1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和十年三月二十三日(土曜日)午前十時二十九分開會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006701477X00519350323&spkNum=0
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001・大河内輝耕
○委員長(子爵大河內輝耕君) ソレデハ開
會イタシマス、內務大臣御出席下サッタノデ、
御都合モゴザイマセウト存ジマスカラ、第
ニ營業收益稅法中改正法律案ヲ問題ニ供
シマス、御質疑ノ御有リニナル方ハ此際御
願ヒ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006701477X00519350323&spkNum=1
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002・大岡忠綱
○子爵大岡忠綱君 本案ニ付キマシテハ、
去ル第六十五議會ニ於キマシテモ、貴族院
ノ有力ナ方ミガ、之ガ成立ヲ强ク希望サレ
マシテ、之ニ對シテ政府當局ニ於カレテモ
十分考慮ヲ拂ハレルト云フコトニナッテ居
リマシテ、其後地方稅及國稅ヲ通ジテ稅制
財政準備委員會等ニ掛ケラレマシテ、相當
審議ヲ圖ラレテ居ルコトト存ジマスガ、尙
ホ本議會ニ於キマシテモ、皆委員ノ方ミニ
於テモ、之ガ通過ヲ熱望シテ居ラレルノデ
ゴザイマスケレドモ、今迄ノ政府ノ御答辯
ニ依リマスト、マダ十分政府當局ノ御眞意
ガ明瞭ニナッテ居ラナイノデスケレドモ、尙
ホ此點ニ付テ內務大臣ノ明確ナル御所見ヲ
承レバ結構デゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006701477X00519350323&spkNum=2
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003・後藤文夫
○國務大臣(後藤文夫君) 政府ニ於キマシ
テハ、衆議院提出ノ本法律案ニ付キマシテ
ハ、從來モ屢〓〓中ゲゲテ居リマスガ如クニ、
法人營業ノ演劇興行ヲ營業收益稅ニスルト
云フコトハ、租稅形態ヲ整ヘマスル意味合
カラ致シマシテハ、純理論ニ於テハ之ニ反
對ヲ致ス譯デハアリマセヌ、唯之ニ伴ヒマシ
テ、演劇興行稅ノ撤廢ニ付テハ、何分地方
稅ニ三百五十萬圓カラノ財源ヲ減ズルヤウ
ナ······此儘デハ減ズルヤウナコトニ相成リ
マスル譯デ、地方財政窮乏ノ甚シイ折柄、
之ガ代リ財源ナクシテハ考慮ヲ致シ兼ネル
ヤウナ實情ニアル譯デアリマス、又地方雜
種稅中ニハ演劇興行稅ニ先ダッテ整理改善
ヲ加ヘナケレバナラヌヤウナモノモ色ミゴ
ザイマスルノデ、是等ヲ差措イテ獨リ演劇
興行稅ノミヲ整理イタスト云フ譯ニモ參リ
兼ネル事情デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006701477X00519350323&spkNum=3
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004・三井清一郎
○三井〓一郞君 只今內務大臣ノ御答ハ、
一言デ言ヘバ合理的ニ此營業收益稅ヲ改正
シテ行クト云フ、根本精神ニ於テハ、決シ
テ反對スルモノデハナイ、併シ代リ財源ヲ
作ラナケレバ三百五十萬圓餘ノ地方ノ財政
ニ影響ガアルノデアルカラ、本案ニ若干ノ
修正ガアッタナラバ、政府モソレニ對シテ善
處セラルルモノト考ヘマス、就テハ本改正
法案ノ附則ガ「昭和十一年四月一日ヨリ之
ヲ施行ス」トナッテ居リマスノヲ「施行期日
ハ勅令ノ定ムル所ニ依ル」ト修正イタシタ
ナラバ、政府ノ從來ノ御趣旨ニ必シモ不都
合ヲ生ズルモノトハ相成リマセヌト存ジマ
スガ、如何デアリマセウ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006701477X00519350323&spkNum=4
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005・後藤文夫
○國務大臣(後藤文夫君) 只今御提案ガア
リマシタ如キ法案ノ附則ヲ修正ヲ致シマシ
テ、施行期限ヲ勅令ニ委ネラレマスルニ於
テハ、前ニ申上ゲマシタ雜種稅等ニ付キマ
シテモ、又代リ財源關係等ニ付キマシテモ、
政府ニ於テ一ツ、銳意整理方竝ニ之ガ處理
方法ヲ考究努力イタシマスル期間ヲモ生ズ
ル譯デアリマシテ、其餘裕モ得ラレマスル
ノデ、此意味合ニ於キマシテ、若シ御修正
デ本法案ガ通過イタサレルコトデアリマス
レバ、政府ノ考ヘテ居リマス趣旨ニモ副フ
コトモ出來ルヤウニ考ヘラレマスルノデ、
政府トシテモ强ヒテ反對ハ致シマセヌ心持
デ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006701477X00519350323&spkNum=5
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006・大河内輝耕
○委員長(子爵大河內輝耕君) 御質問ハゴ
ザイマセヌカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006701477X00519350323&spkNum=6
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007・三井清一郎
○三井〓一郞君 政府ハ此修正セラレタモ
ノニハ反對スルモノデハナイ、斯ウ云フヤウ
ニ了解シテ宜シウゴザイマスカ······ソコデ
根本ニ付テ本案ニ御同意下サレタト云フコ
トハ、我〓滿足イタス次第デアリマスルガ、
本案ノ政府ノ考ヘラレテ居ル所ハ、施行期
日ガ確定シテ居ル爲ニ、政府ガ其間ニ此取
扱ヲスルノニ不便デアルト云フ御感ジデア
ラウト判斷イタシマス、自然施行期日ノ附
則ノ修正ト云フコトニナルト致シマスレバ、
ソレニ對シテ政府ハ若シ長イ期間實行ヲナ
サレヌデアッタナラバ、折角法律案ハ通過シ
テ、合理的ニ營業收益稅ノ中ニ入ッタトシテ
モ、實行シナケレバ效果ガナイノデアリマ
スカラ、是ハ何卒最モ近イ期間ニ於テ御實
行ニナルヤウニ、切望シナケレバナラヌト
思フ、其點ニ付テ御所見ガアリマシタラ伺
ヒタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006701477X00519350323&spkNum=7
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008・後藤文夫
○國務大臣(後藤文夫君) 政府ニ於キマシ
テハ、此問題ハ出來ル限リ早ク合理的ニナッ
テ實施サレルコトニ、地方財政ノ關係等ヲ
モ考究シテ參リタイト豫テ考ヘテ居ル所デ
アリマス、其點ハ十分一ツ努力ヲ致シテ見
タイト考ヘマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006701477X00519350323&spkNum=8
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009・三井清一郎
○三井〓一郞君 尙ホ本案ニ付テ、曩ニ政
府委員ノ御答辯中ニモ、一般ノ稅政整理ノ
時機ニ、若クハ內閣審議會ノ議ニ付シテ、
徐ロニヤラウト云フ考ガ、ソレトナク御答
辯中ニ含マレタヤウニ感ジマスルガ、當委
員會ハ此改正ハ成ルベク速ニ實行シテ戴キ
タイト云フ空氣デアリマスルカラ、我ニト
シテハ內閣審議會ニ掛ケルトカ、或ハ稅制
準備調査會ニ掛ケルトカ云フヤウナ、內容ニ
觸レテ論議スル者デハアリマセヌガ、ドウ
ゾ此營業收益稅ノ殘サレタ此演劇興行稅ハ、
早ク營業收益稅ノ中ニ纏メラレルト云フ、
此稅制ノ體系ヲ整ヘル上ニ重キヲ置カレテ、
速ニ御改正アラムコトヲ切望イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006701477X00519350323&spkNum=9
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010・大河内輝耕
○委員長(子爵大河內輝耕君) 他ニドナタ
カ御質間ゴザイマセヌデスカ······ソレデハ
御質問ガナケレバ討議ニ移リマス、御意見
ノ御有リニナリマス方ハ、此際御申述ヲ願
ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006701477X00519350323&spkNum=10
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011・三井清一郎
○三井〓一郞君 討議ニ這入リマシタニ付
テ、政府ノ御答辯ノ趣旨モ尊重シ、又本案
ノ成立ヲ希望スルト云フ意味カラ、衆議院
送付ノ原案ノ施行期日ヲ修正シタイ、詰リ
施行期日ヲ勅令ニ委任スルコトニ修正ヲシ
タイ、此修正動議ヲ提出イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006701477X00519350323&spkNum=11
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012・大河内輝耕
○委員長(子爵大河內輝耕君) 三井君ノ御
意見、別ニ御異議ハゴザイマセヌデスカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006701477X00519350323&spkNum=12
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013・大河内輝耕
○委員長(子爵大河內輝耕君) ソレデハ左
樣ニ決シマス、尙ホ此文案ニ付キマシテ只
今當局ノ意見ヲ聽キマシタカラ、私之ヲ代
