1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和九年三月十七日（土曜日）午前十時二十四分開議
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議事日程 第二十八號
昭和九年三月十七日
午前十時開議
第一 輸出組合法中改正法律案（政府提出、衆議院送付） 第一讀會
第二 商標法中改正法律案（政府提出、衆議院送付） 第一讀會
第三 不正競爭防止法案（政府提出、衆議院送付） 第一讀會
第四 昭和九年度一般會計歳出の財源に充つる爲公債追加發行に關する法律案（政府提出、衆議院送付） 第一讀會
第五 絲價安定融資擔保生絲買收法中改正法律案（政府提出、衆議院送付） 第一讀會
第六 日本銀行特別融通及損失補償法中改正法律案（政府提出、衆議院送付） 第一讀會
第七 治安維持法改正法律案（政府提出、衆議院送付） 第一讀會
第八 市街地建築物法中改正法律案（政府提出） 第一讀會の續（委員長報告）
第九 旭川市舊土人保護地處分法案（政府提出、衆議院送付） 第一讀會の續（委員長報告）
第十 刑法中改正法律案（衆議院提出） 第一讀會
第十一 刑事訴訟法中改正法律案（衆議院提出） 第一讀會
第十二 刑事判決宣告猶豫に關する法律案（衆議院提出） 第一讀會
第十三 地方財政補整交付金法案（衆議院提出） 第一讀會
第十四 五大都市に特別市制實施に關する法律案（衆議院提出） 第一讀會
━━━━━━━━━━━━━発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X02819340317&spkNum=0
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001・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 是ヨリ報〓ヲ致
サセマス
〔角倉書記官朗讀〕
昨十六日本院ニ於テ可決シタル左ノ政府提
出案ハ卽日裁可ヲ奏請シ又可決ノ旨ヲ衆議
院ニ通知セリ
昭和九年度一般會計歲出ノ財源ニ充ツル
爲公債發行ニ關スル法律案
昭和七年法律第一號中改正法律案
滿洲件事ニ關スル一時賜金トシテ交付ス
ル公債發行ニ關スル法律案
大藏省預金部特別會計法中改正法律案
同日衆議院ヨリ左ノ政府提出案ヲ受領セリ
輸出組合法中改正法律案
商標法中改正法律案
不正競爭防止法案
昭和九年度一般會計歲出ノ財源ニ充ツル
爲公債追加發行ニ關スル法律案
絲價安定融資擔保生絲買收法中改正法律
案
日本銀行特別融通及損失補償法中改正法
律案
治安維持法改正法律案
同日衆議院ヨリ左ノ議案ヲ提出セリ
刑法中改正法律案
刑事訴訟法中改正法律案
刑事判決宣告猶豫ニ關スル法律案
地方財政補整交付金法案
五大都市ニ特別市制實施ニ關スル法律
案
同日本院ニ於テ可決シタル左ノ建議ハ文書
ヲ以テ卽日之ヲ政府ニ呈出セリ
結核豫防國策樹立ニ關スル建議
同日委員長ヨリ左ノ報〓書ヲ提出セリ
請願委員會特別報告第五號
市街地建築物法中改正法律案修正報〓書
旭川市舊土人保護地處分法案可決報〓書
臺灣事業公債法中改正法律案可決報〓書
臺灣官設鐵道用品資金會計法中改正法律
案可決報〓書
同日委員會ニ於テ當選シタル正副委員長ノ
氏名左ノ如シ
民事訴訟法中改正法律案特別委員會
委員長侯爵西〓從德君
副委員長木場貞長君
河川法中改正法律案特別委員會
委員長子爵白川資長君
副委員長阪本釤之助君発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X02819340317&spkNum=1
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002・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 是ヨリ會議ヲ開
キマス、昨十六日中川小十郞君ヨリ、病氣
ニ付キ決算委員辭任ノ申出ガゴザイマシ
ク、之ヲ許スコトニ御異誘ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X02819340317&spkNum=2
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003・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 御異議ナイト認
メマス、就キマシテハ第四部ニ於テ、補闕
選擧ヲ行ハレムコトヲ望ミマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X02819340317&spkNum=3
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004・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 是ヨリ日程ニ移
リマス、日程第一、輸出組合法中改正法律
案、政府提出、衆議院送付、第一讀會、松
本商工大臣
輸出組合法中改正法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議
院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和九年三月十六日
衆議院議長秋田〓
貴族院議長公爵近衞文麿殿
輸出組合法中改正法律案
輸出組合法中左ノ通改正ス
第一條第一項ニ左ノ但書ヲ加フ
但シ特別ノ事情アルトキハ取扱商品ヲ
異ニスル重要輸出品ノ輸出ヲ業トスル
者ヲ以テ之ヲ設立スルコトヲ得
第七條ノ三輸出組合前條ノ規程ニ基キ
組合又ハ組合員ノ輸出數量又ハ輸出價
格ニ付制限ヲ定メタルトキハ遲滯ナク
主務大臣ニ屆出ヅベシ屆出デタル事項
ヲ變更シタルトキ亦同ジ
主務大臣必要ト認ムルトキハ前項ノ輸
出數量又ハ輸出價格ノ變更ヲ命ズルコ
トヲ得
第九條營業上ノ弊害ヲ豫防シ又ハ矯正
スル爲特ニ必要ト認ムルトキハ主務大
臣ハ輸出組合ノ組合員又ハ其ノ組合ノ
組合員ニ非ズシテ其ノ組合ノ地區內ニ
於テ組合員タル資格ヲ有スル者ニ對シ
其ノ組合ノ定ムル取締又ハ制限ニ從フ
ベキコトヲ命ズルコトヲ得
第十二條第一項ニ左ノ但書ヲ加フ
但シ第一條第一項但書ノ場合ニ於テハ
取扱商品每ニ各組合員タル資格ヲ有ス
ル者ノ過半數ノ同意ヲ得ルコトヲ要ス
第十三條ニ左ノ但書ヲ加フ
但シ第一條第一項但書ノ場合ニ於テハ
取扱商品每ニ各設立同意者ノ三分ノ二
以上ノ同意アルコトヲ要ス
第十八條ノ二中「一定ノ金額」ノ下ニ「(保
證金額)」ヲ加フ
第二十一條ノ二組合員ハ代理人ヲ以テ
議決權ヲ行フコトヲ得此ノ場合ニ於テ
ハ之ヲ出席ト看做ス
前項ノ代理人ハ組合員タルコトヲ要ス
但シ法人タル組合員ハ其ノ業務ヲ執行
スル役員又ハ登記シタル支配人ヲ代理
人ト爲スコトヲ得
代理人ハ代理權ヲ證スル書面ヲ組合ニ
差出スベシ
第二十八條中「又ハ定款ノ變更」ヲ「定款
又ハ組合員ノ事業經營ニ對スル制限ニ關
スル規程ノ變更」ニ改ム
第三十條第一項中「出資一口ノ金額ノ減
少若ハ第十八條ノ二ノ規定ニ依ル組合員
ノ責任ノ減少」ヲ「出資一口ノ金額若ハ保
證金額ノ減少」ニ、同條第三項中「出資一
口ノ金額ノ減少又ハ第十八條ノ二ノ規定
ニ依ル組合員ノ責任ノ滅少」ヲ「出資一口
ノ金額又ハ保證金額ノ減少」ニ改ム
第三十三條中「第三十五條乃至第三十
七條、」ヲ「第三十五條、第三十六條、」ニ改
ム
第三十五條第十號中「出資一口ノ金額ヲ
減少シ、第十八條ノ二ノ規定ニ依ル組合
員ノ責任ヲ減少シ、」ヲ「出資一口ノ金額
若ハ保證金額ヲ減少シ、」ニ改メ同條第三
號ヲ第四號トシ以下順次繰下ゲ同條第二
號ノ次ニ左ノ一號ヲ加フ
三本法ニ依ル屆出ヲ爲スコトヲ怠リ
又ハ不正ノ屆出ヲ爲シタルトキ
第三十六條ヲ削リ第三十七條ヲ第三十六
條トス
第三十八條中「前三條」ヲ「前二條」ニ改メ
同條ヲ第三十七條トス
第三十八條第九條ノ規定ニ依ル行政官
廳ノ命令ニ違反シタル者ハ五百圓以下
ノ罰金ニ處ス
輸出ヲ業トスル者ハ其ノ代理人、戶主、
家族、同居者、雇人其ノ他ノ從業者ガ
其ノ營業ニ關シ前項ノ命令ニ遠反シタ
ルトキハ自己ノ指揮ニ出デザルノ故ヲ
以テ其ノ處罰ヲ免ルルコトヲ得ズ
第三十八條ノ二前條ノ罰則ハ輸出ヲ業
トスル者ガ法人ナルトキハ理事、取締
役其ノ他ノ法人ノ業務ヲ執行スル役員
ニ、未成年者又ハ禁治產者ナルトキハ
其ノ法定代理人ニ之ヲ適用ス但シ營業
ニ關シ成年者ト同一ノ能力ヲ有スル未
成年者ニ付テハ此ノ限ニ在ラズ
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第七條ノ二ノ規程ニ基キ定メタル組合又
ハ組合員ノ輸出數量又ハ輸出價格ノ制限ニ
シテ本法施行ノ際現ニ存スルモノハ本法施行
後遲滯ナク之ヲ主務大臣ニ屆出ヅベシ
前項ノ屆出ハ之ヲ第七條ノ三第一項ノ屆
出ト看做ス
本法施行前ニ第九條ノ規定ニ依ル行政官
廳ノ命令ニ違反スル行爲アリタルトキハ
本法施行ノ後ト雖モ仍從前ノ第三十六條
及第三十八條ノ規定ヲ適用ス
〔國務大臣松本烝治君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X02819340317&spkNum=4
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005・松本烝治
○國務大臣(松本烝治君) 輸出組合法中改
正法律案ノ提案ノ理由ヲ御說明申上ゲマ
ス、我國ノ國民經濟ノ發展ヲ圖リマスル爲
ニハ輸出貿易ノ健全ナル發達ニ俟ツ所頗
ル多イコトハ言ヲ俟タナイ所デアリマス、
政府ハ曩ニ大正十四年輸出組合法ヲ制定實
施イタシマシタル所、其後其實蹟ノ見ルベ
キモノガ尠クナイノデアリマス、翻ッテ本邦
輸出貿易ノ現狀ヲ見マスルニ、輸出業者間
ニ統制ヲ缺イテ居リマスル結果、海外市場
ニ於テ同業者間ノ販賣競爭ガ行ハレマシ
テ、海外ノ輸入商ニ對シマシテ、本邦商品
取扱ニ關シテ不安ノ念ヲ懷カシムルノミナ
ラズ、動モスレバ關稅引上ゲ輸入制限等ノ
口實ヲ與ヘマシテ、延イテハ本邦輸出貿易
ノ發達ヲ阻害スルコトガ尠クナイノデアリ
マス、之ニ依ッテ見マスルニ、輸出貿易ノ統
制ヲ圖リ、海外市場ニ於ケル本邦商品ノ無
益ナル競爭ヲ防止スルコトハ刻下ノ急務デ
アリマス、然ルニ現今輸出組合法ニ於キマ
シテハ、輸出ノ統制ニ關スル規定ハ尙ホ不
十分デアリマシテ、之ガ確保ヲ期シ難イ憾
ミガアリマスルカラ、之ヲ整備スルノ必要
ガアルノデアリマス、依テ茲ニ之ヲ改正シ
マシテ輸出統制ノ强化ニ資スルト共ニ、之
ニ對スル監督ヲ十分ナラシメマシテ、更ノ
輸出組合法運用上必要ト認メラルル二三ノ
點ニ付テ、改正ヲ爲サムトスルモノデアリ
やく、何卒十分御審議ノ上御協贊ヲ與ヘラ
レムコトヲ冀ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X02819340317&spkNum=5
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006・池田政時
○子爵池田政時君 只今議題ニ上ボリマシ
タ輸出組合法中改正法律案ハ、其特別委員
ノ數ヲ特ニ十五名トシ、其指名ヲ議長ニ
任スルト云フ動議ヲ提出イタシマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X02819340317&spkNum=6
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007・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 贊成発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X02819340317&spkNum=7
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008・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 池田子爵ノ動議
ニ御異議ゴザイマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X02819340317&spkNum=8
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009・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 御異議ナイト認
メマス、特別委員ノ氏名ヲ書記官ヲシテ朗
讀イタサセマス
〔小林書記官朗讀〕
輸出組合法中改正法律案特別委員
公爵鷹司信輔君侯爵中御門經恭君
伯爵兒玉秀雄君子爵大河内輝耕君
子爵裏松友光君犬塚勝太郞君
男爵四條隆英君男爵伊藤文吉君
男爵深尾隆太郞君堀啓次郞君
稻畑勝太郞君森平兵衛君
下出民義君田村新吉君
磯村豐太郞君発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X02819340317&spkNum=9
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010・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 日程第二、商標
法中改正法律案、日程第三、不正競爭防止
法案、政府提出、衆議院送付、第一讀會、
是等ノ二案ハ之ヲ一括シテ議題ト爲スコト
ニ御異議ハゴザイマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X02819340317&spkNum=10
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011・近衞文麿
○議長(公爵近衛文麿君) 御異議ナイト認
メマス、松本商工大臣
商標法中改正法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議
院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和九年三月十六日
衆議院議長秋田〓
貴族院議長公爵近衞文麿殿
商標法中改正法律案
商標法中左ノ通改正ス
第二條第一項第二號ノ次ニ左ノ一號ヲ加
二ノ二工業所有權保護同盟條約國ノ
國ノ紋章、旗章其ノ他ノ黴章(國旗
ヲ除ク)ニシテ主務大臣ノ指定スル
モノト同一又ハ類似ノモノ
同條同項第三號ノ次ニ左ノ一號ヲ加フ
三ノ二工業所有權保護同盟條約國ノ
官ノ監督用又ハ證明用ノ印章又ハ記
號ニシテ主務大臣ノ指定スルモノト
同一又ハ類似ニシテ同一又ハ類似ノ
商品ニ使用スルモノ
第二十三條但書ヲ左ノ如ク改ム
但シ第二條第一項第一號乃至第四號第
六號第七號第十一號、第十一條但書、
第十五條第二項若ハ第二十四條ノ規定
ニ依リ準用スル特許法第三十二條若ハ
第三十三條ノ規定ニ違反ストノ理由ニ
依ル場合又ハ惡意ヲ以テ登錄ヲ受ケタ
ル商標ノ登錄ニ付第二條第一項第八號
ノ規定ニ違反ストノ理由ニ依ル場合ハ
此ノ限ニ在ラズ
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
商標又ハ商標權存續期間更新ノ登錄ニシ
テ本法施行前爲サレタルモノノ無效ノ審
判ニ付テハ仍從前ノ例ニ依ル
不正競爭防止法案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議
院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和九年三月十六日
衆議院議長秋田〓
貴族院議長公爵近衞文麿殿
不正競爭防止法案
不正競爭防止法
第一條不正ノ競爭ノ目的ヲ以テ左ノ各
號ノ一ニ該當スル行爲ヲ爲シタル者ハ
被害者ニ對シ損害賠償ノ責ニ任ズ
-本法施行ノ地域内ニ於テ取引上廣
ク認識セラルル他人ノ氏名、商號、
商標、商品ノ容器包装其ノ他他人ノ
商品タルコトヲ示ス表示ト同一若ハ
類似ノモノヲ使用シ又ハ之ヲ使用シ
タル商品ヲ販賣若ハ擴布シテ他人ノ
商品ト混同ヲ生ゼシム、ル行爲
二假設若ハ借用ノ商號ニ附加シテ商
品ニ虚僞ノ原產地ノ表示ヲ爲シ又ハ
之ヲ表示シタル商品ヲ販賣若ハ擴布
シテ原產地ノ誤認ヲ生ゼシムル行爲
三他人ノ商品ノ信用ヲ害スル虚僞ノ
事實ヲ陳述シ又ハ之ヲ流布スル行爲
前項ノ行爲ヲ爲シタル者ニ對シテハ裁
判所ハ被害者ノ請求ニ因リ損害賠償ニ
代ヘ又ハ損害賠償ト共ニ其ノ行爲ノ差
止ヲ命ズルコトヲ得
第一項第三號ノ行爲ヲ爲シタル者ニ對
シテハ裁判所ハ被害者ノ請求ニ因リ商
品ノ信用ヲ囘復スルニ必要ナル處置ヲ
モ命ズルコトヲ得
第二條商品ノ普通名稱若ハ取引上普通
ニ同種ノ商品ニ慣用セラルル地名其ノ
他ノ表示ヲ使用スル行爲又ハ之ヲ使用
シタル商品ヲ販賣若ハ擴布スル行爲ニ
付テハ前條ノ規定ヲ適用セズ
第三條外國人ニシテ本法施行ノ地域內
ニ住所又ハ營業所ヲ有セザルモノハ條
約又ハ之ニ準ズベキモノニ別段ノ規定
アル場合ヲ除クノ外第一條ノ請求ヲ爲
スコトヲ得ズ
第四條外國ノ國ノ紋章、旗章其ノ他ノ
黴章ニシテ主務大臣ノ指定スルモノト
同一又ハ類似ノモノハ其ノ國ノ當該官
廳ノ許可ナクシテ之ヲ商標トシテ使用
シ又ハ之ヲ商標トシテ使用シタル商品
ヲ販賣若ハ擴布スルコトヲ得ズ
前項ノ紋章ハ其ノ國ノ當該官廳ノ許可
ナクシテ商品ノ原產地ノ誤認ヲ生ゼシ
ムル方法ニ依リ取引上之ヲ使用シ又ハ
之ヲ使用シタル商品ヲ販賣若ハ擴布ス
ルコトヲ得ズ
外國ノ官ノ監督用又ハ證明用ノ印章又
ハ記號ニシテ主務大臣ノ指定スルモノ
ト同一又ハ類似ノモノハ其ノ國ノ當該
官廳ノ許可ナクシテ之ヲ同一若ハ類似
ノ商品ノ商標トシテ使用シ又ハ之ヲ使
用シタル商品ヲ販賣若ハ擴布スルコト
ヲ図之
帝國ノ紋章、旗章其ノ他ノ徽章又ハ官
ノ監督用若ハ證明用ノ印章若ハ記號ノ
使用ノ許可ヲ當該官廳ヨリ受ケタルト
キハ外國ノ國ノ紋章、旗章其ノ他ノ徽
章又ハ官ノ監督用若ハ證明用ノ印章若
ハ記號ト同一又ハ類似ノモノナル場合
ト雖モ前三項ノ規定ヲ適用セズ
第五條前條ノ規定ニ違反シタル者ハ千
圓以下ノ罰金ニ處ス
第六條第一條第一項第一號第二號及第
四條第一項乃至第三項ノ規定ハ特許
法、實用新案法、意匠法又ハ商標法ニ
依リ權利ノ行使ト認メラルル行爲ニハ
之ヲ適用セズ
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
〔國務大臣松本烝治君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X02819340317&spkNum=11
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012・松本烝治
○國務大臣(松本烝治君) 商標法中改正法
律案及不正競爭防止法案ノ提案理由ヲ、便
宜上一括シテ御說明申上ゲマス、我國產業
ノ堅實ナル發達ヲ圖ル爲ニハ、不正競爭ヲ
防止イタシマシテ、誠實ナル當業者ノ利益
ヲ保護シ、他方ニ於テハ消費者ニ不測ノ損
害ヲ被ラシメザルヤウニ致シマスルコト
ガ、誠ニ緊要ト認メラルルノデアリマシテ、
政府ニ於キマシテモ夙ニ之ガ實情ノ調査
ト法令ノ立案ノ準備トニ努メテ來タノデ
アリマス、然ルニ國際間ニ於キマシテハ工
業所有權保護同盟條約ガアリマシテ、我國
ハ明治三十二年以來此條約ニ加入イタシテ
居ルノデアリマス、而シテ此條約ハ大正十
四年ニ改正セラレマシテ、不正競爭防止ニ
關スル詳細ナル規定ヲ設ケマシテ、特ニ主
要ナル不正競爭ヲ禁止スベキコト等ヲ規定
イタシタノデアリマス、此改正條約ニハ我
國モ署名ハ致シタノデアリマスルガ、未ダ
之ニ加入セズシテ今日ニ及ンダノデアリマ
ス、併ナガラ近時當業者間ノ競爭ハ益〓激
甚トナリツツアルノ實情ニ鑑ミマシテ、此
際主要ナル不正競爭ノ行爲ヲ防止シマシ
テ、被害者ニ對シテハ相當ノ救濟ヲ爲ス爲
メ法律ノ制定ヲ爲シ、且ツ之ニ關聯シテ商
標法ヲ改正イタシマスルコトハ最モ緊要ト
認メラルル次第デアリマス、斯ノ如ク致シ
マシテ、進ンデ工業所有權保護同盟條約ニ
