1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和十一年五月十二日(火曜日)
午後一時十七分開議
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議事日程 第七號
昭和十一年五月十二日
午後一時開議
第一 不穩文書等取締法案(政府提出) 第一讀會
第二 思想犯保護觀察法案(政府提出) 第一讀會
第三 土地賃貸價格改訂法案(政府提出) 第一讀會
第四 職業紹介法中改正法律案(政府提出) 第一讀會
第五 重要肥料業統制法案(政府提出) 第一讀會
第六 航路統制法案(政府提出) 第一讀會
第七 臺灣拓殖株式會社法案(政府提出) 第一讀會
第八 臺灣私設鐵道補助法中改正法律案(政府提出) 第一讀會
第九 競馬法中改正法律案(政府提出) 第一讀會
第十 土地賃貸價格改訂法施行に伴ふ耕地整理法の特例に關する法律案(政府提出) 第一讀會
第十一 總動員祕密保護法案(政府提出) 第一讀會
第十二 重要輸出品取締法案(政府提出) 第一讀會
第十三 輸出絹織物取締法中改正法律案(政府提出) 第一讀會
第十四 輸出組合法中改正法律案(政府提出) 第一讀會
第十五 朝鮮事業公債法中改正法律案(政府提出) 第一讀會
第十六 退職積立金及退職手當法案(政府提出) 第一讀會
第十七 大正十二年法律第五十二號中改正法律案(司法官試補及辯護士の資格に關する件)(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第十八 貯蓄銀行法中改正法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第十九 昭和九年法律第四十五號中改正法律案(貿易調節及通商擁護に關する件)(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第二十 國税徴收法中改正法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第二十一 日本銀行特別融通及損失補償法中改正法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第二十二 農村負債整理組合法中改正法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第二十三 昭和十一年勅令第十八號(一定の地域に戒嚴令中必要の規定を適用するの件)(承諾を求むる件)(貴族院送付)
第二十四 昭和十一年勅令第二十一號(東京陸軍軍法會議に關する件)(承諾を求むる件)(貴族院送付)
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001・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 諸般ノ報〓ヲ致サ
セマス
〔書記官朗讀〕
一今十二日貴族院ヨリ受領シタル政府提出
案左ノ如シ
航空法中改正法律案
〔左ノ報〓ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノ爲
玆ニ揭載ス〕
一政府ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
(第二號)昭和十一年度歲入歲出總豫算追
加案
(特第二號)昭和十一年度各特別會計歲入
歲出豫算追加案
(追第一號)豫算外國庫ノ負擔トナルベキ
契約ヲ爲スヲ要スル件
(以上五月十一日提出)
一議員ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
度量衡法改正ニ關シ調査會審議速進ニ關
スル建議案
提出者
東武君山下谷次君
高橋熊次郞君岡田伊太郞君
石炭運賃低減ニ關スル建議案
提出者
鈴木辰三郞君山崎猛君
自作農創設維持補助規則改正ニ關スル建
議案
提出者高岡大輔君
小開墾助成ニ關スル建議案
提出者松本次一郞君
東部北太平洋漁業開發ニ關スル建議案
提出者
小西和君一柳仲次郞君
澤田利吉君
前橋新潟間國道改修促進ニ關スル建議案
提出者
生方大吉君靑木精一君
佐藤謙之輔君內藤久一郞君
山田又司君
岡崎多治見間鐵道速成ニ關スル建議案
提出者
服部英明君古屋慶隆君
岡本實太郞君武富濟君
日比野民平君
宇和島中村間竝中村窪川間鐵道敷設ニ關
スル建議案
提出者尾崎重美君
宇和島中村間竝中村窪川間鐵道敷設ニ關
スル建議案
提出者
山村豐次郞君林讓治君
大本貞太郞君田村實君
砂田重政君
治療師ニ關スル法規制定ニ關スル建議案
提出者
守屋榮夫君龜井貫一郞君
西村丹治郞君岡田伊太郞君
東北地方國營開墾ニ關スル建議案
提出者
內ヶ崎作三郞君小山田義孝君
中田儀直君仲西三良君
土田莊助君
產業及勞働ノ統制ニ關スル決議案
提出者片山哲君
(以上五月十一日提出)
一昨十一日衆議院規則第十五條但書ニ依リ
議長ニ於テ議席ヲ左ノ通變更セリ
三一大石大君
三二田淵豐吉君
六六鈴木正吾君
一昨十一日常任委員補關選擧ノ結果左ノ如
第四部選出
豫算委員金光庸夫君(東武君補闕)
第七部選出
豫算委員伊豆富人君(大石大君補
關
第八部選出
決算委員池本甚四郞君(津原武君補
關
第八部選出
懲罰委員升田憲元君(川合直次君
補闕)
一昨十一日常任委員理事補闕選擧ノ結果左
ノ部ジ
豫算委員
理事服部英明君(理事工藤鐵男君
今十一日理事辭任ニ付其ノ補
關
一昨十一日議長ニ於テ辭任ヲ許可シタル常
任委員左ノ如シ
第四部選出豫算委員金光庸夫君
第七部選出豫算委員〓瀨規矩雄君
第九部選出豫算委員片山哲君
一昨十一日委員長及理事互選ノ結果左ノ如
シ
米穀自治管理法案(政府提出)外二件委
員
委員長東武君
理事
松村謙三君川崎末五郞君
佐藤謙之輔君角源泉君
石坂養平君三善信房君
島田七郞右衞門君
一昨十一日議長ニ於テ選定シタル委員左ノ
如シ
產繭處理統制法案(政府提出)外二件委
員
百瀨渡君齋藤直橘君
信太儀右衞門君伊藤東一郞君
小野寅吉君湊季松君
愛野時一郞君朝倉每人君
大門恆作君佐藤與一君
生方大吉君宮澤胤勇君
山村豐次郞君井上知治君
坪山德彌君森幸太郞君
深澤豐太郞君松川昌藏君
鈴木辰三郞君山田又司君
宮本雄一郞君出井兵吉君
西川貞一君小山亮君
守屋榮夫君山崎釼二君
鈴木正吾君
昭和六年法律第四十號中改正法律案(重
要產業ノ統制ニ關スル件)(政府提出)委員
野村嘉六君岡崎久次郞君
坂下仙一郞君津原武君
柏木〓治君淺川浩君
堀內良平君〓寛君
長野高一君松井郡治君
古田喜三太君一松定吉君
工藤十三雄君植原悅二郞君
加藤鐐五郞君瀨川嘉助君
〓瀨規矩雄君田中亮一君
本多貞次郞君立川平君
松村光三君玉置吉之亟君
中野正剛君笠井重治君
岸田正記君片山哲君
伊禮肇君
商工組合中央金庫法案(政府提出)委員
增田義一君川橋豐治郞君
田中邦治君古藤增治郞君
小坂梅吉君渡邊玉三郞君
松田正一君大島寅吉君
片山一男君富田等平君
野田武夫君本田英作君
菊池長右衞門君大本貞太郞君
石井德久次君高橋泰雄君
山田佐一君倉成庄八郞君
田中彌助君中野治介君
神保重吉君登坂良作君
前田幸作君今井新造君
今給黎誠吾君水谷長三郞君
伊豆富人君
東北興業株式會社法案(政府提出)外一件
委員
添田敬一郞君內ケ崎作三郞君
〓水德太郞君信太儀右衞門君
粟山博君土田莊助君
氏家〓君鶴見祐輔君
奧山龜藏君菊池良一君
林平馬君工藤鐵男君
菅野善右衞門君佐々木家壽治君
八角三郞君熊谷直太君
小山田義孝君藤井達二君
綾部健太郞君紅露昭君
石坂豐一君岡田伊太郞君
田川大吉郞君木村武雄君
三鬼鑑太郞君川俣〓音君
佐藤啓君
鐵道敷設法中改正法律案(政府提出)外二
件委員
一柳仲次郞君堀內良平君
中村又一君植村嘉三郞君
〓水德太郞君中井川浩君
大島寅吉君片山一男君
鶴見祐輔君荒川五郞君
西村金三郞君田村秀吉君
志賀和多利君尾崎天風君
綾部健太郞君久山知之君
生田和平君土倉宗明君
松木弘君勝又春一君
川島正次郞君名川侃市君
北勝太郞君岡幸三郞君
藏園三四郞君松本次一郞君
石坂繁君
昭和十一年度一般會計歲出ノ財源ニ充ツ
ル爲公債發行ニ關スル法律案(政府提出)
委員
一宮房治郞君松本忠雄君
駒井重次君森兼道君
鈴木康太郞君矢野庄太郞君
內藤久一郞君池田〓秋君
南雲正朔君岡本實太郞君
仲井間宗一君中亥歲男君
金光庸夫君武田德三郞君
木村正義君中井一夫君
高良宗七君岩瀨亮君
田尻生五君倉元要一君
篠原義政君末次虎太郞君
笠井重治君池崎忠孝君
豐田收君川村保太郞君
藏原敏捷君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X00819360512&spkNum=1
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002・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 是ヨリ會議ヲ開キ
マス、御諮リ致スコトガアリマス、決算委
員長ヨリ本日本會議中委員會ヲ開キタイト
ノ申出ガアリマシタ、尙ホ今後本會議中ト
雖モ委員會及ビ分科會ヲ開キタイトノコト
デアリマス、鐵道敷設法中改正法律案外二
件ノ委員長、及ビ東北興業株式會社法案外
一件ノ委員長ヨリ、本日本會議中委員會ヲ
開キタイトノ申出ガアリマシタ、何レモ之
ヲ許可スルニ御異議ハアリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X00819360512&spkNum=2
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003・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 御異議ナシト認メ
許可致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X00819360512&spkNum=3
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004・松永東
○松永東君 日程第一及ビ第二ハ後廻シト
セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X00819360512&spkNum=4
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005・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 松永君提出ノ動議
ニ御異議ハアリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X00819360512&spkNum=5
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006・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 御異議ナシト認メ
