1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和九年二月二日（金曜日）午前十時二十一分開議
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議事日程 第十號
昭和九年二月二日
午前十時開議
第一 國務大臣の演説に關する件（第八日）
第二 農業倉庫業法中改正法律案（政府提出） 第一讀會の續（委員長報告）
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001・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 是ヨリ報〓ヲ致
サセマス
〔近藤書記官朗讀〕
昨一日內閣總理大臣ヨリ左ノ通政府委員
仰付ケラレタル旨ノ通牒ヲ受領セリ
第六十五囘帝國議會大藏省所管事務政
府委員
大藏書記官石渡莊太郞君発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X01019340202&spkNum=1
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002・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 是ヨリ本日ノ會
議ヲ開キマス、公爵伊藤博精君ヨリ病氣ニ
付キ十日間ノ請暇ノ中出デガゴザイマシ
タ、許可ヲスルコトニ御異議ハゴザイマセ
ヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕
號外昭和九年二月三日
貴族院議事速記錄第十號発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X01019340202&spkNum=2
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003・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X01019340202&spkNum=3
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004・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 此際議事日程變
更ニ付テ御諮リヲ致シマス、議事ノ都合上
日程第二ヲ第一ノ前ニ繰上ゲタイト存ジマ
ス、御異議ハゴザイマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X01019340202&spkNum=4
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005・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X01019340202&spkNum=5
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006・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 農業倉庫業法中
改正法律案、政府提出、第一讀會ノ續、委員
長報告、山縣委員長ノ登壇ヲ望ミマス
〔左ノ報告書ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノ
タメ茲ニ載錄ス以下之ニ做フ〕
農業倉庫業法中改正法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報〓候也
昭和九年一月三十一日
委員長公爵山縣有道
貴族院議長公爵近衞文麿殿
〔公爵山縣有道君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X01019340202&spkNum=6
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007・山縣有道
○公爵(山縣有道君) 只今議題トナリマシ
タ農業倉庫業法中改正法律案ノ特別委員會
ニ於ケル經過竝ニ結果ヲ御報告ヲ申上ゲマ
ス、本改正案ハ農業倉庫業ノ今日漸次發達
ヲ來シテ參リマシタ實情ニ鑑ミマシテ、其
機能ヲ擴張セムガ爲ノ改正案ノヤウニ存ゼ
ラレマス、本委員會ハ二囘開會、先ヅ政府
ノ說明ヲ求メ、質疑應答ヲ重ネ、愼重會議
ヲ了シマシタ、只今其質疑ノ〓要ニ付テ簡
單ニ御報告ヲ申上ゲマス、米穀トノ關係ハ、
今日米ノ爲ニ倉庫ガ不足シテ居ルニモ拘ラ
ズ、更ニ木炭ヲモ保管スルト云フコトハ多
大ノ新設倉庫ヲ要シハシナイカ、又木炭生
產者ニ對スル金融ノ關係ハ如何デアルカ、
或ハ海產物ノ保管及其金融ハ如何ニスル
カ、尙ホ又此改正ニ依ッテ木炭ノ生產費ニ如
何ナル影響ヲ及ボスカト云フ諸點ニ付テ質
疑ガアリマシタノデゴザイマス、之ニ對シ
テ政府ヨリソレ〓〓詳細ナル答辯ヲ得タノ
デゴザイマス、其結果委員會ニ於キマシテ
ハ、本改正案ハ至極時宜ニ適スルモノト認
メマシテ、全會一致ヲ以テ可決イタシタ次
第デアリマス、尙ホ詳細ハ速記錄ニ依ッテ御
承知ヲ願ヒ、私ノ報告ヲ終リタイト存ジマ
ス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X01019340202&spkNum=7
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008・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 本案ノ第二讀會
ヲ開クコトニ御異議ハゴザイマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X01019340202&spkNum=8
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009・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X01019340202&spkNum=9
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010・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直ニ本案ノ第二讀會
ヲ開カレムコトヲ希望イタシマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X01019340202&spkNum=10
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011・池田政時
○子爵池田政時君 贊成発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X01019340202&spkNum=11
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012・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 西大路子爵ノ動
議ニ御異議ハゴザイマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X01019340202&spkNum=12
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013・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X01019340202&spkNum=13
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014・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 本案ノ第二讀會
ヲ開キマス、御異議ガナケレバ本案全部ヲ
問題ニ供シマス
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X01019340202&spkNum=14
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015・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 御異議ナイト認
メマス、本案全部委員長ノ報告通リデ御異
議ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X01019340202&spkNum=15
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016・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X01019340202&spkNum=16
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017・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直ニ本案ノ第三讀會
ヲ開カレムコトヲ希望イタシマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X01019340202&spkNum=17
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018・池田政時
○子爵池田政時君 贊成発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X01019340202&spkNum=18
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019・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 西大路子爵ノ動
議ニ御異議ハゴザイマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X01019340202&spkNum=19
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020・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X01019340202&spkNum=20
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021・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 本案ノ第三讀會
