1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
昭和十一年度一般會計歳出の財源に充つる爲公債發行に關する法律案（政府提出）
昭和十一年勅令第七號（災害善後に關する經費支辨の爲公債發行に關する件）（承諾を求むる件）
昭和十一年度一般會計歳出の財源に充つる爲特別會計に屬する資金の繰替使用等に關する法律案（政府提出）
昭和七年法律第一號中改正法律案（滿洲事件に關する經費支辨の爲公債發行に關する件）（政府提出）
昭和九年法律第七號中改正法律案（滿洲事件に關する一時賜金として交付する公債發行に關する件）（政府提出）
對支文化事業特別會計法中改正法律案（政府提出）
關税定率法中改正法律案（政府提出）
大正十三年法律第二十四號中改正法律案（贅澤品等の輸入税に關する件）（政府提出）
昭和七年法律第四號中改正法律案（輸入税の從量税率に關する件）（政府提出）
製鐵業奬勵法中改正法律案（政府提出）
貯蓄銀行法中改正法律案（政府提出、貴族院送付）
日本銀行特別融通及損失補償法中改正法律案（政府提出、貴族院送付）
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會議
昭和十一年五月十五日（金曜日）午前十時開議
出席委員左の如し
委員長 金光庸夫君
理事 矢野庄太郎君 理事 池田清秋君
理事 木村正義君 理事 田尻生五君
一宮房治郎君 松本忠雄君
森兼道君 鈴木康太郎君
内藤久一郎君 松田正一君
仲井間宗一君 中亥歳男君
武田徳三郎君 中井一夫君
高良宗七君 岩瀬亮君
倉元要一君 末次虎太郎君
笠井重治君 綾川武治君
川村保太郎君 藏原敏捷君
同月十四日委員南雲正朔君及豐田收君辭任に付其の補闕として松田正一君及綾川武治君を議長に於て選定せり
五月十四日貯蓄銀行法中改正法律案（政府提出、貴族院送付）及日本銀行特別融通及損失補償法中改正法律案（政府提出、貴族院送付）の審査を本委員に付託せられたり
出席國務大臣左の如し
大藏大臣 馬場えい一君
出席政府委員左の如し
外務政務次官 猪野毛利榮君
外務省文化事業部長 岡田兼一君
大藏政務次官 中島彌團次君
大藏省主計局長 賀屋興宣君
大藏省主税局長 山田龍雄君
大藏省理財局長 廣瀬豐作君
大藏省銀行局長 和田正彦君
大藏書記官 江口順一君
大藏書記官 木内四郎君
大藏書記官 谷口恒二君
大藏書記官 松隈秀雄君
預金部長 金子隆三君
商工省工務局長 岸信介君
商工省鑛山局長 小島新一君
拓務省拓務局長 高山三平君
拓務書記官 小河正儀君
本日の會議に上りたる議案左の如し
昭和十一年度一般會計歳出の財源に充つる爲公債發行に關する法律案（政府提出）
對支文化事業特別會計法中改正法律案（政府提出）
關税定率法中改正法律案（政府提出）
製鐵業奬勵法中改正法律案（政府提出）発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006911696X00319360515&spkNum=0
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001・金光庸夫
○金光委員長 是ヨリ開會致シマス、新
當委員會ニ付託ニナリマシタ貯蓄銀行法中
改正法律案、日本銀行特別融通及損失補償
法中改正法律案、之ヲモ加ヘマシテ、從來
付託ニナッテ居リマス十案ト此二案、十二案
ヲ一括シテ議題ニ供シマス、昨日付託ニナ
リマシタ此二案ニ付テ、政府委員ノ提案理
山ノ御說明ヲ願ヒマス-中島政府委員発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006911696X00319360515&spkNum=1
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002・中島彌團次
○中島政府委員 貯蓄銀行法中改正法律案
ニ付キマシテ御說明ヲ申上ゲマス、現行貯
蓄銀行法第十一條ニハ、貯蓄銀行ハ國債、
地方債又ハ主務大臣ノ認可ヲ受ケタル社債、
若クハ株式ノ應募引受若クハ買入、又ハ
是等ノ有價證劵ヲ質トスル貸付ヲ爲シ得べ
キ旨ヲ規定シテ居リマスルガ、其所謂國債、
地方債、社債、株式ハ、何レモ我國ノモノ
ノミヲ指シ、外國ノモノハ之ヲ含マナイノ
デアリマス、然ルニ近年滿洲國ノ國債其他
ノ有價證劵ガ我國ノ市場ニ於テ發行セラ
レ、又其取引モ今後益〓增加セントスル趨勢
ニアリマスカラ、貯蓄銀行ヲシテ大藏大臣
ノ認可ヲ受ケタル同國ノ有價證劵ニ投資シ
得ル途ヲ拓ク爲ニ、貯蓄銀行法ノ改正ヲ行
ハントスルモノデアリマシテ、右ハ我國ト
滿洲國トノ特殊關係ニ顧ミマシテ、適當ノ
措置ト考ヘル次第デアリマス、宜シク御
審議アランコトヲ望ミマス、其次ニハ日
本銀行特別融通及損失補償法中改正法律
案ノ提案ノ理由ヲ御說明申上ゲマス、現
行日本銀行特別融通及損失補償法ニ依リ
マスレバ、日本銀行ガ同法ニ基イテ特別
融通ヲ行ヒ得ル期限ハ、昭和十二年五月
八日ヲ以テ滿了致シマスノデ、本改正法律
案ハ、右期限ヲ更ニ十年延長セントスルモ
ノデアリマス、日本銀行特別融通及損失補
償法ハ、昭和二年金融恐慌ニ際シ、財界ノ
安定ヲ圖ルガ爲メ制定ヲ見タモノデアリマ
シテ、日本銀行ハ同法ニ依リ五億圓ヲ限度
トスル政府ノ損失補償ノ下ニ、預金ノ支拂
準備ニ充テシムル爲メ、銀行ニ對シ特別融
通ヲ行ヒマシタガ、其新規融通打切期限タ
ル昭和三年五月八日現在ニ於テ、被融通銀
行數ハ八十八行、融通金額ハ六億八千七百
餘万圓ニ上ッテ居リマス、然ルニ其後財界ハ
久シク不況ヲ續ケ、被融通銀行ノ整理モ亦
容易デアリマセヌノデ、特別融通ノ囘收ニ
付テモ其進捗ヲ妨ゲラレタノデアリマス、
而シテ最近兩三年來財界ノ好轉ヲ見ルニ及
ビ、被融通銀行ノ整理モ著シク進捗シ、特
別融通ノ囘收成績モ漸次良好ニ向フニ至リ
マシタガ、昭和十一年三月末ニ於テ、尙ホ
其融通ヲ受ケテ居リマスルモノハ四十九、
融通殘高四億九千三百餘万圓デアリマス、
然ル所日本銀行ヲシテ斯ル多額ノ金額ヲ短
期間ニ囘收セシムルコトハ至難デアリマシ
テ、此際右期限ヲ相當延長スルコトハ、被
融通銀行ノ整理ヲ助成シテ、金融界ノ安定
ニ資スル爲ニ最モ必要ナル措置ト認メラレ
マスルノミナラズ、特別融通ノ囘收ヲ圓滑
ナラシメ、延テハ國庫ノ負擔ヲモ尠カラシ
ムル效果ガアリ、而シテ其延長ノ期間ハ、
現行法ノ定ムル期限後十年トスルヲ適當ト
認メマシタノデ、本案ノ如キ改正ヲ行ハン
トスルモノデアリマス、宜シク御審議ノ上
御協賛下サランコトヲ希望致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006911696X00319360515&spkNum=2
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003・金光庸夫
○金光委員長 此十二案ニ付テ前會ニ引續
キ質疑ヲ許可シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006911696X00319360515&spkNum=3
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004・松本忠雄
○松本委員 只今大藏當局カラ御說明ニ
ナッタ二案ノ審査ノ爲ニ、材料ヲ御願シタ
イノデスガ、特別融通ノ現在ノ貸付ノ殘リ
ト、ソレカラ囘收ノ狀況ヲ示ス材料ヲ御提
出願ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006911696X00319360515&spkNum=4
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005・中島彌團次
○中島政府委員 松本君ノ申サレマシタ材
料ニ付キマシテハ、直チニ整理致シマシテ
提出致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006911696X00319360515&spkNum=5
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006・金光庸夫
○金光委員長 ソレデハ松本君一ツ願ヒマ
ス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006911696X00319360515&spkNum=6
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007・松本忠雄
○松本委員 「アルミニウム」ノ關稅ノ問題
ニ付テ御〓ヲ乞ヒタイノデスガ、第一ニ政
府當局ハ日本ニ於ケル「アルミニウム」ノ需
要供給ト云フコトニ付テ、ドンナ御見透シ
ヲ付ケテ居ラレマスカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006911696X00319360515&spkNum=7
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008・岸信介
○岸政府委員 「アルミニウム」ノ需要ニ關
シマシテハ、年ニ依リマシテ必シモ一樣デ
ハアリマセヌケレドモ、最近漸次需要ガ增
加致シテ居リマス、一万瓲前後ノ需要ハ最
近間違ナクアルモノト思ヒマス、尙ホ今後
輕金屬ノ需要ト云フモノハ、益〓殖エテ行ク
モノデアリマシテ、將來ノ需要トシマシテ
ハ、相當量尙ホ殖エルモノト、斯ウ云フヤ
ウニ考ヘテ居リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006911696X00319360515&spkNum=8
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009・松本忠雄
○松本委員 需要ノ方ハ承リマシタガ、供
給ノ方-國內ノ生產ノ方ニ付テ承リタイ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006911696X00319360515&spkNum=9
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010・岸信介
○岸政府委員 御承知ノヤウニ最近國内ニ
於キマシテモ、「アルミニウム」ヲ生產スル
會社ガ數箇出來マシテ、日本電氣工業株式
會社、日滿「アルミニウム」株式會社、住友
「アルミニウム」精鍊株式會社等ニ於キマシ
テハ、旣ニ生產ヲ開始シ、其製品ヲ市場ニ
出シテ居リマス、尙又臺灣ニ於ケル日本「ア
ルミニウム」株式會社モ、本年末ニハ製造
ヲ開始スル見込デアリマシテ、今日マデ既
ニ出來上ッテ居リマスル生產能力ト云フモ
ノニ付テ見マスルト云フト、日本電工ノ
年ノ生產能力ハ、六千瓲乃至七千瓲デアリ
マス、日滿「アルミニウム」ノ今日ノ生產能
力ハ千五百瓲デアリマス、住友「アルミニ
ウム」ガ千五百瓲デアリマス、日本「アル
ミニウム」株式會社ガ出來上リマスルト、
年產六千瓲位ノ能力ヲ持ッテ居リマス、尙又
日滿「アルミニウム」株式會社及ビ住友「ア
ルミニウム」精鍊株式會社等ニ於キマシテ
ハ、其生產能力ヲ擴張スルト云フ計畫モア
ルヤニ聞イテ居リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006911696X00319360515&spkNum=10
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011・松本忠雄
○松本委員 大體生產能力ハ分リマシタ
ガ、別ニ批評ヲ申上ゲル譯デハアリマセヌ
ケレドモ、需要ノ額ニ比ベテ生產ハ頗ル貧
弱ダト云フ結論ニナルト思ヒマス、ソレハ
私ノ觀察デアリマスカラ宜シウゴザイマス
ガ、吾々頂戴致シマシタ參考表ノ中ニ「ア
ルミニウム」ノ生產額年表ト云フモノガア
リマスガ、此生產額デ、原鑛石ハドウ云フ
所カラ供給ヲ受ケテ居ルカ、原鑛石ノ供給
ノ狀況ヲ御示シヲ願ヒタイ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006911696X00319360515&spkNum=11
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012・岸信介
○岸政府委員 原鑛石ハ朝鮮ニ生產セラレ
テ居リマス明礬石、之ヲ日本電氣工業及ビ
住友「アルミニウム」ニ於キマシテハ原鑛石
ト致シテ居リマス、日滿「アルミニウム」株
式會社ニ於キマシテハ、滿洲國ノ礬土頁岩、
ソレニ歐羅巴方面カラ入レテ居リマスル
「ボーキサイト」ヲ併セ用ヒテ居リマス、臺
灣ノ日本「アルミニウム」株式會社ニ於キマ
シテハ、南洋海峽植民地等ノ方面ニアリマ
スル「ボーキサイト」ヲ原料ニ致ス豫定デア
リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006911696X00319360515&spkNum=12
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013・松本忠雄
○松本委員 只今仰セニナッタ原鑛石ノ中
デ、朝鮮ノ明礬石ト云フモノハ、是ハ供給
ハ確保セラレテ居リマスガ、其他日滿ハ歐
洲方面ト仰シヤッタガ、希臘ノコトデアリマ
スカ、希臘カラ持ッテ來ル「ボーキサイト」
ト、南洋カラ持ッテ來ル「ボーキサイト」ナド
ノ供給ハ、相當長イ期間ニ亙ッテ確保セラレ
ルノデアリマセウカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006911696X00319360515&spkNum=13
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014・岸信介
○岸政府委員 南洋カラ持ッテ參リマスル
「ボーキサイト」ニ付キマシテハ、相當長
期ノ契約ガ確實ニ確保セラレテ居ルヤウニ
吾々承知致シテ居リマス、希臘カラ參リマ
スル「ボーキサイト」ニ付キマシテハ、サウ
云フ風ナ非常ニ長イ契約デ確保サレテ居ル
ヤウニハ承ッテ居リマセヌ、併シ此日滿「ア
ルミニューム」ノ精鍊ノ方法ニ依リマスト、
滿洲ノ礬土頁岩ヲ主ニ致シマシテ、十分技
術的ニ精鍊スル見込ガアルノデゴザイマ
ス、唯平時ニ於キマシテ、比較的採算上有
利ニ希臘ノ「ボーキサイト」ガ輸入出來ルト
云フト、其希臘ノ「ボーキサイト」ノ性質、
卽チ鐡分ヲ非常ニ澤山含ンデ居ルサウデア
リマスガ、サウ云フ事柄ガ精鍊上極メテ便
利ダト云フコトデ、ソレヲ入レテ居ルヤウ
ニ聞イテ居リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006911696X00319360515&spkNum=14
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015・松本忠雄
