1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和八年三月十六日(木曜日)
午後一時十六分開議
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議事日程 第二十六號
昭和八年三月十六日
午後一時開議
第一 宇品港域軍事取締法案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第二 右議案の審査を付託すへき委員の選擧
第三 重要美術品等の保存に關する建議案(政府提出) 第一讀會
第四 右議案の審査を付託すへき委員の選擧
第五 關税定率法中改正法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第六 昭和七年法律第四號中改正法律案(輸入税の從量税率に關する件)(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第七 昭和五年度第一豫備金支出の件(承諾を求むる件)(委員長報告)
第七 昭和五年度特別會計第一豫備金支出の件(承諾を求むる件)(委員長報告)
第七 昭和六年度第一豫備金支出の件(承諾を求むる件)(委員長報告)
第七 昭和六年度特別會計第一豫備金支出の件(承諾を求むる件)(委員長報告)
第七 昭和六年度第二豫備金支出の件(承諾を求むる件)(委員長報告)
第七 昭和六年度豫備金外に於て豫算超過及豫算外支出の件(承諾を求むる件)(委員長報告)
第七 昭和六年度特別會計第二豫備金支出の件(承諾を求むる件)(委員長報告)
第七 昭和六年度特別會計豫備金外に於て豫算超過及豫算外支出の件(承諾を求むる件)(委員長報告)
第七 昭和七年度第二豫備金支出の件(承諾を求むる件)(委員長報告)
第七 昭和七年度特別會計第二豫備金支出の件(承諾を求むる件)(委員長報告)
第七 昭和七年度特別會計豫備金外に於て豫算超過支出の件(承諾を求むる件)(委員長報告)
第八 穀類搗精製粉取締法案(荒川五郎君外二名提出) 第一讀會
第九 穀類搗精製粉取締法案(山本莊一郎君外二名提出) 第一讀會
第十 中央卸賣市場法中改正法律案(上田孝吉君外二名提出) 第一讀會
第十一 司法保護法案(小林かなえ君外四名提出) 第一讀會
第十二 刑事訴訟法中改正法律案(原夫次郎君外九名提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第十三 刑事訴訟法中改正法律案(原夫次郎君外十名提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第十四 民事訴訟法中改正法律案(中野勇治郎君外九名提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第十五 度量衡法中改正法律案(山下谷次君外二名提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第十六 度量衡法中改正法律案(武知勇記君外五名提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第十七 度量衡法中改正法律案(野田文一郎君外一名提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第十八 國務院創設に關する決議案(野田文一郎君外四名提出)
第十九 決議案(教育の根本的改革に關する件)(富田幸次郎君外十七名提出)
第二十 決議案(思想惡化の對策に關する件)(櫻内幸雄君外十七名提出)
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〔左の報告は朗讀を經さるも參照の爲茲に掲載す〕
一昨十五日貴族院より受領したる政府提出案左の如し
宇品港域軍事取締法案
一政府より提出せられたる議案左の如し
重要美術品等の保存に關する法律案
(以上三月十五日提出)
一議員より提出せられたる議案左の如し
寺院現境内地竝墓地無償下戻に關する法律案
提出者
後藤亮一君 中川觀秀君
計理士法中改正法律案
提出者
世耕弘一君 森昇三郎君
山村豐次郎君
(以上三月十四日提出)
辨理士法中改正法律案
提出者
原夫次郎君 横山金太郎君
清瀬一郎君 作田高太郎君
平川松太郎君
(以上三月十五日提出)
一昨十五日貴族院に於て本院の送付に係る左の本院提出案に對し第二讀會を開かさることを議決したる旨同院より通牒を受領せり
行政執行法中改正法律案
一昨十五日貴族院に於て本院の送付に係る左の本院提出案を可決したる旨同院より通牒を受領せり
水産會法中改正法律案
一去十四日齋藤内閣總理大臣より左の通發令ありたる旨の通牒を受領せり
法制局參事官 村瀬直養
第六十四囘帝國議會政府委員被仰付
一去十四日辭任したる常任委員左の如し
第五部選出建議委員 久山知之君
一去十四日特別委員理事補闕選擧の結果左の如し
輸出絹織物取締法中改正法律案(政府提出)委員
理事 一瀬一二君(理事立川太郎君本月十一日委員辭任に付其の補闕)
理事 栗原彦三郎君(理事福田虎龜君去十三日委員辭任に付其の補闕)
一去十四日議長に於て選定したる委員左の如し
震災被害者に對する租税の免除猶豫等に關する法律案(政府提出)委員
八田宗吉君 木暮武太夫君
菅原傳君 星廉平君
八角三郎君 小野寺章君
廣瀬爲久君 藤井達也君
梅村大君 松尾孝之君
太田正孝君 大石倫治君
比佐昌平君 内ヶ崎作三郎君
手代木隆吉君 大島寅吉君
菊池良一君 佐藤理吉君
農業動産信用法案(政府提出)外一件委員
庄晋太郎君 鈴木英雄君
竹澤太一君 佐藤庄太郎君
林儀作君 青山憲三君
平井信四郎君 木本主一郎君
砂田重政君 中村嘉壽君
渡邊與七君 土倉宗明君
村上紋四郎君 谷原公君
中井川浩君 中山福藏君
高田耘平君 小池仁郎君
一去十四日に於ける特別委員の異動左の如し
輸出絹織物取締法中改正法律案(政府提出)委員
辭任 栗原彦三郎君 補闕 中川觀秀君
辯護士法中改正法律案(政府提出)外一件委員
辭任 伊禮肇君 補闕 井上剛一君
一昨十五日常任委員補闕選擧の結果左の如し
第五部選出
建議委員 中野寅吉君(久山知之君補闕)
一昨十五日常任委員理事補闕選擧の結果左の如し
建議委員
理事 中野寅吉君(理事久山知之君去十四日委員辭任に付其の補闕)
一昨十五日委員長及理事互選の結果左の如し
震災被害者に對する租税の免除猶豫等に關する法律案(政府提出)委員
委員長 八田宗吉君
理事
小野寺章君 大石倫治君
比佐昌平君 大島寅吉君
農業動産信用法案(政府提出)外一件委員
委員長 庄晋太郎君
理事
竹澤太一君 平井信四郎君
中井川浩君 中山福藏君
一昨十五日特別委員理事補闕選擧の結果左の如し
司法代書人法中改正法律案(立川平君外二名提出)外一件委員
理事 内藤正剛君(理事中山福藏君本月一日委員辭任に付其の補闕)
一去十日に於ける特別委員の異動左の如し
辯護士法改正法律案(政府提出)外一件委員
辭任 井上剛一君 補闕 伊禮肇君
一昨十五日に於ける特別委員の異動左の如し
少年教護法案(荒川五郎君外六十六名提出)委員
辭任 伊豆富人君 補闕 野中徹也君
辯護士法改正法律案(政府提出)外一件委員
辭任 伊禮肇君 補闕 井上剛一君
昭和五年度第一豫備金支出の件(承諾を求むる件)外十件委員
辭任 清寛君 補闕 山枡儀重君
南滿洲鐵道株式會社の株式引受に關する法律案(政府提出)委員
辭任 増田義一君 補闕 櫻井兵五郎君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02719330316&spkNum=0
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001・秋田清
○議長(秋田〓君) 是ヨリ會議ヲ開キマス、
御諮リ致シマス、第五部選出豫算委員田尻
生五君、第七部選出豫算委員村上紋四郞
君、右常任委員辭任ノ申出ガアリマス、許
可スルニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02719330316&spkNum=1
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002・秋田清
○議長(秋田〓君) 御異議ナケレバ許可致
シマス、其部ノ諸君ハ速ニ補闕選擧ヲ行
ヒ、御屆アランコトヲ望ミマス-去ル十
日北米合衆國南加州ニ於ケル震火災ニ因リ
マシテ、同地方民竝ニ我ガ在留同胞ガ不測
ノ慘禍ヲ被リマシタコトハ、洵ニ同情ニ堪
ヘヌ次第デアリマス、仍テ議長ハ一昨十四
日本院ヲ代表致シマシテ、北米合衆國下院
議長及羅府駐割領事ニ宛慰問ノ電報ヲ發シ
マシタ、茲ニ之ヲ朗讀シテ諸君ノ御諒承ヲ
乞ヒマス(拍手)
北米合衆國下院議長宛電文
貴國南加州ニ於ケル悲慘ナル震災ノ報ニ
接シ洵ニ痛恨ノ至ニ堪ヘズ玆ニ日本帝國
衆議院ヲ代表シテ深厚ナル同情ノ誠意ヲ
表ス
羅府駐割領事宛電文
今囘貴地方震災ニ因ル慘禍ノ報ニ接シ洵
ニ痛心ニ堪ヘズ玆ニ本院ヲ代表シ慰問ノ
辭ヲ呈ス同胞諸君ニ御傳達ヲ乞フ
尙ホ去ル七日本院ヲ代表シテ議長ヨリ發シ
タル感謝祝電ニ對シ、一昨日十四日武藤關
東軍司令官ヨリ議長宛謝電ヲ受領致シマシ
タ、玆ニ之ヲ朗讀致シマス
衆議院ヲ代表シ當軍ニ寄セラレタル深甚
ナル感謝電ニ接シ將兵一同感激ニ堪ヘズ
益々奮勵御期待ニ副ハンコトヲ期ス本次
作戰ノ成功ハ國民致ノ後援ニ依ルモノ
極メテ多シ茲ニ謹ンデ謝意ヲ表ス
〔拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02719330316&spkNum=2
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003・秋田清
○議長(秋田〓君) 此際陸軍大臣ヨリ熱河
方面ノ狀況ニ付キ、報〓ノ爲メ發言ヲ求メ
ラレマシタ、之ヲ許シマス(拍手)--陸軍
大臣荒木貞夫君
〔國務大臣荒木貞夫君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02719330316&spkNum=3
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004・荒木貞夫
○國務大臣(荒木貞夫君) 熱河省ノ平定ニ
付キマシテ、過般衆議院ヲ代表シテ議長ヨ
リ關東軍ニ對シ、感謝激勵ノ祝電ヲ戴キマ
シタコトハ、洵ニ感激ニ堪ヘマセヌ、此機
會ニ於キマシテ、軍部當局ト致シマシテ、
改メテ御禮ヲ申上ゲテ置キマス
今ヤ略、兵匪ノ主力ヲ掃蕩致シマシテ、省
境デアル長城ノ線ニ達シマシテ、治安前途
ノ方策モ豫測シ得ルニ至リマシタノデ、此
機會ニ於テ一應右ニ關スル經過、竝ニ昨秋
以來ノ行動ノ〓要ヲ御報〓致シタイト考ヘ
マス
御承知ノ如ク第六十三議會後間モナク、
帝國ハ朝野一致ノ總意ヲ以チマシテ滿洲國
ヲ承認シ、兩國間ニ日滿議定書ガ締結セラ
レマシテ、關東軍ノ責務モ亦其以前ト大ニ
異ッテ參リマシタ、申ス迄モナク同軍ハ日滿
議定書ニ基ク共同防衛及治安維持ノ義務ヲ
モ加重セラレタノデアリマス、仍テ關東軍
ハ北滿ノ治安克服ニ全力ヲ盡シマシテ、時
旣ニ冬季ニ入リマシタルニモ拘ラズ、祁寒
ヲ排シ、寡兵ヲ以テ、寧日ナキ討伐ヲ敢行致
シマシテ、先ヅ撲炳珊ヲ平ゲ、北ハ黑龍江
岸ニ達シ、西ハ蘇炳文ヲ討伐致シマシテ、
一擧興安嶺ヲ超エテ、呼倫貝爾一帶ノ地
ヲ平定致シ、長驅滿洲里ニ進入致シマシ
テ、監禁邦人ヲ救出シマシタ、東ハ丁
超、李杜、王德林ヲ追ヒマシテ、蘇國國
境マデヲ〓掃ヲシテ、南方遼東ノ三角地
帶モ亦略、·平定ニ歸シマシタノデ、十
二月一先ヅ兵ヲ收メタノデアリマス、
爾後專ラ力ヲ熱河省內ノ治安維持ニ注ギマ
シテ、慘禍ノ生民ニ及バザランコトヲ顧慮
致シマシテ、幾囘カ湯玉麟ノ恭順ヲ期待致
ジ、政治的解決ヲ試ミタノデアリマスガ、
湯玉講ハ一旦滿洲國執政ニ對シ臣禮ヲ取リ
タルニ拘ラズ、一方張學良及南京政府ノ强
壓ニ强ヒラレマシテ、其態度ヲ明ニ致シマ
セヌ、却テ逐次省內ニハ多數ノ兵匪及張學
良正規軍ノ進入ヲ許シマシテ、該地ヲ根據
トシテ滿洲國ノ治安ヲ擾亂政シ、公然反滿
抗日ノ態度ヲ取リマシテ、而モ聯盟ノ空氣
ガ對日惡化ヲ傳ヘラルヽニ至リマスルヤ、
其態度ハ益〓露骨積極的トナリマシテ、熱
河省住民ノ疲弊ト困難トハ、其極ニ達スル
情況ニ至ッタノデアリマス、是ニ於テ遂ニ
滿洲國ト是ガ討伐ニ關スル議ヲ決定致シマ
シテ、關東軍ハ日滿議定書ニ基イテ、行動
ヲ開始スルニ至ッタモノデアリマス
元來熱河省ハ滿洲國ノ領域デアルト云フコト
ハ従來ノ地理的歷史的關係ハ固ヨリ、滿洲
國建國後ノ宣言ニ依リマシテ、極メテ明白ナ
ル事實デアリマス、是ハ恰モ既往滿洲諸地
方ノ掃匪ト同樣、全ク滿洲國ノ國內問題デ
アリマシテ、是ガ掃蕩及治安維持ハ、寧ロ
滿洲國必須ノ行事デアリ、又關東軍ノ當然
ノ責任ナノデアリマス、世界ノ一部ニ於キ
マシテ、當時此問題ニ關シテ論議セラレマ
シタコトハ蓋シ個中ノ消息ニ通ゼザルノ
致ス所ト信ジマス
偖テ關東軍ハ滿洲國側ト協議ノ結果、
熱河省民ノ生產ノ爲ノ便益、卽チ特產物
ノ播種期以前ニ行動スルコトガ必要デア
ルト云フコトヽ一方ニハ今後ニ於ケル國
內一般治安ノ策案トヲ顧慮致シマシテ、
二月下旬以來酷寒ヲ冒シ、滿洲國軍ト共
ニ、敢テ掃匪行動ヲ開始スルコトニナッ
タノデアリマス、當時ノ氣候ハ零下十五度
ヨリ四十度ニ達シマシテ、又時ニハ一部ノ
解氷ヲモ見ルヤウナ事モアッタノデアリマ
シテ、作戰上非常ノ不便ヲ感ジタノデアリ
やく、當時ノ敵ノ兵力ハ、我ニ數倍致シテ
居ッタコトハ御承知ノ通リデアリマス
皇軍ハ方針ヲ決定致シマシタ後ニ、周到
ナル用意ヲ以テ準備ヲ急ギ、二月二十三日
ニ至リマシテ甲兵團ハ主力ヲ以テ通遼、
一部ヲ以テ彰武及朝陽寺附近カラ、又他ノ
乙兵團ハ主力ヲ以テ錦州、一部ヲ以テ綏中
附近ヨリ行動ヲ起シマシテ、途中開魯、北
票及沙帽山附近ニ於キマシテ、敵ノ抵抗ヲ
排除シテ、恰モ當時遭遇致シマシタ非常ナ
ル吹雪ト寒氣冒ヲシマシテ、重疊セル天嶮
ヲ突破シテ、疾風迅雷ノ勢ヲ以チマシテ前
進ヲシ同月二十八日頃ニ兩兵團共ニ主力ヲ
以テ、各〓下窪朝陽ニ進入シ、更ニ進ンデ甲
兵團ノ主力ハ三月四日〓ネ赤峰ニ、乙兵〓
ノ主力ハ六日〓ネ承德〓河ヲ確實ニ占領シ
タノデアリマス
是ヨリ先キ甲兵團ノ茂木騎兵團及乙兵
團ノ川原挺身隊ハ、快速果敢ナル行動ヲ
以テ幾多ノ困難ヲ克服シ、三月一日ニハ
赤峰及遼源ヲ經テ同二日ニハ平泉ヲ占領
シ、續イテ川原挺身隊ハ主力ニ先ダツ二
日卽チ四日ニハ承德卽チ熱河省城ヲ陷レ
マシテ、更ニ敗退スル敵ヲ窮追ヲシテ、長
山峪附近ニ於ケル激戰ノ後、遂ニ三月十日
ノ午後二時三十分ヲ以チマシテ、確實ニ古
北口ヲ占據致シタノデアリマス、又別ニ乙
兵團ノ服部部隊ニ屬スル所ノ米山先遣隊ハ、
凌源ヨリ南下致シマシテ、寡兵ヲ以テ數千
ノ敵ヲ擊破シ、早クモ五日ニハ長城線冷口附
近ヲ占領シ、爾餘ノ服部部隊モ相次イデ、
長城線ノ中央喜峰口附近ノ線ニ進出ヲ致シ
マシテ、玆ニ長城要衝ノ一帶ヲ確保致シマ
シテ、到ル處ニ日章旗ノ飜ルヲ見ルニ至ッ
タノデアリマス
此間張海鵬ノ指揮致シマスル滿洲國軍ノ
主力ハ、稍〓後レマシテ九日ニハ赤峰ニ入
リ、其一部ハ目下西北ノ國境近ク林東、烏
丹城附近ニ於ケル敵匪ヲ掃蕩中デアリマス
斯ク致シマシテ關東軍及滿洲國軍ハ幸
ニ僅々十數日ニシテ、百餘里ノ惡路ヲ突破
シテ、熱河省ヲ席捲シ、目下省內殘存兵匪
ノ掃蕩ト共ニ、治安ノ恢復維持ニ努メツツ、
一方ニ於キマシテハ省民ノ慰撫ニ力ヲ盡
シツヽアルノデアリマス、而シテ從來湯玉
麟ノ秕政ニ苦ンデ居リマシタ當地方住民
ハ、〓シテ親日的傾向ノ濃厚ナルモノガア
リマスルノデ、今後治安ノ恢復ハ比較的迅
速ニ實現セラルヽコトヲ期待シテ居ル次第
デアリマス
此戰鬪中ニ我ガ飛行隊ハ、險惡ナル天候
ト、敵ノ地上ヨリスル射撃トヲ意トセズシ
テ、果敢猛烈危險ナル行動ヲ執リマシテ、
爆擊ニ、偵察ニ、將又地上戰鬪ニ、活潑ナル行
動ヲ續ケマシテ、敵ニ甚大ナル打擊ヲ與ヘ、
其士氣ヲ根柢ヨリ挫折セシメマシテ、其
活動ハ目覺シキモノガアッタノデアリマス、
是ト同時ニ國民後援ノ各種愛國號ノ多クガ
加參致シマシタルコトヲ、特ニ御報〓スル
コトヲ洵ニ光榮ニ存ジテ居ル次第デアリマ
ス(拍手)玆ニ議會ヲ通ジマシテ謹テ國民一
同ニ感謝ノ意ヲ表スル次第デアリマス括 白
手)此間熱河省内ノ兵匪ノ集團ハ、皇軍竝
滿洲國軍ノ神速果敢ナル攻擊ニ依リマシテ、
脆クモ其第一線ヲ放棄シ更ニ天嶮ヲ恃
ミマシタ赤峰葉柏壽、淩源等ノ線モ、亦相
次デ我ノ爲メ奪取セラルヽ所トナリマスル
ヤ、玆ニ一大動搖ヲ來シマシテ、遂ニ承德
附近ニ於ケル抵抗ヲモ斷念致シマシテ、
部ヲ止メテ頭强ナル抵抗ヲ爲サシメ、主力
ハ大混亂ノ中ニ長城ヲ越エテ關內ニ遁走シ、
又其一部ハ四方多倫豐寧方面ニ潰走致シマ
シテ、是等兵匪ノ各將領中ニハ、我ニ歸順
ヲ申出ヅル者尠クナイノデアリマス、斯ク
テ迅速ナル平定ヲ見ルコトヲ得マシタノハ、
皇國ノ爲メ洵ニ慶賀ニ存ズル次第デアリマ
ス、目下尙ホ退路ヲ遮斷セラレ、省內ニ殘
存セル部隊モ尠クナイヤウデアリマスル
ガ、是等ハ武力ト招撫トニ依リマシテ、遠
カラズ肅〓セラレルモノト確信致スノデア
リマス
更ニ平津方面ニ於キマシテハ、東北軍首
腦部ハ承德附近ニ於テ最後ノ抵抗ヲ試ミ
ント致シマシタガ、遂ニ實行スルニ至ラズ、
熱河省內ニ居リマシタ部隊ハ、續々關內ニ敗
退シ來ルニ鑑ミマシテ、學良ハ急遽共總豫
備ヲ以テ古北口附近ヲ確保セシムルト共ニ、
山海關喜峰口方面ノ防備ヲ嚴ニ致シマシ
テ、只管平津地方ニ於ケル、自己ノ地盤ノ
保持ニ努メマシタガ、其指揮統制行ハレズ、
最後ノ一戰ヲ長山峪附近ニ試ミマシタガ、
是亦畫餅ニ歸シ、唯關內軍ノ一部ハ尙
ホ長城線ニ於テ挑戰シツヽアリマスガ、
近々是等モ掃蕩セラルヽコトヽ信ジマス、
而シテ蔣介石軍北上ニ伴ヒマシテ、京津地
方ノ形勢一變シ、張學良ノ下野サヘ傳ヘラ
レ、目下各將領勢力ノ抗爭裡ニ、局面ノ變
化ガ豫期セラルヽ狀態デアリマス
又山西軍ハ一部ヲ張家口ヨリ多倫方面ニ
移動シ、退却シ來リマシタ義勇軍ヲ併セ、
熱河省ノ側背ヲ脅威シツヽアリマスガ、今
後支那側ニシテ故意ニ我ニ挑戰シ來ラザル
限リ、戰禍ノ擴大スルガ如キ事ハナキモノ
ト信ジ、又極東平和ノ爲メ之ヲ希フモノデ
アリマス
顧ミマスルニ北滿始メ世界ノ視聽ヲ集メ
マシタ熱河問題ガ、今日ノ如ク神速且ツ比
較的少數ノ犠牲ニ依リ、偉大ナル效果ヲ收
メ得マシタノハ、其一切ノ過去ニ顧ミ、是
レ一ニ全ク陛下ノ稜威ト國體ノ神聖ト相
俟ツノ天佑ニ依ルコトヲ深ク感激スルモノ
デアリマス(拍手)
又此結果ヲ齎シマシタルハ、關東軍作戰
指導ノ宜シキト、第一線將兵ノ忠烈ナルニ
因ルハ固ヨリデアリマスガ、一方擧國一致
的ノ國民ノ至誠熱烈ナル後援ガ、彌ガ上ニ
モ將兵ノ意氣ヲ昂上セシメ得タル賜ナリ
ト、深ク感謝ニ堪ヘザル所デアリマス(拍
手)唯〓此間發生致シマシタル犧牲ニ對シテ
ハ、洵ニ遺憾ニ存ジ、且ツ深ク同情ト敬意
ヲ表シ、今後一層最善ノ努力ヲ致シ、是等
犧牲者ノ志ヲ無ニセシメザランコトヲ期ス
ル次第デアリマス
全滿洲國ノ治安ニ關シマシテハ、前途尙
ホ幾多ノ努力ヲ必要ト信ジマスガ、今ヤ略〓
其治安ノ基礎ニ付キマシテ、曙光ヲ認メ得
ルニ至リマシタノデ、多年ノ禍亂ヨリ東洋
平和ヘノ第一步ニ進ミ行キマシタコトハ、
皇國ノ爲メ御同慶ノ至リデアリマス(拍手)
此上ハ諸君ト共ニ擧國一致、皇國ノ精神ヲ
發揚致シマシテ、一日モ速ニ所期ノ目的ヲ
達成致シマシテ、光輝アル平和ノ確立ニ適
進シタイト庶幾フ次第デアリマス(拍手)以
上ヲ以テ御報告ニ代ヘマス
〔拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02719330316&spkNum=4
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005・秋田清
○議長(秋田〓君) 日程第一、宇品港域軍
事取締法案ノ第一讀會ヲ開キマス-荒木
貞夫君
第宇品港域軍事取締法案(政府提
出、貴族院送付)第一讀會
宇品港域軍事取締法案
宇品港域軍事取締法
第一條本法ニ於テ宇品港域トハ廣島
市廣島縣安藝郡船越町、海田市町、
矢野町、府中村及坂村ノ各一部竝ニ其
ノ附近ノ水面ニシテ命令ヲ以テ指定ス
ル區域ヲ謂フ
第二條宇品港域ハ命令ノ定ムル所ニ依
リ之ヲ第一區及第二區ニ分ツ
第三條宇品港域第一區內ニ於テ左ノ各
號ノ一ニ該當スル行爲ヲ爲サントスル
者ハ陸軍大臣ノ許可ヲ受クベシ但シ命
令ヲ以テ許可ヲ要セズト規定シタルト
キハ此ノ限ニ在ラズ
一棧橋、埠頭、橋梁、道路、運河、
鐵道又ハ軌道ノ新設、增設又ハ改修
二水面ノ埋立又ハ干拓
三鑛物ノ試掘若ハ採掘又ハ砂鑛ノ採
取
四航空
第四條宇品港域第一區內ニ於テ左ノ各
號ノ一ニ該當スル行爲ヲ爲サントスル
者ハ陸軍運輸部長ノ許可ヲ受クベシ但
シ命令ヲ以テ許可ヲ要セズト規定シタ
ルトキハ此ノ限ニ在ラズ
一不燃質物ヲ材料トスル家屋、工
場、倉庫其ノ他ノ工作物ノ新築、改
築又ハ增築
二土石ノ採掘
三水深ノ變更ヲ生ズベキ物件ノ委棄
四爆發物又ハ容易ニ燃燒スベキ物件
ノ運搬、積卸又ハ貯藏
五船舟ノ航行又ハ繋泊
六漁獵又ハ採藻
前項ノ不燃質物、爆發物及容易ニ燃燒
スベキ物件ノ種類ハ命令ヲ以テ之ヲ定
ム
第五條宇品港域第一區內ノ水陸ノ形狀
又ハ軍事施設ノ狀況ヲ測量、撮影、模
寫模造若ハ錄取シ又ハ其ノ複寫若ハ
複製ヲ爲サントスル者ハ陸軍運輸部長
ノ許可ヲ受クベシ但シ命令ヲ以テ許可
ヲ要セズト規定シタルトキハ此ノ限ニ
在ラズ
第六條前三條ノ規定ニ依ル許可ニハ條
件ヲ附スルコトヲ得
前項ノ條件ハ軍事上必要アルトキハ之
ヲ變更スルコトヲ得
第七條陸軍運輸部長ハ宇品港域內ニ立
入リ軍事施設ノ狀況其ノ他地形等ヲ視
察スル者ト認ムルトキハ其ノ者ニ對シ
港域外ニ退去ヲ命ズルコトヲ得
第八條戰時又ハ事變ニ際シ必要アルト
キハ命令ノ定ムル所ニ依リ第三條乃至
第六條及第十條ノ規定竝ニ之ニ關スル
罰則ノ規定ヲ宇品港域第二區ノ全部又
ハ一部ニ適用スルコトヲ得
戰時又ハ事變ニ際シ必要アルトキハ命
令ノ定ムル所ニ依リ宇品港域第二區ノ
境界線ヨリ外方十キロメートル以内ノ
區域ニ於ケル航空ヲ禁止又ハ制限スル
コトヲ得
第九條陸軍運輸部長ハ戰時又ハ事變ニ
際シ必要アルトキハ宇ロ池港內內在在
船舟ニ對シ錨地ノ變更又ハ退去ヲ命ズ
ルコトヲ得
第十條陸軍大臣ハ第三條若ハ第四條ノ
規定又ハ第三條若ハ第四條ノ規定ニ依
ル許可ニ附シタル條件ニ違反シタル者
ニ對シ原狀囘復ヲ命ズルコトヲ得
第十一條本法又ハ本法ニ基キテ發スル
命令ニ規定シタル事項ニ付陸軍大臣又
ハ陸軍運輸部長ノ爲シタル處分ニ不服
アル者ハ訴願スルコトヲ得
第十二條陸軍大臣ハ宇品港域各區及第
八條第二項ノ區域ヲ標示スル爲必要ナ
ル場所ニ標識ヲ設置スルコトヲ得
當該官吏ハ前項ノ標識ヲ設置スル爲必
要ナル土地ニ立入リ實地調査ヲ爲スコ
トヲ得此ノ場合ニ於テハ豫メ其ノ旨ヲ
土地ノ占有者ニ通知スベシ