ヲ開キマス、第二讀會ノ決議通リデ御異議
ゴザイマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X01019340202&spkNum=21
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022・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X01019340202&spkNum=22
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023・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 國務大臣ノ演說
ニ關スル件津村君ノ登壇ヲ望ミマス
〔津村重舍君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X01019340202&spkNum=23
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024・津村重舎
○津村重舍君 本員ハ昨日各大臣ニ御質問
ヲ申上ゲマシタ所、大略御答辯ヲ得マシタ
ノデアリマスルガ、マダ徹底······其意ヲ得
ザル點ガアリマスルカラ、本日ハ少シク其
徹底スル御囘答ヲ願ヒタイト思フノデアリ
マス、第一ハ日本ノ此聯盟脫退ニ關スル責
任ハ敢テ問ヒマセヌガ、今後ハ外務省ガ國
際的政策ノ上ニ相當革新ヲ施シテ、畏クモ
陛下ノ御趣意ニ副フヤウナ外交ヲ執ラナケ
レバナラヌト思フノデアリマス、聯盟五大
强國ノ一タル日本ガ、殆ド獨立國トシテ認
ムベカラザル半獨立國ノヤウナ支那ニ翻弄
セラレテ、サウシテ日本ノ大趣意ヲ徹底セ
ヌト云フコトハ、私ハ一部ノ罪デアラウト思フノ
デアリマス、苟モ五大列國ノ創立委員國デ
アル、世界ニ對シテ五大國ト稱セラルル所
ノ日本ノ國ガ滿洲ノ獨立ヲ援ケルト云フコ
トハ、自衞上カラモ亦此德義上カラモ、大
義上敢テ讓ル所ノナイ各國ノ稱讃ヲ得ベキ
政策ヲ執ッテ居ノテ、而シテ日本ハ侵略國デ
アル、或ハ領土欲ニ出兵ヲシテ居ルノデア
ルト誣ヒラレルノデアリマス、是ハ實情ヲ
各國ニ知ラシメルコトニ努メナイ罪デモア
リマセウ、又一部ハ知ラサナイヤウニ支那ノ
方ノ策動モ大イニ與ッテ力アルト思フノデ
アリマス、聯盟國ヨリモ支那ハ色〓ノ指導
ヲ願ヒタイ、支那ノ衞生上ノ設備、交通ノ
設備ハ聯盟國ノ干涉ヲ得テ完成ヲ致シタイ
ト云フヤウニ、支那ハ聯盟ノ中ノ懷ロニ飛
込ンデ助ケテ吳レト云フ遣方ヲヤッテ居ル
ノデアリマス、日本ノ外交ハ、宜シイ、助
ケテモヤラウ、聯盟ノ理事ニモシテヤラウ、
何ニモシテヤラウト言ウテ、大國ヲ氣取ッ
テ知ラヌ顏ヲシテ居ルト、「ライヒマン」デア
ルトカ、或ハ交通ノ顧問デアルトカ、多額ノ
俸給ヲ拂フテ聯盟ノ各員ニ便利ヲ與へ、サウ
シテ種々ノ策動ヲシテ居ルノデアリマス、
九月十八日ノ事件ガ起ルヤ、其以前ニ既ニ
聯盟ノ懷ロヘ飛込ンデ居〃テ、聯盟ガ「リツ
トン」卿ヲ調査員ニ寄越ストカ、「リットン」
卿ノ書記官ト云フモノハ支那ノ顧問デアル
ト云フヤウナ關係デアルノデアリマスルカ
ラ、外交上ノ策動ハ全部向フガヤッテ居フテ
此方ハ相關セズ焉ト云フヤウナ狀態ニアル
カラシテ、努メテ支那ヲ助ケテ日本ヲ抑ヘ
ヤウト云フ政策ヲ執ッテ居ルノデアリマス、
ソレガ如何ニモ遺憾千萬ナコトデアリマシ
テ、日本ニ一票ノ贊成者ガアレバ······日本
ハ領土欲デアル、日本ハ聯盟規約ヲ拵ヘテ
置キナガラ、其聯盟規約ヲ破ル國デアルト
言ハレルヤウナ汚名ヲ被ッテ居ルノデアリ
マスカラ、現在ノ滿洲國ノ獨立ヲ助ケテ、
正々堂々ト領土欲デナイ、滿洲國ノ獨立ト
云フモノハ東洋ノ平和ニ重大ナ關係ガア
リ、又世界ノ平和ニ關係ガアルカラシテ獨
立セシメタノデアル、滿洲國ハ元馬賊ヨリ
出世ヲシタ所ノ張作霖デアルトカ、張學良
デアルトカ、斯ノ如キ者ガ亂暴ナ政治ヲシ
テ、而モ日本ノ滿鐵ノ有スル行政權ヲ益〓
迫害シテ、日本人ノ滿洲ニ居ル者ヲ追放セ
ムト企テタノデアル、皆サンモ御承知ノ通
リ、日本ガ靑島ヲ返シ、或ハ各國ノ干涉ニ
依ッテ鐵道ヲ返シシタカラシテ、今度モ米
國ナリ各國ノ干涉ヲ得テ、滿洲ヤ滿鐵ヲ取
返サウト云フ所ノ手段ニ出デタノデアリ
マス、故ニ前陸軍大臣モ主張セラレタ如
ク、日本ノ生命線デアルト云フノデ國民ガ
擧〓テ此滿洲ノ獨立ヲ、實ニ東洋ノ君主國デ
アル日本ハ幾多ノ機牲ヲ拂ッテ滿洲ノ獨立
ヲ······決シテ領土欲デハナイノデアリマス
カラシテ、此點ニ對シテ日本ノ外務省ト云
フモノハ、大イニ新シク工作ヲシテ、各國
ニ日本ノ野心ノ無イト云フコトヲ承知セシ
ムルコトガ、軍備ノ擴張モ必要デアリマセ
ウガ、此點ニ於テ相當多額ノ入費ヲ使ッテ
千、日本ノ外務省ノ策動スベキ第一義デア
ラウト思フノデアリマス、又此各國ノ中デ
利害ノ相反スル點モアリマスルガ、利害ヲ
同ジクスル國ト提携シテ、而シテ日本ノ外
交策ヲ確立シテ進マナケレバナラヌト思フ
ノデアリマス、日本ノ外交ハ祕密デアル祕
密デアルト云フケレドモ、利害關係ヲ同ジ
クスルモノハ公然外務省モ提携シ、日本ノ
國民モ提携シ、擧國擧フテ此提携ニ一段ノフ
テ、サウシテ或ハ東洋ニ重大關係アル從來
ノ日英同盟デアルトカ、或ハ佛蘭西ト同盟
ヲスルトカ······安南ニ領地ヲ有スル佛蘭西
ニ提携ヲスルトカ、堅ク國民共ニ提携ヲシ
テ此外交策ノ確立ヲ遂ゲナイト云フト、亞
米利加ニ逢ヘバ亞米利加ニ御世辭ヲ言ヒ、英
國ニ逢ヘバ英國ニ御世辭ヲ言ッテ、各國ニ
競ッテ御世辭ノ外交ヲヤッテ居フタノデハ、是
デハ私ハ徹底シナイト思ヒマス、宜シク英
國ナリ佛蘭西ナリ······我ミハ外交ノコトハ
存ジマセヌケレドモ、國民ニモ知ラシメテ
徹底的ニ日本ノ外交ヲヤッテ、而シテ列國ヲ
シテ日本ノ意思ノ在ル所ヲ知ラシメテ、日
本ハ領土欲デ滿洲ヲ獨立セシメテ居ナイノ
デアルト云フコトヲ明カニシナケレバナラ
ヌト思フノデアリマス、此點ニ關シテ日本
ノ外務省ガ相當ノ經費ヲ豫算ニ御請求アツ
テ、サウシテ確立シタル外交策ヲ行ハレム
コトヲ希望スルノデアリマス、此點ニ付テ
外務省ノ、從來トハ少シ變革シテ斯ウ云フ
風ニヤルノデアルト云フコトヲ御示シガ出
來ルナラバ願ヒタイト思フノデアリマス、
ソレカラ昨日御返事ガゴザイマセヌデシタ
ガ、御返事ガ出來ナイノナラバ出來ナイト
御仰セ下サレバ宜イト思フノデアリマス、
陸軍大臣ノ更迭デアリマス、少シ風ヲ引イ
タカラト云フテ直ニ辭職ヲ採用スル、ソレモ
或ハ結構デアリマセウガ、現ニ閣員ニ列セ
ラレル方デ餘程御高齡デモアリ、風ヲ引ク
ト云フヤウナコトガ是カラデモ起ッテ來ル
ノデアリマスルガ、斯ウ云フコトガ例ニナ
ルト餘リ宜クナイデナイカト懸念スルノデ
アリマス、日本ノ陸軍大臣ハ滿洲國獨立ト
云フ日本ノ重大問題ニ重大ナ關係ガアリマ
シテ、日本ノ現內閣ノ中心大臣トモ思フノ
デアリマス、此大臣ガ一朝辭表ヲ提出ニナ
ルト早々ニ御聽許ニナリマシテ、忽チ大臣
ガ更"テシマウ、是ハ他ノ大臣ト違ヒマシ
テ日本ノ國民ガ全部望ヲ囑シテ居ッタ所ノ
大臣デアリマス、曩ニハ大臣ガ病フト寢臺
車ヲ拵ヘルトカ注射ヲスルトカシテ、ヤカ
マシク大臣ヲ維持シタモノデアルノニ、此
度ハ先例ノナイ寢耳ニ水ノヤウニ忽ニ更ッ
テシマウ、是ハ功臣ヲ遇スル禮デモナカラ
ウト思ヒマス、マダ國民ガ此大臣ニ期待ス
ルコトガ多イノデアリマシテ、實ニ大人物
デアル所ノ大臣ヲ、斯ノ如ク輕々ニ扱ッテ
宜イモノデアルカ、モウ少シ鄭重ニ御待遇
アッテ然ルベキカト思フノデアリマス、是ハ
內部ニ色ミノ事情ガアルヤウニモ伺フノデ
アリマスケレドモ、玆ニ明カニ御答辯ノ出
來ルコトデアリマスレバ、是ハ國民ノ知ラ
ムト欲スル所デアリマスルカラ御答ヲ願ヒ
タイト思フノデアリマス、ソレカラ滿鐵ノ
コトデアリマスガ、滿鐵ノ改組ガ昨年甚シ
ク强力ニ主張セラレマシテ、滿鐵ノ監督ヲ
軍令部ニ移ス、或ハ一國一產業主義デ徹底
的ニ滿鐵ノ根本カラ改正ヲシテ、種種ノ大
切ナル大變革ヲ起スト云フ原案ノヤウニ伺
テ居リマシタ、ソレガ爲ニ滿鐵ノ株ハ非常
ナ暴落ヲ來シテ、滿鐵及滿洲ニ於テ資本ヲ
求ムル途ヲ塞イデシマウヤウナ有樣ニナッ
テ居ルノデアリマス、此滿鐵ノ規則ヲ改正
スルノニ出先デ改正シテ拓務省ハ何モ
知ラヌ、或ハ陸軍省ハ何モ知ラナイト云フ
出先ノ改正デアリマシテ、其改正ガ陸軍省
ノ贊成ヲ得テ居ルノカ如何デアリマスル
カ、拓務省ニ於テハ聲明シテ、反對ヲセラ
レテ居ルヤウナ譯デアリマス、此滿鐵ノ資
本ト云フモノハ大部分日本ガ出シテ居ルノ
デアル、日本ノ國民、日本ノ政府ガ滿鐵ニ
大資本ヲ出シテ居ッテ、出先ノ從業員カ或ハ
軍閥カ知リマセヌガ、滿洲カラ改正案ヲ持ツ
テ來テ肝腎ノ拓務省デハ御承知ガナイト、
斯ウ云フヤウナヤリ方ハ內地ニ居ル資本家
ガ實ニ危險ヲ考ヘルノデアリマシテ、若シ
改正ノ案ガアルナラバ、陸軍省デモ出先デ
モ、宜シク內部ニ於テ御〓究ニナッテ、而シ
テ拓務省ヘ出シテ、拓務省ノ承諾ヲ得テ之
ヲ發表スルト云フヤウナコトニ願ヘヌモノ
デアルカドウカ、日本ノ資本主ハ斯ノ如ク
危險ナル滿洲ノ事業ニ對シテ今後出資ヲス
ルコトヲ非常ニ恐レルノデアリマス、ソレ
カラ又此滿鐵ノ監督權ヲ關東長官ニ隷屬セ
シメルト云フ案デアッタサウデアリマスル
ガ、此陸軍ガ斯ウ云フ經滿ニ關係スルト云
フコトハ果シテ如何ナモノデアラウカ、是
ハ陸軍省ニ於テモサウ云フ御希望ガアルノ
デアルカ、政治デアルトカ經濟ハ又ソレ〓〓
專門ノ道ガアリマシテ、整理正シク混同
ヲシナイヤウナ政治ニシナケレバナラヌト
痛感スルノデアリマスルガ、此點ニ付テ林
陸軍大臣ノ御意見ヲ伺ヒタイト思フノデア
リマス、滿鐵ノ改組案ハ又出テ來ルヤウナ
コトガアルカモ知レヌト思フ、若シ出テ來
ルナラバ、祕密ニ改正案ヲ拵ヘテ、陸軍省
ナリ拓務省ナリノ諒解ヲ得テ、初メテ發表
セラルルヤウニ願ヒタイト思フノデアリマ
ス、サウデ無カッタナラバ、時々此經濟界ヲ
攪亂ヲシ、或ハ滿洲國ノ資本ヲ集メルコト
ニ大イナル害ヲ爲スト思フノデアリマス、
現在滿鐵ノ社債ヲ三千萬、許可ガ近頃下ッタ
ヤウデアリマスルガ、是ガ二週間カ三週間
前ニ許可ガ下ッタナラバ、或ハ此金ガ募レヌカ
モ知レヌト私ハ思フノデアリマス、ナカナ
カ公債ヲ以テ政府ノ經濟ヲ支辨スルトカ、
滿鐵ガ公債ヲ以テズン〓〓資本ヲ募ルト云
フコトハイト易イヤウニ見エマスルガ、實
ハ此滿鐵ノ信用ト云フモノニアッテ、又日本
ノ公債ヲ募フテ經費ヲ節減シテ行クト云フ
コトモ、要ハ大藏大臣ノ信用ニアルノデア
リマスルカラ、ナカ〓〓輕率ニ考ヘテハ居
ラレヌ問題ト思ヒマスル譯デ、是等ニ對シ
テ拓務省ナリ陸軍大臣ノ徹底シタ御返事ヲ
願ヒタイト思フノデアリマス、又大臣ノ進
退ニ付テモ明瞭ナル御囘答ヲ得タイト思フ
ノデアリマス、尙ホ產業統一ノ問題デ、私
ガ餘リ考ヘテ居ナイ製鐵間題ニ絡ンデ綱紀
肅正問題ヲ聊カ噂ヲシテ、大臣ノ忌諱ニ觸
レタヤウダ、ヒドク神經ニ障ッタト見エマス
ルガ、私ハ製鐵合同ノコトニ付テハ詳シイ
コトハ少シモ存ジマセヌ、今囘ノ質問ニ依ッ
テ官業ノ、非常ナ高ク付イテ居ル所ノ八幡
製鐵所ノ評價ガ非常ニ廉クテ、私立會社ノ
製鐵所ノ評價ガ非常ニ高イ、故ニ幾ラ中島
商工大臣ガ御說明アッテモ、質問者ハ何處
マデモ了解ガ得マセヌト、不滿ナル囘答バ