加入スルコトトナリマスレバ、海外ニ於ケ
ル我商品ノ聲價ヲ一層高メマシテ、我國貿
易ノ發展ニ資スルコト尠カラザルモノアリ
ト考フルノデアリマス、右ノ理由ニ依リマ
シテ、不正競爭防止法案及商標法中改正法
律案ヲ提出イタシタ次第デアリマス、何卒愼
重御審議ノ上御協贊アラムコトヲ冀ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X02819340317&spkNum=12
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013・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 御質疑ガナケレ
バ、此二案ノ特別委員ノ氏名ヲ朗讀イタサ
セマス
〔小林書記官朗讀〕
商標法中改正法律案外一件特別委員
侯爵小村捷治君伯爵二荒芳德君
關屋貞三郞君子爵高橋是賢君
男爵杉溪由言君室田義文君
江口定條君平沼亮三君
米原章三君発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X02819340317&spkNum=13
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014・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 日程第四、昭和
九年度一般會計歲出ノ財源ニ充ツル爲公債
追加發行ニ關スル法律案、日程第五、絲價
安定融資擔保生絲買收法中改正法律案、日
程第六、日本銀行特別融通及損失補償法中
改正法律案、政府提出、衆議院送付、第一
讀會、是等ノ三案ハ、之ヲ一括シテ議題ト
ナスコトニ御異議ハゴザイマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X02819340317&spkNum=14
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015・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 御異議ナイト認
メマス、高橋大藏大臣
昭和九年度一般會計歲出ノ財源ニ充ツ
ル爲公債追加發行ニ關スル法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議
院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和九年三月十六日
衆議院議長秋田〓
貴族院議長公爵近衞文麿殿
昭和九年度一般會計歲出ノ財源ニ充ツ
ル爲公債追加發行ニ關スル法律案
政府ハ昭和九年度一般會計歲出ノ財源ニ
充ツル爲他ノ法律ニ依リ起債シ得ル金額
ノ外千六百七十萬圓ヲ限リ公債ヲ發行シ
又ハ借入金ヲ爲スコトヲ得
前項ノ規定ニ依ル公債ノ發行價格差減額
ヲ補塡スル爲必要アル場合ニ於テハ前項
ノ制限以外ニ公債ヲ發行シ又ハ借入金ヲ
爲スコトヲ得
附則
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
絲價安定融資擔保生絲頁收法中改正法
律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議
院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和九年三月十六日
衆議院議長秋田〓
貴族院議長公爵近衞文麿殿
絲價安定融資擔保生絲買收法中改正法
律案
絲價安定融資擔保生絲買收法中左ノ通改
正ス
第五條中「五分利附一ヲ削ル
附則ニ左ノ一項ヲ加フ
昭和九年度以降當分ノ內第九條ノ規定ニ
依ル繰入ハ之ヲ爲サザルコトヲ得
附則
本法ハ昭和九年四月一日ヨリ之ヲ施行ス
日本銀行特別融通及損失補償法中改正
法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議
院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和九年三月十六日
衆議院議長秋田〓
貴族院議長公爵近衞文麿殿
日本銀行特別融通及損失補償法中改正
法律案
日本銀行特別融通及損失補償法中左ノ通
改正ス
第六條中「五分利附」ヲ削ル
附則
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
〔國務大臣高橋是〓君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X02819340317&spkNum=15
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016・高橋是清
○國務大臣(高橋是清君) 只今議題トナリ
マシタ昭和九年度一般會計歲出ノ財源ニ充
ツル爲公債追加發行ニ關スル法律案、提出
ノ理由ヲ說明イタシマス、昭和九年度一般
會計ニ於テ、旣ニ成立シテ居リマスル公債
法ニ依リ、公債ヲ募集スル金額竝ニ滿洲事
件ニ關スル經費支辨ノ爲メ發行ヲ要スル公
債金額ノ外ニ、歲入ノ不足ヲ補塡スル爲メ、
六億六百八十餘萬圓ノ公債ノ發行ヲ必要ト
スルコトハ、曩ニ昭和九年度總豫算ノ大要
ヲ說明イタシマシタ際ニ中述ベテ置イタノ
デアリマスガ、其發行ノ爲ニハ新ニ起債ノ
權能ヲ得ルコトガ必要デアリマス、尙ホ昭
和九年度ノ歲出ニ於テモ、其內若干ノ金額
ハ例年ノ如ク翌年度ニ繰越サルル結果ニナ
ルノデアラウト存ゼラレマスルガ、其繰越
額ノ財源ハ必シモ九年度內ニ起債スルコト
ヲ必要ト致シマセヌ爲メ、翌年度ニ於テ募
債シ得ルコトト爲スヲ適當ト認メマス、右
ノ理由ニ依リ本法律案ヲ提出イタシタ次第
デアリマス、次ノ日程、絲價安定融資擔保
生絲買收法中改正法律案、提出ノ理山ヲ說
明イタシマス、絲價安定融資擔保生絲買收
法ニ依ッテ買上ゲマシタル生絲ノ賣拂ニ依
リ收入シタル金額ハ、現行法ニ於テハ、之
ヲ國際元金償還資金ニ充ツル爲メ、國際整
理基金特別會計ニ繰入レルコトニナッテ居
ルノデアリマスガ、先般來屢〓申上ゲマシタミ
ル如ク、一般會計歲計ノ狀態ハ、當分ノ中
多額ノ財源不足ヲ免レナイノデアリマシ
テ、之ガ補塡ニ關シマシテハ、新ニ公債ヲ
發行スルノ餘儀ナキ狀態ニ在ルノデアリマ
ス、又別途提出イタシマシタ昭和九年度歲
入歲出總豫算追加第一號ニ計上セラレタ
ル、農村救濟ニ關スル經費ノ財源ヲ必要ト
スル事情ニモ鑑ミマシテ、當分ノ內右國債
元金償還資金繰入ヲ停止スルヲ適當ト認ム
ルノデアリマス、尙ホ輓近一般市場金利低
下ノ趨勢顯著ニシテ、昨年九月以降發行イ
タシマシタル新規公債ノ利率ハ、總テ四分
ニ引下ゲラレタルニ徵シマシテ、右法律ノ
規定ニ依リ交付スル國債證劵ノ利率モ亦之
ヲ引下ゲテ、同時期ニ發行セラルル他ノ國
債ト同樣ノ利率ト爲スノ必要アリト考ヘマ
スノデ、本法律案ヲ提出イタシタ次第デア
リマス、日程第六、日本銀行特別融通及損
失補償法中改正法律案、提出ノ理由ヲ說明
イタシマス、近時低金利ノ趨勢顯著ナルモ
ノガアリマスカラ、此趨勢ニ鑑ミマシテ日
本銀行特別融通及損失補償法ニ依リ交付ス
ル國庫證劵ノ利率モ亦之ヲ引下ゲテ同時期
ニ發行セラルル他ノ國債ト同樣ノ利率ト爲
スノ必要ガアルト認メラレマスノデ、本法
律案ヲ提出イタシタ次第デアリマス、以上
三案、何卒御審議ノ上御協贊ヲ與ヘラレム
コトヲ希望イタシマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X02819340317&spkNum=16
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017・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 御質疑ガナケレ
バ·高橋大藏大臣
〔國務大臣高橋是〓君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X02819340317&spkNum=17
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018・高橋是清
○國務大臣(高橋是清君) 只今日程第四ニ
付テ說明ヲ申上ゲマシタガ、私ノ不注意ノ
爲ニ別ノ案ノ說明ヲ致シマシタ、(笑聲)何
トモ恐縮ニ堪ヘマセヌ、更ニ其說明ヲ致シ
やっ、昭和九年度一般會計歲出ノ財源ニ充
ツル爲公債追加發行ニ關スル法律案、提出
ノ理由ヲ說明イタシマス、昭和九年度歲入
歲出總豫算ニ伴フ一般會計歲入不足ノ補塡
ニ付キマシテハ、之ニ關スル法律案ヲ今期
議會ニ提出イタシマシタガ、別途提出イタ
シマシタ同年度歲入歲出總豫算追加第一號
ニ計上セル經費ノ財源ニ付キマシテモ、亦
今日ノ場合其大部分ヲ公債ニ依ルノ外アリ
マセヌノデ、本法律案ヲ提出イタシタ次第
デアリマス、尙ホ本法律案ハ前述ノ如ク總
豫算ニ伴フ歲入補塡公債法案ガ御審議中
デアリマシタノデ、別ノ法律案ト致シタ次
第デアリマス、何卒御審議ノ上、御協賛ヲ
與ヘラレムコトヲ希望イタシマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X02819340317&spkNum=18
-
019・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 御質疑ガナケレ
バ此三案ハ、之ヲ地租法中改正法律案外一
件ノ特別委員ニ付託イタシマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X02819340317&spkNum=19
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020・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 日程第七、治安
維持法改正法律案、政府提出、衆議院送
付、第一讀會、小山司法大臣
治安維持法改正法律案
右政府提出案本院ニ於テ修正議決セリ因
テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和九年三月十六日
衆議院議長秋田〓
貴族院議長公爵近衞文麿殿
(小字及-ハ衆議院ノ修正ナリ)
治安維持法改正法律案
治安維持法
第一章通則
第一條本法ノ罪ヲ犯シタル者ニ付テハ
刑事手續其ノ他ニ關シ本法ニ別段ノ規
定アル場合ヲ除クノ外一般ノ例ニ依ル
第二條本法ハ何人ヲ問ハズ本法施行區
域外ニ於テ罪ヲ犯シタル者ニ亦之ヲ適
用ス
第二章罪
第三條國體ヲ變革スルコトヲ目的トシ
テ結社ヲ組織シタル者又ハ結社ノ役員
其ノ他指導者タル任務ニ從事シタル者
ハ死刑又ハ無期若ハ七年以上ノ懲役ニ
處シ情ヲ知リテ結社ニ加入シタル者又
ハ結社ノ目的遂行ノ爲ニスル行爲ヲ爲
シタル者ハ三年以上ノ有期懲役ニ處ス
第四條前條ノ結社ヲ支援スルコトヲ目
的トシテ結社ヲ組織シタル者又ハ結社
ノ役員其ノ他指導者タル任務ニ從事シ
タル者ハ無期又ハ五年以上ノ懲役ニ處
シ情ヲ知リテ結社ニ加入シタル考又ハ
結社ノ目的遂行ノ爲ニスル行爲ヲ爲シ
タル者ハ二年以上ノ有期懲役ニ處ス
第五條第三條ノ目的ヲ以テ其ノ目的タ
ル事項ノ實行ニ關シ協議ヲ爲シ又ハ其
ノ目的タル事項ノ實行ヲ煽動シタル者
ハ一年以上七年以下ノ懲役ニ處ス
第三條ノ目的ヲ以テ其ノ目的タル事項
ヲ宣傳シタル者ハ六月以上五年以下ノ
懲役ニ處ス
第六條第三條ノ目的ヲ以テ騒擾、暴行
其ノ他生命、身體又ハ財產ニ害ヲ加フ
ベキ犯罪ヲ煽動シタル者ハ一年以上十
年以下ノ懲役ニ處ス
第七條前四條ノ罪ヲ犯サシムルコトヲ
目的トシテ金品ヲ供與シ若ハ其ノ他ノ
方法ヲ以テ便宜ヲ與ヘタル者又ハ情ヲ
知リテ之ヲ受ケタル者ハ五年以下ノ懲
役ニ處ス
第八條私有財產制度ヲ否認スルコトヲ
目的トシテ結社ヲ組織シタル者又ハ情
ヲ知リテ結社ニ加入シタル者若ハ結社
ノ目的遂行ノ爲ニスル行爲ヲ爲シタル
者ハ十年以下ノ懲役又ハ禁錮ニ處ス
第九條前條ノ目的ヲ以テ其ノ目的タル
事項ノ實行ニ關シ協議ヲ爲シ又ハ其ノ
目的タル事項ノ實行ヲ煽動シタル者ハ
五年以下ノ懲役又ハ禁鋼ニ處ス
第十條第八條ノ目的ヲ以テ騒擾、暴行
其ノ他生命、身體又ハ財產ニ害ヲ加フ
ベキ犯罪ヲ煽動シタル者ハ七年以下ノ
懲役又ハ禁錮ニ處ス
第十一條前三條ノ罪ヲ犯サシムルコト
ヲ目的トシテ金品ヲ供與シ若ハ其ノ他
ノ方法ヲ以テ便宜ヲ與ヘタル者又ハ情
ヲ知リテ之ヲ受ケタル者ハ三年以下ノ
懲役又ハ禁錮ニ處ス
第十二條第三條、第四條及第八條ノ未
遂罪ハ之ヲ罰ス
第十三條本章ノ罪ヲ犯シタル者自首シ
タルトキハ其ノ刑ヲ減輕又ハ免除ス
第三章刑事手續
第十四條第三條、第四條及第八條ノ罪
ニ該ル被疑事件ニ付被疑者左ノ各號ノ
急速ヲ要シ判
一ニ該當スル場合ニ於テ搜査上必要ア
事ノ勾引狀ヲ求ムルコト能ハザルトキハ
リト思料スルトキハ地方裁判所ノ檢事
ハ直ニ被疑者ヲ勾引スルコトヲ得
一被疑者定リタル住居ヲ有セザルト
キ
二被疑者罪證ヲ湮滅スル虞アルトキ
三被疑者逃亡シタルトキ又ハ逃亡ス
ル虞アルトキ
四被疑者變名又ハ僞名ヲ使用スル疑
アルトキ
第十五條勾引シタル被疑者ハ指定ノ場
所ニ引致シタル時ヨリ四十八時間內ニ
之ヲ訊問スベシ其ノ時間內ニ勾留狀ヲ
發セザルトキハ被疑者ヲ釋放スベシ
第十六條第十四條ノ規定ニ依リ被疑者
場合ニ於テ急速ヲ要シ判事ノ勾留狀ヲ求ム
ヲ勾引スルコトヲ得ベ、キ原由アルトキハ
ルコト能ハザルトキハ地方裁判所ノ檢事ハ
之ヲ勾留スルコトヲ得
被疑者ノ勾留ハ前條ノ規定ニ依リ被疑
者ヲ訊問シタル後ニ非ザレバ之ヲ爲ス
コトヲ得ズ但シ被疑者逃亡シタル場合
ハ此ノ限ニ在ラズ
第十七條前條ノ規定ニ依リ勾留シタル
被疑者ハ檢事特ニ必要アリト思料スル
場合ニ限リ之ヲ訊問スルコトヲ得
第十八條勾留ノ期間ハ二月トス特ニ繼
續ノ必要アル場合ニ於テハ一囘限之ヲ
更新スルコトヲ得
第十九條勾留ノ原由消滅シ其ノ他勾留
ヲ繼續スルノ必要ナシト思料スルトキ
ハ速ニ被疑者ヲ釋放スベシ
第二十條刑事訴訟法中被〓人ノ勾引及
勾留ニ關スル規定ハ別段ノ規定アル場
合ヲ除クノ外本法ノ勾引及勾留ニ付之
ヲ準用ス但シ保釋、責付及執行停止ニ
關スル規定ハ此ノ限ニ在ラズ
第二十一條本法ノ罪ヲ犯シタル者ニ對
スル被〓事件公判ニ付セラレタル場合
ニ於テ檢事必要アリト認ムルトキハ事
件ノ繫屬スル裁判所及移轉先裁判所ニ
共通スル直近上級裁判所ニ管轄移轉ノ
請求ヲ爲スコトヲ得但シ第一囘公判期
日ノ指定アリタル後ハ此ノ限ニ在ラズ
前項ノ請求アリタルトキハ決定アル迄
訴訟手續ヲ停止スベシ
第四章保護觀察
第二十二條本法ノ罪ヲ犯シタル者ニ對
シ刑ノ執行猶豫ノ言渡アリタル場合又
ハ刑事訴訟法第二百七十九條ノ規定ニ
依リ公訴ヲ提起セザル場合ニ於テ檢事
必要アリト認ムルトキハ本人ヲ保護觀
察ニ付スルコトヲ得
第二十三條保護觀察ハ本人ヲ司法保護
委員ノ觀察ニ付シ、保護者ニ引渡シ又
ハ寺院、〓會、保護團體、病院若ハ適
當ナル者ニ委託若ハ送致シテ之ヲ爲ス
第二十四條保護觀察ヲ行フニハ本人ノ
更ニ罪ヲ犯スノ危險ヲ防止シ且本人ヲ
シテ正業ニ從事セシムルコトニ留意ス
ベシ
第二十五條司法保護委員及保護觀察ニ
關シ必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定
ム
第五章豫防拘禁
第二十六條第三條又ハ第四條ノ罪ヲ犯
シ刑ニ處セラレタル者其ノ執行ヲ終リ
釋放セラルベキ場合ニ於テ釋放後ニ於
テ更ニ第三條又ハ第四條ノ罪ヲ犯スノ
虞アルコト顯著ナルトキハ裁判所ハ檢
事ノ請求ニ因リ本人ヲ豫防拘禁ニ付ス
第二十七條前條ノ規定ニ依ル豫防拘禁
ノ請求ハ本人ノ現在地ヲ管轄スル地方
裁判所ノ檢事刑務委員會ノ議ヲ經書面
ヲ以テ其ノ裁判所ニ之ヲ爲スベシ
本人ハ辯護
前項ノ請求アリタルトキハ裁判所ハ本
人ヲ選任スルコトヲ得
人ノ陳述ヲ聽キ決定ヲ爲スベシ
裁判所ハ本人及辯護人ノ意見ヲ聽キ決定ヲ
爲スペシ
第二十八條豫防拘禁ニ付スル旨ノ決定
ニ對シテハ本人ヨリ卽時抗告ヲ爲スコ
トヲ得此ノ抗〓ハ裁判ノ執行ヲ停止ス
ル效力ヲ有セズ
第二十九條刑事訴訟法中決定及卽時抗
告ニ關スル規定ハ第二十七條第二項ノ
決定及前條ノ卽時抗〓ニ付之ヲ準用ス
第三十條豫防拘禁ニ付セラレタル者ハ
適當ナル施設
監獄內ノ特ニ分界ヲ設ケタル場所ニ之
ヲ收容シ改悛セシムル爲必要ナル處置
ヲ爲スベシ
以內
第三十一條豫防拘禁ノ期間ハ二年。トス
特ニ必要アル場合ニ於テハ裁判所ハ之
ヲ更新スルコトヲ得
第二十七條乃至第二十九條ノ規定ハ前
項ノ更新ノ場合ニ之ヲ準用ス
第三十二條豫防拘禁ハ刑ノ執行終了後
引續キ之ヲ執行ス
刑事訴訟法中裁判ノ執行指揮ニ關スル
規定ハ前項ノ執行ニ付之ヲ準用ス
第三十三條豫防拘禁ニ付セラレタル者
其ノ執行ニ因リ著シク健康ヲ害スル虞
アルトキ其ノ他重大ナル事出アルトキ
ハ豫防拘禁ノ決定ヲ爲シタル裁判所ノ
檢事又ハ本人ノ現在地ヲ管轄スル地方
裁判所ノ檢事ノ指揮ニ依リ豫防拘禁ノ
執行ヲ停止スルコトヲ得
第三十四條豫防拘禁ニ付セラレタル者
逃亡シタルトキハ檢事ハ直ニ逮捕狀ヲ
發シ又ハ司法警察官ヲシテ之ヲ發セシ
ムルコトヲ得
刑事訴訟法中逮捕狀ニ關スル規定ハ前
項ノ逮捕狀ニ付之ヲ準用ス
第三十五條豫防拘禁ニ付セラレタル者
收容後其ノ必要ナキニ至リタルトキハ
行政官廳ノ處分ヲ以テ退所セシムベシ
前項ノ處分ヲ爲スニハ刑務委員會ノ議
ヲ經ベシ
第三十六條刑務委員會及豫防拘禁ニ關
シ必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
附則
第三十七條本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以
テ之ヲ定ム
第三十八條本法ハ本法施行前從前ノ規
定ニ定メタル罪ヲ犯シタル者ニ亦之ヲ
適用ス但シ改正規定ニ定ムル刑ガ從前
ノ規定ニ定メタル刑ヨリ重キトキハ從
前ノ規定ニ定メタル刑ニ依リ處斷ス
豫防拘禁ニ關スル規定ハ從前ノ第一條
第一項ノ罪ニ付本法施行前刑ニ處セラ
レタル者ニ亦之ヲ適用ス
第三十九條豫防拘禁ニ付セラレタル者ハ當
分ノ間監獄內ノ特ニ分界ヲ設ケタル場所ニ
之ヲ收容スルコトヲ得
四十
第三十九條本法ニ於テ地方裁判所ノ檢
事トアルハ朝鮮ニ於テハ地方法院ノ檢
事トス
〔國務大臣小山松吉君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X02819340317&spkNum=20
-
021・小山松吉
○國務大臣(小山松吉君) 只今上程ニ相成
リマシタ治安維持法改正法律案ヲ、提出ス
ルニ至リマシタ理由ヲ御說明中上ゲマス、
御承知ノ通リ治安維持法違反事件ニ對シマ
シテハ、政府ハ昭和三年以來銳意之ガ檢擧
ヲ續行イタシマシタルニ拘ラズ、共產主義
者ノ運動ハ實ニ執拗ヲ極メマシテ、幾度カ
檢擧ニ依リ其結社ノ組織ガ潰滅ニ至リマシ
テモ、又更ニ其再建ヲ企テツツアリマシ
テ、今日ニ至リマシテモ尙ホ之ヲ剿滅スル
コト能ハザル情況ニ在リマスルコトハ、誠
ニ遺憾ノ次第デアリマス、翻テ我ガ國情ヲ
考ヘマスルニ、今ヤ內外共ニ實ニ重大ナル
時局ニ際會イタシテ居ルノデアリマシテ、
今ニシテ速ニ是等不逞兇惡ノ思想運動ヲ根
絕イタシマセヌケレバ、帝國ノ前途誠ニ憂
慮ニ堪ヘザルモノアルコトヲ痛感スルノデ
アリマス、而シテ之ガ對策ト致シマシテ
ハ、勿論〓育其他ノ方面ニ於ケル新ナル施
設計畫ヲ必要ト致スノデアリマシテ、啻ニ
刑罰ノミヲ以テ之ガ根絕ヲ期スルコトハ至
難ノ業デハアリマスルガ、苟モ國體ヲ變革
イタシマシテ、勞農階級ノ獨裁政治ヲ企畫
スルガ如キ兇惡極マリナキ思想運動者ガ、
潜行的ニ活躍スル今日ニ在リマシテハ、先
ヅ之ニ對シ徹底的ニ彈壓ヲ加ヘマシテ、彼
等ヲシテ蠢動ノ餘地ナカラシムルコトハ、
現下ノ急務デアルト信ズルノデアリマス、
然ルニ現行治安維持法ハ施行以來其實蹟ニ
徵シマスルニ、如上ノ目的ヲ達スル上ニ於
キマシテ、其規定ニ不備ノ點ガ尠カラズ存
スルノデアリマス、殊ニ共產黨ノ所謂外廓
團體ニ對シマスル取締ノ上ニ、不備ノ點ア
ルコトヲ認メタノデアリマス、曩ニ申シマ
シタ如ク共產主義者ガ幾度カ黨ノ再建運動
ヲ爲スニ至リマシタノモ、全ク是等外廓團
體ガ存在イタシテ居リマシテ、隱密ニ活躍