リニ申述ベマス、「附則、本法施行ノ期日ハ
勅令ヲ以テ之ヲ定ム」、ソレカラ次ノ項ニ
「本法施行前ニ終了シタル法人ノ各事業年
度分ノ營業收益稅ニ付テハ尙從前ノ例ニ依
ル」、此意味ヲチヨット當局カラ簡單ニ御說
明ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006701477X00519350323&spkNum=13
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014・大矢半次郎
○政府委員(大矢半次郞君) 「本法施行ノ
期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム」ト云フノハ是ハ
別ニ言フ迄モアリマセヌガ、其次ノ「本法施
行前ニ終了シタル法人ノ各事業年度分ノ營
業收益稅ニ付テハ尙從前ノ例ニ依ル」ト云
フノヲ特ニ必要ト致シマスルノハ、本法施
行前ニ終了シタル法人ノ事業年度分ノ營業
純益ニ付テ本法施行ノ際ニ決定未濟ニナッテ
居ルモノハドウスルカト云フ問題ガ殘ルノ
デアリマス、斯カル事業年度分ニ付テハ本
法施行後ニ於テ之ヲ決定スル場合ニ於テモ、
尙ホ從前ノ例ニ依ッテ非課稅ノ扱ヒヲスル
ト云フコトヲ明カニスルガ爲ニ此規定ヲ要
スル譯デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006701477X00519350323&spkNum=14
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015・大河内輝耕
○委員長(子爵大河內輝耕君) 三井サンノ
御發言ニ付テ伺ヒマスガ、是デ宜シウゴザ
イマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006701477X00519350323&spkNum=15
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016・三井清一郎
○三井〓一郞君 私ノ動議ノ趣旨ニ合シテ
居ッタト考ヘマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006701477X00519350323&spkNum=16
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017・大河内輝耕
○委員長(子爵大河內輝耕君) ソレデハ之
ヲ議題ト致シマス······改メテ三井君ノ御提
案ト認メテ之ヲ議題ト致シマス、斯ウ云フ
風ニ附則ヲ修正イタシマシテ、此營業收益
稅法案ヲ可決スルト云フコトニ御異議ハゴ
ザイマセヌデスカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006701477X00519350323&spkNum=17
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018・大河内輝耕
○委員長(子爵大河內輝耕君) 御異議ナイ
ト認メマス、是デ此法案ハ決定イタシマシ
タ、次ニ昭和十年度一般會計歲出ノ財源ニ
充ツル爲公債發行ニ關スル法律案、昭和七
年法律第一號中改正法律案、昭和十年度一
般會計歲出ノ財源ニ充ツル爲公債追加發行
ニ關スル法律案、此三案ヲ問題ト致シマス、
大藏大臣ガ御出席ニナッテオイデニナリマ
スルカラ、大藏大臣ヘノ御質問ヲ此際御願
ヒ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006701477X00519350323&spkNum=18
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019・三井清一郎
○三井〓一郞君 此赤字公債ニ付キマシテ
ハ私ハ本日初メテ委員トシテ出席イタシマ
シタガ、前囘ニ於テ幾多ノ質問應答ガアリ
マシタノデ、最早大體ニ付テ能ク了解
シテ居ル次第デアリマスルガ、私ハ此際
ニ於テ大藏大臣ニ御尋ネシタイト思フ
コトガ一二アリマスノデ、御許シヲ願ッタ
次第デアリマス、我ミハ高橋大藏大臣ノ財
政經濟政策ニ付キマシテハ、全然共鳴
シテ居ル一人デアリマス、今日此世界的ノ
經濟非常時ニ於テ御執リニナッテ居ル政策
ニ付テハ、何等ノ意見ヲ持ッテ居ル者デアリ
マセヌガ、昭和七年カラ九年ノ末マデニ赤
字公債ガ約二十億七千萬圓餘出テ居ル、此
赤字公債ノ利子ガ爲替差損金ヲ加ヘマスト、
私ノ〓算デハ四億六七千萬圓ニナル、此赤
字公債ハ、自然此利子ハ國民ノ負擔トナル
コトハ勿論デアリマシテ、大藏大臣ハ公債
漸減政策ヲ御執リニナッテ、既ニ一億以上
ノ本年十年度ニ於キマシテハ、公債ノ發
行ガ減ジテ居ルト云フコトハ、此コニ御著
意ニナッテ居ル結果ト私ハ承知シテ喜ンデ
居ル次第デアリマスガ、兔モ角四億以上ノ
赤字公債ノ利子ヲ拂ッテ行クト云フコトハ、
將來餘程財政上困難ナ狀態ニ立到リハシナ
イカト云フコトヲ憂慮スルノデアリマス、
併シ今日ノ我國庫收入ノ現況カラ見テ、ド
ウシテモ時局ニ對スル總テノ經費ヲ賄フ爲
ニハ、公債政策ヨリ外ニナイト云フコト
モ、我々ガ十分了解シテ居ルノデアリマス
ガ、一方ニ於テハ此赤字公債ヲ減ズル上ニ
付テハ、行政財政ノ整理ヲシテ、成ルベク
國家ノ歲出ヲ減ジテ行クト云フコトヲ御考
ヘニナッテオイデニナルコトト信ジマス、殊
ニ內閣審議會等ヲ御設ケニナッテ、之ガ十分
ノ審議ヲ爲シテ、將來ノ財政ノ確立卽チ收
支ノ均衡ヲ得ント御努メニナルト云フコト
ハ、當然ノコトト思ヒマスルガ、此公債政
策ハ御承知ノ通リ財界ニ又一ノ影響ヲ與ヘ
マス、卽チ經濟界ノ動向ヲ若干此公債政策
デ左右シテ行クト云フコトハ、既往ノ事實
ニ鑑ミテ明カデアルト考ヘルノデアリマス、
現ニ昭和七年末以後ニ於テ、九年七月迄ニ、
十六億ニ近イ公債ヲ日本銀行カラ市中銀行ニ
賣却シテ居リマス、卽チ市場操作ヲヤッテ居
ル、此公債賣却ハ或ル場合ニハ金融ノ若干
ノ引締リヲ來シ、又或ル場合ニハ非常ナ「イ
ンフレーション」ノ害ヲ押ヘテ行ク所ノ良
藥トモナル、斯ウ云フ公債ノ動キガ市場ニ
影響シテ居ルト云フコトハ勿論デアリマ
ス、私ハ昨年九月ノ若干ノ財界反動ノ〓究
ヲシテ見マスルト、是ニハ種々ノ原因ガア
リマスガ、卽チ米國經濟界ノ沈滯ダトカ、
或ハ生絲輸出貿易ノ悲觀的見通シダトカ、
若クハ繭安ニ依ル農村購買力ノ減退トカ、
又軍縮問題ニ關係シテ國際的情勢ノ不安ダ
トカ、增稅ノ懸念ダトカ、市中銀行ノ四分
利公債ノ買過ダトカ、出超季節ノ九月上旬
ニ於ケル變態ノ入超ダトカ、重要商品ノ生
產過剩ノ懸念ダトカ、色〓ノ原因ガ集ッテ來
テ、昨年九月ノ若干ノ反動現象ヲ現ハシタ
ト考ヘマスルガ、併シ私ハ自分ノ〓究デ最
モ此關係ノ深カッタコトハ、昨年七月マデニ
日銀ガ市場操作ヲヤッタ、七月ダケデモ二億
七千萬圓ノ公債ヲ賣却シテ居ル、之ガ爲ニ
金融ガ若干逼迫シタト云フ現象ヲ呈シテ居
ル、斯ウ云フ狀況デアリマスノデ、現藏相
ノ御執リニナッテ居ル政策トシテハ、誠
我ミハ共鳴イタシマスガ、此政策ノ實行ニ
餘程ノ大藏省トシテ監督ヲシ、注意シナケ
レバ經濟界ニ大ナル波動ヲ與ヘハセヌカ、
斯ウ云フ憂慮ガアリマス、今後ニ於テモ斯
ウ云フ點ニ付テハ日銀ト大藏ノ關係其他ニ
於テドウ云フヤウナ方法ヲ講ジテ下サレテ
居ルカ、此點ヲ先ヅ御聞キシタイト思ヒマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006701477X00519350323&spkNum=19
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020・高橋是清
○國務大臣(高橋是〓君) 此財界ノ金融ノ
逼塞シタリ或ハ又緩慢ニナッタリ、又景氣ガ
好クナッタリ惡クナッタリ、此循環的ニ來ル
ト云フコトニ付テハ、其原因ハ今御話ノ通
リ種々樣ミナ原因ガアル、而シテ其原因ノ中
ニモ極ク一時的ノ性質ノモノモアルシ、又
稍〓恆久的ノモノト考へラレルコトニ依ッテ
起ッタ影響モアル、樣ミナ影響ガアリマスル
ガ、是ハ皆其時ミノ働ヲ爲シテ居ルノデ、一
一細カイ御說明ヲスルコトハ控ヘマスル
ガ、元來此公債政策ヲ新ニ設ケタト云フコ
トハ、抑〓、根本ノ基調ヲ整ヘルコトガ目的デ
アッタノデアリマス、御承知ノ通リ非常ナ不
景氣ニナッテ、金本位ニナッテカラ非常ナ不
景氣ニナッテ、サウシテ內地ノ產業ハ各方面
ニ於テ不振ノ狀態ニ陷ッテ、日ニ日ニ失業者
ガ多ク現ハレテ來ル、サウ云フ困難ナ場合、
一方ニ於テハ國防上又滿洲ノ事件ニ付テモ
段々政府ノ支出モ寧ロ增加スルトモ是ガ減
ルト云フヤウナ形勢ハ見エナカッタ、ソレデ
財界ノ有樣ハ、農ト云ハズ商ト云ハズ工ト
云ハズ、總テ段々收益ガ減ル、取得ガ減ル
バカリデアル、外國貿易モ思ハシクナイト
云フ有樣デアッタ、ソレ故ニ一方ニ於テハ、
又思想上カラ申セバ、或ハ共產主義ノヤウ
ナ說モ啻ニ說トシテ現ハレタノミナラズ、
隨分學識ノアル、將來大イニ望ヲ屬スベキ
若イ人達ノ、學識ノアル人達ノ頭迄ソレガ
映ジテ來タ有樣デアル、詰リ皆不安ノ念ニ
驅ラレテ居ッタノデアル、ソコデ或ハ資本主
義ト云フモノヲ非常ニ呪フ、ドウ云フモノ
ガ資本主義デアルカト云フコトノ詳シイコ
トハ餘リ〓究モセズシテ、唯資本ノ橫暴、
財閥ノ不埒ナコトトカ云フヤウナ考バカリ
起ッテ來ルヤウナ傾向ニナッテ來タ、而シテ
一方ニ於テハ、國費ハ寧ロ國際間ノ關係ニ
於テモ增加スル一方デアルノデアリマスカ
ラ、玆ニ於テ如何ニシテ此懷疑ニ傾イテ行
ク所ノ人心ヲ安定セシムルカ、此方法ハ如
何ニシタラ宜イモノカ、ソレガ又必要デア
ルト云フコトヲ一ツニハ感ジ、一ツニハ先
ヅソレ等ノ人心ヲ和ゲル上ニ於テモ、日々
失業者ノ殖エルト云フヤウナコトデハ是ハ
イカナイ、此失業者ホド國家ニ對シテ損害
ノ多イモノハナイノデアル、又是等ノ人ノ
働キヲ十分ニ實現スルヤウナ機會ヲ作ッテ
ヤルト云フコトガ必要デアル、從來人ノ働
キト云フヨリハ、資本ノ利益ト云フモノノ
割合ガ多ク分配サレテ來タ、是ガマア從來
