第67回帝国議会　衆議院　昭和十年度一般会計歳出の財源に充つる為公債発行に関する法律案外一件委員会　第6号　昭和10年2月7日

1. 会議録本文

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• 000・会議録情報

  付託議案
  　昭和十年度一般會計歳出の財源に充つる爲公債發行に關する法律案（政府提出）
  　昭和七年法律第一號中改正法律案（滿洲事件に關する經費支辨の爲公債發行に關する件）（政府提出）
  　臨時利得税法案（政府提出）
  　日本銀行納付金法中改正法律案（政府提出）
  　國際文化事業に關する經費支辨に關する法律案（政府提出）
  　造幣局の廳舍、工場其の他の用に供する建物及其の附屬設備の新營費に關する法律案（政府提出）
  　東京高等農林學校及函館高等水産學校の創設に伴ふ帝國大學特別會計及學校及圖書館特別會計の關渉に關する法律案（政府提出）
  　日本銀行金買入法中改正法律案（政府提出）
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  　　　會議
  昭和十年二月七日（木曜日）午前十時四十分開議
  　出席委員左の如し
  　　委員長　岡田忠彦君
  　　　理事　松村光三君　理事　岡田喜久治君
  　　　理事　中村繼男君
  　　　　　　廣瀬爲久君　山田又司君
  　　　　　　小笠原三九郎君　大口喜六君
  　　　　　　太田正孝君　上田孝吉君
  　　　　　　玉置吉之亟君　大山斐瑳麿君
  　　　　　　森田福市君　金光庸夫君
  　　　　　　後藤亮一君　前田房之助君
  　　　　　　小川郷太郎君　矢野庄太郎君
  　　　　　　中島彌團次君　栗原彦三郎君
  　　　　　　亀井貫一郎君
  　出席國務大臣左の如し
  　　　　　　　　大藏大臣　高橋是清君
  　　　　　　　　陸軍大臣　林銑十郎君
  　出席政府委員左の如し
  　　　　　對滿事務局次長　川越丈雄君
  　　　　　　大藏政務次官　男爵　矢吹省三君
  　　　　　　　大藏參與官　豐田收君
  　　　　　大藏省主計局長　賀屋興宣君
  　　　　　大藏省主税局長　石渡莊太郎君
  　　　　　大藏省理財局長　青木一男君
  　　　　　　　大藏書記官　大矢半次郎君
  　　　　　陸軍一等主計正　大城戸仁輔君
  本日の會議に上りたる議案左の如し
  　昭和十年度一般會計歳出の財源に充つる爲公債發行に關する法律案（政府提出）
  　昭和七年法律第一號中改正法律案（滿洲事件に關する經費支辨の爲公債發行に關する件）（政府提出）
  　臨時利得税法案（政府提出）
  　日本銀行納付金法中改正法律案（政府提出）

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• 001・岡田忠彦

  ○岡田委員長　是ヨリ開會致シマス

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• 002・小笠原三九郎

  ○小笠原委員　私ハ滿洲ニ對スル、及滿洲
  ニ於ケル經濟關係ニ付キマシテ、最近滿洲
  事件費ガ三千萬圓近クモ昨年ニ比シマシテ
  殖エ、竝ニ日滿經濟會議ガ近ク開始サレル
  ト云フ事柄、竝ニ今年ノ一月八日ニ高橋大
  藏大臣ガ、所謂初閣議ニ於テ重大ナル御提
  言ニナッテ居ル、斯ウ云フ關係カラ、對滿事
  務局總裁デアラセラレル林陸軍大臣ニ御意
  見ヲ承リタイト思フノデアリマス、ソコデ
  第一ニ私ハ御伺申上ゲタイノハ、今年ノ一
  月八日ノ、アノ初閣議ニ於キマスル、高橋
  藏相ノ對滿投資ニ關スル御提言ニ付テヾア
  リマス、此御提言ハ、過日本會議ニ於キマ
  シテ、大藏大臣カラ詳細ナル御說明ガアリ
  マシテ、大藏大臣ノ意ノアル所ハ、私共深
  ク之ヲ諒承スルコトガ出來タノデアリマ
  ス、順序ト致シマシテ、私ハ少シク私ノ意
  見ヲ申述ベサセテ戴キマス、我ガ日本ガ恰
  モ貿易ノ入超期ニ際シテ居リマスシ、而モ
  本年度ハ北鐵ノ買收資金三千萬圓、竝ニ來
  年一月一日、滿鐵關係ノ英貨公債六百萬磅
  約一億二百萬圓控へテ居リマス、此儘放任
  シテ居リマスレバ、圓爲替ハ漸次低落シテ
  參リマス、延イテ我國ノ海外拂ガ增加スル、
  外債ノ元利拂等ガ激增スルト云フヤウナコ
  トデ、國庫ノ財政ハ赤字ノ過超ヲ來ス虞ガ
  アル、サウ云フコトニナルト、向後又多額
  ノ發行ヲ必要トスルダラウト思フ、赤字公
  債ノ消化ノ非常ニ困難ナ點モ憂慮セラレル
  ノデ、大藏大臣ガ圓爲替維持ノ方針カラ、
  斯ウ云フ御提言ヲ爲サッタコトハ、私共大
  藏大臣ノ立場トシテ、洵ニ御尤ニ存ズルノ
  デアリマスケレドモ、其大藏大臣ノ御話ノ
  中ニハ、爲替關係ノ外ニ可ナリ重大ナル意
  義ヲ含ンデ居ルヤウニ思ハレルノデアリマ
  ス、其御話ノ中ニ、經濟的見地カラ見ルト、
  滿洲國ヲ日本トシテハ別個ノモノトシテ取
  扱フト云フ點ガ一ツト、ソレカラ次ニ大藏
  大臣ハ、政府ノ支拂ナリ、又民間ノ投資ナ
  リヲ、出來ルダケ少クシテ貰ヒタイト云ッ
  タヤウナ、詰リ抑制ヲ希望シテ居ラレル點
  ガアルノデアリマス、是ハ餘程在來ノ考方
  ト違ヒマシテ、又私共ガ軍部ノ御意嚮トシ
  テ聽イテ居ル事柄ヤ、又日本ノ事業家ヤ、
  其他多數ノ人々ノ主張スル考方ト大變違ッ
  テ居ル、私共ハ日滿兩國ノ經濟ヲ打ッテ一
  丸トシテ、其處ニ强力ナル經濟「ブロック」
  ヲ完成スル、サウシテ此日本ノ非常時ヲ突
  破スル、サウ云フ狀態デスカラ、經濟的見
  地カラハ滿洲ヲ他國ト見ナイ、日本ト同一
  視スル、斯ウ云フコトデ軍事的、國防的要
  求ナリ、乃至ハ之ニ依ッテ世界經濟「ブロッ
  ク」下ニ對抗シテ行ク、斯ウ云フ風ニ考ヘ
  テ居ッタノデアリマス、ソレデアリマスカ
  ラ、滿洲ノ投資ノ如キモノモ、多ケレバ多
  イ程宜イ、所謂多々益〓辨ズト云。タヤウナ
  考方ヲシテ居ッタノデアリマシテ、今囘高
  橋藏相ガ御話ニナッタヤウニ、詰リ金融上、
  爲替上ノ見地カラ見ルト、是ハ臺灣、朝鮮
  ト同一視スル譯ニ行カヌ、全然別扱ヒニシ
  ナケレバ、而モ獨立國デアリマスカラ-
  私ノ言フノハ經濟上ノコトデアリマス、私
  共ガ考ヘテ見マスト、日本ノ對滿經濟ヲ建
  設スルコトハ、漸ク其道程ニ著イタバカリ
  デアッテ、將來必ズ相當額ノ資本投下ガ必要
  デアラウト思ハレルノデアリマス、ソコデ
  私ガ御伺致シタイノハ、林陸軍大臣ハ滿洲
  國ヲ高橋サンノ如クニ、經濟的ニ他國ト御
  覽ニナルカ、ソレトモ同一「ブロック」ノ經
  濟ノ組成分子ト見テ、其强化ヲ圖ラルヽコ
  トニナルカ、是ハ對滿國策ノ根本ニ關スル
  問題ト思ハレマスルノデ、先ヅ此點ヲ御伺
  申上ゲタイト思ヒマス

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• 003・林銑十郎

  ○林國務大臣　只今ノ滿洲ニ對スル經濟上
  ノ關係云々ト云フ點ニ付キマシテノ御意見
  ハ、大體私モ同樣ニ考ヘテ居リマス、將來
  滿洲ハ正ニ大ニ發展サセナケレバナラヌ、
  隨テ資力ハ相當ニ滿洲ニ入ッテ行カナケレ
  バ滿洲ノ發展ガ出來ナイ、此間高橋藏相ノ
  言ハレマシタコトハ、私共ハ主トシテ所謂
  爲替關係カラ見テ行クベキモノデアッテ、今
  申シタヤウナ對滿投資ヲ制限スル、極端ニ
  制限スルト云フヤウナ考ハナイノデアリマ
  え、詰リ放漫ナル投資ハ避ケナケレバナラ
  又、併シ堅實ナル投資ハ無論歡迎シナケレ
  バナラヌ、斯ウ云フヤウニ考ヘテ居リマス

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• 004・小笠原三九郎

  ○小笠原委員　今陸軍大臣ノ御話ノ如ク
  ニ、大藏大臣ノ意嚮ハサウデアリマスルガ、
  併シ滿洲事件費ノ如キモ、昨年ヨリ三千萬
  圓モ殖エテ居ル、斯ウ云フコトハ、御承知
  ノ如クニ滿洲ガ全然獨立國デモアリマスル
  シ、向フハ銀デヤッテ居リマスルシ、此方
  ハ金デアリマスルカラ、爲替問題カラ申シ
  マスルト、是ハ矢張圓爲替ヲ低落セシムル
  コトニナリマシテ、圓爲替低落ノ作用カラ、
  延イテ段々海外拂ガ殖エテ來ル、外債ニ對
  スル支拂ガ殖エテ來ル、サウ云フコトデ矢
  張日本ノ爲替ヲ惡化サセテ行ク、斯ウ云フ
  コトハ是ハ爭ヘナイ事實デアルト思ヒマ
  ス、ソコデ私ノ御伺致シタイノハ、滿洲事
  件費ト云フモノハ、將來ドウ云フ風ニナル
  ノデアリマスルカ、一番主ナモノガ陸軍
  關係デアリマスルカラ、先ヅ其點ガ承リタ
  イノデアリマス、丁度昭和十年度ノ滿洲事
  件費ハ、只今申上ゲマシタヤウニ、陸軍關
  係ノ分ダケガ約二千九百餘萬圓增額トナツ
  テ居リマス、所ガ是ハ屢〓今マデ繰返サレ
  マシタ通リニ、荒木前陸軍大臣ハ、昭和十
  年頃ニナルト、滿洲ハ大體平年化スル、平
  年化シテ來レバ、約七千萬圓モアレバモウ
  足リルノダ、斯ウ云フ御話ダッタノデアリ
  マス、是ハ屢〓此事ヲ議場デ公言ヲサレテ
  居ルノデアリマス、所ガ昭和十年度ハ、昨
  年ノ九年度ヨリモ增額シテ居ル、斯ウ云フ
  ヤウナ事實ヨリ致シマスルト、是ハ私ハ今
  日ノ情勢カラ見マシテ御尤ダト思ヒマス、
  金額ガ何モ多イト云フコトヲ毛頭申上ゲル
  ノデハゴザイマセヌ、御尤ダト思フノデア
  リマスガ、併シ將來ノ財政計畫トカ、或八
  日滿經濟ニ投掛ケル影響ト云フモノハ、非
  常ニ大キイノデアリマシテ、ソコデ陸軍關
  係デハ此費用ガドウナッテ行クカ詰リ何時
  頃平年化スルカ、平年化シタラ其費用ハ幾
  ラ位ニナルカ、斯ウ云フコトヲ伺ヒタイノ
  デアリマス

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• 005・林銑十郎

  ○林國務大臣　滿洲事件費ノ將來ニ付キマ
  シテハ、委員會ニ於テモ、本會議ニ於テモ〓
  略ノ說明ヲ致シマシタガ、詰リ此十年度ノ
  滿洲事件費ニ於テ增加シテ居ル主ナル原因
  ハ航空部隊ノ整備デアリマス、ソコデ其航
  空部隊ノ整備ハ、今ノ所デハ今後四箇年ヲ
  目差シテ計畫シテ居リマスガ、ソレガ四箇
  年ノ後ニナッテ、モウ航空部隊ノ整備ヲ止メ
  テモ宜イモノカ、斯ウ云フ問題ハ一寸見込
  ガ付カナイ、是ハ主トシテ所謂相對的關係
  ノモノデアリマスカラ、其頃ニナッテモウ
  大抵此程度デ宜イト云フコトニナレバ、航
  空ニ要スル費用ガ可ナリ減ルノデアル、又
  其外ニ滿洲事件費トシテハ、滿洲ニ於ケル
  部隊ノ移動トカ、或ハ討伐ダトカ、サウ云
  フコトニ費用ヲ消費シタリスルノガ、滿洲
  事件費ノ主ナルモノデアリマスガ、最早極
  メテ平穩デアル、平時狀態ト全ク變ラヌト
  云フコトニナルト、ソレハ又可ナリ減ルト
  思ヒマス、隨テ滿洲事件費ノ將來ハ、大體
  ニ於テ航空部隊ノ充實、ソレニ伴ウテ起ル
  所ノ費用ト云フヤウナモノガ、骨子ヲ成ス
  モノデアリマスカラ、非常ナ大ナル節減ト
  云フコトハ想像ガ出來ナイ、事件當時、卽
  チ二三年前ノ滿洲ノ狀態ヲ見テ居ッテモ、本
  年ハスッカリ滿洲ハ平穩ニナルデアラウト
  云フノデ、大體七千萬圓トカ、八千萬圓トカ
  云フ數字ガ出タンダラウト思ヒマスガ、今
  ノ所新ニ航空部隊ノ充實ト云フ問題ガ起ツ
  テ居リ、又滿洲四圍ノ情勢カラ云ッテモ、近
  ク兵備ヲウント減ラスコトガ出來ルト云フ
  ヤウナ見込ガ、今立チ兼ネルノデアリマス、
  隨テ滿洲事件費ハ、近キ將來ニ於テ甚シク
  減ジナイト云フ計畫ヲシテ行クコトガ、至
  當ダト思フノデアリマス

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• 006・小笠原三九郎

  ○小笠原委員　ソレ等ニ付キマシテ、次ニ
  色々滿洲ノ幣制等ニ付テ變ヘル必要ハ起ラ
  ヌカト云フコトヲ質問シタイトモ考ヘマス
  ルカラ、大藏大臣ノ速ナル御出席ヲ御願致
  シマス、今ノ露西亞-「ソヴイエト」竝
  ニ支那ニ於ケル航空部隊ノ情勢ニ見マスル
  ト.洵ニ御尤ト思フノデアリマスガ、サウ
  致シマスト、向フ五箇年間位ハ航空隊ノ充
  實等デ、大體今位ノ金額、陸軍關係デ一億
  六七千萬圓ノ金額ヲ必要トスル御考デアリ
  マセウカ、是ハ將來ノ事デアリマスノデ、
  大體ノ所デ宜シウゴザイマスガ

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• 007・林銑十郎

  ○林國務大臣　大體ノ豫算ヲ立テヽ居リマ
  ス所デハ、滿洲事件費ハ漸次減少スル傾向
  ヲ有ッテ居リマス、一億五六千萬圓ト云フコ
  トニナッテ居リマスガ、ソレガ漸次下ッテ行
  ク、一億內外マデハ下ッテ行クト云フ、大體
  ノ見込ハ立ッテ居リマス

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• 008・小笠原三九郎

  ○小笠原委員　ソレハ明年度邊リカラサウ
  云フ風ニナルノデアリマスルカ、或ハ今ノ
  五箇年ノ航空計畫ヲ終ッタ上デ、サウ云フ風
  ニナルト云フ御考デアリマスカ

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• 009・林銑十郎

  ○林國務大臣　五箇年計畫ガ終リマセヌデ
  千、一二年ノ後ニハモウ減少ノ傾向ガ現レ
  ルト云フ大體ノ計畫デアリマス、只今ノ所
  デハ是ガ一億以內ト云フ見込ハマダ立ッテ
  居リマセヌ

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• 010・小笠原三九郎

  ○小笠原委員　次ニ私ノ御尋シタイノハ、
  民間ノ對滿投資ニ關シテ、對滿事務局總裁
  トシテノ御考ヲ承リタイ、丁度戴キマシタ
  表ニ依リマスト、大藏省ノ調デハ、七、八、
  九年間ニ四億八千萬圓バカリ、主トシテ滿
  鐵關係デアルガ、滿洲ニ投資サレテ居ルノ
  デアリマス、所ガ私共滿洲建設經濟綱要ニ
  記サレタ、アヽ云ッタ方針デ滿洲ノ經營ガ爲
  シ得ラレルノデアルカ、先ヅ考ヘテ見マス
  ト、尙ホ將來相當彼地ニ投資ガ必要デアル
  ト考ヘルノデアリマス、所ガ事實上ニ於キ
  マシテ、彼地ニ資本ヲ誘導シテ行クト云ッ
  タ事柄ニ付テ、滿洲國ニ於テ、所謂皇軍ノ
  中心デ御考ニナル事柄ガ、餘程妨ゲニナッ
  テ居ルヤウデアル、資本家カラ見マスト、
  洵ニ不安ニ堪ヘヌ點ガ多々アリマスノデ、
  ソレ等ノ事柄ニ付テ少シク伺ッテ見タイト
  思フノデアリマス、滿洲建設經濟綱要ヲ見
  マスト、餘程國家社會主義的ナ統制經濟ガ
  强ク織込マレテ居ル、一面ニハ是ハ宜イコ
  トモアリマセウガ、隨分他方ニハ資本家ナ
  ドヲ萎縮セシメテ、ドレダケ滿洲ノ經濟界
  ノ發達ヲ妨ゲテ居ルカ分ラヌト思フノデア
  リマス、最近聞ク所ニ依リマスト、餘程軍
  當局デモ御考ガ變ッタヤウニモ聞イテ居リ
  マス、是ハ御承知ノ通リ滿洲ノ經濟界ハマ
  ダ幼稚デアリマシテ、謂ハヾ農業時代ト云
  フモノヲ脫シテ居ナイ未開地デアリマスカ
  ラ、サウ云フ處ニ餘リ進步的ナ經濟觀念ヲ
  以テ御臨ミニナッテモ、是ハ害コソアレ、益
  ハ殆ドナイヤウニ思フノデアリマス、マア
  經濟關係ト云フト、動モスレバ難シク考へ
  ラレルガ、俗ニ言ヘバ金儲ケガ基調トナッ
  テ居リマスカラ、先以テ儲ケサセルト云フ
  コトニナラナケレバ、其處ニ資本ガ行クモ
  ノデハナイ、事業ガ起ッテ開發出來ルモノデ
  ハナイ、サウ云フ事業ガ起リ開發ガ行ハレ
  タ上デ、國家ノ權力ニ於テ統制ヲヤラレル
  ト云フコトガ、順序デハナイカト考へルノ
  デアリマスガ、其考ノ下ニ一ツ御尋シタイ
  ノハ、滿洲國ノ經濟開發ニ付テハ、矢張經
  濟綱要ニ示サレタ統制經濟ノ下ニ進マレル
  御考デアルカ、ドウデアリマセウカト云フ
  コトガ第一問デアリマス

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• 011・林銑十郎

  ○林國務大臣　只今御心配ニナルヤウニ、
  將來滿洲ノ經濟ヲ一ツノ國家社會主義的ナ
  モノヲ採ルト云フヤウナ、サウ云フ極端ナ
  考ハ一ツモ有ッテ居リマセヌ、私滿洲國デ出
  來タ建設經濟綱要ナルモノヲ知リマセヌ
  ガ、只今吾々ノ考ヘテ居ル方針トシマシテ
  ハ、サウ云フ極端ナ國家社會主義ヲ採ルト
  カ、極端ナ統制主義ヲ採ルト云フ考ハ有ッ
  テ居リマセヌ

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• 012・小笠原三九郎

  ○小笠原委員　ドウシマシテモ滿洲ノ開發
  其他カラ見テ、資本ヲ誘導シテ行クト云フ
  コトガ、私共必要デアルト考へルノデアリ
  マス、所ガ滿洲自體ニ資本ガアリマセヌカ
  ラ、外國カラ資本ノ誘導ヲシナケレバナリ
  マセヌガ、今日ノ情勢カラ考ヘテ、外國ノ
  資本ト云ヘバ、我ガ日本以外ニハナイト思
  ヒマス、所ガ日本ノ資本ヲ誘導スルニハ、
  矢張其投資ガ非常ニ確實ノモノデナケレバ
  ナラヌ、假令確實ナモノデアッテモ、統制經
  濟ノ一ツ目標トサレルト云ッタヤウナ事デ
  アッテ見タリ、又ヒヨットスルト其上ニ國家
  ノ權力ガ及ンデ來ルト云フコトデアリマス
  ト、資本家ガ斯ウ云ッタ投資ヲ躊躇スルト思
  フノデアリマス、昨年丁度滿洲景氣トデモ
  申シマスカ、アヽ云ッタ時節ニハ、色々會社
  ナドガ出來タノデアリマス、其中ニハ隨分
  不良ナモノモアッテ、大藏大臣ガ過日御話ニ
  ナッタヤウナ事柄モアッテ、洵ニ面白クハゴ
  ザイマセヌガ、併シ滿洲ノ實情カラ見マス
  ルト、マダ續々資本ガ行クト云フコトガ、
  滿洲開發ノ爲ニ必要ノヤウニ考ヘラレルノ
  デアリマス、何カ此資本誘導ニ付テノ御考
  ガ御有リデアリマセウカ、其點ヲ御伺致シ
  タイト思ヒマス

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• 013・林銑十郎

  ○林國務大臣　滿洲ノ事業ト云フコトニ付
  キマシテハ、事業其モノニ對シテ若干ノ統
  制ヲスルト云フコトハ、是ハ當時滿洲ノ建
  國當時デアルト云フ考ト、ソレカラ國防ト
  云フ見地カラ、產業ノ或ルモノニ向ッテ統
  制ヲ加ヘルト云フコトハ、是ハ免レヌト思
  ヒマス、併シ其他ノ問題デ、投資ヲ鈍ラス
  ヤウナ非常ナ制限ヲ加へルト云フヤウナコ
  トハ、全然今考ヘテ居ラヌノデアリマス

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• 014・小笠原三九郎

  ○小笠原委員　是ハ國家ノ爲メ又公益ノ爲
  ニ、已ムヲ得ザル部門ニ付テ統制ヲ爲サイ
  マスコトハ當然ト考へマス、特ニ滿洲ノ現
  狀デハ當然ト考ヘマスガ、ドウモ少シク何
  時モ行過ギテ居リハセヌカ、少シ統制範圍
  ガ行過ギテ居リハセヌカ、サウ云フコトヲ
  皆心配シテ居リマス、又事實サウ云フ點ガ
  多分ニ見受ケラレマスノデ、是ハ今後對滿
  事務局總裁ト致シマシテ、又軍ノ配備上ニ
  於テ、向フヲ御指導ニナッテ居ルノデアリ
  マスカラ、餘程御注意下サランコトヲ御願
  申上ゲテ置キマス、ソレカラ次ニ御伺シタ
  イノハ、滿鐵改組等ノ問題ガ出ル每ニ、何
  時モ出ルノデアリマスガ、ドウモ配當制限
  ト云ッタヤウナ御考ガアリハセヌカ、軍需工
  業等ニ付テモ、昨日ハ此處デサウ云フ考ハ
  有ッテ居ラヌト云フ御話ガアリマシタガ、ド
  ウモ滿鐵ハ少シ儲ケ過ギル、其儲ケ過ギル
  モノハ、マア六朱位ノ程度マデ配當ハ下ゲ
  テモ宜イデハナイカト云フヤウナコトヲ、
  言ッテ居ラレル方モアルノデアリマス、所ガ
  私共考ヘマスルト、前申シマシタ通リ、滿洲
  ヘノ資本ヲ誘導スルニハ、利益ガアルト云
  フコトデナケレバ資本ノ誘導ハ難カシイノ
  デアリマシテ、假ニ滿鐵ノ配當制限ヲスル
  ト云フヤウナコトニナリマスト、近ク苦イ
  御經驗ヲナサイマシタ通リニ、社債ノ募集
  トカ、或ハ未拂込株金ノ徵收ト云フヤウナ
  モノガ、非常ニ困難ニナルノデアリマス、
  ドウシテモ主トシテ日本ノ資本ニ仰ガナケ
  レバナラヌ現狀ニ於キマシテハ、少々儲
  カルカラ配當制限デモシヨウト云ッタヤウ
  ナ考方ガ少シデモアリマスルト、是ハ甚ダ
  面白クナイ、寧ロ滿洲ノヤウナ草創ノ時代
  ニ於テハ、少シ餘計儲カル方ガ宜イノヂヤ
  ナイカ、サウ云フコトニ依ッテ先ヅ經濟界
  ヲ賑ハセテ、其上デ色々租稅其他ノ方法ニ
  依ッテ御取リニナル手段モアラウト思ヒマ
  スカラ、サウ云フ風ニ私共願ヒタイト思ッ
  テ居ルノデアリマスガ、是ハ如何ナ御考デ
  アリマセウカ、丁度水ガ低キニ流レルヤウ
  ニ、資本ハドウシテモ利益ノ高イ所へ集ル
  ノデアリマシテ、サウ云フコトデナケレバ、
  滿洲ノ經濟開發ハ餘程困難ダト考ヘテ居ル
  ノデアリマスガ、御所見ノ程ヲ伺ヒタウゴ
  ザイマス

