1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和十一年五月二十四日(日曜日)午前十時十八分開議
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議事日程 第十四號
昭和十一年五月二十四日
午前十時開議
第一 請願委員長報告
第二 昭和十一年度歳入歳出總豫算追加案(第一號) 會議(委員長報告)
第三 昭和十一年度各特別會計歳入歳出豫算追加案(特第一號) 會議(委員長報告)
第四 豫算外國庫の負擔となるべき契約を爲すを要する件 會議(委員長報告)
第五 昭和十一年度歳入歳出總豫算追加案(第二號) 會議(委員長報告)
第六 昭和十一年度各特別會計歳入歳出豫算追加案(特第二號) 會議(委員長報告)
第七 豫算外國庫の負擔となるべき契約を爲すを要する件(追第一號) 會議(委員長報告)
第八 昭和十一年度歳入歳出總豫算追加案(第三號) 會議(委員長報告)
第九 昭和九年度第一豫備金支出の件(承諾を求むる件)(衆議院送付) 會議(委員長報告)
第十 昭和九年度特別會計第一豫備金支出の件(承諾を求むる件)(衆議院送付) 會議(委員長報告)
第十一 昭和九年度特別會計豫備費支出の件(承諾を求むる件)(衆議院送付) 會議(委員長報告)
第十二 昭和九年度滿洲事件第一豫備金支出の件(承諾を求むる件)(衆議院送付) 會議(委員長報告)
第十三 自昭和十年四月至同年十二月昭和十年度第二豫備金支出の件(承諾を求むる件)(衆議院送付) 會議(委員長報告)
第十四 自昭和十年四月至同年十二月昭和十年度特別會計第二豫備金支出の件(承諾を求むる件)(衆議院送付) 會議(委員長報告)
第十五 自昭和十年四月至同年十二月昭和十年度特別會計豫備金外に於て豫算外支出の件(承諾を求むる件)(衆議院送付) 會議(委員長報告)
第十六 競馬法中改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第十七 航路統制法案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第十八 大正十三年法律第二十四號法中改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第十九 昭和七年法律第四號中改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第二十 思想犯保護觀察法案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第二十一 朝鮮事業公債法中改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第二十二 百貨店法案(衆議院提出) 第一讀會
第二十三 蠶種共同施設組合制度樹立に關する請願 會議
第二十四 山村住民救濟に關する請願 會議
第二十五 水産物の利用に關する請願 會議
第二十六 漁村指導機關の整備に關する請願 會議
第二十七 漁村經濟更生の施設擴充に關する請願 會議
第二十八 漁船保險制度に關する請願 會議
第二十九 漁村金融の改善に關する請願 會議
第三十 沿岸漁業振興に關する請願 會議
第三十一 第二期森林治水事業實施に關する請願(文書表第三十一號、第三十五號、第四十三號、第六十二號、第八十一號、第八十二號) 會議
第三十二 宍道湖岸鹹害水害對策實施の請願 會議
第三十三 雪害對策の施設に關する請願(文書表第三十六號) 會議
第三十四 小名濱線鐵道敷設に關する請願 會議
第三十五 利根川治水對策事業の豫算計上に關する請願 會議
第三十六 和歌山縣橋本町、新宮市間に鐵道敷設の請願 會議
第三十七 樺太元泊郡知取町に區裁判所設置の請願 會議
第三十八 山陽本線那波、西大寺の兩驛間鐵道敷設の請願 會議
第三十九 郡山區裁判所管轄區域擴張の請願 會議
第四十 第二期森林治水事業實施に關する請願(文書表第五十四號) 會議
第四十一 雪害對策の施設に關する請願(文書表第五十七號) 會議
第四十二 北海道手宮、北祝津間に省營自動車運輸開始の請願 會議
第四十三 北海道高島漁港築設の請願 會議
第四十四 海事行政の統一に關する請願 會議
第四十五 岡山縣倉敷市に區裁判所設置の請願 會議
第四十六 島根縣三隅川改修に關する請願 會議
第四十七 廣告物取締に關する法令改正の請願 會議
第四十八 新宮川治水工事速成の請願 會議
第四十九 御影附近、邊富内間鐵道分岐點に關する請願 會議
第五十 姫津線佐用、因美線智頭の兩驛間鐵道速成の請願 會議
第五十一 北海道拓殖鐵道補助年限延長の請願 會議
第五十二 公立商船學校卒業生に對し特別教育機關設置の請願 會議
————◇—————発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X01419360524&spkNum=0
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001・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 報〓ヲ致サセマ
ス
〔角倉書記官朗讀〕
昨二十三日本院ニ於テ可決シタル左ノ政府
提出案ハ卽日裁可ヲ奏請シ又可決ノ旨ヲ衆
議院ニ通知セリ
重要輸出品取締法案
輸出絹織物取締法中改正法律案
輸出組合法中改正法律案
米穀自治管理法案
米穀統制法中改正法律案
籾共同貯藏助成法案
昭和六年法律第四十號中改正法律案
自動車製造事業法案
關稅定率法中改正法律案
重要肥料業統制法案
製鐵業奬勵法中改正法律案
臺灣私設鐵道補助法中改正法律案
同日本院ニ於テ修正議決シタル左ノ政府提
出案ハ卽日之ヲ衆議院ニ囘付セリ
臺灣拓殖株式會社法案
同日衆議院ヨリ左ノ議案ヲ提出セリ
百貨店法案
同日衆議院ヨリ本院ノ送付ニ係ル左ノ政府
提出案ハ同院ニ於テ承諾スルコトヲ議決シ
之ヲ奏上セル旨ノ通牒ヲ受領セリ
昭和十一年勅令第十八號
昭和十一年勅令第二十一號
同日衆議院ヨリ本院ノ送付ニ係ル左ノ政府
提出案ハ同院ニ於テ之ヲ可決シ奏上セル旨
ノ通牒ヲ受領セリ
農村負債整理組合法中改正法律案
航空法中改正法律案発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X01419360524&spkNum=1
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002・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 是ヨリ會議ヲ開
キマス、日程第一、請願委員長報〓、委員
長酒井伯爵
〔伯爵酒井忠克君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X01419360524&spkNum=2
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003・酒井忠克
○伯爵酒井忠克君 請願委員會ノ第二囘ノ
御報告ヲ致シマス、第一囘ノ報告後ニ受領
致シマシタ請願書ノ件數ハ二十二件ゴザイ
マシテ、之ガ連署人數ガ二千八百三十五名
デゴザイマス、第一囘ノ報〓ノ際ニ申上ゲ
マシタ文書表未揭載件數ガ三十二件、之ヲ
合シマスト、合計五十四件ト相成リマス次
第デゴザイマス、文書表揭載件數ハ五十
件文書表ニ揭載ニ至ラザルモノガ四件、
此ノ五十四件ト第一囘報告ノ際ニ申上ゲマ
シタ文書表ニ揭載ノモノノ中、審査結了ニ
至ラナカッタモノ八十件トヲ合ハセマシテ、
合計百三十四件、以上ノ諸件ニ付キマシテ
第一囘報告後各分科會ハ各〓一囘ヅツ、委
員會ヲ一囘五月二十二日ニ開會致シマシ
テ、愼重審査ノ結果、議院ノ會議ニ付スベ
シト決定セルモノハ、三十五件、議院ノ會
議ニ付スルヲ要セズト決定セルモノガ四
件以上ノ中、議院ノ會議ニ付スルヲ要セ
ズト決定セシモノ、卽チ採擇セズト決定致
シマシタモノハ、文書表第二囘報〓ニ揭載
セラレマシタ第四十七號、第六十號、第七
十一號、第七十八號ノ四件デゴザイマス、
尙審査ノ未了ノモノハ九十五件デゴザイマ
ス、次ニ請願文書表報告ハ五月二十一日ニ
1 2 1.請願委員會特別報〓ハ五月二十二日
ニ一囘致シテゴザイマス、次ニ總報告ヲ申
上ゲマス、請願委員會ノ開會數ガニ一囘、請
願委員分科會ノ開會數ハ各分科二囘ヅツ合
計八囘、請願文書表報〓ハ三囘、請願委員
會特別報告ハ二囘、請願書受領件數ハ百四
十一件、之ガ連署人數ガ二十三萬八千八百
五十名、右ノ中文書表揭載ハ百三十七件、
未揭載ノ分ガ四件ゴザイマス、右ノ審査
ノ結果、議院ノ會議ニ付スベシト決定致シ
マシタモノガ四十一件、議院ノ會議ニ付ス
ルヲ要セズト決定致シマシタモノガ五件、
審査未了ノモノガ九十五件ゴザイマス、右
採擇ト決定致シマシタ四十一件ノ中ノ第二
囘報告中ノ第三十九號、利根川治水對策ニ
關スル請願ニ付キマシテハ、請願書ノ形
式ニ於キマシテ、貴族院ニ於テ從來採擇致
シマシタ慣例上多少難點ガゴザイマシテ、
委員會ニ於キマシテ御議論モ大分出マシ
タ、併シナガラ此ノ請願人等ノ趣意ト致シ
マス所ニ付キマシテ、紹介議員ノ方ヨリ懇
切ナル御說明ガゴザイマシテ、委員會ニ於
キマシテハ其ノ請願人等ノ精神ヲ汲ミマシ
テ、尙此ノ利根川治水對策ニ付テハ緊急ヲ
要シ、且重要特別必要ナモノト認メマシテ
委員會ニ於キマシテハ遂ニ採擇ト決シタ次
第デゴザイマス、右ヲ申添ヘテ申上ゲテ置
キマス、以上ハ昭和十一年五月二十三日午
後四時締切迄ノ御報告デゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X01419360524&spkNum=3
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004・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 日程第二ヨリ第
八迄、昭和十一年度歲入歲出總豫算追加案
外六件、會議委員長報告、是等七案ヲ一括
シテ議題トナスコトニ御異議ゴザイマセヌ
カ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X01419360524&spkNum=4
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005・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 御異議ナシト認
メマス、副委員長千秋男爵
〔左ノ報〓書ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノ
タメ玆ニ載錄ス以下之ニ傚フ〕
一昭和十一年度歲入歲出總豫算追加案
(第一號)
一昭和十一年度各特別會計歲入歲出豫算
追加案(特第一號)
一豫算外國庫ノ負擔トナルベキ契約ヲ爲
スヲ要スル件
一昭和十一年度歲入歳出總豫算追加案
(第二號)
一昭和十一年度各特別會計歲入歲出豫算
追加案(特第二號)
一豫算外國庫ノ負擔トナルベキ契約ヲ爲
スヲ要スル件(追第一號)
一昭和十一年度歲入歲出總豫算追加案
(第三號)
右衆議院ヨリ受領シタル各案ヲ審査シ總
テ衆議院議決案ノ通可決スヘキモノナリ
ト議決セリ依テ及報〓候也
昭和十一年五月二十二日
副委員長男爵千秋季隆
貴族院議長公爵近衞文麿殿
〔男爵千秋季隆君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X01419360524&spkNum=5
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006・千秋季隆
○男爵千秋季隆君 是ヨリ豫算委員會ノ經
過及結果ヲ御報告申上ゲマス、豫算委員會
ハ去ル十七日午後ヨリ十八、九兩日ノ午前
午後ニ亙リマシテ、前後三囘總會ヲ開キ、
熱心ニ質疑應答ガ行ハレマシタ、次イデ二
十日、二十一日兩日ニ亙リマシテ各分科會
ヲ開キマシテ、分科ノ審査ヲ終ッテ二十二日
更ニ總會ヲ開キマシテ、遂ニ原案七件共ニ
可決致シマシタ、豫算額ノコトデゴザイマ
スガ、當局ノ發表ニ依リマスト、實行豫算
竝ニ追加豫算ヲ合計致シマスル其ノ額ハ、
歲入二十三億五百五十餘萬圓、歲出二十三
億一千百五十餘萬圓デアリマシテ、實行豫
算額ハ歲入十九億四千九十餘萬圓、歲出十
九億四千五百萬圓、追加豫算額ハ歲入三億
六千四百五十餘萬圓、歲出三億六千六百四
十萬圓、内追加第一號ノ分ハ歲入歲出共ニ
三億六千二百三十餘萬圓、追加第二號ノ分
ハ歲入百二十餘萬圓、歲出三百餘萬圓、追
加第三號ノ分ハ歲入歳出共ニ九十萬圓デア
リマス、而シテ右實行豫算額ト前述ノ追加
豫算額トヲ合計致シマスルト、昭和十一年
度豫算ニ於キマシテ歲入歲出ノ差引五百九
十餘萬圓ノ歲出超過トナリマスルガ、右歲
出超過額ハ昭和十一年度豫算實行上生ズル
歲入超過額ヲ以チマシテ之ヲ支辨スルト云
フ政府ノ說明ハ御承知ノ通リデアリマス、
而シテ委員會ニ於キマスル質疑應答ノ詳細
ニ付キマシテハ、旣ニ速記錄等ニ依リマシ
テ御承知ノコトト存ジマスルカラ、其ノ大
要ノミヲ申上ゲマス、豫算編成ノ方針ニ關
シマシテ、一委員ヨリ、其ノ事業、卽チ經費
ノ性質上、主務省ノ要求以外ニ、各方面ヨ
リ陳情ナリ、演說ナリ、其ノ他運動、聲援
ノ多イモノト、然ラザルモノトガアリ、世
間ヨリノ要求ノ聲ノ大ナルモノト小ナルモ
ノ、甚ダシキニ至リマシテハ人聲ノ無イモ
ノモアル、世上ノ聲ハ少サクトモ、或ハ其
ノ聲ヲ御聞キニナラナクトモ、重要國策ニ
付テハ其ノ豫算編成ニ關シ、閣議ニ於テ或
ハ大藏大臣ニ對シテ特ニ御注意ヲナサルモ
ノデアルカ、此ノ點ヲ承リタイト述べ、其
ノ實例ノ數々ヲ擧ゲ、殊ニ外務省ニ付キマ
シテハ現時、國際關係益〓複雜、多事多難
ノ際、大イニ外交ノ陣容ヲ整へ、其ノ活動
ヲ期待スベキ時ニ當ッテ遺憾ノ點アリ、又司
法關係ニ付キテモ、裁判ノ遲延スルコトニ
付キテ、司法大臣ハ定員ノ不足ト設備ノ不
十分ナルコトヲ以チマシテ、辯明セラレタ
ノデアリマスルガ、其ノ點ハ如何ト述ベラ
レタ質問ニ對シマシテ、政府ハ豫算編成ノ
大體ノ方針ト致シマシテハ、出來ルダケ國
家ノ必要トスル事業ニ付キマシテハ、閣議
ニ依ッテ、各大臣ガソレゾレ自己ノ省ニ關ス
ルコトノミナラズ、一般的ノ問題ニ付キマ
シテモ、國務大臣トシテ十分意見ヲ吐露シ、
討議ヲシテ、其ノ目的ヲ達スルヤウナ豫算
編成ニ當リタイ、其ノ他ノ事柄ニ付テモ、
若シ眞ニ國家ノ爲ニ必要ナル事業ト云フコ
トヲ發見致シマスレバ無論之ガ爲ニ相當
ノ費用ヲ支出スベキハ當然デアルト思フ、
併シナガラ近來ノ財政ハ、數年來赤字公債
ヲ發行シテ居ルノデアリマシテ、退ッ引キナ
ラナイモノデナイ限リハ往々査定、減額ヲ
受クルコトモ實ハ已ムヲ得ナカッタト思ヒ
マスガ、國策上是非共必要ナ經費ハソレゾ
レ計上致シテ、國運ノ進展ヲ圖リ、國民生
活ノ安定ヲ圖ルコトガ必要ダト思フト云フ
答デアリマシタ、財政問題ニ付テデゴザイ
マスガ、先ヅ增稅ノコトニ付キマシテ、
委員ヨリ、此ノ次ニ增稅案ガ出テ來ヤウト
思ヒマスガ、之ニ付キマシテハ大藏大臣ノ
在野當時ノ御意見トシテハ、財政ノ見通シ
ガ付カナケレバ決シテヤラナイト云フヤウ
ナコトヲ言ウテ居ラレルガ、今外務大
臣ト色々質問應答ヲヤッテ見マスト云フ
ト、是ハ見通シガ付クト云フコトハ容易デ
ナイコトヤウニ思ハレル、藏相ノ考ハ在野
當時ト變ラヌカト云フ質疑ニ對シマシテ、
藏相ハ在野當時ト考ヲ異ニシテ居ラヌトノ
答デアリマシタ、ソコデ其ノ委員ハソレデ
ハ歲出ヲ減ラシテ、歲入ヲ殖ヤスト云フヨ
リ外アリマセヌガ、歲出ヲ減ラスト云フコ
トニナレバ行政整理ト云フヤウナモノトカ、
或ハ事業ノ繰延ト云フヤウナコトヲオヤリニ
ナラナケレバナリマセヌガ、是ハオヤリニ
ナル御見込デアリマスカト述べラレタノニ
對シマシテ、政府ハ、近來ハ財政膨脹ト云ツ
テモ、主ニ國防費ノ方面ガ膨脹致シタノデ
アッテ、普通ノ各省ノ必要ナル行政ノ費用ト
云フモノハ餘リ增シテ居ラナナイ、見方ニ依
リマシテハ仕事ノ割合ニ減ッテ居ルトモ言
ヘルノデ、是以上ハ行政整理ヲスル餘地ハ
殆ド無イノデハナイカト思フガ、既定費ノ
中デ苟モ冗費ト認メラレ、若シクハ節約シ
得ルモノハ間斷ナク注意ヲ致シテ、節約シ
冗費ヲ省クト云フコトニ努力スルト答ヘラ
レマシタ、尙其ノ委員カラ、增稅案ニ付キ
マシテ、其ノ一ツハ大衆課稅ヲヤルカドウ
カハ、都會ト地方トノ不權衡、動產ト不動
產トノ間ノ不均衡ト云フコト、又所得稅ハ
少額所得者モ增稅、是ハ免カレナイト思フ
ガ如何、免稅點ノ引下ト云フコトハ隨分無
理ナコトト思ヒマスガ如何、又折角低金利
政策ト言ッテ置イテ、一方ニ資本利子稅ヲ取
ルト云フコトハ、是ハ矛盾シテ居ルヤウニ
考ヘラレルガ、此ノ點ハ如何、相續稅ハ相
當ニ引上モアラウト思フ、是モ急激ニヤラ
レルト云フコトハドウカト思フガ如何、相
續稅ニ付テハ、現物デ取ルト云フヤウナコ
トモ一考ヲ要スル問題ヂヤナイカト思フガ
如何、酒稅モ增稅ニナリマセウカ、新シイ
稅ニ付テハ、財產稅、燐寸稅ダトカ、「ガソ
リン」稅ニ付テノ御考ハ如何、舊稅ノ復活ニ
付テハ、通行稅、賣藥印紙稅、醬油稅ハ如
何ニ考ヘラレルカ、又煙草、酒、麥酒、砂
糖ノ專賣ニ付テハ、所見如何トノ質疑ニ對
シマシテハ政府ハ、マダ來年度以降ノ歲
出ノ見通シ竝ニソレニ對スル歲入ノ計畫ト
云フモノハ今後ノ問題ダカラ、此ノ場合ド
ウ云フ稅ヲ取ル、或ハドウ云フ稅ハ取ラヌ
トカ、或ハドウ云フ風ニ稅率ヲ增ストカ、
增サヌトカ云フコトヲ御答ヘスル時機ニ達
シテ居ラナイガ、將來此ノ財政ノ基礎ノ上
カラ言ヒマスレバ相當ニ經常財源ヲ求メ
テ參ラナケレバナラヌ、其ノ經常財源ノ一
ツトシテハ、確カニ專賣制度ニ對シマシテ
モ〓究致サナケレバナラヌコトハ申スマデ
モナイコトデアル、大衆課稅ト云フコトハ、
何デアルカト云フコトニ付キマシテハ、非
常ニ疑問デアルガ、一般ニ細民階級若シク
ハ細民トマデ行カヌデモ、可ナリ廣イ世
間デ謂フ大衆ノ生活ニ脅威ヲ感ズルヤウナ
課稅ハ致サナイト、斯ウ云フ意味ニ考ヘテ
居ル、國民負擔ノ均衡ヲ保チツヽ國ノ收
入ノ增加ヲ圖ル、斯ウ云フ考ヘ方デ進ンデ
行キタイ、賣藥印紙稅、醬油稅、是等ハ今
日ノ場合、多クハ細民課稅ニナリ易イモノ
デアリマシテ、之ガ採用ヲ平時ニ於テ致ス
コトハ篤ト考慮シナケレバナラヌト答ヘラ
レマシタ、之ニ關聯シテ他ノ一委員ヨリ、
財政ノ改革ト云フコトハ經濟界ニ最モ密接
ニシテ、且重大ナル影響ヲ及ボスモノデア
ル、臨時利得稅ト云フモノヲ創設セラレタ
時、其ノ稅額ハ僅カニ三千萬圓若シクハ四
千萬圓ニ過ギナイニモ拘ラズ、之ガ爲ニ有
價證劵ノ下落ト云フモノハ約十億圓ニ達
シマシテ、財界ニ非常ナ混亂ヲ來シタノデア
ル、ソレ故ニ此ノ稅制ノ改革ト云フコトニ
付キマシテハ、財界人ハ一日モ早ク其ノ全
貌ヲ知ッテ、而シテ之ニ依ッテ被ル所ノ不測
ノ禍ヲ避ケルト云フコトヲ切望致シテ居ル
ガ、少クトモ大藏大臣ハ腹案ハ御持チニナッ
テ居ルコトト私ハ想像スル、成案デナクテ
モ宜シイ、其ノ抱懷セラレル所ノ腹案デ結
構デアルカラ承リタイ、又赤字公債ノ發行
ト云フコトハ御見合ハセニナル意思デアル
ト推測シテ宜カラウト思フガ如何ト述べラ
レマシタノニ對シマシテ、藏相ハ、十二年
度以降、五年、七年ニ亙リ、ドレダケノ歲
出計畫ガアリ、同時ニソレニ對スル歲入計
畫ヲ考ヘテ行クカト云フコトハ、今日ハ全
ク未定デアル、腹案ハナイ、決シテ腹案ガ
アルノヲ此處デ申上ゲナイト云フ謙遜デモ
ナケレバ何デモナイノデアリマス、又增稅
增收計畫ヲ立テマシタ所デ、赤字公債ヲ絕
滅スルコトガ近ク出來ヨウトハ絕對ニ考ヘ
テ居リマセヌ、私ハ絕滅サセタイト云フコ
トハ考ヘテ居リマスガ、事實ニ於テハ出來
ナイト考ヘテ居リマストノコトデアリマシ
タ、金融政策ニ付キ一委員ヨリ、低金利政策
ト云フコトハ大分御實行ニナリマシテ、政
府ノ公債モ下ゲル、或ハ郵便貯金ノ利子モ
下ゲル、或ハ銀行ノ利子モ大分下ゲラレタ
ヤウニ思ヒマスガ、是ハ尙御續行ニナル御
見込カ、又普通銀行ノ利子竝ニ特殊銀行ノ
利子ハ、モウ一層之ヲ御引下ニナル御見込
ガアリマセウカ、又不動產金融ノ方面如何、
又金融機關ノ監督ガ區々ニナッテ居ルガ、之
ヲ大藏省ニ統一スルト云フヤウナ御考モア
ルヤニ承ッテ居リマスガ、其ノ點如何、特殊
銀行ノ强化ハ如何、特殊銀行ノ貸出ノ指導及
普通銀行ノ統制、普通銀行ノ貸出ノ指導、庶
民金融機關ノ改良、金融機關ノ新設、赤字公
債ノ募集ノ限度及消化如何トノ質疑ニ對シ
マシテ政府ハ、低金利政策ヲ最初カラ唱ヘ
テ居ルガ、ソレヲ無理ノナイヤウニ實行シ
テ行キタイ、無理ニ人爲的ノ方法ヲ以テ低
金利ニシテ行カウト云フ考ハナイ、又特殊
銀行ニ付テ、特殊銀行ノ使命上、出來得ル
限リ今後尙金利引下、貸出金利引下ノ餘地
ノアルモノハ漸進的ニ引下ゲサシテ行キタ
イ、金融機關ノ監督權ハ、大藏省ハ或程度
之ヲ持ツコトガ必要デアラウカト考ヘル、
資金ノ貸出方法ノ指導ト云フコトニ付テハ、
將來十分考ヘテ行クベキ筋ガアラウト思フ、
公債消化ノ前途ニ於キマシテ、法的手段ヲ
執ラヌトハ斷言致シマセヌガ、只今ノ所デ
ハ大體行政上ノ手段デ賄ッテ行ケルダラウ
ト考ヘテ居ル、トノ答辯デアリマシタ、財
政計畫ニ付キマシテ一委員ヨリ、我ガ日本
帝國ハ今ヤ向上發展ノ途ニアルカラ、此ノ
向上發展ノ途ニアル日本國ノ前途ハ、國費
ガ膨脹スルト云フコトハ免レザルコトデア
ル、本年ハ二十三億五百萬圓ト云フ未曾有
ノ額ニ上ボリ、內軍事費ハ其ノ五割以上ニ
上ボルノデ、世間ノ人々及有識者ハ、是デ
ハ無制限ニ軍事費ガ增加スルノデハナイカ
ト云フコトデ、非常ナ心配ヲ懷イテ、軍事
費財政經濟、此ノ調整ヲスルコトガ今日
主要ノ問題デアルト云フコトヲ唱ヘルニ至ッ
タノデアルガ、軍事ノ當局者ガ此ノ國防ノ
責任ニ當ッテ、遺憾ナク其ノ責任ヲ果シ得ベ
キ最小限度ノ軍事費ノ案ヲ立テテ、之
ヲ一時ニハ行キマスマイガ、或ハ三年デ
モ、五年デモ宜シイ、其ノ案ヲ提示スル
ト云フコトガ一番必要デアルト思フ、
又增稅ノ種類、增稅ノ程度ハ愼重ニ御〓究
下サッテ、サウシテ次ノ議會ノ前ニ具體的ノ
案ヲ國民ニ御示シ下サルナラバ、ソレデ結
構デアラウト思フガ如何、トノ問ニ對シマ
シテ、陸軍當局ハ、誠ニ御尤モニ存ジマス
ガ、誠ニ遺憾ナガラ今日議會ニソレヲ提出
シテ御協贊ヲ願フダケノ運ビニ至リマセヌ
デゴザイマシタ、次ノ議會マデニハ是非御
希望ニ副フ如ク致シタイト努メテ居リマス
ト述ベラレマシタ、海軍當局ハ速記ヲ中止
シテ之ニ答ヘラレマシタ、財務當局ハ、到
底十年ト云フヤウナコトヲ見通スコトハ困
難ダラウト思フノデ、先ヅ五年乃至七年位
ヲ見通シマシテ、少クモドノ位ノ金ガ要ル
ノデアラウカト云フコトト、同時ニ、果シ
テ財政上之ヲ賄ヒ得ル金額ハドノ程度マデ
立テラレルカト云フコトヲ計畫ヲ立テ、世
間ニ一日モ早ク知ラシムルコトガ國民ノ安
心ヲ買フヤウデアリマスケレドモ、是ニハ
相當ニ愼重ナ〓究ヲ要スルノデアリマス、
出來ルダケ愼重ニ〓究ヲ遂ゲマシテ、成案
ヲ得マシテ議會ノ協贊ニ俟ツト云フコトガ
宜シイノデハナイカト考ヘル、トノ答辯デ
アリマシタ、地方行政及財政ニ付キマシ
テ、一委員ヨリ、大都市ニ國民ガ集中スル
此ノ時弊ヲ矯正シ、大都市膨脹ノ趨勢ヲ抑
制スルコトガ確カニ根本的ノ國策問題デア
ルカラ、其ノ一方法トシテ、各種ノ機會ニ於
テ、行政機構、又〓育機關、產業機關、是
等ヲ成ルベク地方ニ分布シテハドウカ、ト
ノ問ニ對シマシテ、政府ハ、十分ナル注意
ヲ地方ノ問題ニ注ギ、出來ルダケ地方ノ經濟
力ト其ノ機構ガ相俟ッテ行ケルヤウナ方法
ヲ立ツルコトニ十分ノ力ヲ注イデ行クト云
フ御答デアリマシタ、又他ノ一委員ヨリ
如何ニ中央ノ組織ヲ立派ニナサレテモ、地
方長官ガ度々更迭スルト云フヤウナコトデ
ハ、地方行政ハ旨ク行カヌデハナイカ、又
地方機關ヲ充實サセマスルニハ、ドウシテ
モ部落町村ガ非常ニ大事デアルカラ、昔ノ
五人組ノヤウナ點ニ付テ、今日ノ時代ニ適
應スルヤウニナサル御考ハナイノデアラウ
カ、又色々惡イ事件ガ町村ニ起ル原因ハ
矢張リ連絡ノ機關ガ缺ケタコトモ一ツデハ
アルマイカト思フカラ、郡役所復活ヲ必ズ
シモ主張スル者デハナイガ、中央トソレカ
ラ地方、詰リ府縣廳ト市町村役場トノ間ノ
中間機關ヲ御考ヲ願ヒタイト述べラレマシ
タノニ對シマシテ、政府ハ、町村ノ部落ト
云フモノハ自治ヲ振興サセル根柢デアルヤ
ウニ考ヘル、又中間機關ノコトハ、成程斯
樣ナ行政機構モ實際生活ノ實情ニ卽應スル
制度ヲ設ケルノガ一番必要デアルト考ヘル
カラ、是ハ追ッテ行政機構ノ問題トシテ〓究
ハ致シタイ、ト答ヘラレマシタ、又他ノ一
委員ヨリ、府縣ノ併合、又或府縣ヲ廢止シ
テ道廳ノヤウナモノヲ御創設爲サル意思ガ
アルカドウカ、トノ質疑ヲ爲サレマシタノ
ニ對シマシテ、政府ハ、是ハ確カニ重大ナ
問題デアッテ、整理ヲ斷行スルコトハ結構ダ
ガ、是ハナカ〓〓經濟財政ガ旨ク參ラヌト
思フ、殊ニ大キクナッタ府縣ト云フモノヲ解
體スルト云フコトハ、一層重大問題デハナイ
カト思フ、無暗ニ府縣合併ト云フ聲ヲ出ス譯
ニハ參ラヌトノ御答ガアリマシタ、地方財
政ノコトデアリマスガ、一委員ヨリ、地方
交付金ハ今度豫算ニ出テ居ルガ、其ノ次ニ
法律案トナッテ出テ來ルカトノ質問ヲセラ
レタノニ對シマシテ、政府ハ、是ハ全ク此
ノ際ノ臨機應急ノ處置デ、又必然的ノ立法
事項デモナイヤウニ考ヘルガ、將來或ハ何
等カノ形ニ於テ法制化ヲスル必要ガアルカ
モ知レヌ、ト答ヘラレマシタ、又其ノ交付
金ヲ地方ニヤルニシテモ、ソレヲ無暗ニ使ッ
テモ困ルガ、其ノ使ヒ方ハドウ云フ風ニナ
ルカ、又國庫ノ豫算ヲ御提出ニナル場合ニ
ハ、此ノ豫算ガ成立スレバ、地方費ハドノ
位殖エル、ソレニ對スル財源ハドウスルト
云フヤウナコト位ハ、一目瞭然分ルヤウニ
シテ戴キタイト思フガ如何ト質疑サレマシ
タ、ソレニ對シマシテ政府ハ、此ノ使途ニ付
テハ十分注意スル、又國ノ補助金ノ爲ニ地
方ハドレダケノ負擔ガ增スノデアラウカト
云フヤウナ調ベハ、誠ニ遺憾デアルガ今日
マデ正確ニ調ベタモノハナイカラ、是ハ御
希望ニ副フヤウニ準備致シテ置キタイ、ト
ノ答辯ヲセラレマシタ、立憲政治ノ確立ト
云フ問題ニ付キマシテ、一委員ヨリ、是ハ
從來ノ內閣モ色々御骨折ガゴザイマシタデ
セウガ、ドウモ十分マダ效果ヲ生ジテ
居ル迄ニ行カナイ、立憲政治ガ確立ス
ルト云フコトニナリマスレバ、ドウシテモ
政治ノ中心ト云フモノハ議會デナケレバ
ナラヌ、然ルニ今ノ憲法ノ建前デ、議會以
外ノ勢力ガ政治ヲ動カスト云フヤウナコ
トニナッテ來レバ、其處ニ社會不安ガ起ッ
テ來ルコトハ當然ノヤウニ思フ、議會政治
ヲヤルト云フコトニナリマスレバ政黨ト
云フコトハ考ヘナケレバナラヌト思フ、少
シデモ早ク政治ノ中心ヲ確立シ、憲法ノ運
用ニ差支ナイヤウナ風ニヤッテ行クト云フ
コトガ、今日ノ難局ヲ救ッテ行クノニ一番
良イコトヂヤナイカト考ヘルガ如何ト云フ
質疑ニ對シマシテ、政府ハ、最近ニ至リ何
等カ世上ニハ、憲法政治ニ付テ疑ヲ挾ム者
モ生ジツヽアルヤウナ情況ガアリマスノデ、
此ノ內閣ト致シマシテハ、是非トモ其ノ點
ヲハッキリサシテ、國民ヲシテ十分ニ之ニ信
賴スル念ヲ起サスヤウニ進ンデ參リタイ、
議會ト云フモノハ非常ニ重要ナ作用ヲ爲ス
ベキコトハ當然ノコトデアルト思フ、又此ノ
議會ノ運用ニ付キマシテ、衆議院等ニ政黨
ト云フモノガ自然ニ發生シテ參ルト云フコ
トモ、是モ認メナケレバナラヌ、政府ト致
シマシテモ、十分ニ注意ヲ拂ッテ參リタイ、
ト答ヘラレマシタ、庶政一新ト云フコトニ
關シマシテ、一委員ヨリ、此ノ短期ノ議會
ニハナカ〓〓議シ切レナイヤウナ案ガ澤山
出テ居ル、丁度此ノ間ノ非常事變ノ後デ、
火事場ノ前デ急イデ起草シタモノヲ、急イ
デ出シテシマフト云フヤウナコトデナク、
ジックリ一ツ御考ヘニナッテ、庶政ノ一新ヲ
ヤッテ戴キタイト思フト述ベラレマシタル
コトニ對シマシテ、政府ハ、從來相當討議
ヲ經タ問題デ、尙未解決ノ儘殘ッテ居ル他ノ
問題ハ、此ノ特別議會デ成ルベク決定シテ
戴イテ、サウシテ政府ノ新政策ハ新シイ議
會デ、通常議會デ十分御審議ヲ願ヒタイト
云フノデ、是マデノ、從來殘ッテ居リマシタ懸
案ヲ一應解決ヲシテ戴キタイト云フ考デ、
隨分澤山ナ案ヲ出シタ譯デアルト答ヘラレ、
又他ノ一委員ヨリ、廣田內閣ノ政綱聲明竝
ニ首相ノ演說ニ依ッテ見ルト、廣田內閣ノ國
政一新ト申サルヽノハ、二·二六事件ノ關係
者ノ矯激ナル思想、主張ニ刺戟セラレ、ビッ
クリシテサウシテ此ノ國政一新ト云フ言葉
ガ出テ居ルヤウナ疑ヲ有スル者ガアルノデ
アルガ如何トノ質疑ニ對シマシテハ、政府
ハ此ノ日本ノ立憲政治ニ付テマデモ、疑惑
ヲ持ッテ居ルヤウナ方面モアリ、又社會ノ情
勢ヲ見テモ、相當深甚ナル考慮ヲ拂ハナケ
レバナラヌト云フ點ヲ感ジテ居リマシタノ
デ、此ノ際コソ從來改ムベキモノデ遷延今
日ニ至ッテ居ルヤウナ點ガアレバ思切ッテ
改メナケレバナラヌト云フ風ニ感ジマシテ、
其ノ意味ニ於キマシテ庶政一新ヲ圖リタイ
ト云フコトヲ聲明シテ參ッタノデアル、二·
二六事件ノヤウナ各種ノ變態ノ起ル本ヲ匡
シマシテ、日本國家ヲ安全ナル社會情勢、
安全ナル國際情勢ヲ起シテ行クヤウニ、十
分此ノ際國民ハ戒心ヲシテ、再檢討スベキ
點ガアレバ十分ニ再檢討ヲ加ヘテ行ク必要
ガアルト云フ意味ヲ申述ベタノデアルト答
ヘラレマシタ、〓育ノコトニ付テデアリマ
スガ一委員ヨリ、現內閣組閣ノ當初ニ發セ
ラレマシタ新政綱中ニモ、國體觀念ノ明徵、
文〓ノ刷新、國民精神作興、國憲國法ノ尊
重、之ニ最モ力ヲ注ガレテ居リマスルガ、
之ヲ致シマスノニハ何ト申シマシテモ、國
民〓育若シクハ公民〓育ニ力ヲ盡スト云フ
コトガ最モ大事ナコトデアル、然ルニ今日
ノ〓育界ノ情況ヲ直視致シマスト、相當寒
心スベキコトガ澤山アル、卽チ〓育ノ現狀
ハ形式〓育、焦躁〓育、詰込主義ノ乾燥〓
育、競爭〓育デアル、ソレニ付テ文部大臣
ハ、必ズ學制ヲ改革シナケレバナラナイト
言ハレテ居ルガ、サウ云フコトヲスル前ニ、
眞劍ニ突ッ込ンデ、十分ニ考ヘナケレバナラ
ヌ問題ガ幾多アルト述ベラレマシテ、義務
〓育費全額國庫支辨ト爲スト同時ニ特別會
計ト爲スコト、市町村ノ有力者若シクハ政
黨ノ有力者ナドガ〓育者ノ位置ヲ脅シ、校長
及〓員ノ手腕ヲ振ハシメザルコト、小學生
徒ガ强窃盗團ヲ組織スルコト、寄宿舍ノ生
徒ノ「リンチ」事件、偉イ人ヲ造ルト云フ〓育
ノ害アルコト、文部大臣ガ貴族院本會議デ
學校ノ存廢、課目ノ改廢ヲスルトノ言明ハ、
國民ノ不安及疑惑ヲ招クコト、修身ノ課目
ニ敬神崇祖ト云フコトヲ書キ增スベキコト、
學務部長ハ內務所屬タルハ、文部省ノ訓令
等ヲ受ケル場合適當ナラザルコト等、質疑セラ
レマシタニ對シマシテ、政府ハ、勿論〓育ノ
最モ肝要ナル點ハ國民〓者デアリマスコトニ
付キマシテハ全然同感デアリマス、國民〓育ノ
向上ニ付キマシテハ何レ案ヲ具ヘテ次ノ議會
ニデモ費用ヲ要求シタイト思ッテ居ル、〓育
界ノ腐敗ハ、ソレハ矢張リ〓育界ニ人ヲ得
ナイト云フコトモ一原因ダラウト考ヘル、
入學試驗ノ準備〓育ト云フコトハ、文部省
カラモ、各府縣廳ニ屢〓注意ヲ致シマスシ、
又各府縣ニ於キマシテモ、知事カラ各學校
ノ校長及〓員ニ向ッテ、準備〓育ヲシテハナ
ラヌト云フコトヲ言ッテ居ルノデアリマス
ガ、是ハ試驗制度ト云フモノガアル間ハ根
柢カラ之ヲ無クスルト云フコトハ出來マス
テイマダ良イ方法ガ考ヘラレヌ、今日ノ
所デハ試驗制度ヲ全廢スルト云フヤウナコ
トハ、チヨット考ガ付カヌ、寄宿舍ノ「リン
チ」事件、小學校ノ生徒ノ窃盜ナント云フコ
トハ、是ハ學校ノ方ノ罪デナクテ、寧ロ家
庭ノ方ノ罪ヂヤナイカト考ヘテ居ル、〓員
ノ俸給ノ支拂延滯ト云フコトハ、主トシテ
町村財政窮乏ガ因デアルコトハ勿論デアル
ガ、ソレモ近時幾ラカヅヽ減ッテ來テ居ル、
又學校ノ存廢新設ト云フヤウナコトハ、マ
ダ確タル考ヲ持ッテ居ルモノデハナイ、課目
ノ方ノ點ニ付テモ同樣デアル、ソレカラ敬
神崇祖ノコトヲ修身ノ科目ニ入レルコトハ、
國體ヲ明徵ニスル意味ニ於テ、中等學校ノ
圖書ハ標準ノ〓科書ヲ拵ヘルコトニナッテ
居リマスルカラ、其ノ時ニハ必ズ之ヲ入レ
タイト考ヘテ居ル、尙小學校ノ方ノ國定〓
科書ニモ、左樣ナコトヲ入レタイト考ヘテ
居ル、〓育費ニ付テハ小學〓育、普通〓育
ノ實質ヲ損ハナイ限リハ、出來ルダケ行政
施設ノ畫一ヲ打破シテ、適切ナル施設ヲ致