カラ有ル所ノ小作爭議或ハ同盟罷工ト云フ
ヤウナモノガ起ッタ大イナル原因デアリマ
ス、ソレ是ヲ併セテ先ヅ差當リドウ云フ政
策ヲ取ツテ宜イカト云フコトガ、大問題ダ
ト考ヘタノデアリマス、ソレニ依ッテ起ッタ
考ガ低金利ノ政策、ソレカラ將來ドウシテ
モ公債ヲ發行シテ、サウシテ一方ニ於テ必
要ナ方法ヲ樹立スルト同時ニ、民間ノ資本
ガ行カナイ所ノ事業ニ向ッテ先ヅ政府ガ仕
事ヲ起シテ、サウシテ此失業者ヲ働カセル
途ヲ講ジナケレバナラヌ、又其上、民間ニ
於テ資本ト云フモノノ値ヲ安クシテ、金利
ヲ引キ下ゲテ、サウシテ人ノ働キノ方ニ利
益ノ赴クヤウニ方針ヲ執ラナケレバナラ
又、是ガ根本ノ觀念、ソレカラ起ッテ、手段
トシテハドウスルカ、從來ノ公債ノ發行ノ
方法デハ迚モ今日國ガドウシテモセネバナ
ラヌ仕事ヲスルニ必要ナ資本ヲ得ル爲ニ、
公債ヲ賣ルコトガ出來ナクナッタ、行キ詰ッ
タ、ソコデ公債發行ノ方法ヲ改メナケレバ
ナラヌ、ソコデ從來特殊銀行ニ相談ヲシテ
公債ノ引受ヲナサシメタ方法ヲ改メテ、直
ニ政府カラシテ一般ノ公衆ニ向ッテ公債ヲ
發行セズニ、一應日本銀行ヲシテ之ヲ引受
ケシメ、サウシテ一方ニ於テハ日本銀行ノ
發行制度ヲ改メル、玆ニ於テ公債ニ付テ先
刻御話ガアッタ、日本銀行ガ公債ヲ賣ッタガ
爲ニ、或ル時期ニ於テハ金融逼迫シタ爲
ニ、或ハ民間事業、產業ヲ妨ゲルニ至ッタ
ト云フヤウナコトデ、恰モ公債證書ト云フ
モノヲ、日本銀行ガ進ンデ一般ニ賣リ出ス
ト云フヤウニ御考ヘニナッテ居ルデハナイ
カト考ヘラレル、決シテサウ云フ譯デナ
イ、日本銀行ニハ、公債ヲ買ヒタイト云フ
人ガアッタラバ、ヨク理由ヲ質セ、從來公債
迄モ投機思惑ノ具ニ供ヘラレテ居ッタ、今日
ハサウ云フコトハ避ケナケレバナラヌ、凡
ソ有價證劵ナルモノノ樣ミナ種類ハアルケ
レドモ、國ノ公債、國ノ借用證文、一體日本
國民ノ所有トシテハ是ホド確カナモノハナ
イ筈ダ、然ルニ之ヲ投機思惑ノ具ニ供スル
ト云フコトハ宜クナイカラ、サウ云フモノ
ノ具ニナラナイヤウニ注意シナケレバナラ
ヌカラシテ、望ミ手ガアッテモ、何故ニ其ノ
公債ヲ持チタイ買ヒタイト云フノカ、其理
由ヲ質セ、而シテソレガ投機思惑ノ動機カ
ラ起ッタモノデナイ、確カニ貯蓄ノ金、自分
ノ持ッテ居ル金ノ餘ッタモノヲ放資スル、正
シイ投資物トシテ欲シイノデアルト云フヤ
ウナコトデアルナラバ、ソレハ政府カラ引
受ケタ先ヅ元値デ以テ其人ニ賣ッテヤレ、斯
ウ云フ命令ガ行ッテ居ルノデス、ソレ故ニ民
間デ他ニ向クベキ金ガアルノニ、ソレヲ抑
ヘテ公債ニ向ハシメタト云フ働キハ日本銀
行トシテハ決シテ取ッテ居ラナイノデアリ
やっ、民間デ其公債ニ應ズル力ガ出タト云
フノハ何カト云フト、詰リ前ニ申シタ通
リ、民間デ財界不況ノ場合ニ、商工共ニ、
造レバ損スル、賣レバ、買ヘバ、損スルト
云フ狀況デアルカラ、誰モ思切ッテ特ニ增加
ヲ見越シテ物ヲ造ッタリ買ッタリスル者ガナ
クナッタ、詰リサウ云フヤウニ商工業ノ仕事
ガ減ルカラシテ、之ニ從事シテ居ル人達ノ
仕事ガナクナルカラ、ソレ〓〓方々ニ失業者
ガ殖エテ來ルト云フノデアルカラ、國民ノ購
買力ガ段々縮小シテ行ク一方デアッタ、ソコ
ニ政府ガ仕事ヲ起シテ、ソレデ人ニ働キ
職業ヲ與ヘル、職業ニ就ケバ、生活費ヲ拂ッ
テ多少ノ餘裕ガソコニ生ズルト云フ、此餘
裕ト云フモノガ重ナリ重ナッテ民間ノ資本
ト云フモノガ殖エテ來タガ、其殖エルダケ
一方ニ於テ投資スベキ堅實ナル仕事ガ起ラ
ナイカラシテ、餘ッタモノヲ以テ日本銀行
ニ、金利カラ云ヘバ一番安イ所ノ政府ノ公
債ヲ欲シイト云ッテ、貯蓄銀行ニシテモ、普
通ノ銀行ニシテモ、或ハ信託會社ノヤウナ
モノニシテモ、中ニハ又個人ニシテモ、日
本銀行ヘ買ヒニ來ル人達ノ中ニハ、或ハ二
萬圓、三萬圓、五萬圓ト云フヤウナ小サイ
望ミ手ノ用ヲ爲ス爲ニ、證劵業者ナドガ買
ヒタイト云フ理由ヲ述ベテ申出テ居ル、サ
ウ云フ有樣カラ見ルト云フト、萬遍ナク稼
イデ、餘裕ガソコニ出テ來テ、其餘裕ノア
ル金ヲ何カニ放資シタイ、其放資シタイト
云フ其希望ガ、御承知ノ通リ隨分此民間ノ
會社ノ債劵ヤ株劵ニモ、相當ニ今日ハ放資
スル人ガアル、殊ニ此滿洲鐵道或ハ滿洲國
ノ公債ナドニモ、一般ノ人ガ應ズルヤウナ
譯デ、必シモ我國ノ公債ノミト云フ譯デハ
決シテナイ、併シ是ガ固マッテ日本銀行デ政
府ガ公債ヲ出シテモ〓〓赤字公債ガ捌ケテ
行クト云フノデ大變ニ目ニ立ツガ、數字ノ
上デ調ベテ行キマシタナラバ、必ズ囘復シ
テ來タ經濟界ノ囘復ニ連レテ國民ノ餘裕ガ
生ジテ來タト云フ金ガ、悉ク此公債ニ行ッテ
居ルト云フ譯ノモノデハ決シテナイノデアッテ、
却ッテ民間ノ增資或ハ社債或ハ府縣債ト云フヤ
ウナモノニ、矢張リ相當ニ皆投資サレテ居ル、
サウ云フ譯デアリマスカラシテ今日ノ政府ノ公
債政策ガ、必要ナル此民間ノ生產資金ヲ壓迫
シテ居ルト云フ其弊害ハ、今日ハ先ヅ無イ
モノト私ハ考ヘテ居ル、デ將來モ此風デ行
キマスカラシテ、決シテ民間ノ經濟上ノ發
達ヲ妨ゲル迄ニ、日本銀行ガ公債ヲ賣付ケ
ルト云フコトハナイモノト御承知ヲ願ヒタ
イ、ソレカラ成程國民ノ負擔トシテハ公債
ガ非常ニ殖エルノデアリマスカラ、將來長
キニ亙ッテ此公債ノ元利ヲ償還スルト云フ
コトデ、現在ノ國民ナリ、我ミノ次ノ國民
ナリガ之ヲ皆負擔シナケレバナラヌ、併ナ
ガラ斯ノ如ク公債ヲ出スト云フコトモ已ム
ヲ得ズ是ハ出スモノデ、只今申シタヤウニ、
之ヲ若シ出サズニ政府ガヂットシテ何ニモ
セズニ居レバ、政府ノ歲入モ段々ト減ル一
友、政府ノ歲入ノ減ルノハ民間ノ農商工業
者ノ收入ノ減ル結果ガソコニ及ンデ來ルノ
ダカラシテ、益〓萎縮シテ日本全體ガ殆ド先
ヅ行詰ッタ狀態ニ行ク、ソレヲ避ケル爲ニハ
何トシテモ已ムヲ得ザル今日迄ノ政府ノ政
策ダト私ハ考ヘテ居ル、デアリマスシ、將
來是ガ進ンデ行キマスレバ、御承知ノ通リ
人口ハ我國ハ年々殖エテ行ク、殖エテ行ク
ニ從ッテ國民ノ生產力モ伸ビテ行ク、後藤ノ
此收入モ殖エテ行ク、御承知ノ通リ、政府
ノ租稅其他ノ收入ニ於テモ、日露戰爭時代
ニハ僅カ三億カ四億ヲ以テ賄ッテ居ッタ此我
國ガ、今日二十何億ニ進ンダ、此位先ヅ國
民ノ收益モ殖エテ行クモノデアリマスカラ
シテ、此調子デ進ンデ行ケバ、今日ノ赤字
公債ノ元利負擔ヲ、將來ノ人ニモ現在ノ人
三、、サウ迷惑ヲ掛ケズニ濟ンデ行クノヂ
ヤナカラウカ、是ハ少シ樂觀カモ知レヌケ
レドモ、サウ考ヘテ居ル発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006701477X00519350323&spkNum=20
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021・三井清一郎
○三井〓一郞君 大藏大臣ノ御懇切ナル御
答デ非常ニ滿足イタシマス、殊ニ日本銀行
ノ市場操作ガ、日本銀行自發デナク、各地
方銀行其他個人等ノ希望デ公債ヲ賣却シテ
居ルト云フコトニ付キマシテハ、能ク了解
イタシマシタガ、唯私ハ是ガ普通、今年ニ
於テモ調ベテ見マスト、一月二月ノ日銀ノ
公債賣高ガ一億六七千萬圓、殆ド一定シテ
居リマス、約是位デ今迄御發行ニナッタ公
債ガ、月ミ平均シテ動イテ行クト云フコト
ガ、經濟界ニ大ナル影響ヲ與ヘナイガ、市
中銀行ガ非常ニ氣分ガ一ツニナッテ、日本銀
行ヘ澤山ノ申込ガアッテ、昨年ノ七月ガ二億
七千萬圓、六月モ矢張リ二億圓、サウ云フ
ヤウニ固マッテ行キマスト云フト、若干金融
逼迫ノ狀態ヲ呈シハセヌカト憂ヘテ居ル、
併シ其點ハ大藏省ト日銀ノ間ニ十分ノ御連
絡ガアッテ、御統制ニナッテ居ルトスレバ、
誠ニ結構ト思ヒマス、モウ一ツ甚ダ時間ヲ
費シテ濟ミマセヌガ、御伺ヒ致シタイノハ、
是ハ旣ニ此委員會デ御尋ネニナッテ居ルコ
トト信ジマスガ、私ハ今日初メテ出席イタ
シマシタノデ重複スルカモ知レマセヌガ、
此公債消化ノ經路ヲ我〓ガ〓究シテ見マス
ルト、色ミソレニハ議論ガアリマスルガ、
一部ノ財界ノ人等ガ、政府發行ノ公債ガ日
本銀行ヘ廻ッテ、サウシテ其代金ガ軍費其他
財政上ノ費ニ當テラレテ居ル、其經費ガ又
政府ノ支拂トナッテ銀行ヘ入ッテ來ルソレガ
貸付資本ニ轉化スル、貸付資本ガ金融市場
ニ過剩ヲ生ジテ、日本銀行所有ノ公債ニ向
ケラレル、所謂資金ノ盥廻シ、斯ウナッ
テ行クカラ、公債ハ消化サレテ、何時迄
公債ノ消化力ト云フモノハ可能デアル、斯
ウ云フ議論ヲ立テル人モアリマスガ、私等
ハサウ盥〓シデ公債ガ圓滿ニグル〓〓廻リ
ヲシテ都合好ク行クトハドウモ信ゼラレヌ
點ガアル、或ル場合ニ於テ此公債ノ消化力
ガ非常ニ減ジテ來ハセヌカト云フヤウナ憂ヲ
持ッテ居リマスガ、之ニ付テ甚ダ御迷惑デ
アリマスガ、藏相ノ御所見ヲ伺ヒタイト思
ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006701477X00519350323&spkNum=21
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022・高橋是清
○國務大臣(高橋是〓君) 全ク御同感デ
ス、能ク世間デハ盥〓シト云ッテ、中ニハ政
府ニハ政府ガ軍事費其他ニ金ヲ使フノニ公
債ヲ際限ナク出シテ居ル、今ノヤウニ盥廻
シデ一般國民ノ手ニ入ッテ、其餘リヲ又日本
銀行ニ持ッテ來テ、公債ハ如何ニモソレデ以
テ消化サレルノダト云フヤウナ議論ヲ、隨
分相當ナ人ガスル、是ハ誠ニ危險ナ話デア
ル、サウ云フ譯ノモノデハナイ、是迄公債
ガ、比較的能ク潤澤ニ動イテ行キ、又民間
ノ銀行其他ノモノガ之ニ應ズル力ガ存外多
ク出來タト云フモノハ、元來不景氣時代迄
ニ金融機關其他ノモノガ出シタ金ガ氷結シ
テシマッテ、資金化サレナイ狀態ニアッタ、
ソレガ緩ンデ來タト云フコトモ、是モ考ノ
中ニ入レテ置カナケレバナラヌ、是ガ氷結
シ、固定シテ居ッタ、此不動ノ貸金ト云フモ
ノガ動イテ來タモノデスカラ、一時ニ公債
社債等ニ應募スル力ガ殖エタノダケレド
モ、新ニ興ッタ力ヂヤナイ、元貸付ケタ金ガ
活返ッタ、卽チ死ンダト同樣ノ金ガ活返ッテ
來タト云フノガ、借リタ方ニモ又貸シタ方
ニモ幸トナッテ、玆ニ一時大イニ消化力ガ伸
ビタ、ソレヲ以テ直ニ盥廻シニ行ッテ居ル
ト云フノハ、大イナル間違ヒダト私ハ考へ