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• 015・林銑十郎

  ○林國務大臣　昨日モ軍需工業ノ會社ノ問
  題デ申シマシタガ、只今ノ所滿鐵ニ向ッテ
  配當ノ制限ヲスルナドト云フコトハ、全然
  考ヘテ居リマセヌ

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• 016・小笠原三九郎

  ○小笠原委員　サウ云フ只今御考ヲ御持チ
  デナイト云フコトデアリマスガ、將來モサ
  ウ云フコトデ御進ミ下サイマセヌト、餘程
  向フノ經濟開發ガ困難ニナルト考ヘマスカ
  ラ、此點ハ特ニ希望ヲ申上ゲテ置キマス、
  其次ニ私ノ御伺シタイコトハ、漸次滿洲國
  ヲ金本位ニスル日ガ近付イテ居ルノデハナ
  イカト云フ事柄ニ付テ御伺申上ゲタイノデ
  アリマス、爲替關係カラ高橋大藏大臣ガ滿
  洲國ヲ外國ト御覽ニナル、是ハ通貨モ違ッ
  テ居リ、當然デアリマス、所ガ今申上ゲマ
  シタヤウニ、滿洲國ニハ日本カラ資本ヲ入
  レル以外ニ途ガナイ、ソレカラ又國防費モ
  到底一億以內ニ減ズル見込ガナイ、此二ツ
  ヲ併セ考ヘマスト、滿洲國ガ外國トシテノ
  爲替關係ニ相變ラズ置カレテ居ルト云フ事
  柄ハ、非常ニ將來ノ國策ノ上ニ惡イ影響ヲ
  與ヘハセヌカ、斯ウ云フ風ニ考ヘルノデア
  リマス、丁度滿洲國ガ國ヲ創メテ以來三年
  間位デ、アレダケ幣制統一ノ大業ヲ成就シ
  マシタコトハ、洵ニ私共敬服スル所デアリ、
  又建國ノ當初ニ於テ、實際ノ經濟生活ト人
  情風習等ニ考慮ヲ拂ハレテ、此事ヲサレテ
  居ルコトハ、私ハ適切妥當デアッタト考ヘ
  ルノデアリマスガ、併シ此頃ハ少シ事情ガ
  變ッテ來テ居ルノデハナイカ、斯ウ思フノ
  デアリマス、此點ニ付テハ高橋大藏大臣ニ
  モ一ツ御意見ノ程ヲ御示シヲ願ヒマスト、
  洵ニ仕合セト存ズルノデアリマスガ、實ハ
  御承知ノ如ク、滿洲ニハ滿洲國幣ト云フモ
  ノガ使ハレテ居ル、此國幣ト云フモノハ、
  銀ノ純分ガ二十三「ポイント」幾ラ、銀ノ純
  分ヲ代表シテ居ルモノデハアリマスケレド
  モ、現實之ヲ兌換シテ居ル譯デハゴザイマ
  セヌシ、又滿洲國ニ現實銀貨ガ行ハレテ居
  ル譯デハゴザイマセヌ、ソコデ滿洲國ノ貨
  幣制度ヲ、一口ニ申シタラ何ト言ヒマスカ、
  銀本位通貨管理制トデモ申サナケレバナラ
  ヌヤウナ、變態ノモノデアルノデアリマス、
  所ガソレデハ何ニ一體標準ヲ置イテ居ルノ
  カ、斯ウ云フコトヲ聽キマスト、是ハ銀ノ
  値打其モノニ標準ヲ置イテ居ルノダ、斯ウ
  云フコトデアリマス、所ガ銀ノ値打ト云ヘ
  バ、ズット以前デアリマスレバ、世界的ニ銀
  ノ値打ガ大體一定シテ居リマシタカラ、サ
  ウ云フコトガ申サレルノデアリマシタガ、
  亞米利加ノ銀政策ノ影響ヲ受ケテ、昨年十
  一月支那ガ殆ド銀ノ輸出禁止ヲ事實上ニ於
  テ爲シ、關稅其他ノ引下ヲ行ッテ以來ト云
  フモノハ、此滿洲ノ經濟關係カラ見ルト、
  ドウシテモ支那ノ銀ト云フモノニ標準ガ置
  カレテ居ルノデアラウト思ヒマス、所ガ支
  那ノ銀ノ値打ナルモノハ、今日ノ世界ノ銀
  ノ値打カラ掛離レ、分離シテシマッテ居ル
  ノデアリマス、サウ致シマスト、此銀ノ値
  打ニ標準ヲ置イテ居ルト云フコトハ、少シ
  ク今迄ト情勢ガ變ッテ來テ居ルノデハナイ
  カト私共考ヘルノデアリマス、此頃モ滿洲
  中央銀行ノ當局者ニ會ヒマシテ、今マデハ
  尤デアリ、又過渡期ニ對スル色々ナヤリ方
  ニ付テハ、御經驗上斯ウ云フコトモ宜カラ
  ウト考ヘルノデアルガ、併シ銀本位ヲ-
  是モ銀本位デアリマセヌ、銀本位通貨管理
  制度ト云ウタヤウナコトヲ御採リニナッタ
  ノハ、ドウ云フ理由カト私ガ質シタ所ガ、
  ソレハ滿洲ハ政治上ニハ日本ノ勢力圈內ニ
  アルガ、經濟的ニハ支那ノ勢力範圍ダト云
  フコトガ一ツ、第二ハ、滿洲國ノ住民ハ何
  ト云ッテモ支那人ガ多數デアッテ、ソレハ銀
  ニ慣レテ、銀ヲ愛好シテ居ル、斯ウ云フ二
  ツシカ理由ガ擧ゲラレナカッタノデアリマ
  ス、所ガ私ノ考ヘデ見マスト、支那人デモ
  別ニ銀ヲ好ム譯デハナイ、銀ト金ヲヤレバ
  寧ロ金ヲ好ム、況ヤ滿洲デハ銀ガ行ハレテ
  居ル譯デハナイ、銀ヲ代表シテ居ル紙ノ國
  幣ガ行ハレテ居ルニ過ギナイト云フ實情デ
  アリマスシ、又經濟的ニ支那人ノ勢力範圍
  ダ、斯ウ言ハレルケレドモ、私共ハ寧ロ經濟
  的ニハ日本ノ勢力範圍デハナイカト、事實
  上考ヘルノデアリマス、滿洲ニ於ケル一番
  大キナ滿鐵ト云ヒ、其關係會社ト云ヒ、竝ニ
  近頃ノ近代的「インダストリー」ハ、殆ド悉
  ク日本ノ資本ノ勢力ニナルノデアリマシテ、
  一口ニ申シマスレバ、滿洲ノ經濟界ハ新シ
  イ方面、近代的ナ方面、大キナ方面ト云フモ
  ノハ、悉ク日本ノ資本デ賄ハレテ居ル、斯
  ウ云フ風ニ見ルベキモノデハナカラウカ、
  サウ云フ風ニ考ヘテ見マスト、ドウモ支那
  ノ資本ダカラ、支那ノ經濟的勢力範圍ダカ
  ラト云フコトハ、少シク實際ト違フヂヤナ
  イカ、ノミナラズ此民間ノ投資ナリ、或ハ又
  今ノ軍關係ノ諸支拂ナリガ、全部金デヤラ
  レルコトデアリマスカラ、ソコニ私ハ了ヒ
  ニハ、金ノ資本ヲ代表シテ居ル所ノ日本人
  社會ト云フモノト、ソレカラ平常銀ヲ使
  フ、マア農業トカ、或ハホンノ小賣商トカ
  云ッタヤウナ、小規模ナモノト思ヒマスガ、
  サウ云フ所謂滿洲人ノ銀社會ト云フモノ
  ガ、經濟的ニ對立スル結果ニナッテシマッ
  テ、ソレデハ陸軍大臣等ガ最モ所期セラレ
  テ居ル所ノ、日滿ノ融合ト云フモノヲ寧ロ
  破ル因ニナリハセヌカ、斯ウ云フ風ニ私共
  考ヘルノデアリマス、將來サウ云フ惡イ事
  ガ現レテハ大變デアリマスカラ、今日カラ
  矢張金本位ニ持ッテ行クト云ッタヤウナ考方
  デ、諸般ノ準備ヲ進メラレル方ガ宜クハナ
  イカ、現ニ支那モ最近ノ銀ニ對スル、恐慌
  狀態カラ、色々通貨制度ニ對スル再吟味ヲ
  ヤッテ居ルヤウデアリマス、私ハ以前臺灣
  銀行ニ關係ガアリマシテ、臺灣ノ幣制改革
  當時ノ事情ヲ考ヘテ見マスト、モウボツボ
  ツ斯ウ云フ準備ヲナサイマシテ、漸次御ヤ
  リニナルト云フコトガ必要デアルト考ヘテ
  居ルノデアリマス、サウ致シマスト、大藏大
  臣ガ御心配ニナリマシタヤウナ、假ニ共通
  ノ-今日本モ金本位ハ一時中止シテ居リ
  マスガ、共通ノ圓金本位トデモ言フベキモ
  ノガ出來マスレバ、爲替關係カラモ心配ハ
  要ラナクナル、軍ノ支拂ガ一億以上、民間
  ノ支拂ガ一億トカ、二億トカニ上ルデアリ
  マセウ、是等ノ爲替關係ト云フモノヽ將來
  ヲ考ヘテ見ルト、大キイ影響ヲ投掛ケルノ
  デアリマス、貿易ナドガ少シ「ルーズ」ナ狀
  態ニアリマスカラ、餘程爲替關係ニ付テ
  ハ、高橋藏相ハ御心配ニナッテ居ル圓爲替
  維持ト云フコトガ、漸次困難ニナッテ行ク
  心配ハナイカ、サウナッテ行クト、國ノ赤
  字公債ノ發行、消化等ニモ非常ニ困難ナ問
  題ヲ生ジテ來ルダラウト考ヘマスノデ、茲
  ハ一ツ成ベク早ク金本位ニ持ッテ行クト云
  フ、御準備ヲ爲サラナケレバイカヌノデハ
  ナイカト云フヤウニ考ヘテ居ルノデアリマ
  スガ、右ニ對シマシテ陸軍大臣竝ニ大藏大
  臣ノ御答辯ヲ願ハレヽバ、洵ニ仕合セニ存
  ジマス、尙ホ大藏大臣ハ御疲レノヤウデゴ
  ザイマスカラ、御著席ノ儘ユックリ御答辯
  下サランコトヲ、特ニ御願申上ゲテ置キマ
  ス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006711731X00619350207&spkNum=16

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• 017・林銑十郎

  ○林國務大臣　此問題ニ就キマシテハ、滿
  洲國政府ガ將來ドウ云フ制度ヲ採ルカ、色
  色ノ關係ヲ考慮シテ、適當ナル方法ヲ採ル
  モノト私ハ考ヘテ居リマスガ、ソレニ付テ
  ハ主トシテ大藏大臣ノ意見ヲ御聽キ下サル
  ヤウニ御願致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006711731X00619350207&spkNum=17

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• 018・高橋是清

  ○高橋國務大臣　本問題ニ付テ自分ノ意見
  ヲ申述ブルト、大分長クナリマスガ、一體
  金本位ト云フモノハ、其國ノ通貨ガ紙幣デ
  アレバ、其紙幣ヲ硬貨ニ換へテ、外ニ自由
  ニ持ッテ出ル働キガナケレバ、何本位ト云ッ
  タ所デ、實際ハ紙幣國、今日デハ滿洲ハド
  ウナッテ居ルカ能ク存ジマセヌガ、我國ハ
  本金位デモナケレバ、銀本位デモナイ、全
  ク紙幣國、而シテ其紙幣國タル我ガ圓ト、
  滿洲國ノ圓ト同ジニナッタラ、都合ガ好イ
  ヂヤナイカト云フ御考ガ起ッタノダラウト
  思ヒマス、實際ハ近頃ドウデスカ知リマセ
  ヌガ、滿洲國ノ出來夕後ニ、意外ニモアノ
  混亂シテ居ッタ通貨ヲ統一シテ、スッカリ舊
  貨幣ト云フモノヲ引上ゲテ、新ニ滿洲國ノ
  國幣ヲ出シテ、而モソレガ若シ正貨ノ準備
  ガナケレバ、矢張全然各種ノ紙幣ト同ジコ
  トデ、遂ニ紙屑同樣ニナルト云フ疑念ヲ持ツ
  テ居ルヤウデハ、アノ改革ハ出來ナカッタ、
  然ルニ存外今デハ發行額ノ半バ以上ノ金銀
  ノ準備ガアリハセヌカト思フ、ソレカラ何
  時迄モ滿洲國ハ、經濟的ニ唯日本ノ資本、
  日本ノ人バカリガ働イテ居ルト云フ時デハ
  ナカラウ、殊ニ諸外國ハ今日國際間ノ關係
  ニ於テ、何ニ重キヲ置イテ居ルカト云ヘ
  バ、利ニ重キヲ置イテ居ル、我國ノヤウニ仁
  ヲ本ニシテ交ルト云フノデハナイ、利ヲ本
  ニシテ交ハラウト云フノダカラ、彼等ハ其
  內ニハ、滿洲ノ土匪其他ノ治安維持ガ十分
  出來ルヤウニナッテ安心ガ出來レバ、必ズ
  資本ヲ持ッテ來マセウ、資本ヲ持ッテ來テ事
  業ヲ起シマセウ、商工業ハ利ヲ求ムルト云
  フノガ彼等ノ第一ノ目的ダカラ、見遁シテ
  置カヌ、支那本土モ外國ト同ジデ、滿洲ガ
  好ケレバ、皆彼處ノ人達ハ滿洲ニ來テ商工
  業ヲ營ムヤウニナルカモ知レナイ、サウス
  レバ獨リ日本トノ關係デハナイ、軈テハ是
  ハ外國トノ直接關係ガ經濟的ニ起ルモノト
  見ナケレバナラヌ、又滿洲國ガ獨立國トナッ
  テ今日存在シテ居ルノニ、獨リ日本トノミ
  經濟關係或ハ政治關係ガアッテ、他ノ國ニハ
  及バヌト云フノデハ、滿洲國ガ獨立國トシ
  テ打建テラレタ目的ニ反スルモノデアラウ
  ト思フ、而シテサウ云フ利ガ本ニナッテ追
  追ト滿洲國ヲ承認スル國モ外國ニ於テ段々
  出來ル傾向デハアルマイカト思フ、サウナッ
  テ見マスト、我國ハ其時迄ニ本當ノ金本位ニ
  ナレバ宜イガ、私ノ見ル所デハ、マダ世界各
  國共ニ本當ノ金本位、金ノ出入ヲ自由ニシ
  テ、金本位ヲ維持スルヤウニナルカドウカ
  ト云フコトハ、遠イ先ノ話ダラウト思ッテ
  居ル、然ラバ其國ノ紙幣ニ先ヅ信用ヲ置ク
  置カヌト云フコトハ、本位ハ金本位ヲ離脫
  シテ居ルケレドモ、ドノ位一體其國ニ金ガ
  保有サレテ居ルカ、是ガ信用ヲ其國ノ紙幣
  ニ置ク一ツノ要素デアル、ソレカラモウ一
  ツハ、最モ影響ヲ及ボスノハ、先達モ申ス通
  リ、其國ト外國トノ貿易關係、貿易以外ノ關
  係ニ於テ收支ノ釣合ガドウナルト云フコト
  ガ、爲替相場ニ關係シテ來ル、此爲替相場
  ノ影響ヲ、其國ノ通貨ノ信用ニ受ケルト云
  フコトハ當然ノコトデアル、サウ云フ場合
  ニナッテ滿洲國ノ紙幣ハ-是ハ先ニ外國
  トノ取引ガ自由ニ出來ルヤウニナッタ時ノ
  コトヲ言フノデス、外國カラ見タ場合、ア
  レハ正貨準備ト云フモノガ豐富デアルト云
  フノデ、ソコヘ先ヅ信用ヲ置ク、日本ハ正
  貨準備ガ微々タルモノデアル、唯外國トノ
  貿易關係、其貿易以外ノ收支ノ關係ニ於
  テ、今日ノ位置ヲ維持シテ居ル、若シ外國
  ガ滿洲國ニ對スル爲替ハ、滿洲國ノ貨幣ニ
  信用ヲ置イテ價ヲ高クスル、日本ニ對シテ
  ハ低クスルト云フコトニナッテ、ドウシテモ
  日本ト滿洲國ノ間ニ、同ジ金本位ト名ハ言
  ウテモ、今日爲替相場ニ於テ隔テガナイヤ
  ウニナルカト云フコトハ、是ハ難カシイ事
  デアル、サウナッテ來レバ、却テ滿洲國ハ非
  常ニ立派ナ國ニナッテ、我國ハ及バヌコトニ
  ナル、サウナッテハナラヌケレドモ、サウ云
  フコトガアルト云フコトハ考ヘナケレバナ
  ラヌ、故ニ今カラ工作シテ、成ベク滿洲國
  ニ日本ノ圓ト同ジヤウナ値ノモノヲ使ハセ
  ル、ト云ッテモ是ハ實際カラ考ヘテ見ルト、
  サウ云フ希望通リニハ將來容易ニ行クマイ
  ト思フ、ソコラハ能ク考ヘテ行カナケレバ
  ナラヌ問題デアリマスルカラ、今日今カラ
  工作シテ、日本ノ通貨ト滿洲ノ通貨ト同ジ
  モノニシタラ宜カラウト云フ工作ヲ執ルト
  云フコトハ、ドウ云フモノデスカ、チヨット
  私ニハ御答ガ出來ナイヤウナ感ジガ致シマ
  ス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006711731X00619350207&spkNum=18

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• 019・小笠原三九郎

  ○小笠原委　只今大藏大臣ノ御話ニ依リ
  マスト、少シク私ノ申上ゲルコトヽ違ッテ
  居ルノデハナイカト思ヒマスルガ、私ノ申
  上ゲマスル意味ハ、向フノ滿洲人ハ銀ヲ主
  トシテ使用スル、向フニ於テ經濟上ノ實際
  大キナ仕事ヲヤッテ居ル日本人ハ、主トシ
  テ金本位ニ俟ツ、斯ウ云フ結果、日本人ノ
  經濟社會ト滿洲人ノ經濟社會トヲ作ッテ居
  ル結果トシテ、兩方ノ民族ノ融合ヲ破ル因
  ニナリハセヌカ、例ヘバ金ト銀ノ相場ハ、
  今ノヤウデアリマスレバ餘リ問題ガアリマ
  セヌガ、是ハ私ガ高橋藏相ニ申上ゲル迄モ
  ナク、近頃ノ銀ノ値段ト云フモノハ、亞米
  利加ノ銀政策ノ結果デアリマスガ、亞米利
  加ノ銀政策モ、今十二三億「オンス」買フ餘
  地ハアリマセウガ、是ハ五年デ政府ハ買上
  ゲル餘地ガナクナッテシマヒマス、サウ云フ
  時ハ、今ノ銀ハ亞米利加デ準備ガ成ッテ通
  貨ノ作用ヲ致シマスカラ、銀ガ高イノデア
  リマスガ、四五年經チマスレバ、銀ハ矢張暴
  落スル時期ガ來ルノデハナイカト考ヘルノ
  デアリマス、サウ云ッタヤウナコトデ、今陸
  軍大臣ニ御伺ヲ致シマスルト、マダ五年位
  ハ斯ウ云フ風ナ軍ノ關係ハ續クノダト云フ
  御話ガアリマシタガ、サウ云フ時分ニハ混
  亂ヲ起シテ來ハセヌカト思ハレル、其點カ
  ラ今ノ中ニ金本位ニ對スル-金本位ト申
  シマシテモ、日本ノ金本位デナイコトハ、御
  說ノ通リニ私モ了解致シテ居リマスガ、サ
  ウ云フ準備ヲシテ置カナイト、後日非常ナ
  困難ト後悔ヲスルノデハナイカ、斯ウ云フ
  點カラ申上ゲテ居ルノデアリマス、尙ホ私
  ハ陸軍大臣ガ、當面ノ向フノ御責任者デモ
  アルヤウデアリマスノデ、成ベク陸軍大臣
  カラ、斯ウ思フガト云フコトニ付テ、率直ニ
  御答辯ヲ願フコトガ一番安心ダト思フノデ
  アリマスガ、ドウモ高橋大藏大臣ノ說明ヲ
  認メラレテ、高橋大藏大臣ノ說明通リダト
  云フコトヲ言ハレルガ、責任者トシテ直截
  簡明ニ御答辯ヲ願ヒタイト思フノデアリマ
  ス

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• 020・林銑十郎

  ○林國務大臣　幣制云々問題ニ付テ、マダ
  確乎タル私ノ所信ヲ語ルニ至ッテ居リマセ
  ヌ、只今ノ所デハ大藏大臣ノ御說ヲ傾聽シ
  テ居ル程度デアリマス

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• 021・小笠原三九郎

  ○小笠原委員　是ハ極メテ重大ナ問題デア
  リマス、速急ニ之ヲ御〓究下サイマシテ、
  確乎タル御方針ヲ御答辯下サランコトヲ、
  特ニ申上ゲテ置キマス、次ニ私ガ御伺ヲ申
  上ゲタイノハ、日滿經濟會議ノ事柄デアリ
  Vx..此頃聞ク所ニ依リマスレバ、近ク日
  滿兩國ノ經濟提携ニ關スル重要事項ヲ審議
  スル經濟會議ガ開カレルト云フコトデアリ
  マス、是ハ何時頃開カレマシテ、ドウ云フ
  ヤウナ委員ノ顏振レデ御開キニナルノカ、
  其點ヲ承リタイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006711731X00619350207&spkNum=21

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• 022・林銑十郎

  ○林國務大臣　是ハ昨日モ何處カデ御答申
  上ゲマシタガ、マダ向フト交渉中デアリマ
  シテ、其範圍ガキッパリ決マラヌ、ドウ云フ
  程度ニスベキカト云フコトニ付テ、今〓究
  中デアリマス

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• 023・小笠原三九郎

  ○小笠原委員　其御方針ハドウ云フコトデ
  アリマスルカ、例ヘバ陸軍大臣トシテハ、
  大體ドウ云フヤウナ腹案ヲ御有チニナッテ
  居ルコトデアリマスルカ、其腹案ヲ承ルコ
  トガ出來レバ結構ダト存ジマス

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• 024・林銑十郎

  ○林國務大臣　大體ノ考トシマシテハ、日
  滿兩國ノ共存共榮ノ關係ニ鑑ミマシテ、兩
  國經濟ノ合理的融和ヲ圖ル爲メ、兩國政府
  ノ間ニ隔意ナキ協議ヲ遂ゲル、サウシテ其
  有效ナル協力ヲ確保シヨウ、斯ウ云フ大體
  ノ方針ダケ決ッテ居リマスガ、ドウ云フヤウ
  ナ人々ヲ以テ其委員ニスルトカ云フコトニ
  付テハ、只今一寸申上ゲル程度ニナッテ居
  リマセヌ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006711731X00619350207&spkNum=24

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• 025・小笠原三九郎

  ○小笠原委員　只今御示シノ如クニ、重大
  問題ヲ協議スル委員會ト致シマスレバ、餘
  程人選ヲ愼重ニ考慮セラレンコトヲ、此機
  會ニ特ニ切望シテ置キマス、此頃新聞デ見
  マスト、關東軍參謀長、大使館參事官、或
  ハ關東局ノ總長、或ハ對滿事務局カラ一名、
  都合四名位、又向フモ四名位出テ會議ヲス
  ルト云フコトガ出テ居リマス、是ハ今御話
  ノ如キ重大ナル使命ヲ有ツモノデアリマス
  カラ、事實デハナカラウト考ヘルガ、若シ
  是ガ事實デアレバ、關東軍參謀長ヤ大使館
  參事官ト云フ、サウ云フ方面ニハエライ方
  方デアリマセウケレドモ、兩國ノ經濟問題
  ヲ決メルノニ、斯ウ云フ人ガ入ッテ行クト
  云フノハ、經濟問題ヲ何ト御考ニナッテ居
  ルカト云フコトヲ伺ヒタクナルノデアリマ
  ス、是等ノ方ハオ入リニナルノデアリマス
  カ、ナラヌノデアリマスカ、大體ノ御腹案
  ガアレバ承リタイ、實ハ經濟問題ヲ、軍人ノ
  方ニモ稀ニ見ル經濟ニ達セラレタ方ガアル
  トハ思ヒマスガ、今迄ノ經歷ニ鑑ミマシ
  テ、關東軍參謀長、大使館參事官ト云フ人
  ガオヤリニナル、ソレデ果シテ日滿經濟關
  係ノ根幹ノコトヲ御決メニナッタ場合ニ過
  チナキヲ得ルカドウカ、甚ダ心配ニ堪ヘマ
  セヌノデ、若シ御差支ナケレバ其點ヲ伺ツ
  テ見タイト思ヒマス

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• 026・林銑十郎

  ○林國務大臣　只今モ申上ゲマシタ通リ
  ニ、其人員ノ內容ニ付テハ、マダ決ッテ居リ
  マセヌ、是等ノ人々ガ入ルトスレバ、何カ其
  人々ヲ要スル理由ガアッテ入ルコトヽ考ヘ
  マスガ、マダ其點ニ付テハ申上ゲル時機ニ
  ナッテ居リマセヌ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006711731X00619350207&spkNum=26

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• 027・小笠原三九郎

  ○小笠原委員　私ハ其會議ト云フモノガ、
  俗ニ言ヒマスル所ノ、關東軍特務部ノ延長
  ニナッテハナラヌト考ヘルノデアリマス、此
  會議ハ日滿兩國ノ經濟關係ヲ決定スル非常
  ニ重要ナ會議デアリマスカラ、各方面ノ權
  威者ヲ入レマシテモ、眞ニ兩國ノ爲ニ、此
  經濟關係ヲ圖ルダケノコトヲヤッテ行カネ
  バナラヌト考ヘルノデアリマス、就キマシ
  テ御伺致シマスガ、民間ノ經濟界ノ、サウ
  云フ練達堪能ナル士ヲオ入レニナル御考デ
  アリマスカ、如何デアリマスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006711731X00619350207&spkNum=27

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• 028・林銑十郎

  ○林國務大臣　其民間ノ人ヲ入レルカドウ
  カト云フコトモ、マダ明瞭ニハ決ッテ居リ
  マセヌ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006711731X00619350207&spkNum=28

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• 029・小笠原三九郎

  ○小笠原委員　先般關東軍ノ司令官ガ御赴
  任ニナル時ニ、滿洲ハ今カラ經濟ノコトニ
  對シテ、非常ニ平和的ニ色々ノコトヲヤラ
  ナケレバナラヌト云フ御抱負ヲ述ベテ居ラ
  レマシテ、之ヲ監督セラレル陸軍大臣ガ、
  マダ範圍ガ決ラヌト仰シヤルコトハ、私
  ハ受取レヌノデアリマス、マダ此處デ申上
  ゲルコトガ困難ト云フ事情ナラ、已ムヲ得
  ヌコトデアリマスケレドモ、若シ又仰シヤ
  ル通リニ、マダ方針ガ立ッテ居ラヌト云フ
  ヤウナコトデアリマスナラバ、一日モ早ク
  御方針ヲ御立テニナッテ滿洲ト云フ大キナ
  問題ニ對シテノ國策ノ御遂行ニ當ラナケレ
  バナラヌト私ハ思ヒマス、ドウモドチラカ
  ト云フト、經濟問題ヲ輕ク御考ニナッテ、ソ
  レ等ノ方面ニ何等ノ經驗ノナイ、地位ノ上
  ノ者ガ取決メルト云フコトハ、非常ニ大キ
  ナ過チヲ投ゲ掛ケルノデアリマス、此點ハ
  大藏大臣ガ能ク御承知カト思ヒマス、斯ウ
  云フ重大ナル會議ニ於キマシテハ、最モ民
  間ノ有力ナル者ヲオ入レニナッテ、眞ニ經濟
  ノ意味デノ兩國ノ提携ヲ圖ラレルト云フコ
  トニ努力シテ戴キタイト考ヘルノデアリマ
  ス、又サウナケレバナラヌト私ハ考ヘルノ
  デアリマス、次ニ尙ホ對滿事務局總裁タル
  陸軍大臣ニ御質問申上ゲマス、此頃滿洲國
  デ非常ニヤカマシイ問題トナッテ居リマス
  滿洲國ノ官吏消費組合ト云フモノガアリマ
  スガ、勿論アヽ云ッタモノガ出來上ルト云
  フコトハ、自然ノ勢デアリマセウケレド
  モ、今日ノ滿洲ノ實情カラ見ルト、非常ニ
  困ッタ事柄デハナイカ、滿洲國官吏消費組
  合ガ、突如トシテ一月カラ出來ルト云フコ
  トデ、アノ方面ニ行ッテ居ル日本ノ商業移
  民トデモ申シマスルカ、サウ云フ者ガ非常
  ニ恐慌ヲ來シテ、各所ニ於テ大會ヲ開イ
  テ、各方面ニ陳情ヲシテ居ルト云フ事實ガ
  アルノデアリマス、成程是ハ私共考ヘテ見
  マシテモ、無理カラヌコトヽ考へルノデア
  リマス、總テ經濟ノコトハ、實情ニ卽シテ
  ヤラナケレバナラヌト云フコトハ申スマデ
  モアリマセヌ、餘リニ早ク考ガ進ンデ居ル
  カラト云ッテ、其進ンダ考ヲ直チニ御實行ニ
  ナリマスト、其與フル弊害ハ實ニ莫大ナモ
  ノガアリマス、何レ官吏消費組合等ガ出來
  レバ、運賃ヲ下ゲヨウ、稅金モドウシヨウ
  ト云フコトデ、多大ノ特典ヲ與ヘラレルコ
  トニナルノデアリマセウ、サウスルト日本
  が移民問題等デ相當苦心シテ、農業移民及
  多數ノ商業移民ヲ送ラナケレバナラヌ時
  ニ、非常ナ蹉跌ヲ來シハシナイカ、斯ウ云
  フ風ニモ考ヘマスガ、之ニ付テ若シ陸軍大
  臣ハ、サウ急速ニサウ云フモノヲヤルノハ
  面白クナイト云フヤウナ、私ノ意見ニ御同
  意下サルナラバ、適當ナ御處置ヲ御執リ下
  サルカドウカト云フコトヲ、御伺致シタイ
  ノデアリマス、

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006711731X00619350207&spkNum=29

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• 030・林銑十郎

  ○林國務大臣　此問題ハ私ガ申上ゲルヨリ
  千、政府委員カラ御答申上ゲタ方ガ宜イト
  思ヒマスガ、如何デスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006711731X00619350207&spkNum=30

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• 031・小笠原三九郎

  ○小笠原委員　宜シウゴザイマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006711731X00619350207&spkNum=31

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• 032・川越丈雄

  ○川越政府委員　實ハマダ正式ノ報告ガア
  リマセヌノデ、ハッキリシタコトハ申上ゲラ
  レマセヌガ、滿洲ニ今御話ノヤウナ問題ノ
  起ッテ居ルコトハ承知シテ居リマス、併シ消
  費者側、卽チ官吏側ノ方ト在留商人トノ間
  ニ、大體協定ガ付イタラシウゴザイマス、
  是ハハッキリシタコトハ分リマセヌガ、新京
  ダケニ限ルト云フヤウナコトデ、大體協定
  ガ付イタト云フコトヲ聞キ及ンデ居リマ
  ス、只今關東廳ノ方ニ電報デ報〓ヲ求メテ
  居リマスカラ、其報告ガ來レバ詳シイコト
  ハ分ルト思ヒマス

