1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和九年三月十三日(火曜日)
午後一時十五分開議
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議事日程 第二十一號
昭和九年三月十三日
午後一時開議
質問
一 滿洲政策に關する質問(丸山浪彌君提出)
二 鐵道運賃引下に關する質問(藤井啓一君提出)
三 金錢債務臨時調定法に關する質問(山村豐次郎君提出)
四 坂上田村麿武功顯に關する質問(中野種一郎君提出)
五 軍民一致に關する質問(宮脇長吉君提出)
六 不動産擔保貸付利息引下竝金融機關監督權行使に關する質問(松田正一君提出)
七 取引所現行制度の改善に關する質問(野中徹也君提出)
八 政府か横濱正金銀行をして舊露國の預金を沒收せしめたる件に關する質問(山道襄一君外一名提出)
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第一 輸出生絲販賣統制法案(政府提出) 第一讀會
第二 河川法中改正法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第三 計理士法中改正法律案(世耕弘一君外二名提出) 第一讀會
第四 未成年者飮酒禁止法中改正法律案(栗原彦三郎君外十二名提出) 第一讀會
第五 百貨店法案(野田文一郎君外二名提出) 第一讀會
第六 大正十五年法律第二十四號中改正法律案(地方税に關する件)(野田文一郎君外二名提出) 第一讀會
第七 司法代書人法中改正法律案(立川平君外二名提出) 第一讀會
第八 司法代書人法中改正法律案(野田文一郎君提出) 第一讀會
第九 司法代書人法中改正法律案(斯波貞吉君外一名提出) 第一讀會
第十 郷又は町村祿高に對する公債證書給與に關する法律案(寺田市正君外四名提出) 第一讀會
第十一 行政執行法中改正法律案(一松定吉君外六名提出) 第一讀會
第十二 速記士法案(内藤正剛君外一名提出) 第一讀會
第十三 速記士法案(平島敏夫君外一名提出) 第一讀會
第十四 建築士法案(星島二郎君外三名提出) 第一讀會
第十五 建築士法案(多田滿長君外三名提出) 第一讀會
第十六 史蹟名勝天然紀念物保存法中改正法律案(天辰正守君外一名提出) 第一讀會
第十七 農業保險法案(高田耘平君外五名提出) 第一讀會
第十八 簡易森林火災保險法案(小山邦太郎君外十七名提出) 第一讀會
第十九 漁船保險法案(工藤鐵男君外三名提出) 第一讀會
第二十 刑事訴訟法中改正法律案(原夫次郎君外十三名提出) 第一讀會
第二十一 刑法中改正法律案(作田高太郎君外十三名提出) 第一讀會
第二十二 借地借家調停法中改正法律案(牧野賤男君外十三名提出) 第一讀會
第二十三 小作調停法中改正法律案(牧野賤男君外十三名提出) 第一讀會
第二十四 民事訴訟法中改正法律案(牧野賤男君外十三名提出) 第一讀會
第二十五 陪審法中改正法律案(牧野賤男君外十三名提出) 第一讀會
第二十六 産業組合法中改正法律案(風見章君提出) 第一讀會
第二十七 百貨店の小賣制限に關する法律案(眞鍋儀十君外三名提出) 第一讀會
第二十八 水利組合法中改正法律案(熊谷五右衞門君提出) 第一讀會
第二十九 北海道土功組合法中改正法律案(林路一君外十三名提出) 第一讀會
第三十 所得税法中改正法律案(大口喜六君外一名提出) 第一讀會
第三十一 漁業法中改正法律案(畑七右衞門君外一名提出) 第一讀會
第三十二 傷痍軍人及戰公傷病死者遺族等の鐵道船舶等乘車船優遇に關する法律案(江藤源九郎君提出) 第一讀會
第三十三 關税定率法中改正法律案(荒川五郎君外十七名提出) 第一讀會
第三十四 私生子の名稱に關する法律案(一松定吉君外三名提出) 第一讀會
第三十五 盲人保護法案(風見章君提出) 第一讀會
第三十六 金錢債務臨時調停法中改正法律案(山本芳治君外二名提出) 第一讀會
第三十七 金錢債務臨時調停法中改正法律案(野村嘉六君外四名提出) 第一讀會
第三十八 度量衡法中改正法律案(荒川五郎君外十五名提出) 第一讀會
第三十九 度量衡法中改正法律案(東武君外六名提出) 第一讀會
第四十 國立公園法中改正法律案(小林かなえ君外一名提出) 第一讀會
第四十一 森林法中改正法律案(小林かなえ君外一名提出) 第一讀會
第四十二 競馬法中改正法律案(本田義成君外九名提出) 第一讀會
第四十三 繭處理法案(助川啓四郎君外二十名提出) 第一讀會
第四十四 司法保護法案(小林かなえ君外六名提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第四十五 衞生組合法案(中井一夫君外五名提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第四十六 衞生組合法案(野田文一郎君提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第四十七 衞生組合法案(福田關次郎君外二名提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第四十八 傳染病豫防法中改正法律案(中井一夫君外五名提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第四十九 傳染病豫防法中改正法律案(野田文一郎君提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第五十 傳染病豫防法中改正法律案(福田關次郎君外二名提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第五十一 營業收益税法中改正法律案(小林かなえ君外二名提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第五十二 産師法案(山道襄一君外三名提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第五十三 産師法案(土屋清三郎君外三名提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第五十四 産師法案(野方次郎君外三名提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第五十五 決議案(南滿洲鐵道株式會社改造の件)(小池四郎君提出)
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001・秋田清
○議長(秋田清君) 諸般ノ報告ヲ致サセマ
ス
〔書記官朗讀〕
一議員ノ異動左ノ如シ
大阪府第五區選出議員喜多孝治君死去セ
ラレタリ
一政府ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
臨時米穀移入調節法案
政府所有米穀特別處理法案
米穀需給調節特別會計法中改正法律案
(以上三月十三日提出)
一政府ヨリ受領シタル答辯書左ノ如シ、
衆議院議員松田正一君提出不動產擔保貸
付利息引下竝金融機關監督權行使ニ關ス
ル質問ニ對スル答辯書
衆議院議員山道襄一君外一名提出政府カ
橫濱正金銀行ヲシテ舊露國ノ預金ヲ沒收
セシメタル件ニ關スル質問ニ對スル答辯
書(以上三月十三日受領)
不動產擔保貸付利息引下竝金融機關監
督權行使ニ關スル質問主意書
右成規ニ據リ提出候也
昭和九年三月一日
提出者松田正
不動產擔保貸付利息引下竝金融機關
監督權行使ニ關スル質問主意書
一不動產擔保貸付利息引下ニ關スル件
現下ノ農山村民不況ハ今更言フ迄モナク
政府モ亦種種政策ヲ樹立シテ其ノ救濟ヲ
計リツツアルモ遺憾ナカラ其ノ實情ニ副
ハサルモノ多シ依テ本員ハ金利引下等ニ
付テ政府ニ更ニ一段ノ考慮ヲ煩シ度本質
問ヲ爲サムトスル所以ナリ
農山村民カ好景氣時物價騰貴時代ニ於テ
不動產ヲ買求メ其ノ不動產ヲ擔保トシテ
農工銀行等ヨリ金錢ヲ借入レ爾來年賦辨
濟中ナルモ其ノ後抵當不動產及農產物ノ
價格下落ニ依リ遂ニ其ノ年賦金辨濟ヲ不
能ナラシムルニ至レリ政府ハ自作農維持
及創設資金ヲ以テ買入セル者ニ對シテハ
此ノ點ニ付旣ニ相當ノ救濟ヲ爲シ居ルニ
拘ラス之ヲ其ノ他ニ及ホササルハ頗ル不
公平ニシテ且農山村負債整理ニ付其ノ政
策不徹底ナリト言ハサルヲ得ス是等ニ對
スル救濟政策ノ實行又ハ勸業銀行乃至農
工銀行ニ對シ金利低下ノ方策ヲ講シ以テ
農村負債整理ヲ促進スヘキモノナリト信
ス政府ノ所見果シテ如何
二金融機關ニ對スル監督權行使ニ關ス
ル件
大藏省ノ許可認可ヲ受ケ營業スル金融業
者卽チ銀行其ノ他會社ニシテ往往支拂停
止ヲ爲シ又ハ破產ノ宣告ヲ受ケ多數ノ關
係者ニ損害ヲ及ホシ之カ爲ニ庶民金融ヲ
著シク梗塞セシメタル事例尠カラス是レ
政府カ金融機關ニ對スル監督權行使ノ怠
慢ノ結果ニアラスヤ又偶其ノ監督ニ出張
スルヤ始ヨリ刑事被〓事件ヲ搜査檢擧ス
ルカ如キ態度ニ出テ金融機關ニ對スル社
會的信用ヲ毀損セシメ爲ニ支拂停止又ハ
破產ヲ誘發スル事例尠シトセス政府ハ將
來嚴重綿密且親切ナル監督ヲ實行シ金融
機關ノ整備ヲ期スヘキモノナリト信ス政
府ノ所見如何
右及質問候也
昭和九年三月十三日
內閣總理大臣子爵齋藤實
衆議院議長秋田〓殿
衆議院議員松田正一君提出不動產擔保貸
付利息引下竝金融機關監督權行使ニ關ス
ル質問ニ對シ別紙答辯書差進候
〔別紙〕
衆議院議員松田正一君提出不動產擔保
貸付利息引下竝金融機關督權行使ニ
關スル質問ニ對スル答辯書
一、不動產擔保貸付利息引下ニ關スル件
曩ニ政府ハ農山村ノ經濟更生ヲ圖ルカ
爲ニハ之ニ低利潤澤ナル資金ヲ供給ス
ルノ必要ヲ認メ各種低利資金ヲ產業組
合、耕地整理組合、森林組合、畜產組
合、漁業組合其ノ他ノ各種機關ニモ融
通シ又不動產議資及損失補償法竝產業
組合中央金庫特別融通及損失補償法ヲ
施行シテ金融梗塞ノ打開ヲ圖リ以テ直
接又ハ間接ニ農山村債務者ノ負擔輕減
ニ資スヘク努力シ來レリ殊ニ昭和七年
十月施行ニ係ル金錢債務臨時調停法ハ
不況時ニ際會シタル誠實ナル小額債務
者ノ更生ニ付著々見ルヘキ效果ヲ示シ
ツツアルノミナラス昨年八月ニハ農村
負債整理組合法ヲ施行シ差當リ之ニ要
スル低利資金二千萬圓ノ割當ヲ了シ著
著之カ實施ノ步ヲ進メツツアリ
又勸業銀行、農工銀行及北海道拓殖銀
行ニ付テハ政府ハ最近金融界ノ情勢竝
是等各行ノ使命ニ鑑ミ昨年上期以來每
期其ノ認可最高貸付利率ヲ引下ケ債務
者ノ負擔輕減ヲ圖リ來リシカ是等各行
自ラモ極力債券資金原價ノ低下ニ努メ
其ノ結果右認可利率ノ範圍內ニ於テ更
ニ夫々實行利率ヲ定メ新規貸付ニ付テ
ハ勿論既往貸付分ニ付テモ相當ノ利下
ヲ斷行シ將來永ク債務者ノ負擔ヲ輕減
セシメツツアリ
政府ノ採リ來レル右諸般ノ政策ハ相
俟ツテ農山村ノ更生竝負擔ノ整理ニ不
尠寄與シツツアリト信ス固ヨリ政府ハ
今後ニ於テモ經濟情勢ノ推移ヲ注視シ
テ此ノ方面ニ對スル措置ヲ衍ラサラン
コトヲ努ムル方針ナリ
ニ、金融機關ニ對スル監督權行使ニ關ス
ル件
金融機關ニ對スル監督權ノ行使ニ關シ
テハ政府ハ常ニ細心ノ注意ヲ拂ヒ監督
上萬遺漏ナキヲ期シツツアリ偶々近年
金融機關ニシテ破綻ヲ生シタルモノア
リシカ之カ原因ハ主トシテ財界多年ノ
不況ノ影響ト經營者其ノ人ヲ得サリシ
ニ基クモノニシテ極力內容整理ニ努メ
シメタルニモ不拘此ノ結果ヲ見タルハ
寔ニ遺憾トスル所ナリ而シテ是等破綻
ヲ見タル金融機關ニ對シテハ可成速ニ
其ノ整理ヲ遂ケシメ又更生ノ見込ナキ
モノニ付テハ取引者エ最モ損害少キ方
法ヲ以テ解散整理セシムヘク嚴重監視
督促ヲ加へ居レリ
尙金融機關ニ對スル實地檢査執行カ是
等機關ノ信用ヲ毀損シ其ノ破綻ヲ誘發
シタルカ如キ事例ハ未タ嘗テ存セサル
所ナルノミナラス檢査執行ニ當リテハ
綿密周到ヲ期スルト共ニ懇切ノ態度ヲ
以テ之ニ當ラシムルコト政府從來ヨリ
ノ方針トスル所ナリ
右及答辯候
昭和九年三月十三日
大藏大臣高橋是〓
政府カ橫濱正金銀行ヲシテ舊露國ノ預
金ヲ沒收セシメタル件ニ關スル質問主
意書
右成規ニ據リ提出候也
昭和九年三月二日
提出者山道襄一
外一名
政府カ橫濱正金銀行ヲシテ舊露國ノ
預金ヲ沒收セシメタル件ニ關スル質
問主意書
横濱正金銀行ノ弗賣ニ依ル損害補塡ニ關
シ過日本員カ豫算總會及同分科會ニ於テ
質問シタルニ對シ政府ハ祕密會ニ於テス
ラ之ヲ說明スルコト能ハスト爲シ答辯ヲ
峻拒シ以テ議員ノ豫算審議權ヲ放棄スル
ノ已ムヲ得サルニ至ラシメタルハ議會政
治ヲ冒瀆スルモノニシテ吾吾ノ甚タ遺憾
トシタル所ナリ
然ルニ二月十六日ノ新聞ノ報道ニ依レハ
現內閣ハ露國政府ヨリノ預リ金五千萬圓
ヲ時效消滅シタルモノトシテ之ヲ橫濱正
金銀行ニ沒收セシメタリ
一面ニ於テ我カ國民カ歐洲大戰ノ前後ニ
亙リ露國ニ賣却シタル軍需品賣却代金ニ
付テハ露國カ之ヲ支拂ハサル爲政府カ露
國ニ肩代リシテ正金銀行ヲシテ引受ケシ
メタル臨時國庫證劵五千萬圓ヲ昭和七年
度中ニ五分利公債ニ書替ヘ之ヲ二千萬圓
ニ減額交付シタルモノノ如シ
右ハ正金銀行ノ弗賣ニ依ル損害補塡ニ重
大ナル關係アリ不法ナリト認ム政府ノ所
見如何
右及質問候也
昭和九年三月十三日
內閣總理大臣子爵齋藤實
衆議院議長秋田〓殿
衆議院議員山道襄一君外一名提出政府カ
横濱正金銀行ヲシテ舊露國ノ預金ヲ沒收
セシメタル件ニ關スル質問ニ對シ別紙答
辯書差進候
〔別紙〕
衆議院議員山道襄一君外一名提出政府
カ橫濱正金銀行ヲシテ舊露國ノ預金ヲ
沒收セシメタル件ニ關スル質問ニ對ス
ル答辯書
横濱正金銀行ノ露國政府預金ノ處分竝ニ
政府ノ臨時國庫證劵整理借入金ノ處理ニ
關スル顯末ニ付テハ既ニ衆議院ノ決算委
員會ニ於テ詳細說明セル所ナルガ
一、正金銀行ノ弗統制賣ノ跡始末ニ付テ
ハ一部ハ正貨ノ海外現送ヲ許シタルガ
正貨ノ流出ハ成ル可ク小額ニ止ムルヲ
適當ト認メ正金銀行ヲシテ自ラ必要ナ
ル爲替ノ出合ヲ付クル等適宜ノ手段ヲ
講ゼシメタリ然レドモ其ノ處理ノ內容
ハ銀行ノ營業上ノ祕密ニ屬スルノミナ
ラズ正金銀行ノ對外信用延テハ本邦對
外信用ニモ關係スル所アルヲ以テ之ヲ
公ニ爲サザルコト國家ノ利益ナリト信
ス
二、横濱正金銀行ヨリ借入レタル臨時國
庫證劵整理借入金ト橫濱正金銀行ノ舊
露國政府預金トハ法律上ヨリ見ルトキ
ハ全然別個ノ關係ニシテ兩者間ニ不可
分ノ關係アルモノニ非ス從テ橫濱正金
銀行カ露國政府ニ對スル債務ヲ免レタ
リトスルモ日本政府ノ橫濱正金銀行ニ
對スル債務ハ當然消滅スルモノニハ非
ス
尤モ兩者ハ沿革上密接ナル關係アルヲ
以テ正金銀行カ露國政府ニ對シ預金ノ
拂戾ヲ爲ス見込無キニ至リタルニ當リ
政府トシテハ此ノ機會ニ於テ出來得ル
限リ有利ナル條件ヲ以テ該借入金ノ處
理ヲ爲シタルモノトス而シテ本借換ニ
依リ政府ハ期限ノ到來セル借入金ヲ長
期ノ公債ニ借換へ而モ其ノ債務額ヲ著
シク減少シ以テ國庫ノ負擔ノ輕減ヲ實
現シタルモノニシテ公債政策上適當ナ
ル措置ナリト信ス
右及答辯候也
昭和九年三月十三日
大藏大臣高橋是〓
〔左ノ報告ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノ爲
玆ニ揭載ス〕
一政府ヨリ受領シタル答辯書左ノ如シ
衆議院議員林路一君提出交通事故防止ニ
關スル質問ニ對スル答辯書
衆議院議員鷲澤與四二君提出日英會商ニ
關スル質問ニ對スル答辯書
衆議院議員增田金作君提出蠶絲業ニ關ス
ル質問ニ對スル答辯書
(以上三月十三日受領)
交通事故防止ニ關スル質問主意書
右成規ニ據リ提出候也
昭和九年二月二十二日
提出者林路
交通事故防止ニ關スル質問主意書
交通機關ノ發達ニ伴ヒ交通事故頻發シ人
命ヲ損傷スル所多ク殊ニ鐵道、軌道ノ踏
切箇所ニ於テ其ノ甚シキヲ見ル之ヲ未然
ニ防止スルノ途ハ警察取締ノ勵行ニ待ツ
ヘシト雖公私鐵道、軌道ノ踏切箇所ニ付
テハ自動遮斷機又ハ其ノ他ノ設備ヲ完全
ナラシムルハ最急務ナリト認ム政府ノ所
見如何
右及質問候也
昭和九年三月十三日
內閣總理大臣子爵齋藤實
衆議院議長秋田〓殿
衆議院議員林路一君提出交通事故防止ニ
關スル質間ニ對シ別紙答辯書差進候
〔別紙〕
衆議院議員林路一君提出交通事故防止
ニ關スル質問ニ對スル答辯書
鐵道及軌道ノ踏切箇所ニ於ケル交通
事故ハ大部分自動車ト鐵道、軌道上ヲ
走行スル車輛トノ衝突、接觸ニヨリ惹
起サルルモノナリ、而シテ踏切事故ノ
根本的防止策ハ平面交叉ヲ立體交叉ニ
改築スルニアルモ之ニハ多額ノ經費ヲ
要スルヲ以テ全般的急施ハ容易ナラザ
ルニヨリ重要ナルモノヨリ漸次之ガ改
善ヲ期シツツアリ
二、國有鐵道ニ於テハ交通頻繁ナル踏切
箇所ニ對シ出來得ル限リ看手ヲ配置
シ、又ハ警報機ヲ設置スル等設備ノ改
善ニ依リ事故防止ニ努ムルト共ニ自動
車業者及關係官公衙ト協力シ自動車運
轉手ノ踏切箇所ニ於ケル一旦停車ヲ勵
行セシムル樣努力シツツアリ
三、地方鐵道、軌道ニ於テモ踏切箇所ノ
交通頻繁トナルニ伴ヒ自發的ニ踏切設
備ノ改善ニ努メツツアリ、之等ハ當該
規程ニ據ルノ外國有鐵道ノ設備ニ準ジ
施設セルモノナルガ尙監督上未ダ設備
ノ不十分ナルモノ又ハ新ニ施設ノ必要
アリト認メラルルモノアル場合ニ於テ
ハ或ハ命令シ或ハ慫慂シテ之ガ設備ノ
改善ヲ期シツツアリ
右及答辯候也
昭和九年三月十三日
鐵道大臣三土忠造
日英會商ニ關スル質問主意書
右成規ニ據リ提出候也
昭和九年三月三日
提出者鷲澤與四二
日英會商ニ關スル質問主意書
一日英綿業協議會ニ於テ英國綿業代表者
ハ第三國市場ヲモ協議內ニ含マシムヘ
シトノ要求ヲ强固ニ主張シ撤囘ノ望ミ
ナシト報道アリ右ノ如キ事實アリヤ
一日英會商前ニ於テ帝國政府ハ何等ノ形
式ニ於テモ第三國市場除外ノ意思ヲ表
明シタルコトナキカ如何
一我カ國ノ民間綿業代表者ハ日本出發前
第三國市場問題ヲ除外スルコトヲ前提
トシテ會議ニ臨ミタルノ理由ニ依リ若
英國綿業代表者カ前項ノ要求ヲ撤囘セ
サルニ於テハ三月七日カ或ハ其ノ以前
ニ倫敦ヲ引上ケ歸國スヘキヲ決シタリ
トノ報道アリ事實如何
一右ニ對シ日本政府ハ此ノ儘民間協議會
ヲ繼續スルニ於テハ日英會商ノ決裂ヲ
見ルハ當然ナルニ鑑ミ民間協議會ヲ打
切リ日英兩政府間ノ外交交涉ニ移スノ
方針ナリトノ報道アリ共ノ眞相如何
一日印シムラ會議ニ於ケル帝國政府ノ採
リタル態度カ現在ノ日英會商ニ及ホセ
ル影響ノ有無及其ノ程度
一日本政府ハ第三國ヲ會商內ニ含マシメ
サル點ニ付テハ當初ノ方針ノ貫徹ヲ期
スル決心アリヤ如何
右及質問候也
本質問ニ對シテハ至急書面ヲ以テ答辯ヲ求ム
昭和九年三月十三日
內閣總理大臣子爵齋藤實
衆議院議長秋田〓殿
衆議院議員鷲澤與四二君提出日英會商ニ
關スル質問ニ對シ別紙答辯書差進候
〔別紙〕
衆議院議員鷲澤與四二君提出日英會商
ニ關スル質問ニ對スル答辯書
一、大體ニ於テ本質問ノ如キ事實アリ
二、昨年四月ヨリ八月ニ至ル日英政府間
交涉ノ際我方當業者ノ意向トシテ第三
國市場ノ除外サルヘキモノナル旨表明
シ居レリ
三、倫敦引上ゲニ關スル部分ヲ除イテハ
大體本問ト類似ノ報道ニ接セリ
四、本件民間協議會目下進行中ナルニ付
政府トシテハ其ノ經緯注視中ナリ
五、日印會議ハ政府間ノ會商ニシテ今囘
ノ日英會商ハ純然タル民間會商ナルヲ
以テ其ノ間直接ノ影響アルモノト思惟
セズ
六、目下民間會商進行中ナルヲ以テ政府
トシテ本問ニ答フベキ限ニ非ス
右及答辯候
昭和九年三月十三日
外務大臣廣田弘毅
商工大臣松本烝治
蠶絲業ニ關スル質問主意書
右成規ニ據リ提出候也
昭和九年二月十三日
提出者增田金作
蠶絲業ニ關スル質問主意書·
一蠶絲業ニ關スル政府ノ根本方策ヲ伺
ヒ度イ勿論歷代ノ內閣ガ其ノ對策ニ苦
心セラレテ居ルコトハ承知シテ居ルガ
皆何レモ核心ヲ摑ンデ居ナイ就中最近
人絹ノ異常ナル發展ノ爲苦境ニ陷リ此
ノ儘ニ推移センカ生絲ハ〓運ヲ辿ル外
ハナイ又當業者トシテモ徒ニ政府ノ援
助ノミニ賴ルノデハ誠ニ心細イ依テ政
府ハ須ラク根本的方策ヲ樹テテ之ニ臨
マナケレバイケナイト思フガ政府ノ所
見如何併セテ其ノ方策ヲ示サレタイ
二今日ノ所輸出生絲ノ九割三分ハ米國
向デアル故ニ米國ノ景氣ニシテ變更ス
レバ其ノ度每ニ生絲ノ市價ハ騰落ヲ免
レス絲價ノ安定ハ一ニ係リテ米國ニア
リト云フ有樣デアル承レバ政府ハ此ノ
點ニ大ニ覺醒シ米國以外ニ販路ヲ擴張
セント努メツツアリト云フガ其ノ擧ゲ
ラルル所ノ諸外國卽チ南米、南洋、濠
洲印度、瓜哇等ニ於ケル販路開拓ノ
餘地如何顧フニ此等ノ國ニ對シ政府ハ
多大ノ期待ヲ有シテ居ルガ如クニ窺ハ
ルルモ生絲ガ元來贅澤品ト言ハザル迄
モ慥ニ人絹ヤ木綿ニ對シ優良ナル品デ
アル此ヲ以テ前記ノ地方ニ販路ヲ求メ
ントスルモ果シテ豫期ノ效果ヲ擧ゲ得
ルカ頗ル疑問ニ屬スト思ハレル販路開
拓其ノモノハ誠ニ結構デアリ努力セザ
ルベカラザルコトナルガ政府ノ見込如
何ヲ承リタイト同時ニ諸外國ノ生絲消
費統計ヲ示サレタイ
三生絲ノ新用途發見ノ爲卽チ内外國ニ
於ケル需要增進ノ爲ニ政府ハ前年來諸
種ノ調査〓究ヲ試ミツツアルガ如シ其
ノ成績ノ見ルベキモノ見込ノアルモノ
アリシヤ今日迄ノ結果ヲ報〓セラレタ
イト同時ニ將來ノ見込ヲ承リタイ
四新用途發見、需要增進、販路擴張及
米國ヘノ賣込增加等ガ不幸ニシテ所期
ノ目的ヲ達セザルトキハ結局如何ニ取
扱フ所存ナリヤ國民ガ危惧ノ念ニカラ
レテ第一ニ心配シテ居ルノハ此ノ點デ
アル一言ニ申セバ生絲ノ前途ニ對シ樂
觀カ悲觀カデアル此等ノ點ニ政府ガ全
努力ヲ傾ケテ居ルコトハ之ヲ信ズルモ
又其ハ左樣ニシナケレバナラヌ當然ノ
コトデアルガ今日吾々ノ見ル所デハ米
國ノコトハ別トスルモ遽ニ新消費國ヲ
見出スコトハ一寸困難ト思ハル-見
出シ得レバ至極幸ナルガ-其ノ場合
現在ノ如ク生絲ノ生產方面ノコトヲ自
然ノ儘ニ放任シ偏ニ增產改良ノコトノ
ミニ力ヲ致ストキハ甚ダ不都合ナル結
果ヲ將來スト思ヒ誠ニ懸念ニ堪ヘナイ
結局ハ生產制限トカ蠶絲業ニ對スル統
制トカ云フ方針ニ進ムノデハナイカ養
蠶家製絲家等ノ安心ノ爲ニ政府ノ考ヲ
說明セラレタイ
五若シ夫レ生產制限ヲ爲ストセバ如何
ナル方法ヲ以テ實行セントスルノカ顧
フニ政府トシテハ生產制限ニ付何等ノ
考慮ヲ拂ハズシテ便々今日ニ至リシト
ハ考ヘラレヌ恐ラク幾多ノ腹案ヲ持ッ
テ居ルコトデアラウ御〓示ヲ下サレバ
吾々モ共ニ〓究シ此ノ唯一ノ產業ニ付
確固タル策ノ發見ニ努メン故ニ先ヅ生
產制限ヲ必要トスル場合生產制限ニ關
シ今日考ヘテ居ル點ヲ示サレタシ
六數年前迄ハ人絹ガ斯タ迄生絲ヲ壓迫
スベシトハ考ヘテ居ラズ否當業者ノ一
部ニハ人絹ノ發展ハ却テ天然生絲ノ需
要ヲ增進スベシトサヘ云フタ者ガアッ
タ併シ今日生絲問題ニ付人絹ヲ無視ス
ルコトノ出來ナイコトハ何人モ異論ナ
キ所デアル一體人絹ニ對スル生絲價格
ノ維持ノ程度如何或ハ人絹一ニ對シ生絲
三ナレバ可ナリトノ說アルモ人絹ノ品
質向上ヲ見タル今日尙此ノ程度ト見テ
宜シキ考ナルヤ否ヤ人絹ト生絲トノ價
格ハ何ノ邊ニ目標ヲ置クヲ至當トスル
カ政府ノ所見如何
七蠶絲業ト密接ナル關係或ハ反對ノ立
場ニアル我ガ國人絹工業ニ對シ政府ハ
現在及將來如何ナル方策ヲ採ルカ今世
界ニ於ケル人絹ノ生產高ヲ見ルニ昭和
元年ニハ二億千九百餘萬封度ナリシモ
同七年ニハ四億九千八百餘萬封度ニ上
リ價格ハ低落セルモ其ノ生產量及消費
量ハ激增シテ居ル其ノ間ニ於テ我ガ國
ノ人絹業ハ昭和六年ニハ四千七百餘萬
封度デ世界第五位ニ同七年ニハ六千六
百餘萬封度デ第四位ニ躍進シ同八年上
半期ニハ遂ニ世界第二位トナッタト傳
ヘラレテ居ルヲ以テ見レバ生絲對策ト
シテノ人絹工業ヲモ考慮ノ內ニ容レザ
ルヲ得ナイト思フガ政府ノ所見如何
八對人絹策トシテ政府ハ生絲ノ生產費
低下ヲ計リ居ル樣ナルガ元來生絲ノ生
產費低下ヲ計ルト云フモ價格變動ノ度
合ニ對シテハ眞ニ九牛ノ一毛ニ過ギズ例
ヘバ生絲生產費百斤五百圓トシ其ノ一
割ヲ低下シ得タトシテモ五十圓ニ過ギ
ズ然ルニ市價ハ昨年ニ於テモ千圓ニ上
ルカト見レバ四百圓ニ下ルト云フ有樣
デアル生產費ノ低下ヲ計ルコト固ヨリ
大切ナルモ右ノ如キ騰落激變ノ商品ナ
レバ政府ガ其ノ爲ニ力ヲ入レテモ結果
ヨリ見レバ誠ニツマラヌ樣ニモ考ヘラ
ルルガ其ハ暫ク措キ先ヅ生產費低下ノ
方法及程度ニ付說明ヲ得タイ
九元來繭ノ相場ハ其ノ生產費ヲ基準ト
シテ定マルモノニアラズ當時ノ生絲相
場ヲ基準トシテ定マルモノデアル故ニ
動モスレバ養蠶家ノ經營ハ著シク投機
的要素ニ支配サレ春蠶ガ好況ナレバ金
肥ヲ增加シ夏秋蠶ヲ增產シ其ノ爲ニ反
對ニ打擊ヲ蒙ル又輸出ガ增進スレバ之
ニ從テ繭ノ增產トナルト云フ有樣デア
ル統計ニ依ルモ昭和七年下半期ハ生絲
價格上騰シタル爲ニ八年度ハ前年度ヨ
リモ春繭ハ八分餘夏秋蠶ハ一割餘ノ增
產トナリ爲ニ八年度ノ絲價ノ暴落ノ
因トナッテ居ルデハナイカ此等ヲ見テ
モドウシテモ輸出生絲ノ數量價格換言
スレバ生絲ノ販賣統制ヲ主眼トシテ蠶
絲問題全般ニ涉リ國策ヲ樹立スベキモ
ノニアラザルカ如何
十更ニ蠶絲業ノ統制策トシテハ生產ヨ
リ流通過程ニ亙ル一貫セル施設ニ依リ
テ完全ヲ期シ得ベシ卽チ桑園、蠶種、
養蠶、繭取引、製絲工場設備、製絲金
融及生絲販賣ニ及ブ全面的統制ヲ以テ
完キヲ得ルノデ單ニ販賣統制ノミヲ以
テシテハ〓絲問題ハ徹底的ニ解決シ得
ズト思フ政府ハ販賣統制以外ノ此等ノ
點ニ付如何ニ調査ヲ進メツツアリヤ
十一桑園ニ就テ見ルニ現在桑園約六十
八萬三千餘町步ニシテ內改善ヲ要スル
モノ十四萬三千町步廢止スベキモノ九
萬町步合計二十三萬餘町步ニ達ス而シ
テ政府ハ時局匡救事業ノ一トシテ此等
桑園整理ノ爲
イ七年度豫算三百七十五萬圓
內譯
改植費二百二十五萬圓
一萬五千町步
整理費百五十萬圓
一萬、五千町步
ロ八年度豫算二百五十萬圓
內譯
改植費百五十一萬三千餘圓
一萬町步
整理費九十八萬六千餘圓
九千八百六十餘町步
ハ九年度豫算七十五萬五千圓
內譯
改植費六十萬圓
四千町步
整理費十五萬五千圓
千五百五十町步
ノ計畫ヲ以テ著手シ七年度ノ如キ略豫
定ノ通リ遂行シ得タル樣デアル然レド
モ桑園整理計畫ヲ樹ツルニ當リ政府ハ
我ガ國ニ於テ果シテ幾程ノ桑園ヲ必要
トシ其ニ依リテ幾程ノ產繭ヲ期シタル
カ
十二從來平均產繭額九千萬貫ヲ生產ス
ル所要桑園桑葉數量幾許ヲ見込タルカ
前項ノ如ク政府ハ桑園改良ノ爲七年度
二百二十五萬圓八年度百五十一萬圓九
年度六十萬圓ノ經費ヲ投ジテ居ルガ其
ノ結果改良セラルルトキハ桑葉ノ收穫
ハ增大シ延テハ桑園ヲ又々整理減反ス
ル必要ガ起ッテ來ルト云フ矛盾ガ生ズ
ルノデハナイカ政府ノ所見如何
十三學者ノ說ニ依レバ最近十箇年ノ平
均產繭數量九千萬貫ヲ維持スル爲ニハ
桑園反當收葉量三百貫トスレバ四十五
萬町步ニテ十分ナリト政府ノ見込如何
若シ此ノ說ノ如クナレバ改植計畫遂行
後ハ六十萬町步トナル故ニ十五萬町步
ハ忽チ過剩トナリ再ビ減反ヲ爲サザル
ベカラズト思料ス故ニ桑園改植費豫算
ハ寧ロ之ヲ整理費トナシ整理シタル桑
園ヲ他農作物ノ栽培ニ轉向セシムルヲ
得策ト考ヘラレル一例ヲ示セバ群馬縣
ニ於テハ桑園ヲ整理シ之ニ依リ生ジタ
ル畑ニ他農作物ノ作付ヲ爲シ縣內不足
米三十萬石ヲ塡補セントスル計畫ヲ樹
テタリ故ニ改植費豫算ハ之ヲ整理費ニ振
リ替ヘルヲ得策ト考フ政府ノ所見如何
十四製絲業ニ就テ政府ハ大工場主義ヲ
採ルカ小工場主義ヲ採ルカ又企業單位
ヲ採ルカ工場單位ヲ採ルカ
十五製絲業ニ關スル統制トシテハ昭和
七年製絲業法ガ發布サレタ同法ハ所謂
製絲工業ノ免許制度ナルガ積極的統制
策トシテノ現實的意義ニ乏シト思ハル
ルモ政府ハ之ガ改正ヲ爲ス意思アリヤ
現行法ノ如クナレバ積極的統制ハ全ク
不可能ト思ハル何トナレバ免許制度ヲ
採ル以上斯業經營ノ基礎ヲ確立スルト
同時ニ弱小製絲ノ濫立ノ弊ヲ矯メナケ
レバナラヌ彼ノ弱小製絲ハ生絲品質ノ
向上統一ヲ妨ゲ機ニ臨ミ生絲ノ投賣ヲ
行ヒ不自然ナル絲價ノ變動ヲ誘ヒ又製
絲工業統制ノ必要ヲ生ジタル場合ニ支
障ヲ生ジ易イ卽チ一朝生絲ノ恐慌時ニ
於テハ生產物ノ量的制限若ハ價格維持
ノ目的ノ爲ニ統制セントスルモ現行法
ノ儘エテハ何等效果的ノモノデナイ何
トナレバ現行法ハ既設工場ハ永久ニ旣
得權ヲ有シ假令休業スルモ二年以內ニ
開業スルトキハ資格ヲ有ストシテアル
カラ謂ハバ既設製絲ノ特權化ニ過ギナ
イカラデアル元來生絲工業ハ資本構
成上不變資本ニ屬スル部分ガ他ノ纖維
工業ニ比シ比較的小サイ卽チ低度資本
工業故此ノ儘ニシテ居テハ小規模經營
ガ併合セラレテ大經營ニ移行スルコト
ハ必ズシモ容易デナイ故ニ工場ノ規
模企業形態、資力等ニ付更ニ調査シ
且小規模工場整理ニ付考量ヲ拂ハザル
ベカラズト思フ政府ノ所見如何
十六現在ニ於ケル製絲生產設備卽チ釜
數ハ總計二十七萬七千餘釜ニシテ今日
ノ生產高ニ對シ果シテ其レ丈ケノ設備
ヲ要スルカ專門家ノ間ニハ約十萬釜ハ
過剩ナリト云フ說ガアル政府ノ所見如
何
十七生絲貿易機關革新ノ機運發生シ彼
ノ片倉、郡是ノ如キ資本主義大經營製
絲ガ生絲貿易ヘノ進出トナリ又組合製
絲ノ生絲販賣機關ノ大聯合トナリ或ハ
長野縣共同出荷組合ノ創設等トナッタ
ガ金輸出禁止ニ依ル爲替低落アリシニ
拘ラズ絲價慘落シ七年春繭出〓期ニモ
絲價ハ實ニ三百九十圓ト云フ未曾有ノ
安値トナッタ販賣統制問題ノ起ルモ偶
然デナイ卽チ絲價ノ動搖激變ノ防止需
給ノ合理化ヲ叫ビ第六十三囘議會ニ我
ガ黨ノ胎中君ヨリ日本蠶絲株式會社法
案及輸出生絲販賣統制法案ヲ提出シ政
府モ之ニ對シ具體的調査ヲ進メ八年九
月二十二日輸出生絲統制調査會官制ヲ
發布シ目下調査中ト聞クガ其ノ經過結
果如何
十八聞ク所ニ依レバ同調査會ニ於テ生
絲輸出統制案トシテハ
イ特定ノ會社ヲ官民合同ニテ組織シ
生絲ノ販賣若ハ輸出ヲ集中シ生絲ノ
販賣數量及價格ヲ統制セントスルモ
ノ
ロ特定ノ場所又ハ一定ノ地區ヲ以テ
生絲ノ實物市場ヲ設置シ取引內容及
價格ノ公正ヲ表示スルモノ
ハ生絲ノ價格及販賣數量ヲ含ム一切
ノ販賣司令權ヲ調査會ニ一任セント
スルモノニシテ其ノ機關ハ國內的又
ハ國際的統制委員會ニ依ラントスル
モノ
等アリト聞ク(ハ)ノ如キハ實力ナキ調
査機關ニ價格ト數量トノ決定ヲ託スル
モノニシテ實行性乏シキ憾アリ(ロ)ハ
販賣統制ト稱スルモ寧ロ生絲賣買取引
ノ改正案ニ過ギザルガ如シ(イ)ハ詳細
知ルヲ得ザルモ有力ナル販賣機關ヲ設
ケ問屋ノ業務ヲ繼承セシメ輸出生絲ノ
委託販賣又ハ荷爲替ノ受拂、絲資金ノ
供給及之ヲ通シテ輸出生絲ノ販賣統制
ヲ爲サシメントスルモノノ如ク或程度
ニ於テ稍、其ノ目的ヲ達シ得ベキモ單
ニ之ヲ以テシテハ到底所期ノ目的ヲ達
シ得ズト思フ政府ハ果シテ此ノ程度ノ
販賣統制ヲ以テ完全且十分ナリトスル
カ
十九蠶絲業ニ關スル保險政策ニ付政府
ハ如何ナル方策ヲ有スルカ勿論養蠶ノ
違作、產繭價格ノ低落等ハ現狀ノ儘ニ
テハ對保險要素ヲ缺クヲ以テ暫ク措ク
モ彼ノ年々被害ヲ蒙ル桑園災害(霜害、
凍害)等ニ付テハ之ヲ考慮スベキモノ
デハナイカ桑園災害危險性總反別ハ三
十六萬三千餘町步、全桑園ノ五八%ナリ
此等ニ對シテハ保險制度ノ實施ヲ必要ト
スベシ但シ此ノ內最モ危險性ノモノ十
一萬六千餘町步ノ如キハ此ノ際減反シ
他ニ轉向セシムルヲ適當且必要ト認ム
(第十三項參照)最危險性ノ桑園ヲ改廢
シ他ノ農作ニ轉向セシムルトキハ殘リ
二十五萬餘町步ニ對シ災害保險案モ成
立ツコトニナルデハナイカ政府ノ所見
如何
二十養蠶金融ニ對シテハ農業金融、製絲
工業ニ對シテハ工業金融ト理論的ニハ
極メテ明白ナルガ金融ノ緊緩ニ依リ繭
價ノ高低或ハ生絲賣込問屋ノ投賣等ヲ
生ズルハ實例ノ示ス所ニシテ生絲業對
金融ハ非常ニ重要性ヲ有スルモノデア
ル世ニハ蠶絲業ニ對シ特殊銀行設立ノ
問題ガ論議サレテ居ルガ政府ハ蠶絲ノ
金融ニ關シ如何ナル方策ヲ有スルカ
二十一製絲工業ハ輓近長足ノ進步ヲ成
シタルガ徒ニ全部優良ナルモノノミ製
造スルコトヲ止メ複雜ナル工程ヲ省キ
大ニ太絲卽チ「デニール」五十或ハ百等
ヲモ製造シ「コスト」低下ヲ計ルモ一方
法タルヲ失ハナイ我ガ國ニハ關東北部
地方ニ相當ノ山桑アリ寧ロ內地向ノ生
絲ノ如キ或程度迄ハ此等山桑ヲ利用シ
飼育方法ヲ簡易ニシ粗雜ナル產繭、太
生絲ヲ作リ斯クシテ優良品ハ專ラ輸出
向トスルトキハ桑園ノ減反、安價ナル
生絲-或ハ其ノ人絹ニ匹敵シ得ルニ
至ルベシ-ヲ製作シ生絲ヲ一般向ト
シ從テ需要ヲ喚起シ延テ蠶業ニ全面的
ニ好影響ヲ來スコトトナルデハナイカ
今日人絹ノ進出ニ依リ生絲ガ壓迫セラ
ルルコトハ最早否ムベカラザル點デア
ル故ニ此ノ際寧ロ人絹トノ競爭ヲ全ク
度外視シ得ベキ生絲ノ生產ヲ行フベキ
デアル其ノ爲ニハ養蠶ヲ
イ精良無比ナル蠶繭ヲ作ルコト
ロ强健ナル蠶種ノ極端ナル粗放飼育
ニ依リ經濟的產繭ヲ得ルコト
ノ二種ニ區別シ前者ハ今日ノ養蠶業ニ
逐次改良ヲ加フルコトトシ後者ニハ我
ガ國ニアル已測十五度以下ノ農耕適地
千百餘萬町步アルヲ以テ假ニ其ノ一割
百萬町步ニ一部山桑系ノ對寒性强キ桑
樹ヲ立通トシテ栽植シ之ヲ隔年伐採等
ノ方法ニ依リ採葉シ最モ粗放養蠶ヲ行
フ(現ニ岩手縣ニテハ養蠶上山桑ノ使
用一〇%ニ達スト)蠶種ノ如キモ明治
初年時代迄盛ニ飼育サレタ强健種靑白
ノ如キヲ飼育シ其ノ產繭ハ粗放製絲法
ニ依リ極太絲八〇-一〇〇「デニー
ル」位ノモノヲ繰リ地遣絲ニ供用スル
ト云フガ如キ人絹競爭外製品ヲ作ルコ
ト之レ亦蠶絲業ノ轉向トシテ良策ナラ
ズヤ政府ノ所見如何
右及質問候也
本質問ニ對シテハ書面ヲ以テ答辯アラムコ
トヲ望ム
昭和九年三月十三日
內閣總理大臣子爵齋藤實
衆議院議長秋田〓殿
衆議院議員增田金作君提出蠶絲業ニ關ス
ル質問ニ對シ別紙答辯書差進候
衆議院議員增田金作君提出蠶絲業ニ關
スル質問ニ對スル答辯書
蠶絲業近時ノ情勢ニ鑑ミ政府ニ於テ
ハ其ノ根本方策トシテ繭絲類ノ生產費
ノ低下、繭絲類ノ生產及販賣ノ統制竝ニ
繭絲類ノ需要ノ擴充ヲ圖ルノ要緊切ナ
ルヲ認メ之ガ達成ニ必要ナル具體的施
設ニ付逐次考究實現ヲ期シツツアリ
二、南米、南洋、濠洲、印度、瓜哇等ハ
大體ニ於テ本邦生絲ノ新販路ナリト雖
是等地方ガ本邦生絲ノ永續的需要地ト
シテ今後多大ノ期待ヲ懸ケ得ルヤ否ヤ
ハ未ダ遽カニ斷ジ難シ尙諸外國ニ於ケ
ル生絲ノ消費ニ付テハ統計ナキモ大體
左ノ見當ナリト思料ス
世界各國ニ於ケル生絲消費數量見込
國名生絲備考
米國五五三、八一八俵一九三二年
日本二一一、八三四
中華民國一二七、六〇〇一九三二年
(消費見込)
佛蘭西五六、〇九〇一九三一年
(使用數量)
英國二九、二四一一九三二年
尙)
伊太利六、三九七一九三二年
推算
獨逸一二、〇五〇一九三一年
(消費見込)
瑞西一〇、〇〇〇一九三一年
尙)
波蘭五、四八七一九三一年
(使用數量)
和蘭七一七一九三〇年
(輸入數量)
白耳義六一八一九三〇年
(使用數量)
墺地利二、〇〇〇一九三一年
同)
洪牙利二、六〇〇一九三一年
尙)
瑞典三一一九三一年
同)
希臘三、六〇〇一九三一年
尙)
土耳古二、五〇〇一九三二年
尙)
埃及一、一九八一九三二年
尙)
暹羅四八一九三一年
同)
印度一一、八一六一九三二年
(輸入數量)
加奈陀九、二九五一九三一年
尙)
墨國二四一九三一年
同)
佛領印度四、六六七一九三二年
支那(使用數量)
其ノ他不詳
計一、〇五一、六三一
備考
本表生絲消費見込中米國ハ絹業協會報
告ニ日本ハ織物中央會調査ニ英國ハ本
年九月ノ海外經濟事情ニ依リ其ノ他ノ
諸國ハ海外主要絹業地ノ絹業〓況ノ原
絲(生絲)使用數量又ハ輸入數量ヲ以
テ消費數量ト見込タルモノナリ
三、生絲ノ新規用途發見ニ關シ現在各種
ノ試驗〓究ヲ實施セシメツツアルモ何
レモ〓究ノ中途ニアリ未ダ確實ナル成
績ヲ發表シ得ルノ程度ニ至ラザルモ將
來生絲ト他種纎維トノ性狀ノ比較應用
方法竝價格關係等ニ亙ル綜合〓究ヲ完
成スルニ於テハ相當見込アルモノト認
ム
四、政府ニ於テハ政府及當業者相協力シ
繭絲類新規利用ノ〓究、新用途及販路
ノ開拓竝ニ生產費ノ低下等ヲ期スルト
共ニ又必要ニ應ジ生產及販賣ノ統制ヲ
圖リ以テ斯業ノ更生ニ努ムルノ要アル
モノト認ム
五、最近ノ生絲需給ノ趨勢ニ鑑ミルニ本
邦蠶絲業ハ今後徒ラニ增產ノ一途ニ進
ムベカラズシテ寧ロ生產ノ統制ヲ圖ル
ノ要アルハ自明ノ理ナリ然レ共生絲及
繭ノ生產調節ハ之ガ生產ニ從事スル者
ノ範圍極メテ廣汎ナル爲之ヲ統制スル
コトハ容易ナラザルモ政府トシテハ生
