ノ方カラ、農林大臣ニ
ツノ質問ガアリマシタ、ソレハ昨年ノ六十
三議會ニ於キマシテ、蠶絲業法ヲ政府ガ提
出致サレマシテ、之ニ衆議院ガ協贊ヲ與ヘ
ルニ際シ、附帶決議ヲシテ居ルノデアル、其
附帶決議ニハ、蠶種ノ國營案竝ニ輸出生絲ノ
販賣統制法案ガ、我國蠶絲業ノ現狀ニ於テ
極メテ必要ガアルカラ、政府ハ次期議會ニ
於テハ、是等ノ法案ヲ必ズ提出スベシト云
フ意味ノ附帶決議ガアッタノデアル、然ルニ
政府ハ、此附帶決議ニ重キヲ置カズシテ、
今日最モ必要ナル此法案ヲ提出シナイノハ
如何樣ナ譯デアルカ、斯樣ナ質問デアリマ
シタ、之ニ對シテ農林大臣ハ、農林當局ト
致シマシテモ、總テ蠶絲業ニ向ッテ適當ナ
ル統制ヲ加ヘルコト、卽チ蠶種ニ向ッテハ
之ヲ國家ガ管理シ、又販賣ニ向ッテモ適當ナ
ル統制ヲ加ヘルト云フコトニ向フテハ、最モ
必要デアルト云フコトヲ認メテ居ル、併シ
是等ハ極メテ重大ナコトデアッテ、外國ト
ノ關係上、微妙ナ働キヲナス虞ガアルノデ
アルカラ、愼重ノ上ニモ愼重ヲ加へテ調査
スルノ必要ガアル、然ルニ政府ハ未ダ確信
アル提案ヲ得ルコトガ出來ナイノデ、遺憾
ナガラ今期議會ニハ之ヲ提案スルコトハ出
來ナカッタノデアルガ、更ニ銳意調査ヲ進メ
テ、成ルベク速ニ是等ニ關スル法案ヲ提出
シタイ、斯樣ナ答辯デアッタノデアリマス
斯クシテ質問ハ打切ラレマシテ、討論ニ
移ッタノデアリマス、民政黨ノ小山君ヨリモ
本案ニ對シテ、大體統制ハ必要ト認ムルケ
レドモ、本案ノ內容ニ付テハ尙ホ幾多
ノ調査ヲ進メテ見タイ點ガアル、更ニ又
農林當局ニ於テモ、適當ナル調査機關ヲ
設ケテ、是等ニ向フテ更ニ一段ノ調査ヲ
進メルト云フコトヲ言ッテ居ラレルノデ
アルカラ、此農林當局ノ愼重ナル調査ヲ
依乃、此統制案ヲ成立セシムルモ必シモ
遲クハナイト思フカラ、左樣ナ意味ニ於テ、
本案ノ趣旨ニ反對スルノデハナイガ、愼重
ナル態度デ今一段ノ調査ヲ進メルト云フ趣
旨ニ於テ本案ニ反對スル、斯樣ナ御議論デ
アリマシタ、政友會ニ於テハ、左樣ナ農林
省ノ言フヤウナ、サウ云フ暢氣ナコトヲ言ッ
テ居ルト云フコトハ、我國ノ蠶絲業ノ現狀
ハ之ヲ許スモノデハナイ、政府ハ既ニ中央
蠶絲會ニ向ヲテ、自己ノ有ツ所ノ成案ヲ示シ
テ、諮問シテ居ルデハナイカ、之ニ向フテ
蠶絲會ガ、唯色々ナ利害關係上、議論ガ一
致シナクテ、ソレニ向ッテ贊成デアルトカ反
對デアルトカ云フ答申ハシナイトシテモ、
其議論ノ在ル所、其趨勢ヲ見ルナラバ、
切ノ蠶絲業者全體ニ於テモ、此販賣ニ向フテ
統制ヲ加ヘルノ必要ヲ認メテ居ルト云フ、
此趨勢ヲ見ルコトハ決シテ困難デハナイノ
デアル、況ヤ政府ハ、自己ノ信念ヲ以テ其
成案ヲ示シテ、中央蠶絲會ニ之ヲ諮問シタ
以上ハ、其答申如何ニ拘ラズ、自己ノ信念
ニ依ッテ之ヲ提案スルト云フコトガ最モ必
要ナコトデアル、斯樣ナ趣旨カラ本案ヲ成
立セシメタイト云フ議論デアリマシタ、斯
クシテ採決ヲ致シマシタ結果、大多數ヲ以
テ、本案ハ本會議ニ於テ可決セラレンコト
ヲ望ムト云フ意味ノ決定ニ相成リマシテ、
可決確定シタ次第デアリマス、右樣ノ次第
デアリマスカラ、何卒諸君ニ於カレマシテ
〓、本案ニ御贊成ヲ下サッテ、本案ヲ可決
確定セラレンコトヲ、偏ニ御願致シマス
(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02619330314&spkNum=58
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059・植原悦二郎
○副議長(植原悅二郞君) 通告順ニ依フテ
討論ヲ許シマス-小山邦太郎君
〔小山邦太郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02619330314&spkNum=59
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060・小山邦太郎
○小山邦太郞君 私ハ只今議題ニナッテ居
リマス此二ツノ法案ニ對シマシテ、私共ノ
意見ヲ申述ベテ、併セテ其態度ヲ表明致シ
タイト思ヒマス、卽チ輸出生絲販買統制法
案竝ニ日本蠶絲株式會社法案ノ提案ノ理由、
目的トスル所ハ、販賣處理ノ上ニ適當ナ統制
ヲ加ヘ、價格卽チ絲價ノ安定ヲ圖ルニアル
ト云フノデアリマスカラ、之ニハ吾々モ勿
論大贊成デアルノデアリマス、併ナガラ其
目的ヲ遂行スル爲ニ立案セラレマシタ二ツ
ノ法案ノ內容ヲ檢討シテ見マスレバ、此規
模計畫ヲ以テシテハ、價格ノ安定ニ對ス
ル何等ノ機能モ發揮スルコトガ出來ナイト