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• 033・小笠原三九郎

  ○小笠原委員　ソレデハ其問題ニ付キマシ
  テハ、能ク篤ト利害ヲ御考慮ニ相成リマシ
  テ、日本ノ商人ノ移民ノ阻止ト相成ラヌヤ
  ウニ御取計ニナルコトガ、最モ國策ニ適ス
  ルモノト考ヘマス、私ノ對滿事務局總裁林
  陸軍大臣ニ對スル質問ハ、之ヲ以テ終リト
  致シマシテ、次ニ私ハ臨時利得稅ニ付テ、
  大藏大臣ニ御伺申上ゲタイト思フノデアリ
  マス、此臨時利得稅ニ付キマシテハ、本會
  議ニ於テモ、亦一昨日、昨日ノ委員會等ニ
  於キマシテモ、大藏大臣カラ色々御說明ガ
  アリマシテ、大分分ッタ點モアルノデアリ
  マスガ、マダ隨分私共ノ了解ノ行カヌ點ガ
  アッテ-森田君デハナイガ、吾々ノ頭ガ惡
  イノデハナイカト云フ話ヲシテ居ル位デア
  リマスガ、左樣ナ點カラ同ジヤウナ質問ヲ
  申上ゲテ、大藏大臣ニハ甚ダ御迷惑トハ思
  ヒマスガ、併シ最モ分ラナイ所ノ本案提出
  ノ理由其他ニ付キマシテ、先以テ大藏大臣
  ニ御質問ヲ申上ゲ、ソレカラ案ノ內容ニ付
  キマシテ、私共不備ト思ヒ、又不滿ト思フ
  點ニ付テ御質問申上ゲタイト思フノデアリ
  マン·カ大藏大臣ノ御話ヲ伺ヒマスルコトハ
  -一代ノ名醫ガ財界ヲ診斷シテ、其報告
  ヲサレルト云フコトハ、洵ニ吾々ハ〓訓ヲ
  受ケル點ガ多イノデアリマスガ、ドウカ少
  シ御迷惑デアリマセウガ、懇切ニ私共ノ納
  得ノ行クヤウニ御說明下サルナラバ、洵
  仕合セト思ヒマス、此利得稅案ガ提出セラ
  レマシタ理由ニ付キマシテ、昨年ノ十一月
  四日、此利得稅ノ要項ト一〓ニ、其當時理
  由書ト云フモノガ公表サレテ居ルノデアリ
  マス、其理由書ニ依リマスト、第一ガ、是
  ハ負擔ノ公正ヲ圖ルモノダ、第二ハ、赤字
  公債ヲ減額セシムル爲ノモノダ、第三ハ、
  災害對策ニ對スル經費支辨ヲ容易ナラシム
  ル爲ノモノダ、サウ云ッタ事柄カラ、時局ノ
  影響ニ因ッテ利益ヲ得テ居ル者ニ課稅ヲス
  ルノダ、斯ウ云フ風ニ書イテアルノデアリ
  マス、高橋藏相ハ此理由書ヲ其儘、御認メ
  ニナルノデアリマセウカ、如何デアリマセ
  ウカ、或ハ其中デドレガ重ク、ドレガ比較
  的輕イ理由ト云フ風ニデモ御考ニナッテ居
  リマスレバ、其點モ承リタイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006711731X00619350207&spkNum=33

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• 034・高橋是清

  ○高橋國務大臣　是ハ昨日モ申シマシタ通
  リ、何處ニ一番重キヲ置イテ居ルカト云フ
  ヤウナコトハ、箇條々々ニ付テハ述べ難イ
  話ナノデアリマス、ソレ故ニ昨日來申述ベ
  マシタ通リ、此臨時利得稅法ハ、第一ニ是
  ハ政治的ニ考ヘテ出シタモノデアルト、斯
  ウ私ハ思フ、ソレデハ收入ヲ圖ラナカッタ
  ノカト云ヘバ、サウデハナイ、財政的ニ云
  八、是ハ新稅ヲ設ケテ稅ヲ取ル以上ハ、
  收入ヲ圖ッタニ違ヒナイ、サウ考ヘルヨリ
  仕方ガナカラウト思ヒマス、ドウモ此臨時
  ノ利得稅ニ付テ、一般ノ稅制ニ關スル有ユ
  ル方面カラ之ヲ問質シタナラバ、是ハ双方
  色々ノ所ニ打突カッテ、眞面目ナ本當ノ答辯
  ハ出來ナクナルダラウ、私正直ニ申上ゲル
  ト、是ハ政治的ニ出來タモノデアル、而シ
  テ財政的ニドウダト言ハレヽバ、是ハ矢張
  收入ヲ殖ス爲デアル、其殖シタ收入ト云フ
  モノハ、有ユル方面ニ影響ヲ有ツコトハ當
  然ナ話デアル、大抵其邊ノ所デ一ツ御了解
  ヲ願ッテ置キタイト思フノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006711731X00619350207&spkNum=34

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• 035・小笠原三九郎

  ○小笠原委員　ドウモ折角ノ御話デゴザイ
  マスガ、モウ少シ伺ハシテ戴カヌト、了解
  ガ出來兼ネマスノデ、モウ少シ伺ハセテ戴
  キマス、第一ニ是ハ負擔ノ公正ヲ圖ッタモ
  ノデアルト云フコトガ理由書ニ擧ゲテアリ
  マスガ、是デ果シテ負擔ノ公正ガ圖ラレテ
  居ルカドウカ、斯ウ云フ點ニ非帶ナ疑ヲ有
  ツ者デアリマス、若シ負擔ノ公正ヲ圖ルト
  云フコトナラバ、成程軍需品工業、輸出品
  工業ハ多大ノ利益ヲ得テ居ルデアリマセ
  ウガ、同時ニ其以外ニモ非常ナ利益ヲ得テ
  居ル者ガアル、或ハ株式、公債ト云フモノ
  ヲ所有シテ居ッテ、是ガ値上リシテ來タノ
  デ、之ヲ處分シテ非常ナ利益ヲ得テ居ル人
  ト、或ハ又サウ云フ會社ニ關係シテ居ッテ、
  重役ノ賞與金トカ其他ノモノデ、多大ノ收
  益ヲ得テ居ル者ガアルト云フコトハ、私ハ
  是ハ見遁スコトガ出來ヌト思フノデアリマ
  ス、ソレカラ俗ノ言葉デスガ、所謂弗買持
  チト云フヤウナコトデ、最早處分シテシマッ
  テ、大分多大ノ利益ヲ得テ居ル人ノアルコ
  トハ、是ハ爭ヒ難イ事實デアリマス、サウ致
  シマスト、ドウモ是ハ負擔ノ公正ヲ圖ッテ
  居ルモノトハ言ヘナイ、ノミナラズ是ハ後
  カラ細カク政府委員ノ方ニモ一ツ御尋申上
  ゲタイ考デアリマスガ、是ノ基準ハ昭和五
  六年トナッテ居リマス爲ニ、一方ニハ營業不
  振ニ苦ンデ漸ク業績ガ好轉シタヤウナモノ
  ハ餘計ニ租稅ヲ取ラレルシ、他方其時分
  ニ百分ノ七以上ノ利益ヲ得テ居ッタ、斯ウ云
  フヤウナ會社ハ、今後數箇年ニ亙ッテ至大
  ノ特典ヲ附與サレルヤウナ形ニナッテ、矛盾
  ヲ含ンデ居ルノデアリマス、ドウモ是ハ私
  ハ負擔ノ公正ヲ得テ居ルモノトハ思ヘナイ
  ノデアリマスガ、イヤオ前ノ言フ通リデハ
  ナイ、矢張公正ヲ得テ居ルモノデアルト云
  フ、何カ理由ガアリマスレバ、ソレヲ承リ
  タイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006711731X00619350207&spkNum=35

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• 036・石渡莊太郎

  ○石渡政府委員　私カラ···

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006711731X00619350207&spkNum=36

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• 037・小笠原三九郎

  ○小笠原委員　是ハ大キイ問題デスカラ、
  御迷惑デナケレバ大藏大臣ノ方カラ御願シ
  タイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006711731X00619350207&spkNum=37

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• 038・岡田忠彦

  ○岡田委員長　大藏大臣御答ニナリマセヌ
  カ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006711731X00619350207&spkNum=38

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• 039・高橋是清

  ○高橋國務大臣　私カラ申上ゲマスレバ、
  先刻申上ゲタ範圍ヲ出ナイカラ、政府委員
  ニ答辯致サセマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006711731X00619350207&spkNum=39

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• 040・石渡莊太郎

  ○石渡政府委員　本稅ガ負擔ノ公正ヲ得
  ナイデハナイカト云フ點ニ付テノ御尋
  ダト思フノデアリマスガ、是ハ兎ニ
  角此時局ニ於キマシテ、一方デハ薩張
  好クナラナイ人モアル、又更ニ困ッテ
  居ル人モアルガ、一方ニハ儲ケノ非常ニ
  多クナッテ居ル者モアル、隨テ斯ウ云フ跛
  行的ナ時代ニ於キマシテハ、一方儲ッテ居
  ル者カラ幾分ノ負擔ヲシテ貰ヒマシテ、サ
  ウシテ一方ノ經費ノ支辨ヲ幾分容易タラシ
  メルト云フコトノ爲ニ、之ニ相當ノ賦課ヲ
  致シマスルコトハ、負擔ノ公正ヲ得ル、斯
  ウ云フ意味ニ於キマシテ、十一月四日ノ談
  話ノ形式ヲ以チマシテ發表シタモノニ、サ
  ウ云フ言葉ガ入ッテ居ルモノト思フノデア
  リマス、只今御話ノゴザイマシタ、株式ヲ
  賣ッテ儲ケタ者、又賞與ガ餘計アッタ者ハド
  ウカト云フヤウナ御話モアルノデゴザイマ
  スガ、是等ニ付キマシテハ、課稅ノ實際上、
  又負擔ノ實際上如何カト思ハレル點ガアリ
  マスノデ、一方ニ於キマシテ、此營業ノ部
  門ト云フモノヲ抑ヘマスレバ、今日ニ於キ
  マシテ、大體儲ケノ出テ來ル所ヲ抑へ得ル
  ト考ヘマシタ次第デゴザイマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006711731X00619350207&spkNum=40

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• 041・小笠原三九郎

  ○小笠原委員　ドウモ私ガ擧ゲマシタヤウ
  ナモノガ、公正ニ取扱ハレテ居ルト云フコ
  トニ私ハ納得ハ出來マセヌ、又大體ニ於テ
  斯ウダト云フ御話デ、政府委員ノ方モ、是
  ハ公正ニ取扱ッテ居ルト云フコトハ、御認
  メニナッテ居ラナイヤウデアリマス、ソレデ
  ハ其次ニ伺ヒマスガ、是ガ今高橋大藏大臣
  ノ御話ノ如クニ政治的デアリ、又一方デハ
  財政的ノ收入增加ダ、斯ウ云フコトデアリ
  マスガ、第二ノ點ノ、本稅ガ果シテ赤字公
  債ヲ減額スルコトガ一ツノ目的デアッタカ
  ドウカト云フコトニ付テヾアリマス、是ハ
  私ハドウモ恐ラク反對ノ結果ヲ生ジハシナ
  イカト云フコトヲ心配スルノデアリマス、
  勿論私共モ赤字公債ノ增發ハ、喜ブベカラ
  ザルコトハ能ク承知シテ居リマス、併シ机
  ノ上デ赤字公債漸減ノ方針ト云ッタヤウナ
  モノヲ-誰モ漸增ノ方針ナドヲ建テル者
  ハアリマセヌ、無論誰デモ漸減ノ方針ヲ建
  テルニ違ヒアリマセヌガ、併シサウ云フコ
  トヲ一ツノ鐵則トシテ、稅收入ヲ增ス方針
  ヲ建テルト致シマシテモ、是ハ能ク高橋大
  藏大臣ガ申サレマス通リニ、財界ノ實勢ガ
  或ル程度ニ至ッテ居ラナイナラバ、案ダケハ
  通ッテモ、增收ノ目的ヲ達スルコトハ難シイ
  ノデハナイカ、寧ロ能ク言ハレル言葉通リ
  ニ、反對ニ好景氣ノ芽ヲ摘ンデ、財界ヲ萎
  縮セシメテ、一方ノ自然增收ノ途ヲ鎖スコ
  トニナリハシナイカ、稅目ヤ稅率ハ殖エル、
  併シ國庫ノ收入金ガ、ソレニ依ッテ增加シテ
  來ナイ、斯ウ云ッタヤウナコトガアルノデハ
  ナイカ、現ニ此案ガ發表サレタ當時ニ、株
  式市場ヲ初メトシテ、非常ナ大キナ「シヨッ
  ク」ヲ各方面ニ與ヘマシテ、爾來ト云フモ
  ノハ高橋大藏大臣ガ御就任ニナリマシテ、
  此大藏大臣ニ對スル國民的ノ要望カラ、餘
  程財界ハ恢復シテ來マシタケレドモ、併シ
  一言ニシテ申シマスト、何トナク火ノ消エ
  タヤウナ感ジガスルノデアリマス、斯ウ云
  フヤウナ情勢デ、殆ド最近デハ事業ノ新規
  計畫ナドハ起ッテ居リマセヌ、サウ云フヤウ
  ナコトヲ私共考ヘテ見マスト、本利得稅ト
  云フモノハ、增收ニ依ッテ赤字公債ヲ減額ス
  ルト云フ第二ノ目的ニ對シテ、果シテ適應
  シテ居ルモノカドウカ、無論此稅ハ取ルコ
  トモ出來ル-又私共モ後カラ申シマス
  ガ、此稅ハモット餘計取ラレル、三千萬圓ト
  云ッタガ、恐ラク六千萬圓モ、一億圓近クモ
  取ラレルト云フコトニナルデアリマセウ
  ガ、他方デハ自然增收ノ方面ガ非常ニ減ッテ
  來ルコトニナリハシナイカ、斯ウ云フヤウ
  ニ考ヘルノデアリマスガ、之ニ對シテハ大
  藏大臣ハ、屢〓財界ノ實勢ガ其處ニ至ラナケ
  レバ、稅ヲ殖シテモ駄目ダゾト云フコトヲ
  御示シニナッテ居リマスノデ、矢張其御考
  デ、此赤字公債漸減ノ爲ニオヤリニナッタコ
  トハ、大藏大臣ノ御方針トハ少シ違フヤウ
  ニ考ヘラレルノデアリマスガ、如何デゴザ
  イマスカ

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• 042・高橋是清

  ○高橋國務大臣　政府ガ特別ノ斯ウ云フ稅
  ヲ課ケマスレバ、其方ノ收益ガ-所得ガ
  減ルノデアリマス、一方ノ所得ノ稅ノ方カ
  ラ云ヒマスト、ソレダケ影響ヲ受ケテ減ル
  ト云フコトハ、是ハ理ノ當然デアリマス、
  併シソレニモ代ヘラレヌ、國家ノ必要ガア
  ルト云フコトカラ鑑ミテ見マスレバ、此臨
  時利得稅ト云フモノヲ、唯稅制ノ一方カラ
  ノミ、ドウ斯ウト檢討スル譯ニハ行カナイ、
  先刻申ス通リ、矢張是ハ政治的ニ重キヲ置
  イタ、先ヅ私ナドハ一寸目先ヲ考ヘテ見マ
  スレバ、一時ハ世間ニ增稅論ガ盛ニナッタ時
  分ニハ、是ハ困ッタモノダト思ッタ、增稅論
  バカリニ止マレバ宜イケレドモ、遂ニソレ
  ガ餘計ニ收入ヲ取ル者ヲ所謂羨ム、羨ムノ
  ガ今度ハ憎ム、此羨ミ憎ムト云フコトガ、
  今度變ッテ資本ヲ憎ム、恰モ共產主義ノ方ニ
  向ハントスルヤウナ形勢ガ見エタノデ、私
  ハ之ヲ酷ク心配ヲシテ居。タ、併シ實際一時
  ノ利得稅、臨時利得稅ト云フモノガ設ケラ
  レテカラト云フモノハ、此增稅ニ對シテ反
  對論ガ却テ起ッテ來テ、サウシテ今ノ私ガ
  思想ノ上ニ憂ヘテ居ッタ增稅論、ソレカラ資
  本ヲ憎ムト云フ、此事ガ消エタヤウニ感ズ
  ルノデアル、ソレ故ニ私ハ此稅法ト云フモ
  ノハ、矢張政治的ニ重キヲ置イテ來タモノ
  ダト、斯ウ解釋ヲ致シテ居リマスカラ、ド
  ウカ諸君モ其通リ御解釋ヲ願ヒタイ

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• 043・小笠原三九郎

  ○小笠原委員　ドウモ高橋大藏大臣ノヤウ
  ニ仰セラレルト、私是レ以上其事ニ付テノ
  質問ヲ申上ゲル勇氣ヲ失フノデアリマス
  ガ、或ハ此理由ニ付キマシテハ、藤井大藏
  大臣デモ九泉ノ下ヨリ起シテ來テ說明ヲサ
  セルノデナケレバ、滿足ナ答辯ハ得ラレヌ
  ノデハナイカト私ハ考ヘルノデアリマシ
  テ、此理由ニ對スル說明ハ暫ク求メナイコ
  トニ致シマス、ソコデ次ニ私ガ御伺致シタ
  イノハ、丁度御提出ニナッタ時機ニ付テノ問
  題デアリマスガ、是ハ能ク私共ハ高橋大藏
  大臣カラ御話ヲ伺ッテ居リ、常ニ其通リデア
  ルト考ヘテ居ルノデアリマス、是ハドウシ
  テモ此增稅ニ對スル實勢ハ、財界ノ實勢ガ
  整フコトヽ、ソレカラ又軍縮問題ノ見透シ
  ガ付イテ、陸海軍等ノ所要ノ國防豫算ノ見
  定メガ付イテ、國ノ財政計畫ガ樹ツ、斯ウ
  云フ時デナケレバナラナイ、斯ウ云フ風ニ
  絕エズ御示シノ時代ガアッタ、洵ニ其通リデ
  アルト考ヘルノデアリマスガ、ドウモ過日
  來何處デ伺ッテ見テ居フテモ、比財政計畫ノ
  前途ニ對スル見透シナルモノガ付イテ居ラ
  ヌ、ソレデ其際ニ又財界ノ實勢ハドウカト
  云フト、實勢モソコ迄行ッテ居ラヌ、斯ウ云
  フ時ニ此稅ヲ設ケラレルト云フコトハ、ド
  ウモ私其時機デナイノデハナイカ、成程部
  分的ノ增稅デアリマシテ、能ク總理大臣ガ
  說明サレルヤウナ工合ニ、是ハ一般的增稅
  デハナイ、部分的增稅ダカラト申サレマス
  ガ、部分的デアラウト何デアラウト、增稅
  ハ矢張國民ノ負擔ノ增加デアリマシテ、特
  ニ本稅ノ如クニ、第一ニ公正ノ點ガ甚ダ不
  備デアリ、不滿デアリマスト、一層サウ云
  フ感ジヲ私共有タナケレバナラヌノデアリ
  マス、私共思ヒマスルノニ、ドウモ此租稅
  ト云フモノハ、困難ナコトハ申スマデモナ
  イコトデアリマスガ、刑罰デモナイシ、又
  寄附金ヲスルト云フコトデモナイノデアリ
  マス、オ前ハ儲ケテ居ルカラ、一ツオ前ダケ
  課稅サセルゾト、斯ウ云ッタコトハ穩當デハ
  ナイノデアリマス、寧ロ斯ウ云フ風ナ財政
  計畫ノ下ニ、斯ウ云フ風ニ課稅ヲスルノダ
  ト言ッテ、何人ニモ公平ニ行クト云フコトガ
  一番宜イノデハナイカ、斯樣ニ思フノデア
  リマス、ソレデ今假ニ此稅ヲサウ云フ風ニ
  課稅セラルヽトスルナラバ-サウ云フ風
  ニ政治的ニ是ハ出シタモノダト云フヤウナ、
  政治的ト云フ言葉ニ無限ノ意味ヲ籠メテ仰
  セラレルトソレ以上御尋スル勇氣ガアリ
  マセヌガ、ソレナラバ矢張此金ノ方モ政治
  的ニ御使ヒニナリマシテ、農漁山村ト云フ
  方面ノ困窮ヲ救フ、サウ云ッタ施設、或ハ社
  會施設、サウ云ッタ方面ニ向ケラレルト云フ
  コトハ、私共ハ其政治的ノ議論カラ見ルト、
  當然デハナイカト云フ感ジガスルノデアリ
  マス、之ニ對シテ總理大臣ハ、屢〓-金ノ
  事ダカラ、入ッテ來ル金ニハ、何處へドウト
  云フ印ガアル譯デハナイト云ッタヤウナ、意
  味合ノ御話ガアリマスルケレドモ、ソレデ
  ハドウモ此稅ヲ御作リニナッタ目的カラ見
  テモ、私共ハ納得ガ出來兼ネルノデアリマ
  ス、高橋大藏大臣ハ、此金ハ政治的ニ、斯
  ウ云ッタ意味合デ取ルノデアルカラ、之ヲ農
  漁山村、其他ノ方面ニ振向ケルノデアルト
  云フヤウナ御考ヲ下サイマセヌデセウカ、
  如何デアリマセウカ、此點ヲ御伺申上ゲ
  マス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006711731X00619350207&spkNum=43

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• 044・高橋是清

  ○高橋國務大臣　農村、山村、漁村、此問
  題ニ付テハ臨時利得稅ヲ設ケタ其モノヲ、
  其方ニ振向ケルヤウナコトデハ迚モ收ラ
  又、私ハサウ云フ考ヲ起サナイ、是ハマダ
  將來ノ事デ分リマセヌケレドモ、今日ノ我
  國ノ狀態ヲ、又世界ノ形勢ニ併セ考へテ見
  マスト云フト、是ハ經濟上ノ事ハ一大革新
  ヲ起ス時勢ガ來テ居ルノダト思フ、ソレ故
  ニ時々總理大臣モ述ベラレル通リニ、審議
  會ト云フモノヲ設ケテ、サウシテ此處デ國
  策ヲ十分ニ〓究シ、サウシテ之ヲ實行シテ
  行カウト云フ考デ、ドウ云フコトガ出來上
  ルカ分ラヌケレドモ、私ハ至極其考案ハ宜
  イト思フ、但シ其仕組ト組織、ドウ云フ風
  ナ人ガ之ニ與ルカ、國民全般ノ-先ヅ多
  數ノ人ノ考ガ、成程ト合點ノ行クヤウナ人
  達ヲ以テ之ニ當リ、其方法モ成程ト思ハレ
  ルヤウナ方法デ、眞ニ國策ノ根本ヲ調べ、
  サウシテ其國策ノ遂行ヲ始終監督ヲシテ行
  キ、又始終其指導ノ任ニモ當ル、サウ云フ
  ヤウナ職責ヲ持ッタモノデ、此時勢ニ必要ナ
  -舊來ノ經濟機構其他ノモノヲ革新シナ
  ケレバナラヌ時勢ニナッタノダカラ、其時勢
  ニ應ズルヤウナ仕事ヲサセル機關デアルナ
  ラバ、私ハ至極宜イト思フ、斯ウ云フコト
  ヲ自分ノ考ニ持ッテ居リ、又其國策審議會ノ
  相談ガアッタ時ニモ、私ハサウ云フコトヲ述
  ベテ置イタ、ドウシテモ應急ノ事ハ、サウ
  云フコトヲ俟タズニシテ行カナケレバナリ
  マセヌ、唯全部應急ト云フコトデ行ッテハ、
  皆サンノ御承知ノ通リ、是ハ濟ム譯ノモノ
  ヂヤナイ、ドウシテモ根本的ニ之ヲドウス
  ルト云フ建直シヲシナケレバナラヌ、各國
  共ニ其點ニ付テハ皆苦心ヲシテ、又努メテ
  金モ使ヒ、努力モ惜シマズヤッテ居ル、殊ニ
  今日著シク目立ッテ居ルノガ亞米利加デア
  ル、此頃ハ又スッカリ經濟政策ガ變ッタヤウ
  デアル、是迄ハ一時我國デモ國民ハ、吾々
  ハ皆生存權ヲ有ッテ居ル、生存權ヲ有ッテ居
  ルノデアルカラ、國ガ養ハナケレバナラヌ
  ト云フヤウナ事ガ流行ッタ、是ハ矢張外國カ
  ラ流行ッテ來テ、我國ニ移ッテ來タ思想デア
  ル、今度亞米利加邊リガ變ヲタノハ、人間ノ
  生存權ト云フコトヲ言ハナクナッタ、働ク權
  利働ク權利ヲ有ッテ生レテ居ルノニ、仕事
  ヲ與ヘヌノハ國ガ惡イヂヤナイカ、斯ウ云
  フヤウニ變ッテ來テ居ル、サウ云フヤウニ段
  段變ヲテ來ルノデスカラシテ、今ノヤウナ國
  策審議會デ、眞ニ效果ノアラシムルヤウナ
  組織及組合セヲ拵ヘテ、實行シテ行カナケ
  レバナラヌ時機ガモウ來タ、其時ニ來テ居
  ル、サウ云フコトニ私ハ重キヲ置イテ居ル
  モノデアリマスルカラシテ、今政治的ニ出
  來上ッタ此一時ノ、臨時ノ-恆久ノ稅制ヂ
  ヤナイ、臨時ノ稅法ニ付テ、私ハ之ヲ取ッタ
  以上ハ困ッテ居ル所ニ移シタラ宜カラウト
  云フ考ハ、理窟ハサウカモ知レヌケレドモ、
  私ハサウ云フ考ハ浮バナイ

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• 045・小笠原三九郎

  ○小笠原委員　ソレデハ其問題ハ此程度ニ
  致シマシテ、今丁度臨時ノモノデアッテ、恆
  久ノモノデナイト云フ御話ガアリマシタカ
  ラ、其點ヲ一ツ伺ヒタイノデアリマス、是
  ハ臨時利得稅トアリマシテ、正シク恆久ノ
  モノデハナイト思ヒマスガ、之ヲ讀ンデ行
  クト、初年度ハ三千萬圓、平年度ハ四千萬
  圓、平年度ト云フ言葉ヲ使ッテアッテ、何ダ
  カ餘程先キ〓〓マデ取ラレルト云フ感ジヲ
  國民ニ强ク與ヘルノデアリマス、只今仰セ
  ノ如クニ、臨時ノモノデアルト云フ意味ヲ
  强メル爲ニ、私ハ此期限ヲ置イテ、實施年
  限ハ何箇年ト云フコトヲ、ハッキリシテ戴ク
  コトガ極ク、必要デアルト考ヘマス、一方
  ニ於キマシテ、サウ云フ實施年限ヲ置キマ
  スレバ-私共此不公正ノ案ハ、此儘デハ
  迚モイカヌト思ヒマスガ、假ニ此案ガ通リ
  マシタ場合ニ於キマシテモ、稅制ノ根本的
  整理ヲ其間ニ早クヤラナケレバナラヌト云
  フ、稅制整理促進ノ爲ニモナリマスノデ、
  斯ウ云フ意味合カラ以チマシテモ、私ハ年
  限ヲ茲ニ御定メニナルト云フコトガ、極ク
  必要デハナイカ、唯臨時デアルトカ、當分
  デアルト云フ、當分ト云フノハ當分デアル
  ト云フ御話ガアリマシテ、當分ハ當分デア
  リマセウガ、二年デアルトカ、三年デアル
  トカ、條文ニ施行年限ヲキチット決メルト
  云フコトデナケレバナラヌ、茲ニ大藏大臣
  ニ於カセラレテ、此當分ハ二年間ノ意味デ
  アル、三年間ノ意味デアルト云フコトヲ、
  ハッキリ仰シヤッテ戴キマスト、私共本案審
  議ノ上ニ大變便宜デアリマスガ、如何デア
  リマスカ

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• 046・高橋是清

  ○高橋國務大臣　此法案ニ年限ヲ定メルト
  云フコトモ、確ニ一ツノ考トシテ受取レマ
  スガ、今私ガ此處デ一人デ年限ヲ二年トカ
  三年ニ決メルト云フコトハ、御答ガ出來ナ
  イ、是ハ矢張閣議デ決ムベキ問題デアッテ、
  大藏大臣一人デ考ヘテ居ルコトガ、直グニ
  決マル譯デハナイノデスカラ、サウ云フ風
  ニ御承知ヲ願ヒマス

