1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和十一年五月十七日（日曜日）午前十時十四分開議
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議事日程 第九號
昭和十一年五月十七日
午前十時開議
第一 國務大臣の演説に關する件（第八日）
第二 請願委員長報告
第三 産繭處理統制法案（政府提出、衆議院送付） 第一讀會
第四 蠶絲業組合法中改正法律案（政府提出、衆議院送付） 第一讀會
第五 蠶絲業法中改正法律案（政府提出、衆議院送付） 第一讀會
第六 懲罰委員長報告
第七 豫定線鐵道田名部、大間間鐵道速成の請願 會議
第八 靜岡縣榛原郡下川根村に登記所設置の請願 會議
第九 公共圖書館費國庫補助法制定の請願 會議
第十 長崎縣に高等水産教育機關設置の請願 會議
第十一 横莊鐵道買收の請願 會議
第十二 能登鐵道買收に關する請願 會議
━━━━━━━━━━━━━発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X00919360517&spkNum=0
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001・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 報〓ヲ致サセマ
ス
〔角倉書記官朗讀〕
津村重舍君
一昨十五日願ニ依リ貴族院議員ヲ免セラル
同日委員長ヨリ左ノ報告書ヲ提出セリ
請願委員會特別報告第一號
昨十六日懲罰委員長ヨリ報〓書ヲ提出セリ
同日委員會ニ於テ當選シタル正副委員長ノ
氏名左ノ如シ
東北興業株式會社法案特別委員會
委員長侯爵西〓從德君
副委員長男爵淺田良逸君
鐵道敷設法中改正法律案特別委員會
委員長子爵井上匡四郞君
副委員長男爵安保〓種君
商工組合中央金庫法案特別委員會
委員長侯爵大隈信常君
副委員長男爵伊藤文吉君
同日衆議院ヨリ左ノ政府提出案ヲ受領セリ
產繭處理統制法案
蠶絲業組合法中改正法律案
蠶絲業法中改正法律案
昭和十一年度歲入歲出總豫算追加案第
、次の
昭和十一年度各特別會計歲入歲出豫算追
加案(特第一號)
豫算外國庫ノ負擔トナルベキ契約ヲ爲ス
ヲ要スル件
昭和十一年度歲入歲出總豫算追加案第
二號)
昭和十一年度各特別會計歲入歲出豫算追
加案(特第二號)
豫算外國庫ノ負擔トナルベキ契約ヲ爲ス
ヲ要スル件(追第一號)
昭和十一年度歲入歲出總豫算追加案第
三號)発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X00919360517&spkNum=1
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002・近衞文麿
○議長(公爵近衛文麿君) 是ヨリ會議ヲ開
キマス、一昨十五日、松本勝太郞君ヨリ病
氣ニ付キ、豫算委員辭任ノ申出ガゴザイマ
シタ、之ヲ許スコトニ御異議ガゴザイマセ
ヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X00919360517&spkNum=2
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003・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 御異議ナイト認
メマス、就キマシテハ、第一部ニ於テ補闕
選擧ヲ行ハレムコトヲ望ミマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X00919360517&spkNum=3
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004・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 大藏大臣ヨリ發
言ヲ求メラレマシタカラ、此ノ際之ヲ許シ
マス、馬場大藏大臣
〔國務大臣馬場鍈一君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X00919360517&spkNum=4
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005・馬場えい一
○國務大臣(馬場鍈一君) 諸君、今般內閣
ノ成立ニ依リ、不肖財政變理ノ重任ニ膺ルコ
トトナリ、玆ニ昭和十一年度追加豫算ノ大
要竝ニ將來ノ財政經濟ニ關スル方針ニ付キ
說明致シマスルコトハ、私ノ最モ光榮トス
ル所デアリマス、昭和十一年度ノ豫算ハ衆
議院解散ノ爲メ不成立トナリマシタノデ、
憲法ノ條章ニ基キ前年度豫算ヲ施行セラ
v、從ッテ實行豫算ヲ編成スルコトトナッタ
ノデアリマスルガ、內閣成立後日尙淺ク、
本年度豫算ニ於テハ、政府ノ新ナル政策ヲ
具現スルノ遑ガアリマセヌノデ、大體ニ於
テ前議會ニ提出シタル不成立豫算ニ依ルコ
トト致シタノデアリマス、卽チ其ノ施行豫
算ノ範圍內ニ於テ實行シ得ベキモノハ之ヲ
實行豫算ニ計上スルト共ニ、然ラザルモノ
ハ之ヲ追加豫算ニ計上スルコトト致シマシ
タ、右ニ依リ編成致シマシタ實行豫算竝ニ
追加豫算ノ合計額ハ、歲入二十三億五百五
十餘萬圓、歲出二十三億千百五十餘萬圓デ
アリマシテ、之ヲ不成立豫算ニ比較致シマ
スルト、歲入ニ於テ二千七百四十餘萬圓、
歲出ニ於テ三千三百三十餘萬圓ノ增加ニ
ナッテ居ルノデアリマス、而シテ歲入豫算ノ
計上ニ付キマシテハ、不成立豫算ト大體同
一ノ見積方法ニ依ルコトト致シ、又歲出ニ
於キマシテハ、不成立豫算ニ計上シマシタ
經費ハ原則トシテ之ヲ計上致シタノデアリ
マス、尤モ不成立豫算ニ計上シテ居ラナカッ
タ經費デアリマシテ、新ニ計上致シマシタ
經費モアリマスルガ、其ノ主ナルモノハ昭
和十年ニ起リマシタ災害ニ關スル經費デア
ルノデアリマス、尙實行豫算及追加豫算ヲ
通ジマシテ、歲入歲出差引五百九十餘萬圓
ノ歲出超過トナッテ居ルノデアリマスルガ、
右歲出超過額ニ相當スル金額ハ、後デ述べ
マスル第二囘目ノ公債低利借換ニ依リマシ
テ當然不用トナリマスノデ、結局歲入歳出
共ニ同額トナル次第デアリマス、以上ハ實
行豫算竝ニ本特別議會ニ提案致シマシタ追
加豫算ヲ合計シタル金額ニ付テ申述ベタノ
デアリマスルガ、更ニ之ヲ實行豫算ト追加
豫算トニ區分致シマスレバ、實行豫算額ハ
追加豫算ノ成立等ニ伴ヒ增加ヲ要スル額ヲ
モ含メテ、歲入十九億四千九十餘萬圓、歲
出十九億四千五百餘萬圓デアリマス、又追
加豫算額ハ歲入三億六千四百五十餘萬圓、
歲出三億六千六百四十餘萬圓デアリマシテ、
右ノ內追加第一號ノ分ハ歲入歲出共ニ三億
六千二百三十餘萬圓、追加第二號ノ分ハ歲
入百二十餘萬圓、歲出三百餘萬圓、追加第
三號ノ分ヘ歲入歲出共ニ九十餘萬圓デアリ
マス、而シテ右追加第一號ニ計上致シマシ
タ經費ハ、旣定計畫等ニ屬スル經費ノ增加
ノ外、滿洲事件費、陸海軍ノ兵備改善ニ關
スル經費、窮乏町村ノ財政援助及農村經濟
更生特別助成ニ關スル經費、治水事業、馬
政第二次計畫、液體燃料政策、中小商工業
金融機關ノ設置、貿易ノ振興、民間航空ノ
助長等ニ關スル經費、東北振興ニ關スル經
費及災害關係經費等デアリマシテ、追加第
二號ニ計上致シマシタ經費ハ、退職積立金
及退職手當法施行ニ要スル經費、情報委員
會設置ニ要スル經費、租稅制度ノ調査ニ要
スル經費及警察通信施設ノ整備ニ要スル經
費等デアリマス、又追加第三號ニ計上致シ
マシタ經費ハ、海軍ノ受託造修費ノ增加デ
アリマシテ、是等ハ何レモ緊急ヲ要スルモ
ノデアリマス、次ニ昭和十一年度ニ於テ歲
出ノ財源トナルベキ公債ハ、一般會計ニ於
キマシテハ七億三百八十餘萬圓、又特別會
計ニ於テハ八千三百六十餘萬圓デアリマシ
テ、合計七億八千七百四十餘萬圓トナルノ
デアリマス、其ノ內一般會計ニ於ケル歲入補塡
公債ハ五億千二百九十餘萬圓デアリマス、
以上政府提出ノ豫算案ニ付キマシテハ、衆
議院ニ於キマシテハ、全部政府提案ノ通リ
可決セラレタノデアリマス、諸君、現下我
ガ國內外ノ情勢ハ誠ニ重大ナルモノガアリ
マシテ、今日ノ非常時局ニ對處シ、國運ノ
進展ヲ期スルト共ニ、國民生活ノ安定ヲ圖
ルガ爲ニハ、幾多重要ナル國策ノ遂行ヲ必
要ト致スノデアリマス、卽チ躍進途上ニア
ル我ガ國勢ノ現狀ヲ以テ致シマスレバ、啻
ニ將來歲出ノ減少ヲ豫想スルコトハ恐ラク
不可能デアルノミナラズ、或ハ更ニ新ナル
國費ノ增加ヲモ覺悟セネバナラヌ實情デア
リマス、玆ニ於テ速カニ將來ニ對スル歲出
ノ見透シヲ付ケ、之ニ對スル歲入計畫ヲ樹
立シ、以テ財政ノ基礎ヲ鞏固ナラシムルコ
トガ極メテ肝要デアリマス、此ノ場合歲出
ノ一部ヲ公債ニ依リ支辨スルコトハ、固ヨリ
差支ハナイト考ヘマスルガ、普通歲入ノ增
加ヲ圖ラズシテ、何時マデモ赤字公債ノミ
ニ依ルコトハ適當デナイト信ズルノデアリ
マス、換言スレバ今ヤ國民全般ハ各自ノ責
任ト犠牲トニ於テ、時局打開ノ方途ヲ策ス
ベキモノデアリマシテ、漫然之ヲ子孫ノ負
擔ニ遺スベキノ秋デハナイト思フノデアリ
マス、而シテ之ガ爲ニハ租稅制度ノ根本的
改革ヲ行ヒ、又專賣其ノ他官業收入竝ニ各
種特別會計ノ收支等ニ付キ周到ナル檢討ヲ
加ヘ、以テ國庫收入ノ增加ヲ圖ルコトガ必要
トナッテ參リマス、尙我ガ國地方財政ハ歲計
收支ノ均衡ヲ失スルモノ多ク、地方費ノ負
擔ハ過重ニ陷リツヽアリマシテ、此ノ際中
央財政ト關聯シテ、地方財政ノ確立ヲ圖ル
コトモ亦急務デアルト認メラレマス、而モ
我ガ國國民經濟ノ發展ハ、富ノ都市集中ノ
傾向ヲ顯著ナラシメ、地方農山漁村ニ於ケ
ル租稅負擔ハ、都市ノソレニ比シ〓シテ重
キヲ致セル情勢ニ在リマスルカラ、國及地
方ヲ通ジテ財源ノ調整ヲ圖ルト共ニ、國民
負擔ノ不均衡ヲ是正スルコトヲ以テ、稅制
改革ノ主旨ト致サネバナラヌト考フル次第
デアリマス、併シナガラ稅制ノ改正等ニ依
リ普通歲入ノ增加ヲ圖リマシテモ、是ノミ
ヲ以テシマシテハ國防ノ充實、其ノ他幾多
國策ノ遂行ニ要スル歲出全體ヲ支辨スルニ
足リマセヌコトハ明カデアリマシテ、相當
多額ノ赤字公債ノ發行ハ、今後モ尙繼續致
サネバナラヌト思フノデアリマス、而シテ
我ガ國經濟竝ニ金融ノ情勢ニ顧ミマスレバ、
之ガ圓滑ナル消化ヲ圖ルコトハ、必ズシモ
困難デナイト存ズルノデアリマス、仍テ政
府ハ金融界ノ情況ニ卽シタル通貨政策竝ニ
低金利政策、其ノ他適當ナル方策ヲ實施シ、
以テ事業界ノ健全ナル繁榮ト、國民全般ノ
金融上ノ負擔輕減ヲ期スルト共ニ、併セテ
公債政策ノ圓滿ナル遂行ヲ確保スルノ方針
デアリマス、斯クノ如クニシテ不當ナル通
貨膨脹ニ因リ、經濟界ニ惡影響ヲ及ボスコ
トナキヤウ努ムルコトハ勿論ノコトデアリ
やっ、而シテ現內閣成立以來、極力之ガ實
現ニ努力シ來ッタノデアリマスルガ、政府
ノ斯クノ如キ方針ニ順應シテ、現ニ日本銀
行ノ公定割引歩合ノ引下及普通銀行其ノ他
各種金融機關ノ預金竝ニ貸付利率ノ引下ヲ
見ルニ至リ、又政府預金部ニ於キマシテモ、
旣往竝ニ新規ノ貸付利率ニ付キ、相當大幅
ノ引下ヲ爲スコトニ致シマシタ、而シテ政
府ハ日本銀行公定割引步合ノ引下ト共ニ、
來ルベキ金利水準ノ目標ヲ明示シ、金融市
場ノ安定ヲ圖ルコトヲ必要ト認メマシテ、
此ノ趣旨ヲ以テ先般來相次イデ二囘ニ亙リ、
合計七億七千九百餘萬圓ニ上ボル五分利國
庫債劵ノ低利借換ヲ行フコトト致シ、之ガ
爲メ發行スル公債ハ何レモ三分半利付ト致
シタノデアリマス、尙金融ノ改善ニ付キマ
シテハ、各種金融機關ノ公共性ニ顧ミ、其
ノ本來ノ機能ヲ發揮セシムルガ爲メ、適切
有效ナル統制ヲ行フ方針デアリマス、又農
山漁村ニ於ケル金融上ノ負擔ヲ輕減シ、更
ニ低利且潤澤ナル資金ノ供給ヲ圖リマスル
コトハ、其ノ更生發展ノ爲メ缺クベカラザ
ル所デアリマスルカラ、政府ニ於キマシテ
モ此ノ點ニ付テ特ニ十分ナル方策ヲ講ズル
考デアリマス、更ニ中小商工業乃至庶民金
融ノ問題ハ、久シク論議セラレテ參ッタ所デ
アリマシテ、政府ニ於テハ目下之ガ對策ヲ
考究中デアリマスルガ、中小商工業金融ニ
付キマシテハ、差當リ商工組合中央金庫ヲ
設立シ、以テ此ノ方面ノ金融ノ圓滑ヲ圖ルコト
ト致シ、之ニ必要ナル經費ヲ追加豫算ニ計上ス
ルト共ニ、之ニ關スル法律案ヲ今期議會ニ提
出致シタ次第デアリマス、次ニ最近ニ於ケ
ル我ガ國貿易ノ情況ハ、諸外國ノ輸入制
限其ノ他幾多ノ障碍アルニ拘ラズ、目覺マ
シキ發展ヲ示シテ居リマスルガ、此ノ趨向
ヲ益〓助長促進スルノ必要アルコトハ申ス
迄モナイ所デアリマシテ、之ニ依ッテ初メテ
我ガ國國際收支ノ改善ヲ齎スコトヲ得マス
ルト同時ニ、我ガ國民經濟力ノ充實ヲ圖ル
コトガ出來ルノデアリマスルカラ、官民協
力一致シテ、益〓海外市場ヲ維持開拓スル
爲ニ、今後一層努力スルコトガ肝要デアリ
マス、我ガ圓貨ノ爲替相場ハ依然安定ヲ持
續致シテ居リマスルガ、過般ノ事變ニ際シ
マシテモ外國爲替管理法ノ存在ノ爲ニ、國
內資本ノ海外逃避モ行ハルルコトナク、又
