第67回帝国議会　衆議院　本会議　第20号　昭和10年2月28日

1. 会議録本文

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• 000・会議録情報

  昭和十年二月二十八日（木曜日）
  　　　午後一時十五分開議
  　　　　━━━━━━━━━━━━━
  　議事日程　第十九號
  　　昭和十年二月二十八日
  　　　午後一時開議
  　第一　市町村立尋常小學校費臨時國庫補助法中改正法律案（政府提出）　第一讀會
  　第二　府縣制中改正法律案（政府提出）　第一讀會
  　第三　北海道會法中改正法律案（政府提出）　第一讀會
  　第四　市制中改正法律案（政府提出）　第一讀會
  　第五　町村制中改正法律案（政府提出）　第一讀會
  　第六　産繭處理統制法案（政府提出）　第一讀會
  　第七　蠶絲業組合法中改正法律案（政府提出）　第一讀會
  　第八　蠶絲業法中改正法律案（政府提出）　第一讀會
  　　　　━━━━━━━━━━━━━
  　　〔左の報告は朗讀を經さるも參照の爲茲に掲載す〕
  一政府より提出せられたる議案左の如し
  　産繭處理統制法案
  　蠶絲業組合法中改正法律案
  　蠶絲業法中改正法律案
  　　　　　　　（以上二月二十七日提出）
  一議員より提出せられたる議案左の如し
  　百貨店法案
  　　提出者
  　　　　眞鍋儀十君　川橋豊治郎君
  　　　　本田彌市郎君　一松定吉君
  　百貨店法案
  　　提出者
  　　　　三上英雄君　立川太郎君
  　家事調停法案
  　　提出者
  　　　　星島二郎君　田子一民君
  　　　　松尾孝之君　篠原義政君
  　　　　山本市英君
  　朝鮮に訴願法及行政裁判法實施に關する建議案
  　　提出者
  　　　　牧野良三君　熊谷直太君
  　　　　名川侃市君　牧野賤男君
  　　　　小林かなえ君　宮古啓三郎君
  　朝鮮に裁判所構成法及辯護士法實施に關する建議案
  　　提出者
  　　　　牧野良三君　宮古啓三郎君
  　　　　熊谷直太君　名川侃市君
  　　　　牧野賤男君　小林かなえ君
  　教育施設の改善に關する建議案
  　　提出者
  　　　　山下谷次君　川口義久君
  　　　　石坂豐一君　福井甚三君
  　教育施設の改善に關する建議案
  　　提出者
  　　　　荒川五郎君　内藤正剛君
  　　　　作田高太郎君　田中祐四郎君
  　　　　山本厚三君　八並武治君
  　　　　猪股謙二郎君　戸井嘉作君
  　　　　平川松太郎君　末松偕一郎君
  　　　　本田彌市郎君　吉川吉郎兵衞君
  　　　　林平馬君　牧山耕藏君
  　　　　藤田若水君
  　利根渡良瀬江戸三川低水工事急施に關する建議案
  　　提出者
  　　　　佐藤洋之助君　今井健彦君
  　　　　出井兵吉君
  　京都市内貫通國有鐵道高架改築に關する建議案
  　　提出者
  　　　　中野種一郎君　鷲野米太郎君
  　　　　鈴木吉之助君
  　母子扶助法制定に關する建議案
  　　提出者
  　　　　星島二郎君　田子一民君
  　　　　松尾孝之君　篠原義政君
  　　　　山本市英君
  　　　　　　　（以上二月二十六日提出）
  一議員より提出せられたる質問主意書左の如し
  　宗教界の醜爭竝佛教復興に關する質問主意書
  　　提出者　　　　　　　　中村三之丞君
  　　　　　　　（以上二月二十六日提出）
  一去二十六日岡田内閣總理大臣より左の通發令ありたる旨の通牒を受領せり
  　　　　　　　内務書記官　坂千秋
  　第六十七囘帝國議會内務省所管事務政府委員被仰付
  一去二十六日常任委員補闕選擧の結果左の如し
  　第五部選出
  　　決算委員　仙波久良君（加藤久米四郎君補闕）
  一去二十六日辭任したる常任委員左の如し
  　　第三部選出豫算委員　杉山元治郎君
  一去二十六日議長に於て辭任を許可したる常任委員左の如し
  　　第八部選出豫算委員　加藤鐐五郎君
  一去二十六日議長に於て選定したる委員左の如し
  　米穀自治管理法案（政府提出）外二件委員
  　　　　東武君　立川太郎君
  　　　　本田義成君　川手甫雄君
  　　　　上野基三君　河野一郎君
  　　　　助川啓四郎君　壽原英太郎君
  　　　　山田又司君　島田七郎右衞門君
  　　　　田中善立君　牧野良三君
  　　　　後藤脩君　服部岩吉君
  　　　　上田孝吉君　中井一夫君
  　　　　難波清人君　田村實君
  　　　　石川又八君　三善信房君
  　　　　水久保甚作君　安藤正純君
  　　　　坂東幸太郎君　中島彌團次君
  　　　　松村謙三君　中亥歳男君
  　　　　川橋豊治郎君　池田秀雄君
  　　　　谷原公君　小山松壽君
  　　　　猪股謙二郎君　吉川吉郎兵衞君
  　　　　由谷義治君　野中徹也君
  　　　　中田正輔君　朴春琴君
  一去二十六日に於ける特別委員の異動左の如し
  　政府貸付金處理に關する法律案（政府提出）委員
  　　辭任　犬養健君　補闕　本田義成君
  　　辭任　増田義一君　補闕　松尾四郎君
  　大正九年法律第五十九號中改正法律案（北海道拓殖鐵道補助に關する件）（東武君外五名提出）外一件委員
  　　辭任　廣瀬爲久君　補闕　綾部健太郎君
  　　辭任　丸山浪彌君　補闕　瀬川嘉助君
  一昨二十七日常任委員補闕選擧の結果左の如し
  　第三部選出
  　　豫算委員　塩月學君（杉山元治郎君補闕）
  　第八部選出
  　　豫算委員　佐竹直太郎君（加藤鐐五郎君補闕）
  一昨二十七日常任委員理事補闕選擧の結果左の如し
  　豫算委員
  　　理事　亀井貫一郎君（理事小池四郎君本月十九日委員辭任に付其の補闕）
  一昨二十七日委員長及理事互選の結果左の如し
  　米穀自治管理法案（政府提出）外二件委員
  　　委員長　　　　　　　　東武君
  　　理事
  　　　　立川太郎君　助川啓四郎君
  　　　　上田孝吉君　三善信房君
  　　　　松村謙三君　川橋豊治郎君
  　　　　野中徹也君
  一昨二十七日に於ける特別委員の異動左の如し
  　借地借家調停法中改正法律案（藤田若水君外四名提出）外六件委員
  　　辭任　中山福藏君　補闕　内藤正剛君
  　　　　━━━━━━━━━━━━━

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006713242X02019350228&spkNum=0

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• 001・濱田國松

  ○議長(濱田國松君)　是ヨリ會議ヲ開キマ
  ス、日程第一、市町村立尋常小學校費臨時
  國庫補助法中改正法律案ノ第一讀會ヲ開キ
  マスー文部大臣松田源治君
  第市町村立尋常小學校費臨時國庫
  補助法中改正法律案(政府提出)
  第一讀會
  市町村立尋常小學校費臨時國庫補助法
  中改正法律案
  市町村立尋常小學校費臨時國庫補助法中
  左ノ通改正ス
  第一條中「昭和九年度迄」ヲ「昭和十年度
  迄」ニ改ム
  第三條中「百分ノ四十以內」ヲ「百分ノ七
  十以內」ニ、「千分ノ七·五以内」ヲ「千分
  ノ五以內」ニ改ム
  附則
  本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス但シ第三
  條ノ改正規定ハ昭和十年度分ニ付之ヲ適
  用ス
  〔國務大臣松田源治君登壇〕

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• 002・松田源治

  ○國務大臣(松田源治君)　市町村ノ財政ノ
  現狀ニ鑑ミマシテ、市町村立尋常小學校費
  臨時國庫補助法ニ依ル補助期間ヲ、昭和十
  年度迄延長シ、併セテ市町村ニ對スル補助
  金交付ノ割合ヲ變更スルノ必要ガアリマス
  ノデ、本案ヲ提出致シタ次第デアリマス、何
  卒御協贊アランコトヲ切望致シマス(拍手)

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• 003・濱田國松

  ○議長(濱田國松君)　質疑ノ通告ガアリマ
  ス、通〓順ニ從ヒ順次之ヲ許ツマス-木
  村正義君
  〔木村正義君登壇〕

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• 004・木村正義

  ○木村正義君　只今議題トナリマシタ市町
  村立尋常小學校費臨時國庫補助法中改正法
  律案ニ關シマシテ、少シク政府ニ御尋致シ
  タイト思ヒマス、此市町村立尋常小學校費
  臨時國庫補助法ハ昭和七年八月、彼ノ農村
  恐慌ヲ中心トシテ捲起リマシタ社會不安ニ
  對シ開カレマシタ臨時議會ニ於テ、時局匡
  救對策ノ一ツトシテ協賛ヲ與ヘタル非常時
  立法ノ一ツデアリマス、卽チ農村ノ不況深
  刻ニシテ、町村ニ於テ小學校〓員ノ俸給ノ
  不拂、延滯、又ハ寄附强制等ガ、全國隨所
  ニ行ハレマシテ、國民〓育ノ重大ナル危機
  ヲ招來致シマシタガ爲ニ、昭和七年度乃至
  昭和九年度ノ三箇年ニ亙リ、每年國庫ヨリ
  千二百万圓ヲ支出シ、市町村ノ極度ニ窮迫
  セル財政ノ緩和ヲ圖リ、併セテ〓員俸給不
  拂等ヲ防止セントシタモノデアリマス、而
  シテ本法ノ實施ノ結果ハ如何デアッタデア
  リマセウカ、御承知ノ通リ時局匡救事業ノ
  爲ニ投ゼラレタル國ノ經費ハ、五億二千餘
  万圓ニ達シテ居リマスルガ、其中此尋常小
  學校費臨時國庫補助ハ、三箇年ヲ通ジ僅ニ
  三千六百万圓ニ過ギナイノデアリマス、併
  ナガラ是ガ普ク全國ノ町村ニ行渡リ、而モ
  國民〓育ノ危機ヲ救ウタル偉大ナル功績
  ハ、何人モ私ハ之ヲ認メナクテハナラヌト
  思ヒマス、彼ノ匡救土木事業費ガ頗ル巨額
  ニ達シテ居リナガラ、政府當初ノ聲明ヲ裏
  切リ、町村民ヲ霑ス所ノ勞銀ハ極メテ少ク、
  多クハ役人ノ救濟ニ終リ、又事業ノ配當ガ
  其宜シキヲ得ズシテ、部落間ニ惡感情ヲ誘
  發シ、徒ニ町村ニ起債ノ重荷ヲ殘シマシタ
  ノト較ベマスレバ、洵ニ同日ノ論ニ非ザル
  コトハ、諸君ノ等シク認メラレル所デアル
  ト思ヒマス(拍手)斯ノ如ク此法律ハ現下我
  國町村ノ實情ニ卽シ、眞ニ有效適切ナルモ
  ノデアリマスカラ、昭和十年度ニ於テ、現
  内閣ガ本法ニ對シ如何ナル取扱ヲ爲スカト
  云フコトハ、國民ノ最モ注目ヲ怠ラナカッタ
  所デアリマス、而シテ前藤井藏相ノ誤レル健
  全財政主義ヲ是認シタ岡田首相以下各閣僚
  モ、流石ニ此國庫補助ヲ、他ノ匡救事業ト
  同ジク九年度ヲ以テ打切ル程ノ暴擧ハ敢テ
  セラレナカッタノデアル、併ナガラ千二百万
  圓ヲ九百万圓ニ減ジ、昭和十年度限リトセ
  ラレマシタルコトハ、抑〓如何ナル理由ニ基
  クモノデアリマセウカ、私共ノ最モ不可解
  トスル所デアリマス(拍手)此處ニモ現內閣
  ノ農村輕視、町村無視ノ態度ガ、遺憾ナク
  暴露セラレテ居ルモノト申サナケレバナリ
  マセヌ、政府ハ今日マデ財政上ノ都合トカ、
  或ハ自分ノ微力ノ爲ダト云フヤウナコトヲ
  辯明致サレテ居リマスケレドモ、斯ノ如キ
  辯明ヲ以テシテハ、全國ノ町村、否全國民
  ヲ滿足セシムルモノデハナイト思ヒマス、
  ソレ故ニ私ハ次ノ數項ヲ揭ゲテ政府ニ御尋
  致シタイノデアリマスルガ、本案ノ內容ニ
  立入ルニ先ッテ、本案提出ノ手續ニ付テ御伺
  ヲ致シテ置カネバナラヌ一二ノ重要問題ガ
  アリマス
  先ヅ第一ニ御伺致シタイコトハ、政府ハ
  何故ニ本改正案ヲ、斯クモ遲レテ本會議ニ
  提出シタノデアル、何故衆議院ノ豫算審査
  期間中ニ提出シナカッタカト云フコトデア
  リマス、凡ソ豫算ニ關係アル所ノ法律案ハ、
  豫算案ノ提出ト同時ニ、取ハ豫算審議中ニ
  議會ニ提出スベキト云フコトハ、其性質上當
  然ノコトデアリマス、而モ本改正案ノ內容ヲ見
  マスルニ、僅ニ二箇條ニ過ギヌ極メテ簡單ナ
  ルモノデアル、ヨモヤ事務的ニ調査ニ日ヲ要
  シタナドヽハ申サレマスマイ、政府ノ怠慢、
  部內ノ不統制カ、又ハ他意アッテノコトカ、
  其何レカノ一ツデナケレバナリマセヌ、世
  間デハ政略的ニ手控へ、遲延セシメタ等ノ
  觀測ヲ下シテ居ルノデアリマス、尙ホ貴族
  院カラ、政府議案提出ノ遲延ニ付テ警告ヲ
  發セラレタニ當ッテ、書記官長ヲシテ政友
  會、民政黨ノ幹事長ヲ訪間セシメ、審議ノ
  促進ヲ要望セシメラレマシテ、恰モ衆議院
  ニ、遲ラシテ居ル所ノ一部ノ責任アルカノ
  如ク、世間ノ誤解ヲ招イテ居ルノデアリマ
  スガ、是ハ以ノ外ノコトデアリマシテ、衆
  議院ノ迷惑至極トスル所デアリマス(拍手)
  議案提出ノ遲延等ニ付キマシテハ、政府ニ
  責任ノアルコトヲ、深ク反省セラルベキデ
  アルト思ヒマス、現ニ本改正法律案ニ付キ
  マシテモ、旣ニ去ル二十三日ノ日程ニ上ッテ
  居リマシタノニ、關係大臣一人ノ出席ナク、
  遂ニオ流レトナッテ、審議ヲ五日間モ遲延ス
  ルニ至ッタノデアリマス、或ハ貴族院ノ豫算
  總會ニ於テ、恰モ關係大臣ニ質問ガアッタ
  爲メ、已ムヲ得ナカッタノデアルト辯解サ
  レルカモ知レマセヌケレドモ、貴族院ニ於
  ケル一豫算委員ノ質問ト、政府ノ衆議院ニ
  對スル法律案ノ提出ト、輕重何レデアリマ
  セウカ、而モ政府ノ都合ニ依リマシテハ、
  貴族院ニ於ケル質問者ノ順序ヲ入替ヘルト
  云フコトハ、敢テ困難デハナイノデアリマ
  ス、私ハ甚ダ遺憾ノコトデアリマスルガ、
  政府ノ斯ノ如キ怠慢、斯ノ如キ不誠意ガ、
  議案ノ審査ヲ遲ラシ、又貴族院ヘノ囘付ヲ
  遲ラシテ居ルト、玆ニ斷言セザルヲ得ヌノ
  デアリマス(拍手)本法案提出ノ遲レタル理
  由ヲ明瞭ニ御答アランコトヲ總理大臣ニ希
  望致シマス
  第二ハ總理大臣及內務大臣ニ御伺ヲ致シ
  タイノデアリマス、ソレハ本法案提出ノ手
  續ニ付テヾアリマス、本法案ハ昭和十年二
  月二十日、勅旨ヲ奉ジテ帝國議會ニ提出サ
  レタノデアルガ、ソレニ副署セル者ハ、內
  閣總理大臣岡田啓介、大藏大臣高橋是〓、
  文部大臣松田源治トナッテ居リマス、然ルニ
  昭和七年八月二十三日、此市町村立尋常小
  學校費臨時國庫補助法案ガ帝國議會ニ提出
  サレマシタ時ニ、ソレニ副著セル者ハ、內
  閣總理大臣子爵齋藤實、大藏大臣高橋是
  清、內務大臣男爵山本達雄、文部大臣鳩山
  一郞トナッテ居リマス、私ハ本法案ハ市町村
  ノ財政ニ關スル法律案デアリマスカラ、政
  府ニ於テ案文ヲ起草シ天皇ノ命ヲ奉ジ、之
  ヲ法律案ト爲シ議會ニ提出スルニ當ッテハ、
  憲法第三十八條及五十五條ノ條章ニ照シ、
  當然內務大臣ノ副著ヲ要スベキモノト信ジ
  ママ、何故ニ本法律案ニ內務大臣ノ副署ナ
  キカト云フコトヲ、內閣ノ首班タル內閣總
  理大臣ニ御尋致シマス、又內務大臣ハ何故
  ニ本法案ニ副署セラレナカッタノデアルカ、
  關係國務大臣ガ勅旨ヲ奉ゼザル法律案ガ議
  會ニ提出セラルヽト云フコトハ、大臣輔弼
  ノ責任ニ缺クル所ナキカヲ御尋致シマス
  (拍手)先ヅ以上ノ二ツニ付キマシテ御答ガ
  アリマシタル後ニ、私ハ內容ニ亙リ更ニ質
  問ヲ致シタイト思ヒマス(拍手)
  〔國務大臣岡田啓介君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006713242X02019350228&spkNum=4

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• 005・岡田啓介

  ○國務大臣(岡田啓介君)　木村君ニ御答致
  シマス、第一ノ御質問ノ提出手續ノ遲レタ
  ル理由デアリマスガ、是ハ私ハ早ク提出ス
  ルヤウ督促ヲ致シタノデアリマス、交付金
  ノ分配率ノ決定、其他種々〓究ヲ要スル事
  項ガアリマシテ、其爲ニ遲レマシタノハ洵
  ニ遺憾デアリマス、第二ノ副署ノ御尋デア
  リマスガ、是ハ今回提出致シマシタ案ハ、
  專ラ文部省ニ關係スル事項デアリマスカラ、
  內務大臣ノ副署ハ致シテ居リマセヌ
  〔國務大臣後藤文夫君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006713242X02019350228&spkNum=5

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• 006・後藤文夫

  ○國務大臣(後藤文夫君)　只今ノ提案ニ付
  キマシテ、副署ノコトニ付テノ御尋ニ對シ
  マシテハ、只今總理大臣カラ御答ノアッタ
  通リデゴザイマスルガ、此案ハ提出ノ時ニ
  ハ、內務大臣モ副署大臣ニ相成ッテ居リマ
  スルガ、今囘ノ提案ニハ、此前ノ案ノ時分
  ニ、町村等ニ特別會計ヲ設置スル關係ノ事
  項ガアリマシタガ、今度ノ改正ハ別ニサウ
  云フ點ニ觸レテ居リマセヌノデ、特ニ提案
  ノ副署大臣ト云フコトニ相成ッテ居ラヌノ
  デアリマスガ、併シ文部省、內務省ノ間ニ
  於キマシテハ、無論此法案ニ付テハ能ク協
  議ヲ遂ゲ、閣議等ニモ提出致シマシテ、之
  ヲ關係ノ責任アル者トシテハ參加ヲ致シマ
  シテ、閣議ヲ經テ提出スルコトニ相成ッテ
  居ルノデアリマス、左樣御諒承ヲ願ヒタイ
  ト思ヒマス
  〔木村正義君登壇〕

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• 007・木村正義

  ○木村正義君　只今總理大臣及內務大臣カ
  ラ御答ガアリマシタガ、第一ノ點ニ付キマ
  シテハ、此議案ヲ遲ラシタコトニ付テハ、
  自分ハ催促ヲシテ居ッタケレドモサウナッタ
  ト、斯ウ云フ御答デアル所ヲ見ルト、具大
  全ク政府ノ怠慢、或ハ部內ノ不統制ト斷ズ
  ルヨリ外ナイノデアリマス(拍手)此點ガ我
  ガ衆議院ガ年來常置委員制度ノ必要ヲ高唱
  シテ居ル所以デアリマス、私共ハ政府ノ斯
  ノ如キ怠慢、不誠意ニ對シテ、玆ニ十分ナ
  ル警告ヲ發シテ置キタイト思ヒマス、第二
  ノ總理大臣ノ御答ハ、大體文部省ニ關係ヲ
  致シテ居ルカラ、副署シナイコトニナッテ居
  リマスト、斯ウ云フ御答辯デアリマスルガ、
  是ハ私ノ理解出來ナイ所デアル、尙ホ又內
  務大臣カラモ縷々、特別會計ニ此前ニハ關係
  シテ居ッタケレドモ、今囘ハ別ニ其規定ガナ
  イカラ、副署シテ居ナイナドヽ申サレマス
  ケレドモ、是亦私ハ到底諒解スルコトガ出
  來ナイノデアリマス、大體文部省ニ關係ス
  ルカラト言ッテ、大體ト云フヤウナ御言葉ヲ
  遣ハレルナラバ、矢張內務省ニ關係アルコト
  ヲ、總理モ認メテ居ラレルト申サナケレバ
  ナラヌ、況ヤ內務省ノ官制ヲ見マスルト、
  第一條ニハ、地方行政ニ關シテ內務大臣ガ
  管理ヲ致シテ居ルト云フコトハ規定サレテ
  居ル、第五條ヲ見マスルト、府縣市町村公
  共組合ノ財政及經濟ニ關スル事項、斯ウ云
  フコトガアルノデアリマス、府縣市町村ノ
  財政及經濟ニ關スル事項ハ地方局ノ所管デ
  アッテ、內務大臣ノ所管デアルコトヲ明記シ
  テアリマス、此市町村立尋常小學校費臨時
  國庫補助法ガ、何人カ市町村財政ニ關係シ
  ナイモノデアルト云フコトヲ斷言シ得ルデ
  アリマセウカ(拍手)況ヤ政府カラ提出サレ
  タル所ノ、文部省所管ノ豫定經費要求書ノ
  中ノ說明書ヲ見マスルト、此臨時國庫補助
  ノ理由トシテ、斯ウ云フコトヲ書イテアリ
  マス、地方財政ノ狀況ハ是ガ補助ヲ繼續ス
  ルノ必要アルニ依ッテ六百何十万圓ヲ計上
  スル云々、其處ニ書イテアルコトハ、〓育
  ノ事ガ書イテアルノヂヤアリマセヌ、地方
  財政ノ狀況ハ、是ガ補助ヲ繼續スル必要ガ
  アルカラ、此臨時國庫補助法ヲ出スノダ、
  斯ウ云フ說明ニナッテ居ルノデアリマス、是
  ガ地方財政ニ關スル事項デアルト云フコト
  ハ、一點ノ疑ノ無イコトデアッテ、先程內務大
  臣ノ特別會計ト云フヤウナ、サウ云フ部分
  的ノ問題ヂヤアリマセヌ、內務省ノ官制ハ、
  全般的ニ府縣市町村ノ財政ニ關スル事項ト云
  フコトハ-內務大臣ノ所管デアルト云フ
  コトヲ明記致シテ居ルノデアリマス、而モ
  此前ニ提出サレマシタル法律案ニ付テ、四
  大臣ガ副署シ、發布ニ當ッテ亦之ヲ副署シテ
  居ルノデアリマス、此法律案ニ付テ只今ノ
  如キ御答辯デハ、滿足スルコトガ出來ナイ
  ノデアリマスルガ、モウ一應念ノ爲ニ御伺
  ヲ致シテ置キマス、政府ハ此法律案ニ內務
  大臣ガ副署ヲセヌデモ差支ナイト云フ御見
  解デアルカ、更ニ此處ヘ斷言セラレンコト
  ヲ、言明セラレンコトヲ要求致シマス、唯
  總理大臣ノヤウニ、副署ハシテアリマセヌ
  ト云フヤウナコトヂヤアリマセヌ、サウ云
  フ事實ヲ聽イテ居ルノヂヤナイ、副署シナ
  イデ差支ガナイト云フコトヲ、此處ヘ斷言
  セラルヽコトヲ要求致シマス(拍手)
  〔國務大臣岡田啓介君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006713242X02019350228&spkNum=7

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• 008・岡田啓介

  ○國務大臣(岡田啓介君)　御答致シマス、
  副署シナクテモ差支ナイノデアリマス
  〔木村正義君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006713242X02019350228&spkNum=8

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• 009・木村正義

  ○木村正義君　只今總理大臣カラ、內務大
  臣ノ副署ナクシテ、此法律案ヲ提出シテ差
  支ナイト云フ御言明ガアリマシタ、私ハ憲
  法第三十八條、第五十五條、及內務省官制
  ニ照シ、內務大臣ノ副署ナキトキハ、輔弼
  ノ責任上缺クル所アリト信ズルモノデアリ
  マス(拍手)併ナガラ差支ナシト總理大臣カ
  ラ言明アリマスル以上ハ、玆ニ討論ハ致シ
  マセヌ、唯政府ハ其言明ニ對シ、重大ナル
  責任ヲ生ズルモノデアルト云フコトヲ申上
  ゲテ置キマス
  私ハ是カラ本法案ノ內容ニ互ッテ質問ヲ
  致シタイト思ヒマス、第一ニ御伺ヲ致シタ
  イコトハ、此臨時國庫補助法ヲ九百万圓ト
  シ、昭和十年度迄トセラレタルコトニ付テ
  御伺ヲ致シタイト思ヒマス、抑〓現行法ニ於
  キマシテ、國庫補助金ガ千二百万圓ニナッ
  タト云フコトニ付キマシテハ、特別ノ理由
  ノ存スルコトデアッテ、文部當局モ此事ハ能
  ク御存ジノコトデアリマス、卽チ當初文部
  省ハ、每年度三千万圓ヲ要スルモノトシテ、
  大藏省ニ對シテ豫算ノ要求ヲ爲シタモノデ
  アリマスルガ、市町村立尋常小學校費國庫
  補助ハ、小學校〓員ノ俸給等ニ對シテ補助
  ヲスルモノデアッテ、經常費ノ性質ヲ有ッテ
  居ルモノデアルカラ、他ノ土木事業ナドヽ
  違ッテ、三年ヲ以テ之ヲ打切ルコトハ出來
  ナイ、隨テ是ハ後ニ繼續スベキ必然性ヲ有
  スルモノトシテ、其金額ヲ最小限度ニ決メ
  ナクテハナラナイ、斯ウ云フ理由ノ下ニ、
  大藏省ニ於キマシテ千二百万圓ニ減少シタ
  經緯ヲ有ッテ居ルノデアリマス、卽チ此補助
  金ハ、一般ノ時局匡教費ガ九年度ヲ以テ打
  切ラレマシテモ、十年度以降ニ繼續スルモ
  ノデアルト云フコトハ、當初カラ豫定セラ
  レテ居ッタモノデアリマス、又委員會等ニ於
  キマシテモ、此國庫補助ハ臨時トハ言フモ
  ノヽ、恒久的性質ヲ有スルモノデアルト云
  フコトハ、當時政府ノ能ク之ヲ認メテ居ッタ
  所デアリマス、然ルニ政府ハ、今囘之ヲ九
  百万圓ニ減少スルト共ニ、十年度限リニ限
  定ヲセラレマシタノハ、此當初ノ經緯ヲ無
  視スルモノデアリマシテ、町村ノ爲ニ、國
  民〓育ノ爲ニ、眞ニ不親切至極ト申サナケ
  レバナラヌノデアリマス、政府ハ何故此當
  初ノ經緯ヲ無視シタノデアルカ、單ニ財政
  上ノ都合トカ、自分ノ微力ノ結果ダト云フ
  辯明デハ、私ハ文部大臣トシテ輔弼ノ重責
  ヲ完ウシタリト認メルコトハ出來ナイノデ
  アリマス、此點ニ付テ國民ヲ納得セシムル
  ニ足ルベキ、十分ナル御說明アランコトヲ
  希望致シマス
  又文部大臣及內務大臣ニ御伺致シタイノ
  デアリマスルガ、政府ノ豫定經費要求書ニ
  依レバ、九百万圓中六百万圓ガ是迄ノ千二
  百万圓ノ繼續デアリマシテ、後ノ三百万圓
  ハ災害對策ニ要スル經費トナッテ居リマス、
  卽チ地方財政ノ困態ノ結果ト致シマシテ、
  補助ヲ繼續スルモノハ從來ノ半額、卽チ六
  百万圓ニ過ギナイノデアリマス、ソコデ御
  伺致シタイコトハ、政府ハ地方財政ノ狀況
  ハ、十年度ハ前三箇年ニ比シ好轉スルトノ
  御見込ヲ持ッテ居ラレルカドウカト云フコ
  トデアリマス、是マデ東北地方ノ窮乏ニ付
  キマシテハ、此壇上ヨリ屢〓承リマシタ所デ
  アリマシテ、私共ハ眞ニ同情ニ堪ヘナイ所
  デアリマスルガ、町村財政ノ窮乏ハ、單エ
  東北地方ノミニ限ッテハ居リマセヌ、一部ノ
  軍需工業等ニ惠マレマシタル地方ヲ除イテ、
  殆ド全國的、全面的デアルト申サナケレバ
  ナラヌノデアリマス、現ニ熊本縣ノ如キニ
  付テ考ヘテ見マシテモ、極ク最近、縣廳ニ
  於キマシテ、縣下三百二十五箇町村ノ中デ、
  約百箇町村ノ町村財政ノ實情ヲ調査致シタ
  ノデアリマスルガ、其百箇町村ノ中デ、殆
  ド破產ニ瀕シテ居ル町村ガ、五十五箇町村
  ノ多キニ達シテ居リマス、サウシテ比較的
  餘裕アリト見ラルヽモノハ、僅ニ八箇村ニ
  過ギナイノデアリマス、此五十五箇町村
  ノ稅滯納額ヲ合計致シマスルト、八十万八
  千五百圓ノ巨額ニ達シテ居リマシテ、村
  平均一万四千七百圓デアリマス、〓員給其
  他ノ支拂延滯額ハ、七十三万九千五百圓ニ
  上ッテ居リマス、極端ニ惡化セル或村ノ如キ
  ハ、稅滯約額ガ十四万八千圓ニ上ッテ居
  リマシテ、同村ノ一箇年ノ稅收入額ハ七
  万八千圓デアリマスルカラ、殆ド其收入ノ
  倍額ガ滯納ニナッテ居ルト云フヤウナ狀況
  デアル、隨テ支拂延滯額ノ如キモノモ十五
  万圓ノ巨額ニ達スルト云フヤウナ狀況デア
  リマス、是ハ熊本縣ノ一例デアリマスルガ、
  斯ノ如ク町村ノ實情ヲ能ク調査致シマスレ
  バ、昭和十年度ノ地方財政ハ、ドウ考ヘテ
  見マシテモ、私共ハ好轉スルモノト言フコ
  トハ出來ナイノデアリマシテ、益〓惡化スル
  モノト斷言セザルヲ得ナイノデアリマス、
  然ルニ政府ハ臨時國庫補助ノ千二百万圓ヲ
  九百万圓ニ減ジ、內三百万圓ハ災害對策費
  デ、是迄ノ地方財政窮乏ノ見地カラ補助致
  シテ居リマスルモノハ六百万圓、卽チ前年
  度ノ半額ト云フコトニ至リマシテハ、洵
  驚クノ外ハナイト思ヒマス、文部大臣、內
  務大臣ハ一體地方財政ノ狀況ヲ能ク御存ジ
  ニナッテ居ルカドウカ、此點ニ付テ詳細ニ御
  說明アランコトヲ希望致シマス、次ニ十年
  度限リトセラレマシタルコトハ、抑〓如何ナ
  ル理由ニ基クモノデアリマセウカ、十一年
  度以降ハ地方財政ガ好況ニ向ヒ、最早臨時
  國庫補助ノ必要ナシト認メラレタ爲メデア
  リマセウカ、又ハ十一年度以降ニ付テハ何
  カ腹案ガアッテノコトデアリマセウカ、ソレ
  トモ十一年度ノ事ハ又其時ニナッテ考ヘヨウ
  ト云フヤウナ、其日暮シノ漫然タル政治ノ
  結果デアリマセウカ、明答ヲ得タイト思ヒ
  やく、尙ホ九百万圓中三百万圓ハ災害對策
  ニ要スル經費トナッテ居リマスルガ、内務、
  農林ノ災害對策費ハ、九年、十年、十一年
  度ノ三箇年ニ亙リ、後年度ニ繼續スルモノ
  トナッテ居ルマスルノニ、同ジ災害對策費デ
  アッテ、十年度限リトセラレマシタコトハ、
  抑〓如何ナル理由デアリマセウカ御尋ヲ致シ
  マス、尙ホ私ハ此點ニ付テ大藏大臣ニモ御伺
  ヲ致シタイト思ヒマスルガ、御出デニナッテ
  居リマセヌカラ、此點ハ省略致シマス
  第二ニ御伺致シタイコトハ、政府ハ小學
  校〓員ノ俸給ノ不拂、延滯、又ハ寄附强制
  等ハ、昭和十年度ニ於テハ如何ナル狀況デ
  アルト御考ニナッテ居ルカト云フ事デアリ
  マス、政府ノ調査ニ依リマスレバ、町村立
  小學校〓員ノ俸給ノ不拂、延滯ノ狀況ヲ調
  ベテ見マスルト、昭和七年ノ十一月ニ於キ
  マシテ、町村數七百七十七、金額ハ九十四
  万圓デアリマスルガ、一年經チマシタ昭和
  八年ノ十一月ニ於テハ、町村數ガ四百八十
  六、金額ハ六十二万圓ニ減少致シマシタ、
  所ガ昨年ノ十一月ニ至リマスルト、町村數
  ガ八百三十四、金額百六万餘圓ト、今日迄
  ノ最高ノ數字ヲ示シテ居ル、卽チ今日ハ臨
  時國庫補助法ガ實施セラレマシテ以來、最
  モ憂慮ニ堪ヘナイ狀況ニアルノデアリマス、
  此調査ハ政府ノ調査デアリマスルカラ、町
  村長等ハ假令俸給ノ不拂ガアリマシテモ、
  町村ノ名譽ノ爲ニ之ヲ隱スト云フノガ通例
  デアリマス、隨テ實際ニ此處ニ申シマシタ
  數字ノ約二倍ニ達スルモノト思ヒマス、ソ
  レニ俸給ノ强制寄附デアルトカ、或ハ任意
  ノ寄附等ヲ加ヘテ見マスルナラバ、恐ラク
  二千五百カラ三千ノ町村ニ達スルモノト思
  ヒマス、殊ニ昨年ハ、未曾有ノ災害ガ各地ニ
  相踵デ到リマシテ、町村ハ疲弊困憊ノ極ニ
  達シテ居ルノデアリマスカラ、昭和十年度
  ニ於テ〓員俸給ノ不拂等ガ激增シ、國民〓
  育上出々シキ大事ヲ惹起スルト云フコトヲ、
  私ハ衷心ヨリ憂ヘテ居ルモノデアリマス、
  斯ル見易キ實情ヲ前ニシナガラ、當然增額
  ノ必要コソアレ、毫モ減額ノ理由ナキニ拘
  ラズ、一千二百万圓ヲ九百万圓ニ減ゼラレ
  マシタコトハ、私ノ最モ不可解トスル所デ
  アリマス(拍手)若シ政府提案ノ九百万圓ヲ
  理由アリト致シマスルナラバ、昭和十年度
  ハ前三箇年ニ比シ〓員俸給ノ不拂等ガ減少
  スルモノト認メネバナラヌノデアリマスガ、
  政府ハ左樣ニ御考ニナッテ居ルノデアリマ
  セウカ、御伺ヲ致シマス
  第三ハ特別町村ニ關シテ御尋ヲ致シタイ
  ト思ヒマス、昨年ハ各地ニ未曾有ノ災害ガ
  起リマシタ爲ニ、災害地町村ノ大部分ハ、
  昭和十年度ニ於キマシテハ特別町村ニ認定
  セラルベキモノト信ジマス、サスレバ昭和
  十年度ノ特別町村ノ數ハ、是迄ノ特別町村
  數七千九百十五ニ比シ、少クトモ約二千箇
  町村以上ハ增加致シマシテ、約一万ニ達ス
  ルモノト考ヘマス、文部當局ハ昭和十年度
  ノ特別町村ノ數ヲ幾何ニ御考ニナッテ居ル
  ノデアリマセウカ、聞ク所ニ依リマスレバ、
  文部省ハ昭和十年度ノ特別町村數ハ、大體
  昭和八九年ト同様ニ八千町村ニスルト云フ
  コトデアリマス、果シテ然ラバ私ハ玆ニ非
  常ナル無理ガアルト申サンケレバナラヌ、
  是ハ恰モ農村ヤ產業ヲ犠牲ニシテ、公債漸
  減主義ノ誤レル財政主義ヲ認メテ、サウシ
  テ赤字公債ヲ五億圓臺ニ止メヨウトスルノ
  ト同一筆法デアリマシテ、町村ノ實情ヲ無
  視シテ特別町村ヲ定メントスル、官僚的ナ
  ヤリ方デアルト申サンケレバナリマセヌ、
  特別町村數ガ是迄ト大體同數ノ八千箇町村
  ト致シマスナラバ、災害地ノ町村ニシテ、
  十年度新ニ特別町村ニ認定セラルベキモノ
  二千ヲ加ヘルノデアリマスカラ、是迄ノ特
  別町村ガ、ソレダケ二千町村ダケ省カレテ、
  特別町村カラ普通町村ニ下ルモノト申サン
  ケレバナリマセヌ、サウ致シマスルト增
  加交付金ヲ剝奪サレ、昭和十年度ハ、今迄
  多ク貰ッテ居リマシタ補助額ガ、四分ノ一以
  下ニ下ルモノト認メネバナラヌノデアリマ
  ス、斯樣ナ町村ニ於テハ、此減額セラレタ
  ル所ノ金額ヲ、何ニ依ッテ補フコトガ出來ル
  ノデアリマセウカ、先程モ申述ベマシタヤ
  ウニ、財政窮乏ノ農村ノ實情ヨリ見マスル
  ナラバ、一戶平均十五圓以上ニ上ッテ居ル所
  ノ特別稅戶數割ノ增稅ヲ斷行シ難イ位ノコ
  トハ、現內閣ト雖モ私ハ御認メニナルデア
  ラウト思ヒマス、此事ハ町村財政上、又國
  民〓育上、洵ニ重大ナル危機ヲ招來スルモ
  ノト思フノデアリマスルガ、內務大臣及文
  部大臣ハ、此點ヲ如何御考ニナッテ居ルノデ
  アリマセウカ、尙ホ文部大臣ハ過日ノ豫算
  分科會ニ於キマシテ、貧弱町村ノ方ハ率ガ
  變ラヌヤウニヤッテ見タイト考ヘテ居ルト
  申サレテ居ルノデアリマス、併ナガラ昭和
  八年度ニ於キマシテ、七千八百四十箇町村
  ニ對スル補助金額ハ、九百六十四万七千餘
  圓ト相成ッテ居リマス、然ラバ今囘ノ九百万
  圓デハ、此特別町村ダケニ付テ考ヘテ見マ
  シテモ、六十四万七千餘圓ノ不足ヲ〓ゲテ
  居ルノデアリマス、其他法律上當然交付ス
  ベキ三千五百七十九ノ市町村ガアルノデア
  リマスカラ、如何ニシテ松田文部大臣ノ、
  貧弱町村ニハ前年通リニシタイト云フ御考
  ガ、實現セラルヽデアリマセウカ、餘リニ
  無責任ナル御言葉デアルト思ヒマス
  第四ニハ普通町村ニ付テ御伺ヲ致シタイ
  ノデアリマス、是迄ノ國庫補助千二百万圓デ
  ハ、之ヲ昭和八年ノ例ニ付テ考ヘテ見マスルト、
  普通町村ニハ二百二十四万餘圓ノ補助金ガ
  交付セラレテ居ルノデアリマス、今囘ノ改
  正案ニ依レバ九百万圓ニ減額セラレ、而モ
  特別町村ニ百分ノ七十ヲ增加交付セラルヽ
  ノデ、其結果ト致シマシテ、恐ラク普通ノ
  町村ニ付テハ百万圓以下ノ補助金、卽チ從
  來ノ二分ノ一ニナルモノト思ヒマス、然ル
  ニ是等町村ノ財政狀態、經濟狀態ハ好クナッ
  テ居ルカト申シマスレバ、毫モ改善ヲ致サ
  レテ居ナイ、斯ル時ニ此臨時國庫補助ヲ二
  分ノ一以下ニ減ゼラレルト云フコトハ、町
  村財政ニ重大ナル影響ヲ與ヘ、〓員俸給ノ
  不拂等、國民〓育上洵ニ寒心ニ堪ヘナイ事
  態ヲ簇出スルモノト、私ハ心配ヲ致シテ居
  ルノデアリマス、内務文部兩大臣ノ此點ニ
  關スル御所見ヲ、御伺致シタイト思ヒマス、斯
  ルコトニ相成リマシテハ、此臨時國庫補助ガ
  時局匡救對策中、最モ普遍的ニ效果的デアッ
  タト云フコトガ、却テ大ナル障碍ト相成ル
  モノデアリマシテ、文部大臣ハ豫算分科會
  ニ於テ、貧弱町村以外ノモノハ甚ダ御氣ノ
  毒デアリマスガ、我慢シテ貰フヨリ仕方ガ
  ナカラウト思フト御答ニナッテ居リマス、是
  ハ餘リニ御自分ノ立場ダケヲ御考ニナッテ、
  町村ヤ〓育ヲ無視セラレタル御考デアルト
  申サンケレバナリマセヌ、私ガ申上ゲル迄
  モナク、凡ソ政治ハ內閣ノ爲ノ政治、各大
  臣ノ爲ノ政治デアッテハナリマセヌ、政治ハ
  町村ノ爲ノ政治、國民ノ爲ノ政治、國家ノ
  爲ノ政治デナクテハナラヌト思ヒマス、我
  慢ヲシテ貰フヨリ仕方ガナイト仰セラレル
  ケレドモ、若シ我慢ガ出來ナカッタラ如何相
  成ルモノデアリマセウカ、我ガ國民〓育ハ
  滅茶苦茶ニナルモノト斷定セザルヲ得ナイ
  ノデアリマス、私ハ此點ニ付テ深ク憂ヲ有
  ツモノデアリマスカラ、若シ私ノ此憂ヲ解
  クニ足ル御說明ガアルナラバ、承リタイト
  思ヒマス
  第五ニ御尋致シタイコトハ、本法律案ニ
  關聯シテ、高等小學校ノ運命ニ關スル問題
  デアリマス、今迄申述べマシタ如ク、臨時
  國庫補助ガ九百万圓ニ減ゼラレマスルト、
  金額ハ三百万圓ニ過ギナイノデアリマスル
  ケレドモ、是ガ町村財政竝ニ國民〓育ニ及
  ボス影響ト云フモノハ、頗ル甚大ナルモノ
  ガアリマス、其結果ト致シマシテ、町村當
  局ハ窮餘ノ策トシテ、或ハ高等小學校ヲ廢
  止シ、又ハ來年度ヨリ實施セラレントスル
  所ノ靑年學校ノ普通科ヲ二年ニ變更スルニ
  アラザルカ、頗ル懸念ニ堪ヘザルモノガア
  リマス、若モ左樣ナコトニ相成リマスレバ、
  是ハ我ガ國民〓育上洵ニ由々シキ大事ト申
  サンケレバナリマセヌ、先日私ハ豫算總會
  ニ於テ申述ベマシタ如ク、我黨ハ現在ノ高
  等小學校、實業補習學校及靑年訓練所
  ハ之ヲ融合統一シテ、國民大衆〓育トシテ、
  一體タル靑年〓育制度ヲ確立セントスル制
  度ヲ既ニ發表致シテ居リマス、是ハ高等小
  學校ヲ廢止シタリ、或ハ靑年學校ノ普通科
  二年程度ニ引直シテ滿足スルヤウナ案デハ
  毫モナイノデアリマシテ、否、現行ノ高等
  小學校ヲ其〓育的本質ニ鑑ミ、初等〓育ヨ
  リ中等〓育トシテノ靑年〓育ノ部門ニ移
  シ、眞ニ農村ノ實情ニ卽シ、農村ヲ守ル中
  堅靑年ヲ養成セントスル、靑年〓育ノ向上、
  擴充ヲ目的トスル案デアリマス、然ルニ政
  府ハ高等小學校ヲ現在ノ儘ニ放任シテ置イ
  テ、實業補習學校ト靑年訓練所ノ二ツダケ
  ノ統合案タル靑年學校ノ新制度ヲ一方ニ於
  テ設ケ、又一方ニ於テ、今囘臨時國庫補助
  千二百万圓ヲ、謂ハレナク九百万圓ニ減ジ
  タト云フ、此二ツノ事實ガ同時ニ町村ニ現
  レテ來ルノデアリマスルカラ、全國ノ町村
  ハ玆ニ高等小學校ノ存廢ニ關スル重大問題
  ヲ惹起スルコトハ、必然ナリト申サンケレバ
  ナリマセヌ、文部大臣ハ町村ノ都合ニ依ッテ
  ハ高等小學校ハ之ヲ廢止シ、又ハ靑年學
  校ノ普通科二年ニ變更シテモ、已ムヲ得ナ
  イト云フ御考デアリマセウカ、此點ハ我國
  國民〓育上頗ル重大ナル問題デアリマスル
  カラ、十分ナル御意見ノアル所ヲ開陳セラ
  レンコトヲ希望致シマス
  最後ニ御伺致シマスコトハ、本改正案ハ
  率直ニ申シマスレバ、實ニ我ガ疲弊困憊ノ
  農村窮乏裡ニ呻吟セル所ノ、町村ニ對スル
  現內閣ノ爆彈デアル、又我ガ神聖ナル國民
  〓育ニ對スル文部大臣ノ爆彈デアルト斷言
  致シテモ私ハ差支ナイト思ヒマス、松田文
  部大臣ハ、昭和十年度豫算ノ編成ニ當ッテ
  ハ、此三百万圓ヲ減ズルコトガ町村ニ、又
  我ガ國民〓育ニ、如何ナル影響ヲ及ボスモ
  ノデアルカト云フコトヲ、御存ジナカッタ
  モノヽヤウニ存ゼラレマス、或ハ今日ト雖
  モ九百万圓ニ決定シタ以上ハ、是デ責任ヲ
  持ツナドヽ、役人ラシイ御言葉ヲ御遣ヒニ
  ナッテ居リマスルガ、私ガ憂慮シテ居ル如
  ク、昭和十年度ニ於テ〓員俸給ノ不拂ヤ、
  高等小學校ノ廢止等ガ簇出シマシタ場合ニ
  於テ、如何ニ松田文部大臣ガ手品ガ巧イト
  申シマシテモ、此九百万圓ト御言葉ダケデ
  ハ責任ハ執レヌト思ヒマス、其場合ニ處ス
  ル爲ニ、內閣總理大臣及文部大臣ハ如何ナ
  ル對策ヲ今日有セラレテ居ルノデアルカ、
  速ニ追加豫算ヲ御提出ニナルノデアルカ、
  又他ニ對策ヲ有セラレルノデアルカ、御伺
  ヲ致シタイト思ヒマス
  以上ノ諸點ニ付キマシテ、私ハ全國町村
  ノ爲メ、又我ガ國民〓育ノ爲メ、深憂ノ餘
  リ此質問ヲ爲ス者デアリマスルカラ、政府
  ニ於カレマシテハ愼重ニ御考ニナッテ、御答
  アランコトヲ希望致シマス(拍手)
  〔國務大臣松田源治君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006713242X02019350228&spkNum=9