テ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006701477X00519350323&spkNum=22
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023・三井清一郎
○三井〓一郞君 私ノ質問ハ是デ終リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006701477X00519350323&spkNum=23
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024・大河内輝耕
○委員長(子爵大河內輝耕君) ドナタカ大
藏大臣ニ對スル御質問ハゴザイマセヌデス
カ······ゴザイマセヌケレバ、大藏大臣ハ御
忙シイダラウト存ジマスカラ、大藏大臣
ハ御退席ニナッテモ宜シウゴザイマセウ
カ······ソレデハドウゾ··他ニ此三案ニ
付キマシテ御質疑ノ御有リニナル御方ハ御
願ヒ致シマス、別ニ御質問ゴザイマセヌデ
スカ、別ニ御質問ガゴザイマセヌケレバ、
採決ニ移リタイト存ジマス、此昭和十年度
一般會計歲出ノ財源ニ充ツル爲公債發行ニ
關スル法律案、昭和七年法律第一號中改正
法律案、竝ニ昭和十年度一般會計歲出ノ財
源ニ充ツル爲公債追加發行ニ關スル法律
案に、是ハ全部原案通リ御異存ゴザイマセヌ
カ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006701477X00519350323&spkNum=24
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025・大河内輝耕
○委員長(子爵大河內輝耕君) 御異議ナイ
ト認メマス、ソレデ此三案ハ決定イタシマ
シタ、次ニ不動產融資及損失補償法中改正
法律案ヲ問題ニ供シマス、先ヅ政府委員ノ
說明ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006701477X00519350323&spkNum=25
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026・矢吹省三
○政府委員(男爵矢吹省三君) 不動產融資
及損失補償法中改正法律案ニ付テ御說明申
シマス、御承知ノ如ク不動產融資及損失補
償法ニ依ル不動產資金ノ融通ハ、昭和七年
本法ノ制定セラレマシタ當時ニ於ケル金融
梗塞ノ狀勢ニ鑑ミマシテ、銀行ノ有スル不動
產、固定資產ヲ資金化シテ、其活動ヲ圓滑
ナラシメ、以テ金融ノ疏通ヲ圖ラントスル
施設デアリマスガ、現行法ニ依リマスレ
バ、其融通期間ハ本年九月末ヲ以テ終了ス
ルコトニナッテ居リマス、本融通開始後二
年餘ヲ經過シマシタ今日迄ノ實蹟ニ徵シマ
スレバ、本法ニ依ル資金ノ融通高ハ昭
和九年末ニ於テ、累計三千八百二十一
萬圓ニ達シマシタガ、其外ニ或ハ寢抵當
ヲ設定シ、或ハ將來ノ貸付ヲ目的トシテ抵
當物件ノ調査ヲ行フ等ノ方法ニ依リマシ
テ、豫メ本法ノ發動ニ備ヘタルモノモアリ
マシテ、其銀行ノ信用ヲ確保シ金融界ノ安
定ニ資スルコト頗ル大ナルモノガアッタト
考ヘマス、而シテ最近ニ於キマシテハ、政
府ノ低金利ノ政策ノ各種政府資金ノ放出ニ
伴ヒマシテ、有價證劵ハ値上リヲ見、又預
金モ增加シツツアル結果、銀行ノ資產內容
ハ漸次改善セラレ、手許資金モ亦潤澤トナ
リマシタガ、何分ニモ經濟界ハ未ダ全般的
ノ囘復ヲ見ル迄ニ至ラズ、不動產ノ價格モ
僅ニ低落ノ步ヲ止メタルニ過ギヌ狀態デア
リマスカラ、銀行ノ固定資產ヲ流動化シ、
以テ金融ノ疏通ヲ圖ルノ必要ハ依然トシテ
存シ、從テ今後ト雖モ本制度ノ繼續ヲ必要
トスルノデアリマス、殊ニ昨年中ハ殆ド全
國ニ互ッテ各種ノ災害ガ相踵イデ起リ、之ガ
爲ニ銀行ニ於ケル不動產、固定資產ノ整理
ハ進捗ヲ阻害セラルルニ至リマシタノデ、
特ニ其必要ガ認メラレルノデアリマス、斯
カル次第デアリマスルカラ、本法ニ依ル不
動產資金ノ融通期間ハ、之ヲ相當延長スル
必要ガアルノデアリマスガ、其延長ノ期間
ハ經濟界ノ狀勢、銀行固定資產ノ整理ニ要
スル時日等ヲ考慮シマシテ、本年十月以降
三年トスルコトヲ適當ト認メマシタノデ、
本改正案ヲ提出イタシタ次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006701477X00519350323&spkNum=26
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027・高崎弓彦
○男爵高崎弓彥君 チヨット御尋ネシマス
ガ、今ノ御說明中ニ金額ノ三千八百二十一
萬圓餘トアリマシタガ、是ハ此不動產融資
ニ對スル金額ナノデゴザイマスカ、チヨット
聽キ漏シマシタノデ··発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006701477X00519350323&spkNum=27
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028・矢吹省三
○政府委員(男爵矢吹省三君) 三千八百二
十一萬ハ、九年末マデニ出シマシタ、融通
イタシマシタ總計デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006701477X00519350323&spkNum=28
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029・高崎弓彦
○男爵高崎弓彥君 是ハ不動產ニ對スル今
ノ九年末マデノ融通總計ニナッテ居リマス
カ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006701477X00519350323&spkNum=29
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030・矢吹省三
○政府委員(男爵矢吹省三君) 左樣デゴザ
イマス、不動產ニ對シテ貸付ケマシタ、融
通イタシマシタ總計ナノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006701477X00519350323&spkNum=30
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031・山本米三
○山本米三君 此不動產融資ノ施行サレマ
シテ以來、殆ド三箇年ニ垂ントスルノデア
リマスルガ、成績ハ餘リ宜クナイヤウニ思
ハレルノデ、政府ハ五億圓ヲ豫定サレマシ
タニモ拘ラズ、只今此表ヲ頂戴イタシマシ
タ額ニ依リマスト、三千二十八萬餘圓、斯
ウ云フコトニ相成ッテ居リマスルガ、餘リト
シテ其成蹟ガ擧ッテ居ナイト云フコトハ、利
子ガ餘リ高イト云フ風ナコト、及ビ又取扱
ニ付キマシテ農工、勸銀等ノ銀行ノ取扱
ガ、餘リ抵當物ナドヲ見マスルノニ嚴密ニ
過ギマシテ、此不動產貸付ノ、融資貸付ノ
趣意ニ副ハナイヤウナコトノ爲ニ、此成蹟
ニ依リマスルト、不動產融資及損失補償法
ニ依ル融資ニ關スル損失補償ノ申請ハ一ツ
モナイト云フコトニ依リマシテモ、餘リ嚴
密ニ過ギタノデナイカト云フ風ニモ思ハレ
マスルガ、政府ニ於キマシテノ御所見ハ如
何デゴザイマセウカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006701477X00519350323&spkNum=31
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032・荒井誠一郎
○政府委員(荒井誠一郞君) 私カラ御答ヘ
致シタイト存ジマス、不動產融資ノ貸付高
ガ當初ノ豫想ニ比シテ非常ニ少イデハナイ
カ、是ハ御尤ナ御尋デアリマス、當時ニ於
キマシテハ只今御話ノ如ク五億圓ヲ融通イ
タシマシテ、其二割、一億圓ノ補償ガ必要
デアラウト云フ趣旨カラ法律案ガ提案ニ
ナッタノデアリマス、御承知ノ通リ、當時
ニ於キマシテハ非常ニ金融界モ逼迫イタシ
テ居リマシテ、相當巨額ナ不動產融資ノ資
金ヲ供給イタシマセヌケレバ、財界ノ安定
モ出來ヌダラウト云フ考カラ、斯ノ如キ計
畫ニナッテ居ッタノデアリマスガ、其後ニ於
キマシテ金融狀況ガ非常ニ變化イタシマシ
テ、只今說明ガアリマシタ通リ銀行ノ手許
資金モ順次潤澤ニナッテ參ッタノデアリマス、
其當時豫想イタシマシタ如ク、多クノ不動
產抵當債權ヲ資金化スル必要ガ減ジタト云
フコトガ、一ツノ理由カト思フノデアリマ
ス、又此法律ヲ實行イタシマシテ、愈〓勸業
銀行ナリ農工銀行ナリガ貸付ヲ致シマスニ
付キマシテ、一番困難ニ感ジマスノハ、普
通銀行ガ不動產ニ貸シテ居リマス其抵當ニ
取ッテ居リマス價格ガ頗ル高イモノデアリ
マスカラ、此評價ノ關係カラ、ナカ〓〓融
資ガ容易ニ行ハレナカッタノデアリマス、此
點ニ付キマシテハ、法律ニ於キマシテ、特
ニ勸業銀行法、農工銀行法ノ例外ト致シマ
シテ、普通デアリマスナラバ算定價格ノ三
分ノ二マデ貸付ケルト云フモノヲ、全額マ
デ貸付ケルト云フ方法モ用ヰテ居ルノデア
リマシテ、緩和ノ方法ハ開イテアルノデア
リマスガ、併シソレハ尙ホ困難ヲ生ジテ居
ルノデアリマス、又地方ニ依リマシテハ、
普通銀行ト農工銀行トノ連絡ガ從來アリマ
セヌノデ、何カ不動產銀行ニ肩替リヲ致シ
マストカ、或ハ資金ノ融通ヲ受ケマストカ
云フ際ニ於キマシテ、銀行ノ內容ヲ疑ハレ
ルト云フヤウナ虞カラ、之ヲ下ゲテ居ルモ
ノモアルノデアリマス、其點ニ於キマシテ
ハ、今日ハ漸次其誤解モ解ケマシテ、必要
ナル資金ノ融通ヲ受ケルト云フコトニ機運
ガ向イテ居ルト思フノデアリマス、我ニノ
考ヘテ居リマスノハ、是等ガ主要ナル原因
ト思ハレルノデアリマスガ、只今御話ノ金
利ノ點、是モ確ニ左樣デアルト思ヒマス、
金利ガ勿論安ケレバ安イダケニ銀行ガ借入
レ致シマスニ付キマシテモ樂デアリマスシ、
又直接ニ肩替リヲスル場合ニ於キマシテモ、
