1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和九年三月五日（月曜日）午前十時二十一分開議
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議事日程 第二十三號
昭和九年三月五日
午前十時開議
第一 旭川市舊土人保護地處分法案（政府提出、衆議院送付） 第一讀會
第二 臺灣事業公債法中改正法律案（政府提出、衆議院送付） 第一讀會
第三 臺灣官設鐵道用品資金會計法中改正法律案（政府提出、衆議院送付） 第一讀會
第四 昭和九年度一般會計歳出の財源に充つる爲公債發行に關する法律案（政府提出、衆議院送付） 第一讀會
第五 昭和七年法律第一號中改正法律案（政府提出、衆議院送付） 第一讀會
第六 滿洲事件に關する一時賜金として交付する公債發行に關する法律案（政府提出、衆議院送付） 第一讀會
第七 大藏省預金部特別會計法中改正法律案（政府提出、衆議院送付） 第一讀會
第八 鐵道敷設法中改正法律案（政府提出、衆議院送付） 第一讀會
第九 貴族院伯子男爵議員選擧規則中改正に關する請願 會議
第十 都市計畫に依る寺院境内地の受益者負擔金免除規則制定の請願 會議
第十一 石川縣福浦港築設の請願 會議
第十二 八戸港を第二種港灣に編入の請願 會議
第十三 土地收用法中改正に關する請願 會議
第十四 國立吃音矯正機關設置の請願 會議
第十五 農村匡救土木費竝用水幹線改良費豫算増額に關する請願 會議
第十六 養蠶組合指導員設置國庫補助の請願 會議
第十七 官幣大社熊野坐神社遷座改築の請願 會議
第十八 戰公傷病死者竝傷痍軍人の遺族扶助料に關する請願 會議
第十九 愛知縣碧海郡刈谷町に登記所設置の請願 會議
第二十 伊東金銀鑛採掘權取消に關する請願 會議
第二十一 宮崎縣東臼杵郡門川村に區裁判所出張所設置の請願 會議
第二十二 林野治水に關する請願 會議
第二十三 林野整備促進に關する請願 會議
第二十四 山陽本線鐵道麻里布、山陰本線鐵道萩の兩驛間鐵道敷設の請願 會議
第二十五 漁村金融の改善に關する請願 會議
第二十六 漁村指導技術員設置助成の請願 會議
第二十七 漁村組合指導機關充實に關する請願 會議
第二十八 水産物運賃低減の請願 會議
第二十九 水産物輸出増進の請願 會議
第三十 鮭鱒の基本調査竝増殖施設に關する請願 會議
━━━━━━━━━━━━━発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X02319340305&spkNum=0
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001・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 是ヨリ報〓ヲ致
サセマス
〔小林書記官朗讀〕
去ル二日採擇スルコトヲ議決シタル義務〓
育費國庫支辨ニ關スル請願外十四件ノ請願ハ
各こ意見書ヲ附シ卽日之ヲ政府ニ送付セリ
同日委員長ヨリ左ノ報〓書ヲ提出セリ
請願委員會特別報告第三號
一昨三日委員長ヨリ左ノ報〓書ヲ提出セリ
軍用電氣通信法案可決報〓書
同日衆議院ヨリ左ノ政府提出案ヲ受領セリ
旭川市舊土人保護地處分法案
臺灣事業公債法中改正法律案
臺灣官設鐵道用品資金會計法中改正法律
案
昭和九年度一般會計歲出ノ財源ニ充ツル
爲公債發行ニ關スル法律案
昭和七年法律第一號中改正法律案
滿洲事件ニ關スル一時賜金トシテ交付ス
ル公債發行ニ關スル法律案
大藏省預金部特別會計法中改正法律案
鐵道敷設法中改正法律案
本日第八部ニ於テ決算委員中村純九郞君ノ
補闕選擧ヲ行ヒシニ其ノ結果水野錬太郞君
當選セリ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X02319340305&spkNum=1
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002・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 是ヨリ會議ヲ開
キマス、日程第一、旭川市舊土人保護地處
分法案、政府提出、衆議院送付、第一讀會、
山本內務大臣
旭川市舊土人保護地處分法案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議
院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和九年三月三日
衆議院議長秋田〓
貴族院議長公爵近衞文麿殿
旭川市舊土人保護地處分法案
旭川市舊土人保護地處分法
第一條北海道廳長官ハ舊土人保護ノ目
的ヲ以テ旭川市ニ貸付シタル同市所在
ノ土地ヲ內務大臣及大藏大臣ノ認可ヲ
經テ特別ノ緣故アル舊土人ニ單獨有財
產又ハ共有財產トシテ無償下付スルコ
トヲ得
第二條北海道舊土人保護法第二條第一
項ノ規定ハ前條ノ規定ニ依リ下付シタ
ル土地ニ付之ヲ準用ス
第三條第一條ノ規定ニ依ル土地所有權
ノ取得ニ關シテハ登錄稅ヲ課セズ又地
方稅ヲ課スルコトヲ得ズ
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
〔國務大臣男爵山本達雄君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X02319340305&spkNum=2
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003・山本達雄
○國務大臣(男爵山本達雄君) 旭川市舊土
人保護地處分法案提出ノ理由ヲ說明イタシマ
ス、旭川市所在ノ國有地約四十二萬八千坪
ハ、明治二十七年以來同地所在舊土人保護
ノ爲ニ存置セラレタモノデアリマシテ、明
治三十九年ニ至リ之ヲ旭川市ニ貸付シ、同
市ヲシテ其一部ヲ在住舊土人ニ耕作セシ
メ、他ノ部分ハ之ヲ和人ニ轉貸セシメ、其
得タル收入ヲ以テ舊土人ノ救護ト生活向上
ノ施設ニ充當セシメ來ッタノデアリマス、然
ルニ舊土人保護ノ趣旨ヨリ見マスルモ、又
國有地處理ノ上ヨリ致シマスルモ、今後永
ク本地ヲ斯カル取扱ノ儘ニ置キマスルコト
ハ適當デゴザリマセヌノデ、今囘之ヲ同地ニ
特別ノ緣故ヲ有スル在住舊土人ニ無償下付
セムト致スノデアリマス、而シテ其下付ノ
方法ニ付キマシテハ、本地中從來舊土人ガ
使用シテ居リマシタ一戶當リ一町步内外、
合計約五十町步ノ土地ハ直接舊土人各戶ニ
讓與スルト共ニ、他ノ土地ハ其現況ヨリ見
テ、之ヲ分割下付セザルコトガ適當デアル
ト認メ、之ヲ右舊土人ノ共有財產トシテ讓
與シ、北海道長官ヲシテ之ガ監理ニ當ラシ
ノ、其收益ハ之ヲ舊土人保護ノ爲メ使用セ
シムル見込デゴザイマス、又右下付處分ニ當
リマシテハ、特ニ舊土人ノ本地所所有權ノ
取得ニ際シテモ、國稅竝地方稅ヲ免除スル
ト共ニ、其下付後ニ於キマシテハ、舊土人
ノ保護ノ見地ヨリ、從來北海道内ニ於ケル
北海道舊土人保護法ニ依リ下付シマシタ土地
ト同樣ニ、其所有權ニ相當ノ制限ヲ加フル
コトニナッタノデアリマス、以上ハ本法律案
提出ノ理由ノ大要デアリマス、何卒御審議
ノ上、御協贊アラムコトヲ御願ヒ申シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X02319340305&spkNum=3
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004・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 別ニ御質疑ガナ
ケレバ、特別委員ノ氏名ヲ書記官ヲシテ朗
讀ヲ致サセマス
〔瀨古書記官朗讀〕
旭川市舊土人保護地處分法案特別委員
公爵島津忠承君伯爵柳原義光君
子爵野村益三君男爵北大路實信君
男爵松平外與麿君竹越與三郞君
安立綱之君板谷宮吉君
大和田健三郞君発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X02319340305&spkNum=4
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005・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 日程第二及第三
ハ、之ヲ一括シテ議題トスルコトニ御異議
ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X02319340305&spkNum=5
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006・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 御異議ナイト認
久 丈発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X02319340305&spkNum=6
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007・近衞文麿
○議長(公爵近衛文麿君) 日程第二、臺灣
事業公債法中改正法律案、政府提出、衆議
院送付、第一讀會、日程第三、臺灣官設鐵
道用品資金會計法中改正法律案、政府提出、
衆議院送付、第一讀會、高橋大藏大臣
臺灣事業公債法中改正法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議
院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和九年三月三日
衆議院議長秋田〓
貴族院議長公爵近衞文麿殿
臺灣事業公債法中改正法律案
臺灣事業公債法中左ノ通改正ス
第一條中「酒專賣制度」ノ下ニ「若ハ粗製
樟腦及樟腦油製造事業」ヲ加ヘ「一億五千
二百萬圓」ヲ「一億五千四百六十萬圓」ニ
改ム
附則
本法ハ昭和九年四月一日ヨリ之ヲ施行ス
臺灣官設鐵道用品資金會計法中改正法
律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議
院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和九年三月三日
衆議院議長秋田〓
貴族院議長公爵近衞文麿殿
臺灣官設鐵道用品資金會計法中改正法
律案
臺灣官設鐵道用品資金會計法中左ノ通改
正ス
第一條鐵道及自動車交通事業ノ用品ヲ
購入貯藏シ臺灣官設鐵道ノ運輸營業及
建設事業竝官設鐵道ニ關聯シ經營スル
自動車交通事業ノ需用ニ應スル爲豪灣
官設鐵道用品資金ヲ置キ特別ノ會計ヲ
立テシム
第三條中「臺灣官設鐵道所屬」ノ下ニ「又
ハ自動車交通事業所屬」ヲ加フ
第四條中「鐵道用品ノ製作」ヲ「鐵道及自
動車交通事業ノ用品ノ製作」ニ改ム
第五條中「鐵道用品ノ賣拂價格」ヲ「鐵道
及自動車交通事業ノ用品ノ賣拂價格」ニ
改ム
附則
本法ハ昭和九年度ヨリ之ヲ施行ス
〔國務大臣高橋是清君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X02319340305&spkNum=7
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008・高橋是清
○國務大臣(高橋是清君) 只今議題トナリ
マシタ臺灣事業公債法中改正法律案ノ說明
ヲ致シマス、臺灣ニ於キマスル樟腦專賣事
業ニ關シマシテハ、其合理化ヲ圖ルガ爲ニ
粗製樟腦及樟腦油ノ製造ヲモ亦之ヲ官營ト
スルノ必要ガアリマスノデ、之ガ爲ニハ現
ニ該事業ヲ致シテ居ル者ニ對シマシテ、事
業廢止ニ伴ヒマス三百四十萬餘圓ノ限度ニ
於キマシテ、補償金ノ交付ヲ要スルノデア
リマス、此交付金ハ時價ニ依ッテ公債ヲ交付
スルコトト致シマスノデ、公債額面三百四
十七萬餘圓ヲ發行シ得ルノ必要ガアルノデ
アリマス、然ルニ現行臺灣事業公債法ニ於
キマシテハ、未ダ該目的ノ爲ニ公債ヲ發行
シ得ル旨ノ規定ガナイノデアリマス、又現
行法定額ノ發行餘力ハ九十七萬餘圓ニ過ギ
マセヌノデ、ソレ故右交付公債ノ發行ヲ爲
シ得ルコトト致ス爲ニ、本法律案ヲ提出イ
タシタル次第デアリマス、又議題第三ノ臺
灣官設鐵道用品資金會計法中改正法律案、
提出ノ理由ヲ說明イタシマス、臺灣ニ於テ官
設鐵道ニ關聯シテ經營スル自動車交通事業
ノ用品ノ購入貯藏ハ、之ヲ臺灣官設鐵道用
品資金會計ニ於テ經營スルヲ適當ト存ズル
ノデアリマス、ソレデ本法律案ヲ提出イタ
シタ次第デアリマス、何卒御審議ノ上、右
兩案トモ御協賛ヲ與ヘラレムコトヲ願ヒマ
ス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X02319340305&spkNum=8
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009・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿者) 別ニ御質疑ガナ
ケレバ、特別委員ノ氏名ヲ朗讀イタサセマ
ス
〔瀨古書記官朗讀〕
臺灣事業公債法中改正法律案外一件特別
委員
候爵佐竹義春君子爵新庄直知君
子爵戶澤正己君男爵園田武彥君
宮田光雄君赤池濃君
菊池恭三君三橋彌君
濱口儀兵衞君発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X02319340305&spkNum=9