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• 010・松田源治

  ○國務大臣(松田源治君)　小學校ノ臨時國
  庫負擔ノ千二百万圓ガ九百万圓ニナッタト
  云フコトハ、私モ頗ル遺憾トスル所デアル、
  是ハ木村君モ御承知ノ通リ、昭和九年度ニ
  於テ打切ラルベキ性質ノモノデアッタノデ
  アリマス、併シ地方ノ財政ノ狀況ト云フコ
  トモアリマシタカラ、千二百万圓ガ九百万
  圓ニハ減リマシタケレドモ、十年度モ矢張
  繼續スルト云フコトニナッタノデアリマス、
  私ハ義務〓育費ノ國庫負擔法ト、ソレカラ
  臨時ノ補助法ニ依リマシテ、責任ヲ以テ善
  處スル積リデアリマス、併シ意外ナ事ガ生
  ジマシテ、此經費ガ足ラナイコトガ出來タ
  場合ニ於テハ、相當ニ考慮スル積リデアリ
  そく、ソレカラ之ヲ十年度限リニシタト云
  フコトハドウデアルカ、ソレハ本案ハ十年
  度限リニシテ居リマス、併シ又財政上ノ狀
  態ニ依リマシテハ、如何ニスルカト云フコ
  トハ、其十年度ノ時ニ於テ、是ハ考慮致シ
  タイト考ヘテ居ルノデアリマス、ソレカラ
  〓員ノ俸給ノ未拂デアリマスガ、是ハ本法
  ノ制定シタ七年當時ヨリモ、今日ハズット
  減ッテ居リマス、併シ是ハ數字ノ事デアリマ
  スカラ、何レ詳細ハ委員會ニ於テ御答申シ
  タ方ガ宜カラウト考ヘテ居リマス、ソレカ
  ラ特別町村ノ數ハ、全國ノ町村數ガ一万一
  千二百九十六ノ中デ八千二百アルノデアリ
  マス、ソレカラ私ハ豫算分科會ニ於キマシ
  テ、貧弱町村ト申シタカ知レマセヌガ、ソ
  レハ誤リデアリマス、災害町村ニハ、大體
  前年度ト同ジヤウニ交付ガ出來ルト云フコ
  トヲ申シタノデアリマシテ、若モ豫算分科
  會ニ於テ、貧弱町村ト言ッテ居リマシタナ
  ラバ、ソレハ災害町村ノ誤リデアリマスカ
  ラ、此處デ以テ訂正致シテ置キマス、ソレカ
  ラ分配ノ率ノ事デアリマスガ、是ハ數字ニモ
  關係シ、此處デ御答致スヨリモ、委員會ニ於
  テ詳細答ヘタ方ガ便利デアルト私ハ考ヘテ
  居リマス、ソレカラ高等小學校ノ廢止ノ問題
  デアリマスガ、此高等小學校ノ廢止ト云フコ
  トハ、現實サレザル狀況デアルト私ハ考ヘ
  マス、高等小學校ハ獨自ノ使命ヲ有ッテ居リ
  マシテ、高等小學ハ高等小學トシテ發達
  セシメタイト考ヘテ居リマス、ソレカラ地
  方ノ財政ノ窮乏ニ付テハ、私モ窮乏シテ居
  ルト云フコトヲ認メテ居リマスガ、是ハ總
  理大臣其他ノ申シタヤウニ、內閣審議會ガ
  出來マスレバ、ソレニ付議シテ財政ノ窮乏
  ヲ救フコトニナルデアラウト考ヘテ居リマ
  ス、大體御答申上ゲマシタガ、詳細ノ點ハ
  委員會ニ於テ、數字等ヲ御示シ申シマシテ
  御答致ス積リデアリマス
  〔國務大臣後藤文夫君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006713242X02019350228&spkNum=10

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• 011・後藤文夫

  ○國務大臣(後藤文夫君)　地方財政ノ狀況
  ガ、先程木村君ノ御話ノ如ク、決シテ昨今
  好轉シテ參ッテ居ルトハ私モ考ヘマセヌ、殊
  ニ昨年ノ災害ヲ受ケマシテカラ、學校〓員
  ノ俸給不拂等ノ現象モ一時ト違ッテ、又殖エ
  テ參ルヤウナ傾向ニ相成ッテ居ルコトモ承
  知致シテ居リマス、今日ノ地方財政ハ、決
  シテ此儘ニシテハ置ケナイ狀況ニ相成ッテ
  居ルト思ヒマス、斯ウ云フ場合ニ、此市町
  村立ノ尋常小學校ノ經費ノ國庫補助ノ金額
  ガ、前年通リ十年度ニモ計上サレテ參リマ
  スレバ、是ハ最モ希望スル所デアリマス、
  併ナガラ一般國ノ財政、其他諸般ノ施設ノ
  關係上、今年度ノヤウナ金額ニナリマシタ
  コトモ、洵ニ已ムヲ得マセヌコトデアリマ
  ス、之ヲ以テ〓育ノ方面カラノ施設ニ、成
  ベク支障ノナイヤウニ努力シテ戴キマス、
  所管ノ省及關係官廳ニ於テ、十分ナ努力ヲ
  致サウト云フコトニ相成ッテ居リマス、今
  日ノ場合ニ於キマシテハ、地方財政全般ノ
  事ニ付キマシテハ、色々憂慮スベキコトガ
  アリマスガ、此問題ニ付キマシテハ、全般
  ノ關係カラ斯樣ナコトニ相成ッテ居ルノモ、
  洵ニ巳ムヲ得ナイコトヽ考ヘテ居リマス
  〔國務大臣岡田啓介君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006713242X02019350228&spkNum=11

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• 012・岡田啓介

  ○國務大臣(岡田啓介君)　私へノ御尋ハ、
  九百万圓デ足リナカッタナラバドウスルノ
  カ、斯ウ云フコトデアッタヤウデアリマス、
  松田文部大臣ノ御答致シタ通リ、萬一サウ
  云フ場合ガ起リマシタナラバ、實情ニ依リ
  善處致ス考デアリマス(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006713242X02019350228&spkNum=12

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• 013・濱田國松

  ○議長(濱田國松君)　次ノ通〓者中村繼男
  君
  〔中村繼男君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006713242X02019350228&spkNum=13

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• 014・中村繼男

  ○中村繼男君　只今議題トナッテ居リマス
  ル市町村立尋常小學校費臨時國庫補助法中
  改正法律案ニ付キマシテ、政府當局ニ御尋
  ヲ致シタイト思フノデアリマス、此案ノ形
  式カラ見マスルト、一箇年間ダケ期限ヲ延
  長シタト云フ事柄デアリ、又町村ニ對スル
  配分ノ方法ヲ變更サレタト云フノガ、此案
  ノ形ノ上ニ現レテ居ル點デアリマス、內容
  ト致シマシテハ、先程木村君カラ御話ノア
  リマシタ通リ、從來一千二百万圓ヅヽノ補助
  金デアッタモノヲ、九百万圓ニ減少シテ居ラ
  レル、是ガ私共ノ洵ニ遺憾千萬ニ存ズル點
  デアリマス、私共ハ、別ニ本議會ニ對シマ
  シテ、義務〓育費ノ國庫補助金ノ增額ニ關
  スル法律案ヲ提出致シテ居ルノデアリマス、
  其理由ト致シマス所ハ、申スマデモナク農
  村ノ負擔ノ輕減ヲ圖ルト云フ點ニ在ルノデ
  アリマス、此一兩年ニ於ケル帝國議會ガ、
  所謂非常時議會デアルト言ハレテ居リマス、
  勿論其對象ト致シマシテハ國防、軍備ノ問
  題モアリマセウ、併ナガラ之ヲ對內的ニ見
  マシタ場合ニ於テハ、所謂農村對策、中小
  商工業者ニ對スル對策ガ、所謂非常時議會
  ト言ハレテ居ル點デアルト考ヘテ居ルノデ
  アリマス、此農村ノ疲弊ノ原因ハ、私ガ改
  メテ此處デ申スマデモアリマセヌ、理由ハ
  色々アリマセウ、併ナガラ手取リ早ク之ヲ
  申シマスナラバ、所謂都市ト農村トノ負擔
  ノ不均衡ト云フコトハ、最モ其主ナル點デ
  アルト云フコトヲ信ジテ居ルノデアリマス、
  此處ニ私ハ最近ノ統計ヲ持ッテ居リマスガ、
  簡單デアリマスカラ之ヲ御披露致シマスル
  ト、昭和三年ニ國稅ヲ百ト致シマシテ、六
  大都市、郡部、六大都市以外ノ市ノ負擔ノ狀
  況ヲ見テ見マスルト、六大都市ハ國稅百ニ
  對シマシテ、縣稅及市附加稅ガ僅ニ五十八、
  合計致シマシテ百五十八ノ負擔デアリマス、
  其他ノ都市ハドウデアルカト云フト、國稅
  百ニ對シマシテ、市稅及縣稅ノ合計額ガ百
  五十七デアリマス、合計二百五十七ノ
  負擔ヲ致シテ居ルノデアリマス、其他
  ノ農村地方ハドウデアルカト申シマスト、
  國稅百ニ對シマシテ、地方ノ縣稅及町
  村稅ハ二百九十六ト云フ莫大ナル數字ニ
  ナッテ居ルノデアリマシテ、合計三百九十
  六ト云フ負擔デアリマス、卽チ六大都市
  ノ負擔ガ百五十八デアルノニ對シマシテ、
  郡部ニ於キマシテハ三百九十六ト云フヤウ
  ナ、倍數以上ノ負擔ヲヤッテ居ル、昭和六年
  ノ狀況ヲ見マスルト、六大都市ハ百七十九、
  其他ノ都市ハ二百七十五、郡部ニ於キマシ
  テハ四百八、斯ノ如キ開キニナッテ來テ居ル
  ノデアリマス、斯ウ云フ狀況デアリマスカ
  ラ、地方ニ於ケル金持ハ皆籍ヲ都會ノ方ニ
  移シテシマフ、其結果トシテ農村ハ愈〓以
  テ窮乏スル、財政的ニ行詰ッテ行ク、而シ
  テ此財政ニ行詰リヲ來ス所ノ、最モ主ナ
  ル町村ノ負擔ハ何デアルカト申シマスレ
  バ、申スマデモナク所謂義務〓育費デア
  リマス、義務〓育費ノ歲出ニ對スル割合
  ヲ見テ見マスルト、都市ニ於キマシテハ總
  歲出額ノ八分乃至一割ガ、義務〓育費ニ使
  ハレテ居ルノデアリマス、然ルニ農村ニ於
  キマシテハ總歲出額ノ三割乃至五割ト云フ
  ノガ、義務〓育費ニ使ハレテ居ルト云フ狀
  況ニナッテ居リマス、卽チ此點カラ考ヘテ行
  キマシタナラバ、義務〓育費ノ增額ヲ圖ッテ
  行クト云フコトハ、農村ノ負擔ノ均衡ヲ圖
  リ、農村疲弊ノ實情ヲ匡救スルト云フ、最
  モ重大ナル觀點デナクチヤナラヌト考ヘテ
  居ル者デアリマス(拍手)然ルニ今年度ニ於
  キマシテハ、前年マデ千二百万圓デアッタ補
  助ヲ、九百万圓ニ減少サレテ居ル、此事實
  カラ見マスルト、所謂農村ノ非常時ト云フ
  モノハ、既ニ消滅シタト云フ風ニ御考ニナッ
  テ居ルノデハナイカト云フ疑ヲ起サヾルヲ
  得ナイ、此議會ニ於キマシテモ農村對策ト
  云フモノガ、政治的ニ最モ重大ナル動向ヲ
  指ス動機トナッテ現レテ居ルコトハ御承知
  ノ通リデアル、而シテ政府ニ於キマシテモ、
  農村對策ニ付テハ出來ルダケノ最大ノ努力
  ヲスルト云フコトヲ御誓ヒニナッテ居ル、然
  ラバ其政府ノ考方カラ致シマシテモ、義務
  〓育費ニ對スル增額ヲスルト云フコトガ當
  然デナクテハナラヌノニ、却テ之ヲ減額シ
  テ居ルト云フコトハ、所謂時代錯誤ノヤリ
  方デハナイカ、又義務〓育ハ町村ノ仕事ニ
  ナッテ居ルノデアリマスケレドモ、是ハ寧ロ
  本質的ニ之ヲ考ヘテ見マシタナラバ、體體
  是ハ國家ガヤルベキモノデハナイカト云フ
  議論モ起リ得ルト思フ、卽チ國民〓育ノ基
  本デアリマシテ、忠君愛國ノ思想ヲ打込ム
  其根柢ヲ成シテ居ル、斯ウ云フ場合ニ於テ
  義務〓育ヲ地方ダケニ委シテ置イテ、貧乏
  ナ町村ニ於テハ代用〓員ダケヲ使ッテ、十分
  ナラザル〓育ヲスルト云フガ如キ、所謂〓
  育ノ機會不均等ヲ來シテ居ルト云フヤウナ
  コトハ、是ハ由々シキ問題デアルト言ハナ
  ケレバナリマセヌ(拍手)隨テ此義務〓育ト
  云フ點ニ付テハ、最モ機會均等ト云フコト
  ヲ肝要ト致ス、ソレデアルナラバ是ハ寧ロ
  國家ガ直接之ヲヤルベキモノデハナイカ
  (拍手)或ハ義務〓育費ノ全額ト云フモノハ、
  國家ガ之ヲ負擔スベキモノデハナイカト云
  フコトモ、是ハ言ヘルト考ヘテ居ルノデア
  リマス(拍手)此農村ノ對策乃至義務〓育ノ
  機會均等ト云フ立場カラ致シマシテモ、私
  共ハ此義務〓育費ト云フモノハ、遙ニ多額
  ノ增額ヲ致サナケレバナラヌト考ヘテ居ル、
  松田文相ハ先程ノ御答辯モアリマシタ通リ、
  此小學校ノ國庫補助法ハ、昭和九年度ダケ
  デ打切ラルヽ筈デアッタガ、ソレヲ延長スル
  必要ヲ認メテ、昭和十年度ニ延バシタト、
  金額ハ財政ノ都合ニ依ッテ九百万圓ト致シ
  タト、斯ウ云フ御答辯デアル、其御考ハ洵
  ニ結構ダト思フノデス、併ナガラ九百万圓
  ト云フヤウナ、斯ノ如キ寡少ノ金額デハ、
  私共ハ是ハ殆ド問題ニナラナイト考ヘテ居
  た、サウシテ十年度一箇年間ダケ延長サレ
  ル、是ハ寧ロ當分ノ間ト致シマシテモ、或
  ハ世間デ傳ヘラレテ居ル所ノ内閣審議會ト
  云フモノガ出來ルト致シマスナラバ、ソレ
  マデノ間ノ繋ギト致シテ、當分ノ間之ヲ實
  行スルトセラルヽノガ至當デハナカッタデ
  アラウカ、卽チ是等ノ點カラ考ヘマシテ、
  農村ノ實情ヲ正確ニ認識シテ居ラルヽト致
  シマスルナラバ、臨時國庫補助金ヲ九百
  万圓ニ減ジテ、而モ十年度一箇年間
  ダケシカ延長シナイト云フガ如キハ、甚
  ダ迂遠至極デアッテ、農村ノ實情ヲ無視
  シテ居ルモノト言ハナケレバナラヌデハナ
  イカト云フ結論ニ達スルト思フノデアリマ
  ス(拍手)特ニ昭和十年度ハ、昭和九年ニ於
  ケル風水害、早害ノ後ヲ受ケテ居ル、昭和
  八年度、九年度ニ於キマシテハ、何等風水
  害等ノ豫想ハナカッタ、其時デサヘモ一千二
  百万圓ノ金額ヲ支出ヲ致サレテ居ルノデア
  ルノニ、其風水害ノ後始末ヲシナケレバナ
  ラヌ第一年度ニ於テ、旣ニ三百万圓ヲ減ジ
  ク、只今モ松田文相ハ言ハレマシタガ、ソ
  レハ風水害ニ罹ッテ居ル町村ニ對シテハ、前
  年ト同額位ノ金額ハ出ス積リデアル、ソレ
  ハ同額ヲ出サレマシテモ、風水害ニ因ッテ受
  ケタル所ノ被害ガ、前年度ト同額デアッタガ
  故ニ直シテ行ケルトハ是ハ言ヒ得ラレナ
  イ(拍手)遙ニ前年ヨリモ增額ヲシナケレバ
  ナラヌ必要ガアルト言ハナケレバナラヌノ
  デアリマス、是等ノ點ニ付テハ、如何ナル
  御考ヲ御有チニナッテ居ルノデアルカ、獨リ
  是ハ文部大臣ノミノ責任デアルトハ私ハ考
  ヘマセヌ、內閣諸公全體ト致シマシテ、所
  謂義務〓育ト云フモノハ、單ニ義務〓育ト
  云フ風ニ御考ニナッテ居ルノヂヤナイカ、所
  謂農村ノ負擔ヲ輕減スルト云フコトガ、今
  日ノ農村對策ノ最モ大ナル部分デアッテ、而
  モ其根源ヲ成シテ居ル義務〓育費デアル、
  之ヲ補充シ、補給シテヤルト云フコトハ、
  農村對策ノ最モ大切ナル點デアルト云フコ
  トヲ御認識ニナッテ居ラナイノデハナイカ
  ト私共ハ考ヘテ居ル、ソコデ私共ハ、或ハ
  交付金ノ增額、或ハ補助金ノ增額ト云フコ
  トヲ言ヒマスガ、私共ノ申シマス所ノ交付
  金乃至補助金ノ增額ト云フモノハ、ソレダ
  ケ町村歲入ノ增加ニナルノダト云フヤウニ
  考ヘテ居ルモノデハナイ、卽チソレダケノ
  交付金乃至補助金ト云フモノハ、直チニ持ツ
  テ行ッテ負擔ノ輕減ニ充テナケレバナラヌ、
  先程申シマシタヤウニ、都市ト農村トノ負
  擔ノ均衡ガ、倍以上ニモ紊レテ居ルト云フ
  ヤウナ事實ヲ見マシタ場合ニ於テハ、此交
  付金ヲ以テ或ハ事業費ニ充當スル、或ハ外
  ノ歲出ノ膨脹ノ財源ニ充テル、サウ云フコ
  トデアッテハイカヌト私共ハ考ヘテ居ル、是
  ダケノモノヲ市町村ニ與ヘルナラバ、ソレ
  ダケハ直チニ其村々ノ現情ニ卽シテ、特殊
  ノ其町或ハ村ニ於ケル所ノ負擔過重ノ點ニ
  向ッテ、是ガ輕減ヲ圖ッテ行クコトガ、私共
  ノ眼目ト致シテ居ル交付金デアリ、補助金
  デアル、此點ニ付テ世間デハ能ク交付金ト
  言ヒマスト、ソレダケ町村ノ歲入ヲ增加
  シ、隨テソレダケ歲出ヲ膨脹セシムルモノ
  デアルカノ如ク、誤解サレテ居ル人ガナイ
  デハナイノデアリマシテ、私共ハ洵ニ是ハ遺
  憾ニ考ヘテ居ル點デアリマス、隨テ私共ガ
  提案シヨウト致シテ居リマス所ノ、義務〓
  育費ノ補助金ノ增額ニ關スル法律案ニ於キ
  マシテハ、明ニ文部大臣ハ使途ヲ明ニシ
  テ、サウシテ「エー」ノ村デハ何稅「ビー」ノ
  村デハ何稅ニ充テヽ、サウシテ之ヲ外ノ財源
  ニ流用スルヤウナコトヲ禁ジ、若シ其指定
  ニ違反致シマシタ場合ニ於テハ、交付金ヲ
  返還セシメ、或ハ之ヲヤラナイト云フヤウ
  ナ規則ヲ作ッテ行カナケレバナラヌト感ジ
  テ居ルノデアリマスガ、政府ハ此補助金ノ
  增額ニ關シマシテ、義務〓育費ノ國庫負擔
  額ト併セテ、全國ノ小學校〓員ノ俸給全額
  ニ相當スル位マデ、此補助金ヲ增額セラル
  ルノ御意思ガアルカドウカ、又此點ニ付テ
  ハ只今總理大臣竝ニ文部大臣ヨリ、九百万
  圓デ若シ足ラヌヤウナコトガアック場合ニ
  於テハ、其時ニ於テ考ヘル、斯ウ云フ御話
  デアル、恐ラク是ハ第二豫備金ノ千五百万
  圓カラ賄フト云フ御話デアラウト思フ、果
  シテサウデアッタトスルナラバ、第二豫備金
  ノ增額千五百万圓ヲ出デナイ、私共ノ要求
  スル所ハサウ云フ小サナ金額デハナイノ
  デ、第二豫備金ノ千五百万圓ヲ全部持ッテ
  行ック所デ千五百万圓シカナイ、他ノ災害費
  ニ是ハ當テルト云フ譯ニハ行カヌ、サウ云
  フ考デハナイノデアリマスガ、之ニ對シマ
  シテ政府當局ト致シマシテハ如何ナル御考
  ヲ御持チニナッテ居リマスカドウカ明確ナ
  ル御〓ヘヲ蒙リタイト思ヒマス
  〔國務大臣松田源治君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006713242X02019350228&spkNum=14

  ---

• 015・松田源治

  ○國務大臣(松田源治君)　御答申上ゲマス、
  義務〓育費ノ一千二百万圓ヲ九百万圓ニシ
  タト云フコトニ付キマシテハ、木村君ニ御
  答申シタ次第デアリマス、是デ責任ヲ以テ
  ヤリマスガ、若モ意外ノコトガ生ジテ足ラナ
  イト云フヤウナコトガ出來マスレバ、其時
  分ニ又考慮スルノデアリマス、ソレカラ八
  千五百万圓ヲ全額ニシテハドウカト云フコ
  トデアリマスケレドモ、此點ハ財政上ノ關
  係モアリマシテ、直チニ全額ヲ增スト云フ
  コトハ、今日ノ財政狀態デハ出來ナイト考
  ヘルノデアリマス、デアリマスカラ内閣審
  議會デモ出來マシテ、町村ノ財政ノ窮乏ヲ
  救フト云フコトノ、根本的ノ政策ヲ立テル
  時分ニ、此問題モ解決スベキモノト考ヘテ
  居リマス、右御答申上ゲマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006713242X02019350228&spkNum=15

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• 016・中村繼男

  ○中村綴男君　簡單デアリマスカラ、自席
  カラ發言ヲ御許シ願ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006713242X02019350228&spkNum=16

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• 017・濱田國松

  ○議長(濱田國松君)　許可致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006713242X02019350228&spkNum=17

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• 018・中村繼男

  ○中村繼男君　只今ノ御答辯ノ中ニ一ツ漏
  レテ居ルノガアリマス、ソレハ內閣審議會
  等ニ於テ根本對策ガ立テラレルマデノ繫ギ
  トシテ、當分ノ間トシテ何故ヤラナカッタ
  カ、一年々々、目ノ子算ニ行クヤウナコト
  ヲ、ドウシテヤラレタカト云フ點ニ付テノ
  御答辯ガ洩レテ居ルヤウデアリマスカラ··
  〔國務大臣松田源治君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006713242X02019350228&spkNum=18

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• 019・松田源治

  ○國務大臣(松田源治君)　內閣審議會ノ調
  査モサウ長ク掛ルコトデハナイト私ハ考ヘ
  テ居リマスカラ、ソレデ十年度トシタ譯デ
  アリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006713242X02019350228&spkNum=19

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• 020・濱田國松

  ○議長(濱田國松君)　中村君、モウ宜シウ
  ゴザイマスカ-本案ノ審査ヲ付託スベキ
  委員ノ選擧ニ付テ御諮リ致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006713242X02019350228&spkNum=20

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• 021・青木雷三郎

  ○靑木雷三郞君　本案ハ議長指名十八名ノ
  委員ニ付託セラレンコトヲ望ミマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006713242X02019350228&spkNum=21

  ---

• 022・濱田國松

  ○議長(濱田國松君)　靑木君ノ動議ニ御異
  議アリマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006713242X02019350228&spkNum=22

  ---

• 023・濱田國松

  ○議長(濱田國松君)　御異議ナシト認メマ
  ス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ-日程第
  二乃至第五ハ同種ノ議案ナルニ依リ、一括
  議題トナスニ御異議アリマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006713242X02019350228&spkNum=23

  ---

• 024・濱田國松

  ○議長(濱田國松君)　御異議ナシト認メマ
  ス、仍テ日程第二、府縣制中改正法律案、
  日程第三、北海道會法中改正法律案、日程
  第四、市制中改正法律案、日程第五、町村
  制中改正法律案、右四案ヲ一括シテ第一讀
  會ヲ開キマス-內務大臣後藤文夫君
  第二府縣制中改正法律案(政府提出)
  第一讀會
  第三北海道會法中改正法律案(政府
  提出)第一讀會
  第四市制中改正法律案(政府提出)
  第一讀會
  第五町村制中改正法律案(政府提出)
  第一讀會
  府縣制中改正法律案
  府縣制中左ノ通改正ス
  第四條ニ左ノ二項ヲ加フ
  前項ノ區域ノ人口著シク少キトキハ府
  縣條例ヲ以テ其ノ區域ト隣接ノ區域ト
  ヲ合セテ一選擧區ヲ設クルコトヲ得
  前項ノ規定ニ依リ選擧區ヲ設クル場合
  ニ於テ必要ナル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ
  定ム
  第六條第二項中「戰時若ハ事變ニ際シ」ノ
  下ニ「又ハ兵役法第五十五條第二項ノ規
  定(志願ニ依リ兵籍ニ編入セラレタル者
  ニ付テハ之ニ該當スル勅令ノ規定ヲ含ム)
  ニ依リ」ヲ加フ
  第八條第一項但書中「第三十一條第二項、
  第三項若ハ第六項ノ規定ニ依ル期限前ニ
  於テ」ヲ「選擧ノ期日ヨリ一年以內ニ」ニ、
  「其ノ期限經過後ニ於テ」ヲ「選擧ノ期日
  ヨリ一年經過後ニ於テ」ニ、「第三十二條
  第三項」ヲ「第三十二條第四項」ニ、同條
  第二項中「第三十二條第四項及第五項」ヲ
  「第三十二條第五項及第六項」ニ改ム
  第十三條ノ二第三項中「選擧ノ期日ノ前
  日マテ」ヲ「選擧ノ期日前一一日目マデ」ニ
  改ム
  第十五條第四項中「特別ノ事情」ヲ「必要」
  ニ改ム
  第十六條第一項中「選擧ノ期日ノ前日マ
  テ」ヲ「選擧ノ期日前二日目マデ」ニ改ム
  第十九條ノ二選擧人ニシテ勅令ノ定ム
  ル事由ニ因リ選擧ノ當日投票時間內ニ
  自ラ投票所ニ到リ投票ヲ爲シ能ハザル
  ベキコトヲ證スル者ノ投票ニ關シテハ
  第十八條第三項及第五項、第十八條ノ
  二第一項但書竝ニ前條ノ規定ニ拘ラズ
  勅令ヲ以テ特別ノ規定ヲ設クルコトヲ
  得
  第二十五條第三項中「投票區每」ヲ「市町
  村其ノ他府縣知事ノ定ムル區域每」ニ改
  ム
  第三十二條第一項但書中「第二項」ヲ「第
  二項又ハ第三項」ニ、同條第三項中「前項」
  ヲ「前二項」ニ改メ同條第二項ヲ左ノ如ク
  改ム
  前項第一號乃至第四號ノ事由ヲ生ジタ
  ル場合ニ於テ第二十九條第一項但書ノ
  得票者ニシテ當選者ト爲ラザリシ者ア
  ルトキハ直ニ選擧會ヲ開キ其ノ者ノ中
  ニ就キ當選者ヲ定ムベシ
  第一項第五號又ハ第六號ノ事由ヲ生ジ
  タルトキハ其ノ選擧ノ期日ヨリ一年以
  內ナル場合ニ於テ第二十九條第一項但
  書ノ得票者ニシテ當選者ト爲ラザリシ
  者アルトキ又ハ其ノ選擧ノ期日ヨリ一
  年經過後ナル場合ニ於テ第二十九條第
  二項ノ規定ノ適用ヲ受ケタル得票者ニ
  シテ當選者ト爲ラザリシ者アルトキハ
  前項ノ規定ヲ準用ス
  第三十四條ノ二第三項中「前二項」ヲ「前
  項」ニ改メ同條第四項ヲ左ノ如ク改メ同
  條第二項ヲ削ル
  檢事ハ衆議院議員選擧法第百十二條乃
  至第百十三條ノ規定ノ準用ニ依ル罪ニ
  該ル事件ノ被〓人ガ選擧事務長又ハ選
  擧事務長ニ非ズシテ事實上選擧運動ヲ
  總括主宰シタル者ナルニ因リ同法第百
  三十六條ノ規定ノ準用ニ依リ當選ヲ無
  效ナリト認ムルトキハ公訴ニ附帶シ當
  選者ヲ被告トシテ訴訟ヲ提起スルコト
  ショッハ
  衆議院議員選擧法第八十五條、第八十
  七條、第百四十一條及第百四十一條ノ
  三ノ規定ハ第一項又ハ第二項ノ規定ニ
  依ル訴訟ニ、同法第百四十一條ノ二及
  第百四十一條ノ三ノ規定ハ前項ノ規定
  ニ依ル訴訟ニ之ヲ準用ス
  前條第八項ノ規定ハ第一項乃至第三項
  ノ場合ニ之ヲ準用ス
  第三十六條第二項中「第三十二條第三項」
  ヲ「第三十二條第四項」ニ、同條第四項中
  「第三十二條第四項及第五項」ヲ「第三十
  二條第五項及第六項」ニ改ム
  第三十九條中「及第百四十二條」ヲ「、第百
  四十二條及第百四十七條」ニ、同條但書
  中「選擧事務所ノ數、選擧委員及選擧事務
  員ノ數竝」ヲ「選擧委員ノ數、選擧運動ノ
  爲使用スル勞務者ノ數及」三八人
  第五十條第二項ニ左ノ但書ヲ加フ
  但シ場合ニ依リ府縣知事ハ臨時會ニ付
  七日以內ニ於テ別ニ會期ヲ定ムルコト
  ヲ得
  同條第三項中「前項ノ規定ニ拘ラズ三日
  以內」ヲ「通ジテ三日以內ニ於テ」ニ改ム
  第五十一條第二項ノ次ニ左ノ一項ヲ加フ
  前條第二項但書ノ規定ニ依リ會期ヲ定
  メタル場合ニ於テハ前項ノ〓示ト同時
  ニ其ノ會期ヲ告示スベシ
  第五十五條第一項中「第二十九條」ヲ「第
  二十九條第一項」ニ、同條第二項中印
  項」ヲ「第一項」ニ改メ同條第一項ノ次ニ
  左ノ一項ヲ加フ
  前項ノ選擧ニ於テ當選者ヲ定ムルニ當
  リ得票ノ數同ジキトキハ議長抽籤シテ
  之ヲ定ム
  第六十八條中第三號ヲ削リ同條第二號ヲ
  第三號トシ同條第一號ノ次ニ左ノ一號ヲ
  加フ
  二府縣會閉會中府縣會ノ權限ニ屬ス
  ル事件ニシテ輕易ナルモノヲ府縣會
  ニ代ハリテ議決スルコト
  同條ニ左ノ一項ヲ加フ
  前項第二號ノ規定ニ依リ府縣參事會ニ
  於テ議決スベキ事件ハ府縣會ノ議決ヲ
  經テ府縣知事之ヲ定ム
  第七十條中「第五十一條第三項」ヲ「第五
  十一條第四項」ニ改ム
  附則
  本法中議員選擧ニ關スル規定ハ次ノ總選
  擧ヨリ之ヲ施行シ其ノ他ノ規定ノ施行ノ
  期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
  本法ニ依リ議員ヲ選擧スル場合ニ於テ昭
  和十年市制中改正法律又ハ同年町村制中
  改正法律中公民權及選擧人名簿ニ關スル
  規定ハ之ヲ施行セザル市町村ニ於テハ府
  縣制中市町村公民權及選擧人名簿ニ關ス
  ル規定ノ適用ニ付之ヲ施行シタルモノト
  看做ス
  昭和十年市制中改正法律又ハ同年町村制
  中改正法律中公民權及選擧人名簿ニ關ス
  ル規定ハ之ヲ施行シタル市町村ニ於テハ
  府縣制中市町村公民權及選擧人名簿ニ關
  スル規定ノ適用ニ付次ノ總選擧ニ至ル迄
  ノ間未ダ之ヲ施行セザルモノト看做ス
  昭和十年町村制中改正法律中選擧人名簿
  ニ關スル規定ハ第九條第一一項ノ規定ノ適
  用ニ付テハ本法ノ施行ト同時ニ施行セラ
  レタルモノト看做ス
  前三項ノ場合ニ於テ議員ノ選擧ニ必要ナ
  ル選擧人名簿ニ關シテハ命令ヲ以テ特別
  ノ規定ヲ設クルコトヲ得
  昭和九年法律第四十九號ハ本法ノ適用ニ
  付テハ本法ノ施行ト同時ニ施行セラレタ
  ルモノト看做ス
  北海道會法中改正法律案
  北海道會法中左ノ通改正ス
  第三條第一項ニ左ノ一號ヲ加フ
  八租稅滯納處分中ノ者
  第四條中「戰時若ハ事變ニ際シ」ノ下ニ「又
  ハ兵役法第五十五條第二項ノ規定(志願
  ニ依リ兵籍ニ編入セラレタル者ニ付テハ
  之ニ該當スル勅令ノ規定ヲ含ム)ニ依リ」
  アノタ
  第六條第二項中「第十八條第二項」ヲ「第
  十八條第二項及第三項」ニ改ム
  第十條中第三號ヲ削リ同條第二號ヲ第三
  號トシ同條第一號ノ次ニ左ノ一號ヲ加フ
  二北海道會閉會中北海道會ノ權限ニ
  屬スル事件ニシテ輕易ナルモノヲ北
  海道會ニ代ハリテ議決スルコト
  同條ニ左ノ一項ヲ加フ
  前項第二號ノ規定ニ依リ北海道參事會
  ニ於テ議決スベキ事件ハ北海道會ノ議
  決ヲ經テ北海道廳長官之ヲ定ム
  附則
  本法中議員選擧ニ關スル規定ハ次ノ總選
  擧ヨリ之ヲ施行シ其ノ他ノ規定ノ施行ノ
  期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
  本法ニ依リ議員ヲ選擧スル場合ニ於テ昭
  和十年市制中改正法律中公民權及選擧人
  名簿ニ關スル規定ハ之ヲ施行セザル市ニ
  於テハ北海道會法中選擧人名簿ニ關スル
  規定ノ適用ニ付之ヲ施行シタルモノト看
  做ス
  昭和十年市制中改正法律中公民權及選擧
  人名簿ニ關スル規定ハ之ヲ施行シタル市
  ニ於テハ北海道會法中選擧人名簿ニ關ス
  ル規定ノ適用ニ付次ノ總選擧ニ至ル迄ノ
  間未ダ之ヲ施行セザルモノト看做ス
  前二項ノ場合ニ於テ議員ノ選擧ニ必要ナ
  ル選擧人名簿ニ關シテハ命令ヲ以テ特別
  ノ規定ヲ設クルコトヲ得
  本法ニ依リ初テ議員ヲ選擧スル場合ニ於
  テ必要ナル町村長ノ調製スル選擧人名簿
  ニ關シ第六條ニ規定スル期日又ハ期間ニ
  依リ難キトキハ北海道廳長官ニ於テ別ニ
  其ノ期日又ハ期間ヲ定ム但シ其ノ選擧人
  名簿ハ次ノ選擧人名簿確定迄其ノ效力ヲ
  有ス
  昭和九年法律第四十九號、昭和十年府縣
  制中改正法律中議員選擧ニ關スル規定及
  同年町村制中改正法律中選擧人名簿ニ關
  スル規定ハ本法ノ適用ニ付テハ本法ノ施
  行ト同時ニ施行セラレタルモノト看做ス
  市制中改正法律案
  市制中左ノ通改正ス
  第十條ニ左ノ一項ヲ加フ
  市公民租稅滯納處分中ハ其ノ公民權ヲ
  停止ス
  第十一條中「戰時若ハ事變ニ際シ」ノ下ニ
  「又ハ兵役法第五十五條第一一項ノ規定(志
  願ニ依リ兵籍ニ編入セラレタル者ニ付テ
  ハ之ニ該當スル勅令ノ規定ヲ含ム)ニ依
  リ」ヲ加フ
  第十七條中「特別ノ事情」ヲ「必要」ニ改ム
  第二十條第一項中「闘員ヲ生ジタル場合
  ニ於テ」ヲ「闘員ヲ生ジタルトキハ其ノ闕
  員ト爲リタル議員ガ選擧ノ期日ヨリ一年
  以內ニ闕員ト爲リタル者ナル場合ニ於テ
  第三十條第一項但書ノ得票者ニシテ當選
  者ト爲ラザリシ者アルトキ又ハ選擧ノ期日
  ヨリ一年經過後ニ於テ闕員ト爲リタル者
  ナル場合ニ於テ」ニ、「第三十三條第三項
  及第四項」ヲ「第三十三條第四項及第五
  項」ニ、同條第三項中「第三十三條第五項
  及第六項」ラ「第三十三條第七項」ニ改ム
  第二十一條第二項中「前項」ヲ「前二項」ニ
  改メ同條第一項ノ次ニ左ノ一項ヲ加フ
  選擧人ノ年齡ハ選擧人名簿確定ノ期日
  ニ依リ之ヲ算定ス
  第二十二條第一項中「選擧ノ期日前七日
  目(第三十九條ノ二ノ市ニ於テハ二十日
  目)迄」ヲ「選擧ノ期日前二十日目迄」ニ改
  ム
  第二十二條ノ二議員候補者タラントス
  ル者ハ選擧ノ期日ノ〓示アリタル日ヨ
  リ選擧ノ期日前七日目迄ニ其ノ旨ヲ市
  長(第六條ノ市ニ於テハ區長)ニ屆出ヅ
  ベシ
  選擧人名簿ニ登錄セラレタル者他人ヲ
  議員候補者ト爲サントスルトキハ前項
  ノ期間內ニ其ノ推薦ノ屆出ヲ爲スコト
  ヲ得
  前二項ノ期間內ニ屆出アリタル議員候
  補者其ノ選擧ニ於ケル議員ノ定數ヲ超
  ユル場合ニ於テ其ノ期間ヲ經過シタル
  後議員候補者死亡シ又ハ議員候補者タ
  ルコトヲ辭シタルトキハ前二項ノ例ニ
  依リ選擧ノ期日前二日目迄議員候補者
  ノ屆出又ハ推薦屆出ヲ爲スコトヲ得
  議員候補者ハ市長(第六條ノ市ニ於テ
  ハ區長)ニ屆出ヲ爲スニ非ザレバ議員
  候補者タルコトヲ辭スルコトヲ得ズ
  前四項ノ屆出アリタルトキ又ハ議員候
  補者ノ死亡シタルコトヲ知リタルトキ
  ハ市長(第六條ノ市ニ於テハ區長)ハ直
  ニ其ノ旨ヲ告示スベシ
  第二十二條ノ三議員候補者ノ屆出又ハ
  推薦屆出ヲ爲サントスル者ハ議員候補
  者一人ニ付二百圓又ハ之ニ相當スル額
  面ノ國債證書ヲ供託スルコトヲ要ス
  議員候補者ノ得票數議員ノ定數(選擧
  區アル場合ニ於テハ其ノ選擧區ノ配當
  議員數)ヲ以テ有效投票ノ總數ヲ除シ
  テ得タル數ノ十分ノ一ニ達セザルトキ
  ハ前項ノ供託物ハ市ニ歸屬ス
  議員候補者選擧ノ期日前十日以內ニ議
  員候補者タルコトヲ辭シタルトキハ前
  項ノ規定ヲ準用ス但シ被選擧權ヲ有セ
  ザルニ至リタル爲議員候補者タルコト
  ヲ辭シタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
  第二十三條第三項、第五項及第六項ヲ削
  ル
  第二十三條ノ二議員候補者ハ選擧人名
  簿(選擧區アル場合ニ於テハ其ノ選擧
  區ノ選擧人名簿)ニ登錄セラレタル者
  ノ中ヨリ本人ノ承諾ヲ得テ選擧立會人
  タルベキ者一人ヲ定メ選擧ノ期日前二
  日目迄ニ市長(第六條ノ市ニ於テハ區
  長)ニ屆出ヅルコトヲ得
  前項ノ規定ニ依リ届出アリタル者(株)
  員候補者死亡シ又ハ議員候補者タルコ
  トヲ辭シタルトキハ其ノ屆出ニ係ル者
  ヲ除ク)十人ヲ超エザルトキハ直ニ其
  ノ者ヲ以テ選擧立會人トシ十人ヲ超ユ
  ルトキハ市長(第六條ノ市ニ於テハ區
  長)ハ其ノ者ノ中ニ就キ抽籤ニ依リ選
  擧立會人十人ヲ定ムベシ
  前項ノ抽籤ハ選擧ノ期日ノ前日之ヲ行
  フ第一項ノ屆出ヲ爲シタル議員候補者
  ハ之ニ立會フコトヲ得
  前項ノ抽籤ヲ行フベキ場所及日時ハ市
  長(第六條ノ市ニ於テハ區長)ニ於テ豫
  メ之ヲ告示スベシ
  第二項ノ規定ニ依リ選擧立會人定マリ
  タルトキハ市長(第六條ノ市ニ於テハ
  區長)ハ直ニ之ヲ本人ニ通知シ選擧ニ
  立會ハシムベシ
  議員候補者死亡シ又ハ議員候補者タル
  コトヲ辭シタルトキハ其ノ屆出ニ係ル
  選擧立會人ハ其ノ職ヲ失フ
  第二項ノ規定ニ依ル選擧立會人三人ニ
  達セザルトキ若ハ三人ニ達セザルニ至
  リタルトキ又ハ選擧立會人ニシテ參會
  スル者選擧會ヲ開クベキ時刻ニ至リ三
  人ニ達セザルトキ若ハ其ノ後三人ニ達
  セザルニ至リタルトキハ市長(第六條
  ノ市ニ於テハ區長)ハ選擧人名簿(選擧
  區アルトキハ其ノ選擧區ノ選擧人名簿)
  ニ登錄セラレタル者ノ中ヨリ三人ニ達
  スル迄ノ選擧立會人ヲ選任シ直ニ之ヲ
  本人ニ通知シ選擧ニ立會ハシムベシ
  選擧立會人ハ名譽職トス
  前八項ノ規定ハ投票立會人ニ之ヲ準用
  ス但シ選擧人名簿ニ登錄セラレタル者ト
  アルハ投票分會ノ區劃內ニ於ケル選擧
  人名簿ニ登錄セラレタル者トス
  第二十五條第五項及第七項中「被選擧人」
  ヲ「議員候補者」ニ改ム
  第二十五條ノ三第一項ヲ左ノ如ク改メ同
  條第四項中「投票分會長又ハ」ヲ削ル
  投票ノ拒否ハ選擧立會人又ハ投票立會
  人ノ意見ヲ聽キ選擧長又ハ投票分會長
  之ヲ決定スベシ
  第二十五條ノ四選擧人ニシテ勅令ノ定
  ムル事由ニ因リ選擧ノ當日投票時間內
  ニ自ラ選擧會場ニ到リ投票ヲ爲シ能ハ
  ザルベキコトヲ證スル者ノ投票ニ關シ
  テハ第二十五條第三項及第五項、第二
  十五條ノ二第一項但書竝ニ前條ノ規定
  ニ拘ラズ勅令ヲ以テ特別ノ規定ヲ設ク
  ルコトヲ得
  第二十七條ノ二第二項ヲ左ノ如ク改ム
  前項ノ計算終リタルトキハ選擧長ハ先
  ヅ第二十五條ノ三第二項及第四項ノ投
  票ヲ調査シ選擧立會人ノ意見ヲ聽キ其
  ノ受理如何ヲ決定スベシ
  第二十八條左ノ投票ハ之ヲ無效トス
  一成規ノ用紙ヲ用ヒザルモノ
  二議員候補者ニ非ザル者ノ氏名ヲ記
  載シタルモノ
  三一投票中二人以上ノ議員候補者ノ
  氏名ヲ記載シタルモノ
  四被選擧權ナキ議員候補者ノ氏名ヲ
  記載シタルモノ
  五議員候補者ノ氏名ノ外他事ヲ記載
  シタルモノ但シ爵位、職業、身分、
  住所又ハ敬稱ノ類ヲ記入シタルモノ
  ハ此ノ限ニ在ラズ
  六議員候補者ノ氏名ヲ自書セザルモ
  ノ
  七議員候補者ノ何人ヲ記載シタルカ
  ヲ確認シ難キモノ
  八市會議員ノ職ニ在ル者ノ氏名ヲ記
  載シタルモノ
  第二十九條投票ノ效力ハ選擧立會人ノ
  意見ヲ聽キ選擧長之ヲ決定スベシ
  第三十條ノ三第二十二條ノ二第一項乃
  至第三項ノ規定ニ依ル屆出アリタル議
  員候補者其ノ選擧ニ於ケル議員ノ定數
  ヲ超エザルトキハ投票ヲ行ハズ選擧區
  アル場合其ノ選擧區ニ付亦同ジ
  前項ノ規定ニ依リ投票ヲ行フコトヲ要
  セザルトキハ市長(第六條ノ市ニ於テハ
  區長)ハ直ニ其ノ旨ヲ〓示スベシ
  第一項ノ場合ニ於テハ選擧長ハ選擧ノ
  期日ヨリ五日以內ニ選擧會ヲ開キ議員
  候補者ヲ以テ當選者ト定ムベシ
  前項ノ場合ニ於テ議員候補者ノ被選擧
  權ノ有無ハ選擧立會人ノ意見ヲ聽キ選
  擧長之ヲ決定スベシ
  第三項ノ場合ニ於テハ市長(第六條ノ
  市ニ於テハ區長)ハ豫メ選擧會ノ場所
  及日時ヲ告示スベシ
  第三十三條第一項但書中「第二項」ヲ「第
  二項又ハ第三項」ニ改メ同項ニ左ノ一
  號ヲ加フ
  六第三十六條ノ二ノ規定ニ依ル訴訟
  ノ結果當選無效ト爲リタルトキ
  同條第三項中「前項」ヲ「前二項」ニ、同
  條第四項中「第二項」ヲ「第二項及第三
  項」ニ改メ同條第二項ヲ左ノ如ク改
  ム
  前項第一號乃至第四號ノ事山ヲ生ジタ
  ル場合ニ於テ第三十條第一項但書ノ得
  票者ニシテ當選者ト爲ラザリシ者アル
  トキハ直ニ選擧會ヲ開キ其ノ者ノ中ニ
  就キ當選者ヲ定ムベシ
  第一項第五號又ハ第六號ノ事由ヲ生ジ
  タルトキハ其ノ選擧ノ期日ヨリ一年以
  內ナル場合ニ於テ第三十條第一項但書
  ノ得票者ニシテ當選者ト爲ラザリシ者
  アルトキ又ハ其ノ選擧ノ期日ヨリ一年
  經過後ナル場合ニ於テ第三十條第二項
  ノ規定ノ適用ヲ受ケタル得票者ニシテ
  當選者ト爲ラザリシ者アルトキハ前項
  ノ規定ヲ準用ス
  第三十六條第一項中「選擧人」ノ下ニ「又
  ハ議員候補者」ヲ加フ
  第三十六條ノ二衆議院議員選擧法第百
  十條ノ規定ノ準用ニ依リ當選ヲ無效ナ
  リト認ムルトキハ選擧人又ハ議員候補
  者ハ當選者ヲ被〓トシ第三十二條第一
  項〓示ノ日ヨリ三十日以內ニ控訴院ニ
  出訴スルコトヲ得
  前項控訴院ノ判決ニ不服アル者ハ大審
  院ニ上告スルコトヲ得
  檢事ハ衆議院議員選擧法第百十二條乃
  至第百十三條ノ規定ノ準用ニ依ル罪ニ
  該ル事件ノ被〓人ガ選擧事務長又ハ選
  擧事務長ニ非ズシテ事實上選擧運動ヲ
  總括主宰シタル者ナルニ因リ同法第百
  三十六條ノ規定ノ準用ニ依リ當選ヲ無
  效ナリト認ムルトキハ公訴ニ附帶シ當
  選者ヲ被〓トシテ訴訟ヲ提起スルコト
  乙酸、
  衆議院議員選擧法第八十五條、第八十
  七條、第百四十一條及第百四十一條ノ
  三ノ規定ハ第一項又ハ第二項ノ規定ニ
  依ル訴訟ニ、同法第百四十一條ノ二及
  第百四十一條ノ三ノ規定ハ前項ノ規定
  ニ依ル訴訟ニ之ヲ準用ス
  前條第九項ノ規定ハ第一項乃至第三項
  ノ場合ニ之ヲ準用ス
  第三十七條第二項中「第三十三條第三項
  及第四項」ヲ「第三十三條第四項及第五
  項」ニ、同條第四項中「第三十三條第五項
  及第六項」ヲ「第三十三條第六項及第七
  項」ニ改ム
  第三十九條ノ二市會議員(第六條ノ市
  ノ區ノ區會議員ヲ含ム)ノ選擧ニ付テ
  ハ衆議院議員選擧法第十章及第十一章
  竝ニ第百四十條第二項、第百四十二條
  及第百四十七條ノ規定ヲ準用ス但シ議
  員候補者一人ニ付定ムベキ選擧委員ノ
  數選擧運動ノ爲使用スル勞務者ノ數
  及選擧運動ノ費用ノ額ニ關シテハ勅令
  ノ定ムル所ニ依ル
  第三十九條ノ三ヲ削ル
  第五十二條但書中「議長ニ於テ出席ヲ催
  告シ仍半數ニ滿タサルトキ」ノ下ニ「若ハ
  半數ニ滿ツルモ其ノ後半數ニ滿タザルニ
  至リタルトキ」ヲ加フ
  第五十五條第一項中「第三十條」ヲ「第三
  十條第一項」ニ、同條第二項中「前項」ヲ
  「第一項」ニ改メ同條第一項ノ次ニ左ノ
  項ヲ加フ
  前項ノ選擧ニ於テ當選者ヲ定ムルニ當
  リ得票ノ數同ジキトキハ議長抽籤シテ
  之ヲ定ム
  第六十七條中第二號ヲ第三號トシ第三號
  ヲ第四號トシ同條第一號ノ次ニ左ノ一號
  フルク
  二市會閉會中市會ノ權限ニ屬スル事
  件ニシテ輕易ナルモノヲ市會ニ代ハ
  リテ議決スルコト
  同條ニ左ノ一項ヲ加フ
  前項第二號ノ規定ニ依リ市參事會ニ於
  テ議決スベキ事件ハ市會ノ議決ヲ經テ
  市長之ヲ定ム
  第七十條第一項但書中「議長ニ於テ出席
  ヲ催告シ仍半數ニ滿タサルトキ」ノ下ニ
  「若ハ半數ニ滿ツルモ其ノ後半數ニ滿タ
  ザルニ至リタルトキ」ヲ加フ
  第百四十六條第二項中「市會議員ニ關ス
  ル規定」ヲ「町村制中町村會議員ニ關スル
  規定」ニ改ム
  附則
  本法中公民權及議員選擧ニ關スル規定ハ
  次ノ總選擧ヨリ之ヲ施行シ其ノ他ノ規定
  ノ施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
  本法ニ依リ初テ議員ヲ選擧スル場合ニ於
  テ必要ナル選擧人名簿ニ關シ第二十一條
  乃至第二十一條ノ四ニ規定スル期日又ハ
  期間ニ依リ難キトキハ府縣知事ニ於テ別
  ニ其ノ期日又ハ期間ヲ定ム但シ其ノ選擧
  人名簿ハ次ノ選擧人名簿確定迄其ノ效力
  ヲヨハ
  昭和九年法律第四十九號ハ本法ノ適用ニ
  付テハ本法ノ施行ト同時ニ施行セラレタ
  ルモノト看做ス
  昭和十年府縣制中改正法律ハ從前ノ第三
  十九條ノ二ノ規定ノ適用ニ付テハ次ノ總
  選擧ニ至ル迄ノ間未ダ施行セラレザルモ
  ノト看做ス
  本法中市會議員ニ關スル規定ハ從前ノ第
  百四十六條第二項ノ規定ノ適用ニ付テハ
  區會議員ノ次ノ總選擧ニ至ル迄ノ間未ダ
  施行セラレザルモノト看做ス
  昭和十年町村制中改正法律中町村會議員
  ニ關スル規定ハ第百四十六條第二項ノ改
  正規定ノ適用ニ付テハ本法ノ施行ト同時
  ニ施行セラレタルモノト看做ス
  町村制中改正法律案
  町村制中左ノ通改正ス
  第八條ニ左ノ一項ヲ加フ
  町村公民租稅滯納處分中ハ其ノ公民權
  ヲ停止ス
  第九條中「戰時若ハ事變ニ際シ」ノ下ニ
  「又ハ兵役法第五十五條第二項ノ規定(志
  願ニ依リ兵籍ニ編入セラレタル者ニ付テ
  ハ之ニ該當スル勅令ノ規定ヲ含ム)ニ依
  リ」ヲ加フ
  第十四條中「特別ノ事情」ヲ「必要」ニ改
  ム
  第十七條第一項中「闕員ヲ生ジタル場合
  ニ於テ」ヲ「闕員ヲ生ジタルトキハ其ノ
  闕員ト爲リタル議員ガ選擧ノ期日ヨリ一
  年以內ニ闕員ト爲リタル者ナル場合ニ於
  テ第二十七條第一項但書ノ得票者ニシテ
  當選者ト爲ラザリシ者アルトキ又ハ選擧
  ノ期日ヨリ一年經過後ニ於テ關員ト爲リ
  タル者ナル場合ニ於テ」ニ、「第三十條第
  三項及第四項」ヲ「第三十條第四項及第五
  項」ニ、同條第三項中「第三十條第五項
  及第六項」ヲ「第三十條第七項」ニ改ム
  第十八條第一項ノ次ニ左ノ一項ヲ加フ
  選擧人ノ年齡ハ選擧人名簿確定ノ期日
  ニ依リ之ヲ算定ス
  第二十二條ノ四選擧人ニシテ勅令ノ定
  ムル事由ニ因リ擧選ノ當日投票時間內
  ニ自ラ選擧會場ニ到リ投票ヲ爲シ能ハ
  ザルベキコトヲ證スル者ノ投票ニ關シ
  テハ第二十二條第三項及第五項、第二
  十二條ノ二第一項但書竝ニ前條ノ規定
  ニ拘ラズ勅令ヲ以テ特別ノ規定ヲ設ク
  ルコトヲ得
  第三十條第一項但書中「第二項」ヲ「第二
  項又ハ第三項」ニ、同條第三項中「前項」
  ヲ「前二項」ニ、同條第四項中「第二項」ヲ
  「第二項及第三項」ニ改メ同條第二項ヲ左
  ノ如ク改ム
  前項第一號乃至第三號ノ事由ヲ生ジタ
  ル場合ニ於テ第二十七條第一項但書ノ
  得票者ニシテ當選者ト爲ラザリシ者ア
  ルトキハ直ニ選擧會ヲ開キ其ノ者ノ中
  ニ就キ當選者ヲ定ムベシ
  第一項第四號ノ事由ヲ生ジタルトキハ
  其ノ選擧ノ期日ヨリ一年以內ナル場合
  ニ於テ第二十七條第一項但書ノ得票者
  ニシテ當選者ト爲ラザリシ者アルトキ
  又ハ其ノ選擧ノ期日ヨリ一年經過後ナ
  ル場合ニ於テ第二十七條第二項ノ規定
  ノ適用ヲ受ケタル得票者ニシテ當選者
  ト爲ラザリシ者アルトキハ前項ノ規定
  ヲ準用ス
  第三十四條第二項中「第三十條第三項及
  第四項」ヲ「第三十條第四項及第五項」ニ、
  同條第四項中「第三十條第五項及第六項」
  ヲ「第三十條第六項及第七項」ニ改ム
  第三十六條ノ二中「及第百四十二條」ヲ
  「、第百條ノ二、第百四十二條及第百四十
  七條」ニ改ム
  第四十八條但書中「議長ニ於テ出席ヲ催
  告シ仍半數ニ滿タサルトキ」ノ下ニ「若ハ
  半數ニ滿ツルモ其ノ後半數ニ滿タザルニ
  至リタルトキ」ヲ加フ
  第五十一條第一項中「第一一十七條」ヲ第
  二十七條第一項」ニ、同條第二項中「前項」
  ヲ「第一項」ニ改メ同條第一項ノ次ニ左ノ
  一項ヲ加フ
  前項ノ選擧ニ於テ當選者ヲ定ムルニ當
  リ得票ノ數同ジキトキハ議長抽籤シテ
  之ヲ定ム
  附則
  本法中公民權及議員選擧ニ關スル規定ハ
  次ノ總選擧ヨリ之ヲ施行シ其ノ他ノ規定
  ノ施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
  第三十八條ノ規定ニ依リ町村會ヲ設ケザ
  ル町村ニ付テハ本法ノ施行ノ期日ハ勅令
  ヲ以テ之ヲ定ム
  本法ニ依リ初テ議員ヲ選擧スル場合ニ於
  テ必要ナル選擧人名簿ニ關シ第十八條乃
  至第十八條ノ四ニ規定スル期日又ハ期間ニ
  依リ難キトキハ府縣知事ニ於テ別ニ其ノ
  期日又ハ期間ヲ定ム但シ其ノ選擧人名簿ハ
  次ノ選擧人名簿確定迄其ノ效力ヲ有ス
  昭和九年法律第四十九號ハ本法ノ適用ニ
  付テハ本法ノ施行ト同時ニ施行セラレタ
  ルモノト看做ス
  〔國務大臣後藤文夫君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006713242X02019350228&spkNum=24