シタ爲デアリマス、從テ政府ハ是等ノ者ニ
對シ特別ノ取締規定ヲ設クル必要ヲ認メタ
次第デアリマス、治安維持法違反事件ノ犯
罪者ノ行動ハ組織的デアリマシテ、而モ大
衆的犯罪デアリマス、現行刑事訴訟法ニ於
ケル犯罪搜査手續ノ豫想セザリシ犯罪現象
ヲ呈スルコトガアリマスルガ爲ニ、其檢擧
ヲ爲スニ當リマシテモ、手續上ノ特例ヲ設
クルノ必要ヲ認メタノデアリマス、從テ改
正案ニ於キマシテハ單ニ罪ト刑トヲ定ムル
實體法規定ノ外ニ、手續法規ヲモ之ニ加ヘ
タノデアリマス、更ニ犯罪者ノ實情ニ鑑ミ
マシテ、犯罪ノ豫防ト鎭壓ノ效果トヲ完璧
ナラシメムガ爲ニ、保護觀察ノ制度ト豫防
拘禁ノ制度トヲ創設イタシタ次第デアリマ
ス、更ニ改正案ノ主要ノ條項ニ付キマシ
テ、少シク具體的ニ御說明ヲ申上ゲマスレ
バ、第一ハ國體ヲ變革スルコトヲ目的トス
ル犯罪ト、私有財產制度ヲ否認スルコトヲ
目的トスル犯罪トノ規定ヲ、全ク別ノ條文
ニ規定シタコトデアリマス、第二ハ所謂外
廓團體ニ對スル處罰規定ヲ設ケタルコトデア
リマス、第三ハ宣傳行爲ヲ處罰スル規定ヲ設
ケタルコトデアリマス、第四ハ本法ノ第三
條及第四條、是ハ國體變革ニ關スル罪デア
リマス、竝ニ第八條、私有財產制度否認ニ
關スル規定デアリマスガ、第三條、第四條
及第八條ノ犯罪ニ限リマシテ、特別ノ場合
ニ於テ地方裁判所檢事ガ、被疑者ニ對シマ
シテ勾留狀ヲ發スルコトヲ得ル規定ヲ設ケ
タルコトデアリマス、尙ホ本法ノ罪ヲ犯シ
マシタ被告事件ニ付キマシテ、必要ノアリ
マスル時ニ其裁判管轄ヲ移轉スルコトヲ得
ル規定ヲ設ケタルコトデアリマス、ソレカ
ラ第五ハ、刑ノ執行猶豫ノ言渡ヲ受ケタル
者、又ハ檢事ガ不起訴ノ處分ヲ爲シマシタ
者ニ對シマシテ、本人ヲ保護觀察ニ付スル
規定ヲ設ケタルコトデアリマス、ソレカラ
第六ハ本法ノ第三條又ハ第四條、卽チ國體
變革ニ關スル罪デアリマスルガ、第三條又
ハ第四條ノ犯罪ニ依リマシテ刑ニ處セラレ
タル者ニ對シマシテ、保安處分トシテ豫防
拘禁ノ制度ヲ設ケタコト等デアリマス、然
ルニ此衆議院ニ於キマシテハ本法第十四
條、第十六條中ノ檢事ガ勾引又ハ勾留ヲ爲
シ得ベキ場合ノ手續規定ニ、人權擁護ノ趣
旨ニ於キマシテ、少シク修正ヲ加ヘテ居リ
マス、文字上ノ修正デゴザイマス、第二十
七條第二項ニ、本人ニ辯護人ヲ選任シ得ル
旨ノ規定、第三十條ノ豫防拘禁ヲ爲ス場所ニ
付キマシテ、又第三十一條ノ豫防拘禁ノ期間
ニ付キマシテ、少シク修正ヲ加ヘタノデア
リマスガ、政府ニ於キマシテハ、右ノ修正
ニハ反對ハ致シマセヌ、詳細ハ委員會ニ於
キマシテ御說明申上ゲマス、何卒愼重御審
議ノ上、御協賛アラムコトヲ希望イタシマ
ス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X02819340317&spkNum=21
-
022・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 本案ニ對シテハ
質疑ノ通告ガゴザイマス、通〓順ニ依リマ
シテ、大河內子爵ノ發言ヲ許シマス
〔千爵大河內輝耕君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X02819340317&spkNum=22
-
023・大河内輝耕
○子爵大河內輝耕君 會議切迫ノ折柄、皆
樣ヲ煩シテ誠ニ恐縮ニ存ジマス、私ハ此際
政府ニ對シマシテ、一般思想ニ對スル政府
ノ態度如何、斯ウ云フコトヲ質問イタシタ
イ、是ハ一般思想ノコトデゴザイマスルカラ、
或ハ總理大臣ニ申上ゲタ方ガ順序カトモ存
ジマスルガ、其邊能ク存ジマセヌガ、御提
案ガ司法大臣ノコトデゴザイマスルカラ、司
法大臣ガ政府ヲ代表シテ御答ヘ下サレバ
向差支ナイコトデゴザイマス、ソレデ只今
御說明ニナリマシタ治安維持法ハ、過激思
想取締ノコトダト私ハ了解イタシマス、ソ
レデ此過激思想ハ勿論取締ダケデハイカナ
イ、善導ガ主デゴザイマシテ、ソレニ取締
ガ唯手傳ヒニ出ル、斯ウ云フコトダラウト
存ジマス、併シ只今ノ御說明ヲ伺ッタ所デ
ハ、決シテ我ミ此治安維持法ニ對シテ反對
スベキモノデナイ、少シモ反對スル理由ハ
發見ヲ致シマセヌ、唯其內容ヲズット見テ
見マスト、思想ノ潮流ニ付キマシテ政府ノ
御認識ガ、何カ少シ斯ウ足リナイヤウナ感
ガアリマス、多少物足リナイヤウナ感ガゴ
ザイマス、其點ニ付テ御確メヲシテ見タイ
ト思フ、先達テ以來豫算委員會其他ニ於キ
マシテ、思想問題ノ質問應答ガ屢、繰返サレ
マシタ、其結果ヲ見テ見マスルト、是ハ祕
密會ニ互ッテ居ルコトデゴザイマスルカラ、
皆樣御承知デゴザイマスガ、此處デ內容ヲ
勿論申ス譯ニハ參リマセヌガ、詰リ國體變
革ノ方ノ思想ト云フモノハ段々ニ崩壞シテ
來テ、ソレデ勿論國體ヲ認メテ居ル、國體
ヲ認メテ居ルト云フ前提ノ下ニ矯激ナコト
ヲスル考ヘデ居ル、斯ウ云フ思想、世間デ
所謂右傾、右翼ト言ッテ居リマスガ、此右翼
ト云フ言葉ハ私ハ惡イト思フ、右翼ト申セ
バ左傾ニ對スル、所謂國體變革ニ對スル愛
國心ノコトデゴザイマスカラ、斯ウスレバ
我ミデモ右翼〓ノ一人デアル、左翼ト云フ
言葉ハ惡イト思ヒマスガ、マア兔ニ角サウ
云フヤウナ矯激ナ思想ガアル、是ガ今最モ
警戒ヲ要シ、又善導ヲ要スルモノデアルト
云フヤウナ、其點ガ明ニサレタヤウニ存ジ
やく、蛇足ノヤウデゴザイマスガ、私之ニ
付キマシテ何カ色ミナ例モ多少調ベテ見マ
シタ、併シ又一々申上ゲルコトモ煩ハシウ
ゴザイマスガ、是ハマア其思想ニ直接關係ガ
アルカ無イカ實ハ分ラナイ、分ラナイノデ
ゴザイマスガ、往來デ拾ッタ文章ナンデス、
往來デ拾ッタ文章ナンデスガ、書イタ人モ
誰ダカ分ラズ、如何ナル時期ニ書イタノカ
分ラズ、從テドンナ意味デ書イタノダカ聞
イテ見ヤウモナイ、併シチヨット之ヲ讀ンデ
見マス、「日本國民ニ檄ス日本國民ヨ······刻
下ノ祖國日本ヲ直視セヨ、政治外交〓育思
想文〓等、何處ニ興國日本ノ姿アルカ、政
權黨利ニ盲シタル政黨ト、之ニ結束シテ、
民衆ノ膏血ヲ絞ル財閥ト、更ニ之ヲ擁護シ
テ壓制日々ニ長スル官憲ト、軟弱外交ト墮
落セル〓育ト、腐敗セル軍部ト惡化セル思
想ト、塗炭ニ苦シム農民勞働者階級ト、群
據セル口舌ノ徒、日本ハ今ヤ此ノ如ク、錯
踪セル墮落ノ淵ニ臨ミ、死ナントシテ居ル、
武器ヲ取ッテ立テ、今ヤ邦家救濟ノ途ハ、
途直接行動以外ニ何モノモナイ、國民ヨ、
天皇ノ御名ニテ、君側ノ奸ヲ屠レ、國民ノ
敵タル旣成政黨ト、財閥トヲ殺セ、橫暴極
マル官憲ヲ膺懲セヨ、奸賊特權階級ヲ抹殺
セヨ、昭和七年〇月〇〇日〇〇〇靑年〇〇
農民同盟」斯ウ書イテアル、何ダカ分リマセ
ヌケレドモ、コンナコトガ書イテアル、是
ハ書イタ人モ分リマセヌカラ、無論之ヲ論
議ノ前提ニスル譯デモゴザイマセヌガ、思
想ノ湖流ノ一ツノ一例トシテハ見テ差支ナ
カラウト存ジマス、併シ斯ウ云フモノヲ前
提トシテ質問イタス譯ニ參リマセヌカラ、
ソレデ我ミガ矯激ナリト認メテ居ル思想ハ
何ダ、右翼ト云フ言葉ハ無論イケマセヌ、
ソレデ申上ゲテ見マスレバ、此間中ノ色ミ
質問ノ應答ノ樣子ニ依ッテ見レバ、斯ウ云フ
コトナンダラウト思フ、詰リ國體ハ認メル、
併シ極端ノ獨裁政治ヲ布イテ國民ノ人格ヲ
奪ッテシマフ、憲法上ニ於テ與ヘラレタ榮譽
權ヲ奪ヒ、自由權ヲ奪ヒ、財產權ヲ奪ヒ、
悉ク之ヲ奪ッテ、サウシテ之ヲ昔ノ奴隷ト同
ジヤウナ法律上ノ······事實上モサウナリマ
セウガ······地位ニ置イテ、サウシテ獨裁ヲ
ヤラウ、國體ヲ認メルガ、實ハ露西亞ニシ
テシマフ、斯ウ云フコトラシクマア大體承
知シテ宜シイト思フ、ソレヲ前提トシテ質
問ヲ續ケテ參リマス、此思想ト云フモノガ
一番今ハ恐ルベキ思想デ、一番詰リ蔓延シ
テ居ル所デナイカト思フ、ソレデ斯ノ如キ
思想ハ無論申ス迄モナク、日本ナリ何處ナ
リ、到底容赦シ得ベカラザル思想デゴザイ
マス、殊ニ日本ニ於テハ斯ウ云フモノハ到
底容レルコトガ出來ナイ、御承知ノ通リ憲
法ハ不磨ノ大典デアル、殊ニ社會上カラ見
テモ私有財產制度ト云ヒ、或ハ議會政治ト
云ヒ、國民生活ノ基本ニナッテ居ル、斯ウ云
フモノハスッカリ捨テテシマフト云フヤウ
ナコトデハ、到底社會ハ成立ツコトヲ得ナ
1、分リ切ッタ話、殊ニ斯ウ云フコトヲ實際
行ハウトシマスレバ、暴力ニ依ルト依ラザ
ルトヲ問ハズ、又此一部ヲ破壞スルト全部
ヲ破壞スルトヲ問ハズ、大動亂ヲ來タスト
云フコトハ勿論ノ事、大動亂ヲ來タセバ是
ハ所謂左翼ノ思フ壹ニ山飲マル、動亂ヲ來セ
バドンナコトガ起ラヌモノデモナイ、動亂
ヲ來シテ社會ノ秩序ヲ無クシテシマヘバ、
ソレデ左翼ノ目的ハ達スル、何モ殊更ニ日
本ニ合ハナイヤウナコトヲ言ハナクテモ、
此ヤリ方ダッテ最後ニ行ク所ハ同ジコトナ
ンダ、デ斯ウ云フ思想ガ何處カラ出テ來タ
ノカト云フコトヲ又見テ見マスルト、司法
省當局ノ御方ガ書カレ夕文ニ、斯ウ云フ風
ニ書イテアル、斯ウ云フ矯激ナ思想ハ何處
カラ來ルカト云フト、一ツハ國粹的主義ヲ
持ッタ者ガ、共產主義又ハ社會主義ノ思想ノ
普及スルニ從ッテ、知ラズ識ラズ其影響ヲ受
ケタノガ其一ツ、又モウ一ツハ左翼社會民
主主義或ハ共產主義デアッタガ、ソレガ餘リ
ニ觀念的、理論的デアリ、餘リニ機械的デ
アリ、又餘リニ「インターナシヨナリズム」
過ギクコトガ分ッテ、順次「ナシヨナリズム」
ニ轉向シテ、斯ウ云フ思想ニナッテ來タノ
ダ、詰リ左ヘ行ッタ所デ迚モ通ル道ガナイ
カラ、ソレデ斯ウ云フヤウナ道ヲ通ラウ
トシテ居ルノダ、此二ツノ何カラ來テ居ル
ノダト云フヤウニ說明サレテ居リマス、誠
ニ此風潮ト云フモノハ怖ロシイ風潮デゴザ
イマシテ、政府ハ此治安維持法ヲ改正サレル
ニ付キマシテモ、今後斯ウ云フ思想ニ付テ
ハ十分ノ善導竝ニ其······必要トスルナラバ
巳ムヲ得ヌ、其取締モ是非トモ御願ヲ致サ
ニヤナラヌト思ヒマス、ソレデ大體趣旨ハ
政府デ御了解下サルト思ヒマスガ、併シ色
色ニ世論モゴザイマスカラ、尙ホモウ少シ
明瞭ニスル爲ニ、少シ第二義ニ下ルヤウニ
ハナリマスケレドモ、一應說明シテ置キタ
イト思フ、世間デハ私有財產制度ニ對スル
非難ガゴザイマス、又議會政治、政黨ナド
ニ對スル非難ガアル、此事ニ付キマシテハ
此政界ノ權威者デアル、我ミガ先輩ト仰イ
デ居ル竹越君ガ、「旋風裡ノ日本」ト云フ册子
ニ於キマシテ十分ニ論ジテ居ラレル、非常
ニ述論叮嚀デアリ、又該博ナル資料ヲ以テ、
十分ニ御說明ニナッテ居ッテ、皆樣モウ御覽
デアリマセウカラ申ス迄モナイノデアリマ
ス、私モ實ハ是ハ能ク拜讀イタシマシテ、始終
其後、出タ後モ機會アル每ニ讀ンデ居リマ
ス、之ヲ紹介スル譯ヂヤ無論ナイノデ、サ
ウ云フ先輩ノ御考ヲ私ガ玆デ說明スルコト
ナド、ソンナカハ到底ゴザイマセヌガ、是ニ
モ出テ居リマスノデ、大體コンナモノカラ
得タモノヲ根據トシテ申上ゲルト云フコト
ヲ明カニシテ置キマス、ソレデ私有財產制
度ニ付キマシテハ無論非難モゴザイマス、
私有財產制度ノ非難ト云フノハ何カト云フ
ト、自由競爭ノ結果資本主義ニ陷ル、資本
主義ニ陷ッテ、政治家、資本家ニ引張ラレ
ル、大資本家ノ影響ヲ受ケテ政治ガ公正ヲ
得ナイ、斯ウ云フコトダラウト思フ、是八
チヨイ〓〓ドウモ實際アリマス例デ、昭和
二年ノ恐慌、申ス迄モナク、少シ申シニク
イデスガ、今度議會ニ出タ揚案ノ中ニモ、
此議場デソンナヤウナコトデ問題ニナッタ
モノモアルヤウデ、チヨット言ッテ見マスト、
是ハマア何レ御訂正ニナルサウデスカラ、
決シテ非難スル譯デモ何デモアリマセヌ
ガ、製鐵所ノ善後策ナドモ、アノ評價ハ別
ト致シマシテ、何カ斯ウ政府ハ八割モ出資
シテ居ルノニ、重役ノ數ナドカラ言ヘバ半
分シカ出サナイ、何カ庇ヲ貸シテ母屋ヲ取
ラレタヤウナ感ガアル、何カ統制トカ合併
トカヤレバ、政府ハ結局損ヲスルノダト云
フヤウナ感ヲ與ヘタ、是ハ併シオ直シニナ
ルサウデスカラ、決シテ攻擊スルノデモ何
デモアリマセヌ、或時期ニ相當直サレルサウ
デスカラ······斯ウ云フヤウナコトハ、ソレハ
無イコトモナイ、無イコトモナイデスガ申
ス迄モナク、企業ヲヤッテ行カウト云フニ
付キマシテハ、ドウシテモ是ハ十分個人ノ
人格ヲ認メテ、經濟上ノ人格ヲ認メテ、其
人ノ稼イダモノハ其人ニ與ヘル、斯ウ云フ
コトガナケレバ經濟上ノ發展ハ期シ得ラレ
ナイコトハ勿論デアリマス、是ハ申ス迄モ
ナク、又公平ナ分配ダッテ出來ヤシナイ、能
ク財閥トカ何トカ言ッテ攻擊ハシマス、サウ
シテ一千萬圓以上ノ財產ハ沒收シテシマフ
トカ云フヤウナ、エライ議論モ行ハレマス
ケレドモ、是ナドハ實情ヲ知ラナイ議論デ、
若モ日本ガ鎖國カ何カノ狀態デアリマセ
バ、ソレハソレデ濟ンデ行キマスケレドモ、
此世界ヲ相手トシテ大キナ商賣ヲヤッテ行
〃、爲替ノ變動ナリ市價ノ變動ナリニモ少
シモ影響ヲ受ケズニヤッテ行ク、又非常ナ巨
額ナ固定資本ヲ要スルヤウナ仕事ヲヤッテ
行クト云フコトニ付キマシテハ、ドウシテ
モ此大キナ財團ヲ以テ當ラナケレバ競爭ハ
出來ナイ、支那ニシロ、亞米利加ニシロ、
千萬長者ハ澤山居リマス、日本ダケ
百萬圓位ノモノヤ僅カノモノデ、ソレ
ニ當ラウト云ッテモ、到底出來ル話デナイ、
此點ニ付テ餘程世間ニ誤解ガアルヤウニ考
ヘマス、又政黨政治ニ付テモ同ジコトデ、
是モ非難ハアリマス、隨分地方行政ノ現狀
ナドヲ見マスルト、成程ドウカト思ハレル
ヤウナ點ガアル、勿論是ハ色ミ考ヘテ見ナケ
レバナラヌノデ、政黨ガ惡イノデナクテ、政
黨ヲ利用シテ不正ナコトヲスルモノガ有ル、
是ハ澤山居リマスカラ、ソレト政黨ガ惡イ
ト云フコトトハ、是ハ分ケテ考ヘナケレバ
ナリマセヌガ、政黨其モノニ付テモ、地方
行政ノヤウナコトニ付テハ、ドウモ責任ガ
全然ナイトモ申上ゲラレマセヌ、此處ヘ出
テ來ル案ニ致シマシテモ、チヨット何ダカヲ
カシナモノモ今度出テ參ッテ、偶然ニ本ガ一
ツニナッテ不可分ダカラ通ッタト云フヤウナ、
サウ云フヤウナモノモチヨット出テ來タ、ド
ウモ弊ガナイト云フコトハ申セマセヌ、併
シソレハ弊ハ弊デアッテ、議會政治ノ根本ト
云フコトハ、是ハ云ハレナケレバナラヌ、政
黨政治ト云フモノハ、申スマデモナク批判
ノ政治デアリマスカラ、批判ノ政治デアル爲
ニ明ルイ政治ニナル、是ガ官僚政治デアリ
マシテ、ソレダケノ人ガ祕密ヲ以テヤッテ居
ルノナラバ、惡イコトガアッテモ知レハシナ
イ、反對黨ガアリ、政府黨ガアリ、互ニ論
難スルノデ、ソレデ政治ノ弊害ト云フモノ
ハ國民ノ前ニ展開サレテ來ル、官僚政治デ
ハ少シ位惡イコトヲシテモ、知レルモノデ
ナイ、能ク政黨政治家ノ不正ナドガ出マスガ、
是ハ同時ニ政黨政治ノ良イコトヲ語ルモノ
デ、是ハ官僚政治デハアヽ云フコトハ出テ
來ナイ、政黨政治ダカラアヽ云フコトガ外
へ出テ、廓〓サレル、ソレガ手段ニナッテ、行
クト思フ、ソレカラ尙ホ獨裁政治ト違ヒマ
シテ、政黨政治ト云フモノハ、安全ナ政治
デアル、一二ノ人ガ唯勝手氣儘ニ亂暴ヲヤ
レバ、其結果取返シノ付カナイコトガ起リ
マスガ、是ハ多勢ノ政黨ノ力ニ依ッテ、其領
袖ガ政治ヲヤルト云フコトニナレバ、サウ
亂暴ヲヤルコトハ出來ナイ、極ク穩健ナ······
成程敏速ニハ行カヌカモ知レマセヌガ、穩
健ナ方法ヲ以テ政治ヲ運用シテ行クコトガ
出來テ、サウシテ取返シノ付カナイヤウナ、
ヒドイ失敗ニハ先ヅ陷ラナイヤウニ考ヘマ
ス、尙ホ申スマデモナク、帝國憲法三條デ、
天皇ノ神聖ナルコトガ規定シテゴザイマ
スガ、之ノ十分ナ趣旨ヲ發揮スルコトニ付
キマシテモ、民望ヲ負ウタ政治家ガ中心ニ
ナッテ、天皇ヲ輔弼スルト云フコトデ初メ
テ行クノデ、是ガ、決シテ此內閣ガドウトカ
云フコトデハゴザイマセヌガ、官僚ト云フ
コトデアレバ、動モスルト、マア今此內閣
ハソンナコトハゴザイマセヌガ、從來動モ
スルト、責任ヲ及ボスベカラザル所へ責任
ヲ及ボシテ來ル、今日政黨ガ惡イ、政黨ガ
惡イト云ハレテ居ルノハ、卽チソレダケ政
黨ガ役ニ立ッタ、アヽ云フ引カブリ役ガアル
ト云フコトガ又、日本ノ政黨政治ノ長所ト
見テ宜シイ、ソレデ政黨ニ對スル非難モ色
色ゴザイマスガ、實ハ是ハ、政黨政治ニ對
シテハ、マダモウ一ツ述べタイコトハ、安
全瓣ガ一ツアル、安全瓣ハ何カト云フト、
貴族院デアル、ソレデ政黨ガ惡イト云フコトニ
假ニ致シマスレバ、其責任ノ一半ハ······
半ト云フコトモナイ、其責任トシテハ、貴
族院モ免レルコトハ出來ナイト思フ、是ハ
皆樣御承知ノコトデゴザイマスガ、說明ノ
便宜上憲法義解ヲチヨット讀ンデ見マス、
三十四條ノ解釋ノ中ニ、斯ウナッテ居ル、
「貴族院ニシテ其職ヲ得ルトキハ政權ノ平衡
ヲ保チ政黨ノ偏張ヲ制シ橫議ノ傾勢ヲ撐ヘ
憲法ノ鞏固ヲ扶ケ上下調和ノ機關トナリ國
福民慶ヲ永久ニ維持スルニ於テ其ノ效果ヲ
收ムルコト多キニ居ラムトス」、是ハ政黨
ノ偏張トカ横議トカアリマスケレドモ、
橫議バカリヂヤナイ、政黨ガ十分ニ機能ヲ
發揮シナイ場合ニハ、是ハ矢張リヤッテ行カナ
ケレバナラヌ、斯ウ云フ安全瓣ガアリマ
スカラ、是ダケデモ政黨政治ト云フモノハ
安全ダト云フコトガ言ハル、是ガ獨裁政治
カ何カナレバ、貴族院ナドハドウスルコト
モ出來ナイ、以上ノコトデ大體私ノ質問ハ政
府デモ御了解下サッタラウト思フ、是ガ現今
一番警戒ヲ要スル所ノ過激思想ノ大體ノ潮
流ヂヤナイカト私ハ思フ、ソレデ今度治安
維持法ガ改正サレタニ付キマシテモ、斯ウ
云フ思想ニ對シテハ、政府ニ於カレテハ最
モ御注意下サッテ、之ニ善處セラレル、之ノ
善導ニ努メラレル、又善導ダケデ行カナケ
レバ取締ニモ努メラレルト云フコトガ、必
要ナコトデアラウカト存ジマス、之ニ付テ
ハ御氣付ノコトトハ存ジマスガ、此機會ヲ
利用イタシマシテ一言御尋ヲ致シマス
〔國務大臣小山松吉君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X02819340317&spkNum=23
-
024・小山松吉
○國務大臣(小山松吉君) 大河內子爵ノ御
質疑ニ御答へ致シマス、只今御述べニナリ
マシタ事柄ハ能ク了解イタシマシタ、御話
ノアリマシタ如ク、近頃國體ノ變革ヲ主張
イタシマセズシテ、共實過激ナル思想ヲ包
藏シテ居ル者ノアリマスコトハ、政府モ
認メテ居リマス、從來ハ、國家主義ヲ唱ヘ
テ居リマシタ者ハ現在ノ國家制度ヲ認メ、
現在ノ國家制度ノ權力ニ依ッテ、資本主義ノ
是正デアリマストカ、或ハ其他ノ社會制度
ノ改革ヲ唱ヘテ居ッタノデアリマシタガ、近
來ノ思想ハ、從來ノ國家制度ヲ認メナイ、
言葉ノ上デハ認メテ居ルヤウデアリマシ
テ、其實認メナイヤウナ思想ガアリマシテ、
其思想ハ、共產主義デナケレバ無政府主義
デハナイカト思ハレルヤウナ議論ノ包藏サ
レテ居ルコトハ、認メテ居リマス、之ニ對
シマシテ十分注意イタシテ居ルノデアリマ
ス、デ今囘ノ治安維持法ノ改正ヲ致シマス
際ニモ、其點ニ付テハ考慮ヲ拂ッテ居リマ
ス、ソレデアリマスカラ、假令國家主義ヲ
標榜イタシマシテモ、其實ガ國體ノ變革ヲ
目的トスル團體デアルト認メマシタナラ
バ、其實ニ付テ處分ヲスルノデアリマス、
デ國體ノ尊嚴ヲ認メテ居ルト言ヒナガラ、
其實ハ社會主義ヲドコマデモ實現シヤウト
云フ思想デアリマスルナラバ、ソレハ本法
ノ第八條、私有財產制度ヲ否認スルト云フ
コトニ當ルノデアリマス、其他今囘改正イ
タシマシタ各條文ニ依リマシテ、此取締ハ
十分ニ出來ルト考ヘテ居リマス、ソレカラ
尙ホ御言葉ノアリマシタ一般的ノ取締ト云
フコトニ付キマシテハ、內務當局モ常ニ出
版物又ハ其他ノ言論等ニ付キマシテ、十分
注意ヲ怠ラズニ居ル譯デアリマス、御話ノ
アリマシタ世間ニ所謂右翼ト稱セラルルモ
ノノ行動ニ付キマシテモ、政府ハ注意ヲ怠
ラズ取締ヲ致シテ居リマス、是ダケ申上ゲ
テ置キマス
〔子爵大河內輝耕君漁壇ニ發ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X02819340317&spkNum=24
-
025・大河内輝耕
○子爵(大河內輝耕君) 政府ノ御意思ノア
ル所ハ能ク分リマシタ、私ノ考ヘテ居ル所
ヲ趣旨トシテ御認メ下サッタコトニ付テハ、
誠ニ私ハ滿足イタシマス、唯此治安維持法
ハ、出テ見タ所ヲ見マスルト、十分ドウモ
少シ其點ニ付テハ、法文ノ上ニ物足ラナイ
所ガアルヤウニ存ジマス、思想善導ハ無論
主デ、法律ダケデ行クモノデハナイト云フ
コトハ、分リ切ッテ居リマスガ、法律モ亦必
要デアル、ドウモ實情ヲ見テ見マスト、私
素人デ一向分リマセヌガ、何カドウモ物足
ラナイヤウナコトガアルト思ハレル、デ衆
議院アタリデ修正案ガ出タリ、希望決議ガ
出タリシタノダラウト存ジマスガ、此點ニ