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010・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 日程第四ヨリ第
七マデノ法律案ハ、之ヲ一括シテ議題トス
ルコトニ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X02319340305&spkNum=10
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011・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 御異議ナシト認
メマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X02319340305&spkNum=11
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012・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 日程第四、昭和
九年度一般會計歲出ノ財源ニ充ツル爲公債
發行ニ關スル法律案、第五、昭和七年法律
第一號中改正法律案、第六、滿洲事件ニ關
スル一時賜金トシテ交付スル公債發行ニ關
スル法律案、第七、大藏省預金部特別會計
法中改正法律案、政府提出、衆議院送付、
第一讀會、高橋大藏大臣
昭和九年度一般會計歲出ノ財源ニ充ツ
ル爲公債發行ニ關スル法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議
院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和九年三月三日
衆議院議長秋田〓
貴族院議長公爵近衞文麿殿
昭和九年度一般會計歲山ノ財源ニ充ツ
ル爲公債發行ニ關スル法律案
第一條政府ハ昭和九年度一般會計歲出
ノ財源ニ充ツル爲他ノ法律ニ依リ起債
シ得ル金額ノ外六億六百九十萬圓ヲ限
リ公債ヲ發行シ又ハ借入金ヲ爲スコト
ヲ得
第二條政府ハ昭和九年度一般會計歲出
豫算翌年度繰越額ノ財源ニ充ツル爲他
ノ法律ニ依リ起債シ得ル金額ノ外昭和
十年度ニ於テ公債ヲ發行シ又ハ借入金
ヲ爲スコトヲ得但シ前條ノ規定ニ依ル
公債又ハ借入金ト通ジテ前條ノ制限額
ヲ超ユルコトヲ得ズ
第三條前二條ノ規定ニ依ル公債ノ發行
價格差減額ヲ補塡スル爲必要アル場合
ニ於テハ前二條ノ制限以外ニ公債ヲ發
行シ又ハ借入金ヲ爲スコトヲ得
附則
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
昭和七年法律第一號中改正法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議
院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和九年三月三日
衆議院議長秋田〓
貴族院議長公爵近衞文麿殿
昭和七年法律第一號中改正法律案
昭和七年法律第一號中左ノ通改正ス
「四億九千百萬圓」ヲ「六億五千十萬圓」ニ
改ム
附則
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
參照
昭和七年法律第一號ハ滿洲事件ニ關ス
ル經費支辨ノ爲公債發行ニ關スル法律
ナリ
滿洲事件ニ關スル一時賜金トシテ交付
スル公債發行ニ關スル法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議
院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和九年三月三日
衆議院議長秋田〓
貴族院議長公爵近衞文麿殿
滿洲事件ニ關スル一時賜金トシテ交付
スル公債發行ニ關スル法律案
滿洲事件ニ關スル一時賜金トシテ交付ス
ル爲政府ハ額面五千萬圓ヲ限リ公債ヲ發
行スルコトヲ得
附則
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
大藏省預金部特別會計法中改正法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議
院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和九年三月三日
衆議院議長秋田〓
貴族院議長公爵近衞文麿殿
大藏省預金部特別會計法中改正法律案
大藏省預金部特別會計法中左ノ通改正
ス
第二條中「事務取扱費」ノ下ニ「、營繕費」
ヲ加フ
附則
本法ハ昭和九年度ヨリ之ヲ施行ス
〔國務大臣高橋是〓君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X02319340305&spkNum=12
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013・高橋是清
○國務大臣(高橋是清君) 只今議題トナリ
マシタ昭和九年度一般會計歲出ノ財源ニ充
ツル爲公債發行ニ關スル法律案、提出ノ理
由ヲ說明イタシマス、昭和九年度一般會計
ニ於テ、旣ニ成立イタシテ居リマスル公債
法ニ依リ、公債ヲ募集スル金額竝ニ滿洲事
件ニ關スル經費支辨ノ爲メ發行ヲ要スル公
債金額ノ外ニ、歲入ノ不足ヲ補塡スル爲メ、
六億六百八十餘萬圓ノ公債ノ發行ヲ必要ト
スルコトハ、曩ニ昭和九年度總豫算ノ大要
ヲ說明イタシマシタ際ニ申述ベテ置イタ通
リデアリマス、其發行ノ爲ニハ新ニ起債ノ
權能ヲ得ルコトガ必要デアリマス、昭和九
年度ノ歲出ニ於テモ、其內若干ノ金額ハ例
年ノ如ク翌年度ニ繰越サレル結果ニナルノ
デアラウト存ゼラレマスガ、其繰越額ノ財
源ハ必シモ九年度內ニ起債スルコトヲ必要
ト致シマセヌ爲メ、翌年度ニ於テ募債シ得
ルコトト爲スヲ適當ト致シマス、右ノ理由
ニ依リマシテ、本法律案ヲ提出イタシタル
次第デアリマス、日程第五ノ、昭和七年法律
第一號中改正法律案提出ノ理由ヲ說明イタ
シマス、滿洲事件ニ關スル經費ニ關シマシ
テハ、去ヌル第六十一囘、第六十二囘及第
六十四囘帝國議會ニ於テ、其財源ニ充ツル
爲メ公債ヲ發行スルコトヲ得ル法律ノ成立
ヲ見マシテ、之ニ依ッテ本年度マデノ經費ヲ
支辨シ得ル次第デアリマスガ、昭和九年度
分ノ經費トシテ、更ニ約一億五千九百十餘
萬圓ヲ必要トスルノデアリマス、サウシテ
今日ノ財政ノ狀況竝ニ本經費ノ性質ニ鑑ミ
マシテ、從來ノ如ク之ヲ公債財源ニ依ルコ
トト致シマシタ爲ニ、現行滿洲事件ニ關ス
ル經費支辨ノ爲公債發行ニ關スル法律中ノ
發行限度ヲ、改正增加スルノ必要ガアリマ
スノデ、本法律案ヲ提出イタシタ次第デア
リマス、日程第六、滿洲事件ニ關スル一時
賜金トシテ交付スル公債發行ニ關スル法律
案ノ提出ノ理由ヲ說明イタシマス、昭和六
年以來ノ滿洲事件ニ關シ、功勞ガアリマシ
タ陸海軍軍人等ニ對シマシテハ、此際恩賞
トシテ適當ノ一時賜金ヲ賜與セラルルコト
ヲ必要ト考ヘマス、是等一時賜金ハ總額約
五千四百六十餘萬圓デアリマシテ、此內四
千八百七十餘萬圓ハ公債證書ヲ以テ交付ス
ルコトト致シマスル爲ニ、公債ノ發行ヲ要
シマス、而シテ右公債ハ時價ニ依リ交付ス
ルヲ妥當ト認メマシタノデ、發行總額五千
萬圓トシ、本案ヲ提出イタシマシタ次第デ
アリマス、日程第七ノ大藏省預金部特別會
計法中改正法律案、提出ノ理由ヲ說明イタ
シマス、大藏省預金部特別會計ノ事業ノ發
展ニ伴ヒマシテ、其事業遂行上必要ナル營
繕ハ、之ヲ同會計ノ負擔ニ於テ爲サシムル
ヲ適當ト考ヘルノデアリマシテ、別途昭和九
年度豫算ニ計上シテアリマスル大藏省廳舍
新營費ニ付テハ、之ガ財源ヲ負擔セシムル
ヲ妥當ト認メ、其所要金額ヲ一般會計ニ繰
入ルルコトト致シマシタ、且ツ同會計ノ事
業ノ狀況ニ鑑ミマシテ、將來新營ノ必要ヲ
生ズルコトヲ豫想セラレマスルノデ、本法
律案ヲ提出イタシタ次第デアリマス、以上
各案、何卒御審議ノ上御協賛アラムコトヲ
希望イタシマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X02319340305&spkNum=13
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014・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 御質疑ガナケレ
バ特別委員ノ氏名ヲ朗讀イタサセマス
〔小林書記官朗讀〕
昭和九年度一般會計歲出ノ財源ニ充ツル
爲公債發行ニ關スル法律案外三件特別委
員
侯爵松平康昌君子爵舟橋〓賢君
子爵綾小路護君男爵井田磐楠君
男爵深尾隆太郞君菅原通敬君
西野元君佐々木八十八君
澁澤金藏君発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X02319340305&spkNum=14
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015・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 日程第八、鐵道
敷設法中改正法律案、政府提出、衆議院送
付、第一讀會、三土鐵道大臣
鐵道敷設法中改正法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議
院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和九年三月三日
衆議院議長秋田〓
貴族院議長公爵近衞文麿殿
鐵道敷設法中改正法律案
鐵道敷設法中左ノ通改正ス
別表第五十號ノ三ノ次ニ左ノ一號ヲ加フ
五十ノ四埼玉縣大宮ヨリ川越ヲ經テ
飯能附近ニ至ル鐵道
別表第百五號ノ次ニ左ノ一號ヲ加フ
百五ノ二高知縣須崎ヨリ窪川ニ至ル
鐵道
別表第百十號ノ次ニ左ノ一號ヲ加フ
百十ノ二福岡縣添田ヨリ大分縣日田
附近ニ至ル鐵道
附則
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
〔國務大臣三土忠造君演壇ニ登ル)発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X02319340305&spkNum=15
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016・三土忠造
○國務大臣(三土忠造君) 只今上程サレマ
シタル鐵道敷設法中改正法律案ノ提案ノ理
由ヲ簡單ニ申上ゲマス、今囘鐵道敷設法ヲ
改正シテ、其別表ニ追加セムトスル線路
ハ、埼玉縣大宮ヨリ川越ヲ經マシテ飯能附
近ニ至ル鐵道、ソレカラ高知縣須崎ヨリ窪
川ニ至ル鐵道、及ビ福岡縣添田ヨリ大分縣
日田附近ニ至ル鐵道ノ三線路デゴザイマ
ス、大宮·飯能附近間ノ鐵道ハ、八王子ヨ
リ高崎ニ通ズル所謂八高線ノ一部、東飯
能·八王子間、及ビ横濱線八王子·東神奈川
間ノ各既成線ト相俟ッテ、東京ヲ包ム環狀
線ヲ構成イタシ、東北、中央、東海道ノ諸
本線ヲ聯絡イタシマスルカラ、一朝有事ノ
際ニ於ケル國防上ノ效果ハ大ナルモノガア
ルノデゴザイマス、是ト共ニ是等諸線相互
間ノ輸送ニ、東京ヲ迂廻スルノ不便ヲ除キ
マシテ、東京附近ニ輻湊スル輸送ヲ緩和
シ、運輸系絡上ヨリモ誠ニ緊要ナル線路デ
アルノデアリマス、須崎·窪川間鐵道ハ、
沿線ノ海陸物資ノ搬出ニ利便ヲ與ヘ、地方
產業ヲ開發イタシマスルノミナラズ、既成
高知線及ビ十年度全線開通豫定ノ土讃線ノ
培養線トナルノデアリマシテ、尙ホ亦將來
ニ於ケル四國循環線ノ一部ヲ構成イタシマ
スル主要ナル線路デゴザイマス、添田·日
田附近間ノ鐵道ハ、沿線ノ炭田、森林ヲ開發
シ、久大線、宮原線ノ竣成ト相俟ッテ、林產
物資ニ富ム日田、阿蘇地方ト、筑豐ノ鑛業
地帶トヲ近接セシメマスル主要ナル線路デ
ゴザイマス、要スルニ是等ノ三線ハ、地方
開發又ハ軍事上必要ニシテ、且ツ鐵道經營上
カラモ有利ト認メラレルモノデアリマスカ
ラ、何レモ昭和九年度ヨリ工事ニ著手イタ
シタイト考ヘテ居ルノデアリマス、以上ノ
理由ニ依リマシテ本案ヲ提出イタシタノデ
ゴザイマス、何卒御協賛ヲ與ヘラレムコト
ヲ希望イタシマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X02319340305&spkNum=16
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017・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 靑木周三君ヨリ
質疑ノ通告ガゴザイマシタカラ、此際許シ
マス、靑木周三君
〔靑木周三君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X02319340305&spkNum=17
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018・青木周三
○青木周三君 私ハ只今上程セラレマシタ
ル·····鐵道敷設法中改正法律案ガ上程セ
ラレタニ付キマシテ、此機會ヲ以テ、鐵道
政策ニ關シ、二三ノ質疑ヲ鐵道大臣及總理
大臣ニ致シタイト考ヘタノデアリマスガ、
生憎本日ハ總理大臣ハ午前中文部大臣ノ引
繼ヲシテ居ラレテ、引續キ何等カノ事故ガ
アラレルサウデゴザイマスルカラシテ、遺憾ナ