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• 047・小笠原三九郎

  ○小笠原委　其次ニ私ハ御伺致シタイノ
  ハ、此課稅ノ標準、基準ガ、昭和五六年ニ
  ナッテ居リマス關係上、俗ニ言ヒマス所謂金
  解禁恐慌時代ガ、丁度標準ニナッテ居リマ
  スノデ、最モ惡イ時節デアリマスカラ、其
  標準ニ基イテ御取リニナルト、實際森田君
  ガ昨日モ言ハレマシタガ、私共ノ計算デモ
  六千萬圓以上、一億ニ達スルデアラウト私
  ハ見テ居ルノデアリマス、ドウモ此稅ヲ御
  取リニナル時分ニハ、-歷代稅ヲ御取リ
  ニナル方ハ、何時モサウデアリマスガ、何ダ
  カ自然增收デモアルト、自分ノ功ノ如ク考
  六つ、成ベク稅ヲ低ク見積ッテ置ク、稅收入
  ヲ少ク見積ッテアルト云フ弊ガアルノデア
  リマス、此問題ニ付テモ、昨日戴イタ表ニ
  依リマスト、例ヘバ昭和八年度ノ法人ノ利
  益ト云フモノガ、十億七千七百萬圓、約十
  億八千萬圓、今度昭和十年度分ニ、稅ヲ
  取ル基準デ御出シニナッタノハ、十億三
  千三百萬圓トナッテ、昭和八年度カラ比
  ベテ、尙ホ四千四百萬圓モ減ッテ居ル、
  私共常識カラ考ヘテ見テ、ドウシテモ
  十二三億ハ、少クトモナケレバナラヌト
  私ハ思フノデアリマス、必ズ十二三億ハ
  アルノデアリマス、ソレヲ稅ヲ取ル時分
  ニハ、『斯ウ云フ風ニ低クヽシテ置イテ、
  今度ハ稅ヲ取ラズニ、關係ノナイヤウナ
  表ヲ拵ヘル時ニハ、斯ウ云フヤウナ表ヲ御
  出シニナル、是ハドウシテモ、當局者トシ
  テ少シ駈引ガアルノデハナイカ、サウシテ
  自然增收ト云ッタヤウナコトデ、國民ノ上ニ
  重イ負擔ヲ投ゲ掛ケラレルト云フヤウナコ
  トニナルノデハナイカ、私ハ此點ガ國民ガ
  今日ノ稅ノ中デ一番恐レテ居ル所デアラウ
  ト思フノデアリマス、能ク聞イテ極樂見テ
  地獄ナドヽ云フガ、本案ナドハ恐ラク實際
  ニヤラレテ見タナラバ、實際地獄ニナルノ
  デハナカラウカト思フノデアリマス、少ク
  トモソレデナイマデモ、看板ニ僞リガアル
  ト云フコトハ、私ハ間違ガナイト思ヒマ
  ス、初年度ニハ三千萬圓取ル、平年度ニハ
  四千萬圓ダト言ハレテ居ルガ、若シサウ云
  フコトデアレバ、今後三千萬圓以上取ッタ
  ラ本年度ハ還ス、四千萬圓以上取ッタラ還
  スト云フ御約束ヲ下サッテ、稅法中ニサウ云
  フ御規定ヲ御設ケ下サルナラバ洵ニ結構デ
  アリマスガ、恐ラクサウ云フ規定ヲ御出シ
  ニナル御考ハアリマスマイト思ヒマス、サ
  ウスルト何時モ稅務當局者ノヤリ方ハ、ド
  ウモ課稅スル元ノ基礎數字ハ少クシテ居
  ル、斯ウ云フコトガ窺ハレルノデアリマス
  ガ、此點ニ付キマシテハ高橋大藏大臣ハ、
  恐ラク昭和八年ヨリ昭和十年ノ法人所得ガ
  減ッテ居ルトハ御考ニナルマイト思ヒマス
  ガ、如何デゴザイマスカ、昭和八年度ヨリ
  四千四百萬圓モ減シテ稅ノ基礎ニシテ居ル
  ト云フコトハ、私ハ穩當デナイト考へルノ
  デアリマス、少クトモ私ハ法人ノ利益ハド
  ウシテモ是ハ十二三億デ、昭和八年度ヨリ
  モ二三億殖エテ居ルト云フコトハ間違ナイ
  ト考ヘルノデアリマスガ此點ニ付キマシ
  テ、高橋大藏大臣ノ財界ヲ逹觀セラレテノ
  御見込ハ如何デアリマセウカ、御伺致シタ
  イト思ヒマス

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• 048・高橋是清

  ○高橋國務大臣　是ハヤハリ政府委員カラ
  御答シタ方ガ宜カラウト思ヒマス

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• 049・石渡莊太郎

  ○石渡政府委員　只今ノ御尋ノ十億七千七
  百萬圓ト云フ數字ト、ソレカラ昭和十年度
  ノ第一種所得見込金額ノ十億三千三百萬圓
  ト云フ數字ハ、昨日モ森田サンカラ御尋ガ
  ゴザイマシテ、斯ウ云フ紛ハシキ數字ヲ御
  說明シナイデ差出シマシタコトハ、甚ダ恐
  縮デゴザイマスガ、昨日モ申上ゲマシタ通
  リ、此法人數、拂込資本金額、積立金額及利
  益金額調ト申シマスル表ハ、其年ノ一月一
  日カラ十二月三十一日迄ニ終リマシタ、其
  會社ノ總テノ拂込資本金額、積立金額及利
  益金額ノ總體ヲ合計致シマシタ表デアリマ
  シテ、隨ヒマシテ稅務署デ課稅ヲ致シテ居
  ル所得ニ限ッテ居ナイノデアリマス、隨ヒマ
  シテ之ニハ製鐵業ノ所得デアルトカ、國債
  ノ利子デアルトカ、サウ云フヤウナ課稅ヲ
  シナイ所ノ所得一切ヲ引括メマシタ額デゴ
  ザイマス、ソレカラ一方ノ第一種所得見込
  金額ト申シマスル方ハ、是ハ課稅ヲ致シマ
  スル所得ノ實體デゴザイマス、隨ヒマシテ
  此方ガ減ッテ來ルト云フコトハ、是ハ當然デ
  ハナカラウカト存ジテ居リマス、然ラバ昭
  和八年度ニ課稅致シマシタ、第一種ノ所得
  決定ノアリマシタ其法人ノ所得ハ幾ラアル
  カト、斯ウ云フコトハ、モウ一表出テ居リ
  マシテ、ソレハ昭和八年度ハ七億八千八百
  萬圓、斯ウ云フ數字ガ出テ居リマス、本年
  ノ第一種所得稅ノ見込ハ、昭和八年度ニ對
  シマシテ三割增ヲ見込ミマシテ、サウシテ
  十億三千三百萬圓ト、斯ウ云フ數字ガ出テ
  居リマスノデ、此十億三千三百萬圓ニ付キ
  マシテハ、只今モ豫算分科會ニ於キマシテ
  見積ガ多過ギヤシナイカト、斯ウ云フ御尋
  ノアリマシタ數字デアリマスノデ、隨ヒマ
  シテ此十億七千七百萬圓ト十億三千三百萬
  圓トハ、數字ノ根據ガ違ッテ居リマスノデ、
  其點ハ一ツ御諒承ヲ願ヒタイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006711731X00619350207&spkNum=49

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• 050・小笠原三九郎

  ○小笠原委　一應其說明デ分リマシタ
  ガ、併シ尙ホ私共ハ、此基礎數字ハサウ云
  フ反對ノ意見ガアッタカモ知レマセヌガ、事
  實ニ於キマシテハ全ク少ナ過ギル、稅金ハ
  今ノ初年度三千萬圓、平年度ハ四千萬圓デ
  ナクシテ、恐ラク六千萬圓乃至一億ニ達ス
  ルデアラウ、サウ云フコトヲ、私共ハ色々
  ノ數字ニ基イテ、是ハ信用シテ疑ハナイ者
  デアリマス、サウ云フ風ニ今後若シ餘計御
  取リニナッタラ、是ハ稅ガ苛斂誅求ト云フ
  譯ニナルノデゴザイマスカラ、政府ノ方デ
  自然增收ト云ッテ御喜ビニナルト、大變違
  フト思ヒマスノデ、私一寸此點ヲ申上ゲテ
  置キマス、其次ニ御伺致シタイノハ、昨日
  本委員會ニ於キマス大藏大臣ノ御答辯ノ中
  デゴザイマシタカ、本稅ト云フモノハ富メ
  ル者カラ、儲ケテ居ル者カラ取ルノデア
  ルカラ、是デ幾ラカ貧富ノ感情ヲ和ゲルト
  云フ、斯ウ云フ御話デゴザイマシテ、私共
  モ御尤ト存ジマス、併ナガラサウ云フ貧富
  ノ感情ヲ和ゲルト云フナラバ、サウ云フ富
  メル者カラ取ッタモノハ、寧ロ是ハ社會政
  策的施設ノ方面ニ向ケルトカ、或ハ時局匡
  救ノ爲ニ必要ナル方面ニ向ケルトカ、直接
  サウ云ッタ方面ニ此金額ヲ振向ケルト云フ
  コトガ、理窟カラ云ッテ當然ノコトデナケ
  レバナラヌト考ヘルノデアリマスガ、豫算
  ノ何處ヲ見マシテモ、社會政策ノ費用ガ殖
  エタト云フ所ハゴザイマセヌ、サウシテ時
  局匡救費ト云フモノガ、非常ナ削減ヲ受ケ
  テ居ルコトハ各所デ言ハレテ居ル通リデア
  リマス、私ハサウ云フ貧富ノ感情ヲ和ゲル
  一種ノ社會政策的意味モ籠ッテ居ルノデア
  ルト云フコトデアリマスナラバ、此金モサ
  ウ云フ方面ニ御使ヒ下サイマシテ-特ニ
  此金ト云フモノハ臨時デアル、臨時ノ金デ
  アリマスカラ、臨時ノ金ヲサウ云フ方面ニ
  御使ヒニナッテ、貧富ノ感情ヲ緩和願フト云
  フコトガ、一番宜シイト思フノデアリマス
  ガ、之ニ對スル大藏大臣ノ御考ハ如何デゴ
  ザイマスカ

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• 051・高橋是清

  ○高橋國務大臣　是ハ先般來一二囘サウ云
  フ御質問ガアッテ、御答ヲシテアル筈デアリ
  マスケレドモ、國庫ニ收入シタモノハ、矢
  張是ガ農村其他地方救濟事業ニ入ッテ居ラ
  ヌカト云フト、居ルトモ言ヘルシ、居ラヌ
  トモ言ヘル、明ニハ言ヘナイ、一ツノ金ニ
  ナッテ居ル、ソレナラバ結局何處ニ影響シ
  テ居ルカ、若シ此金ガ是ダケナケレバ、是
  ダケ矢張公債ノ發行ガ殖エルコトニナル、
  公債ノ方ニ響イテ居ルトハ確ニ言ヘマス
  ガ、此金ガ農村ノ方面ニ行ッテ居ラヌト云
  フ風ニハ、ドウモ言ヘナイ

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• 052・小笠原三九郎

  ○小笠原委員　モウ一ツ質問シテ午前中ノ
  質問ヲ終リタイト思ヒマス、大藏大臣ニ對
  スル質問ヲモウ一ツダケ致シテ、午後ハ政
  府委員ニ對スル質問ヲ私ハ致シタイト思ヒ
  マスガ、此法案ニ依リマスト、時局ノ好影
  響ニ因リ儲ケタ者云々ト云フコトニナッテ
  居リマス、此時局ノ影響ト云フ言葉ガ私共
  分リ兼ネルノデ、分ッタヤウデ分ラヌ、是
  コソ大藏大臣ノ言ハレル政治的ニ解釋シナ
  ケレバナラヌカト思ヒマスガ、併シ誰シモ
  軍需工業ト云ッタヤウナ事柄ハ、是ハ軍事費
  ノ厖大シテ居ル所カラ、時局ノ影響ヲ受ケ
  ルト云フコトハ分ルノデアリマス、又爲替
  安ニ依ッテ輸出工業ト云フモノガ影響ヲ受
  ケテ居ル、是ハ爲替安ニ依ッテ能ク言ハレ
  テ居リマスカラ分ルノデアリマスガ、併シ
  其他ノモノモ入ッテ居リマスノデ、此點ハ
  後デ政府委員ニ御質問申上ゲマスケレド
  モ、此處デ私ノ御伺致シタイノハ、此軍需
  工業ノ點ハ姑ク措キマシテ、爲替安ニ因ル
  時局ノ好影響ト云フモノハ、何時頃マデ續
  クモノデアラウカト云フコトデアリマス、
  勿論此爲替安ガ、一方デ日本ノヤウナ國柄
  ハ、輸入原料ガ高クナリマスシ、漸次國內
  ノ物價モ高クナッテ參リマセウカラ、サウ長
  ク續クモノデハナカラウト考ヘルノデアリ
  マスガ、高橋大藏大臣ハ、國際經濟ニ對ス
  ル非常ナ見透シヲ御持チニナッテ居リマス
  カラ、此機會ニ日本ノ斯ウ云フ時局ニ因ル
  好景氣ト云フモノガ、何時頃マデ續クカト
  云フ御見込ヲ承リマシテ、私ハ大藏大臣ニ
  對スルダケノ質問ヲ終リタイト存ジマス

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• 053・高橋是清

  ○高橋國務大臣　外國ニ對スル貿易上ノ見
  透シト云フモノハ、附ケタイト思フケレド
  モ中々附カナイ、ト云フノハ、此節デモ御
  承知ノ通リ、矢張亞米利加ナドハ、輸出先
  トシテハ我國ノ好得意デアル、ケレドモ是
  ハ始終政策ガ變ッテ、矢張或ハ「コーターシ
  ステム」デモ、割當制度デモ、アレニ近イ
  制度ヲ行ハナケレバナラヌ、又困ルコトニ
  ハ亞米利加合衆國ナラ合衆國ダケヲ見テ、
  合衆國ノ貿易ノコトヲ考ヘテ宜イカト云フ
  ト、サウモ行カヌ、ソレハ中央亞米利加、
  南米、是等ニ對シテ日本ノ品物ヲ買ハズニ、
  俺ノ品物ヲ買ヘヨ、其代リ一方ニ於テハ斯
  ウ云フ便利ヲ與ヘテヤル、斯ウ云フ蔭ニ於
  テノ働キガ始終アル、是等ガ成功スルト、
  折角我國ガ南米ヤ何カニ安イ物ヲ持ッテ行ッ
  テモ、向フハ品物ヲ國交ノ關係上買ッテ吳レ
  ナイ、自分ノ國トノ經濟關係、サウ云フ點ニ
  於テ自國ノ消費者ニ取ッテハ不利ダケレド
  モ、國全體ニ取ッテハ消費者ノ利益ヲ見テ居
  ル譯ニハ行カヌト云フコトデアルガ、併シ
  國交ノ親善ヲ圖ル爲ニ、却テ一般國民ノ利
  益ヲ犧牲ニスルコトハ出來ナイト思フ、サ
  ウ云フ譯デアリマスカラ、私ハ初メカラ外
  國貿易ハ實ニ大切ナモノデアルケレドモ、
  外ガサウ云フ譯デアリマスカラ、外國貿易
  ヲ十分ニ信賴スルコトハ出來ナイ、故ニ我
  國トシテハヤハリ自給自足ト云フコトニ心
  掛ケテ、外國貿易ノコトハ第二次ニ置イテ
  考ヘナケレバナラヌト言ウテ居ルノデアリ
  マス、將來爲替ダケ、安イカラト云ッテ安心
  シテ居ル譯ニ行カヌ、今能ク雜貨ガ出ルト
  云ッテ、是モ安心シテ居ル譯ニ行カナイ、
  斯ウ云フコトハ長ク世界ニ續イテ居ル譯ハ
  ナカラウト思フ、サウ云フコトヲヤッテ居
  ル國ハ、皆双方共不自由ヲシ、双方共ニ結
  局損ニナルカラ、長ク續ク譯ノモノデハナ
  カラウト思フ、併シ一時目前ノ急ニ迫ッテ、
  ドウモ已ムヲ得ヌカラ、自分ノ方ノ國ノ斯
  ウ云フモノヲ犠牲ニシテ、斯ウ云フ方デ利
  ヲ得ヨウ、詰リ利ノ爭デアルカラ、中々見透
  シガ付キマセヌ、デスカラ當業者ガ自ラ始
  終用心スルト云フコトガ一番大切ニナッテ
  來タ、資本家モ、工業者モ、商賣人モ、始終
  用心ヲ自分デセネバナラヌ、人賴ミハ出來
  ナクナッテ來タ、ソレダケ申上ゲテ置キマ
  ス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006711731X00619350207&spkNum=53

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• 054・中村繼男

  ○中村委員　材料ノ點デ一寸御願致シマ
  ス、委員長ヲ通ジテ斯ウ云フモノヲ出シテ
  戴キタイト思フ、昭和九年一月カラ十二月
  迄ニ決定シタル法人ニ付テ、臨時利得稅ノ
  見積ガドウナルカ、是ハ昨日デシタカ、當
  局ノ御說明ニ依リマスト、今ノ三千萬圓、四
  千萬圓ト云フモノハ、昭和八年ノ下カラ九
  年ノ上ニ決定シタモノヲ、大體標準ニシテ
  居ラレルヤウデアリマス、九年一月カラ十
  二月ト云フモノデ見レバ、大分正確ナモノ
  ガ出ルノデハナイカト思フガ、九年一月カ
  ラ十二月マデニ御決定ニナッタ法人分ニ付
  テノ臨時利得稅、個人ハ九年分デ宜シイ、之
  ヲ御願スル、モウ一ツ第二ノ問題トシテ稅
  率ヲ平均一割トシテ、稅金ヲ御出シニナッテ
  居ルノデアリマスガ、其稅率ハ七分ヲ適用
  スルモノ、七分未滿ノモノハ七分ヲ適用ス
  ルト云フコトニナッテ居リマスカラ、七分未
  滿ノモノニ付テハ七分ヲ適用シ、七分以上
  一割マデノモノニ付テハ一割ヲ適用シ、
  割ヲ超過スルモノニ付テハ一割五分ノ稅金
  ヲ取ル、斯ウ云フコトニシテ、稅金ヲ計算
  致シマシタナラバ、ドウ云フ金額ニナルカ、
  是ダケ委員長カラ政府ノ方ニ御要求願ヒマ
  ス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006711731X00619350207&spkNum=54

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• 055・岡田忠彦

  ○岡田委員長　政府ニ御願致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006711731X00619350207&spkNum=55

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• 056・石渡莊太郎

  ○石渡政府委員　只今御要求ニナッタ表ハ、
  短時日ノ間ニハ調製ガ難カシイノデハナカ
  ラウカト考ヘテ居リマス、出來ルダケヤル
  コトニハ致シマスガ、何ニ致セ此昭和八年
  八月ヨリ昭和九年七月末迄ニ決定致シマシ
  タ其實績ニ於キマシテ、幾ラ稅金ガ此稅法
  デ取レルカト云フコトヲ算出致シマシタノ
  ニ、實ハ一二月ヲ要シタヤウナ次第デアリ
  マスノデ、法人ニ付テ一々當ッテ行カナケ
  レバイケマセヌカラ、是ハ只今御要求ノ表
  ハ、容易ニ出來難イノデハナカラウカト思
  ヒマスガ、出來得ル限リ一ツ、或ハ達觀ヲ
  以テヤッテ見ルカモ知レマセヌガ、其點ハ
  御諒承願ヒマス、第二ノモノモ極メテ難カ
  シイ表デアリマス、或ハサウ云フ部分ヲ取ツ
  テナイカト思ヒマスガ、是モ或ハ達觀ヲ以
  テヤル問題カモ知レマセヌ、一應暫ク御待
  チヲ願ヒタイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006711731X00619350207&spkNum=56

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• 057・岡田忠彦

  ○岡田委員長　ソレデハ是デ休憩致シマシ
  テ、一時半カラ再開致シマス
  午後零時二十分休憩
  午後一時五十九分開議

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006711731X00619350207&spkNum=57

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• 058・松村光三

  ○松村委員長代理　是ヨリ引續キ會議ヲ開
  キマス-小笠原君

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006711731X00619350207&spkNum=58

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• 059・小笠原三九郎

  ○小笠原委員　大藏大臣ノ御都合モアラセ
  ラレルサウデゴザイマスカラ、私ノ質問ハ
  少シク留保致シマシテ、大藏大臣ニ對スル
  質問ヲ同僚ノ大山君ニ御願致シテ、其大山
  君ノ大藏大臣ニ對スル質疑ヲ終了次第、私
  ガ政府ニ質疑ヲスルコトノ御許シヲ願ヒタ
  イト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006711731X00619350207&spkNum=59

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• 060・松村光三

  ○松村委員長代理　承知シマシタ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006711731X00619350207&spkNum=60

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• 061・大山斐瑳麿

  ○大山委員　私ハ大藏大臣ニ對シマシテ一
  言御尋申上ゲタイ、、高橋大藏大臣ハ前カラ、
  昭和七年ノ時カラ減債基金ノ繰入ヲ停止ニ
  ナノフ、爾來其方針デ見エテ居ル、是ハ當分
  矢張減債基金繰入ノ停止ハ、續ケテオヤリ
  ニナル御積リデアリマセウカ、詰リ廢止ノ
  狀態ニ置カレル譯、ソレカラ今一ツハ、本
  年度ノ豫算ニ於キマシテモ、特別會計ノ減
  債基金マデモ繰入ニナッテ居ルヤウニ吾々
  ハ拜聽致シテ居リマス、是等ニ對スル高橋
  大藏大臣ノ御意見ヲ伺ヒタイト思ヒマス

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• 062・高橋是清

  ○高橋國務大臣　減債基金ハ、歲出ガ多ク
  テ公債ヲ募集セネバナラヌト云フ時ニ當ッ
  テ、一方デ公債ヲ起シ、又減債基金ニ繰入
  レル金マデモ公債ヲ起スト云フコトニナリ
  マスルカラ、當分減債基金ト云フモノハ、
  巳ムヲ得ヌ外國ニ對スル義務ヲ果ス爲ニ止
  メテ、內地ノ公債ハ當分見合ハセルト云フ
  コトデ、アレハ止メタノデス、故ニ總テノ
  狀況ガ恢復シ、好クナッテ來レバ、減債基金
  ト云フモノハ、ドウシテモ元ニ復シテ、段
  段ト國債ヲ減ラシテ行クト云フ方針ヲ執ル
  ト云フコトハ方針トシテハ變ラナイ、特別
  會計ニ致シマシテモ、矢張減債基金ノ全部
  ヲ取ラズニ、慥カアレハ三分ノ一減債基金
  ハ今日デモ取ッテアッテ、外國ノ公債ノ償還
  ニ充テル譯ニナッテ居ルダラウト思フ、其割
  合デ矢張特別會計カラモ入レテ居ッタノデ
  ス、今後特別會計ニシテ若シ餘裕ガアッテ、
  從前ノ割合デ減債基金ノ爲ニ繰入ガ出來ル
  ナラバ、ソレハ繰入レサセタイト云フ考ヲ
  有ッテ居リマス、先ヅ減債基金ヲ十分ニ取ル
  ト云フコトハ、今日ノ赤字公債ヲ出シテ行
  カネバナラヌ此場合ニ於テハ今考ヘラレナ
  イ、併シ少シモ早ク減債基金ニ備へ、段々ト
  殖ヱテ居ッタ公債ヲ減ラシテ行クコトハ希
  望シテ居ル、是モヤハリ財界一般ノ景氣ガ
  恢復シ、歲出ニ對シテ今ノヤウナ赤字公債
  ヲ出ス必要ガナクナルト云フ時デナイト、
  此問題ハ考ヘラレナイ、ソレ迄ハ殘念ナガ
  ラ今日ノ狀態デ進マナケレバナラヌト思フ

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• 063・大山斐瑳麿

  ○大山委員　サウ致シマスト、大藏大臣ノ
  御見込ト致シマシテハ、當分減債基金制度
  ノ復活ハ望マレナイヤウナ結論ニナリハシ
  ナイカト思フ、此點ニ對シマシテハ如何デ
  アリマセウカ

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• 064・高橋是清

  ○高橋國務大臣　其通リデアリマス、赤字
  公債ガ見透シガ付イテ是ヨリ殖エナイ、段
  段減ルバカリト云フコトニナリマスレバ、
  又其時分ニハ考ヘル、而シテ又財界ノ狀態
  ガ段々ト收入ガ殖エルト云フ景氣ニナッテ、
  初メテ考慮スベキ問題ダト考ヘマス

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• 065・大山斐瑳麿

  ○大山委員　此減債基金制度ノ設定ノ當時
  ニ於ケル高橋大藏大臣ノ御意見ハ、サウ云
  フヤウナ御意見デハナカッタヤウニ私ハ承ッ
  テ居ル、一體借金ヲスルノニ返ス當ノナイ
  借金ヲシヨウト云フコトガ無理ヂヤナカラ
  ウカ、今健全財政主義ヲ前藤井藏相ガ御執
  リニナッタ、健全財政主義ノ最モ看板ニナッ
  タコトハ、卽チ赤字公債ノ漸減、斯ウ云フ
  コトヲ主唱サレテ居リマシタ、今ノ高橋大
  藏大臣ノ御意見ニ從フト、此赤字公債ハ、
  今迄吾々ノ同僚ガ御尋シマシタ其御答辯ニ
  對スルコトカラ見マシテモ、當分此赤字公
  債ナルモノハ克服ノ見込ハ付キ兼ネルトシ
  テ見マシタナラバ、減債基金制度モ今ノ大
  藏大臣ノ御意見カラ割出シテ行キマスル
  ト、當分是ハ囘復ノ見込ハナイ、サウスル
  ト當分我國ノ國債ナルモノハ、償還ノ方針
  ナキ條件ノ公債ニナッテシマヒハシナイ
  カ、紙幣ヲ發行スルニ付テモ、一方ニ準備
  ガアッテ紙幣ガ發行出來ル、信用ノ維持ガ
  出來ル、公債ノ市場性ヲ非常ニヤカマシク
  言ッテ居ラレマスルガ、償還ノ方法ガ立タ
  ナイデ、國債ニ對スル信用ノ維持、市場
  性ノ維持ト云フコトヲ望ミ得ラレマセウ
  カ、ドウデアリマセウカ、今大藏大臣ハ
  外國ノ公債ニ對スル云々ト云フコトヲ言ハ
  レマシタ、而シテ內地債ニ對シテハ償還ノ
  方法ヲ顧慮スル暇ガナイ、斯ウ云ッタヤウ
  ナ口吻デゴザイマシタ、成程外國ニ於テ募
  集シマシタ公債ト、日本內地ニ於ケル國債
  トハ違ヒマス、違ヒマスケレドモ、若シサ
  ウ云フ御方針デアルトスルナラバ、今吾々
  ノ前ニ與ヘラレテ居ル所ノ赤字財政ニ關ス
  ル法律、及此臨時利得稅ニ對スル法律案ニ
  付テ、吾々ノ考慮スベキコトハ餘程違ッテ
  來ハシナイカ、此點ニ關シマシテ今少シー
  -ソレ共市場ノ變化ニ依ッテ心境ノ御變化
  ヲ來サレタノデアリマスルカドウカ、減債
  基金制度設定當時ノ御考ト現在ノ御考ト、
  大分吾々ガ承ッテ居ル所デハ開キガアルヤ
  ウニ思ヒマスルガ、モウ一應此點ニ付テノ
  御明答ヲ煩シタイト思ヒマス