第十三條前條ノ場合ニ於テ通常生ズベ
キ損害ハ之ヲ補償ス
前項ノ規定ニ依ル補償金額ハ陸軍大臣
之ヲ決定ス其ノ決定ニ對シテ不服アル
者ハ其ノ通知ヲ受ケタル日ヨリ三月以
內ニ通常裁判所ニ出訴スルコトヲ得此
ノ場合ニ於テハ訴願スルコトヲ得ズ
第十四條本法ノ禁止及制限ハ陸海軍又
ハ陸海軍官廳ノ行動又ハ施設ニ關シテ
ハ之ヲ適用セズ
第十五條陸海軍以外ノ官廳ニ於テ第三
條乃至第五條ニ揭グル行爲ヲ爲サントス
ルトキハ主務大臣ニ在リテハ陸軍大臣
ニ協議シ其ノ他ノ官廳ニ在リテハ各本
條ノ規定ニ準ジ陸軍大臣又ハ陸軍運輸
部長ノ承認ヲ受クベシ
第十六條左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ
二年以下ノ懲役又ハ二千圓以下ノ罰金
三酸八人
一第三條第四號ノ規定ニ違反シタル
者
二第九條ノ規定ニ依ル命令ニ從ハザ
ル船舟ノ長又ハ其ノ職務ヲ執ル者
第十七條左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ
一年以下ノ懲役又ハ千圓以下ノ罰金ニ
處ス
第三條第一號乃至第三號ノ規定ニ
違反シタル者
二第三條第四號ノ規定ニ依ル許可ニ
附シタル條件ニ違反シタル者
三第四條第一項ノ規定ニ違反シタル
者
四第五條ノ規定ニ違反シタル者
五第七條ノ規定ニ依ル命令ニ從ハザ
ル者
六第八條第二項ノ規定ニ依ル禁止又
ハ制限ニ違反シタル者
前項第四號ノ未遂罪ハ之ヲ罰ス
第十八條左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ
千圓以下ノ罰金ニ處ス
-第三條第一號乃至第三號ノ規定ニ
依ル許可ニ附シタル條件ニ違反シタ
ル者
二第四條第一項ノ規定ニ依ル許可ニ
附シタル條件ニ違反シタル者
三第五條ノ規定ニ依ル許可ニ附シタ
ル條件ニ違反シタル者
第十九條宇品港域各區又ハ第八條第二
項ノ區域ヲ標示スル標識ヲ損壞シ又ハ
其ノ他ノ方法ヲ以テ之ヲ無效ナラシメ
タル者ハ三百圓以下ノ罰金又ハ科料ニ
處ス
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
本法施行ノ際現ニ作業中ノモノニハ第三
條第一號乃至第三號及第四條第一項第一
號ノ規定ヲ適用セズ
〔國務大臣荒木貞夫君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02719330316&spkNum=5
-
006・荒木貞夫
○國務大臣(荒木貞夫君) 今囘提案ヲ致シ
マシタ宇品港域軍事取締法ニ關スル提案ニ
付テノ御說明ヲ申上ゲマス
御承知ノ如ク宇品港ハ、陸軍々事輸送上
重要ナル港灣デアリマシテ、過去日〓、日
露ノ戰役ハ固ヨリ、其他ノ事變ニ於キマシ
テモ、每ニ船舶輸送ノ基地トシテ重要ナル
任務ニ服シ、以テ常ニ顯著ナル功績ヲ貽シ
マシテ、國軍ノ作戰ニ貢獻致シタコトノ大
ナルコトハ諸君御承知ノ通リデアリマ
ス、而シテ宇品港ニ於キマスル是等陸軍ノ
諸設備竝其行動ハ國軍ノ機密ニ屬スルコ
トデアリマシテ、其祕密ヲ嚴守シ得ルト否
トハ、作戰ノ運命ニ關スルモノガ多イノデ
アリマス、日〓戰爭ノ時ニハ戒嚴ヲ宣〓
シテ、臨戰地境トシタノミナラズ、宇品港
取締規則ヲ制定シテ、此目的ヲ達成シタノ
デアリマス、又日露戰爭ノ時ニハ、廣島灣
要塞地帶、宇品港取締規則及陸軍々用船字
品港出入假規則ヲ制定シテ、宇品港附近ノ
防衛、軍機ノ保護及海面ノ取締ヲ致シタノ
デアリマス、然ルニ歐洲大戰後、列强ノ諜
報機關ノ發達ハ異常ナルモノガアリマシ
テ、特ニ近時其傾向益、顯著露骨ナルモノ
ガアルト信ジマス、故ニ到底昔日ノ如ク戰
時ノミノ取締デハ、今日ニ於キマスル軍事
港トシテノ性能ノ維持及軍機ノ保護ハ不可
能デアリマス、廣島灣要塞地帶ノ廢止セラ
レマシタ今日、殊ニ其然ル所以ヲ認ムルモ
ノデアリマス、今ヤ現時ノ情勢ガ重大デア
ルノニ鑑ミマシテ、速ニ本取締法ヲ制定致
シマシテ、宇品港附近ノ水陸ノ某區域ニ對
シマシテ、海軍ノ軍港要港規則ニ準ズル某
程度ノ軍事的取締ヲ行フコトハ、緊要已ム
ヲ得ナイコトヽ認メマシテ、本案ヲ提出シ
タ次第デアリマス、尙ホ本法ハ軍事上ノ要
求ニ基ク取締法デアリマスル故ニ、關係地
方ノ民業其他ニモ若干ノ影響アルコトヽ信
ジマスルノデ、此點ハ特ニ愼重ニ考慮致シ
マシテ、其實行ニ際シマシテハ、關係諸官
廳ト協議致シマシテ、苟モ軍事上支障ナキ
限リ、禁止制限事項ヲ解除スルノミナラ
ズ、其實行ノ手續等モ努メテ簡易化致シマ
シテ、以テ地方民ノ福利ヲ損セザラントス
ル心算デアリマス、以上ノ次第デアリマス
ノデ、何卒御協賛ヲ與ヘラレンコトヲ切ニ
希望致シマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02719330316&spkNum=6
-
007・秋田清
○議長(秋田〓君) 日程第二、右議案ノ審
査ヲ付託スヘキ委員ノ選擧ヲ議題ト致シマ
ス
第二右議案ノ審査ヲ付託スヘキ委員
ノ選擧発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02719330316&spkNum=7
-
008・上田孝吉
○上田孝吉君 本案ハ議長指名九名ノ委員
ニ付託セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02719330316&spkNum=8
-
009・秋田清
○議長(秋田清君) 上田君ノ動議ニ御異議
アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02719330316&spkNum=9
-
010・秋田清
○議長(秋田〓君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ、日程第
三、重要美術品等ノ保存ニ關スル法律案ノ
第一讀會ヲ開キマス-文部大臣鳩山一郞
君
第三重要美術品等ノ保存ニ關スル法
律案(政府提出)第一讀會
重要美術品等ノ保存ニ關スル法律案
第一條歷史上又ハ美術上特ニ重要ナル
價値アリト認メラルル物件(國寶ヲ除
ク)ヲ輸出又ハ移出セントスル者ハ主
務大臣ノ許可ヲ受クベシ但シ現存者ノ
製作ニ係ルモノ、製作後五十年ヲ經ザ
ルモノ及輸入後一年ヲ經ザルモノハ此
ノ限ニ在ラズ
第二條前條ノ規定ニ依リ其ノ輸出又ハ
移出ニ付許可ヲ要スル物件ハ主務大臣
之ヲ認定シ其ノ旨ヲ官報ヲ以テ告示シ
且當該物件ノ所有者ニ通知スベシ
前項ノ規定ニ依リ認定ノ告示アリタル
トキハ賣買、交換又ハ贈與ノ目的ヲ以
テ當該物件ノ寄託ヲ受ケタル占有者ハ
其ノ認定アリタルコトヲ知リタルモノ
ト推定ス
第三條主務大臣第一條ノ規定ニ依リ許
可ノ申請アリタル場合ニ於テ許可ヲ爲
サザルトキハ許可申請ノ日ヨリ一年ヨ
リ長カラザル期間內ニ當該物件ヲ國寶
保存法第一條ノ規定ニ依リテ國寶トシ
テ指定シ又ハ前條ノ規定ニ依ル認定ヲ
取消スベシ
第四條認定、其ノ取消及第二條ノ規定
ニ依ル認定物件ノ所有者ニ付變更アリ
タル場合ノ屆出ニ關スル事項ハ命令ヲ
以テ之ヲ定ム
第五條主務大臣ノ許可ナクシテ第二條
ノ規定ニ依ル認定物件ヲ輸出又ハ移出
シタル者ハ三年以下ノ懲役若ハ禁錮又
ハ千圓以下ノ罰金ニ處ス
附則
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
〔國務大臣鳩山一郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02719330316&spkNum=10
-
011・鳩山一郎
○國務大臣(鳩山一郞君) 重要美術品等ノ
保存ニ關スル法律案ノ提出理由ヲ說明致シ
マン、重要美術品等ノ保存ニ關スル法律案
ハ、歷史上又ハ美術上特ニ重要ノ價値アル
物件ヲ國內ニ存置スルコトハ、學術〓究ノ
立場カ、ラ見マシテモ、亦國民精神作興若ク
ハ美的情操涵養ノ上カラ考ヘマシテモ、洵
ニ肝要ナ事柄ト申サナクテハナラナイノデ
アリマス、然ルニ從來國寶ニ關シマシテハ、
國寶保存法ガ制定セラレテ居リマスガ、國
寶タルノ資格ヲ有チナガラ、未ダ其指定手
續ノ濟ンデ居ラヌ貴重ナ物件ガ、自由ニ海
外ニ持運ビノ出來ル狀態ニ在ルノデアリマ
ス、近時圓爲替安其他ノ事情ニ依リマシ
テ、是等ノ貴重ナル美術品等ニテ、海外ニ
流出セントスル危險ニ曝サレテ居ルモノ
ガ、尠ナクナイノデアリマス、其爲ニ此際
歷史上又ハ美術上特ニ重要ナル價値アル物
件ニ付キマシテハ急速ニ之ヲ調査認定致
シマシテ、其輸出又ハ移出ヲ取締ル必要ア
リト認メテ、本案ヲ提出致シタ次第デアリ
Ⅳく、何卒御審議ノ上御協賛アランコトヲ
望ミマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02719330316&spkNum=11
-
012・秋田清
○議長(秋田濟君) 質疑ノ通〓ガアリマ
ス、之ヲ許シマス、栗原彥三郞君
〔栗原彥三郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02719330316&spkNum=12
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013・栗原彦三郎
○栗原彥三郞君 只今日程ニ上リマシタ重
要美術品等ノ保存ニ關スル法律案ニ付キマ
シテ、極ク簡單ニ二三ノ質問ヲ試ミタイト
存ジマス、重要美術品ノ輸出ニ關シマシテ
ハ其輸出セラルヽ品物ニ依リマシテハ
國家ニ非常ナル利益ヲ與ヘ、又ハ精神的ニ
モ國家ニ非常ナ利益ヲ與フル場合ガアリマ
スルノト、之ニ反シマシテ、其輸出セラル
ル所ノ美術品ニ依リマシテハ、國家ノ爲ニ
非常ナ不利益ヲ招キ、又精神的ニ國家ガ非
常ニ迷惑ヲシナケレバナラナイト云フ場合
ガアルノデアリマシテ、重要美術品ノ輸出
ト云フコトハ、洵ニ「デリケート」ナ問題ナ
ノデアリマス、只今鳩山文部大臣ノ御說明
ニ依リマシテ、太體ニ於テ諒承致シマシタ
ガ、尙ホ吾々ノ滿足スルコトガ出來ナイ、
諒解スルコトガ出來ナイ一二ノ重要ナ點ニ
付テ、御伺ヲ申上グルノデアリマス
先ヅ第一ニ、ドウ云フ品物-美術品ガ
海外ニ輸出セラレタ爲ニ、國ニ非常ナ利益
ヲ與ヘ、又精神的ニ國家ガ大變ナ利益ヲ得
タカ、此御說明ヲ申上グルニハ、事實ニ就
テ中上グルノガ最モ早ク御諒解願ヘルト存
ズルノデアリマス、アノ瀨戶物師ノ柿右衞
門ノ作リマシタ物ハ、大正ノ初年頃マデハ
皿一枚ガ五六圓乃至十圓デアリマシテ、
度是ガ海外ニ輸出セラレテ、歐米ノ鑑識家
ノ鑑識ニ適ヒマシテ、彼國ノ人々ガ之ヲ愛
翫スルヤウニナリマシタ結果ハ、遂ニ世界
ノ公定相場ガ、柿右衞ノ皿一枚ハ大體百弗
ト云フコトニ落著イテ居リマス、百五十弗
ニモ百七十弗ニモナッタコトガアリマスル
ガ、今ハ段々下ヲテ參リマシテモ、大抵百弗
致シテ居リマス、之ニ依リマスルト、柿右
衞門ガ一生涯ニ作ッタモノハ、專門家ノ調査
ニ依ッテ大抵二万點位作フタガ、大正ノ初カ
ラ昭和ノ初マリ位迄ノ間ニ、凡ソ三千五百
點位ガ輸出サレタト申シテ居リマス、ッ
百弗ト致シマシテ、三十五万弗ノ金ガ日本
ニ入ッタト同時ニ、日本ニ殘ッテ居リマスル
一万六千五百點ト云フモノガ、其價格ノ値
上リニ依リマシテ、大體百六十五万圓ト云
フ利益ガアッタノデアリマスルガ、是ハ金ノ
上ノ僅ノ利益デアリマスルガ、是ヨリ重大
ナモノガアルノデアリマス、ソレハ何デア
ルカト言ヘバ、美術品ハ皆樣モ御承知ノ通
リ、其美術品ヲ愛術致シマス者ニ對シテ、
非常ナル感化ヲ與フルモノデアリマス、現
在歐羅巴ニ出テ居リマスル柿右衞門ノ三千
五百點ヲ愛翫致シテ居リマス者ハ、此柿右
衞門ノ藝術ヲ通ジマシテ、日本ノ文明ヲ愛
シ、日本ノ國民性ヲ愛シ、日本國ヲ贔負ス
ルト云フコトニ相成ッテ居ルノデアリマ
ス(拍手)今ヤ世界ノ國際關係ガ「デリケー
ト」ニナレバナル程、日本ノ藝術家ノ作品
ト云フモノヽ歐米人ニ對スル感化力ハ、愈
愈働キヲ大ニスルノデアリマス、(拍手)此
柿右衞門一ツデハ、アリマセヌ、日本ニ
柿右衞門ト同ジ性質ヲ有スル藝術ハ甚
ダ多イノデアリマシテ、其總テガ海外
ニ輸出セラルヽト云フコトニ相成リマス
レバ、金錢ノ上ニ於ケル利益ト同時ニ、
日本文明ガ世界ニ紹介セラルヽト云フ上ニ
於テ、絕大ナル利益ヲ有スルノデアリマス
又モウ一ツ、然ラバドウ云フ品物ヲ出セ
バ、日本ノ不利益ニナルカト斯ウ申シマス
ルト、是モ實例ヲ申上グルコトガ最モ御諒
解ニ易イト存ズルノデアリマス、ソレハ明
治ノ初年ニ足利學校ノ緣起繪卷ト記錄ガ紛
失ヲ致シタノデアリマスルガ、此繪卷ニハ
足利學校ノ歷史ガ悉ク載ッテ居ルノデアリ
やっ、然ルニ只今帝室博物館ニ、一〓ニ無
クナッタ記錄ノ一部ガ幸ニシテ存在スルガ、
此緣起繪卷ガ無クナッテ、是ガ今歐米-殊
ニ米國ニ在ルト云フ噂デアリマス、諸君御
承知ノ通リ足利學校ハ、日本デ一番古イ學
校デアリ古イ圖書館デアリマシテ、日本
ノ東洋ノ文明、日本ノ國民精神ト云フモノ
ハ、茲ニ存在スルト言ッテモ宜イノデアリ
マス、然ラバ此足利學校ニドウ云フ歷史ガ
アッタカト申シマスレバ、足利學校ニハ世界
ニ存在シナイ所ノ文書ガアリマス、彼ノ古
文尙書ノ如キ、古文孝經ノ如キモノモ其一
ツデアリマスガ、支那ニ於テハ、唐ノ時代
竝ニ宋ノ時代ニ於テ、古文尙書竝ニ古文孝
經ノ如キモノハ、唐ノ時代ニ於テ今文ト書
直シタ際ニ、當時ノ政治家ノ都合ノ好イヤ
ウニ堯舜竝ニ孔孟ノ精神ト云フモノヲ書
變ヘテシマッテ居ル、更ニ又宋代ノ儒者ガ自
由勝手ニ改竄致シマシタガ爲ニ、支那ニハ
本當ノ堯舜ノ精神竝ニ孔孟ノ精神ヲ傳フル
所ノ文書ハ無イノデ、纔ニ足利學校ニノミ
是ガ存在シテ居ルト云フ、斯樣ナ洵ニ日本
ノ文明、日本國民ノ精神ノ上ニ、非常ニ重
大ナ關係ヲ有シテ居ルノデアリマスガ、此
歷史ヲ今日明ニシテ居ルモノハナイノデア
リマス、若シ諸君ノ中デ、足利學校ハ斯樣
ナ歷史デアルト云フコトヲ、明瞭ニ御答ノ
出來ル人ガアッタラ御伺致シタイノデアリ
マス(拍手)足利學校ハ小野篁ガ之ヲ建テタ
ト云フヤウナ事モアリマスガ、決シテサウ
デハナイ、其ズット以前ニ於テ、下野虫
丸-文字丸ガ有ユル文書ヲ聚メタノガ是
デアルト言ヒ、又日本ニ於テ書記官ノ元祖ト
モ言フベキ下野不人-筆人ト云フ者ハ、
此足利學校デ養ハレテ出テ、始メテ日本ニ
文字ノ記錄ヲ遺シテ居ルノデアルガ、如何
ナル緣起、如何ナル歷史ガアッタカト云フ
コトガ、此大切ナル緣起繪卷一卷ガ無クナフ
タ爲ニ、之ヲ知ルコトガ出來ナイノデアリ
マス
諸君、此足利學校ハ日本ノ忠君愛國ノ精
神ヲ支配シテ居ルト言ヲテモ宜シイノデア
リマス、卽チ一方ニ於テハ、人見家ノ人々
ガ之ヲ支配シテ居ル、水戶ノ弘道館ノ人見
友岳ガ之ヲ支配シ、殊ニ足利學校ニ於テハ、
代々繼續シテ忠君愛國ノ精神、竝ニ忠孝ノ
精神ヲ常ニ繼承シテ講義ヲシテ居ル、又輩
出シタ人物モ非常ニ多ク出テ居リマス、最
近ニ至リマシテモ高山彥九郞ノ如キハ、全ク此
足利學校ニ學ンダ人デアルノデアリマシテ、日
本ノ文明ニ重大ナル關係ヲ有シ、日本ノ國
民精神ニ重大ナル關係ヲ有スル此足利學校
ガ、繪卷一卷ノ紛失ニ依ッテ、其緣起ヲ能ク
知ルコトガ出來ナイト云フニ至ッテハ、國家
ノ一大痛恨事ト言ハザルヲ得ナイノデアリ
マス(笑聲起ル)之ヲ御笑ヒニナル方ガアリ
マスガ、之ヲ御笑ヒニナルヤウナ御方ハ、
日本帝國ノ眞ノ文明精神ト云フコトヲ、御存
ジノナイ方デアルト言ハナケレバナラナイ
(拍手)
諸君、今世界人類共通ノ惱ミハ、現代ノ
文明ヲ如何ニスルカト云フコトデアリ、列
國ノ人ノ最モ憂フル所ハ、其國ノ文明竝ニ
文明ノ道程ヲ、如何ニシテ將來ノ子孫ニ示
スカト云フコトニ在ルノデアリマシテ、重
要ナル古美術品ノ保存ノ如キハ、此點ニ於
テ最モ大切ニ取扱ハナケレバナラナイノデ
アリマス、此點カラ私ハ二ツノ疑義ヲ質シ
タイノデアリマス、第一ニ重要輸出品ト云
フノハ、其價値ヲ如何ナル標準デ御定メニ
ナルカト云フノガ第一ノ質問デアリマス、
第二ノ質問ハ、現在ノ作家竝ニ五十年ヲ經
ナイ物ハ持出シテモ差支ナイト云フコトニ
ナッテ居リマスガ、是ハ餘程ノ御考違ヒデハ
ナイカト思フノデアリマス、五十年ヲ經過
セザル物デモ、日本文明ノ爲ニ、日本藝術
ノ爲ニドウシテモ外ニ出シテハナラナイ
物ガアリマス、ソレハ何デアルカト言ヘバ、
學術技藝員加藤友太郞ノ燒イタ瀨戶物ノ如
キモ其一ツデアリマス、アノ加藤友太郞ノ
燒イタ赤イ色ノ染付ト云フモノハ、世界ニ
何人モ之ヲ眞似ヲスルコトガ出來ナイ、又
子孫ニモ是ガ傳ヘテナイノデアリマス明
治大帝ハ非常ニ之ヲ御心配遊バシマシテ、
何時カ友太郞ニ、アノ染付デ赤イ色ヲ出ス
コトヲ子孫ニ傳ヘルヤウニセヨ、ト云フ御
言葉サヘ賜ハッタノデアリマシタガ、其事ナ
クシテ明治大帝ガ崩御遊バサレ、又次デ
加藤友太郞モ死ンデシマッタノデアリマス、
今日工業學校及其他ノ瀨戶物ノ製造ヲスル
學校ニ於テ、學者達ガ倒サニ立ッテモ、此赤
イ色ノ染付ト云フモノガ出來ナイノデアリ
さい、然ルニ世界陶器界ニ於テ未ダ作リ出
スコトノ出來ナイ程ノ貴イ品物ガ、ドノ位
ナ價デアルカト云ヘバ、加藤友太郞ノ洵ニ
立派ナ藝術品デモ、現在二三十圓ノ價格シ
カアリマセヌ、是ハコンナ安イ筈ノモノヂ
ヤナイ、國民ニ本當ニ加藤友太郎ノ藝術ヲ
吟味スル人ガ出來テ來レバ、是ハ數千圓ノ
價トナルベキモノデアリ、又〓究ノ材料ト
シテ最モ大切ナルモノデアリマスルガ、是
ガ安イ價格デ海外ニ輸出セラレテ居ルト云
フコトハ、國家ノ爲ニ洵ニ嘆ズベキコトデ
アリマス(拍手)
更ニ又眞葛香山ノ製造致シマシタ所ノ靑
磁ノ如キモ、日本デ眞葛香山ノ作ッタヤウ
ナ靑磁ハ、未ダ曾テ出來ナイノミナラズ、
歐羅巴ノ陶器工ガ頻ニ〓究シテ居ルガ出來
ナイ、支那モ此模造ヲシテ居リマスケレド
モ是ガ出來ナイノデアリマス、是等ニ相
當ノ保護ヲ加ヘテ、日本國內ニ留メテ置イ
テ、相當ノ價格ガ認メラレタ時ニ、初メテ
海外ニ出スガ宜シイト存スルノデアリマス
更ニモウ一點ハ、國家非常ノ場合ニ於テ
ハ、非常ナル藝術品ガ出來ルモノデアリマ
ス、之ヲ奈良朝時代ニ於ケル、海外ノ文明
ヲ輸入シタ時代ニ於ケル所ノ藝術品、比一
弘安時代ヲ中心トシタ所ノ、國家非常時ニ
於ケル藝術品、斯ウ云フ時代ニ於テハ國
家ノ歷史的ナ非常ノ藝術品ガ出來ルモノデ
アリマシテ、イマ日本ハ國ヲ擧ゲテ世界建
直ノ爲ニ、世界ニ對スル劃期的大運動ヲ起
シテ居ルノデアリマス、此時代ニ於テハ、
當時ノ日本文明ヲ物語ルベキ立派ナ藝術品
ガ、出來ルニ相違ナイト思フノデアリマ
ス、若シ之ヲ出來ナイト云フナラバ、是
非常ナ誤リデアルノミナラズ、現在ノ日本
藝術家ニ對スル一大侮辱ナリト言ハナケレ
バナラナイノデアリマス、此點ニ於テ本當
ニ歷史價値ノ存在スルモノデアルナラバ、
假令五十年ヲ經ズトモ、現代人ノ製作品ト
雖モ、之ニ相當ノ保護ヲ加フルコトガ當然
ナリト存ズルノデアリマスルガ、本法案ニ
於テ、此重要ナル點ニ付テ御考慮ヲ累ハサ
レナカッタコトハ、抑〓如何ナル次第デア
リマスカ、此二點ニ付テ御伺ヲ申シタイノ
デアリマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02719330316&spkNum=13
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014・秋田清
○議長(秋田〓君) 鳩山文部大臣
〔國務大臣鳩山一郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02719330316&spkNum=14
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015・鳩山一郎
○國務大臣(鳩山一郞君) 栗原君ニ御答致
シマス、栗原君ノ御質問ハ如何ニシテ重
要性ヲ認定スルカト云フノガ第一點デアリ
マス、輸出又ハ移出ヲセザルコトヲ欲スル
其重要性ハ、專門家ヲ集メタル委員會ニ於
テ、決定スル積リデアリマス、第二ノ御質
問ノ、五十年未滿ノモノデモ、其輸出又ハ
移出ヲ禁ズル必要ガアルノデハナイカト云
フ御質問デゴザイマスガ、五十年未滿ハ其
必要ナシト規定致シマシタノハ、專門家ノ意
見ニ基イタノデアリマシテ、輸出又ハ移出
ヲ禁止スルト云フコトハ、栗原君ガ質問ノ
冒頭ニ於テ述ベラレマシタ如ク、日本ノ文
明ヲ海外ニ紹介スル必要ノアルト云フコト
モ、御論旨ノ通リデアリマスモノデスカ
ラ、成ベク其制限ノ範圍ヲ縮小シタイト云
フ趣旨カラ、專門家ノ意見ヲ容レマシテ、
五十年ヲ限度ト致シタ次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02719330316&spkNum=15
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016・栗原彦三郎
○栗原彥三郞君 自席カラ一言··発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02719330316&spkNum=16
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017・秋田清
○議長(秋田〓君) 栗原君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02719330316&spkNum=17
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018・栗原彦三郎
○栗原彥三郞君 只今藝術家ノ意見ニ依フ
タト云フコトデゴザイマシタガ、私ハ先年國
寶保存法制定ノ際ニ於キマシテモ、往々ニ
シテ國寶ノ指定ガ、骨董的趣味ニノミ墮シ
マシテ、國家ノ文明ノ歷史ノ跡、國家文明
ノ道程ニ關スルト云フヤウナ點ヲ輕視スル
憂ガアリマスルカラ、御注意ヲ願ヒタイト
云フ警告ヲ發シテ居ッタノデアリマスルガ、
今囘ニ於キマシテモ、亦同樣ノ憾ナキ能ハ
ズデアリマスルガ、詳細ハ委員會ニ於テ御
尋ヲ致スコトニシテ、私ノ質問ヲ打切リマ
ス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02719330316&spkNum=18
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019・秋田清
○議長(秋田〓君) 日程第四、右議案ノ審
査ヲ付託スヘキ委員ノ選擧ヲ議題ト致シマ
ス
第四右議案ノ審査ヲ付託スヘキ委員
ノ選擧発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02719330316&spkNum=19
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020・上田孝吉
○上田孝吉君 本案ハ議長指名九名ノ委員
ニ付託セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02719330316&spkNum=20