產及販賣過程ニ於ケル統制的施設ノ充
實ヲ圖リ當業者ヲシテ自治的ニ統制セ
シムル樣指導督勵シツツアリ
六、人絹ト生絲ノ價格ノ比率ニ付テハ曩
ニ一對三ノ說行ハレタルガ畢竟當時ノ
經濟情勢ノ下ニ於ケル經驗ヲ基礎トシ
タル推論ニ過ギザレバ今後兩者比率ノ
目標ヲ奈邊ニ求ムベキカハ遽カニ豫斷
ヲ許サザルモノト認ム
七、人絹工業ノ發達ニ對シ蠶絲對策上考
慮ヲ要スベキハ繭絲類ノ生產費ノ低下
ト生絲本來ノ特質發揮トニ努ムルト共
ニ繭絲類ノ新規利用ヲ策スルニ在リ之
ガ具體策ニ付テハ銳意〓究ヲ重ネ成案
ヲ得ルニ從ヒ實現ニ努メツツアリ
八、生絲生產費ノ低下ハ主トシテ之ガ約
八割ヲ占ムル原料繭ノ低廉化ニ俟ツベ
ク而シテ繭ノ生產費ハ原蠶種ノ國家管
理、桑園ノ整理改植、飼育方法ノ改良
等ニ依リ現在ヨリ尙相當低下シ得ベキ
見込アリ製絲方法ノ改良等ニ付テモ努
ムル所アラントス
九、蠶絲業統制ノ中軸トシテ輸出生絲ノ
販賣統制ハ斯業進展上極メテ肝要トス
ル所ナルヲ以テ政府ハ調査會ヲ設ケテ
之ガ具體策ニ付銳意調査審議中ノ處最
近其ノ答申アリタルヲ以テ之ガ成案ヲ
得テ其ノ實現ニ必要ナル準備ヲ進メツ
ツアリ
+、生絲販賣以外ノ過程ニ亙リ統制ヲ圖
ルノ要アルコトハ勿論ニシテ政府ハ曩
ニ製絲業法ヲ制定施行シタルガ更ニ新
ニ原蠶種ノ國家管理ニ依ル蠶種ノ統制
ヲ行ハントシ尙其ノ他ノ方策ニ關シテ
ハ複雜ナル斯業ノ實際ニ鑑ミ愼重考慮
シ成案ヲ得ルニ於テハ漸次其ノ實現ヲ
圖ラントス
十一、昭和七年度ニ於テ樹テタル桑園ノ
整理改植計畫ハ繭ノ生產數量ヲ基準ト
シタルモノニアラズ當時著シク荒廢ニ
歸シ經濟上不利益ナリト認ムル桑園ノ
改植ヲ農村匡救事業トシテ實行セシメ
之ニ依リ桑園能率ノ增進ヲ圖リ其ノ增
進セラルヘキ見込數量ヲ一面桑園ノ整
理ニ依リ調節セシメムトシタルモノナ
リ
十二、九千萬貫ノ繭ヲ生產スルニ要スル
桑葉ハ大體十八億貫內外ノ見込ニシテ
現在ノ桑園六十五萬二千五百十四町二
段(昭和七年六月現在)ヨリ收穫セラ
ルヘキ桑葉見込量二十億六千萬貫ナル
ヲ以テ現在ニ於テハ甚シキ過剩ト見ル
コト能ハス然レトモ今後荒廢桑園ノ改
植又ハ改善ニ依リ著シク能率ヲ增進ス
ル場合ハ桑葉ノ過剩ヲ來スヘキヲ以テ
其ノ過剩分ハ適當ノ指導奬勵ニ依リ整
理セシムル要アルヘシ
十三、繭一貫ヲ生產スルニ要スル桑葉量
ヲ十五貫ト見做ストキハ反當リ三百貫
ノ收葉量アル桑園四十五萬町步ニテ九
千萬貫ノ繭ヲ收穫シ得ル計算トナル然
レ共養蠶者ノ實情ヨリ之ヲ見ルトキハ
繭一貫ノ生產ニハ約二十貫ノ桑葉ヲ要
スル現狀ナルヲ以テ六十萬町步ノ桑園
ハ必スシモ過剩ナリトハ認メ難シ但シ
經營ノ改善ニ依リ所要桑葉量ハ多少之
ヲ節減シ得ヘキ餘地アルヲ以テ今後之
カ實現ニ伴ヒ漸次過剩桑園ヲ整理シテ
他ノ作物ノ栽培ニ轉セシムルハ肝要ノ
コトナリト認ム
十四、製絲業ニ付テハ大體一工場百五十
釜以上ノ設備ヲ以テ適當ト認メ製絲業
法ニ依リ組合製絲ニ付百釜ヲ認ムルノ
外之ニ達セサルモノノ新設ヲ免許セス
尙右免許關係ニ於テハ工場單位ヲ採レ
共中小製絲業ノ相互共助ヲ趣旨トスル
生絲共同施設組合制度ニ於テハ組合員
ノ資格ニ付企業單位ニ依レリ
十五、製絲業法ハ未タ施行一年有半ニ過
キスシテ其ノ免許制度ノ改正ハ現在政
府ニ於テ考慮シ居ラサル所ナリ
尤モ小規模製絲工場ノ合理化ニ付テハ
昭和七年度以來製絲業ノ共同施設ヲ奬
勵スルト共ニ昨年製絲業法ヲ改正シテ
生絲共同施設組合ノ制度ヲ創設シ共同
ノ施設ニ依リ其ノ經營ノ改善ニ資シツ
ツアリ
十六、現在ニ於ケル標準的製絲技術ニ依
ル設備當リ生絲生產能率ヨリスレバ現
在ノ設備釜數ハ質問ノ如キ過剩釜ヲ有
スルコトトナル尤モ實際上ハ相當多數
ノ休止釜數ヲ存シ且中小工場ニハ作業
日數尠キモノ相當多キ實情ニ在リ
十七、九ノ答辯參照
十八、同前
十九、桑ノ災害保險ハ之ヲ農業保險中ニ
加へ農務局ニ於テ調査(自昭和三年度
至同五年度)ノ結果既ニ其ノ成案ヲ得
タルモ財政其ノ他ノ關係ニ依リ本議會
ニ提案スルニ至ラス
二十、政府ハ現在ニ於テハ蠶絲金融ニ關
シ特殊金融機關設置等ハ考慮セザルモ
本件ハ極メテ重要ナル事項ナルヲ以テ
之ガ圓滑ナル融通ニ付努力シツツアル
ト共ニ蠶絲ノ生產取引ノ機構ノ改善統
制ヲ通ジ之ガ目的達成ニ資セントス
二十一、生絲原價ノ低下ヲ圖リ人造絹絲
ニ對抗スルノ要アルハ勿論ナリ而シテ
一面ニ於テ人絹ノ遠ク及ハサル優良無
比ナル蠶繭ヲ產出シテ優良生絲ノ生產
ニ努メ他面ニ於テ極力飼育上ノ勞費ヲ
省キ經濟的產繭ニ依リ品質稍劣ルモ安
價ナル生絲ヲ生產スルガ如キハ一方策
ト認メラルルヲ以テ之ガ〓究ニ必要ナ
ル經費ヲ今般追加豫算ニ計上シタリ然
レ共經濟的蠶繭生產ノ手段トシテ山桑
ノ利用ハ葉質勞力等ノ關係上果シテ有
利ナリヤ否ヤニ付尙篤ト考慮ノ要アリ
ト認ム
右及答辯候也
昭和九年三月十三日
農林大臣後藤文夫
一政府ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
輸出生絲販賣統制法案
(以上三月十二日提出)
一議員ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
護國共濟組合法案
提出者
大口喜六君木下成太郞君
廣瀨爲久君宮古啓三郞君
助川啓四郞君添田敬一郞君
高田耘平君山枡儀重君
池田秀雄君山道襄一君
破產者ノ公ノ資格ニ關スル法律案
提出者
土屋〓三郞君武知勇記君
村松久義君〓寛君
枡谷寅吉君
蠶絲業組合法中改正法律案
提出者
加藤知正君高橋守平君
小山邦太郞君助川啓四郞君
靑木精一君戶田由美君
(以上三月十日提出)
關稅定率法中改正法律案
提出者
山下谷次君宮澤裕君
森田福市君
(以上三月十二日提出)
不動產登記法改正ニ關スル建議案
提出者
杉本國太郞君山本芳治君
公立商船學校ヲ官立ニ變更若ハ國庫補助
ニ關スル建議案
提出者
星島二郞君川崎克君
濱田國松君藤田若水君
小樽稚内間定期命令航路ニ關スル建議案
提出者林路一君
北海道中部ニ鐵道局增設ニ關スル建議案
提出者
田中喜代松君林路一君
蹄鐵工法制定ニ關スル建議案
提出者
大石倫治君三善信房君
橫山泰造君
佛典奧義ノ最高〓究機關設置ニ關スル建
議案
提出者
藏園三四郞君靑木精一君
荒川五郞君中川觀秀君
能登半島沿岸國立公園指定ニ關スル建議
案
提出者櫻井兵五郞君
北海道酸性土壤地改良ニ要スル石灰運賃
輕減ニ關スル建議案
提出者
山本厚三君坂東幸太郞君
手代木隆吉君大島寅吉君
北海道港灣漁港修築速成ニ關スル建議案
提出者
山本厚三君坂東幸太郞君
手代木隆吉君大島寅吉君
北海道鐵道敷設速成ニ關スル建議案
提出者
山本厚三君坂東幸太郞君
手代木隆吉君大島寅吉君
淀川低水工事ノ計畫擴充ニ關スル建議案
提出者
田中祐四郞君本田彌市郞君
ェチオピアニ親交使節派遣ニ關スル建議
案
提出者中山福藏君
宮津港ヲ第一種重要港灣ニ指定ニ關スル
建議案
提出者
田中祐四郞君本田彌市郞君
七尾金澤間縣道ヲ軍事用國道ニ編入ニ關
スル建議案
提出者櫻井兵五郞君
電信文鐵道驛名札國定〓科書ノカナ遺氏
名ノ文字地名ノ書方ノ改善ニ關スル建議
案
提出者
池田敬八君斯波貞吉君
土屋〓三郞君山枡儀重君
都城驛霧島神宮驛間國營自動車運輸ニ關
スル建議案
提出者水久保甚作君
岡崎飯田間鐵道敷設ニ關スル建議案
提出者
小林錡君山本愼平君
北海道ニ國立種馬所設置ニ關スル建議案
提出者
東武君尾崎天風君
富山ヨリ東京大阪名古屋仙臺靑森ノ各地
間及富山朝鮮滿洲帝國間定期航空路開設
ニ關スル建議案
提出者
高見之通君土倉宗明君
島田七郞右衞門君野村嘉六君
傷痍軍人ノ爲特種保險法制定ニ關スル建
議案
提出者
八角三郞君上原平太郞君
原口初太郞君胎中楠右衞門君
神崎川及猪名川改修促進ニ關スル建議案
提出者
蔭山貞吉君靑木雷三郞君
伊豆大島ニ中央氣象臺附屬測候所設置ニ
關スル建議案
提出者
三上英雄君牧野賤男君
鈴木富士彌君斯波貞吉君
伊豆七島ニ府縣制竝町村制施行ニ關スル
建議案
提出者
三上英雄君牧野賤男君
鈴木富士彌君斯波貞吉君
中小商工業振興ニ關スル建議案
提出者
安藤正純君牧野賤男君
鈴木吉之助君中野種一郞君
上田孝吉君森田政義君
野方次郞君加藤鐐五郞君
砂田重政君中井一夫君
宮澤〓作君岡田伊太郞君
田邊熊一君箸本太吉君
岸田正記君宮川一貫君
西岡竹次郞君前田房之助君
吉川吉郞兵衞君中島彌團次君
眞鍋儀十君戶井嘉作君
三宅磐君小山松壽君
中村三之丞君川橋豐治郞君
中山福藏君枡谷寅吉君
松定吉君中亥歲男君
濱野徹太郞君田島勝太郞君
勝正憲君櫻井兵五郞君
山本厚三君俵孫一君
宗〓團體法制定ニ關スル建議案
提出者
安藤正純君〓水銀藏君
田中善立君加藤知正君
楠基道君
北海道農家負債整理ニ關スル建議案
提出者
山本厚三君坂東幸太郞君
手代木隆吉君大島寅吉君
四國ニ國立種馬所設置ニ關スル建議案
提出者
伊藤皆次郞君宮脇長吉君
山下谷次君
宗〓法制定ニ關スル建議案
提出者
中川觀秀君風見章君
原料牛乳及乳製品事業統制ニ關スル建議
案
提出者
林路一君高橋熊次郞君
手代木隆吉君河野一郞君
カゼインニ對シ輸入關稅賦課ニ關スル建
議案
提出者
林路一君手代木隆吉君
白山新潟間竝新潟新發田間鐵道敷設ニ關
スル建議案
提出者
松木弘君渡邊幸太郞君
山本悌二郞君田邊熊一君
鈴木義隆君加藤知正君
出塚助衞君武田德三郞君
高橋金治郞君山田又司君
增田義一君佐藤與一君
原吉郞君山田助作君
人造バター工業保護助長ニ關スル建議案
提出者
小野寺章君上田孝吉君
新潟港ニ家畜傳染病檢疫所設置ニ關スル
建議案
提出者
佐藤與一君原吉郞君
山田助作君增田義一君
大竹貫一君
(以上三月十日提出)
一去十日提出者ニ於テ撤囘シタル議案左ノ
如シ
蠶絲業組合法中改正法律案
提出者風見章君
(以上二月三日提出)
一議員ヨリ提出セラレタル質問主意書左ノ
如シ
種繭ニ對スル特別課稅ニ關スル質問主意
書
提出者加藤知正君
(以上三月十二日提出)
一去十日議長ニ於テ選定シタル委員左ノ如
シ
輸出水產物取締法案(政府提出)委員
鈴木英雄君靑木精一君
靑山憲三君保良淺之助君
渡邊與七君中村嘉壽君
鵜澤宇八君村上紋四郞君
小池仁郞君
貿易調節及通商擁護ニ關スル法律案(政
府提出)委員
加藤鐐五郞君國枝捨次郞君
畑桃作君岡田伊太郞君
武田德三郞君熊谷五右衞門君
芦田均君大山斐瑳麿君
中村嘉壽君宮本雄一郞君
玉置吉之亟君中島彌團次君
小川〓太郞君松田竹千代君
田島勝太郞君勝正憲君
福田虎龜君中川觀秀君
一去十日ニ於ケル特別委員ノ異動左ノ如シ
製鐵所特別會計法廢止法律案(政府提出)
委員
辭任濱野徹太郞君補闕田島勝太郞君
辭任鷲澤與四二君補闕岸衞君
鐵道敷設法中改正法律案(政府提出)委員
辭任高橋壽太郞君補闕佐藤理吉君
農村救濟負擔均衡法案(〓瀨一郞君外四
名提出)外一件委員
辭任金井正夫君補闕平野桑四郞君
辭任佐々木家壽治君補闕山口忠五郞君
衆議院議員選擧法中改正法律案(政府提
四委員
辭任木本主一郞君補闕森田政義君
辭任濱野徹太郞君補闕戶澤民十郞君
辭任森田政義君補闘木本主一郞君
石油業法案(政府提出)委員
辭任田口文次君補闘福井甚三君
一去十一日第六部選出決算委員喜多孝治君
死去セラレタリ
一昨十二日衆議院規則第十五條但書ニ依リ
議長ニ於テ議席ヲ左ノ通變更セリ
二三四林讓治君
二三八大阪府第五區
選出議員
三九八小林絹治君
一昨十二日議長ニ於テ辭任ヲ許可シタル常
任委員左ノ如シ
第五部選出建議委員山本市英君
一昨十二日委員長及理事互選ノ結果左ノ如
輸出水產物取締法案(政府提出)委員
委員長鈴木英雄君
理事
保良淺之助君村上紋四郞君
貿易調節及通商擁護ニ關スル法律案(政
府提出)委員
委員長加藤鐐五郞君
理事
國枝捨次郞君大山斐瑳麿君
松田竹千代君
一昨十二日特別委員委員長及理事補關選擧
ノ結果左ノ如シ
製鐵所特別會計法廢止法律案(政府提出)
委員
委員長橫川重次君(委員長加藤鐐
五郞君本日委員長辭任ニ付
其ノ補闕)
理事田尻生五君(理事橫川重次
君本日理事辭任ニ付其ノ補
闕
理事田島勝太郞君(理事濱野徹太
郞君本月十日委員辭任ニ付
其ノ補闕)
一昨十二日ニ於ケル特別委員ノ異動左ノ如
治安維持法改正法律案(政府提出)委員
辭任崎山嗣朝君補闕宮崎一君
五大都市ニ特別市制實施ニ關スル法律案
(中井一夫君外六名提出)外一件委員
死去喜多孝治君補闕井阪豐光君
臺灣事業公債法中改正法律案(政府提出)
外一件委員
死去喜多孝治君補闕山下谷次君
辭任白城定一君補闕上野基三君
石油業法案(政府提出)委員
辭任田中貞二君補闕八角三郞君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006513242X02219340313&spkNum=1
-
002・秋田清
○議長(秋田清君) 是ヨリ會議ヲ開キマ
ス-只今御報〓致サセマシタル通リ、喜
多孝治君一昨十一日逝去セラレマシタルコ
トハ、洵ニ痛惜哀悼ノ至リニ堪ヘマセヌ、
此際勝田永吉君ヨリ發言ヲ求メラレテ居リ
マス-勝田永吉君
〔勝田永吉君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006513242X02219340313&spkNum=2
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003・勝田永吉
○勝田永吉君 只今議長ヨリ御報告ニ相成
リマシタル、喜多孝治君ニ對シマシテ、院
議ヲ以テ甲詞ヲ贈呈シ、其弔詞ハ議長ニ一
任スルノ動議ヲ提出致シマス(拍手)而シテ
此際私ハ諸君ノ御許シヲ得マシテ、議員一
同ヲ代表シ、故喜多孝治君ニ對シテ哀悼ノ
徵意ヲ表シタイト思ヒマス(拍手)
喜多孝治君ハ明治十一年二月大阪府北河
內郡門眞村ニ生レ、靑春笈ヲ負ヒテ東都ニ
遊學シ、法學院英語法學科ヲ卒業シ、爾後
官途ニ就キ、遞信書記官、臺灣總督祕書官
兼參事官、臺灣總督府殖產局長、臺南州知
事等ニ歷任シ、昭和三年樺太長官ノ重任ニ
當リ、其間行ク處可ナラザルナク、官學出身
者ノ間ニ伍シマシテ、常ニ燦然タル光彩ヲ
放チ、令名ノ嘖々タルモノガアッタノデゴザ
イマス、昭和五年二月、第十七囘衆議院議
員總選擧ニ際シマシテ、當時野ニ在ラレマ
シタル同君ハ、周圍ノ政情必シモ同君ノ爲
ニ有利デナカッタノニ拘リマセズ、蹶然立候
補セラレマシテ、能ク當選ノ榮冠ヲ擔ハレ
マシテ、爾來昭和七年ノ總選擧ヲ經マシテ、
今日ニ至ルマデ引續キ衆議院議員トシテ國
家憲政ノ爲ニ盡瘁セラレ、特ニ其植民地行
政ニ對スル透徹セル識見ニ付キマシテハ、
同君多年ノ〓鑽ト、實驗ヲ基礎ニセラレタ
ルモノデゴザイマシテ、吾々同僚ノ常ニ推
服措ク能ハザリシ所デアッタノデゴザイマ
ス(拍手)然ルニ去ル八日、突如御發病アラ
セラレマシタルコトニ付キマシテ、吾々ハ
一日モ速ニ其御本復アランコトヲ祈ッテ居
リマシタニ拘ラズ、藥石效ナク、十一日午
後七時四十分、溘焉トシテ不歸ノ客トナラ
レマシタコトハ、洵ニ傷心痛惜ノ至ニ堪へ
マセヌ(拍手)玆ニ謹ンデ哀悼ノ微意ヲ表シ
マシテ弔詞ト致シマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006513242X02219340313&spkNum=3
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004・秋田清
○議長(秋田清君) 勝田君提出ノ動議ニ御
異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006513242X02219340313&spkNum=4
-
005・秋田清
○議長(秋田〓君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ動議ハ可決セラレマシタ、玆ニ議
長ノ手許ニ於テ起草シタル弔詞ヲ朗讀致シ
マス
衆議院ハ議員從四位勳三等喜多孝治君ノ
長逝ヲ哀悼シ恭シク弔詞ヲ呈ス
〔拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006513242X02219340313&spkNum=5
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006・秋田清
○議長(秋田清君) 此贈呈方ハ議長ニ於テ
取計ヒマス-是ヨリ日程ニ入リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006513242X02219340313&spkNum=6
-
007・青木雷三郎
○靑木雷三郞君 議事日程變更ノ動議ヲ提
出致シマス、卽チ此際日程第一及ビ第二ヲ
繰上ゲ上程シ、逐次其審議ヲ進メラレンコ
トヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006513242X02219340313&spkNum=7
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008・秋田清
○議長(秋田清君) 靑木君ノ動議ニ御異議
アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006513242X02219340313&spkNum=8
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009・秋田清
○議長(秋田〓君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ日程ハ變更セラレマシタ-日程
第一、輸出生絲販賣統制法案ノ第一讀會ヲ
開キマス-農林大臣後藤文夫君
第輸出生絲販賣統制法案(政府提
U第一讀會
輸出生絲販賣統制法案
輸出生絲販賣統制法
第一條本法ニ於テ輸出生絲問屋ト稱ス
ルハ輸出ノ目的ヲ以テスル生絲ノ賣買
取引(取引所ノ賣買取引ヲ含マズ以下
之ニ同ジ)ノ仲立又ハ取次ヲ業トスル
者ヲ謂フ
主務大臣ノ指定スル地ニ於テ生絲ノ輸
出ヲ業トスル者ニ對シ其ノ地ニ事務所
ヲ設ケ生絲ノ販賣ヲ爲ス者ハ本法ノ適
用ニ付テハ之ヲ輸出生絲問屋ト看做ス
第二條主務大臣ノ指定スル地ニ於テ生
絲ノ輸出ヲ業トスル者ヲ買主トスル生
絲ノ賣買取引ハ本法ノ適用ニ付テハ之
ヲ輸出ノ目的ヲ以テスル生絲ノ賣買取
引ト看做ス
第三條輸出生絲問屋タラントスル者ハ
主務大臣ノ免許ヲ受クベシ
前項ノ免許ニ關シ必要ナル事項ハ命令
ヲ以テ之ヲ定ム
第四條輸出生絲問屋ノ免許ノ期間ハ十
年以内トス
第五條輸出生絲問屋支店其ノ他ノ事務
所ヲ設置セントスルトキハ命令ノ定ム
ル所ニ依リ主務大臣ノ認可ヲ受クベシ
第六條主務大臣ハ輸出生絲問屋ノ業務
ノ狀況ニ依リ必要ト認ムルトキハ其ノ
業務ヲ停止シ又ハ必要ナル事項ヲ命ズ
ルコトヲ得
第七條主務大臣ハ輸出生絲問屋ノ所爲
ニシテ本法若ハ本法ニ基キテ發スル命
令ニ違反シ又ハ公益ヲ害シ若ハ害スル
ノ虞アリト認ムルトキハ其ノ業務ヲ停
止シ又ハ其ノ認可若ハ免許ヲ取消スコ
トヲ得
第八條輸出ノ目的ヲ以テスル生絲ノ賣
買取引若ハ其ノ仲立ヲ爲ス者又ハ生絲
ノ輸出ヲ爲ス者ハ勅令ノ定ムル所ニ依
リ其ノ賣買取引又ハ輸出ニ關スル事項
ヲ輸出生絲登錄原簿ニ登錄スルコトヲ
要ス
第九條前條ノ規定ニ依リ登錄ヲ爲シタ
ル者又ハ其ノ利害關係人ハ命令ノ定ム
ル所ニ依リ輸出生絲登錄原簿ノ閱覽又
ハ其ノ膽本若ハ抄本ノ交付ヲ請求スル
コトヲ得
第十條主務大臣ハ輸出ノ目的ヲ以テス
ル生絲ノ賣買取引若ハ其ノ仲立ヲ爲ス
者又ハ生絲ノ輸出ヲ爲ス者ニ對シ生絲
ノ販賣ノ統制上必要ナル事項ヲ命ジ又
ハ必要ナル處分ヲ爲スコトヲ得
第十一條主務大臣取締上必要アリト認
ムルトキハ輸出生絲問屋又ハ生絲ノ輸
出ヲ業トスル者ニ對シ業務ニ關スル報
告ヲ爲サシメ又ハ當該官吏ヲシテ事務
所倉庫其ノ他ノ場所ニ臨檢シ業務ノ
狀況若ハ帳簿書類其ノ他ノ物件ヲ檢査
セシムルコトヲ得
前項ノ場合ニ於テハ當該官吏ハ其ノ身
分ヲ證明スベキ證票ヲ携帶スベシ
第十二條主務大臣ノ免許ヲ受ケズシテ
輸出生絲問屋ノ業務ヲ行ヒタル者ハ千
圓以下ノ罰金ニ處ス
第十三條左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ
五百圓以下ノ罰金ニ處ス
一第五條ノ規定ニ違反シタル者
二第六條ノ規定ニ依ル命令又ハ第六
條若ハ第七條ノ規定ニ依ル業務停止
ノ處分ニ違反シタル者
三第十條ノ規定ニ依ル命令又ハ處分
ニ違反シタル者
第十四條左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ
三百圓以下ノ罰金ニ處ス
-第八條ノ規定ニ依ル登錄ヲ怠リ又
ハ不正ノ登錄ヲ爲シタル者
二第十一條ノ規定ニ依ル報〓ヲ怠リ
又ハ臨檢檢査ヲ拒ミ、妨ゲ若ハ忌避
シ又ハ其ノ尋問ニ對シ答辯ヲ爲サズ
若ハ虚僞ノ陳述ヲ爲シタル者
第十五條第八條ノ規定ニ依ル登錄ノ事
務ニ從事シ又ハ從事シタル者故ナク其
ノ職務ニ關シ知得タル他人ノ業務上ノ
祕密ヲ漏泄シタルトキハ五百圓以下ノ
罰金ニ處ス
第十六條輸出ノ目的ヲ以チスル生絲ノ
賣買取引若ハ其ノ仲立ヲ爲ス者又ハ生
絲ノ輸出ヲ爲ス者ハ其ノ代理人、戶主、
家族、同居者、雇人其ノ他ノ從業者ガ
本法又ハ本法ニ基キテ發スル命令ニ違
反シタルトキハ自己ノ指揮ニ出デザル
ノ故ヲ以テ其ノ處罰ヲ免ルルコトヲ得
ズ
第十七條本法又ハ本法ニ基キテ發スル
命令ニ依リ輸出ノ目的ヲ以テスル生絲
ノ賣買取引若ハ其ノ仲立ヲ爲ス者又ハ
生絲ノ輸出ヲ爲ス者ニ適用スベキ罰則
ハ其ノ者ガ法人ナルトキハ理事、取締
役其ノ他ノ法人ノ業務ヲ執行スル役員
ニ、未成年者又ハ禁治產者ナルトキハ
其ノ法定代理人ニ之ヲ適用ス但シ營業
ニ關シ成年者ト同一ノ能力ヲ有スル未
成年者ニ付テハ此ノ限ニ在ラズ
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
本法施行ノ際命令ノ定ムル所ニ依リ引續
キ六月以上輸出生絲間屋タル者又ハ其ノ
承繼人ハ本法施行ノ日ヨリ五年間之ヲ本
法ニ依リ免許ヲ受ケタル者ト看做ス
前項ノ規定ニ依リ免許ヲ受ケタル者ト看
做サルル者本法施行ノ際現ニ支店其ノ他
ノ事務所ヲ有スル場合ニ於テハ其ノ支店
其ノ他ノ事務所ニ付第五條ノ規定ニ依ル
認可ヲ受ケタルモノト看做ス
(國務大臣後藤文夫君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006513242X02219340313&spkNum=9
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010・後藤文夫
○國務大臣(後藤文夫君) 只今議題トナリ
マシタ輸出生絲販賣統制法案提出ノ理由ヲ
御說明申上ゲマス、現今我國ニ於テ生產セ
ラレマスル生絲ノ大部分ハ、海外ニ消費セ
ラレマス、其取引ハ主トシテ輸出生絲市場
ニ於テ行ハレルノデアリマスカラ、同市場
ノ販賣組織及ビ取引方法ノ如何ハ、我ガ蠶
絲業ニ取リマシテ、極メテ重要ナ關係ヲ有
スル次第デアリマス、然ルニ輸出生絲市場
ノ販賣組織及ビ取引方法ノ現狀ヲ見マスル
ニ、之ニ關スル諸種ノ制度未ダ完カラザル
ガ爲ニ、兎角當業者間ノ統制ヲ缺キ、取引
ノ圓滑公正ヲ期スルニ遺憾ナ點ガアルノデ
ゴザイマス、延イテ絲價ノ安定ヲ阻害スル
ヤウナ場合モナイトハ申セナイノデアリマ
ス、仍テ是ガ改善統制ヲ圖リマスコトハ、
蠶絲業ノ進展上極メテ肝要トスル所デゴザ
イマス、政府ハ昨年九月以來、輸出生絲販
賣統制調査會ヲ設置致シマシテ、輸出生絲
販賣統制ノ方策ニ關シ諮問致シテ居ッタノ
デアリマスルガ、最近同調査會ニ於キマシ
テ、取敢ヘズ急施ヲ要スル方策ノ答申ガゴ
ザイマシタ、政府ハ右ノ答申ニ·基キマシ
テ、本法案ヲ提出スルコトニ致シタ次第デ
アリマス
以上ノ次第デアリマシテ、本法案ハ輸出
生絲ノ販賣組織及ビ取引方法ノ改善統制ヲ
圖ルノ趣旨デアリマシテ、其大要ヲ中シマ
スレバ、第一ニ、輸出生絲問屋ノ免許制度
ヲ設クルコトニ致シマシタ、現在ハ多數ノ
輸出生絲問屋ガ存在致シマシテ、販賣上遺
憾ノ點ガアリマスノデ、此小サナ輸出生絲
問屋ノ簇生致シマスルヤウナコトヲ防ギタ
イト云フ趣旨デアリマス、第二ニ、輸出生
絲登錄制度ヲ設クルコトニ致シマシタ、輸出
生絲ノ賣買取引ハ、總テ之ヲ公ケノ原簿ニ登
錄致シマシテ、取引ノ公明ヲ確保スルト共
ニ、販賣統制上ノ效果ヲ完カラシムルコト
ニ資シタイト考ヘルノデアリマス、第三
ハ、主務大臣ガ生絲販賣統制上必要ナ命令
又ハ處分ヲナシ得ル旨ノ權限ニ關スル規定
ヲ設クルコトニ致シマシタ、蠶絲業ノ非常時
ニ際會致シマシタ場合ニ、政府ハ必要ニ應
ジマシテ、當業者ノ自治的統制ト相俟ッテ、
國家權力ニ依リ販賣統制ノ完璧ヲ期シ得ル
措置ヲ執リ得ルコトニ用意ヲ致シタノデア
リマス、以上ハ本案ノ要旨デアリマス、何
卒御審議ノ上、御協賛アランコトヲ希望致
シマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006513242X02219340313&spkNum=10
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011・秋田清
○議長(秋田〓君) 是ヨリ通告順ニ依リ質
疑ヲ許シマス-近藤壽一郞君
〔近藤壽一郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006513242X02219340313&spkNum=11
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012・近藤壽市郎
○近藤壽一郞君 諸君、只今上程サレマシ
タ輸出生絲販賣統制法ニ付キマシテハ米
ト同樣ニ、今日我國ノ國情カラ言ヒマスル
ト、此蠶絲對策ト云フコトハ、重大ナ問題
デアリマス、其重大ナ問題デアルガ故ニ、
吾々議會ト致シマシテハ、六十三議會ニ旣
ニ政府ガ製絲法ヲ提出サレ、之ヲ滿場一致
デ議決致シマシタ際ニ、其附帶決議トシ
テ、此製絲法ダケデハ蠶絲對策ハ完全スル
コトハ出來ナイカラ、之ニ伴フベキ諸般ノ
對策ヲ、次ノ議會ニハ必ズ出スベシト云
フ、政府ニ要望ガシテアッタノデアリマス、
然ルニ六十四議會ニ於テハ、胎中君外數名
ガ提出者トナッテ、統制法ナルモノモ、統制
法ニ伴フベキ日本蠶絲株式會社法ナルモノ
モ通過シタノデアリマスルガ、貴族院ニ於
テ審議未了ニ終ッタノデアリマス、巳ニ業ニ
國民ト致シマシテモ、吾々議事ト致シマシ
テモ、三年モ前ヨリ之ヲ要望シテ、蠶絲對
策ニ備ヘントシタノニモ拘ラズ、政府ニ於
テハ審議會ニ掛ケルトカ、或ハ調査〓究ニ
名ヲ藉リテ、今日マデ之ヲ提出セナンダト
云フノハ、私共怪訝ニ堪ヘナイノデアリマ
ス(拍手)
諸君、今日農村ノ疲弊ニ付テハ、養蠶ト
米ト、此二ツノ問題ガ重大ナル問題デアル
ト云フコトハ爭ハレヌ事實デアリマス、然
ルノニ拘ラズ今日漸ク此案ヲ出サレタノデ
アリマス、但シ數日前ニ決定ニナリマシタ原
蠶種管理法モ提出サレマシタガ、既ニ其際ニ
此原蠶種管理法ナルモノト相竝ンデ、之ヲ
提出スベキモノデアルノニ、會期切迫ノ場
合ニ至ッテ此案ヲ出シタト云フコトガ、抑
政府ノ矛盾ト申シマセウカ、或ハ國民ニ對
スル-此蠶絲對策ニ對スル誠意ノ無イト
云フコトヲ、私ハ遺憾ニ存ズル次第デアリ
マス(拍手)サリトテ此輸出生絲統制法ガ決
定ニナリマシタナラバ必ズ是デ輸出生絲
ノ解決ガ出來ルカ、只今提案ノ理由ニ農林
大臣ハ御述ベニナリマシタ如クニ行ヘル
カ、私共ハ此案一ツデハ、輸出生絲ノ統制
ト云フモノガ、唯絲價ノ安定ト統制ヲ圖ル
ト云フ、小ナル所ノ貿易問屋ヲ統制スルト
云フコトダケハ出來ルカモ知レナイガ、斷
ジテ根本的ニ是ガ出來ルトハ私共ハ思ヘナ
イノデアリマス(拍手)
ソコデ私ハ伺ヒタイノデアリマス、此統
制案ナルモノヲ、吾々ガ原案ノ通リ決議シ、
貴族院ニ於テ、今期議會ニ至急ニ要望ヲシ
テ、間ニ合フヤウニ決議ヲ致シマシテ、此
案ガ通過スルト致シマシテモ、果シテ此輸
出生絲統制ガ、只今農林大臣ノ言ハレタ通
リニ完全ニ行ハレルヤ否ヤ、私共ハ此絲價
安定ト云フコトヲ叫ンデ居リマス、ソレカ
ラ統制ト云フコトモ叫ビノ一ツデアリマス
ケレドモガ、是ダケデハイカナイ、之ヲ養蠶
家ニ對スル生產ノ統制トカ、或ハ製絲家ニ
對スル所ノ生絲ノ生產制限ノ對策、是等ヲ
何等御考慮ニモナッテ居ラナイヤウニ、今日
ノ狀態デハ見エテ居ルノデアリマスガ、是
等ニ對シテノ御考慮ヲ第一ニ伺ヒタイノデ
アリマス
第二ニハ、此統制法ハ、唯輸出生絲ノ統
制ニノミ只今言ハレタ通リ役立ッテ、サウシ
テ養蠶家ニ對スル利益ガ生ジテ來ネバナラ
ナイノデアルガ、必ズ養蠶家ヲ救濟スルト
云フコトガ、是デ出來ルカ否ヤ、此點モ伺
ヒタイノデアリマス、ソレカラ次ニハ、最
近聞ク所ニ依リマスルト、本年ハ製絲家ガ
非常ニ工女ノ募集難ニ陷ッテ居ルト云フコ
トデアリマス、是ハ全國的デアラウト私ハ
思フノデアリマス、此原因ハ何ニ依ルカト
申シマスルト、人絹ノ盛ンニナッタ結果、是
等ノ工女ハ人絹ノ方ガ工賃モ多額ニ取レル
ト云フ工合デ、其方ヘ行キマスルノト、
ツハ紡績ガ盛ンニナリマシテ、紡績ノ方ニ
工女ヲ取ラレマス爲ニ、製絲家ハ今年ハ非
常ニ工女ノ募集難ニ陷ッテ居ルト云フコト
ヲ聞キマス、サウシマスト此結果、生絲ノ
生產ノ制限ハ、法ニ依ッテ致サズトモ、本年
ハ必ズヤ工女拂底ノ爲ニ、生絲ガ制限セラ
レルト云フコトニナリハセヌカト、今日カ
ラ思ヘルノデアリマス、果シテ然ラバ養蠶
家ノ作出シタ繭ノヤリ場ニ困ッテシマフ、之
ニ對シテ成程乾繭裝置モスルトカ、或ハ共
同經營ノ乾繭助成ノ方モ求メテアル、斯ウ云
フコトヲ言ハレルカ知レナイケレドモ、ソ
レハ平時ニ今日迄ニ備フベキモノヲ、今日
ノ豫算ノ上デ、豫定ノ上デ政府ガ立テラレ
タノデアリマスガ、是等ノ今私ガ申上ゲマ
スガ如キ、工女ノ募集難カラ來ッテ、延テハ
生產ニ對スル制限ヲ自然的ニ受クルモノニハ
對策ガアリヤ否ヤ、之ヲ私ハ承リタイノデア
リマス、ソレカラ尙ホ此輸出生絲ノ統制ハ、
之ニ依ッテ圖ラレルト假ニ見マシテモ、生絲
デ輸入ハシテハ參リマセヌケレドモガ、此
頃モ我ガ同僚ヨリ建議案トシテ出サレテ居
リマス所ノ、古絹靴下ノ輸入デアリマス、
逆ニ米國カラ古靴下ノ輸入ガ多額ニアル、
非常ナモノダサウデアリマス、之ヲ精製ジ
テ種々ナ物ニ作ルト云フコトニ至ッテ、何等之
ニ對スル取締ト云フモノハ、政府ハ少シモ
爲サッテ居ラレナイ、斯ウ云フコトハ此輸出
生絲統制ノ方トハ違フケレドモガ、是等ニ
織込ンデ、是等ニ含マレテ、今申上ゲタヤ
ウナ逆輸入ノ-假令古靴下ト雖モ、精製
サレテ生絲ニナル、生絲ノ代用ヲスルト云
フモノガ、玆ニ多數ノ數量ガ出ルト致シマ
スレバ、是等ニ對スル對策ハ、政府ガセネバ
ナラヌノニ、今迄何等是ガ對策ガナイト云フ
コトハ、是レ卽チ拔カッテ居ルコトデアッテ、國
民ニ對スル親切ヲ缺イテ居ル最モ甚シキモ
ノデアルト私ハ思フノデアリマス、是等ニ付
テモ矢張、取締ヲナサルト云フコトノ御意
見デアルカ、之ヲ承リタイ
以上御尋致シマシテ、尙ホ私ハ此對策ニ
付テハ多々質問スルコトガアリマスケレド
モ、是ハ旣ニ豫算委員會ニ於キマシテモ、
先輩諸氏ハ米ト共ニ能ク政府ニ要望シ、追
究シテ居ル問題デアリマスシ、此演壇ニ於
キマシテモ、此一二年間ニ數同繰返サレテ
居リマスカラ、詰ラヌ質問ヲ長ク繼續シヨ
ウトハ思ハナイノデアリマスカラ、今ノ要
點ダケニ付テ、政府ニ於カレテハ御意見ノ
アル所ヲ、細カニ御說明アランコトヲ偏ニ
希フ次第デアリマス(拍手)
〔國務大臣後藤文夫君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006513242X02219340313&spkNum=12
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013・後藤文夫
○國務大臣(後藤文夫君) 近藤君ノ御尋ニ
御答ヲ致シマス、只今提出シテゴザイマス
輸出生絲販賣統制ノ法案ハ、問屋ノ免許制
度、輸出生絲ノ取引ノ登錄ノ制度、非常ノ
際ニ當リマシテ統制上ノ處置命令ヲ爲シ得
ルノ權能ヲ設ケテ置クコト、斯ウ云フ事柄
デアリマス、御承知ノ如ク輸出生絲ノ販賣
統制ノ問題ハ、多年論ゼラレタ所デアリマ
シテ、先年來關係當業者ノ間ニ於キマシテ
モ、代表者ガ集ッテ議ヲ練ッタ所デアリマス
ガ、利害ノ關係頗ル錯雜デアリマスルツ、
又輕々ニ是ガ結論ヲ出シテ實施致シマスコ
トハ海外貿易ノ關係等カラ、必シモ喜バ
シキ結果ノミガ生ズルトモ限ラナイ點ガア
リマス、サウ言ッタヤウナコトカラ、中々結
論ニ到達ヲ致シマセヌ、政府ニ於キマシテ
昨年御協贊ヲ經テ、調査會ノ設置ヲ致スコ
トニ致シマシテ、其調査會デ審議ヲ重ネテ
參ッタノデアリマス、調査會ハ其結論トシ
テ、取敢ヘズ今囘提案シマシタ法案ノ內容
ニ等シイモノヲ、答申シテ參ッタノデアリ
そく、尙ホ是デ以テ完全ナ絲價安定ノ手段
ガ講ゼラレルカ、輸出生絲ノ完全ナ統制ガ
出來ルカト云フ御尋デアリマスガ、吾々モ
是ノミヲ以テ完全ナ統制ガ出來ルトハ考ヘ
マセヌ、唯問屋ノ小サイモノガ濫立シテ行
クコト、是ガ海外ニ賣ル方ニモ、又製絲業
者ノ方ニモ惡イ影響ノ及ブコトガアリマス
ルシ、延テハ更ニ養蠶家ニモ其影響ガ及ブ
ト云フヤウナコトガアリマスルノデ、問屋
ノ間ニ統制ヲ設ケルコトガ、今日ノ販賣組
織ノ中ニ於ケル、一ツノ要點ニ觸レル問題
デアルト考ヘテ居ルノデアリマス、又取引
ノ登錄制度ヲ設ケマスルコトモ、取引ノ公
正、圓滑ヲ期シテ行ク上ニ、矢張相當ノ效
果ガアルト思フノデアリマス、是等ノコト
ガ段々ト今後ニ於テ講ゼラレル販賣統制ノ
有力ナ方法ノ下地ヲ爲スコトニモナリマス
ルシ、又現在ノ販賣組織及ビ取引ノ上ニ於
ケル改善ヲ行フト云フコトニモ相成リマス
ルノデ、旁、當業者ノ間ニモ、凡ソ意嚮ノ
一致シマシタ、實行ノ可能性ノ十分ニ認メ
ラルヽ、此部分ノ案ヲ法案トシテ、御協贊
ヲ願ッタ譯デアリマス、政府ニ於キマシテ
ハ、尙ホ販賣統制ノコトニ付キマシテハ、
色々ト其中心ノ大キナ問題ニ觸レテノ攻究
ヲ續ケテ參リタイ、成案ヲ得ルコトニ努メ
タイト云フ考デ居ル譯デアリマス、御諒承
ヲ願ヒタイト思ヒマス
ソレカラ此法案ガ實施サレルコトニ依ッ
テ、養蠶家ニハドウ云フ利益ガ來ルデアラ
ウカ、是ハ蠶絲業界全體ヲ通ジテノ色々ナ
關係ガ旨ク統制サレ、絲價ノ安定ガ行ハレ
マスレバ、延イテ養蠶家ニモ相當ナ利益ガ
及ンデ參ルト云フコトニナルノデアリマシ
テ、此法案ニ依ッテ、完全ニトハ申セナク
トモ、販賣ノ組織竝ニ取引ノ上ニ於テ、或
ル程度ノ改善ガ行ハレルコトニナリマスル
ナラバ、其利益ハ直接間接ニ、矢張リ養蠶
家ニモ及ブモノデアルト考ヘルノデアリマ
ス
ソレカラ第三ニ、色々ナ事情カラ製絲工
場ノ女工募集難ガアルガ、是カラ生ズル結
果ニ付テ、政府ハドウ考ヘテ居ルカト云フ
御尋ガアリマシタ、只今迄政府ノ承知致シ
テ居リマスル所デハ、或ル一局部ノ地方ニ
女工難ガ感ゼラレテ居ル所ハアルヤウデア
リマスルガ、全般ト致シマシテハ、今日未
ダ製絲工場ガ、女工難ノ心配ノ爲ニ製絲ノ
作業、製絲ノ分量ノ上ニ、非常ナ大キナ影
響ガ來ルデアラウト云フヤウナ、憂ヲ懷イ
テ居リマセヌヤウナ譯デアリマス
ソレカラ第四ニ、古靴下ノ輸入ノコトノ
御話ガアリマシタ、是ハ御話ノ如ク小サイ
問題ノヤウデ、併シ是ハ注意シナケレバナ
ラヌ問題デアリマス、此事ハ政府ニ於テモ
從來注意致シテ居ルノデアリマスルガ、何
分ニモ輸入ノ仕方ガ、色々ノ機械等ノ間ヲ
塞グボロ布ノ代リノヤウニ詰メテアッタリ
スル關係カラ、稅關等デモ餘程取締ニ困難
ヲ感ジテ居ルヤウデアリマス、關稅ノ當局
等トモ絕エズ打合セヲシテ、何等カノ方法
ヲ講ジタイト云フヤウニ考ヘテ居ルノデア
リマスルケレドモ、只今ノ所未ダ非常ニム
ヅカシイ問題デアッテ、具體的ナ方法ヲ十
分ニ樹テルニ至ッテ居リマセヌガ、今後尙ホ
引續イテ攻究ヲ續ケテ參ッテ、何等カノ處
置ヲ考ヘタイト云フ風ニ思ッテ居ル事柄デ
アリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006513242X02219340313&spkNum=13
-
014・近藤壽市郎
○近藤壽市郞君 簡單デアリマスカラ、此
席デ御許シヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006513242X02219340313&spkNum=14
-
015・秋田清
○議長(秋田〓君) 許可致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006513242X02219340313&spkNum=15
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016・近藤壽市郎
○近藤壽市郞君 只今ノ農林大臣ノ御答辯
ニ依リマシテ、稍:分リマシタケレドモ
ガ、結局此法案デ統制ガ完全ニ付クカ付カ
ヌカト云フコトハ、議論ノ相違ト相成リマ
スルカラ、私ハ是レ以上ニハ申シマセヌ、
又機ヲ見テ細カニ御尋シテ見タイト思ヒマ
ス、尙ホ茲ニ一ツ承ッテ置キタイ事ハ、此
統制ガ大臣ノ言ハレル如ク、完全ニ行ハレ
ルト致シマスルト云フト、國用向ノ絲ガ殖
エテ來ルト云フ結果ニナリハセヌカ、現ニ
過般此輸出ノ三割制限ヲ致シマシタ爲ニ、
國用向ガ打擊ヲ受ケテ、此許可ニ付テハ大
ニ非難ノ聲ガ全國ニ揚ッタノデアリマス、斯
樣ナ事ヲ此統制法ニ依ッテ又モ惹起スヤウ
ナコトガアリ、此國用向ニ影響ヲ及ボスコ
トガアレバ、ヤハリ此輸出生絲統制法ヲ設
ケタガ爲ニ、蠶絲對策ハ害ヲ及ボス、斯ウ
云フコトニナリハセヌカト思フノデアリマ
スルガ、此點ニ付テ尙ホ一言承ッテ置キタ
イト思ヒマス
〔國務大臣後藤文夫君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006513242X02219340313&spkNum=16
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017・後藤文夫
○國務大臣(後藤文夫君) 本案ハ專ラ輸出
生絲ノ取扱ニ關係ノアリマス問屋、取引ノ
登錄ト云フコトガ中心ニナッテ居リマス、御
話ノヤウニ、此法案ノ結果トシテ、國用生絲
ニ影響ガ來ルト云フコトハ、格別心配ノナ
イ問題ト考ヘテ居ルノデアリマス、專ラ輸
出生絲ノ取引市場ニ於ケル販賣ノ組織ト取
引ノ事ニ付テ、改善ヲ致サウト致シテ居ル
譯デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006513242X02219340313&spkNum=17
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018・近藤壽市郎
○近藤壽市郞君 此席デ簡單ニ御許シヲ願
ヒマス-只今大臣ノ御答辯ニナッタ所ヲ
承ッテ見マスルト云フト、此法律ハ私共ノ
思ッタ程、左程重大ナルモノデハナイヤウニ
窺ヘルノデアリマス、ケレドモガ此際ニ蠶
絲對策トシテ折角出サレルナレバ、斯樣ナ
養蠶家ヘモ影響ヲスルカセヌカ、有利ナ響
ガ行クカ行カヌカト云フヤウナ法律ヤ、或
ハ國用向ニハ響カナイト云フヤウナ法律
ヲ、今日出シテ居ル時デハナイト私ハ思ヒ
マスケレドモ、是等ハ意見ノ相違ト思ヒマ
スカラ、又或ル機會ヲ以テ御尋ヲスルコト
ト致シマス、今日ハ是デ私ノ質問ハ打切リ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006513242X02219340313&spkNum=18
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019・秋田清
○議長(秋田〓君) 三宅磐君
〔三宅磐君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006513242X02219340313&spkNum=19
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020・三宅磐
○三宅磐君 私ハ政府ノ蠶絲業對策ノ基調
ガ、奈邊ニアルカト云フコトヲ明ニスル爲
ニ、本法案ニ關聯シマシテ少シク御尋シテ
見タイト思ヒマス、政府ガ此法案ヲ制定セ
ラレルコトニ依ッテ、販賣組織竝ニ取引方法
ノ改善ヲ圖ラントセラレテ居ルコトハ明デ
アリマスガ、尙ホソレト同時ニ、價格統制
ヲモ試ミントスル御考デアルカト云フコト
ヲ、先ヅ第一ニ御尋シタイト思ヒマス、此
法案ノ第三條竝ニ第八條ヲ見マスルト、輸
出生絲問屋ノ免許制度ト、輸出生絲取引ノ
登錄制度トヲ創設セラレマシテ、輸出生絲
ノ販賣組織竝ニ取引方法ノ改善ヲ圖ラント
セラレテ居リマスル點ニ付テハ、假令其效
果ガ、ドウ云フモノガアルカト云フコト
ハ、姑ク別問題ト致シマシテモ、極メテ明
白デアルト思フノデアリマス、併ナガラ更
ニ此法案ノ第六條及ビ第十條ヲ見マスルト、
農林大臣ニ輸出生絲ノ販賣統制上、必要
ナル事項ニ付テノ命令權ヲ付與スルコトニ
相成ッテ居リマス、此規定ニ基キマスル農林
大臣ノ命令權ト云フモノハ、如何ナル內容
ノモノトナッテ現ハレマスルカ、一體斯ル
命令權ハ、ドウ云フ時ニ發動ヲ致シ、何ヲ
目的ニシテ行使セラルヽカト云フヤウナコ
トハ、是ハ其細則ノ發表ヲ待タナケレバ、
詳カニ致スコトガ出來マセヌカラ、今玆ニ
俄ニ此點ニ付テ批評ヲ加ヘルコトハ出來マ
セヌケレドモ、併シ政府ニ於カレマシテハ、
輸出生絲ノ價格ノ上ニモ、或ル統制ヲ加ヘ
ントシテ居ル御考ノアルコトハ明デアリマ
ス、併ナガラ申ス迄モナク、生絲ハ其產額
ノ大部分ヲ海外ニ賣却スルモノデアリマ
ス、サウ云フ關係カラ致シマシテ、海外ノ
景況ガ此生絲ノ價格ニ作用シマスルコト
ハ、極メテ大ナルコトハ申ス迄モアリマセ
又、隨テ生絲相場ヲ安定セシメントスル爲
三、內地ノ生產ヲ統制スルト共ニ、海外
ノ景況ヲモ十分考察シナケレベナラナイ譯
デアリマスルガ、海外ノ需要ハ、固ヨリ之
ヲ內地ニ於テ左右スルコトハ來出ナイノデ
アリマスルカラ、ドウ致シマシテモ、此價
格統制ノコトニ付キマシテハ、我國ノ生產
ニ對シテ、先ヅ强力ナル統制ヲ加ヘルコト
ガ肝要デアリマシテ、單ニ販賣統制ヲ以テ
シテハ、到底此價格ノ統制ヲ致スト云フコ
トハ出來ナイト思フノデアリマス、併ナガ
ラ政府ハ此販賣統制ニ依ッテ、價格ノ統制ヲ
モ圖ラントセラルヽ御考デアルカドウカ、
是ガ先ヅ第一ニ御尋シタイ點デアリマス
第二ニ御尋致シタイコトハ、政府ハ此販賣
統制ヲ實施スル前ニ、生產統制ノ上ニ一層其
完全ト徹底トヲ圖ル御考ハナイカト云フコト
ヲ伺ヒタイノデアリマス、思フニ政府ニ於カ
レマシテモ、販賣統制ト共ニ生產統制ヲモ併
セ行ハントスル御考デアリマセウ、曩ニ制
定セラレマシタ製絲業法及ビ蠶絲業組合法
ト云ヒ、又今期議會ニ御提出ニナッタ所ノ原
蠶種ノ國家管理ト云フガ如キモノモ、要ス
ルニ是ハ、政府ニ生產統制ノ御考ガアルト
云フコトヲ窺ハシメルモノデアリマスル
ガ、是等ノ規定デハ、殆ド生產統制ノ實ハ
擧ッテ居ラナイ現狀デアリマス、現ニ蠶絲業
組合法ノ如キニ付テ見マシテモ、此組合法
ハ「カルテル」的ノ統制ヲ期待スルモノデゴ
ザイマシテ、昨年ノ暮ニ三割出荷制限ニ依ッ
テ、此法案ノ運用ヲ圖ッタノデアリマスルケ
レドモ、此實績ガドウナッテ居ルカト云フコ
トヲ見マスルト、神戶、横濱、此兩市場ヘ
ノ本年二月中ノ入荷高ト云フモノハ、昨年
ニ較ベマシテ、寧ロ六割二分ノ增加ヲ致シ
テ居ルヤウナ次第デアリマス、生產方面ガ
斯樣ナ狀態デハ、假令强力ナル販賣統制機
關ヲ設ケマシテモ、到底價格ノ安定ヲ望ム
コトハ困難デアルト考ヘマス、ソレ故ニ斯
ル生產狀態ニ於キマシテ、若シ先般傳ヘラ
レマシタヤウナ蠶絲局ノ原案ノ如キ、販賣
統制機關ヲ設ケタト致シマシタナラバ、結
局政府ノ負擔ヲ大ナラシメマシテ、再ビ絲
價補償法ノ陷ッタ、アノ困難ヲ繰返スニ過ギ
ナカッタデアラウト思フノデアリマス、ソコ
デ政府ニ御尋致シタイコトハ、政府ハ販賣
統制ヲ實施ナサルヨリモ、其以前ニモット
完全ナル生產統制ヲ實施シヤウトスル御考
ハゴザイマセヌカ、此點ヲ第二ニ御尋スル
ノデアリマス
第三ニ伺ヒタイコトハ、政府ハ生絲ニ對
スル其統制政策ト、人絹對策トノ間ニ存ス
ル所ノ、一大矛盾ヲ如何ニ解決セラレント
スルカト云フ點デアリマス、販賣統制ト云
ヒ、生絲生產統制ト申シマスル場合ニハ、
直接或ハ間接ニ、ヤハリ此價格ノ維持又ハ
釣上ヲ期待スルコトガ多イノデアリマシ
テ、恐クハ此統制ト云フコトハ、常議ニ於
テヤハリ價格ノ釣上デアルト申シテモ差支
ナイト思フノデアリマス、然ルニ我ガ蠶絲
業ノ現狀ニ付テ考ヘテ見マスルノニ、非常
ナ困難ニ今日陷ヲテ居リマスルコトハ、無論
米國ノ恐慌ノ爲ニ依ルコトハ勿論デアリマ
スルケレドモ、亦一面ニ於キマシテハ、人
絹ノ進出ニ依ル所ガ頗ル多イト思フノデア
リマス、ソレ故ニ此蠶絲業ト致シマシテハ、
人絹對策ガ急務中ノ急務デアリマスルガ、
政府ハ此人絹對策トシテ、如何ナル方針ヲ
有ッテ居ラレルノデアリマスルカ、此人絹對
策ト致シマシテハ、生絲ノ原價ヲ合理的ニ
引下ゲル必要ガアルト思ヒマス、若シ此原
價引下ガ出來ナイト云フコトニ相成リマス
ルナラバ、生絲ノ新シキ用途ヲ開拓シ、新
シキ販路ヲ開拓スルト云フコトハ、是ハ到
底困難ナコトデアラウト思ヒマス、然ルニ
蠶絲政策ノ實際ヲ見マスルト、各種統制方
策ヲ講ゼラレマシテ、繭及ビ生絲ノ價格釣
上ヲ圖リツヽアラレルヤウナ狀態デアリマ
ス、玆ニ人絹對策トノ一大矛盾ヲ來スノデ
アリマスルガ、政府ハ如何ニシテ之ヲ解決
セントセラレルノデアリマスルカ、是ハ今
後ニ於ケル蠶絲業對策ノ一大眼目ヲ成スモ
ノデアッテ、此場合ニ政府ノ御所信ヲ質シテ
置キタイ事デアリマス
第四ニ御尋申上ゲタイ事ハ、政府ハ農村
問題トシテノ蠶絲業對策ニ付テ、ドウ云フ
御方針ヲ御有チニナッテ居リマスカ、此點ヲ
御伺スルノデアリマス、我國ノ蠶絲業ガ、
現時ノ如キ困難ニ陷ッテ居リマスノハ、前ニ
申シマシタヤウニ、單ナル經濟恐慌ノ結果
ノミデハゴザイマセヌデ、人絹ノ壓迫ニ因
ル所ガ極メテ大ナノデアリマス、而シテ此人
絹對策ト致シマシテハ、繭、生絲ノ價格ヲ
モット引下ゲルコトガ必要デアリマス、然ル
ニ、此繭、生絲ノ價格ヲ引下ゲルト云フコト
ニ相成リマスルナラバ、農村ノ困難ヲ益〓大
ナラシムル結果ト相成ルノデアリマス、政
府ハ此關係ヲドウ云フ風ニ調和セントセラ
ルヽノデアリマスカ、若シ農村ヲ苦シメナ
イデ、繭ノ價格ヲ引下ゲントセラレマスル
ナラバ、繭ノ生產原價ヲ合理的ニ引下ゲル
ヨリ外ニ途ガアルマイト思ヒマスルガ、此
繭ノ生產原價ヲ合理的ニ引下ゲシムル爲ニ、
政府ハ如何ナル方策ヲ御有チニナッテ居リ
マスルカ、又繭ノ生產費ヲ引下ゲル爲ニ、
政府ニ於カレマシテハ農家ノ多角的經營デ
アルトカ、養蠶ノ多收穫主義ナドト云フヤ
ウナ事ヲ以テ臨ンデ居ラレルヤウデアリマ
スルガ、果シテ斯ウ云フ方法ダケデ、十分
ノ效果ヲ擧ゲルコトガ出來ルト御考ヘニナッ
テ居リマスルカ、又此多收穫政策ト申シマ
シテモ、一段步ノ桑園カラ繭約八十貫ヲ上
ゲタト云フ京都府ニ於ケル所ノ試驗ノ成績
ハゴザイマスルケレドモ、ソレハ特例デア
リマシテ、全國ノ平均ハ約十五貫目ノ現狀
デアリマス、政府ニ於カレマシテハ、之ヲ
ドノ程度マデ增加セシムルコトガ出來ルト
御考ヘニナッテ居リマスルカ、更ニ根本的ノ
問題ト致シマシテハ、政府ハ生絲ノ將來ヲ
ドウ見テ居ラレルノデアリマスルカ、言葉
ヲ換ヘテ申シマスレバ、生絲ハ人絹ニ對抗
シテ將來何時迄モ其生存ヲ續ケテ行クコト
ガ出來ルト云フ自信ヲ御有チニナッテ居リ
マスルカドウカ、是ハ實ニ大キナ問題デア
リマス、今日マデ政府ハ、米或ハ繭ノ價格
釣上ヲ圖ルト云フノガ其根本方針デアッタ
ヤウニ窺ハレマスルガ、斯樣ナ姑息ナル政
策デ、農村ノ窮狀ガ打開セラレ、又我國ノ
蠶絲業ノ永遠ノ繁榮ガ期待サレルデアリマ
セウカ、此點ニ付テノ政府ノ御所信ヲ伺ヒ
タイト思フノデアリマス
第五ニ伺ヒタイコトハ、政府ハ生絲ノ輸
出方針カラ、絹物輸出方針へ轉向シヨウト
云フ御考ハナイデアリマセウカ、又左樣ナ
轉向ハ出來ルト云フ御見込ガアリマスルカ
ドウカ、此點ヲ御尋シタイト思フノデアリ
マス、我國ノ生絲政策ハ、申上ゲル迄モナ
ク明治時代カラ今日マデ、原料輸出ノ方針
デ一貫シ來ッテ居ルノデアリマス、而シテ輸
出絹物ニ付キマシテハ、今日ニ於テモ漸ク
年額五、六千万圓ニ過ギナイヤウナ狀態デ
アリマス、此輸出絹物ガ、斯樣ナ不振ノ狀
態ニ居ルト云フコトガ、確ニ今日ノ生絲ヲ
困難ナラシメテ居ル一ツノ理由デアルト思
フノデアリマスカラ、ソコデ此御尋ヲ政府
ニ致スヤウナ次第デアリマス、併ナガラ絹
物ノ輸出ハ、今日各國ガ絹物ノ關稅或ハ割當
制限等ヲ設ケマシテ、之ニ障碍ヲ與ヘテ居
リマスルガ爲ニ、急激ナル增加ヲ期スルコ
トハ出來ナイト思ヒマス、若モ絹物輸出ノ
急激ナル增加ヲ期スルコトガ出來ナイト致
シマスルナラバ、我國ト致シマシテハ、尙
ホ當分ハ矢張生絲輸出主義デ進ンデ行クヨ
リ外ハナイト思ヒマスルシ、又其生絲輸出
ノ爲ニハ、其支障トナッテ居ル制度方法ハ、
之ヲ避ケナケレバナラナイト思フノデアリ
マスルガ、此生絲輸出ヲ必要ト致シマスル
建前カラ申シマスルナラバ、輸出商ノ海外
ニ於ケル活動ヲ活潑ナラシムルコトガ極メ
テ必要デアルト考ヘマス、然ルニ曩ニハ第
三者格付檢査ト云フモノヲ設定シテ之ヲ縛
リ、又今囘ハ取引登錄制度ト云フモノヲ設
ケマシテ、問屋輸出商ニ一層ノ束縛ヲ加ヘ
ントシテ居ラレルノデアリマスルガ、斯樣
ニ生絲ノ取引ヲ規則ヅクメデ固メマシテ、
商人ノ活動ヲ制限致スト云フコトハ、生絲
貿易ノ進展ヲ期スル上ニドウ云フ利益ガア
ルノデアリマセウカ、此點ニ付テ農林大臣
ノ御考ヲ伺ヒタイト思フノデアリマス、申
ス迄モナク今日ノ生絲問屋ト云フモノハ、
往年ニ於ケルガ如キ實力ハ失ッテ居リマス、
併ナガラ假令實力ハ失ッテ居リマシテモ、尙
ホ輸出生絲ノ約七割ト云フモノヲ、是等ノ
問屋ガ取扱ッテ居ルノデアッテ、ソレノミナ
ラズ製絲金融ノ關係カラ申シマシテモ、此
問屋ト云フモノハ最モ必要ナル存在デアル
ノデアリマス、然ルニ今此問屋ト云フモノ
ガ、廢滅致スト云フコトニ相成リマシタナ
ラバ、直チニ中小無數ノ製絲家ト云フモノ
ガ、ソレニ伴ッテ潰滅スル外ナイト云フノガ
今日ノ實情デアリマス、又絲價ノ變動ヲ助
長スルト云フ理由カラ申シマシテモ、若モ整
理統制ヲ加ヘル必要ガアルト致シマスルナ
ラバ、問屋ニ對シテ之ヲ試ミルヨリモ、寧
ロ中小製絲家ニ對シテ之ヲ試ミル方ガ遙ニ
肝要デアルト思フノデアリマス、要スルニ
保護發展ヲセシメナケレバナラナイモノニ
對シマシテ、斯樣ナ整理取締ヲ强行セラレ
ントスルコトハ、或ハ政府ノ蠶絲業對策
ハ、從來ノ生絲輸出方針カラ絹物輸出方針
ヘ轉向セントセラルヽ御意思ガアル爲デハ
ナイカト思フノデアリマシテ、玆ニ此點ニ
付テノ御尋ヲ致シタ次第デアリマス
要スルニ政府ハ此法案ヲ御提出ニナリマ
シタ、其根本方針ガ那邊ニ在ルカト云フコ
トヲ明ニ致シタイノガ、私ノ此質問ノ要旨
デアリマス、兎ニ角政府ガ今マデ通リ繭、
生絲ノ價格ノ釣上ニ對策ノ基調ヲ置カレ
テ、養蠶製絲販賣ノ各方面ニ對サレマシ
テ、色々ノ作爲ヲ施サレルト云フ方針デ
ハ、我ガ蠶絲業ノ安固ヲ期スルコトガ出來
マセヌノミナラズ、或ハ此蠶絲業ヲ以テ農
村存立ノ重大ナル根據ト致シテ居リマスル
其農村ノ將來モ、亦寒心スベキ事態ニ陷リ
ハシナイカト云フコトヲ深ク憂フル者デア
リマス、ソコデ私ハ政府ニ於カレマシテ、
生絲ノ將來ガ如何ナル運命ヲ以テ約束セラ
レテ居ルカ、又蠶絲業ト農村トノ關係ガド
ウ云フ點ニ於テ、篤ト考察シナケレバナラ
ヌカ、更ニ根本的ノ對策ヲ確立シナケレ
バ、實ニ此蠶絲業ノ前途、我ガ農村ノ前途
洵ニ憂慮スベキコトガアルカラシテ、根本
對策ヲドウシテモ確立セラレナケレバナラ
ナイト云フコトヲ信ジマスルガ爲ニ、其見
地カラ致シマシテ、只今申述マシタ五箇條
ニ亙リマスル所ノ御尋ヲ致シタ次第デアリ
マス(拍手)
〔國務大臣後藤文夫君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006513242X02219340313&spkNum=20
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021・後藤文夫
○國務大臣(後藤文夫君) 三宅君ノ御尋ニ
御答ヲ致シマス、政府ハ輸出生絲ノ販賣ニ
關スル統制ヲ行ッテ、是デ價格ノ統制マデ進
ンデ行カウト云フ考ガアルノカドウカト云
フ御尋デアリマス、政府ハ生絲ノ價格ガ安
定スルト云フコトガ必要デアルト云フコト
ヲ考ヘテ居リマス、隨テ内外ノ生絲ノ需要
供給ノ關係カラ、生絲ノ値段ガ相當ナ價格
ニ維持サレルト云フコトハ希望スル所デア
リマス、併ナガラ此目的ヲ達スル爲ニハ、
關係ノ各業ニ於テ相當ナ統制ガ取レテ參ル
コトガ必要デアリマス、政府トシテハ、今
直チニ政府ノ力ヲ以テ價格ヲ强力ニ統制シ
ヨウト云フコトヲ企圖致シテ居リマセヌ、
當事者ノ努力ニ依リ、自治的ナ統制ガ行ハ
レ、價格ノ安定ガ圖ラレルト云フコトニ對
シテ、·政府ガドウ云フ風ニシタラバ力ヲ添
ヘルコトガ出來ルデアラウカト云フヤウナ
點ニ付テ、考究ヲ致シテ居ルヤウナ譯デア
リマス、此販賣統制ノ法案ハ、直チニソレ
程ノ强力ナ價格統制ニマデ至ルト云フコト
ヲ平時ニ於テハ企圖致シテ居ラナイノデア
リマス、唯非常ノ際ニ於テ、當業者ガ自治
的ニ色々統制ヲ圖ルコトヲヤリマスル時
ニ、政府ガソレニ力ヲ添ヘルコトガ出來ル
ヤウナ準備ヲ、此法案ニモ致シテアルト云
フノニ止マルノデアリマス、生絲ノ價格ガ
高イト云フコトノミヲ期スル譯ニハ行カ
ヌ、價格釣上ト云フヤウナコトバカリ考ヘ
テモ、今後ハ其目的ヲ達セラレヌデアラ
ウ、隨テ原價ノ引下、生產ノ過程ニ於ケル
各種ノ統制ガ、寧ロ必要デアルノデハナイ
カト云フヤウナ御尋ガアリマシタ、是モ吾
吾トシテハ大體御同感デアリマス、今後我
國ノ生絲ガ過去ノ如キ非常ナ高値ヲ出スト
云フコトヲ豫想シテ、今後ノ政策ヲ考ヘル
コトハ出來ナイト思ヒマス、併ナガラ又我
國ノ蠶絲業界ノ統制ガ十分デナイ爲ニ、下
ガラヌデ宜イ値段マデ下ガルト云フコトヲ
避ケル途ハ、是ハ矢張十分ニ講ジナケレバ
ナラヌト思フノデアリマス、ソレデ生產ノ
統制ト云フコトヲ、販賣ノ統制ヲ考ヘル前
ニ、寧ロ先ンジテ考ヘナケレバナラヌノデ
ハアルマイカト云フ御尋デアリマシタガ、
生產ノ統制ト云フコトハ中々困難ナ問題デ
アリマス、殊ニ御承知ノ通リ、我國ノ製絲
業ニハ、多數ノ業者ガ存在シテ居リマス、
更ニ製絲ノ原料デアル繭ノ方ニナリマスレ
バ、多數ノ農民ニ關係ノアル問題デアリマ
ス、隨テ生產ニ關スル統制ノ必要ハ感ジテ
居リマスルガ、此生產統制ヲ製絲業及ビ養
蠶家ノ經濟ニ打擊ヲ與ヘルコトナクシ
テ、順調ニ其結果ヲ奏スルヤウナ事態ニ
物ヲ導イテ參リマスノニハ、餘程ノ準備
ト手段トガ、時ヲ掛ケテ講ゼラレナケレ
バナラヌト思フノデアリマシテ、一氣ニサ
ウ云フモノヲ玆ニ實現ヲスルト云フヤウナ
譯ニハ參リマセス、是ガ十分ニ參ラナケレ
バ、販賣ノ統制ノ方面ニハ手ヲ著ケテハナ
ラナイノカト申シマスト、左樣デハナイト
思フノデアリマス、矢張價格ノ安定ヲ圖ル
上カラ云ヘバ、販賣關係ノ所ニモ重要ナ改
善ノ餘地、方法ノ講ズベキ點ガアルノデア
リマス、是ノミヲ以テ徹底的ニ價格ノ安定
ヲ圖ル譯ニハ參リマスマイ、生產關係ノ方
モ十分ニ考慮サレテ、完璧ナ生產統制、價
格統制ト云フ所マデ行クノカモ知レマセヌ
ガ、其處ニマデ至ラナクトモ、其途中ニ於
テ矢張販賣ニ關スル各種ノ改善ヲ致シテ、其
改善ノサレタ程度ニ於テ、我ガ蠶絲業界ニ
利益ノ及ブヤウニ考ヘテ參リマスルコト
ハ、是ハ必要ナ事デアラウト思ヒマス、之
ニ關スル方策ノ立チマシタコト、實行ノ可
能性ノ見エマシタコトニ付テハ、政府ハ逐
次ニ實行シテ參リタイト云フ考デ本法案ヲ
提出シタ譯デアリマス
人絹ト天然絹絲トノ問題ニ付テ、政策ノ
矛盾ガナイカ、生絲ノ原價ヲ下ゲナケレバ
ナラヌ、殊ニ人絹ノ發達ニ對抗シテ行クノ
ニハ、生絲ノ値段ヲ安クシテ、之ニ對抗シ
テ行カナケレバナラヌノデハナイカ、具人
先程申シマシタ通リニ、私決シテ異存ノナ
イ點デアリマスル、生絲ガ安クナッテ人絹ニ
對抗シテ行クト云フコトハ、必要ナ方策デ
アルト思ヒマス、併ナガラ三宅君モ御話ノ
アリマシタヤウニ、生絲ノ原價ヲ下ゲル、
隨テ繭ノ價ヲ下ゲルト云フコトデ、百姓農
家ハドウナルカト云フコトノ矛盾ニ逢著ス
ルデハナイカ、其通リデアリマス、農家ノ
經濟ヲ苦シメルコトナクシテ、農家ノ經濟
ヲ痛メルコトナクシテ、原價ノ下ガル方法
ヲ講ジナケレバナラヌノデアリマス、是ハ
決シテ簡單ナ手段デハ參リマセヌ、色々複
雜ナ要素ニ入ッテ、生產費ノ低下ヲ圖ラナケ
レバナラヌノデアリマス、我國ノ蠶絲業ノ
一ツノ大キナ問題ハ、矢張生產費ノ低下ヲ
圖ルト云フコトデアルト思ヒマス、生產費
ノ低下ヲ圖ルノニハ、製絲行程ニ於ケル生
產費ノ低下モ圖ルベキ餘地ガ相當ニアルト
思ヒマス、又養蠶ト云フ所ニ於テノ生產費
ノ低下ヲ圖ル餘地モ相當ニアルト思ヒマ
ス、併ナガラ是ハ直チニ實現ヲスルト云フ
譯ニハ參リマセヌ、或ハ養蠶ノ經費ノ中デ、
可ナリノ多額ヲ占ムル桑ノ値、桑ノ生產費
ト云フヤウナ問題ガ考究サレルノデアリマ
ス、桑園ノ改植整理ト云フヤウナ事柄、桑
園ノ今後ノ經營ニ於ケル色々ナ生產技術上
ノ進步ト云フヤウナ事柄ガ、相當今日考究
サレテ居リマスルノデ、此方面カラモ生產
費ノ低下ガ今後圖ラレルト思ヒマス、又稚
蠶ノ共同飼育等デモ、生產費ノ低下ガ幾ラ
カ圖ラレテ居リマスルガ、今後モ色々
養蠶ノ共同施設ト云フヤウナモノガ
生產費ノ低下ニモ役立ツコトデアラウト思
ヒマス、又原蠶種ノ國家管理等ニ依ッテ、優
秀ナ〓種、絲量ノ多イ繭ガ生產サレルコト
モ、是モ生產費ノ低下ニ役立ツコトデアラ
ウト思ヒマス、今日ノ時代ニ於キマシテ
ハ、當業者モ十分ナ努力ヲ致シマシテ、有ユ
ル方面カラ生產費ノ低下ヲ圖ッテ、農家經濟
自身ノ利益ヲ害スルコトナシニ、生產費ノ
低下ヲ圖ルヤウニ努力シナケレバナラヌト
考ヘテ居ルノデアリマス、合理的ニ生產費
ヲ引下ゲルト云フコトノ必要ハ、三宅君ノ
御話ノ通リデアルト思ヒマス、サウデナケ
レバ我國ノ蠶絲業ノ問題、蠶絲業ニ關係ス
ル中ノ最モ大キイ所ノ、農家ノ今後ノ生活
安定ノ問題トヲ調和サセル、此合理的解決
ヲ圖ルト云フコトハ出來ナイ譯デアリマ
ス、此點ニ今後大ニ力ヲ入レナケレバナラ
ヌコトハ、吾々モ考ヘテ居ル所デアリマス、
尙ホ生絲ノ將來ヲドウ考ヘルカト云フコト
デアリマスルガ、私ハ我國ノ生絲ノ將來
ハ、努力サヘ致スナラバ、十分ニ是ガ維持
ヲ圖リ、或ハ進ンデ是ガ發展ヲ圖ルコト
モ、見込ノナイコトデハナイト信ジテ居ル
ノデアリマス、唯是迄ノ我ガ蠶絲業ガ順風
ニ帆ヲ揚ゲテ發展シタ時ノヤウナ考デハイ
カヌ、非常ナ努力ガ要ル、非常ナ決心ヲ以
テ困難ト鬪フコトガ要ル、併ナガラ此決心
ヲ以テ政府モ、亦民間ノ當業者モ、ソレ〓〓
努力ヲ致シテ參リマスルナラバ、我國ノ生
絲ハ今後其運命ヲ持續シ、開拓シテ行ケル
モノデアルト私ハ信ジテ居ルノデアリマ
ス、人絹ガ段々進步致シマス爲ニ、生絲ガ
元ノヤウナ橫行濶步ヲスル、獨步ノ地步ヲ
占メルコトハ、非常ニ困難ニハナッテ參リ
マシタ、併ナガラ世界ノ纖維產物トシテノ
最高級ノモノデアルト云フ位置ハ、決シテ
生絲カラ失ハレルモノデハナイト思ヒマ
ス、唯人絹ガ之ニ近付イテ來ルト云フコト
デアリマスケレドモ、生絲自身ノ有ツ動
物纖維トシテノ特色、最高級ノ纖維トンテ
ノ傳統的ノ嗜好ト云フモノヲ、今後モ十分
ニ發揮シテ行ク方法ヲ、現在以上ニ努力シ
テ講ジテ參リマスナラバ、生絲ノ地步ト云
フモノハ維持サレルト思ヒマス、又更ニ生
絲ノ新規ノ用途ト云フモノヲ、是迄ハ餘リ
考ヘテ居ラナカッタノデアリマスガ、之ヲ考
ヘマスルナラバ、決シテ此新天地ノ開拓モ
見込ノナイコトデハナイト云フヨリモ、寧
ロ大キナ見込ガ相當ニ豫想サレテ居ルノデ
アリマス、吾々ハ人絹ノ進歩モ結構デアリ
マスガ、ソレト相竝ンデ、〓絲業ノ基礎ヲ
確實ニシテ、農家經濟ト調和シナガラ、今
後ノ蠶絲業ヲ生カシテ行ク、維持シテ行ク
コトニ努力スルコトノ、今日見込ガナイト
云フヤウナコトハ少シモ考ヘマセヌ、前途
ニ付テハ相當ナ確信ヲ有ッテ、蠶絲業界ノ將
來ヲ吾々ハ考ヘテ居ル譯デアリマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006513242X02219340313&spkNum=21
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022・三宅磐
○三宅磐君 先程農林大臣ニ御尋致シマシ
タ事項ノ內、只今御答辯ヲ伺フコトノ出來
ナカッタ點ガ二、三アルト思ヒマスルガ、大
體只今ノ農林大臣ノ御答辯ニ依ッテ、政府ノ
御趣旨ノアル所ヲ窺ヒ知ルコトガ出來タノ
デアリマス、此政府ノ御趣旨ニ基キマシ
テ、本法案ノ內容ヲ檢討致シマスル場合
ニ、尙ホ幾多御尋ヲ申上ゲナケレバナラヌ
事項ガゴザイマスルケレドモ、ソレハ委員
會等ノ場合ニ讓リマシテ、大體只今ノ御答
辯ニ依ッテ、私ノ質問ハ差控ヘルコトニ致
シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006513242X02219340313&spkNum=22
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023・秋田清
○議長(秋田〓君) 由谷義治君
〔由谷義治君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006513242X02219340313&spkNum=23
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024・由谷義治
○由谷義治君 只今政府ノ提案ノ輸出生絲
統制法案ニ對スル政民兩黨ノ質問、竝ニ農
林大臣ノ答辯ヲ聽イテ居リマスト、洵ニ遺
憾ニ堪ヘナイノデアリマス、此法案ヲ農林
大臣自身ガ、自ラ不完全ダト白狀シテシ
マッテ居ル、特ニ農林大臣ノ答辯ハ、動モス
ルト事務的ナ釋明ニ終リマシテ、農林大臣
ノ答辯ト云フヨリモ、寧ロ後藤農務局長、
或ハ後藤蠶絲局長ノ答辯ノ域ヲ脫セザルコ
トヲ衷心カラ遺憾ニ思ヒマス、一體生絲ノ
問題ハ、農林大臣ノ言フヤウニ逐次ニヤル
トカ、或ハ又追々ニヤッテ行クトカ、養蠶ノ
統制ハ面倒ダカラ中々出來ナイトカ、サウ
云フ荏苒日ヲ遷シテ宜イヤウナ、何時掛ッテ
モ大丈夫ト云フ風ナ、左樣ニ簡單ナ、且ツ
緩漫ナ問題ニ非ズト吾々ハ信ズルノデアリ
マス、先刻三宅君ノ質問ガ、私ノ聽カント
スル點ニ觸レテ參ルノデアリマスガ、結局
蠶絲ノ問題ハ、最早部分的ナ、バラ〓〓
ノ、養蠶ヲドウスルトカ、桑園ヲドウスル
トカ、製絲ヲドウスルトカ云フ風ナ、有機
的ナ働キヲ持タヌ所ノ、バラ〓〓ノ政策デ
アルナラバ、悉ク失敗デアルシ、役ニ立タ
ヌ時勢ニナッタノデアリマス、成程亞米利
加ノ景氣ガ生絲ヲ支配スル、特ニ今日ノ國
際爲替ノ非常ナル動搖ガ生絲ノ價格ヲ支
配スル、況ヤ一方ニ於テハ、人絹ノ異常ナ
ル進出ガアリ、更ニ一方ニ於テハ支那或ハ南
露西亞ノ天然絹絲ノ壓迫ガアル、斯ウ云フ情
勢カラ申シマスルト、此世界的ノ經濟ノ中ニ
盛ラレテ居ル生絲ニ向ッテ、統制ヲ取ルコトハ
面倒デセウ、面倒ダケレドモ、斯ウ云フ面倒
ナモノダカラ統制ヲ取ッテ、卽チ國家的ノ信
用ト、國家ノ權力ニ依ッテ、統制ヲ取ルニ非
ズンバ、我國蠶絲業卽チ養蠶農家、製絲業
煮之ヲ一貫スル所ノ適正ナル蠶絲對策ナ
シト吾々ハ信ズルノデアリマス、特ニ生絲
ノ問題ハ、之ヲ日本國內ノ情勢カラ、モウ
一遍眞劍ニ再吟味スル必要ガアリマス、蠶
絲ヲ廻リマシテ、一方ニ於テハ養蠶農家、
中間ニアリテハ製絲業者、更ニ販賣方面ニ
於テハ貿易業者ガアル、此三ツガ悉ク相反
シテ居ル、悉ク相反目シテ居ル、時ニ製絲
業者ノ如キハ、從來日本ノ二百五十万ノ養
蠶農家ヲ悉ク壓迫シ、悉ク搾取シテ來タ、
我國ノ生絲ノ相場ノ上リ下リト、之ニ比例
スベキ繭ノ相場ノ上下ノ關係ヲ見マスト、
常ニ製絲業者、販賣業者ガ不當ナル利益ト
不當ナル搾取ヲシテ來タ、是ガ今日、日本
製絲業發展ノ一ツノ理由デアリマセウケレ
ドモ、最早日本ノ情勢ハ、此農家ノ重要產
物、更ニ此日本ノ重要商品ニ對スル蠶絲ニ
向ッテ、製絲業者ト養蠶農家ト販賣業者トノ
相剋三角關係ヲ是レ以上持續スルコトハ、
日本ノ經濟ノ情勢モ政治情勢モ斷ジテ許サ
ズト、吾々ハ信ズルノデアリマス
ソコデ吾々ガ農林大臣ニ聽キタイコトハ、
斯ノ如キ現實ノ認識ヲ有ツ限リニ於テ、部分
的ナ、バラ〓〓ノ蠶絲對策ヲヤリマシテモ、
何等ノ效果ナシ、農林大臣ハ此際思切シテ
强力ナル且ツ完全ナル養蠶、製絲、販賣ヲ
一貫スル所ノ、蠶絲統制政策ヲ斷行スル勇氣
ナシヤ否ヤノ問題デアリマス(拍手)農林大
臣常ニ言フ、理想ハ結構デアル、ケレドモ
理想案ガナイ、逐次ヤッテ行クノダ、農林大
臣ガ農林大臣ノ名譽ヲ享樂ナサルコトハ御
自由デアリマスケレドモ、何時マデモ調査
〓究デ日ヲ送ラレタノデハ、日本ノ農民モ、
日本ノ重要產業モ、何等ノ御蔭ヲ蒙ルコト
ハ出來ナイ、少クトモ私ハ農林大臣コ向ツ
テ、政治的ノ責任觀念ト、大臣トシテノ輔
弼ノ重大任務ヲ、改メテ御自覺願ヒタイノ
デアリマス、畢竟私ノ質問ハ、此一點ニ歸
スル、政府ハ卽チ生絲ノ國營ヲヤルカヤラ
ヌカ、生絲國營ト云フ言葉ハ極メテ大膽デ
アリマスケレドモ、御互ノ認識ガ其處マデ到
達セヌ限リニ於テハ、日本ノ養蠶問題モ、日本
ノ製絲問題モ、解決ノ途ナシト考ヘマス、唯
此處デ生絲國營ヲヤルカヤラヌカト申シマ
シテモ、餘リニ漠然トシテ居リマスカラ、モウ
少シ私ノ質問ノ趣旨ヲ進メマスナラバ、斯ウ
デモシタラドウカ、政府ノ蠶絲局、或ハ農林大
臣監督下ニアル所ノ輸出生絲統制委員會、斯
ウ云フモノヲモット擴大强化シテ、養蠶家カ
ラモ、製絲業者カラモ、更ニ販賣業者カラ
モ、更ニ又消費階級カラモ、各〓其代表者
ヲ集メル、更ニ養蠶製絲ニ關スル所ノ、我
ガ日本ノ學問ト、知識ト、技術ト、經驗ト、
其他一切ノ權威ヲ集メテ一ツノ會ヲ造ル、
之ヲ假ニ蠶絲統制局ト申シマセウ、蠶絲統
制局ハ全智全能ヲ發揮シテ、一生縣命ノ努
力ヲシテ、先ヅ來年度ノ生絲ノ消費ニ對シ
マシテ、國內國外ニ對スル豫想數量ヲ決定
致シマス、更ニ又來年度ニ於テ幾ラニ賣レ
ルカト云フ豫想價格ヲ決定スル、消費ニ向ッ
テ豫想數量ガ決リマスカラ、之ヲ基礎ニシ
テ、養蠶ニ對スル徹底シタル生產統制ガ出
來ル、政府ガ今囘提案シマシタ原蠶種管理
法案ノ如キモ、此徹底シタル養蠶生產統制
ヲヤルコトニ於テ、初メテ意義アリト信ズ
ルノデアリマス、一方來年度ノ生絲ノ相場
ガ決マルナラバ、其生絲ノ相場ヲ基礎ニシ
テ、繭ノ相場ト生產費、卽チ製絲生產費ト、
更ニ販賣手數料ヲ決メマス、例ヘバ來年度
ガ五百五十圓ノ見當ガ付クナラバ、之ヲ基
礎ニシテ、假ニ販賣手數料ヲ二十圓、製絲
生產費ヲ百三十圓、サウ致シマスレバ、ソ
レノ殘リデアル所ノ四百圓ガ、繭ノ相場ニ
當ルノデアリマスカラ、之ヲ基礎ニシテ政
府ハ來年度ノ繭ノ相場ヲ幾ラト決メルノデ
アリマス、サウシテ一方養蠶農家ハ、繭ノ
相場ニ保障ガ出來マスカラ、初メテ自力更
生ノ餘地ガアル、今マデノ生產費ヲウント
安クスルヤウニ、政府ノ自慢スル所ノ
自力更生運動ヲ本當ニ擴大シテ、之h
依ッテ日本ノ養蠶農家ニ眞箇ノ安定ト保
障ガ來ル、更ニ又製絲業者ハ百斤百三
十圓ト云フ公定生產費ガ決メラレルナラ
バ、其範圍內ニ於テ能率ノ增進モ結構、製
絲ノ合理化モ結構、日本ノ此非常ニ紛雜混
亂シタル所ノ製絲業界其モノニ對シマシテ
モ、玆ニ自ラ一ツノ統制ガ付イテ來ル、
一方生絲商人ハ、是ハ國外生絲商人モ、貿
易業者モ、百斤二十圓ナラ二十圓ノ公定手
數料ガアリマスカラ、其範圍內ニ於テ自己
ノ營業ハ十分ニ續イテ行ク、私ノ申シマス
コトハ極メテ簡單デアリマスケレドモ、若
シサウスレバ、其處ニ亞米利加邊デ常ニ非
難サレル所ノ生絲ノ絲價ノ安定ガ期待出來
ル、更ニ又サウスルコトニ依ッテ、日本ノ養
〓農家ハ自分ノ作ル繭價ノ公定維持保障ニ
佐々、自ラ安定匡救サレマセウシ、更ニ又
製絲業者モ其處ニ一ツノ統制ガ生レマスカ
ラ、養蠶農家ヲ相刺スルヤウナ弊害ヤ、非
難ガナクナッテ來ル、小クトモ此處マデ考ヘ
テ、サウシテ日本ノ養蠶對策ヲ考ヘナイ限
リ、日本ノ生絲對策ヲ考ヘナイ限リ、政府
ノヤルヤウナ、バラ〓〓ナ、部分的ナ、左様
ニ姑息ナ曖昧ナ、不徹底ナ政策デハ、私ハ今
後ノ日本ノ重要產業トシテノ蠶絲對策ニ對
スル徹底セル結論ナシト信ズルノデアリマ
ス、此點ニ付テ農林大臣ノ明確ナル答辯ヲ
要求シマス、農林大臣ガ啻單ニ尸位素餐ノ
謗ヲ受ケツヽ其職ニ留マルナラバ、日本ノ
社會情勢ハドウ云フ轉換ヲスルカ分ラヌ、
私ハ問題ハ極メテ地味ナ養蠶問題デアリマ
スケレドモ、其背後ニ日本ノ哀々タル農民
ガ、今年ノ春繭ノ相場ニスラ、非常ナ心配
ト非常ナ憂憤ヲ有ッテ居ル事情カラ、此際農
林大臣ノ奮發ヲ希ヒ、私ノ謂フ生絲國營案
ユ對スル所ノ、農林大臣ノ率直ナル、サウ
シテ正直ナル答辯アランコトヲ要求シテ降
壇致シマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006513242X02219340313&spkNum=24
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025・秋田清
○議長(秋田清君) 後藤農林大臣
〔國務大臣後藤文夫君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006513242X02219340313&spkNum=25
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026・後藤文夫
○國務大臣(後藤文夫君) 由谷君ノ御質問
ニ御答ヲ致シマス、御述ニナリマシタ蠶絲
業國營案トデモ申スモノデアリマスカ、ド
ウモ只今伺ヒマシタダケデ、私俄カニ御批
評ヲ中上ゲ兼ネルノデアリマスガ、併シ我
國ノ蠶絲業ノ今日ノ現狀、是ガ農村ノ非常
ニ多數ノ人口ニ關係ヲ致シテ居リマスル實
情カラ見マシテ、遽ニ簡單ナ解決案ヲ玆ニ
樹テル譯ニハ參リ兼ネルト思フノデアリマ
ス、吾々共カ年來致シテ居リマスルコトガ、
個々バラ〓〓ノモノデアルト云フヤウナ御
批評モアリマスルガ、吾々ヲ以テ見マスレ
バ、是ハ總テ一貫シタ一ツノ方向ニ向ッテ
進ンデ居ルモノデアルノデアリマシテ、此
蠶絲業ニ關係ノアル各業態ノソレ〓〓ニ於
テ、ソレ〓〓適切ナル統制ガ行ハレルコト
ニ依ッテ、全體ノ統制ノ步ヲ進メラレルモノ
デアルト考ヘテ居ルノデアリマス、吾々ハ
色々理想ヲ考ヘナイデハゴザイマセヌ、併
ナガラ高遠ノ理想ヲ唯述ベテ、具體的成案
ノナイモノヲ、色々御話スル譯ニモ參リ兼
ネマスルシ、今日ニ於キマシテハ、一定ノ
方向ニ向ッテ具體案ヲ得タモノヲ、逐次ニ實
行シテ參ッテ居ルノデアリマシテ、決シテ愚
圖々々ト致シテ居ル譯デハナイト云フコト
ヲ御諒承ヲ願ヒタイト存ジマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006513242X02219340313&spkNum=26
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027・由谷義治
○由谷義治君 此席カラ御許シヲ願ヒマ
ス、農林大臣ノ答辯ハ、悉ク不滿足デアリ
マス、個々ノ統制ヲ何トカシテ行クト云フ
ヤウナ御答辯デアリマスケレドモ、一番基
本的ナ統制ヲシテ行キ、ソレカラ個々ノ統
制ガ連絡ヲ持ツベキガ、本當ノ筋道ト私ハ
信ズルノデアリマス、是レ以上質問ハ申シ
マセヌ、適當ナ機會ニ更ニ農林大臣ノ所信