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• 066・高橋是清

  ○高橋國務大臣　減債基金ト云フモノニ付
  テノ御考ガ少シ私ト違フ、抑〓減債基金ヲ置
  クヤウニナッタノハ、今御話ノ通リ日露戰爭
  ノ後、私ガ歐米ノ其當時日本公債ニ關係ヲ
  有ッタ有力ナル財界ノ人々ノ意見ニ依ッテ是
  ガ起ッタモノナノデス、ソレハ斯ウ云フ譯、
  彼等ハ日露戰爭ノ後ニハ、日本ガ連戰連勝
  ノ中ニアッタノダカラ、定メシ露西亞カラ
  相當ノ償金ヲ得ルデアラウ、ソレガ一ツ
  ノ日本公債ニ應ジタ人達ヘノ安心デアッ
  ク、然ルニ「ポーツマス」ノ談判ノ結果一文
  モ償金ガ取レナカッタ、ソコデ資本家、就
  中倫敦ノ「ロード·ロスチヤイルド」ガ最モ
  親切ニ懇々ト私ニ話シテ、其私ニ話シタコ
  トヲ日本政府ニ傳ヘテ貰ヒタイト云フコト
  デアッタ、ソレハ斯ウ云フコトナノデス、
  體日本政府ガ是程ノ多額ノ公債ヲ、獨リ倫
  敦バカリデハナイ、英國ニ於テモ、佛蘭西ニ
  於テモ、獨逸ニ於テモ、殆ド世界ノ大國ニ
  向ッテ此公債ヲ皆募集シテ成功シタ、併シ此
  成功シタノヲ以テ、俄ニ日本政府ノ信用ガ
  世界ニ認メラレタノダト思ッタラ間違デア
  ル、日本政府ノ經濟的ノ信用ト云フモノハ、
  今漸ク其芽ガ生エタ所デアル、是ニ於テ公
  債所有主ニ安心ヲ與ヘナケレバナラヌ、其
  安心ヲ與ヘルノニハ、何トシテモ日本ノ國
  ノ產業ヲ盛ニシテ、富ヲ興スト云フコトガ
  一番根本デアル、聞ケバ日露戰爭ノ爲ニ、
  隨分日本ノ國民ハ臨時ニ重キ稅ヲ課セラレ
  テ居ル、此重荷ヲ背負ッテ尙ホ將來日本ノ
  國民ガ國ノ富ヲ殖ヤス爲ニ、山坂ヲ是カラ
  登ラナケリヤナラヌ、此重荷ヲ背負ッテ此坂
  ガ登レルカ、若シ重荷ガ多過ギテ、此將來進
  ンデ行ク山坂ガ登レヌト云フナラバ、第
  ニドウカ減稅ヲシテ貰ヒタイ、國民ノ負擔
  ヲ輕クシテ、其困難ナ山坂ヲ容易ニ登リ得
  ルヤウニシテ貰ヒタイ、是ガ第一ノ日本政
  府ノ公債ヲ持ッテ居ル外國人ノ安心ノ一ツ
  デアル、ト云フノハ、ソレ程ニナレバ日本ノ
  前途ニ對シテノ希望ガ起ッテ來ル、失望ハシ
  ナイ、是カラノ日本ハ好クナルノダト云フ
  希望ヲ有タセル、若シ幸ニシテ日本ノ人ガ、
  此重荷ヲ背負ッテモ是等ノ山坂ガ登レル、
  登ッテ行ケルト云フ忍耐ト勇氣トガアルナラ
  バ、之ニ越シタコトハナイ、其場合ニハドウ
  カ減債基金法ヲ設ケテ貰ヒタイ、減債基金
  ハ第二ノ條件デアル、サウシテ此每年幾ラ
  カヅヽナリトモ還スト云フコトヲシテ貰ヘ
  バ、日本政府ノ公債ヲ所有シテ居ル人ハソ
  レデ安心スル、兎ニ角公債所有者ニ安心ヲ
  與ヘルト云フコトガ、此際日本政府ノ信用
  ヲ維持スル上ニ於テ最モ大切デアル、斯ウ
  云フコトデアッタ、ソレデ政府ニ其事ヲ取次
  イデ、始メテ茲ニ減債基金制度ト云フモノ
  ガ出來タ、故ニ減債基金ノ起リト云フモノ
  ハ、公債所有者ニ安心ヲサセルト云フノガ根
  本ノ目的デアル、外國ノ公債ニ對シテノ減
  債基全ヲ今デモ繰入レテ居ルト云フノハ、
  是ハ卽チ外國人ノ日本ノ公債ヲ持ッテ居ル
  人々ニ安心ヲ與ヘテ行クコトヲ續ケテ居ル
  ノデアル、卽チ外國ニ對シテ日本政府ノ財
  的信用ヲ維持スル一ツノ原因ニナッテ居ル、
  是ハ契約ニモナッテ居ル、之ヲ今我國ガ契約
  違反スルト云フヤウナ必要モナシ、是ハ出
  來ルダケ續ケテ行カニヤナラヌ、ソコデ今
  度內地ノ方ハ、今ノ御話ニ依ッテ見ルト、還
  ス目的ガナクテ借リッ放シダト云フヤウナ
  コトデアルガ、國債ト云フモノハサウハナ
  ラヌ、國債ヲ背負フモノハ矢張國民デアル、
  故ニ有價證劵トシテ、先ヅ國債程確ナモ
  ノハ、其國民ノ持ツモノトシテハナイ筈デ
  アル、ソレ故ニ減債基金ト云フモノガナ
  イ、每年借リルバカリデ還スコトガナイト
  云フノデ、日本ノ國民ガ此公債ヲ危險視シ
  テ持タナクナルト云フコトニナレバ、是ハ
  別ナ話デアルケレドモ、今日ノ情勢デハサ
  ウ云フコトハナイノデアル、ソコデ減債基
  金ヲ置クト云フコトハ、剩餘金ノ生ズル場
  合デナケレバ置ケナイモノデアル、一方八
  公債ヲ募ッテ、其募ッテ得タ金ヲ以テ一方デ
  公債ヲ還ス、是ハ期限ノ來タモノハ仕方ガ
  ナイ、償還期限ノ來タモノハ、サウ云フ手
  續ヲ取ラナケレバナラヌガ、償還期限ノ來
  ナイモノヲ一方デ還シ、還ス金ハ剩餘金デ
  ナイ、新ニ又公債ヲ出シテ募ラナケレバナ
  ラヌト云フ、內國債ニ付テサウ云フコトヲ
  スル必要ハ恐ラクナイ、私ハマダ日本ノ國
  民ガ日本政府ノ公債ニ付テ、還ス目途ガナ
  イカラ是ハ危險ダト云フ考ヲ懷ク者ハナカ
  ラウト思フ、ト云フノハ國民ノ是ハ義務デ
  アル、國民ノ借財デアル、銘々ノ負擔スベキ
  モノデアル、サウシテ又株劵ヨリ何ヨリ
  番信用ヲ置イテ宜イモノデアル、責任ハ全
  體ノ國民、現在ノ國民、將來ノ國民、總テ
  是ハ負擔スベキモノデアルカラ、是程確實
  ナモノハナイノデアル、ソレ故ニ必ズチヤ
  ント還ス目途ガナイカラ借リチヤナラヌト
  云フ性質ノモノデハナイ、サウ私ハ心得テ
  居ル

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• 067・大山斐瑳麿

  ○大山委員　國債ニ對スル減債基金設定ノ
  コトニ付テハ、今大藏大臣ノ御話ノヤウナ
  コトハ、私共ハ度々大藏大臣御自身カラ承ッ
  テ居リマス、設定ノ當時ノ事情、其當時高橋
  サンガ外國ニ行カレテ、募債ヲサレタ御苦
  心、ソレ等ノコトハ能ク伺ヒマシタガ、併シ
  外國人ノ國債應募者モ、內國人ノ國債應募
  者モ、其國債應募者ノ心理狀態ハ同ジコト
  ダラウト思フ經濟的ニ考ヘマスルナラバ、
  矢張是ハ償還年限ガ書イテアリマシテモ、
  其償還年限ニ一定ノ標準ヲ設ケテ、是ガ年
  年歲々何分カノ償還ニ對スル積立ガアル、
  斯ウ云フコトガアルノト、是ガナイノトハ、
  如何ニ大藏大臣ガ俺ノ發行スル公債ハ立派
  ナモノデアルト仰シヤッテモ、市場ニ對シ
  テ、之ガ市場ノ消化力ニハ餘程ノ影響ガア
  ルモノト私ハ考ヘル、此點ニ付テハ或ハ見
  解ノ相違ニナルカモ知レマセヌケレドモ、
  ソレハドウシテモ國債ノ價格ト云フモノニ
  影響スル譯デアッテ非常時局ノ際已ムヲ得
  ズ私共ハ、昭和七年ノ減債基金停止ノ高橋
  サンノ財政々策ニ吾々ハ共鳴致シタ譯デア
  ル、考ヘテ見マスレバ、成程仰シヤイマス
  ヤウニ、一方ニ國債ヲ多額ニ募集シツヽ、
  一方ニソレノ利息マデモ矢張公債デヤル、
  借金ニ重ヌルニ借金ヲ以テスルト云フコト
  ハ、是ハ宜クナイコトニハ違ヒアリマセ
  ヌ、併ナガラ償還スルト云フ義務ヲ果スニ
  付テノ保證ト云フモノハ、是ハ確立シテ置
  カナケレバナラヌモノデアル、年々一遍ニ
  償却スル特別ノ目途ガナイ、今高橋サン
  ノ言ハレタヤウニ、日露戰爭當時ノ、將
  來得ベキ償金ヲ以テ目安ニヤルト云フヤ
  ウナコトハ出來ナイ、今日ノ公債ナルモ
  ノハ、是ハ眞ノ赤字公債デアッテ、是ダケ
  ノモノヲ注込ンデ、國民ノ生產力ヲ將來如
  何程マデニ維持シ、擴張シテ行ケルカ、ソ
  レニ依ッテドウ云フ風ニナルカト云フコト
  ハ、吾レ人共ニ不安ニ感ジテ居ル、決シテ
  日本ノ國債ニ對シテノミ不安ニ感ズル譯デ
  ハナイ、併ナガラ其際ニ當リマシテ、矢張
  同ジ吾々ノ負擔ヲ將來一遍ニ受ケルト云フ
  ヨリハ、年々歲々ニ之ヲ積立テヽ置キマシ
  テ、其償還方法ヲ一方ニ採ッテ置キマスレ
  バ、一方ニ於テハ、ソレガ日本ノ國債ニ對ス
  ル一ツノ信用維持ノ方法ニモナリ、又國債
  應募者ニ對スル-公債所有者ニ對スル安
  心ノ因トモナリ、而シテ又一方ニ於テ將來
  ノ國民ニ對スル親切ト云フモノガ其處ニ現
  ハレテ來ル譯デアル、負擔ヲ將來ニ貽ス、
  吾々ノ負擔ヲ-現在ノ人間ガ負擔スベキ
  モノヲ將來ニ貽シテ行クト云フ時ニ、均分
  シテ貽シテヤルト云フコトニナリ得ルノデ
  ハナカラウカ、決シテ今仰シヤル通リ、外
  國債ニ對シテハ、國際關係ノ債權債務ノ關
  係デ-契約上ノ關係デ減債基金ト云フモ
  ノハ止メル譯ニハ行カナイガ、內國債ニ於
  テハ自分達ノ借金デアルカラ、是ハ償還方
  法ヲ講ジナクテモ宜イト云フヤウナモノヂ
  ハナカラウト私ハ思フノデアリマス、今大
  藏大臣ガ御話ニナリマシタ所ヲ要約致シマ
  スルト、幾ラデモ公債ハ-內國債ハ出シ
  テモ宜イヤウナ氣モシマスルシ、ソレカラ
  又一方カラ云フト、國債ノ償還ノ方法カラ
  吾々將來ヲ考ヘテ見マスト云フト、甚ダ
  心細イヤウナ氣モ致シマス、畢竟吾々ガ此
  問題ヲ提起致シマシタ所以ノモノハ、臨時
  利得稅ヲ設ケテ、サウシテ現在ノ赤字克服
  ニ對シマスル、ソレダケノ歲出ニ應ジマス
  ルダケノ負擔ヲ、現在ト將來トニ使ヒ分
  ケ、振分ケニナルト云フ方針ノ下ニ、臨時
  利得稅ヲ設ケマシタノデアルカドウカ、若
  シサウ云フ遠大ナ御考ガアリトスルナラ
  バ、是ハ結構ナコトニ違ヒナイ、此前民政
  黨ノ方デ一億圓ノ增稅ヲ主張サレタ當時ニ
  モ、セメテハ赤字公債ノ利子ダケデモ增稅
  ニ依レト云ッタヤウナ主張デアッタヤウニ吾
  吾ハ承ッテ居ル、サウ云フヤウナコトデ、
  今高橋大藏大臣ノ言ハレタ通リニ、本當ニ
  赤字國債モ增稅モ同ジ國民ニ對スル負擔ト
  云フ-負擔ノ方カラ考ヘマスルナラバ同
  ジコトデアル、ソレヲ一時ニ國債ト見テ、
  將來ノ國民ニ對シテ-吾々ノ子孫ニ對シ
  テ一時ニ重イモノヲ課シテ行クト云フヨリ
  ハ、一方ニ於テ現在ノ國民モ、之ニ對シテ
  何分カノ負擔ヲシテ行カナケレバナラヌ、
  斯ウ云フ建前ノ下ニ臨時利得稅デモ御立テ
  ニナッタト云フノナラバ、吾々ハ幾分諒トス
  ル點モアリマスケレドモ、サウデナクシ
  テ、一方カラ伺ッテ見ルト云フト、國債ハ
  今內國ノ國債デアル限リハ、幾ラデモ國民
  ハ負擔ニ應ジナケレバナラヌ、ソレヲ償還
  シヨウトシマイト、償還ガ確實デアラウト
  ナカラウト、決シテ償還シナイト云フコト
  ハナイノデアルカラ、吾々ノ負擔ナノダカ
  ラ、ソレハドウシテモ引受ケナケレバナラ
  又、斯ウ言ッタヤウナ結論ニナリハシナイ
  カト思ヒマスガ、其點ニ對シマシテ、モウ
  一度諄イヤウデアリマスガ、重要ナル事デ
  アリマスカラ、御親切ナル御示〓ヲ仰ギタ
  イト思フ

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• 068・高橋是清

  ○高橋國務大臣　後段ノ御話ハ、旣ニ朝ノ
  中ニモ十分ニ辯ジテアルノダカラ必要ハナ
  カラウト思フ、唯公債ニ結付ケテ考ヘテノ
  御話ハ、ドウモ少シ私ノ考トアナタノ考ト
  違ッテ居ル減債基金ト云フモノヲ積ンデ置
  イテ償還スル、ソンナ減債基金ハアリハシ
  ナイ、何處ノ國ニモナイ、又期限ガ來テ滿足
  ニ現金デ償還スルト云フ力ヲ常ニ備ヘテ居
  ル所ハ恐ラクナイノデス、近キ中ニ償還ス
  ル期限ガ來ルト云ヘバ、前以テ新ニ公債ヲ
  發行シテ置イチ、サウシテソレデ得タ金デ
  以テ、舊公債ヲ還ス、借換ト能ク言ッテ居ル、
  此公債ノ借換ト云フコトハ、其國ノ信用ガ
  保タレテ居リ、而シテ其發行シタ先ノ國ノ
  經濟界ガ窮迫シテ居ラナケレバ、借換ト云
  フモノニ付テハ餘リ困難ヲ感ジナイ、公債
  ト云フモノハ-減債基金ト云フモノヽ運
  用ヲ、アナタガ能ク御承知デナイヤウニ思
  ハレル、減債基金ノ運用ト云フモノハ、市場
  カラ常ニ借入償還ヲシテ、ドノ公債ト決ッシ
  テハ居ナイ、積ンデアル譯デハナイ、片ッ端
  カラ公債ヲ政府ガ減債基金デ買ッテ行クカ
  ラ、公債ノ市價ノ維持モ幾ラカ出來ルト云
  フ働キノモノデアル、減債基金ヲ澤山積ン
  デ、サウシテ是デ償還期限ガ來タモノヲ還
  スノダト云フ意味ノ減債基金デハナイ、是
  ハ何處ノ國デモ、減債基金ヲ唯積ンデ置イ
  テ、償還ノ時ニ基金ヲ一時ニ出スト云フ國
  ハナイ、ドノ公債ニ拘ラズサウデアル、殊ニ
  公債ノ市場ニ於テ、公債ノ種類ノ多イ所ハ.
  人ニ依ッテハ同ジ四分利附デモ、初ニ出シ
  タ四分利附ト、二度目ニ出シタ四分利附ト
  ハ、、市價ガ違フモノデアル、是ハドウモ公債
  ヲ持ッテ居ル人ノ考ニ依ル話デ、同ジ公債デ
  アッテモ市價ガ-同ジ利息ノ公債デモ發
  行ノ時ガ違フ爲ニ、大變ニ市價ノ違フコト
  ガアル、サウ云フ場合ニ於テ、已ムヲ得ズ
  市價ノ下ルト云フヤウナ公債ヲ、政府ハ大
  抵買入レテ償還ヲシテ行ク、サウ云フ風ニ
  減債基金ヲ用ヰラレテ居ル、ソレカラ斯ウ
  云フ譯デアルカラシテ、何モ今ノ所減債基
  金ヲ日本ニ於テ備ヘルコトガ出來テ居ル
  カ、ドウシテ居ルカト云フコトハ、矢張今
  申シタ通リ外國市場ナドハ、ドノ公債ニ限
  ラズ、凡ソ此公債ヲ買ッテ置ク方ガ國ニ利
  益ナリト思フヤウナモノヲ買フ、內地ニ於
  テモ其通リ、而シテソレデ今日ノ公債ノ市
  價ヲ維持シテ居ルカ、維持セラレテ居ナイ
  カト云ヘバ、今日ハ豫テ申シテ居ル通リ、
  方法ヲ改メテアルノデ、先ヅ今日ノ所デハ
  公債ノ市價ハ從來減債基金ヲ置イテ居ッタ
  當時ヨリハ動カズニ居ル、ソンナラ希望者
  ガナイカト云ヘバ、隨分希望者ガアッテ賣
  レテ行ク、是ハ卽チ國民ガ公債ト云フモノ
  ニ對シテ安心ヲシテ居ルト云フコトハ明カ
  デアラウト思フ、デ減債基金ノ運用ノ誤解
  カラ、今ノヤウナ御質問ガ出テ居ルト私ハ
  察スル

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• 069・大山斐瑳麿

  ○大山委員　御話ノ如キ、私ハ決シテ減債
  基金運用ノ方法ヲ誤解ハ致シテ居リマセヌ、
  承知致シテ居リマスカラ御尋ヲ申上ゲルー
  -此疑問ガ出テ來ル、市場ニ於テ滅債基金
  ノ運用ニ依ッテ、國債ヲ額面以下デ買入レ、
  サウシテソレヲ償還スル、安クナレパ減債
  基金ノ運用ガ始ッテ來テ、此國債ハ値ガ上ッ
  テ來ル、價格ノ維持ガ出來ルト云フ所ニ、國
  債所有者ノ、若クハ買入者ノ安心ト云フモ
  ノガ繋ッテ居ル、ソレガ無クナッタンダカラ、
  矢張市場性ニ影響ヲ及シテ居ル、今御話ノ
  減債基金制度ノ繼續サレテ居ッタ時代ト、停
  止サレタ今日ノ國債ノ價格ガ變ラヌ、イヤ
  本當ニ言ヘバ、其當時ヨリハ寧ロ上ニ居ル
  ト云フコトヲ以テ、此理由ニ御使ヒニナッテ
  居リマスケレドモ、ソレハ外ノ理由ニ依ル
  ノデ、國債ノ市場價格ハ、一方ニ於テ國債ノ
  利息條件如何ニ依ルコトデアッテ、色々ナ理
  由ニ依ッテソレハ行ッテ居ルノデアル、其當
  時ハ獨リ國債バカリデハアリマセヌ、國債
  ノ價格ガ下ッテ居ッタノハ、一般ノ有價證劵
  全部ガ下ッタ時デアル、今日有價證劵ノ價格
  ガ上ッタ時ニ、國債モ矢張ソレニ連レテ上ツ
  テ居ルノデアリマス、是ハ强チ減債基金制
  度ノ廢止トカ繼續トカ云フコトノミニハ依
  ラヌト私ハ思ヒマス、併シソレハ大藏大臣
  ガ首肯サレテ居ナイヤウデアリマスカラ、
  私ハ大藏大臣ノ御意見ヲ伺ッテ置クダケニ
  止メテ置キマスガ、今一ツ之ニ關聯致シマ
  シテ御伺致シタイ、健全財政ノ建前カラ行
  キマシテ、歲出ヲ出來ルダケ整理緊縮ヲ
  シ、歲入ヲ出來ルダケ增加ヲ圖ル、此歲入
  ノ增加ヲ圖ルニモ、租稅其他ノ國家ノ經常
  的ナ歲入ヲ增加シ得ラレナイ場合ニハ、已
  ムヲ得ズ現時ノ國債ナリ何ナリノ方法ニ
  依ッテ歲入ノ一時補塡ヲスル、斯ウ云フコト
  ニ相成ルノデアリマスカラ、健全財政主義
  カラ申シマスナラバ、國債ノ成ベク少カラ
  ンコトヲ望ムコトガ當然ノコトデアリマ
  ス,國債以外ニ於テモ、今申サレマシタ臨
  時利得稅ノヤウニ別途ニ財源ガアリマシ
  テ增增ナリ新稅ノ創設ノ出來得ル場合ハ、
  成ベク其方ニ振向ケテ行ッテ、現在ノ國民ニ
  對スル負擔ト將來ノ國民ニ對スル負擔トノ
  振分ケヲ、成ベク適當ニヤッテ行クト云フ
  コトヲ御圖リ願ハナケレバナラヌト思フノ
  デアリマスルガ、現在ノ赤字國債ハ本年度
  ニ於テモ六億、七億、特別會計マデ入レマ
  スルト、相當ノ額ニ是ガ上ッテ居リマス、ソ
  レニ對シマシテ、此臨時利得稅ノ設定ニナ
  リマシタ其主義ハ、何ト申シマシテモ、ド
  ウモ理由ガハッキリ致シマセヌ、度々吾々ノ
  同僚ガアナタニ伺ッテ居リマスケレドモ、ド
  ウモ確實ナル、的確ナル、斯ウ云フ理由デ
  アルト云フコトガ色々ニ傳ヘラレマスケレ
  ドモ、其都度伺ッテ見テモ、ハッキリシナイ
  ノデアリマス、理由ノ如何ニ拘リマセズ、
  赤字國債其モノハ相當ノ額デ增加致シマス
  ルシ、又一方現在ノ臨時利得稅ノ如キモ、
  旣ニ歲入ノ一部ニ繰入レテ御提案ニナッテ
  居ル際デモアリマスノデ、吾々ハ此問題ハ
  何トカシテ解決ヲシナケレバナラヌ問題ニ
  相成フテ居ルト思ヒマス、健全財政主義ノ建
  前ヲ一般歲出ノ上ニ考へテ見マスナラバ、
  軍事費其他ノ國費ハ當分-今マデノ質問
  應答ヲ伺ッテ見テ居ッテモ、是ガ減少ノ見込
  ガ立チニクイ、ソレカラ租稅其他ノ一般歲
  入ノ方ハ、新稅ノ創設以外ニ、サウ急ナ擴
  張ハ望マレ得ナイト云フ狀態デアリマス、
  隨テ是ノ收支「バランス」ヲ合セマスル上
  カラ行キマシテ、赤字公債ト云フモノガ、
  相當ノ額ヲ將來トモ維持シテ行クノデアリ
  マスルカラ、若シ減債基金制度ト云フモノ
  ガ、本當ニ告朔ノ餼羊ノ如キモノデアリマ
  スルナラバ、ソレハモウ廢止ニナルト云フ
  コトナラバ、ソレデ宜シイケレドモ、是ニ
  於テハ私共ハ借金ヲシ、國債ヲ益〓增加シ
  ナケレバナラヌト云フ建前ニナリマスル場
  合ハ、一方ニ減債基金制度ノ如キモ、之ヲ
  何等カノ方法ニ依フテ補塡シテ積立ヲシテ
  行ク、囘復ヲシテ行クト云フコトガ必要ナ
  ノデナカラウカ、若シ臨時利得稅ヲ以テ三
  千萬圓デモ、四千萬圓デモ、必要ガアリマ
  スルナラバ、サウ云フ方ニ之ヲ御向ケニナ
  ルコトモ、一ツノ方法デハナカラウカ、斯
  ウ私共ハ此國債ノ償還ト云フコトニ考及ビ
  マシタ時ニ、其念ヲ有ッタカラ御尋申上ゲ
  タノデアリマス、併シ今迄ノ高橋大藏大臣
  ノ御話カラ行ケバ、減債基金制度ト云フモ
  ノヽ結論トシテハ、當分是ハ囘復ノ餘地ナ
  シ、見込ナシ、斯ウ云フ結論ニ相成ッテ居
  リマス、又囘復ノ意思ナシトモ窺ヘルノデ
  アリマス、ソレデ一方ニ於テ三千萬圓ナリ、
  四千萬圓ナリ、減債基金ダケノ國債ヲソレ
  ダケ減シテ行ク、斯ウ云フコトニ御努メニ
  ナッテ居ルノデアリマスルガ、今度ノ特別會
  計ノ減債基金マデモ之ヲ繰入レラレマシタ
  コトニ付テ、今ノヤウナ御方針デアルトス
  ルナラバ、千七百萬圓位デナク、全部ヲ御
  繰入ニナッテハ如何デアリマセウカ、其點ニ
  付テ大藏大臣ニモウ一應御考ヲ伺ヒタイト
  思フノデアリマス

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• 070・高橋是清

  ○高橋國務大臣　別ニモウ御答スル必要ハ
  ナイ、特別會計ニ餘裕ノアルモノハ繰入レ
  テモ宜イデセウ、ソレハ今ハッキリ申上ゲ
  ルコトハ出來ナイ問題デアル、前ニ申上ゲ
  タガ、私ノ言ヒ方ガ惡カッタカ、一寸間違ガ
  アル、誤解ガアル、ソレハ私ハ公債ノ市價
  ガ上ッタトカ下ッタトカ云フコトヲ言ッタノ
  デハナイ、市價ノ變動ガ少イ、斯ウ言ッタ、
  凡ソ貯金ヲスル人ハ、相場師或ハ投機思惑
  ノ爲ニ金ヲ使フ人ハ別デアリマス、併ナガ
  ラ子孫ノ爲トカ、老後ノ爲トカ、自分ノ働
  ガナクナッタ時ニ、今ノ中ニ貯蓄シ用意シテ
  置カナケレバナラヌト云フ人達ハ、成ベク
  自分ノ持ッタモノヽ市價ガ上ッタリ下ッタリ
  シナイヤウニ、危險ガ最モ少イモノニ投資
  スルノハ當リ前ノ話デアル、公債ト云フモ
  ノガ株劵同樣ニ上ッタリ下ッタリ從前シテ
  居ッタガ、其市價ノ變動ガ今日公債ニ於テナ
  クナッタ、卽チ健全ナ投資者ノ目的物ニ最モ
  適フベキ狀態ニナッテ來タ、斯ウ云フ意味デ
  申シタノデアリマス、ソレカラ健全財政ト
  云フコトヲ頻ニ御言ヒデスガ、是ハ分ッテ居
  ル話、何人モ健全財政ヲ惡イナント云フ人
  ハナイノデアル

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• 071・大山斐瑳麿

  ○大山委員　サウ致シマスルト、減債基金
  制度ノ問題ハ之ニ止メテ置キマス、モウ大
  抵大藏大臣ノ御考ハ分ッテ居リマスカラ、御
  尋申シマスマイ、然ラバモウ一ツ大藏大臣
  ニ御伺致シタイノデアリマスルガ、甚ダ言
  葉ガ荒イヤウデアリマスケレドモ、大藏大
  臣ハ我國ノ稅制ノ建前ノ上カラ、今マデハ
  ズット綜合課稅主義ヲ御執リニナッテ居ルヤ
  ウニ吾々ハ承知致シテ居リマス、然ルニ今
  度御設ケニナリマシタ臨時利得稅ナルモノ
  ハ、是ハ申スマデモナク、源泉課稅主義デ
  アル、綜合累進課稅主義ヲ出シテ、サウシ
  テ一方ニ源泉比例主義ニ依ル今度ノ臨時利
  得稅ヲ御設ケニナリマシタノハ、ドウ云フ
  譯デゴザイマセウカ、ソレヲ伺ヒマス

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• 072・高橋是清

  ○高橋國務大臣　今度ノ臨時利得稅ト云フ
  モノハ、度々申ス通リ、稅制ト云フ一般的
  カラ考ヘマスト云フト、不備ナ點ガ澤山ア
  ル、ソレハ先刻申シタ通リ、是ハ主ニ政治
  上ノ考カラ出來タモノダト云フコトデ、御
  了解ヲ願ヒタイト思フ、ソレカラ前ニ累進
  稅法ヲ執ッタ、是モ御承知デアリマセウガ、
  アレハ確カ原內閣時代デス、其時代ニ考ヘ
  テ居ッタ私ノ稅制ノ考ト云フモノハ、今度ト
  餘リ變リハシナイ、アノ時ハ第一步ヲ踏出
  シタノデ、ソレガソレ切リニナッテ居ル、ア
  ノ時分ニ累進稅法ヲ持ッテ行ッタノハ、中央
  政府ノ歲入トシテノ稅ハ、先ヅ所得稅ガ主
  ナルモノデアル、ソレカラ消費稅、ソレカラ
  關稅、政府ノ事業ノ收益、卽チ專賣局等ノ
  收入、ソレニドウシテモ稅ノ負擔ノ公平ト
  云フコトカラ考ヘテ、所得稅ダケデハ公平
  ヲ缺クカラシテ、稅ヲ負擔スル能力ノアル
  人ノ公平ヲ得ル爲ニ、財產稅ヲ之ニ加ヘル、
  是ダケガ國稅デ、後ハ皆地方ニ移シテシマ
  フト云フヤウナ考ヲ以テ、例ノ綜合所得稅
  法ト云フモノヲ出シタ、ダカラ初カラ完全
  ナモノヲヤルト云フト、中々世ノ中ガ反對
  ヲシテ施行ガシニクイ、先ヅ第一步ヲ踏出
  ス積リデヤッタノガ、其後ソレッ切リニ途切
  レテ居ルノデ、今日デモ一般的ニ稅制ノ整
  理ヲスルト云フコトニナレバ、矢張根本ハ
  サウ云フ所ニ置カナケレバナラヌノカ知ラ
  ト、自分ダケハ考ヘテ居ル、併シ是ハ前ニ
  モ申シタ通リ、國策審議會ト云フヤウナ、
  本當ニ良イ機關ガ出來上レバ、此機關ニ於
  テ地方稅、中央稅、併セテ產業ノ國策等モ考
  ヘテ、ドウシテモ是ハ將來改革スル時ガ來
  ルト、私ハ斯ウ考ヘテ居ル