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• 025・後藤文夫

  ○國務大臣(後藤文夫君)　只今議題ト相成
  リマシタ府縣制、北海道會法、市制及町村
  制中ノ改正法律案ノ〓要ヲ御說明申上ゲマ
  ス、第六十五議會ニ於キマシテ御協贊ヲ經
  マシタ衆議院議員選擧法中改正法律ハ、客
  年六月二十三日法律第四十九號ヲ以チマシ
  テ公布ニ相成リマシタ、之ニ伴フ附屬諸法
  令ノ改正モ、既ニ其必要ナ手續ヲ了シタノ
  デゴザイマス、之ニ伴ヒマシテ、此衆議院
  議員選擧法改正ノ趣旨ニ照應致シマシテ改
  正致シマスコト、及ビ地方議會ノ議員選擧
  ニ於キマスル過去ノ實績ニ徵シマシテ、規
  定ノ改正ヲ行ヒマスルト共ニ、併セテ其他
  若干ノ事項ニ付テ、事務的ニ必要ナリト考
  ヘラルヽ改正ヲ加ヘルコトヽ致シマシテ、
  玆ニ地方制度ニ關スル諸法律ノ改正ヲ提案
  スルコトニ致シマシタ次第デゴザイマス
  改正案ハ市制、町村制、府縣制及北海道
  會法ノ四法律ニ關スルモノデゴザイマス
  ガ、其內容ハ相當多數ノ項目ニ亙ッテ居リマ
  スルケレドモ、主トシテ議員選擧ニ關スル
  事項デアリマス、而シテ其議員選擧ニ關ス
  ル事項ハ、又大體二ツニ分ケルコトガ出來
  やく、第一ハ、直接ニ昨年ノ衆議院議員選
  擧法ノ改正ニ伴ヒマスル事項、第二ハ、直
  接ニハ昨年ノ、衆議院議員選擧法ノ改正ニ
  伴フモノデハアリマセヌケレドモ、過去ノ
  實績ニ徵シマシテ、此際改正ヲ加ヘルヲ適
  當ト認メマシタ事項ニ關スルモノデアリマ
  ス、先ヅ第一ノ事項カラ申上ゲマスレバ、
  改正案ハ衆議院議員選擧法改正ノ趣旨ニ從
  ヒマシテ改正ヲ致シタノデアリマス、其
  主ナル點ヲ申シマスルト、一、成ベク容易
  ニ投票ノ場所ヲ創設シ得ルノ趣旨ヲ法文ニ
  加ヘタノデアリマス、二、選擧人ノ年齡ハ
  選擧人名簿ヲ確定ノ期日ニ依リ、之ヲ算定
  スルコトヽ致シタノデアリマス、三、議員
  又ハ當選者ニ欠缺ヲ生ジマシタ場合ニ、選
  擧ノ期日カラ一年以內ハ、一般次點者ヲ繰
  上ゲテ之ヲ補充スルコトヽ致シタノデアリ
  マス、四所謂連坐ノ訴訟ノ手續ヲ改正衆
  議院議員選擧法ト同樣ニ改メタ等デアリマ
  ス、其他衆議院議員選擧法ノ罰則其他ノ規
  定ヲ準用スル諸規定ヲ整備致シマシテ、其
  運用ニ遺憾ナキヲ期シタノデゴザイマス、
  次ニ第二ノ、直接ニ昨年ノ衆議院議員選擧
  法ノ改正トハ關係シマセヌケレドモ、矢張
  此地方議會ノ選擧ニ關スル規定デ改正ヲ致
  シタル諸點ガゴザイマス、改正案ニ於キマ
  シテハ、全部ノ市ニ付キマシテ議員候補者
  屆出ノ制度ヲ採用スルコトヽ致シマシテ、
  之ニ伴ヒマシテ立會人屆出、所謂連坐ノ訴
  訟等ニ關スル規定ヲ設ケマシテ、且ツ之ニ
  衆議院議員選擧又ハ道府縣會議員選擧ニ於
  ケルト同樣ナ選擧運動又ハ其費用ニ關スル
  取締規定ヲモ適用スルコトヽ致シタノデア
  リマス、議員候補者ノ制度ハ、旣ニ衆議院
  議員選擧竝ニ道府縣會議員ト大中都市ノ市
  會議員選擧ニ關シテ施行致シテ居ルノデア
  リマシテ、相當ノ效果ヲ擧ゲツヽアルノデ
  アリマス、此際一步ヲ進メマシテ、全部ノ
  市ニ付テ之ヲ施行スルコトヽ致サウトスル
  ノデアリマス、次ニ各種地方議會ノ議員選
  擧ニ關シマシテ、所謂不在者投票ノ制度ヲ
  採用スルコトヽ致シマシタ、大正十四年ニ
  衆議院議員選擧ニ關シ、此制度ヲ採用致シ
  マシテ以來、旣ニ數次ノ選擧ヲ重ネテ居リ
  マシテ、今ヤ官民共ニ此制度ニ習熟ヲシテ
  參ッタト認メラレルノデアリマス、此際之ヲ
  地方議會ノ議員選擧ニモ及ボシマシテ、成
  ベク多數ノ選擧人ヲシテ現實ニ選擧ニ參加
  スルノ機會ヲ得シムルコトヽ致シタノデア
  リマス、次ニ尙ホ比較的稀ニ生ズル場合デ
  ハアリマスルガ、府縣會議員選擧ニ關シ、
  人口ノ著シク少イ郡ニ於キマシテ、一選擧
  區トナルモノガアリマスノデ、是等ノ郡ハ
  府縣條例ヲ以テ隣接ノ郡市ト併セテ一選擧
  區トナシ得ル途ヲ開キマシタ、以テ各選擧
  區ニ對スル議員ノ配當ヲ成ベク公平ナラシ
  メンコトヲ期シタノデアリマス
  以上ハ議員選擧ニ關スル改正條項デアリ
  マス、是等ノ事項ノ外、改正案ニ於キマシ
  テハ、地方自治ノ實績ニ徵シマシテ、從來
  ノ制度ニ對シ若干ノ整備改善ヲ加フルコ
  トヽ致シマシタ、其一ツハ租稅滯納ノ處分
  中ノ者ニ對シ、其市町村公民權ヲ停止スル
  コトヽ致シタノデアリマス、此際公共的精
  神ノ向上ノ上カラ見マシテ、現ニ租稅滯納
  ノ處分中ノ者ノ公民權行使ハ適當デナイト
  考ヘラレマスルノデ、之ヲ停止スルコトヽ
  致シタノデアリマス、其二ハ市會又ハ道府
  縣會ノ權限ニ屬スル事件ニシテ輕易ナルモ
  ノハ、豫メ市會又ハ道府縣會ノ議決ヲ經テ
  其範圍ヲ定メマシテ、市會又ハ道府縣會ノ
  閉會中、市參事會又ハ道府縣參事會ニ於テ
  之ヲ議決シ得ルコトヽシタノデアリマス、
  是ハ全ク事務ノ便宜ト簡捷トヲ圖ル趣旨ニ
  出タモノデアリマス、其三ハ市町村會、府
  縣會等地方議會ノ內部ニ於キマシテ行ハ
  ルヽ選擧ニ於テ、同數ノ得票者ガ二人以上ア
  リマスル時ハ、從來ノ制度デハ先ヅ年齡多
  キ者ヲ採ッタノデアリマスルガ、改正案ニ於
  キマシテハ、斯ノ如キ場合ニ於テハ、直チ
  ニ抽籤ノ法ヲ用ヒテ當選者ヲ決定スルコ
  トヽ致シマシタ、地方議會ノ內部ニ於ケル
  選擧ニアリマシテハ、選擧ノ結果ガ大體ニ
  於テ正確ニ豫見セラレル爲ニ、屢〓弊害ヲ伴ツ
  タ過去ノ實情ニ鑑ミタモノデアリマス、其
  四ハ臨時府縣會ニ付キマシテハ、場合ニ依
  リ其通常ノ會期タル七日ヨリ短イ會期ヲ定
  メ得ル途ヲ開イタノデアリマス、是ハ申ス
  迄モナタ臨時府縣會ニモ必シモ七日間ト云
  フ會期ヲ必要トシナイ場合ガアルカラデア
  リマス、以上ガ改正案ノ大要デアリマス、
  何卒御審議ノ上御協賛アランコトヲ希望ス
  ル次第デゴザイマス(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006713242X02019350228&spkNum=25

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• 026・濱田國松

  ○議長(濱田國松君)　質疑ノ通〓ガアリマ
  ス、船田中君
  〔眞鍋儀十君「議長ハ畑桃作君ニ黑ノ襟
  卷ヲシテ議場ニ入ルコトヲ御許シニナ
  リマシタカ」ト呼フ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006713242X02019350228&spkNum=26

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• 027・濱田國松

  ○議長(濱田國松君)　何デスカ-發言ヲ
  正式ニ求メラレテ御尋アランコトヲ希望致
  シマス
  〔眞鍋儀十君「正式ニ求メマセヌケレド
  モ、餘リ恰好ガ惡イカラ······」ト呼ヒ
  其他發言スル者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006713242X02019350228&spkNum=27

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• 028・濱田國松

  ○議長(濱田國松君)　發言ヲ許シテアリマ
  ス-私語ヲ禁ジマス
  〔船田中君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006713242X02019350228&spkNum=28

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• 029・船田中

  ○船田中君　只今議題トナリマシタ府縣制
  改正案以下、地方制度改正ニ關スル四案ヲ
  審議致シマスニ付キマシテ、只今內務大臣
  ヨリ御說明ガアリマシタガ、尙ホ私ハ此場
  合政府ニ向ッテ重要ナル二三ノ問題ニ付テ、
  質問致シタイト思フノデアリマス、先ヅ總
  論的ノ根本問題ト致シマシテ、第一ニ岡田
  内閣總理大臣ニ御伺ヲ致シタイコトハ、岡
  田内閣ノ聲明セラレマシタ十大政綱ノ中ニ、
  其第一ニ綱紀肅正ノコトヲ擧ゲテ居ラレマ
  スルガ、其中ニ特ニ斯ウ云フコトガ申シテ
  アリマス、中央地方ノ行政ニ及ボセル各種
  ノ情弊ヲ矯メ云々ト云フコトヲ申サレテ居
  ルノデアリマス、中央地方ノ行政ニ及ボ
  シタル所ノ各種ノ情弊ヲ矯正スルト云フ
  コトヲ謳ハレマス以上ニ於キマシテハ、此
  所謂地方行政ニ及ボシタ所ノ情弊ト云フモ
  ノガ、如何ナルモノデアルカト云フコトニ
  付テ、政府ハ正確ナル御認識ヲ有ッテ居ラ
  ルベキ筈デアルト思フノデアリマス、又其
  情弊ニ對シテ、如何ナル矯正策ヲ立ツベキ
  デアルカト云フコトニ付テノ抱負、又政策ガ
  ナケレバナラナイト思フノデアリマス、隨テ其
  地方行政ニ及ボシテ居ル所ノ各種ノ情弊ト云
  フコトニ付テノ政府ノ御認識、及之ニ對シテ
  如何ナル政策、卽チ之ヲ矯正スルガ爲ニ如何
  ナル政策ヲ立テルノデアルカト云フコトニ付
  テ、先以テ總理大臣ニ御伺ヲ致シタイノデア
  リマス、今囘政府ガ御提案ニナリマシタ
  ル是等地方制度改正案ハ、尙ホ後ニ御伺ヲ
  致シタイト思フノデアリマスルガ、主トシ
  テ昨年改正セラレマシタ衆議院議員選擧法
  改正法律ニ伴フ所ノ改正ガ、其主ナル部分
  ヲ占メテ居ルノデアリマス、併シ苟モ總理
  大臣ガ政綱ノ第一ニ而モ冒頭ニ斯ノ如キコ
  トヲ謳ッテイラッシヤル以上ニ於キマシテ
  ハ、之ニ付テノ何等カノ對策ヲ、此場合ニ
  於テ御示シニナルト云フコトガ、內閣總理
  大臣ノ當然ノ御責任ト思フノデアリマス、
  若シ現內閣ニシテ、其主張セラレル所ニ忠
  實デアリ、其責任ヲ痛感セラレマスルナラ
  バ、今囘ノ地方制度改正案ノ立案ニ付キマ
  シテハ、最モ愼重ニ審議ヲセラレマシテ、
  地方ノ行政及地方ノ政界ニ及ボシタ所ノ弊
  害ヲ除去シマシテ、地方官憲ノ綱紀ヲ肅正
  シ、窮乏其極ニ達シテ居リマスル所ノ地方
  自治體ノ匡救ニ付テ、最モ有效適切ナル案
  ヲ立テマシテ、眞ニ地方ガ更生出來ルヤウ
  ナ根本的ノ改正案ヲ御立テニナルコトガ、
  當然デアラウト思フノデアリマス、果シテ
  岡田內閣總理大臣ハ如何ナル御所見ヲ有
  チ、又如何ナル政策ヲ今後御示シニナルノ
  デアルカ、其政策、抱負ニ付テ御開陳ヲ願
  ヒタイノデアリマス
  第二ハ地方選擧制度ノ根本的改革ニ關ス
  ル政府ノ方針、衆議院議員選擧法改正法ノ
  規定ヲ地方選擧制度ニ採用シ、又ハ之ヲ準
  用スルコトノ可否ノ問題デアリマシテ、此
  問題ニ付テハ、內務大臣竝ニ司法大臣ニ御
  聽取リヲ願ヒタイノデアリマス、吾々ノ見
  解ヲ以テ致シマスルナラバ、今日地方ノ行
  政又地方ノ政界ニ及ボシテ居ル所ノ弊害
  ハ決シテ少クナイト思ヒマス、而モ是等ノ
  問題ハ、果シテ人ノ問題デアルカ、或ハ制度
  ノ不備缺陷カラ來ル所ノ問題デアルカ、固
  ヨリ國民ノ政治常識ガ非常ニ發達ヲ致シ、
  又國民ノ自治的訓練ガ高度ニ發達ヲ致シマ
  スルナラバ、如何ナル制度ノ下ニ於テモ、
  十分ニ其機能ヲ發揮スルコトガ出來ルデア
  リマセウ、併ナガラ今日ノ國民ノ常識、今
  日ノ地方民ノ自治的訓練ノ程度ニ於キマシ
  テハ、强チ人ノミヲ責メルコトハ出來ナイ、
  ドウシテモ制度ノ上ニ於テ改メシムベキハ
  改メテ行クニアラザレバ、地方ノ行政、地
  方ノ政界ハ改マルモノデハナイト私ハ考ヘ
  ルノデアリマス、斯樣ナ趣旨ニ於キマシテ、
  今日地方ニ於ケル所ノ選擧ノ實情ヲ見マス
  ルナラバ、普通選擧制度ヲ採用スルコトニ
  相成リマシテカラ、殊ニ衆議院議員選擧有
  權者ト、地方議會ニ於ケル所ノ、卽チ府縣
  會又ハ市會、町村會ノ有權者ノ資格トガ殆
  ド同樣デアリマスカラ、隨テ世間往々ニシ
  テ今日ノ地方ノ政治ノ腐敗ハ、政黨ノ影響
  デアルト云フヤウナ非難ヲ致ス者ガアリマ
  スルケレドモ、國會議員ノ選擧モ、地方議會
  ノ選擧も、全ク殆ド同ジト申シテ差支ナイ
  所ノ有權者ノ制度ノ下ニ於キマシテハ、政
  黨ノ勢力ガ地方ノ議會ニ影響ヲ及ボスコト
  ハ宜シクナイト申シテモ、是ハ絕對ニ出來
  ナイ所デアリマス、隨テ若シサウ云ウ點ニ
  於テ、政黨ノ勢力ガ地方ノ議會ニ影響ヲ及
  ボスコトガ宜シクナイト云フナラバ、其根
  本ニ於テ改革ヲ爲サナケレバナラナイ、所
  ガ今囘御提案ニナリマシタ改正案ニ於テ
  ハ寧ロ衆議院議員選擧法ニ付テ昨年改正
  シマシタ其儘ノモノヲ、地方議會ノ選擧制
  度ニ採入レヨウトシテ居ルノデアル、サウ
  シテソコニ吾々ガ大ニ危險ヲ感ジマスルコ
  トハ、所謂嚴罰主義及連坐規定ノ採用ノ問
  題デアル、嚴罰主義或ハ連坐規定ノ採用ト
  云フコトニ依リマシテ、地方ノ議會ガ改マ
  ル、或ハ衆議院議員選擧ニ付キマシテ
  モ、其弊害ヲ除去スルコトガ出來ルト考ヘ
  ルノハ、是ハ全ク官僚ノ机上ノ空論デゴザ
  イマス(拍手)玆ニ最モ恐ルベキモノハ、
  此嚴罰主義ニ依ッテ取締ル所ノ檢察制度ニ
  於テ、洵ニ今日ノ制度ハ不備缺陷ガ多イ、而
  モ檢察ノ實際ノ狀況ヲ見マスルト云フト、
  是亦極メテ不公平ニ行ハレテ居ル、斯ノ如
  クニ檢察制度ガ不完全デアリ、而モ檢察ガ
  往々ニシテ公平ヲ缺ク今日ノ現狀ノ下ニ於
  テハ、嚴罪主義ノ採用竝ニ連坐規定ノ採用ト
  云フコトハ、極メテ危險デアルト申サナケ
  レバナラヌ(拍手)此問題ニ付キマシテ政府
  當局、殊ニ內務大臣及司法大臣ハ如何ナル
  御所見ヲ有スルノデアルカ、而モ一方ニ於
  テ如何ニ嚴罰ヲ以テ臨ムト致シマシテモ、
  其嚴罰ヲスル半面ニ於テ非合法ノ運動ガ行
  ハレテ、其非合法ノ運動ノ效果ガ投票ノ上ニ
  現レテ來ルト云フヤウナ、今日ノ實情ニ於
  キマシテハ、人情ノ常トシテ動モスレバ非
  合法ノ運動ヲ爲サントスル者ガ多クナルト
  云フコトハ、是ハ致方ガナイ、隨テ其根本ニ
  於テ之ヲ改メントスルナラバ、非合法ノ運
  動ノ絕對ニ出來ナイヤウナ制度ニスルカ、
  或ハ非合法ノ運動ノ效果ガ投票ノ上ニ絕對
  ニ現レテ來ナイヤウナ、選擧制度ニ改メル
  ニ非ザレバ、今日ノ非合法ノ運動ヲ絕滅ス
  ルコトハ出來ナイト私ハ考ヘルノデアル、
  隨テ選擧界ヲ革正シ、政治ノ淨化ヲ圖ラン
  トスルナラバ、此點ニ深ク思ヲ致シマシ
  テ、中央地方ヲ通ジテ選擧制度ノ一大革新
  ガ必要デアルト思フ、今日議題トナッテ居リ
  マスルヤウナ此提案ヲ以テシテハ、到底地
  方ノ選擧界ヲ革正スルコトモ地方政界ノ淨
  化ヲ圖ルコトモ出來ナイ、隨テ若シ此改正
  案ニ依リマシテ、嚴罰主義ガ地方ノ議會選
  擧ニ付テ採用ナレ、又連坐規定ガ厲行セラ
  ルヽト云フコトニナリマシタナラバ、多ク
  ノ無辜ノ民ヲ罪人ニスルト云フヤウナ危險
  ガ、玆ニ包藏サレルト云フコトニ相成ラウ
  ト思フノデアリマス、此地方議會ノ選擧制
  度ニ付テ、若シ根本的ノ改正ヲ致スト云フ
  ナラバ、玆ニ職能代表、或ハ任命議員、或
  ハ嘗テ行ハレタ所ノ等級選擧制度ニ付テ大
  ニ〓究ヲシ、之ヲ再吟味スル必要ガアラウ
  ト思フノデアリマスルガ、之等ノ問題ニ付
  テ內務大臣ハ如何ナル御所見ヲ御有チニナ
  ルノデアリマセウカ、此點ニ付テ御說明ヲ
  願ヒタイト思フノデアリマス
  第三ニ御尋申シタイコトハ、地方自治體
  ノ執行機關ノ選任制度ノ問題デアリマス、
  市町村長ハ現在ノ制度ノ下ニ於キマシテ
  ハ、市町村會ノ選擧ニ依ルト云フコトニ相
  成ッテ居リマス、隨テ市町村長ノ地位ハ動モ
  スレバ市町村會ニ引摺ラレテ、其獨立性ヲ
  失フト云フヤウナ危險ガアル、而モ近年自
  治體ニ於キマシテ、多クノ非違不當ガ行ハ
  レテ居ルノデアリマスガ、其多クハ議決機
  關ノ理事者ヲ壓迫スルコト、或ハ理事者ト
  議決機關トガ共謀ヲスルト云フコトニ依ッ
  テ、幾多ノ弊害ヲ發生シテ居ルノデアル、
  隨テ之ヲ改メテ市町村長ノ選任方法ニ一大
  改革ヲ施ス所ノ必要ガアラウト思フ、例へ
  バ市町村長ハ市町村會ニ於テ選擧セズシ
  テ、市町村公民ノ直接選擧ナリ、或ハ復選
  法ニ依ルト云フヤウナ制度ニ、之ヲ改メル
  ノ必要ガアラウト思フガ、之ニ付テノ內務
  大臣ノ御所見ヲ伺ヒタイノデアリマス
  尙ホ此執行機關ノ選任問題ニ關聯致シ
  マシテ二ツノコトヲ御尋致シタイ、其一ツ
  ハ、市町村ニ於ケル所ノ市町村長、或ハ助
  役其他ノ市町村吏員ノ待遇ノ問題、或ハ是
  等ノ公吏ノ職務執行、或ハ其身分ノ保障、
  或ハ是等ノ者ノ恩給制度、是等ノ問題ニ付
  キマシテ、或ハ公吏法トモ稱スベキ一ツノ
  法制ヲ立テヽ、全國的ニ連絡ガアリ、相互
  ニ共通シ得ル所ノ、一ツノ制度ヲ設ケル必
  要ガアラウカト考ヘルノデアリマスガ、之ニ
  付テ內務大臣ノ御所見ヲ伺ヒタイ、近年官
  吏ニ付キマシテハ、御承知ノ通リニ官僚内
  閣ガ復活ヲ致シマシテ、身分保障令ト云フ
  モノガ出來、又敍位、敍勳、恩給或ハ官吏ノ
  社會的待遇、是等ノモノニ付テハ國家トシ
  テ殆ド缺クル所ガナイ、餘リニ國家ノ優遇ニ
  狎レテ、徃々ニシテ官吏社會ガ腐敗ヲシ
  テ、今日幾多ノ濱職事件ガ起ッテ居ル(拍手)
  全ク我國ノ今日ノ制度ハ官吏萬能、本當ノ
  意味ニ於ケル所ノ官僚政治デアル、斯樣ナ
  狀態ニ相成ッテ居ルノデアリマス、然ルニ他
  面公吏ハ同ジヤウニ國家ノ公務ニ盡瘁ヲシ
  テ、而モ先程モ度々此壇上カラ論ゼラレテ
  居ルガ如クニ、其多クノ市町村ノ吏員ハ殆
  ド給料ヲ貰ッテ居ラナイヤウナモノガアル
  ト云フ有樣デアル、斯ノ如キ薄給又ハ無給
  ニ甘ンジテ繁雜ナル國家ノ公務ニ勉勵努力
  ヲ致シテ居ル而モ國家カラハ非常ナ冷遇
  ヲ受ケテ居ル、町村長ノ如キハ、二十七年
  間勤務ヲシナケレバ、動八等ニ叙スルコト
  ガ出來ナイト云フ有樣デアル、之ヲ官吏ガ、
  僅カ許リノ功勞ガアッタカラト言ッテ、高級
  ノ敍位敍勳ノ恩典ニ浴スルモノト比較スレ
  バ、誠ニ同情ニ堪ヘヌモノガアリマス、而
  モ市町村ノ市町村立小學校長ニ於テハ奏任
  待遇ノ者ガ近年多クナッテ居ル、或ハ三等郵
  便局長ニシテモ奏任待遇ノ者ガアル是等
  /資陛下ノ行幸ニ際シテ停車場ニ行ッ
  タ場合ニ於テハ、町村長ハ「プラットフオー
  스ニ入ルコトガ出來ナイガ、町村長ノ監
  督シテ居ル所ノ小學校長ハ「プラットフオー
  台ニ於テ奉迎奉送ガ出來ルト云フ有樣デ
  アル、斯ノ如キ狀態デハ到底此町村ノ行政
  ノ圓滿ナル發達ヲ期スルコトハ出來ナイト
  思フ(拍手)私ハ此市町村長以下ノ公吏ニ付
  テ適當ナル法制ヲ立テヽ、國家ガ之ニ對シテ
  十分ナル監督モシ、十分ナル待遇モ與ヘル
  ト云フコトガ、市町村ノ行政ヲ發達セシム
  ル所ノ所以デアラウト思フ(拍手)モウ一ツ
  此問題ニ關聯ヲシテ御伺ヲ致シタイコトハ、
  地方官々制ノ改正及ビ知事公選ノ問題デア
  リマス、自治權ノ擴充ヲ致シ、地方分權ヲ徹
  底スル爲ニハ、地方官々制、卽チ北海道廳
  ノ官制、各府縣ノ官制、是等ノモノヲ徹底
  的ニ改正ヲ致シマシテ、進ンデハ知事公選
  ニマデ行クノガ當然デアラウト思フノデア
  リマス、然ルニ政府ハ先般地方官々制ヲ御
  改正ニナッテ、經濟部ト云フモノヲ新設セラ
  レタ、隨テ各府縣ニ於キマシテハ內務部ハ
  總務部トナッテ、經濟部、學務部、警察部ト
  四部ガ對立ヲスル、其外ニ大キナ府縣ニ於
  テハ土木部ト云フモノガ又アル、斯ノ如ク
  ニ致シマシテ各部ガ對立ヲシテ居ル、今日
  ニ於テハ成ルベク行政ヲ單一化シ、綜合的
  ニヤッテ行カナケレバ行政ノ效果ガ擧ガラ
  ナイ、經濟部ヲ新設シタガ爲ニ、却テ官廳
  內部ノ對立ヲ激化致シマシテ、迷惑ヲ蒙ム
  ルノハ地方民ダケデアルト云フ有樣デアル
  (拍手)斯ノ如キコトニ依ッテ、内務大臣ガ其
  當時御聲明ニナリマシタ所ノ、之ニ依ッテ地
  方ノ改善ヲスルノデアル、之ニ依ッテ地方ノ
  經濟ノ更生ヲ圖ルノデアルト云フコトハ、
  全ク私ハ出來ナイト考へルノデアリマスル
  ガ、此點ニ付キマシテモ內務大臣ノ御所見
  ヲ伺ヒタイト思フノデアリマス
  第四ニハ自治體ノ分合ニ關スル問題デア
  リマス、各地方ノ從來ノ境界ハ、動モスレ
  バ機械的ニ、又因襲的ニ、情實的ニ分界サ
  レテ居リマシテ、其團體トシテ政治的ニ又
  經濟的ニ獨立シテ自治權ヲ行フニ適當ナル
  ヤウニ出來上ッテ居ラナイノデアリマス、是
  ガ爲ニ或ル地方ニ於テハ極メテ富裕ナモノ
  ガアル、又之ニ反シテ或ル地方ニ於テハ極
  メテ貧弱ナルモノガアル、東北ニ例ヲ取ッテ
  恐入リマスガ、或ル東北ノ寒村ニ於キマ
  シテハ、其村ノ殆ド全部ガ官有林デアルト
  云フ有樣デアル、斯ノ如キ村ニ於テハ自治
  ヲ許シテ居ッテモ、實際ニ之ヲ行フコトガ出
  來ナイ、經濟的ニ全ク獨立スルコトガ出
  來ナイ、財政的ニ獨立スルコトノ出來ナイ
  境界ニ依ッテ限ラレテ居ルト云フ村ガ、決シ
  テ少クナイノデアリマス、仍テ自治體ノ地
  域ハ地方住民ノ經濟生活ニ重キヲ置キマシ
  テ、且ツ一財政單位ヲ目標トシテ併合シ、
  之ヲ擴大スル所ノ必要ガアラウト思フノデ
  アリマスルガ、此點ニ付テノ內務大臣ノ御
  所見ヲ伺ヒタイノデアリマス
  第五ハ部落ノ法認ノ問題、卽チ各地方ノ
  字ヲ法制上公認スベシト云フコトノ問題デ
  アリマス、部落卽チ各字ト云フモノハ、古
  來自然ニ發達シ來ッタ所ノ隣保相助ノ團體
  デアリマシテ、產業上ノ共同施設ハ勿論ノ
  事、神社ノ奉祀、其他精神的結合ニ力强イ
  根柢ヲ成シテ居ルノデアリマス、仍テ之ヲ
  法制上ニ認メテ其活動ヲ助長シ、今後一層
  發達セシムルノ必要ガアルト思フノデアリ
  マスルガ、政府ノ之ニ對スル所ノ御所見ハ
  如何デアリマスカ、此點モ御伺ヲ致シタイ
  ノデアリマス
  次ニ第六トシテ御伺ヲ致シタイコトハ、
  大都市制度、殊ニ東京都制案ニ付テノ問題
  デゴサイマス、大都市制度及東京都制案ハ、
  今日ニ於テハ殆ド世間ノ輿論ト相成ッテ居
  ルノデアリマス、本院ニ於テモ每年連續シ
  テ大都市制度、或ハ都制ヲ促進スル所ノ各
  種ノ案ガ提出サレ、或ハ法律案トナッテ居
  ルコトモアリマス、而モ政府ニ於キマシテ
  ハ、數年來大都市制度調査會ト云フモノヲ
  開イテ、此大都市制度ニ付テノ調査ヲ爲サッ
  テ居ル筈デアリマスカラ、旣ニ案ハ出來テ
  居ルモノト思フ、殊ニ東京都制案ニ付キマ
  シテハ、一昨年本院ニ御提出ニナリマシテ、
  審議未了トハナリマシタケレドモ、兔ニモ
  角ニモ當時ノ山本內務大臣ノ下ニ於テ、立
  派ナ成案ガ出來タノデアル、當時後藤內務
  大臣ハ農林大臣デアッタガ、國務大臣トシテ
  之ニ御參與ニ相成ッテ居ルノデアリマスル
  カラ、現內閣ニ於テ內務大臣トシテ之ヲ行
  フ所ノ責任ノ地位ニ立タレタ以上ニ於テハ、
  此大都市制度ニ付テノ立案ヲサレ、殊ニ東
  京都制案ニ付テハ、此東京市ノ現狀ニ鑑ミ
  テ、速ニ御提出ニナルコトガ適當デアラウ
  ト考ヘルノデアリマスルガ、此大都市制度、
  殊ニ東京都制案ニ付テノ內務大臣ノ御抱負、
  御經綸ヲ此際ニ明確ニセラレンコトヲ望ム
  ノデアリマス
  第七ニ御伺ヲ致シタイコトハ、自治體ノ
  經濟化、自治權ノ强化、所謂地方分權ノ實
  現ニ關スル問題デアリマス、現在ノ自治
  體、殊ニ町村ハ行政ノ主體タル地位ノミニ
  固著ヲ致シテ居リマシテ、町村ノ事務ハ殆
  ド形式的ノモノガ多イ、殊ニ近年法令ガ發
  布サレルニ從ッテ、町村ニ委任セラルヽ事務
  ガ非常ニ多クシテ、殆ド固有ノ事務ヲ行フ
  所ノ餘裕ハナイノデアリマス、且ツ地方民
  ノ經濟又ハ產業ニ關係ノアリ、地方民ノ福
  社ヲ增進スル鍵トモ云フベキ各種ノ團體ト、
  町村ノ役場トガ分立シテ、オ互ニ抗爭ヲス
  ルヤウナ仕組ニ相成ッテ居ル、其狀況ハ最近
  ノ米ノ問題、或ハ繭ノ問題、其他各種ノ問題
  ニ付テ現レテ來テ居ル、斯ノ如クニ町村ノ事
  務ガ殆ド全ク委任事務デアリ、而モ町村ノ
  行政ト云フモノガ、唯形式的ノ行政デアッ
  テ、地方民ノ經濟或ハ地方民ノ產業ト全ク
  遊離シテ居ルト云フ所ニ、今日地方團體ノ
  所謂地方自治ノ成績ノ擧ラザル所ノ根本ノ
  原因ガアルト思フノデアリマス(拍手)斯ノ
  如キ現狀ニ於キマシテハ、到底地方自治ヲ
  健全ニ發達セシムルコトハ出來ナイ、遂ニ
  ハ貧弱町村ニ於テハ、町村ノ自治ヲ返還シヨ
  ウト云フヤウナモノガ出來テ來テ居ルノデ
  アリマス、隨テ此際ニ於テ、所謂經濟ノ地方
  分權ト申シマスカ、工業ノ田園化、或ハ自治
  體ノ產業化ト云フコトヲ圖ッテ、政治ト經濟
  トヲ密接ニ關係セシメテ、サウシテ此最近
  動モスレバ都會ニ集中シツヽアル所ノ人物、
  富、及仕事ヲ地方ニモ分散ヲ致シ、還元ヲ
  シテ、サウシテ地方團體ガ行政的ニモ、政
  治的ニモ、或ハ又經濟的ニモ健全ニ自治ヲ
  シ遂ゲルコトノ出來ルヤウニ、根本的ニ地
  方制度ノ改正ヲスルコトガ、最モ必要デア
  ラウト思フノデアリマス、是ガ爲ニハ固ヨ
  リ產業、或ハ交通、〓育、衞生、警察、社
  會ノ各種ノ行政ニ付テノ地方分權ト云フコ
  トガ必要デアラウト思ヒマス、併シ玆ニ私
  ガ地方分權ト云フコトヲ申シマスルノハ、
  徒ニ昔ノ封建制度ニ還レ、或ハ國家ノ統制
  アル統治ニ對シテ反抗スルガ爲ニ地方分權
  ヲ申スノデハアリマセヌ、今日地方團體ト
  云フモノハ、是ハ資本主義經濟ノ今日ノ制
  度ノ下ニ於キマシテハ、必要的ノ、又已ム
  ヲ得ズシテ起ッテ來ル所ノ一ツノ消費團體
  ニナッテ居ル、此資本主義經濟ノ下ニ於テ、
  必要的消費團體トナッテ居ル所ノ、此地方團
  體ノ特殊使命ニ鑑ミテ、サウシテ其必要的
  手段トシテ地方分權ヲスル、斯樣ナ趣旨ニ
  於テ私ハ地方分權ヲ主張致シタイノデアリ
  マス、卽チ地方自治團體ト云フモノガ、各〓
  地方的ノ事情ニ卽シテ、地方的ノ創意ヲ
  發揮スルト云フコトニ依ッテ、ヨリ健全ナル
  所ノ發達ヲ遂ゲルコトガ出來ヨウト私ハ考
  ハト其必要的手段トシテノ地方分權ヲ致
  シタイト云フコトヲ主張スルノデアリマ
  ス、又近年度々起ッテ參リマス所ノ各種ノ疑
  獄事件、ソレ等ニ現ハレマスル所謂政治ノ
  利權化ヲ防止スルガ爲ニハ、中央政府ノ必要
  以上ノ地方政治ニ對スル所ノ干渉ヲ止メ
  テ、サウシテ地方ヲシテ各〓其創意ヲ十分ニ
  發揮セシメルヤウナ制度ニ改メルト云フコ
  トノ必要ガアラウト思フノデアリマス、斯
  樣ナ意味ニ於キマシテ自治權ヲ强化シ、經
  濟及政治ノ地方分權ヲ實現スルヤウニ、地
  方制度及其他之ニ關聯スル各種ノ官制等ノ
  一大改革ヲ圖ルコトガ、今日ノ行詰ッテ居ル
  地方ヲ更生シ、國家ノ權力ヲ强化スル所以
  デアルト思フノデアリマスガ、此點ニ付テ特
  ニ岡田內閣總理大臣、竝ニ後藤內務大臣ノ御
  所見ヲ承リタイノデアリマス、尙ホ之ニ關聯
  ヲ致シマシテ第八トシテ御伺致シタイコト
  ハ、政治〓育、殊ニ公民〓育ニ對スル政府
  ノ御所見如何ト云フコトデアリマス
  之ヲ要スルニ今囘御提案ニナリマシタ法
  案ニ付キマシテハ、其內容ヲ一々點檢ヲシ、
  只今後藤內務大臣ノ御說明ニ依ッテ之ヲ
  審議致シマスルノニ、或ハ租稅滯納處分中
  ノ者ニ付テ公民權ヲ停止スルノ規定、或ハ
  參事會ノ權限擴張ニ關スル改正等、地方自
  治ノ實績ニ徵シ改善トナルベキ幾多ノ規定
  ヲ含ンデ居ルコトハ、吾々モ大ニ之ヲ歡迎
  スルノデアリマスルガ、併シ多クハ昨年行
  ハレマシタ所ノ衆議院議員選擧法改正法律
  ヲ、其儘地方議會ノ選擧制度ニ採リ入レ
  ヨウトシテ居ルノデアッテ、何等只今私ガ申
  上ゲマシタヤウナ根本ノ問題ニ觸レテ居ラ
  メト云フコトハ、遺憾千萬ニ考ヘルノデア
  リマス、要スルニ地方制度ノ改革ハ、單ニ
  行政ヲ整理シ、或ハ其機能ヲ發揮スル爲ノ
  根幹トナルバカリデハナクシテ、今日ノ有
  ユル行政上ノ弊害ヲ救濟スル所ノ根本デア
  リマス、農村救濟ノ如キモ、蓋シ地方制度
  ノ改革ヲ爲スニ非ザレバ、如何ナル施設ヲ
  致シマシテモ、其效果ヲ全ウスルコトハ出
  來ナイト思フ、而シテ地方制度ノ改革ハ、
  地方ヲシテ自治體トシテノ機能ヲ十分ニ發
  揮セシムルヤウニ、經濟的ニ政治的ニ地方
  分權ノ精神ヲ徹底シ、自治權ノ擴充ト其自
  治權ノ强化ヲ徹底スルニ非サレバ、其目的
  ヲ達成シ得ナイト思フノデアリマス、且ツ
  地方自治體ノ健全ナル發達ガナケレバ、立
  憲政治ノ美果ヲ收ムルト云フコトニハ行カ
  ナイ、岡田内閣總理大臣ハ其十大政綱ニモ
  聲明シ、其後口ヲ開ケバ立憲政治ヲ唱ヘ、
  又民意ノ暢達ト云フコトヲ申サレテ居ルノ
  デアリマスルガ、玆ニ思ヲ致シ、サウシテ
  十分愼重ニ此制度ノ改正案ヲ立ツルニ非ザ
  レバ、如何ニシテ民意ノ仲達ヲ圖ルノデア
  ルカ、如何ニ立憲政治ヲロニシ、或ハ民意
  ノ暢達ト云フコトヲ申シマシテモ、其實際
  ノ效果ヲ擧ゲルコトハ出來ナイト思フノデ
  アリマス、仍テ私ハ以上ノ八ツノ問題ニ付
  キマシテ、其根本的ノモノニ付テハ岡田内
  閣總理大臣、其他ニ付キマシテハ內務大臣、
  殊ニ嚴罰主義ノ採用、檢察制度ノ改善ニ關
  スル問題ニ付キマシテハ、司法大臣ノ御所
  見ヲ承リタイト思フノデアリマス
  〔國務大臣岡田啓介君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006713242X02019350228&spkNum=29