ヲ質スコトニ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006513242X02219340313&spkNum=27
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028・秋田清
○議長(秋田〓君) 質疑ハ終局致シマシタ、
本案ノ審査ヲ付託スベキ委員ノ選擧ニ付テ
御諮リ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006513242X02219340313&spkNum=28
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029・青木雷三郎
○靑木雷三郞君 本案ハ議長指名十八名ノ
委員ニ付託セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006513242X02219340313&spkNum=29
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030・秋田清
○議長(秋田〓君) 靑木君ノ動議ニ御異議
アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006513242X02219340313&spkNum=30
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031・秋田清
○議長(秋田〓君) 御異議ナシト認メマス、
仍テ動議ノ如ク決シマシタ、日程第二、政府
提出、河川法中改正法律案ノ第一讀會ノ續
ヲ開キマス、委員長ノ報〓ヲ求メマス-
松實喜代太君
第二河川法中改正法律案(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報〓)
報告書
一河川法中改正法律案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報告候也
昭和九年三月十日
委員長松實喜代太
衆議院議長秋田〓殿
〔松實喜代太君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006513242X02219340313&spkNum=31
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032・松實喜代太
○松實喜代太君 只今上程サレタル所ノ河
川法中改正法律案ニ付テ、特別委員會ノ經過
竝ニ結果ヲ御報〓致シマス、本委員會ハ前
後三囘ニ亙リマシテ開會致シタノデアリマ
スルガ、先ヅ最初ニ委目長及ビ理事ノ互選
ヲ行ヒマシタ、委員長ニ不肖ガ當選致シ、
又理事ニハ政友會ノ石川又八君、民政黨ノ
坂東幸太郞君ガ當選相成リマシタノデアリ
マス、サウシテ政府ノ提案ノ理由ヲ承リマ
シタノデアリマスルガ、政府ノ提案ノ理由
ニ依リマスルト云フト、近時北海道ニ於ケ
ル拓殖事業ガ非常ナル發展ヲ致シ、又北海
道ニ於ケル所ノ諸般ノ產業モ大ニ振興致シ
タ關係上、此河川ノ重要性モ增大致シタノ
デアリマス、又北海道ニ最近頻々タル所ノ
水害ガ起リマシテ、サウシテ非常ニ北海道
民ガ惱ンデ居ルノデアリマスルガ、此水害
ヲ除去スル爲ニ、政府ハ本年ノ此議會ニ石
狩川外五河川ノ治水計畫ヲ提案シタノデア
リマス、サウ云フヤウナ關係カラシテ、此
河川法ヲ改正シテ、北海道ニモ河川法ヲ施
行スルト云フコトニ致シタイト云フ希望ヲ
以テ、政府ガ提案サレタノデアリマスルガ、
先ヅ其改正ノ內容ニ付テ申上ゲマスルト云
フト、現行ノ河川法ニ依リマスルト云フト、
此河川ノ費用ハ府縣ノ負擔トスル、斯ウ
云フコトニナッテ居ルノデアリマス、所ガ
北海道ニ於テハ拓殖計畫ニ依ッテ、國費ヲ以
テ河川ノ支辨ヲ致シテ居ルノデアリマスル
カラ、此點ニ付テ改正ヲ行ハナケレバ、北
海道ニ施行スルコトハ出來ヌノデアリマス、
又現在ノ此河川法ニ依リマスルト云フト、
河川ヨリ生ズル所ノ收入ハ、府縣ニ歸屬セ
シムルト云フコトニナッテ居ルノデアリマ
スルガ、先程申シマシタヤウニ、北海道ノ
拓殖計畫ニ依ッテ、國費ヲ以テ北海道ノ河
川ノ支辨ヲ致シテ居ル關係上、北海道ニ於
ケル河川ノ收入ハ、國庫ニ歸屬セシムルト
云フコトニナッテ居ルノデアリマスルカラ、
此點ヲ明ニ改正ヲ致サナケレバ、北海道ニ
河川法ヲ施行スルコトハ出來ヌト云フコト
ニ依ッテ、今囘改正ヲ行ハウ、斯ウ云フ提案
デアリマス、ソレニ付キマシテ幾多ノ政府
委員ト、特別委員トノ間ニ質疑應答ヲ重ネ
ラレタノデアリマスルガ、是ハ諸君ノ御手
許ニ配付シタル所ノ速記錄ニ依ッテ御承知
ヲ願ヒタイノデアリマス、質問ヲ終了致シ
マシテ、討論ニ入リマシテ、政友會ヲ代表
シテ石川又八君、民政黨ヲ代表致シテ、坂
東幸太郞君ガ贊成ノ意ヲ述ベラレ、隨テ之
ヲ採決致シマシタ結果トシテ、滿場一致政
府案ヲ可決致シタ次第デアリマス、但シ茲
ニ民政黨ノ坂東君ガ、委員長ノ報告ニ添ヘ
テ貰ヒタイト云フ希望條件ガアルノデアリ
マスルカラ、之ヲ玆ニ朗讀致シテ、其坂東
君ノ意思ノ表示ヲ明ニシタイト思ヒマス
希望條項
一、政府ハ本法施行ノ爲ニ堤外地トナル
民有地ニ對シテハ價額ノ補償又ハ賠償
ヲ爲シ其所有者又ハ賃借人等ニ不當ノ
損失ヲ與ヘザル樣考慮セラレンコトヲ
望ム
ト云フ希望條項デアリマス、何卒委員會決
定ノ通リ御贊成アランコトヲ希望致シマ
ス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006513242X02219340313&spkNum=32
-
033・秋田清
○議長(秋田〓君) 本案ノ第二讀會ヲ開ク
ニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006513242X02219340313&spkNum=33
-
034・秋田清
○議長(秋田〓君) 御異議ナシト認メマ
ス、本案ノ第二讀會ヲ開クニ決シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006513242X02219340313&spkNum=34
-
035・青木雷三郎
○靑木雷三郞君 直チニ本案ノ第二讀會ヲ
開キ、第三讀會ヲ省略シテ、委員長報告通
リ可決サレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006513242X02219340313&spkNum=35
-
036・秋田清
○議長(秋田〓君) 靑木君ノ動議ニ御異議
アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006513242X02219340313&spkNum=36
-
037・秋田清
○議長(秋田〓君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ直チニ第二讀會ヲ開キ議案全部ヲ
議題ト致シマス
河川法中改正法律案第二讀會(確定議)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006513242X02219340313&spkNum=37
-
038・秋田清
○議長(秋田〓君) 別ニ御發議モアリマセ
又、仍チ第三讀會ヲ省略シテ、委員長報告
通リ可決確定致シマシタ(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006513242X02219340313&spkNum=38
-
039・青木雷三郎
○靑木雷三郞君 議事日程變更ノ緊急動議
ヲ提出致シマス、卽チ此際日程第四十四乃
至第五十四マデ繰上ゲ上程シ、逐次其審議
ヲ進メラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006513242X02219340313&spkNum=39
-
040・秋田清
○議長(秋田〓君) 靑木君ノ動議ニ御異議
アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006513242X02219340313&spkNum=40
-
041・秋田清
○議長(秋田〓君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ日程ハ變更セラレマシタ、日程第
四十四、司法保護法案ノ第一讀會ノ續ヲ開
キマス、委員長ノ報告ヲ求メマス-山本
芳治君
第四十四司法保護法案(小林鑄君
外六名提出)
第一讀會ノ續(委員長報〓)
報告書
一司法保護法案(小林錡君外六名提出)
右ハ本院ニ於テ別紙ノ通修正スヘキモノ
ト議決致候此段及報告候也
昭和九年三月六日
委員長高見之通
衆議院議長秋田〓殿
〔別紙〕
司法保護法
第一條左ニ揭クル者ニシテ必要アリト
認ムルトキハ本法ニ依リ之ヲ保護ス
一刑ノ執行ヲ終リ又ハ刑ノ執行ノ免
除ヲ得タル者
二假釋放ヲ許サレタル者
三刑ノ執行ヲ停止セラレタル者
四刑ノ執行ヲ猶豫セラレタル者
五起訴猶豫又ハ微罪釋放ノ處分ヲ受
ケタル者
六其ノ他刑事處分ヲ受ケタル者
第二條保護事務ハ司法大臣ノ管理ニ屬
ス
第三條地方裁判所所在地ニ地方保護局
ヲ置キ保護事務ヲ行ハシム
必要アルトキハ地方保護分局ヲ置クコ
トヲ得
第四條地方保護局ノ設置、廢止及管轄
ニ關スル規定ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第五條地方保護局ニ局長、保護司及書
記ヲ置ク
第六條地方保護局ニ保護事務ニ關スル
諮問機關ヲ置ク
諮問機關ノ組織竝職務ニ關スル規定ハ
命令ヲ以テ之ヲ定ム
第七條地方保護局ハ保護事務ノ補助ヲ
爲サシムル爲適當ト認ムル者ニ保護委
員ヲ囑託スルコトヲ得
第八條地方保護局ハ保護ノ要否ヲ認定
スルニ當リ保護ヲ受クル者ノ父兄親族
其ノ他保護ヲ委託スルニ適當ト認ムル
者ニ出頭ヲ求メ保護ヲ勸說シ又ハ保護
ニ必要ナル事項ヲ指示スルコトヲ得
第九條地方保護局ハ保護ヲ受クル者又
ハ保護ヲ受ケントスル者ヲ召喚シ又ハ
保護司ヲシテ同行セシムルコトヲ得
第十條地方保護局ハ其ノ事務ヲ行フニ當
リ必要アルトキハ公務所又ハ公務員ニ對
シ囑託ヲ爲シ又ハ補助ヲ求ムルコトヲ得
第十一條保護ノ種類左ノ如シ
一生業助成
二融和調停
三補導援護
第十二條地方保護局被保護者ノ居宅ニ
於テ保護ヲ爲スコト能ハス又ハ之ヲ適
當ナラスト認ムルトキハ保護團體ヲシ
テ收容セシメ又ハ寺院〓會其ノ他適當
ナル施設若ハ私人ノ家庭ニ收容ヲ委託
スルコトヲ得
第十三條地方保護局ハ被保護者ニ對シ
保護ノ爲必要ナル事項ノ遵守ヲ命スル
コトヲ得
第十四條地方保護局ハ必要アリト認ム
ルトキハ被保護者ヲ保護司ノ觀察ニ附
スルコトヲ得
第十五條保護期間ハ二箇年以内トス但
シ繼續ノ必要アルトキハ之ヲ更新スル
コトヲ得
第十六條保護ノ解除竝保護期間ノ更新
ハ地方保護局之ヲ決定ス
第十七條保護團體ヲ設置セントスル者
ハ司法大臣ノ認可ヲ受クルヲ要ス
第十八條地方保護局ハ收容ヲ委託シタ
ル保護團體又ハ適當ナル者ニ對シ命令
ノ定ムル所ニ依リ收容費ヲ補給スルコ
トヲ得
第十九條保護團體ノ用ニ供スル土地建
物ノ權利ノ取得又ハ所有權ノ保存ノ爲
ノ登記ニ付テハ登錄稅ヲ課セス
第二十條保護團體ノ用ニ供スル土地建
物ニ對シテハ租稅其ノ他ノ公課ヲ課セ
ス但シ有料ニテ之ヲ使用セシメタル者
ニ對シテハ此ノ限ニ在ラス
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
〔山本芳治君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006513242X02219340313&spkNum=41
-
042・山本芳治
○山本芳治君 只今上程セラレマシタ司法
保護法案ノ委員會ノ經過ヲ御報告申上ゲマ
ス、本案ハ御手許へ送付致シマシタ報告書
ノ通リ、條文ヲ整理修正ツテ可決ンタノデ
アリマス、本案ハ昨年ノ議會ニ本院ヲ通過
シタ案デアリマス、其際ノ委員會ニ於キマ
シテ、詳細ニ審査ガ遂ゲラレテ居リマスル
關係上、此度ノ委員會ニ於キマシテハ、質疑
應答ヲ用ヒズシテ、直チニ討論ニ入ッタノデ
アリマス、討論ノ大要ヲ御報告申上ゲマス
レバ、本案ハ現在ノ刑政、卽チ檢察、裁判、
行刑、之ニ加ヘテ司法保護制度ヲ以チシテ、
刑政ノ效果ヲ十分ニ收メタイト云フノガ主
眼デアル、現在ニ於キマシテハ、此保護事
業ハ民間ノ公益事業トシテ經營セラレテ居
ルノデアリマスルガ、ソレデハ刑政ノ效果
ヲ擧グルニ不十分デアル、現ニ今囘政府ガ
提出致シマシタ治安維持法ノ如キモ、特
保護觀察ノ一章ヲ設ケテ居ルノデアル、是
等ノ點カラ考ヘマシテモ、一般刑政ノ效果
ヲ擧ゲル上ニ於テ、本案ノ如キハ是非必要
ナル立法デアル、大體斯樣ナ見解ヲ以テ、
原案ヲ可決シタノデアリマス、以上御報告
申上ゲマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006513242X02219340313&spkNum=42
-
043・秋田清
○議長(秋田清君) 本案ノ第二讀會ヲ開タ
ニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006513242X02219340313&spkNum=43
-
044・秋田清
○議長(秋田〓君) 御異議ナシト認メマ
ス、本案ノ第二讀會ヲ開クニ決シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006513242X02219340313&spkNum=44
-
045・青木雷三郎
○靑木雷三郞君 直チニ本案ノ第二讀會ヲ
開キ、第三讀會ヲ省略シテ、委員長報告通
リ可決セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006513242X02219340313&spkNum=45
-
046・秋田清
○議長(秋田清君) 靑木君ノ動議ニ御異議
アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006513242X02219340313&spkNum=46
-
047・秋田清
○議長(秋田〓君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ直チニ第二讀會ヲ開キ、議案全部
ヲ議題ト致シマス
司法保護法案第二讀會(確定議)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006513242X02219340313&spkNum=47
-
048・秋田清
○議長(秋田清君) 別ニ御發議モアリマセ
又、仍チ第三讀會ヲ省略シテ、委員長報告
通リ可決確定致シマシタ(拍手)-日程第
四十五乃至第五十ハ、同一委員ニ付託シタ
ル議案ナルニ依リ、一括議題トナスニ御異
議アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006513242X02219340313&spkNum=48
-
049・秋田清
○議長(秋田〓君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ日程第四十五、中井一夫君外五名
提出、衞生組合法案、日程第四十六、野田
文一郞君提出、衞生組合法案、日程第四十
七、福田關次郞君外二名提出、衞生組合法
案、日程第四十八、中井一夫君外五名提出、
傳染病豫防法中改正法律案、日程第四十九、
野田文一郞君提出、傳染病豫防法中改正法
律案、日程第五十、福田關次郞君外二名提
田、傳染病豫防法中改正法律案、右ヲ一括
シテ第一讀會ノ續ヲ開キマス、委員長ノ報
告ヲ求メマス-委員長守屋榮夫君
第四十五衛生組合法案(中井一夫君
外五名提出)
第一讀會ノ續(委員長報告)
第四十六衞生組合法案(野田文一郞
君提出)第一讀會ノ續(委員長報告)
第四十七衞生組合法案(福田關次郞
君外二名提出)
第一讀會ノ續(委員長報告)
第四十八傳染病豫防法中改正法律案
(中井一夫君外五名提出)
第一讀會ノ續(委員長報牛ロ)
第四十九傳染病豫防法中改正法律案
(野田文一郞君提出)
第一讀會ノ續(委員長報告)
第五十傳染病豫防法中改正法律案
(福田關次郞君外二名提出)
第一讀會ノ續(委員長報告)
報〓書
一衞生組合法案(中井一夫君外五名提出)
一衞生組合法案(野田文一郞君提出)
一衞生組合法案(福田關次郞君外二名提
用
右ハ本院ニ於テ三案ヲ併合シテ一案ト爲
スヘキモノト修正議決致候此段及報告候
也
昭和九年三月六日
委員長守屋榮夫
衆議院議長秋田〓殿
報告書
一傳染病豫防法中改正法律案(中井一夫
君外五名提出)
一傳染病豫防法中改正法律案(野田文一
郞君提出)
一傳染病豫防法中改正法律案(福田關次
郞君外二名提出)
右ハ本院ニ於テ三案ヲ併合シテ一案ト爲
スヘキモノト修正議決致候此段及報〓候
也
昭和九年三月六日
委員長守屋榮夫
衆議院議長秋田〓殿
〔守屋榮夫君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006513242X02219340313&spkNum=49
-
050・守屋榮夫
○守屋榮夫君 只今議題ニナリマシタ各法
律案ノ委員會ニ於ケル審議ノ經過及ビ結果
ヲ簡單ニ御報告申上ゲマス、中井一夫君外
五名提出ニ係ル衞生組合法案、傳染病豫防
法中改正法律案、野田文一郞君ノ提出ニ係
ル衞生組合法案、傳染病豫防法中改正法律
案、福田關次郞君外二名ノ提出ニ係ル衞生
組合法案、及ビ傳染病豫防法中改正法律案
ハ、提出者ガ違ヒマスルガ、內容ハ全然同
一ノモノデアリマス、而シテ同一內容ノ法
律案ガ、昨年滿場一致ヲ以テ本院ヲ通過シ
テ居ルノデゴザイマス、委員會ニ於キマシ
テハ、各提案者カラ提案ノ趣旨ノ說明ヲ詳
細聽取シマシタ後、質疑應答ガゴザイマシ
テ、討論ニ入リ、院議ヲ尊重スル趣旨ヲ以
チマシテ、衞生組合法三案、傳染病豫防法
中改正法律案三案共ニ、各一案ニ修正議決
スベキモノデアルト、全員一致ヲ以テ決定
シタ次第デアリマス、右謹ンデ御報告申上
ゲマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006513242X02219340313&spkNum=50
-
051・秋田清
○議長(秋田〓君) 委員長報告ハ、衞生組
合法案ノ三案、傳染病豫防法中改正法律案
ノ三案ヲ、ソレ〓〓併合シテ各一案トナ
シ、修正議決シタモノデアリマス、此六案
ノ第二讀會ヲ開クニ御異議アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006513242X02219340313&spkNum=51
-
052・秋田清
○議長(秋田清君) 御異議ナシト認メマ
ス、六案ノ第二讀會ヲ開クニ決シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006513242X02219340313&spkNum=52
-
053・青木雷三郎
○靑木雷三郞君 直チニ三案ノ第二讀會ヲ
開キ、第三讀會ヲ省略シテ、委員長報告通
リ可決サレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006513242X02219340313&spkNum=53
-
054・秋田清
○議長(秋田清君) 靑木君ニ一言シマス
ガ、只今三案ト仰セラレマシタガ、六案デ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006513242X02219340313&spkNum=54
-
055・青木雷三郎
○靑木雷三郞君 六案ニ訂正致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006513242X02219340313&spkNum=55
-
056・秋田清
○議長(秋田清君) 靑木君ノ動議ニ御異議
アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006513242X02219340313&spkNum=56
-
057・秋田清
○議長(秋田清君) 御異議ナシト認メマ
ス、直チニ六案ノ第二讀會ヲ開キ、議案全
部ヲ議題ト致シマス
衞生組合法案第二讀會(確定議)
衞生組合法案第二讀會(確定議)
衞生組合法案第二讀會(確定議)
傳染病豫防法中改正法律案
第二讀會(確定議)」
傳染病豫防法中改正法律案
第二讀會(確定議)
傳染病豫防法中改正法律案
第二讀會(確定議)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006513242X02219340313&spkNum=57
-
058・秋田清
○議長(秋田清君) 別ニ御發議モアリマセ
又、第三讀會ヲ省略シテ、委員長報告通リ
可決確定致シマシタ、日程第五十一、營業
收益稅法中改正法律案ノ第一讀會ノ續ヲ開
キマス、委員長ノ報〓ヲ求メマス-委員
長熊谷直太君
第五十一營業收益稅法中改正法律案
(小林錡君外二名提出)
第一讀會ノ續(委員長報〓)
報〓書
一營業收益稅法中改正法律案(小林錡君
外二名提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和九年三月八日
理事林路
衆議院議長秋田〓殿発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006513242X02219340313&spkNum=58
-
059・林路一
○林路一君 委員長ニ代ッテ御報告ヲ申上
ゲマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006513242X02219340313&spkNum=59
-
060・秋田清
○議長(秋田清君) 林君ハ理事デゴザイマ
スカ-許可致シマス
〔林路一君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006513242X02219340313&spkNum=60
-
061・林路一
○林路一君 營業收益稅法中改正法律案ノ
審議ノ經過竝ニ結果ヲ御報告申上ゲマス、本
案ハ營業收益稅法ノ第七條ヲ改正致シマシ
テ、法人ノ演劇興業稅ヲ加へ、之ニ依ッテ現
在地方稅トシテ演劇興業稅ヲ賦課セラレテ
居リマスケレドモ、是ガ極メテ不公正ナ課
稅デアリマスルカラ、此課稅ヲ地方稅ヨリ
取去ルト云フコトガ本案ノ目的デアルノデ
ゴザイマス、委員會ハ二囘之ヲ開キマシテ、
提出者ヨリ懇篤ナル提案ノ趣旨ノ御說明ガ
ゴザイマシタ、之ニ對シマシテ、各委員諸君
カラシテ、內務及ビ大藏當局ニ伺ッテ種々
質疑セラレマシタ、政府ハ理論ト致シマシ
テハ、本案ノ改正ノ趣旨ハ反對デハナイノ
デアルケレドモ、現在ノ演劇興業稅ガ持ツ
所ノ二ツノ意味、卽チ一ハ收益ニ對スル所
ノ課稅、他ノ一ハ奢侈的部分ニ對スル所ノ
課稅、此二ツノ意味ガ含蓄サレテ居ルモノ
ガ、營業收益稅ニ變リマスト、收益ニ對ス
ル課稅ハ變リハアリマセヌガ、一方ニ於ケ
ル奢侈的部分ニ對スル課稅ト云フモノガ取
殘サレルコトニナルノデアルカラ、殊ニ今
日地方財源ガ不足ヲ致シテ居リマス場合
ニ、演劇興業稅ガ地方稅ノ雜種稅ヨリ除外
セラレマスト、夥シイ金額ガ地方財源ノ上
ニ不足ヲ來シマスカラ、斯樣ナ理由デ、今
直チニハ贊成致シ兼ネルト云フコトデアッ
タノデアリマス、之ニ對シテ委員諸君カラ
ハ、今日演劇興業稅ノ大部分ヲ占メル所ノ
活動寫眞ヲ以テ、奢侈的ナリト見ルト云フ
コトハ誤ッテ居ル、假ニ若シ奢侈的性質ガア
リト致シマシテモ、其部分ニ對スル所ノ課稅
ハ、觀覽稅ヲ以テ補ヘバ宜イデハナイカト云
フ意見ガゴザイマシタ、之ニ對シテ政府ハ、
觀覽稅ハ徵收ガ困難デアルカラト云フコト
デ、反對ヲ爲サイマシタケレドモ、其根據
ガ薄弱デアッタノデアリマス、斯クシテ最後
ニ討論ニ入リマシテ、政友會ヲ代表シテ高
橋委員、民政黨ヲ代表シテ〓水委員ヨリ、
各、原案贊成ノ意見ヲ述べラレマシタ、國民
同盟ノ高橋委員カラハ、贊否ノ意見ヲ保留
セラレマシテ、採決ノ結果ハ多數ヲ以テ原
案ヲ可決致シマシタ、詳細ハ速記錄ニ依ッテ
御承知ヲ願ヒマス、右御報告ヲ申上ゲマス
(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006513242X02219340313&spkNum=61
-
062・秋田清
○議長(秋田〓君) 本案ノ第二讀會ヲ開ク
ニ贊成ノ諸君ノ起立ヲ求メマス
〔贊成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006513242X02219340313&spkNum=62
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063・秋田清
○議長(秋田清君) 起立多數、仍テ本案ノ
第二讀會ヲ開クニ決シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006513242X02219340313&spkNum=63
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064・青木雷三郎
○靑木雷三郞君 直チニ本案ノ第二讀會ヲ
開カレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006513242X02219340313&spkNum=64
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065・秋田清
○議長(秋田〓君) 靑木君ノ動議ニ御異議
アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006513242X02219340313&spkNum=65
-
066・秋田清
○議長(秋田〓君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ直チニ本案ノ第二讀會ヲ開キ、議
案全部ヲ議題ト致シマス
營業收益稅法中改正法律案第二讀會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006513242X02219340313&spkNum=66
-
067・秋田清
○議長(秋田〓君) 別ニ御發議モアリマセ
ヌカラ、委員長報告通リ決シマシタ-是
ニテ本案ノ第二讀會ハ終リマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006513242X02219340313&spkNum=67
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068・青木雷三郎
○靑木雷三郞君 直チニ本案ノ第三讀會ヲ
開カレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006513242X02219340313&spkNum=68
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069・秋田清
○議長(秋田〓君) 靑木君ノ動議ニ御異議
アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006513242X02219340313&spkNum=69
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070・秋田清
○議長(秋田清君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ直チニ本案ノ第三讀會ヲ開キ、議
案全部ヲ議題ト致シマス
營業收益稅法中改正法律案第三讀會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006513242X02219340313&spkNum=70
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071・秋田清
○議長(秋田〓君) 本案ハ第二讀會ノ議決
ノ通リ可決スルニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006513242X02219340313&spkNum=71
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072・秋田清
○議長(秋田清君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ本案ハ第二讀會議決ノ通リ可決確
定致シマシタ、日程第五十二乃至第五十四
ハ、同一委員ニ付託シタル議案ナルニ依リ、
一括議題トナスニ御異議アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006513242X02219340313&spkNum=72
-
073・秋田清
○議長(秋田〓君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ日程第五十二、山道襄一君外三名
提出、產師法案、日程第五十三、土屋〓三
郞君外三名提出、產師法案、日程第五十四、
野方次郞君外三名提出、產師法案、右三案
ヲ一括シテ第一讀會ノ續ヲ開キマス、委員
長ノ報告ヲ求メマス-委員長坂本一角君
第五十二產師法案(山道襄一君外三
名提出)第一讀會ノ續(委員長報〓)
第五十三產師法案(土屋〓三郞君外
三名提出)第一讀會ノ續(委員長報〓)
第五十四產師法案(野方次郞君外三
名提出)第一讀會ノ續(委員長報〓)
報告書
一產師法案(山道襄一君外三名提出)
一產師法案(土屋〓三郞君外三名提出)
一產師法案(野方次郞君外三名提出)
右ハ本院ニ於テ三案ヲ併合シテ一案トシ
別紙ノ通修正スヘキモノト議決致候此段
及報告候也
昭和九年三月八日
委員長坂本一角
衆議院議長秋田〓殿
〔別紙〕
產師法
第一條產師トハ助產ヲ業ト爲ス者ヲ謂
フ
第二條產師タラムトスル者ハ年齡二十
年以上ノ女子ニシテ左ノ資格ヲ有シ內
務大臣ノ免許ヲ受クルコトヲ要ス
高等女學校卒業者又ハ之ト同等以
上ノ學力ヲ有スル者ニシテ內務大臣
ノ指定シタル產師學校ヲ卒業シタル
者
二外國ノ產師學校ヲ卒業シ又ハ外國
ニ於テ產師免許ヲ受ケタル者ニシテ
命令ノ規定ニ該當スル者
三產師試驗ニ合格シタル者
產師試驗ハ內務大臣之ヲ行フ
產師試驗ニ關スル事項ハ命令ヲ以テ之
マルナ
第三條聾者、啞者、盲者又ハ精神病者
ニ對シテハ產師ノ免許ヲ爲スコトヲ得
ス
墮胎ノ罪其ノ他業務ニ關スル罪ヲ犯シ
刑ニ處セラレタル者又ハ禁錮以上ノ刑
ニ處セラレタル者ニ對シテハ產師ノ免
許ヲ爲ササルコトアルヘシ
第四條產師ハ姙婦、產婦、褥婦又ハ胎
兒、生兒ニ異常アリト認ムルトキハ直
ニ醫師ノ診療ヲ請ハシムヘシ自ラ其ノ
處置ヲ爲スコトヲ得ス但シ臨時應急ノ
處置ハ此ノ限ニ在ラス
第五條產師ハ自ラ臨產又ハ檢案セスシ
テ死產證書又ハ死胎檢案書ヲ交付スル
コトヲ得ス
第六條產師ハ何等ノ方法ヲ以テスルヲ
問ハス業務上技能、經歷又ハ命令ノ定
ムル事項ノ廣告ヲ爲スコトヲ得ス
第七條產師ハ產簿ヲ備へ十箇年間之ヲ
保存スヘシ
第八條產師ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ道
府縣產師會ヲ設立スヘシ
道府縣產師會ハ日本產師會ヲ設立スル
コトヲ得
產師ハ土地ノ狀況ニ依リ郡市區產師會
ヲ設立スルコトヲ得
產師會ハ法人トス
產師會ハ命令ノ定ムル所ニ依リ產事衞
生ノ改良發達ヲ圖ルヲ以テ目的トス
前各項ノ外產師會ニ關シ必要ナル事項
ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第九條產師第三條第一項ニ該當スルト
キハ其ノ兔許ヲ取消スヘシ
產師墮胎ノ罪其ノ他業務ニ關スル罪ヲ犯
シ刑ニ處セラレタルトキ又ハ禁錮以上ノ
刑ニ處セラレタルトキハ其ノ免許ヲ取消
シ又ハ期間ヲ定メテ業務ヲ停止スルコト
アルヘシ其ノ免許前ニ係ル場合亦同シ
前項ノ取消處分ヲ受ケタル者ト雖改悛
ノ情顯著ナルトキハ再免許ヲ爲スコト
ヲ得
前三項ノ處分ハ內務大臣之ヲ行フ但シ
第二項ノ處分及第三項ノ再免許ヲ爲ス
場合ハ中央衞生會ノ審議ヲ經ルコトヲ
要ス
第十條第二條ノ免許ヲ受ケスシテ助產
ノ業ヲ爲シタル者又ハ第四條乃至第七
條ノ規定ニ違反シタル者ハ百圓以下ノ
罰金又ハ科料ニ處ス業務停止中ノ產師
ニシテ助產ノ業ヲ爲シタル者亦同シ
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
產婆規則ハ之ヲ廢止ス
本法施行前產婆名簿ニ登錄セラレタル者
ハ本法ニ依リ產師ノ免許ヲ受ケタル者ト
看做ス
本法施行前地方長官ヨリ業務ノ地域及期
間ヲ定メテ假ニ產婆ノ業ヲ免許セラレタ
ル者ハ本法施行後ト雖尙其ノ效力ヲ有シ
且其ノ有效期限ハ申請ニ依リ之ヲ更新ス
ルコトヲ得
本法施行ノ際從前ノ規定ニ依リ產婆名簿
ニ登錄ヲ受クル資格ヲ有スル者及本法施
行後五箇年以內ニ從前ノ規定ニ依リ產婆
名簿ニ登錄ヲ受クル資格ヲ得タル者ハ第
二條ノ規定ニ拘ラス產師ノ免許ヲ受クル
コトヲ得
〔坂本一角君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006513242X02219340313&spkNum=73
-
074・坂本一角
○坂本一角君 只今上程ニナリマシタル產
師法案ノ委員會ニ於ケル審議ノ經過竝ニ其
結果ヲ極メテ簡單ニ御報告申上ゲマス、此
三案ハ全ク形式內容共ニ一致致シテ居リマ
ス、ソコデ三案一括致シマシテ審議ヲ致シ
マシタ、此案ノ主眼ト致シマスル所ハ、從
來稱ヘラレテ居ル所ノ產婆ノ名稱ヲ產師ト
改メルト云フコト、現行法產婆規則ハ、明
治三十二年ニ制定サレタモノデアリマス、
ソレガ今日ノ時勢ノ進運ニ伴ハザルモノガ
アルト云フノデ、此案ノ制定ヲ見テ、產婆
ノ〓育ノ程度ヲ高メ、社會的ノ地位ヲ高メ、
內務大臣監督ノ下ニ統一シテ、其身分權限
ヲ法律ノ上ニ明確ニシ、更ニ此團體ヲ法律
上公ケニ認メテ、醫師會、藥劑師會、齒科
醫師會ト提携シテ、公衆衞生ニ貢獻セント
スルノガ此案ノ目的デアリマス、委員會ハ
先月、二月九日ニ第一囘ヲ開キマシテ、六
囘重ネテ居リマス、十分ニ審議ヲ致シマシ
タ結果、御手許ニ配付致シテアル通リノ修
正ヲシテ、滿場一致之ヲ可決致シマシタ、
尙ホ本案ハ前議會及ビ前々議會ニ二囘程、
本院ヲ通過致シテ居リマス、全國五萬ノ產
婆ノ要求デアリ、國民保健ノ上カラ考ヘマ
シテ必要ダト考ヘマス、ドウカ滿場一致可
決アランコトヲ切望致シマシテ、御報告ニ
代ヘタ次第デアリマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006513242X02219340313&spkNum=74
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075・秋田清
○議長(秋田〓君) 委員長報告ハ三案ヲ併
合シテ一案トナシ、修正議決シタモノデア
リマス、三案ノ第二讀會ヲ開クニ御異議ア
リマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006513242X02219340313&spkNum=75