ガラ總理大臣ニ對スル分ハ留保イタシマシ
テ、他日ノ機會ヲ待ツ積リデアリマス、近
來此政治上デ最モ寒心シテ居ル所ノ、最大
關心事ト云フモノハ何デアルカト云フト、
此思想問題デアルノデアリマス、思想問題
ト申シマスルノハ結局人心ガ、左右兩極
ニ走ルコトヲ憂ヘルコトデアリマシテ、
何デ人心ガ左右兩極ニ走ルカト云フノ
ニ、是ハ現在ノ世情ニ慊リナイカラデアル
ノデアリマス、其慊リナイモノト云フノハ
何デアルカト云フト、最モ甚シイモノハ政
黨ノ不信用、政治ノ溷濁竝ニ分配ノ不均衡
ト云フ點ニ歸スルノデアリマス、分配ノ不
均衡ヲ憤ル者ハ財界人ノ跋扈ヲ憎ミ、政治
ノ溷濁ヲ憤ル者ハ政黨ノ跳梁ヲ恨ム、斯樣
ニシテ或ハ獨裁政治ヲ望ムトカ、或ハ均一
分配論ニ耳ヲ傾ケルニ至ルノデアリマス、
是ハ如何ニ文部大臣ヲ責メテ、〓育ヲ以テ
之ヲ改善シロト云ウテモ、生活ニ卽シテ〓
ヘル所ノ實物〓育ニ依ッテ斯ウ云フ結果ヲ
招クノデアリマスカラ、ドウシテモ政治ヲ
〓淨ニシ、財界ノ人ガ自ラ顧ミテ制約スル
所ガナケレバ駄目ダト、斯ウ考ヘルノデア
リマス、私共ハ現在ノ政治機構、經濟機構
ニ急激ノ變更ヲ加フルト云フコトハ社會ノ
利益デナイト考ヘル、デアリマスルカラシ
テ冀クハ政黨ノ人モ、財界ノ仁モ、共ニ此
點ニ鑑ミラレテ制約ヲ加ヘラレムコトヲ望
ンデ止マナイノデアル、又政治ハ裁判所デ
裁判スルノト違ヒマシテ、證據ノ問題デナ
イ、人心ニ與ヘル所ノ認識ガ對象デアル、
認識ガ誤ッテ居ルトカ誤ツテ居ナイトカ云フ
コトハ、問フニ遑ガナイ場合ガ多イ、先達
テ佛蘭西デ大事件ヲ起シマシタ、「バイヨン
ヌ」ノ詐欺犯人ガ、果シテ警官ニ殺サレタ
ノカ、自殺デアッタノカト云フヤウナコト
ハ、是ハ今ノ所ハ知ル由ハナイノデアル、
併ナガラ其結果トシテ起ッタ所ノ大事件ハ、
內閣ヲ二ツモ倒シ、又數百人ノ死傷者ヲ巴
里ノ街デ見ルト云フヤウナコトガ起ッタノ
デアル、デアリマスルカラシテ事實ガアル
トカ無イトカ云フコトハ、恐ラクハ問題ニ
ナラナイデ、政治上ノ結果ハ或ハ現ハレテ
來ルノデアリマス、デアリマスルカラシテ
政治ニ當ル方ミハ、ソレガ政界ノ、政治上
ノ溷濁デナイト云フコトヲ明カニ示シ、若
シ左樣ナ疑ヲ招クヤウナ事件ニ係ル時ニ
ハ、愼重ニ考慮セラレテ、先以テ左樣ナ
疑ガナイヤウニ計畫ヲセラレルコトガ、最
モ必要ナコトデアルト私共考ヘル、今日質
問イタシマスルノモ、政府ニ左樣ナコトデ
ナイト云フコトノ機會ヲ與ヘタイ、LK)
ノガ私ノ心望デアリマスル、私ハ此財界ノ
コトハ詳シク存ジマセヌ、屢こ問題ニナリ
マシタケレドモ分ラヌ場合ガ多イ、此點ニ
付テハ姑ク措キマシテ、鐵道ガ政黨ノ利益、
政黨ノ策略ト云フモノニ利用セラレルト云
フコトヲ常ニ憂ヘテ居ルノデアリマス、デ
敢テ此場合ニ鐵道大臣ニ質問イタシマシ
テ、斯ウ云フ今囘ノ鐵道政策ガ黨利黨略ニ
基クモノデナイト云フコトヲ、明カニシテ
戴キタイト思ッテ今日質問ヲ致ス所以デア
リマス、三土鐵道大臣ガ其職ニ就カレテカ
ラ其政策ヲ拜見シテ居リマスト云フト、從
來黨利黨略ノ爲ニ禍サレテ鐵道ノ建設ガ甚
シク總花主義トナリマシタ放漫デアッタ所
ノ建設政策ヲ改メテ、建設集中主義ト云フ
モノヲ執ラレマシテ、從來豫算ニ計上シテ
アル所ノ建設線ノ中デモ、鐵道政策上不利
益ナモノト思ハレルモノハ、之ヲ或ハ延期
或ハ殆ド止メルノデハナイカト思フマデ後
ヘ下ゲラレテ、サウシテ中デ重要ナル又旣
ニヤラナクチヤナラナイ狀態ニ至ッテ居ル
所ノ線路ハ、ドシ〓〓ト完成年度ヲ繰上ゲ
ラレルト云フヤウ方針ヲ執ラレマシテ、
又建設線ガ打切ラレタリ遲延シタリスル所
ニ對シテハ、鐵道省自營ノ乘合自動車ヲ運
行スルト云フヤウナ政策ヲ執ラレマシテ、
是ハ私共ガ常ニ望ンデ居ッタ所ノ政策ヲ最
モ勇敢ニ施行セラレタノデアリマシテ、三
土君ニ對シテ多大ノ信賴ト多大ノ尊敬ヲ
拂ッテ居ル者デアリマスル、此內閣ハ此政黨
ノ不信用ヲ恢復シテ、大イニ政治ノ溷濁ヲ
淨メヤウト云フコトヲ一枚看板デ立タレ
ク、此際ニ三土君ガ鐵道大臣トナラレタコ
トハ、我ミハ頗ル喜ンデ居リマス、昨年ノ
議會ニ提出セラレタル案ヲ拜見シマスルト
云フト、甚ダ小サナ問題ニハ稍〓其臭ヒノス
ルモノガ無イデモアリマセヌデシタケレド
モガ、大體ニ於キマシテハ、頗ル眞面目
ナ案デアリマシテ、大イニ三土君ヲ援ケ
テ其政策ヲ成サシメヤウト考ヘテ居ッタ
ノデアリマス、然ルニ今年ノ議會ニ提出
セラレタモノハ前年トハ大イニ異リマ
シテ、傳統的黨略第一主義ヲ反映シタノ
デハナイカト思ハセルヤウナモノガ非常
ニ多イ、三土君モ人間デアリマスルカラ
シテ、理性方面ト、感情方面ヲ持ッテ居ラレル
コトハ已ムヲ得ヌデアリマス、デ三土君ハ
昨年ニ於キマシテハ、非常ニ三土君ノ理性ガ
働イテ、我ミニ尊敬ヲ拂ハセルヤウナ案ヲ
提出セラレマシタケレドモガ、本年ニ於キ
マシテハ大イニ其ノ理性ガ、感情ノ爲ニ蔽
ハレタノヂヤナイカト云フヤウナ疑ヲ懷カ
ザルヲ得ナイノデアリマス、若シ果シテ吾
輩ガ憂慮シテ居ル通リニ、此鐵道ニ關スル
所ノ諸政策ガ果シテ國家ヲ第二義トシテ、
政黨ヲ第一義トスルト云フヤウナコトガ
アッタトスルナラバ、是ハ本員ノ······重大
問題デアリマスル、私ハ議員ト致シマシ
テモ、又官吏トナッタ場合ニ於キマシテモ、
常ニ此鐵道、國家ノ公器ガ黨利黨略ノ爲ニ
左右サレルコトヲ憤慨イタシマシテ、有ユ
ル場合ニ於キマシテ、ソレニ對シテ反抗シ
テ來タモノデアリマス、今日此疑ヲ懷クニ
至リマシタモノデアリマスカラシテ、鐵道
會議ニ於キマシテモ、又今日諸君ヲ煩ハシ
テ此ノ質問ヲ聽イテ戴ク所以デアリマス、此
場合ニ於キマシテ鐵道ノ豫算ノコトヲ、大
體ヲチヨット申上ゲテ置カナクチヤナラヌ
ト思ヒマスガ、鐵道ノ建設費ハ今マデ、本
年度カラハ······四千萬圓ヅツデアッタノガ、
今度三土鐵道大臣ハ九年度、十年度、十一
年度ト三箇年度ニ各八百萬圓、合計二千四
百萬圓ト云フモノヲ增サレマシテ、サウシ
テ八線ノ······八ツノ線ノ建設計畫ヲ爲サレ
タノデアリマス、御手許ニ配付シテ居リマ
スル所ノ地圖中ニ、靑イ線ヲ以テ表ハシタ
線ハ其八ツニ當ルノデアリマス、現在我國
ニ於キマシテハ國難ノ時デアッテ、政府ノ
事業ニ夥シイ費用ヲ要スル時デアル、之ガ
爲ニハ多額ノ赤字公債ヲ發行シテ行カナク
チヤナラヌ狀態ニナッテ居ル、此公債ノ發
行額、公債ノ消化力ニ限度ガアル爲ニ、サ
ウサウハ赤字公債ヲ發行スルコトハ出來ヌ
ト云フコトカラシテ、海軍ニ於キマシテモ、
陸軍ニ於キマシテモ、農林省ニ於キマシ
テモ、悉ク不滿ナル所ノ數字ヲ以テ豫算ヲ
組立テナケレバナラヌ所ノ時代デ、鐵道ハ
必シモ、イツカ或議員モ言ハレマシタガ、
二年ヤ三年鐵道ガチョットモ延ビナカッタカ
ラト云ッテモ、國家ハ大シタ危機ニ迫ルモ
ノデハナイ、然ルニ此際ニ當ッテ二千四百
萬圓ト云フ多額ノ資金ヲ投ジテ、新シイ線
路ヲ計畫スル所ノ必要ガアルカト云フコト
ヲ私ハ第一ニ疑問ニ思ヒマシタ、此點ニ關
シテ鐵道會議ニ於キマシテハ鐵道大臣ニ質
シマシタ、併ナガラ言葉ノ行違デアッタカ、
鐵道大臣ノ答辯ハ頗ル要領ヲ得ナイノデア
リマシテ、此八百萬圓ト云フモノハ、鐵道
省ノ共濟組合ノ金デ以テ應募スルノデア
ル、市場ニ對シテ壓迫ヲ加ヘナイノデアル
カラシテ、ソレデ此公債ヲ發行スルコトニ
シタノデアルト云フ御答辯デアリマシタ、
併ナガラ私ノ聽カムト欲スル所ハ、何故ニ
其公債ノ財源ヲ、他ノ方面ノ必要ナモノニ
振向ケナイカト云フコトガ聽キタカッタノ
デアリマス、鐵道省ノ、國有鐵道ノ純益金
ト云フモノハ、一時ハ一億數千萬圓ニ上ボッ
テ居ッタ程デアリマシタケレドモ、此打續
ク不景氣ノ爲ニ頗ルソレガ減少イタシマシ
テ、稍〓囘復シマシタ九年度ノ豫算ニ於テ
モ、僅ニ六千萬圓程度ニ過ギナイノデア
ル、此六千萬圓ノ中ニハ約三千萬圓位ト云
フモノハ、是ハドウシテモ營業費ニ近イ所
ノ改良費ニ掛ケナクチヤナラヌモノデア
ル、デアリマスカラシテ是ハ營業費ト
見ルノガ當リ前デアル、サウスルト殘リハ
僅カ三千萬圓シカ無イノデアリマス、
年ニ四千八百萬圓ヅツ增スト致シマスト
云フト、其利子ダケガ二百四十萬圓、尙
ホカケル所ノ鐵道ハ、甚シク不利益ナ線デ
アリマスカラシテ、ソレデ損ヲスルモノガ
相當ニナクチヤナラヌ、サウシマスト稍、三
百萬圓ト云フモノハ損ガ年ミ積ッテ行ク譯
デアル、今ノ鐵道豫算ハ稍〓十年、昭和十六
年度位マデ掛カルノデアリマスガ、此鐵道
豫算ガ全部使ヒ切ル頃ニハ益金ガ一文モ無
クナルト云フ勘定ニナラザルヲ得ナイノデ
アリマス、誠ニ現今ノヤウナ不景氣ハ、是ハ
常態デハアリマスマイ、或ハモット囘復スル
時ガアルデアラウト考へマスルケレドモ、
併ナガラ此鐵道ノ收益率ト云フモノハ決シ
テ樂觀ヲ許サナイノデアリマス、又現在我
ガ國ニ於キマシテハ十七億圓ニ餘ル所ノ私
設會社ガアルノデアリマス、此十七億圓ト
云フ國家ノ資本ガ私設鐵道ニ固定シテ居リ
マシテ、サウシテ其中デ僅カナガラデモ配
當ヲシテ居ルモノハ約二割ニ過ギナイノデ
アル、後ノ八割ト云フモノハ全部無配當デ
アル、斯樣ナ狀態デアリマス、是ハ私設鐵
道ノコトデアリマスケレドモ、私設鐵道ノ
監督、免許、總テ政府ガ之ニ當ッテ居リマ
シテ、サウシテ鐵道ハ國有トスベキコトヲ
原則トシテ鐵道國有法ニ定メテアル、法律
ヲ以テ定メテアル、是等ノ鐵道ハ是ハ私設
鐵道デアッテ、株主ガ馬鹿ナコトヲシタノダ
カラ是ハ已ムヲ得ヌト言ッテ、政府ハ之ヲ對
岸ノ火災ノヤウナ顏ヲシテ見テ居ル譯ニ
ハ、恐ラクハ行カヌコトト思フ、是ダケノ
大キナ資本ガ何等ノ配當モスルコトガ出來
ズニ困ッテ居ル狀態ヲ、政府ガ見テ居ル譯ニ
ハ到底行カヌコトニナルダラウト思フ、何
〓カノ形ニ於テ國庫、卽チ此國有鐵道ノ負
擔ニナラザルヲ得ナイト思ッテ居リマス、
現ニ今年度ノ豫算ニ於テ七百三十萬圓ノ補
助金ヲ與ヘテ居リマスケレドモ、七百三十
萬圓位ノ補助金デハ濟マナイ、恐クハ何等
カノ形デ此鐵道ノ始末ヲ付ケテヤラナケレ
バナラヌ時代ガ來ルノダラウト私ハ考ヘル
ノデアリマスカラシテ、此鐵道ニ長官トナ
ル所ノモノハ、決シテ放漫ナル政策ヲ以テ
之ニ臨ムト云フコトハ、許サレナイ狀態ニ
アルト云フコトヲ御考ヲ願ハナクチヤナラ
ヌノデアリマス、次ニ此建設線ニ付テ少シ
ク詳細ニ亙ッテ說明ヲ致シマシテ、質疑ヲ
致シタイト思ッテ居リマスル、今度提出セ
ラレマシタ所ノ八線ハ、只今地圖デ申上ゲ
マシタ通リニ北海道、本州、九州、四國ニ
亙リ、此靑イ線ノ八ツデアリマスルガ、其
中デ北海道ニ於キマシテ、浦川、樣似ト云
フ所ハ、是ハ誠ニ結構ナ線、是ハ問題デア
リマセヌ、ソレカラ九州ニ於キマシテ、
番南ノ所ニアリマス指宿ト云フ所カラ山川
ト云フ所、是ハタッタ一哩ニ足リナイ所ノ
線路デアリマシテ、是モ結構ナ計畫デアリ
マシテ、是モ問題デアリマセヌ、ソレカラ
只今上程シテアリマスル所ノ敷設法改正ニ
載ッテ居ル所ノ、東京附近ノ大宮カラ飯能
ニ行ク所ノ此線路ハ、是ハ軍部ノ要求デア
リマシテ、東京ニ入ラズニ、東北カラ東海
道、東海道カラ東北ニ行ク線ガ是非必要ダ
ト云フコトデアリマス、是モ長イコト軍部
ガ要求シテ居ル所ノ線デアリマス、鐵道會
議ニ於キマシテハ、此線ニ對シテモ屢、議
論ガアリマシテ、甚ダ不必要デアルト云フ
意見ヲ懷ク人モアリマシタ、併ナガラ是ハ
今日私ガ問題ニセムト欲スル所ノ線デハ
アリマセヌ、デアリマスルカラシテ之
ヲモ除キマス、殘リノ五ツノ線ト云フモ
ノガ悉ク私共ガ不可解、分ラナイ所ノ
問題ヲ包ンデ居ル所ノ線デアリマス、其
中デ第一番ハ北海道ノ北ノ方ニアリマス
ル名寄カラ朱鞠內ト云フ所ニ行ク所ノ線
デアリマス、ソレカラ第二ハ福島縣ノ柳津
ト云フ所カラ川口ニ至ル所ノ線、ソレカラ
新潟縣ノ小出ト云所カラ只見ト云フ所ニ
至ル線、是ハ元ト豫定線デハ福島縣ノ柳津
カラ小出ニ至ル所ノ一ツノ線デアル、ソレ
ヲ今囘ハ間ヲ切ッテ、サウシテ二ツノ線トシ
テ出サレタノデアリマス、ソレカラ第四ハ
九州ノ添田カラシテ日田附近ニ至ル所ノ線
デアリマス、第五ハ四國ノ須崎カラ窪川ニ
至ル所ノ線デアリマス、之ヲ見マスルト云
フト北海道、關東、東北、四國、九州ト
云フヤウニ整然トシテ分布セラレテ居ルコ
トガ御分リニナルデアリマセウ、是ハ政黨
ノ黨勢上非常ニ必要ナコトデアリマスト見
エマシテ、先年小川鐵道大臣ガ鐵道ノ大買
收案ヲ提出セラレタコトガアリマス、其時
ニ本議場ニ於キマシテ、私ハ此案ヲ定メル
標準ハ何處ニ置イタノデアルカ、鐵道ヲ買
收スル標準ハ何處ニ置イタノデアルカト云
フコトヲ聽キマシタ所ガ、小川鐵道大臣ハ
分布ヲ一ツノ標準トシタト、斯ウ云フコト
ヲ率直ニ答ヘラレタノデアル、私ハ私設鐵
道全部ヲ國有ニ買收スルト云フ大方針ガ定
マッタ上ナラバ分布ト云フコトモ必要デア
ル、併ナガラ鐵道ノ系絡上私設鐵道ノ買收
ヲ必要トスルト云フコトデアルナラバ、分
布ニ拘ハッテ居ルコトハ出來ナイ、デアルカ
ラシテ此分布ニ重キヲ置ク所ノ案ハ、必ズ
ヤ政黨ノ統制ノ爲ニ必要ニナルカラヤッタ
ノデアラウト考ヘマシテ、極力其案ニ付テ
質問モ致シマスルシ反對モ致シマシテ、力
ヲ極メテ之ヲ排擊イタシマシタ、幸ヒニ本
院ノ諸公ノ考モ私ノ考ト同一デアッタト見
エマシテ、此委員會ニ於キマシテハ、此案
ヲ、政黨政策ニ基カズ、鐵道政策ニ基イテ
修正シタ、サウシテ之ヲ衆議院ニ送リマシ
タ所ガ、分布ヲ破ラレタ所ノ鐵道政策ヲ受
入レルコトハ出來ナカッタ、ソレデ遂ニ此案
ハ不成立ニ終ッタコトハ諸君ノ御記憶ニ新
ナル所デアラウト思フ、又先年床次氏ガ鐵
道大臣ニナラレマシタ時ニ、私ドモ鐵道ニ
關係ノアッタモノヲ政府ニ呼バレマシテ、
今度モ鐵道買收ヲシタイト思フガ、如何ナ
ル線ヲ買收シタラ宜カラウカト云ッテ御相
談ガアッタ、其時ニ私共ハ鐵道政策、鐵道カ
ラ見ル所ノ買收ヲ必要トスル所ノ案ヲ二三