付キマシテハ、今後政府竝ニ皆樣方ノ御〓
究ヲ御願ヒ致シマス、私ノ質問ハ是デ止メ
テ置キマス
〔岩田宙造君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X02819340317&spkNum=25
-
026・岩田宙造
○岩田宙造君 只今議題トナリマシタ法案
ハ御承知ノ通リニ變則ナル非常立法デア
リマシテ、其意味ニ於テ極メテ重要デアル
ノミナラズ、所謂此共產主義運動ニ對スル
國家權力ノ之ヲ取扱ヒマスル根本ノ主義方
針ニ關スル法律デゴザイマスルカラ、其點
ニ於キマシテ、私ハ政府ニ於テ持ッテ居ラレ
マスル根本ノ考へ方ニ付テ、一二伺ッテ置キ
タイト考ヘルノデアリマス、其點ハ卽チ此
國體變革ニ關スル事項ト、私有財產制度ノ
否認ニ關スル事項トノ此關係ニ付テデゴザ
イマス、此兩者ノ關係ニ付キマシテハ御承
知ノ通リニ、治安維持法ガ初メテ制定ヲサ
レマシタ大正十四年ノ法律デハ、之ヲ全然
區別セズニ同ジヤウニ規定サレテ居ルノデ
アリマス、卽チ「國體ヲ變革シ又ハ私有財
產制度ヲ否認スルコトヲ目的トシテ結社ヲ
組織スル」云々ト、斯ウ云フコトニナッテ居
リマシテ、國體ノ變革ト私有財產制度ノ否
認ト云フモノヲ全然同ジヤウニ扱ハレテ居
ルノデゴザイマス、所ガ昭和三年ニ改正ヲ
サレマシタ時ニ、初メテ國體變革ト私有財
產制度否認トノ間ニ區別ヲ設ケラレマシ
テ······區別ヲ設ケラレマシタガ、其時ノ區
別ハ、唯國體變革ヲ目的トスル方ノ結社運動
ニ付テハ、其方ノ罪ヲ少シ重クセラレタニ
止マルノデアリマシテ、他ニ多少ノ相違ハ
アリマスガ、主トシテソレダケノ區別ヲ設
ケラレタニ過ギナイノデアリマス、然ルニ
今囘ハ更ニ一步ヲ進メマシテ、國體變革ニ
關スル事項ト私有財產制度否認ニ關スル事
項トヲ、全ク別ノ條文ニ持ッテ行キマシタ
ノミナラズ、其實質ニ於テモ、扱ヒ方ヲ非
常ニ區別サレタノデアリマス、卽チ只今司
法大臣ノ御說明ニナリマシタ如ク、此新法
案ノ主ナル點ハ、共產主義者ノ所謂外廓團
體ヲ、之ヲ取扱フ、取締ル點、御承知ノ通
リニ、是マデハ國體變革ナリ或ハ私有財產
制度否認ヲ目的トスル結社ヲ作リマシタ場
合ニ、其結社自體ハ取締ルノデアリマスル
ケレドモ、更ニソレヲ援助スル所謂外廓團
體ハ、是ハ取締ル規定ニナッテ居ナカッタノ
デアリマスガ、ソレヲ取締ル規定ヲ設ケタ
ト云フコトガ重大ナル點デアリマスルニ拘
ラズ、是ハ國體變革ニ付テノ外廓團體グケ
ヲ取締ルコトニナッテ居リマシテ、私有財產
制度否認ノ外廓團體ハ、是ハ打チヤッテ顧ミ
ナイト云フコトニナッテ、此點ニ於テ重大ナ、
ル區別ヲ設ケラレタノデアリマス、今一ツ
ハ豫防拘禁デ、此法律ニ違反シテ刑ニ服シ
マシタ者ガ、滿期ノ際ニ更ニ釋放サレル時
ニ、ドウモ又再ビサウ云フ犯罪ヲ犯ス運動
ヲスル虞ガアルト云フ場合ニ、豫防ノ爲ニ、
又拘禁ヲスルノデアリマスルガ、是モ國體
變革ニ限ッテノミソレヲ認メテ、私有財產制
度否認ニ付テハ認メナイト云フ區別ニナッ
テ居ルノデアリマシテ、此兩者ノ間ニ非常
ナル區別ヲ設ケラレタノデアリマス、是ガド
ウ云フ考カラ出テ居リマスルカ、果シテ正
當デアルカドウカ、疑問ガゴザイマスルノ
デ、此點ニ關スル政府ノ御所見ヲ伺ヒタイ
ト思フノデアリマス、ト申シマスルノハ、
私共ノ考デハ、日本ノ國體ト云フモノハ、
實ハ私有財產制度ト不可分ノ關係ガアルモ
ノデハナイカト云フ考ヲ持ッテ居ルノデア
リマス、御承知ノ通リニ、家族制度ト日本
ノ國體ガ不可分ノ關係ニ在ルト云フコト
ハ、是ハ何人モ疑ハナイノデアリマスル
ガ、其所謂家族制度ナルモノハ、戶主ヲ中
心トシテ家族ヲ養ッテ行グ制度デアリマシ
テ、是ハドウシテモ此私有財產制度ト云フ
モノヲ離レテハ、家族制度ノ存在ト云フモ
ノハ考ヘラレナイト思フノデアリマシテ、
從テ私有財產制度ヲ否認シテ、廢シマシテ、
露西亞ノヤウニ皆財產ヲ共有ニスルト云フ
制度ニナリマスレバ、家族制度ハ勿論立行
クコトハ出來ナイノデアリマス、同時ニ
日本ノ國體ト云フモノモ、維持出來ナイ
コトニナルノヂヤナイカト思フノデアリマ
ス、ソレデアリマスルカラ、日本ノ實情カ
ラ申シマスルト云フト、私有財產制度卽
チ家族制度卽チ日本ノ國體ヲ成シテ居ル
ト云ッテ宜イノデハナイカ、私有財產制度ハ
其關係カラ云ヘバ、日本ノ國體ヲ維持シテ
居ル土臺ヲ成シテ居ッテ、其上ニ日本ノ國體
ト云フモノガ建設サレテ居ルト云フ風ニ見
ルベキモノデハナイガ、ト云フ考ヲ持ッテ
居ルノデアリマス、元來此國體變革ニ關ス
ル事項ト、私有財產制度否認ニ關スル事
項トヲ區別シテ扱フト云フコトハ、是ハ獨
立シテ存在スル場合ニノミ之ヲ獨立ノ犯罪
トシテ區別シテ考ヘルコトガ出來ルノデ
アッテ、國體變革ト云フモノハ私有財產制度
否認ニ當然伴ッテ、不可分ノ關係ヲ持ッテ居
ルモノト致シマスナラバ、此兩者ヲ區別シ
テ取扱フト云フコトハ、間違ッテ居ルノデハ
ナイカト思ハレルノデアリマス、又一方カ
ラ見マスルト云フト此共產主義者ガ目的
トシテ居ル實質ト云フモノハ、所謂共產主
義ニアルノデアリマシテ、國體問題ト云フ
モノハ、日本ニ來テ初メテ日本ノ國體ト云
フモノト衝突ヲスルモノデアリマシテ、本來
ハ共產主義其モノハ、國體ト云フモノガド
ウデアルト云フコトハ、實ハ直接ニ問題ト
シテ居ル所デハナイノデアリマス、唯日本
デ共產主義ヲ行ハウトスルニハ、日本ノ國
體ガ邪魔ニナルカラ、ソレデ本部ノ方カラ
ノ指令ニハ、日本ノ天皇制ヲ廢止スルト云
フヤウナコトモ、共產主義者ハ言フノデア
リマスケレドモ、實ハ國體其モノハ彼等ノ
目的トシテ居ル本當ノ內容デハナイ、デア
リマスルカラ、若シ此國體ト云フコトヲ表
面ニ揭ゲテヤレバ、非常ニ是ハ色ミ豫防拘
禁ヲヤラレタリ、外廓運動モ出來ナイ、斯
ウ云フコトニナルナラバ、何モ更メテ國體
變革ト云フコトヲ初カラ看板ニ出ス必要ハ
ナイノデアリマス、デアリマスルカラ、國
體變革ト云フ看板ダケハ暫ク外シテ置イ
テ、サウシテ私有財產制度否認ト云フコト
デヤレバ、只今ノヤウニ外廓運動モ自由ニ
出來ルシ、宣傳ヲシテモ是ハ差支ナイ、國
體變革ハ今度ハ宣傳モ罰セラレルコトニナ
リマシタガ、私有財產制度否認ト云フナラ
バ、ドンナ宣傳ヲシテモ罰セラレナイ、サ
ウ云フコトデアリマスルナラバ、何ヲ苦シン
デ國體變革ト云フ、サウ云フ嚴罰ニ處シ、
嚴重ニ扱ハレルモノヲ表面ニ出ス必要ハ無
イノデアリマスルカラ、是迄ハ大シテ其取
締ガ區別サレテ居ラヌカラ、本國ノ指令通
リニ兩方ヲ揭ゲテヤッテ居リマシタモノガ、
斯ウ云フ立法ガ出來レバ、續々ト其一方ノ
看板ヲ卸シテ、サウシテ一方ダケデ實際ノ
目的ヲ達スル手段ヲ講ズルト云フコトガ、
十分ニ考ヘラレルノデアリマス、デ現ニ是
ハ眞僞ハ能ク承知シマセヌガ、或ル新聞ノ
報道ニ依リマスト云フト、北陸ノ或ル縣內
デハ、尊皇共產主義團體ト云フヤウナモノ
ガ出來テ、是ハ實際ハ其右翼轉向者ガヤッテ
居ルト云フコトヲ報道シテ居ルモノガアリ
マス、眞僞ハ分リマセヌケレドモ、有リ得
ルコトダト私ハ考ヘルノデアリマス、卽チ
其綱領ハ「我ミハ日本ノ皇典ニ基キ皇室中心
ノ社會主義日本ノ建設ヲ期ス」ト云フノデ
アリマシテ、其主張等ヲ見マスルト、「我等
ハ亞細亞勤勞諸民族ノ先頭ニ立チ世界資本
主義ニ向ッテ其解放ヲ要求シ巨大ナル社會
主義國家ノ成立ヲ期ス」、或ハ其宣言ノ中ニ
ハ「政權ノ利ニ盲ヒタル政黨ト結託シテ民
衆ノ膏血ヲ搾ル財閥ト其軍門ニ番犬化セル
日本主義及其亞流ノ陣營ヲ徹底的ニ打倒シ
彼等ノ支配力ヲ完全ニ掃蕩スルト共ニ」云
云、或ハ、「何等ノ階級特權介在ヲ許サザル
新政治形態ト新經濟組織ノ上ニ眞ニ國民大
衆ノ福社ヲ確保シ」云々、或ハ「土地及資本
ヲ國有トシテ其營利性ヲ剝奪シ之ヲ國法ノ
下ニ統制シテ」云々、斯ウ云フコトガ書イ
テアルノデアリマスルガ、若シ新法ガ實行
サレルト云フコトニナレバ、皆ナ此國體ニ
關スル文字ダケヲ暫ク隱シテ置イテ、サウ
シテ私有財產制度一點張リデヤルヤウニ
ナリハシナイカ、勿論ソレハ隱シテ居ル
ノダト云フコトガ分レバ、無論是デ罰セ
ラレルノデアリマセウケレドモ、表面、外
シテシマヒマスト云フト、本當ニ國體ノコ
トハヤラナイノデ、私有財產制度ダケデヤッ
テ行クノデアルカドウカ、不明デアルノミ
ナラズ、假ニ實際運動トシテハ私有財產制
度ニ關スル點ノミノ實際運動ヲヤッテ居リ
マシテモ、其實ハ此國體ノ基礎ヲ危クスル
ト云フコトデアリマスルナラバ、國體變革
ヲ目的トスルヤウナ實際ノ結果ヲ生ズル行
爲ヲヤッテ居ルニ拘ラズ、是ハ嚴重ナ取締ガ
出來ナイト云フコトニナル虞ガアルノデア
リマシテ、此點ニ於テ私ハ重大ナ疑問ヲ持ッ
テ居ル者デアリマス、デ是ハ將來國家トシ
テ斯樣ナ見方ヲサレマシテ、唯ダ形式上ノ
普通ノ見解ヲ以テ見マスレバ、國體ノ問題
ト私有財產制度ノ問題ト云フモノハ、非常
ナ輕重ノアルコトハ當然デアリマスルカラ、
サウ云フ表面ノ見方ダケヲシテ區別シテ
扱ッテ行カレルト云フコトニナルト、色ミノ
點デサウ云フ方針デ進ムト云フコトニナレ
バ、恐ルベキ結果ヲ生ズルノデハナイカト
云フ憂ヲ懷イテ居ルノデアリマス、斯樣ナ
關係デアルノミナラズ、今一ツ申上ゲテ置
キタイノハ、實ハ此刑事政策ノ上カラ申シ
マスレバ、日本ニ於テハ國體問題ト云フモ
ノハ重大ナ問題ニ相違アリマセヌガ、重大
ナ問題デアルダケ、必シモ嚴罰ヲ以テ臨マ
ナクテモ、國民ノ大多數ト云フモノハ、之
ニ共鳴ハシナイノデアリマシテ、刑罰ヲ以
テ之ヲ阻止スルト云フ方ノ見方カラ言ヘ
バ、寧ロ此私有財產制度ノ方コソ、是ハ誤
リ易イノデアッテ、國民ガ付イテ行ク、多數
ノ人ガ付イテ行ク危險ガアルノデアリマス
カラ、此方コソ却テ重ク罰スル必要ガアル
トモ言ヘルノデアリマス、斯樣ナ點カラ考
ヘテ見マシテ、私ガ玆ニ伺ヒタイト考ヘマ
スノハ、一體此私有財產制度ト云フモノヲ
根柢カラ廢止シテモ、一體我國ノ家族制度
ヤ國體ト云フモノハ維持出來ルノデアル
カ、卽チ私有財產制度ヲ廢止スルト云フコ
トト我ガ國體ヲ變革スルコトトハ、必シモ
同ジ意味ヲ持ッテ居ルノデハナイ、是ハ兩々
獨立シテ存在シ得ルモノデアルト云フ、
體政府ハ御考ヲ持フテ居ラレルノデアルカ
ドウカ、ソレヲ第一ニ伺ヒタイ、其次ニハ
斯ウ云フ法律ガ出來マスルト云フト、國體
變革ニ關スル點ダケヲ抛棄スルト云フコト
ハ、共產主義者ハ實際何等痛痒ヲ感ジナイ
ノデアリマスルカラ、例ヘバ此問題デ監獄
ニ入ッテ、サウシテ滿期ニナッテ出テ來タヤ
ウナ時ニ、國體問題ニ付テ轉向スレバ、豫
防拘禁ト云フヤウナコトモ行ハレナイノデ
アリマスルカラ、ソレダケハ捨テタト云フ
ヤウナコトヲ言ッテ、瞞シテ出テ來ル、或ハ
先刻述ベマシタヤウニ、現在ノ運動スル者
ガ、此國體變革ニ關スル看板ダケヲ卸シテ、
サウシテ此法律ノ私有財產制度ノ方ノ看板
ノ下ニ隱レル、斯ウ云フ一體、法ヲ遁レル
ヤウナ危險ハナイモノト考ヘテ居ラレルデ
アリマセウカ、ドウデアリマスカ、其點ヲ
伺ヒタイノデアリマス、是ガ私ガ伺ヒタイト
思フ主ナ二點デゴザイマスルガ尙ホ附加ヘ
テ伺ッテ置キタイト考ヘマスルノハ、所謂極
端ナ右翼ノ取締問題、是ハ衆議院デモ大分論
議サレタヤウニ承知シテ居リマスルカラ、
尙ホ先刻モ大河內子爵カラモ述ベラレマシ
タノデ、是ハ大體政府ノ御考モ明カニナッテ
居ルヤウデアリマスルノデ、此方ニ付テ
ハ多クノ言葉ヲ用ヰマセヌガ、唯新聞紙
ヤ其他衆議院ノ印刷物等ヲ見マスルト云
フト、政府ニ於テハ此方面ニ付テモ十分
ナ取締ヲスル考ダト云フ風ニ述ベテ居ラ
レルヤウデアリマスルガ、一體此取締ノ規
定ヲ本案ノ中ニ入レラレナカッタノハ、
ドウ云フ理山デアリマスルカ、又其取締ニ
付テハ、早晩何等カノ規定ヲ設ケラルル考
デアリマスルカ、取締法ヲドウカ云フ形デ
制定サレル御考デアリマスルカ、之ヲ併セ
テ伺ッテ置キタイノデアリマス、衆議院ニ於
ケル應答等ヲ拜見イタシマスルト云フト、
其點ハ缺點ガアルケレドモ、出版法ノ改正
ニ依ッテ之ヲ多少補フ積リダト云フコトヲ
言ッテ居ラレルヤウデアリマス、私ハ此點ニ
付テ甚ダ了解ニ苦シンデ居ルノデアリマス
ルガ、一體此治安維持法ノ缺點ヲ出版法デ
補フト云フコトハ、ドウ云フ意味デアリマ
スルカ、私ニハ了解ガ出來ナイノデアリマ
ス、御承知ノ通リ此治安維持法ト云フモノ
ハ、非常ニ嚴格ナ特別ノ法律デアリマシ
テ、普通ノ法律ノ規定デハ追ッ付カナイノ
デ、特ニ嚴重ナ規定ガ設ケラレタノデアリ
マス、例ヘテ言ヘバ非常ニ兇惡ナ犯罪人ガ
同ンナ、普通ノ巡査ヤ刑事デハ迚モイカヌカ
ラ腕ッ節ノ强イ特別ナ腕力ノ强イ刑事ナリ
巡査ヲ以テ之ヲ逮捕シヤウト、斯ウ云フノ
ニ當ッテ居ルノデアリマス、所ガ出版法ハ
全クサウデハナイノデアリマシテ、出版法
ハ是ハ唯子供ガ見張リヲシテ居ルヤウナモ
ノデアリマシテ、唯サウ云フ强イ犯罪人ガ
アッタナラバ外ニ通知ヲスル位ナ役目ヲ持ッ
テ居ルノデアリマス、デアリマスカラ是ハ
成程、サウ云フ特別ノ强イ巡査ナリ刑事ガ
居ッテ初メテ、子供ガ見張リヲシテ居ッテ其
處ニ告ゲテ行ケバ、役ニ立ツノデアリマス
ケレドモ、强イ巡査モ刑事モ居ラナクテ、
子供ダケガ見張リヲシテ居ッタト云フコト
デハ、何等其役ニハ立タヌノデアリマス、
然ルニ其點ニ付テハ、强イ巡査ヤ見張ハ置
カナイケレドモ、子供ヲ見張サシテ居ルト
云フコトヲ以テ其缺點ヲ補ハウト云フ意味
ノ說明ヲサレテ居ルノデアリマスルガ、サ
ウ云フ說明モ、ソレカラ若シサウ云フ說明
デ滿足シタ人ガアリトスレバ、其二ツトモ
私ニハ甚ダ了解ガ出來ナイノデアリマス、
デアリマスルカラ、サウ云フ意味ノモノデ
ナクシテ、本當ニ此治安維持法ノ規定ニ代
ルベキ何等カノ取締法ヲ制定サレル意思ガ
アリマスルノデアリマスカドウカ、此點等
併セテ伺ッテ置キタイノデアリマス、ソレダ
ケデアリマス
〔副議長伯爵松平賴壽君議長席ニ著ク〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X02819340317&spkNum=26
-
027・松平頼壽
○副議長(伯爵松平賴壽君) 小山司法大臣
〔國務大臣小山松吉君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X02819340317&spkNum=27
-
028・小山松吉
○國務大臣(小山松吉君) 岩田君ノ御質疑
ニ御答へ致シマス、第一ノ御質疑ハ、國體
變革ト私有財產制度ノ否認トハ元ミ不可分
ノモノデアルカラシテ、此改正案ノ如ク二
ツニ分ケタナラバ、私有財產制度ヲ廢止ス
ルト云フコトト、國體ノ變革ヲ目的トスル
場合トガ、兩々相存在スルモノデハナイデア
ラウト云フヤウナ御趣意ト伺ッタノデアリ
マス、元來私有財產制度ノ否認ト云フ言葉
ハ、少シク了解シニクイ文字ニ近頃ナッテ居
ルノデアリマス、此點ヲ少シ申上ゲマシテ
御了解ヲ得タイト思フノデアリマスガ、私
有財產制度ヲ否認スルト申シマスルノハ、
單ニ或ル所有權又ハ財產權ヲ否認スルト云
フヤウナ個々ノモノヲ指スノデハナイノデ
アリマシテ、根本的ニ私有財產ノ制度ヲ破
壞シヤウト云フ單一不可分ノ觀念デアリマ
ス、私有財產制度ハ、現在ノ社會組織、經
濟生活ノ根幹ヲ成スモノデアリマシテ、思
想的ニ申シマスレバ、歷史的國民的ニ拔ク
ベカラザル信念ノ存スル國民共存共榮ノ律
則ヲ包含スル觀念デアルト、斯ウ申サナケレ
バナラヌノデアリマス、沿革上、私有財產制度
ヲ否認スルト云フコトハ、御承知ノ通リ所謂廣
キ意味ニ於テノ社會主義ト云フコトノ思想ヲ包
含シテ居ルノデアリマス、所謂生產手段ヲ公有
トスル、從テ土地其他資本等モ公有トスル
ト云フ、此社會主義ノ思想ヲ包含シテ居ル
ノデアリマス、モット痛切ニ申シマスレバ、
私有財產制度ヲ否認スルト云フコトハ、是
ハ社會主義ノ思想デアルト申シテ宜シイト
思フノデアリマス、社會主義ト申シマスレ
バ、此中ニ共產主義ヲ包含サレテ居リマス、
又無政府主義モ社會主義ノ中ニ包含セシメ
テ之ヲ解釋シテ居ル者モアルノハ、御承知
ノ通リデアリマス、右ノヤウニ申上ゲマス
ルト、私有財產制度ヲ否認スル思想ハ、我
ガ國體ノ變革ヲ目的トスル思想トハ違ハナ
イコトニナル場合ガ多イノデアリマス、ソ
レガ第一ノ御質疑ノ出タ原因ダト思フノデ
アリマスガ、理論上ハ誠ニ御尤デアリマス、
併ナガラ玆デ御考ヘヲ願ハナケレバナリマ
セヌノハ、人ノ思想ハ是ハ取締ルコトノ出
來ナイモノデアリマス、如何ナル思想ヲ持ッ
テ居リマシテモ、其思想ニ對シテ國家ハ之
ヲ取締ッテ處罰スルト云フコトハ出來ナイ
ノデアリマス、其思想ガ運動トシテ、行
動ニ現ハレマシテ、初メテ其現ハレタ
形ニ於テ國家ハ之ヲ取締ルベキデアリ
マス、從來ノ思想ノ歷史ヲ見マシテモ、
佛〓ノ思想、支那ノ老莊ノ思想、之ヲ〓
究イタシマスルト隨分過激ナル思想ガア
ルノデアリマス、併ナガラ老莊ノ思想ヲ直
チニ治安維持法違反ダト云ッテ、今日取締ル
コトハマア出來ナイコトデアリマス、又取
締ヲ致ス必要モナイト同ジデアリマシテ、
思想運動トシテノ行動ニ現ハレタ場合ニ於
テ、國家ハ之ヲ危險ナリトシテ取締ルノデ
アリマスカラ、假令私有財產制度ノ否認ト
國體ヲ變革スルコトヲ目的トスル思想ト
ガ、同一ニ歸著スル場合ガアリマシテモ、
立法ヲ致シマス趣旨カラ申シマスト、其現
ハレタ形ニ於テ之ヲ處罰スルヨリ外ニハ、
方法ハナイノデアリマス、詰リ運動的行動
ニ危險性アリト見ルノデアリマス、頭ノ中
ニ考ヘテ居ルノハ、是ハ如何トモシヤウガ
無イノデアリマス又考ヘテ居ル思想ハ、
往々ニシテ色ミ變化スルヤウデアリマスガ、
外部ニ現ハレ、文書ニ現ハレ、演說ニ現
ハレ、或ハ行動ニ現ハレマシタ時ニ、其現
ハレタ形ニ於テ、是ハ私有財產制度ヲ否認
スル思想ナリ、是ハ進ンデ我ガ國體ノ尊嚴
ヲ破壞スル思想ナリト云フコトヲ見テ行カ
ナケレバナラヌノデアリマス、マア詳細ハ
委員會ニ於テ尙ホ申上ゲル方ガ宜シイト思
ヒマスガ、大體サウ云フ風ニ取締ノ根本觀
念ヲ認メテ居ル次第デアリマス、左様ナ次
第デアリマスルカラ、第二ノ御尋ノヤウニ、
サウ云フ風ニ現ハレタ形ニ依ッテノミ取締
ルト云ックナラバ、國體ヲ變革スルコトヲ目
的トスル思想ニ對シテハ、之ヲ隱スデアラ
ウ、瞞マスデアラウ、ト云フヤウナ御考ノ
生ズルノハ御尤デアリマスルガ、併シ實際
ハ不思議ニモサウデナイノデアリマシテ、
不思議ト云フトヲカシウゴザイマスガ、實
際ハサウデゴザイマセヌ、現ニ我國ノ治安
維持法制定以來ノ經過ヲ見マスルト云フ
ト、先刻岩田君ノ御話ノヤウニ、元ハ大正
十四年ノ治安維持法第一條ニ、「國體ヲ變革
シ又ハ私有財產制度ヲ否認スルコトヲ目
的トシテ」、斯ウ規定シテ居リマシテ、
是ハ同列ニ置イテ居ル、是ハ思想上ニ於
テモ是ハ同列ニ置イテモ宜シイモノデ
アリマス、併ナガラ大正十四年以來施行
イタシテ見マスルト、我國ニ於テハ外國
ニ例ノ無イ國體變革ヲ目的トスル思想運動
ガ非常ニ盛ニナッタノデアリマス、ソコデ昭
和三年、緊急勅令ニ依ッテ、國體ヲ變革スル
コトヲ目的トスルト云フ、此危險ナ思想運
動ニ對シテハ、特別ノ重キ刑ヲ科サナケレ
バナラヌト云フ必要ヲ認メマシテ、其當時
第一條ヲ二ツニ分ケマシテ、第一條ニハ、
國體ヲ變革スルコトヲ目的トスル結社ハ死
刑マデ科スルコトニ致シタノデアリマス、
サウシテ私有財產制度ヲ否認スルコトヲ目
的トスル方ハ、從來ノ通リ、十年以下ノ懲
役ト云フ其儘ニシテ置イタ譯デアリマス、
斯ノ如ク死刑マデ科セラレルト云フ重キ法
規ガ出テ來タニモ拘ラズ、我ガ過激思想運
動ヲ爲ス者ハドウ云フコトヲシテ居ルカト
申シマスト、益〓此國體變革ノ方ニ向ッテ來
テ居ルノデアリマス、私有財產制度ヲ否認
スルト云フ所謂社會主義、無政府主義ノ方
ノ思想運動ハ段々靜ニナッテ、寧ロ影ヲ潜メ
テシマッテ、専ラ我ガ國體ノ變革ヲ目的トス
ル共產主義ノ方ニノミ向ッテ來タノデアリ
マス、加之露國ノ國際共產黨ハ頻リ此方ニ
向ッテ新シイ「テーゼ」ヲ發シテ居ルノデア
リマス、是ハドウモ理論ト全ク反對ナ方向
ニ向ッテ來タ譯デアリマス、サウ云フ形ヲ以
テ、我ミガ申スコトモ畏イト思フヤウナ言
葉ヲ使ッテ、盛ニ思想運動ヲ致シマス以上
ハ、此國體變革ト云フモノニ對シテハ、ド
ウシテモ重キ刑ヲ以テ臨ミ、重キ處分ヲシ
ナケレバナラヌト、斯ウ考ヘテ居ル譯デア
リマス、ソレカラ次ニ御話ノアリマシタ、
斯ウ云フ風ニ國體ノ變革ト云フコトニ重キ
ヲ置イテ、私有財產制度否認ト云フ方ニ對
シテハ輕イ取扱ヲシタナラバ、所謂瞞マス
者ガアルダラウ、或ハ自分ノ思想ヲ隱ス者
ガアルダラウト云フ御話ガアリマシタ、是
