1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和十年三月二十日(水曜日)午前十時十七分開議
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議事日程 第十九號
昭和十年三月二十日
午前十時開議
第一 倉庫業法案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第二 裁判所構成法中改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第三 裁判所の廢止及設立に關する法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第四 大正二年法律第九號中改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第五 司法代書人法中改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第六 辯護士法中改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第七 公證人法中改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第八 執達吏規則中改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第九 執達吏手數料規則中改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第十 關税定率法中改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第十一 大正十三年法律第二十四號中改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第十二 昭和七年法律第四號中改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第十三 關税法中改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第十四 昭和十年度一般會計歳出の財源に充つる爲公債追加發行に關する法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第十五 府縣制中改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第十六 北海道會法中改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第十七 市制中改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第十八 町村制中改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第十九 民事訴訟法中改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第二十 不動産融資及損失補償法中改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第二十一 産業組合中央金庫特別融通及損失補償法中改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第二十二 臨時地方財政補整金法案(衆議院提出) 第一讀會
第二十三 刑事訴訟法中改正法律案(衆第十八號)(衆議院提出) 第一讀會
第二十四 刑事訴訟法中改正法律案(衆第十九號)(衆議院提出) 第一讀會
第二十五 舊獨逸膠州租借地還付に關する條約實施に伴ふ損失の補償に關する法律案(衆議院提出) 第一讀會
第二十六 政教刷新に關する建議案(侯爵西郷從徳君外五名發議) 會議
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006703242X01919350320&spkNum=0
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001・松平頼壽
○副議長(伯爵松平賴壽君) 報告ヲ致サセ
マス
〔角倉書記官朗讀〕
一昨十八日本院ニ於テ可決シタル左ノ政府
提出案ハ卽日裁可ヲ奏請シ又可決ノ旨ヲ衆
議院ニ通知セリ
昭和十年度歲入歲出總豫算追加案第
號
昭和十年度各特別會計歲入歲出豫算追加
案(特第一號)
造幣局ノ廳舍、工場其ノ他ノ用ニ供スル
建物及其ノ附屬設備ノ新營費ニ關スル法
律案
東京高等農林學校及函館高等水產學校ノ
創設ニ伴フ帝國大學特別會計及學校及圖
書館特別會計ノ關涉ニ關スル法律案
日本銀行金買入法中改正法律案
朝鮮銀行法中改正法律案
臺灣銀行法中改正法律案
同日本院ニ於テ採擇スルコトヲ議決シタル
第二期林野治水計畫實現促進ニ關スル請願
外三十七件ノ請願ハ各〓意見書ヲ附シ卽日之
ヲ政府ニ送付セリ
同日內閣總理大臣ヨリ左ノ通政府委員仰付
ケラレタル旨ノ通牒ヲ受領セリ
第六十七囘帝國議會大藏省所管事務政府
委員
大藏書記官松隈秀雄君
昨十九日委員會ニ於テ當選シタル正副委員
長ノ氏名左ノ如シ
朝鮮事業公債法中改正法律案特別委員會
委員長侯爵小村捷治君
副委員長子爵戶澤正己君
市町村立尋常小學校費臨時國庫補助法中
改正法律案特別委員會
委員長侯爵大久保利武君
副委員長松浦鎭次郞君
同日委員長ヨリ左ノ報〓書ヲ提出セリ
朝鮮事業公債法中改正法律案可決報告書
同日衆議院ヨリ左ノ政府提出案ヲ受領セリ
倉庫業法案
裁判所構成法中改正法律案
裁判所ノ廢止及設立ニ關スル法律案
大正二年法律第九號中改正法律案
司法代書人法中改正法律案
辯護士法中改正法律案
公證人法中改正法律案
執達吏規則中改正法律案
執達吏手數料規則中改正法律案
關稅定率法中改正法律案
大正十三年法律第二十四號中改正法律
案
昭和七年法律第四號中改正法律案、
關稅法中改正法律案
昭和十年度一般會計歲出ノ財源ニ充ツル
爲公債追加發行ニ關スル法律案
府縣制中改正法律案
北海道會法中改正法律案
市制中改正法律案
町村制中改正法律案
民事訴訟法中改正法律案
不動產融資及損失補償法中改正法律案
產業組合中央金庫特別融通及損失補償法
中改正法律案
同日衆議院ヨリ左ノ議案ヲ提出セリ
刑事訴訟法中改正法律案(衆第十八號)
刑事訴訟法中改正法律案(衆第十九號)
舊獨逸膠州租借地還付ニ關スル條約實施
ニ伴フ損失ノ補償ニ關スル法律案
同日議員ヨリ左ノ議案ヲ提出セリ
政〓刷新ニ關スル建議案(侯爵西〓從德
君外五名發議)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006703242X01919350320&spkNum=1
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002・松平頼壽
○副議長(伯爵松平賴壽君) 會議ヲ開キマ
ス、來ル四月初旬御來訪アラセラレマスル
滿洲國皇帝陛下ノ歡迎ノ件ニ付キマシテ、
鷹司公爵ヨリ發言ヲ求メラレマシタカラ、
之ヲ許可イタシマス、鷹司公爵ノ御登壇ヲ
望ミマス
〔公爵鷹司信輔君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006703242X01919350320&spkNum=2
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003・鷹司信輔
○公爵鷹司信輔君 滿洲國皇帝陛下ニ於カ
セラレマシテハ、來ル四月初旬我國ニ御來
訪遊バサルル御豫定デアリマス、誠ニ聖代ノ
盛事デアリマシテ、我ガ皇室ノ御歡待ハ申
スニ及バズ、官民擧ッテ滿腔ノ誠意ヲ以テ御
迎へ申上ゲル次第デアリマス、本員ハ身議
政ノ府ニ列シテ此盛事ニ際會スルコトヲ得
マシタコトハ、無上ノ光榮ニ存ズル所デゴ
ザイマス、滿洲帝國ハ建國以來日尙ホ淺キ
ニ拘ラズ、國礎益〓、固ク、國運彌〓盛ナルモノ
ガアリマスノハ、是レ偏ニ皇帝陛下ノ文思
聰明、武德叡毅ニ亙ラセラルルニ基クモノ
デアルト存ジマス、皇帝陛下ハ曩ニ使臣ヲ
遣シテ我國ヲ訪ハシメラレ、我國ヨリモ亦
秩父宮殿下ガ滿洲國ニ赴カセラレテ、兩國
ノ交誼ヲ厚クセラレタノデアリマス、今又
皇帝陛下自ラ來リ、我ガ天皇陛下ヲ訪ハ
セラレ、親シク驩ヲ交ヘ給フコトニ相成ッタ
ノデゴザイマス、兩國皇室ノ御親睦ハ彌〓增
シ、兩國國交ノ親善ハ益〓厚キヲ加フルコト
デアラウト存ジマス、冀クハ皇帝陛下ノ懿
德ニ依リ、將來兩國ハ相依リ相助ケ、益〓共
存共榮ノ實ヲ擧ゲ、東洋ノ平和ヲ確保シ、
延イテハ世界人類ノ福祉ヲ增進セシムルコ
トヲ切望スルモノデゴザイマス、皇帝陛下
ヲ御迎ヘスルニ當リ、我ガ貴族院ハ最善ノ
方法ヲ盡シテ歡迎ノ衷誠ヲ表明イタシタイ
ノデアリマスガ、時恰モ閉會中ニ屬シマス
ル爲ニ、玆ニ本員ハ貴族院ガ皇帝陛下ヲ歡
迎シ奉ルコトニ關スル一切ノ處置ヲ、豫メ
議長ニ一任スルノ動議ヲ提出スル次第デゴ
ザイマス、何卒滿場ノ諸君ニ於カセラレ
マシテ、御贊成アラムコトヲ希望イタシマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006703242X01919350320&spkNum=3
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004・池田政時
○子爵池田政時君 贊成イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006703242X01919350320&spkNum=4
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005・松平頼壽
○副議長(伯爵松平賴壽君) 只今鷹司公爵
ノ述べラレマシタ滿洲國皇帝陛下御來訪ノ
際、貴族院ノ御歡迎ニ關スル一切ノ處置ヲ、
豫メ議長ニ一任スルノ動議ト承リマシタ、
就キマシテハ鷹司公爵ノ動議ニ同意ノ諸君
ノ御起立ヲ願ヒタイト存ジマス
〔全員起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006703242X01919350320&spkNum=5
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006・松平頼壽
○副議長(伯爵松平賴壽君) 全會一致ト看
做シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006703242X01919350320&spkNum=6
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007・松平頼壽
○副議長(伯爵松平賴壽君) 日程第一、倉
庫業法案、政府提出、衆議院送付、第一讀
會商工政務次官
倉庫業法案
右政府提出案本院ニ於テ修正議決セリ因
テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和十年三月十九日
衆議院議長濱田國松
貴族院議長公爵近衞文麿殿
(小字及-ハ衆議院ノ修正)
倉庫業法案
倉庫業法
第一條倉庫營業者ハ主務大臣ノ許可ヲ
受クルニ非ザレバ預證劵及質入證劵又
ハ倉荷證劵ヲ發行スルコトヲ得ズ但シ
勅令ヲ以テ指定シタル倉庫營業者ハ此
ノ限ニ在ラズ
第二條前條ノ許可ヲ受ケントスル者ハ
命令ノ定ムル所ニ依リ事業計畫、營業
規則及保管料率表ヲ具シ主務大臣ニ之
ヲ申請スベシ
第三條第一條ノ許可ヲ受ケタル者事業
計畫、營業規則又ハ保管料率表ヲ變更
セントスルトキハ命令ノ定ムル所ニ依
ニ屆出ヲ爲スベシ
リ主務大臣ノ認可ヲ受クベシ
第四條主務大臣必要アリト認ムルトキ
ハ第一條ノ許可又ハ前條ノ認可ヲ爲ス
ニ當リ之ニ制限又ハ條件ヲ附スルコト
ヲ得
第五條第一條ノ許可ヲ受ケタル者ハ正
當ノ事由アルニ非ザレバ寄託ノ引受ヲ
拒ムコトヲ得ズ
第六條第一條ノ許可ヲ受ケタル者預證
劵及質入證劵又ハ倉荷證劵ヲ發行スル
場合ニ於テハ寄託者ノ爲ニ受寄物ヲ火
災保險ニ付スベシ但シ寄託者ガ反對ノ
意思ヲ表示シタル場合又ハ命令ニ別段
ノ規定アル場合ハ此ノ限ニ在ラズ
第七條第一條ノ許可ヲ受ケタル者ハ命
令ノ定ムル所ニ依リ業務報〓書ヲ作成
シテ之ヲ主務大臣ニ提出スベシ
第八條行政官廳必要アリト認ムルトキ
ハ第一條ノ許可ヲ受ケタル者ニ對シ其
ノ業務ニ關スル報告ヲ命ジ又ハ當該官
吏ヲシテ第一條ノ許可ヲ受ケタル者ノ
業務及設備ノ狀況ヲ檢査セシムルコト
ヲ得
前項ノ規定ニ依リ臨檢ヲ爲ス場合ニ於
テハ當該官吏ハ其ノ身分ヲ證明スベキ
證票ヲ携帶スベシ
第九條主務大臣ハ第一條ノ許可ヲ受ケ
タル者ノ業務又ハ設備ノ狀況ニ依リ必
要アリト認ムルトキハ事業計畫、營業
規則又ハ保管料率表ノ變更ヲ命ジ其ノ
他必要ナル命令ヲ爲スコトヲ得
第十條主務大臣ハ第一條ノ許可ヲ受ケ
タル者本法若ハ本法ニ基キテ發スル命
令又ハ之ニ基キテ爲ス處分ニ違反シ又
ハ第四條ノ規定ニ依リ許可若ハ認可ニ
附シタル制限若ハ條件ニ違反シタルト
キハ預證劵及質入證劵若ハ倉荷證劵ノ
發行ノ停止ヲ命ジ又ハ第一條ノ許可ノ
取消ヲ爲スコトヲ得主務大臣第一條ノ
許可ヲ受ケタル者ノ行爲ガ著シク寄託
者又ハ預證劵、質入證劵若ハ倉荷證劵
ノ所持人ノ利益ヲ害シ又ハ害スルノ虞
アリト認ムルトキ亦同ジ
第十一條第一條ノ許可ヲ受ケタル者死
亡シタル場合ニ於テ其ノ倉庫營業ヲ相
續ニ因リテ承繼シタル者ハ之ヲ第一條
ノ許可ヲ受ケタル者ト看做ス
第十二條本法中主務大臣ノ職權ハ命令
ヲ以テ之ヲ地方長官ニ委任スルコトヲ
得
第十三條第一條ノ規定ニ違反シ主務大
臣ノ許可ヲ受ケズシテ又ハ第十條ノ規
定ニ依ル發行停止ノ命令ニ違反シテ預
證劵及質入證劵又ハ倉荷證劵ヲ發行シ
タル者ハ三千圓以下ノ罰金ニ處ス
第十四條第一條ノ許可ヲ受ケタル者左
ノ各號ノ一ニ該當スルトキハ五百圓以
下ノ罰金ニ處ス
一第三條ノ規定ニ違反シ主務大臣
ニ屆出ヲ爲サズシテ
ノ認可ヲ受ケズシテ事業計畫、營業
規則又ハ保管料率表ヲ變更シタルト
キ
二第七條若ハ第八條ノ規定ニ依ル報
〓ヲ爲サズ若ハ〓僞ノ報〓ヲ爲シ又
ハ第八條ノ規定ニ依ル檢査ヲ拒ミ、
妨ゲ若ハ忌避シタルトキ
三第九條ノ規定ニ依ル命令ニ違反シ
タルトキ
第十五條倉庫營業者ハ其ノ代理人、戶
主、家族、雇人其ノ他ノ從業者ニシテ
其ノ業務ニ關シ本法若ハ本法ニ基キテ
發スル命令又ハ之ニ基キテ爲ス處分ニ
違反シタルトキハ自己ノ指揮ニ出デザ
ルノ故ヲ以テ其ノ處罰ヲ免ルルコトヲ
得ズ
第十六條本法又ハ本法ニ基キテ發スル
命令ニ依リ倉庫營業者ニ適用スベキ罰
則ハ其ノ者ガ法人ナルトキハ理事、取
締役其ノ他ノ法人ノ業務ヲ執行スル役
員ニ、未成年者又ハ禁治產者ナルトキ
ハ其ノ法定代理人ニ之ヲ適用ス但シ營
業ニ關シ成年者ト同一ノ能力ヲ有スル
未成年者ニ付テハ此ノ限ニ在ラズ
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
本法施行ノ際現ニ倉庫營業ヲ行フ者又ハ
其ノ承繼人ハ本法施行ノ日ヨリ二年ヲ限
リ第一條ノ規定ニ拘ラズ預證劵及質入證
劵又ハ倉荷證劵ヲ發行スルコトヲ得
前項ニ揭グル者前項ノ期間內ニ第一條ノ
許可ヲ申請シタル場合ニ於テ其ノ申請ニ
對スル許可又ハ不許可ノ處分ノ日迄亦前
項ニ同ジ
倉庫營業者前二項ノ規定ニ依リ預證劵及
質入證劵又ハ倉荷證劵ヲ發行シタルトキ
ハ其ノ發行ノ日ヨリ前二項ノ期間內第七
條乃至第十條、第十三條、第十四條第二
號及第三號、第十五條竝ニ第十六條ノ規
定ノ適用ニ付之ヲ第一條ノ許可ヲ受ケタ
ル者ト看做ス
〔政府委員勝正憲君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006703242X01919350320&spkNum=7
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008・勝正憲
○政府委員(勝正憲君) 商工大臣病氣ニ付
キマシテ、倉庫業法案ノ提案ノ理由ヲ私ヨ
リ代リテ御說明申上ゲマス、倉庫營業ハ貨
物ノ大量保管ヲ職能トスルモノデアリマシ
テ、保險業、銀行業ト同ジク社會公共ニ對
シテ、重大ナル利害關係ヲ有スルモノデア
リマスガ、殊ニ倉庫證劵ヲ發行スル場合ニ
於キマシテハ、商品ノ賣買竝ニ商品擔保ノ
金融上重要ナル機能ヲ營ムモノデアリマシ
テ、其經營ノ良否、設備ノ完否等、國民經
濟ノ發展ニ至大ナル影響ヲ及ボスモノデア
リマス、然ルニ從來我國ニ於キマシテハ、
倉庫營業ノ監督取締ニ關スル法規ハ完備イ
タシテ居リマセヌ、之ガ爲ニ保管設備又ハ
經營方法等ニ付キマシテ、遺憾ノ點ガ少ク
ナイノデアリマス、其結果倉庫營業竝ニ倉
庫證劵ノ信用ヲ薄弱ナラシメマシテ、商品
ノ賣買、商品ヲ擔保トスル金融ノ圓滑ヲ期
シ、倉庫營業ノ機能ヲ完全ニ發揮セシムル
上ニ於テ、支障ナキヲ保シ難イ情況デアル
ノデアリマス、仍テ玆ニ倉庫營業ノ監督取
締ノ法規ヲ制定イタシマシテ、資力、信用
ノ薄弱又ハ設備ノ不完全ナル業者ノ倉庫證
劵發行ヲ取締ルト共ニ、其事業經營ニ付キ
適當ナル監督ヲ行ヒマシテ、以テ倉庫營業
ノ健全ナル發達ヲ助成スルノ趣旨ヲ以チマ
シテ、本案ヲ提出イタシマシタ次第デゴザ
イマス、尙ホ衆議院ニ於キマシテ、本法案ノ
一部ニ修正ガアリマシタガ、本法案提案ノ根
本趣旨ニ牴觸モ致シマセズ、又運用上ニ於
キマシテモ、別段支障ガナイト認メマシタ
カラ、政府ハ之ニ對シテ同意ヲ致シマシタ
次第デアリマス、何卒愼重御審議ノ上、御
協贊アラムコトヲ切望スル次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006703242X01919350320&spkNum=8
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009・有馬頼寧
○伯爵有馬賴寧君 簡單ナ質問ガアリマス
ガ、御許シヲ願ヒタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006703242X01919350320&spkNum=9
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010・松平頼壽
○副議長(伯爵松平賴壽君) 宜シウゴザイ
マス
〔伯爵有馬賴寧君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006703242X01919350320&spkNum=10
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011・有馬頼寧
○伯爵有馬賴寧君 只今政府ノ御說明ニナ
リマシタ倉庫業法ニ付キマシテ、其內容ニ
付テ質問ヲスルノデハナイノデアリマス
ガ、衆議院ノ委員會ノ時ニ、之ニ付帶決議
ガ付イテ居ルノデアリマス、全會一致ヲ以
テ付帶決議ガ付ケラレテ居リマスガ、其付
帶決議ノ第三デアリマシタカニ、農業倉庫
業及產業組合附屬ノ倉庫ニ對シテハ、倉庫
業······何ト申シマスカ一般倉庫業ガヤルヤ
ウナ商行爲ハ、一切之ヲ禁止スルト云ッタ
ヤウナ風ノ意味ノコトガ、付帶決議ニ入ッテ
居ルノデアリマス、勿論此倉庫業法ガ出來
マシテモ、農業倉庫ハ農業倉庫業法ト云フ
特別ノ法律ガアルノデアリマスルカラ、サ
ウ云フ付帶決議ガアリマシテモ、直ニ此倉
庫業法ガ成立イタシマシタ爲ニ、農業倉庫
ガサウ云フ制限ヲ受ケルト云フコトハナイ
ト思フノデアリマスガ、只今修正條項ニ付
テハ、政府ハ御同意ニナッタト申サレマシ
タガ、無論付帶決議ニ付テハ何トモ申
サレマセヌガ、其付帶決議ヲドウ云フ風
ニ政府ハ御考ニナルノデアリマスカ、農
業倉庫業ト云フモノガ、若シサウ云ッタ
ヤウナ商行爲ヲ全部禁止サレルト云ッタヤ
ウナ風ナコトデアルナラバ、農業倉庫ハアッ
テ無キガ如キモノニナルノデアリマス、尤
モソレガ爲ニハ、農業倉庫業法ノ改正ヲシ
ナケレバ出來ナイコトデアリマスガ、其委
員會ニハ商工省ノ方バカリ出テ居ラレマシ
テ、農林省ノ關係ノ方ハ一度モ出テオ出デ
ニナラヌヤウデアリマス、從テ農林省側ノ
意向ト云フモノハ全然發表サレテ居ラナイ
ヤウニ思ヒマス、其點ニ付キマシテ政府當
局ノ御意見ヲ伺ヒタイト思ヒマス
〔政府委員勝正憲君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006703242X01919350320&spkNum=11
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012・勝正憲
○政府委員(勝正憲君) 只今ノ御質問ニ御
答申上ゲマスガ、此倉庫業法案ヲ衆議院ガ
決議スルニ當リマシテ、付帶希望條項ト云
フモノガ四ツバカリ付イタノデアリマス、
是ハ政府ニ於キマシテハ大體此希望ノ趣旨
ハ贊成デアリマスルケレドモ、何モ此通リ
必ズ其儘實行スルト云フ譯ニモ行カナイ點
モ、能ク〓究シテ見ナケレバナラヌ所ガア
ラウト思ヒマス、從テ只今御述ニナリマシ
タ希望條項ノ第三ハ、農業倉庫法又ハ產業
組合法ノ規定ノ範圍ヲ逸脫シテ、營業倉庫ヲ
壓迫スルガヤウナ行爲ハ、取締ッテ貰ヒタイ
ト云フヤウナ趣旨デアルモノト認メマシ
テ、ソレ等ノコトニ付キマシテモ主管省タ
ル農林省トモ協議ノ上ニ、農業倉庫業法、
產業組合法ノ適切ナル運用ニ依リマシテ、
極力妥當ナル處置ヲ講ジタイト考ヘテ居リ
マス次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006703242X01919350320&spkNum=12
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013・有馬頼寧
○伯爵有馬賴寧君 簡單デアリマスカラ、
此席カラ御許シヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006703242X01919350320&spkNum=13
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014・松平頼壽
○副議長(伯爵松平賴壽君) 宜シウゴザイ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006703242X01919350320&spkNum=14
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015・有馬頼寧