○松本委員 此「アルミニューム」工業ニ投
下サレタ資本ノ額デゴザイマスガ、只今直
チニ御示シヲ願ヘレバ結構デゴザイマス、
出來ナケレバ後程デモ宜シウゴザイマス
ガ、御示シヲ願ヒタイト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006911696X00319360515&spkNum=15
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016・岸信介
○岸政府委員 日本電氣工業ノ公稱資本ハ
二千五百万圓、日滿「アルミニューム」ガ五
百万圓、住友「アルミニューム」精鍊株式會
社ガ一千万圓、日本「アルミニューム」株式
會社ガ一千万圓、斯ウ云フコトニナッテ居リ
マス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006911696X00319360515&spkNum=16
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017・松本忠雄
○松本委員 ソコデ私ハ多少疑問ヲ呈セザ
ルヲ得ナイノデアリマス、是ダケノ資本ヲ
投下シテ、是ダケノ會社ガアルノデアリマ
スガ、其生產額ハ、只今仰シヤッタ通リニシ
テモ、日本デ一年ニ十万瓲位ノ需要ガアル
ノニ對シテ、供給ハ年額一万七八千瓲、二
万瓲ニハ達シナイト思ヒマス、之ニ對シテ
資本ノ投下ガ、只今仰シヤッタモノガ四五
千万圓、之ヲ擁護スル爲ニ關稅ヲ高クシテ、
サウシテ日本ノ「アルミニューム」製品ノ値
ヲ引上ゲルコトガ、ソレ程必要デアリマセ
ウカ、又此關稅ヲ引上ゲレバ事業ノ採算ハ
取レルノカ、大藏當局ノ御說明ニ依レバ、
生產ガ開始セラレルト、自然競爭的態度ニ
外國ガ出ルモノト考へラレル、既ニ其兆候
ガ現レテ居ルカラ、關稅ヲ引上ゲル必要ガ
アルト云フヤウナ御話デアリマスガ、是ハ
外國會社ガ競爭的態度ニ出ナケレバ、日本
ノ「アルミニューム」工業ト云フモノハ「ペ
ーイ」スルノカ、斯ウ云フ競爭的態度ニ出
レバ、日本ノ工業ガ駄目ニナルノカ、其點
ヲ一ツ御伺致シテ置キタイト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006911696X00319360515&spkNum=17
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018・岸信介
○岸政府委員 最後ノ段ニ御答申上ゲマス
前ニ、一寸私ノ申上ゲマシタ數字ガ、言葉
ガハッキリシナカッタ爲ニ、間違ッタノヂヤナ
イカト思ヒマス、需要ハ大體十万瓲ト御聽取
リノヤウデアリマシタガ、大體一万瓲乃至
一万二千瓲位ガ最近ノ需要デアリマス、隨
テ本法ノ年產能力ガ「フール」ニ發揮サレマ
スト云フト、寧ロ現在ノ需要ヨリモ多イダ
ケノ能力ヲ持ツコトニナルノデアリマス、
最後ニ價格ノ點デアリマスルガ、是ハ各社
ノ現在ノ狀況カラ申シマスト、生產ノ技術
的方法モ違ッテ居リマスシ、原鑛モ先程申上
ゲマシタヤウニ、色々區々デアリマスシ、
尙又能力ヲ全部發揮致シテ居リマセヌノ
デ、其「コスト」ニ付キマシテハ、尙ホ詳細
ニ之ヲ明確ナラシムルコトガ出來ナイノデ
アリマスケレドモ、大體ニ於キマシテ、今日
ノ「アルミニューム」ノ市價デアル千五百圓
乃至千六百圓位ノ値段ノ程度デアルナラ
バ、十分是等ノ會社ハ「ペーイ」スルト云フ
見込デアリマス、隨テ今日ノ市價ガ、特ニ外
國カラ輸入サレル「アルミニューム」ノ市價
ニ依ッテ、低下セラレルト云フコトガナイ限
リニ於キマシテハ、大體ニ於テ是等ノ「アル
ミニューム」工業ハ成立ッテ行クダラウト思
フノデアリマス、所ガ御承知ノ通リ外國ニ於
キマシテ强力ナル「アルミニューム」ニ付テ
ノ「カルテル」ガアリ、世界的ニ見ルト相當
「オーヴァー·プロダクション」ノ現狀デアリ
マスカラ、日本ノ是等ノ工業ガ確立シヨウト
スル際ニ、其値段ノ上ニ於テ色々ナ細工ヲ
サレルト云フコトニナリマスト、折角樹立
ショウトスル是等ノ工業ガ、其確立ヲ妨ゲ
ラレル、丁度大藏省ノ御說明ニアリマス通
リ、現ニサウ云フ細工ト思ハレルヤウナ事
柄ガ、屢〓見受ケラレルノデアリマス、吾々
ハ之ニ依リマシテ特ニ値段ヲ引上ゲルト云
フ考デハナク、寧ロ現在ノ價格ヲ維持スル
ト云フ所ニ主眼ヲ置イテ、此關稅ヲ考ヘテ
居ル譯デアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006911696X00319360515&spkNum=18
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019・松本忠雄
○松本委員 當局ノ御見透シデハ、相當關
稅ヲ引上ゲテモ、之ニ依ッテ市價ハ〓騰ス
ルコトハナイト云フヤウナ御考デアリマス
カ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006911696X00319360515&spkNum=19
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020・岸信介
○岸政府委員 サウ云フ見込デ居リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006911696X00319360515&spkNum=20
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021・松本忠雄
○松本委員 其御見込ガ違ッテ來ルコトガ
アリハシナイカト云フコトヲ一番恐レルノ
デアリマシテ、私ハ外ノ會社ハ知ラヌガ、
新聞等デ見テモ、日本電氣工業デスカ、仰
シヤッタ會社ハ相當高イ配當ヲシテ、株價モ
相當高クナッテ居ル、現在デモソレダケノ收
益ノアルモノヲ、關稅ヲ引上ゲテ更ニ保護
スルト云フコトノ必要ハドウカト思ハレマ
スガ、ソレハ見解ノ相違デ、値ハ引上ラヌ
ト云フコトデアレバ、是ハ將來ニ俟ツヨリ
外仕方ガナイ、唯私共伺ヒタイノハ、原鑛
石ヲ國內ニ求メ得ルモノナラバ宜イガ、原
鑛石ヲ國內ニ求メラレナイ所ノ產業ヲ、關
稅ヲ高クシテ保護シテ、サウシテ其結果ガ
果シテドウナルカ、是ハ又別ナ場合ニ承リ
タイト思フガ、實ハ吾々鐵ノ關稅ノ引上ヲ
承諾シタ時ニハ、數年ナラズシテ、此鐵ノ
關稅ハ引下ゲルコトガ出來ルト云フコトヲ
言明サレタ、ソレヲ信賴シテ吾々ハソレニ
應ジタノデアリマス、所ガ金ノ輸出再禁止
トナリ、鐵ノ價格ノ暴騰トナッテ、非常ナル
利益ヲ占メルヤウニナッテ居ルニ拘ラズ、關
稅ノ引下ゲト云フコトハ爲サラナイ、〓
關稅ヲ引上ゲルト云フコトニ同情ヲ申上ゲ
ルト引下ゲルト云フ問題ニ付テハ、殆ド望
メナイト云フヤウナ感ジヲ實ハ懷イテ居ル
ノデアリマス、此點ニ付テ當局ノ確ッカリシ
タ御判斷ヲ承ッテ置キタイト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006911696X00319360515&spkNum=21
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022・岸信介
○岸政府委員 原料ヲ外國ニ仰ガナケレバ
ナラナイ工業ニ付テ、特ニ高イ關稅ヲ設ケ
テ、國內ノ生產業ヲ保護スルト云フ事柄ニ
關シマスル、根本的ノ御意見モアッタヤウデ
アリマスガ、御承知ノ通リ此「アルミニ
ーム」工業ハ、一方ニ於テハ軍事上極メテ
重要ナモノデアリマスシ、又產業上カラ申
シマシテモ、極メテ重要ナ各種ノ產業ト密
接ナ關係ヲ持ッテ居リマスノデ、之ヲ何トカ
國內ニ樹立シテ、又成ベク國產ノ原鑛カラ
「スタート」シタ工業ヲ興サウ、是ハ一旦緩
急アル場合ヲ考ヘマスレバ、申スマデモナ
ク日本ノ勢力範圍內カラ原鑛ヲ取得スルト
云フコトガ必要デアルト思フノデアリマ
ス、サウ云フヤウナ事柄モ多年色々攻究セ
ラレテ、明礬石カラノ精鍊ノ方法ニモ成功
ジ、又最近滿洲ノ礬土頁岩ヲ原料トスル精
鍊ノ方法ニモ成功シ、是等ノモノモ斯ウ云
フ風ニ工業化セラレテ居ル現狀ナノデアリ
マス、隨テ之ヲ何トカ維持シ發展セシメテ
行クト云フ事柄ハ、國防上或ハ產業上、ド
ウシテモ吾々ノヤラナケレバナラヌ事柄デ
アルト考ヘテ居リマス、唯御心配ノヤウニ、
關稅ヲ無暗ニ引上ゲテ、ソレニ依ッテ價格ヲ
高クスルト云フコトハ、消費ノ方面、其他
色々是ノ影響スル所モ、考慮セネバナラヌ
コトデアラウト思フノデアリマス、唯「ア
ルミニューム」ニ付キマシテハ、御承知ノ
ヤウニ從來日本ニ生產ガナカッタ爲ニ、全然
保護的ナ、意味ノナイ極ク輕イ稅金ガ課ッテ
居リマシテ、今囘ノ關稅ノ改正ニ依リマシ
テ課ケヨウト云フ率ハ、一般ノ化學工業ノ
例ナリ、或ハ輕金屬ノ「マグネシューム」
ニ課ケラレテ居リマス例ナリ、サウ云フ一
般ノ稅率ノ所マデ課ケヨウト云フノデアリ
マシテ、特ニ之ニ依ッテ價格ヲ〓騰セシメ
テ、サウシテ無理シテ、之ヲ實施シヨウト
云フ風ナ結果ニハ立至ラナイデアラウト確
信シテ居リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006911696X00319360515&spkNum=22
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023・松本忠雄
○松本委員 御答辯ヲ承リマシタガ、次ニ
「アルミニューム」工業ノ爲ニハ「アルミニュ
ーム」ヲ海外カラ輸入シテ精製スルト云
フコトモ、一ツノ方法デアリマスケレド
モ、半製品デアル「アルミナ」ヲ持ッテ來テ、
之ヲ精製スルト云フコトモ一ツノ行キ方デ
アル、或ハ運賃ヲ節約スルト云フ所カラ言
ハイ、ソレデ宜シイガ、承レバ「アルミナ」
ノ關稅ハ、從來カラ從價二割ヲ課ケラレテ
居ル、吾々ハ「アルミニューム」工業全體ノ
見地カラ見レバ、精製品デアル「アルミニュ
ーム」ノ關稅ハ上ゲルガ「アルミナ」ノ關
稅ハ之ヲ引下ゲテ、サウシテ半製品ヲ持ッ
テ來テ、日本ニ於テ精製ガ出來ルト云フヤ
ウナ手續ヲ御執リニナルコトモ、急務デハ
ナイカト思フノデアリマスガ「アルミニュ
ーム」關稅ヲ引上ゲテ「アルミナ」ノ關稅ニ
付テハ手ヲ御著ケニナラナイノハ、ドウ云
フ譯デアルカ承リタイノデアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006911696X00319360515&spkNum=23
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024・岸信介
○岸政府委員 「アルミニューム」工業ヲ國
內ニ確立スルコトニ付キマシテ、從來カラ
長イ間〓究シテ居リマシテ、其一ツノ方策
ト致シマシテ、今御話ニナリマシタヤウナ
「アルミナ」ヲ輸入シテ、ソレカラ精鍊ヲ內
地デヤルト云フ風ナコトモ、嘗テ吾々ハ考
ヘタコトモアッタノデアリマスガ、其後ノ日
本ノ國內ノ技術ノ發達、竝ニ吾々ノ勢力範
圍內ニ於ケル色々ナ原鑛ノ發見ト云フヤウ
ナ所カラ、今日ニ於キマシテハ大體原鑛カ
ラ「アルミナ」ヲ作リ、更ニ「アルミラュー
ム」ヲ精鍊スルト云フ一貫的ナ事業ガ、十
分國內ニ確立シ得ル見込ガ立チマシタノ
デ、今日ニ於キマシテハ特ニ「アルミナ」ヲ
輸入シテ、サウシテ此方デ「アルミニュー
ム」ノ精鍊事業ダケヲヤルト云フ風ナコト
ハ考ヘテ居リマセヌ、併シサウ云フコトガ
經濟的ニ見テ、運賃ノ關係等カラ適當デハ
ナイカト云フヤウナ御話モアリマスケレド
モ、先程申上ゲマシタヤウニ、希臘カラ來
マス極ク少量ノ「ポーキサイト」ハ別トシマ
シテ、南洋方面カラ取リマス「ボーキサイ
ト」ニ付キマシテハ、南洋方面ノ地理的若
クハ其方面ノ工業ノ發達ノ現狀カラ見マシ
テ、アノ方面ニ「アルミナ」工場ガ出來テ、
サウシテ其處デ「アルミナ」ヲ造ッテ內地ニ
持ッテ來ルト云フコトハ、今日ノ實情カラ申
シマスト、困難デハナイカト思フノデアリ
やく、サウ云フ意味ニ於キマシテ、特ニ其
方面ニ特別ノ考慮ハ拂ッテ居ラナイ譯デア
リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006911696X00319360515&spkNum=24
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025・松本忠雄
○松本委員 大體ノ御話ノ筋ガ、原鑛石ノ
供給ガ確保シ得ラレルト云フ御見地ニ立ツ
テ居ラレルノデアリマスガ、私共希臘カラ
持ッテ來ル「ボーキサイト」是ハ供給ノ點ニ
於テハ、極メテ不十分デアルト思フノデア
リマシテ、一朝有事ノ際ニ希臘カラ果シテ
支障ナク「ボーキサイト」ガ十分取レルカト
云フコトハ、勿論是ハオ互ニ考ヘナケレバ
ナラヌ問題デアリマスルシ、蘭領印度カラ
ノ「ボーキサイト」ノ供給、是モ相當困難デ
ハナイカ、ソコデ私ハ承リタイガ、此蘭領
印度カラ來ル「ボーキサイト」ハ、積出ス港
ノ問題ニ付テ、其後解決ガ付イタカドウカ
知リマセヌガ、何カ解決ノ付カナイヤウナ
コトガアッタンヂヤナイカ、其點ヲ一ツ御伺
致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006911696X00319360515&spkNum=25
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026・岸信介
○岸政府委員 蘭領印度カラ持ッテ來マス
問題ニ付キマシテ、御話ノヤウニ積出シ其
他ノ問題ニ付テ、色々ノ經緯モアッタノデア
リマスガ、其問題ガ大體解決致シマシテ、
圓滿ニ持ッテ來ラレルヤウニナッタト聞イテ
居リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006911696X00319360515&spkNum=26
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027・松本忠雄
○松本委員 滿洲ノ「アルミニューム」ノ生
產ノ現狀ハドウナッテ居リマスカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006911696X00319360515&spkNum=27
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028・岸信介
○岸政府委員 滿鐵ニ於キマシテ從來「ア
ルミニューム」ノ生產ニ付テノ色々ナ〓究ヲ
ヤッテ居ッタノデアリマスガ、マダ之ヲ工業
化スル狀態マデ達シテ居リマセヌ、實ハ詳
シイ御話ハ、私カラ申上ゲルヨリモ、對滿
事務局ノ方カラ御話ガアッタ方ガ間違ガナ
ク、正確デハナイカト思ヒマスガ、吾々ノ承
知致シテ居リマスル限リニ於キマシテハ、
未ダ是ガ實現ノ域ニ達シテ居ラナイ、斯ウ
云フ風ニ承知致シテ居リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006911696X00319360515&spkNum=28
