1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和九年三月二十三日(金曜日)午前十時十八分開議
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議事日程 第三十一號
昭和九年三月二十三日
午前十時開議
第一 昭和九年度一般會計歳出の財源に充つる爲公債第二次追加發行に關する法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第二 鑛業法中改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第三 朝鮮私設鐵道補助法中改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第四 臺灣私設鐵道補助法中改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第五 臨時米穀移入調節法案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第六 政府所有米穀特別處理法案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第七 米穀需給調節特別會計法中改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第八 輸出水産物取締法案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第九 農會法中改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第十 借地借家調停法中改正法律案(衆議院提出) 第一讀會
第十一 小作調停法中改正法律案(衆議院提出) 第一讀會
第十二 刑法中改正法律案(衆議院提出) 第一讀會
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X03119340323&spkNum=0
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001・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 報〓ヲ致サセマ
ス
〔瀨古書記官朗讀〕
昨二十二日可決シタル左ノ政府提出案ハ卽
日裁可ヲ奏請シ又可決ノ旨ヲ衆議院ニ通知
セリ
鐵道敷設法中改正法律案
商標法中改正法律案
不正競爭防止法案
秋田鐵道株式會社所屬鐵道外三鐵道買收
ノ爲公債發行ニ關スル法律案
播電鐵道株式會社所屬鐵道ノ經營廢止ニ
對スル補償ノ爲公債發行ニ關スル法律案
同日修正議決シタル左ノ政府提出案ハ卽日
之ヲ衆議院ニ送付セリ
著作權法中改正法律案
同日衆議院ヨリ左ノ政府提出案ヲ受領セリ
昭和八年度歲入歲出總豫算追加案(第二
號
昭和八年度各特別會計歲入歲出豫算追加
案(特第二號)
昭和九年度歲入歲出總豫算追加案(第二
號
昭和九年度各特別會計歲入歲出豫算追加
案(特第二號)
豫算外國庫ノ負擔トナルベキ契約ヲ爲ス
ヲ要スル件(追第二號)
昭和九年度各特別會計歲入歲出豫算追加
案(特第三號)
昭和九年度一般會計歲出ノ財源ニ充ツル
爲公債第二次追加發行ニ關スル法律案
鑛業法中改正法律案
朝鮮私設鐵道補助法中改正法律案
臺灣私設鐵道補助法中改正法律案
臨時米穀移入調節法案
政府所有米穀特別處理法案
米穀需給調節特別會計法中改正法律案
同日衆議院ヨリ左ノ議案ヲ提出セリ
借地借家調停法中改正法律案
小作調停法中改正法律案
刑法中改正法律案
同日委員長ヨリ左ノ報告書ヲ提出セリ
昭和七年度歲入歲出總決算、昭年七年度
各特別會計歲入歲出決算審査報告書
昭和七年度國有財產增減總計算書審査報
告書発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X03119340323&spkNum=1
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002・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 是ヨリ會議ヲ開
キマス、日程第一、昭和九年度一般會計歲
出ノ財源ニ充ツル爲公債第二次追加發行ニ
關スル法律案、政府提出、衆議院送付、第
一讀會、大藏大臣
昭和九年度一般會計歲出ノ財源ニ充ツ
ル爲公債第二次追加發行ニ關スル法律
案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議
院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和九年三月二十二日
衆議院議長秋田〓
貴族院議長公爵近衞文麿殿
昭和九年度一般會計歲出ノ財源ニ充ツ
ル爲公債第二次追加發行ニ關スル法律
案
政府ハ昭和九年度一般會計歲出ノ財源ニ
充ツル爲他ノ法律ニ依リ起債シ得ル金額
ノ外九百四十萬圓ヲ限リ公債ヲ發行シ又
ハ借入金ヲ爲スコトヲ得
前項ノ規定ニ依ル公債ノ發行價格差減額
ヲ補塡スル爲必要アル場合ニ於テハ前項
ノ制限以外ニ公債ヲ發行シ又ハ借入金ヲ
爲スコトヲ得
附則
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
〔國務大臣高橋是〓君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X03119340323&spkNum=2
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003・高橋是清
○國務大臣(高橋是清君) 只今議題トナリ
マシタ昭和九年度一般會計歲出ノ財源ニ充
ツル爲公債第二次追加發行ニ關スル法律
案、提出ノ理由ヲ說明イタシマス、昭和九
年度一般會計歲入不足ノ補塡ニ付キマシ
テハ、之ニ關スル法律案ヲ二囘ニ亙リ今期
議會ニ提出シ、總豫算ニ伴フモノニ付キマ
シテハ旣ニ御協贊ヲ經テ、他ハ目下御審議
中デアリマスガ、別途提出イタシマシタ同
年度歲入歲出總豫算追加第二號ニ計上セル
經費ノ財源ニ付キマシテモ亦今日ノ場合、
其大部分ヲ公債ニ依ルノ外ゴザイマセヌノ
デ、本法律案ヲ提出イタシタ次第デアリマ
ス、尙ホ本法律案ハ之ヲ議會ニ提出スル際
ニ於キマシテハ、先ニ二囘ニ互リ提出イタ
シマシタ歲入補塡公債ノ、總豫算ニ伴フモ
ノハ旣ニ御協賛ヲ經テ居リマシタケレド
モ、未ダ公布ノ運ビニ至リマセヌデアリマ
シタノト、他ハ衆議院ニ於テ審議中デアリ
マシタノニ鑑ミ、別ノ法律案ト致シタ次第
デアリマス、何卒御審議ノ上御協贊ヲ與ヘ
ラレムコトヲ希望イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X03119340323&spkNum=3
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004・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 本案ハ之ヲ地租
法中改正法律案外七件ノ特別委員ニ付託イ
タシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X03119340323&spkNum=4
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005・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 日程第二、鑛業
法中改正法律案、政府提出、衆議院送付、
第一讀會、松本商工大臣
鑛業法中改正法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議
院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和九年三月二十二日
衆議院議長秋田〓
貴族院議長公爵近衞文麿殿
鑛業法中改正法律案
鑛業法中左ノ通改正ス
「農商務大臣」ヲ「主務大臣」ニ、「鑛山監督
署長」ヲ「鑛山監督局長」ニ改ム
第二條第一項中「砒鑛、」ノ下ニ「ニッケル
鑛コバルト鑛、」ヲ加へ「及硫黃」ヲ「、硫
黄、石膏及重晶石」ニ改ム
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
本法施行ノ際現ニニッケル鑛、コバルト
鑛石膏又ハ重晶石ヲ掘採スル者又ハ其
ノ承繼人ハ本法施行ノ日ヨリ六月間從前
ノ例ニ依リ其ノ掘採ヲ繼續スルコトヲ得
其ノ期間內ニ當該掘採者又ハ其ノ承繼人
ガニッケル鑛、コバルト鑛、石膏又ハ重晶
石ヲ掘採スル爲出願ヲ爲シタル場合ニ於
テ許可ノ登錄ノ日又ハ不許可ノ指令ノ日
迄亦同ジ
前項ニ揭グル者本法施行ノ日ヨリ六月以
內ニニッケル鑛、コバルト鑛、石膏又ハ重
晶石ヲ掘採スル爲出願ヲ爲シタルトキハ
其ノ掘採區域ニ限リ第九條第三項、第二
十八條、第二十九條、第三十一條、第三
十三條及第三十三條ノ二ノ規定竝ニ第九
條第二項ノ鑛區面積ニ關スル規定ニ拘ラ
ズ之ヲ許可ス
本法施行ノ際現ニ契約又ハ慣習ニ依リ
ニッケル鑛、コバルト鑛、石膏又ハ重晶石
ヲ掘採スル者ヨリ代償ヲ受クル土地所有
者ハ前項ノ規定ニ依リ許可ヲ受ケタル者
ニ對シ右ノ鑛物ノ掘採ニ付相當ノ補償金
ヲ請求スルコトヲ得
砂鑛法第十三條及第十五條ノ規定ハ前項
ノ補償金ニ之ヲ準用ス
試掘鑛區第三項ノ規定ニ依ル鑛區ト重複
シ且同種ノ鑛物ナル場合ニ於テ其ノ試掘
權者試掘權存續期間中同種ノ鑛物ニ付採
掘ノ出願ヲ爲シ又ハ第三十三條ノ二第一
項ノ規定ニ依ル出願ヲ爲シタルトキハ第
九條第三項、第二十八條及第二十九條ノ
規定ニ拘ラズ之ヲ許可ス
砂鑛法第五條ノ規定ハ第三項ノ規定ニ依
ル鑛區他人ノ鑛區ト重複シ且同種ノ鑛物
ナル場合ニ之ヲ準用ス
〔國務大臣松本烝治君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X03119340323&spkNum=5
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006・松本烝治
○國務大臣(松本烝治君) 鑛業法中改正法
律案、提案ノ理由ヲ御說明申上ゲマス、政
府ハ今囘鑛種名追加ノ目的ヲ以テ、鑛業法
ノ一部改正ヲ致シタイ考ヘデアリマス、卽
チ新ニ「ニッケル」鑛、「コバルト」鑛、石膏
及重晶石ヲ鑛業法上ノ鑛物中ニ追加イタシ
マシテ、掘採事業ニ鑛業法ヲ適用セムトス
ルモノデアリマス、御承知ノ通リ「ニッケル」
ハ特殊鑛、雷熱光源、彈丸等ニ使用セラレ
マシテ、軍事上及產業上極メテ重要ナルモ
ノデアリマシテ、其原鑛タル「ニッケル」鑛
ハ我國ニモ相當埋藏セラルルモノト認メラ
レルノデアリマス、依テ之ヲ鑛業法所定ノ
鑛物ニ追加イタシマシテ、其掘採事業ニ鑛
業法ヲ適用シマシテ、同法ノ保護監督ノ下
ニ「ニッケル」鑛ノ開發促進ヲ圖ルコトハ、刻
下ノ急務デアルト考ヘルノデアリマス、「コ
バルト」鑛モ亦特殊鋼等ニ使用セラルルモ
ノデアリマシテ、略こ「ニッケル」鑛ト同樣
ノ事情ニアルモノデアリマス、次ニ石膏ハ
主トシテ「セメント」混和劑トシテ使用セラ
ルルモノデアリマス、又重晶石ハ白色顏料
製紙用等、重要用途ニ使用セラルルモノデ
アリマシテ、此際是等ノモノヲモ鑛業法上
ノ鑛物中ニ追加シマシテ、其掘探事業ノ發
展ヲ圖ラムトスルモノデアリマス、何卒愼
重御審議ノ上、御協賛ヲ與ヘラレムコトヲ
冀ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X03119340323&spkNum=6
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007・池田政時
○子爵池田政時君 只今議題ニ上ボリマシ
タ鑛業法中改正法律案ハ、關聯スル所ガア
リマスル故ニ、石油業法案ノ特別委員ニ併
託セラレムコトノ動議ヲ提出イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X03119340323&spkNum=7
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008・植村家治
○子爵植村家治君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X03119340323&spkNum=8
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009・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 池田子爵ノ動議
ニ御異議ゴザイマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X03119340323&spkNum=9
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010・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X03119340323&spkNum=10
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011・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 日程第三、朝鮮
私設鐵道補助法中改正法律案、日程第四、
臺灣私設鐵道補助法中改正法律案、政府提
出衆議院送付、第一讀會、是等ノ二案ヲ
一括シテ議題トナスコトニ御異議アリマセ
ヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X03119340323&spkNum=11
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012・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 御異議ナイト認
メマス、永井拓務大臣
朝鮮私設鐵道補助法中改正法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議
院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和九年三月二十二日
衆議院議長秋田〓
貴族院議長公爵近衞文麿殿
朝鮮私設鐵道補助法中改正法律案