シテ行ケバ、自ラソコニ市町村財政ノ緩和
モ出來ルノデハナイカト思フ、各町村ガ〓
育費ノ特別會計ヲ設ケマスレバ、或ハ〓員
俸給ノ不拂、延滯ト云フコトモ少クナルト
思フガ、今日ノ義務〓育費ガ八千五百萬圓
トシテモ、是ハ〓員給ノ金額ガ行ク譯デハ
ナイノデ、之ヲ假ニ全部特別會計ニ致シマ
シテモ、他ノ半分ナリ三割ナリ四割ナリハ、
矢張リ一般會計カラ持ッテ行カナケレバナ
ラヌカラ、其ノ方面ニ於テモ、矢張リ〓員
給ノ不拂若シクハ延滯ト云フモノガ起ル可
能性ガアル、デドウシテモ必要費ニ應ズル
ダケノ財源ノ提供ヲ、或程度マデシテヤラ
ナケレバナラヌト云フヤウナ趣意カラ、少
額デハアルガ兎ニ角二千萬圓ト云フモノヲ
支出致シマシテ、町村財政ノ負擔金ノ平均
ヲ取ラセルト云フ施設ヲ、今囘ノ豫算デ御
協賛ヲ仰グ次第デアル、又學務部長ノ地位
ガ理解ヲ得テ居ラナイガ、學務部長ノ取扱
ニ付キマシテハ將來十分注意ヲ致ス、サウ
シテ決シテ從來ノヤウナ他ノ部長ト如何ニ
モ等差デモアルヤウナ考ハ、先ヅ取扱フ者カ
ラ止メテ、各部長同等トシテ適材ヲ適所ニ
配置シテ、長ク其ノ地位ニ留マラシメ、精
進サセルト云フ方法ヲ執リタイモノダト云
フ御答デアリマス、更ニ其ノ委員ハ、學科ノ
改廢或ハ學校ノ存廢ノコトニ付テ、當局ニ具
體案ナクシテ之ヲ言ハレルノハ、天下ヲ惑
ハセルコト甚ダ大ナルモノガアルト思フカ
ラ、將來少シ御考ヲ願ヒタイト述ベラレマ
シタ、又ソレカラ商科大學、立〓大學、帝
展ノ問題ノ質疑ガアリマシタガ、之ニ對シ
マシテ當局ハ、商科大學ノ件ハ先般先ヅ解決
ニ至ッタ、マダ多少〓授ノ中ニ不滿ナ人ガア
ルヤウデアルガ、大體ニ於テ片付イタモノト
御承知ヲ願ッテ差支ナイ、ソレカラ美術院ノ
問題ハナカ〓〓込ミ入ッテ居ルガ、一應會員
其ノ他美術家ノ意見ヲ求メタ上ニ、適正ト
考ヘル所ノ判斷ヲ下シタイト考ヘテ居ル、立
〓大學ノコトハ、マダ立入ッテ調査ヲシテ居
ラヌト答ヘラレマシタ、漢字廢止論ニ付キ
マシテ一委員ヨリ、現內閣ノ政綱、聲明書
ト云フモノハ相當ムヅカシイ字ヲ使ッテ居
ル、相當難解ノ字ヲ使ッテ居ル、サウシテ其
ノ時ノ文部大臣ハ漢字ヲ廢スルト云フ御考
デアルト云フコトハドウシタコトカトノ間
ニ對シマシテ、文部大臣ハ、漢字廢止ノコト
ニ付テ御話ガアリマシタガ、是ハ私ガ年來
持ッテ居ル私ノ理想デアリマスルガ、併シ
ナガラ是ハマダ十分ニ檢討シ、十分ニ
確タル點ニ達シテ居ルモノデハアリマ
セヌカラ、文部大臣トシテハ之ヲ實行
ニ移ス考ハ全然アリマセヌカラ、左樣御承
知置キヲ願ヒタイト思ヒマスト答ヘ、又他
ノ一委員ヨリ、文部大臣ノ御答辯ハ到ル處變
遷シテ參リマスノデ、何レヲ採ッテ宜イカ分
ラナイノデ、之ヲ明瞭ニ致シテ置クコトガ御
互ノ爲デアルト前提シテ、大臣ハ漢字ヲ廢止
セネバナラヌト云フ信念ノ下ニ、多年民間ニ
在ッテ之ガ運動ヲナサレツヽアッタト云フコ
トデアルガ、若シ之ガ事實デアルトスルナラ
バ、是ハ實ニ山々シキ重大ナル問題デアル、
此ノ問題タルヤ實ニ我ガ國ノ文字及國語ノ
大改革デアル、其ノ波及スル所、推シ進メ
テ行クト、天皇機關說以上ノ不敬事件ノ發
生ヲ見ルコトナシトモ限ラナイ大問題デア
ルト考ヘル、又此ノ問題ノ係ル所ハ、啻ニー
〓育上ノ一部若シクハ〓育費負擔輕減ノ如
キ小問題ニアラズシテ、寧ロ我ガ國將來ノ國
語廢滅問題ニ屬スルノデアル、畏キ事ナガ
ラモ歷代ノ天皇ノ御名モ悉ク古典ヨリ出
デテ、誠ニ奧深キ尊嚴ナ意味ヲ含マレテ居
ル、例ヘバ年號ノ壽永或ハ養和、明治、大
正、昭和ト云フヤウナコトヲ假名デ書イテ
シマフト云フコトニナッタナレバ、何等ノ意
味モナク、其ノ何等ノ意味モナイト云フコ
トガ、言フニ言ハレヌ不敬ノ事柄ニ相成ル
ノデアルト述べ、又漢字ノ重要性、漢字ト
假名書トノ比較ヲ詳細ニ述ベラレ、此ノ際
奮ッテ御反省ニナリ、漢字廢止論ト云フ御考
ハ御放棄ニナルコトヲ御勸〓申上ゲル次第
デアリマスルト述ベラレタニ對シマシテ、文
相ハ、漢學ガ日本固有ノ文化ニ醇化セラレ
マシテ、我ガ文化ノ進展ニ多大ナル貢獻ヲ
致シタコトハ言フマデモアリマセヌ、寧ロ
漢學ヲ盛ニスルノニハヤサシイ字ヲ使ッタ
方ガ宜イノデハナイカト云フ考ガ私ニアリ
マイ、之ニ付テハ述ベルコトモアルノデア
リマスケレドモ、此處デ其ノ優劣トカ或ハ
利害ト云フヤウナコトヲ議論スルコトハ避
ケル、尙十分檢討シテ、果シテ自分ノ考ガ
誤リアリト云フコトダッタナラバ、取消スコ
トニ致シマスト答ヘラレマシタ、司法部ノ
コトニ付キマシテ一委員ヨリ、裁判所ノ設
備司法官ノ待遇ガ甚ダ不十分デアルト思
フガ如何、又大審院長ト云フモノハ司法官
ノ最高位ニ在ルモノデアルガ、大審院長ガ
司法大臣ヨリモ餘程下風ニ立ツモノデアル
ト云フヤウナコトヲ考ヘルヤウナ虞ガアル
ノハ甚ダ遺憾デアルカラ御考慮願ヒタイガ
如何、ト述ベラレタルニ對シマシテ當局ハ、
篤ト考慮ヲ加へタイト答ヘラレマシタ、又
司法省直屬ノ司法警察官ノ設置ノ問題ニ付
キマシテ一委員ヨリ、是ハ極メテ犯罪檢擧
ノ上、又ハ警察官ト致シマシテ頗ル重要ナ
ル事柄デアッテ、又此ノ司法警察官ヲ置クト
云フコトニスルト、全國ノ警察官ノ士氣ニ
非常ニ關係スルト思フガ如何トノ問ニ對シ
マシテ、政府ハ、司法警察機關ト行政警察
機關ト云フモノヲ分離シテ設ケマスト云フ
コトハ、一面ニ於キマシテハ非常ニ好都合
デアリマスケレドモ、一面ニ於キマシテハ
其ノ弊モ相當ニアルト云フコトハ考ヘナケ
レバナラヌカラ、色々利害得失ヲ〓究シテ
愼重ニ之ヲ考慮スルト答ヘラレマシタ、外
交一元化ノ問題ニ付キマシテ一委員ヨリ、
滿洲事變以後ノ外交ト云フモノハドウモ一
元化サレズ、餘リ不統一デアルヽドウモ現
地ニ於テ起ル所ノ問題ハ必ズシモ終始一貫、
同ジ政策カラ出クモノトハ考ヘラレナイヤ
ウナ點ガアルガ、今後日本ガ對外政策ヲ實
行スル場合ニ、區々ノ行動ノナイヤウニ願
ヒタイ、又其ノ爲ニハ、本國政府ガシッカリ
シタ方針ヲ御決メニナッテ、之ヲ出先ニ完全
ニ傳へ、苟モ之ニ背ク者ガアックラ直チニ處
分スルダケノ御決心ヲ以テ、政策ヲ御決メ
ニナラナケレバナラヌ、ト述ベラレタノニ
對シマシテ、政府ハ、從來相當遺憾ノ廉ガ
アッタヤウニ思フノデアリマスガ、將來ニ於
テハ萬遺憾ナキヲ期シテ參リタイト存ジテ
居ルノデアリマスト答ヘラレマシタ、國際
文化事業ノ豫算ノコトニ付キマシテ一委員
ヨリ、外交ニ重點ヲ置キ、又文化事業ニ依ッ
テ各國間ニ於テ、オ互ニ其ノ文化ヲ理解シ
合ッテ行クト云フコトニ重點ヲ置カナケレバ
ナラヌト云フコトヲ明カニ當局ハ言ハレテ
居ルガ、其ノ豫算ヲ見ルト甚ダ僅少デアルト
思フガ如何、ト述ベラレタノニ對シマシテ、
當局ハ、全然同感デアルガ、今日ノ財政上、
事情萬已ムヲ得ズ、現在ノ程度デ我慢セザ
ルヲ得ナイ次第デアル、尙許ス限リ多額ニ
シタイト思フガ、其ノ費用ノ使用ノ方法ニ
付テハ、再檢討致シテ十分使ッタ金ガ有效ナ
ル結果ヲ現スヤウニ致シタイト考ヘル旨答
ヘラレマシタ、肅軍ノコトニ付テ一委員ヨ
リ、此ノ度ノ事件ガ光輝アル皇軍ノ過去ニ
對シテ實ニ拭フベカラザル汚點ヲ殘シ、過
去ノ陸軍ノ先輩ガ築キ上ゲマシタ所ノ日本
精神、此ノ日本ノ美シキ士ノ道、之ヲ悉ク
沒却シテシマッタコトハ遺憾ニ堪ヘナイ、陸
相ハ先考ノ後ヲ繼イデ陸軍大臣トナラレタ
ガ、其ノ責任ハ一層重大ナルモノガアルト
信ズル、此ノ點ニ思ヒヲ致サレテ、願クバ
肅軍ノ實ヲ擧ゲラレタイ、玆ニ特ニ遺憾ニ
思フノハ、此ノ事件ガ或ハ豫知スルコトガ
出來ナカッタト云フコトデアル、是ハ軍
隊上ノ上下ノ親シミガ無クナッテ、日本
ノ軍隊ガ形式ニ流レタ爲ダト思フ、モット
人格本位ニヤッテ貰ヒタイト、最モ熱烈
ナル御質問ガアッタノニ對シマシテ、陸相
ハ感激ノ御樣子デ、誠ニ御熱情ノ籠ッタ御忠
告ヲ戴イテ、誠ニ有難ウゴザイマス、一言
厚ク御禮申上ゲマスト述ベラレマシタ、軍
人後援會ノコトニ付キマシテ一委員ヨリ、
各種ノ軍人後援ニ關係スル所ノ團體ハ非常
ニ多イガ、是ノ統一ガ非常ニ急務デハナイ
カ、殊ニ愛國婦人會ト篤志看護婦、又國防
婦人會ト云フヤウナモノガ色々アルノハ、
統一スベキデハナイカ、ト述ベラレタノニ
對シマシテ、當局ハ、軍事後援扶助團體ヲ
統制或ハ合同シテ、其ノ作用ヲ强化シ、效
果的ナラシメルト云フコトハ同感ダガ、各
團體成立ノ沿革モ性質等ガ違フカラ、無理
ニ之ヲ合同サセルト云フコトモ却テ活動ヲ
阻害スルモノトモ考へルカラ、漸次其ノ合
同ガ可能ニナルヤウニシテ行カネバナラヌ
ト答ヘラレマシタ、右翼運動ノ取締ニ付キ
マシテ一委員ヨリ、此ノ度ノ事件ノ經過カ
ラ見テモ、從來兎角右翼運動ノ取締ニ付キ
マシテ、當局ハ無關心デハナカッタカト云フ
質疑ヲ爲サレマシタノニ對シマシテ、政府
ハ愛國ノ美名ニ隱レテ共產運動ヲ行フ者
ヤ、右翼團體ニ對シテハ、取締ノ機關ヲ充
實シテ、今後十分ニ注意シテ行キタイ、ト
ノ答辯ガアリマシタ、綱紀ニ關シマシテ一
委員ヨリ、官吏ガ役所ニ居ッテ關係シタ所ノ
事業會社ニ入ル場合ガ多々アルガ、是ハ其
ノ會社ノ從業員ニ對シテ實ニ殘酷ナコトデ
アリ、又非常ニ累ヲ社會ノ上ニ及ボスコト
デアラウト私ハ思フカラ、少クトモ役人ヲ
罷メテカラ三年間位ハ浪人ヲサセテ後ニヤ
ルト云フヤウナコトニシテハドウカ、ト問
ハレマシタノニ對シマシテ、政府ハ、是ハ人
材本位ヲ以テスルト云フコトガ根本ノ原則
デナケレバナラヌ、一身上ノ關係其ノ他カ
ラ强ヒテ官廳ガ背景トナッテ、之ヲ會社ニ採
用サスルト云フヤウナコトハ甚ダ面白クナ
イコトデアルト思フ、ト答ヘラレマシタ、
民間航空ノ問題ニ付キマシテ、一委員ヨリ、
貧弱ナル現在ノ民間航空事業ヲ發達サセル
爲ニ、勝馬投票劵、卽チ馬劵ト同ジヤウナ
方法ニ依ッテ、一氣ニ二億圓ト云フヤウナ資
源ヲ得ルコトヲ計ッテハドウカ、ト述ベクノ
ニ對シマシテ、政府ハ、民間航空事業ノ發
達ヲ圖ラナケレバナラヌト云フコトニ付キ
マシテハ、無論私モ同感デアルガ、富籤公債
ノ發行ト云フコトハ餘程考ヘナケレバナラ
又、ト答ヘラレマシタ、其ノ他航空國策樹
立ト云フヤウナコトニ對シマシテ、當局ハ
飛行機ノ利用ヲ第一ニ奬勵シナケレバナラ
又、ソレニハ飛行機ニ對スル安全感ヲ增ス
ヤウニ努メナケレバナラヌ、ト答ヘラレマ
シタ、拓務省廢止ノ問題ニ付キマシテ一委
員ヨリ、拓務省廢止ト云フ聲ヲ聞クガ、政府
ハ拓務省廢止ト云フヤウナコトヲ從來仰セ
ラレタコトデアルカ、サウ云フ御考ヲ持ッテ
オイデニナッタコトガアルカ、ト云フ問ヲ爲
サレマシタノニ對シマシテ、政府ハ、中央
地方ヲ通ジテ、行政機構ノ各般ニ付テ再檢
討ヲ加ヘテ、國運ノ進展、社會ノ要求ニ應
ジテ相當〓究ヲ加ヘタ結果、改ムベキモノ
ガアレバ改メテ參リタイト云フ考ハ持ッテ
居ルガ、特ニ拓務省ダケヲ廢止スルト云フ
ヤウナコトヲ考ヘタコトハナイ、ト述ベラ
レマシタ、滿洲移民問題ニ付テ一委員ヨリ、
滿鐵デハ確カ七千五百萬圓カノ會社ヲ作ッ
テ、大袈裟ナ山東移民招來ノ計畫ヲ立テテ
居ルガ、ドウシテモ日本ノ移民ヲ出來ルダ
ケ澤山早ク滿洲ニ送ルコトガ大事ダト、斯
ウ考ヘルガ、ドウカト云フ質疑ヲナサレマ
シタニ對シマシテ當局ハ、國策遂行、又國
防上必要ナコトダカラ、出來ルダケ多數、
而モ後ヘ戾ッテ來ルヤウナ心配ノナイヤウ
ニ、十分注意ヲ加ヘテ送リタイト答ヘラレ
マシタ、其ノ他警察官及消防組員ノ待遇ヲ
改善シ、又警察官ノ〓育機關ヲ充實セラレ
タイト云フコト、鐵鋼國策ヲ樹立スルコトハ
現時ノ急務デハナイカト云フコト、防空ニ
付テモット考ヘナケレバナラヌデハナイカ
ト云フコト、國立工藝指導所ノ設立、武道
ヲ小學校ノ正科トスルコト、兵ノ家族ノ給
與ヲ良クスルコト、營養問題、家庭紛爭調
停法、動產抵當法ノ制定、東北ノ應急的救
濟施設ニ付キ、又豫算關係法律案ノ不成立
ト豫算トノ關係、經費ノ濫用ノコト等ニ付
キ、熱心ナル質疑應答ガアリマシタ、次ニ分
科ノコトヲ大體御報告申上ゲマス、各分科
トモ二十日、二十一日、此ノ二囘開カレマ
シタ、第一分科ハ歲入及大藏省ノ分デアリ
マスガ、分科會ニ於ケル質疑ノ主ナルモノ
ハ、稅制改革、行政整理、國際貸借ノ將來、
對滿投資、庶民及農村金融、國債ノ消化、
產業ノ統制、米穀法ト財政ノ關係、低金利
政策、公債借換等其ノ他六十數件ニ達スル
トノコトデアリマシタ、第二分科ハ外務省
及司法省ノ分デアリマスガ、司法省所管ニ
付テハ右翼思想ノ取締、裁判手續ノ澁滯ノ
矯正方法、辯護士ニ關スルコト、司法官ノ
採用方針等ニ付テ、又外務省所管ニ付テハ、
外交官ノ語學力ノ向上、外務省ノ經費ノ不
足、對支文化事業等ニ付キ質疑應答アリ、
第三分科ハ內務省、文部省ノ分デアリ
マスガ、內務省ニ付テハ衞生施設、町
村補給金、神社行政ノ刷新、雪害水害對
策、選擧肅正等ニ付キ、文部省ニ付テハ人
格〓育、神社思想ノ普及、學制改革等ニ付
キ質疑ガアリマシタ、尙第三分科ニ於キ
マシテハ、内務省所管ノ部ニ於キマシテ
治水根本ノ施設全カラザルガ爲水害頻發
シ失費負擔共ニ尠カラズ、政府ハ速ニ荒
廢溪流ノ砂防其ノ他根本施設ヲ講ジ、治
水ノ完全ヲ期スベシ
ト云フ希望決議ガナサレマシタ、第四分科
ハ陸軍省及海軍省デアリマスガ、陸軍省ニ
付キマシテハ兵備改善費ノコト、在滿在支
兵力ノコト、空軍ニ關スルコト、國內治安
維持ト軍隊ノ配置等ニ付キマシテ質疑ガア
リ、海軍省ニ付テハ海軍航空隊ニ關スルコ
ト、艦船改裝ノコト、艦船維持費ノコト、
無條約後ノ海軍ノ經費、海軍思想ノ普及其
ノ他ニ付テ質疑ガアリマシタ、第五分科ハ
農林省、商工省及遞信省ノ所管デアリマス
ガ、農林省ニ付テハ北洋漁業ノ設備、農村
工業ノ振興、米穀自治管理法等ニ付キ、商
工省ニ付キマシテハ產業統制、國際見本市、
保險ノ國營等ニ付キ、遞信省ニ付キマシテ
ハ飛行場ノ設置、農村ノ電化、電力ノ國營、
其ノ他航空ノ問題等ニ付キ質疑ガアリマシ
タ、第六分科ハ鐵道省及拓務省デアリマス
ルガ、鐵道省ニ付キマシテハ鐵道ノ電化、
關門海底隧道、新建設線等ニ付キ、拓務省
ニ付キマシテハ滿洲移民、朝鮮農村ノ更正、
樺太ノ石油問題、其ノ他臺灣、南洋ノ問題
ニ付キ質疑ガ重ネラレマシタ、尙內務省所
管、陸海軍省所管ニ付キマシテハ各〓一囘祕
密會ヲ開イテ、機密ノ問題ニ付テ愼重審議
セラレマシタ、各分科共原案ヲ可決サレマ
シテ、各主査ヨリ二十二日ノ總會ニ於キマ
シテ、其ノ經過及結果ガ報告セラレマシタ、
討論ニ於テ二人ノ委員ヨリ贊成意見ヲ述べ
ラレ、其ノ他別段ニ發言モナク、昭和十一
年度追加豫算案七件トモ原案通リ可決セラ
レマシタ、以上ヲ以テ御報告ヲ終リマス、
何卒御贊成ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X01419360524&spkNum=6
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007・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 質疑ノ通〓ガゴ
ザイマスカラ之ヲ許シマス、阪谷男爵
〔男爵阪谷芳郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X01419360524&spkNum=7
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008・阪谷芳郎
○男爵阪谷芳郞君 本員ハ文部大臣ニ質問
致シマス、御承知ノ通リニ、昭和六年三月
十八日貴族院ハ學術ノ奬勵助長ニ關シテ、
全會一致建議ヲ致シタノデゴザイマス、其
ノ建議ヲ念ノ爲ニ申上ゲマス、「國勢進展ノ根
本方策トシテ政府ハ學術〓究ノ奬勵助長ニ
關シ速ニ適當ナル對策ヲ講ゼラレンコトヲ
望ム」、此ノ建議ハ全會一致通過致シマシテ、
貴族院ハ學術振興ヲ以テ國家根本策ト考ヘ
テ居ルト云フ意思ヲ表示シタノデゴザイマ
ス、次イデ昭和八年政府ハ、年々七十萬圓、
三箇年ノ繼續ノ豫算ガ提出ニナリマシタガ、
今年度ハ最早其ノ滿期ニナッテ居ルノデス、
然ルニ其ノ豫算ガ不成立ニナリマシタノデ、
政府ハ前年度ノ豫算ヲ施行スルト云フ名義
ノ下ニ、一箇年七十萬圓支出スルコトニナッ
タノデアリマス、甚ダ本員ハ不足ニ感ズル
ノデアリマス、就テハ文部大臣ヨリ旣往ノ
學術振興ニ關スル成績如何ト二、フコトヲ御
報〓ヲ願ヒマシテ、尙本員ハ其ノ文部大臣
ノ御意見如何ニ依ッテ、更ニ意見ヲ述ベタイ
ト存ジマス
〔國務大臣平生釟三郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X01419360524&spkNum=8
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009・平生釟三郎
○國務大臣(平生釟三郞君) 只今阪谷男爵
ヨリノ御尋ニ對シマシテ、昭和八年ヨリ三
箇年間ノ期限ヲ以テ補助ヲ致シテ居リマス
ル日本學術振興會ノ〓究ニ對スルコトニ付
テ、其ノ實績ノ〓要ヲ御報告申上ゲタイト
思フノデアリマス、第一ニ本會ノ直接ノ〓
究ト致シマシテハ、特別委員會ヲ五回、小
委員會ヲ二十囘、併セテ二十五ノ委員會デ、
此ノ官廳、學校、〓究所、會社、工場等ノ代表
者、專門家、實業家ヨリ成ル委員會ヲ開イテ、
綜合〓究ヲ行ッテ居ルノデアリマス、其ノ〓
究項目ハ何レモ國家重要ノ問題デアリマス、
今此ノ二十五ノ委員會ガ〓究シテ居リマス
ル〓究事項中四五ノモノヲ擧ゲマスレバ、
次ノ通リデアリマス、第一、滿洲國關係ト致シマ
シテハ、滿洲農業移民問題及北支ニ於ケル資源
ノ〓究デアリマス、其ノ二ハ純學術問題ト致シ
マシテハ、世界學界ガ先キヲ爭ウテ居ル宇宙線
本質ノ發見デアリマス、第三ハ產業ニ關シマシ
テハ、地球物理學的方法ニ依ル金屬、石炭、
石油等ノ探鑛法ノ〓究デアリマス、又紙及
人絹ノ「パルプ」ニ對スル新原料ノ探究デア
リマス、第四ハ國民生活關係ト致シマシテ
ハ、國民榮養基準ニ關スル〓究、米穀根本
政策、養蠶問題ノ〓究、國民病「トラホー
〓ノ〓究、竝ニ東北地方民ノ衣食住改善
ノ〓究デアリマス、第五ハ國防上ノ問題ト
シマシテハ、祕密無線通信方式ノ〓究、大
型ノ大砲機關等ニ用ヒル特殊鋼材ノ缺點除
去ノ〓究等デアリマス、是レ以外ニモ工業上
ノ大問題ハ相當アルノデアリマス、第二ト
致シマシテ、援助補助ヲ爲シツヽアル〓究
ヲ申上ゲマスレバ、年ニ二囘個人ヨリ自分
ノ行ッテ居リマスル又ハ行ハムトスル〓究
ニ對スル費用ノ援助補助ヲ申請シマスル
ト之ヲ十二ノ常置委員會デ愼重審議シマ
シテ、適切ナルモノヲ採擇スルコトニナッテ
居リマス、昭和八年、九年、十年ノ三箇年
ノ申請件數ハ千九百三十三件デ、其ノ中採
擇シ、援助補助ヲシタモノハ一千七十三件
デアリマス、從ッテ今マデ〓究費ノ不足ニ惱
ンデ居リマシタ學校、〓究所ナンカモ、之
ガ爲ニ有效ナル〓究ガ出來ルヤウニナリマ
シテ、非常ニ助ッテ居ルノデアリマス、又援
助補助ヲシマシタ〓究事項ハ、人文及自然
科學竝ニ之ガ應用ノ各部門ニ亙ッテ居リマ
スルガ、此ノ中內閣ガ曩ニ告示シマシタ國
家重要〓究事項モ百六十三件ニ及ンデ居リ
やっ、其ノ他ニモ國家重要間題ガ澤山アル
ノデアリマス、未ダ日ガ淺イカラ完成シタ
モノハ僅カニ八十件デアリマスルガ、今後
次カラ次ヘト完成スルコトニナッテ居リマ
ス、今〓究中及完成〓究ノ中デ、主ナモノヲ
少シク申シマスレバ、次ノ通リデアリマス、
人文ノ方デハ神道ノ〓究、神社ノ〓究、人
口問題、農村經濟、貿易ノ統制、中小工業
ノ問題ガアリマス、又自然科學方面ノ純學
理ニ於キマシテハ、世界學界ノ問題デアル
元素ノ轉換ノ〓究ガ、此ノ援助補助ニ依ッテ
各所デ行ハレルコトニナリマシタ、又產業
及實用方面デハ、成功スレバ紡績ノ生產費
ヲ非常ニ減ズル考案モアリマス、石炭ノ液
化不十分ナ物ヨリナイ船底塗料ニ對スル
新シイ〓究、國產紅茶ノ改善、撰鑛法ノ改
善、其ノ他澤山ナ方面ノ〓究ガアルノデア
リマス、更ニ國防上ノ問題トシマシテハ
防毒「マスク」用活性炭素、微量毒瓦斯ノ識
別法、防楯鋼、航空機及潜水艦乘組員ニ對ス
ル生理、病理ノ〓究ヲ初メト致シマシテ、
軍需資源ノ開發等ニモ相當多數ノ有效ナル
〓究ガアルノデアリマス、以上述ベマシタ
所ガ日本學術振興會ガ今日行ッテ居リマス
ル事業ノ〓要デアリマス、創設日尙淺イニ
モ拘ラズ、相當ノ成績ヲ擧ゲツヽ居ラレマ
スカラ、今後トモ財政ノ許ス限リハ補助金
ヲ增シマシテ、益〓事業ノ振興ヲ圖リタイ
ト云フコトガ政府ノ考デアリマス
〔男爵阪谷芳郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X01419360524&spkNum=9
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010・阪谷芳郎
○男爵阪谷芳郞君 文部大臣ノ御答辯ヲ得
マシテ詳細ニ諒承致シマシタ、併シナガラ
甚ダ微々タルモノノヤウニ考ヘマスノデ、
益〓此ノ貴族院ノ全會一致ノ建議ノ趣旨ヲ
徹底致シタイヤウニ本員ハ望ムノデアリマ
ス、近頃學術立國ト云フ言葉ガ新聞等ニ散
見致シマスルガ、是ハ私モ面白イ言葉デア
ルト思フ、工業立國トカ、農業立國ト相竝
ンデ、學術立國ト云フコトニ日本ノ國民ガ
耳ヲ傾ケルト云フコトハ、非常ニ喜バシイ
現象ト思フ、考ヘテ見マスレバ今日世界
列强ト位地ヲ爭ッテ行キマスルニハ、學術ガ
勝利ヲ得ナケレバ何事モ出來ナイ、今國
防ノ問題ニ付キマシテモ、學術ガ進マ
ナケレバ陸海軍ガ如何ニ戰ハムト欲
シテモ、到底他ノ國ノ學術ノ進步シタ
國ノ兵器ニ競爭ハ出來ナイ、ドウシテモ
此ノ學術立國ト云フコトニ重キヲ置カ
ナケレバナラヌノデアラウト思フ、是
ハ誠ニ國民ノ聲トシテ、本員ハ偶然貴族院
ノ全會一致ノ建議ノ趣旨ニ暗合シタモノト
甚ダ喜ンデ居ル次第デアリマス、然ルニ內
ニ顧ミマスルト云フト、日本ノ學術ハ甚ダ
マダ振ッテ居ラナイ、例へバ貴族院ノコト一
ツニシマシテモ、飛行機ノ〓究ト云フコト
ニハ文部省モ力ヲ入レテ居ラレ、陸海軍モ
力ヲ入レテ居ルガ甚ダマダ振ハナイ、只今
〓究所デ〓究シテ居ルノハ本員ハ詳シク存
ジマセヌカラ間違ッテ居ルカモ知レマセヌ
ガ、速力デ以テ、先ヅ二百五十哩カラ三百
哩位ヲ目的トシテ〓究シテ居ルヤウニ聞イ
テ居リマス、然ルニ此ノ米國アタリデハモ
ウ七百哩ヲ目的ニ〓究シテ居ルノデ、半分
遲レテ居ル譯ニナル、日本ノ〓究所デ飛行
機ガ出來上ッテモ、モウ米國ノ方ハ其ノ倍以
上速力ノ出ルモノガ〓究サレテ居ルト云フ
コトデ以テ見ルト甚ダ心細イ、就キマシテ
ハ政府ニ於テ益〓學學振興ノ趣旨ヲ徹底サセ
ルヤウニ本員ハ希望致シテ置キマス、只今
本員ガ申シマシタヤウニ、三箇年ノ繼續費
デアックモノガ今年消エテシマッタノデアル、
ソレデ政府ハ纔カニ前年度豫算施行ト云フ
名義デ以テ一箇年出シテ居ルノデスガ、來
年ハドウナルノカ甚ダ心細イ、サウ云フコ
トデハ迚モ學術ノ振興ガ十分出來ルモノヂ
ヤナイ、今學者ハ此ノ學術振興會ノ援助、
其ノ他民間ノ補助等ニ依ッテ漸ク力ヲ入レ
掛ッテ居ルノデアル、其ノ掛ッテ居ル時ニ補
助ガ無クナッテシマフト云フコトハ、甚ダ間
違ッタコトデアリマスカラ、今迄七十萬圓デ
アッタモノハ更ニ之ヲ百萬圓ニスルトカ、百
五十萬圓ニスルト云フヤウニ、相當ニ增加
ナサッテ御請求アッテ然ルベキコトト思フ、
殊ニ此ノ學術振興ノコトニハ畏イコトデゴ
ザイマスルガ、陛下ガ非常ニ御心配遊バ
シテ、百五十萬圓ノ御內帑金ヲ賜ッテ居リマ
ス又民間ノ有志者カラモソレゾレ寄附ガ
集リツヽアリマスガ、ドウカ政府ニ於テモ
ウ一層力ヲ入レルト云フコトニ御注意ノ程
ヲ切ニ希望致シテ置キマス、尙一言申シマ
スルガ、是ハ總理大臣、大藏大臣ニ對シテ
述ベタイノデアリマスルガ、本員ハ此ノ演
壇ニ立ッテ、此ノ財政計畫ノ徹底シナイコト
ヲ屢〓論ジタガ、ドウモ何ト言ッテモナカ
ナカ齋藤內閣モ、其ノ次ノ岡田內閣モ、
向本員ノ言フコトヲ容レテ吳レナイノデ、
本員ハ最後ニ呆レテシマッタカラ、モウ今後
ハ言ハヌト言ッテ打切ッタノデアリマスルガ、
今度ハ廣田君ガ新內閣ヲ組織セラレテ、有
力ナ馬場君ガ藏相トシテ起タレタノデアリ
マスルカラ、一言申シテ置キタイノデアリ
マスルガ、此ノ赤字公債ト云フヤウナ無責
任ナコトハ御止メナサッテ、財政ノ計畫ヲ早
ク御立テニナラムコトヲ希望致シマス、固
ヨリ公債ヲ絕無ニスルト云フコトハ直グニ
ハ出來ルモノヂヤナイケレドモ、大凡財政
ニハ見通シガナクチヤナラナイ、本員ハソ
レ故ニ此ノ滿洲事變ノ起ッタ時ニ、此ノ滿洲
事變ト云フコトハ實ニ重大ナコトデアルカ
ラ、此ノ際大藏省トシテハ三億圓位ノ財源
ヲ作ルト云フ肚ヲ持タナケレバイケナイト
云フコトヲ此ノ演壇デ述ベタ、三億ノ財源
ヲ作ルト云ッタッテ、此ノ稅法ト云フモノヲ
今日貴族院ヘ提出シテ、明日カラ三億ガ入
ルモノデハアリマセヌ、ソレ故ニ豫メ三億
ノ計畫ヲ立テテ、法律ヲ作ッテ徐々トヤッテ
行ッテ、ソレガヤット四五年乃至七八年經ッテ
カラ其ノ三億ノ收入ガ得ラレルノデスカラ、
其ノ間ト云フモノハ無論赤字公債ト云フモ
ノガ出テ來ル、ケレドモ物ニハ計畫ガ立タ
ナケレバナラナイ、旣往ノコトヲ述ベルノ
デハナイガ、日〓戰爭ノ後デモ、日露戰爭
ノ後デモ、國家ハ非常ナ財政難ニ出會ッタノ
デアリマスルケレドモ、ソレハソレトシテ、
將來何年經テバ此ノ收支ガ償ッテ、財政經濟
ニ不安ヲ來スヤウナコトハナイト云フ計畫
ヲ、戰爭中ニ直グニ定メテ進行シタノデア
ル、此ノ度ノ滿洲事變ト云フモノハ日〓戰
爭、日露戰爭以上ノ重大ナル問題ヲ惹キ起シ
テ居ッテ、財政ノ計畫トシテハ何モ無イ、藤井
大藏大臣ノ時ニ四千萬圓バカリノ增稅ヲシ
タノハ、是ハマア大變ナ上出來ト私ハ思フ
ノデアリマスガ、サウ云フ不用意ナコトデ
ハ行ケルモノデハナイ、法律ニ作ルバカリ
ガ財政ヂヤナイノデアッテ、豫テ大藏省トテ
ハ來年ハ斯ウスル、再來年ハ斯ウスル、凡
ソ陸海軍ノ要求ナリ、各省ノ要求ト云フモ
ノト見比ベテ、將來此ノ位有ッタラバ收支ガ
償フト云フコトヲ立テテ行クノガ卽チ財政
ノ計畫デアル、今ノヤウニマダ日本銀行ガ
公債ヲ買ッテ吳レルカラ、マダ宜イマダ宜イ
ト云フヤウナコトデハ誠ニ心細イヤリ方ナ
ノデアル、イツ日本銀行ガ、モウ公債ガ賣
レマセヌト言フカ分ラヌ、サウ云フヤウナ
甚ダ薄弱ナル基礎ノ上ニ國家ノ財政ヲ置ク
ト云フコトハ、大藏大臣トシテモ又總理大
臣トシテモ決シテ其ノ職務ヲ盡シ、責任ヲ
盡シタトハ言ヘナイ、一家ヲ維持スルニモ、
一會社ヲ維持スルニモ、必ズシモ每年々々
儲カルトカ、金ガ餘ルト云フモノデハナイ
ノデアリマス、其ノ不足ノ時ニ豫メ之ヲド
ウシタラ負債整理ガ出來ルカト云フコトヲ
考ヘテ、數年ノ計畫ヲ立テテ行クカラ總テ
其ノモノガ整理シテ行クノデス、卽チ只今
各地ノ農村ノ負債整理ノ如キモ其ノ一例デ
アラウト思フノデアリマス、大藏省ハ何ヲ
シタカ、昭和六年ニ事變ガ起ッテカラ今日迄
ニ藤井藏相ガ殆ドソレガ爲ニ命ヲ縮メルト
云フ程ノ苦心ヲシテ、僅カニ四千萬圓ノ增
稅ヲセラレタニ過ギナイ、ソレモ其ノ當時、
其ノ前ノ藏相或ハ藤井君ノ後ノ藏相ハ大變
反對デアッタカノ如クニ新聞ニハ傳ヘラレ
テ居ル、反對ハ反對デモ宜イケレドモ、其
ノ計畫ヲナゼ見セヌカ、日〓戰爭、日露戰
爭アタリニモチヤント大藏省ガマア十年計
畫ト云フモノヲ立テテ、斯ウ〓〓ナルト云フ
コトヲ國民ニ示シテ、ソレニ依ッテ進行シテ
居ル、滿洲事變ノ結果ガ增稅ナシニ、永久
ニ增稅ナシニ進ム譯ノモノデハ決シテナイ、
ソレデ私ハ大藏大臣ガ斷然決心シテ、サ
ウシテ收支ノ付クヤウニ、臺灣ノ如キ、朝
鮮ノ如キ、最早四十年或ハ二十五年ノ施政
ヲ經テ、國力モ大分養ハレテ居ルノデアル
カラ、國防費ノ幾分ヲ負擔スルト云フコト
ハ差支ナイ、鐵道ノ如キ特別會計ナリ、餘
力ノ有ルモノカラハ財源ヲ提出サセル、而
シテ尙足ラザルモノハ專賣デモ起シテ行ク
ガ宜カラウ、專賣ヲ起スナリ、增稅ヲスル
ナリ、增稅ヲスルト不景氣ニナルト言ッテ大
變ニ大藏大臣ガ心配ヲスルノデアリマスガ、
增稅ノ方法如何ニ依ッテハ決シテ不景氣ガ
來ルモノデハナイ、ソレデモウ大膽ニソコ
ハ計畫ヲ立テテ、國家ガ立ッテ行ケルト云フ
基礎ヲ明カニセラレナケレバ、此ノ不安ト
云フモノハ去ラナイ、不安ト云フモノガ去
ラナケレバ日本ノ財政經濟ノ發達ノ上ニ非
常ナ割引ガ來ル、無論思想上ノコト、又肅
軍ノコト、色々ナコトガ不安ノ原因ヲ成シ
テ居リマスケレドモ、マアソレハソレトシ
テ、一ツヅヽ其ノ方法ヲ立テテ行クヨリ外
仕方ガナイ、又外交ノ問題ニシテモ、列國
ヲ總テ相手ニスルト云フヤウナコトハ出來
ルモノデハナイノデアリマスカラ、成ルベ
ク列國ト仲ヲ善クシテ、一ツ〓〓問題ヲ片
付ケル、關稅ノ競爭ノ如キハ「カナダ」ト日
本トハ仲ガ善クナッタカラ、其ノ他ノ又濠洲
ト日本ノ如キモ、サウ拳骨ヲ以テ互ニ向ヒ
合フト云フコトデナシニ、圓滿ニ話ヲシタ
ナラバ互ニ分ルデアラウト思フ、サウシテ濠
洲モ利益シ、日本モ利益スルト云フヤウナ
方法ヲ御執リニナレバ、日本ハ貿易上ノ心
配ガナイコトニナルノヂヤナイカ、ッ
一ツ道理ヲ以テ事ヲ片付ケテオイデニナッ
テ行ケバ、道理ニ勝ツモノハナイ、道理ガ
一番强イモノデアル、無理ヲシヨウトナサ
レバソレハ決シテ通ラナイ、道理ヲ以テ支
那問題ナリ「ロシア」問題ナリヲ總テ片付
ケテ、成ルベク國力ノ增進スルコトヲ期セ
ラレル、詰リ國力ガ增進シナケレバ富國强
兵ト申シマシテモ、陸海軍ヲオ强クスルコ
トハ出來ナイ、一方ニ色々財閥ヲ攻擊スルト
云フヤウナコトガアリマスガ、今日ノ「ヨー
ロッパ」ナリ、「アメリカ」ノ强兵、强大ナ
陸海軍ト云フモノハ、今迄ノ資本主義デ出
來タ、日本ハ遲レテ立ッタ國デアルカラ、矢
張リ資本主義ヲ當分持續シテ行カナケレバ
强兵ト云フモノハ出來ルモノヂヤナイ、「ヨー
ロッパ」「アメリカ」ハモウ資本主義デ强
兵ヲヤッテシマッタ、日本ハ是カラヤラウト
云フ、矢張リ强兵ニスルニハ國ヲ富マス、
富國ノ策ヲ講ジナケレバイケナイ、ソレハ
ドウシテモ資本主義、資本主義ト言ッテ「ロ
シア」ナドノ社會主義ノ攻擊ニ迷フヤウナ
コトガアッテハイケナイ、矢張リ日本ハ日本
トシテ、道理アル資本主義ヲ執ッテ行ッテ宜
シイ、資本主義ト云フモノハ資本家ガ我ガ
儘ヲスルト云フ意味ノ資本主義ナラバ非常
ニ不都合デアッテ、ソレハ何ノ採ル所ハナイ
ガ、國ヲ富マス、富マシテ行クト云フ資本
主義デアレバ、是ハ誠ニ結構ナコトデアル
ト本員ハ考ヘル、國ガ富ミサヘスレバ貧民
ハ無クナッテシマフ、現在臺灣ナドハ、領臺
當時ニハ非常ニ貧民ガ多ク、乞食ガ多カッタ
ト云フコトデアルガ、今日臺灣ニ行ッタ人ノ
話ニハ、臺灣モ非常ニ良クナッタ、乞食ハ一
人モ居ナイト云フヤウナコトハ、矢張リ資
本主義ノ結果トシテ臺灣ハ富ンデ、臺灣ノ
貧民ハ誠ニ安心シテ居ルト云フコトデアル、
デアルカラ資本主義ト云フテモ、名ト實ト
ヲ能ク〓究シテ、道理アル資本主義ヲ以テ、
道理アル富國ヲヤッテ行クト云フ矢張リ覺
悟ガナケレバナラヌ、ソレ等ノコトガ今度
ノ豫算ニ見エテ居ナイ、甚ダ計畫ノナイ無
謀ナ豫算デアル、併シ是ハ解散後ノ豫算、
豫算不成立ノ豫算デアルカラ、是ハ追究ハ
出來ヌデアリマセウガ、此ノ暮ノ議會ニハ
總理大臣ナリ、大藏大臣ガシッカリシタ前
途ノ見込アル、國民ノ滿足スル豫算ヲ御作
リニナラヌト、私ハ承知ガ出來ナイ、是ハ
强ク總理大臣ヤ大藏大臣ニ希望致シテ置キ
やっ、是ハ國家ノ爲ニ必ズサウアラネバナ
ラヌコトデアルノデアルカラ、唯行キ懸リ
行キ懸リデ、公債ガ日本銀行デ買ッテ呉レル
カラト云フヤウナ、甚ダ薄弱ナル財政ハ御
斷リシタイ、道理アル、基礎アル、計畫ア
ル、確實ナル財政ト云フモノヲオ立テニナッ
テ、國家ヲ安全ノ基礎ノ上ニ置カレルト云
フコトニ、努力セラレムコトヲ切ニ希望致
シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X01419360524&spkNum=10
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011・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 坂本男爵
〔男爵坂本俊篤君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X01419360524&spkNum=11
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012・坂本俊篤
○男爵坂本俊篤君 本員ハ只今上程、議題
トナリマシタ豫算案中、殊ニ液體燃料自給
自足促進ニ關スル件ニ付キマシテ、本議會
ノ開會ノ劈頭ニ當リマシテ、廣田首相ヨリ
施政方針ノ御演說中ニ言及サレタ所ノモノ
デアリマシタニ拘ラズ、具サニ其ノ內容ヲ