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029・松本忠雄
○松本委員 是モ滿洲國ノ國策ノ問題デア
リマセウガ、滿洲國ハ斯ウ云フヤウナ國防
ニ必要ナ所ノ產業ヲ國內ニ起ス方針、此「ア
ルミニューム」ノ原鑛石若クハ半製品ヲ日
本ニ持ッテ來テ、此事業ヲ經營スルト云フコ
トニ付テハ、最後ノ瞬間ニ至ッテ御同意ガ
ナカッタヤウデ、私共承知致シテ居ル所デ
ハ、日滿「アルミニューム」ハ其點ニ於テ行支
ヘタト聞イテ居リマス、其點ハ別ト致シマ
シテモ、何カ滿洲トノ特別ノ關稅條約ナド
「アルミニューム」ニ付テハ、特別ナ御考慮ガ
拂ハレルヤウニナルノデゴザイマセウカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006911696X00319360515&spkNum=29
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030・岸信介
○岸政府委員 今日ノ事情ハ先程申上ゲマ
シタヤウニ、未ダ滿洲ニ於テ工業化セラレ
ル域ニ達シテ居リマセヌカラ、今日ドウス
ルト云フコトハハッキリ申上ゲル譯ニハ行
カナイト思ヒマスガ、併シ將來滿洲デ色々
內地ノ需給ノ狀況ナリ、生產費ノ狀況ナリ、
其他一般狀況ニ顧ミマシテ、滿洲デサウ云
フ工業ヲ起スコトガ適當デアル、又是ハ對
滿事務局ノ問題デアリマセウガ、滿鐵等ヲ
シテヤラシメルコトガ適當デアルト云フ風
ナコトニナッテ參リマシタ場合ニ於キマシ
テハ、十分滿洲デ出來上ガリマスル所ノ「ア
ルミニューム」工業ト、內地ノ「アルミニュー
ム」工業トノ間ニ、適當ナル統制連絡ヲ考
ヘルコトハ必要デアラウ、斯ウ云フヤウニ
考ヘテ居リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006911696X00319360515&spkNum=30
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031・松本忠雄
○松本委員 只今ノ滿洲國ノ問題ニ付テ、
私共ハ鐵ノ問題ニ付テ相當苦ガイ經驗ヲ嘗
メテ居リマスカラ「アルミニューム」ノ問題
ニ付テモ、同ジヤウナ結果ニ陷ラナイヤウ
ニ御願致シテ置キマス、他ノ委員會ノ關係
モアリマスノデ、又御伺スルコトニシテ、
大體此程度デ質問ヲ打切リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006911696X00319360515&spkNum=31
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032・金光庸夫
○金光委員長 一宮君発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006911696X00319360515&spkNum=32
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033・一宮房治郎
○一宮委員 只今ヤット資料ヲ受取ッタバカ
リデ、餘リ調ベテ居リマセヌガ、二三ノ點
ニ付テ政府當局ニ承ッテ見タイト思ヒマス、
ソレハ從來對支文化事業ト致シマシテ、色
色ナ方面ニ事業ヲヤラレテ居リマスガ、主
トシテ文化ニ關スル對支文化事業部ノ活動
ハ古代支那ノ文化〓究ト云フ點ニアルト
思ハレルノデアリマス、是ハ洵ニ結構ナコ
トデアリマスケレドモ、現在ノ日本及ビ支
那ガ要求シテ居ルモノハ、單ニ古代文化ノ
〓究ニ止マラズシテ、現代文化ノ〓究ト云
フコトニ對シテモ、我ガ日本國民及ビ我ガ
日本ハ痛切ナル要求ヲ持ッテ居ルヤウニモ
思フノデアリマス、ソレデ古代文化ノ〓究
モ洵ニ結構デアリマスケレドモ、現代支那
ノ文化〓究ト云フモノニ對シテ、文化事業
部ノ援助ヲ擴張致シマシテ、之ヲ少シク補
助或ハ其事業ニ著手スルト云フ御考ヲ當局
ハ持ッテ居ラレルカドウカ、此點ヲ承ッテ置
キタイト思フノデアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006911696X00319360515&spkNum=33
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034・猪野毛利榮
○猪野毛政府委員 現在ノ文化事業部ノ法
規ノ許ス範圍ニ於キマシテ、又費用ノ許ス
範圍ニ於キマシテ、御希望ノ如キ趣意ニ副
ヒタイ、斯ウ云フ方針デ居ルノデアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006911696X00319360515&spkNum=34
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035・一宮房治郎
○一宮委員 サウ云フ意味合ニ於キマシ
テ、現在ノ文化事業部ハドウ云フ活動ヲナ
サレテ居ルカ、ソレヲ一寸承ッテ置キタイ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006911696X00319360515&spkNum=35
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036・岡田兼一
○岡田政府委員 現代ノ支那文化ノ〓究ト
云フコトニ付キマシテハ、只今現ニヤッテ居
リマスコトハ、コチラカラ學者ヲ向フニ派
遣致シマシテ、コチラノ文化ヲ傳ヘマスト
同時ニ、向フノ文化ヲ〓究シテ歸ッテ戴ク、
學者ノ交換若クハ〓授ノ交換ト云フヤウナ
コトヲ、現ニ致シテ居ルノデゴザイマス、
モウ一ツハ東方文化〓究所、東京及ビ京都
ニゴザイマス東方文化〓究所ニ於キマシテ
モ、出來ルダケ現代ノ支那文化ノ〓究ニ從
事スルト云フコトニナッテ居ルノデゴザイ
マス、只今手ヲ著ケテ居リマスノハ、大體
其位ノ範圍ダケデゴザイマシテ、尙ホ其外
ニ申上ゲマスレバ、日本ノ大學若クハ專門
學校程度以上ノ學校ヲ出マシタ者ヲ支那ニ
派遣致シマシテ、是ハ必シモ現代ノ文化バ
カリデハゴザイマセヌケレドモ、現代文化
及ビ古代ノ文化ヲ〓究サセルト云フヤウナ
コトヲ致シテ居ルノデゴザイマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006911696X00319360515&spkNum=36
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037・一宮房治郎
○一宮委員 此東方文化學院、或ハ上海ニ
於ケル所ノ自然科學〓究所、或ハ北京ニ於
ケル〓究所ト云フヤウナモノガ、全然現代
ト游離シテ居ルト云フコトハ、只今申上ゲ
兼ネルノデアリマスケレドモ、大體其方面
ノ〓究ト云フモノハ、實際社會トハ直接ノ
密接ノ關係ノナイ學問的方面ヲ主ニサレテ
居ルノデアッテ、ソレニ隨分文化事業部モ澤
山ノ金ヲ出シテ居ラレルヤウニ承知シテ居
ルノデアリマス、是モ洵ニ結構デアリマス
ガ、只今仰シヤラレタ講師ノ交換、或ハ現
在支那ニ對シテ我ガ國民ガ要求シ、又我ガ
國民ガ支那ノ現代ノ文化ガ如何ナル程度ニ
アルカト云フコトヲ知ルガ爲ニ、最モ注意
ヲ惹イテ居ル所ノ、或ハ現代ノ支那ノ文學
デアルトカ、或ハ現代ノ支那ノ學術デアル
トカ、其他社會情勢其他ニ對スル所ノ〓究
ト云フモノニ對シテモ、相當ナル援助ヲナ
サリ、或ハ相當ナル活動ヲナサッテ、サウシ
テ古代支那ノ〓究及ビ學術關係ノ〓究ト云
フモノト、相當ナル「バランス」ヲ取ルダケ
ノ〓究ヲナサルト云フコトガ、現代日本ノ
要求シテ居ル所デハナイカト私ハ思フノデ
アリマス、ソレガ爲ニ若シ法制ノ上ニ-
現在ノ事業法中ニ、ソレガ許サレナイ所ガ
アルト致シマスレバ、ソレヲ改正シテモ、
斯ウ云フコトヲ實行スルノガ必要デハナイ
カト思フノデアリマスガ、其點ニ對シテ當
局ハ如何ナル御考ヲ持タレテ居リマスカ、
承リタイト思フノデアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006911696X00319360515&spkNum=37
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038・猪野毛利榮
○猪野毛政府委員 一宮サンノ御希望、御
意見洵ニ結構ナコトデアラウト思ヒマス、ソ
レ等ノコトニ付キマシテハ時代ノ情勢、日
支ノ關係ニ付キマシテ、段々改善シテ宜シ
イモノハ、改善スルコトニ付テ一向躊躇ヲ致
サナイノデアリマス、現ニ今囘出來マス所
ノ同ジ自然科學ノ〓究所ニ於キマシテモ、
上海ノ方ハ純學術的ノモノ、北京ノ方ハ自
然科學ニ對シテ應用ノ意味ガ含マレテ居リ
マス、是ナドモ其時代ノ變遷要求ニ應ジテ
出來上ッタ所ノモノト考へテ居ルノデアリ
マス、是ハ單ニ其一例デアリマスケレドモ、
要スルニ御趣旨ノ點ハ洵ニ御尤ト思ヒマス
カラ、漸次サウ云フ方針ニ出來得ル限リ致
シタイト考ヘラレマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006911696X00319360515&spkNum=38
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039・一宮房治郎
○一宮委員 今ノ御答辯ハ、少シク私ノ承
リタイコトトハ違ッテ居ルヤウニ思フノデ
アリマス、上海ノ〓究所或ハ北平ノ〓究所、
是ハ現代ノ社會トハ游離シタ實ハ〓究ヲ多
クヤッテ居ルノデアリマス、支那ノ社會、經
濟、現代ノ文化ト云フモノニ對スル〓究ハ
ドウモ少シク閑却サレテ居ルノデハナイカ
ト云フヤウニ、吾々ハ認メテ居ルノデアリ
マス、古代ノ〓究モ勿論必要デアリ、學術
ノ〓究モ勿論必要デハアリマスガ、現代ノ
支那文化ガドウ云フ風ニナッテ居ルカ、支那
ノ社會經濟ト云フモノガドウ云フ風ニ動イ
テ居ルカト云フコトハ、日支關係ノ密接ナ
ル今日、最モ時勢ノ要求スル所デアリ、又
日本ノ大衆ノ希望スル所デアルト思ヒマ
ス、ソレヲ實行スルコトハ非常ニ急務デア
ルト信ゼラレルノデアリマス、若シソレニ
法制上ノ不便ガアルナラバ、其法制ヲ改正
シ、又サウ云フ事ガ實行ノ出來得ラレルヤ
ウニヤラレル御意向ヲ持ッテ居ラレルカドウ
カ、又其點ニ對シテ從來ノ活動デ御滿足デ
アルト云フナラバ、ソレハ意見ノ相違デア
リマスカラ、又何ヲカ言ハンヤデアリマス
ガ、從來ノ-今日ノ活動ヲ以テ御滿足
ト御考ニナッテ居ラレルカドウカ、若シ御滿
足ニ考ヘテ居ラレナイノデアルナラバ、ソ
レヲ改正シテモヤッテ見ヨウト云フ御意向
アリヤ否ヤト云フコトヲ承ッテ見タイト思
フノデアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006911696X00319360515&spkNum=39
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040・猪野毛利榮
○猪野毛政府委員 一宮サンノ御意見御希
望ノ御趣旨ニ合致シテ居ルモノガ、外務當
局ノ方ニ於テアルト云フコトハ、今度對支
文化事業特別會計法中改正法律案等ヲ出シ
マシテ、サウシテ經費モ相當ニ要求致シテ
居ル、此費用ノ一部ナドハ旣ニ一宮サンノ
御希望ニ副フ一ツノ現ハレニナッテ居ル次
第デアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006911696X00319360515&spkNum=40
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041・一宮房治郎
○一宮委員 ソレナラバ今囘御增シニナル
百万圓ハ、ドウ云フ方面ニ御使ヒニナル御
意向デゴザイマスカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006911696X00319360515&spkNum=41
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042・岡田兼一
○岡田政府委員 今度使ヒマス百万圓ニ付
キマシテハ、未ダ細カイコトマデ確定シタ
ト云フコトハ申上ゲラレマセヌケレドモ、
只今御話ノアリマシタヤウニ、古代ノ文化
ヲ〓究スルノミナラズ、是カラハ近代科學
圖書館ト云フモノヲ上海ト北平ニ設ケマシ
テ、日本語ニ依ッテ近代ノ科學ヲ知ルコトガ
出來ルヤウナ施設ヲ致シマスト同時ニ、其
圖書館ニ於キマシテ、日本側及ビ支那側ノ
學生、學者ガ集マリマシテ、現代ニ於ケル
日本ノ文化ニ關スル重要ナル書籍ヲ支那語
ニ譯シ、又ハ支那文化ニ關スル重要ナル書
籍ヲ日本語ニ譯スト云フヤウナ仕事モ、併
セテヤッテ行キタイ積リデゴザイマス
〔金光委員長退席田尻委員長代理著席〕
ソレカラ第二ニハ、北支ニ於キマシテ、今
ノ所天津ニ置ク積リデ居リマスノデスガ、
農事試驗場ヲ設ケマシテ、日本ノ進步シタ
ル現代科學ノ知識ニ依リマシテ、北支方面
ノ重要產業デアル棉花及ビ羊毛ニ關シ種々
ノ〓究ヲ行ヒマシテ、之ニ關スル肥料ノ使
ヒ方、竝ニ出來上ッタ品物ヲ合理的ニ處分ス
ル方法等ヲモ併セテ〓究スル、學術的ノ〓
究機關ヲ設ケル積リデ居リマス、其次ニハ農
業以外ノ近代科學、卽チ鑛山、工業、其他ノ
產業ニ關スル學術的ノ〓究ヲ致シマシテ、
之ヲ發表シテ支那側ヲ利益スルト同時ニ、
日支ノ關係ヲ調節シテ參リタイト云フコト
ガ、主ナル事業ニナッテ居ルノデゴザイマ
ス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006911696X00319360515&spkNum=42
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043・一宮房治郎
○一宮委員 只今ノ御說明ヲ承リマシテ、
洵ニ今度ハ結構ナル方面マデ、此事業ヲ擴
張セラレタト思フノデアリマス、元來團匪
賠償金ヲ以テ支那ノ開發ニ從事スルト云フ
計畫ハ、單ニ日本ノミナラズ、義和團事件
ニ關係ノアル各列强ニ於テヤッテ居ルノデ
アリマスルガ、英米ノ如キハ此範圍ヲ非常
ニ擴張致シマシテ、有ユル事業ニ此資金ヲ
流用シテ居ル、甚シキハ英國ノ如キハ、鐵
道開發ノ材料ニマデ此金ヲ流用シテ居ルト
云フヤウナ狀態デアリマスガ、之ヲ擴張ス
ルト云フコトニ付テハ、考慮スベキ餘地ガ
アルノデアリマス、從來ノ我國ノ對支文化
事業ノ資金ノ流用ト云フモノハ、餘リニ局
限サレ、餘リニ學術一方ニ偏シテ居ッタト
思フノデアリマス、支那ノ開發、日支ノ關
係ニ於テ必要ナル所ノ施設ニ此資金ヲ投ジ
テ、サウシテ日支關係ヲ改善スルト云フコ
トハ、最モ必要ナコトダト私ハ思ッテ居ル、
或ハ支那ガ日本ノ事情ヲ餘程知リタガッテ
居ル、サウ云フモノニ對シテハ或ハ活動寫
眞ナリ、或ハ日本語ノ普及ナリ、日本ノ事
業ノ普及ナリヲシテ、サウシテ支那ノ日本