ハ御尤ナ御質疑デアルト思ヒマスルガ、是
モ實際ノ彼等思想犯罪者ノ狀態ヲ見マスル
ト、サウ云フコトハ無イノデアリマス、彼
等ハ自分ノ信念ヲ飽クマデモ主張スル、人
ニ向ッテハソレヲ宣傳シ、同志ノ者ヲ求メル
ト云フコトデアリマシテ、或ル意味ニ於テ
ハ信仰的態度ヲ執ッテ居リマスカラ、自分ノ考
ヲ隱シテ、胡麻化シテ、瞞マシテドウスル
ト云フヤウナコトハ無イノデアリマス、サ
ウ云フ關係デアリマスカラ、今日デハ實際
上ノ必要ヨリシテ、國體ノ變革ヲ目的トス
ル思想ニ對シマシテハ、嚴罰ヲ以テ臨マナ
ケレバナラヌノデアリマス、ソレカラ私有
財產制度ノ否認ヲ目的トスル方ノ結社ニ對
シテハ、ソレナラモウ少シ何故重イ處分ヲ
シナイカト云フ御言葉モアッタヤウデアリ
マスガ、國體ノ變革ノ方ニ重キヲ置イテ、
色ミ規定イタシテ居リマスレバ、私有財產
制度ノ否認ノ方ハ、從來大正十四年以來ノ
規定ニ於テ十分ナリト認メテ居ルノデアリ
マス、是ハ今日マデノ取締ノ實際ガ是デ宜
シイト政府ハ考ヘテ居ル次第デアリマス、
ソレカラ次ニ第三ノ御質疑トシテ、所謂右
翼ノ取締ノコトニ付テノ御話ガアリマシタ
ガ、是ハ政府ト致シマシテモ、治安維持法
ヲ改正イタシマスルニ當ッテ、考慮ヲ致シタ
ノデアリマス、考慮ヲ致シマシタガ、御承
知ノ通リ、此所謂右翼ノ團體ト申シマスル
モノハ、團體其モノハ不法ノ團體デハナイ
ノデアリマス、或ハ忠君愛國ト云ヒ、或ヘ
尊王ト云フ、或ハ勤王黨ト云フヤウナ名前
モ付イテ居ルノガ多々アルヤウデアリマ
ス、唯是ガ御話ノ如ク、取締ヲ要スルト云
フコトニナリマスノハ、其團體トシテノ行動
デナクシテ、其團體ノ中ノ或者ガ不穩ノ行動
ヲスルコトガ往々ニシテアルノデアリマス、
現ニ或ル事件ノ如キハ、各團體カラ二三人
ヅツ集マッテ、一種ノ暴力行爲ヲスル團體ノ
名前ガ出來タ事件ガアル位デアリマス、團
體其モノヲ法律ガ不都合ダト云ッテ取締ル
コトハ出來ナイノデアリマス、サウ云フ點
カラ致シマシテ色ミ〓究ヲ致シマシタガ、
ツハ治安維持法ト云フモノガ、專ラ所謂左
翼トカ左傾トカ云フモノノ取締ヲスル爲ニ、
大正十四年ニ立法イタシマシタ沿革ニモ鑑
ミマシテ、サウシテ其規定ヲ置カナカッタノ
デアリマス、是ハ出版法等ニ依ッテ取締ルカ
ラ宜イト云フコトデアッタト云フ御言葉モ
ゴザイマシタガ、出版法ハ唯文書ニ依ル場
合デアリマシテ、不穩ノ行動ニ出デタ場合
ハ、現行ノ刑法其他暴力行爲取締法、又ハ
其他ノ刑罰法規ニ於テ取締ヲスルコトガ出
來ルト考ヘテ居ル次第デアリマス、ソレカ
ラ尙ホ、然ラバ今後ニ於テ所謂右翼ニ對ス
ル取締ヲスルカト云フコトデアリマスガ、
是ハ衆議院ノ委員會ニ於テ屢、質問應答ガアこ
リマシテ、〓究ニ〓究ヲ致シマシタ結果、
此度ハ改正案ニモ其規定ガ必要ガ無イコト
ニ衆議院ノ意見モナッテ居ルノデアリマス、
希望條項ガ附イテ居リマスカラ、此點ニ付
キマシテハ政府ハ十分ニ考慮ヲ致ス考デ居
リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X02819340317&spkNum=28
-
029・岩田宙造
○岩田宙造君 何レ委員會ニ於テ詳細ナ論
議ガ行ハレルコトト考へマスルカラ、私ノ
質問ハ是デ止メタイト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X02819340317&spkNum=29
-
030・松平頼壽
○副議長(伯爵松平賴壽君) 通〓順ニ依リ
マシテ、丸山鶴吉君ニ發言ヲ許シマス、御
登壇ヲ願ヒマス
〔丸山鶴吉君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X02819340317&spkNum=30
-
031・丸山鶴吉
○九山鶴吉君 先程大河內子爵竝ニ岩田議
員ヨリ御質問ガアリマシタ點デアリマスノ
デ、重複ヲ致スト思ヒマスケレドモ、モウ
少シ立入ッテ司法大臣ノ御意見ヲ承ッテ置キ
タイト存ジマシテ、御迷惑ト存ジマスケレ
ドモ、私ノ質問ノ趣旨ヲ申上ゲタイト思フ
ノデアリマス、先程大河內子爵モ指摘サレ
マシタノデアリマスガ、私ハ敢テ右翼トモ
申シマセヌ、又左傾トモ申シマセヌノデア
リマス、可ナリ過激ナル思想ガ今日蔓莚ヲ
致シテ居ルノデアリマス、國體ノ變革ヲ志
ス如キ思想ガ、此光榮アル歷史ノアル國民
トシテ、我ガ國民ノ深キ信念デアリ、我ガ
民族ノ信仰デアル此尊嚴ナル國體ヲ變革シ
ヤウト云フコトヲ考ヘル者ノ思想ノ怖ルベ
キ、憎ムベキコトハ申上ゲル迄モナイコ
トデアリマシテ、勿論先程來岩田君ヨリモ、
或ハ大河內子爵ヨリモ御示シニナリマシタ
ヤウニ、唯之ヲ彈壓シテ、彈壓ニ依ッテノミ
之ヲ救濟シヤウト云フコトハ、困難ナコト
デアルコトハ本員モ同感デアリマス、勿論
此建國ノ大精神ヲ徹底セシメ、我ガ國體ノ
精華ヲ本當ニ國民一般ニ徹底サセマスコト
ニ依リマシテ、初メテ是等ノ者ヲ改過遷善
セシムルコトガ出來ルト信ズルノデアリマ
ス、佐野、鍋山等ノ轉向ノ徑路ヲ聽キマシ
テモ、獨房心靜カニ佛書ヲ繙キ、佛典ヲ開
イテ佛〓哲理ニ〓究ヲ加ヘマシタ結論トシ
テ、遂ニ日本精神ノ〓究ニ憧レマシテ、初
メテ日本精神ノ廣大無邊ナル所ヲ感得イタ
シマスルヤ、初メテ我國ニ於テハ階級鬪爭
ノ必要ガナカッタト云フコトノ自覺ニ到達
ヲシテ、是ガ彼等ノ轉向ノ動機トナッテ居
ルト云フコトヲ承ッテ居リマス、ソレガ故
ニ此過激思想ノ取締ヲ致シマスル根本ト致
シマシテ、日本精神ヲ、徹底イタシマ
スコトノ必要デアリマスコトハ、今更
私ノ申上ゲル迄モナイコトデアリマスガ、
併シ一面斯ノ如キ思想ニ陷リ、斯ノ如キ行
動ニ出ヅル者ヲ嚴重ナル罰則ヲ科シテ、之
ヲ處罰イタシマスコトノ必要モ申上ゲル迄
モナイノデアリマス、併シ現代日本ニ於キ
マシテ、此怖ルベキ共產思想、怖ルベキ過
激思想ノ半面ニ於キマシテ、尙ホ一ツ怖ル
ベキ大キナル思潮ハ、暴力是認ノ思想デア
ルト申サナケレバナラヌノデアリマシテ、
此思想ガ今日著シク蔓莚ヲ致シテ居ルノデ
アリマス、殊ニ血盟團事件ヲ初メト致シマ
シテ、續イテ五·一五事件トナリ、或ハ神兵
隊事件トナリ、或ハ川越事件トナッテ、要ス
ルニ暴力ニ依リマシテ現代ノ社會機構ヲ破
壞シ、社會機構ノ革新ヲ企テヤウト云フ此
思想デアリマス、各種ノ事件ニ對スル所ノ
公判ニ現ハレタル被〓ノ言論ヲ御讀ミニナ
リマシテ、諸君ハ思ヒ半バニ過ギルモノガ
オ有リニナルコトト存ズルノデアリマス、
此暴力ニ依ッテ社會革新ヲ企テヤウト云フ
思想ガ起ルニ至リマシタ動因ニ付キマシテ
ハ、勿論我ミ盲目デハアリマセヌ、之ヲ然
ラシムルニ至リマシタ各種ノ社會上ノ缺陷
ガアリ、或ハ或種階級ノ橫暴ガアリ、或種
階級ノ腐敗墜落ガアッテ、是等ノ刺戟ニ依ッ
テ、尋常ナル手段ニ依ルコトガ出來ズ、遂
ニ過激ナル暴力ニ依ッテ革新ヲ企テヤウト
云フ者ヲ作ルニ至ッタ其動因ニ對シマシテ
ハ、勿論私共モ互ニ相戒メテ此社會全體ノ
革新ヲ圖リ、改革ヲ圖ラナケレバナラヌト
思フノデアリマス、併ナガラ何ト致シマシ
テモ、暴力ニ依ッテ其目的ヲ達成シヤウト云
フコトハ、斷ジテ我國ニ於テ之ヲ許スコト
ノ出來ナイ事實デアリマス、或人ガ是ナリ
ト信ジ、或人ガ正シイコトト信ジテ主張イ
タシマスルコトハ、必シモ他ノ人ガ之ヲ是
ナリト信ジ、必シモ之ヲ他ノ人ガ正シイト
信ズル譯ニ行キマセヌ、或一派ノ人、或
團ノ人達ガ信ズル理想、或ハ信ズル所ノ眞
理ニ向ッテ、暴力ニ依ッテ之ヲ遂行シヤウト云
フコトニナリマスレバ、必ズ暴力ヲ迎フル
モノハ暴力デアリマス、結局國家ハ暴力鬪
爭ノ、全ク無政府狀態ニ陷ル外ハナイト思
フ、斷ジテ此暴力ニ依ル革新ノ運動、暴力
ニ依ル改革ノ運動ト云フモノハ、ドウシテ
モ之ヲ阻止シナケレバナラヌト私共ハ信ジ
テ居ル、唯今私ガ數へ擧ゲマシタヤウナ
事件ハ、旣ニ人口ニ膾炙イタシテ居リマシ
テ、國民ノ悉ク知ッテ居ル大キナ事件デアリ
マスケレドモ、此暴力是認ノ此思想ト云フ
モノガ、派生的ニ流レテ此國民ニ與ヘテ居
ル所ノ不安、不愉快ノ狀態ト云フモノハ、
今日程甚シイモノハナイ、小ナル血盟團ノ
思想、小ナル五·一五事件ノ行キ方ヲヤリ、
小ナル神兵隊ノ考へ方ヲヤッテ、サウシテ各
方面ニ暴力ニ依ッテ壓迫ヲ加ヘテ居ル狀態
ト云フモノハ、今日程ヒドイコトハナイ、
侃々諤々ノ論ヲナシ、正道ニ立ッテ論議ヲ鬪
ハス者ハ、必ズ何カノ形ニ於テ暴力ノ壓抑
ヲ受ケテ居ルト云フコトガ現在ノ狀態デア
ル、國民ノ生活ノ上デ何ガ不安デアリ、何
ガ不愉快デアルト申シマシテモ、其人ノ
言論ノ自由ハ奪ハレ、其人ノ行動ノ
自由ガ全ク暴力ニ依ッテ壓迫サレテ居ルコ
ト、此コト位不安ニシテ、此位不愉快ナル
國民生活ハナイト思フ、唯暴力是認ノ思想
ト云フモノガ認メラレ蔓延ヲ致シマスルカ
ラ、大ニシテ國家ヲ大改革ヲスル、國家ノ
諸制度ヲ革新スルト云フヤウナ、大キナ運
動デナイニ致シマシテモ、斯ノ如キ正々堂
堂タル論陣ヲ進メ、侃々諤々ノ論ヲ以テ社
會ニ警醒ヲ與ヘル者ハ、ソレヲ好マナイ者
ハ必ズ暴力ヲ以テ壓迫スルノ風ガ、今日滔
滔トシテ風ヲナシテ居ル、此位不愉快、此
位陰鬱ナ國民生活ハナイト言ハナケレバナ
ラヌ、又本當ニ天下ノ木鐸トナルベキ新聞
或ハ雜誌ニシテモ、其筆ヲ伸シ其論ヲ進ム
ルコトガ出來ナイ狀態ニナッテ居ルコトハ、
皆樣モ御承知ノ通リト思ヒマス、新聞ニモ
現ハレズ、社會ニモ報道サレナイ幾多ノ、
斯ノ如キ暴力ニ依ッテ壓迫サレテ居ル所ノ
事實ハ、私澤山承知ヲ致シテ居ル、此位暗
イ國民ノ生活ハナイト私ハ信ズルノデアリ
マス、此派生的ニ生ズル小ナル暴力是認ノ
其考ヘ方ガ、斯ノ如ク著シク國民生活ヲ壓
迫イタシテ居ルノデアリマス、ドウシテモ
是ハ國民生活ヲ朗カニシテ、自山ナル言論
ヲ發表スルコトガ出來、自由ナル行動ヲ各、と
信ズル所ニ於テ執ルコトガ出來テ、初メ
テ其社會ハ進步シ、其國家ハ安寧ニナッテ行
クノデアル、是ガ抑ヘラレルコトハ、誠
其國ノ進步發展ヲ阻害スルモノダト私共ハ
信ズルノデアリマス、斯ウ云フ狀態ニアリ
マスコトヲ看過シテ、縱ンバ治安維持法ガ
改正ヲサレマシテ、國體變革ノ如キ不都合
ナル考ヲ持ツ者ガ徹底的ニ取締ラレマシテ
モ、決シテ社會ノ、日本ノ國民生活ハ朗カ
ナルモノニナリマセヌ、常ニ陰鬱ナル壓迫
ヲ感ジタル、不愉快ナル生活デアルノデア
リマス、是ハドウシテモ今日斯ノ如キ暴力
ヲ是認シテ、社會ノ經濟機構ニシテモ、政
治機構ニシテモ、暴力ニ依ッテ革新ヲシヤウ
ト云フヤウナ思想ノ如キハ、今日之ニ嚴重
ナル取締ヲ施サナケレバナラヌ時期デアル
ト私ハ確信ヲ致シテ居ル、時恰モ治安ヲ維
持スルト云フ其標題デアリマス治安維持法
ノ改正ガ行ハレタノデアリマス、私共ハ此
改正ノ行ハレマスコトヲ聞イテ居リマシタ
時ニ、此日本ノ現狀ニ於テ、勿論此共產思
想ノ取締ノ必要ナルコトハ論ジマスルケレ
ドモ、暴力ヲ是認シ、暴力ニ依ッテ革新ヲ
斷行シヤウト云フ思想ハ、必ズヤ嚴重ナル
御取締ハセラレルニ違ヒナイ、必ズヤ此法
案ノ條項ノ中ニ加ヘラレテ、徹底的ナル所
ノ御取締ヲ斷行セラレルモノト私共ハ確信
イタシテ居リマシタケレドモ、今囘提案ヲ
サレマシタ所ノ其法案ノ中ニハ、何等是等
ノ點ニ觸レタ所ノ條項ガゴザイマセヌ、先
程大河內子爵ノ質問ニ對シテ司法大臣ハ、
勿論其團體ガ若シ眞ニ國體ヲ革新······改革
スルヤウナ、變革スルヤウナ思想ヲ持チ、
行動ヲスルモノナラバ此規定デ取締ルノデ
アル、若シ其團體ガ如何ナル立派ナコトヲ
揭ゲテ居ッテモ、私有財產制度ノ否認ヲ主張
シ、之ヲ實行スルヤウナ團體デアルナラバ、
改正法ノ第八條デ取締ルノデアル、斯ウ仰
セラレマシタケレドモ、國體ノ變革ニモ當
ラズ、私有財產ヲ根本的ニ否認スル思想デ
モナクシテ、暴力ニ依ッテ社會ノ革新ヲシ
ヤウト云フ思想ハ、此法案デハ御取締リニ
ナルコトハ出來ナイノデアル、唯大河內子
爵ノ答辯ニ對シマシテハ斯ノ如ク申サレ
テ、大河內子爵ハ御滿足ナサッタト思ヒマ
スケレドモ、國體ノ變革ヲ主張セズ、私有
財產制度ノ根本的否認ヲシナイケレドモ、
暴力ニ依ッテ社會革命ヲ實行シヤウト云フ
各種ノ思想團體、各種ノ結社ガアルノデア
リマス、是ハ此治安維持法ニ依ッテハ到底取
締ルコトハ出來ナイノデアリマス、唯衆議
院ニ於ケル本會議竝ニ委員會等ニ於ケ
ル質疑應答ヲ拜聽イタシテ居リマスト、
成程先程司法大臣モ御認メニナッタヤウ
ニ、斯ノ如キ過激矯激ナル所ノ思想ガ橫
行シテ居ルコトハ御認メニナッテ居ル、
デ之ヲ何トカシテ取締ルノデアルケレド
モ、此法案ノ中ニハ入レナカッタケレドモ、
若シ其者ガ殺人ヲヤルナラバ、刑法ノ殺人
罪デ罰スルノデアル、若シ、徒黨ヲ組ンデ
內亂ヲ起スモノナラバ、內亂罪ニ於テ罰ス
ルノデアル、或ハ其者ガ爆彈ヲ持ッテ來、或
ハ「ピストル」ヲ持ッテ來タナラバ、爆發物ノ
取締規定デ之ヲ各、罰スルノデアル、卽チ
一般法ニ於テ是等ヲ罰スルコトガ出來ルカ
ラ、何モ特ニ此中ノ條項ノ中ニ入レテ、特
別ナル取締ヲシナクテモ宜イト云フヤウナ
御答辯デアリマシタ、斯ウ簡單ニ、此日本
現下ノ最モ憂トスベキ、又日本ノ前途ニ對
シ最モ心配セナケレバナラヌ此暴力是認ノ
思想ト云フモノヲ、斯ク簡單ニ御片付ケニ
ナッテハイケナイ、現ニ社會主義運動ノ如キ
モ、當時私ハ役人ヲ致シテ居リマシテ、幸
德秋水事件以後ノ社會主義運動ノ取締ノ任
ニ當ッテ居リマシタ、其當時ハ決シテ治安維
持法ノ如キモノハナカッタノデアリマス、
各〓或ハ之ヲ刑法ニ照シ、或ハ之ヲ治安警察
法ニ照シ、或ハ出版法ニ照シ、色ミノ行動
ヲ其一般法デ取締ッテ居リマシタケレドモ、
ソレデハ到底斯ノ如ク蔓莚シマスル所ノ思
想ヲ徹底的ニ取締ルコトハ出來ナイ、況ヤ
共產主義思想ト云フモノハ斯ノ如クシテ蔓
莚スル徴ガアリマシタカラ、初メテソレヲ
根柢カラ徹底的ニ潰滅スル趣旨ヲ以テ、此
治安維持法ト云フモノガ制定サレタノデア
リマス、ソレデアリマスカラ治安維持法ニ
於キマシテハ、單リ國體變革ノ行動ヲ致シ
タモノヲ罰スルノデハアリマセヌ、其目的
ヲ以テ結社ヲ致シマシテ、玆ニ團體ヲ造レ
バ結社モ罰セラレル、結社ニ加入シタ者モ
罰セラレル、結社ヲ指導シタ者モ罰セラレ
ル、斯ノ如クニシテ根柢カラ之ヲ覆ヘシテ
行カウト云フ趣旨デアル、況ヤ之ニ依リマ
スレバ相寄ッテ、其目的ニ依ッテ協議ヲ致シ
マシテモ、是ガ罰セラレル、況ヤ其目的ヲ
遂行スル爲ニ煽動ヲシテモ罰セラレル、又
今囘ノ改正ニ依リマスレバ煽動バカリデハ
アリマセヌ、其コトノ目的達成ノ爲ニ大ニ
宣傳是レ努メタ場合ニ於キマシテモ、之ヲ
罰セラレル、卽チ〓マデノ一般法ニ於キマ
シテハ到底徹底的ノ勦滅ガ出來ナイト云
フ、其趣旨ニ依ッテ此治安維持法ト云フモノ
ハ特ニ制定ヲサレタノデアリマス、サウ云
フ意味カラ行キマスレバ、今迄デモ暴力行
爲ガアリ、暴力團體ト云フヤウナモノガア
リマシテ、取締ヲ一般法デ致シテ居リマス
ガ、ソレガ近年急激ニ社會狀勢ノ變化ニ伴ッ
テ、斯ノ如キ暴力是認ノ思想、之ヲ私ガ一々
事例ヲ申上ゲナクテモ皆サン御存知ノ通
リ、一定ノ指導精神ヲ以テ暴力革命ヲ企テ
ル所ノ各種ノ團體、各種ノ「グループ」ノア
リマスコトハ、是ハ御承知ノ通リデアリマ
ス、デ是等ヲ本當ニ徹底的ニ取締ヲスルト
云フナラバ、此國體ノ變革ヲ考へ、過激思
想ヲ有スル人達ヲ取締ルト同ジ方法、同ジ
手段ニ依ッテ其殲滅ヲ期スルニ非ザレバ、到
底其目的ヲ達スルコトハ出來ナイト私ハ信
ジテ居ル、ソレデアリマスカラ折角此時期、
此際ニ改正サレル其改正案ノ中ニ、一言モ
此點ニ付テ觸レラレナカッタト云フコトニ
對シマシテハ、私ハ甚ダ遺憾ノ意ヲ表スル
ノデアリマス、併ナガラ考ヘ方ニ依レバ、
此治安維持法ト云フモノノ制定ノ沿革モア
リマシテ、是ハ主トシテ國體變革ヲ目的ト
スル犯罪ヲ檢擧スル、其爲ニ作ラレタ法律
デアルカラ、此暴力ニ依ル一ツノ暴力是認
ノ思想ノ取締ノ如キハ、或ハ此法律ノ中ニ
加ヘルコトガ不適當デアルト云ッタヤウナ
御考デアルナラバ、何故ニ治安維持法ト相
竝ンデ此暴力是認、最モ怖ルベキ、最モ忌
ムベキ、最モ此國民ニ不安ト不愉快ノ念ヲ
與ヘテ居ル所ノ、此暴力是認ノ思想ヲ取締
ルモノヲ、相竝ンデ何故ニ御提出ニナラナ
カッタカ、此點ハ先程岩田博士ノ御質問モ御
觸レニナッテ居リマシタガ、一應私ハ斯ノ如
キ必要ノアルモノヲ何故ニ之ニ御加ヘニナ
ラナカッタカ、又加ヘラレナカッタコトガ今
私ガ申上ゲマスヤウナ趣旨デアリトスルナ
ラバ、相竝ンデ何故ニ此緊急ナル時節ニ於
テ、相竝ンデ暴力是認ノ思想ヲ取締リニナ
ル所ノ特別ナル法律ヲ御提案ニナラナカツ
タカ、重ネテ此點ヲ司法大臣ニ御伺ヲ申上
ゲル次第デアリマス(拍手)
〔國務大臣小山松吉君演壇ニ登ル)発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X02819340317&spkNum=31
-
032・小山松吉
○國務大臣(小山松吉君) 丸山君ノ御質疑
ニ御答ヘ致シマス、先刻來御答ヲ致シマシタ
通リ、政府ト致シマシテハ治安維持法ノ
中ニ暴力行爲ヲ致シマス者ヲ、取締ルベキ
規定ヲ置クベキカドウカト云フコトニ付テ
ハ、十分考慮ヲ致シタノデアリマス、併ナ
ガラ段々〓究ヲ致シマシタ結果、現今行ハ
レテ居リマスル暴力行爲處罰ニ關スル法律、
又ハ御示シニナリマシタ爆發物取締罰則、
其他銃砲火藥取締法等ノ規定ガアルノデア
リマシテ、此運用ヲ適當ニ致シマスレバ、
現在ノ御話ノヤウナ不安ノ狀態ノアリマス
ルコトモ、取締モ出來ルデアラウト云フ考
モアリマシテ、其結果治安維持法ノ規定ノ
中ニハ入レナカッタノデアリマス、先刻申上
ゲマシタガ、衆議院ノ委員會等ニ於テモ、
是ハ度〓繰返サレテ論議イタシマシタ其結
果、衆議院ノ修正案モ希望條項トシテ朝憲
ヲ紊亂スル目的ノ暴力ニ關スル行爲ト云フ
ヤウナコトノ希望條項ガ付イテ居リマス、
政府ト致シマシテハ先刻岩田君ノ御質疑デ
御答へ致シマシタヤウニ、十分考慮ヲ致ス
積リデ居リマス
〔男爵井田磐楠君發言ノ許可ヲ求ム〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X02819340317&spkNum=32
-
033・丸山鶴吉
○丸山鶴吉君 ソレデハ、尙ホ諒承シ難イ
點モゴザイマスケレドモ、委員會等ニ於キマ
シテ詳細承ルコトニ致シマシテ、私ノ質問
ヲ打切リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X02819340317&spkNum=33
-
034・松平頼壽
○副議長(伯爵松平賴壽君) 井田男爵ハ御
質疑デゴザイマスカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X02819340317&spkNum=34
-
035・井田磐楠
○男爵井田磐楠君 只今上程サレマシク法
案ニ付キマシテ、二三質問ヲ致シタイト思
ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X02819340317&spkNum=35
-
036・松平頼壽
○副議長(伯爵松平賴壽君) 御質疑ノ時間
ガ長イヤウデゴザイマスレバ、一時休憩ヲ
致シマスガ·発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X02819340317&spkNum=36
-
037・井田磐楠
○男爵井田磐楠君 簡單デアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X02819340317&spkNum=37
-
038・松平頼壽
○副議長(伯爵松平賴壽君) 簡單デゴザイ
マスレバ、ドウゾ只今······登壇ヲ願ヒマス
〔男爵井田磐楠君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X02819340317&spkNum=38
-
039・井田磐楠
○男爵井田聲楠君 私ハ皆サンノ御質疑ニ
依リマシテ、急ニ誘ハレマシテ此壇上ニ起
チマシタ、司法大臣ニ二三御質問ヲ申上
ゲタイト思ヒマス、岩田君ノ御意見、卽チ
我ガ國家ハ國家主義デアリ、同時ニ家族主
義デアルト云フコトニ付テハ、私ハ極メテ
同感ノ一人デアリマシテ、我國ハ決シテ國
家社會主義デモナケレバ、又ソレヲ引ッ繰返
シタ社會國家主義デモナイノデアリマス)
他ノ國ニ類例ヲ見ナイ純粹ナル國家主義ノ
國デアリマシテ、申ス迄モナク國家主義デ
アリマシテ、又建國ノ上カラ考ヘマスト云