借主ガ安イ金利デ借リラレマスレバ、勿論
希望スル者ガ多イカト思ハレルノデアリマ
ス、此點ニ付キマシテハ、昭和八年當時ト
ハ金融ノ狀況モ變ッテ參リマシテ、金利モ低
下致シタ次第デアリマスカラ、預金部資金
ノ許ス範圍內ニ於キマシテ、金利ヲ下ゲテ
貰フト云フコトデ、今日考究中デアリマス、
方針ト致シマシテハ之ヲ下ゲルト云フコト
ニ決定致シテ居ルノデアリマス、唯此資金
ノ目的ガ金融ノ梗寒ヲ解クト云フコトニア
リマシテ、不動產資金トシテ特ニ低利ナル
資金ヲ供給スルト云フコトデハナイノデア
リマス、預金部資金ノ最モ安イ金利ヲ以テ
融通スルコトハ困難ナ事情ニアルト思ハレ
ルデスガ、出來ルダケ安イ資金ヲ供給スル
ト云フコトニハ、今日方針ハ決マッテ居ルノ
デアリマス、モウ一ツ御尋ノ手續ノ點ト云
フノデアリマスガ、是ハ手續ニ付キマシテ
ハ、今日法律上ノ手續ト致シマシテ、銀行
ガ再擔保ニ入レルト云フ場合ニハ、債務者
ニ通知ヲスルト云フコトモアリマスシ、ソ
レガ爲ニ債務者ノ方デモ、銀行ガ再擔保ニ
入レテ金ヲ借リテ居ルノダナト云フコトモ
分リマスノデ、色ミ其點ニ付テ銀行トシテ
ハ又好マシクナイト云フコトヲ考ヘテ居ル
モノモアリマスルガ、主トシテ評價ノ點ガ
ナカ〓〓困難デアルト云フコトニ歸著スル
ノデハナカラウカト思ヒマス、此評價ノ點
ニ付キマシテハ、銀行ト致シマシテモ、自
分ノ不動產貸モアルモノデアリマスカラ、
特ニ此融通ニ付キマシテ評價ヲ高メルト云
フコトモ困難ナ事情デアリマスノデ、出來
ルダケノ評價ヲスルト云フコトニハ、大藏
省トモ打合セハ致シテ居ルノデアリマス、
尙ホ普通銀行ノ評價ト不動產銀行ノ評價ト
ノ間ニ、從來モ違ヒガアリマスシ、今日ニ
於テモ違ヒガアリマスノデ、此點ニ付キマ
シテハ尙ホ我ミト致シマシテ、出來ルダケ
ノ相談モ致シマシテ、何トカ緩和ノ方法ガ
アリマスレバ、是ハ講ジタイト云フコトニ
モ考ヘテ居ル次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006701477X00519350323&spkNum=32
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033・山本米三
○山本米三君 詳細ニ承リマシテ了承致シ
マシタガ、只今御貸出シニナッテ居リマス利
率ハ、ドウ云フ風ナコトニナッテ居リマス
カ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006701477X00519350323&spkNum=33
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034・荒井誠一郎
○政府委員(荒井誠一郞君) 只今預金部カ
ラ貸出シマス利率ガ五分三厘デアリマシ
テ、銀行ガ其間ニ立チマシテ七厘ノ利鞘ヲ
取ルノデアリマスカラ、結局六分ニナリマ
シテ、銀行ノ手ニ渡リ、或ハ肩替リノ場合
ニ於キマシテハ、債務者ノ手ニ渡ル、斯ウ
云フコトニナッテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006701477X00519350323&spkNum=34
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035・山本米三
○山本米三君 預金部ノ金デゴザイマスル
ト、モウソレ以上ハ下ゲラレナイノデゴザ
イマスカ、只今ノ此低利金利ノ際デゴザイ
マスノデ、尙ホ一層低減ノコトニ御意思ハ
ゴザイマセウカ、承リタイデスガ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006701477X00519350323&spkNum=35
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036・荒井誠一郎
○政府委員(荒井誠一郞君) 只今申上ゲマ
シタ通リ、五分三厘ト申シマスモノハ昭和
七年當時決メタモノデアリマスカラ、今日
金利ガ低下致シマシタ狀勢ニ應ジマシテ、
或ル程度マデ是ハ下ゲタイト云フコトニ、
只今相談中デゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006701477X00519350323&spkNum=36
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037・大岡忠綱
○子爵大岡忠綱君 只今戴キマシタ不動產
融資貸付高種類別調ノ中ニ、不動產貸、債
權質、眉替貸等ガゴザイマシテ、之ニ對シ
テ此コニ年賦、定期ト云フヤウナコトニ分
レテ居リマスガ、此點チヨット說明ヲ願ッテ
置キタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006701477X00519350323&spkNum=37
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038・荒井誠一郎
○政府委員(荒井誠一郞君) 不動產融資貸
付高種類別調之ニ付テ御說明申上ゲマス、
銀行名ト致シマシテ農工銀行、勸業銀行、
北拓ト斯ウ云フ風ニ種類別ヲ致シマシテ、
其下ニ、橫ニ數字ガ出テ居リマスノハ、行
數デアリマス、不動產貸ト横ニ出テ居リマ
スノガ、是ハ銀行ガ持ッテ居リマスル不動
產ヲ抵當ニ致シマシテ、勸業銀行、農工銀
行、北拓等カラ金ヲ借ル場合デアリマス、
ソレガ年賦ト定期トアルノデアリマス、債
權質ト申シマスノハ、銀行ガ或ル者ニ不動
產ヲ抵當トシテ債權ヲ持ッテ居ルノデアリ
マスガ、ソレヲ質ト致シマシテ不動產銀行
カラ金ヲ借ルノデアリマス、其中ニ定期ト
アリマシテ、年賦ト云フモノハナイノデア
リマスガ、是ハ只今ノ法律ノ規定カラ致シ
マシテ、此銀行ガ債權質ヲ以テ不動產銀行
カラ借リマス場合ニハ、定期ト云フコトニ
ナッテ居ルノデアリマスガ、是ハ定期ト申
シマシテモ、一時ニ返ス普通ノ定期ノ外
ニ、尙ホ分割拂モアリマスデスカラ年賦貸
ト同ジヤウナ作用ハ致シテ居ルノデアリマ
スガ、唯區分上定期ト云フモノニ二ツガ包
含サレテ居ルモノデアリマス、肩替貸、是
ハ銀行ガ持ッテ居リマスル債權ノ辨濟ヲ受
ケマシテ、其債務者ハ不動產銀行カラ更ニ
金ヲ借リル場合デアリマス、詰リ銀行ノ持ッ
テ居リマスル不動產抵當債權ガ不動產銀行
ノ方ニ移ル場合デアリマス、其場合ニハ年
賦貸ト定期貸トアルノデアリマス、其下ノ
モノハ是等ヲ合計イタシマシテ計ヲ出シテ
居ルノデアリマス、此合計ガ三千八百萬圓
ニナッテ居ルノデアリマス、ソレガ囘收ヲ
致シタモノモアリマスノデ、貸付現在高ガ
昭和九年十二月三十一日現在ニ於キマシテ
三千二十八萬五千圓、斯ウ云フコトニナッテ
居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006701477X00519350323&spkNum=38
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039・山本米三
○山本米三君 只今ノ此改正ノ條項ハ、詰
リ是マデノ三年ヲ六年ト云フコトニナッテ
居リマスルガ、融通期限ノ十五年ノ方ハ、
御延バシニナル御意思ハナイノデゴザイマ
スネ、御必要ハナイト云フノデセウカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006701477X00519350323&spkNum=39
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040・荒井誠一郎
○政府委員〈荒井誠一郞君) 只今御尋ノ通
リ、今度ノ改正ハ唯融通期限ノ三年ヲ六年
ニ致スト云フコトデアリマスガ、從ヒマシ
テ今後融通イタシマスモノニ付キマシテ
ハ、十五年ト云フモノガ段々短イモノガ出
來ルノデアリマス、九年ニナルノガアルカ
ト思ヒマスガ、今日ノ狀況ニ於キマシテ
ハ、此期限ハ延バサヌデモ、大體此位ナ年
限デ間ニ合フダラウト云フ豫想ヲ以テ、其
點ニ付テハ改正イタサナイノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006701477X00519350323&spkNum=40
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041・三井清一郎
○三井〓一郞君 此不動產融資ノ此法律
ノ、法ノ精神ハ、丁度昭和七年頃隨分農村
其他ノ借金ガ多イト云フヤウナコトカラ、
不動產ヲ抵當ニ入レテ借リル者ヲ保護スル
意味、及ビ地方ノ銀行ノ資金ヲ豐カニシ
テ、是等ノ貸付ニ支障ノナイヤウニ考ヘタ
法律デアッタノデアリマス、ソレガ爲ニ政
府ハ約五億ノ二割、一億補償金ヲ一億マ
デ支出シテモ宜イト云フコトニ法律ガ規定
シタノデアリマス、先刻山本サンノ御質問
ノ如ク、案外今日マデ實行シタ跡ヲ尋ネマ
スト云フト、僅カナ貸付デ濟ンデ居ルト云
フノハ先刻、政府委員ノ御答辯ノ、所謂市
中銀行ニ金ガダブ付イタ爲ニ其必要ガナ
カッタト云フコトガ大ナル原因デアレバ、
結構デアリマスルガ、ドウモ大藏省ガドウ
云フヤウニ市中銀行ヲ御監督ニナッテ居ル
カ知リマセヌガ、市中銀行ハ公債ヲ買ッテ
置ク方ガ下手ナ貸付ヲスルヨリハ利益ダト
云フ場合ニハ、公債ニ飛ビツク、利益ガ決
シテ念頭カラ離レテ居ナイ、此農村等ノ不
動產貸付ヲ努メテ融通ヲシテ、法ノ精神ヲ
徹底セシメルト云フコトハ、到底ムヅカシ
イノヂヤナイカ、是ハ大藏省其他ノ銀行監
督ガ徹底セナケレバ、私ハ今後三年延バシ
テモ、大ナル實蹟ガ擧ガルモノヂヤナイ、
斯ウ考ヘラレルノデスガ、私ノ聞イテ居ル
所デハ、此不動產融資法律ガ出マシテカラ
後ニ、地方銀行ニ不動產ヲ抵當ニシテ借金
ヲシテ者ハ差押ヘヲセラレ、遂ニ公賣處分
ヲ受ケタト云フ者モアルヤニ聞イテ居リマ
スルガ、ソレデハ此不動產融資損失、政府
ガ一億ノ損失マデ補償スル肚ヲ決メテ此法
律ヲ出シタ趣旨ニ反スルヤウニ考ヘマス、