ママ、仍テ日程第一及ビ第二ハ後廻シト致
シマス、日程第三、土地賃貸價格改訂法案、
其第一讀會ヲ開キマスー-大藏政務次官中
島彌〓次君
第三土地賃貸價格改訂法案(政府提
〓第一讀會
土地賃貸價格改訂法案
土地賃貸價格改訂法
第一條政府ハ地租法第九條第一項ノ規
定ニ依リ昭和十三年一月一日ニ於テ土
地ノ賃貸價格ヲ改訂シ昭和十三年分ヨ
リ改訂賃貸價格ニ依リ地租ヲ徴收ス
第二條改訂賃貸價格ハ各地目每ニ昭和
十一年四月一日ニ於テ土地ノ情況類似
スル區域內ニ於ケル標準ト爲ルベキ土
地ノ賃貸價格(標準賃貸價格)ニ依ル
前項ニ定ムルモノノ外賃貸價格ノ算定
ニ關シ必要ナル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ
定ム
第三條昭和十一年四月一日後昭和十二
年十二月三十一日迄ノ間ニ於テ賃貸價
格ヲ設定シ又ハ修正シタル土地ノ改訂
賃貸價格ハ地租法第九條第三項ノ例ニ
準ジ之ヲ定ム
昭和十一年四月一日後昭和十二年十二
月三十一日迄ノ間ニ於テ分筆又ハ合筆
ヲ爲シタル土地ノ改訂賃貸價格ハ其ノ
分筆又ハ合筆前ノ土地ニ付前條ノ規定
ニ依リ定メラルベキ賃貸價格ヲ地租法
第三十三條ノ例ニ準ジ配分又ハ合算シ
テ之ヲ定ム
第四條改訂賃貸價格ニ依ル各土地ノ地
租額ガ從前ノ賃貸價格ニ依ル地租額ノ
四倍ヲ超ユルトキハ其ノ四倍ヲ超ユル
金額ニ相當スル地租ハ昭和十五年分迄
之ヲ免除ス
第五條第二條第一項ノ區域及標準賃貸
價格ハ賃貸價格調査委員會ノ議ニ付シ
政府ニ於テ之ヲ定ム
第六條稅務署長ハ第二條第一項ノ區域
及標準賃貸價格ノ調査書ヲ作成シ之ヲ
賃貸價格調査委員會ニ提出スベシ
第七條各稅務署所轄內ニ賃貸價格調査
委員會ヲ置ク但シ稅務署所轄內ニ在ル
市ニ付テハ命令ヲ以テ特ニ賃貸價格調
査委員會ヲ置クコトヲ得
第八條賃貸價格調査委員會ハ之ヲ置ク
ベキ區域內ノ各市町村ニ於テ地租納稅
義務者ノ選擧シタル調査委員ヲ以テ之
ヲ組織ス
各市町村ニ於テ選擧スベキ調査委員ノ
數ハ市ニ在リテハ十人、町村ニ在リテ
ハ一人トス但シ市町村ノ情況ニ依リ命
令ヲ以テ之ヲ增減スルコトヲ得
第九條選擧期日前十五日ノ現在ニ於テ
地租名寄帳ニ納稅義務者トシテ記載セ
ラレタル個人(地租法第七十條又ハ第
七十三條第一項但書ノ規定ニ依リ地租
ヲ免除セラルル者又ハ地租ヲ徵收セラ
レザル者ヲ含ム)ハ當該市町村內ニ於
テ調査委員ヲ選擧シ又ハ調査委員ニ選
擧セラルルコトヲ得但シ左ノ各號ノ一
ニ該當スル者ハ此ノ限ニ在ラズ
一無能力者
二破產者ニシテ復權ヲ得ザルモノ
三國稅滯納處分ヲ受ケタル後一年ヲ
經ザル者
四六年ノ懲役若ハ禁錮以上ノ刑ニ處
セラレ又ハ舊刑法ノ重罪ノ刑ニ處セ
ラレタル者
五六年未滿ノ懲役又ハ禁錮ノ刑ニ處
セラレタル者ニシテ其ノ刑ノ執行ヲ
終リ又ハ執行ヲ受クルコトナキニ至
ル迄ノモノ
六地租法第八十三條又ハ第八十六條
第二項ノ規定ニ依リ處罰セラレタル
後五年ヲ經ザル者
法人ニシテ地租ノ納稅義務ヲ有スル者
ハ前項ノ規定ニ準ジ調査委員ヲ選擧ス
ルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ選擧ニ關
スル代表者ヲ定メ當該市町村長ニ申〓
スベシ
第一項各號ノ一ニ該當スル者ハ前項ノ
規定ニ依ル法人ノ代表者タルコトヲ得
ズ
第十條投票及開票ニ關スル事務ハ市町
村長之ヲ擔任シ其ノ他ノ選擧ニ關スル
事務ハ稅務署長之ヲ擔任ス
第十一條稅務署長ハ調査委員ノ選擧期
日ヲ定メ之ヲ市町村長ニ通知スベシ
市町村長前項ノ通知ヲ受ケタルトキハ
少クトモ選擧期日七日前ニ之ヲ公示ス
ベシ
前項ノ公示ニハ投票及開票ノ日時及場
所ヲ記載スベシ
第十二條調査委員ノ選擧ハ無記名投票
ヲ以テ之ヲ行フ
投票ハ一人一票ニ限ル
選擧人ハ選擧ノ當日投票時間內ニ自ラ
投票所ニ到リ被選擧人一人ノ氏名ヲ投
票用紙ニ記載シテ投票スベシ
投票用紙ハ選擧ノ當日投票所ニ於テ之
ヲ選擧人ニ交付スベシ
第十三條市町村長ハ當該市町村內ニ於
テ選擧資格ヲ有スル者ノ內ヨリ二人ノ
立會人ヲ選任シ投票及開票ニ立會ハシ
久々
立會人ニハ命令ノ定ムル所ニ依リ手當
ヲ支給ス
第十四條投票ノ效力ハ立會人ノ意見ヲ
聽キ市町村長之ヲ決定スベシ
第十五條市町村長ハ投票ヲ調査シ直ニ
左ノ事項ヲ稅務署長ニ通知スベシ
一投票人及投票ノ數竝ニ有效投票及
無效投票ノ數
二投票ヲ無效ト決定シタル事由
三被選擧人ノ住所、氏名、生年月日
及其ノ得票數
第十六條稅務署長前條ノ通知ヲ受ケタ
ルトキハ之ヲ調査シ當選人ヲ決定スベ
シ
第十七條投票ノ多數ヲ得タル者ヲ以テ
當選人トス得票數同ジキトキハ年齡多
キ者ヲ取リ年齡モ亦同ジキトキハ稅務
署長抽籤シテ之ヲ定ム
第十八條稅務署長當選人ヲ決定シタル
トキハ其ノ氏名ヲ公示シ且之ヲ當選人
及市町村長ニ通知スベシ
市町村長前項ノ通知ヲ受ケタルトキハ
當選人ノ氏名ヲ公示スベシ
第十九條調査委員ニ當選シタル者ハ正
當ノ事由ナクシテ之ヲ辭スルコトヲ得
ズ
第二十條調査委員第九條第一項各號ノ
一ニ該當スルニ至リタルトキハ其ノ職
ヲル)
第二十一條調査委員ニ缺員ヲ生ジタル
トキハ當選人ト爲ラザリシ者ノ中得票
數多キ者ヨリ順次之ヲ補充ス其ノ得票
數同ジキトキハ第十七條ノ規定ヲ準用
ス
第十八條ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準
用ス
第二十二條調査委員ノ選擧ニ於テ當選
人ノ數ガ定數ニ達セザルトキ又ハ調
査委員ニ缺員ヲ生ジ前條ノ規定ニ依リ
補充スベキ者ナキトキハ補缺選擧ヲ行
フ但シ賃貸價格調査委員會開會後缺員
ヲ生ジタル場合ニ於テハ之ヲ行ハザル
コトヲ得
第二十三條賃貸價格調査委員會ハ稅務
署長ノ通知ニ依リ之ヲ開ク其ノ開會日
數ハ三十日以内トス
第二十四條賃貸價格調査委員會ハ開會
ノ始ニ於テ調査委員中ヨリ會長ヲ選擧
スパン
會長事故アルトキハ出席シタル調査委
員中ノ年齡多キ者會長ノ職務ヲ代理ス
第二十五條賃貸價格調査委員會ハ定員
ノ過半數ニ當ル委員出席スルニ非ザレ
バ決議スルコトヲ得ズ
議事ハ出席員ノ多數ヲ以テ之ヲ決ス可否
同數ナルトキハ會長ノ決スル所ニ依ル
第二十六條賃貸價格調査委員會ノ決議
ハ會長之ヲ稅務署長ニ通知スベシ
第二十七條昭和十二年九月三十日迄ニ
賃貸價格調査委員會成立セザルトキハ
稅務署長ニ於テ第二條第一項ノ區域及
標準賃貸價格ヲ定ム
賃貸價格調査委員會開會ノ日ヨリ第二
十三條ノ期間內又ハ昭和十二年九月三
十日迄ニ決議終了セザルトキハ稅務署
長ニ於テ第二條第一項ノ區域及標準賃
貸價格ヲ定ム
第二十八條稅務署長ハ賃貸價格調査委
員會ノ決議ヲ不當ト認ムルトキハ十日
以內ノ期間ヲ定メ再議ニ付ス仍其ノ決
議ヲ不當ト認ムルトキ又ハ再議期間內
ニ決議終了セザルトキハ稅務署長ニ於
テ第二條第一項ノ區域及標準賃貸價格
ヲルム
第二十九條稅務署長又ハ其ノ代理官ハ
賃貸價格調査委員會ニ出席シ意見ヲ陳
述スルコトヲ得
第三十條調査委員ニハ命令ノ定ムル所
ニ依リ手當及旅費ヲ支給ス
第三十一條第二條第一項ノ區域及標準
賃貸價格ヲ定メタルトキハ稅務署長ハ
之ヲ市町村長ニ通知スベシ
市町村長前項ノ通知ヲ受ケタルトキハ
二十日間關係者ノ縱覽ニ供スベシ縦覽
期間ハ豫メ之ヲ公示スベシ
第三十二條自己ノ納稅義務ヲ有スル土
地ニ適用セラルベキ標準賃貸價格ニ關
シテ異議アル者ハ前條ノ縦覽期間滿了
ノ日ヨリ二十日以內ニ不服ノ事由ヲ具
シ稅務署長ヲ經由シテ稅務監督局長ニ
異議ノ申立ヲ爲スコトヲ得
前項ノ申立アリタル場合ト雖モ政府ハ
稅金ノ徵收ヲ猶豫セズ
第三十三條前條第一項ノ申立アリタル
トキハ稅務監督局長ハ之ヲ審査決定シ
異議申立人ニ通知スベシ
第三十四條前條ノ決定ニ對シ不服アル
トキハ訴願ヲ爲シ又ハ行政裁判所ニ出
訴スルコトヲ得
第三十五條稅務署長又ハ其ノ代理官ハ
土地ノ所有者、質權者、地上權者其ノ
他利害關係人ニ對シ賃貸價格ノ調査上
必要ナル事項ヲ質問スルコトヲ得
第三十六條賃貸價格ノ調査又ハ決議ニ
從事シタル者ハ其ノ調査又ハ決議ニ關
シ知リタル祕密ヲ正當ノ事由ナクシテ
他ニ漏洩スルコトヲ得ズ
第三十七條町村組合ニシテ町村ノ事務
ノ全部又ハ役場事務ヲ共同處理スルモ
ノハ本法ノ適用ニ付テハ之ヲ一町村、其
ノ組合管理者ハ之ヲ町村長ト看做ス
市制第六條又ハ第八十二條第三項ノ市
ニ於テハ本法中市ニ關スル規定ハ區
ニ、市長ニ關スル規定ハ區長ニ之ヲ適
用ス
町村制ヲ施行セザル地ニ於テハ本法中
町村ニ關スル規定ハ町村ニ準ズベキモ
ノニ、町村長ニ關スル規定ハ町村長ニ
準ズベキモノニ之ヲ適用ス
附則
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
地租法第七十一條第一項ニ規定スル申請
期間ハ昭和十三年分地租ニ限リ命令ヲ以
テ之ヲ變更スルコトヲ得
〔政府委員中島彌團次君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X00819360512&spkNum=6
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007・中島彌團次
○政府委員(中島彌團次君) 土地賃貸價格
改訂法案ノ大體ノ說明ヲ致シマス、曩ニ御
協贊ヲ得マシテ制定致シマシタ地租法ニ於
キマシテハ、地租ノ課稅標準タル土地賃貸
價格ハ之ヲ十年每ニ改訂シ、其第一囘ノ改訂
ヲ昭和十三年ニ於テ行フコトトナッテ居ル
ノデアリマス、仍テ此規定ニ基キ昭和十三
年ニハ現行ノ賃貸價格ヲ改訂スル必要ガア
ルノデアリマスガ、是ガ爲ニ行フ調査ニハ
相當ノ日時ヲ必要ト致シマスルノデ、本年
度ヨリ著手スルコトトシ、之ニ要スル經費
ノ一部ヲ追加豫算ニ計上スルト共ニ、土地
賃貸價格改訂法ヲ制定スルコトニ致シマシ
タ次第デアリマス、改訂賃貸價格ノ調査ノ
方法ハ、大正十五年ニ於ケル賃貸價格ノ調
査方法ト同一デアリマシテ、改訂賃貸價格
ハ各地目每ニ、土地ノ狀況、類似スル區域
內ニ於ケル標準賃貸價格ニ依ルコトト致シ、
其區域及ビ標準賃貸價格ハ、地租納稅者ノ
選擧シタル調査委員ヨリ成ル委員會ノ議ニ
付シテ決定スルコトト致シタノデアリマス、
又調査委員ノ選出モ、前囘ノ通リ原則トシ
テ市部ハ十人、町村ハ一人ト致シマシタ、
尙ホ賃貸價格ノ改訂ニ依リ負擔ニ激增ヲ來
スモノニ付キマシテハ、其負擔ヲ緩和スル
爲メ適當ナル規定ヲ設ケマシタ、何卒御審
議ノ上速ニ御協賛ヲ與ヘラレンコトヲ希望
スル次第デアリマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X00819360512&spkNum=7
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008・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 質疑ノ通〓ガアリ
せて、髙田耘平君-議席ニ居ナイヤウデ
アリマスカラ發言ノ通〓ハ取消ト致シマス、
本案ノ審査ヲ付託スベキ委員ノ選擧ニ付キ
御諮リ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X00819360512&spkNum=8