フト、先程岩田君ノ言ハレマシタ家族主義
ト云フモノガ多大ニ根本ニアルノデ、天
皇ヲ中心ニ戴イタ我國ハ、所謂一大家族制
度デアル、强ヒテ私ガ申シマスレバ、日本ハ
國家家族主義デアルト言ハナケリヤナラヌ
ト私バ思ッテ居ル、然ルニ此治安維持法ノ中
ニ、國家ト離ルベカラザル此家族制度ト云
フモノヲ、如何ナル方法ニ依ッテ司法大臣ハ
保護サレヤウトナサルノデアルカ、先程仰
セニアッタ司法大臣ノ、天皇ト私有財產ト
云フモノヲ御一體ニ御述べニナッタヤウニ
伺ヒマシタ、之ニ付テハ相當論議ノ餘地ガ
アルカト思ッテ居リマス、併ナガラ天皇ト
臣民、國家ト家族所謂國家家族主義ト云フ、
此國家ト家族ト云フモノハ離ルベカラザル
モノデアルノデアリマシテ、此點ニ於テ私
ハ岩田君ノ說ヲモウ一步强調シテ申上ゲタ
イト思ッテ居ル、デ私有財產ノ保護ト云フコ
トニ付テ、衆議院ニ於テ司法大臣ガ御述べ
ニナリマシタ所ニ依ルト云フト、私有財產
ニ依ッテ罰則ヲ受ケタ者ハ殆ド少イノデア
ルト云フ仰セデアリマス、デ前例ニ依ッテ少
イヤウナ私有財產ヲ保護スル爲ニ、特ニ之
ヲ第一條カラ引拔イテ第八條ノ別箇ニ置ク
ト云フ理由ガ、甚ダ乏シイヤウニ思フ、私
ハ今ソレヲ御尋スルノデハナイノデアリマ
スガ、如何ニシテ此家族制度ト云フモノヲ
保護ナサルカト云フコトニ付テ御伺ヲ申上
ゲタイ、是ガ質問ノ第一點、第二點ハ衆議
院ニ於キマシテ暴力行爲ニ對スル希望決議
ガ附イテ居リマス、又先程來大河內子爵、
岩田君、丸山君ニ於カレマシテ、暴力行爲
ニ關スル取締ノ希望ガ出テ居リマス、本
員之ニ對シテ何等反對ヲ唱ヘル者デハア
リマセヌガ、我國ニ於ケル此左翼ノ共產
黨ノ暴力行爲ト云フコトニ付キマシテハ、
是ハ近クハ最モ大キナ事件トシテハ、タシ
カ昭和四年ト思ッテ居リマスガ、五月一日
ニ於ケル、「メーデー」ニ於ケル川崎ノ暴動
事件、其他小サナ暴力行爲ハ是亦少クナイ
ノデアリマス、此點ニ於テ先程丸山君ノ言
ハレタ暴力行爲ノ御觀念-觀念ハ私ノ觀
念ト聊カ共通的ナ所ガアリマスルガ、翻テ
之ヲ世界的ニ見マスト云フト千九百二十
七年ニ於テ巴里ニ於ケル所ノ「サッコ·ヴァン
ゼッチ」ノ運動、之ガ爲ニ巴里ノ中ニハ防
柵ヲ築イテ共產黨ノ暴動ヲ防止シタト云フ
實例ガアリマス、今年ニ入リマシテ巴里ニ
於ケル暴動、維也納ニ於ケル暴動、共ニ其
背面ニハ多大ニ共產黨ノ活動ガアルノデア
リマス、デ彼等ノ組織ハ非常ナ大キナ組織
ヲ持チ、非常ナ深イ組織ヲ持ッテ居レダケ
ニ、彼等ガ暴力行爲ヲ爲サムトスル時ハ、
其行爲ト云フモノハ最モ深刻デアリ、最モ
激烈デアルト云フコトハ、我ミガ終始其行
爲ガ現ハレナイ今日ニ於テ覺悟ヲシテ居ナ
ケレバナラナイ點デアルノデアリマス、デ
アリマスルカラ此暴力行爲ノ取締ト云フコ
トニ付テハ、深ク思ヲ共產黨ノ暴力事件ノ
中ニ潜メテ、而シテ其取締條項ヲ規定サレ
ルコトガアルナラバ、其點ニ思ヲ潜メナケ
レバナラヌト云フコトヲ私ハ考ヘテ居ルノ
デアリマスガ、此件ニ付テノ司法大臣ノ御
考ハ如何、大體此二件ヲ御尋ヲ申上ゲテ置
キタイノデアリマス
〔國務大臣小山松吉君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X02819340317&spkNum=39
-
040・小山松吉
○國務大臣(小山松吉君) 井田男爵ノ御質
疑ニ御答へ致シマス、我ガ國家ガ御承知ノ
如キ萬國ニ類例ノ無イ國家主義ノ國デアルト
云フコトハ、仰セノ通リデアリマス、我ガ國
家ハ君國一體、君民一體ノ所謂大家族主義
デアルト私モ思ッテ居ルノデアリマシテ、古
來ヨリ我ガ大和民族ノ家族制度ト云フモノ
ハ、世界ニ類例ノ無イモノデアリマス、我
ガ國家ハ一大家族ヲ組織シテ居ルモノナリ
ト申シテ差支ナイト思フノデアリマス、デ
此家族制度ヲ如何ニ保護スルカト云フ御尋
ネニ對シマシテハ、治安維持法ノ國體變革
ヲ目的トスル犯罪ヲ嚴罰イタシマスルコト
ハ、卽チ之ニ該當シテ居ルノデアル、尙ホ
民法其他ノ規定ニ依リマシテモ、我ガ家族
制度ヲ保護シ、之ヲ何處迄モ維持シテ行ク
ト云フ、法律ニ色ミノ規定ガアルコトハ御
承知ノ通リデアルト思ヒマス、ソレカラ次
ニ此暴力行爲ノコトニ付テノ御言葉デゴザ
イマシテ、是ハ先刻來度と申上ゲタ通リデ
アリマスガ、唯御言葉ノ中ニ川崎事件其他
ヲ御引キニナッタヤウデアリマスガ、サウ云
フコトニ付キマシテハ此度ノ改正案デハ殊
ニ注意イタシテ居ルノデアリマス、現ニ改
正案ノ第六條ニハ「第三條ノ目的ヲ以テ騷擾、
暴行其ノ他生命、身體又ハ財產ニ害ヲ加
フベキ犯罪ヲ煽動シタル者ハ」ト云フコトモ
規定シテ居ルノデアリマシテ、思想犯ニ對
スル此暴力行爲ト云フコトニ付テ同ジヤウ
ナ、又第十條ニ、八條ノ目的ニ關スル犯罪
煽動迄モ規定シテ居リマス、犯罪行爲ニナ
リマスレバ、刑法共他ノ刑罰規定ニ於テ處
分ガ出來ルノデアリマス、サウ云フ點ニ付
テハ注意ヲ怠ラズ規定ヲ致シテ居ル次第デ
アリマス、ソレデ御諒承願ヒタイト思ヒマ
ス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X02819340317&spkNum=40
-
041・池田政時
○子爵池田政時君 只今議題ニ上ボリマシ
タ治安維持法改正法律案ハ、極メテ重要ナ
ル法案デアリマスルガ故ニ、其特別委員ノ
數ヲ二十五名トシ、其指名ヲ議長ニ一任ス
ルト云フ動議ヲ提出イタシマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X02819340317&spkNum=41
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042・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 贊成発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X02819340317&spkNum=42
-
043・松平頼壽
○副議長(伯爵松平賴壽君) 池田子爵ノ動
議ニ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X02819340317&spkNum=43
-
044・松平頼壽
○副議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト
認メマス、書記官ヲシテ特別委員ノ氏名ヲ
朗讀イタサセマス
〔瀬古書記官朗讀〕
治安維持法改正法律案特別委員
公爵一條實孝君侯爵細川護立君
伯爵松木宗隆君子爵會我祐邦君
子爵伊東二郞丸君子爵松平康春君
子爵高木正得君水上長次郞君
小野塚喜平次君川村竹治君
男爵千秋季隆君男爵井田磐楠君
男爵松平外與麿君男爵德川喜翰君
山岡萬之助君赤池濃君
次田大三郞君松村義一君
丸山鶴吉君大塚惟精君
山隈康君鵜澤總明君
岩田宙造君松澤〓次郞君
大谷尊由君発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X02819340317&spkNum=44
-
045・松平頼壽
○副議長(伯爵松平賴壽君) 是ニテ休憩イ
タシマス、午後ハ一時三十分ヨリ開會イタ
シマス
午後零時三十三分休憩
午後一時五十七分開會発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X02819340317&spkNum=45
-
046・松平頼壽
○副議長(伯爵松平賴壽君) 是ヨリ報〓ヲ
致サセマス
〔小林書記官朗讀〕
本日委員長ヨリ左ノ報〓書ヲ提出セリ
昭和九年度歲入歲出總豫算追加案(分)
號)、昭和九年度各特別會計歲入歲出豫算
追加案(特第一號)、豫算外國庫ノ負擔ト
ナルベキ契約ヲ爲スヲ要スル件(追第一
號)可決報告書
出版法中改正法律案修正報〓書
本日衆議院議員選擧法中改正法律案特別委
員會ニ於テ當選シタル正副委員長ノ氏名左
/西
委員長侯爵佐佐木行忠君
副委員長子爵前田利定君発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X02819340317&spkNum=46
-
047・松平頼壽
○副議長(伯爵松平賴壽君) 是ヨリ午後ノ
會議ヲ開キマス、日程第八、市街地建築物
法中改正法律案、政府提出、第一讀會ノ續、
委員長報告、川村伯爵
市街地建築物法中改正法律案
右別冊ノ通修正議決セリ依テ及報〓候也
昭和九年三月十六日
委員長伯爵川村鐵太郞
貴族院議長公爵近衞文麿殿
特別委員ノ修正ニ係ル部分ノニ印刷
シ其ノ他ハ之ヲ略スーハ修正ナリ
第二十六條第一項ヲ左ノ如ク改ム
本法ニ於テ道路ト稱スルハ幅員四メー
トル以上ノモノ及幅員二·七メートル
以上ニシテ土地ノ非況ニ依リ行政官廳
ノ認定シタルモノヲ謂フ
〔伯爵川村鐵太郞君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X02819340317&spkNum=47
-
048・川村鐵太郎
○伯爵川村鐵太郞君 議題ニ上ボリマシ
タル市街地建築物法中改正法律案ノ委員
會ノ經過及結果ヲ御報告申上ゲマス、本
法ハ大正九年施行セラレマシテ以來、今
日マデ十數年ノ歲月ガ經ッテ居リマスガ、マ
ダ一囘モ改正ヲ企テラレマシタコトハゴザ
イマセヌ、此運用上ニ色〓無理ガ出來、不
便ヲ感ジルノデアリマス、其上本法ノ適用
區域ハ、適用ヲ受ケテ居リマス市町村ハ、
施行令、施行規則、此全部ノ適用ヲ受ケテ
居リマス市ハ、十二市二村デアリマス、此
一部ノ適用ヲ受ケテ居リマスモノハ、百八
市ニ互ッテ居リマス、今申上ゲタノハ少シ間
違ヒマシタ、百八市二十五町二村ニ亙ッテ
居リマス、其町村ノ適用ガ漸次增加イタシ
マシテ參リマス際ニ當リマシテ、市街地建
築ノ問題トシテ、官民ノ間ニ長イ間甚ダ遺
憾デアルヤウニ感ジラレタ點ヲ、今囘改正
イタシマセヌケレバナラヌヤウニナッタノ
デアリマス、改正ノ要項ハ、本法ノ七條、
八條、九條、十條、二十三條、二十六條デ
アリマス、現行法ノ七條、九條ヲ第一ニ申
上ゲテ見マスト、道路敷地、道路幅等ノ境
界線及ビ建築線ト建築物トノ關係ヲ規定サ
レテアリマシテ、今囘道路敷地ノ境界線ヲ
以チマシテ、原則ト致シテ建築線ト致シマ
スノヲ改メマシテ、道路幅ノ境界線ヲ、以テ原
則トシテ建染線トスル規定ニ改マリマスノデ
アリマス、斯ク致シマスコトニ依リマシテ、道
路敷地ノ境界線ト道路幅ノ境界トノ一致セ
ザル場合ニ於キマシテハ、常ニ道路幅ノ境
界線マデハ建築線ガ突出シ得ルコトニナリ
マス、更ニ建物ノ地盤以下ニアリマス所ノ部分
ハ、建築線ヨリ突出シテ出セルコトヲ認容
サレルヤウニ改正サレルノデアリマス、此
點ハ頗ル建築主ノ便利ニナルコトデアリマ
ス、八條ノ改正ヲ今拔カシマシタガ、建築
物ノ敷地トシテ資格ヲ許シマスノハ、現行
法ニ依リマスレバ、其土地ガ建築線ニ接ス
ルコトガ必要デアリマス、此建築線ニ接ス
ルコトニ依リマシテ、道路ノ敷地ノ境界線
ニ接スルカ、或ハ道路敷地ニ接シナイ場合
ニハ、別ニ行政官廳ノ指定ヲ俟ッテ、建築線
ヲ決メテ貰ハナケレバナリマセヌ、單ニ建
築線ガアルカラト云フ理由デ、其土地ノ上ニ
建築物ヲ建設シマス場合ニ於キマシテハ、
其結果非常ニ狹イ路地ヲ挾ンダ町ガ出來、
不衞生地區ヲ現出スルノデアリマス、之ヲ
防止スル爲ニ此條項ガ改正サレルノデアリ
やく、玆ニ卽チ建築物ハ其敷地ガ道路敷地
ニ接シナケレバ建築スルコトヲ得ズト云フ
規定ニシマシテ、密集區域ノ生ズルコトヲ
防止スルノデアリマス、一一十三條ノ改正ハ、
現在規定シテ居ラレマス市街地建築物法ノ
施行ガ普及イタシマシタ今日、一ミソレヲ
勅令ヲ以テ指定イタシマスト云フコトハ、
重キニ過グルノ感ガアリマスカラ、之ヲ主
務大臣ノ指令ニ俟ツト云フコトニ改メマシ
テ、其事務ノ簡捷ヲ圖ルト云フコトデアリ
マス、次ニ二十六條ノ改正ヲ申上アゲマス
レバ、道路ノ最小限度ハ、今日ハ九尺トナッテ
居リマス、卽チ九尺アリマセヌケレバ、道
路ト看做サイト云フコトニナッテ居リマス、
是ガ十數年此法律ノ實行ニ當リマシテ、道
路ノ九尺ノ道路デハ兩方ニ測溝ヲ取ッテ、中
ニ電信柱ヤ何カガ立チマスト、誠ニ道路幅
モ狹クナッテ參ルノデ、今日ハ消防或ハ防
火ノ器具ガ自動車ニ依リ、又消毒ノ、傳染
病ニ要スル所ノ各種ノ消毒ノ器具ハ、盡ク
前ヨリ大キクナッテ居リマス、ソレノミナリ
マセズ、都市ノ汚物ノ搬出ニ際シマシテモ、
頗ル困難ヲ見ルノダサウデアリマス、故ニ
此際幾分ナリトモ之ヲ廣クスルコトヲ目的
トシマシテ、約九尺ノモノヲ四「メートル」
ニ擴ゲル、但シ是マデアリマシタ旣設ノ道
路ニ對シテハ、完成シマシタ場所ニ付キマ
シテハ、今直ニ四「メートル」ヲ實施シマスコ
トハ、頗ル無理ナ所ガアリマスカラ、見たく
二「メートル」七ト云フコトデ、二「メート
ル」七十「センチ」ト云フコトニシテ、現在ノ
道路ヲ認メルコトニナリマス、是ガ全體ノ
今度ノ政府ノ提出サレマシタ改正ノ要旨デ
アリマス、委員會ハ六囘開キマシテ、各委
員ノ質問ガ一般的ニ行ハレマシタガ、特ニ
取立テテ申上ゲマス事柄ハ、此市街地建築
物法ノ根本ニ向ッテ、ナカ〓〓嚴シイ質問
ガアリマシタ、ソレトモウ一ツハ、此道路
幅ノ四「メートル」ト云フコトニ付テ色ミ質
疑ガ行ハレマシタ、此二ツヲチヨット申上ゲ
テ見タイト思ヒマス、先ヅ此根本義ニ向ッテ
質問ヲナサッタ方ハ、斯ノ如キ重大ナル改正
ヲ此市街地建築法ノ上ニ行フニ付キマシテ
ハ、相當ノ權威アル機關ニ依ッテ審議サレ
ナケレバナラナイノニ、單ニ內務省ノ一課
ヲ成ス所ノ都市計畫課ノヤウナ所デ立案ヲ
スルト云フコトハ、頗ル不謹愼デアル、何
故ニ先年都市計畫法ニ於テ自分ガ政府ニ希
望ヲシテ置イタ通リ、中央委員會ノ如キ權
威アル機關ヲ働カシテ、其日暮シデナイ、
卽チ永遠ニ亙ル所ノ方策ヲ立テラレテヤラ
ナカッタカト云フコトニ付テハ、誠ニ嚴シク
再三質問ガアリマシタ、政府當局ニ於テハ、
成程中央委員會ニ掛ケルト云フ御話ハアッ
タケレドモ、サウ云フ御約束ハシタコトハ
ナイ
〔議長公爵近衞文麿君議長席ニ著ク〕
併シ決シテ忘レテ居ルコトデハナイガ、兎
ニ角此度改正案トシテ提出シマシタ程度ノ
モノハ、中央委員會ニ掛ケル程ノ程度ノモ
ノデハナイト心得テ、今囘ノ計畫ハ內務省
限リデ之ヲ改正イタシタノダト云フ御答辯
デアリマシタガ、何囘モ質問應答ガ取交ハ
サレマシタケレドモ、遂ニ其委員ハ滿足サ
レナカッタノデアリマス、ソレカラ此道幅ニ
付テノ質問ガ又集注サレテ、質問ガゴザイ
マシタ、道路幅ノ九尺ト云フモノハ相當前
ニ〓究ヲサレテ決マッタモノデアルノヲ、單
ニ之ヲ四「メートル」ニ改正シテシマフト云
フコトハ頗ル當ヲ得ナイ、ト云フ御質問モ
アリマシタ、ソレカラ又何分ニモ事柄ガ實
際ノ問題デアリマシテ、狹イ廣イト云フコ
トデハ再三論議サレマシタケレドモ、遂ニ
是モ質問者ニ十分ノ滿足ヲ與ヘルコトガ出
來マセヌデシタ、委員會ノ外ニモ三囘懇談
會ヲ開キマシテ、色ニ〓究ヲ致シマシタケ
レドモ、其程度デ質問ハ終リマシタ、討議
ニ移リマシタ所ガ、一委員ヨリ熱心ナル本
案支持ノ御演說ガアリマシタ、其趣旨ハ十
數年モ政府ガ實際ニ當ッテ此問題ヲ〓究シ、
サウシテ玆ニ四「メートル」トシテ、四「メー
トル」ノ道幅ヲ必要ナリトシテ出シテ、而モ
土地ノ狀況ニ依ッテ、又旣設ノ市街地ニ何
等無理ノ行ハレナイヤウニ、九尺同樣ニ、
卽チ二「メートル」七十「センチ」ノ道幅ヲ認
容スルコトニ於テ、十分ノ注意ヲ以テ玆ニ
提出セラレタノデアル、其外ニ建築線ガ道
路幅ノ境界線ト一致シ、而モ建築物ノ地下
ノ部分ハ道路敷地マデ突出シテモ宜イト云
フヤウナ、非常ナ宜イ改正デアルノデア
ル、ドウモ之ヲ否認スルト云フノハ頗ル當
ヲ得ナイコトデアルト云フコトノ御趣意ヲ
以テ··
〔「聞エマセヌ」ト呼フ者アリ〕
此趣意ヲ以テ隨分論難ガアリマシタ、遂之
一議員カラ動議ガ出マシテ、之ヲ成規ノ手
續ニ依リマシテ採決ヲ致シマシタガ、之ヲ
チヨット讀上ゲテ見マス、此二十六條ヲ斯
ウ云フ風ニ修正シタイト云フ動議デアッタ
ノデゴザイマス、「本法ニ於テ道路ト稱スル
ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ一定ノ幅員ヲ有ス
ルモノヲ謂フ」ト、斯ウ云フ動議デアリマシ
テ、共提出ノ御理由トシテハ、此道路ノ必
要ナコトハ、種々場所ニ依リ、道幅ニハ相
當ノ仲縮ノ自山ヲ與ヘル方ガ宜イノデア
ル、現ニ家ノ高サモ勅令ニ俟ッテ居ル、家ノ高
サヲ指定シマスコトハ、勅令ニ依ッテ指定
セラレテ居ルノデアル、此道路ノ幅員モ勅
令ニ依ッテ指定スルト云フ方ガ宜クハナイ
カ、其外ニ二三ノ御理由ハアッタノデアリ
マスガ、主ナ御理由ハマアサウダト私ハ
忠ッテ居ル、之ヲ成規ノ手續ニ依リマシテ
可否ヲ採リマシタ所ガ、之ヲ可トスル委員
ハ二人デ、遂ニ是ハ成立イタシマセヌデシ
ク、次ニモウ一ツ修正動議ガ出マシテ、其
修正動議ハ此原案ノ二十六條ノ原案ヲ削除
シテ、サウシテ現行法ノ通リニ、現行法ニ
戾スト云フコトガ、動議トシテ成立ヲ致シ
マシタ、卽チ外ハ皆異議ナクシテ、單ニ二
十六條ノ道路幅ヲ·······道路ノ幅員ヲ四「メー
トル」ニスルト云フコトニ、此政府ノ原案ニ
對シマシテ、削除ヲ試ミルト云フコトデア
リマス、ソレデ現行法ニ之ヲ戾ス、其趣旨
ハ、此二十六條ノ改正ニ付テハ、未ダ審議ガ
十分盡サレテ居ラナイト云フコトヲ認ムル
ニ付テ、將來尙更〓究ノ上ニ政府ノ提案ヲ俟
ツコトトシテ、此度ハ之ヲ削除シタイ、斯ウ
云フ簡單ナ御趣意デアリマシタケレドモ、
其言外ニハ、是ハ私カラ附加ヘテ申上ゲル
程ノコトハアリマセヌデシタガ、此質問應
答ノ間ニ於キマシケ、各委員カラ此本法ノ
根本ニ向ッテ色ミ御話ガアリマシタ際ニ··
質問ガアリマシタ際ニ、未ダ此本法ノ十分
ニ練レテ居ラナイト云フコトハ、政府當局
モ御認メニナッテ居ル、卽チドウ云フコトカ
ト申シマスト、建築物ノ建ッテ居リマス區域
ノ土地ノ構成デアリマストカ、又美觀ニ關
スルコトデアリマストカ、卽チ建築ノ美觀
ト云フコトニ付テノコトデアルトカ、ソレ
カラ其他地下建築物ノ、或ハ衞生的設備デ
アルトカ、色ミ地下ノ設備ヲ要スルモノガア
ルノデアリマス、サウ云フコトノ一切ニ付
テ、マダ十分ノ〓究ガ遂ゲラレテ居ラナイ
ト云フコトハ、政府當局モ御認メニナッテ居
ルノデアリマス、斯ウ云フコトガアリマシ
タモノデスカラ、未ダ審議ヲ盡サザルモノ
アリト認ムルニ付キ、將來更ニ十分〓究ノ
上ニ政府ノ提案ニ俟ツコトニシタイ、斯ウ
云フ御趣意ヲ以テ此政府ノ道路幅員ニ付テ
ノ改正ヲ削除スルト云フ動議ガ成立チマシ
ク、是ハ矢張リ成規ノ手續ニ依リマシテ採
決イタシマシタ所ガ、之ヲ可トスル委員ガ
四人、否トスル委員ガ三人デ、此修正動議
ガ成立ッタノデアリマス、其際ニ委員ノ一人
カラ希望意見ガ出マシテ、ソレハ全會一致
ヲ以テ委員長カラ附加ヘテ報〓ヲシテ吳レ
ト云フコトデアリマスルカラ、此際朗讀ヲ
致シマスカラ、左樣御許シヲ願ヒタイト思
ヒマス、市街地建築物法中改正法律案特別
委員會ノ希望決議デアリマス
都市計畫上重大ナル影響アル法令ノ改廢
ニ關シテハ都市計畫中央委員會ニ諮問シ
タル上提案セラレムコトヲ望ム
斯ウ云フ希望決議ヲ、委員會一致ノ決議ニ
依ッテ私カラ玆ニ御報告ヲ申上ゲルノデア
リマス、右樣ノ次第デアリマシテ、此委員
會ハ終了イタシマシタ、此段御報告申上ゲ
マス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X02819340317&spkNum=48
-
049・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 御質疑ガナケレ
バ本案ノ採決ヲ致シマス、本案ノ第二讀會
ヲ開クコトニ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X02819340317&spkNum=49
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050・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X02819340317&spkNum=50
-
051・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直ニ本案ノ第二讀會