○伯爵有馬賴寧君 只今ノ御答辯デアリマ
スナラバ、私ハ敢テ御尋ヲスル必要ハナカッ
タノデアリマスガ、速記錄デ拜見シマシタ
付帶決議ノ文句ハ、只今御說明ニナリマシ
タノトハ私ハ遠フヤウニ了解ヲスルノデア
リマス、併シ此事ニ付キマシテハ、他ノ機
會ニ於テ御尋スル折モアラウカト存ジマス
カラ、今囘ハ此程度ニ止メテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006703242X01919350320&spkNum=15
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016・松平頼壽
○副議長(伯爵松平賴壽君) 別ニ御質疑モ
ゴザイマセヌケレバ、特別委員ノ氏名ヲ朗
讀イタサセマス
〔小林書記官朗讀〕
倉庫業法案特別委員
侯爵井上三郞君子爵植村家治君
男爵橋元正輝君男爵杉溪由言君
內藤久寛君中村圓一郞君
門野幾之進君武井覺太郞君
田中德兵衞君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006703242X01919350320&spkNum=16
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017・松平頼壽
○副議長(伯爵松平賴壽君) 日程第二、裁
判所構成法中改正法律案、日程第三、裁判
所ノ廢止及設立ニ關スル法律案、日程第
四、大正二年法律第九號中改正法律案、日
程第五、司法代書人法中改正法律案、日程
第六、辯護士法中改正法律案、日程第七、
公證人法中改正法律案、日程第八、執達吏
規則中改正法律案、日程第九、執達吏手數
料規則中改正法律案、政府提出、衆議院送
付第一讀會、是等ノ八案ハ之ヲ一括シテ
議題ニスルコトニ御異議ゴザイマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006703242X01919350320&spkNum=17
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018・松平頼壽
○副議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト
認メマス、司法大臣
裁判所構成法中改正法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議
院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和十年三月十九日
衆議院議長濱田國松
貴族院議長公爵近衞文麿殿
裁判所構成法中改正法律案
裁判所構成法中左ノ通改正ス
第二條ニ左ノ一項ヲ加フ
地方裁判所ハ必要ニ應シ之ヲ民事ノミ
ヲ管轄スルモノ(民事地方裁判所)又ハ
刑事ノミヲ管轄スルモノ(刑事地方裁
判所)ト爲スコトヲ得
第六條第一項中「各裁判所」ヲ「民事地方
裁判所ヲ除ク外各裁判所」ニ改メ同項ノ
次ニ左ノ一項ヲ加フ
前項ニ定メタル檢事ノ權限ハ民事地方
裁判所ニ關シテハ其ノ管轄區域ヲ同シ
クスル刑事地方裁判所ノ檢事局ノ檢事
之ヲ行フ
第八條第一項中「各裁判所」ヲ「各裁判所
及各檢事局」ニ改メ同條第二項ヲ削ル
第十三條ノ三第十一條第三項第十三條
及前條ニ定メタル地方裁判所長ノ權限
ハ民事地方裁判所及刑事地方裁判所ア
ル場合ニ於テハ控訴院長又ハ其ノ指定
シタル民事地方裁判所長若ハ刑事地方
裁判所長之ヲ行フ
第十九條第二項中「各地方裁判所」ヲ「民
事地方裁判所及刑事地方裁判所ヲ除ク外
各地方裁判所」ニ改メ同條ニ左ノ一項ヲ
加フ
民事地方裁判所及刑事地方裁判所ニ一
若ハ二以上ノ部ヲ設ク
第二十五條ノ三民事地方裁判所及刑事
地方裁判所アル場合ニ於テ裁判事務上
必要アリト認ムルトキハ控訴院長ハ民
事地方裁判所又ハ刑事地方裁判所ノ判
事ニ其ノ管轄區域ヲ同シクスル刑事地
方裁判所又ハ民事地方裁判所ノ判事ノ
代理ヲ命スルコトヲ得
第七十一條ノ二中「關東廳法院判官又ハ
關東廳法院檢察官」ヲ「關東法院判官又ハ
關東法院檢察官」三郎人
第七十二條第二號中「郡」ヲ削ル
第八十六條第一項ヲ左ノ如ク改メ同條第
二項中「檢事局」ヲ「區裁判所檢事局」ニ、
同條第三項中「監督書記及書記長」ヲ「書
記長及監督書記」ニ改ム
大審院大審院檢事局及控訴院ノ書記課
ニ書記長ヲ置ク控訴院檢事局地方裁判
所及地方裁判所檢事局ノ書記課ニ監督
書記ヲ置ク
第九十五條第一項ノ次ニ左ノ一項ヲ加フ
民事地方裁判所及刑事地方裁判所アル
場合ニ於テハ前項ノ委任ハ民事地方裁
判所長ニ對シ之ヲ爲ス
第百一條廷丁ハ大審院控訴院及地方裁
判所ニ於テハ裁判所長區裁判所ニ於テ
ハ其ノ一人ノ判事又ハ監督判事之ヲ雇
ヒ及其ノ雇ヲ解ク
第百三十三條中「裁判所書記課」ヲ「裁判
所及檢事局ノ書記課」ニ改ム
第百三十五條ニ左ノ一項ヲ加フ
前項第四號ニ定メタル地方裁判所長ノ
其ノ支部及其ノ管轄區域內ノ區裁判所
ニ對スル監督ノ權限ハ民事地方裁判所
及刑事地方裁判所アル場合ニ於テハ控
訴院長又ハ其ノ指定シタル民事地方裁
判所長若ハ刑事地方裁判所長之ヲ行フ
第百四十二條ニ左ノ一項ヲ加フ
前項ニ定メタル權限ハ民事地方裁判所
ニ關シテハ其ノ管轄區域ヲ同シクスル
刑事地方裁判所ノ檢事局之ヲ行フ
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
裁判所ノ廢止及設立ニ關スル法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議
院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和十年三月十九日
衆議院議長濱田國松
貴族院議長公爵近衞文麿殿
裁判所ノ廢止及設立ニ關スル法律案
東京地方裁判所ハ之ヲ廢止ス
東京市ニ民事地方裁判所及刑事地方裁判
所ヲ設立シ民事地方裁判所ヲ東京民事地
方裁判所、刑事地方裁判所ヲ東京刑事地
方裁判所ト稱ス
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
東京地方裁判所ニ於テ爲シタル事件ノ受
理其ノ他ノ手續ハ民事事件ニ付テハ東京
民事地方裁判所ニ於テ、刑事事件ニ付テ
ハ東京刑事地方裁判所ニ於テ之ヲ爲シタ
ルモノト看做ス
大正二年法律第九號中改正法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議
院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和十年三月十九日
衆議院議長濱田國松
貴族院議長公爵近衞文麿殿
大正二年法律第九號中改正法律案
大正二年法律第九號中左ノ通改正ス
別表裁判所管轄區域表地方裁判所ノ欄中
「東京」ヲ「東京民事三枚入り
東京刑事」
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
〔參照〕
大正二年法律第九號ハ裁判所管轄區域ニ
關スル法律ナリ
司法代書人法中改正法律案
右政府提出案本院ニ於テ修正議決セリ因
テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和十年三月十九日
衆議院議長濱田國松
貴族院議長公爵近衞文麿殿
(小字ハ衆議院修正)
司法代書人法中改正法律案
司法代書人法中左ノ通改正ス
「司法代書人法」ヲ「司法書士法」ニ改ム
第一條、第四條及第七條乃至第十條中「司法代
書人」ヲ「司法書士」ニ改ム
〓中「司法代書人」ヲ「司法書士」ニ改メ
同條
第二條〓ニ左ノ但書ヲ加フ
但シ管轄區域ヲ同シクスル民事地方裁
判所及刑事地方裁判所アル場合ニ於テ
ハ民事地方裁判所ノ所屬トス
O.J
第三條、第五條、第六條及第十一條中。「地
法代書人」ヲ「司法書士ニ」、
方裁判所長」ヲ「所屬地方裁判所長」ニ改
ム
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
辯護士法中改正法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議
院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和十年三月十九日
衆議院議長濱田國松
貴族院議長公爵近衞文麿殿
辯護士法中改正法律案
辯護士法中左ノ通改正ス
第八條第一項ニ左ノ但書ヲ加フ
但シ管轄區域ヲ同シクスル民事地方裁
判所及刑事地方裁判所アル場合ニ於テ
ハ刑事地方裁判所ニ之ヲ備フ
同條第二項ノ次ニ左ノ一項ヲ加フ
第一項但書ノ場合ニ於テハ刑事地方裁
判所所屬ノ辯護士ハ當然民事地方裁判
所ノ所屬トス
第十八條第一項ヲ左ノ如ク改ム
辯護士會ハ地方裁判所ノ管轄區域每ニ
之ヲ設立ス可シ但シ辯護士ノ數寡少ニ
シテ辯護士會ヲ組織スルニ適セサルト
キハ司法大臣ノ認可ヲ受ケ他ノ地方裁
判所所屬辯護士ト合同シテ辯護士會ヲ
設立スルコトヲ得
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
公證人法中改正法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議
院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和十年三月十九日
衆議院議長濱田國松
貴族院議長公爵近衞文麿殿
公證人法中改正法律案
公證人法中左ノ通改正ス
第十條第一項ニ左ノ但書ヲ加フ
但シ管轄區域ヲ同シクスル民事地方裁
判所及刑事地方裁判所アル場合ニ於テ
ハ民事地方裁判所ノ所屬トス
第四十五條第二項、第六十四條第二項、
第六十七條第二項及第七十四條第二項
中「地方裁判所長」ヲ「所屬地方裁判所長」
ニュティ
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
執達吏規則中改正法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議
院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和十年三月十九日
衆議院議長濱田國松
貴族院議長公爵近衞文麿殿
執達吏規則中改正法律案
執達吏規則中左ノ通改正ス
第五條ノ三第五條及前條第一項ニ定メ
タル地方裁判所長ノ權限ハ管轄區域ヲ
同シクスル民事地方裁判所及刑事地方
裁判所アル場合ニ於テハ控訴院長又ハ
其指定シタル民事地方裁判所長若クハ
刑事地方裁判所長之ヲ行フ
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
執達吏手數料規則中改正法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議
院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和十年三月十九日
衆議院議長濱田國松
貴族院議長公爵近衞文麿殿
執達吏手數料規則中改正法律案
執達吏手數料規則中左ノ通改正ス
第十八條第三項ニ左ノ但書ヲ加フ
但管轄區域ヲ同シクスル民事地方裁判
所及刑事地方裁判所アル場合ニ於テハ
控訴院長之ヲ定メ又ハ其指定シタル民
事地方裁判所長若クハ刑事地方裁判所
長控訴院長ノ認可ヲ經テ之ヲ定ム
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
〔國務大臣小原直君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006703242X01919350320&spkNum=18
-
019・小原直
○國務大臣(小原直君) 只今上程ニナリマ
シタ裁判所構成法中改正法律案外七件ノ提
案理由ヲ御說明申上ゲマス、裁判所構成法
中改正法律案ノ主眼ト致シマスル所ハ、從
來通常裁判所ニ於キマシテハ、民事及刑事
ヲ裁判スルコトニナッテ居ルノデアリマスル
ガ、今回地方裁判所ニ付テハ民事ノミヲ管
轄スル民事地方裁判所ト、刑事ノミヲ管轄
スル刑事地方裁判所トヲ設ケルコトノ出來
ル途ヲ開イタ點デアリマス、是ハ東京地方
裁判所ノ現狀ニ鑑ミマシテ、切實ニ其必要
ヲ感ジテ居ルノデアリマシテ、東京地方裁
判所ニ於ケル事件ノ數、又其職員ノ數ニ徵
シマスルト、之ヲ一人ノ地方裁判所ノ監督
ノ下ニ其統制ノ全キヲ期スルコトハ蓋シ至
難ノコトト言ハナケレバナラナイノデアリ
マー、ソコデ右監督統制ノ全キヲ期スル爲
ニハ事務ノ相違、職員ノ分野ニ從ヒマシテ、
之ヲ民事刑事各個ノ地方裁判所ニ獨立分離
セシムルコトガ最モ適當デアリ、又必要缺
クベカラザルコトト考へタノデアリマス、
玆ニ於テ裁判所構成法中改正法律案ト相俟
チマシテ、裁判所廢止及設立ニ關スル法律案
ヲ以チマシテ、東京地方裁判所ヲ廢止イタ
シ、改メテ東京民事地方裁判所及東京刑事
地方裁判所ヲ設立イタシマシテ、同時ニ大正
二年法律第九號中改正法律案ニ依リ、東京民
事地方裁判所ト東京刑事地方裁判所ノ管轄
區域ヲ明ニセムトスル次第デアリマス、尙
ホ裁判所構成法中改正法律案ニ付テ右申上
ゲマシタ主眼ノ點ノ外ニ、裁判所書記其他
ニ關スル規定ノ若干改正モアルノデアリマ
スルガ、詳細ハ適當ノ機會ニ御說明申上ゲ
タイト存ジマス、次ニ司法代書人法中改正
法律案外四件ハ、右申述べマシタ通リ地方裁
判所ヲ民事地方裁判所ト刑事地方裁判所ニ
分離スルコトヲ得ルノ途ヲ開キマシタ結果、
ソレ〓〓其規定ヲ改正整備スルノ必要ヲ生
ジタ譯デアリマス、卽チ地方裁判所ガ民事
及刑事ノ各獨立ノ地方裁判所ニ分離セラレ
マシタ場合ニ於ケル辯護士、公證人及司法
代書人ノ監督上ノ所屬ヲ明ニシ、又執達吏
ニ付テモ之ニ類スル事項ヲ改メル爲ニ本案
ヲ提案シタ次第デアリマシテ、要スルニ裁
判所構成法中改正法律案ニ關聯スル整備的
趣旨ノ改正案デゴザイマス、何卒愼重御審
議ノ上、東京地方裁判所ノ民刑分離獨立ノ
必要ヲ痛感イタシマスル點ヲ御諒承下サイ
マシテ、速ニ御協贊アラムコトヲ希望スル
次第デアリマス、尙ホ最後ニ申添ヘテ置キ
マスルガ、以上八案ノ中司法代書人法中改
正法律案ニ對シマシテハ、衆議院ニ於キマ
シテ修正ガアリマシタ、修正ハ司法代書人
ノ名稱ヲ司法書士ト改ムル點デアリマシテ、
從テ右ノ修正ノ結果本案ノ名稱ハ司法書士
トナッテ居リマス、此點ヲ一言イタシテ置
キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006703242X01919350320&spkNum=19
-
020・松平頼壽
○副議長(伯爵松平賴壽君) 別ニ御質疑ガ
ゴザイマセヌケレバ、八案ハ之ヲ刑法中改
正法律案外二件ノ特別委員ニ付託イタシマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006703242X01919350320&spkNum=20
-
021・松平頼壽
○副議長(伯爵松平賴壽君) 日程第十、關
稅定率法中改正法律案、日程第十一、大正
十三年法律第二十四號中改正法律案、日程
第十二、昭和七年法律第四號中改正法律案、
日程第十三、關稅法中改正法律案、政府提
出、衆議院送付、第一讀會、是等ノ四案ハ
之ヲ一括シテ議題ト爲スコトニ御異議ハゴ
ザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006703242X01919350320&spkNum=21
-
022・松平頼壽
○副議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナシト
看做シマス、矢吹政務次官
關稅定率法中改正法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議
院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和十年三月十九日
衆議院議長濱田國松
貴族院議長公爵近衞文麿殿
關稅定率法中改正法律案
關稅定率法中左ノ通改正ス
第九條第二項中「茶鉛、」ヲ「機械用若ハ工
業用ニ供スル爲形ツクリタル貴石、茶鉛、」
三六人
別表輸入稅表中左ノ如ク改ム
第二百二十號ヲ左ノ如ク改ム
二二〇人造麝香
一ムスクキシロール
二其ノ他
第二百九十九號第四項ヲ削リ第五項ヲ第四項トシ第六項ヲ第五項トス
第四百十二號ヲ左ノ如ク改ム
四一二貴石
一機械用又ハ工業用ニ供スル爲形ツクリ
タルモノ
二其ノ他
第四百六十三號ノ二中「マグネシウム」ヲ「マグネシウム及マグネシウム合金」
ム
第六百二十號ヲ左ノ如ク改ム
六二〇白金、ヴァナヂウム又ハ其ノ化合物ヲ含ム觸
媒
第六百三十一號ヲ左ノ如ク改ム
六三一ヴァルカナイズドファイバー
類
附則
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
大正十三年法律第二十四號中改正法律
案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議
院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和十年三月十九日
衆議院議長濱田國松
貴族院議長公爵近衞文麿殿
大正十三年法律第二十四號中改正法律
案
每百斤一二五·〇〇
從價三割五分
從價五分
從價一割
ニ改
無稅
全板及管ノ
每百斤二六·〇〇
大正十三年法律第二十四號中左ノ通改正
ス
第二項中「貴石若ハ」ヲ削ル
別表輸入稅表番號第六十六號ノ項ヲ左ノ
如ク改ム
六六別號ニ揭ケサル酒類(燒酎類
ヲ除ク)
同第四百十二號ノ項ヲ削ル
同第六百十二號ノ項一ヲ左ノ如ク改ム
一單ニ切リ、挽キ又ハ割
リタルモノ
甲ノ二鐵刀木、紅木、
紫檀及黑檀(縞黑檀ヲ
除ク)
附則
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
參照
大正十三年法律第二十四號ハ贅澤品等
ノ輸入稅ニ關スル法律ナリ
昭和七年法律第四號中改正法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議
院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和十年三月十九日
衆議院議長濱田國松
貴族院議長公爵近衞文麿殿
昭和七年法律第四號中改正法律案
昭和七年法律第四號中左ノ通改正ス
別表輸入稅表番號第百七十六號ノ項ノ次
ニ左ノ一項ヲ加フ
二二〇人造麝香
-ムスクキシロール
同第四百六十三號ノ二ノ項ヲ左ノ如ク改
ム
四六三ノ二マグネシウム及マグネシウ
ム合金
同第六百十二號ノ項ノ次ニ左ノ一項ヲ加
フ
六三一ヴァルカナイズドファイ
バー(竿、板及管ノ類)
附則
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
參照
昭和七年法律第四號ハ輸入稅ノ從量稅
率ニ關スル法律ナリ
關稅法中改正法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議
院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和十年三月十九日
衆議院議長濱田國松
貴族院議長公爵近衞文麿殿
關稅法中改正法律案
關稅法中左ノ通改正ス
第七十五條ニ左ノ但書ヲ加フ
但シ犯罪ニ係ル貨物カ關稅定率法別表
輸入稅表第四百十二號第二項ニ揭クル
貴石ナルトキハ罰金又ハ科料ハ其ノ原
價ノ三倍ニ相當スル金額トス
第七十五條ノ二ニ左ノ但書ヲ加フ
但シ犯罪ニ係ル貨物カ前條但書ニ揭ク
ル貴石ナルトキハ罰金ハ五千圓以下ト
シ其ノ原價カ五千圓ヲ超ユルトキハ原
價ニ相當スル金額以下トス
附則
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
〔政府委員男爵矢吹省三君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006703242X01919350320&spkNum=22
-
023・矢吹省三
○政府委員(男爵矢吹省三君) 只今議題ト
ナリマシタ關稅定率法中改正法律案外三件
ニ付キマシテ、其關稅改正ノ趣旨ヲ說明イ
タシマス、先ヅ大正十三年法律第二十四號、
卽チ贅澤品等ノ輸入稅ニ關スル法律中改正
法律案ハ、現行ノ規定品目中カラ貴石外幾
品目ヲ削除シ、併セテ字句ノ改正ヲ致サム
トスルモノデアリマス、貴石ハ何分ニモ容
積極メテ小ニシテ、價格甚ダ高價ナル品物
デアリマスカラ、現行稅率ヲ以テシテハ取
締上至難ノ點ガアリマスノデ、其稅率ヲ從
價一割トスルコトニ致シタイト存ジマス、
次ニ人造麝香等五品目ニ付キマシテハ、是
等物品ノ生產、輸入及需給等ノ情況ニ鑑ミ、
現行稅率ノ改正ヲ加フルノ要アリト認メマ
スノデ、關稅定率法中改正法律案及昭和七
年法律第四號中改正法律案ヲ提出イタシマ
シタ次第デアリマス、尙ホ貴石ニ對シマシ
テハ現行關稅法ノ罰則ヲ以テシテハ、之ガ
取締ノ目的ヲ達スル上ニ於テ十分ナラザル
モノガアルト認メマシテ、關稅法ノ改正ヲ
行フコトニ致シマシタ、政府ハ關稅率ノ點
ニ關シマシテハ、曩ニ關稅調査委員會ニ諮
問シ、其答申ニ基キマシテ茲ニ關稅ノ關係
法律案ヲ提出イタシマシタノデアリマス、
尙ホ詳細ナル點ニ關シマシテハ適當ノ機會
ニ於テ御說明ヲ致ス考デアリマス、何卒御
審議ノ上、速ニ御協贊ヲ與ヘラレムコトヲ
希望イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006703242X01919350320&spkNum=23
-
024・池田政時
○子爵池田政時君 只今上程ニ相成リマシ
タ日程第十、第十一、第十二、第十三ノ各
案ハ、重要ナル法案デアリマスルガ故ニ、
其特別委員ノ數ヲ十五名トシ、其指名ヲ議
長ニ一任スルノ動議ヲ提出イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006703242X01919350320&spkNum=24
-
025・植村家治
○子爵植村家治君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006703242X01919350320&spkNum=25
-
026・松平頼壽
○副議長(伯爵松平賴壽君) 池田子爵ノ動
議ニ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006703242X01919350320&spkNum=26
-
027・松平頼壽