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• 073・大山斐瑳麿

  ○大山委員　私ノ伺ッタノハサウ云フ事デ
  ハナカッタノデアリマス、今度御設ケニナリ
  マシタノハ、現大藏大臣ノ從來ノ御方針ニ
  似合シカラヌ、突如トシテ今度源泉比例課
  稅主義ヲ御執リニナッタト云フノハ、ドウ云
  フ譯デアリマスカ、斯ウ云フコトヲ伺ッタノ
  デアリマス、今マデハ綜合累進課稅主義ヲ
  御立テ下サレテ、ソレガ爲ニ社會上ノ色々
  ナ稅ニ對スル物議ト云フモノガ、大分緩和
  サレマシタ、一方ニ於テハ、吾々ハ一時ハ源
  泉課稅主義デナケレバ、日本ノ產業ハ發達
  シナイト言ッテ隨分御無理ヲ御願シタ時代
  モアッタ、ケレドモ現在ノ社會情勢ノ上カラ
  見マスルト云フト、ドウシテモ綜合課稅主
  義ハ已ムヲ得ヌ、綜合累進課稅主義デナケ
  レバ負擔ノ均衡ハ十分ニイカナイ、社會政
  策的ノ觀念ハソレニ盛リ切レナイ、斯ウ云
  フ所カラ、今高橋大藏大臣ノ御樹テニナリ
  マシタ綜合累進課稅主義ト云フモノヲ、吾
  吾ハ現在ノ我國ノ稅制ノ根本方針トシテ承
  認ヲ致シテ居リマス、然ルニ今度御設ケニ
  ナリマシタ臨時利得稅ト云フモノハ、所得
  稅法中ノ超過所得ニ關スル規定ノ上ニ更ニ
  一步踏出シテ、別ノ觀點ダト仰シヤルケレ
  ドモ、同ジ稅本ニ向ッテノ、又一ツ茲ニ比例
  源泉ノ課稅ヲ新シク御設ケニナラウト云フ
  ノデアリマス、是ハ一面カラ是ダケヲ切離
  シテ考ヘテ見マスレバ、何デモナイヤウデ
  アリマスルケレドモ、現在所得稅法中ニ、
  既ニ超過所得ト云フモノニ關スル規定ガア
  リ、ソレガ全然一段階デハアリマセヌケレ
  ドモ、殆ド比例源泉ノ主義ニ依ッテ盛ラレテ
  居ルモノデアル、然ルニ今度又臨時利得稅
  ニ於テ、更ニ一律ノ比例主義ヲ以テ課稅ヲ
  ナサル、斯ウ云フノデアリマスルカラ、是ハ
  ドウ云フ風ニ成行クモノデアリマセウカ、
  ドウ云フ御考デゴザイマセウカ、其點ヲ伺
  ヒタイノデアリマス

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• 074・石渡莊太郎

  ○石渡政府委員　只今大山サンカラ御尋ガ
  ゴザイマシタ、今囘ノ臨時利得稅ヲ何故綜
  合主義ニ基カナカッタカ、斯ウ云フ御尋デゴ
  ザイマス、此臨時ノ利得稅ノ課稅ノ方法ト
  致シマシテハ、仰シヤル通リ個人ニ總テノ
  所得ヲ綜合致シマシテ、卽チ第三種ノ所得
  ノ總額ニ於キマシテノ比較ヲシテ行キマス
  コトモ、一方法ダラウト思フノデゴザイマ
  ス、併ナガラ今日ノ我國ノ所得稅法、又今
  日ノ一般經濟狀態カラ致シマシテ、大體ニ
  於キマシテ營業所得ヲ目標ニ致シテ之ヲ拵
  ヘテ行キマスレバ、今囘ノ臨時利得稅法ノ
  目的ヲ達シ得ルモノト、斯ウ考ヘマシタ次
  第デアリマシテ、戰時利得稅ヲ歐米諸國ニ
  於キマシテ行ヒマシタ場合ニ於キマシテ
  モ、多クハ斯ウ云フヤウナ形式ヲ執ッテ居ル
  モノト存ジテ居リマス、是モ一ツノ行キ方
  ト思ヒマス

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• 075・大山斐瑳麿

  ○大山委員　私ハ根本觀念ニ於テ大藏大臣
  ニ伺ッタ積リデアリマシタノデ、現在ノ臨時
  利得稅ヲ御設ケニナリマシタ、此臨時利得
  稅ノ方針ヲ伺ッテ居ルノデハナイ、現大藏大
  臣ガ豫テヤカマシク綜合課稅主義ヲ御執リ
  ニナッテ居ッタニ拘ラズ、今囘ノ臨時利得稅
  ヲ比例主義デ御取リニナッテ居ルト云フコ
  トニ對シテ、現大藏大臣ガドウ御考ニナル
  カト云フコトヲ伺ッタノデアリマス、併シ之
  ニ對シテ御答ガナケレバ已ムヲ得マセヌ、
  ダガ唯茲ニ一ツ問題ガ殘ルノデアリマスル
  ガ、一方今大藏大臣ガ御話ニナリマシタ、
  大藏大臣ガ甞テ原內閣時分ニ御樹テニナリ
  マシタ其御方針ト、今尙ホ大體ニ於テ稅制
  ノ根本ニ關シテ、自分ノ考ハ違ッテ居ラヌ、
  斯ウ云フ御話デアル、其建前ハ、卽チ濱口
  内閣ニ依ッテ樹テラレマシタ我國ノ稅制整
  理ノ、所得稅ヲ根本トシテ、營業、地租ノ兩
  稅ヲ之ヲ兩翼トシテ立テヽ居リマスル所ノ
  此現在ノ稅制制度、ソレカラ高橋サンノ其
  當時カラ今以テ大シテ御變リハナイト云
  フ、地租及營業收益稅ノ兩稅ヲ地方ニ委讓
  シヨウト云フ御考ト是ガ大分ソコニ違ッテ
  居ルノデアリマス、併ナガラ現在直チニ此
  兩稅ヲ委讓サレルカドウカト云フコトヲ伺
  フ程、私モ白痴デハナイ積リデアリマスル
  ケレドモ、今度國策審議會ト云フモノヲ設
  ケテ一般ノ稅制整理ヲ爲サラウ、斯ウ云フ
  場合ニ於テ、地租、營業稅ノ兩稅委讓ヲー
  -矢張成タケソレニ近イモノヲ御執リニナ
  ル方針デアリマスルカドウカ、是ハ餘程重
  大問題デアリマスルケレドモ、國策審議會
  云々ガ出マシタカラ、私ハ御尋申上ゲルノ
  デアリマス、一般稅制整理ト云フコトガ、
  何時行ハレマスカ知リマセヌケレドモ、近
  ク設定サレマス國策審議會ニ白ヲチ稅制
  整理ヲ御提案ニナラウト云フノデアリマス
  ルカラ、今ノ大藏大臣ノ御方針ノ片鱗デモ
  伺フコトガ出來マスレバ仕合セデアリマス

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• 076・高橋是清

  ○高橋國務大臣　私ハ自分ノ考トシテハ、
  前ニ持ッテ居ッタ考ト今日餘リ變リアリマセ
  ヌ、併ナガラ國策審議會ノ必要ヲ私ガ言フ
  以上ハ、自分ノ說ヲ必シモ、宜イトハ思ハナ
  イ、衆智ヲ聚メ、色々ノ人ノ經驗ヲ集メ、
  其時ノ時勢ノ狀況ニ應ジテ最善ノ方法ヲ樹
  テルノガ私ノ目的デアル、決シテ私ハ自分
  ノ考ガ元斯ウダカラト云ッテ、ソレニ執著ハ
  シテ居ラヌノデアリマス、良イト思ッタモ
  ノハ誰ノ說ニモ贊成スルノデアリマス

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• 077・大山斐瑳麿

  ○大山委員　デハモウ一ツ突込ミ過ギルヤ
  ウデハアリマスケレドモ伺ヒマスガ、稅制
  整理ノコトハ、申ス迄モナク大藏大臣ノ權
  限ニ屬スルモノト思ヒマス、國策審議會ニ
  御提案ニナリマスノハ-御提案ニナッテ
  審議ノ結果ハ、是ハ衆議ニ御從ヒニナルノ
  ハ無論ノ話デアリマセウガ、併シ御提案ニ
  ナリマスル原案ハ、高橋大藏大臣ガ作製ニ
  ナルモノト思ヒマス、其原案ハドウ云フ風
  ナモノニナルノデゴザイマセウカ

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• 078・高橋是清

  ○高橋國務大臣　思ハザル-原案ナンテ
  私ハ考ヘテ居リマセヌ、又國策審議會ガ出
  來タ時分ニ、假ニ私ガ大藏大臣ノ職ニ在ツ
  タトシテモ、私ハ自分デ原案ヲ出ス考ハ少
  シモナイ

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• 079・大山斐瑳麿

  ○大山委員　分リマシタ、是ハ其程度ニ致
  シテ置キマスガ、今ソレニ關聯シテ御伺シ
  タイノハ、執拗イヤウデアリマスガ、地方
  財政ノ整理ト云フコトニ向ッテ、大藏大臣ガ
  今兩稅委讓デモシナケレバナラヌト云フ御
  考ガ變ラヌノハ、卽チソコニアルノダラウ
  ト思フ、地方財政ガ非常ニ苦シンデ居ル、
  此實情ヲ承知シテ居レバコソ、斯ウ云フ御
  質問ヲ私モ申上ゲ、又御答辯ヲ煩シタノデ
  アリマスガ、此地方財政ノ整理ニ向ッテ、現
  在吾々ノ目ノ前ニ提案サレテ居リマスル、
  臨時利得稅ト云フ一方ニ收入ガアルノデア
  リマス、アルノヂヤナイ、ソレハ御拵ヘニナ
  ルノデアリマスガ、御設ケニナルノデアリ
  マスガ、同時ニ何等カソレヲ御使ヒニナル
  ト云フヤウナコトニ付テノ御考ハアルノデ
  アリマセウカ、ナイノデアリマスカ、數字
  ヲ捉ヘテ言ヘバ、臨時財源ト致シマシテ、
  一般歲入ニ編入セラレテ、何處ニ頭ヲ出シ
  テ居ルカ分ラヌ、ソレハ當然ノコトデアリ
  マスガ、大體新稅ヲ起サレル場合ノ稅ノ目
  的ト云フモノハ斯ウ云フ用途ニ必要デアル
  カラ、是ダケノ增稅ヲシナケレバナラヌ、
  是ダケノ新稅ヲ起サナケレバナラヌ、斯ウ
  云フ所ニ稅ノ殘ッテ居ルモノガアルノデア
  ル、取得ルモノガアルノデアルカラ取ル、
  斯ウ云フコトデナクテハナラヌト思フノデ
  アリマスガ、度々臨時利得稅ノ理由、目的
  ト云フモノハ、モウ色々ノ方面カラ伺ハレ
  テ居ルノデアリマスケレドモ、マダ成程是
  ダナト得心ノ行ク一ツノ理由ト云フモノヲ
  伺ッテ居ラヌケレドモ、是ハ禪問答ニ終リマ
  スカラ、私ハ是ハ避ケテ置キマス、唯現在
  ノ御考トシテ、地方ノ財政ニ對シテドウ云
  フ風ニ-何等カ財源ガアッタナラバ、ソレ
  ヲ與ヘテヤリタイ、斯ウ云フヤウナ御考ガ
  アルカナイカヲ伺ッテ置キタイ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006711731X00619350207&spkNum=79

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• 080・高橋是清

  ○高橋國務大臣　サウ云フ一方ニ偏シタ考
  ヲ有ッテ居リマセヌ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006711731X00619350207&spkNum=80

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• 081・大山斐瑳麿

  ○大山委員　一方ニ偏シタコトヽモ私ハ考
  ヘナイノデゴザイマス、私ノ御尋シタコト
  ガドウ云フヤウニ高橋サンノ御耳ニ響キマ
  シタカ知リマセヌガ、私ノ申シタ趣旨ハ、國
  稅一般ニ對スル稅制整理ヲ爲サル場合ニ、
  必ズ中央、地方ヲ通ジタ稅制整理ヲ爲サル
  ト云フコトハ、最近ノ議會ニ於テモ、現在
  ノ議會ニ於テモ、度々サウ云フ方針デアル
  ト云フコトハ、總理大臣、大藏大臣ノ言明
  サレテ居ル所デアリマス、其一部ノ地方財
  政ノ整理ニ關スル問題トシテ、御方針ヲ伺ツ
  テ居ルノデアリマスカラ、私ハ少シモ偏シ
  テ居ルト思ヒマセヌガ、尙ホ何等カ私ノ質
  問ノ仕方ガ惡カッタ爲ニ、サウ云フ風ニ御
  考ニナッタノデアリマスカ、私ハ此點ヲ是正
  シテモウ一應御伺致シマス

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• 082・高橋是清

  ○高橋國務大臣　局部ニ偏シタ考ヲ持ッテ
  居ラヌト云フコトハ、具體的ニ斯ウ云フ財
  源ハ之ヲ地方ニ持ッテ行ク、サウ云フヤウナ
  考ヲ持ッテ居ルノデハナイト、サウ云フノ
  デアリマス、一般ニ地方ノ財政、中央ノ財
  政併セテ國策ヲ樹ツル上ニ於テハ、私
  此際自分デ斯ウ云フ考ヲ持ッテ居ルト云フ
  コトハ-考ハアッタ所デ、ソレヲ自ラ自分
  ヲ信ジナイ、ソレ故ニ國策審議會ト云フモ
  ノガアッテ衆智ヲ聚メテ適當ナ方策ヲ樹テ
  テ貰ヒタイト考ヘル

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• 083・大山斐瑳麿

  ○大山委員　然ラバモウ一應伺ヒマスガ、
  此臨時利得稅モ一緒ニ國策審議會ニ御掛ケ
  ニナッテハ如何デアッタデアリマセウカ、ソ
  レヲ待テナイ事情ガ何カアッタノデゴザイ
  マセウカ

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• 084・松村光三

  ○松村委員長代理　大藏大臣ハ御答ガナイ
  サウデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006711731X00619350207&spkNum=84

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• 085・大山斐瑳麿

  ○大山委員　之ヲ一ツノ疑問トシテ御見遁
  シニナルナラ已ムヲ得マセヌ、御答ガナイ
  モノヲ强テ伺フ譯ニモ參リマセヌガ、左樣
  ナコトデハ私ハ自分ノ考へテ居ルコトヲ、
  十分ニ御伺スルコトガ出來ナイト思フ、已
  ムヲ得マセヌカラ、大藏大臣ニ對スル質間
  ハ是デ終リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006711731X00619350207&spkNum=85

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• 086・森田福市

  ○森田委員　一寸正式ニ材料ノ要求ヲ御願
  シテ置キマス、肝心ノ勅令要項ガ見當ラヌ
  ノデアリマスガ、是ハ催促ガナクテモ之ニ
  關聯シテ-何時デモ法律審議ノ時ニハ、
  勅令要項ヲ出ス例ニナッテ居ル、ドウゾ早ク
  出シテ下サルコトヲ御請求申シテ置キマ
  ス、ソレカラ昨日モ私ガ申上ゲマシタヤウ
  ニ、昭和五年、六年ノ二年間、六箇月ノ決
  算期ノ四期ヲ通ジテノモノヲ、平均所得ニ
  スル場合、昭和五、六年ハ、御承知ノ通リ
  同盟罷工ノ一番澤山アッタ時代デアルガ、平
  素一割以上儲カッテ居リナガラ、一期間ダ
  ケノ間ニ同盟罷エガアッタ爲ニ、利益ガ七分
  以下ニ落チタ、其爲ニ百分ノ七ヲ適用サレ
  ルヤウナ場合ニハ、大變不都合ヲ生ズルト
  思フ、平素一割以上儲カッテ居リナガラ、一
  期間ダケニ同盟罷エガアッタ爲ニ、サウ云フ
  コトニサレテハ大變デアルト思フノデ、是
  ハ分ケテ加減サレルカ、或ハ省令デ適當ナ
  方法ヲ設ケルカト云フコトニ付テ、御〓究
  置願ヒタイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006711731X00619350207&spkNum=86

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• 087・大山斐瑳麿

  ○大山委員　私ハ大藏大臣ニ對スル質問ハ
  多々アッタノデアリマスガ、先程申上ゲタ
  趣意デ打切ッタノデアリマス、他ノ大臣ニ對
  スル質問ハマダ澤山殘ッテ居ルノデアリマ
  ス、此際ドウ云フ御取扱ニナリマセウカ、
  大藏大臣ニ對スル小笠原君ノ質問ガ殘ッテ
  居ルト云フコトデ、其間ヲ自分トシテハヤッ
  タノデアリマス、大藏大臣ガ居ラレナイノ
  デアリマスカラ、ヤハリ小笠原君ハ大藏大
  臣ノ次會ニ見エルマデ御保留ニナリマスカ
  (「イヤサウヂヤナイ時間ノ關係ガアルカ
  ラ」ト呼フ者アリ)大藏大臣ガ見エナクナッ
  タラ······今ノ御話トシテハ、大藏大臣ノ質
  問ガ濟メバ、政府委員ニ對シテ小笠原君ノ
  質問ガ殘ッテ居ル、ソレヲ御繼續ニナルノデ
  アリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006711731X00619350207&spkNum=87

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• 088・松村光三

  ○松村委員長代理　サウ云フ意味デ御了解
  ヲ願ッテ置イタノデアリマスカラ、小笠原君
  ニ御願致シマス-小笠原君

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006711731X00619350207&spkNum=88

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• 089・小笠原三九郎

  ○小笠原委員　大體午前中ノ質問ニ依リマ
  シテ、總體ニ對スル質問ハ終ッタノデアリ
  マス、尤モマダ殘ッテ居ル點モアリマスガ、
  ソレハ又他ノ機會ニ申上ゲタイノデアリマ
  ス、此處デハ稅法ノ一ツ〓〓ニ付キマシテ
  少シ疑問ノ點ヲ私ハ御尋シテ見タイト思ヒ
  マス、順序ガ條文通リニ行ッテ居リマセヌ
  カラ、其御積リデ御答ヲ願ヒタイ、第一ニ
  御伺シタイノハ、法人ニ對スル算出ノ基準
  ガ七分トセラレテ居ル理由ハ、ドウ云フ點
  デ七分トサレテ居ルノデアリマセウカ、戰
  時利得稅、超過所得稅モ一割卽チ百分ノ十
  トナッテ居ルガ、之ヲ百分ノ七トセラレテ居
  ル根據ヲ伺ヒタイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006711731X00619350207&spkNum=89

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• 090・石渡莊太郎

  ○石渡政府委員　法人ノ昭和五年、大正直す
  於キマスル事業年度ノ平均ノ利益ガ、七分
  以下デアッタ場合ニハ七分ト見ル、其七分
  トスル根據ハ何處ニアルカ、斯ウ云フ御尋
  デゴザイマス、百分ノ七ト之ヲ致シマシタ
  ト云フコトハ、是ハ一ツノ目安デゴザイマ
  ス、如何ナルモノヲ以テ此目安トシタカト、
  斯ウ云フ御尋デゴザイマスルト、是ハ先般
  差上ゲマシタ、アノ會社表ノ數字ヲ御覽下
  サイマシテモ御分リニナリマス通リ、昭和
  五年、六年當時ニ於キマスル總テノ會社ノ
  資本金、積立金、是ノ合計額ニ對スル利益
  金ト云フモノハ、四分又ハ五分三厘ト云フ
  ヤウナ數字デゴザイマシテ、大體ハ四分ト
  五分ノ間ニアッタト思フノデゴザイマス、
  隨ヒマシテ其當時ノ數字ト致シマシテハ、
  四分、五分デモ宜イノカト思ヒマスガ、其
  當時ノ經濟狀況ニ鑑ミマシテ、其數字ヲ直
  チニ採リマスコトハ如何ト思ヒマシタノ
  デ、茲ニ百分ノ七ト致シマシテ、其間ニ多
  少ノ餘裕ヲ見マシテ、幾ラカ餘裕ヲ取リマ
  シタ次第デゴザイマス、是ハ一般ノ金利ノ
  關係モアルノデゴザイマシテ、一般ノ金利
  經濟ニ付キマシテモ、戰時利得稅ノ施行當
  時トハ大分模樣ガ變ッテ居ルカト思ヒマス、
  戰時利得稅法施行ノ時ニ於キマシテモ、大
  正元年、二年ノ平均ニ於キマシテハ、其當
  時ノ利廻ト致シマシテハ八分、九分ノ間ニ
  アッタト思ハレルノデアリマス、ソレデ多少
  餘裕ヲ置キマシテ、一割ト致シマシタヤウ
  ニ存ジテ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006711731X00619350207&spkNum=90

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• 091・小笠原三九郎

  ○小笠原委員　私ハ今ノ會社ノ實績ガ四分
  何厘、五分ソコソコデアルカラト云フコト
  デ、所謂臨時利得ノ基準トセラレルコトハ
  少シ根據ガ乏シイ、是ハ矢張金利ノ點モ御
  考慮ニナッタコトガ主タル點ト考ヘルノデ
  アリマスガ、御承知ノ如ク、是ハ私ガ申ス
  マデモナク利益率ト云フモノト、配當率ト
  云フモノト違フノデアリマシテ、七分ト云
  フ利益率ハ、配當ノ方カラ申セバ、五分位
  ノ程度ニシカ配當ガ出來ナイ、今ノ株ノ利
  廻其他カラ見マシテモ、大體六分以下ノ利
  廻デハ會社ヲ造ル者モナイシ、又株ノ市價
  ト云フモノモ、拂込以上ニ維持出來ルモノ
  デモアリマセヌ、デスカラ此七分ト云フコ
  トハ、實際非常ニ低キニ過ギテ、甚ダ私ハ
  穩當デナイト思フノデアリマス、少クトモ
  積立金トカ、或ハ役員賞與金トカ、サウ云
  フモノヲ頭ノ中ニ入レテ考ヘテ見ルト、控
  除サレルノハ八、九分程度デ控除ナサラヌ
  ト、金利ノ低下其他ノ上デ御考ニナッテ居
  ル點ニ達シナイノデナイカ、八九分程度ト
  云フ所マデ之ヲ引上ゲテ計算スル必要ガア
  ルト云フ風ニ考ヘルノデアリマスガ、此點
  ニ對スル御所見ハドウデアリマスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006711731X00619350207&spkNum=91

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• 092・石渡莊太郎

  ○石渡政府委員　資本金ニ對シマスル利廻
  ト申シマスルコトガ、多少語弊ガアルト思
  フノデゴザイマス、ソレデ成程拂込濟ノ資
  本金額ダケニ對シマシテ七分ト云フコトデ
  アリマスト、仰セノ通リ配當ハ五分シカ出
  來ヌ、六分シカ出來ヌ、斯ウ云フコトニ相
  成ルカト思フノデアリマスガ、此持ッテ居
  リマスル資本金額ト云フ言葉ハ、積立金ヲ
  含メテ居リマスノデ、隨ヒマシテ積立金ヲ
  含メマシタ資本金額ノ七分ト申シマスノ
  ハ、相當餘裕ノアルモノト思ッテ居リマス、
  隨ヒマシテ七分ト見マシテモ、積立金ヲ含
  メマシタ資本金額ノ七分ト云フコトデアリ
  マスカラ、其中ニハ七分ノ利廻デアッテモ、
  一割モ、一割五分モ配當ノ出來ル會社モゴ
  ザイマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006711731X00619350207&spkNum=92

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• 093・小笠原三九郎

  ○小笠原委員　是ハ一般的ノ御說明ナラ
  バ、或ハ首肯出來ルカモ知レナイガ、御承
  知ノ如ク是ハ利益ガ無カッタモノ、或ハ利益
  ガ少カッタモノニ付テ言ハレルモノデアリ
  マスカラ、利益ノ無カッタモノ、利益ノ少
  カッタモノガ積立金ヲ持タウ筈ガナイノデ
  アリマシテ、是ハ主稅局長ノ何カ誤解デア
  ルト考ヘマス、其次ニ私ハ御伺致シマス
  ガ、七分ト云フ風ニ一律ニ査定ヲセラレル
  結果ト致シマシテ、反對ニ一割モ二割モ儲
  ケテ居ッタ者デモ、利益ガ特別ニ增加シテ居
  ナイト云フト、此臨時利得稅ハ課セラレナ
  イ、斯ウ云フコトニナルノデアリマス、又
  一割以上儲ケタ者ハ、超過所得稅ヲ取ルデ
  ハナイカト云フヤウナ御說明ガアルカモ知
  リマセヌガ、併シ九分九厘儲ケタ者ハ、超
  過所得稅モ取ラレナイシ、臨時利得稅モ取
  ラレナイ、斯ウ云フコトニナッテ、永久ニ七
  分ト-假ニ九分九厘ナレバ、二分九厘ノ
  差ト云フモノハ-此法人ハ特別ノ恩惠ニ
  浴スル、斯ウ云フコトニナルノデアリマス
  ガ、是等ノ點ニ付テハ、ドウ云フ風ニ御考
  ヘニナッテ居リマスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006711731X00619350207&spkNum=93

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• 094・石渡莊太郎

  ○石渡政府委員　最初ノ點ハ、モウ一應申
  上ゲテ置キマスガ、昭和五年、六年當時ニ
  於キマスル百分ノ七ト云フ見積ハ、是ハ矢
  張積立金ヲ引キマシテノ見積デゴザイマス
  カラ、隨ヒマシテ其處ニ相當餘裕ガアルヤ
  ウニ仕組ンデアル、斯ウ申上ゲタ次第デゴ
  ザイマス、ソレカラ其次ノ御尋デゴザイマ
  スル、儲ケガ多クトモ超過シテ居ナケレバ
  課稅ヲ受ケナイデハナイカト云フ御尋ハ御
  尤デアリマシテ、ソレハ此稅法自體ガ所得
  ノ增加致シタト云フモノニ對スル課稅デゴ
  ザイマスノデ、隨ヒマシテ斯ウ云フ臨時稅
  法ヲ起シマシタ次第デゴザイマスノデ、儲
  ケノ殖エテ居ラヌト云フモノニ付キマシテ
  ハ、利廻ガ多クトモ、其分ニ付テハ課稅致
  シマセヌ

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• 095・小笠原三九郎

  ○小笠原委員　其アトノ九分九厘儲ケテ居
  ルト云フノハ、ドウ云フコトニナリマスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006711731X00619350207&spkNum=95

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• 096・石渡莊太郎

  ○石渡政府委員　前ニ昭和五六年當時ニ九
  分九厘儲ケテ居ッタ、今デモ九分九厘儲ケテ
  居ルト、其者ノ所得ハ增サナイ、斯ウ云フ
  モノニハ課稅致シマセヌ

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• 097・小笠原三九郎

  ○小笠原委員　ソレハ違ヒマス、九分九厘
  前ニ儲ケテ居ッタ、併シ今度ハ一割五分儲ケ
  タ、斯ウ云ッタヤウナ場合デアリマス、其時
  ニハ七分ノ場合デアリマスルト、今ノヤウ
  ナ課稅ヲ受ケマスガ、其二分九厘分ダケハ
  得ヲスルト、サウ云フヤウニ私ハ見ルノデ
  アリマスガ、其點ヲ御伺シテ居ルノデアリ
  マス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006711731X00619350207&spkNum=97

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• 098・石渡莊太郎

  ○石渡政府委員　只今ノ御尋ハ、昭和五年、
  六年當時ニ於テハ九分九厘儲ッテ居ッタ、今
  度ハ一割五分儲ッテ居ル〓サウスルト其五分
  一厘ト云フモノニ對シテ課稅ヲ課ケマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006711731X00619350207&spkNum=98

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• 099・小笠原三九郎

  ○小笠原委員　私ノ言フノハサウヂヤナイ
  ノデ、七分ト其九分九厘ノ、詰リ一割五分
  デモ宜イノデスガ、其一割ノモノハ、アナ
  タノ從來ノ御說明ダト云フト、ソレハ一割
  以上儲カッタモノハ、超過所得稅ヲ拂フカラ
  宜イヂヤナイカ、斯ウ云フ御話デアル、九
  分九厘儲カッタモノハ、超過所得稅ヲ拂ッテ
  居ナイノデアルカラ、モト九分九厘儲カッテ
  居ッタモノガ、一割五分儲カッタ、斯ウナル
  ト、此モノハ何ヲ拂フカト云フト、五分一
  厘ダケ拂フト云フコトニナル、所ガ七分儲
  カッテ居ッタモノガ一割五分儲ケルト、ドウ
  云フコトニナルカト云フト、是ハ丁度八分
  拂フコトニナル、其點ガイカヌヂヤナイカ
  ト云フノデス、是ハ必ズ主稅局長モ首肯セ
  ザルヲ得ナイ點デアラウト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006711731X00619350207&spkNum=99

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• 100・石渡莊太郎

  ○石渡政府委員　只今ノ御話デアレバ、仰
  シヤル通リデアリマス、前ニ九分九厘儲カッ
  テ居ッタ者ガ一割五分儲ケレバ、五分一厘ニ
  對スル課稅ヲ受ケル、七分儲カッテ居ッタ者
  ハ、八分ニ對シテ課稅ヲ受ケル、其通リデ
  アリマス、ソレデソレハ要スルニ儲カリ步
  合ガ大キイノデアリマスカラ、隨ヒマシテ
  其大キナ金額ニ課稅ヲ受ケル、斯ウ云フコ
  トニ相成リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006711731X00619350207&spkNum=100