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021・秋田清
○議長(秋田〓君) 上田君ノ動議ニ御異議
アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02719330316&spkNum=21
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022・秋田清
○議長(秋田〓君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ、日程第五
及第六ハ同一委員ニ付託シタル議案ナルニ
依リ、一括議題ト爲スニ御異議アリアセヌ
カ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02719330316&spkNum=22
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023・秋田清
○議長(秋田清君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ日程第五、關稅定率法中改正法律
案、日程第六、昭和七年法律第四號中改
正法律案、右兩案ヲ一括シテ第一讀會ノ續
ヲ開キマス、委員長ノ報告ヲ求メマス-
委員長金光庸夫君
第五關稅定率法中改正法律案(政府
提出)第一讀會ノ續(委員長報〓)
第六昭和七年法律第四號中改正法律
案(輸入稅ノ從量稅率ニ關スル件)
(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報告)
報〓書
一關稅定率法中改正法律案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報告候也
昭和八年三月十五日
委員長金光庸夫
衆議院議長秋田〓殿
報〓書
一昭和七年法律第四號中改正法律案(輸
入稅ノ從量稅率ニ關スル件)(政府提
四
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和八年三月十五日
委員長金光庸夫
衆議院議長秋田〓殿
〔金光庸夫君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02719330316&spkNum=23
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024・金光庸夫
○金光庸夫君 只今上程サレマシタ關稅定
率法中改正法律案ノ委員會ニ於ケル、審議
ノ〓末ヲ御報告申上ゲマス、本案ハ麻黃、
生酒石等ハ藥品ノ原料デアリマス、又骨灰
ハ高級陶器ノ原料デアリマシテ、内地ニハ
出來マセヌ、專ラ輸入ニ俟ツモノデアッテ、
而モ相當重要性ヲ有スルモノデアルノ故ヲ
以テ、之ヲ無稅トスル、蒟蒻芋ハ近年蘭領
印度、中華民國カラノ輸入ガ著シク增加シ
マシテ、我ガ農產物デアル所ノ蒟蒻芋ガ、
其壓迫ヲ被ムルコトヽナリマシタノデ、是
ガ保護ノ爲ニ增稅シタイ、次ニハ木材關稅
中南洋「ラワン」材ニ關シマシテハ、昨年ノ
第六十二議會ニ於ケル關稅定率法中改正法
律案ノ委員會ニ於キマシテ「南洋材ニ對ス
ル關稅ハ次期議會ニ於テ必ズ提案スベシ」
ト云フ附帶決議ニ基キマシテ、今囘增稅ス
ルコトヽシ「ドグラスファー」等卽チ米松等
ノ內デ、長丸太ノ一部ニ對シテハ、朝鮮ノ
北部地方產ノ木材保護ノ意味ヲ以テ、新
課稅セントスルモノデアリマシテ、政府ニ
於テハ關稅ニ關スル一般的ノ改正ハ、內外
經濟界ノ稍、安定スルヲ待ッテ、提案スルコ
トニシタイ、今囘ハ唯緊急已ムヲ得ザルモ
ノノミニ止メタ旨ヲ表明サレタノデアリマス、
委員會ハ連日政府ニ對シテ質疑應答ヲ重ネ
マシタガ、就中長丸太課稅ニ關シテハ、森
田委員、中島委員等カラ、北鮮長丸太ノ產
出ハ、其數量ガ極メテ少量デアッテ、且ツ品
質用途モ米丸太トハ同一デナイカラ、保護關
稅ヲ課スルニ及バヌデハナイカ、又此程度ノ
保護デハ生產增加ノ見込ガナク、目的ハ達
セラレナイデハナイカ、長丸太ノ增稅ハ結
局消費者ヲ苦シメルダケノ結果ニ了リハセ
ヌカト云フヤウナ意味ノ質問ガ、相次デアッ
タノデアリマシタガ、政府委員ハ之ニ對シ
テ、目下計畫中ノ北鮮地方ニ於ケル鐵道、
林道等、諸般ノ開拓事業ノ進捗ニ伴ヒマシ
テ、本改正案ノ實施ト相俟ァテ、相當生產增
加ノ見込ガアルト云フコトヲ、强調サレタ
ノデアリマス、又蒟蒻ノ關稅引上ニ關シマ
シテハ、蠶絲業ガ衰退シテ居リマス今日、
農產物トシテ特ニ重要性ヲ增加シテ參リマ
シタ現況ニ鑑ミマシテ、適當ノ提案ナリト
認ムルノ意見ガ、委員中ニ多カッタノデアリ
マス、斯ノ如クシテ討論ニ入リマシテ、大
山委員、永田委員其他カラ、政府ハ內外ノ
經濟事情ノ推移ニ鑑ミ、且ツ日滿關係等ヲ
考慮シテ、關稅全般ニ亙ッテ根本的整理ヲ期
スベシト云フ意味ノ、希望意見ノ陳述ガア
リマシテ、採決ノ結果、全會一致ヲ以テ原
案通リ可決シタ次第デアリマス、此段御報
告申上ゲマス(拍手)
次ニ昭和七年法律第四號中改正法律案
ノ、委員會ニ於ケル審議ノ〓末ヲ御報告申
上ゲマス、此法案ハ關稅定率法中改正法律
案ニ依ッテ、從來ノ從價稅ヲ從量稅ニ改メタ
ルモノ、又ハ新ニ從量稅ヲ定メラレタルモ
ノニ對シテハ、其生產輸入竝ニ需給及爲替
關係等、諸般ノ狀況ヲ考慮シテ按配シタモ
ノデアルガ故ニ、從量稅ニ對スル稅率ヨリ
除外スル所ノ、別表中ニ揭ゲラレタル諸品
ト同樣ニ、取扱フベキモノデアルト云フコ
トヲ認メテ、別表ニ此品目ヲ追加セントス
ルモノデアリマシテ、委員會ハ愼重審議ノ
結果、適當ノ提案ナリト認メテ、全會一致
可決シタ次第デアリマス、此段御報告申上
ゲマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02719330316&spkNum=24
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025・秋田清
○議長(秋田清君) 本案ノ第二讀會ヲ開ク
ニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02719330316&spkNum=25
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026・秋田清
○議長(秋田〓君) 御異議ナシト認メマ
ス、兩案ノ第二讀會ヲ開クニ決シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02719330316&spkNum=26
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027・上田孝吉
○上田孝吉君 直チニ兩案ノ第二讀會ヲ開
キ、第三讀會ヲ省略シテ、委員長報告通リ
可決セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02719330316&spkNum=27
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028・秋田清
○議長(秋田清君) 上田君ノ動議ニ御異議
アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02719330316&spkNum=28
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029・秋田清
○議長(秋田〓君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ直チニ兩案ノ第二讀會ヲ開キ、議
案全部ヲ議題ト致シマス
關稅定率法中改正法律案
第二讀會(確定議)
昭和七年法律第四號中改正法律案輸
入稅ノ從量稅率ニ關スル件)
第二讀會(確定議)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02719330316&spkNum=29
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030・秋田清
○議長(秋田〓君) 別ニ御發議モアリマセ
又、第三讀會ヲ省略シテ、兩案トモ委員長
報告通リ可決確定致シマシタ(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02719330316&spkNum=30
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031・上田孝吉
○上田孝吉君 議事日程變更ノ緊急動議ヲ
提出致シマス、卽チ此際政府提出、農村負
債整理組合法案ヲ議題ト爲シ、委員長ノ報
告ヲ求メ、其審議ヲ進メラレンコトヲ望ミ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02719330316&spkNum=31
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032・秋田清
○議長(秋田濟君) 上田君ノ動議ニ御異議
アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02719330316&spkNum=32
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033・秋田清
○議長(秋田〓君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ日程ハ變更セラレマシタ、農村負
債整理組合法案ノ第一讀會ノ續ヲ開キマス、
委員長ノ報〓ヲ求メマス--委員長大口喜
六君
農村負債整理組合法案(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報〓)
報〓書
一農村負債整理組合法案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和八年三月十六日
委員長大口喜六
衆議院議長秋田〓殿
〔大口喜六君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02719330316&spkNum=33
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034・大口喜六
○大口喜六君 私ハ玆ニ政府提出ニ係リマ
スル農村負債整理組合法案ニ付キマシテ、
特別委員會ノ經過竝ニ結果ニ付キ御報〓致
シマス、ソレニ付キマシテハ、先以テ本案
其モノヽ或點ニ關シマシテ、一應御說明申
上ゲ置ク必要アリト考ヘマス、御承知ノ如
ク本案ハ、前議會以來ノ歷史ヲ有スルモノ
デアリマシテ、今囘ノ提案ハ其大體ニ於キ
マシテハ、略、前囘提案ノモノト相一致シ
テ居ルヤウニ考ヘラレマス、併シ其內前囘
ノモノト異"テ居リマス主ナル點ヲ中上ゲ
マスルト、今囘ハ負債整理組合ノ組織ニ付
キマシテ、無限責任以外ニ保證責任ヲ認メ
タコトデアリマス、ソレカラ負債整理組合
資金ニ對シマシテ、特別融通ノ途ヲ開キ、
尙ホソレガ損失ニ對シマシテ補償竝ニ補給
ノ力法ヲ定メタコトデアリマス、此二ツガ
先ヅ前囘ノ提案ト異ッタル重要ナ點デアル
ト考ヘマス、更ニ其特別融通竝ニ損失補償
又ハ補給ノ內容ニ付テ申上ゲマスルト、負
債整理組合ニ特別融通ヲシマスルノハ市町
村デアリマシテ、其融通ヲ爲シ得ル期間ハ、
本法施行ノ日ヨリ五年間トシ、其融通ノ期
限ハ、本法施行ノ日ヨリ二十年ヲ超ユルコ
トヲ得ズトナッテ居リマス、サウシテ此特
別融通ヲ爲スニ依リテ生ジマシタル損失ニ
對シテハ、道府縣ハ其融通總額ノ三割以內ニ
於テ、損失補償ノ契約ヲ爲スコトヲ得トナッ
テ居リマスガ、ソレニ對シマシテ、政府ハ更
ニ其損失補償金ノ半額ヲ補給スルコトニナフ
テ居ルノデアリマス、而シテ政府ノ支出シマ
スル補給金ノ總額ハ、三千万圓ト限ラレテ居
リマスノデ、結局損失總額六千万圓ヲ限度
トシテ、補給スルト云フコトニナルノデアリ
マス、隨テソレニ對スル融通總額ハ、二億圓
限度デアルト推算サルヽノデアリマス、而
モ最初道府縣ガ三割以内ノ補償ヲ契約致シ
マスル時ニハ、其損失補償金中ノ四分ノ一
ニ相當スル金額ヲ、當該市町村ニ於テ負擔
スベキ旨ヲ定ムベキコトニナッテ居ルノデ
アリマス、隨テ結局融通總額二億圓ニ對シ
テ三割ノ損失ガアルト致シマスルト、六千
万圓デアリマスルガ、其四分ノ一卽チ一千
五百万圓ハ、當該市町村ガ之ヲ負擔シ、更
ニ一千五百万圓ヲ道府縣ガ負擔シ、殘リノ
三千万圓ヲ政府ガ補給スルト云フ勘定ニナ
ルノデアリマス、尤モ法案第三十條ノ但書
ニ於キマシテ、「特別ノ事由アルトキハ命令
ノ定ムル所ニ依リ市町村ノ負擔スベキ金額
ノ割合ニ付別段ノ定ヲ爲スコトヲ得」トナッ
テ居リマシテ、特別ノ場合ハ別ニ規定サレ
ル筈デアリマス、先ヅ是ダケヲ申上ゲマシ
テ、是カラ經過ニ付テ申述べヨウト存ジマ
ス
委員會ハ去ル十三日ヲ以テ委員長竝ニ理
事ノ選擧ヲ行ヒ、委員長ニ私、理事ニ西方、
貝谷、森、武知、猪股、後藤ノ諸君ガ當選
サレマシタ、ソレカラ直チニ質疑ニ入リマ
シタガ、質疑ハ頗ル微ニ入リ細ニ亙リマシ
テ、相當ノ委曲ヲ盡サレタヤウニ考ヘラレ
やく、隨テ其全般ニ亙リマシテ、一々茲ニ
御報告スルコトハ出來兼ネマスガ、例ニ依
リマシテ、其中ノ主ナルモノデアルト思考
シマスル點ヲ、申述ベタク考ヘマス
第一ニ問題トナリマシタノハ、本法案第
一條ノ施行區域ニ關スルコトデアリマス、
卽チ其第一條ニハ「本法ハ農山漁村ニ居住
スル者ノ經濟更生ヲ圖ル爲隣保共助ノ精神
ニ則リ其ノ者ヲシテ負債整理組合ヲ組織セ
シメ」云々トアリマスルガ、サウスルト假
令農山漁業者デアッテモ、市制地トカ町制
地ト云フヤウナ所ニ居住シテ居ル者ハ、此
組合員ニハナレヌノデアルカト云フ意味ノ
質疑ガ起リマシタ、ソレニ對シテ政府ノ答
辯ハ、此法文ハ唯法律ノ精神ヲ現シタモノ
デ、廣義ニ解釋スベキデアル、隨テ假令其
人ガ市制地ニ居ヤウガ、町制地ニ居ヤウガ
隣保共助ノ精神ニ則フテ、組合ヲ作ラウト云
フ以上ハ差支ナイ、又農山漁業者ガ集團ヲ
成シテ居ル區域內ニ介在シテ居ル者デ、組
合員ニナリタイト云フ者デアレバ、必シモ
ソレガ農業者、山林業者、漁業者デナクテ
モ、加入ハ差支ナイト解釋シテ居ルトノコ
トデアリマシタ、ソレカラ此組合ヲ組織ス
ルノニハ其組合ノ樹立シタル負債償還計
畫及經濟更生計畫ヲ履行スル必要ガアルコ
トニナッテ居ルガ、是ダケハ極メテ困難デハ
ナイカト云フ意味ノ、質疑ガ盛ニ起リマシ
タ、ソレニ對シマシテ政府ハ、此法案ノ骨
子トスル所ハ、所謂負債整理ニアルノデ、
所謂救濟ヲ主トスルモノデハナイ、隨テ此
負債償還又ハ經濟更生計畫ノ實行ハ、極メ
テ必要デアルト考ヘル、併シソレハソレ
ゾレ其地方々々ノ實情ニ依ラネバナラヌコ
トデアル、實情ニ卽シテ適宜ノ計畫ヲ立テ
シメル考デアルト云フ意味ヲ述ベラレテ居
リマス、殊ニ雪害地ノ如キ、特殊ノ事情ニ
在ルモノニ對シテハ、旣ニ特別ノ調査機關
モ設ケラレテ居ルコトデアッテ、經濟更生
計畫ニ於テモ、其他ノ地方ニ比シテ、矢
張特殊ノモノガ行ハルベキデアルトノ意味
ヲ答ヘラレテ居リマス、更ニ全國一万二
千ノ町村ニ對シ、ドレダケ組合ガ出來ル見
込ヲ立テヽ居ルカト云フ質問ニ對シマシ
テ、政府ハ約六千町村ニ對シテハ、資金
供給ノ必要アルモノト見テ居ルガ、共他三
千町村ニハ、他カラ資金ヲ供給セズトモ、
組合ハ出來得ルモノト考ヘテ居ル、其餘ノ
三千町村ハ、大體ニ於テ先ヅ農漁山村ニ關
係ノナイモノト見テ宜カラウトノ、答デア
リマシタ
更ニ質疑ト致シマシテ、農業者ノ負債
總額約四十五、六億圓ト推定サレテ居ル
ガ、其整理ニ對シテ僅ニ二億圓ノ資金融
通ニ依ッテ爲シ遂ゲ得ラレルト考ヘテ居ル
カト云フ意見ガ述ベラレマシタガ、ソレニ
對スル政府ノ答辯ト致シマシテハ二億圓ノ
融資ト云フノハ、謂ハヾ頭金ト言ッタヤウ
ナモノデ、少クトモソレニ依ッテ六億圓ノ
負債ハ整理シ得ル見込ヲ有ッテ居ルト答ヘ
テ居リマス、サウシテ負債整理ハ決シテ
是バカリデ出來得ルモノトハ考ヘテ居ナイ、
卽チ中ニハ融資ヲ與ヘズトモ、自ラ整理シ
得ベキモノガアル見込デアル、又其他各種
ノ方法、例ヘバ債務者ト債權者トノ間ニ立ッ
テ行ハルヽ調停ニ依ル整理、或ハ不動產融
資法及中央金庫融資法等ニ依ル〓通ニシテ
モ、自然ニ其間ヲ緩和スベキモノガアル、其外
有ユル方法ニ依ッテ爲シ得ラルベキモノデ、
此法案ノミニ依ッテ其全部ヲ解決スベキモ
ノトハ考ヘラレヌト云フ意味デアリマシタ、
ソレカラ更ニ其二億圓ノ融資ニシテモ、町
村ハ何ニ依フテ其資金ヲ得べキカト云フコ
トニ付キマシテハ、政府ハ出來得ル限リ大
藏省預金部カラ融通スル考デアル、勿論未ダ
委員會ノ決議ヲ經テ居ル譯デハナイカラ確
言ハ出來ヌガ、政府ガ此案ヲ立テタル以上ハ、
何處マデモソレニ努力スルコトハ當然デア
ルトノ意味ヲ答ヘテ居リマス、其外資金ニ
對スル利子ノ問題ヲ初メ、重要ナ質疑應答
ガ行ハレマシタガ、餘リニ繁多ニナリマス
カラ、速記錄ニ讓リタイト存ジマス
ソコデ愈、討論ニ入リマシテ、政友會ノ
助川委員ヨリハ、本案ニハ極メテ不滿足ノ
點ガ多イ、殊ニ融資額ノ少ナイコトヽ損
失ノ補償ヲ市町村ニ及ボスコトニ付テハ、
甚ダ以テ遺憾トスルガ、本案ガ今日ニ至ル
ニ付テハ、容易ナラザル苦心ト努力トノ加ッ
テ居ルコトヲ知ルト同時ニ、國民ノ要望モ
亦實ニ切ナルモノガアル、或ハ本案實施ノ
暁ニ於キマシテ、國民ノ要望ニ對シ、期待
ヲ裏切ルガ如キコトガアフテハナラヌト憂
ヘザルヲ得ナイケレドモ、所謂無キニハ
勝ルモノガアル、隨テ玆ニ本案ノ成立ヲ思
フ所カラ、原案ニ贊成スル者デアルトノ意
味ヲ述ベラレマシテ、且ツ希望トシテ實施
其他ニ對シ、特ニ注意スベキ點ヲ列擧サ
レマシタガ、更ニ雪害地ノ如キ特別ノ事情
アル地方ニ對シテ、劃一的ノ方法ヲ用ヒラ
レルコトハ宜シクナイ、特ニ考慮サレタイ
トノ意味ヲ附加ヘラレマシタ
次ニ民政黨ノ武知君ヨリモ、本案ニ贊成
スル旨ヲ述ベラレ、其理由トシテ、本案ガ
前囘ノ提案ニ比シテ立法上改善サレタ點ト
シテ、損失補償ヲ認メタ點、無限責任以外
ニ保證責任ヲ認メタ點、金錢債務調停法ト
連絡セシメタ點等ヲ擧ゲラレマシテ、個人
ノ負債ニ對シテ國庫又ハ公共〓體ガ補償ス
ルト云フコトハ平時ニ於テハ一考ヲ要ス
ベキモノデアルガ、今日ノ場合ニ直面シテ、
金融梗塞ノ豫知サレル方法ヲ以テ臨ムコト
ハ、採ルバキ途デナイノミナラズ、機會ヲ
逸スルヨリハ實行可能ノ範圍內ニ於テ、整
理更生ノ實際化ヲ圖リタイト云フ意味ヲ述
ベラレタノデアリマス、ソレカラ國民同盟
ノ後藤君ヨリ修正說ガ出マシタガ、ソレハ
委員會ニ於キマシテハ留保サレマシテ、採
決ニハ加ヘマセヌコトヽナリマシタノデ、
玆ニハ說明ヲ省キマス、何レ本議場ニ於
キマシテ、同君ヨリ詳シク御述べニ相成ル
コトヽ考ヘマス、ソコデ採決ノ結果、大多
數ヲ以テ本案全部ヲ可決致シタ次第デアリ
やっ、此段御報告ヲ申上ゲマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02719330316&spkNum=34
-
035・秋田清
○議長(秋田〓君) 本案ニ對シテハ、後藤
亮一君ヨリ定規ニ依ッテ修正案ガ提出サレ
テ居リマス、仍テ便宜上討論ハ第二讀會
ニ於テ修正案ノ趣旨辯明ヲ聽キマシタ上
デ、之ヲ許可シタイト思ヒマス、本案ノ第
二讀會ヲ開クニ御異議アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02719330316&spkNum=35
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036・秋田清
○議長(秋田〓君) 御異議ナシト認メマ
ス、本案ノ第二讀會ヲ開クニ決シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02719330316&spkNum=36
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037・上田孝吉
○上田孝吉君 直チニ本案ノ第二讀會ヲ開
カレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02719330316&spkNum=37
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038・秋田清
○議長(秋田〓君) 上田君ノ動議ニ御異議
アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02719330316&spkNum=38
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039・秋田清
○議長(秋田〓君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ直チニ第二讀會ヲ開キ、議案全部
ヲ議題ト致シマス
農村負債整理組合法案第二讀會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02719330316&spkNum=39
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040・秋田清
○議長(秋田〓君) 此際本案ニ對スル修正
案ノ趣旨辯明ヲ許シマス-後藤亮一君
農村負債整理組合法案ニ對スル修正案
右〓規ニ據リ提出候也
昭和八年三月十六日
提出者後藤亮
農村負債整理組合法案中左ノ通修正ス
第二十九條中「半額」ヲ「全額」ニ、「三千
萬圓」ヲ「六千萬圓」ニ改ム
第三十條ヲ削リ第三十一條ヲ第三十條ニ
改メ以下順次繰上グ
〔後藤亮一君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02719330316&spkNum=40
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041・後藤亮一
○後藤亮一君 只今議題トナッテ居リマス
ル農村負估整理組合法案ニ付テ、修正ノ意
見ヲ陳述致シマス、私ノ修正セント致シマ
スル點ハ、極メテ簡單明瞭ナルモノデアリ
マシテ、只今委員長ヨリ御報〓ガアリマシ
タ如ク、今囘政府ノ提出致シマシタル農村
負債整理組合法案ハ其損失補償ノ半分ヲ
府縣ト市町村トニ負擔セシメヨウト云フ原
案デアリマス、此點ニ關シマシテ修正ヲ致
スノデアリマス
先ヅ其修正ノ要點ヲ申上ゲマス、第二十
九條ニ損失補償金ノ「半額」トアリマスノヲ
「全額」ニ改メマス、補給金ノ總額ハ「三千
萬圓」トアリマスノヲ、「六千萬圓」三郎、
ルノデアリマス、此修正ノ結果第三十條ハ
無用ニナリマスカラ、之ヲ削除致シマス、
第三十一條ヲ第三十條ニ改メマシテ、以下