○副議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト
認メマス、特別委員ノ氏名ヲ朗讀イタサセ
マス
〔小林書記官朗讀〕
關稅定率法中改正法律案外三件特別委員
侯爵細川護立君侯爵德川賴貞君
伯爵溝口直亮君男爵安保〓種君
子爵曾我祐邦君子爵井上勝純君
子爵高橋是賢君眞野文二君
男爵伊藤一郞君男爵安場保健君
靑木周三君大川平三郞君
磯村豐太郞君大澤德太郞君
水野甚次郞君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006703242X01919350320&spkNum=27
-
028・松平頼壽
○副議長(伯爵松平賴壽君) 日程第十四、
昭和十年度一般會計歲出ノ財源ニ充ツル爲
公債追加發行ニ關スル法律案、府政提出、
衆議院送付、第一讀會、矢吹政務次官
昭和十年度一般會計歲出ノ財源ニ充ツ
ル爲公債追加發行ニ關スル法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議
院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和十年三月十九日
衆議院議長濱田國松
貴族院議長公爵近衞文麿殿
昭和十年度一般會計歲出ノ財源ニ充ツ
ル爲公債追加發行ニ關スル法律案
政府ハ昭和十年度一般會計歲出ノ財源ニ
充ツル爲他ノ法律ニ依リ起債シ得ル金額
ノ外六十萬圓ヲ限リ公債ヲ發行シ又ハ借
入金ヲ爲スコトヲ得
前項ノ規定ニ依ル公債ノ發行價格差減額
ヲ補塡スル爲必要アル場合ニ於テハ前項
ノ制限以外ニ公債ヲ發行シ又ハ借入金ヲ
爲スコトヲ得
附則
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
〔政府委員男爵矢吹省三君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006703242X01919350320&spkNum=28
-
029・矢吹省三
○政府委員(男爵矢吹省三君) 只今議題ト
ナリマシタ昭和十年度一般會計歲出ノ財源
ニ充ツル爲公債追加發行ニ關スル法律案、
提出ノ理由ヲ說明イタシマス、昭和十年度
歲入歳出總豫算ニ伴フ一般會計歲入不足ノ
補塡ニ付キマシテハ、之ニ關スル法律案ヲ
今期議會ニ提出シテ居リマスガ、別途提出
イタシマシタ同年度歲入歲出總豫算追加第
一號ニ計上セル經費ノ財源ニ付キマシテ
モ、又今日ノ場合公債ニ依ル必要ガアリマ
スノデ、本法律案ヲ提出シタ次第デアリマ
ス、尙ホ本法律案ハ前述ノ如ク總豫算ニ伴
フ歲入補塡公債法案ガ目下審議中ナルニ鑑
ミ、別ノ法律案ト致シタ次第デアリマス、
何卒御審議ノ上、速ニ御協賛ヲ與ヘラレム
コトヲ希望イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006703242X01919350320&spkNum=29
-
030・松平頼壽
○副議長(伯爵松平賴壽君) 御質疑ゴザイ
マセヌケレバ、本案ハ之ヲ酒造組合法中改
正法律案外四件ノ特別委員ニ付託イタシマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006703242X01919350320&spkNum=30
-
031・松平頼壽
○副議長(伯爵松平賴壽君) 日程第十五、
府縣制中改正法律案、日程第十六、北海道
會法中改正法律案、日程第十七、市制中改
正法律案、日程第十八、町村制中改正法律
案、政府提出、衆議院送付、第一讀會、是
等ノ四案ハ之ヲ一括シテ議題ト爲スコトニ
御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006703242X01919350320&spkNum=31
-
032・松平頼壽
○副議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト
認メマス、後藤内務大臣
府縣制中改正法律案
右政府提出案本院ニ於テ修正議決セリ因
テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和十年三月十九日
衆議院議長濱田國松
貴族院議長公爵近衞文麿殿
(小字及-ハ衆議院ノ修正)
府縣制中改正法律案
府縣制中左ノ通改正ス
第四條ニ左ノ二項ヲ加フ
前項ノ區域ノ人口著シク少キトキハ府
縣條例ヲ以テ其ノ區域ト隣接ノ區域ト
ヲ合セテ一選擧區ヲ設クルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ選擧區ヲ設クル場合
ニ於テ必要ナル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ
定ム
第六條第二項中「戰時若ハ事變ニ際シ」ノ
下ニ「又ハ兵役法第五十五條第二項ノ規
定(志願ニ依リ兵籍ニ編入セラレタル者
ニ付テハ之ニ該當スル勅令ノ規定ヲ含
、同條第五項ノ次ニ左ノ一項ヲ
ム)ニ依リ」ヲ加フ
加フ
租稅滯納處分中ノ者ハ被選擧權ヲ有セズ
第八條第一項但書中「第三十一條第二項、
第三項若ハ第六項ノ規定ニ依ル期限前ニ
於テ」ヲ「選擧ノ期日ヨリ一年以內ニ」ニ、
「其ノ期限經過後ニ於テ」ヲ「選擧ノ期日
ヨリ一年經過後ニ於テ」ニ、「第三十二條第
三項」ヲ「第三十二條第四項」ニ、同條第
二項中「第三十二條第四項及第五項」ヲ
「第三十二條第五項及第六項」ニ改ム
第十三條ノ二第三項中「選擧ノ期日ノ前
日マテ」ヲ「選擧ノ期日前二日目マデ」ニ
改ム
第十五條第四項中「特別ノ事情」ヲ「必要」
二六六
第十六條第一項中「選擧ノ期日ノ前日マ
テ」ヲ「選擧ノ期日前二日目マデ」ニ改ム
第十九條ノ二選擧人ニシテ勅令ノ定ム
ル事由ニ因リ選擧ノ當日投票時間內ニ
自ラ投票所ニ到リ投票ヲ爲シ能ハザル
ベキコトヲ證スル者ノ投票ニ關シテハ
第十八條第三項及第五項、第十八條ノ
二第一項但書竝ニ前條ノ規定ニ拘ラズ
勅令ヲ以テ特別ノ規定ヲ設クルコトヲ
得
第二十五條第三項中「投票區每」ヲ「市町
村其ノ他府縣知事ノ定ムル區域每」ニ改
ム
第三十一條第五項中「第六條第六項」ヲ「第六
條第七項」ニ改ム
第三十二條第一項但書中「第二項」ヲ「第
二項又ハ第三項」ニ、同條第三項中「前項」
ヲ「前二項」ニ改メ同條第二項ヲ左ノ如
クルエ
前項第一號乃至第四號ノ事由ヲ生ジタ
ル場合ニ於テ第二十九條第一項但書ノ
得票者ニシテ當選者ト爲ラザリシ者ア
ルトキハ直ニ選擧會ヲ開キ其ノ者ノ中
ニ就キ當選者ヲ定ムベシ
第一項第五號又ハ第六號ノ事由ヲ生ジ
タルトキハ其ノ選擧ノ期日ヨリ一年以
內ナル場合ニ於テ第二十九條第一項但
書ノ得票者ニシテ當選者ト爲ラザリシ
者アルトキ又ハ其ノ選擧ノ期日ヨリ一
年經過後ナル場合ニ於テ第二十九條第
二項ノ規定ノ適用ヲ受ケタル得票者ニ
シテ當選者ト爲ラザリシ者アルトキハ
前項ノ規定ヲ準用ス
第三十四條ノ二第三項中「前二項」ヲ前
項」ニ改メ同條第四項ヲ左ノ如ク改メ同
條第二項ヲ削ル
檢事ハ衆議院議員選擧法第百十二條乃
至第百十三條ノ規定ノ準用ニ依ル罪ニ
該ル事件ノ被〓人ガ選擧事務長又ハ選
擧事務長ニ非ズシテ事實上選擧運動ヲ
總括主宰シタル者ナルニ因リ同法第百
三十六條ノ規定ノ準用ニ依リ當選ヲ無
效ナリト認ムルトキハ公訴ニ附帶シ當
選者ヲ被告トシテ訴訟ヲ提起スルコト
フルガ
衆議院議員選擧法第八十五條、第八十
七條、第百四十一條及第百四十一條ノ
三ノ規定ハ第一項又ハ第二項ノ規定ニ
依ル訴訟ニ、同法第百四十一條ノ二及
第百四十一條ノ三ノ規定ハ前項ノ規定
ニ依ル訴訟ニ之ヲ準用ス
前條第八項ノ規定ハ第一項乃至第三項
ノ場合ニ之ヲ準用ス
第三十六條第二項中「第三十二條第三項」
ヲ「第三十二條第四項」ニ、同條第四項中
「第三十二條第四項及第五項」ヲ「第三十
二條第五項及第六項」ニ改ム
第三十九條中「及第百四十二條」ヲ「、第百
四十二條及第百四十七條」ニ、同條但書中
「選擧事務所ノ數、選擧委員及選擧事務員
ノ數竝」ヲ「選擧委員ノ數、選擧運動ノ爲
使用スル勞務者ノ數及」ニ改ム
第五十條第二項ニ左ノ但書ヲ加フ
但シ場合ニ依リ府縣知事ハ臨時會ニ付
七日以內ニ於テ別ニ會期ヲ定ムルコト
ヲ得
同條第三項中「前項ノ規定ニ拘ラズ三日
以內」ヲ「通ジテ三日以內ニ於テ」ニ改ム
第五十一條第二項ノ次ニ左ノ一項ヲ加フ
前條第二項但書ノ規定ニ依リ會期ヲ定
メタル場合ニ於テハ前項ノ〓示ト同時
ニ其ノ會期ヲ〓示スベシ
第五十五條第一項中「第二十九條」ヲ一群
二十九條第一項」ニ、同條第二項中「前
項」ヲ「第一項」ニ改メ同條第一項ノ次ニ
左ノ一項ヲ加フ
前項ノ選擧ニ於テ當選者ヲ定ムルニ當
リ得票ノ數同ジキトキハ議長抽籤シテ
之ヲ定ム
第六十八條中第三號ヲ削リ同條第二號ヲ
第三號トシ同條第一號ノ次ニ左ノ一號ヲ
加フ
二府縣會閉會中府縣會ノ權限ニ屬ス
ル事件ニシテ輕易ナルモノヲ府縣會
ニ代ハリテ議決スルコト
同條ニ左ノ一項ヲ加フ
前項第二號ノ規定ニ依リ府縣參事會ニ
於テ議決スベキ事件ハ府縣會ノ議決ヲ
經テ府縣知事之ヲ定ム
第七十條中「第五十一條第三項」ヲ「第五
十一條第四項」ニ改ム
附則
本法中議員選擧ニ關スル規定ハ次ノ總選
擧ヨリ之ヲ施行シ其ノ他ノ規定ノ施行ノ
期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
本法ニ依リ議員ヲ選擧スル場合ニ於テ昭和
十年市制中改正法律又ハ同年町村制中改
正法律中公民權及選擧人名簿ニ關スル規
定ハ之ヲ施行セザル市町村ニ於テハ府縣
制中市町村公民權及選擧人名簿ニ關スル
規定ノ適用ニ付之ヲ施行シタルモノト看
做ス
昭和十年市制中改正法律又ハ同年町村制
中改正法律中公民權及選擧人名簿ニ關ス
ル規定ハ之ヲ施行シタル市町村ニ於テハ
府縣制中市町村公民權及選擧人名簿ニ關
スル規定ノ適用ニ付次ノ總選擧ニ至ル迄
ノ間未ダ之ヲ施行セザルモノト看做ス
昭和十年町村制中改正法律中選擧人名簿
ニ關スル規定ハ第九條第一一項ノ規定ノ適
用ニ付テハ本法ノ施行ト同時ニ施行セラ
レタルモノト看做ス
前三項ノ場合ニ於テ議員ノ選擧ニ必要ナ
ル選擧人名簿ニ關シテハ命令ヲ以テ特別
ノ規定ヲ設クルコトヲ得
昭和九年法律第四十九號ハ本法ノ適用ニ
付テハ本法ノ施行ト同時ニ施行セラレタ
ルモノト看做ス
北海道會法中改正法律案
右政府提出案本院ニ於テ修正議決セリ因
テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和十年三月十九日
衆議院議長濱田國松
貴族院議長公爵近衞文麿殿
(小字及-ハ衆議院ノ修正)
北海道會法中改正法律案
北海道會法中左ノ通改正ス
第三條第一項ニ左ノ一號ヲ加フ
八租稅滯納處分中ノ者
第四條中「戰時若ハ事變ニ際シ」ノ下ニ「又
ハ兵役法第五十五條第二項ノ規定(志願
ニ依リ兵籍ニ編入セラレタル者ニ付テハ
之ニ該當スル勅令ノ規定ヲ含ム)ニ依リ」
ヲ加フ
第五條第二項ノ次ニ左ノ一項ヲ加フ
租稅滯納處分中ノ者ハ被選擧權ヲ有セズ
第六條第二項中「第十八條第二項」ヲ第
十八條第二項及第三項」ニ改ム
第十條中第三號ヲ削リ同條第二號ヲ第三
號トシ同條第一號ノ次ニ左ノ一號ヲ加フ
二北海道會閉會中北海道會ノ權限ニ
屬スル事件ニシテ輕易ナルモノヲ北
海道會ニ代ハリテ議決スルコト
同條ニ左ノ一項ヲ加フ
前項第二號ノ規定ニ依リ北海道參事會
ニ於テ議決スベキ事件ハ北海道會ノ議
決ヲ經テ北海道廳長官之ヲ定ム
附則
本法中議員選擧ニ關スル規定ハ次ノ總選
擧ヨリ之ヲ施行シ其ノ他ノ規定ノ施行ノ
期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
本法ニ依リ議員ヲ選擧スル場合ニ於テ昭
和十年市制中改正法律中公民權及選擧人
名簿ニ關スル規定ハ之ヲ施行セザル市ニ
於テハ北海道會法中選擧人名簿ニ關スル
規定ノ適用ニ付之ヲ施行シタルモノト看
做ス
昭和十年市制中改正法律中公民權及選擧
人名簿ニ關スル規定ハ之ヲ施行シタル市
ニ於テハ北海道會法中選擧人名簿ニ關ス
ル規定ノ適用ニ付次ノ總選擧ニ至ル迄ノ
間未ダ之ヲ施行セザルモノト看做ス
前二項ノ場合ニ於テ議員ノ選擧ニ必要ナ
ル選擧人名簿ニ關シテハ命令ヲ以テ特別
ノ規定ヲ設クルコトヲ得
本法ニ依リ初テ議員ヲ選擧スル場合ニ於
テ必要ナル町村長ノ調製スル選擧人名簿
テハ命令ヲ以テ特別ノ規定ヲ設クルコ
ニ關シ第六條ニ規定スル期日又ハ期間ニ
トヲ得
依リ難キトキハ北海道廳長官ニ於テ別ニ
其ノ期日又ハ期間ヲ定ム但シ其ノ選擧人
名簿ハ次ノ選擧人名簿確定迄其ノ效力ヲ
有ス
昭和九年法律第四十九號、昭和十年府縣
制中改正法律中議員選擧ニ關スル規定及
同年町村制中改正法律中選擧人名簿ニ關
スル規定ハ本法ノ適用ニ付テハ本法ノ施
行ト同時ニ施行セラレタルモノト看做ス
市制中改正法律案
右政府提出案本院ニ於テ修正議決セリ因
テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和十年三月十九日
衆議院議長濱田國松
貴族院議長公爵近衞文麿殿
(小字及-ハ衆議院ノ修正)
市制中改正法律案
市制中左ノ通改正ス
第十條ニ左ノ一項ヲ加フ
市ノ名譽職ニ就
市公民租稅滯納處分中ハ其ノ公民權ヲ
クコトヲ得ズ
停止ス
第十一條中「戰時若ハ事變ニ際シ」ノ下ニ
「又ハ兵役法第五十五條第二項ノ規定(志
願ニ依リ兵籍ニ編入セラレタル者ニ付テ
ハ之ニ該當スル勅令ノ規定ヲ含ム)ニ依
リ」ヲ加フ
第十七條中「特別ノ事情」ヲ「必要」ニ改ム
第二十條第一項中「闕員ヲ生ジタル場合
ニ於テ」ヲ「國員ヲ生ジタルトキハ其ノ闕
員ト爲リタル議員ガ選擧ノ期日ヨリ一年
以內ニ闕員ト爲リタル者ナル場合ニ於テ
第三十條第一項但書ノ得票者ニシテ當選
者ト爲ラザリシ者アルトキ又ハ選擧ノ期
日ヨリ一年經過後ニ於テ闘員ト爲リタル
者ナル場合ニ於テ」ニ、「第三十三條第三
項及第四項」ヲ「第三十三條第四項及第五
項」ニ、同條第三項中「第三十三條第五
項及第六項」ヲ「第三十三條第七項」ニ改
ム
第二十一條第二項中「前項」ヲ「前二項」ニ
改メ同條第一項ノ次ニ左ノ一項ヲ加フ
選擧人ノ年齡ハ選擧人名簿確定ノ期日
ニ依リ之ヲ算定ス
第二十二條第一項中「選擧ノ期日前七日
目(第三十九條ノ二ノ市ニ於テハ二十日
目)迄」ヲ「選擧ノ期日前二十日目迄」ニ改
ム
第二十二條ノ二議員候補者タラントス
ル者ハ選擧ノ期日ノ〓示アリタル日ヨ
リ選擧ノ期日前七日目迄ニ其ノ旨ヲ市
長(第六條ノ市ニ於テハ區長)ニ屆出ヅ
ベシ
選擧人名簿ニ登錄セラレタル者他人ヲ
議員候補者ト爲サントスルトキハ前項
ノ期間內ニ其ノ推薦ノ屆出ヲ爲スコト
ヲ得
前二項ノ期間內ニ屆出アリタル議員候
補者其ノ選擧ニ於ケル議員ノ定數ヲ超
ユル場合ニ於テ其ノ期間ヲ經過シタル
後議員候補者死亡シ又ハ議員候補者タ
ルコトヲ辭シタルトキハ前二項ノ例ニ
依リ選擧ノ期日前二日目迄議員候補者
ノ屆出又ハ推薦屆出ヲ爲スコトヲ得
議員候補者ハ市長(第六條ノ市ニ於テ
ハ區長)ニ屆出ヲ爲スニ非ザレバ議員
候補者タルコトヲ得ズ
前四項ノ屆出アリタルトキ又ハ議員候
補者ノ死亡シタルコトヲ知リタルトキ
ハ市長(第六條ノ市ニ於テハ區長)ハ直
ニ其ノ旨ヲ告示スベシ
第二十二條ノ三議員候補者ノ屆出又ハ
推薦屆出ヲ爲サントスル者ハ議員候補
者一人ニ付二百圓又ハ之ニ相當スル額
面ノ國債證書ヲ供託スルコトヲ要ス
議員候補者ノ得票數議員ノ定數(選擧
區アル場合ニ於テハ其ノ選擧區ノ配當
議員數)ヲ以テ有效投票ノ總數ヲ除シ
テ得タル數ノ十分ノ一ニ達セザルトキ
ハ前項ノ供託物ハ市ニ歸屬ス議員候補
者選擧ノ期日前十日以內ニ議員候補者
タルコトヲ辭シタルトキハ前項ノ規定
ヲ準用ス但シ被選擧權ヲ有セザルニ至
リタル爲議員候補者タルコトヲ辭シタ
ルトキハ此ノ限ニ在ラズ
第二十三條第三項、第五項及第六項ヲ削
ル
第二十三條ノ二議員候補者ハ選擧人名
簿(選擧區アル場合ニ於テハ其ノ選擧
區ノ選擧人名簿)ニ登錄セラレタル者
ノ中ヨリ本人ノ承諾ヲ得テ選擧立會人
タルベキ者一人ヲ定メ選擧ノ期日前二
日目迄ニ市長(第六條ノ市ニ於テハ區
長)ニ屆出ヅルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ屆出アリタル者(議
員候補者死亡シ又ハ議員候補者タルコ
トヲ辭シタルトキハ其ノ屆出ニ係ル者
ヲ除ク)十人ヲ超エザルトキハ直ニ其
ノ者ヲ以テ選擧立會人トシ十人ヲ超ユ
ルトキハ市長(第六條ノ市ニ於テハ區
長)ハ其ノ者ノ中ニ就キ抽籤ニ依リ選
擧立會人十人ヲ定ムベシ
前項ノ抽籤ハ選擧ノ期日ノ前日之ヲ行
フ第一項ノ屆出ヲ爲シタル議員候補者
ハ之ニ立會フコトヲ得
前項ノ抽籤ヲ行フベキ場所及日時ハ市
長(第六條ノ市ニ於テハ區長)ニ於テ豫
メ之ヲ告示スベシ
第二項ノ規定ニ依リ選擧立會人定マリ
タルトキハ市長(第六條ノ市ニ於テハ
區長)ハ直ニ之ヲ本人ニ通知シ選擧ニ
立會ハシムベシ
議員候補者死亡シ又ハ議員候補者タル
コトヲ辭シタルトキハ其ノ屆出ニ係ル
選擧立會人ハ其ノ職ヲ失フ
第二項ノ規定ニ依ル選擧立會人三人ニ
達セザルトキ若ハ三人ニ達セザルニ至
リタルトキ又ハ選擧立會人ニシテ參會
スル者選擧會ヲ開クベキ時刻ニ至リ三
人ニ達セザルトキ若ハ其ノ後三人ニ達
セザルニ至リタルトキハ市長(第六條
ノ市ニ於テハ區長)ハ選擧人名簿(選擧
區アルトキハ其ノ選擧區ノ選擧人名
簿ニ登錄セラレタル者ノ中ヨリ三人
ニ達スル迄ノ選擧立會人ヲ選任シ直ニ
之ヲ本人ニ通知シ選擧ニ立會ハシムベ
シ
選擧立會人ハ名譽職トス
前八項ノ規定ハ投票立會人ニ之ヲ準用
ス但シ選擧人名簿ニ登錄セラレタル者
トアルハ投票分會ノ區劃內ニ於ケル選
擧人名簿ニ登錄セラレタル者トス
第二十五條第五項及第七項中「被選擧人」
ヲ「議員候補者」ニ改ム
第二十五條ノ三第一項ヲ左ノ如ク改メ同
條第四項中「投票分會長又ハ」ヲ削ル
投票ノ拒否ハ選擧立會人又ハ投票立會
人ノ意見ヲ聽キ選擧長又ハ投票分會長
之ヲ決定スベシ
第二十五條ノ四選擧人ニシテ勅令ノ定
ムル事由ニ因リ選擧ノ當日投票時間內
ニ自ラ選擧會場ニ到リ投票ヲ爲シ能ハ
ザルベキコトヲ證スル者ノ投票ニ關シ
テハ第二十五條第三項及第五項、第二
十五條ノ二第一項但書竝ニ前條ノ規定
ニ拘ラズ勅令ヲ以テ特別ノ規定ヲ設ク
ルコトヲ得
第二十七條ノ二第二項ヲ左ノ如ク改ム
前項ノ計算終リタルトキハ選擧長ハ先
ヅ第二十五條ノ三第二項及第四項ノ投
票ヲ調査シ選擧立會人ノ意見ヲ聽キ其
ノ受理如何ヲ決定スベシ
第二十八條左ノ投票ハ之ヲ無效トス
一成規ノ用紙ヲ用ヒザルモノ
二議員候補者ニ非ザル者ノ氏名ヲ記
載シタルモノ
三一投票中二人以上ノ議員候補者ノ
氏名ヲ記載シタルモノ
四被選擧權ナキ議員候補者ノ氏名ヲ
記載シタルモノ
五議員候補者ノ氏名ノ外他事ヲ記載
シタルモノ但シ爵位、職業、身分、
住所又ハ敬稱ノ類ヲ記入シタルモノ
ハ此ノ限ニ在ラズ
六議員候補者ノ氏名ヲ自書セザルモ
七議員候補者ノ何人ヲ記載シタルカ
ヲ確認シ難キモノ
八市會議員ノ職ニ在ル者ノ氏名ヲ記
載シタルモノ
第二十九條投票ノ效力ハ選擧立會人ノ
意見ヲ聽キ選擧長之ヲ決定スベシ
第三十條ノ三第二十二條ノ二第一項乃
至第三項ノ規定ニ依ル屆出アリタル議
員候補者其ノ選擧ニ於ケル議員ノ定數
ヲ超エザルトキハ投票ヲ行ハズ選擧區
アル場合其ノ選擧區ニ付亦同ジ
前項ノ規定ニ依リ投票ヲ行フコトヲ要
セザルトキハ市長(第六條ノ市ニ於テ
ハ區長)ハ直ニ其ノ旨ヲ告示スベシ
第一項ノ場合ニ於テハ選擧長ハ選擧ノ
期日ヨリ五日以內ニ選擧會ヲ開キ議員
候補者ヲ以テ當選ト定ムベシ
前項ノ場合ニ於テ議員候補者ノ被選擧
權ノ有無ハ選擧立會人ノ意見ヲ聽キ選
擧長之ヲ決定スベシ
第三項ノ場合ニ於テハ市長(第六條ノ
市ニ於テハ區長)ハ豫メ選擧會ノ場所
及日時ヲ告示スベシ
第三十三條第一項但書中「第二項」ヲ「第
二項又ハ第三項」ニ改メ同項ニ左ノ一號
アップ
六第三十六條ノ二ノ規定ニ依ル訴訟
ノ結果當選無效ト爲リタルトキ
同條第三項中「前項」ヲ「前二項」ニ、同條
第四項中「第二項」ヲ「第一一項及第三項」ニ
改メ同條第二項ヲ左ノ如ク改ム
前項第一號乃至第四號ノ事由ヲ生ジタ
ル場合ニ於テ第三十條第一項但書ノ得
票者ニシテ當選者ト爲ラザリシ者アル
トキハ直ニ選擧會ヲ開キ其ノ者ノ中ニ
就キ當選者ヲ定ムベシ
第一項第五號又ハ第六號ノ事山ヲ生ジ
タルトキハ其ノ選擧ノ期日ヨリ一年以
內ナル場合ニ於テ第三十條第一項但書
ノ得票者ニシテ當選者ト爲ラザリシ者
アルトキハ又ハ其ノ選擧ノ期日ヨリ一
年經過後ナル場合ニ於テ第三十條第二
項ノ規定ノ適用ヲ受ケタル得票者ニシ
テ當選者ト爲ラザリシ者アルトキハ前
項ノ規定ヲ準用ス
第三十六條第一項中「選擧人」ノ下ニ「又
ハ議員候補者」ヲ加フ
第三十六條ノ二衆議院議員選擧法第百
十條ノ規定ノ準用ニ依リ當選ヲ無效ナ
リト認ムルトキハ選擧人又ハ議員候補
者ハ當選者ヲ被〓トシ第三十二條第一
項〓示ノ日ヨリ三十日以內ニ控訴院ニ
出訴スルコトヲ得
前項控訴院ノ判決ニ不服アル者ハ大審
院ニ上〓スルコトヲ得
檢事ハ衆議院議員選擧法第百十二條乃
至第百十三條ノ規定ノ準用ニ依ル罪ニ
該ル事件ノ被告人ガ選擧事務長又ハ選
擧事務長ニ非ズシテ事實上選擧運動ヲ
總括主宰シタル者ナルニ因リ同法第百
三十六條ノ規定ノ準用ニ依リ當選ヲ無
效ナリト認ムルトキハ公訴ニ附帶シ當
選者ヲ被告トシテ訴訟ヲ提起スルコト
ヲル、
衆議院議員選擧法第八十五條、第八十
七條、第百四十一條及第百四十一條ノ
三ノ規定ハ第一項又ハ第二項ノ規定ニ
依ル訴訟ニ、同法第百四十一條ノ二及
第百四十一條ノ三ノ規定ハ前項ノ規定
ニ依ル訴訟ニ之ヲ準用ス
前條第九項ノ規定ハ第一項乃至第三項
ノ場合ニ之ヲ準用ス
第三十七條第二項中「第三十三條第三項
及第四項」ヲ「第三十三條第四項及第五
項」ニ、同條第四項中「第三十三條第五項
及第六項」ヲ「第三十三條第六項及第七
項」三六人
第三十九條ノ二市會議員(第六條ノ市
ノ區ノ區會議員ヲ含ム)ノ選擧ニ付テ
ハ衆議院議員選擧法第十章及第十一章
竝ニ第百四十條第二項、第百四十二條
及第百四十七條ノ規定ヲ準用ス但シ議
員候補者一人ニ付定ムベキ選擧委員ノ
數選擧運動ノ爲使用スル勞務者ノ數
及選擧運動ノ費用ノ額ニ關シテハ勅令
ノ定ムル所ニ依ル
第三十九條ノ三ヲ削ル
第五十二條但書中「議長ニ於テ出席ヲ催
告シ仍半數ニ滿タサルトキ」ノ下ニ「若ハ
半數ニ滿ツルモ其ノ後半數ニ滿タザルニ
至リタルトキ」ヲ加フ
第五十五條第一項中「第三十條」ヲ「第三
十條第一項」ニ、同條第二項中「前項」ヲ
「第一項」ニ改メ同條第一項ノ次ニ左ノ
項ヲ加フ
前項ノ選擧ニ於テ當選者ヲ定ムルニ當
リ得票ノ數同ジキトキハ議長抽籤シテ
之ヲ定ム
第六十七條中第二號ヲ第三號トシ第三號
ヲ第四號トシ同條第一號ノ次ニ左ノ一號
アルコン
二市會閉會中市會ノ權限ニ屬スル事
件ニシテ輕易ナルモノヲ市會ニ代ハ
リテ議決スルコト
同條ニ左ノ一項ヲ加フ
前項第二號ノ規定ニ依リ市參事會ニ於