爲替市場モ大體ニ於テ平靜ヲ保チ得タノデ
アリマス、併シナガラ政府ニ於テハ低金利
ノ趨勢ニ伴ヒ、今後トモ資本ノ國際的移動
ニ注意シ、一層外國爲替管理ニ關スル取締
ヲ嚴重ニ致シ、以テ資本ノ逃避竝ニ爲替相
場ノ動搖ヲ防止スルノ方針デアリマス、而
シテ日滿兩國共存共榮ノ趣旨ニ顧ミマシテ、
滿洲國ニ對スル健全ナル投資ヲ圓滑ナラシ
ムルコトハ、極メテ緊要デアルト考ヘルノ
デアリマス、仍テ政府ハ滿洲國國債及滿鐵
社債ノ發行、其ノ他ニ關シマシテ適當ナル
援助ヲ爲スノ方針デアリマス、終リニ臨
ミ、政府提出ノ豫算案ニ付キマシテハ、何
卒速カニ御協贊ヲ與ヘラレムコトヲ切望シ
テ巳マヌ次第デアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X00919360517&spkNum=5
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006・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 此ノ際日程ヲ變
更シマシテ、日程第一ヲ最後ニ廻シ、日程
第二以下順次議事ヲ開クコトニ御異議ゴザ
イマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X00919360517&spkNum=6
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007・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 御異議ナシト認
メマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X00919360517&spkNum=7
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008・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 日程第二、請願
委員長報告、酒井伯爵
〔伯爵酒井忠克君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X00919360517&spkNum=8
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009・酒井忠克
○伯爵酒井忠克君 請願委員會ノ第一囘ノ
報〓ヲ致シマス、去ル五月六日ニ正副委員
長ノ選擧ヲ行ヒマシテ、引續キ第一囘ノ會
議ヲ開キ、先例ニ依リマシテ左ノ諸事項ヲ
議決致シマシタ、一、分科竝ニ其ノ所管、二、
分科擔當委員ノ選定、三、審査方針ノ件、
四、委員會及分科會開會ノ日時、以上ノ諸
事項ハ總テ先例通リニ決定相成リマシタ、
故ニ其ノ詳細ハ速記錄ニ依ッテ御覽ヲ願ヒ
タイト存ジマス、次ニ分科ニ付テ申述ベマ
ス、正副主査ノ互選ハ各分科トモ五月七日
ニ行ヒマシテ、第一、第三分科會ハ五月十
1日、第二、第四分科會ハ五月十二日ニ開
會致シマシテ、第一囘ノ文書表ニ付テ審査
致シマシタ、請願文書表報〓ハ五月七日ト
五月十四日ノ二囘ニ致シマシテゴザイマス、
請願委員會特別報〓ハ、五月十五日ニ第一
號ヲ提出致シマシタ、次ニ受理請願ノ數ヲ
申上ゲマスレバ、受理件數ハ百十九件、請願
連署人數ガ二十三萬六千十五名、此ノ內請
願文書表ニ揭載致シマシタモノガ八十七件、
未揭載ノモノガ三十二件ゴザイマス、委員
會ニ於ケル審査ノ經過竝ニ結果ニ付テ申上
ゲマスガ、此ノ審査ノ經過ノ詳細ニ付キマ
シテハ一ツ一ツノ案件ニ付テ申述べマス
ルト時間ヲ要シマスル故ニ、玆ニ詳細ハ省
略致シマス、五月十五日ニ第二囘委員會ヲ
開キマシテ、愼重審査ノ結果、議院ノ會議
ニ付スベシト決定致シマシタモノガ六件、
議院ノ會議ニ付スルヲ要セズト決定致シマ
シタモノガ一件、審査未了ガ百十二件ゴザ
イマス、以上ハ五月十六日午後四時締切迄
ノ御報告デゴザイマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X00919360517&spkNum=9
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010・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 日程第三、產繭
處理統制法案、日程第四、蠶絲業組合法中改
正法律案、日程第五、蠶絲業法中改正法律
案、政府提出、衆議院送付、第一讀會、是等ノ
三案ヲ一括シテ議題トナスコトニ御異議ハ
ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X00919360517&spkNum=10
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011・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 御異議ナシト認
メマス、島田農林大臣
〔左ノ議案ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノタ
メ玆ニ載錄ス以下之ニ傚フ〕
產繭處理統制法案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議
院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和十一年五月十六日
衆議院議長富田幸次郞
貴族院議長公爵近衞文麿殿
產繭處理統制法案
產繭處理統制法
第一條養蠶者ノ依ルベキ繭ノ處理方法
ハ地方ノ狀況其ノ他特別ノ事由ニ因リ
生繭ノ賣買取引ヲ必要トスル場合ヲ除
クノ外左ノ各號ニ揭グルモノトス
一乾繭ニ依ル賣買取引(乾繭取引)
二收繭前爲シタル契約ニ基キテ行フ
生繭ノ賣買取引(特約取引)
三產業組合又ハ產業組合聯合會ニ依
リ行フ製絲加工(組合製絲)
四前各號ニ揭グルモノノ外勅令ヲ以
テ定ムル方法
第二條道府縣ハ命令ノ定ムル所ニ依リ
繭ノ品位ニ付檢定ヲ行フベシ
前項ノ規定ニ依ル繭ノ檢定ニ關シ必要
ナル費用ハ道府縣ノ負擔トス但シ國庫
ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ豫算ノ範圍內
ニ於テ道府縣ニ對シ其ノ檢定施設ニ要
スル經費ノ二分ノ一以內ヲ補助スルコ
トヲ得
第三條繭ノ賣買取引其ノ他命令ヲ以テ
規定スル繭ノ處理ハ前條ノ檢定ニ依ル
品位ニ依ルニ非ザレバ之ヲ爲スコトヲ
得ズ但シ命令ヲ以テ規定スル場合ハ此
ノ限ニ在ラズ
第四條特約取引ヲ爲サントスル者ハ行
政官廳ノ認可ヲ受クベシ
前項ノ認可ニ關シ必要ナル事項ハ命令
ヲ以テ之ヲ定ム
第五條蠶絲業組合又ハ繭ノ處理ヲ爲ス
團體ガ其ノ組織員ノ繭ノ處理ニ關シ統
制ヲ爲シタル場合ニ於テ行政官廳必要
アリト認ムルトキハ其ノ統制ヲ故ナク
紊シ又ハ紊サントスル組織員ニ對シ其
ノ組合又ハ團體ノ統制ニ從フベキコト
ヲ命ズルコトヲ得
前項ノ規定ハ蠶絲業組合法第十八條第
二號ニ揭グル者ニ付テハ之ヲ適用セズ
第六條左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ三
百圓以下ノ罰金又ハ科料ニ處ス
一第三條ノ規定ニ違反シタル者
二第四條ノ認可ヲ受ケズシテ特約取
引ノ契約ヲ爲シタル者
第七條養蠶者、養蠶實行組合、繭ノ處
理ヲ爲ス產業組合其ノ他ノ法人、繭ノ
賣買若ハ取次ヲ業トスル者又ハ製絲業
者ハ其ノ代理人、戶主、家族、同居者、
雇人其ノ他ノ從業者ガ本法又ハ本法ニ
基キテ發スル命令ニ違反シタルトキハ
自己ノ指揮ニ出デザルノ故ヲ以テ其ノ
處罰ヲ免ルルコトヲ得ズ
第八條本法又ハ本法ニ基キテ發スル命
令ニ依リ適用スベキ罰則ハ其ノ者ガ法
人ナルトキハ理事、取締役其ノ他ノ法
人ノ業務ヲ執行スル役員ニ、未成年者
又ハ禁治產者ナルトキハ其ノ法定代理
人ニ之ヲ適用ス但シ營業ニ關シ成年者
ト同一ノ能力ヲ有スル未成年者ニ付テ
ハ此ノ限ニ在ラズ
第九條第五條ノ規定ニ依ル行政官廳ノ
命令ニ違反シタル者ハ百圓以下ノ過料
三四〇、
非訟事件手續法第二百六條乃至第二百
八條ノ規定ハ前項ノ過料ニ之ヲ準用ス
第十條本法ハ命令ヲ以テ定ムル繭ノ處
理ニ付テハ之ヲ適用セズ
附則
本法施行ノ期日ハ各規定ニ付勅令ヲ以テ
之ヲ定ム
蠶絲業組合法中改正法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議
院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和十一年五月十六日
衆議院議長富田幸次郞
貴族院議長公爵近衞文麿殿
蠶絲業組合法中改正法律案
蠶絲業組合法中左ノ通改正ス
第十八條養蠶業組合ハ其ノ地區內ニ於
ケル左ニ揭グル者ヲ以テ其ノ組合員トス
一養蠶實行組合
二養蠶實行組合ノ組合員ニ非ザル養
蠶者ニシテ命令ヲ以テ規定スルモノ
第十九條第三項ヲ左ノ如ク改ム
養蠶實行組合ノ地區ハ部落其ノ他之ニ
準ズル區域ニ依ル但シ特別ノ事由アル
トキハ此ノ區域ニ依ラザルコトヲ得
第二十二條ヲ削リ第二十一條ヲ第二十二
條トシ同條第一項ヲ左ノ如ク改メ第二十
條ヲ第二十一條トス
養蠶實行組合ヲ設立セントスルトキハ
其ノ地區內ノ養蠶者七人以上設立者ト
爲リ規約ヲ作成シ行政官廳ノ認可ヲ受
クベシ
第二十條養蠶實行組合ハ其ノ目的ヲ達
スル爲左ノ事業ヲ行フ
一組合員ノ養蠶業ニ必要ナル物ノ共
同購入、共同設備ノ設置其ノ他組合
員ノ養蠶業ニ關スル共同施設
二組合員ノ生產シタル繭ノ處理ニ關
スル施設
三組合員ノ養蠶業ノ統制ニ關スル施設
四組合員ノ養蠶業ニ關スル共濟及備
荒施設
五組合員ノ養蠶業ニ關スル指導、〓
究及調査
六前各號ニ揭グルモノノ外組合ノ目
的ヲ達スルニ必要ナル施設
第二十三條第二項ヲ左ノ如ク改ム
登記スベキ事項左ノ如シ
一前條第二項第一號乃至第四號及第
十一號ニ揭グル事項
二設立認可ノ年月日
三理事及監事ノ氏名及住所
第二十五條ノ二組合員タル資格ヲ有ス
ル者養蠶實行組合ニ加入セントスルト
キハ組合ハ正當ノ理由ナクシテ加入ニ
困難ナル條件ヲ附シ又ハ其ノ加入ヲ拒
ムコトヲ得ズ
第二十五條ノ三養蠶實行組合ノ分合ニ
關シ必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第二十五條ノ四養蠶實行組合ハ左ノ事
由ニ因リテ解散ス
一規約ニ定メタル事由ノ發生
二總會ノ決議
三組合ノ合併
四組合ノ分割
五組合員ガ七人未滿ニ減ジタルトキ
六組合ノ破產
七行政官廳ノ處分
第二十六條民法第三十八條、第四十四
條第一項、第四十七條、第四十八條、第
五十條、第五十一條、第五十二條第二
項、第五十三條乃至第五十五條、第五十
九條乃至第六十六條、第六十九條、第
七十條及第七十二條乃至第八十二條、
非訟事件手續法第三十五條第二項、第
三十六條、第三十七條ノ二、第百十七
條、第百十九條乃至第百二十二條、第
百三十六條乃至第百三十八條、第百四
十二條、第百四十三條、第百四十七條乃
至第百五十條ノ二、第百五十一條乃至
第百五十一條ノ四、第百五十一條ノ六
乃至第百五十七條及第百七十五條乃至
第百七十七條竝ニ產業組合法第二十五
條、第三十四條ノ二、第三十五條、第四
十八條ノ二、第六十條第一項(〓算ニ關
スル規定ヲ除ク)、第六十條ノ二、第六
十一條(〓算ニ關スル規定ヲ除ク)及第
六十五條(合併ニ關スル規定ヲ除ク)ノ
規定ハ養蠶實行組合ニ之ヲ準用ス但シ
民法第四十八條及第七十七條中一週間
トアルハ之ヲ二週間トス
第二十七條養蠶業組合ヲ設立セントス
ルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ其ノ地
區內ノ第十八條第一號及第二號ニ揭グ
ル者ノ各ノ三分ノ二以上ノ同意ヲ得テ
創立總會ヲ開キ定款ヲ議定シ役員ヲ選
任シ收支豫算及經費ノ分賦收入方法ヲ
議決シ行政官廳ノ認可ヲ受クベシ但シ
其ノ地區內ノ養蠶者ノ過半數ガ養蠶實
行組合ノ組合員タル場合ニ於テハ設立
ノ同意ハ養蠶實行組合ノ三分ノ二以上
ノ同意ヲ以テ足ル
前項ノ創立總會ノ決議ニ關シ必要ナル
事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第三十條第一項中「農會、產業組合又ハ
產業組合聯合會」ヲ「法人」ニ改ム
第三十一條第一項中「養蠶實行組合」ヲ
「組合員タル資格ヲ有スル者」ニ改ム
第三十二條第二項中「總組合員」ヲ「議員」
ニ改メ同條ニ左ノ一項ヲ加フ
養蠶業組合ノ議員ノ選任及解任ニ關シ
必要ナル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第三十四條第二項中「組合員ハ總組合員」
ヲ「議員ハ總議員」ニ、同條第四項中「組合
員」ヲ「議員」ニ改ム
第三十六條第一項中「組合員」ヲ「議員」ニ、
同條第二項中「養蠶實行組合ノ三分ノ二