云フコトハ、明瞭ニ提案者ニ依ッテモ說明セ
ラレテ居ルノデアリマス、又更ニ是ガ實行
ノ上ニ、將來起ルベキ重大ナル問題、卽チ
營業權ノ買收等ハ、何レモ、其根本的調査
〓究ヲ缺イテ居リマスカラ、私共ハ此法案
ノ重大性ニ鑑ミマシテ、徒ニ論議ヲ重ネテ反
對ノ意見ヲ述ブルヨリハ、繼續〓究ノ態
度ニ出ヅルヲ以テ妥當ナル態度ナリトシ
テ、ソレヲ要求致シテ居ルモノデアリマシ
タガ、不幸ニシテ委員會ハ、先程委員長ノ
報〓ノ通リノ結果ニ終リマシタ、今本會議
ニ於テ此贊否ヲ敢テ決セラルヽナラバ、遺
憾ナガラ其趣旨ニハ贊成デアルケレドモ、
其趣旨ノ徹底ヲ期スルニ足ラザル、內容貧
弱ナル法案トシテ反對セザルヲ得ナイノデ
アリマス(拍手)
皆サン、先ヅ輸出生絲販賣統制法案ニ付
テ申上ゲマスレバ、日本カラ輸出スベキ生
縫若クハ輸出會社ニ販賣スベキ生絲ハ、
擧ゲテ此法律ニ依ッテ組織セラルベキ日本
蠶絲會社ノ手ヲ經ザレバ、賣ルコトガ出來
ナイトナッテ居リマス、ケレドモ一方ニ於テ
ハ、輸出業者ハ從前通リ之ヲ認メテ居ル、製
絲業者ニシテ直接販賣スル者モ亦其儘認メ
ル、又他方ニ於テハ產業組合製絲ニ依ッテ
組織セラレテ居ル販賣組合モ亦從前通リデ
アル、然ラバ今後我國ノ生絲ヲ輸出スベキ
取扱機關ハ、別個各樣ニ、獨立シタル會社
若クハ個人ガ約三十有餘軒アッテ、各、其自
由裁量ニ依ル統制ナキ活動ヲスルト云フコ
トニナリマシテ、販賣統制ト云フ立派ナ名
前ハ打ッテアルケレドモ、其間何等統制ノ機
能ヲ發揮シ得ナイコトガ、ハッキリシテ居ル
デハアリマセヌカ、此意味ニ於テ私ハ反對
スルヨリハ、洵ニ其理由トスル所ハ結構ナ
案デアリマスカラ、繼續〓究ヲ願ヒタイト
云フノガ第一ノ理由デアリマス
第二ニハ、此法案ヲ實行スルナラバ、現
在アリマス問屋ハ自ラ廢業ノ運命ニ置カレ
ルノデアリマス、而シテ其廢業ニ對シテ、
營業權買收ヲ政府ニセシメルト書イテアリ
マス、政府ニセシメル營業權買收ノ總額及
營業權査定ノ標準ヲ何ニ據ルカト云フト、
ソレハ明示サレテ居ナイ、若シ其〓究ガ足
リナイナラバ、是レ明ニ調査〓究不十分ナ
リト難ゼラルヽモ敢テ辯解ノ辭ガナイデハ
アリマセヌカ、更ニ又之ヲ政府ニ一任シテ
行クナラバ、若シ其額ガ多イ時ハ、國民ノ
耐ヘザル負擔トナリ、少キニ失スル時ハ、
又當業者ノ應諸致サザル所トナルデアラ
ウ、當業者ノ不應諾ヲ構ハズ、國民負擔ノ
如何ヲ無視シテ、唯〓政府權力ノ發動ニ
任スルナラバ、ソレハ暴政ニ墮スルノ虞ガ
アルノデアリマスカラ、是亦〓究ノ餘地ア
リトシテ、私共ガソレヲ主張スル第二ノ理
由デアリマス
第三ニハ日本蠶絲株式會社ト云フモノハ、
丁度直接輸出スベキ者、若クハ產業組合製
絲ニ關係スル者以外ノ製絲業者ノ共同販賣
ノヤウナモノダカラ、此程度ノコトダケナラ
バ、今日本會議ヲ全會一致デ可決サレマシタ
製絲業法中改正法律案ノ共同施設ノ徹底ト、
一方ニ於テハ問屋ニ對スル免許資格制度ヲ定
メ免許制ヲ布クコトニ依ッテ、現在行ハレテ居
ル所ノ幾多ノ弊害ハ十分ニ矯正シ得ル見込
ガアルト思ヒマスノデ、是等モ考慮ノ中ニ
加ヘテ貰ヒタイト云フコトヲ、主張シタ第
三ノ理由デアリマス
第四ハ資本金四千万圓ト書イテアル、然
ラバ其四千万圓ニシナケレバナラヌ基礎的
數字ハ何處ニアルカト申スト、是ハ明瞭デ
ナイ、ソレト今一ツニハ、賣買ノ數量ガ一
致シタ時ハ問題ハアリマセヌガ、買手ガ少
クテ、賣手ノミガ多イ時ニ、之ヲ如何ニ加
減按配スルカト云フコトヲ、擧ゲテ將來ノ
〓究ニ委セルト云フコトデアリマスカラ、
數へ來レバ不備、缺點、擧グルニ遑ナキ法
案ノ內容デアリマスノデ、其提案ノ理由ハ
結構デアルケレドモ、中味ガ如何ニモ殘念
ナガラ貧弱デアルカラ、續イテ御〓究ヲ願
ヒタイト云フコトヲ主張シタ第五ノ理由デ
アリマス
皆サン、更ニ贊成論者ノ意見ノ二三ニ付
テ中上ゲマスト、贊成サレル方ハ、旣ニ販
賣統制ハ、我國ノ國論ノ一致シテ居ル所デ
アル、若シ之ニ反對スルガ如キコトアラバ、
ソレハ養蠶家ノ利益ヲ無視スルモノデアル
ト云フ主張モアリマシタ、成程販賣統制ニ
依ル絲價ノ安定ハ、何レノ蠶絲關係者モ求
メテ居ル所デアリマスガ、共窮極ノ目的ハ
販賣統制ニ非ズシテ、價格ノ維持ニアルノ
デアリマス、價格ノ維持ヲ得タイ爲ニ、販
賣統制ノ手段ヲ求メルノデアリマス、然ル
ニ先程申シタ通リ、此法案ニ依ッテハ價格
ノ維持ハ出來ナイト云フコトヲ提案者自ラ
ガ明瞭ニ說明シテ居ル以上、是コソ本當ニ
先程風見君ノ農林當局ニ對シテ言ハレタ御
言葉ノ如ク、羊頭狗肉ノ法律ナリト言ハル
ルモ致方ナイ、私共ハサウ云フコトヲ申上