カリヲシテ居ラレタノデアリマス、ソレヲ
聽イテ我ミガ聊カ玆ニ疑點ヲ挾ム譯デ、敢
テ私ハ他ノコトヲ考ヘテ居ルノデハアリマ
セヌ、ドウカ此日本ノ八幡製鐵所ト云フモ
ノハ年々多額ノ金ヲ費シテ、國家事業トシ
テ多年非常ナ何億圓ノ金ヲ入レマシタカ覺エ
マセヌガ、非常ナ日本ガ國費ヲ投ジテ、完全ナ
ル製鐵所ガ出來上ッタノデアリマシテ、是等ヲ
私立會社ノ微々タルモノト比較スレバ比較ニ
ナラヌ程政府ガ金ヲ使ッテ、雄大ナル製鐵所
ヲ成立シタノデアルカラシテ、國家ノ利益
ノ上カラモ相當ノ價格ニ見積ッテ、一見私立
會社ノミニ厚イヤウニ見エルヤウナヤリ方
ハ國家ノ爲ニ、國民ニ疑點ヲ抱カシ、又此
重役ヲ選任スルノデモ八幡製鐵所ハ三分ノ
二以上出シテ宜イト云フノニ、少ナクモ半
分位ニ過ギナイ重役ヲ出シテ居ルト云フコ
トヲ聞キマスガ、是等ニ付テモ深甚ノ御注
意ヲ願ヒタイト思フノデアリマス、政府ヲ
損サスノハ少シモ構ハヌ、人民ニ利益ヲ與
ヘレバ宜イヤウナモノデアリマスケレドモ、
此政府ノ損失ハ日本全體ノ損失デアッテ、日
本全國民ノ負擔スル所デアリマスカラシテ、
少數ノ資本主ノミニ厚クシテ、全體ノ國民
ニ不利益ヲ與ヘルヤウナヤリ方ハ餘程愼重
ニ願ヒタイト思フノデアリマス、少數ノ人
ニ少シモ損得ハ無イカラ、民間ノ事業ヲ助
ケル爲ニ多少寬大ニシテヤルト云フコトモ
宜シイケレドモ、斯ノ如キ比較ノ違ッタモノ
ニ向ッテ、餘リニ民間ノ資本家ニ利益ヲ與
ヘルト云フコトハ、民間ノ資本家ガソンナ
事ヲ希望シマセヌ、日本ノ實業家ハサウ云
フコトハ希望ハ致シマセヌ、ソンナニ夥シ
イ差異ヲ以テ、民間ノ資本家ヲ優遇スルト
云フコトハ、他日又財閥々々ト云フテ、財
閥ヲ攻擊スル種ニナルノデアリマシテ、實
業家ノ希望セザルコトヲ政府ナリ、其派ノ
人ガ他日ノ利益ヲ得ル爲ニ擁護ヲシテ置イ
テ、サウシテ日本ノ實業家ヲ財閥デアルト
カ、色ミナ汚名ヲ被ラシメテ、攻擊スル種
ヲ或ハ作ルコトニナリハシナイカト私ハ思
フノデアリマス、昨日モチヨット申シマシタ
通リ、日本ノ實業家ハ西洋ノ實業家ノヤウ
ニ、貪ッテ飽クコトヲ知ラズト云フヤウナ
考ヲ持ッテ居ル者ハ少イト私ハ思ヒマス、政
治家ガ實業家ニ利益ヲ與ヘ、他日之ニ報酬
ヲ求ムルト云フヤウナ政策ガ斯ウ云フコト
ニナリ來ッタモノデアルト思フノデアリマ
ス、或ハ密輸入ノ「ダイヤモンド」ガドウデア
ルトカ、アア云フヤウナコトデモ、實業家
ガ求メテシタコトデハナクテ、或ハ外部ノ
者ガ無理ニ持ッテ來タカモ是ハ知リマセヌ、
ソンナ事ハズット以前カラヤッテ居ルノデア
ルカラ、以前カラ嚴重ニヤレバ宜イ、ソレ
ヲ突然ヤカマシウ言フテ、之ヲ罪ニスルト云
フヤウナヤリ方ハ、大イニ實業家ヲ一種ノ
脅迫スルモノデアルト私ハ思フノデアリマ
ス、平常嚴重ニシナイデ置イテ、何十年默
許シテ、直ニヤカマシウ言フト云フコトハ、
或筋ノ者ガ爲ニセム爲ニスルノデアラウ
ト思フノデアリマス、惡イ者モアリマセウ
ガ、高潔ナル實業家ハ、國家ノ爲ニ金ヲ出
セト言ヘバ、出來ル力デ出ス人ハ澤山アル
ノデアリマス、西洋ノ或ハ「ヂユー」ノ如キ
貪慾飽クヲ知ラズト云フヤウナ實業家デハ
無イト思フ、又無イヤウニ政府モ仕向ケナ
ケレバナラヌ、皇室中心主義デアルトカ、
日本ノ根本的ノ國ノ主義ニ對シテハ、日本
國民ハ擧ッテ明治大帝ノ〓育勅語其儘ノ
日本ノ國民デアッテ、世界ニ誇ルニ足ル所ノ
國民デアルト云フコトヲ、政治家モ自覺シ
テ貰ハナケレバナラヌト思フノデアリマス、
何カト云フト財閥ハ惡イコトヲスルカノ如
キ目ヲ以テアシラハレルト云フコトハ、益〓
此實業家ヲ惡クスル意味合ニナルデアラウ
ト思フ、國家ノ爲ニ三千万圓ヲ出ストカ、三
百萬圓モ出ストカ、或ハ飛行機ヲ獻納スルト
カ、人ヲ奬勵シテ、益、皇室中心主義ニ集ヲテ行
クナラバ、日本ノ將來ト云フモノハ實ニ洋々タ
ルモノデアルト思フノデアリマス、ソレカ
ラ昨日朝鮮ノ水利組合ハ許可ヲセザル方針
デアルト云フ御答辯ヲ得マシテ、誠ニ滿足
ヲ致シマス、又朝鮮ノ水利組合ニ反對ノ請
願書ヲ出シテ居ル者モ大ニ喜ブコトデアラ
ウト思フノデアリマシテ、是ハ拓務大臣ニ
感謝ヲ致シマス、同時ニ此水利組合ノ水利
ノ入費ガ拂ヘナイト、ソレハ米ノ高イ時分
ニ設計ヲシタカラシテ、今日ノ安イ時ニハ
拂ヘナイノデアル、ソレデ低利資金ヲ貸シ
テドウデアルトカ斯ウデアルトカト云フコ
トハ、マダ私ハ徹底セヌト思フ、低利資金
ヲ借リテモ尙ホ此水利組合ノ組合費ヲ納メ
ルコトハ出來ヌノデアル、又產米增殖ニ於
テ頻リニ人民ヲ奬勵シテ、干拓事業ト云フ
モノヲ方々デヤラシマシタケレドモ、此干
拓事業ノ根本ノ設計ガ誤ッテ居リマシテ、貯
水池ノ水ヲ十分何百萬坪ノ······山へ降ル所
ノ水ヲ以テ貯藏スレバ、是ダケノ地所ハ養
ヘルト云フヤウナ、朝鮮ノ殖產課ノ設計ノ
技師ガ誤クテ、大キナ地面ハ出來テ一居ルケ
レドモ、之ニ灌漑スル所ノ水ガ不足デアル、
斯ウ云フヤウナ技術上ノ不十分デアルカ、
又ハ其官吏ト、日本ノ內地ノ資本家ノ金ヲ
引出ス爲ニ結託シテ、算盤ニ合ハヌコトモ
ヤラシタノカモ知レマセヌ、斯ウ云フヤウ
ナモノガ方々ニアルヤウニ伺ヒマスルガ、
斯ウ云フ設計ノ過チハ、或ハ再審査ヲシテ
完全ナモノヲヤルナラバ、マダ貯水池ノ擴
張ナドニ從來ノ通リ補助金ヲヤッテ、折角厖
大ナル土地ノ堤防ガ出來、水道下水ガ出來
テ居ル際ニ、貯水池ノ水ガ足ラヌト云フ
ヤウナ干拓事業ニハ、水ノ十分アルダケノ
コトニ、又御補助ヲナサレルモノデアルカ、
折角出來タ地面ヲ其儘見殺シニシテシマ
フノデアルカ、ソレ等ノ點ヲ序ニ伺ヒタ
イト思フノデアリマス、ソレカラ在滿機構
ノ統制ハ、三位一體トシテ、關東長官ガ三
位ヲ兼ネテ、關東長官デアルトカ、關東軍
司令部、滿洲駐在ノ全權デアルトカ、此三
位ヲ、一體ニハナッテ居リマスケレドモ、其
部分ガ別々ニ働イテ、内部ニ於テ却テ混亂
モ起シテ居ルト云フコトガ事實デアリマ
ス、是等ノ點モ、機關ヲ內部デ阻止シ合フヤ
ウナコトナク、完全ナ三位一體ノ實ノ······
成績ノ擧ガルヤウナ方法ニ御改正ニナル御
意思ハアリマセヌデアラウカ、此點ニ付テ
又陸軍ニ御尋ヲスルノデアリマス、滿洲ニ
於ケル實業ノ進出ガ如何ニモ遲々トシテ、
或ハ自動車ノ製造會社デアルトカ、或ハ鑛
山ノ開鑿デアルト云フ點ガ、新シク日本ノ
資本ガ未ダニ這入ッテ行キマセヌ、色〓會
社組織ニ變更シタリ、小資本ノ會社ハ從來
ノモノガ變更スル迄デアッテ、內地カラ安
心ヲシテ滿洲へ大資本ヲ要スル事業ハ發展
ヲシナイト思フ、是等ニ對シテハ軍閥ハ、
資本家ト財閥、又政黨ヲ入レナイノデアル
ト云フ聲ガ中ミ盛デアリマシテ、未ダニサ
ウ云フ響ガシテ居クテ、政黨ニ關係ノアル
者、實業ノ財閥ニ關係アル者ガ或ハ遲クナフ
テ居ルノデハナイカト思フノデアリマスル
ガ、滿洲ノ開發ハ日本國民ノヤラナケレバ
ナラヌ義務デアルト思フノデアリマスル
ガ、此點ニ付テ日本ノ資本ヲ誘導スルヤウ
ナ政策ヲ御採リニナッタラ如何カト思フノ
デアル、何カ出願ヲシテモ、中ミ許可ニナ
ラナイ、色〓ノ干渉ガアッテ實行ガ出來ナイ
カラ、實業家ハ是ニ手ヲ出サヌト云フヤ
ウナ現狀デアルノデアリマス、此點ニ付テ
御尋ヲ致シマス、昨日商工大臣ニ御尋ヲ致
シテ置キマシタガ、自動車ノ製造ノコトデ
アリマス、今日ハ見エマセヌヤウデアリマ
スルガ、是等モドウ云フ程度ニナッテ居ル
カ、少シ國家トシテ經營ヲシテモ宜クナイ
カト、カネ〓〓私ハ考ヘテ居ルノデアリマ
スルガ、是等ニ對シテモ御囘答ヲ願ヒタイ
ト思フノデアリマス、是ダケニ致シマス
〔國務大臣子爵齋藤實君演壇ニ登ル)発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X01019340202&spkNum=24
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025・齋藤實
○國務大臣(子爵齋藤實君) 昨日津村君ヨ
リ御質問ノ中ニ、私ガ御答辯漏レニナッテ
居リマスルモノガアリマスルカラ、只今御
尋ニナリマシタ陸軍大臣ノ更迭ノコトニ付
キマシテ、私ヨリ一言御答ヲ致シマス、是
ハ全ク前陸軍大臣ノ健康上ノ爲ニ此重大ナ
ル時局ニ當リ、長イ時日ノ間引入ッテ居ル
コトハ責任上恐懼ニ堪ヘヌ、是非職ヲ辭シ
テ靜養ヲ致シ、又國務ノ爲ニハ適當ナル陸
軍大臣ヲ得テヤラレルガ宜シイト云フコト
カラ、辭表ヲ捧呈サレタノデアリマス、其
趣意ニ依ッテ御許可ニナッタノデアリマシ
テ、其他ニ何等ノ事情モ何モナイノデアリ
マス、此段ヲ御答イタシテ置キマス
〔國務大臣永井柳太郞君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X01019340202&spkNum=25
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026・永井柳太郎
○國務大臣(永井柳太郞君) 津村君ノ御質
問ノ中、私ニ關スル部分ダケヲ御答イタシ
タイト存ジマス、第一ハ滿鐵ニ關スルコト
デアリマスガ、滿鐵ハ昨日モ御答イタシマ
シタヤウニ、滿洲ニ於ケル經濟建設ノ根幹
トシテ重大ナル使命ヲ持ッテ居ルノデアリ
マスカラ、滿鐵ニ對スル投資ニ對シマシテ
ハ、出來ルダケ其安全ヲ保障シ、出來ルダ
ケ之ヲ優遇スル必要ガアルト信ジテ居ルノ
wデゴザイマス、又滿鐵ノ經營ニ關係スル從
業員モ、安ンジテ其地位ニ就イテ努力ヲ献
ジ得ルヤウニ、其安全ヲ保障スルコトガ必
要デアルト考ヘテ居ルノデゴザイマス、併
シ滿洲ニ於ケル新シイ情勢ニ基キマシテ、
其時々々ニ內容ニ付テ改良ヲ施シテ行ク必
要ハアルト存ジマス、ソレ等ノ改良ニ付キ
マシテハ、色ミナ方面カラ出テ參リマスル
意見ニ付テハ、十分參考トシテ傾聽シタイト
思ヒマス、先程御述ニナリマシタ所謂關東
軍ノ改組案ト云フガ如キモノモ亦、現地ニ居
ル人ノ經驗カラ出タ意見トシテ十分參考ニ
供シテ價値アルモノトシテ〓究イタシタイ
ト存ジテ居リマス、第二ニ滿洲ニ於ケル事
業ノ進行ガ極メテ遲々トシテ居ルデハナイ
カト云フ御話デゴザイマシタガ、滿洲ニ對
シマシテ、日滿兩國ノ議定書ニ基ク共同國
防ニ關係ノアル產業ハ申ス迄モナク、其他
ノ產業ニ付キマシテモ、出來ルダケ促進ス
ルコトニ努力イタシテ居ルノデアリマス、
現ニ滿洲事變ガ發生イタシマシテカラ今日
ニ至リマスルマデ、滿洲デ建設サレマシタ
新會社ノ中、百萬圓以上ノ資本ヲ有スルモ
ノダケデモ既ニ二十ホド新設サレタノデア
リマス、其資本額ハ合計約一億三四千萬圓
ニ達シマス、尙又目下計畫中デアリマスル
モノモ、約七八ゴザイマス、其資本ハ合計
一億ニ垂ント致シテ居リマシテ、相當ニ計
畫ハ進行シツツアルト存ジマス、是等ノ資
本ガ投下サレルニ從ヒマシテ滿洲ニ於ケル
購買力モ增進イタシマシテ、滿洲事變ノ發
生イタシマシタ年ハ、事變ノ影響モアリマ
スケレドモ、一箇年ノ貿易ハ輸出入合計二
億五千萬圓ニ過ギナカッタノデアリマスガ、
昨年度ハ、十月マデノ計算デアリマスケレ
ドモ、約四億七千萬圓ニ達シテ居ルノデゴ
ザイマス、大體ニ於テ事業ハ著々ト進行シ
ツツアルト存ジマス、ソレカラ第三ニ、朝
鮮ノ水利事業ガ、其米ノ增收高ニ於テハ豫
定ノ通リニ增收ガ出來タトシテモ、米ノ値
段ガ下落シタ爲ニ豫定ノ收益ヲ擧ゲルコト
ガ出來ナイデ、財政難ニ陷テ居ルト云フコ
トハ、是ハ昨日申上ゲマシタ通リデゴザイ