朝鮮私設鐵道補助法中左ノ通改正ス
第一條朝鮮總督ハ朝鮮ニ於テ公衆ノ用
ニ供スル爲經營スル私設鐵道ニ對シ該
鐵道營業開始ノ日ヨリ十五年ヲ限リ補
助金ヲ交付スルコトヲ得
朝鮮總督ハ必要アリト認ムルトキハ更
ニ五年ヲ限リ前項ノ期間ヲ伸長スルコ
トヲ得
第二條前條ノ補助金ハ左ノ各號ニ依ル
金額ヲ限度トス
一前條第一項ノ期間中ハ每營業年度
ニ於ケル建設費ニ對シ年六分ノ割合
ニ相當スル金額但シ每營業年度ニ於
ケル益金カ建設費ニ對シ年一分ノ割
合ニ相當スル金額ヲ超ユルトキハ其
ノ超過額ハ之ヲ補助金額ヨリ控除ス
二前條第二項ノ期間中ハ每營業年度
ニ於ケル建設費ニ對シ年五分ノ割合
ニ相當スル金額但シ每營業年度ニ於
ケル益金カ建設費ニ對シ年一分五厘
ノ割合ニ相當スル金額ヲ超ユルトキ
ハ其ノ超過額ハ之ヲ補助金額ヨリ控
除ス
第三條朝鮮總督ハ必要アリト認ムルト
キハ一經營者ノ經營スル鐵道ヲ數區ニ
分チ各區ニ付前二條ノ規定ニ準シ補助
ヲ爲スコトヲ得
第四條中「前三條ノ規定ニ依ル益金、拂込
資本金額、社債及借入金」ヲ「前二條ノ規
定ニ依ル建設費及益金」ニ改ム
第七條中「補助ヲ受クル會社」ヲ「補助ヲ
受クル鐵道ノ管理者」三六人
第八條削除
第十條中「前二條」ヲ「前條」ニ改ム
附則
本法ハ昭和九年四月一日ヨリ之ヲ施行ス
但シ本法施行ノ際現ニ補助ヲ受クル鐵道
ニ對スル補助ニ付テハ會社設立登記ノ日
ヨリ十五年ノ期間滿了ノ日(朝鮮鐵道株
式會社ニ在リテハ昭和九年十二月十四日)
ヲ含ム營業年度ノ末日迄ハ改正規定ニ拘
ラズ仍從前ノ例ニ依ル
本法施行ノ際現ニ補助ヲ受クル鐵道ニ對
スル補助ノ期間ニ付テハ該鐵道ノ建設費
ニ充テタル資金ニ對シ初メテ補助ヲ爲シ
タル日ヲ以テ第一條第一項ノ營業開始ノ
日ト看做ス
臺灣私設鐵道補助法中改正法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議
院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和九年三月二十二日
衆議院議長秋田〓
貴族院議長公爵近衞文麿殿
臺灣私設鐵道補助法中改正法律案
臺灣私設鐵道補助法中左ノ通改正ス
第一條臺灣總督ハ臺灣ニ於テ公衆ノ用
ニ供スル爲經營スル私設鐵道ニ對シ該
鐵道營業開始ノ日ヨリ十五年ヲ限リ補
助金ヲ交付スルコトヲ得
前項ノ補助金ハ每營業年度ニ於ケル建
設費ニ對シ年六分ノ割合ニ相當スル金
額ヲ限度トス但シ每營業年度ニ於ケル
益金カ建設費ニ對シ年一分ノ割合ニ相
當スル金額ヲ超ユルトキハ其ノ超過額
ハ之ヲ補助金額ヨリ控除ス
附則
本法ハ昭和九年四月一日ヨリ之ヲ施行ス
但シ本法施行ノ際現ニ補助ヲ受クル鐵道
ニ對スル補助金計算ニ付テハ昭和九年三
月三十一日ヲ含ム營業年度ノ末日迄ハ仍
從前ノ例ニ依ル
〔國務大臣永井柳太郞君演壇ニ登ル)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X03119340323&spkNum=12
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013・永井柳太郎
○國務大臣(永井柳太郞君) 只今議題トナ
リマシタ朝鮮私設鐵道補助法中改正法律案
及臺灣私設鐵道補助法中改正法律案、提出
ノ理由ヲ說明イタシタイト存ジマス、朝鮮
及臺灣ニ於ケル補助私設鐵道ハ、何レモ其
營業成績ガ未ダ良好デナイノデアリマシ
テ、將來人口ノ增加、生活ノ向上及產業ノ
發展等ヲ考慮ニ入レマシテモ、尙且ツ當分
補助ヲ離レテ自立シ得ルコトハ困難ノ狀態
ニアルノデゴザイマス、從テ之ガ補助期間
ヲ延長スル爲メ、朝鮮ニ於テハ現行ノ十五
年ヲ、必要ニ應ジテ更ニ五年ヲ限リ延長シ
得ルコトニ改メ、臺灣ニ於テハ現行ノ十年
ヲ十五年ニ改ムルノ必要ヲ認メタノデアリ
マン、加之補助方法及補助率ニ付キマシテ
モ、私設鐵道助成ニ關スル從來ノ實蹟ニ照
シ、且又金利ノ著シク低下シマシタ近時經
濟界ノ趨勢等ニ鑑ミマシテ、現行補助方法
及補助率ハ適當デナイト認メラレマスノ
デ、內地地方鐵道ノ補助率等トノ均衡ヲモ
考慮イタシマシテ、之ヲ改正スルコトト致
シタノデアリマス、卽チ朝鮮ニ於テハ現在
ノ拂込資本金、又ハ社債借入金ニ對シ年八
分ノ割合ニ相當スル金額ヲ限度トシ、其利
益不足額、又ハ利息相當額ヲ補給スルコト
トナッテ居リマスノヲ、今囘ハ建設費ニ對シ
テ年六分ノ割合ニ相當スル金額ヲ補助スル
コトニ改メ、同時ニ利益金中建設費ニ對シ、
年一分ノ割合ニ相當スル金額マデノ留保ヲ
認メ、經營者ヲシテ自主的ニ且ツ自發的ニ
益金ノ增加ニ努メシムルコトト致シタノデ
ゴザイマス、尤モ右補助率及益金留保率ハ、
營業ノ開始後十五年ヲ經過シナイ鐵道ニ
對スルモノデアリマシテ、十五年ヲ超エタ
ルモノニ付キマシテハ、更ニ自助ノ範圍ヲ
擴大スルヲ適當ト認メマシテ、其補助率ヲ
年五分、益金保留率ヲ年一分五厘ト致シタ
ノデアリマス、又臺灣ニ於キマシテモ、現在
建設費ニ對シ年八分ノ割合ニ相當スル金額
ヲ限度トシ、其益金不足額ヲ補給スルコト
トナッテ居リマスノヲ、朝鮮ト同樣ノ趣旨ニ
基キマシテ、建設費ニ對シ年六分ノ割合ニ
相當スル金額ヲ補給スルコトトシ、同時ニ
利益金中建設費ニ對シ年一分ノ割合ニ相當
スル金額迄ノ留保ヲ認メルコトニ改メタ次
第デゴザイマス、何卒御審議ノ上、御協贊
ヲ賜ハラムコトヲ希望イタシマス
〔菅原通敬君發言ノ許可ヲ求ム〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X03119340323&spkNum=13
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014・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 菅原君ハ:発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X03119340323&spkNum=14
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015・菅原通敬
○菅原通敬君 質問ヲ致シタイノデアリマ
スガ、簡單デアリマスカラ此席カラ御許ノ
願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X03119340323&spkNum=15
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016・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 宜シウゴザイマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X03119340323&spkNum=16
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017・菅原通敬
○菅原通敬君 朝鮮私設鐵道補助法ノ改正
案ニ付テ伺ッテ見タイト存ズルノデアリマ
ス、只今改正案ニ付キマシテノ說明ヲ拜承
イタシタノデアリマスガ、此附則ノコトニ
付テハ、何等說明ヲ伺フコトガ出來ナカッタ
ノデアリマス、附則ハ私設鐵道卽チ現ニ補
助ヲ受ケテ居ル鐵道ニ對スル補助ニ關スル
コトデアリマシテ、之ニ付テハ所謂既得權
ヲ尊重セラレルト云フ御趣意デアリマセウ
ガ、新法ノ規定ニ拘ラズ舊補助法ノ規定ニ
依ッテ補助ヲ與ヘルト云フヤウナコトニナツ
テ居ルヤウデアリマス、其事ノ內容ニ付テ
ハ別ト致シマシテ、此規定ニ依リマスト云
フト、「本法施行ノ際現ニ補助ヲ受クル鐵道
ニ對スル補助ニ付テハ會社設立登記ノ日ヨ
リ十五年ノ期間滿了ノ日ヲ含ム營業年度ノ
末日迄ハ改正規定ニ拘ラズ仍從前ノ例ニ
依ル」斯ウアリマス、故ニ現ニ補助ヲ受ケル
鐵道ニ對スル補助ト云フモノハ、總テ此規
定ニ依ルモノト見ルベキモノデアルト思フ
ノデアリマス、而シテ斯樣ニ解シマスト云
フト、會社ノ資本金ニ對スル補助モ社債又
ハ借入金ニ對スル利息ノ補助モ、此適用ヲ
受ケベキモノニナラウト思フノデアリマ
ス、サウ致シマスト云フト、從來社債又ハ
借入金ノ利息ニ對スル補給ハ、社債登記ノ
日又ハ借入ノ日カラ起算シテ十五年間補助
ヲ與ヘルコトニナッテ居リマスモノガ、其利
益ヲ失フコトニナルノデアリマス、例ヘバ
玆ニ是ガ設立以來既ニ十年ヲ經過シテ居ル
會社ガアル、是ガ設立後五年ノ後借入金ヲ
シタト云フコトニナリマスト云フト、其モ
ノハ設立後五年目カラ更ニ十五箇年間ノ補
助ヲ受ケ得ラレテ居ッタモノガ、今度ハ會社
ノ設立登記ノ日カラ起算シテ十五年シカ補
助ヲ貰フコトガ出來ヌト云フコトニナリマ
スト云フト、其五年間ノ補助ヲ受クベキ利
益ヲ奪ハレルコトニナルノデアリマス、左
樣ナコトデハ折角既設會社ニ對スル利益ヲ
尊重シ、旣得權ヲ尊重シテヤラウト云フタ
此規定ト云フモノハ、其趣旨ニ副ハヌコト
ニナリハセヌカト思フノデアリマス、其處
ハドウナルノデス
〔國務大臣永井柳太郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X03119340323&spkNum=17
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018・永井柳太郎
○國務大臣(永井柳太郞君) 只今ノ菅原サ
シノ御質問ハ、朝鮮私設鐵道ノ既得權ヲ尊
重シナケレバナラヌト云フ御趣旨カラ出タ
モノト存ズルノデアリマス、政府モ其點ハ
全然同感デアリマシテ、只今御讀上ゲニナ
リマシタ通リ、改正補助法ガ適用セラレマ
スル以前ノ鐵道ニ對シマシテハ、從來通リ
ノ補助率ニ依ッテ其利益ヲ保證スルノデア
リマス、唯區間別ノ利益保證ノコトニ御言
及ニナリマシタガ、其區間別ノ利益保證ノ
コトハ從來ニ於キマシテモ之ヲ認メテ居ラ
ナカッタノデアリマシテ、ソレハ將來ニ於キ
マシテモ同樣ノ方針トナルノデアリマス、
併ナガラ只今申上ゲマシタヤウニ、會社ノ
全體トシテノ資本金竝ニ社債借入金ニ對シ
マシテハ十五箇年間ハ從來諒解ノアッタ通
リノ方法ニ依リマシテ、其利益保證ガ繼續
セラレルコトニナッテ居ルノデアリマシテ、
此點ニ對シマシテハ當業者ガ何等特別ニ損
失ヲ蒙ムルコトハナイト存ズルノデゴザイ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X03119340323&spkNum=18
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019・菅原通敬
○菅原通敬君 只今ノ御說明ハ盡シテ居ラ
レヌヤウニ伺ヒマス、區間別ノ問題ト離レ
マシテ······其問題ニ付テハ又別ニ考ヘナケ
レバナリマセヌガ、區間別ノ問題ニ觸レナ
イデ、詰リ現行法ノ第二條ニ社債ニ付テハ
社債登記ノ日、借入金ニ付テハ借入日カラ
十五年間、其時カラ十五年間八分ノ補助ヲ
與ヘル、斯ウ云フ規定ニナッテ居ル、此規定
ハ此附則ノ第一項ニ依ッテハ、何等將來ニ
向ッテ十五年間保證セラレルコトハナイノ
デアリマス、デアリマスカラ若シ之ヲ御話
ノ通リニ條文ヲ現ハスナラバ、拂込資本金
ニ付テハ會社設立登記ノ日ヨリ向フ十五
年、社債又ハ借入金ニ付テハ社債登記ノ日
又ハ借入ノ日ヨリ十五年、斯ウ兩樣ニ揭ゲ
ナケレバ法律トシテ意味ヲ爲サヌコトニ
ナッテシマヒマス、御話ノヤウニ私設會社ニ
付テハ既得ノ利益ヲ其儘繼續スベク補助シ
テヤルト云フ御趣意ハ達セラレナイコトニ
ナルト思ヒマス
〔國務大臣永井柳太郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X03119340323&spkNum=19
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020・永井柳太郎
○國務大臣(永井柳太郞君) 重ネテノ御質
疑デアリマスガ、只今ノ御尋ノ御趣旨ハ實
質ニ於テハ區間別補助ノ問題ニ歸スルヤウ
ニ存ジマス、若シ其區間別補助ノ意味デナ
シニ、當初カラ計畫セラレタ線路ニ對シマ
シテ、投ゼラレル資本金ナリ、又ハ社債及
借入金ナドニ對シマシテノ利益保證ハ、是
ハ先程申上ゲマシタ通リ其最初ノ登記ノ時
ヨリ十五年間其利益ヲ保證セラルルト云フ
コトニナルノデゴザイマス、唯新ラシキ別
ノ區間ニ對シマシテノ投資竝ニ借入金ノ場
合ニ付テ、如何ニ取扱フカト云フコトガ御
質疑ノ根柢ニナッテ居ルヤウニ存ジマスケ
レドモ、ソレハ從來區別シテ取扱ハナイコ
トガ方針ニナッテ居ッタノデアリマシテ、其
方針ハ將來ト雖モ矢張リ繼續スルコトニナ
ルノデゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X03119340323&spkNum=20
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021・菅原通敬
○菅原通敬君 旣ニ借入若クハ社債ニ依ッ
テ建設費ノ中ニ入レテ使ッテシマッテ居ルモ
ノデアルト云フモノニ對スル補助ハ、從前
ノ通リ矢張リ社債若クハ借入ヲシク日カラ
受ケルノデアルカラ、前ノ利益ヲ失フコト
ハナイト仰セラレマス、サウナサルノガ當
然デアリマスシ、又サウナケレバナラヌノ
デアリマス、併ナガラソレハドノ規定ニ基
イテオヤリニナルノデアリマスカ、既設會
社ノ現ニ補助ヲ受ケテ居ルモノニ對スル補
助ノ規定ハ、此附則ノ第一項ニ依ルノ外ナ
イノデアリマス、所ガ是ニハ唯拂込資本金
ニ對スルモノダケヲ見テアッテ、社債又ハ借
入金ニ對スルモノヲバ除カレテ居ル、或ハ
ソレヲ落サレタノデハナイカト私ハ思フノ
デアリマス、是ハ法文ノ不備デアルト私ハ
考ヘテ居リマス、何カ御手違ヒデナカラウ
カトマデ思ッテ居ルノデアリマス、併シ今此
處デ其問題ニ付テ餘リ應答申上ゲルコトハ
差控ヘマス、何レ委員會ニ於キマシテ機會ガ
アリマシタナラバ、私ニモ質問應答ノ機會
ヲ御與ヘ願ヒタイト思ッテ居リマス、ソレカ
ラ附則ノ第二項デス、是ハ「本法施行ノ際
現ニ補助ヲ受クル鐵道ニ對スル補助ノ期間
ニ付テハ該鐵道ノ建設費ニ充テタル資金ニ
對シ初メテ補助ヲ爲シタル日ヲ以テ第一條
第一項ノ營業開始ノ日ト看做ス」ト斯ウ云フ
規定デアリマス、是ハ必要ノナイ規定デハ
ナイカト思ハレル、第一項ノ方ガ無イ場合
ニ於テハ此規定ハ必要デアル、第一項ガ入ッ
タ以上ハ此規定ハ重複スルノミナラズ無用
ノモノデアル、一口ニ申シマスト矛盾デア
ル、ト云フノハ旣設會社ニ對スル補助ノ起
算點ト云フモノハ、第一項ニ於テ設立登記
ノ日ヨリト云フコトヲモウ旣ニ書イテアル、
デアルカラ第二項ニ行ッテ此期間ニ付テノ
起算點ヲ定メル必要ハナイ、デアルカラ其
點カラ言ヘバ無用デアル、而シテ一方ハ設