以上ノ同意」ヲ「組合員タル資格ヲ有スル
者又ハ組合員ノ第二十七條第一項ノ規定
ニ準ズル同意」ニ改ム
第三十七條中「組合員」ヲ「議員」ニ改ム
第三十八條第三項中「所屬ノ養蠶實行組
合ノ組合員」ヲ「議員」ニ改ム
第四十一條第一項第一號ヲ左ノ如ク改ム
一本法ニ依ル報〓若ハ屆出ヲ爲サズ
又ハ檢査ヲ拒ミ其ノ他行政官廳ノ命
令又ハ處分ニ從ハザルトキ
第四十四條ノ二蠶種業組合ニ總會ヲ置
總會ハ總組合員ヲ以テ之ヲ組織ス
第四十四條ノ三蠶種業組合ハ命令及定
款ノ定ムル所ニ依リ組合員ノ選擧シタ
ル總代ヲ以テ組織スル總代會ヲ以テ總
會ニ代フルコトヲ得
總會ニ關スル規定ハ命令ニ別段ノ規定
アル場合ヲ除クノ外總代會ニ之ヲ準用
ス
第四十五條中「第二十九條及第三十一條」
ヲ「第三十一條及第三十三條」ニ改ム
第五十一條中「及第三十一條乃至第四十
條」ヲ「、第三十一條、第三十三條乃至第四
十條及第四十四條ノ二」ニ改メ同條ニ左
ノ一項ヲ加フ
第三十條及第四十四條ノ三ノ規定ハ製
絲業組合ニ之ヲ準用ス
第五十六條中「及第三十一條乃至第四十
條」ヲ「第三十一條、第三十三條乃至第四
十條及第四十四條ノ二」ニ改ム
第六十二條第三項中「產業組合製絲組合」
ノル·エ「及製絲ヲ爲シ又ハ製絲工場ヲ有
スル產業組合又ハ產業組合聯合會ニシテ
命令ヲ以テ規定スルモノ」ヲ加フ
第六十五條第三項中「會員タル蠶絲業組
合又ハ道府縣養蠶業組合聯合會」ヲ「會員」
三分五
第六十八條ニ左ノ一項ヲ加フ
第三十條ノ規定ハ第五十七條第一號及
第二號ノ蠶絲業組合聯合會ニ之ヲ準用ス
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
本法施行ノ際現ニ存スル養蠶實行組合ハ
本法施行ノ日ヨリ之ヲ本法ニ依リ設立シ
タルモノト看做ス但シ第三項ノ規定ニ依
ル認可ヲ受クル迄ハ仍從前ノ規定ニ依ル
前項ノ組合ハ本法施行ノ日ヨリ二年以內
ニ命令ノ定ムル所ニ依リ行政官廳ノ認可
ヲ受クベシ
第二項ノ組合ハ前項ノ認可ヲ受ケタルト
キハ二週間以內ニ主タル事務所ノ所在地
ニ於テ其ノ認可ノ年月日、監事ノ氏名及
住所竝ニ第二十二條第二項第三號及第十
一號ニ揭グル事項ノ登記ヲ爲スベシ
第二項ノ組合ニシテ第三項ノ期間內ニ同
項ノ規定ニ依ル認可ヲ受ケザルモノハ其
ノ期間滿了ノ日ニ於テ解散ス
本法施行ノ際現ニ存スル養蠶業組合ハ本
法施行ノ日ヨリ二年ヲ限リ其ノ構成者、總
會及役員ニ關シ第十八條、第三十二條第
二項第三項、第三十四條第二項第四項、
第三十六條、第三十七條及第三十八條第
三項ノ改正規定ニ依ラズ仍從前ノ規定ニ
依ル但シ命令ノ定ムル所ニ依リ行政官廳
ノ認可ヲ受ケタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
前項ノ組合同項但書ノ規定ニ依ル認可ヲ
受ケタルトキハ其ノ地區內ニ於ケル第十
八條第二號ニ揭グル者ハ當然其ノ組合員
上タシ
第六項ノ組合ニシテ同項ノ期間內ニ同項
但書ノ規定ニ依ル認可ヲ受ケザルモノハ
其ノ期間滿了ノ日ニ於テ解散ス
產業組合法第十條ノ三ニ左ノ二項ヲ加フ
農事實行組合ヲ設立スルニハ其ノ地區
內ノ農業者七人以上設立者ト爲リ規約
ヲ作成スルコトヲ要ス
農事實行組合ハ其ノ設立ノ日ヨリ二週
間內ニ規約、役員ノ氏名及住所竝ニ設
立ノ年月日ヲ具シ行政官廳ニ之ヲ屆出
ヅベシ屆出デタル事項ニ變更アリタル
トキ亦同ジ
產業組合法第十條ノ四ヲ左ノ如ク改ム
第十條ノ四蠶絲業組合法第二十一條、
第二十二條第二項、第二十三條乃至第
二十五條、第二十六條及第四十一條、
民法第四十四條第二項、第五十二條第
一 四第五十六條乃至第五十八條及第
六十八條竝ニ非訟事件手續法第三十五
條第一項ノ規定ハ農事實行組合ニ之ヲ
準用ス但シ蠶絲業組合法第二十三條第
二項第一號中第一號乃至第四號及第十
一號トアルハ之ヲ第一號、第二號及第
四號トシ同項第二號中設立認可トアルハ
之ヲ設立トシ同項第三號中理事及監事
トアルハ之ヲ理事トシ同法第二十六條ノ
規定ニ依リ準用スル民法第三十八條第
二項及第四十七條、產業組合法竝ニ非
訟事件手續法第百五十條ノ二ノ規定ヲ
除ク
蠶絲業法中改正法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議
院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和十一年五月十六日
衆議院議長富田幸次郞
貴族院議長公爵近衞文麿殿
蠶絲業法中改正法律案
蠶絲業法中左ノ通改正ス
第一條ニ左ノ一項ヲ加フ
命令ヲ以テ規定スル蠶絲業者ノ團體ハ
第二十九條乃至第三十四條ノ十ノ規定
ノ適用ニ付テハ之ヲ蠶絲業者ト看做ス
第二十九條蠶絲業者ハ其ノ蠶絲業ノ改
良發達及統制ヲ圖ル爲共同ノ施設ヲ爲
ス目的ヲ以テ命令ノ定ムル所ニ依リ蠶
絲共同施設組合ヲ設立スルコトヲ得
第三十條蠶絲共同施設組合ハ法人トス
第三十一條蠶絲共同施設組合ハ左ノ事
業ヲ行フ
一組合員ノ生產若ハ製造又ハ取扱ニ
係ル蠶種、繭又ハ蠶絲類ノ加工若ハ
販賣又ハ仲立
二組合員ノ事業ニ必要ナル物ノ共同
購入、共同設備ノ設置及資金ノ貸付
三組合員ノ生產又ハ製造シタル蠶絲
類ノ檢査
四組合員ノ事業ノ聯絡統制ニ關スル
施設
五組合員ノ事業ニ關スル指導、〓究
及調査
六前各號ニ揭グルモノノ外組合ノ目
的ヲ達スルニ必要ナル施設
第三十二條蠶絲共同施設組合ノ組織ハ
無限責任、有限責任及保證責任ノ三種
トス
無限責任ノ組合ニ在リテハ組合財產ヲ
以テ其ノ債務ヲ完濟スルコト能ハザル
場合ニ於テ組合員ノ全員ガ連帶無限ノ
責任ヲ負擔シ有限責任ノ組合ニ在リテ
ハ組合員ノ全員ガ其ノ出資額ヲ限度ト
シテ責任ヲ負擔シ保證責任ノ組合ニ在
リテハ組合財產ヲ以テ其ノ債務ヲ完濟
スルコト能ハザル場合ニ於テ組合員ノ
全員ガ其ノ出資額ノ外一定ノ金額保
證金額)ヲ限度トシテ責任ヲ負擔ス
第三十三條蠶絲共同施設組合ハ命令ノ
定ムル所ニ依リ其ノ名稱中ニ蠶絲共同
施設組合タルコトヲ示スベキ文字及組
合ノ組織ヲ示スベキ文字ヲ用フベシ
蠶絲共同施設組合ニ非ザルモノハ其ノ
名稱中ニ蠶絲共同施設組合タルコトヲ
示スベキ文字ヲ用フルコトヲ得ズ
第三十四條本法ニ依リ登記スベキ事項
ハ登記前ニ在リテハ之ヲ以テ第三者ニ
對抗スルコトヲ得ズ
第三十四條ノ二本法ニ依リ登記スベキ
事項ハ其ノ事實ノ生ジタル後二週間以
內ニ之ヲ登記スベシ
登記スベキ事項ニシテ行政官廳ノ認可
ヲ要スルモノハ其ノ認可書ノ到達シタ
ル時ヨリ登記ノ期間ヲ起算ス
第三十四條ノ三蠶絲共同施設組合ヲ設
立セントスル者ハ定款ヲ作成シテ主務
大臣ノ認可ヲ受クベシ
第三十四條ノ四蠶絲共同施設組合ノ定
款ニハ左ノ事項ヲ記載シ各設立者之ニ
署名又ハ記名捺印スベシ
一目的
二名稱
三組織
四地區
五事務所ノ所在地
六出資一口ノ金額及其ノ拂込ノ方法
七組合員ノ有スベキ出資口數ニ關ス
ル規定
八保證責任ノ組合ニ在リテハ保證金
額ニ關スル規定
九剩餘金處分及損失分擔ニ關スル規
定
十準備金ノ額及其ノ積立ノ方法
十一組合員タル資格ニ關スル規定
十二組合員ノ加入及脫退ニ關スル規定
十三事業及其ノ執行ニ關スル規定
十四役員ニ關スル規定
十五會計ニ關スル規定
十六組合ガ公〓ヲ爲ス方法
十七存立時期又ハ解散ノ事由ヲ定メ
タルトキハ其ノ時期又ハ事由
第三十四條ノ五蠶絲共同施設組合ハ出
資ノ第一囘ノ拂込アリタル後二週間以
內ニ各事務所ノ所在地ニ於テ設立ノ登
記ヲ爲スベシ
登記スベキ事項左ノ如シ
一前條第一號乃至第四號、第六號、
第十六號及第十七號ニ揭グル事項
二事務所
三出資ノ總口數及拂込ミタル出資ノ
總額
四無限責任ノ組合ニ在リテハ各組合
員ノ氏名又ハ名稱及住所
五保證責任ノ組合ニ在リテハ各組合
員ノ氏名又ハ名稱、住所及保證金額
六設立認可ノ年月日
七理事及監事ノ氏名及住所
前項ニ揭グル事項中ニ變更ヲ生ジタル
トキハ其ノ登記ヲ爲スベシ但シ前項第
三號ニ揭グル事項ニ付テハ每事業年度
末日ノ現在ニ依リ事業年度終了後一月
以內ニ登記ヲ爲スコトヲ得
第三十四條ノ六蠶絲共同施設組合ニハ
理事及監事ヲ置クベシ
理事及監事ハ總會ニ於テ之ヲ選任ス但
シ組合設立當時ノ理事及監事ハ定款ヲ
以テ之ヲ定ムベシ
第三十四條ノ七組合員ハ總會ニ於テ各
一個ノ議決權ヲ有ス但シ定款ノ定ムル
所ニ依リ出資口數ニ應ジ二個以上ノ議
決權ヲ有セシムルコトヲ得
前項但書ノ規定ニ依リ組合員ノ有スベ
キ議決權ノ數ノ制限ニ關シ必要ナル事
項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第三十四條ノ八組合員タル資格ヲ有ス
ル者蠶絲共同施設組合ニ加入セントス
ルトキハ組合ハ正當ノ理由ナクシテ加
入ニ困難ナル條件ヲ附シ又ハ其ノ加入
ヲ拒ムコトヲ得ズ
第三十四條ノ九組合員ハ命令ノ定ムル
所ニ依リ一定ノ期間前ニ豫〓ヲ爲シ蠶
絲共同施設組合ノ承諾ヲ得タル場合ニ
於テハ事業年度ノ終ニ於テ脫退スルコ
トヲ得
組合ハ正當ノ理由ナクシテ前項ノ承諾
ヲ拒ムコトヲ得ズ
第三十四條ノ十民法第四十四條第一
項第四十五條第二項第三項、第四十
八條、第五十條、第五十二條第二項、
第五十三條乃至第五十五條、第五十九
候、第六十一條第一項、第六十二條、
第六十四條、第六十六條、第七十條、
第七十三條乃至第八十一一條及第八十四
條第一號、非訟事件手續法第三十五條
第二項、第三十六條、第三十七條ノ二、
第百十七條、第百十九條乃至第百二十
二條、第百三十六條乃至第百三十八條、
第百四十一條乃至第百五十八條、第百
六十五條、第百七十五條乃至第百七十
八條及第二百六條乃至第二百八條竝ニ
產業組合法第五條、第六條、第十條、
第十一條第一項、第十二條、第十七條
第一項、第十八條乃至第二十四條、第
二十六條乃至第三十一條ノ三、第三十
三條、第三十四條ノ二乃至第三十七條、
第三十九條乃至第四十六條、第四十七
條乃至第四十九條、第五十一條乃至第
五十八條、第六十條第一項(〓算ニ關
スル規定ヲ除ク)、第六十條ノ二、第六
十一條(〓算ニ關スル規定ヲ除ク)、第
六十二條(第一項第四號ヲ除ク)、第六
十三條ノ二乃至第六十五條、第六十六
條第一項、第六十七條、第六十八條、第
七十條乃至第七十三條、第七十四條ノ
二第一項、第九十三條ノ二及第百四條
ノ規定ハ蠶絲共同施設組合ニ之ヲ準用
ス但シ民法第四十五條第三項、第四十
八條第一項及第七十七條中一週間トア
ルハ二週間トシ同法第八十四條中二百
圓トアルハ三百圓トシ非訟事件手續法
第百二十條第二項中定款トアルハ定款
及出資ノ第一囘ノ拂込アリタルコトヲ
證スル書面トシ產業組合法中主務大
臣、地方長官又ハ監督官廳トアルハ行
政官廳トス
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
製絲業法第一條第二項中「第二條乃至第
十一條及附則第二項ノ規定」ヲ「本法」ニ
改メ同條第三項及同法第十二條乃至第二
十七條ヲ削ル
登錄稅法第十九條第七號中「生絲共同施
設組合」ヲ「蠶絲共同施設組合」ニ、「製絲
業法」ヲ「蠶絲業法」ニ改ム
日本勸業銀行法第十五條第三項及第三十
二條第一項第三號、農工銀行法第七條ノ
五及第二十三條第三號竝ニ北海道拓殖銀
行法第八條第四項中「生絲共同施設組合」
ヲ「蠶絲共同施設組合」ニ改ム
本法施行ノ際現ニ存スル生絲共同施設組
合ハ本法施行ノ日ヨリ之ヲ本法ニ依ル蠶
絲共同施設組合ト看做ス
〔國務大臣島田俊雄君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X00919360517&spkNum=11
-
012・島田俊雄
○國務大臣(島田俊雄君) 只今議題ト相成
リマシタ產繭處理統制法案外二案ノ提出ノ
理由ヲ說明致シマス、近時我ガ國ノ蠶絲業
ガ海外經濟界ノ影響、人造絹絲工業ノ躍進
ニ依リマシテ、非常ノ難局ニ直面シツヽア
リマスコトハ御承知ノ通リデアリマスルガ、
蠶絲業ガ我ガ國國民經濟竝ニ國際貿易上極
メテ重要ナル地位ヲ占メテ居ル點ニ鑑ミマ
スレバ、其ノ更生刷新ヲ圖リマスコトハ焦
眉ノ急務デアリマシテ、政府ハ年來之ガ爲
メ必要ナル具體的方策ノ確立實施ニ努メツ
ツアルノデアリマス、幸ヒ最近ニ於キマシ
テハ絲價ハ稍〓小康ヲ保ッテ居リマスルケ
レドモ、之ヲ以テ斯業ノ前途ヲ樂觀シ得マ
セナイコトハ勿論デアリマシテ、一日モ速
カニ根本的恆久對策ノ實現ヲ期スルコトガ
緊要デアルト信ズルノデアリマス、而シテ
玆ニ御審議ヲ御願ヒ致シマスル產繭處理統
制法案外二案ハ、此ノ意味ニ於キマシテ極重
要ナルモノデアルト存ズルノデアリマス、
卽チ產繭處理統制法案ハ、我ガ國蠶絲業ノ
根幹タル繭處理ノ合理化ト、繭取引ノ公正
圓滑トヲ圖リマシテ、以テ養蠶及製絲業ノ
經營ヲ改善向上セシメ、延イテ繭絲價ノ維
持安定ニ資セムトスルヲ目的ト致シテ居リ
マス、又他ノ法律案ハ、共ニ蠶絲業團體ノ整
備ニ關スルモノデアリマシテ、之ニ依リマシ
テ斯業ノ自治的統制ノ强化ト、經營ノ合理化
トヲ圖リマシテ、蠶絲業ノ改善更生ニ資セム
トスルモノデアリマス、而シテ是等三法案ハ、
何レモ業界多年ノ要望ニ基イテ立案致シタ
モノデアリマシテ、其ノ內容ノ詳細ニ付キ