ニ對スル所ノ認識、日本ノ文化ニ對スル所
ノ認識ヲ明ニスルノミナラズ、我國ト致シ
マシテハ、支那ノ現在ノ社會ガドウナッテ
居ルカト云フコトヲ紹介シ、或ハソレニ必
要ナル所ノ文獻等ニ對シテハ、之ニ適當ナ
援助ヲ與ヘルト云フヤウナ風ニシテ、對支
文化事業ト云フモノヲ强化スルト云フコト
ガ、私ハ最モ必要デアルト實ハ思ッテ居ル
ノデアリマス、現ニ對支文化事業ノ一部ノ
金ヲ、外務省ノ外廓團體タル所ノ國際文化
事業協會ニ百万圓ノ金ヲ出シテ居リマス
ガ、其文化事業協會デヤッテ居ルヤウナ仕
事ヲ、對支關係ニ於テ實行シテ行キタイト
思フガ、現在ニ於テハ行ッテ居ナイ、支那ト
比較的關係ノ薄イ國際文化事業協會ニサヘ
モ、活動寫眞トカ、或ハ日本ノ紹介デアル
トカ、或ハ支那ノ方ノモノヲ日本ニ紹介ス
ルトカ云フ、廣イ範圍ニ於ケル文化的事業
ノ活動ヲスル援助ノ爲ニ、對支文化事業ノ
金ヲ出シテ居ルノデアリマスカラ、支那ニ
對シテハ勿論ソレ以上ニヤル必要ガアルト
思フ、サウ云フ點ニ付テ今少シク對支文化
事業ヲ强化シ、ソレガ爲ニ今少シク資金ヲ
出スヤウニスルト云フコトハ、御考ニナッテ
居ナイノデアリマスカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006911696X00319360515&spkNum=43
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044・猪野毛利榮
○猪野毛政府委員 此金ハ法律ニ依ッテ決ツ
テ居リマス、ソレ故ニ成ベクハ現在ノ法規
ノ範圍內ニ於テ、只今ノ所ヤッテ居リマス
ルケレドモ、必要ニ應ジテドウシテモ、法
律ヲ改正シテデモ、ソレダケノ金ヲ使ハネ
バナラヌト云フ情勢ニナルナラバ、別ニ躊
躇シナイデモ宜シイト思ヒマス、御意見ノ如
ク成ベク該事業ノ强化ヲ圖ッテ、サウシテ日
支ノ親善ヲ圖ッテ、東洋ノ平和ニ資シ、人文
ノ進展ニ貢獻スルト云フコトハ、非常ニ日
本トシテモ必要ナコトデアルト思ヒマス、
若シ此事業ニ金ガ澤山ニ使ハレタニシタ所
デ、是ガ爲ニ日本ニ對スル誤解ヲ世界カラ
解キ、支那、露西亞ナドカラ日本ニ對スル
感情ガ非常ニ良クナルト云フコトニナッテ、
世間デ能ク噂ヲサレテ居ル所ノ、東洋ニ於
ケル風雲ノ急等ト云フヤウナ噂ガ解消サレ
ル、取去リ得ルト云フコトニナレバ、是一
非常ニ安イモノデアルト考ヘラレマスルカ
ラ、御希望ノ點ニハ成ベク副ヒタイト、斯
ウ云フ考ヲ持ッテ居ルノデアリマス、尙ホ以
上ノ如キ事業ヲ集ッテ相談スル所ノ對支文
化事業調査會ト云フヤウナモノモアリマス
ルカラ、斯ウ云フ機關ニモ機ヲ見テ諮リマ
シテ、成ベク御趣旨ノアル點ヲ徹底サセタ
イト考ヘテ居ルノデアリマス、ソレカラ序
ニ申シテ置キマスルガ、先程私ガ申シマシ
タ、北京ニ於ケル自然科學〓究所ト申シマ
シタノハ、是ハ北京ト申スヨリモ、北支ト
云フ方ガ穩當デアリマスカラ、一寸訂正致
シテ置キマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006911696X00319360515&spkNum=44
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045・一宮房治郎
○一宮委員 今配付サレマシタ書類ニ依リ
マシテ、對支文化事業委員會ノ顏觸ヲ見マ
スト、是ニハ衆議院ノ人ハ一人モ入ッテ居ナ
イ、私ハ實ハ此權利、賠償金ヲ對支文化ニ
流用スル最初ノ委員會ニ出テ、此委員會ノ
經過ヲ聊カ承知致シテ居ルノデアリマス
ガ、最初是ガ創立シタ當時ハ、衆議院ノ人
人モ入ッテ居ッタ、所ガ何時カソレガ除カレ
テ、外務省關係ノ衆議院ノ人ハ勿論ヘッテ居
リマスガ、官吏デアル人ハ入ッテ居リマス
ガ、一般ノ衆議院ノ人ハ、此中カラ除カレ
テ居ルヤウニナッテ居リマスガ、是ハ最初ノ
通リニ衆議院ノ人モ私ハ入ルノガ至當デア
ラウト思フ、元來斯ウ云フ豫算ニ關スルモ
ノハ、衆議院ノソレ等ノコトニ關係シテ居
ル人ヲモ入レルト云フコトガ、至當デアラ
ウト私ハ思フノデアリマスガ、衆議院ノ人
ハ全然除却シタト云フノハ、ドウ云フ理由
デアルカ、一寸承ッテ置キタイト思フノデア
リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006911696X00319360515&spkNum=45
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046・猪野毛利榮
○猪野毛政府委員 ドウモ各委員會ヲ見マ
スルノニ、衆議院ノ人ヨリハ貴族院ノ人ナ
ドガ多イヤウニナッテ居ルノデ、是ハ面白ク
ナイト考ヘテ居ルノデス、若シ政黨排擊ト
カ何トカト云フヤウナ間違ッタル外部ノ聲
ニ禍ヲサレテ、各委員會ガサウ云フ意味
デ、衆議院議員ヲ成ベク入レヌト云フヤウ
ナコトデ若シアッタナラバ、是ハ非常ナ認識
不足、間違ッタコトデアリマスルカラ、是ハ
是正セナクチヤイカヌト私共ハ考ヘテ居ル
ノデアリマスガ、對支文化事業ノ調査會ノ
委員會ノ名簿ヲ見マスルト、成程私共二人
ノ政務官以外ノ者ハ入ッテ居ナイ、二人ハ幸
ニシテ衆議院議員デアルカラ、マア衆議院
モ入ッテ居ルト云フ風ニ見マスルケレドモ
(笑聲)是ガ貴族院議員ノ政務官デアッタナ
ラバ、衆議院議員ハ一人モ入ッテ居ラヌト、
斯ウ云フコトニナリマスカラ、是ハ餘リ感
心シタモノニハ思ヘナイ、斯ウ云フ風ニ私
ハ公平ニ觀察致スノデアリマスガ(笑聲)斯
ウ云フ點ニ付キマシテモ、ドウ云フ譯デ一
體衆議院議員ノ名前ガ少イノデアルカト云
フヤウナコトヲ能ク-私モ任官シテ日ガ
淺イカラ、篤ト一ツ斯ウ云フ委員會ヲ拵ヘタ
歷史、精神、其當時ノ話合ノコト等ヲ聽キマ
シテ、一宮サンノ仰シヤッタコトハ御尤ト
思ヒマスルカラ、十分一ツ調査ヲ致シテ、
成ルベク正シイヤリ方ニ致シタイト考ヘテ
居リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006911696X00319360515&spkNum=46
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047・一宮房治郎
○一宮委員 私ハ大臣デモ御出デニナッタ
ラ、一寸伺ッテ見タイコトガアリマスガ、大
體他日ノ機會ニ質問ヲ留保シテ置キマシ
テ、モウ是デ止メテ置キタイト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006911696X00319360515&spkNum=47
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048・田尻生五
○田尻委員長代理 松本君発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006911696X00319360515&spkNum=48
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049・松本忠雄
○松本委員 製鐵奬勵法ノ改正ニ關シテ二
三御尋シタイノデアリマスガ、私共日本製
鐵株式會社法案ニ協賛ヲ致シマスル當時
ハ製鐵ノ合同ト云フモノガ、モット早イ期
間ニ、而モモット大規模ニ行ハレルモノノ
ヤウナ御信念ト承ッテ居ッタノデアリマス
ガ、其後ノ情勢ハ、其當時ノ御說明、御言
明ヲ裏切ッタヤウナ事態ニナッテ居ルヤウニ
考ヘラレルノデアリマスガ、其點ニ付テノ
一ツ御說明ヲ承ッテ置キタイノデアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006911696X00319360515&spkNum=49
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050・小島新一
○小島政府委員 御答申上ゲマス、日本製
鐵株式會社法制定ノ當初ニ於キマシテハ、
出來得ルナラバ一所十一社ノ合同ト云フコ
トヲ考ヘマシテ、其中デモ速ニナリ得ルモ
ノニ付テハ、一所六社ニ付テ是ガ實現ヲ圖
リタイト云フコトデ參ッテ居ルノデアリマ
ス、御話ノ通リ當初豫定シテ居リマシタ
所十一社全部ニ付テト云フ譯ニハ參ッテ居
リマセヌ、其大體ニ於テハ合同ニ參加スル
コトガ出來テ居リマスガ、尙ホ當初豫期ノ
ヤウナ合同ハ實現シテ居リマセヌ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006911696X00319360515&spkNum=50
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051・松本忠雄
○松本委員 今難カシイコトヲ論議致シマ
セヌガ、製鐵業奬勵法ヲ改正シテ、今度稅
金ヲ餘計御取リニナルト云フコトヲ御考ニ
ナッタノデスガ、是ハ會社ノ營業成績カラ御
覽ニナッテ御決メニナルノデアリマスカ、吾
吾カラ見レバ、鐵ノ關稅ト云フコトニ付テ
モ、多少手ヲ御付ケニナッテ然ルベキ時期デ
ハナイカト云フ風ニ考へテ居ルノデアリマ
スガ、其方ニチットモ手ヲ御付ケ下サラヌ理
由ヲ、一ツ承ッテ置キタイノデアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006911696X00319360515&spkNum=51
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052・小島新一
○小島政府委員 現行政策ノ中デハ、關稅
制度ト云フモノガ、製鐵奬勵法ノ免稅制度
ト共ニ、現行法ニ於テノ大キナ支柱ヲ成シ
テ居ル譯デゴザイマス、日鐵成立以後ニ
於キマシテ、將來日本ノ鐵鋼業ノ基礎ヲ鞏
固ニシマシテ、設備ノ改善擴張ニ依リマシ
テ、其「コスト」ヲ出來ルダケ引下ゲルコト
ガ出來マシタナラバ、鐵鋼關稅ニ付テモ、
當初ノ豫期ノヤウニ之ヲ引下ゲシメルト云
フコトニ向フベキモノデアルト考ヘテ居リ
やく、併シ何分ニモ今日ノ日本ノ鐵鋼業ノ
實情ニ付キマシテハ、只今ノ所是ガ引下ニ
付テ、直チニ考慮スルマデニハ立至ッテ居
ラナイノデアリマス、併ナガラ此問題ニ付
テハ、實ハ近時ノ內外ノ鐵鋼界ノ事情ニ顧
ミマシテ、更ニ鐵鋼國策ノ具現化、具體化
ノ方策ニ付キマシテ考究スル意味ニ於キマ
シテ、商工省ニ關係各省ノ協議會ヲ設ケマ
シー、至急ニ是ガ檢討ヲ致スコトニ相成ッ
タノデアリマス、隨ヒマシテ關稅ニ付キマ
シテモ、同時ニ將來適當ニ考慮シマシテ、
出來ルダケ速ニ日本ノ鐵鋼業ガ、今日ノ如
ク保護關稅ニ依ラズシテ立ッテ行キマスル
ヤウニ、助力致シタイト考ヘテ居リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006911696X00319360515&spkNum=52
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053・松本忠雄
○松本委員 鐵ノ問題ニ付キマシテハ、日
本製鐵會社ニハ增配ヲナサッタト云フコト
ニナッテ居ルヤウデアリマス、之ニ依ッテ日
本製鐵會社ノ株主ハ利益ヲ得ラレマス、ソ
レカラ此度ハ製鐵業奬勵法ヲ御改正ニナッ
テ、政府ガ或ル程度ノ稅金ヲ御取リニナッ
テ、政府ノ懷ロモ若干暖クナルダラウト思
ヒマス、然ルニ多數ノ鐵ノ消費階級ニ對シ
テハ、何等ノ恩惠ヲ御與ヘニナラヌト云フ
コトハ、結局言葉ヲ强メテ申セバ、大衆ヲ
搾取シテ資本家ト政府ガ懷ロヲ肥ス、斯ウ
云フコトニナルノデアリマシテ、私共サウ
云フ言葉ヲ使ヒタクナイノデアリマスケレ
ドモ、結果カラ申セバ、サウ結論セザルヲ
得ナイヤウナコトニナッテ、其點私共頗ル不
滿ニ思フ、殊ニ銑鐵關稅ヲ引上ゲタ當時ノ
政府ノ御言明、其他衆議院ノ附帶決議カラ
言ッテモ、疾ニ關稅ノ引下ガナケレバナラヌ、
特ニ今日ノヤウニ製鐵業ガ非常ニ華ヤカデ
アル〓代ハ、當然其點ニ御考ガ及ンデ宜イ
ノダト思ヒマス、殊ニ一方ニハ低金利時代
ト云ッテ、金利ハドン〓〓安クナッテ居ル、此
低金利ニナッテ居ル時ニ、製鐵會社ノ株主ダ
ケハ配當ガ殖エルト云フコトハ、政府ノ製
鐵政策ニ非常ナ矛盾ガアルヤウニ思フ、私
ハ其矛盾ヲ責メヨウト云フノデハアリマセ
ヌケレドモ、一方ニハ大衆ト云フ鐵ノ需要
者ノ立場ニ付テ、先ヅ第一ニ御考ニナラナ
ケレバナラヌ、然ル後ニ政府、株主ト云フコ
トニ御考下サルノガ、私ハ適當ヂヤナイカ
ト思フ、ソレ等ノ點ハ只今御話ニナッタ委員
會ヲ御作リニナッテ御〓究下サルト云フコ
トデアリマスカラ、冬ノ議會マデニハ適當
ナル御成案ヲ得ラレルコトヽ私共信ジテ、
深ク期待ヲ掛ケテ居ル次第デアリマス、其
點ニ付テハ質問ハ止メテ置キマスガ、此製
鐵業奬勵法ヲ御改正ニナルニ付テ、モウ一
ツ御考へ戴カナケレバナラヌコトハ、地方
稅ノ關係デアルノデアリマス、此製鐵業奬
勵法ノ改正ニ依ッテ國ガ稅金ヲ御取リニナ
〓、ソレカラ地方稅モ其國稅ノ附加稅ノ形
式ニ於テ取ルコトハ宜シイト云フノデアリ
ひぐ、一方製鐵業奬勵法デ免除シテアル地
方稅ニ付テ、斯ウ云フ場合ニ幾分デモ取ル
コトヲ許スト云フコトニ御改正ニナルノガ
適當デハナイカ、一體吾々ノ總括的感ジヲ
申シマスレバ、政府ノヤリ方ハ、兎角中央
政府ノコトニ對シテハ、非常ニ敏感デ御熱
心デアリマスガ、地方ノ立場ニ付テハ非常
ニ考ガ鈍イノデアリマス、私共ハ是ハ商工
省ヲ責メルノガ無理カモ知レマセヌガ、或
ハ內務省ガ斯ウ云フ機會ニ乘込ンデ、便乘
シテ行ッテ、地方ノ立場ヲ考ヘテヤラナイノ
ガ不都合デアルト考ヘテ居リマスガ、何故
ニ此製鐵業法ヲ改正ニナッテ國稅ヲ徵收ス
ル時ニ、全然免除サレテ居ル地方稅ヲ、若干
デモ取ルト云フコトヲ御考慮ニ入レラレナ
カッタノデアリマスカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006911696X00319360515&spkNum=53
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054・小島新一
○小島政府委員 御承知ノ通リ今囘製鐵業
奬勵法ヲ改正致シマシテ、一定ノ限度ヲ超
エタ部分ニ付キマシテハ、國稅タル所得稅、
營業收益稅ヲ課スルコトヲ認メタ次第デア
リマスガ、之ニ關聯シマシテ地方稅ニ於キ
マシテモ、御話ノヤウニ其超過部分ニ付テ
ノ國稅ニ對シテ、更ニ附加稅ヲ課スルコト
ヲ今囘認メルコトニ致シマシタ譯デゴザイ
やっ、 、是レ以上ニ更ニ地方稅ヲ、從來免除
シテアリマス所得稅、營業收益稅ニ付テノ
附加稅ト云フモノヲ特ニ考慮スルコトハ、
此際適當デナイト考ヘテ居ル次第デアリマ
ス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006911696X00319360515&spkNum=54
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055・松本忠雄
○松本委員 ソレハ私ノ申上ゲ方ガ惡カッ
タ、從來免除シテアッタ國稅ノ所得稅、營業