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009・松永東
○松永東君 本案ハ議長指名十八名ノ委員
ニ付託セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X00819360512&spkNum=9
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010・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 松永君ノ動議ニ御
異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X00819360512&spkNum=10
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011・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 御異議ナシト認メ
マス、仍テ動議ノ如ク決シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X00819360512&spkNum=11
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012・松永東
○松永東君 日程第四ハ後廻シトセラレン
コトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X00819360512&spkNum=12
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013・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 松永君提出ノ動議
ニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X00819360512&spkNum=13
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014・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 御異議ナシト認メ
マス、仍テ日程第四ハ後廻シト致シマス、
日程第五、重要肥料業統制法案、此第一讀
會ヲ開キマス-商工大臣小川〓太郞君
第五重要肥料業統制法案(政府提出)
第一讀會
重要肥料業統制法案
重要肥料業統制法
第一條本法ハ肥料ノ需給ノ圓滑及價格
ノ公正ヲ圖リ肥料製造業及農業經營ノ
改善發達ヲ期スルコトヲ目的トス
第二條本法ノ適用ヲ受クル肥料ノ種類
ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
本法ニ於テ肥料製造業ト稱スルハ命令
ノ定ムル所ニ依リ肥料ヲ製造スル事業
フォン、
第三條肥料製造業者ハ肥料ノ需給圓滑
及價格ノ公正ヲ圖リ肥料製造業ノ改善
發達ヲ期スル爲政府ノ認可ヲ受ケ肥料
ノ種類別ニ肥料製造業組合ヲ設立スル
コトヲ得
第四條肥料製造業者肥料製造業組合ヲ
設立セザル場合ニ於テ政府必要アリト
認ムルトキハ肥料製造業者ニ對シ肥料
製造業組合ノ設立ヲ命ズルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ設立ヲ命ゼラレタル
者命令ノ定ムル所ニ依リ設立ノ認可ヲ
申請セザルトキハ政府ハ定款ノ作成
其ノ他設立ニ關シ必要ナル處分ヲ爲ス
コトヲ得
第五條肥料製造業組合ハ法人トス
肥料製造業組合ハ營利ヲ目的トシテ其
ノ事業ヲ營ムコトヲ得ズ
第六條肥料製造業組合ハ左ノ事業ヲ行
フコトヲ得
一肥料ノ製造總數量及各組合員ニ對
スル其ノ割當ノ決定、肥料ノ販賣價
格ノ決定其ノ他肥料ノ生產又ハ販賣
ニ關スル決定
二組合員ノ委託ニ依ル肥料ノ販賣但
シ前號ノ決定ヲ實行スル爲必要アル
場合ニ限ル
三組合員ノ肥料製造業ニ必要ナル物
ノ供給
四其ノ他組合ノ目的達成上必要ナル
事業
第七條肥料製造業組合ハ設立ノ認可ア
リタル時又ハ第四條第二項ノ規定ニ依
リ定款ノ作成アリタル時成立ス
肥料製造業組合ノ設立アリタルトキハ
主タル事務所ノ所在地ニ於テ設立ノ登
記ヲ爲スベシ登記シタル事項中ニ變更
ヲ生ジタルトキ亦同ジ
肥料製造業組合ノ設立又ハ登記シタル
事項ノ變更ハ其ノ登記ヲ爲スニ非ザレ
バ之ヲ以テ第三者ニ對抗スルコトヲ得
ズ
第八條肥料製造業組合ハ肥料ノ種類每
ニ一箇トス
第九條肥料製造業組合ニハ所得稅及營
業收益稅ヲ課セズ
第十條肥料製造業組合ノ設立アリタル
トキハ其ノ種類ノ肥料製造業者ハ其ノ
組合ノ組合員トス
肥料製造業組合ハ政府ノ認可ヲ受ケ本
法施行地域外ニ於テ肥料製造業ヲ營ム
者ヲ組合員ト爲スコトヲ得
第十一條肥料製造業組合第六條第一號
ノ決定ヲ爲シタルトキハ命令ノ定ムル
所ニ依リ其ノ實施前豫メ之ヲ政府ニ屆
出デ其ノ承認ヲ受クベシ
肥料製造業組合ノ組合員ハ前項ノ規定
ニ依ル屆出前ニ於テハ其ノ決定ニ基キ
肥料ノ生產又ハ販賣ヲ爲スコトヲ得ズ
屆出後命令ノ定ムル期間內亦同ジ
政府肥料ノ需給ノ圓滑又ハ價格ノ公正
ヲ圖ル爲其ノ他公益上必要アリト認ム
ルトキハ第一項ノ決定ノ全部又ハ一部
ノ變更又ハ取消ヲ爲スコトヲ得
第十二條肥料製造業者又ハ肥料製造業
組合ハ政府ノ許可ヲ受クルニ非ザレバ
肥料ノ生產、販賣、輸出、輸入、移出
又ハ移入ニ關シ統制協定ヲ爲スコトヲ
得ズ
第十三條肥料製造業組合肥料ノ製造總
數量及各組合員ニ對スル其ノ割當ノ決
定又ハ肥料ノ販賣價格ノ決定ヲ爲サザ
ル場合ニ於テ政府公益上必要アリト認
ムルトキハ其ノ決定ヲ爲スベキコトヲ
命ズルコトヲ得
第十四條政府公益上必要アリト認ムル
トキハ肥料製造業組合ノ組合員ニ對シ
肥料ノ生產又ハ販賣ニ關スル組合ノ決定
ニ從フベキコトヲ命ズルコトヲ得
第十五條政府ハ肥料製造業組合又ハ其
ノ組合員ニ對シ其ノ業務ニ關シ報〓ヲ
爲サシメ其ノ他監督上必要ナル命令ヲ
發シ又ハ處分ヲ爲スコトヲ得
政府監督上必要アリト認ムルトキハ當
該官吏ヲシテ肥料製造業組合又ハ其ノ
組合員ノ事務所其ノ他ノ場所ニ臨檢シ
業務ノ狀況又ハ帳簿書類其ノ他ノ物件
ヲ檢査セシムルコトヲ得此ノ場合ニ於
テハ其ノ身分ヲ示ス證票ヲ携帶セシム
ベシ
第十六條肥料製造業組合ノ決議又ハ組
合ノ役員ノ行爲ガ法令、定款若ハ政府
ノ處分ニ違反シタルトキ又ハ公益ヲ害
シ若ハ害スルノ虞アリト認ムルトキハ
政府ハ左ノ處分ヲ爲スコトヲ得
一決議ノ取消
二役員ノ解任
三組合ノ事業ノ停止
四組合ノ解散
第十七條本法ニ規定スルモノヲ除クノ
外肥料製造業組合ノ設立、登記、組織、
管理、解散、〓算其ノ他組合ニ關シ必
要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第十八條政府公益上必要アリト認ムル
トキハ命令ノ定ムル所ニ依リ期間ヲ定
メ肥料ノ輸出又ハ輸入ヲ制限スルコト
ヲ得
第十九條第十一條第三項ノ規定ニ依ル
處分、前條ノ規定ニ依ル制限其ノ他本
法施行ニ關スル重要事項ニ付政府ノ諮
問ニ應ゼシムル爲重要肥料業委員會ヲ
置ク
重要肥料業委員會ニ關スル規程ハ勅令
ヲ以テ之ヲ定ム
第二十條左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ
五千圓以下ノ罰金ニ處ス
一第十一條第二項ノ規定ニ違反シタ
ル者
二第十二條ノ規定ニ違反シ政府ノ許
可ヲ受ケズシテ統制協定ヲ爲シタル
者
三第十四條ノ規定ニ依ル命令ニ違反
シタル者
四第十八條ノ規定ニ依ル制限ニ違反
シ肥料ノ輸出又ハ輸入ヲ爲シタル者
前項第四號ノ場合ニ於テハ其ノ肥料ハ
之ヲ沒收スルコトヲ得若シ其ノ全部又
ハ一部ヲ沒收スルコト能ハザルトキハ
其ノ價格ヲ追徵スルコトヲ得
第二十一條第十三條ノ規定ニ依ル命令
ニ違反シタル者ハ三千圓以下ノ罰金ニ
處ス
第二十二條正當ノ事由ナクシテ第十五
條ノ規定ニ依ル報告ヲ爲サズ若ハ虛僞
ノ報告ヲ爲シ又ハ檢査ヲ拒ミ、妨ゲ若ハ
忌避シ其ノ他政府ノ命令又ハ處分ニ違
反シタル者ハ五百圓以下ノ罰金ニ處ス
第二十三條當該官吏又ハ其ノ職ニ在リ
タル者本法ニ依ル職務執行ニ關シ知得
シタル個人又ハ法人ノ業務上ノ祕密ヲ
漏洩シ又ハ竊用シタルトキハ一年以下
ノ懲役又ハ千圓以下ノ罰金ニ處ス
職務上前項ノ祕密ヲ知得シタル他ノ公
務員又ハ公務員タリシ者其ノ祕密ヲ漏
洩シ又ハ竊用シタルトキ罰前項ニ同ジ
第二十四條肥料製造業組合、肥料製造
業組合ノ組合員、肥料製造業者其ノ他
肥料ニ關スル業ヲ爲ス者ハ其ノ代理
人、戶主、家族、雇人其ノ他ノ從業者
ガ其ノ業務ニ關シ本法若ハ本法ニ基キ
テ發スル命令又ハ之ニ基キテ爲ス處分
ニ違反シタルトキハ自己ノ指揮ニ出デ
ザルノ故ヲ以テ其ノ處罰ヲ免ルルコト
ヲタン。
第二十五條本法又ハ本法ニ基キテ發ス
ル命令ニ依リ適用スベキ罰則ハ其ノ者
ガ法人ナルトキハ理事、取締役其ノ他
ノ法人ノ業務ヲ執行スル役員ニ、未成
年者又ハ禁治產者ナルトキハ其ノ法定
代理人ニ之ヲ適用ス但シ營業ニ關シ成
年者ト同一ノ能力ヲ有スル未成年者ニ
付テハ此ノ限ニ在ラズ
第二十六條肥料製造業組合第十一條第
一項ノ規定ニ依ル屆出ヲ爲サザルトキ
ハ組合ノ役員ヲ五百圓以下ノ過料ニ處
ス
第二十七條肥料製造業組合本法又ハ本
法ニ基キテ發スル命令ニ依ル登記ヲ爲
スコトヲ怠リ又ハ不正ノ登記ヲ爲シタ
ルトキハ組合ノ役員又ハ〓算人ヲ三百
圓以下ノ過料ニ處ス
第二十八條非訟事件手續法第二百六條
乃至第二百八條ノ規定ハ前二條ノ過料
ニ之ヲ準用ス
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
登錄稅法第十九條第七號中「又ハ輸出組
合聯合會」ヲ「、輸出組合聯合會又ハ肥料
製造業組合」ニ、「又ハ輸出組合法」ヲ「、輸
出組合法又ハ重要肥料業統制法」ニ改ム
〔國務大臣小川〓太郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X00819360512&spkNum=14
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015・小川郷太郎
○國務大臣(小川〓太郞君) 重要肥料業統
制法案ハ商工、農林兩省ノ共同提案ニ係ル
モノデアリマスルガ、便宜上私ヨリ大體ノ
趣旨ヲ御說明申上ゲマス、申ス迄モナク肥
料ハ、全國民ノ過半數ヲ占メ、而モ其大部
分ガ過小經營者デアル農家ノ必需品デアリ
マシテ、肥料代ハ是等農家ノ農業經營ニ要ス
ル現金支出中、相當大ナル部分ヲ占メテ居ル
モノデアリマスルガ故ニ、農家ニ肥料ヲ豐
富且ツ低廉ニ供給致シマシテ、農業生產費
ノ低減ヲ圖ルコトハ、啻ニ農家經濟改善上
ノ急務デアリマスルノミナラズ、我國全般
ノ經濟政策ノ上カラ見マシテモ、亦最モ緊
要ト存ズル次第デアリマス、肥料ヲ豐富且
ツ低康ニ供給致シマス爲ニハ、販賣肥料中
ノ指導的地位ヲ占ムル化學肥料ニ付キマシ
テ、其需給ノ圓滑ト價格ノ公正ヲ圖ルコト