マシテハ委員會ニ讓リタイト存ジマスルガ、
幸ヒニシテ本法案ノ成立ヲ見マスレバ、從
來政府ガ樹立致シマシタ蠶絲恆久ノ諸施設
ト相關聯致シマシテ、蠶絲業ノ更生刷新ノ
上ニ、裨益スル所頗ル多イト信ズルノデア
リマス、何卒御審議ノ上、御協賛アラムコ
トヲ希望致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X00919360517&spkNum=12
-
013・池田政時
○子爵池田政時君 只今上程サレマシタ產
繭處理統制法案外二件ハ、重要ナル法案デ
アリマスルガ故ニ、其ノ特別委員ノ數ヲ十
八名トシ、議長ニ於テ其ノ指名ヲサレムコ
トヲ希望致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X00919360517&spkNum=13
-
014・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 贊成発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X00919360517&spkNum=14
-
015・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 池田子爵ノ動議
ニ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X00919360517&spkNum=15
-
016・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 御異議ナシト認
メマス、特別委員ノ氏名ヲ朗讀致サセマス
〔角倉書記官朗讀〕
產繭處理統制法案特別委員
公爵山縣有道君侯爵井上三郞君
伯爵黑木三次君子爵米津政賢君
子爵織田信恒君子爵松平康春君
嘉納治五郞君男爵大森佳一君
男爵三須精一君男爵德川喜翰君
中村純九郞君西野元君
若尾璋八君今井五介君
江口定條君武井覺太郞君
長野忠次君米原章三君発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X00919360517&spkNum=16
-
017・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 日程第六、懲罰
委員長報告
一議員津村重舍君ニ對スル懲罰事犯ノ
件
右ハ議員辭職ノ御聽許アリタルヲ以テ之
カ審議ヲ中止候條此段及報告候也
昭和十一年五月十六日
委員長公爵島津忠重
貴族院議長公爵近衞文麿殿発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X00919360517&spkNum=17
-
018・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 懲罰事犯ノ議事
ハ貴族院規則第百八十一條ニ依リ祕密會議
デアリマスカラ、傍聽人ノ退場ヲ命ジマス
午前十時四十八分祕密會ニ移ル
午前十時五十四分祕密會ヲ終ル発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X00919360517&spkNum=18
-
019・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 祕密會ノ結果ヲ
宣告致シマス、津村重舍君ニ對スル懲罰事
犯ノ件ハ、同君議員辭職ノ御聽許ガアリマ
シタノデ之ガ審査ヲ中止シタル旨ノ、懲罰委
員長ノ報告ニ異議ナシト決定致シマシタ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X00919360517&spkNum=19
-
020・近衞文麿
○議長(公爵近衛文麿君) 日程第七ヨリ第
十二マデノ各請願、會議、全部一括シテ議
題ニ供シマス
〔左ノ意見書案ハ朗讀ヲ經サルモ參照
ノタメ玆ニ載錄ス以下之ニ傚フ〕
意見書案
豫定線鐵道田名部、大間間鐵道速成ノ
件
靑森縣下北郡大奥村長佐々木吉三郞
外八名呈出
右ノ請願ハ大湊線田名部驛ヨリ靑森縣大
間港ニ至ル豫定線鐵道ヲ敷設スルハ大間
港ノ發展ト相俟テ海陸資源ノ開發上須要
ナルノミナラス運輸交通竝國防上亦資ス
ルトコロ大ニシテ且工事甚容易ナルニ依
リ速ニ之ヲ實現セラレタシトノ旨趣ニシ
テ貴族院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキモノ
ト議決致候因テ議院法第六十五條ニ依リ
別册及送付候也
昭和十一年月日
貴族院議長公爵近衞文麿
內閣總理大臣廣田弘毅殿
意見書案
靜岡縣榛原郡下川根村ニ登記所設置ノ
件
靜岡縣榛原郡下川根村長半田瀧藏外
二十八名呈出
右ノ請願ハ靜岡縣榛原郡下川根村、志太
郡伊久身村大字身成、筆間渡及笹間村大
字笹間下ハ各其管轄登記所トノ距離遠ク
住民ノ不利不便尠カラサルハ遺憾ナルニ
依リ經濟狀態、取引關係等ニ於テ相互緊
密ナル之等隣接三地域ヲ管轄區域トスル
登記所ヲ下川根村地内ニ設置セラレタシ
トノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ採
擇スヘキモノト議決致候因テ議院法第六
十五條ニ依リ別册及送付候也
昭和十一年月日
貴族院議長公爵近衛文麿
內閣總理大臣廣田弘毅殿
意見書案
公共圖書館費國庫補助法制定ノ件
東京市豐島區池袋町八丁目官吏松本
喜一外二萬九千百二十一一名呈出
右ノ請願ハ學校ト共ニ國民〓育ヲ完成ス
ヘキ重要機關ナル公共圖書館ハ社會〓育
ノ中心機關トシテ最永續的效果ヲ擧クヘ
キモノナルニ拘ラス未國庫補助ノ途ナク
其ノ施設十分ナラサルハ學校〓育費ノ補
助アルニ比シ均衡ヲ失スルノミナラス亦
我國文化ノ發達上甚遺憾ナルニ依リ速ニ
公共圖書館費國庫補助法ヲ制定セラレタ
シトノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ
採擇スヘキモノト議決致候因テ議院法第
六十五條ニ依リ別册及送付候也
昭和十一年月日
貴族院議長公爵近衞文麿
内閣總理大臣廣田弘毅殿
意見書案
長崎縣ニ高等水產〓育機關設置ノ件
長崎市東中町平民上原參良外八名呈
出
右ノ請願ハ我國ニ於テ水產業ノ振興ヲ圖
ルハ最緊要ナルニ拘ラス其ノ高等〓育機
關ノ尠キハ甚遺憾ナルニ依リ速ニ國費ヲ
以テ斯業ノ中樞トシテ恰當ノ地ナル長崎
縣ニ之カ機關ヲ設置シ其ノ發達ニ資セラ
レタシトノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大
體ハ採擇スヘキモノト議決致候因テ議院
法第六十五條ニ依リ別册及送付候也
昭和十一年月日
貴族院議長公爵近衞文麿
内閣總理大臣廣田弘毅殿
意見書案
橫莊鐵道買收ノ件
秋田縣平鹿郡横手町大町中丁平民公
吏和泉喜代松外千二百一名呈出
右ノ請願ハ秋田縣橫手町ヨリ本莊町ニ至
ル私設横莊鐵道ハ沿線地方ニ於ケル產業
ニ貢獻シ且東北、奧羽竝羽越ノ諸線ヲ連
絡スル重要ノ線路ナルニ拘ラス同鐵道ノ
運賃高率ニシテ運輸施設亦不備ナルニ加
ヘ近時財界不況ノ影響ヲ蒙リ一部未成線
ノ完通モ容易ニ期シ難ク地方民ノ不利不
便多大ナルニヨリ之ヲ買收スルト共ニ速
ニ未成線ヲ完成シ以テ東北地方振興ニモ
資セラレタシトノ旨趣ニシテ貴族院ハ願
意ノ大體ハ採擇スヘキモノト議決致候因
テ議院法第六十五條ニ依リ別册及送付候
也
昭和十一年月日
貴族院議長公爵近衞文麿
内閣總理大臣廣田弘毅殿
意見書案
能登鐵道買收ニ關スル件
石川縣羽咋郡羽咋町長釜谷七太郞外
三十二名呈出
右ノ請願ハ私設能登鐵道ハ曩ニ地方開發
ノ爲沿線各町村民多大ノ犧牲ニ依リ之カ
建設經營中ナリト雖近時財界ノ不況ニ際
會シ關係町村ノ疲弊愈甚シキヲ以テ之カ
窮狀打開ノ方策トシテ速ニ同鐵道ヲ國有
ニ移管シ且其未成線三明驛、富來町間ヲ
國費ニテ急施スルト共ニ豫定線鐵道富來
町、三井間鐵道ヲモ速ニ竣エシ同地方ノ
振興發展ニ資セラレタシトノ旨趣ニシテ
貴族院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキモノト
議決致候因テ議院法第六十五條ニ依リ別
册及送付候也
昭和十一年月日
貴族院議長公爵近衞文麿
内閣總理大臣廣田弘毅殿発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X00919360517&spkNum=20
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021・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 全部委員長報告
通リ採擇スルコトニ御異議ゴザイマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X00919360517&spkNum=21
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022・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 御異議ナシト認
メマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X00919360517&spkNum=22
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023・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 是ヨリ日程第一
ニ戾リマス、國務大臣ノ演說ニ對スル質疑
ヲ許シマス、赤池濃君
〔赤池濃君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X00919360517&spkNum=23
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024・赤池濃
○赤池濃君 私ハ總理大臣竝ニ外務大臣ニ
對シテ、現今ノ國際關係ニ付テ、少シク御
質問ヲ致シタイト思フノデアリマス、今日
我ガ國ヲ初メ世界ヲ擧ゲテ、國際情勢ノ險
惡ニ惱ンデ居リマシテ、只管不安ノ氣分ヲ
以テ形勢ノ成行キヲ見テ居ル情勢デアリマ
ス、不安ナルガ故ニ、各國ガ競ウテ軍備ノ
充實ヲ急イデ、甘ンジテ軍事費ヲ負擔シテ
居ルノデアリマスルガ、軍事費ノ膨脹ハ殆
ド其ノ底止スル所ヲ知リマセヌガ、之ニ反
シテ國際不安ハ少シモ減ズル所ガナク、却
テ益〓擴大スル情勢デアリマス、玆ニ於テ
カ眞劍ニ國際情勢ノ眞相ヲ檢討シテ、其ノ
不安ノ由ッテ來ル所ヲ究メテ之ニ善處スル
コトガ今日ノ一大急務ト相成ッタノデアリ
マス、從ッテ今日程總理大臣竝ニ外務大臣ノ
責任ガ重クナッタコトハアリマスマイト思
ヒマス、而シテ國民ハ悉ク大臣ノ經綸ヲ聽
イテ其ノ手腕ニ信賴セムト欲シテ居ルノデ
アリマス、目下我ガ國ノ外交關係ハ極メテ
多事多難、又複雜微妙ヲ極メテ居リマシテ、
到ル所ニ難關ガ橫ハッテ居リマシテ、其ノ一
ツヲ解決スルダニモ容易ナコトデハアリマ
セヌ、併シナガラ何ト申シマシテモ、其ノ
中デ最モ重要デ、最モ緊要デ、最モ危險性
ヲ帶ビテ居ルモノハ、對露、對支ノ關係デ
アラウト存ジマス、廣田外相ハ夙ニ協和外
交ヲ主張セラレマシテ、銳意平和ノ達成ニ
努力サレテ居ルコトニ付キマシテハ、我々
平素非常ニ敬意ヲ拂ッテ居リマシテ、其ノ成
功ヲ偏ニ希ウテ居ルモノデゴザイマスガ、
其ノ總理竝ニ外務大臣ガ先達テ本議場ニ於
ケル所ノ施政演說中、露國ノ熊度ニ付テ遺
憾ノ意ヲ表シ、且又其ノ猛省ヲ促スト云フ
ヤウナコトヲ言明セラレルヤウニ至ラシメ
タ情勢デアルコトハ、我々ハ實ニ遺憾トシ
又憂慮ニ堪ヘナイ次第デアリマス、露國ハ
一昨年ノ十月、所謂露蒙協約ヲ結ンダノデ
アリマスルガ、其ノ相手タル外蒙ハ支那ノ一
部デアルノデアリマス、卽チ此ノ條約ハ明
カニ支那分割ヲ意味スルモノデアリマシテ、
支那ノ領土保全ノ主義トハ相容レナイモノ
デアリマス、而モ此ノ時此ノ際、露支密約
說ガ盛ニ流布サレルヤウニ相成リマシタノ
デアリマス、尙ソレニ加フルニ、支那ノ南
京政府ノ軍事委員會ノ副委員長タル憑玉
祥氏ハ、英國ノ記者ニ向ッテ、日露戰爭ハ避
クベカラザルモノデアルノダ、我々ハ此ノ
際露支同盟ヲ結ンデ、飽クマデ、武裝抗日、
鎧ヲ著テ日本ニ抗スル、武裝抗日ヲ爲サナ
ケレバナラヌト云フコトヲ語ッテ居ルノデ
アリマス、之ヲ「スターリン」氏ガ「アメリ
カ」ノ新聞社長ノ「ロイ·ハワード」氏ニ向ツ
テ、甚ダ不謹愼ノ言語ヲ用ヒテ我ガ國ヲ誣
ヒテ居リマシテ、ソレガ爲ニ米國ニ於テハ、
日露戰爭避クベカラザル所ノ議論ト云フモ
ノガ相當世間ヲ賑ハシテ居ルト云フ情勢ト
相對照シマシテ、我々ハ非常ニ色々ノコト
ヲ考ヘサセラレルノデアリマス、近來支那
ノ共產黨ハ其ノ「スローガン」ヲ改メマシタ