マス、ソコデ昨日モ申上ゲマシタヤウニ、
約百八九十アリマスル水利組合ノ中デ、最
モ財政ノ困窮シテ居リマスモノガ十ホドア
ルノデアリマスガ、之ニハ旣ニ救濟ノ方法
ヲ講ジタノデアリマス、卽チ低利資金ヲ融通
シテ救濟ノ方法ヲ講ジ、ソレカラソレ程極
端ニ困窮シナイモノデモ、困難ナ狀態ニア
ルモノニ對シマシテハ、組合費ノ節減ヲサ
セマスルトカ、低利資金ノ融通ヲ致シマス
ルトカ、又其組合ノ組合債ノ如キモノハ、
其償還期限ヲ延長サセテ、サウシテ其組合
ノ窮境ヲ脫セシムルト云フヤウナコトモ、
目下考慮イタシテ居ル次第デゴザイマシ
テ、其水利組合ノ救濟ニ付テノ努力ニ付テ
ハ、十分御諒承ヲ願ヒタイト存ジマス、設
計ガ非常ニ杜撰ナ爲ニ困難ニ陷ッテ居ルモ
ノモアルト云フ御話デアリマシタガ、從來
ハサウ云フヤウナコトモ時々アッタト承知
イタシテ居リマス、從來ノ失敗ニ鑑ミマシ
テ、最近ハ其設計ノ點ニ付キマシテモ、測
量ニ付キマシテモ、政府トシテハ十分ナル
監督ヲ附シテ居ルノデアリマス、現ニ先程
津村君ガ御話ニナリマシタ昭和水利組合ノ
如キハ、大正十一年カラ設計ヲ始メマシ
テ、第一案、第二案、第三案ト、何度モ其
案ヲ練リ返シテ、サウシテ政府トシテハ十
分ト思フマデ其計畫ノ設計改良ヲ促シテ、
其間ニ約十年ノ時日ヲ經過シタト云フヤウ
ナコトモアルノデアリマシテ、今日ハ出來
ルダケ其設計ヲ過タナイヤウニ、監督ヲ致
シテ居ルノデゴザイマス、產米增殖ヲ目的
トシタ色ミナ計畫ハ、是ハドノ程度ニ今後
進行サセルノデアルカト云フ意味ノ御尋ガ
アッタヤウニ存ジマスガ、是ハ今日ノ內外
地ヲ通ジマシテノ米穀政策ノ見地カラ考慮
イタシマシテ、朝鮮ニ於ケル產米增殖計畫
ハ、其計畫ガ中途ニナッテ居ッテ、而モ中止
スルコトノ出來ナイ樣ナ狀態ニナッテ居ル
モノカ、又ハソレヲ中止イタシマスル爲ニ
多數ノ失業者ヲ出ス樣ナ危險アル狀態ニア
リマスルモノノ外ハ、其計畫ヲ一時中止ス
ルコトニ致シタノデアリマス、サウシテ其
餘剩勞力ノ如キモノハ、目下計畫シテ居リ
マス朝鮮ニ於ケル棉花ノ栽培ノ事業ノ方ニ
向ケシムルト云フ方針デアリマシテ、今日
ハ朝鮮ニ於ケル棉花栽培事業ノ方ニ力ヲ盡
ス樣ニ努力イタシテ居ルノデアリマス、大
體此四點ガ私ニ對スル御尋デアッタト思ヒ
マスノデ、ソレダケ御答ヲ致シテ置キマス
〔國務大臣廣田弘毅君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X01019340202&spkNum=26
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027・廣田弘毅
○國務大臣(廣田弘毅君) 外務省豫算ニ付
キマシテ、一言御質問ニ御答ヲ致シマス、日
本ノ外交ガ眞ニ世界的トナリマシタ爲ニ、外
交機構ノ擴張、從テ是カラ生ズル費用ノ增
加ト云フコトモ、當然ノコトダト思フノデ
アリマス、御承知ノ通リ曩ニ帝國議會ノ協
贊ヲ經マシタ外務省考査部ト云フモノモ、
幸ニ樞密院ノ諒解ヲ經マシテ、旣ニ其組織
ニ著手イタシテ居リマス、尙ホ本年度ノ豫算
中ニモ米國トノ關係益〓重大ナルニ鑑ミマ
シテ、米洲局ト云フモノヲ作ル豫定ニナッ
テ居リマス、尙ホ日本ノ事情ヲ文化的ニ益〓
世界ニ了解セシムル爲ニ、其方ニモ相當
ノ案ヲ有フテ居リマス、斯ウ云フ風ニ內部
ノ構成ハ大體整ヘテ居ル積リデアリマス
ガ、在外公館ノ設備ニ至リマテハ實ハ甚ダ
不十分デアルト思ッテ居ルノデアリマシス、
現在ノ日本ノ在外公館數ヲ歐米ノ諸國ト比
較シマスト、大キナ國ニ比較シマスト、僅
カ三分ノ一ニ足リナイ、又其他ノ國ニ比較
イタシマシテモ、僅カ半數ニ足リナイト云
フ樣ナ狀態デアリマスノデ、今日日本ノ產
業發展ノ結果、對外貿易ノ擴張ト相俟チマ
シテ、其邊ニハ十分ナル設備ヲ致サナケレ
バナラヌト思フノデアリマス、要スルニ外
務省ノ費用ト云フモノハ、斯ウ云フ風ノ各
種ノ機構ノ設備準備費、及ビ此下ニ活動イ
タシマスル人間ノ給料ト云フモノガ、外務
省豫算ノ實ハ大體ノ骨子トナッテ居ルノデ
アリマスルガ、ソレダケデハ實ハ外交ト云
フモノノ活用運轉ノ上ニハ甚ダ物足リナイ
ノデアリマス、ドウシテモサウ云フ機構ヲ
十分ニ活動イタサセマスルノニハ、ドウシ
テモ油ヲ注ガナケレバナラヌ、共コトニ付
キマシテモ相當多額ノ費用ガ要ルコトト思
ヒマスガ、是ハ是カラ進ンデ參リマス日本
ノ外交工作ノ必要ニ應ジマシテ、ソレ〓〓
適當ノ費用ヲ出シテ貰フコトニ、現ニ大藏
大臣ノ諒解モ得テ居ルノデアリマス、出來
ルダケ其方ニ活動ヲ致シタイト思フノデア
リマス、併シ從來外務省ノ傳統的政策ト致
シマシテ、成ルベク少イ費用デ成ルベク效
果ヲ擧ゲルト云フヤウナ建前デ進ンデ參ッ
テ居リマスノデ、殊ニ今日國家經費多端ノ
際ニ於キマシテハ、私モ出來ルダケ其心得
ヲ以テ進ンデ參リタイト思ッテ居リマス
〔國務大臣林銑十郞君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X01019340202&spkNum=27
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028・林銑十郎
○國務大臣(林銑十郞君) 津村君ノ御質問
ノ中デ、私ニ答辯ヲ御求メニナリマシタ點ハ、
只今拓務大臣ノ答辯ニ全ク同樣デアリマ
ス、滿鐵改組案ノ問題竝ニ滿洲ヘノ產業進
出ノ問題、ソレニ一二附加ヘテ御答ヲ申シ
テ置キタイト思ヒマス、滿洲ヘノ產業ノ進
出ヲ、軍部ニ於テ資本ノ進出ヲ抑壓シテ居
ル、或ハスルノデハナイカト云フヤウナ意
味ノ御懸念ガアッタヤウニ拜シマシタガ、事
件ノ當初ニ於キマシテハ、滿洲防衛ト云フ
ヤウナ觀念ガ主デアリマシタ爲ニ、サウ云
フ風ナコトモ耳ニ致シマシタガ、今日ニ於
キマシテハ、最モ經濟建設ノ時期ニ當ッテ居
リマスノデ、今日ニ於テ資本家ノ進出ヲ抑
壓スルト云フヤウナコトハ、斷ジテ無イト
考ヘテ居リマス、ソレカラ滿洲ニ於ケル經
濟ノ機構ヲ軍司令官ノ手デ持ッテ居ルノハ、
旣ニ今日ノ時代ニハ適當シテ居ラヌデハナ
イカト云フヤウナ意味ノ御質問モアッタヤ
ウニ考ヘマス、是ハ誠ニ御尤ニ考ヘマス、
但シ今日マデノ所ハ、滿洲ノ狀態ハ、警備
第一、警備ノ手ガ及バナケレバ何事モ出來
ナイト云フヤウナ狀態ニアリマシタノデ、
是ハ一ツノ過渡期ノ狀態トシテ、軍司令官
ガ經濟ノ點ニモ或程度ノ關與ヲ持ツト云フ
コトハ、已ムヲ得ナイコトデアリマシテ、
此警備狀態ガ逐次平常ノ狀態ニ復シマスト
共ニ、サウ云フ關係ハ變化シテ來ルコトト
考ヘテ居リマス、之ヲ以テ御答ト致シマス
〔政府委員竹內可吉君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X01019340202&spkNum=28
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029・竹内可吉
○政府委員(竹內可吉君) 自動車ノ問題ニ
付キマシテ、商工大臣ニ代リマシテ、御許
シヲ得マシテ御答辯申上ゲマス、我國ニ於
ケル自動車製造ノ確立ヲ圖リマスコトハ、
政府ニ於キマシテモ年來多大ノ關心ヲ有フ
テ居ル所デアリマシテ、一昨年此問題ニ付
キマシテ、關係各廳竝ニ民間當業者ヲ集メ
マシタ調査會ニ於キマシテ、大體ノ方針ヲ
定メタノデゴザイマス、唯如何ニモ我國內
地ダケデハ販路ガ狭小デアリマスノデ、直
ニ徹底的ナ助成策ヲ講ジマスコトハ殆ド不
可能ト思ハレマシタノデ、實情ニ卽シマシ
タ漸進的ナ方針デ進ムコトニ致シタノデア
リマス、之ニ對シマシテ若干デアリマスガ
助成金モ交付スルコトニ致シマシタシ、又
必要ナ官制ノ改正モ致シタノデゴザイマ
ス、然ルニ此滿洲國ガ建設ニナリマシテカ
ラ、此間情勢ニ若干ノ變化ガ起リマシタノ
デ、此新ナ情勢ニ應ジマスル爲ニ、在滿帝
國機關竝ニ內地ニ於キマスル各關係官廳及
當業者ヲ集メマシテ、目下成ルベク速ニ此
新ナ情勢ニ應ジタ具體策ヲ〓究イタシテ居
ルノデゴザイマスルガ、略〓其根本ニナリ
マスル具體策ハ出來上リマシタノデ、着々
之ガ具現ニ力メテ居ルヤウナ次第デゴザイ
マス、自動車ニ關シマシテハ、只今御質問
ガアリマシタノデ御答へ申上ゲタ次第デゴ
ザイマスルガ、尙ホ其他ノ點ニ付キマシテ、
御希望ノ點ハ十分商工大臣ニ御傳ヘスルコ
トニ致シタイト思フノデゴザイマス、御了
承ヲ願ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X01019340202&spkNum=29
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030・岩切重雄
○政府委員(岩切重雄君) 只今津村サンカ
ラノ御質問ノ中ニ、鐵ノコトガゴザリマシ
タガ、丁度大臣ガオ出デニナリマセヌノデ、
一言私カラ御質問ノ點ニ觸レマシタ所ヲ申
上ゲテ置キタイト思ヒマスガ、御質問ノ要
旨ハ、製鐵合同ニ際シテ八幡製鐵所ノ資產
ヲ安ク評價シタ、サウシテ民間會社ノ資產
ヲ高ク評價シタ、斯ウ云フコトハ一般ノ國
民ニ損害ヲ被ラスル結果ニナル、思ハシイ
コトデ無イト云フヤウナ御質問デアッタヤ
ウニ存ズルノデアリマスガ、此點ハ先日大
臣カラ數字ニ基キマシテ此席デ御說明ヲ申
上ゲタ筈デゴザイマスガ、今私ガソレヲ更ニ
繰返シマシテ、斯ウ云フ數字ノ關係ニナッテ
居ルカラ、決シテ御懸念ノヤウナ結果ヲ來
シタノデハナイト云フコトヲ玆デ申上ゲレ
バ宜イノデアリマスガ、先日モ大臣カラ申
上ゲマシテ、數字ノコトハ既ニ說明ガシテ
アル筈デゴザイマスカラ、唯私ハ其經路ノ
一端ヲ申上ゲテ御答ヘ致シタイト思ヒマス
ガ、實ハ此評價ヲ致シマスコトハ非常ナ困
難ナ問題デアリマシテ、是ハ先日大臣モ申
サレタ通リデアリマス、唯ドウ云フ風ニ
シテ評價シタカト云フコトハ、評價
委員會デ再三說明申上ゲタ通リニ、
稼高ト復成價格トヲ加ヘタモノヲドウシテ、
ソレニ壓縮率ヲドウ云フ率デ掛ケテ、減少
額ヲドウ云フ風ニシテ行クト云フ、一九ノ
率ヲ計算シテ出シマスコトニ、皆サンノ御
審議ヲ願フテ、或一ツノ法則ヲ作リ出シタ
ノデアリマス、其法則ヲ製鐵所ニモ民間ノ
會社ニモ同樣ニ率ヲ掛ケマシテ數字ヲ出シ
タノデアリマスカラ、特ニ民間ニハ三ヲ掛
ケルガ、政府ノ製鐵所ニハ二ヲ掛ケルト云
フヤウナ特別ノ取扱ヲ致シタノデハナイノ
デゴザイマスカラ、出來上リマシタ結果ハ
サウ云フ一律ノ方程式ニ依ッテ出テ來タ數
字デゴザイマスカラ、一方ニ重クテ一方ニ
輕イト云フヤウナ結論ニハ到達シテ居ナイ
コトト信ジテ居ルノデゴザイマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X01019340202&spkNum=30
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031・津村重舎
○津村重舍君 此席カラ少シ補足イタシタ
イト思ヒマスガ、御許シヲ願ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X01019340202&spkNum=31
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032・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 宜シウゴザイマ