ゲタクナイ、大切ナル法律デアッテ、而モ
提案者ノ目的トスル所ハ洵ニ結構デアルノ
デアルカラ、ドウカ此事ハ徒ニ反對ノ聲ヲ
大ニスルヨリハ、繼續〓究ヲシテ、サウシ
テ其根本的方策ヲ誤ラナイヤウニシタイ、
當業者モ旣ニ數箇月ニ亙ッテ此問題ヲ〓究
サレテ、尙ホ結論ニ到達シナイノデ、今尙
繼續〓究ヲシタイト言フ、政府亦ドウデア
ルカト云フト、旣ニ調査費ヲ計上シテ、調
査〓究ニ入ルベキ準備ヲ急イデ居ルノデア
リマスガ、吾々ハ斯ル根本問題ハ今待ッテ
居ルコトノ出來ナイ、所謂拙速ヲ尊ブ底ノ
問題デナイノデアリマスカラ、繼續〓究ノ
上、愼重ニ審議ヲ致シマシテ、其途ヲ誤ラ
ナイヤウニ致シタイト云フノガ、吾々ノ卽
決可決ニ反對ノ理由デアリマス、ドウゾ此
意味ニ於キマシテ、政黨的集團的ニ決スル
ナラバ、吾々ハ自ラ破ルヽノデアリマセウ
ガ、斯ル重大ナル問題ニ付テハ、何レ私ノ
後ニ又贊成演說モアリマセウカラ、ソレヲ
能ク御聽取リ下サイマシテ、自由ノ立場カ
ラ自由ノ御判斷ヲ願ヒ、法案取扱ヒノ上ニ、
且又斯業ノ爲メ愼重ナル態度ニ出デラレン
コトヲ望ンデ已マザル者デアリマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02619330314&spkNum=60
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061・植原悦二郎
○副議長(植原悅二郞君) 近藤壽市郞君
〔近藤壽市郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02619330314&spkNum=61
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062・近藤壽市郎
○近藤壽市郞君 諸君私ハ只今玆ニ上程サ
レマシタ輸出生絲販賣統制法案、竝ニ日本
蠶絲株式會社法案ニ付キマシテ、只今委員
長ガ報〓致シマシタ通リ、原案ニ贊成スル
者デアリマス、仍テ成ベク是カ贊成ノ理由
ヲ簡單ニ述べ、サウシテ諸君ノ御贊同ヲ仰
ギタイト存ズルノデアリマス、輸出生絲販
賣統制法案ト、日本蠶絲株式會社法案トハ、
御承知ノ如ク一括シテ議題トナッテ居リマ
スルガ、此二案ハ最モ關聯シテ居ル所ノ、不
可分ノモノデアリマスカラ、隨テ是ガ理由
モ、總括的ニ私ハ申上ゲテ見タイト存ジマ
ス
本案ハ提出者ノ提出ノ理由ニモ述ベテア
ルガ如ク、絲價ノ異常ナル變動ヲ慮リ、販
賣處理ノ上ニ適當ナル統制ヲ加ヘ、以テ絲
價ノ安定ヲ圖ラントスル法案デアリマス、
抑、我國ニ於ケル農家ノ重要物產ト致シマ
シテハ米ト繭デアリマスガ、其米ニ對シマ
シテハ、既ニ今議會ニ於キマシテ政府ヨリ
米穀統制法案ヲ提出シ、本會ニ於キマシテ
滿場一致ヲ以テ可決シタノデアリマス、然
ルニ繭ト云ヒ、蠶種ト云ヒ、生絲ト云ヒ、
何レモ是等ノ統制ヲ圖ルベキ重要問題ニ對
シマシテハ、委員會デモ幾人カ此事ニ付テ
ハ農林大臣或ハ農林當局ニ尋ネタノデアリ
マスルガ、政府ガ提案スルニ至ラナカッタ
ノデアリマス、ソレハ何故ニ政府ガ提案セ
ナカッタカト申シマスルト、只今委員長ガ報
告サレタ如ク、外國トノ關係微妙ナルモノ
ガアリ、尙ホ大ニ調査スベキ點ガアルトカ
申シマスルケレドモ、私共此內容ヲ探ッテ
見マスルト、其實ハ農林當局ニ於テハ十分
是等ノコトハ辨ヘテ居ラレマスルケレドモ、
大藏當局トノ關係上、多クハ經費ノ點ニア
ルヤウデ、別段是等ノ案ニ對シテハ農林當
局ハ反對ノ御意見ヲ有ッテ居ルモノデナイ
ト云フコトヲ私共ハ感ジテ居ルノデアリマ
ス、殊ニ昨年臨時議會ニ於キマシテ、政府
ハ製絲業者ノ蠶種統一ヲ圖ル爲メ、製絲業
法案ヲ提出致シマシテ、本會ニ於キマシテ
ハ御承知ノ通リ滿場一致ヲ以テ可決シ、又
貴族院ニ於キマシテモ是ガ可決ヲ致シマシ
テ、直チニ法律トナッテ實施サレテ居ルノ
デアリマス、其際ニ此衆議院ニ於キマシテ
ハ、蠶種ノ統制ヲ圖ルニハ單ニ製絲業法ノ
ミヲ以テ足レリトスルモノデナイト云フ見
地カラ斯ウ云フ附帶決議ヲ其時ニシタノデ
アリマス「政府ハ時代ノ趨勢ニ鑑ミ原蠶種
國家統制、生絲販賣統制其ノ他共同施設助
成ニ關スル法律案ヲ次、期議會ニ提出シ以テ
蠶絲業根本政策ヲ確立シ併セテ本法ヲシテ
更ニ一段ノ效果アラシムベシ」斯ウ云フ附
帶決議ヲ、而モ滿場一致デ可決シタノデア
リマス、此附帶決議ハ、政府ヲシテ〓絲業
ノ根本政策ヲ樹テサスベク要望シタノデア
リマス、蠶絲業ノ根本政策ハ、蠶種ノ統制ニ
依ッテ養蠶家ニ繭ヲ改良サスルトカ、又ハ蠶