收益稅ノ附加稅ヲ取レ、斯ウ云フ意味デハ
アリマセヌ、詰リ製鐵業奬勵法ノ第七條ニ
依ッテ「資本金額、從業者、營業用ノ工作物
若ハ物件、使用動力又ハ收入ヲ標準トシテ
課稅スルコトヲ得ス」此點ナンデス、之ヲ
私共ハ國稅ヲサウ御取リニナル以上ハ、斯
ウ云フ地方稅ノ幾分ヲ何カノ形ニ於テ取ラ
セルト云フコトノ御考慮ヲ下サルノガ當然
デアルト思フ、國ノ方、自分ノ懷ロノ方ヘ
來ルノハ取ルケレドモ、地方ノ懷ロニ入ル
モノハ取ルコトハ考ヘテヤラヌ、詰リ製鐵
業奬勵法ニ依ッテ一割以上ヲ配當スルヤウ
ナ會社ハ、國デ御取ニナルガ宜シイガ、地
方ノ斯ウ云フ稅金ヲ幾ラカ制限ヲ設ケテ取
ルヤウニシテヤルノガ、適當デアルト私共
ハ考ヘマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006911696X00319360515&spkNum=55
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056・小島新一
○小島政府委員 私カラ一寸御說明申上ゲ
タイト思ヒマスガ、現在ニ於キマシテモ、
製鐵業奬勵法第七條ニ依リマシテ、國ニ於
テ免稅致シマスル製鐵業ニ對シテ、地方稅
ヲ課スルコトハ出來ナイコトニナッテ居リ
マスガ、或ル場合ニハ其條文ノ但書ニアリ
マスヤウニ、政府ノ許可ヲ得タ場合ニ於キ
マシテハ、地方稅ヲ課ケラレルヤウニナッテ
居リマシテ、隨テ地方稅ヲ課ケテ居ル實例
モゴザイマス、ソレカラ先程商工省ノ政府
委員カラ說明ガアリマシタノデ、多分御分
リデアラウト思ヒマスガ、今囘資本ノ一割
以上ノ部分ニ對シテハ、國稅タル所得稅、營
業收益稅ヲ改正スルコトニ致シマシテ、國
ガ製鐵業ニ對シテ課稅ヲシテ、國バカリ收
入ヲ擧ゲテ、地方ハ構ハヌコトニシテアル
ト云フコトデアレバ間違ヒデアリマスガ、
其部分ニ對シテハ地方稅ヲ附加スルコトヲ
認メテアルカラシテ、國ノ收入バカリヲ圖ッ
テ、地方ノ收入ヲ圖ラナイト云フ譯デハナ
イノデゴザイマスカラ、御諒承ヲ御願致シ
マス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006911696X00319360515&spkNum=56
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057・松本忠雄
○松本委員 大藏大臣ガ御見エニナリマシ
タカラ止メマスガ、私ノ申上ゲ方ガ、甚ダ
アナタノ御理解ヲ損ッテ居ルト思ヒマス、私
ハ其點ハハッキリ申上ゲテ置キマス、國ニ取
リマス所ノ所得稅、營業收益稅ノ附加稅ヲ
地方稅ニ取ラセルノデアリマシテ、是ハ當
リ前ノ話デ、是ハ法ニモ出テ居リマスツ、
固ヨリ私ノ說明ニモ申上ゲテ居リマス、更
ニ「特別ノ事情ニ基キ主務官廳ノ認可ヲ受
ケタル場合ハ此ノ限ニ在ラズ」チヤント條
文ニ書イテアリマスカラ、能ク知ッテ居リマ
ス「特別ノ事情ニ基キ主務官廳ノ認可ヲ受
ケタル場合ハ此ノ限ニ在ラス」ト云フコト
ヲ、サウアナタガ仰シヤレバ吾々言ハザル
ヲ得ナイ、特別ノ事情ニ基キ主務官廳ノ認
可ヲ受ケレバ、地方ニモ幾分取ラセルヤウ
ニスルノハ當リ前デハアリマセヌカ、サウ
云フ御考方ガ私ハ地方ニ對シテ不親切ダト
言フノデス、國ガ取ラヌカラ附加稅モ取ラ
ナイト云フコトハ當リ前ナンデ、第七條ニ
依ッテ明示サレテアル所ノ營業用ノ工作物
若クハ物件、其他ノモノニ地方稅ヲ取ラサ
レタラ宜イ、特別ノ認可ヲ受ケルト云フコ
トデナクテ、當然私ハ取ラセルト云フノガ
適當ダト思ヒマス
〔田尻委員長代理退席、池田委員長代理
著席〕
是ハ私ノ意見デスカラ宜シウゴザイマス、
何レ又後刻伺フコトニシテ、大藏大臣ガ御
見エニナリマシタカラ是デ止メマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006911696X00319360515&spkNum=57
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058・倉元要一
○倉元委員 一寸松本君ノ質問ニ關聯シテ
聽イテ見タイ、今ノ松本君ニ御答ニナリマ
シタ地方稅ヲ課スル場合ニ、特別ノ事情ア
ル時ニ御認可ニナル、其御認可ニハドウ云
フ要件ガ必要ナノデスカ、其實際ノ扱振リ
ヲ聽イテ置キタイ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006911696X00319360515&spkNum=58
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059・松隈秀雄
○松隈政府委員 製鐵業奬勵ノ爲ニ國ニ於
テ所得稅、營業收益稅等ノ賦課ヲシナイト
云フコトニナッテ居ルノデゴザイマスガ、製
鐵業所在地ニ於キマシテハ、製鐵業ガアリ
マスル關係上、製鐵業ニ從事シテ居ル者ガ
多數住ンデ居リマシテ、其地方トシテハ相
當ノ地方的ノ支出ヲ要シマス、國トシマシ
テハ國稅ヲ徵收シナクテモ、廣ク一般的ノ
收入ガアリマスルカラシテ、何トカ賄ガ付
クノデアリマスケレドモ、地方〓體ト致シ
マシテハ、他ニ十分ナ財源ガナイト云フ場
合ニ於キマシテハ、國稅ガ免除セラレ學
ソレニ對スル地方稅ガ無イト云フ場合ニ於
テハ、地方トシテハ歲入ガ上ラズシテ、非
常ナ困難ニ陷ルト云フコトモゴザイマスノ
デ、サウ云フ場合ニハ或ル程度ノ地方稅ヲ
賦課セシムルコトモ已ムヲ得ナイト認メマ
シテ、其事情ヲ斟酌シテ地方稅ヲ賦課セシ
メルコトヲ認メテ居ル場合ガアルト、斯ウ
云フ譯デアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006911696X00319360515&spkNum=59
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060・倉元要一
○倉元委員 私ハ其扱ヒノ實際ノ要件ヲ聽
イテ居ルノデス、サウスルトアレデスカ、
所在地ノ自治體ノ町村長ナラ町村長ト云フ
モノガ、自分デ以テ積極的ニ發動シテ來ナ
ケレバ、政府ハ知ラヌ顏ヲシテ居ル、斯ウ
云フノデアリマスカ、サウスルト大抵其所
在地ノ地方團體ハ皆迷惑ヲ蒙ッテ居マス、
トシテ然ラザルモノナシト私ハ申上ゲテモ
宜イト思フ、サウ云フコトニナリマスト、
今松本君ノ御說ノヤウニ、之ヲ切離シテ特
別ノ扱ヒニオ置キニナル必要ガナイヤウニ
私共ハ考ヘル、國稅ト同樣ニ御取扱ニナッテ
然ルベキモノデハナイカト考ヘラレル、ハッ
キリ斯ウ云フ場合デアルト云フ要件ヲ伺ヒ
タイ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006911696X00319360515&spkNum=60
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061・山田龍雄
○山田政府委員 私途中カラ參リマシタノ
デ、能ク前ノ關係ヲ承知シテ居リマセヌカ
ラ、或ハ御質問ノ要旨ニ副ハナイカモ知レ
ヌノデアリマスガ、元々製鐵事業奬勵法ノ
免稅ノ規定ハ、御承知ノ通リ重要ナ產業ヲ
奬勵スル趣旨カラ生レテ來タノデアリマス
カラ、之ニ對シテ國稅ハ免除シテ居ルケレ
ドモ、地方稅ヲ課スルト云フヤウナコトニ
ナルト云フト、奬勵ノ根本ノ趣旨ヲ沒却ス
ル虞ガアルト云フノデ、大體ハ原則トシテ
ハ課稅ヲシナイト云フ立前ヲ採ッタノデア
リマスガ、唯先程モ政府委員カラ說明ガア
リマシタヤウニ地方デハ其製鐵業ガ非常ニ
地方ノ重要ナル產業ト言ヒマスカ、正正に
言ヒマスカ、サウ云フモノノ重要ナル部分
ヲ占メテ居ッテ、隨テソレニ從事スル所ノ、
例ヘバ勞働者トカ云フモノガ、其住民ノ大
部分ヲ占メテ居ルト云フヤウナ場合ニ、其
歲入ヲ得ルノニハ、其業態ヨリ外ニハ餘リ
目ボシイモノガナイ、而モ其市町村ノ施設
ノ爲ニハ相當ノ經費ヲ要スルト云フヤウナ
場合ニ、其奬勵ノ趣旨ヲ沒却シナイ範圍ニ
於キマシテ課稅ヲスルノデアリマスカラ、
只今御質問ノヤウニ、ヤハリ自治體ノ現在
ノ財政狀態ナドヲ睨ンデ、サウシテ其製鐵
業ノ奬勵ノ趣旨ヲ沒却シナイ程度デ認否ヲ
決スルノデアリマスカラ、例ヘバ他ノ方面
デ相當製鐵業ノ爲ニ市町村トシテハ-自
治體トシテハ施設ヲシナケレバナラヌ場合
ニ於キマシテモ、他ノ方ニ何カ歲入ガアル
トカ、或ハ歲入ガナクテモ、歲出ノ方面ヲ
賄ッテ行クコトガ出來ルト云フヤウナ時ニ
ハヤハリ原則ニ歸ッテ-製鐵業奬勵ト云
フ方面ノ原則ニ歸ッテ課稅ヲサセナイト云
フヤウニシテ居ルノデアリマシテ具體的ニ
ドウ云フ場合ニハドウダト云フヤウナ、ハッ
キリシタ標準ハ持ッテ居ラナイノデアリマ
ス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006911696X00319360515&spkNum=61
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062・倉元要一
○倉元委員 大體御趣意ハ分リマシタガ、
ドウモサウ云フコトニナリマスト、政府ノ
御方針ガ、製鐵業奬勵ノ趣旨ヲ全ウスル爲
メノ名前ニ捉ハレテ居ルヤウナ感ガアルノ
デス、是ハ獨リ製鐵業ダケデナクテ、紡績
會社デアルトカ、或ハ鑛山業デアルトカ、
有ユル所在地ノ各種ノ事業ガアリマスト、
其村ニ營造物モ厄介ニナリ、衞生上モ厄介
ニナリ、有ユルコトデ厄介ヲ掛ケル譯デス、
デスカラドウモソコノ所ノ御趣意ガ、私共
ニハ一寸納得ノ行カナイ點ガアルノデアリ
マス、是ハ一ツ御考究下サル必要ガアラウ
ト思ヒマス、是ダケ私ハ御參考ニ申上ゲテ
置キタイト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006911696X00319360515&spkNum=62
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063・池田清秋
○池田委員長代理 大藏大臣ガ見エマシタ
カラ、通告順ニ依ッテ發言ヲ許可致シマス、
田尻君発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006911696X00319360515&spkNum=63
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064・田尻生五
○田尻委員 私ハ製鐵事業ノコトニ付キマ
シテ御伺ヲ致シタイ、出來得ルナラバ大藏
大臣ト商工大臣ニ御列席ヲ御願致シマシ
テ、一〓ニ御伺スルト、大變質問ノ趣意モ
徹底致スノデゴザイマスガ、商工大臣御出
席ガ出來ナイヤウデアリマスカラ、大藏大
臣ニ御伺致シタイト思ヒマス、色々アリマ
スケレドモ、時間ノ都合モアリマスカラ、
大藏大臣ニ對シテ最モ重要ト思ヒマス一點
ヲ伺ヒマス、ソレハ昨年豫算ノ編成ノ當時
ニ、從來日本製鐵株式會社ニ於ケル配當
ハ、六分ト云フコトデヤリ來ッテ居ッタノデ
アリマシタガ、ソレヲ一分增配ト云フコト
ニ政府ノ方デ決定セラレテ、サウシテ日本
製鐵ノ當局ニ交涉ノ結果、日鐵トシテハ、
營業ノ成績ヲ見タ上デト云フコトニ表面
ナッテ居ッタヤウデアリマスケレドモ、先般
ノ重役會議ニ於テ、政府希望通リニ增配問
題ヲ決定シタト傳ヘラレテ居ルノデアリマ
ス、御承知ノ通リ日本製鐵會社ハ、我國ニ
於ケル劃期的ノ鐵國策樹立ノ際ニ、將來日
本ノ鐵國策ノ中心機關トシテ設立サレタモ
ノデ、重大使命ヲ持ッテ居ルノデアリマス
ガ、アノ會社法案ガ議會ニ現レマシタ際
二、私共モ審議ニ參加致シマシテ、色々質
問應答ヲ重ネタノデアリマス、其際ニ日鐵
ノ將來ノ配當ハドウ云フ風ニスルカト云
フコトヲ質問致シマシテ、相當ノ制限ヲシ
ナケレバナルマイト云フヤウナ、各員ノ意
向デアリマシタガ、時ノ商工大臣ハ大體ニ
於テ、是ハ營利本位ノ會社デナイノデ、社
債ノ利〓ヨリモ少シ高イ程度位デ配當致シ
タイト云フコトデ、具體的ニハハッキリ申
サレマセヌデシタケレドモ、其後六分ト云
フコトデ配當ヲ致シテ居ッタノデアリマス、
ソレガ先般豫算編成期ノ際ニ、政府ノ國庫
ノ歲入ノ方カラ考慮セラレタ結果、政府ノ
持株ニ對スル日鐵ノ配當ヲ增加スルコトニ
依ッテ、約二百八十万圓ノ收入ヲ得ヨウト云
フコトカラ致シマシテ、增配問題ガ現レタ
ノデアリマス、此增配問題ニ付キマシテ
ハ、其當時各方面ニ色々批判モアリマス
シ、多ク非難ノ聲ガ揚ガッテ居ッタヤウデア
リマス、新聞雜誌等ノ言論機關ニ於テモ、色
色非難サレテ居ッタノデアリマスガ、此增配
ノ主體ガ、殊ニ其當時商工省デ御計畫ニ
ナッテ居リマシタ商工中央金庫、是ガ商工
大臣ト大藏大臣トノ折衝ノ結果、漸クニシ
テ認メラレルコトニナッテ、其財源トシテ日
鐵ノ增配ニ依ッテ得ル所ノ一一百八十万圓ヲ、
此政府側ノ出資ニ充テルヤウニ傳ヘラレテ
居リマシタ爲ニ、其際此增配問題ガ喧シ
ク非難ノ的ニナッタト思ヒマス、私ハ此口
鐵ノ配當ト云フモノヲ、永久不變ニ六分
ト云フコトニシテ置カナケレバナラヌト云
フ、窮屈ナ考ハ持ッテ居リマセヌ、或ル場合
ニハ五分或ハ四分ニ下ゲナケレバナラヌカ
モ知レヌ、其代リ又七分ニ上ゲルト云フコ
トモ、已ムヲ得ヌ場合ガアルカモ知レヌト
思フノデアリマス、特殊會社デハアリマス
ケレドモ、ヤハリ民間ノ資本モ入ッテ居ッテ、
ヤハリ營利ト云フコトヲ無視スル譯ニハ行
カナイヤウナ譯デアリマシテ、此日鐵會社
ハ最初ハ八幡ノ製鐵所ノ外、民間ノ十
會社ヲ合同ノ目標ト致シテ居ッタニモ拘ラ
ズ、當時經濟界ノ事情ガ變化致シマシタ爲
二、露骨ニ申シマスレバ、此際合同ニ參加
スルヨリモ、從來ノ儘デ單獨ニ經營致シタ
方ガ、景氣ガ直ッタ爲ニ利益ガ多イ、詰リ此
際國家的見地ト云フヤウナコトカラ、合同
ニ參加スルト云フヤウナコトハ損デアル、
却テ單獨デヤッタ方ガ得デアルト云フヤウ
ナ考カラ、合同ニ參加シナカッタ會社モア
ルヤウデアリマス、サウ云フ會社ハ今日非
常ナ利益ヲ得テ、二割三割ト云フヤウナ配
當ヲ致シテ居ル會社ガアル、現ニ其當時參
加ヲ豫定サレテ居リナガラ、合同ニ參加シ
ナカッタ會社モ、アノ位ノ評價デ合同スル位
ナラバ、自分ノ方ハ此儘三年ヤッテ行ケバ、
十分ノ利益ヲ擧ゲテ、評價額位ノ利益ハ擧
ゲ得ルノデアルカラ、此際合同ニ參加スル
ト云フコトハ、非常ニ不利益デアルト云フ
ヤウナコトヲ、放言シタ者モアルト傳ヘラ
レテ居ルノデアリマス、サウ云フヤウナ事
情デアリマシテ、其際合同ニ參加致シマシ
タ五社、後ニ又一社加ハリマシテ六社デア
リマスガ、サウ云フモノハ、內心ハ合同ニ
參加シナイデ、ヤハリ從來ノ儘自己ノ經營
デ、サウシテ此景氣ノ波ニ乘ッタ方ガ、非常
ニ利益デアルト考ヘタカモ知レナイノデア
リマスガ、ソレニモ拘ラズ色々ノ國家的見
地カラ、或ハ從來非常ニ國家ノ世話ニナツ
テ居ルト云フヤウナコトモ考ヘタデアリマ
セウガ、兎ニ角六社ダケガ參加シテ合同會
社ガ出來タ、サウ云フ會社ハ、會社設立ノ
際ノ評價ニ付テハ、世間デハ或ハ非常ナ水
膨レノ會社ガ出來タ、評價ガ高過ギタト云
フコトヲ非難シテ居ル向キモアリマシタ
ガ、是ハ馬場大藏大臣ハ、慥カアノ當時評