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• 030・岡田啓介

  ○國務大臣(岡田啓介君)　船田君ニ御答致
  シマス、現內閣ハ組閣ノ當初ニ當リマシテ、
  十大政綱ヲ聲明致シマシタ、其中ノ一節ニ
  「中央地方ノ行政ニ及ホセル各種ノ情弊ヲ
  矯メ人心ノ緊張ヲ促シ」ト申シテ置イタノ
  デアリマス、各種ノ情弊ヲ矯メマスニハ、
  國民全體ノ協力ヲ得ナケレバナラヌノデア
  リマシテ、是ガ爲ニハ人心ノ緊張ヲ促スコ
  トハ必要ナコトヽ考ヘルノデアリマス、サ
  ウシマシテ各種自治國體ノ健全ナル發達ヲ
  促スニアルト思フノデアリマス、ソレニハ
  窮乏町村ノ經濟更生ヲ圖ルコトガ急務デア
  ルト考ヘテ居リマス、是等國家ノ根本對策
  ニ對シマシテ愼重ニ審議スル爲ニ、追テ內
  閣ニ内閣審議會ヲ設ケル考デ居リマス、此
  處ニ諮問シマシテ、成ベク速ニ其結論ヲ得
  ルコトニ努メタイト考へテ居リマス(拍手)
  〔國務大臣後藤文夫君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006713242X02019350228&spkNum=30

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• 031・後藤文夫

  ○國務大臣(後藤文夫君)　只今船田君カラ
  地方制度ノ問題ニ關シテ、數點ニ亙ッテ御所
  見ト共ニ御尋ガアリマシタ、順次ニ一通リ
  御答ヲ申上ゲタイト存ジマス、最初ニ今囘ノ
  地方制度ノ改正ハ、專ラ昨年ノ衆議院議員選
  擧法ノ改正ニ伴ッテ行ッテ居ルコトガ多イノ
  デアル、就テハ是ハ地方制度ノ根本的ノ改
  革ト云フコトニハ、少シモ觸レテ居ラヌノ
  デハナイカト云フ點ト、ソレカラ地方制度
  ノヤリ方ヲ、常ニ衆議院議員選擧法ノ改正
  ニ伴ハシムルト云フコトガ宜イノデアルカ
  ドウカト云フ點ニ觸レテノ御尋デアッタト
  思ヒマス、今囘ノ改正ハ、大體御話ノ通リ
  ノ改正デアリマス、大キナ根本ニ觸レタ改
  正デハゴザイマセヌ、是マデ衆議院議員選
  擧法ノ建前、地方制度ニ於ケル選擧ノ建前
  ト大體同ジニナッテ居リマス、隨テ是ガ選擧
  ノ徑路ニ關シマスルコト、其他大體規定ヲ
  同ウシテ參ッテ居ルノデアリマス、今日ノ
  制度ニ於キマシテハ、成ベク同ジヤウナ形
  デ出來テ居リマス議會ノコトデアリマスル
  カラ、其選擧ノヤリ方、又之ニ關スル處罰
  ノ規定、各種ノ運動ニ關スル取締ノ規定ト
  云フヤウナモノモ、殆ド揆ヲ一ニ致シテ居
  リマセヌト云フト、洵ニ複雜ナ、混亂ヲ來
  スト云フヤウナ虞ガアリマシテ、同ジヤウ
  ナ形ノ議會デアリマスルシ、同ジヤウナ大
  體選擧民ニ依ッテ選擧サレルト云フコトニ
  ナリマスルカラ、規定ヲ常ニ同クシテ參ル
  ト云フコトガ、在來ヤッテ參リマシタ行方
  デアリマス、今囘ノ場合ニ於キマシテモ、
  選擧權ノコト、議會ノ建前等、大體揆ヲ同
  ウシテ居リマスルノデ、ソレ等ノ點ニ付テ
  ハ同樣ニ改正ヲ致スコトガ適當デアルト考
  ヘタノデアリマス、併シ飜ッテ根本ニ遡ッテ、
  地方議會ト云フモノヲドウ云フ風ニ考ヘタ
  ラ宜シイカ、或ハ府縣ノ議會ト町村ノ議會
  トハ、又別個ナ考ヲシテモ宜イノデハナイ
  カト云フヤウナ點ニ想ヒ到リマスルト云フ
  ト、色々私攻究スベキ問題ガアルト存ジマ
  スルケレドモ、是ハ中々一朝一夕ニ改革ヲ
  企テル譯ニハ參リ兼ネルモノデアリマス、
  今日ノ場合ニ於キマシテハ、大體制度ノ建
  前ヲ、衆議院議員選擧法ノ改正ニ做ッテ參
  ルト云フヤウニ致スコトガ適當デアルト考
  ヘテ居リマス、處罰規定其他ノ取締ノ事ニ
  付キマシテモ、大體揆ヲ一ニスルノデアリマ
  セヌケレバ、是ハ非常ナル不便ヲ生ズルコト
  デアルト思ヒマス、更ニ遡ッテ地方議會ノ改
  革ニ付テ、職能代表、或ハ又級別選擧ノ如
  キモノニ付テハドウ考ヘルカ、是ハ重大ナ問
  題デアリマス、職能代表ノヤウナ制度ヲ、
  今日ノ議會制度ニ考ヘヨウトシマスレバ、
  可ナリ困難ナ問題ガアリマスルシ、ソレガ
  果シテ我國ノ國情ニ適應シマスカドウカ、
  又適應スルトシマシテモ、ドウスレバ本當
  ニ適切ナ制度ニナルカ、是ハ議會制度ニ關
  スル根本ノ大キナ問題デアリマス、今遽ニ
  私ガ簡單ナ結論ニ付テノ所見ヲ申上ゲ兼ネ
  ルノデアリマス、級別選擧等ニ於キマシテ
  ハ町村會ノ選擧ニ付テ、今日大分サウ云
  フ議論ヲ聞クノデアリマス、併ナガラ一度
  今日ノヤウナ一般的ノ選擧ニ致シマシタ後
  ニ、再ビ元ノヤウニ、租稅ニ因ル級別選擧
  ト云フヤウナモノヲ復活スルト云フコト
  ハ、極メテ困難ナ事デアルト思ヒマス、デ
  此地方制度ノ改革ノコトニ付テハ、後段ニ
  モ御尋ガアリマシタノデ、更ニ後程少シバ
  カリ申上ゲタイト思ヒマス、ソレカラ執行
  機關ノ選任ノ事、及市町村等ノ長、助役以
  下公吏ノ待遇ノ問題ニ付テ御尋ガアリマシ
  ク、執行機關ノ選任ハ、只今ハ市町村會ノ
  選擧ニナッテ居リマス、ソレガ爲ニ市町村會
  ト市町村長ト云フヤウナ者ガ一緒ニナッテ、
  色々面白クナイ事ガアルノデハナイカ、ソ
  レニ執行機關ガ引摺ラレルノデハナイカト
  云フヤウナ御懸念カラノ御尋ガアリマシタ、
  或ハ之ヲ一般ノ公民ノ選擧ニ變ヘルトカ、
  或ハ他ノ選任方法ヲ設ケルトカ云フヤウナ
  コトニ付テノ、何カ考ガナイカト云フコトデ
  アリマス、是モ今日矢張論ジラレテ居ル問題
  デアリマス、併ナガラ是ナドハ地方制度ノ
  改正ノ中デハ、餘程大キナ問題トシテ十分
  ナ考慮ヲ費サナケレバナラヌ事デアリマス、
  現在ノ制度ガ總テノ場合運用宜シキヲ得レ
  バ、必シモ弊害ノミガアルトハ申セナイ場
  合モ尠クナイノデアリマス、併シ是等ノ點
  ニ付テハ、尙ホ篤ト攻究ヲ重ネテハ見タイ
  ト考ヘテ居リマス
  又市町村長以下公吏ノ待遇ノ問題デアリ
  マス、是ハ今日ノ市町村ノ公吏ガ、隨分劇
  シイ仕事ニ從事シテ、第一線ニ立ッテ民生ノ
  福利、安寧ノ增進ニ努力ヲ致シテ居リマス
  ル實情ヲ見マスレバ、洵ニ氣ノ毒ナ感ガア
  ルノデアリマス、併ナガラ是等ノ待遇改善
  ノ問題ハ、自治體ノ財政ノ關係、其他全般
  ニ餘程大キナ關聯ヲ持チマスノデ、是等ノ
  點ト併セテ是ハ考慮サレル問題トナルコト
  ト思ヒマス、尙ホ各種ノ精神的待遇其他ノ
  事ニ付テモ、出來ル限リ是ガ改善ヲ圖リタ
  イト考ヘテ居リマス、一例トシテ敍勳年限
  等ノ事モ御話ガアリマシタガ、是等ノ事ニ
  付テモ、只今折角攻究ヲ進メテ參ッテ居ル
  ヤウナ譯デアリマス、デ市町村公吏ニ、色々
  ナ點ニ於テ國家的待遇ヲ考ヘ、又是ガ監
  督指導ト云フヤウナ事ヲモ考ヘテ參リマス
  コトハ、私ハ必要デアルト思ッテ居リマス、
  併ナガラ又自治體ト云フモノヽ本質ニ顧ミ
  マシテ、之ヲ全ク官吏ト同ジヤウナ風ニ近
  ヅケテ來ルト云フコトハ、必シモ適當ナ事
  デハナイヤウニモ考ヘルノデアリマス、官
  吏トノ比較ニ付テノ色々ナ御話ガアリマシ
  タガ、今日官吏ノ待遇ト雖モ、決シテ非常
  ニ有リ餘ルト云フヤウナ、潤澤ナ待遇ハサ
  レテ居ル譯デモアリマセヌ、隨テ公吏ノ待
  遇等ニ付キマシテモ、尙ホ一般ニ力ノ及バ
  ナイ點ガアルノデアリマス、是等ノ點ニ付
  キマシテハ、矢張中央地方ノ色々ナ財政其
  他ノ關係、竝ニ各般ノ施設ノ改善ト相俟チ
  マシテ、是ガ改善ヲ圖ッテ參ラナケレバナラ
  ヌト考ヘテ居リマス、尙ホ次ニ知事公選等
  ノ問題、地方團體ノ執行機關制度等ニ付テノ
  御話ガアリマシタ、是ハ年來議論ノアル所デ
  アリマスルガ、私ハ今日ノ地方團體ノ組織、
  府縣ノ組織ニ於キマシテハ、此儘デ知事ノ
  公選ト云フ事ヲ考ヘルコトハ、適當デナイ
  ヤウニ思ッテ居リマス、唯御話ノアリマシタ
  ヤウニ、地方ノ自治行政竝ニ地方的ノ國家
  行政ト云フモノヲ全般的ニ考ヘテ、大キナ
  改革ヲ玆ニ想像シテ見マスレバ、地方ノ町
  村ト云フ團體以上ノ大キナ團體ニ付テ、或
  ハ公選ノ執行機關ガ置カレルト云フヤウナ
  制度モ考ヘラレナイデハナイト思ヒマスケ
  レドモ、是ハ少シ大キナ根本的ノ問題ニ亙
  ルコトヽ考ヘマス、經濟部ノ設置等ニ付テ
  一寸御話ガアリマシタケレドモ、是ハ屢〓御
  答致シテ居リマスノデ、唯簡單ニ申上ゲマ
  スルガ、此制度ヲ設ケタコトニ付テ、果シテ
  運用ノ效果如何ト云フコトニ御疑念ガアル
  ヤウデアリマスケレドモ、私ハ之ニ依ッテ地
  方行政ノ上ニ相當ナ刷新ヲ致シ、活躍ヲ求
  メルコトガ出來ルコトニナルデアラウト考
  ヘテ居リマス、又左樣致サセタイ積リデ居
  ルノデアリマス、次ニ町村ノ合併ニ關スル
  方針ニ付テ御尋ガゴザイマシタ、大體町村
  ガ餘リ小サ過ギテ、一財政團體トシテ存在
  スルノニ不都合ノアルヤウナモノガ多クハ
  ナイカ、一財政單位トシテ適スルヤ否ヤト
  云フコトヲ標準ニシテ、町村ノ合併ヲ行フ
  ト云フヤウナコトガ考ヘラレル事デハナイ
  カト云フヤウナ事ニ付テノ御尋デアリマス、
  私ハ町村ト云フ自治體ハ、矢張一ツノ隣保
  共助ノ考ガ全體ヲ貫ク有機的ナ團體デナケ
  レバナラヌト思ヒマス、隨テ不自然ニ、唯
  一ツノ財政上ノ關係其他ト云フヤウナ、外
  形的ノ一ツノ標準カラノミ、是ガ分合ヲ强
  ヒルト云フコトハ、出來上ック自治體其モノ
  ガ本當ノ自治體トシテ、融和シタ活動ノシ
  ニクイモノガ出來ルコトガアルト思ヒマス、
  又サウ云フ事例モ今日マデ屢〓アッタノデア
  リマス、隨テ町村ノ心持ガ一致ヲシテ、分合
  ヲ喜ブト云フコトデ、而モ其結果トシテ財
  政的ニモ工合ガ良クナルト云フヤウナ所ニ
  付キマシテ、合併ヲ慫慂シテ進メテ行カシ
  テ宜シイト思ヒマスガ、唯一律ノ方針ヲ以テ、
  一ツノ標準ニ依ッテ合併ヲサセタヤウナ時代
  モ、過去ハアリマシタケレドモ、隋分却テ
  紛亂ヲ殘シタヤウナコトモアリマスノデ、
  是ハソレ〓〓地方ノ實情ニ應ジテ、適切ニ
  此併合問題ヲ指導シテ參ルコトガ、役所ノ
  立場トシテモ宜シイ、又地方ノ人達ノ考ト
  シテモ、左樣ナ考方デ眞ニ融和シタ町村ヲ
  造ルト云フ意味デノ併合ナラバ、洵ニ結構
  デアラウト考ヘテ居ルノデアリマス、次ニ
  部落ノ公認ト云フヤウナコトヲ考ヘナイカ
  ト云フ御話デアリマス、今日ノ町村ヲ見マス
  ルト、本當ノ融合シタ隣保共助ノ有機的自
  治體ト云フ實ガ中々擧リ兼ネル、然ルニ部
  落ハ洵ニ自然ノ隣保共助ノ團體ノ形ヲ成シ
  テ居リ、其實モ可ナリ今日具ッテ居ル、斯ウ
  云フモノヲ何カ制度トシテ考ヘル必要ハナ
  イカ、是ハ私モ私見ト致シマシテハ、洵
  左樣デハナイカト考ヘテ居リマス、斯ウ云
  フコトヲ考ヘテ、サウシテ今度町村ノ廢
  〓、或ハ町村ノ今日ノ大キサニ付テノ標準
  ト云フヤウナモノヲ考ヘマスルト、玆ニ又
  面白イ考方ガ出來得ルノヂヤナイカトモ思
  フノデアリマス、併シ是ハ町村ノ制度ノ可
  ナリ根本ニ亙ル改革ニナリマスノデ、私ハ
  是等ノ點モ篤ト考究ヲ致シテ見タイト考ヘ
  テ居ル所デアリマス
  次ニ大都市制度ノコトニ付テ、殊ニ東京
  ノ都制ニ付テ、ドウ云フ考デアルカト云フ
  御尋デアリマス、昨年都制案ノ提案セラレ
  マシタ際ニハ、私モ關係ヲ持ッテ居リマシタ
  ガ、更ニ直接ノ主管ノ責任者トシテ都制案
  ノコトヲ考ヘテ見マスル時分ニ、是マデ提案
  サレマシタヤウナ都制案ニ付キマシテモ、
  私色々マダ考慮シテ見タイ點ガ少クナイノ
  デアリマス、何分ニモ東京ハ東京市民ノ東
  京デアリマスルト同時ニ、帝國ノ政治、文
  化、經濟ノ中心デアリマス、所謂帝都デア
  リマス、隨テ此東京都制ト云フモノハ、餘
  程大キナ見地カラ考ヘテ、立派ナ制度ヲ樹
  テナケレバナラヌトm心フノデアリマス、今
  日尙ホ私ハ〓究ヲ致シテ居ル最中デアリマ
  ス、今期議會ニ提案ヲスルコトガ出來ルカ
  ト云フコトデアリマスレバ、只今ノ所デハ
  其見込ガ少イト申上ゲル外ハナイノデゴザ
  イマス
  ソレカラ次ニ地方團體ノ現狀ヲ改メ、地
  方分權ノ實ヲ擧ゲル爲ニ、色々ナコトヲ考
  ヘテ見ナケレバナラナイノデハナイカ、殊
  ニ經濟生活ト地方團體トガ遊離シテ行クト
  云フヤウナ形デハ、本當ニ地方自治體ノ實
  ヲ擧ゲルコトガ出來ニクイノデハナイカ、
  是モ私ハ御說ハ洵ニ同感デアリマス、殊ニ
  最近經濟生活ガ複雜トナリ、又各方面トノ
  連繫モ非常ニ有機的ニ密接トナッテ參リマ
  シタ時代ニ於キマシテ、地方團體ノ仕事
  ガ、唯上級官廳等カラノ委任事務、其他ノ
  法令ニ依ル仕事以外ニ、實際ノ民衆ノ生活ニ
  卽シタ所ノ各種ノ事柄ニ、其機能ガ發揮サレ
  ルト云フコトニナラナケレバ、本當ノ自治
  體トシテノ働ガ出來ナイノデハナイカト云
  フ風ニ私モ考ヘマス、然ラバ斯ウ云フ關係
  ヲ地方ノ制度トシテ、ドウ云フ風ニ織込ン
  デ考ヘルカト云フコトガ、今後ノ地方制度
  ノ改革ニ與ヘラレタ大キナ問題ダト私ハ思
  ヒマス、併ナガラ實際問題トシテ考ヘテ見
  マスト、是ハ實ニ澤山ナ複雜ナ關係ヲ有ッテ
  居リマス、今日經濟上ノ各種ノ團體ガ、地
  方ニモズット網ヲ張ッテ存在シテ居ルノデア
  リマス、ソレト地方團體トハ各、重ッテ存在
  ヲシテ居ルノデアリマシテ、之ヲ直チニ解
  消ヲシテ、一箇ノ有機的ナ地方團體ヲ造ル
  ト云フコトハ、中々容易ナコトデハナイト
  思ヒマスルシ、又ソレガ總テノ場合ニ全部
  適當デアルカドウカト云フコトニ付テモ、
  餘程疑問モアルト思ヒマス、唯地方團體ノ
  制度ノ將來ノ改革ト云フコトヲ考ヘマス時
  二、此經濟生活トノ密接ナ關聯ヲ考慮シテ
  行カナケレバナラヌト云フコトハ、私モ同
  樣ニ考ヘルノデアリマス、大體以上ヲ以テ
  御答辯ト致シマス
  〔國務大臣小原直君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006713242X02019350228&spkNum=31

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• 032・小原直

  ○國務大臣(小原直君)　船田君ノ御質問ニ
  御答申シマス、各種ノ選擧ノ情弊ヲ除キマ
  シテ、政治ノ淨化ヲ圖リマスコトハ、何レ
  ノ時ニ於テモ必要ノコトデアリマスルガ、
  現政府ハ組閣ノ當初ニ於キマシテ、特ニ此
  點ノ必要ヲ痛感シテ、其聲明ヲシテ居ルノ
  デアリマス、併ナガラ現今我國ニ於ケル各
  種ノ選擧ノ弊害ハ、船田君モ御述ニナリ
  マシタルガ如ク、中々容易ニ之ヲ除去ス
  ルコトハ困難ナノデアリマス、前內閣ニ
  於キマシテ衆議院議員選擧法ノ改正ヲ企テ
  テ、其實現ヲ見マシタコトモ、全ク此選擧
  革正ノ目的ニ出タノデアリマス、併ナガラ
  獨リ法律ヲ改正シ、殊ニ罰則ヲ嚴重ニシ、
  或ハ連坐ノ規定ヲ設ケルコト等ニ依リマシ
  テ、其目的ヲ達シ得ルトハ考ヘラレナイノ
  デアリマス、寧ロ根本的ニ國民〓育ノ時カ
  ラ選擧ノ貴重ナル所以、其嚴肅ナルコトヲ
  〓ヘマシテ、或ハ社會〓育ニ於テ、公民〓
  育ニ於テ選擧ノ大切ナルコトヽ、其弊害ノ
  恐ルベキコトヲ示シテ、順次其肅正ヲ企テ
  テ行クヨリ外ニ方法ガナイト考ヘテ居ルノ
  デアリマス、殊ニ今日ノ情勢ニ於キマシテ
  ハ、選擧違反ハ何時ノ時ニ於テモ非常ニ多
  數ニ發生致シマスルノデ、我ガ檢察機關ノ
  手薄ノ狀態ニ於キマシテハ、到底之ニ應接
  スルノ遑ガナイ位デアリマス、併ナガラ恆
  久ノ策ニ依ッテノミ選擧ノ弊害ヲ除カウト
  致シマシテモ、其結果ノ現レルノハ遠イコ
  トデアリマスカラ、差當リ先ヅ選擧法ノ改
  正等ニ依リマシテ、惡質ノ犯罪ニ對スル罰
  則ヲ重クシテ、ソレ等ノ弊害ヲ除クト云フ
  コトモ、亦一ツノ策デアルト云フコトヲ考
  ヘテ居ルノデアリマス、併シ先程モ申シマ
  スルヤウニ、今日ノ檢察ノ手薄ナル狀態ニ於
  キマシテハ、到底檢擧ニ應ジ切レテ、檢擧ニ
  依ッテ犯罪ヲ無クスルト云フヤウナコトハ望
  マレナイノデアリマス、何レ來ルベキ秋ノ府
  縣會議員ノ總選擧等ニ於キマシテモ、先以
  テ司法部ト致シマシテハ、犯罪者ヲ罰スル
  ヨリハ、犯罪ヲ未然ニ防グト云フコトニ努
  メナケレバナラヌト考へテ居リマス、此故
  ニ何レ選擧ノ告示等ガアリマシタ際ニハ、
  內務當局ト協議ヲ致シマシテ、檢察ノ總動
  員ヲ致シタ上ニ、各地ニ檢事ヲ出張致サセ
  マシテ、選擧ノ尊ブベキ所以、其犯罪ノ恐
  ルベキ所以ヲ示シテ、之ニ依ッテ成ベク選擧
  違反ヲ生ゼシメナイヤウニ努メタイト考へ
  テ居ルノデアリマス、併ナガラ是等ニ依ッテ、
  中々急速ニ選舉違反ヲ防止シ、選擧ノ弊害
  ヲ除去スルト云フコトハ困難ナノデアリマ
  シテ、國民ノ上下一致、此弊害ヲ救フコト
  ニ努力スルコトニ依ッテノミ、其目的ヲ達ス
  ルコトヽ考ヘテ居ル次第デアリマス、之ヲ
  以テ御答ト致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006713242X02019350228&spkNum=32

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• 033・船田中

  ○船田中君　簡單デアリマスカラ、此席カ
  ラ御許シヲ願ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006713242X02019350228&spkNum=33

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• 034・濱田國松

  ○議長(濱田國松君)　許可致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006713242X02019350228&spkNum=34

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• 035・船田中

  ○船田中君　只今岡田内閣總理大臣、後藤
  內務大臣、竝ニ小原司法大臣ヨリソレ/
  御答辯ガアリマシタ、大體ニ於テ私ノ只今
  申上ゲタコトヲ、肯定セラレルト云フ御辯
  明ダケガアッタノデアリマシテ、ソレヲ政策
  ノ上ニ現スト云フコトニ付テハ、殆ド何等
  責任ヲ有ッタ御答ハゴザイマセヌ、私ハ只今
  ノ御答辯ニ滿足スルモノデハアリマセヌガ、
  詳細ハ總テ委員會ニ於テ御伺スルコトニ致
  シマシテ、私ノ質問ヲ打切リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006713242X02019350228&spkNum=35

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• 036・濱田國松

  ○議長(濱田國松君)　各案ノ審査ヲ付託ス
  ベキ委員ノ選擧ニ付テ御諮リヲ致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006713242X02019350228&spkNum=36

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• 037・青木雷三郎

  ○青木雷三郞君　日程第二乃至第五ノ四案
  ヲ一括シテ、議長指名十八名ノ委員ニ付託
  セラレンコトヲ望ミマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006713242X02019350228&spkNum=37

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• 038・濱田國松

  ○議長(濱田國松君)　靑木君ノ動議ニ御異
  議アリマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006713242X02019350228&spkNum=38

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• 039・濱田國松

  ○議長(濱田國松君)　御異議ナシト認メマ
  ス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ-日程第
  六乃至第八ハ關聯セル議案ナルニ依リ、
  括議題トナスニ御異議アリマセヌカ
  (「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006713242X02019350228&spkNum=39

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• 040・濱田國松

  ○議長(濱田國松君)　御異議ナシト認メマ
  ス、仍テ日程第六、產繭處理統制法案、日
  程第七、蠶絲業組合法中改正法律案、日程
  第八、蠶絲業法中改正法律案、以上三件ヲ
  一括シテ第一讀會ヲ開キマス-農林大臣
  山崎達之輔君
  第六產繭處理統制法案(政府提出)
  第一讀會
  第七〓絲業組合法中改正法律案(政
  府提出)第一讀會
  第八蠶絲業法中改正法律案(政府提
  〓第一讀會
  產繭處理統制法案
  產繭處理統制法
  第一條養蠶者ノ繭ノ處理ハ命令ノ定ム
  ル所ニ依リ左ニ揭グル方法ニ依ルコト
  ヲ要スルモノトス
  一乾繭ニ依ル賣買取引(乾繭取引)
  二收繭前爲シタル契約ニ基キテ行フ
  生繭ノ賣買取引(特約取引)
  三產業組合又ハ產業組合聯合會ニ依
  リ行フ製絲加工(組合製絲)
  四前各號ニ揭グルモノノ外勅令ヲ以
  テ定ムル方法
  地方特別ノ狀況其ノ他特別ノ事由ニ因
  リ前項ニ揭グル方法ニ依リ難キモノニ
  付テハ命令ヲ以テ別段ノ定ヲ爲スコト
  ヲ得
  第二條道府縣ハ命令ノ定ムル所ニ依リ
  繭ノ品位ニ付檢定ヲ行フベシ
  前項ノ規定ニ依ル繭ノ檢定ニ關シ必要
  ナル費用ハ道府縣ノ負擔トス但シ國庫
  ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ豫算ノ範圍內
  ニ於テ道府縣ニ對シ其ノ檢定施設ニ要
  スル經費ノ二分ノ一以內ヲ補助スルコ
  トヲ得
  第三條繭ノ賣買取引其ノ他命令ヲ以テ
  規定スル繭ノ處理ハ前條ノ檢定ニ依ル
  品位ニ依ルニ非ザレバ之ヲ爲スコトヲ
  得ズ但シ命令ヲ以テ規定スル場合ハ此
  ノ限ニ在ラズ
  第四條特約取引ヲ爲サントスル者ハ行
  政官廳ノ認可ヲ受クベシ
  前項ノ認可ニ關シ必要ナル事項ハ命令
  ヲ以テ之ヲ定ム
  第五條繭處理ノ統制上特ニ必要アリト
  認ムルトキハ行政官廳ハ蠶絲業組合、
  繭ノ處理ヲ爲ス產業組合若ハ產業組合
  聯合會又ハ命令ヲ以テ規定スル組合ノ
  組合員又ハ所屬組合ニ對シ其ノ組合又
  ハ聯合會ノ行フ繭處理ニ關スル統制ニ
  從フベキコトヲ命ズルコトヲ得
  第六條左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ三
  百圓以下ノ罰金又ハ科料ニ處ス
  一第三條ノ規定ニ違反シタル者
  二第四條ノ認可ヲ受ケズシテ特約取
  引ノ契約ヲ爲シタル者
  第七條養蠶者、養蠶實行組合、繭ノ處
  理ヲ爲ス產業組合其ノ他ノ法人、繭ノ
  賣買若ハ取次ヲ業トスル者又ハ製絲業
  者ハ其ノ代理人、戶主、家族、同居者、
  雇人、其ノ他ノ從業者ガ本法又ハ本法
  ニ基キテ發スル命令ニ違反シタルトキ
  ハ自己ノ指揮ニ出デザルノ故ヲ以テ其
  ノ處罰ヲ免ルルコトヲ得ズ
  第八條本法又ハ本法ニ基キテ發スル命
  令ニ依リ適用スベキ罰則ハ其ノ者ガ法
  人ナルトキハ理事、取締役其ノ他ノ法
  人ノ業務ヲ執行スル役員ニ、未成年者
  又ハ禁治產者ナルトキハ其ノ法定代理
  人ニ之ヲ適用ス但シ營業ニ關シ成年者
  ト同一ノ能力ヲ有スル未成年者ニ付テ
  ハ此ノ限ニ在ラズ
  第九條第五條ノ規定ニ依ル行政官廳ノ
  命令ニ違反シタル者ハ百圓以下ノ過料
  三粒酸、
  非訟事件手續法第二百六條乃至第二百
  八條ノ規定ハ前項ノ過料ニ之ヲ準用ス
  第十條本法ノ規定ハ命令ヲ以テ定ムル
  繭ノ處理ニ付テハ之ヲ適用セズ
  附則
  本法施行ノ期日ハ各規定ニ付勅令ヲ以テ
  之ヲ定ム
  蠶絲業組合法中改正法律案
  蠶絲業組合法中左ノ通改正ス
  第十八條中「養蠶實行組合」ノ下ニ「及養
  蠶實行組合ノ組合員ニ非ザル養蠶者ニシ
  テ命令ヲ以テ規定スルモノ」ヲ加フ
  第十九條第三項ヲ左ノ如ク改ム
  養蠶實行組合ノ地區ハ部落其ノ他之ニ
  準ズル區域ニ依ル但シ特別ノ事由アル
  トキハ此ノ區域ニ依ラザルコトヲ得
  第二十二條ヲ削リ第二十一條ヲ第二十二
  條トシ同條第一項ヲ左ノ如ク改メ第二十
  條ヲ第二十一條トス
  養蠶實行組合ヲ設立セントスルトキハ
  其ノ地區內ノ養蠶者七人以上設立者ト
  爲リ規約ヲ作成シ行政官廳ノ認可ヲ受
  クバシ
  第二十條養蠶實行組合ハ其ノ目的ヲ達
  スル爲左ノ事業ヲ行フ
  一組合員ノ養蠶業ニ必要ナル物ノ共
  同購入、共同設備ノ設置其ノ他組合
  員ノ養蠶業ニ關スル共同施設
  二組合員ノ生產シタル繭ノ處理ニ關
  スル施設
  三組合員ノ養蠶業ノ統制ニ關スル施
  設
  四組合員ノ養蠶業ニ關スル共濟及備
  荒施設
  五組合員ノ養蠶業ニ關スル指導、〓
  究及調査
  六前各號ニ揭グルモノノ外組合ノ目
  的ヲ達スルニ必要ナル施設
  第二十三條第二項ヲ左ノ如ク改ム
  登記スベキ事項左ノ如シ
  一第二十二條第二項第一號乃至第四
  號及第十一號ニ揭グル事項
  二設立認可ノ年月日
  三理事及監事ノ氏名及住所
  第二十五條ノ二組合員タル資格ヲ有ス
  ル者養蠶實行組合ニ加入セントスルト
  キハ組合ハ正當ノ理由ナクシテ加入ニ
  困難ナル條件ヲ附シ又ハ其ノ加入ヲ拒
  ムコトヲ得ズ
  第二十五條ノ三養蠶實行組合ノ分合ニ
  關シ必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定
  ム
  第二十五條ノ四養蠶實行組合ハ左ノ事
  由ニ因リテ解散ス
  -規約ニ定メタル事由ノ發生
  二總會ノ決議
  三組合ノ合併
  四組合ノ分割
  五組合員ガ七人未滿ニ減ジタルトキ
  六組合ノ破產
  七行政官廳ノ處分
  第二十六條民法第三十八條、第四十四
  條第一項、第四十七條、第四十八條、
  第五十條、第五十一條、第五十二條第
  二項、第五十三條乃至第五十五條、第
  五十九條乃至第六十六條、第六十九條、
  第七十條及第七十二條乃至第八十二
  候、產業組合法第二十五條、第三十四
  條ノ二、第三十五條、第四十八條ノ二、
  第六十條第一項(〓算ニ關スル規定ヲ
  除ク)、第六十條ノ二、第六十一條清
  算ニ關スル規定ヲ除ク)、第六十五條
  (合併ニ關スル規定ヲ除ク)竝ニ非訟事
  件手續法第三十五條第二項、第三十六
  條、第三十七條ノ二、第百十七條、第
  百十九條乃至第百二十二條、第百三十
  六條乃至第百三十八條、第百四十二條、
  第百四十三條、第百四十七條乃至第百
  五十條ノ二、第百五十一條乃至第百五
  十一條ノ四、第百五十一條ノ六乃至第
  百五十七條及第百七十五條乃至第百七
  十七條ノ規定ハ養蠶實行組合ニ之ヲ準
  用ス但シ民法第四十八條及第七十七條
  中一週間トアルハ之ヲ一一週間トス
  第二十七條養蠶業組合ヲ設立セントス
  ルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ其ノ地
  區內ノ養蠶實行組合及養蠶實行組合ニ
  非ザル組合員タル資格ヲ有スル者ノ各
  ノ三分ノ二以上ノ同意ヲ得テ創立總會
  ヲ開キ定款ヲ議定シ役員ヲ選任シ收支
  豫算及經費ノ分賦收入方法ヲ議決シ行
  政官廳ノ認可ヲ受クベシ但シ其ノ地區
  內ノ養蠶者ノ過半數ガ養蠶實行組合ノ
  組合員タル場合ニ於テハ設立ノ同意ハ
  養蠶實行組合ノ三分ノ二以上ノ同意ヲ
  以テ足ル
  前項ノ創立總會ノ決議ニ關シ必要ナル
  事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
  第三十條第一項中「農會、產業組合又ハ
  產業組合聯合會」ヲ「法人」ニ改ム
  第三十一條第一項中「養蠶實行組合」ヲ
  「組合員タル資格ヲ有スル者」ニ改ム
  第三十二條第二項中「總組合員」ヲ「議員」
  ニ改メ同條ニ左ノ一項ヲ加フ
  養蠶業組合ノ議員ノ選任ニ關シ必要ナ
  ル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
  第三十四條第二項中「組合員ハ總組合員」
  ヲ「議員ハ總議員」ニ、同條第四項中「組
  合員」ヲ「議員」ニ改ム
  第三十六條第一項中「組合員」ヲ「議員」
  ニ、同條第二項中「養蠶實行組合ノ三分
  ノ二以上ノ同意」ヲ「組合員タル資格ヲ有
  スル者又ハ組合員ノ第二十七條第一項ノ
  規定ニ準ズル同意」ニ改ム
  第三十七條中「組合員」ヲ「議員」ニ改ム
  第三十八條第三項中「所屬ノ養蠶實行組
  合ノ組合員」ヲ「議員」ニ改ム
  第四十一條第一項第一號ヲ左ノ如ク改
  ム
  一本法ニ依ル報告若ハ屆出ヲ爲サズ
  又ハ檢査ヲ拒ミ其ノ他行政官廳ノ命
  令又ハ處分ニ從ハザルトキ
  第四十四條ノ二蠶種業組合ニ總會ヲ置
  ク
  總會ハ總組合員ヲ以テ之ヲ組織ス
  第四十四條ノ三蠶種業組合ハ命令及定
  款ノ定ムル所ニ依リ組合員ノ選擧シタ
  ル總代ヲ以テ組織スル總代會ヲ以テ總
  會ニ代フルコトヲ得
  總會ニ關スル規定ハ命令ニ別段ノ規定
  アル場合ヲ除クノ外總代會ニ之ヲ準用
  ス
  第四十五條中「第二十九條及第三十一條」
  ヲ「第三十一條及第三十三條」ニ改ム
  第五十一條中「及第三十一條乃至第四十
  條」ヲ「、第三十一條、第三十三條乃至第
  四十條及第四十四條ノ二」ニ改メ同條ニ
  左ノ一項ヲ加フ
  第三十條及第四十四條ノ三ノ規定ハ製
  絲業組合ニ之ヲ準用ス
  第五十六條中「及第三十一條乃至第四十
  條」ヲ「、第三十一條、第三十三條乃至第四
  十條及第四十四條ノ二」三六八
  第六十二條第三項中「產業組合製絲組合」
  ノイ·「及製絲ヲ爲シ又ハ製絲工場ヲ有
  スル產業組合又ハ產業組合聯合會ニシテ
  命令ヲ以テ規定スルモノ」ヲ加フ
  第六十五條第三項中「會員タル蠶絲業組
  合又ハ道府縣養蠶業組合聯合會」ヲ「會
  員三六人
  第六十八條ニ左ノ一項ヲ加フ
  第三十條ノ規定ハ第五十七條第一號及
  第二號ノ蠶絲業組合聯合會ニ之ヲ準用
  ス
  附則
  本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
  本法施行ノ際現ニ存スル養蠶實行組合ハ
  本法施行ノ日ヨリ之ヲ本法ニ依リ設立シ
  タルモノト看做ス但シ第三項ノ規定ニ依
  ル認可ヲ受クル迄ハ仍從前ノ規定ニ依
  ル
  前項ノ組合ハ本法施行ノ日ヨリ二年以內
  ニ命令ノ定ムル所ニ依リ行政官廳ノ認可
  ヲ受クベシ
  第二項ノ組合ハ前項ノ認可ヲ受ケタルト
  キハ二週間以內ニ主タル事務所ノ所在地
  ニ於テ其ノ認可ノ年月日、監事ノ氏名及
  住所竝ニ第二十二條第二項第三號及第十
  一號ニ揭グル事項ノ登記ヲ爲スベシ
  第二項ノ組合ニシテ第三項ノ期間內ニ同
  項ノ規定ニ依ル認可ヲ受ケザルモノハ其
  ノ期間滿了ノ日ニ於テ解散ス
  本法施行ノ際現ニ存スル養蠶業組合ハ本
  法施行ノ日ヨリ二年ヲ限リ其ノ構成者、
  總會及役員ニ關シ第十八條、第三十二條
  第二項第三項、第三十四條第二項第四項、
  第三十六條、第三十七條及第三十八條第
  三項ノ改正規定ニ依ラズ仍從前ノ規定ニ
  依ル但シ命令ノ定ムル所ニ依リ行政官廳
  ノ認可ヲ受ケタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
  前項ノ組合同項但書ノ規定ニ依ル認可ヲ
  受ケタルトキハ其ノ地區內ニ於ケル養蠶
  實行組合ニ非ザル組合員タル資格ヲ有ス
  ル者ハ當然其ノ組合員ト爲ル
  第六項ノ組合ニシテ同項ノ期間內ニ同項
  但書ノ規定ニ依ル認可ヲ受ケザルモノハ
  其ノ期間滿了ノ日ニ於テ解散ス
  產業組合法第十條ノ三ニ左ノ二項ヲ加フ
  農事實行組合ヲ設立スルニハ其ノ地區
  內ノ農業者七人以上設立者ト爲リ規約
  ヲ作成スルコトヲ要ス
  農事實行組合ハ其ノ設立ノ日ヨリ二週
  間內ニ規約、役員ノ氏名及住所竝ニ設
  立ノ年月日ヲ具シ行政官廳ニ之ヲ屆出
  ヅベシ屆出デタル事項ニ變更アリタル
  トキ亦同ジ
  產業組合法第十條ノ四ヲ左ノ如ク改ム
  第十條ノ四蠶絲業組合法第二十一條、
  第二十二條第二項、第二十三條乃至第
  二十五條、第二十六條及第四十一條、
  民法第四十四條第二項、第五十二條第
  一、1、第五十六條乃至第五十八條及第
  六十八條竝ニ非訟事件手續法第三十五
  條第一項ノ規定ハ農事實行組合ニ之ヲ
  準用ス但シ蠶絲業組合法第二十三條第
  二項第一號中第一號乃至第四號及第十
  一號トアルハ之ヲ第一號、第二號及第
  四號トシ同項第二號中設立認可トアル
  ハ之ヲ設立トシ同項第三號中理事及監
  事トアルハ之ヲ理事トシ同法第二十六
  條ノ規定ニ依リ準用スル民法第三十八
  條第二項及第四十七條、產業組合法竝
  ニ非訟事件手續法第百五十條ノ二ノ規
  定ヲ除ク
  蠶絲業法中改正法律案
  蠶絲業法中左ノ通改正ス
  第一條ニ左ノ一項ヲ加フ
  命令ヲ以テ規定スル蠶絲業者ノ團體ハ
  第二十九條乃至第三十四條ノ十ノ規定
  ノ適用ニ付テハ之ヲ蠶絲業者ト看做ス
  第二十九條蠶絲業者ハ其ノ蠶絲業ノ改
  良發達及統制ヲ圖ル爲共同ノ施設ヲ爲
  ス目的ヲ以テ命令ノ定ムル所ニ依リ蠶
  絲共同施設組合ヲ設立スルコトヲ得
  第三十條蠶絲共同施設組合ハ法人トス
  第三十一條蠶絲共同施設組合ハ左ノ事
  業ヲ行フ
  一組合員ノ生產若ハ製造又ハ取扱ニ
  係ル〓種、繭又ハ蠶絲類ノ加工若ハ
  販賣又ハ仲立
  二組合員ノ事業ニ必要ナル物ノ共同
  購入、共同設備ノ設置及資金ノ貸付
  三組合員ノ生產又ハ製造シタル〓絲
  類ノ檢査
  四組合員ノ事業ノ聯絡統制ニ關スル
  施設
  五組合員ノ事業ニ關スル指導、〓究
  及調査
  六前各號ニ揭グルモノノ外組合ノ目
  的ヲ達スルニ必要ナル施設
  第三十二條〓絲共同施設組合ノ組織ハ
  無限責任、有限責任及保證責任ノ三種
  トス
  無限責任ノ組合ニ在リテハ組合財產ヲ
  以テ其ノ債務ヲ完濟スルコト能ハザル
  場合ニ於テ組合員ノ全員ガ連帶無限ノ
  責任ヲ負擔シ有限責任ノ組合ニ在リテ
  ハ組合員ノ全員ガ其ノ出資額ヲ限度ト
  シテ責任ヲ負擔シ保證責任ノ組合ニ在
  リテハ組合財產ヲ以テ其ノ債務ヲ完濟
  スルコト能ハザル場合ニ於テ組合員ノ
  全員ガ其ノ出資額ノ外一定ノ金額保
  證金額)ヲ限度トシテ責任ヲ負擔ス
  第三十三條蠶絲共同施設組合ハ命令ノ
  定ムル所ニ依リ其ノ名稱中ニ蠶絲共同
  施設組合タルコトヲ示スベキ文字及組
  合ノ組織ヲ示スベキ文字ヲ用フベシ
  蠶絲共同施設組合ニ非ザルモノハ其ノ
  名稱中ニ蠶絲共同施設組合タルコトヲ
  示スベキ文字ヲ用フルコトヲ得ズ
  第三十四條本法ニ依リ登記スベキ事項
  ハ登記前ニ在リテハ之ヲ以テ第三者ニ
  對抗スルコトヲ得ズ
  第三十四條ノ二本法ニ依リ登記スベキ
  事項ハ其ノ事實ノ生ジタル後二週間以
  內ニ之ヲ發記スベシ
  登記スベキ事項ニシテ行政官廳ノ認可
  ヲ要スルモノハ其ノ認可書ノ到達シタ
  ル時ヨリ登記ノ期間ヲ起算ス
  第三十四條ノ三蠶絲共同施設組合ヲ設
  立セントスル者ハ定款ヲ作成シテ主務
  大臣ノ認可ヲ受クベシ
  第三十四條ノ四蠶絲共同施設組合ノ定
  款ニハ左ノ事項ヲ記載シ各設立者之ニ
  署名又ハ記名捺印スベシ
  一目的
  二名稱
  三組織
  四地區
  五事務所ノ所在地
  六出資一口ノ金額及其ノ拂込ノ方法
  七組合員ノ有スベキ出資口數ニ關ス
  ル規定
  八保證責任ノ組合ニ在リテハ保證金
  額ニ關スル規定
  九剩餘金處分及損失分擔ニ關スル規
  定
  十準備金ノ額及其ノ積立ノ方法
  十一組合員タル資格ニ關スル規定
  十二組合員ノ加入及脫退ニ關スル規
  定
  十三事業及其ノ執行ニ關スル規定
  十四役員ニ關スル規定
  十五會計ニ關スル規定
  十六組合ガ公〓ヲ爲ス方法
  十七存立時期又ハ解散ノ事由ヲ定メ
  タルトキハ其ノ時期又ハ事由
  第三十四條ノ五蠶絲共同施設組合ハ出
  資ノ第一囘ノ拂込アリタル後二週間以
  內ニ各事務所ノ所在地ニ於テ設立ノ登
  記ヲ爲スベシ
  登記スベキ事項左ノ如シ
  前條第一號乃至第四號、第六號、
  第十六號及第十七號ニ揭グル事項
  二事務所
  三出資ノ總口數及拂込ミタル出資ノ
  總額
  四無限責任ノ組合ニ在リテハ各組合
  員ノ氏名又ハ名稱及住所
  五保證責任ノ組合ニ在リテハ各組合
  員ノ氏名又ハ名稱、住所及保證金額
  六設立認可ノ年月日
  七理事及監事ノ氏名及住所
  前項ニ揭グル事項中ニ變更ヲ生ジタル
  トキハ其ノ登記ヲ爲スベシ但シ前項第
  三號ニ揭グル事項ニ付テハ每事業年度
  末日ノ現在ニ依リ事業年度終了後一月
  以内ニ登記ヲ爲スコトヲ得
  第三十四條ノ六蠶絲共同施設組合ニハ
  理事及監事ヲ置クベシ
  理事及監事ハ總會ニ於テ之ヲ選任ス但
  シ組合設立當時ノ理事及監事ハ定款ヲ
  以テ之ヲ定ムベシ
  第三十四條ノ七組合員ハ總會ニ於テ各
  一個ノ議決權ヲ有ス但シ定款ノ定ムル
  所ニ依リ出資口數ニ應ジ二個以上ノ議
  決權ヲ有セシムルコトヲ得
  前項但書ノ規定ニ依リ組合員ノ有スベ
  キ議決權ノ數ノ制限ニ關シ必要ナル事
  項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
  第三十四條ノ八組合員タル資格ヲ有ス
  ル者蠶絲共同施設組合ニ加入セントス
  ルトキハ組合ハ正當ノ理由ナクシテ加
  入ニ困難ナル條件ヲ附シ又ハ其ノ加入
  ヲ拒ムコトヲ得ズ
  第三十四條ノ九組合員ハ命令ノ定ムル
  所ニ依リ一定ノ期間前ニ豫〓ヲ爲シ蠶
  絲共同施設組合ノ承諾ヲ得タル場合ニ
  於テハ事業年度ノ終ニ於テ脫退スルコ
  トヲ得
  組合ハ正當ノ理由ナクシテ前項ノ承諾
  ヲ拒ムコトヲ得ズ
  第三十四條ノ十民法第四十四條第一
  項、第四十五條第二項第三項、第四十
  八條、第五十條、第五十二條第二項、
  第五十三條乃至第五十五條、第五十九
  條、第六十一條第一項、第六十二條、
  第六十四條、第六十六條、第七十條、
  第七十三條乃至第八十二條及第八十四
  條第一號、非訟事件手續法第三十五條
  第二項、第三十六條、第三十七條ノ二、
  第百十七條、第百十九條乃至第百二十
  二條、第百三十六條乃至第百三十八
  條、第百四十一條乃至第百五十八條、第
  百六十五條、第百七十五條乃至第百七
  十八條及第二百六條乃至第二百八條竝
  ニ產業組合法第五條、第六條、第十條、
  第十一條第一項、第十二條、第十七條
  第一項、第十八條乃至第二十四條、第
  二十六條乃至第三十一條ノ三、第三十
  三條、第三十四條ノ二乃至第三十七條、
  第三十九條乃至第四十六條、第四十七
  條乃至第四十九條、第五十一條乃至第
  五十八條、第六十條第一項(〓算ニ關ス
  ル規定ヲ除ク)、第六十條ノ二、第六十
  一條(〓算ニ關スル規定ヲ除ク)、第六
  十二條(第一項第四號ヲ除ク)、第六十
  三條ノ二乃至第六十五條、第六十六條
  第一項、第六十七條、第六十八條、第
  七十條乃至第七十三條、第七十四條ノ
  二第一項、第九十三條ノ二及第百四條
  ノ規定ハ蠶絲共同施設組合ニ之ヲ準用
  ス但シ民法第四十五條第三項、第四十
  八條第一項及第七十七條中一週間トア
  ルハ二週間トシ同法第八十四條中二百
  圓トアルハ三百圓トシ非訟事件手續法
  第百二十條第二項中定款トアルハ定款
  及出資ノ第一囘ノ拂込アリタルコトヲ
  證スル書面トシ產業組合法中主務大
  臣、地方長官又ハ監督官廳トアルハ行
  政官廳トス
  附則
  本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
  製絲業法第一條第二項中「第二條乃至第
  十一條及附則第二項ノ規定」ヲ「本法」ニ
  改メ同條第三項及同法第十二條乃至第二
  十七條ヲ削ル
  登錄稅法第十九條第七號中「生絲共同施
  設組合」ヲ「蠶絲共同施設組合」ニ、「製絲
  業法」ヲ「蠶絲業法」ニ改ム
  日本勸業銀行法第十五條第三項及第三十
  二條第一項第三號、農工銀行法第七條ノ
  五及第二十三條第三號竝ニ北海道拓殖銀
  行法第八條第四項中「生絲共同施設組合」
  ヲ「蠶絲共同施設組合」ニ改ム
  本法施行ノ際現ニ存スル生絲共同施設組
  合ハ本法施行ノ日ヨリ之ヲ本法ニ依ル蠶
  絲共同施設組合ト看做ス
  〔國務大臣山崎達之輔君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006713242X02019350228&spkNum=40