點檢スルニ及ビマシテ、何等新ナル所ノ經
綸ノ見ルベキモノナク、ノミナラズ實質的
ニ於テハ之ヲ前年度ノ豫算ニ比シマシテ、
却テ遜色アルコトハ、其ノ期待ヲ裏切ルコ
トノ甚ダシキモノアリト言ハネバナリマセ
ヌ、仍テ本員ハ本豫算採決ニ先ダチマシテ、
二三ノ質問ヲ提起シ、總理大臣ヲ初メ大藏
大臣竝ニ商工大臣ヨリ各〓御所見ヲ拜承致
シタイト存ズルノデアリマス、尙會期切迫
ノ折柄、時間ノ節約ノ爲ニ質問ハ之ヲ箇條
書ト致シマシテ、之ヲ朗讀シ、之ニ多少ノ
敷衍ヲ附加致シマシテ御尋スルコトニ致シ
タイト思フノデアリマス、首相ニ對スル第
一、液體燃料國策樹立ガ國防上ニ、產業上
ニ一日ヲ緩ウスル能ハザルモノアルニ拘ラ
ズ、今尙遲々トシテ解決ノ域ニ達セザルコ
トハ國家ノ深憂ト謂ハザル可カラズ、政府
ガ現下ノ國際政情ニ鑑ミ、國防ノ充實ニ專
念セラレツヽアルコトハ、之ヲ豫算編成
ノ上ニ其ノ重點ヲ見出スコトニ於テモ
明カデアリマス、然ラバ等シク國防ノ
第一線ニ立ツ所ノ液體燃料ノ解決ニ向ッ
テ、其ノ促進ニ努力セラルヽノ用意ヲ有
セラルヽヤ否ヤト云フノデアリマス、
是ヨリ少シク敷衍ヲ試ミテ見タイト思フノ
デアリマス、思フニ液體燃料ハ之ヲ身體ニ
例ヘマスレバ尙血液ノ如キモノデアリマス、
然ルニ其ノ血液ノ九十「ハーセント」ト云フ
モノヲ外國ノ輸血ニ俟ッテ、僅カニ其ノ命脈
ヲ維持スルト云フガ如キハ、刻下ノ國際環
境ノ下ニ、殊ニ國防ノ見地ヨリ致シマシテ、斯
クノ如キ異常ナ狀態ニ對シテ晏如タルコト
ガ容サルベキデアリマセウカ、先ニ「ニユー
ヨーク」ノ或一大新聞ノ主筆某ガ、日本海
軍ノ擴張ハ石油ノ供給國ニ依ッテ制限セラ
ル、卽チ「ジヤパン·ネーヴアル·エキスパ
ンション·リミテツド·バイ·パワーズ·コン
トローリング·オイル·サツプライ」、斯樣ニ
題シテ長々ト意見ヲ述ベテ居ルノデアリマ
ス、又最近ニ於キマシテハ「イタリト」對「エ
チオピア」ノ戰爭ニ對シマシテ、國際聯盟ガ
對「イタリー」ノ制裁ノ手段ト致シマシテ、
石油供給ノ途ヲ絕タムト議シタ如キ、是等
ノ事柄ハ我々ニ向ッテ、何物カ深刻ナル所ノ
示唆ヲ與ヘルモノニ非ズシテ何ゾヤト申ス
ベキデアリマス、之ガ質問ヲ提起致シマシ
タ所以デアリマス、首相ニ對スル其ノ二、
燃料國策樹立ノ如キ、重要ナル國策ノ遂行
三、最モ有力ナル行政機關ノ運營ニ俟ツ
ニ非ザレバ、速カニ其ノ目的ヲ達成シ難シ
ト存ズルノデアリマス、政府ハ此ノ見地ニ
基キ新ニ其ノ運營ヲ掌ルニ相應ハシキ行政
機構ノ施設ニ俟ツノ意圖ヲ有セラルヽヤ否
ヤト云フノデアリマス、凡ソ一定ノ目的ヲ
達セムトスルニハソレ相應ノ施設ノ方策
ガ之ニ伴ハナケレバナリマセヌ、然ルニ現
下液體燃料ノ所掌ハ、商工省ノ鑛山局ノ片
隅ニ、一ツノ燃料課トシテ存在スルニ過ギ
ヌノデアリマス、燃料國策樹立ノ叫バレル
今日ニ於キマシテ、餘リニモ貧弱タルコト
ヲ免レヌノデアリマス、又豫算ノ上カラ見
マシテモ商工省ノ全部ヲ擧ゲマシテ、僅カ
ニ二千萬圓ニモ足ラヌ、ソレカラ幾ラ經費
ヲ割キマシタ所ガ、國策ヲ使命トスル所ノ
運營ノ前ニハ眞ニ九牛ノ一毛デアリマス、
高ノ知レタモノデアリマス、サレバ斯クノ
如キ行政機構ノ下ニ於テ、何レノ日ニカ其
ノ目的ヲ達成シ得ベキカ、是ガ今日マデ誰
人モ燃料問題ノ重要性ヲ知リナガラ、其ノ
事功ヲ擧グルコト能ハザリシ其ノ原因デア
ルト思フノデアリマス、政府ハ庶政一新、
諸〓ノ行政機構ノ上ニモ改廢ヲ考慮サレツヽ
アリト承ル際、燃料國策樹立ノ上ニ於テモ
一段ノ考慮ヲ進メラレムコトヲ希望致スノ
デアリマス、是レ此ノ質問ヲ提起致シマシ
タ所以デアリマス、首相ニ對スル其ノ三、
液體燃料國策樹立ニ關シテハ之ヲ最モ權威
アル官民合同ヨリ成ル所ノ調査會ニ付議シ、
其ノ完璧ヲ期スルノ要アリト認ム、政府ノ
所見果シテ如何ト云フノデアリマス、本員
ハ去ル第六十七議會ニ於キマシテ、燃料國
策樹立ノ必要ヲ認メ、其ノ重要性ニ鑑ミマ
シテ、之ヲ時ノ最モ權威アリト目セラルヽ
所ノ内閣審議會ニ付議スルノ要ナキカト云
フコトヲ、岡田首相ニ質シマシタ所ガ、首
相竝ニ町田商相モ同意ノ旨ヲ表示ヲセラレ
タノデアリマス、然ルニ今日ハ内閣審議會
ノ消滅スル時ニ於キマシテ、新ニ此ノ種ノ
調査會ヲ設クルカ、然ラザレバ現存國防資
源ノ統制運用ニ當リツヽアル所ノ、資源審
議會ニ付議シ、其ノ根本策ヲ決定セラルヽ
コトノ適當ナルコトヲ認ムルモノデアリマ
ス、以上三點ニ付キマシテハ首相ヨリノ御
答辯ヲ煩シタイト存ズルノデアリマス、次
ニ藏相ニ對シマシテ其ノ一、液體燃料國策
樹立、換言スレバ液體燃料自給自足ノ目的
ヲ達成スルニハ、將來ニ亙リ尠カラザル國
帑ノ支出ニ俟タネバナラヌト思料ス、然ルニ
此ノ國防ノ第一線ニ立ツ所ノ液體燃料充備
ノ爲メ、財政當局ハ之ニ對スル如何ナル用意ヲ
懷抱セラレテ居リマスルヤ否ヤト云フノデアリ
マス、藏相ハ其ノ財政ニ關スル御演說中ニ、
將來一般財政ノ見通シト、之ニ應ズル所ノ財
政計畫ニ言及サレテ居リマスガ、液體燃料
自給自足ニ關シマシテモ、其ノ國策ヲ定メ
マスルニハ、先ヅ以テ其ノ計畫ノ全貌ヲ究
メ、之ガ遂行ニ要スル所ノ經費ノ如キハ
之ヲ繼續費ト致シ、其ノ方策ニ依ッテ、般
會計ノ中ヨリ之ヲ支辨致シマスルカ、然ラ
ザレバ殊ニ輸入礦油ノ關稅增率等ニ依ル所
ノ財源ヲ擧ゲテ、特別會計ノ下ニ之ヲ液體
燃料ヲ掌ル所ノ機關ノ運營ニ歸セシムル等、
種々ノ方策ガ考ヘラルヽト思フノデアリマ
ス、兎ニ角液體燃料ナキ軍備ハ、翼ヲ失ヘ
ル鳥ノ如ク、豫算ノ伴ハザル所ノ燃料國策
ハ水ヲ離レタル魚ノ如キモノデアリマス、
此ノ點ニ付テハ藏相ニ於カレマシテハ、將
來ノ財政計畫上深甚ナル所ノ御考察ヲ廻ラ
サシムルコトヲ希望シテ已マザルモノデア
リマス、是レ此ノ質問ヲ提起致シタル所以デ
アリマス、藏相ニ對スル其ノ二、液體燃料
自給促進ニ關シ、從來豫算ノ分配上ニ於テ不
均衡、換言スレバ不合理ノ點アリシト思フ、
藏相ハ將來之ヲ是正スルノ意圖ヲ有セラル
ルヤ否ヤト云フノデアリマス、從來豫算ノ
分配上ノ跡ヲ討ネマスルニ、等シク國防上
ノ要素、殊ニ其ノ第一線上ニ立ツ所ノ液體
燃料ノ自給促進ニ必要ナル所ノ豫算ニ對シ、
一方軍部方面ノ豫算ニ對シテハ、歲出總豫
算額ノ動モスレバ其ノ五割ニ垂ントスルモ
ノサヘ之ヲ容認スルニ吝ナラザルニモ拘ラ
ズ、燃料ノ主管當局ヨリ提出ニ係ル所ノ僅々
十數萬圓ニモ足ラナイ、而モ極メテ緊要ナ
ル所ノ項目ヲサヘ之ヲ削除シテ顧ミラレザ
ル、悲痛ナル所ノ事實ノ繰返サレルコトヲ
見タノデアリマス、是ハ畢竟スルニ必要ナ
ル燃料ノ伴ハザル軍備ハ何等ノ用モナサズ、
卽チ燃料無ケレバ國防無シトモ言ヒ得ベキ
所ノ、認識ニ於テ未ダ缺クル所ガアリシコ
トニ因由スルモノタルヲ思ハシムルモノデ
アリマス、今ヤ更始一新、將來豫算ノ分配
上ニ於テモ、閣僚互ニ相倚リ相助ケ、其ノ
均衡ヲ得ルコトニ互ニ協力スル所アラムト
スル、此ノ現內閣ノ藏相ニ於テハ、今日マ
デ動モスレバ豫算分取リト云フガ如キ舊來
ノ弊竇ニ向ッテ、之ヲ是正スルノ御用意ガア
ルト思フノデアリマス、此ノ點ニ付テ御尋
ヲ申上グル所以デアリマス、商工大臣ニ對
スル質問其ノ一、液體燃料國策樹立ヲ圖ル
ニ、、先ヅ其ノ計畫ノ全貌ヲ究メ、而シテ
其ノ實行方策トシテハ一定ノ繼續費ノ形式
ニ依リ之ヲ遂行スルコトガ實際的ナリト信
ズ、當局ノ所見果シテ如何ト云フノデアリ
やく、液體燃料ノ自給自足ガ國防上ニ、產
業上ニ、一日モ緩ウスル能ハザルモノナル
ニ拘ラズ、今ニ於テ尙遲々トシテ進展ヲ見
ザル十年一日ノ如キ所以ノモノハ、是レ蓋
シ政策ニ於テ其ノ全貌ヲ見渡シタル所ノ一
定ノ方策ナク、唯其ノ日暮シト云フガ如キ
姑息倫安ノ外ニ出ヅル能ハザル、恰モ船ノ
舵ナク、羅針盤ナク、而シテ最モ其ノ遂行
ニ必要ナル所ノ機關ニ推進力ナキコトデア
リマス、斯クノ如クシテ何レノ日カ目的ノ
港ニ到達スルコトガ出來ルデアリマセウカ、
眞ニ國家ノ爲ニ深憂ニ堪ヘザルモノデアリ
マス、是レ質問ヲ提起致シタ所以デアリマス、
商相ニ對スル質問ノ第二、液體燃料ノ自給自
足ノ目的ヲ達成セムト欲スルニハ、其ノ開發ニ
從事スル所ノ民間ノ企業者ニ對シテ、大イニ助
成政策ノ途ニ出ヅルノ要アリト認メルノデ
アリマス、政府ノ之ニ對スル意圖如何、天
然資源ニ富メル「アメリカ」又ハ「ロシア」ノ
如キハイザ知ラズ、其ノ他天惠薄キ國々ニ
アリマシテハ、其ノ企業ノ性質ニ鑑ミマシ
テ、國家ノ保護助成ニ俟ツニ非ザレバ、其
ノ目的ヲ達成スルコトノ極メテ困難ナルコ
トナレバ、之ヲ歐洲列國ノ實例ニ照シマシ
テモ明白ナル事柄デアリマス、例ヘバ政府
ガ自ラ巨費ヲ抛ッテ外國ノ石油會社ノ株劵
ヲ買占メ、其ノ覇權ヲ握レル英國ノ「アン
グロ·ベルシヤン」石油會社ニ對スル如キガ
卽チソレデアリマス、海外資源獲得ノ爲ニ
ハ外國ノ石油企業ニ對シ、自國ノ資本家ヲ
勸メテ之ニ投資セシメ、其ノ投資額ノ半バ
ヲ補助スル「ドイツ」政府ノ如キハ卽チソレ
デアリマス、半官半民ヨリ成ル所ノ구
ジップ」ナル一大石油會社ヲ設立セシメ、之
ニ每年七百萬「リラ」ヲ支出シテ、奬勵シツ
ツアル「イタリー」政府ノ如キガソレデアリ
やく、石油關稅ノ收入ヲ擧ゲテ之ヲ液體資
源局ノ收入ニ歸セシメ、獨立經濟ノ下ニ其
ノ運營ニ委セシメ、以テ石油政策ノ遂行ニ
資セル「フランス」ノ如キモノガ卽チ是デア
リマス、斯クノ如ク致シマシテ、石油ニ天
惠ノ薄イ歐洲ノ列强ハ、殆ド例外ナク國家
自身若シクハ其ノ保護助成ノ下ニ其ノ發達
ヲ遂ゲツヽアルコトハ、大ニ鑑ムベキコト
デアルト思フノデアリマス、勿論我ガ政府
ニ於キマシテモ、些少ナガラ石油ノ試掘奬
勵費トカ、乃至低溫乾餾ノ事業助成トカ、
是等ノ方途ハ講ゼラレテ居リマスガ、併シ
ナガラソレモ極メテ貧弱デアリマシテ、其
ノ中ニ最モ大切トサレテ居ル所ノ試掘奬勵
費ノ如キ、是等ノ如キハ近來ハ以前ニ比シ
却テ減少サレテ居ルガ如キ、極メテ不可解
千萬ノコトト言ハネバナリマセヌ、其ノ他
海外資源開發費ハ如何デアリマセウカ、又
其ノ開發ノ助成費ハドウナッテ居ルノデア
リマセウカ、是レ皆燃料自給自足ニ最モ必
要ナル所ノ事項ガ依然トシテ等閑ニ付セラ
レテアルコトハ甚ダ遺憾ノ極ミデアリマ
ス、是モ畢竟致シスルニ、政府ニ於テ燃料
ニ對スル一定ノ政策ナク、唯僅カニ主務省
ガ極メテ苦シイ豫算ノ範圍ノ中ニ於テ遣繰
リ算段ヲシヨウトスレバコソ、心ナラズモ
斯樣ナ姑息倫安ニ甘ンゼザルヲ得ヌコトヲ
悲シムモノデアリマス、ソレニ付テモ燃料
國策ガ一日モ速カニ成ラムコトヲ本員ハ熱
望シテ巳マヌ者デアリマス、以上、總理大
臣ヲ初メ、藏相、商相ヨリ御答辯ヲ煩ハシ
タイト存ズルノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X01419360524&spkNum=12
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013・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 報告ヲ致シマ
ス
〔角倉書記官朗讀〕
本日衆議院ヨリ左ノ政府提出案ニ付同院ニ
於テ本院ノ修正ニ同意セサルコトニ決議シ
タル旨ヲ以テ兩院協議會ヲ開クノ請求ヲ受
ケ又同時ニ同院ヨリ協議委員ノ數ヲ十名ト
爲スニ決シタル旨ノ通牒ヲ受領セリ
臺灣拓殖株式會社法案発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X01419360524&spkNum=13
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014・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 只今書記官ヲシ
テ報告致サセマシタ通リ、衆議院ヨリ臺灣
拓殖株式會社法案ニ付キ、兩院協議會ヲ開
キ、且其ノ委員ノ數ヲ十名ニスルノ要求ニ
接シマシタカラ、此ノ際議事日程ヲ變更シ
テ、兩院協議委員ノ選擧ヲ行フコトニ御異
議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X01419360524&spkNum=14
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015・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 御異議ナシト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X01419360524&spkNum=15
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016・池田政時
○子爵池田政時君 只今議題ト相成リマシ
タ臺灣拓殖株式會社法案兩院協議委員ノ選
擧ハ、會期切迫ノ際デアリマス故ニ、議長
ニ於テ之ヲ御指名アラムコトヲ望ミマス、
右動議ヲ提出致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X01419360524&spkNum=16
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017・植村家治
○子爵植村家治君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X01419360524&spkNum=17
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018・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 池田子爵ノ動議
ニ御異議ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X01419360524&spkNum=18
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019・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 御異議ナシト認
メマス、兩院協議委員ノ氏名ヲ朗讀致サセ
マス
〔角倉書記官朗讀〕
臺灣拓殖株式會社法案兩院協議委員
侯爵細川護立君男爵安保〓種君
子爵大久保立君子爵渡邊千冬君
內田重成君男爵小畑大太郞君
柴田善三郞君堀切善次郞君
黑崎定三君倉知鐵吉君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X01419360524&spkNum=19
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020・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 本日直チニ兩院
協議委員ノ正副議長ヲ選擧セラレムコトヲ
望ミマス、休憩致シマス、午後一時三十分
ヨリ開會致シマス
午後零時十八分休憩
午後一時四十二分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X01419360524&spkNum=20
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021・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 休憩前ニ引續キ
會議ヲ開キマス、再ビ日程第二ヨリ第八マ
デノ會議、馬場大藏大臣
〔國務大臣馬場鍈一君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X01419360524&spkNum=21
-
022・馬場えい一
○國務大臣(馬場鍈一君) 坂本男爵ノ御尋
ニ對シマシテ御答ヲ申上ゲマスルガ、只今
總理大臣ガ已ムヲ得ナイ差支ガアリマスル
ノデ、私ヨリ代ッテ御答ヲ申上ゲタイト存ジ
マス、液體燃料ニ對スル國策ハ定ッテ居ルノ
カドウカト、斯ウ云フ意味ノ御問ガ第一デア
リマスガ、液體燃料ニ對スル方策ハ、自給
自足ノ方針デ進ムコトニ定ッテ居ルノデア
リマス、固ヨリ是ニハ相當ノ年月ヲ要スル
コトハ申上ゲル迄モナイノデアリマスル
ガ、此ノ方針ノ下ニ政府ハ其ノ政策ヲ進メ
ツヽアルコトヲ御承知ヲ願ヒタイノデアリ
ママ、第二ハ行政機關ノ問題デアリマス、之ニ
付キマシテハ今後十分ニ考ヘテ行キタイノ
デアリマシテ、今日ノ儘デ宜シイカドウカト
云フコトニ付テハ、將來篤ト考究ヲ遂ゲル
コトニ致シタイト考ヘテ居リマス、燃料國
策ニ調査會ヲ別ニ設ケルノ考ガアルカドウ
カ、今日デハ商工省ノ中ニ燃料對策各省協
議會ト云フモノガ設ケテアリマシテ、之二
依ッテ諸般ノ方策ヲ講ジテ居ルノデアリマ
スルガ、或ハ將來必要ニ依リマシテハ特別
ニ、坂本男爵ノ御話ニナッタヤウナ調査會ヲ
設ケルコトモ、或ハ考ヘラレヌデハナイノ
デアリマス、今日デハ今申上ゲタヤウナ調
査會ニ於テ對策ヲ講ジテ居ル譯デアリマス、
次ニ大藏大臣ニ對スル御尋トシマシテ、第
一ハ今後ノ財政計畫ニ於テ、此ノ燃料對策
ニ對スル國費ノ增加ニ付テ相當ノ用意ガア
ルカ、或ハ輸入礦油ノ財源ヲ以テ、特別會計
等ヲ設置スルヤウナ考ハ有ルカ無イカ、斯
ウ云フ意味ノ御尋デアルノデアリマス、大
藏省ト致シマシテモ液體燃料ニ對シマル對
策ハ、國ノ一ツノ大キナ方策トシテ十分ニ
今後重キヲ置イテ行ク積リデアルノデアリ
やく、併シナガラソレニ致シマシテモ、今
日直チニ特別會計ヲ設ケテ之ヲ致スカト云
フコトニ付テハ、未ダ決定シタ方針ハナイ
ノデアリマスル、無論此ノ液體燃料問題ニ
付テ、今後相當ノ國費ヲ要スルコトモ覺悟
致シテ居ルノデアリマス、大藏省ト致シマ
シテモ財政ノ許ス限リハ、之ニ對シテ相當
ノ國費ヲ投ジテ行ク考ハ持ッテ居ルノデア
リマス、今日ノ如ク、坂本男爵ハ第二ノ御
尋トシテ、豫算上ノ金額ノ分配ガ不合理デ
アル、國防費トノ均衡ヲ得テ居ラヌト云フ
ヤウナ御非難ノ下ニ御尋ガアリマシタガ、
前申上ゲタ如ク液體燃料ノ方策ナルモノハ、
啻ニ國防上ノミナラズ、產業上重大ナル問
題デアルノデアリマス、之ニ對シテ相當ノ
今後財政計畫ノ上ニ於テモ、出來ルダケノ
力ハ用ヒテ行キタイト考ヘテ居ル譯デアリ
やく、現ニ坂本男爵ハ十一年度ノ豫算ニ於
テハ、寧ロ前年度ヨリ減ジテ居ルヤウナ御
意見モアッタヤウデアリマスルガ、實ハサウ
デハナイヤウニ思フノデアリマス、十一年
度ニ於テハ實行豫算ニ於テ、或ハ追加豫算
ニ於テ、之ヲ總計致シマシタナラバ、前年
度ノ約倍額ニハナッテ居ルノデアリマス、所
謂一般會計特別會計ヲ通ジマシテ、此ノ方
面ニ投ジテ居ル金ハ、約倍額ニ近イモノデ
アルノデアリマス、更ニ今後ハ此ノ問題ノ
爲ニハ、大藏省トシテハ財政ノ許ス限リ、
金ヲ出シテ行ク考ハ持ッテ居ルノデアリマ
ス、ソレヲ私トシテ御答へ申上ゲマス
〔國務大臣小川〓太郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X01419360524&spkNum=22
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023・小川郷太郎
○國務大臣(小川〓太郞君) 坂本男爵ノ私
ニ對スル御尋ハ、二ツアリマス、第一ハ液
體燃料國策樹立ノ爲ニハ、其ノ計畫ノ全貌ヲ
究メテ、其ノ實行方策トシテ一定繼續費ノ
形ニ依ッテ遂行スルノガ實際的デハナイカ、
斯ウ云フ御意見ノ下デ御尋デアッタト思ヒ
やく、私モ全然同感デアリマス、燃料國策
ノ實行ノ爲ニハ、其ノ施設ノ性質ニ鑑ミマシ
テ、出來ル限リ其ノ全貌ヲ究メマシテ、繼
續費ノ形式ニ依ル方ガ便宜ト考ヘマス、併
シナガラ豫算ノ編成ノ關係モアアリマスノ
デ、繼續費トナッテ居リマセヌ、大藏省トノ
間ニ繼續的ニ行フト云フ相談ガ出來テ居リマ
スモノニ於キマシテモ、豫算ノ上デハ一年
限リトナッテ、ソレデ年々又認メラレルト云
フヤウナ形ニナッテ居ルノデアリマス、唯後
ニ、第二問ニ關聯致シマスガ、此ノ北樺太
石油資源開發助成ノ爲ニハ、豫算外國庫ノ
負擔トナルベキ契約ヲ五年ニ亙ッテ結ブコ
トニナッテ居リマス、是ハ御尋ノ趣旨ニ形ハ
少シ違ヒマスガ適ッテ居ルト思フノデアリ
マス、ソレカラ第二ノ御質疑ハ、資源ノ開
發ニ從フベキ民間助成ノ方策ト云フコトデ
アッタヤウデアリマス、現在ニ於キマシテモ
内地資源ノ試掘奬勵ト云フモノニ隨分努メ
テ居リマスガ、御話モアッタ通リニ其ノ額ハ
十分デアリマセヌ、併シ本年ハ前年ニ比シ
テ相當增額ヲシテ居ルノデアリマス、北樺
太石油資源ノ開發ニ付キマシテハ、其ノ試
掘助成ノ計畫ヲ立テマシテ、五年ニ亙リマ
シテ四百五十萬圓ヲ助成スルコトニ致シマ
シテ、本年ノ豫算ニハ百二十餘萬圓計上サ
レテ居ルノデアリマス、更ニ會社ノ資金調
達ニ便ナルガ爲ニ、三百萬圓ノ社債ニ付キ
マシテ元利償還ノ補償ヲ爲スコトニナッテ
居リマス、之ニ依リマシテ北樺太石油開發
ノ計畫的ノ仕事ガ十分出來得ルコトト考ヘ
ルノデアリマス、更ニ其ノ外ノ海外資源ノ
調査、且開發ノ爲ニ今適當ナル組織ヲ爲シ、
出來ツヽアルノデアリマス、是モ此ノ組織
ガ出來マシタナラバ、海外資源ノ開發ニ相
當資スル所ガアルト考へテ居リマス、東ノ
附加ヘテ申上ゲテ置キタイノデアリマスガ、
此ノ代用燃料工業ノ確立ガ、燃料國策ノ上
デ大切デアリマスガ、ソレニ付キマシテハ
海軍ニ於キマシテ石炭液化ノ〓究ヲ進メマ
シテ、近ク滿鐵ニ於キマシテ之ガ企業化ヲ
圖ルコトニナッテ居リマス、商工省ト致シマ
シテハ尙低溫乾餾工業ノ助成、木炭瓦斯ノ
發生爐ノ使用ノ奬勵ヲ圖リマスト共ニ、石
炭液化ノ試驗ヲ此ノ燃料〓究所デ促進サセ
テ居リマスガ、本年ハ更ニ「ガソリン」合成
ノ試驗ヲ開始スルコトニナッテ居リマス、今
後此ノ代用燃料工業ヲ確立スルト云フコト
ガ、一番大切ナコトト考ヘマスノデ、其ノ
方ニ十分力ヲ致シタイト考ヘテ居ルノデア
リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X01419360524&spkNum=23
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024・坂本俊篤
○男爵坂本俊篤君 簡單デアリマスカラ此
ノ席デ發言スルコトヲ御許シヲ願ヒタイ·····
先ヅ第一ニ總理大臣ヨリノ御答辯、燃
料國策ハヤッテ居ル、併シナガラ此ノ
ヤッテ居リ方ガ甚ダ遲々トシテ、此ノ時局
ニ對應スルダケノ進捗ヲ見ナイノデアリマ
ス、若シ此ノ時局ニ鑑ミラレタナラバ、
國防上ニ其ノ重要ヲ置カレテ、其ノ全額
ノ五割ニ垂ントスルモノ迄モ認容サレル御
考デアリマスルナラバ矢張リ其ノ國防上
ノ尖端ニ居ル所ノ燃料ニ對シテモ、同樣ノ
御覺悟ヲ以テ進マレタイト云フノガ私ノ念
願デアリマス、畢竟スルニ其ノ認識ノ上ニ
於テ、聊カ不足デアラレルヤウニ考ヘルノデ
アリマス、十分此ノ點ノ御認識ヲ深メラレ
ムコトヲ希望致シマス、又大藏大臣ヨリハ
私ハ前年度ニ比シテ劣ッテ居ルト申シタガ
サウデハナイ、實際ハ其ノ倍額位ニナッテ
居ル、斯ウ云フ御答辯デアリマス、成程私
モ數字ノ上デハ四百五十六萬圓、前年度ニ
於キマシテハ百九十萬圓位ノ程度デアリマ
スガ併シナガラ此ノ增シタ額ト云フノハ
何デアルカト中スト、石油業法ニ依ル所ノ
各會社施設ノソレニ補償ト申シテハ語弊ガ
アルカ存ジマセヌガ、ソレヲ助ケル爲ノ二
百六十餘萬圓ノ額ガ計上サレテ、ソレデサ
ウ云フ數字ニナッテ居ルカラシテ、是ハ石油
業法ニ關係スル所ノ費用デアルノデアリマ
スカラ、元來ナラバ其ノ補償ガナクトモ今
日迄進ンデ來タノデアリマスガ、色々ノ關
係カラ今囘ハソレヲ出シタト云フコトニナッ
テ居ル、石油業法ニ依ッテ何等此ノ資源ノ開
發ト云フモノガ、一滴モ國內ニ殖エル譯デ
ハアリマセヌ、唯石油業法ハソレダケノ貯
蓄シタ石油ニ對シテソレノ補償ヲスルダケ
デアリマス、若シ資源ガ十分ニナレバ一滴
ノ貯蓄モ要ラヌ譯デアリマスカラ、却テサ
ウ云フヤウニナラムコトヲ理想トシテハ希
望スル譯デアリマス、石油業法ノ爲ニ國費
ヲ茲ニ投ジタカラ、ソレガ爲ニ燃料問題ノ
國策ノ解決トハナラヌノデアリマス、サウ
云フ工合ニ私ハ考ヘテ居リマスカラ、其ノ
點ヲ考ヘマスルト總テノ燃料國策樹立ノ爲
二、資源開發ニ要スル所ノ經費ハ、矢張リ
百九十萬圓程度デ、却テ其ノ數字ノ上カラ
見レバ不足シテ居ル位ニ見エル、先ヅ同額
ト見テ宜シイ、次ニハ商工大臣カラノ御答
辯デアリマスガ、是亦一言私カラ申上ゲテ
置キタイト思ヒマス、北樺太ノ石油會社ニ
對シテハ今後五箇年ニ亙ッテ助成ヲスル、是
ガ私ノ申シタ繼續費ノ形ニナッテ居ル、斯ウ
云フ御答辯デアリマシタ、私ハ何モ北樺太
ノ一ツノ會社ヲ助成スルト云フヤウナ如キ
モノヲ以テ、此ノ國策樹立ノ對象ト考ヘテ
居ラヌデス、是ハモットノ〓大キク此ノ國策
ト云フモノノ全貌ヲ考ヘテ、其ノ全貌ノ上
ニ於テ有リト有ラユル助成ヲシテ開發ヲシ
テ、サウシテ自給自足ノ域ニ達セシメルコ
トヲ企圖スルコトガ所謂國策ノ樹立デアル
ト考ヘテ居リマス、北樺太會社ニ對スル助
成デアルトカ、或ハ資金ノ補助デアルト云
フヤウナ一時的ノモノ、又其ノ限局サレタ
ヤウナ小サイコトニ付テ、此ノ國策樹立ノ
コトヲ御伺ヒシタ譯デハアリマセヌ、又滿
鐵ノ石炭油化ノ爲ニ云々ト御辯明ガアリマ
シタガ、滿鐵ノ石炭油化業ハ是ハ恐ラク明
後年、明後年ノ半バ頃ニ於テ其ノ工場ガ竣
成サレルノデアリマス、サウスルト其ノ工
場ノ油化サレタ石油ハドレ位カト申セバ、
約二萬瓲ヲ目的トシテ居ルノデアリマス、
其ノ二萬瓲ノ石油ガ何時頃出來ルカト申セ
バ、丁度ソレカラ後ニ一年經ッテカラ初メテ
出來ルダケノ設備ガアルノデアリマス、約
今カラ三年ノ後ニナラナケレバ、此ノ二萬
瓲ノ石油量ト云フモノハ得ラレヌノデアリ
やマ、今日海軍ノ石油ノ費消ハ非常ナモノ
デアリマシテ、二萬瓲バカリノ石油デハ、今
三年後ニ出來タトシテモ是ガ何等ノ足シニ
ナラヌト云フ狀態デアリマス、是ハ成程滿
鐵ノ石炭油化モ一ツノ方法デハアリマスケ
レドモ、左樣ナ事柄ヲ以テ此ノ燃料國策ノ
樹立ト考ヘラレヌノデアリマス、况ヤ其ノ
他ノ事例ヲ擧ゲテ云々ト商工大臣ヨリ御辯
明ニナリマシタガ、是等ハホンノ燃料國策
樹立ノ前ニハ塵ノ端シニモ足ラナイモノト
思フノデアリマス、ドウカ此ノ石油燃料國
策ト云フモノハ、此ノ時局ニ鑑ミラレテ、
サウシテ此ノ認識ヲ十分ニ深メラレテ、何
等カ今後ニ於テ、卽チ來ルベキ第七十議會
ニ於テハ、モウ少シ經綸ノアル所ノ御計畫
ヲ拜聽スル機會ヲ得タイト存ズルノデアリ
マヽ、マダ申上ゲタイコトハ多々アリマス
ガ、會期切迫ノ折柄、此ノ程度ニ止メテ私
ノ質問ヲ終リマス
〔水野甚次郞君「議事ノ進行ニ付テ議長
ニ希望ガアリマス」ト述フ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X01419360524&spkNum=24
-
025・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 只今申上ゲマス、
此ノ際議事ノ整理上、念ノ爲メ申上ゲテ置キ
マス、只今ハマダ討論ニ入ッテ居リマセヌ、
從ッテ意見ノ御陳述等ハ討論ニ入リマシテ
カラ御願ヒ致シマス、質疑ノ際ニハ質疑ノ
前提トシテ御意見ヲ御述ニナルコトハ差支
ゴザイマセヌガ、成ルベク御意見ノ陳述ハ
御遠慮ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X01419360524&spkNum=25
-
026・水野甚次郎
○水野甚次郞君 坂本男爵ノ燃料問題ハ昨
日モ私ガ申上ゲマシタルガ如ク、帝國現下
ノ急務デアル··発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X01419360524&spkNum=26
-
027・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 水野君ハ御質問
デアリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X01419360524&spkNum=27
-
028・水野甚次郎
○水野甚次郞君 非常ニ傾聽スベキ問題デ
アリマスルケレドモ、只今ノ如ク議席ヨリ
御述ベニナルノデハチットモ傾聽スルコト
ガ出來マセヌ、御登壇シテ戴クヤウニ、議
長カラ御注意ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X01419360524&spkNum=28
-
029・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 議長ニ於テモ將
來注意致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X01419360524&spkNum=29
-
030・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 柳原伯爵
〔伯爵柳原義光君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X01419360524&spkNum=30
-
031・柳原義光
○伯爵柳原義光君 私ノハ極メテ簡單ナ質
問デゴザイマス、今日午前ニ千秋豫算副委
員長カラ委員會ノ經過ヲ誠ニ詳カニ承リマ
シテ、深ク敬承致シタ譯デアリマス、其ノ
御報〓ノ中ニ、實ハ私ハ豫算委員各位ノ中
カラ文部大臣ニ對シテ宗〓方面ニ關スル重
要ナル質問ガ必ズヤオアリニナッタコトト實
ハ期待シテ居ッタノデアリマス、然ル所何等
此ノ問題ニ觸レタル御質疑等ガナカッタヤ
ウナ趣デアリマシタノデ、誠ニ其ノ點ニ付
テ、私ガ質疑ヲ致サウト思フ點ガ何等觸レ
テ居リマセヌカラ、私ガ改メテ此ノ件ニ對
シテ文部大臣ニ承リタイト考ヘル次第デア
リマス、現內閣ハ庶政刷新ト云フコトヲ深
ク聲明セラレマシテ、從來ノ政治デ苟モ改
ムルモノガアッタナラバ、之ヲ改メルコトニ
吝ナラザルモノデアルト云フ御聲明デアッ
タノデアリマス、サウシテ剛健質實ナル政
策ヲ實施スルト云フ、極メテ明快ナル聲明
ヲ發セラレタコトハ、深ク本員共ノ多謝シ
テ居ル所デアリマス、國民生活ノ問題、〓
育ノ問題、思想ノ問題ニ對シテモ、多大ナ
關心ヲ現內閣ガ持ッテ居ラレルコトモ、是亦
私ハ多謝致ス所デアリマス、然ルニ此ノ思
想問題、生活問題ノ根幹トモ申スベク、又
世道人心ニ最モ關係ノ深イ宗〓ノ問題ニ付
テ、何等御所見等ヲ承ル機會ガナカッタノハ
誠ニ私ハ殘念ニ思ッテ居ル次第デアリマス、
今ヤ國民思想ノ不安定、實生活ノ困難ニ乘
ジテ淫祠邪〓ガ其ノ勢ヲ逞シウ致シマシテ、
其ノ最モ甚シモノニ至リテハ大本〓ノ如キ
モノハ旣ニ禁止サレタノデアッテ、是ハ當然
ノコトト存ジマスルガ、斯クノ如ク此ノ國
民思想ノ不安定、生活ノ困難ニ乘ジテ、其ノ
間隙ニ淫祠邪〓ガ蔓ルノデアリマスル、是
ハ最モ憂慮スベキコトト存ジマスル、申ス
迄モナク健全ナル宗〓思想ノ涵養ハ、國民生
活ノ上ニ最モ必要ナモノデアリマシテ、是
ハ健全ナル〓育制度ト相俟ッテ相倚リ
相俟チ、最モ是ハ必要ナモノト思フノデア
リマスル、嘗テ此ノ宗〓法案或ハ又宗〓團
體法案ナル名ノ下ニ政府ガ提案ヲ致サレマ
シテ、本議場ニ三囘マデ現レテ居ッタ所ノ事
實ハ、皆樣モ御記憶ニ尙新ナル所デアルト
考ヘテ居ルノデアリマスル、其ノ沿革ヲ簡
單ニ中上ゲマスルト、第一ハ古ク山縣內閣
ノ時ニ宗〓法案ナルモノガ議場ニ現レタノ
デアリマスル、第二ハ若槻內閣ノ時、第三
ハ田中內閣ノ時デアッタノデアリマスル、第
一ノ時、卽チ山縣内閣ノ時ハ古イコトデゴ
ザイマスルノデ、私ハ其ノ當時議席ハ持ッテ
居リマセヌ、併シナガラ此ノ宗〓法案ナル
モノハ否決ニ相成ッタト承ッテ居リマスル、
第二ノ時ハ若槻內閣デアリマシテ、文部大
臣ハ故岡田良平君デアッタノデアリマスル、
此ノ時ハ確カ審議未了ニ終ッタト存ジテ居
リマス、第三ノ時ハ田中內閣ノ時デアリマ
シテ、是ハ勝田君ガ文部大臣デアラレマシ
テ、是モ不幸ニシテ審議未了ニ終ッタコト
デアリマスル、而シテ又此ノ前內閣ノ岡田
內閣ノ時ニ、故松田文相ガ丁度昨年ノ末デ
アリマシタガ、宗〓制度調査會ヲ開カレマ
シテ、不肖ナガラ私モ右調査委員會ノ委員
デアリマスル關係上、其ノ委員會ニ出席致
シタノデアリマスル、段々政府ノ提案
文部省ノ提案ニ依リマシテ審議ヲ