立登記ノ日カラト言ッテ居リ、此方ハ建設
費ニ充テタル資金ニ對シ初メテ補助ヲ爲シ
タル日ト云フヤウナコトデ、矛盾スルコト
ニナル、是ハ私ノ見ル所デハ何等カノ矢張
リ御手違ヒデナイカ、第一項ト云フモノハ
後カラ挿入サレタト云フコトヲ私ハ仄聞シ
テ居ルノデアリマスガ、其際ニ於ケル御審
議ガ足リナカッタノデナイカト云フヤウニ
迄疑フノデアリマス、何レ其問題ニ付テモ
此處デ必シモ御答辯ヲ承ラヌデモ宜シウゴ
ザイマスガ、能ク御考ヲ願ヒタイト思ヒマ
ス
〔政府委員北島謙次郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X03119340323&spkNum=21
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022・北島謙次郎
○政府委員(北島謙次郞君) 只今ノ御質問
ニ對シマシテ、私カラ便宜御答ヘ致シマス、
附則ノ第一項但書ノ中デ「本法施行ノ際現
ニ補助ヲ受クル鐵道ニ對スル補助ニ付テハ
會社設立登記ノ日ヨリ十五年ノ期間滿了ノ
日ヲ含ム營業年度ノ末日迄ハ改正規定ニ拘
ラズ仍從前ノ例ニ依ル」ト云フコトニナッテ
居リマスルガ、是ハ拂込資本金ノミニ關ス
ル規定デアッテ、社債及借入金ニ關スル規定
デナイデハナイカト云フ御質問デアッタカ
ト思ヒマスルガ、是ハ拂込資本金ノミニ關
スル規定デゴザイマセヌデ、矢張リ從來社
債及借入金ニ對シテモ補助ヲ貰ッテ居リマ
スル會社ニ對シマシテ、其社債及借入金モ
含メタ其補助金ニ付キマシテハ、矢張リ從
前ノ例ニ依ルト云フ意味デアリマス、ソレ
カラ第二項ハ是ハ現ニ補助ヲ受ケテ居ル鐵
道ニ對スル補助期間ニ關スル例外規定デア
リマス、第一項ノ規定ハ所謂從前ノ規定ニ
依ッテ八分ノ補助ヲスルト云フ意味ノ經過
規定デアリマシテ、第二項ハ補助期間ノ算
定ニ對スル例外規定デゴザイマス、例ヘバ
設立登記ノ日ト營業開始ノ日トノ間ニ二年
ナリ三年ナリ開キガアリマシタ場合ニ、此
規定ガ無イト致シマスルト、當然十五箇年
間ノ補助ノ期間デアルベキモノガ、營業開
始ノ日ガ設立登記ノ日ヨリモ遲レテ線路ガ
出來マシテ補助ヲ致シマシタ、場合ニ於テ
ハ、此規定ガナケレバ其設立登記ノ日ト、
營業開始ノ日トノ二年ナリ三年ノ間ガ更ニ
延長サレルト云フヤウナ結果ニナリマスル
ノデ、初メテ補助ヲ爲シタル日ヲ以テ第一
條第一項ノ營業開始ノ日ト看做スト云フ規
定ヲ特ニ置キマシテ、十五箇年ガ實際上二
年ナリ三年ナリ延ビルト云フ結果ヲ避ケル
爲ニ、特ニ設ケタ規定デアリマス、何レ委
員會ノ席上デ或ハ詳シク御說明イタシマス
ケレドモ、一應申上ゲテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X03119340323&spkNum=22
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023・菅原通敬
○菅原通敬君 只今ノ御說明モドウモ要點
ニ觸レテ居ラヌヤウデアリマス、第一項ノ
方ガ社債借入ニ付テ矢張リ從前ノ通リノ補
助ヲスル積リデアルト言ハレルケレドモ、
此規定デハサウハナラヌ、若シ從前ノ通リ
補助ヲスルト云フモノデアルナラバ、矢張
リ設立登記ノ日カラ、或ハ借入ノ日カラ向
フ十五年ト云フコトノ文字ガ入ラヌト、是
ハ單ニ設立登記ノ日カラ十五年、補助ニ付
テハ〓括的ニ書イテアル、デアリマスカラ
拂込資本金ニ付テモ、又ハ社債借入金ニ付
テモ、補助ニ關スルモノハ總テ會社設立登
記ノ日カラ十五年、斯ウ解釋スベキガ當然
デアル、デアルカラ若シ御趣意ノ通リトス
レバ、拂込資本金ニ付テハ會社設立登記ノ
日カラ、社債又ハ借入金ニ對スル補助ニ付
テハ借入又ハ登記ノ日カラト書キ分ケナケ
レバナラヌノデハナイカト申シタ所以デア
ルノデアリマス、ソレカラ第二項ハ第一項
ノ除外例デアルト云フコトニ言ハレマシタ
ガ、私ハ一向除外例デアルト解スルコトハ
出來ナイ、何トナレバ私設會社、卽チ現ニ
補助ヲ受ケテ居ル鐵道ニ對スル補助期間ニ
付テハ、前ノ第一項ニチヤント揭ゲテアル、
全部何等取除ケナシニ包括的ニ書カレテア
ル、之ニ除外例ノアリヤウガナイ、總テソ
レハ設立登記ノ日カラト、斯ウ書イテアル
ノデアリマスカラ、該鐵道ノ建設費ニ充テ
タ資金ニ對シテ、初メテ補助ヲ爲シタル日
ト云フコトガ起ッテ來ナイ、是モ能ク御〓究
ヲ願フコトニシテ、此案ニ對スル質問ハ打
切リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X03119340323&spkNum=23
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024・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 他ニ御質疑ガナ
ケレバ兩案ハ、臺灣事業公債法中改正法律
案外一件ノ特別委員ニ付託イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X03119340323&spkNum=24
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025・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 日程第五、臨時
米穀移入調節法案、日程第六、政府所有米
穀特別處理法案、日程第七、米穀需給調節
特別會計法中改正法律案、政府提出、衆議
院送付、第一讀會、是等ノ三案ハ之ヲ一括
シテ議題トナスコトニ御異議ゴザイマセヌ
カ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X03119340323&spkNum=25
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026・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 御異議ナイト認
メマス、後藤農林大臣
臨時米穀移入調節法案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議
院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和九年三月二十二日
衆議院議長秋田〓
貴族院議長公爵近衛文麿殿
臨時米穀移入調節法
第一條政府ハ朝鮮米及臺灣米ノ內地移
入數量ヲ調節スル爲本法ニ依リ昭和十
年三月三十一日迄朝鮮米及臺灣米ノ買
入ヲ行フコトヲ得
第二條前條ノ規定ニ依リ買入ルル米穀
ノ價格ハ勅令ノ定ムル一定價格以內ニ
於テ時價ニ準據シテ之ヲ定ム
第三條政府ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ第
一條ノ規定ニ依リ買入レタル米穀ノ賣
渡、貯藏及加工ヲ爲スコトヲ得
第四條前條ノ規定ニ依ル賣渡ノ價格ハ
時價ニ準據シテ之ヲ定ム
第五條本法ニ依ル朝鮮米及臺灣米ノ買
入、賣渡、貯藏又ハ加工ニ關スル一切
ノ歲入歲出ハ米穀需給調節特別會計ニ
屬セシム
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
政府所有米穀特別處理法案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議
院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和九年三月二十二日
衆議院議長秋田〓
貴族院議長公爵近衞文麿殿
政府所有米穀特別處理法案
政府所有米穀特別處理法
第一條政府ハ米穀ノ新規利用ニ關スル
試驗〓究ノ用ニ供スルトキ又ハ米穀ノ
新規用途ノ開拓ノ爲必要アルトキニシ
テ米穀ノ市價ニ影響ヲ及ボサザル場合
ニ限リ勅令ノ定ムル所ニ依リ米穀需給
調節特別會計ニ屬スル米穀ヲ處分スル
コトヲ得
第二條前條ノ規定ニ依ル米穀ノ處分ニ
關スル重要事項ハ農林大臣米穀處理委
員會ニ諮問シテ之ヲ定ム
米穀處理委員會ノ組織ハ勅令ヲ以テ之
ヲルチノ
第三條第一條ノ規定ニ依ル米穀ノ處分
ニ關スル一切ノ歲入歲出ハ米穀需給調
節特別會計ニ屬セシム
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
米穀需給調節特別會計法中改正法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議
院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和九年三月二十二日
衆議院議長秋田〓
貴族院議長公爵近衞文麿殿
米穀需給調節特別會計法中改正法律案
米穀需給調節特別會計法中左ノ通改正
ス
第四條ノ三中「七億圓」ヲ「八億五千萬圓」
三六六
第六條ノ二米穀ノ數量又ハ市價ノ變動
ニ基ク買入數量ノ增加其ノ他避クベカラ
ザル事由ニ因リ生ジタル豫算ノ不足ヲ補
フ爲歲出豫算ニ豫備費ヲ設クルコトヲ得
附則
本法ハ昭和九年度ヨリ之ヲ施行ス
政府ハ當分ノ內必要アリト認ムルトキハ
勅令ヲ以テ第四條ノ三ニ定ムル證劵及借
入金ノ額ヲ通ズル最高金額ヲ三億圓ノ範
園內ニ於テ增額スルコトヲ得
〔國務大臣後藤文夫君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X03119340323&spkNum=26
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027・後藤文夫
○國務大臣(後藤文夫君) 便宜ノ爲ニ日程
第五、第七、第六ノ順序デ御說明ヲ申上ゲ
マス、第一ニ臨時米穀移入調節法案ヲ提出
イタシマシタ理由ヲ申上ゲマスレバ、昭和
九米穀年度、昨年ノ十一月ヲ以テ始マリ昭
和九年ノ十月末日ヲ以テ終リマスル一年ノ
間ニ於ケル內地ノ米ノ生產額ハ七千萬石ヲ
超エテ居ルノデアリマス、是ハ昭和八年度產
米ガ昭和九米穀年度ノ米ノ生產額ノ供給ト
ナッテ現ハレル數字ヲ申シタノデアリマス、
實ニ未ダ曾テ無イ所ノ大豐作ヲ現出イタシ
タノデアリマス、之ニ加ヘマシテ年々增殖
シテ參リマスル朝鮮米及臺灣米ノ內地移入
ノ數量ハ、所謂昭和九米穀年度ニ於キマシ
テハ千二三百萬石ノ多額ニ達スルモノト豫
想セラレルノデアリマス、尙又昭和八、詰
リ昨年ノ米穀年度カラノ持越高モ多量ニ存
在イタシテ居リマスルノデ、內地ニ於ケル
米穀需給ノ關係ハ、著シク供給過剩ノ狀態
ヲ呈シテ居リマス、然ルニ昨年御協賛ヲ得
マシタ米穀統制法ガ昨年ノ十一月カラ實施
セラレマシテ、此法律ニ依ル公定價格ノ買
上ガ十一月以來引續キ實行セラレテ參ッテ
居ルノデアリマス、政府買入米ノ數量ハ、
季節調節ノ買入ト申シマスモノト合セテ、
旣ニ一千萬石ヲ超ユル狀況ト相成ッテ居リ
マス、一面籾ノ貯藏ヲ奬勵スル施設等ト相
俟チマシテ、此政府ノ買上ガ斯ノ如キ供給
過剩ノ情勢ニアルニモ拘ラズ市場ニ於ケ
ル米ノ需給關係ノ權衡ヲ得セシムルノニ相
當ナ效果ヲ擧ゲテ居リマシテ、米價ハ現在
ノ如キ狀態ニ維持サレテ居ル次第デアリマ
スル、併ナガラ近年ノ如キ米穀ノ供給ガ過
剩ナ情勢ニ於テハ朝鮮米及臺灣米ガ多量
ニ內地ニ移入セラレマスル時ハ、特ニ米價
ヲ著シク壓迫スルコトハ、今更申ス迄モナ
イコトデアリマス、之ヲ適當ニ調節スルコ
トガ肝要デアルト存ゼラレルノデアリマ
ス、依テ朝鮮米及臺灣米ノ內地移入數量
ヲ、單ニ季節調節ニ止マラズ、稍〓長期ニ
亙ッテ調節スル爲メ、內地ニ移入セラルル朝
鮮米及臺灣米ヲ政府ニ於テ特ニ買入ルルコ
トヲ得ルコトト致シマシタノガ、本法案ノ
骨子デアリマス、別ニ朝鮮臺灣ニ於テ現ニ
實行シテ居リマスル米ノ消費ノ增進、移出
減少ノ爲ノ施設、例ヘバ米ノ季節出廻リ調
節ノ爲ノ貯藏奬勵デアリマストカ、籾ノ長
期貯藏ノ奬勵デアリマストカ、粟其他ノ雜
穀ノ輸入ノ調節等、是等ノ施設ニ付キマシ
テハ一層努力ヲ致シマスルコトト、此本法
ニ依ル買トトヲ併セ行ヒマシテ、差當リ朝
鮮米及臺灣米ノ移入ノ調節ヲ期セムトスル
次第デアリマス、尤モ右ハ臨時應急ノ施設
デアリマスルカラ、政府ハ引續イテ朝鮮米
及臺灣米ニ對スル根本對策ヲモ考究シテ、
速ニ成案ヲ得ルコトニ努ムルコトニ致シタ
イト考ヘテ居ルノデアリマス、從テ本制度
ニ依ル買入モ本會計年度末迄ト致シタ譯デ
アリマス、次ニ米穀需給調節特別會計法中
改正法律案、提出ノ理由ヲ說明申上ゲマ
ス、只今申上ゲマシタ如ク、米穀移入調節
法竝ニ現行ノ米穀統制法ノ圓滑ナル施行ヲ
圖ラムトスル爲ニハ、米穀需給調節事業資
金ヲ相當增額スルコトヲ必要ト致スノデア
リマス、又最近ノ米穀事情カラ考察イタシ
マス時ハ、此一定ノ增額ノ範圍內ニ於テ、
十分是ガ目的ヲ達シ得ナイヤウナ供給過剩
ヲモ相像シ得ラレナイコトハナイノデアリ
マリ、一度斯カル場合ガ生ジマシタ時ニ於
テハ、更ニ其事業資金ヲ增額シ得ルヤウ豫メ
方途ヲ開イテ置キタイト考ヘルノデアリマス、
之ニ依ッテ米穀統制ノ遂行上、資金ノ不足ノ
ナイヤウナ準備ヲ致シテ置キタイトモ思ヒマ
ス、尙ホ米穀統制上ノ必要ニ基ク米穀ノ買入
數量等ハ、米穀作柄ノ豐凶等ニ依リマシテ、
著シク相違ガ生ズルノデアリマス、從テ事
業資金ニ於テ一面用意ヲ致シテ置ク必要ガ
アリマスルノト、又此買入等ノ仕事ニ伴ヒ
マスル事業費ノ方面ニ於キマシテモ、大體
ハ普通ノ場合ニ於ケル買入數量等モ見込ミ
マシテ豫算ハ立テマスルケレドモ、ン
以上ノ必要ヲ生ジマシタヤウナ場合ニ於キ
マシテハ之ガ補充增額ヲスルコトガ出來
ルヤウニ致シテ置クコトガ適當デアルト認
メマシテ、本會計歲出豫算ニ豫備費ヲ設ク
ルコトト致シタノデアリマス、米穀資金ノ
增額ハ米穀移入調節法ノ實施ノ爲ニ一億五
千萬圓ノ增額ヲ致スコトト致シマシテ、尙
ホ更ニ今年ノ如キ大豐作ニ再ビ直面スルヤ
ウナ場合ガ若シアリトシタナラバ、其場合ニ
於ケル十分ナ、安全ナ措置ヲ致シテ置キタ
イト云フ趣旨カラ、三億圓ノ限度ヲ限リマ
シテ、其範圍內ニ於テ、必要ナ程度ダケ政
府ハ事業資金ノ增額ヲ致スコトガ出來ルト
云フ途ヲ開クト云フ趣旨ノ改正ヲ致サウト
致シテ居ルノデアリマス、其外ニ最後ニ申
上ゲマシタ豫算ノ關係上、豫備費ト云フ豫
算ノ一目ヲ設ケテ置クコトニ致シタノデア
リマス、是ガ大體米穀需給調節特別會計法
中改正法律案ノ要旨デアリマス、次ニ我國
ニ於ケル、今申シタヤウナ米穀過剩ノ昨今
ノ狀況ニ鑑ミマシテ、米ノ需給ノ均衡ヲ得
セシメル爲ニ、一面ニ新規用途ヲ開拓シ、
需要ヲ增進スルト云フコトガ極メテ必要デ
アルヤウニ考ヘラレルノデアリマス、之ガ
爲メ政府所有ノ米穀ヲ、新規利用ニ關スル
試驗〓究及米穀ノ新規用途ノ開拓ノ爲ニ、
米穀ノ市價ニ影響ヲ及ボサザル場合ニ限ッ
テ、特別ニ處分スルノ途ヲ開カムトスルノ
ガ、政府所有米穀特別處理法案ノ要旨デア