進言ヲ致シマシタ、後ニ床次氏ハ其買收案
ガ出來タカラト云ッテ示サレマシタモノヲ
見マスルト云フト、我〓ノ進言ヲ致シマシタ
所ノモノヲ取入レラレテアッタ、併ナガラソ
レハ分布ニ拘ハッテ居ラレルノデアリマス
ルカラシテ、或ハ北海道ヲ加ヘ、或ハ九州
ヲ加ヘルト云フヤウニシテ分布ヲ整ヘラレ
タ、之ニ對シテ斯樣ニ分布ヲ主トシタ所ノ
鐵道買收案ニ對シテハ、之ヲ支持スルコト
ハ御免ヲ蒙ルト申上ゲタコトガアリマス、
併ナガラ床次氏ハ內閣ノ更迭ト共ニ罷メラ
レマシテ、其案ハ廢棄セラレタノデアル、
此度斯樣ニ三土君ガ玆ニ提出セラレタル所
ノ案モ正ニ此通リニ、此傳統ヲ追ウテ北海
道關東、九州、四國ト云フヤウニ分布サ
レタノデアリマス、是ハ眞最初ニ、如何ニ
モ何等カノ政黨統制ノ上ニ必要ガアリトセ
ラレテ、拵ヘラレタモノデナイカト云フコ
トヲ疑ハザルヲ得ナイノデアリマス、昨年
ノ議會ニ於キマシテハ先程モ申上ゲマシ
タ通リニ三土君ハ、政黨ノ動キニ鑑ミル所
ガアリマシテ、非常ニ愼ンデ案ヲ立テラレ
タト見エマシテ、私共カラ見マシテ昨年ノ
提出セラレタ所ノ諸案ハ、最モ鐵道政策ニ
卽シテ立テラレタ所ノ案ダト考ヘテ居リマ
シタ、所ガ今申シマスル通リニ、鐵道政策
ニ基イタ所ノ案ハ分布ニ拘ハッテ居ルコト
ガ出來ナイ、從テ分布ノ上カラハ甚シク
不均一デアリマス、ソレデアリマシタ
爲ニ是ハ黨ノ內部ニ於テ非常ナ問題
ヲ起シマシテ、殊ニ福島縣地方ニ於
テハ非常ニヤカマシカッタ、是ハ四圍ノ不平
組ト俟ッテ相提携シタ爲ニ、殆ド三土君ノ鐵
道案ノ運命スラ危ブマレルヤウナ狀態ニ立
至ッタノデアリマス、ソレデ流石ノ三土鐵道
大臣モ我ヲ折ッテ、遂ニ此黨略ニ聽カザルヲ
得ナイヤウナ狀態デ、此今年ノ案ガ出來タ
モノト推察スルノデアリマス、三土君ノ苦
衷ハ察スルニ餘リアリマスルケレドモガ、
政黨ガ國家ノ公器ヲ黨利黨略ノ爲ニ利用ス
ルト云フコトハ、是ハ國民ノ公憤ヲ招ク所
ノ基デアリマス、世人ハ動モスレバ官吏ガ
金錢ノ爲ニ汚損セラレルコトヲ、綱紀問題
トシテヤカマシク言ヒマスケレドモガ、最
モ實害ノ多イノハ、政黨ガ公器ヲ濫用シテ
黨略ノ具ニ供スルト云フコトデアル、私ハ
先程モ申シマスル通リニ、政黨ガ鐵道ヲ黨
略ノ具ニ供スルト云フコトニ對シテ、官吏
トシテモ、議員トシテモ、極力之ヲ拒ンデ
居ルノデアリマス、若シ此案ガ斯樣ナ疑ヲ
持ッテ居ルモノデアルナラバ、本院ハ決シテ
此案ヲ通シテハナラヌコトダト私ハ考ヘル
ノデアリマス、以下モウ少シ詳細ニ亙ッテ、
各線ニ付テ鐵道大臣ノ御意見ヲ質シタイト
思フ、第一ノ北海道ノ名寄·朱鞠內間約四十
「キロ」バカリノ線デアリマスルガ、名寄ト
申シマスルノハ地圖デ御覽ノ通リニ、稚內
本線ノ中ノ主要ナ驛デアリマスルケレドモ
ガ、固ヨリ北海道ノ小驛ノコトデアリマス
ルカラシテ大シタ都邑デハアリマセヌ、
朱鞠內ノ如キニ至ッテハ誠ニ人口ガドノ位
アルカ知リマセヌガ、政府ノ言フ所ニ依リ
マスルト云フト、千人位ト云フノガドノ位
ノ範圍ニ擴ガッテ居ルカ、極ク小村デアラウ
ト思フノデアリマス、此線路ハ元ト名寄·
雨龍間ト云フ線路デアリマシテ、小川鐵道大
臣ノ時ニ議會ヲ通過シタ所ノ線デアリマス
ルガ、其後ニ濱口內閣ノ時ニハ、小川鐵道大
臣ガ六十幾線ト云フ所ノ大建設案ヲ出サレ
タノヲ、斯ウ云フ風ナコトハ必要ナイト致
シマシテ、其中二十八線ヲ削除イタシタ、
其二十八線ノ中ノ一線デ、削除セラレタ所
ノ一線デアルノデアリマス、斯樣ナ名寄ト
云ヒ雨龍ト云ヒ、若クハ朱鞠內ト云フヤウ
ナ小サナ村ヲ、鐵道デ以テ繋グト云フコト
ハ誠ニ意味ノナイコトデアリマス、交通ハ
大體ニ於テ中央カラ地方ニ及ブダケデアリ
マス、誠ニ失禮ナ話デアリマスルガ、例ヲ
東京ノ中ニ取リマシテ、例ヘバ日本橋ヲ中
心ト致シマシテ、澁谷ト日本橋、及新宿ト
日本橋ト、此二ツノ線ガアリマスルナラ
バ、是ハ中央カラ地方ニ至ル所ノ線デアリ
マシテ、放射線デアリマシテ、誠ニ繁昌スル
所ノ線路デアラウト思フ、併ナガラサレバ
ト云ッテ、新宿ト澁谷ヲ繫イダカラト云ッテ、
此間ノ交通ハ恐ラク甚ダ微々タルモノデア
ラウト思フ、斯ウ云フコトハ誰ガ見テモ直
グ分ルノデアリマス、又鐵道ハ道路トハ違
ヒマシテ、各人ノ門ノ前、各人ノ畑ノ前マ
デ鐵道ヲ持ッテ來ルト云フ譯ニハ行カナイ、
大體ニ於テ其鐵道ノ兩側二哩トカ三哩ト
カ、或ハ五哩トカ云フ勢力範圍ヲ定メテ、
其間ノモノハ皆各驛ニ集ッテ行クト云フノ
ガ大體ノ趣旨デアリマス、此地圖ヲ御覽下
サイマシテモ、稚內本線ト雨龍線ト云フモ
ノトハ、極ク接近シテ竝行シテ居ル所ノ線
デアリマス、是ハ地圖デ見マスルト云フト、
大體此距離ハ五里カ、廣イ所デ八里位ノ線、
此中間ヲ取リマスルト云フト四里若クハ三
里位ガ勢力範圍ト見ナクチヤナラヌ、此勢
力範圍ヲ延バシテ行キマスルト云フト、今
度新ニカケヤウト云フ所ノ名寄ト朱鞠內ノ
線ト云フモノハ此勢力範圍ノ中ニ這入ル、
斯樣ナモノヲ新ニ北海道ノヤウナ廣漠ナ、
マダ開通スベキ所ガ澤山アル中ニ持ッテ行ッ
テ、斯樣ナ勢力範圍ノ中ニ再ビ一ツ
ノ鐵道ヲ造ルト云フ必要ハナイ、政府ノ
說明スル所ニ依リマスルト云フト、此雨龍
線ヲ延バシタ所ニ炭鑛ガアル、炭鑛ト云ッテ
石炭ノ露頭ガアルトカ、或ハ此處ニ大キ
十、北海道水力電氣會社ガ大キナ貯水池ヲ
拵ヘテ、其貯水池ノ水門ノ工事ヲスル爲ニ
必要デアラウト思フ、サウ云フモノガ必要
デアルナラバ、其必要ノ所マデ延バシテ置
ケバ名寄ト繫グ所ノ必要ハ一ツモナイ線ナ
ノデアリマス、或ハ此線ニ大學ノ演習林ガ
アッテ、移民ガ幾ラ居ルトカ、木材ガドレダ
ケ出ルトカ云フヤウナコトガアリマスルケ
レドモガ、御覽ノ通リニ大體ニ於テ此兩方
ノ勢力範圍ニ入ッテ行クノデアリマス、此雨
龍。朱鞠内カラ大學ノ演習林マデ何里アル
カ知リマセヌケレドモガ、北海道デハ五里
ヤ八里鐵道カラ離レテ移民ガ入ルト云フコ
トハ普通ノ狀態ナンデアリマス、是ニ持ッテ
行ッテ此鐵道ヲカケルト云フ必要ハナイノ
デアリマス、斯樣ナ線デアリマスルカラ、先
年此鐵鐵ガ削ラレタ、削ラレテ見マスルト
云フト、折角鐵道ガカカルト樂ンデ居ッタ
此名寄ノ町民ハ甚シク失望シタコトハ、是
ハ如何ニモ氣ノ毒ナ話デアリマスルガ、名
寄ノ町民ハ甚ダ遺憾ニ思ッテ、一方ノ政黨ノ
者ガ他ノ政黨ニ入黨スルト云フヤウナ狀態
デ、是非此線ヲ豫算ニ計上シテ貰ヒタイト
云フコトヲ、非常ナ運動ヲシタト云フコト
ハ、是ハ皆ガ知ッテ居ル事實デアリマス、併
ナガラ斯樣ナ價値ノ少イ所ノ線路ヲ、如何
ニ政黨ニ入黨スルトカ······四百ヤ五百ノ黨
員ヲ得タカラト云ッテ、之ヲマサカニ三土君
ガ取上ゲル筈モナイノデアリマシテ、非常ニ
大變ナ運動ヲシテ居リマシタケレドモ、容
易ニ聽キ容レラレナカッタ、是ハ何人モ知ッ
テ居ル事實デアリマスルガ、是ガ如何ニシ
テ斯ウ云フ風ニ計上セラレタカト云フコト
ハ其裏面ノ消息ハ私共之ヲ知ル由ガアリ
マセヌガ、併ナガラ「北海道タイムス」ト云フ
地方新聞デハ······有力ナ新聞デアリマス、
屈指ノ地方新聞デアリマスルガ、ソレニ依ッ
テ見マスルト云フト、其新聞ニ關係ノアル
所ノ或黨派ノ領袖ガ三土君ニ賴ンデ、泣キ
落シテ、サウシテ之ヲ入レタノデアル、オ
前達ノ運動ダケデハソンナモノハ利クモノ
ヂヤナイト云フコトデ、遂ニ之ヲ人レタン
ダト云フコトヲ、三土君ノ寫眞其外ソレニ
關係ノアル所ノ寫眞ヲ入レテ書イテアル、
量ハ新聞ノ記事デアリマスルカラシテ、興
味半分ニ書クコトモアリマセウシ、私共ハ
一々是ガ事實デアルト云フノデハアリマセ
ヌガ、斯樣ナコトヲ坊間デ言ッテ居ルコト
ト、今迄ノ事實ト照シ合シテ見ルト云フト、
此線路ガ如何ニ鐵道政策ヲ離レタ必要カラ
出來タモノデアルト云フコトヲ知ルコトガ
出來ルダラウト思フ、第二ノ福島縣ノ柳
津、川口間、第三ノ小出、只見間、此線路
ニ付テモ私共ハ頗ル不可解ニ考ヘテ居ルノ
デアリマス、元ト此線ハ鐵道ノ豫定線デハ
一本ノ線デアリマスルガ、先程モ申シマシ
タ通リニ、此中間ヲ切ッテ二ツノ線トシテ、
一方ハ福島縣ノ柳津カラ川口迄、一方ハ新
潟縣小出カラ、福島縣ノ只見迄、此二ツノ
線ニシテ提出セラレタノデアリマス、是ハ
只今上程セラレテアル所ノ敷設法ニハ關係
ガナイ、豫算ニノミ關係ノアル所ノ線デア
リマス、此柳津·川口間ノ線路ノ如キモノハ
鐵道省ノ調査書ニ依リマシテモ、北海道ノ
名寄·朱鞠內ノ線ノ次ニ位スルホド一番惡
イ線、內地デハ一番惡イ線、御承知ノ通リ
ニ此邊ハ非常ナ山地デアリマシテ、山デア
リマシテ殆ド此鐵道ハ川筋ヲ傳ウテ行クダ
ケデ、其兩側ハ山デアル、平地ハ殆ド無イ
ト言ッテモ宜イ位ナンデアリマス、何カ產物
ガアルカト云フト、何物ノ產物ノ聞クベキ
モノハナイ、或ハ鑛山ガアルト云ッテモ、是
モ稼業ヲシテ居ル鑛山デハナイ、或ハ山林
ガアルト云フヤウナ······何時モ斯ウ云フ
線路ヲカケル時ニ產物ト云ヘバ、木材、石
材、薪炭、サウ云ッタヤウナモノニナルノデ
アリマスガ、山林ガアル、山林ガアルト申
シマスルケレドモガ、日本ハ山國デ、人煙
ノ少イ所ニハ皆山林ガアル、山林ガアルカ
ラト云ッテ鐵道ヲカケテ居タナラバ、恐ラク
ハ鐵道ハ奔命ニ疲レルデアラウト思フ、此
線ヲ鐵道會議ニ於テ質問イタシタ方ガアリ
マシタ、ソレニ對シテ最モ要領ヲ得タ所ノ
答辯ハ斯ウ云フノデアリマス、御覽ノ通リ
ニ······此地圖ヲ示シマシテ······御覽ノ通
リニ此地方ハ鐵道ガ無クテ眞白クナッテ
居ル、ダカラシテ此線路ヲ入レテカラ、
モウ少シ黑クシナケレバナラヌト云フ
ヤウナ答辯デアリマシタ、是ハ言葉ハ甚
ダ奇妙ナ、奇矯ナ言デアリマスルケレド
モガ、實ハソレガ、ソレヨリ外ニハ此
鐵道ヲカケル必要ト云フノハナイノデ
アリマス、唯地圖ヲ黑クスルト云フダケ
ガ一ツノ此鐵道ヲカケル必要デアル、昨年
三土鐵道大臣ガ議會ニ提出セラレタル所ノ
ハ、先程モ申シマシタ通リニ主トシテ鐵道
政策ニ基イテ出サレタモノデアリマスルカ
ラシテ、何ンボカ或地方ニ偏シテ居ル、最
モ偏シテ居ッタノハ四國ノ地方デアリマスル
ガ、ソレガ爲ニ關東ノ方デハ非常ニ苦情ガ
出タ、サウシテ福島縣ガ最モ猛烈デアッテ、
黨內ガ治ラナカッタ、先程モ申シマシタ通
リニ鐵道案ノ運命ガ疑ハレル程ノ困難ニ
陷ッタ、三土君モ是ニハホト〓〓困ラレタ
樣子デアッタ、之ニ懲リタノカ或ハ其時ニ默
約ガアッタノカ、明約ガアックノカ存ジマセ
ヌガ、內地デハ最モ利益率ノ惡イ所ノ線路
デアルト銘ヲ打ッテ、此案ヲ提出セラレタ
ノデアリマス、斯樣ニ鐵道ノ必要·······鐵道
政策ニ基イタモノデナクテ、黨內懷柔策ノ
爲ニ出來タ所ノ鐵道デアルノデアリマス、
普通ノ此北海道ノ如キ平野ノアル所デアリ
マスナラバ、拓殖ノ見込ガアルト云フノデ、
國策トシテ鐵道ヲカケテ、假令不利益デモ
其處ヲ開拓スルト云フ見込ノアル所ナラ
バ鐵道ヲカケルノモ私ハ或場合ニハ已ム
ヲ得ナイコトト思ヒマスガ、斯樣ナ山地デ
アッテ、開拓ヲスルト云ッタッテドウモ出來
ル所デナイ、山ノ木ヲ伐ッテシマッタラソレ
切リデ、五十年ナリ三十年ナリト云フモノ
ハ何モ產物ハ無クナッテ來ル、斯樣ナ所ニ唯
面積ニ比例シテ、鐵道ヲカケルト云フコト
ハ、是モ私共ハ承知スルコトノ出來ナイ所
ノ線デアルノデアリマス、以上ハ主トシテ
福島縣寄リノ方ヲ述べタノデアリマスガ、
此片方ノ此小出カラ柳津ニ至ル所ノ線ハ此
只見川ノ谿谷ヲ步イテ行ク所ノ線路デアリ
やく、兩側ハ申シマスル通リニ山デ、唯其
谿谷ノ間ヲ只見川ガ流レテ居ル、其流筋ニ
沿ウテ此鐵道ハカケテ行クノデアリマス、
唯茲ニ最モ考ヘナクチヤナラナイコトハ、
此只見川筋ニハ多大ノ水力電氣ガアルノデ
アリマス、其水力電氣ノ權利ハ東京電燈會
社ガ持ッテ居ルノデアリマシテ、豫算會議ニ
於テ或議員カラ要求セラレタモノデ、玆ニ
提出セラレタ所ノ遞信省及內務省カラ出テ
來テ居ル所ノ書類ヲ見マシテモ、非常ニ大
キナ發電所ガアルノデアリマス、此柳津カ
ラ只見ニ至ル所ノ此沿岸ニ於テ約十箇所餘
リノ發電所ガアリマシテ、總計ガ十八萬「キ
ロ」ニ上ボルト云フコトニナッテ居リマス、
ソレデ東京電燈ハ前年信濃川筋デ十六萬
「キロ」カ、十七萬「キロ」バカリノ發電所ヲ
建設スル爲ニ千三百萬圓カ、千二三百萬圓
ノ金ヲ掛ケテ飯山鐵道ト云フ鐵道ヲカケマ
シテ、是ハ山ノ中デアリマスカラ何モ鐵道
トシテ必要ガナイノデアリマスガ、水力電
氣ニ必要ナ砂利、「セメント」、機械ヲ運搬
スル爲ニ是ダケノ千二百萬圓ト云フ大金
ヲ掛ケテ、鐵道ヲ自分デカケテ居ル、ソレ
ハ僅カデアリマセヌ十七萬「キロ」バカ
リ·····此只見川筋ノ電力ラ總計イタシマス
ルト云フト、十八萬「キロ」ニナル、是ダケ
ノ水力電氣ヲ拵ヘル爲ニハ六百萬圓ヤ、七
百萬圓ヲ、此鐵道ニ要スル位ノ金ヲ、自分
デ鐵道ヲカケテモ然ルベキ程ノ値打ガアル
ノデアリマス、デ此水力電氣ニ要スル所ノ
總費用ガ一億數千萬圓、恐ラク二億圓ニ上
ボルコトデアラウト思フ、斯ウ云フ點ニ付
テ伊澤議員ハ、鐵道會議ニ於キマシテ此事ヲ
質問セラレテ、是ダケノ大キナ水力ヲ開發ス
ルト云フコトハ恐ラク、鐵道省ガ鐵道ヲカ
ケル理由ガアル、東京電燈ノ水利權デアル
ケレドモガ、是ハ國家ノ利權デアルカラ、
之ヲ開發スルノニ鐵道ヲカケルト云フコト
ガ必要デアルケレドモガ、此鐵道ヲカケテ
利益ヲ得ルモノト云フモノハ、殆ド東電ガ
一手ニ此利益ヲ占メルノデアル、デアルカ
ラシテ何トカシテ此限度ニ於テ、東電ヲシ
テ此建設費ヲ負擔セシメタラドウカト云フ
コトヲ伊澤君ガ質問シタコトガアルノデア
リマス、私共モ是ダケノ大キナ利益ヲ得ル
爲ニハ、ソレ位ノ費用ヲ負擔シテモ然ルベ
キデアルト考ヘルノデアリマス、然ルニ其
事ヲ伊澤君ガ言ハレマスルト云フト、鐵道
ノ當局者ハ水力電氣ガ出來ルト云フコトハ
私ハ初耳デアル、左樣ナコトハ初メテ此處
デ伺フノデアルト云フ、斯ウ云フ御答辯デ