各ミ一條ヲ繰上ゲルト云フノガ修正ノ要點
デアリマス、是ハ要スルニ市町村及道府縣
ノ負擔ヲ取除イテ、此農村負債整理組合法
ニ依リマシテ生ジマシタル損失補償ハ、其
全部ヲ國庫ガ負擔スベキモノナリト云フノ
ガ、修正ノ要點デアリマス(拍手)
以下簡單ニ修正ノ理由ヲ申述べマス、今
囘提案セラレマシタ所ノ負債整理組合法案
ハ其資金ノ融通ヲ認メテ居ル點、又損失
補償ヲ認メマシタル點ニ於キマシテハ前
議會ニ提案セラレタルモノトハ、一段ノ進
步ノアルコトハ、只今委員長ノ御報告ニモ
述ベラレタ通リデアリマス、併ナガラ今ヤ
恆久的トナリ、全面的トナッテ居リマスル
此深刻ナル農村ノ疲弊、之ヲ打開致シマス
ル重要ナル一方法ハ、此負債整理ヲ有效適
切ニ致スト云フコトガ、一番ノ重大ナル對
策デアリマス、ソレデアリマスカラ之ヲ致
シマスル爲ニハ、政府ハ思切ヲタル對策ヲ
爲スノガ當然デアルト考ヘル者デアリマ
ス(拍手)吾々ノ考ヘル所デハ、負債ノ元金
或ハ長ラク累積シテ居リマス所ノ利子ノ一
部分ヲ切捨テル、或ハ殘餘ノ負債ニ對シマ
シテハ低利ノ金ト肩替リヲサセテ、長期
ノモノニスルト云フヤウナ、思切ッタル方
法ヲ採ラナケレバ、本當ニ此農村ノ負債ヲ
整理スルコトハ出來ナイト考ヘテ居ルノデ
アリマス(拍手)然ルニ今囘ノ提案ニ依リマ
スト云フト、融資額ハ僅ニ二億圓デアリマ
シテ、甚ダ僅少デアルト云フコトハ、各派
ノ委員諸君ガ此感ヲ同ジウシテ居ッタ所デ
アリマス、又其損失補償モ國家ハ三千万圓
シカ取ラナイ、アトハ府縣ト市町村トニ於
テ、之ヲ分擔シテ引受ケヨト云フノデアリ
マシテ、其損失補償額ノ僅少ナル點ニ至
リマシテモ是亦各委員諸君ガ、甚ダ
其僅少ナルコトニ遺憾ノ意ヲ表シテ居〃
タノデアリマス、斯樣ニ今囘ノ農村負債
整理組合法案ハ甚ダ姑息不徹底ナモ
ノデアルト同時ニ、其一面ニ於キマシ
テハ或ハ此法案ガ出ルコトニ依リマシ
テ債權者ニ乘ゼラルヽヤウナ機會ヲ與ヘ
ルノデハナイカト云フヤウナ、サウ云フ遺
憾ナ點スラアルノデアリマシテ、斯樣ナ懸
念ニ對シマシテモ、吾々ハ頗ル此案ノ不徹
底ナルコトヲ考ヘナケレバナラヌノデアリ
マン、斯樣ナ理由ニ依リマシテ、吾々ハ玆
ニ各府縣及市町村ノ損失負擔ヲ修正シヨウ
トスルノデアリマス
修正ノ理由ト致シマシテハ、第一ニハ、
吾々ト政府トハ農村負債整理ト云フコトニ
對シテ、根本的ニ其觀念ヲ異ニスルト云フ
點デアリマス、卽チ政府ハ農村ノ負債ヲ整
理シテヤルコトハ、農村ノ爲ニシテヤルノ
ダト云フヤウナ考ヲ、多分ニ有ッテ居ラレ
ルノデアリマス、吾々ハ其政府ノ者ガ餘程
違ッテ居ルト思フノデアリマス、嘗テ議會ノ
劈頭ニ於キマシテ、總理大臣又大藏大臣ヨ
リ御述べニナリマシタ如ク、我國ノ經濟的
不振ヲ打開シテ、玆ニ本當ニ經濟的建直シ
ヲスルトカ、或ハ景氣ノ曙光ヲ出ダスト云
フコトハ、農村ノ購買力ヲ增進スルト云フ
コトガ、唯一ノ方法デアルト云フコトヲ申
述ベラレテ居リマス、是ハ吾々モ同感デア
リマス、而モ今ヤ農村ノ實情ハト申シマス
ルト、非常ニ疲弊困憊シテ居ルト云フコト
ハ言フ迄モナイコトデアリマシテ、此農村
ヲ救フト云フコトハ、農村自體ヲ救フト云
フコトデハナクシテ、此農村ヲ救フト云フ
コトハ、同時ニ國家ヲ救フ所以デアルト云
フコトヲ考ヘナケレバナラヌノデアリマス
(拍手)此點ニ於キマシテ、吾々ハ其根本觀
念ヲ異ニスルト云フ點ヲ指摘シタイト思フ
ノデアリマス
第二ハ、政府ハ農村ノ窮迫ニ對シマシ
テ、甚シク認識ヲ缺イテ居ルト云フ點デア
リマス、卽チ現在ノ農村ノ現狀ハ申上ゲル
マデモナク、農產物ガ不自然ナ激落ヲシテ
居ルトカ、或ハ過重ナル負擔ニ苦ンデ居ル
トカ、又一戶當リ千圓以上モアルト申サレ
テ居リマスルガ、五十億トモ云ヒ、七十億
トモ云フヤウナ、莫大ナル所ノ負債ニ苦ン
デ居リマシテ、而モ其負債ハ七分乃至二割
以上モノ高率ノ利子ヲ支拂ッテ居ルノデア
リマス、斯樣ナ實情ニ在リマシテ、農村ハ
窮迫シテ、今ヤ氣息奄々タル狀態ニアルコ
トハ幾度モ此議場デ各派ノ議員ヨリ述べ
ラレテ居ル通リデアリマス、之ニ對シマシ
テハ、或ハ重要農產物ノ價格ノ引上ヲスル
トカ、或ハ肥料ノ統制ヲ致ストカ、其外吾
吾ガ夙ニ主張致シテ居リマスル如ク、義務
〓育費ノ全額ヲ國庫負擔ト致シマストカ、
或ハ農村技術員ニ對スル俸給ヲ國家ガ補助
シテヤノトカ、又役場費中ノ一部分ヲ國家
ガ補助シテヤルトカ、耕作地租ノ一時全免
ト云フヤウナ、此非常時ニ對スル所ノ對策
ヲ講ジテヤラナケレバ、農村ガ更生シナイ
ト云フ所ノ、今ヤ重大ナル時機ニアルノデ
アリマス、斯樣ナ時ニ於キマシテ、斯樣ニ
非常時ノ對策ヲ講ジテヤラナケレバナラヌ
ソレ等ノ市町村ニ對シマシテ、寧口之ニ反
スル所ノ、將來ニ於テ負擔ヲ重ク背負ハセ
ルト云フヤウナ政策ヲ執ルト云フコトハ、
畢竟農村ノ實情ニ對シテ、政府ハ認識ヲ缺
イテ居ル所以デアルト云フコトヲ、指摘シ
ナケレバナラヌノデアリマス(拍手)
第三番目ニハ、政府ガ屢、聲明致シテ居リ
マスル所ト、此農村負債整理ノ精神トハ、
其政策ガ矛盾シテ居ルト云フコトヲ指摘シ
タイノデアリマス、我國ノ現在ノ經濟的不
振ヲ打開スル爲ニハ農村ノ購買力ヲ增進
セシメネバナラヌト云フコトハ、屢、申上
ゲル通リデアルニ拘ラズ、其農村ニ對シマ
シテ、新シキ負擔ヲ負ハシメヨウトサセル
コトハ、政府ノ屢〓聲明スル所ト相矛盾ス
ル政策デアルト、申サナケレバナラヌノデ
アリマス
第四番目ニハ、負債ヲ澤山負ウテ居ル農
民ノ多イ町村程、町村自體モ疲弊シテ居ル
ノデアリマス、ソレ故ニ其町村ニ損失ヲ負
擔セヨト申シマシテモ、到底其議ハ纏マル
モノデハナイト云フコトヲ申上ゲタイノデ
アリマス
第五番目ニハ、一部落ノ負債ニ對シマシ
テ、全村ガ果シテ損失負擔ヲスルト云フ、
村議或ハ町議ヲ纒メルコトガ出來ルヤ否ヤ
ト云フ點デアリマス、本案ハ隣保共助ト云
フ精神ニ依リマシテ、部落ヲ單位トシテ負
債整理組合ヲ作ラシタイト云フノガ此本
案ノ骨子デアリマス、其隣保共助ノ精神ニ
依ッテ負債整理ヲスルト云フコトハ、吾々モ
頗ル結構デアルト考ヘマスルガ、其町村ノ
中ノ一部落ガ、或ハ其町村中ノ二部落ガ、
自分等ノ負債ヲ整理スルト云フコトノ爲ニ
組合ヲ作ッタ場合ニ、其村全體ガ、隣保共助
ノ精神デアルカラト云ッテ、一部分ノ人ノ負
債ヲモ負擔スルダケノ雅量アリヤ否ヤト云
フコトハ頗ル實際問題トシテ疑ハシイノ
デアリマス、寧ロ是ハ不可能デアルト云フ
コトヲ考ヘテ、サウシテ立案ヲ致シタ方ガ、
將來ニ失望ヲ貽サヾルモノデアルト吾々ハ
考ヘルノデアリマス(拍手)
第六ニハ、一人當リ千圓位ノ程度ニ於テ、
此負債ノ整理資金ヲ貸シタイト云フノガ政
府ノ說明デアリマスガ、農村ノ現狀ヲ考ヘ
テ見マスルト、農村ノ從業者、農村ノ勞働
者或ハ小作人モ困ッテ居ルニハ違ヒアリマ
セヌガ、本當ニ農村デ困,テ居リマスルモノ
ハ一二町乃至二三町ノ田地ヲ持ッテ居ル
所ノ、所謂中農小農ト言ハレル人ガ、一番
ニ窮迫ヲ致シテ居ルノデアリマス、然ルニ
一人千圓位ノ資金ヲ融通スルト云フ精神デ
アリマスルト、是等ノ中小農ノ負債ヲ整理
スルト云フコトハ實際ニ於テ餘リニ期待
出來ヌノデアリマス、サウ云フコトニナリ
マスルト、是等所謂其村ニ於ケル所ノ、中
堅ノ人ト言ハナケレバナラヌ所ノ中小農
ガ、果シテ一部分ノ人ノ負債ヲ整理シテヤ
ル爲ニ起ッテ來ル此損失負擔ヲ爲スト云フ
議ヲ、纒メ得ルヤ否ヤト云フコトハ、是亦
甚ダ不可能ノコトデアルト考ヘラレルノデ
アリマス
第七ハ、損失ヲ市町村ニ負擔セシムルト
云フコト、或ハ道府縣ニ負擔セシメルト云
フコト、是ハ融資ノ金額ガ二億圓デ少イト
カ、損失補償ノ額ガ三千万圓デハ少イトカ
云フ意味ト違ヒマシテ、是等融資額ガ二億
圓デアル、損失補償ガ三千万圓デアルト云
フコトハ、國家ノ財政ニ餘裕ガ出來ルトカ、
或ハ負債整理組合ノ成績ガ非常ニ良好ナル
場合ニ於キマシテハ、將來之ヲ改正スベキ
機會ハ强チ無イト云フコトハ出來ナイノ
デアリマスガ、道府縣及市町村ニ其損失ヲ
負擔セシメルト云フコトハ、ソレトハ意味
ヲ大ニ異ニ致シマシテ、是ハ根本的ナ主義
上ノ意見ノ相違デアリマスカラシテ、〓〓
今囘ノ立法ニ於テ、道府縣及市町村ガ之ヲ
負擔スルト云フコトニ決リマスレバ、容易
ニ之ヲ更改スルコトハ不可能デアルト吾々
ハ考ヘルノデアリマス、故ニ此點ニ付キマ
シテハ立法ノ初メニ於テ、宜シク是等ノ
負擔ヲ除去シテ置カナケレバナラヌモノデア
ルト、吾々ハ確信ヲ致ス者デアリマス、
最後ニ第八ト致シマシテ申上ゲタキハ、
市町村同樣ニ地方財政、卽チ道府縣ノ財政
モ、今ヤ非常ナル窮迫ヲ致シテ居リマス、
サウシテ其負擔モ頗ル過重デアリマシテ、
地方ノ財政ノ此重キ負擔ト云フモノハ容
易ナラザルモノガアリマス、是ハ寧ロ市町
村ノ財政ノ負擔ヲ輕減セシメルト同樣ニ、
道府縣ノ負擔ヲモ輕減シテヤラナケレバナ
ラヌ時ニ方リマシテ、將來ニ新シキ重キ負
擔ヲ背負ハセルト云フガ如キ政策ハ、斷ジ
テ吾々ノ採ラザル所デアリマス、斯樣ナル
意味ニ於キマシテ、吾々ハ修正ヲ致シタイ
ノデアリマスルガ、之ヲ要スルニ、嘗テ政
府ハ昭和二年ノ經濟恐慌ノ場合ニハ、二億
或ハ五億ト云フヤウナ莫大ナル資金ヲ融通
致シマシテ、サウシテ一部ノ金融資本
家ヲ救濟致シタヤウナ事モアリマス、
是モ國家ノ爲ニヤラナケレバナラヌ事デ
アルトスルナラバ結構ナ事デアリマスル
ガ、其當時吾々ハ其損失負擔ヲ、一部ノ金
融資本家ニ負擔セシメタト云フコトヲ、未
ダ曾テ聞イタコトガナイノデアリマス、然
ルニ今ヤ農山漁村ノ疲弊ガ甚シク、殊ニ累
積シテ居ル所ノ負債ノ爲ニ、此儘抛ッテ置イ
タナラバ、農村ハ再ビ起ツ能ハザルニ至リ
マシテ、洵ニ國家ノ一大事ト申サナケレバ
ナラヌノデアリマス、此時此際ニ偶、負債整
理法ヲ提出シタル所、其損失ノ一部ヲ、是
等道府縣及農村ニ負擔セシメマシテ、將ニ
飢エナントシテ居ル所ノ此瘦馬ニ、ーサ)
重キ荷物ヲ背負ハセルト云フヤウナコト
ハ斷ジテ政治家ノ採ラザル所デアルト吾
吾ハ考ヘル者デアリマス、委員會ニ於テノ
空氣ヲ考ヘテ見マスルト、委員會ニ於テ各
派ノ諸君ガ政府ニ向フテ質問ナサル所ハ、殆
ド私ト同意見デアリマス、質問ヲシテ居ラ
レル所ヲ聞キマスト、殆ド吾々ト共鳴シタ
意見ガ多イノデアリマスルガ、色々ト其政
黨的關係ニ依リマシテ、色々ナ御事情ガア
ラウトハ御察シ申上ゲマスルガ、併ナガラ
斯樣ナ農村ノ非常時デアリマス、冀クハ深
ク疲弊困憊シテ居ル農山漁村ノ實情ヲ洞察
セラレマシテ、堂派的感情ヲ捨テヽ滿場
ノ諸君ガ此修正案ニ御贊成アランコトヲ、
切望シテ巳マザル者デアリマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02719330316&spkNum=41
-
042・秋田清
○議長(秋田清君) 是ヨリ討論ニ入リマ
ス、通告順ニ依ッテ發言ヲ許シマス-西
方利馬君
〔西方利馬君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02719330316&spkNum=42
-
043・西方利馬
○西方利馬君 私共ハ委員長ノ報〓通リ贊
成セントスル者デアリマス、併ナガラ私共ハ
本案ニ滿足ヲ致シテ贊成ヲ致ス者デハ固ヨ
リナイノデアリマス、幾多ノ不滿不備缺陷
ハ認メルノデアリマス、併ナガラ此御粗末
ナル案ヲ完全ニ修正シヨウト致シマシテ
モ、修正シ切レルモノデハアリマセヌ、御
承知ノ通リ、モウ會期モ切迫シテ居リマ
ス、到底吾々共ノ希望ニ副フ修正ヲスルナ
ドヽ云フコトハ、旣ニ時日ガ許サヌノデア
リマス、又前議會ニ御提案ニナラレタ案ニ
比較シマシテ、多少ナリトモ吾黨ノ主張ヲ
取入レラレタ點モアルノデアリマス、又斯
様ナ詰ラヌモノデモ、無イヨリハ有ル方
ガ、幾ラカ農山漁村民ノ爲ニナルノデハナ
カラウカト云フヤウナ意味合デ、吾々共ハ贊
成ヲ致スノデアリマス、就テハ私共ハ如何
ナル點ニ主トシテ不滿ヲ有ツモノデアルカ
ト云フコトヲ明ニ致シテ、贊成ノ意ヲ表セ
ントスル者デアリマス
第一、吾々共ノ最モ遺憾ニ存ズル點ハ、
本案カラ中小商工業者ノ負債整理ヲ除去シ
タル點デアリマス、御承知ノ通リ今日負債
ノ重壓ニ苦ム者ハ、獨リ農山漁村民バカリ
デハナイノデアリマス、中小商工業者モ均
シク此負債ノ爲ニハ苦ンデ居ルノデアリ
マス、故ニ御承知ノ通リ六十一一議會ニ於キ
マシテハ、滿場一致ヲ以テ可決致シマシタ
時局匡救案、此時局匡救案ニハ獨リ農山漁
村民ノ負債ニ付テバカリデナク、此中小商
工業者ノ負債ニ付テモ、整理ヲスベシト云
フコトヲ明ニ致シテ居ルノデアリマス、又前
囘ノ議會ニ於キマシテモ、我黨カラ此點ニ對
シテ修正ヲ致シテ居ルコトハ諸君モ御承知
ノ通リデアリマス、然ルニ今囘ノ案ニモ、之
ヲ除外サレテ居ルノデアリマス、政府ノ說明
ナサル所ニ依リマスト云フト、中小商工業者
ト云フ者ハ、此農山漁村民トハ異ナリ、業
態モ異ナル、隨テ環境モ異ヲテ居ル、是ハ隣
保共助ノ精神ニ愬ヘルヨリモ、寧ロ同業者
共助ノ精神ニ依フテ整理ヲ致シタ方ガ適當
デアルト云フ、斯樣ナ政府ノ說明デアルノ
デアリマス、ソレナラバ、同ジク整理ヲシ
ナケレバナラヌ必要ヲ痛感スルナラバ、此同
業者共助ニ依ル所ノ負債整理ノ別案ヲ、同
時ニドウシテ御出シニナラヌノデアルカ、
之ヲ御提出ニナラズ、隨テ今之ヲ整理スル
ノ途ナシトスルナラバ、姑ク本案ニ之ヲ包
含セシメテ整理スルコトガ立法ノ上ニ、取
扱ノ上ニ多少ノ不便ガアリマシテモ、之ヲ
含メテ整理スルト云フコトガ、是ガ親切ナ
ヤリ方デモアリ、妥當ナリト吾々共ハ確信
致スノデアリマス(拍手)此點ハ吾々共ノ返
ス返スモ遺憾ニ思フ點デアリマス
次ニ私共ノ遺憾ト致シマスル點ハ、此整
理ノ資金ニ付テヾアリマス、本案ニハ此點
ハ明ニハナッテ居リマセヌガ、委員會ノ說
明ニ依リマスルト云フト、凡ソ二億圓ノ金
ヲ融通シテ、サウシテ此莫大ナル負債ノ整
理ヲ爲サントスル御意思デアルヤウデアリ
さい、此二億圓ノ金ヲ以テ、此莫大ナル負
債ヲ、ドウシテ整理セント爲サルノデアル
カ、吾々共ハ其餘リニ少額ナルニ驚カザル
ヲ得ナイノデアリマス、又失望セザルヲ得
ナイノデアリマス、御承知ノ通リ今日市町
村ノ數ハ約一万一千七百アリマス、此一万
一千七百ニ對シテ、假ニ一万ノ市町村ニ、
此二億ノ金ヲ割當テルト云フナラバ、ー市
町村當リ幾ラニナルデセウ、僅ニ二万圓デ
アリマス、而シテ本案ニ依リマスルト云フ
ト、五箇年間ニ二億圓ノ金ヲ融通スルコト
ニ相成ッテ居ルノデアリマス、デアルカラシ
テ一市町村當リ一箇年ノ割當平均額ハ幾
ラニナルカト云フトタッタ四千圓デアリ
マい、此四千圓ヲ以テドウシテ一箇村ノ負
債ノ整理ガ出來マスカ、御承知ノ如ク今日
市町村ノ平均負債額ハ、幾ラ少ク見積ッテ
モ四十万圓デアリマス、四十万圓ト云フト、
一市町村當リノ一年ノ利息ダケデモ、平均
一割ト見積ニテ四万圓ニナル、利息ダケデ
モ四万圓負擔セネバナラヌ此農村ニ向ッテ、
僅ニソレノ一割ニ相當スル四千圓ノ資金ヲ
以テ、如何ニシテ今日ノ此負債ノ整理ガ出
來ルノデアリマスカ(「ヒヤ〓〓」拍手)到底
出來ルモノデナイコトハ是ハ明瞭デアリ
やべ、殊ニ又此點モ本案ニハ明ニナッテ居
ラヌノデアリマスガ、政府ハ小額債務ニ限フ
テ、之ヲ整理セントスル意圖ヲ有スルコト
ハ明デアリマス、此小額債務ニ限フテ整理
ヲスルト云フ其御考ハ根本カラ間違ヲテ
居ルノデアリマス、一體如何ナル債務ヲ整
理スベキカト云フ標準ハ、負債ノ多寡ニ依。フ
テ決定スルモノデハナイノデアリマス幾
ラ小額ノ負債デアリマシテモ、整理シナク
トモ宜シイモノモアル、又幾ラ厖大ナル負
債ト雖モ、其負債ヲ整理シナカッタナラバ、
所謂整理ノ實ガ擧ラヌ、其農村ノ更生ガ出
來ナイ、又農村更生ノ上ニ大ナル障碍トナ
ルト云フヤウナ、斯樣ナ種類ノ負債ニ對シ
テハ幾ラ額ガ多クトモ之ヲ整理シテヤ
ラニヤ整理ノ實ガ擧ラナイノデアリマス、
デアルカラシテ如何ナル負債ヲ整理スベキ
カト云フコトハ決シテ是ハ金額ノ大小ニ
依ルベキモノデナクシテ、負債ノ種類、性
質ニ之ヲ求メナケリヤナラヌコトハ理ノ
當然デアルノデアリマス、殊ニ又政府ノ說
明ナサル所ニ依リマスルト云フト、此小額
負債ニ付テモ、僅ニ一千圓以下ノ債務ニ對
シテ整理ヲナサレントスル御考デアルコト
容易ニ窺フコトガ出來ルノデアリマス
ルガ、併ナガラ千圓以下ノ債務ト申シマスレ
バ、是ハ都會ハ率ザ知ラズ、農村ニ於キマシ
テハ一時借ハ別ト致シマシテ、例ヘバ肥料
ノ資金デアルトカ、或ハ養蠶ノ前借デアル
トカ云フヤウナモノハ、是ハ別ト致シマシ
テ、千圓以下ノ負債ト云フモノハ、大抵是ハ
無擔保債務デアリマス、無擔保債務ノ如キ
ハドウナッテ居リマスルカト云フト農村
ノ實情ニ少シク御精通ナサッタ方ハ御承知
デアリマセウガ、千圓以下ノ無擔保倩務ノ
如キハ、大抵是ハ〓權者ハ諦メテシマッテ、
言ハズ語ラズノ裡ニ、出世證文的ニ大抵ハ
整理サレテ居ルノデアル、ドウシテモ整理
シナケレバ農村ノ更生、農村經濟ノ建直シ
ガ出來ナイト云フ負債ハドウ云フ負債デ
アルカト申シマスルト、先程モ國民黨ノ方
カラ申サレタヤウニ(「國民黨ヂヤナイ」ト
呼フ者アリ)國同ノ方カラ申サレタヤウニ、
此田地田畑ヲ持チ、山林ヲ持チ、家屋敷ヲ
持ッテ、之ヲ抵當ニ入レテ、金ヲ借リテ、利息
ノ爲ニ動キガ取レナクナッテ居ル者、之ヲ目
標ニ整理ヲシナカッタナラバ、今日ノ農村ノ
建直シト云フモノハ他ニドンナ方法ヲ講
ジテモ、絕對ニ出來ルモノデハナイノデア
リマス(拍手)是ニ中心ヲ置カズシテ、サウ
シテ少額債務、而モ千圓以下ノ債務ヲ中心
ニシテ、整理ヲナサルナドト云フヤウナコ
トハ全ク今ノ政府ハ先程モ言ハレタガ、
農村ノ實情ニ對シテ認識ガナイト言ハザル
ヲ得ナイノデアリマス(拍手)
次ニ私共ノ最モ不滿ニ感ズル點ハ、如何
ナル負債ヲ整理センカト云フ點ニ付テ、全
ク認識ヲ缺イテ居ルノデアリマスガ、其他
ニモ此負擔ノ問題ニ付テ、或ハ其他ノ問題
ニ付キマシテモ、多々遺憾ノ點ハアリマス
ガ私ハ之ヲ一々數ヘ上ゲタノデハ一日
掛ッテモ到底論ジ切レルモノデハナイノデ
アリマスカラ、私ハ是以上述ブルコトヲ差
控ヘルコトニ致シマスガ、要スルニ現內
閣ガ-今ノ政府ガ斯樣ナ不撤底ナ案ヲ出
サレタト云フコトハ、取リモ直サズ負債敷
理ノ重要性ニ對シテ、全ク誤フタル根本觀念
ヲ有ッテ居ラレル所カラ、出發シテ居ルト
思フノデアリマス(拍手)內閣諸公ノ中ニ
ハ農村ノ個人ノ負債マデ政府ガ發動シ
テ-國家ガ發動シテ之ヲ整理シテヤルベ
キモノヂヤナイト云フヤウナコトヲ考ヘテ
居ラレル、平常ノ場合ナラ成程ソレデ宜シ
イ、苟モ非常時ヲ擔當スル非常時內閣ノ言
フベキコトヂヤ斷ジテナイノデアリマス
(拍手)農村ノ角債ヲ農村民ノ力、所謂自力
〓生ニ依リ解決ガ付ク程ナラバ吾々ハ非
常時ナドヽ大騷ギヲスル必要ハテンデナイ
ノデアル(拍手)全ク此點ニ於テ現內閣ハ間
違ッタ根本觀念ヲ有ッテ居ラレル假令個人
ノ負債デアッテモ、ソレヲ整理セザルニ於テ
ハ農村ノ今日ノ破局ヲ救フコトハ出來ナ
イ、今次ノ農村經濟ノ破局ヲ救フコトガ出來
ナケレバ、國家經濟ノ建直シハ出來ナイト
云フ所ニ、負債整理ノ〓要性ガアルノデア
リマス(拍手)ソコニ又此非常時ノ非常時タ
ル事態ガ存スルノデアル然ルニ現内閣ハ
此點ニ思ヲ致サレズシテ、サウシテ個人ノ
負債、個人ノ負債ニ向ッテ國家ガ發動スルナ
ドヽ云フコトハ、間違ッテ居ルト云フヤウナ、
斯樣ナ考ヲ有タレテ居ル所カラ、此缺陷、
不備、總テ不徹底ナル案ガ出發シテ居ルノ
デアル(拍手)此點ニ付テハ吾々ト根本ノ觀
念ニ於テ、今ノ內閣ガ大ナル隔リガアルノ
デアル、斯樣ニ吾々共ハ、此内閣ニ向ッテ
今口幾多ノ希望ガアリト致シマシテモ、其
希望ヲ申シテモ無駄ナコトデモアルカラ、
唯吾々ノ願ハントスル所ハ、本案ガ通過ス
ルコトニ依ッテ、多少デモ農村漁村民ノ爲ニ
ナルコトデアッタナラバ宜シイ、ドウカ爲ニ
ナッテ貰フコトヲ願ッテ、吾々共ハ本案ニ巳
ムヲ得ズ贊成ヲ致ス次第デアリマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02719330316&spkNum=43
-
044・秋田清
○議長(秋田〓君) 高田耘平君
〔髙田耘平君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02719330316&spkNum=44
-
045・高田耘平
○高田耘平君 農村負債整理組合法ニ付キ
マシテ、委目長ノ報〓ニ贊成ノ意ヲ表シ、
併セテ後藤君提出ノ修正說ニ、反對ノ意見
ヲ申上ゲタイト思ヒマス、已ムヲ得ズ反對
ノ意見ヲ申上ゲマス
農村ノ負債額ガ、凡ソ何程ノ金額デアルカ
ト云フ事柄ハ殆ド推定的デアリマシテ、或ハ
五十億ト稱シ、六十億ト稱シテ居リマシタ、
所ガ昨年ノ十二月ニ於テ、十二月ヲ基準ト
シテ、政府ガ大體調ベタモノガ、五十四億九
千万圓デアリマシテ、先ヅ五十五億ト記憶
スルコトガ宜カラウト思ヒマス、昭和四年
末ニ於テ農林省ガ調べタモノハ、是ハ本當
ノ推測デアッタ、是ハ四十三億万圓デアッタ、
五、六、七年ノ間ニ十二億万圓殖エタノデ
アリマス但シ今囘ノ調査ト雖モ、絕對的
ニ信ズベキモノデハナイカモ知レマセヌガ、
大體ニ於テ中ッテ居ルト見ル外ナイノデア
リマスサウスルト昭和四年ノ十二月ニ
四十三億デアリシモノガ五十五億デスカ
ラ、年々約四億万圓ヅヽ增加シタノデアリ
やく、卽チ一割ノ利子ガ累年的ニ加算シタ
ノデゴザイマシテ、玆ニ五十五億万圓ト云
フ大負債ガ出來タノデアリマスソコデ之
ヲドウシテ支拂フカト云フコトハ、極メテ
重大問題デアリマス、是ニ於テ負債整理組
合法ノ必要ガアルノデゴザイマスルガ假
ニ日本ノ全農村ノ米ノ收穫高ヲ平均ハ千万
石ト見マシテ、其二分ノ一ノ三千萬石ガ市
場ニ賣買サレテ、其金ガ生產者タル農民ノ
手ニ入ルモノト假定致シマシテ、少シ違ヒ
ガアリマスガ、大體其邊ノ數字デ宜カラウ
ト思ヒマス、之ヲ庭先相場デ一石二十圓ト
見マスレバ、約六億万圓デアリマス、サウ
スルト五十五億万圓ニ對シテ、其利子ガ年
一割ト見レバ五億五千万圓デアリマスカ
ラシテ、日本ノ農民ノ主タル農產物ノ收入
全部ガ、農村ノ借入金ノ利子ニ相成ルト云
フコトニ略ニナリマス、此數字ヲ見マシテ、
成程農村ニ他ノ收入モゴザイマセウ、養蠶
ノ收入モゴザイマセウ、又山村ニ於テハ山
林ノ收入モゴザイマセウ、畑作ノ收入モゴ
ザイマセウガ、兎モ角モ主タル收入ハ米デ
アリマス、此米ノ殆ド全部ヲ賣ッタモノガ
元本五十五億万圓ノ利子ト消エテシマフノ
デゴザイマスルカラシテ、如何ニ農村ガ此
負債ノ重壓ノ爲ニ苦シムカト云フ事柄ニ於
キマシテハ想像ニ堪ヘヌモノガアルノデ
アリマス、而シテ昨年ノ六月ノ第一一次臨時
議會ニ於キマシテ、各派ガ農村匡救ニ對ス
ル對案ヲ政府ニ示シマシテ、其對案ノ一トシ
テ、農村負債整理ノ問題ニ重キヲ置イタコ
トハ極メテ當然ノ話デゴザイマス、昨年
ノ九月ノ第三次臨時議會ニ、政府ガ農村負
債整理組合法ヲ提案致シマシタ、政友會ノ
各位モ御提案ニナリマシテ、而シテ茲ニ修
正說ガ通過致シマシテ、政友會ノ大體ノ意
見ガ容レラレ、是ガ貴族院ニ囘付サレマシ
テ、貴族院ガ衆議院ノ意見ニ同意セズシテ、
玆ニ兩院協議會トナッテ、其結果不調ニ終ッ
タコトハ極メテ遺憾デアッタト私共ハ思