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• 041・山崎達之輔

  ○國務大臣(山崎達之輔君)　只今上程セラ
  レマシタ三法律案ノ、提案理由ノ〓要ヲ御
  說明申上ゲマス、近來海外經濟界ノ不況ト、
  人造絹絲ノ進出等ニ依リマシテ、我ガ蠶絲
  業ガ洵ニ重大ナル難局ニ直面致シテ居リマ
  スル此情勢ニ鑑ミマスレバ、斯業ノ更生刷
  新ヲ策スル恒久的施設ヲ講ズルコトハ、最
  モ急務トスル所デアリマス、就中產繭處理
  統制及蠶絲團體制度ノ整備ニ關シマシテハ、
  多年業界ニ於テ其必要ガ强調セラレ、且ツ
  最近ノ議會ニ於ケル決議、又ハ御論議ノ次
  第モアリマスルノデ、當局ト致シマシテハ、
  曩ニ具體案ヲ日本中央蠶絲會ニ諮問ヲ致シ
  マシテ、其答申ニ基キマシテ三法律案ヲ立
  案ヲ致シ、玆ニ提出スルニ至ッタ次第デアリ
  マス
  先ヅ產繭處理統制法案ハ、蠶絲業ノ根幹
  デアリマスル繭ノ處理ニ關スル組織及ビ方
  法ヲ合理化シマシテ、養蠶者ノ繭ノ處理ヲ
  確保スルト共ニ、取引ノ公正圓滑ヲ圖リマ
  シテ、斯業ノ基礎ヲ堅實ナラシメンコトヲ
  期スルモノデアリマス、元來養蠶者ノ產繭
  處理ハ、生繭取引ガ其大半ヲ占メマシテ、
  之ヲ短時日間ニ處理セネバナラヌ關係上、
  一面ニ於キマシテハ不自然ナル繭絲價ノ騰
  落ヲ誘致シ、一面ニ於キマシテハ蠶絲金融
  上ノ障碍トナッテ居ルノデアリマス、是等ノ
  點ハ海外生絲ノ消費ガ旺盛デアリマシタ時
  代ニ於テハ、多ク顧慮スルノ必要モナカッタ
  ノデアリマスルケレドモ、近年斯業ノ不況
  ニ伴ヒマシテ、著シク其缺陷ヲ痛感セラル
  ルニ至ッタノデゴザリマスルノデ、此際一定
  計畫ノ下ニ、生繭ノ成行取引ヲ、他ノ合理
  的處理形態ニ誘導致シマスルト共ニ、其形
  態ニ對シマシテモ、十分ニ指導督勵ヲ加ヘ
  ルコトヽ致シタ次第デゴザリマス、又繭取
  引ノ際ニ於ケル品質ノ鑑定ガ、從來或ハ粗
  笨ノ方法ニ依リ、或ハ賣買當事者ノ一方ノ
  ミニ於テ行ハレテ居リマスル爲ニ、動モス
  レバ取引ノ適正ヲ缺キ、且ツ品質ノ改善ニ
  尠カラザル支障ヲ來シテ居リマシタノデ、
  此際相當期間ノ猶豫ヲ置キマシテ、之ヲ公
  正ナル第三者檢定ニ依ラシムルコトヽ致シ
  タノデアリマス、而シテ今囘ノ法案ノ趣旨
  ニ關シマシテ、世上一部ニハ或ル程度ノ誤
  解ガ傳ッテ居リマシテ、是ガ爲ニ種々ノ心配
  ヲ抱イテ居ラレル方モアルヤニ伺ッテ居リ
  マス、所ガ今囘ノ法律ハ、決シテ法律ヲ以
  テ直接强制ヲスルモノデハゴザリマセヌ、
  卽チ法律ヲ以テ生繭ノ取引ヲ禁止スルモノ
  デハゴザリマセヌ、飽マデ自治的統制ニ依
  ラシムル一種ノ奬勵助長ノ方策デアリマス、
  且又相當ノ猶豫期間ヲ置キマシテ、同時ニ
  種々ノ特例ヲモ認メル譯デアリマシテ、出
  來得ル限リ無理ヲ避ケマシテ、出來得ルダ
  ケ圓滿ナル實施ヲ圖ルコトヲ期シテ居ル次
  第デアリマス、此點ハ特ニ此機會ニ於テ明
  瞭ニ申上ゲテ置キタイト思ヒマス
  次ハ蠶絲團體制度ノ整備デゴザリマス、
  卽チ蠶絲業組合ノ强化ト、蠶絲共同施設組
  合制度ノ樹立デゴザリマシテ、是ガ爲ニ一
  ハ蠶絲業組合法ヲ改正シ、一ハ蠶絲業法ヲ
  改正セントスルノデアリマス、蠶絲業組合
  法ノ改正ノ要點ハ、養蠶業組合ノ構成ヲ改
  メマシテ、養蠶實行組合員外ノ養蠶者モ、
  其養蠶業組合ニ加入スルコトヽ致シ、又養
  蠶實行組合ノ設立解散等ニ付テ、認可制度
  ヲ採ルコトヽ致シタノデアリマス
  又蠶絲業法改正ノ要點ハ、現在蠶絲業者
  ガ協力一致シテ業務上ノ利益增進ヲ圖ラン
  トスル場合ニ、組織シ得ベキ團體制度ニ不
  十分ナル所ガゴザリマスルノデ、新ニ蠶絲
  共同施設組合ノ制度ヲ設ケマシテ、是等業
  者ノ業務ノ發展ニ資シ得ルノ途ヲ開イク次
  第デゴザリマス、此兩施設ハ曩ニ述ベマシ
  タ產繭處理統制施設ト相俟チマシテ、蠶絲
  業ノ基礎ヲ堅實ナラシメ、蠶絲業ノ維持刷新
  上適切ナル效果ヲ擧ゲ得ルモノト信ズルノ
  デゴザリマス、以上ハ三法律案提案ノ要旨
  デゴザリマスルガ、何卒御寒議ノ上御協贊
  アランコトヲ御願申上ゲマス(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006713242X02019350228&spkNum=41

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• 042・濱田國松

  ○議長(濱田國松君)　質疑ノ通〓ガアリマ
  ス、通〓順ニ從ヒ之ヲ許可致シマス-山
  本愼平君
  〔山本愼平君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006713242X02019350228&spkNum=42

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• 043・山本愼平

  ○山本愼平君　只今農林大臣ノ御話ノ如ク、
  現在ノ蠶絲業ハ此儘デハ到底行カレナイノ
  デアリマス、其原因ハ、或ハ人絹工業ノ進
  出モアリマセウ、其他種々ナ合理的ナラザ
  ル施設モアリマシテ、彼此レ種々ナ原因ガ
  複雜ヲ致シマシテ、何トカ玆ニ新シイ手段
  ヲ加フルニ非ズンバ、蠶絲業ノ新展開ハム
  ヅカシイト云フコトハ、是ハ定論デアリマ
  ス、而シテ之ヲ狙ッテ農林省ハ產繭處理法其
  他二案ヲ提出セラレタノデアリマセウガ、
  玆ニ數點ニ付テ御伺ヲ致シマシテ、吾々ノ
  覺悟ヲ決メタイト思フノデアリマス
  先ヅ人絹工業ノ進出ニ對シテ、殊ニ生絲
  ノ市價ノ上ニ惡影響ヲ及ボシテ居リマスル
  モノハ、販賣機關ノ無統一デアリマス、言
  葉ヲ換ヘテ申シマスレバ、個人主義的營利
  ノ觀念ガ餘リニ强クテ、此販賣機關ガ屢〓價
  格ノ亂高下ヲ惹起シテ居ルト云フ事實ハ、
  疑フベカラザル點デアリマス、是ニ對スル
  施設ヲナスニ非ズンバ、如何ニ產繭處理ヲ
  合理的ニ致シマシテモ、結局ハ價格ノ問題
  デアリマス、販賣統制ノ上ニ適當ナル合理
  的施設ガ行ハレルニ非ズンバ、其價格ハ常
  ニ安定ヲ缺ク、隨テ產繭處理ノ上ニ或ル合
  理性ヲ與フベク、本案ヲ提出セラレタノハ
  之ヲ認メマス、殊ニ生繭ノ處理、卽チ十日
  ヲ出デズシテ生繭ハ商品デナクナルト云フ
  品物ニ對シテ、或ル程度マデ之ヲ商品化ス
  ベク乾繭ニ重キヲ置イテ、而モソレニ團體
  處理ヲ加ヘヨウト致シタ點ニ於テ、吾々ハ
  或ル程度迄ノ理想ヲ認メルコトガ出來ル、
  此理想ニ對シテ、一方ニ於キマシテハ販賣
  ノ統制、販賣ノ合理化ト云フモノガ行ハレ
  ルニ非ズンバ、如何ニ產繭ノ處理ニ合理性
  ガアリマシテモ、實ハ空文ニ終ルノデアリ
  マス(拍手)私ノ聞ク所ニ依リマスレバ、政
  府ハ小委員會ノ議決ヲ經タダケデ、總會ヲ
  招集セザル儘ニ、生絲ノ輸出販賣統制案ハ放
  置セラレテ居ルト云フコトヲ聞及ンデ居リ
  マス、敢テ御伺ヲ致シマス、政府ハ產繭處理
  ニ重キヲ御置キニナッテ、ソレヨリモヨリ重
  大性ヲ有ッテ居ル販、賣統制ニ、何等ノ力ヲ御
  用ヒニナラヌノデアリマスカドウデアリマ
  スカ、此點ヲ明確ニ御伺ヲ致シテ置キタイ
  ノデアリマス(拍手)販賣ト產繭ト伴ウテ行
  カナケレバナラナイノニ、比較的發言權ノ
  薄イ農村ノ側ダケニ、產繭處理法ヨリ生ズ
  ル或ル程度ノ犠牲ヲ求メテ置キナガラ、販
  賣統制ヨリ生ズル犠牲ハ之ヲ求メズシテ、
  聞ク所ニ依レバ、資本家ニ屬スル橫濱及神
  戶ノ大キナ輸出商ノ運動ニ依ッテ、此販賣統
  制案ガ現ニ阻止セラレテ居ルト、道途說ヲ
  爲ス者ガアリマス(拍手)私ハ敢テ此說ヲ信
  ズル者デハアリマセヌ、アリマセヌケレド
  モ、現在ノ事實ニ於キマシテハ、產繭處理
  ノミ御出シニナッテ、販賣統制ニ付テハ何等
  ノ御〓究ガナイノミナラズ、屢〓他ノ機會ニ
  於テ御伺致ス所ニ依リマスレバ、政府ハ販
  賣統制案ヲ出ス自信ガナイヤウニ受取レル
  ノデアリマス、斯ノ如クンバ、動モスレバ
  資本家ト大衆トノ間ニ政治的ノ背離ガ行ハ
  レ易イ今日ノ世態ニ於テ、資本ヲ中心トス
  ル輸出商ノ運動ノミガ效ヲ奏シテ、其他ノ
  大衆ノ農民ヲ中心トシタル產繭問題ニ對ス
  ル運動ノ聲ハ、政府ニ何等ノ徹底ヲシナイ
  ト云フヤウナコトニナリマスナラバ、徒之
  資本家ト民衆トノ間ヲ分離サセル所ノ、思
  想的ニ申シマシテモ好マシカラザル現象ヲ
  惹起シ易イノデアリマス、政府ハ之ニ對シ
  テ如何ナル御存念ヲ御有チニナッテ居リマ
  スカ、殊ニ重キヲ置イテ之ヲ御伺致シタイ
  ノデアリマス、元來政治ハ生活デアル、近
  來日本ノ政治ガ進步致シマシテ、國民ノ全
  部ノ生活ニ犇々ト觸レテ來タ點ニ於テ甚
  ダ喜ブベキ現象ナリト國民ハ思ウテ居
  ル、徒ニ政治ガ形式ニ止マラズシテ、國
  民ノ米櫃ニ一々光ヲ射シ込ンデ來ル、ソレ
  ガ本當ノ政治デアリマスナラバ、斯ノ如
  キ產業立法ノ頻リニ起ルコトハ最モ喜ブ
  ベキデアリマス、併シ其喜ビト同時ニ、
  一ハ資本家ニ阿ネル、一ハ發言權ノ極メテ
  少イ農民ヲ虐ゲルト云フコトニナッテハ一
  大事デアリマス、此點ハ最モ重要ナル立場
  ニ於テ政府ノ考慮ヲ煩サナケレバナラヌノ
  デアリマス、是ガ第一點デアリマス
  第二點ト致シマシテ、假ニ若シ運動ニ依ク
  テ販賣統制ト云フ片袖ガ〓リ取ラレテシ
  マッテ、兩袖揃ッテ蠶絲界ニアラネバナラナ
  イモノガ、取ラレタ儘ニナッテ、卽チ販賣統
  制ガドウシテモ此議會ニ出ルコトガ出來ナ
  イト云フ運命ニアルナラバ、政府ハドウデ
  スカ、此產業立法ノ性質ト致シマシテ、殊
  ニ國民ノ生活ニ極メテ緊密ナ關係ヲ有チマ
  スル立場上、姑ク手段ト時トヲ能ク熟慮セ
  ラルベク、相當ノ年月ヲ茲ニ與ヘテ、更之
  考慮ヲ新ニスルト云フ御考ハアリマスカ、
  アリマセヌカ、元來乾繭ニスルトカ、團體
  處理ヲスルトカ云フヤウナコトハ、-3)
  理想デアリマス、政治ハ理想デハアリマセ
  ヌ、此理想ヲ如何ニ現實ニ施スベキカ、其
  時ト其手段トガ政治デアリマス以上ハ、其
  時ト手段ノ上ニ最モ重大ナ考慮ヲ〓ラサナ
  ケレバナラナイ、隨テ今日ノ生繭、卽チ製
  絲家ノ無力、段々製絲家ハ力ガ減ッテ參リマ
  シタ、其製絲家ノ力ノ減ック爲ニ、或ハ生繭
  ノ出〓時期ニ、其買叩キガ起リハシナイカ、
  若クハ特約取引ニハ第三者ノ公正ナル檢定
  ガアリマセヌカラ、屢〓其處ニ不當ノ聲ガ起
  ルノデアリマス、此生繭ノ買叩キヤ、特約
  取引ノ不當等ヲ、マザ〓〓ト若シ吾々ノ現
  實ノ社會ガ見セ付ケラレタ時ニ、果シテ國
  民ハドウ云フ感ヲ懷クカ、ソレ等ノコトヲ
  靜ニ考ヘルナラバ、政治ハ理想デナクッテ、
  勢ヒト方法デアルト致シマスルナラバ、サ
  ウ云フ機會ヲ狙ッテ、卽チ双方ノ間ニ認識ヲ
  深メタル機會ニ於テ、產業立法ヲ施行スル
  ノモ亦一ツノ方法デアリマス、此點ニ於テ
  政府ハ如何ニ御考ニナッテ居リマスカ、卽
  チ第一ノ質問ノ、販賣統制ノ法ヲ出スコト
  ガ出來ルカ出來ナイカ、出來サウモナイナ
  ラバ、寧ロ此案ニ對シテ時ト方法トヲ、モ
  ウ少シ練上ゲル熟慮ト勇氣ハナイカ、斯ウ
  云フノガ第二點デアリマス(拍手)
  第三點ハ養蠶家ハ卽時生繭ニ依テ現金ヲ
  欲スルノデアリマス、倉敷料ヲ掛ケ、乾
  燥料ヲ用ヒ、而シテ現金ニ換ヘル時間ヲ一
  箇月以後ニ延バサナケレバナラヌ立場ハ、
  大體ニ於テ好マナイカモ知レナイ、而シテ
  其現金ヲ欲シ、乾燥料ヲ好マナイ、ソレ等
  ニ對シテ政府ハ如何ナル救濟ノ手段ヲ御有
  チニナッテ居ラレマスカ、是ガ第三點デアリ
  マス
  第四ニハ組合製絲ハ大體ニ於テ暗イ影ヲ
  今日マデ示シテ居リマス、理想ト致シマシ
  テハ、勿論組合製絲ハ結構デセウ、併ナガ
  ラ理想ト現實ノ差ハ此處ニモ橫ッテ居ル、單
  ニ理想ダケデハ行キ得ナイ、現實ノ衝突ニ
  對シテ、之ヲ巧ミニ調節スル所ニ政治ノ本
  質ガアルトシマスルナラバ、現在ノ組合製
  絲ノ失敗ヲ如何ニ救濟ナサル御積リデアリ
  マスカ、少クトモ其區域ノ整理、及其內容
  ノ整理ニ付テ、相當ニ當局ノ識見ガナケレ
  バナラヌ筈デアリマス、其點ヲ十分ニ、而
  モ明白ニ承ルコトガ出來ルナラバ仕合セデ
  アリマス
  第五ニハ生繭ヲ乾繭ニ致シマシテ、其乾
  繭ニスルト生繭ニスルトハ、自治的强化ニ
  俟ツト云フノガ本產繭案ノ精神デアリマ
  ス、是ハ只今農林大臣ノ仰セラレタ通リデ
  アリマセウ、卽チ養蠶實行組合ガ、生繭デ
  賣ラウト思ヘバ生繭デ賣ルシ、乾繭デ賣ラ
  ウト思ヘバ乾繭デモ賣ルコトガ出來ル、自
  治ニ委セテ居リマスガ、事實ニ於キマシテ
  ハ、此自治的强化ナルモノハ、行政官廳、
  殊ニ地方ノ行政廳ノ手心ニ依リマシテ、乾
  繭倉庫ノ施設ヲスルナラバ他ノ補助モ吳レ
  テヤルガ、乾繭倉庫ノ施設ヲシナイナラバ、
  此補助モヤラヌ、此補助モヤラヌト云フヤウ
  ナ手心ハ、屢〓地方ノ官憲ニアリ得ルコトデア
  リマス、(拍手)左樣ナ場合ニ對シテ、自治的
  强化ト云フ表面ノ形式ハ宜シイガ、實ハソ
  レガ背景ヲ持ッタル行政權的强化ニ變リ易
  イノデアリマス(拍手)此點ヲ如何ニシテ政
  府ハ御防ギニナリマスカ、具體的ニ、而モ
  出來ルダケ左樣ナ憂ノナイヤウニ保障セラ
  ルヽニアラズンバ、一種ノ危險ヲ包藏スル
  ト云フコトヲ信ズルノデアリマス
  第六ニハ、組合ノ進出ニ對シマシテ反產
  運動ガ頻リニ起ッテ居リマス、殊ニ肥料ト穀
  物ニ對シテハ、反產運動ガ益〓之ニ力ヲ加增
  スルコトヽ存ゼラレル、曩ニハ商工大臣ハ、
  此反產運動ノ緩和ノ手段トシテ、小商工業
  者ニ對シテ組合制、及商工金庫ノ制ヲ與ヘ
  ラレルト云フコトヲ申サレマシタガ、今ヤ
  失業セントスル繭絲ノ仲買商ニ對シテハ、
  農林省ハ如何ナル救濟ヲ爲サル御積リデア
  リマスカ、此點モ亦具體的ニ御話ヲ承リタ
  イノデアリマス、以上六點ニ對シテ農林大
  臣ノ責任アル御答辯ヲ承リタイ
  之ヲ要スルニ政治ハ理想ニ非ズシテ時ト
  方法デアリマス、其時ト方法ノ上ニ於テ、
  本產繭處理法ガ眞實其效果ヲ現スベク、是
  等ノ六點ニ對シテ明快ナル御答辯ヲ得テ、
  後ニ是等ノ考慮ヲ進メタイト存ズルノデア
  リマス(拍手)
  〔國務大臣山崎達之輔君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006713242X02019350228&spkNum=43

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• 044・山崎達之輔

  ○國務大臣(山崎達之輔君)　御答ヲ致シマ
  ス、第一點、卽チ生絲販賣統制ノ問題デア
  リマスガ、生絲販賣統制問題ノ重要性ニ付
  キマシテハ、山本君ト變ッタ考方ハ有ッテ居
  リマセヌ、此問題ハ昨年來農林省內ニ設ケ
  テアリマスル、專門家ニ依ッテ組織セラレテ
  居リマスル委員會ニ於テ、種々ノ調査〓究ヲ
  重ネラレテ居ルノデアリマシテ、大體ノコ
  トハ山本君御承知ノ通リデアリマス、而シ
  テ只今ノ經過ニ於キマシテハ、小委員會ニ
  於テ一應ノ案ガ出來テ居ルノデアリマス、
  其案ハ〓略ヲ申シマスレバ、生絲ノ暴騰暴
  落ノ際ニ對シテ、關係業者ノ自治的組合ニ
  依ッテ、或ル程度ノ手當ヲ致サウト云フ仕組
  ニ相成ッテ居ル譯デアル、私共モ確ニ一ツノ
  案デアルト云フコトハ認メテ居リマス、所
  ガ此問題ハ御承知ノ通リ關係業者自身ノ團
  體ノ自治ニ依ッテ統制ヲ致シテ行カウト云
  フ、其目的タル自治團體自體ノ間ニ未ダ氣
  運ガ十分熟シテ居リマセヌコトハ御承知ノ
  通リデアリマス、斯樣ナコトデ、調査會ニ
  於テハ種々攻究ヲ繼續シテ努力致シテ居ラ
  レマスルガ、政府ト致シマシテハ、其答申ガ
  確定致シマシテ、適當ナ案ト認メラレル場
  合ニ、提案セルヤ否ヤヲ決セナケレバナラ
  ヌノデアリマス、左樣ナ關係ニアリマスコ
  トガ今日ノ實情デアリマス、是ト產繭處理
  統制ノ問題トノ關係ハドウ考ヘルカ、私ハ
  二百万養蠶家ニ直接ノ關係ヲ有ッテ居リマ
  スル產繭處理統制ノ問題ハ、最モ大切ナ問
  題デアルト考ヘテ居リマス、最モ重大ナ問
  題デアルト考ヘマス、生絲ノ販賣關係ノコ
  トモ固ヨリ重大デアル、無論是ハ解決致シ
  タイ考デアリマスガ、之ニ依ッテ養蠶家自體
  ニ關係ノアル產繭處理統制ノ問題ニ影響ヲ
  來スベキ筋合ノモノデハナイ、私ハ斯樣ニ
  確信ヲ致シテ居ルノデアル
  〔「一方的ノコトデハ駄目ダ」ト呼ヒ、
  其他發言スル者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006713242X02019350228&spkNum=44

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• 045・濱田國松

  ○議長(濱田國松君)　靜肅ニ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006713242X02019350228&spkNum=45

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• 046・山崎達之輔

  ○國務大臣(山崎達之輔君)　(續)而シテ產
  繭處理統制ハ、先刻モ申上ゲマシタヤウニ、
  養蠶業界ノ多年ノ希望トシテ强調セラレテ
  居ル問題デアリ、團體間ノ議モ大體ニ於テ
  熟シテ居リマスコトハ、山本君御承知ノ通
  リデアル、隨テ此問題ハ、殊ニ豫算上ノ計
  畫トモ關聯ヲ致シマシテ、幸ニ此法案ノ御
  協贊ヲ願フコトガ出來マスレバ、政府ノ
  一面ニ懷イテ居リマスル豫算上ノ計畫、卽
  チ養蠶業ノ基礎ヲ鞏固ニスル產繭處理ノ
  施設ヲ整備致シマスル爲ニ、十年度ノ豫算
  ハ幸ニ既ニ御協贊ヲ得テ居リマスルガ、十
  一年度以後ニ亙リマシテ、約一千万圓程度
  ノ計畫ヲ、實ハ政府ノ內部ニ於テハ懷イテ
  居ルヤウナ次第デアリマス、是等ノ施設ハ
  一方ニ豫算上ノ計畫、一方ニ法制ノ確立、
  此兩者相俟ッテ養蠶業ノ基礎ノ確立(芙蓉)
  タイト云フコトガ、政府ノ切ナル希望デア
  ルコトヲ御諒承ヲ願ヒタイト思ヒマス、決
  シテ私ハ是アルガ爲ニ生絲販賣統制ノ問題
  ヲ輕視ハ斷ジテ致シマセヌ(「輕視シナケレ
  バ出シタラ宜イヂヤナイカ」ト呼フ者アリ)
  是ハ議熟シテ、成案確立致シタ上ノコトデ
  アリマス、斯樣ナ次第デゴザイマスカラ、
  山本君ノ御尋ニナリマシタ第二點、卽チ產
  繭處理統制ノ案ニ付テ、更ニ相當期間ヲ置
  イテ考慮スル意思アリヤ否ヤト云フ御問ニ
  對シマシテハ、大體是デ御諒解ヲ冀ヒタイ
  ト思フノデアリマス
  第三ハ養蠶家ノ繭處理ヲ急グ、卽チ金ノ
  必要ニ迫ラレル、此狀態ニ對シテ乾繭ノ處
  理ヲヤッテ行クコトハ、養蠶家ノ利害ノ上
  ニドウデアルカト云フ御懸念デアリマス、
  此點ハ-政府ハ之ニ對シマシテ或ハ資金
  ノ供給、其他出來得ル限リノ利便ハ、法律
  及豫算ヲ離レマシテ別途ニ考究ヲ致シテ居
  ル譯デアリマシテ、其點ニ於テ多クノ御心
  配ハナイコトデアラウト存ズルノデアリマ
  ス
  第四ハ組合製絲ノ問題デゴザイマス、組
  合製絲ガ最近ノ製絲業ノ不況ノ結果ト致シ
  マシテ、色々困難ヲ感ジテ居ル組合ナキニ
  シモアラザルコトハ、山本君能ク御承知ノ
  通リデアリマス、此點ニ付キマシテハ山本
  君ノ仰セノ通リ、政府ニ於キマシテモ、組
  合製絲ノ或ハ區域ノ整理、合同其他出來ル
  ダケノ整理ハ致ス考デアリマシテ、其點ハ
  先般御協賛ヲ願ヒマシタ豫算ノ中ニモ、既
  ニ若干ヲ織込ンデ居ル次第デゴザイマス
  第五ハ乾繭ヲ自治的ニヤルト云フガ、是
  ハ地方廳アタリデ壓迫シテヤルヤウナ弊ガ
  往々ニシテアルガ、ドウデアル、斯ウ云フ
  御問デゴザイマス、私ハ-全般的ニ私ノ
  考方ト致シマシテハ、斯樣ナ產業上ノ問題
  ハ、出來得ル限リ其業者、國體ノ自治的活
  動ト云フコトニ、最モ重點ヲ置イテ參ルベ
  キモノデアル、斯樣ナ考ヲ有ッテ居ル一人デ
  アリマシテ、其點ハ山本君ト恐ラク同樣ノ
  意見デアラウト存ジマス、從來或ハ山本君
  御指摘ノヤウナ實際上ノ弊ガアッタカモ知
  レマセヌガ、若シアリト致シマスレバ、左
  樣ナコトハ今囘ノ制度ノ根本ノ精神ニモ背
  馳スル譯デアリマシテ、十分ナル指導、監
  督ヲ加ヘルニ吝ナラザル次第デゴザイマス
  第六ハ種々產業上ノ施設ニ對シテ、所謂
  反產的ノ思想モ世間ノ一部ニハ現レテ居ル
  ガ、此法案ガ養蠶業者ヲ目指シテ居ル結果、
  或ハ繭絲商ノ諸君ニ對シテ考慮ヲ拂ハナカッ
  タ嫌ガアルノデハアルマイカ、斯樣ナ御懸
  念ノヤウデゴザイマス、此點ニハ十分ノ考
  慮ヲ拂ッタ積デアリマス、先刻提案理由說明
  ノ際ニ、私ハ特ニ明瞭ニ申上ゲタ積リデゴ
  ザイマスルガ、今囘ノ法制ヲ一種ノ助長奬
  勵ノ立法、卽チ法律ノ力ヲ以テ壓迫スルト
  云フ點ヲ、極力私ハ避ケタ積リデアリマス、
  而シテ土地ノ事情其他特殊ノ事情ニ對シマ
  シテハ、十分ノ例外ヲ勅令ヲ以テ認メ得ル
  ト云フ制度ヲ執リマシタ譯デアリマス、更
  ニ又或ハ玉繭、屑繭、自家用ノ製絲用ノ繭、
  左樣ナモノハ一切今囘ノ法ノ適用カラ除外
  ヲ致ス積リデアリマス、更ニ蠶絲業組合法
  ニ付テ申上ゲマシタヤウニ、蠶絲ニ關スル
  共同施設組合ノ制度ヲ新ニ設ケマシタコト
  モ、是モ決シテ無用ナ計畫デハナイト考ヘ
  ルノデアリマシテ、諸般ノ點ニ付キマシテ、
  繭絲業諸君ノ種々ノ御意嚮等モ、十分私共
  ハ考慮ノ中ニ加ヘタ積リデゴザリマス、ド
  ウカ以上ノ點ヲ十分御諒解ヲ冀ヒマシテ御
  贊成ヲ願ヒタイト思ヒマス(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006713242X02019350228&spkNum=46

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• 047・山本愼平

  ○山本愼平君　此席カラ御許シヲ願ヒタウ
  存ジマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006713242X02019350228&spkNum=47

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• 048・濱田國松

  ○議長(濱田國松君)　許可致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006713242X02019350228&spkNum=48

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• 049・山本愼平

  ○山本愼平君　產繭處理モ、若クハ販賣統
  制モ、結局ノ狙ヒ所ハ農產物ノ價格ノ安定
  デアリマス、如何ニ產繭處理ヲ致シマシテ
  モ、如何ニ其處ニ合理性ガ存在致シマシテ
  モ、最後ハ農產物價ノ安定ト云フコトヲ狙ッ
  テ、唯一ノ目的ト致シテ居ルノデアリマス、
  隨テ產繭處理ノ合理性ノ最後ノ目的ハ、矢
  張價格ノ安定デアル以上ハ、其價格ノ安定
  ニ最モ直接シタル販賣統制ヲ行ハレ、卽チ
  販賣上ニ合理化ガ行ハレルニ非ズンバ、眞
  實ノ目的ヲ達スルコトハ出來ナイノデアリ
  マス、此點ニ於テ政府ハハッキリトシタ-
  出ストカ出サヌトカト云フコトノ、責任ア
  ル御答辯ガアッテ、始メテ此產繭處理法モ生
  還ッテ來ルノダラウト思フノデアリマス、此
  點ニ付テ、他ハ多少事務的ナ問題ニナリマ
  スカラ、何レ委員會デ〓究セラルヽデアリ
  マセウガ、此一點ダケハモウ一應農林大臣
  ノ極メテ明確ナ、出ストカ出サヌトカ、甲
  カ乙カ、其何レカノ點ヲ御明答アランコト
  ヲ望ミマス(拍手)
  〔國務大臣山崎達之輔君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006713242X02019350228&spkNum=49

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• 050・山崎達之輔

  ○國務大臣(山崎達之輔君)　山本君モ能ク
  御承知ノ通リニ、蠶絲業關係ノ問題ト致シ
  マシテ、或ハ原蠶種管理ノ問題、產繭處理
  ノ問題、生絲販賣統制ノ問題、此三者ノ蠶
  絲業ニ通ズル三大問題デアルト私ハ考ヘテ
  居ルノデアリマス、無論此三者ハ總テ解決
  セラレナケレバナラヌト確信致シテ居リマ
  ス、併ナガラ此三者ノ解決ハ、必ズ同時デ
  ナケレバナラヌト、私ハ實ハ考ヘテ居ラヌ
  ノデアリマス、現ニ一昨年原蠶種管理法ヲ
  制定致シマシタノデ、今囘產繭處理ノ問題
  ヲ解決致シ、出來得ベクンバ生絲販賣統制
  ノ問題モ、今期議會ニ解決致シタイ〓望ヲ
  以テ、私共ハ進ミツヽアル譯デアリマス、
  併ナガラ先程申上ゲマシタヤウニ、此案ノ
  狙フ所ガ、業者ノ團體ニ依ル自治統制ヲ狙ッ
  テ居ルノデアリマス、隨テ其業者ノ自治
  的團體ノ成立ニ付テノ機運ヲ、或ル程度マ
  デハ拵上ゲルコトガ必要デアリマス、此意
  味ニ於テ只今調査委員會ニ於テハ、種々苦
  慮ヲ重ネテ居ル譯デアリマシテ、此問題ハ
  決シテ私共ハ此儘デ置クナドヽ云フ考ハ毛
  頭有ッテ居リマセヌ、調査會ニ於テ決定致シ
  マシテ、適當ナル案デアレバ、固ヨリ提案
  ヲ致ス考デアリマスケレドモ、只今申上ゲ
  マスルヤウナ經過ニ今日アルコトヲ、特
  御諒承ヲ希ッテ置キマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006713242X02019350228&spkNum=50

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• 051・山本愼平

  ○山本愼平君　此以上追窮致シマシテモ、
  ソレダケデゴザイマス、私ノ質問ハ是デ終
  リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006713242X02019350228&spkNum=51

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• 052・濱田國松

  ○議長(濱田國松君)　次ノ通〓者近藤壽市
  郞君
  〔近藤壽市郞君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006713242X02019350228&spkNum=52