アリマシタガ、併ナガラ此水力電氣ガ、
玆ニ是ダケノ大キナ水力電氣、是ホドノ
水力電氣ガアルト云フコトハモット
早ク知レテ居ル所デアリマシテ、必シ
モ是ガ初耳デアルベキ理由ガナイノデ
アリマス、然ルニ如何ナル間違デアルカ知
レマセヌガ、鐵道ノ當局者ハソレハ初耳デ
アル、左樣ナコトハ聞イタコトガナイト云
フ答辯デアリマシタ、是ハ私共ハ何ノ爲ニ
左樣ナ答辯ヲセラレタノデアルカ、私共ニ
ハ能ク理解ガ出來マセヌケレドモガ、併ナ
ガラ左樣ナコトガ初耳デアルト云フヤウナ
コトデハ、鐵道ノ調ベト云フモノハ誠ニ賴
リノナイモノデ、私共ノヤウナ素人デサヘ
知ッテ居ルヤウナ水力電氣ガ、左樣ナモノガ
アルト云フコトヲ私共初メテ聞イタト云フ
コトヲ、政府ノ當局者ガ言フト云フコトハ、
私共ハ政府ノ調ベト云フモノガ、何ニ基イ
テ出來テ居ルモノデアルカト云フコトヲ疑
ハザルヲ得ナイ、此今ノ鐵道會議ニ於キマ
シテ、只見川ノ水力電氣ガ問題トナッタ時
ニ、此鐵道會議ニ於キマシテ此事ガ問題ト
ナッタ時ニ、丁度其場合ニ東電ニ關係ノア
ル所ノ鐵道會議々員ガ居リマシテ、其處デ、
此東電ガ水力ヲ······水利權ヲ有シテ居ルケ
レドモガ、併ナガラ今東電ハ是ダケノ仕事
ヲスル資力モ無イシ、今之ニ掛カル考ヘハナ
イ、今掛ラウトシテ居ルモノハアノ福島縣
寄リノ柳津デ仕事ヲスルノデアッテ、此只見
川筋ノ鐵道ノ建設ニハ關係ガナイト云フコ
トヲ、東電ニ關係ノアル議員ガ述ベラレマ
シタガ、併ナガラ成程今直グ掛ラウト云ッテ
モ、線モ何ニモナイ所ニ、水力電氣ノ工事ニ
掛カルコトハ出來ナイ、掛カルト云フコトハ
鐵道ヲ建設シテカラノ上ノコトデアル、今
掛カル見込ガナクテモ、鐵道ガ出來タ頃ニ
ハ水力電氣ニ掛カルニ極マッテ居ル、是ハ單
ナル遁辭デアリマシテ、此鐵道ガ出來ル頃
ニナリマスト云フト丁度今ノ水力電氣ニ
取掛カル好時期ニ至ルデアラウト私共ハ推
測スルノデアリマス、デアリマスカラ若シ
斯樣ナコトガ事實デアルナラバ、私共モ伊
澤君ト同ジヤウニ、是ダケノ大キナ水利權
ヲ活用スルコトガ出來ルナラバ六百萬圓
位ノ費用ヲ此處ニ投ジテモ、是ハ假令國家
ノ資本デアラウガ、電氣會社ノ資本デアラ
ウガ、通シテ然ルベキモノデアラウト私ハ考
ヘル、デアリマスルカラ之ヲ、此水利權ヲ活
用スルト云フコトニ付テ異議アリマセヌケレ
ドモガ、併ナガラ其建設費ノ大部分ト云フモ
ノハ、之ニ依ッテ利益ヲ受ケル所ノ東電ニ負
擔セシメルト云フコトガ、最モ人ノ疑惑ヲ解
ク所以デアラウト思フ、此際三土君ニ伺ヒ
タイノハ、若シ是ガ、此豫算ガ此儘通過シ
タナラバ、或ハ其利益ヲ受ケル所ノ限度ニ
於テ、東電ヲシテ負擔セシムル所ノ意思ガ
アルヤ否ヤト云フコトモ、此機會ニ於テ鐵
道大臣カラ御說明ヲ願ヒタイノデアリマ
ス、第四ハ九州ノ添田·日田間ノ問題デアリ
マス、此線ハ此處ニ上程セラレテ居ル所ノ
敷設法中改正法律案ニ關係ノアル所ノ線デ
アリマスルガ、此附近ノ線路狀態ヲ一應申上
ゲテ置カヌト云フト、御理解ガ行キニクイダ
ラウト思ヒマスガ、是ハ九州ノ部デアリマ
シテ、此日田ト云フ所ハ、是ハ九州デハ田
舍ノ山ノ中ノ都邑デハアリマスケレドモ、
九州デ有名ナ所デアリマス、此日田ト云フ
所ニ久大線ト申シマスル、大分カラ久留米
ニ至ル所ノ線ガ、今年中ニハ此日田ト云フ
所デ、兩方カラ工事ヲシテ來ルノガ合致シ
テ、久大線ガ全通スルコトニナッテ居ルノデ
アリマス、御覽ノ通リニ日田ト云フ所ハ山
間ノ都邑デアリマシテ、今日迄マダ鐵道ガ
一ツモ通ジテ居ナイ所デアリマス、尤モ先
年、久留米ト日田トノ間ニハ小サナ輕便鐵
道ガアッタノデアリマスケレドモ、此久大線
ガ出來ルト云フト營業ガ成立タナイト云フ
理由デ、小川鐵道大臣ノ時ニ廢業シテ、政
府カラ補償ヲ取ッタ、補償ヲ取ッテ廢業シタ
ノデアリマス、是ガ補償ヲ取ル案、此補償
ヲヤル案ガ議會ニ出マシタ時ニ私ハ、マダ
久大線ガ出來テ居ナイ中ニ、久大線ガ出來
タナラバ營業ガ成立タヌトシテ止メテシ
マッタナラバ、日田ト久留米トノ間ノ交通ガ
出來ナクナリハシナイカ、又此久大線ガ出
來テカラ廢業ヲ許シタ方ガ宜イヂヤナイカ
ト云フ質問ヲ致シマシタ、所ガ當時ノ當局
者ハ、乘客ノ大部分ハモウ旣ニ自動車ニ移ツ
テシマッテ居ル、荷物ハ大シテ言フニ足ルモ
ノハナイ、デアルカラシテ是ハ廢止サセテ
モ差支ナイト云フコトデアッタ、ソレカラ今
日ニ至ル迄三年以上經ッテ居ル、然ルニ久大
線ハ色ミナ故障デ全通スルコトガ出來ナイ、
日田ト云フ所ハ鐵道ガ無クテ、通路ガ無ク
テ、貨物ノ通路ガ無クテ因ッテ居ル、此私設
鐵道ハ好イ時ニ廢業シテ好イ補償ヲ貰ッテ、
私設鐵道ハホク〓〓デアリマスケレドモ、
日田ノ交通ハ非常ニ阻害サレタ、是ニハ色
色ノ評判モアリマシタケレドモガ、兔ニ角
サウ云フ風ナ狀態デアル、併シ輕便鐵道デ
ハアリマスケレドモ鐵道ヲ引ッ剝ガシテ、サ
ウシテ三年ニ及ンデモ大シタ問題ヲ起サナ
イ
〔副議長伯爵松平賴壽君議長席ニ著ク〕
成程地方ハ困ッタニ相違アリマセヌガ、困ッタ、
困ッタト言ヒナガラ大問題ヲ起サナイ、議會
ナドモソレヲ聞イタコトノナイ程ノ所デア
ル、是程ノ大問題、鐵道ヲ引ッ剝ガシテ三年
ニナッテ、ソレデ大シタ問題ガ起ラナイト云
フノガ日田ノ地方ノ値打デアル、左樣ナ値
打ノアル所ニ、左樣ナ貧弱ナ値打ノ所ニ今
度ハ、今年ニ至ッテハ久大線ト云フ立派ナ大
キナ幹線ガ繋ガッテ來ルノデアル、此久大線
ガ出來マシテ、日田ト云フ所ハ久留米カラ
博多、若松、小倉、門司ト云フヤウニ自由
ニ兩方、何方カラデモ〓ッテ繋ガルヤウニ
ナッテ來ルノデアル、ソレニ報ユルダケノ貨
物ヤ客ガアルカ無イカト云フコトハ頗ル問
題ダト思ッテ居ル、然ルニ、然ルニ又此日田ヲ
中心トシテ、此日田ト添田トノ間ヲ繋イデ、
サウシテ北九州ニ日田ヲ繫ガナケレバナラ
ヌト云フ程ノ必要ガアルカドウカト云フコ
トハ、私非常ニ問題ダト思フ、而モ此處ハ
豫定線ニナイ所デアリマシテ、豫定線ニナ
イト云フコトハ此處ハ大變大キナ山ガアッ
テ、所謂彥山ノ山脈デアリマシテ、之ヲ越
エテ行カナケレバナラヌ、デアリマスカラ
シテ豫定線サヘ付ケテナカッタ、ソレヲ今度
ハ豫定線ヲ追加シテ、サウシテ此處ニ新シ
イ線ヲカケヤウト云フコトニナッテ居ル、斯
ウ云フ風ナ鐵道ガ果シテ要ルノデアルカ、
久大線デマダ不足デアルカ、ソレ程ノ貨物
ガアリ、客ガアルノカト云フコトハ、私共
非常ナ疑ナキヲ得ナイノデアリマス、ソレ
デ此久大線ガアル上ニ持ッテ行ッテ、又日田·
添田ト云フ線ヲ加ヘル必要ガアルカ無イカ
ト云フコトガ疑問デアル上ニ、此日田·添田
ト云フ所ノ線ヲ拵ヘタ爲ニ、非常ナ政治上
ノ罪惡ガ行ハレテ居ルト云フコトヲ諸君ニ
申上ゲナケレバナラヌノデアル、ト申シマ
スルノハ、此圖面ヲ御覽下サイマスト云フ
ト御分リニナル通リニ、日田ト中津トノ間
ニハ豫定線ガアルノデアリマス、法律デ定
メタ所ノ豫定線ガアル、十文字ノ繫ギ、十字
繫ギノ線ガ之ガ日田·中津ノ豫定線デアル、
日田ト云フ所ヲ北九州ト繋グノニ此豫定線
ヲ通ルト云フコトガ、大正十一年以來約束
セラレタ所ノ豫定線デアル、是ガ添田ノ方
ヘ持ッテ行ッテ繫グコトニナリマスルト云フ
ト日田ト中津ニ至ル所ノ豫定線ト云フモ
ノハ全ク效力ヲ失ッテ、最早久大線デスラ
日田ト云フ所ノ旅客ヤ貨物ハ十分デアラウ
ト思フ所ニ、尙ホ添田ト日田トノ間ヲ繋イ
デ、其上ニ尙ホ日田ト中津トヲ繫グト云フ
コトハ、最早二十年ヤ三十年必要ガアラウト
思ハレナイ位ノ所デアリマス、是ガ此豫定
線ガ效力ヲ失フト云フダケデアルナラバ大
シタ問題デナイノデアリマスケレドモ、併
シ此日田ト中津トノ間ノ此豫定線ノ上ニ耶
馬溪鐵道ト云フ鐵道ガアル、ソレハ元ト明治
ノ末年、大正ノ初メ頃ニ出來タ所ノ鐵道デ
アリマスガ、其出來タ時ニハ二呎六吋ノ小
サナ輕便鐵道デアッタ、大正十一年ニ此豫
定線ガ出來タ爲ニ、此耶馬溪鐵道ハ線路ヲ
延長シヤウト云フコトヲ鐵道省ニ出願シタ、
所ガソレナラバ此豫定線ノ上ニ線路ヲ拵ヘ
テ、サウシテ二呎五吋ノ小サナ輕便鐵道デ
ハ國有ノ豫定線ノ上ニカケルノニハ不都合
デアルカラシテ、之ヲ三呎六吋ノ鐵道ニ改
築シロト云フコトヲ嚴命サレタノデアル、
一旦ハ耶馬溪鐵道ハ此鐵道省ノ命令ヲ奉ジ
マシタケレドモ、當時財界ガ甚ダ惡カッタ爲
ニ何トカシテ、此期限內ニ軌幅ヲ改築スル
コトガ出來ナイカラ、モウ少シ期限ヲ延バ
シテ戴キタイト云フコトヲ出願シタ、所
ガ元田鐵道大臣ハソレヲ拒絕、却下イタシ
マシテ、左樣ナコトハ罷リナラヌ、期
限通リニ拵ヘナケレバ權利ヲ失フト云フ
嚴命ヲ下サレタ、耶馬溪鐵道ハ政府
ノ命令デアリマスカラ已ムヲ得ズソレニ
從ッテ、銀行カラ金ヲ借リテ改築ヲシタ、是
ハ何故サウ云フ風ナコトヲスル、株主モ此
增資ニ同意シタカ、銀行ハドウシテ斯ウ云
フ鐵道ニ金ヲ貸シタカト云フコトハ是ハ
豫定線デアルカラシテ、銀行モ金ヲ貸シ、
地方ノ人モ增資ニ應ジタ、然ルニ今囘ニ至ッ
テハ······前ノ元田鐵道大臣ガ左樣ナコト
ハ罷リナラヌカラ期限通リニ拵ヘロト云フ
コトハ豫定線デアルカラデアル、所ガ今度
ハ新タニ別ノ方ニ口ヲ開ケテ、其方ニ豫定
線ヲ作ッテ、其方へ直ニ鐵道ヲ九年度カラ拵
ヘヤウ、斯ウナルト云フト此豫定線ト云フモ
ノハ全ク價値ヲ失ッテシマフ、耶馬溪鐵道ノ
如キハサウ云フ狀態ニナルコトデアレバ、
昔ノ二呎五吋ノ遊覽鐵道デアッタ方ガ遙ニ
宜イノデアル、是ハドウ云フ譯デ斯ウ云フ
ヤウナ惡政ガ行ハレルノデアルカドウカト
云フコトハ、私共ハ誠ニ其意味ガ分ラナイ
ノデアル、政府ノ說明ニ依リマスト云フト、
此日田ト添田ノ間ヲ繫グ所ノ線ト、日田ト
中津ノ間ヲ繋グ線ヲ比べルト云フト、日田
ト添田ヲ繋グ方ガ金額ガ安ク出來ル、斯ウ
云フ說明デアリマスルケレドモ、ソレノ中ニ
ハ耶馬溪鐵道ヲ買收スル所ノ費用ガ含ム、
耶馬溪鐵道ヲ買收スル費用ト云フモノハ、
先程申シマシタ通リ、私設鐵道ガ既ニ國家
ノ資本ヲ使ッテ出來テ居ル、是ハ何トカシテ
利用スルヤウナ方法ヲ講ズルト云フコトガ
賢明ナ策デナクチヤナラヌ、然ルニ斯樣ナ
線路ヲ拵ヘルト云フコトハ、誠ニ私共ハ解
スルコトガ出來ナイ、此日田·添田間ノ鐵
道ニハ炭ガ出ルト云フコトデアル、併シ其
炭ノ出ルノハズット北ノ方ニ寄ッテ、日田カ
ラ五哩バカリノ所ニ炭ガ出ル、其炭坑ハ九
州ノ有名ナル炭坑ノ持主ガ持ッテ居ル、サウ
シテ此日田カラ添田迄持ッテ來マスト云フ
ト、此鐵道ガドウ云フ狀態ニナルカト云フ
ト、此處ニ示シテアリマス小サナ梯子ノヤ
ウナ線ノ私設鐵道デアリマスルガ、此小倉
鐵道ト云フ私設鐵道、此私設鐵道ノ小倉鐵道
ニ繫ガルノデアリマス、是ガ繋ガルト云フ
ト小倉鐵道ノ買收ヲ運動スル爲ニ非常ニ利
益ニナル、此炭坑ノ持主ハ小倉鐵道ノ······
持主ガ小倉鐵道ノ關係者デアルカドウカ私
ハ承知シマセヌケレドモ、併ナガラ此間ニ
何等カノ事情ガ含ンデ居ルノデハナイカト
云フコトヲ私共ハ疑ハザルヲ得ナイノデア
リマス、第五ハ四國ノ線デアリマスルガ、
此線ニ付キマシテハ私ハ多クノコトヲ知リ
マセヌ、ナシタ知識ヲ持ッテ居リマセヌ、併
ナガラ是ガ先程申シマシタ通リノ分布ヲ主
眼トスル所ノ線デアルコトハ申ス迄モナ
イ、カ州ニモアリ、北海道ニモアリ、本州
ニモアルカラ、四國ニモナカラザルベカラ
ズト云フノデ選ビ出サレタノガ此須崎·窪
川間ノ線デアラウト思フ、此線路ト云フモ
ノハ先程モ鐵道大臣ガ說明セラレマシタ通
リニ、四國循環鐵道ヲ急グ所ノ意味ノ鐵道
デアリマス、四國循環鐵道ト云フヤウナ線
路ハ甚ダ贅澤ナ話デアリマシテ、四國ヲ循
環シテ廻ッテ步カウト云フ、サウ云フ暢氣ナ
旅客ハサウ澤山アル譯デハナイ、又貨物ニ
致シマシテモ、四國ヲ循環シテ廻ッテ步カ
ウト云フ貨物ハ恐ラクアリマスマイ、斯樣
ナ循環鐵道ト云フヤウナコトハ普通素人ガ
考ヘラレル所ノコトデアリマスルケレドモガ、
斯ウ云フ風ナ旅客貨物ノ流レト云フモノハ
甚ダ少イノデアリマス、大體ニ於テ中央ニ向ッ
テ急グノガ本當デアリマス、四國ニハ此中央ニ
向ッテ急グベキ線ガ澤山殘ッテ居ル、何ヲ苦ン
デ斯樣ナ線ヲ、四國循環鐵道ト云フヤウナモ
ノヲ急ガルルノデアルカ私共ハ意味ガ分ラヌ、
是モ全ク今ノ全體ノ分布ヲ趣意トスル所
ノ、政黨懷柔策ニ出發シタモノデハアルマ
イカト云フコトヲ疑ハザルヲ得ナイノデア
リマス、以上申上ゲマシタ通リ此五ツノ線
ト云フモノハ、誠ニ其鐵道ノ政策カラ考ヘ
マスルト、本筋カラ考ヘマスルト云フト、
誠ニ意味ノナイ所ノ鐵道デアリマスル、三
土君ハ就任以來建設集中主義ヲ執リマシ
テ、既定ノ線路デモ工事中ノ線路ノ完成ヲ
急イデ、假令著手シタモノデモ餘リ有用デ
ナイモノハズット後年度ニ延バス、又有用ナ
線ハ年度ヲ繰上ゲテヤルト、今年一年問繰
上ゲラレルモノハ十一線ノ多キニ及ブ、其
外年度ハ繰上ゲナイケレドモ、工事ヲ繰上
ゲルト云フヤウナコトヲセラレテ、非常ニ
私共ガ尊敬ヲ拂ッテ居ルニ拘ハラズ、尙ホ
三土君ハ斯ウ云フ風ナ、私共カラ考ヘテハ
譯ノ分ラヌ線路ヲ計畫セラレルト云フコト
ハ何ノ意デアルカト云フコトヲ私共ハ疑
ハザルヲ得ナイノデアリマス、齋藤内閣ハ
先程モ申シマシタ通リニ政黨ノ不信用ヲ恢
復スル、綱紀ヲ振肅シテ政界ヲ淨化スルト
云フコトヲ一枚看板トシテ立タレタ內閣デ
アルニ拘ハラズ、斯樣ナモノガ、五·一五事
件ノ記憶ガ薄ラグト同時ニ、斯樣ナ政策ガ
ボツ〓〓ト此議院ニ提出セラレルヤウニ
ナッタト云フコトハ、誠ニ嘆ハシイコトデア
リマス、說〓デ世態ガ直ルモノデナイノデ
アリマス、實物ノ〓育ガ非常ナ力ヲ占メル、
政黨ガ黨利ノ爲ニ國家ノ公器ヲ濫用スルト
云フコトヲマザ〓〓見セ付ケテ、サウシテ
思想ヲ善導シヤウト云フヤウナコトハ、是
ハ迚モ出來ルコトヂヤ私ハナイト思フ、小
川鐵道大臣ガ大買收案ヲ出シテ、貴族院ガ
之ヲ修正シテ不成立トナリ、床次鐵相ガ又
多數ノ鐵道ヲ買收スル案ヲ拵ヘラレタ、是