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076・秋田清
○議長(秋田〓君) 御異議ナシト認メマス
三案ノ第二讀會ヲ開クニ決シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006513242X02219340313&spkNum=76
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077・青木雷三郎
○靑木雷三郞君 直チニ三案ノ第二讀會ヲ
開キ、第三讀會ヲ省略シテ、委員長報告通
リ可決セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006513242X02219340313&spkNum=77
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078・秋田清
○議長(秋田清君) 靑木君ノ動議ニ御異議
アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006513242X02219340313&spkNum=78
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079・秋田清
○議長(秋田清君) 御異議ナシト認メマス
直チニ三案ノ第二讀會ヲ開キ、議案全部ヲ
議題ト致シマス
產師法案第二讀會(確定議)
產師法案第二讀會(確定議)
產師法案第二讀會(確定議)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006513242X02219340313&spkNum=79
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080・秋田清
○議長(秋田清君) 別ニ御發議モアリマセ
又、第三讀會ヲ省略シテ、委員長報告通リ
可決確定致シマシタ(拍手)
水雷艇友鶴遭難ニ關スル大角國務大臣
ノ報〓発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006513242X02219340313&spkNum=80
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081・秋田清
○議長(秋田清君) 只今大角海軍大臣ヨリ
水雷艇友鶴遭難ニ關シ報〓致シタキ旨通告
ニ接シマシタ、仍テ其發言ヲ許シマス-
海軍大臣大角岑生君
〔國務大臣大角岑生君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006513242X02219340313&spkNum=81
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082・大角岑生
○國務大臣(大角岑生君) 佐世保鎭守府司
令長官ヨリノ報〓ニ基キ、水雷艇友鶴遭難
ノ〓要ヲ申上ゲマス、佐世保警備戰隊所屬
ノ軍艦龍田ト、第二十一水雷隊千鳥、友鶴
ハ、同戰隊司令官統率ノ下ニ、十一日夜半
佐世保港外ニ於キマシテ訓練實施中、十二
日午前四時頃友鶴ハ本隊ト分離致シマシテ、
遂ニ消息ヲ絕ツニ至ッタノデアリマス、當時
風力ハ二十米デ、風向ハ南々東、時々大ナ
ル長濤ガアリ、降雨ノ爲メ視界ハ極ク狹カッ
タノデアリマス、司令官ハ右ノ報告ヲ受領
致シマスルヤ否ヤ、僚艇千鳥ハ直チニ附近
ノ寺島水道ニ避泊セシメ、自分ノ乘艦ノ龍
田ヲ以テ搜索セシメマスル一方、佐世保ヨ
リ派遣シタル驅逐艦ヤ飛行機ト協力致シマ
シテ、附近海面ヲ搜索致シマシタル結果、
午後二時ニ至リマシテ、志自岐崎ノ南方約
五浬ノ地點ニ於キマシテ、友鶴ガ〓覆シテ
漂流中ナルヲ發見シ、龍田ヲ以テ佐世保軍
港ニ曳イテ參リマシテ、本日午前七時庵埼
附近-是ハ佐世保港內デアリマス、庵埼
附近ニ到著致シマシタ、尙ホ艦內ニ生存者
ノアル見込デアリマシテ、差當リ是ガ收容
作業中デアリマス、當時ノ狀況ヨリ推シマ
シテ、殉職者多數デアル見込デアリマシテ、
眞ニ痛恨ノ至リニ堪ヘマセヌ、今囘ノ事件
ノ原因ハ尙ホ詳カデアリマセヌガ、一昨年
早蕨遭難ニ鑑ミマシテ、復原力等ニ關シマ
シテモ愼重〓究ヲ致シ、旣ニ諸般ノ對策ヲ
實施シテ參ッタノデアリマスルガ、今又此事
件ヲ惹起致シマシタルコトハ、洵ニ遺憾至
極デアリ、恐懼ニ堪ヘザル所デアリマス、
速ニ必要ナル對策ヲ執リ、將來寸毫ノ遺憾
ナキヲ期スル覺悟デアリマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006513242X02219340313&spkNum=82
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083・秋田清
○議長(秋田〓君) 海軍大臣ノ報告ニ關聯
セル質疑ノ通〓ガアリマス、順次之ヲ許シ
マス-內田信也君
〔內田信也君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006513242X02219340313&spkNum=83
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084・内田信也
○內田信也君 只今大角海軍大臣ヨリ我ガ
新銳ノ水雷艇友鶴遭難ノ御報告ヲ承リマシ
テ、洵ニ遺憾禁ズル能ハザルモノガアルノ
デアリマス、遭難艦ハ御承知ノ通リ我ガ第
一次補充計畫ノ一デアリマシテ、舞鶴要港
部ニ於テ製造シ、漸ク先月下旬ヲ以テ引渡
サレ、訓練ニ從事シテヨリ僅ニ數日ニシテ、
斯ノ如キ悲慘ナル報告ヲ耳ニスルコトハ、
國民ノ洵ニ遺憾ニ堪ヘザル所デゴザイマス
(拍手)殊ニ只今御報告中ニハゴザイマセヌ
デシタケレドモ、新聞紙其他ヨリ承知致シ
マスレバ、當時ノ風浪ハ三米トカニ聞及ン
デ居リマスガ、三米ノ浪ト云フモノハ、決
シテ稀ニ見ル如キ大キナモノデハゴザイマ
セヌ、常時見ル所ノモノデアリマス、此僅
カ三米ノ風浪ノ間ニ於テ、新銳ノ我ガ國防
ノ第一線ニ立ツベキ水雷艇ガ、我ガ佐世保
軍港ノ玄關先ニ於テ、斯ノ如キ遭難ヲ見ル
コトハ、實ニ我ガ國民ノ國防安全感ヲ刺戟
スルモノガ大ナルモノアリト信ズルノデア
リマス、私ハ只今海軍大臣ノ御報〓ニ依ッ
テ、水雷艇中尙ホ生存者ヲ存スルト云フコ
トヲ聽キマシテ、此點ハ洵ニ喜ビヲ以テ、
大ナル期待ヲ以テ、生存者ノ一員モ多數ニ、
一日モ早ク救援サレンコトヲ望ンデ已マナ
イ者デアリマス(拍手)而モ狀況ハ未ダ判明
致サズ、私ハ此遭難ニ對シテ、兔角ノ斷案
ヲ下ス機會デハゴザイマセヌガ、兔モ角モ
艦ガ覆沒シテ、尙ホ海上ニ浮ンデ居ルト云
フコトハ、乘組員將士ガ最後マデ其防水作
業ニ奮鬪シテ、職務ニ全力ヲ盡シタ結果、
沈沒ヲ免レテ居ル證左ト私ハ拜察スルノデ
アリマス、此點ニ於チ我ガ忠勇ナル將士ノ、
最後マデ職務ニ奮鬪セルコトニ對シテ、茲
壇上ヲ通ジテ深キ敬意ヲ表シマスト共
ニ、其點ハ必ズ是等生存者ヲ一人モ多カラ
シムルコトヲ期待致シテ居ルノデアリマ
ス、蓋シ此水雷艇ノ性能ニ付キマシテハ、
吾々ハ決シテ今日マデ無關心デ居ッタノデ
ハアリマセヌ、卽チ先般協贊致シマシタ所
ノ第二次補充計畫中、此六百噸以下ノ水雷
艇ガ十六隻アルノニ對シマシテハ、深キ關
心、否、杞憂ヲ懷イテ居ック者デアリマス、
卽チ政府ノ豫算閣議決定ニ先チマシテ、本
員ハ此件ニ對シ憂ヲ有ッテ、海軍省ニ藤田海
軍次官ヲ訪ヒマシテ、此六百噸以下ノ水雷艇
ノ性能ニ對シテ御伺致シタノデアリマス、更ニ
又大角海軍大臣ヲ訪レマシテ、尙ホ此六百
噸以下ノ水雷艇ガ、果シテ國防ノ第一線ニ
立ツ性能アリヤ否ヤニ付テ、私ハ御伺シタ
ノデアリマス、而モ斯ノ如キコトハ、事軍
機ニ屬シマスルガ故ニ、之ヲ公開ノ議場ニ
於テハ審カニ論ズルコトヲ避ケ、特ニ海軍
大臣竝ニ海軍次官ヲ御訪ネシテ、對坐シテ
之ヲ御尋シタノデアリマス、當時海軍大臣
ハ、大演習ノ結果、此六百噸以下ノ水雷艇
ト雖モ、二等驅逐艦以上ノ性能ヲ有シテ、更
ニ心配ガナイト云フ御答デアッタノデアリ
マス、併シ本員ノ見ル所デハ、偶、海上
平穩ナ時ニ於テ、其性能ガ十分ニ發揮セラ
レテモ、一タビ荒天ニ際シテハ、思ヒ半バ
ニ過グルモノアルコトハ、是レ小型艦艇ノ
特色デアリ、缺點デアリマス、是ハ大演習
中ノ事デアリマスルガ、私ガ實見シタコト
デアリマス、大演習中ナリト雖モ、此事ハ
映畫トナッテ公開シテアルカラ、私ハ軍機事
項デナイト信ジテ申上ゲマスガ、私ガ現ニ
或ル主力艦ニ乘ッテ居リ、全速デ以テ運轉シ
テ居ル、之ニ對シテ二等驅逐艦ノ襲撃ガアツ
ク、當時偶、荒天デアッタ、サウスルト机上
ノ論ヨリ言ヘバ二十二、二十三デ走ッテ居
ル主力艦ユ對シテ、三十四、五ノ大速力ヲ
有スル驅逐艦ガ、直チニ追跡襲擊ガ出來ル
筈デアルガ、ソレガ出來ナイ、荒天ノ際ハ
小艦ハ自由ニ運轉ガ出來ナイ、與ヘラレク
ル「スペシフィケーション」ト違ッタ性能ガ
ソコニ現ハレル、故ニ此六百噸以下ヲ、倫
敦條約ニ於テ建造自由トシテ制限外ニ置イ
タコトハ、其性能ガ不十分デアルカラ、各
國ニ自由建造ヲ許シタノデ、ソレヲ濫ニ
之ニ信賴シテ、國防ハ安全ダトシテ、之
ヲ建造スルコトハ如何デアルカト、大
角海相ニ御注意申上ゲタノデアル、尙ホ
倫敦條約ガ千九百三十六年滿期トナリ、
明年ハ新ニ倫敦デ軍縮會議ガ開カレン
トスルニ當リマシテ、此第窟ナ制限ヲ受ケ
タ所ノ、此六百噸以下ノ小水雷艇十六隻ヲ、
今囘新ニ第二次補充計畫中ニ組入レテ、倫
敦條約期限前ニ拵ヘルナラ兔モ角モ、倫敦
條約ハ千九百三十六年デ滿期ニナルノニ、
ソレニ依ッテ束縛サレタ此威力ノ少イ、危險
極マル艦ヲ、條約滿期後ノ三十七年マデ繼
續セントスル意思ハ何處ニアルカト云フコ
トヲ、私ハ分科會ニ於テ御尋シタノデアリ
や、、卽チ假令豫算ハ此議場ヲ通過シテ
毛、本來軍縮會議ガ開カレテ、倫敦條約ガ
更改サレ若クハ廢棄サレタナラバ、何モ苦
ンデコンナ窮窟ナ艦ヲ拵ヘル必要ハナイカ
ラ、會計法ニ一向差支ナイカラ、今カラ豫
算ガ通過シタカラト云ッテ、十六艘ノ水雷艇
ノ製造材料ヲ集メテシマッテ、動キノ取レ
ナイヤウニスルコトハ、甚ダ策ヲ得タモノ
デナイカラシテ、來年ノ會議ヲ待ッテ、會議
ノ模樣ヲ見テ、此第二次補充計畫ノ十六隻
分ハ、變更スルコトアルノ用意ヲ必要トスルト
云フコトヲ御忠告申上ゲ、否警告シテ、吾々
ハ豫算ニ協賛ヲ與ヘタノデアリマス、當時
大角海軍大臣ハ、此私ノ分科會ニ於ケル質
問ニ對シマシテ「今內田君ノ御意見デ一番
問題ニナラウト思フノハ、水雷艇ナドデア
ラウト思ヒマス、其水雷艇ノ問題ニ關シテ
モ、隨分〓究モシ、議論モシタノデアリマ
スガ、結局作戰上要ルト云フコトニナッテ、
現ニ今出來ツヽアル水雷艇ハ、割合ニ今迄
アッタ二等驅逐艦ト云ヒマスカ、八百噸位ノ
仕事ガ出來ル、斯ウ云フ風ナコトデ、益〓必ニ
要ヲ感ズルヤウニナッタノデアリマス」ト書
イテアル、部內ニ於テモ、此水雷艇ニ對シ
テハ議論ガアッタト云フノデアルカラ、議論
ガアッタト云フコトハ、反對論ガアッタト云
フコトニ違ヒナイ、私等ト同ジ意見ヲ有ッタ
方モ部內ニアルト云フ是ハ證據デアル、サ
ウスルト海軍部分ニモ、又此議場ニ於テモ、
是ガ旣ニ議論サレタガ、此杞憂ガ不幸ニシ
テ現實ニ暴露サレタノデアル、卽チ今不幸
ニシテ現實ニ我ガ軍港ノ玄關先ニ於テ、此
遭難ヲ見ルニ於テハ、更ニ私ハ玆ニ其憂ヲ
深ク致シマスルト共ニ、海軍大臣ハ、此將
來ニ殘サレテ、今ヤ貴族院ヲ通過セントス
ル、此昭和九年度豫算案ニ伴フ、海軍第二
次補充計畫中ノ制限外艦艇、卽チ水雷艇十
六隻ノ前途ニ對シテ、如何ナル御所感ト御
考慮ヲ有セラルヽヤヲ御伺致シタイノデア
リマス、之ヲ以テ私ノ質問ヲ終リマス拍
手)
〔國務大臣大角岑生君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006513242X02219340313&spkNum=84
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085・大角岑生
○國務大臣(大角岑生君) 友鶴遭難ニ關シ
內田君ヨリ善意ノ御忠言ヲ拜聽致シマシ
テ、洵ニ感謝ニ堪ヘザル次第デアリマス、
是ヨリ私共ハ最モ權威アル査問委員會ヲ編
成致シマシテ、成ベク速ニ事態ノ眞相ヲ究
明致シタイト考ヘテ居ルノデアリマス、而
シテ只今內田君ノ御述ニナリマシタコト
ハ、十分考慮ニ入レタイト存ズル次第デア
リマス、尙ホ只今手ニ致シマシタ電報ヲ御
參考ニ御報告申上ゲタイト思ヒマス、佐世
保鎭守府長官ヨリ
午後零時二十分友鶴後部ヨリ生存者三名
(松田一等機關兵、高橋三等機關兵、川村
三等機關兵)ヲ救出シ三名共元氣尙同室
ニ數名ノ生存者アル見込
斯ウ云フ電信ヲ受取リマシタカラ御報告ニ
及ビマス
〔拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006513242X02219340313&spkNum=85
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086・秋田清
○議長(秋田清君) 內田君宜シウゴザイマ
スカ-內田君ハ御濟ミニナリマシタカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006513242X02219340313&spkNum=86
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087・内田信也
○內田信也君 宜シウゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006513242X02219340313&spkNum=87
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088・秋田清
○議長(秋田〓君) 高橋壽太郞君
〔高橋壽太郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006513242X02219340313&spkNum=88
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089・高橋壽太郎
○高橋壽太郞君 水雷艇友鶴遭難ニ對シ、
國民同盟ヲ代表シ、遭難者ニ對シ謹ンデ深
甚ナル哀悼ノ意ヲ表シマス(拍手)此非常時
ニ際シテ、多數有爲ノ將兵ヲ喪ヒマシタコ
トハ悲痛此上モナイコトデゴザイマス、
友鶴艇長岩瀨少佐以下將兵ハ固ヨリ職務ニ
什レタモノデアリマスカラ、武人ノ最後
トシテハ事情亦已ムヲ得ナイコトデアリ
マス、偉ナガラ華々シキ戰場ノ花ト散ル
コトガ出來ズニ、春尙ホ淺キ佐世保ノ港
外ニ、風浪ノ間ニ散リ失セタト云フコト
ハ、定メシ遺憾至極ナコトデアッタデアラウ
ト思ヒマス、一昨年十二月臺灣ノ近海ニ於
デ、驅逐艦早蕨ノ遭難ガアリ、今又友鶴ノ
不幸ヲ聽キマシテ、國民ハ洵ニ驚愕措ク能
ハザルモノガアリマス、蓋シ我ガ國民ハ、
海軍ニ信賴スルコト極メテ厚イノデアリマ
シテ、我ガ海軍ノ將兵ノ忠誠勇武ナルコト
竝ニ其練度ニ於テモ亦極メテ優秀デアルコ
トヲ信ジ、而シテ其造船ノ技術ハ世界第一
ヂアルトノ誇リヲ有シテ居ルカラデアリマ
ス、隨テ今囘ノ如キ變災ニ對シマシチハ、
且ツ驚キ且ツ悲シミ、其措ク所ヲ知ラザル
有樣デアリマス、海軍ハ宜シク遭難ノ原因
ヲ明ニシテ、先ヅ國民ノ疑惑ヲ除キ、以テ
國民ノ信賴ニ酬ユルト共ニ、陛下ノ股肱
タル軍人ヲシテ無意義ノ犧牲ヲ拂ハシメザ
ルヤウ、萬遺憾ナキヲ期セラレンコトヲ切
望シテ已ミマセヌ(拍手)
〔國務大臣大角岑生君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006513242X02219340313&spkNum=89
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090・大角岑生
○國務大臣(大角岑生君) 只今高橋君ヨリ
懇切丁寧ナル御言葉ヲ拜シマシテ、洵ニ感
謝措ク能ハザル所デアリマス、尙ホ御注意
ニ預リマシタル此原因ヲ十分ニ探究シテ國
民ノ疑惑ヲ解キ、又陛下ノ軍人ヲ犧牲ニ
供スルコト少クスルヤウニ努力セヨトノ意
味ノ御言葉ニ對シテハ、十分衷心ヨリ服膺
スル考デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006513242X02219340313&spkNum=90
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091・秋田清
○議長(秋田〓君) 此際加藤鯛一君ヨリ成
規ニ據リ日程ヲ變更シテ、同君提出、治安
維持ニ關スル件ニ付キ、緊急質問ヲ許可ス
ベシトノ御動議ガ提出セラレマシタ、此日
程變更ノ動議ニ御異議アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006513242X02219340313&spkNum=91
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092・秋田清
○議長(秋田〓君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ日程ハ變更セラレマシタ、加藤鯛
一君提出、治安維持ニ關スル件、緊急質問
ヲ許可致シマス-內務大臣ハ只今出席要
求ノ手續ヲ執リマシタ、直チニ見エル筈デ
アリマス-加藤鯛一君
治安維持ニ關スル緊急質問(加藤鯛一
君提出)
〔加藤鯛一君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006513242X02219340313&spkNum=92
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093・加藤鯛一
○加藤鯛一君 只今議題ニナリマシタル治
安維持ノ問題ニ對シマシテ、政府ニ御尋ヲ
致サントスル者デアリマス、齋藤內閣ノ重
大ナル使命ノ一ツハ言フマデモナイコトデ
アリマスガ、非常時解消ノ任務デナケレバ
ナリマセヌ、然ルニ近時ノ社會情勢ヲ見マ
スルト、治安維持ノ問題ニ對シマシテ、社
會不安ハ愈、增サントスルノ情勢ガアルノ
デアリマス、卽チ最近ニ於キマシテ、社會
上ニ相當知名ノ人デアリマシタ武藤山治君
ガ暗殺ヲサレテ居ルノデアリマス、諸君、
抑こ武藤山治氏ノ暗殺ノミナラズ、近來新
聞紙其他ノ傳フル所ニ依リマスト、治安維
持上容易ナラザル問題ガ報道セラレテ居ル
ノデアリマス、卽チ數日前ノ某新聞ニハ、「ピ
ストル」八百挺前後、行衞不明ニナッタト報道
サレテ居リマス、又近時頻々トシテ此「ピス
トル」ト云フ兇器ガ盛ニ密輸入サレテ居ル
ト云フコトガ報道サレテ居ルノデアリマ
ス、一體此非常時解消ノ使命ヲ有ッテ生レタ
ル內閣ガ、此密輸入ノ取締ガ出來ナイデ、
其任務ヲ行フコトガ出來ルカドウカ(拍手)
國民ハ非常ナル不安ニ襲ハレテ居ルノデア
リマス、又此「ピストル」ト云フ兇器ヲ、
體政府ハドウ云フ範圍ノ人間ニ所持スルコ
トヲ許シテ居ルノデアリマスカ、相當知名
ノ士デアリマシテ、自ラヲ防衞スルニ必要
ナル程度ノ人ニ所持スルコトヲ許シテ居ル
ト吾々ハ今日マデ考ヘテ居リマシタガ、
最近武藤氏ヲ襲ヒマシタル福島某ト云フ者
ハ、道途傳フル所ニ依リマスレバ「インテリ」
階級デハアリマシタガ、「ルンペン」ニ等シ
イ生活ヲシテ居ッタト報道サレテ居ルノデ
アル、此人間ニ精巧ナル「ビストル」ヲ所持
スルコトヲ警察ハ許可シテ居ッタト云フコト
デアリマスルガ、今後ハ如何ナル範圍ノ人
間ヲ標準ト致シマシテ、所持スルコトヲ許
ス考デアリマセウカ、又此犯人福島某ナル
者ハ、武藤君ヲ襲撃致シマスル犯行前ニ、
妻子ヲ離緣致シテ居ルト云フコトデアリマ
ス(拍手)妻子ヲ離別致シマシテ、重大ナル
決意ヲ以テ、而モ此「ルンペン」ニ等シイ生
活ヲシテ居ッタ者ガ、精巧ナル「ピストル」ヲ
持ッテ居ルト云フコトニ對シマシテ、警察ハ
何等ノ關心ヲ持ッテ居ナカッタノデアルカド
ウカ(拍手)之ニ對スル當時ノ取扱振ニ對シ
マシテ質サントスルモノデアリマス、又
左樣ナル「ルンペン」ニ等シキ生活ヲシテ居
ル者ガ、精巧ナル兇器ヲ所持シテ、妻子ヲ
離別シテ重大ナル決意ヲシタコトニ對シ
テ、何等關心ヲ持ッテ居ナイヤウナコトデ
アッタトスルナラバ、ソレデ治安ヲ維持スル
コトガ出來ルト思フカドウカ(拍手)吾々ハ
之ニ對シマシテ政府ノ所信ヲ質サナケレバ
ナリマセヌ、又武藤山治氏ガ遭難ヲセラレ
マスルト、僅ニ數時間ノ後ニ於キマシテ、
當局者ハアノ問題ハ火葬場ノ原稿ノ問題デ
アルト云フコトヲ天下ニ發表致シマシタ
ガ、是ハ餘リニ遣方ガ輕卒デナカッタノ
デハナイカ(拍手)諸君、アノ火葬場ノ問題
ニ對シマシテハ、吾々ハ信ズベキ方面カラ
聞イテ居ルコトガアリマス、卽チ武藤山治
氏トハ相當ニ話ガ付キマシテ、福島某ナル
本人ハ、釋然トシテ諒解シタリト云フ事實
ヲ友人ニ話ヲシテ居リマス、然ルニ當局者
ガ簡單ニ輕卒ナル取扱ヲ致シマシテ、アレ
ハ火葬場ノ問題デアルト云フコトヲ天
下ニ發表致シマシタルコトハ、其意ヲ盡
サザルノ憾ガアルト思フノデアリマスガ、
政府ハ如何樣ニ御考ニナルノデアリマスル
カ(拍手)又吾々ガ常識デ考ヘテ見マシテ
モ、アノ火葬場ノ原稿問題ノミデ、アレダ
ケノコトヲシタト云フコトハ考ヘラレマセ
又、國民齊シク私ハ吾々ト同樣ノ常識ヲ以
テ、此問題ニ對スル觀察ヲシタノデハナカ
ラウカト思ヒマスルガ、果シテ然ラバ、斯
ウ云フ取扱ヲ致シマシテ、輕卒ニ判斷ヲシ
テ、之ヲ發表致シマシタルコトガ、國民ニ
非常ナル不安ヲ與ヘタト政府ハ思ハナイノ
デアルカドウカ(拍手)又是ハ先般起ッタ問
題デアリマスルガ、井上準之助氏ガ襲擊サ
レマシタ時ニ、政府當局者ハ、アノ問題ノ
背後ニハ何等ノ關係ハナイト云フコトヲ輕
卒ニ發表致シマシタガ、アノ問題ハ果シテ
關係ガナカッタカドウカ(拍手)若シアノ時
ニ愼重ニ探究セラレマシタナラバ、帝都ノ
治安ハアレ程ニ紊レズニ濟ンダカモ知レナ
イト吾々ハ考ヘザルヲ得ナイノデアリマ
ス(拍手)
此色々ノ問題ヲ綜合致シテ考ヘテ見マス
ルト、政府ノ兇器ヲ所持シタル者ニ對スル
取締ノヤリ方、之ニ若干ノ手落ガアッタトハ
考ヘナイカドウカ、今後ハ如何ナル人ニ持
タセルト云フ標準ヲ置ク考デアルカドウ
カ、又盛ニ密輸入サレマシタル兇器「ピス
トル」ガ、澤山行衞不明ニナッテ居ルト報ゼ
ラレテ居リマスガ、如何ナル方法ヲ以テ是
ガ捜査ヲ繼續シツヽアルカ、如何ナル取締
ヲ爲サントスルノデアリマスルカ、此諸點
ニ對シマシテ、政府ハ國民ノ安心ノ行クヤ
ウニ、明確ナル答辯ヲセラレンコトヲ望ム
モノデアリマス(拍手)
〔國務大臣男爵山本達雄君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006513242X02219340313&spkNum=93
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094・山本達雄
○國務大臣(男爵山本達雄君) 只今武藤山
治君ノ暗殺事件ニ付キマシテ、如何ニモ政
府ノ取締ガ緩漫デアルト云フコトニ付キマ
シテノ御質問デアリマシタガ、全體ノ取締
カラ申述ブル方ガ宜カラウト思ヒマスガ、
是マデ拳銃ノ授受、運搬、携帶ノ許可ニ際
シマシテハ、本人ノ身許ヲ嚴重調査シ、不
適當又ハ不必要ト認メラレマス者ニ對シマ
シテハ許可ヲ與ヘズ、且ツ旣ニ許可ヲ與ヘ
タル者ニ對シマシテモ、其所持ヲ不適當又
ハ不必要ト認メラレマスル場合ニ於キマシ
テハ、及ブダケ諭旨ヲ致シマシテ、廢棄處
分ヲ爲サシメツヽアル次第デアリマス、昭
和七年四月ニ、特ニ是ガ取締ノ嚴密ヲ期ス
ル爲ニ、國費補給巡査百七十一名ヲ全國エ
配置致シマシテ、爾來取締ノ徹底ヲ期シツ
ツアルノデアリマス、爲ニ昭和七年度中ニ
於キマシテ、不正所持拳銃ヲ九千八百六十
六挺、同ジク實包二十七万六千百九發ヲ發
見致シマシテ、ソレ〓〓廢棄其他ノ處分ヲ
了シタノデアリマス、昭和八年中ノ此種不
正所持ニ付キマシテハ、其統計ヲ未ダ得マ
セヌガ、察スルニ不正所持發見數ハ、昭和
七年ノ九千八百幾ラト云フヨリモ更ニ大ナ
ル見込デアリマス、常ニ此取締ニ付キマシ
テハ銳意努力シツヽアルノデゴザイマス、
而シテ武藤山治君ノ此度ノ凶事ニ付キマシ
テ、福島某ガ「ビストル」ヲ以テ斯ノ如キ事
ヲ起シタノデアリマスルガ、其本人ノ福島
某ニ對シマシテハ、丁度大正十一年、
警視廳管下築地警察署ニ於キマシテ、
其讓受ヲ許可致シマシテ、爾來所持中ノ
所昭和三年警視廳令改正ノ際ニ於キ
マシテ、更ニ其屆出ヲ命ジ、拳銃ノ名稱、
番號、又型式等ヲソレ〓〓臺帳ニ登錄致シ
マシテ、常ニ査察シテ居ッタノデアリマス、
大正十一年許可當時ノ事情ハ、調ベテ見マ
シタガ分明ニナッテ居リマセヌガ、本人ニ於
テハ事前ニ於テ、是マデ安寧秩序ヲ害スル
ノ傾向ガ明ナラザリシ爲ニ、其儘所持ヲ認
メテ居ッタノデアリマス、將來ニ於キマシテ
ハ、此種物件ノ取締ヲ一層嚴重ニ属行致シ
マシテ、禍根ヲ芟除スルコトニ及ブベキダ
ケ努メタイト思フ次第デアリマス、此段御
答申上ゲマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006513242X02219340313&spkNum=94
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095・加藤鯛一
○加藤鯛一君 簡單デアリマスカラ、此席
カラ··発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006513242X02219340313&spkNum=95
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096・秋田清
○議長(秋田清君) 許可致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006513242X02219340313&spkNum=96
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097・加藤鯛一
○加藤鯛一君 總理大臣ニ御尋致シマス、
只今總理大臣ハ、私ノ御尋シタコトヲ御聽
キ下サッタコトデアラウト思ヒマスガ、只今
內務大臣ノ御答ヲ承リマシテ、如何ニ多ク
ノ兇器ガ密輸入セラレ、行方不明ニナッテ
居ッタカト云フコトヲ一層痛切ニ感ジタノ
デアリマス、是ハ政策ノ問題デハアリマセ
又、アナタノ政府ニ於テ政策ガ實行出來ル
トカ出來ヌト云フ問題デハナイ、此非常時
解消ノ重大ナル使命ヲ帶ンデ現ハレタルア
ナタノ政府ガ、此非常時ヲ解消スルコトガ
出來ヌノミナラズ、今日マデ斯ノ如ク兇器
ヲ澤山密輸入セシメタトカ、行方不明ニサ
セタト云フコトハ、是ダケデモアナタノ重
大ナル使命ハ行ハレテ居ラヌノデアリマス
ガ、斯ウ事實ニ鑑ミマシテ、此治安ノ維持
スヲ出來ナイト云フコトヲ慚ヂテ、罪ヲ上
下ニ謝シテ、總理大臣ハ辭職ヲナサル決意
ハナイカドウカ(笑聲)之ヲ御尋致シマス
(拍手)
〔國務大臣子爵齋藤實君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006513242X02219340313&spkNum=97
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098・齋藤實
○國務大臣(子爵齋藤實君) 武藤山治君ニ
關シテノ事件ニ付キマシテハ、內務大臣ヨ
リ大體御答致シタ通リデアリマス、此兇器
ノ密輸入ト云フコトニ付キマシテハ、近年、
殊ニ昨年以來非常ニ能ク調査ガ出來テ居リ
マシテ(「調査デハナイ、取締ヲドウスル」
ト呼フ者アリ)取締モ以前ヨリハ十分ニ良
クナッテ、結果ガ擧ッテ居リマス(「擧ッテ居
ラヌヂヤナイカ」「武藤ハドウシタ」ト呼フ
者アリ)ソレハ世ノ中ノ事、手落チガ無イ
トハ言ヘナイノデアリマス、卽チ是ハ手落
デアリマス、洵ニ遺憾ナ事デアリマス···
(「ソレガアナタノ責任デハナイカ」ト
呼ヒ其他發言スル者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006513242X02219340313&spkNum=98
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099・秋田清
○議長(秋田清君) 靜肅ニ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006513242X02219340313&spkNum=99
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100・齋藤實
○國務大臣(子爵齋藤實君)(續) 併シ是
ハ、直接ニ私ガ此事ニ携ッテ直グドウ斯ウ
出來ル事デハナイノデアリマス、ソレ故ニ
ソレ〓〓ノ責任者ガアリ、ソレ〓〓ノ取締
者ガアッテ、之ヲ今行ヒツヽアルノデアリ
マス、今日マデ出來ルダケノ手段ハ講ジテ
居ルノデアリマスカラ、私ト致シマシテハ
斯樣ナ事ガ出來タノハ遺憾デアリマスガ、
取締ハ十分ニ致シテ居リマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006513242X02219340313&spkNum=100
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101・秋田清
○議長(秋田〓君) 加藤君提出ノ緊急質問
ハ終局致シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006513242X02219340313&spkNum=101
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102・青木雷三郎
○靑木雷三郞君 議事日程變更ノ緊急動議
ヲ提出致シマス、卽チ此際政府提出、臨時
米穀移入調節法案、政府提出、政府所有米
穀特別處理法案及ビ政府提出、米穀需給調
節特別會計法中改正法律案ヲ一括議題ト爲
ジ、其審議ヲ進メラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006513242X02219340313&spkNum=102
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103・秋田清
○議長(秋田〓君) 靑木君ノ動議ニ御異議
アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006513242X02219340313&spkNum=103
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104・秋田清
○議長(秋田〓君) 御異議ナシト認メマス、
仍テ日程ハ變更セラレマシタ-政府提
円臨時米穀移入調節法案、政府提出、政府
所有米穀特別處理法案、政府提出、米穀需給
調節特別會計法中改正法律案、以上三案ヲ
一括シテ第一讀會ヲ開キマス-農林大臣
後藤文夫君
臨時米穀移入調節法案(政府提出)
第一讀會
政府所有米穀特別處理法案(政府提出)
第一讀會
米穀需給調節特別會計法中改正法律案
(政府提出)第一讀會
臨時米穀移入調節法案
臨時米穀移入調節法
第一條政府ハ朝鮮米及臺灣米ノ內地移
入數量ヲ調節スル爲本法ニ依リ昭和十
年三月三十一日迄朝鮮米及臺灣米ノ買
入ヲ行フコトヲ得
第二條前條ノ規定ニ依リ買入ルル米穀
ノ價格ハ勅令ノ定ムル一定價格以內ニ
於テ時價ニ準據シテ之ヲ定ム
第三條政府ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ第
一條ノ規定ニ依リ買入レタル米穀ノ賣
渡、貯藏及加工ヲ爲スコトヲ得
第四條前條ノ規定ニ依ル賣渡ノ價格ハ
時價ニ準據シテ之ヲ定ム
第五條本法ニ依ル朝鮮米及臺灣米ノ買
入、賣渡、貯藏又ハ加工ニ關スル一切
ノ歲入歲出ハ米穀需給調節特別會計ニ
屬セシム
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
政府所有米穀特別處理法案
政府所有米穀特別處理法
第一條政府ハ米穀ノ新規利用ニ關スル
試驗〓究ノ用ニ供スルトキ又ハ米穀ノ
新規用途ノ開拓ノ爲必要アルトキニシ
テ米穀ノ市價ニ影響ヲ及ボサザル場合
ニ限リ勅令ノ定ムル所ニ依リ米穀需給
調節特別會計ニ屬スル米穀ヲ處分スル
コトヲ得
第二條前條ノ規定ニ依ル米穀ノ處分ニ
關スル重要事項ハ農林大臣米穀處理委
員會ニ認問シテ之ヲ定ム
米穀處理委員會ノ組織ハ勅令ヲ以テ之
司法大
第三條第一條ノ規定ニ依ル米穀ノ處分
ニ關スル一切ノ歲入歲出ハ米穀需給調
節特別會計ニ屬セシム
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
米穀需給調節特別會計法中改正法律案
米穀需給調節特別會計法中左ノ通改正ス
第四條ノ三中「七億圓」ヲ「八億五千萬圓」
三厘人
第六條ノ二米穀ノ數量又ハ市價ノ變動
ニ基ク買入數量ノ增加其ノ他避クベカ
ラザル事由ニ因リ生ジタル豫算ノ不足
ヲ補フ爲歲出豫算ニ豫備費ヲ設クルコ
トヲ得
附則
本法ハ昭和九年度ヨリ之ヲ施行ス
政府ハ當分ノ內必要アリト認ムルトキハ
勅令ヲ以テ第四條ノ三ニ定ムル證劵及借
入金ノ額ヲ通ズル最高金額ヲ三億圓ノ範
圍內ニ於テ增額スルコトヲ得
〔國務大臣後藤文夫君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006513242X02219340313&spkNum=104
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105・後藤文夫
○國務大臣(後藤文夫君) 只今議題トナリ
マシタ三案ヲ纒メテ御說明申上ゲタイト思
ヒマス、第一ニ臨時米穀移入調節法案ノ提
案理由カラ申上ゲマス、昭和九米穀年度、
卽チ昨年ノ十一月カラ今年ノ十月末日ニ至
リマスル此期間ニ於ケル內地ノ米穀ノ生產
額ハ七千万石ヲ超エマシテ、洵ニ未曾有ノ
大豐作ヲ現出致シタノデアリマス、之ニ加
ヘマシテ年々增加シテ參リマシタ朝鮮米及
ビ豪灣米ノ內地ニ移入セラレル數量モ、本米
穀年度ニ於キマシテハ千二三百万石ヲ豫想
セラルヽノデアリマス、且ツ前米穀年度カ
ラノ持越高モ多量ニ存在致シマスノデ、內
地ニ於キマスル米穀ノ需給關係ハ著シク供
給過剩ノ狀態ヲ呈シテ居ルノデアリマス、
然ルニ曩ニ御協賛ヲ得マシタ米穀統制法ガ、
昨年ノ十一月カラ實施セラレマシテ、同法
ニ依ル公定價格ノ買上ガ引續キ實行セラレ
マシタノデ、政府買入米ノ數量モ、季節調
節ノ買入ト併セマシテ既ニ一千万石ヲ超ユ
ルノ狀況デアリマス、籾ノ貯藏奬勵ノ施設
ト相俟ッテ、斯ノ如キ供給過剩ノ情勢ニモ
拘ラズ、米價ハ現在ノ狀態ニ維持セラレテ
居ルノデアリマス、併ナガラ近年ノ如キ米
穀ノ供給ガ過剩ナル狀態ニ於キマシテ、朝
鮮米及ビ臺灣米ガ多量ニ內地ニ移入セラレ
マス時ハ、特ニ米價ヲ著シク壓迫スルコト
ハ申ス迄モナイコトデアリマス、之ヲ適當
ニ調節スルコトハ頗ル緊要デアルト存ズル
ノデアリマス、仍テ朝鮮米及ビ臺灣米ノ內
地移入數量ヲ、單ニ季節調節ニ止ラズ、稍、
長期ニ互ッテ調節スル爲ニ、內地ニ移入セ
ラレル朝鮮米及ビ臺灣米ヲ政府ニ於テ特ニ