リマス、以上三案何卒御審議ノ上、御協賛
アラムコトヲ切望イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X03119340323&spkNum=27
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028・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 本案ニ對シテハ
上山君ヨリ質疑ノ通〓ガゴザイマス、上山
君ノ登壇ヲ望ミマス
〔上山滿之進君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X03119340323&spkNum=28
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029・上山滿之進
○上山滿之進君 諸君、米穀統制法ハ誠
ニ遺憾ナガラ所期ノ目的ヲ達スルコトガ出
來ナカッタノデアリマス、ソレハ職責上勿論
農林大臣ノ責ニ歸スル譯デアリマスケレド
モ、併シ私ハ貴族院及衆議院モ確ニ其責任
ヲ分タナケレバナラヌト思ヒマス、又私一
個ト致シテハ農林省ノ米穀顧問ト云フモノ
デアリマス、確ニ私モ其責任ノ一半ヲ分タ
ナケレバナラヌト考ヘルノデアリマス、誠
ニ遺憾千萬デアリマス、併ナガラ私ハ此場
合ニ過去ノ責任ヲ論ズルノ暇ガナイノデア
リマス、國家ノ重大ナ間題ニナッテ參リマシ
タ、之ヲ將來如何ニスベキカト云フコトハ
自分ノ責任問題ハ、先ヅ姑ク御預ケニシテ、
サウシテ忠實ニ之ヲ考ヘナケレバナラヌコ
トデアルト思フ、其意味ヲ以テ此場合ニ質
問ヲ致シマス、私ハ我ガ後藤農林大臣ガ非
常ニ熱心ニ忠實ニ此問題ニ當ラレタト云フ
コトヲ感謝イタシマス、併ナガラソレヲモ
先ヅ姑ク御預リシテ置キマシテ、兔モ角モ
何トシテ此問題ノ將來ヲ解決シヤウカト云
フコトヲ、我〓ハ考ヘナケレバナラヌノデ
アリマス、私ハ政府ニ五ツノ質問ヲ發シタ
イト思フノデアリマス、先ヅ其問題ヲ讀上
ゲマス、第一問、政府ハ世間傳フルガ如ク
今年端境ノ持越米ヲ一千六七百萬石ノ莫大
ナル額ニ上ボルベシト思考スルヤ、將又
此額ハ大イニ減少シテ、甚シク米穀界ヲ脅
スコトナシト思惟スルヤ、第二問、最低價
格買入米九百餘萬石ハ將來如何ニ之ヲ處分
スルノ見込ナリヤ、第三問、調節事業資金
ハ將來幾許ヲ以テ足レリトスルノ成算アリ
ヤ、第四問、地方ハ賣過ギノ結果、民間在
米ノ不足ヲ來シタルベク、從テ遲クモ七八
月ノ交ニ至ラバ政府米拂下ノ要望ヲ生ズベ
シ、如何ニ之ニ處セムトスルヤ、第五問、
首相ハ衆議院ニ於テ內外地全部ニ通ズル
根本對策ヲ定メ、其成案ヲ得レバ出來秋
以前ニ臨時議會ヲ召集スベキコトヲ約
サレタルガ如シ、果シテ然ラバ、何故ニ
主トシテ出來秋以後ノ所要ニ充ツベキ
資金ノ增額ヲ依然要求セラルルヤ、是ガ
質問ノ要領デゴザイマス、第一ノ質問、卽
チ政府ハ、今年ノ持越米ヲ千六七百萬石ニ
ナルト世間デ言ウテ居ル、ソレヲ正シイト
思ッテオイデニナルカ、又ソレハ減少スルモ
ノデアル、而モ其減少額ハ少カラザル、數
萬石ノ非常ナ多額ニ上ボル、從テ此年度末
ニ來年度ヘ持越ス米ハ、ソンナニ驚クベキ
モノデナイト御考ヘニナルカト云フコトヲ
御尋ネシタイノデアリマス、兔角世間デ今
年度ノ持越米ヲ非常ニ多ク言フノデアル、
政府モ何ダカサウ云フ風ニ考ヘテオイデニ
ナルヤウナ御言葉ガ時ミ現ハレル、ケレド
モ私ノ考ヘニ依リマスト、斷ジテソンナニ
大キナモノニナラヌト斯ウ思フ、此持越米
ガ大キイカ少ナイカト云フコトガ、今年ノ
米穀問題ノ非常ニ重大ナ點デアル、(此)
明カニシナケレバ全ク水掛論ニナル、多イ
ト言ヒ少イト言ヒ、唯徒ニ世間ヲ惑ハスコ
トニナル、度〓米ノ洪水ト云フコトヲ聞キ
マスケレドモ、私ニ言ハセマスト云フト、
チヨツトモ米ノ洪水デハナイ、米ノ洪水ト
云フノハ武藏野ノ逃ゲ水デアッテ、幻デア
リ陽炎デアルト云フヤウニ、私ニハドウシ
テモ思ハレル、是ハ私昨年八月頃ト思ヒマ
スガ、其頃カラ考ヘテ居ルコトデ、今日ニ
至ッテモ同樣デアルノミナラズ近頃又新シイ
材料ヲ······之ニ私ノ論ヲ肯定スル新シイ材
料ヲ加ヘタノデアリマス、第一ニ九年度ノ
米ノ產額、卽チ昨年ノ產額、是ガ未曾有ノ
豐作ダト斯ウ言ハレルノデアリマスケレド
モ、私ニハ未曾有ノ豐作トハドウシテモ思
ハレナイ、或年ノ產額ヲ前年度ニ對比イタ
シマシテ、其增加額ガ昭和三年度及四年度
ハ共ニ七百萬石增加シテ居ル、八年度ハ五
百萬石增加シテ居ル、今年度ハ一千萬石ト
唱ヘラレテ居リマスケレドモ其實數ハ、實
際ノ增加額ハ凡ソ是ト伯仲ノ間柄ニ居ルモ
ノト私ハ思フ、ソレハドウ云フ譯カト申シ
マスト、此九年度ノ產額調査、此調査方法
ガ過去ノ、從來ヤッテ來テ居ッタ調査方法ト
スッカリ變ッタノデアリマス、是ハ世間ニ普
通知ラレナイコトデアルヤウニ思ハレマ
ス、以前ノ調査方法ハ大體調査スル人ノ大
凡ノ見當デセラレマシタモノヲ、昨年カラ
實地ニ就イテ、調査員ヲ實地ニ派遣シテセラ
レタ、生產者及消費者、又輸送中ナラ其輸
送中ノ場所ニ付テ、實地ニ付テ調ベタ、是
ハ其結果ドウシテモ正確ニ調ベガ行キマス
カラ、增加スルノガ當リ前デアル、ソレデ
結局幾ラ增加シタカト云フコトヲ計算スル
ノガナカ〓〓面倒デアルケレドモ、是モ私
ノ見ル所デハ凡ソ見當ガ付ク、ト云フモノ
ハ大體每年ノ產額、卽チ實收額ハ、第一回、
第二囘トアリマスガ、第二囘豫想ノ收穫高
ニ比ベマシテ大キナ開キガナイ、大キナ聞
キガナイト云フコトハ過去ニ於ケル事實デ
アル、最近昭和六年度及七年、此實收高ハ
第二囘豫想高ニ比ベマシテドチラモ二十萬
石內外、僅カナモノデアリマス、殆ド無イ
ト言ッテ宜イ、所ガ昨年ノ開キ、卽チ昨年ノ
豫想高ト實收高ト比べマスト四百八十八萬
石ト云フモノニナル、前々二年ハ二十萬石
內外デアッタノガ、昨年俄ニ四百八十八萬石
ニナルト云フコトハ誰ガ考ヘテモ不思議千
萬ナコトデアル、是ハ先刻申シマシタヤウ
ニ、調査方法ガ變リマシテ、嚴密ニ調ベタ
カラ、從來ハ調べ洩レデアッタ、隱レテ居ツ
タモノガ表面ニ現ハレテ出タト云フノニ過
ギナイ、ドウシテモ此四百五十萬石位ハ昨
年調査方法ノ變更ニ依ッテ形式上增加シタ、
實質上デナクテ形式上增加シタト見ルノガ
當然デアルト思フノデアリマス、サウ致シ
マスト昨年ノ收穫高ガ一千五十萬石殖エテ
居リマスガ、是ガ六百萬石ノ增加ト云フコ
トニナル、四百五十萬石ヲ引キマスカラ六
百萬石ノ增加ト云フコトニナル、政府デハ
此數字ヲ以テ何百何十萬石ト云フコトハ是
ハ出來マセヌノデ、私モ役人ヲシテ居リマシ
タカラ能ク知ッテ居リマスガ、サウハッキリ
シタコトハ言ヘナイ、言ヘナイカラ仕方ナ
シニ矢張リ帳面ノ上ニ現ハレタ數字ヲ提ゲ
テ、サウシテ昨年ノ實收高ト言ッテ居ラレ
ル、是ハ何モ私不思議デハナイト思ヒマス、
併シ私ナドガ考ヘルトサウハ行カヌ、スッ
カリ根柢ガ誤ッテ居ル、蓋シ政府モ何百何十
萬石ト云フコトハ仰セニナルコトハムヅカシ
イトハ思ヒマスケレドモ、數百萬石昨年ハ帳
面上殖エタト云フコトハ御認メニナルコト
ト思フ、現ニ農林省ノ御出シニナッタ米穀要
覽ノ中ニモ其意味ノ斷リガ書イテアル、ソ
レカラ只今ノ質問ハ最モ此問題ノ根柢ヲナ
スモノデアリマスカラ、オウルサイカ知レ
マセヌガ、モウ少シ詳シク數字ヲ以テ申上
ゲマス、ドウゾ御許シヲ願ヒマス、只今マ
デ申シタノガ第一ノ點、第二ノ點ハ、現在
米調査ト云フコトヲ一昨年ノ十一月カラ又
調査方法ヲ變ヘタノデス、是等ノ調査方法
ヲ嚴密ニ致シマシタカラ、非常ニ澤山ナル
數量ガ帳簿上增加シタ、現實ニ增加シタノ
デナクシテ帳簿上增加シタ、其爲ニ此一年
間ノ米ノ消費量ト云フモノガ、昭和七年度
ハ前古未曾有ノ少額ニナッタ、少クナッタ、
數字ヲ申シマスト、大正六年以降、一人當
リノ消費量ガ一石一斗ヲ降ッタコトハ僅ニ
二回シカナイ、六年以降二囘シカナイノデ
アリマス、其二囘ノ中デ一番少ナカッタノ
ガ一石七升七合ト云フノデ、此十數年ノ間
デ最モ少ナカッタ一石七升七合ニ比ベテ、昭
和七年ハ一石一升四合ト云フノデス、六升
以上ノ開キガ出テ居ル、ドウモ昭和七年ニ
限ッテ國民全般ガ米ヲ攝ラナイ、食ハナイ筈
ガナイ、チヨットモ食ハナイ筈ハナイ、是ガ
全ク在米數量ノ調査方法ガ十一月一日カラ
變リマシタノデ、詳シイコトハ申述ベマセヌ
ケレドモ、變ッタ其結果在米高ガ殖エタカラ、
消費高ノ方ガ今度減ッテ來タ、此高ガ凡ソ三
百三十萬石位ニナル、是ガ若シ普通ニ一人
當リノ消費量ト云フコトガ計算サレレバ、
一人當リノ消費量ガ殖エルノデアルカラ、
其殖エタダケハ在米高ノ方デ減ラナケレバ
ナラヌ、是モ私ノ申シマス大勢ハ政府モ御
認メニナルト思フノデスガ、唯數字ニ付テ
ハッキリ仰シヤルコトハ出來マイケレドモ、
是モ數百萬石ノ間違ヒガアル、斯ウ云フコ
トニナル、若シ私ノ申ス如クデアルト、今
日マデ普通唱ヘラレテ居ッタ理想持越米五
百萬石ト云フモノハ、先ヅハ百萬石カラ八
百五十萬石ト云フモノニナルダラウト思フ、
例ヘバ本年ノ端境期ノ持越米ヲ千六百萬
石ト致シマシテ、其中カラ八百五十萬石ヲ
引キマスト幾ラニナリマスカ、餘程少イモ
ノニナル、五百萬石ト八百何十萬石ト云フ
モノノ違ヒガ其處ニ現ハレテ來ル、過去ノ
數字ヲ今日現ハレタ數字ト比ベテ、サウシ
テ直ニヒドクドウモ米ガ多クナルヤウニ言
フノハ、大變ナ誤リデアルト思フ、ソレカ
ラモウ一ツ事實ヲ申上ゲタイノデアリマス、
豐年ノ翌年ニハ必ズ國民ノ米ノ消費ガ殖エ
ルノデアリマス、是ハモウ爭フベカラザル
事柄デアル、イツモ豐年ノ翌年ニハ殖エテ
居ル、何故サウカト申シマスト、此生產增
加ノ中デ翌年度ニ持越サレタ分量ハ生產增
加量ノ一部分デアル、米ガ何百萬石出來テ
モ、ソレデ何百萬石翌年ノ持越米ガ殖エル
カト云フト決シテ殖エナイ、其開キダケハ
國民ガ消費シテ、豐年ノ翌年ニハ必ズ消費
ガ增進スルノデアリマス、是ハモウ御迷惑
デアリマセウガ、數字ヲチヨット申上ゲマス、
昭和三年度ノ增產額ガ七百萬石、其持越增
ガ二百萬石、三分ノ一ニ足リナイ、三分ノ
二以下ト云フモノハ、消費ガ增加シテ居
ル、昭和六年ノ增產ガ七百萬石、是ガ持
越高ノ增ガ三百萬石、昭和八年度ガ增
產ガ五百萬石、其持越高ガ百萬石ニ足リ
ナイ、ソレデ必ズ豐年ノ翌年ニハ消費ガ、
增加シテ居リマス、本年度モ蓋シ增スデア
ラウト思フ、サウ致シマスト、年度末ニ千
六七百萬石餘ルト云フコトハ、是コソ全ク
杞人ノ憂ニ屬スル、今年ノ三月一日ニ米ノ
在米高ガ調ベラレマシタガ、在米高ガ調べ
ラレタ爲ニ昨年ノ十一月カラ二月マデ、此
卽チ米穀年度ノ三分ノ一ノ期間ニ於ケル消
費量ト云フモノガ分リマシタ、是ハモウ勿
論政府ノ調ベニ依ッテ出タ數字デアリマス
ガ、此前四箇月ノ間ニ米ノ消費量ガ一箇月
一人當リ一升殖エテ居リマス、一升ト申ス
ト非常ニ小サイヤウデアリマスケレドモ、
一升殖エテ居ル、一箇月一人當リ一升デゴ
ザイマスカラ、十二箇月ニ合セルト一斗二
升ニナル、一斗二升ヲ六千六百八十何萬ト
云フ人ロガ食フノデアリマスカラ、大變ナ
數字ニ上ボッテ來ル、若シ此前四箇月ノ消費
シタ通リニ、今後此三月カラ十月マデノ八
箇月間ニ消費スルモノト致シマスト、、非常
ナ額ニ上ボッテ來ル、假ニ申上ゲマスガ、後
八箇月ノ消費量ガ五千五百萬石ト云フモノ
ニナル、サウ致シマスト、本年ノ十一月一
日ノ在米、卽チ來年度へノ持越米、是ハ僅
ニ六七百萬石ニシカナラヌノデアリマス、
是ハ少シ私ハマダ數字ニ付テ考ヘナケレバ
ナラヌト思ヒマスカラ、私ハ斯ウナルトハ
思ヒマセヌケレドモ、併シ之ヲ以テ見テモ
本年ノ持越米ハ千六七百萬石ニ上ボルデア
ラウ、米ノ洪水デアルト云フコトハドウ
モ、ドウ思ッテモ考ヘラレナイ、此三ツノ點
ヲ根據ニ致シマシテ、私ハ本年ハソンナニ
米ガ多イカラト云ウテ、心配スベキモノデ
ハナイト云フコトヲ考ヘルノデアリマス、
ソコデ政府ニ御尋ネ致シマスノハ、勿論私
ガ申シタヤウニ何百何十萬石ドウダト云フ
コトニハ、是ハナラナイノガ當リ前デアリ
マスケレドモ、此世間ニ傳ヘラレテ居ル千
六七百萬石ト云フ莫大ノ額ハ大イニ減少ヲ
シテ、サウシテ甚シク米穀界ヲ脅スモノデ
ナイト云フコトデアラウト私ハ思ヒマス
ガ、ソレハ如何デゴザイマスカト云フコト
ヲ伺ヒタイノデアリマス、蓋シ是ハ私否定
出來ナイ事柄デアルト思フ、世間デハ徒ニ
大キク思ッテ居ル、是ハドウシテモ世ノ惑
ヒヲ解イテ置カヌトイカヌト思ヒマス、此
際ドウカサウ云フコトヲ御考ノ上デ御答辯
ヲ願ヒタイト思フ、是ガ此問題ノ根本ニナ
ルコトデアリマス、ソレカラ第二問ハ、政
府ガ最低價格ヲ以テ買入レタ米ガ、今日凡
ソ九百三十萬石位アルト思フノデアリマス、
此九百餘萬石ノ米ヲ將來ドウナサレル御積
リデアリマスカト云フコトヲ伺ヒタイ、此
買フノハ最低價格二十三圓三十錢デ買ヒマ
スガ、之ヲ賣ル時ハ三十圓五十錢ニナラヌ
ト賣レナイ米ナンデス、此米ハ、九百萬石
ト云フ米ハドウシテモ三十圓五十錢ニナラ
ニヤ賣レナイ、所ガ現在ノ市場ノ價格ハ公
定價格ヲ以テ二十三圓三十錢ニ無理ヤリニ
吊上ゲタ値段デアル、吊上方モ可ナリ私共ハ
多イト思フノデアリマスケレドモ、兎モ角
モヒドク吊上ゲタモノデアル、サウシテ一
方デハ此吊上ゲタ價格デ、買ッタ米ハ三十圓
五十錢デナケレバ賣レナイト云フ、サウス
ルト三十圓五十錢ニナルト云フコトハ、今
日ノ如ク此高ク吊上ゲタ米ノ値段トシテ、
三十圓五十錢ニ今後ズン〓〓上ッテ行クト
云フコトハ到底期セラレナイ、今年ノ秋作
ガ假ニ非常ナ凶作デアルト致シマシテモ、
容易ニ此三十圓五十錢ノ市場米價ヲ拔クト
云フコトハ私ハナイト思ヒマス、若シ豐作
デアッタラ勿論、若シ平年作デアッテモ、更
ニ買上米コソ要求セラルレ、到底今ノ買入
レタ米ヲ永久ニ處分スルコトニハナラナイ、
三十圓五十錢ヲ上ヘ上ガルト云フコトハナ
イ、斯ウ云フ風ニ思ハレマス、是ハ誰デモ
常識デハサウ考ヘテ居ル、此度何トカ新法
案デ新規用途ヲ發見スルト云フ法律案ガ出
テ居マスガ、是ハ固ヨリ此效力ハ未知數ノ
モノデアッテ、サウシテ又我〓普通考ヘテ
居ルコトデハ、本當ノ僅カノ物シカ新規用
途ニ充テラレナイ、僅カノ分量シカ新規用
途ニ依ッテ消費スルコトガナイ、是ハ無論見
込ハ立チマセヌガ、結局今ノ九百萬石ト云
フモノヲドウスル御考デアリマセウカ、私
ニモ實ハドウシタラ宜カラウカト云フ考ヘ
ガ付カナイ、九百萬石ヲ唯ヂット持ッテ品傷
メニナルコトヲ待ッテ居ルヨリ外途ガナイ、
ト云フヤウニ思ハレル、三十圓五十錢以上
ニ此米價ガ上ルト云フコトハ何人モ想像ガ
出來ナイ、是ハ如何ニナサルカト云フコト
ヲ御尋ネスルノハ、餘リニモヒドイト思ヒ
マスケレドモ、併シ順序上ドウシテモ買ッタ
米ヲ如何ニ處分スルカト云フコトノ見當ガ
凡ソ立ッテ居ナケレバナラヌノデアリマス
カラ、私ハ考ヘ及バヌ所ガアリマセウト思
ヒマスノデ、政府ノ御考ハドウデアリマセ
ウカト云フコトヲ伺フ、第三問、需給調節