テ議決スベキ事件ハ市會ノ議決ヲ經テ
市長之ヲ定ム
第七十條第一項但書中「議長ニ於テ出席
ヲ催告シ仍半數ニ滿タサルトキ」ノ下ニ
「若ハ半數ニ滿ツルモ其ノ後半數ニ滿タ
ザルニ至リタルトキ」ヲ加フ
第百四十六條第二項中「市會議員ニ關ス
ル規定」ヲ「町村制中町村會議員ニ關スル
規定」ニ改ム
附則
本法中公民權及議員選擧ニ關スル規定ハ
次ノ總選擧ヨリ之ヲ施行シ其ノ他ノ規定
ノ施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
本法ニ依リ初テ議員ヲ選擧スル場合ニ於
テハ命令ヲ以
テ必要ナル選擧人名簿ニ關シ第二十一條
テ特別ノ規定ヲ設クルコトヲ得
乃至第二十一條ノ四ニ規定スル期日又ハ
期間ニ依リ難キトキハ府縣知事ニ於テ別
ニ其ノ期日又ハ期間ヲ定ム但シ其ノ選擧
人名簿ハ次ノ選擧人名簿確定迄其ノ效力
フォロー
昭和九年法律第四十九號ハ本法ノ適用ニ
付テハ本法ノ施行ト同時ニ施行セラレタ
ルモノト看做ス
昭和十年府縣制中改正法律案ハ從前ノ第
三十九條ノ二ノ規定ノ適用ニ付テハ次ノ
總選擧ニ至ル迄ノ間未ダ施行セラレザル
モノト看做ス
本法中市會議員ニ關スル規定ハ從前ノ第
百四十六條第二項ノ規定ノ適用ニ付テハ
區會議員ノ次ノ總選擧ニ至ル迄ノ間未ダ
施行セラレザルモノト看做ス
昭和十年町村制中改正法律中町村會議員
ニ關スル規定ハ第百四十六條第二項ノ改
正規定ノ適用ニ付テハ本法ノ施行ト同時
ニ施行セラレタルモノト看做ス
町村制中改正法律案
右政府提出案本院ニ於テ修正議決セリ因
テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和十年三月十九日
衆議院議長濱田國松
貴族院議長公爵近衞文麿殿
(小字及-ハ衆議院ノ修正)
町村制中改正法律案
町村制中左ノ通改正ス
第八條ニ左ノ一項ヲ加フ
町村ノ名譽職
町村公民租稅滯納處分中ハ其ノ公民
ニ就クコトヲ得ズ
ヲ停止ス
第九條中「戰時若ハ事變ニ際シ」ノ下ニ
「又ハ兵役法第五十五條第二項ノ規定(志
願ニ依リ兵籍ニ編入セラレタル者ニ付テ
ハ之ニ該當スル勅令ノ規定ヲ含ム)依依
リ」ヲ加フ
第十四條中「特別ノ事情」ヲ「必要」ニ改ム
第十七條第一項中「闕員ヲ生ジタル場合
ニ於テ」ヲ「闕員ヲ生ジタルトキハ其ノ闕
員ト爲リタル議員ガ選擧ノ期日ヨリ一年
以內ニ闕員ト爲リタル者ナル場合ニ於テ
第二十七條第一項但書ノ得票者ニシテ當
選者ト爲ラザリシ者アルトキ又ハ選擧ノ
期日ヨリ一年經過後ニ於テ闕員ト爲リタ
ル者ナル場合ニ於テ」ニ、「第三十條第三
項及第四項」ヲ「第三十條第四項及第五
項」ニ、同條第三項中「第三十條第五項及
第六項」ヲ「第三十條第七項」ニ改ム
第十八條第一項ノ次ニ左ノ一項ヲ加フ
選擧人ノ年齡ハ選擧人名簿確定ノ期日
ニ依リ之ヲ算定ス
第二十二條ノ四選擧人ニシテ勅令ノ定
ムル事由ニ因リ選擧ノ當日投票時間內
ニ自ラ選擧會場ニ到リ投票ヲ爲シ能ハ
ザルベキコトヲ證スル者ノ投票ニ關シ
テハ第二十二條第三項及第五項、第二
十二條ノ二第一項但書竝ニ前條ノ規定
ニ拘ラズ勅令ヲ以テ特別ノ規定ヲ設ク
ルコトヲ得
第三十條第一項但書中「第二項」ヲ「第二
項又ハ第三項」ニ、同條第三項中「前項」ヲ
「前二項」ニ、同條第四項中「第二項」ヲ第
二項及第三項」ニ改メ同條第二項ヲ左ノ
如ク改ム
前項第一號乃至第三號ノ事由ヲ生ジタ
ル場合ニ於テ第二十七條第一項但書ノ
得票者ニシテ當選者ト爲ラザリシ者ア
ルトキハ直ニ選擧會ヲ開キ其ノ者ノ中
ニ就キ當選者ヲ定ムベシ
第一項第四號ノ事由ヲ生ジタルトキハ
其ノ選擧ノ期日ヨリ一年以內ナル場合
ニ於テ第二十七條第一項但書ノ得票者
ニシテ當選者ト爲ラザリシ者アルトキ
又ハ其ノ選擧ノ期日ヨリ一年經過後ナ
ル場合ニ於テ第二十七條第二項ノ規定
ノ適用ヲ受ケタル得票者ニシテ當選者
ト爲ラザリシ者アルトキハ前項ノ規定
ヲ準用ス
第三十四條第二項中「第三十條第三項及
第四項」ヲ「第三十條第四項及第五項」ニ、
同條第四項中「第三十條第五項及第六項」
ヲ「第三十條第六項及第七項」ニ改ム
第三十六條ノ二中「及第百四十二條」ヲ
「、第百條ノ二、第百四十二條及第百四十
七條」ニ改ム
第四十八條但書中「議長ニ於テ出席ヲ催
告シ仍半數ニ滿タサルトキ」ノ下ニ「若ハ
半數ニ滿ツルモ其ノ後半數ニ滿タザルニ
至リタルトキ」ヲ加フ
第五十一條第一項中「第一一十七條」ヲ「第
二十七條第一項」ニ、同條第二項中「前項」
ヲ「第一項」ニ改メ同條第一項ノ次ニ左ノ
一項ヲ加フ
前項ノ選擧ニ於テ當選者ヲ定ムルニ當
リ得票ノ數同ジキトキハ議長抽籤シテ
之ヲ定ム
附則
本法中公民權及議員選擧ニ關スル規定ハ
次ノ總選擧ヨリ之ヲ施行シ其ノ他ノ規定
ノ施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第三十八條ノ規定ニ依リ町村會ヲ設ケザ
ル町村ニ付テハ本法ノ施行ノ期日ハ勅令
ヲ以テ之ヲ定ム
本法ニ依リ初テ議員ヲ選擧スル場合ニ於
テハ命令ヲ以
テ必要ナル選擧人名簿ニ關シ第十八條乃
テ特別ノ現定ヲ設クルコトヲ得
至第十八條ノ四ニ規定スル期日又ハ期間
ニ依リ難キトキハ府縣知事ニ於テ別ニ其
ノ明日又ハ期間ヲ定ム但シ其ノ選擧人名簿
ハ次ノ選擧人名簿確定迄其ノ效力ヲ有ス
昭和九年法律第四十九號ハ本法ノ適用ニ
付テハ本法ノ施行ト同時ニ施行セラレタ
ルモノト看做ス
〔國務大臣後藤文夫君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006703242X01919350320&spkNum=32
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033・後藤文夫
○國務大臣(後藤文夫君) 府縣制、北海道
會法、市制及町村制中ノ改正法律案ノ提案
ノ要旨ヲ、一括シテ御說明申上ゲタイト存
ジマス、第六十五議會ニ於テ御協贊ヲ經マ
シタ衆議院議員選擧法中改正法律案ハ客
年六月二十三日法律第四十九號ヲ以チマシ
テ公布ニ相成リマシタ、之ニ伴フ附屬諸法
令ノ改正モ、旣ニ其必要ナ手續ヲ了シマシ
タノデアリマス、之ニ伴ヒマシテ一面ニハ
此衆議院議員選擧法改正ノ趣旨ニ照應ヲ
シ、一面ニハ地方議會ノ議員選擧ニ於ケル
過去ノ實蹟ニ徵シマシテ、地方議會ノ議員
選擧ニ關スル規定ノ改正ヲ行ヒマスルト共
ニ、併セテ他ノ若干ノ事項ニ付テ必要ナリ
ト考ヘラレル改正ヲ加フルコトト致シマシ
タ、玆ニ地方制度ニ關スル諸法律ノ改正ヲ
提案イタシタ次第デゴザイマス、改正案ハ
市制、町村制、府縣制及北海道會法ノ四法
律ニ關スルモノデアリマシテ、其內容ハ相
當多數ノ項目ニ亙ッテ居リマスルガ、主トシ
テ議員選擧ニ關スル事項デアリマス、其議
員選擧ニ關スル事項ハ大體二ツニ分ツコト
ガ出來マス、第一ハ直接ニ昨年ノ衆議院議
員選擧法ノ改正ニ伴フ事項、第二ハ直接ニ
昨年ノ衆議院議員選擧法ノ改正ニ伴フモノ
デハアリマセヌガ、過去ノ實蹟ニ徵シマシ
テ、此際改正ヲ加フルヲ適當ト認メタ事項
デアリマス、先ヅ第一ノ事項カラ申上ゲマ
スルト、改正案ハ衆議院議員選擧法改正ノ
趣旨ニ從ヒマシテ、成ルベク容易ニ投
票ノ場所ヲ創設シ得ルノ趣旨ヲ法文ニ加ヘ
マシタ、二、選擧人ノ年齡ハ選擧人名簿確
定ノ期日ニ依リ之ヲ算定スルコトト致シマ
シタ、三、議員又ハ當選者ニ欠闘ヲ生ジマ
シタ場合ニ於テハ、選擧ノ期日カラ一年以
內ハ一般次點者ヲ繰上ゲテ之ヲ補充スルコ
トト致シマシタ、四所謂連坐ノ訴訟ノ手
續ヲ、改正衆議院議員選擧法ト同樣ニ改メ
マシタ、是等ノ改正ニ伴フ衆議院議員選擧
法ノ罰則其他ノ規定ヲ準用スル諸規定ヲ整
備イタシマシタ譯デアリマス、次ニ第二
ノ、直接ニ昨年ノ衆議院議員選擧法ノ改正
ト關係ナイ事項ニ付テ申上ゲマスレバ一、
改正案ニ於テハ市ノ全部ニ付キマシテ議
員候補者屆出ノ制度ヲ採用イタシマシテ、
之ニ伴ヒマシテ立會人屆出、所謂連坐ノ訴
訟等ニ關スル規定ヲ設ケマシタ、且ツ之ニ
衆議院議員選擧又ハ道府縣會議員選擧ニ於
ケルト同樣ノ選擧運動及其費用ニ關スル取
締規定ヲ適用スルコトト致シマシタ、是等
ハ旣ニ衆議院議員選擧竝ニ道府縣會議員及
大中都市ノ市會議員選擧ニ關シテ、今日迄
施行セラレテ參ッタノデアリマシテ、相當ノ
效果ヲ擧ゲテ居ルト考へラレマスルノデ、
此際一步ヲ進メマシテ全部ノ市ニ付テ之ヲ
施行セムトスルノデアリマス、二、各種地
方議會ノ議員選擧ニ關シ、所謂不在者投票
ノ制度ヲ採用スルコトト致シマシタ、大正
十四年衆議院議員選擧ニ關シ此制度ヲ採用
イタシマシテ以來、旣ニ數次ノ選擧ヲ重ネ
マシテ、今ヤ官民共ニ此制度ニ習熟シテ參ツ
タモノト考ヘラレマスルノデ、此際之ヲ地
方議會ノ議員選擧ニモ及ボシ、成ルベク多
數ノ選擧人ヲシテ現實ニ選擧ニ參加スルノ
機會ヲ得セシメルコトト致シタノデアリマ
ス、三、尙ホ比較的稀ニ生ズル場合デハア
リマスルガ、府縣會議員選擧ニ關シ人口ノ
著シク少イ郡ニシテ一選擧區トナルモノガ
アリマスルノデ、是等ノ郡ハ府縣條例ヲ以
テ隣接ノ郡市ト併セテ一選擧區ト爲シ得ル
途ヲ開キマシテ、各選擧區ニ對スル議員ノ配
當ヲ成ルベク公平ナラシメムコトヲ期シタ
ノデアリマス、以上ハ議員選擧ニ關スル改
正條項デアリマス、是等ノ事項ノ外ニ改正案
ニ於キマシテハ、地方自治ノ實蹟ニ徵シマシ
テ、從來ノ制度ニ對シ若干ノ整備、改善ヲ
加フルコトト致シマシタ、其一ハ、租稅滯
納處分中ノ者ニ對シテ、其市町村公民權ヲ
停止スルコトト致シタノデアリマス、此際
公共的精神ノ向上ノ上カラ見マシテ、現ニ
租稅滯納處分ヲ受ケテ、其處分中ニアル者
ノ公民權行使ハ妥當デナイト考ヘラレマス
ルノデ、之ヲ停止スルコトト致シタノデア
リマス、其二ハ、市會又ハ道府縣會ノ權限
ニ屬スル事件ニシテ輕易ノモノハ豫メ市
會又ハ道府縣會ノ議決ヲ經テ其範圍ヲ定メ
テ、市會又ハ道府縣會ノ閉會中、市參事會
又ハ道府縣會參事會ニ於テ之ヲ議決シ得ル
コトト致シタノデアリマス、是ハ全ク事務
ノ便宜ト簡捷トヲ圖ルノ趣旨デアリマス、
其三ハ、市町村會、府縣會等地方議會ノ內
部ニ於テ行ハルル選擧ニ於キマシテ、同
數ノ得票者ガ二人以上アリマス時ハ是人
從來ノ制度デハ先ヅ年齡多キ者ヲ採ッタノ
デアリマスルガ、改正案ニ於テハ斯ノ如キ
場合ニ於テ、直ニ抽籤ノ方法ヲ用ヰマシテ
當選者ヲ決定スルコトト致シマシタ、地方
議會ノ內部ニ於ケル選擧ニアリマシテハ
選擧ノ結果ガ大體ニ於テ正確ニ豫見セラレ
マスル爲ニ、屢〓起リマシタ弊害ノ實情ニ鑑
ミタモノデアリマス、其四ハ臨時府縣會
ニ付テハ、場合ニ依ッテ其通常ノ會期タル七
日ヨリ短イ會期ヲ定メ得ル途ヲ開キマシタ、
是ハ申ス迄モナク臨時府縣會ニ必シモ七日
間ト云フ會期ヲ必要トシナイ場合ガアルカ
ラデアリマス、以上ハ政府提案ニ係ル改正
案ノ要旨デアリマス、之ニ對シマシテ衆議
院ニ於テ一ツノ修正ガ助ヘラレテ居リマス、
其修正ハ、租稅滯納處分中ノ者ノ公民權停
止ノ條項ニ關スルモノデアリマス、卽チ政
府原案ニ於キマシテハ租稅滯納處分中ノ者
ニ對シテハ市町村公民權ヲ停止シ、從テ是
等ノ者ハ市町村會議員ノ選擧權及市町村ノ
名譽職ヲ擔任スルノ資格ヲ有セズ、又道府
縣會議員ノ選擧權及被選擧權ヲ有セザルコ
トト定メテ居ルノデアリマスルガ、修正案ニ
於キマシテハ此拘束ヲ或程度ニ緩和ヲ致シ
マシテ、租稅滯納處分中ノ者ト雖モ市町村
會議員及道府縣會議員ノ選擧權ハ之ヲ認メ
ルコトト致シ、唯市町村ニ於ケル名譽職擔
任ノ資格及道府縣會議員ノ被選擧權ノミヲ
制限スルコトト致シタノデアリマス、是ガ
衆議院修正ノ要旨デアリマス、大要右述ベ
マシタ如クデアリマスルガ、何卒御審議ノ
上適當ナル御協贊ヲ得タイト希望スル次第
デゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006703242X01919350320&spkNum=33
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034・松平頼壽
○副議長(伯爵松平賴壽君) 御質疑ガゴザ
イマセヌケレバ、右四案ノ特別委員ノ氏名
ヲ朗讀イタサセマス
〔小林書記官朗讀〕
府縣制中改正法律案外三件特別委員
公爵池田宣政君關屋貞三郞君
子爵白川資長君子爵富小路隆直君
松井茂君次田大三郞君
松村義一君西本健次郞君
山上岩二君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006703242X01919350320&spkNum=34
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035・松平頼壽
○副議長(伯爵松平賴壽君) 日程第十九、
民事訴訟法中改正法律案、政府提出、衆議
院送付、第一讀會、司法大臣
民事訴訟法中改正法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議
院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和十年三月十九日
衆議院議長濱田國松
貴族院議長公爵近衞文麿殿
民事訴訟法中改正法律案
民事訴訟法中左ノ通改正ス
第五百七十條第一項第二號中「一个月」ヲ
「三个月」ニ改
同條第二項中「然レトモ」ヲ削リ「第三號
乃至第八號」ヲ「第一項第三號乃至第八
號」ニ改メ同項ノ前ニ左ノ二項ヲ加フ
前項第二號ノ場合ニ於テ食料又ハ薪炭
ニ各數種ノモノアルトキハ執達吏ハ債
務者ノ利益ヲ考慮シテ差押ヲ爲ササル
範圍ヲ定ムルコトヲ要ス
前項ノ場合ニ於テ執達吏ハ一應差押ヲ
爲シタル上執行裁判所ニ差押フ可キ物
ノ指定ヲ求ムルコトヲ得此指定ニ對シ
テハ當事者ハ異議ヲ述フルコトヲ得ス
第五百七十條ノ二差押ニ因リ債務者カ
其生活上囘復スルコト能ハサル窮迫ノ
狀態ニ陷ルノ恐アル場合ニ於テ債務者
カ誠實ニシテ債務履行ノ意思アリ且債
權者ノ經濟ニ甚シキ影響ヲ及ホササル
モノト認ム可キ顯著ナル事出アルトキ
ハ裁判所ハ債務者ノ申立ニ因リ前條ノ
規定ニ依ルノ外必要ナル限度ニ於テ差
押フルコトヲ得サル財產ヲ定ムルコト
ヲ得
前項ノ裁判ヲ爲シタル後ニ於テ理由消
滅シ又ハ事情變更シタルトキハ裁判所
ハ當事者ノ申立ニ因リ又ハ職權ヲ以テ
前項ノ裁判ヲ取消シ又ハ之ヲ變更スル
コトヲ得
第五百二十二條第二項ノ規定ハ前二項
ノ場合ニ之ヲ準用ス
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
本法施行前ニ開始シタル强制執行ニ付テ
ハ仍從前ノ例ニ依ル但シ第五百七十條ノ
二ノ規定ハ本法施行前ニ開始シタル强制
執行ニ付テモ亦之ヲ適用ス
國稅徴收法第十六條第二號中「一箇月」ヲ
「三箇月」ニ改ム
附則第二項本文ノ規定ハ前項ノ規定ヲ適
用スル場合ニ關シ之ヲ準用ス
〔國務大臣小原直君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006703242X01919350320&spkNum=35
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036・小原直
○國務大臣(小原直君) 只今上程ニナリマ
シタ民事訴訟法中改正法律案ニ付テ、提案
ノ理由ヲ說明イタシマス、本案ハ農業者等ノ
生活安定ニ資セムトスルモノデアリマシテ、
此問題ニ付キマシテハ御承知ノ通リ、去ル
第六十五囘帝國議會ニ際シ、本院ニ於キマ
シテ農業者等ノ窮狀緩和ニ關スル御決議モ
アリ、旁〓政府ト致シマシテハ關係各省協議
ヲ重ネマシタル結果、民事訴訟法中差押ニ
關スル規定ヲ適當ニ改正スベキモノト考ヘ
マシテ、玆ニ本案ヲ提出スルニ至ッタ次第デ
アリマス、本案ニ於キマシテハ現行民事訴
訟法ノ强制執行ニ關スル規定中、第五百七
十條第一項第二號ニ債務者及其家族ニ必要
ナル一个月間ノ食料及薪炭ハ差押フルコト
ヲ得ザルモノトシテ居リマスノヲ三个月間
ノ食料及薪炭ト改メマシテ、生活ノ保障ノ
程度ヲ擴張シ、更ニ右ノ外一般ニ差押ニ因ッ
テ債務者ガ、生活上囘復スルコト能ハザ
ル窮迫ノ狀態ニ陷ル恐アル場合ニ、裁判ニ
依ッテ必要ナル限度ニ於テ財產ヲ保留スル
コトノ出來ル途ヲ開カムトスルモノデアリ
マス、斯クシテ啻ニ農業者ノミナラズ、小
商工業者其他ノ窮狀ヲモ相當ニ緩和スルコ
トガ出來ルモノト信ズルモノデアリマス、
尙ホ本案ニ於キマシテハ、右ノ如ク民事訴
訟法ヲ改正イタシマシタルト權衡ヲ得セシ
ムル爲ニ、國稅徴收法ノ規定ヲモ改正シテ、
三箇月間ノ食糧及薪炭ハ國稅滯納處分ニ依
リマシテモ之ヲ差押フルコトヲ得ザルモノ
ト致シ、兩者相俟ッテ窮狀緩和ノ實ヲ擧ゲタ
イト考ヘタ次第デアリマス、何卒此趣旨ニ
御贊同下サイマシテ、速ニ御審議ノ上御協
贊アラムコトヲ切望イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006703242X01919350320&spkNum=36
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037・松平頼壽
○副議長(伯爵松平賴壽君) 御質疑ガゴザ
イマセヌケレバ本案ヲ刑法中改正法律案外
十二件ノ特別委員ニ付託イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006703242X01919350320&spkNum=37
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038・松平頼壽
○副議長(伯爵松平賴壽君) 日程第二十、
不動產融資及損失補償法中改正法律案、政
府提出、衆議院送付、第一讀會、矢吹政務
次官
不動產融資及損失補償法中改正法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議
院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和十年三月十九日
衆議院議長濱田國松
貴族院議長公爵近衞文麿殿
不動產融資及損失補償法中改正法律案
不動產融資及損失補償法中左ノ通改正ス
第二條中「三年」ヲ一六年」ニ改ム
附則
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
〔政府委員男爵矢吹省三君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006703242X01919350320&spkNum=38
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039・矢吹省三
○政府委員(男爵矢吹省三君) 只今議題ト
ナリマシタ不動產融資及損失補償法中改正
法律案ニ付テ說明イタシマス、不動產融資
及損失補償法ハ昭和七年十月之ヲ實施シ
テ以來、銀行ノ信用ヲ確保シ、金融界ノ安
定ニ資スル上ニ多大ノ效果ヲ收メテ參ッタ
ノデアリマスルガ、同法ニ依ル不動產資金
ノ融通期間ハ本年九月末ヲ以テ終了スルコ
トニナッテ居リマス、然ルトコロ最近ニ於ケ
ル銀行ノ不動產固定資產ノ情況ヲ見マスル
ニ、之ガ整理ハ必シモ既ニ十分ナル進捗ヲ
見タトハ申サレヌノデアリマス、而モ經濟
界ハ未グ全般的ノ囘復ヲ見ルニ至ッテ居リ
マセズ、不動產ノ價格モ亦僅ニ低落ノ步ヲ
止メタルニ過ギナイ狀態ナルニ加ヘマシテ、
昨年中ハ殆ド全國ニ亙ッテ各種ノ災害ガ相
踵イデ起リ、之ガ爲ニ銀行ニ於ケル不動產
固定資產ノ整理ハ、一層其進捗ヲ阻害セラ
ルルニ至ッタ情況デアリマス、從テ金融疏通
ノ情勢ヲ確保スルガ爲ニハ、今後モ引續キ
右固定資產ノ資金化ヲ助成スルノ必要ガア
ルノデアリマスガ、之ガ爲ニハ本法ニ依ル
不動產資金ノ融通期間ヲ、本年十月以降三
年間延長スルコトヲ適當ト認メマシテ、本
案ヲ提出シタ次第デアリマス、御審議ノ上
何卒御協贊アラムコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006703242X01919350320&spkNum=39
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040・松平頼壽
○副議長 伯爵松平賴壽君) 別ニ御質疑ガ
ナイヤウデゴザイマスルカラ、本案ノ特別
委員ノ氏名ヲ申上ゲマス、本案ハ之ヲ酒造
組合法中改正法律案外五件ノ特別委員ニ付
託ヲ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006703242X01919350320&spkNum=40
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041・大河内輝耕
○子爵大河内輝耕君 政府ニ本案ノ材料ノ
請求ヲ致シタイト思ヒマスガ、宜シウゴザ
イマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006703242X01919350320&spkNum=41
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042・松平頼壽
○副議長(伯爵松平賴壽君) 宜シウゴザイ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006703242X01919350320&spkNum=42
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043・大河内輝耕
○子爵大河內輝耕君 此案ハ私ノ方ノ委員
ニ參リマシタ、會期切迫ノコトデゴザイマ
スカラ、政府ノ方ニ於キマシテモ成ルベク
御勉强下サイマシテ、之ニ關スル不動產融
資竝ニ損失補償ニ關スル材料、詰リ不動產
融資ノ現狀トカ、或ハ條件トカ云フヤウナ
コトノ詳細ナル材料ヲ、速ニ委員ニ御配付
下サルコトヲ此際希望イタシテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006703242X01919350320&spkNum=43
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044・松平頼壽
○副議長(伯爵松平賴壽君) 日程第二十
一產業組合中央金庫特別融通及損失補償
法中改正法律案、政府提出、衆議院送付、
第一讀會、守屋政務次官
產業組合中央金庫特別融通及損失補償
法中改正法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議
院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和十年三月十九日
衆議院議長濱田國松
貴族院議長公爵近衞文麿殿
產業組合中央金庫特別融通及損失補償