致シマシテ、審議ダケハ濟ンダノデアリマス
ルケレドモ、何等討論モ致シマセズ、從ッテ
文部大臣ニ向ッテ答申スルコトモ出來ナカッ
タノデ、卽チ唯質疑ヲ終ッタダケデ終ッタ
ノデアリマスル、サリナガラ今カラ考ヘテ
見マスルト、前內閣ノ松田文相ハ宗〓團體
法ヲ若シ出來タナラバ出シテ見ヨウト云フ
考ガアラレタモノカト憶測スルノデアリマ
スル、此ノ現內閣ハ庶政刷新ト云フ立派ナ
ル標榜ノ下ニ、政策ヲ聲明シテ居ラレルノ
デアリマスルカラシテ、必ズヤ此ノ思想問
題ニ最モ深キ關心ヲ有スル、此ノ宗〓團體
法若シクハ宗〓法ノ如キモノニ對シテハ相
當ノ御考ガアラセラレルコトト私ハ思フノ
デアリマスル、元來此ノ法規ノ上カラ見マ
シテモ、宗〓ヲ取締ル······取締ルト言フト
語弊ガアリマスルガ、宗〓ニ關スル法律ト
云フモノハ誠ニ紛然、雜然タルモノデアリ
マシテ、明治初年度ニ發セラレマシタル所
ノ太政官ノ太政官令デアルトカ、或ハ太政
官達トカ云フヤウナモノガマダ〓〓法律ト
シテ活キテ居ルノデアリマシテ、頗ル此ノ
內容ハ紛然、雜然ヲ極メテ居リマス、此ノ
法規ノ上カラ見テモ、之ヲ整理スル必要ハ
切實ニ必要ガアルト私ハ考ヘテ居ルノデア
リマスル、此ノ取扱ニ對シマシマモ誠ニ複
雜ヲ極メテ居ルノデアリマスルカラシテ、
是ハ法規ノ上カラ見テモ簡單ニスル必要ガ
必ズアルモノト信ジテ居ルノデアリマスル、
右申ス如ク、古ク山縣內閣、若槻内閣、田
中內閣、此ノ三内閣ニ依ッテ宗〓法案若シク
ハ宗〓團體法ト云フ名ノ下ニ提案セラレマ
シテ、本院ニ提出ニ相成ッタモノデアリマス
ルカラシテ、此ノ現時ノ如キ思想問題ニ對
シテ最モ深キ關心ヲ持ッテ居ラレル廣田首
相ハ、此ノ甞テ三代ノ內閣ガ出サレタ沿革
ガアル事デアルカラシテ、此ノ宗〓法ト云
フコトニ向ッテ、相當ナ御關心ガアラレルコ
トト思フノデアリマスガ、總理大臣ハ、總
理大臣トシテ、ドウ云フ御考デアリマスル
カ、簡單ニ其ノ御所見モ承リタイト考ヘル
ノデアリマス、尙又文部大臣ニ向ッテハ、前
申シマシタ如ク、三代ノ內閣ノ時ハ、旣
此ノ議場マデ宗〓ニ關スル案ガ送ラレテ、
サウシテ又前內閣ニ於テハ、兎ニ角前內閣
ノ故松田文相ガ、宗〓制度委員會ヲ招集セ
ラレ、其ノ質問ダケハ終ッタクラヰデアリマ
スカラ、少クモ出來タナラバ此ノ案ヲ出シ
テ見ヨウト云フ準備ノ行爲ハアラレタモノ
ト私ハ思フノデアリマス、仍テ現文部大臣
タル平生君ハ、ドウ云フ御考ヲ持ッテオイデ
ニナリマスカ、頗ル練達堪能ノ士デアラレ
ル御方デゴザイマスガ故ニ、此ノ宗〓ノ制
度ニ向ッテモ根本的ノ御方針及御考ガオア
リニナルコトヽ私ハ信ズルノデアリマス、
殊ニ諄ク申スヤウデゴザイマスガ、健全ナ
ル宗〓思想ノ發達ハ、〓育ト相掎リ相俟ッ
テ、最モ必要ナルモノデアルト私ハ信ズル
者デアリマス、此ノ庶政刷新ト云フ聲明ノ
下ニ立タレタ內閣ノ下ニ於テハ、必ズヤ此
ノ文部大臣ハ、此ノ問題ニ對シテ、相當ナ
御考ガアラレルモノト私ハ考ヘルノデアリ
マス、ドウ云フ御考ヲ御持チニナッテ居リ
マスルカ、一應此ノ場合ニ於テ承リタイト
考ヘマス、之ヲ以テ私ノ質問ヲ終リト致シ
マス
〔國務大臣平生釟三郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X01419360524&spkNum=31
-
032・平生釟三郎
○國務大臣(平生釟三郞君) 御答ヲ致シマ
ス、國民生活ノ不安定ト共ニ、國民思想ガ
混沌トシテ居リマスル今日ニ於キマシテ、
健全ナル宗〓ノ存在ト云フコトハ、〓育ト
共ニ最モ必要デアルト云フコトハ、只今柳
原伯爵ノ御述ニナック通リ至極御同感デア
リマス、又宗〓法ノ沿革ニ付キマシテモ、
柳原伯ノ御說ノ通リ、最初ニ宗〓法案ガ帝
國議會ニ提案サレマシタノハ、明治三十二
年第十四議會ニ初メテ提案サレタノデアリ
マシテ、其ノ後幾多ノ變遷ヲ經テ居リマシ
テ、未ダ今日ニ至ッテ制定ガ終ラヌノデアリ
やっ、段々〓究調査ノ結果漸ク宗〓團體法
要綱ト云フモノノ作成ヲ終リマシテ、昨年
十二月ノ十日ニ宗〓制度調査會ニ之ヲ諮問
致シマシテ、同會ニ於テハ、特別委員會ヲ
數囘開カレテ、逐條ニ付テノ質疑ヲ終リマ
シタガ、其ノ後議會ノ解散、內閣ノ更迭等
ニ依リマシテ、暫ク中止ヲシテ居リマシタ
ガ、漸ク委員ノ補充モ終リマシタカラ、
段々ニ審議モ進メラレルコトヽ考ヘルノデ
アリマス、審議答申ガ終リマシタナラバ
成ルベク早イ機會ニ於テ、帝國議會ニ提案
ヲ致シタイト考ヘテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X01419360524&spkNum=32
-
033・柳原義光
○伯爵柳原義光君 只今文部大臣ノ御答辯
ハ、極メテ敬承致シマシテ、深ク本懷ト致
シマス、成ルベク適當ノ機會ニ、成ルベク
早ク御提案アラムコトヲ希望致シマス、併
セテ總理大臣モ此ノ宗〓法案ノコトニ付テ
ハ深キ御關心ヲ持ッテオイデニナルコトト思
ヒマスガ、世道人心ニ及ボス問題ニ付テハ、
深キ關心ヲ有シマスル者デアルガ故ニ、
應總理大臣ノ······必ズヤ是ハ必要ナモノデ
アルト仰セラレルコトトハ信ジマスルガ、
若シ一應總理大臣ノ御所見ヲ伺フコトガ得
マシタナラバ幸甚デアルト存ジマス
〔國務大臣廣田弘毅君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X01419360524&spkNum=33
-
034・廣田弘毅
○國務大臣(廣田弘毅君) 只今柳原伯爵ヨ
リ宗〓ノ必要ニ付テ御述ニナリマシタガ、
私モ我ガ國民精神ノ涵養ノ上ニ於キマシテ、
一般〓育ノ外、宗〓的情操ノ必要デアルコ
トヲ感ジテ居ルノアリマス、又一方宗〓ノ
自由ノ一面ニハ、隨分如何ハシイ宗〓ガ日
本國內ノミナラズ海外カラモ參ルヤウナ形
勢モアリマスノデ、此ノ宗〓ニ付テハ相當
考慮ヲ政府トシテ加ヘナケレバナラヌト思ッ
テ居ルノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X01419360524&spkNum=34
-
035・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 長岡半太郞君
〔長岡半太郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X01419360524&spkNum=35
-
036・長岡半太郎
○長岡半太郞君 先刻阪谷男爵ト文部大臣
トノ、學術振興會ニ付キマシテノ御質問御
答辯ヲ承リマシタガ、更ニ大藏大臣、文部
大臣ニ御尋ネシタイ事ガゴザイマスル、私
振興會ノ學術部長トシテ三年餘此ノ事ニ當ッ
テ居リマスルガ、色々希望ヲ述べナケレバ
ナラヌ事項ガ生ジテ來タ次第デゴザイマシ
テ、只今文部大臣カラ御說明ニナリマシタ
ヤウニ、特別委員會二十五、委員會十二ト
云フモノカラ組織サレテ居リマスルガ、其
ノ特別委員會ノ性質ハ、國家的重要性ヲ帶
ビテ居ル學術方面ノ〓究ニ從事シテ居リマ
シテ、各省、各會社等ノ專門技師ヲ選拔致
シマシテ、色々ナ我ガ國ニ於テドウシテモ
今日ニ至ル迄出來ナイモノガアル、或ハ又
ソレヲ改善シナケレバナラヌモノガアル、
サウ云フ種類ノモノヲ〓究スルト云フ方針
デヤッテ居ルノデゴザイマスルガ、實際各
省、各會社トモオヤリニナッテ居ルノデスケ
レドモ、其中ニ居ラルヽ人ノミノ〓究ニ限ッ
テ居リマスル、廣ク見マスルト云フト、此
ノ事ハ斯ウ云フ會社ノ人ヲ使ハナケレバナ
ラヌ、此ノ事ニ當ッテハ、コヽノ省ノ某技師
ヲ使ハナケレバナラヌト云フヤウナコトニ
ナッテ居リマシテ、ソレガ唯一ツニ限ラレル
トドウシテモ旨ク行キマセヌ、日本全國
ヲ見渡シタ所デ、最モ優秀ナルト云フ人ニ
選ンデ委員トシテヤッテ居ル次第デゴザイ
やく、例ヘテ申セバ鐵ノ鑄物ノ〓究ナドト
云フモノガ、是ハ國家的重要ナル事柄デ、
工業上此ノ材料ノ宜シクナイト云フコトハ
一般ニ認メルコトデゴザイマスル、殊ニ軍
事上カラ申スト、大砲其他ノ軍器ノ製造等
カラシテ、鑄物ノ惡イト云フコトハ實ニ嘆
カハシイコトデゴザイマシテ、是等ノ缺點
ヲドウカシテ除キ去ラナケレバナラヌト云
フ方針デ、特別委員會ノ一ツハ出來テ居ル
ノデゴザイマシテ、其他ノモノモ之ニ類シ
タモノデゴザイマス、又祕密通信ノ如キハ、
電信電話······主ニ無線方面デゴザイマスル
ガ、一朝事有ル日ニ敵ニ知ラレテハ困ル、
ドウシタラバ宜イカ、其ノ方面ノ〓究ヲ致
シマシテ、是ハ大分電話ノ方面ハ成功致シ
テ居ル次第デゴザイマスルカラ、之ヲ實用
ニ供シテ行カウト云フ所マデ進ンデ居リマ
スル、是等二十五ノ特別委員會、十二ノ委
員會ヲ實際ニ旨ク動カスニハ、政府ヨリ支
給サレル七十萬圓、其ノ他財團寄附金等ヲ
利用致シマシテ、マア實際ニ〓究方面ノミ
ニ使ヒ得ル金ハ七十萬圓以內ニナッテ居リ
マシテ、如何ニモ其ノ〓究費ノ不足ヲ感ジ
テ居ル次第デゴザイマスルガ、玆ニ特ニ御
質問致シタイノハ、是カラ澤山此ノ種類ノ
モノガ出ヨウト思ヒマスルガ、曩ニ大臣ノ
述ベラレタ通リニ、原子ノ轉換ナドト云フ
純學問方面ノ〓究ガアリマス、原子ノ轉換
スベカラザルト云フコトハ從來ノ見地デ
アッタノデゴザイマスルガ、一昨々年頃カラ
シテ原子轉換スベシト云フコトニ〓究ガ進
ミマシテ、初ハホンノ顯微鏡的ノ仕事デゴザ
イマスルケレドモ、昨年初頃カラ大分大々的
ニナッテ參リマシテ、是ハドウシテモ振興會
デヤラナケレバナラヌ仕事デアル、〓算ヲ
致シテ見マシテモ、ドウシテモ小規模ニヤッ
タ所デ三十萬圓ヲ要スル、七十萬圓ノ內三
十萬圓取リマスルト云フト、外ノ仕事ハ全
ク出來マセヌノデ、事實外ニ之ヲ求メナケ
レバナラヌト云フ譯デ、甚ダ困ッタ次第デゴ
ザイマシタケレドモ、幸ヒニ無線電信
會社ノ使ヒ古シノ機械ヲ造リ直セバ宜イ
ト云フ譯デ、ソレヲ貰ッテ來マシテ、又
三井報恩會ノ如キモノカラ十五萬圓ヲ貰
フト云フヤウナコトデ、ヨウ〓〓ノコト
設備ヲ今日始メルヤウナ情況ニナッテ居
リマシテ、振興會ハドウシテモ其ノ七十
萬圓ノ內カラ支辨スルコトハ出來マセヌ、
附加ヘテ置キマスルガ、此ノ原子轉換ト云
フノハ、今日デハマダ其ノ原子量ノ近所ノ
モノガオ互ニ轉換サレル譯デアリマシテ、
例ヘバ鹽カラシテ「ネオン」ヲ取ルトカ、或
ハ「マグネシウム」ヲ取ルトカ、又「マグネ
シウム」モ色々變化シテ參リマス、硫黃カラ
燐ガ出來ルトカ、又違ック硫黄ガ出來ルト
カ、サウシテ多クノモノガ「ラヂウムノヤウ
ナ放射性ヲ持ッテ居ルモノデゴザイマシテ、
單ニ學問上ノ價値ノアルノミナラズ、或モ
ノハ醫療用ニ供セラレル、卽チ放射性ヲ利
用致シマシテ、此鹽ノ如キモノハ放射鹽ヲ
注射致シマスレバ大分其ノ效キ目ガアル
デアラウ、サウ云フヤウナコトガ續々ト出
テ來ルノデス、又瓦斯體ニ於テモ「アルゴン」
ノ如キモノハ放射性ヲ帶ビテ居ル、是ハ或
ハ氣管方面ノ病人ニ吸ハセタラバ癒リハシ
ナイカト云フヤウナマア考モアルノデゴザ
イマス、此ノ原子轉換ノ如キハ學同界ニ於
ケル滿洲事變ト匹敵スルモノデアッテ、少シ
モ躊躇スルコトノ出來ナイ仕事デアル、ソ
レデ迚モ振興會ノ經費デハ賄ヒ切レナイ仕
事デゴザイマスカラシテ、何カ此ノ滿洲事
變ノ如ク學問界ニ突發シタ時ニハ、政府カラ
シテ澤山ノ金デハゴザイマセヌカラシテ、
御支出ヲ願フト云フヤウナ方面ヲ設ケラレ
ルコトハ出來ナイモノデアラウカト云フ考
ヲ持ッテ居リマス、又當面顧慮シテ居ル問題
ノ一ツヲ申上ゲマスト、近頃ハゴザイマセ
ヌガ、地震ニ關シテ耐震構造、無論是ハ震
害ヲ輕減スル位ノコトデアッテ、全ク無害ト
云フコトハ保證出來マセヌガ、耐震構造ト
云フコトガ大分其ノ當面ノ專門家ガ〓究致
シマシテ、可ナリ進ミ來ッタノデアリマシ
テ、斯ウ云フモノモ到底振興會ノ入費デハ
支辨ガ出來兼ネルノデアリマス、ソレカラ
又モウ一ツ痛ク諸方面ニ於テ感ジテ居ルコ
トハ、振興會其ノ他ノ方面ニ於キマシテ〓
究ガ非常ニ進ンデ參リマシテ、ソレハ十年
前ト比較致シマスト、非常ナ進步デアリ、
殊ニ私ガ目ニ觸レテ居リマスノハ、工學上
ノ新〓究ト云フモノハ夥シクナッテ居ル、是
ハ實ニ國家的喜ブベキコトデアッテ、元外國
ノ工業ヲ多ク見傚ッテ來テ、コチラニ模倣ス
ルト云フヤウナ主義ガ段々ト薄ライデ來テ
カラニ、我ガ國獨特ノ〓究ニ基ク工業ヲ始
メルト云フヤウナ基礎ガ、段々ト固クナッテ
行クノハ誠ニ良イコトデアリマス、又科學
方面卽チ「サイエンス」ノ方面ニ於キマシテ
モ、ナカ〓〓進ンデ參リマシテ、其ノ他農
業方面ニモ同樣デアリマスルガ、如何ニセ
ム此ノ振興會ノ經費カラ、ソレ等ノ〓究ヲ
出版スルト云フコトガ頗ル困難デゴザイマ
ス、此ノ無線電信電話等ニ關シタモノハ國
際的ノ會合ガゴザイマシテ、是ハモウ一日
モ遲クスルコトハ出來マセヌカラシテ、僅
カニ二千五百圓位ノ金ヲ振興會カラ支出シ
テ、其ノ有益ナル〓究ヲ無線方面ノ人ニ配
ルコトニハ致シテ居リマスルガ、マア其ノ
位ノコトデアリマシテモ、出版費ノ缺乏シ
テ居ル一ツノ例トシテ申上ゲマストドウシ
テモ、私ハ帝國學士院カラ選出サレテ居リマ
スカラシテ、學士院ノ爲ニモ一ツ序ニ御諮
リヲ願ハナケレバナラヌト云フノハ、學士
院カラシテ每月各般ノ〓究ノ〓要ヲ出版シ
テ居リマス、ソレデ其ノ內容ハ有ラユル方
面ノ〓究者カラシテ學士院ニ提出サレ、學
士院デ一應批判ヲシタ上デ、出版スル次第
デゴザイマスガ、先月マデハ僅カニ其ノ各
〓究ニ對シテ三頁ノ割合デ出版スルコトガ
出來タノデアリマス、三頁ト云ヒマスト、
表題ニ少シ拔萃ノ拔萃ト云フヤウナモノヲ
加ヘタ位ナモノデ、ソレデドウモ是デハ十
分ニ行カヌト云フノデ、遣繰リ算段ヲシテ
漸ク今月カラ四頁ニ增スコトガ出來タヤウ
ナ次第デゴザイマス、ドノ國ニ行キマシテ
モ、此ノ「アカデミー」カラ出ル出版物ト云
フモノハ、獨創的ナ〓究ノ粹ヲ拔イタモノ
ガ出ルノデゴザイマス、ソレニ對シテ「イ
ギリス」ノ如キハ、頁數ヲ惜シマナク出版
シテ居リマス、「フランス」ニハ幾ラカ制限
ガゴザイマスケレドモ、其ノ材料ノ豐富ナ
ル我ガ帝國學士院デ、一月ニ出版スルモノ
ガ、凡ソ八囘位出テ居リマス、每週出マス
ガ、「コントランジユー」ノ半分位シカ、我
ガ帝國學士院カラ出スコトガ出來ナイノデ
アル、實際材料ハアルノデス、アルケレド
モ兎ニ角文部省カラ支給サレル經費ヲ見マ
スト、漸ク四頁ニ漕ギ付ケルコトガ出來タ
ト云フヤウナ狀態ニアリマス、是ハ或ハ大
臣ハ能ク御存ジナイカモ知レマセヌケレド
モ、實ニ見逃スベカラザル國家ノ恥辱ト私
ハ思ッテ居リマス、之ヲ如何ニナサル積リデ
アリマスカ、之ヲ一ツ質問致シタイト思フ
ノデアリマス
〔國務大臣馬場鍈一君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X01419360524&spkNum=36
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037・馬場えい一
○國務大臣(馬場鍈一君) 只今長岡君カラ
學術振興會ノ〓究費ガ不足デアル、或ハ帝
國學士院デアリマスカ、費用ガ足ラヌデ非
常ニ困ッテ居ル、是ハ私モ御同情ハ申上ゲマ
ス、併シ御承知ノ如ク學術振興ノ必要ナル
コトハ、無論能ク認メテ居ルノデアリマ
ス、有ラユル經費ガ悉ク皆不足ダト云フ譯
デアルノデアリマス、大藏省トシマシテハ
全體ヲ見渡シマシテ、其ノ最モ必要ナルモ
ノカラ、適當ニ按配ヲシテ行ク外途ハナイ
ノデアリマス、學術振興ノ必要ヲ認メナイ
譯デモナケレバ、今御話ノヤウナコトモ出
來ルダケハ致シタイト考ヘマス、併シ先刻
モ液體燃料ニ對スル國策ニ對スル莫大ナル
御要求モアル譯デ、其ノ他有ラユル國費ガ
今日各方面ノ要求ガ、非常ニ多額ナンデア
リマスカラ、大藏省トシマシテハ、適當ニ
財政ノ許ス限リニ於テ、緩急按配宜シキヲ
得テ、査定ヲ致ス外途ガナイノデアリマ
ス、御意見ノ程ハ能ク諒承致シマスカラシ
テ、無論私ハ御同情ヲ以テ査定ヲ致ス積リ
デアリマスケレドモ、此ノ場合ニ、來年度
ニドウ致スト云フコトヲ此處デ確言スルダ
ケハ、暫ク遠慮シタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X01419360524&spkNum=37
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038・長岡半太郎
○長岡半太郞君 國家費用ノ多端ノ時ニ、
單ニ學術振興バカリニ御支出ヲ願フコト
ハ、無論遠慮致シマスガ、此ノ學問方面デ、
ドウシテモヤラネバナラヌト云フコトガ起
リマシタ時分ニハ、何カソコニ一ツ御考ヘ
置キヲ願ヒタイト思ヒマス
〔國務大臣平生釟三郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X01419360524&spkNum=38
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039・平生釟三郎
○國務大臣(平生釟三郞君) 學術振興會ノ
爲ニ補助金ヲ增額シテ、此ノ學術振興ノ爲
ニ御盡力下サル方々ノ御滿足ヲ得タイト云
フコトハ山々デアルノデアリマスガ、財政
ノコトハ只今大藏大臣ヨリ申上ゲマシタ通
リノ事情デゴザイマス、先程私ガ述べマシ
タ通リニ、學術振興會ニ於テハ、最モ重要
ナル御〓究ニ從事セラレテ居ル學者ヲ總動
員シテ、基礎的ニ、又綜合的ニ、又試驗的
ニモ御〓究ニナッテ居ルコトハ、私ハ疾ニ承
知シテ居ル次第デアリマスカラ、出來ルダ
ケ財政ノ都合ヲ藏相ト相談致シマシテ、出
來ルダケノコトヲ致シタイト考ヘテ居ル次
第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X01419360524&spkNum=39
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040・長岡半太郎
○長岡半太郞君 只今大臣ノ御答辯デ致方
ゴザイマセヌガ、學士院ノ出版物ノ如キ、
他ノ方面ト多少權衡ヲ御考ニナリマシテ、
ドウカ一ツ御處分ヲ願ヒタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X01419360524&spkNum=40
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041・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 是ヨリ討論ニ入
リマス、通〓ニ依リ長岡隆一郞君ニ發言ヲ
許シマス
〔長岡隆一郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X01419360524&spkNum=41
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042・長岡隆一郎
○長岡隆一郞君 本員ハ、本追加豫算案ニ
對シ贊成ヲ致シ、且其ノ成立ヲ希望スル者
デゴザイマス、以下其ノ理由竝ニ之ニ關聯
致シマスル本員ノ希望ヲ極メテ簡單ニ申上
ゲタイト思ヒマス、本員聊カ健康ヲ害シテ
居リマスルガ故ニ、到底長時間ノ討論ニ堪
ヘザルノミナラズ、定メテ御聽キ苦シイコ
トト思ヒマスケレドモ、約數分間ノ時間ヲ
御割愛ヲ願ヒタイノデゴザイマス、思フニ
現內閣ハ成立以來日極メテ淺ク、調査〓究ノ
結果其ノ政策ヲ決定セラレル御暇ナカリシ
コトハ、本員能ク之ヲ諒承致シテ居ルノデ
ゴザイマス、追加豫算ノ金額ガ極メテ多ク、
提出サレタル法律案其ノ數又少カラズト雖
モ、其ノ多クハ前內閣ノ當時定リタル政策
ヲ踏襲セラレタルモノニ過ギズシテ、謂ハ
バ引繼事項ノ實行ニ外ナリマセヌ、是ハ無
理モナイコトデアリマシテ、本員敢テ之ニ
對シテ兎ヤ角ノ批評ヲ致ス意思ハ毛頭持ツ
テ居リマセヌ、唯來ルベキ通常議會ニ臨マ
レルニハ、到底此ノ儘デハイケマセヌ、玆
ニ重要ナル事項ニ付テ、本員ノ希望ヲ開陳
致シテ、其ノ實現ヲ待タムトスルモノデゴ
ザイマス、第一ハ對外國策ノ樹立デゴザイ
マン、廣田內閣總理大臣ハ外交問題ニ關シ
テハ、深キ知識ト長キ經驗ヲ持ッテ居ラレル
御方デアリマスルガ故ニ、國民ノ中ニハ此
ノ點ニ關シテハ廣田內閣ニ信賴ヲ置イテ居
ル者ガアルノデアリマス、又外交政策ノ統一
ニ關シ、廣田內閣總理大臣ガ孜々トシテ
努力セラレツヽアルコトハ、私モ窃ニ感謝
シテ居ルノデゴザイマス、併シナガラ
國民ノ一部ノ間ニ於キマシテハ、此ノ問題
ニ關シ深ク憂慮ヲ致シテ居ル者ガ少クナイ
ノデゴザイマス、卽チ政府ノ部內ニ於テ幾
分異リクル意見ノ對立スルモノアルニ非ズ
ヤト杞憂ヲ懷キツヽアル者ガアルノデアリ
マス、本員ハ固ヨリ之ヲ信ズル者デハゴザ
イマセヌ、又斯クノ如キコトナキコトヲ衷
心ヨリ希望スル者デゴザイマス、是等ノ件
ニ付テ具體的ニ申上ゲマスルコトハ、國際
關係ニ微妙ナル影響ヲ與フルコトヲ虞レマ
スルガ故ニ、一切具體的問題ニハ觸レマセ
ヌケレドモ、將來ハ廣田內閣總理大臣統率
ノ下ニ、閣僚ハ打ッテ一丸ト相成リ、統一セ
ル且一貫シタル外交方針ヲ樹立セラレ、對
外政策ニ付テ國民ヲシテ其ノ嚮フ所ヲ惑ハ
セシメザルヤウ、又國策ノ實行ノ衝ニ當ル
在外機關ヲ苦シメザルヤウ、一層ノ御盡力
ヲ願ヒタイノデゴザイマス、第二ハ先程阪
谷男爵カラ御話モゴザイマシタガ、國家ノ
財政政策ニ關スルコトデゴザイマス、之二
關シ不安ノ念ヲ持ッテ居リマス者ハ、決シテ
國民ノ一部ダケニ止リマセヌ、國民ハ本年
度ノ豫算ガドウナッテ居ルカト云フコトニ
付キマシテモ、勿論多大ノ關心ヲ持ッテ居リ
マスルケレドモ、ソレ以上ニ心配ヲ致シテ居
ルコトハ、將來ノ國家ノ財政ガドウナルカ
ト云フコトデゴザイマス、恐ラクハ此ノ一
兩年ノ間ハ、豫算ノ編成モ曲リナリ一ハ出
來マセウ、又赤字公債ノ消化モ出來マセワ、
問題ハ其ノ後ニ於ケル財政計畫ガドウナル
カト云フコトデゴザイマス、不祥ナルコト
ヲ申スヤウデアリマスルガ、只今ノ儘デ單
ニ其ノ日暮シノ豫算ヲ編成シ、無爲無策ニ
シテ一時ヲ彌縫スルニ於テハ、或ハ惡性ノ
ㄱインフレーシヨン」ノ兆候ガ起リハシナイ
ダラウカト云フコトヲ虞レテ居ル者モアル
ノデゴザイマス、勿論此ノ問題ノ處理ハ、
極メテ困難デアルコトハ本員ハ能ク承知致
シテ居リマス、批評ノ立場ニ立チマシテ、
御註文ヲ申上ゲルコトハ極メテ容易デゴザ
イマスガ、責任ノ位置ニ立ッテ實際問題ヲ處
理シテ居ラルヽ當局者ガ、日夜御苦心ヲサ
レテ居ルコトハ、是ハ察スルニ餘リガアル
ノデアリマス、本員ハ敢テ難キヲ政府ニ强
フルト云フガ如キ考ヲ以テ申上ゲルノデハ
毛頭ゴザイマセヌ、前ニ申上ゲマシタ通リ
國民ハ本年度、來年度ノ豫算ガ如何ナルコ
トニナッテ居ルカ、又如何ニナルデアラウ
カ、此ノ問題ニモ多大ノ關心ヲ持ッテ居リマ
スルケレドモ、ソレ以上ニ後年度ノ國家ノ
財政ガドウナルカト云フコトニ付テハ、其
ノ以上ニ非常ナル不安ト心配トヲ持ッテ居
リマス、勿論將來ノコトハ人間ノ力デハ分
ラヌコトガ澤山ゴザイマス、國際情勢ノ變
化國內事情ノ推移ニ依リマシテハ、豫期
セザル費用ヲ要スルコトモゴザイマスルガ、
大體ニ於テ獨リ本年來年ノミナラズ、今後
各省ノ要スル經費ノ〓略ニ付テ、大體ノ見
通シヲ付ケタイト多クノ國民ハ希望シテ居
ルノデゴザイマス、此ノ將來ノ各省ノ要求
スル經費ニ付テ〓略ノ見込ガ付キマシテ、
是ガ略〓明カニナッテカラ、初メテ將來ノ財政
政策ノ見當ガ付クコトニナルト思ヒマス
馬場大藏大臣ハ財政計畫ニ付テハ極メテ御
堪能ナル御方デアル、國民ハ現内閣ノ力ニ
依ッテ財政ノ將來ニ付テ、幾分ナリトモ安心
ヲ得タイト衷心ヨリ希望致シテ居ル、來ル
ベキ通常議會ニ於キマシテハ、完全ナル〓
計表ヲ拜見出來ルコトト樂ンデ居リマス、
馬場大藏大臣ハ國民ノ此ノ大イナル期待ト
信賴トヲ裏切ラレザルコトヲ希望スル次第
デゴザイマス、第三ハ庶民階級ノ生活安定
ニ關スル諸政策ノ遂行デゴザイマス、思フ
ニ社會ノ一部ニハ現在ノ經濟組織ニ思切ッ
タル改革ヲ施シ、之ニ依ッテ庶民生活ノ不安
定ヲ解除セムトスル思想ガアリマスルト同
時ニ、又一部ニハ社會ノ現狀ヲ此ノ儘ニ維
持致シ、時ノ經過ト共ニ人心ノ安定ヲ待タ
ムトスル思想モゴザイマス、此ノ思想ノ對
立スル所、其處ニ各般ノ社會ノ不安ガ生レ
テ來タモノデナイカト考ヘラレル、固
ヨリ社會ハ複雜多岐ニシテ、コヽニハ
歷史モアリ、秩序モアリマスルガ故ニ、
極メテ純眞ナレドモ又極メテ單純ナル人々
ノ考ヘラレル如ク、一朝ニシテ地上ノ樂
園ヲ作ラムトスルガ如キコトハ、極メテ
困難ナリトハ信ジマスケレドモ、又單ニ
一時ヲ彌縫シ、當面ヲ糊塗スルコトニ依ッテ
人心ノ安定ヲ靜カニ待タムトスルガ如キコ
トハ、今日ノ情勢、到底之ヲ許サザル事情
ニ差迫ッテ居ルト信ジマス、殊ニ過去ノ政治
ヲ振返ッテ見マスルト、餘リニ現狀ノ維持ト
云フコトニ付テ大イナル力ガ働キ過ギテ居ッ
タノデハナイカト考ヘラルヽ節モアルノデ
ゴザイマス、是レ卽チ政治ノ極メテムヅカ
シイ所デゴザイマシテ、現實ヲ離レテ理想
ノミヲ夢ミルコトハ危險デアルト同時ニ、
理想ナクシテ、現實ノミニ拘泥スルコトハ
極メテ調子ノ低イ政治デアルト信ジマス、
要ハ理想ト現實ノ間ヲ巧ミニ調和シ、巧ミ
ニ調整スルコトガ當面ノ政治ノ要諦ト信ジ
マスルケレドモ、此ノ事モ亦言フハ易クシ
テ行フコトハ極メテ困難ナル問題デアル、此
ノ壇上ニ於テ政府ヲ批判シ、之ヲ鞭撻スルコ
トハ極メテ容易デアリマスルガ、責任ノ局
ニ當リ、實際ノ政治ニ當ッテ居ラルヽ大臣諸
公ノ御苦シミハ、是ハ一通リヤ二通リデハ
ナイコトト考ヘマス、幸ヒニシテ現內閣ノ
諸公ハ何レモ一粒撰リノ立派ナ政治家ノ方
方デアリマシテ、今日ノ大臣ノ椅子ニ戀々
タルヤウナ未練ヲ持ツ方ハ一人モ居ラレヌ
コトト信ジマス、何卒左顧右眄、其ノ日暮
シノ政治ヲ行ハレルコトナク、玉ト碎クル
御決心ヲ以テ、來ルベキ通常議會マデニハ
國民ヲシテ幾分ナリトモ將來ニ希望ヲ繋ガ
ルベキ政策ヲ發表シ、且著々之ヲ實行ニ移
サレムコトヲ希望致シマス、世上ニハ廣田
内閣總理大臣ノ心事ヲ誤解スル者アリ、單
ニ内閣總理大臣タラムガ爲ニ七重ノ膝ヲ八
重ニ折ッテ内閣ヲ組織セラレタリト批評ス
ル者モゴザイマスルケレドモ、我々廣田內
閣總理大臣ノ平素ノ御人格ヲ熟知致シテ居
ル者ハ斯ノ如キ齊東野人ノ言ヲ信ジマセヌ、
政局不安ニシテ人心動搖シツヽアル際、一
日モ早ク政局ヲ安定セラレムガ爲ニ堪ヘ難
キヲ堪ヘ、忍ビ難キヲ忍ビ、世上ノ毀譽褒
貶ニ一切耳ヲ藉スコトナク、內閣ヲ組織セ
ラレタルモノナリト信ジ、其ノ御心事ニ對
シ、其ノ御決心ニ對シ、深ク感謝致シテ居
ル者デゴザイマス、承ル所ニ依リマスレバ
廣田內閣總理大臣ハ大楠公ガ湊川ニ赴カル
ルガ如キ決死ノ御決心ヲ以テ御就任遊バサ
レタサウデゴザイマス、本員其ノ悲壯ナル
御心事ニ對シ深ク敬意ヲ表スル者デゴザイ
そう、然レドモ國民ノ希望スル所、政府ノ
宣傳ヤ放送ヲ聽カムト欲スルニアラズシテ、
其ノ政策ノ實現ヲ見ムト欲シツヽアルノデ
ゴザイマス、率直ニ申上ゲマスレバ、政府
ノ聲明書ノ御發表ノ如キハ、最早拜讀スル
ノニ飽キテ居ルノデゴザイマス、或ハ各省
ノ廢合ノ如キ、官制ノ改正ノ如キ、或ハ結
構デゴザイマセウ、併シナガラ國民ノ望ム
所ハ國民生活ニ多クノ關係ヲ有セザル枝葉
末節ノ事務的ノ政策ノ實行ニ非ズシテ、飢
餓線上ニ彷徨シツヽアル庶民階級ノ生活安
定ノ政策ノ實行デゴザイマス、私ハ廣田內
閣ハ必ズ此ノ困難ナル問題ノ解決ニ、幾分
ナリトモ其ノ步ヲ進メラレル實力ヲ有スル
鞏固ナル、且有力ナル內閣ナルコトヲ信ジ
且之ヲ希望スル者デアリマスガ故ニ、來
ルベキ通常議會ニ於テ廣田內閣ノ眞ノ價値、
且眞ノ實力ヲ示サルヽ機會ニ到達致シマス
コトヲ樂シミ、其ノ際ニ於テ國民ト共ニ廣
田内閣ノ樹立セラルヽ諸政策ヲ詳カニ檢討
致シ、嚴正ニ之ヲ批判致シタイト考ヘテ居
ル者デゴザイマス、以上ノ希望ヲ開陳致シ
マシテ、本員ハ追加豫算案ニ贊成致スモノ
デアリマス(拍手スル者アリ)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X01419360524&spkNum=42
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043・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 他ニ御發言モナ
ケレバ採擇ヲ致シマス、御異議ガナケレバ
七案全部ヲ問題ニ供シマス、原案ニ贊成ノ
諸君ノ起立ヲ請ヒマス
〔總員起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X01419360524&spkNum=43
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044・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 全會一致ト認メ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X01419360524&spkNum=44
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045・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 日程第九ヨリ第
十五マデ、昭和九年度第一豫備金支出ノ件
外六件、承諾ヲ求ムル件、會議、委員長報
〓、是等ノ七件ヲ一括シテ議題ト爲スコト
ニ御異議ガゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X01419360524&spkNum=45
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046・近衞文麿
○議長(公爵近衞文麿君) 御異議ナシト認
メマス、委員長池田侯爵
昭和九年度第一豫備金支出ノ件、昭和
九年度特別會計第一豫備金支出ノ件、
昭和九年度特別會計豫備費支出ノ件、
昭和九年度滿洲事件第一豫備金支出ノ
件、自昭和十年四月昭和十年度第二豫
至同年十二月
備金支出ノ件、自昭和十年四月昭和十
至同年十二月
年度特別會計第二豫備金支出ノ件自昭
至同
和十年四月昭和十年度特別會計豫備金
年十二月
外ニ於テ豫算外支出ノ件
右承諾スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報〓候也
昭和十一年五月二十三日
委員長侯爵池田宣政
貴族院議長公爵近衞文麿殿
〔侯爵池田宣政君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X01419360524&spkNum=46
-
047・池田宣政
○侯爵池田宣政君 昭和九年度第一豫備金
支出ノ件外六件ニ關シマスル事後承諾ヲ求
ムル件ニ付キマシテ、委員會ノ經過竝ニ結
果ヲ極ク簡單ニ御報告申上ゲマス
〔副議長伯爵松平賴壽君議長席ニ著ク〕
是等ノ諸件ノ內容ハ過日本會議ニ於キマシ
テ說明ガゴザイマシタガ、政府ヨリ事後承
諾ヲ求メテ居リマスルモノハ、昭和九年度
一般會計第一豫備金支出六百萬圓、昭和九
年度特別會計第一豫備金支出五百六萬八百
二十三圓、昭和九年度特別會計豫備費支出
一千四十九萬八千圓、昭和九年度滿洲事件
第一豫備金支出一千萬圓、昭和九年四月ヨ
リ同年十二月ニ至ル一般會計第二豫備金支
出一千九百二萬八百五十六圓、同期間ニ於
ケル特別會計第二豫備金支出三百三十四萬
四千三百五十三圓、同期間ニ於ケル特別會
計剩餘金支出百八十二萬八千四百九十二
圓合計五千五百七十五萬二千五百二十四
圓デゴザイマスガ、尙委員會ニ於キマシテ
ハ詳細ナル說明ヲ聽取シ、愼重審議致シマ
シタ結果、右諸件ニ付承諾ヲ與フベキモノ
ト全會一致決定シタノデゴザイマス、尙各
般ニ亙ル詳細ナル內容ニ付キマシテハ之ヲ
省略スルコトト致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X01419360524&spkNum=47
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048・松平頼壽
○副議長(伯爵松平賴壽君) 別ニ御發言モ
ゴザイマセヌケレバ採決致シマス七件ニ
對シ委員長ノ報告通リ承諾ヲ與フルコトニ
御異議ゴザイマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X01419360524&spkNum=48