ス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X01019340202&spkNum=32
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033・津村重舎
○津村重舍君 只今商工省ノ御答辯ハ至極
御尤ノコトト存ジマス、併シ此ノ、彼ニ薄ク
是ニ厚イトカ、數字ガ斯ウナルトカ云フ御答
ハ、質問者ハドウシテモ御承知ナラヌノデアリマ
ス、質問者デモ其說明ハ腑ニ落チナイト云フコ
トデアリマシタカラ、私モ聊カ伺ッテ見タイ
ト思ヒマスルカラ、統計表或ハ說明書ヲ、
何時デモ宜シウゴザイマスカラ、郵便デ御
送リ下サルコトヲ希望イタシマス、ソレカ
ラ陸軍大臣ノ御說明、過渡期デハ經濟上ニ
モ關係スルガ、逐次安全ニナッテ來タカラ、
經濟政治上ニハ餘リ口出シヲセヌ、斯フ云
フヤウナ御明言デアリマシテ、此日本ノ軍
部ガ總テヲ開拓シテ來タノデアルカラ、過
渡期ハサウ云フコトニ干涉セザルヲ得ヌノ
デアリマスカラ、斯フ云フコトニ付テハ日
本ノ國民モ滿足スルデアラウ、唯何時マデ
モ經濟ト政治上ニ軍部ガ力ヲ出シテ御干涉
ニナル、軍部ノ力ハ中〓非常ナモノデアッ
テ、色ミナ事件ヲ惹起スルヤウニモ考ヘテ、
政治家モ怖ガッテ居ルヤウナ際デアリマス
カラ、サウ云フ風ニ陸軍ノ方デ御考ヘ下サッ
タナラバ、日本ノ政治ニ一大進步ヲ來ス、
世界ノ各國モ大ニ是デ安心スルコトデアラ
ウト思フノデアリマス、尙ホ外務大臣ノ御
答辯モ大ニ私ハ滿足ヲ致シテ居リマスルガ、
列國ニ對スル政策、工作ニ關スルコトハ非
常ナ金ヲ要スルト云フ思召デアリマスルガ、
私モ非常ナ金ガ要ルト思ヒマス、又日本
ノ國民モ、是ハ非常ナ金ヲ使ッテモ、戰爭ヲ
スルヤウナコトヲセヌヤウニヤッテ貰ヒタ
イ、又賢明ナル大藏大臣ハ之ニ同意ヲ爲サ
レタト云フコトデアリマスルカラ、ドウカ
臨時費デモ構ハヌ、一日モ早ク外交工作ニ
適當ノ金ヲ作フテ、各國ノ理解ヲ得ルト云
フコトニ努力ヲシテ貰ヒマシタナラバ、戰
爭ガ始マルト云フヤウナ懸念ノコトヨリモ、
世界ノ平和ノ爲ニ幾何ノ利益ヲ得、幾何ノ
安心ヲ得ルカ知レナイノデアリマス、日本
ノ現在ハ、陸軍ハ世界一デアル、日本ノ商
工ハ敢テ各國ニ劣ラヌノデアル、日本ノ皇
室中心主義ノ、畏多クモ仁慈大義ノ御精神
ハ世界ニ冠タルモノデアル、斯ウ云フ風ニ
日本ノ國ヲ世界各國ニ信用セシメタナラバ、
如何バカリ日本ノ國ガ世界ニ發展スルノデ
アラウカ、此點ニ付テハ、私ハ外務大臣ガ
相當多額ノ經費ヲ、勇氣ヲ出シテ思切ァテ御
請求ニナッテ、サウシテ外交事務員ト云フヤ
ウナ人物デナク、外交大政治家ト云フ人物
ヲ世界ニ派出セラレムコトヲ希望シテ已マ
ヌノデアリマス、恐ラクハ日本ノ國民モ領
土欲ガアル、侵略國デアルト云フ、心ニモ
無イヤウナコトヲ誤解セシメテ、此東洋ニ
日本ガ孤立スルト云フヤウナ、慘メナ目ニ
遭ハナイヤウニシテ戴キタイト、切ニ希望
スル次第デアリマス、又拓務大臣ノ御說明
ニ水利組合ガ二百幾ツアッテ、困フテ居ルノ
ガ十幾ツデアルト云フコトモ、名前ヲ擧ゲ
テ書面デ宜シイカラ後カラ御屆ケ願ヒタイ
ト思フノデアリマス、永井君ハ有名ナ演說
家デアリマシテ、說明ガ誠ニ御上手デアリ
マスガ、實地朝鮮ノ農民ガ水利組合デ幾許
ノ人ガ困ッテ居ルカ、幾許ノ人ガ困ッテ居ナイ
カト云フコトヲ、統計表ニ於テ御調ベヲ願フテ、
私ハ事實ニ基イテ又御尋ヲ致シクイト思フ
ノデアリマス、此程度デ私ノ質問ハ打切リ
マス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X01019340202&spkNum=33
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034・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 通〓順ニ依リマ
シテ、次ニハ關直彥君ノ發言ヲ許シマス
〔關直彥君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X01019340202&spkNum=34
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035・關直彦
○關直彥君 私ハ數ケ條ノ質問ヲ致シタイ
ト思ヒマシテ待ッテ居リマシタ、所ガ大分本
日モ時間ガ經過イタシマシタル爲ニ、其定
刻內ニ私ノ述ベル所ヲ終リ得ルカドウカト
云フコトニ付テ
〔「高聲ニ願ヒマス」ト呼フ者アリ〕
甚ダ心配ヲ致シテ居ルノデアリマス、又只
今承リマスルト云フト、此所ニ御出席ノ陸
海軍兩大臣ノ方ミハ、衆議院ノ會議ノ都合
ニ依ッテ御退席ヲ急ガレルト云フ御話デア
リマス、デアリマスルカラシテ、私ハ海陸
軍ニ關スル點ニ付テハ最初ニ申上ゲマス、
而シテ別ニ私ハ此席ニ於テ御答辯ヲ得ヤウ
ト致シマセヌ、私ノ申上ゲルコトヲ御聽キ
ニナリマシテ、十分御了承下サレマスレバ、
ソレデ滿足デアリマス、其申上ゲマシタル
後ハ、何時デモ御隨意ニ御退席アリマシテ
結構デアリマス、此コトヲ申上ゲテ置キマ
ス、今日私共ノ最モ心配ニナリマスルコト
ハ何デアルカト申シマスルト云フト、對外
ノ關係ガ第一デアリマス、次ニハ思想ノ變
化ニ付テ、著シキ思想ノ變化ニ付テ私ハ頗
ル前途ヲ憂慮イクシテ居ルノデアリマス、
共次ニハ綱紀ノ頽廢デアリマス、今日ノ各
方面ノ狀態ヲ見マスルト云フト、頗ル綱紀
ガ弛緩イタシテ居リマシテ、甚シキハ役人
ノ中ニ迄モ此弊風ガ及ビマシテ
〔副議長伯爵松平賴壽君議長席ニ著ク〕
官紀ヲ紊亂イタシテ居ルト云フヤウナ點ガ
多々アルノデアリマス、現ハレタル事實ダ
ケニ依リマシテモ相當ニ多數デゴザイマス
ルガ、現ハレナイ事實ヲ洗ッテ見マスレバ、
是迄ドレ位ノ綱紀ノ頽廢ガアルカ、官紀ノ
紊亂ガアルカト云フコトハ、殆ド想像ニ及
バナイノデアリマス、此點ニ付キマシテハ、
私ハ非常ニ前途我國ノ爲ニ憂慮イタシテ居
ルノデアリマスルカラ、順ヲ逐ウテ御質問
ヲ申上ゲタイト思フノデアリマス、若シ此
三ツノ憂慮ニ關シマシテ、當局者ノ處置其
宜シキヲ得マセヌト云フト、將來如何ナル
コトガ出來イタシマスルカ、甚ダ寒心ニ堪ヘ
ナイノデアリマス、御承知ノ如ク我國ノ進
步發展ハ非常ニ著シイモノデアリマスルカ
ラシテ、各國ノ猜疑ヲ招キ、各國ノ恐怖ヲ
招キ、殆ド今日ハ日本帝國ハ世界ニ於テ孤
立ノ地位ニ立ッテ居ルノデアリマス、又殊ニ
聯盟ノ脫退此方ト云フモノハ、著シキ變化
ヲ來シテ居リマス、惡イ感情ヲ受ケテ居ル
ノデアリマス、若モ是ガ或機會ニ於キマ
シテ聯盟脫退ノ後、其規約十六條ニ依ヶテ
經濟斷交デモ押付ケラレルト云フヤウナコ
トガ有リハシナイカトマデ心配イタシマシ
タガ、幸ニシテ各國共ニ自國ノ經濟ニ惱ミ
ツツアルノデアリマスルカラシテ、押切→
テ我國ニ對シテ其壓迫ヲ加ヘルコトノ出來
ナカッタト云フコトハ、我國ニ取リマシテハ
多少ノ幸デアッタカモ知レナイ、併ナガラ間
接ニ各國共ニ我ガ貿易ノ進路ヲ阻害シ、或
ハ關稅ヲ高メ、或ハ其他ノ種々ナル方法ヲ
以テ我ガ貿易ノ進展ヲ阻害シテ居リマスル
ト云フコトハ是ハ事實デアリマス、此際ニ
處シマシテ、我ガ外交當局モ非常ナ御心配
デアリマセウ、又海陸軍當局モ御心配ニナル
ノハ尤デアルト思ヒマス、殊ニ又三十五年、
三十六年ノ華府會議、倫敦會議ノ改正ノ期限
ガ參ッテ居リマスルカラ、此際ニ於キマシテ
ハ或ハ如何ナル危險ナル狀態ガ發生イタ
シマスルカ、是亦測リ知ル可カラザル點デ
アリマスルカラ、此點ニ付キマシテハ、國
民擧"テ決心ヲ致シテ居ラナケレバナリマ
セヌ、就キマシテハ今囘ノ豫算ノ上ニ於キ
マシテ、海陸軍ノ軍費ガ非常ニ膨脹イタシ
テ參フテ居ルノデアリマス、併ナガラ國民ハ
今日ノ情勢カラ見マシテ、如何トモ仕方ガ
ナイト觀念ヲ致シテ居リマス、我ミハ其國民
ノ意思ヲ體シマシテ、來年度ノ豫算ニ對シ
テモ謹ンデ之ヲ協贊イタサウト存ジテ居ル
譯デアリマス、此點ハ軍部ニ於テモ御安心
下サッテ宜シウゴザイマス、併シ一應御注意
ヲ申シテ置キタイノハ、外デハゴザイマセ
ヌ、非常ニ前途ヲ軍部ニ於テ憂慮セラレル
結果トシテ、多少神經ガ過敏ニオナリニナッ
テアリハシナイカト云フコトヲ感ズルノデ
アリマス、或ハ多少ノ風說、道聽途說ニ非
常ニ懸念ヲサレ、非常ニ御心配ヲサレテ居
ルト云フヤウナ點ハアリハシナイカ、過日
モ海陸軍兩省ノ大臣ノ名ニ於テ重大ナル聲
明ヲ發セラレマシタノデアリマス、ソレハ
ドンナ、何ノ爲ノ聲明カト云フト、軍民離
間ノ聲明デアリマス、軍部ト國民トノ間ヲ
離間スル者ガアル、是デハ誠ニ危險千萬デ
アルト云フ非常ニ御心配ノ御聲明書ガ、同
日ニ、同刻ニ、連ネテ發表サレタノデアリ
マス、私ハ之ヲ拜見シマシテ、何事ガ起,
タカト實ハ思ヒマシタ、如何ナル責任ノア
ル人ガ、又如何ナル有力ナ人ガ、如何ナル
場所ニ於テ如何ナルコトヲ言ウタノデアル
カ、私ハ腑ニ落チナカッタノデアリマス、故
ニ幸ヒ議會モ開カレテ居ルコトデアリマス
ルカラ、此點ニ付テ質問ヲ申上ゲテト存ジ
マシタケレドモ、此程既ニ衆議院ニ於テ此
事ガ問題ニナリマシテ、祕密會マデ開カレ
テ御說明ニナッタヤウニ聞イテ居リマス、勿
論祕密會ノコトデアリマスルカラ、其內容
ヲ知ル譯ニハ參リマセヌケレドモ、新聞紙
ヨリ漏レ承ル所ニ依リマスルト、大シタ事
ハ無カッタヤウニ窺ハレルノデアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X01019340202&spkNum=35
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036・松平頼壽
○副議長(伯爵松平賴壽君) 關サン御發言
中デアリマスガ、御聲ガ小サイノデ聽エナ
イヤウデスカラ、擴聲器ヲ附ケタラドウカ
ト云フコトデゴザイマスカラ、今附ケサセ
マスカラ御附ケヲ願ヒタイト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X01019340202&spkNum=36
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037・關直彦
○關直彥君 ソレ程御心配ニナルヤウナ事
實ガ無カッタヤウニ考へラレルノデアリマ
ス·······聲ガ低イノデ諸君ノ御耳ニ達シマセ
ヌコトハ甚ダ遺憾ニ存ジマス、失禮デアリ
マスケレドモ擴聲器ヲ附ケテ申上ゲマス
····ソレ程大シタコトノヤウニ承知シマセ
又、我ミ國民ハソレ程薄弱ナ考ヲ持ッテ居
ルモノデハアリマセヌ、假令多少離間中傷ノ
言ヲ聞キマシテモ、國家ノ大事ニ對シマシ
テハ、決シテ彼等ノ離間中傷ニ迷ハサレル
ト云フヤウナ事ハナイト云フコトダケハ申
上ゲテ置キタイト思ヒマス、ココデ此程ド
コカラデアリマスカ、「政黨ノ軍民離間運動
ノ實證」ト云ウテ斯ウ云フ「パンフレット」ヲ
配ッテ參リマシタ、或ハ是ハ其筋ノ演說ノ
傍聽筆記デモサセタモノノ中カラ此材料ヲ
貰ッタモノデアリマセウ、此通リノ證據ガ
アルノダカラ軍民離間ヲシテ居ルヂヤナイ
カ、軍部ニ於テ兩大臣ノ聲明ヲ發シタノモ