買入レ得ルコトニ致シマシテ、別ニ朝鮮臺
灣ニ於テ現ニ行ハレテ居リマス籾ノ貯藏奬
勵、籾ノ長期貯藏奬勵、粟其他雜穀ノ輸入
調節等、移出減少ノ爲メ必要ナル諸施設ヲ
併セ行ヒマシテ、差當リ朝鮮米、臺灣米ノ
移入ノ調節ヲ期セントスルノデアリマス、
尤モ右ハ臨時應急ノ施設デアリマスカラ、
政府ハ引續キ朝鮮米、臺灣米ニ對スル根本
對策ヲモ考究シ、速ニ成案ヲ得ルコトニ努
メルコトヽ致シタイ、隨テ本制度ニ依ル買
入モ本會計年度末迄ト致シタ譯デアリマス、
以上ガ米穀移入調節法案ノ提案ノ理由及ビ
其內容ノ要旨デアリマス
次ニ米穀需給調節特別會計法中改正法律
案提出ノ理由ヲ御說明申上ゲマス、只今御
說明致シマシタ米穀移入調節法竝ニ現行米
穀統制法ノ圓滑ナル施行ヲ圖ラントスル爲
三ハ、米穀需給調節事業資金ヲ相當增額ス
ルコトヲ必要ト致シマス、又最近ノ米穀事
情ヨリ考察致シマス時ハ、該事業資金ノ範
圍內ニ於テハ、或ハ十分ニ目的ヲ達シ得ザ
ル場合ヲモ想像シ得ラルヽノデアリマス、
若シ斯ル場合ヲ生ジマシタ時ニ於テハ、更
ニ其事業資金ヲ增額シ得ルノ途ヲ、豫メ議
會ノ御協賛ヲ得テ置キタイト存ズルノデア
リマス、仍テ米穀統制ノ遂行上、該資金ノ
不足スルコトナキヤウニ致シタイト考ヘマ
ス、尙ホ米穀統制上ノ必要ニ基ク米穀ノ買
入數量等ハ、米ノ作柄ノ豐凶等ニ依リ著シ
ク相違致シマスノデ、事業費等モ大體普通
ノ場合ニ於ケル買入米穀ノ數量見込ニ依タ
テ豫算ヲ致シマス、ソレ以上ノ必要ヲ生ジ
マシタ場合ニ於キマシテ、之ヲ補充增額ス
ルコトガ適當デアラウト認メマシタノデ、
本會計歲出豫算ニ豫備費ヲ設ケルコトニ致
シタイト存ズルノデアリマス、以上ガ米穀
需給調節特別會計法ノ改正案ノ理由竝ニ要
旨デゴザイマス
次ニ政府所有米穀特別處理法案提出ノ理
由ヲ御說明申上ゲマス、我國ニ於ケル米穀
ノ事情ハ今マデ申シタヤウナ譯デ、供給過
剩ト云フ狀況デアリマスカラ、米穀需給
ノ均衡ヲ得セシムル爲ニ、新規ノ用途
ヲ開拓シ、需要ヲ增進スルコトガ必
要デアルト考ヘラレルノデアリマス、之ガ
爲ニ政府所有米穀ヲ新規利用ニ關スル試驗
〓究及ビ米穀ノ新規用途ノ開拓ノ爲ニ、米
穀ノ市價ニ影響ヲ及ボサザル場合ニ限ッテ、
特別ニ處分スルノ途ヲ開キタイト考ヘルノ
デアリマス、是ガ本案ヲ提出致シマシタ所
以デアリマス、以上三案何卒御審議ノ上、
速ニ御協賛アランコトヲ切望致シマス(拍
手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006513242X02219340313&spkNum=105
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106・秋田清
○議長(秋田〓君) 質疑ノ通〓ガアリマ
ス、順次ニ之ヲ許シマス-三善信房君
〔三善信房君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006513242X02219340313&spkNum=106
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107・三善信房
○三善信房君 私ハ只今付議セラレテアリ
マスル諸法案ニ對シマシテ、政府當局ニ質
問ヲ致シタイト思フノデアリマス、先ヅ米
穀對策ニ付キマシテハ、曩ニ豫算委員會ニ
於テ齋藤總理ハ「朝鮮臺灣ニ米穀需給調節
特別會計ヲ設置致シ、臺灣過剩米ノ買上ヲ
ナス等、外地米調節ノ方法ヲ講ズルコト」
又「米穀特別會計ノ借入限度ヲ擴張シ得ル
ノ方法ヲ設クルコト」「政府所有米ノ特別處
理方法ヲ設クルコト」此三點ヲ述ベラレマ
シテ、サウシテ之ヲ不日提案スルト云フコ
トヲ申サレタノデアリマス、吾々ハ齋藤總
理ノ此言明ニ信賴致シマシテ、今囘ハ此言
明ノ趣旨ニ基キタル法案ノ御提出ガアルコ
トヽ信ジテ居ッタノデアリマス、然ルニ法案
ノ內容ヲ窺ッテ見マスルト、齋藤總理ノ言明
ニ副ハナイ點ガ非常ニ多イノデアリマス、
而モ第一ニ、臺灣朝鮮ニ米穀需給特別會計
ヲ設置スルト云フ、其根本方針ガ既ニ違ッテ
居リマシテ、唯今囘ノ提案ハ內地ノ米穀調
節資金ノ增額ニ止メラレタニ過ギヌノデア
リマス、此點ガ齋藤總理ノ言明ト非常ナル
相違ヲ來シテ居ルノデアリマス(「總理大臣
ガ居ラヌ」ト呼フ者アリ)總理大臣ガ居ラレ
ヌノデアリマスルガ故ニ、此事ハ總理大臣
ニ改メテ質問ヲ致スコトニ致シマスルガ、
斯樣ニ總理大臣ノ言明ト本日ノ提案トガ違
ヒマシテハ-齋藤總理ガ此言明ト全ク相
違シタコトヲスルト云フコトハ、政治道德
上吾々ハ許スコトガ出來ナイト信ズルノデ
アリマス(拍手)斯樣ナコトヲ致シマシテ
ハ、將來總理ノ言葉ニ信賴スルコトガ出來
ナイヤウナコトヲ招來シハシナイカト信ズ
ルノデアリマス(拍手)齋藤總理ノ御出席ガ
ナイノデアリマスルガ故ニ、此點ハ總理ノ
意見ヲ求メルコトガ出來ナイノヲ遺憾トス
ルモノデアリマスルガ、改メテ委員會等ニ
於キマシテ、總理ノ御所見ヲ伺ッテ見タイ
ト思フノデアリマス、此點ハソレニ止メテ
置キマス
曩ニ米穀統制法制定セラレマシテ、之二
依リマシテ最低價格ガ決定シ、政府ハ農民
ノ希望ニ應ジマシテ、米ヲ買上ゲルノ途ヲ
講ゼラレテ居ルノデアリマスルケレドモ、
今日ノ米價ハ政府ノ期待ヲ裏切リマシテ、
常ニ最低價格以下ニ廻ッテ居ルヤウナ狀態
デアリマス、其原因ヲ調ベテ見マスルト、
第一政府買上米ノ煩瑣ナ手數ガアリ、又倉
庫ノ不足ヲ愬ヘ、其根本ニ於テ米ガ過剰デ
アルト云フコトガ、農民ヲ刺戟致シマシタ
結果、今日ノ米價ガ常ニ最低價格ノ下廻リ
ヲ致シテ居ル現狀デアリマス、特ニ外地米
ノ移入ニ依リマシテ、內地米ヲ壓迫致シテ
居ルト云フコトハ、爭ハレナイ事實デアル
ト私ハ信ズルノデアリマス(拍手)吾々ハ現
在ノ米價ニ滿足スルモノデハアリマセヌ、
農村ノ收支ガ相償ッテ居ナイト云フコトハ、
私ガ申上ゲル迄モナク、旣ニ御承知ノ通リ
デアルト思フノデアリマス、此米價ニ相當
ノ利潤ヲ加ヘテコソ始メテ負債ノ整理モ出
來、農村ノ振興モ期シ得ラレルト思フノデ
アリマス(拍手)此米價ノ維持、又價格ノ向
上ヲナス爲ニハ、ドウシテモ外地米ノ移入
統制ヨリ外、途ハナイト私ハ深ク信ズルノ
デアリマス(拍手)然ルニ動モシマスレバ外
地米ノ移入統制ヲ爲サントスレバ直チニ
朝鮮ニ對シテ差別待遇ヲ爲スト云フヤウ
ナ御意見ガアルノデアリマス、私ハ必ズ
外地ト內地ト同一ナル政策ヲ施スコト
ガ、一視同仁デナイト思フノデアリマ
ス、卽チ適地適應ノ政治ヲ爲シテ、其結
果ニ於テ同樣ノ恩惠ヲ受ケルコトニ依ッテ、
外地ト內地ノ共存共榮ノ實ヲ擧ゲルコト
ガ出來ルト思フノデアリマス(拍手)一體內
地ト外地トハ氣候風土ノ關係ニ於キマシ
テ、或ハ地理的事情ニ於キマシテ、農業經
營ガ非常ニ異ッテ居リマス、或ハ生活ノ狀態
ガ違ッテ居リマス、假ニ茲ニ經濟調査ニ基キ
マス所ノ生活狀態ヲ申シテ見マスルト、
朝鮮ノ最近數年ノ農家ノ收入ガ、一戶平均
三十五圓ノ收入減、所謂收入不足ニナッテ居
リマスガ、內地ハ一戶平均八十圓ノ收入不
足ニナッテ居ルノデアリマシテ、此見地カラ
考ヘマシテモ、如何ニ內地ノ農民ガ悲慘ナ
狀態ニアルカト云フコトガ、立證出來ルト
思フノデアリマス、(拍手)而モ生產費ガ內
地ト外地ハ非常ニ違ッテ居ルノデアリマ
ス、此生產費ノ違フモノヲ、同一ニ取扱フ
ト云フコトガ、抑〓、矛盾撞著ナリト私ハ信
ズルノデアリマス、(拍手)曩ニ政府ガ發表
セラレマシタ所ノ朝鮮ノ生產費ハ、二十圓
九十八錢デアリ、內地ノ生產費ハ二十二圓
十七錢デアリマス、其差額ハ僅ニ一石一圓
十九錢ノ差額デアルノデアリマシテ、是ハ
吾々ガ常識カラ考ヘマシテモ、此外地ノ生
產費ハ餘リニ高キニ失シハシナイカト云フ
感シヲ持ツノデアリマス、私ハ此生產費ノ
調査ヲ爲サント致シマシテ、政府ニ其生產
費ノ根本トナルベキ資料ノ御提出ヲ求メテ
置キマシタケレドモ、今ニ其資料ノ御提出
ガナイノデ、私共ハ十分檢討スルコトガ出
來ナイノヲ遺憾トスルノデアリマス、併シ
常識カラ之ヲ考ヘテ見マスルト、朝鮮ニ於
ケル肥料ノ一年ノ消費高ハ、水田ト畑地ト
ヲ平均致シマシテ、實ニ一箇年僅ニ一段步
四十九錢デアリマス、我ガ內地ノ金肥ノ消
費高ハ四圓五十錢デアリマシテ、約十分ノ
一ニ相當スルノデアリマス、其十分ノ一ニ
相當スルニ拘ラズ、今囘政府提出ノ金肥ノ
使用高ハ、殆ド內地ト匹敵致シテ居ルヤウ
ナ感ヲ有ツノデアリマシテ、玆ニ非常ニ矛
盾ガアルト私ハ思フノデアリマス(拍手)殊
ニ朝鮮ノ公租公課ノ如キ、內地ノ三分ノ一
デアルト云フコトハ、是ハ朝鮮總督府ノ發
行シタル所ノ書籍ニ明ニ記載シテアルノデ
アリマス、殊ニ資本利子ノ如キモ、朝鮮ノ
上田ト中田ト下田ト、之ヲ調ベテ見マスル
ト、上田ガ一反百五十圓、中田ガ百圓、下
田ガ七十圓、是ハ朝鮮ノ統計ニ明ニナッテ居
ルノデアリマス、然ルニ拘ラズ、今囘發表
サレタル此資本利子ノ基準トナルベキ所ノ
田地ヲ一反百五十圓トシテ、上田ヲ計上シ
テアル所ニ、玆ニ其粗漏ガアルト私ハ信ズ
ル者デアリマス、又勞賃ノ如キ、其他ニ於
テ詳細點檢致シマスレバ、此生產費ニ對シ
テ吾々ハ十分眞ヲ置クコトガ出來ナイノデ
アリマス、此生產費ヲ基礎トシテ內地、外
地ノ米ノ問題ヲ解決スルコトハ、非常ニ吾々
ノ困難トスル所デアリマシテ、生產費ノ
點ニ付キマシテハ、他日機會ヲ得テ尙ホ檢
討致シタイト思フノデアリマス、私ガ政府
ニ質問致サント致シマスノハ、本法案ニ依
リマスレバ、政府ハ朝鮮、臺灣ニ於テ米ヲ
時價デ買上ゲ、或ハ時價デ賣渡スト、斯ウ
云フコトニナッテ居ルノデアリマス、若シ此
朝鮮ノ米ヲ時價デ買上ゲラレルト云フコト
ニナリマスレバ、最近五箇年ノ平均ニ依リ
マスト、內地ノ米價ト朝鮮ノ米價トハ、其
市場ノ價格ニ於テ一石ニ付キ實ニ六圓三十
六錢ノ開キガアルノデアリマス、ソレダケ
朝鮮ノ米ハ、朝鮮ニ於テ安クナッテ居ルノ
デアリマス、其安イ時價デ若シ御買上ニナ
ルト云フコトニナレバ、朝鮮ノ農民、或ハ
移出業者ハ此安イ價格ニ應ジナイデ、內地
ヘドン〓〓移入セラレテ、ソレガ內地ノ米
ヲ壓迫シナイカト云フ疑點ガアルノデアリ
マス、此點ヲ政府ハ如何ニ考ヘルノデアリ
マスカ
第二ニ、內地ノ米ヲ最低價格ヲ以テ買入
レラレテ居ルノデアリマスガ、朝鮮、臺灣
ノ米ハ時價ヲ以テ買上ゲラレル、是ハ非常
ニ取扱ニ矛盾ガアル、常ニ政府ハ一視同仁、
或ハ差別待遇ハセヌト云フコトヲ言ハレマ
スガ、內地ノ米ハ最低價格ヲ以テ買上ゲ、
外地ノ米ハ時價ヲ以テ買上ゲルト云フコト
ハ、ソレハ抑、矛盾デアルト私ハ信ズルノ
デアリマス
又第三ニ、外地デ買入レタ所ノ米ヲ、之
ヲ時價ヲ以テ販賣セラレルコトニナルノデ
アリマスガ、其時價ハ內地ノ米ガ最高價格
以上ニナッタ時ニ販賣セラレルノデアルカ、
ソレトモ亦朝鮮ノ市場ノミヲ以テ販賣セラ
レルノデアルカ、無暗ニ買ッタ米ヲ販賣セ
ラレルコトニナリマスレバ、其米ハ再ビ內
地ニ移入スルコトニ依ッテ、內地米ヲ壓迫ス
ルコトニナリマスガ、此點ハ如何樣ナル見
解ヲ有ッテ居ラレルノデアルカ
第四ニ、外地米ノ今日ノ移入ハ現在四百
万石ヲ計上致シテ居ルノデアリマスガ、尙
ホ移入餘力トモ云フベキモノハ五百万石内
外アルト思フノデアリマス、此五百万石内
外ノ米ヲ御買上ニナラナケレバ、內地米ヲ
壓迫スルコトニナルノデアリマス、此五百
万石ノ米ヲ御買上ニナルノニ、縱シ一石二
十二圓ト假定致シマシテモ、一億一千万圓
ヲ要スルノデアリマス、然ラバ此米穀年度
ハ是デ濟ムカモ知レマセヌケレドモ、昭和
九年度ノ米穀年度、所謂新米出〓期ニ對シ
テ資金ノ不足ヲ生ジハセヌカ、斯樣ナ場合
ニハ如何ナル考ヲ有ッテ居ルカ、此點ヲ伺ッ
テ見タイト思ヒマス、又朝鮮ノ米ヲ買入レ
ラレルト言ハルヽノデアリマスガ、私ノ調
査ニ依リマスレバ、朝鮮ノ道府縣ノ農業倉
庫ハ今日八千五百七十坪デアリ、又移出米
穀業者ノ持ッテ居ル米穀倉庫ハ、二万七千五
百七十三坪デアリマシテ、道府縣ノ農業倉
庫ノ收容力ハ三十四万二千石、又移出米穀業
者ノ持ッテ居ル倉庫ノ收容力ハ、百十万一千石
デアル、然ラバ政府ガ五百万石朝鮮ノ米ヲ御
買上ニナラナケレバ、米穀ノ調節ガ出來ヌト
云フコトニナルニ拘ラズ、此收容力ヲ以テシ
テハ、今直チニ御買上ニナリマシテモ收容ス
ル場所ガナイデハナイカ、之ヲ如何ニセラル
ルカト云フコトガ私ノ疑點ノ一ツデアリノス
尙ホ臺灣ノ米ヲ御買上ニナルト云フノデ
アリマスガ、臺灣ハ先般拓務大臣モ申
サレタ通リニ、臺灣ノ米ヲ買ッテモ貯藏
スルニ困難デアルト云フコトヲ言明致シテ
居ラレルノデアリマスガ、此貯藏困難
ノ臺灣ノ米ヲ御買上ニナッテ、如何ニシ
テ貯藏保管ノ實ヲ擧ゲラレル意思ガアルノ
デアリマスカ、又私ハ米ノ問題ニ付キマシ
テ、根本策ガナイノヲ洵ニ遺憾トスルノデ
アリマス、只今提案セラレテ居ル所ノモノ
ハ、殆ド應急ノ對策デアリマシテ、米穀ニ
對スル根本方策ガ一ツモ立ッテ居ナイヤウ
デアリマス、米ノ需給推算ニ於キマシテ、
米ノ過剩ヲ生ジテ居ルト云フコトハ、政府
自身ガ御承知ノコトデアリマス、殊ニ本年
ハ其過剩米ガ千八百万石ト稱セラレテ居ル
ノデアリマス、此千八百万石カラ理想持越ト
モ云フベキ五百万石ヲ差引致シマシテモ、
千三百万石ノ過剩米ガアルノデアリマス、
此過剩米ヲ如何ニ處理スルカト云フコト
ガ、今日ノ目今ノ急務デアルト私ハ信ズル
ノデアリマス、之ニ對スル所ノ根本ノ對策
ガ政府ニ無イノハ、洵ニ遺憾トスル所デア
リマス、纔ニ米穀ノ處理方法トシテ、或ハ
試驗〓究ノ爲ニ若干ノ米ヲ費シテ、新用途
ヲ開拓スルカモ知レナイト云フヤウナル處
理方法ハアルノデアリマスルケレドモ、之
ニ由ッテ此今日アル所ノ千三百万石ノ滯貨
ヲ處分スルト云フコトハ、絕對ニ不可能デ
アリマスルガ故ニ此根本策ヲ〓究セラル
ル必要ガアルト思ヒマスルガ、之ニ對シテ
如何ナル御考ヲ有ッテ居ラレルノデアリマ
スルカ、又米ガ每年增產ニナッテ參リマスル
コトハ、是ハ旣ニ御承知ノ通リデアリマシ
テ、一面現在ノ過剩米ヲ處理スルト共ニ、
此每年增產ニナル所ノ米ヲ如何ニシテ按排
スルカト云フコトガ、政府自ラ御考ヘニナ
ラナケレバナラヌコトデアルト思フノデア
リマス、然ルニ此米ノ將來ノ生產ニ向ッテハ、
何等ノ考究ヲ爲シテ居ラレナイヤウデアリ
マス、而モ私ガ今日朝鮮ノ事情ヲ申シテ見
マスレバ、朝鮮ガ唯今日ノ儘ト致シマシテ
モ、自然增加ト云フノガ三百万石アルト云
フ、朝鮮ノ農林局ノ發表ニナッテ居ルノデ
アリマス、之ニ或ハ種子ノ改良、或ハ開墾
其他ノコトヲ致シマスレバ、八百万石ノ增
加ヲ爲スコトガ容易デアル、此朝鮮ノ增加
スル所ノ、米ニ向ッテ、如何ナル御考ヲ有ッ
テ居ラレルノデアルカ、私ハ拓務大臣
ガ居ラレナイカラ御尋スルコトハ出來
ナイノデアリマスルガ、拓務大臣ガ先般議
場ニ於テ屢、朝鮮ニ於テハ-外地ニ於
テハ消費ヲ增加スルノ方法ヲ講ズル、或
產米計畫ヲ變更シテ、サウシテ產米增產ニ
ナルノヲ、之ヲ棉ニ栽培替ヘヲスル、斯ウ
云フヤウナコトヲ言ッテ、如何ニモ朝鮮ノ消
費ヲ增進シ、或ハ產米ニ多少ノ制限ヲ加ヘ
テ、サウシテ内地米ヲ壓迫セナイヤウニシ
タイト云フヤウナコトヲ、屢〓言明致シテ
居ラレルノデアリマスルガ、朝鮮ノ總督府
ガ發表シタル所ノ其農業經營ノ指導方針ト
モ云フベキモノガアルノデアリマス、之ヲ
御參考ニ私ガ讀ンデ見マスレバ、直チニ如
何ニ拓務大臣ノ言ッテ居ラレルコトヽ、朝鮮
總督府ガ執ッテ居ル所ノ指導方針トガ、矛
盾シテ居ルカト云フコトガ明ニナルト思フ
ノデアリマス、昭和八年十二月一日、總督
府農林局ノ發表デアリマス「朝鮮ノ農業」ト
云フコトニ付テ、朝鮮ノ農業經營ノ指導方
針ガ揭ゲラレテアリマス、ソレハ第一、食
糧品ノ生產ヲ增加スルコト、第二ハ、輸移
入農產物ニ對シテハ出來得ル限リ自給ヲ圖
ルコト、第三、內地及隣接國ニ對シ輸移出
ノ見込アル產物ハ、勉メテ生產ノ改良ヲ計
リ、一面鮮內ノ消費ヲ節約シ、輸移出ノ增
加ヲ圖ルコト」斯ウ云フコトガ書イテアリ
やっ、又次ニハ品種ノ改良、肥料ノ增施ヲ
スルコト、其次ハ水利灌漑ノ設備ヲ改善ス
ルコト、未開墾地ノ利用增進ヲ圖ルコト、
最後ニ勞力豐富、勞銀ノ低廉、公課、其他
生產ニ要スル費用低キニ依リ、內地ヨリ經
營ガ有利デアル故ニ、內地ニ於テ供給不足
セル米、小麥、大豆ノ生產力ヲ擴張シ、內
地ニ供給スルコト、斯ウ云フヤウナコトガ
朝鮮ノ指導方針デアリマス、之ニ依ッテ見マ
スト、朝鮮ハ兔角內地ニ米ガ不足スルカ
ヲ、今朝鮮ニ米ヲ作ッテ内地ニ移出シナケ
レバナラヌト云フノガ、朝鮮ノ指導方針デ
アリマシテ、此拓務大臣ノ言ハレル所ノ朝
鮮ノ增產計畫ヲ變更スルトカ、或ハ消費節
約ヲスルト云フコトヽ、全ク矛盾撞著ノ缺
陷ガアルト私ハ信ズルノデアリマス、此
點ヲ考ヘマシテモ、朝鮮ノ生產米ハ將來恐
ルベキ增加ノ傾向ヲ生ジテ居ルノデアリマ
スルガ故ニ、之ニ對シテ如何ナル對策ヲ有ッ
テ居ラレルノデアリマスルカ、是ハ寧ロ拓
務大臣ニ御尋スルコトガ適當ト思ヒマスル
ケレドモ、拓務大臣ガ居ラレヌノデアリマ
スガ故ニ、農林大臣ハ之ニ對シテ如何ナル
感ジヲ御有チニナルノデアルカ、今朝鮮及
ビ內地米ノ最近五箇年間ノ消費狀況ヲ申上
ゲテ見マスルト、內地ハ六十五万九千石ノ
每年消費ノ增加ニナリマス、臺灣ハ六万八
千石ノ增加ニナリマス、朝鮮ハ獨リ十八万
五千石ノ消費減退ニナッテ居リマス、此消費
減退ガ、前ニ揭ゲテアリマスル所ノ消費ヲ
少クシテ、內地ニ移出セヨト云フコトガ徹
底シタ結果、斯樣ニナッテ居ルト私ハ思フ
ノデアリマス、是ニ於テドウシテモ內地ノ米
ト朝鮮ノ米トヲ同樣ニ取扱フコトガ、矛盾
デアルト云フコトノ結論ニ到達スルト思フ
ノデアリマス、今囘ノ米ノ臨時法ニ於キマ
シテハ、米ノ臨時應急ノ施設ダケデアリマ
シテ、根本對策ガナイノデアリマス、此根
本對策ヲ御考ニナラナケレバ、何時マデ經ッ
テモ米ノ今日ノ問題ハ解決ガ出來マセヌ、
今日ノ米ノ問題、農村ノ惱ミハ米ノ價格ガ
安イコト、或ハ繭ノ價格ガ安イコト、此二點
ダケ解決シ、併セテ肥料ノ問題ヲ考ヘレバ、
農村ノ今日ノ現狀ヲ打開スルコトハ、決シ
テ困難デナイト私ハ信ズルノデアリマス、
然ルニ拘ラズ唯應急策ヲ以テ一時ヲ糊塗セ
ントシテ、恆久策ガナイコトハ、政府ニ果
シテ農村ヲ救フ所ノ眞意アリヤ如何、之ヲ
私ハ疑フ者デアリマス、モウ少シ農林大臣
ガ農村ニ對シテ眞劍ニ、職ヲ賭シテマデモ
之ヲ解決スルノ勇氣ト熱心トガアリマシタ
ナラバ、此問題ヲ解決スルコトハ決シテ困
難デナイト考ヘル(拍手)此點ニ對シマシテ
農林大臣ハ少シク、其熱意ノ足ラナイコト
ヲ、私ハ遺憾トスル者デアリマスルガ、以
上數點ニ對シマシテ、農林大臣ノ所見ヲ伺ッ
テ見タイト思フノデアリマス
〔國務大臣後藤文夫君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006513242X02219340313&spkNum=107
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108・後藤文夫
○國務大臣(後藤文夫君) 三善君ノ御質問
ニ御答致シマス、第一ニ今囘ノ法案ニ於テ、
朝鮮、臺灣米ノ買上ヲスルノガ、時價ノ買
上ト云フコトニナッテ居ル、時價ノ買上ニ
依ッテヤルコトヽ、內地ノ買上ガ最低價格ト
云フモノヲ決メテ買フト云フコトヽ、遣方
ガ違フデハナイカト云フコトデアリマス、
是ハ其通リデアリマス、內地ノ只今ノ買上
ハ季節調節ノ場合ヲ除キマスルト、最低價
格ト最高價格ヲ定メマシテ、最低價格ナラ
バ申込ニ應ジテ幾ラデモ買フト云フ政府ハ
態度ヲ執ルコトニ依ッテ、最低價格ヲ出來
ルダケ維持シテ參ラウト云フノデアリマ
ス、朝鮮ノ米、臺灣ノ米ノ今囘ノ法案ニ依
ル買上ハ、朝鮮、臺灣カラ內地ニ多量ノ米
ガ入ッテ參リマス、其壓迫ヲ除クガ爲ニ、朝
鮮臺灣米ノ入ッテ來ルモノヽ一部分ヲ、買
ハウトスルノデアリマス、是ガ爲ニハ相當
ニ買上ノ出來ル値ヲ以テ買上ヲ致サナケレ
バナラヌノデアリマス、併ナガラ政府ニ於
キマシテハ、勅令ノ定ムル所ニ依リマシテ、
一定ノ最高額ヲ定メテ、ソレ以下ノ範圍內
ニ於テ、時價ニ準據シテ買上ヲ致サウトス
ルノデアリマス、此際ニ於ケル臨時應急ノ
施設トシテ、朝鮮米ノ內地ニ來ル壓迫ヲ除
ク爲ノ働ニ效果アラシムル爲ニハ、左樣ナ
買上モ亦已ムヲ得ナイト考ヘルノデアリマ
ス、併ナガラ是ハ臨時應急ノ施設デ、長ク
實施シヨウトスルモノデハナイノデアリマス
ソレカラ販賣ノ場合ハ、矢張時價デ賣ル
ノカト云フコトデアリマス、販賣ノ場合モ、
此法案ニ依ッテ買入レタ米ハ、時價デ賣ル
積リデアリマス、併ナガラ内地ノ最低價格
維持ニ妨ゲヲ生ズルヤウナ場合ニハ、賣ラ
ナイ積リデアリマス、隨テ季節調節ナドヽ
違ヒマシテ、一年ノ中ニ初メ之ヲ買ウテ、
後デダラ〓〓必ズ賣拂ッテシマフト云フノ
デハアリマセヌ、內地ノ米價調節ニ效果ア
ラシメルヤウニ、之ヲ始末シテ參ラウト云
フノデアリマスカラ、賣ルコトガ不都合デ
アル場合ニハ、賣ラナイ積リデアリマス
(「農林大臣ソレハ出鱈目デス」ト呼フ者ア
リ)法律案ハ左樣ニ相成ッテ居ルノデアリマ
ス、內地ノ米價ノ最低ヲ維持スルノニ不都
合ノナイ際ニハ、市場ヲ妨ゲナイヤウナ方
法ニ依ッテ、賣ッテ參ルト云フコトニ致ス積
リデアリマス
ソレカラ尙ホ臺鮮米ノ昭和八年度產ノモ
ノデ、內地ニ入ッテ來ルモノガ五百万石以
上アルデアラウ、之ヲ若シ買フコトニスレ
バ、今囘ノ特別會計ノ增加ヲ以テシテモ、
モウ昭和九年ノ產米ニ對シテハ、處置ガ出
來ヌヤウニナルノデハナイカト云フ御疑念
デアリマス、是ハ左樣デハナイノデアリマ
シテ、昭和八年度ノ臺鮮米ニ對スル買上ハ、
左樣ナ多量ヲ今日行フ積リハアリマセヌ、
又其必要モナイノデアリマス、相當ナ數量
ハ、此法案ガ通過致シマスレバ、此米穀年
度內ニ於テモ買上ハ致シタイ積リデアリマ
スガ、大部分ハ昭和九年ノ產米ノ處置ニ之
ヲ振向ケルコトニ相成ルノデアリマス、ソ
レハ今年旣ニ米穀統制法ニ依リマシテ、多
量ノ内地米ノ買上モ致シテ居リマスノデ、
需給ノ關係カラ申シマシテ、今囘御協贊ヲ
得マシタ臨時法ニ依ッテ、特別會計ノ增額ト
共ニ實施致シマスル臺鮮米ノ買上ハ、昭和
八年產米カラ昭和九年產米ニ亙リマシテ、
寧ロ多量ニ昭和九年ノ產米ニ振向ケル豫定
デアリマス、併ナガラ昭和九年ノ產米狀況
ハ、內地及ビ朝鮮、臺灣ヲ通ジマシテ如何
樣ニ相成リマスカ、豐凶ノ所ハ今カラ豫想
ハ出來マセヌ、若シ平年デ參リマスナラバ、
內地ノ米穀需給特別會計ヲ、今囘ノ臺鮮米
買入ノ爲ノ增額ノ上ニ、更ニ增額スルノ必
要ナシニ經過シ得ルカモ知レマセヌガ、若
シ相當ナ多量ノ豐作ヲ見ルヤウナコトガア
リマスレバ、ソレデハ內地ノ米價維持ヲ統
制法ニ依ッテヤル上ニ、支障ヲ生ズル場合ガ
ナイトモ限ラナイノデアリマス、隨テ三億
圓ヲ最高限度トスル必要ナ場合ニ於ケル資
金增額ノ御協贊ヲ、得テ置カウト云フ準備
ヲ致シタ譯ナノデアリマス
朝鮮デ米ヲ買フ場合ニ、收容倉庫ノ關係
ハドウデアルカ、臺灣ノ米ハ貯藏ニ堪ヘナ
イカラシテ、是ガ買上ニ付テハ、ドウ云フ
風ナ始末ヲスルカト云フコトニ付テノ御疑
念ガアリマシタ、此收容倉庫ノ問題ハ、吾々
モ相當ニ考慮致シテ居ル所デアリマスガ、
此買上ヲ一時ニヤリマスカ、又買ッタ米ヲ朝
鮮ノミニ置キマスカ、內地へ移シマスカ、
ソレ等ノコトハ實際ノ場合ニ於テ、適當ノ
處置ヲ致シテ參リタイノデアリマシテ、今
日マデ季節調節ニ於キマシテ、朝鮮米ノ相
當ナ數量ヲ買ッタ經驗ヲ有ッテ居リマスノ
デ、今囘ノ臨時法デ始末ヲスル上ニ於キマ
シテハ、相當ナ始末ガ出來ル積リデアリマ
ス、隨チ臺灣米ニマデ果シテ大キク手ヲ伸
バスカドウカト云フコトハ、吾々ハ今ノ所
デハ考慮スベキ問題ダト思ッテ居リマス、臺
灣米ニ付テ絕對ニ手ヲ著ケナイト申スノデ
ハアリマセヌケレドモ、內地米、朝鮮米、
臺灣米ヲ通ジテ、寧ロ適切ナル方法ヲ講
ジマシテ、內地ノ米價ノ維持ニ效果アラシ
メルヤウニ、働イテ參リタイト考へテ居ル
ノデアリマス、尙ホ過剩米ガ今日非常ニ多
イノデアルガ、之ニ對スル處置對策ヲ考ヘ
ナケレバイカヌデハナイカ、是ハ御說ノ通
リデアリマス、唯過剩米ノ處置對策ト申シ
マシテモ、是ガ新シイ消費ノ用途ヲ求メ
ルコトハ、吾々トシテハ今後是非努メナケ
レバナラヌコトヽ思ッテ、努力ヲ續ケテ參ル
積デアリマス、ソレガ爲ニ別途法案ノ御協
贊ヲ願ッテ居ル譯デアリマスガ、尙ホ進ン
デ或ハ之ヲ內地外ノ土地、海外等ニ始末ヲ
シ、或ハ海外ノ販路ニ之ヲ振向ケルト云フヤ
ウナコトハ、吾々モ我國ノ對外貿易ノ關係ニ
於テ、惡イ影響ノ來ナイ方法ニ於テ、極力講
ジテモ見タイト考ヘテ居ルヤウナコトデア
リマス、併ナガラ更ニ進ンデ御話ノアリマシ
タ生產統制ノ問題ニマデ入ッテ、我國ノ米穀
對策ヲ考ヘルト云フコトハ、是ハ無論必要
ナル事デアルト存ジマス、唯生產統制ニマデ
入ッテ米穀對策ヲ講ジマスルコトハ、只今生
ジテ居ルヤウナ、此近年ノ米穀過剩ノ狀態、
或ハ今後多少此壓迫ガ續クデアラウト考ヘ
ラレマス近年ノ狀態ニ、卽時ニ對應スル譯
ニハ參ラナイノデアリマス、是非此生產ノ
統制問題ハ、內地外地ヲ通ジテ考究致サナ
ケレバナラヌ問題デアルコトハ、勿論デア
ルト考ヘテ居リマス、朝鮮ニ於ケル產米增
殖ノ計畫、又消費增加ノコト、內地ニ移入
スル米ガ成ベク少クナルヤウニ、朝鮮ニ於
テ色々ナ施設ヲ講ズルト云フコト、是ハ先
年來朝鮮總督府ニ於テモ極力力ヲ致シテ居
ラルヽ所デアリマスガ、今後更ニ進ンダ方
法ヲ講ジテ、斯ウ云フ手段ヲモ尙ホ有力ニ
效果アラシメルヤウニスルト云フコトニ付
テハ、今折角拓務省、總督府等ニ於テモ、
考究ヲ續ケテ居ラルヽ間題デアルノデアリ
やく、具體的ノコトニ付テハ、又他ノ機會
ニ其方面カラ御答スルコトデアラウト存ジ
マス
〔三善信房君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006513242X02219340313&spkNum=108
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109・三善信房
○三善信房君 只今農林大臣ノ御答辯ヲ聽
キマスニ、私ノ質問ノ要項ニ觸レテ居ナイ
點ガ多數アルノデアリマス(「ヒヤ〓〓」)農
林大臣ハ、今囘ノ資金ハ九年度ノ米ニ成ベ
ク向ケルヤウニスル、本年度ハ少ク使ッテ
宜シイト云フヤウナコトヲ言ハレタノデア
リマスガ、私ガ先ニ申シマシタ外地米ニ於
テハ、五百万石ノマダ移出ノ餘力ガアル、
其餘力ノアル所ノ米ヲ處理セナケレバ、之
ヲ買上ゲルトカ何トカセナケレバ、內地米
ヲ壓迫スルノデアリマスガ故ニ、少クトモ
五百万石ダケノ米ニ付キマシテハ、相當考
慮セラレンケレバナラヌ、少クトモ之ヲ買
上ゲルトカ、何等カノ方法ヲセラレンケレ
バ內地米ヲ壓迫スル、此點ニ對シテ唯九年
度ノ米ニ多ク使用スル積リダト云フコトデ
ハ、如何ニモ私共ノ考ト非常ナ相違ヲ來シテ
居ルト思フノデアリマスガ故ニ、此點ハモ
ウ一囘綿密ニ御檢討下サッテ、御答辯ヲ願ヒ
タイト思フノデアリマス、私ガ臺鮮ニ對シ
テ買上米ヲ收容スル所ノ倉庫ニ不足ヲ愬ヘ
ハシナイカ、斯ウ云フコトヲ申シテ見マシ
タガ、之ニ對シテ農林大臣ハ倉庫ハ少ナイ
ケレドモ、何トカ都合ヲシテ支障ノナイヤ
ウニシヨウ、一時ニ買上ゲルノデナイト言
ハレルノデアリマスケレドモ、少クトモ五百
万石內外ノ米ヲ買上ゲラルヽニ付キマシテ
ハ、之ニ相當スル、或ハ是ノ半分位ヲ收容
スルダケノ餘地ガナケレバナラヌト思フノ
デアリマス、私ガ先ニ申上ゲマシタ點ニ依
リマスレバ、僅ニ百万石内外ノ米ヲ收容ス
ルダケノ餘力ガアリマシテ、是レ以上ノ餘
力ハナイ、之ニ向ッテ何トカ考へラレナケ
レバ、唯此法案ガ通過致シマシテモ、米ヲ
買フコトハ出來ヌト云フ結論ニナルノデア
リマスガ故ニ、此點ヲ明瞭ニサレナケレバ
ナラヌト思フノデアリマス、又臺灣米ハ成
ベク買ハナイ積リダ、斯フ云フコトヲ言ハ
レマスケレドモ、然ラバ臺灣米ノ行先ハ何
處へ持ッテ行クカ、買ハナイト云フコトニナ
レバ、結局臺灣ノ安イ米ガ內地ヘ流レテ來
テ、是ガ內地米ヲ壓迫スルコトニナルノデ
アリマスガ故ニ、此點ハ更ニ御〓究ガ必要
ダト私ハ思フノデアリマス、生產ノ統制ト
云フコトニ付キマシテハ、大臣モ私ノ意見
ニ贊成シテ居ラレルヤウデアリマスガ、是
ハ十分調査〓究ヲ致サナケレバナラヌ、而
モ今年、去年ノ米ノ生產ヲ以テ、直チニ之ニ
對應スルコトハ出來ナイト言ハレマスガ、勿
論其通リデアリマス、私ノ言ヒマスル所ノ米
ノ過剩ダ、或ハ生產ノ增加ダト云フコトハ、
昨年度ト今年度トヲ以テ論ズルモノデハア
リマセヌ、旣往五箇年間、或ハ十年間ノ平
均ヲ取リマシテモ、需給推算ニ於テ當然剩ル
ト云フコトガ明ニナッテ參ッテ居ル今日、此根本
策ヲ講ゼヌト云フコトデハ、如何ニモ米問
題ニ對スル〓究ガ足リヌト思フノデアリマ
ス(拍手)尙ホ朝鮮カラ内地ニ來ル所ノ移入
米ニ付キマシテハ、相當ニ考究スルト云
フコトヲ言ッテ居ラレマスルガ、此事ハ先ニ
私ガ言ッタ通リ、拓務大臣ハ或ハ消費ヲ成ベ
ク增進シ、或ハ生產ヲ他ノ方面ニ振向ケテ、
內地ノ米ヲ壓迫シナイヤウニスルト云フコ
トヲ言明シナガラ、朝鮮總督府ハ消費ヲ少
クセヨ、內地ノ米ガ足ラヌカラ、ウント作ッ
テ內地ニ移入セヨ、斯ウ云フコトヲ言ッテ居
リマスナラバ、果シテ拓務大臣ノ此意見ガ
徹底シテ居ルカドウカ、卽チ拓務大臣ノ言ハ
レル所ト、朝鮮總督府ノ執ッテ居ル所ノ施設
方針トハ矛盾ヲ來シテ居ルガ故ニ、此點ヲ
拓務大臣ハ明ニセラレル必要ガアルト私ハ
思フノデアリマス、固ヨリ私ハ玆ニ內地外地
ト申シマスノハ、共存共榮ノ意味ヲ有ツモ
ノデアリマシテ、決シテ外地ニ對シテ差別
待遇ヲナスト云フガ如キコトハ、毛頭考ヘ
ナイノデアリマシテ、一視同仁ノ趣旨ニ立
脚シテ此議ヲナスノデアリマスガ故ニ、此
點ハ十分御了承ヲ願ヒタイノデアリマス
〔國務大臣後藤文夫君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006513242X02219340313&spkNum=109
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110・後藤文夫
○國務大臣(後藤文夫君) 三善君ヨリ重ネ
テ御質問ノアリマシタ一二ノ點ニ付テ御答
致シタイト思ヒマス、五百万石ノ移入米ヲ
更ニ買上ゲナケレバナラヌデハナイカト云
フ御疑念デアリマスガ、是ハ他ノ機會ニ於
ラ尙ホ詳細ニ申上ゲルコトガ宜シイカト思
ヒマスルガ、今日ノ米穀統制法ニ依ル米ノ
買上、季節調節ノ買上ト云フヤウナ、今ノ數
量ノコトヲ考ヘテ見マシテ、臺灣、朝鮮カラ
既ニ入リマシタ米ノ數量ヲ考ヘテ、今年入
ルモノト豫想サレル臺灣、朝鮮カラノ米ヲ、
今年度ニ付テ考ヘテ見マスト、今年度ニ於
キマシテハ、五百万石ト云フ程ノモノヲ買
ハナケレバナラヌト云フ譯デモナイノデア
リマス、隨テ此增額ハ九年度ノ米ニ相當ニ
振向ケルコトガ出來ルト云フコトガ、吾々
ノ大體ノ豫定ナノデアリマス、是ハ尙ホ細
カニ外ノ機會ニ申上ゲタ方ガ宜シイカト存
ジマス、ソレカラ收容倉庫ノコトニ付テノ
御疑念デアリマスガ、是ハ此臨時法ヲ實行
シマスル限リニ於キマシテハ、直チニ收容
倉庫ニ非常ニ困ルガ爲ニ行ヒ難クナルト云
フ程ノ懸念ハ、吾々ハ有ッテ居リマセヌ、併
シ今日十分完全ナ倉庫ノ準備ガアルト云フ
譯デハアリマセヌケレドモ、是迄ノ買上ノ
經驗等モアリマスノデ、間ニ合セテ參ルダ
ケノコトハ出來ル積リデ居リマス、ソレカ
ラ臺灣米ハ絕對ニ買ハヌト云フノデハアリ
マセヌ、此臺灣米ヲ買フト云フ問題ト、朝
鮮米ヲ買フト云フ問題、內地ニ於ケル色々
ナ米穀統制法ノ運用ト云フコトヽ、併セテ適
切ニ行ッテ行キタイ、臺灣米ノ性質ハ御話ノ
通リデアリマスノデ、之ヲ無暗ニ多量ニ買
フノガ宜イカドウカハ、其時ノ米穀事情ニ
應ジテ考ヘテ見ナケレバナラヌト思ッテ居
ルノデアリマス
〔國務大臣永井柳太郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006513242X02219340313&spkNum=110
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111・永井柳太郎
○國務大臣(永井柳太郞君) 米穀ノ調節ノ
問題ニ付キマシテハ、朝鮮總督府ハ內地ト
全然憂ヲ共ニシテ居ルノデアリマス、朝鮮
ノ產米ノ統制ト云フコトニ付キマシテモ、
出來ルダケ內地ノ要求ニ合致スルヤウニ效
果ヲ擧ゲタイト云フ考デ、現ニ朝鮮總督府
ニ於テモ各種ノ〓究ヲ致シテ居ルノデアリ
やく、又米穀ノ用途轉換ト云フコトニ付キ
マシテモ、朝鮮總督府ニ於キマシテハ、內
地ノ官廳ト協力シテ效果ヲ擧ゲタイト云フ
コトヲ申シテ居ルノデアリマシテ、朝鮮總
督府ト內地トノ間ニ於テ、何等方針ニ矛盾
ハナイノデアリマシテ(「アルカラ心配シテ
居ルノダ」ト呼フ者アリ)協力スルト云フコ
トニナッテ居ルノデアリマスカラ、其點ハ御
安心ヲ願ヒタイト思ヒマス
〔拍手「安心出來マセヌ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006513242X02219340313&spkNum=111
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112・三善信房
○三善信房君 簡單デアリマスカラ、自席
ヨリ御許シヲ願ヒマス--私ノ質問ニ對ス
ル農林大臣フ答辯ニハ、私マダ滿足致サヌ
ノデアリマスケレドモ、委員會等ニ於キマ
シテ十分御意見ヲ承ッテ見タイト思ヒマス、
拓務大臣ノ只今ノ御答辯ノ、內地ト外地ト
相俟ッテ、此米穀問題ノ解決ヲシナゲレバナ
ラヌト云フヤウナコトハ、洵ニ言葉ハ立派
デアリマスガ、實際ハサウデハナイ、又拓
務大臣ガ左樣ニ考ヘテ居ラレルナラバ、何
故ニ朝鮮總督府ハ米ノ消費ヲ節約セヨ、サ
ウシテ此際內地ノ米ガ足ラヌカラ、ウント
作ッテ內地ニ移出シナケレバナラヌト云フ
ヤウナ指導方針ヲ御出シニナッタカ、是ガ根
本ニ於テ矛盾致シテ居ル、拓務大臣ハ此點
ヲ明瞭ニサレナケレバ、內地ト外地トノ米
ノ根本策ハ解決出來ナイノデアリマス、是
ハ拓務大臣モ恐ラク御考ヲ御違ヘニナッテ
居ル、實際ノ肚ノ裡ニ於テハ、此際朝鮮ニ
ウントヤレト云フヤウナ御考ヲ御有チニ
ナッテ居ッテモ、此議場ニ於テハ、內地ト一
秘協力シテ米ノ問題ノ解決ニ當ルト云フヤ
ウニ言ハレルノデアリマスガ、眞ニ拓務大
臣ガ、內地ト提携シテ米ノ間題ノ解決ヲ付
ケルト云フ御考ヲ有ッテ居ラレルナラバ、
朝鮮總督府ガ此米ニ對シテ成ベク消費ヲ
節約セヨ、或ハ內地ニ米ガ足ラヌカラ移
出セヨト云フ此方針ハ、拓務大臣ノ方デ
變更セラレナケレバナラヌト思フノデアリ
マス、私ハ拓務大臣ガ米問題ノ解決ニ付テ
執ラルベキ途ハ幾多アルト思ヒマス、或ハ
棉ノ栽培ノ如キ、今日我國ニ於テ四億四千
万圓ノ多額ノ費用ヲ以テ外國カラ購入シテ
居ル、此棉ノ如キモ代用作トシテ奬勵ナサ
ルナラバ、米問題ノ解決ニハ大シタ困難ナ
コトデハナイ、之ニ付テハ眞劍ニ此間題ニ
當ッテ貰ハナケケレハナラヌノデアリマス
カラ、唯此議場ニ於テ、私ノ質問ニ對シテ
言葉巧ミニ御答辯ニナラヌデ、モウ少シ誠
心誠意御答辯ナサラナケレバナラヌト思フ
ノデアリマス、是レ以上ハ申上ゲマセヌ、
委員會等ニ於テ十分質問スル積リデアリマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006513242X02219340313&spkNum=112
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113・秋田清
○議長(秋田〓君) 河野一郞君
〔河野一郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006513242X02219340313&spkNum=113
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114・河野一郎
○河野一郞君 私ハ只今議題ニナッテ居リ
マスル米穀關係法案ニ付キマシテ、主トシテ