ノデアリマス、卽チ赤化救國ト云フ「スロー
ガン」、赤化シテ支那ヲ救フ、國ヲ救フト云
フ「スローガン」ヲ、抗日救國、日本ニ抵抗
シテ國ヲ救フト云フ「スローガン」ニ改メタ
ノデアリマス、而モ此ノ標語ハ、昨年ノ八
月「モスコー」ニ開カレタル第七囘「コミン
テルン」ノ大會ニ於テ制定サレタモノデア
ルノダサウデアリマス、我ガ國ニ於テ「シベ
リア」出兵ヲ撤廢シロトカ、若シクハ「ロシ
ア」承認ヲ速カニシロト云フ所ノ「スローガ
ン」ヲ、我ガ國ニ流布シタト同一ノ筆法デア
ルノデアリマス、政府ハ以上ノ事實ニ對シテ如何
ナル御所見ヲ有サレルノデアルカ、其ノ點
ヲ承リタイノデアリマス、是ト關聯シテ御
尋ネシタイノハ、先達テ我ガ國ニ於テ檢擧サ
レタ「スパイ」事件ニハ、共產黨關係ガ著シ
ク眼ニ付イタノデアリマス、國家ノ祕密トシ
テノ問題ノ外ニ、思想問題、又經濟問題ト
シテ、政府ハ之ニ對スル如何ナル御所見ヲ
持ッテ居ラッシヤルカ、ソレモ承リダイト思
フノデアリマス、次ニ支那關係ニ付テ御尋
ネシタイノデアリマスルガ、御答ノ便宜ノ
爲ニ、三ツニ分ケテ御尋ネシタイト思ヒマ
ス、卽チ第一ハ支那ノ政權卽チ南京政府以
下ノ政權ニ關スルモノ、第二ハ支那ヲ中心
トスル歐米關係ニ關スルモノ、第三ハ支那
ノ民衆ニ關スルモノト、此ノ三項ニ分ケテ
御尋ネスルコトニ致シマス、第一、支那ノ
政權ニ關スルモノデアリマス、近來南京政
府ハ我ガ國ノ對支三原則ヲ以テ日支交涉ノ
中心問題トシテ認メナイヤウナ風ノ有樣デ
アリマス、一昨年ノ末カラ昨年ニ掛ケマシ
テハ、日支間ト各種ノ懸案ハ著々解決セラ
レマシテ、或ハ兩國ノ間ニ重大ナル協定サ
ヘモ結バレムトスル形勢スラ見エタノデア
リマスルガ、昨今ノ南京政府ノ口吻竝ニ其
ノ態度ハ、是ト比較スレバ天地雲泥ノ相違
ガアルヤウニ相成リマシテ、總理及外務大
臣ハ、何ガ爲ニ斯クノ如クナッタト御覽ニ
相成ルカ、又如何ニセバ之ヲ軌道ニ復スル
コトガ出來ルト云フ御考デアルカ、此ノ點
ヲ承リタイト思ヒマス、近來新聞其ノ他ニ
現レテ居ル所ノ記事ヲ見マスルト云フト、
西南派ノ巨頭胡漢民氏ハ抗日ヲ言ヒ遺シテ
死ンデ居リマスルシ、又廣西派ノ李宗仁氏
モ亦抗日ヲ申シテ居リマス、河南ノ省長ノ
商震氏、北平ノ市長ノ秦德純氏ハ、共ニ米國
ノ記者ニ排日ノ意見ヲ吐露シテ居ルノデア
リマス、是ハ米國ノ新聞ニ現レテ居ルノデ
アリマス、斯樣ナ風ニ支那ノ權政ノ首腦者、
南京政府ト云ハズ、其ノ他ノ支那ノ各種ノ
政權ノ首腦者ガ抗日若シクハ日支開戰ヲ主
張スルコトニ付キマシテ、政府ノ御所見ハ
ドウデアリマスルカ、之ヲ承リタイノデア
リマス、第二ハ支那ヲ中心トスル歐米關係
ニ付テデアリマス、最近世界ノ耳目ヲ聳動
セシメタモノハ、英國ノ支那ニ於ケル所ノ
活動ト竝ニ其ノ成功デアリマス、卽チ英國
ハ多年ノ理想デアル所ノ粤漢鐵道ヲ近ク完
成セシメルヤウナ風ニ成功シタノデアリマ
ス、粤漢鐵道ト申シマスレバ、湖北ノ漢口
カラシテ江西ヲ縱斷シテ廣東省ノ廣東ニ至
ル鐵道デアリマス、換言スレバ中支、南支
ノ沃野ヲ縱斷スルモノデアリマシテ、其ノ
經濟上、軍事上、政治上、重大ナルモノデ
アルコトハ言フ迄モアリマセヌ、加之、之
ヲ京漢線ト連結シマスルナラバ、卽チ全支
那ノ南北ヲ縱斷スルモノデアリマシテ、其
ノ威力ト其ノ利益ハ、他ニ比較スルモノガ
アリマセヌ、又英國ハ川漢鐵道卽チ漢口カ
ラ四川ニ通ズル鐵道デアリマスガ、川漢鐵
道ノ建設費トシテ、一億二千萬元ノ建築材
料供給ノ爲ニ、新ニ「クレヂット」ヲ締結シ
タト云フ說ガアリマス、此ノ風說ノ外ニ、
四川省カラシテ雲南ヲ經テ「ビルマ」ニ至ル
所ノ自動車道路ノ開設ノ權利ヲ得タト云フ
噂モ傳ッテ居ルノデアリマス、又更ニソレニ
聯關致シマシテ、英國ノ西藏政策ニ對シテ
支那ノ了解ヲ得タト云フ風說モアルノデア
リマス、若シ是ガ事實ト致シマスルナラバ、
西部支那ニ於ケル所ノ英國ノ權力ハ、英國
ノ勢力ハ絕對的ノモノト相成ルノデアリマ
ス、尙又英國ハ先般ノ支那ノ幣制改革ヲ援
助致シマシテ非常ナ利益ヲ得タノミナラズ、
廣東政府カラスラモ紙幣ノ印刷ヲ引受ケタ、
又ハ廣東ノ鋼鐵廠、日本ノ製鐵所ニ比較スル
モノデアリマスガ、廣東ノ鋼鐵廠建設ニ關シテ
二百萬「パウンド」ノ借款ヲ契約シタト云フ
所ノ噂モアリマス、殊ニ驚クベキモノハ、
昨年支那ノ國寶、武英殿ノ寶物ヲ、「ロンド
ン」ニ於テ展覽會ヲ開イタノデアリマスル
ガ、其ノ國寶ヲ擔保トシテ武器借款ヲ結ン
ダト云フ說モアルノデアリマス、眞僞ハ固
ヨリ不明デアリマスルガ、列國ノ對支武器
輸入禁止協定ガ尙存シテ居ルト考ヘラレル
今日ニ於キマシテ、斯カル風說ヲ聞クト云
フノハ、如何ニモ驚クニ堪ヘナイ次第デゴ
ザイマス、次ニ「アメリカ」デアリマスル
ガ、「アメリカ」ハ近來支那ニ對シテ又復積
極的ニ働キカケマシテ、航空界ニ目覺マシ
イ活躍ヲシテ居ルコトハ、世間周知ノコト
デアリマスルガ、更ニ昨年來、米支ノ要人
ガ互ニ來往頻繁ヲ極メテ居リマシタコトガ
眼ニ付キマシタガ、今囘資金一億五千萬「ド
ル」ノ對支投資會社ヲ設立シテ、各種ノ支
那ノ借款ニ應ズルヤウニ相成ッタト云フ風
說ガ傳ッタノデアリマス、御承知ノ如ク、今
日ノ支那ハ資金難ニ陷リマシテ、資金ヲ欲
スルコトハ大早ニ雲霓ヲ望ムヤウナ風デア
リマシテ、少シノ資金デモ渴望シテ居ル際
ニ於テ、英米ガ多大ノ資金ヲ供給シマシ
テ、鐵道政策、幣制改革其ノ他ノ事ニ干與
シマシテ、大活動ヲ爲シ、殆ド我ガ國ノ十
大聲明ヲ無視スルヤウナ風ノ有樣デアリマ
スノハ、取リモ直サズ支那ノ官界ニ歐米依
存主義ガ捲土重來ノ勢ヲ以テ盛ニナッタ所
ノ證據ニ外ナリマセヌ、之ヲ歷史的ニ觀マ
スルト云フト、歐米依存主義ハ排日、抗日
ノ思想ト相表裏シテ來タノデアリマス、卽
チ支那ノ政府部內ニ此ノ歐米依存ノ主義ガ
盛ニナリマスレバ、事實トシテ排日、排貨
ガ現レマシテ、之ニ反シテ親日ノ氣分ガ盛
ニ起レバ、我ガ國ノ通商關係ハ圓滿ニ運バ
レテ來タノデアリマス、卽チ南京政府、支
那ノ政權當局者ノ心事ハ、直チニ政治、通
商其ノ他ニ反映致シマシテ、具體的事實ト
シテソレガ現レテ來ルノヲ例トシテ居ッタ
ノデアリマス、政府ハ昨今ノ歐米依存主義
ノ擡頭シタ所ノ現象ニ對シテ、如何ニ御觀
察ニ相成ッテ居ルカ、又之ニ對シテ如何ナル
御經綸ヲ懷カレテ居ラレルカ、ソレヲ承リ
タイノデアリマス、特ニ此ノ際御伺ヒ致シ
タイノハ、歐米ノ活動ニ付キマシテ、之ヲ
單ニ英國ノ東洋政策ノ成功デアルトカ、或
ハ又「アメリカ」ノ東洋政策ノ發露デアルト
カ、斯ウ云フ風ニシテ御觀察ニ相成ルカ、
將又玆ニ有力ナル財團又ハ勢力團體ガアッ
テ、ソレガ英米ト相提携シ、相策應シテ、
斯ク爲サシメルモノト御考ニナルカドウ
カ、殊ニ支那ノ當局者ヲシテ前日ト豹變ス
ルヤウナ風ノ熊度ヲ執ラシメテ居ルコトニ
付キマシテハ、是等ノ財團若シクハ勢力團
體ガ何カ働イテ居ルカ、換言スレバ、南京
政府其ノ他ノ政權ト、是等ノ財團又ハ勢力
團體トノ間ニ、特殊ノ因緣關係ガ有ルカド
ウカ、之ヲ如何ニ御考ニナルカ、政府ノ御
所見ヲ承リタイモノデアリマス、第三ハ支
那ノ民衆ニ關スルモノデアリマス、支那ノ
民衆ト支那ノ政權、支那ノ政府トハ全ク別
箇ノ存在デアリマス、此ノコトハ總理大臣
竝ニ外務大臣ノクレグレモ能ク御承知ノコ
トデアルノデアリマシテ、我々ガ喋々此處
ニ言フヲ俟タナイ次第デアリマス、從ッテ日
支ノ國交ハ彼等ノ政權ト親善ヲ圖ルノハ勿
論デアリマスルケレドモ、ソレ以上ニ必要
ナコトハ、支那ノ民衆ノ心ヲ得ルコトデア
リマス、政府ハ此ノ點ニ付テ如何ナル御努
力ヲ爲サレテ居ルカ、又爲サル御積リデア
ルカ、其ノ御所見ヲ承リタイノデアリマ
ス、今ヤ支那ノ民衆ハ天災地變人災ニ依リ
マシテ、塗炭ノ苦シミニ喘ギツヽアルノデ
アリマス、精神的方面カラ見マスルモ、物
質的方面カラ見マスルモ實ニ同情ニ堪ヘナ
イ次第デアルノデアリマシテ、政府ハ善隣
ノ誼トシテ何カ御計畫ニナッテ居リマスカ
ドウカ、例ヘバ團匪賠償金ノ支出方法ヲ改
メ、此處ニ資金ヲ求メ、之ヲ以テ支那人ノ
民衆ノ疾苦ヲ癒サムトスルヤウナ御考デ
アリマスカドウカ、以上ノ諸點ニ付キマシ
テ簡明ナル御答ヲ得レバ、誠ニ仕合セノ極
ミデアリマス
〔國務大臣廣田弘毅君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X00919360517&spkNum=24
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025・廣田弘毅
○國務大臣(廣田弘毅君) 只今赤池君ノ御
述ニナリマシタ、今日世界ノ各方面非常ナ
國際關係上ノ不安ヲ感ジ、又之ニ伴ッテ各國
競ウテ軍備ノ擴張ヲ致シテ居ル、ソレニモ
拘ラズ世界ノ不安ハ尙依然トシテ解ケナイ、
斯ウ云フ事態ハ、政府ニ於キマシテモ、斯
カル現狀デアルコトヲ認メテ居ルノデアリ
やっ、殊ニ日本ト致シマシテハ、赤池君モ
御述ニナリマシタヤウニ、日本ノ隣國トシ
テ最モ近イ主ナ國ハ「ロシア」ト支那デアル
ノデアリマス、滿洲ニ對スル日本ノ國策ヲ
中心ト致シマシテ、此ノ近イ隣國デアル「ロ
シア」及支那トノ關係ニ於テ、日本ハ誠意誠
心善隣主義ヲ以テ進ンデ參リタイト云フ考
ヲ持ッテ居リマスコトハ、屢〓政府ノ宣明致シ
テ居ル所デアルノデアリマス、然ルニ今日
ノ現狀ハ其ノ點ニ於テ甚ダ遺憾ナ狀態ニア
リマスコトモ、赤池君ノ御述ノ通リデアル
ト思フノデアリマス、日本ノ大陸ノ隣國ト
ノ關係ハ、實ハ非常ニ微妙ニ動クモノデア
リマシテ、全般的ニ此ノ二大隣國トノ關係
ガ善クナリマスコトハ、最モ日本ノ希望ス
ル所デアリマスガ、其ノ目的ヲ達シマスル
前提ト致シマシテモ、又途中ノ經過ト致シ
マシテモ、日本ト支那ノ關係ガ善クナレバ、
「ロシア」ハ相當不快ナ感ジヲ持ツ、又日本
ト「ロシア」ノ關係ガ善クナレバ、支那ハ或
種ノ不快ノ念ヲ持ツ、ト云フヤウナ微妙ナ
動キガ此ノ三國ノ間ニアルコトハ、從來ノ
例ニ依ッテモ明カナコトデアルト思フノデ
アリマス、從ッテ日本ト致シマシテハ、其ノ
二大隣國ニ對スル關係ハ餘程愼重ニ考ヘテ
參ラナケレバナラヌト思フノデアリマス、
最近日本ノ隣國デアリマス此ノ「ロシア」及
支那ガ、非常ニ接近シテ參ッテ居ルト云フ
コトニ付テノ、色々ノ例ヲ御擧ゲニナッタノ
デアリマスガ、果シテソレガドノ程度ノモ
ノデアルカト云フ點ニ付キマシテハ、何レ
當局大臣ヨリ答辯ニナルコトデアラウト思
ヒマスガ、又「スパイ」ノ間題ガ日本ニ起ッタ
ト云フ點ニ付キマシテモ、是ハ若シ何等カ日
本ニ對スル赤化宣傳、或ハ日本ノ弱點ヲ握
ラウト云フヤウナ、或國ノ問題ト致シマス
レバ、無論十分ノ注意ヲ拂ッテ參ラナケレバ
ナラヌコトデアルト思フノデアリマス、尙
特ニ支那ノ問題ニ付テ、只今赤池君ノ御質
問ニナリマシタ、支那ハ最近支那ノ政權中
日本ニ對シテ非常ニ惡聲ヲ放ッテ居ルト云
フコトデアリマスガ、是ハ最近ノ事實ト致
シマシテハ、各方面ニサウ云フ現象モ現レ
テ居ルト思フノデアリマスガ、私ノ知リ得
テ居ル情報ニ依リマスト、支那ノ南京方面
ノ政權ノ中心ガ、必ズシモ非常ニ日本ニ對
シテ惡化シテ居ルトハ認メナイノデアリマ
シテ、マダ〓〓日本ニ對スル關係ニ於テ、
十分ノ決心ヲシ得ナイ程度ニアルラシクハ
見エルノデアリマスガ、何レ日本ノ正當ナ
ル主張ニ對シテハ、ドウシテモ此ノ東亞方
面ノ形勢ニ鑑ミマシテ、理解シ得ル、又理
解シ來ル時期ガアルコトデアラウト考ヘテ
居ルノデアリマス、支那ノ動キニ付キマシ
テ、歐米諸國ノ關係ガ非常ニ微妙ニ動クコ
トモ、御述ニナリマシタ點大イニ參考トス
ベキモノモアルト思ヒマスガ、是等ノ實情
ニ付キマシテハ、更ニ關係大臣ヨリ御答辯
申上ゲルコトデアラウト思ヒマスガ、大體ニ
於テ歐米諸國ノ支那ニ於ケル動キノ中心ハ、
經濟ノ關係ガ非常ニ大ナルモノガアルノデ
アリマス、從ッテ經濟ノ實權ヲ握ッテ居ル所
ノ、歐米ノ財閥ト申シマスカ、資本家ト申
シマスカ、是等ガ相當ニ關係ガ深イト云フ
コトハ、當然ノコトデアルト思フノデアリ
マス、是ガ支那ノ中央ノ官憲トドウ云フ關
係ニアルカト云フコトノ、詳細ナ點ナ
ドニ付キマシテハ、何レ是モ主管大
臣ヨリ申上グルガ適當デアルト思フノ
デアリマス、日本ガ支那ト關係ヲ善ク
シテ參リマス上ニ於キマシテ、民衆トノ連
絡ヲ取ルコトノ必要ナコトハ、是ハ從來日
本政府ガ最モ重キヲ置キ、認メテ參ッタ所デ
アルト思フノデアリマス、一時ハ政權ヲ無
視シテ民衆ト近ヅイテ、日本ハ支那ノ民衆
ト外交ヲヤルベキデアルト云フコト迄唱ヘ
ラレタ時ガアル位デアリマシテ、ドウシテ
モ此ノ兩國ノ關係ヲ完全ニ密接ニシテ參リ
マスルノニハ、一時的ノ政權、或ハ人民ト
ノ關係ノ密接デナイ政權ト結ンデ、事ヲ謀ッ
テ行クト云フコトハ、ソレハ全ク暫定的ノ
モノデアリマシテ、根本ノ關係ト致シマシ
テハ、日本人其ノ者ガ支那人其ノ者トノ間
ニ、非常ニ融和ノ關係ヲ作ルコトガ必要デ
アルト思フノデアリマス、是ハ單ニ外交官
ノ爲スベキコトバカリデナク、日本ノ國民
全體ガ支那人トノ接觸ニ於テ、矢張リ國家
ノ關係ヲ善クスル必要ガアルト國家ガ認メ
マス程度ニ於テ、國民互ニ親和ノ空氣ヲ作ッ
テ參ルコトガ、最モ私ハ大事ナコトデ、是