誠ニ意義アルコトデハナイカト云フヤウナ
調子デ、我ニノ所へ配ッテ參リマシタ、二
讀イタシマシタノデスガ、斯樣ナ事柄デ、
斯樣ナ言論デ以テ我〓國民全體ガ誤ラレマ
シテ、軍部ニ對シテ反感ヲ抱クト云フヤウ
ナコトハ、絕對御心配ハナイノデアリマス、
是位ノモノノ效果ト云フモノハ、殆ド豆鐵
砲カ、散彈位ノ效果シカナイ、迚モ「ピス
トル」一挺ノ效果ニハ及ビマセヌ、コンナ
事ニ御心配ニナリマスルヨリモ、ドウカ一
ツ御職掌柄ノ點ニ御盡力ヲ下サイマシテ、
コンナ事ハ御構ヒニナラナイ方ガ宜カラウ
ト思ヒマス、其實狀ヲ申上ゲマスルト、議
會ノ始マリマシタル後、日〓戰役ノアル以
前ニ於キマシテハ、軍部ニ對スル攻擊ハナ
カ〓〓コンナモノヂヤナカッタノデアリマ
ス、帝國議會ニ於キマシテモ正々堂々ト、藩
閥打破、軍閥打破ト云フ議論ガ盛ニ行ハレ
テ居リマス、御承知デアリマセウ、又常時ノ
民黨各派ノ主義政綱ノ中ニハ、軍閥打破ト
云フヤウナ政綱モアリマシタ、今日ノ各方
面ノ選擧演說ヤ何カニ、無責任ノ者ガ言ウテ
居ルヤウナモノデハナカッタノデアリマス、其
結果ト致シマシテ、樺山海軍大臣デアリマ
シタカ、演壇ニ於テ、藩閥ガ何處ガ惡イノ
デアルカ、軍閥ノ何處ガ惡イノデアルカト
云ッテ、大聲疾呼サレタコトガアリマシテ、
民黨ヨリハ新井章吾デアリマシタカ、演壇
ニ驅ケ登ッテ摑ミ付カウトシタヤウナ、劇ヲ
演ジタコトモアリマス、ソレ位デアリシニ
モ拘ラズ、一朝日〓戰役ノ事ガ起リマスル
ト云フト、民黨各派悉ク一致連結、軍事費
ハ滿場一致可決、國民ハ總動員デ後援ヲ致
シマシタコトモ、御承知デアリマセウ、ソ
レガ濟ミマシテ其後又多少軍部ニ對シテノ、
或ハ軍備縮小ダトカ、或ハ軍事費ノ削減
ダトカ色ミ議論モアリマシタガ、日露戰役
ガ起リマスト云フト、アノ通リノ狀態、全
院一致デアリマス、各派悉ク共同一致、國
民老幼男女ヲ問ハズシテ、銃後ノ後援ヲ致
シマシタト云フコトハ、御承知デアリマセ
ウ、サウ云フ國民デアリマスルカラ、何等
斯ウ云フコトニ對シテ御懸念ナイヤウニ、
驀地ニ御職務ニ御盡瘁アラムコトヲ希望シ
テ已ミマセヌ、私ノ唯玆ニ多少ノ御注意ヲ
申上ゲタイノハ、各方面ニ於テ、或ハ在〓
軍人或ハ將校諸君、愛國心ヲ煽ル結果ト致
シマシテ、多少政治問題ニモ觸レテ居ラレ
ルヤウニ聞クノデアリマスルガ、是ハ大シ
タコトハアリマセヌ、斯ウ云フコトハドウ
カ將來能ク御取締ヲ下サイマスレバソレデ
滿足デアリマス、詰リ一方ノ政黨ノ人とガ
多少ノ攻擊ヲ致シ、或ハ又軍人諸君モ政黨ニ
對シテ種々ナル攻擊ヲ致サレル、瑣細ナ爭
ヒデス、大局カラ見マスルト云フトコンナ
コトハ大シタ響ハアリマセヌ、詰リ子供ノ
喧嘩ノヤウナモノデアリマスルカラ、ソレ
ヘ向ッテ親ガ大キナ聲ヲシテ怒鳴リツケル
必要モナカラウカト思ハレル、其代リ一方バ
カリ怒鳴リツケナイデ、雙方惡ケレバ惡イ
デ之ヲ制御サレルガ宜カラウト思フ、私ハ
唯、我ガ國民ハ左樣ナ薄弱ナル精神ヲ有ッテ
居ル國民デアリマセヌ、共產黨關係ノモノ
ハ是ハ已ムヲ得マセヌガ、之ヲ除ク以外ニ
於キマシテハ、傳統的ニ日本帝國ノ國民ト
云フモノハ誠ニ忠實、事アル場合ニ於テハ
一致團結ハ少シモ御心配ニナラヌヤウニ私
ハ思ヒマス、別段此以上御質問ヲ申上ゲル
コトハアリマセヌカラシテ御隨意ニ御退席
下サイマシテ差支アリマセヌ、ソレカラ今
ッ、私ガ非常ニ心配ニナリマスルコトハ
思想ノ變化デアリマス、左翼ノ思想ノ追〓
蔓延イタシマシテ、或ハ學校ノ內外若クハ
各方面ニ蔓延シタト云フコトハ甚ダ危險千
萬ナコトデアリマス、併ナガラ此問題ニ付
キマシテハモウ非常ニ皆樣ガ御心配ニナ
リ、又當局者モ心配イタシマシテソレ〓〓
其方法ヲ盡シテ居ラレルノデアリマス、旣
ニ本期ノ議會ニ治安維持法ノ改正法律案モ司
法省ヨリ提案サレテ居ル通リデアリマス、
十分ニ彼等ノ行動ヲ取締ルコトニ御盡力ニ
ナッテ居リマスルシ、又文部當局ニ於キマシ
テモ非常ナ御心配ヲ以テソレ〓〓ノ設備、
ソレ〓〓ノ處置ヲサレテ居ルト云フコトハ
承知イタシテ居リマスルカラ、此點ニ付キ
マシテハ當局ノ御盡力ニ御任セ申シマシテ
此處デ彼是レハ最早申シマセヌ、何分十分
ニ御取締ト、十分ニ思想ノ善導ヲサレムコ
トヲ希望シテ止ミマセヌ、所ガ當今大分ハ
ヤッテ參リマシタル思想ハ所謂「フアッショ」
ノ思想デアリマス、此「フアッショ」ノ思想、
之ヲ其儘放任イタシテ置キマスルト云フト、
或ハ憲法中止、成ハ憲政ノ破壞ト云フヤ
ウナコトニマデナリハシナイカト云フコト
ヲ私ハ非常ニ心配ヲ致スノデアリマス、勿
論此「フアッショ」ノ思想ノ熾ニナッテ參リマ
シタノハ、其原因ハ私共モ同感デアリマ
ス、是マデノ政黨ハ國事ニ對シテ非常ナル
盡力ヲサレタノデハアリマスルケレドモ、
其間ニ積弊ガ段々ト現レテ參リマシテ、今
日ハ非常ニ國民ノ信賴モ薄ラギマシテ、所
謂政黨ニ對シテハ受難時代ト相成ッテ居リ
マス、其結果カラシテ此反動トシテ起リマ
シタノガ「フアッショ」ノ思想デアル、是ハ巳
ムヲ得マセヌ、而シテ此思想ヲ抱ク人達ノ
心持ヲ察シマスルト誠ニ純デアル、今日ノ
時弊ヲ痛歎シテ、何トカ政界ヲ廓〓シテ行
キタイト云フコトガ此人達ノ思惑デアリマ
スルカラシテ、私ハ決シテ此「フアッシヨ」
思想ニ對シテ頭カラ惡イモノデアルト云フ
コトハ攻擊ハ致シマセヌ、致シマセヌガ之
ヲ此儘ニ打チヤッテ置キマスルト云フト、何
處マデ走ルカ知レマセヌ、此點ハ總理大臣
ニ於テ餘程御注意ヲ下サッテ、此思想ヲ善
導シテ國家ノ爲ニナルヤウニ一ツ願ヒタイ
ノデアル、御承知ノ通リ、近來歐羅巴ニ於
キマシテモ此思想ハ大分發展イタシテ參リ
マシタ、申スマデモナク伊太利、獨逸、
「ムッソリーニ」ノ「フアッショ」、又「ヒット
ラー」ノ「フアッショ」、「ムッソリーニ」ノ「フ
アッショ」デハ既ニ下院ヲ廢止イタシマシ
テ、廢止スルトマデハ申サレマセヌカモ知
レマセヌケレドモ、下院ノ組織ト云フモノ
ヲ全然變更シテ了ヒマシテ、殆ド名前ガ
有ッテ無キガ如キ狀態ニナッテ居リマス、若
シ日本ニ於テサウ云フヤウナコトガ出來イ
タシマシタナラバ、ドンナ結果ニナリマス
ルカ、又獨逸ニ於テハ「ヒットラー」ノ「フアッ
ショ」、「ナチス」ニ非ザレバ人ニ非ズト云フ
ヤウナ狀態デ以テ、「ヂユデヤ」系ノ學者、政
治家、經濟家、斯ウ云フモノヲ悉ク國外ニ追
放イタシテ了ヒマシテ、彼等ノ著シマシタ
所ノ法律、政治、經濟ノ書物ハ勿論、文藝
ノ書物ニ至ルマデモ悉ク之ヲ燒棄テタ、世
界的ニ有名ナル「アインシュタイン」ノ如キ
學者モ今日ハ英吉利ニ流浪イタシテ居リマ
シテ、サウシテ國內ニ在ル財產ト云フモノ
ハ沒收サレテ了ッタ、「ヂュデヤ」政治家ヲ
悉ク國外ニ追放シ、其著述ヲ焚イタト云フ
ヤウナコトハ近頃西洋デハ誠ニ珍シガッテ
居リマスルケレドモ、コンナコトハ既ニ東
洋ニ於テハ二千年前ニアッタコトデ、秦ノ始
皇ガ書ヲ焚キ儒ヲ坑ニシテ、而シテソレデ
天下ガ治ノタカト云フト治ラナイ、マア「ヒッ
トラー」、「ムッソリーニ」ノ將來ハドウデア
ルカ知リマセヌケレドモ、此人達ガ亡クナッ
テ了ッタ後ハドウカ知ラヌト私共ハ非常ニ
心配シテ居ル、嘗テ、話ガ外レマスケレド
モ、秦ノ始皇ガ書ヲ焚キ儒ヲ坑ニシテ果シ
テ天下ガ治ッタカト云ヒマスルト、直グト亡
ボサレテ了ッタ、唐ノ時代ノ詩人ガ之ヲ嗤ク
テ謳ッテ申シマスルノニ、「坑灰未冷山東亂、
劉項元來不讀書」ト言ウテ居リマス、書ヲ焚
イタ坑ノ灰ガマダ冷メナイ中ニ既ニモウ早
ヤ山東カラ亂ガ起ッタヂヤナイカ、サウシテ
其大將デアル漢ノ劉邦、項羽、此二人ハ書
物ヲ讀ンダコトノナイ男デアル、ダカラシ
テ書物ヲ焚イタリ儒ヲ坑ニシタリシタッテ何
ニモナラヌヂヤナイカト言ッテ嗤ッテ居リマ
スガ、獨逸ノ「ヒットラー」モ矢張リ其眞似
ヲ二千年ノ後ニヤッテ居ルト云フコトハ、誠
ニ興ノ冷メタ話デハナイカト思フ、併シ極
端ニ此處マデ參リマシタ所以ト云フモノハ
深キ理由ガアリマス、伊太利ノ如キハ世界
大戰ノ後ニ非常ナル思想ノ變化ヲ來シマシ
テ、殆ド左翼ノ力ニ依ッテ或ハ共產主義ノ
國家ニモナリハシナイカ、而シテ皇帝ノ權
力ガ少シモ及バズ、國家ヲ統制スル力ニ乏
シカッタノデアリマスルカラ、此儘打チヤッ
テ置ケバ伊太利ハ自滅ノ外ハナイト云フノ
デ、已ムヲ得ズ玆ニ起リマシタノガ「ムッソ
リーニ」ノ「フアッショ」デアル、是ハ時ニ
取ッテ誠ニ名案デアッタカモ知レマセヌ、獨
逸モ亦今日ハ殆ド世界カラ叩キ潰サレテ、
此儘打チヤッテ置イタナラバ、迚モ此國ノ
存立ガ出來ナイト云フ點カラ、「ヒットラー」
モ奮發ヲ致シタノデアリマス、デアリマス
ルカラシテ、是ハドウモ其時ノ時勢ニ依リ
國情ニ依ッテ或ハ已ムヲ】得ヌカハ知リマセ
ヌケレドモ、我國ニ於テハサウ云フ情勢ハ
既ニ更ニ無イ、有難イコトニハ明君上ニ在
シマシテ、國家ノ統一ハ誠ニ堅實デアリ、
賢相諸公······玆ニ御列席ノ賢相諸公之ヲ
輔弼サレテ、上下兩院斯ノ如ク堅實ニ成
立シテ居リマス、此時ニ當フテ何モ「ヒット
ラー」ヲ眞似、又「ムッソリーニ」ヲ眞似
ル必要ハナイカト思フ、併ナガラ今日ノ時
勢ガ甚ダ面白クナイ狀況デアリマスカラシ
テ、自然ニ斯ウ云フ思想ガ發達シテ參リマ
シテ、之ヲ善導シテドウカ彼等ノ忠誠ナル
精神ト勇氣トヲ以テ、我ニト共ニ倶ニ此憲
政ヲ擁護シテ貰ヒタイト思フノデアリマス、
私共ヲシテ希望スル所ヲ言ハシメレバ、斯
カル思想ヲ抱イテ居ル人ミガ一大團結ヲシ
テ一ツノ大保守政黨ヲ拵ヘテ、盛ニ其同志
ヲ選擧ニ依フテ衆議院ニ送リ出シ、言ハムト
欲スル所ハ議會ヲ通シテ言ウテ貰ヒタイ、
行ハムト欲スル所ハ議會ヲ通シテ行フテ貰
ヒタイ、ドウカ此憲法ニ疵ノ付カヌヤウニ
シテ貰ヒタイト云フコトガ、私ノ熱心ナル
希望デアリマス、旣ニ我國ニ於テモ此「フ
アッショ」ハモウ七八百年ノ間ノ經驗ヲ經テ
居リマス、彼等ノ申シマス大化革命結構デ
アリマス、其當時ノ大化革命ハ實ニ己ムヲ
得ナカッタ、中大兄皇子、藤原鎌足、是等ガ
ヤリマシタコトハ誠ニ結構ナコトデアリマ
シタケレドモ、其後ニ段々弊害ヲ來シマシ
テ、遂ニ或ハ平氏ノ如キハ法皇ヲ幽囚シ奉
ラムトシ、北條義時ハ旣ニ後鳥羽院ヲ隱岐
ノ國ニ流シ奉リ、又後醍醐天皇モ隱岐ノ
國ニ蒙塵サレテ居リマス、段々後世ニ參リ
マシテ畏イコトデアリマスガ皇室ノ御式微
ナリ、高山彥九郞ヲシテ泣カシメタト云フ
ヤウナコトニナリマシタノモ、是モ日本ニ
於ケル「フアッショ」ノ行過ギノ結果ガ斯ウ
ナッタノデアル、長イ間ノ經驗ヲ經テ居ル我
國デアリマスカラ、今更之ヲ又元ニ戾スト
云フ必要ハ誠ニ危險デアリマス、之ヲ明
治大帝陛下ガ思召シタル結果既ニ五箇條ノ
御誓文ニ依ッテ憲政ノ基礎ヲ定メラレタ、二
十二年ニハ憲法ヲ發布サレテ、其御詔勅ヲ
拜讀イタシマスト云フト、國民ハ實ニ淚ナ
クシテ拜讀スルコトガ出來ナイノデアル、
皇室親カラ其權力ヲ御制限遊バサレマシ
テ、又此憲法ノ條章ニ依ルノ外ハ何等ノコ
トハナサラヌト云フ御誓ヒヲ遊バサレマス
シ、國民ヲ愛撫シテ、國民ノ生命財產ヲ安全
ニ保護スルト云フ御詔勅、實ニ有難イ御詔
勅デアリマス、此憲法ハ實ニ我國ノ政治ノ
根本、若シ之ニ搖ギガ生ジマスト云フト、
陛下ニ對シマシテモ申譯モアリマセヌ、
我〓此政治ニ携ッテ居リマス者ハ朝ト言ハ
ズ野ト言ハズ、如何ナル政黨ト言ハズ、如
何ナル國民ト言ハズ、悉ク此憲法ノ條章ニ
服從シテ、陛下ノ仰セニモ決シテ此憲法
ト云フモノハ紛更ヲ許サヌノデアルト仰セ