-
049・松平頼壽
○副議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト
認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X01419360524&spkNum=49
-
050・松平頼壽
○副議長(伯爵松平賴壽君) 日程第十六、
競馬法中改正法律案、政府提出、衆議院送
付、第一讀會ノ續、曾我委員長
競馬法中改正法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報〓候也
昭和十一年五月二十二日
委員長子爵曾我祐邦
貴族院議長公爵近衞文麿殿
〔子爵曾我祐邦君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X01419360524&spkNum=50
-
051・曾我祐邦
○子爵曾我祐邦君 只今上程致サレマシタ
所ノ競馬法中改正法律案、特別委員會ノ經
過及結果ヲ御報告申上ゲマス、本委員會ハ
去ル二十日二十二日ノ午後ヲ全部費シタノ
デゴザイマス、本改正案ノ提案ノ理由ノ主
ナルモノヲ申上ゲマス、本改正案ハ現在ノ
競馬ノ情勢ニ處シテ、競馬ノ使命革正ニ遺
憾ナキヲ期スト共ニ、昭和十一年度ヨリ實
施セラレタル所ノ馬政第二次計畫ノ關係ヨ
リ致シマシテ、馬政上競馬ノ機能ヲ發揮セ
シメル必要ガ益〓重クナッテ參リマシタノ
デ、政府ハ現行競馬制度ニ改善ヲ加フルノ
必要ヲ認メ、昨年馬政調査會ニ對シマシテ
競馬ノ統制改善ニ關スル方策ヲ諮問シタノ
デゴザイマス、此ノ改正案ハ此ノ答申ニ基
イテ立案セラレタモノデアルト云フコトデ
ゴザイマス、而シテ本改正案ノ骨子トナリ
マス所ノモノハ三點ゴザイマス、主ナルモ
ノハ第一、競馬施行機關ニ關スル事項デア
リマシテ、現在十一ノ競馬倶樂部ガゴザイ
マスガ、ソレガ各〓獨立シテ施行シテ居ル
ノデゴザイマスカラ、之ヲ日本競馬會ト申
シマスモノニ、一箇ノ法人ニ統一シテ施行
セムトスルノデアリマス、第二ハ政府納付
金ニ關スル所ノ事項デゴザイマス、從來ノ
政府ニ對スル納付金率ハ、勝馬投票劵ノ賣
得金額ノ百分ノ六以內デアリマシクモノヲ、
今囘ハ百分ノ八以內ニ改メムトスルモノデ
ゴザイマス、及政府納付金ノ馬事經費充當
割合ハ四分ノ三ヲ下ルコトヲ得ズト改メタ
ノデゴザイマス、第三點ハ取締ニ關スル事
項デゴザイマス、調馬師、調〓師、騎手ノ
取締及開催執務委員ノ職務執行ヲ妨害スル
者ニ對スル制裁及日本競馬會ノ役員等ノ違
法行爲ノ制裁ヲ嚴重ニヤルト云フコトデゴ
ザイマス、而シテ本案ヲ審議サルヽニ當リ
マシテハ、陸軍當局ヨリ軍馬資源ノ維持涵
養ノ必要上、競馬機能ノ充實强化ヲ圖リ、
競馬施行ノ適正ヲ期セムトスル本改正案ニ
對シマシテハ、全然贊成ナリトノ意見ノ陳
述ガゴザイマシタ、先ヅ委員會ハ政府ノ詳
細ナル所ノ說明ヲ求メマシテ、然ル後質問
應答ニ入ッタノデゴザイマス、只今其ノ質問
應答ノ主ナルモノニ付キマシテ十數點ヲ御
紹介致シタイト存ジマス、一、競馬ノ施行
ガ馬產ノ改良上ニ及ボシタル所ノ影響如
何、之ニ對シマシテハ政府ハ競馬ノ施行
ニ依ッテ馬ノ種類ノ改良ヲ進メ、又軍馬
トシテノ體型モ現ニ向上シツヽアリ、又產
馬地方ニ對シテモ種々ノ點ニ於テ好影響ヲ
與ヘテ居ルト云フ答辯デゴザイマシタ、第
二、政府ハ陸軍ノ要求スル馬ガ競馬ニ依ッテ
得ラレテ居ルト信ズルヤ否ヤ、答現在競
馬ニ使用シテ居ル所ノ馬ハ直チニ軍馬ニ適
當ナルモノトハ言ヒ難イケレドモ、將來ハ
出走馬ハ直チニ軍馬トシテ出來ルヤウナ資
格ニスルヤウニ改善シテ行キタイ、現在ノ
所ニ於テモ乘馬トシテノ資源トシテ相當ニ
役立ッテ居ルモノガアルト云フ御答辯デゴ
ザイマシタ、第三、競馬ノ社會風〓上ニ及
ボス所ノ影響、且之ニ對スル所ノ對策ハド
ウデアルカト云フコトニ付テ政府ノ所見ヲ
尋ネラレタノデゴザイマス、答政府ハ勝
馬投票ノ發賣ハ風〓上ニ影響ナシト云フコ
トハ言ヒマセヌ、併シナガラ競馬ハ馬ノ改
良增殖上ニ必要ナルモノデアルカラシテ、
之ガ施行ニ付キマシテハ、十分之ニ注意ヲ
致シテ弊害ノ最モ少カラムヤウニ努メタイ
ト云フコトノ御答辯デゴザイマシタ、四、
政府ハ將來競馬場ノ移轉ヲ考ヘテ居ラヌカ、
答、當分其ノ必要ハナイト思フカラ、ソレハ
考ヘテ居ラヌ、第五、日本競馬會ガ競馬施
行ヲ統一スルニ當ッテ、其ノ結果ハ、勝馬投
票發賣ノ額ガ減少シテ、維持スルヤウナコ
トニ困難ナコトガアリヤシナイカト云フ御
問デゴザイマシタ、別ニサウ云フヤウナコ
トハナイヤウニ思フト云フ御答辯デゴザイ
マシタ、第六、今囘ノ納付金ノ增加ニ依ッテ、
競馬ノ經營ニ經濟的ノ支障ヲ與ヘヤセヌカ、
是モ只今ノ、前ノ御答ト同ジヤウニ、サウ
云フ心配ハナイ、而シテ立案ニ對シテハ各
倶樂部ノ經營情況ヲ十分ニ調査シタ上デシ
タコトダカラ、サウ云フ支障ハナイト思フ、
七、將來日本競馬會ニ多額ノ餘裕金ヲ生ジ
タル場合ハ納付金率ノ引上ヲ爲スノ考ナリ
ヤ、答收入增加ノ場合ニハ適當ナル納付
金率ノ改正ヲ行フハ勿論、日本競馬會ノ餘
裕金ガ一定ノ金額以上ニ達シタ場合ニハ
之ヲ政府ニ納付セシメムトスルト云フコト
ヲ考ヘテ居ル、其ノ規定ヲ設ケタノデアル、
八現在ノ勝馬投票劵面ガ一枚二十圓デア
ルガ、是ハ高キニ過ギアシナイカ、而シテ
其ノ結果ト致シテ呑ミ屋ノ跋扈等、違反者
ナドガソレガ爲ニ殖エテ來ルノデアル、寧
ロ斯ウ云フ弊害ヲ防グ爲ニ、其ノ二十圓劵
面ヲ少額ノモノニシタラドウカト云フ御問
デゴザイマシタ、答各倶樂部ガ獨立デア
リマシタ場合ニハ、少額ノ勝馬投票劵ノ發
賣ハ、倶樂部ノ收入上困難デアリマシタ
ガ、日本競馬會ト云フモノニ統一セラレタ
大キナモノニナック後ニハ、或ハ地方ノ情況
如何ニ依ッテハ斯ウ云フコトモ出來ナイコ
トデハナイト思フト云フ御答辯デゴザイマ
シタ、九、競馬法制定ト云フモノハ明治四
十三年ノ時ニ貴族院ニ於テ十分論議セラレ
タモノデアリマス、其ノ節ニ於キマシテ競
馬ト云フモノノ風紀、風〓上ニ及ボス弊害
ニ付テ先輩ノ諸君ヨリ十分議論ガ圖ハセラ
レタノデアリマス、サウシテ一時廢止セラ
レテ、更ニ大正ニナッテ許サレタヤウナ歴史
ヲ持ッテ居ルノデアリマス、而シテ其ノ節ノ
馬劵ガ許サレマシタ時ニ當リマシテハ、陸
軍當局ノ說明ニ依リマスルト、風紀、風〓
ニ影響スルモノデハアルガ、陸軍ハ馬政上
ノ改良ニ此ノ重點ヲ置イテ居ルノデアルカ
ラ、已ムヲ得ナイモノデアルト云フヤウナ御
答辯デアック、而シテ更ニ論議ガ〓ハサレマ
シタ結果、甚ダシク風紀風〓ノ上ニ影響ヲ
與フルモノデアルナラバ、將來ハ之ヲ止メ
ルト云フ言明ヲ政府ハシテ居ルノデアリマ
ス、ソレデ一委員ノ質問ハ斯カル重大ナル
所ノ國防ノ基礎デアル所ノ馬政ノ重點ヲ、
將來或ハ止メラレルカモ知レナイト云フ不
安定ノ基礎ノ上ニ之ヲ形ツクッテ行クト云フ
コトハ、國防其ノモノノ原則ノ上カラ言ウテ
モ不安心デアルシ、又面白クナイコトデハナイ
カト云フ質問デゴザイマシタ、政府ノ答ハ
競馬ノ收入ガ萬一ノ場合ニアッテ望マレナイ
時ニハ、或ハ他ノ一般經費ニ依ッテ其ノ馬產
ノ安定ヲ圖ル積リデアル、而シテ現在ニ於
テハ斯カル弊害アリト迄ハ、止メラレル程ノ
程度ナリト迄ハ思ハレナイ、當然競馬其ノ
モノハ存在シ得ルモノデアルト自分ハ思フ
ト云フヤウナ御答辯デゴザイマシク、第十、
日本競馬會ノ承繼スベキ所ノ特別ノ權利義
務ニ付テ、橫濱ノ日本「レース」倶樂部ニ特
別ノ特例ヲ設ケタ其ノ理由ハ何處ニ在ル
カ、答日本「レース」倶樂部ハ他ノ倶樂部
ト異ッテ居リマシテ、馬劵禁止ノ時代ニ於テ
モ競馬場ノ設備等ニ付テ政府ノ補助ヲ受ケ
ルコトナク、而モ競馬ヲ實施スル當時ニ於
テハ或程度ノ資產ヲ有シテ居ッタ、サウ云フ
過去ニ於ケル所ノ關係ガアリマスカラシ
テ、此ノ點ヲ考慮シ、其ノ權利義務ノ一部
ヲ保留シ得ルコトヲ適當ノ處置ト看做シタ
ノデアル、斯ウ云フ御返答デゴザイマシタ、
第十一、今囘ノ改正ニ於テ政府ノ納付金ヲ
社會事業ニ充當スルコトハ、割合ガ三分ノ
一ヨリ四分ノ一ト云フコトニ減ゼラレタ理
由ハ如何、答從來納付金ノ發賣高ノ百分
ノ六以内ナリシモノヲ以テ、今囘ハ馬事經
費ニ充當スル爲ニ、百分ノ八以內ト改メラ
レタノデアリマス、而シテ又一方カラハ社
會事業ニ充當スル割合ヲ從來ノ通リトスル
意味ニ於テ四分ノ一ニ改メラレタノデアリ
やく、而シテ此ノ社會事業ニ充當スル所ノ
金額ハ、昭和六年ノ改正ニ際シマシテ、政
府部內ニ於テ百萬圓トノ話合ニナッテ居ル、
今後モ其ノ金額ハ減ルヤウナコトハナイト
云フコトデゴザイマシタ、是カラ以下只今
ノ問題ヲ問ヒヲ含ミマシテ二三點質問サレ
マシタ委員カラ、特ニ本議會ニ於キマシテ
明瞭ニ御紹介シテ呉レト云フ御依賴デゴザ
イマシタ、ソレデ是ハ一括シテ全部申上ゲ
ル積リデゴザイマス、十二、政府ノ說明ニ
依レバ社會事業ニ充當スル所ノ金額ハ百萬
圓ニナッテ居ルガ、然ラバ此ノ際社會事業ノ
充當ノ割合ヲ四分ノ一ニ減ズルト云フヤウ
ナコトヲシテ、其ノ實質ニ變化ナキトシテ
モ、法文上ニ三分ノ一ト云フ所ヲ四分ノ一
ト云フヤウナ風ニ、目ニ付クヤウナ書方ヲ
シテ、恰モ社會事業其ノモノヲ輕ク視ルヤ
ウナ感ジヲ一般ニ與ヘルト云フヤウナコト
ハ、現在ノ社會ノ情勢、又此ノ社會事業ニ
獻身的ニ奉仕シテ居ラレル所ノ多クノ方面
委員ト、其ノ他特殊ノ人々ノ頭ニ如何ニ是
ガ映ズルデアラウカ、誠ニ內容ニ變化ナキ
モノナラバコンナ書キ方ヲセヌデモ何ト
カ書キヤウガアリハシナイカ、此ノ一般社
會ニ與フル所ノ、書キ方ノ拙ナルガ爲ニ惡
イ感情ヲ與ヘルコトハ甚ダ面白クナイ、是
ハ何トカ考ヘラレヌカト云フコトデアリマ
シタ、答、今日ノ改正ト云フモノハ馬ノ第
二次計畫ニ充當スルガ爲ノ納付金ヲ增加シ
タノデアル、ソレガ爲ニ若シ馬ノ方ノ點カ
ラバカリ理想ヲ以テ申シマスレバ此ノ第
二次計畫ヲ遂行スルニ當ッテハ、全部ノ今ノ
納付金ヲ使ッテモ其ノ足ラザラムコトヲ恐
レテ居ルヤウナ情況ニアルノデアル、ソレ
デアルケレドモ社會事業ト云フヤウナ尊キ
モノガ旣ニ習慣的ニ支出セラレルコトニ
ナッテ居ルノデアルカラ、此ノ金額ハ減シタ
クハナイ、併シナガラ今御說ノ如クニ之ヲ
殖ヤシテ行クト云フヤウナ譯ニイカナイ、
只今ノ所デハ此ノ割合ヲ以テ、精々前ニ申
上ゲマシタ所ノ割合ヲ以テ、社會事業ニ充
當スルコトノ範圍ヲ變更スルコトガ適當ト
信ジタカラ、之ヲ已ムナク斯クノ如クシタ
ノデアル、第十三、馬事經費ハ之ヲ他ノ財
源ニ求メテ、競馬ノ納付金ノ如キ多少社會
ノ風紀、風〓上カラ面白カラザル影響ヲ與
ヘテ居ルコトニ鑑ミテ、セメテノ罪亡ボシ
二、ソレカラ上ル所ノ納付金ト云フモノ
ハ、全部社會事業ニ充當スルノガ適當デナ
イカト云フ、非常ニ强キ所ノ御議論デゴザ
イマシタ、政府ハ之ニ對シマシテ競馬法制
定ノ趣旨ヨリ考ヘ且又競馬ニ依ル收入ハ、
前ニ御說明申上ゲマシタコトト關聯致シマ
シテ、馬ノ改良、增殖ノ經費ニ充ツルコト
ガ最モ適當デアルト云フコトヲ信ジタ爲
ニ、又今後益〓馬ニ關スル經費ノ增加ノ大ナ
ルモノヲ見越シテ居ルガ爲ニ、其ノ必要ニ
餘儀ナクセラレテ馬事財源ヲ確保スルガ爲
ニ、斯ウ云フ風ニシタノデアルト云フ御返
答デゴザイマシタ、十四、又一委員ハ內務
省政府委員ノ出席ヲ求メラレマシテ、競馬
ニ依ル所ノ收入ヲ社會事業費ニ充當シ、救
護施設ノ徹底ヲ期スルコトヲ考ヘテハドウ
カト云フ御質問デゴザイマシタ、內務省ノ
政府委員ト致シマシテ其ノ答辯トシテハ、
競馬ノ收入ヲ社會事業ニ充當スルコトハ
誠ニ理想ノ上カラ出來レバ是レ程望マシ
イコトハナイノデゴザイマス、併シナガラ
競馬ノ收入ハ馬政改良、增殖ニ充ツル必
要カラ割出サレタモノデアッテ、先に
モ述ベマシタヤウナ理由ノ爲ニ、救護
施設ニ對シマシテハ、今後他ノ方面カラ必
要ナル財源ヲ得ルコトニ努力スル、又考へ
テ見タイ、而シテ其ノ徹底ヲ期シタイト思
フトノコトデゴザイマシタ、更ニ本年度ハ
ソレガ爲ニ、其ノ意味ニ於テ本年度ハ追加豫
算トシテ五十萬圓ヲ其ノ費用ノ中ニ增加計
上サレテアルト云フ御答辯デゴザイマシタ、
其ノ他或ハ繋駕速步ノ競爭ガ弊害ガアルト
カ、我ハ軍馬購買ニ對シテノ購買漏レニナツ
テ居ル所ノ合格馬ノ始末ハドウスルカト云
フヤウナ問題ガ多々ゴザイマシタ、併シ是
等ニ付キマシテハ政府ハ考ヘテ置カウトカ、
十分又〓究シテ置カウト云フヤウナ一般的
ノ御返答デゴザイマシタ、或委員ヨリ御意
見ト致シマシテ、競馬ニ於テハ能力檢定モ
爲シ、成績ノ優良ナル所ノ優秀ナル所ノ馬
ハ、政府ニ於テ種馬トシテ之ヲ買上ゲ、又
國ニ於テハ生產シタ所ノ馬ハ競馬ニ於テ其
ノ能力ヲ檢定スル、競馬ノ機能ト馬政ノ運
用ト云フモノヲヨリ以上ニ密接ナラシムル
ノ要アリト思フガ、是ハドウスルカト云フ
御質問デゴザイマシタ、答、從來此ノ點ニ
付テ考慮シテ居ル、一層ノ〓究ヲ重ネテ努
力スル積リデアルト云フコトデアリマシタ、
又御意見ト致シマシテ、此ノ法案ハ讀ンデ
見ルト競馬法案ニアラズシテ馬劵法案ト云
ウテ宜シイ、殆ド各條馬劵ノコトノ書イテ
ナイ所ハナイ、如何ニモ馬劵法案ニシテ競
馬法案デナイノデナイカ、斯ウ云フ法案ト
云フモノハ面目クナイ、何トカ此處ニ思ヒ
ヲ致サナカッタノデアルカト云フ御意見デ
ゴザイマシタ、委員會ハ二日ヲ費シマシテ
討論ニ入リマシタ際ニ、一委員ヨリ第八條
第三項中ノ『「三分ノ二」ヲ「四分ノ三」ニ』、
此ノ十文字ヲ削除スルノ修正動議ガ出マシ
ク、併シナガラ是ハ贊成者ガゴザイマセヌ
ガ爲ニ、其ノ修正動議ハ成立致シマセヌデ、
採決ニ入リマシテ此ノ法案ハ、滿場一致ヲ
以テ通過致シマシタ、右極ク簡單デゴザイ
マスルケレドモ、經過ヲ御報告申上ゲマシ
タ次第デゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X01419360524&spkNum=51
-
052・松平頼壽
○副議長(伯爵松平賴壽君) 島田農林大臣
〔國務大臣島田俊雄君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X01419360524&spkNum=52
-
053・島田俊雄
○國務大臣(島田俊雄君) 此ノ場合、去ル
十九日ノ本會議場ニ於ケル土方博士ノ御質
問ニ對シマシテ、私ヨリ御答ヲ申上ゲテ置
キタイト存ジマス、政府ハ競馬ノ施行ニ關
シマシテ勝馬投票劵ヲ發賣致シマスルコト
ハ、御詔勅ノ御趣旨ニ反スルモノトハ信ジ
テ居リマセヌ、併シナガラ之ガ實施ニ當リ
マシテハ、愼重ナル注意ヲ致シマシテ、弊
害ノナイヤウ最善ノ努力ヲ致ス考デアリマ
ス、右ハ各大臣モ同樣ノ考デアリマスト云
フコトヲ附加ヘテ申上ゲテ置キマス
〔土方寧君發言ノ許可ヲ求ム〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X01419360524&spkNum=53
-
054・松平頼壽
○副議長(伯爵松平賴壽君) 土方君ハ御質
問デゴザイマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X01419360524&spkNum=54
-
055・土方寧
○土方寧君 只今ノ御答ニ付テ伺ヒタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X01419360524&spkNum=55
-
056・松平頼壽
○副議長(伯爵松平賴壽君) 宜シウゴザイ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X01419360524&spkNum=56
-
057・土方寧
○土方寧君 只今農林大臣カラ先日私カラ
各國務大臣ニ御尋ネシマシタコトヲ、政府
ヲ代表シテ皆各大臣ガ同意ダ、偶然一致ヲ
ナサッタノカ、御協議ノ上サウナッタノカ何
レカ知リマセヌガ御答ハ······、私ハ〓育勅
讀、戊申詔書、大正天皇ノ國民精神作興
ニ關スル詔書ノ中ノ趣旨ニ反スルト固ク信
ジマスルガ、併シナガラ今ノ各國務大臣ノ
代表的ノ御答デハ反シナイト仰シヤル、私
ト正反對ノ解釋デアリマス、私カラ見マス
レバ是ハ各大臣ガ甚ダ失禮ナ申分デアリマ
スガ、是等ノ詔書ナドヲ正解ナサルコトガ
出來ナイ結果デアルト斷言シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X01419360524&spkNum=57
-
058・松平頼壽
○副議長(伯爵松平賴壽君) 別ニ御質議ガ
ゴザイマセヌケレバ是ヨリ討論ニ入リマス、
通〓ニ依リマシテ土方寧君ニ登壇ヲ願ヒマ
ス
〔土方寧君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X01419360524&spkNum=58
-
059・土方寧
○土方寧君 私ハ本案ノ其ノ本ニナッテ居
リマス現行ノ競馬法ニ勝馬投票劵ト云フモ
ノヲ許シテ居ルト云フ點ニ絕對ニ反對デア
リマス、其ノ譯ハ質問ノ時モチヨット申シマ
シタガ、非常ニ人心ヲ惡化セシムル弊害ガ
アルト信ズルカラデアリマス、抑く、馬匹改
良ノ政策ニ付キマシテハ、初メカラ非常ニ
權衡ヲ失シタ態度ヲ執ラレテ、今日ニ至ッテ
居ルト思ヒマス、日〓戰爭ノ時分ノ我ガ國
ノ馬匹ト云フモノハ非常ニ貧弱デアリマシ
テ、ソレハ陸軍ノ軍人ハ何程苦イ經驗ヲセ
ラレタカ、素人デモ想像ニ餘リガアリマス、
其ノ結果デモアリマセウ、是非ニモ馬匹
ノ改良ヲシナケレバナラヌト云フコトデ、
ハッキリ年度ヲ覺エマセヌガ、三十年カ三十
一年ト思ヒマスガ、馬政局ト云フモノヲ設ケ
テ、馬匹ノ改良ノ行政事務ヲ行フ其ノ案ヲ
樞密院ニ諮詢ニナッテ、其ノ案ニハ馬政局
ノ總裁ハ親任官トスト云フコトガアリマス、
當時ハマダ我ガ國ニ最高ノ學府ハ大學ガ一
ツシカナイ時デアリマス、今ノ東京帝國大
學ガ帝國大學ト言ッタ時デ、マダ京都大學ノ
出來ル前デアリマス、其ノ唯一最高學府ノ
總長ガ勅任官、馬政局ノ總裁ハ親任官ト云
フノデス、如何ニモ權衡ヲ失シテ居ル事デ
アリマシテ、此ノ點ハ樞密院デドウ云フ譯
カト質問セラレテ、一言モナク直チニ勅任
官ニ修正セラレタケレドモ、當時總裁ニ擬
セラレタ方ハ曾禰荒助君デアリマシテ、大
臣ノ經歷ノアル方、其ノ爲ニ官制ハ改メラ
レマシタガ、馬政局總裁ニ勅任セラレテ特
ニ親任官ノ待遇ヲ賜フト云フコトニナッタ
ノデアリマス、待遇ダケデアリマシテモ日
本ニ一ツシカナイ大學總長ヨリハ厚イ待遇
ヲ受ケテ居ルコトガ既ニ權衡ヲ失シテ居ル、
其ノ精神ガ今日マデ至ッテ居ル、人間ヨリハ
馬ヲ重ンズルト云フ意味ニナル、世ノ中ニ
人ヲ馬鹿ニスルト云ヒマスケレドモ、是レ
程馬鹿ニシタモノハ恐ラク外ニ例ガアリマ
スマイ、質問ノ時モチヨット簡單ニ申シマシ
タガ、日露戰爭後、實業界ノ繁昌ト共ニ、
馬劵附競馬モ非常ニ繁昌シマシタ、大變ニ
人心ニ惡影響ヲ及ボスト云フノデ、明治天
皇カラ戊申詔書ヲ拜スルヤウニナリマシテ、
其ノ結果ト察シマスガ、馬劵發賣ハ禁止セ
ラレタノデアリマス、所ガ其ノ後ノ當局者
ハドウ云フ考デアリマシタカ、戊申詔書ナ
ント云フモノハ其ノ時限リノモノト考ヘタ
ノカ、或ハ明治天皇ノ戊申詔書ハ、崩御ニ
ナレバモウ其勅旨ハ遵奉シナイデ宜イト考
ハハ、マサカサウデハアリマスマイガ、十
年餘モ經ッタ大正十二年ノ春デアリマス、矢
張リ馬劵ノ發賣ヲ許サナケレバ競馬ガ盛ニ
行ハレヌ、サウナケレバ馬匹ノ改良ハ出來
ヌト云フノデ、馬劵ト云フモノガ評判ガ惡
クナッタカラ、尤モラシク勝馬投票劵ト云フ
名前デ又同ジ事ヲ復活スルヤウナ提議ガア
リマシタ時、私ハ如何ニモ人心ヲ惡化スル
モノデアルト思ヒマシテ、默スルコトガ出
來ナイデ反對致シマシタケレドモ、反對シ
甲斐ガナクシテ通過シテ今日ニ至ッテ居ル、
其ノ後地方的競馬モ段々殖エマシテ、近年
ハナカ〓〓競馬熱ガ盛ニナッテ居ル時代、ソ
レガ人心ヲ惡化スルコトハ恰モ惡疫ガ身體
ヲ冒スト同ジヤウニ、精神ヲ何程惡化シテ
居ルカ分ラヌト私ハ思ヒマス、近頃ノ政
府ハ此ノ內閣ニ限ラズ、國民精神ノ作興ト
カ、民心ノ善導トカ云フコトヲ能ク政綱ノ
中ニ高唱セラレテ居リマスガ、併シナガラ國
民精神ノ作興ト申シマシテモ、設計ニ依ッテ
家ヲ建テルヤウナ按配式ニハ、健全ナル精
神ヲ人力デ以テ作ルコトハ出來ルモノデハ
ナイ、民心ノ善導ト云ッテモオ前ハ北ヘ行ッ
テハイケナイ、オ前ハ左ヘ曲リ過ギル、オ
前ハ右ヘ行キ過ギル、正道ハ旭日ノ上ルコ
チラノ方ニアルト言ッテ、道ニ迷ッテ居ル人
ニ正シイ道ヲ指シ示スヤウニハ參リマセヌ、
如何ニモ必要ナコトデアリマスガ、此國民
精神ノ作興トカ、國民精神ノ善導トカ云フ
コトヲ實現スル具體的政策ト云フモノハ、
ナカ〓〓言フベクシテ行ハレ難イコトデア
リマス、結局ハ〓育ノ效果ニ俟ツ外ハアリ
マスマイ、其ノ〓育ハ學齡兒童ガ中學校、
女學校ヲ卒業シテ、軈テ靑年ニ達シタ時分
ニ、サウシテ一人前ノ思慮ガ定ッタ時分ニ現
レテ來ルノデアリマスカラ、容易ノコトデ
ハアリマセヌガ、一方ニ折角質實剛健ナル
國民ト云フモノヲ涵養スル積リデ施シタ〓
育ナドモ、〓ケ事ナドニ耽ケルト云フコト
ヲ許スニ於キマシテハ、〓育ノ效果ト云フ
モノヲ沒却スルト云フ迄言ハナクテモ、滅
却スルコトハ確カデアリマス、折角長イ間
立派ナ人間ニ造リ上ゲヤウト思ッテ施行シ
タ〓育ノ結果ト云フモノガ、大部分打破ラ
レテシマフ、總テ何事デモ勝負事ト云フモ
ノハ賭ケニ惡用セラレル危險ガアリマス、屋
內ノ碁將棋デモ、花歌留多デモ、「トランプ」デ
モ、撞球デモ、「ピンポン」デモ、或ハ賭ノ好キ
ナ支那カラ輸入シタ近頃妙ナモノガアル、
私ハドウ云フモノカ知リマセヌ、ソレカラ屋
外ニアリマシテハ今ノ競馬ノ外ニ「野球」モ
アリマス、ソレカラ「ゴルフ」モアリマス、何
デモ勝負事ヲスル以上ハ、其ノ結果ニ於テハ〓
ケルト云フコトハ出來ルコトデアリマスカラ、サ
ウ云フ弊害ガアル、「アメリカ」ノ如キハアンナ
ニ盛ナノハ、全ク專門ノ野球ノ選手ト云フモノ
ヲ養成シテ、賭ケノ材料ニシテ居ルカラデア
リマス、マダ幸ヒ我ガ國ニハサウ云フ弊害
ガソンナニ傳染シタヤウニ思ヒマセヌケレ
ドモ、今後警戒シナイトサウ云フコトモ起ッ
テ來ルト思ヒマス、相撲ナドモ結構ニ賭ケ
ラレマス、多少相撲デモ、野球デモ、〓ケ
ガ旣ニアルヤウニ聞イテ居リマス、先程忘
レマシタガ麻雀、元々支那人ガ〓ノ道具ニ
作ッタ、併シナガラ賭ケ事ノ種類ハ數多クア
リマスガ、何レモ賭ケ其ノモノハ法禁デア
リマス、故ニ內密デ多少行ハレマシテモ、
其ノ弊害ガ甚ダシク擴マッテ居リマセヌ、然
ルニ競馬ニ限ッテ所謂勝馬投票劵ト云フモ
ノヲ發賣スルノデアリマスカラ、公々然ト
〓事ヲスルコトヲ許スコトニナリマス、是
ガ私ノ考デハ非常ニ有害デアル、殊ニ競馬
ハ多クハ都會カラ往來スルニ餘リ不便ノナ
イ距離ニ於テ、而モ農村ニ接近シタ場合ニ
多クアリマス、其ノ附近ノ農民ト云フモノ
ガ矢張リ競馬熱ニ浮カサレマスト云フト
迚モ彼等ガ眞面目ナ農業ニ從事スルト云フ
コトハ出來ナクナリマス、我ガ國ノ現狀ハ
丁度「ナポレオン」戰爭後、イギリスガ產業
革命ノ後、大規模ノ現代ノ產業組織ニナッテ、
數年ノ間ノ有樣ニ能ク似テ居リマス、「イギ
リス」ハ農村ガ全滅シテシマヒマシタ、ソ
レデモ「イギリス」ハソレデ宜カッタ、當時「フ
ランス」、「ドイツ」ハマダ勃興セズ、「アメリ
カ」ハマダ農業本位ノ債務國デアッテ、世界
中ノ市場ヲ、自由貿易主義ヲ高唱シテ獨占
シテ居ッタノデアリマス、植民地モアリ、先
ヅ宜カッタノデアリマスガ、今日デハ大戰前
カラ農村復活ノコトヲ計畫シテモ最早不能
デアリマス、我ガ國ハ今日農村ガ疲弊困憊
ノ極ニアルカラシテ、此ノ儘ニ放任スル譯
ニイカヌト云ッテ、政府ハドノ政府デモ、近
年ハ諸種ノ農村開發更生ニ付テノ政策ヲ行
ハムトシテ居リマスガ、如何ニ物質的ニ之
ヲ援助セムトシテモ、農民其ノ者ノ精神ガ
墮落シテ、賭ケ事ニ耽ルヤウナコトニナリ
マシタナラバ、到底農村ト云フモノハ立チ
行カヌコトニナルコトハ明カニ見エマス
斯樣ナ點カラ考ヘマシテ、ドウシテモ是ハ
勝馬ノ投票劵ト云フヤウナモノヲ發賣スル
コトハ、今後是非禁ジテ戴キタイ、其ノ趣
意デ此ノ案ニ反對シマスガ、併シナガラ此
ノ案ニ反對シマシテ幸ヒニ此ノ案ノ通過ヲ
阻止スルコトガ出來マシテモ、矢張リ勝馬
投票劵附ノ競馬法其ノモノハ殘ルノデアリ
マスカラ何ニモナリマセヌ、ソレダカラモ
ウ餘リ長イコト言ヒマセヌ、言ヒマセヌガ、
政府ニ警告シテ置キマス、ドウカ此ノ次ノ
通常議會迄ニ此ノ問題ニ付キマシテ十分ニ
御熟慮ニナッテ、馬匹改良ノ爲メナラバ、何
トカ外ニ、牧場ノ持主トカ競馬馬ノ持主ト
カニ對シテ、今モヤルヤウデアリマスケレ
ドモ、モット多クノ賞與デモ與ヘテ、其ノ方
法デ爲シ得ル程度ノ奬勵ヲシテ、人心ヲ惡
化スルヤウナ勝馬投票劵發賣ダケハドウカ
是非廢止シテ戴キタイ、此ノ短期特別議會
ノ末期ニ當リマシテ、衆議院ニ行惱ンダヤ
ウナ澤山ナ案ガアリマシテ、閣僚皆サンハ
餘程御忙シカッタラウト推察シマス、戊申詔
書トカ大正天皇ノ精神作興ニ關スル詔書
トカ云フモノヲ、當時發布當時ニハ御讀ミニ
ナッタカ知レマセヌガ、私ガ突然伺ッタ時分
ニハ腦裡ニナカッタト思フ、之ヲ能ク御覽ニ
ナッタノカ、或ハ部下ノ者ガ作ッテ吳レタノ
デ答辯ヲシテ下サッタノカドウカ知リマセ
ヌケレドモ、マダ大臣ガ十分ニ御熟讀シテ
居ラレナイト思フノデアリマス、ドウカ次
ノ通常議會迄ニ、國務大臣ハ普通一般ノ國
民ヨリ一層其ノ聖旨ヲ奉體スル意味デ、十
分ニ熟讀シテ、サウシタ上デ御考ノ上デ、
ドウモ成程馬ノ改良モ必要ダケレドモ、人
心ニ害ヲ及ボシテナラナイト云フコトニキッ
ト結論ガアルダラウト思フ、今日大臣ノ御
演說デハ反シナイト仰シヤル、私カラ言ヘ
バアノ詔書ト云フモノヲ正式ニ解スル能力
ノナイコトヲ自白セラレタト私ハ世間ニ向ッ
テ斷言シマス、是デ終リデス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X01419360524&spkNum=59
-
060・松平頼壽
○副議長(伯爵松平賴壽君) 別ニ御發言ガ
ゴザイマセヌケレバ本案ノ採決ヲ致シマ
ス、本案ノ第二讀會ヲ開クコトニ御異議ハ
ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X01419360524&spkNum=60
-
061・松平頼壽
○副議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト
認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X01419360524&spkNum=61
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062・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直チニ本案ノ第二讀
會ヲ開カレムコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X01419360524&spkNum=62
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063・植村家治
○子爵植村家治君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X01419360524&spkNum=63
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064・松平頼壽
○副議長(伯爵松平賴壽君) 西大路子爵ノ
動議ニ御異議ハゴザイマセンカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X01419360524&spkNum=64
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065・松平頼壽
○副議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト
認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X01419360524&spkNum=65
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066・松平頼壽
○副議長(伯爵松平賴壽君) 本案ノ第二讀
會ヲ開キマス、御異議ガゴザイマセヌケレ
バ全部ヲ問題ニ供シマス、本案全部、委員
長ノ報告通リデ御異議ハゴザイマセカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X01419360524&spkNum=66
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067・松平頼壽
○副議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト
認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X01419360524&spkNum=67
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068・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直チニ本案ノ第三讀
會ヲ開カレムコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X01419360524&spkNum=68
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069・植村家治
○子爵植村家治君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X01419360524&spkNum=69
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070・松平頼壽
○副議長(伯爵松平賴壽君) 西大路子爵ノ
動議ニ御異議ハゴザイマセカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X01419360524&spkNum=70
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071・松平頼壽
○副議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト
認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X01419360524&spkNum=71
-
072・松平頼壽
○副議長(伯爵松平賴壽君) 本案ノ第三讀
會ヲ開キマス、本案全部、二讀會ノ決議通
リデ御異議ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X01419360524&spkNum=72
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073・松平頼壽
○副議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト
認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X01419360524&spkNum=73
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074・松平頼壽
○副議長(伯爵松平賴壽君) 日程第十七、
航路統制法案、政府提出、衆議院送付、第
一讀會ノ續、委員長一條公爵
航路統制法案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報告候也
昭和十一年五月二十三日
委員長公爵一條實孝
貴族院議長公爵近衞文麿殿
〔公爵一條實孝君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X01419360524&spkNum=74