ヲ開カレムコトヲ希望イタシマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X02819340317&spkNum=51
-
052・植村家治
○子爵植村家治君 贊成発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X02819340317&spkNum=52
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053・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 西大路子爵ノ動
議ニ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ)発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X02819340317&spkNum=53
-
054・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 御異議ナシト認
メマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X02819340317&spkNum=54
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055・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 第二讀會ヲ開キ
やく、御異議ガナケレバ全部ヲ問題ニ供シ
マス、本案全部委員長ノ報〓通リデ御異議
ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X02819340317&spkNum=55
-
056・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X02819340317&spkNum=56
-
057・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直ニ本案ノ第三讀會
ヲ開カレムコトヲ希望イタシマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X02819340317&spkNum=57
-
058・植村家治
○子爵植村家治君 贊成発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X02819340317&spkNum=58
-
059・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 西大路子爵ノ動
議ニ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X02819340317&spkNum=59
-
060・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X02819340317&spkNum=60
-
061・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 第三讀會ヲ開キ
やく、第二讀會ノ決議通リデ御異議ハゴザ
イマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X02819340317&spkNum=61
-
062・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X02819340317&spkNum=62
-
063・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 日程第九、旭川
市舊土人保護地處分法案、政府提出、衆議
院送付、第一讀會ノ續、委員長報〓、委員
長野村子爵ノ登壇ヲ望ミマス
旭川市舊土人保護地處分法案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報告候也
昭和九年三月十六日
委員長子爵野村益三
貴族院議長公爵近衞文麿殿
〔子爵野村益三君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X02819340317&spkNum=63
-
064・野村益三
○子爵野村益三君 旭川市舊土人保護地處
分法案、本案ハ舊土人保護ノ目的ヲ以チマ
シテ、明治三十九年以來旭川市ニ貸付イタ
シマシタ所ノ土地ヲ、今回特別緣故ノアル
舊土人卽チ其附近ニ住居ヲ致シテ居リマス
ル「アイヌ」ノ人ミニ無償貸付ヲ致サウト云
フ趣旨ノモノデアリマス、此土地ハ面積ニ
致シマスルト約百五十町步デアリマスガ、
此土地ハ所謂豫定給與地ナルモノデアリマ
シテ、元〓現ニ住居イタシテ居リマスル舊
土人ニ給付スベキモノデアッタノデアリマ
ス、ソレヲ只今申上ゲマシタヤウニ、便宜
上明治三十九年以來旭川市ニ貸付イタシマ
シ六、其收益ニ依ッテ舊土人ヲ保護イタシ
テ居ッタノデアリマス、然ルニ舊土人ハ其土
地ヲ耕作ヲ致シマシタリ、所謂地目ノ變換
ヲ來シタノデアリマシテ、從テ舊土人保護
法ニ依ッテ處分ヲ致スコトハムヅカシイト
云フ狀態ニナッテ居ルノデアリマス、故ニ此
度本案ヲ制定公布ヲ致シマシテ、舊土人殊
ニ緣故アル所ノ舊土人ノ保護ヲ全ウシヤウ、
斯ウ云フ法案ナノデアリマス、法案ハ至ッテ簡
單ナルモノデアリマシテ三箇條竝ニ附則
ヨリ成ッテ居ルモノデアリマス、特別委員會
ハ前後二日ニ亙リマシテ、先以テ舊土人ノ
分布ノ狀態、生活ノ有樣、竝ニ保護ノ程度
等ヲ質疑應答ヲ致シマシテ、進ンデ前御紹
介申上ゲマシタ舊土人保護地處分法ノ內
容卽チ之ヲ以テ舊土人保護ノ目的ヲ遂行
シ得ルヤ否ヤ、尙ホ內容ヲ改正スルノ意思
アリヤ否ヤト云フ點ニ付テモ質疑應答ヲ重
ネタノデアリマス、延イテハ所謂先住民族、
「アイヌ」民族ノ文化保存ト云フヤウナ點ニ
モ觸レテ當局ノ意見ヲ叩イタノデアリマス、
結局特別委員會ハ本法案ヲ以テ正當適切ナ
ルモノト認メマシテ、出席者一致ヲ以テ本案
ヲ可決イタシマシタ、以上御報告ヲ終リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X02819340317&spkNum=64
-
065・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 御質疑ガナケレ
バ採決ヲ致シマス、本案ノ第二讀會ヲ開ク
コトニ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X02819340317&spkNum=65
-
066・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X02819340317&spkNum=66
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067・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直ニ本案ノ第二讀會
ヲ開カレムコトヲ希望イタシマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X02819340317&spkNum=67
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068・植村家治
○子爵植村家治君 贊成発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X02819340317&spkNum=68
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069・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 西大路子爵ノ動
議ニ御異議ハゴザイマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X02819340317&spkNum=69
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070・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X02819340317&spkNum=70
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071・近衞文麿
○議長(公爵近衛文麿君) 第二讀會、全部
ヲ問題ニ供シマス、全部委員長ノ報告通リ
デ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X02819340317&spkNum=71
-
072・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X02819340317&spkNum=72
-
073・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直ニ本案ノ第三讀會
ヲ開カレムコトヲ希望イタシマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X02819340317&spkNum=73
-
074・植村家治
○子爵植村家治君 贊成発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X02819340317&spkNum=74
-
075・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 西大路子爵ノ動
議ニ御異議ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X02819340317&spkNum=75
-
076・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X02819340317&spkNum=76
-
077・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 第三讀會、第二
讀會ノ決議通リデ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X02819340317&spkNum=77
-
078・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X02819340317&spkNum=78
-
079・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 日程第十、刑法
中改正法律案、日程第十一、刑事訴訟法中
改正法律案、日程第十二、刑事判決宣告猶
豫ニ關スル法律案、衆議院提出、第一讀會
是等ノ三案ハ、之ヲ一括シテ議題トナスコ
トニ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X02819340317&spkNum=79
-
080・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 御異議ナイト認
メマス
刑法中改正法律案
右本院提出案及送付候也
昭和九年三月十六日
衆議院議長秋田〓
貴族院議長公爵近衞文麿殿
刑法中左ノ通改正ス
第二十五條ノ二左ニ記載シタル者罰金
ノ言渡ヲ受ケタルトキハ情狀ニ因リ裁
判確定ノ日ヨリ一年以上三年以下ノ期
間內其執行ヲ猶豫スルコトヲ得
-前ニ罰金以上ノ刑ニ處セラレタル
コトナキ者
二前ニ罰金以上ノ刑ニ處セラレタル
コトアルモ其執行ヲ終リ又ハ其執行
ノ免除ヲ得タル日ヨリ五年以內ニ罰
金以上ノ刑ニ處セラレタルコトナキ者
第二十六條中「刑ノ執行猶豫」ヲ「懲役又
ハ禁錮ノ執行猶豫」ニ、「前條第二號」ヲ
「第二十五條第二號」ニ改ム
第二十六條ノ二左ニ記載シタル場合ニ
於テハ罰金ノ執行猶豫ノ言渡ヲ取消ス
可シ
一猶豫ノ期間內更ニ罪ヲ犯シ罰金以
上ノ刑ニ處セラレタルトキ
二猶豫ノ言渡前ニ犯シタル他ノ罪ニ
付キ罰金以上ノ刑ニ處セラレタルトキ
三第二十五條ノ二第二號ニ記載シタ
ル者ヲ除ク外猶豫ノ言渡前他ノ罪ニ
付キ罰金以上ノ刑ニ處セラレタルコ
ト發覺シタルトキ
刑事訴訟法中改正法律案
右本院提出案及送付候也
昭和九年三月十六日
衆議院議長秋田〓
貴族院議長公爵近衞文麿殿
刑事訴訟法中左ノ通改正ス
第五十六條ノ二被告人、被疑者、證人、
鑑定人、通事又ハ翻譯人ヲ訊問スル場
合ニ於テ是等關係者ノ請求アリタルト
キハ裁判所書記ノ作成スル調書ハ速記
ノ方法ニ依ルヘシ
前項ノ場合ニ於テハ裁判所書記ヲシテ
速記ヲ翻譯セシメタル後之ヲ供述者ニ
讀聞カサシメ又ハ供述者ヲシテ之ヲ閱
覽セシムヘシ
速記ノ爲ニ要スル費用ハ請求者ノ負擔
トシ其ノ金額ヲ豫納セシムヘシ
前項ノ費用ニ關スル規定ハ命令ヲ以テ
之ヲ定ム
第三百三條第三項ニ左ノ但書ヲ加フ
但シ豫審判事ハ豫審ノ進行ヲ妨ケサル
限リ許可ヲ拒ムコトヲ得ス
第四百四十三條ニ左ノ但書ヲ加フ
但シ第四百十二條ニ規定スル事由アリ
ト認ムル場合ニ於テ更ニ事實ノ取調ヲ
爲ス必要ナキトキハ原判決ヲ破毀シテ
直ニ判決ヲ爲スコトヲ得
第四百四十三條ノ二第四百四十條及前
條ノ場合ニ於テ他ノ裁判所ヲシテ事實
ノ審理ヲ爲サシムルヲ相當トスルトキ
ハ判決ヲ以テ原判決ヲ破毀シ原裁判所
ニ接近シタル同等ノ裁判所ヲ指定シテ
事件ヲ其ノ裁判所ニ移送スルコトヲ得
其ノ單ニ私訴ニ係ルトキハ其ノ裁判所
ノ民事部ヲ指定スヘシ
刑事判決宣告猶豫ニ關スル法律案
右本院提出案及送付候也
昭和九年三月十六日
衆議院議長秋田〓
貴族院議長公爵近衛文麿殿
第一條裁判所ニ於テ審理ノ結果被〓人
ノ性格、年齡及境遇竝犯罪ノ情狀及犯
罪後ノ情況等ニ因リ判決ノ宣告ヲ爲サ
サルヲ相當ト認ムルトキハ決定ヲ以テ
一年以上五年以下ノ期間內其ノ宣告ヲ
猶豫スル旨ノ言渡ヲ爲スコトヲ得
檢事及被告人ハ前項ノ決定ニ對シ卽時
抗告ヲ爲スコトヲ得
第二條判決宣告猶豫ノ言渡アリタルト
キハ勾留セラレタル被〓人ニ對シテハ
放免ノ言渡アリタルモノトス
第三條左ノ場合ニ於テハ裁判所ハ檢事
ノ請求ニ因リ判決宣𠮷猶豫ノ言渡ヲ取
消スコトヲ得
一被〓人カ宣〓猶豫ノ期間內ニ犯シ
タル罰金以上ノ刑ニ處セラルヘキ罪
ニ依リ公判ニ付セラレタルトキ
二其ノ他被〓人ニ著シク宣告猶豫ノ
決定ヲ爲シタル趣旨ニ反スル行狀ア
リタルトキ
第四條判決宣告猶豫ノ期間內ハ公訴ノ
時效ハ進行セス
第五條判決宣告猶豫ノ言渡取消アリタ
ルトキハ裁判所ハ更ニ刑事訴訟法ノ規
定ニ從ヒ判決ノ言渡ヲ爲スヘシ
第六條判決宣告猶豫ノ言渡ヲ取消サル
ルコトナクシテ猶豫ノ期間ヲ經過シタ
ルトキハ被〓人ニ對シ免訴ノ言渡アリ
タルモノト看做ス
第七條判決宣告猶豫ノ言渡アリタルト
キハ私訴ニ付テハ其ノ裁判所ノ民事部
ニ移ス言渡アリタルモノトス
第八條本法ニ依ル卽時抗告ニ付テハ刑
事訴訟法ノ規定ヲ準用ス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X02819340317&spkNum=80
-
081・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 三案ハ之ヲ民事
訴訟法中改正法律案外一件ノ特別委員ニ付
託イタシマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X02819340317&spkNum=81
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082・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 日程第十三、地
方財政補整交付金法案、衆議院提出、第一
讀會
地方財政補整交付金法案
右本院提出案及送付候也
昭和九年三月十六日
衆議院議長秋田清
貴族院議長公爵近衞文麿殿
地方財政補整交付金法
第一條政府ハ本法ニ依リ北海道、府縣
及市町村ニ對シ地方財政補整交付金ヲ
交付ス
第二條前條ノ規定ニ依リ國庫ノ支出ス
ヘキ金額ハ每年度五千八百萬圓ヲ下ラ
サル額トス
第三條地方財政補整交付金ハ北海道及
府縣ト市町村トニ對シ左ノ通配分ス
北海道及府縣ニ對シテハ國庫支出
額ノ十分ノ三
二市町村ニ對シテハ國庫支出額ノ十
分ノ七
第四條前條第一號ノ國庫支出金ハ勅令
ノ定ムル所ニ依リ其ノ三分ノ一ハ人口
ニ比例シテ之ヲ交付シ、三分ノ二ハ第
五條ノ交付金額ヲ除キ其ノ殘額ヲ二分
シ一ハ資力ヲ標準トシ他ハ課稅力ヲ標
準トシテ之ヲ交付ス
第五條內務大臣ハ勅令ノ定ムル所ニ依
リ特ニ必要アリト認ムル北海道、府縣
ニ對シ第三條第一號ノ國庫支出金ノ十
五分ノ一ヲ超エサル範圍內ニ於テ交付
金額ヲ增加スルコトヲ得
第六條第三條第二號ノ國庫支出金ハ勅
令ノ定ムル所ニ依リ其ノ三分ノ一ハ人
ロニ比例シテ之ヲ市町村ニ交付シ、三
分ノ二ハ第七條ノ交付金額ヲ除キ其ノ
殘額ヲ二分シ一ハ市町村ノ資力ヲ標準
トシ他ハ市町村ノ課稅力ヲ標準トシテ
之ヲ北海道及各府縣ニ割當テ北海道及
各府縣割當額ハ各別ニ二分シ勅令ノ定
ムル所ニ依リ一ハ市町村ノ資力ヲ標準
トシ他ハ市町村ノ課稅力ヲ標準トシチ
之ヲ市町村ニ交付ス
第七條內務大臣ハ勅令ノ定ムル所ニ依
リ特ニ必要アリト認ムル市町村ニ對シ
第三條第二號ノ國庫支出金ノ十五分ノ
一ヲ超エサル範圍內ニ於テ交付金額ヲ
增加スルコトヲ得
第八條內務大臣ハ勅令ノ定ムル所ニ依
リ特別ノ事由アリト認ムル北海道府
縣、市町村ニ對シテハ本法ニ規定スル標
準ニ依ラス交付金額ヲ減額スルコトヲ得
第九條本法ニ依ル交付金ノ使途ニ關シ
必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
地方財政監督上必要アリト認ムルトキ
ハ內務大臣ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ北
海道府縣、市町村ニ對シ本法ノ交付金
ノ全部又ハ一部ヲ交付セサルコトヲ得
第十條本法ノ適用ニ付テハ町村組合ニ
シテ町村ノ事務ノ全部ヲ共同處理スル
モノハ之ヲ一町村、町村制ヲ施行セサ
ル地域ニ於ケル町村ニ準スヘキ公共團
體ハ之ヲ町村ト看做ス
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X02819340317&spkNum=82
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083・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 特別委員ノ氏名
ヲ朗讀イタサセマス
〔小林書記官朗讀〕
地方財政補整交付金法案特別委員
侯爵西〓從德君子爵野村益三君
子爵非上勝純君有吉忠一君
男爵稻田昌植君次田大三郞君
藤山雷太君西本健次郞君
岩崎〓行君発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X02819340317&spkNum=83
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084・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 日程第十四、五
大都市ニ特別市制實施ニ關スル法律案、衆
議院提出、第一讀會
五大都市ニ特別市制實施ニ關スル法律
案
右本院提出案及送付候也
昭和九年三月十六日
衆議院議長秋田〓
貴族院議長公爵近衛文麿殿
第一條本法ニ於テ市ト稱スルハ京都
市、大阪市、横濱市、神戸市及名古屋
市ヲ謂フ
第二條市ハ從來ノ區域ニ依リ之ヲ府縣
ノ區域外トス
第三條市ハ法人トス官ノ監督ヲ承ケ法