ラレルノデアル、又皇室ヲ初メト致シテ、
國民永遠ニ此憲法ニ服從スベシト詔ラセラ
レテアリマス、若シ是ガ一朝ニシテ「フアッ
シヨ」ノ思想ノ行過ギタ結果又元ニ戾ルト
云フヤウナコトガアリマシテハ、國家ノ滅
亡デアリハシナイカト非常ニ私ハ憂慮イタ
スノデアリマス、國家變理ノ責任ニ當ノテ
居ラレマスル首相、殊ニ首相此點ニ御注意
下サイマシテ、此思想ヲ善導シテ共ニ倶ニ
我ミト此憲法ノ擁護、國體ノ擁護、此二ツ
ハ是非ニ御導キ下サルヤウニ、何トカ御方
法ヲ御執リ下サルヤウニ御願ヒ致シタイ、
若シ法律ニ反クヤウナコトガアリマシタナ
ラバ、彈壓ヲシナケレバナリマセヌケレド
モ、純ナル思想カラ起ッテ來テ居リマスル
此思想デアリマス、ドウカ之ヲ善導シテ共ニ憲
法擁護ノ任ニ當ラシメルヤウニ、御導キヲ
願ヒタイノデアル、ソレカラ第三ニ私ガ心
配イタシマシテ内閣諸公ニ御願ヒ申シタイ
コトハ、綱紀ノ頽廢、綱紀ノ紊亂ヲ匡スコ
トデアリマス、方今盛ニ傳ヘラレテ居リマ
スル綱紀ノ紊亂ノ事實ハ隨分澤山アリマス
ルガ、第一ニ製鐵會社ノ合同ノ問題、ソレカ
ラ第二ニ臺灣銀行ガ帝國人絹株ヲ不當ナ價
ヲ以テ賣買ヲシテ、其間ニ不當ノ利益ヲ得
テ國家ニ迄損害ヲ及ボサムトシタコト、其
次ハ東洋拓殖會社ガ其持株デアル南洋興發
會社株ト云フモノヲ不當ノ價ヲ以テ賣却シ
テ、其間甚ダ面白カラザル風聞ガアリマシ
ク、是等ノ會社ト云フモノハ特殊會社デ
テック、其總裁ハ政府ノ任命スル所デアリ、
其事業ハ政府ノ監督スル所デアル、ソレニ
モ拘ラズ斯樣ナ不當ナル處置ガ公然行ハレ
テ、何故ニ監督官廳タル大藏省ナリ拓務省ナ
リガ、之ヲ嚴重ニ取調ベテ監督シナイカ、
監督ノ怠リデハナイカト云フコトノ問題
ガ囂々トシテ傳ヘラレテ居リマス、其點ニ
付キマシテハ多少調ベマシタコトヲ申上ゲ
テ、當局ノ御注意ヲ促シタイト思フノデア
リマス、製鐵所、製鐵事業ノ合同問題ニ付キ
マシテハ、過日來旣ニ上山君ガ質問ヲサレマ
シテ、大〓其要領ヲ得マシタカラ、私ハ此間
題ニハ觸レマセヌ、進ンデ臺灣銀行ガ帝國
人絹會社ノ株ヲ不當ニ賣却シタト云フコト
ニ付テ申述ベテ見タイト思ヒマス、元來此
帝國人絹會社ト云フモノハ、鈴木商店ニ對
シテ臺灣銀行ガ不當貸付ヲ致シマシテ、昭
和ノ二年デアリマシタカ、遂ニソレガ爲ニ
臺灣銀行ソレ自身ガ倒產ノ厄ニ遭ハムト致
シマシタル時ニ、御承知デアリマスガ此國庫
ガ五億圓デアリマシタカ、七億圓デアリマシ
タカノ損害補償ヲサレタコトガアル、其時
ニ取ッテ置カレマシタル株ノ一デアリマス、
稍、見込ノアル株ハ日本銀行ノ手ヲ經テ非
常貸付ヲ致シマシタガ、囘復ノ見込ノナイ
株ニ對スル貸付ハ皆國庫ノ損害ニナッテ了ッ
テ居リマス、ソレデアリマスルカラ若シ多
少見込ノアル貸付ノモノガ他日有利ニ展開
イタシマシテ、サウシテ價格ガ上ッテ參リ
マシタル時ニ賣拂ヒマスレバ、國庫ノ損失
モソレガ爲ニ減少スル譯デアリマス、然ル
ニ今囘ヤリマシタルコトハ誠ニ面白クナイ
ヤリ方ヲヤッタ、其抵當ニ取ッテ置キマシタ
ル株ノ中、外ニモアリマスルガ、製鋼所ノ
株モアリマスケレドモ、今日ハ此人絹株ガ
非常ナル盛況ヲ呈シマシテ、一般ノ人絹ノ
株ハ騰貴シタル中ニモ帝國人絹ノ如キハ、
二千百萬圓ノ資本ニ對シテ年一割五分ノ配
當ヲナシツツアリマス、其外ニモ尙ホ多額
ノ積立金ヲ有シテ居ル誠ニ良イ會社ノ株ト
ナッテ居ルノデアリマス、是ガ一時ハ時價二
百圓ニ上ボラント致シマシタ、臺灣銀行ガ
之ヲ賣却イタシマシタル少シ前、百九十五
圓ト云フ市價デアリマシタ、然ルニ其後多
少ノ經濟界ニ變動ガアリマシタト共ニ、關
係者ガ策謀ヲ致シマシテ賣リ叩キ、安ク買
ハムガ爲ニ賣リ叩イタト云フコトデアリマ
スガ、百二十五圓マデ下ッタコトガアリマ
ス、百九十五圓シテ居フタ株ガ一時百二十五
圓マデ下ッタ、其時機ヲ捉ヘテ百二十五圓
デ賣却シテシマッタ、是ハ管理ヲシテ居ル當
局者ト致シマシテハ誠ニ失當ナ處置ト言ハ
ナケレバナラヌ、賣リタケレバ成ルベク株
ノ上ッテ居ル時ヲ見テ之ヲ賣却スルガ宜シ
イ、何モ下ッテ、極度ニ下ッタ時ヲ見テ之ヲ
賣却スルト云フコトハ、此間ニ何等カノ祕
密ガナケレバナラヌカト思フノデアリマ
ス、時價ト比ベマスト一株ニ付テ丁度七十
圓ノ安値デアリマス、賣却イタシマシタル
株ノ數ガ十一萬株、シテ見マスルト七十
七萬圓ダケハ臺銀ノ損失ニナッテ居ル、之ヲ
若シ百九十五圓ノ價ニ賣リマシタナラバ、
七十七萬圓ト云フモノハ臺灣銀行モ助カッ
テ居ル、買收イタシマシタ人達ハソレダケ
ノ利益ヲ得タノデアリマスルガ、マア買收
シタ人ハ、是ハ安イト思ウタカラ買ックンデ
アリマスカラ當然デアリマスガ、併シ賣ル
方ガ間違フテ居ル、中間ニ立ッテ之ヲ斡旋イ
タシマシタル某、某、某ノ三人ハ又不當ノ
「コンミッション」ヲ取ッテ居リマス、是ガ當
リ前ナラコンナ「コンミッシヨン」ト云フモノ
ハ取レルモノデハナイ、何カ知ラヌ當局者
トノ間ニ策謀聯絡ガナケレバコンナコトハ
出來マセヌガ、賣方カラ「コンミッシヨン」
ハ一株ニ一圓、買方カラモ一圓、雙方カラ、一
株一圓宛ノ「コンミッション」ヲ取リマシテ、
是ガ二十二萬圓ノ「コンミッション」トナッテ
居ル、マダ其上ニ賣主ノ方カラ配當付ノ株
ヲ取ッテ、之ヲ買主へ渡シタ時ハ配當落ニ
シテ渡シテ居リマス、一株ニ付テ三圓七十
五錢配當デアリマス、三圓七十五錢ノ配當
ヲ中間ニ立ッタ人達ガ之ヲ所得イタシテ
居リマス、十一萬株ニテ是ガ四十一萬二千
五百圓、一圓宛ノ「コンミッション」ト合計
イタシマスルト云フト、六十三萬二千五百
圓ヲ仲介者ガセシメテ居ル、斯ウ云フ東京
ニ······何處ニ於キマシテモ、此株式ノ「ブ
ローカー」ガアリマスガ、斯ウ云フウマイ「コ
ンミッション」ヲ取ル「ブローカー」ハ、恐ラ
ク一人モ居リマセヌ、是ハ賣手ト何等カノ
關係ガアリマセヌト、斯樣ナコトハ出來ナ
イ譯デアリマス、所ガ果シテ此賣買ノ爲
ニ六十何萬圓ト云フ仲介者ガ利益ヲ得タ、
果シテ此利益ガ此仲介者三人ノ懷ロニ
ノミ收ッタモノデアラウカト云フコトガ疑
ヒガアル、或ル其當局者ノ······賣ッタ當局
者、臺灣銀行ノ總裁其人ガ私ハ賄賂ヲ取ッタ
トハ申シマセヌガ、此人モ關係ガアルデセ
ウ、或ハ其他政府ノ大官ニ御賴ミヲシテ、
其口添ヲ得タリ其助力ヲ得テ、此事ガ成立〃
タト云フコトヲ傳ヘテ居リマス、私ハ是ハ
存ジマセヌガ、左樣ニ世間デハ傳ヲテ居リ
やっ、デアリマスルカラシテ六十何萬圓ノ
仲介者ノ利益モマル〓〓ハ三人ノ懷ロニ入ッ
タノデハナカラウト云フ想像ヲサレテ居
ル、ソレナラバ何處ニ行ッタカ、ドノ方面
ニ參ッタカ知リマセヌガ、私ハ直接之ヲ見
タノデアリマセヌカラ分リマセヌガ、政府
ノ當局者トシテ、監督者トシテ、大藏省ナ
リ又其他ノ政府ノ機關ヲ使ッテ、之ヲ仔細
ニ御調ニナリマスレバ必ズ分ルコトデアリ
マス、私ハ此席ニ於テ政府ノ御卽答ヲ望ミ
マセヌ······望ム譯デハアリマセヌ、十分ニ
一ツ事實ヲ調査サレテ、正確ナル報告ヲ御
待チ致シタイ、サウシテ若シ此間ニ何等カ
監督不行屆ノコトガアッタ、或ハ臭イコトガ
アッタトカ云フ時ニハ政府ノ手デソレヲ御
正シニナルガ宜カラウト思フ、斯樣ナコト
ノ將來ニナイヤウニ、善後ノ處置ヲ執ラレ
ルガ相當デアリハシナイカ、併シ卽時答辯
ハ出來ナイコトハナイ、政府トシテハ若シ
誠意ガナクシテ、御答辯ヲナサルナラバ、
斯樣ナ答辯ハ出來マセウ、貴樣ハサウ云フ
コトヲ言フケレドモ、株ノ賣買ハ時價ニ依フ
テシタモノデアルカラ、株ノ高下ニ依フテ
損スル場合モアラウシ、得スル場合モアル、
ソレハ其時ノ事情ダカラ政府ノ知ル所ニア
ラズ、斯ウ御答モ出來マセウ、何モ百九十
五圓ノ株ヲ百二十五圓ニ賣ッタカラト云ッテ、
賣ヲタ時ノ値ガサウデアッタノダカラ仕方ガ
ナイ、ソンナコトハ政府ノ知ッタコトデハ
ナイ、斯ウ不誠實ノ御答辯ニナレバソレモ
出來マセウ、又「コンミッション」、手數料ノ
不當ニ多カッタト云フコトノ如キハ、多カラ
ウガ少カラウガ、ソレハ双方ノ合意デシタ
コトダカラ、政府ハ知ッタコトデハナイ、斯樣
ニモ御答辯ガ出來マセウ、又ドウ云フ人〓
ガ、或ハ政府ノ大官デアルカ、或ハ其他ノ
有力者デアルカ知ヲヌガ口添ヲシタノモア
ルダラウ、斡旋ヲシタノモアルダラウガ、
ソンナコトハ政府ハ知ラヌノダ、答辯スル
必要ハナイト云フ御答辯ニナレバ、ソレデ
モ宜シイ、サウ御答辯ニナリマセウケレド
モ、世間ハソレデハ濟ミマセヌ、若シ他日
何人カガ此事實ニ基イテ、私共ノ調査ヨリモ
モット正確ナル調査ヲシテ、之ヲ司法ノ手ニ
移ス、告發ヲスルト云フヤウナ場合ニ於テ
ハ、司直ノ責任トシテ之ヲ糺サナケレバナ
ラヌ、其場合ニ如何ナル不法ガアッタ、不當
ノ事實ガアッタト云フコトガアッタ時ニハ、
不誠實ナル答辯ヲシテ居ラレタ政府ハ、其
時ニドウナサレマセウカ、ソレガ私ハ誠ニ
心配デアリマス、ソレヨリモサウ云フコト
ノ起ラナイ前ニ、政府自ラガ之ヲ一ツ御調
査ニナリマシテ······精細ニ御調査ニナリマ
シテ、惡イトシテ、之ヲ御正シニナルガ宜
カラウカト私ハ思フノデアリマス、マダ茲
ニ一ツ此賣買ニ付キマシテ見遁スベカラザ
ル一點ガアリマス、ソレハ明カニソレハ事
實、ソレハ此帝人株ノ賣渡、引渡ヲ致シマ
シタ時日ハ六月ノ上旬デアリマス、六月上
旬デアルニモ拘ラズ、名義ノ書換ハ五月ノ
末ニナッテ居リマス、是ハチヤント帳簿ニア
ルノデアリマス、株式臺帳ニアリマスルカ
ラ、何トモ是ハ否ム譯ニハ行キマセヌ、取
引ヲシタノハ六月ノ上旬デアッテ、株式ノ
名義變更ハ、遡ッテ五月ノ末日デアリマス、
何故ソンナコトヲシタカト云ヒマスト、總會
前ノ名義書換ノ停止中デアリマスカラ書換
ヘルコトハ出來ナイ、ソレデゴザイマスル
カラシテ、遡ッテ五月ノ末ニ賣買ノアッタ如
ク繕ラッテ帳簿ニ記載シタ、是ハ虚僞ノ手續
デアリマス、是ハ何人モ否ムコトノ出來ナ
イ虛僞ノ手續デアリマス、商法違反デアリ
マイ、文書ノ不實記載デアリマス、刑法上
ノ問題ニナリマス、賣買者、是ハ雙方共ニ
知ッテ爲シタモノデアリマスナラバ、其責ヲ
免レルコトハ出來マセヌ、ドウカ此點モ一
ツ當局者ハ能ク御調査ヲ願ヒタイノデアリ
マス、私ハ本件ニ干與シタル人ミノ名前ヲ
指摘スルコトヲ遠慮イタシマス、併シ一月二
十五日發刊ノ時事新報ヲ御一覽ニナリマス
レバ、思ヒ半バニ過ギルモノガアラウト思ヒ
マス、御參考ニナルダラウト思ヒマスカラ、
一月二十五日ノ時事新報ヲ指摘イタシテ置
キマス、帝人問題ハ先ヅソレダケニ致シテ置
キマシテ、次ハ南洋ノ興發株式會社廉賣ノ件
ヲ申上ゲマス、丁度此帝人株ノ賣買ト似寄ッ
タモノデ、東洋拓殖會社持株ノ南洋興發會社
ノ株、時價七十圓ノモノヲ一株五十五圓ノ
安値ヲ以テ四萬五千株、或ハ二萬五千株ト
モ申シマスガ、私ノ聞キマシタ所ハ四萬五
千株、之ヲ共保生命保險會社ニ賣渡シタト
云フ事實デアリマス、南洋興發會社ト云フ
モノガドンナ會社デアルカト申シマスルト、
是ハ東洋拓殖會社ノ傍系會社デ、資本金ガ
二千萬圓デアリマシテ、委任統治ノ南洋ニ
於テ拓殖事業ヲ行フモノデアリマス、是モ
純益ガ年一割、誠ニ有望ナル會社デ、昨日
此新聞ニアリマスル相場表ヲ見マスルト云
フト七十六圓ト出テ居リマス、其親會社デ
アリマスル東洋拓殖會社ハ矢張リ特殊會社
デ、政府ノ保護監督ノ下ニアル會社デアル、
其總裁ハ政府ノ任命ニ依"テナッテ居リマス、
其監督ハ拓務省ガ監督ヲサレテ居ル、デ此
東拓會社ト云フモノ自身ト致シマシテハ、