ガ眞ニ日支兩國ノ親善關係ヲ持チ來ス根本
ノ問題デアルト感ズルノデアリマス、以上
私ノ感ジヲ述ベマシテ、其ノ他ノ點ハ外務
大臣ヨリ御答辯致スコトニ致シタイト思ヒ
マス
〔國務大臣有田八郞君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X00919360517&spkNum=25
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026・有田八郎
○國務大臣(有田八郞君) 只今赤池君カラ
國際關係ニ付キマシテ、極メテ廣汎多岐ナ
御質問ガアッタノデアリマス、大體ハ只今總
理大臣カラシテ御答辯ガアッタノデアリマ
ス、私ハ多少詳細ニ御質問ニ答ヘタイト思
フノデアリマス、日本ノ「ソヴィエト」竝ニ
支那ニ對シマスル方針ハ、先程總理大臣カ
ラモ申述べラレマシタ通リ、日滿關係ヲ基
調ト致シマシテ、日「ソ」、日支ノ關係ヲ調
整スルト云フコトニアルノデアリマス、此
ノ兩國トノ關係ハ、日本トシテ極メテ重大
ニ考ヘテ居ル次第デアリマス、先ヅ日「ソ」
ノ關係ニ付キマシテ、只今赤池君カラ「ソ
ヴィエト」ト蒙古トノ協約、「ソヴィエト」ト
支那トノ密約等ヲ御引用ニナリマシテ、又
支那共產黨ノ標語ガ、最近ニハ抗日救國ト
云フコトニ變ッタト云フ風ナ事例ヲ擧ゲラ
レマシテ、之ニ對シテ政府ハ如何ニ考ヘテ
居ルカ、又其ノ方策ハドウカ、斯ウ云フ風
ナ御質問デアッタノデアリマス、「ソ」蒙協約
ハ既ニ發表セラレテ、内容モ明白ニナッテ居
ルノデアリマス、此ノ協約ニ付キマシテハ、
日本ガ重大ナル關心ヲ以テ之ヲ〓究致シテ
居ルノデアリマス、「ソ」支密約ニ至リマシ
テハ、其ノ風說ハアリマスルガ、果シテサ
ウ云フ風ナモノガゴザリマスルカドウカト
云フコトハ未ダ分ッテ居ラナイノデアリマ
ス、是ハ同ジク政府ト致シマシテ、非常ナ
注意ヲ以テ觀テ居ル次第デアリマス、又支
那ノ共產黨ノ標語ガ抗日救國ト云フ風ナコ
トニ變ッタト云フコトハ、是亦頗ル重大ナコ
トデアリマスルノデ、是等ニ付テモ政府ハ
非常ナ注意ヲ以テ觀テ居ル次第デアリマス、
此ノ極東ニ於キマスル「ソヴィエト」ノ態度
殊ニ最近極東ノ兵備ヲ充實致シマシタト云
フコトハ、極メテ日本トシテ重要視シテ居
ルト云フコトハ、先般ノ演說中ニモ申述べ
タ所デアリマスルガ、是等ノ極東ニ於ケル
色々ナ事柄ト申シマスルモノハ、極東ニ於
ケル日本ノ地位ト云フモノニ對スル「ソヴ
イエト」ノ認識ノ不足ト云フコトガ其ノ一
ツノ原因デアリマスルシ、又疑心暗鬼ト云
フコトガ其ノ他ノ理由デアルト我々ハ考ヘ
テ居ルノデアリマス、此ノ極東ニ於ケル形
勢ヲ明朗ニシテ、サウシテ日本ト「ソヴイ
エト」トノ關係ヲ益〓親善ニ致シマスルニ付テ
ハ、此ノ認識ノ足リナイト云フコトヲ、又疑
心暗鬼、之ヲ解消スルニアルト我々ハ信ジ
テ居ルノデアリマス、出來ルダケ其ノ方針
ニ向ッテ進ンデ居ルノデアリマス、次ニ支那
ノ政權ニ付キマシテ、初メニハ三原則ヲ基
礎トシテ、日支ノ間ノ國交ヲ調整スルト云
フコトヲ認メテ居リナガラ、最近ニ至ッテハ
之ヲ認メナイト云フ風ニ變ッテ來テ居ルヤ
ウデアル、其ノ原因ハ何處ニアルノカ、斯
ウ云フ風ナ御質問デアッタト思フノデアリ
マスガ、是ハ三原則ヲ基礎トシテ日支ノ間
ノ國交ヲ調整シヨウト云フ、支那政府ノ考
方ニハ變リハナイト思フノデアリマス、此
ノ昨年ノ春以來、南京政府ノ熊度ガ日本ニ
對シテ著シク善クナリ、日本ト支那トノ間
ノ懸案其ノ他ガ著々トシテ解決セラレタノ
デアリマス、其ノ途中ニ汪精衞ガ傷キ、サ
ウシテ蔣介石ガ代ッテ場面ニ現レテ來タト
云フ時以來、今迄ノ懸案解決ト云フコトノ
步調ヲ緩メマシテ、日支國交ノ根本調節ヲ
シタイト云フ風ナ申出ヲシテ來タノデアリ
マスガ、以來個々ノ懸案ノ解決ト云フコト
ニハ、其ノ前程熱心デナイト云フ風ナ態度
ニナッテ來タコトハ事實デアルト思フノデ
アリマス、此ノ日支ノ國交調節ヲ基本的ニ
ヤリタイト云フ考ノ下ニハ何ガアルカ、態
度ガ多少變ッテ來タトスレバ、其ノ原因ハ何
處ニアルカト云フ御質問ニ對シマシテハ、私
ハ年月的ニ考ヘテ見マシテ、北支事件ト云
フモノガ影響ヲ與ヘテ居ルノデハナイカト
察シテ居ルノデアリマス、此ノ兩國ノ關係
調節ト申シマスルコトハ、最モ必要ナコト
デアリマスルノデ、本春私ガ駐支那大使ト
シテ參リマシタ際ニ、南京デ外交部長ト懇
談ヲ遂ゲタコトガアルノデアリマス、其ノ
時ノ私ノ得タ感ジニ依リマスト云フト、マ
ダ支那側ノ國交根本的調整ト云フコトニ對
スル決意ガ足リナイト云フコトヲ發見致シ
タノデアリマス、卽チ此ノ問題ニ付キマシ
テハ、マダ日本ト支那トノ間ノ呼吸ガビッタ
リト合ハナイ、此ノ呼吸ヲ合ハセルト云フ
コトガ、先ヅ第一デアルト云フ風ナ感ジヲ
得テ參ッタノデアリマス、デ現ニ政府ト致シ
マシテ考ヘテ居リマスルコトハ此ノ呼吸ヲ
合ハスト云フコトデアリマス、卽チ一方ニ
於キマシテハ勿論支那政府ノ決心ヲ促サナ
ケレバナラナイノデアリマス、他方ニ於テ
又日本側トシテ〓究スベキ所ガアレバ〓究
ヲスル、サウシテ呼吸ヲ合ハセル、是ガ一
番必要ナコトデアルト考ヘテ居ル次第デア
リマス、次ニ支那政權ノ問題ニ付キマシテ
西南、北支等ニ排日ノ意見ヲ公表シ、或
日支開戰ヲ主張スルモノガアル、之ヲ政府
ハドウ考ヘテ居ルカ、斯ウ云フ御質問デアッ
タノデアリマス、支那ノ各地ニ排日ガ根絕
致シテ居ラナイト云フコトハ事實デアリマス、
日本ノ品物ヲ排斥スルト云フコトハ近來非
常ニ宜クナッタノデアリマス、日支ノ貿易モ
一時ヨリモ遙カニ增加ヲ致シテ居リマス、
商賣ノ取引等ニ於テ、今日排貨ト云フコト
ヲ認メルコトハ極メテ少イノデアリマス、
併シナガラ學生ノ排日或ハ知識階級ノ排日
ト云フ風ナコトハ、今尙遺憾ナガラ幾分殘ッ
テ居ルノデアリマス、是等ニ付キマシテハ
政府ト致シマシテ有ラユル機會ヲ利用シテ、
是ノ根絕ニ努メテ居ルノデアリマス、只今
御質問ノ此ノ西南若シクハ北支那ニ於ケル
排日言動ト云フコトニ付キマシテハ、我々
モ多少其ノ事實ヲ認メルノデアリマスルガ、
是等ハ此ノ中央卽チ南京政府ニ對スル關係
カラシテ、南京政府ト日本トノ關係ノ密接
ニナルコトヲ妨ゲヨウト云フ風ナ理由カラ
シテ、特ニサウ云フ風ナイヤガラセヲ言ッ
テ居ルト云フ風ナコトモ亦我々トシテハ考
ノ中ニ置カナケレバナラヌト思フノデアリ
マス、併シナガラ其ノ內面ノ事情ハ如何ア
ラウトモ、兎ニ角サウ云フ風ナ排日的ノ言
論ヲ公ニ致シテ居リマスレバ、ソレ等ニ對
シテ日本政府トシテ臨時適當ノ處置ヲ執ル
ベキハ勿論ナノデアリマス、第三ニ支那ト
歐米トノ關係ニ付テ、「イギリス」ガ各方面
ニ於テ最近非常ニ活動ヲ致シテ居ル、「アメ
リカ」モ亦然リ、斯ウ云フ風ナ段々ノ例ヲ擧
ゲテノ御說明ガアッタノデアリマスルガ、此
ノ中ノ或モノハ確實ナ報道デアルト思フノ
デアリマスルガ、其ノ他ノ多クハ單ニ風說ニ
止ルモノガアルト思フノデアリマス、勿論
日本ト致シマシテハ如何ナル國ガ如何ニ支
那ニ於テ活動致サウトモ、ソレガ純經濟ノ範
圍ヲ出デナイ限リハ、勿論之ヲ兎ヤ角言フ
ベキモノデハナイト思フノデアリマス、唯
是ガ先程赤池君ノ御話ノヤウニ日本ヲ排
斥スル、英米依存ト云フ風ナ考カラ日本ヲ
排斥スルト云フ原因ニナルトスレバ、或ハ
其ノ事實ノ現レデアルトスレバ、勿論非常
ニ注意ヲシナケレバナラナイコトデアルノ
デアリマス、今ノ支那ノ政治的、社會的、經濟
的ノ情況ニ於キマシテ、各國ガ多額ノ金ヲ
支那ニ投資スルト云フ風ナコトハ、甚ダ疑
ハシイノデアリマス、是等色々ナ風說ガ外
面ニ現レマスルノモ、一ツハ此ノ利害關係
ノアル方面カラノ所謂宣傳ニ因ルト云フ風
ナコトモアリ得ルト思フノデアリマス、最
近ニハ風說ノ割合ニ、事實斯ウ云フ風ナモ
ノガ成立シテ居ルト云フ風ナコトハ極メテ
少イト考ヘテ居リマス、勿論此ノ事ハ極メ
テ日本ト致シマシテハ重要視シナケレバナ
ラヌコトデアリマスノデ、注意ヲシテ居ル
コトハ勿論デアリマス、事實ハ噂ホドデハ
ナカラウカト考ヘテ居ル次第デアリマス、
是等ノ關係ガ、支那ニ於ケル外國ノ經濟活
動ガ、支那ニ於ケル財團或ハ或種ノ勢力團體
ノ活動ト關係ガアルカドウカト云フ風ナ御
質問ニ付キマシテハ、是ハ我々モ色々ナ風
說ヲ耳ニ致スノデアリマス、其ノ中ノ風說
ニハ相當注意ヲ要スベキ風說モアルヤウデ
アリマシテ、政府ト致シマシテハ十分注意
ヲ致シ、又〓究ヲ怠ラナイ次第デアリマス、
終リニ支那民衆ト政府トノ關係ニ付キマシ
テ御質問ガアリマシタガ、此ノ點ニ付キマ
シテハ先程總理大臣ノ御答辯ガアッタヤウ
ニ、民衆ト民衆ノ心ヲ得ルト云フコトハ最
モ必要ナコトデアルノデアリマシテ、一時
的ノ政府トノ關係ノミヲ顧慮シテ、其ノ後
ニアル民衆ト云フモノヲ視ナイト云フコト
ハ、是ハ全然間違ッタコトデアルト思フノデ
アリマス、併シナガラ政府ト致シマシテハ、
承認シタル政府ヲ除ケテ、サウシテ其ノ意
思如何ニ拘ラズ民衆ト直接接觸スルト云フ
風ナコトガ出來ナイ場合モアルト考ヘラレ
ルノデアリマス、併シ此ノ點ハ寧ロ國民ト
國民、卽チ日本國民ト支那國民トノ接觸ヲ
密接ニスル、サウシテ支那民衆ノ心ヲ取ル
ト云フコトガ、一番良イ方法デアラウカト思
フノデアリマス、政府ト致シマシテモ勿論
合法ニ、又承認シタル政府ニ累ヲ及ボサナ
イ程度ニ於キマシテハ、支那民衆ノ福利增
進ト云フコトハ念ト致シテ居ルノデアリマ
ス、極メテ些少デハアリマスルケレドモ、
ソレ等ノ設備ニ付テモ考ヘ、又現ニ施設ヲ
致シテ居ル點モアルノデアリマス、團匪賠
償金ヲサウ云フ風ナ方面ニ使ヘナイカト云
フ風ナ御質問デゴザイマスガ、是ハ大キナ
意味ニ於キマシテ赤池君ノ御考ニナッテ居
ルヤウニ、支那ノ民心ヲ取ルト云フコトハ
旣ニ此ノ對支文化事業ニ、此ノ〓匪賠償金
ノ金ヲ使ッテヤッテ居ルト考ヘラレルノデア
リマス、唯ソレガ目前ニ現レナイト云フダケ
デ、對支文化事業ノヤッテ居リマスル事柄ハ、
卽チ支那ノ民衆ノ百年後ノ知己ヲ求メル、詰
リ此ノ文化事業ヲヤッテ居リマスレバ、矢張リ支
那ノ國民ハ其ノ一時的ノ政府デナク、國民ハ
必ズヤ日本ト云フモノノヤッテ吳レタ此ノ
仕事ニ對シテ感謝ヲスル時機ガアラウ、卽
チ支那國民ノ心ヲ取ルト云フ結果ニナルノ
デアラウト思フノデアリマス、今日ト致シ
マシテハ此ノ文化事業ノ金ヲ、直グ從來ノ
目的以外ニ使フト云フコトニハマダ政府ト
致シテ考ヘテ居ラナイノデアリマス
〔赤池濃君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X00919360517&spkNum=26
-
027・赤池濃
○赤池濃君 只今總理大臣竝ニ外務大臣ヨ
リ詳細ナル又御鄭重ナル御答辯ヲ戴キマシ
テ、私ハ非常ニ滿足スルモノデアリマス、
殊ニ總理大臣ノ御話ニ依リマスト云フト、
南京政府ノ首腦者ノ中ニハ、或事ヲ言フ者
ガアルカモ知レナイケレドモ、其ノ中心勢
力ハ左樣ナ考ヲ持ッテ居ラナイラシイト云
フ御話ヲ聽キマシテ、私ハ其處ニ總理大臣
竝ニ外務大臣ノ特ニ御考慮ヲ願ヒ、益〓我々
ヲシテ總理大臣竝ニ外務大臣ノ御手腕ニ信
賴スルヤウニサシテ貰ヒタイモノデアルノ
デアリマス、此ノ際ニ於キマシテハ、區々
タル局部ノ小サナコトニ頓著シテ居リマス
ルト云フト、大計ヲ過ル虞ガアルノデアリ
マスカラ、大局カラ見マシテカラシテ、極
ク達見ヲ以テ事ヲ處サナケレバ相成ラヌ時
期ニ相成ッテ居ルノデアリマスカラ、此ノ點
ニ付キマシテハ特ニ總理竝ニ外務大臣ノ御
自重ト、御奮勵ヲ御願ヒスル次第デアリマ
ス、又私ハ思ヒマスルノニハ、今日政權ノ
首腦者ノ或部分ニハ色々ノコトヲ申シテ居
リマスケレドモ、又外務大臣カラモ民衆ノ
方面ハ、經濟的ニ日本ニ結ビ付イテ居ルト
云フ御話ガアリマシタガ、私ハサウ云フ思
フノデアリマス、今日政權ガドウアラウト
モ、民衆ノ考ト政權ノ考ノ間ニハ非常ナ相
違ガアル、我々ハ一部ノ政權ノ排日ヲ以テ
非常ニ悲觀スル必要ハナイト思フノデアリ
マス、ト申シマスノハ外務大臣ノ御話ノ如
ク、我ガ國ノ通商關係ハ大體ニ於テ相當良
ク行ッテ居ルト思フ、今日支那人ガ日本ノ商
品ヲ用ヒナイデ以テ日常生活ヲ充タス能ハ
ザル今日ニ於キマシテハ、ドウシテモ支那
ノ經濟關係ハ深ク結ビ付イテ居ルト思フノ
デアリマス、更ニ思想的カラ申シマスルト
云フト、今日支那ニ於テ最モ流行シテ居ル
ノハ何カト申シマシタナラバ日語〓授デア
リマス、日本語ノ〓究、〓授デアルノデア
リマス、日本語熱ト云フモノガ非常ニ行ハ
レマシテ、各地ニ色々ノモノガ出來テ居ル
ト云フコトハ、卽チ總テノ諒解ハ言語カラ
ト云フコトカラ、日本語〓究ガ盛ニナッテ居
ル事實ヲ見マスト云フト、我々ハ非常ニ意
ヲ强ウスルモノガアルノデアリマス、更ニ
日本ノ書籍ガ非常ナ賣行キヲ以テ支那ニ行
ハレテ居ル、卽チ知識ヲ日本ニ求メル、或
ハ日本ノ書籍ニ依ッテ西洋ノ知識ヲ求メル、
日本ヲ兎ニ角仲介トシテ、或種ノ知識ニ接
シタイト云フ希望ガ周圍ニ充滿シテ居ル以
上ハ、我々ハ其ノ氣分ニ乘ジテ爲スベキコ
トガ澤山アルト思フノデアリマス、况ヤ我
我日支間ノ文化關係ヲ見マシテ、色々ノ點
カラ考ヘテ見マスト云フト、日支兩國ノ關
係ハ文化ノ關係、社交ノ關係、娯樂ノ關係、