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• 101・小笠原三九郎

  ○小笠原委員　私ノ申ス意味ト云フノハ、
  是ハ九分九厘ト云フノモ、唯例ニ取リマシ
  タダケノ話デ、九分九厘ト七分ハサウ云フ
  差別ヲ受ケルコトニナル、ソレヲ長イ間ヤッ
  テ行クコトハ宜クナイヂヤナイカ、斯ウ云
  フコトヲハッキリ意識シテ申上ゲテ居ルノ
  デアリマス、サウスルト七分ハイカヌヂヤ
  ナイカ、七分ノ據リ所ハドウカト云フコト
  ヲ申上ゲテ居ルノデアリマス、是ハ超過所
  得稅ガアルノト對照シテ、宜クナイヂヤナ
  イカト云フコトヲ申上ゲテ居ルノデアリマ
  ス、其次ニ御尋シマスガ、今度ハ一割以上
  儲ケテ居ルモノハ、此場合デアリマスト超
  過所得稅ト臨時利得稅ト、兩方ノ課稅受ケ
  ルコトニナリマスガ、如何デアリマスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006711731X00619350207&spkNum=101

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• 102・石渡莊太郎

  ○石渡政府委員　一割以上儲ケテ居ルモノ
  ニ付キマシテハ-臨時利得稅ノ賦課ヲ、
  割以上儲ケマシテモ、御承知ノ通リ臨時利
  得稅ノ賦課ヲ受ケナイモノモアルカト思ヒ
  マスガ、臨時利得稅ノ賦課ヲ受ケマスモノ
  ニ付テハ、臨時利得稅ト超過所得稅ト、兩
  方重ナルコトニ相成リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006711731X00619350207&spkNum=102

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• 103・小笠原三九郎

  ○小笠原委員　恐ラク數字デ出シマシタナ
  ラバ私ノ申スノハ從來一割以上儲ケテ居ッ
  クモノガ、今度ハ一割二分儲ケタ、一割三
  分儲ケタト云フモノハ、丁度超過所得稅ト
  兩方拂フコトニナル、サウスルト事ニ依ル
  下、計算シテ見ルト、是モ細カク出シタナ
  ラバ一割一分何厘、一割二分何厘ト云フ所
  ニ行ケバ、數字ハドウカ分リマセヌガ、九
  分九厘儲ケタモノヽ方ガ却テ稅ハ少イ、斯
  ウ云フコトニナリハセヌカ、斯ウ云フ點ヲ
  私ハ申上ゲルノデス、此點ハドウモ超過所
  得稅ト二重ニナル、二重課稅ヲ受ケルト云
  フコトニナルハシナイカ、是ハ恐ラク間違
  ナイト思ヒマスガ、其點ヲ確メテ置キタイ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006711731X00619350207&spkNum=103

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• 104・石渡莊太郎

  ○石渡政府委員　前ニ一割儲カッテ居ッタモ
  ノガ、一割二分又ハ三分儲カッタト云フ場
  合ニ於キマシテハ、其二分又ハ三分ニ付キ
  マシテ兩方ノ課稅ヲ受ケマスコトハ、仰シ
  ヤル通リデゴザイマス、唯九分九厘儲カッテ
  居ルモノヨリモ、餘計ニ稅金ヲ納メルト云
  フコトハナカラウト存ジマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006711731X00619350207&spkNum=104

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• 105・小笠原三九郎

  ○小笠原委員　ソレハ計算ヲ致シテ見ナケ
  レバ、私モ一寸此處デハ思付キマセヌガ、
  恐クハ一割一分何厘位儲ケタモノハ、稅金
  ヲ餘計拂フト云フヤウナコトニナッテ、非常
  ニ不公平ヲ來スコトニナルダラウト思フノ
  デアリマスガ、森田君ガ之ニ關聯シテ質問
  シタイト云フコトデアリマスカラ···

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006711731X00619350207&spkNum=105

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• 106・森田福市

  ○森田委員　今小笠原君ニ對スル御答ヲ聽
  イテ居ルト云フト、資本金ト云フノハ、ヤハ
  リ超過所得ノ計算ヲスル時ノヤウナ資本金
  ニ私ハ聽取シタ、卽チ拂込資本ニ留保所得
  ヲ全部加ヘタモノヲ資本金トシテ計算ヲシ
  テ、今度ノ利得稅ヲ課稅スレバ、ヤハリ超
  過所得稅ト同ジヤウナモノニナル、果シテ
  サウデアルナラバ、新會社ハ工合ガ惡イト
  思フ、舊會社ハ色々ナ別途積立金トカ、後期
  繰越金ト云フモノヲ相當有ッテ居ル、然ルニ
  新會社ハサウ云フ資本ヲ有ッテ居リマセヌ、
  サウスルト既設ノ古イ會社ノ方ガ稅率ガ安
  クナルコトヽ、結果ニ於テ同ジコトニナリ
  ハシナイカト云フコトヲ氣付イタノデアリ
  マスガ、留保所得ヲ超過所得ノヤウニ資本
  ニ加ヘテ計算スルノデアリマスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006711731X00619350207&spkNum=106

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• 107・石渡莊太郎

  ○石渡政府委員　ソレハ只今御答致シマシ
  タ通リ、積立金ト云フモノハ全部加ヘテ計
  算致シマス、ソレデアリマスカラ、超過所
  得稅ノ計算ト同ジヤウナ資本金ノ計算ヲ致
  ス見込デアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006711731X00619350207&spkNum=107

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• 108・森田福市

  ○森田委員　サウスルト今度ノ稅ノ趣旨
  ノ、臨時利得ニ對スル稅ト云フコトハ、ソ
  コデ沒却シテシマフコトニナルト思フ、臨
  時ノ利得ト云フコトナラバ、拂込資本ハ對
  等ニ見テ行カナケレバナラヌガ、古イ會社
  ホド積立金、繰越金ト云フモノヲ澤山有ッテ
  居ルコトハ議論ノ餘地ハアリマセヌ、新會
  社ハ儲カッテ居ッタモノ、若ハ儲ケテ居ッテ
  モ、其七分ニ達シテ居ラヌモノハ、昭和六
  年ノ平均利得ヲ七分ト見テ計算ヲスルノデ
  アリマス、サウスルト其後ニ出來タ新會社
  ハ積立金ナドハアッテモ少ナイトシナケレ
  バナラヌ、殆ド無イトシナケレバナラヌ、
  サウスルト非常ニ稅率ガ變ッテ來ルノト同
  ジ結果ヲ生ジテ來ルト云フコトニ、御氣付
  ニナラヌデアリマセウカ、一方五十萬圓資
  本金ヲ拂込ンデ居ル會社ガ、五十萬圓積立
  金ヲ持ッテ居ルト假定スレバ、ソレハ百萬圓
  ト同ジコトニナル、卽チ根柢ノ薄弱ナ新會
  社ハ重キ稅ヲ受ケル、併ナガラ今政府ガ說
  明スルヤウニ、臨時ノ利得者ニ課稅スルト
  云フ趣旨トハ、今度ハ違ッテ來ルト云フコト
  ニ當局ハ御氣付ニナラヌデアリマセウカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006711731X00619350207&spkNum=108

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• 109・石渡莊太郎

  ○石渡政府委員　森田サンカラ色々御意見
  ガアリマシタガ、要スルニ會社カ一割以上
  利益ガアルカドウカト申シマスル點ニ付キ
  マシテ、利益ヲ見テ行クト云フコトハ、其
  會社ガ實際上運轉シテ居ル所ノ金ニ對シテ
  幾ラ儲カッタカ、例ヘバ拂込濟ノ資本金額五
  十萬圓、積立金五十萬圓アル、其會社ハ百萬
  圓ノ金ヲ動カシテ、サウシテソコニ幾割儲
  ケガアルカ、斯ウ見テ行カザルヲ得ナイト
  思フノデゴザイマス、積立金其他ハ外シテ、
  拂込濟ノ資本金額ダケデ見テ行ク譯ニハ、
  是ハ到底行カヌト思フノデアリマス、隨ヒ
  マシテ今日超過所得稅ヲ計算スル場合ニ於
  キマシテモ、其會社ガ實際ニ動カシ、運轉
  シテ居ル所ノ金ガ幾ラデアルダラウカ、ソ
  レニ對スル儲ケ步合ト云フモノハ幾ラデア
  ルダラウカ、斯ウ云フモノヲ見テ行キマシ
  テ、特ニ餘計儲カッタ場合ニ於キマシテ課稅
  ヲ致ス、斯ウ云フコトニ致シテ置キマスコ
  トハ御承知ノ通リデアリマス、又サウ云フ
  行キ方ヨリ致方ガナイト思フノデアリマ
  ス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006711731X00619350207&spkNum=109

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• 110・森田福市

  ○森田委員　分ッテ居リマス、今ノヤウナ御
  說明ハ超過所得ノ時ニ左樣ニヤル、今度超
  過所得ト同ジヤウニ、矢張新會社ノ稅率ヲ
  餘計ニサレルト、同ジ結果ニナルノデハナ
  イカト質問シタノデアリマスガ、ソレハ大
  抵分ッタト思ヒマスカラ···資本金ノ古イ會
  社程今ノヤウニ稅率ヲ澤山持ッテ居リマス
  カラ、其モノハ百分ノ十ト云ウテモ、百分ノ
  五ニナルカ、三ニナルカ分ラナイガ、新會
  社ニ比シテ稅率ガ安クナルノト結果ハ同ジ
  コトデアル、隨テ臨時利得者ニ稅ヲ課ケル
  ノトハ、趣旨ガ違ウテ來ルノデハナイカト
  言ウタノデス、アナタノヤウニ資本勘定カ
  ラ云フナラバ、超過所得ニ對スル計算ト同
  ジ計算ニナル、根柢ノ薄弱ナ新會社ニ持ッテ
  行ッテ、却テ高イ稅ヲ課ケル結果ニナラヌ
  カ、同ジ會社デモ、古イ會社ト新ラシイ會
  社ト竝ンデ居ル時ハ、結果ニ於テ新會社ガ
  稅率ヲ高ク拂ッテ行クト云フコトニナルノ
  デハナイカ、斯ウ言ウタノデアリマス、是
  ハ能ク〓究サレタラ分ルト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006711731X00619350207&spkNum=110

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• 111・石渡莊太郎

  ○石渡政府委員　其點ニ付テ申上ゲテ置カ
  ナケレバナラヌモノト思フノデアリマス
  ガ、森田サンノ仰シヤルヤウニ、決シテ舊
  會社ガ必ズ積立金ヲ餘計ニ持ッテ居ルモノ
  デナク、又新會社ガ必シモ貧弱デアルトモ
  言ヘヌト思フノデアリマス、アナタノ新設
  會社ト言ハレルノハ、何時頃ノ會社ヲ新設
  會社ト言ハレルノカ能ク分リマセヌガ、昭
  和七年以降ニ新設致シマシタ所ノ會社、全
  ク事業ヲ新ニ起シタ所ノ會社ニ付テ、其會
  社ハ百分ノ七ダケシカ決メテ貰ヘナイト云
  フコトガ、不都合デハナイカト云フ御考ガ
  アルノデハナイカト思フノデアリマスガ、
  新會社-全ク新シク事業ヲ始メマシタ新
  會社ト云フモノハ、サウ容易ニ利益ガ擧ル
  モノデモナイト思フノデアリマス、ソレ等
  ノ會社ニ關シマシテ色々考慮ハ致シマシタ
  ガ、此程度ニ於テ、格別特ニ寛嚴ハナイ見
  込デゴザイマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006711731X00619350207&spkNum=111

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• 112・小笠原三九郎

  ○小笠原委員　先刻ノ私ノ御話ノ中ニ少シ
  誤解ガアルカモ知レマセヌガ、私ノ言ヒマ
  シタ意味ハ、九分九厘(笑聲)又同ジヤウナ
  コトヲ言フヤウデスガ、九分九厘マデハ二
  重課稅ヲ受ケルコトニナル、片方ノ一割ニ
  ナラヌモノハ二重課稅ヲ受ケル、斯ウ云フ
  意味デスカラ御承知ヲ願ヒマス、次ニ利益
  算定ノコトニ付キマシテ御質問ヲ申上ゲマ
  ス、一體銷却ト云フコトハ、ドノ程度マデ
  御認メニナルノカ、是ハ何カ內規デモアッ
  テ、此程度ハ利益ト見ナイト云フコトニデ
  モナッテ居ルノデアリマスルカ、或ハ手心デ
  オヤリニナッテ居リマスカ、此點ヲ承リタイ
  ト思フノデアリマス

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• 113・石渡莊太郎

  ○石渡政府委員　銷却ニ付キマシテハ、
  體稅務署ニ於キマシテ、一定ノ標準ヲ持ッテ
  居リマス、其標準ニ當嵌メマシテ、銷却ヲ
  認メタリ認メナカッタリシテ居リマス

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• 114・小笠原三九郎

  ○小笠原委員　保險會社デアルトカ、銀行
  デアルトカ云フヤウナ所デハ、競ッテ銷却ヲ
  餘計シテ、自分ノ財產ノ評價ノ低イト云フ
  コトヲ自慢ニシテ居ル、ソレハ物ニハ程度
  ガアリマスカラ、例ヘバ四分利公債ガ八十
  五圓位ノモノガ七十何圓臺迄ナッタコトガ
  アッテモ、サウ云ッタコトハ差支ナイト思ヒマ
  スガ、サウ云フ程度マデ銷却スルコトハ
  種ノ利益ノ隱匿ニモナッテ、考方ニ依ッテハ、
  實際上脫稅ヲシテ居ルト云フヤウニ見ラレ
  ヌデモナイ、此點ヲドウモ手心デオヤリニ
  ナルト云フト、ドノ邊マデ手心ヲ御加ヘニ
  ナルノデアルカ、是ハ餘程徵稅上ノ問題デ
  アリマセウガ、公平ヲ缺ク場合ガ甚ダ少ク
  ナイノデ、斯ウ云フ風ナ臨時利得稅デモ取ツ
  テ、稅金增收ノ目的ニ充テヨウト云フヤウ
  ナ場合ニハ、銷却ト云フコトニ付テ餘程手
  心ヲサレテ、世間ガ見テ餘リ銷却ヲシ過ギ
  ルデハナイカト思ッタ程度マデ、之ヲ利益外
  ニ置キ、銷却セシメテ行クト云フコトハ如
  何ナモノカト考ヘルノデアリマス、ケレド
  モ銀行ニ付テハ、或ル程度マデ信用ノ維持
  ト云フコトモアリマスカラ、或ル程度マデ
  銀行、保險會社ハ認メテ宜イヤウデアリマ
  スガ、程度ヲ越ストサウ云フ弊害ガ非常ニ
  アルヤウニ思ヒマスノデ、銷却ノ點ニ付テ
  ハ、出來得ルナラバ標準ト云フモノヲ世間
  ニ明ニサレテ置クコトガ、大變宜イノデハ
  ナイカ、斯ウ云フ風ニ考ヘルノデアリマス、
  其次ニ伺ヒマスノハ、內部積立金ト云フモ
  ノガ各所ニアリマスガ、斯ウ云フモノハド
  ウ云フ風ナ御取扱ニナッテ居リマスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006711731X00619350207&spkNum=114

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• 115・石渡莊太郎

  ○石渡政府委員　銷却ノ點ニ付キマシテ色
  色御注意ヲ戴キマシタガ、十分不公平ノ起
  ラヌヤウニ致シタイト存ジテ居リマス、其
  次ニ御尋ノアリマシタ內部積立金ト云フモ
  ノヲ、ドウ云フ風ニ扱フカト云フコトハ詰
  リ考課狀ニ載ッテ居ラナイ所ノ、所謂祕密留
  保金ト吾々ノ方デ言ッテ居ルモノカト存ジ
  マスガ、是等ニ付キマシテハ、矢張普通ノ
  積立金ト同樣ニ扱ッテ行ク積リデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006711731X00619350207&spkNum=115

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• 116・小笠原三九郎

  ○小笠原委員　是ハ私共銀行ニ居ッタ時ノ
  經驗カラ言フト、例ヘバ爲替相場デ之ヲ隱
  シテ置クト云フコトニナルト、殆ド大藏省ノ
  方デハ査定サレナイ、爲替相場デ餘程大キ
  ナモノガ隱セル、サウ云フコトニモナルノデ
  アッテ、斯ウ云フ內部積立ナドハ、餘程嚴重
  ニオヤリニナラヌト、又之ヲ御調ニナル方
  ガ餘程確ッカリシテ居ラヌト云フト、內部積
  立ハドウ云フ風ニスルカト云フコトガ分ラ
  ナイ、ソンナコトハ初メテ聞イタト云フヤ
  ウナ者モ中ニハアル、斯ウ云フコトモ臨時
  利得稅ヲ取ル場合ニハ、甚ダ宜クナイト考
  ヘルノデアリマス、或ハ未拂利息ナドト云
  フモノガアル、私ガ或ル銀行ヲ檢査シタ所
  ガ、定期預金ノ利息ガ八分ニ附イテ居ル、
  八分ノ定期預金ナドアル筈ハナイ、是ハ定
  期預金未拂利息ト云フモノニ利益ヲ隱匿シ
  テ居ルニ相違ナイノデアリマス、此邊ヲ能
  ク御取扱ニナル上ニ於テ、餘程御注意ヲ戴
  カナケレバナラヌト思フノデアリマス
  〔松村委員長代理退席、委員長著席〕
  次ニ課稅率ヲ百分ノ十トセルコトニ付キ
  マシテ、少シ御尋致シマス、今度ノハ法人
  ト個人トガ、一樣ニ百分ノ十ニナッテ居リ
  マスガ、是ハ超過所得稅ガ百分ノ十ト云ッ
  タヤウナ法人ノ關係モアッテ、超過所得ヲ寄
  セテ見ルト、丁度戰時利得ノヤウニ百分ノ
  二十ニナルカラ、ソレデ法人ノ方ハ百分ノ
  十ガ、前ノ戰時利得ノ百分ノ十五ニ較ベレ
  バ、五減ッテ居ルト云フヤウナ考カラ出テ居
  ルノデアリマセウカ、ソレトモ一律ニ取扱。ツ
  タ方ガ宜イト云フヤウナ御考カラ出テ居ル
  モノデアリマセウカ、私共擔稅力ノ方カラ
  見ルト云フト、百分ノ十、斯ウ云ッタ稅ヲ同
  一ニ御取扱ニナルコトハ穩當デナイ、斯ウ
  云フ風ニ考ヘルノデアリマス、其點ヲ一寸
  御伺致シマス

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• 117・石渡莊太郎

  ○石渡政府委員　稅率ヲ百分ノ十ト致シマ
  シタコトニ付テ御尋デゴザイマスルガ、先
  ヅ斯ウ云フヤウナ種類ノ稅法ト致シマシテ
  ハ、比較的稅率ガサウ高クナイト思フノデ
  アリマスガ、此稅率ヲ一律ニ致シマシタコ
  トハ、法人ノ利得、個人ノ利得、各々算出
  ノ仕方ハ相違シテ居リマスガ、其利得金額
  ニ對シマシテ、稅率ヲ適用致シマスル場合
  ニ、之ヲ異ナル稅率ヲ用ヒルト云フコトニ
  相成リマスレバ、其異ル理由ヲ何處カニ見
  出ス必要ガアルト思フノデアリマス、先ヅ
  今日ノ負擔狀況カラ見マシテ、法人ニ付キ
  マシテモ法人ノ普通所得稅、超過所得稅ト
  云フヤウナモノモゴザイマス關係上、ソレ
  ヲ見合ヒマシテ、之ヲ區分スル必要ハナイ、
  一律デ宜イト云フ所カラ致シマシテ、之ヲ
  一律ニ致シマシタ次第デゴザイマシテ、決
  シテ超過所得稅ノ稅率ヲ平均致シマシテ、
  倍ニナルト云フヤウナ計算ヲ致シタ譯デハ
  ゴザイマセヌガ、其超過利得稅ノ負擔モ考
  ヘマシテ、法人ノ方ヲ重クスルト云フコト
  モ如何カト思ッタモノデゴザイマスカラ、之
  ヲ同一率ニ致シタ次第デゴザイマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006711731X00619350207&spkNum=117

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• 118・小笠原三九郎

  ○小笠原委員　其點ハソレダケニ致シマシ
  テ、次ニ超過所得ノ方ハ累進率ニナッテ居ル
  ノデゴザイマスガ、之ニ累進率ヲ設ケラレ
  ナカッタ理由ハ、ドノ邊ニアルノデアリマス
  カ、或ハモウ是ハ極ク短期間デアルカラ、
  斯ウ云フヤウニ單純ニヤッテ行カウト云フ
  ヤウナ意味合デアリマスカ、ソレトモ何カ
  稅法的ナ御考ガアッテ、累進率ヲ設ケラレナ
  カッタノデアリマスカ、此點ニ關スル御考
  ヲ伺ッテ置キタイト思ヒマス

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• 119・石渡莊太郎

  ○石渡政府委員　只今小笠原サンノ仰シ
  ヤッタ通リ、一應此程度ノ徵稅デ宜クハナイ
  カ、斯ウ考ヘマシタ次第デゴザイマス、之
  ヲ累進稅率ニ致スト云フコトハ、今日法人
  ノ超過所得ガ既ニ累進率ニナッテ居リマス
  ノデ、此方モ再ビ累進率ニシテ課稅致シマ
  スコトハ、此負擔ノ上カラ見テ、如何カト
  思ッタモノデゴザイマスカラ、之ヲ比例稅率
  ニ致シタ次第デゴザイマス

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• 120・小笠原三九郎

  ○小笠原委　其次ニ私ガ御伺致シタイノ
  ハ、例ノ法人超過利益ノ中、二千圓ト云フ
  モノヲ控除シテアル問題デアリマス、是ハ
  能ク是ト比較サレル戰時利得稅ノ方ハ、定
  率控除ト云フコトニナッテ居ルガ、此方ハ
  定額控除ニナッテ、二千圓控除サレルコトニ
  ナッテ居ル、是ハ私ガ申スマデモナク、法人
  ノ資本形態ト云フモノハ、實ニ差別ガ多イ
  ノデアッテ、非常ニ小サナモノカラ、非常ニ
  大キナモノマデアルノデゴザイマスカラ、
  森田君モ申サレマシタガ、何百萬圓ト云ッ
  タヤウナ大キナモノニ、二千圓ト云フ控除
  ハ何ノ意味カ意味ガ分ラナイト云フヤウ
  ニ、私共ニハ見エルノデアリマス、何カ之
  ニ付テ特別ナ根據デモアリマスノカ、或ハ
  徵稅上簡單ニヤッツケヨウト云フヤウナコ
  トデアッタノカ、其邊ヲ伺ヒタイト思ヒマ
  ス

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• 121・石渡莊太郎

  ○石渡政府委員　只今御話モゴザイマシタ
  ガ、戰時利得稅ノ際ニ、定率ヲ控除シテ
  居ッタノデハナイカト云フ話デゴザイマス、
  アノ定率控除ト云フモノガ、果シテ之ニ當
  リマスルノカ、又ハ免稅點六千圓、其免稅
  點以上ノ時ハ、定額控除ハ二千圓デアル、
  デ此免稅點ヲ六千圓トスルト云フ條件ガゴ
  ザイマスガ、ソレガ之ニ類似シテ居リマス
  ルノカ、實ハ私共モ多少迷ッタノデゴザイ
  Vマハ.此二千圓ヲ控除スルト云フコトハ、
  如何ニ超過利得ト云ヒマシテモ、ソコニ利
  得ガアルト云ッタ所デ、例ヘバ一圓、十圓ト
  云フヤウナ、極メテ少額ナモノデアッテモ、
  ソレヲ加ヘテ課稅致スト云フコトハ、本稅
  ノ趣旨ニ鑑ミマシテ穩カデナイ、是ハ矢張
  幾ラカソコニ餘裕ヲ置キマシテ、相當額以
  上ノモノガ卽チ課稅サレル所ノ利得デア
  ル、斯ウ考ヘルコトガ、先ヅ常識カラ行キ
  マシテモ、亦課稅ノ實際上ノ便益カラ行キ
  マシテモ、其方ガ尤ダト思ヒマシテ、此二
  千圓ト云フコトヲ規定シタノデ、一ニハ少
  額利得者ノ負擔ヲ緩和スルト共ニ、併セテ
  稅務ノ實際上ニ於テ、官民相互ノ煩瑣ヲ避
  ケタイト思ッタ次第デゴザイマス、外國ノ立
  法例等ニ付テ之ヲ考ヘテ見マシテモ、ドウ
  モ定率控除ト云フコトハアリマセヌデ、皆
  定額控除ヲ行ッテ居ル模樣デアリマス、ソレ
  ナラバ此前何故定率控除ヲ致シタカト云フ
  理由ニ付キマシテハ、其當時ノ文獻ヲ見タ
  ノデゴザイマスガ、ドウモハッキリシタコ
  トハアリマセヌガ、色々類推致ス所デハ、物
  價ガ非常ニ暴騰致シマシテ、殆ド三倍位ノ
  物價ニナッテ居リマスノデ、隨テ其程度ノ儲
  ケト云フモノハ、是ハ普通ノ儲ケトシテ見
  テ行ッタナラバ宜クハナカラウカト云フ考
  ガアッタノデハナイカト思ッテ居リマス、ド
  ウモアノ定率控除ヲ致シマスル立法ノ趣旨
  ト申シマスモノハ、實ハ今日吾々ト致シマ
  シテハ、餘リハッキリ致シテ居ラヌノデア
  リマス、左樣御諒承ヲ願ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006711731X00619350207&spkNum=121

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• 122・小笠原三九郎

  ○小笠原委員　其問題ハソレダケニ致シマ
  シテ、次ニ是ハ私ハ能ク條文ガ分ラヌカラ
  御伺致スノデアリマスガ、第四條第二項第
  三號、是ハ多分法人ノ資本ノ增減ノ場合ニ
  付テノ條文デアルト思ヒマスガ、此減資ノ
  場合、增資ノ場合ニ付テ、私共ニ分リ易ク
  御說明ヲ願ヒタイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006711731X00619350207&spkNum=122

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• 123・石渡莊太郎

  ○石渡政府委員　第三號ニ付テ御說明致シ
  マス、此第三號ノ規定ハ、資本ノ增減ニナリ
  マシタ場合デアリマシテ、例ヘバ昭和五年、
  六年當時ニ、百萬圓ノ資本デ十萬圓儲ケテ
  居ッタ、此會社ガ現在ハ一千萬圓ノ資本金デ
  アル、斯ウ云フ場合ニハ、其前ニ百萬圓デ
  十萬圓儲ケテ居ッタ割合、卽チ一割ト云フモ
  ノヲ、詰リ今度ノ一千萬圓ノ資本ニ付テ百
  萬圓ニ該當致シマスノデ、百萬圓ト云フモ
  ノヲ昭和五年、六年當時ノ儲ケトシテ、ソ
  レヲ超過シタモノニ對シテ課稅ヲ致ス、斯
  ウ云フコトニ規定致シマシタ條文デゴザイ
  やく、減資ノ場合モ、ソレト同樣ノ積リデ
  ゴザイマス、ソレカラ終ヒノ方ノ「此ノ場
  合ニ於テ第一號ノ規定ノ適用ニ付テハ」ト
  云フ條項ハ、若シ最初百萬圓ノ會社ガ五萬
  圓シカ儲ケナカッタ、其率ハ百分ノ五デアル
  ト云フ場合ニ於キマシテハ、ソレヲ百分ノ
  七マデ見テ行ク、斯ウ云フコトデゴザイマ
  シテ、卽チ今資本金額ガ一千萬圓ノ場合ニ
  於テハ、七十萬圓マデハ元ノ率ガ百分ノ五
  デアッテ、卽チ五十萬圓ト云フモノヲ見テ行
  クノデハナイ、七十萬圓マデハ元ノ昭和五
  年、六年當時ノ平均ノ利益ト見テ行ク、斯
  ウ云フ計算ヲ致ス積リデゴザイマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006711731X00619350207&spkNum=123

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• 124・小笠原三九郎

  ○小笠原委員　今ノ御說明ニ依ルト、減資
  ノ場合ハ極ク合理的デアリマスガ、增資ノ
  場合ハ、多クハ詰リ利益ヲ少ナクシテ、法
  人ノ超過所得稅等ヲ免レル爲ニ增資ヲス
  ル、此場合ニ詰リ控除スル基本ヲ多ク見ル
  ト云フコトニナルノハ、甚ダ不都合ダト思
  ヒマスガ、何等ノ不都合ハゴザイマセヌ
  カ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006711731X00619350207&spkNum=124