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075・一條實孝
○公爵一條實孝君 航路統制法案特別委員
會ノ經過竝ニ結果ヲ御報告致シマス、本法
案ハ其ノ條項ト致シマシテハ僅カニ十三箇
條ヨリ成リマスル極メテ簡單ナモノデアリ
マスルガ、其ノ性質カラ見マスレバ極メ
テ重要ナル法案デアリマス、衆議院ニ於
キマシテモ非常ニ論議ヲ盡サレ、附帶決議
モアリ、又一部修正セラレテ本院ニ囘付セ
ラレタモノデアリマス、委員會ニ於キマシ
テハ去ル二十一日午後、正副委員長ノ下運
後、引續キ會議ヲ致シ、昨日マデ愼重審議
ヲ盡シマシタノデアリマス、其ノ間當局ノ
說明、委員ノ質疑ニ對スル應答ヲ重ネ、或
ハ祕密會ヲ開キ、或ハ懇談會ヲ致シ、十分
ニ政府ノ忌憚ナキ說明モアリ、委員ノ質問
モ致シタノデアリマスルガ、事或ハ外交ノ
機微ニ亙リ、或ハ軍事ノ機密ニモ觸レル點
ガアリマスルノデ、其ノ內容ノ全部ヲ御報
告申上ゲラレナイコトヲ遺憾ト致シマス、
從ヒマシテ此處ニハ極メテ簡單ニ御報〓ヲ
申上ゲマス、質問ノ主ナル點ヲ申亠ゲマス
レバ本案ノ如キ重要ナル法案ヲ何故ニ緊
急此ノ度ノ特別議會ニ出サレタノデアル
カ、一般ノ海運政策ト云フモノヲ立テテ、
其ノ一ツトシテ本案ノ如キモノヲ出シタラ
宜イノヂヤナイカ、又今日ノ國際情勢ヨリ
スレバ海運ノ如キハ國家ガ積極的ニ助
成、發達スベキモノデアルニ拘ラズ、斯樣
ナ制限ヲスルコトニ依ッテ、却テ海運ヲ萎靡
セシムル如キ結果ニナリハセヌカ、又統制
ノ結果大會社保護ニ偏重シテ、不都合ガア
ルヤウナコトニナリハセヌカ、其ノ他本案
ノ各條項ニ付キマシテ、殊ニ本案中ニアリ
マスル統制委員會ノ組織ヤ其ノ他ニ付テ、
一々丁寧ナル質疑ガアリマシタガ、政府ハ
又懇切ニ、本案ノ趣意ハ主トシテ無用ナル
競爭ノ弊ヲ防ギ、二重投資ノ如キコトガ無
イヤウニスル趣意デアルト云フコトヲ反覆
說明セラレマシテ、又我ガ海運業者ガ一致
〓結シテ、對外的活動ヲ要望スル旨ヲ述べ
ラレタノデアリマス、又航路ノ補助金ニ對
スル委員ノ質問ニ對シマシテ、再檢討ヲ補
助金ニ對シテスルト云フコトハ、必ズシモ
補助金額ヲ減ズルト云フヤウナ意味デモナ
ク、必要ノ場合ニハ增額ヲモ考慮スルノデ
アルト申サレテ居リマス、其ノ他積極的海
運助長策、船質改善助成費、海事金融等ニ
關シマシテ質問ガアリマシタガ、政府ハ十
分ニ考慮致スベキ旨答ヘラレタノデアリマ
ス、尙第七條ニアリマスル本法ヲ準用スル
場合ニ付キマシテノ委員ノ質問ニ對シマシ
テハ、政府ハ此ノ第七條ヲ設ケタノハ、法
人ノ脫法行爲ヲ取締ルノ必要上、其ノ必要
ガアッタノデアルト云フコトヲ說明シテ居
リマス、先程申上ゲマシタ統制委員會ト云
フノハ、遞信大臣ヲ會長ト致シマシタ十五
名ノ官民カラ成ル委員會デアリマシテ、此
ノ統制委員會ノ人選ニ付キマシテモ、十分
ニ考慮ヲ拂ハルヽトノコトデアリマス、質疑
應答ヲ終リマシテ討論ニ入リ、一委員ヨリ
政府ガ說明セラルヽ所ハ諒トスルモ、海運
業ハ積極的ニ保護助長ヲ必要トスル時ニ、
取締ノミノ本案ガ此ノ議會ニ提出セラレタ
ルコトハ遺憾デアル、本案ト併行シテ海運
政策ヲ定メ、海事行政ノ統一、適正ナラザル
補助ニ付テモ再檢討ヲ加ヘテ、同時ニ本案
ガ出タナラバ結構デアッタノニ、本案ノミヲ
出サレテ、消極的ナ取締デ、其ノ爲ニ海運
ガ萎靡スルヤウナコトニナルヤウニナッテ
ハ遺憾デアルト考ヘルガ、段々政府ノ言明
モアリ、當局ヲ信賴シテ本案通過ニ同意ヲ
スルモノデアル、併シナガラ施行期日、勅
令等、尙十分ニ注意アリタイ、又本法ハ傳
家ノ寶刀トシテ、徒ラニ用ヒルコトナカラ
ムコトヲ望ム、就テハ次ニ申述ベル所ノ希
望決議ヲ委員ノ總意トシテ附シタイ
希望決議
政府ハ本法施行ニ當リ其運用ニ愼重
ナル考慮ヲ拂ヒ且貿易ノ仲張、海運ノ
發展ヲ阻害セザル樣留意スベシ
政府ハ航路補助ノ實績ヲ檢討シ之レ
ガ改善ヲ計リ且不定期遠洋航路ノ奬勵
助成策ヲ樹立シ速ニ其實現ヲ期スベシ
政府ハ內外ノ情勢ニ鑑ミ海事行政ヲ
統一シ、併セテ海事金融ノ圓滑ヲ計ル
ベシ
第七條ニヨリ本法ヲ準用スルニ當リ
テハ特ニ其運用ニ注意シ苟クモ國際關
係ニ惡影響ヲ及サザルコトヲ期スベシ
尙一委員ヨリ本案ニハ贊成スルガ、本案ノ
裏ニ何カ問題ノアルヤウナ時ニ、此ノ法案
ガ出タコトハ遺憾ノ旨ヲ述ベラレタノデア
リマス、是ニテ討論ヲ終結致シ、政府ヨリ
ハ希望決議ニ對シ、其ノ決議ニ副フヤウ努
メラルヽ言明ヲ得タノデアリマス、斯クテ
衆議院修正ノ該法案ヲ原案ト致シマシテ可
否ヲ諮リマシタ所、全會一致可決致スコト
ニ相成リマシタ、尙希望決議ハ委員會一致
ノモノト相成ッタノデアリマス、之ヲ以テ報
告ヲ終リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X01419360524&spkNum=75
-
076・松平頼壽
○副議長(伯爵松平賴壽君) 別ニ御發言モ
ゴザイマセヌケレバ本案ノ採決ヲ致シマ
ス、本案ノ第二讀會ヲ開クコトニ御異議ハ
ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X01419360524&spkNum=76
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077・松平頼壽
○副議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト
認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X01419360524&spkNum=77
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078・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直チニ本案ノ第二讀
會ヲ開カレムコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X01419360524&spkNum=78
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079・植村家治
○子爵植村家治君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X01419360524&spkNum=79
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080・松平頼壽
○副議長(伯爵松平賴壽君) 西大路子爵ノ
動議ニ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X01419360524&spkNum=80
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081・松平頼壽
○副議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト
認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X01419360524&spkNum=81
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082・松平頼壽
○副議長(伯爵松平賴壽君) 本案ノ第二讀
會ヲ開キマス、御異議ガナケレバ全部ヲ問
題ニ供シマス、本案全部、委員長ノ報告通リ
デ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X01419360524&spkNum=82
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083・松平頼壽
○副議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト
認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X01419360524&spkNum=83
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084・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直チニ本案ノ第三讀
會ヲ開カレムコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X01419360524&spkNum=84
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085・植村家治
○子爵植村家治君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X01419360524&spkNum=85
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086・松平頼壽
○副議長(伯爵松平賴壽君) 西大路子爵ノ
動議ニ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X01419360524&spkNum=86
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087・松平頼壽
○副議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト
認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X01419360524&spkNum=87
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088・松平頼壽
○副議長(伯爵松平賴壽君) 本案ノ第三讀
會ヲ開キマス、本案全部、二讀會ノ決議通
リデ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X01419360524&spkNum=88
-
089・松平頼壽
○副議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト
認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X01419360524&spkNum=89
-
090・池田政時
○子爵池田政時君 日程第十八、第十九、第
二十一ハ同一ノ委員ニ付託サレマシタ、此
ノ際日程ヲ變更シ、第二十一ノ日程ヲ第二
十ノ日程ノ前ニ置イテ、三案ヲ一括シテ議
題トシ、委員長ノ報〓ヲ求メラレムコトノ
動議ヲ提出シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X01419360524&spkNum=90
-
091・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X01419360524&spkNum=91
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092・松平頼壽
○副議長(伯爵松平賴壽君) 池田子爵ノ日
程變更ノ動議ニ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X01419360524&spkNum=92
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093・松平頼壽
○副議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト
認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X01419360524&spkNum=93
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094・松平頼壽
○副議長(伯爵松平賴壽君) 日程第十八、
大正十三年法律第二十四號中改正法律案、
政府提出、衆議院送付、第十九、昭和七年
法律第四號中改正法律案、政府提出、衆議
院送付、第二十一、朝鮮事業公債法中改正
法律案、政府提出、衆議院送付、第一讀會
ノ續、委員長報〓、委員長池田侯爵
大正十三年法律第二十四號中改正法律
案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報〓候也
昭和十一年五月二十三日
委員長侯爵池田宣政
貴族院議長公爵近衞文麿殿
昭和七年法律第四號中改正法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報〓候也
昭和十一年五月二十三日
委員長侯爵池田宣政
貴族院議長公爵近衞文麿殿
朝鮮事業公債法中改正法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報〓候也
昭和十一年五月二十三日
委員長侯爵池田宣政
貴族院議長公爵近衞文麿殿
(侯爵池田宣政君演壇ニ登ル)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X01419360524&spkNum=94
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095・池田宣政
○侯爵池田宣政君 只今上程ニナリマシタ
大正十三年法律第二十四號中改正法律案外
二案ノ委員會ノ經過竝ニ結果ヲ御報告申上
ゲマス、今囘ノ大正十三年法律第二十四號中
改正法律案ハ、關稅定率法中改正法律案ニ
伴フモノデゴザイマシテ、實質上從來ト何
等變更ナク、唯法文ノ記載方ニ關スル整理
的改正ニ過ギナイノデゴザイマス、次ニ昭
和七年法律第四號ト申シマスルノハヽ輸入
稅ノ從量稅率ニ關スル法律デゴザイマシテ、
卽チ關稅定率法別表輸入稅表ニ定メタル從
量稅率ハ當分ノ內之ヲ其ノ百分ノ百三十五
トス、但シ、同輸入稅表ニ揭グル物品ニシ
テ、本表ノ別表ニ揭グルモノノ從量稅率ハ
此ノ限ニ在ラズト云フノデゴザイマス、今
囘ノ關稅定率法中改正法律ニ依リマシテ、從
量稅率ヲ盛ラレマシタ「シトロネラ」油ナド
ハ、其ノ生產、輸入及需給ノ關係ト諸般ノ
事情ヲ勘案致シマシテ、其ノ稅率ヲ廢シタ
モノデゴザイマスカラ、此ノ上更ニ三割五
分ヲ課スルノ必要ヲ認メナイノデ、前例ニ
依リ是等品目ヲ本法ノ別表ニ追加スル爲メ、
改正セムトスル趣旨ノモノデゴザイマス、
委員會ニ於キマシテハ、「イオノン」、「シト
ロネラ」、、「レモングラス」等ノ輸入及生產情
況等ニ付キマシテ、質問應答ガゴザイマシ
ク、而シテ討論ニ入リ、全會一致二案トモ
政府原案ノ通リ可決決定致シマシタ、次ニ
朝鮮事業公債法中改正法律案デゴザイマス
ガ、本案ハ現行公債發行法定額六億一千五
百八十萬圓ヲ六億九千六百二十萬圓ニ改正
セムトスルモノデゴザイマシテ、今囘特第
二號追加豫算ニ計上致サシテ居リマスル朝
鮮ノ鐵道建設及改良費總額八千百餘萬圓、
港灣ノ修築改良費ノ中、總額六百餘萬圓合
計八千七百餘萬圓ノ中、現行法定額ノ餘裕
額ヲ差引キマシタ八千四十萬圓ヲ總督府財
政ノ現狀ニ鑑ミマシテ、公債支辨トスルコ
トニ計畫シ、現行法定額ニ追加スルモノデ
ゴザイマス、其ノ事業ノ內容ハ、慶尙北道
永川ヨリ京城郊外〓凉里ニ至ル三百五十八
「キロ」ノ鐵道ヲ新設スルト共ニ京釜、京義、
兩線及馬山線ノ輸送力ノ增進ヲ圖ル爲ノ必
要上、改良工事ヲ施行シ、尙是等鐵道ノ建
設改良工事ニ伴ヒ、釜山港及馬山港ノ海陸
連絡設備ノ擴張ヲナスモノデゴザイマシテ、
昭和十一年度以降三年乃至五年ニ亙ッテ施
行スルコトトナッテ居ルノデアリマス、委員
會ニ於キマシテハ、政府ノ說明ニ次ギ質疑
ノ應答ヲ重ネタノデゴザイマスガ、其ノ質
問ノ主ナルモノハ、鐵道ノ新線路選擇ノ經
緯沿線ノ物資、港灣施設ノ內容、又石油
資源ノ有無ナドデゴザイマシテ、ソレゾレ
政府委員ヨリ答辯ガアッタノデゴザイマス、
而シテ討論ニ入リ、採決ノ結果、全會一致
原案ヲ可決致シタノデゴザイマス、以上御
報〓申上ゲマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X01419360524&spkNum=95
-
096・松平頼壽
○副議長(伯爵松平賴壽君) 別ニ御質疑ガ
ゴザイマセヌケレバ三案ノ採決ヲ致シマ
ス、三案ノ第一讀會ヲ開クコトニ御異議ハ
ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X01419360524&spkNum=96
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097・松平頼壽
○副議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト
認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X01419360524&spkNum=97
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098・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直チニ各案ノ第二讀
會ヲ開カレムコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X01419360524&spkNum=98
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099・植村家治
○子爵植村家治君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X01419360524&spkNum=99
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100・松平頼壽
○副議長(伯爵松平賴壽君) 西大路子爵ノ
動議ニ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X01419360524&spkNum=100
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101・松平頼壽
○副議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイモ
ノト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X01419360524&spkNum=101
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102・松平頼壽
○副議長(伯爵松平賴壽君) 三案ノ第二讀
會ヲ開キマス、御異議ゴザイマセヌケレバ
全部ヲ問題ニ供シマス、三案全部、委員長
ノ報告通リデ御異議ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X01419360524&spkNum=102
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103・松平頼壽
○副議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト
認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X01419360524&spkNum=103
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104・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直チニ各案ノ第三讀
會ヲ開カレムコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X01419360524&spkNum=104
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105・植村家治
○子爵植村家治君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X01419360524&spkNum=105
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106・松平頼壽
○副議長(伯爵松平賴壽君) 西大路子爵ノ
動議ニ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X01419360524&spkNum=106
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107・松平頼壽
○副議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト
認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X01419360524&spkNum=107
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108・松平頼壽
○副議長(伯爵松平賴壽君) 三案ノ第三讀
會ヲ開キマス、三案全部、第二讀會ノ決議
通リデ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X01419360524&spkNum=108
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109・松平頼壽
○副議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト
認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X01419360524&spkNum=109
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110・松平頼壽
○副議長(伯爵松平賴壽君) 日程第二十、
思想犯保護觀察法案、政府提出、衆議院送
付、第一讀會ノ續、委員長報〓、委員長西
〓侯爵
思想犯保護觀察法案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報〓候也
昭和十一年五月二十三日
委員長侯爵西〓從德
貴族院議長公爵近衞文麿殿
〔侯爵西〓從德君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X01419360524&spkNum=110
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111・西郷從徳
○侯爵西〓從德君 只今上程セラレマシタ
思想犯保護觀察法案、特別委員會ノ經過竝
ニ結果ヲ御報告申上ゲマス、本案ハ非常ニ
重大ナ法案デアリマシテ、且興味アル法案
デアリマスカラ詳シク御報〓ヲ申上グベキ
デアリマスケレドモ、場合ガ斯樣ナ場合デ簡
略致シマスコトヲ御許ヲ願ヒマス、二十一
日ニ正副委員長ノ選擧ヲ終リマシテ、引續
キ法案ノ內容ニ付キマシテ司法大臣、司法
省内務省ノ政務官カラ詳細ナル說明ガゴ
ザイマシタガ、是ハ過日本議場ニ於テ司法
大臣ノ述ベラレタコトノ延長デアリマスル
カラ、簡略スルコトヲ御許ヲ願ヒマス、委
員會ハ二十一日引續キ開會ヲ致シ、又二十
二日ニ互ッテ開キマシタガ、其ノ二日間ニ於
ケル質問應答モ極メテ廣イ範圍ニ亙リ、又
箇條モ非常ニ多ウゴザイマシタガ、是亦時
間ノ關係カラ主要ナルモノノミヲ此ノ際申
上ゲルコトヲ御許ヲ願ヒマス、第一ハ思想
犯人ノ〓化ニ關シ、行刑上如何ナル處置ヲ
講ジテ居ルカト云フ質問デゴザイマシタガ、
當局ヨリハ思想犯人ヲ收容スベキ刑務所ノ
選擇ニ留意スル、ソレト共ニ本人ノ過チヲ
改メ善ニ遷ル爲ニ〓誨師ノ選擇、讀書ニ對
スル配慮、其ノ他適切ナル處置ヲ講ジテ居
ル旨ノ答辯ガアリマシタ、次ニ所謂左翼犯
人ノ對策ヲ講ズルト共ニ、所謂右翼犯罪ニ
對スル萬全ノ方策ヲ講ズル必要ガアル、當
局ノ所見ハドウデアルカト云フ質問ニ對シ
マシテハ、當局ノ國憲國法ノ尊嚴維持ハ現
下ノ時局ニ於テ最モ緊要デアル、之ヲ蔑視
シテ矯激ナル手段ヲ執ラムトスル犯罪ハ、
假令其ノ動機ノ善ナルモノト雖モ、嚴重ニ
取締ヲナスノデアッテ、所謂右翼犯罪ノ取締
ニ關シテハ、現行ノ刑法、暴力行爲等ノ罰
法其他ノ規定ニ依ッテ、大體其ノ目的ヲ達シ
得ルノデアルケレドモ、尙不徹底ナルヲ免
レマセヌノデ、目下審議中ノ刑法改正草案
ニ於テハ、不法團結ノ處罰其ノ他新規定ヲ
設ケムトシテ居リマスシ、其ノ他現時ノ客
觀的情勢ニ最モ適切ナル對策ヲ〓究中デア
リマストノ答辯デアリマシタ、次ハ思想保
護司ノ人選、其ノ他本法ヲ施行スル上カラ
萬全ノ注意ヲ拂ッテ濫用ニ亙ル虞ナキヲ期
セラレタシトノ希望ガアリマシテ、之ニ對
シテハ當局ヨリ思想保護司ハ宗〓家、社會
事業家、〓育家、其ノ他思想犯ノ保護觀察
ニ適當ナル人ヨリ之ヲ選擇スルト同時ニ、
本法ノ運用ニ關シテ、最モ愼重ナル注意ヲ
求メ、萬遺漏ナキヲ期スルトノ答辯ガアリ
マシタ、ドウモ法律ノ言葉ハ能ク分リマセ
ヌノデ、オ分リニナルカドウカ分リマセヌ
ガ、少シハ違ッテモ御許ヲ願ヒマス、尙一般
釋放者ニ對スル保護觀察制度ニ付テモ、速
カニ之ヲ整備シタル上、犯罪防止ニ遺憾ナ
キヲ期セラレタキ旨ノ希望開陳ガアリマシ
タ、其ノ他質問應答ガ之ニ付テ重ネラレマ
シタガ、ドウゾ長イコトデアリマスカラ、
速記錄完成ノ上、速記錄ニ付テ御覽ヲ願ヒ
マスコトニ致シマシテ、只今ハ質疑應答ノ
主要ナル點ダケヲ申上ゲマシタ、質疑應答
ノ長カッタニ比較致シマシテ、討論ニ入リマ
シテハ何等ノ異論モゴザイマセヌデ、委員
會全會一致ヲ以テ本案ヲ可決致シマシタ、
右御報告ヲ申上ゲマス、終リ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X01419360524&spkNum=111
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112・松平頼壽
○副議長(伯爵松平賴壽君) 御質疑ガナケ
レバ本案ノ採決ヲ致シマス、本案ノ第二讀
會ヲ開クコトニ御異議ゴザイマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X01419360524&spkNum=112
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113・松平頼壽
○副議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト
認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X01419360524&spkNum=113
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114・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直チニ本案ノ第二讀
會ヲ開カレムコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X01419360524&spkNum=114
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115・植村家治
○子爵植村家治君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X01419360524&spkNum=115
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116・松平頼壽
○副議長(伯爵松平賴壽君) 西大路子爵ノ
動議ニ御異議ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X01419360524&spkNum=116
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117・松平頼壽
○副議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト
認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X01419360524&spkNum=117
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118・松平頼壽
○副議長(伯爵松平賴壽君) 本案ノ第二讀
會ヲ開キマス、御異議ガナケレバ全部ヲ問
題ニ供シマス、本案全部委員長ノ報告通リ
デ御異議ゴザイマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X01419360524&spkNum=118
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119・松平頼壽
○副議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト
認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X01419360524&spkNum=119
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120・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直チニ本案ノ第三讀
會ヲ開カレムコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X01419360524&spkNum=120
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121・植村家治
○子爵植村家治君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X01419360524&spkNum=121
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122・松平頼壽
○副議長(伯爵松平賴壽君) 西大路子爵ノ
動議ニ御異議ゴザイマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X01419360524&spkNum=122
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123・松平頼壽
○副議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト
認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X01419360524&spkNum=123
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124・松平頼壽
○副議長(伯爵松平賴壽君) 本案ノ第三讀
會ヲ開キマス、本案全部第二讀會ノ決議通
リデ御異議ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X01419360524&spkNum=124