是等ノ監督方ハ、内務省ナリ大藏省ナリガ
ドウ云フ方法ヲ執ッテ、ヤッテオイデニナリ
マスルカ、一應御漏ラシヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006701477X00519350323&spkNum=41
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042・荒井誠一郎
○政府委員(荒井誠一郞君) 此法律ノ適用
ニ依リマシテ資金ガ出マシタ金額ガ割合ニ
少イト云フコトハ、只今御話ノ通リデアリ
マシテ、又其理由ノ主ナルモノハ先程申上
ゲタノデアリマスガ、尙ホ我ミト致シマシ
テ、今日然ラバ不動產金融ニ付テ尙ホ改善
ヲ要スル餘地ハナイカト申シマスト、ソレ
ハ大ニアルト考ヘマス、此法律ヲ以テシテ
勿論及バヌ所ガアリマスガ、此法律ノ及ブ
範圍內ニ於テハ、是非此際之ヲ實行イタシ
タイ、殊ニ今日金融界モ平靜デアリマシテ、
此不動產抵當債權等ニ付キマシテ、或ル程
度ノ整理ヲスルト云フコトハ、比較的樂ニ
出來ル時代デアリマシテ、銀行等ニ對スル
信用ヲ傷ツケルトカ、或ハ債務者トノ關係
ニ於テ非常ナ面倒ヲ起スト云フヤウナコト
ナシニ、割合ニ比較的樂ニ行ク時期デハナ
カラウカト思ヒマスノデ、我ニト致シマシテ
ハ是非之ヲ實行イタシタイ、又銀行トモ常
ニ接觸イタシマシテ、サウ云フ方針ヲ以テ
進ミタイト云フコトヲ考ヘテ居ルノデアリ
マス、只今御話ノヤウニ不動產ヲ處分スル、
是ハ場合ニ依リマシテハ、或ハ避クベカラ
ザル事情モアルカト思フノデアリマスルガ、
若シ其場合ガ、此不動產融資ニ依リマシテ
銀行モ肩替リラシ、處分モセヌデ濟ムヤウ
ナコトガ出來マスレバ、勿論我ミト致シマ
シテハ其方向ニ向ッテ進ムベキデアラウト
思フノデアリマス、尙ホ御注意ノ點ニ付キ
マシテモ、能ク將來努メタイト考ヘテ居リ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006701477X00519350323&spkNum=42
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043・三井清一郎
○三井〓一郞君 御答ハ能ク了承シマシタ
ガ、此不動產融資補償法ガ昭和七年ニ出來
ル際ニ於キマシテハ、此法律ハ銀行ヲ保護
スル法律デハナイノデ、所謂今日不動產ヲ
持ッテ居ル農村其他ノ金融ヲ滑カニスルノ
ダト云フ御趣意デ此法律ガ出來テ居ル、然
ルニ銀行ハ個人ノ不動產抵當ヲ肩替リニシ
テ、サウシテ個人ヲ保護スルヤウナ態度ニ
ドウモ出テ居ナイヤウニ聞クノデアリマス
ガ、ソレデハ法律ガ制定セラレテモ、其目
的ト云フモノハ何ニモ逹シ得ナイノデアリ
マスルカラ、是ハドウシテモ中央ノ監督官
廳ニ於テ十分御注意下サラナケレバナラヌ
點ダラウト思ヒマスガ御不同意デナケレバ、
ドウゾ其點ニ付テ將來御注意ヲ願ヒタイト
思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006701477X00519350323&spkNum=43
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044・荒井誠一郎
○政府委員(荒井誠一郞君) 當時ノ速記錄
等ニ依リマシテ、此法律ノ趣旨ヲ能ク〓究
イタシマシタノデゴザイマスガ、當時銀行
ヲ保護スルヨリモ、不動產抵當ノ金ヲ借リ
テ居ル者ヲ救濟スルト云フコトガ必要デハ
ナカラウカト、斯ウ云フ議論ガ大分アッタノ
デアリマス、是ハ勿論銀行ガ資金ニ詰マッテ
參リマスレバ、督促モ急ニ致シマスシ、又
處分モ速ニ致サナケレバナラヌト云フコト
ガ自然ニ起ッテ參リマスノデ、銀行ノ資本ヲ
潤澤ニ致シマスレバ、之ニ依ッテ不動產抵當
債務者ノ保護ニモナルト云フコト、銀行ヲ
通ジテ之ヲ行フト云フコトノ趣旨ノヤウニ
承ッテ居リマス、從ヒマシテ銀行ニ對シテ之
ヲ保護スルト申シマスカ、銀行ノ立場ヲ良
クスルト云フコトハ、結局不動產債務者ノ
立場ガ良クナルト思フノデアリマス、兩者
相俟ッテ此目的ヲ達セシムルト云フコトニ努
メナケレバナラナイカト思フノデアリマス、
只今ノ御趣意ニ依リマシテ、尙ホ不十分ナ
點ガアリマスレバ、十分〓究イタシマシテ、
サウ云フ所ハ除キタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006701477X00519350323&spkNum=44
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045・三井清一郎
○三井〓一郞君 唯私ハ先刻藏相ニ御尋シ
タヤウニ、此市中銀行ガ非常ニ公債ヲ進
ンデ買フ、手ニ入レル、銀行ニ裕リガアレ
バ公債ヲ手ニ入レル、買過ギル位ニ手ニ入
レルト云フコトガ、地方銀行ノ資金ヲ減ジ
テ、サウシテ地方ニ於ケル金融ノ逼迫ヲ來
シ、低金利政策ガ徹底シナイヂヤナイカト
云フ疑ヲ持ッテ居ル、ドウゾ地方銀行ノ監督
ハ大藏省デアリマセウガ、營業狀態:印
チ營利ノミニ趨ッテ此地方ノ金融機關ノ使
命ヲ全ウセナイヤウナコトガナイカドウカ
ヲ、私ハ十分ノ監督ヲシテ頂キタイト考ヘ
テ居リマス、ソレダケヲ申上ゲテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006701477X00519350323&spkNum=45
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046・山本米三
○山本米三君 只今御答辯ヲ得タノデゴザ
イマスガ今一應政府ノ御所見ヲ確メタイト
思ヒマスルノハ、第二條ノ十五年ノ融通期
限デアリマス、是ハ三年ヲ六年ニ致シマス
レバ、是モ延バス方ガ公平デアリ且ツ宜シ
イノデハナイカ、議論ニハナルヤウデアリ
マスガ、或ハ必要ガナイト云フ御所見デセ
ウカ、モウ一應御確メ申シタイト思フノデ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006701477X00519350323&spkNum=46
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047・荒井誠一郎
○政府委員(荒井誠一郞君) 其點ニ付キマ
シテハ十分考究ヲ遂ゲタ積リデアリマス
ガ、三年間融資期間ガ延ビレバ、當然當初
十五年ノモノデアッタノデアリマスガ、是ハ
更ニ三年延バシマシテ、今度融通期間ガ切
レマシテ、新ラシイ融通期間ニナリマシテ融
資致シマシタモノモ、十五年最長ノ融通ヲ
スルコトガ適當デハナカラウカト云フ點ニ
付キマシテハ、十分〓究ヲ致シテ見タイノ
デアリマス、大體此勸業銀行農工銀行等ノ
不動產融通ニ付キマシテハ、自分ノ資金ヲ
以テ融通シテ居リマスモノハ、十年乃至十
二三年ノモアルカト思ッテ居ルノデスガ、十
五年ト云ヒマスモノハ、預金部資金等ニハ
隨分長イモノガアリマスガ、比較的少ナイ
ノデアリマシテ、此ノ三年經チマシテ、最
終ニ融通ヲ受ケル者ハ、十二年ノ融通期限
シカナイノデアリマス、此法律ガ更ニ三年
延ビマシテ、六年目ニ融通ヲ受ケルノガ九
年ト云フコトニナルカト思フノデアリマ
ス、先ヅ九年デアルト、少シ短イト云フ考
モアリマスデスガ、十年ヲ標準ト致シマス
レバ、其邊デモ我慢ガ出來ハシナイカト云
フ點カラ、之ヲ述バサヌデモ宜カラウト云
フ結論ニナッタ次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006701477X00519350323&spkNum=47
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048・高崎弓彦
○男爵高崎弓彥君 今ノ御答辯デ、若シサ
ウ云フコトガ、政府ノ御見込通リニ、ソレ
デ宜カラウト思召シテ居テ、若モ其以上ノ
モノガ起ッタ場合ハ、私共ホンノ其方ノ知識
ハナイノデスケレドモ、若シサウ云フ場合
ガアッタナラバ、政府ハ其際ハ御考慮ニナル
ノデセウカ、其コトヲ承ハッテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006701477X00519350323&spkNum=48
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049・荒井誠一郎
○政府委員(荒井誠一郞君) 先キノコトデ
アリマスガ、若シ此法律ノ六年目ニ融通ガ
起ッタ時ニ、ドウ云フ貸付ヲスルカ、最長九
年ト云フコトニナルカト思フノデアリマ
ス、九年デ貸スヨリ致シ方ナイ、假令ソレ
ガ十年ニシタ方ガ適當デアルト考ヘマシテ
モ、先ヅ九年ト云フコトデ、貸付ヲ行フヨ
リ致シ方アルマイト思フノデアリマス、サ
ウシテソレガ其後更ニ九年後ニナッテ、然ラ
バ債務者ノ方デ困リハセヌカト云フコトニ
考ヘラレルノデアリマスガ、其點ニ付キマ
シテハ、或ハ是ガ其時ニ一部損失ニナリマ
スカ、優良ノ債權デアリマスレバ、更ニ不
動產銀行ニ於キマシテ引取リマシテ、相當
ノ貸付ヲシテ、自分ノ資金トシテモ貸出シ
得ルカト思ハレルノデアリマス、其時ニ於
テ相當ノ整理ガ付クノデハナイカト云フコ
トニ考ヘテ居ル次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006701477X00519350323&spkNum=49
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050・大河内輝耕
○委員長(子爵大河內輝耕君) 御質問ゴザ
イマセヌデスカ、速記ヲ止メテ頂キマス
〔速記中止〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006701477X00519350323&spkNum=50
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051・大河内輝耕