フノデアリマス、其當時吾々ノ意見ハ兎
ニモ角ニモ負債整理ト云フヤウナ事柄ハ
急ニハ中々出來ルモノデハナイノデアル
カラシテ、多少不完全ナ點ガアッテモ、先
以テ之ニ同意ヲ表シテ、一刻モ早ク幾分ナリ
トモ農村ノ負債整理ヲ爲シテ、所謂農村匡救
事業ト相俟ッテ成立シタイト云フコトガ、吾々
ノ希望デアッタノデアリマス、而シテ其當時
吾々ハ政府案ニ對シテ修正意見ヲ出シタコ
トハ無限責任ノミナラズ、保證責任ヲ認
メヨト云フ意味ニ於テ、修正說ヲ出シタノ
デゴザイマス、是ハ政友會ノ諸君モ御同意
見デアッタノデゴサイマス、尙ホ希望條件ト
シテ、損失補償ノ制度ヲ確立スルト云フコ
ト、或ハ利率ヲ出來ルダケ最低ニセヨト云
フコト又必要ニ應ジテ低利資金ヲ融通セ
ヨト云フコト等ヲ希望條件トシテ、私共ハ
同意シタノデゴザイマス、所ガ今囘ノ案ニ
於キマシテハ、先程委員長ノ御說明ノ通リ
無限責任デアリシモノガ、無限責任トサ
ウシテ保證責任ト、二ツ竝立スルコトニ相
成リマシタ、尙ホ補償ノ制度モ立ッタノデ
ゴザイマス、吾々ハ尙ホ希望ヲ申セバ色々
ゴザイマスケレドモ、併ナガラ先以テ此邊
ノ程度ヲ以テ、日本ノ現在ノ狀況ニ照シテ
已ムヲ得ザルモノト見テ、玆ニ同意ヲ表ス
ル次第デアリマス、唯私ハ政友會ノ西方君
ノ如クニ、徹頭徹尾反對ノ意味ノ贊成デナ
クシテ、大體此邊デ宜カラウト云フコト
デ、贊成ノ意味ガ多少違フコトニ御注意ヲ
願ヒタイ
此處デ資金ノ問題ニナルノデゴザイマ
ス、資金ハ大體二億圓デアルト云フコト
デスガ、是ハドウ見テモ十分デアルトハ何
人モ思ヒマセヌ、併ナガラ私ハ一度ニ五億
モ六億モノ金ガ要ルトモ存ジマセヌ、負債
整理組合ヲ作ルト云フ其事ガ、極メテ至難
ナコトデアリマス、政府ハ一万二千ノ町村
ノ中、六千町村ニ負債整理組合ヲ作ル必要
ガアルトノ意見デゴザイマスガ、私共ハ其
點ニ付テハ明確ナル判斷ヲ缺キマスガ、兎
ニ角負債整理組合ヲ作ルト云フコトハ事
頗ル容易デハアリマセヌカラシテ、非常ニ
〓究ヲ要スベキモノデハアルケレドモ、中
中實效ヲ擧ゲ難イカラ、茲ニ二億圓ト大體
融通資金ガ決ッテ居リマシテモ、若シ今後負
債整理組合ガ各村ニ、各部落ニ續々トシテ起
リマシテ、而シテ堅實ナル意味ニ於テノ資
金ノ要求ガアリマシタ場合ニ於テハ私ハ
今ノ內閣ニシロ、如何ナル內閣ニセヨ農
村負債ノ實情ヨリ見テ、此二億ノ金ヲ三億
三、、五億ニモ、或ル場合ニ於テハ十億ニ
モシナケレバナラヌ必要ニ迫ラレルデアラ
ウト思ヒマスカラシテ、先以テ今度二億圓
デ我慢ヲスルコトデ宜シイト思フ、何モ實
際ノ運用ニ於テ差支ガアリマセヌ(「今必要
ナンダヨ」ト呼フ者アリ)中々サウ急ニ出來
ルモノデハナイノデアリマス、オヤリナ
スッテ御覽ナサイ、次ニハ府縣及町村ニ補償
ノ一部ヲ負ハセルト云フコトデアリマス、
私ハ實際ニ於テ、若シ政府ガ同意シ得ル場
合デアルナラバ、國同ノ提案ノ通リ、全部
國家ガ補償スルト云フコトニ同意シテモ差
支ナイト思ヒマス、併ナガラ實情ヲ御考へ
下サイ、最初政府ノ意見ハ、全部ヲ國家
ニ負ハセルト云フ意見デアッタヤウニ承ック
ノデス、少クモ農林省ノ意見ハ-所ガ
大藏大臣ハ同意シナイ、大藏大臣ノ今日
マデノ御意見ハ個人ノ負債ヲ整理スル
ニ當ッテ、國家ガ之ヲ補償スルト云フコト
ハ根本的ニ反對デアルト云フコトガ、今
ノ大藏大臣ノ御意見デゴザイマス、所ガ今
度ハ御同意ニナック、併ナガラ全部政府
ガ負擔スルヨリモ、府縣及町村ニ負擔セ
シムルト云フコトニ依ッテ、ドウ云フ言葉ガ
宜シイカ分リマセヌガ、所謂補償額ヲ少ク
スルコトガ出來ルノデアリマス、若シ政府
ガ全部補償スルト云フコトニナシテ、而シ
テ之ヲ府縣ヲ經ズシテ町村ニ貸シタ場合ニ
於キマシテハ町村ノ自治體ガ此整理組合
ニ於テ借入レタル負債ノ償却等ニ付テ注意
ヲ怠ルコトハ已ムヲ得ザル狀態デアルト
私ハ思ヒマス、是ニ於テカ町村ニ對シテ
モ、此補償額ヲ幾分ナリトモ負ハセルト云
フ事柄ハ負債ノ償還ヲ爲サシムルコトニ
於テ、極メテ必要ナル意味モ存シテ居ルト
私ハ思フノデアリマス、實ハ昨年臨時議會
以前ニ、吾々民政黨ハ、少シ意味ハ違ヒマ
スガ小產者ニ對シテ-農業、林業、漁
業ノ小產者ニ對シテ、其生產上必要ナル或
ル程度ノ低利資金ヲ、町村ヲ經テ貸付ケタ
イ、而シテ其場合ニ於テハ國モ府縣モ町村
モ、或ル程度ノ補償ノ責任ニ任ズルト云フ
方ガ、實際ニ於テ可能性ガアリト信ジマシ
テ九月ノ臨時議會ニ於キマシテ、此意味
ノ低利資金ノ融通ヲ政府ニ向クテ要求セン
トシタノデアリマシタガ、其決議案ハ遺憾
ナガラ思フ通リニ行カナカッタノデアリマ
ス卽チ議ニ上ラナカッタノデアリマス私
共ハ地方ガ困ッテ居ル、殊ニ町村ガ困ッテ居
ル際ニ於テ、將來ニ亙リ幾分ナリトモ負擔
ヲ重クスルト云フコトハ、情ニ於テハ忍ビ
ナイ點ガアルコトハ御同樣デアリマス、併
ナガラ今政府ノ言フ通リ、四分ノ一、千五
百万圓ヲ町村ガ負擔シ、其町村ノ數ガ六千
ト假定致シマスレバ、千五百万圓ガ六千ノ
町村ニ分割サレマスルカラシテ、卽チ一町
村平均二千五百圓ノ負擔ニナルノデアリマ
ス、私ハ政府ノ六千ト云フ說ニハ同意スル
コトハ出來ナイカラ、玆ニ判斷出來マセヌ
ガ、一町村平均二千五百圓デアリマス、其
二千五百圓モ、是ハ一年、二年、三年ト云
フ譯デハゴザイマセヌ、償還期限ガ相當ニ
長イノデゴザイマスルカラシテ、若シ損失
補償ヲスルト致シマシテモ、或ル特殊ノ場
合ヲ除クノ外、大體ニ於テ十五年カ二十年
ノ後ニナッテ補償額ガ決定スルノデゴザイ
マスルカラシテ、今日ヨリ左程之ヲ憂フル
必要ガナイト思ヒマス、私共ハ町村ニ此補
償額ヲ幾分ナリトモ負ハセルト云フコトガ、
事柄ノ實行上ニ於テ極メテ已ムヲ得ナイモ
ノデアルト云フ意味ニ於テ、之ニ同意スル
ノデゴザイマス、先程西方利馬君ガ反對ノ
ヤウナ理由ノ一トシテ、政友會ノ昨年ノ案
ニハ農業者ノミナラズ中小商工業者モ、
此整理組合法ニ加ヘテ整理セントシタモノ
ガ、今囘ハ全然是ガ除去シテアッテ、中小
商工業者ニ對シテ何等負債整理ノ方策ノ立
タナイコトハ遺憾デアルトノ御話ガゴザ
イマシタ、是ハ私共其結果ニ於テハ同ジ考
ヲ有ッテ居リマス、併ナガラ農村ノ負債ト、
中小商工業者ノ負債トハ、其性質ニ於テ、全
然トハ申シマセヌガ、大體ニ於テ意味ガ違,
テ居ルト見ルコトガ、正鵠ヲ得テ居ルト信
ジマスルガ故ニ、本案トハ別ニ、政府ガ急
速ニ中小商工業者ニ對シテ、何カ負債整理
ノ方法ガアリマシタナラバ之ヲ確立シ
テ、一日モ早ク實行ニ著手センコトハ是
レ私共ノ要望スル所ノ一ツデアリマス
更ニ考ヘナケレバナラヌコトハ農村土
木匡救事業ノ問題ニ付テモ、私一個人トス
レバ非常ニ不平ヲ持ッテ居ルノデアリマ
ス、ソレハドウ云フ事デアルカト言ヘバ、農
村土木匡救事業ノ經費ノ振當ガ、實際地方
地方ノ農村ノ實情ニ卽セザル傾ガアリマ
ス、之ヲ大キク申セバモウ少シ東北、北
海道、北陸地方ニ重クシテ、關西、九州地
方ニ於テ金額ヲ減ラシテモ宜イヂヤナイカ
ト云フ考ヲ達觀的ニ私ハ持ヲテ居リマス
此意味ヨリ推論致シマシテ今囘ノ負債整
理案ノ資金ノ融通ニ付キマシテモ此點ニ
政府ハ深ク御考慮ヲ御拂ヒ下スッテ、地方ノ
經濟事情ニ應ジ、農村窮迫ノ事情ニ應ジ
テ、其資金ノ貸出ヲ適當ニ按配サレンコト
ヲ、私ハ希望ノ一ツトシテ玆ニ申上ゲテ置
ク次第デアリマス、以上ガ本案ニ贊成スル
大體ノ理由デアリマス
此際私ハ政府及貴族院ニ對シテ、私ノ御
願ヲ申上ゲテ見タイト思フコトガアルノデ
ゴザイマス、農家負債ガドウシテ出來タ
カ、比原因ヲ色々調査致シマスルト云フ
ト、其理由ノ第一ハ過去ニ遡ッテ批評ヲ
スルヤウニナリマスルケレドモ、大正七年
度ヨリ十二年度迄ノ間ニ非常ニ激增ヲ見タ
ノデアリマス、勿論農家ノ負債トシテノ調
査ハ日本ニ何處ヲ調ベテモアリマセヌ、
唯多少據ルベキモノハ、勸業銀行ガ年々發
行スル所ノ負債ニ關スル調査デアリマス、
ソレヲ見ルト云フト、大正六年末ノ推定不
動產抵當貸付金ハ十五億七千万圓デアッタ
ノデアリマス、不動產抵當貸付金デゴザイ
マスルカラシテ、是ガ强チ農村負債トハ申
シマセヌガ、六年ガ十五億七千万圓、ソレ
ガ大正十二年末ニナルト云フト、四十九億
一千万圓トナッテ居ルノデアリマス、是ハ
無論推定デゴザイマスルカラシテ、之ヲ全
然確カナモノトハ申シマセヌガ、是以上
ニ、之ニ關スル數字ハ日本ニナイノデゴザ
イマスルカラシテ之ヲ信ズルヨリ外ハナ
1、サウスルト云フト大正六年ノ數字
ト、十二年ノ數字ヲ見ルト、七、八九、
十、十一、十二、此六年間ニ三倍以上ニ不
動產抵當貸ガ增加シタコトハ極メテ明確
デアリマス、我國ノ國債ガ此間ニ於テ激增
シタコトハ是ハ諸君ガ御承知ノ通リデア
リマス、豫算附屬ノ國借累年表ヲ見レバ御
分リデゴザイマス、此處デ地方債ノコトヲ
調ベテ見ルト云フト、ドウナッテ居ルカ、
大正四年度ノ地方債ノ總額ハ三億三千
六百万圓デアッテ、ソレガ大正十二年度ニ
ハ九億二千四百万圓トナリ、三倍ニナ7
テ居ルノデアリマス、私ハ此七年度カラ十
二年度迄、四年度カラ十二年度迄ニ、殆ド
地方債モ三倍ニナリ、不動產抵當貸モ三倍
ニナッタト云フ、此事實ハ何ニ原因スルカ
此處ニ之ヲ申上ゲル必要ハナイト存ジマ
ス、簡單ニ言ヘバ財政政策ガ放慢デアリ
シ結果デアルト論斷シ得ルト思ヒマス(拍
手)
ソコデ大正十二年度ハ、詰リ加藤內閣
デ、ソレガ倒レマシタ後デ、大正十三年ニ
護憲三派內閣ガ出來タガ、旣ニ其時ニ四十
九億ニナッタノデアル、其後段々殖エマシタ
ケレドモ、割合ニ殖エナイ是ガ所謂財政
政策ノ放慢ノ結果、六七年間ニ三倍ニナフ
タ、斯ウ云フ憂フベキ時代ヲ現出シテ其
後ハ利息拂ノ爲ニ-利息ガ拂ヘナイデ
段々段々殖エタ、但シ農產物下落モ、之ニ伴ツ
テ相當ノ負債增加ノ根源ニナッタコトハ、
是モ爭ハレナイ事實デアリマス
ソコデモウ一ツノ理由ハ、負擔ノ偏重ト
云フコトデアリマス、最近農家ノ負擔ガ、
商工業者ノ負擔ト比較シテ非常ニ重イ、殆
ド二、三倍ニナッテ居ルト云フコトハ是ハ
無論國稅、地方稅ヲ通ジテノ數字デハゴザ
イマスルケレドモ、是モ極メテ明瞭ナル事
例デゴザイマス、私共ハ農村問題トシテ、
農民ガ國ニ要求スル問題トシテ、此位道理的
ナモノハナイト思フノデゴザイマス、米ヲ
高クスルト云フ政策ヲ實行スレバ消費者ハ
困リマス(「簡單」ト呼フ者アリ)色々他ノ農
民ノ希望、例ヘバ農村負擔輕減ノ一トシテ
議會ニ現ハレタル所ノ郡市町村農會技術
員ノ問題ノ如キ、是モ直チニ金ガ伴フノデ
ゴザイマスルカラ容易デゴザイマセヌ
ガ、十數年來非常ニ重キ負擔ヲ負ウテ居ル
ト云フコトハ明瞭デアル、サウスレバ之ヲ
偏重ノモノデナク、公平ナモノニスル均
衡ヲ得セシムルト云フ要求ハ、吾々ハ全農
民ガ如何ナル力ヲ〓シテモ實行シナケレバ
ナラヌ所ノ、一大國策デアルト信ジテ居ル
次第デゴザイマス(拍手)更ニ災害ニ因ル所
ノ農民ノ負擔ノ問題、彈力ナキ農民ハ何
カ災害ガ起レバ、其災害ニ因ル所ノ借入金
ノ元利ヲ支拂フ能力ハ殆ドー-全然無イ
ト申シテモ宜カラウト思フノデアリマス、
昭和六年ノ若槻内閣當時ニ、御承知ノ通リ
農林審議會ガ出來マシテ、農村問題ノ解決
ノ案ニ著手セントシタコトハ諸君ノ御承知
ノ通リデアリマス、其諮問ノ一ツニ、農家
負債ノ整理ノ案ガ、此審議會ノ議ニ付セラ
レマシテ、其諮問案ノ答申トシテ、農家負
擔ノ增加ニハ種々ノ理由ハ無論アルガ、先
以テ之ヲ一時的ニ整理スルト云フコトモ必
要デハアルガ根本的ニ將來負債ノ生ジナ
イヤウナ策ヲ執ルト云フコトガ、何ヨリ大
切デアルト云フ見地ヨリ、玆ニ農業保險法
ガ其一ツトシテ答申サレタコトハ諸君ノ
御承知ノ通リ、私モ此前ニ申上ゲタコトガ
アルノデアリマス農業災害保險法ノミナ
ラズ、漁船ノ保險モ無論必要デアリ、森林
ノ保險モ無論必要デアリマス、此原始產業
ニ對スル所ノ各種ノ保險ヲ實行シテ、而シ
テ農家ノ生活ヲ安定サスト同時ニ、將來
起ル負債ヲ防除スルト云フ事柄ハ此際
此農村負債整理組合法案ト相竝ンデ、兩
院ヲ通過スベキモノデアルト私ハ信ジマ
ス(拍手)御承知ノ通リ本院ニ於キマシテ
ハ農漁業災害保險法ヲ旣ニ十數日前ニ
而モ殆ド全會一致ヲ以テ通過シテ、之ヲ貴
族院ニ送付シタノデアリマス然ルニ私共
ノ承ハル所ニ依ルト云フト、貴族院ハ此重
大ナル所ノ、農村負債整理組合法案ト竝行
スベキ此農漁業災害保險法案ニ付テ、其審
議ヲ等閑ニシテ置クカノ如ク感ゼラレルコ
トハ極メテ遺憾ナ次第デゴザイマス、私
ハ貴族院ノ諸公ハ、無論今囘ノ-今日通
過スル所ノ農村負債整理組合法案ニハ御同
意アルベキコトヽ存ジマスルガ、之ニ御同
意アルト同時ニ、十數日前ニ既ニ本院ガ滿
場一致同樣ノ決議ヲ以テ貴族院ニ送付シタ
ル所ノ、此重大法案ニ對シテハ、農民生活
ノ安定ノ爲ニ、農家負債防除ノ爲ニ、是非
共本會議ニ於テ衆議院ノ決議ニ同意セラレ
ンコトヲ要望シ政府ニ於カレマシテモ、
其意味ニ於テ貴族院ニ於テ、相當ノ力ヲ致
サレンコトヲ御願申ス次第デアリマス、以
上ヲ以テ私ノ贊成ノ意ヲ表シタ次第デアリ
マス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02719330316&spkNum=45
-
046・秋田清
○議長 秋田清君)討論ハ終局致シマシタ
カラ、直チニ採決ニ入リマス、先ヅ修正案
ニ付キ採決致シ、次ニ本案ノ委員長報告ニ
付キ採決致シマス、後藤君提出ノ修正案ニ
贊成ノ諸君ノ起立ヲ求メマス
〔贊成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02719330316&spkNum=46
-
047・秋田清
○議長(秋田〓君) 起立少數、仍テ修正案
ハ否決セラレマシタ-次ニ本案ノ委員長
報告ニ贊成ノ諸君ノ起立ヲ求メマス
〔贊成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02719330316&spkNum=47
-
048・秋田清
○議長(秋田〓君) 起立多數、仍テ本案ハ
委員長報告通リ可決致シマシタ(拍手)是ニ
テ第二讀會ハ終了致シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02719330316&spkNum=48
-
049・上田孝吉
○上田孝吉君 直チニ本案ノ第三讀會ヲ開
カレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02719330316&spkNum=49
-
050・秋田清
○議長(秋田清君) 上田君ノ動議ニ御異議
アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02719330316&spkNum=50
-
051・秋田清
○議長(秋田〓君) 御異議ナシト認メマス、
直チニ本案ノ第三讀會ヲ開キ、議案全部ヲ
議題ト致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02719330316&spkNum=51
-
052・後藤亮一
○後藤亮一君 居リマスルガ、
上、
テ、
第七
農村負債整理組合法案
吾々ハ曩ニ提出致シマシタ
ル修正案ヲ以テ、最善ノ案デアルト信ジテ
少數ヲ以テ敗レマシタル以
此際無キニ優ルト云フ意味ニ於キマシ
次善ノ案ニハ贊成シ、
贊成ノ意ヲ表スル者デアリマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02719330316&spkNum=52
-
053・秋田清
○議長(秋田〓君) 通リ議決スルニ御異議アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02719330316&spkNum=53
-
054・秋田清
○議長(秋田〓君) 仍テ本案ハ第二讀會議決ノ通リ可決確定致
シマシタ(拍手)日程第七、
豫備金支出ノ件、外十件、
ヲ一括シテ議題ト致シマス、
ヲ求メマス-委員長宮古啓三郞君
昭和五年度第一豫備金
支出ノ件
昭和五年度特別會計第
一豫備金支出ノ件
昭和六年度第一豫備金
支出ノ件
昭和六年度特別會計第
一豫備金支出ノ件
昭和六年度第二豫備金
支出ノ件
昭和六年度豫備金外ニ
於テ豫算超過及豫算外
支出ノ件
昭和六年度特別會計第
二豫備金支出ノ件
昭和六年度特別會計豫
備金外ニ於テ豫算超過
及豫算外支出ノ件
昭和七年度第二豫備金
支出ノ件
昭和七年度特別會計第
二豫備金支出ノ件
昭和七年度特別會計豫
備金外ニ於テ豫算超過
支出ノ件
第三讀會
委員長ノ報〓ニ
本案ハ第二讀會議決ノ
御異議ナシト認メマス、
昭和五年度第一
承諾ヲ求ムル件
委員長ノ報告
承諾委員
ヲ求長報
ムル
件〓
報〓書
一昭和五年度第一豫備金支出ノ件(承諾
ヲ求ムル件)
右ハ本院ニ於テ承諾ヲ與フヘキモノト議
決致候此段及報〓候也
昭和八年三月十五日
委員長宮古啓三郞
衆議院議長秋田〓殿
報〓書
一昭和五年度特別會計第一豫備金支出ノ
件(承諾ヲ求ムル件)
右ハ本院ニ於テ承諾ヲ與フヘキモノト議
決致候此段及報〓候也
昭和八年三月十五日
委員長宮古啓三郞
衆議院議長秋田〓殿
報〓書
一昭和六年度第一豫備金支出ノ件(承諾
ヲ求ムル件)
右ハ本院ニ於テ承諾ヲ與フヘキモノト議
決致候此段及報〓候也
昭和八年三月十五日
委員長宮古啓三郞
衆議院議長秋田〓殿
報〓書
一昭和六年度特別會計第一豫備金支出ノ
件(承諾ヲ求ムル件)
右ハ本院ニ於テ承諾ヲ與フヘキモノト議
決致候此段及報〓候也
昭和八年三月十五日
委員長宮古啓三郞
衆議院議長秋田〓殿
報〓書
一昭和六年度第二豫備金支出ノ件(承諾
ヲ求ムル件)
右ハ本院ニ於テ承諾ヲ與フヘキモノト議
決致候此段及報〓候也
昭和八年三月十五日
委員長宮古啓三郞
衆議院議長秋田〓殿
報〓書
一昭和六年度豫備金外ニ於テ豫算超過及
豫算外支出ノ件(承諾ヲ求ムル件)
右ハ本院ニ於テ承諾ヲ與フヘキモノト議
決致候此段及報告候也
昭和八年三月十五日
委員長宮古啓三郞
衆議院議長秋田〓殿
報〓書
一昭和六年度特別會計第二豫備金支出ノ
件(承諾ヲ求ムル件)
右ハ本院ニ於テ承諾ヲ與フヘキモノト議
決致候此段及報告候也
昭和八年三月十五日
委員長宮古啓三郞
衆議院議長秋田〓殿
報告書
一昭和六年度特別會計豫備金外ニ於テ豫
算超過及豫算外支出ノ付(承諾ヲ求ム
作作
右ハ本院ニ於テ承諾ヲ與フヘキモノト議
決致候此段及報〓候也
昭和八年三月十五日
委員長宮古啓三郞
衆議院議長秋田〓殿
報〓書
一昭和七年度第二豫備金支出ノ件(承諾
ヲ求ムル件)
右ハ本院ニ於テ承諾ヲ與フヘキモノト議
決致候此段及報〓候也
昭和八年三月十五日
委員長宮古啓三郞
衆議院議長秋田〓殿
報〓書
一昭和七年度特別會計第二豫備金支出ノ
件(承諾ヲ求ムル件)
右ハ本院ニ於テ承諾ヲ與フヘキモノト議
決致候此段及報〓候也
昭和八年三月十五日
委員長宮古啓三郞
衆議院議長秋田〓殿
報〓書
一昭和七年度特別會計豫備金外ニ於テ豫
算超過支出ノ件(承諾ヲ求ムル件)
右ハ本院ニ於テ承諾ヲ與フヘキモノト議
決致候此段及報〓候也
昭和八年三月十五日
委員長宮古啓三郞
衆議院議長秋田〓殿
〔宮古啓三郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02719330316&spkNum=54
-
055・宮古啓三郎
○宮古啓三郞君 只今議題ト相成リマシタ
11和和年年第第一豫備金支出ノ件、外十件ノ
委員會ノ經過竝ニ結果ヲ簡單ニ御報〓致シ
ママ、此度政府ヨリ致シマシテ、議會ノ承
諾ヲ求メテ參リマシタ件數ハ十一件デアリ
マシテ、其年度ヲ申シマスルト、昭和五年
度カラ昭和七年度ニ亙フテ居ルノデアリマ
ス、ソレデ其金額ハ幾何デアルカト申シマ
スト云フト總計デ一億六千十七万七千五
百十七圓デアリマス、之ヲ年度別ニ致シマ
スルト云フト、昭和五年度ニ於キマシテハ
八百八十八万二千四百十三圓デアリマス、
其內譯ヲ申シマスレバ、一般會計ニ於テ五
百九十九万餘圓、特別會計ニ於テ二百八十
八万餘圓、何レモ第一豫備金ヨリ支出シテ
居リマス、其次ニ昭和六年度ノ金額ハ幾何
デアルカト申シマスルト、一億三千二百六
十一万六千六十九圓デアリマシテ、其內譯
ヲ申シマスレバ一般會計ニ於テ第一豫備
金カラ其全額ノ六百万圓、ソレカラ第二豫
備金カラ其全額ノ八百万圓、ソレカラ豫備
金外ニ於ケル豫算超過及豫算外ノ支出ノ分
ガ七千五百七十万餘圓デアリマス、ソレカ
ラ特別會計ノ方ニ於キマシテ、第一豫備金
カラ二百九万餘圓、第二豫備金カラ百五十
一万餘圓、豫備金外ニ於ケル豫算超過及豫
算外支出ノ分ガ三千九百二十九万餘圓デア
リマス
其次ニ昭和七年度ハ幾何デアルカト申シ
マスルト、一千八百六十七万九千三十五圓
デアリマス、其內譯ヲ申シマスレバ、般
會計ニ於テ第二豫備金カラ七百四十九万餘
圓、特別會計ニ於キマシテ第二豫備金カラ
八十一万餘圓、ソレカラ豫備金外ニ於ケル
豫算超過支出ノ分ガ千三十七万餘圓デアリ
マス其細目ハ議案ニ付テ御承知ヲ願ヒマ
ス、委員會ニ於キマシテハ何レモ此支出
ハ已ムヲ得ザルモノデアルト認メマシテ、
質問モ至ッテ少ク、滿場一致ヲ以テ全部承諾
ヲ與ヘルト云フコトニ決定ヲ致シマシタ、
此段御報告ヲ申上ゲマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02719330316&spkNum=55
-
056・秋田清
○議長(秋田〓君) 昭和五年度第一豫備金
支出ノ件、外十件ハ、承諾ヲ與フルニ御異
議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02719330316&spkNum=56
-
057・秋田清
○議長 秋田濟君)御異議ナイト認メマ
ス、十一件トモ承諾ヲ與フルニ決シマシタ
(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02719330316&spkNum=57
-
058・上田孝吉
○上田孝吉君 議事日程變更ノ緊急動議ヲ
提出致シマス、卽チ、此際政府提出、農業
動產信用法案及漁案法中改正法律案ヲ一括
議題ト爲シ、委員長ノ報〓ヲ求メ、其審議
ヲ進メラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02719330316&spkNum=58
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059・秋田清
○議長(秋田清君) 上田君ノ動議ニ御異議
アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02719330316&spkNum=59
-
060・秋田清
○議長(秋田清君) 御異議ナシト認メマス、
仍テ日程ハ變更セラレマシタ、農業動產信
用法案、漁業法中改正法律案、此兩案ヲ一
括シテ第一讀會ノ續ヲ開キヤス委員長ノ
報〓ヲ求メマス-委員長庄晋太郞君
農業動產信用法案(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報告)