價委員デアッタト思ヒマスガ、私共モ斷ジテ
サウ云フ水膨レノ評價デナイト信ジテ居リ
マシタガ、サウ云フ會社ガ、其後日鐵ニ參
加シタガ爲ニ、六分ノ配當デ甘ンジテ居ラ
ナケレバナラヌト云フヤウナコトデアルノ
デアリマシテ、是等ノ民間ノ出資者ハ、內
心他ノ參加シナカッタ會社ト比較シテ、サウ
シテ或ハ六分ノ配當ニ甘ンズルト云フコト
ハ、非常ニ苦痛ト感ジ、或ハ七分ノ配當ヲ
希望スルト云フコトハ、是ハ有リ得ルコト
ダト私ハ言ハナケレバナルマイト思ヒマ
ス、ソレニモ拘ラズ、サウ云フ希望ガ民間
ノ出資者ノ方カラハ、表面ニ現レタコトヲ
聞カナイノデアリマスガ、却テ昨年ノ豫算
編成期ニ際シテ政府ノ方カラ、政府ノ配富
ヲ殖シタイガ爲ニ、日鐵ニ對シテ增配ヲ要
求セラレタト云フコトハ、洵ニ穩當ヲ缺イ
テ居ル處置デナイカト私ハ思ヒマス、殊
町田前商工大臣ハ、昨年、昭和十年ノ議會
ニ於テモ、度々此日鐵ノ使命ヲ達成スル爲
ニ、設備ヲ改良シ或ハ擴張シテ、サウシテ
生產費ヲ低クメテ、鐵鋼ノ供給ヲ潤澤ニシ
ナケレバナラヌト云フ使命ニ鑑ミテモ、出
來ルダケ社內保留ヲ多クスル必要カラ、
此配當ト云フモノハ極力制限シナケレバ
ナラヌト云フコトヲ、私ノ質問ニ對シテ
モ仰セニナリマスシ、外ノ機會ニ於ケル
質問ニ對シテモ度々仰セニナリ、サウシテ
サモ若シモ民間ノ出資者カラ增配ノ要求デ
モアレバ、斷ジテ之ヲ抑壓スルト云フヤウ
ナ意氣ヲ御示ニナッテ居ルノデアリマス、是
ハ速記錄ニ依ッテ私ハ確認シテ居リマスカ
ラ、ハッキリ分ルノデアリマスガ、或ル場合
ニ於テハ「日鐵ノ使命カラ申シテ、出來ル
ダケ株主ニ配當スル利益ヲ少クシテ設備ヲ
完全ニスルト云フ、アノ法律ノ趣意カラ致
シマシテ、出來ルダケ分量ヲ豐富ニシテ、
安イ値デ世ノ中ニ供給スルト云フ明ナ目的
ノ下ニ、アノ法律ガ出來テ居ルノデアリマ
スカラ、私ハソレニ副ヒタイ積リデアリマ
ス」又或ル場合ニハ「幸ヒ日鐵會社ハ政府
ノ特別ナル監督ノ下ニアリマス、配當ヲ出
來ルダケ最小限度ニシテ、其利益デ經營ノ
改善ヲスルトカ、設備ヲ完備シテ、每座
產ヲ安クシテ供給ヲ多クスルト云フ方針
ハ、今後モ續ケマス」又或ル場合ニハ「最
モ重キヲ置キマスノハ、日本製鐵會社ヲシ
テ配當ヲ制限シテ、經營改善竝ニ新シイ設
備ヲ殖ヤスコトニ全力ヲ擧ゲサセル、此考
ヲ以テ日本製鐵會社ヲ中心ニシテ、日本製
鐵界ヲバ支配スルコトガ出來ル」斯ウ云フ
風ニ仰セニナッテ居ルノデアリマス、ソレニ
モ拘ラズ民間ノ出資者カラ何等ノ要求モシ
ナイニ拘ラズ、僅カ二百八十万圓ノ國庫ノ
收入ヲ得ルガ爲ニ、而モソレガ商工中央金
庫ノ出資ニ充ツルガ爲ニト云フコトデアル
トシマスレバ、日本製鐵會社ガマダ十分ノ
活動ガ出來テ居ナイ、將來益〓其設備ノ改
良擴張ノ爲ニ資金ヲ要スル此日鐵會社ニ對
シテ、二百八十万圓ノ配當ヲ强要スルト云
フコトガ、私ハ非常ナ矛盾シタヤリ方デア
ルト言ハナケレバナルマイト思フ、殊ニ中
小商工業者ノ爲ニ特別ノ金融機關ヲ設ケ
ル、商工中央金庫ヲ設ケルト云フコトハ、
是ハ昨年ノ議會ニ於キマンテ、商工大臣ガ
自分ノ意見トシテ御述ニナッタ際モ、政黨政
派ヲ問ハズ擧ッテ贊成ノ意ヲ表シタノデア
リマシテ、唯大藏當局ニ於テハ御難色ガアッ
タヤウデアリマスガ、是ガ所謂政治的解決
ト云フコトデ、此實現ヲ見ルニ至ッタノデア
リマス、此商工中央金庫ハ、日本ノ中小商
工業者ノ重要ナル地位ニ鑑ミ、又其必要カ
ラ致シマシテ、私共ハ此商工中央金庫ヲ出
來ルダケ大規模ニ設立サレルコトヲ要望シ
タモノデアリマスケレドモ、ソレガ僅ニ五
百万圓ノ資金、而モ其半分ノ二百五十万圓
ノ資金ヲ出スガ爲ニ、日本製鐵會社ニ對シ
テ一分ノ增配ヲ要求スルト云フコトハ、或
ハ其當時ノ公債漸減ノ原則ニ捉ハレタ結果
デアルト思ヒマスケレドモ、餘リニ產業ト
云フモノヲ無視シタ、輕ジタヤリ方デアル
ト言ハナケレバナルマイト思フ、日鐵ニ對
シテサウ云フ犧牲ヲ拂ハシテ、サウシテサ
ラデダニ活動ノ鈍イト言ハレテ居ル日鐵會
社ヲシテ、將來ノ發展ニ要スル資金ヲ、國庫
ノ歲入ニ充ツルガ爲ニ、昭和九年二月ニ設
立サレタバカリデ、マダ二年シカ經過シテ
居ナイ日鐵ニ對シテ、サウ云フ際ニ政府ガ
民間カラ要求スレバ嚴重ニ抑ヘルト言ッテ
置キナガラ、政府自身、監督官廳デアル大
藏省、商工省ガ其增配ヲ要求シテ、而モ一方
ニ於テ中小商工業者ノ爲ニ特別ノ金融機關
ヲ設ケルト云フコトハ、非常ニ有效デアル
ト言ッテ置キナガラ、其資金ノ出シ吝ミヲス
ルト云フヤウナコトデ、果シテ本當ノ產業
振興ヲ眞面目ニ御考ニナッテ居ラレルノデ
アルカドウカ、私トシテ考ヘレバ非常ニ疑
ハシイノデアリマス、併ナガラ是ハ前內閣
ノ下ニ於テ行ハレタコトデアリマシテ、內
閣ガ迭ッテカラ見ルト、アノ商工中央金庫ノ
仕組モ、資金五百万圓デ適當デアルカノ如ク
ニ主張サレテ居ッタ方々ガ、內閣ガ迭ルト直
チニ資金ハ倍ニナリマシテ、是ハ元々商工
省ノ原案ダサウデアリマスガ、一千万圓ノ
資金ニ復活致シタノデアリマス、是ナラバ
前內閣ノヤリ方ヨリモ、資金ガ倍ニナルダ
ケ效果モ恐ラク倍ニナラウト思ヒマス、商
工中央金庫ノ機能モ倍ニ發揮スルコトガ出
來ルト思フノデアリマシテ、非常ニ喜ンデ
居ル譯デアリマス、是モ畢竟スルニ馬場大
藏大臣ガ御就任ニナッテ、從來ノ經濟政策、
財政方針ヲ御修正ニナッタ結果デアルト考
ヘルノデアリマス、今度豫算ニ此一分增配
ヲ其儘御計上ニナッテ居ル大藏大臣トシテ
ハ、果シテ今申シマシタヤウナ事情ヲ能ク
御考下サイマシタ上デノコトデアリマセウ
カ、或ハ此際デアルカラシテ已ムヲ得ナイ
ト云フコトデ、來年以後ニ付テハ何等カノ
考ガアリマセウカ、其點ヲ御伺致シタイト
思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006911696X00319360515&spkNum=64
-
065・馬場えい一
○馬場國務大臣 只今田尻君ノ御意見ハ洵
ニ御尤ダト思ヒマス、只今御話ニモアリマ
シタ通リ、私モ評價委員ヲ致シテ居リマシ
テ、其當時ニ於キマシテモ六分配當デ、釘
付ケニスルト云フコトデナカッタコトハ、今
御話ノ通リデアリマス、私ハ實ハ七分位ガ
宜イノヂヤナイカ、工業會社デアリマスカ
ラ、七分位マデハ之ヲ認メテ宜クハナイカ
ト云フコトヲ考ヘテ居リマシテ、殊ニ評價
ノ際ニ還元率モ七分デ還元シテ居ルヤウナ
譯デアリマス、併シソレハソレトシテ、無
論出來マスナラバ前ノ商工大臣ノ言ハレマ
シタ通リ、又田尻君ノ御話ノ通リ、出來ル
ダケ六分配富デ行キマシテ、低廉ニシテ豐
富ナル鐵ヲ供給スル、而モ將來ノ擴張ト云
フコトハ洵ニ必要ナコトデアリマスカラ、
是ハ成ベク社內留保金デ賄ッテ行ク、而モ所
謂製鐵業從事員ノ社會政策的施設ナドニモ
影響ノナイヤウニシテ行ク、是ガ洵ニ理想
的ノヤリ方デアリマス、私トシテモ此田尻
君ノ趣旨ヲ貫徹シテ行クト云フコトニ付テ
ハ全ク同感デアリマス、併ナガラ一面ニ又
考ヘテ見マスト、ソレデハ七分配當ヲスル
ト云フコトガ、非常ニ惡イ影響ヲ實際ニ及
ボスカドウカト云フコトヲ考ヘテ見マス
ト、製鐵合同ヲ致シマシタ際トハ、製鐵事
業ノ收益ト云フモノガ、非常ニ思ッタヨリモ
良クナッテ居ルノデアリマス、實ハ社內留保
金ナドモ、非常ニ豫期シタヨリモ多ク、爲
ニ擴張計畫モドシ〓〓進ンデ行キマス狀況
ニアリ、且又政府ガ兎ニ角八割マデモ資本
ヲ持ッテ居ルノデアリマスカラ、之ニ一分增
配スレバ相當ナ收入モ擧ゲラレル譯デアリ
やくろ、而シテ是アルガ爲ニ鐵ノ値段ニ影響
スルト云フ程デモナシ、又將來ノ擴張計畫
ハ成程其二百何十万圓カダケハ社內留保
金ガ減ル譯デアリマスカラ、理論的ニ申セ
バ、ソレダケハ賦金ナリ何ナリヲ殖ヤシテ、
事業計畫ヲスルト云フコトニナルノデアリ
マスガ、此程度ノ配當ヲ今日認メルト云フ
コトガ、非常ニ惡イ影響ヲ日鐵ノ將來ニ與
ヘルト云フ程ノモノデモナイト考ヘマシタ
ノデ、財政ノ今日相當ニ困ッテ居ル際デアリ
マスノデ、前內閣デ計畫シタモノヲ其儘踏
襲シタト云フノガ、正直ナ實ハ考方ナノデ
アリマス、併シ將來製鐵國策ニ付キマシテ
ハ、實ハ更ニ再檢討ヲスル時ガ來タヤウニ
思フノデアリマス、此製鐵國策ノ再檢討ヲ
致シマスト同時ニ、此問題モ亦再檢討ヲス
ベキモノデハナイダラウカト考ヘテ居リマ
スガ、今囘ノ此增配ダケハ、サマデ影響ノ
惡クナイコトカラ考ヘマシテ、此儘デ一ツ
進メテ行クコトニ御諒承ヲ願ッテ置キマシ
テ、製鐵國策ノ再檢討ヲ致シマス時ニ、同
樣ニ此問題ヲ一ツモウ一遍考ヘテ見タイト
思フノデアリマス、ソレカラ今ノ中央金庫
ノ千万圓ト云フコトニナリマシタノデ、自
然其拂込モ殖エテ行ク譯デアリマスガ、是
ハ是ト直接ノ實ハ關係ガアル譯デハナイノ
デアリマス、モウ一遍考ヘテ見ルト云フコ
トダケハ申上ゲテ置キタイノデアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006911696X00319360515&spkNum=65
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066・田尻生五
○田尻委員 只今大體ニ於テ私ノ豫期シテ
居ッタヤウナ御答辯ヲ得マシタ、外ニ色々ア
リマスガ、此際質問者モ他ニアルヤウデア
リマスカラ、私ハ大藏大臣ニハ是デ止メテ
置キタイト思ヒマス
〔池田委員長代理退席田尻委員長代理
著席〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006911696X00319360515&spkNum=66
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067・末次虎太郎
○末次委員 一寸關聯致シマシテ-私ハ
能ク分リマセヌガ、今田尻君ノ質問ノ中
ニ、統制ノ出來タ、一〓ニ合併出來夕日本
製鐵會社ハ六分乃至七分、他ノ統制ニ入
ラナイデ各自ニヤッテ居ルノハ一割五分モ
二割モ配當シテ居ル、斯ウ云フコトハ非常
ニ不公平デアッテ、日本ノ大事ナ鐵ノ問題ニ
對シテ、今大藏大臣ガ再檢討ヲシナケレバ
ナラヌト言ハレタノハ、多分サウ云フ御考
ヲ持ッテノコトダト思ッテ居リマスガ、サウ
考ヘテ宜シウゴザイマスカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006911696X00319360515&spkNum=67
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068・馬場えい一
○馬場國務大臣 私ノ申シマシタノハ「ア
ウトサイダー」ノ配當ガ非常ニ高率デアル
カラ、ソレヲドウスル斯ウスルト云フコト
デナクシテ、實ハ日鐵ヲ作リマシタ時ニ
ハ、殆ド全體ノ製鐵會社ノ合同ガ出來ルト
云フコトヲ豫期シテ居ッタノデアリマシタ、
其後非常ニ財界、產業界ノ事情ガ變リマシ
テ、御承知ノ通リ「アウトサイダー」ト云フ
モノハ、相當ノ有力ナモノガ皆殘ッテ、ソレ
ガ盛ンニ活動シテ居ル、而モ今後此製鐵、
製鋼事業ト云フモノハ、相當ニ國家ガ考ヘ
テ行カナケレバナラヌ大キナ問題ニナッテ
居ルノデアリマス、サウ致シマスルト、今
日ノ儘デ進ンデ行ケルカドウカ、新タナル
時代ニ應ジテ、製鐵國策トシテ大ニ考ヲ變
ヘテ行クト申スカ、或ハ進ンデドウ云フ對
策ヲ製鐵國策トシテ確立スルカ、其點ハ商
工大臣ガ見エマシタラ、十分ニ御說明ガア
ラウト思ヒマスガ、私共ノ相談シテ居ル所
デハ、詰リ日本製鐵ヲ作ル時ノアノ考ガ、
實ハ今日ハ實現サレテ居ラナイノデアリマ
ス、將來ドウ云フ國策ヲ立テルカト云フコ
トニ付テハ、尙ホモウ一ツ相當ニ是ハ再檢
討ヲシナケレバナラヌ、斯ウ云フコトニ考
ヘテ居ルノデアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006911696X00319360515&spkNum=68
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069・田尻生五
○田尻委員長代理 一寸申上ゲマス、アナ
タ丁度發言ノ順序ニナッテ居リマスカラ、繫
聯事項デハナク續イテ、大藏大臣ニ御質問
ナサッテ宜シウゴザイマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006911696X00319360515&spkNum=69
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070・中亥歳男
○中委員 一寸伺ヒマスガ、私委員長ヲ通
ジテ、最前今日ハ午前中デアルカラト云フ
ノデ、私ノ質問ハ大體二十分トシテ、大藏大
臣ヲ貴族院カラ態々オ出デヲ願ッテ居ルノ
デスガ、委員長自ラノ御質問デ旣ニ十二時
ニナッテ居リマス、十二時ヲ過ギテモ、大
藏大臣ノ御諒解ガアルノデセウカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006911696X00319360515&spkNum=70
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071・田尻生五
○田尻姿員長代理 中君ニ申上ゲマス、實
ハアナタ今日御出デニナッテ御通告ガアリ
マシタガ、私モ末次君モ一昨日カラ質問ヲ
通〓シテ居ッタノデアリマス、ソレデ先程丁
度十時半ニオ出ニナルト云フコトデアッタ
ノガ、遲レマシタノデ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006911696X00319360515&spkNum=71
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072・中亥歳男
○中委員 ソンナコトハ伺ハヌデモ宜イノ
デスガ、時間ガ過ギテモヤル大藏大臣ノ御
諒解ガアルナラ待ッテ居リマスシ、其時間ガ
ナイノナラ-私ハ朝九時カラ待ッテ居リ
マスカラ··発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006911696X00319360515&spkNum=72
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073・田尻生五
○田尻委員長代理 大藏大臣ハ十二時半迄
宜イサウデスカラ、一寸オ待チニナッテ戴キ
マス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006911696X00319360515&spkNum=73
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074・末次虎太郎
○末次委員 斯ウ云フコトガ、今ノ製鐵合
同ト云フヤウナコト、詰リ統制ト云フコ
トニ付テハ、非常ニ大事ナコトデゴザイマ
セウガ、兎ニ角政府ガ之ヲ統制シヨウト思ッ
テモ、北統制ニドウシテモ服シナカッタ人間
ハ、非常ニ良イ立場ニナッテ居ルト云フヤ
ウナコトヲ、何時マデモ放任シテ置クト云
フコトニナレバ、後ノ仕事ヲ統制スル時分