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• 053・近藤壽市郎

  ○近藤壽市郞君　只今上程ニナッテ居ル所
  ノ產繭處理統制法案ニ付キマシテ、成ベク
  簡單ニ質疑ヲ致シテ見タイト存ジマス、私
  ガ問ハントスル所ノ大要ハ、只今山本議員
  ニ於テ大半ハ盡サレテ居リ、其質問タルヤ
  悉ク同感デアリマスルガ、御答ニ至ッテハ、
  私ハ之ヲ一ツトシテ承知スルコトガ出來ナ
  イノデアリマスルカラ、洵ニ失禮デハアリ
  マスルガ、更ニ私ハ之ヲ蒸返スト云フヤウ
  ナ嫌ヒガアルカハ知リマセヌケレドモ、是
  等モ織込ンデ質疑ヲ試ミテ見タイト思ヒマ
  スカラ、前以テ御斷リヲ申上ゲテ置キマス
  (拍手)
  〔議長退席、副議長著席〕
  本案ノ內容ヲ通覽致シマスト、本案ハ只今
  矢張農林大臣ノ仰セラレタ乾繭ヲ奬勵シテ、
  之ヲ團體的ニ處理セシメ、養蠶家ノ爲メ、
  將又製絲家ノ爲ニ、繭ノ標準價格ヲ確定セ
  ントスルコトガ案ノ骨子デアリマスルケレ
  ドモ、果シテ此法律ニ依ッテ、蠶絲界ノ安定
  ガ出來ルカト、私ハ大ニ疑ヲ有ツ者デアリ
  マス、本案ハ一、乾繭ニ依ル賣買取引、卽チ乾
  繭取引、二一ガ、收繭前爲シタル契約ニ基キテ行
  フ生繭ノ賣買取引、卽チ是ハ特約取引デア
  リマス、三ガ、產業組合又ハ產業組合聯合
  會ニ依リ行フ製絲加工、卽チ組合製絲デア
  リマス、四ガ、前各號ニ揭グルモノヽ外勅
  令ヲ以テ定ムル方法、其他ニ地方特別ノ狀
  況云々ト云フコトニナッテ居リ、乾繭取引ノ
  强制デハナイ、自治的强化ニ俟ツト云フコ
  トデアリマス、ソレデアリマスガ、政府ノ
  最初此案ヲ提案セザル者ノ意思ハ、世間傳
  フル所ニ依リマスルト、乾繭取引ヲ强
  制シテ、生繭取引及特約取引、組合製
  絲ヲ除クノ外ハ絕對禁止ノ御意思デアッタ
  ヤウニ、世間デハ言觸ラシテ居ッタノデアリ
  マス、果シテ今日デモ理想トシテ農林大臣
  ハ、其御意思デアルカト云フコトヲ、先以
  テ私ハ承リタイノデアリマス
  只今申上ゲマシタ如キ御意思デアルノ
  カ、ソレカアラヌカ、本案ハ乾繭强制デハナ
  イ、養蠶實行組合ノ自治的强化ニ俟チ、是
  ガ普及徹底ヲ期スルノデ、生繭取引モ絕對
  禁止デナイト言ハレルケレドモ、此法案ニ
  依リマスト、養蠶業者ハ總テ養蠶實行組合
  ニ當然加入セザルヲ得ザルコトヽナッテ居
  リマス、組合ノ自治的統制ニ對シテハ、政
  府ハ必要ニ應ジテ統制命令ヲ發動スルノミ
  ナラズ、一面ニハ補助、助成、奬勵ノ施設
  ニ依リ、乾繭取引ヲ促進セラレツヽアルニ
  於キマシテハ、法律デハ强制セヌト稱セラ
  レテ居リマスケレドモ、事實上間接的ニ强
  制ヲスルト云フコトヽ、何等擇ブ所ガナイ
  ト私ハ思フノデアリマス(拍手)加之只今大
  臣ノ御答ニ、左樣ナ强制的壓迫-官權ヲ
  利用スルトカ、或ハ地方的官權ヲ以テ、別
  ニ地方制度デ以テ縛ルトカ、壓迫スルト云
  フヤウナコトハ、斷ジテヤラナイト言ハレ
  テ居リマスケレドモ、現ニ此頃各地ニ於テ
  ヤリツヽアルノデアリマス、或ル地方ニ於
  キマシテハ、縣ノ係官ヤ技手ガ手分ケデ乾
  繭組合ノ設立ヲ-此法律ヲ提出セントス
  ル時ニ、多數ノ反對ガアリマシタガ爲ニ、
  此反對ヲ壓迫シ、抑ヘル一ノ手段ト致シマ
  シテ、各縣ノ縣屬ヲ以テ、各養蠶實行組合
  ニ出張セシメ、サウシテ言フコトニハ、此
  乾繭組合ヘ加入セザル養愚實行組合ハ不良
  組合トシテ、將來助成金モ補助金モ與ヘ
  又、加入スレバ組合ノ加入金ハ支出セナク
  テモ、助成金ヲ以テ振替ヘテヤルカラ加入
  セヨ、斯ウ云フ勸メ方ヲシテ居ル所ガ、各
  地ニアルコトヲ私ハ耳ニシタノデアリマ
  ス(拍手)耳ニシタドコロデハナイ、現在是
  ハ確ニアルノデアル、斯樣ナコトヲ致シマ
  シテ、洵ニ縣ノオ役人カラハ、乾繭組合ニ
  加入セヨト言ハレルガ、此方デハ金ガ無
  ク、乾繭組合ヘ加入シタナラバ、末ハ如何
  ナルモノニナルカ、オ隣リノ乾繭組合ガ今
  差押ヲ喰ッタリ、或ハ疑獄ヲ拵ヘタリシテ、
  二進モ三進モ動カヌヤウナ乾繭組合モ目ノ
  アタリ見テ居ル、此實行組合ニハ、入ルニ
  ハ怖クテ入レズ、入ラヌト云ヘバ助成金ハ
  ヤラヌゾ、補助金ハヤラヌソ、入レ〓〓(笑
  聲拍手)金ハ要ラナイ、ソレハ振替ノ金
  デ助成金ヲ與ヘテヤルト云フ、洵ニ牡丹餅
  デ頰ベタヲ叩カレルヤウナ、心持ノ好イモ
  ノヲ持ッテ來マスケレドモガ、迂ッカリ之ニ
  農村ニ於テハ加入スルコトガ出來ナイ爲
  ニ、態々上京ヲ致シマシテ、慥カ農林大臣
  ノ所ヘハ是等ノコトヲ陳情ニ參ッテ、如何致
  シタラ宜シウゴザイマスカ、アナタノ方ノ
  御命令デアルカト、斯ウ云フ者マデ來タト
  云フコトヲ私ハ仄カニ聞及ンデ居ルノデア
  リマス、然ルニモ拘ラズ、今玆ニ農林大臣
  ハ演壇ニ立ッテ、左樣ナコトハ斷ジテナイ
  ナドヽ仰シヤイマスケレドモガ、確ニアッタ
  ノデアリマス(笑聲)サウ云フ譯デアリマス
  ルカラ、恐ラク是等ノコトハ、農林大臣ハ
  御承知ノナイ筈ハナイト思フノデアリマ
  ス、法律ヲ出ス時ニハ、自治的强化ヲ唱
  へ地方廳ニ言付ケタ、指揮命令ダト言ヘ
  バ語弊ガアルカモ知レナイガ、ソレハ地方
  ノオ役人ガ本省ニ對スル忠義立テノ爲ニ、
  極力賴ミモセヌ、命令モシナイコトヲヤッタ
  ニ違ヒハアリマスマイケレドモガ、兔ニ角
  地方廳ニ於テハ、强制的ニヤッテ居ルコト
  ハ事實デアリマス、斯樣ナコトハ宜シクナ
  イノミナラズ、斯ノ如キハ官紀紊亂ノ甚シキ
  モノデアルト云フコトヲ、私ハ眞面目ニ斷
  ズル者デアリマス(笑聲、拍手)岡田首相ノ
  言ハルヽ民意ヲ暢達スル所ノ内閣ナラバ、
  宜シク民意ノアル所ヲ容レラレ、自分ノ手
  デ生產シタ所ノ繭ハ自分デ處理出來ルヤウ
  ニ-ソレヲ自治的强化ト云フ名ノ下ニ、
  一面カラ壓制的ニ、壓迫的ニ之ヲ抑ヘ付ケ
  テ、自由ニ自分ノ品物、生產物ガ販賣ノ出
  來ナイト云フヤウナコトハナイ筈デアリマ
  スルカラ、斯樣ナコトハ、只今申上ゲマスル
  眞ニ民意ヲ暢達スルノ御意思ガアルナラ
  バ、宜シク我ガ國民ノ思フ儘ニ自由ニサシ
  テ戴クコトガ、私ハ眞ノ民意ヲ暢達スルコ
  トデアルト思フノデアリマス(笑聲、拍手)
  次ニ是モ山本君カラ一寸御尋シタコトニ
  關聯ヲシテ居リマスガ、此生繭ハ繭ノ出盛
  リ季節ニ、是マデノ如クニシテ置ケバ、自
  由販賣ニ依ッテ相當ノ値段デ取引ガ出來タ
  ノデアリマス、併シ此法律ガ施行ノ曉ニ、
  乾繭ニシテ持ッテ居タ後ニ、相場ガ益ニ暴落致
  シマシタ時ニハドウナルデアリマセウ、無
  イトハ限ラヌノデアリマス、斯ク申シマス
  ルト、暴落ガアレバ暴騰スル時ガアルカラ、
  ソレハ「プラス、マイナス」デ宜イヂヤナイ
  カ、斯ウ言ハレルデアラウケレドモガ、ソ
  レガ私ハ最モ危險千萬ナルコトデアルト思
  フノデアリマス、百姓ニ斯ウ云フ相場ガ來
  ルカラ、上ルノヲ樂ンデ乾繭ニシテ、品物
  ヲ持ッテ、金ヲ借リテ苦ンデ居レト云フコト
  ニナル、ソレハ悠長ナ、歐洲戰亂時代ノ浮
  イタ〓〓ノ時代デアッタナラバソレデ宜イケ
  レドモ(笑聲)今日農家ハソレコソ繭ヲ取上
  ゲマシテ、直グニ之ヲ金ニ換ヘテヤラネバ、
  其日ノ生活ガ出來ナイト云フ狀態ニナッテ
  居ル、實ニ數年前ヨリ不況續キデアリマシ
  テ、農家ノ疲弊困憊ハ其極點ニ達シ、殊ニ
  中產階級以下ノ養蠶家ハ、繭ガ出來レバ只
  今申上ゲル通リニ、モウソレヲ書入レニシ
  テ居ッテ、之ヲ賣ッテ金ニシタナラバ、何々
  何々ト云フコトデ、チヤント豫定ガアッテ、
  ソレデモ尙ホ不足デ、二進モ三進モ動カヌ
  コトニナッテ居ルケレドモガ、兔ニ角此繭ノ
  賣上金ヲ以テ書入レニシテ居ルモノガ、之
  ヲ乾繭ニシテ、今ノ相場ヨリハ高ク賣レル
  カラ樂ミニシテ持ッテ居レ、金ヲ貸スカラト
  云フガ、金利モ掛ルシ、倉敷モ掛ルモノヲ、
  之ヲ堪ヘテ居レルモノデハナイ、堪ヘテ居
  ルモノハ田舍ノ樂ナ人達デアリマス、必ズ
  今日ノ農村ノ八分ハ、後ニ五圓ニナルヨリ
  ハ、今四圓ニナルト言ヘバ、末ノ百ヨリ是
  ノ五十デ、必ズ生繭ヲ賣ルコトニナルノデ
  アリマス(拍手)此點ニ於テハ先程モ大臣
  カラ御答ガアリマシタケレドモ、私共ハド
  ウモ所感ヲ異ニシテ居リマスカラ、尙ホ一
  ツ御尋ヲ致ス次第デアリマス、又乾繭ト生
  繭ヲ比較致シマスルト、乾繭ヨリ生繭ノ方
  ガ、絲量ノ步留リノ良イコトハ勿論デアリ
  さく、又乾繭ヨリ生繭ノ方ガ解舒ガ良イカ
  ラ、製経家ノ工費ヲ低減スル、低減スレバ
  卽チソレダケ勞個賃銀ナリ利谷ガ生レテ來
  ル、ソレダケハ詰リ裕リガ出來テ來ルカラ、
  農村ノ繭ニ響イテ來ルカ、或ハ女工ノ工賃
  ニ響イテ行クカ、何レカニ裕リガ付クト云
  フコトニナルノデアリマス、工費ハ成ベク
  低減シ、生產費ハ成ベク低下ニスルノガ、
  今日ノ私ハ急務デアルト思フノデアリマス、
  ソレヲ考ヘマシテモ今申上ゲマスル通リ、
  繭ノ解舒ガ良イカ惡イカト云フ上デ、乾繭
  ト生繭ノ差、乾繭ヨリ生繭ノ方ガ、遙ニ絲
  ノ品質光澤等ニ於キマシテモ良好デアルト
  云フコトハ、是ハ爭ハレヌ問題デアリマス、
  其結果ハ光澤或ハ絲質ノ非常ニ良イモノガ
  出來マスレバ、ソレダケ價格ガ高ク賣レル
  譯デアリマスルカラ、是ハ三ツ兒デモ分ッ
  タ問題デアリマスガ、何レノ點カラ見マシ
  テモ、生繭ガ乾繭ニ優ッテ居ルト云フコトハ
  論ズル餘地ハナイノデアリマス、デ乾繭ニ
  スルヨリモ、寧ロ冷シテ冷凍繭ニスルノガ
  理想デアリマスルケレドモガ、科學ノ進ン
  デ居ル今日ト雖モ、マダ此〓究ガ足ラナイ
  ノデアリマスルガ、多少ヤッテ居ル所ハアル
  ヤウニ聞及ンデ居リマスルガ、設備ト費用
  等ノ點ニ於キマシテ引合ハヌトノコトデア
  リマスガ故ニ、是ハ今一般ニハ行ッテ居リマ
  セヌ、兔ニ角此點カラ見マシテモ、乾繭ヨ
  リ生繭ガ良イト云フコトハ明デアリマス、
  サリトテ生繭ノミニ依ルコトガ出來ナイカ
  ラ、是マデドウシテ居ッタカト云フト、諸君
  御承知ノ通リ、是マデニ乾繭ノ裝置ハ何レ
  モ製経家ガシテ居ルカ、繭問屋ガシテ居ル
  ノデアリマス、ソレデアリマスカラ、以上
  述べマシタ乾繭ト生繭ノ利害得失カラ考ヘ
  マシテモ、出來得ル限リハ生繭デ生絲ニス
  ル方ガ有利デアリ、又理想的デアルト云フ
  コトハ、只今申上ゲタヤウナ理由ニ依ッテ
  明デアルト思フノデアリマス、ソレヲ無理
  ニ乾繭々々、乾繭ニ非ザレバト云フコトハ、
  私ハドウシテモ受取レヌト斯ウ思フノデア
  リマス、是等ニ對シテノ乾繭ト生繭ノ比較
  ノ點カラ考ヘマシテ、當局ハ何ト御考ニナ
  リマスカ、是モ承リタイノデアリマス
  ソレカラ生絲ハ、今日ハ昔ト違ヒマシテ、
  以前ハ輸出生絲ガ大半ヲ占メテ、國用向ハ
  ホンノ僅カ屑繭デ取ルヤウニナッテ居リマ
  シタケレドモガ、今日デハソレガ國用向ガ
  段々ト殖エテ參リマシテ、製絲家ノ釜數ニ
  於テモ、製絲ノ量ニ於キマシテモ、一寸數
  字ヲ申上ゲマスガ、國用向ノ製絲ハ百釜
  以上ノモノガ釜數デ一万八千七百三、百釜
  以下ガ九万六百六十四、座繰製絲ガ六万四
  千八百二、合計十七万四千有餘ノ釜數デア
  リマス、ソレデ生產高ガ幾ラデアルカト申
  シマスルト、約一千三十九万貫デアリマス
  ガ、一面輸出生絲ハ、釜數ガ十六万八千四百
  二十三釜デ、生產高ガ一千六十万貫デアリ
  マスカラ、是ハ昭和七年ノ統計ニ依ッテ稍〓、
  相半バシテ居ルノデアリマス、今日九年度ノ
  統計ヲ私ハ詳シク取ッテ見マセヌケレドモ、
  察スルニ九年度ノ統計ヲ見マシタナラバ、
  國用生絲ハ總額ノ六割以上ニナッテ居ルト
  當局者モ言ッテ居リマスカラ、ソレニ違ヒナ
  イト思フノデアリマス、此國用製絲家ハ、
  生繭デ挽ケル限リハ製造シテ居リマス所
  ノ、所謂細カイ製絲家デアリマス、中小製
  絲家ガ、多ク國用絲ヲ挽イテ居ルノデアリ
  マス、ソレ等ハドウ云フヤウニ之ヲヤッテ居
  ルカト云フト、只今申上ゲル通リ生繭デ出
  來ル限リハ製造シ、ソレカラ次ニハ乾燥ガ
  三分乾燥、五分乾、八分乾、ソレカラ全乾
  トナルノデアリマスケレドモ、其絲ヲ取リ
  マス日限ノ先ヲ見計ヒマシテ、三分乾燥デ
  ヤッテ居リ、又次ニハ五分乾燥デヤルト云フ
  ヤウニ、手心デ今迄ハ洵ニ理想ニ適ッタヤウ
  ニ是等ノ製絲ヲヤッテ居ルノデアリマスケ
  レドモ、今囘此法案ガ施行サレマスト、是
  等ノ小口取引ヲシテ居ル製絲家ハ、大口取
  引デナケレバナラヌカラ、困難ドコロデハ
  ナイ、中小製絲家ハ廢業ノ已ムナキニ至ル
  デハアルマイカト私ハ思フノデアリマス、
  是等多數ノ中小製絲家及繭ノ仲買人等ニ至
  リマシテハ、今申上ゲマスル乾繭强制デハ
  ナク、ソレハ詰リ養蠶實行組合ノ自治的强
  化ニ俟ツモノデアルカラ、今迄ト左程變リ
  ハナイト當局ハ言ハレルカ知ラヌケレド
  モ、先キ〓〓ハ私ガ申上ゲマシタ通リ、裏
  面ニハ强制的ノコトニナッテ居リマスカラ、
  自然ニ是ハ乾繭ト云フモノニナルベキモノ
  ト私ハ信ズルノデアリマス、ソレデアリマ
  スカラ斯樣ナ人達、多數ノ業者ガ失業致シ
  マスガ、是等ニ對シ失業シタ場合ニハ、何
  カ政府ニ於テ補償トカ、或ハ轉業ノ途ヲ開
  ケル案ヲ御有チニナッテ居ルカ、如何ナル御
  考デアルカ御所見ヲ承リタイノデアリマ
  ス、尙ホ製絲界ノ對策ハ、一面ニ輸出貿易
  生絲ヲ國際商品トシテ考ヘネバナラヌト同
  時ニ、又今申上ゲマシタ通リ國用向ノ生絲
  モアリマスカラ、是モ考ヘネバナラヌノデ
  アリマス、何レモ是等ニ付テハ只今申上ゲ
  マシタ通リ、品質モ向上セシメ、サウシテ
  價格ヲ廉ニシ、人絹ト大ニ對抗スベキ政策
  ヲ樹テヽ行カナケレバナラヌノガ、此蠶絲
  對策ノ根本政策デアリマス、然ルニソレヲ
  講ゼズシテ、唯乾繭統制、乾繭トバカリ言ツ
  テ、果シテ是等ガ事實始末ガ付イテ行クカ、
  當局者ハ如何ナル御考デアルカト云フコト
  モ、併セテ承リタイノデアリマス
  ソレカラ次ニ御尋致シマスルハ、山本君
  モ一寸御尋ニナッタヤウデアリマシタガ、組
  合製絲ハ殆ド是迄失敗ニ終ッテ居リマス、群
  馬縣ノ群馬社ノ如キ、アノ大組合製絲ガ、
  製絲界ニ於ケル所ノ最モ有爲ナル將來アル
  所ノ社長ヲ悲慘事ニ陷レテシマッタヤウナ
  コトモアリマス、其他刑事問題ヤ、或ハ民
  事問題ガ起ッテ居ッテ、サウシテ破產狀態ニ
  陷ッテ居ルモノガ澤山アルノデアリマス、此
  法律ヲ見マスト、是等ノ組合製絲ヲ御認メ
  ニナッテ、尙ホ奬勵シツヽアル、此組合製絲
  ノ一條項ガ認メラレテ居ル-認メラレル
  ドコロデハナイ、尙ホ奬勵セントスル所ノ
  此案ヲ見マシテハ、洵ニ私ハ思ヒ半バニ過
  グルモノガアルノデアリマス、ソレトモ今迄
  ノ組合製絲ノ取締指導デナク、大臣ハ大ニ
  改善シタル所ノ、何カ新名案ヲ御立テニナツ
  タ、御考ニナッタト云フコトデアルカ、是等
  ノ御所見ヲ承リタイノデアリマス、世間デ
  ハ此案ガ通過スレバ、只今申上ゲマスル所
  ノ組合製絲ダトカ、或ハ乾繭組合ダトカ言
  ウテ、幾十万ノ負債ヲ脊負ヒ込ンデ、二進モ
  三進モ動ケナイ所ノ、是等ノ乾繭組合ヤ組合
  製絲ガ、此穴埋ヲスル約束ガ旣ニ立ッテ居ル
  ナドヽ云フヤウナ噂サヘモアルノデアリマ
  ス、私ハ斯ノ如キコトヲ信ズル者デハアリマセ
  ヌケレドモ、是等ニ對スル政府ノ御所見ヲ承
  リタイノデアリマス、尙ホ繭ノ小口取引ガ出來
  ナクナルカラ、隨テ大製絲家ハ特約取引ガ
  出來マスケレドモ、中小製絲家ト繭ノ仲買人
  ハ、今申上ゲマスル通リ、生活難ニ陷ルコ
  トハ火ヲ睹ルヨリ明デアリマス、之ニ對シテ
  ノ御所見ハ先程承リマシタケレドモ、是
  等ハ今日續々ト上京シテ、此案ノ如何ニナ
  ルカヲ氣遣ッテ、各縣カラ代表ガ出テ來テ、
  人心恟々トシテ居リマス、思想問題ト致シ
  マシテモ、地方ノ是等ノ方々ノ落付クヤウ
  ナコトヲヤラネバナラナイケレドモ、此法
  案デハ、私ハ必ズヤ是等ノ人達ガ危急存亡、
  非常ナ困難ニ陷ル時ガ來ルデアラウト思ヒ
  マス、是ハ先ニ私ガ申上ゲタコトヽ重複ス
  ルヤウデアリマスルケレドモ、宜シク御考
  慮アッテ御答辯ガ願ヒタイノデアリマス
  終リニ臨ミマシテ、矢張山本君ノ御間ニ
  ナッタ生絲販賣統制デアリマス、之ニ付テ私
  モ一言述ベタイノデアリマス、根本的蠶絲
  ノ對策ト致シマシテハ、是非統制ガ必要ダ
  ト致シマスルナラバ、產繭處理統制ト同時
  ニ、生絲販賣統制モ行ハネバナラナイト云
  フ、私ハ山本君ト同ジ意見ヲ有ッテ居ルモ
  ノデアリマス、繭ノ相場ガ決ッテ生絲ノ値
  段ガ決ルモノデアレバ、ソレハ勝手ニ此乾
  繭處理統制ヲドン〓〓先ヘ進マセテ構ハヌ
  ノデアリマスケレドモ、生絲ノ値段ニ依ッテ
  繭ノ相場ガ立ツノデアリマスカラ、產繭處
  理統制案ト此生絲販賣統制トハ車ノ兩輪ノ
  如ク、政府ハ兩案同時ニ並行シテ提出セネ
  バナラナイ筈ダト私ハ思フノデアリマス(拍
  手)然ルニ此案ヲ提出セズシテ、別々デモ何
  等差支ハナイト云フ、今大臣ノ御答デアリ
  マシタケレドモ、ソレハ意見ノ相違ダト言
  ヘバソレマデヾアリマスケレドモ、私共ハ
  想フノニ、今申上ゲタ通リ是非共此生絲販
  賣統制案ガ出マセネバ、乾繭處理ノ統制案
  ヲ私共ガ議シテモ-幾分カ、無イヨリハ
  有ルニ勝ルカハ知ラナイケレドモ、只今申
  上ゲマスル通リ、一面ニハ繭ノ仲買業者ヲ
  多數生活難ニ陷レ、中小製絲家ヲ生活難ニ
  陷レ、甚シキハ廢業ノ已ムナキニ至ラシメ
  ルト云フヤウナ、危險千萬ナ此法案ヲ何ヲ
  急イデヤルカ、ソレモ反對モナク、平々凡
  凡デ、大ニ百姓ガ歡迎ヲシテ居ルトカ、或
  ハ製絲家ガソレデモ差支ハナイト云フ時ナ
  ラバ率ザ知ラズ、今日ハ實ニ白熱化シタ反
  對ノ聲ニ充チ滿チテ居リマスル時ニ當ッテ、
  之ヲ是非共提案シ、決定セネバナラナイト
  云フ-一面ノ橫濱ノ、資本家主義ノ大キ
  ナ商人ヤ、神戶ノ貿易商ノ大キナ人ノ爲ニ
  ハ、大臣ト言ヒ、政府ノ大官ガ諒解ヲ求メ
  テ、是等ノ人ニハ統制ヲスルコトノ案ハ出サ
  ナイト、斯ウ云フコトガ世間デ傳ヘラレテ
  居ルノデアリマスルカラ、是ハ是非共貿易業
  組合ノ自治ニ俟ツトカ、或ハ是等ノ人々ノ意
  見ヲ諮フトカ云フコトデハ、是デハ私ハ生
  溫イ話デアルト思フノデアリマスカラ、是
  ハ私ハ農林大臣、總理大臣ニ、之ヲ提出ス
  ルト云フ御確信ガアルカ、ヤハリ農林大臣
  ノ仰セラレタヤウニ、後デモ宜シイ云フヤ
  ウナ生溫イ御意見デアルカ、一ツノ內閣ニ
  於テ意見ヲ異ニスルヤウナコトハアリマス
  マイケレドモ、私ハ折入ッテ責任ヲ有ッテ總
  理大臣ニ、此提案ヲ此議會中ニシテ貰フト
  云フコトニ付テノ御所見ヲ承リタイノデア
  リマス、尙ホ質疑ノ點ハ多々アリマスルケ
  レドモ、細カク涉リマスルカラ、私ハ是デ
  打止メマスケレドモ、以上述べマシタ所ノ
  數項ニ付キマシテ、明確ナル御答辯ヲ願ヒ
  タイノデアリマス、御答辯ノ如何ニ依リマ
  シテ、再ビ又質問ヲ致シマス(拍手)
  〔國務大臣山崎達之輔君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006713242X02019350228&spkNum=53

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• 054・山崎達之輔

  ○國務大臣(山崎達之輔君)　近藤君ニ御答
  申上ゲマス、第一ハ生繭ノ取引ヲ禁止スル
  ト云フヤウニ傳ッテ居ッタガ、サウデアル
  カ、斯ウ云フ御意見デアリマシタガ、左樣
  ナコトハゴザリマセヌ、先刻提案理由ノ際
  ニ詳細ニ申上ゲタ通リデアリマス、第二ニ
  ハ實際上强制ヲシテ居ル地方ノ實例ガアル
  ヂヤナイカ、斯ウ云フ御趣意デアルヤウデ
  アリマスルガ、私共ハ乾繭ノ奬勵助長ハ、養
  蠶業ノ爲ニハ善イ事ダト考ヘテ居ルノデア
  リマス、隨テ之ヲ奬勵シ助長シテ行クト云
  フコトハ、何等差支ハゴザリマセヌケレド
  モ、併ナガラ今囘ノ法制ノ建前ハ、法ノ力
  ヲ以テ强制スルト云フコトデハナイノデア
  リマスノデ、若シ此法ノ精神ニ反スルヤウ
  ナ取扱方ヲ地方廳デヤリマシタ場合ニハ、
  相當ノ監督ヲ加ヘル考デアリマス、先刻近
  藤君ノ御述べニナリマシタヤウナ嫌ノアル
  コトモ、實ハ絕對ニナイトハ申シマセヌ、ソ
  レ等ノ地方ニ對シマシテハ、旣ニ相當ノ注意
  ヲ致シテアルノデアリマス、ソレカラ近藤
  君ハ、一體繭ノ處理ハ個人ノ自由意思ニ委
  セルガ宜イヂヤナイカト、斯ウ云フ御考デ
  ゴザリマスガ、先程申上ゲマシタヤウニ、
  日本ノ生絲ノ外國ニ於ケル販路ト云フモノ
  ガ、以前ノヤウニ旺盛ナル時代デアレバ、
  別ニ大シテ苦勞ヲスル必要ハナイノデアリ
  マス、併ナガラ我ガ蠶絲業ノ現狀及將來
  ハ、決シテ樂觀スベキモノデハナイ、此狀
  態ニ適應スルガ爲ニ、出來得ル限リ養蠶業
  ニ付テモ、一面ニハ生產費ノ低下、一丁、
  ハ繭ノ處理ノ改善、其他出來得ルダケノ施
  設ヲ講ズルノ已ムヲ得ザルニ迫ッテ居ルノ
  デアリマス、此點ヲ一ツ能ク御諒解ヲ願ヒ
  タイノデアリマス、ソレカラ乾繭ノ取引ト
  スレバ、詰リ金ガ早ク入ラヌカラ、養蠶家
  ハ困ルヤウニナリハセヌカト云フ御趣意デ
  アリマス、乾繭ノ奬勵ハ、決シテ繭ノ賣捌
  ノ時期ヲ制限スル意味デハナイノデアリマ
  ス、唯生繭ノ取引デアリマスレバ、或ハ十
  日位ノ間ニ是ガ非デモ處分シナケレバナラ
  ヌト云フ此狀態ヲ、之ヲ救ウテ行クノガ乾
  繭奬勵ノ精神デアルノデアリマシテ、乾繭ニ
  スルカラト言ッテ、處分ノ時期ヲ制限スルト
  云フ考方ハ無論ナイノデアリマス、現ニ從來
  ノ實例デ考ヘマシテモ、生繭取引ノ場合ト
  乾繭取引ノ場合ト、何レガ養蠶農家ニ有利
  ナ結果ヲ示シテ居ルカト云フコトハ、秋
  委員會ニ於テ數字ニ當リマシテ御說明ヲ申
  上ゲタイト思ヒマス、ソレカラ乾繭ハ生繭
  ノ特長ヲ失フ、又絲步或ハ解舒ノ關係ニ於
  テモ、生繭ノ方ガ優良デアル、斯ウ云フ御
  意見ノヤウデアリマシタガ、是ハ旣ニ科學
  的ニ十分ノ〓究ガ出來テ居ルノデアリマ
  ス、何レ委員會等ニ於キマシテ、表ヲ以テ
  御高覽ヲ願フコトニ致シマスガ、絲步ノ成
  績モ、亦解舒ノ成績モ、相當有利ノ成績ヲ
  示シテ居リマスコトハ、是ハ科學者ノ〓究
  ニ依ッテ明瞭ト相成ッテ居ルノデアリマス、
  ソレカラ國用絲ノ關係デアリマスガ、固ヨ
  リ國用絲ノ中ノ特殊ノモノ、是等ニ對シマ
  シテハ、提案ノ際ニ申上ゲマシタヤウニ、
  出來ルダケノ例外ハ認メル、例外ノ規定ヲ
  設ケテ、決シテ無理ノナイヤウニ致スト云
  フコトハ、提案ノ時ニ申上ゲタ通リデアリ
  マス、尙又中小製絲家等ニ於キマシテハ、或
  ハ必要ガアリマシタ場合ニハ、今囘ノ蠶絲
  業組合法改正ニ依ッテ出來マスル共同施設
  ノ組合ヲ拵ヘルナリ、或ハ又必要アル場合
  ニ於テハ、特約等ノ方法モアル譯デアリマ
  スノデ、決シテ中小製絲家ガ御心配ニナル
  コトハナイノデアリマス、殊ニ繭ヲ賣ルコ
  トノ確實ナルコトハ、却テ私ハ從來ヨリモ
  中小製絲家ニ取ッテモ非常ナ便宜デアル、殊
  ニ中小製絲家ガ從來生繭取引ニ於テ、一時
  ニ多額ノ資金ヲ要シテ居ッタ、其金融上ノ不
  便モ、今囘ハ除去セラレルノデハナイカト、斯
  樣ニ考ヘテ居ルノデアリマス、ソレカラ繭絲
  商ノ諸君ノ關係ノコトハ、是ハ先刻山本君ノ
  御間ニ對シテ御答ヲ申上ゲマシタヤウニ、
  私ハ十分是等ノコトヲ考慮ニ加ヘマシテ、
  今囘ノ法制ハ立案致シテ居ルト云フコトヲ
  御諒解ヲ願ヒタイノデアリマス、次ハ組合
  製絲ノ成績ハ非常ニ不良デアルガ、之ヲ奬
  勵スルノデアルカト云フ御趣意デアリマス
  ガ、是ハ組合製絲ヲ奬勵スル意味デハゴザ
  リマセヌ、先程山本君ニ御答ヘ申上ゲマシ
  タヤウニ、組合製絲ハ寧ロ區域其他ニ於テ
  整理ヲ要スル點ガアルノデハナイカ、其整
  理ヲ奬勵致シテ行クト云フ考デアル譯デア
  リマスガ、併ナガラ組合製絲ハ產繭處理ノ
  一ツノ形態トシテ之ヲ認メルト云フコトハ
  同一デアリマスカラ、今囘ノ法律ノ第一條
  ニ之ヲ揭ゲタ譯デアリマス、次ハ小口取引
  ノコトデアリマスガ、今囘ノ法律ニ依ッテ
  決シテ小口取引ノ禁止ハ致シテ居ラヌノデ
  アリマス、團體取引ヲ强制スル、左樣ナ立
  法ハ致シテ居ラヌノデゴザリマス、併ナガ
  ラ將來ノ經濟機構ノ問題トシテ考ヘレバ、
  養蠶農民ガ個々ニ自分ノ生產物ヲ捌キマス
  ルヨリモ、出來得レバ團體的活動、卽チ共
  同ノ經營ニ依ッテ其生產物ヲ捌クト云フ、此
  形態ノ方ガ養蠶家ノ爲ニハ有利デアラウト
  ハ信ジマスガ、決シテ小口取引ヲ禁止致ス
  ト云フ建前ニハ相成ッテ居ラヌノデアリマ
  ス、最後ニ生絲販賣ノ統制トノ關係デアリ
  マスガ、生絲販賣統制ハ固ヨリ必要デア
  ル、私ハ決シテ之ヲ輕視致シテ居リマセヌ、
  必ズヤ解決シ得ルト私ハ自信ヲ有ッテ居ル
  ノデアリマス、併ナガラ是ガ產繭處理法案
  ト同時デナケレバナラヌト云フ御議論ニ
  ハ、如何ニシテモ贊成致シ兼ネルノデアリ
  マス、現ニ原蠶種管理ノ問題ハ、一昨年ノ
  議會ニ於テ解決セラレタ、總テノ問題ガ同
  時デナケレバナラヌト云フコトハ、或ル場
  合ニ於テハ解決全體ヲ遲ラスト云フ、不利
  益ノ伴フコトモ考ヘテ置カナケレバナラヌ
  ノデアリマス
  (「總理大臣ハドウシタ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006713242X02019350228&spkNum=54

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• 055・植原悦二郎

  ○副議長(植原悅二郞君)　御答辯ガアリマ
  スカ-內閣總理大臣
  〔國務大臣岡田啓介君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006713242X02019350228&spkNum=55

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• 056・岡田啓介

  ○國務大臣(岡田啓介君)　近藤君ニ御答致
  シマス、私ハ山崎農林大臣ト全ク同意見デ
  アリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006713242X02019350228&spkNum=56

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• 057・近藤壽市郎

  ○近藤壽市郞君　簡單デアリマスカラ、此
  席ヨリ御許シヲ願ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006713242X02019350228&spkNum=57

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• 058・植原悦二郎

  ○副議長(植原悅二郞君)　許可致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006713242X02019350228&spkNum=58

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• 059・近藤壽市郎

  ○近藤壽市郞君　只今總理大臣ノ御答ハ、
  此生絲販賣統制ニ對スル案ヲ出スカ否ヤト
  云フコトニ付テ、農林大臣ノ御答ト同一デ
  アルト言ハレタ、同一ダト致シマスト、今此
  處デ述ベラレタノガ、强チ產繭處理統制案
  ト同時デナクテモ宜シイト云フ御意見ノヤ
  ウデアル、私共ハ其處ガ意見ガ違フノデア
  リマス、併シ是レ以上爭ヒマシテモ致方ナ
  イ、私共ハ此蠶絲對策ヲ解決致シマスルニ
  ハ-解決ト言ウテモ直チニ解決ハ出來マ
  スマイケレドモ、兔ニ角之ヲ審議致シマス
  ルノニハ、兩案揃ヘテヤラナケレバ-ソ
  レハ何モ問題ノナイ時ナラバ、今農林大臣
  ノ言ハレタヤウナコトデ宜シイケレドモ、
  今日ハ農林大臣ノ言ハレルヤウナ議論モ國
  民ノ中ニハアルガ、反對ノ議論モアルノデ
  アリマス、ソレデアルカラ統制ノ爲ニハ兩
  方揃ヘナケレバイケナイ、斯ウ云フノガ私
  共ノ意見デアリマスケレドモ、是ハ議論ニ
  ナリマスルカラ、後日委員會カ何カノ機會
  ニ讓ルコトニ致シマシテ省キマス、サウシ
  テ生絲ノ步留リトカ、或ハ乾繭ト生繭トノ
  相違ハ、昔ト違ッテ今日ハ科學ノ上カラ違ヒ
  ハナイト言ハレルケレドモ、ソレハ違ヒナ
  イダケノ〓究ノ積ンダヤリ方ヲシテ居ル一
  部分ハ宜イカモ知レナイケレドモ、今日ノ
  日本ノ製絲界、蠶絲界ノ實情カラ言ヒマス
  ルト、決シテ農林大臣ノ御答ニナッタヤウ
  ナコトバカリデハナイノデアリマス、併シ
  是モ意見ガ違フト言ヘバ致方アリマセヌカ
  ラ委員會ニ讓リマス、ソレカラ小口取引ノ
  コトハ、何等此法律ニ禁止ハナイ、禁止ハ
  出來ナイト言ハレマスガ、自然ノ結果小口
  デ買フコトガ出來ナイコトニナルノデアリ
  マスカラ、ソレヲ御聽キシタノデアリマ
  ス、併シ是モ亦此以上追窮致シマシタ所
  ガ、ソレハ成ルヤウニヤッテ見テ、而シテ後
  ニ現レタモノヲ見ルヨリ外、結論ハ出ナイ
  ノデアリマスカラ、私ハ萬事此邊デ打止メ
  マシテ、委員會カ何カノ機會ニ於テ尙ホ中
  上ゲルコトニシタイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006713242X02019350228&spkNum=59

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• 060・植原悦二郎

  ○副議長(植原悅二郞君)　次ノ通〓者〓水
  留三郞君
  〔〓水留三郞君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006713242X02019350228&spkNum=60