絲業法ニ依ッテ製絲ノ統制ヲ圖リ、販賣統
制ニ依ッテ絲價ノ安定ヲ圖ルト云フ風ニ、何
レモ竝行シテ進マネバ何等效ヲ奏セザルノ
ミナラズ、現在窮境ニ陷フテ居ル所ノ養蠶
家竝ニ製絲家ハ容易ニ救ハレナイト思フノ
デアリマス、本案ノ如キハ、旣ニ發布サレ
テ居ル製絲業法竝ニ本會議ニ於テ過日可決
セラレマシタル原蠶種國營管理法ト、殆ド
一身同體ノ如キ關係ヲ有スル重要法案デア
リマスルカラ、一日モ早ク是ガ實施ヲ見ル
ニ至ラシメテ、而シテ行詰レル蠶絲業ノ發
展ヲ圖ルコトハ、刻下ノ急務中ノ急務デア
ルト私ハ存ズルノデアリマス、是等ノ意味
ヲ以チマシテ、既ニ今期議會ニ於テ原蠶種
國營管理法案ハ、滿場一致ヲ以テ可決シタ
ノデアリマスカラ、本案モ滿場一致ヲ以テ
可決スルノガ、私ハ當然過ギル程當然デア
ルト思フノデアリマス、只今之ニ對シテ、
民政黨ノ小山君ヨリ反對ノ御意見ガ出タノ
デアリマスケレドモ、小山君ハ昨年モ製絲
業法ノ委員ノ御一人デアッタノデアリマス、
其時ニヤハリ此附帶決議ヲ附ケルコトニ付
キマシテハ、大ニ力說セラレテ、一日モ早
ク是ガ統制ヲヤラネバ救ハレルコトハ出來
ナイト言ハレタノデアリマス、然ルニモ拘
ラズ內容ガ貧弱デアルカラ、內容ガ整ウテ
居ナイカラ、此案ノ根柢カラ否決論ヲ主張
スルト云フニ至リマシテハ、實ニ驚キ入ッタ
ル次第デアルト私ハ思フノデアリマス(拍
手)案其モノヽ內容ニ付テハ、惡イ所ガア
リマシタナラバ、御修正爲サルナラバ兎ニ
角、本案ニ對シテ根柢カラノ反對ヲスルト
云フニ至リマシテハ、製絲ニ關係アリ、蠶
絲ニ關係アル民政黨ノ小山君トシテハ、單
ニ民政黨ノ立場ニアルガ故ニ、政友會ノ提
案ノ此案ナルガ故ニ反對ヲシタノデハナイ
カ、私ハサモシイ心ト思フノデアリマス
(拍手)昨年附步決議ヲ滿場一致デ可決シ、
政府ニ提案ヲ要求致シマシタ、政府ガ提案
セヌカラト云ウテ、政府ノ提案スルマデ、
百年モ二百年モ待ッテ居ラウト云フヤウナ、
ソンナコトヲシテ居リマシテハ、此蠶絲業
界ノ、養蠶家及製絲家ト云フモノハ顎ガ乾
上ッテシマフノデアリマス(拍手)尙ホ細カ
イ反對ノ御議論ト致シマシテ、提案者ニ向ク
テ質問シタラバ、此內容ノ答辯ガナッテ居ラ
ヌトカ、此點ニ於テハ是ガ出來ナイトカ言
ヒマスケレドモ、決シテサウデハナイノデ
アリマス、速記錄ヲ御覽ニナルト分リマス、
委員會ノ速記錄ヲ見テ、ソレハ小山君其人
カラ、提案者其人ニ對シテノ質問ヲ致シマ
シタ其事ガ御自身ノ頭ニ十分ニ入ラヌ點ハ
アッタカモ存ジマセヌ、御意見ノ合ハザル點
ハアッタカモ知レナイケレドモ、ソレハ意見
ノ相違デアリマス、私ハ此案ハ、兎ニ角本體
ニハ小山君ハ何等反對デナイ、贊成デアルト
仰セラレタ、此一言ニ依ッテ、私ハ全體ニ是ハ
御贊同ノアルベキモノダト確信致シマス、
故ニ本會ニ於ケル多數ノ諸君ハ勿論、委員
會ニ於テ反對爲サレタル諸氏ニ於カセラレ
マシテモ、而モ小山君モ御反省爲スッテ、
全國ノ二百万養蠶家ノ爲メ、製絲家ノ爲メ、
蠶絲業界ノ爲メ、是非トモ御意思ヲ御飜シ
ニナリマシテ、滿場一致ヲ以テ御贊成アラ
ンコトヲ偏ニ希望致シマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02619330314&spkNum=62
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063・植原悦二郎
○副議長(植原悅二郞君) 戶田由美君
〔戶田由美君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02619330314&spkNum=63
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064・戸田由美
○戸田由美君 私モ本案ニ對シマシテ極メ
テ簡單ニ吾々國民國盟トシテノ意思ヲ表明
致シタイト思フノデアリマス、私共ハヤハ
リ小山君ノ御趣旨ニ基キマシテ、本案ノ提
案ノ御趣旨ニハ贊成ハ致シマスルガ、其效
果ヲ考ヘマシタ場合ニ於キマシテ、效果少
イノミナラズ、寧ロ現在ノ我國ノ蠶絲業界
ノ情勢ニ鑑ミマシテ、或ハ却テ有害無益ノ
結果ニ陷ラザルヤト云フコトヲ恐レマスガ
故ニ、此案ノ取扱ヲ最モ愼重ニ致シ、而シ
テ政府當局ヨリ最モ意義アル、效果アル提
案ヲ一日モ速ニサセルト云フ意味ニ於キマ
シテ、遺憾ナガラ反對ヲ致シタイノデアリ
マー、只今近藤君ガ小山君ニ對シマシテ、
色々論難攻擊ガアリマシタガ、之ヲ私ハ聞
キマシテ、一層本案ヲ卽決スルノ不可ナル