ガ、最モ肝要ト存ゼラルヽノデアリマス、
而シテ是等ノ化學肥料ヲ製造スル化學肥料
工業ハ、一面ニ於テ基礎工業トシテ、他面
ニ於テ軍需工業トシテ、產業上竝ニ國防上
極メテ重要ナル地位ヲ占メテ居ルモノデア
リマス、隨テ其製品ノ需給ノ圓滑ト價格ノ
公平ヲ圖リマシテ、斯業經營ノ安定ヲ期
シ、其事業ノ改善發達ヲ圖リマスコトハ、
獨リ農業トノ關係カラ見テ最モ緊要デアリ
マスルノミナラズ、產業上竝ニ國防上カラ
考ヘマシテモ、極メテ必要デアルト申サナ
ケレバナリマセヌ、然ルニ現在ノ肥料ノ配
給狀態ヲ見マスルニ、或モノハ今尙ホ其製
造事業ノ發達ガ十分ト云フ域ニ達シテ居ナ
イ爲ニ、年々相當數量ノ生產不足ヲ生ジマ
シテ、價格モ亦騰貴シ勝デアリ、又或モノ
ハ生產過剩ニ陷リマシテ、其事業ノ安定ヲ
得難イ狀態デアリマス、本法ハ是等ノ肥料
ニ付キマシテ、其需給關係ヲ調節シ、需給
ノ圓滑ヲ期シマスルト共ニ、出來ルダケ其
價格ヲ低廉ナラシムルト云フ意味ニ於テ、
公正ナル價格ノ維持ヲ圖リマシテ、仍テ以
テ一面ニ於テハ農家ノ利益ヲ保護シ、農家
經濟ノ改善ニ資シ、他面ニ於テハ肥料製造
業ノ基礎ヲ安定セシメ、其事業ノ合理的ナ
ル發達ヲ促スコトヲ目的トシテ立案致シタ
モノデアリマス、尙ホ政府ハ曩ニ第六十七
囘帝國議會ニ肥料業統制法案ヲ提出致シマ
シタノデアリマスルガ、今囘提案致シマシ
タ本法律案ノ立案ニ當リマシテハ、曩ノ議
會ニ於ケル各種ノ論議ノ外、更ニ當業者及
ビ消費者ノ團體ノ意見ヲモ參酌シ、現下ノ
情勢ニ對處シテ、肥料ノ需給ノ圓滑ト價格
ノ公正ヲ圖リマス上ニ、最モ適切妥當デア
ルト考ヘラルヽ方策ヲ考究シ、其成案ヲ得
タ次第デアリマス、詳細ハ更ニ委員會ニ於
テ御說明申上グルコトト致シマスガ、何卒
十分御審議ノ上御協贊アランコトヲ希望致
シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X00819360512&spkNum=15
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016・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 質疑ノ通告ガアリ
やく、之ヲ許シマス-大本貞太郞君
〔大本貞太郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X00819360512&spkNum=16
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017・大本貞太郎
○大本貞太郞君 私ハ本案ニ對シマシテ非
常ナル疑義ヲ持ッテ居ルノデアリマス、故ニ
疑義ト考ヘマスル所ヲ申シマシテ、商工大
臣ノ明快ナル御答辯ヲ承リタイト思フノデ
アリマス、第一ニ私ガ御伺シタイノハ、本
年御提出ニナリマシタ所ノ此法案ヲ見マス
ト、昨年岡田内閣ノ當時ニ出來マシタ所ノ
統制案ト、非常ナル相違ガアルノデアリマ
ス、頗ル微溫的ナ微力ナモノニナッテ居リマ
シテ、見方ニ依リマスルト殆ド骨拔キトナッ
テ居ルノデアリマス、何ガ故ニ昨年ノ統制
法案ト本年ノ統制法案トガ、斯ノ如ク相違
ノアルモノヲ御出シニナッテ居ルノデアリ
マスルカ、此點ヲ伺ヒタイノデアリマス
第二ニ伺ヒタイノハ、本案ハ色々ノ條項
ガアリマスルガ、要スルニ肥料ノ供給關係
ヲ圓滿ニシテ、今日肥料代ノ重壓ニ苦ンデ
居リマスル所ノ農村經濟ヲ緩和シヨウト云
フノガ、其主眼デアルト考ヘルノデアリマ
ス、固ヨリ肥料製造業者ノ統制ヲ圖ルト云
フコトモ、其目的ノ一ツデハゴザイマセウ
ガ、其主タル目的ハ飽マデモ農村經濟ヲ匡
救スルコトニアラネバナラヌト考ヘルノデ
アリマス、ソコデ私ハ商工大臣ニ御尋致シ
マスルガ、一體此化學肥料ノ製造ノ設備ハ、
御承知ノ通リニ年ト共ニ色々ノ新式ノモノ
ガ出來テ居リマスルノデ、其當事者々々々
デ生產ノ「コスト」ニ非常ナ相違ガアルノデ
アリマス、此肥料ノ統制案ノ目的トスル所
ハ主トシテ硫安ニアルト考ヘマスルカラ、
例ヲ硫安ニ取ッテ御話致シマスガ、硫安ノ設
備モ御承知ノ通リニ年々新シイ設備ガ出來
テ居ルノデアリマス、故ニ以前ノ設備ノモ
ノト最新式ノモノヲ比ベマスルト、其生產
費ニ非常ナ懸隔ガ出來テ居ルノデアリマス、
私ノ承知ヲ致シテ居ル所ニ依リマスルト、
硫安ノ最新式ノ設備ヲシテ居リマスルノハ、
三井ノ三池窒素、東洋高壓等デアルト聞イ
テ居リマスルガ、是等ノ最新式ノ設備ヲシ
テ居リマスル所ノ製造會社ノ硫安ノ生產「コ
スト」ハ、一瓲ニ付テ工場「コスト」ガ三十
圓內外ト聞イテ居ルノデアリマス、之二
營業費其他ノ諸經費ヲ瓲十圓ト見マシテ
モ、五十圓ニモ賣レマスレバ相當ノ利潤ヲ
生ズルノデアリマス、然ルニ極ク舊式ノ硫
安ノ製造工場ノ「コスト」ハ、工場「コストL
デサヘ六十圓乃至七十圓ニモ付イテ居ルモ
ノガアルト聞イテ居ルノデアリマス、之二
營業費其他ヲ加ヘマスルト、八十圓デ賣リ
マシテモ利潤ハナイノデアリマスルガ、斯
樣ニ大キナ違ヒノ出テ居リマスモノヲ、如
何ナル方法ニ依ッテ、如何ナル基數ニ依ッテ、
商工大臣ノ所謂公正ナル價格ヲ算出シテ、
農家經濟ヲ匡救シヨウト言ハレルノデアリ
マスルカ、此點ヲ私ハ伺ヒタイノデアリマ
ス、斯ク申上ゲマスルト、現ニ硫安ハ內地
ノ生產デハ不足ヲスルノデ、輸入ヲシテ調
節ヲ圖ッテ居ルデハナイカ、左樣ナ問題ハ今
日直チニ心配ヲスル問題デナイト仰セラレ
ルカモ分リマセヌガ、硫安ノ自給、更ニ進
ンデ輸出ヲシナケレバナラヌコトハ、我國
ノ產業國策上カラ申シマシテモ緊切ナ事柄
デアリ、又是非其實現ヲ期セネバナラヌノ
デアリマシテ、私共ノ考ト致シマシテハ、
コヽ一兩年或ハ當局者ノ措置其宜シキヲ得
レバ、明年アタリニハ當然硫安ノ自給ヲシ
テ、進ンデ輸出ヲスル餘裕ヲ生ズルト考ヘ
ルノデアリマシテ、此問題ハ今日此案ヲ通
過セシメル上ニ於テ、非常ニ緊急ナル問題
デアルト私共ハ考ヘテ居ルノデアリマスル
ガ、之ニ對シテ商工大臣ノ明快ナル御答辯
ヲ煩ハシタイト思フノデアリマス、尤モ此
製造ノ機械其他ノ設備ガ年々新シク出來マ
シテ、製造「コスト」ノ違ヒマスルコトハ、唯
硫安ノミデゴザイマセズ、總テノ製造工業
ガサウデハアリマスルガ、此點ハ昨日小山
君ノ重要產業統制法案ノ御贊成ノ演說中ニ
モ、此事ニ言及サレテ居リマシタガ、特ニ
此硫安ハ其相違ガ甚シイノデアリマス、只
今申上ゲマシタ如ク三十圓ノ工場ノ「コス
ト」ソレガ舊式ノ機械デハ六十圓、七十圓ニ
上ッテ居ルノデアリマスルカラ、十ニ對スル
二十ニ餘ル所ノ生產費ガ高ク付ク勘定ニナッ
テ居ルノデアリマス、他ノ製造工業ヲ見マ
スルト、例ヘバ紡績業ノ如キニ於キマシテ
干、舊式ノ機械ヲ持ッテ居リマス製造業者
ト、新式ノ機械ヲ持ッテ居リマス製造業者
ノ生產「コスト」ニハ相違ガアリマスルガ、併
ナガラ今日ノ時價デ申シマスルト、綿絲ノ
標準物ノ二十手ヲ製造致シマスルノニ、新
式ノ優良ナ機械ヲ持ッテ居リマス者ハ、一梱
百八十五六圓デ出來ルノガ、舊式ノ機械ヲ持ッ
テ居リマス者ハ、ソレガ百九十五六圓掛ルサウ
デアリマス、詰リ十圓餘ノ差デ濟ンデ居ルノデ
アリマス、又人絹會社ノ如キモ相當ニ舊式ノ
機械ト新式ノ機械トノ「コスト」ノ開キガアル
ト言ハレテ居ルノデアリマスガ、ソレデモ
標準物百封度ニ付テ十圓內外ニ過ギヌノデア
リマス、砂糖會社ノ如キモ、沖繩ノ黑糖ナ
ドハ例外デアリマスガ、臺灣デ出來マスル
分蜜糖ノ生產費ナドハ、一流ノ優良會社ノ
生產「コスト」モ、二流三流ノ脆弱ナル生產
業者ノ「コスト」モ、分蜜糖百斤ニ付テ十二
圓シカ開イテ居ラヌノデアリマシテ、此硫
安肥料ノ如ク、舊式ノ機械ト新式ノ機械ニ
依ッテ莫大ナル生產「コスト」ノ相違ヲ見テ
居ルモノハ他ニナイノデアリマス、此點ガ
私ハ非常ニ疑義ヲ持ッテ居ル所デアリマス、
ドウカ商工大臣ノ明快ナル御答辯ヲ希望致
シマス
〔國務大臣小川〓太郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X00819360512&spkNum=17
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018・小川郷太郎
○國務大臣(小川郷太郞君) 大本君ノ御質
問ニ簡單ニ御答ヲ申上ゲマス、第一ハ本法
案ハ六十七議會ニ出シタ肥料業統制法案ニ
比スレバ、骨拔キニナッタデハナイカト云フ
御尋デアリマスガ、ヨクサウ云フ御批評ガ
アリマスガ、成程前六十七議會ニ出シマシ
タ本案カラ見マスト云フト、大分違ッタ所ガ
アリマス、併シソレハ丁度只今說明ニモ申
シマシタ通リ、其當時ノ本院ニ於ケル議論、
ソレカラ尙ホ當業者及ビ消費者ノ團體ノ意
見ヲ徴シテ見マシタ上デ、本案ノヤウナ風
ニ改メルノガ最モ適當デアルト考ヘタノデ
アリマス、一々相違ノ點ヲ此處デ申上ゲル
ノモ煩ニ過ギマスルカラ、何レ委員會デ能
ク說明ヲ致シマスガ、例ヘバ許可事業ニセ
ナケレバナラヌト云フヤウナコトモ、消費
者ノ團體カラ聞イテ見マシテモ、ソレハ宜
クナイト云フノデアリマス、骨拔キニシタ
ガ爲ニ消費者タル農民ニハ非常ニ惡イノダ
ト、此案ヲ考ヘル人モアリマスケレドモ、
實ハ其許可制度ヲ取去ッタト云フコトガ、其
方面ノ意見ニモ合ッテ居ルノデアリマス、サ
ウ云フ風デ骨拔キ〓〓ト云フコトデ、大變
ニ誤解ガアルヤウデアリマスケレドモ、此
法律案ガ實際ニ運用セラレル時分ニハ、決
シテ左樣ナモノデナイ、斯ウ云フコトヲ申
上ゲタイノデアリマス
ソレカラ第二ノ御質問ハ肥料ノ公正ナル
價格ト云フコトデアッタト思ヒマスガ、實ハ
肥料ハ安ケレバ安イ程農村ニ取ッテハ宜シ
イノデアリマス、サウ云フ風ニアリタイト思
ヒマスガ、ガ併シ御話モアリマシタ通リ、
日本ノ硫安ニ付テ申シマスレバ、今日ハ供
給ガ不足ナノデアリマス、海外ニ其不足分
ヲ仰ガナケレバナラナイ、海外ニハ窒素「カ
ルテル」ト云フヤウナ强力ナルモノガアリ
マシテ、ソレデ國際的ニ値段ヲ決メルノデ
アリマス、ソレデ日本ノ硫安ノ價モ之ニ左
右セラレルコトヲ免レ得ナイノデアリマス、
ソレデ「コスト」ガ幾ラデアルトカ、三十圓、
四十圓デ出來ルトカ、其「コスト」ヲ標準ニ
シテ價格ヲ決メタラ宜イヂヤナイカト申サ
レマシテモ、今日ノヤウナ不足セル場合ニ
於キマシテハ、サウ云フ譯ニ參ラナイノデ
アリマシテ、ソコデ日本ノ現狀カラ申シマス
ナラバ、硫安ニ付テ言ヘバ、先ヅ自給自足
ヲ圖ラナケレバナラナイ、大本君ハ明年位
デ自給自足ニナルヂヤナイカト云フ御話デ
アリマシタケレドモ、私等ノ調ベテ居ル所
デハ、サウモイカヌヤウデアリマス、是ハ
需要ハドン〓〓增スト云フコトヲ考ヘナケ
レバナラヌノデアリマス、ソコデ先ヅ硫安
ノ自給自足ト云フ域ニ達シ、ソレガ澤山ニ
出來テ來ルヤウニナレバ、以テ肥料ノ價ヲ
安クセシムルコトモ出來ルデアリマセウシ、
或ハ進ンデハ輸出ヲスルヤウナコトモアリ
得ルト思フノデアリマシテ、ソレデ需要者
ノ立場ト生產者ノ立場ト兩方面ヲ狙ヒマシ
テ、其時其場合ニ於キマシテ公正ナル價格
ト云フコトヲ見テ行キタイト考ヘルノデア
リマス、ソレデ此法律案ノ狙ヒ所ハ其處ニ
アルノデアリマシテ、必シモ生產費ト云