其ノ他色々ノコトヲ見マスト云フト、色々
ノ意味ニ於テ非常ナル密接ノ關係ガアル、
深ク掘レバ深ク掘ル程兩方ノ關係ノ深イコ
トヲ感ズル譯デアリマス、單ニ我々ガ儒〓
ニ依ッテ倫理、道德、人生觀ヲ一ツニシテ居
ルト云フコトデナク、音樂ト申シ、繪畫ト
申シ、有ラユル藝術ナリ或ハ娛樂ノ方面、
或ハ一年ノ年中行事ノ點カラ見マシテモ、
總テノ點ニ於テ兩者共通ノ點ガ多イノデア
リマシテ、又我々ガ本當ニ此ノ直觀的ニ靈
ト靈トヲ相接近スルコトニ付キマシテハ、
是ハ日本人デナケレバ支那人ヲ解釋スルコ
トガ出來ナイモノガ澤山アル、例ヘバ天道
循環ト申シマシテモ、ソンナ思想ハ西洋人
ニ向ッテ分ルカドウカ、先王ノ風ハ山高ク
水長シト云フガ如キハ直ニ共鳴スルガ、
西洋人ニハ分リマスマイ、釆菊東籬下、悠然
見南山ト云フヤウナ風デアリマシテ、オ互
ニ其ノ間ニ靈ト靈トガ相通ズル譯デ、判斷
ガ出來ルヤウナ境遇ニ居ルノハ、日支
兩國ノ間ニ限ラレテ居ルノデアリマス、
我々ハ各種ノ間ニ日支兩國民ハ共ニ親シム
コトガ出來ル、共ニ愛スルコトガ出來ル
共ニ相信ジ、相敬スルコトガ出來ルモノト
思フノデアリマス、此ノ意味ニ於キマシ
テ、我々ハ高等程度ノ學校ニ於テハ、外國
語トシテモウ一遍漢文學ヲ設置シテ貰ヒタ
イ位ノ考ヲ持ツ一人デアリマス、兎ニモ角
ニモ努力如何ニ依リマシテハ、支那ノ民心
ヲ得ルト云フコトハ困難デナイ、サウ云フ
コトヲ考ヘル者デアリマシテ、此ノ點ニ付
キマシテカラシテ、政府ニ於レマシテハ特
ニ御考ヲ願ヒタイト思フノデアリマス、尙
私ガ團匪賠償金ノコトニ付テ申シマシタ
ガ、之ヲ申ス譯ハ外デモアリマセヌガ、「イ
ギリス」ガ今囘粤漢鐵道ノアノ大難工事ヲ
ヤルコトニ付キマシテハ、團匪賠償金ヲ使ッ
テ居ルノデアリマス、我ガ國ハ自ラ自繩自
縛規定ヲ極ク限リマシテ、サウシテ小規
模ノコトヲヤッテ居ルノデアリマスルガ、私
ハ非常ノ時ニ於テハ非常ノ心ヲ立テナケレ
バナラナイ、之ニ對シテハ從來ノ規則ヤナ
ンカヲ變ヘテシマッテ、大イニソレヲ活用シ
ナケレバナラヌト云フコトヲ考ヘル者デア
リマスルカラシテ、其ノ御所見ヲ承ッタノデ
アリマス、アレデ滿足スルヤウナ御答辯ダ
トスルト私ハ不滿ヲ懷ク者デアリマス、モ
ウ一遍此ノ點ニ付テハ御考ヲ願ヒタイト思
ヒマス、ソレカラ財團若シクハ或勢力團體
ノコトニ付テ申シマシテ、是ハ極メテ微妙
ナ問題デアルノデアリマス、總理大臣カラ
シテ或點ノ御言葉ヲ承リマシタ、併シ是ハ
私ハ他ノ機會ニ於テ十分ニ御尋モシ、又
御聽キモシタイト思フノデアリマス、兎一
角最近ニ於キマシテカラシテ、英國ノ活動
ノ裏面ニ於テハ幾多ノサウ云フ風ノ事情ガ
アリマス、殊ニ或財闕ノ巨頭ニ於テハ、必
ズ大變動ガアルト云フ事實ガアリマスカラ
シテ、其ノ事實ガアル以上ハ決シテ漫然看
過スルコトガ出來ナイト思フノデアリマ
ス、更ニ最近十年間ニ於ケル支那ノ大變動
ノ跡ヲ段々見マスト云フト、悉ク關係シテ
居ルコトヲ見マスルカラシテ、ソレデ私ガ
此ノ點ヲ申シタノデアリマスルガ、併シ事
ハ極メテ〓妙ノ點モアルノデアリマスルカ
ラシテ、此ノ壇デハ伺ハナイ、他日ノ機會
ニ於テ承リマスシ、又更ニ之ニ對シテ御考
究ヲ願ヒタイト思ヒマス、クレグレモ總理
大臣竝ニ外務大臣ノ御奮勵ヲ願ヒマシテ私
ハ降壇シタイト思フノデアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X00919360517&spkNum=27
-
028・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 淺田男爵
〔男爵淺田良逸君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X00919360517&spkNum=28
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029・淺田良逸
○男爵淺田良逸君 私ハ建軍ノ本義其ノ他
ニ付キマシテ、陸軍大臣ガナサレマシタル
御答辯等ニ關聯ヲ致シテ質問ヲ申上ゲタイ
ト思ヒマス、過日圖ラズモ當貴族院ニ起リ
マシタル出來事ニ對シテ、當院ハ機ヲ逸セズ
機宜ノ處置ヲ執ッタノニ對シ、陸軍ニ於カレ
マシテハ深甚ノ敬意ヲ表サレタト承ッテ居
リマシテ、却テ私共ハ恐縮ニ存ジテ居リマ
ス、併シナガラ斯クノ如クシテ軍民一致、
文武協力ガ成立チマスコトニ依ッテ、聖旨ノ
萬分ノ一ニ報イ奉ルコトガ出來マシタナラ
バ、却テ禍ヲ轉ジテ福トナスモノト考ヘテ
居ル次第デゴザイマス、此ノ意味ヲ以チマ
シテ貴族院本來ノ使命ニ鑑ミテ深ク時勢ヲ
認識致シ、皇國ニ於キマスル軍ノ地位、任
務ト云フコトヲ尊重致シマスルト共ニ、五
ニ扶ケ相戒メテ、朝野一致シテ此ノ至難ナ
ル時局ヲ立派ニ乘切リタイト云フ精神ヲ以
テ、質問ヲ申上ゲル次第デゴザイマス、偖
テ去ル七日、衆議院ニ於キマスル齋藤代議
士ノ御質問ニ對シ陸軍大臣ハ、「軍部ニ關シ
マスル御質問、洵ニ熱誠適切ナル御所論ヲ
承リマシテ、私ハ其ノ論旨ニ付キマシテハ
同感デゴザイマス」ト答辯ヲセラレテ居ル、
其ノ當時新聞其ノ他世間デハ、此ノ答辯ヲ
虛心坦懷デアルトカ、率直明快デアルトカ
云フ風ニ盛ニ稱讚ヲ致シ、恰モ陸相ハ齋藤
君ノ演說ニ悉ク同意シタモノト解スル向キ
ガ甚ダ多イノデアリマス、ソレモ無理カラ
ヌコトデアリマシテ、語句ノ上カラハ所論
ヲ適切ト認定シ、論旨ニ同感デアルト言ハ
レテ居ルカラ致シ方ハナイカモ存ジマセ
又、果シテ左樣ニ考ヘテ宜シイノデゴザイ
マセウカ、若シモ此ノ質問ノ演說ノ中ニ是
認スベカラザル點ガアリマスルナラバ、セ
メテ其ノ重要ナル箇條ダケニ對シマシテモ
卽時御意見ヲ述ブルガ至當ト考ヘマス、假
ニ一步ヲ讓リマシテ、當時何カ外ニ御考ガ
アッテ其ノ儘ニ放置セラレタノデゴザイマ
スルナラバ、必ズヤ後ノ日ニ於テ何等カノ
機會ヲ捉へ、之ヲ補足是正スベキデアル、
ドウカサウアリタイト私ハ念願ヲ致シテ居
リマシタノデゴザイマスケレドモ、重要ナル
事項ニ付テ今尙其ノ儘ニナッテ居ルコトハ少
クナイノデアリマス、玆ニ於テ私ハ陸軍出身
ノ議員ト致シ、心ナラズモ此ノ事ニ關聯ヲ
シテ質問ヲ申上ゲテ、遂ニ或ハ過般ノ不祥事
件ニ及ブカモ知レヌト思ッテ居リマス、職責上
眞ニ已ムヲ得ザルコトト御了承ヲ仰ギタイ
ノデゴザイマス、論者ノ質問ノ中ニ、陸海
軍ハ國防ノ爲ニ設ケラレタルモノデアルト
斷定ヲシテ居リマス、果シテ其ノヤウニ我
ガ陸海軍ハ單ニ國防ノ爲ニ設ケラレタルモ
ノデアルカ、一體國防トハ何デアルカ、廣
義狹義ニ依リソレゾレ解釋ノ差異ハゴザ
イマセウケレドモ、要スルニ國防ノ意義ハ
外敵ニ對シテ國家ヲ防護スルト云フコトニ
ナルノデゴザイマス、私ハ陸軍ノ重要ナル
各條例、規則ヲ繙イテ見マスルニ、國防ト
云フ字ハ至ッテ、方々ニ現レテ居リマセヌノ
デ、唯參謀本部條例第一條ニ「國防及用兵ノ
事ヲ掌ル」トナッテ居リマス、各軍司令部ノ條
例ニハ防衞、防備ト云フ文字ガ出テ居ルダ
ケデアリマス、凡ソ軍人ハ平素專ラ戰爭ノ
〓育訓練及作戰、用兵ノ準備ニ沒頭致シ、
一朝事有ルノ秋ニ當ッテハ、身命ヲ〓シテ戰
爭ニ從事スルハ勿論デアルガ、ソレダケデ
事足リルノデアルカ、否サウデハナイノデ
アリマス、大所高所カラ見渡シ、抑〓軍ノ任
後本領ニ關スル見解如何ト云フコトニナ
リマスレバ軍令ヲ以テ明確ニ致シテ居リ
マスル唯一ノ則デアル軍隊內務書綱領第一
ニ二八一天皇親率ノ下ニ皇基ヲ恢弘シ國
威ヲ宣揚スルヲ本義トス」、之ニ據ラナケレ
バナリマセヌ、是レ卽チ建軍ノ本義デアリ
マス
〔副議長伯爵松平賴壽君議長席ニ著ク〕
所ガ世間デハ斯クノ如キ大事ナコトヲ能ク
御承知ナイガ爲ニ誤リヲ起シ、唯軍ハ國防
ノ爲ニ設ケラレタルモノニ過ギナイ、斯ウ
申ス、果シテ從來軍ハ色々ノ議會ニ於キマ
シテ、此ノ趣旨ヲ徹底セシムルコトニ些カ
ノ手落チモナカッタデゴザイマセウカ、軍ハ
畏多クモ天皇御直屬ノ下ニ天業恢弘、國體
擁護、國威宣揚ノ大任ヲ遂行スベキモノデ
ゴザイマス、換言スレバ皇基ノ恢弘ハ第一
義デアリマス、國防ハ國威宣揚ノ中ニ包括
セラルベキ一部分デアルト考ヘナケレバナ
リマセヌ、而シテ皇基ヲ恢弘致シマスルノ
ニハ、先ヅ以テ內ハ國體ノ精華ヲ確保スル
コトヲ必要ト致シ、萬一國體ヲ破壞セムト
スルカ、又ハ國體ノ尊嚴ヲ冐瀆スル者ガ起
リマシタナラバ、軍ハ直チニ大命ヲ奉戴シ
テ之ガ殲滅ニ邁進スベキハ當然デゴザイマ
ス、彼ノ統治ノ大權ノ主體ハ天皇ニ在サズ
シテ、國家ニ在リトノ亡國的不逞論、又統治
ノ大權ハ天皇竝ニ國家ニモ亦在リトノ二
元的邪論ノ如キモノハ、明カニ我ガ尊嚴無
比ナル國體ニ悖ルモノト致シ、全軍ノ擧ッテ
排擊芟除スベキモノト確信スル者デアリマ
ス、宜ベナル哉、事件後、現組閣ノ初メニ
當リマシテ、陸軍ノ總意ト致シ、寺內大將
ガ要求セラレタル四項目ノ中ニ、第一ニ國
體明徵ノ徹底ト云フ事ガ擧ゲテアルト云フ
コトニ承ッテ居リマス、果シテソレガ事實デ
ゴザイマセウカ、私ハ事實ナラムコトヲ希
望スル者デゴザイマス、斯クノ如クニ考ヘ
來リマスレバ、軍ハ國防ノ爲ニ設ケラレタル
モノト局限スル譯ニハ斷ジテ參リマセヌ、抑〓
皇基ヲ恢弘スル重責ニ任ズル陛下ノ軍ヲ、
單ニ國防軍事ノ狹イ範圍ニ閉ヂ込メヨウト
スル自由主義、民權論者ノ思想ハ極メテ危
險デゴザイマシテ、決シテ斯クノ如キコト
ハ國威ヲ宣揚スル所以ノ道デナイノデアリ
やく、ソレヲアッサリト、國防ナル字義ヲ廣
ク解釋スレバソレデ宜イ位デ、漫然同感ノ
意ヲ表セラレタモノデハゴザイマセヌデセ
ウカ、甚ダ以テ不可解ト思フノデゴザイマ
ス、若シ斯クノ如ク致シマシテ、建軍ノ本
旨ニ寸毫タリトモ疑義ヲ生ズル者ガゴザ
イマシタナラバ、是ハ國家ノ爲ニ憂フベ
キコトト思ヒマスノデ、此ノ際御明答
ヲ煩シタイト思フノデゴザイマス、論
者ガ又申スノニ、「故ニ軍人ノ〓育訓練
ハ、專ラ此ノ方面ニ集中セラレ、政治
外交財政經濟等ノ如キハ、寧ロ軍人ノ
知識經驗ノ外ニアルノデアリマス」ト云ウ
タニ對シ、當時陸相ハ、一言モ之ヲ否定致
シテ居リマセヌ、唯、其ノ後某議員ノ質問ニ
對シテハ、「軍人ガ廣義國防ノ見地ヨリ必要
ナル事ヲ〓究スルハ當然デアル」ト答ヘラ
レテ居ルガ、未ダソレデハ言葉ガ足ラヌ、
國民ヲ代表スル所ノ議員等ニ十分ソレデ滿
足ガ行クカ、行カナイダラウト私ハ思フノ
デゴザイマス、若シモ軍ノ將校ニシテ、政
治外交等ノ知識ガ無カッタナラバ、ドウシテ
軍ノ楨幹トシ、社會ノ上流人ト致シテ、能
ク其ノ地位ヲ保持シ、其ノ任務ヲ盡スコト
ガ出來マセウカ、况ヤ軍隊〓育ノ被〓育者
ノ中ニハ、高等ノ學府ヲ卒業シタ者モゴザ
イマスシ、殊ニ危險ナル思想ヲ保持スル者
モゴザイマス、是等ヲ〓育薰化スルコトガ
出來マセウカ、故ニ總テノ將校ハ、政治其
ノ他ニ付キマシテハ相當ノ關心ヲ有シ、〓
究ヲ遂ゲ、常ニ常識定見ヲ涵養シ、所謂邪
說ニ惑ハサレザルハ勿論、所要ニ應ジテ人
ヲモ說破スルダケノ知識ヲ保有スルガ頗ル
肝要デアリマス、况ヤ軍ノ樞機ニ干與スル
將校ニ於テハ、特ニ左樣デナケレバナラヌ
ト思フノデアリマス、卽チ軍人ハ斷ジテ政
治外交、財政、經濟等ノ知識圏外ニ在ル
ベキ者デナイ、寧ロ益〓是等ニ關スル知識
ヲ擴充スル爲ニ、個人ノ讀書〓究ハ勿論、
相互協力ヲ致シテ、論議審査スルコトハ絕
對ニ必要ト考ヘテ居リマス、此ノ事ニ付キ
マシテハ、從來如何ニ爲サッテオイデニナル
カ、又將來如何ニ御指導爲サル御考デアル
カヲ御尋シタイノデアリマス、又論者ハ、
靑年將校ヲ評シ、政治、外交、財政、經濟
等ニ付キマシテハ、無論基礎學問ヲ爲シタ
コトハナイト斷定ヲ致シ、陸相ハ默ッテ居ラ
レマシタ、私ハ陸相ガ事實ヲ釋明スル大事
ナ機會ニ於テ無言デアッタト云フコトヲ遺
憾トスルノデアリマス、何トナレバ士官學
校兵學校ニ於キマシテモ、高等學校ト殆
ド同等以上程度ニ、法制、經濟其ノ他ヲヤッ
テ居リ、任官後モ引續キマシテ致シテ居リ
やっ、固ヨリ專門家ノヤウナ譯ニハ參リマ
セヌケレドモ、軍事以外ノ基礎學問ナシトノ
侮辱ヲ甘受スルト云フコトハ遺憾ナコトデ
アリマシテ、是ハ事實ニ反シ、徒ニ靑年將
校ノ心事ヲ刺激スルモノト考フルノデアリ
ママ、此ノ點ニ付キマシテモ、陸相ノ御答
辯ヲ御願ヒ致シマス、次ニ又質問ノ中ニ「要
スルニ斯クノ如キ次第デアリマシテ、三月
事件ニ對スル軍部ノ熊度ガ十月事件ヲ喚ビ
出シ、十月事件ニ對スル軍部ノ態度ガ五·
五事件ヲ喚ビ出シ、五·一五事件ニ對スル軍
部ノ態度ガ實ニ今囘ノ一大不祥事ヲ惹起シ
タノデアルト、斯樣ニ私ハ觀察ヲ下シテ居
ルノデアリマスガ、若シ此ノ觀察ニ過チガ
アレバ正シテ戴キタイノデアリマス」ト申
サレテ居ルノデアリマス、敢テ自ラ省ミル
コトナク、陸軍ノ態度ノミヲ責ムルコト如
何ニモ深刻デアルガ、之ニ對シテ陸軍大臣
ハ一言モ辯明是正ヲ致シテ居リマセヌ、其
ノ事實ヲ正確ナリト御認メニナッタノデア
ルカ否ヤ、然ラズンバ遲レタリト雖モ無キ
ニ勝ルト考ヘマスルガ故ニ、之ニ關スル御
所見ヲ承リタイノデアリマスガ、私ハ敢テ
玆ニ此ノ所謂三月事件、十月事件ト稱セラ
レル、斯クノ如キ風聞ニ過ギザルコトハ度
外致シ、五·一五事件ト云フコトハ、是ハ實