法中改正法律案
產業組合中央金庫特別融通及損失補償法
中左ノ通改正ス
第二條中「三年」ヲ「六年」ニ改ム
附則
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
〔政府委員守屋榮夫君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006703242X01919350320&spkNum=44
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045・守屋榮夫
○政府委員(守屋榮夫君) 產業組合中央金
庫特別融通及損失補償法中改正法律案、提
出ノ理由ヲ簡單ニ御說明申上ゲマス、本法
ハ昭和七年十月一日施行以來、相當ノ成績
ヲ擧ゲテ居ルノデゴザイマスガ、其融通期
間ハ本年ノ九月末ヲ以テ終了スルコトニ相
成ッテ居ルノデアリマス、然ルニ產業組合ノ
現狀ニ鑑ミマスル時ニ、尙ホ融通期間ヲ繼
續イタシマシテ、組合金融ノ疏通ニ資シマ
スルコトガ、本制度ノ趣旨ヲ達成スル上ニ
於キマシテ、最モ適當ナル措置ト考ヘラレ
ルノデアリマス、仍テ組合金融ノ現況、其
整理期間等ヲ考慮イタシマシテ、特別融通
期間ヲ尙更ニ三箇年延長スルコトニ致シタ
イト思ヒマス、何卒御審議ノ上、速ニ御協
贊ヲ垂レ給ハラムコトヲ切望スル次第デゴ
ザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006703242X01919350320&spkNum=45
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046・松平頼壽
○副議長、伯爵松平賴壽君) 別ニ御質疑ガ
ゴザイマセヌケレバ、本案ノ特別委員ノ指
名ヲ朗讀イタサセマス
〔角倉書記官朗讀〕
產業組合中央金庫特別融通及損失補償法
中改正法律案特別委員
公爵島津忠承君子爵伊集院兼知君
子爵米倉昌達君男爵足立豐君
男爵園田武彥君室田義文君
稻田勝太郞君鈴木幸作君
大和田健三郞君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006703242X01919350320&spkNum=46
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047・松平頼壽
○副議長(伯爵松平賴壽君) 日程第二十
二、臨時地方財政補整金法案、衆議院提出、
第一讀會
臨時地方財政補整金法案
右本院提出案及送付候也
昭和十年三月十四日
衆議院議長濱田國松
貴族院議長公爵近衞文麿殿
臨時地方財政補整金法
第一條政府ハ本法ニ依リ北海道、府縣
及市町村ニ對シ當分ノ間地方財政補整
金ヲ支出ス
第二條前條ノ規定ニ依リ國庫ノ支出ス
ヘキ金額ハ每年度五千七百萬圓ヲ下ラ
サル額トス
第三條地方財政補整金ハ北海道及府縣
ト市町村トニ對シ左ノ通配分ス
北海道及府縣ニ對シテハ國庫支出
額ノ十分ノ三
二市町村ニ對シテハ國庫支出額ノ十
分ノ七
第四條前條第一號ノ國庫支出金ハ勅令
ノ定ムル所ニ依リ其ノ十分ノ一ハ人口
ニ比例シテ之ヲ支給シ、十分ノ九ハ第
五條ノ金額ヲ除キ其ノ殘額ヲ二分シ一
ハ資力ヲ標準トシ他ハ課稅力ヲ標準ト
シテ之ヲ支給ス
第五條內務大臣ハ勅令ノ定ムル所ニ依
リ特ニ必要アリト認ムル北海道、府縣
ニ對シ第三條第一號ノ國庫支出金ノ十
分ノ二ヲ超エサル範圍內ニ於テ支給金
額ヲ增加スルコトヲ得
町村ニ對シ本法ノ支出金ノ全部又ハ
部ヲ支給セサルコトヲ得
第十條本法ノ適用ニ付テハ町村組合ニ
シテ町村ノ事務ノ全部ヲ共同處理スル
モノハ之ヲ一町村、町村制ヲ施行セサ
ル地域ニ於ケル町村ニ準スヘキ公共團
體ハ之ヲ町村ト看做ス
附則
本法ハ昭和十年四月一日ヨリ之ヲ施行ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006703242X01919350320&spkNum=47
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048・池田政時
○子爵池田政時君 只今議題ト相成リマシ
タ臨時地方財政補整金法案ハ、重要ナル法
案デアリマスルガ故ニ、其特別委員ノ數ヲ
十八名トシ、其指名ヲ議長ニ一任スルノ動
議ヲ提出イタシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006703242X01919350320&spkNum=48
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049・植村家治
○子爵植村家治君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006703242X01919350320&spkNum=49
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050・松平頼壽
○副議長(伯爵松平賴壽君) 池田子爵ノ動
議ニ御異議ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006703242X01919350320&spkNum=50
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051・松平頼壽
○副議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト
認メマス、特別委員ノ氏名ヲ朗讀イタサセ
マス
〔角倉書記官朗讀〕
臨時地方財政補整金法案特別委員
公爵一條實孝君侯爵大久保利武君
侯爵大隈信常君子爵梅小路定行君
子爵野村益三君子爵立見豐丸君
內田重成君太田政弘君
塚本〓治君男爵岩倉道倶君
男爵周布兼道君男爵長基連君
岡田文次君赤池濃君
橋本辰二郞君金子元三郞君
宇野勇作君大谷尊由君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006703242X01919350320&spkNum=51
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052・松平頼壽
○副議長(伯爵松平賴壽君) 日程第二十
三、刑事訴訟法中改正法律案、日程第二十
四、刑事訴訟法中改正法律案、日程第二十
五、舊獨逸膠州租借地還付ニ關スル條約實
施ニ伴フ損失ノ補償ニ關スル法律案、衆議
院提出、第一讀會、是等ノ三案ハ之ヲ一括
シテ議題ト爲スコトニ御異議アリマセスカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006703242X01919350320&spkNum=52
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053・松平頼壽
○副議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト
認メマス
刑事訴訟法中改正法律案
右本院提出案及送付候也
昭和十年三月十九日
衆議院議長濱田國松
貴族院議長公爵近衞文麿殿
刑事訴訟法中左ノ通改正ス
第百十三條勾留ノ期間ハ二月トス特ニ
繼續ノ必要アル場合ニ於テハ決定ヲ以
テ一月每ニ之ヲ更新スルコトヲ得
刑事訴訟法中改正法律案
右本院提出案及送付候也
昭和十年三月十九日
衆議院議長濱田國松
貴族院議長公爵近衞文麿殿
刑事訴訟法中左ノ通改正ス
第四百四十三條ニ左ノ但書ヲ加フ
但シ第四百十二條ニ規定スル事由アリ
ト認ムル場合ニ於テ更ニ事實ノ取調ヲ
爲ス必要ナキトキハ判決ヲ以テ原判決
ヲ破毀シテ直ニ判決ヲ爲スコトヲ得
第四百四十三條ノ二第四百四十條及前
條ノ場合ニ於テ他ノ裁判所ヲシテ事實
ノ審理ヲ爲サシムルヲ相當トスルトキ
ハ判決ヲ以テ原判決ヲ破毀シ原裁判所
ニ接近シタル同等ノ裁判所ヲ指定シテ
事件ヲ其ノ裁判所ニ移送スルコトヲ得
其ノ單ニ私訴ニ係ルトキハ其ノ裁判所
ノ民事部ヲ指定スヘシ
舊獨逸膠州租借地還付ニ關スル條約實
施ニ伴フ損失ノ補償ニ關スル法律案
右本院提出案及送付候也
昭和十年三月十九日
衆議院議長濱田國松
貴族院議長公爵近衞文麿殿
第一條舊獨逸膠州租借地ニ永久的土著
ノ帝國臣民ヲ移植シ帝國ノ利便ニ資セ
ムカ爲ニ政府ノ奬勵保護ノ下ニ政府ノ
施設ニ策應シ永久計畫ヲ以テ舊獨逸膠
州租借地ニ既墾地ヲ買收シ若ハ未墾地
ヲ開拓シ又ハ膠州灣內ニ於テ養貝事業
ヲ經營セル個人又ハ會社カ山東懸案解
決ニ關スル條約及山東懸案細目協定ノ
實施ニ伴ヒ帝國軍隊ノ撤退後治安障害
ニ因リテ農業又ハ養貝事業ヲ經營スル
コト能ハサルニ至リタル爲被リタル損
失ニ對シテハ政府ハ本法ニ依リ之ヲ補
償スルコトヲ得
第二條前條ニ規定スル補償金ノ總額ハ
三百七十五萬圓以內トス
第三條補償金ハ主務大臣補償審査會ノ
審査ヲ經テ之ヲ決定シ額面金額ニ依リ
國債證劵ヲ以テ之ヲ交付ス
補償審査會ニ關スル規定ハ勅令ヲ以テ
之ヲ定ム
第四條政府ハ前條ノ規定ニ依ル交付ニ
必要ナル額ヲ限度トシ公債ヲ發行スル
コトヲ得
第五條本法ニ依リ補償金ヲ交付スル場
合ニ於テハ政府ハ當事者ニ對シ補償ノ
目的タル租借權ノ讓渡其ノ他必要ナル
條件ヲ附スルコトヲ得
附則
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006703242X01919350320&spkNum=53
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054・松平頼壽
○副議長(伯爵松平賴壽君) 別ニ御質疑ガ
ゴザイマセヌケレバ、三案ハ之ヲ刑法中改
正法律案外十三件ノ特別委員ニ付託イタシ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006703242X01919350320&spkNum=54
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055・松平頼壽
○副議長(伯爵松平賴壽君) 御諮リヲ致シ
タイト存ジマスルガ、總理大臣ハ本日ハ午
前中ハ樞密院ノ本會議ニ出席サレテ居リマ
スルノデ、此方へ出席ガ出來ナイト云フコ
トデアリマスルカラ、一時玆ニ於キマシテ
休憩ヲ致シタイト存ジマス、御異議ゴザイ
マセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006703242X01919350320&spkNum=55
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056・松平頼壽
○副議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト
認メマス、午後ハ一時三十分ヨリ開會イタ
シマス
午前十一時十一分休憩
午後一時四十八分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006703242X01919350320&spkNum=56
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057・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 是ヨリ午後ノ會
議ヲ開キマス、日程第二十六、政〓刷新ニ
關スル建議案、侯爵西〓從德君外五名發
議Law.建議案ヲ朗讀イタサセマス
〔瀨古書記官朗讀〕
〔提出文ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノタメ
茲ニ載錄ス〕
政〓刷新ニ關スル建議案
右貴族院規則第六十九條ニ依リ提出候也
昭和十年三月十九日
發議者
侯爵西〓從德伯爵溝口直亮
男爵四條隆英菅原通敬
田所美治鵜澤總明
贊成者
公爵鷹司信輔公爵山縣有道
侯爵德川義親侯爵中御門經恭
侯爵松平康昌伯爵酒井忠正
子爵大久保立子爵伊東二郞丸
子爵保科正昭子爵松平康春
眞野文二男爵千田嘉平
有吉忠男爵東久世秀雄
伊澤多喜男男爵赤松範
川崎卓吉柴田善三郞
男爵有地藤三郞男爵黑田長和
桑山鐵男男爵伊江朝助
男爵中村謙男爵長基連
橋本圭三郞竹越與三郞
倉知鐵吉坂野鉄次郞
西野元赤池濃
古島雄小坂順造
松本眞平田村新吉
江口定條金杉英五郞
岩田宙造小林嘉平治
野村德七風間八左衞門
澁澤金藏
貴族院議長公爵近衞文麿殿
政〓刷新ニ關スル建議
方今人心動モスレバ輕佻詭激ニ流レ政〓
時ニ肇國ノ大義ニ副ハザルモノアリ政府
ハ須ク國體ノ本義ヲ明徴ニシ我ガ古來ノ
國民精神ニ基キ時弊ヲ革メ庶政ヲ更張シ
以テ時艱ノ匡救國運ノ進展ニ萬遺算ナキ
ヲ期セラレムコトヲ望ム
右建議ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006703242X01919350320&spkNum=57
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058・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 西〓侯爵
〔侯爵西〓從德君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006703242X01919350320&spkNum=58
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059・西郷從徳
○侯爵西郷從德君 建議案ノ趣旨ヲ簡單ニ
御說明申上ゲマス、我國現在ノ文化ハ歐米
諸國ニ範ヲ採リマシテ、ソレガ爲ニ一面ニ
ハ學術ハ開ケ、人智ハ進ンダニハ相違ゴザ
イマセヌガ、他面ニハ往々彼ニ追隨模做ス
ルニ急デアリマシテ、眞ニ彼ノ長ヲ採リ短
ヲ補フト云フ譯ニ參リマセヌノデ、爲ニ政
治ニ〓育ニ將タ諸般ノ文物制度ニモ、往々
肇國ノ大義ニ副ハズ、古來ノ我ガ國民精神
ニ悖ル虞アルモノガ少クナイヤウデゴザイ
マス、從テ國民思想ニモ紛淆ヲ釀シテ、往々
徒ニ新シキヲ尙ビ奇ヲ競フテ、輕佻詭激
ニ失シ、中道ヲ逸ヅレ、或ハ浮華放縱ニ流
レテ、荒怠自棄ニ陷ルモノガ頻々タル事態
デゴザイマス、今ヤ我國ハ內外多事多難ナ
ル時局ニ直面シテ居ル際デゴザイマス、從
テ政府モ綱紀ヲ振肅シ、國民指導ノ精神ヲ
明ニスベキガ當然ノコトト信ズルモノデゴ
ザイマス、今日學說ノ批判ヨリ延イテ國體
ニ關シテ迄モ、議論ノ餘地ヲ存スルカノ如
キ有樣ニ見受ケラレマスコトハ、誠ニ遺憾
至極ニ存ジマス、政府ハ篤ト我ガ國體ノ本
義ヲ明ニシ、苟モ國體觀念ニ群疑ヲ生ズル
ガ如キ憂ナキヤウニ致サレ、從來屢〓、渙發セ
ラレマシタ御詔勅ノ聖意ヲ奉體シテ、古來
ノ國民精神ニ基イテ時弊ヲ矯正シ、政治及
〓育ヲ刷新更張スルト同時ニ、廣ク古來ノ
醇風美俗ヲ奬メ、質實剛健ナル民風ヲ振作
シテ、益〓國運ノ進展ニ全力ヲ傾注セラレル
ヤウ致シタイト云フノガ本建議案ノ趣旨デ
ゴザイマス、何卒諸君ノ御贊成ヲ希望イタ
シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006703242X01919350320&spkNum=59
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060・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 別ニ御質疑モナ
イト認メマスカラ、是ヨリ討論ニ移リマス、
井田男爵
〔男爵井田磐楠君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006703242X01919350320&spkNum=60
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061・井田磐楠
○男爵井田警捕君 只今提出ヲ致サレマシ
タ建議案ノ贊成者ノ一人ト致シマシテ、暫
ク所見ヲ述ベサシテ戴クコトヲ御許シヲ願
ヒタウ存ジマス、我國ガ肇マリマシテ以
來未ダ曾テ今日ノヤウニ國威ノ隆昌ヲ來
シタコトハナイノデアリマス、此時ニ當リ
マシテ、本貴族院ニ於キマシテ斯カル建議
案ノ提出ヲ見ルニ至リマシタコトハ、誠ニ君
國ノ爲メ憂慮ニ堪ヘナイ次第デアリマス、
併ナガラ顧ミマスレバ、我國ハ長ク歐米ノ
唯物文化ヲ模倣イタシマシテ、其弊ガ誠ニ
深イモノガアリマス、而シテ今ヤ政治、〓
育諸般ノ文物制度等、一切ノ施設ニ大イ
ニ日本精神文化ヲ反省イタシマシテ、新タ
ナル文化建設ヲ致サネバナラヌト云フ時代
デアリマスルカラ、斯カル建議案ノ提出ヲ
見ルノモ誠ニ已ムヲ得ナイ次第デアルト思
ヒマス、偶〓今議會ニ於テ起リマシタル天皇
機關說ノ如キハ、其例ノ最モ主ナルモノト
言ハナケレバナリマセヌ、實ニ此問題ハ國
本ニ關シマスル憲法上ノ根本問題デアリマ
シテ、憲法ノ補則第七十三條ニ依リマシテ、
議會ガ最モ關心スベキ重大事デアル、而モ
國家ノ大法トシテ、此問題ハ實ニ憲政史上
特筆スベキ大事件デアルト考ヘルノデアリ
そく、吾人ハ此建議案ノ趣旨ヲ達成イタシ
マスル爲ニハ彼ノ歐米ノ變亂時ニ於テ作
ラレマシタ所ノ各國ノ憲法ヲ模倣シ、而シ
テ我ガ國體ヲ全ク度外視シタ所ノ、而モ三
十年來我ガ國民精神ニ暗雲ヲ生ゼシメタ
此天皇機關說ヲ打破スルコトガ極メテ急務
デアルト感ジ、而シテ之ヲ以テ新興日本ノ
爲ニ、政治、〓育、諸般ノ文物制度ニ至ル
マデ、啓蒙ノ實ヲ劃シテ、之ヲ打破スルコ
トヲ以テ其首途トセネバナラヌト考ヘルノ
デアリマス、抑、現內閣施政ノ綱領ハ國體
ヲ明徵ニスルト云フコトヲ以テ第一義ト致
シタノデアリマス、若シ政府ハ此問題ヲ暖
味ニ處斷ヲサレ、或ハ其處斷ヲ躊躇サルル
如キコトガオアリニナルナラバ、所謂羊
頭ヲ揭ゲテ狗肉ヲ賣ルノ議リヲ免レ
ナイ、且ツ內閣ノ諸公ハ國民ヲ指導
スベキ資格ヲ失ハレル、憾ラクハ人
心動搖ノ端ハ是ヨリ發スルコトガナ
イトモ申サレヌノデアル、顧ミマスルト我
ガ憲法學上ノ論爭ハ對立三十年、而シテ天
皇機關說ノ、其政治、〓育等一切ニ及ボス
所ノ弊ハ誠ニ深イモノガアルノデアリマ
ス、或ハ共產黨事件ヲ生ジ、或ハ五·一五事
件、或ハ血盟團事件等、幾多ノ大事件ガ深
ク之ニ交涉ヲ致シテ居ル、遂ニ現在ハ尊嚴
冒瀆トシテ起訴サレテ居ルニ至ッタノデア
リマス、憲法學者故穗積博士ハ、丁度극
モクラシー」ガ社會ヲ風靡シテ居リマス時
分ニ、其職ヲ退カレタノデアリマスルガ、
其最後ノ講義ニ於テ、筆ハ杵ヨリモ重イト
云フコトヲ言ハレタノデアル、又故上杉博
士ハ社會的ノ迫害ヲ受ケテ、其書齋ノ廻リ
ニハ刃痕ヲ留メテ居ルト云フコトヲ、私ハ
其高弟カラ聞イタノデアル、烏兎〓々、今
ヤ世界戰爭以來、社會意識ハ反自由主義、
反「デモクラシー」主義トナッテ居リ、而シテ
國家ノ特殊性ヲ意識スルコトニ自覺ヲシテ
來テ居ルノデアリマシテ、我國ニ於キマシ
テハ、ソレガ滿洲事變以來特ニ著シク國體
意識ニ反省ヲサセラレテ居ルノデアリマ
ス、之ガ爲メ社會團體ガ國家ノ本質ヲ成ス
ト云フヤウナ民衆主義、自由主義的學說、
之ニ反對ノ機運ガ勃興イタシマシテ、今日
社會的運動スラ起ッテ居ルノガ、其實情デア
リマス、思想ハ絕エズ螺旋的ニ反省ヲシツ
ツ前進ヲ續ケテ居ル、法ハ社會心理ニ基イ
テ存スルト云フ學說ノ所有者ヨ、少クトモ
其法ノ存立ノ基礎カラシテ、現世界ノ意識
ヲ顧ミラレタナラバ、自己ノ論說ニ依リテ
自己ガ否定セラレルト云フコトヲ御氣付キ
ニナッテ居ルデアラウ、政府諸公ヨ、何等我
ガ國本ヲ反省ヲシナイ、單ニ平面上ノ圓周ヲ
巡ッテ居ルヤウナ著作ノ加除訂正、是ハ國民
意識ニ背クモノデアリマシテ、政府モ或ハ
同罪ニ陷ル感ガナイトハ言ヘナイ、十分御
反省アラムコトヲ望ムノデアリマス、玆ニ
於キマシテカ、吾人ハ簡單ニ美濃部憲法ヲ
構成スル思想ヲ〓觀スル必要ガアル、著者
ハ社會條理意識、サウ云フ言葉ヲ使ッテ居ラ
レマス、卽チ何ガ社會正義デアリ、何ガ社
會的利益ニ適スルカト云フコトヲ判斷スル
ノガ極メテ重要デアルト言フテ居ル、就中
觀念法學ノ弊ヲ憲法ノ領域デハ避ケネバナ
ラヌト言ッテ居ル、法ガ基礎デアル、觀念ハ
之ニ基イテノミ作ラレル、法ガ基礎デアリ
觀念ハ之ニノミ依ッテ作ラレルモノデアル、
此社會的ノ價値判斷デ、何ガ法デアルカヲ
發見スルノガ最モ主要ナル要素デアルト信
ジテ居ルノデアリマス、而モ此法ノ基礎觀
念ヲナシテ居ル所ノ本質ノ目的ハ、人類ノ
利益ヲ充タスコトニアル、斯ウ云フノデア
ル、玆ニハッキリト此說ガ唯物論ノ見地ニ
立ッテ居ルト云フコトガ讀メルノデアリ
やく、更ニ法ノ存立ノ基礎ヲ、社會ニ是ハ
置イテ居ルノデアリマスルカラ、國家ノ本
質ヲ論ズルノニハ、先ヅ廣ク世界ニ於ケル
國家ノ現象ヲ觀察ヲシテ、其總テニ共通ナ
要素ヲ求メルコトニナッテ居ルノデアル、實
ニ此法ガ基礎デアリ、觀念ハ之ニ基イテノ
ミ作ラレルト云フ此理論ハ、所謂國體ニ背
反スル所ノ基礎理論デアルノデアリマス、
斯ノ如キ美濃部憲法ノ根本的誤謬ハ、憲法
ヲ解釋イタシマスルノニ倫理的ノ事實、歷
史ト云フモノヲ單ニ觀念デアルト片付ケテ
シマッテ居ル、而シテ社會科學的ノ、唯物論
的ノ見地カラ此憲法ヲ取扱ハムトシテ居ル
ノデアル、之ガ爲ニ遂ニハ往々我ガ國體
ヲ理由トシテ、斯ウ云、フ言葉ヲ使ッテ居ルノ
デアリマス、往々我ガ國體ヲ理由トシテ、
之ガ爲ニ憲法ノ解釋ヲ誤ル者ガ少クナイト
迄言フテ居ル、實ニ暴論デアルト言ハナケ
レバナラヌ、尤モ美濃部憲法ニハ歷史的
ノ事實ヲ觀察スルコトガ絕對ノ要件デアル
トハ申述ベラレテアルノデアリマス、併ナ
ガラソレハ其法ノ組織カラハ、前申上ゲマ
シタ如クニ歷史ヲ除ケテ、國體觀念ヲ無視
シテ居ルノデアル、サウカト思ヒマスルト
云フト、其法ノ組織ノ中ニハ社會通念トシ
テノ社會史的事實ヲ重要ナル要素トシテ、
其中ニ織リ込ンデ居ル矛盾ヲ敢テシテ居ル
ノデアル、我ガ憲法ノ特殊性ヲ全然沒却シ
去ッテシマッテ、法萬能デ組織ヲシテ居ルノ
デアリマス、從ヒマシテ憲法第一條、卽チ
「大日本帝國ハ萬世一系ノ天皇之ヲ統治ス」、
此條章ハ日本古來ノ歷史ニ基イテ、日本政
體ノ根本原則ヲ宣言シタモノダト申シテ居
ルノデアリマス、斯ク觀ジ來リマスト云フ
ト、其著書ニ見エテ居リマスル國體ヲ尊重
スルト云フ語ハ、如何ニモ組織ノ中ニ入ッテ
居ルカノ如クデアリマスケレドモ、學問ト
シテハソレハ否定ヲサレテ、却テ反對ニ、
其結果ハ君國一致ノ國體ヲ、法學デアルガ
故ニト否定シテシマッテ居ル、サウシテ天皇
ト國家トヲ分離シテ考ヘテ、玆ニ國家ヲ統
治權ノ主體トナシ、天皇ヲ以テ法人國家ヲ
代表シテ權利ヲ行フ機關ト觀念ヲシ、所謂
天皇機關說ナルモノガ學問上ニ觀念設定ヲ