フコトダケヲ標準ニシテ、公正ナル價格ト
云フコトガ見出サレルノデハナイノデアリ
マシテ、要ハ此法律ノ運用ニ依リマシテ、
安イ肥料ヲ供給スルコトガ出來ルヤウニナ
ランコトヲ望ンデ居ル次第デアリマス(拍手)
〔大本貞太郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X00819360512&spkNum=18
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019・大本貞太郎
○大本貞次郞君 只今ノ商工大臣ノ御答辯
ハ、ドウモ私ハ要領ヲ得ナイト思フノデア
リマス、第一ニ商工大臣ハ、昨年政府ガ提出
ヲ致シマシタ統制法ト、今日御出シニナッタ
統制法トノ相違ノ出來テ居ルノハ、能ク農
村側トモ協議ノ上、寧ロ需要者、卽チ農村
側ニモ此方ガ利益デアルト思ウテ提出ヲシ
タトノ御答辯デアルノデアリマスルガ、全
然ソレハ御考ガ間違ウテ居ルト思フノデア
リマス、此統制案ニ依リマスルト、私ハ結
論ニ於テハ決シテ農村民ノ經濟ノ匡救手段
ニハナラズシテ、肥料製造業者ノ保護法案
ニナルト考ヘルノデアリマス(拍手)肥料製
造業者ヲシテ、此上ニモ暴利ヲ貪ラシ
ムル所ノ一ツノ手段トナルト私ハ考ヘルノ
デアリマス、是ハ私ガ考ヘマスルノミデハ
ナク、世間ノ者ハ皆サウ考へテ居ルノデア
リマス、論ヨリ證據、先般政府ガ斯ノ如キ
微溫的ナル統制法ヲ提出スルコトニ決定ヲ
シタト云フコトガ一度世間ニ傳ハリマスト、
肥料會社ノ株ハ暴騰ヲ告ゲタノデアリマス、
此案ノ提出ノ內容ヲ見マス前ト見タ後ノ肥
料會社ノ株ノ相場ヲ調ベテ見マスト、一割
以上ノ暴騰ヲ告ゲテ居ルノデアリマス、是
ガ私ハ何ヨリモ此御提出ニナッタ統制案ハ、
農民經濟ヲ匡救スルモノニアラズシテ、肥
料會社ノ利益ヲ增進スルモノデアルコトヲ、
此株ノ上ッタト云フコトガ雄辯ニ物語ッテ居
ルモノデアルト考ヘルノデアリマス、甚ダ
失禮ナ申分デアリマスガ、商工大臣ナドノ
御考ヨリハ、株ノ相場ノ考ノ方ガ遙ニ利口
ナノデアリマス、斯樣ナ次第デ私ハ此株價
ノ暴騰シタト云フコトカラ考ヘマシテモ、
商工大臣ノ言ハレルヤウナコトハ全然理由
ノナイコトデアルト信ズルノデアリマス
又第二ノ問題デアリマスガ、御話ニ依ル
ト肥料價格ノ公正ナル標準相場ト云フモノ
ハ、製造「コスト」デ算出スベキモノデナイ、
斯樣ナコトヲ言ハレルノデアリマスガ、私
ハ奇怪千萬ナル御答辯デアルト思フノデア
リマス、凡ソ物ノ價格ヲ算定致シマスル第
一ノ基礎ハ、生產費ノ「コスト」ニ置カナケ
レバナラヌノハ、子供ガ考ヘテモ分ッテ居ル
コトデアリマス、私ハ今日此統制案ガ假ニ
成立ヲ致シタト致シマスレバ、肥料會社ハ
長ク今日ノ暴利ヲ貧ルコトガ出來ルト思フ
ノデアリマス、何故ナラバ只今申上ゲマシ
タ通リニ、硫安デ譬ヘテ見マスト、安イ生
產設備ヲ持ッテ居リマス所ノ製造會社ノ生
產「コスト」ハ三十圓位デアリマス、高イ所
ハ六十圓、七十圓ニ上ッテ居ルノデアリマス
カラ、先ヅ「コスト」ヨリ見タ所ノ公正ナル
價格ヲ定メヨウト致シマスト、凡ソ今日ノ
設備ヲシテ三十圓デ出來ルモノト致シマス
レバ、十圓ノ營業費ヲ見マシテモ、五十圓
乃至六十圓ニ定メルノガ至當デアラウト思
フノデアリマスルガ、若シ五十圓、六十圓
ニ硫安ノ相場ヲ公定致シマシタ場合ニハ、
舊式ノ設備ヲ持ッテ居リマス所ノ製造業者
ハ全滅ヲ免レナイノデアリマス、所ガ舊式
ノ製造業者ノ全滅ヲ助ケヨウト思ヒマスレ
バ、勢ヒ硫安ノ公定相場ヲ九十圓、百圓ニ
持ッテ行カナケレバナラヌノデアリマスガ、
左樣ニ致シマスト新シイ設備ヲ持ッテ居リ
マス所ノ生產會社ハ、其設備ノ資本ニ對シ
マシテ、一年八割、十割ノ暴利ヲ貧ルヤウ
ニナルノデアリマス、此調節ハ如何ニシテ
オヤリニナル御考デアリマスカ、舊式會社
ヲ保護シヨウト思ヘバ、新式會社ヲシテ斯
ノ如ク不當ナル暴利ヲ取ラシテ、サラヌダ
ニ肥料代ノ重壓ニ苦ンデ居リマス所ノ五百
万ノ農村民ヲシテ、此上長ク此重壓ニ苦シ
マシムルコトトナルノデアリマスシ、又安
イ製造會社ノ生產「コスト」ヲ標準トシテ定
メマスレバ、舊式ノ既設會社ヲ潰滅サスコ
トトナルノデアリマスガ、ドウシテモ一ヲ
採ルカ二ヲ採ルカニ致サネバナラヌ結論ニ
ナルノデアリマスガ、是デモ商工大臣ハ公
正ナル價格ヲ算出シ得ルト御考ヘニナリマ
スルカ、又只今ノ御言葉デハ、ソンナコト
ハ今頃心配ヲセヌデモ、マダ當分ハ日本ノ
化學肥料ハ自給自足ハ出來ナイ、海外カラ
輸入シテ補給ヲセネバナラナイト云フヤウ
ナ御答辯デアリマシタガ、是モ私ハ全ク商
工大臣ノ御認識ノ不足デアルト考ヘルノデ
アリマス、大體ヲ言ヘバ政府ノ措置其宜シ
キヲ得マシタナラバ、昨年頃ニ於テ硫安ナ
ドハ需給ノ權衡ヲ得テ居ラネバナラナカッ
タノデアリマス、現ニ肥料業者自ラモ昭和
十年度ニ於テハ十分ニ自給シ得ルト云フコ
トヲ、製造業者自ラモ言ウテ居ッタコトハ御
承知ノ通リデアラウト思フノデアリマス、
元來ヲ言ヘバ私ハ此需給關係ガ圓滿デナ
イ、詰リ自給自足ノ出來テ居ラナイ今
日ニ、斯樣ノ法案ヲ御出シニナルコト
ガ、私ハ間違ヒデアルト考ヘルノデア
リマス、之ニ付キマシテハ昨年ノ統制案
ニ對シマシテ、委員會デ斯ウ云フ報〓ヲ
シテ居ルノデアリマス、卽チ一、窒素工業
ノ合理化ト增產ニ對シテ適當ノ助成、例へ
バ發電計畫ニ優先權ヲ與フルコト等ヲナ
シ、將來優越セル輸出工業ノ域ニ達セシム
ルコト、二、供給ノ圓滑ト市價ノ低下ヲ期
センガ爲メ適當量ノ常備貯藏ヲ爲サシメ、
又ハ相當數量ノ海外輸入ヲ配給組合ニ命
ジ、由テ生ズル此損害ニ對シテハ政府之ヲ
補償スルコト、昨年ノ委員會ニ於テハ此報
告ヲ致シマシテ、此統制案ノ成立ハ時期尙
早デアリトサレタノデアリマスルガ、私ハ
今囘ノ御提案ニ對シマシテモ、依然トシテ
此事ヲ申上ゲタイト思フノデアリマス、是
ダケノコトヲ先ヅ行ウテ、サウシテ化學肥
料ノ需給ヲ圓滿ニシテ、初メテ此統制案ヲ御
出シニナラネバナラヌノデアリマス、需給
ノ關係ガ圓滿ニ行ッテ居リマセヌ今日、斯樣
ナ法案ヲ御出シニナリマスルコトハ、旣設
ノ舊式設備ヲ持ッテ居リマスル脆弱ナ肥料
製造會社ノ保護法案トナッテシマフ虞ガ多
分ニアルノデアリマス、此點ニ付テ商工大
臣ノ御答辯ヲ御願致シマス(拍手)
〔國務大臣小川〓太郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X00819360512&spkNum=19
-
020・小川郷太郎
○國務大臣(小川郷太郞君) 大本君ノ重ネ
テノ御質問ニ御答辯致シマス、此法律案ガ
骨拔キデアル、ソレハ肥料會社ノ株ガ上ッタ
ノデモ分ルヂヤナイカト云フコトデアリマ
シタ、併シ肥料會社ノ株ノ上リマシタノハ
色々ノ理由ガアリマセウ、一ツハ二·二六事
件直後ニ暴落致シマシテ、其後一般政策問
題ニ關シテ政府ノ意圖ガ明カトナリマシ
テ、財界ガ安定シテ、肥料會社ノ株モ囘復
シタト云フ事情モアラウト思ヒマス、又一
ツハ此法律案ガ骨拔キデアルト云フ噂ガア
ル、能ク內容ヲ嚙締メテ戴ケバ、私ハ決シ
テ農村ノ爲ニ惡イモノデハナイ、是ハ多少
誤解ヲセラレタコトモアラウト思ヒマス、
其株價ノ下ッタ上ッタト云フコトダケニ依ッ
テ、此法律案ヲ御批評戴クコトハ、甚ダ私
トシテハ恐縮スル次第デアリマス、ドウカ
ソレハ十分ニ御認識ヲ戴キタイト思フノデ
アリマス、第一農村ノ爲ニ惡イト云フ御話
デアリマスケレドモ、實ハ價格ノ公正ヲ圖
ルト云フコトノ爲ニハ、肥料業組合ガ販賣
價格ヲ決定致シマスト、ソレヲ豫メ政府ニ
屆出マシテ、其承認ヲ受ケルノデアリマ
ス、若シ其價格ガ公正デナイト見レバ、ソ
レノ變更ヲ命ズルコトモ出來ルノデアリマ
ス、ダカラ此法律ガアリマシタ方ガ農村ノ
爲ニモナル、今日何故之ヲ出スカ、總テ需
給調節ガ出來ルヤウニナッテ、肥料ガ澤山出
來上ッテ後デモ宜イヂヤナイカト申サレマス
ケレドモ、ソレ迄ニ於テモ法律案ハ確ニ農
村ノ爲ニナルト私ハ考ヘルノデアリマス
ソレカラ此市價ノ定メ方ニ付キマシテ
ハ、各社ノ生產費ト云フモノハ、實ハ具體
的ニ明瞭ニ出來マセス、政府ハ最惡ノモノ
ヲ標準ニスルコトハ出來ナイコトハ勿論デ
アリマスガ、硫安ノ市價ヲ監督スルニ當ッテ
ハ、各社ノ生產費、農村事情、一般物價等、
各般ノ事情ヲ考慮シマシテ、消費者及ビ生
產者ノ何レニモ偏シナイヤウニ、公正ナル
價格ヲ標準トスベキモノダト思フ、此法律
案ニ依リマシテ、先ヅ澤山ノ硫安ノ供給ガ
出來ルヤウニナレバ、自然ニ又價格ハ低ク
ナッテ來ルコトガアルト思フノデアリマス
カラ、サウ云フヤウナコトヲ大體考ヘマス
ト、今日此法律案ヲ出スノハ決シテ急イダ
譯ヂヤナイ、適當ナモノデアルト考ヘルノ
デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X00819360512&spkNum=20
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021・大本貞太郎
○大本貞太郞君 此處カラ發言ヲ御許シ願
ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X00819360512&spkNum=21
-
022・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 許可致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X00819360512&spkNum=22
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023・大本貞太郎
○大本貞太郞君 商工大臣ノ御答辯ハ頗ル
苦シイ御答辯デゴザイマシテ、私共一向要
領ヲ得ナイヤウニ思フノデアリマスルガ、
何レ委員會ニ於テ詳細ニ御伺致スコトニ致
シマシテ、是デ私ノ質問ハ打切リマス(拍
手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X00819360512&spkNum=23
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024・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 田中養達君
〔田中養達君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X00819360512&spkNum=24
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025・田中養達
○田中養達君 本案ハ前ノ議會デ可ナリ論
議シ盡サレテ居ル問題デアリマスケレドモ
ガ、前ノ議會ト今日トハ社會情勢ニ
大變化ガ來テ居ルノト、廣田內閣組閣ニ
ハ、寺內陸軍大臣ハ組閣ノ內容ニ付テ相當
突込ンデ關與サシタ事實ガアリマスカラ、
現內閣ノ重要ナル政策ニ付テハ軍部ハ一
大責任ガアルト思フ、私ハ斯ウ云フ前提、
斯ウ云フ立前カラ本案ニ付テ御尋シタイト
斯ウ存ズル次第デアリマス
大體此肥料統制法案ナルモノハ、眞ニ今