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125・松平頼壽
○副議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト
認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X01419360524&spkNum=125
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126・松平頼壽
○副議長(伯爵松平賴壽君) 報〓ヲ致サセ
マス
〔角倉書記官朗讀〕
本日臺灣拓殖株式會社法案兩院協議委員ニ
於テ互選シタル正副議長ノ氏名左ノ如シ
議長子爵渡邊千冬君
副議長男爵小畑大太郞君
本日衆議院ヨリ左ノ政府提出案ヲ受領セリ
退職積立金及退職手當法案発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X01419360524&spkNum=126
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127・松平頼壽
○副議長(伯爵松平賴壽君) 一時休憩ヲ致
シマス、四時三十分ヨリ再開致シマス
午後四時九分休憩
午後四時三十四分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X01419360524&spkNum=127
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128・松平頼壽
○副議長(伯爵松平賴壽君) 休憩前ニ引續
キマシテ開會ヲ致シマス、衆議院ヨリ送付
セラレマシタ政府提出ニ係ル退職積立金及
退職手當法案ヲ、此ノ際議事日程ニ追加シ
テ第一讀會ヲ開クコトニ御異議ハゴザイマ
セヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X01419360524&spkNum=128
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129・松平頼壽
○副議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト
認メマス、潮內務大臣
〔左ノ議案ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノタ
メ茲ニ載錄ス〕
退職積立金及退職手當法案
右政府提出案本院ニ於テ修正議決セリ因
テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和十一年五月二十四日
衆議院議長富田幸次郞
貴族院議長公爵近衞文麿殿
(小字及-ハ衆議院ノ修正)
退職積立金及退職手當法案
退職積立金及退職手當法
第一章總則
第一條本法ハ左ノ各號ノ一ニ該當スル
五
事業ニシテ當時三十人以上ノ勞働者ヲ
使用スルモノニ之ヲ適用ス
一工場法ノ適用ヲ受クル工場
二鑛業法ノ適用ヲ受クル事業
三其ノ他勅令ヲ以テ指定スル事業
主務大臣ハ事業ノ種類又ハ規模ヲ限リ
本法ノ適用ヲ除外スルコトヲ得
第二條本法ノ適用ヲ受クル事業ガ規模
ノ縮少其ノ他ノ事由ニ因リ本法ノ適用
ヲ受ケザルニ至リタル場合ニ於テ事業
主其ノ旨ヲ行政官廳ニ屆出ヅル迄ハ前
條ノ規定ニ拘ラズ仍本法ヲ適用ス
第三條第一條第一項各號ノ事業ニシテ
本法ノ適用ヲ受ケザルモノノ事業主退
職積立金、退職手當積立金又ハ退職手
當及之ガ支給ニ充ツル爲ノ準備積立金
ニ關スル規程ヲ定メ行政官廳ノ許可ヲ
受ケタルトキハ其ノ事業ニ第十一條、
第十六條及第十七條中積立ノ率ニ關ス
ル規定竝ニ第三十條第三項ノ規定ヲ除
クノ外本法ヲ適用ス
前項ノ規定ニ依リ許可ヲ受ケタル規程
ヲ廢止又ハ變更セントスルトキハ行政
官廳ノ許可ヲ受クベシ
第四條營業ノ讓渡其ノ他ノ事由ニ因リ
事業ノ承繼アリタル場合ニ於テ勞働者
ガ引續キ承繼人ニ使用セラルルトキハ
其ノ勞働者ト從前ノ事業主トノ間ニ本
法ニ依リテ生ジタル法律關係ハ承繼人
ニ移轉ス
前項ノ場合ニ於テ積立金ノ承繼ニ關シ
必要ナル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第五條本法ノ適用ヲ受クル事業ニ使用
セラルル勞働者ノ中左ニ揭グル者ニハ
本法ヲ適用セズ但シ第一號若ハ第二號
ニ該當スル者六月ヲ超エテ引續キ使用
セラルルニ至リタルトキ又ハ第三號ニ
該當スル者一年ヲ超エテ引續キ使用セ
ラルルニ至リタルトキハ其ノ時ヨリ其
ノ者ニ本法ヲ適用ス
一六月以內ノ期間ヲ定メテ使用セラ
ルル者
二日日雇入レラルル者
三季節的事業ニ使用セラルル者
前項第三號ノ季節的事業ノ範圍ハ主務
大臣之ヲ定ム
第六條賃金及標準賃金ニ關シ必要ナル
事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第七條行政官廳ハ事業主ニ對シ本法ニ
依ル積立金ノ積立若ハ運用、退職積立
金ノ支拂又ハ退職手當ノ支給其ノ他本
法ノ施行ニ關スル事項ニ付必要ナル檢
査ヲ爲シ又ハ事業主ヲシテ報告ヲ爲サ
シムルコトヲ得
第八條本法ニ依リ事業主ノ積立ツベキ
退職手當積立金及準備積立金ノ額ハ勅
令ノ定ムル所ニ依リ法人タル事業主ニ
在リテハ事業年度、個人タル事業主ニ
在リテハ曆年ニ於ケル勞働者ノ其ノ期
間中ノ賃金ノ百分ノ七ニ相當スル額以
下トス
第九條本法ノ適用ヲ受クル事業ガ事業
ノ廢止其ノ他ノ事由ニ因リ本法ノ適用
ヲ受ケザルニ至リタル場合ニ於テ退職
積立金支拂又ハ退職手當支給ノ完了ニ
至ル迄ハ之ニ必要ナル限度ニ於テ仍本
法ヲ適用ス
第十條本法ハ政府ノ事業ニ之ヲ適用セ
ズ
道府縣及市町村其ノ他之ニ準ズベキモ
ノノ事業ニ關シテハ本法ノ適用ニ付勅
令ヲ以テ別段ノ規定ヲ設クルコトヲ得
第二章退職積立金
第十一條事業主ハ勅令ノ定ムル所ニ依
リ勞働者ノ賃金ノ中ヨリ其ノ百分ノ二
ニ相當スル金額ヲ各勞働者ニ代リ其ノ
名義ヲ以テ退職積立金トシテ積立ツベ
シ
災害其ノ他已ムヲ得ザル事由アルトキ
ハ事業主ハ行政官廳ノ許可ヲ受ケ前項
ノ規定ニ拘ラズ積立ヲ爲サズ又ハ減額
シテ積立ツルコトヲ得
第十二條勞働者退職(解雇及死亡ヲ含
ム以下之ニ同ジ)其ノ他ノ事由ニ因リ本
法ノ適用ヲ受ケザルニ至リタル場合ニ
非ザレバ前條ノ退職積立金ノ支拂ヲ受
クルコトヲ得ズ
第十三條事業主豫メ確實ナル方法及利
子ノ定率ヲ定メ行政官廳ノ許可ヲ受ケ
タル上勞働者ノ同意ヲ得タルトキハ其
ノ勞働者ノ退職積立金ヲ運用スルコト
ヲ得
行政官廳ハ前項ノ許可ヲ爲ス場合ニ於
テ必要ト認ムル額ノ國債ヲ供託スベキ
コトヲ命ズルコトヲ得
行政官廳必要アリト認ムルトキハ第一
項ノ許可ヲ取消シ又ハ前項ノ國債ノ增
額ヲ命ズルコトヲ得
勞働者ハ事業主ノ運用シタル退職積立
金ニ關シ前二項ノ規定ニ依リ供託シタ
ル國債ニ付他ノ債權者ニ先チテ辨濟ヲ
受クルノ權利ヲ有ス
前項ノ權利ノ實行ニ關シ必要ナル事項
ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第十四條前條第一項ノ規定ニ依リ退職
積立金ヲ運用シタル場合ニ於テ勞働者
退職其ノ他ノ事由ニ因リ本法ノ適用ヲ
受ケザルニ至リタルトキハ事業主ハ運
用シタル金額ニ前條第一項ノ利子ヲ附
シタルモノヲ退職積立金トシテ其ノ勞
働者ニ支拂フベシ
第十五條退職積立金ノ支拂ヲ受クルノ
權利ハ之ヲ讓渡シ又ハ差押フルコトヲ
得ズ
第三章退職手當
第十六條事業主ハ勅令ノ定ムル所ニ依
リ每年一囘以上一定ノ期間末ニ於ケル
勞働者ノ其ノ期間中ノ賃金ノ少クトモ
百分ノ二ニ相當スル金額ヲ退職手當積
立金トシテ遲滯ナク積立ツベシ
災害其ノ他已ムヲ得ザル事出アルトキ
ハ事業主ハ行政官廳ノ許可ヲ受ケ前項
ノ規定ニ拘ラズ積立ヲ爲サズ又ハ減額
シテ積立ツルコトヲ得
第十七條事業主ハ前條ノ退職手當積立
每年一囘
金ノ外勅令ノ定ムル所ニ依リ左ノ各號
以上一定ノ期間末
ノ一ニ該當スル金額ノ十分ノ一ヲ限度
トシテ法人タル事業主ニ在リテハ事業
年度末、個人タル事業主ニ在リテハ曆
年末ニ於ケル勞働者ノ其ノ期間中ノ賃
以內ニ於テ行政官廳ノ認可
金ノ百分ノ三ニ達スル迄ノ金額ヲ退職
ヲ受ケタル
手當積立金トシテ遲滯ナク積立ツベシ
但シ行政官廳ノ許可ヲ受ケタルトキハ此ノ
限ニ在ラズ
卜事業主法人ナル場合ニ於テ事業年
度ニ於ケル利益配當金ガ拂込株金額
又ハ出資金額ニ對シ年百分ノ五ノ割
合ヲ以テ算出シタル金額ヲ超過スル
トキハ其ノ超過金額
仁事業主個人ナル場合ニ於テ事業ノ一
年ノ純益金額ノ百分ノ六十ガ五千圓
ヲ超過スルトキハ其ノ超過金額
第十八條前二條ノ退職手當積立金ハ計
算期每ニ其ノ期間中ノ賃金ニ比例シテ
勞働者別ニ計算ヲ明ニスベシ但シ前條
ノ退職手當積立金ニ限リ事業主豫メ行
政官廳ノ許可ヲ受ケタルトキハ勤務年
限勤務狀態其ノ他ニ依リ異ル率ヲ以
テ勞働者別ニ計算スルコトヲ得
第十九條事業主ハ退職手當積立金ヨリ
ヒ生ジタル利子((二二所所得稅又ハ資本
利子稅ヲ課セラレタルトキハ之ヲ差引
キタル金額)及第二十一條第一項ノ規
定ニ依リ退職手當積立金ヲ運用シタル
場合ニ於テハ同條同項ノ利子ヲ退職手
當積立金トシテ遲滯ナク積立ツベシ
前項ノ場合ニ於テハ命令ノ定ムル所ニ
依リ一定ノ計算期ニ於テ勞働者別ニ計
算ヲ明ニスベシ
第二十條退職手當積立金ノ積立ハ命令
ノ定ムル所ニ依リ他ノ財產ト分別シテ
左ノ方法ニ依リ之ヲ爲スベシ
一郵便貯金
二銀行ヘノ預金
三金錢信託
四登錄國債
第二十一條事業主豫メ確實ナル方法及
利子ノ定率ヲ定メ行政官廳ノ許可ヲ受
ケタルトキハ退職手當積立金ヲ運用ス
ルコトヲ得
第十三條第二項乃至第五項ノ規定ハ前
項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第二十二條本法ニ依リ退職手當積立金
トシテ積立ツル金額ハ所得稅法、營業
收益稅法及臨時利得稅法ノ適用ニ付テ
ハ之ヲ總損金又ハ必要ノ經費ト看做ス
道府縣及市町村其ノ他之ニ準ズベキモ
ノハ本法ニ依リ退職手當積立金トシテ
積立ツル金額ヲ標準トシテ課稅スルコ
トヲ得ズ
第二十三條退職手當積立金ノ拂戾又ハ
償還ヲ受クルノ權利ハ之ヲ讓渡シ又ハ
差押フルコトヲ得ズ但シ本法ニ依ル退
職手當ヲ受クベキ者第二十四條第一項
第一號ノ金額又ハ第二十六條第一項ノ
特別手當ノ金額ニ付差押フルコトヲ妨
ゲズ
第二十四條勞働者退職其ノ他ノ事由ニ
因リ本法ノ適用ヲ受ケザルニ至リタル
トキハ事業主ハ左ノ各號ノ金額ヲ退職
手當トシテ支給スベシ但シ命令ノ定ム
ル所ニ依リ特別ノ事由アル場合ニ於テ
ハ其ノ全部又ハ一部ヲ支給セザルコト
ヲ得
一第十八條、第十九條第二項及第二
十八條第二項ノ規定ニ依リ其ノ勞働
者ノ計算ニ屬スル金額
二第十六條第一項ノ規定ニ依ル積立
ノ最後ノ期間後ノ賃金ノ百分ノ二ニ
相當スル金額
前項第一號ノ金額ハ退職手當積立金ノ
中ヨリ之ヲ支給シ退職手當積立金ヲ以
テ之ヲ支給スルコト能ハザルトキハ事
業主ノ他ノ財產ヨリ之ヲ支給スベシ
第一項第二號ノ金額ハ退職手當積立金
ノ中ヨリ之ヲ支給スルコトヲ得ズ
勞働者死亡シタル場合ニ於テハ退職手
當ハ命令ノ定ムル所ニ依リ遺族又ハ勞
働者ノ死亡當時其ノ收入ニ依リ生計ヲ
維持シタル者ニ之ヲ支給スベシ
第二十五條前條第一項但書ノ規定ニ依
リテ支給スルコトヲ要セザル金額ヲ生
ジタルトキハ事業主ハ第二十六條第一
項ノ特別手當ニ充ツル爲ノ積立金特
別手當積立金)トシテ之ヲ保留スベシ
第二十六條事業主事業ノ都合ニ依リ勞
働者ヲ解雇シタルトキハ退職手當トシ
テ第二十四條第一項ノ金額ノ外特別手
當積立金ノ存スル限度ニ於テ左ノ各號
ノ一ニ達スル迄ノ金額(特別手當)ヲ加
算シテ支給スベシ但シ命令ノ定ムル所
ニ依リ特別ノ事由アル場合ニ於テハ加
算スルコトヲ要セズ
一勤續一年以上三年未滿ノ者ニ付テ
ハ標準賃金二十日分ニ相當スル金額
二勤續三年以上ノ者ニ付テハ標準賃
金三十五日分ニ相當スル金額
特別手當ヲ受クベキ者一人以上アル場
合ニ於テ特別手當積立金ガ前項各號ノ
金額ヲ支給スルニ足ラザルトキハ其ノ
支給ヲ受クベキ者ノ前項各號ノ金額ニ
按分シ特別手當ノ金額ト爲スベシ
第二十四條第二項ノ規定ハ特別手當ノ
支給ニ之ヲ準用ス
第二十七條事業主行政官廳ノ許可ヲ受
ケ特別手當積立金ノ限度ヲ定メタルト
キハ其ノ限度ヲ超ユル金額ハ第十六條
及第十七條ノ規定ニ依リ積立ツベキ金
額ニ之ヲ充當スベシ
行政官廳必要アリト認ムルトキハ前項
ノ許可ヲ取消シ又ハ變更スルコトヲ得
第二十八條事業主ハ第十九條第二項ノ
計算期ニ於テ退職手當積立金ノ缺損ヲ
塡補シ餘剩ヲ積立ツベシ
前項ノ規定ニ依リ餘剩ヲ積立ツル場合
ニ於テハ命令ノ定ムル所ニ依リ勞働者
別ニ計算ヲ明ニスベシ
第二十九條本法ニ依ル退職手當ヲ受ク
ルノ權利ハ之ヲ讓渡シ又ハ差押フルコ
トヲ得ズ
第三十條事業主退職手當及之ガ支給ニ
充ツル爲ノ準備積立金ニ關スル規程ヲ
定メ行政官廳ノ許可ヲ受ケタルトキハ
第十六條及第十七條ニ規定スル退職手
當積立金ノ積立ヲ爲サザルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ許可ヲ受ケタル規程
ノ廢止又ハ變更ハ行政官廳ノ許可ヲ受
クルニ非ザレバ其ノ效力ヲ生ゼズ
事業主ハ第一項ノ規定ニ依リ許可ヲ受
ケタル場合ニ於テ勞働者退職其ノ他ノ
事由ニ因リ本法ノ適用ヲ受ケザルニ至
リタルトキハ少クトモ勤續一年ニ付標
準賃金十二日分ニ相當スル退職手當(事
業ノ都合ニ依ル解雇ノ場合ニ於テハ勤
續一年以上三年未滿ノ者ニ付テハ標準
賃金二十日分、勤續三年以上ノ者ニ付
テハ標準賃金三十五日分ニ相當スル金
額ヲ加算シタルモノ)ヲ支給スベシ此ノ
場合ニ於テハ第二十四條第一項但書及
第二十六條第一項但書ノ規定ヲ準用ス
第二十條乃至第二十三條及第二十八條
第一項ノ規定ハ第一項ノ準備積立金ニ、
第二十四條第四項、第二十九條及第三
十一條ノ規定ハ第一項ノ退職手當ニ之
ヲ準用ス
行政官廳必要アルト認ムルトキハ第一
項ノ許可ヲ取消シ又ハ準備積立金ノ增
額ヲ命ズルコトヲ得
第四章退職金審査會
第三十一條退職積立金ノ支拂又ハ退職
手當ノ支給ニ關スル事項ニ付民事訴訟
ヲ提起スルニハ退職金審査會ノ審査ヲ
經ルコトヲ要ス
前項ノ審査ハ請求ハ時效ノ中斷ニ關シ
テハ裁判上ノ請求ト看做ス
第三十二條退職金審査會ノ組織及審査
ニ關シ必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ
定ム
第五章罰則
第三十三條事業主第二十一條第一項
(第三十條第四項又ハ第四十二條ニ於
テ準用スル場合ヲ含ム)ノ許可ヲ受ケ
ズシテ退職手當積立金又ハ準備積立金
-禁錮
ヲ處分シタルトキハ三年以下ノ懲役又
ハ三千圓以下ノ罰金ニ處ス
事業主法人ナル場合ニ於テ前項ノ許可
ヲ受ケザルニ拘ラズ其ノ理事、取締役
其ノ他法人ノ業務ヲ執行スル役員退職
手當積立金又ハ準備積立金ヲ處分シタ
ルトキ其ノ者ニ付亦前項ニ同ジ
第三十四條事業主左ノ各號ノ一ニ該當
スルトキハ千圓以下ノ罰金ニ處ス
第三條第二項、第十一條第一項、
第十四條、第十六條第一項、第十七
條、第十八條、第十九條、第二十條
(第三十條第四項又ハ第四十二條ニ
於テ準用スル場合ヲ含ム)、第二十四
條第一項第四項(第三十條第四項ニ
於テ準用スル場合ヲ含ム)、第二十五
候、第二十六條第一項、第二十七條
第一項、第二十八條(第三十條第四
項又ハ第四十二條ニ於テ準用スル場
合ヲ含ム)又ハ第四十一條第二項ノ
規定ニ違反シタルトキ
二第十三條第二項第三項(第二十一
條第二項、第三十條第四項又ハ第四
十二條ニ於テ準用スル場合ヲ含ム)、
第十七條又ハ第三十條第五項ノ規定
ニ依ル命令ニ從ハザルトキ
三第三條第一項、第三十條第一項又
ハ第四十二條ノ規定ニ依リ許可ヲ受
ケタル準備積立金ノ積立ヲ爲サザル
トキ
四第三十條第三項ノ規定ニ依リ支給
スベキ退職手當トシテ勤續一年ニ付
標準賃金十二日分以內ニ相當スル金
額(事業ノ都合ニ依ル解雇ノ場合ニ
於テハ勤續一年以上三年未滿ノ者ニ
付テハ標準賃金二十日分以內、勤續
三年以上ノ者ニ付テハ標準賃金三十
五日分以內ニ相當スル金額ヲ加算シ
タルモノ)ヲ支給セザルトキ
第三十五條第七條ノ規定ニ依ル檢査ヲ
拒ミ、妨ゲ若ハ忌避シ又ハ報〓ヲ爲サ
ズ若ハ虛僞ノ報〓ヲ爲シタル者ハ三百
圓以下ノ罰金ニ處ス
第三十六條事業主ハ其ノ代理人、戶主、
家族、同居者、雇人其ノ他ノ從業者ニ
シテ其ノ業務ニ關シ本法若ハ本法ニ基
キテ發スル命令又ハ之ニ基キテ爲ス處
分ニ違反シタルトキハ自己ノ指揮ニ出
デザルノ故ヲ以テ其ノ處罰ヲ免ルルコ
トヲ得ズ
第三十七條本法又ハ本法ニ基キテ發ス
ル命令ニ依リ事業主ニ適用スベキ罰則
ハ其ノ者ガ法人ナルトキハ理事、取締
役其ノ他法人ノ業務ヲ執行スル役員
ニ、未成年者又ハ禁治產者ナルトキハ
其ノ法定代理人ニ之ヲ適用ス但シ營業
ニ關シ成年者ト同一ノ能力ヲ有スル未
成年者ニ付テハ此ノ限ニ在ラズ
附則
第三十八條本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以
テ之ヲ定ム
第三十九條第十六條又ハ第十七條ノ規
定ニ依ル本法適用後ノ最初ノ積立金ニ
付テハ勅令ヲ以テ別段ノ規定ヲ設クル
コトヲ得
第四十條勞働者第十六條ノ規定ニ依ル
本法適用後ノ積立ノ最初ノ期間中ニ退
職其ノ他ノ事由ニ因リ本法ノ適用ヲ受
ケザルニ至リタル場合ニ於テハ第二十
四條第一項第二號ノ金額ハ本法適用後
ノ賃金ノ百分ノ二ニ相當スル金額トス
第四十一條事業主及勞働者ノ出捐ニ係
ル組合ガ本法施行ノ際現ニ退職手當ニ
關スル規程ヲ有スル場合ニ於テ事業主
行政官廳ノ許可ヲ受ケタルトキハ第十
一條ニ規定スル退職積立金竝ニ第十六
條及第十七條ニ規定スル退職手當積立
金ノ積立ヲ爲サザルコトヲ得
前項ノ組合ガ勞働者退職其ノ他ノ事由
ニ因リ本法ノ適用ヲ受ケザルニ至リタ
ル場合ニ支給スベキ金額ヲ支給セザル
トキハ事業主ハ組合ノ支給セザル金額
ニ相當スル金額ヲ勞働者ニ支給スベシ
行政官廳必要アリト認ムルトキハ第一
項ノ許可ヲ取消スコトヲ得
第四十二條事業主本法施行ノ際現ニ使
用スル勞働者ノ本法施行前ノ勤務ニ對
スル退職手當及之ガ支給ニ充ツル爲ノ
準備積立金ニ關スル規程ヲ定メ行政官
廳ノ許可ヲ受ケタルトキハ第二十條乃
至第二十三條及第二十八條第一項ノ規
定ハ準備積立金ニ、第二十九條及第三
十一條ノ規定ハ退職手當ニ之ヲ準用ス
第四十三條本法ノ適用ヲ受クル事業ニ
於ケル本法適甲前ノ退職手當規程ハ本
法ノ適用ニ依リ廢止又ハ變更セラルル
コトナシ但シ本法適用後ノ勤務ニ對シ
本法ニ依ル退職手當ヲ支給スル場合ニ
於テハ從前ノ規程ニ依リ支給スベキ退
職手當ハ其ノ差額ヲ支給スルヲ以テ足
ル
第四十四條國稅徴收法第十六條ニ左ノ
一項ヲ加フ
退職積立金及退職手當法ニ依ル退職手
當積立金及準備積立金ニ付亦前項ニ同
第四十五條郵便貯金法第四條ニ左ノ一
號ヲ加フ
五退職積立金及退職手當法ニ依ル積
立金ノ預入金
〔國務大臣潮惠之輔君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X01419360524&spkNum=129
-
130・潮惠之輔
○國務大臣(潮惠之輔君) 只今上程ニ相成
リマシタ退職積立金及退職手當法案ニ付キ
マシテ提案ノ理由ヲ御說明申上ゲマス、今
ヤ我ガ國ノ產業界ニ於キマシテハ事業主ト
勞働者トハ益〓相親和シ、相協力シ、勞資
一體トナッテ產業ノ健全ナル發達ヲ圖ラナ
ケレバナラナイ時期デアルト考ヘルノデゴ
ザイマス、近時我ガ國ニ於ケル勞働運動ガ
眞摯ナル發達ヲ爲シ、勞資ノ間ハ漸時其ノ
理解ヲ深メ偕和協力シテ國家產業ノ發展ニ
努メムトスルノ機運ニ向ヒツヽアリマスコ
トハ、誠ニ喜バシキ傾向ト存ズル次第デゴ
ザイマス、惟フニ勞働者ノ生活安定ハ國民
生活安定ノ一礎石ヲ爲スモノデゴザイマシ
テ、之ガ對策ヲ講ジマスコトハ現下ノ情勢
ニ鑑ミ極メテ緊要ノコトト考ヘマシテ、玆
ニ其ノ一方策トシテ退職手當制度ノ確立ヲ
圖リタイト考ヘマシタ次第デゴザイマス、
抑〓退職手當制度ノ慣行ハ我ガ國獨特ノ美
風トシテ夙ニ發達シタモノデアリマシテ、
勞働者ノ生活不安ヲ緩和スル爲ニ極メテ推
奬スベキ制度デアルト存ジマス、然ルニ此
ノ制度ハ大規模ノ工場鑛山ニハ比較的普及
シテ居リマスルガ、未ダ一般的ト云フコト
ガ出來マセヌ、又手當ノ支給ニ關シマシテモ多
クハ事業主ノ任意ニ決スル所デアリマスノデ、
其ノ間種々ノ問題ヲ惹起スル場合モアルノデゴ
ザイマス、斯カル事情ニアリマスノデ、之ヲ法
制化致シ、其ノ普及ヲ圖リ、其ノ內容ヲ合理
的ナラシムルト共ニ、平素ヨリ之ガ支給準
備ノ爲ニ積立ヲ爲サシメテ、其ノ支給ヲ確
保スルコトハ極メテ緊要ノコトデアルト考
ヘマス、仍テ本法案ハ事業主ニ對シ、賃銀
ノ百分ノ二ノ積立義務ヲ課シ、更ニ事業ノ
負擔能力ヲ考ヘマシテ、其ノ負擔能力ニ應
ジ、賃金ノ百分ノ三迄ノ積立ヲ爲サシメ、
其ノ積立額ヲ基礎トシテ退職手當ヲ支給セ
シムルコトト致シタノデゴザイマス、同時
ニ勞働者ニ對シマシテモ事業主ガ退職手當
ヲ支給スルノニ相應ジマシテ、自ラモ亦其ノ
退職時ニ備ヘシムル趣旨ノ下ニ、賃金ノ百
分ノ二ノ積立ヲ爲サシムルコトニシタノデ
アリマス、今ヤ我ガ國ハ軍需工業ノ振興ト、
輸出貿易ノ增加トニ依リマシテ、比較的好
況ヲ見ツヽアルノデゴザイマスガ、斯カル
時コソ將來ノ爲ニ相當ノ準備ヲ開始スルニ
最モ適當ナ時期デアルト考フルノデアリマ
ス、之ヲ要シマスルニ、本法案ハ我ガ國獨
特ノ美風トシテ發達シマシタ慣行ヲ助長シ
テ、勞資協力ノ精神ノ下ニ勞働者ノ退職時
ノ經濟的不安ヲ緩和シ、安ンジテ其ノ
勞務ニ努メシメ、延イテ產業ノ健全ナ
ル發達ニ資セムトスルモノデゴザイマシ
テ、今日ノ情勢ニ鑑ミ極メテ緊要ノコトト
存ジテ提案致シマシタ次第デゴザイマス、
本案ニ對シマシテ、衆議院ニ於キマシテ數
箇ノ修正ガ加ヘラレタノデアリマス、第
ハ適用範圍ニ關スル修正デアリマシテ、政
府原案ニ於キマシテハ常時三十人以上ノ勞
働者ヲ使用スル工場、鑛山及ビ勅今ヲ以テ
指定スル事業ニ本法ヲ適用スルコトニ致シ
タノデアリマスガ、之ヲ常時五十人以上ノ
勞働者ヲ使用スル工場、鑛山ニ適用スルコト
トシ、勅令ヲ以テ指定スル事業ヲ削除スル
コトトセラレタノデアリマス、第二ニハ、
退職手當積立金ニ對スル修正デアリマス、
政府原案ニ於キマシテハ第十六條ニ於テ少
クトモ百分ノ二ニ相當スル金額ヲ積立テシ
ムルコトニ致シテ居リマシタガ、「少クトモ」
ノ字句ヲ削除スルコトトセラレ、尙政府原
案ニ於キマシテハ、第十七條ニ定ムル計算
ニ依リマシテ、事業主ノ負擔能力ニ應ジテ
百分ノ三迄ノ積立金ヲ事業主ニ課シタノデ
アリマスガ、之ヲ產業主ガ賃金ノ百分三以
內ニ於テ行政官廳ノ認可ヲ受ケタル金額ヲ
退職手當積立金トシテ積立テルコトトスル
修正デアリマス、第三ハ、原案ノ第三十三條
ニ於テ退職手當積立金ヲ不正ニ處分シタル
場合ノ罰ヲ三年以下ノ懲役又ハ三千圓以下
ノ罰金ト致シテ居リマシタノヲ、一年以下
ノ禁錮又ハ三千圓以下ノ罰金トスルコトノ
修正デアリマス、本修正案ハ漸進的ニ社會
立法ヲ進メテ行クト云フ趣旨ニ依ルモノト
考ヘラレマスガ、原案ノ本旨ハ本修正案ニ
於テモ大體現レテ居リマス、又政府ハ此ノ
法案ノ速カニ成立スルコトヲ希望致シマス
ノデ、若シ兩院ノ御意見ガ一致ヲ致シマシ
タ上ハ、政府ハ其ノ御決議ヲ尊重シ、善處
致シタイト存ジマス、此ノ際如何ニモ恐縮
ニ存ジマスルガ、何卒御審議ノ上御協賛ア
ラムコトヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X01419360524&spkNum=130
-
131・松平頼壽
○副議長(伯爵松平賴壽君) 質疑ノ通〓ガ
ゴザイマスカラ、御許シヲ致シマス、金岡
君
〔金岡又左衞門君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X01419360524&spkNum=131
-
132・金岡又左衞門
○金岡又左衞門君 私ハ本案ニ付キマシテ
總理大臣竝ニ內務大臣ニ御尋ヲ致シタイト
思ヒマス、今囘ノ特別議會ハ大體ニ於テ前
內閣政策ノ延長ノ議會デアル感ガ致サレル
ノデアリマス、獨リ其ノ中デ此ノ退職積立
金法案ハ現内閣ノ獨自ノ立場ニ於キマシテ、
獨自ノ政策ノ現レト致シマシテ、唯一ノ社
會政策ヲ加味シ、最モ〓新味ノアル重要ナ
ル法案デアルト考ヘマス、此ノ法案ヲ現內
閣ガ會期短キ此ノ特別議會ニ敢然トシテ御
提案ニナリマシタ其ノ御勇斷ヲ多トスル
者デゴザイマス、私ハ本案ノ只管通過致シ
マスコトヲ待望シテ居ル次第デアリマシタ
ガ、只今此ノ本案ニ最モ骨子ト致シマスル
所ノ最モ味ノアル所ノ、本案ノ眞先ニアル
第一條ノ三十人ヲ五十人トスルト云フ衆議
院ニ於テ修正ヲ加ヘラレタノデアリマシテ、
政府ハ之ニ對シテ同意ノ意思ヲ表示セラレ
テ居リマス、政府ハ此ノ重要法案ニ付テ確
乎タル信念ヲ以テ我ガ國獨特ノ此ノ重要法
案トシテ折角御提出ニナリマシタ此ノ案ニ
對シテ、何ガ故ニ之ヲ速カニ御同意ノ意
思ヲ表示サレマシタカ、之ヲ總理大臣竝ニ
內務大臣ニ御尋ヲ致シタイト思ヒマス、五
十人トナリマスルト云フト、實際同題ト致
シマシテハ、退職手當、退職ノ慰勞等ハ支
給サレテ居ルノデアリマシテ、此ノ法律ガ
アリマシテモ、ナクテモ、大體ニ於テソレ
ガ實行セラレテ居ルト考ヘテ居リマス、從
ヒマシテ五十人ト致シマスレバ此ノ法律
ノ效力ハ極メテ稀薄トナリマス、極メテ〓
弱ニナルト考ヘルノデアリマス、五十人以
下ノ使用範圍ノ勞働者竝ニ勞役者ニ向ッテ
此ノ生活ノ安定ヲ與ヘル爲ニコソ此ノ法
案ヲ制定セラレタノデアルト私ハ思ヒマス、
御承知ノ如ク現在ニ於キマシテハ工場法ノ
適用ハ十人ト相成ッテ居リマス、又健康保險
法ニ於キマシテハ五人ヲ標準トシテ居リマ
シテ、一圓ニ付テ二錢ヅツノ百分ノ二ニ該
當スル保險金ヲ勞資兩者ニ於テ積立テテ居
ルノデアリマス、サウシテ勞資協調ノ守貝ヲ
擧ゲテ居ルノデアリマス、故ニ最初社會局
ニ於テ立案サレマシタ時ニハ、此ノ工場法
適用ノ範圍ニ於テ退職積立金ハ十人ヲ目標
トシテ立案ヲサレタト云フコトデアリマス
ガ、ソレニ緩和ニ緩和ヲ重ネ、讓步ニ讓步
ヲ重ネテ、三十人トシテ政府ハ之ニ御決定
ニナッタト承知シテ居リマス、デアリマス故
ニ、此ノ點ニ付キマシテハ最早彼此言フノ
餘地ガナイカト斯樣ニ信ジテ居ルノデアリ
マス、卽チ此ノ五十人ニ引上ゲラレマシタ
コトニ依ッテ此ノ法案ハ殆ド骨拔キ同樣トナ
リ、殆ド蟬ノ脫殼同樣ニ相成ッタノデハナイ
カト私ハ思フノデアリマス、之ガ爲ニ此ノ
法律ノ適用ヲ受ケマセヌ所ノ勞役者ハ約十八
萬人、卽チ二十萬人近クニ相成ルカト承知致
シマス、二十萬人トロデ申シマスレバソレ
迄デアリマスガ、實際二十萬人ト云フ此ノ
大衆ノ生活安定ガ與ヘラレナイト云フコト
ニナリマシテハ、此ノ法案ハ骨拔キトナリ、
殆ド有名無實ニ近イモノデナイカト私ハ信
ズルノデアリマシテ、現內閣ハ庶政ノ更革、
民心ノ安定ヲ主義政綱トシテ揭ゲラレテ居
ルノデアリマシテ、此ノ大事ノ金看板ガ或
ハ行方不明ニナルノデハナイカト云フコト
ヲ思ハレマス、是デハ其ノ聲明ヲ裏切リ、
延イテハ現內閣ノ鼎ノ輕重ヲ問ハルヽノデ
ハナイカト云フコトヲ深ク遺憾トスルモノ
デアリマス、政府ハ何故ニ、此ノ大修正ニ
對シテ斷乎反對ノ意思ヲ表明セラレマシテ、
或ハ場合ニ依ッテハ本案ヲ撤囘シ、來ルベキ
議會ニ於テ更ニ捲土重來ヲ畫サレルヤウナ
コトヲナサレナカッタノカ、是ハ現內閣ノ爲
ニ頗ル心外トスル所デゴザイマス、以上ノ
私ノ申シマシタコトニ付キマシテ、總理大
臣竝ニ內務大臣ヨリ御所見ヲ伺ヒタイト思
ヒマス
〔國務大臣潮惠之輔君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X01419360524&spkNum=132
-
133・潮惠之輔
○國務大臣(潮惠之輔君) 御答ヘ申上ゲマ
ス、仰セノ通リ他ノ法律、例ヘバ工場法或
ハ健康保險法等ニ於キマシテハ、各〓其ノ
成立ノ際或ハ其ノ後ノ實績ニ依リマシテ、
標準ト致シマスル人數ニハ相違ガアルノデ
ゴザイマス、本案モ之ヲ三十人ニ致シマス
ルカ、或ハ降ッテ十人ニ致シマスルカ、若シ
クハ超エテ五十人ニ致シマスルカ、是ニ付
キマシテハ從來各方面デ御意見ガアルノデ
アリマス、從ッテ他ノ法制ト必ズシモ步調ヲ
合ハスル必要モナク、及實際ニ徵シテ步調
ヲ合ハセヌコトガ實情ニモ合フノデハナイ
カト存ジマシテ、是等ノ意見ヲ綜合シテ考
ヘマシタ揚句、政府ハ原案トシテ三十人ト
云フコトヲ以テ提案致シタノデゴザイマス、
政府ト致シマシテハ、此ノ三十人ハ適當ナ
ル案ト存ジテ居ルノデゴザイマスケレドモ、
先刻モ申上ゲマシタヤウニ、之ヲ衆議院ニ
於テ御修正ニナリマシタ御趣意モ、社會立
法ヲ漸進的ニシテ行カウト云フ御修正デア
リマスルシ、若シ此ノ點ニ付キマシテ兩院御
一致ノ意見ト云フコトニ相成リマスレバ
政府トシテハ十分ニ此ノ御趣意ヲ尊重シテ
善處ヲ致シタイト云フ考ヲ申上ゲマシタノ
デアリマス、左樣ナコトニ相成リマシテ、
本案ノ趣旨ヲ沒却スルト云フコトニナレバ
格別デゴザイマスケレドモ、政府ガ勞働者
ノ福趾ヲ增進シ、又一面ニ於キマシテハ事
業主、產業界ノコトヲ考ヘルト、該趣旨ニ
於キマシテハ、矢張リ修正ニ依リマシテモ
現レ得ルノデゴザイマスカラ、左樣ナ考カ
ラ御意見ガ兩院デ御決リニナリマスレバ善
處致シタイト申上ゲタ趣意デアルノデゴザ
イマス、右樣ノ次第デゴザイマスノデ、金
岡君ニ於カレマシテモ特ニ御諒察ヲ願ヒタ
イト存ジマス
〔國務大臣廣田弘毅君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X01419360524&spkNum=133
-
134・廣田弘毅
○國務大臣(廣田弘毅君) 只今金岡君ヨリ
ノ御質疑ニ對シマシテハ、內務大臣ヨリ詳
細御說明申上ゲタノデアリマスガ、要シマ
スルノニ、斯カル立法ハ根本ニ於キマシテ、
日本ノ特殊ノ美風ニ基イタモノデアリマス
ノデ、ソレヲ成ルベク普及サセル意味ニ於キ
マシテ、法制化ヲスルコトヲ適當ト認メタ
ノデアリマスルガ、斯カル制度ハ急進的ニ
進メマスヨリモ、漸進的ニ進ンデ行クト云フ
コトガ適當デアルト思ヒマスノデ、衆議院
ノ修正モ其ノ趣意ニ出デテ居ルト云フコト
ヲ察シマシテ、寧ロ撤囘スルヨリモ、成立
ヲ希望スル趣旨ニ於テ、斯カル修正ニ同意
ヲ致シタノデアリマスカラ、左樣御承知ヲ
願ヒマス
〔金岡又左衞門君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X01419360524&spkNum=134
-
135・金岡又左衞門
○金岡又左衞門君 總理大臣竝ニ內務大臣
ヨリ御所見ヲ伺ヒマシタガ、本案ハ漸進的ニ
ヤル、多少トモ其ノ趣旨ガ沒却セラレナイ
コトデアルナラバ、本案ノ修正ニ同意ヲス
ルト云フヤウナ御趣旨デアリマシタ、ソレデ
ハ此ノ現內閣ノ非常時ニ立タレマシタ非常
時內閣トシテ、非常ナ決意ヲ以テ立タレマ
シタル現內閣ニ對シテ、私ハ御警告ヲ申上
ゲタイト思ヒマス、廣田總理大臣ハ特別議會
ノ劈頭ニ於キマシテ、貴衆兩院ニ向ッテ聲明
ヲシテ居ラレマス、又或ル機會ニ於テモ堂々
トシテ聲明ヲシテ居ラレマスルノハ、政府
ハ徒ニ舊習ニ囚レズ、其ノ是ナリト信ズル
所ニ向ッテハ斷乎トシテ邁進シ、敢テ偷安一
時ヲ糊塗シ、百年ノ大計ヲ忘ルヽナカラム
コトヲ固ク期スルノデアルト云フコトヲ聲
明ニナッテ居ルノデアリマス、此ノ趣旨ニ於
テモ政府ハ確乎タル信念ヲ持チ、確乎不動
ナル態度ヲ以テ强力ナル政治ヲ御斷行アラ
ムコトヲ切ニ御警告申上ゲマス、私ノ質疑
ハ是デ終リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X01419360524&spkNum=135
-
136・池田政時
○子爵池田政時君 只今議題ト相成リマシ
タ退職積立金及退職手當法案ハ重要ナル法
案デアリマスルガ故ニ其ノ特別委員ノ數ヲ
十八名トシ、其ノ指名ヲ議長ニ一任スル動
議ヲ提出致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X01419360524&spkNum=136
-
137・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X01419360524&spkNum=137
-
138・松平頼壽
○副議長(伯爵松平賴壽君) 池田子爵ノ動