資金ハ將來ドノ位アッタラバ間ニ合フ、ノデ
アルカト云フコトノ成算ガアリマスカ、唯
金ガ無クナッタカラ、或ハ無クナリサウダ
カラ又一億圓增ス、一億五千萬圓增ス、四
億五千萬圓增スト云フコトデハ、ドウモ我ミ
納得ガ出來ナイ、國家財政ガ非常ニ危機
ニ陷ルノデアリマス、デ過去ノコトヲ咎メ
ル意味デハチヨットモアリマセヌガ、前議會
ニ於テ既ニ二億圓ト云フ多額ノ資金ヲ增加
シテ、是ナラバヤッテ行ケルト云フ政府ニ
モ自信ガアリマシタラウシ、又我ミトシテ
モ是ナラバヤッテ行ケルト云フ自身ガナケ
レバ贊成スル譯モナイノデアリマス、所ガ
ヤッテ行ケナイ、ソレデ今度一億五千萬圓又
增サウ、更ニ豫備トシテ三億圓增サウ、四
億五千萬圓增サウ、昨年全ク見込ガ外レタ
ノガ今年ハ見込ガ立ツト云フノハドウ云フ
ノデアリマセウカ、如何ニモ世間ノ傳フル
如ク一千六七百萬石ノ未曾有ノ持越米ガア
ルト言ヘバ、又ソレガ此度初メテ發見セラ
レタト言ヘバ、ソレハ一部分ノ理窟ハアリ
やっ、ケレドモソレハサウデナイコトハ先
刻申述ベタ通リデ、今年ノ第二囘ノ收穫
豫想トソレカラ實收四百何十萬石ノ開キ
ト云フノハ、全ク調査ノ方法ノ變更デアリ
マシテ、今年ノ實收ハ明瞭ニ昨年ノ第二囘
豫想ノ收穫高ト同ジデアリマス、ソレハ明
ニ八月ハサウデアッタ、是ハ證明ガ出來マ
ス、政府ノ御考モ矢張リ其通リデアッタ、ソ
レガ現ハレテ來タノデアリマシテ、何モ本
年ノ收穫ガ實際ニヒドク多カッタカラ昨年
ノ豫定ガ今年行ハレナイ、不足ヲ生ズルト
云フ譯ハナイノデアリマス、然ルニ斯ウ云
フ多額ナ要求ヲサレルト云フコトハ、ドウ
云フ成算ガアッテノコトデアリマセウカ、是
ガ伺ヒタイノデアリマス、第四問ハ、政府
ニ買上ヲ要求致シマシテ、政府ガソレヲ買
ヒマシテ、其額ガ九百何十萬石ニ上ボリマ
シタ、此爲ニ詰リ地方ハ賣リ過ギタ爲ニ、
民間ノ在米ガ甚シク不足ヲ來シタデアラウ
ト思フノデアリマス、是ハマダ實數ヲ······
今此處ニ實數ノ確カナモノヲ持合セマセヌ
カラ、實數ハ申シマセヌガ、是ハ不足ヲ來
シタコトハ確カデアリマス、サウナリマス
ト早速起ルカモ知レマセヌガ、晩クトモ七
八月頃ニナリマスト地方ニハ米ノ不足ヲ生
ズル、飯米ガ不足ヲ生ジテ來ル、政府米
ヲ拂下ゲチ吳レト云フ要求ガ出テ來ルト思
フ、之ヲドウ云フ風ニ處置ナサルカ、如何
ニモ政府ハ九百何十萬石ノ米ヲ持ッテ居リ
やっ、何時デモ拂下ゲラレル、併シ此米ハ
先刻申シマシタ通リニ一一十三圓三十錢デ買
ヒマシタケレドモ、三十圓五十錢ニナラナ
ケレバドウシテモ賣ルコトガ出來ナイ、賣
ルコトハ法ノ規定ガ許サナイ、結局三十圓
何十錢ト云フモノニナラナケレバヂット仕
舞ッテ置クヨリ仕方ガナイ、ソコニドンナニ
細民ガ〓糧ニ困ッテ蒼イ顏ヲシテ居ッテモ、
此處ニ大キナ藏ニ賣レナイ米ヲ積ンデ置カ
ナケレバナラヌ、斯ウ云ツコトニナル、是
ハ非常ナ人心ニ關係ノアルコトデアル、併
シ是ハドウシテモ賣レマセヌ、其外ノ政府
ノ所有米、季節調節デ買上ゲタ米トカ、ソ
レカラ前年カラ持越シタ米ガアリマス、此
米ガ四百五十萬石バカリアルカト思ヒマス
ガ、是ハ賣レマス、賣レマスガ季節調節買
上ハ最低價格卽チ二十三圓三十錢ノ五分以
上ノ上値ニナラナケレバ賣レナイ、是ハ賣
ルト致シマセウ、賣ルト致シマシテモ是ガ
凡ソ百五十萬石バカリアリマス、朝鮮ニア
ルノト內地ニアルノト合セテ·····ソレカ
ラ前年カラ持越シタ米ガ三百萬石、是ハ賣
ルト致シテモサウ安ク賣ル譯ニハ到底行カ
ナイ、矢張リ上値ドレダケカソレハ知リマ
セヌガ、公定相場ノ二十三圓三十錢ノ下値
デ賣ルコトハ出來ナイ、是ハ賣ッタノデハ、
二十三圓三十錢ノ公定相場ヲ建テタト云フ
コトガ打壞シニナル、上値デナケレバ賣レ
マセヌガ、偖テ地方ノ小農ハ政府ガ買ッテ吳
レルト云フカラ喜ンデ、又慌テテ二十三圓
三十錢デドン〓〓政府ヘ賣上ゲテシマッタ
所ガ、七八月頃ニナルト今度ハ自分ノ食フ
米ハナイ、買ハナケレバナラヌ、其時ハ高
イ米ヲ買ハナケレバナラヌ、斯ウ云フコト
ニナル、是モ非常ナ社會ノ人心ニ私影響ノ
アルコトト思ヒマス、ソレノミナラズ政府
ノ所有米ハ各地ニ行渡ッテ居リマセヌ、比較
的少數ナ地方ニシカナイノデ、其處カラ各
地ヘズット配給ヲセナケレバナリマセヌ、各
地ニ要求ガ起ッテ各地ニ拂下ノ要求ガ起ル
トスレバ、各地ニ配給ヲシナケレバナラヌ、
其配給ヲスル運賃諸掛ト云フコトヲ考ヘナ
ケレバナラヌ、其運賃諸掛ト云フモノハ誰
ノ負擔ニナルカト云フト小農ノ負擔ニナ
ル、斯ウ云フ事態ニナッテ來ハセヌカト云フ
コトヲ憂フルノデアリマス、來ザルコトヲ
希望スルノデアリマスガ、來ハセヌカト云
フコトヲ憂フルノデアリマスガ、是ハ容易ナ
ラヌ事柄ガ起ッテ來ハセヌカト云フコトヲ
心配ニ堪ヘヌノデアリマス、賣リ過ギノ結
果此夏カラ秋へ掛ケテ政府米ノ拂下ノ要
求ガ出テ來ル、之ニ對シテドウナサル御積
リデアルカト云フコトヲ伺ッテ見ナケレバ
ドウシテモ安心ガ出來マセヌ、但シ玆ニ一ツ
途ノアルノハ整理米ト云フモノガアリマス、
傷ミ米、傷ンダ米ヲ賣出ス、是ハ勿論二十三
圓三十錢ヨリ高クハ賣レナイ、傷ンダ程度ニ
依ッテ幾ラ安ク賣ッテモ宜イノデアリマスガ、
併シソレハ宜イノデアリマスガ、ソレハ數量
ハ、ソレノ方ハ知レテ居ル、迚モ全國ノ要望ニ
應ズル程ノ米ノ額ニハナラナイ、第五問ハ、
昨日總理大臣ハ衆議院ニ御出席ニナリマシ
テ、衆議院ノ附帶決議ニ「米穀ノ數量及價格調
節ニ關スル現行制度ノ不備ヲ根本的ニ改正セ
ムカ爲速ニ審議會ヲ設ケ內地外地全部ニ通ス
ル統制計畫ヲ樹テ臨時議會ヲ召集シテ之ヲ
提出スヘシ」ト云フ附帶決議ガ附キマシタ、
私ハ丁度衆議院ノ議事ヲ傍聽クテ居リマシ
タ、デ總理大臣ハ之ニ對シテ言明ヲサレマ
シタ、是ハ或ル新聞ニ出テ居ル所ヲチヨット
讀ンデ見マスト、「政府ハ本案ノ通過後出來
ルダケ速ニ根本對策ヲ得ルコトニ努力シ、
成案ヲ得ルコトガ出來マシタナラバ臨時議
會ノ召集ノ手續ヲ執リ、次ノ米穀年度ニ實
施シ得ルヤウ考慮シタイト思ヒマス」斯ウ
アリマス、勿論只今總理大臣カラシテ臨時
議會ヲ召集スルト云フコトヲ明言イタシマ
スコトハ是ハ出來マセヌガ、是ハ當然ダラ
ウト思ヒマスケレドモ、併シ御決意ノ程ハ
明ニ是デ知ラレマス、詰リ今年ノ出來秋マ
デニ臨時議會ヲ召集サレルモノト存ジマ
ス、又衆議院モ斯ク了解シテ此案ヲ通過サ
シタト思ヒマスシ、又私モ總理大臣ガ斯ク
マデ仰シヤレバ其通リデアラウト信ズルノ
デアリマス、果シテ其通リデアッタトスルナ
ラバ、今日ハ此初メノ提案ノ時トハズッカ
リ形勢ガ變ッテ居ルノデアリマス、臨時議會
ヲ召集スルト云フ御考ニナッテ居ルコトハ
確カデアリマス、必ズ召集スルト云フコト
ハ分リマセヌケレドモ、召集スル御考デア
ルト云フコトハ確カデアリマス、サウスル
ト出來秋迄ニ臨時議會ヲ召集サレルノナラ
バ、共出來秋以後ニ要求スル資金ノ增加ヲ
何故今日モ要求セラレルノデアリマスカト
言ヒタクナル、ト云フノハ此資金ノ用途ハ
來年ノ米、詰リ今年米ガ出來テカラ先ニ要
ル金デアリマス、尤モ此一億五千萬圓ノ方
ノ資金ハ是ハ昭和八年米ニ付テモ要ルラシ
イノデス、ケレドモソレハ極ク少部分デア
ルト云フコトデアリマス、農林大臣ノ衆議
院ニ於ケル說明ニ依リマシテモ、特別會計
ノ增額ト共ニ實施イタシマスル臺鮮米ノ買
上ハ、昭和八年產米カラ昭和九年產米ニ亙
リマシテ、寧ロ多量ニ昭和九年ノ產米ニ振
向ケル豫定デアリマス、多量ト云フノハド
ノ位カ分リマセヌガ、一億五千萬圓ノ大部
分ハ昭和九年產米、卽チ今年出來ル米ヲ買
フノデアル、斯ウ云フノデアリマス、サウ
スルト八年產米ヲ買フノハ僅カデアリマ
ス、僅カノモノナラバ今ダッテマダ確カ一億
圓以上アルト思ヒマス、又整理米ノ金モ相
當ニ出ルト思フノデ、之ニ應ズルニ何ノ差
支ハナイノデアル、斯ウ云フ風ニ私共ハ考
ヘルノデアリマス、ドウ云フ譯デ臨時議會
ヲ召集スルト云フコトノ御決心ガ出來タ今
日ニ於テモ、矢張リ來年度ノ分迄考へテ置
カナケレバナラヌカト云フコトガドウシテ
モ分リマセヌ、私ハ本來申シマスト政府ハ
速ニ此根本策ヲ考究シテ、サウシテ來年度
ニ應ズル確實ナ方法ヲ御立テニナルノガ宜
イト斯ウ思フノデアリマス、今日世間デ傳
ヘラレテ居ル米穀界ノ困窮、窮狀ト云フモ
ノハ政府ノ御提案ノ理由ヲ伺ッテ見マスト、
何ダカ朝鮮米、臺灣米ノ統制ヲシナケレバ
ナラヌ、又之ニ伴ウテ生產制限ヲシナケレ
バナラヌ、是サヘヤレバ此日本ノ米問題ハ
解決スルノダ、斯ウ云フ風ニ思ッテハオイ
デニナラヌカト云フヤウニ考ヘルノデアリ
マスケレドモ、私ハ斷ジテサウデナイト思
フ、如何ニモ朝鮮米臺灣米ノ非常ニ殺到スル
コトハ是ハ困ルノデアリマス、困ルノデア
リマスカラ相當ナ方法ヲ設ケナケレバナリ
マセヌガ、併シ朝鮮米、臺灣米ヲ除イテモ
非常ニ重大ナ問題ガ此米穀政策ニ現ニアル
ノデアリマス、要スルニ今日ノ窮況ハ現在
ノ米穀制度ノ缺陷ニ起因スルモノト斯ウ考
八 、朝鮮臺灣ヲ、或部分ノ人ハヒドク目
ノ敵ノヤウニシテ、追拂ハナケレバナラヌ
ト云フヤウニ考ヘテ居ルカモ知レマセヌケ
レドモ、是ハ驚クベキ間違ヒデアリマス、
現ニ內地ノ生產ヲ以テ我ミ內地人ノ食糧ニ
充テルコトハ出來マセヌ、古イコトハ別ト
致シマシテ、昭和二年ノ米穀年度カラ昭和
八年迄、年々八百萬石乃至千二百萬石ト云
フモノヲ朝鮮臺灣カラ入レナケレバ國民ノ
食糧ハ足リナイノデアリマス、ドウシテモ
朝鮮臺灣ヲ除クト云フ譯ニハ行カナイ、外
ノ點カラモ除クト云フ譯ニ行キマセヌガ、
此食糧ノ需給ノ關係カラ言ッテモ、我ガ內地
ガ兩外地ニ負フ所ガ頗ル大デアルト云フコ
トハ忘レテハナラヌコトデアリマス、又ソ
レト一面ニハ一時ニヒドク殺到スルノハ朝鮮
臺灣米ガ殺到スル、是ハ主トシテ朝鮮米デ
アリマスガ、朝鮮米ガ殺到スルカラ内地ノ米
價ガ壓迫サレル、是モ事實デアラウト思フ、
此兩方ヲ調和スルト云フコトハ政府ノ非常
ニ重大ナ責任デアリマス、ケレドモ私共露
骨ニ申上ゲマスト、今日迄內地ノ政府當局
ナリ、朝鮮臺灣ノ當局ノヤリ方ガ甚ダ私共
ノ腑ニ落チヌコトガ多イノデアリマス、互
ニ自己ノ管轄、所管スル範圍ノ利益バカリ
考ヘテ
〔副議長伯爵松平賴壽君議長席ニ著ク〕
先方ノ利害ニハ餘リ多ク耳ヲ傾ケヌ、目ヲ
塞グト云フコトガ澤山ニ現ハレテ居ルヤウ
デアリマス、是ハ無論相當ニ改革シナケレ
バナリマセヌケレドモ、此朝鮮、臺灣ノ問
題ヲ解決シクカラト云ッテ、チヨットモ日
本内地ノ米ノ根本ノ問題ハ解決サレナ
イ、ドウシテモ此根本問題ヲ解決シナケ
レバナラヌ、此根本問題ニ付テ十分ニ調
査〓究ヲ盡スト云フコトニ、總理大臣ガ御
同意ニナッタコトハ誠ニ私ハ國家ノ慶事
デアルト思フノデアリマス、根本問題
ト申セバ色ミアリマス、此處デ數ヘ上ゲ
ルコトノ出來ナイ程アリマスガ、先以テ色
色ノ中デ公定米價ヲ定ムルニ當ッテ、米ノ
生產費ニ非常ニ重キヲ置イテ居ルト云フコ
トガ、一體正シイカ正シクナイカト云フコ
トヲ考ヘナケレバナラヌ、私ニハ一定ノ說
ガアリマス、是ハ私ノミノ說デハナイ、斯
ウ云フコトモ一ツノ重大ナ問題デアリマ
ス、又國民ノ一般ノ家計費、國民一般ノ暮
シノ費用ヲドウ云フ風ニ考ヘタラ宜イカ、
詰リ米ノ下値ヲ生產ニ依ッテ定メルト云フ
ナラバ、上値ハ家計費デ定メナケレバナラ
ヌノデアリマスガ、其家計費ヲドウシタラ
宜イカ、是ハ調ベガ十分デナイカラ確實ニ
申上ゲルコトハ出來マセヌガ、是モ重大間
題デアリマス、ソレカラ生產費ノ調査ヲ二
千何百戶カラ取ッテ内地デ調ベラレテ居リ
マスガ、其調査ノ結果ヲ役所デ纒メテ取扱
フ、其取扱方ガ一體適當デアルカドウカト
云フコトモ考ヘナケレバナラヌ、現ニ七年
度ノ生產費ハ二十圓六十八錢トナッテ居リ
マス、七年度ハ二十圓六十八錢デアルノガ
八年度ハ二十二圓十七錢ト云フモノニナッ
テ居ル、何故一圓五十錢モ上ッタカ、其八年
度ト云フノハ非常ニ生產ノ多イ、米ノ洪水
ガ起リサウダト言ハレル程產額ガ多カッタ、
產額ガ多ケレバ生產費ガ下ルコトガ當リ前
デアリマス、ソレガ却ッテ逆ニ一圓五十錢モ
上ッタ、斯ウ云フコトハドウ云フモノデア
ラウカ、ソレカラ七年度ノ生產費ノ調べノ
中デ、是ハ確カ十五圓カラ三十圓ノモノヲ平均
シテ出シテアルト思ヒマスガ、八年度ハ今度
ハ十八圓カラ三十三圓ノモノガ平均シテア
ル、此取扱方ガ一體適當デアルカドウカト
云フヤウナコトモ問題デアル、物價參酌値
ヲ下値一割、上値二三割、是デ以テ最低物
價ト最高物價ヲ定メル一ツノ標準ニナッテ
居ルト云フコトガ、果シテ適當デアルカド
ウカ、米價ノ過當ナル吊上ガ却テ生產ヲ奬
勵スル、內地ノ生產モ奬勵スルガ、朝鮮、
臺灣ノ生產モ奬勵スルト云フコトガアリハ
セヌカ、又適當ノ吊上ハ却テ國民ノ消費ヲ
抑制スル、抑ヘルト云フコトガアリハセヌ
カト云フヤウナ問題ハ幾ラデモアリマス、
斯ウ云フコトヲ考究スルト云フコトハ非常
ニ宜イコトト思フ、ソレヲ考究シテ初メテ
米ノ問題ガ解決スルノデアリマスガ、ソレ
ヲ考究シヤウト總理大臣モ御考ニナッテ居
ルシ、又考究ガ出來タラバ出來秋迄ニ臨時
議會ヲ召集シヤウト仰セニナッテ居ルシ、又
此問題ノ結論ヲ得ラレナイト云フコトハ斷
ジテナイ、今ハマダ三月デアリマス、出來
秋迄ニハ半年時ガアル、半年デ出來ナケレ
バ一年カカッテモ、二年カカッテモ出來ハシ
ナイ、十分ニ考究スル期間ガアリマス、サ
ウスルト臨時議會ヲ召集サレルト云フコト
ハ當然ノコトデアルヤウニ思フノデアリマ
ス、サウスルト何モ來年度ニ要スル三億圓
ハ勿論ノ話、大部分來年度ニ要スル一億五
千萬圓ヲドウシテモ此際通サナケレバナラ
ヌト云フコトハ、私ニハ理由ヲ發見スルニ
苦シムノデアリマス、是デ私ノ質問ハ終リ
マシタ、大變長ク而モ細カイ數字ヲ擧ゲテ
諸君ノ御〓聽ヲ煩ハシタコトヲ此場合ニ謝
シマス
〔國務大臣後藤文夫君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X03119340323&spkNum=29
-
030・後藤文夫
○國務大臣(後藤文夫君) 只今上山サンカ
ラ御質問ニ併セテ、深イ平素ノ御〓究ノ結
果ニ基ク各種ノ數字ヲ御擧ゲニナッテ質問
ノ趣旨ヲ明カニセラレタノデアリマス、私
ハ深ク傾聽ヲ申上ゲタ譯デアリマス、ソレ
ニ付キマシテ質問ノ要旨ニ搔摘ンデ御答ヲ
申上ゲタイト思ヒマス、第一ニ今年ノ端境
期ノ持越米ガ世間デ千六七百萬石ニナルト
言ハレテ居ルガ、政府モサウ云フ考ヲ持ッテ
居ルノデアルカ、其推算ハ御自身ノ色ミナ基
礎カラノ御〓究ニ依レバ非常ニ間違ッテ居
ルヤウダ、格別多クノ持越米ガ端境期ニ生
ズルノデハナイデアラウト推算ヲスルノ
ダ、サウスレバソレヲ基礎ニシテ色ミナ方
策ヲ慌テテ立テルニモ及バナイデハナイ
カ、斯ウ云フ御意見ニ基イテノ御質問デア
リマシタ、是ハ一ツノ御見解デアルト存ジ
マス、併ナガラ色ミ基礎ニ付テノ御話ハア
リマシタガ、政府ハ大體矢張リ千六七百萬
石ノ過剩米ガ出來ルモノト云フ計算ヲ立テ
マシテ、ソレヲ基礎ニ處置ヲ講ジテ置クコ
トガ一番安全デアリ、今日ノ米穀事情ニ處