日窮乏シテ居ル農民ヲ救フト云フ立前カラ
提案サレテ居ルモノデアルカドウカ、私ハ
玆ニ非常ナ疑義ヲ持ツ次第デアリマス、ソ
レハ今審議中ノ米穀自治管理法案、產繭處
理法案竝ニ此法案ハ、農村ニ取ッテハ最モ
重大ナル關係ガアルコトハ申ス迄モナイコ
トデアリマス、其中デモ特ニ此肥料ノ問題
ハ一般農民ニ、養蠶家ニモ、米作者ニモ、
而モ中產階級以下ノ今日一番窮乏シテ居ル
小作階級ノ人等ニ、直接利害關係ノアル重
大ナル是ハ問題デアリマスガ、理窟ハ拔イ
テ、要スルニ今日ノ窮乏セル農村ヲ少シデ
モ救ウテヤリタイト云フ御考デアルナラ
バ、是ハ理窟ヂヤナシニ、安イ肥料ヲ提供
シテヤル、私ハ是デ盡キテ居ルト思フ、サ
ウシマスト問題ノ中心ハ肥料ノ價格ニナル
ノハ申スマデモナイ、所デ此肥料ノ價格ヲ
決メラレルノニ、今大本君モ申サレタ通リ
ニ「コスト」ノ高イ-是ハ語弊ガアルカモ
知レマセヌガ、不良會社ノ採算ノ取レルヤ
ウナコトニ一ツノ目安ヲ置イテ、サウシテ
公正ナ價格ヲ決メル、斯ウ云フコトニナリ
マスト、此不良會社ノ利益ハ軈テハ今日苦
ンデ居ル農村ニ轉嫁シ、農民ニ轉嫁サレテ
居ルコトハ、爭ハレヌ是ハ事實デアリマス(拍
手)今日此案ニ對シテ或ハ資本家擁護ダト
云フ聲ハ相當ニアリマス、私ハ資本家擁護ナ
リト云フ聲ヲ聞クノハ、只今申スヤウニ「コ
スト」ノ高イ會社ガ、採算ノ取レルヤウナ目
安ニ價格ヲ決メラレルト云フ所ニアルト斯
ウ信ジマス、殊ニ私ハ今囘特ニ提案サレタ
此案ノ中ニ、前ノ議會デスラ、アノ社會情
勢ノ時デスラアノ條項ノ中ニアッタ假ニ斯
ウ云フ「コスト」ノ高イ、或ル意味ニ於ケル
不良會社ハ營業停止トカ、其他ノ權限ヲ主
務大臣ガ持ッテ居ラレルヤウニ書イテアッ
ク、ソレガ今日ノヤウナ社會情勢ニナッタ
此議會デ、特ニ其種ノ權能ヲ態〓ミ廢メテ、
其條項ヲ省イテ玆ニ提案サレタ、其理由ヲ
御尋致シタイ、私ハ商工大臣竝ニ農林大臣
ニ御尋シタイコトハ、全體何時マデ此「コス
ト」ノ高イ會社ノ採算ヲ取ラレルヤウナ價
格ヲ何時マデ全體持續サレル積リカ、私ノ
申スノハ、若シアナタガ眞劍ニ農民ヲ憂ヘ
ラレル氣持ガアルナラバ、ソレハ成程需要
ノ關係上今立ドコロニ此會社ヲ潰ス譯ニ行
カヌ、斯ウ言ハレルカモ知レマセヌガ
〔添田敬一郞君「東北興業株式會社ノ委
員會ヲ開キマスカラ御集リヲ願ヒマ
ス」〕
ソレナラソレデ其會社ノ採算ノ取レルダケ
ノ、ソレダケハ政府ガ補償サレテモ宜イノ
デハナイカ、又何時マデモ此農民ニ負擔ヲ
課ケルコトハ可哀相ダカラ、積極的ニ新シ
イ設備ノ、新シイ機械ノアル會社ニ向ッテ
思切ッテ援助シテ、一日モ速ニ安イ肥料ヲ農
民ノ手ニ入ルヤウニシテヤルトカ、此決心
ガアルカドウカト云フコトヲ私ハ御尋申シ
タイ
イマ一ツ今一番喧シイ例ノ米穀統制法案
デモ、此根本ハ何カト言ヘバ、ヤハリ肥料
ニ係ルコト重大デアル、如何ニ米價ヲ統制
セントサレテモ、肥料ノ價格ニ於テ今日ノ
ヤウナ無統制-少シク米ガ高ウナレバ勝
手ニ肥整ガ高ウナル、コンナ馬鹿氣タコト
ヲ默認シテ居ッテ、米ノ統制ナドハ私ハ出來
ヌト信ズル(拍手)私ハ理窟ヲ拔イテ先ヅ其
根本デアル肥料、コンナモノハ國家ノ力ニ
依ッテ思切ッテ安イモノヲ農民ノ手ニ配ッテ
ヤッテ貰ヒタイ、私ハサウ云フ立前カラ論
ジマス時ニ、是ハコンナ生溫イ法案デナシ
ニ、モウ一步進ンデ或ハ專賣ニ爲サルトカ、
或ハ國營ニマデ進ム御考ハナイカ、此處ノ
所ヲ一ツハッキリト御尋申上ゲタイノデア
リマス
イマ一ツ私ハ寺內陸軍大臣ニ御尋シタイ
ガ······(「陸軍大臣ハ居ナイ」ト呼フ者アリ〕
居ラレマセヌカラ、ドウカ政府委員カラ私
ノ意ノ在ル所ヲ傳ヘテ戴イテ、機會ノアル
時ニ此御囘答ガ願ヒタイト斯ウ存ジマス、
五·一五事件ト云ヒ、今度ノ二·二六事件ト
申シ、無論是等ノ由テ來ル原因ニハ、政治、
經濟、社會情勢、色々アルトハ存ジマスケ
レドモガ、其最モ大ナル原因ガ、軍ノ組織
ノ根本デアル基礎デアルベキ多數ノ農村
ガ、苦ミ惱ンデ居ルト云フコトガ一大原因
デアルダケハ爭ハレナイ事實デアリマス、
其證據ニハ先般例ノ叛軍ト稱スルアノ人等
ノ中ニ、山王臺デ何ト演說ヲサレテ居タ
カ、大衆ニ向ッテ「私ハ埼玉縣ノ一農夫デ
アリマス、私共ノ穫ッタ米ヲ吾々ハ〓へ
ヌ、是ニハ一大缺陷ガアルコトト存ジマ
スガ、其理由ハ知ラヌ、兎ニ角吾々ハ之
ヲ改メテ貰ヒタイ」ト叫ンダ事實ガアルデ
ハナイカ、陸軍大臣此一言ヲ聽カレテモ、
如何ニ軍ノ基礎デアリ、組織ノ根本デアル
農民ガ惱ミ苦ンデ居ルカト云フコトハ明ナ
事實デアリ、隨テ又五·一五事件ト云ヒ、
二·二六事件ト云ヒ、此農村窮乏ガ最大ノ原
因デアル位ノコトハ、十二分ニ私ハ御承知
ノコトト存ジテ居リマス、最近ハ盛ニ肅軍
ガ叫バレテ居ル、私ハ肅軍結構ト存ジマス、
思切ッテヤッテ貰ヒタイケレドモガ、此肅軍
ヲ叫バネバナラナイ由テ來ル理由原因ガ、
若シ果シテ農村窮乏ニアルト云フコトデア
ルナラバ、此根本ヲ正サズシテ肅軍ハ何ニ
モナラヌト私ハ信ズル(拍手)先ヅ窮乏セル
此農村ヲ救ヒ、アノヤウナ不祥事ヲ重ネテ
起サセヌヤウニスル、斯ウ云フ立前ニ御立
チニナルナラバ、今申上ゲマスヤウニ、中
產階級以下ノ實際惱ミ苦シンデ居ル多數農
民ガ、其時カラ理窟ヲ拔イテ卽座ニ潤ヒ救
ハレル、斯ノ如キコトニ對シテハ思切ッタ
此際案ヲ立テヽ戴キタイ、ソレニ昨年トハ
骨拔キニナッタヤウナ、コンナ案ニ贊成サレ
ル意味ガ私ニハ分ラヌ、殊ニ聞ク所ニ依リ
マスレバ、肥料、殊ニ窒素肥料ノ如キハ、
一度有事ノ場合ニハ國防上缺クベカラザル
重大ナル工業デハナイカ、然ラバ此際此社
會情勢ニ於テ、斯ノ如キ法案コソ思切ッチ政
府ノ權力ニ依ッテ、一面ニ於テハ安イ肥料ヲ
農民ニ提供シ、一面ニ於テハ有事ノ場合ニ
ハ是ガ軍需工業トシテ手落チノナイヤウ
ニ、何故私ハ此際思切ッテモット進ンダ案
ヲ提案サレヌノカ、何故私ハ陸軍大臣ガ閣
議ニ於テ斯ノ如キ生溫イ案ニ贊成サレタカ、
私ハ其眞意ガ那邊ニアルノカ知ルニ苦シミ
マス
私ノ今囘ノ事件ニ對シテ一番憂ヘルコト
ハ何カト申シマスルト、軍民ノ離間デアル、
今私ハ世間デ色々ノ噂ヲ聞イテ見マスル
ト、此間ノ事件ハ軍部ガ怪シカラヌト申シ
テ居リマス、而モ現狀維持派ノ連中等ハ、
筆ヲ揃ヘテ怪シカラヌト云フヤウニ思ハス
爲ニ努力シテ居ル明カナル事實ガアル拍
、チン何ト云フ馬鹿ナコトダ、ヤラレタコト
ハ洵ニ是ハ其手段ト方法ニハ遺憾ナ點ガ多
多アリマス、併ナガラ己等ノ部下デアリ、
軍ノ組織デアリ、軍ノ根本デアル此多數農
民ガ惱ミ苦ンデ居ルノダ、誰カ起ッテ改革セ
ニヤ是等ガ救ヘヌト云フ、此眞情ニ對シテ
ハ、オ互敬服セザルヲ得ナイ、方法ハ誤ッテ
居ル、然ルニ今日ハ此氣持マデモ怪シカラ
ヌト傳ヘント致シテ居ルデハナイカ、私ハ
此際アノヤウナ不祥事モ、方法ハ誤ッテ居ッ
タノデアルケレドモガ、其根本ノ目的ハ國
家ヲ憂ヘ、今苦ンデ居ル是等多數ノ農民ヲ
救ハンガ爲デアッタ、此氣持ダケハハッキリ
ト國民ニ示シテ戴キタイノデアリマス、唯
單ニ抽象的ニ肅軍ダト言ッテモ、今日食フコ
トニ惱ンデ居ル百姓ハ肅軍ト云フコトニハ
耳ヲ藉サヌ、ソレヂヤナシニ、私ガ申スヤ
ウニ、斯ノ如キ案ニ對シテハ思切ッタ政策
ヲ立テヽ、此苦ンデ居ル農民ニ安イ肥料ヲ
ヤル、而シテ彼等ヲ救フ、ソレコソ眞ニソ
コカラ初メテ肅軍モ起リ、ソレデ初メテ軍
民一致ノ實ガ擧ガルト私ハ斯ウ信ジマス
(拍手)若シモアノ不祥事ヲ重ネテ起サヌヤ
ウニスル、肅軍ヲヤル、而モ今憂ヘル軍民
一致ガ斯ノ如キ案ニ依ッテ少シデモ促進サ
v、今日苦ンデ居ル一般農民ガ、其認識ヲ
深メルト云フコトデアルナレバ、幾億ノ金
ヲ投ジテモ宜イト私ハ信ズル、私共ハ斯ウ
云フ立前ニ立ッテ、寺內陸軍大臣ハドンナ御
考ヲ持ッテ居ルノカ、簡單ニ肥料ノ統制法案
ダト斯ウ云フ取扱デナシニ、軈テハ之ニ依ッ
テ農民ヲ救ヒ、之ニ依ッテ軈テハ軍ノ一致、
之ニ依ッテ一般大衆ガ軍部ニ信賴スル所以
ノ途ダト云フ、此見地ニ立ッテ思切ッタ案ヲ
具成セラルヽ意思ガナイカ、此處ノ所ヲ御
尋申シタイト斯樣ニ存ズル、是等ノ內容ノ
手續其他ニ付テハ、何レ委員會デ私ナリ同
僚ナリガ、詳シク御尋スルコトト存ジマス
カラ、唯私ハ希望ノヤウデアリマスルガ、自
ラノ希望ヲ交ゼテ一言御尋致シテ置ク次第
デアリマス(拍手)
〔國務大臣小川〓太郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X00819360512&spkNum=25
-
026・小川郷太郎
○國務大臣(小川郷太郞君) 田中君ノ御質
問ニ御答致シマス、第一ニ肥料ノ工場ノ整
理ニ關シテノ御質問デアリマスガ、政府ハ
不良工場ノ整理ヲ强制的ニヤッテ行ケルモ
ノデナイト考ヘテ居ルノデアリマス、何カ
肥料ノ値段ハ、不良工場ノ生產費ヲ目安ニ
シテ、不當ニ之ヲ保護シテ居ルヤウニ御論
ジニナッテ居ルヤウデアリマスガ、私ノ見ル
所ハサウデアリマセヌ、前ニモ申シマシタ
通リニ、硫安ハ日本ノ供給ガ足リナイノデ
アリマシテ、外國カラ其不足ヲ仰イデ居
ル、隨テ强力ナル海外ノ窒素「カルテル」ニ支
配セラレルノデアリマス、不良會社ノアル
トナイトヲ問ハズ、斯ウ云フ風ナ狀態ニ於
キマシテハ、國外ノ窒素「カルテル」ニ支配
セラレルノヲ免レナイノデアリマス、デア
リマスカラ今日ノ肥料ノ値ヲ以テ不良工場
ヲ保護シテ居ルト御考ヘニナルノハ、私ハ
事實ノ判斷ニ付テ多少ノ間違ヒガアルノデ
ハナイカト思フノデアリマス、政府ハ本法
ノ施行ニ依リマシテ、先ヅ其足リナイ供給
不足ノ物ヲ十分ニ豐富ニ生產セシメテ、供
給ガ餘ッテ行クヤウナ狀態ニ持ッテ行ッテ、サ
ウスレバ漸次ニ生產費ハ下ッテ來ルモノデ
アリ、漸次市價ガ低落ヲシマシテ、不良工
場ハ自然ニ整理セラレルニ至ル、ソレガ私
ハ無理ノナイ自然ナ道行キデアッテ、ソレ
ニ依ッテ日本ノ產業界ト云フモノガ發達ヲ
シテ行クノデアル、其肥料產業ノ發達ニ依ッ
テ又農村ハ惠マレル、斯ウ云フコトニナル
ノダト考ヘテ居ルノデアリマス
第二ハ國營トシ專賣トシテハドウカト云
フ、是ハ御意見ヲ以テノ御質問デアリマシ
タガ、政府ハサウ簡單ニ國營トカ專賣トカ
云フモノガ出來ルモノデハナイト思ッテ居
リマス、是ハ財政上ノコトモ考ヘナケレバ
ナリマセヌ、ソレデ我國農業及ビ肥料業ノ
現狀ニ速ニ適當ナル肥料政策ヲ樹立スル必
要ヲ感ジマシテ、本案ニ依ッテ肥料ヲ豐富ニ
低廉ニセシメヨウトスルモノデアリマシ
テ、最モ日本ノ今日ニ當嵌ッテ居ルモノダ
ト考ヘテ居リマス(拍手)
〔田中養達君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X00819360512&spkNum=26
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027・田中養達
○田中養達君 今ノ小川商工大臣ノ御答ハ
私ノ問ハントスル所デナイノデアリマシ
テ、御聽違ヒト在ジマスガ、今日俗ニ云フ
不良會社ヲ〓算スレバ需要供給ノ關係デ困
ル、ソレモ宜シイ、ソレモ已ムヲ得ナイ、
私ノ申スノハサウデナイノデス、將來安イ
肥料ヲ農民ニ提供スルト云フ立前デアルナ
レバ、アナタガ今仰シヤルヤウニ、軈テハ
安イ肥料ガ澤山出來ルヤウニナル、安クナ
ルダラウト云フ勢ニ任セズニ、政府自體ガ