農林大臣ニ御尋致シタイノデアリマス、三
善君ヨリ主ナル點ニ付テ、重要ナル質疑ガ
交サレタ際デアリマスルカヲ、成ルベク重
複ヲ避ケマシテ、法案ノ內容ニ付テ御尋シ
テ見タイト思ヒマス、其質問ニ入ルニ先チ
マシテ、此機會ニ農林大臣、拓務大臣ニ所
見ヲ質シテ見タイト思フノデアリマス
諸君、今ヤ我國ニ於ケル全國農民ハ、此
農村非常時ス當ッテ、米穀問題ノ根本的解決
ヲ望ンデ已マナイモノガアルノデアリマス、
而シテ其米穀事情タルヤ、今更私ガ玆ニ申
上ゲルマデモナク、昨年度ニ於ケル所ノ六
豐作ニ次グニ、外地米大豐作ヲ加ヘマシ
テ、千七、八百万石ノ過剩米ヲ見テ、此持
越米ニ次グニ持越米ヲ以テシタナラバ、將
來永久ニ米價ノ〓騰ヲ見テ農家經濟ノ確立
ヲ期スルコトハ絕對ニ不可能ト云フ立場ニ
立チマスカラシテ、米穀問題ノ速ニ解決セ
ラレンコトヲ望ンテ已マナイモノガアルノ
デアリマス、而モ此希望ハ、全國的要望ト
ナリマシテ、其雰圍氣ノ間ニ立ッテ解決ス
ルニ非ズンバ、多年吾々ノ先輩ガ唱ヘラレ
マシタ所ノ、外地米ノ統制管理ノ問題ニ致
シマシテモ、米ノ專賣ノ問題ニ致シマシテ
モ、此機會ヲ逸スルコトニ依ッテ、總テ農家
ハ失望落膽ノ淵ニ落サレルモノト私ハ思フ
ノデアリマス(拍手)而モ此雰圍氣ノ間ニ於
テ、後藤農林大臣ニ對スル全農民ノ期待ハ、
甚ダ重且ツ大ナルモノガアッタノデアリマ
ス、而モ此間ニアッテ後藤農林大臣ハ、吾々
政民兩黨ニ屬スル所ノ農村關係代議士ノ切
ナ要望期待ヲ裏切ッテ、本日茲ニ最モ拙劣、
拙惡ナル所ノ提案ヲナサレマシタニ付テハ、
心中頗ル御不快ナルモノガアルダラウト私
ハ思フノデアリマス、何故斯ル法案ヲ提出
セラレナケレバナラナクナッタカ、更ニ進ン
デ拓務大臣ニ對シテ御所見ヲ承ッテ見タイ
ト思フ、今囘ノ提案ガ、豫算委員會ニ於テ、
我黨先輩ノ質疑ニ對シテ、總理大臣ヨリ、
米穀對策ニ對シテ徹底的ニ外地米調節ノ案
ヲ提案スルト云フ御答辯ガアリマシテカ
ラ、今日マデ既ニ一箇月餘ヲ經過シテ、漸
ク生レタノガ此法案デアリマス、由來吾々
ハ前質問者モ言ハレマシタ如ク、決シテ內
地外地兩米穀對策ノ間ニ、不公平ヲ要求ス
ル者デモナケレバ、內地外地ニ對シテ一視
同仁ナラザル如キ、政策ヲ要求スル者デモ
斷ジテナイノデアリマス、唯拓務大臣ノ執
ラレル態度如何ニ依ッテハ、思ハザル所ノ誤
解ヲ外地住民ニ與ヘシメテ、朝鮮、臺灣ノ
領土ニ於ケル所ノ農民ニ、思ハザルノ誤解
ヲ生マシメテ、恰モ吾々同僚ガ要求スル所
ノ外地米管理統制ノ政策ガ、朝鮮、豪灣ニ
於ケル農民ヲ壓迫スルガ如キ誤解ヲ生マシ
メル、其責任ハ全部拓務大臣ガ負ハナケレ
バ斷ジテナラヌト私ハ思フノデアリマス
(「ヒヤ〓〓」拍手)若モ拓務大臣ノ指導宜シ
キヲ得レバ、是等農民ニ對シテ、內地外地
ニ於ケル所ノ生產要素ノ根本的差異ヲ明確
ニ指摘シテ、十分ナル諒解ヲ得セシメテ、
內地外地兩農民手ヲ携ヘテ、我國農村政策
ノ上ニ立ッテ、之ニ向ッテ愉快ニ進ムコトガ
出來得ベキ問題ヲ拓務大臣ガ其行政監督宜
シキヲ得ザル結果、斯ノ如ク外地米ニ對シ
テ、恰モ差別的政策ヲ行ヒ、差別的政策ヲ
吾々政民兩黨ニ屬スル農村關係代議士ガ要
求シテ居ルカノ如ク思ハシメルコトハ、不
愉快ニ堪ヘヌ所デアリマス、此點ニ對シテ
拓務大臣ノ明確ナル御答辯ヲ要求致シマス
次ニ本法案ノ內容ヲ仔細ニ檢討致シマス
ルト、本法案ハ大正十年原内閣當時、高橋
大藏大臣、山本農商務大臣ニ依ッテ立案セ
ラレ、制定セラレマシタル所ノ、現在旣
ニ廢案ニナッテ居リマスル米穀法案其儘ナ
ノデアリマス、米穀法案其儘ノ條文ヲ、
今囘政府ハ十數年後ノ今日、民政黨內
閣ニ依ッテ、此米穀法案ヲ以テシテハ非常
ニ危險ガ多イ、米穀政策上宜シクナイト
云フノデ、率勢米價ヲ加味スルコトニ依ッテ
改正セラレタ、其改正前ノ法案ヲ、本日此
議場ニ御提案ニナッテ居ルノデアリマス、而
モ此大正十年ニ作ック法案ヲ以テ、現在ノ朝
鮮臺灣米ニ對シテ之ヲ統制シヤウトナサ
ルノデアリマスルカラ、私ハ高橋大藏大臣、
山本內務大臣ハ、甚ダ思ヒ半バニ過ギルモ
ノガ御アリダラウト思フノデアリマス、自
分達ガ今カラ十數年前ニ作ツタ米穀法案ヲ、
今頃又持出サナケレバナラヌ程、現在ノ政
府ニ氣ノ利イタ農林關係當局ガ居ラナイノ
カト云フヤウナコトヲ、定メテ御考ヘニナ
ルダラウト私ハ思フノデアリマス、果シテ
斯ノ如キ米穀法案ヲ以テシテ、政府ガ御希
望ニナッテ居ルヤウナ、外地米ニ對スル移入
ノ月別平均ガ期セラレルヤ否ヤ、若モ今囘
提出サレタル本案ヲ以テ、完全ナル法案ト
ナサルナラバ、何ノ必要ガアッテ此法案ヲ現
行米穀統制法ニ變へル必要ガアッタカ、後藤
農林大臣ハ、農林大臣御就任以來、昭和七
年十一月ニ米穀統制調査會ナルモノヲ御作
リニナッテ、銳意御〓究ニナック結果旣ニ廢
案ニナリマシタ、而モ今囘御提案ニナリマ
シタ米穀法ヲ以テシテハ、不十分ナリ、不
完全ナリトシテ、米穀統制法案ヲ御作リニ
ナッタ、サウシテ今囘又再ビ前ノ法案ヲ之ニ
附加ヘテ、而モ兩々相俟ッテ御ヤリニナルト
云フコトハ、御止メニナッタ方ガ宜シイナラ
バ、其案一本デ御ヤリニナッタ方ガ宜イト思
フ、而モ、米穀統制法案ト此法案トノ違ヒ
マス點ハ、買上、賣渡、其時期ニ對スル條
件ノ違ヒガ主ナル違ヒナンデアリマス、而
モ政府ガ今囘御提案ニナリマシタル此法案
ニ依リマスルト、買上ノ時期ハ第二條ニ依
リマシテ「前條ノ規定ニ依リ買入ルル米穀ノ
價格ハ勅令ノ定ムル一定價格以內ニ於テ時
價ニ準據シテ之ヲ定ム」トシテアリマス、由
來現內閣ハ官僚內閣、超然內閣ノ建立ト致
シマシテ、總テノ法律案ノ內容ヲ勅令ニ讓
ル癖ガアル、法律案ノ骨子ハ總テ勅令ニ讓ッ
テ、後カラ自分達ダケデ都合ノ好イヤウナ
モノヲ作ル癖ガアル、前議會ニ於テ決定致
シマシタル所ノ米穀統制法ニ於キマシテ
〓、其法案ノ骨子デアル所ノ生產費決定ノ
條件ハ、之ヲ勅令ニ讓ッテ、遂ニ本議會、衆
議院ニ勅令ノ内容ヲ示サナカッタノデアリ
マス、再ビ此案ノ提出ニ當ッテ、其買上ノ最
モ重要ナル要點ヲ勅令ニ讓ッテ居ルノデア
リマス、之ニ付キマシテハ、何レ委員會ニ
於テ明確ニ其勅令ノ內容ヲ質サナケレバナ
ラヌト思ヒマスルガ、若シ此機會ニ勅令ノ
內容ガ決定シテ居ルナラバ、此議場ヲ通ジ
テ、全農民ニ御知セニナル必要ガアルダラ
ウト思ヒマスノデ、敢テ此質問ヲ致ス次第
デアリマス
次ニ御尋致シタイノハ、而モ買上ノ條件
ガ斯ノ如クデゴザイマシテ、其賣渡、拂下
ノ條件ニ至リマシテハ、法案ノ何處ヲ見テ
モ全然書イテナイノデアリマス、法案ノ何
レノ點ヲ見マシテモ、買上ハ勅令ニ讓ッテア
ル、賣渡ニ付テハ、値段ガ幾ラニナッタラ賣
ルノカ、何處デ賣ルノカ、何等ノ規定モナ
ケレバ何等ノ定メモナイ、斯ノ如クシテハ
朝鮮、臺灣デ買ッテ參ッタ米ガ、何時內地へ
持ッテ來テ、ドウブチ撒カレルカ分ラヌカ
ラ、常ニ米價ハ昂騰スルコトハ出來ナイ、
常ニ米價ハ最低安値ニ釘付ケニナルト云フ
農民ニ取リマシテハ頗ル不利益ナル法案
ト私ハ考ヘルノデアリマスガ、之ニ對スル
明確ナル御答辯ヲ承リタイト思フノデアリ
マス
次ニ御尋致シタイノハ、政府ハ只今農林
大臣ノ御說明中ニモアリマシタヤウニ、此
法案ハ明年三月迄ノ短期間ノ立法デアル、
而モ其間ニ於テ適當ナル調査〓究ヲ遂ゲ
テ、根本策ヲ定メルト云フ御說明デアリマ
シタガ、旣ニ我國ニ於キマシテハ、米穀對
策〓究ノ爲ニ、昭和四年五月、田中內閣當
時ニ、米穀調査會ヲ設ケマシテ、總理大臣
會長トナリ、各關係閣僚、知識經驗者ヲ網
羅シテ、米穀對策ニ付テ根本的ノ〓究ヲ始
メタノデアリマス、爾來濱口內閣ガ繼承致
シマシテ、濱口內閣當時ニ於キマシテ、率
勢米價ヲ基準ト致シマスル所ノ米穀對策ヲ
作リ、更ニ現内閣ニ至リマシテ、昭和七年
十一月、米穀統制調査會ナルモノヲ設立致
シマシテ、是モ同時ニ總理大臣ノ下ニ大々
的ナ調査〓究ヲ遂ゲタノデアリマス、而モ
斯ノ如ク致シマシテ、其間我黨ニ於キマシ
テハ、旣ニ有志ノ間ニ於キマシテハ、專賣
法以外ニハ米穀對策ノ根本的施設ナシト云
フ結論ガ確定致シテ居ルノデアリマス、民
政黨ノ方々ノ中ニモ、高田先輩ノ如キハ、
此米穀專賣案ニ對シテ、滿腔ノ贊意ヲ御持
チニナッチ居ルト云フコトヲ私ハ同ッテ居リ
やく、斯ノ如ク此議場ヲ通ジマシテモ、議
員ノ大多數ハソレ〓〓米穀對策ニ對スル根
本的施設ヲ皆持合セテ居ルノデアリマス、
政府部內ニ於テモ唯之ヲ農林大臣、其他總
理大臣ガ、斷ノ一字ヲ以テ行フト否トノ岐
路ニ立ッテ居ルノデアリマス、何等調査研究
ノ必要モナク、既ニ總テノ場合、總テノ條
件ヲ調査〓究濟ミデアッテ、唯之ヲ後藤農林
大臣ガ斷行スルコトガ出來ルカ否カト云フ
問題ガ殘サレテ居ルダケデアリマス、隨テ
後藤農林大臣ガ〓究調査ニ名ヲ藉ッテ、四年
三月マデ、來議會マデ此對策ヲ放任シテ、
來議會ニ、マア來年マデ自分達ガヤッテ居ル
ナラ何トカ、ト云フヤウナ態度デ、而モ其
間ニハ此財政難ノ折柄、多額ノ國帑ヲ米穀
對策ノ爲ニ、六七千万圓カラ一億圓ノ國帑
ヲ要スル此問題ヲ、唯自己ノ力足ラズシ
テ、其解決案ヲ得ルコト出來ズ、逡巡ト一
箇年間ヲ經過ナサルコトハ、甚ダ後藤農林
大臣ノ爲ニ私ハ取ラザルモノト信ズルモノ
デアリマス、此機會ニ後藤農林大臣ハ、現
在農林當局ガ御持合セニナッテ居ル處ノ米
數對策ヲ以テ、臨時議會マデ開イテ、堂々
ト臨時議會ニ所信ヲ明ニナサレル勇氣アリ
ヤ否ヤト云フ點ヲ御尋致シテ降壇致シマ
ス(拍手)
〔國務大臣後藤文夫君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006513242X02219340313&spkNum=114
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115・後藤文夫
○國務大臣(後藤文夫君) 河野君ノ御質問
ニ御答ヲ致シマス、先程提案ノ理由ニモ申
シマシク如ク、異常ノ豐作ニ際會ヲ致シマ
シテ、米穀對策トシテ何等カノ處置ヲ講ジ
テ、統制法ノ效力ヲ一層發揮スルコトニ致
シタイト云フ考デ、吾々ハ色々攻究ヲ續ケ
クノデアリマス、殊ニ先年來臺灣、朝鮮米
ノ統制ニ關スル事ガ問題トナリ、是ガ米穀
統制法ト相俟ッテ攻究セラレナケレバナラ
ヌト云フコトガ、議會ニ於キマシテモ、亦
其前ノ統制調査會等ニ於キマシテモ、決議
ト相成ッテ居ッタヤウナ譯デアリマス、吾々
トシテハ折角此臺鮮米ノ問題ニ付テ攻究ヲ
遂ゲタノデアリマス、併シマダ今後ニ殘サ
レタ攻究問題ガ多々アリマス、取敢ズ今囘
ノ法案ヲ以テ、此會計年度內ニ應ズルノ處
置ヲ講ジヨウト致シタ譯デアリマス、今囘
ノ法案ガ恰モ過去ニ於ケル米穀法ノ如キモ
ノデアル、統制法ト云フモノヲ一方ニ作ッテ
アルノニ、斯ウ云フモノヲ又附加ヘルト云
フノハ、ヲカシイヂヤナイカト云フ御尋デ
アリマス、是ハ成程過去ノ米穀法ニ似タ法
案デアリマス、併ナガラ申上ゲテ居リマス
ル通リニ、是ハ臨時ノ臺鮮米對策デアリマ
ス、隨テ統制法ノ如キ有力ナ、內地ノ米價
安定ノ基本法トハ建前ガ違ッテ居ルノデア
リマス、臨時ノ對策ヲ講ジテ置イテ、其間
ニ更ニ進ンダ考ヲ付ケタイト云フ積リデ居
ルノデアリマス、買上ノ事ニ付テ、勅令ノ
規定ニ讓ッテアルノハドウカト云フコトデ
アリマスルガ、是ハ何レ他ノ機會ニ、勅令
ニ規定セントスル事ニ付テ、詳シク申上ゲ
ルコトモアラウト思ヒマスルガ、大體ニ於
キマシテハ、內地ノ公定價格ト、向フノ米
ノ價トノ工合ヲ考ヘマシテ、餘リ高イ値デ
朝鮮ノ米ヲ買ハナケレバナラヌト云フコト
ヲスル必要モアルマイト云フ考慮カラ來テ
居リマス、先程モ申シタヤウニ、凡ソノ數
量ヲ買上ゲテ調節ヲ致サウトスルノデアリ
マスカラシテ、時價ニ凖據スルト云フコト
ガ建前ニナルノデアリマス、唯內地ノ米價
ノ事情ガ、最低價格以上ニ上ッテ居ッテ、格別
ノ調節ヲ要セナイト云フ時デアレバ、强ヒテ
買ハナケレバナラヌト云フコトモナイ譯デ
アリマスルガ、其點ニ付テ最高限ト云フヤウ
ナモノヲ定メヨウト云フノガ、此勅令ノ趣
旨ナノデアリマス、ソレカラ賣渡ノ時モ、
是ハ矢張勅令デ賣渡ノ事ヲ規定スルコトニ
致シテ居ルノデアリマス、價ハ時價ニ依リ
マスケレドモ、賣渡モ亦內地ノ凡ソ最低價
格ヲ基準ニ致シマシテ、最低價格ヨリ安イ
ヤウナ事態ノ場合ニハ、無論此米ヲ賣ルノ
デハアリマセヌ、最低價格ヨリ相當米價ガ
上ニアル時ニ、賣ルト云フコトニ致シタイ
積リデ居ルノデアリマス、ソレカラ米穀對
策ニ付テハ、旣ニ色々ナ根本對策ガ攻究サ
レテ居ルモノガアルノデハナイカト云フ御
話デアリマスガ、米穀統制法ハ御承知ノ通
リ、昨年ノ議會ニ於テ御協賛ヲ得マシテ制
定ヲ致シタノデアリマス、之ヲ實施シテカ
ラ、マダ半歲ヲ出ナイノデアリマスノ
ニ、稀有ノ大豐作ニ遭遇シマシタ爲ニ、相
當ニ大キナ買上ヲ實行シナケレバナラヌコ
トニナリマシタケレドモ、併シ私ハ此統制
法ガ米價維持ノ上ニハ、米價安定ノ上ニハ、
可ナリ大キナ力ヲ持ッテ居ルモノデアルト
云フコトヲ信ジテ居リマス、一時斯ウ云フ
事情ニ面シタカラト申シマシテ、更ニ非常
ナ根本策ト云フモノヲ、今直チニ考ヘナケ
レバナラヌト云フ風ニハ考ヘテ居ラナイノ
デアリマス、併ナガラ我國ノ米穀問題ハ
非常ニ重要ナ問題デアルコトハ申スマデモ
アリマセヌ、當局ニ於テモ、米穀問題ノ現
在及ビ近キ將來ノコト、及ビ遠イ將來ニ亙ッ
テノ、色々ナ根本策ヲ攻究シテ、置クコト
ハ、忽セニシテハナラヌト考ヘテ居リマシ
テ、之ニ付テハ絕エズ攻究ヲ怠ラナイノデ
アリマス、最後ニ御尋ニナリマシタ、米穀
對策ノ爲ニ臨時議會ヲ開クヤウナ考ハナイ
カト云フコトデアリマスガ、今囘ノ法案ニ
依リマシテ、明年ノ議會マデノ間ノ臨時ノ
處置ハ相當ニ付ク積リデアリマスノデ、今
臨時議會ヲ開クト云フヤウナ考ハ有ッテ居
リマセヌ
〔國務大臣永井柳太郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006513242X02219340313&spkNum=115
-
116・永井柳太郎
○國務大臣(永井柳太郞君) 私ハ政府モ議
會モ共ニ、啻ニ米穀問題ノミデナク、各種
ノ問題ヲ〓究致シマスル時ニ、常ニ內外地
ヲ通ズル全國民ノ共存共榮ヲ考慮スルコト
ヲ忘ルヽモノデナイト云フコトヲ、外地ニ
知ラシムル爲ニハ十分ナル努力ヲ致シテ居
ルノデアリマス、又此度ノ米穀問題ニ關シ
マシテモ、內地ノ農民ガ米穀ノ供給過剩ノ
爲ニ、如何ニ苦境ニ在ルカト云フコトヲ、
十分外地ニ理解セシムル爲ニ努力ヲ致シタ
ノデアリマス、先程三善君モ御引用ニナリ
マシタガ、アレハ多分數年前ノモノデハナ
イカト存ジマスガ(「ノーノ〓」)例ヘバ內地
ニ於キマシテ、米穀ノ供給ガ缺乏シテ居ル
ヤウナ時代ニ於キマシテハ、出來ルダケ朝
鮮ニ於テ之ヲ補ハシムルガ爲ニ、產米增殖
計畫ノ如キモノヲ、獎勵致シタノデアリマ
ス、又今日ハ產米增殖計畫ヲ中途ニ變更致
シマシテ、之ヲ棉花ノ生產ヲ目的トスル、
產棉增殖計畫ニ變更スルヤウナ方針ヲ立テ
テ居ルノデアリマス、又臺灣ノ方ニ於キマ
シテモ-先程三善君モ御話ニナリマシタ
ガ、私共モ全然同感デアリマシテ-出來
ルダケ代作ヲ奬勵シ得ルモノハ代作ヲ奬勵
致シマシテ、此度御審議ヲ願ヒマシタ豫算
ニ依リマシテ、米作ノ代リニ甘蔗トカ、麻
トカ云フモノヲ生產サセルコトニ依ッテ、籾
百万石内外ノ生產ヲ節減スルト云フヤウナ
案モ立テヽ居ルノデアリマス、出來ルダケ
外地ヲシテ、內地ノ要求ニ應ゼシムルヤウ
ニ、又外地ノ要求ニ對シテ內地モ亦之ニ應
ジテ、兩者共存共榮スルコトヲ目的トシテ
居ルト云フ方針ヲ、十分ニ理解セシムル爲
ニ努力致シテ居ル次第デゴザイマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006513242X02219340313&spkNum=116
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117・秋田清
○議長(秋田清君) 河野一郞君
〔河野一郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006513242X02219340313&spkNum=117
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118・河野一郎
○河野一郞君 農林大臣ノ御答辯中ニハ、
米穀統制法ハ其運用宜シキヲ得テ、現在相
當ノ效果ヲ擧ゲテ居ルカラ、今囘提案ノ三
法案ハ、明年三月迄ノ間、之ヲ補ッテ行ク
ノデアル、而モ其間ニ於テ統制法ノ根本ヲ
變ヘル必要ハナイガ、適當ナル補强的施
設ニ付テ〓究スルノデアルト云フヤウナ御
答辯ト私ハ承ッタノデアリマス、サウ致シマ
スト、米穀統制法ヲ政府ガ御實施ニナリマ
シタノハ、昨年ノ十一月デアリマス、而モ
昨年ノ十一月ニ於テハ、旣ニ昭和八年度產
米ノ大豐作ハ、ソレ〓〓ノ機會ニ於テ、政
府ノ第一囘作柄調査、第二囘調査、實收調
査其他ノ調査ニ依リマシテ、大體大豐作
デアッテ、一千數百万石ノ過剰米ガ出テ、
此儘デハイカヌト云フコトハ-政府部
內ニ於カレマシテ、モ、既ニ統制法一本
ヲ以テシテハ、其政策運用ノ妙ヲ得ル
コト困難ナリトセラレマシテ、之二
加フルニ籾ノ貯藏ヲ以テセラレ、而モ
農林大臣ノ如キハ、減反案ノヤウナ、世ノ
中ノ物笑ニナルヤウナ施設マデモ加ヘテ、
施設セラレヤウトシタデハアリマセヌカ、
其時ニ於テ、既ニ米穀統制法一本ヲ以テシ
テハ、今後ニ於ケル米穀對策不十分ナリト
云フコトハ、ハッキリ分ッテ居ッタ筈デアル、
而モ今囘ノ豫算總會ニ於テ、吾々同僚ヨリ
米穀政策ニ付テ缺クル所ナキヤ如何ト追窮
ヲ致シテカラ、初メテ米穀統制法一本デハ
イカヌ、ドウモ不十分ノヤウニ思フト云フ
ヤウナ調子デ騒ギ出シテ、アレヤ是ヤト騒
イデ、餘リニ慌テ過ギテ、齋藤總理カラ、
何モ纒ッテモ居ラヌト言明マデシテ、二枚
舌問題マデ起スヤウニナッタデハアリマセ
ヌカ、若モモウ少シ眞劍ニ、モウ少シ愼重
ニ農民ノ立場ヲ御考ニナッタナラバ、米穀政
策ノ如キハ、泥棒ヲ捕ヘテ繩ヲ綱フヤウナ
態度ヲナサラズ、明ケテモ暮レテモ、全國
農民ヲ救フノハ、米ト繭ト肥料ノ此三ツサ
ヘ考ヘテ居レバ、農民ハ救ハレルノデアル
(拍手)之ニ付テ考ガ足ラズ、肥料ニ付テハ
肥料屋ニ委セル、繭ヤ生絲ニ付テハ、當業
者ガ三割減產ト云フヤウナコトヲ言ッテ參
レバ、直グソレデ宜シイト云フヤウナコト
デ贊成ニナル、本當ノ農林大臣ノ頭ハドウ
ダ、如何ナル需給推算ノ上ニ立ッテ、大臣ハ
御決メニナッタカト云フコトヲ申シマスレ
バ、大シタ數字的根據サヘモナイ、米穀政
策ニ於テモ、今頃ニナッテ來年ノ三月迄ノ、
五箇月ヤ八箇月ノ臨時施設ノ法律ヲ取出シ
テ、後十日カ一週間位ノ此議會ニ提案シテ、
何トカ此急場ノ繋ギヲヤフテ置イテ吳レト
云フヤウナコトヲ此處ヘ賴ンデ來ル、此無
責任ニ至ッテハ、私ハ斷ジテ許ス譯ニ行カ
ヌト思フノデアリマス、農林大臣ハモウ少
シ眞劍ニ、米穀政策ニ付テ吾々ト共ニ御〓
究願ヒタイト思フノデアリマス、デ此機會
ニ御尋致シタイノハ、農林大臣ハ本法案ガ
若シモ兩院ヲ通過セザル時ニハ、現在ノ米
穀統制法ダケデ、明年三月迄ニ於ケル米穀
政策ノ運用ヲ、農林大臣ノ職責ニ於テ責任
ヲ負フコトガ出來ルヤ否ヤト云フ點ヲ御尋
シテ置キマス
次ニ拓務大臣ニ申上ゲマス、拓務大臣ハ
只今同僚三善君ノ先程ノ質問ニ對シテ、數
年前ノモノダラウト云フヤウナ、頗ル不謹
愼ナル御言辭ガアリマシタガ、吾々ハ斯ル
不眞面目ナル質問ヲ致シテ居ルノデハナイ
ノデアリマス、ソレダカラ朝鮮農民ニ對シ
テ誤解ヲ招クト吾々ハ申上ゲルノデアル、
少クトモ吾々ハ總テ質問ヲ爲ス場合ニハ、
確乎タル計數、確乎タル事實ノ上ニ立タナ
ケレバ、斷ジテ不謹愼ナル言ハ弄サヌノデ
アリマス、先程三善君ノ御引用ニナリマシタ
ノハ、昭和八年十一月朝鮮ノ農林局ニ於テ
御作リニナッタモノヽ中ニ、明確ニ記シテア
ル材料ニ依ッテ御質問ニナッテ居ルノデアリ
やっ、拓務大臣ハ今後ニ於カレマシテモ巧
ミナル言辭ヨリモ、一ツノ確乎タル數字的基
礎ノ上ニ立ッテノ御答辯ガ、吾々ノ望ム所デ
アリマスカラ、此機會ニ於テ一言申上ゲテ
置キマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006513242X02219340313&spkNum=118
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119・秋田清
○議長(秋田〓君) 後藤農林大臣
〔國務大臣後藤文夫君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006513242X02219340313&spkNum=119
-
120・後藤文夫
○國務大臣(後藤文夫君) 米穀對策ノ重要
ナコトニ付テハ、私何人ニモ劣ラナイ熱意
ト眞劍サヲ以テ之ニ對シテ參ッテ居ル積リ
デアリマス、今囘米穀統制法ノ實施ノ後ニ
於ケル狀況ニ鑑ミマシテ、色々ナ考究ヲ致
シタノデアリマス、殊ニ議會ヤ統制調査會等
ニ於ケル要望ニ從ッテノ對策モ、是非立テタ
イト考ヘテ、苦心ヲ致シタノデアリマス、
斯ノ如クシテ考究ノ結果ガ、只今玆ニ提案
シテ居リマスルモノヲ以テ、此際ノ差當リ
ノ處置ト致シマシテ、尙ホ進ンデ眞劍ニ考
究ヲ續ケタイ、斯ウ云フコトヲ申上ゲテ居
ルヤウナ譯デアリマス、若シ此法案ガ通過
シナイヤウナコトガアッタラバ、ドウスル
カト云フヤウナコトニ付テ、其對策ハ今此
處デ私何トモ申上ゲル譯ニモ參リ兼ネマス
ルガ、吾々トシテハ是非此法案ニ對シ、皆
樣ノ協賛ヲ速ニ得タイコトヲ熱望シテ已マ
ナイノデゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006513242X02219340313&spkNum=120
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121・秋田清
○議長(秋田〓君) 河野君、御濟ミニナリ
マシタカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006513242X02219340313&spkNum=121
-
122・河野一郎
○河野一郞君 濟ミマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006513242X02219340313&spkNum=122
-
123・秋田清
○議長(秋田〓君) 高田耘平君
〔高田耘平君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006513242X02219340313&spkNum=123
-
124・高田耘平
○高田耘平君 私只今上程サレテ居ル三案
ニ付テ、二三政府ニ質問シタイト思フノデ
アリマス、先ヅ總理大臣ガ去月十二日豫算
總會ニ於テ聲明セラレタル、其聲明ヲ實行
シ得ズシテ、極メテ姑息的ナル本案ヲ提出
シタ、其經過等ニ付テ承リタイト思フノデ
ゴザイマスルガ、私共出席ヲ要求シテアリ
マシタガ、今尙ホ出席ニナリマセヌカラ、
已ムヲ得ズ唯非常ニ遺憾デアック、總理大臣
ガ聲明ヲ裏切ッテ、斯ノ如キ不徹底ナル案ヲ
御提出ニナッタコトハ、極メテ遺憾デアルト
云フコトヲ、玆ニ前以テ申上ゲテ置ク次第
デアリマス
米穀ノ問題ハ申ス迄モナク非常ニ重大、デ
ゴザイマス、財政上ノ關係ヨリシテハ、勿
論デゴザイマスケレドモ、殊ニ農村問題解
決ノ上ヨリ、此米ノ問題ヲ根本的ニ解決シ
ナケレバナラナイト云フコトヲ、私共ハ痛
感致シテ居ルモノデアリマス、何故サウデ
アルカト云ヘバ、例ヘバ今度追加豫算ガ出
テ居ル、此二千万圓ノ追加豫算ノ中、千五
百万圓ハ籾貯藏ニ關スル費用デアリマス、
而シテ根本問題解決ニハ少シモ手ヲ觸レナ
イ、デ大藏當局ニ言ハシテ見レバ、是ハ大
體ニ於テ皆農村ノ爲デアル、籾貯藏モ農村
ノ爲デアル、斯ウ言フノデアリマス、而シ
テ一面ニハ本年ノ一月迄ニ旣ニ二億二三千
万圓ノ缺損ヲ來シ、更ニ最低公定基準價格
ニ依ル買上ガ、若シ千万石ニ達スレバ、恐
ラクハ今後一年間ニハ彼此レ一億万圓近ク
ノ缺損ヲ來スノデハナイカト思フ狀態ニ陷
レタノデアリマスカラ、非常ニ財政上重大
ナ問題デアルト同時ニ、此米ノ問題アルガ
爲ニ、此方面ノミニ國費ノ大部分ガ使ハレ
テ、他ノ農村根本問題ノ解決ガ出來ナイト
云フコトハ、極メテ遺憾デアリマスカラ、
一日モ早ク、此米ノ問題ニ付テノ根本的解
決ヲシナケレバナラヌト云フコトヲ、私共
ハ信ジテ居ルノデアリマス、ソコデ私共今
囘ノ御提案ヲ見マシテ、甚ダ遺憾ニ感ズル
點ハ第一ニ、先程古イ米穀法ヲ其儘出シ
タノデアルト云フヤウナ御話モアリマシタ
ガ、或ハサウ云フ批評モアルカモ知レマセ
又、臨時處理法ハサウ云フ非難モスレバ出
來マス、而シテ如何ニモ不徹底デ、僅ニ一
年間ヲドウスルカト云フ案ヲ御立テニナツ
クニ過ギナイ、但シ只今農林大臣ハ、一年
ノ間ニ調査〓究ヲシテ、根本的ノ案ヲ立テ
ルト云フ說明デアリマシタガ、ドウ云フ程
度ニ於テノ根本的對策ヲ立テントスルノデ
アルカヲ伺ッテ置キタイノデアル
今囘此案ガ出ル前ニ、閣僚ノ諸君ガ意見
ヲ異ニシタヤウニ承ル、卽チ朝鮮、臺灣ヨ
リ移入スル米ヲ法律ニ依ッテ規定シテ、或ル
程度以上ノ移入ハ絕對ニ許サナイコトニス
ルト云フコトガ、農林當局ノ主張デアッテ、
是ガ大體ニ於テ內地ノ農民側ノ要求デアリ
マス、所ガ拓務省ノ方ハ、ソレハイカヌ、
サウスレバ差別待遇ニナルカライカヌト云
フコトデ、結局或ル程度ノ制限ハスルガ、
法律ニ依ッテ規定スルコトハ全然イカナイ
ト云フコトデ、此意見ノ對立ヲ、總理大臣
ガ纏メルコトガ出來ズシテ、此案ニナッタノ
デアラウト私ハ思ヒマス、卽チ一時的便法
ガ出來タノデアラウト思ヒマス、然ラバ根
本的對策トハドウ云フヤウニ考ヘテ進ムノ
デアルカト云フコトヲ、能ク考ヘナケレバ
ナラヌノデアリマス、私ハ斯ウ云フコトヲ
考ヘル、例ヘバ此間農林當局ガ主張シタ、
外地移入米ヲ法律ヲ以テ規定スルコトガ出
來タト假ニ致シマシテモ、是ハ決シテ根本
的解決デハナイト私ハ思フノデアリマス、
何トナレバ、例ヘバ朝鮮ヨリ八百万石、臺
灣ヨリ四百万石、約千二百万石以上ハ、今
日ノ米穀事情ニ於テ移入スルコトヲ認メナ
イト云フコトヲ法律デ規定スレバ、ソレガ
爲ニ內地ノ米價ハ相當ニ維持セラレマセ
ウ、隨テ米穀統制法ノ運用モ極メテ樂ニナ
ルト思ヒマス、是ハ確ニ其通リニナリマ
ス、サウスレバ朝鮮、臺灣ハドウナル、近々
十年間ノ趨勢ヲ見マスト、非常ナル勢ヲ以
テ移入米ハ增加シテ居ルノデゴザイマス、
大正十三年ノ朝鮮、臺灣ヨリノ移入米ノ總
額ハ五百十万石デアッテ、昭和八年ニハ千百
七十四万石デ、十年間ニ倍額以上ニ達シテ
居ル實情デゴザイマスルカラ、卽チ朝鮮、
臺灣ノ生產米ガ、斯ル勢ヲ以テ、大體ニ於
テ增加スルモノト見ナケレバナリマセヌ、
大體ニ於テ增加スルモノト見ナケレバナラ
〓、十年間ニ倍ニナッテ居ル、然ラバ今後ド
ウナルカト云フコトヲ色々考ヘテ見マスル
ト臺灣ノ農業ニ於キマシテ、例ヘバ耕地
ノ擴張ヲ止メタニシタ所ガ、各方面ヨリ耕
作ノ改良、施肥ノ改善等ヲ致シマスレバ、
現在ヨリ更ニ數百万石ヲ增スコトハ極メテ
易々タルコトデアルト、吾々ハ常識的ニ考
ヘラレマス、朝鮮ニ於テモ其通リデアリマ
ス、朝鮮ノ土壤ノ性質等ヨリ見マシテ、耕
作ニ相當ノ注意ヲ加へレバ、一反步ニ於テ
二石平均位マデニ達スルコトハアリ得ルト
私ハ思フ、卽チ外地ノ米ノ增殖ト云フモノ
ハ、年々進ムコトハ明デゴザイマスルカラ、
內地ニ入ル數量ヲ千二百万石ナラ千二百万
石ト限定スレバ、朝鮮、臺灣ノ方ガ非常ニ
困ルノデアリマス、困ルカラ例ヘバ餘ッタ米ヲ
特別會計ヲ作ッテ買ッタト致シマシタ所ガ、
數百万石買ッタ所ガ之ヲ賣ルコトガ出來マ
セヌ、丁度內地ノ特別會計ニ於テ、十數年
來米ヲ買ッテ〓〓買ッテ居ルガ、賣ルコトガ
出來ナイヤウナ狀態ヲ、朝鮮、臺灣ニ於テ
再ビ繰返スト同ジ結果ニ相成ルト思ヒマス
ガ故ニ、千二百万石ナラ千二百万石ノ制限
ヲ致スコトガ出來タ所ガ、二年ナリ三年ノ
後ニハ朝鮮、臺灣ノ農民ガ非常ニ困ッテ、其
結果ハ、又何等カノ方策ヲ立テナケレバ、
全領土ヲ通ジテノ米穀政策ヲ全ウスルコト
ハ絕對ニ出來ナイト私ハ思フノデアリマス
先程農林大臣ノ御說明ノ一端ニハ、朝鮮、
臺灣ニ對シテ何カ特ニ根本的對策ヲ立テル
ト云フヤウナル御說明ガアッタヤウデゴザ
イマシタケレドモ、私ハ朝鮮、臺灣ノミナ
ラズ、內地ヲモ通ジテノ、所謂全領土ヲ通
ジテ根本的對策ヲ立テルニ非ザレバ、到底
米穀問題ノ永久ノ解決ハ出來ナイト信ズル
ノデゴザイマス、但シ其方法ト致シマシテ
ハ、或ハ全領土ヲ通ジテノ生產制限ノ必要
モゴザイマセウ、或ハ又專賣ガ宜イト言フ
人モゴザイマス、或ハ又朝鮮、臺灣ノミノ
專賣ヲ實行スルコトニ依ッテ救ハレルト申ス
人モアリマス、位シ玆ニ專賣論ヲ主張シナ
ガラ、減反案ニ反對スル者モアリマスルケ
レドモ、是ハ一寸私ハ了解シ兼ネルノデア
リマス、專賣トナレバ、減反ヲシナケレバ
專賣ハ出來ナイノデゴザイマスルガ、此點
ハ意見ノ相違ニナルノデアリマスカラ、申
上ゲル必要モナイノデゴザイマスガ、兎一
角專賣論ニハ減反ガ伴フト私共ハ見テ居ル
ノデアリマス、ソコデ政府ガ調査シテ根本
的ノ案ヲ立テルト云フノハ、單ニ此間拓務
省ト農林省ガ對立シタ如キ、所謂朝鮮、臺
灣ニ對シテノ、或ル程度ノ移入制限ヲ法律
的ニ試ミントスル意味ニ於テノ調査ナリ
ヤ、是デハ不十分デアリマス、私ハソレデ
ハ滿足致シマセヌ、更ニ一步進ンデ、ソレ
ヨリモ只今申上ゲタ意味ノ根本的解決ヲナ
サラナケレバナラヌト思フガ、政府ガ調査
〓究セントスル方針ハ、其點迄進ンデ解決
セントスルノデアルヤ否ヤト云フコトヲ伺
ヒタイト思フノデアリマス
更ニ第二ノ質問ハ、河野君ノ質問ト同ジ
意味ニ相成ルノデアリマス、卽チ政府ハ調
査〓究ヲ一日モ早ク遂ゲテ、是ガ成案ヲ得
テ、尠クトモ端境期頃迄ニ臨時議會ヲ開ク
ノ意思アリヤ否ヤト云フコトデアリマス、
是ハ實ハ總理大臣ニ伺ヒタイノデアリマス
ケレドモ、總理大臣ガ居リマセヌカラ、已
ムヲ得ズ農林大臣ノ御答デモ宜シイノデ
ス、何故私ガ左樣ナコトヲ申上ゲルカト云
ヒマスト、從來調査會ト云フモノガ再々開
カレテ居ッタガ、ドウシテモ根本問題ガ解決
サレマセヌデシタ、私ハ今日迄ノヤウナ調
査會デハ、中々容易デナイト思フ、要スル
ニ非常ナル强イ意味ニ於テノ調査會デナケ
レバナラヌ、尠クトモ各方面ノ、マア民
政黨デモ、政友會デモ、本當ニ領袖株ノ
人ヲ揃ヘテヤラネバナラヌ、問題ガ大體
決ッテ居ルノデス、唯斷ノ一字デアルト私
ハ思フ、故ニ此調査會ノ爲ニ一年モ費ス必
要ハナイ、端境期ノ十月迄ニハ、四、五、
六、七、八、九、マダ六箇月アル、此間ニ
解決サレナイヤウデハ、一年掛ッテモ私ハ
解決出來ナイト思フ、尠クトモ三月ヤ四月
掛レバ大抵ノ大問題ハ解決出來ル、三月、
四月デ解決サレナイヤウデハ一年掛ッテモ
私ハ解決出來ナイト思ヒマス、デアルカラ
政府ハ-私ガ特ニ端境期迄ニト申上ゲタ
理由ハ、申上ゲル迄モアリマセヌガ、端境
期以後ニナッテ、新米穀年度ニナッテ、政策ガ
立タナイヤウデハ、生產者モ消費者モ、亦
特別會計維持ニ當ル所ノ政府モ、非常ニ困
ルノデアリマスルカラ、是非端境期迄ニ解決
スル必要ガアルノデゴザイマス、故ニ政府
ハ先程私ガ申上ゲタ意味ノ根本方針ヲ以テ
調査スル心算デアルカ、或ハ又單ニ朝鮮、
臺灣ニ對スル移入制限ノミニ付テノ案ヲ御
〓究ニナル心算デアルヤ否ヤト云フコトヲ
伺ヒマス、大體ニ於テ私ノ希望トシテハ、
ドウシテモ根本的解決トスレバ、全領土ヲ
通ジテノ米穀政第デナケレバナラヌノデア
リマスルカラシテ、其點ニ付テ伺フト同時
ニ、端境期迄ニ尠クトモ調査〓究ヲ遂ゲテ、
サウシテ成案ヲ得テ、臨時議會ヲ開クベシ
ト云フコトニ付テノ、政府ノ意見ハ如何デ
アルカト云フコトヲ伺ヒマス、是ハ實ハ農
林大臣デナク、御相談ノ上一ツ總理大臣ヨ
リ御答ヲ願ヒタイト思ヒマス
第三ハ、米穀需給特別會計法中ノ此內容
ノ問題デゴザイマス、卽チ一億五千万圓ヲ
第四條ニ增額シ、更ニ三億万圓ヲ豫備費ト
シテ之ヲ附則ニ認メントスル案デゴザイマ
ス、質問ノ要點ハ、何故三億万圓ヲ要スル
ト云フコトデアリマス、玆ニ事實ノ問題ヲ
申上ゲテ見ルト、今日マデ政府ノ持ッテ居ル
米ヲ一切先ヅ賣ラナイモノトシ、尙ホ最低
公定基準價格ニ依ル買上總量ヲ一千万石ト
假定致シマス、或ハモット超エルカモ知レマ
セヌガ、サウ假定致シマス、端境期ニ持越
ス所ノ所謂金額ガ幾ラアルカト云ヘバ、大
體ニ於テ私ノ算定デハ一憶一千万圓ハ殘ル
ト思ヒマス、利子、倉敷ヲ差引イテ一億一
千万圓ハ殘ル筈デアリマス、但シ是ガ百万
石殖エレバ二千三百万圓バカリ又減リマス
ケレドモ、大體ニ於テ千万石トスレバ一億
一千万圓ダケ端境期ニ金ガアル譯ニナリマ
ス、其外ニ一億五千万圓ヲ法第四條ニ於テ
增加スル、サウスルト是ガ二億六千万圓、
其外ニ政府ガ端墳期マデニ賣ラナケレバナ
ラヌ米ガ何程アルヤト云フコトハ、是ハ私
共無論能ク分リマセヌガ、所謂整理賣却ヲ
シナケレバナラヌ米ガ、昭和六年度ノ米、
七年度ノ米、八年度ノ米、相當ニ私ハ八年
度ノ米ノ中ニモ、今度ハ餘程所謂乾燥ノ惡
イ米ナドガ入ッテ居ル筈デゴザイマスルカ
ラ、相當ノ數量ヲ整理賣却トシテ賣ラナケ
レバナラヌト思ヒマス、若シ其金額ヲ、大
體ニ於テ四百万石程度ト假定致シマスレバ、
チヨット高イカ知レマセヌガ、一石二十圓ニ
見積ルト、是ガ八千万圓デアリマス、サウ
スレバ一億五千万圓ノ今度ノ法律ニ依ル增
加資金、一億一千万圓ノ殘餘ノ金、更ニ整
理米ヲ四百万石賣ッタ其八千万圓ト、之ヲ含
マセレバ三億四千万圓トナルノデゴザイマ
スルカラシテ、假令臨時議會ヲ、吾人ノ希
望スル通リニ端境期マデニ開イテ、根本問
題ヲ解決スルコト能ハズトシテモ、三億四
千万圓ノ資金ガアレバ、內地外地ヲ通ジテ
相當ノ數量ヲ買ヒ得ルコトニ依ッテ、私ハ不
安ガナイト思フノデゴザイマス、卽チ事實
ノ上ヨリ三億万圓ト云フ豫備費ヲ設ケル必
要ガナイト思ヒマス、更ニ若シ必要ガアリ
トノ御見込ナラバ、何故豫備費ナドヽ云フ
名前ニ致シマシタカ、一億五千万圓增スノ
ヲ大膽ニ四億五千万圓增ストスル方ガ、正
當デハナイカト思ヒマス、必要ナイモノナ
ラバ置ク必要ナシ、必要ガ萬一アルト云フ
御見込ナラバ、是ハ一億五千万圓ヲ增スニ
非ズシテ、四億五千万圓ヲ增シタ方ガ私ハ
適當デアルト思フ、更ニ又此法律ノ「米穀
ノ數量又ハ市價ノ變動ニ基ク買入數量ノ增
加其ノ他避クベカラザル事由ニ因リ」トアル
ガ、ドウ云フコトヲ「避クベカラザル事由」
ト申スカハ知リマセヌガ、要スルニ豐作ノ
場合ニ買ハナケレバナラヌト云フコトヂヤ
ナイカト私ハ思フノデアリマス、兎ニ角
豐作ノ場合ニ買フト云フコトデアリマスレ
バ、私共ノ考デハ、必要ガソレ程アルト思
くい、議會ノ權能ヲ第二ニシテ、行政官ガ
三億万圓ノ豫備費ヲ自分ノ自由裁量ニ於テ
支出スルト云フ、斯ノ如キ重大ナル問題ニ
付テ、議會ノ權能ヲ無視スルノ必要ガアリ
マセヌカラシテ、是ハ若シ必要ガアルト思
ハハ、須ラク私ノ見ル所デハ、四億五千万
圓ノ增加トシテ宜シイト思フ、私ハコヽデ
斯ウ云フ疑問ヲ有ッテ居リマスガ、如何デス
カ、此三億万圓ト云フノハ、實ハマダ拓務省
ト農林省トノ意見ガ岐レマセヌ內ニ、一致
スルモノト思ッテ、所謂移入米ノ統制ガ法律
的ニ完全ニ實行出來ル場合ヲ豫想シテ、サ
ウシテ外地ニハ一億五千万圓、內地ニハ三
億万圓ノ豫備費同樣ナモノヲ置クト云フコ
トガ新聞ニ出マシタガ、其通リヲ實行シタ
ノデアリマス、卽チ半永久的ナ、要スルニ
外地米ニ對スル相當ノ移入統制ガ出來ルコ
トヲ前提トシテ、外地ニ一億五千万圓、內
地ニ三億万圓ノ豫備費同樣ノモノヲ置クト
云フコトヲ新聞ニ發表サレマシタガ、ソレ
ヲ其儘一年限リノ問題ニ於テモ實行スルト
シテ、玆ニ私ハ揭ゲタモノニ非ズヤトノ疑
念モアルノデアリマス、是ハ想像デスカラ
ハッキリ分リマセヌガ、ドウモサウモ言ヒ得
ル、一年限リト致シマスレバ、私ハ三億圓
ノ豫備費ヲ置ク必要ハ更ニナイト思フノデ
アリマスケレドモ、之ニ對スル政府ノ御意