漁業法中改正法律案(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報〓)
報告書
一農業動產信用法案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報告候也
昭和八年三月十六日
委員長庄晋太郞
衆議院議長秋田〓殿
報〓書
一漁業法中改正法律案(政府提出)
右ハ木院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和八年三月十六日
委員長庄晋太郞
衆議院議長秋田〓殿
〔庄晋太郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02719330316&spkNum=60
-
061・庄晋太郎
○庄晋太郞君 只今議題トナリマシタ農業
動產信用法案竝漁業法中改正法律案ニ關ス
ル委員會ノ經過竝結果ヲ御報告申上ゲマス
本委員會ニ於キマシテハ昨日ヨリ今日ノ
二日ニ亙リマシテ愼重ニ審議致シタノデア
リマス、先ヅ漁業法中改正法律案ヨリ審議
ヲ始メ、次ニ農業動產信用法案ニ移リ、其
審議ヲ致シマシタ、其經過竝ニ結果ノ大要
ハ先ヅ漁業法中改正法律案ノ要旨ヲ申シマ
スレバ漁村經濟ノ更生ニ資スル爲メ、漁
村中樞團體タル漁業組合ノ機能ヲ整備擴充
シ、新ニ組合員ノ經濟ノ發達ニ必要ナル共
同施設ヲ行フ事ヲ得セシメルト共ニ、漁業
組合、同聯合會ニ出資制度ヲ認メ、又其責
任組織ヲ明ニスル事、竝ニ時勢ノ變遷ト漁
業ノ進步トニ伴ヒマシテ、水產動植物ノ蕃
殖保護、漁業取締ニ關スル事項、其他漁業
權、入漁權ノ變更ノ手續等ニ關シ、多少ノ
改正ヲ爲サントスルモノデアリマシテ、之
ニ對シマシテ委員會ニ於テハ漁業權制度
ノ整備、殊ニ漁業權ノ存續期間ノ延長又ハ
撤廢、漁業權取消等ノ場合ニ於ケル補償、
金融ニ開スル問題等ニ付テ、重要ナル質問
ガ發セラレタノデアリマス、政府ヨリハ
漁業權ノ問題ハ重大ナ問題デアルカラ、根
本的ニ調査〓究ノ必要ガアル、又補償ノ問
題ニ付テハ、將來考究スル旨答辯ガアリ、
又金融問題ニ付キマシテハ本改正ノ結果
漁業組合ノ內容ガ整備充實セラレタナラバ
漸次ニ解決ノ步ヲ進メルコトガ出來ル旨ヲ
答辯セラレタノデアリマス、其詳細ニ亙リ
マシテハ速記錄ニ依ッテ御覽ヲ願ヒマス
次ニ農業動產信用法案ノ要旨ヲ申シマス
レバ、此法案ハ農漁山村ニ於ケル金融ノ狀況
ニ鑑ミマシテ、農漁業者ノ擔保力ノ增加ヲ圖
リ、其生產資金供給ノ圓滑ヲ期スルコトヲ目
的トスルモノデアリマシテ、信用組合及漁業
組合等ニ對シ特別ノ先取特權ヲ與ヘ、且ツ
農業漁業用ノ重要ナル動產ヲ目的トスル抵
當權ヲ取得セシメルノガ、本案ノ骨子デア
リマス、之ニ對シマシテ委員會ニ於テハ、農
業動產信用法ト云フ名稱ニ、漁業ヲ加ヘナ
カッタノハドウ云フ譯デアルカ、尙ホ勅令及
命令事項ノ內容ハドウデアルカ、資金供給
ニ付テ特ニ考慮ガナイカトノ質問ガアリマ
シリー政府ハ、法案ノ名稱ニ漁業ノ文字ヲ
加ヘナカッタノハ、林業畜產等ノ關係ガア
リ是等ヲ加ヘルトスルト、名稱ガ餘リ長
クナルカラデ、別ニ他意ハナイ、之ニ對シ
テ中村委員カラハ畜產トカ林業トカ云フ
ノハ、陸上ノ事デアルカラ、直グ農業ト關
聯シテ考ヘラレルガ、水產ハ全ク關係ガ薄
イ爲ニ、常ニ閑却サレル嫌ガアル、此邊ニ
付テ相當喧マシク論議セラレタノデアリマ
スガ、詰リ名稱ガ長クナルカラデ、別ニ他
意ハナイト云フコトデアリマシタ、又勅令
及命令事項ノ內容ニ付キマシテハ、法人ニ
付テハ漁業組合ヲ勅令ヲ以テ指定シ、農業
用動產ノ問題ニ付キマシテハ、牛馬、漁船、
農業器械ノ大キナ物ヲ勅令ヲ以テ指定ス
ル資金ニ付テハ將來十分ニ考慮スルト云
フ御答辯ガアリマシタ、其詳細ニ付テハ速
記錄ニ依ッテ御覽ヲ願ヒマス
最後ニ討論ニ入リマシテ、漁業法中〓
法律案ニ關シマシテハ、希望條件ヲ附シテ
原案ニ贊成セラレ、採決ニ入リ滿場一致ヲ
以テ本案ヲ可決致シマシタ、其希望條件ハ
漁業權ノ存續期間ヲ相當延長シ又其
更新制度ヲ延長制度ニ改正シ以テ漁業
權ニ確實性ヲ加ヘシメ金融上ノ不安ヲ
除去セシメラレタシ
二、本法第二十四條ニ依ル漁業權ノ處分
ニ對シ補償制度ヲ確立シ以テ權利者ノ
不安ト損失ヲ一掃セシメラレタシ
三、本法ノ改正ニ基キ漁業組合ハ其制度
ヲ改革シテ漁業及經濟施設ノ充實ヲ期
シ以テ漁村更生ノ中心トシテ其效果ヲ
發揮スル爲メニハ充分ナル金融ノ之ニ
伴フヲ必要トス仍テ政府ハ今後一層漁
業組合竝同聯合會ニ對シ金融疏通ノ途
ヲ講セラレタシ
此三ツノ希望條項ヲ附シマシテ、滿場一
致原案ヲ可決致シマシタ次第デアリマス
次ニ農業動產信用法案ニ付キマシテモ、
同樣原案ヲ贊成セラレマシテ、採決ニ入
リ滿場一致ヲ以テ可決致シタ次第デアリ
やく、何卒本院ニ於テモ委員會決議ノ通
リ滿場一致御贊成アランコトヲ希望致シ
マシテ報〓ヲ終リマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02719330316&spkNum=61
-
062・秋田清
○議長(秋田濟君) 兩案ノ第二讀會ヲ開ク
ニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02719330316&spkNum=62
-
063・秋田清
○議長(秋田清君) 御異議ナシト認メマス、
兩案ノ第二讀會ヲ開クニ決シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02719330316&spkNum=63
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064・上田孝吉
○上田孝吉君 直チニ兩案ノ第二讀會ヲ開
キ、第三讀會ヲ省略シテ、委員長報告ノ通
リ可決セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02719330316&spkNum=64
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065・秋田清
○議長(秋田清君) 上田君ノ動議ニ御異議
アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02719330316&spkNum=65
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066・秋田清
○議長(秋田清君) 御異議ナシト認メマス、
仍テ直チニ兩案ノ第二讀會ヲ開キ、議案全
部ヲ議題ト致シマス
農業動產信用法案第二讀會(確定議)
漁業法中改正法律案第二讀會(確定議)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02719330316&spkNum=66
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067・秋田清
○議長(秋田濟君) 別ニ御發議モアリマセ
又、第三讀會ヲ省略シテ兩案共委員長報
告ノ通リ可決確定致シマシタ(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02719330316&spkNum=67
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068・上田孝吉
○上田孝吉君 議事日程變更ノ緊急動議ヲ
是出致シマス、卽チ此際政府提出、震災被
害者ニ對スル租稅ノ免除猶豫等ニ關スル法
律案ヲ議題ト爲シ、委員長ノ報〓ヲ求メ、
其審議ヲ進メラレンコトヲ望ミマス
(「贊成」「贊成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02719330316&spkNum=68
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069・秋田清
○議長(秋田〓君) 上田君ノ動議ニ御異議
アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02719330316&spkNum=69
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070・秋田清
○議長(秋田〓君) 御異議ナシト認メマス、
仍テ日程ハ變更セラレマシタ政府提出、
震災被害者ニ對スル租稅ノ免除猶豫等ニ關
スル法律案ノ第一讀ノ續ヲ開キマス、委員
長ノ報〓ヲ求メマス-委員長八田宗吉君
震災被害者ニ對スル和稅ノ免除猶豫等
ニ關スル法律案
第一讀會ノ續(委員長報告)
報告書
一震災被害者ニ對スル租稅ノ免除猶豫等
ニ關スル法律案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和八年三月十六日
委員長八田宗吉
衆議院議長秋田〓殿
希望條項
政府ハ災害ノ甚大ナルニ鑑ミ之カ復舊復
興ノ爲速ニ追加豫算ヲ提出スヘシ
〔八田宗吉君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02719330316&spkNum=70
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071・八田宗吉
○八田宗吉君 本案ノ委員會ノ經過及結果
ヲ御報告致シマス本委員會ハ昨日來委員
長理事ノ選擧ヲ行ヒ引續キ會議ヲ開キマ
シテ、愼重審議、モウ少シ前ニ決定致シタ
ノデアリマス、其經過竝ニ結果ニ付テ申上
ゲマスト、委員長ニハ不肖ガ常選致シ、理
事ニハ小野寺章君、大石倫治君、比佐昌平
君、大島寅吉君、右四君ガ御當選ニナリマ
シテ、政府委員ノ出席ヲ求メ、愼重審議、
本案ニ付キマシテ質問ヲ致シマシタ所、本
案ハ去ル三月三日三陸沿岸ニ起リマシタ所
ノ大震災大海嘯ニ因ル被害者ニ對シマシテ、
法律ヲ以テ此際免稅ヲスルト云フ法案デア
リマス、是ハ政府ノ說明スル所ニ依リマス
ルト、去ル昭和二年三月ニ丹波丹後方面ニ
起リマシタル震災當時ニ於テ執リマシタ處
置ト同一ノ法律ヲ以テ此際免稅ヲ致スノ
デアル從來ハ-卽チ昭和二年以前ニ於
キマシテ、關東大震災ガアッタノデアリマ
スガ、其以前ニ於ケル免稅ト云フコトニ付
テハ唯、地租ノミニ止ッテ居フタノデアリ
マスガ、昭和二年ノ丹波丹後ノ震災ノ際ニ
於キマシテハ、大正十二年ノ關東大震災ニ
對スル斟酌上、更ニ所得稅、營業稅、酒稅、
斯ウ云フ方面ニ免稅ヲ進メタガ爲ニ、今囘
モソレヲヤルノデアル、總額ハマダハッキ
リシナイケレドモ、大體ニ於テ三十万圓デ
アル、其金額ノ主ナルモノヲ云フト、所得稅
ハ七万圓位、地租ハ五万五千圓位、アトハ
營業收益稅、斯ウ云フノガ五万圓、酒稅ガ
十万圓デアッテ、是ガ最モ主ナル免稅額デア
ル總計二十九万三千圓バカリデアル、精細
ナコトハ分ラヌケレドモ、大體此位ノ金額
デアルト云フ政府ノ答辯デアリマシタ、之
ニ付キマシテ各委員ヨリ致シマシテ、同ジ三
月デアッテモ、丹波丹後方面ノ三月ト東
北方面ノ寒冷地ノ三月トハ實情ガ違ッテ
居ル、今ヤ零點下十度內外ノ寒冷ガ每日續イ
テ居ル、東北方面ノ慘害ト云フモノハ、丹波
丹後方面ニ於ケル慘害ニ較ベルト、實ニ是
ハ想像ニ餘リアル話デアッテ、其悲慘ノ狀
思ヒ遣ラルヽ次第デアルカラ、同一例ヲ以
テ之ヲ律スルコトハ、其當ヲ得ナイデハナ
イカ、又關東震災ノ際ニ當テハ保險ノ
被保險者等ニ對シテ、政府ハ色々ノ施設ヲ
施シタ、關東震災ノ當時ハヤッタケレドモ、
丹波丹後ノ際ニハ致サナカッタ、今囘ハ生
命保險、火災保險等ニ對シマシテハ、特ニ
施設スル所ガアッテモ宜シイデハナイカト
云フ質問ガアッタノデアリマスルガ、之ニ
對シテハ政府ハ特ニ考慮ヲ費シテ、成べ
ク希望ニ副フヤウナ方法ヲ講ズルト云フ答
辯ガアッタノデアリマス、又內務省方面ニ
對シマシテ、特ニ此岩手縣ト靑森縣トハ、
目下第八師團トシテ滿洲ニ出征シテ居ル
兵士ヲ出シテ居ル處デアル、陸軍ニ於テハ
之ニ對シテ金ヲ醵出シテ出征軍人家族ヲ救
ヒ、又在〓軍人會等ニモ救濟ヲ爲シタト云
フヤウナ施設ヲ致シタノデアルカラ、內務
省等ニ於テモ何等カノ方法ヲ以テ、政府ト
シテモ特ニ溫イ施設ヲ以テ、之ニ對策ヲ講
ズル必要ガアルデハナイカト云フ質問ガ
アッタノニ對シマシテモ、ソレ〓〓目下調
査〓究中デアッテ、御希望ニ副フヤウニ努
メヨウト思フ、斯ウ云フ答辯デアッタノデ
アリマス、斯樣ナ質問應答ガ交サレマシ
テ、遂ニ討論ニ入リマシテ、菅原傳君ヨリ
致シマシテ、諸般ノ希望ヲ御述べニナリマ
シタガ、特ニ希望條項トシテ斯樣ナ御提議
ガアッタノデアリマス
希望條項
政府ハ災害ノ甚大ナルニ鑑ミ之カ復舊復
興ノ爲速ニ追加豫算ヲ提出スヘシ
此事ニ付キマシテ、菅原委員ヨリ致シマシ
テ、特ニ書面トシテ御提議ニ相成リ、之二
對シマシテ民政黨ノ內ケ崎作三郞君ヨリ
致シマシテ贊成ガアリ、國民同盟ヲ代表シ
テ菊池良一君カラ贊成ガアリ、各委員滿場一
致ヲ以テ、此法案、希望條項ニ對シテ贊意ヲ
表シ、本案ニ對シテ贊成ヲ表シタノデアリ
マス、以上大體ノ經過ヲ申上ゲマシテ、是
非滿場一致ヲ以テ速ニ-悲慘極マル震災
地ニ對スル施設デモアリマスルカラ、連
可決アランコトヲ御願致シマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02719330316&spkNum=71
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072・秋田清
○議長(秋田〓君) 討論ニ入リマス、通〓
順ニ依ヶテ發言ヲ許シマス田子一民君
〔田子一民君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02719330316&spkNum=72
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073・田子一民
○田子一民君 極メテ簡單ニ、只今議題ニ
ナリマシタ法律案竝ニ附帶希望決議ニ對シ
マシテ、贊成ノ意思ヲ表明致シタイト思ヒ
マス租稅ノ免除猶豫等ニ關シマスル法律
案ハ、負擔力ナキ者ニ免稅ヲ致シ猶豫ヲ
致スノデアリマスルカラ是ハ當然過ギル
程當然デアリマシテ、特ニ言辭ヲ用ヒズシ
テ贊成ヲ致ス者デアリマス、希望決議ニ至リ
マシテハ只今委員長御報〓ノ如ク、慘害
ノ甚大ナルニ鑑ミ、復舊復興ニ關スル追加豫
算提出ヲ求メラレタノデアリマスガ今囘
ノ海嘯ハ其被害ノ程度ニ於キマシテ死
者、行方不明等四千百、流失、燒失、全倒壞家
屋一万一千ヲ超エテ居ルノデアリマス、而モ
漁民ト致シマシテ、日常生活ノ根本ト致シ
マスル所ノ漁船ハ、稅金ノ關係デ八千ト
ナッテ居リマスルケレドモ、實際ハ此五割
增ヲ算スル程ノ多大ナル損害ヲ受ケテ居ル
ノデアリマシテ、特ニ漁具、漁網等ニ至リ
マシテハ、算スル所ヲ知ラヌト云フ悲慘ナ
狀態デアリマス、東北ノ內靑森縣ハ凶作ガ
アリマス、岩手縣ハ凶作ガ二年續キマシ
テ、岩手縣ハ現在銀行ガ破綻ヲ致シ、預金
者ノ支拂ヲ受ケ得ザル金額七千万圓ト稱セ
ラレテ居リマス、宮城縣モ比年水害等ニ惱
サレテ、縣ノ財政極メテ窮乏ヲ告ゲテ居ル
ノデアリマス、此三縣ハ財政的ニモ、經濟
上ニモ、洵ニ悲慘ナル狀態ニ在リマシタニ
拘ラズ、今囘斯ノ如キ重大ナル慘害ヲ受ケ
マシタニ付キマシテハ政府ハ宜シク單ニ
復舊ト云フ消極的ノ豫算バカリデナシニ、
復興ヲ含マレタル意味ノ豫算ヲ速ニ提出セ
ラレルコトハ最モ必要ナリト認メルノデ
アリマス(拍手)若夫レ此復舊復興ニ、-
モ早ク手ヲ染メナケレバ、徒ニ徒食ヲ奬勵
致スコトヽ相成リマシテ、救助米ニ依フテ
露命ヲ繫グト云フコトニナリマシテ、社會
政策上洵ニ遺憾ノコトニ思ヒマスルカラ、
政府ハ宜シク此希望決議ノ趣意ヲ體セラレ
マシテ、速ニ復興竝ニ復舊ニ關シマスル豫
算ヲ提出セラレンコトヲ切ニ望ムノデア
リマス(拍手)以上法律案ニ贊成ヲ致シ、殊
ニ希望決議ニ對シテ滿腔ノ贊成ヲ表スル者
デゴザイマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02719330316&spkNum=73
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074・秋田清
○議長(秋田〓君) 內ケ崎作三郞君
〔內ケ崎作三郞君登壇)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02719330316&spkNum=74
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075・内ヶ崎作三郎
○內ケ崎作三郞君 私モ本案ニ對シテ贊成
ノ意ヲ表スルノデアリマス、委細ハ田子君
ヨリ述ベラレマシタ通リデゴザイマス、私
ヨリ敢テ繰返ス必要ハナイノデゴザイマス、
政府ガ速ニ本案ヲ提出セラレマシタト云フ
コトハ私共罹災地ニ關係アル者ノ特ニ感
謝スル所デゴザイマス、但シ本案ハ總テ皆
命令ニ依ッテ之ヲ行フコトヽナッテ居ルモノ
デゴザイマスルカラシテ、當局ニ於カレマ
シテ、本案ヲ施行スルニ際シテハ罹災者
ニ對シテ甚大ナル同情、思遣リノ念ヲ起サ
レマシテ、ソレニ依ッテ本案ヲ施行セラレ
ンコトヲ希望スルノデアリマス、尙ホ此際
附加ヘテ申述ベタイコトハ、御承知ノ如ク
三陸海岸ハ世界第一ノ漁場デゴザイマシ
テ世界第一ノ水產國デアル所ノ我ガ帝國
ノ、運命ノ懸ヲテ居ル主ナル地點デアル
ト思フノデアリマス然ルニ此地方ハ五十
年ニ一囘、或ハ三十數年ニ一囘ト云フヤウ
ニ、周期的ニ大震害、隨ヒマシテ大海嘯ノ
災害ヲ被リマスコトハ洵ニ遺憾ニ堪ヘナ
イ次第デゴザイマスルガ、之ニ對スル恆久
策ハ追テ私共提案致シマシテ、皆サン方
ノ御協贊ヲ願フ機會モアルダラウト思フノ
デゴザイマスルガ、兎ニ角三陸東海岸百數
十里ニ互リマシテ、多クノ漁民ハ船ヲ失ヒ、
漁具ヲ失ヒ、又活動ノ中心タルベキ所ノ幾
千ノ壯丁ヲ亡ヒマシテ、全ク途方ニ暮レテ
居ル際デゴザイマシテ、而モ世界一ノ漁場
ヲ、見ス〓〓之ニ手ヲ著ケルコトガ出來ナイ
ト云フヤウナ、悲慘ナル狀態ニ在ルノデゴ
ザイマスルカラ、政府當局ニ於カレマシテ
ハ、速ニ追加豫算ヲ本議會中ニ提出セラレ
マシテ、是等ノ人々ヲ救濟スルト共ニ、ソ
レ等地方ノ水產業ノ復興ヲ圖リ、又將來ノ
災害ニ對スル豫防ノ手段ト致シマシテ、相
當ノ御努力アランコトヲ希望致シマシテ
本案ニ對スル贊成ノ趣旨ト致スノデアリマ
ス、終リニ臨ンデ、此度ノ災害ニ付キマシ
テハ上ハ皇室ヨリ、下一般國民ニ至ル迄、
非常ナル同情ヲ垂レラレマシタルコトヲ感
謝スルノデアリマス、又我ガ同僚各位ヨリ
モ、多大ナル所ノ義金ヲ寄セラレツヽアル
ト云フコトニ對シマシテモ、併セテ感謝ノ
意ヲ表スル次第デアリマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02719330316&spkNum=75
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076・秋田清
○議長(秋田〓君) 菊池良一君
〔菊池良一君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02719330316&spkNum=76
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077・菊池良一
○菊池良一君 只今上程セラレマシタ法律
案ニ對シ贊成ヲ致ス者デアリマス、田子君、
內ケ崎君カラ申サレマシタ通リ、今囘ノ震
災ノ災害ハ、洵ニ同情ニ堪ヘナイモノガア
ルノデアリマス、私モ先般此災害地ヲ實際
視察慰問致シマシテ、洵ニ同情致シマシタ、
之ニ對シテ政府ガ復舊ノ豫算ヲ提出セラレ
タルコトハ洵ニ感謝スル次第デアリマ
ス、故ニ私ハ此問題ニ付キマシテハ色々
マダ希望モアリマスル、卽チ復舊ノミナラ
ズ、將來又繰返サレル此災害ニ對シテ、豫
防ノ方法ヲモ講ジテ戴キタイト云フ希望ヲ
有ッテ居リマスルガ、兎モ角此案ニ對シテハ
滿腔ノ贊成ヲ致ス者デアリマス、玆ニ贊成
ノ意ヲ表明致シマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02719330316&spkNum=77
-
078・秋田清
○議長(秋田清君) 討論ハ終局致シマシ
タ本案ノ第二讀會ヲ開クニ御異議アリマ
セヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02719330316&spkNum=78
-
079・秋田清
○議長(秋田濟君) 御異議ナシト認メマ
ス、本案ノ第二讀會ヲ開クニ決シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02719330316&spkNum=79
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080・上田孝吉
○上田孝吉君 直チニ本案ノ第二讀會ヲ開
キ、第三讀會ヲ省略シテ、委員長報告ノ通
リ可決セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02719330316&spkNum=80
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081・秋田清
○議長(秋田〓君) 上田君ノ動議ニ御異議
アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02719330316&spkNum=81
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082・秋田清
○議長 秋田清君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ直チニ第二讀會ヲ開キ、議案全部
ヲ議題ト攻シマス
震災被害者ニ對スル租稅ノ免除猶豫等
ニ關スル法律案第二讀會(確定議)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02719330316&spkNum=82
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083・秋田清
○議長秋田済君) 別ニ御發議モアリマセ
又、第三讀會ヲ省略シテ、委員長報告通リ
可決確定致シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02719330316&spkNum=83
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084・上田孝吉
○上田孝吉君 議事日程變更ノ緊急動議ヲ
提出致シマス、卽チ此際日程第十二乃至第
十七ヲ繰上ゲ上程シ、逐次其審議ヲ進メラ
レンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02719330316&spkNum=84
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085・秋田清
○議長秋田〓君) 上田君ノ動議ニ御異議
アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02719330316&spkNum=85
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086・秋田清
○講長秋田〓君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ日程ハ變更セラレマシタ、日程第
十二乃至十四ハ同一委員ニ付託シタル議案
ナルニ依リ、一括議題ト爲スニ御異議アリ
マセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02719330316&spkNum=86
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087・秋田清
○議長(秋田清君) 御異議ナシト認メマ
ス、日程第十二、原夫次郞君外九名提出、
刑事訴訟法中改正法律案、日程第十三、原
夫次郞君外十名提出、刑事訴訟法中改正法
律案、日程第十四、中野勇治郞君外九名提
川、民事訴訟法中改正法律案、右三案ヲ一
括シテ第一讀會ノ續ヲ開キマス、委員長ノ
報〓ヲ求メマス-委員長飯村五郞君
第十二刑事訴訟法中改正法律案(原
夫次郞君外九名提出)
第一讀會ノ續(委員長報〓)
第十三刑事訴訟法中改正法律案原
夫次郞君外十名提出)
第一讀會ノ續(委員長報〓)
第十四民事訴訟法中改正法律案〓
野勇治郞君外九名提出)
第一讀會ノ續(委員長報〓)
報告書
一刑事訴訟法中改正法律案(原夫次郞君
外九名提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段〓報〓候也
昭和八年三月十四日
委員長飯村五郞
衆議院議長秋田〓殿
報告書
一刑事訴訟法中改正法律案(原夫次郞君
外十名提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段報告候也
昭和八年三月十四日
委員長飯村五郞
衆議院議長秋田〓殿
報〓書
一民事訴訟法中改正法律案(中野勇治郞
君外九名提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和八年三月十四日
委員長飯村五郞
衆議院議長秋田〓殿
〔議長退席、副議長著席〕
〔飯村五郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02719330316&spkNum=87
-
088・飯村五郎
○飯村五郞君 只今議題ニ供セラレマシタ
ル法律案ニ付テ、委員會ニ於ケル審議ノ經
過竝ニ結果ニ付キ、努メテ簡潔ニ御報告申
上ゲ、詳細ハ之ヲ速記錄ニ讓ルコトニ致シ
やく、第一、刑事訴訟法中改正法律案、現
行訴訟法ハ人權尊重ノ趣旨ヨリ致シマシ
テ、被〓人ニ對スル勾留期間ハ先ヅ之ヲ
二箇月ニ押ヘ、而シテ特ニ必要ナル場合ニ
限リマシテ、之ヲ繼續スルト云フコトノ規
定ニ相成ヲテ居リマス、然ルニ斯ノ如ク相
成ッテ居ルニモ拘ラズ、之ヲ運用致シマス
ル者、其局ニ當ル者ノ取扱ノ實情ヲ檢討致
シマスレバ、甚ダ吾人ノ意ヲ得ナイ點ガ少
クナイノデアリマス、卽チ特ニ已ムヲ得ザ
ル必要アル場合ニ、例外的ニ繼績規定ヲ認
メテ居ルノデアリマスルガ、殆ド二箇月ノ
勾留期間ヲ更新スルト云フコトガ寧ロ通例
デアリマス是ガ原則ナルカノ如キ感ジヲ
致サザルヲ得ナイノアリマス、故ニ此弊
ヲ改メ、勾留スル場合ニハ決定ヲ以テスル
ト云フコトニナッテ居リマスルガ、是モマ
ダ現行法ガ改正セラルヽ當時ニ於キマシ
テハ、卽チ四十五議會ニ於キマシテハ更
新スル場合ニハ詳細ナル理由ヲ附ケル、斯
樣ニ當時政府ハ言明致シタノデアリマスル
ガ、今日ノ實狀ハ決定書ニ理由ヲ附サヾ
ルノミナラズ、更新スルコトヲ以テ原則ナ
ルカノ如キ現狀ニ到達致シテ居ルノデアリ
マス此弊ヲ救ハンガ爲ニ、卽チ決定書ニ
ハ必ズ詳細ナル明確ナル理由ヲ附セ、而シ
テ更新スル場合ニ於キマシテハ一箇月以
內ニセヨ、是ガ本案ノ要旨デアリマス
更ニ現行刑事訴訟法ニ依リマスト、判事
ガ裁判ニ對シテ偏頗ノ虞アル場合ニ於キマ
シテハ辯護人ハ之ヲ忌避致ス權能ヲ付與
致サレテ居ルノデアリマス、裁判ノ公正ヲ
保持スル意味ニ於キマシテ、洵ニ當然ノ規
定デアリマス、然ルニ其忌避申立ニシテ、
徒ニ訴訟ヲ遲セセシムル目的デアルト云フ
コトヲ、忌避サレマシタル判事ガ認メマシ
タ場合ニハ其申立ヲ却下スルト云フ第二
十九條ノ規定ガ存スル爲ニ、此規定ヲ濫用
サレ辯護人竝ニ被告人其他ノ關係人ニ付
與致サレテ居リマスル、裁判ノ公正ヲ保持
スル意味ニ於キマスル此忌避ノ申立權能ト
云フモノハ無視致サレルノデアリマス、
此弊ヲ救ハントスルノガ卽チ第二案改正案
ノ趣旨デアリマス
次ニ第三案、民事訴訟法中改正法律案ハ、
現行法ニ依リマスレバ區裁判所ノ判決ニ
ハ其理由ヲ書カヌデモ宜シイト云フコトニ相
成ッテ居リマス、是ガ宜シクナイ、區裁判所
ノ判決タルト、大審院ノ判決タルト、等シ
ク陛下ノ御名ニ於テ御裁判ナサル判決デ
アル、甲乙アルベカラズ、判決ニ理由ナク
ンバ、關係人ハドウシテ其判決ニ心服ガ出
來ルデアラウカ、其判決ニ心服ガ出來ナイ
結果、往々ニシテ控訴、上告、此濫訴ノ弊
ヲ續出致シテ居ル此弊ヲ救ハントスルノ
ガ卽チ第三案立法ノ趣旨デアリマス、卽チ
區裁判所ノ判決ト雖モ、判決ニハ理由ヲ書
カナケレバイカヌ、是ガ第三案改正ノ要旨
デアリマス、而シテ三案トモ政友會竝ニ民
政黨、國民同盟ノ多數ノ有志諸君ニ依,テ
御提案ニナラレタ法案デアリマス、委員會
ヲ開クコト三囘、委員間ニ於キマシテハ
殆ド質疑應答ノ必要ヲ認メナカッタノデア
リマス委員諸君ハ主トシテ、殆ド大部分
ハ政府當局ニ對シ質問ヲ致シタノデアリマ
ス、政府ノ答辯ハ一言ニシテ盡シマスレバ
必シモ現行法ヲ改正スルノ必要ヲ認メナイ、
法運用ノ妙ハ其人ニアルノデアルカラ本
案ニ對シマシテハ遺憾ナガラ贊成ノ意ヲ
表スルコトガ出來ヌ、斯樣ナ答辯ヲ致サレ
タノデアリマシタガ、委員會ニ於キマシテ
ハ滿場一致ヲ以テ、三案トモ何レモ可決
致シマシタ、本會ニ於キマシテモ、何卒滿
場一致可決セラレンコトヲ切望致ス次第デ
アリマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02719330316&spkNum=88
-
089・植原悦二郎
○副議長(植原悅二郞君) 本案ノ第二讀會
ヲ開クニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02719330316&spkNum=89
-
090・植原悦二郎
○副議長(植原悅二郞君) 御異議ナシト認
メマス三案ノ第二讀會ヲ開クニ決シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02719330316&spkNum=90
-
091・上田孝吉
○上田孝吉君 直チニ三案ノ第二讀會ヲ開
キ、第三讀會ヲ省略シテ、委員長報〓ノ通
リ可決セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02719330316&spkNum=91
-
092・植原悦二郎
○副議長(植原悅二郞君) 上田君ノ動議ニ
御異議アリマセヌカ
〔一異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02719330316&spkNum=92
-
093・植原悦二郎
○副議長(植原悅二郞君) 御異議ナシト認
メマス直チニ三案ノ第二讀會ヲ開キ、議
案全部ヲ證題ト致シマス
刑事訴訟法中改正法律案
第二讀會(確定議)
刑事訴訟法中改正法律案
第二讀會(確定議)
民事訴訟法中改正法律案
第二讀會(確定議)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02719330316&spkNum=93
-
094・植原悦二郎
○副議長(植原悅二郞君) 別ニ御發議モア
リマセヌ、第三讀會ヲ省略シテ三案共委
員長報告通リ、可決確定致シマシタ(拍
手)-日程第十五乃至第十七ハ、同一委
員ニ付託シタル議案ナルニヨリ一括議題
ト爲スニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02719330316&spkNum=94
-
095・植原悦二郎
○副議長(植原悅二郞君) 御異議ナシト認
メマス、日程第十五、度量衡法中改正法律
案日程第十六、度量衡法中改正法律案、
日程第十七、度量衡法中改正法律案ヲ一括
シテ第一讀會ノ續ヲ開キマス、委員長ノ報
告ヲ求メマス-竹內友治郞君
第十五度量衡法中改正法律案(山下
谷次君外二名提出)
第一讀會ノ續(委員長報告)
第十六度量衡法中改正法律案(武知
勇記君外五名提出)
第一讀會ノ續(委員長報〓)
第十七度量衡法中改正法律案(野田
文一郞君外一名提出)
第一讀會ノ續(委員長報〓)
報告書
一度量衡法中改正法律案(山下谷次君外
二名提出)
一度量衡法中改正法律案(武知勇記君外
五名提出)
一度量衡法中改正法律案(野田文一郞君
外一名提出)
右ハ本院ニ於テ三案ヲ併合シテ一案ト爲
シ表題ヲ「度量衡法中改正法律案」トシ別
紙ノ通修正スヘキモノト議決致候此段及
報〓候也
昭和八年三月十五日
委員長竹內友治郞
衆議院議長秋田〓殿
〔別紙〕
度量衡法中左ノ通改正ス
第六條ニ左ノ但書ヲ加フ
但シ勅令ヲ以テ定ムル場合ハ此ノ限ニ
在ラス
第十二條、第十六條及第十七條中「販賣
ノ免許ヲ受ケタル者」ヲ「販賣ノ業ヲ營ム
者」ニ改ム
第十四條第一號ヲ左ノ如ク改ム
第六條ノ規定ニ違反シテ度量衡器
ノ製作、修覆又ハ販賣ノ業ヲ營ミタ
ル者
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
〔竹內友治郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02719330316&spkNum=95
-
096・竹内友治郎
○竹内友治郞君 只今議題ニナッテ居リマ
スル三案ノ委員會ニ於ケル經過及結果ヲ御
報〓致シマス、此三案ハ議會內ニ於ケル三
派カラ御提出ニナリマシテ、何レモ少シモ
違ハナイ同一ナ案デゴザイマス、其趣意ハ
今日總テノ民衆ガ、殆ド常用致シマスル體
溫器、或ハ「メートル·グラス」ト云フモノ
ハ家庭ニ極メテ必要デアルニ拘ラズ、度
量衡法ノ取締上ノ手續ガヤカマシイ爲ニ、
總テノ藥種屋デ誰モ賣ッテ居ルト思フノニ、
是ガ現在ハ賣ラレテ居ラヌノデアル、ソレ
ヲ何處ノ藥種屋デモ買へルヤウニ致シタイ
ト云フコトガ、此三案ノ趣旨デゴザイマス、
所ガ提案サレタル條文デハ實際法規ノ
上ニ於テ運用ガ付キ兼ネルト云フコトガ、
委員會審議ノ結果明ニナリマシタル所カ
ラ、更ニ提案者カラ修正案ヲ提出致シマシ
タ次第デアリマス、其修正案ヲ玆ニ朗讀致
シマス
度量衡法中左ノ通改正ス
第六條ニ左ノ但書ヲ加フ
但シ勅令ヲ以テ定ムル場合ハ此ノ限ニ
在ラス
第十二條、第十六條及第十七條中「販賣
ノ免許ヲ受ケタル者」ヲ「販賣ノ業ヲ營ム
者」ニ改ム
第十四條第一號ヲ左ノ如ク改ム
-第六條ノ規定ニ違反シテ度量衡器
ノ製作、修覆又ハ販賣ノ業ヲ營ミタ
ル者
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
此修正案ヲ提出致サレマシテ、委員會ニ於
テ愼重審議ノ結果、政府ニ於テモ同意致サ
レマシタノデゴザイマスカラ、委員會ハ滿
場一致ヲ以テ可決致シマシタ、斯ウ云フ次
第デゴザイマスルガ故ニ、此委員會ノ可決
通リ御贊成アランコトヲ御願致ス次第デゴ
ザイマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02719330316&spkNum=96
-
097・植原悦二郎
○副議長(植原悅二郞君) 委員長報告ハ、
三案ヲ併合シテ一案トシテ修正議決シタモ
ノデアリマス三案ノ第二讀會ヲ開クニ御
異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02719330316&spkNum=97
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098・植原悦二郎
○副議長(植原悅二郞君) 御異議ナシト認
メマス、三案ノ第二讀會ヲ開クニ決シマシ
タ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02719330316&spkNum=98
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099・上田孝吉
○上田孝吉君 直チニ三案ノ第二讀會ヲ開
キ、第三讀會ヲ省略シテ委員長報告ノ通リ、
可決セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02719330316&spkNum=99
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100・植原悦二郎
○副議長(植原悅二郞君) 上田君ノ動議ニ
御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02719330316&spkNum=100
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101・植原悦二郎
○副議長(植原悅二郞君) 御異議ナシト認
メマス、直チニ三案ノ第二讀會ヲ開キ、議
案全部ヲ議題ト致シマス
度量衡法中改正法律案
第二讀會(確定議)
度量衡法中改正法律案
第二讀會(確定議)
度量衡法中改正法律案
第二讀會(確定議)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02719330316&spkNum=101
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102・植原悦二郎
○副議長(植原悅二郞君) 別ニ御發議モア
リマセヌ、第三讀會ヲ省略シテ委員長報〓
通リ、可決確定致シマシタ(拍手)-日程
第八及第九ハ同種議案ナルニ依リ一括議題
ト爲スニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02719330316&spkNum=102
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103・植原悦二郎
○副議長(植原悅二郞君) 御異議ナシト認
メマス、仍テ日程第八、穀類搗精製粉取締
法案、日程第九、穀類搗精製粉取締法案ヲ
一括シテ第一讀會ヲ開キマス、順次提出者
ノ趣旨辯明ヲ許シマス--荒川五郞君
第八穀類搗精製粉取絲法案(荒川五
郞君外二名提出)第一讀會
第九穀類搗精製粉取締法案(山本莊
一郞君外二名提出)第一讀會
穀類搗精製粉取締法案
穀類搗精製粉取締法
第一條本法ニ於テ穀類ト稱スルハ米、
麥、粟、黍高粱ヲ謂フ
第二條食用ニ供スル目的ヲ以テスル穀
類ノ搗精又ハ製粉ニハ砂土、石粉其ノ
他液類等ヲ混入スルコトヲ得ズ但シ大
麥及高粱ヲ搗精スル爲ニ之ヲ水ニ浸ス
ハ此ノ限ニ在ラズ
第三條搗精、製粉シタル穀類又ハ搗精、
製粉セザル穀類ト雖モ食用ニ供スル目
的ノモノハ之ニ砂土、石粉其ノ他液類
等ヲ混入スルコトヲ得ズ
第四條砂土、石粉其ノ他液類等ヲ混入
シテ搗精又ハ製粉シタル穀類ハ〓用ニ
供スル目的ヲ以テ之ヲ所持シ若ハ販賣
シ又ハ輸入シ若ハ移入スルコトヲ得ズ
第五條前三條ノ規定ニ違反シタル者ハ
五百圓以下ノ罰金又ハ科料ニ處ス
穀類搗精製粉取締法案
穀類搗精製粉取締法
第一條本法ニ於テ穀類ト稱スルハ米、
麥、栗、黍、高粱ヲ謂フ
第二條食用ニ供スル目的ヲ以テスル穀
類ノ搗精又ハ製粉ニハ砂土、石粉其ノ
他液類等ヲ混入スルコトヲ得ズ但シ大
麥及高粱ヲ搗精スル爲ニ之ヲ水ニ浸ス
ハ此ノ限ニ在ラズ
第三條搗精、製粉シタル穀類又ハ搗精、
製粉セザル穀類ト雖モ食用ニ供スル目
的ノモノハ之ニ砂土、石粉其ノ他液類
等ヲ混入スルコトヲ得ズ
第四條砂土、石粉其ノ他液類等ヲ混入
シテ搗精又ハ製粉シタル穀類ハ〓用ニ
供スル目的ヲ以テ之ヲ所持シ若ハ販賣
シ又ハ輸入シ若ハ移入スルコトヲ得ズ
第五條前三條ノ規定ニ違反シタル者ハ
五百圓以下ノ罰金又ハ科料ニ處ス
第六條豫メ主務官廳ノ許可ヲ得タルモ
ノニ付テハ本法ハ之ヲ適用セズ
〔荒川五郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02719330316&spkNum=103
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104・荒川五郎
○荒川五郞君 穀類搗精製粉取締法提案ノ
理由ヲ簡單ニ說明致シマス、諸君、近年學理
〓究ノ進步ト其實際化ノ發達ニ伴ヒ、草
木花卉果實等ノ食物タル肥料ニ付テハ、銳意
ニ〓究セラレ、是ガ效果ヲ擧ゲツヽアルコ
トハ多ク其品種ノ改良セラレタルヲ以テ
モ諸君ノ御承知ノ通リデアリマス、然ルニ
單リ最モ大切ナル人間ノ肥料タル日常ノ〓
物ニ付テハ、唯、單ニ其嗜覺ヤ外形等ノコ
トニ關シテハ相當ニ技巧ヲ凝ラシ、人ノ味
覺ヲ唆ルヤウナ〓究ハ進ンデ居リマスガ
唯〓最モ重要ナ人間榮養ノ根本タル主食ニ
付テハ更ニ〓究進步ヲ見ザルノミカ、却
テ反對ニ不良化シ、惡習慣ニ流レツヽアル
コトハ實ニ逆施倒行ノ甚シキモノデアリ
マシテ、我ガ民族ノ長養、國力ノ强大ヲ期
スベキ上ニ於テ、國家ノ爲メ、洵ニ大遺憾
事ト謂ハネバナリマセヌ
抑我ガ主食料タル米ハ吾等日本人ニ
最モ適當デ、且ツ最モ必要ナ榮養分ヲ完全
ニ包有スル天與ノ賜物デ、所謂瑞穗ノ美穀
デアルニ拘ラズ、此理想的榮養ノ米ヲ、故
ラニ手間ヲ掛ケ、暇ヲ掛ケ、費用ヲ掛ケテ
之ヲ搗キ之ヲ精ゲテ、大切ナル榮養分ヲ除
キ去ッテ居ルノミナラズ、尙ホ更ニ白土ヤ石
粉ナドヲ加ヘテ之ヲ搗精シマスル爲ニ、此
搗粉タル混合物ヲ十分ニ除キ〓メル必要
上、徹底的ニ之ヲ磨洗ヒ、卽チ淘洗セナケ
レバナリマセヌカラ、益〓養分ヲ棄テ去ル
ノミデアリマス、此不合理、不經濟、不衞
生ノ弊習ハ、今ヤ實ニ洛々トシテ津々浦々、
山間避地モ全ク例外ナク、廣ク全國ニ行ハ
レテ居ルノデアリマス、斯樣ニシテ其棄テ
ラレ、失ハレタ榮養分ハ是非トモ人身ニ
極メテ必要デアルノデアリマスカラ、已ム
ナク之ヲ他ノ鳥獸魚肉等、諸種ノ副食物カ
ラ攝ラネバナリマセヌ、爲ニ非常ナ不經濟
ニ陷リ、自ラ求メテ一般ノ生活費ヲ增加シ、
家計ノ困難ヲ加ヘテ居ルト云フコトハ、實
ニ奇怪千萬ト謂ハネバナリマセヌ、加之是
ガ爲ニ人身ノ發達ヲ害シ、疾病危羽ヲ招キ、
擧術ヤ作業等人ノ能率ヲ減損シ、醫藥休養
ヲ要スルコトガ少クナイ、ソレ等一般ノ惡
影響、惡結果ハ中々容易ナラヌモノガア
リマシテ、此位不可解、不合理、無思慮ノ
甚シキモノハ他ニアルマイト思ハレマス、
然ルニ世間多クハ恬トシテ之ヲ顧ミナイ狀
況デアルコトハ國家民族ノ前途ノ爲ニ甚
ダ歎カハシイ次第デアリマス
諸君近來日本人ハ、非常ニ著物ヲ重ネテ
厚著ヲスルヤウニナリマシタ、是ハ皮膚ガ弱
クナッタ爲メデアリマス、皮膚ガ弱クナッタ
ノハ身體筋肉ガ弱クナッタニ由ルノハ言
フマデモアリマセヌ、又齲齒ハ、元ハ非常
ニ少カッタノガ年次激增シテ、今ヤ世界ノ惡
齒國トナリマシタガ、其齒ノ惡イト云フノ
ハ卽チ身體ノ中ノ筋骨ガ惡クナッタ現ハ
レデアルノデアリマス、斯樣ニ身體皮膚ガ
弱クナリ、骨肉機能ガ脆クナッテ、是デドウ
シテ健全强壯ナ精神身體ヲ保ツコトガ出來
マセウカ、卽チ從來殆ド聞カナカッタ兵士ヤ
學生ノ、夏ノ日ニ日射病ニ罹ル者ガ近年
こ益、增加致シ、又神經衰弱「ヒステリー」近視
亂視ガ非常ニ殖エ、更ニ近頃マデ無カッタ
弱視者ガ俄ニ增加致シ、其他肺病ヤ肋膜等
ノ病人ガ滔々トシテ殖エマシテ、統計ノ示
ス所ニ依レバ、我國兒童ノ死亡率ハ世界第
一デアリ、又學校醫ノ言フ所ニ依レバ、學
生ノ四割ハ初期ノ肺病ニ罹ッテ居ルトノコ
トデアリマス、「エー、エリ、トーマス」ト
云フ人ハ、我ガ日本ヲ病人市場「シック·マー
ケット」ト酷評シテ居ルデハアリマセヌカ、
是デハ外ニ對シテ强イ國民モ、內カラ衰へ
ハシマスマイカ、洵ニ憂慮痛心ニ堪ヘナイ
次第デアリマス、此原因ハ米ヲ搗イテ、榮
養ニ必要ナ部分ヲ取去,タ白米ヲ常食トス
ル當然ノ結果デアリマシテ、博士專門家中、
白米ガ人體ニ及ボス影響ノ恐シキコトヲ說
イテ居ル者ハ隨分少クアリマセヌ、中ニモ
戶出博士ノ如キハ白米亡國論ヲ公ケニシ
テ居ルノデアリマスガ、是等學者ノ說ク所
ヲ俟ッマデモナク、實際ニ於テ其影響結果ハ
旣ニ明白デアリマシテ、糠トシテ取去ル部
分ニ榮養健康分ノアルコトハ今日健康劑
ノ賣藥トシテ盛ニ行ハレテ居リマスル中
ニ、糠ヲ主要原料トシテ居ル賣藥ハ私
ノ知ッテ居ルダケデモ四十餘種ノ多キニ
及ンデ居ルノデアリマス、日々只デ直キ
二代、ラレル米ノ糠ヲ、故ラニ取去ッテ、
サウシテ一方ニ之ヲ高イオ金ヲ出シテ、
榮養ノ藥、健康ノ藥トシテ買ウテ居ルト云
フコトハ、如何ニモ矛盾無意義ノ甚ダシキ
モノデハアリマセヌカ、是ハ直チニ文字カ
ラ見テモ直グ分リマス糠ト云フ字ハ米偏
ニ健康ノ康ト書イテアル米ノ健康分デア
ル糠ヲ取去ッタ白米ハ、米ノ粕デアリマス卽
チ米偏ニ白イト云フ字ハ粕ト讀ムノデア
ル斯樣ナ次第デ、今ヤ我ガ國民ハ日々米
ノ粕バカリヲ食ベテ、我ガ民族トシテ漸次
人間ノ粕ニナリツヽアルコトハ實ニ看過ス
ベカラザル國家民族重大事ト思フノデアリ
マス(拍手)
殊ニ諸君、是ガ搗精ニ搗粉ヲ入レルト云
フコトハ、是ハ實ニ亂暴ノ極ミデアリマ
ス、大切ナ人間ヲ養フ日々ノ生命糧タル大
切サヲ顧ミナイデ、不合理千萬ニモ左樣ナ
毒性毒物ヲ混入シテ居ル、是ガ爲ニ多少ノ
時間ヲ節約スルトカ、或ハ一部ノ人ガ利益
ヲ得ルトカ云フヤウナコトハ是ハ我ガ民
族上ノ重大問題ニ對シテハ寸毫モ問題ニハ
ナラヌコトデアリマシテ、此搗粉ハ主成分
ガ硅素ヨリ成ルモノト「カルシウム」カラ成
ルモノトノ二種アリマシテ、硅素性搗粉ノ
入ッタ白米ヲ連用シテ居ル者ハ、胃潰瘍ヤ胃
癌前程ノ變化ヲ認メ、又「カルシウム」性搗
粉ノ白米ヲ常食スル者ハ、胃ニ於ケル病態
的變性ノ外ニ、顯著ナ腎臟及膀胱ノ結石症
ヲ發スルコトハ既ニ〓究上明ニナッテ居リ
マイ、併シ白米ハ之ヲ徹底的ニ洗ヘバ養分
ハ棄去ルケレドモ、直接ノ害ハ少イ、ケレ
ドモ現今デハ製粉ニ入レルノデアリマス、
粉ハ米ノヤウニ洗フコトガ出來ナイノデア
リマス、今日粉デ造フタ饂飩ヤ、蕎麥ヤ、竹