新シイ設備トカ、新シイ機械トカ、是等ニ
對シテ積極的ニ働キ掛ケテ、一日モ速ニ此
不良會社ヲ擁護センナラヌト云フヤウナコ
トヲ廢メル、之ヲ積極的ニ爲サルカドウカ
ト云フコトヲ私ハ御尋シタノデアリマス、
ソコノ所ハドウゾ誤解ノナイヤウニシテ戴
キタイ、斯ウ存ジマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X00819360512&spkNum=27
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028・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 政府ニハ御答辯ガ
アリマセヌ-佐竹晴記君
〔佐竹晴記君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X00819360512&spkNum=28
-
029・佐竹晴記
○佐竹晴記君 商工大臣竝ニ農林大臣ニ對
シマシテ御質問申上ゲマス、嘗テ内閣ノ首
班タリシ方ガ當議場ニ於キマシテ、農村振
興トハ肥料ノ公平ナル分配ニアリト言ハレ
タト云フコトデ有名デゴザイマス、其言ヒ
方ハ洵ニ失笑ニ値スルモノガアルノデゴザ
イマスルケレドモ、肥料問題ト農村振興ト
ノ間ニ深キ關係ヲ有スルコトハ、全ク其通
リデアリマス、今ヤ農村ハ窮乏ノ極ニアリ
マシテ、本法案ノ討議ハ全農民ガ眼ヲ瞠ッテ
監視ヲ致シテ居リマス、政府當局ノ一言一
旬ハ、彼等ノ胸ヲ刺スコトデアリマセウ、
サレバ私共農民ヲ代表スル者ノ聲ニ對シテ
ハ、懇切ニシテ熱意アル答辯アランコトヲ
要望致シマス次第デアリマス
先ヅ第一ニ本法案ハ肥料資本家擁護ノ嫌
ヒアリトノ議ガゴザイマスガ、果シテ如何
デゴザイマセウカ、只今大本、田中兩氏ノ
質問ガゴザイマシテ、政府ノ御答辯ガゴ
ザイマシタガ、滿足スルコトヲ得ナイノ
デゴザイマス、更ニ御尋ヲ申上ゲタイト思
フ、先ヅ本案ニ付テ劈頭感ジマスコトハ、價
格ノ決定權ヲ肥料製造業組合ニ持タセテ居
ルト云フコトデゴザイマス、是ガ爲ニ肥料資
本家ノ御都合ノ好イヤウナ價格ガ決定サレ
ルデハナイカト云フ憂デアリマス、農民ノ作
ル米ニ致シマシテモ、亦繭ニ致シマシテモ、
總テ農民自身ニ其價格ヲ決定スルノ權利ハ
ナイノデアリマス、第三者ヲシテ之ヲ決定
セシメテ居ル、サレバ肥料ニ致シマシテモ、
極メテ公正ヲ期スル上ニ於テハ、第三者ヲ
シテ適正ナル決定ヲ爲サシムル途ヲ開クニ
如カズト思フノデアリマス、サナクバ本法
案第一條ノ眞ノ目的ヲ達シ得ラレナイト思
フト同時ニ、肥料資本家擁護ノ法案ナリト
ノ議ヲ免ルヽコトハ出來マイト思フノデア
ル、更ニ今囘提案サレマシタ法案ガ、前二
氏ノ申サレテ居リマシタ通リ、曩ニ六十七
議會ニ提出サレマシタ肥料統制法案ニ比べ
マシテ、第一ニ肥料業ノ許可制ヲ廢シ、第二
ニ主務大臣ノ統制命令權ヲ弱化シ、第三ニ
生產能率不良工場ノ改善、又ハ廢止ノ規定
ヲモ削除セラレテ居リマスノデ、若シモ此
法案ガ實現セラレマシタ曉ニハ「カルテル」加
盟會社ノ中、最モ不良ナル會社ノ生產費ニ
利潤ヲ加ヘマシタモノガ、販賣價格トナル
デアラウト云フコトハ、殆ド誰モガ考ヘザ
ルヲ得ナイ點デアリマス、斯クテ不良會社
デアッテモ、完全ニ利潤ガ保障セラレマスト
同時ニ、生產能率ノ髙イ優良會社ニ於キマ
シテハ、ヨリ高キ獨占利潤ヲ確保出來ル譯
デアリマシテ、肥料資本家ニ取リマシテハ
洵ニ好都合デハアリマセウガ、消費者タル
農民大衆ハ、篦棒ニ高イ肥料ヲ買ハサレマ
シテ、其結果ハ結局農村窘メニ終リハシナ
イカト恐レザルヲ得ナイノデアリマス、由
來歷代內閣ニ於キマシテハ、啻ニ肥料問題
ノミデハゴザイマセヌガ、肥料ノ政策ニ付
キマシテモ、常ニ資本家擁護ニ傾イテ居リ
マスト云フ憾ガアルノデアリマス、肥料問
題ニ付キマシテモ、肥料資本家ニ好意ヲ持
ツト申シマスコトハ、語弊ガアルカモ分リ
マセヌガ、農民大衆ノコトハ左程ニ思ッテ居
ナイト云フノガ、實情デハナイカト考ヘラ
レルノデアリマス、嘗テ硫安ノ輸出入ノ許
可規則、ソレハ昭和六年ノ十二月、農林省
及ビ商工省令デ出テ居リマス規則デアリマ
ス、此規則ノ撤廢問題ニ付テ、商工省ト農
林省トノ間ニ意見ノ對立ヲ見マシタ時ニ、
種々討論サレマシタ結果、昭和七年ノ十二
月ニ遂ニ意見ノ一致ヲ見マシテ、同月ノ六
日撤廢ニ決シマシタ際、其省令撤廢ノ理由
トシテ、商工省ノ發表致シマシタノハ次ノ
通リデアリマス、卽チ「硫酸「アムモニア」輸
出入許可制度ヲ創設セル所以ノモノハ蓋シ
安價ナル外國硫安ノ流入ニヨリ本邦ニ於ケ
ル優良ナル硫安製造會社ノ存立ノ基礎ヲモ
破壞シ去ルノ虞アリト認メ該工業ノ重要性
ニ鑑ミ外國硫安ノ輸入ヲ制限シ以テ本邦ニ
於ケル斯業ノ保護ヲ圖ラントスル眞ニヤム
ヲ得ザルノ例外的非常手段ニ外ナラザルナ
リ、シカルニ金輸出再禁止後爲替相場ノ下
落ヲ見外國硫安ノ輸入困難トナリ內地市價
昂騰シ本制度存置ノ理由消滅シタルヲ以テ
コヽニコレヲ廢止スルコトヽセリ」ト云フノ
デゴザイマス、全ク文字通り硫安製造會社
ノ利害ダケガ考ヘラレテ居リマシテ、農民
ノ立場ニ付テハ全ク考慮ガ拂ハレテ居ナイ
ト云フ事實デアリマス、昭和六年ト七年ノ
同期ニ於ケル肥料及ビ米ノ騰貴率ヲ見テ見
マスルノニ、內地ノ硫安ガ六五%、過燐酸
ガ三三%、加里ガ七五%ノ騰貴ヲ示シテ居
リマスノニ拘リマセズ、農民ノ作ル米ハ如
何デゴザイマセウ、僅カ一一%ノ騰貴ニ過
ギナイノデアリマス、是レ全ク肥料獨占資
本ノ高度化ト、一面ニ過燐酸、石灰窒素、
硫安等ノ「カルテル」結成ノ結果デハナイカ
ト思ハレルノデアリマス、然ラバ本法案通
過ニ依リマシテ、一層獨占資本ノ「カルテ
ル」ガ擴大强化セラレ、肥料ト農產物ノ騰
貴率ニ一段ノ開キヲ生ジ、益〓農民ヲ窮狀
ニ導クノ結果トナリハシナイカト云フコト
ヲ恐レザルヲ得ナイノデアル、政府ハ斯ノ
如キ憂ナシト言ハルヽノデゴザイマセウ
カ、若シ然リトセバ如上私ノ憂慮ニ對シマ
シテ、具體的ニ說明ヲ加ヘラレタイト希フ
次第デアリマス
第二ニ更ニ私ハ窮乏農村ノ立場ニ立ッテ、
御質問申上ゲマシタ半面タル農村窮乏ノ方
面ヨリ御尋ヲ申上ゲテ見タイト思フノデア
ル、本案第一條ニ依リマスト「本法ハ肥料
ノ需給ノ圓滑及價格ノ公正ヲ圖リ肥料製造
業及農業經營ノ改善發達ヲ期スルコトヲ目
的トス」トゴザイマス、本法制定ニ依リマシ
テ農村救濟ニ資セントスルノ意圖アリマス
コトハ窺フニ足ルト同時ニ、只今小川商工
大臣ヨリモ直接ニ之ヲ承リ得タノデアリマ
ス、然ルニ事實ハ前段質問ノ如ク肥料資本
家擁護ニ歸シ、農民大衆ハ救ハレナイト思
フノデゴザイマスガ、果シテ如何デゴザマ
セウ、農村ノ窮狀ハ今ヤ全クドン底デゴザ
イマス、肥料ヲ施シ得ナイ者ガ次第ニ增加
致シテ居リマス、所謂無施肥農耕ノ餘儀ナ
キ姿ニアルノデアリマス、是デハ耕地ハ日
ニ增シ荒廢シ、生產力減退シ、米ト云ハズ、
麥ト云ハズ、將又桑ト申上ゲマセズ、農民
生活ノ基本タル生產ハ次第ニ衰退致シマシ
テ、延イテハ國政頽廢ヲ招來スルデハナカ
ラウカト憂ヘザルヲ得ナイノデアル、ニモ
拘ラズ是等ノ事柄ニ付テハ餘リ顧ミラレテ
居ナイデハナイカト思フノデアリマス、飜ッ
テ思フニ肥料製造ノ業ハ次第ニ進步發達ヲ
致シマシテ、硫安ダケハ成程足ラヌノデゴ
ザイマセウ、昭和九年度ノ統計ニ依リマス
レバ、我國ノ生產高四十九万瓲ニ對シマシ
テ、內地ノ消費高ハ六十五万瓲ニ過ギナイ
ノデアリマス、併シ石灰窒素ハ九年度ニ於
キマシテ消費高ガ二十万一一千九百瓲ニ對シ
テ、生產能力ガ四十五万瓲デアリマス、過
燐酸ハ同年度消費高百六万八千七百瓲ニ對
シマシテ、生產能力二百十二万三千瓲ト、
斯ウ云フ莫大ナ生產能力ガ過剩デアルノデ
アリマス、サレバ農民ノ希フ所ノモノハ、
當然是等肥料ノ市價ヲ低下サシテ貰ヒマシ
テ供給ヲシテ戴キタイ、サウシテ無施肥農
耕カラ救ハレタイト云フ一念ニ外ナラヌノ
デアリマス、今本法案ヲ拜見致シマスルノ
ニ、先程申上ゲマシタ如ク、第一條ニハ是
等農民ノ要望ニ付テモ心配シテ居ルカノ如
ク見エルノデゴザイマスガ、偖テ內容ヲ具
サニ拜見致シマス時ニ、此農民ノ聲ニ滿足
ヲ與フベキ何物モナイト私ハ思フノデアリ
マスガ、果シテ如何デアリマセウ、若シア
リマストスレバ、十分其根據ト具體的方針
ニ付テ示サレタイト思フノデアリマス
第三ニ本法案ガ通過シタト致シマシタ時
ニ、將來肥料資本家ノ專橫ヲ防ギ、法案
第一條ノ眞ノ意義ヲ徹底セシムル所ノ十分
ノ御用意ガアルカドウカ、吾々ノ思フ所ニ
依リマスレバ、如何ニ嚴重ナ監督ヲ致シマ
シテモ、三井、三菱ノ財閥ノソレニ能ク手
ガ屆クデアラウカト云フコトヲ憂ヘザルヲ
得ナイノデアル、申上ゲル迄モナク三菱ハ
生產ノ約半バヲ占メテ居リマス、三井ハ販
賣權ノ主勢力ヲ持ッテ居ルノデアリマス、政
府ハ能ク之ヲ監視シ、本法精神ノ徹底ヲ期
シ得ラレルデアリマセウカ、否、寧ロ彼等
ノ手先ニ動カサレ、傀儡トナリハシナイカ
ト憂フル向ガアルノデアリマス、何ガ故ニ
斯ク申上ゲルカ、單ナル臆說デハナイノデ
アリマス、過去ノ實歷ニ徵シマシテモ、例
ヘバ麥酒ニシテモ、紙ニ致シマシテモ、乃
至ハ「セメント」ニ致シマシテモ、是等資本家
ニ對シマシテ如何ニ政府ガ無力デアッタカ
ト云フコトハ、私共ノ敢テ喋々ヲ俟ツマデ
モナイノデアリマス、今ヤ農村興亡ニ關ス
ル此重大法案ガ提案セラルヽノ時ニ當リマ
シテ、此肥料統制ニ依ッテ何ノ不安モ要ラナ
イト云フコトガ果シテ言ヘルデアラウカ、
農民ハ極度ノ不安ニ襲ハレテ居リマス、政
府ハ此農民大衆ノ憂慮ヲ一掃スルニ足ル將
來ヘノ見透シト云フモノガ付イテ居ルデア
リマセウカ、若シ然リトセバ其確信ノ程ヲ
承リタイト思フノデアリマス
第四ニ此法案ガ軍需的戰時編制ニ關聯ス
ルコトナキヤ、如上本法案ニ對シマシテ吾
吾ハ多大ノ憂慮ヲ持ツト同時ニ、政府モ全
然之ヲ否定シ得ナイト私ハ考ヘザルヲ得ナ
イ、ニモ拘ラズ敢テ之ヲ提案セル理由ハ、
硫安及ビ石灰窒素ニ依ル硝酸系毒瓦斯、爆
藥或ハ「ダイナマイト」製造ニ關聯ヲ持チ、
之ヲ統制スル必要ガアルノデハナイカト思
フカラデアリマス、若シ左樣ダト致シマス
ルナラバ、吾々モ亦國防ノ重大性ヲ感ズル
ト同時ニ、又之ニ對スル適當ノ成案ト云フ
モノハ得ラルベキモノデアルト思フガ故ニ、
率直ニ其內容ニ付テ、眞ノ目的ニ付テ今少シ
ク詳細ニ之ヲ承リタイト思フノデアリマス
第五、硫安ノ瓲當リ生產費ヲ御尋申上ゲ
タイト思フノデアリマス、岡田内閣當時ニ
新聞紙ノ報ズル所ニ依レバ、農林省ハ七十
五圓ヲ主張シ、商工省ハ八十六圓ヲ主張シ、
結局八十二三圓ニ落付クナラント言ウテ居ッ
タノデゴザイマスルガ、一體是ハ何ヲ基準
トシテ斯ノ如ク定メラレタモノデゴザイマ
セウカ、私共ハ其根據ヲ知ルニ苦シムノデ
アリマス、私共ノ調査スル所ニ依レバ、第
六十七議會ニ臨ムニ際シマシテ、商工省ニ
於テ五ツノ會社ニ付テ調査ノ結果ハ、機械
ノ償却、資本利潤ヲモ計算ニ入レマシテ、
尙ホ最低四十三圓、最高六十五圓トナッテ居
ルト云フコトヲ聞カサレルノデゴザイマス
ルガ、果シテ如何デゴザイマセウカ、若シ
私共ノ聞ク所ノ如シト致シマスルナラバ、
各會社ハ實ニ暴利ヲ恣ニシテ居ルモノト言
ハンケレバナラヌノデアリマス、然リト致