餘リ成績ノ宜シカラヌ會社デアリマス、其
成績ノ宜シカラヌ、資產狀態ノ十分ニ確立
シテ居ナイ會社ガ持ッテ居ル南洋興發會社
ノ如キ優良ナル株ト云フモノハ、東拓會社
ニ取リマシテハ誠ニ重大ナル關係ノアル、
尊キ資產ノ一ツデアル、何故ニ之ヲ賣拂ヲタ
カ、賣ラナケレバナラナカッタカ、又何故ニ
之ヲ賣ルニシテモ時價ヨリモ十五圓乃至二
十圓ヅツ損失ヲシテ、何故之ヲ賣ッタノデア
ルカ、東拓會社ノ總裁ノ意見ハドノ邊ニアッタ
モノデアリマスルカ、是ハ大事ノ會社ヲ預フ
テ、政府ノ保護監督ヲ受ケナガラ、斯ウ云
フコトガ能クモ出來タモノダト思フノデア
リマス、併ナガラ之ヲサセタト云フ人ガ何
處カニアリハシナイカ、是ガ問題ナノデア
リマス、斯ウ云フモノヲ見テ居フテ何故監督
ニ當ル拓務省ナリ大藏省ガ之ヲ看過シテ居
ラレタノデアリマスカ、尤モ拓務大臣ハ私
モ年來御懇意デアリマシテ、誠ニ前途アル
大政治家デアリマスルカラ、斯ウ云フ小サ
イコトハ或ハ未ダ御耳ニ入ッテ居ラヌカモ
知レヌト思フガ、ドウカ一ツ能ク御調べ下
サイマセ、若シ斯ウ云フコトガ御耳ニ旣ニ
入ッテ居フテ、之ヲ默過シテ居ルト云フヤウナ
コトデアリマスルト云フト、是ハ非常ニ大
臣閣下ノ將來ニ疵ガツキマスカラ、私ハ決
シテ拓務大臣ハ御存ジナイコトト思フ、御
存ジナイコトデアルガ能ク御調ヲ願ッテ、此
責任ヲ明カニサレテ置カレタイト云フコト
ヲ、私ハ衷心拓務大臣ヲ御信賴申上ゲル上
カラ、特ニ私ハ左樣ニ思ヒマス、決シテ攻
擊スルト御聽キニナラヌヤウニ、ドウカ御
願ヒシタイト思フ、決シテ攻擊ハシマセヌ、
併シ若シ斯ウ云フ事實ガアルトスレバ、監
督者ノ責任ト云フコトガ免レマセヌカラ、
一ツ能ク御調ベニナッテ、善後ノ處置ヲ御執
リニナルガ宜シカラウ、併ナガラ大臣ガ御
承知ガナクテモ、其監督ノ衝ニ當ッテ居ル
殖產局長ダトカ、或ハ東拓ノ監理官デアル
農林課長ダトカ、又其上ニ居ラレマスル政
務次官、事務次官、此兩次官ハ知ラヌトハ
申サレマセヌ、知ッテ爲サレタト致シマスレ
バ、是ハ官紀ノ紊亂デアリマス、知ラナカッ
タトスレバ監督ノ怠慢、曠職ノ責ハ免レヌ
デアリマス、若シ又其上ニモ或ハ東拓ノ社
長ト共謀シテヤッタ官吏ガアッタト致シマス
レバ、以テノ外ノ曲事デアル、是ハ能ク一
ツ御調ヲ願ヒタイ、此件ニ付キマシテハ種
種ノ風說ヲ傳フル者ガアリマスルケレドモ、
私ハ是ハ述べマセヌ、其調査ハ政府ノ御手
ニ委シテ、其善後ノ處置モ政府ノ御手ニ委
シテ置キタイト思フ、ドウカ將來斯ウ云フ
コトノ各方面ニ澤山ナイヤウニ願ヒタイ、
又モウ一ツハ臺灣銀行ノ持ッテ居リマスル、
鈴木カラ引受ケマシタル製鋼會社、之ヲ橫
取リスルトカ、乘取リマストカ云フヤウナ
策謀ガ今日行ハレテ居ルサウデアリマス、
或ハ出來タカモ知レマセヌガ、是ナドモ政
府ハ御注意アラムコトヲ希望スルノデアリ
マス、ソレカラ尙ホ東拓ニ關スル中デモ、
昨年デアリマシタカ、一昨年末デアリマシ
タカ、日露漁業會社ノ乘取リノ計畫ガアッタ
ト云フコトデアリマス、ケレドモ是ハ遂ニ
各方面ノ反對ガアリマシテ、取止メニナッタ
ト云フコトデアリマスカラ今日ハ問題ニナ
リマセヌ、斯ウ云フヤウナコトガ各方面ニ
アリマシテハ、誠ニ歎カハシイコトデアリ
マシテ、政府ノ責任頗ル重大デアルト考ヘ
マスカラ、ドウカ能ク御調査ノ上デ、善後
ノ處分ヲ御願ヒ申上ゲマス、ソレカラ、モ
ウ少シデス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X01019340202&spkNum=37
-
038・松平頼壽
○副議長(伯爵松平賴壽君) マダ長ウゴザ
イマスカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X01019340202&spkNum=38
-
039・關直彦
○關直彥君 〓育ニ關スルコトガアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X01019340202&spkNum=39
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040・松平頼壽
○副議長(伯爵松平賴壽君) 如何デセウ
カ、玆デ一ツ御切リニナッテ、次ニ又······発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X01019340202&spkNum=40
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041・關直彦
○關直彥君 宜シウゴザイマス、今度ハ〓
育方面ニ關スルコトヲ申上ゲタイノデスガ、
時間ガアリマセヌカラ、此次ニ繼續ヲサシ
テ戴クコトニ致シマス(拍手)
〔國務大臣子爵齋藤實君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X01019340202&spkNum=41
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042・齋藤實
○國務大臣(子爵齋藤實君) 御答ヲ致シマ
ス、「フアッシヨ」思想ノ善導ニ付キマシテハ
全ク御同感デアリマス、憲法擁護ノ御趣旨
ニ付キマシテハ、私モ關君ノ御意見ニ全然
同意ノ考ヲ持ッテ居リマス、ソレカラ臺灣銀
行ニ關シマスルコトニ付テノ御質問ニ付キ
マシテハ、主務ノ大臣カラ御答シタ方ガ宜
カラウト思ヒマスシ、又私ニ於キマシテハ
今日マデ何等不正ナルコトヲ、綱紀ニ觸レ
ルコトニ付テ報〓ニ接シテ居リマセヌ、此
段ヲ御答へ致シマス
〔國務大臣永井柳太郞君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X01019340202&spkNum=42
-
043・永井柳太郎
○國務大臣(永井柳太郞君) 只今關サンカ
ラ綱紀ニ關スル御質問ガアリマシテ、綱紀
ノ頽廢ヲ憂フル御精神ニ對シマシテハ、私
モ心カラ共鳴イタス者デゴザイマス、私
對シマシテハ東洋拓殖會社ノコトデ御聽キ
ニナッタノデアリマスガ、東洋拓殖會社ガ南
洋興發株式會社ノ株約八割ヲ所有シテ居,
タノデゴザイマス、其所有シテ居リマシタ
約八割ノ株ヲ東洋拓殖會社自身ガ只今御話
ノ通リ整理ヲ要スルヤウナ狀態ニアリマシ
タノデ、五割迄ハ手許ニ所有シテ置キマス
ケレドモ、殘リノ株ダケハ手放シタノデゴ
ザイマス、ソレハ整理ノ目的デ手放シタノ
デゴザイマス、サウシテソレヲ手放シマス
ニ付キマシテハ、拓務省ニ對シマシテハ認
可事項ニハナッテ居ラナイノデゴザイマス、
何故ニカト申シマスト東洋拓殖會社ガ新シ
イ事業ニ投資ヲ致シマス時ニハ、設立ノ趣
旨ニ反スルヤウナ事業ニ資本ヲ濫費シテハ
イケマセヌノデ、拓務省ノ認可ヲ要スルコ
トニナッテ居リマス、卽チ株ヲ持ツ時ニ認可
ヲ要スルコトニナッテ居リマス、併シ其株ヲ
處分イタシマス時ニハドノ株ヲ幾ラデ何處
ニ賣レナドト云フヤウナコトヲ政府ガ指圖
スルコトハ、政府ノ知識ノ上カラ言ノテモ
十分デナク、又其間ニ色ミノ情弊ガ出ルト
云フヤウナコトヲ考ヘタ爲デアリマセウ、
ソレハ認可ヲ要セナイト云フ立前ニナッテ
居ルノデゴザイマス、從テ東拓ガ南洋興發
株式會社ノ株ヲ手放シマシタ時ハ、何等認
可申請ハ致シテ居ナイノデアリマス、東洋
拓殖株式會社ノ判斷デソレヲ致シタノデア
リマス、従テ其當時ハ私ハ其事實ヲ知ラナ
カッタノデアリマスガ、最近ソレガ世間ノ
問題トナリマシタノデ、私ハ監督者ノ立場
カラ取調ベテ見マシタ、取調ベテ見マスル
ト、只今關サンガ此處デ御話ノ事實トハ違
ヒマス、東洋拓殖會社ハ其南洋興發ノ持株
四萬五千株ヲ昨年ノ五月十五日ニ賣渡シタ
ノデアリマスガ、其賣渡先ハ三ツアリマ
ス、只今關サンノ御話ニナッタ何トカ生命
保險會社デハナイノデアリマス、卽チ第一
ハ內外投資株式會社、第二ハ山一證券株式
會社、ソレカラ第三ハ川島屋商店、此三者
ニ一萬五千株ヅツ賣渡シテ居リマス、サウ
シテ幾ラデ賣ッタカト申シマスト、只今關サ
ンハ時價七十圓ノモノヲ五十五圓デ賣ッタ
ト御話ニナリマスガ、ソレハ全然間違デ、
先方ガ六十圓ト申出マシタノヲ、追〓競リ
上ゲテ七十圓デ賣"タノデゴザイマス、卽チ
時價七十圓ノモノヲ七十圓デ賣ッタノデゴ
ザイマス、ソレガ明白ナ事實デゴザイマ
ス、故ニ其點ニ付キマシテハ私ハ別ニ何等
不正ナ問題ガ其處ニ潜在シテ居ルトハ考ヘ
マセヌ、尙ホ其外ニ何カ特別ナ點デ御氣付
キノコトガアリマスレバ十分御注意ヲ受ケ
テ、尙ホ監督ノ責任ヲ盡シタイト存ジマ
ス、ソレカラ東洋拓殖株式會社ガ日魯漁業
ノ株ヲ十八萬株持クテ居ッタノデゴザイマス、
ソレハ關サンモ御存ジノ通リニ、北洋漁業
ニ關係シテ居ル者ノ大同團結ヲ當時ノ政府
ガ致サセマシタ時ニ、ドウシテモ政府カラ
相當ノ出資ヲシナケレバナラナイト云フノ
デ、政府ハ東洋拓殖會社ニ九百萬圓ノ資金
ヲ融通シマシテ、其九百萬圓ノ資金ヲ以テ
東洋拓殖會社ハ十八萬株ノ優先株ヲ持ッテ
居ッタノデアリマス、此度共十八萬株ノ優先
株ヲ、日本產業株式會社ニ賣リタイト云フ
話ガ進ンデ參リマシタ、併シ其株ハ只今申
上ゲマシタヤウナ歷史ヲ有ッテ居リマスル
ノミナラズ、其株ヲ東洋拓殖會社ガ他ニ讓
リ渡シマスル場合ニハ、日魯漁業會社ノ社
長ノ同意ヲ得ナケレバナラヌト云フ紳士協
約ガ當時東洋拓殖會社ノ社長ト日魯漁業株
式會社ノ社長トノ間ニ結ボレテ居ッタ事實
ガアルノデゴザイマス、然ルニ日魯漁業株
式會社ノ社長ハ、東洋拓殖會社ガ其十八萬
株ヲ他ニ讓渡ヲスルコトニ同意ヲシナカッタ
ノデアリマス、ソレヲ無理ニ讓渡スコトハ
宜シクナイト考ヘマシタノデ、私ハ高山東
拓總裁ヲ呼ビマシテ其取引ノ禁止ヲ命ジマ
シタ、サウ云フ事實ガゴザイマス、此點ニ
付テ御諒解ヲ得タイト存ジマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X01019340202&spkNum=43
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044・松平頼壽
○副議長(伯爵松平賴壽君) 本日ノ議事ハ
都合上是ニテ延會ヲ致シタイト存ジマス、
御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X01019340202&spkNum=44
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045・松平頼壽
○副議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト
認メマス、次ノ會議ハ來ル五日午前十時ヨ
リ開會イタスコトニ致シマス、議事日程ハ
本院彙報ヲ以テ御通知イタシマス、本日ハ
是ニテ散會イタシマス
午後零時五十一分散會
貴族院議事速記錄第八號正誤
頁段行誤正
六二五軍備競爭軍備協定
六一二四是ヲ以テ是レ以テ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X01019340202&spkNum=45
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