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• 061・清水留三郎

  ○〓水留三郞君　私ハ產繭處理統制法案ニ
  付キマシテ、主トシテ農林大臣、又專門的
  ニ亙リマスル部分ヲ、井野蠶絲局長カラ答
  辯ヲ煩シタク思フノデアリマス、先程山本
  君ノ質疑ニ對シマシテ、農林大臣ノ答辯セ
  ラレタ所ヲ聽キマスルト、現內閣所謂農林
  當局ノ蠶絲ニ關スル指導精神ナルモノハ、
  原蠶種、養蠶、製絲販賣、此一貫セル所ノ
  統制、是ガ農林當局ノ懷イテ居リマスル蠶
  絲ニ對スル指導精神ト私共ハ思ウテ居リマ
  ス、嘗テ政府ハ原蠶種ノ統制ヲ致シマシタ、
  又製絲法ヲ改正シテ製絲ノ統制ヲ致シマシ
  タ、本日玆ニ養蠶ノ統制ヲセントシテ居ル、
  又他日販賣統制ヲセントスルノデアリマ
  ス、私ハ玆ニ統制其モノガ善イカ惡イカト
  云フコトヲ論ズルノデハアリマセヌ、併ナ
  ガラ從來日本ニ行ハレマシタ統制ノ實情ヲ
  見マスト云フト、遺憾ノ點ガ尠カラズアル
  ノデアリマス、譬ヘテ見レバ鐵ヲ統制シタ、
  麥酒ヲ統制シタ、紙ヲ統制シタ、其結果利
  益ヲ得タモノハ何カ、殆ド主ナル資本家デ
  アル、大資本家ハ之ニ依ッテ利益ヲ得タ、之
  ニ依ッテ不利益ヲ被ッタ者ハ何カ、大部分ノ
  所謂消費階級デアル、統制ノ結果鐵ハ上ッ
  ク、麥酒ハ上ッタ、紙ハ上ッタ、是ガ現在ノ
  實情デアリマス、併シ私ハ玆ニ統制ノ可否
  ヲ論ズルノデハアリマセヌガ、今若イ官吏
  ノ頭ニ於テハ、締制々々ノ一點張リデ、統
  制ヲ行ハナイト如何ニモ時代後レデアルカ
  ノ如キ感ヲ懷イテ居リマスル官吏ガ、尠カ
  ラズアルノデアリマス、是等ノ思想ガ所謂
  農林當局ニ染ッテ居ッテ、玆ニ統制ヲ見ント
  スルノデハナイカ、第一理想ノミデ物ガ實
  現出來ルモノデハアリマセヌ、理想ト實際
  トハ非常ニ違フノデアル、先程山本君ガ組
  合製絲ノ問題ヲ申サレマシタガ、如何ニモ
  現在ノ組合製絲ナルモノハ、理想トシテハ
  良イ方法デアルカモ知レマセヌ、併シ理想
  デ良イ所ノ組合製絲ガ、一般營業製絲ニ比
  シテ劣ッテ居ルノハ何カ、營業製絲ニ於キマ
  シテハ、主人公自ラ繭ノ買入ヲスル、工女
  ノ雇入ヲスル、又其家族ニ於キマシテモ、
  共ニ給料モ取ラズシテ一〓ニヤッテ居ル、是
  ガ今日營業製絲ガ營業稅ヲ拂ッテ、尙ホ營業
  出來テ居ル所以デアル、組合製絲ガ、營業
  稅ヲ拂ハズ、低利資金ノ融通ヲ受ケ、有ユ
  ル所ノ便宜ヲ受ケテ居リナガラ、其組合製
  絲ガ振ハナイト云フコトハ、總テ所謂オ役
  所仕事、官僚的ノ頭ニ於テ、役人ノ古手、
  其他月給取ガ多ク之ニ關係シテ居ル結果、
  組合製絲ナルモノガ發展シナイ、所謂理想
  トシテハ統制ガ宜イカモ知レヌガ、之ガ實
  際ニ當ッタ場合ニ於テ、如何ニ多クノ不利益
  ヲ蒙ルカト云フコトハ、過去ノ幾多ノ事實
  ガ之ヲ證明シテ居ルノデアリマス、第一此
  案ニ對シマシテ、世ノ中ニ於テハ何ト言ッテ
  居ルカ、是ハ洋服ノ「レディーメード」ノ案デ
  アル、所謂「レディーメード」ノ洋服ナルモノ
  ハ、之ヲ買フニハ便利ダ、併シ買ッテ之ヲ身
  ニ著ケル場合ニ於テハ、其處ニ幾多ノ缺點
  ガアッテ、身ニハ著カナイ、ソレト同ジ風
  ニ、此統制ヲシテ乾繭デヤルト云フコトハ
  宜イカモ知レマセヌガ、其結果第一今日農
  林省ノ方針モサウデアリマスルシ、一般要
  求シテ居リマスルノハ優良生絲ノ製造デア
  リマス、優良生絲ト云フモノニ付キマシテ
  ハ、各製絲家ニ於テハ苦心ヲシテ居ル、如
  何ニシテ三「エー」ノ「エキストラ」物ヲ作ル
  カ、所謂優良生絲ヲ作ルナラバ、高ク亞米
  利加ニモ賣レルノデアル、是等優良生絲ニ
  付テハドウスルカ、無論飼育方法其他ニ於
  テ、繭ノ飼育其他ニ於テ相當ニ努メテ居リ
  マスルガ、ソレ以外ニ必要ナルモノハ、
  其繭ノ乾燥問題デアリマス、如何ナル程
  度ニ乾燥スルカ、是ガ所謂重要ナ問題デ
  アル、今日一般乾燥ノ方法デヤッテ居リマス
  ルガ、此優良製絲ノ如キモノハ、却テ是ガ
  出來ナクナルト云フ風ナ不便ヲ感ズルノデ
  アリマス、私共ハ此案ヲ通覽致シマスルト、
  幾多ノ缺陷ヲ見ルノデアル、ソレヲ一々玆
  ニ詳シク質問スルト云フコトハ、時間ノ關
  係カラ遠慮シナケレバナラヌノデアリマス
  ルガ、私ハ其中ノ主ナルモノニ付テ、先ヅ
  政府當局ノ御意見ヲ承リタク思フノデアリ
  マス
  第一ニ承リタイノハ、此案ノ骨子デアリ
  マスル所謂乾繭-一體乾繭ト云フモノヽ
  通用範圍、謂ハヾ乾繭ノ定義デアリマス、
  此案ニ謂ハレル乾繭ト云フモノハ、單ニ本
  乾繭ダケヲ指スノデアリマスルカ、或ハ七
  分乾繭、五分乾繭、三分乾繭ト云フ風ナモ
  ノモ、之ニ含マレルノデアルカ、更ニ今日
  私共ノ〓里前橋方面ニ於テヤッテ居リマス
  ルノハ、殺菌乾燥デアリマス、殺蟲乾燥デ
  アリマス、所謂蟲ヲ殺ス程度ノ極ク幼稚ナ
  ル乾燥デアリマス、之ヲヤッテ居ル所ガ一番
  多イノデアリマス、能ク私共ノ〓里ニ於キ
  マシテ、夏三箇月ト申シマス、昔ハ夏三箇
  月シカ生繭ヲ挽クコトハ出來ナカッタ、併シ
  今日ハ五月ノ出繭ヨリ十一月ノ晩々秋ニ至
  ル迄、約半年ト云フモノハ繼續シテ生繭ヲ
  挽クコトガ出來ル、而モ生繭以外ニ於テ或
  者ハ之ヲ殺蟲乾燥ニ依ッテ之ヲ挽イテ居ル、
  是ガ事實製紙家ニ於テ利益ダト云フノデ、
  此方針ヲヤッテ居ル、是等殺蟲乾燥ト云フ風
  ナモノハ、是ハ所謂乾繭ト云フモノヽ中ニ
  含マレルカドウカ、更ニ先程ドナタカノ御
  質問ノ中ニアッタカト記憶致シマスルガ、所
  謂今日進步セル方法トシテハ、冷蔵裝置ニ
  依ッテノ生繭ノ保存デアル、信州ニ於テ、又
  私共ノ縣ノ群馬社ニ於テ、是ハ現在實行シ
  テ居ル、所謂冷凍裝置ニ依ッテ生繭トシテ之
  ヲ保存スル、其方ガ却テ良イ絲ガ挽ケル、
  良イ絲ヲ挽クニハ此方針ニ依ラナケレバナ
  ラヌト云フ說ガアル、是等ノ所謂冷凍裝置
  ニ依ッテ-今後多クノ製絲家ニ依ッテ利用
  サレベキ所ノ冷凍裝置ニ依ル此方法ハ、ヤ
  ハリ乾繭ノ中ニ含マレルカドウカ、是等ニ
  對シマスル所ノ所謂乾繭ノ定義ト云フモノ
  ニ付テ、先ヅ私ハ政府當局ニ伺ヒマスルト
  同時ニ、此政府ノ理想トスル所ノ乾繭ノ標
  準ハドウカ、政府ノ理想トスル所ノ乾繭ハ
  本乾繭ガ理想カ、七分乾繭ガ理想カ、半乾
  繭ガ理想カ、三分乾繭ガ理想カ、所謂政府
  ノ理想トスル乾繭ニ付テ、其程度ヲ御伺致
  シタイノデアリマス
  第二ニ御伺致シタイノハ、例外規定ニ關
  スル點デアリマス、先程農林大臣ノ說明ノ
  中ニ於キマシテモ、屑繭、玉繭及自家用
  製絲ノ原料繭ヲ除外スルト云フコトヲ言ハ
  レマシタ、屑繭、玉繭ヲ除外スルト云フコト
  ハ是ハ當然デアル、而シテ此自家用製絲ノ原
  料繭ト云フモノハ、之ヲ狭義ニ解スルノガ必
  要デアルカ、廣義ニ解スルノガ必要デアル
  カ、卽チ今日ノ制度ニ於キマシテ、絹織物
  消費稅ノ中ニ於テモ、自家用ノ絹織物ト云
  フモノハ之ヲ免稅シテ居リマス、是ト同ジ
  意味ニ於テ、自分ノ家デ使フ繭、此製絲ト
  云フモノニ付テ、是ダケハ免除スルト云フ
  ノデアリマスカ、私ハ此間ノ豫算總會ノ分
  科會ニ於テ、是等ノ點ニ付テ農林當局ニ質
  間致シマシタ、其時井野蠶絲局長ノ答辯ニ
  依リマスルト、是ハ廣義ニ解釋サレテ居ル
  ヤウデアリマス、卽チ其答辯ニ依リマスル
  ト「或ハ織物ノ性質上、生繭デナケレバナ
  ラヌト云フモノデアリマスレバ、無論サウ
  云フモノハ例外ヲ認メタイ、假ニ自治的統
  制ヲ致ストシマシテモ、サウ云フ例外ヲ認
  メテ行キタイ」ト云フ風ニ、蠶絲局長ハ答
  辯サレテ居リマス、是カラ見ルト、如何ニ
  モ是ハ廣義ニ解スルノガ必要ト思フ、廣義
  ニ解スルト云フコトナラバ、自家用ト云フ
  「用」ト言ッタ先程ノ農林大臣ノ言葉ニ誤弊
  ガアル、卽チ所謂自家織物ト言ヘバ、自家製
  絲ニ對スル原料繭ナラバ意味ヲ成シマスガ、
  自家用ト云フコトニ於テハ意味ヲ成サヌノ
  デアル、假ニ自家用ノ「用」ト云フモノヲ取ッテ、
  卽チ自分ノ家デ製造スル所ノモノヽ、或物ハ差
  支ナイ、特殊ノ內地織物ニ向クモノハ差支ナイ
  トスレバ、今度ノ問題ハ何カ、是等內地特
  有織物ニ要スル所ノ繭ト、輸出物ニ對スル
  所ノ繭、此區分ガ出來マスカ、如何ニシテ
  此輸出繭ト、內地用ノ繭トノ區分ガ出來ル
  カ、若シ此區分ガ出來ルトスルナラバ、如
  何ニシテ此區分ガ出來ルカト云フコトニ付
  テ私ハ伺ヒタイ
  次ニ御伺致シタイノハ、此案ガ昨年ノ
  暮世ノ中ニ發表セラレマスルト云フト、
  繭絲賣買業者ハ勿論ノコト、養蠶業者、製
  絲家、有ユル方面ノ人ガ猛烈ナ反對ヲ起シ
  タノデアリマス、何故ニ是等ノ人々ガ反對
  スルカ、養蠶家ニ於キマシテモ、大ナル養蠶
  家ハサウデハナイカモ知レヌ、或ハ養蠶組
  合ノ幹部級ノ人ハサウデハナイカモ知レマ
  セスガ、中小養蠶業者ト云フモノハ、殆ド全
  國ニ於ケル大多數ガ之ニ反對シテ居ル、何
  故是等ノ人々ガ反對スルカ、先程近藤君ノ
  質問ノ中ニモアリマシタ通リ、所謂丁度養
  蠶家ガ、春繭ノ時ト云フモノハ非常ニ忙シ
  イ、金ガ缺乏スル、農村ニ於キマシテハ御
  承知ノ如ク春繭ヲヤル、直チニ麥刈トナリ、
  田植トナリ、夏繭トナル、其爲ニ寸暇ガナ
  イ、寸暇ガナイノミナラズ金ヲ要スル、所
  ガ假ニ一貫匁二圓ノモノヲ七割ヲ政府ハ貸
  シテ居ル、低利資金ニ依ッテ七割借リルト致
  シマシテモ、一圓四十錢ダ、而モ低利資金
  ノ從來ノ例ヲ見ルト、借リルノガ煩雜デアッ
  テ、幾多ノ困難ヲ感ズル、假ニ是等ハ樂ニ
  借リラレルト致シマシテモ、一圓四十錢以
  上貸スコトハ恐ラク出來マイ、ソレヨリハ
  假令二十錢安ニ賣ッテモ、一圓八十錢ニスル
  ト云フヤウナコトガ、今日小養蠶家ノ熱望
  シテ居ル所ダ、丁度其春繭ヲ賣ッタ金ハ、或
  ハ之ヲ以テ人夫代ヲ拂フ、肥料代ヲ拂フ、
  殊ニ養蠶地方ニ於テハ、自分ノ所デ穫レル
  米デハ足リマセヌカラ米ヲ買フ、必要品ヲ
  買フ、一年ノ計算ハ所謂米ヲ賣ッタ時ニ於
  テ爲ス、此時ニ於テ金ノ收入ガ少イト云フ
  ノハ非常ナ苦痛デアル、是ガ現在ノ多クノ
  養蠶家ガ反對シテ居リマスル第一ノ理由デ
  アリマス、更ニ此方法ニ依リマスト、際、
  テ見レバ乾繭料デアルトカ、倉敷料デアル
  トカ、金利デアルトカ、運搬ノ費用デアル
  トカ、乾繭所ニ於テ使ッテ居リマスル所ノ
  技術員、竝ニ事務員ノ給料デアルトカ云フ
  風ナモノ、是ハ悉ク養蠶家自身ノ負擔ニナッ
  テ居ル、是等ノ負擔ヲ養蠶家ハ負ハナケレ
  バナラヌ、生繭デ賣ルナラバ、其負擔ハ負
  ハナイデ濟ムノガ、乾繭ニナルト、此負擔
  ヲ一々負ハナケレバナラヌト云フ窮狀ニ陷
  ルノミナラズ、假渡金ト致シマシテ、今申
  ス假ニ二圓ノ七割一圓四十錢ヲ假渡金トシ
  テ吳レル、所ガ是ガ半年後カ一年後ニ〓算
  サルヽデゴザイマセウガ、若シ其繭ガ豫定
  通リニ賣レルカ、又ハ豫定ヨリ高イ値段ニ
  賣レル時ニ於テハ、是ハ問題ハ起ラヌノデ
  アリマスルガ、此値下リノ場合ハドウナ
  ル、現在此問題ハ私共ノ縣ノ群馬社ニ於テ
  起ッタノデアル、ソレハ一昨年ニ於テ一貫匁
  五圓ニ賣レタ、五圓ニ賣レタカラ、之ヲ三
  圓五十錢組合製絲ニ於テ出シタ、然ルニ其
  翌年ニ於キマシテ、其繭ヲ賣ラントスル時
  ニ於テハ、是ガ三圓以下ニナッタ、其爲ニ組
  合員ハ此自分ノ繭ヲ群馬社ニ提供シヨウト
  スルナラバ、去年ノ所謂足ラヌ金ヲ差引カ
  ルヽカモ知レヌ、差引カルヽノハ苦シイト
  云フノデ、組合員自ラ組合製絲ニ繭ヲ出サナ
  クナッタ、是ニ於テ大久保社長ガ、自己ノ經
  營セル他ノ製絲會社ノ繭ヲ持ッテ來テ挽カ
  シタト云フ風ナ問題ガ起ッテ、現在尙ホ其地
  方ノ養蠶業者ハ、群馬社ノ、前ノ安ク賣レ
  タ其差引ノ金、詰リ自己ガ負擔スベキ金ノ
  負擔ニ苦ンデ居ルト云フ風ナ狀態デアル、
  此乾繭裝置ニ於キマシテ、假ニ七割ヲ貸シ
  タ、其繭ガ七割以下ニナッタ場合ニ於ケル
  其責任ノ歸著ハドウナルカ、是ガ養蠶業者
  ノ今日一番心配シテ居ル一ツノ問題デア
  ル、更ニ此乾繭裝置ト云フヤウナモノハ、
  他面ニ於テ確ニ投機心ヲ挑發スル、所謂繭
  ヲ置クノデアル、所謂値ガ上リサウナ時マデ
  之ヲ保存シテ置キタイト云トコトハ人情デア
  ル、所ガ商人デアリマスルナラバ、其商機ヲ見ル
  ニ敏ナルモノデアル、所ガ農家ニ於テ、農家
  育チノ人ガ幹部ニ在ッテ、到底商人ノヤウニ
  商機ヲ見ルコトハ出來ナイ、是ニ於テ損ヲス
  ルコトハ明デアルト同時ニ、一般組合員ニ投
  機心ヲ起ス、斯ウ云フヤウナ種々ナル弊害ガ
  アリマスル爲ニ、現在中小養蠶業者ト云フ
  モノハ本案ニ反對シテ居ル、是等ノ反對ニ
  對シテ、政府ハドウ云フ風ナ對策ヲ有ッテ
  居ルカト云フコトヲ承リタイ
  又製絲家ガ反對シテ居ルト云フノハ、先
  程近藤君ノ言ハレタ如ク、私ハ大製絲家ノ
  コトヲ論ズル者デハアリマセヌガ、中小ノ
  製絲家ニ於キマシテハ、矢張乾燥デヤルヨ
  リハ-乾燥繭ヲ使フヨリハ生繭ト云フコ
  トヲ希望シテ居ル、如何ニモ生繭ノ方ガ利
  益ダト云フコトヲ、私共ハ當業者カラ聽イ
  テ居ル、又本乾繭ヨリハ
  〔副議長退席、議長著席〕
  中乾繭、或ハ殺蟲乾繭ガ利益ダト云フコト
  ノ表ハ、私此處ニ持ッテ居リマスルガ、是等
  ノ點ハ一々微細ニ亙ル點デアリマスルカラ、
  委員會ニ於テ私ナリ又同僚カラ質問スルデ
  ゴザイマセウガ、併シ兔ニ角生繭ガ却テ中
  小製絲家ニハ利益デアルト云フコトハ、一
  般ノ認メテ居ル事實デアル、ノミナラズ此
  金融上ノ關係ニ於テ、先程農林大臣ハ金融
  上便宜ヲスルト言ッテ居ラレマスガ、今日ノ
  小製絲家ノ狀態ヲ見ルナラバドウカ、所謂
  蠶絲賣買業者カラ事實上ニ於テハ資金ノ供
  給ヲ受ケル、或ハ繭ノ供給ヲ受ケテ、是デ
  挽イテ居ル階級ト云フモノハ少カラザルモ
  ノデアリマス、是等ノ者ガ今度乾繭倉庫ニ
  於テ乾繭ヲ買フト云フニハ、必ズ現金デナ
  ケレバ賣ラナイ、其現金ト云フモノヽ持合
  セガ今日ノ小製絲家ニハナイノデアル、其
  結果小製絲家ハ繭ハアッテモ買フコトガ出
  來ズシテ、其結果休業シナケレバナラヌト
  云フ狀態ニ陷ルコトハ明デアル、是ガ今日
  ノ小製絲家ガ此案ニ反對シテ居ル主ナル理
  由デアル、其他特約取引ニ向ッテ制限ヲ加ヘ
  ルト云フノデアリマスルガ、之ニ對シテモ
  屆出制度ニスルノガ宜イノヲ、今囘ハ認可
  制度デアル、ノミナラズ苛酷ナル罰則ヲ之
  ニ規定シテ居ルノデアリマス、殊ニ私共ガ
  一番心配ニ堪ヘマセヌノハ、此實行組合ナ
  リ何ナリト云フ風ナモノガ、兔角弊風ニ陷
  リ易クハナイカ、譬ヘテ見レバ、政府ノ御
  話ヲ聽キマスト、一郡ヲ單位トシテノモノ
  ラシイ、一郡ヲ單位トシテ乾繭倉庫ニ於テ
  繭ヲ貯藏シテ居ル、乾繭シタル繭ヲ置ク、所
  ガ生絲ノ値下リノ場合ハサウ困難ハアリマ
  スマイガ、若シ生絲ガ急ニ亞米利加ノ景氣
  ニ依ッテ値上リヲシヨウトシテ居ル時ニ於
  テハ、必ズヤ之ヲ買ハントシテ殺到スルコ
  トハ明デアル、此殺到スル場合ニ、從來ノ
  例カラ見ルト、兔角其管理者ナリ、若クハ
  政府ノ役人ナリト云フ風ナ者ガ、或ハ饗應
  ノ爲メ、或ハ何カ裏面ノ關係ニ於テ、公平
  ニ賣ラザルコトハ明ナ例デアル、卽チソコ
  ニ色々ナ陋劣ナル問題ガ起リ、疑獄事件モ
  起ルノデアル、故ニ生絲ガ値上リノ場合ニ
  於テ殺到シテ、ドウシテモソレ等當業者ノ
  不正手段ガ起ルト云フコトハ、火ヲ諸ルヨ
  リ明デアリマスルガ、ソレ等ニ付テ如何ニ
  政府ハ考ヘテ居ラレルカ、所謂今日ノ此制
  度ニ於テハ、現在ノ製絲家ハ滿足シテ居ラ
  ザルト云フコトダケハ明ナノデアリマス、
  更ニ現在賣買業者ガ之ニ反對シテ居ルノハ
  何ノ爲メカ、生繭ガ實質上利益ダト云フコ
  トハ、先程近藤君ノ言ハレタ通リデアリマ
  ス、政府ハ生繭ノ賣買ハ禁止シナイ、團體
  的處理ハ强要シナイ、自治團體ノ强化ニ依ッ
  テ行ハシム、當業者ハ壓迫シナイト申シテ
  居リマス、併ナガラ此當業者間ニ於テ心配
  シテ居ルノハ、政府ハサウ云フ方針デヤル
  トシテモ、地方廳、府縣ニ於テハ、之ヲ强
  制セシメントスルヤウナ策ヲ執ルノデハナ
  イカ、此點ニ付テ私ハ分科會ニ於テ農林大
  臣ニ聽イタノデアリマスルガ、其時農林大
  臣ハ、政府ノ此法律ニ依ッテ規定シタ以上ノ
  コトヲ、府縣ニハヤラセナイト云フコトヲ言
  明シテ居リマスルガ、府縣自身ハ或ハヤ
  ラヌカモ知レマセヌガ、此組合ヲシテ、
  政府ガ組合ニ補助ヲ與ヘ奬勵ヲシテ、
  サウシテ之ヲ强制セシムルト云フコト
  ハ、先程山本君竝ニ近藤君ノ質疑ニ依ツ
  テモ明デアリマス、サウ致シマスルト
  結論ニ於テ迷惑ヲ蒙ルノハ繭絲ノ賣買業者
  デアル、事實段々減ッテ、サウデナクテモ丁
  度肺病患者ノヤウニ、段々取引ノ範圍ガ縮
  小セラレマシテ、其結果非常ノ迷惑ヲ蒙ル
  ノデハナイカ、是ガ今日繭絲賣買業者ガ非
  常ニ憂慮シテ居ル點ナノデアリマス、又繭
  絲賣買業者ノ人數ト云フモノハ、サウ多ク
  ハナイカモ知レマセヌ、併ナガラ今日是等
  繭絲賣買業者ヨリ繭ノ供給ヲ受ケ、委託ヲ
  受ケテ賃挽キシテ居ル階級ト云フモノハ少
  カラザルモノデアリマス、私ノ〓里前橋、
  或ハ大口君ノ〓里豐橋ナリノ實例ヲ見マス
  ト殆ド其市及其市ノ附近ノ住民ノ約三分
  ノ一ト云フモノハ此繭商人カ、然ラザレバ
  繭商人カラ委託ヲ受ケテ絲ヲ挽イテ生活シ
  テ居ル階級ガ多イノデアリマス、所謂繭賣
  買業者ガ失業スルナラバ、延テハ其絲ヲ挽
  イテ生活シテ居ル數多イ何百万ト云フ人ガ
  失業スル、是ハ重大ナル社會問題デアリマ
  ス、是等ニ付キマシテ政府ハ如何ナル考ヲ
  有ッテ居ルカ、私共ハ或ハ人力車ガ出來テ、
  サウシテ籠界キガ失業スル、自動車ガ發達
  シテ人力車夫ガ失業スル、之ニ付テハ吾々
  ハ文明ノ向上ニ於テノ據ロナキコトデアリ
  マスルカラ、敢テ反對ハ出來マセヌガ、併
  ナガラ政府ガ法律ヲ以テ無暗ニ失業者ヲ急
  造スル、失業者ヲ激增セシムルト云フ政策
  ヲ政府自ラ執ルコトハ、是ハ國ノ社會政策
  上考慮スベキ重大ノ問題ト思フノデアリマ
  ス(拍手)故ニ私共ハ、此問題ニ付キマシテ
  尙ホ色々承リタイコトモアリマスルガ、時
  間モ大分經過シテ居リマシテ、私ガ多ク取
  ルコトハ恐縮ニ堪ヘマセヌカラ、私ハ此程
  度ニシテ置キマスルガ、政府ニ於テハ私ガ
  以上質問シテ置イタ問題ニ付テ如何ナル御
  考ヲ有スルカ、其御考ヲ承ッタ上ニ於テ、私
  ハ再度ノ質問ヲ御許シ願ヒタイト思フノデ
  アリマス(拍手)
  〔國務大臣山崎達之輔君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006713242X02019350228&spkNum=61

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• 062・山崎達之輔

  ○國務大臣(山崎達之輔君)　〓水君ノ冐頭
  ニ御述ニナリマシタ御意見ニ對シマシテ、
  一言申上ゲテ置キタイト思ヒマス、統制統
  制ト唯徒ラニ統制ヲ考へルコトハ考物デア
  ル、斯ウ云フ御意見デアリマスガ、其御考
  方ニ付テハ、私ハ必シモ反對ヲ致ス者デハ
  アリマセヌ、併ナガラ大體ニ於テ、今後ノ
  經濟ノ組織ト申シマスカ、機構ト申シマス
  カ、是ガ從來ノヤウナ全ク自由放任ノ建前
  デ行ケルモノデアルカドウカ、私ハ其考方
  ニモ同意ヲ致シ兼ネルノデアリマス、唯茲
  ニ注意ヲ致サナケレバナラヌコトハ、私共
  ノ考方ト致シマシテハ、其統制ナルコトモ、
  出來得ル限リハ自治的ノ統制デ行キタイ、
  之ヲ徒ラニ國ノ權力ヲ以テ强要スルト云フ
  コトハ、是ハ眞ニ已ムヲ得ザル場合ノ外ハ
  避ケルガ宜シイノデアリマス、唯飽マデ自
  治的ノ統制ト云フコトヲ尊重シテ行クベキ
  モノデハアルマイカト思フ、何トシテモ今
  後ノ經濟活動ニ、從來ノヤウナ個人單位ノ
  コトデ、果シテ旨ク行クモノデアルカドウ
  カト云フ點ニハ、私ハ實ハ多大ノ疑ヲ有ッテ
  居ル譯デアリマス、大體今囘ノ農林省關係
  ノ立法ニ於キマシテハ、左樣ナ考方ノ下ニ
  法案ヲ立案致シタ積リデアリマス、第二ノ
  乾繭ノ度合ニ付テ、ドウ云フコトヲ取決メ
  ル積リデアルカト云フ御趣意デアッタヤウ
  デアリマス、乾繭ノ度合ニ依ル成績ノ關係
  ハ、相當科學的ニ〓究ハ出來テ居ルノデア
  リマス、併ナガラ是モ物ニ依リマシテ、所
  謂適乾ト稱スルモノガ適合スル場合モアリ
  マセウシ、或ハ物ニ依リマシテハ、只今御
  話ノヤウナ、極メテ弱イ程度ノ乾燥ガ適ス
  ル場合モゴザイマセウ、今囘ノ立法ニ至リ
  マシテハ、左樣ナ點ニハ何等ノ制限ヲ加ヘ
  ナイ考デアリマス、ソレカラ第十條ニ於テ
  玉繭、屑繭及自家用製絲ト云フコトヲ除外
  シテ居ルガ、其自家用製絲ト云フコトハ、
  廣義ニ解スルカ、狹義ニ解スルカト云フコ
  トデアリマスガ、是ハ蠶絲局長ヨリ委員會
  ニ於テ御答辯ヲ申上ゲマシタコトヲ以テ、
  私ノ答辯ト致シタイト思ヒマス、次ハ繭
  ノ區分ノ關係デアリマスガ、是ハ御指定
  ニ依リマシテ、蠶絲局長ヨリ御答ヲ申スコ
  トニ致シマス、今囘ノ法案ニ付テ中小養蠶
  家ノ中ニハ反對ガアルデハナイカト云フ
  御意見デアリマス、私ハ固ヨリ全國大多
  數ノ方々デアリマスルカラ、一人々々ノ意
  見ヲドウ斯ウト云フ譯ニハ無論參リマセ
  又、併ナガラ私ハ今囘ノ法案ハ、大體ニ於
  テ蠶絲業所屬ノ方々ニ於テ鞏固ナル反對ガ
  アルト云フコトハ考ヘラレナイノデアリマ
  ス、色々ト御心配ノ御言葉モアリマシタ
  ガ、詰リ從來ノヤウニ生繭デ取引ヲ致シマ
  シテ、利害ノ如何ヲ問ハズ、僅カ十日カ二
  週間ノ間ニ、是ガ非デモ繭ノ處理ヲシナケ
  レバナラヌト云フ、此不利益ヲ救ヒマシ
  テ、サウシテ養蠶農家ノ基礎ヲ鞏固ニシタ
  イト云フノガ、今囘ノ立法ノ趣旨デアル譯
  デアリマスカラ、此趣旨ニ對シテ養蠶農家
  ニ反對ガアルト云フコトハ、ソレハ澤山ノ
  人々デアリマスカラ、或ハ法ノ趣旨ガ徹底
  セザル爲メ、其他ノ關係上絕無トハ無論申
  シマセヌガ、理論上私ハ其事ヲエライ御憂
  慮ノ必要ハナイヂヤナイカト考ヘルノデア
  リマス、殊ニ今囘ノ法制ハ、只今申上ゲマ
  シタヤウニ、不自然ナル取引ヲ改メルト云
  フコトガ根本ノ趣旨デアリマスノデ、決シ
  テ繭ノ販賣ノ時期ヲ制限スルト云フ意味デ
  ハナイノデアリマス、唯好ムト好マザルト
  ヲ問ハズ、十日以內ニ是ガ非デモ處分シナ
  ケレバナラヌ、之ヲ救ッテ行カウ、十日デ
  賣ッテハナラヌト云フ精神デハナイノデア
  リマス、隨テ販賣ノ時期等ニ付テ何等制限
  ヲ加フル意思ハナイノデアリマス、ソレカ
  ラ今囘ノ法制ノ結果、養蠶家ノ負擔ヲ增ス
  ノデハナイカト云フ御意見デゴザイマシ
  タ、此點ハ從來乾繭組合等ニ依ッテ農家ノ手
  取リトナック步合、生繭ヲ直取引デ致サレマ
  シタ步合等ニ付テ、是ハ現實ノ問題トシテ
  委員會等ニ於テ、參考資料ヲ以テ十分御諒
  解ノ行クヤウニ、御說明ヲ申上ゲタイト思
  ヒマス、ソレカラ生繭ノ方ガ、中小製絲家
  ニハ有利デアル、成程斯樣ナ聲モ全ク聞カ
  ナイノデハアリマセヌ、唯事ハ或ル一部ヲ
  見テ、是ハ不利デアル、斯ウ云フ卽斷ヲ致
  スト云フコトハ考ヘモノデアリマス、全體
  ノ利害ヲ、公平冷靜ニ考慮セラレマシタナ
  ラバ、私ハ中小製絲家ニ不利デアルト云フ
  コトハ考ヘナイノデアリマス、現ニ全國製
  絲業聯合會モ、矢張此產繭處理ノ法案ニ
  ハ、贊成ヲ致シテ居ラレル譯デアリマス、
  ソレカラ特約ニシテ、認可ノ主義ヲ採ッタ、
  斯ウ云フコトデアリマスガ、是ハ私ハ當然
  ノ立法デアルト考ヘマス、卽チ特約取引ト
  云フコトハ、是ハ合理的ノ手段トシテ、第
  一條ニ明瞭ニ之ヲ認メテ居ル譯デアリマ
  ス、決シテ特約取引ヲ制限スルトカ、或
  彼此レノ考ハ毛頭有チマセヌ、矢張繭ノ正
  常ナル取引ノ形態トシテ、之ヲ認メテ行ク
  譯デアリマス、唯茲ニ養蠶組合其他トノ契
  約ノヤリ方等ニ付キマシテハ、之ヲ絕對ニ
  放任致シテ置クコトガ、果シテ養蠶農家ノ
  爲ニ如何デアルカト云フ點ニ付テハ、矢張
  マダ今日ノ實情ニ於テハ、認可ノ制度ハ存
  置スル方ガ適當デアル、此點ニハ地方ニ依
  リマシテハ、少シク窮屈ニ過ギルヤウナ取
  扱ヲシテ居ル所モ現在アリマスガ、今囘ノ
  立法ニ於テハ、大體中庸ノ考ヲ以チマシ
  テ、特約ノ取引ハ正常ノ取引トシテ認メ
  テ、唯契約ニ付テハ一ツノ認可事項トス
  ル、斯ウ云フ制度ニ致シタ譯デアリマス、
  此點ハ私ハ當然ノコトデアッテ、何等御懸念
  ハナイト考ヘマス、ソレカラ繭絲業者ノ關
  係デアリマスガ、是ハ山本君、近藤君モ御
  心配ニナッタ問題デアリマス、私ハ此點ハ相
  當詳細ニ申上ゲタ積リデゴザイマスガ、卽
  チ今囘ノ立法ヲ、成ベク急激ナ變化ヲ起サ
  ナイヤウニ、又法ヲ以テ强制ヲシタリ、或
  ハ生繭ノ取引ヲ禁止シタリスルヤウナコト
  ヲ避ケ、而モ條項ニ依リマスレバ、大體五
  箇年位ノ有效期間ヲ置クト云フヤウナ、色
  色ノ緩和手段モ採リ、一方ニハ蠶絲業組合法
  ヲ特ニ改正致シマシテ、蠶絲業關係者ノ共同
  施設組合ノ制度ヲ認メル、更ニ又第一條ニ於
  テ、丁度豫算分科會ニ於テ、アナタカラ御質問
  ニナリマシタアノ點ニ付テモ、ハッキリト法ノ上
  於テ例外ノ規定ヲ認メテ置ク、斯樣ナ色々
  ノ緩和的手段ヲ講ジマシタコトニ依ッテ、御
  諒解ヲ願ヒタイト存ズル譯デアリマス、只
  今〓水君ハ御懸念ニナリマシテ、第一條ニ
  折角地方ノ事情ニ依ッテ例外ハ認メテモ、
  ソレヲ地方廳邊リデ之ヲ變改シタヤウナ取
  扱ヲスル虞ガナイカト云フ、重ネテノ御懸
  念デゴザイマシタガ、苟モ法律ニ依ッテ規定
  ヲ致シマシテ、卽チ法ノ精神ニ反スル如キ
  處置ハ、地方廳ガ絕對ニ行フベキデナイト
  私ハ信ズルノデアリマス、其點ハドウカ御
  懸念ヲ御取去リヲ願ヒタイト思ヒマス
  〔政府委員井野碩哉君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006713242X02019350228&spkNum=62

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• 063・井野碩哉

  ○政府委員(井野碩哉君)　〓水議員ノ御尋
  ニ係リマスル產繭處理法ニ關スル特例ノ問
  題デゴザイマスガ、豫算分科ノ委員會ニ
  於キマシテ、私ヨリ御說明申上ゲマシタ當
  時ニ於キマシテハ、マダ法案ガ確定シテ居
  リマセヌノデ、大體ノ考ヲ申上ゲタノデゴ
  ザイマスガ、此法案ニ依リマシテ御答申上
  ゲマスレバ、大體此法案ハ、第一條ニ於キマ
  シテ特例ヲ設ケマシタノト、第十條ニ於キ
  マシテ特例ヲ設ケテ居ルノデゴザイマス、
  第十條ニ於キマスル特例ト致シマシテ、繭
  ノ種類ト、繭ノ處理方法ノ特例ヲ認メテ居
  ルノデゴザイマス、十條ノ特例ハ、本法ノ
  適用ヲ全部除外致シマスル特例デゴザイマ
  シテ、繭ノ種類ト致シマシテハ、命令ヲ以
  テ或ハ玉繭、屑繭、種繭ト云フヤウナ、繭
  ノ種類自體ニ依ッテ區別シ得ルモノヲ規定
  致ス積リデゴザイマス、又繭ノ處理方法ニ
  付キマシテハ、養蠶者ノ自家用製絲デアリ
  マストカ、其他特殊用途ニ使用スル場合ニ
  付キマシテ、色々ノ調査ヲ重ネマシテ、適
  當ノモノヲ除外致ス積リデゴザイマス、殊
  ニ御尋ニナリマシタ、地方ノ事情ニ依リマ
  シテ、或ハ賃挽等ノ如キ座繰製絲ノ除外ト
  云フコトニ付キマシテハ、第一條ノ第二項
  ヲ以テ除外致シタイト、目下考ヘテ居ル次
  第デゴザイマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006713242X02019350228&spkNum=63

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• 064・清水留三郎

  ○〓水留三郞君　簡單デゴザイマスカラ、
  此席カラ御許シヲ願ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006713242X02019350228&spkNum=64

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• 065・濱田國松

  ○議長(濱田國松君)　許可致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006713242X02019350228&spkNum=65

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• 066・清水留三郎

  ○〓水留三郞君　只今農林大臣竝ニ蠶絲局
  長ノ御答辯ヲ聽キマスト、政府ガ初メ考ヘ
  テ居リマシタモノニ多クノ除外例ヲ置キ、
  緩和サレタト云フ觀念ヲ得タノデアリマ
  ス、言葉ヲ換ヘテ申シマスルナラバ、露骨
  ニ申シマスルナラバ、骨拔ニナッタ、此骨
  拔ニナッタ案ヲ尙ホ立法化スルノ必要ガ何
  處ニアリマスカ、立法化スル必要ヨリハ、
  私共現在ノ、或ハ乾繭倉庫ニ向ッテノ補助
  トカ、其他ノ方法デ是ガ出來得ラレルナラ
  バ其方ガ宜イ、所謂此骨拔案ヲ立法タラシ
  メタト云フコトハ、私共ハ誤ッテ居ルト思
  ヒマスガ、是等ハ意見ノ相違ニナリマス
  シ、尙ホ詳シイ點ニ於テ色々承リタイ點ガ
  アリマスガ、是等ハ何レ委員會ニ於テ、私
  ナリ同僚カラ承ルコトニ致シマシテ、私ノ
  質疑ハ是デ打切リマス(拍手)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006713242X02019350228&spkNum=66

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• 067・濱田國松

  ○議長(濱田國松君)　次ノ通〓者鷲澤與四
  二君
  〔鷲澤與四二君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006713242X02019350228&spkNum=67