議ニ御異議ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X01419360524&spkNum=138
-
139・松平頼壽
○副議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト
認メマス、特別委員ノ氏名ヲ朗讀致サセマ
ス
〔角倉書記官朗讀〕
退職積立金及退職手當法案特別委員
公爵贋司信輔君侯爵佐佐木行忠君
伯爵林博太郞君子爵野村益三君
子爵岡部長景君子爵增山正興君
有吉忠一君男爵北河原公平君
男爵赤松範一君男爵安場保健君
松本學君小久保喜七君
阿部房次郞君藤原銀次郞君
久恒貞雄君濱口儀兵衞君
大澤德太郞君金岡又左衞門君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X01419360524&spkNum=139
-
140・松平頼壽
○副議長(伯爵松平賴書君) 是デ暫時休憩
致シマス
午後五時一分休憩
午後六時二十五分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X01419360524&spkNum=140
-
141・松平頼壽
○副議長(伯爵松平賴壽君) 休憩前ニ引續
キマシテ開會ヲ致シマス、土方寧君ヨリ先
刻ノ同君ノ發言ニ付自己ノ責任上辯明致シ
タキ旨要求ガゴザイマシタガ、此ノ際之ヲ
許可スルコトニ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X01419360524&spkNum=141
-
142・松平頼壽
○副議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト
認メマス、土方寧君
〔土方寧君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X01419360524&spkNum=142
-
143・土方寧
○土方寧君 私ガ先刻競馬法中改正法律案
ニ付キマシテ反對ノ意見ヲ述べマシタ終ヒ
ノ方ニ行キマシテ、過日各國務大臣ニ對シ
テ質問ヲ致シマシタ、其ノ質問ノ要點ハ、
其ノ時ニ申シマシタ通リニ、私ハ勝馬投票
劵ヲ發賣スルト云フコトハ、前ニ引用シマ
シタ明治天皇カラ拜シタ戊申詔書、大正天
皇カラ拜シタ國民精神作興ニ關スル詔書、
是等ノ詔書ニ御示シニナッテ居ル聖旨ニ反
スルト私ハ確信シテ居リマス、各國務大臣
ハ左樣ニ御考ガナイカ、反スルト考ヘナイ
カドウカト云フコトヲハッキリ御答ヘ願ヒ
タイト云フコトヲ申シテ置キマシタ、今日
島田農林大臣ガ閣僚全ヲヲ表表テテ勝馬
投票劵ヲ發賣スルト云フコトヲシテモ、是
等ノ詔書ニ御示シニナッテ居ル聖旨ニ反シ
ナイト云フ御答デアリマシタ、私ハドコ迄
モ反スルト云フコトガ正解デアルト確信シ
テ居ルノデアリマスカラシテ、遂ニ是ト正反對
ノ解釋ヲセラレタノハ、是等ノ詔書ヲ正解
スル能力ノナイコトヲ自白シタト同樣ニ見
ル外仕方ガアリマセヌト云フコトヲ申シマ
シタ、所ガソレハドウモ穩カデアルマイ、
餘リ强イコトヲ言過ギタノヂヤナイカト云
フ注意ヲ受ケマシテ、能ク考ヘテ見マスト、
成程餘リ强烈ニ過ギタ言葉ヲ使ッタヤウニ
思ヒマスカラ、之ヲ取消シマシテ、斯クノ
如キ詔書ニ示サレル聖旨ニ反スルヤ否ヤト
云フヤウナ重大ナ問題ニ付テ、私ハ反スル
ト確信スルガ、是ト正反對ノ閣僚全體ノ御
答辯ヲ得タト云フコトハ遺憾至極ニ存ジマ
ス、ト斯ウ云フコトニ訂正致シマスカラ、
左樣御承認ヲ願ヒタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X01419360524&spkNum=143
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144・松平頼壽
○副議長(伯爵松平賴壽君) 日程第二十二
百貨店法案、衆議院送付、第一讀會
百貨店法案
右本院提出案及送付候也
昭和十一年五月二十三日
衆議院議長富田幸次郞
貴族院議長公爵近衞文麿殿
百貨店法
第一條本法ニ於テ百貨店ト稱スルハ衣
食住ニ關スル多種類ノ商品ノ小賣業ヲ
營ム者ヲ謂フ
衣〓住ニ關セサル物品ヲ小賣スル場合
ト雖百貨店ノ營業所ニ於テ之ヲ爲スト
キハ之ヲ百貨店ノ營業ト看做ス
第二條百貨店ノ業務ヲ營マムトスル者
ハ事業方法其ノ他命令ノ定ムル事項ヲ
具シ主務大臣ニ申請シ免許ヲ受クヘシ
主務大臣前項ノ免許ヲ爲スニ當リテハ
特定ノ審議機關ノ審議ノ結果ヲ參酌ス
ルコトヲ得
前項ノ審議機關ハ命令ノ定ムル所ニ依
リ地區營業者ノ代表者、同業組合ノ
代表者及所管公吏ヲ以テ之ヲ組織
ス
第三條百貨店ハ本店其ノ他ノ營業所ノ
位置ヲ變更シ又ハ店舗若ハ賣場ヲ新設
若ハ擴張セムトスルトキハ主務大臣ノ
認可ヲ受クヘシ
前項ノ認可ニ付テハ前條ノ規定ヲ準用
ス
第四條百貨店ハ支店、出張所若ハ代理
店ヲ設置シ又ハ出張販賣ヲ爲スコトヲ
得ス
第五條百貨店見切品、棚浚、殘品其ノ
他名義ノ何タルヲ問ハス相場外ノ價格
ヲ以テ廉賣ヲ爲サムトスルトキハ商品
ノ種類、品質、數量、仕入時價及原價、
賣價竝廉賣ノ事由ヲ具シ主務大臣ノ認
可ヲ受クヘシ
第六條主務大臣ハ百貨店ノ營業方法カ
公益ニ反シ又ハ一般小賣業者若ハ消費
者ノ公正ナル利益ヲ害スルモノト認ム
ルトキハ之ヲ制止スル爲必要ナル事項
ヲ命シ又ハ必要ナル處分ヲ爲スコトヲ
得
第七條主務大臣ハ百貨店ノ所爲ニシテ
本法又ハ本法ニ基キテ發スル命令ニ違
反シタリト認ムルトキハ其ノ業務ヲ停
止シ又ハ其ノ認可若ハ免許ヲ取消スコ
トヲ得
第八條百貨店ハ重要物產同業組合其ノ
他ノ同業組合ニ加入スヘシ
第九條百貨店ハ左ノ各號ノ時間外ニ於
テ營業ヲ爲スコトヲ得ス
一四月一日ヨリ九月三十日迄ハ午前
八時開店午後六時閉店
二十月一日ヨリ翌年三月三十一日迄
ハ午前九時開店午後五時閉店
第十條百貨店ハ每月一齊ニ三日以上ノ
休日ヲ設クヘシ
第十一條主務大臣必要アリト認ムルト
キハ百貨店ニ對シ其ノ營業若ハ財產ノ
狀況報〓ヲ爲サシメ又ハ營業若ハ財產
ノ狀況ヲ檢査スルコトヲ得
第十二條主務大臣ノ免許ヲ受ケスシテ
百貨店ノ業務ヲ營ミタル者ハ三千圓以
下ノ罰金ニ處ス
第十三條百貨店ニ非スシテ百貨店ノ支
店出張所、代理店又ハ出張販賣ナル
カ如ク裝ヒテ營業ヲ爲シタル者ハ千圓
以下ノ罰金ニ處ス
第十四條左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ
千圓以下ノ罰金ニ處ス
一第三條乃至第五條又ハ第八條乃至
第十條ノ規定ニ違反シタル者
二第六條ノ規定ニ依ル命令又ハ處分
ニ違又シタル者
三第七條ノ規定ニ依ル業務停止ノ處
分ニ違反シタル者
四正當ノ理由ナクシテ第十一條ノ規
定ニ依ル報〓ヲ爲サス若ハ虚僞ノ報
告ヲ爲シタル者又ハ同條ノ規定ニ依
ル檢査ヲ拒ミ若ハ之ヲ妨ケタル者
第十五條百貨店ノ業務ヲ營ム者ハ其ノ
代理人、戶主、家族、同居者、雇人其
ノ他ノ從業者カ本法又ハ本法ニ基キテ
發スル命令ニ違反シタルトキハ自己ノ
指揮ニ出テサルノ故ヲ以テ其ノ處罰ヲ
免ルルコトヲ得ス
第十六條本法又ハ本法ニ基キテ發スル
命令ニ依リ百貨店ノ業務ヲ營ム者ニ適
用スヘキ罰則ハ其ノ者カ法人ナルトキ
ハ理事、取締役其ノ他ノ法人ノ業務ヲ
執行スル役員ニ、未成年者又ハ禁治產
者ナルトキハ其ノ法定代理人ニ之ヲ適
用ス但シ營業ニ關シ成年者ト同一ノ能
力ヲ有スル未成年者ニ付テハ此ノ限ニ
在ラス
第十七條主務大臣ハ命令ノ定ムル所ニ
依リ本法ニ依ル職權ノ一部ヲ地方長官
ニ委任スルコトヲ得
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
重要物產同業組合法第四條但書ハ之ヲ廢
止ス
本法施行ノ期日ニ於テ現ニ營業ヲ爲ス百
貨店又ハ其ノ店舗若ハ賣場ハ本法ニ依リ
免許又ハ認可ヲ受ケタルモノト看做ス
本法施行ノ期日ニ於テ現ニ營業ヲ爲ス百
貨店ノ旣存ノ支店、出張所又ハ代理店ハ
第四條ノ規定ニ拘ラス其ノ營業ヲ繼續ス
ルコトヲ得
主務大臣ハ前二項ノ場合ニ於テ其ノ營業
繼續ニ付必要ナル處分ヲ爲スコトヲ得
本法施行ノ期日以前ニ於テ百貨店ノ本店
其ノ他ノ營業所ノ設置若ハ位置變更ニ著
手シ又ハ店舗若ハ賣場ノ新設若ハ擴張ニ
著手シタル者ハ本法ニ依リ免許又ハ認可
ノ申請ヲ爲スコトヲ要ス若シ免許又ハ認
可ヲ得ルコトヲ得サル場合ニ於テハ其レ
ニ因リテ生シタル損失ニ付政府ニ對シ補
償ヲ請求スルコトヲ得
前項ノ規定ニ依ル補償額決定ノ方法ハ命
令ヲ以テ之ヲ定ム発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X01419360524&spkNum=144
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145・松平頼壽
○副議長(伯爵松平賴壽君) 別段御質疑ガ
ナケレバ、本案ハ之ヲ大正十三年法律第二
十四號中改正法律案ノ特別委員ニ付託ヲ致
シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X01419360524&spkNum=145
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146・松平頼壽
○副議長(伯爵松平賴壽君) 日程第二十三
ヨリ日程第五十一迄ノ請願、會議
〔左ノ意見書案ハ朗讀ヲ經サルモ參照
ノタメ玆ニ載錄ス以下之ニ傚フ〕
意見書案
蠶種共同施設組合制度樹立ニ關スル件
岡山市岡山縣蠶種業組合長小島銀治
呈出
右ノ請願ハ蠶種ノ良否ハ直接養蠶ノ豐凶
ヲ左右シ養蠶家ノ經濟ニ關係スル所多大
ナルニ拘ラス輓近製絲業者ノ蠶種製造兼
營ヘノ進出ト特約養蠶者ヘノ强制配給ト
ノ重壓ヲ蒙リ中小蠶種製造者ノ窮境ニ陷
リタルハ斯業ノタメ遺憾ナルニ依リ速ニ
蠶種共同施設組合制度ノ樹立竝助成、普
通蠶種國家管理制度ノ實現ヲ促進セラレ
タシトノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體
ハ採擇スヘキモノト議決致候因テ議院法
第六十五條ニ依リ別册及送付候也
昭和十一年月日
貴族院議長公爵近衞文麿
內閣總理大臣廣田弘毅殿
意見書案
山村住民救濟ニ關スル件
岐阜縣郡上郡牛道村西多農鷲見石之
助外三千五百十二名呈出
右ノ請願ハ山村住民ノ救濟ハ從來農山漁
村ト稱スル一律ノ施設ニヨリ未山村ノ特
殊性ニ留意セラレサルノ憾アルニ依リ第
二期林野治水事業ノ完璧、縣道ノ改修速
成林道ノ普遍的開鑿、植林費ノ補助、
政府所有米ノ拂下、雪害ノ救濟、山林ノ
合理化等請願人等所案ノ如ク實行シ以テ
山村住民ノ甦生ヲ圖ラレタシノト旨趣ニ
シテ貴族院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキモ
ノト議決致候因テ議院法第六十五條ニ依
リ別册及送付候也
昭和十一年月日
貴族院議長公爵近衞文麿
內閣總理大臣廣田弘毅殿
意見書案
水產物ノ利用ニ關スル件
東京市赤坂區溜池町帝國水產會會長
子爵野村益三呈出
右ノ請願ハ水產物ノ利用方法ハ近年長足
ノ進步ヲ見タルモ尙今後ノ改善ニ待ツヘ
キモノ多ク殊ニ鰮、鰊等ノ大量漁獲物ニ
關シテハ漁村更生ノ見地ヨリモ之カ改善
ノ急務ナルニ依リ速ニ水產物利用改善ニ
關スル指導助成ノ方策ヲ擴充セラレタシ
トノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ採
擇スヘキモノト議決致候因テ議院法第六
十五條ニ依リ別册及御送付候也
昭和十一年月日
貴族院議長公爵近衞文麿
內閣總理大臣廣田弘毅殿
意見書案
漁村指導機關ノ整備ニ關スル件
東京市赤坂區溜池町帝國水產會會長
子爵野村益三呈出
右ノ請願ハ農村ニ關スル指導施設ハ最近
養蠶指導組織ノ確立ヲ見タルカ如ク著著
整備セラルルニ拘ラス獨リ漁村ニ關スル
指導機關ノ不備甚シキハ遺憾ナルニ依リ
速ニ中央ニ於ケル指導機關ノ充實ヲ圖ル
ト共ニ全國漁村ニ相當ノ指導者ヲ配置セ
ラレタシトノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ
大體ハ採擇スヘキモノト議決致候因テ議
院法第六十五條ニ依リ別册及送付候也
昭和十一年月日
貴族院議長公爵近衞文麿
内閣總理大臣廣田弘毅殿
意見書案
漁村經濟更生ノ施設擴充ニ關スル件
東京市赤坂區溜池町帝國水產會會長
子爵野村益三呈出
右ノ請願ハ漁村經濟更生ニ關スル中央及
地方ニ於ケル諸般ノ施設ヲ擴充スルハ獨
リ漁村一般ノ振興更生上ノミナラス農漁
山村ノ經濟更生施設アルニ比シ緊要事ナ
ルヲ以テ速ニ之カ實現ヲ圖ラレタシトノ旨
趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘ
キモノト議決致候因テ議院法第六十五條
ニ依リ別册及送付候也
昭和十一年月日
貴族院議長公爵近衞文麿
內閣總理大臣廣田弘毅殿
意見書案
漁船保險制度ニ關スル件
東京市赤坂區溜池町帝國水產會會長
子爵野村益三呈出
右ノ請願ハ漁船ハ漁業上ノ基本設備ナル
ト共ニ漁業者ノ重要財產ナルニ依リ之カ
經濟價値保全ト資金化トヲ圖ルハ斯業ノ
安全ニ寄與スル所以ナルノミナラス水產
金融改善上貢獻スルトコロ多大ナルヲ以
テ速ニ國庫補助ニ依ル漁船保險制度ヲ創
設セラレタシトノ旨趣ニシテ貴族院ハ願
意ノ大體ハ採擇スヘキモノト議決致候因
テ議院法第六十五條ニ依リ別册及送付候
也
昭和十一年月日
貴族院議長公爵近衞文麿
內閣總理大臣廣田弘毅殿
意見書案
漁村金融ノ改善ニ關スル件
東京市赤坂區溜池町帝國水產會會長
子爵野村益三呈出
右ノ請願ハ曩ニ漁業組合制度ヲ改正セラ
レ漁業經濟更生計畫ノ確立ヲ期セラレタ
リト雖同組合ニ對スル金融施設ニ至リテ
ハ未改善セラレサルハ甚遺憾ナルニ依リ
速ニ漁業組合ヲ中心トスル漁村金融體系
ヲ確立セラレタシトノ趣旨ニシテ貴族院
ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキモノト議決致
候因テ議院法第六十五條ニ依リ別冊及送
付候也
昭和十一年月日
貴族院議長公爵近衞文麿
内閣總理大臣廣田弘毅殿
意見書案
沿岸漁業振興ニ關スル件
東京市赤坂區溜池町帝國水產會會長
子爵野村益三呈出
右ノ請願ハ沿岸漁業ハ我國水產業ノ樞軸
ニシテ漁村經濟存立ノ基礎ナルニ拘ラス
輓近沿岸漁場ノ荒廢ニ伴ヒ漁村ノ窮乏愈
甚シキハ遺憾ナルニ依リ速ニ資源ノ培養
增殖ヲ基調トスル沿岸漁業振興ノ方策ヲ
確立セラレタシトノ旨趣ニシテ貴族院ハ
願意ノ大體ハ採擇スヘキモノト議決致候
因テ議院法第六十五條ニ依リ別册及送付
候也
昭和十一年月日
貴族院議長公爵近衞文麿
内閣總理大臣廣田弘毅殿
意見書案
第二期森林治水事業實施ニ關スル件
沖繩縣國頭郡大宜味村大字大宜味平
民山城東榮外六十一名呈出
茨城縣多賀郡高岡村商鈴木龜太郞外
千三百四名呈出
埼玉縣北埼玉郡埼玉村長町田正之助
外八萬五百七名呈出
岡山縣吉備郡庭瀨町大字川入農高塚
拾吉外一萬千七百三十五名呈出
三重縣員辨郡神田村大字筑紫農種村
吉次郞外九千五百五十七名呈出
宮崎縣東臼杵郡東〓村大字山陰農奈
須熊吉外四百五名呈出
右ノ請願ハ暴風ノ襲來多ク地形亦出水調
節ニ惠マレサル我國ニ於テ治山治水ハ最
重要ナル國策タルニ拘ラス昭和九年ヲ以
テ終了セル第一期森林治水事業ノ實績ヲ
見ルニ尙引續キ急施ヲ要スルモノ多ク更
ニ內容ヲ擴充セル第二期森林治水事業ノ
實施ハ急務タルニ依リ昭和十一年ヨリ之
ヲ實施シ以テ治水ノ完璧ヲ期セラレタシ
トノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ採
擇スヘキモノト議決致候因テ議院法第六
十五條ニ依リ別册及送付候也
昭和十一年月日
貴族院議長公爵近衞文麿
內閣總理大臣廣田弘毅殿
意見書案
宍道湖岸鹹害水害對策實施ノ件
島根縣八束郡朝酌村長靑山勘十郞外
十四名呈出
右ノ請願ハ島根縣宍道湖岸十五箇町村ニ
於ケル沃野ノ灌漑ハ古來湖水ノ揚水ナル
ニ近時斐伊川改修工事ニ件フ大橋川ノ浚
渫未全カラサルニ拘ラス海水ノ逆流ヲ見
湖水ノ含鹽量頓ニ增加シ來タリ灌漑用水
トシテ適セサルニ至リタルノミナラス一
朝豪雨ニ際會セハ湖岸耕地忽チ湛水シ年
歲多大ノ被害ヲ蒙ル等住民ノ不安甚シキ
ニ依リ速ニ之カ對策ヲ講セラレクシトノ
旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ採擇ス
ヘキモノト議決致候因テ議院法第六十五
條ニ依リ別冊及送付候也
昭和十一年月日
貴族院議長公爵近衞文麿
内閣總理大臣廣田弘毅殿
意見書案
雪害對策ノ施設ニ關スル件
新潟縣長岡市東千手町公吏木村〓三
郞外一萬九千八十六名呈出
右ノ請願ハ新潟縣長岡市ノ雪害ハ連年深
刻ヲ極メ啻ニ產業交通上ノミナラス人命
及家屋ノ損傷等市民生活ヲ甚シク脅威シ
延テ同市疲弊ノ最大原因タルハ遺憾ナル
ニヨリ速ニ請願人等所案ノ如ク雪害救濟
復舊助成金ノ交付、低利資金、勸業資金
ノ融通、公租公課ノ減免、排雪設備ノ公
設又ハ補助、融雪時ノ洪水ニ對スル防禦
施設、雪害調査救濟機關ノ設置等ヲ實行
シ以テ雪害ニ對スル應急竝恆久對策ヲ講
セラレタシトノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意
ノ大體ハ採擇スヘキモノト議決致候因テ
議院法第六十五條ニ依リ別册及送付候也
昭和十一年月日
貴族院議長公爵近衞文麿
內閣總理大臣廣田弘毅殿
意見書案
小名濱線鐵道敷設ニ關スル件
福島縣石城郡江名町長河野嘉藏外五
名提出
右ノ請願ハ未成線小名濱線鐵道ノ經由地
ニ關シ湯本ヲ經テ小名濱ニ通セシメント
スルノ議アルヤニ仄聞スルモ同鐵道ハ夏
井村、高久村竝豐間、江名ノ兩漁場ヲ通
過セシムルヲ以テ其ノ利用價値最多ク沿
線ノ豐富ナル農產水產ノ資源開發ニ資ス
ル所多大ナルニヨリ請願人等記述ノ如ク
同鐵道ヲ敷設セラレタシトノ旨趣ニシテ
貴族院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキモノト
議決致候因テ議院法第六十五條ニ依リ別
册及送付候也
昭和十一年月日
貴族院議長公爵近衞文麿
內閣總理大臣廣田弘毅殿
意見書案
利根川治水對策事業ノ豫算計上ニ關ス
ル件
茨城縣猿島郡生子菅村生子農塚原喜
秀外三千五百七十九名呈出
右ノ請願ハ昭和十年九月ノ利根川筋洪水
被害ノ實況ニ鑑ミ同川治水ノ對策ヲ遷延
スルニ於テハ沿岸地方民ノ生活、產業ヲ
脅カスコト多大ナルニ依リ請願人等所案
ノ如ク放水路ノ新設、水源地方ノ治山施
設各支流ノ改修、水害豫防費ノ國庫負
擔等應急、恆久ノ對策ヲ樹立シ之カ經費
ハ第六十九囘議會ニ追加豫算案トシテ提
出セシメ速ニ其ノ實現ヲ圖ラレタシトノ
旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ採擇ス
ヘキモノト議決致候因テ議院法第六十五
條ニ依リ別册及送付候也
昭和十一年月日
貴族院議長公爵近衞文麿
内閣總理大臣廣田弘毅殿
意見書案
和歌山縣橋本町、新宮市間ニ鐵道敷設
ノ件
和歌山縣伊都郡橋本町長宇佐美定市
外二十一名呈出
右ノ請願ハ和歌山縣伊都郡橋本町ヨリ戀
野、富貴ノ兩村竝奈良縣吉野郡大塔村坂
本ヲ經テ和歌山縣新宮市ニ至ル鐵道ヲ敷
設スルハ經濟竝軍事上須要ナルノミナラ
ス亦豫定線鐵道五條、新宮間鐵道ニ比シ
其ノ工事容易ニシテ且大阪市ト紀南トヲ
結フ捷徑ナルニ依リ速ニ之ヲ實現シ以テ
地方產業開發ニ資セラレタシトノ旨趣ニ
シテ貴族院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキモ
ノト議決致候因テ議院法第六十五條ニ依
リ別册及送付候也
昭和十一年月日
貴族院議長公爵近衞文麿
內閣總理大臣廣田弘毅殿
意見書案
樺太元泊郡知取町ニ區裁判所設置ノ件
樺太元泊郡知取町長三宅貞太郞呈出
右ノ請願ハ樺太東海岸地方ハ近時戶口ノ
增加、產業ノ發達著シク訴訟事件夥多ナ
ルニ拘ラス之ヲ管轄スル豐原區裁判所ハ
距離遠隔ニシテ住民ノ不利不便多大ナル
ニ依リ速ニ恰當ノ地ナル元泊郡知取町ニ
區裁判所ヲ設置セラレタシトノ旨趣ニシ
テ貴族院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキモノ
ト議決致候因テ議院法第六十五條ニ依リ
別冊及送付候也
昭和十一年月日
貴族院議長公爵近衞文麿
內閣總理大臣廣田弘毅殿
意見書案
山陽本線那波、西大寺ノ兩驛間鐵道敷
設ノ件
兵庫縣赤穗郡赤穗町加里屋士族製鹽
業岩佐一郞外三百九十三名呈出
右ノ請願ハ山陽本線那波ヨリ分岐シ同線
西大寺驛ニ至ル豫定線鐵道ヲ敷設スルハ
沿線地方ニ於ケル各種產業ノ開發上至大
ノ關係アルノミナラス運輸交通、軍事上
亦須要ナルニ依リ速ニ之ヲ起工セラレタ
シトノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ
採擇スヘキモノト議決致候因テ議院法第
六十五條ニ依リ別册及送付候也
昭和十一年月日
貴族院議長公爵近衞文麿
内閣總理大臣廣田弘毅殿
意見書案
郡山區裁判所管轄區域擴張ノ件
福島縣郡山市長和田潤呈出
右ノ請願ハ郡山區裁判所管轄區域ヲ擴張
シテ白河區裁判所管轄ノ岩瀨、石川ノ二
郡及福島區裁判所管轄ノ安達郡ノ内本宮
町外九箇村ヲ移管スルハ元來郡山市ト前
記地方ト經濟上相互密接ノ關係ヲ有スル
ノミナラス水郡線完通ニ依リ交通上ノ利
便モ亦到底現管轄裁判所ニ至ルノ比ニ非
サルヲ以テ速ニ之ヲ實現セラレタシトノ
旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ採擇ス
ヘキモノト議決致候因テ議院法第六十五
條ニ依リ別册及送付候也
昭和十一年月日
貴族院議長公爵近衞文麿
內閣總理大臣廣田弘毅殿
意見書案
第二期森林治水事業實施ニ關スル件
東京市赤坂區溜池町全國山林會聯合
會會頭男爵小畑大太郞呈出
右ノ請願ハ治水事業ノ成否ハ國土ノ保安、
產業ノ興廢ニ影響スル所大ナルニ拘ラス
昭和九年度ニテ終了セシ第一期治水事業
ハ尙幾多ノ事業殘存セルノミナラス新規
所要ノ施設多ク之カ內容擴充シテ續行セ
サレハ治水ノ完璧ヲ期シ難キニ依リ速ニ
第二期森林治水事業計畫ヲ樹立シ昭和十
二年度ヨリ實施セラレタシトノ旨趣ニシ
テ貴族院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキモノ
ト議決致候因テ議院法第六十五條ニ依リ
別册及送付候也
昭和十一年月日
貴族院議長公爵近衞文麿
内閣總理大臣廣田弘毅殿
意見書案
雪害對策ノ施設ニ關スル件
新潟縣中蒲原郡新飯田村農大野榮外
二萬七千六百八名呈出
右ノ請願ハ新潟縣ハ全國ニ冠タル積雪地
ニシテ天惠乏シキカ爲產業、交通、〓育、
保健等社會萬般ニ亙リ不利多ク殊ニ近時
ノ不況ニ伴ヒ疲弊益著シキニ加へ今春ノ
如ク雪害甚大ナルハ遺憾ナルニ依リ之カ
救濟策トシテ東北六縣ト同樣特異地域ニ
加ヘ以テ住民ノ生活安定上各般ノ保護施
設ヲ爲サレタシトノ旨趣ニシテ貴族院ハ
願意ノ大體ハ採擇スヘキモノト議決致候
因テ議院法第六十五條ニ依リ別册及送付
候也
昭和十一年月日
貴族院議長公爵近衞文麿
内閣總理大臣廣田弘毅殿
意見書案
北海道手宮、北祝津間ニ省營自動車運
輸開始ノ件
北海道高島郡高島町字南高島町平民
公吏竹島武治郞外五十名呈出
右ノ請願ハ北海道高島郡高島町ハ小樽市
隣接ノ漁業地、郊外住宅地トシテ同市ト
ノ交通頻繁ナルニモ拘ラス未十分ナル交
通機關ニ惠マレス地方民ノ不利不便尠カ
ラサルハ甚遺憾ナルニヨリ札幌、手宮間
ノ省營自動車ヲ同町字北祝津迄延長運轉
シ以テ同地方ノ交通竝產業ノ發逹ニ資セ
ラレタシトノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ
大體ハ採擇スヘキモノト議決致候因テ議
院法第六十五條ニ依リ別册及送付候也
昭和十一年月日
貴族院議長公爵近衞文麿
內閣總理大臣廣田弘毅殿
意見書案
北海道高島漁港築設ノ件
北海道高島郡高島町字南高島町平民
公吏竹島武治郞外二十五名呈出
右ノ請願ハ北海道高島郡高島町ハ夙ニ漁
業地トシテ著ハルルノミナラス地理的關
係上小樽港ノ發展ニ伴ヒ之カ副港的漁港
トシテ恰當ノ地ニ位シ且天然ノ地形ヲ利
セハ比較的工費少クシテ安全ナル漁港ヲ
築設シ得ルニ依リ速ニ國費ヲ以テ之カ實
現ヲ圖リ船舶航行ノ安全ト產業發展トニ
資セラレタシトノ旨趣ニシテ貴族院ハ願
意ノ大體ハ採擇スヘキモノト議決致候因
テ議院法第六十五條ニ依リ別册及送付候
也
昭和十一年月日
貴族院議長公爵近衞文麿
內閣總理大臣廣田弘毅殿
意見書案
海事行政ノ統一ニ關スル件
名古屋市南區熱田新田東組平民稻垣
諭治郞呈出
右ノ請願ハ等シク我國旗ヲ揭揚スル船舶
ニシテ內地ト殖民地トノ海事行政夫夫異
ナル爲沿岸貿易、船舶檢査、海技免狀、
船員ノ雇傭契約、海難屆等ノ公認、手續
等相違シ就中海事審判ニテ內地ト殖民地
トノ兩者ニ跨ル衝突事件ハ其ノ裁決各異
ナリ海事行政不統一ノ嫌アルニ依リ速ニ
殖民地ニ於テモ內地ト同シク二審制度ト
爲シ連絡統制ヲ執ルヤウ改正セラレタシ
トノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ採
擇スヘキモノト議決致候因テ議院法第六
十五條ニ依リ別册及送付候也
昭和十一年月日
貴族院議長公爵近衞文麿
内閣總理大臣廣田弘毅殿
意見書案
岡山縣倉敷市ニ區裁判所設置ノ件
岡山縣倉敷市長平松俊太郞外二十名
呈出
右ノ請願ハ岡山縣倉敷市及隣接町村ハ近
時產業竝經濟上ノ發展著シク其ノ訴訟事
務亦益增加セルニ拘ラス同地方ノ區裁判
所事務ノ管轄ハ岡山、玉島ノ兩區裁判所
ニ屬スル爲地方民ノ不便尠カラサルニ依
リ同市及隣接町村ヲ管轄區域トスル區裁
判所ヲ倉敷市ニ設置セラレタク若シ之カ
速時實現不能ナル場合ハ同地方ヲ總テ交
通上便利ナル岡山區裁判所ノ管轄トセラ
レタシトノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大
體ハ採擇スヘキモノト議決致候因テ議院
法第六十五條ニ依リ別册及送付候也
昭和十一年月日
貴族院議長公爵近衞文麿
內閣總理大臣廣田弘毅殿
意見書案
島根縣三隅川改修ニ關スル件
島根縣那賀郡三隅町長寺戶光次外十
名呈出
右ノ請願ハ島根縣那賀郡安城村及美濃郡
二川村ニ源ヲ發シ四箇町村ヲ經テ日本海
ニ注ク三隅川ハ水量豐富ナルニ拘ラス河
床淺ク幅員狹小ニシテ一朝豪雨ニ際會セ
ンカ容易ニ決潰シ年歲人畜田畑ノ被害甚
大ナルハ甚遺憾ナルニ依リ速ニ同川ヲ改
修シ以テ水害ノ慘禍ヲ根絕シ之カ沿岸地
方民生活ノ安定ヲ圖ラレタシトノ旨趣ニ
シテ貴族院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキモ
ノト議決致候因テ議院法第六十五條ニ依
リ別册及送付候也
昭和十一年月日
貴族院議長公爵近衞文麿
内閣總理大臣廣田弘毅殿
意見書案
廣告物取締ニ關スル法令改正ノ件
東京市小石川區原町都市美協會會長
男爵阪谷芳郞呈出
右ノ請願ハ輓近都市ニ於ケル廣〓、看板
等ハ產業ノ發達ト共ニ益多キヲ加フルニ
拘ラス廣告物取締法ハ制定後既ニ久シク
現今ノ實情ニ副ハサルノミナラス其ノ運
用ニ關スル地方廳令區ナルハ遺憾ナルニ
依リ之等法令ノ改正ヲ行ヒ取締ノ基準ヲ
確立シ以テ風致及都市美ノ顯現竝廣〓文
化ノ向上ヲ圖ラレタシトノ旨趣ニシテ貴
族院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキモノト議
決致候因テ議院法第六十五條ニ依リ別册
及送付候也
昭和十一年月日
貴族院議長公爵近衞文麿
内閣總理大臣廣田弘毅殿
意見書案
新宮川治水工事速成ノ件
三重縣南牟婁郡鵜殿村長倉本德之助
外二名呈出
右ノ請願ハ新宮川ノ治水ハ多年ノ要望ナ
ルニ拘ラス未其ノ實現ヲ見ス年歲流域地
方ノ產業竝經濟上ノ被害甚大ナルハ洵ニ
遺憾ナルニ依リ速ニ新宮川下流及支流相
野谷川沿岸ニ對シ應急施設ヲ圖ラレタシ
トノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ採
擇スヘキモノト議決致候因テ議院法第六
十五條ニ依リ別冊及送付候也
昭和十一年月日
貴族院議長公爵近衞文麿
內閣總理大臣廣田弘毅殿
意見書案
御影附近、邊富內間鐵道分岐點ニ關ス
ル件
北海道河西郡御影村字御影農矢野治
吉外三名呈出
右ノ請願ハ今期議會ニ豫定線編入及起工
豫算ノ提案ニ至リタル十勝御影附近、膽
振邊富內間鐵道ハ交通竝產業上根室本線
御影驛ヨリ分岐スルヲ以テ最適當ナルニ
依リ同鐵道ハ御影驛ヨリ分岐敷設セラレ
タシトノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體
ハ採擇スヘキモノト議決致候因テ議院法
第六十五條ニ依リ別册及送付候也
昭和十一年月日
貴族院議長公爵近衞文麿
内閣總理大臣廣田弘毅殿
意見書案
姫津線佐用、因美線智頭ノ兩驛間鐵道
速成ノ件
兵庫縣佐用郡佐用町長鎌井丈太郞外
三百六名呈出
右ノ請願ハ姫津線佐用驛、因美線智頭驛
間鐵道ヲ敷設スルハ沿線地方ノ豐富ナル
農產、林產ノ資源ヲ開發スルノミナラス
姫路、鳥取ヲ結フ㨗徑トシテ運輸交通上
亦須要ノ線路ナルニ依リ速ニ之ヲ實現セ
ラレタシトノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ
大體ハ採擇スヘキモノト議決致候因テ議
院法第六十五條ニ依リ別册及送付候也
昭和十一年月日
貴族院議長公爵近衞文麿
內閣總理大臣廣田弘毅殿
意見書案
北海道拓殖鐵道補助年限延長ノ件
北海道札幌市社團法人北海道鐵軌同
志會常任理事長畑金吉呈出
右ノ請願ハ大正九年法律第五十六號ニ依
リ補助セラルル北海道ニ於ケル私設鐵道
及軌道ハ同道ノ拓地殖民ノ先驅トシテ貢
獻スル所多大ナルニ拘ラス其ノ業績〓ネ
不振ニシテ所期ニ反スルコト尠カラサル
ハ畢竟臺灣、朝鮮等ト異リ同道ノ特殊事
情就中雪害ニ基因スルコト甚シク國家ノ
保護ヲ加ヘラルヘキ必要程度ハ遙ニ前記
地方以上ナルニ依リ同法律中「十五年」ト
アルヲ「二十年」ト改メ以テ同道ノ私設鐵
道及軌道ニ對シテ其ノ補助ヲ更ニ五箇年
延長シ其ノ救濟ニ資セラレタシトノ旨趣
ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキ
モノト議決致候因テ議院法第六十五條ニ
依リ別册及送付候也
昭和十一年月日
貴族院議長公爵近衞文麿
内閣總理大臣廣田弘毅殿発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X01419360524&spkNum=146
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147・松平頼壽
○副議長(伯爵松平賴壽君) 是等ノ請願ハ、
請願委員長ノ報〓通リ、採擇スルコトニ御
異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X01419360524&spkNum=147
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148・松平頼壽
○副議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト
認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X01419360524&spkNum=148
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149・松平頼壽
○副議長(伯爵松平賴壽君) 御報告ヲ致ス
コトガゴザイマス、休憩中、內閣總理大臣
ヨリ、本月二十五日マデ一日間帝國議會會
期延長ヲ命ゼラルヽ旨ノ詔書ヲ傳達セラレ
マシタ、本日ノ議事ハ是ニテ延會致シマス、
明日ハ午後一時半ヨリ開會致シマス、日程
ハ決定次第彙報ヲ以テ御通知ニ及ビマス、
本日ハ是ニテ散會致シマス
午後六時二十九分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006903242X01419360524&spkNum=149
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