サレタノデアル、斯カルコトヲ敢テシタ譯
デアル去ル二月二十六日、菊池男爵ノ御
發言ニ對サレマシテ、美濃部博士ハ御辯明
ヲ爲サレテ居リマス、ソレハ只今マデ再々
引合ニ申上ゲマシタ、法ガ基礎デアリ、觀
念ハ之ニ基イテノミ作ラネバナラナイト云
フ國體背反ノ基礎理論ガ此中ニ明カデアリ
マスルカラ、暫ク速記錄ノ一部分ヲ引證イタ
シマシテ、所見ヲ述ベテ見タイト思ヒマス、
其一節ニ曰ク「我ミ」卽チ複數デアリマス、
「我〓ハ統治ノ權利主體ハ國體トシテノ國
家デアルト觀念イタシマシテ」、卽チ茲ニ觀
念イタシマシテト云フ言葉ガ使フテアリマ
ス、又他ノ一節ニハ、「天皇ハ國ノ元首ト
シテ、言換ヘレバ國ノ最高機關トシテ··
觀念スルノデアリマス」、矢張リ觀念スルノ
デアリマス、斯ウ云フ風ニナッテ居ル、卽チ
法學ヲ基礎トシテ勝手ニ觀念スルノデアリ
やっ、觀念スルト云フ用語ハ、卽チ看做ス
ト云フガ如キ用語デアル、君國一致、肇國
以來ノ國民觀念ヲ勝手ニ我ニト云フ複數ヲ
用ヰテ、天皇ト國家トヲ分離シタ國體觀
念ヲ新ニ法學ノ上ニ設定シタノデアル、
是ハ學問上ニ於テ國體ヲ變革シタモノト云
フコトハ爭ハレナイ事實デアル、世ニハ曲
學曲筆ト云フ言葉ガアル、是ハ學問ヲ直
角方向ニ見タ言葉デアル、斯ノ如キ憲法論
ニ至リマシテハ國體觀念ヲ百八十度ノ
方向、全ク正反對ノ方向カラ見タモノデア
リマシテ、「マルクス」ハ「ヘーゲル」ノ學說
ニ逆立ヲシテ居ルト言ハレテ居ル、或ハ禪
ノ書物ニ鐵笛倒吹ト云フノガアル、L〓b)
レニ似テ、我ガ憲法ノ正解ニ對スル轉倒想
デアル、彼ノ春秋ノ際ニ禮樂ガ頽レマシテ、
思想ハ益〓自由トナリマシテ、孔、老、孟
莊ノ諸學ガ勃興イタシマシテ、其極マル所
ヲ知リマセヌデシタ、其時ニ堅白異同ノ辯
ト云フヤウナ議論ガ行ハレタ、丁度此憲法
論ハ無學ノ學デアリ、名月鷺ヲ藏シ類シテ
同ジカラズト云フ禪ノ言葉ガアリマスルガ、
蓋シ此學說ヲ批判シテ遺憾ナキモノト思フ
ノデアリマス、勿論是ハ政府ガ辯護ヲ爲スッ
テオイデノヤウニ、單ナル學說上ノ問題デ
ハナイ、著者自身ノ序文ヲ御覽ニナルト云
フト、是ハ憲法ノ註釋書デアルト言フテ居
ラレルノデアル憲法ニ關スル國體、殊ニ
國體ニ疑義ヲ生ズルヤウナ憲法ノ私解ハ許
サレルモノデハナイ、又政府ハ、機關說ハ
學理ト觀念トノ關聯ニ於ケル學術上ノ問題
デアルト言ッテ居リマスガ、憲法ハ學問ノ對
象デハナイ、國民實踐ノ大法典デアル、其
大法典上ノ解釋ノ一ツノ〓ヲ假ニ電信柱ニ
貼リ付ケテ見クナラバ、是ハ恐ラク不穩文
書ト思ハレルカノ如キモノモナイデハナ
イ、ソレガ學問上ノ體系デアルト言ッテ、
ツノ本トナッタ時ニ、果シテソレガ學問デア
ルカラト言ッテ、自由ニ放任シテ置クコトガ
出來ルノデアルカドウカ、殊ニ此憲法ニ關
シマシテハ樞密院官制第二章第六條ニ、憲
法ノ條項ニ關スル疑義ト云フコトガアリマ
シテ、是ハ御諮詢ヲ待ッテ、會議ヲ以テ意見
ヲ上奏スルコトニナルノデアリマシテ、之
ニ依リマシテモ、斯カル憲法ノ解釋ガ國民
ノ群疑ヲ起スト云フヤウナ場合、斯カル問
題ハ學說デアルカラ、學說デアルカラト言
フテ、之ヲ其儘放任シテ置クト云フコトハ
何トシテモ考ヘラレナイ問題デアル、政府
ハ此點ニ於テ十分御考慮ヲナサラナケレバ
ナラナイ、斯ノ如クニ著述上ニ、自分ハ國
體尊重論者デアルト言ヒマシテ、サウ云フ
コトヲ何處カニ書イテ置イタナラバ、サウ
シテ其學問ニサウ云フ觀念ヲ織込ンデ行カ
ナカッタナラバ、勝手氣儘ニ國體背反ノ說ヲ
其學間ノ上ニ立テルコトガ出來ルノデアル、
或ハ觀念デアルカラ觀念デアルカラト言フ
テソレヲ書イテ置イテ、サウシテ學問ハ別
ダト言フテ、玆ニサウ云フ學問ヲ設定シタ
ナラバドンナ學間デモ出來ル、斯ノ如キコ
トガアッタナラバ國粹ノ美名ノ下ニ、共產主
義ノ學ヲ幾ラデモ組織シテ世ノ中ニ出スコ
トガ出來ル、思想上ノ取締ハ到底出來ルモ
ノデハアリマセヌ、政府ハ本建議案ノ趣旨
ニ顧ミラレマシテ、此學問々々ト言フテ居
ル此憲法ノ解釋書ニ、一層ノ御考慮ガ必要
デアルノデアリマス、若シ夫レ統帥權ノコ
トニ至リマシテハ、種々論議ヲセラレテ居
リマス、其帷幄ノ大令卽チ統帥權ニ關シテ
述ベテ居ル一項ヲ茲ニ引例ヲ致シマス、「ソ
レハ固ヨリ憲法ノ明文ヲ以テ定メラレタモ
ノデハナク、唯官制ト慣習トニ依ッテ定マツ
テ居ルニ過ギヌノデアルカラ、將來之ヲ改
メテ軍ノ統帥ニ付テモ、等シク內閣ノ責任
ニ屬セシメ」、是デ軍部ガ御承知ニナルカド
ウカ、「從ッテ軍隊ガ內閣ノ監督ヲ受クルモ
ノトセラレテモ、敢テ憲法ノ改正ヲ必要ト
スルモノデハナク、官制ノ改正ニ依ッテ之
ヲ實行シ得ルコトハ勿論デアル」斯ウ云フ
コトガ逐條精義ノ二百五十五頁ニ明記サレ
テアル、是ハ最新版デアル、又其著ノ大日
本國法學中ニ、統治權ノ主體ガ國家ニアル
ト云フ其立前カラ、天皇ヲ其機關トシテ說
イテ居リマシテ、偖テ述ベテ言フノニハ「臣
民ニ命令スルモノハ國家自身ニシテ、治者
ハ國家ノ機關トシテ國家ノ意思ヲ發表スル
ナリ、臣民ガ租稅ヲ納ムルハ國家ニ納ムル
ナリ、軍人ガ戰鬪スルハ國家ノ爲ニ戰フナ
リ、···軍人ガ戰鬪スルハ國家ノ爲ニ戰フ
ナリ」、是ハ一應御聽キ下スッテ、誠ニ其通
リニ私共ハ此字ダケデハ見ルノデアリマス
ガ、此國家トハ卽チ天皇機關說ニ依ッテ、君
國分離シタ國家ヲ指シテ居ルノデアル、是
等ハ何レモ軍人勅諭ニ畏多クモ、「我國ノ軍
隊ハ世ミ天皇ノ統率シ給フ所ニゾアル」ト仰
セラレマシタ、天皇ガ親ラ帝國ノ一切ノ軍
隊ヲ統帥シ給フノ大義ニ悖ッテ居ルモノデア
リマシテ、軍人ノ天皇ニ對シ奉ル忠誠ノ念ニ
疑雲ヲ生ゼシムルモノデアル、建軍ノ上ニ
於テ軍人一般ガ最モ痛憤シテ巳マナイ所デ
アリマス、斯ノ如ク政治ニ、〓育ニ、軍隊ニ、要
スルニ國民全般ノ思想ニ大影響ヲ與ヘテ居
ル所ノ此異學ニ關シマシテハ、政府ハ速ニ
其處斷ヲ下サナケレバナラヌノデアル、寬
政二年德川幕府ニ於キマシテ、所謂異學
異ッタル學、異學ノ禁ガゴザイマシタ、ソレ
ハ申ス迄モナク松平樂翁公ガ、林大學頭ニ對
シテ朱子學ヲ正シキ學、正學トシテ異學ヲ
交ヘナイヤウニ命令ヲシタノデアリマス、
當時朱子學以外ノ學者ハ齊シク起チマシテ
之ニ非難、批議ヲ加ヘタノデアル、ダガ樂
翁公ハ決シテ偏狭ナ考ヲ持ッテ居ル方デハ
ナイ、サウ云フ考ヘカラ此異學ヲ禁ジラレ
タノデハナイノデアリマス、公自身ノ學問
ハ隨分廣イモノデアル、決シテ一流一派ニ
偏シハシテ居ラレナイノデアル、公平ナ考
ヲ持ッテ居ラレタニモ拘ラズ、斷然此異學ノ
禁ヲ爲サレタノデアリマス、實ニ當時學界
ノ弊風ハ此禁令ノ必要ヲ痛感セシメラレマ
シタ、學界ノ狀態ハ諸派ガ相爭ヒ、新奇ヲ
好ミ、輕佻浮薄、此建議案ニハ輕佻詭激ト
云フコトガ使ッテアリマス、輕佻浮薄ニ陷ッ
テ、篤實純正ノ風ヲ失ッテシマッテ居ル、ソ
コデ樂翁公ハ、最初ノ學問ヲ正シクシナイ
時ハ、愈〓學ンデ愈〓迷ヒ、遂ニ雜學異端ニ陷
ルト考ヘラレタ、初學ノ者ニ異學ヲ禁ジテ、
學界ノ弊風ヲ改メサセヤウト云フ考ヲ起サ
レタノデアッタノデアリマス、斯ノ如ク幕府
ニ於テ一度異學ノ禁令ガ下リマシタラバ
諸藩モ亦之ニ做ッテ其實行ヲ致シマシタ、天
下ハ靡然トシテ朱子學ニ歸シマシテ思想ノ
統一ガ成リ、實踐窮行ノ態度、篤實率直ノ
風格ガ起ッタト、斯ウ云フコトガ歷史ノ上ニ
現ハレテ居ル、私ハ單リ斯ノ如キ思想方面
ノ學問ノミナラズ、科學ノ立場ニ於キマシ
テモ、其科學ノ發見ガ或ハ人心ニ動搖ヲ來
スガ如キモノガアルト云フヤウナコトデア
ルナラバ、政府ハ其學說ノ發表ヲ、或ハ取
締ル必要ガアルトモ考ヘテ居ル、況ヤ此天
皇機關說ニ至リマシテハ、名ヲ學問ノ自由
ニ藉リマシテ、國體違反ノ說ヲ敢テシテ居
ルコトハ、是ハ到底樂翁公異學ノ禁ニ比ス
ベクモナイノデアル、本建議案中ノ「政〓時
ニ肇國ノ大義ニ副ハザルモノアリ」ト申シテ
居ルノハ、蓋シ斯カル學說ヲ云フテ居ルモ
ノデアリマス、斯カルコトヲ段々ト考ヘテ
參リマスル時ニ、我ガ大學、殊ニ官學ニ於
ケル國體違反ノ學ヲ如何ニ御處置ニナルベ
キカ、是ハ深ク御考ノ上ニ、斷乎トシテ其
決心ヲ御示シニナラナケレバナラナイモノ
ダト考ヘテ居リマス、我ガ大日本帝國統治
權ノ主體ハ天皇ニ存シマツルコトハ肇國
ト共ニ君國一體、君民一體、サウ云フ形ヲ成
シテ居ル、建國ノ體ト致シマシテ直ニ御示
シニナリマシタ天壤無窮ノ彼ノ神勅ニ依リ
マシテ、炳トシテ其事ガ明カナコトデアル、
憲法第一條ノ「大日本帝國ハ萬世一系ノ天
皇之ヲ統治ス」ト書カレテアリマスノハ是
ハ憲法義解ニ示シテアル如クニ、憲法ニ依ッ
テ新シク設ケラレタル義デハナイノデアリ
やく、サウ云フ新シク設ケラレタ意義デハ
ナイノデアリマシテ、單ニ國體ヲ憲法ニ依ッ
テ益〓鞏固ニ示サレタモノデアル、斯ノ如
キハ明ニ憲法義解ニ示サレテ居ルノデアリ
マシテ、世人動モスルト之ニ於テ誤リヲ生
ズル、本建議案ノ主旨ト致シマスル所ハ
蓋シ帝國憲法ニ現レテ居リマスル所ノ絕エ
ナイ現實トシテ、我ガ歷史ニ一貫シテ居ル
御神勅ノ御精神ヲ我ミハ擁護發揚シ奉ッテ、
之ヲ政治、〓育、文物、一般ノ上ニ斷々乎
トシテ實現スルコトヲ希望シテ居ルモノニ
外ナラナイノデアル、問題ハ統制下ノ自由、
自由ノ上ノ統制、此全體觀ニ問題ガアルト
確信ヲ致シテ居リマス、首相閣下、內閣ノ
諸公、願ハクハ獨リ天皇ヲシテ社稷ヲ憂ヘ
シメルコトナク、奉ゼザレバ輔ニ非ズト云
フコトヲ能ク御體シ下サリマシテ、國民ノ
言ヲ御聽キ下スッテ、國體明徴ノ義ヲ御誤リ
ニナラヌコトヲ深ク望ンデ巳マナイ次第デ
アリマス、是ニテ私ノ所見ヲ終リマス(拍
手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006703242X01919350320&spkNum=61
-
062・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 土方寧君
〔土方寧君演壇ニ登ル)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006703242X01919350320&spkNum=62
-
063・土方寧
○土方寧君 私ハ此建議案ニ贊成ヲ致ス者
デゴザイマス、建議案ノ表題ニ政〓刷新ニ
關スル建議案トナッテ居リマス、刷新ト申ス
ノハ隨分廣イ字句デアリマス、此內閣又ハ
前內閣ニ於キマシテモ、我國ノ現狀ニ鑑ミ
國民精神ノ作興トカ、人心ノ善導トカ云フ
ヤウナコトハ政綱ノ中ニ加ヘラレテ居ル
ヤウデアリマスガ、併ナガラ之ヲ實現スル
コトハ頗ル困難デアリマス、精神ノ作興ト
申シマシテモ、家ヲ建テルト云フヤウナ工
〓民心ヲ善導スルト云ッテモ、道ニ迷ッテ
居ル者ニ正シイ道ヲ指示スト云フヤウナ工
合ニハ出來マセヌ、刷新ト申シマシテモ、
朽廢シタ家ヲ大修繕スルト云フヤウナ工合
ニハ行キマセヌ、此趣意ヲ積極的ニ實現ス
ルト云フコトハ言フベクシテ實行スルノ
ハ頗ル困難デアリマス、併ナガラ比較的ニ
此目的ヲ達スルニ容易ナ方法ハ、人心ノ惡
化スル原因トナッテ居ルコトヲ除却スルニ
アリマス、建議案ノ表題ニハ政〓トアリマ
スカラ、多分政界ノ現狀ヲ見テ之ヲ肅正ス
ル必要ガアルト云フ意味デアラウト思ヒマ
ス、如何ニモ必要ナコトデアリマス、御承
知ノ通リ、政界ガ腐敗シテ政黨ガ國民ノ信
ヲ失ッテ居ルト云フコトハ、公知ノ事實デア
リマス、其原因ハ種々アリマセウガ、一番
主ナ原因ハ選擧ガ純良ニ行ハレヌト云フコ
トニアルト思ヒマス、其選擧ガ純良ニ行ハ
レヌト云フノハ、選擧費用ガ多額ニ要スル
ト云フコトニ在ルヤウデアリマス、前々議
會デアリマシタカ、同僚ノ上山君ガ此壇上
デ公然、衆議院ノ議員中ニ選擧法ノ制限以
內ノ費用デ當選シテ居ル者ハ十人位シカナ
イト云フコトヲ公言セラレマシタ、否認ス
ル者ガ誰モアリマセヌ、ソレガ事實トスレ
バ衆議院ハ成立ッテ居ナイ譯デ、分ラヌカラ
看過セラレテ居ルガ、虛僞ノ議員ガ多數ヲ
占メテ居ル、此弊害ハ、選擧界ノ腐敗ト云
フモノハ前カラズット漸々ニ酷クナッテ來
マシテ、大正十四年憲政黨內閣、加藤君ガ
總理大臣、若槻君ガ內務大臣ノ時ニ提案ニ
ナリマシテ、其前カラ投票ノ買收ト云フ弊
害ガアッタ、併シ前ニハ有限選擧デアリマシ
テ、選擧人ノ數ガ比較的ニ少ナイ、ソレダ
カラ買收スルコトガ容易デアルケレドモ、
普通選擧ニ致シマスルト云フト、選擧人ガ
殖エルカラ、多勢ニナルカラ、ナカ〓〓手
ガ〓ラナイ、買收ガ實行難ニナルカラ、此
弊ガ除却セラレナクテモ輕減セラレルト云
フコトヲ、總理大臣モ內務大臣モ言ハレタ、
私ハソレハ大間違デ、却テ選擧費ガ餘計要
ルコトニナリマス、成程候補者ガ多數ノ有
權者ヲ自分デ買收スル譯ニハ行キマセヌケ
レドモ、選擧區內ノ、ソレ〓〓ノ方面ノ
「ブローカー」ヲ經テヤレバ何デモナイ、有
權者一人分ノ費用ハ僅カデアリマスガ、數
ガ多クナルカラ總額ハ大變ナコトニナッテ、
却テ其弊害ヲ助長スルコトニナルダラウト
云フコトヲ豫測シテ申シテ置キマシタガ、
其通リデアル、今日衆議院ノ議員ノ知ッテ居
ル人ニ聞キマスト、アレハ良クナカッタト
皆言ッテ居リマス、隨分大膽デアリマシタ
ガ、此案ガ提案セラレタ時ニ、大變長イ演說
ヲシマシタ、四時間半カ、諸君ニ大變ニ御迷
惑ヲ掛ケタノデアリマスガ、實ハ一所懸命ニ
ヤッタノデアリマス、又世界ノ大戰チヨット前
デアリマスガ、西洋ノ文明國デハ、皆何處デモ
普通選擧ニナッテ居ル、是ハ世界ノ立憲制ノ
通義デアルト云フヤウナ立前カラ高調セラ
レタノデアリマス、ケレドモ私ハ是ヲ決シテ
立憲制ノ必要カラ起ッタモノヂヤナイ、外ノ
國ハ能ク知リマセヌガ、「イギリス」ノコトハ
能ク知ッテ居リマスガ、「イギリス」ナンカデハ
普通選擧ハ「イギリス」ノ憲法ノ根本ヲ破壞
シテ居ルモノデアル、元「イギリス」ノ憲法
上ノ選擧權ト云フモノハ、納稅ニ依ッテ初メ
テ政府ノ政治ニ容喙スル權利ガアルノガ、
「イギリス」ノ憲法ノ根本デアリマス、ソレ
ヲ覆シタノデアリマス、ソレハ宜イト思ッ
テシタノヂヤアリマセヌ、產業革命以來少
數ノ資產階級ト、大多數ノ······モウ十九世
紀末カラ國民ノ六割七割ハ無產階級ノ勞働
者デアリマセウ、其ノ間ノ利害關係カラシ
マシテ、千八百七十年ノ普通〓育實施ノ結
果、從來ハ無學文盲デアッタ所ノ多數ノ勞働
者階級ノ者ガ、彼等ノ利益ヲ仲達スル爲ニ、
政權ヲ與ヘヨト言ッテ立ッタノデアリマス、
ソレガ善イ惡イハ別論トシテ、ソレヲ容レ
ナケレバ國ガ立チマセヌ、サウ云フ譯デ據
ナク容レタ、ソレカラ後ノ經驗モ短イ、屹度
是ハ良クアルマイ、大膽デアリマスガ、此
普通選擧ニナッタ後ノ立憲制ハ、歐米ノ諸國
デモ屹度結果ガ惡イノデアリマスカラ、御
覽ナサイト言ッテ置キマシタガ、其通リデア
ル、大戰後ノ歐洲ノ文化ハ殆ド破壞セラレ
ル、各國トモ產業界、經濟界、財界、政界
ガ混亂狀態ニアリマス、其難局ヲ打破スル
爲ニハ色ミナ政策ヲ執ッテ居リマスケレド
モ、何トシテモ普通選擧ニ依ル多數ノ者ノ
歡心ヲ得ナケレバ議決ヲ得ラレヌト云フヤ
ウナ議會デハ、此難局ヲ打破スルダケノ政
策ヲ共ニ議スルコトガ出來マセヌ、立憲制
ハ現在何處ニモ本當ニ行ハレテ居リマセ
又、形ダケハ北米合衆國ニアリマスガ、併
シ大統領ニ多大ノ行政權ヲ與ヘマシタカ
ラ、從來ノヤウナ議會ノ働キト云フモノハ
ナイ譯デアリマス、「イギリス」ガ立憲國ノ
本尊ダト申シマスケレドモ、千八百三十一
年以來政黨ノ內閣デアリマセヌ、動トモス
ルト我國ノ政黨ガ······衆議院ニ多數ヲ制ス
ル政黨ガ政權ヲ得ルノガ憲政ノ常道ダト言
ヒマスガ、ソンナモノハ今ハ何處ニモアリ
マセヌ、「イギリス」デハ千八百三十一年以
來「ナシヨナル·ガヴァンメント」、擧國一致
內閣デアリマス、ソンナ譯デ其原因ハ多々
アリマセウケレド、普通選擧ガ一大原因ヲ
爲シテ居ルト私ハ見テ居リマス、千八百三
十一年ノ「イギリス」ノ政變ハ、是ハ外ノ
國ニト同樣ノコトデアリマスガ、戰爭後非
常ナ不況ニ陷ッテ、歲入ガ減ジ、サウシテ歲
出ハ非常ニ殖エタ、其殖エタ主ナル原因ハ、
大多數ノ失業者ニ對スル失業者ノ手當、勞
働者ノ保險ト云フモノガアリマス、保險金
デアリマス、ソンナモノガ多大ナモノニナ
ル、失業者ガ多クナレバ多クナル程歲入ハ
減ル、歲出ハ多クナル、ソレデ「イギリスL
ノ財界ガ信用ヲ失ッタ、當時マダ世界ノ金融
ノ中心ハ全部「ニユーヨーク」ニ移ッテ居リ
マス、矢張リ多年ノ因襲デ、「イギリス」ガ
歐洲ノ諸國ニ對シテハ一種ノ金融ノ中心地
デアリマス、短期ノ投資ガ澤山出來テ居リ
マス、ソレヲ取付ケラレテシマッタ、丁度銀
行ノ取付ト同ジコトデアリマス、サウ云フ
窮境ニ立ッタ時ニ、當時ノ「マクドナルド」、
ソレノ率ヰラレテ居リマス勞働黨内閣ハ絕
對多數デアリマセヌ、比較的多數デアリマ
シテ、自由黨一部ノ援助ヲ得テ居リマスガ、
コンナ薄弱ナ內閣デハ到底此難局ヲ打開ス
ルコトガ出來ナイト云フノデ、サウシテ聯
立內閣ニナッテ、今デハ赤字ハ〓算ヲシテ居
リマス、增稅ヲシタリ色ミナコトヲシタリ
シテ、到頭赤字ヲ克服シテ居リマス、ソン
ナ譯デ私ノ考デハ、大正十四年ニ若シ我ガ
國民ノ如キモ、モウ少シ西洋ノ文化ニカブ
レテ居ナカッタナラバ、マサカ立憲國ノ通義
デアルト云ッテ、宜イ加減ナコトヲシナ
カッタラウト私ハ思ヒマス、併ナガラ今
日デハ既ニ法律デ決マッテ居リマス、納稅
ノ資格ガ無クテ選擧權ヲ與ヘラレテ居リマ
ス、既ニ與ヘラレタル權利ヲ剝奪スルト云フ
コトハ與ヘザルヨリモ困難デアリマス、
私ノ考デハ近イ將來ニ於テハ之ヲ改正ス
ル必要ガアル、改正スル時ハ今申スヤウナ
理由デ、選擧權ヲ剝奪スル譯ニハ行キマセ
ヌカラ、ソレヲ其儘ニシテ置イテ、納稅ヲ
シナイ者ヲ納稅ヲスル者ト同等ニ見ルト云
フコトハ、不公平デアリマスカラ、納稅者
ニハ二票、或ル額以上ノ納稅者ニハ三票ト
云フヤウナコトニシテ、納稅シナイ者ノ投
票權ハ一ツニシテ效力ヲ薄クスルト云フヤ
ウナコトモ、一ツノ手段デナイカト思ッテ居
リマスガ、他日折ガアッタラ、政府ノ方デモ
サウ云フ選擧法ノ改正ニ付テ御考慮ヲ願ヒ
タイ、今ノ儘デハ買收ガ盛ニ行ハレテ、人
心ヲ惡化スルコトノ甚シイモノデアリマ
ス、今ノ小學校ノ兒童ガ級長ニ選バレル爲
ニ、「キヤラメル」、鉛筆ヲ皆友達ニヤッテ級
長ニナッタト云フ者ガアリマスガ、ソレヲ惡
イト思ッテ居ナイデセウ、彼等兒童マデ選
擧ノ時ニ買收ト云フコトガ公々然ト行ハレ
テ居ル、是ハ知ラズ識ラズ見聞キシマス、
ソンナ譯デ此選擧界ニ於ケル投票ノ賣買等
ガ如何ニ人心ヲ腐敗セシメテ居ルカ、測リ
知ルベカラザルモノガアリマス、コンナコ
トガ卽チ人心ヲ惡化スル原因デアル、例外
バ今日デハ全國ニ地方的ニ澤山ノ競馬ガ行
ハレテ居リマス、是ハ私ハ全廢スベキモノ
ト思フ、競馬ハ廢メナイデ宜イト思フ、馬
劵附ノ競馬、是ハ明治三十年頃デアリマシ
タガ、馬匹改良ノ爲ニ競馬法ガ出來マシ
テ、馬券附ノ競馬ガ許サレテ居ッタ、日露戰
爭後大變ニ實業界ガ繁昌シタ時分ニ、國民
ガ浮華放縱ニ流レマシテ、當時明治天皇
ガ大變御軫念遊バサレマシテ、戊申詔書ヲ
渙發セラレマシタ、其結果デアリマスカ、
其後數年ナラズシテ、馬劵附競馬法ヲ斷然
禁ジテシマッタノデアリマス、所ガ其後十年
モ經ツト云フト、矢張リ馬券附競馬ヲシナ
イト云フト馬匹ノ改良ガ出來ナイカラト云
フノデ、又許サレルコトニナリマシタ、其
時私ハ極力反對シマシタ、馬匹改良ガ必要
デアルト云ッテ、人心ヲ惡化シテ宜イト云フ
ノハ、事理〓倒デアル、人ヲ馬鹿ニシタ話
デアル、是程人ヲ馬鹿ニシタ例ハ世界中ド
コニモアリマスマイ、馬ヲ良クスル爲ニ人
ガ惡クナッテモ宜イト云フコトニナル、是ガ
本來都會ノ住民ヨリモ堅實ナルベキ農村ノ
人民ヲシテ賭博心ヲ挑發セシメ、輕佻浮薄
ナラシメテ居ルト云フコトハ、實ニ甚シイ
モノデアリマス、之ヲ許シテ置イテ人心ガ
惡化スル、質實剛健ニナレト云フノハ、矛
盾デアリマス、是モ簡單ナコトダ、廢メテ
シマヘバ宜イ、サウカト云ッテ競馬ハ別ニ
賞與ヲヤルトカ、外ノ方法デ以テ出來ヌコ
トハナカラウト思フ、斯樣ナコトヲ申シマ
スト云フト、此建議案ニハ色ミ廣ク書イテ
アリマス、色ミナコトガ這入ッテ居リマス
カラ、又種々ノコトニ付テ此建議案ノ趣旨
ヲ達成スルニ付テ、斯ウモアアモ思フコト
ガ澤山アリマスケレドモ、數時間ヲ要スル
ノデ、諸君ニ御迷惑ヲ掛ケマスカラ、今日
ハ略シマスガ、是非申サナケレバナラヌコ
トガアトニ殘ッテ居リマス、ソレハ建議案ニ
モ、或ハ西〓侯ノ建議案ノ御說明ノ中ニ
モ、故ラニ其言葉ハ御使ヒニナリマセナ
カッタケレドモ、只今ノ井田男爵ノ御贊成ノ
演說ノ中ニ、昨今本貴族院ニ於テ、衆議院
ニ於テ、院外ノ諸種ノ團體ニ於テ、盛ニ論
議セラレテ居リマス美濃部博士ノ憲法論デ
アリマス、天皇機關說デアリマス、ソレヲ
主トスルト云フ論デアリマス、其主トスル
趣意ハ、院內外デ盛ニ論議セラレテ居リマ
ス、此席デモ井田男爵カラ拜聽イタシマシ
タ、同ジヤウナコトハ繰返スコトハ差控ヘ
やく、天皇機關說ガ不可デアルト云ヘバ
ソンナラバ天皇ノ御本質、國家ノ本體、兩
者ノ關係ヲドウ見レバ我國ノ國體ト云フモ
ノノ眞相ヲ正解スルコトガ出來ルカト云フ
方ノ說明ニ至リマシテハ、寡聞ナガラ私マダ
多ク聞クコトヲ得マセヌノヲ遺憾ト致シマ
ス、ソレニハ私ハ餘程前カラ此問題ニ付テ
ハ一個ノ意見ヲ持ッテ居リマス、其意見ヲ述
ベマシテ此建議案ニ贊成ノ趣意トスル積リ
デアリマス、結論ヲ先ニ申シマス、私ノ考
ヘマスル所ニ依リマスト云フト、我ガ大日
本帝國、我ガ國家ハ如何樣ノ構成分子カラ
成立ッテ居ルモノデアルカト云フコトニ付
キマシテハ、斯ウ考ヘテ居ル、我ガ國家ハ
其領土ト······領土モ國家ノ一元素デアリマ
ス、我ガ國家ハ其領土ト、其領土ノ上ニ天
皇ノ統治ニ依リテ結合セラレテ家ヲ成シテ
生存シテ居ル國民デアリマス、是ガ一ツ
ソレト國家ノ中心、卽チ元首トシテノ天皇
ト、此三者ヲ以テ構成セラレテ居ルノデア
リマス、三者ヲ以テ構成セラレタ所ノ一體
デアル、斯ウ見ルノガ我ガ國家ノ本體ト、
國家ニ對スル天皇ノ御本質、兩ツナガラ正
シク解シタモノデアルト確信シテ居リマ
ス、或ハ天皇卽チ國家ト云フヤウナ說モ聞
キマスガ、私ニハドウ云フ意味カ能ク了解
シ兼ネマス或ハ君民一體ナドト云フコト
ヲ言ヒマス、是モ私ガ申スヤウニ色ニナ構
成分子カラ出來タモノデ一體ニナッテ居ル
ト云フノト同ジヤウナコトニナリハシマイ
カト思ヒマスガ、唯構成分子ヲ明ニ說明シ
テ居ナイト云フ嫌ガアリマス、此一體トナッ
タ國ハ無論無形ノ觀念デアリマス、領土ガ
有形デアルノハ論ガナイ、其上ニ住マッテ居
ル多數ノ國民モ有形ナ自然人デアリマス
天皇モ、是ハ天皇ノ御人格ニ付テ申シマス
ガ、是ハ矢張リ玉體ヲ有セラレル有形ノ方
デアリマスケレドモ三ツノ者ヲ集メタモ
ノ、無形ノ觀念デアリマス次ニ天皇ノ
御本質ニ付テ考ヘル所ヲ申上ゲマス、我ガ
天皇ハ現人神デアラセラレマス、「アラヒト
ガミ」デアラセラレマス、卽チ神格ト人格
ト兩ツナガラ併セ御持チニナッテ居リマス、
人格トシテノ天皇ハ玉體ヲ持ッテオイデニ
ナリマス、御料ノ財產モ持ッテオイデニナ
リマス、政務ニ直接關係ノナイ御用ハ宮內
省ヲ設ケテ辨ジテ居リマス、此天皇ハ今