見ハ如何デアリマスカ、之ヲ御伺シタイト
思フノデアリマス
先程三善君ヨリ質疑ガアッテ、農林大臣ガ
御答ニナッタ問題デアリマスガ、ソレハ內地
ト外地トノ所謂米ノ買入ノ基準ニ付テノ問
題デアリマス、勿論今ノ立法ニ於キマシテ
モ、季節的買收ノ場合ニ於テハ、朝鮮モ臺
灣モ、卽チ內地モ外地モ時價デ買フコトニ
ナッテ居ルノデゴザイマス、季節買收ハ時價
デ買フト云フコトニナッテ居ル、所ガ今度ハ
季節的買收ニ非ズシテ、朝鮮、臺灣ト云ヒ
マシテモ、先ヅ主トシテ朝鮮ニ於テ-臺
灣デハ買ハヌデセウ、朝鮮ニ於テ米ヲ買フ
場合ニ於テ、內地デハ生產費ヲ基礎トシ、
物價其他ノ狀況ヲ加味シテ、最低基準價格
デ買フノデアル、朝鮮デハ然ラズシテ時價
デ買フノデアルト云フ、此不公平ノ問題、
是ハ如何ニモ受取レナイ、差別的待遇ト云
フコトガ若シアリトスレバ、是ハ確ニ差別
的デアル、但シ其間ニ於テ判斷シ兼ネル事
柄ハ、私ハ生產費ノ問題ニ付テ疑ガアリマ
ス、其疑ヲ質サナイカラ、玆ニ常識的ニ申
スヨリ外アリマセヌケレドモ、大體ニ於テ
朝鮮ト內地トノ米ノ生產費ハ、一石ニ付テ
五六圓ノ差ガナケレバナラヌト私ハ思フ、
今迄ハアッタノデアリマス、今度ハナイガ、
今迄ハアッタ、ソコデ生產費ヲ基礎トシテ、
內地同樣ニ公定基準價格ヲ決メテ買フト云
フコトニスルト云フコトハ、私ハ其事ヲ爲
スコトニ付テノ困難ナル事情ハ御察シ申シ
マス、御察シハ申シマスガ、併ナガラ道
理カラ云ヘバ、內地デハ生產費ヲ基礎トス
ル最低公定基準價格デ買ヒ、朝鮮デハ時價
デ買フト云フコトニナルト、大體ニ於テ朝
鮮ノ時價ト云フモノガ、內地ノ最低公定基
準ニ引摺ラレテ居ルカラシテ、生產費以上
數等超エタモノガ時價ニナッテ居ルニ違ヒ
ナイト私ハ思フ、サウスレバ內地ニ於テ
ハ最低公定基準價格デ買フガ、朝鮮エ於テ
ハ時價デ買フト云フコトニナルト、此不公
平ハ私ハ何トシマシテモ見遁シ難イ、是八
差別待遇デアルト私ハ思フ、デアリマスル
カラシテ、或ル一定ノ數量ヲ政府ガ買フ必
要ヲ認メタナラバ、所謂朝鮮ニ於テ最低公
定基準ヲ內地ト同樣ニ作ラシテ、之ニ依ッテ
强制的ニ三百万石ナリ、四百万石ナリ買フ
ト云フコトデナケレバ、私ハ非常ナル差別
待遇ト思フガ、此點ニ對スル農林大臣ノ意
見ハ如何デアリマスカ、尙ホ事務的ニ二三
伺ヒタイ點ガゴザイマスケレドモ、後日ニ
讓リマシテ、只今申上ゲマシタ點ニ付テ政
府ノ所見ヲ伺フ次第デアリマス(拍手)
〔國務大臣後藤文夫君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006513242X02219340313&spkNum=124
-
125・後藤文夫
○國務大臣(後藤文夫君) 高田君ノ御質問
ニ御答致シマス、第一ニ、尙ホ根本策ニ付
テハ續イテ考究ヲスルト云フコトデアル
ガ、其根本策ト云フノハドウ云フコトヲ含
ンデ居ルノカ、內地、外地ヲ通ジテノ米穀
ノ問題ヲモ含ンデ居ルノデアルカ、ドウカ
ト云フ御尋デアリマシタ、私ハ提案ノ理由
ニモ御說明申上ゲマシタヤウニ、今囘ノ移
入米穀ノ調節ノ法案ハ、臺鮮米ノ移入ノ調
節ニ關スルコトデアリマス、之ニ卽シテ臺
鮮米ノ移入調節ニ關スル更ニ是レ以上ノ方
策ニ付テ、政府モ考究ヲシテ成案ヲ得ルコ
トニ努メル積リデアルノダト云フコトヲ申
上ゲタノデアリマス、尙ホ併シ在來懸案ト
ナッテ居リマスル一般的ノ生產ノ統制ト云ッ
タヤウナ問題ハ、無論根本策ノ一ツトシテ
今日マデモ考究シテ參ッテ居ル所デアリマ
スガ、今後ニ於テモ考究シナケレハナラヌ
コトヽ考ヘテ居リマス、臺鮮米ノ問題ニ付
テ、單純ナル移入スルモノヽ數量ノ調節ノ
ミナラズ、更ニ根本ニ入ッテノ問題ガアルノ
デハナイカト云フ高田君ノ御尋ハ、ソレ等
ノ點ニ關シテノコトデアラウト思ヒマス、
生產ノ下ニ入ッテマデ全領土ヲ通ジテノ米
穀對策ト云フモノヲ講ズルコトハ、無論必
要デアリ、今後考究サレナケレバナラヌ問
題ト考ヘテ居リマス、是等ノ問題モ考究致
シタイト思フノデアリマスガ、唯此問題ヲ
直チニ效果ヲ擧ゲルヤウナ成案ヲ得ルコト
ハ中々困難デアル、永遠ノ方策トシテ多少
年月ヲ要スル方策トシテ、玆ニ方針ヲ立テ
ナケレバナラヌ問題デアルト云フコトハ御
承知ノ通リデアラウト思ヒマス
臨時議會ヲ開ク積リガアルカドウカト云
フ御尋デアリマス、是ハ先程河野君ニモ御
答致シマシタヤウニ、只今臨時議會ヲ開ク
ト云フ考ハ有ッテ居リマセヌ、ソレカラ何故
三億ト云フヤウナ豫備的ナ資金ノ準備ヲシ
テ置クノカ、是ハ要ラナイノデハナイカ、
此色々數字ニ依ル計算ノコトハ、外ノ機會
ニ申上ゲタ方ガ宜シイカト存ジマスガ、只
今御推算ノ御話ノアッタノトハ、少シ吾々ノ
見解ハ違ッテモ居リマスルガ、此三億ト云フ
ノヲ政府ガ權能ヲ得テ置カウト申シマスル
ノハ、想像シ得ベキ最大ノ場合ヲモ豫想シ
テ置カナケレバナラヌ、今年ノ米穀年度ニ
於ケル昨年ノ大豐作ト云フモノハ、殆ド何
人モ豫想シ得ザル所デアリマシタケレド
モ、斯樣ナ豐作ガ參ッタノデアリマスカラ、
再ビ是ガ續イテ參ルデアラウト云フコト
ハ、多クノ人ガ是ハ豫想シナイコトデアリ
やく、併ナガラ絕對ニ來ナイトハ何人モ言
ヒ得ナイノデアリマス、ソレニ應ズルダケ
ノコトハシテ置キタイ、併ナガラ是ガ爲ニ
直チニ米穀資金ヲ今增額シテシマフノダト
云フコトマデ行カナクテモ、增額ヲスルト
云フコトノ權能ヲ戴イテ置イテ、其時ノ事
情ニ應ジテ必要ナ程度ダケ政府ガ增額スル
ト云フコトガ、却テ斯ウ云フ資金ノ運用ヲ
嚴正ニシ、國家財政ノ見地カラ見マシテモ、
ソレノ方ガ適切デハナイカト考ヘルノデア
リマス、サウ云フ趣旨デ是ハ多クノ米穀資
金ノ增額ノ權能ヲ、一方一億五千万圓ノ增
額ノ外ニ戴イテ置キタイト云フ譯デアリマ
ス、左樣御承知ヲ願ヒタイト思ヒマス
尙ホ最後ニ米ノ買入價格ノコトヲ、三善
君ノ御尋ト同ジヤウナコトニ付テ御尋ガア
リマシタ、是ハ御承知ノ如ク統制法ノ最低
價格、最高價格ヲ維持スルト云フ建前ノ買
入デハナイノデアリマス、朝鮮デノ最低價
格ノ維持ト云ック意味デハナイノデアリマ
シテ、內地ヘノ移入ヲ調節スル爲ノ買入デ
アリマスカラ、此買入ノ建値ノ仕方ガ兩方
ノ遣方ガ遠フト云フコトニハナラナイノデ
アリマス、併ナガラ此買方ト云フモノガ、
將來ニ影響ヲ有ツノデハナイカト云フコト
ヲ御懸念デアラウト思ヒマスガ、是ハ餘程
考究ヲシテ掛ラナケレバナラヌ問題デアル
ト考ヘチ居ルノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006513242X02219340313&spkNum=125
-
126・秋田清
○議長(秋田清君) 由谷義治君
〔由谷義治君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006513242X02219340313&spkNum=126
-
127・由谷義治
○由谷義治君 出來ルダケ簡潔ニ質問ノ要
旨ヲ盡シマス、農林大臣ニ御尋シマスガ、
外地米ノ統制ニ關シテ、農林省ニ法律化ス
ル原案ガアック筈ト思ヒマス、是ハ昨年米穀
統制法ノ決議當時ニモ附帶條件デアリマシ
タシ、殊ニ最近米穀問題ノ中心問題デアリ
マシタカラ、其移入法制化ノ原案ノ御說明
ヲ願ヒマス
質問ノ第二點ハ、此度暫定的ナ法案デ臺
鮮米ノ移入管理ヲヤルト云フノデアリマス
ガ、買上ノ價格及ビ買上數量ノ具體的豫
想ガアラウト思ヒマス、此御發表ヲ願ヒタ
イノデアリマス、內地ニ移入ヲ防グ爲ニ外
米地ノ買上ヲスルコトハ、結局時價以上ニ
買ハナイト、政府ノ買上ヲ要求スル者ガナ
イト考ヘマス、隨テ安イ生產費ノ米ヲ高ク
買フ結果ニナリマスカラ、結局米作ノ奬勵
デアリマス、或ハ外地ノ地主、米穀商人等
ハ非常ニ喜ブデアリマセウケレドモ、結果
ガ米作ノ增產助長計畫、絕對的ニ供給過剩
ノ政策ナリト考ヘマスカラ、買上價格ヲ聞ク
ノデアリマス、同時ニ外地米ノ過剩ノ算定
ガ間違ッテ居リマスト、移入防止ニナリマセ
又、隨テ外地米ノ買上數量ノ豫想ヲ御發表
願ヒマス
同時ニ質問ノ第三ハ、此法案ヲ暫定的ニ
出シテ、サウシテ根本對策ハ審議會ノ成立
ニ依ッテ決定スルト云フノデアリマスガ、齋
藤内閣ニ來年度ノ米ヲ心配スルマデノ力ガ
アルカドウカ、唯單ニ農林省ト拓務省ノ確
執、對立ヲ宜イ加減ニ胡麻化ス意味ニ於テ、
此度ノ法案ヲ出シタケレドモ、將來ノ問題
ニ對シテ、餘リ此內閣ガ大キナ約東ヲスル
コトハ吾々信用出來ナイノデアリマス拍
手)隨テ審議會ニ對スル政府ノ所信ト、竝
ニ其責任觀念ヲ聽キタイ、拓務大臣ニ二ツ
質問ヲ致シタイノデアリマスガ、拓務大臣
ガ居リマセヌカラ、私甚ダ遺憾デアリマス
ケレドモ、此機會ニ一言シテ置キマス、拓
務省方面デ事每ニ共存共榮主義トカ、或
一視同仁トカ、今度ノ米ノ問題ヲ繞リマシ
テ屢、吾々ガ奇怪ナル言動ヲ見タノデアリマ
ス、一體今度ノ問題ハ、之ヲ此儘ニ放任シ
テ置クト、結局內地農民ノ負擔ニ於テ、外
地ノ農民ヲ補償スルト同ジヤウナ結果ニ
ナッテ來ルノデアリマス、拓務省ハ寧ロ輕率不
謹愼ナル一視同仁主義ノ煽動ノヤウナコト
ヲセズニ、或ハサウ云フ言葉ニ依ッテ齋藤內
閣ノ內輪ヲ脅迫セズニ、寧ロ進ンデ日本內
地ノ米穀對策ニ對シテ、拓務省或ハ外地ノ
監督官廳自ラガ適當ナル調節方法、移入統
制ニ關スル方法ヲ講ズルコトガ、拓務省ノ
最モ正シキ政治デナケレバナラヌト、吾々
ハ信ズルノデアリマス、然ルニ拓務省ハサ
ウ云フコトヲシナイ、極メテ觀念的ナル、拓
務大臣ノ言ヲ以テスレバ、全人類ノ共存共
榮トカ、或ハ全國民ノ一視同仁トカ、洵
結構ナ言葉デアルケレドモ、サウ云フ觀念
的ナ言葉ハ決シテ政治ノ解決デハナイ、私
此點ニ付テ別ノ機會ニ拓務大臣ノ答辯ヲ要
求シマシテ、根本的ノ質問ハ後ニ殘シテ、
唯今申シマシタ點ニ對シテ、農林大臣ノ答
辯ダケヲ要求シテ置キマス
〔國務大臣後藤文夫君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006513242X02219340313&spkNum=127
-
128・後藤文夫
○國務大臣(後藤文夫君) 今囘ノ案ヲ提出
スル迄ニ於テ、當局ノ間デ色々準備調査ヲ
致シタ際ノ事柄ハ、此際私申上ゲル限リデ
ナイト思ヒマス
次ニ買上ノ價格ノコトデアリマスガ、是
ハ屢、前ノ御質問ノ方カラモ御尋ガアッタ
コトデアリマス、時價ニ依ッチ買上ゲルコト
ニ相成ッテ居リマス、唯單純ニ時價ト云フノ
デ、何時デモ買ッテ宜イコトニ致サズニ、最
高ノ限度ト云フモノハ決メテ置キタイト考
ヘテ居リマス、ソレカラ買上數量ハ、是ハ
今日ノ米穀ノ需給狀況デノ數量ト、ソレカ
ラ愈、昭和九年ノ產米ノ豫想狀況ヲ見テノ
豫測ト合セテヾナケレバ、ハッキリシテ數ヲ申
上ゲル譯ニハ參リマセヌ、一億五千万圓ト云フ
數字ガ一杯ニ達シマスナラバ、六七百万石位
ヲ豫想サレル譯デアリマスケレドモ、是ハ其
全部ヲ必ズ買上ニ充テルモノト豫想致シテ、
計算ヲシテハ居ラヌノデアリマス、今ハッキ
リ此處デ數字ヲ申上ゲル譯ニハ參リ兼ネマ
ス
最後ニ今後ノ調査ノコトニ付チノ御尋ガ
アリマシタガ、是ハ吾々出來ル限リ色々ノ
點ニ觸レテ、十分ノ調査ヲ致シタイト云フ
考デ居ルト云フコトヲ申上ゲルニ止メタイ
ト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006513242X02219340313&spkNum=128
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129・由谷義治
○由谷義治君 農林大臣ノ御答辯ハ、私ノ
質問ニ對シテ皆喰違ッテ居リマス、是ハ別ノ
機會ニ質問應答ヲ致スコトニ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006513242X02219340313&spkNum=129
-
130・秋田清
○議長(秋田〓君) 質疑終局、各案ノ審査
ヲ付託スベキ委員ノ選擧ニ付テ御諮リ致シ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006513242X02219340313&spkNum=130
-
131・青木雷三郎
○靑木雷三郞君 三案ヲ一括シテ議長指名
二十七名ノ委員ニ付託サレンコトヲ望ミマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006513242X02219340313&spkNum=131
-
132・秋田清
○議長(秋田〓君) 靑木君ノ動議ニ御異議
アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006513242X02219340313&spkNum=132
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133・秋田清
○議長(秋田清君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ、是ヨリ質
問ニ入ルノデアリマスガ、之コ先チ諸君ニ
御諮リ致シタイコトガアリマス、此質問、
卽チ所謂火曜日ニ於ケル質問デアリマスル
ガ、是ハ成ベク多數ノ質問者ノ要望ヲ滿サ
シムベク、演說時間ノ制限ヲ爲ス必要アリ
ト考ヘマス、仍テ今後各質問演說ハ二十分
間以内トスルコト、但シ議長ニ於テ特別ノ
事情アリト認ムルモノニ限リ、三十分間マ
デ之ヲ許容スルコトニ致シタイト思ヒマ
ス、之ニ御異議アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006513242X02219340313&spkNum=133
-
134・秋田清
○議長(秋田清君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ其通リニ決シマシタ-本日ノ日
程ニ揭ゲマシタ質問ノ六及ビ八ハ、何レモ
政府ヨリ答辯書ヲ受領致シマシタ、仍テ日
程ヨリ之ヲ省キマス-只今靑木雷三郞君
ヨリ成規ニ依ル、質問五、宮脇長吉君提出、
軍民一致ニ關スル質問ヲ、質問一ノ前ニ
繰上ゲ許可スベシトノ動議ガ提出サレマシ
タ、此靑木君ノ動議ニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006513242X02219340313&spkNum=134
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135・秋田清
○議長(秋田清君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ其通リ決シマシタ、直チニ宮脇長
吉君ノ登壇ヲ許シマス
五軍民一致ニ關スル質問(宮脇長吉
君提出)
軍民一致ニ關スル質問主意書
右成規ニ據リ提出候也
昭和九年三月一日
提出者宮脇長吉
軍民一致ニ關スル質問主意書
去ル二月二日本員カ豫算總會ニ於テ軍民
一致ノ實ヲ揚クル爲ナシタル質問演說中
在〓軍人會云云ニ付述ヘタル主旨ハ近時
動モスレハ政黨排擊ノ手段ニ在〓軍人會
ヲ利用セムトシ甚シキハ之ニ關シ奇矯ナ
ル決議ヲモ爲サムトスルノ風アルヲ以テ
斯ノ如キハ在〓軍人會ノ本旨ニ悖ルノミ
ナラス軍民一致ノ實ヲ揚クル上ニ非常ナ
ル惡影響ヲ招來スヘキヲ憂ヘ嚴ニ之ヲ戒
ムルノ必要ヲ痛感シ軍部大臣ニ對シ警告
ヲ爲シタルモノナリ然ルニ或ル方面ニ於
テ故意ニ在〓軍人ヲシテ本員ノ演說ノ眞
意ヲ誤解セシムル目的ヲ以テ特ニ其ノ速
記錄ノ一部ヲ拔萃シ殆ト全國的ニ配布シ
之カ爲速記錄ノ全般ヲ通讀セサル在〓軍
人ノ一部ヲシテ〓軍ヲ侮辱シタル如ク誤
解セシメタリ然レ共本員ハ我カ國防ノ主
體カ在〓軍人ニアルモノト確信シ在〓軍
人會ノ向上發展ニ微力ヲ盡シツツアル者
トシテ何ヲ以テ在〓軍人ヲ侮辱スル言辭
ヲ弄セムヤ本員ノ演說ノ主旨ハ軍民一致
ノ實ヲ揚クル點ヨリ考フルモ在〓軍人會
ヲ絕對ニ政治的ニ利用セシムヘカラサル
旨ヲ力說シタルモノニシテ夫ノ演說ノ全
般ヲ聽カレタル陸海軍大臣ハ能ク此ノ主
旨ヲ了解セラレ在〓軍人ヲ侮辱シタルモ
ノニ非サルヲ認メラルルナラム之ニ關ス
ル兩相ノ所見如何
右及質問候也
〔宮脇長吉君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006513242X02219340313&spkNum=135
-
136・宮脇長吉
○宮脇長吉君 或ル方面ニ於テ、私ガ去ル
二月二日豫算總會ニ於テ、軍民一致ノ實ヲ
揚グル爲メ爲シタル質問演說ノ趣旨ヲ、故
意ニ誤解セシムル爲メ、其一部ヲ拔萃シ、
殆ド全國的ニ在〓軍人ニ配付シ、甚シキハ
速記錄ノ一部ヲ改竄シテ配付セル者ガアル
ノデアリマス、是ガ爲メ演說ノ全般ヲ通讀
セザル者ハ、往々ニシテ私ノ在〓軍人會ニ
關スル質問演說ノ眞意ヲ誤解シアルハ、頗
ル遺憾トスル所デアリマス(拍手)速記錄ヲ
改竄捏造セル例ヲ擧ゲテ見マスルナラバ、
速記錄中「サウ云フコトハ殆ド商賣的ニヤツ
テ居ル人間ガ言フノデアル」ト云フ文句ガア
ル、而シテ此「サウ云フコト」トハ、在〓軍
人會ヲ利用シテ、政治的決議ヲ爲サントス
ルコトヲ謂フノデアルコトハ、速記錄ヲ初
メヨリ讀メバ明カデアリマス、然ルニ此文
句ヲ捉ヘテ、在〓軍人會へ集マル者ハ、商
賣的ノ者バカリデアルト宣傳シタノデアリ
やく、私ノ殆ド商賣的ニヤッテ居ルト言ッタ
意味ハ、言フ迄モナクサウ云フコトヲヤッ
テ居ル人ヲ指シタモノデ、在〓軍人會ニ集
マル者ノ大部ノ意味ニ非ザルコトハ、速記
錄ヲ見ルナラバ、小學校ノ子供デモ間違フ
筈ハアリマセヌ、又在〓軍人大會ノ決議ヲ
無價値ナリト述べタリト宣傳シテ居リマス
ガ、是亦私ノ言ヲ誤解セシメ、在〓軍人ノ
憤懣セシムル爲ノ宣傳デアリマシテ、卽チ
私ノ眞意ハ、速記錄ノ初メヨリ見レバ明瞭
ナル如ク、政治的決議ニ限定シテ述ベタモ
ノデアリマシテ、在〓軍人會ノ普通一般ノ
決議ヲ無價値トシタルモノデハアリマセ
又、假令大會ニ於テ政治的決議ヲ爲スト
モ、ソレハ在〓軍人ノ總意ニアラザル旨ヲ
述ベタモノデアリマス(拍手)又在〓軍人會
ニ出席スル者ハ、無賴ノ徒ノ集リデアッテ、
烏合ノ衆ナリト述ベタリト宣傳シテ居リマ
スルガ、斯ル非常識ナル言ヲ弄スル筈モナ
ケレバ、弄シタコトノナイコトハ、速記錄
ヲ見レバ明カデアリマス、唯眞劍ニ自分ノ
正業ニ勵ンデ居ル人間ハ、多クハ行ケナイ
ノデアリマスト述ベタ點ヲ捉ヘテ、改竄揑
造的ニ宣傳シタモノト思ヒマスガ、其意味
ハ、眞劍ニ自分ノ正業ニ勵ンデ居ル一般
ノ人ハ、大會ニ出席シタクトモ行ケナイ
者ガ多イト云フ意味デアリマス、元來私ガ
在〓軍人會云々ニ付キ質問シタ所ノ趣旨
ハ、近時動モスレバ政黨排擊ノ手段ニ在〓
軍人會ヲ引入レントシ、時トシテ在〓軍人
集會ノ場合ヲ利用シ、奇矯ナル決議ヲモ爲
サントスル者ガアルノ風アルヲ憂慮シ、之
ヲ嚴ニ戒ムルノ必要ヲ痛感シ、陸相ニ對シ、
注意的質問ヲ爲シタルモノデアリマシテ、
其趣旨ハ軍民一致ノ實ヲ揚グルニハ、在〓
軍人ノ集會等ヲ、政治的目的ノ爲ニ利用セ
シメザル爲メ行ヒタルモノデアリマシテ、
速記錄ノ全般ヲ通讀スルナラバ、此趣旨ハ
明瞭ニ現ハレテ居ルモノト信ジマス、現ニ
私ノ此演說ヲ聽キマシタ多數ノ議員、官吏
諸君ハ、其趣旨ヲ能ク了解シ、私ガ如何ニ
在〓軍人會ノ爲メ考慮シアルカヲ認メ、全
國在〓軍人會ノ爲メ感謝ノ辭ヲ寄セラレタ
ル者多數アルニ見マシテモ、明カデアリマ
シテ、質問ヲ受ケタル陸軍大臣モ、亦私ノ
眞意ヲ了解シタルモノト信ジテ居リマス、
要スルニ私ノ演說ヲ、在〓軍人會ヲ政治的
ニ利用セシメテハ相成ラヌト云フコトニ限
定セシメタルモノトシテ見ラレマスルナラ
バ、誤解ハ自ラ解ケ、其大會ニ於テ政治的
決議ヲナシタリトテ、是ハ在〓軍人ノ總意
ニ非ズト斷言致シマスルモ亦決シテ妄言デ
ナイト信ジマス(拍手)私ハ徹頭徹尾在〓軍
人會ヲ政治的ニ利用スルノ不可ヲ述べタモ
ノデアリマシテ、サレバ在〓軍人大會ノ決
議云々ハ、此政治的決議ヲ指シタモノデア
リマシテ、普通一般ノ愛國ノ至誠ヨリ出デ
タル所ノ會本然ノ立場ニ基ク決議ニハ、何
人モ異論ノアルベキ筈ハアリマセヌ(拍手)
然レドモ如何ナル理由ヲ以テシマシテモ、
在〓軍人ノ集會ノ場合ニ於テ、政治的決議
ヲ爲シタリトテ、ソレハ在〓軍人ノ總意デ
ハ決シテアリマセヌ、何トナレバ、在〓軍
人會規約第十一章第八十七條ニ「本會ハ團體
トシテ政治ニ關與シ又ハ本會々員ハ本會ノ
名目ヲ以テ政治ニ關與スルコトヲ得ズ」ト
シテアリマス、而シテ一部ノ或ル目的ヲ有
スル者以外ノ大多數ノ純良ナル在〓軍人ハ、
此規約ノ趣旨ヲ諒解シ、忠實ニ此規約ヲ守
リ、此規約ニ違反スル者アラズト認ムルカ
ラデアリマス(拍手)又在〓軍人集會ノ場合
ニ於テ、政黨ヲ惡罵シマスルコトハ考ヘモ
ノデアル、何トナレバ在〓軍人ガ召集ニ應
ジマシタ場合ニ於キマシテハ、是ハ純然タ
ル軍人デアリマスルガ、併ナガラ在〓間ハ、
或ハ雇傭關係ニ於テ、或ハ取引關係、或ハ
貸借關係、或ハ地主關係、小作關係、或
水利關係等ノ經濟ノ關係ノ外、種々ノ情實
因緣關係ノ上カラ、實生活ノ上ニ於キマシ
テハ、在〓軍人ハ複雜ナル身上ヲ有シテ居
リ、在〓軍人トシテモ個々ノ人士ト致シマ
シテハ、政治的ニハ殆ド其去就ハ決ッテ居
ルノデアリマス(拍手)卽チ在〓軍人ハ、其
能力ニ於テ優秀デ、地方ニ於キマシテハ何
カニ付ケ、活動ノ主體デアリマスカラ、政
黨員又ハ選擧關係者ハ、此有能ナル所ノ士
ヲ、決シテ見遁ス筈ハアリマセヌ、前申シ
マシタヤウナ諸關係ヲ辿リ、之ヲ味方ニ引
入レルノデアリマス、故ニ選擧ニ於キマシ
テハ、在〓軍人ト致シマシテハ行動ハ致シ
マセヌガ、各、個々ノ人士トシテハ最モ活
躍スル人デアリマスルガ故ニ、在〓軍人ノ
內容ヲ檢討スレバ、政黨員デアルカ、サモ
ナクバ議員ノ後援者タル者ガ多イノデアリ
さゝ、換言スレバ在〓軍人ハ、個々ノ人士
トシテハ何レカノ政黨エ好意ヲ持ツ者ガ多
イノデアリマス、此實情ヲ無視シテ、在〓
軍人ノ集會ノ場所ニ於テ、政黨ヲ惡罵スレ
バ一部ノ者ヲ喜バスカモ知レナイガ、多數
ノ在〓軍人ニ反感ヲ抱カシムルノ惡結果ヲ
來スモノデアリマス、是等ノ點ハ軍民一致
ノ實ヲ擧グル上ニ於テ、大ニ考慮ヲ拂ハナ
ケレバナラヌ問題デアリマス、故ニ私ハ在
〓軍人會ヲ政治的ニ利用セントスルノ不可
ノミナラズ、此集會ニ於テ、政黨ニ對シ惡
罵等ヲ爲スベキモノニアラズト確信シテ居
ル者デアリマス、此私ノ根本意見ヲ基礎ニ
致シマシテ、彼ノ質問演說ノ全般ヲ通覽セ
ラレルナラバ、私ノ眞意ハ自ラ明瞭ナルモ
ノト信ジテ居リマス(拍手)
由來私ハ我國ノ國防ノ主體ハ在〓軍人ニ
アリト確信シ、此在〓軍人會ノ發達ニ對シ
テハ、及バズナガラ平素ヨリ微力ヲ盡シツ
ツアル者デアリマシテ、每年ノ豫算ニ於キ
マシテ、私ハ在〓軍人會ノ補助金ノ增額ヲ
要求シ、現ニ過日ノ豫算委員會ニ於テモ、
現補助金二十五万圓ハ如何ニモ少額デアル
カラ、少クトモ三百万圓ニ增額スベシト力
說シテ、林陸相ヨリ其增額ニ關シ、或ル程
度ノ言質ヲ得テ居ル次第デアリマス、私ハ
微力デアリマスルケレドモ、在〓軍人會ノ向
上發達ニ、從來ハ固ヨリ、將來モ亦努力ヲ
スベキ覺悟ヲ有スル者デアリマス、然ルニ
今囘ノ私ノ質問演說ニ端ヲ發シ、在〓軍人
ノ一部ヨリ非難ヲ受ケルノハ、如何ニモ遺
憾千萬デアリマス、前述ノ如ク私ノ根本觀
念ヲ了解セラレテ、速記錄ノ全部ヲ通讀セ
ラレルナラバ、私ニ對スル誤解ハ自ラ一掃
スルモノト信ジテ居リマス、然ルニ或者ガ
演說ノ一部、殊ニ在〓軍人ヲ刺戟シ易イ點
ヲ捉ヘテ、全國的ニ宣傳シ、甚シキハ速記
錄ノ一部ヲ改竄シテ配付シ、或ル目的ノ爲
ニ故意ニ私ノ眞意ヲ誤解セシメ、在〓軍人
ヲ憤懣セシムルノ擧ニ出デタコトハ、實ニ卑
怯千萬デアリマシテ、言語道斷ノ所爲デア
リマス(拍手)私自ラガ在〓軍人デアリ、而
モ前述ノ如ク我ガ國防ノ主體ガ在〓軍人ニ
アルコトヲ痛感セル私ト致シマシテ、何ヲ
以テ在〓軍人ヲ侮辱スルノ言辭ヲ弄センヤ
デアリマス、私ハ在〓軍人會ヨリ感謝ノ辭
ヲ受ケルコトハアルト思ヒマスガ、併ナガ
ラ一點ノ非難ヲ受ケル理由ハナイト思ッテ
居リマス、(ヒヤ〓〓)玆ニ誤解ヲ一掃シ、
在〓軍人ヲシテ爲ニスル者ノ宣傳ニ乘ゼラ
ルヽノ餘地ナカラシムル爲ニ、一言スル次
第デアリマスガ、私ハ玆ニ改メテ陸海軍大
臣ノ所見ヲ伺ヒタイノハ、第一、如何ナル
理由ヲ以テシテモ、在〓軍人會ヲ絕對ニ政
治的ニ利用スベキモノニアラズト信ジマス
ガ、之ニ關スル所見如何、第二、假令在〓
軍人大會ニ於テ政治的決議ヲ爲ストモ、在
〓軍人ノ總意ニアラズト信ジマスガ、之ニ
對スル所見如何、第三、帝國在〓軍人會ハ
其規約ニ「陸軍大臣及海軍大臣ノ監督ヲ受
ク」トアリマスルガ、其集會ヲ政治的ニ利
用セシメナイ爲ニハ、如何ナル方法ヲ講ジ
ツヽアルカ、私ハ以上ノ三點ニ付テ陸軍大
臣ノ明確ナル御答ヲ願ヒタイノデアリマス
(拍手)
〔國務大臣林銑十郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006513242X02219340313&spkNum=136
-
137・林銑十郎
○國務大臣(林銑十郞君) 只今ノ宮脇君ノ
第一ノ御質問ハ、在〓軍人會ヲ政治的ニ利
用スルト云フコトハイケナイト思フガ、ド
ウデアルカト云フ御質問デアリマスガ、是
ハ申スマデモナク、在〓軍人會規約ニモア
リマス通リ、團體トシテ政治上ノ事ニ關與
スルコトハ、規約ニ於テ止メテ居ルノデア
リマス、是ハ當然政治的ニ利用スルコトハ
ナイコトヽ考ヘマス、ソレカラ第二ニハ、在
〓軍人會ニ於テ、何カ政治的決議ヲシテモ、
ソレハ在〓軍人ノ總意デハナイト思フ、旣ニ
第一ノ箇條ニ於テ述べマシタ如ク、在〓軍
人會ニ於テ、政治的決議ヲスルト云フコト
ハ、有ルベカラザルコトナノデアリマスカ
ラ、當然是ハサウ云フコトガ或ル所デ若シ
起ッタトシテモ、ソレハ在〓軍人ノ總意ダト
云フコトハ、無論言ハレナイト考ヘマス、
ソレカラ第三ハ、之ヲ取締ルニドウ云フ方
法ヲ執ッテ居ルカ、斯ウ云フヤウナ御尋ノヤ
ウデアリマスガ、是ハ在〓軍人ノ統率ヲス
ル在〓軍人會長ガ、之ヲ監督シテ居ルノデ
アリマシテ、此在〓軍人會長ハ、相當ナ取
締方法ヲ執ッテ居ルト思ヒマス、尙ホソレデ
不足デアルト考ヘル場合ニ於テハ、職務上
在〓軍人會長ニ注意ヲスルコトハアルダラ
ウト考ヘマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006513242X02219340313&spkNum=137
-
138・工藤鐵男
○工藤鐵男君 ソレニ關聯シテ一寸私ハ
點ダケ御伺シタイノデス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006513242X02219340313&spkNum=138
-
139・秋田清
○議長(秋田清君) 陸軍大臣ニ對スル質疑
デスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006513242X02219340313&spkNum=139
-
140・工藤鐵男
○工藤鐵男君 サウデス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006513242X02219340313&spkNum=140
-
141・秋田清
○議長(秋田清君) 許可シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006513242X02219340313&spkNum=141
-
142・工藤鐵男
○工藤鐵男君 近頃地方ノ新聞ヲ見マスル
ト、本院ニ議席ヲ有スル議員ニ對シマシ
テ、院內ノ言論ニ相當脅威ヲ與ヘテ居ルヤ
ウナ事實ガアルノデアリマス、而シテ現ニ
新聞紙ニ依ルト云フト、院內ノ言論ニ關聯
シテ辭職ヲ勸〓シテ居ル例モアルノデアリ
マス、或ハ其言論ヲ取消サシメントシテ、
多數ノ者ガ面會ヲ强要シテ居ル事實モアル
ノデアリマス、院內ノ言論ハ申ス迄モナク
極メテ大切ナルコトデアルニ拘ラズ、只今
陸軍大臣ノ監督ノ下ニ在ル所ノ在〓軍人會
ノ一部ニモ、斯樣ナルコトガアルノデアリ
マス、吾々ハ今日院外ニ於テ左樣ナル行動
ハ、洵ニ國家ノ現狀ニ見テ遺憾禁ジ能ザル
モノガアルノデアリマスルカラ(「下ラナイ
コトヲ言フナ」ト呼フ者アリ)陸軍大臣ハ在
〓軍人ヲ監督指導シ、殊ニ宮殿下ヲ戴イテ
居ル所ノ在〓軍人會、十万圓ノ皇室カラノ
御下賜金ヲ戴イテ居ル所ノ在〓軍人會、而
シテ國家ノ中堅ヲ以テ任ジテ居ル所ノ此在
〓軍人會、故ニ帝國議會ニ於キマシテハ、
此立派ナル仕事ニ對シマシテ、出來ルダケ
援助ヲ吝マザルガ爲ニ、二十五万圓ノ補助
金ヲ與ヘテ居ルノデアリマス、若シ院內ニ
於ケル斯樣ナル言動ニ對シマシテ、アナタ
ノ御監督ノ下ニ在ル在〓軍人會ノ、假令一
部デアッテモ、斯樣ナル責任ヲ負ハセルガ如
キコトヲスルノハ、アナタトシテ當然之ヲ
矯正シナケレバナラヌ重大ナル責任ト考ヘ
マスガ、此事實ガアリトスルナラバ、現ニ
アルガ、アリトシタナラバ、是ハドウ云フ
工合ニ調ベラレルカ、而シテドウ云フ監督
ヲシテ居ルノデアルカ、此席上ニ於テ御辯
明アランコトヲ私ハ切ニ希望スルノデアリ
マス(拍手)
〔國務大臣林銑十郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006513242X02219340313&spkNum=142
-
143・林銑十郎
○國務大臣(林銑十郞君) 只今ノ工藤君ノ
御尋ニ御答致シマスガ、只今ドウ云フ言論
ガ、此議會ノ議場內ニ於ケル言論ニ對シテ、
外側ニ起ッテ居ルカト云フコトノ詳シイコ
トハ存ジマセヌガ、恐ラク過日ノ宮脇君ノ
豫算總會ニ於ケル質問ニ關聯シテ、何等カ
論ゼラレテ居ルコトヽ考ヘマス、其宮脇君
ノ言ハレタ事柄ヲ、ドウ云フ風ニ感ジタカ
ト云フ御尋ヲ、前ニ治安維持法ノ委員會ノ
席デ受ケマシテ、其當時私ハ答ヘタコトガ
アリマスガ、宮脇君ノ質問ノ一部分ニハ、
穩カデナイト感ジタコトガアル(拍手)斯ウ
申シマシタ、ソレデ全體ノ御趣意ハ、今御
話ヲ承ッテ能ク分リマシタ如クニ、宮脇君ノ
考ハ、全體ノ御趣意トシテハ、決シテ彼此
言フベキデハナイデアリマセウガ、其用
ヒラレタ言葉ノ中ニハ、可ナリ在〓軍人ノ
人々ヲシテ妙ニ感ゼシムルコトガアッタヤ
ウダト云フコトヲ、私ハ明ニ申シマシタ、
サウ云フ事柄ガ問題ニナッテ居ルノデハナ
イカト考ヘマス、尙ホ其點ニ付テハ能ク調
ベル考デアリマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006513242X02219340313&spkNum=143
-
144・工藤鐵男
○工藤鐵男君 マダ徹底シマセヌカラ駄目
ヲ押シテ置キマス、ソレハ院內ノ言論ノ善
惡ハ、別ノ方法ヲ以テ之ヲ判斷スルコトガ
出來マセウ、併ナガラ私共ノ憲法上ノ保障
ハ、兩院議員ノ院內ニ於テノ意見、若クハ
表決ニ對シマシテハ、院外ニ於テ其責任ヲ
負フコトナシト規定セラレテ居ル、是ハ憲
法上ノ規定デアル、又逮捕權モ同樣デアリ
やく、故ニ陸軍大臣ハ、此點ヲ御了解願ヒ
タイ、憲法ノ條章ニ依ヶテ保障セラレタル
院內ノ私其ノ言論ガ、現ニアナタノ監督ノ
下ニ在ル團體員ニ依ッテ面會ヲ强要セラレ、
辭職ノ勸〓ヲセラレテ居ル事實ガアルト云
フコトデアリマスナラバ、斯樣ナルコトガ
漸次勢ヲ逞シウシタ場合ニ於キマシテ、立
憲政治ハ玆ニ滅ビルノデアリマス、アナタ
ハ此點ニ付テ御考慮ヲ下サイマシテ、此現
ニアル所ノ事實ニ對シテ取締ヲシナケレバ
ナラヌ、是ハ獨リ陸軍大臣ノ行政上ノ監督
バカリデハアリマセヌ、一步踏ミ込ムト云
フト、國法ニ觸レルノデアリマス、苟モ議
員ノ職責ヲ脅カシタリ、辭職ヲ强要シ、何
等カノ脅迫手段ヲ以テヤリマスルナラバ、
刑法上ノ制裁ヲ受ケルノデアリマス、私共
ハ二十五万圓ノ國家ノ補助金ヲ認メ、皇室
ノ恩寵ニ浴シマスル此在〓軍人會ガ、誤ッテ
國法ニ觸レルヤウナコトガアッタナラバ、ア
ナタハ陸軍大臣トシテ、其職責ヲ全ウスル
コトガ出來ナイト考へマスルカラ、一步誤
ルト國法ヲ犯スコトニナルノデアリマスカ
ラ、嚴ニ御監督ヲ願ヒタイト云フノデアリ
やく、歸スル所ハ、院內ニ於ケル言論ニ對
シマシテハ、何人ニモ指圖ヲ受ケルモノデナ
イト云フ憲法ノ鐵則ニ對シマシテ、アナタ
ガ相當ナル注意ヲ拂ハレマシテ、院外ニ於
ケル斯樣ナル、少クトモアナタノ監督ノ下
ニ於ケル團體ニ對シマシテハ、相當御考慮
アランコトヲ願ヒマスル爲ニ、前刻誤解セ
ラレテ居ル點モアリマスルカラ、更ニ此點
ヲ明カニ致シマス、他日ノ機會ニ於テ此點
ヲ明瞭ニ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006513242X02219340313&spkNum=144
-
145・秋田清
○議長(秋田〓君) 堀田海軍政務次官ハ發
言ヲ求メラレマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006513242X02219340313&spkNum=145
-
146・堀田正恒
○政府委員(伯爵堀田正恒君) 議長発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006513242X02219340313&spkNum=146
-
147・秋田清
○議長(秋田〓君) 堀田海軍政務次官
〔工藤鐵男君「私ノモ併セテ御答辯願ヒ
マス」ト呼フ〕
〔政府委員伯爵堀田正恒君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006513242X02219340313&spkNum=147
-
148・堀田正恒
○政府委員(伯爵堀田正恒君) 海軍大臣ハ
公務ノ爲ニ御伺ヒガ出來マセヌノデ、私カ
ラ御答辯申上ゲマス、海軍ト致シマシテモ、
只今陸軍大臣カラ御述ニナリマシタ通リデ
ゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006513242X02219340313&spkNum=148
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149・青木雷三郎
○靑木雷三郞君 殘餘ノ日程ヲ延期シ、本
日ハ是ニテ散會セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006513242X02219340313&spkNum=149
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150・秋田清
○議長(秋田〓君) 靑木君提出ノ動議ニ御
異議アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006513242X02219340313&spkNum=150
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151・秋田清
○議長(秋田清君) 異議ナシト認メマス、
仍テ動議ノ如ク決シマシタ、次會ノ日程ハ
公報ヲ以テ御通知致シマス、本日ハ是ニテ
散會
午後六時十八分散會
衆議院議事速記錄第二十號中正誤
頁段行誤正
四五一一一六保有輸送
四五一一三五國家物價
四五三三二〇前前ト
四五三三一二百百三十
四五三三一一二弱强
四五四二四初繭春繭
衆議院議事速記錄第二十一號中正誤
頁段行誤正
四九〇二七選選選擧
四百九十頁二段八行ノ次ニ細線ヲ挿入
五百六頁三段二十六行ノ次ニ細線挿入発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006513242X02219340313&spkNum=151
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