ニ、非常ナ難カシイ事情ガ起ッテ來ルダラ
ウト思ヒマスカラ、其邊ハ餘程御考慮ヲ願
ヒタイト思ヒマス、私ガ今ノ關聯事項デ御
伺シタイモノト思ッテ居リマシタノハ、滿洲
國ノ農業移民問題デアリマス、前大藏大臣
ハ、滿洲ノ農業移民ハ到底支那人ト競爭ハ
出來ナイ、日本ノ農業移民へ少々金ヲ出シ
テヤッテモ中々成立タナイ、ダカラ其方面ニ
ハ金ヲドウシテモ出セナイト云フヤウナコ
トデ、モウ殆ド四年カ五年滿洲國ガ出來マ
シテナリマスガマダ僅カ二千人、自分勝手
ニ行ッテ居ルノガ殆ド七百人、僅カナ移民
シカ行ッテ居ラナイノデゴザイマスガ、今度
ノ大藏大臣モサウ云フ御考デゴザイマス
カ、之ヲ伺ッテ置キマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006911696X00319360515&spkNum=74
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075・馬場えい一
○馬場國務大臣 此滿洲ノ農業移民ト云フ
モノガ、普通ノ單純ナル產業的ノ意味ノ移
民デアルト云フ考方ト、サウデナイ、他ノ
目的カラ考ヘル意味ノ移民、言葉ヲ換ヘテ
申セバ、滿洲ニ日本人ガ相當人數定住スル
ト云フコトガ、國策上必要デアルカドウ
カ、斯ウ云フ問題トハ、餘程共處ニ又考方
ヲ異ニシテ行カネバナラヌモノデハナイダ
ラウカ、無論其場合ト申シテモ、經濟上、
產業上ノ關係ヲ離レタ問題デハアリマセヌ
ケレドモ、唯所謂產業的ノ見地ノミヨリ見
ル移民デアルカドウカト云フコトニ依ッテ、
私共ノ考方ガ多少變ッテ行カナケレバナラ
ヌノデハナイカト思フノデアリマス、其意
味ニ於キマシテ、私ハ此問題ハ相當愼重ニ
考慮致サナケレバナラヌ、唯農業者ガ支那
人ト競爭上ドウデアルカト云フダケノ、產
業的見地カラノミ考ヘテ宜イカドウカ、其
點ハ私ハマダ十分ナル〓究ヲ今日ハ遂ゲテ
居リマセヌガ、愼重ニ考ヘテ行クベキ問題
ダト思ヒマス、ソレダケ御答シテ置キマ
ス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006911696X00319360515&spkNum=75
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076・末次虎太郎
○末次委員 御尤ナコトト思ヒマス、私ナ
ドハ非常ナ澤山ナ人命ト、ソレカラ澤山ナ
國帑ヲ費シテ、滿洲國ヲ漸ク日本ノ勢力範
圍ニ、マア斯ウナッテ居ル際ニ、國民ハ全體
滿洲國ヲ日本ノ生命線ト言ッテ居ルノハ何
ヲ意味シテ居ルカ、唯國防ノ第一線デアル
カラト云フコトダケガ、決シテ日本ノ生命
線トハ言ハレナイ、詰リ現ニ非常ニ困ッテ居
ル中小商工業者ヲ初メ、農民ガ非常ニ困ッテ
居ルト云フコトハ、是ハ人口ガ非常ニ土地
ニ比較シテ多イカラ、斯ウ云フ結果ヲ來シ
タノデアルト云フコトハ、明カナ事實ダト
思フノデアル、ソレデドウシテモアヽ云フ
廣イ土地ガアッテ、サウシテ氣候ハ冬ハ寒イ
ノデゴザイマスガ、穀物ノ出來ルダケノ光
線モ持ッテ居リマス、又溫度モ持ッテ居ル、土
地ハ日本ナンカニ比ベルト非常ニ肥エテ居
ル、之ニ日本民ガ移植シテ、農業移民トシ
テ立タレナイト云フ理窟ハ何處カラモ成立
タヌト思フ、又拓務省ガ今向フヘ移民ヲ僅
カヤッテ居ルケレドモ、是デモ相當順序ハ
立ッテ居ル、斯ウ云フコトヲ聞イテ居リマ
ス、サウスレバ今此人間ガ百万人モ殖エテ
居ル時ニ、十年モ先ニナッタラ一體ドウナル
ノデス、益〓資本家ト勞働者ト激シク抗爭ヲ
始メ、農村ト都會トガ殆ド縱橫、十文字ニ
抗爭ヲ始メテ居ル、ソレヲ益〓激シクスルヤ
ウナ結果ニナル、兎ニ角何處へ日本人ヲ送
ルト云ッテモ、殆ド世界中何處ニモ行ク所ハ
ナイ、滿洲ダケ一ツ非常ナ日本ノ努力ノ爲
ニ斯ウ云フコトニナッテ居ル、之ニ澤山ナ農
業移民ヲ送ルト云フコトガ、初メテ吾々ノ
早ク生活ノ安定ヲ得、サウシテ子孫ノ安住
ノ地ヲ殘シ、サウシテ國民ノ民族ノ發展ニ
資スル、一番ノ大事ナ問題ダト私ハ思フ、
ソレデ少々金ガ-無論引合ハヌヤウナト
云フコトハ、仕事トシテモ引合ハヌト云フ
ヤウナコトハナイト、私ナンカ思ッテ居リマ
スガ、若シ少々足ラナクテモ、引合ハナク
テモ、是ハドウシテモ相當ナ多額ナ金ヲ出
シテ、サウシテ是ダケハ極力多イ人間ヲ向
フヘ送ルト云フコトニシテ戴カナケレバナ
ラヌト思フノデアリマス、之ニ對スル大藏
大臣ノ御意見ヲ伺ヒタイ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006911696X00319360515&spkNum=76
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077・馬場えい一
○馬場國務大臣 洵ニ御尤ナ御意見デアル
ト思ヒマス、私モ滿洲ニ相當ナ移民ヲ送ル
ト云フコトハ、今御話ノヤウナ見地カラデ
ナクトモ、私ハ相當ニ必要ガアルト思ヒマ
ス、此問題ハ今日十分ニ考ヘナケレバナラ
ヌ問題デアリマスガ、必要ハ他ニモ大イニ
アルト思フノデアリマスガ、今御話ノ如ク、
日本ノ此人口問題ト云フ方カラ考ヘマシテ
モ、又地方ノ農村ノ實情カラ考ヘマシテモ、
現ニ御承知ト存ジマスガ、山形縣邊リノ農
民ノ滿洲ニ移住シマシタ成績ハ、極メテ宜
シウゴザイマス、ソンナコトカラ考ヘ合セ
マシテ、日本ノ農村問題カラ考ヘマシテモ、
人口問題カラ考ヘテモ、私ハ滿洲ニ相當ナ
移民ヲ送ルト云フコトハ、色々ナ重大ナ意
味ガ其處ニアルト考ヘテ居リマス、唯之ニ
對シテハ相當ニ國費ヲ掛ケナケレバナラヌ
ト思ヒマス、ソレデ無論國費ヲ掛ケマス爲
ニハ十分財政關係ハ考ヘテ進マナケレバ
ナリマセヌケレドモ、此問題ハ適當ニ解決
シテ行クコトハ必要ダト今思ッテ居リマス、
大體御說ノヤウナ考へ方ヲシテ居ルノデア
リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006911696X00319360515&spkNum=77
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078・末次虎太郎
○末次委員 ドウカ一ツ能ク政府デモ御相
談ナサッテ、此次ノ議會ニハ是非豫算ヲ出シ
テ戴クコトニ、御努力ヲ願ヒタイト思フノ
デアリマス、兎ニ角非常ニ損ニナルト云フ
コトハナイヤウニ私ナンカ考ヘテ居ル、コ
コ十年カ僅カノ間ダケヲ金ヲ寢カサナケレ
バナラヌト云フコトハアルデアリマセウガ、
サウ非常ニ大キナ金ヲ要シナクテモ、詰リ
方法ノ立テ方ニ依ッテ濟ムト思フ、問題ハ非
常ニ大キイノデアリマスカラ、少シハ其處
デ疑問ノ點ハアッテモ、早クヤッテ貰ハナケ
レバナラヌ、今現ニ向フニ行ッテ色々ナ工
業ヲ起シテモ、人間ガ足リナクテ困ル、支
那カラ支那人ヲ每年百万人位入レナケレバ
仕事ガ出來ナイ、所ガ陸軍デハソンナコト
ヲシテ居ルト、アト大體百万人位入レマス
ト三〇%、詰リ三十万人位ノ人間ハ定著
スル、サウナッテハナラヌト云フノデ、去年
ハ四十五万ト云フコトニ限定シタト云フコ
トデアリマスガ、今年ハ又三十五万ニ減ラ
シタ、是ハ詰リ日本人ノ移民ヲ非常ニ困難
ニナラシムルト云フコトヲ恐レテ、サウ云
フコトヲヤッテ居ルノデアラウト思フノデ
アリマスガ、併シ今現在仕事ヲヤッテ居ル
人ハ非常ニ困ルダラウト思ヒマス、兎ニ角
此問題ハ成タケ早クヤラナケレバナラヌト
思フノデアリマス、特ニ御考慮ヲ御願致シ
マス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006911696X00319360515&spkNum=78
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079・田尻生五
○田尻委員長代理 中君発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006911696X00319360515&spkNum=79
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080・中亥歳男
○中委員 私ハ大藏大臣ニ對シマシテ、公
債政策ニ對スル御所見ヲ一二點伺ヒタイト
思ヒマス、藏相ノ今日迄ノ御聲明ナリ御演
說ニ依リマシテ、將來ドウシテモ國費ハ增
加スル、隨テ增稅モヤラナケレバナラヌ、
赤字公債モ增額ヲ致ス、斯ウ云フ點ハ明ニ
相成ッテ居ルノデアリマスガ、唯其程度ノコ
トニ對シマシテハ、大藏大臣トシテハ今御
言明ノ時機デナイト云フコトデ、明ニナッテ
居ラナイノデアリマス、是ハ或ハ已ムヲ得
ナイコトヽ存ジマス、而シテ議會ニ於テ藏
相ノ御演說ヲ拜聽致シマシタ其一節ニ、斯
ウ云フ風ニ御述ニナッテ居ルノデアリマス、
此場合歲入ノ一部ヲ赤宇公債ニ依ッテ補塡
致スコトハ已ムヲ得ナイ、併ナガラ通常歲
入ノ增加ヲ計ラズシテ、何時デモ赤字公債
ニ依ッテヤルコトハ適當デハナイ、ドウシテ
モ國民ハ自己ノ責任ニ於テ、此時局ヲ打開
セネバナラヌ、子孫ニサウ負擔ヲ遺スベキ
デナイ、斯ウ云フ風ニ仰セラレテ居ルノデ、
此點ハ私モ頗ル同感デアリマス、私ハ前內
閣當時ニ於キマシテ、赤字公債ノ漸減ト云
フ.此前內閣ノ意見ニハ衷心共鳴ヲ致シテ
居ッタ一人デアリマス、今日モ尙ホ其信念ニ
於テ變リハナイノデアリマス、併ナガラ國
際情勢ノ變化、其他藏相ノ豫算委員會デモ
仰セラレマシタ通リニ、ソレガ爲ニ國民ノ
經濟力ヲ增スト云フヤウナ、重要ナ政策ト
云フヤウナコトニ依ッテ、巳ムヲ得ズ國費ガ
膨脹スル、隨テ公債漸減主義ヲ破ッテ、ドウ
シテモ公債ヲ多ク發行セネバナラヌト云フ
ヤウナコトニナレバ、是モ亦已ヲ得ナイコト
ト存ズルノデアリマスガ、唯此場合國民ハ、
一體此我國ノ赤字財政ト云フモノハ、何時
克服スルコトガ出來ルモノデアルカト云フ
コトヲ、昭和七年以來年々赤字公債ガ增額
致シマスノデ、心配ヲシテ居ル、昨年漸ク
赤字公債ハ是以上ハ殖エナイデアラウト云
フコトニ、稍〓安心ヲ致シタノデアリマス
ガ、現內閣ニ於テ藏相ノ御聲明ニ依テ、又
再ビ赤字公債ヲ非常ニ增額スルノダ、斯ウ
云フ風ニ心配ヲ致シマシテ、一體何時ニナ
レイク此我國ノ赤字公債ヲ克服ガ出來ルデ
アラウカト云フ、所謂我國ノ財政ノ將來ニ
對スル、國民ノ頭カラ一種ノ不安ガ取去ラ
ナイノデアリマスガ、是ガヤハリ事業ニ投
資ヲ致シマス上ニ於キマシテモ、何トナク
心ノ底ニ、我國ノ財政ノ將來ヲ非常ニ心配
シテ居ルト云フノガ、是ガ事實デアリマス、
ソコデ大藏大臣ノ御演說ヲ拜見致シマスル
ト云フト、何時マデト仰セラレルノデスカ、
何時マデモ此赤字公債デ行ク-ドウシテ
モ通常收入ノ增加ヲ計ッテ、此赤字公債ヲ抛
棄シナケレバナラヌ、此御言葉カラ推シテ
考ヘマスト、御發表ニナッテ居リマセヌガ、
恐ラク藏相ノ御意中ニハ、斯クシテ何時ノ
頃ニカハ、ドウシテモ此赤字財政ヲ普通ノ
財政ニ引戾サナケレバナラヌ、引戾スノダ
ト云フ、何モノカノ御成算ガ必ズヤ大藏大
臣トシテハ御持チニナッテ居ルト、斯樣ニ私
ハ考ヘルノデアリマス、此間カラ豫算委員
會ニ於テ藏相ノ說明ヲ承リマシテモ、只今
申上ゲマシタヤウニ、藏相ハ國家經濟力ヲ
培養スルコトガ出來ルヤウナモノニ付テ
ハ、積極的ニ今ハ苦ンデモヤッテモ宜イノダ
ト云フヤウナ御口吻ヲ漏ラサレテ、非常ニ
衷心喜ビ、或ハ藏相ノ御計畫ハ或ル程度マ
デ御發表ニナリマシタガ、現内閣ニ於テハ
公債漸減ヲスルカラ、此以上殖エナイト云
フコトハ分リマシタガ、偖テ七億ナリ、八
億ナリノ現在出シテ居ル赤字公債ト云フモ
ノハ、一體何時ニナッタラ是ガ減ルノカ、何
時ニナッタラ止マルノカト云フ、少クモ見据
ヱハ付イテ居ナケレバナリマセヌ、現內閣
ニナッテ、成程一時ハ赤字公債ハ殖エルガ、
藏相ノ御說明ヲ、能ク得心ノ行クヤウニ國
民ガ聞キマシタナラバ、或ハ一時ハ公債ハ
殖エルガ、此御計畫ニナッタナラバ、寧ロ根
本的ノ赤字財政ノ克服ハ、前內閣ノ執ッタ方
針ヨリハ、早ク根本的ニ於テ赤字財政ノ克
服ガ出來ルノヂヤナイカト云フヤウナコト
ヲ、私ハ國民ニ考ヘサセ得ルノヂヤナイカ
ト云フコトヲ、此間中ノ藏相ノ各所ニ於ケ
ル所ノ、豫算ニ對スル所ノ御答辯デ考ヘテ
居ルノデアリマス、色々御都合モアルコト
ト思ヒマスガ、併ナガラ只今申上ゲマシタ
ヤウニ、是等ノコトヲ少シデモ國民ニ知ラ
シムルト云フコトハ、只今申上ゲマシタ各
個人ガ實業界ニ投資ヲ致シマス上ニ於テ
モ、何カニ於テ財界ノ將來ニ對スル杞憂ヲ
取去ルト云フ意味カラ、洵ニ必要ナコトデ
アリマス、私ガ之ヲ伺ヒマスノハ、只今藏相
ノ言質ヲ得テ置イテ、將來ソレガ間違ッタラ
藏相ヲ責メルトカ、何トカト云フヤウナ考
ハ、無論持ッテ居リマセヌ、固ヨリ藏相ト雖
モ今日御考ヘニナッタコトガ、將來色々社會
情勢ノ變化ニ依ッテ、必シモ其通リ實行出來
ルカ出來ヌカト云フコトノ分ラヌコトハ、
私共承知シテ居リマス、何卒此點ニ對シテ
御差支ノナイ限リ、藏相ノ腹藏ナキ御答辯
ヲ得マスレバ、非常ニ仕合セト存ズルノデ
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081・馬場えい一
○馬場國務大臣 洵ニ御尤ナ御尋デアリマ
ス、前內閣ノヤウニ、公債漸減ノ方針ヲ續
ケテ參リマシテ、赤字公債ノ絕滅ノ時期ノ
來ルコトヲ待ツ、斯ウ云フ考デ進マレタノ
デ、其通リ進ンデ行ケレバ非常ニ結構ナコ
トデアリマス、自然增收ノ或ル程度ヲ大體
ノ目安ト致シマシテ、或ル程度ニ公債ノ漸
減ガ出來テ行ク、是デ進ンデシマヒマスル
コトハ、最モ喜ビトスル所デアル、恐ラク
ハ國民モ之ニ信賴ヲ拂ッテ居ッタラウト思フ
ノデアリマス、然ル所ガ經濟情勢ノ變化ナ
リ.又多年公債漸減ノ主義ヲ確保致シテ來
マシタ爲ニ、產業貿易ノ振興ナリ、或ハ國
民生活ノ安定ト云フヤウナ經費ハ、出來ル
ダケ抑ヘテ參ッタ譯デアリマス、其爲ニ餘程
產業貿易上カラ申シテモ、亦國民生活ノ上
カラ申シテモ、却テ摩擦ガ起リツツアル、
一方ニ於テハ國際情勢ノ變化カラ、相當ニ
國防費ハ增サナケレバナラヌ、是モ先ヅ軍
部當局ニ於テモ、無駄ヲシヨウト云フ考ハ
毛頭ナシ、不必要ナコトヲ要求シヨウト云
フ御考ハ毛頭ナイト私ハ確信シテ居リマス
ガ、併シ今日ノ時勢ニ於テハ、國際環境カ
ラ言ッテモ、已ムヲ得ズ國防費ト云フモノハ
增大スル、又一面ニ於テ國民生活ノ今日ノ
狀態ヲ此儘ニシテ、公債漸減ノ主義ノ遵守
ノ爲ニ、何等ノ施設モ遠慮シテシナイ、或
ハ產業貿易ノ振興ガ圖リ得ルカ、ヤハリ公
債漸減ノ主義ノ爲ニ、此方ニモ施設ヲ致サ
ヌト、斯ウ云フコトデハ、兩方ノ方面カラ
今日デハ抑ヘテ居ラレナイ時ガ來テシマッ
タノデアリマス、サウナルト、ドウ云フコ
トヲ此場合ニ考ヘテ行ケバ宜イカト云ヘ
バ、從來赤字公債ノミノ-赤字公債ト云
フト少シ語弊ガアリマスガ、要スルニ公債
ダケノ政策ヲ執ッテ、要ルダケノ金ハ唯公債
ヲ發行スルト云フダケデ行クガ宜イカ、或
ハ玆ニ租稅ノ增徵ナリ、其他各種ノ經常財
源ヲ求メテ、或ル程度マデハ其經常財源デ
以テ國家ノ費用ヲ賄ヒシ、又國債ノ將來增
加スル所ノ利拂其他ニ對シテモ、之ヲ安全
ニスル爲ニ經常財源ヲ殖ヤス、サウシテ