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• 125・石渡莊太郎

  ○石渡政府委員　此稅法ガ資本ノ增資ヲ
  致シマシタ會社ニ付キマシテ、稅金ガ輕
  クナルノデハナイカト云フ御尋デゴザイ
  マスガ、如何ニモサウ云フ點モゴザイマス
  ガ、此點ヲ防ガウト致シマスコトハ、矢張
  明年度ノ其增資ヲ致シマシタ時ノ金額ニ
  對シマシテ、之ヲ控除シテ行ク額ハ百分ノ
  七ト見テ行クト云フヤリ方モ、一ツノ行キ
  方ダト思ヒマス、サウ云フ方法ニ付キマシ
  テ、隨分論議致シテ見タノデアリマスガ、
  ドウモ會社ノ發展ト云フモノヲ妨ゲル嫌ガ
  アリマス、又此稅ハ臨時稅デアリマスノ
  デ、左程此爲ニ特別ニ脫稅ヲ企テルモノモ
  アルマイト思ヒマシテ、實ハ此前ノ戰時利
  得稅法ト同樣ノ規定ニ致シテ、其點ニ關シ
  マシテハ別段規定ヲ置カナカッタ次第デア
  リマシテ、此前ノ戰時利得稅施行ノ結果カ
  ラ見マシテモ、此點ハ脫稅ヲ致ス爲ニ增資
  ヲ行フト云フコトハ、先ヅナカラウト思ヒ
  マス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006711731X00619350207&spkNum=125

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• 126・小笠原三九郎

  ○小笠原委　今御話ノヤウニ會社ノ健全
  ナ發達トカ、何トカサウ云フ點カラ云ヘ
  バ、斯ウ云フ稅稅ヲ課サナイ方ガ宜イ、既ニ
  課スルコトヽナッタ以上ハ、ドウシテモ公平
  ニ課シナケレバナラヌ、現ニ超過所得稅ニ
  對シ、法人ガ超過所得ヲ免レヤウトシテ居
  ル事ハ、恐ラク主稅局長モ御存ジナイコト
  ハナイデセウ、ソレデアリマスカラ此場合
  今ノヤウナコトニナリマスト、甚ダ面白ク
  ナイト私ハ思フ、此場合デモ矢張七分ト看
  做スト云フコトニデモシナケレバ、此稅法
  ハ甚ダ不備デアルト思フノデアリマス、此
  點ニ付テハ適當ニ御改メヲ願ハヌトイカヌ
  ト思ヒマス、尙一寸モウ一ツ二ツアリマス
  カラ、次ノ質問ニ移リマス

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• 127・石渡莊太郎

  ○石渡政府委員　其前ニ一寸一言申上ゲマ
  ス、是ハ增資ト申シマシテハ、多少語弊ガ
  アルト思ヒマスガ、例ヘバ其會社ハ積立金
  ヲ有ッテ居ル、其狀態ト、特ニ增資ヲシナク
  テモ、其會社ガ有ッテ居リマス積立金ヲ增資
  へ振替ヘマシタノトハ、負擔額ト云フモノ
  ハ同ジデアリマス、隨ヒマシテ每期積立テ
  テ行キマス積立金ニ致シマシテモ、例ヘバ
  增資ヲ制限シマスレバ、積立金モ多少制限
  スル必要ガアルト思ヒマス、ソレ等ニ付キ
  マシテハ、實行上中々容易デナイ點ガアル
  ヤウニ思ヒマシタノデ、實ハ斯樣ニ致シタ
  次第デアリマス

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• 128・小笠原三九郎

  ○小笠原委　主稅局長ハ積立金ヲ以テ增
  資スルト御考ニナルカラ、サウ云フコトニ
  ナリマスガ、サウ云フ會社ハ餘リ世ノ中ニ
  澤山アリマセヌ、此事ハ實情ヲ御調べ下サ
  ルコトヲ御願致シマス、其次ニ一寸御尋シ
  マスコトハ、是ハ私共先刻モ大臣ニ御尋シ
  タノデアリマスガ、此臨時利得稅ハ、御承知
  ノ通リ一方ニハ平年ダ、初年ダト云フコト
  ニナッテ、ドウモ永久性ヲ有ツヤウニ考ヘラ
  レル、ドウシテモ是ハ年限ヲ一一年、三年ト
  限ッテ戴カナケレバナラヌト思ヒマスガ、大
  藏當局ハ年限ヲ切ッテハ何カ困ル事情ガア
  ルノカ、ソレトモ先ヅ一應ハ斯ウ云フコト
  ニシテ置イテ、ズル〓〓トヤッテ行クト云フ
  コトノ肚ト云フモノガアルノデアルカ、其
  點ヲ特ニ肚ヲ割ッテ御答ヲ願ヒタイ

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• 129・石渡莊太郎

  ○石渡政府委員　平年度ト云フ言葉ハ、大
  分耳障リニナル言葉デアルコトハ、仰シヤ
  ル通リデアリマス、平年度ト云フ言葉ハ、
  實ハ課稅額ヲ算出スルニ付キマシテ、先ヅ
  平年度ト云フモノヲ算出シマシテ、ソレカ
  ラ初年度ニ決定サレルモノガ幾ラト、斯ウ
  シテ行クノデアリマスカラ、最初カラ初年
  度幾ラ、平年度幾ラト斯ウ算出ニナッタ次
  第デアリマシテ、此稅法ハ決シテ永續性ア
  ル稅法デハナイト思ヒマス、昭和五年六年
  ト云フモノヲ基準ニ致シマシテ、ソレカラ
  儲カッタモノニ付テ課稅シテ行クト云フ、斯
  ウ云フコトデゴザイマスカラ、是ガ相當永
  ク續キマスコトハ、却テ負擔上如何カト思
  ハレマス、ソレデアリマスカラ、ソレ等ノ點
  カラ考ヘマシテ、此稅法ノ存續期間ト云フ
  モノハ、自ラ制限ノアリマスコトハ當然デ
  アルノデゴザイマスガ、ドウモ只今ノ所、二
  年三年デ之ヲ打切ルト云フコトモ、一寸言
  切レナイ狀態デアリマス、先ヅ當分ノ間、
  二年、三年ハ續クモノト思ヒマス、或ハモッ
  ト短イトモ思ヒマス、多少モウ少シ永クナ
  ルカトモ思ヒマスガ(笑聲)其邊ノ所ハ先ヅ
  經濟情勢ノ變化ニモ依ルコトヽ思ヒマスノ
  デ、一應是ハ當分ノ內ト、斯ウ致シテ置イ
  タノデアリマス、餘リ肚ヲ割リ過ギマシ
  テ

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• 130・松村光三

  ○松村委員　一寸今ノ事ニ關聯シテ一言御
  尋致シマス、最初此案ヲ藤井藏相ガ立テラ
  レタ時ニハ、三年乃至五年ト云フコトハ、
  何カノ機會ニ大藏省カラ內示シテ居ッタノ
  デハナイデスカ、十一月頃ノ新聞雜誌等ニ
  ハ、三年、五年ト云フコトガ出テ居リマシ
  タガ、ソレガ前藏相ガ亡クナッタ頃カ、或ハ
  其後カラカ、大藏省ノ方針ガ頗ル曖昧ニ
  ナッタノデハナイノデスカ、內輪ノ事デハア
  リマスガ、前ニ何等カノ機會ニ、三年トカ
  五年トカ云フコトヲ、發表或ハ內示シタコ
  トハアリマセヌカ、新聞雜誌ニ左樣ナ事ガ
  屢〓見エテ居リマスカラ、一應ハッキリ御答
  ヲ願ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006711731X00619350207&spkNum=130

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• 131・石渡莊太郎

  ○石渡政府委員　サウ云フ事ハナイト思ッ
  テ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006711731X00619350207&spkNum=131

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• 132・小笠原三九郎

  ○小笠原委員　ドウモ自ラ其稅ガ定ッテ行
  クト云フコトデアリマシテ、中々增稅問題
  ハサウ簡單ニ議會ヲ通ルモノデハナイ、
  恐ラク次ノ增稅案ヲ出スコトハ容易デナイ
  カラ、三年、五年ハ愚カ、モット非常ニ永ク續
  クト見ナケレバナラヌ、ソレデアリマスカ
  ラ、斯ウ云フ臨時利得稅ノ性質カラ見テ、
  私ハ施行年限ヲ決メルト云フコトハ、絕對
  ニ必要ナコトヽ考ヘマスガ、是ハ意見デア
  リマスカラ、左樣申上ゲルダケニ止メテ置
  キマス、其次ニモウ一ツダケデ終リマス、
  昭和五、六年ガ標準ニナッテ居リマスルガ、
  個人ノ所ヲ讀ンデ行クト、昭和六年デ二年
  デアッテ、四年ト五年ガ標準ニシテ居ルヤウ
  ニ取ラレマスガ、ソレハ法人ト個人トデ違
  フノデアリマスカ、六年デ二年ト云フノ
  ハ、五年六年ト云フノデアリマスカ、其言
  葉ガハッキリシナイノデ伺フノデアリマス
  ガ、違フトスレバ何故違フノカ、ソレヲ御
  尋シタイ

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• 133・石渡莊太郎

  ○石渡政府委員　洵ニ御尤ナ御尋ト存ジマ
  ス、是ハ昭和六年以前ト云フモノヲ基準ニ
  致シマシタガ、御承知ノ通リ稅務署ニ於キ
  マシテ、其所得ヲ決定致シマスニ付キマシ
  テハ、大體ニ於キマシテ前年ノ實績ニ依リ
  マシテ、サウシテ其年ノ分ヲ計算スルト云
  フ方法ヲ用ヒタ方ガ宜イカト思ヒマスガ、
  其年ノ分デアルケレドモ、其實績ハ前年ノ
  分デアルト云フコトデゴザイマシテ、隨ヒ
  マシテ茲ニ課稅ヲ致シマスル分ニ付キマ
  シテハ、昭和五六年ニ稅務署デ決定致シ
  マシタ、其所得ヲ基ニシテ計算シテ行キ
  タイト思ヒマス、思ヒマスケレドモ、其
  所得ノ內容ハ多クノ場合ニ於キマシテハ、
  其前年デゴザイマスルカラ、四年、母ア
  業績ト云フモノガ、其決定ノ中ニハ多ク含
  マレテ居ルコトヽ思ヒマス

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• 134・小笠原三九郎

  ○小笠原委員　此標準ニ昭和五年、六代下、
  云フ、所謂金解禁ノ恐慌時代ヲ御採リニナッ
  タノハ、是ハ何カ別ニ理由デモアッテノコ
  トデスカ、或ハ此時分ニ採ッテ置ケバ、稅金
  ガ餘計取レルト云フ、增收第一主義カラ來
  テ居ルノデアリマスカ、是ハモウ少シ新シ
  イ所ヲ標準ニ御採リニナル方ガ宜イト考ヘ
  ル、尤モ時局ノ好影響云々ト云フコトデ、
  時局ノ好影響ト云フコトヲ一番ニ御採リニ
  ナル方ガ宜イト云フノカ、ソレトモ增收第
  一主義デ彼處ヲ御採リニナッタノデアリマ
  スカ、是モ腹ヲ割ッタ御話ヲ承リタイ

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• 135・石渡莊太郎

  ○石渡政府委員　是ハ强テ增收ヲ求メタト
  云フ譯デハゴザイマセヌ、今日一部產業ノ
  好影響ヲ呈シ始メタノハ昭和七年ニ入ッテ
  カラデアリマス、隨ヒマシテ此好景氣ノ始
  マル直近ノ狀態ヲ採ッタ方ガ宜イ、斯ウ考ヘ
  マシテ昭和五年、六年ヲ採リマシタ次第デ
  ゴザイマス、此前ノ戰時利得稅ニ於キマシ
  テモ、大正三年ニ戰爭ガ始リマシテ、其始ッ
  タ直近ノ大正二年、明治四十五年ノ二箇年
  分ヲ平均致シマシタノデ、其例ニ倣ヒマシ
  テ昭和七年ノ前二箇年ヲ標準ニ致シタノデ
  アリマス、決シテ稅金ヲ餘計取ラウト思ッ
  タ次第デハゴザイマセヌ、個人ノ方ノ景氣
  ハ寧ロ昭和七年ノ方ガ、昭和六年、五年ヨ
  リ減ッテ居ルカト思ッテ居リマス

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• 136・小笠原三九郎

  ○小笠原委員　昭和五六年ヲ標準ニ採ル爲
  ニ、其結果トシテ色々ナ方面ニ非常ナ不均
  衡、不公正ガ澤山出テ來ルコトハ、是ハ度
  度皆サンカラモ言ハレタ通リデアリマス、
  デアリマスルガ、本日ノ所ハ先ヅ此程度ニ
  止メテ、更ニ後日機會ヲ得テ質疑ヲ致スコ
  トニ御許シヲ願ヒタイト思ヒマス

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• 137・大山斐瑳麿

  ○大山委員　關聯問題デ一寸······

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• 138・岡田忠彦

  ○岡田委員長　許シマス

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• 139・大山斐瑳麿

  ○大山委員　私ノ先程大藏大臣ニ對スル質
  問ハ、大藏大臣トノ間ノ意思ノ疏通ヲ缺イ
  タ爲ニ止メマシタ、止メマシタガ、今小笠
  原君ノ伺ヲタ點ニ付テ一寸觸レテ居リマス
  ノデ、政府委員ニ對シテ尙ホ此間ノ事情ヲ
  伺ヒタイト思ヒマス、詰リ臨時利得稅ノ施
  行年限ニ關スル問題デアリマス、度々本會
  議豫算會議其他ノ機會ニ於テ、大藏大臣ナ
  リ總理大臣ガ、今本席デモ言ハレタノデア
  リマスルガ、一般稅制整理ト云フモノヲ、
  國策審議會ニ懸ケテ之ヲ決定スル、斯ウ云
  フノデアル、國策審議會ニ懸ケテ稅制整理
  ヲヤル時ニハ、必ズ此臨時利得稅ト云フモ
  ノハ考慮スルノダト云フコトハ、本會
  議デ總理大臣ガ言明シテ居ル所デアル、
  然ルニ今政府委員ノ御答辯ニ依ルト、
  是ハ腹ヲ割ッタ御話デアルト云フコト
  デアルカラ、餘リ大キイ聲デハ申シマ
  セヌケレドモ、ドウモ二三年ノ間ニ是ガ
  打切リニナルヤラ、或ハモット長ク掛ルカ
  モ知レヌ、斯ウ云フ御話デアル、一方カラ聽
  クト、國策審議會ト云フモノハ、非常ニ御急
  ギニナルヤウデ、而モ其主ナルモノハ何デ
  アルカト云ヘバ、今現ハレテ居ル問題トシ
  テハ國防ニ關スル問題、一方ハ稅制整理ニ
  關スル問題等ガ非常ニ强調サレテ居ルノデ
  アル、一體伺ヒタイノハ、一方ニ今ノ高橋大
  藏大臣ガ、前ニ御在任中ニ稅制整理委員會
  ト云フモノヲ省內ニ御設ケニナッテ、稅制ニ
  關スル一般ノ御調査ヲ急イデ居ラレタノデ
  アリマスガ、ソレガ何處へヤラ消エテシマ
  ヒマシタ折、突如トシテ藤井藏相ニ依ッテ、
  臨時利得稅ト云フモノガ創設サレタノデア
  リマス、而シテ現在カラ考ヘテ見マスルト、
  何カ根本問題ニ觸レルト、稅制整理委員會
  ニ懸ケルンダ、斯ウ云フ御話デアル、稅制
  整理委員會ニ於テハ、此臨時利得稅ヲ存續
  スルカ、改廢スルカ、ソレハ其時ニ考ヘル、
  斯ウ云フコトニナッテ居ル、ソレデ半面ノ期
  間ノ方カラ伺ヒマスト、何時マデ續クカ分
  ラヌト言フ、國策審議會ニ懸ケタ結果、是
  ガ續クト云フコトデアルノカ、改廢ヲ行フ
  ト云フ意思ガ最近ニアルノカナイノカ、
  此點ガドウモハッキリシナイ、是ハ政務次官
  ノ方カラ一ツ伺ッタ方ガ早カラウト思ヒマ
  ス

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• 140・矢吹省三

  ○矢吹政府委員　臨時利得稅ヲ當分ノ中行
  フト云フ、其言葉ニ付テノ御質問デアリマ
  スルガ、當分ノ中ハ所謂當分ノ中デ、永續
  シナイモノト心得テ居リマス、何時迄モ臨
  時利得稅ヲ置イテ、其利得ヲ取ルノヂヤナ
  イカト云フ御懸念ガ非常ニ深イノデアリマ
  スガ、私共此稅ヲ起スニ付テノ內輪ノ相談
  ノ場合ニ、決シテ左樣ナコトヲ豫想シタ者
  ハナイノデアリマシテ、所謂臨時利得ト云
  フノデ、ホンノ當分ノ間稅ヲ課ケル、ソレ
  デ斯ウ云フ稅ヲ課ケルニ付テノ理由ハ、モ
  ウ既ニ色々ノ機會ニ於テ大藏大臣其他カラ
  申上ゲタラウト思ヒマスガ、今日時局ノ影
  響ヲ受ケマシテ、一方ニ相當ナ利得ヲ占メ
  テ居ル人々ガアルト云フ、此現狀ハ見遁ス
  譯ニハ參ラヌノデアリマシテ、左樣ナ特ニ
  時局ノ影響ニ依ッテ利得ヲ占メテ居ル人カ
  ラ、若干ノ稅ヲ取ルト云フコトハ、至極至
  當ナコトデアルト、斯樣ニ考ヘテ居リマ
  ス、左樣ナ狀況ト云フモノハ永續スベキ性
  質ノモノデハナイト思フ、時局ノ影響ナル
  モノハ、或ル限ラレタル期間デアルト云フ
  コトハ豫想サレルノデアリマシテ、隨ヒ
  マシテ此稅ヲ實施致シマス期間モ、自ラサ
  ウ永久的ノモノデナイト云フコトニ、御承
  知ヲ願ヘルダラウカト思ヒマス

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• 141・大山斐瑳麿

  ○大山委員　是レ以上ハ常識判斷ノヤウニ
  ナリマスルケレドモ、一體當分ノ中ナドト
  云フコトハ、法律ノ術語ニナルベキモノカ
  ドウカ、私等ニハ分ラヌ、マア併シソレハ
  ソレデ宜シイトシテ、大體此稅ヲ設定サレ
  ル心持ト云フモノガ、若シ今ノヤウナ心持
  デアルトスルナラバ、世ノ中ガ不景氣ニ
  ナッタラ止メル、斯ウ一言デ言ハナケレバナ
  ラヌコトニナル、世ノ中ノ不景氣ニナルコ
  トヲ期待サレテ、ドノ位ノ收入ニ止マル場
  合マデ御存續ニナル積リデアルカ、今初年
  度ハ三千萬圓、二年度、三年度カラ段々ニ
  增額シテ、六千萬圓、七千萬圓ヲ超エルダラ
  ウト吾々ハ想像シテ居ルノデアルガ、ソレ
  ガ世ノ中ガ不景氣ニナッテ段々減ッテ、元ノ
  創設當時ノ三千萬圓以內ノ收入ニ止マルヤ
  ウニナッテ來タラ、止メルト云フノカドウカ、
  サウヂヤナクシテ矢張稅ノ收入額ノ如何ニ
  拘ラズ、原因ノ如何ニ拘ラズ、社會正義ノ上
  カラ是ハ取ルノデアルト云フコトナラバ、
  永久稅トシタラ宜カリサウニ思フ、何ノ爲
  ニ臨時利得稅ト云フコトニナッテ居ルノカ分
  ラヌ、是等ノ點ニ付テ御答ニクイ點ガアル
  カモ知レマセヌケレドモ、此處ハ委員會デ
  アリマスカラ、御遠慮ハ要リマセヌカラ、
  ドウゾ率直ニ御答ヲ願ヒタイ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006711731X00619350207&spkNum=141

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• 142・矢吹省三

  ○矢吹政府委員　先程私ガ御答申上ゲマシ
  タニ付キマシテ、臨時利得稅ガ廢止サレル
  場合ハ、則チ不景氣ノ到來スル場合デアラ
  ウ、不景氣ハ好マヌ所デアルカラ、臨時利
  得稅ガ成ベク長ク取レルヤウナ社會情勢ガ
  望マシイト云フ、大山サンノ御趣意デアリ
  マス、私共モ左樣ニ考ヘテ居リマス、斯樣
  ナ稅金ヲ何時マデモ取リ得ルヤウナ好景氣
  ノ續クコトガ、國家ノ爲ニ願ハシイト思ッテ
  居リマス、而シテ斯樣ナ狀況ガ長ク續ク
  場合ニ於キマシテハ、一般ニ稅制ノ上カラ
  前ヲノ社會ノ事情ニ依ッテ改正ヲシテ參ラ
  ナケレバナラヌコトハ、此際バカリデナ
  ク、常ニアルノデアリマシテ、疾ウカラ大
  藏省ノ內部ニ於テハ、今大山サンノ仰セノ
  如ク、稅制ノ改善整理ト云フコトニ付テ
  ハ常ニ案ヲ練ッテ居ルノデアリマス、ソコ
  ヘ此度ノ此時局ノ影響ニ依リマシテ、相當
  ノ利得ヲ占メテ居ル人々ニ對シテノ課稅
  ハ、此際稅制ノ整理ヲ致スナラバ、ソレニ
  適應シタ稅制ノ改正モ出來ルノデアリマス
  ガ、一般稅制ハ其儘ニシテ置イテ、唯時局
  ノ影響ヲ受ケタ人々ノ利得ヲ、其儘默過ス
  ル譯ニ參ラヌ、現在ノ事情カラ言ッテ、之三
  對シテ稅ヲ取ラウト云フ場合ニ於テハ、斯
  ウ云フ臨時ノ利得稅ヲ設ケテ、暫クノ間之
  ニ依ッテ間ニ合セルト云フコトヲ考ヘルノ
  外ハナカッタノデアリマス、社會ノ好景
  氣ガ時局ノ影響ニ依リマシテ續ク狀況ニ
  於キマシテハ、豫々大藏大臣ハ總理カラ申
  上ゲタ通リ、一般ノ稅制ノ整理改善ト云フ
  コトガ、國策審議會等ノ議ニ附シテ行ハレ
  ルコトニナラウト思フノデアリマシテ、好
  景氣ノ續ク限リニ於テハ、自ラ其新タナル
  稅制ニ依リマシテ、臨時利得稅ニ代リマシ
  テ斯ル利得ヲ占メテ居ル人々ニ對シテ、
  般稅制整理ノ結果、新タナル稅ヲ課ケルト
  云フコトガ、將來起ルダラウト思ヒマス、
  斯樣ナ考方カラ致シマシテ、矢張臨時利得
  稅ナルモノハ臨時ノモノデアッテ、サウ永續
  スルモノデハナイト私共ハ考ヘルノデアリ
  マス

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• 143・大山斐瑳麿

  ○大山委員　諄イヤウデスケレドモ、應
  ソコガ吾々ノ御尋致シタイ眼點デアリマス
  カラ、御伺致シマスガ、現ニ先程モ申上ゲタ
  ヤウニ、總理大臣マデガ、臨時利得稅ハ一般
  稅制整理ノ際ニ必ズ考慮スルト云フコトヲ、
  本會議デモ明言サレテ居ル、デスカラ一般
  稅制整理ヲ國策審議會ニ懸ケテ、ソレガ決
  定スルマデノ間ト云フナラ、ソレデ宜シイ、
  是ハ一ツノ期間デアル、所謂臨時デアル、
  据置クヤ据置カザルヤト云フコトハ、其國
  策審議會ニ懸ケテ御決定ニナレバ宜イ譯デ
  アル、吾々ノ責任トシテ、此委員會ノ責任ト
  シテ、一體何處マデヤルノカ、當分ノ內ダ
  ト云フコトハ、常識トシテ見テ行ケバ差支
  ナイコトデアリマスルケレドモ、苟モ國民
  負擔ニ關スル問題ヲ、サウ云フコトデ漫然
  トウッチヤッテ置ク譯ニハ行クマイ、肚ノ中
  デハ大抵見當ガ付イテ居リマス、付イテ居
  ルダケニ、此點ダケハ一ツ確メテ置キタイ、
  若シ社會情勢ガ非常ニ好轉スルカ、是レ以
  上ニ好轉スルカ、是レ以上ニ不景氣ニナル
  カ、社會情勢ノ變化モアリマセウ、又國家
  財政ノ狀況ノ變化モアリマセウ、ダガ併シ
  稅制ノ根本ニ關スル問題デアリマスルガ故
  ニ、一般稅制整理ニ對シテ、必ズ其時ニハ
  之ヲ考慮スルノダト云フ御言明ガ得ラレマ
  スレバ仕合セデアリマス、若シ只今直グニ
  御言明ガ難カシイ事情ガアリマシタラ、宜
  シク御相談ノ上、其分ハ後日ニデモ宜シウ
  ゴザイマス、此委員會中ニ於テ、其點ヲハッ
  キリシテ戴キタイト思フノデアリマス

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• 144・矢吹省三

  ○矢吹政府委員　色々ナ機會ニ總理或ハ大
  藏大臣カラ申上ゲテ居ル通リ、國策審議會
  ニ懸ケマシテ、一般稅制整理ヲシタイト云
  フ政府ノ希望ハアルノデアリマシテ、左樣
  ナ審議ヲ致ス場合ニハ、此臨時利得稅ヲ存
  續スベキヤ否ヤト云フコトハ、當然付議サ
  レベキモノデアルト考ヘテ居リマス、此程
  度ノ私カラノ御答ヲ以テ御滿足ガ行カナイ
  ノデアリマスルカ、明ニ其際ハ之ヲ廢スル
  ト云フコトヲ言明セイト云フ仰セナノデア
  リマスカ、、左樣ナ意味デアルト致シマスト、
  只今私ハ卽答致シ兼ネマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006711731X00619350207&spkNum=144

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• 145・岡田忠彦

  ○岡田委員長　大山君、アナタノ御質問
  ハ、矢張此次ニ大藏大臣ノ見エタ時ニナ
  サッタラ如何デスカ、國策審議會ナドハマダ
  ナイモノダ、空ナモノヲ以テ答タッテ何ニ
  モナラナイ、サウ云フモノヲ以テ答ヘルト
  云フコトハナイ筈デス、是ハ寧ロ大藏大臣
  ノ見エタ時ニ、モウ一度御聽キニナッタラ
  宜カラウト思フ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006711731X00619350207&spkNum=145

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• 146・大山斐瑳麿

  ○大山委員　委員長ニ申上ゲマスガ、大藏
  大臣ニ對シテ私ハ臨時利得稅問題、及公債
  問題ニ付テハ質問セヌト言ッテ居ル

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006711731X00619350207&spkNum=146

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• 147・岡田忠彦

  ○岡田委員長　ナサル場合ニハ私ガ許シマ
  ス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006711731X00619350207&spkNum=147

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• 148・大山斐瑳麿

  ○大山委員　故ニ大藏大臣ニ關スル限リハ、
  私ハ此程度ニ止メテ置キマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006711731X00619350207&spkNum=148

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• 149・岡田忠彦

  ○岡田委員長　ソレヂヤ御質問ヲ續ケマス
  カ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006711731X00619350207&spkNum=149

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• 150・大山斐瑳麿

  ○大山委員　モウ是デ宜シイ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006711731X00619350207&spkNum=150

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• 151・後藤亮一

  ○後藤委員　昨日矢野君カラ要求シマシタ
  材料デアリマスガ、只今一ツ參ッタノデアリ
  マス、マダ殘ッテ居リマスカラ、成ベク早ク
  御提出ヲ願ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006711731X00619350207&spkNum=151

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• 152・石渡莊太郎

  ○石渡政府委員　出來マシタモノヨリ順次
  提出致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006711731X00619350207&spkNum=152

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• 153・岡田忠彦

  ○岡田委員長　明日ハ實ハ分科會ノ方へ大
  藏大臣ガ出ルコトヲ必要トスルモノデアリ
  マスカラ、私モ御同意シテ置イタノデス、
  ソコデ大藏大臣ガ居ナケレバ進行出來ナイ
  點モアルヤウデアリマスカラ、明日ハ特ニ
  午後一時半ヨリ開クコトニ致シマシテ、午
  前ハ開キマセヌ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006711731X00619350207&spkNum=153

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• 154・大山斐瑳麿

  ○大山委員　御決定ノコトニ付テハ彼此レ
  申シマセヌガ、私ハ先程外務大臣及商工大
  臣等ニモ、同時ニ質問ヲスベク要求ヲ致シ
  テ置キマシタ、デアリマスカラ、若シ大藏
  大臣ノ問題デアリマスルナラバ、ソレハ構
  ハズニ、他ノ大臣デ質問ガ出來ルコトト思
  ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006711731X00619350207&spkNum=154

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• 155・岡田忠彦

  ○岡田委員長　宜シウゴザイマス、時間ノ
  都合ガアリマスカラ、明日ハ午後一時半カ
  ラ開イテ、サウシテアナタノ御要求シテ居
  ルコトハ、固ヨリ外務大臣竝ニ商工大臣ニ
  通ジテ置キマス、ソレハ分ッテ居リマス、本
  日ハ是デ散會
  午後四時十一分散會

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006711731X00619350207&spkNum=155

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