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• 068・鷲澤與四二

  ○鷲澤與四二君　本案ノ如キ極メテ重大ナ
  ル法案ガ議セラレル今日ニ於テ、斯樣ナ時
  刻ヲ過ギマシテ、質問ノ要旨ヲ盡スニ不十
  分ナル時刻ニ差迫ッタコトハ、洵ニ私共遺憾
  ニ堪ヘナイ所デアリマス、併シ私ノ問ハン
  トスル所、大體ハ既ニ政民兩黨ヨリ起タレ
  タ方々カラ、技術的ニモ、政策的ニモ意ヲ
  盡シテ居ラレルト思ヒマスカラ、私ハ極メ
  テ簡單ニ要旨ニ付テ質疑ヲ致シタイト思フ
  ノデアリマス、質問ノ要項ニ入ルニ先ッテ、
  私ハ甚ダ不愉快ナル御尋ヲ致シタイノデア
  リマス、事ハ非公式デアリマシタガ、私共
  ハ黨ト云フ上ニ於テ、公的ニ政府當局者ニ
  如何ナル法案ガ出ルノデアルカ、前以テ
  政府ノ趣旨ノアル所、立法ノ精神ノアル
  所及ビ其規定サルベキ範圍等ニ對シテ御
  伺ヲ致シタノデアリマス、其時ノ政府當路
  者ノ御話ニ依レバ、最初ハ極メテ深刻ナル
  强制的ノモノデ、法律ヲ以テ抑ヘ付ケテ
  シマフ、併シソレデハ此我國ノ重大ナルー
  政治經濟ノ上ニ於テモ、國際上ニ於テモ
  重大ナル所ノ蠶絲統制案ヲ議スルノ態度ニ
  相應ハシクナイカラ、洵ニ和ヤカシテ、强
  制的或ハ縛リ上ゲルト云フヤウナコトハ止
  メニスル、殊ニ中央蠶絲會ニ之ヲ諮問致シ
  タル所、同樣ニ法律ヲ付テ强制スルト云フ
  ヤウナコトヲシテ欲シクナイト云フ趣旨ニ
  鑑ミテ、總テ骨拔ニナツタカノ如ク、膝突合
  セテ、極メテ和ヤカニ、此大問題ヲ決定ス
  ルヤウナ法案ニ改メタト云フコトヲ承ッテ、
  實ハ私共ハ根本的ニ反對デアリマシタガ、
  或ハ是ナラバ贊成ヲシテモ宜イカナア位ニ
  モ考ヘタノデアリマス、然ルニ昨日出マシ
  タル法案ヲ見ルト、啻ニ吾々ガサウ感ズル
  バカリデナク、全國ノ養蠶農民ハ恐ラク戰
  慄致シタラウト思フノデアル、此法案ハ或
  ハ罰金ヲ二重三重ニ科スルト云フヤウナ、
  强制デナイトハ言ヒナガラ、極メテ深刻ナ
  ル法案ヲ爲シテ居ル、例ヘバ私共ハ治安維
  持法デモ見ルヤウナ氣持ヲ以テ本案ヲ見タ
  ノデアル、洵ニ吾々ガ立法ノ精神、其他ニ
  付テ御何致シタル所ノ態度トハ、雲泥ノ差
  ガ此法案ニハ現レテ居ルノデアリマス、此
  點ハ如何ナル御趣旨ニ依ッテ出來タノデア
  ルカ、此點ヲ先ヅ私ハ國民ニ與ヘル所ノ感
  想及此法案ノ實際的ノ運用如何ト云フコト
  二、重大ナル關係ガアルノデアリマスルカ
  ラ、此點ハ當局大臣ヨリ丁寧ナル御說明ヲ
  願ヒタイト思フノデアリマス、殊ニ豫算本
  會議ニ於テ政友會ノ加藤サンカラノ質問ニ
  對シテ、政府委員ハ斯ウ答ヘテ居ルノデア
  リマス、始マリハ法律デ抑ヘル-加藤サ
  ンノ質問ノ要領ハ、斯樣ナ重大問題ヲ決定
  致スノデアルカラ、ソレニ相應シイ所ノ豫
  算ヲ伴ハナケレバイカヌヂヤナイカ、此位
  ナ金ヂヤ出來ナイヂヤナイカト云フコトニ
  對シテ、政府委員ノ答辯ハ、私ハ今日玆ニ
  速記錄ヲ持タヌノデアリマスルガ、私ノ記
  憶ニ依ッテ明ナル所ヲ申上ゲルナラバ、法律
  デ抑へ付ケテシマヒタイ、國ノ力デ抑へ付
  ケタイノダケレドモ、サウヤルニシテハ金
  モナシ、財政上ノソレニ伴フ豫算ヲ拵ヘル
  コトガ出來ナイカラ、ソコデ自治强化ト云
  フガ如キ事ニ關スルヤウナ御答ガ出テ居ル
  ノデアリマス、吾々ノ仄聞スル所ニ依ル
  下、ヤハリ乾繭處理一點張デ之ヲ强制スル
  ト云フコトガ、政府ノ方針デアッタヤウニ思
  フノデアリマス、ソレヲ豫算ガナイ爲ニ、
  乾繭處理ダケデ行クノヲ止メテ、他ニ色々
  ニ配合致シテ此法案ガ出來クト私共ハ解ス
  ル外ナイ、隨テ本案ノ各條ヲ見ル時ニ、洵
  ニチグハグデアルノデアリマス、故ニ若シ
  甚ダ惡意ノ邪推ヲ致スヤウデ相濟マヌノデ
  アリマスガ、斯樣ナ重大ナル問題ニ激化致
  シテ居ルノデアルカラ、此儘ハ通ラヌガー
  ドウセ衆議院ヲ滿足ニ通ルマイガ、色々
  削ル所モアラウカラ、削ルヤウナモノヲ最
  初付ケテ置イテ、サウシテ削ラセテ、圓滿
  ニ通サウト云フペテン-斯樣ナ言葉ヲ
  使ッテ甚ダ相濟マヌノデアリマスガ、他ニ宜
  イ言葉ガナイカラ用ヒマスガ、斯樣ナペテ
  ンガ含マレテ居ルノデハナイカト云フコト
  ヲ私ハ疑フノデアリマス、此點ハ本案ヲ取
  扱フ上ニ於テ、又本案ノ效力ヲ實際上ニ於
  テ現ハサナケレバナラヌ重大ナコトデアリ
  マスカラ、ドウゾ隔意ナク御話ヲ願ヒタイ
  ノデアリマス、是ハ單ニ私バカリデナク、
  全國ノ養蠶農民ハ之ヲ聞イテ、或ハ安心
  シ、或ハ又自己ノ立場ヲ考ヘ直スト云フ機
  會ニモナラウカト考へマスカラ、ドウカ此
  點ハ十分懇切ニ御注意願ヒタイノデアリマ
  ス
  ソレデ私ハ第一ニ問ウテ見タイコトハ、
  此立法ノ根本ニ亙ッテ、此法案ヲ出スコト
  ニ依ッテ、養蠶農民ヲ組合運動化セントスル
  趣旨デアルヤ否ヤ、此點ヲ御伺致シタイノデ
  アリマス、先程來農林大臣ノ御話ヲ承ッテ居
  ルト、農林大臣モ餘リ能ク養蠶業、蠶絲業ニ
  對シテハ知識ガナイヤウニ見受ケルノデア
  リマス、寧ロ此點ニ於テハ井野蠶絲局長ノ方ガ
  熱意ガアル、立案者デアルダケ、技術的ニハ
  優ッテ居ルヤウニ思フノデアリマスガ、併ナ
  ガラ技術的決定ヲ致ス前ニ、先以テ政治的
  ニ、政策的ニ國家ノ國策ト致ス上ニ於テ、農林
  大臣ハモット的確ナル認識ノ上ニ立タナケレ
  バナラヌト私ハ思フノデアリマス、養蠶ハ團
  體若ハ組合-日本ハ露西亞ヂヤナイノデ
  アリマス-不統制ニ依ッテ自然的發達ヲ來
  シタモノガ、今日ノ我國ノ養蠶業デアルノ
  デアリマス、決シテ組合制度ニ依ッテ發達シ
  タ養蠶ヂヤナイノデアリマス、先頃ノ亞米
  利加ノ「シカゴ」ノ博覽會、日本カラモ出品
  致シマシタガ、當時ニ於テ亞米利加ノ雜誌
  ハ何ト書イテ居ッタカ、日本ニ於テハ養蠶ヲ
  スルノニ人間バカリヂヤナイ、猫マデモ總
  動員シテ居ルト書イテ居ル、一日ノ勞働時
  間ガ二十四時間ニアラズシテ、二十六時間
  勞働ニ依ッテ養蠶ヲシテ居ルト、甚ダ滑稽ヲ
  加ヘタ書キ方デハアリマスルガ、是ガ今
  日日本ノ養蠶ノ實情ヲ的確ニ現ハシテ居ル
  ノデアリマス、殊ニ我ガ長野縣ノ如キハ副
  業ヂヤナイノデアリマス、今日繭價ノ暴落
  ニ依ッテ必死デアリマス、橫カラ批判的ニ見
  テ、或ハ論理的ニ見テ、斯ウ云フヤウニ致
  シタナラバ便利デアラウナドト云フ、生優
  シイコトデハナイノデアリマス、死ヌカ活
  キルカ、死線ヲ超エテ居ルノガ我ガ長野縣
  ヲ初メ、各養蠶ヲ主業トシテ居ル所ノ地方
  ニ於ケル實情デアリマス(拍手)故ニ此養蠶
  狀態ヲ見ルナラバ、勞働條件ニモ入リハシ
  ナイ、一日二十六時間、五十時間勞働ヲス
  ルカモ知レヌ、僅ニ三週間餘リノ養蠶勞働
  ト云フモノヲ、之ヲ計算シテ見タナラバ實
  ニ五十時間勞働、百時間勞働カモ知レヌ、
  而シテ飯ヲ食フ所モナイ、寢ル眼モ寢ナイ、
  斯ノ如ク此勞働ガ直チニ金ニナルガ故ニ、
  日本全國ノ養蠶民ハ、假令其繭ガ栗三升繭
  一升ト言ハレタモノガ、本年ノ初頭ニ於テ
  ハ、繭一貫目栗三升ト云フ位繭價ノ暴落ガ
  アッテモ、尙且ツ之ヲ絕ヤサナイ、何トナレ
  バ三週間ニシテソレダケノモノヲ得ルノデ
  アル、決シテ是ハ副業ニ非ズシテ、我等ノ
  主業デアル、更ニ言換ヘルナラバ、今日ニ
  於テハ養蠶業ト云フモノハ、農家ニ於ケル
  唯一ノ現金收入ノ途ナリト云フノガ、最モ
  當レルモノデアリマス、是ガ組合制度-
  吾々モ統制經濟ヲ說キマスルガ、吾々ノ統
  制經濟ハ資源ヲ刺戟シ、產業ノ過程ニ於テ
  合理化セシメ、其目的ニ於テ產業全體ノ利
  益ヲ普遍的ニ致スト云フコトガ、吾々ノ唱
  ヘル統制法デアル、然ルニ單ニ統制ヲシヨ
  ウ、締制トハ整理スルコト、私ハ英語ノ「コ
  ントロール」ト云フ言葉ヲ譯シタノダラウ
  ト密カニ思フノデアリマスガ、唯統制ヲ致
  シテ-日本ノ社會情勢ノ發達ヲ顧ズニ、
  一箇ノ統制ヲ强ユルト云フ、所謂統制病ニ
  罹ッテ居ル、此病氣カラ出テ來ル一ツノ「マ
  ニア」ダト私ハ考ヘル、而シテ此養蠶ノ發達
  ハ、斯ノ如クニシテ吾人ノ勞働條件、商行
  爲、有ユルモノヲ超越シタル所ニ行ハレテ
  居ルノデアリマス、ソレヲ組合團體ニ持ッテ
  行カウナント云フコトハ、私ハ根本カラ反
  對ハ致サナイガ、少シク時ヲ以テ尙ホ將來
  ノ發達ヲ見タ上デ、私ハ考慮スベキ問題デ
  アラウト考ヘルノデアリマス、然ルニモ拘
  ラズ頭カラ之ヲ强制スル、先程カラ强制デ
  ナイ、强制デナイト仰シヤルガ、私ハ是
  レ以上ノ巧妙ナ强制ハナイト考ヘルノデア
  リマス(拍手)故ニ此自然的ニ個人ノ力、熱
  味及數百年ノ立體的產業トシテ育マレタル
  所ノ養蠶ニ、組合制度ヲ突如トシテ入レテ、
  是ノ發達ヲ圖ルト云フ觀念ニ付テハ、私共
  ハ農林大臣初メ閣僚各位ニ再認識ヲシテ戴
  キタイト思フノデアリマス、殊ニ此法案提
  出ノ理由ニ至ッテハ、不時ノ暴落、或ハ短期
  日ニ於テノ買入ノ爲ニ繭價ノ暴落ガ行ハレ
  ル、養蠶家ガ製絲家カラ强ヒラレルガ故ニ、
  之ヲ救濟スルノダト云フコトヲ、頻ニ繰返シ
  テ農林大臣ハ御答辯ニナッテ居ルノデアリマ
  ス、私ガ此點ニ付テ再檢討ヲ願ッテ御答ヲ戴
  キタイト思フノハ、繭ノ相場ハ製絲家ガ製
  造スルモノデハナイノデアリマス、亞米利
  加ニ於ケル市場、世界ニ於ケル生絲市場ノ
  反映トシテ繭ノ價ガ決マルノデアリマス、
  成程市場ノ不況ナル場合ニ於テハ、製絲家
  ハ自己ノ採算ヲ有利ナラシムルガ爲ニ、買
  落ス傾向ガアルコトハ私ハ否認致サヌ、併
  ナガラ好景氣ノ場合ニ於テハ、アベコベニ
  製絲家ハ買煽ラザルヲ得ナイノデアリマス、
  決シテ製絲家ハ養蠶家ヲ窘メテ居ルノデハ
  ナイノデアリマス、勿論窘メ得ルヤウナ有
  利ナ立場ニハアリマスルガ、決シテ此相場
  ヲ製絲家一人ノ獨斷ニ依ッテ、養蠶家ニ强ヒ
  テ居ルト云フヤウナコトハナイノデアリマ
  ス、然ラバ此不時ノ暴落ヲ防グト云フコト
  ニ言及セラレルナラバ、政友會ノ山本君ガ
  言ハレタヤウニ、販賣統制ニ於テ世界ノ市
  場ニ連絡ヲ有ツ所ノ案デナケレバ、此繭價
  ト云フモノハ整理スルコトガ出來ナイノデ
  アリマス(拍手)凡ソ蠶絲業-私ハ蠶絲業
  ト云フ文句ガ氣ニ喰ハヌノデアリマス、今
  日マデ我國ノ絲價ガ甚ダ有利ナ狀態ニアリ、
  繭價ガ有利ナ狀態ニアッタガ爲ニ問題トナ
  ラナカッタノデアリマスガ、從來蠶絲業ダケ
  デ數十年來生キテ居ッタ我國ノ蠶絲ニ付テ、
  統制法ナドト云フノガ間違ッテ居ル、一體蠶
  絲ナドト云フモノハナイ、世界ノ何處ニ於
  テモ絹絲ヲ頭カラ被ッテ居ル者ハ一人モナ
  イ、蠶絲ハ織ニ至ラザレバ完成セル精製業
  トハ言ヘナイノデアリマス、故ニ繭ナリ、
  絲ナリノ値段ト云フモノハ、何レカラ決メ
  ルカト言ヘバ、之ヲ以テ織物トシテ最後ノ
  需要者ノ手ニ入ル時ノ市場ノ値段ニ依ッテ
  繭價ガ定マリ、絲價ガ定マッテ來ル、然ルニ
  拘ラズ其最モ根本デアル-先程カラ根本
  トカ、徹底トカト云フコトヲ頻ニ仰シヤル
  ガ、根本ノ根ト本ガ拔ケテシマッテ居ル(笑
  聲サウシテ養蠶家ヲ直接利益スルデモ
  ナイ、繭ヲ皆買ッテヤッタ所デ三億五千万
  位ノモノデアリマシテ、米價調節カラ見タ
  ラ何デモナイ話デアル、サウシテ養蠶家ヲ
  安定サセルト云フナラバ、何ソ進ンデ全部
  國家管理ノ中ニ移サヾルヤト言ヒタイ、亞
  米利加ニ於ケル市場ヲ其儘ニシテ置イテ、
  サウシテ此繭價ヲ云々スルナント云フコト
  ハ、實ニ本末〓倒デアッテ、根本デモナケレ
  バ徹底ヲモ致サナイノデアリマス、故ニ此
  繭價ヲ整理致ストナレバ、如何ニシテモ世
  界ノ絹織物市場ニ手ヲ觸レナケレバイカヌ、
  寧ロ私ガ此機會ニ於テ問ハントスル所ハ、
  斯ノ如キ立法ヲ以テ、我國ノ蠶絲業ヲ根本
  的ニ解決サレルト云フ農林當局及大臣ハ、
  是等ニ對シテ如何ナル畫策ガ御有リニナル
  カ、此法案ヲ出シタ蔭ニハ、山本氏ハ販賣
  統制ヲスル案ガアルカト御聞キニナッタガ、
  私ハ更ニ一步ヲ進ンデ、其販賣統制ノ基礎
  ヲ爲スベキ世界市場ニ對シテノ、我ガ國策
  アリヤ否ヤヲ問ヒタイノデアリマス(拍
  手)何モナイ、昔噺ヲ致スヤウデアリマス
  ガ、今日ノ繭價不況ヲ致シタル所ノキッカ
  ケヲ爲シタ、卽チ人絹ニヤラレタ所ノ動機
  ヲ簡單ニ申上ゲテ見タイ、大地震ノ際ニド
  ウデアリマスカ、吾々ハ丁度海外ニ居ッタ
  ガ、世界ヲ七廻リ廻ッタト云フ電信ハ、日本
  徹底的ニ滅ビタリト云フ電信デアッタ「ジ
  ヤパン·トータリー·デストロイド」實ニ容
  易ナラザルコトデアッタ、日本ガ何處カニ無
  クナッタト云フ電信デアッタ、此電信ヲ最モ
  恐レタモノハ、吾々バカリデハナカッタ、亞
  米利加ニ於ケル生絲機屋デアッタ、日本ガ滅
  ビタナラバ此繭絲ヲ何處カラ仕入レルベキ
  ヤ、故ニ機屋ハ直チニ電信ヲ出シテ、印度支
  那及支那ニ向ッテ、電信デ手配ヲシタ、値段ハ
  三千圓乃至三千五百圓ノ手配ヲシテ居ル、
  然ルニ我國ガ橫濱港ハ破レタリト雖モ、次
  ノ輸出港ハ神戶港ヲ以テ之ニ充テル、故
  御安心下サレト云フ通牒ヲ、世界ニ發シタ
  ノガ九月十六日デアッタ、其時ニ市場ヲ開イ
  テ見タラ、我國ハ二千五百圓以上ノ高値ハ
  ナカッタ、是ガ亞米利加ノ機屋ヲバタ〓〓ト
  破產セシメ、ソレガ人絹ニ、ソラ見ロ、天然絹
  絲ノ如キ不便ナルモノヲ使フヨリハ、我ガ人
  絹ヲ使ッタラ宜イヂヤナイカト云フ、宣傳ノ機
  會ヲ與ヘタノガ此時デアッタ、此生絲產業ハ
  我國ニ於ケル對世界、殊ニ重要ナ米國ニ對
  スル容易ナラザル國策デアリマス、然ルニ
  モ拘ラズ、日本滅ビタリト云フ電信ヲ其儘
  ニシテ置イテ、而シテ我ガ當局ニ於テ、東
  京附近ハ壞サレタガ、生絲產地ハ安全ナリ
  ト云フ一本ノ電信ヲモ出ス機會ガナカッタ
  ト云フコトハ何事デアリマスカ、若シ其當
  時、九月一日ノ午後ニ於テヾモ宜シイ、サ
  ウ云フ電信一本デモ打ッテ居ッタラ、是ガ何
  千万、何億万ニ價シタカ分ラヌ、若シ生絲
  ガ我國ノ國策經濟上ノ大本デアルト言フナ
  ラバ、之ヲ防禦スベキ防火壁ガナケレバナ
  ラヌ、是ガ今後ニ於ケル私ハ日本ノ養蠶
  業蠶絲業ヲ中心トセル國際外交ノ眞髓デ
  ナケレバナラヌト思フ(拍手)斯樣ナ法案ヲ
  出シテ、サウシテ天下ニ對立的運動ヲ起サ
  セルヨリモ、先以テ私ハ斯樣ナ點ニ一石ヲ
  投ジテ、而シテ高所ヨリ下ッテ參ッテ、以テ
  養蠶家ニ安全率ヲ與ヘルト云フ所ニ、農林
  省ト言ハズ、商工省ト言ハズ、政府一體ト
  ナッテノ政治的責任アリト、私共ハ考ヘルノ
  デアリマス(拍手)此法案ヲ見マスト、唯繭
  カラ絲ニ至ルダケデ、ソレデ終リデアリマ
  ス、而シテ只今聽イテ見レバ、農林省ハ絲
  ダケデ、絲カラ先ハ商工省デアル、道理デ
  今日私ハ此處ニ町田商工大臣ノ居ラレナイ
  コトヲ遺憾トスルノデアリマス、商工大
  臣、商工省トシテ考ヘテ見タナラバ、此案
  ハ苦々シイト町田サンガ御思ヒニナッテ居
  ルト、私ハ善意ニ推測致スノデアリマス、
  コンナ案ヲ出サレテ、ドウシテ亞米利加ニ
  販賣ガ出來ルカ、只今農林大臣ノ御言葉デ
  アル乾繭處理、乾繭ノ方法ニ付テ幾多ノ質
  問ガ出ル、ソレニ對シテノ御答ハ、唯論理
  的御答デアルニ過ギナイノデアリマス、乾
  繭ノ重大ナルコトハ、繭ガ生絲デナクナッテ
  シマフト云フ程度ニ重大デアリマス、斯樣
  ナコトハ議論ヲ用ヒズシテ、各營業製絲ヲ
  ヤル-製絲業ヲナサル方々ノ製絲場へ
  行ッテ見ルト直チニ分ル、有ユル犠牲ヲ拂ッ
  テ、此乾繭ニ力ヲ注グ、此乾繭ニ力ヲ注ガ
  ザル限リ、良キ絲ハ出來ナイノデアリマス、
  良キ絲モ出來ナケレバ、如何ニ乾繭ノ利用
  ヲ迅速ニシヨウトモ、農家トノ間ヲ圓滿ニ
  シヨウトモ、此生絲ハ外國へ賣レナイノデ
  アリマス、此生絲ガ人絹ニ叩カレタノハ幾
  多ノ理由ハアリマセウ、先程申シタヤウナ
  宣傳ノ機會ヲ與ヘテ、安イ、或ハ賣易イ、
  或ハ技術的ニ良イト云フ點ハアリマセウ
  ガ、唯天然絹絲ガ人造絹絲ニ對抗シ得ル點
  ハ、今日ハ優秀ナル生絲製品ト云フ以外ニ、
  人絹トハ對抗ハ出來得ナイノデアリマス、
  故ニ此點ニ於テハ政府自ラ語ッテ居ルノデ
  アリマス、今日ノ本豫算ノ中ニ現レタ中
  ニ、格付〓究助成金ト云フモノガアル、タッ
  タ四万二千圓デアリマス、是ガ稍〓私ハ我國
  ノ生絲ヲ世界的市場ニ結付ケル最モ重要ナ
  ル案ト思フノデアリマス、四万二千圓位デ
  ハイケナイ、四十二万圓モ投ジテモ宜イノ
  デアリマス、此格付〓究トハ、卽チ格付ノ
  標準ヲ上ゲルト云フコトデス、是ハ恐ラク
  製絲業、輸出家ハ非常ナ迷惑ヲ受ケタデア
  リマセウ、打擊ヲ受ケテ居リマス、打撃ヲ
  受ケテ居ルガ、假令ソレガ打擊、苦痛デアッ
  テモ、良イ絲ガ出ルト云フ點ニ於テ是ハ將
  來性ガアル、故ニ苦痛デハアルガ、恐ラク
  世ノ製絲家、貿易業者ハ之ヲ受入レテ居ル、
  政府ガ格付ノ標準ヲ高カラシムルト云フコ
  トハ、高等製品トシテ人絹ヲ叩クト云フ意
  味ニ於テ、洵ニ當ヲ得タモノデアル、併ナ
  ガラ單ニ四万二千圓デアル、此格付ヲ上ゲ
  ルト云フ制度ヲ設ケタラバ、之ニ對應ス
  ル爲ニ乾繭ニ對シテハ異常ノ注意ヲ拂
  フト云フコトガナケレバ、是ハ本末〓
  倒デアリマス、是ハ私今日ハ外務大臣
  モ居ラレナイヤウデアリマスルガ、大ニ御
  考慮ヲ願ヒタイ、御得意樣ハ亞米利加デ
  アリマス、如何ニ內デ吾々ガ藻搔イテモ、
  亞米利加ノ市場ニ適用セザル生絲ガ現レタ
  時、是レ生絲ニ非ズデアリマス、故ニ如何
  ニシテモ亞米利加ノ市場ニ合フ程度ノ物ヲ
  拵ヘナケレバナラヌトスルナラバ、最モ優
  良品トシテモ生絲ヲ輸出スル、或ハ之ヲ生
  產スルト云フ以外ニ途ハナイノデアリマ
  ス、今日ドウデアリマセウ、日本ノ生絲ノ
  最後ニ殘ッタモノハ何デアルカト云ヘバ、最
  モ其地色ヲ現スベキ、亞米利加婦人ノ「ス
  トッキング」靴下ダケガ殘ッテ居ルデハアリ
  マセヌカ、人絹ガ殊ニ生絲ハ及バザル點
  ハ-コンナコトハ釋迦ニ說法デ、皆サン
  御存ジデアリマセウガ、動物ノロカラ出ル
  ガ爲ニ、最初ハ細クテ、眞中ハ太クテ、終
  リガ細クナルノガ生絲デアリマス、ソレ位
  一ツノ繭カラ出ル二三百米ノ長サニ於テ
  モ、初マリガ細クテ、眞中ガ太クテ、終リ
  ガ細イト云フヤウナ「デリケート」ナ差デス
  ラモ、人絹ノ針金ノ如ク延バシタモノニハ
  及バナイ、高等織物ニハ適シナイト云フ程
  微妙ナモノデアリマス、然ルニモ拘ラズ、
  ソレノミニ依ッテ-優秀ナ絲、品質ト云フ
  コトノミニ依ッテ、人絹ト戰ハナケレバナラ
  ヌト云フ時ニ、繭ガ繭デナクナル乾繭處理
  ヲ、單ニ蛹ヲ殺ス-私ハ其位ノコトハ甚ダ
  失禮ナ申分デアルガ、乾繭トハ蛹ヲ殺スト
  云フ程度ノ認識シカ當局ニハナカラウト思
  ハレル、蛹ハ殺シテモ繭ガ役ニ立タナケレ
  バ役ニ立タヌ、蛹ノ殺方ニハ、金ガ掛ッテ
  モ、其結果品質ガ優良デアルト云フナラバ、
  亞米利加ノ市場ヲ人絹ト對抗シテ優ニ負カ
  スコトガ出來ルノデアリマス、其點ニ於テ
  政府ハ此格付ヲ上ゲルト云フ常道ヲ一方ニ
  執ッテ居リナガラ、一方ニ於テ品質ヲ惡クシ
  テシマフトハ、是ハ矛盾デハナイカ、此點
  ニ付テ私ハモット御〓究ナサッテハ如何デア
  ラウカト思フノデアリマス、故ニ此乾繭處
  理ヲ、而モ强制ハ致サナイ、自治强化-
  實ニ私ハ養蠶農民諸君及產業組合諸君全部
  ガ、非常ナ是ハ迷惑ヲスル、有難イ、而シ
  テ實際ニ於テハ有難クナイ、痛イ所ノ陷穽
  デハナイカト思フ、始マリハ法律デ抑ヘテ
  シマフ、ケレドモ抑ヘテシマフニハ相當ナ
  金ヲ出サナケレバナラヌ、今日ノ財政狀態
  デハソレガ出來ナイ、故ニ是ハ組合ノ農民
  ニ任シテヤル、就テハ抑ヘナイゾ、オ前等
  ヲ繩デハ縛ラナイ、故ニオ前等ノ自治强化、
  サウシテ今日產業組合ノ各位モ、自治强化
  デ吾々ガヤルノダト仰シヤルノデアリマセ
  ウガ、今農林大臣モ仰シヤル通リ、產業組
  合、組合製絲ノ缺陷ハ幾ラデモアルカラ、
  是カラ整理スルト仰シヤッテ居ラレル、サウ
  シテ見ルト受ケルモノハ何デアルカト云ヘ
  バ、自治强化デ產業組合ガ金ヲ出シテ、自
  分ノ危險負擔デ、サウシテ有ユルコトヲヤツ
  テ行カナケレバナラナイ、政府ハ法律ダ
  ケ出シテ、サウシテ此處ニ出テ來ルト是デ
  罰金百圓ダ、此處ニ出テ來ルト罰金百圓ダ、
  棚ヲ結ッテ、サウシテオ前等ニハ自治强化
  ダ-何ガ自治强化デアルカ、是ハ他治强
  化ト言ハナケレバナラヌ、私ハ政治或ハ
  國策ヲ遂行スル上ニ於テハ、モット眞面目ナ
  責任ヲ執ッテ戴キタイ、今日日本ノ養蠶業者
  ハ實ニ死ノ苦ミデアリマス、養蠶家ハ儲ケ
  テ居ラヌ、製絲家モ儲ケテ居ラヌ、又今日
  殆ド人非人扱シテ居ル生繭生絲商人モ儲ケ
  テ居ラヌ、誰モ儲ケテ居ラヌ、若シ誰カ儲
  ケタ人ガアルトスレバ、ソレハ日本ノ生絲
  デナクチヤナラヌト云フ亞米利加及歐洲列
  國ニ於ケル需要者各位ガ儲ケテ居ル、而シ
  テ日本デハ一人モ儲ケテ居ラヌ、養蠶仲間
  ニ於テハ斯ウ云フ言葉ガアル「儲ケナカッタ
  ラ止メルカ、ナアニアレハ十年間手バタキ
  グ」斯ウ言ッテ十年間倉一ツ建テナカッタノ
  二、我國ノ貿易ノ太宗デアル、國策デアル
  ト言ッテ、國民上下擧ッテ其犠牲ニナッテ、今日
  ノ隆盛ヲ來シタコトニ想ヒ到ッタナラバ、此
  際斯樣ナ法律陷穽ヲ柵トシタル强制法律案
  ヲ-サウシテ自治强化ダケハオ前等ニヤ
  ラセルト云フ名ヲ與ヘテ置イテ、其負擔ハ
  ドウナルデアリマセウカ、組合製絲及組合
  乾繭ノ如キモノガ、今日如何ナル狀態ニ在
  ルカヲ私ハ御伺シタイノデアリマス、全國
  六十有餘ノ乾繭倉庫及此組合製絲ノ現狀ハ
  如何デアリマセウ、一ツデモ赤字ノ出テ居
  ラヌ組合ガアルナラバ、御〓ヲ願ヒタイノ
  デアリマス、而シテ政府ハ之ヲ極祕ニ致シ
  テ居ルサウデアリマスガ、一體全額幾ラノ
  損失ニナッテ居ルノデアリマセウ、私ノ聞ク
  所ニ依レバ一千万圓ヲ超エテ居ルト云フ噂
  デアリマス、ソコデ私ハ此組合强化ハ宜シ
  イ、論理的ニ一先ヅ之ヲ聽キ遁シマセウ、
  併ナガラ此組合强化ニ依ッテ是カラ手ヲ著
  ケヨウトスル、新規豫算ノ要求ニ依ッテ新ニ
  爲サントスル、而シテ其背景ニハ、此法案
  ヲ背景トシテ眞劍ニ向ッテ行カウト云フ、此
  組合統制ノ、其組合ナルモノヽ狀態ガドウ
  ナッテ居ルカ、或ハ恐ル、今迄ノ缺損ヲ塡補
  スル一ツノ方法ニ之ヲ利用シハシナイカ、
  非常ナル缺損ニナッテ居ル、此方法ヲ以テ行
  クナラバ、其途中デ變ヘテシマヒハシナイ
  カト云フヤウナ、狡イ考ガアリハシナイカ、
  假令是ガ狡イ考ガナイニモセヨ、缺損ガ旣
  ニアル、其モノニ此モノヲヤルナラ、其缺
  損ハ此法案遂行ト同時ニ、是ハ融和償還サ
  レルベキモノデアルト考ヘル方ガ當然ダト
  思フノデアリマス、然ルニ是ガ此缺損ヲ此
  法案ニ依ッテ救ヒ、又同時ニ此缺損ヲ缺損ト
  シテ獨立ニシテ、此法案ヲ遂行スルト云フ、
  極メテ重要ナル所ノ觀念ヲ失ッテ居ルト云
  フコトハ、私ハ實ニ歎ハシイコトデアルト
  思フノデアリマス、故ニ現在ノ組合製絲及
  組合乾繭倉庫ノ損失ハ幾何デアリマスルカ、
  或ハ之ヲ此損失ノ上ニ補塡ノ爲ニ、救濟ノ
  爲ニオヤリニナルト云フ氣分ガオアリニナ
  ルノデアルカドウカ、而シテソレガオアリ
  ニナラヌト云フノナラバ、具體的ニ如何ナ
  ル方法ニ於テ、ソレ等カラ分離シテ、獨立
  ノ法案トシテ其働ヲ取ラレルカ、此點ヲ御
  伺致シタイノデアリマス、私共ノ考カラ言
  フナラバ、此損失ハ損失トシテ決濟シタラ
  宜イ、コンナ法案ヲ今日突如トシテ出スヨ
  リモ、現在受ケテ居ル組合製絲ノ損失ヲ國
  家ガ補塡シテヤルコトガ、私ハ先決問題ナ
  リト思フノデアリマス(拍手)而シテ此現在
  ノ損失ヲ補塡シテ、然ル後ニ官民共ニ熟議
  ニ熟議ヲ凝シテ、サウシテ之ヲ提出スベキ
  ガ實ニ心アリ、又親切ナル遣方デアルト考
  ヘルノデアリマス、卽チ今日天下ニ澎湃ト
  シテ反對論ガ起ルノハ、此親切ナル手續ヲ
  盡サズ、此蔭ニ隱レテ居ル所ノ暗影ヲ、其
  儘ニ見遁シテ來テ居ルガ故ニ、天下澎湃ト
  シテ反對論ガ起ッテ居ルノデアリマス(拍
  手)私ハ餘リニ技術的ニ御考ニナラズニ、
  統制經濟ノ末ニ醉ハズニ、モット政治的ニ高
  處カラ斷案ヲ下サレンコトヲ望ムノデアリ
  マス、此點ハ或ハ農林大臣ヲ商工大臣ガキ
  メ付ケルコトモ如何デアリマセウ、現內閣
  ノ組織カラ言フナラバ······併ナガラ總理大
  臣ハ首班トシテ、之ヲ仲介サレナケレバナ
  ラヌ、單ナル批判的或ハ論理的、左樣ナモ
  ノデ決定スベキモノデハナイ、我國ノ國際
  經濟上ノ死活ニ關スル間題デアルカラ、寧
  ロ是等ノ點ハ技術官ニ委セルニ非ズシテ、
  先以テ總理大臣ガ、此非常時對策トシテ、
  內ニ困リ、外ニ向ッテ我ガ貿易ノ發展ヲ圖ラ
  ナケレバナラヌ、此大問題ヲ決濟スベキモ
  ノハ、私ハ懸ッテ總理大臣ノ雙肩ニアリト信
  ズル者デアリマス、此點ニ於テ私ハ總理大
  臣ノ、モット政治的良心ノ發動ヲ求メル、サ
  ウシテ玆ニ官民共喜ブ案ヲ作成サレル手段
  ヲ御執リニナルコトヲ、切ニ私ハ全國二百
  万養蠶國民ノ爲ニ、又我國對外經濟發展ノ
  爲ニ、特ニ總理大臣ニ此政治的折衝ニ乘出
  サレンコトヲ御願致ス次第デアリマス
  諸君、更ニ御伺致シタイノハ、只今農林
  大臣カラモ御答ガアリ、質問モ出タノデア
  リマスルガ、此法案ニ依ッテ從來ノ養蠶組合
  員販賣人等ガ失業ノ外ナキト云フ狀態ニ
  陷ル、之ヲ如何ニシテ救濟スルカト云フコ
  ト、而モ本案ニ於テ此要項ヲ見マスルト、
  實ニ養蠶家ト云フモノハ-繭販賣人、仲
  買人ト云フモノハ、人間扱ヒヲ受ケテ居ラ
  ヌノデアリマス、是等ノ人間ハ玉繭、層絲ヲ
  取扱ッテ居レバ宜イ、モット甚シキハ、井野
  蠶絲局長ノ如キ、蠶絲ニ付テハ實ニ吾々ガ
  多大ノ敬意ヲ拂ヒ、熱ト知識ヲ有ッテ居ラレ
  ル方ガ、何デコンナコトヲ御書キニナッタカ
  ヲ、是ハ筆ノ誤リヂヤナイカト思フ程不思
  議ニ思フノデアル、仲買人ハ商賣ガナク
  ナッタラ、乾繭業務ニ轉向シタラ宜イト云
  フ、諸君、乾繭如何ニ依ッテ生絲ガ生絲デナ
  クナルト云フ狀態ガアルニ拘ラズ、玉繭、
  屑絲デモ買ッテロ、而シテ他ノ商賣ニ有リ付
  ケ、養蠶業ノ商賣ニ有リ付クノデアッタラ
  バ、乾繭業ニデモ轉向シロトハ何事デアリ
  マス、養蠶業仲買人ハ仲介搾取デアルナド
  ト云フ露西亞式「イデオロギー」ニ囚ハレテ
  論ズベキモノデナイ(拍手)今日ハ是ハ整理
  スベキ時代デハアリマスルガ、單ナル養蠶
  家ノ養蠶事業ニ依ッテ、繭ガ市場ニ出テ來ル
  ノヂヤナイ、他縣ハ知ラズ、之ヲ本業トス
  ル我縣ノ如キハ、來年ノ春蠶マデ、農民ハ
  仲買人ト約束ヲシテ居ルノデアリマス、來
  年蠶ヲ飼ッテ置ケ、買ヒニ來テヤルカラ、其
  聲ヲ樂ミニシテ蠶ヲ飼フト云フ狀況ニ在ッ
  テ、養蠶家ト言ヘバ、ソレニ仲買人ヲ一部
  加ヘテ養蠶家ト言ヒ得ル程、仲買人ハ決シ
  テ養蠶家ノ寄生蟲デハナイノデアル、ソレ
  ヲ恰モ寄生蟲ノ如ク之ヲ取扱ッテ、サウシテ
  全國ニ二十万アルト吾々ハ聞イテ居ルガ、
  ソンナニハナイト云フコトヲ言ハレテ居ル
  ガ、假令一人デモ宜シイ、此養蠶業ニ必死
  トナッテ努メタル過去ノ功勞者ヲ、此不備ナ
  ル法案ヲ出ス爲ニ、之ニ飢ヱラカシテ宜イ
  ト云フ政治道德ハ、私ハ何處ニモ見出スコ
  トハ出來ヌノデアル(拍手)而モ是ハ私ハ商
  工大臣ニ御伺致シタイ、ドウデアリマセ
  ウ、只今私ノ所ヘ著イタ、是ハ靜岡縣カラ
  ノ手紙デアリマス、養蠶仲買人組合カラノ
  手紙デアリマス、オ前等ハ生繭ヲ取扱ハセ
  ナイ、故ニ玉繭、層絲ヲヤレト追ヒヤラレ
  タ故ニ、ソコデ靜岡縣ニ於ケル仲買業者
  ハ、政府ノ御趣旨ニ從ッテ、政府ノ御趣旨ト
  云フヨリハ、此苛酷ナル法律ノ蔭ニ喘ギナ
  ガラ、然ラバ玉繭、屑絲商業組合ヲ拵ヘヨ
  ウトシテ願出タ、是ハ私共ハ正面カラ之ヲ
  救濟セズニ、彼等ガスゴ〓〓ト玉繭、屑絲
  ニ轉業シテ行カウ、組合ヲ拵ヘテ行カウト
  云フ發心ニ對シテハ、多大ノ同情ト敬意ヲ
  拂ハナケレバナラヌノデアリマス、然ルニ
  ソレニ對シテドウ云フ指令ガアッタカト云
  フト、商工省ヨリ靜岡縣經濟部長ニ宛テ、
  經濟部長ヨリソレニ宛テタ手紙、是ガ本文
  デアリマスガ、之ヲ讀ミマス、「曩ニ商業組
  合法ニ基キ組合設立ヲ發起屆出有之候處特
  ニ繭絲類ノ仲買業者ハ商業組合法第一條第
  二項ニ依ル勅令ヲ以テ商業者ニ非サルモノ
  トシテ規定セラルヽ見込ニ付此際組合ノ設
  立ハ見合ス樣指示相成度旨其ノ筋ヨリ申越
  有之候條」ト書イテアル、諸君何ニナッタノ
  デアリマス、此法案ガ通ルト、養蠶仲買人
  ト云フモノハ何ニナッタノデアリマス、商業
  者ニ非ザルガ故ニ-恐ラク斯ウ云フ御答
  辯ヲナサルト思フ、是ハ組合商業法ニ依ル
  商業者ニ非ザルト云フ風ニ御答ニナルノデ
  アリマセウガ、左樣ナ形式論デ斯樣ナ社會
  問題ヲ料理スルコトハ出來ナイノデアリマ
  ス(「ヒヤ〓〓」)一法案ヲ立案スルニ付テ
  ハ、ソレノ當面ノ目的ニ對シテハ、例ヘバ
  蠶絲業ノ問題ヲ論ズル時ニハ、遠ク亞米利
  加ヲ考慮ニ入レテ考へルト同樣ニ、其法案
  ニ依ッテ生ズル所ノ被害者、之ニ對シテハ救
  濟ノ途ヲ豫メ考ヘテ行クト云フ所ニ、私ハ
  法ノ有難サガアルト思フノデアリマス(拍
  手)又同時ニ、ソコニ政治的道德道義ガアル
  ト思フノデアリマス、然ルニ屑繭、玉繭ヲ商
  賣ニシロ、出來ナカッタラト云ッテ、不可能
  デアル乾繭轉向ヲ强ヒテ置キナガラ、而シ
  テ、然ラバト云フノデ、組合萬能ノ政府ノ
  御主張ニ依ッタノデアリマセウ、是ハ仲買
  人諸君ノ窮餘ノ智慧デス、組合ト言ッタラサ
  ゾ受入レテ吳レルダラウト云フ考カラ、商
  業組合ヲヤルト言ッタラ、オ前等ハ商業者ト
  シテ取扱フコトハ出來ヌ、人間トシテ取扱
  フコトハ出來ヌカラ勝手ニシロト云フコト
  デアリマス、斯樣ナコトガ民心ニ及ボス所
  ノ影響ト云フモノハ重大デアリマス、單ニ
  仲買業者ハ減ッタ、是ハ中間者ダ、拔カナク
  テハナラヌナドヽ云フ批判的言葉ヲ以テ、論
  理的ナ結論ト致シテ、斯樣ナ重大ナル、國
  民ヲシテ過去ニ於テ養蠶業ヲ今日アラシメ
  タル、少クトモ忠君愛國者デアル是等ヲ弊
  履ヲ棄テルガ如ク、人間界カラ沒却シテシ
  マウヤウナ態度ヲ執ルト云フコトハ、洵
  私ハ遺憾ニ堪ヘナイノデアリマス、故ニ養
  蠶業者ハ困ッテ居ルカラ之ヲ救ヘナドヽ云
  フ、私ハ女々シイ哀願ヲスルノデハナイ、
  本案ヲ提出シテ、サウシテ國內ニ於テハ蠶
  絲業ノ確立ヲ圖リ、之ニ依ッテ生ズル海外ノ
  經濟市場ヲ統制シテ行キ、擴大シテ行キ、
  强化シテ行カウト云フ重大ナル法案ヲ立案
  サレタル當局者ハ、斯樣ナ片鱗ト雖モ之ヲ
  顧ミテ漏サヾルヤウニ注意シナケレバナラ
  ヌノデアリマス、故ニ私ハ是等ノ一點ヲ見
  テモ、本案ガ洵ニ今日ノ事情ニ適セザル所
  ノ惡法タルコトヲ、吾々ハ認メルノデアリ
  やく、今日ハ討論ヲ致スノデハナイノデア
  リマスルガ、是等ノ諸點ニ付テ尙ホ私ハ伺
  ヒタイコトハ幾ラデモアル、山程アル、マ
  ダ本論ニ入ッテ居ラナイ、本論ニハ入ッテ居
  ラヌガ、微ニ入リ細ニ亙ルト云フコトハ、
  是ハ只今農林大臣ノ御答ニ依ッテ大抵其全
  般ガ窺ヒ得タノデアリマス、是ハ委員會等
  ニ於テ十分ニ御聽キ致ス機會ニ讓ルコトニ
  致シマセウガ、兔ニ角本案ガ提出サレタコ
  トニ依ッテ、ソレニ依ッテ受ケル所ノ實害、
  殊ニ乾繭處理ヲ主眼トスル、此乾繭處理ニ
  依ッテ生絲ガ生絲トナラザルト云フガ如キ
  重大ナル結果ヲ來スコトニ對シテハ如何ナ
  ル御考ガアルカ、而シテ若シ亞米利加カラ、
  斯ノ如キ法案ガ出テ、今マデ優秀ナ生絲產
  出ヲ國是トシテ居ッタ日本ニ於テハ、今後乾
  繭ガ滅茶苦茶ニナルカラ生絲ノ品質ハ下落
  スルゾト云フ考ヲ、若シ亞米利加、紐育ノ
  機屋ニ是レポッチデモ示サレタナラバ、我國
  ノ亞米利加市場ニ於テ、生絲ノ受ケル影響
  ハ如何デアリマセウカ、實ニ重大デアリマ
  ス、故ニ是等ノ問題ハ、單ニ法規上ニ於テ、
  絲バカリ取扱フ農林省、而シテ其中ニ居ラ
  V、此養蠶業ヲドウカシヨウト云フ熱意ガ
  アルガ、マダ認識ガ少シ缺ケテ居ルト云ッタ
  ヤウナ人々ヲ相手ニシテ、一夜作リノ法案
  ヲ作ッテ、蠶絲會ニ問合セテ、斯ウ云ッタカ
  ラ宜イト云フヤウナ程度ニ於テ之ヲ出シ、
  如何ナル惡影響ガ起ッテモ俺ハ知ラヌ、組合
  ノ統制ヲ行ッテ、サウシテ其統制ノ恩惠ニ
  佐つく値段ハ何時モ農家ニ利益ニナルノ
  ダ、故ニ團體取引ヲシナケレバナラヌト云
  フ此法案提出ノ理由ヲ見レバ、丁度風ガ吹
  ケバ桶屋ガ儲カルト云ッタ程度ノ論理ニ外
  ナラヌノデアリマス、故ニ私ハ斯樣ナコト
  ヲ顧慮スル上カラハ、根本案デアリ、徹底
  セル法案デアルト云フナラバ、根本案デア
  リ徹底セル法案デアルト云フコトヲ、少ク
  トモ私共ノヤウナ素人デモ分ル程度ニ於テ
  切實ニ御說明アランコトヲ望ミマス、尙ホ
  詳シイコトハ時間モ甚ダ切迫致シテ居リマ
  スカラ、委員會ニ讓リマシテ、先以テ吾々
  ガ此法案ニ對スル全般的意見ヲ開陳致シテ、
  而シテ當局大臣ノ切實ナル御說明ヲ乞フ次
  第デアリマス
  〔國務大臣山崎達之輔君登壇〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006713242X02019350228&spkNum=68

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• 069・山崎達之輔

  ○國務大臣(山崎達之輔君)　只今鷲澤君ノ
  非常ナ御造詣ノ深イ御立場カラ、種々ノ材
  料ヲ巧ニ御取扱ヒニナッテ、マア主トシテ御
  意見ノヤウデハアリマシタガ(「意見ヂヤナ
  イ實際ダ」ト呼フ者アリ)一一三御答ヘ致シテ
  置キマス、本案ヲ提案ヲ致ス場合ニ、誰ニ
  御會ヒニナッタ御話カ分リマセヌガ、强制
  ヲスル考デアルト言ッテ居ッタノガ、强制ハ
  シナイト云フコトニ變ッタ、ソレナラバ贊成
  ヲシテ宜イカモ知レヌト云フ氣持モ起ッタ
  ガ、罰則ガアルカラ云々、而シテ全國ニ大
  反對ガ澎湃トシテ起ッテ居ル、ドウモ其
  邊ノ話ヲ一々連絡ヲ取ッテ考ヘテ行キ
  マスト、甚ダ諒解シ難イ點ガ多々アル
  譯デアリマス、併ナガラ此處デ御意見ヲ反
  駁致スヤウナコトハ、是ハ私御遠慮申上ゲ
  ル方ガ宜シイト思ヒマスガ、唯大切ナ點デ
  アリマシテ、或ハ世上ニ誤解ヲ撒布スルノ
  虞ガアリマスカラ、此處デ一言申上ゲテ置
  キマスガ、私ハ提案ノ理由及質問ニ對スル
  答辯ニ於テ申上ゲマシタヤウニ、今囘ノ產
  繭處理ノ形態ハ罰則ヲ以テ强要シタリ、或
  ハ法ノ力ヲ以テ壓迫スルト云フコトハ避ケ
  タイ、是ガ法律立案ニ當ッテノ根本ノ考方
  デアル、其通リノ法律デアリマス、之ヲ何
  等罰則ヲ以テ强要シタト云フコトハナイ、
  是ハ能ク御承知ノコトデアラウト思ヒマス、
  唯一箇條輕微ナ罰則規定ガアリマスノハ、
  是ハ例ヘバ檢定ト云フ制度ヲ設ケル場合
  ニ、而モ此檢定モ、先刻申上ゲマシタヤウ
  二、小口ノ取引等ニ付テハ檢定ハ强要致サ
  ナイ積リデアリマス、大量ノ取引ニ付テ、
  大口ノ荷口ニ付テ檢定ヲ行フ積リデアリマ
  スガ、左樣ナ場合ニ違反ガアッタ場合ハ、是
  ハ輕微ナ罰則ヲ設ケルコトハ已ムヲ得ナイ
  コトデアリマス、此事ニ付テハ業界ニ於テ
  何等ノ異存ハナイト私ハ確信ヲシテ居リマ
  ス、更ニ今第二項トシテ擧ゲテアリマスノ
  ハ、所謂特約取引ニ付テノ輕微ナ是モ取締
  規定ニ過ギマセヌ、產繭處理ノ本體ニ付テ、
  何ダカ罰則ヲ以テ强要デモシテ居ッテ、農民
  ヲ戰慄セシメルト云フヤウナ御言葉ガアリ
  マスコトハ、是ハ能ク御諒解ノコトヽハ存
  ジマスガ、或ハ世間ニ誤解ヲ撒布スル虞ガ
  アリマスカラ、此場合私ハ明瞭ニ申上ゲテ
  置キタイト思フ、第二ハ今囘ノ法案ハ、
  種ノ組合運動デハナイカ、養蠶業ハ組合ニ
  依ッテノ經營ハ困難デアル、斯樣ナ意味合ノ
  御言葉デアリマス、是モ專門家デアラセ
  ラレルノデアリマスカラ、能ク御理解下サッ
  テ居ルト存ジマスルガ、今囘何モ別ニ組合
  制度ヲ創立シタト云フコトハアリマセヌ、
  是マデ御承知ノヤウニ實行組合ノ制度ハ、
  儼然トシテ存在致シテ居ルノデアリマス、新
  ニ組合制度ヲ持込ンダト云フヤウナコトデ
  ハナイノデアリマス、殊ニ今囘ノ處理ニ付
  テ、唯生產シタル繭ヲ處理スル上ニ於テ、
  詰リ捌キヲ付ケル場合ニ、或ハ實行組合等
  ニ依ッテ捌ク方ガ便宜デアラウトハ思ヒマ
  スガ、是モ强制ハ致シテ居リマセヌ、是
  其方ガ農家ノ爲ニ宜シカラウト思ヒマス
  ガ、何モ組合ニ依ッテ團體販賣ヲ强要スルト
  云フヤウナコトハアリマセヌ、況ヤ養蠶業
  ノ經營其モノヲ、何カ組合運動ト云フヤウ
  ナ意味デドウ-或ハ私ガ御說ヲ聽キ誤ッタ
  カモ知レマセヌケレドモ、法ノ精神ハ先程
  申上ゲタ通リノコトデアリマシテ、若シ此
  點ニ何等カノ御懸念ガゴザイマスルナラ
  バ、是ハドウカ一ツ御安心ヲ願ヒタイト思
  ヒマス、ソレカラ根本ノ御議論ハ、苟モ蠶
  絲業ノ事ヲ考ヘルノニ、亞米利加其他ニ於
  ケル、詰リ國際的事情ノコトヲ考ヘルコト
  ガ根本デハナイカト云フ御意見デアリマシ
  テ、是ハ私御尤ナ御意見ト思ヒマス、是ア
  ルガ爲ニ蠶絲業及輸出業其他ノ當業者ニ於
  キマシテ、出來得ル限リノ努力ヲ拂ヒマシ
  テ、海外市場ノ新規開拓、或ハ生絲ノ新規
  利用等ニ付テ、政府ト協力致シマシテ力ヲ
  盡シテ居ル譯デアリマス、併ナガラ海外ノ
  經濟事情ト云フモノヲ、之ヲ日本ダケノ力
  ヲ以テドウ斯ウト云フ譯ニ、是ハ中々簡單
  ニ參ルコトデナイシ、是ハ申上ゲル迄モナ
  イコトデスガ、併ナガラ市場ノ開拓、或ハ
  其他ニ付テ、是ハ出來ルダケノ努力ヲ拂ハ
  ナケレバナラズ、或ハ御贊成ヲ受ケマシタ
  輸出生絲ノ格付、檢定、其他遺憾ナキヲ期
  シテ居ル譯デアリマス、併ナガラ是アルガ
  爲ニ、養蠶業ノ前途ト云フモノヲ、私共ハドウ
  シテモ樂觀スル譯ニハ参ラヌ、是迄ノヤウナ
  情勢デアレバ、提案理由ニ申上ゲマシタヤウ
  ニ、彼此レト心配スルコトモアリマスマイガ、
  私ハ前途ヲ如何ニ努力致シマシテモ、之二
  樂觀的態度ヲ以テ望ムト云フ勇氣ハ實ハナ
  イノデアリマス、是ニ於テカ養蠶農家ノ經營
  ノ基礎ヲ、有ユル手段ヲ以テ鞏固ニスル施
  設ヲ講ズルト云フコトハ、是ハ私ハ當然ノ
  事デハナイカト云フ風ニ考ヘテ居ル譯デア
  リマス、乾繭デ絲ガ惡クナリハセヌカト云
  フ御趣意デゴザイマシタガ、此點ハ先刻他
  ノ御質問ニモ御答申上ゲマシタヤウニ、之ニ
  付キマシテハ乾繭ノ度合ニ付テ、一々成績ハ
  〓究ガ出來テ居ル譯デアリマシテ、此點ハ
  私ハ御覽ノ通リ素人デアリマシテ、寧ロ委
  員會等ニ於テ專門ノ者ヨリ詳細ノ事ヲ御說
  明申上ゲマスル方ガ適當デアラウト考ヘマ
  ス、ソレカラ乾繭組合ノ不成績ナモノガア
  ル、之ヲ何ダカ今囘ノ施設ニ依ッテ、ドウ斯
  ウト云フヤウナ御意味ニ諒解ヲ致シマシタ
  ガ、尙ホ全國乾繭組合ノ中デ、名前ハ申シ
  マセヌガ、若干經營ニ困難ヲ感ジテ居ルモ
  ノガアルコトハ御承知ノ通リデアリマス、併
  ナガラ其問題ノ處理ト今囘ノ立法トノ間ニ
  ハ、何等ノ關係ガナイト云フコトヲ、特
  私ハ明瞭ニ言明致シテ置キマス、ソレ等ノ
  處置ハ處置トシテ、別個ニ考ヘルベキモノ
  デ、ソレアルコトニ依ッテ、今囘ノ立法ニ對
  シテ何等ノ懸念、何等ノ關係ガナイ、斯ウ云
  フ風ニ御諒解ヲ願ヒタイノデゴザイマ
  ス
  ソレカラ最後ニ商業組合ノ御話ガゴザイ
  マシタガ、是ハ商工省カラ回答ガ參ッタコト
  ト思ヒマスガ、ソレハ私別ニ不思議ハナイ
  ト思ヒマス、現在ノ法制ノ建前ニ於テ左樣
  ニナッテ居リマス、其不便ガアリマスレバコ
  ツ、今回此改正案ヲ出シテ居ル、法案ヲ御
  覽願ヒマスレバ分ルト思ヒマスガ、蠶絲業
  組合法ヲ改正シテ、サウシテ蠶絲共同施設
  組合ノ制度ヲ設ケマスルコトハ、只今御話
  ニナッタ左樣ナ不便ヲ除クガ爲ニコソ、今囘
  此法案ヲ出シテ居ル譯デアリマス、其點ハ
  ドウカ御諒解ヲ希ヒタイト存ジマス、併ナ
  ガラ諸般ノ點ニ付テ、色々又御氣付ノコト
  モ多々オアリノヤウデゴザイマスカラ、ソ
  レ等ノ點ニ付キマシテハ、十分他ノ機會ニ
  於テ御示シヲ願ヒタイト存ジマスガ、大體
  以上ノ點ダケヲ此席ニ於テ御答申上ゲテ置
  キタイト存ジマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006713242X02019350228&spkNum=69

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• 070・濱田國松

  ○議長(濱田國松君)　鷲澤君、モウアリマ
  セヌカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006713242X02019350228&spkNum=70

  ---

• 071・鷲澤與四二

  ○鷲澤與四二君　簡單デアリマスカラ、自
  席デ御許シ願ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006713242X02019350228&spkNum=71

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• 072・濱田國松

  ○議長(濱田國松君)　簡單ナラバ御許シヽ
  マス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006713242X02019350228&spkNum=72

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• 073・鷲澤與四二

  ○鷲澤與四二君　只今農林大臣ヨリ御答ヲ
  戴イタガ、申セト云フヤウナコトデアリマ
  シタカラ、私ハ事理ヲ明ニスル議論ナラバ、
  徹宵デモ御相手ヲ仕ル考、又ソレガ議會政
  治ノ根本ト考ヘマスガ、尙ホ此問題ニ付テ
  ハ現在ダケノコトデナク、前途ニ付テモ御
  〓究ヲ願ヒタイ、殊ニ世間ヲ觀レバ、對立的
  ニ之ヲ解決セントスルガ如キ惡現象ガ現レ
  テ居ル、或モノハ承ル所ニ依ルト、農林大
  臣御出生ノ福岡縣等ニ於テハ、何カ本案贊
  成ノ陳情ヲ、縣廳ノ方カラ手ヲ廻シテ、頭數
  ヲ揃ヘテ出シテ來イト云フヤウナコトガ行
  ハレテ居ルヤウナ取沙汰ガアル、是ガ今日
  ハ贊成、反對ト云フガ如ク對立シタコトハ、
  私ハ我國ノ蠶絲業根本原則ヲ確立シ、之ヲ
  解決致ス上ニ於テハ、實ニ嘆ハシイ現象デ
  アルト思フ、私共ハ農民ノ爲ニ、產業組合
  ノ爲ニ、生絲商賣人ノ爲ニ、有ユルモノヽ
  爲ニオ互對立デナク、之ヲ樹立致シタイト
  思フノデアリマス、ドウカ斯樣ナ點ニ於テ、
  當局ニ於カレテモ御親切ニ、總テノ各般ノ
  事情ヲ〓究ニ相成ッテ、來ルベキ委員會ニ於
  テ、吾々ノ足ラザル所ヲ補ヒ、以テ有終ノ
  美ヲ添ヘテ、此重大ナ本案ヲ國家竝ニ國民
  ノ利益ノ爲ニ成立致シタイト思フノデアリ
  マス、此點ヲ御含ミヲ願ヒタイノデアリマ
  ス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006713242X02019350228&spkNum=73

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• 074・濱田國松

  ○議長(濱田國松君)　質疑ハ是ニテ終局致
  シマシタ、各案ノ審査ヲ付託スベキ委員ノ
  選擧ニ付テ御諮ヲ致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006713242X02019350228&spkNum=74

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• 075・青木雷三郎

  ○靑木雷三郞君　日程第六乃至第八ノ三案
  ヲ一括シテ、議長指名二十七名ノ委員ニ付
  託セラレンコトヲ望ミマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006713242X02019350228&spkNum=75

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• 076・濱田國松

  ○議長(濱田國松君)　靑木君ノ動議ニ御異
  議アリマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006713242X02019350228&spkNum=76

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• 077・濱田國松

  ○議長(濱田國松君)　御異議ナシト認メマ
  ス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ、本日ノ議
  事日程ハ是ニテ議了致シマシタ、次會ノ議
  事日程ハ公報ヲ以テ通知致シマス、本日ハ
  是ニテ散會致シマス
  午後六時四十九分散會
  衆議院議事速記錄第十九號中
  正誤
  頁段行誤正
  三四七一一二一事實デアテ事實デアリ
  居リマスマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006713242X02019350228&spkNum=77

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