シマシテ、農村初メ一般ノ經濟上ノ安定ヲ
得セシムルノニ必要デアルト考ヘテ居ルノ
デアリマス、今年ノ·····今年ト申シマスト
昭和八年ノ產米デアリマスガ、產米ガ大豐
作デアッタ、未曾有ノ大豐作デアッタト云フ
コトヲ申シマスノハ、最後ニ實收高ノ調査
ヲ完結イタシマシテ、是ハ爭ヘナイ所デア
ルト感ジタノデアリマス、上山サンノ御推
算ニ依リマスト、實收高ノ調査方法ガ違ッテ
居ルコトガ、可ナリ實收高ヲ增加セシメテ
居ルデアラウ、實際ハ左程デナカッタノデア
ラウト云フ御堆測デアリマス、我ミモ實收
高ノ調査方法ガ大分精密ニナリマシタノ
デ、ソレガ爲ニ平年ナラバ隱レテ居ル數字
ガ此實收高ニ現ハレテ居ルデアラウト云フ
コトハ推測ヲ致シテ居リマス、併ナガラ是
ガ何程其中ニ現ハレテ居ルカ、何百萬石現
ハレテ居ルカト云フコトハ、全ク判斷ノ出
來ナイコトデアリマス、サウシテ一面試驗
場其他各地ニ於ケル實際ノ收穫ノ事例ヲ見
マスト云フト、昨年ノ收穫ガ可ナリ大キナ
增產デアックト云フコトヲ推測スルニ十分
ナノデアリマス、從テ此七千萬石以上ト云
フ數字ガ、不斷ノ是迄ノ調査デアッタナラ
バ、其幾ラカ內輪デアッタデアラウト云フ
推測ハ我ミモ致シマス、併ナガラ何程内輪
デアッタカト云フコトハ全ク判斷ガ出來マ
セヌ、矢張リ我ミトシテバ此計數ニ現ハレ
タモノガ增產デアルトシテ、將來ノ計ヲ立
テルコトガ一番今日ノ場合安全デアルト考
ヘテ居リマス、サウ致シマスルト矢張リ千
六七百萬石ノ端境期ノ持越ヲ生ズルデアラ
ウト云フ推算ニ相成ルノデアリマス、尙ホ
是ニ付テ消費ノ關係ヲモ御擧ゲニナリマシ
タガ、消費ノ一人當リト云フ計算ハ、誠
困難ナ實ハ計算ナノデアリマス、是迄政府
ガ致スノモ一般ノ世間デ行ヒマスノモ、
人ガ何程平均使フデアラウカト云フ實地ニ
付テノ調査ハ全クナイノデアリマス、分ラ
ナイノデアリマス、唯米ガ一年前ニ何程アッ
タ、ソレカラ一年後ニ收穫ト加ヘテ何程アッ
ク、其差ガ幾ラダカラ其間ニ是ダケ減ッテ
居ルノガ消費サレタモノデアラウ、海外ヘ
出タリ方々ノ輸出入ノ關係等ヲ差引キ致シ
マシテ、結局是ダケ減ッテ居ルカラ、ソレガ
此間ニ消費サレタモノデアラウ、ソレヲ人
ロデ割ッテ、一人當リ幾ラダト逆算シテ每年
出シテ居リマス、從テ收穫高ノ調査ナ
リ又現在高ノ調査ナリト云フモノガ動
キマスト云フト、消費ノ關係ヲ見ル數
字ガ動イテ來ルト云フヤウナ形ニナリ
マシテ、今日マデノ所本當ニ賴リニナ
ル一人當リノ消費量ト云フモノヲ、推算ス
ルコトハ困難ナノデアリマス、併ナガラ我
我ガ致シマスルノニハ、矢張リ此過去ノ實
蹟ヲ見マシテ逆算シタ數字ヲ用ヒル外ニハ
今日アリマセヌ、色〓之ニ考ヲ入レテ判斷
ヲシテ、ソレニ割增ヲシタリ、割引ヲシタ
リスル方法モゴザイマセウケレドモ、政府
ガ特別ニ實際政策ノ基礎ニ致シマスニハ、
矢張リ在來行ッテ居リマスルヤウナ、每年出
マス逆算ノ消費量ト云フモノヲ、大凡ソ過
去ヲ平均シテ將來ヲ推測スルト云フヨリ外
ニハナイノデアリマス、サウ致シマスト云
フト矢張リ上山サンノ仰セラレタヤウナ考
ヘ方ヲ以テ、直ニ之ヲ現實政策ノ基礎ノ數
字ニ致ス譯ニ行キマセヌ、我ミハ是マデ行
ヒ來ッタ大體常識的ナ方法ト致シマシテ推
算ヲスルト、矢張リ千六七百萬石ノ過剩米
ガ端境期ニ出來ルト云フ推算ニ大凡ソ相成
ルノデアリマス、尤モ今後ノ米ノ消費ガド
ウ云フ工合ニナリマスカ、又政府ノ持ッテ居
ル米ヲ領土外ニ處分イタシマスヤウナコト
ハ相當出來マスカ否カニ依ッテ、或程度ノ計
數ノ相違ハ生ジテ參リマス、是ハ的確ナ豫
定ハ全然出來ナイ事柄デアリマスガ、成ル
ベク之ヲ安全ニ見積リマシテ推算ヲ立テテ
參リマスト、千六七百萬石ト云フモノガ端
境期ニ持越サレルデアラウト考ヘルノデア
リマス、從テ上山サンノ仰セラレルヤウニ
大シテ過剩持越シハ、政府持越シト云フモ
ノヲ差引クトナイモノデアラウト云フコト
ニ考ヘマスレバ、今日御協贊ヲ願ッテ居ルヤ
ウナ案モ、急イデ出スニモ及バナイト云フ
御結論ニナルデアラウト思ヒマスガ、我〓
ノ見ル所デハ矢張リ此過剩米ノ存在ヲ前提
ト致シマシテ、只今申シタ數量ノ存在ヲ前
提ト致シマシテ、今年及ビ來年ニ掛ケテノ
方策ヲ樹立シテ、用意ヲ致シテ置クニアラ
ザレバ、今後ノ一年間ニ於ケル米價ノ安定
ト云フモノヲ圖ル上ニ、非常ナ不安ナ狀態
ヲ貽シテ行クト云フヤウニ相成ルヤウニ思
フノデアリマス、ソレカラ第二ニ最低回格
デ買上ゲタ米ガ九百餘萬石ニ上ボッテ居ル
ガ、是ハ將來ノ處置ノ困難ナモノデアラウ、
ドウ云フ風ニ處置サレル見込ミデアルカト
云フ御尋デアリマス、米穀統制法ヲ施行シ
テ參リマスルノニハ、最低價格ノ維持ヲ圖
ルト共ニ、最高價格以上ニ米價ノ上ラナイ
ヤウニスルト云フ仕組ニナッテ居リマス、從
テ統制法ノ下ニ於キマシテハ、政府ガ四五
百萬石ノ米ヲ持續ケテ參ルト云フコトハ、
大體考ヘテ居ラナケレバナラヌコトデアラ
ウト思ヒマス、最高價格ヲ維持スルト云フ
場合ガ來マシタ時分ニ政府ニ持米ガナイ、
或ハ非常ニ貧弱デアルト云フコトデハ餘程
困ル事情ガ生ズルト思ヒマス、四五百萬石
ノ米ハ買換等ヲ行ヒマシテ、成ルベク其損
失ヲ少ク爲スヤウニ致シテ、持續ケテモ宜
イト云フ考デ居ッテ宜シイト考ヘテ居リマ
ス、併ナガラ是ハ實際ノ事情ニ卽シテノ話
デアリマシテ、强ヒテソレダケ持タナケレ
バナラヌト云フノデハアリマセヌケレドモ、
持ッテ居ルト云フコトヲモ大體前提ト致シ
テモ宜シイノヂヤナイカト思ヒマス、サウ
致シマスト、其殘餘ノ米ハ處分ヲドウスル
カト云フ問題ニナリマス、是ハ新規用途等
ノ開拓ノ〓究モ、成ルベク急イデヤリタイ
ト思ッテ居リマスルシ、又今日ノ國際經濟
市場ニ於テ、海外賣却ガサウ自由ニ參ルト
ハ申サレマセヌケレドモ、出來得レバ海
外ニ、國際貿易ノ關係ニ惡イ影響等ヲ及
ボスヤウナコトノナイヤウナ用意ヲ十分
ニ致シテ、處分ヲ致シタイト思ヒマスル
シ、又其間ニ整理賣却等ノコトモ起ッテ
參リマスルシ、殘餘ノ四五百萬石ノ米ノ處
置ハ急速ニ、半年乃至一年ニ全部ヤッテシマ
フト云フコトハ困難デアリマセウケレド
モ、年所ヲ多少要シマスレバ、是ガ處置ハ
必シモ困難デハナイト思フノデアリマス、
併ナガラ更ニ其上ニ又來年モ米ノ買上ヲス
ルト云フヤウナコトガ續ケバ仕樣ガナクナ
ルノヂヤナイカ、無限ニ蓄積ヲスルノデハ
ナイカト云フヤウナ御質問モ併セテアッタ
ヤウデアリマス、是等ノ點ニ對シマシテハ
一面ニ消費ノ方面ノ開拓、一面ニハ生產ノ
方面ニ於ケル統制、共他ノ根本的ノ統制法
ノ外廓ニ於ケル工作ガ、將來準備サレナケ
レバナラヌト云フコトヲ我ミモ考ヘテ居リ
やっ、ソレ等ノ點ニ付テハ今後十分ニ考究
ヲシテ、方法ヲ立テタイト考へテ居ルノデ
アリマス、ソレカラ第三ニ調節事業資金ハ
將來幾許ヲ要スル見込デアルカ、何時迄デ
モ足リナクナレバ增ス、足リナクナレバ增
スト云フコトデ行クノデハ致方ガナイデハ
ナイカ、此調節事業資金ガ米穀統制法ヲ運
用シテ參リマス上ニ、將來幾許マデ行ケバ
止マルカ、或ハ幾許マデ行ッテモ止マラナ
イカト云フコトヲ今日明ニ申上ゲルコトハ
困難デアリマス、唯在來米穀法ヲ實施シテ
カラ今日ノ統制法ニ至リマスルマデ十數年
ノ間、相當ニ米穀需給特別會計ノ資金ハ、
所謂損失ト云フモノヲ現ハシテ參ッテ居リ
マス、此統制法ノ運用ニ入リマスル時ニ、
昨年ノ十一月ノ初ニ於テ約二億ニ近イ、所
謂缺損ト稱スル數字ヲ現ハシテ居ルノデア
リマス、其後統制法ノ運用ニ入ッテ參ッタ譯
デアリマス、デ是等ノモノガ色ミノ批評ハ
アリマスルケレドモ、營利的ナ計算ヲ致ス
事業特別會計ナドト違ヒマシテ、米穀政策
ガ一種ノ國家ノ必要ナ政策トシテ行ハレテ
參リマスル限リ、ウマク參リマスレバ所謂
特別會計ニ缺損モ生ジナイヤウナコトモア
リ得ルト云フ想像ハ付クノデアリマス、又
サウ云フ風ニ元ノ米穀特別會計ハ說明サレ
テ樹立サレタノデアリマスルケレドモ、近
年ノ經濟狀況ニ鑑ミテ見マスルト云フト、
矢張リ米穀政策運用ノ爲ニ、國民ノ負擔ス
ル失費ガ、自ラ此特別會計ノ中デ現ハレテ
來テ居ルト云フコトニ考ヘタ方ガ適切デア
ラウト思フノデアリマス、デサウ言ッタヤウ
ナ國民ノ負擔ニ屬スル失費ガ特別會計ノ中
デ現ハレテ來ルト云フコトハ、今後ノ統制
法ノ運用ヲ續ケテ參リマス上ニモ、將來相
當ニ續イテ參ルデアラウト思ヒマス、併ナ
ガラ我ミトシテハ其失費ヲ最少限度、ニ止メ
ルト云フ用意ヲシ、又努力ヲ致サナケレバ
ナラヌ、致シタイト考ヘテ居ルノデアリマ
ス、唯米穀統制法ガ昨年十一月實施ヲセラ
レマスルヤ、恰モ上山サンノ御推測デハ
大シタ豐作デナイトモ仰セラレテ居リマ
スルガ、我ミノ今日マデノ考デ見マシテ
ハ、未曾有ノ大豐作ニ臨ンダノデアリ
マシテ、千萬石ニ近イ最低價格ノ買入ヲ
モ致スト云フヤウナ事情ニ、統制法ノ結
果ガ相成ッタノデアリマシテ、實ハ是ハ統
制法制定ノ時ニ於テ我ミハ豫想シナカッタ
程ノ大キナ數字ニ上ボッタノデアリマス、從
チ統制法制定ノ初年ニ於テ、又更ニ今後
ノ資金ノ增額ヲ考ヘナケレバナラヌ事態ニ
陷リマシタノデアリマスルケレドモ、統制
法ヲ實施シテマダ僅ニ半歲、米ノ出來秋ニ
ハ一囘シカ臨ンデ居ラナイノデアリマス、
之ヲ以テ統制法ノ功罪ヲ判斷スルコトハ非
常ニ早イノデアルト私ハ考ヘテ居ルノデア
リマス、從テ今囘ノ資金增額竝ニ萬一ノ場
合ニ資金ヲ更ニ增額シ得ル限度ヲ定メテ置
イテ、共範圍內デ必要ナダケノ增額ヲスル
途ヲ開イテ置イテ戴キマスト云フコトハ、
第一ニ申シマシタ過剩米ノ狀況カラ考ヘ、
更ニ今年ノ出來秋ニ於テ又昨年ト同ジヤウ
ナ大豐作ガ來タルモノト一應想像イタシマ
シテ、サウ云フ場合ニモ應ジ得ル準備ヲ致
スト云フ爲ニ、此特別會計ノ二段ノ增額、
一ツハ確實ニ增額シテ戴ク、一ツハサウ云
フヤウナ事態ガ若シ起ッタ時ニモ安心ノ行
クダケノ處置ヲ付ケテ置イテ戴カウト云フ
爲メノ、增額ヲ爲シ得ル途ヲ開イテ置クコ
トニ致シマスル方法、此二段ノ方法ヲ御願
ヲ致シテ居ル譯ナノデアリマス、上山サン
ノ御想像ノ如ク一切ガ幸ニ過剩モナク、非
常ニ工合好ク參ルコトデアリマスレバ、是
等ノ準備ハ準備ニ止マリマシテ、格別ノ支
出ヲセズニ濟ムコトニナルカモ知レヌト思
ヒマスルガ、サウナリマスレバ我ミモ誠ニ結
構ダト考ヘルノデアリマスガ、併シ是迄ノ
事例及昨年ノ事實ニ徵シテ見マシテ、將來
ノ安全ノ措置ト云フモノヲ致シテ置カナケ
レバ米穀ノ關係ガ非常ニ不安ヲ生ジテ參リ
マシテ、米價等ニモ不安定ナ實情ヲ表ハス
虞レガアリマスノデ、此今年ノ端境期カラ
來年ニ掛ケテノ處置ヲ中心ニシマシテ法案
ノ提出ヲ致シタ譯デアリマス、ソレカラ第
四ニ地方デ賣急ギヲシテシマッタ爲ニ、持米
ガ少クナッテ七八月ノ交ニナレバ小農以下
ノモノハ、又米ノ拂下ヲ政府ニ求メルト云
フヤウナ事態ニナリハセヌカ、サウ云フ懸
念ガアルガ、ドウカト云フ御尋ネデアリマ
シタ、是ハ實際ノ實情ニ付キマシテ見マセ
ヌト、勿論ハッキリ致サナイコトデアリマス
ガ、若シサウ云フコトガアリマシタトシテ
モ、サウ廣汎ニ各地方ニ亙ッテ起ルト云フコト
デモアルマイト思ッテ居リマス、又サウ云フ
事態ガアリマシテモ、籾ノ貯藏ヲ相當ノ數
量イタサセテ居ルノデアリマスカラ、籾ノ
貯藏ヲ解除シテヤルト云フ途ガ第一段ニハ
アルト思ヒマス、ソレカラ次ニ誠ニ困窮ヲ
シテ居ル町村等ニ、或ハ府縣ニ對シテ或ハ
町村ニ對シテ、延納ノ拂下ゲヲ致シマスト
カ、貸付ヲ致シマストカ云フヤウナ途ガ開
イテアリマス、是ハ古米等ノ廉價ニ拂下ゲ
ノ出來ルモノヲ處置スル、或ハ整理米ヲ處
置スルト云フ限度ニ於キマシテ、相當ノ始
末ハ付クコトト思ヒマス、在來ノ斯ウ云フ
場合ニ處スル方法ヲ行フコトニ依ッテ、ソレ
ハ實情ニ應ズルコトガ出來ルダラウト思ヒ
マス、又懸念サレルガ如クニ、サウ云ッタコ
トヲ非常ニ廣汎ニ行フト云フコトハ、一面
ニ米價ノ維持ヲ圖ルコトト衝突ヲ起ス虞レ
ガナイトハ限ラヌノデアリマスカラ、在來
ト同樣ナ用意ヲ以テ之ニ處シナケレバナラ
ヌト考ヘテ居リマス、政府ガ買上ゲヲスル
コトニシタガ爲ニ、特ニ七八月ニ拂下要
求ガ多ク起ルノデハナイカト云フヤウナ御
話モアリマシタガ、私共ノ觀ル所デハ此出
來秋ニ米ヲ賣急グ小農ハ、米價ノ高低ニ拘
ラズ賣急ギヲセザルヲ得ナイ事情ニアッテ
賣急ギヲスルノデアリマスカラ、今年ノ如
ク米價ガ豐作ニモ拘ラズ比較的安定ヲシテ、
出來秋ニモ政府ニ賣リ或ハ政府外ニ特ニ相
當ノ値段デ賣ッタト云フ事情ハ、小農以下ノ
モノニ取リマシテハ、是ガ放任サレテ居ッタ
時ヨリモ惡イ狀態ニ、小農ガ陷ルノダト云
フ譯デハナイト私ハ想像イタスノデアリマ
ス、ソレカラ第五ニ臨時議會ノコトニ付テ
御尋ネガアリマシタ、臨時議會ヲ開ク政府
ガ決心ヲ持ツナラバ、主トシテ此出來秋後
ニ用ヒラレル此法案ハ、今ヤラナイデモ宜
イヂヤナイカ、臨時議會ヲ待ッテ總テノコト
ヲ處置シ得タラ宜クハナイカト云フ御尋ネ
デアリマシタガ、是ハ御尋ネノ中ニモアリ
マシタヤウニ、政府ハ出來ル限リ今後速ニ
調査ヲ遂ゲテ、成案ヲ得マシタナラバ、臨
時議會ヲ開イテ實施ヲスル、來米穀年度ニ
モ間ニ合フヤウニ考慮ヲシヤウト云フコト
ヲ申シテ居ルノデアリマスケレドモ、臨時
議會ヲ開クコトハ成案ガ出來ルト云フコト
ト關聯ヲスルノデアリマス、又假ニ臨時議會
ヲ開クコトニ相成リマシテモ、臨時議會ニ
懸カル成案ガ、直ニ來米穀年度ノ中ニ、今
御協贊ヲ願ッテ居ルヤウナ準備處置ヲ必要
トシナイト云フヤウナ案トナッテ現ハレテ
來ルト云フコトヲ必スル譯ニハ參リ兼ネル
ノデアリマス、殊ニ各種ノ消費政策、卽
チ生產統制政策ト云フヤウナモノヲ盛込ムヤ
ウナ場合ヲ考ヘマスレバ、是ハ直ニ來米穀
年度ニ大キナ影響ヲ直グ現ハシテ來ルト云
フヤウナ譯ニハ······出來秋カラ早々ニ現ハ
レルト云フヤウナコトニハ參リ兼ネルノデ
アリマス、多少出來秋ニ何カ影響ノアル法
案ヲ作ルニシマシテモ、ソレガ今御協贊ヲ
願ッテ居ル法案ヲ必要トシナイト云フヤウ
ナモノヲ、必ズ臨時議會ヲ開イテ出スノダ
ト云フヤウナコトヲ、必然的ニ現ハレルモ
ノトシテ中ス譯ニ參ラヌノデアリマス、從
テ臨時議會ト云フコトヲ眼中ニ置キマシタ
爲ニ·······置ク爲ニ此法案ヲ今御協賛ヲ得ナ
イデモ宜シイト云フ結論ニハ、全然相成ラヌ
ト思フノデアリマス、今日此端境期ニ於キ
マシテ政府ノ持ッテ居リマス資金會計ハ、
極ク安全ヲ取ッテ推算ヲ致ス、ト申シマスノ
ハ是ヨリ多クナルデアラウト思ヒマスケ
レドモ、マア一番少クナッタ場合ヲ豫想シテ
計算ヲ致シマスルト、約一億圓ノ餘力ヲ存
スルト云フコトニナルノデアリマス、是
若シ今年ハ現ハレタヤウナ增產ガ假ニ現ハ
レルヤウナコトヲ豫想イタシマスルト、全
ク是ニハ應ジラレナイ資金デアリマシテ、
七八月ノ交カラ段々次ノ收穫ガ豫想サレル
時期ニナリマスト云フト、非常ナ不安ヲ生
ズルコトニ相成ルト思フノデアリマス、サ
ウ云フコトヲ旁、、計算ヲ致シテ參リマスレバ
玆ニ御協賛ヲ願ッテ居ルヤウナ處置ヲ一
立テテ置イテ戴ク必要ガアルト考ヘルノデ