時ハ或ハ赤字公債ノ如キモノモ、產業的公
債ハ勿論デアリマスガ、赤字公債ガ增シマ
シテモ、之ニ依ッテ今日ノ國民生活ノ安定
モ幾ラカソレニ依ッテ出來ル、又產業ノ貿易
ニ對スル政策ヲ、ソレニ依ッテ施設スルコ
トガ出來テ、之ニ依ッテ自然增收ト云フモ
ノノ一種ノ助長ガ出來ル、斯ウ云フコトデ
アリマスルナラバ、假令一時ハ公債ノ發行
漸減主義ヲ破リマシテモ、其方ガ國家將來
ノ永遠ノ爲ニ宜カラウ、其代リ國民モ今日
增稅ト云フコトニ我慢ヲシテ貰フ、增稅ト
云フ言葉ハ、國民ノ決シテ喜バザル所デア
リマセウガ、今日ノ國家ノ事情上、ドウカ國
民モ我慢ヲシテ貰ヒタイ、其代リ之ニ依ッテ
此經常財源ヲ得ルコト、竝ニ一時ハ公債ノ增
發ガアッテモ、國民生活ノ上カラ申シテモ、
產業貿易ノ助長ニ依ッテ將來ノ自然增收ノ
增加ヲ期待スルコトガ出來ルト云フコトニ
依ッテ、將來ハ此赤字ト云フコトガ絕滅出來
ルカラト云フ、其事ニ依ッテ國民ノ增稅負擔
ヲ我慢シテ貰ヒタイト云フノガ、私ノ根本
觀念デアリマス、ソコデソレデハ赤字公債
ハ何時ニナレバ絕滅シ得ルカト云フ見透シ
ガ付クカト、斯ウ仰シヤレバ、是ハ私ニハマ
ダ何年ノ先ニ於テ澤山赤字公債ヲ出サズ濟
ミマスト云フ財政計畫ハ、今日持合セマセ
ヌ、併シ今私ノ申上ゲタヤウナ方法デ、國民
ニモドウカ國家租稅ノ負擔ハ我慢シテ貰ヒ
タイ、是ハ將來ニハ結局國家ノ產業貿易仲
張ニ依ッテ國家ノ歲入ヲ增スシ、サウシテ行
ケバ此赤字ハ段々ニ將來減ラシテ行キ、遂
ニハソレガ絕滅出來ルノダカラ我慢シテ貰
ヒタイ、斯ウ云フ私ハ根本觀念カラ增稅其
他ノコトヲ計畫シタノデアリマス、無論私
ト致シマシテモ、一日モ早ク赤字公債ナドハ
無クシタイ、又租稅ノ負擔ヲ一文デモ少ク
シタイノデアリマス、併シソレデハ結局國
ノ財政ノ前途ト云フモノハ全ク暗澹トシ
テ、我國ノ財政ニ對シテ對內信用モ、對外
信用モナクナルト云フコトニナッテハナラ
ヌノデアリマスカラ、國民モ我慢シテ貰ヒ
タイ、其代リ國防費ニシテモ、其他ノ費用
ニシテモ、全ク國家ノ必要ナモノダケヲヤッ
テ行カウ、產業貿易ノ助長モシナケレバ、
到底將來ノ財政收入ハ增サナイ、假令一時
ハ形ハ洵ニ面白クナイ赤字公債ヲ殖ヤシテ
デモヤッテ行クシ、又國民生活ノ安定ガ出來
ナケレバ、國防ト云フモノモ唯軍備ヲ增
シタカラト云ッテ、決シテ安全ナル國防ハ出
來ナイノデアリマス、サウ云フ方カラ言ッ
テモ、國民生活ノ方ニモ金ヲ出サナケレバ
ナラヌ、ソレニモ相當ノ金ガ要ルカラ、サ
ウナレバ赤字公債ハ或ハ一時殖エル、若ク
ハ當分減スコトハ出來ヌダラウ、併シ將來
ハソレニ依ッテ赤字公債ガ絕滅シ得ルト云
フコトヲ覺悟致シ、又其確信ヲ持タナケレ
バ、斯ウ云フ增稅ヲ國民ニ强ユルコトハ出
來ヌダラウト思フ、デアリマスカラ、今アナ
タノ考ヘ方ハ、多分私ノ申スコトデ御諒解
ヲ得ルト思フガ、ソレヂヤ何年先キカ、十年
先キカ、十五年先キドウナルカ、斯ウ云フ
コトハ今日ノ國際情勢カラ言ッテ、中々判斷
スルコトハ難カシイノデアリマス、ソコデ
私ガ歲出見透シヲ附ケルト言ッテモ、十年、
十五年先キノ國際情勢マデモ見透シテ、十
年先キ、十五年先キニハドウナルト云フコ
トヲ申シテ見テモ何ニモナラヌ、ソンナコ
トヲ申スヨリモ、大體ノ根本ノ政策ガココ
ニ在ルト云フコトヲ以テ、國民ニ增稅ヲシ
テ貰フコトノ覺悟ヲ決メテ貰ヒタイ、ソレ
ニハ少クモココ七八年ノ國防、其他ノ產業
ニシテモ、國民生活ニシテモ、大體ドレダ
ケノ金ガ要ル、ソレデアルカラ是ダケノ增
稅是ダケノ公債ヲ發行セナケレバナラヌ
ガ、今ノ考ヘ方ガココニアルト云フコトヲ
國民一般ニ知ッテ貰ッテ、我國將來ノ財政ニ
對スル內外ノ信用ニ付テ不安ナカラシムル
ヤウト云フノガ、私ノ根本ノ考デアリマス、
ドウゾ左樣ナ意味ニ於テ御諒解ヲ得タイト
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082・中亥歳男
○中委員 率直ナ御說明デ餘程分リマシタ
ガ、要スルニ藏相ハ先刻私ガ申上ゲタノト
同ジデ、一時ハ公債ハ殖エルカモ知ラヌガ、
早ク自然增收ヲ多クスルヤウニシテ、之二
依ッテ赤字公債ヲ克服シタイ、斯ウ云フコト
ニ歸着スルト思ヒマスガ、是ハ私ハ御理想
トシテ、議論トシテ、洵ニ同感デアリマス
ルガ、唯私共ノ憂慮致シマスノハ、果シテ
藏相ノ御考ニナッテ居ル程ニ、容易ニ自然增
收ガアルカドウカ、昭和七年ト十一年ヲ比
較致シマスト、此四五年ノ間ニ二億二一二千
万圓ノ自然增收ガアリマス、併ナガラ此期
間ハ、御承知ノ通リ貿易ガ非常ニ急激ニ增
加シタ時代デアリマシテ、是ハ時間ヲ取リ
マスノデ、後ハ申シマセヌガ、昭和六年カ
ラ十年度マデハ二十五億ノ貿易ガ五十億ト
云フヤウナ、殆ド倍額ニマデ增加致シタ、
其上ニ七年以來ノ赤字公債ノ增發ニ依リマ
シテ、軍需工業ガ盛ニナリ、此二ツノ理由
デ非常ニ一部ノ經濟界ガ潤サレテ、漸ク此
四五年間ニ二億二三千万圓ノ增收ガアッタ
ヤウナ狀態デアリマシテ、今後ノ五年間ト
云フモノハ、我國ノ貿易ハ此以上、二十億
ノモノガ四十億ニナルト云フヤウナ程度ニ
ハ到底參ラヌ、ソコデ公債ハ今七億五千万
圓前後デアリマスガ、是ガ殖エルト云ヘバ
先ヅ十億ト見ナケレバナラヌ、十億ノ公債
ヲ一年ニ出スト致シマスルト、五年先ニハ、
細カイ勘定ハ分リマセヌガ、約二億近クモ
利拂ダケガ殖エル、赤字公債ヲ憂ヘルノハ、
元金ノ支拂ヲ子孫ニ遺スト云フコトモ第一
デアリマスガ、併シ一體公債ヲ發行スルガ
爲ニ、其利拂ノ爲ニ又國家ノ歲出ガ殖エル、
其利拂ノ爲ニ公債ヲ發行スル、又利拂ガ殖
エルト云フヤウナコトガ、私ハ一番心配ナ
ノデアリマシテ、果シテ藏相ノ御考ハ、此
公債ヲ增加スル利拂、是カラ殖エマス公債
ノ利拂ヲ自然增收デヤッテ、尙且ツ公債ノ發
行ヲ減ジテ行ク程ノ自然增收ガアルカ否カ
ト云フコトニ付テ、私ハ實際ニ考ヘテ、理
想トシ、御意見トシテハ全ク同感デアリマ
スカ、果シテソレガ實現シテ、我國ノ赤字
公債ガ減ルノ時期ガ近キ將來ニ來ルカドウ
カト云フコトハ、非常ニ心配ヲ致スノデア
リマスガ、何カ自然增收ヲ殖ヤシテ、サウシ
テ結局赤字公債ヲ克服スルノダト云フ御意
見ニ對スル、モウ少シ御確信ノアル具體的
ノ御示シヲ願フコトガ出來ナイデアリマセ
ウカ、ソレカラ今一ツハ、左樣ナ目的ヲ達
スルト致シマスレバ、餘程藏相ガ思ヒ切ッ
テ、先刻申上ゲマシタ、所謂國家ノ經濟力
ヲ培養スルト云フヤウナ方面ノ施設ニ、餘
程思切ッテ御同情ヲ願ハナケレバナラヌ、
今年ノ十一年度ノ豫算ハ、全ク不成立豫算
ト大差ナイ豫算デアリマシテ、不成立豫算
ハ御承知ノ通リニ二十二億七千万圓ニ對ス
ル國防費ガ十億五千万圓デ、此國防費ト他
ノ豫算トノ釣合ニ對シテハ、相當論議ガアッ
タノデアリマスルガ、將來ニ於テモ或ハ二
億ノ國費ガ殖エマスカ、或ハ三億ノ國費ガ
殖エマスカハ知リマセヌケレドモ、前岡田
內閣ノ編成サレマシタヤウナ豫算デ、所謂
國防費ト他ノ施設トノ釣合ガ、斯ウ云フ釣
合デ進ミマシタノデハ、尙更私ノ只今心配
致ス藏相ノ御理想、卽チ自然增收ヲ得テ赤
字公債ヲ克服スルナドト云フコトハ、到底
私ハ思モ寄ラヌコトト思フ、是ハ或ハ少シ
伺ウテモ御答辯ヲ得ルコトハ無理カモ知レ
マセヌガ、十一年度ノ實行豫算ノ、所謂豫
算額ト國防費トノ釣合等ニ對スル藏相ノ御
所見ヲ伺フコトガ出來マスレバ仕合セダト
思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006911696X00319360515&spkNum=82
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083・馬場えい一
○馬場國務大臣 只今御話ノ如クニ公債ヲ
發行致シマシテ、元金ノ負擔ハ無論デアリ
マスガ、利息ノ負擔ガ殖エルガ故ニ、ドウ
シテモ十分玆ニ財源トシテ、增稅其他ノ手
段ヲ以テ相當ニ收入ヲ擧ゲテ置カナケレバ
ナラヌト云フノハ、其處ニ一ツハ大イニア
ルノデアリマス、ソレカラ國防費ガ一般會
計ノ中デ何割ト云フ比率ノコトハ、是ハ餘
リ議論ヲ申上ゲタクナイノデアリマシテ、
之ヲ以テ直チニ一般產業貿易其他ノ所謂行
政的ノ費用ガ多イトカ少イトカ云フコトデ
ハナイト思ヒマスガ、ソレニ致シテモ國防
費ト云フモノガ、今後相當ニ私ハ增サザル
ヲ得ナイト思ヒマス、而シテ其國防費ト云
フモノモ、今日ノ我國ノ產業ノ上若クハ國
家ノ增收ノ上ニ、全然役立タナイト云フヤ
ウナコトハ、是ハ考ヘルノガ間違ッテ居ル
ノデアッテ、今日國防費ニ投ズルコトハ、寧
ロ世間デハ軍需「インフレ」ト云フ言葉ヲ使
フ者モアルノデスカラ、是ガ我國ノヤハリ
產業ニ、直接軍需工業ノミナラズ、是ト相
關聯シテ居ル他ノ工業ニ非常ナル刺㦸ヲ與
ハイ、我國產業ノ爲ニ大イニ役立ッテ居リ、
ソレガ〓リ〓ッテ國家ノ歲入ト云フモノニ、
全ク好影響ガナイト云フ風ナ考ヘ方ハ、無
論スル必要ハナイト思フノデアリマス、又
國防費ノ增加ト云フコトハ、他面カラ見マ
スレバ、私ハ豫テ脇デモ講義ナドシタ時ニ
申シタノデアリマスガ、卽チ國家ガ破壞行
爲カラ免カルル所ノ、卽チ戰爭ヲ避ケテ行
ケル費用デアルト云フ風ニ考ヘタイノデア
リマス、卽チ若シ國防ガ充實サレテ居ラヌ
ガ爲ニ、戰爭ト云フ害ヲ蒙ッタナラバ、直チ
ニ財界ノ破壞ヲ來スノデ、ソレガ免ルルト
云フ風ニ之ヲ考ヘテ行キマスレバ、是ハド
ウシテモ必要ナモノハ、國民トシテハ是非
トモ負擔シテ行クコトガ、結局富ノ破壞ヲ
免ルルノデアリマス、ケレドモ此國防費ノ
增加ト云フコトハ、國民全般的ノ利益ノ上
カラ云フト、兎角凸凹景氣、跛行景氣ト云
フヤウナコトニナルノデアリマス、是ガ今
日ノ實情デアリマス、ソコデ農村方面其他
ニ對シテ吾々ガ考ヘサセラルルト云フコト
ニナリマシテ、是ガ今日國民生活ノ安定ト
云フ上ニ-無論農村ノミデアリマセヌ、
中小工業者モアリマスガ、考ヘサセラレル
點ナンデアリマス、ドウシテモ國防ノ充實
ヲシテ、所謂國家安全感ヲ全ウシヨウトス
レバ、民政ノ安定ト云フ方面モ國家ガ力ヲ
注ガナケレバ、本當ノ國防ニハナラヌト云
フ考ヘ方ヲシテ行クノデアリマス、而シテ
只今自然增收ガ今日ノヤウナ風ニハ到底將
來ハ行クマイ、七、八、九ト云フヤウナ調
子デ、國庫ノ自然增收ト云フモノガ行クマ
イト云フコトモ、一ツノ御觀察ト思ヒマ
ス、現ニ今日ノ國際貿易ノ情勢ヲ見レバ、
各方面カラ我國ノ進出ニ對シテ障碍ヲ與ヘ
ツヽアルノデアリマス、併ナガラ私共ハド
ウシテモ優良ニシテ廉價ノ生產ヲスルト云
フコトヲ、着々其國ノ產業上ニ行ヒマスレ
バ將來貿易ノ前途ヲ悲觀スルト云フコト
ノ必要ハ私ハナイト思フ、各國ハソレ〓〓
今日生產過剩ノ爲ニ購買力ヲ失ッテ居ルト
云フ實情ニアリマスガ、追々ト各國モソレ
ゾレ國民ノ將來ノ生活ト云フコトヲ考ヘテ
參ル時ニハ、國費ヲ我國ガ丁度赤字公債ヲ
發行シテマデモ、國民ノ購買力ヲ付ケル爲
ニ努力シタヤウナ政策ヲ、各國ガ同ジヤウ
ニ採ラルヽモノト思フノデアリマス、サウ
ナレバヤハリ何處迄モ優良ニシテ廉價ノ生
產品ヲ造ル國ハ、貿易場裡ニ立ッテ必ズ優
勢ノ地位ヲ占ムルデアラウト私ハ確信スル
ノデアリマス、成程今日ノ如キ進度ハ、今
後持續出來ナイカモ知レマセヌ、隨テ差當
リノ自然增收ガ今日ノ如ク行クカ行カナイ
カハ、私ハ保證ノ限リデハ勿論アリマセヌ
ガ、我國ノ前途ヲ見ル場合ニ、殊ニ貿易ノ
前途ヲ見ル場合ニ、又國內ニ於テ相當ノ產
業助長ノ政策ヲ採リ、產業貿易振興ニ對シ
テ必要ナル國費ヲ使ッテ行ク以上ハ、私ハ我
國ノ前途ニ付テサマデ悲觀ヲスル必要ハナ
イト思フ、私ハ樂觀論者ト仰シヤラレルカ
モ知レマセヌガ、可ナリ實業家ノ中ニハ私
共ヨリモ數倍ノマダ樂觀論者モ實ハ居ルノ
デアリマス、私ハソレ程樂觀シテ居ル譯デ
ハアリマセヌガ、悲觀ヲセズニ吾々ハ爲ス
ベキ仕事ヲドシ〓〓スル、斯ウ云フコトデ
進ムヨリ、今日ノ我國ノ財政變理ヲ致ス途
ハ外ニハナイト思フ、唯徒ニ前途ヲ悲觀ス
ルト云フコトデナシニ、吾々ハ堅實ニ而シ
テ前途ニ光ヲ認メテ著々進ンデ行ク、ソレ
ニハ勿論公債ノ發行其他ノ爲ニ經常ノ財源
ヲ備ヘテ行クト云フコトニ、先ヅ第一ニ著
手シロト云フノガ、私ノ財政ノ考へ方ナノ
デアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006911696X00319360515&spkNum=83
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084・中亥歳男
○中委員 御尋シタイコトハアリマスガ、
モウ時間モ三十分過ギマシタノデ、唯一言
希望ヲ中述ベテ私ノ質問ヲ打切リマス、只
今マデ度々仰セラレマシタ增稅デアリマス
ガ、增稅ニ付キマシテハ、利拂ヒノ殖エル
公債ヲ成ベク減サナケレバナラヌト云フ見
地カラ、此間中藏相ガ各所デ御說明ニナリ
マシタ、大衆ノ生活ヲ脅サヌ範圍ノ增稅ナ
ラバ是ハ增稅ヲナサヌト云フ前內閣ガ間
違デアッテ、私ハ增稅ヲナサル、所謂現在ノ
時局ハ現在ノ國民ニ依ッテ解決ヲ致スト云
フ此方針デ、堪へ得ル人ニ增稅ヲスル、所
謂生活ニ困ルヤウナ者ノ脂ヲ搾ラナイ、此
立前ガハッキリシテ居リマス以上ハ、此時局
ニ增稅ハ當然ナリト信ジテ居リマス、唯申
ス迄モアリマセヌガ、自然增收ヲ得ルト云
フ意味合ヲ、成ベク產業施設-今日マデ
產業ノ仕事ヲ扱ッテ居リマス、殊ニ產業貿易
ヲ扱ッテ居リマス商工省、從來商工省ノ豫算
ト云フモノハ非常ニ小サイノデアリマス、
然ルニ商工省ハヤルコトハナイカ、斯ウ申
セバ、一例ヲ擧ゲレバ輸出補償令ノ如キ、
アレハ頗ル良イモノデアル、所ガ其規模ガ
餘リ小サイモノデアリマスカラ、貿易商ガ
之ヲ利用スルコトガ出來ナイ、斯ウ云フ點
ガ多々アラウト思ヒマス、中央金庫ノ資金
ヲ一度ニ倍額ニサレタ藏相ノ此オヤリ方ヲ
見マシテ、私ハ產業政策ニ對スル藏相ノ御
方針ハ大體想像ガ付キマスノデ、衷心喜ン
デ居リマス、ドウゾ此上トモ國家ノ經濟力
ヲ培養スル方面ノ施設ニ、ウント資金ヲ注
込マレンコトヲ切ニ希望シマシテ、私ノ質
問ヲ打切リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006911696X00319360515&spkNum=84
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085・馬場えい一
○馬場國務大臣 只今一寸御話ニナッタ輸
出補償制度ハ、私ハ今後大ニ擴充シテ行キ
タイト思ッテ居リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006911696X00319360515&spkNum=85
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086・田尻生五
○田尻委員長代理 ソレデハ明日ハ午前九
時ヨリ開會致シマス、本日ハ是ヲ以テ散會
致シマス
午後零時四十分散會発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006911696X00319360515&spkNum=86
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