○委員長(子爵大河內輝耕君) 速記ヲ始メ
テ、······不動產融資及損失補償法中改正法
律案、是ニ付キマシテ、尙ホ御質疑ゴザイ
マセヌデスカ、御質疑ガゴザイマセヌケレ
バ、討論ニ移リマス、御意見ノ御有リニナ
リマスル御方ハ此際御願イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006701477X00519350323&spkNum=51
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052・山本米三
○山本米三君 此改正法案ハ極メテ機宜ニ
適シタモノト考ヘマス、利率ノ低減ナリ、
又貸付手續ノ緩和ニ付テノ希望ニ對シマシ
テハ、只今政府委員ノ御答辯ニ依リマシテ、
之ヲ信賴イタシマシテ、私ハ贊成ヲ致シマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006701477X00519350323&spkNum=52
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053・大河内輝耕
○委員長(子爵大河內輝耕君) 別ニドナタ
モ原案通リ御異議ゴザイマセヌデスカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006701477X00519350323&spkNum=53
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054・大河内輝耕
○委員長(子爵大河內輝耕君) 御異議ナイ
ト認メマス、ソレデハ此不動產融資及損失
補償中改正法律案ハ是デ決定イタシマシタ、
ソレデハ此際休憩ヲ致シマス、午後ハ何時
ニ開キマスカ、又何レ申上ゲマスデスカ
ラ、其御積リデ御待チヲ願ヒタウゴザイ
さく、是デ休憩ヲ致シマス
午後零時二分休憩
午後三時五十三分開會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006701477X00519350323&spkNum=54
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055・大河内輝耕
○委員長(子爵大河內輝耕君) 是ヨリ開會
イタシマス、大正九年法律第五十六號中改
正法律案ヲ問題ニ致シマス、御質問ノ御有
リニナル方ハ此際御願イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006701477X00519350323&spkNum=55
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056・山本米三
○山本米三君 只今問題ニナッテ居リマス
北海道ノ私設鐵道及軌道ハ頂戴イタシマシ
タ昭和八年年度ノ調表ニ依リマスト、現行
ノ補助年限ガ切レマスト、獨立シテ行ケナ
イモノガ······二十社ノ中デ辛ウジテ行ケル
モノガ僅ニ三社ノミノヤウデゴザイマス、
此狀態デ進ンデ行キマスナラバ、折角造ラ
レマシタ所ノ鐵道、軌道ナリハ維持至難ノ
結果破產若クハ廢線ノ外ナイ慘狀ヲ呈スル
ニ至ルノデアリマス、是ハ單ニ會社ノ存廢
ノミノ問題デナクシテ、實ニ北海道拓殖ノ
前途ニ不安ヲ招クモノデアラウト憂慮サレ
ルノデアリマス、又朝鮮臺灣ハ昨年五月ニ、
樺太モ一昨年五月ニ何レモ獨立自營ノ域ニ
達シテ居ナイト云フ理由ニ依リマシテ、五
箇年補助期間延長ニナッテ居ルノデアリマ
ス、北海道ニ於テハ一層成蹟ガ惡イニモ拘
ラズ、之ガ補助ヲ延長シナイト云フコトハ、
甚ダ公平ヲ失スルヤウニ思ハレルノデアリ
マス、政府委員ノ御答辯ニ依リマスト、間
接ノ方法デ救濟ノ途ヲバ精々講ズルト云フ
御言葉デアリマスガ、果シテソレデ好結果
ヲ得マシテ、此窮狀ヲ救ヒ得マスヤ、問題
トセネバナラヌノデアリマス、之ヲ要シマ
スノニ財源難ノ爲デアリマシテ、其必要ハ
十分御認メニナッテ居ルノデアリマス、以上
ハ北海道ノ拓殖費ナルモノノ御繰廻シヲ都
合好ク御ヤリニナリマスナラバ、敢テ至難
ノコトデハナイデハナイカト思ハレマス、
又ドウシテモ不足スルト云フノナラバ、强
ク大藏省ニ對シマシテ御迫リニナッテ致シ
マスナラバ、之ヲモ大藏省ニハ認メラレヌ
ト云フヤウナコトモアルマイト思フノデゴ
ザイマス、政府委員ノ御所見ハ如何デゴザイ
マスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006701477X00519350323&spkNum=56
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057・佐上信一
○政府委員(佐上信一君) 只今ノ御質問ニ
依リマシテ、御手許ニ差上ゲテアリマス會
社ノ營業狀態ニ付テ御質問ガアリマシタ
ガ、御承知ノ通リ北海道ハ昭和六年七年竝
ニ昭和九年ト三箇年ノ間非常ナ凶作水害デ
アリマス、殊ニ昭和六年七年ハ農產物ノ產
額ガ四割五割······四割五六分ニ止マッタヤ
ウナ狀態デアリマス、サウ云フヤウナコト
ノ爲ニ貨物ノ出廻リガ非常ニ惡イ、或ハ人
ノ旅行スルヤウナモノモ非常ニ少イト云フ
ヤウナコトカラ致シマシテ、此旅客貨物ノ
運賃收入ガ激減ヲ致シテ居ルヤウナ狀況デ
アリマス、旣ニ其當時ノ拓殖費ノ經理ノ狀
況ヲ見マシテモ、常ニ赤字々々デアリマシ
テ、政府ノ公債財源ニ依ッテ漸ク豫算ヲ支
辨······編成ヲスルコトガ出來タヤウナ狀態
デアリマス、サウ云フ道内ノ不慮ナ災害
ガ、鐵道軌道ニ對シテ大ナル影響ヲ與ヘテ
居ルコトト思フノデアリマス、從ヒマシテ
將來此農產收入等ガ十分ニ完全ニ囘復イタ
シマスレバ、軌道會社ガ今ノヤウナ慘狀ニ
アルモノガ相當救濟ヲ受ケルモノガ多カラ
ウト思ヒマス、度ミ此委員會デモ御說明申上
ゲマシタ通リデアリマスガ、當初ノ計畫デ
ハ百二十萬圓位アレバ、大體其補助ガ十分
デアルト考ヘテ居ッタモノガ、此連年ノ凶作
ノ爲ニ著シク收入ガ減ジタ爲ニ、補助ヲ餘
計ニヤラナケレバナラヌト云フヤウナコト
デ、豫算ガ足リナクナッタヤウナコトデア
リマシテ、是ハ矢張リ此北海道ノ災害ト因
果關係ヲ持ッテ居ルヤウナ狀態デアリマス、
勿論此北海道ノ拓殖ノ爲ニ必要ナル地
方及鐵道軌道等ニ對シマシテハ、十分
ナコトハ致シタイト思ッテ居リマスガ、
北海道ノ財源ノ立前ガ年々ノ收入カラ
支出ヲ引キマシタ殘額ヲ以テ、此拓殖財源
ト致シテ居ルヤウナ關係上、十分ニ手ガ廻
リ兼ネルト云フヤウナ狀況ニナッテ居ッタノ
デアリマス、ソレデ尙ホ未補助ノ會社ガ七
會社バカリアリマスノデ、サウ云フモノニ
モ補助ノ均霑ヲ致サシメタイト云フヤウナ
考カラ致シマシテ、此補助ノ切レタ會社ニ
對シテハ、此委員會デハ從來各會社々々ニ
付テソレ〓〓各種ノ沿線ノ培養施設等ヲシ
テ、此經營ノ成立ツヤウナ風ニ考ヘテ行キ
タイ、併シ中ニハ客觀的ノ事情ガ補助ナシ
ニハ絕對ニ出來ナイト云フヤウナモノモ無
イデモナイト云フヤウナ現狀デアリマシ
テ、サウ云フモノニ對シテハ、將來ドウス
ルカト云フコトニ付テ、此委員會等ニ於テ
モ非常ニ御心配ヲ下サッテ居ルノデアリマ
シテ、ソレ等ニ付テモ十分ノ考慮ヲシナケ
レバナルマイカト云フヤウナコトヲ考ヘル
ヤウニナッタヤウナ次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006701477X00519350323&spkNum=57
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058・三井清一郎
○三井〓一郞君 私モ本案ニ付テマダ質問
ヲシテ居リマセヌガ、重複スルカモ知レマ
セヌガ一言御尋ヲ致シマス、私モ北海道ニ
居住シタコトモアッテ、北海道ノ事情ニ付テ
ハ大分分ッテ居ル積リデアリマス、北海道開
拓ガ比較的遲々トシテ居ルノハ、御承知ノ
寒イノト、人ロガ少イ、比較的生產品ガ出
ナイト云フヤウナコトデ、北海道拓殖ハナ
カナカ御困難デアラウト思ヒマスガ、此拓
殖政策ノ第一要件トシテハ、早ク未開地ニ
鐵道ヲ敷クト云フコトガ主張セラレテ、
續々私設鐵道ガ御許可ニナッテ、非常ナ困難
ヲシテ此鐵道ガ今日ニ至ッタノデアル、斯ウ
云フ事實カラ此地方鐵道、軌道ノ補助ト云
フコトガ決マッテ來タノデアリマス、今日先
刻モ御尋ガアリマシタ通リ、臺灣朝鮮、樺
太等ガ補助年限ノ延長ガアッタ後デアリマ
ス、此北海道鐵道ニ付テハ出來得ルダケノ
手段ヲ盡シテ、出來得ルナラ此法律ニ依ッテ
鐵道ヲ生カシテ行キ、只今長官ノ御答ニ
アッタヤウニ、北海道ノ農產品其他ノ產出ヲ
助長シテ、鐵道モ生キ農村モ更生シテ行ク
ヤウニ仕向ケテ戴キタイト思フノデアリマ
ス、故ニ是非此本案ノ精神ヲ一ツ十分ニ御
汲取リ願ッテ、適當ナ手段ヲ盡サレタイト思
フノデアリマスガ、取敢ズ斯ウ云フ法律案
ガ出テ居リマスカラ、此法律案ヲ成ルベク
生カシテ行キタイト云フ希望ヲ持ッテ居リ
マスガ、是ニ對スル御所見ヲ承リタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006701477X00519350323&spkNum=58
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059・佐上信一
○政府委員(佐上信一君) 鐵道、軌道ノ助
成ヲ致シテ行キタイト云フ考ハ勿論三井サ
ント同ジ意見デゴザイマスガ、唯北海道ノ
拓殖計畫ハ朝鮮、臺灣等ノ特別會計ノヤウ
ナ風ニ、特別會計ニ於テ自由ニ、自由ト申
シマシテハ何ンデゴザイマスガ、此負擔ニ
於テ公債ヲ起スト云フヤウナ途ガナイ爲
ニ、兔角財源難ニ非常ニ困ッテ居ルノデア
ル、ソレデ外ノ河川、港灣、道路等ノ如
キ費用ハ拓殖計畫ノ豫定計畫カラ申シマ
スルト云フト、四割バカリ總テ減額ニナッテ
計上サレテ居ルノデアリマスガ、地方鐵道
及軌道ノ補助費ハ計畫豫算ヨリハ四割バカ
リ餘計ニ之ヲ出シテ居ルト云フヤウナ現狀
カラ見マシテモ、相當拓殖費デハ地方鐵
道軌道ノ費用ハ十分ニ他ノ支出ニ較ベマ