上天皇ハ我〓赤子トシマシテハ聖壽萬歲ヲ
期スル譯デアリマスガ、併シ人格者タル天
皇ニ對シ奉リマシテ、聖壽萬歲ヲ期シテモ
文字通リハ出來ヌコトハ言フ迄モアリマセ
ヌ、ソレハ建國以來初代ノ神武天皇ヨリ歷代
ノ天皇ヲ經テ、今上天皇迄百二十四代、百
二十四遍代ッテ居ルコトヲ以テ分リマセウ、
是ハ人格者トシテノ天皇デアリマス、併ナガ
ラ天皇トシテ最モ我〓ガ崇敬スル眞ニ生
神樣ト思フテ我ミガ崇メ奉ル所ノモノハ
神格ヲ持ッテオイデニナルカラデアリマ
ス、此神格ハ古ク神代ヨリ初代ノ人皇カラ
歷代ノ天皇ヲ經テ、今上天皇ニ至ル迄皇統
連綿一瞬間モ斷絕スルコト無ク確定不動
今日迄至ッテ居リマス、此神格者ノ地位ハ大
御位デアリマス、眞ニ寶祚無窮デアリマス
建國以來今日迄二千五百九十五年、將來
ハ無限ト云フ意味デアリマス、國民ノコト
ヲ少シ申上ゲマス、只今申ス通リ我國ハ國
民ガ集ッテ家ヲ成シ、天皇ノ統治ノ下ニ其家
ガ集ッテ國ヲ成シテ居ルト云フコトヲ申シ
テ置キマシタガ、此事ヲ申シテ置キマス
何故中スカト云フト此點ヲ知識階級ノ人
モ昨今輕視シテ居ルヤウニ思フカラデアリ
ママ、古クハ我國ニハ氏族制ガ行ハレテ居
リマシタ、當時ハマダ天皇ノ統治權ガ普ク
全國ニ行渡ッテ居ナカッタト思ハレマス併
シ其後郡縣ノ制ヲ布カレ、中央集權ノ制度
ガ行ハレルヤウニナリマシテ以來、氏族制
ノ範圍ガ縮小セラレテ、家族制度ニナッテ今
日ニ至ッテ居リマス、西洋ノ諸國ハ國民ガ
集ッテ國ヲ成シテ居ル形デアリマスガ、我國
ハ國民ガ、老幼男女數人ガ其戶主ニ統一セ
ラレテ家ヲ成シ其家ガ天皇ノ統治ノ下ニ
國ヲ成スト云フ姿ニナッテ居リマス、戶主及
其家族、所謂法律デ云フ自然人、是ハ新陳
代謝イタシマス、老幼男女ガ集ッテ戶主ノ
下ニ家ヲ成シテ居ル、其家族ハ新陳代謝イ
タシマス、戶主ガ死ネバ家督相續人ガ後ヲ
繼グ、ケレドモ家其モノハ戶主、家族全滅
シマセヌ以上ハ存續シマス不幸ニシテ全
滅スル場合モアリマスガ、廢絕家ト云フヤ
ウナコトモ出來テ來マスガ、ソレハマア例
外デアルドウモ人間ガ死ヌノハ仕方ガア
リマセヌ、佛者ノ所謂生者必滅デアル、天
則デアリマスカラドウモ屈伏セザルヲ得ナ
イ、我國ニハ今日尙ホ〓トシテ家族制度ガ
行ハレテ居ルト云フコトハ多分皆サン御
承知ト思ヒマスケレドモ、其家族制度ノ趣意
ニ適フヤウニ戶主及家族殊ニ知識階級ノ
人ガ實際ニ生活ヲシテ居ルカト云フト少シ
疑ハシイ、全國民ノ多數ハ農民デアリマス、
ソレハ舊來ノ通リ、都會ノ知識階級ノ者ハ、
ソレコソ利己的個人主義ノ西洋ノ文化ノ惡
影響ヲ受ケテ、家族制度ガ頽廢セムト云フ
ヤウナ傾向ガアリマス、是ハ私ノ考ヘル所
デハ大切ナ、天皇カラ仰シヤルト國ノ御
寶ト仰シヤル國民ト云フモノノ構成ノ分子
ノ大切ナ所ノ我國ノ制度ノ趣意ガ十分ニ
行ハレヌト云フコトニナッテハ、國其モノノ
效力ニ惡影響ヲ及ボスト思ヒマス我國ハ
他ノ國ト違ヒマシテ家ヲ以テ成立ッテ居ル、
國民ハ其家ヲ成シテ居ル、故ニ人ミガ集ッテ
家ヲ成シ、家ガ集ッテ國ヲ成ス、國民ハ間接
ニ構成分子タルニ過ギナイト云フコトハ、
次男カ三男ガ別居シテ御覽ナサイ、一部分
創立シ、一人ボッチデ一家ヲ成ス、普通ノ家
ト云フ觀念ニ過ギマセヌケレドモ、法律上
ハ我ガ國民ハ一人モ戶籍ノナイ者ハナイト
云フ立前デアリマス、ソレハ大勢アリマス、
人口ハ澤山殖エル一方デアリマスカラ···
事實分ラヌカラ無籍モアリマスケレドモ、
制度ヤ慣習ノ上カラ言フト一人モ戶籍ノナ
イ者ハナイノデアリマスカラ、一人デモ分
家ヲスレバ、一人ポッチデモ分家ヲ創立スト
民法ニ書イテアリマス、併シ民法ニ新シク
作ッタノデハアリマセヌ、昔カラノ慣習法ト
云フモノヲ其儘法文ニシテ現ハシタニ過ギ
マセヌ、之ヲ以テ人ミガ集ッテ家ヲ成シ、家
ガ集ッテ國ヲ成スト云フコトニ依ッテ、我國
ノ家族制度ト云フモノガ明カニナラウト思
ヒマス、所ガドウモ近頃ハ先刻モチヨット申シ
マス通リニ、長男ガ妻帶スル、老夫婦ト新夫
婦ト一〓ニ居ルノハ御互ニ氣兼ネダカラ
ト云フノガ多クハ分家スルヤウデス、別居ス
ルヤウデスガ、ソレハ私ハ宜シクナイト思フ、
親子、兄弟、夫婦ト云フヤウナ者デアリマ
シテモ、ソレハ性ガ違フ、體ヲ異ニシテ居
ルカラ、物ニ付テ意見ハ違ヒマセウ、ケレ
ドモ、又老人ノ考ト若イ者ノ考ハ違ヒマス
各ゝ長短ガアル、自分ノ思フ通リニシタイト
云フコトガ我儘デアリマス最モ利害ヲ共
通ニスル家族ノ間デ、互ニ自省シテ融和シ
テ行クコトガ出來ナイヤウナ國民ハ忠良
ノ臣民デハアリマセヌ、孔子ノ言ノ中デ、
修身齊家治國平天下ト申シテ居リマス千
古ノ金言ト存ジマス、治國平天下ハ多少漠
然トシテ居ッテ、今日ノ政治ノ實際ニハドウ
當嵌メテ宜イカ分リマセヌガ、併シ修身齊
家ハ昔モ今モ變リハナイ、其修身齊家ノ實
ガ擧ガラヌカラ、其本尊ノ支那ハ御覽ノ通
リノ情況デアル、我國ニハ却テ之ガ或程度
マデ行ハレテ居ルカラ誠ニ仕合セナ有樣デ
アリマス、身ヲ修メルコトガ出來ナクテ家
ノ齊ヒヤウガナイ、ソレガ出來ヌノニ國ノ
政治ニ參與スル責任ヲ各自ニ盡シ得ル譯ノ
モノデハナカラウ、身內ノ者デ迷惑スルヤ
ウナ我儘者ハ、他人トノ關係ニ於テハ圓
滿ニ纏マルモノモ紛爭ヲ生ジ、裁判沙汰ヲ
仰グ譯ニナリマス、私ハ自分デ言フテモヲ
カシイガ、總テ私ハ實踐躬行デアリマスカ
ラ、二夫婦一緒ニ居リマス私ノ方ガ大變
ニ遠慮シテ居マスケレドモソレガ宜イト
思フ我儘ヲ押シ通スト云フコトハ破滅ノ
本デアリマス、私ガ先刻モ言フ通リ戶主モ
家族モ新陳代謝シマスケレドモ家ト云フ
モノハ存續シ得ル性質ノモノデアル、ソレ
ヲ私ドモ法律上ノ言葉デ言ヘバ法人性ヲ
持ッテ居ルト申シマス、我國ノ家ガ法人トハ
我國ノ法律ニモ規定シテ居リマセヌガ、法
律ノ學問ノ上デハ、斯ウ云フ風ナ自然人ハ
天然自然ノ壽命ガアッテ何時カハ死ヌル、法
人ト云フモノハ天然ノ壽命ノナイ代リニ永
續スル、此永續スルト云フ觀念ヲ特徵トシ
テ捉マヘテ法人ト云ヒマス、サウスレバ家
ハ一種ノ法人デアリマス、我國ノ美風トシ
マシテカラ大抵ドノ家ニモ先祖代々ノ祭ヲ
致シマス、ソレハ畏多イ事ダケレドモ祭政
一致デ、天皇ガ御祭ヲナサルト同ジヤウナ
趣意デ、サウシテ家族ノ心掛ガ間違ッテ居ナ
イ先祖代々ノ家名ヲ辱メナイヤウニ、少
クモ出來ルナラバ現代ノ當主家族ガ協力シ
テ、其家ノ名ヲ益、く隆盛ナラシメタイト云フ
コトニ努ムルノガ當リ前デアル、サウ云フ
心掛ノ人ミガ集マッテ家ヲ成シ、其家ガ澤山
アリマシタナラバ、其家ヲ以テ成ル國ト云
フモノハ實ニ隆盛ヲ致スニ相違アリマセ
又、國モ亦今申スヤウナ意味デ、西洋デハ
個々ノ人ガ集ッテ國ヲ成ス、我國デハ人ガ
集ッテ家ヲ成シ、家ガ集ッテ國ヲ成ス、其國
ト云フモノハ元素ハ外ニモアリマスガ無
形ノ觀念デアリマス、ソレハ組成分子ノ重
モナ所ノ國民ト云フモノハ、矢張リ自然人
デアリマスケレドモ新陳代謝シマス、併ナ
ガラ國其モノハ永續シマスソレダカラ此
點カラ見マシテモ、國モ亦法人性ガアルト
云ッテモ宜イノデゴザイマス、國家ガ法人デ
アルト云フコトハ何處ノ國ノ憲法ニモ其
他ノ法律ニモ規定シテアリマセヌ、我國ニ
モアリマセヌ、併ナガラ國際公法ニ於キマ
シテハ獨立國ノ間ノ外交上ノ便宜上、獨立
國ハ互ニ公法人ヲ成シテ居ルト見テ居ルノ
ガ通則デ、通說デアルト心掛ケテ居リマス、
國際法學者ノ說ハドウカ知リマセヌガ、私
ハサウ考ヘテ居ル、サウ見ナイト忽チ困リ
マス、甲ナル帝國ガ······或ハ王國ガ、外國
ト條約ヲ結ビマス、所ガ其後ニ革命ガアッ
テ共和國ニナリマス、ソレガ爲ニ甲帝國ノ
時分ニ結ンダ他國トノ條約ガ無效ニナルト
云フコトデアリマシタナラバ雙方トモ不
便デアリマセウガ、多クノ場合相手國ニ不
便デアリマス、西洋デハ我國ニ於ケル如ク
國體ト政體トノ區別ハハッキリ付キマセヌ
革命ガアッテ王國ガ共和國ニナレバ、殆ド國
ガ更新セラレタ形ニナリマスガ、ソレデモ
外國カラ見タラ、同ジ國ト云フモノガ甲國
ナラバ甲ガ附イテ居ルト見ナケレバ、彼我
共ニ不便デ仕樣ガアリマセヌカラ、サウ云
フ變動ハアッタニ拘ラズ甲國ハ何處迄モ甲
國デアルト見ルノガ必要デアル必要デナ
クモ有益デアルト云フ意味カラ、同一國ハ
皆ナ法人ダト見テ居ル公法人ト見テ居ル
美濃部君ノ天皇機關說ハ、國家ハ法人デア
ル其國家ニ統治權、主權ガアル法人ハ
形ガナイ、法人ノ固有ノ意思モアリ得ナイ
ダラウ、アッタニシテモ行爲能力ガナイ故
ニ天皇ガ其法人タル國家ヲ代表シ、機關ト
シテ統治權ヲ行ハルト、斯ウ說イテアリマ
ス、ソレヲ聞イテ、機關ト申スハ怪シカラ
ヌト、直グニ多クノ人ハ法人タル國ノ機關
ト申スト云フト、ソレハ有限株式會社ノ社
長ト同ジモノニ擬スル譯デ實ニ畏多イト
云ッテ反對サレマス、ソレハサウ考ヘル人ハ
無理モナイ、ケレドモ其人達ハ法人ト云フ
觀念ガナイノデス、一體有限株式會社ト云
フモノハ今日我國ニモ何處ノ國ニモ盛ンニ
一ツノ事業ヲ經營シテ居マシテ、諸君御承
知ノ通リデアリマスガ、是ハ法人デアル、
併シ比較的新シイノデス、有限責任株式會
社ト云フモノノ法律上認メラレタノハ確カ
千八百四十二年、「イギリス」ガ初メテデア
リマス產業革命以來多數ノ者カラ資金ヲ
募集シテ、多額ノ資本ヲ合同シテ大規模ノ
事業ヲ經營シヤウト云フニハ迚モ少數ノ
人ノ金デハ足リマセヌカラ、斯ウ云フ趣意
ノ會社ヲ頻リニ立テヤウトシマシタ、ケレ
ドモ裁判所ハドウシテモ許サナイ、誰デモ
自分ガ他人ニ對スル債務ノ辨濟トシテ、自
分ノ財產ノ一部分ヲ限定スル自分ノ財產
ハ是ダケヲ以テ他人ニ制限スル、ソレ以外
ハ勝手ニ制限スルコトガ出來ルカ、他人ノ
債務ニ對シテ自分ノ財產ノ一部ノ責任ヲ局
限スルコトガ出來ルカ、出來ナイダラウ
一人ガ出來ナケレバ十人集ッテモ、百人
集ッテモ、千人集ッテモ同ジコトヂヤナイカ
ト云フコトデ、有限株式會社ト云フモノデ
モナカ〓〓認メラレナカッタ、大變難產デア
リマシタ、ソレガ遂ニ出來タ譯ハ、此組織
ニ依ッテ多數ノ者カラ資金ヲ醵出シテ、サウ
シテ大事業ヲスルト云フコトハ之ニ携ハ
ル人ミノ私ノ利益ノミデハナイ、是ガ卽チ
國ノ富ヲ增ス所以デアル、公益上有益デア
ルト云フノデ、嚴格ナル裁判所ノ法律論ニ
對スル例外トシテ僅ニ認メラレタノガ千八
百四十二年デアリマス、マダ百年ニナリマ
セヌ「フランス」ヤ「ドイツ」デ之ニ倣ッタ
ノハソレヨリ數年後デアリマス此有限
株式會社ガ認メラレルコトニナッタ時ニ初
メテ法人ト云フ考ガ起ッタノヂヤナイノデ、
是ハ古イ話デス、法律上法人ト云フ觀念、
ソレヲ應用シタニ過ギマセヌ法人ト云ヘ
バ直グニ有限株式會社ノミヲ豫想スルト云
フコトハマア法律ヲオヤリニナラヌ方ハ
無理ノナイコトダケレドモ、法人ト云フ觀
念ヲ御持チニナラヌカラデアリマス、法人ニ
ハ日本ノ民法ニ於キマシモ財團法人ト云
フモノガアル公益法人ニ限リマス社團法
人ト云フモノガアル社團法人ハ、營利ヲ
目的トスルモノハ商法ノ所謂會社デアル、
其營利ヲ目的トシナイ民法ノ社團法人ヤ財
團法人ナドノ中ニハ何モサウ其首腦ニ
ナッテ居ル人ト幾分似タ所ガアルト申シテ
モ、ソレ程不都合ハナイト田心フガ、儲ケヲス
ル有限株式會社ノ社長ナラ社長ト同ジト云
フコトハ、如何ニモ誰ガ見テモヲカシク聞エル、
玆ニチヨット序ニ申シタイコトハ、只今申シ
タ通リニ、我國其他ノ國ニ財團法人ト云フモ
ノガアル、實ハ奇妙ナモノデス、財產ト云フモ
ノハ人ノ權利、人間ノ權利ノ客體トナルベキ
ガ本體デアル、或場合ニハ財產權ハ主體ニ
ナルト云フノハ是ハ變ナ見方デアリマス、
ケレドモ是ハ色ミナ理由デ其便宜ヲ圖ル爲
ニサウ見テ居ル、所ガ「イギリス」ニハ財團
法人ナドト云フモノハアリマセヌ、其代リ
「イギリス」ニ限ル妙ナモノガアル、ソレハ
單獨法人ト云フ、タッタ一人ノ人ガ法人ト云
フ單獨自然人ヲ法人ト見ル、是「イギ
リス」ダケデアリマス、其觀念ガアルト云
フコトトモウ一ツハ「イギリス」ニハ信託
ト云フコトガアリマス、我國ニモ大體ソレ
ニ據ッテ信託法ガ出來マシテ、信託業法ノ下
ニ信託銀行ガ出來テ居リマスガ、「イギリ
ス」ニ數百年來行ハレテ居ル信託其モノハ
マダ日本人ハ利用シテ居ナイヤウデアリマ
スガ、信託ト云フモノガアリマス、一七三
信託ガアリ一方ニ單獨法人ノ觀念ガアル、
此兩者ヲ利用スレバ財團法人ト云フヤウナ
觀念ノ必要ガナイカラ「イギリス」ニハ財
團法人ト云フモノハアリマセヌ、其單獨法
人一自然人ヲ法人ト見ルト云フコトハ
サウ適用ハ廣クアリマセヌガ、最モ古イ所
ハ寺ノ住職デアリマス、「イギリス」ノ國民
ガ耶蘇〓ニ歸依シテ以來、全國ヲ
〔「簡單ニ願ヒマス」ト呼フ者アリ〕
多クノ小區ニ分チマシテ、「パリッシユ」ト申
シマス、其그パリッシユ每ニ「パリッシユ·チ
ヤーチ」、卽チ寺院ヲ設置シマシテ住職ヲ置
イタ、ソレハ少シ違ヒマスガ、マア「レク
トル」トカ「ビツガー」トカ申シマスガ、是
ガ單獨法人ダト申シマシテ、何モ深イ意味
ハアリマセヌ或寺ノ住職ガ甲デアル甲
ガ或寺ノ住職トシテ他人トノ法律行爲ヲス
ル所ガ住職ハ死ンダ、或ハ轉任シタ、サ
ウシテ其同ジ寺ノ住職ガ乙ニナッタ、其爲ニ
前任者ノ甲ノ時分ノ他人トノ契約ナラ契約
ガ無效ニナッタ日ニハ雙方不便デアリマス、
ソレダカラ、甲ガ乙ニ變ッテモ、或寺ノ住職
ト云フ地位ハ同ジモノダト云フコトヲ現ハ
ス爲ニ、住職ト云フモノハ法人デアルト云
ヒマス、ソレハ古クカラ不文ノ慣習法デサ
ウ見テ居リマス、最近ニ單獨法人ト見タモ
ノハ、立法ニ依ル有給ノ受託官デアリマス
只今申ス通リ、「イギリス」デハ信託ト云フ
モノガアリマシテ··発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006703242X01919350320&spkNum=63
-
064・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 土方君ニ申上ゲ
マスガ、ドウカ直接此建議案ニ關係ノアル
範圍ニ御止メヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006703242X01919350320&spkNum=64
-
065・土方寧
○土方寧君 今ノコトヲモウ少シ進メマス
〔「簡單ニ願ヒマス」ト呼フ者アリ〕
是ハ前ノ論理ノ方ノ參考ニナルコトト思ヒ
マスカラ申上ゲマス、受託者ト云フモノハ
數人ニシナケレバナラヌト云フコトデアリ
マシタガ、併シ適當ナ主任者ガ得ラレルヤ
ウニナッテ、一時ハ所有者ノ監督ノ下ニスル
ㄱジユシヤル·トラシテイ」ト云フモノガ出
來マシタガ、ソレモ餘リ利用シナイデ、最近
ニ於キマシテ有給ノ受託官ト云フモノヲ置
キマシテ、信託行爲ノ設定者ハ自然人ノ受
託者ト共ニ、或ハ有給ノ受託官ト云フモノ
ヲ單獨ニ受託者ニ指名スルコトガ出來テ
其受託官ノシタコトニ對シテ國家ガ責任ヲ
負フト云フコトニナッテ居リマス、サウシテ
其受託官ト云フモノハ單獨法人ト云フコト
ニナッテ居リマス甲ガ乙ニ變ラウガ、乙
ガ丙ニ變ラウガ、受託者ハ同ジモノダト云
フコトニ見テ居ルモット大キイモノハ是
ハ不文ノ憲法ノ上ノ一ツノ格言デアリマス
ガ、「イギリス」ノ國王ハ單獨法人ト云フコト
ニナッテ居ル、「キング·イズ·コーペレーシ
ヨン·ソール」、「イギリス」ノ國王ハ單獨法
人デアル··
〔「議長」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006703242X01919350320&spkNum=65
-
066・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 今發言中デゴザ
イマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006703242X01919350320&spkNum=66
-
067・土方寧
○土方寧君 「イギリス」ノ國王ト云フモノ
ハ
〔子爵三室戶敬光君「議事進行ニ付テ」
ト述フ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006703242X01919350320&spkNum=67
-
068・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 議長ニ御委セヲ
願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006703242X01919350320&spkNum=68
-
069・土方寧
○土方寧君 モウ少シデ濟ミマス、、+)
グ·ネヴアー·ダイズ」ト云フコトガアル·
〔子爵三室戸敬光君「議長、議事進行ニ
付テ發言ヲ御許シニナリマセヌカ」ト
述フ〕
「ギング·ネヴアー·ダイズ」ト云フコトヲ申
シマス、是ハ普通ノ英語ノ通リニ解シマス
ト眞ッ赤ナ噓デアリマス、「ヴイクトリア」
皇帝ガ崩ゼラレテ····発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006703242X01919350320&spkNum=69
-
070・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 土方君、ドウカ
成ルベク此範圍ニ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006703242X01919350320&spkNum=70
-
071・土方寧
○土方寧君 私ハ天皇機關說ノコトニ非常
ニ參考ニナルト思ッテ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006703242X01919350320&spkNum=71
-
072・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 成ルベク簡單
ニ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006703242X01919350320&spkNum=72
-
073・土方寧
○土方寧君 大方濟ミマス、「キング·イズ·
コーペレーション·ソール」ト云フノハ文
字通リ解セバ當ラヌコトデアリマス、ヴ
イクトリア」皇帝ガ崩ゼラレ、「エドワードㄴ
七世ガ位ニ卽カレテ、「ジヨージ」五世ニナッ
テ變ッテ居リマスケレドモ、ソレハ何ヲ意味
スルカト云ヘバ王位ト云フモノハ不滅デ
アル王位ニ在ル肉體ノ王樣ナリ女王樣
ガ御亡クナリニナッテモ、王位其モノハ一尺
不動デ、一瞬間モ空虛ガナイト云フ意味カ
ラ、其王位ヲ持ッテ居ル方ヲ法人デアルト云
フ法人觀ガアル、斯ウ云フノデス、此見方
ナラ「イギリス」ダケノコトデアリマスケレ
ドモ、或見樣ニ依ッテハ、我ミガ天皇ノ人格
者トシテノ御本質ト云フモノヲ解スルト餘
程似タ所ガアルト思ヒマスカラ、引合ヒニ
御話シマシタ、是デモウ終リマスガ、最後
ニ諸君ニ御願ヒシマス私ハ此天皇機關說
ニ付テ反對論ハ聞キマスガ、ソレヲ排斥シ
テ積極的ニ趣旨ヲ說明シタサウ云フ說ヲ多
ク聞クコトハ出來マセヌカラ、殘念ニ思ッテ
居リマス、自分ハ先刻來申シタヤウナ考デ、
我國ノ國體ト云フモノノ本體ヲ明ニスルコ
トガ出來ルト信ジテ居リマスケレドモ、私
ハ國史ノ素養ニ乏シイノデアリマスカラ、
私ガ先刻申シタヤウナ說明ノ仕方デハ或ハ
不都合ガアルカモ分リマセヌガ自分ニハ
氣付キマセヌ、ソレダカラ、若シオ前ノ言
フヤウナコトデハ斯ウ云フ所ガ良クナイ
アア云フ所ガ良クナイト云フコトガ御氣付
キニナリマシタナラバ此壇上デ討論ヲ求
メル譯デアリマセヌガ、ドウカ御好意ヲ以
テ御注意ヲ願ヒタイ、ト云フノハ私ハ問題
ガコンナニヤカマシクナリマシタカラ、折〓
色ミナ所へ講演ヲ賴マレテ行ッタリシマス、
場合ニ依ルト、此日本ノ國體ノ本義トカ云
フヤウナコトニ付テ話シマスガ、今申上ゲ
タヤウナコトガ自分デハ良イ積リナンデス、
良イ積リナンデスケレドモ、若シ間違ッテ
居ッタナラバ、良イ積リナノニ却テ害ヲ招キ
マスカラ、ドウカ私ガ思フ所ヲ御聞キ下サッ
テ、サウシテオ前ノ言ッタコトデモ或部分
ハ良イガ、或部分ハイカヌト云フヤウナコ
トガアリマシタナラバ、ドウカ御叱正ヲ願
ヒタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006703242X01919350320&spkNum=73
-
074・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 三上參次君
〔三上參次君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006703242X01919350320&spkNum=74
-
075・三上參次
○三上參次君 今日ノ建議案ニ付キマシテ、
モウ旣ニ西〓侯爵ノ簡潔ナル御說明ガアリ、
又井田男爵ノ道强ナル御說明ガアリ、土方
博士ノ稍〓詳詳ナル御說明モアッタ譯デアリ
マスルガ、私ガ更ニ蛇足ヲ添ヘル必要ハナ
イト思ヒマスルケレドモ、私ノ立場トシテ
〓育ノ方面カラ、簡單ニ所見ヲ申シテ贊成
ノ意ヲ表シタイト思フノデアリマス、私ハ
元來今日ノ問題トナッテ居リマスル天皇機
關說ノ如キハ事ハ重大ナリト雖モ、明治
以來〓育ノ誤ッタル方針ガ斯ノ如キ現象ヲ
玆ニ一ツ現ハシタノデアッテ、明治以來ノ〓
育ノ自然ノ結果ノ一ツトシテ、我ミハ惱マ
サレナケレバナラヌモノト感ズル次第デア
リマス、明治以來五六十年ノ〓育ト云フモ
ノハ日本人トシテ折角學ブベキ所ノ事ヲ
バ多ク閑却イタシテ、甚ダ空虛ナ人間ニ成
長シテ居ルト私ハ思フノデアル、固ヨリ明治
ノ御一新ノ方針トシテ、世界ニ智識ヲ廣ク
求メルト云フコトハ、イツノ世ニナッテモ必
要ノコトデアリマシテ、今日ト雖モ今日
以後ト雖モ、必要ナルコトデアリマス併
ナガラ唯如何ニモソレガ爲ニ忙殺サレテ
肝腎ノ國民トシテ自分ノ國ノ事ヲ學ブベキ
コトヲ閑却シテ居ッタト云フコトハ時勢ノ
巳ムヲ得ザルコトトハ云ヒナガラ、甚ダ遺
憾ニ堪ヘナカッタ次第デアルノデアリマ
ス、其一ツノ結果トシテ今日ノ如キ問題ガ
現ハレサウシテ今日提出セラレマシタ所
ノ建議案ノ必要ト云フヤウナコトガ現ハレ
テ來タモノト思フノデアル此建議案ノ文
句ハ簡單デアリマスルケレドモ、意味ハ深長
デアッテ、論語ノ文句ノ如ク、如何ヤウニモ
意味深長ニ解釋ノ出來ルモノデアリマス、
併ナガラ私ガ〓育ノ上カラ一言申上ゲルト
云フコトハ是ガ誠ニ好イ機會デアルト思
フカラデアリマス、學校ノ〓育ニ於テ明治
五年ニ、御承知ノ通リニ初メテ學制ト云フ
モノヲ文部省ガ布カレマシテ、全國的ニ普
通〓育ヲ普ク及ボスト云フコトニナッタ、其
時ニ歷史ト云フ科目ガアリマシタガ、何ヲ
〓ヘタカト云ヘバ、日本ノ國民ニ最初カラ
西洋ノ歷史ヲ〓ヘタノデアッテ、自分ノ國ノ
歷史ハ、其後十年間バカリ、マルデ〓ヘナ
イノデアリマス、文部省ノ學校ニ於テハサ
ウデアル、私塾ニ於テハ〓ヘテ居リマシタ、