コトヲ悟フタノデアリマス、卽チ諸君ハ現內
閣ノ兩與黨ト致シマシテ、最モ我國ニ重大
ナル蠶絲業ニ付キマシテハ、最モ良キ案ヲ
共同一致シテ提案セシムルノガ本來ノ御役
目デアルノニ拘ラズ、與黨側ニ於テ案ノ一
致セザル、練リ合ノ足ラザル案ヲ以テ、良
イトカ惡イトカ論議サレルコトガ、此案ノ
不完全、不徹底ナルコトヲ私ハ感ジマシテ、
洵ニ政友會ノ諸君ノ御盡力ニ對シテハ相濟
マヌノデアリマスガ、私共國民同盟ト致シ
マシテハ、此案ニ遺憾ナガラ反對セザルヲ
得ナイノデアリマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02619330314&spkNum=64
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065・植原悦二郎
○副議長(植原悅二郞君) 兩案ノ第二讀會
ヲ開クニ贊成ノ諸君ハ起立
〔贊成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02619330314&spkNum=65
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066・植原悦二郎
○副議長(植原悅二郞君) 起立多數、仍テ
兩案ノ第二讀會ヲ開クニ決シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02619330314&spkNum=66
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067・上田孝吉
○上田孝吉君 直チニ兩案ノ第二讀會ヲ開
キ第三讀會ヲ省略シテ、委員長報告ノ通リ
可決セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02619330314&spkNum=67
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068・植原悦二郎
○副議長(植原悅二郞君) 上田君ノ動議ニ
御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02619330314&spkNum=68
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069・植原悦二郎
○副議長(植原悅二郞君) 異議ナシト認
メマス、直ニ兩案ノ第二讀會ヲ開キ議案全
部ヲ議題ト致シマス
輸出生絲販賣統制法案
第二讀會(確定議)
日本蠶絲株式會社法案
第二讀會(確定議)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02619330314&spkNum=69
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070・植原悦二郎
○副議長(植原悅二郞君) 別ニ御發議モア
リマセヌ、第三讀會ヲ省略シテ委員長報告通
リ可決確定致シマシタ(拍手)日程第十一、
出版權法案ノ第一讀會ノ續ヲ開キマス、委
員長ノ報〓ヲ求メマス、委員長牧野賤男君
第十一出版權法案(原夫次郞君外六
名提出)第一讀會ノ續(委員長報告)
報〓書
一出版權法案(原夫次郞君外六名提出)
右ハ本院ニ於テ別紙ノ通修正スヘキモノ
ト議決致候此段及報告候也
昭和八年三月十一日
委員長牧野賤男
衆議院議長秋田〓殿
〔別紙〕
出版權法
第一條本法ニ於テ出版權ト稱スルハ著
作權ノ他人ニ屬スル者作物又ハ著作權
ノ存セサル著作物ヲ原作ノ儘印刷複製
シテ之ヲ發賣頒布スル權利ヲ謂フ
第二條自己ノ計算ニ依リ著作權ノ他人
ニ屬スル著作物ノ出版ヲ引請ケタル發
行者ハ其ノ著作物ニ付出版權ヲ專有ス
著作權者ハ第五條ニ規定スル場合ヲ除
クノ外現ニ出版權ノ目的タル著作物ヲ
原作ノ儘自ラ印刷複製シ又ハ他人ヲシ
テ印刷複製セシムルコトヲ得ス
著作者カ原著作物ニ就キ著作權法第十
九條ニ依リ新ニ著作權ヲ生セサル程度
ノ修正增減又ハ翻案ヲ爲シタルトキハ
出版權ノ目的タル著作物ニ變更ナキモ
ノト看做ス
第三條著作權ノ存セサル著作物ノ最初
ノ發行者ハ其ノ著作物ノ印刷複製ニ用
フル版型(寫眞術又ハ之ト類似ノ方法
ニ依リ複製スル場合ヲ含ム)ニ付テノ
ミ出版權ヲ專有ス
前項ノ出版權ハ其ノ著作物カ最初ニ發
行セラレタル時ニ發生シ爾後十年間存
續ス
第四條第二條ニ依ル出版權ハ其ノ著作
物ニ付著作權者ト發行者トノ間ニ出版