アリマス、大要以上ヲ以テ御答ト致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X03119340323&spkNum=30
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031・上山滿之進
○上山滿之進君 只今ノ御答辯ノ第一問ニ
對スル數字上ノ認定ト申シテ宜シイカ、是
ハ私ハ可ナリ根據ヲ持ッテ居ル積リデアリマ
ス、此問題ハ今當面ニ出テ居ル所ノ問題ノ
中心ニナッテ居ル、或ハ魁ニナッテ居ルト云ッ
テモ宜シイト思フ、此年度ノ持越米ガ非常
ニ多イ、斯ウ云フカラ此案ガ出ルノデ、ソ
レガソンナニ多クナイト云ヘバサウセヌデ
モ宜イ、斯ウ云フコトニナル、ソコノ見込
ガ違ヒマス、政府ハ唯算盤ノ上デノ勘定ヲ
其儘ニ御使ヒニナッテ居ル、私ハ其內容ヲ檢
討シテ斯ク〓〓ノ數デアラウ、斯ウ云フノ
デアリマスカラ、是ハ重大ナ問題デ、此案
ノ根本ヲナス重大ナ問題デアリマスカラ、
此場合ニハ質問イタシマセヌガ、委員會デ
伺ヒマスカラ、ドウカ政府ニ於テモウ少シ
御〓究ヲ願ッテ置キタイト斯ウ思ヒマス、ソ
レカラ最後ノ質問ハ、實ハ申シ落シマシタ
ガ、私ハ總理大臣ニ伺ッタノデアリマス、丁
度幸ニ總理大臣御出席デゴザイマスカラ、
是ハ農林大臣ノ御答ヲ總理大臣ノ御答ト諒
承シテ、暫ク此儘デ此問題ハ止メテ置キマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X03119340323&spkNum=31
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032・松平頼壽
○副議長(伯爵松平賴壽君) 質疑ノ通〓者
ハ是デ終リマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X03119340323&spkNum=32
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033・池田政時
○子爵池田政時君 只今議題ニ上ボリマシ
タ臨時米穀移入調節法案外二案ハ重要ナル
法案デアリマスガ故ニ、其特別委員ノ數ハ
十八名トシ、其指名ヲ議長ニ一任スルノ動
議ヲ提出イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X03119340323&spkNum=33
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034・植村家治
○子爵植村家治君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X03119340323&spkNum=34
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035・松平頼壽
○副議長(伯爵松平賴壽君) 池田子爵ノ動
議ニ御異議ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X03119340323&spkNum=35
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036・松平頼壽
○副議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト
認メマス、特別委員ノ氏名ヲ朗讀イタサセ
マス
〔小林書記官朗讀〕
臨時米穀移入調節法案外二件特別委員
侯爵大隈信常君侯爵中御門經恭君
伯爵有馬賴寧君子爵靑木信光君
子爵片桐貞央君子爵綾小路護君
三井〓一郞君內田重成君
上山滿之進君伊澤多喜男君
男爵福原俊丸君男爵淺田良逸君
男爵稻田昌植君赤池濃君
長岡隆一郞君藤山雷太君
松本眞平君絲原武太郞君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X03119340323&spkNum=36
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037・松平頼壽
○副議長(伯爵松平賴壽君) 日程第八、輸
出水產物取締法案、日程第九、農會法中改
正法律案、政府提出、衆議院送付、第一讀
會ノ續、委員長報〓、是等ノ二案ハ之ヲ一
括シテ議題トスルコトニ御異議ゴザイマセ
ヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X03119340323&spkNum=37
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038・松平頼壽
○副議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト
認メマス、田所委員長ノ御登壇ヲ望ミマス
輸出水產物取締法案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報〓候也
昭和九年三月二十二日
委員長田所美治
貴族院議長公爵近衞文麿殿
農會法中改正法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報告候也
昭和九年三月二十二日
委員長田所美治
貴族院議長公爵近衞文麿殿
〔田所美治君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X03119340323&spkNum=38
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039・田所美治
○田所美治君 只今議長カラ宣〓ニナリマ
シタ、輸出水產物取締法案及農會法案ノ委
員會ノ經過及結果ヲ御報告申上ゲマス、委
員會ハ三囘開會ヲ致シマシテ、政府委員ト
詳細ナル問答ヲ交換イタシマシテ、審議討
論ノ結果、兩案トモ原案ノ通リ滿場一致デ
可決ヲ致シマシタ、先ヅ輸出水產物取締法
案カラ申上ゲテ見マスレバ、過日モ皆樣モ
御聽キノ通リ、近來水產物ノ輸出ハ非常ニ
多額ニ上ボリマシテ、旣往七箇年以來ノ平
均ヲ取ッテ見マスト、七千萬圓バカリニナッ
テ居リマス、多イ年ニハ八千五百萬圓ニモ
ナッテ居ル、斯ウ云フ有樣デアルノデアリマ
ス、貿易ノ伸張ノ上カラハ非常ニ喜ブベキ
コトデアリマスルガ、一面ニ於キマシテハ
又當業者ノ間ニ競爭ヲ馴致イタシマシテ、
其間ニ或ハ不統一ヲ來シ、或ハ粗惡品ノ生
產ヲ來シマシテ、海外ニ於テ或ハ信用ヲソ
レガ爲ニ滅却シ、本邦水產品ノ輸出盛ナル
際ニ、一面デハ水產物ノ聲價ヲ失墜スルト
云フ、斯ウ云フ虞ガ段々生ジテ來タノニ付
キマシテ、何カ是ハ取締ヲシナケレバナラ
又、斯ウ云フコトカラ近年間題ニナリマシ
テ、或ハ議院ニ對スル請願トナリ、或ハ各
種水產業ノ團體ノ建議陳情トナリマシテ、
或ハ政府ニ於テモ、ソレ〓〓ノ機關ニ諮問
ヲ致シテ調査イタシマシタ結果等ニ基イ
テ、本取締法案ガ提出ニナッタモノナンデア
リマス、其內容ノ極クアラマシヲ申上ゲテ
見マスト云フト、現在モ實ハサウナッテ居ル
サウデアリマスルガ、省令ノ極ク簡單ナ取
締規則ニ依リマシテ、檢査ヲ經テ合格品ヲ
輸出スルト、斯ウ云フコトハ今デモ行ッテ居
ルノデアリマスガ、法律ノ無イ爲ニ誠ニ不
備ナ、タック二箇條バカリノ省令ガ出テ居リ
やく、卽チ檢査ニ合格シタモノダケヲ輸出
スル、サウ云フモノダケヲ輸出スル、鮪ノ
冷シタヤツデアリマスルトカ、蟹ノ罐詰此
二種ガ省令ニ依ッテ輸出ノ取締ヲセラレテ
居ルノデアリマス、而シテ省令ノ規定デア
リマスルカラ不備ヲ免レヌ、斯ウ云フ狀態
デアルノデアリマス、ソレ故ニ今度ハ法律
ニ依リマシテ先キニ申上ゲマシタ當業者等
ノ希望モ、法律ノ制定ヲ望ミ、サウシテ完
全ナル指導取締ヲ望ムト、斯ウ云フコトデ
本案ガ出來タノデアリマス、卽チ其趣旨ニ
基キマシテ一層檢査ヲ嚴正ニシ、且ツ統一
ヲ得セシメルガ爲ニ、主務大臣ノ指定シタ
ル種類ノ水產物ニ付キマシテハ、檢査ニ合
格シタルモノデナケレバ一切輸出ヲ禁ズ
ル、是ガ本案ノ骨子デアルノデアリマス、
ソレニ附帶シマシテ其特定ノ水產物ノ製造
加工等ニ從事シテ居リマス者ハ、其前ニ於テ
豫メ許可ヲ得ナケレバナラヌ、自由營業ノ範
圍ヲ取締リマシテ、拘束シマシテ、免許營業ニ
スルト云フ規定ナドモアルノデアリマス、或
ハ又其製造加工ノ工程ニ於キマシテ、工場ノ
設備ヲ取締ル、設備ノ取締ニ關スル命令モ詳細
規定スル、法律ノ委任ニ依リマシテ、ソン
ナ規定モ備ッテ居リマス、又尙ホソレ等ガ出
來マシタ上ニ、當業者ノ團體、例ヘバ水產
組合トカ、水產組合ノ聯合會トカ云フモノ
ニ對シマシテハ、統制上必要ナル命令モ發
シ得ル、或ハ尙ホソレガ不徹底デアルナラ
バ當業者各個人ニ對シテモ統制上ノ事項ヲ
命ズル、斯ウ云フヤウナ取締監督ヲ周到ニ
致シマシタ規定ガソレ〓〓備ッテ居リマス、
又是等ニ附帶シマシテ、監督上ノ諸般ノ規定
ヲ備ヘマシテ、又ソレ等ニ違反シマシタモ
ノニ付テハ各箇ニ付キマシテ、詳細ナ制裁
ノ規定ヲ具シマシテ、總計十四條ノ規定ガ
出來テ居リマスヤウナ譯デアリマス、右ノ
ヤウナ趣旨ニ依リマシテ、政府ハ一方デハ
營業ノ自由ノコトモ考ヘ、一方デハ輸出ノ
競爭、ソレガ爲ニ製品ノ聲價ヲ失墜スルノ
ヲ防グ、又一面ニハ輸出品ノ增加ヲ圖ル等、
調節宜シキヲ得マシテ、本案ノ實行ニ掛
リタイ、斯ウ云フヤウナ趣意デアリマス、
詳細ノコトハ又速記ヲ御覽ヲ願ヒタイノデ
アリマス、色ミノ質問應答ガ交換セラレマ
シタ、其中ノ主ナル一二ヲ御紹介ヲ申上ゲ
テ見マスレバ、一體檢査ヲヤルナラバ、國
家ガ檢査ヲスルヤウニシテハドウデアル
カ、現在ハ御承知ノ御方モアリマセウガ、
水產組合、或ハ水產組合聯合會等ニヤラシ
テ居ルノデアリマス、前ニ申シマシタヤウ
ナ誠ニ不十分ナガラニ其檢査ヲヤラシテ居
ル、矢張リ其方法ヲ政府ハ續ケル積リデ居
ルノデアリマスカラ、寧ロ國營ノ檢査ヲヤッ
テハドウデアルカ、斯ウ云フコトノ問ガアッ
タノデアリマスガ、ソレニハ大分豫算モカ
カルノデアルシ、又從來ノ檢査モ或ハ嚴正
ヲ缺ク場合モナイデハナイケレドモ、相當
ナル成績ヲ擧ゲテ居ルカラ、暫クノ間ハ水
產組合及水產組合ノ聯合會等ノ自治的ノ機
關ニ依ッテ、相當ノ監督ノ下ニ本案第一條
ノ檢査ヲヤル積リデアル、若シ夫レ徹底ヲ
期スルナラバ國營ニ越シタコトハナイ、斯
ウ云フ答辯ナドモアッタノデアリマス、第一
條ニ依リマシテ、本案ニ依ッテ取締ヲ第一ト
スル水產物ノ種類ハ、先ヅドンナ物デアルカ
ト云フ質問ナドモ起リマシタ、ソレハ先ヅ差
當ッテ本案成立後直ニ著手ヲ致シマスノハ、
現在ノ通リ蟹······最モ其輸出ガ水產物中ノ
最重要位ヲ占メテ居リマスル蟹ノ罐詰、或
ハ鮪ノ冷凍シタ物、冷凍鮪、此二種カラ始
メル積リデアル、サウシテ追ヒ本法ニ依ッテ
必要ナル限度ニ應ジマシテ、其他ノ水產物
ニ及ブ、例ヘテ言ッテ見レバ近來發達シタ
「フイッシユ·ミール」ナドモアルサウデア
リマス、或ハ鮭トカ鱒トカ云フヤウナモノ
ニモ及ンデ行ク、卽チ此法律ニ依リマシテ
自由ニ仲縮ヲ致シテヤル積リデアル必要ニ
應ジテ······、コンナ答辯デアリマシタ、或
ハ又取締ダケデナシニ南洋、北洋等ニ於ケ
ル漁業ノ奬勵指導ト云フヤウナ方面ニ付テ
ノ問答モ交換セラレタノデアリマス、或ハ又
輸出ト云フテモ、相手ノ國ノ關係ニ依ッテ
モ其寛嚴ヲ異ニセネバナルマイ、東洋ノ例
ヘバ支那方面ニ輸出スルモノト、歐米各國
ニ輸出スル物ニ付テハ品物モ違フシ、又取
締ノ程度モ寬嚴宜シキヲ得ナクチヤナラヌ
ヂヤナイカ、斯ウ云フ意味ノ問答モ交換セ
ラレタノデアリマス、相當ノ政府ニ於キマ
シテモ答辯ハ致シマシテ、先以テ本案ニ付
テ目的トスル所ハ歐米各國ニ對スル輸出ノ
取締デアッテ、支那方面ニ對スル物ハ、
先ニ申上ゲマシタ免許ノ許可ヲ得ナケレ
バ生產ガ出來ヌトカ云フヤウナコトマデニ
ハ及ボサヌ、況ヤ檢査ナクシテモ差支ガナ
イ、本案ニ依リマス檢査ハ······自治的ニヤ
リマス檢査ハ組合等デヤッテ居リマセウ
ガ······サウ云フヤウナ答辯モアリマシテ、
質問者ノ丁度趣旨ニ合致スルヤウナ方針ヲ
執ッテ行ク、斯ウ云フヤウナ答辯デアッタノ
デアリマス、十四箇條バカリノ法案デアリ
マスルガ、大體ニ只今申上ゲマスヤウナ趣
旨カラ見マスト云フト、誠ニ內容モ適切デ
アッテ、運用宜シキヲ得マシタナラバ、將來
ノ輸出物ヲ一面ニ於テハ增加ヲ圖リ、一面
ニ於テハ海外ノ信用モ保持シツツ、水產物
ノ原料等ノ滅失モ防ギマシテ、相當ナ成績
ヲ擧ゲルコトガ出來ルダラウ、斯ウ云フ意
味デ全會一致デ原案ノ通リ可決ヲ致シマシ
ク、此段御報〓ヲ致シテ置キマス、モハフ
ツハ農會法デアリマス、農會法ハ御覽ノ通
リ二十有餘箇條ニ亙リマシテ、詳細ナル、
細カイ其文字ハ現ハレテ居リマスルガ、此
改正ノ骨子ハ別段此農會ノ性質トカ、或ハ
目的トカ云フヤウナ根本ノ程度ニハ少シモ
及ンデ居ラヌノデアリマス、一言ニシテ申
シマスレバ、過日モ御聽キデアリマシタラ
ウガ、農會ヲ組織シテ居リマスル議決機關
デアリマストカ、執行機關デアリマスト
カ、機關ノ組織ヲ少シ變ヘマシタト云フヤ
ウナ點ガ一點、ソレカラ其機關ヲ選擧イタ
シマスル選擧ニ關スル規定等ヲ改正ヲ致
シ、或ハ議決機關ノ是マデノ不備ノ所ヲ改
メマシテ、監督ニ關スル規定モ從來ノ不備
ニ鑑ミマシテ、改メタイト云フヤウナ寧ロ
事務的ノ方面ノ組織ニ關スルコトデアリマ
シテ、農會ニ關シマシテ、從來問題トナッテ
居リマスル根本ノ本質トカ、目的トカト云
フモノニハ觸レテ居ラヌノデアリマス、其
一二ヲ申上ゲテ見マスレバ、是マデ御承知
ノ通リ町村農會アリ、郡農會アリ、或ハ道
府縣ノ農會アリ、帝國農會アリ、此四段ノ
系統的ニナッテ居ルノデアリマス、其系統ノ
聯絡ヲ縱ニモ圓滑ニ致シマスシ、又各階級
ニ付キマシテ、其組織ノ不都合ナ所ヲ改メ
ク、斯ウ云フ譯ニナッテ居ルノデアリマス、
先以テ議決機關ノ改正ト致シマシテハ、町
村農會ニモ總會ト云フモノノ組織ガアルノ
デアリマス、總會デ諸般ノ議決ヲ致シテ居
ル、是ハ町村ノ事情カラ見マシテ、寧ロ町
村ノ總代會ノ方ガ宜カラウ、只今ノ規定ニ
依リマシテ、總會ヲ本則ニ致シマシテ總代
會ヲ設クルコトヲ得、代用スルコトヲ得ト
云フコトニナッテ居ルノデアリマス、其代用
ノ方ヲソレヲ一定ノモノニ致シマシテ、町
村農會ニ於テハ、町村農會ノ總會ヲ廢止シ
マシテ、サウシテ總代會ヲ設ケル、極ク少
數ノ者ニシマシテ、サウシテ親密ニ審議ヲ
致ス、斯ウ云フコトニスル方ガ實情ニ卽ス
ルモノデアル、從來多年、十數年ノ經驗ニ
基キマシテ、町村農會ニ於テハ、寧ロ總代
會ガ宜イト云フコトニ改メタノデアリマ
ス、只今マデノ實例ヲ調ベテ見マスルト云
フト、總代會ノ方ハモウ九十六「パーセン
ト」位、町村農會ノ申デ實施ヲ致シテ居リ
マスノデ、殘リ、總會ヲ有シテ居ル所ハ僅