我ミガ中學校ヲ經マシテ第一高等學校ノ前
身、卽チ大學豫備門ニ這入リマシタ時ニ、
初メテ國史ト云フモノヲ、〓場ニ於テ一週
間ニ一時間課セラレタノデアリマス、而モ
ソレハ誰ノ建言ニ依ッタカト云ヘバ、獨逸語
ノ〓師ノ「グロート」ト云フ獨逸人ガ校長ニ
建言シテ、漸クソレガ行ハレタノデアル
我國固有ノ學問ガ如何ニ輕ンジラレテ居ッ
タカト云フコトガ、此一ツノ御話ニ依ッテ
モ大抵囘顧スルコトガ出來ルト思フノデア
リマス、其後段々歲ヲ經マシテ、〓育ノ方
針ト云フモノハ正シク返ッテ來マシタケレ
ドモ尙ホ其痕跡ノ殘ッテ居ルト云フコト
ハヽ今日ノ有ラユル高等學校ニ於テ歷史ヲ
〓ヘテ居リマス時間ト云フモノハ三年ヲ
通ジテ十時間デアル、然ルニ其中デ國史ハ
幾ラ〓ヘテ居リマスカト云フト外國ノ歷
史ヲ十〓ヘル中デ國史ト云フモノハ僅ニ二
ナノデス、海軍ノ比率ノ五、五、三ヨリハ
餘程分量ガ少イ、斯ノ如キ······今日ニ於テ
モサウ云フ比率ノ少イ時間デ國民精神ヲ養
フト云フヤウナ〓育ヲシテ居ッテ、身體ガ空
虛デアレバ、外カラ色ミノ外來ノ惡空氣ガ
入ッテ來ルト云フコトハ當然ノコトデハア
リマセヌカ、文部大臣ハ此點ヲドウ云フ風
ニ御考ヘニナッテ居リマセウカ、私ハ數年前
サウ云フコトヲ文部大臣ニ建議シタコトガ
アリマスケレドモ一向文部大臣ハマダ御
考ヘニナラヌ、依然トシテ十時間ノ中デ僅
ニ二時間、五、一ト云フ比率デ外國歷史ト
日本歷史ヲヤッテ居ル、以テ他ヲ類推スルニ
足ルト思フノデアリマス、ソコデ外國ノ知
識ガ澤山入ッテ參リマスルガ、其外國ノ知識
ニ於テモ、法律萬能ト云フコトヲ私ハ絕叫
シタイノデアリマス、是ハ政府者ニ於テモ法
律ノ學科ヲ學バレタ人ガ多イノデアリマシ
テ、甚ダ憚多イコトデアリマスケレドモ、
此議場ニ於テモ法律ヲ御學ビニナッタ方ガ
蓋シ大多數デアラウト思フ、世ノ中ヲ擧ゲ
テ法律萬能デアル、其法律タルヤ、固ヨリ
國家經營ノ上ニ大ナル事柄デアリマスルケ
レドモ、初ハ我國ヲ條約改正ト云フコトヲ
セシメムガ爲ニ、强ヒテ自分ノ足ヲ削ッテ
外國ノ靴ニ合セルト云フ法律ガ本ニナッテ
居ルノデアリマス、玆ニ於テ民法ト云フ精
細ナルモノガ出來マシタケレドモ、其中ニ
規定シテアルコトハ、我國三千年來ノ善風良
俗ニ合ハナイコトガ澤山アルノデアリマス、
日本人ハドウデモ宜イ、外國人ノ都合サヘ
好クテ條約改正ニ一步ヲ進メルコトガ出
來レバ能事足レリト云フコトデ出來タ法律
デアル其後追〓改善ヲセラレマスルヤウデ
アリマスルケレドモ、是ハ甚ダ言フヲ憚ル
コトデアリマスケレドモ、其法律改正委員ノ
中ニ、我國ノ古來ノ善政美風ヲ〓究シテ居
ル人ハ餘リ多クナイヤウニ、殘念ナガラ見
受ケルノデアリマス、加之、諸法律ト云フ
モノガ雨後ノ筍ノ如ク續々ト出ルノデアリ
マス貴衆兩院ノ贊襄ヲ得テ出來ル法律ト
云フモノハ一年ノ中ニドノ位アルカ分リ
マセヌ、從テ、ソレヲ扱フ人ト云フモノハ
法律ヲ學ンダ人デナクテハナラナイ、行政
官ト云フモノハ法律ヲ學ンデ高等文官試
驗ヲ經タ人デナケレバナラヌ、斯ウ云フ〓
育ヲ多年受ケテ居ッタ國民ノ間カラシテ、
天皇機關說ト云フヤウナ問題ノ出來テ來ル
コトト云フモノハ、是ハ當然ノコトデアル、
之ヲ我ミ國民精神ノ上カラ批判シテ、甚ダ
困ッタコトデアルト云フコトヲ論ズルノハ
當然ノコトデアリ、之ニ對シテ院ノ內外ヲ
問ハズ攻擊スル者ノ多イノハ誠ニ結構デア
リマスルガ、私カラ見マスト、ソレハ玆ニ一
ツノ病氣ガ現ハレテ、ソレニ對シテ對症療
法ヲ頻ニ講ジテ居ルノデアッテ、私ハモウ一
步廣ク進ンデ、總テノ病源ガ何處ニ在ルカ
ト云フコトヲ內閣諸公ニ於テ御考ヘヲ願ヒ
タイト思フノデアリマス例ヘバ帝國憲法
ノ如キ貴重ナル法典ト雖モ、之ヲ解釋スル
ニ必シモ「メートル」法ヲ用ヰナケレバナラ
ヌト云フコトハナイ、尺貫法デ十分ニ解釋
ガ出來ルノデアル然ラバ其萬病ノ根本療
法ハ何デアルカト云ヘバ卽チ明治以來缺
陷デアッタ所ノ、日本人タル精神ヲ涵養スベ
キ所ノ學校ヲモウ少シ增加シテ、日本人ヲ
作ルト云フコトガ一番大事ナコトデアル、
外ニ色ミアリマセウケレドモ、是ガ一番大事
ナコトデアル、卽チ私カラ申セバ甚ダ我田
引水ノ嫌ハアリマスルケレドモ、國史ヲ中
心トシ國語、漢文及ビ之ニ因緣ノ深イ所
ノ修身道德ト云フモノヲ〓科ノ根本中心ト
シテ日本人ヲ養成スルト云フコトヨリ外
ニ千言萬語ヲ費スト雖モ方法ハアリハシ
ナイト思フ故ニ先ヅ多クノ學校ノ入學試
驗ニ是等ノ學科ニ重キヲ置イテ之ヲ課スル
ト云フコトガ當然ノコトデアル文官高
等試驗ニハ國史ヲ必須科目ニ入レルト云フ
コトガ必要ナルコトデアル、是ハ此前ニモ
申シタコトデアリマスルガ、漸ク文官高等
試驗ニ近頃選擇科目トシテ國史ヲ入レラレ
タコトデアルケレドモ選擇科目デアルガ
爲ニ、年々其試驗ヲ受ケルト云フ者ハ極メ
テ晨星寥々タルモノデアル、大多數ハ他ノ
選擇科目ノ方へ參ルノダサウデアリマス
前內閣ノ時ニ、司法大臣ノ小山君ハ閣內ニ
於テ高等文官試驗ニ國史ヲ必須科目トシテ
入レルト云フコトニ御盡力デアルト云フコ
トヲ聞イテ居リマシタガ、此內閣ニ於テ果
シテ其御計畫ヲドナタカ御繼承ナサッテ御
主張ナサッテ居リマスカ、ドウデアリマス
カ、若シナケレバ必ズ、私ハ其事ハ愼重考
慮ト云フヤウナコトヲ仰ッシヤラズニ、早ク
速ニ御實行ニナルコトヲ希望イタシタイノ
デアリマス、私ハ此天皇機關說ニ付テ斯ウ
云フヤウニ感ジタノデアリマス、是ハ我ミ
ハ日本人トシテ多少ノ〓育ヲ受ケテ居ル場
合ニハ實ニ其天皇ノ神聖ニシテ侵スベカ
ラズ、我國ハ萬世一系ノ天皇之ヲ統治シ給
フ、其天皇ハ至高至尊ノ御方デアラセラレ
テ、同時ニ國家ノ父デ居ラッシヤル、君デア
ルト同時ニ父デ居ラッシヤル、サウシテ君民
一體トシテ此日本國ハ出來テ居ルノダト
云フコトデ、極メテ常識デソレ以上ノ知識
ハ要ラヌト思ッテ居ッタノデアリマス、若
夫ソレ以上ノコトヲ必要トスルナラ
バ、然ラバ人間ト云フモノハドウ云フ
モノデアルカ、我ミハ人間ハ萬物ノ靈
長デアルト云フコトヲ自ラ任ジテ居レバ宜
シイノデ、之ヲ解剖學上ニ細胞組織デドウ
ナッテ居ルモノデアルトカ云フヤウナコト
ハソレハ御醫者サンカ解剖學者ニ委セテ
置ケバ宜シイコトデアル、水ヤ空氣ハ如何
ニ人間ノ生活ニ必要ナモノデアルカト云フ
コトハ、人間トシテハソレダケ知ッテ居レバ
宜シイ、空氣ハ水素ト窒素デスカ水ハ酸
素ト水素ト云フヤウナコト空氣ノ成分
ハ間違ヒマシタ、酸素ト窒素デアリマシタ
カサウ云フヤウナコトヲ而モ分量マデ〓
究シテ知ッテ居ルベキコトハ、是ハ理學者、
化學者ノ知ッテ居ッテ宜シイコトデ、我〓世
ノ中ヲ渡ル所ノ人間ト云フモノハサウ云
フコトハ唯サウ云フ說ガアルト云フコトヲ
知ッテ居レバ宜シイノデアル、人間トハ如何
ナルモノゾヤト云フ定義ハ是ハ學者ノ〓
究自身ニ委シテ置イテ宜シイコトデアル
天皇機關說ト云フヤウナコトハ我とカラ
見ルト極メテ常識的ニ考ヘテ見マスト云
フト、サウ云フ問題ニ過ギナイト云フヤウ
ニ思ッテ居ルケレドモ、是ガ大キナ問題ニ
ナッテ、世間ノ耳ニ響クト云フコトニナルト
云フト、其儘ニハ置カレナイト云フ問題ニ
ナッテ來ル、ソコデ又一ツ考ヘマスルノニ
數年來我國ニ於テハ、共產主義ヲ唱ヘ、之ニ
類似シタ所ノ不逞ノ說ヲ唱ヘル者ガ、御承
知ノ通リ實ニ多キヲ數ヘルコトニナッタノ
デアリマスルガ、ソレガ段々調査セラレマ
スルト云フト、多數ハ國史ノ知識ノ缺乏ニ
基クト云フコトヲ聞イテ居ルノデアリマ
ス、是ハ誠ニ鑑ミルベキコトデアリマシ
テ、天皇機關說ト云フモノヲサウ云フ共產
主義說ト一〓ニ見ルト云フコトハ私ハ斷
ジテ避ケタイ、サウ云フ說ヲ唱ヘル人ニ付
テ誠ニ御氣ノ毒ニ思ヒマスルケレドモ、國
史ニ基ク所ノ我國ノ知識ガ足リナイカラシ
テサウ云フ說ヲ唱ヘルヤウニナッタト云フ
點ニ至ッテハ蓋シ一ナノデアル、同ジデア
ラウト思フ、成ルベク早ク、成ルベク速ニ
斯ウ云フ面倒ナ問題ト云フモノハ〓育界カ
ラ早ク一掃シテ戴キタイノデアリマス學
問界カラハサウ容易ク一掃スルコトハ恐ラ
ク出來マスマイ、人ノ心ノ中ト云フモノ
ハ如何ニ政府ノ力ト雖モ之ヲ何トモス
ルコトハ出來マスマイケレドモ、之ヲ外ニ
現ハシテ累ヲ他人ニ及ボスト云フコトニナ
リマスルト云フト、政府タルモノハ相當ノ權
力ヲ用ヒテ當然ノコトデアラウト思フノデ
アリマス、先刻井田男爵ノ御話ニ、白河樂翁
公ガ寛政ノ異學ヲ禁ゼラレタト仰シヤッタ
コトハ、誠ニ適切ナ我〓祖先ノ取ッタ所ノ好
イ例デアル、樂翁公ノ考ニ、學問ハ何ノ爲
ニスルノデアルカ、學問ハ立志、修身、治
國、平天下、此大事ナコトノ方便トシテ學
ブ所ノモノデアル然ルニ彼ノ頃ノ學者ト
云フモノハ實ニ澤山異說ヲ唱ヘテ、爭ッテ
自說ヲ世間ニ廣メヤウトシテ、サウシテ其
結果人情ヲ害シ、風俗ヲ紊スト云フヤウ
ナコトニナッタ、故ニ樂翁公ハ、學問ヲ
スル所ノ主旨ニ反スルノデアル故ニ、サウ
云フ者ハ政治家トシテハ取締ラナケレバ
ナラヌ、ケレドモ流石ニ樂翁公ハ大政治家
ダケアリマシテ、學問ノ多クノ說ノ中カラ
シテ、幕府ノ卽チ聖堂ノ正シイ學問トシテ
取上ゲタル所ノ學問ハ、朱子ノ學問デア
ル、其外ノ學問ハ勝手ニスルノハ決シテ幕
府カラハ干渉ハシナイガ、幕府デハ認メナ
イト云フ扱ヒヲサレタノデアル、故ニ聖堂
ニハ一人トシテ異學者ハ登用セラレナイ
諸藩ノ學校ニハ間〓折衷學トカ、朱子學以外
ノ古學トカ云フモノヲ用ヰテ居ルモノモア
リマシタ、又悧巧ナ幕府ノ學者ノ中ニハ
朝ニハ聖堂ニ出デテ朱子學ヲ講ズルケレド
モ、タニハ宅ヘ歸ッテ王陽明ヲ其弟子ニ授ケ
ルト云フヤウナ人モアッタノデス、併ナガラ
幕府ハ朱子學ト云フモノハ正當ナ學問デア
ルト標準ヲ定メマシタカラシテ、廣ク諸藩
ノ學校モ自ラ幕府ノ爲ス所ニ做ッテ、是カラ
朱子學ト云フモノガ大イニ天下ニ重キヲ爲
スヤウニナッタノデアリマス、是等ノモノハ
今日ノ建議案ヲ政府ニ於テ實行ナサルニ付
テハ多少ノ御參考ニナルノデハナカラウ
カト思フノデアリマスソレカラモウ一ツ
附加ヘテ、政府ノ之ヲ御實行ナサルニ付テ、
私ハモウ今日ノ建議案ノ趣意ト云フモノ
ハ說明ヲ要シナイ程自明ノ理ヲ含ンデ居
ル、明カナルモノデアリマスルカラ、唯老
婆心デアリマスケレドモ、內閣ガ之ヲ實行
ナサルニ付テ、幾分カ御參考ニナルコト
ヲ申シタイト思フ今申シタコトモ其一ツ
デアリマシタガ、更ニ一ツ申シマスルト
此コハ餘程悧巧ニ爲サラヌトイカヌノデア
ラウト思ヒマス、議院外ノ說ニ依リマスト
云フト、天皇機關說ヲ唱ヘル人ヲバ、或八
議員ノ地位ヲ奪ヘトカ、高等文官試驗ノ地
位ヲ奪ヘト云フヤウナコトヲ言ッテ居ル、或
ハ自決セヨト云フヤウナコトモ言ッテ居ル
高等文官試驗ノ地位ヲ、其說ヲ唱ヘル人ニ
ヤルヤラヌト云フコトハ恐ラクハ內
トシテハ格別ムツカシイ問題デハナカラウ
ト思フ、併ナガラ虎ヲ野ニ放ツト云フ諺ガ
アル、檻へ入レテ置キマスレバ、相當ニ制
禦ガ出來ルノデスケレドモ、下手ニ野ニ放
ツトドウ云フ害ヲスルカ分ラヌノデアリ
やく、先年來文部省ニ於テ、官立大學ノ〓
授及ビ直轄學校ノ〓授ノ赤イ先生ヲバ御處
分ナサッタコトガアル直接ニ御處分ナスッ
タリ、或ハ說諭シテ罷メサセラレタ人モア
ル、併ナガラ我ミハサウ云フ人ノ說ヲ、學
校ノ講壇ニ於テ演說ヲシテ居ルト云フコト
ヲ聞キマシタ時ニ、何ノ某ハ赤イサウデア
ル誰某ハ大分桃色ダサウデアルト云フコ
トヲ聞クニ止マッタノデアリマスケレドモ、
文部省ガ之ヲ野ニ放タレタガ爲ニ、ソレ等
ノ人ハ自由ヲ得マシテ、雜誌ニ講壇ニ其說
ヲ吐キマシタカラシテ、私共モ御蔭デサウ
云フ說ヲ拜聽スルコトガ出來タヤウナコト
モアル、是等ノコトハ政治ヲスル人ガ餘
程旨ク御考ヘニナリマセヌト、取締ラムト
欲シテ却テ其結果ハ反對ニナルト云フコト
ニモナリ得ルノデアリマス、私ハ學問ノ自
由ト云フコトハ大イニ尊重シテ貰ヒタイノ
デアリマス、又學說ノ自由ト云フコトモ
我ミノ立場カラ切望スル次第デアリマス
併ナガラ如何ニ學問ニ國境ナシト云ッテモ、
ソレハ主トシテ「サイエンス」ニ關スルコト
デアル理化學ニ關スル學問ノ方ニハ如何
ニモ國境ハナイノデアル併シ人文科學ノ
或ルモノニ至ッテハ國家アッテ初メテ其國
ノ人文科學デアリ得ル場合ガアルノデア
ル、況ヤ天下ニ我國ノ如ク特別ナル國體ヲ
持ッテ居ル所ノ國ニ於テハ、其特別ナル國體
ノ妨ゲヲ爲スヤウナ人文科學ト云フモノ
ハ相當ノ程度ニ於テ取締ラルベキノガ
必要デアラウト私ハ信ズル者デアル、私ハ
一個ノ學者ノ端ニ居ル者デアリマス
學問ノ自由ト云フモノハ何處マデモ絕
叫イタシタイ、ケレドモ我國ニ於テハ其
ノ自由ト云フモノハ、或ル點ニ於テ束縛
セラルベキモノデアルト云フコトヲ私ハ
自信イタシテ居ル、斯ク論ジ來リマスルト、
明治天皇ガ明治十九年ニ大學へ行幸セラ
レテ諸種ノ學科ヲ御覽ニナリマシテ、歸ッ
テ岩倉右大臣ト元田侍講ニ御感想ヲ御漏ラ
シナサレタコトガアリマス、今日大學ヘ行ッ
テ、法律、政治、醫學、理學色ミノ學科ハ
非常ニ進步ヲシテ居ルノヲ見テ、大イニ喜
ンダ、ケレドモ東洋道德ノ學科ヲ〓ヘル所
ヲ見セテ呉レナカッタ、古典講習科ト云フモ
ノヲ置カレタサウデアルガ、ソレハ今日見
セテ吳レナカッタ、法學、醫學、政治學、是
等ノ諸學ノ進步ト云フコトハ大イニ喜ブベ
キコトデアルケレドモ、是等ノ學問ニ達シ
タト云フダケデ、國家ノ政治ハ爲シ得ベキ
モノデハナイ、東洋古來ノ道德ヲ學ンダ人
デナケレバ、今日內閣ヲ組織シタ人ハ王政
復古ニ功ガ有ッタ人ガ爲ッテ居ルノデアッテ、
是等ノ人ハ何時迄モ永續スルモノデナイ、
之ニ代ルベキ人ハ必ズサウ云フ必要ナ道德
ニ關スル學問ヲシタ人デナケレバナラヌト
仰セラレテ居リマスコトガ、ヒシ〓〓ト私
ハ身ニ感ゼラレルノデアリマス、其東洋道
德我國古來ノ道德ハ何デアルカト云ヘ
バ、今申シタ如ク修身學、修身學ト云フモ
ノハ國史、國語、漢文ヲ基トシタ所ノ修身
學デアルト解釋ヲ致スヨリ外、致シ方ガナ
イト思フノデアリマス、斯ウ云フ見地ニ於
キマシテ、私ハ今日ノ政治界、〓育界ト云
フモノニハ反省シ改良スベキ所ガ多々ア
ルト思フノデアリマスルカラシテ、今日ノ
建議案ノ出タニ付テ、此方面カラ衷心ノ贊
成ヲ致ス者デアリマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006703242X01919350320&spkNum=75
-
076・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 二荒伯爵
〔伯爵二荒芳德君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006703242X01919350320&spkNum=76
-
077・二荒芳徳
○伯爵二荒芳德君 旣ニ幾多ノ議員諸君カ
ラ本建議案ニ付キマシテ縷々贊意ヲ表セ
ラレマシタノデゴザイマスカラ、私ハ最早
立ツ必要ガナイカモ知レヌト存ジマスガ、
唯豫テカラ私ノ抱懷シテ居リマス國體ノ信
念カラ致シマシテ、特ニ政府ニ最モ强イ反
省ヲ促シマシテ、然ル後ニ本建議案ニ對シ
テ、贊意ヲ表セムトスル者デアリマス、最
近我國ノ思想ハ、數十年ノ歐米心醉ノ傾向
カラ一轉イタシマシテ、深ク國體ノ眞面目
ナル探究トナッテ參ッタノデアリシテ、其熾
烈ナル國家意識ノ下ニ、民族的ノ矜持ト國
民歷史的ノ確信トニ依リ、日本人本來自然
ノ心ト云フモノヲ摑マヘテ參ッタノデアリ
やく、此結果ト致シマシテ、曾テハ世間ノ
思想トシテ一家ノ風ヲ成シテ居ッタモノニ
モ、本然ノ心ノ叫ビカラ强イ批判ノ言葉ヲ
以テ迎ヘラルルニ至ッタノデアリマシテ、
斯ノ如キコトハ國民ノ思想ノ覺醒期ニ當リ
マシテハ、世界何レノ國ニ於テモ起ル現象デ
アルト私ハ考ヘル者デアリマス、熟〓現代ノミ
思潮ヲ通觀イタシマスレバ一方ニ國家各、
ガ持ッテ居リマス特性ニ基ク特異性ノ存在
ニ目ヲ蔽ヒマシテ、肇國悠久ノ昔カラ前後
ナク存在スル所ノ我ガ日本ノ魂、皇國精神ノ
發露タル國ノ基ノ法ノ嚴存スルト云フコト
ヲ無視シ、神祇、天皇一體ヲ成シ、天皇、
臣民一心ヲ以テ結ブ、萬邦無比ナル我ガ國體
ヲ十分知悉シナイ思想モアルノデアリマス、
又他方此日本精神ノ有スル同化ノ力、創造
ノ力、古語ヲ以チマシテ產靈ノ力ト呼バレ
ル雄渾濶達ナル力ヲ認メマシテ、世界ノ思
潮ノ進取向上ニ貢獻スベキ我國獨自ノ文化
的大使命、之ヲ自覺シナイデ、徒ニ偏狹固
陋ノ說ヲ執ッテ、我ガ國體ノ眞義ヲ解シ得タ
リトナス思想家モアルノデアリマス、目今
世ニ行ハルル所ノ詭矯、矯激ノ思想ト退嬰
墨守ノ氣風ト云フモノハ二者孰レモ肇國
ノ大理想ニ民心ガ徹シテ居ナイカラ起ル現
象デアリマシテ、之ヲ過去、我國數千年來
ノ國史ニ徵シテ見マスノニ、國力ノ消長ハ、
此國家的自覺ノ心ノ消長ト正比例シテ居ル
ノデアリマシテ時局ノ艱難頗ル重大ナル
今日ニ於キマシテ特ニ深イ憂ヲ持ツ者デ
アリマス、而シテ斯ノ如ク思想ノ根柢ノ深
クナイ結果ト致シマシテ、將又民族的ノ理
想、信仰ノ探究不十分ナル結果ト致シマシ
テハ現代ノ靑年ガ實ニ俊敏聰明ノ偉材ヲ
持ッテ、日本國民タルノ誇ヲ打捨テマシテ、
或ハ外來思想ノ走狗トナリ、或ハ今日帝國
ノ重大ナル發展途上ニアルコトヲ忘レマシ
テ、自堕落、敗頽ノ生活ニ、自ラノ貴重ナ
ル生命ヲ欺瞞シテ居ルト云フヤウナ情況ガ
滔々ト見ラレルノデアリマス、思想的ニ迷
ヘル者、道義的ニ敗頽セル者、是亦我ガ日本
精神ノ深イ信仰ヲ持タナイ所カラ來タルモ
ノデアルト考ヘラレルノデアリマス、誠
國家ノ損失、國民ノ不幸、是ヨリ大ナルモ
ノハナイノデアリマス、例ヲ外國ニ取ルノ
モ如何カト存ジマスケレドモ、歐洲ニ於ケ
ル新興ノ國家、又ハ更生ヲ畫シテ居ル諸邦
ニ於キマシテハ、或ハ共產主義ニ蝕マレテ、
國民思想ノ動搖ヲ來シタノヲ看取シタ政治
家ハ玆ニ所謂新シキ國家思想ヲ張揚セム
爲ニ、實ニ果斷ナル且又明快ナル政策ヲ國
民ノ前ニ提示シテ居ルノデアリマス、或ハ
又永ラク異民族ノ爲ニ、其固有ノ國民思想
ガ歪曲サレマシタ國家ニ於キマシテモ、同
ジク政府ハ全力ヲ盡シテ民族ノ理想、信仰
ヲ張揚イタシテ居ルノデアリマス、是ハ
ㄱヨーロツパ」ノ古イ國ニ於テ例ヲ見ルト同
時ニ、世界大戰後ニ興リマシタ所ノ新國家ニ
モ見ラレルノデアリマス、又近クハ東洋ニ
於ケル國ミニ於テモ、暫ク目ヲツブッテ考
ヘレバ皆其努力ヲ致シテ居ル有樣デアリ
やく、我ガ帝國ハ國體ノ優秀デアルガ故
二、餘リニ明白ナル此國體ニ賴リ過ギテ、
其深イ精神的ノ根據ヲ十分ニ國民ニ示サナ
カッタト云フ所ニ、思想動搖ガアルト云フコ
トハ、我ミ否ムコトガ出來ヌト思フノデア
リマス、而シテ此國民的理想ノ確立、國民
的新生命ノ發揚ト云フコトニ付キマシテ
ハ啻ニ政府ガ其眞面目ナル全力ヲ傾倒シ
テ居ルバカリデナク、達識ナル學者、思想
家ハ手ヲ携ヘテ烈々タル忠愛ノ信念ヲ以テ
國民ニ呼ビカケテ居ルコトハ實ニ外國ナ
ガラ又或程度ノ欽羨、羨シサニ堪ヘヌ所モ
アルノデアリマス今日政府ハ能ク時代ノ
潮流ノ奈邊ニ流レツツアルカト云フコトヲ
達觀シ、現代ノ日本ハ、ソモ何ヲ要求シテ
居ルカ、現代ノ國民ハ何ヲ考ヘテ居ルカ
外國ノ環境ノ眼ハ今日ノ日本ノ態度ニ對
シテ如何ナル批判ヲ加ヘテ居ルカ、斯ノ如
キ諸點ヲ考へ來リマスレバ日本精神ノ把
握ヲ以テ初メテ外國思想ヲ玆ニ釀化シ、日
本精神ニ依ッテ消化シ得ルコトガ出來ルト
考ヘラレルノデアリマス、建議案ノ意味ハ
頗ル深長デアリマシテ、時弊ノ革新、庶政
ノ更張、時艱ノ匡救、國運ノ進展、誠ニ含
ム所重要ナモノバカリデアリマシテ、此意
義ニ於キマシテ、政府ハドウゾ〓心坦懷ニ、
本案ノ精神ヲ考ヘラレ、聰明ト果斷、之二
加フルニ確乎不拔ノ國家的、國體的信仰ノ
上ニ、此建議案ノ精神ヲ十分徹底シテ、再
ビ今日ノ如キ諸說ノ紛糾ナカラムコトニ努
力セラレムコトヲ、衷心カラ祈ッテ已マナ
イ次第デアリマス、此意味ヲ以チマシテ、
私ハ本建議案ニ贊成ノ意ヲ表スル者デアリ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006703242X01919350320&spkNum=77
-
078・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 是ニテ討論ハ終
リマシタ、總理大臣ヨリ發言ノ要求ガゴザ
イマス、內閣總理大臣
〔國務大臣岡田啓介君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006703242X01919350320&spkNum=78
-
079・岡田啓介
○國務大臣(岡田啓介君) 此際一言政府ノ
所信ヲ明白ニ致シテ置キタイト存ジマス
本建議案ハ誠ニ御尤ナコトト考ヘマスルノ
デ、政府ハ十分ニ之ヲ尊重シマシテ、其趣
旨ニ副フヤウ力ヲ致ス積リデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006703242X01919350320&spkNum=79
-
080・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 是ヨリ採決ヲ致
シマス本建議案ニ贊成ノ諸君ノ起立ヲ請
ヒマス
〔總員起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006703242X01919350320&spkNum=80
-
081・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 全會一致ト認メ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006703242X01919350320&spkNum=81
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082・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 報〓ヲ致サセマ
ス
〔瀨古書記官朗讀〕
本日委員長ヨリ左ノ報告書ヲ提出セリ
日本銀行納付金法中改正法律案可決報〓
書
臨時利得稅法案修正報〓書発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006703242X01919350320&spkNum=82
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083・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 本日ノ日程ハ是
ニテ終了イタシマシタ、次會ノ日程ハ決定
次第、彙報ヲ以テ御通知ニ及ビマス、是ニ
テ散會イタシマス
午後四時一分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006703242X01919350320&spkNum=83
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