契約カ成立シタル時ニ發生シ其ノ契約
ノ存續スル期間存續ス
存續期間ノ定ナキ出版契約ハ其ノ成立
ノ時ヨリ三年ヲ經過スルニ因リテ終了
ス但シ之ヲ更新スルコトヲ妨ケス
第五條著作權者ハ出版契約ニ別段ノ定
ナキ限リ其ノ著作物カ最初ニ發行セラ
レタル時ヨリ三年ヲ經過シタル後ハ出
版權ノ存續中ト雖之ヲ全集其ノ他ノ編
輯物ニ輯錄シ又ハ全集其ノ他ノ編輯物
ノ一部ヲ分離シテ別途ニ利用スルコト
ヲ得
出版契約ニ別段ノ定ナキ限リ新聞紙又
ハ雜誌ニ揭載セラレタル著作物ハ其ノ
新聞紙又ハ雜誌ノ發行後一箇月間ハ著
作權者ニ於テ之ヲ別途ニ利用スルコト
司政大
著作權者タル原著作者カ死亡シタル場
合ニ在リテハ特約ノ有無ニ拘ラス其ノ
死亡ト同時ニ前二項ノ期間滿了シタル
モノト看做ス
第六條出版權ハ之ヲ讓渡スルコトヲ得
但シ出版契約ニ別段ノ定ナキトキハ著
作權者ノ同意ヲ得ルコトヲ要ス
第七條出版權ノ讓受人ハ出版契約ノ履
行ニ付著作權者ニ對シテ其ノ讓渡人ト
同一ノ權利及義務ヲ有ス但シ金錢上ノ
債務辨濟ノ責任ハ出版權讓渡ノ當事者
及著作權者間ニ特別ノ意思表示ナキ限
ハ旣ニ計算ノ確定シタル部分ニ及ハス
第八條著作物カ最初ニ發行セラレタル
時ヨリ三年ヲ經過シタル後ハ出版權者
ニ於テ三箇月前ニ著作權者ニ豫告シ將
來ニ向テ出版契約ヲ解除スルコトヲ得
第九條出版權者カ正當ノ理由ナクシテ
六箇月以上著作物ノ印刷複製又ハ發賣
頒布ヲ爲ササルトキハ著作權者ニ於テ
三箇月以上ノ期間ヲ定メテ其ノ履行ヲ
催告シ其ノ期間內ニ履行ヲ得サルトキ
ハ將來ニ向テ出版契約ヲ解除スルコト
ヲ得
第十條出版權カ消滅シタルトキハ著作
權者ハ發行者ノ所有ニ屬スル其ノ著作
物及之カ印刷複製ノ爲ニ特ニ作ラレタ
ル機械器具ヲ相當ノ價額ヲ以テ優先ニ
買受クルコトヲ得
前項ノ權利ハ出版權消滅ノ時ヨリ三箇
月內ニ之ヲ行使セサルトキハ消滅ス
第十一條出版權ノ取得、相續、讓渡及
質入ハ其ノ登錄ヲ受クルニ非サレハ之
ヲ以テ第三者ニ對抗スルコトヲ得ス
第十二條登錄ハ行政廳之ヲ行フ
登錄ニ關スル規定ハ命令ヲ以テ之ヲ定
ム
第十三條虛僞ノ登錄ヲ受ケタル者ハ五
百圓以下ノ罰金ニ處ス
第十四條出版權ヲ侵害スヘキ著作物ヲ
發行シタル者又ハ情ヲ知テ之ヲ印刷シ
若ハ發賣頒布シタル者ハ二千圓以下ノ
罰金ニ處ス
出版權ヲ侵害シタル著作物及專ラ侵害
ノ用ニ供シタル機械器具ハ發行者、印
刷者又ハ發賣頒布者ノ所有ニ屬スル場
合ニ限リ之ヲ沒收ス
第十五條前條ノ罪ハ被害者ノ〓訴ヲ待
テ之ヲ論ス
第十六條出版權ノ侵害ニ關シ民事ノ出
訴又ハ刑事ノ起訴アリタルトキハ裁判
所ハ原〓又ハ〓訴人ノ申請ニ因リ保證
ヲ立テシメ又ハ立テシメスシテ假ニ侵
害ノ疑アル著作物ヲ差押ヘ若ハ之カ發
賣頒布ヲ差止ムルコトヲ得民事ノ出訴
又ハ刑事ノ起訴前ト雖民事訴訟法ニ規
定スル假差押又ハ假處分ノ要件ヲ具備
スルトキ亦同シ
前項ノ場合ニ於テ侵害ニ非サル旨ノ判
決確定シタルトキハ申請者ハ差押又ハ
發賣頒布ノ差止ヨリ生シタル損害ヲ賠
償スルノ責ニ任ス
第十七條法人ノ代表者又ハ雇人其ノ他
ノ從業者法人ノ業務ニ關シ本法ニ定メ
タル罪ヲ犯シタルトキハ法人ヲ處罰ス
前項ノ場合ニ於テハ法人ノ代表者ヲ被
告人トス
第十八條本法ニ定メタ罪ニ對スル公訴
ノ時效ハ二年ヲ經過スルニ因リテ完成
ス
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
本法施行前ニ發行シタル著作物ニ付本法
施行ノ日ヨリ一年內ニ本法ニ依リ出版權
ノ登錄ヲ受ケタル場合ニハ爾後本法ノ規
定ヲ適用ス
〔牧野賤男君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02619330314&spkNum=70
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071・牧野賤男
○牧野賤男君 只今上程相成リマシタ出版
權法案ニ付テ委員會ノ經過竝ニ結果ヲ御報
告致シマス、本案ハ著作物ノ出版ヲ引受ケ
タ者ガ、多大ノ費用ヲ投ジ、勞力ヲ費シ
テ、出版物ヲ社會ニ紹介シテ、其出版物ノ
賣行ヲ盛ンナラシメ、大ニ出版物ガ聲價ヲ
博シタト云フ際ニ當ッテ、著作者ガ更ニ第
二、第三ノ出版者ト契約ヲシテ出版ヲ爲サ
シムルト云フヤウナ不合理ヲ矯メタイ、サ
ウシテ最初ノ出版者ノ權利ヲ認メテ之ヲ保
護シヨウト云フノガ案ノ骨子デアリマス、
併ナガラソレアルガ爲ニ、著作者ノ權
利ヲ壓迫スルヤウナコトガアッテハナラ
ナイト云フ考カラ、玆ニ小委員ヲ設ケマ
シテ、小委員會ニ於テハ著作者側ト、出