令ノ範圍內ニ於テ其ノ公共事務竝從來
法令又ハ慣例ニ依リ府縣又ハ市ニ屬ス
ル事務及將來法律令ニ依リ市ニ屬スル
事務ヲ處理ス
第四條市ハ內務大臣之ヲ監督ス
第五條市制其ノ他ノ法令又ハ慣例ニ依
リ從來地方長官及府縣參事會ノ權限ニ
屬スル事項ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ主
務大臣又ハ市長之ヲ行フ
第六條市制其ノ他ノ法令ニ依リ從來府
縣參事會ニ訴願シ得ヘキ事項ハ直ニ之
ヲ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
第七條市ハ市制其ノ他ノ法令ニ依ルモ
ノノ外從來ノ府縣稅及賦金ノ例ニ依リ
市稅及賦金ヲ賦課徵收スルコトヲ得
第八條市ハ府縣ト其ノ事務ノ一部ヲ共
同處理スル爲規約ヲ定メ內務大臣ノ許
可ヲ得テ府縣市組合ヲ設クルコトヲ得
府縣市組合ハ法人トス
府縣市組合ノ事務ハ內務大臣ノ指定シ
タル府縣知事又ハ市長之ヲ管理ス
府縣市組合ニ關シテハ府縣制第百二十
六條ノ三第一項及第百二十六條ノ四乃
至第百二十六條ノ七ノ規定ヲ準用ス
第九條市制第百七十條第一項ノ懲戒審
査會ノ組織ニ關シテハ別ニ勅令ヲ以テ
之ヲ定ム
第十條本法ニ規定スルモノノ外總テ市
制ノ定ムル所ニ依ル
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
本法施行ノ爲府縣ニ屬スル財產、營造物
及事業ノ處分竝權利義務ノ歸屬ニ關シ必
要ナル事項ニ付テハ關係アル府縣會及市
會ノ意見ヲ徵シ主務大臣之ヲ定ム
〔伯爵柳澤保惠君の言ノ許可ヲ求ム〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X02819340317&spkNum=84
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085・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 柳澤君ハ何デス
カ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X02819340317&spkNum=85
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086・柳澤保惠
○伯爵柳澤保惠君 質問イタシマス、政府
ニ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X02819340317&spkNum=86
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087・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 阪本君カラ質問
ノ通〓ガゴザイマス、阪本君発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X02819340317&spkNum=87
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088・阪本さん之助
○阪本彰之助君 餘リ長クゴザイマセスカ
ラ、此處デ御許シヲ願ヒタイト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X02819340317&spkNum=88
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089・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 成ルベクナラ御
登壇ヲ願ヒタイ
〔阪本釤之助君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X02819340317&spkNum=89
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090・阪本さん之助
○阪本釤之助君 五大都市ニ特別市制實施
ニ關スル法律案ト云フモノガ衆議院デ可決
ヲ致シマシテ、本院ヘ〓付サレタノデアリ
マス、由來此東京ニ於ケル都制ト申シマス
ルカ、特別市制ト申シマスルカ、之ヲ實施
サレルコトニ付テハ市民其他ニ非常ナ希望
ガアリマシテ、多年ニ亙ッテ今ニ解決イタシ
テ居リマセヌ、而シテ又此案ニゴザイマス
ル京都以下ノ五大都市ハ、東京ノ問題ガ解
決ヲ致シマスレバ、引續イテ五大都市ニモ
及バレタイト云フコトハ、此五大都市ノ市
民ガ希望イタシテ居ル、或ハ特別市制ト稱
シテ六大都市ニ同時ニ實行サレルト云フ案
モアルノデアリマス······市民ノ希望トシテ
ハアルノデアリマス、所ガ政府ハ、單リ此
政府ヲ申スノデハゴザイマセヌ、歷代ノ內
閣ガ何故カ此東京ニ特別ノ市制ヲ布クト云
フコトニ付テハ、躊躇逡巡、一向決スル所
ガナイ、甲ト言ヘバ乙、乙ト言ヘバ甲ト言
フ、種々ナ議論ヲ御考ヘニナッテ居ルカノ
ヤウニ見エル、又市民ノ方ノ覺悟ト云フモ
ノモ、政府ヲ動カスダケノ力ノアルモノデ
ナイト云フ場合モアリマシタ、近來ハ餘程
市民モ覺醒ヲ致シマシタ、何時迄モ斯樣ナ
コトヲシテ居ッテハ堪マラヌ、現ニ私共局外
ノ者ガ考ヘマシテモ、府知事ト市長ノ間ニ
同ジ仕事ヲ重複シテヤッテ居ルノデアリマ
ス、現ニ此節起リマシタ小學校長ノ醜キ問
題ノ如キモ、二重ニ監督シテ居ルカラ宜シ
イト言ヘバ言フヤウナモノデアリマスガ、
畢竟府ニモ視學ガ居ル市ニモ視學ガ居ル、
サウシテ監督スル、府ノ方ニハ安イ月給ノ
視學ガ居ッテ、被監督者ノ市ノ方ニハ高イ月
給ヲ取ッテ居ル視學ガ居ル、社會事業ト言
ヒ、其他何ト言ヒ、皆同ジ仕事ヲ二ツデヤッ
テ居ル、此卽チ我ミ市民ガ賦課ヲ受ケル費
用ダケデモ大シタモノデ、一ツデ濟ムモノ
ヲ二重ニヤッテ居ッテ、サウシテ市役所ト云
フモノハ澤山ナ月給ヲ拂ッテ居ル、府ノ方ハ
政府デ定メラレタ所ノ俸給其他デヤッテ居
ル、是等ハ是非統一イタシテ、市ト云フモ
ノガ今日ノ如キモノニナッテ居ル以上ハ宜
シク市役所一ツニシテ二重監督ヲ廢スト云
フコトハ當然ノ歸結デアリマシテ、彼此レ
問題デハナイト思フ、何故カ政府ハ之ヲ證
起送巡、一向決セラレナイ、今日是ガ切迫
シテ參リマシタ所デハ、唯都長官ヲ官選ニ
スルカ公選ニスルカト云フコトガ、ソレガ
唯一ツノ問題デアリマス、宜シク政府ハ相
當ノ英斷ヲ以テ、ドウシテモ都長ハ官選ニ
シナケレバナラヌト御考ニナッタナラバ、官
選デ案ヲ御出シニナッタラ宜シイ、市會ガ何
ト言ハウトソンナコトハ構ヤシナイ、政府
ノ見識デオヤリニナッタラ宜シイ、ドウモ公
選ガ宜イカ、官選ガ宜イカト云フ問題ガ極ッ
テ居ナイカヲ、今年ハ發案ヲセヌ、先達テ
有吉君ガ此壇上ニ於テ問ヒヲ發セラレマシ
タ時ニモ、內務大臣ノ御答ハ誠ニ賴リナキ
御答デアリマシテ、私共甚ダ遺憾ニ思ッテ居
ルノデアリマス、今日此處デ御質問ヲ爲サ
ウト思ヒマスルノハ、衆議院ノ案デハ
アリマスルケレドモ、モウ衆議院アタ
リデハ東京ノコトハ東京ノコト、ソン
ナコトヲ言ッテハ待チ切レナイカラ、
今度ハ東京以外ノ五大都市ニ···
東京ハ勿論一ツノ市役所デ、府廳ハ止
ス而シテ殆ド大阪ノ如キハモウ東京ニ匹
敵シテ居ル、或事柄ハ東京ヨリモ優ッテ居
ル、東京ニ特別ノ市制ヲ布カレルナラバ、
大阪ハ勿論ノコト、從テ三府ノ一ツデアル
京都、ソレカラ神戶、橫濱、名古屋ト云フ
モノハ殆ド三府ニ次グ所ノ今日デハ人口ヲ
持チ、市ノ形ヲ成シテ居ルノデアルカラ、
能ク卽チ世間デ之ヲ六大都市ト稱スルノデ
アリマスガ、六大都市デモ······卽チ五大
都市ニハ宜シク東京同樣ノ制度ヲ布イテ貰
ヒタイト云フコトガ此案デアルノデアリマ
ス、然ルニ政府ハ輦轂ノ下デアル東京ヲス
ラ、マダ躊躇シテ居ラレルヤウナコトデア
リマスカラ、此五大都市特別市制ト云フモ
ノハ、或ハビックリナサッタカモ知ラヌト思フ
位デアル、是ハ政府ハドウ之ヲ御扱ヒニナ
ルカ、御覺悟ヲ一ツ伺ッテ見テ、六大都市ノ
者ノ覺悟ヲ極メサシタラ宜カラウト思ヒマ
ス、故ニ政府ハ之ヲドウ御扱ヒニナルカト
云フコトヲ先以テ伺ッテ見タイノデアル
〔國務大臣男爵山本達雄君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X02819340317&spkNum=90
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091・山本達雄
○國務大臣(男爵山本達雄君) 御答へ致シ
マン、五大都市ニ付キマシテ、第一ニ此都
制ニ付テ······五大都市ヲドウカト云フ御
質問ノヤウニ伺ヒマシタ、丁度前ニ有吉君
ヨリ此都制案ニ付テ御質問ガアリマシタカ
ラシテ、其時ニ申上ゲマシタ如ク、昨年ハ
都制案ヲ出シマシテ御贊成ヲ得タイト思ッ
テ居リマシタガ、御承知ノ如ク衆議院ニ於
テ段々反對ガアリマシテ、色ミ議論ヲ致シ
マシタガ、遂ニ未了ニ終ッテシマヒマシタ、
其時ノ一體ノ議論及模樣ヲ察シテ見マスノ
ニ、第一ニ今御話ノ如ク此都長ノ點ニ付
テ、政府ハ官選ト云ヒ、一方ハ自治制デア
ルカラシテ無論公選デアルト云フコトガ第
一ニ議論トナリマシテ、遂ニ政府ノ意見ハ
行ヘサウニ思ヘマセズシテ、遂ニ未了ニ終ッ
タノデアリマス、今年モ考ヘテ見マスル
ニ、之ヲ出シテ果シテ通過ノ見込アリヤ否
ヤト云フコトヲ考ヘマスルノニ、ドウモ之
ヲ出シテモ通過シヤウト云フコトノ自信ヲ
持テマセヌデスカラ、ソレデ又徒ニ出シテ
置イテ、政府ガ贊成ノ出來ナイヤウナ案ニ
セラレテ見タ所ガ、矢張リ是ハ不成功ニ終
ルノデアリマスカラ、ドウモマダ時機ガ來
テナイト、斯ウ云フ積リデ今年ハ出スコト
ヲ止シマシタ次第デアリマス、御承知ノ如
ク同ジ市會ノ中デモ公選ヲ主張スル者モア
リ、或ハ官選ヲ主張スル者モアリマシテ、
ドウモ空氣ガ、實行ノ出來ル自信ヲ持タナ
カッタヤウナコトデアリマス、ソレカラ都制
案ニ付キマシテモ衆議院デ此案ガ出マシタ
時ニ色〓質問ヲサレタノデアリマシタガ、
政府トシテハ其時ニモ申シマシタ如ク、ド
ウモ東京ガソンナ有樣デアルシ、又地方ニ
依ッテハ地方ノ事情ガ色ミ異ッテ居リマシテ、
唯一概ニ都制、五大都市、五大都市ト申
シマスガ、其五大都市ノ間ニ於テモ大阪、
京都或ハ名古屋、橫濱ト數ヘテ見マシテ
モ、ソレ〓〓ノ所ニ色〓長所短所ガアリマシ
テ、一〓ニ是デ斯ウト云フ譯ニモ參リマセ
ズ、遂ニマダ政府ニ於キマシテモ案ヲ定メ
テ提出スルト云フ所マデ參ッテ居ラナイノ
デゴザイマスカラ、ソレデ遂ニ是モ先ヅ今
囘ハ〓究調査中トシテ出スコトヲ見合セタ
ル次第デゴザイマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X02819340317&spkNum=91
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092・阪本さん之助
○阪本釤之助君 只今ハ政府ガ發案ヲシナ
カッタ理由ヲ御述べニナッタニ止マルヤウデ
アリマス、衆議院ガ此五大都市ニ特別市制
案ヲ出シマシテ、既ニ貴族院ノ壇上ニ上ボッ
テ居ル、之ヲ貴族院ガ衆議院ニ用意ヲ致サ
ムトスル時ニ、ドウ云フ御感ジヲ御持チニ
ナルカ、或ハ貴族院ニ向ッテコンナモノヲ決
議シテ吳レテハ困ル、斯ウ云フ理由ダカラ
困ルトカ、或ハ別ニ反對スル理由ハナイカ
ラ貴族院ハ決議シテモ宜イトカ云フヤウ
ナ、政府ノ意見ヲ伺ッテ見タイ、東京都制ノ
コトヲ只今仰セニナリマシタガ、東京都制
ト云フコトハ是モ唯都長ノ官選カ、公選カ
ト云フコトガ蟠ッテ居ルダケノコトデ、ソレ
サヘ政府ガ宜シク御決斷ヲナサレレバ直グ
ニ解決スル問題デアル、此五大都市ニ付テ
ハモウ旣ニ衆議院ハ具體的ノ案ヲ出シテ居
ル、政府ノ御異存サヘナケレバ······貴族院
ノ併シ意向ハドウナルカ分リマセヌガ、貴
族院ガ若シ同意シマスレバ、是ハモウ直グ
法律ニナルノデアリマス、東京ノコトハ唯
序デニ伺ッタノデアリマス、此案ヲドウ御扱
ヒニナルカ、斯ウ云フコトヲ極ク明確ニ御
答ヲ願ヒタイノデアリマス
〔國務大臣男爵山本達雄君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X02819340317&spkNum=92
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093・山本達雄
○國務大巨(男爵山本達雄君) 御答へ致シ
やっ、今都制案ニ付テ申述べタ如ク、政府
ニ於テハマダ時機ノ來ラヌモノトシテ止シ
テ居ルノデアリマス、ソレカラ五大都市ノ
案ニ付キマシテハ、ドウモ今日政府ニ於テハ
是ト云フ具體案ヲ持チマセヌカラ、政府カラ
出シマセヌ、ソレカラ又今ノ此案ニ付キマシ
テ、若シ此貴族院ニ於テ御同意ニナルト、衆
議院ノ案ニ御同意ニナルト假定イタシマシ
テモ、政府ニ於テハ果シテ是ガ適當デアルト
云フコトノ、マグ自信ヲ持ッテ居リマセヌ、
ソレ故ニ之ヲ御可決ニ相成リマシテモ、政
府ハ今日ノ所デハ同意ヲシ兼ネル次第デゴ
ザイマス、何故ナラバマダ其都制案ニ付
テ十分ナモノトシテ考ヘテ居リマセヌデス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X02819340317&spkNum=93
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094・阪本さん之助
○阪本釤之助君 甚ダウルサク申スヤウデ
スガ、モウ一言御許シヲ願ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X02819340317&spkNum=94
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095・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 成ルベク御高聲
ニ願ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X02819340317&spkNum=95
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096・阪本さん之助
○阪本彰之助君 餘程大キナ聲デシテ居ル
積リデアリマスガ······是ハ誠ニ簡單ナ、明
瞭ナ案デアリマシテ、內務行政ニ御當リニ
ナッテ居ル御方ハ之ヲ見マスト、是ハマダ五
大都市ニハ早過ギルダラウトカ、場合ニ依ツ
テハ之ヲ出シテモ宜イダラウトカ、相當速
斷出來ルコトデアラウト思ヒマス、政府ガ
發案スルノヂヤナイ、政府ガ發案シテ出スト
云フコトニナレバ、御熟慮ニナラナケレバ
ナラヌガ、此案ガ衆議院カラ出テ來テ、チヤ
ント立派ナ立法ガ出來テ、之ニ同意ヲスル
カセヌカト云フダケデス、此案ハドウ云フ
所ニ不備ガアル故ニ、ドウ云フ風ニスルト
カ、斯ウ云フ譯デアルカラ同意ガ出來ナイ
ト云フヤウナコトヲ承リタイノデアリマス
〔國務大臣男爵山本達雄君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X02819340317&spkNum=96
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097・山本達雄
○國務大臣(男爵山本達雄君) 唯都制案ト
シマシテ出テ居リマシテモ、一向詳シイ條
項ハナイノデアリマス、ソレヂヤカラ之ヲ
政府ガドウスルカト申シマシテモ、詳シイ
コトガ書イテアリマセズ、唯此條項バカリ
デ以テ同意ヲスル譯ニハ參リマセヌカラシ
テ、先刻ノ通リ申述ベタノデアリマス、ソ
レカラ又私ハ思フノニ、之ヲマサカ此貴族
院ガ御贊成ニナルヤウナコトモアルマイ
ト、政府トシテハ想像シテ居リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X02819340317&spkNum=97
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098・阪本さん之助
○阪本彰之助君 詳シイコトガ書イテナイ
カラ見當ガ付カヌト云フヤウニ仰シヤル
ガ、此位詳シイ法律ハナイ、是ハ立派ナ五大
都市ノ市制デアル、之ヲ一讀スレバ直グ分
リマス、大臣方ハ御多端デアルカラ御分リ
ニナッテ居ラヌカ知レヌガ、屬僚ノ方ハ是ガ
衆議院ヲ通レバ、相當重大ナ問題デアルカ
ラ御〓究ニナッテ居ルト思ヒマス、是ノ內容
ガ分ラヌト云フコトハナイ、一箇條二箇條
ノモノデハナイ、チヤントシテ市制······市
制ト言ッテモ東京ノコトト御混同ニナラヌ
ヤウニ願ヒマス、五大都市ノ市制ハチヤン
ト立派ナ立法ガ出來テ居ルノデアルカラ、
之ニ對シテハドウデアルカト云フノデ
ス······併シ只今ノ御意見デ大體分リマシタ
カラ御答辯ヲ煩ハシマセヌカラ、何レ特別
委員會ガ開カレマセウカラ、其時分マデニ
宜シク屬僚ニ御命ジニナッテ、御會得ニナリ
マシテ、サウシテ確リシタ御答辯ヲ委員會
ニ於テ願ヒタイト云フコトヲ希望申上ゲテ
置キマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X02819340317&spkNum=98
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099・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 柳澤伯爵ハ御質
問ニナリマセヌカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X02819340317&spkNum=99
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100・柳澤保惠
○伯爵柳澤保惠君 私ハ阪本君ノ御質問ノ
趣旨ト全ク同一デアリマスカラ、質問ヲ取
消シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X02819340317&spkNum=100
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101・近衞文麿
○議長(公爵近衛文麿君) 本案ハ之ヲ河川
法中改正法律案ノ特別委員ニ付託イタシマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X02819340317&spkNum=101
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102・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 本日中川小十郞
君ヨリ病氣ニ付キ、健康保險法中改正法律
案外四件ノ特別委員ヲ、又松村義一君ヨリ
都合ニ依リ、地租法中改正法律案外四件ノ
特別委員ヲ、何レモ辭任シタキ旨申出ガア
リマシタ、之ヲ許可スルコトニ御異議ハゴ
ザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X02819340317&spkNum=102
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103・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 御異議ナイト認
メマス、就キマシテハ中川君ノ補關トシテ
佐藤三吉君ヲ、松村君ノ補闕トシテ男爵長
基連君ヲ指名イタシマス、本日ノ議事ハ是
ニテ終リマシタ、次會ノ議事日程ハ決定次
第、彙報ヲ以テ御通知ニ及ビマス、本日ハ
是ニテ散會イタシマス
午後二時五十六分散會発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X02819340317&spkNum=103
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