モ不成立ニナッタ、ソレデ國家ガドウナッタ
カト云フコトヲ考ヘテ見ルト云フト、何ト
モナッテ居ナイ、コンナモノハ無カッタ方ガ
宜カッタ、私ハ今度ノ此新線計畫デモ、是
ハ何ノ爲ニ必要ガアル、是ハ能ク御考ニ
ナッテ、私ハ直ニ潰セト云フコトヲ申上ゲル
ノデナクテ、一年デモ二年デモ御考ニナッ
テ、ドウシテモ必要ダト云フナラバ、四十
「キロ」ヤ五十「キロ」ノ鐵道ハ二年カ三年掛
カレバ出來ル、ソレデモ遲クハナイ、鐵道
會議ニ於テ或議員ガ何故ニ、斯樣ナ四十
「キロ」カ五十「キロ」ノ線ガ五年六年ト掛カ
ルノハドウ云フ譯カト言ッテ、不思議ガッテ
質問セラレタ方ガアル、是ハ單ニバラ撒ク
爲ニ斯ウ云フ風ニシタニ過ギナイ、眞實必
要ガアルナラバ、其時ニ二年カ三年經ッテ
出來ル、先年私共同志僅ニ十五人カ二十人
ガ此製鐵合同案ニ反對イタシマシテ、併ナ
ガラ多數ヲ以テ此合同案ハ通リマシタガ、
併ナガラ今日ニ至ッテ、此製鐵合同問題ニ付
テ我ミガ憂慮シ我ミガ論ジタコトガ、現在其
通リニナッテ來ツツアル、遂ニ今年ノ議會ニ
於キマシテ綱紀問題ニ火ヲ點ケルヤウナ狀
態ニナッタト云フコトハ、矢張リ此製鐵合同
問題ガ起リデアッタト考ヘルノデアリマス、
私共此鐵道建設案ガ一年ヤ二年通ラナカッ
タ所ガ、決シテ國家ガドウモナルモノデナ
イ、此八百萬圓宛御增シニナッタノハ、是ハマ
ア今迄ノ新線ニ御使ヒニナッテモ澤山デア
ル、外ノ方ニ金ガ要ラヌト云フコトデアルナラ
バ〓迄アル所ノ鐵道ニ御掛ケニナッテ十分デ
アル、斯樣ナ案ガ易ミト本院ヲ通過スルヤウ
ナコトニ至ッテハ私ハ議院ノ信用ニモ關ハル
モノデハナイカト、私ハ考ヘテ憂慮スルノ
デアリマス、併ナガラ之ニ對シテハ政府ノ
當局者トシテハ、相當ノ御議論モアリマセ
ウシ辯明モアラウト思フ、一應其辯明ヲ伺
ヒタイト思フノデアリマス
〔國務大臣三土忠造君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X02319340305&spkNum=18
-
019・三土忠造
○國務大臣(三土忠造君) 靑木君ノ御質問
ニ對シテ御答ヲ申上ゲマス、今囘新線計畫
ヲ提案イタシマシテ御協贊ヲ仰イデ居リマ
スルガ、之ニ付キ如何ニモ黨利黨略ニ依ッテ
線路ヲ選定シタヤウニ仰シヤラレタノデア
リマスガ、是ハ私ト致シマシテハ甚ダ心外
ニ存ズル次第デアリマス、私ハ鐵道大臣ニ
就任イタシマシタ時カラノミナラズ、餘程前
カラ左樣ナ非難ヲ屢〓世間カラ受ケルコトヲ
耳ニ致シマシテ、常ニ之ヲ遺憾ニ思ウテ居
ル者デアリマス、從テ私ハ二十五年間議員
生活ヲ致シテ居リマスルケレドモ、鐵道ノ
建設ニ付キマシテ地方へ參リマシテモ、未
ダ一囘モ政黨ニ之ヲ利用シテ彼此レ申シタ
コトハナイノデアリマス、私ノ〓里ニ於キ
マシテモ鐵道運動ガアリマシタガ、私ハ皆
押ヘテ、政府ハ技術及採算上カラ鐵道ヲカ
ケルノデアルカラシテ、當然カケルベキモ
ノカラカケルノデアルカラ、運動ハ無用デ
アル、一切運動ハ要ラヌト申シマシテ、
切運動ヲ押ヘタヤウナ次第デアリマス、鐵
道大臣ニ就任イタシマシテモ、兎ニ角世間
ノ非難ノアリマスコトハ多少事實デアリマ
ス、ドウシテモ地方ガ非常ニ希望イタシマ
スカラシテ、熱心ニ申シテ參リマスト、人
情ニ絆サレテ、其結果黨利黨略ニ陷ルト云
フコトハ免レヌ、是ハドウシテモ匡正シナ
ケレバナラヌト云フ、斯ウ云フ私ハ考ヲ以
テ、鐵道大臣トシテ臨ンデ居ルノデアリマ
スカラ、黨利黨略カラ脫却スルト云フコト
ガ私ノ重大使命ト考ヘテ居ルノデアリマス、
所ガ今囘選定イタシマシタモノガ考ヘヤウ
ニ依リマスト、靑木君ノ仰シヤルヤウニモ
見ラレマスガ、靑木君ノ仰シヤラレマスノ
ハ、第一分布ノ狀態ヲ見テモ、北海道、九
州ニ亙リマシテ、大體ニ割振ッテアル、是ハ
黨利黨略デハナイカト云フコトヲ言ハレマ
スガ、丁度議員諸君ノ御手許ニ地圖ガゴザ
イマスカラ御覽ヲ願ヒタイノデゴザイマ
ス、本島ニ於キマシテ福島縣以北ニハ一ツ
モアリマセヌ、又東京以西、下關迄ニハ一
線モ入レテナイノデアリマス、若シ分配公
平主義デ行キマスナラバ、福島縣內ニ二線
モ新線ヲ入レズシテ、或ハ東北ニモウ一ツ、
中國、四國方面ニモモウ一ツト云フコトヲ
致シタデアリマセウガ、サウ云フコトハ少
シモ眼中ニ置イテ居リマセヌ、唯此一線每
ニ付テノ御話デアリマスガ、名寄·朱鞠内ノ
鐵道デアリマス、是ハ先年豫算ニ計上シテ
アッタノデアリマスガ、江木鐵道大臣ノ時分
ニ削除セラレタ、當時私ハ削除セラレタコ
トモ御尤ト考ヘテ居リマス、當時ニ於キマ
シテハ雨龍電力會社ノ貯水池ノ問題モアリ
マスルシ、ソレカラ工事費ニ非常ニ金ガ掛
カルノデ止メラレタト思ヒマス、然ルニ今
日ニ於キマシテハ此電力發電所ノ貯水池ヲ
北廻リヲ致シマスコトガ、寧ロ便利デアルヤ
ウニナッテ參リマシタノト、ソレカラ建設技
術ノ進步ニ依リマシテ、建設規程ノ改正、
運輸規程ノ改正ノ結果簡易線デヤレマスノ
デ、割合ニ經費ガ少クテ出來ルノデアリマ
ス、同時ニ此方面ノ開墾計畫ガ段々進ンデ
參リマシテ、北海道長官カラモ熱心ニ之ヲ
希望シテ參ッタノデアリマス、現在ノ長官ハ
私ガ申スマデモナク、近來稀ナル名長官ト
私ハ信ジテ居リマス、北海道開拓ニ付キマ
シテハ餘程廣イ眼ヲ以テ、公正ニ考ヘテ、
非常ニ良クヤッテ居ルト思ヒマスカラ、
鐵道ノ新線設置ニ付キマシテモ、北海
道長官ノ意見ヲ私ハ餘程尊重スルノデア
リマス、北海道長官ハ他ノドノ線ヨリモ先
ヅ此線ヲヤッテ貰ヒタイ、斯ウ云フノデ
アリマス、ソレハ「オホーツク」海ト日本海
方面ヲ結付ケルト云フコトガ一ツ、ソレカ
ラ幌稚線ノ終點へ名寄カラ結ビ付ケマスコ
トガ、此方面ノ全體ノ關係カラ宜シイト云
フコトト、主トシテ北海道拓殖計畫ハ此方
面ニ力ヲ用ヒテ段々ニヤッテ行ク方針ニナッ
テ居ルカラシテ、旁、以テ此方ガ宜イカラ是
非ヤッテ貰ヒタイト云フコトガ、最モ北海道
長官ノ熱心ナル希望デアリマシタ、私ハ一
昨年モ昨年モ二度北海道ニ參リマシタガ、
北海道程鐵道ノ運動ガ激シイ所ハナイノデ
アリマス、各方面カラ運動ニ參リマシタ
ガ、私ハ札幌デ歡迎會ノ席上デ申シタノデ
アリマス、諸君ガ非常ニ運動サレルガ、鐵
道ニ對シテハ私ガ鐵道大臣ヲシテ居リマス
名取ハ少クトモ其間ダケハ運動ハ無用デ
アル、東京マデ多勢來ラレテ旅費ヲ費スコ
トヲ見ルト云フトゾットスル、一切サウ云フ
コトヲスル必要ハナイ、鐵道省ハ鐵道省ノ見
ル所ニ依ッテ鐵道ノ建設ヲシテ行クカラシ
テ、一切御無用デアルト云フコトヲ强ク申
シタ次第デアリマス、左樣ナ次第デ北海道
長官ノ意見ニ依ッテ拓殖計畫トノ關係上、ソ
レカラモウ一ツハ採算上、又近頃ニナリマ
シテハ建設運輸規程ノ改正ガ出來マシタ結
果トシテ、廉ク出來ルカラヤラウ、斯ウ云
フコトニナッタノデアリマス、ソレカラ其次
ニ會津方面ノ二線デアリマスルガ、只見·小
出間ノ鐵道ハ是ハ地圖デ御覽ニナレバ分リ
マスル通リ、常越線ガ出來マシタノデ、奧
地開發ノ意味ニ於キマシテ只見附近マデ鐵
道ヲ延バシマスルト、是ガ一番東京へ近イ
ノデアリマス、彼ノ物資ノ相當アリマスル
只見ヲ開發イタシマシテ、之ヲ東京方面ヘ
繫グト云フコトハ、最モ都合ガ好イノデア
リマスカラ、之ヲ選ンダノデアリマス、ソ
レカラ會津方面カラ出マス所ノ柳津·川口
間ノ鐵道ガアリマス、是ハ此線ダケ申シマ
ストサウ利益線デアリマセヌケレドモ、相
當培養線ト致シマスルト有益デ、培養ト此
線ノ利益ト兩方合セマスルト、鐵道省ノ計
算デハ五分六七八厘ニ付クノデアリマス、
ソレ位ナ純益ノ擧ッテ來マス鐵道デアリマ
スカラシテ、此方面開發ノ爲ニ是非ヤリタ
イ、斯ウ考ヘテ居ルノデアリマシテ、此方
面ノ地圖カラ見マスルト、全ク白イ地圖ニナッ
テ居ル、此所ヲ黑クスル爲ニトヤルノデア
ル、ソンナコトヲ申シタコトハ決シテアリ
マセヌ、靑木君ガ左樣ニ御考ヘニナッタノ
ハ或ハ言葉ノ誤解デナイカト思フノデア
リマスガ、兔モ角彼ノ方面ハ鐵道ガ無イノ
デアリマス、產業開發ノ見地カラ申シマシ
テモ、奧地開發ノ積リデドウシテモ兩方カ
ラヤル、將來出來レバ之ヲ繫グ、斯ウ云フ
積リデアリマス、唯此只見·小出間ノ只見
川ノ流域ニ於キマシテ、東京電燈及新潟電
力ノ發電所計畫ガアルノデアリマス、之二
付テ伊澤君ガ鐵道會議デモ御質問ニナリマ
シタガ、此計畫ノアルコトハ無論鐵道省ノ
者モ存ジテ居ルノデアリマスガ、アノ時分
ニ政府ノ者ガ、ソレハ全ク初耳ダト申シマ
シタヤウニ聞エマシタガ、ソレハサウデナイ
ノデアリマス、此發電計畫ハ幾ツモアリマシ
テ、箇所ハ幾ツモアルノデアリマスルガ、
只見川ノ流域ガ最モ多イ、主トシテ東京電
燈ガ持ッテ居ルノデアリマス、東京電燈ハ水
利使用ノ許可ハ得テ居リマスルケレドモ、
未ダ工事實施ノ施工許可ハ受ケテ居ラヌノ
デアリマス、一ツモ受ケテ居リマセヌ、又
東京電燈ノ電力供給其他ノ資本關係カラ
申シマシテモ、之ヲサウ早クヤルト云フヤ
ウニハ見テ居リマセヌ、故ニ東京電燈ガ直
グニ仕事ヲ始メルノデアルカラ、利益ガア
ルト云フヤウナコトヲ言ハレマスルノニ對
シテ、左樣ナコトハマダ考ヘテ居ラヌト云
フ意味ヲ申シタノデアリマシテ、計畫共モ
ノガ有ルト云フコトヲ知ラヌト申シタノデ
ハナカラウト思フノデアリマス、今日デ
モ遞信省ノ見ル所デハ電力供給ノ關係カラ
申シマシテモ、マダ急イデ東京電燈ガ事業
ヲ開始スル必要ハナカラウト見テ居ルヤウ
デアリマス、從テ今日迄ノ所ハ一箇所モ事
業ノ施工認可ハ得テ居ラヌヤウナ狀況デア
リマス、唯此鐵道ガ出來マスルト云フト、
東京電燈ガ仕事ヲ始メマスルノニ、材料品
ヲ運搬スルノニ大變都合ガ好イ、非常ニ利
益ニナルカラ、鐵道ガ出來タラヤルカモ知レ
ナイ、其場合ニ於キマシテハ、東京電燈ハ相
當ノ利益ヲ得ルカラ寄附ヲサセテハドウカ
ト云フ話デアリマスガ、所ガ私共ノ考ハ非
常ニ違フノデアリマス、鐵道省ガ仕事ヲ致
シマスルノニ、其地方ノ特別ナ必要ニ依ッ
テ、例ヘバ引込線ヲ入レルトカ、或ハ何處ニ
停車場ヲ設ケルトカ云フ場合ニ、受益者ヲ
シテ負擔ヲセシメルト云フコトハ致シマス
ルケレドモ、國ガ鐵道ヲカケル結果トシテ、
何者ガ利益シヤウガ、利益スル人ガ多イ程
結構ナノデアリマス、若シ受益者ヨリ利益
ガアルカラ寄附ヲ取ルトナリマスルト云フ
トドノ線モ全部取ラナケレバナラヌ、殊
ニ鐵道ノカカリマスル如何ナル川デモ、大
キナ川ニナリマスルト云フト大抵發電所ナ
ドガアリマス、又自ラ發電計畫モアリマス、
ソレカラ利益ガ得ラレルカラ寄附ヲ取ルト
云フコトハ、私ハ考ヘタコトハアリマセヌ、
內務省ニ於キマシテモ、遞信省ニ於キマシ
テモ、ソレハ許サナイノデアリマス、何故
ナレバ、ソレダケ寄附イタシマスレバ、其
寄附シタ金ダケ投下資本ガ多クナリマスル
カラシテ、電力代ガ高クツイテ、結局需用
者ニ轉嫁サレルノデアリマス、我ミハ假令
如何ナル利益ガアリマシテモ、國ガ强制シ
テ寄附ヲ取ルヤウナコトハ宜シカラザルコ
トト考ヘテ居リマスカラ、非常ニ考ガ違フ
ト云フコトヲ申上ゲテ置キマス、ソレカラ
添田線デゴザイマスガ、是モ地圖デ御覽ニ
ナリマスル通リ、添田·日田間ヲ繫ギマスト
云フコトハ、明年完成イタシマス久大線······大
分カラ久留米へ參リマスル線ト、ソレカ
ラモウ一ツハ、ソレカラ分岐イタシテ居リ
マスル宮原線、此線ガ完成イタシマスルト
云フト、此方面ト北九州トヲ繋グ必要ガア
ルノデアリマス、北九州ト繫グト申シマス
ルコトハ、福岡縣ノ鑛業中心地へ繫グコト
ガ最モ必要デアリマスルコトハ申スマデモ
ナイノデアリマス、然ルニ何故是マデノ敷
設法ニ於テ、耶馬溪鐵道カラ日田ヘ繫グ
ヤウニシテ居ッタカト申シマスルト云フ
ト、此添田·日田間ハ矢張リ工事ガ難工
事デアリマシテ、非常ニ勾配ガキツイト
云フノデ、鐵道ノ建設ハ不可能デアルト云
フコトカラ、豫定線デ只今ノヤウニ定ッテ
居ッタノデアリマス、從テ耶馬溪鐵道會社ト
致シマシテハ、豫定線デアリマスカラシ
テ、何レ政府ガ之ヲ貫通スル、サウシテ鐵
道ハ買收サレル、斯ウ聯絡ガ付キサヘスレ
バ誠ニ結構デアルカラト云フノデ、資本ヲ
投下シテ餘程擴張ヲ致シタノデアリマス、
其事情カラ申シマスルト云フト、誠ニ氣ノ
毒ニ考ヘテ居ルノデアリマシテ、私ハ之ニ
對シテドウスルカト云フコトヲ今考慮イタ
シテ居リマスルガ、併シ大キナ眼ヲ以テ見
マスルト云フト、此久大線ノ沿線カラ北九
州ヘ繫グト申シマスルト云フト、中津ヘ繫
グノト八幡、若松方面へ繋ギマスルノトハ、
問題ニナラヌ程違フノデアリマス、比較ニ
ナラヌ程一方ノ方ガ必要ナノデアリマス、
中津ヘ繫ギマシテソレカラ門司ヘ出テ參
リ、福岡縣ノ鑛業地帶ヘ參リマスルノニハ
餘程迂廻ヲ致シマス、所ガ日田·添田間ヲ
繫ギマスト云フト一直線ニ向ヒマスカラ
非常ニ便利ニナルノデアリマスカラ、永遠
ノ國家政策ヲ考ヘマスルト云フト、斯ウ致
スヨリ外ナイノデアリマス、ソレガ何故出
來ルカト申シマスト云ソト、先到申シマシ
タ名雨線ト同ジヤウニ、建設規程ノ改正、
運輸規程ノ改正ニ依ッテ、三十分ノ一ノ勾
配デモ工事ガヤレマスルノデ、其事ガ近頃
定リマシタノデ、此線ヲ採ルコトニ致シタ
ノデアリマシテ、其外何ノ意味モアリマセ
ヌ、ソレカラ四國デアリマスガ、四國ノ須
崎·窪川間ノ鐵道デアリマス、是モ何レカケ
ナケレバナラヌ鐵道デアリマシテ、一九九
山林地帶ヲ控ヘ、一方ニ海岸ヲ控ヘテ居リ
マシテ、水產物、林產物ヲ初メト致シマシ
テ、相當物資ハアルノデアリマス、之ヲズッ
ト宇和島邊マデクッ付ケマスカ、クッ付ケマ
セヌカマダ定メテ居リマセヌケレドモ、兎
ニ角結局ハ其處デクッ付ケテ、此方面ノ開發
ニ使フ積リデアリマス、此線ノ如キハ一二
年遲クシテモ宜イト云ヘバ宜イノデアリマ
スルガ、一ツハ土讃線······香川縣カラ高知
縣へ通ジマスル土讃線、是ガ明年完成イタ
シマス、明年完成イタシマスルト云フト、