際問題デアル、當時畏クモ上御宸襟ヲ惱マ
シ奉リ、下一世ヲ衝動シタ不祥事デアリマ
ス、而モ其ノ司法ニ關與致シ、或ハ直接間
接ニ責任ヲ分ツベキ地位ニ立ッテ居ラレタ
現職軍人ガ今尙居ルノデアリマスカラ、萬
一、五·一五事件ノ處理方ガ、陸軍ノヤリ方
ガ惡クテ、之ガ爲ニ今囘ノ前古未曾有ナル
大不祥事ガ惹起シタト世間ニ誤解ヲサレマ
シタナラバ、誠ニ是ハ大切ナコトデアッテ、
陸軍當局トシテモ更ニ一段ノ考慮ヲ拂ヒ、
處斷シナケレバナラヌコトガ澤山ニ殘ッテ
居ル筈デアリマス、是ハ陸軍ニ取リ由々シキ事
件デゴザイマスルガ故ニ、之ニ對シテ御答辯
ヲ御願ヒシタイノデアリマス、次ニ論者ハ
又「啻ニソレ許リデハナイ、例ヘバ今囘叛亂後
ノ內閣組織ニ當リマシテモ、事件ニ付テ重大
ナル所ノ責任ヲ擔ウテ居ラレル所ノ軍部當
局ハ、相當ニ自重セラレルコトガ國民ノ要
望デアッタニモ拘ラズ、或ハ某々ノ省內ニ
ハ政黨人入ルベカラズ、某々ハ軍部ノ思想
ト相容レナイカラ之ヲ排斥スル、最モ公平
ナル所ノ肅正選擧ニ依ッテ國民ノ總意ハ明
カニ表白セラレ」云々、「一部ノ單獨意思ニ
依ッテ國民ノ總意ガ蹂躪セラルヽガ如キ形
勢ガ見ユルノハ甚ダ遺憾千萬ノ至リニ堪ヘ
ナイノデアリマス」トノ質問ニ對シテモ、
私ハ何トシテモ、是ハ何カ御答ガアッテ然
ルベキト思フ、當時ノ新聞報ニ依リマスレ
バ三月六日午後三時三十分、寺內大將ハ
組閣本部ヨリ陸軍省ニ歸來後、次ノ如キ話
ヲシタト出テ居リマス、又陸軍ノ不滿トス
ル點トシテ、人事ニ關スル五箇條ヲ列擧シ
テアリマス、其ノ後間モナク決定致シマシ
タル御顏觸レヲ拜見スルト、如何ニモ其ノ
通リニ現レテ居リマシタ、私ハ論者ノ言ハ
ルヽ如ク、當時一部ノ單獨意思、動モスレ
バ軍部ヲ指スト誤解セラルヽ如キ言葉ヲ用
ヒテ、國民ノ總意ハ之ニ依ッテ蹂躙セラレタ
リトハ決シテ思ハナイノデアリマス、否斯
クノ如ク爲サルコトハ、恐ラク是ハ最善ノ
方法デアリ、國民ノ輿望デアル、少クトモ
國民ノ歸趨ヲ指導スル上ニ於テ、最良ノ方
針デアッタノデハナカラウカト考ヘテ居ル
ノデゴザイマス、果シテ然ラバ陸軍大臣ト
致シ、左樣ナコトハ答辯ノ限リニアラズト
御考ニナッタノカモ知レマセヌケレドモ、
議會ヲ尊重致シ、國民ノ希望ヲ充足スル意
味ニ於テ極メテ眞劍ニ、御懇切ニ堂々ト所
信ヲ披瀝ナサレ、主張ヲ開陳セラルヽト云
フコトハ立憲的ノ態度デアリ、當然大臣ト
シテ爲サルベキ責務デアルト私ハ考ヘテ居
リマス、願クハ左樣將來アリタイノデア
リマス、之ヲ看過シ或ハ默シテ答ヘザルト
云フコトハ、私ノ誠ニ遺憾トスル所デゴザ
イマスガ、斯クノ如ク致シマスルト云フ
ト、國民ノ疑惑ハ益〓深マリ、誤解ノ結果、
軍部ガ執ルベカラザル責任ヲモ負ハサレル
ト云フコトニナリ、遂ニハ軍部ノ威信ヲ傷
ヒ、累ヲ皇國ニ及ボスト云フコトガアリマ
シテ、或ハ反軍思想、軍民離間等ノ如キ
モ、斯クノ如キコトニ胚胎セズトハ限ラナ
イ、深ク心スベキコトト思フノデアリマ
ス、仍テ之ニ對シテ御〓示ノ意味ニ於キマ
シテ、何分ノ御答辯ヲ煩ハシタイ、去ル六
日陸軍大臣ハ、貴族院ノ本會議ニ於キマシ
テ、今囘ノ不祥事件ニ付テ御說明ナサイマ
シタ御言葉ノ中ニ、「事件參加者ノ行動ガ許
スベカラザル反亂行爲ナルコトハ旣ニ彼等
兵營出發ノ時ヨリ明カナル事實デアリマ
ス、ソレニモ拘ラズ特ニ之ヲ反亂部隊ト公
稱セズ、形式上トハ申シナガラ一時之ヲ原
所屬部隊ノ指揮ニ入レタルガ如キ、各種臨
機ノ手段ヲ講ジマシタノハ、全ク當時ニ於
ケル反亂將校ノ〓奮狀態ヲ刺㦸セシメズシ
テ云々」ト誠ニ至嚴ノ中ニモ溫情ガ籠リマ
シテ、自然ト頭ガ下ル、斯樣ナ感ジガスル
ノデアリマス、ガ併シ三日間ニ互リ反亂部
隊ト公稱シナカッタガ爲ニ、世間ニハドウ
シテ反亂行爲トソレヲ認メルモノガアリマ
セウカ、世間ハソレヲ反亂行爲ト考ヘル由
モナク、其ノ間ニ如何ナル事態ガ色々起ツ
タカト云フコトヲ顧ミマスル時ニ、私自身
トシテモ自ラ悚然タラザルヲ得ナイノデア
リマス、何人ガ其ノ責任ヲ執ルノデアル
カ、又形式上トハ申シナガラ、一時之ヲ原
所屬部隊長ノ指揮ニ入レタルガ如キ、各種
臨機ノ手段ト申ス點ガ、私ハ語句ノ末ヲ捉
ヘ、又軍ノ統帥ニ觸ルヽモノデハゴザイマ
セヌケレドモ、命令ヲ以テ原所屬部隊長ノ
指揮ニ入レ、其ノ行動ヲ律シタト云フ事實
問題ニ對シテ申スノデゴザイマス、當時ハ
一體反亂部隊ハ首相官邸附近ニ一集團ト
ナッテ居リマシタカラ、數多ノ部隊カラ出
タ反亂部隊ヲ一纏メトシテ取扱フ外ニ途ハ
ナカッタノデアルカラ、原所屬部隊長ノ指揮
ニ入レクト云フコトハ、一體ドウ云フ區署
デアッタノカ、誠ニ不可解デアリマスケレ
ドモ、此ノ點ハ深ク問フベキデハナイノデ
アリマスガ、凡ソ命令ト云フモノノ威嚴ニ
付テ考ヘマスレバ、抑〓命令ハ統帥大權ノ
一部發動トモ見ルベキモノデアリマス、絕
對服從ヲ要求スベキ軍紀ノ發端トナルベキ
モノデゴザイマスカラ、命令ハ固ヨリ神聖
デナケレバナラヌ、絕對神聖デナケレバナ
ラヌ、萬一之ヲ策略ノ具ニ供スルヤウナコ
トガアッタナラバ、私ハ是ハ大變デアルト
思ッテ居ルノデゴザイマス、斷ジテ私ハ今
ニ及ビマシテ過去、特ニ危機一髪ノアノ場
合、拙速ヲ要スル一時ノ事象ヲ捉ヘマシテ
問責ヲスル者デハアリマセヌ、唯將來ニ
於キマシテ命令ノ本質、本義ニ鑑ミ、他ノ
亂用ヲ咎メテ、自ラモ亦誤用ニ陷ラザラ
ヌコトヲ希フ次第デアリマス、此ノ件ニ付
キマシテハ敢テ御答辯ヲ煩ハサウトハ存ジ
マセヌノデアリマス、次ハ軍人トシテ重
大ナル服從ノ原則ニ付テデアリマス、貴
命令ハ其ノ事ノ如何ヲ問ハズ、直チニ之ニ
服從シ、抗抵干犯ノ所爲アルベカラズト深
ク誠メラレテアリマシタ、今ハ受令者ガ、
是ハ極メテ不可解、大局上不利益ト氣付イ
タ時ニ、其ノ命令ヲ篤ト玩味判斷シテ、之
ニ基ク機宜ノ處置ヲ執ルコトハ許サレテ居
ルノデアリマセウカ否ヤ、例ヘテ申セバア
ノ不祥事件中ニ當リマシテ兵士ハ、兵營出
發直後、或ハ或行爲ヲ致シタ後ニ、ドウモ是
ハ變ダ、只事デハナイ、少クトモ良イコトヲ
シテ居ルトハ思ハレナイ、或ハ是ハ不忠ナ
行ヒヲ餘儀ナクセラレテ居ルノデハナカラ
ウカ、斯ウ云フ風ニ氣付イタ時ニ、必ズ良
心ノ琴線ニ觸レマシテ、深思默考、ドウシ
ヨウカ、ドウナルノカ、非常ニ考ヘタ譯デ
アリマセウ、其ノ時心臟ノ鼓動ガ止ッタトサ
ヘ述懷シタノヲ仄聞致シテ居ルノデアリマ
ス、私モソレヲ承リマシテ、實ニ當時淚ニ咽
ンダ次第デゴザイマス、其ノ際自己ノ判
斷ニ基キ、敢テ勅命ガ下ッタカラト申スノデ
ハナク、自ラ小節ヲ捨テテ、大網ノ順逆ヲ
誤ラザラムトスル所ノ自由意思ニ依リマシ
テ、指揮官ノ命令ニ背キ、死ヲ賭シテ兵營
ニ戾ッタナラバ、ソレハ誠ニ尊ブベキコトト
考ヘマス、判斷ノ結果デアリマス、偖テ其
ノ結果ハドウナリマセウ、矢張リ是ハ服從
ノ義務ニ背反シタルモノトシ、軍紀ニ觸レ、
軍律ニ問ハレルモノデアラウカ、ドウモ私
共ハ考ヘルノニ、ソレハ要務令ニ依リマス
獨斷專行トモ意味ガ違フノデ、解決ハ益〓ム
ヅカシクナルノデアリマス、此ノ場合ニ受
令者ハ、命令ヲ大乘的ノ見地ヨリ判斷ヲ致
シテ、之ニ背イテモ差支ガナイノデアルカ
ドウカ、デ斯クノ如ク內容ヲ精査致シマス
ルト云フト、軍ノ當局ニ於キマシテハ、命
令ト服從トノ關係ニ付テ早速ト檢討ヲ遂ゲ、
何等カ從來ノ法規、〓令ト違ック原則、要綱
ヲ發見シテ、補足的修正ヲ加フル必要ガナ
カラウカト思ウテ居リマス、然ルトコロ新
聞ノ傳フル所ニ依リマスレバ、陸軍ノ會議
ノ席上、服從ノ原則ニ何等變リガナシト言
ハレタト云フコトデアリマス、私ハ此ノ點
更ニ深甚ノ考慮ヲ御願ヒシタイノデアルガ、
此ノ事ハ肅軍ノ遂行ニモ大關係ガゴザイマ
スルケレドモ、此ノ事ハ度々大臣ノ申サルル
通リデアリ、英明ナル大臣ノ手腕ニ萬幅ノ
信賴ヲ捧ゲルト致シ、私ハ唯國民皆兵ノ義
務ヲ負ハサレテ居ル一般國民ガ、何トカシ
テ安心ヲシテ子弟ヲ軍ニ送リ、名譽アル兵
役ノ大任ヲ盡シテ、些カノ過失モナカラシ
ムルコトヲ期待スルト共ニ、此ノ最モ複雜
多岐ナル世相ト社會情勢、就中思想ノ機微
ニ鑑ミマシテ、衷心カラ心配ヲ致シテ居リ
やっ、一面カラスレバ私ハ陸軍出身者タル
一ツノ義務ト考ヘマシテ、是ハ單ニ唯軍內
ノコトデアルカラ俺ニ委セロト云フ譯ニイ
カナイ、我々ノ子弟ヲ驅ッテ軍律ニ服從セ
シメテ、兵役ノ義務ヲ如何ニスレバ全ウス
ルカト云フ見地カラシテ、此ノ件ハ承ラザ
ルヲ得ナイノデアリマス、是ハ軍紀ノ根源
タル服從ノ本則ニ、決シテ軍內ノ事バカリ
ヂヤヤナイ、之ニ依ッテ我々ハ家庭訓ヲ施シ、
國民〓育ヲ指導シナケレバナラナイカラデ
ゴザイマス、ドウゾ以上ニ付キマシテ、成
ルベク詳細懇切ナル御答辯ヲ御願ヒシタイ
ノデゴザイマス
〔國務大臣伯爵寺內壽一君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X00919360517&spkNum=29
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030・寺内壽一
○國務大臣(伯爵寺內壽一君) 只今爲サレ
マシタ淺田男爵ノ御質問ニ御答ヲ致シマス、
軍ハ天皇親率ノ下ニ皇基ヲ恢弘シ、國威ヲ
宣揚スルヲ以テ本義ト致シテ居リマス、此
ノ本義ニ基キ、國防ハ軍ノ負フ所ノ最大ナ
ル一ツノ任務デゴザイマス、私ハサウ解シ
テ居リマス、先般ノ衆議院ニ於ケル齋藤議
員ノ質問ニ對シテ、私ノ答ヘマシタ所ノ趣
旨ヲ申上ゲマス、私ハ同氏ノ演說ノ軍ニ關
スル中デ兵ト政、此ノ分ヲ明カニシテ、文
武ガ各〓其ノ職分ニ恪循スルト云フ所ノ、其
ノ趣旨ニ同意ヲ表シタノデアリマス、同氏
ノ言ノ稍、く穩當ヲ缺クガ如ク感ゼラレタ所、
竝ニ事件ノ原因等ニ關シ稍、斷定的ノ論議等
ガアリマシタコトハ、是ハ私ガ事件ニ關シ兩度
ニ亙リ爲シマシタル所ノ說明ニ依リテ、明瞭
ニ諒解シ得ラレタコトト存ズルノデアリマ
ス、當時之ニ關シテ論議ヲ重ネマスルコト
ハ、自然只今進捗シツヽアル所ノ軍法會議
ノ取調ノ內容ニモ觸レザルヲ得ナイヤウナ
關係ニモナリマスノデ、之ヲ當時避ケタノ
デアリマス、今日モ尙其ノ關係上之ニ關シ
テ私ガ今日マデ述ベマシタ以上ニ御答ヘス
ルコトハ避ケタイト思ヒマス、軍人ノ政治
干與ニ關スル件、是ハ私ハ勅諭ニ於テ示サ
レタル所ニ依リ、我々ノ政治ニ關スル信念
竝ニ法令等ニ依リ禁止サレタ所ヲ述べタノ
デアリマス(拍手スル者アリ)我々軍人ト雖
モ國民トシテ政治ニ關心ヲ持ツコトハ當然
デアリマス、殊ニ軍政ノ整理ニ關係スル所
ノ諸官衙、例ヘバ陸軍省ノ如キモノニ於キ
マシテ、ソレ〓〓國防上ノ見地カラ廣ク〓
究シ、又之ニ關シテ關係各省ト論議スル如
キ政治干與ハ當然デアリマシテ、是等ハ御
說明申スコトモナイコトト實ハ存ジテ居ル
ノデアリマス、又命令ノ件、命令ノ神聖竝
ニ之ニ絕對服從ト云フコトハ、勅諭ニ於テ
儼然トシテ示サレテアリマス、將校ノ政治
知識ニ關スル件ハ淺田男爵ガ御述ニナッタ
通リデアリマス、尙此ノ服從ノ件ニ付テ、
只今軍ガ執ッテ居リマス所ノ軍隊軍隊內務書
ニ示サレテ居ル所ノ要綱ヲ申述べマス、
「服從ハ軍紀ヲ維持スルノ要道タリ故ニ至誠
上官ニ服從シ其ノ命令ハ絕對ニ之ヲ勵行シ
習性ト成ルニ至ラシムルヲ要ス而シテ服從
ハ高潔ナル犠牲的精神ヨリ出テ彈丸雨注ノ
間尙克ク身命ヲ君國ニ獻ケ一意上官ノ指揮
ニ從フニ至ルヘキモノニシテ其ノ之ヲ致ス
所以ノ道ハ上官先ツ自ラ法則ヲ恪守シ命令
ヲ遵奉シ以テ服從ノ範ヲ垂ルルニ在リ」、此
ノ原則ハ少シモ變リマセヌ、勅諭ノ鐵則モ
變リハゴザイマセヌ、以上ニ依リ御理解ノ
コトト存ジマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X00919360517&spkNum=30
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031・淺田良逸
○男爵淺田良逸君 稍〓不滿足ノ點モアリ
マスルケレドモ、ソレハ又別ノ機會ニ讓リ
マシテ、私ノ質問ヲ終リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X00919360517&spkNum=31
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032・松平頼壽
○副議長(伯爵松平賴壽君) 是ニテ國務大
臣ノ演說ニ對スル質疑ノ通告ハ全部終了致
シマシタ、本日ノ日程全部終了致シタノデ
ゴザイマス、次會ノ議事日程ハ彙報ヲ以テ
御通知ニ及ビマス、本日ハ是ニテ散會致シ
マス
午後零時三十二分散會
貴族院議事速記錄第七號正誤
頁段行誤正
六九二一 一二ナイトナイカト
〃〃一四漢字漢學
七〇一二八ナサラヌトナサラヌカト
〃二一二「ゼネバ」ハ「ゼネバ」ノ
〃三二八少學校小學校
七二三一(11m杉野重野
〃三是代是ハト発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X00919360517&spkNum=32
4. 会議録のPDFを表示
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