ニ四「パーセント」位デアリマス、町村ノ
數デ申シマスト、一萬何千ニ對シマシテ、
僅ニ四百有餘ガ今日總會ヲ存シテ居リマシ
テ、大〓ハ只今申上ゲマスヤウナ例外ナ總
代會デ活動ヲ致シテ居リマス、其實情ヲ見
マシテ、只今申上ゲルヤウナ町村農會ニ於テ
ハ總會ヲ廢止シテ總代會ト云フヤウナ制度
ヲ設ケル、是ガ一ツデアリマス、モウ一ツ、第
二ニハ郡ノ特別議員ト云フモノヲ廢スル、是ハ
衆議院ノ方デ修正ニナッテ來テ居リマスガ、
原案ハ郡農會ニ於テハ特別議員ヲ廢スル、
特別議員ト云フノハ、皆樣御承知デアリマ
セウガ、農會ニ於テ、其地方ノ學識經驗ア
ル者ヲ官廳ガ命ジマシテ、サウシテ特別議員ト
致シテ居ルノデアリマス、政府モ之ヲ廢止
シヤウト考ヘマシタ趣旨ハ、從來農會ノ非
常ナル、農業發達ニ依ッテ貢獻ノ傍ラ、又多年
ノ間ニ弊害ヲ生ジテ居ル、其弊害ノ主ナル
モノハ是等ノ點ニアル、特別議員ヲ任命シ
マシテ、サウシテ色〓政黨政派ノ爭奪ヲヤ
ル、役員ノ爭奪等ヲ試ミル、ソレガ爲ニ農會
本來ノ目的ヲ脫却シテ途法モナイ弊竇ニ陷ッ
タト云フヤウナコトモ從來少カラズアルノ
デアリマス、サウ云フ點ヲ改メルガ爲ニ、
寧ロモウ根本的ニ今ノ特別議員ヲ廢止スル、
斯ウ云フ原案デアッタノデアリマス、衆議院
ニ於テハソレヲ修正イタシマシテ、特別議
員ハ又良イ者モアル、殊ニ系統的ノ會デアッ
テ、帝國農會ニモ亦道府縣ノ會ニモ、又町
村會ニモ置キ得ルノニ、卅農會ニ限ッテサウ
云フコトヲスルト云フコトハ、何カ方法ヲ
講ジタナラバ其弊害ヲ取締ル方法ヲ
講ジタラ、特別議員ヲ置イテモ宜イヂヤナ
イカト云フ趣旨カラ特別議員ヲ存置シテ、
其特別議員ハ農會役員ノ選擧トカ云フヤウ
ナモノニ干與スルコトガ出來ヌ、卽チ特別
議員ノ議決權ヲ拘束スル、斯ウ云フコトニ
シタラドウデアラウカ、政府モ其趣旨ニ於
テハ、前申上ゲルヤウナ弊害サヘ起リ得ナ
ケレバ無論差支ナイ話デアリマシテ、且ツ一
面ニハ學識經驗アル者ガ若シ得ラレルトス
ルナラバ、正シキ行動ニ依リマシテ郡農會
ニ於ケル特別議員モ、相當ニ立派ナ貢獻ヲ
爲シツツアル所モアルノデアルカラ、室口
其修正ニ喜ンデ同意ヲスルト云フコトニナッ
テ本院ヘ〓ッテ來テ居ルト、斯ウ云フヤウナ
譯ナノデアリマス、尙ホモウ一點申上ゲテ
置キマスガ、組織ノ關係ニ於キマシテ、從
來ハ系統的デアリマスルカラ、各農會ノ議
員ハ下級ノ農會カラ選擧シマシタ者ヲ以テ
議員ニ充テルト云フコトニナッテ居ルノデア
リマス、ソレヲ變ヘマシテ、議員ニナル者
ハ下ニ附屬シテ居リマス直下直屬ノ團體ノ
會長ト副會長ガ當ル、サウシテ選擧ニ依ラ
ナイデ法律デサウ云フ限定ヲシテシマフ、
依ッテ以テ色ミニ弊害ノ一端モ防ガウ、且又
聯絡モソレガ爲ニ良クナル、會長、副會長
デアレバ卽チ下級ノ團體ノ事情ニ能ク精通
シテ居ル者デアルカラ、上下ノ聯絡モヨク
付イテ、卽チ農會ノ各種ノ圓滿ナル活動ヲ
捉スコトガ出來ヤウ、斯ウ云フコトデ會長、
副會長ヲ以チマシテ議員トスルト云フ、サ
ウ云フ限定ノ規定ガ出來テ居リマス、其他
或ハ選擧ニ關スル缺格規定ヲ設ケマシタリ、
或ハ總會、總代會等ノ創立ノ場合ニ於テ不
備ナ規定ヲ補ヒマシタリ、或ハ農會ノ合併
スルヤウナ場合ニ於ケル不備ノ規定ヲ簡易
ニ且ツ確實ニ致シテ居リマスヤウナ點デア
リマストカ云フヤウナ點ヲ改正イタシタノ
デアリマシテ、根本ノコトニハ及ンデ居リ
マセヌ、問答ノ一二ヲ御紹介イタシマスレ
バ、卽チ今ノ根本ノ農會ノ農業ノ發達ニ付
テノ貢獻ハ著シイモノデアルデアラウガ、從
來農會ニ對シテハ又非難ノ點モ澤山アル、
何故ニ政府ハ根本的ノ改正ヲ考ヘナカッタ
ト斯ウ云フヤウナコトガ主ナ質問ノ一ツデ
アルノデアリマスルガ、ソレニ對シマシテ
ハ、從來ノ多年ノ······明治三十年前後カラ
デアリマセウ、三十有餘年發達シテ來マシ
タ此農會ガ、我國ノ農業ノ發達ニハ著シキ
貢獻ヲ爲シテ居リマスコトハ皆サンモ御承
知ノ通リ、其後ニ色〓ノ團體ガ町村ニハ出
來マシテ、產業組合デアリマストカ、共他
各種ノ農業ニ關スル或ハ自治機關ノヤウナ
モノモ出來マシタラウシ、或ハ營利ノ媒介
ヲスルモノガ出來マシタラウシ、色〓出來
テ今日デハ複雜ニナッテ居リマス、其複雜ニ
ナッテ居ルガ爲ニ、其機關ガ重複シ、活動ガ
或ハ矛盾スルト、斯ウ云フヤウナ弊モナイ
デハナイケレドモ、一面ニ於テハ農會ト云
フモノノ貢獻ハ著シイモノデ、又將來ノ活
動ニ俟ツコトガ多イノデアルカラ、根本的
ノ改正ト云フモノハ、漸次々々ニ改メル必
要ハアルカモ知レナイケレドモ、目下ノ所
ユ於テソレハ考ヘテ居ラヌ、考究ハ無論ス
ルケレドモ······ト斯ウ云フヤウナコトデア
リマシタ、ソレカラ附帶シマシテ、或ハ政
黨トノ關係、或ハ官廳等ノ干涉、卽チ政黨
ガ原因デアリマスルガ、サウ云フコトカラ
從來及ンデ居ッタ弊害、或ハ今申上ゲタヤウ
ナ各種團體ト農會トノ關係ヲモット簡單ニ
シマシテ、サウシテ矛盾ノナイヤウニ、數
者相俟ッテ矛盾ノナイ、圓滿ナ活動ヲ促スト
云フコトニ付テハ、問フ方ノ人モ其考デ問
ウテ居リマスシ、又政府モサウ云フ點ニ於
テハ十分ノ〓究モ致シ、又運用上宜シキヲ
制スル積リデアルト、斯ウ云フヤウナコト
デアリマシタ、尙ホ各條ニ付キマシテ詳細
ナ質問等ハアリマシタガ、速記錄デ御覽ヲ
願ヒマス、討論ニ入リマシテ滿場一致デ可
決イタシマシタヤウナ譯デアリマス、尙ホ
衆議院ノ修正ハ、政府モ同意ヲ致シテ居リ
マスルシ、政府ノ原案ニ豫期シテ居リマシ
タ點ハ補正セラレマシテ、サウシテ一面デ
ハ郡農會ニモ尙ホ特別議員ト云フモノヲ保
存シ得ルト斯ウ云フコトニナッタノデアリ
マスカラ、弊害サヘナケレバ誠ニ結構ナコ
トデアルト云フ譯デ、衆議院ノ修正ノ通リ
可決ヲ致シマシタ、御報告ヲ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X03119340323&spkNum=39
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040・松平頼壽
○副議長(伯爵松平賴壽君) 御質疑ガナケ
レバ二案ノ採決ヲ致シマス、二案ノ第二讀
會ヲ開クコトニ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X03119340323&spkNum=40
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041・松平頼壽
○副議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト
認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X03119340323&spkNum=41
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042・植村家治
○子爵植村家治君 兩案ノ第二讀會ヲ直ニ
聞カレムコトヲ希望イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X03119340323&spkNum=42
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043・梅園篤彦
○子爵梅園篤彥君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X03119340323&spkNum=43
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044・松平頼壽
○副議長(伯爵松平賴壽君) 植村子爵ノ動
議ニ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X03119340323&spkNum=44
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045・松平頼壽
○副議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト
認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X03119340323&spkNum=45
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046・松平頼壽
○副議長(伯爵松平賴壽君) 二案ノ第二讀
會ヲ開キマス、御異議ナケレバ全部ヲ問題
ニ供シマス、二案全部、委員長ノ報告通リ
デ御異議ハゴザイマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X03119340323&spkNum=46
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047・松平頼壽
○副議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト
認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X03119340323&spkNum=47
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048・植村家治
○子爵植村家治君 直ニ兩案ノ第三讀會ヲ
開カレムコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X03119340323&spkNum=48
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049・梅園篤彦
○子爵梅園篤彥君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X03119340323&spkNum=49
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050・松平頼壽
○副議長(伯爵松平賴壽君) 植村子爵ノ動
議ニ御異議ハゴザイマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X03119340323&spkNum=50
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051・松平頼壽
○副議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト
認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X03119340323&spkNum=51
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052・松平頼壽
○副議長(伯爵松平賴壽君) 二案ノ第三讀
會ヲ開キマス、二案全部、第二讀會ノ決議
通リデ御異議ハゴザイマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X03119340323&spkNum=52
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053・松平頼壽
○副議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト
認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X03119340323&spkNum=53
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054・松平頼壽
○副議長(伯爵松平賴壽君) 日程第十、借
地借家調停法中改正法律案、日程第十一、
小作調停法中改正法律案、日程第十二、刑
法中改正法律案、衆議院提出、第一讀會、
是等ノ三案ヲ一括シテ議題ニ供スルコトニ
御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X03119340323&spkNum=54
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055・松平頼壽
○副議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト
認メマス
借地借家調停法中改正法律案
右本院提出案及送付候也
昭和九年三月二十二日
衆議院議長秋田〓
貴族院議長公爵近衞文麿殿
借地借家調停法中左ノ通改正ス
第七條當事者及利害關係人ハ自身出頭
シ又ハ辯護士ヲ代理人トシテ出頭セシ
ムルコトヲ要ス
前項ノ代理ニ付テハ民事訴訟法中代理
ニ關スル規定ヲ準用ス
第二十二條中「第七條第一項但書第二
項、」ヲ削ル
小作調停法中改正法律案
右本院提出案及送付候也
昭和九年三月二十二日
衆議院議長秋田〓
貴族院議長公爵近衞文麿殿
小作調停法中左ノ通改正ス
第十六條當事者、總代及利害關係人ハ
自身出頭シ又ハ辯護士ヲ代理人トシテ
出頭セシムルコトヲ要ス
前項ノ代理ニ付テハ民事訴訟法中代理
ニ關スル規定ヲ準用ス
刑法中改正法律案
右本院提出案及送付候也
昭和九年三月二十二日
衆議院議長秋田〓
貴族院議長公爵近衞文麿殿
刑法中左ノ通改正ス
第二十五條中「二年以下」ヲ「三年以下」ニ
改ム発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X03119340323&spkNum=55
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056・松平頼壽
○副議長(伯爵松平賴壽君) 御質疑ガナケ
レバ是等ノ三案ハ、之ヲ民事訴訟法中改正
法律案外六件ノ特別委員ニ付託ヲ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X03119340323&spkNum=56
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057・松平頼壽
○副議長(伯爵松平賴壽君) 本日ノ議事ハ
是ニテ終リマス、次ノ議事ハ明二十四日午
前十時ヨリ開會イタシマス、本日ハ是ニテ
散會イタシマス
午後零時五十七分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006503242X03119340323&spkNum=57
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