版者側トノ代表的ノ意見ヲ取纏メテ、各、
兩者ノ保護宜シキ規定ヲ設ケマシテ、成
案ヲ得タ譯デアリマス、卽チ諸君ノ御手許
ニ〓シテアリマスル所ノ案ガ、其小委員會
ノ案デアリマス、小委員會ノ委員ハ星島二
郞君、犬養健君、中野勇治郞君、山枡儀重
君、原夫次郞君ノ五名デアリマシテ、星島
二郞君ガ委員長トナッテ報告ヲセラレタノ
デアリマスガ、政府ニ於キマシテハ、該案
ノ趣旨ニハ反對ハナイガ、千九百三十五年
ニハ著作權ニ關スル國際會議ガアルカラ、
其會議ノ結果ヲ見テ立法シテモ晩クハナイ
ト云フヤウナ意見デアリマシタケレドモ、
委員會ニ於キマシテハ、今立法ヲ致シテ、
其際ニ又改メル必要ガアレバ改メテモ宜イ
ヂヤナイカト云フ意見ガ多數デアリマシテ、
卽チ小委員會ノ成案ヲ以テ本案ノ修正意見
トシテ、本実ヲ修正可決致シタ次第デアリ
マス、何卒滿場ノ御贊成ヲ御願致シマス
(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02619330314&spkNum=71
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072・植原悦二郎
○副議長(植原悅二郞君) 本案ノ第二讀會
ヲ開クニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02619330314&spkNum=72
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073・植原悦二郎
○副議長(植原悅二郞君) 御異議ナシト認
メマス、本案ノ第二讀會ヲ開クニ決シマシ
タ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02619330314&spkNum=73
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074・上田孝吉
○上田孝吉君 直チニ本案ノ第二讀會ヲ開
キ、第三讀會ヲ省略シテ委員長報告通リ、
可決セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02619330314&spkNum=74
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075・植原悦二郎
○副議長(植原悅二郞君) 上田君ノ動議ニ
御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02619330314&spkNum=75
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076・植原悦二郎
○副議長(槙原悅二郞君) 御異議ナシト認
メマス、仍テ直チニ第二讀會ヲ開キ、議案
全部ヲ議題ト致シマス
出版權法案第二讀會(確定議)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02619330314&spkNum=76
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077・植原悦二郎
○副議長(植原悅二郞君) 別ニ御發議モア
リマセヌ、第三讀會ヲ省略シテ委員長報告
通リ可決確定致シマシタ(拍手)次ニ日程第
十二營業收益稅法中改正法律案ノ第一讀會
ノ續ヲ開キマス、委員長ノ報〓ヲ求メマ
ス-小林錡君
第十二營業收益稅法中改正法律案
(木暮武太夫君外二名提出)
第一讀會ノ續(委員長報告)
報〓書
一營業收益稅法中改正法律案(木暮武太
夫君外二名提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和八年三月十三日
委員長大崎〓作
衆議院議長秋田〓殿
〔小林錡君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02619330314&spkNum=77
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078・小林かなえ
○小林鑄君 只今上程セラレマシタ營業收
益稅法中改正法律案ノ委員會ノ經過竝ニ結
果ヲ御報告申上ゲマス、委員會ハ愼重審議致
シマシタガ、討論ニ際シ中村委員カラ、本
法ノ實施ニ當リテハ、政府ハ法人ノ漁業ニ
付テモ相當考慮スベシトノ希望ノ申出ガア