是ハ相當大キナ工事デアリマシタノデ、事
務所、出張所ヲ置イテアリマスルカラ、是
ガ出來マスルト引續イテ高知縣ノ此仕事ヲ
ヤル方ガ經濟的デアルト云フコトカラ決メ
タノデアリマス、今囘八線入レマシタ中デ、
私ハモウ有リノ儘ヲ申上ゲマスルガ、此高
知縣ノ線ノ如キハ、地方ノ人ハ何人モ知ラ
ナカッタノデアリマス、高知縣ハ寧ロ、地圖
デ御覽ノ通リ、高知カラ東ニ廻リマスル鐵
道ニ付キマシテハ何十人ト云フ人ガ屢〓熱
心ニ運動ニ參リマシタガ、私ハ一切肯カズ
シテ、少シモ運動ノナカッタ此線ヲ選ンダ
ノデアリマス、添田·日田間ニ致シマシテ
モ、其地方ノ人ハ、此方カラ決メテ後ニ知ッ
タノデアリマス、一度モ運動ハアリマセヌ、
鹿兒島縣ノ指宿·山川間ノ如キモ、少シモ知
ラナカッタノデアリマス、大宮·飯能ノ如キ
ハ勿論デアリマス、ソレカラ北海道ハ、是ヨ
リモモット外ノ線ノ方ガ運動ガ猛烈デアリ
マシテ、ソレヲ一切排斥シテ、北海道長官
ノ意見ヲ尊重シテ之ヲ決メタノデアリマ
ス、會津方面ニ付キマシテモ、我ミガ決メ
タ後ニ會津方面ノ人ガ二三運動ニ參リマシ
タガ、ソレヨリ先ニ決メテ居ッタノデアリ
マス、此外ニ猛烈ニ運動サレテ屢"來ラレ
タ、斯ウ云ッタヤウナ鐵道デハ一ツモ入レテ
居リマセヌ、斯ウ云フ譯デアリマスルカラ、
私ノ鐵道計畫ニ付キマシテハ、私ハ衷心ヨ
リ斯樣ナコトヲ考ヘテ居リマス、黨利黨略
ナドニ囚ハレヌト云フコト、黨利黨略ニ囚
ハレルコトガアリトスレバ之ヲ排除スルト
云フコトガ、私ノ鐵道大臣トシテノ一番大キ
ナ使命ト考ヘテ居ルノデアリマスカラ、ド
ウカ此點ニ關シテハ御安心ヲ願ヒタイノデ
アリマス、唯新線ヲ入レル位ナラバ、寧ロ
公債發行額ヲ多クスルコトハ止メテ、外ノ
方へ廻シタラ宜イヂヤナイカ、此場合鐵道
ナドハ急ガヌノデアルト云フ、是モ一ツノ
御議論デアリマス、併ナガラ財政上ノ所謂
赤字公債ト云フモノハ、昨年ヨリハ本年、
本年ヨリハ明年ト順々ニ一般會計ダケデ考
ヘマシテモ減シテ行カヌケレバナラヌ、公債
ノ發行ノ限度全體ガドレ位デ宜シイカト云
フコトヨリモ、一般會計ノ赤字公債ト云フ
モノハ每年々々減ッテ行ク傾向ヲ持タナケレ
バ、財政上ノ信用ヲ保タレマセヌ、此見地カ
ラ大藏大臣ガ非常ニ苦心シテ一般會計ノ
赤字公債ヲ抑ヘテ居ルノデアリマシテ、鐵
道特別會計ノ方ハ、是ハ別個デアリマス、
成程八百萬圓增スノヲ止メタラソレダケ一
般會計ノ方デ發行餘力ガアルト御考ニナリ
マスルケレドモ、發行餘力ガアリマシテモ、
卽チ一般市場ガソレダケ消化スルト致シ
マシテモ、一般會計ダケデ玆ニ赤字公債ハ
ドウシテモ減シテ行カヌケレバナラヌト、
斯ウ云フ見地カラ出タノデアリマスルカ
ラ、是トハ全然別個ノ問題ト御承知ヲ願ヒ
タイノデアリマス、尙ホ詳シイコトハ委員
會等ニ於テ申上ゲマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X02319340305&spkNum=19
-
020・青木周三
○靑木周三君 簡單デスカラ此處カラ發言
ヲ御許シ願ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X02319340305&spkNum=20
-
021・松平頼壽
○副議長(伯爵松平賴壽君) 宜シウゴザイ
マス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X02319340305&spkNum=21
-
022・青木周三
○靑木周三君 時間モ段々切迫イタシマス
カラシテ、只今鐵道大臣ノ御述ベニナリマ
シタ辯明ニ對シテハ、慊ラヌモノガ非常ニ
澤山アリマスルケレドモ、一々ソレヲ論難
スルコトハ時間ガ許シマセヌカラ之ヲ省キ
タイト思ヒマス、唯今鐵道大臣ガ只見川
ノ溪流ニハ、水利權ノ許可ハ得テ居ルケレ
ドモガ、認可ヲシタモノハ一ツモナイト云
フコトデアリマス、正ニ其通リデアリマス
ルケレドモガ、鐵道大臣其外一般ノ方ガ御
存知ノ通リニ、此工事施行許可ト云フモノ
ハ、將ニヤラウト云フコトガ極ッタ時ニ初
メテ、ドウカ許可ヲシテ下サイト言ッテ、認
可ガアルト六箇月經ッタレバ、ソレニ著手シ
ナケレバナラヌト云フ義務ガアルノデアリ
マスルカラシテ、多クノ場合ニ於テヤル時
迄ハ默ッテ、認可ヲ申請シテモ認可ノナラナ
イヤウニ運動シテ、愈〓ヤルト決ッタ時ニ認
可ヲ請フノガ今迄ノ例デアリマス、ソレデ
悉ク施工認可ガ取ッテナイト云フコトハ其
通リデアリマス、併ナガラ施工認可ガ取ッテ
ナイト云フモノノ中デ、例ヘバ野澤ノ發電
所ノ如キモ、マダ施工認可ハ取ッテナイケレ
ドモガ、東電ガヤル考ヘデ、モウ鐵道ガ柳
津迄カカッタカラ、是カラポツ〓〓鐵道ノ利
益ヲ受ケルノダト云フヤウナ顏ヲシテ、マ
グ認可ヲ受ケテ居ナイガ、發電所ノ建設計
畫ニ掛ッテ居ル、是ハ東電ノ人モ鐵道會議ニ
於テ述ベタ所デアリマスルカラ間違ノナイ
所デアリマスガ、ソレカラ又寄附ヲスルト
云フコトハ、寄附ヲ受ケル必要ハナイ、利
益ヲ受ケル人ガアッテモ、ソレカラ寄附ヲ取
ルト云フコトハ宜クナイト云フヤウナ御話
デアリマシタ、併ナガラ現ニ鐵道省ニ於テ
モ或時代ニ於テハ、寄附ヲ取ルト云フコト
ハ宜シクナイ、鐵道ノ停車場ヲ拵ヘル時ニ
寄附ヲ取ル習慣ガアッタケレドモ、停車場ヲ
造ルト云フコトハ國家ノ事務デアル、ダカ
ラ國家ノ費用ヲ以テ造ル、ソレデ寄附ヲ取
ルコトハ相成ラヌ、寄附ヲ取ル結果トシテ
其地方ノ何等ノ利益ヲ受ケナイ者ニモ皆寄
附ヲ强要スルコトニナルカラ、鐵道省ガ停
車場ヲ建設スルト云フ場合ニ於テ寄附ヲ取
ルト云フコトハ出來ヌ、シチヤナラヌト云
フヤウナ意見デ、仙石鐵道大臣ノ時ニハ寄
附ヲ取ルト云フコトヲ禁ジタコトガアリマ
ス、併ナガラ其ヤウニ潔癖ニヤッタ爲ニ、非
常ニ停車場ノ新設ガ遲レルカラソレヲ止メ
テ、現在ニ於テハ停車場ヲ造ル場合ニ於テ
ハ寄附ヲ取ッテ居ル、停車場ヲ拵ヘル爲ニ、
ソレ等ニ依ッテ利益ヲ受ケル所ノ人カラ寄
附ヲ取ッテオイデニナル、是ハ請願ヲスルカ
ラト云フノデアリマスガ、請願ヲスルト云
フノハ話合ノ上ノコトデ、東電ニ對シテモ
私等ノ方ハ今急ニ鐵道ヲ拵ヘル考ハナイノ
ダ、唯利益ヲ受ケルノハ東電ダケダ、他ノ
人ハサウ利益ヲ受ケナイ、東電ハ自分デ此
鐵道ヲカケテモー引合フ位ノ工事ヲ有ッテ居
ル、ソレカラ取ッテモ差支ナイ、取ルノガ當
リ前ダ、私ハサウ考ヘル、鐵道省ノ政策ト
矛盾シテ居ナイノデアリマスルガ、左樣ナ
狀態デアリマス、又初耳ト云フヤウナコト
ハ言ウタコトハナイト云フヤウナコトヲ鐵
道大臣ハ今言ハレマシタケレドモ、鐵道會
議ノ速記錄ヲ見マスト、「鐵道省建設局長池
田嘉六君、東京電燈ノ發電所ト云フヤウナ
コトハ私ハ全ク初耳デ只今承ッタバカリデ
アリマス」、斯ウ云フコトヲ言ウテ居ル、ソ
レガ初耳デアアッタカ、初耳デナカッタカト
云フヤウナコトハ、今更論ズル必要ハアリ
マセヌケレドモガ、併ナガラ明ニ鐵道會議
ニ於テ述ベラレタ所ニ依リマスト、發電所
ヲ造ルト云フコトハ初耳デアッタラシイ、是
ハ私ハ〓ヲ申上ゲタノデナク、速記錄ニ左
樣ニ書イテアルト云フコトダケ申上ゲテ
置キタイ、尙ホ色〓伺ヒタイコトモアリマ
スガ、先程モ申シマシタ通リニ、時間モ過
ギマシタシ、又委員會ガ是カラ開カレルコ
トト思ヒマスカラ、詳シイコトハ委員會ニ
讓リマシテ、質問ヲ打切リタイト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X02319340305&spkNum=22
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023・松平頼壽
○副議長(伯爵松平賴壽君) 是ニテ質疑ハ
終了イタシマシタ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X02319340305&spkNum=23
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024・池田政時
○子爵池田政時君 只今議題ニ上ボリマシ
タ鐵道敷設法中改正法律案ハ重要ナル法案
デアリマスルガ故ニ、此特別委員ノ數ハ十
五名トシ、其指名ヲ議長ニ一任スルト云フ
動議ヲ提出イタシマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X02319340305&spkNum=24
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025・戸澤正己
○子爵戸澤正己君 動議ニ贊成イタシマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X02319340305&spkNum=25
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026・松平頼壽
○副議長(伯爵松平賴壽君) 池田子爵ノ動
議ニ御異存ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X02319340305&spkNum=26
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027・松平頼壽
○副議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト
認メマス、書記官ヲシテ特別委員ノ氏名ヲ
朗讀イタサセマス
〔小林書記官朗讀〕
鐵道敷設法中改正法律案特別委員
公爵山縣有道君侯爵佐佐木行忠君
伯爵有馬賴寧君子爵加藤泰通君
子爵秋元春朝君子爵高橋是賢君
太田政弘君桑山鐵男君
男爵辻太郞君男爵小畑大太郞君
男爵中村謙一君靑木周三君
古島一雄君稻畑勝太郞君
風間八左衞門君発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X02319340305&spkNum=27
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028・松平頼壽
○副議長(伯爵松平賴壽君) 日程第九ヨリ
第三十マデ、各請願會議、全部一括シテ議
題ニ供シマス
意見書案
貴族院伯子男爵議員選擧規則中改正ニ
關スル件
東京市板橋區練馬仲町僧侶守山聖眞
外四百七十一名呈出
右ノ請願ハ諸宗ノ僧侶又ハ〓師ハ曩ニ衆
議院議員選擧法ノ改正ニ因リ被選擧權ヲ
附與セラレタルニ拘ラス貴族院伯子男爵
議員選擧規則ニ於テ今尙其ノ被選人タ
ルコトヲ除外セラルルハ彼此權衡上甚遺
憾ナルニ依リ同規則第二條ヲ削除セラレ
タシトノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體
ハ採擇スヘキモノト議決致候因テ議院法
第六十五條ニ依リ別册及送付候也
昭和九年月日
貴族院議長公爵近衞文麿
内閣總理大臣子爵齋藤實殿
意見書案
都市計畫ニ依ル寺院境內地ノ受益者負
擔金免除規則制定ノ件
東京市板橋區練馬仲町儈侶守山聖眞
外四百七十四名呈出
右ノ請願ハ寺院及佛堂境內地ハ從來其ノ
使用上種種ノ制限ヲ受ケ有利ナル施設等
ヲ禁止セラルルニ拘ラス近者都市計畫ニ
依ル道路ノ擴張竝鋪裝完成等ノ爲受益者
負擔金ヲ課セラルルハ遺憾ナルヲ以テ同
負擔金ヲ免除セラルルヤウ規則ヲ制定セ
ラレタシトノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ
大體ハ採擇スヘキモノト議決致候因テ議
院法第六十五條ニ依リ別册及送付候也
昭和九年月日
貴族院議長公爵近衞文麿
內閣總理大臣子爵齋藤實殿
意見書案
石川縣福浦港築設ノ件
石川縣羽咋郡福浦村長直宮助松外十
二名呈出
右ノ請願ハ日本海沿岸ニ於ケル屈指ノ良
港ナル石川縣羽咋郡福浦港ハ海陸交通ノ
要衝ニシテ近時沖合漁業ノ著シキ發展ト
相俟テ出入船舶激增シ加之僅少ノ經費ヲ
以テ容易ニ之カ恰當ノ港灣ト爲シ得ヘキ
ナリ然ルニ這般政府ニ於テハ樞要港灣ヲ
指定セラルルヤニ仄聞スルニ依リ同港ヲ
指定セラレタシトノ旨趣ニシテ貴族院ハ
願意ノ大體ハ採擇スヘキモノト議決致候
因テ議院法第六十五條ニ依リ別冊及送付
候也
昭和九年月日
貴族院議長公爵近衞文麿
内閣總理大臣子爵齋藤實殿
意見書案
八戶港ヲ第二種港灣ニ編入ノ件
靑森縣八戶市長神田重雄呈出
右ノ請願ハ北日本東海岸ニ於ケル要港ナ
ル靑森縣八戶港ハ近時港灣施設ノ進捗ニ
伴ヒ漁業ノ根據地ナルノミナラス商港ト
シテ亦船舶ノ出入竝物資ノ呑吐共ニ激增
シ加之將來北海道東海岸ニ於ケル諸港ト
相俟テ資源開發上資スル所大ナルニ依リ
速ニ同港ヲ第二種港灣ニ編入セシメラレ
タシトノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體
ハ採擇スヘキモノト議決致候因テ議院法
第六十五條ニ依リ別册及御送付候也
昭和九年月日
貴族院議長公爵近衞文麿
內閣總理大臣子爵齋藤實殿
意見書案
土地收用法中改正ニ關スル件
新潟縣長岡市東千手町四百六番地ノ
三公吏木村〓三郞呈出
右ノ請願ハ道府縣市町村立ノ公園ヲシテ
國立ノ夫ト等シク土地收用法ヲ適用セシ
ムルハ其ノ使命ニ鑑ミ當然ノ理ナルニ拘
ラス未之ヲ見サルハ彼此權衡ヲ失シ國民
保健上竝災害防止上等遺憾甚シキニ依リ
同法第二條第一項第四號中「國立公園」ト
アルヲ「公立公園」ト改正セラレタシトノ
旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ採擇ス
ヘキモノト議決致候因テ議院法第六十五
條ニ依リ別册及送付候也
昭和九年月日
貴族院議長公爵近衞文麿