輪ヤ、麩ヤ、其他子供ガ食ベル多クノオ菓
子、是等ニハ皆此澱粉ガ入ッテ居ルノデア
リマス、又砂糖デモ大抵ノモノニハ殆ド多
クノ、此搗粉入リノ澱粉ガ入ッテ居リマス、
砂糖箱ヲ開ケテ見レバ、固ウナッタノガア
ル殆ド落雁見タヤウニナッタノガアル、是
等ハ何割ト云ハウカ、多クノ澱粉ガ入ッテ
居ルノデアリマス(拍手)
諸君、日用品ノ販賣ニ付テ斤量ヲ胡魔化
シテ、目方不足ノ品ヲ賣ッタリ、或ハ牛乳ニ
水ヲ加ヘテ賣ル等ノコトハ、警察ノ取締ハ
隨分嚴重デアリマス、然ルニ人間ノ主食常
食デアル、生命ノ糧デアル所ノ此米ニ混入
物ヲナシテ、更ニ之ニ化粧粉ト云フモノヲ
加ヘテ枡目ヲ胡魔化スナド、之ヲ敢テ問ハ
ナイガ如キハ實ニ大小緩急ヲ顧ミナイ、
〓倒ノ甚シキト云フモ實ニ一層甚ダシキコ
トデハアリマセヌカ、斯樣ナ次第デアリマ
スカラ、一日モ猶豫スルコトハ出來ナイ次
第デ、速ニ是ガ取締法ヲ設ケテ、此搗粉ノ
禁止ヲ圖ラナケレバナリマセヌ、旣ニ滋賀
縣ヤ北海道デハ、命令ヲ以テ之ヲ禁止シテ
居リマス、又樺太デハ斷然白米ノ移入ヲ禁
ジテ居リマス、是等ノ實例ニ鑑ミテモ、之
ヲ全國的ニ實施厲行スルコトハ極メテ必
要大切ナコトト存ジマス、私ハ大正四年カ
ラ米〓ノコトヲ〓究致シテ、衷心切々洵ニ
憂慮禁ゼザルモノガアリマシテ、旣ニ二囘
モ議會ニ建議ヲ出シマシタガ、此度ハ幸ニ
〓心ナ有志ノ御協力ヲ得テ此法案ヲ出シタ
次第デアリマス實ハ搗粉ノコトハ旣ニ問
題デハナイノデアリマシテ、直チニ玄米食
ニ轉向セネバナラヌノデアリマスガ、玄米
食ガ全國各方面ニ普及スルニハ相當ナ年
月ヲ要スルコトヽ思ハネバナリマセヌガ、
此國民ヲ養フ命ノ根、命ノ親タル此常食ノ
米ニ付テハ、日々刻々直前ノ急要事デアリ
マシテ、我ガ國運ノ振張富强ノ爲ニ、將タ
我ガ民族ノ健康幸福ノ爲ニ、一日モ緩ウス
ベカラザル重大事デアリマスカラ、國民ヲ
玄米食ニ導ク維ギト致シマシテモ、大ニ其
必要ヲ認メル次第デアリマス
諸君、今日ノ此非常時局ニ、是程ノ大切
ナ事項スラ實施斷行ガ出來ナイトアッテハ
ドウシテ吾々ハ時局ヲ救フコトガ出來マセ
ウカ(拍手)併シ白米病ニ襲ハレタ者ハ
多ク氣短カデアリマス、諸君ハ此位ナ短
演說デモ、落付イテ聽クダケノ餘裕ヲヨ
ウ持タナイコトハ是ハ直チニ白米病ノ
現ハレデ、誠ニ已ムヲ得マセヌカラ、私
ハ玆ニ以下ノ說明ヲ省略シテ、委細ハ
委員會ニ讓リマシテ、玆ニ本案提出ノ
理由竝ニ全國醫學博士三百五十餘名連署
ノ玄米食ハ、人體榮養上最モ完全ナル旨ノ
說明書トヲ特ニ議長ノ許可ヲ得テ速記錄ニ
載セマスカラ、幸ヒニ御一讀ノ上、常ニ國
家ヲ以テ念トセラレル愛國熱誠ノ諸君ガ、
我ガ民族素質ノ向上改善ノ爲ニ、何卒御贊
助ノ御鼎力ヲ與ヘラレンコトヲ切ニ希望シ
テ已ミマセヌ(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02719330316&spkNum=104
-
105・植原悦二郎
○副議長(植原悅二郞君) 平野桑四郞君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02719330316&spkNum=105
-
106・平野桑四郎
○平野桑四郞君 極メテ簡單デアリマスカ
ラ此席カラ御許シヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02719330316&spkNum=106
-
107・植原悦二郎
○副議長(植原悅二郞君) 許シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02719330316&spkNum=107
-
108・平野桑四郎
○平野桑四郞君 只今議題ニナッテ居リマ
スル米穀搗精ニ關スル案ハ同僚タル荒川
君カラ、微ニ入リ細ヲ極メテ御說明ニナリ
マシタカラ、私ハ更ニ此事ニ對シマシテ深
クヲ申シマセヌ、唯、〓日所謂搗精ヲ致シ
マスルノニ、混砂ヲ致シマスコトハ衞生上
極メテ害ノアルト云フコトハ識者ノ既ニ決
定サレテ居リマスル事柄デアリマス、今此
處ニ蛇足ハ添ヘマセヌ、賢明ナル皆樣ハ
ドウカ此案ニ對シマシテハ滿場御贊成下サ
イマシテ、一日モ早ク國民保健ノ徹底ヲ致
シマスルコトニ致シタイト存ジマス、Ilam
申上ゲマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02719330316&spkNum=108
-
109・植原悦二郎
○副議長(植原悅二郞君) 別ニ質疑ノ通〓
ハアリマセヌカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02719330316&spkNum=109
-
110・上田孝吉
○上田孝吉君 兩案ハ一括シテ小山邦太郞
君外十七名提出、簡易森林火災保險法案ノ
委員ニ併セ付託セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02719330316&spkNum=110
-
111・植原悦二郎
○副議長(植原悅二郞君) 上田君ノ動議ニ
御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02719330316&spkNum=111
-
112・植原悦二郎
○副議長(植原悅二郞君) 御異議ナイモノ
ト認メマス、仍テ動議ノ如ク決シマシ
タ-日程第十、中央卸賣市場法中改正法
律案ノ第一讀會ヲ開キマス、提出者ノ趣旨
辯明ヲ許シマス-上田孝吉君
第十中央卸賣市場法中改正法律案(上
田孝吉君外二名提出)第一讀會
中央卸賣市場法中改正法律案
中央卸賣市場法中左ノ通改正ス
第六條主務大臣ハ中央卸賣市場開設者
ノ意見ヲ聞キ其ノ中央卸賣市場ノ取扱
品目ニ付當該指定區域内ニ於テ中央卸
賣市場類似ノ業務ヲ爲ス市場ノ閉鎖ヲ
命スルコトヲ得中央卸賣市場ノ取扱品
目ヲ追加スルトキ亦同シ
附則
本法ハ昭和八年四月一日ヨリ之ヲ施行ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02719330316&spkNum=112
-
113・上田孝吉
○上田孝吉君 簡單デスカラ自席ヨリノ發
言ヲ御許シ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02719330316&spkNum=113
-
114・植原悦二郎
○副議長(植原悅二郞君) 許可致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02719330316&spkNum=114
-
115・上田孝吉
○上田孝吉君 中央卸賣市場法ハ旣ニ施
行セラレテ居リマスルニ拘ラズ、其第六條
ノ運用ニ付テ、洵ニ遺憾ノ點ガアリマスル
ノデ市場閉鎖ニ關スル點ノ改正ヲ願ヒタ
イト云フノガ本案ノ提案ノ趣旨デアリマス、
詳細ハ書面ニ讓ルコトニ致シマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02719330316&spkNum=115
-
116・植原悦二郎
○副議長(植原悅二郞君) 別ニ質疑ノ通〓
ハアリマセヌ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02719330316&spkNum=116
-
117・上田孝吉
○上田孝吉君 本案ハ政府提出、輸出絹織
物取締法中改正法律案外五件ノ委員ニ併セ
付託セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02719330316&spkNum=117
-
118・植原悦二郎
○副議長(植原悅二郞君) 上田君ノ動議ニ
御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02719330316&spkNum=118
-
119・植原悦二郎
○副議長(植原悅二郞君) 御異議ナシト認
メマス仍テ動議ノ如ク決シマシタ-日
程第十一司法保護法案ノ第一讀會ヲ開キ
やく、提出者ノ趣旨辯明ヲ許シマス-小
林錡君
第十一司法保護法案(小林錡君外四
名提出)第一讀會
司法保護法案
司法保護法
第一條左ニ揭クル者ニシテ其ノ必要ア
リト認ムルトキハ本法ニ依リ之ヲ保護
ス
刑ノ執行ヲ終リ又ハ刑ノ執行ノ免
除ヲ得タル者
假釋放ヲ許サレタル者
三刑ノ執行ヲ停止セラレタル者
四刑ノ執行ヲ猶豫セラレタル者
五不起訴又ハ起訴猶豫ノ處分ヲ受ケ
タル者
六罰金又ハ科料ニ處セラレタル者
七其ノ他ノ刑事處分ヲ受ケタル者
前項各號ニ該當スル者ノ家族ユシテ保
護ノ必要アリト認ムルトキハ本法ヲ準
用ス
第二條他ノ法令ニ依リ保護處分ニ付セ
ラレタル以外ノ者ニ對シテハ其ノ意ニ
反シ保護ヲ行ハス
第三條保護事務ヲ掌理スル爲保護局ヲ
置ク
第四條保護局ハ司法大臣ノ管理ニ屬ス
第五條北海道廳及府縣ニ地方保護局ヲ
置ク
必要アルトキハ北海道廳及府縣內ニ地
方保護分局ヲ置クコトヲ得
第六條地方保護局ノ設置、廢止及管轄
ニ關スル規定ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第七條地方保護局ニ局長、保護司及書
記ヲ置ク
第八條地方保護局長ハ司法大臣ノ命ヲ
承ケ局務ヲ掌理シ所屬管內ニ於ケル保
護團體ノ經營狀態竝事業施行ニ付之ヲ
監督ス
第九條保護司ハ地方保護局長ノ命ヲ承
ケ保護事務ヲ掌理ス
保護司ハ保護ニ關スル知識又ハ經驗ヲ
有スル者其ノ他適當ト認ムル者ニ對シ
司法大臣之ヲ囑託スルコトヲ得
第十條書記ハ上司ノ指揮ヲ承ケ庶務ニ
從事ス
第十一條地方保護局內ニ保護事務ニ關
スル諮問機關ヲ置ク
諮問機關ノ組織竝職務ニ關スル規定ハ
命令ヲ以テ之ヲ定ム
第十二條地方保護局長ハ保護事務ノ援
助ヲ爲サシムル爲其ノ地方ニ於ケル適
當ナル者ニ保護委員ヲ囑託スルコトヲ
得
第十三條地方保護局長ハ保護ノ認定ヲ
爲スニ當リ父兄親族其ノ他保護ヲ委託
スルニ適當ト認ムル者ニ出頭ヲ求メ保
護ヲ受クル者ノ利益ノ爲保護ヲ勸說シ
又ハ保護ニ必要ナル事項ヲ指示スルコ
トヲ得
第十四條保護司ハ保護ヲ受クル者又ハ
將來保護ヲ受ケムトスル者ニ對シ召喚
同行其ノ他保護ニ必要ナル事項ノ遵守
ヲ命スルコトヲ得
第十五條地方保護局長及保護司ハ其ノ
職務ヲ行フニ當リ公務所又ハ公務員ニ
對シ必要ナル共助ヲ求ムルコトヲ得
第十六條保護團體ヲ設置セムトスル者
ハ地方保護局長ヲ經由シ司法大臣ノ認
可ヲ受クルヲ要ス
第十七條前條ニ依リ認可ヲ受ケタル保
護團體ハ理由ナクシテ保護ノ委託ヲ拒
ムコトヲ得ス
第十八條保護ヲ分チテ左ノ三種トス
生業助成
二融和調停
三、輔導援護
前項各號ノ範圍程度及方法ハ命令ヲ以
テ之ヲ定ム
第十九條保護ハ保護ヲ受クル者ノ居宅
ニ於テ之ヲ行ヒ保護司ノ觀察ニ付ス
第二十條地方保護局長居宅保護ヲ爲ス
コト能ハス又ハ之ヲ適當ナラスト認ム
ルトキハ保護團體ヲシテ保護ヲ受クル
者ヲ收容セシメ又ハ私人ノ家庭若ハ適
當ナル施設ニ收容ヲ委託シ之ヲ保護セ
シメ保護司ノ觀察ニ付ス
第二十一條保護ノ要否ハ地方保護局長
之ヲ決定ス但シ他官廳ヨリ保護ノ依賴
アリタルトキハ特別ノ事由ナキ限リ之
ヲ拒否スルヲ得ス
第二十二條二府縣以上ニ跨リ保護移
動ヲ要スルトキハ關係地方保護局長協
議ノ上之ヲ決定ス
第二十三條保護期間ハ二年以內トス但
シ必要アルトキハ之ヲ延長スルコトヲ
第二十四條保護ノ解除竝保護期間ノ延
長ハ地方保護局長之ヲ決定ス
第二十五條地方保護局ノ經費ハ國庫ヨ
リ之ヲ支辨ス
第二十六條國庫ハ命令ノ定ムル所ニ依
リ保護施設ノ建築費、設備費、維持費
竝收容費ヲ補助ス
第二十七條保護團體ノ用ニ供スル土地
建物ノ權利ノ取得又ハ所有權ノ保存ノ
爲ノ登記ニ付テハ登錄稅ヲ課セス
第二十八條保護團體ノ用ニ供スル土地
建物ニ對シテハ租稅其ノ他ノ公課ヲ課
セス但シ有料ニテ之ヲ使用セシメタル
者ニ對シテハ此ノ限ニ在ラス
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
本法施行ノ際現ニ保護事業ヲ經營スル保
護團體中司法大臣ノ指定シタルモノハ本
法ニ依リ認可セラレタルモノト看做ス
〔小林錡君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02719330316&spkNum=119
-
120・小林かなえ
○小林崎君 極メテ簡單ニ提案ノ理由ヲ說
明申上ゲマス本案ハ刑餘者、刑ノ執行中
ニ假出獄ヲ命ゼラレタル者、或ハ起訴猶豫
ノ處分ニ付セラレタル者是等ノ人々ニ對
スル保護ノ制度ヲ完備シテ、再犯若クハ犯
罪ノ起ルコトヲ豫防シヨウト云フ法案デア
リマス、御承知ノ如ク國家ガ犯罪人ニ刑罰
ヲ科スルノハ、近來ノ傾向ト致シマシテハ
所謂應病施藥デアリマシテ、藥ヲ與ヘテ病
人ヲ癒スト同樣デアリマス、然ルニ是マデ
ノ制度ニ於キマシテハ國家トシテ斯ウ云
フ方面ノ設備ガ十分ニ出來テ居リマセヌ爲
ニ、民間ノ宗〓家デアルトカ、或ハ〓育家
デアルトカ云フ篤志家ガ是等ノ保護團體
ヲ組織シテ此仕事ニ盡力シテ居ラレタノ
デアリマス洵ニ眼ニ見エナイ所ノ、晴々
シクナイ椽ノ下ノ力持ヲサレテ居フタノデ
アリマスルケレドモ年々犯罪數ハ殖エ
又累犯者モ殖エマシテ此制度ヲ完備スル
ニアラザレバ益z犯罪人ガ殖エテ行クト
云フ傾向ヲ呈シテ居ルコトハ旣ニ諸君モ
御承知ノ所デアリマス、而モ是等ノ犯罪
人若クハ累犯者ノ年齡ヲ調査シテ見マス
ルト、二十歲以上五十歲以下ト云フ、最モ
人生ニ於テ働クベキ壯年ノ時期ニ於ケル者
ガ八割以上ヲ占メテ居ルノデアリマス、若
シ此保護施設ニシテ完備スルナラバ、是等
ノ人々ヲ國家ノ爲ニ有用ナル途ニ使用スル
コトモ出來マスルシ、又一方警察、檢察、
裁判其他ノ國費ノ上ニモ、非常ナル節約ヲ
スルコトガ出來ルト思フノデアリマス少
年法ニ於キマシテハ、保護法ノ規定ガ整ヲテ
居リマスルガ爲ニ、少年法實施以來可ナリ
ノ成績ヲ擧ゲテ居ルノデアリマスガ成年
者ニ對シテハ此施設ガナイ爲ニ、保護團體
ハ非常ニ苦シキ立場ニアリマシテ殊ニ近
來不景氣ノ爲ニ是等ノ人々ニ仕事ヲ與フ
ルニモ困難シテ居ル狀態デアリマス御承
知ノ如ク檢察、裁判、行刑ハ所謂司法制
度ノ三大要素デアリマスルガ、保護制度コ
ソ此仕上ヲナス所ノ最モ重大ナル施設デナ
ケレバナラヌノデアリマス、遺憾ナガラ從
來此點ニ非常ナ缺點ガアッタコトハ皆樣
モ御同感ノコトヽ信ズルノデアリマス而
モ改正刑法ノ草案ノ中ニハ保護監察ノ規
定マデモ置イテ居ルノデアリマシテ將來
此改正法案ガ刑法トナヲテ現レル以前ニ
此保護制度ヲ整ヘテ置クト云フコトハ極
メテ重要ナコトデアルト思フノデアリマ
ス故ニ此法案ヲ提出シタノデアリマスル
ガ、ドウカ滿場諸君ノ御贊成ヲ得マシテ
本案ガ一日モ早ク成立スルコトヲ希望スル
次第デアリマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02719330316&spkNum=120
-
121・植原悦二郎
○副議長(植原稅二郞君) 別ニ質疑ノ通告
ハアリマセヌ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02719330316&spkNum=121
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122・上田孝吉
○上田孝吉君 本案ハ安達謙藏君外一名提
川、調停中立事件ノ手續費用救助ニ關スル
法律案外六件ノ委員ニ併セ付託セラレンコ
トヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02719330316&spkNum=122
-
123・植原悦二郎
○副議長(植原悅二郞君) 上田君ノ動議ニ
御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02719330316&spkNum=123
-
124・植原悦二郎
○副議長(植原悅二郞君) 御異議ナシト認
メマス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02719330316&spkNum=124
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125・上田孝吉
○上田孝吉君 殘餘ノ日程ヲ延期シ、本日
ハ是ニテ散會セラレンコトヲ望ミマス
〔「贊成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02719330316&spkNum=125
-
126・植原悦二郎
○副議長(植原悅二郞君) 上田君ノ動議ニ
御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006413242X02719330316&spkNum=126
-
127・植原悦二郎
○副議長(植原稅二郞君) 御異議ナシト認
メマス仍テ動議ハ可決セラレマシタ、次
會ノ日程ハ公報ヲ以テ御通知致シマス、本
日ハ是ニテ散會致シマス
午後四時四十六分散會
〔荒川五郞君演說參照〕
玄米食ハ人體榮養ニ最完全ナル
事
白米ト玄米ノ比較
白米ト玄米ノ比較ニ就イテ陸軍糧秣廠ノ分
析竝ニ内務省榮養〓究所ノ分析發表左ノ如
陸軍糧秣廠分析
脂肪灰分纖維
白米〇、四六0%〇、四九%〇、五六%
胚芽米一、二九%〇、五五〇、〇、七六ツ。
玄米一、九四%の一、五四0。一、二三%
一、內務省榮養〓究所發表
脂肪灰分纖維
白米〇、五〇〇〇〇、五一0〇、七三%。
七分搗米一、一八%。〇、七〇%一、〇九%
玄米二、六六〓。一、三九%一、五九%
前揭分析長ニヨリテ之ヲ見レバ、白米ハ
甚シク脂肪ニ乏シク玄米ノ脂肪量ノ約四
分ノ一乃至九分ノ一ニ減少シ又之ガ混砂
搗シタル白米ナレハ徹底的淘洗ヲ要スルガ
爲前表白米ノ脂肪ハ更ニ減少シテ玄米脂肪
ノ約十分ノトナリ到底食用ニ適セザル食
物トナル、白米ニ比スレバ胚芽米及ビ七分
搗米ハ脂肪量多ク幾分白米ヨリ〓アルカ如
キモ是レ亦水洗スレバ脂肪更ニ減少シ到底
玄米ノ完全ナルニ比スベクモアラザルナリ
次ニ灰分卽チ無雙分〓ニ有效纖維質ニ至
リテモ前表ニ見ル如ク白米ニハ此ノ成分甚
ダ乏シク又胚芽米竝ニ七分搗米ニ於テモ減
少シ何レモ玄米ニ於ケル量ノ約三分ノ一乃
至二分ノ一ニ減量スルヲ以テ白米ハ此ノ點
ニ於テモ甚ダイ完全ニシテ胚芽米七分搗
米モ亦不完全タルヲ免レズ之ニ比ス
玄米食ハ此ノ點ニ於テモ完全ナル榮養食ナ
ルヲ知ル、而シテ其ノ白米ニ於テ失ハレタル
無機分ハ燐カリウムマグネシウム、カ
ルシウム鐵等ニシテ、玄米中ニハ此等榮
養上甚ダ有效ナル無〓成分ヲ含ムノミナラ
ズ其等ノ加機分ハ〓玄米ノ脂肪中ニ含有
スル類脂肪體ノ働キニヨリテ有機物ト結合
シ無害ニシテ且ツ有效缺クベカラザル作用
ヲナスモノトナリテ存ス而カモ此等ノ無
機化合物中最モ有效ナル燐ノ含有量ハ玄米
百瓦中ニ實ニ二六六密瓦ノ多クヲ有セリ
二白米ニ於ケルヴイタミンABノ損失
由來白米ハヴイタミンB缺亡ノ食物トシ
テ本邦人脚氣ノ原因ハ直接四接ニ之ニ關係
ヲ有スルコトハ疑ナキ事實ナリ而シテ北
ノヴイタミンBハ白米ニハ絕無ニシテ胚芽
米竝ニ七分搗米ニハ幾分殘存スレドモ玄
米中ニ最モ多量ナルハ論ヲ竢タザル所ナリ
而シテヴイタミンAニ至リテモ同一關係
ニアリAハ白米ニハ絕無ニシテ玄米中ニ
最モ多クヲ含ム之ニ就イテモ玄米ハ最モ
完〓ナルモノト云フベク白米ハ最モ不完全
ニシテ〓廢スベキモノニ屬ス
(-アルカリー及ビヴイタミンCDE
ニ就イテ
アルカリーノ人體中ニ必要ナルコトハ論
ヲ待タズ而シテ白米食者ハ上述ノ脂肪缺
亡ノ爲ニソレヲ動物脂肪及ビ油類ニ求メン
トシテ鳥獸肉食、魚肉食、油脂食等ニ嗜好
ノ偏向ヲ來タスハ蓋シ自然ノ要求ト見做ス
ベキモ之ニハ大體二種ノ弊害アリ其ノ
ハ白米〓者ハ鳥獸肉類魚肉類ヲ偏攝ス
ル爲ニ酸〓新又ヘアルカリー缺亡ノキヲ受
ケ竝ニ蛋白質過剩ヨリ來ル諸種ノ自家中毒
ノ害ニカヽルコト、其ノ二ハ白米〓者ハ脂肪
ノ乏シキ野菜等ノ植物質ヲ嫌忌シテ爲ニ
ヴイタミンCDE及ビ多量ノアルカリー分
ノ惠與ヲ受クルコト能ハザルニ至リ自然其
ノ缺亡ノ害ヲ受クルコト是ナリ、此ノ點ニ關
シテハ胚芽米、七分搗米攝取者ニ於テモ大同
小異ニシテ玄米〓攝取者ハ自然ニ有害ナ
ル動物〓ニ遠ザカリ反對ニ有效ナル植物
食ヲ好ミテヴイタミンCDE竝ニアルカリー
類ノ豐富ナル供給ヲウクルニ至ル是レ亦
玄米食ノ最モ完全ナル主食タルニ適スルコ
トヲ證明スルモノナリ
(四)生物食品、死物食品、及ビ變質食
品ニ就テ
生命ヲ維持スルモノハ發芽能力ヲ有
シ發芽能力ヲ有スルモノハ多ク變質スル
コトナキモ旣ニ死シテ生命ナキ物質ハ死
後早晩變質シテ榮養上不完全ナル狀態トナ
ル而シテ植物性食品ハ死後ニ於テモ徐々
ト變質スレドモ動物性食品ハ死後直チニ
變質ヲ始ムルモノト知ルベシ
變質食品ハ榮養上有害ナルコト多ク、生
物〓品ハ安全ニシテ無害有效ナルコトハ
一般ニ認ムル所ナリ、此ノ點ニ就キテモ白
米ハ勿論、胚芽米、七分搗米モ搗カルヽト
共ニ生命力ヲ失フテ死後時日ヲ經過スル
ニ隨ヒ次第ニ變質シユクモ之ニ反シテ玄
米ハ尙發芽力ヲ有スル生物食品ニシテ、卽
チ炊飯前迄謂フマデモナク、不變質食品ニ
シテ炊飯後多クノ時間ヲ經テ腐敗ニ傾クト
キハ所謂變質食タルコト勿論ナレドモ然ラ
ザル以上ハ變質食タルコトヲ免カルヽヲ得
ルモノナリ多クノ野菜類、芋類豆類
果物類等、之ニ準ズ、此ノ點ニ關シテモ白
米鳥獸肉類、魚肉類ハ死後變質食ニ屬
スルモノ多ノ榮養上不適當ナルモノニ屬ス
斯クシテ白米ハ不完全、有害ニシテ
全廢スベキモノ玄米ハ完全有效ニシテ、
推奬スベキモノトス
附記
一、白米ハ消化吸收ノヨキモノ、玄米ハ
消化吸收ノ惡シキモノトノ說ヲナス
モノアレドモ白米ノ如キ有害食品
ハ消化吸收ノ善キ程危險ニシテ玄米
ノ如キ完全食ハ徐々ト消化セラレ
徐々ト吸收セラルヽ程、無害有效ナリ
ト知ルベシ
例ヘバ毒物ハ吸收ノ早キモノ程危險
ノ程度强キガ如ク又總ベテ生理的作
用ノ急激ナルハ有害ニシテ緩徐ナル
ヲヨシトスルガ如シ
二、玄米食ハ胃腸ヲ害シ下痢ヲ來スコト
多シト云フ恐怖ヲ有スルモノアレド
モ是レハ只大食ノ惡習慣ヨリ來ル
場合ニ見ル所ニシテ玄米食ハ完全
榮養ヲ有スルガ故ニ白米〓ニ比シ
三分ノ一內外ヲ減量シテ可ナリ其
白米食ノタメ大食習慣ノ者モ、玄米
食ヲトレバ自然ニ早晩習慣モ改マリ
適應セル食量ニ歸復スルヲ以テ恐ル
ベキモノニ非スト知ルベシ
三、玄米〓ハ不味ニシテ食スルニ堪ヘザ
ルモノトナスモノアレドモ、其レハ
炊飯法ノ最近種々ニ改善セラレタル
ニヨリ又一方ニハ食者ノ慣レルニ
ヨリテ玄米〓ハ最モ美味ナル食物ト
感ズルニ平リ、之ニ慣レタルモノハ
白米〓ニ歸復スルコトヲ却ッテ嫌忌
スルニ至ルモノナリ
昭和八年二月十八日
醫學博士一六謙三
外三百五十四名
衆議院議事速記錄第二十六號中正誤
頁段行誤正
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