スレバ、相當計上イタシテ居ルノデアリマ
スガ、唯此數年ノ間、非常ニ凶作水害等ノ
爲ニ農村ガ疲弊イタシマシタ結果、地方鐵
道或ハ軌道ノ營業成蹟ガ非常ニ不良デアリ
マス爲ニ、其赤字補塡ノ費用ニ多額ノ豫算
ヲ要シマシタガ爲ニ、計畫豫算ヨリハ四割
餘計取ッテ居ル豫算デモ尙ホ不足ヲ告ゲテ
居ルヤウナ情況デアリマス、ソレデ其端境
期ニ臨ンデ年限ノ滿了スルモノニ付テ、ド
ウ云フ風ニシタラ宜イカト云フコトニ付テ
ノ法律案ガ當委員會デ御審議ニナッテ居ル
ヤウナコトデアリマス、要スルニ是ハ問題
ハ財源ニ懸ッテ居ル問題デアルノデアリマ
スルガ、色ミト此委員ノ各位ヨリ御意見等
モアリマシタノデ、出來ルダケ御希望ニ副
フヤウニ、相當ニ考慮ヲシテ見ヤウト云フ
ヤウナ考ヲ持ツニ至ッタノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006701477X00519350323&spkNum=59
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060・高崎弓彦
○男爵高崎弓彥君 チヨット私ハ御渡シニ
ナッタ表デ伺ヒタイノデスガ、補助年限十五
箇年二十箇年ノ場合ノ補助見込額比較ト云
フ表ガアリマスガ、ソレハ年度ハ昭和二年
度同九年度ノ計畫豫算ハ六百六十三萬八千
五十三圓、十五箇年ノ補助ガ九百三萬四千
二百圓、ソレカラ九年度ノ方ガ百二十五萬
五千二百十六圓、二十箇年ノ補助トナリマ
スト又同ジコトガ書イテアリマシテ、結局
比較增減ハチットモ變ッテ居ラナイノデアリ
マスケレドモ、是ハドウ云フ譯ナンデゴザ
イマセウカ、旣支出額、未拂補助額ト斯ウ
ナッテ居リマスガ、比較ノ增減ガナクナッテ
居リマスケレドモ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006701477X00519350323&spkNum=60
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061・政府委員(佐上信一君)
○政府委員(佐上信一君) 御答申上ゲマ
ス、此拓殖計畫改訂ノ當時ニ計畫イタシテ
居リマシタ豫算ノ昭和二年度カラ九年マデ
ノモノヲ合算イタシマスルト六百六十三萬
八千五十三圓ト云フコトニナッテ居ル、ソレ
ト實際ノ支出ヲ致シマシタ合算ヲ致シマス
ルト、既ニ支出濟ノ額ガ九百二一萬四千二百
圓、所ガ其金ガ足ラナイデ、マダ支出ヲシ
マセヌケレドモ、支出ノ義務ガアルモノガ
百二十五萬五千二百十六圓アル、ソレガ昭
和二十年ニナリマスト九年度マデハ同一ノ
額デ行クノデアリマスガ、昭和十年度以降
ニナリマスト、年限ノ終了シタモノヲ中ニ
加ヘテ行ク關係上、九年度マデハサウ云フ
制度ガアリマセヌカラ、比較增減ハ出テ居
ラナイ、サウ云フ結果デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006701477X00519350323&spkNum=61
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062・男爵高崎弓彥君
○男爵高崎弓彥君 分リマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006701477X00519350323&spkNum=62
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063・委員長(子爵大河內輝耕君)
○委員長(子爵大河內輝耕君) 別ニ御質問
ゴザイマセヌデスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006701477X00519350323&spkNum=63
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064・男爵高崎弓彥君
○男爵高崎弓彥君 北海道補助地方鐵道軌
道會社調昭和八年度ノ內ニ澤山會社名ガ
ズットアリマスケレドモ、見マストドレモ是
モ損ノ立ッタ會社バカリノヤウニ書イテア
リマスガ、此內此會社ノ、色ニ鐵道會社ノ
名前ガゴザイマスガ、何モ關係ナシト云フ
ト語弊ガアリマスガ、他ノ會社ニ關係ノナ
イ、全ク獨立ノ鐵道ト云フモノハドレトド
レデアリマセウカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006701477X00519350323&spkNum=64
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065・政府委員(佐上信一君)
○政府委員(佐上信一君) 此內デ定山溪鐵
道、壽都鐵道、北海道鐵道、ソレカラ渡島
海岸、膽振、北海道拓殖、ソレカラ洞爺湖
電鐵、ソレカラ鐵道デハ留萠鐵道、ソレダ
ケデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006701477X00519350323&spkNum=65
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066・男爵高崎弓彥君
○男爵高崎弓彥君 軌道ノ方ハドンナノデ
スカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006701477X00519350323&spkNum=66
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067・政府委員(佐上信一君)
○政府委員(佐上信一君) 軌道ハ全部會社
ニ關係ガゴザイマセヌ、皆獨立ノモノデゴ
ザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006701477X00519350323&spkNum=67
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068・委員長(子爵大河內輝耕君)
○委員長(子爵大河內輝耕君) 內務大臣ガ
御出席ニナリマシタカラ內務大臣へ御質問
ノ御アリニナリマス御方ハ此際御願イタシ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006701477X00519350323&spkNum=68
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069・男爵高崎弓彥君
○男爵高崎弓彥君 此際內務大臣ニ御尋ヲ
致シタイノデゴザイマスガ、北海道ノ地方
鐵道及軌道ハ元來ガ補助ヲ目當ニ漸ク鐵道
ヲ經營シテ居ルノデ、而モ其經營ガ補助ガ
アルニ拘ラズ每年缺損ガ續イテ居リマスヤ
ウナ次第デ、只今此問題ニナッテ居リマス北
海道ノ地方鐵道トカ、軌道補助ニ關スル件
ニ付キマシテ、若シモ本案ガ不成立ニナリ
マスト、多クノ地方鐵道軌道ハ只サヘ、補
助ガアッテサヘ營業ガ困難ナノヲ、ソレデハ
營業ヲ中止シナケレバナラナイヤウニナル
ダラウ、ソレデハ北海道ノ拓殖ノ政策上、
是ハ誠ニ大事ダト斯ウ私ハ考ヘマスガ、此
場合ニ於キマシテ內務大臣ノ御所見ヲ承ッ
テ置キタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006701477X00519350323&spkNum=69
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070・國務大臣(後藤文夫君)
○國務大臣(後藤文夫君) 本案ニ付キマシ
テハ政府委員等カラ御說明モ申上ゲマシタ
ヤウニ政府トシテハ今直ニ御贊成ヲ申上ゲ
兼ネルノデアリマス、併ナガラ北海道ニ於
ケル地方鐵道及軌道ニシテ、補助年限滿了
ノ結果經營ノ困難ナモノ等ニ付キマシテハ
適當ナ善後策ヲ講ズルノ要ガアルト考ヘテ
居リマス、政府ニ於キマシテハ近ク設置サ
レマスル拓殖計畫改訂ニ關スル調査會等ニ
於キマシテ、速ニ是等鐵道ニ關シマシテ
モ、軌道ニ關シマシテモ、補助年限ノ延長
デアリマストカ、補助豫算ノ充實デアリマ
ストカ、其他沿線ノ培養施設等ニ關シマシ
テ、一般拓殖計畫ノ改訂ト併セテ萬善ノ策
ヲ樹立シタイ考デゴザイマス
委員長(子爵大河內輝耕君)外ニ御質問
ノ御方ハゴザイマセヌカ、內務大臣ニ對ス
ル御質問ノ御有リニナル御方ハ此際御願イ
タシマス······デハモウ御質問ゴザイマセヌ
カ······ソレデハ政府委員ニ對スル御質問ヲ
願ヒマス、御質問ゴザイマセヌデスカ、速
記ヲ止メテ下サイ
〔速記中止〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006701477X00519350323&spkNum=70
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071・委員長(子爵大河內輝耕君)
○委員長(子爵大河內輝耕君) 速記ヲ始メ
テ下サイ、本日ハ是ニテ散會イタシマス、次
ノ開會ノ時ハ何レ又御通知ヲ申上ゲマス
午後四時二十一分散會
出席者左ノ如シ
委員長子爵大河內輝耕君
副委員長男爵高崎弓彥君
委員
侯爵德川賴貞君
子爵大岡忠綱君
三井〓一郞君
男爵山根健男君
三橋彌君
山本米三君
國務大臣
大藏大臣高橋是〓君
內務大臣後藤文夫君
政府委員
內務政務次官男爵大森佳一君
內務參與官伯爵橋本實斐君
北海道廳長官佐上信一君
大藏政務次官男爵矢吹省三君
大藏省主計局長賀屋興宣君
大藏省理財局長靑木一男君
大藏省銀行局長荒井誠一郞君
大藏書記官廣瀨豐作君
同山田龍雄君
同大矢半次郞君
預金部長金子隆三君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006701477X00519350323&spkNum=71
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