內閣總理大臣子爵齋藤實殿
意見書案
國立吃音矯正機關設置ノ件
大阪市東成區勝山通八丁目四十番地
〓員松澤忠太呈出
右ノ請願ハ我國民中吃音ナルカ爲天賦ノ
能力ヲ發揮シ得サルモノ頗ル多數ナルハ
吃音者自身ノ不幸ナルノミナラス延テ國
家ノ損失ナルニ依リ速ニ國費ヲ以テ吃音
矯正機關ヲ設置セラレタシトノ旨趣ニシ
テ貴族院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキモノ
ト議決致候因テ議院法第六十五條ニ依リ
別冊及御送付候也
昭和九年月日
貴族院議長公爵近衞文麿
內閣總理大臣子爵齋藤實殿
意見書案
農村匡救土木費竝用水幹線改良費豫算
增額ニ關スル件
栃木縣足利郡御厨町長岡村勇外四名
呈出
右ノ請願ハ栃木縣足利郡南部ニ於ケル御
厨町竝山邊、筑波、梁田、久野ノ諸村ハ
其ノ灌漑用水タル足尾銅山ヨリ流入スル
河水ノ被害排除ノ爲之カ對策トシテ縣營
ニ依ル湧水伏流ノ用排水幹線改良事業計
畫成レリ然ルニ政府ニ於テハ明年度農業
匡救土木及用水幹線改良ノ兩費ヲ削減セ
ラル斯クテハ之等關係町村ノ困窮一方ナ
ラサルニ依リ同費ハ之ヲ增額シ以テ農村
更生ノ實ヲ擧ケラレタシトノ旨趣ニシテ
貴族院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキモノト
議決致候因テ議院法第六十五條ニ依リ別
册及送付候也
昭和九年月日
貴族院議長公爵近衞文麿
內閣總理大臣子爵齋藤實殿
意見書案
養蠶組合指導員設置國庫補助ノ件
滋賀縣高島郡大溝町養蠶實行組合長
上原茂次外二百十五名呈出
山形縣南村山郡本庄村大字楢下字金
山六十六番地金山養蠶實行組合長〓
野吉司外二百十五名呈出
島根縣飯石郡飯石村養蠶實行組合長
松村恭外百五十三名呈出
埼玉縣北足立郡小谷村大字小谷二千
五百七十番地堤根養蠶實行組合長鈴
木梅太郞外五百七十六名呈出
靜岡縣磐田郡下阿多古村養蠶實行組
合長松野勝太郞外二百九十五名呈出
愛媛縣今治市養蠶實行組合長田坂庄
三郞外二百四十八名呈出
右ノ請願ハ經濟共同ノ實ヲ擧ケ生產竝販
賣ノ改良統制ヲ企圖シ眞ニ組合ノ機能ヲ
發揮セムニハ一ニ組合活動ノ中心機關タ
ル指導員ノ設置ヲ急務トスルヲ以テ養蠶
業者刻下ノ窮狀ヲ察シ組合指導員設置ニ
對スル國庫助成ノ途ヲ啓カレタシトノ旨
趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘ
キモノト議決致候因テ議院法第六十五條
ニ依リ別册及送付候也
昭和九年月日
貴族院議長公爵近衞文麿
內閣總理大臣子傳齋藤實殿
意見書案
官幣大社熊野坐神社遷座改築ノ件
和歌山縣東牟婁郡本宮村長大谷昌吉
外二十三名呈出
右ノ請願ハ和歌山縣東牟婁郡本宮村ニ鎭
座セラルル官幣大社熊野坐神社ハ古來由
〓アル靈社ニシテ上下ノ尊崇隆ナリシニ
拘ラス明治二十二年ノ水災以來殊ニ中、
下兩社ノ荒廢ニ委スルハ洵ニ恐懼ニ堪ヘ
サルノミナラス該地方ハ亦國立公園候補
地ナルニ依リ同神社及中、下各四社竝攝
末社ヲ舊境內ニ遷座改增築ヲ爲ス等復舊
ノ實ヲ擧ケ以テ國民〓化ニ資セラレタシ
トノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ採
擇スヘキモノト議決致候因テ議院法第六
十五條ニ依リ別册及送付候也
昭和九年月日
貴族院議長公爵近衞文麿
內閣總理大臣子傳齋藤實殿
意見書案
戰公傷病死者竝傷痍軍人ノ遺族扶助料
ニ關スル件
石川縣金澤市西町一番丁三十九番地
平民土田外次郞外百四十八名呈出
右ノ請願ハ戰死者、公傷病死者及戰公傷
痍者ノ遺族ニシテ生活上窮境ニ陷レル者
アルハ國民思想涵養上甚遺憾ナルニ依リ
其ノ扶助料ヲ增額シ以テ其ノ生活ヲ安定
セシムルト共ニ恩給法實施以前死亡ノ戰
公傷者ニ對シ死亡當時同一戶籍內ニ在リ
タル寡婦ニモ亦扶助料ヲ支給セラレ且傷
病年金受給者竝戰地ニ於ケル公務傷病者
ヲ優遇セラルル等請願人等所案ノ如ク恩
給法ヲ改正セラレタシトノ旨趣ニシテ貴
族院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキモノト議
決致候因テ議院法第六十五條ニ依リ別册
及送付候也
昭和九年月日
貴族院議長公爵近衞文麿
內閣總理大臣子爵齋藤實殿
意見書案
愛知縣碧海郡刈谷町ニ登記所設置ノ件
愛知縣碧海郡刈谷町長井野直治外一
名呈出
右ノ請願ハ愛知縣碧海郡刈谷町附近ハ交
通ノ要衝ナルノミナラス近時產業ノ發達
ニ伴ヒ戶口亦增殖シ爲ニ登記事務激增セ
ルニ拘ラス管轄知立登記所ハ之カ利用上
不利不便ナルニ依リ速ニ同町及依佐美村
ヲ管轄區域トスル登記所ヲ同町ニ設置セ
ラレタク尙敷地竝廳舍等ハ地元町村ヨリ
貸供スヘシトノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ
大體ハ採擇スヘキモノト議決致候因テ議
院法第六十五條ニ依リ別册及送付候也
昭和九年月日
貴族院議長公爵近衛文麿
内閣總理大臣子爵齋藤實殿
意見書案
伊東金銀鑛採掘權取消ニ關スル件
靜岡縣田方郡伊東町長上原重平外三
百八十六名呈出
右ノ請願ハ曩ニ許可セラレタル靜岡縣田
方郡伊東町ニ在ル金銀鑛ハ學說竝旣往ノ
實績ニ徵シ其ノ掘鑿ニ因リ溫泉又ハ水源
ヲ涸渴セシメ公益上甚遺憾ナルニ依リ速
ニ之カ許可ノ取消ヲ爲サシメラレタシト
ノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ採擇
スヘキモノト議決致候因テ議院法第六十
五條ニ依リ別册及送付候也
昭和九年月日
貴族院議長公爵近衞文麿
內閣總理大臣子爵齋藤實殿
意見書案
宮崎縣東臼杵郡門川村ニ區裁判所出張
所設置ノ件
宮崎縣東臼杵郡門川村大字門川尾末
十三番地農小野千代吉外二千五百十
三名呈出
右ノ請願ハ宮崎縣東臼杵郡門川村ハ地域
廣大ニシテ人口亦多ク從テ登記事務夥多ナ
ルニ拘ラス管轄延岡區裁判所富高出張所
ヲ距ルコト遠ク村民ノ不便尠カラサルニ
依リ速ニ同村ニ同區裁判所出張所ヲ設置セ
ラレタク尙廳舍、倉庫等必要ナル設備ハ地
元ヨリ提供スヘシトノ旨趣ニシテ貴族院
ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキモノト議決致
候因テ議院法第六十五條ニ依リ別册及送
付候也
昭和九年月日
貴族院議長公爵近衞文麿
內閣總大臣子爵齋藤實殿
意見書案
林野治水ニ關スル件
東京市赤坂區溜池町一番地全國山林
會聯合會會頭子爵東園基光呈出
右ノ請願ハ洪水氾濫ノ主因ヲ爲ス荒廢林
野ニ對スル治水計畫ハ昭和九年度ヲ以テ
終了セラルルヤニ聞クモ尙引續キ急施ヲ
要スルモノ及新ニ施設ヲ要スルモノ尠カ
ラサルニ依リ第二次治水ノ計畫ヲ樹立セ
ラレ他面疲弊セル農山村ノ經濟ニ寄與ス
ルヤウ其ノ內容ヲ擴充シテ昭和十年度ヨ
リ實施セラレタシトノ旨趣ニシテ貴族院
ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキモノト議決致
候因テ議院法第六十五條ニ依リ別册及送
付候也
昭和九年月日
貴族院議長公爵近衞文麿
內閣總理大臣子爵齋藤實殿
意見書案
林野整備促進ニ關スル件
東京市赤坂區溜池町一番地全國山林
會聯合會會頭子爵東園基光呈出
右ノ請願ハ曩ニ林野整備ニ關スル諸般ノ
準備對策ヲ完了セルニ拘ラス之カ實行ヲ
見サルハ甚遺憾ナルヲ以テ速ニ當初ノ方
針ニ準據シ其ノ實現ニ努メラレタシトノ
旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ採擇ス
ヘキモノト議決致候因テ議院法第六十五
條ニ依リ別册及送付候也
昭和九年月日
貴族院議長公爵近衞文麿
內閣總理大臣子爵齋藤實殿
意見書案
山陽本線鐵道麻里布、山陰本線鐵道萩
ノ兩驛間鐵道敷設ノ件
山口縣玖珂郡岩國町長永田新之允外
二十八名呈出
右ノ請願ハ豫定線鐵道岩國、日原間鐵道
ノ中間ニ於ケル山口縣玖珂郡廣瀨村ヨリ
豫定線鐵道德佐、大井間鐵道ニ連絡スル
鐵道ヲ敷設シ全線開通ノ曉ハ啻ニ沿線地
方ニ於ケル林產、鑛產等ノ資源ヲ開發ス
ルノミナラス萩港ノ發展ト相俟テ遠ク朝
鮮竝滿洲國ヲ連絡スル捷徑ニシテ軍事上
亦須要ノ線路ナルニ依リ速ニ之ヲ實現セ
ラレタシトノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ
大體ハ採擇スヘキモノト議決致候因テ議
院法第六十五條ニ依リ別册及送付候也
昭和九年月日
貴族院議長公爵近衞文麿
内閣總理大臣子爵齋藤實殿
意見書案
漁村金融ノ改善ニ關スル件
東京市赤坂區溜池町三會堂內帝國水
產會會長子爵野村益三呈出
右ノ請願ハ改正漁業法ハ今猶ホ實施セラ
レス加フルニ漁村ノ金融ニ關シテハ未何
等施設ノ改善セラルルナキハ誠ニ遺憾ナ
ルニ依リ政府ハ速ニ適當ノ施設ヲ圖ラレ
タシトノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體
ハ採擇スヘキモノト議決致候因テ議院法
第六十五條ニ依リ別册及送付候也
昭和九年月日
貴族院議長公爵近衞文麿
内閣總理大臣子爵齋藤實殿
意見書案
漁村指導技術員設置助成ノ件
東京市赤坂區溜池町三會堂內帝國水
產會會長子爵野村益三呈出
右ノ請願ハ漁村ノ如キ最モ技術的指導ノ
必要アルモノニ關シテハ夙ニ技術員ノ普
及ヲ圖リ其ノ更生、改善其他諸般ノ指導
ヲ最モ必要トスルモノナルニ依リ速ニ漁
村指導技術員設置助成ノ途ヲ啓カレタシ
トノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ採
擇スヘキモノト議決致候因テ議院法第六
十五條ニ依リ別册及送付候也
昭和九年月日
貴族院議長公爵近衞文麿
内閣總理大臣子爵齋藤實殿
意見書案
漁村組合指導機關充實ニ關スル件
東京市赤坂區溜池町三會堂內帝國水
產會會長子爵野村益三呈出
右ノ請願ハ漁村ノ經濟機關タル漁業組合
ノ指導ニ關シテハ中央及地方ニ若干ノ機
關ヲ設置セラレタリト雖何レモ人員過少
ニシテ非常時ニ善處スヘキ漁業組合ノ徹
底的指導ヲ期待スル能ハサルニ依リ速ニ
適當ノ施設ヲ圖ラレタシトノ旨趣ニシテ
貴族院ハン意意大大體ハ採擇スヘキモノト
議決致候因テ議院法第六十五條ニ依リ別
册及送付候也
昭和九年月日
貴族院議長公爵近衞文麿
內閣總理大臣子爵齋藤實殿
意見書案
水產物運賃低減ノ件
東京市赤坂區溜池町三會堂內帝國水
產會會長子爵野村益三呈出
右ノ請願ハ水產物ハ米麥等ト共ニ國民生
活上必需品タルノミナラス又海外輸出品
トシテモ有力ナル地步ヲ占ムルモノナル
ヲ以テ之カ生產費ノ低減ヲ圖ルハ急務ナ
ルニ依リ就中近年魚價ノ低落甚シク運賃
ノ負擔ニ困シムノ狀態ナルニ依リ速ニ水
產物運賃ノ低減ヲ斷行セラレタシトノ旨
趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘ
キモノト議決致候因テ議院法第六十五條
ニ依リ別册及送付候也
昭和九年月日
貴族院議長公爵近衞文麿
內閣總理大臣子爵齋藤實殿
意見書案
水產物輸出增進ノ件
東京市赤坂區溜池町三會堂內帝國水
產會會長子爵野村益三呈出
右ノ請願ハ水產物ハ我國重要輸出品ニ屬
シ現下ノ世界的不況時ニ拘ラス滿洲其ノ
他各方面ニ進出シツツアルハ頗ル注目ス
ヘキ現象ナレハ徹底的ニ非常時ニ於ケル
水產物輸出ニ關スル施設ヲ圖ラレタシト
ノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ採擇
スヘキモノト議決致候因テ議院法第六十
五條ニ依リ別册及送付候也
昭和九年月日
貴族院議長公爵近衞文麿
内閣總理大臣子爵齋藤實殿
意見書案
鮭鱒ノ基本調査竝增殖施設ニ關スル件
東京市赤坂區溜池町三會堂內帝國水
產會會長子爵野村益三呈出
右ノ請願ハ鮭鱒ハ我國ニ於ケル重要水族
ナルヲ以テ政府ハ從來之ニ關スル〓究調
查竝增殖ノ施設ヲ講セラレタリト雖〓ニ
シテ拔本的對策ヲ確立スルニアラサレハ
其ノ將來誠ニ寒心ニ堪ヘサルモノアルニ
依リ速ニ鮭鱒ニ關スル基本的調査ヲ徹底
的ニ施行スルト共ニ人工增殖ヲ擴張セラ
レタシトノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大
體ヲ採擇スヘキモノト議決致候因テ議院
法第六十五條ニ依リ別册及送付候也
昭和九年月日
貴族院議長公爵近衞文麿
内閣總理大臣子爵齋藤實殿発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X02319340305&spkNum=28
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029・松平頼壽
○副議長(伯爵松平賴壽君) 請願全部、委
員長ノ報告通リ採擇スルコトニ御異存ゴザ
イマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X02319340305&spkNum=29
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030・松平頼壽
○副議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト
認メマス、本日ノ議事ハ是ニテ終了イタシ
やく、女會ノ議事H程ハ本院彙報ヲ以テ御
通知ニ及ビマス、本日ハ是ニテ散會イタシ
マス
午後零時二十五分散會発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X02319340305&spkNum=30
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