リマシテ、全部本案ニ贊成ノ意ヲ表示セラ
レ、採決ノ結果多數ヲ以テ原案ハ可決致シ
タノデアリマス、何卒滿場諸君ノ御贊成ヲ
冀フ次第デアリマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02619330314&spkNum=78
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079・植原悦二郎
○副議長(植原悅二郞君) 本案ノ第二讀會
ヲ開クニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02619330314&spkNum=79
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080・植原悦二郎
○副議長(植原悅二郞君) 御異議ナシト認
メマス、本案ノ第二讀會ヲ開クニ決シマシ
タ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02619330314&spkNum=80
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081・上田孝吉
○上田孝吉君 直チニ本案ノ第二讀會ヲ開
キ、第三讀會ヲ省略シテ委員長報告ノ通リ
可決セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02619330314&spkNum=81
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082・植原悦二郎
○副議長(植原悅二郞君) 上田君ノ動議ニ
御異議アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02619330314&spkNum=82
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083・植原悦二郎
○副議長(植原悅二郞君) 御異議ナシト認
メマス、仍テ直チニ第二讀會ヲ開キ、議案
全部ヲ議題ト致シマス
營業收益稅法中改正法律案
第二讀會(確定議)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02619330314&spkNum=83
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084・植原悦二郎
○副議長(植原悅二郞君) 別ニ御發議モア
リマセヌ、第三讀會ヲ省略シテ、委員長報
告通リ可決確定致シマシタ(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02619330314&spkNum=84
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085・上田孝吉
○上田孝吉君 殘餘ノ日程ヲ延期シ、本日
ハ是ニテ散會セラレンコトヲ望ミマス
〔「贊成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02619330314&spkNum=85
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086・植原悦二郎
○副議長(植原悅二郞君) 上田君ノ動議ニ
御異議アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02619330314&spkNum=86
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087・植原悦二郎
○副議長(植原悅二郞君) 御異議ナシト認
メマス、仍テ動議ハ可決セラレマシタ、次會
ノ日程ハ公報ヲ以テ御通知致シマス、本日
ハ是ニテ散會致シマス
午後五時三十二分散會
衆議院議事速記錄第二十五號中正誤
頁段行誤正
五八六四四マダ目的自足主マダ自給自足
義主義
五八七四二八耕作權、或ハ自作耕作權ト云フ
農ト云フヤウナヤウナ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02619330314&spkNum=87
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