シマスルナラバ、政府ハ如何ニシテ之ヲ掣
肘シ、本法案第一條ニ示ス「農業經營ノ改善
發達ヲ期ス」トノ目的ヲ達セントナサルノ
デゴザイマセウカ、今其具體的方針ヲ示サ
レタイト思フノデアリマス
第六、肥料試驗場ニ於ケル試驗ノ結果ハ、
不良成分ガ非常ニ多ク出テ居リマシテ、無
知ノ農民ノ迷惑ガ甚ダ大デアルト云フ事實
ガアルノデゴザイマス、政府ハ本法施行ニ
際シマシテ、此試驗ヲ嚴ニシ、眞ニ農業經
營ノ改善ヲ期スルダケノ意圖ガアルデゴザ
イマセウカ、私共聞ク所ニ依リマスレバ、肥
料檢査官ハ地方ニ於テ技師二名、技手八十
五名ノ少數デゴザイマス、多イ府縣デモ三
名、多クハ技手一名デ以テ之ニ當ッテ居リ
やく、是デ不正肥料ノ防止ガ出來ルト思フ
デアリマセウカ、元來政府ハ農村對策ニ付
テハ、表面上ノ聲ハ甚ダ大デアリマスケレ
ドモ、斯ノ如キ切實ナル問題ニ對シマシテ
ハ、極メテ冷淡デアルト私共ハ思フノデア
ル、將來ヘノ對策ヲ篤ト承リタイノデゴザ
イマス
最後ニ第七、肥料國策ハ土壞ノ〓究ニ俟タ
ンケレバナラヌト云フコトハ言フマデモナ
イノデゴザイマスルガ、政府ノ御所見如何、
米國ノ土壤局長ガ土ハ活キタモノデアルト
稱シテ居リマス、土壤「コロイド」ノ〓究ナ
クシテ、眞ニ施肥ノコトヲ解スルコトハ出
來ナイト言ハレテ居リマス、洵ニ左樣デゴ
ザイマセウ、東北ニ適スル肥料ガ必シモ關
西ニ適スルト云フコトハ出來ヌノデゴザイ
マス、農林省ガ土壤ト肥料トノ關係ニ付
テ、如何ナル御〓究ヲ持タレテ居ルカ、各
地方別ニ其大綱ヲ承リタイト思フノデゴザ
イマス、以上質問致シマス
〔國務大臣小川〓太郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X00819360512&spkNum=29
-
030・小川郷太郎
○國務大臣(小川〓太郞君) 私ノ關係スル
範圍ニ於キマシテ簡單ニ御答申上ゲマス、
第一ニ本法案ハ肥料資本家ヲ擁護スルノデ
ハナイカ、斯ウ云フ御質問デアリマス、此
事ハ前ノ大本君ノ質問ニ對シマシテ大體御
答申シテ居リマス、現在ニ於キマシテハ、
硫安等ノ重要肥料ニ付キマシテハ、任意的
組合ガ任意的ニ價格ヲ決定致シマシテ、何
等ノ監督權ハナイノデアリマス、本法ニ依ツ
テ初メテ組合ノ決定ニ對シテ國家的監督ガ
行ハレルノデアリマス、此國家的監督ガ公
正ナル價格ヲ定メルコトニ大イニ力ガアル
ト思フノデアリマス、何カ本案ニ付キマシ
テ世間ニモ誤解ガアリマシテ、國家ノ監督
權ガ非常ニ緩イヤウニ思ハレテ居リマスガ、
併シ肥料業組合ヲ强制的ニ拵ヘセシメテ、ソ
レガ例ヘバ價格ノ決定ヲスル、ソレヲ政府
ニ屆出デル、政府ノ承認ヲ受ケルノデアリ
マス、其價格ガ公正ナモノデナケレバ、政
府ハ之ニ對シテ變更ヲ命ゼシメルノデス、
隨分ノ力デアルト思フノデス、ソレガ骨拔
キトカ何トカ云フヤウナコトデ、何ダカ國
家的監督ガ緩イヤウナ、力ノナイヤウニ思
ハレテ居リマスケレドモ、之ヲ能ク嚙分ケ
テ見マスト云フト、相當ナ威力ガアルト
思フノデアリマス、而シテ消費者ノ方ノ
考ヘ方ハ入ラナイヂヤナイカト云フヤウナ
御意見デ御質問アリマシタケレドモ、ソレ
ハ單ニ事業會社ノミヂヤナイ、其國家ノ監
督權ヲ行フ時分ニ當リマシテハ、勿論肥料
業委員會ニ付議スルノデアリマシテ、ソレ
ニハ社會總テノ方面ヲ代表スルヤウナ意見、
殊ニ消費者ノ立場ヲ代表スルヤウナ意見モ、
ソコニ加ハッテ來ルノデアリマスカラシテ、
消費者ヲ無視シテ價格ガ決定セラレルモ
ノデアルト云フコトニハナラナイト思フノ
デアリマス、是ガ主要ナル點デアルト思フ
ノデス、アトハ色々ソレニ關聯致シマシテ
御話ガアリマシタケレドモ、其主要ナ點ヲ
答ヘマシタナラバ、大體御答ガ出來タト思
フノデアリマス、農村ガ救ハレナイヂヤナ
イカ、サウ云フヤウナ御質問、ソレハ肥料
ノ所謂豐富ナル供給ヲスルコトニ依ッテ救
ハレル、ソレガ根本的デス、サウ云フコト
ガ出來テ、段々肥料ハ安クナッテ行ケルモノ
デ、其根本ガ出來ナケレバ、何ヲヤリマシ
テモ肥料ヲ安クスルト云フ、本當ノ目的ヲ
達セラレルモノデハナイカト考ヘテ居ルノ
デアリマス、勿論次ノ質問デアリマスガ、
財閥ニ支配セラレルトカ、本法ノ趣旨ガ徹
底シナイヂヤナイカト云フヤウナ意味ノ御
質問デアリマシタガ、政府ハ本法ガ行ハレ
ルニ至リマシタナラバ、本法ノ趣旨ニ從ヒ
マシテ忠實ニ之ヲ行ヒタイト思フノデアリ
マン、ソレカラ硫安ノ瓲當リ生產費ニ付キ
マシテ御尋ガアリマシタガ、ソレハマダ正
確ニスルコトヲ得マセヌノガアリマス、從
來各社ノ生產費ノ如キハ、政府トシテ發表
シタコトハアリマセヌ、尙ホ他ノ質問ハ農
林省ノ方カラ御答ニナルト思ヒマス
〔國務大臣島田俊雄君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X00819360512&spkNum=30
-
031・島田俊雄
○國務大臣(島田俊雄君) 只今ノ御質問中
肥料國策ニ關スルコトニ付テ、土壤ノ調査
〓究ガ根本デハナイカト云フ意味ノ御質問
デアリマシタガ、其通リト考ヘテ居リマス、
隨テ之ヲ實際ニヤルト云フコトニ付テ常ニ
努力ヲシテ居リ、又或ル程度マデ土壤ノ調
査ト云フコトニ重キヲ置キ、サウシテ之ヲ
實際ニ行ハシメテ居ルノデアリマスガ、趣
意ニ於テハ御話ノ通リデアリマスケレド
モ、之ヲ大規模ニ徹底的ニヤラセルト云フ
コトニ付テハ、尙ホ經費等ノ關係ニ於テ足
ラザルモノガアルト云フコトヲ認メテ居リ
やく、是ダケヲ御答致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X00819360512&spkNum=31
-
032・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 佐竹君、マダ發議
ガアリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X00819360512&spkNum=32
-
033・佐竹晴記
○佐竹晴記君 自席カラデ宜シウゴザイマ
ス-甚ダ不十分デゴザイマスケレドモ、
尙ホ委員會ニ於テ論議ガ重ネラレルコトト
思ヒマスノデ多クヲ申上ゲマセヌ、唯最初
議會ヘ法案ノ出ル時分ニハ、隨分旨イコト
ヲ仰シヤッテ居ラレマスルケレドモ、實際法
律ガ施行サレタ時ニハ、最初ノ豫想ヲ裏切ッ
テ、大變ナ結果ニナッテ、直チニ又再度其法律
ノ改正案ヲ出スト云フコトハ、往々ニシテ
之ヲ見ルコトデアリマス、政府當局ニシテ
本法案ヲ出シテ、將來斷ジテ農民階級ニ不
安ナシト斷言ガ出來ルト致シマスナラバ、
暫ク之ヲ承ッテ置キマス、若シ夫レ將來農民
階級ニ不安ヲ生ズルガ如キ事態ヲ生ジタル
場合ニハ、政府ハ責任ヲ負ッテ-連帶責
任ヲ負ッテ卽時辭職スルダケノ御覺悟ガアル
カドウカ、ソレヲ承ッテ置キタイノデアリマ
ス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X00819360512&spkNum=33
-
034・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 政府ノ答辯ガアリ
マセヌ-野中徹也君
〔野中徹也君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X00819360512&spkNum=34
-
035・野中徹也
○野中徹也君 私ハ只今マデ本案提出ノ理
由ニ付キマシテ、商工大臣カラハ其理由ヲ
拜聽致シマシタ、併ナガラ果シテ農林大臣
モ同ジヤウナ工合ニ、商工大臣ノ提案理由
ヲ御認ニナルカドウカ、之ヲ先ヅ最初ニ御
伺シタイト思ヒマス、商工大臣ハ本案ヲ提
出シマスルノニ、此本案ガ消費階級ノ利益
ヲ阻碍シナイ、卽チ公益的デナイノデハナ
イ、又此本案ガ國防關係カラ見マシテモ決
シテ不當デハナイ、更ニ肥料業ノ上カラ見テ
差支ナイモノデアルト云フコトヲ言ハレタ
ノデアリマス、私ハ第二、第三ノ點ハ、本
日ハ此處デハ先ヅ商工大臣ノ意見ヲ聞キッ
放シニ致シマシテ、何レ委員會ニ於キマシ
テ其誤レル所以ヲ摘出致シマセウ、併シ最
初ノ問題トシテ、果シテ本法律案ガ消費階
級デアル農民ノ利益ヲ阻碍スルモノデナイ
カドウカ、此法律案ニ依リマシテ、所謂不
良會社ガ保護ヲ受ケルト云フヤウナコトハ、
今迄ノ質問者ガ十分ニ述ベタコトデアリマ
スルカラ、其理由ハ申上ゲマセヌ、又同時
ニ此法案ガ恐ラク第三條ノ適用ニ依リマシ
テ、從來ノ組合ノ「アウトサイダー」ガ此
中ニ包含セラルヽモノデアルト見ナケ
レバナラヌト考ヘマスルガ、其場合
ニ今迄ノ肥料ノ價格ガ此「アウトサイダー」
ニ依ッテ、又更ニ優良ナル設備機械ヲ持ッテ
居ル所ノ會社ノ出現ニ依ッテ、其生產價格ガ
漸次低落シツヽアル現狀デアルト云フコト
ハ御承知デゴザイマセウ、但シ本年ハ特
別ノ理由デ、例ヘバ硫酸「アンモニヤ」ノヤ
ウナモノハ特ニ高ウゴザイマスルガ、是ハ
私共カラ言ハセルナラバ普通ノ現象デハナ
イ、詰リ異常時ノ狀態デアル、普通ノ場合
ニ於キマシテハ從來ノ統計カラ見マシテ
モ、優良ナル能力ヲ持ッテ居ル會社、ソレガ
出現スルコトニ依ッテ、其價格ガ漸次低落シ
ツヽアルコトハ事實デアッタノデアリマス、
ソレデアリマスルカラ、恐ラク本案ト云フ
モノハ、今迄ノ質問者モ幾人カ言ハレマシ
タ通リ、不良會社ヲ保護スベク、又「アウ
トサイダー」ヲ排擊スルガ爲ニ本案ヲ提出
シ、隨テ本案ニ依ッテ消費階級ハ、此儘デ居
レバ安ク買ハルベキ肥料ヲ、高ク購買シナ
ケレバナラヌト云フ、其狀態ニ追込マルヽ
ノデハナカラウカ、私ハ今迄ノ質問者ト同
ジヤウナ工合ニ、本案提出ニ依ッテ其肥料ノ
價格ガ高價ニナルノデハナイカト云フコト
ヲ考ヘテ居リマスガ、若シ肥料價格ガ高價
ニナルナラバ、消費者デアル農民階級ノ害
ニナリ、卽チ損失ニナルト云フコトハ勿論
デアリマス、ソレデアリマスルカラ果シテ
本案ニ對シテ農林大臣モ同ジヤウナ工合
ニ、商工大臣ト意見ヲ等シウスルヤ否ヤ、
農林大臣ニ對スル質問ハ此一點ダケニ致シ
テ置キマス
次ニ商工大臣ニ伺ッテ見ル、本法律ニ於テ
肥料製造業ト云フモノハ如何ナル範圍ノモ
ノヲ肥料製造業ト云フカ、所謂例ヘバ硫酸
「アムモニヤ」ノ製造業者モ、之ヲ製造スベ
ク專業ニ營ンデ居ル會社ガアリマス、又副
生產物トシテ、例ヘバ瓦斯會社デアルト
カ、或ハ製鐵業者デアルトカ云フ、所謂本
當ニ肥料ヲ造ル意思ナクシテ、副產物トシ
テ肥料ヲ造ル會社ガアリマス、是等モ尙ホ
肥料製造業ト謂フヤ否ヤ
第三ニ此法文カラ見マシテモ、先刻中上
ゲマシタ通リ、此法案ハ現在ノ「アウトサ
イダー」卽チ肥料同業組合ノ組合員ニアラ
ザルモノヲ包含スルト云フヤウナ意味ノ下
ニ、立案セラレタモノデハナイカト思フ、
ソレデアリマスルカラ此「アウトサイダー」
ヲ中ニ入レル爲ニ本案ヲ作ッタモノナリヤ
否ヤ
第四番目ニ、現在ニ於ケル日本ノ硫安、
或ハ過燐酸、或ハ石灰窒素、サウ云フヤウ
ナ所謂重要肥料ノ消費量ト云フモノハ、稍〓
一定シテ居ルガ如ク見エマスルケレドモ
ガ、事實サウデハナイ、時ニ依ッテ消長ガア
ル、其場合ニ於テドレ位ナ程度ノモノヲ、所
謂肥料年度ニ於ケル肥料ノ消費量トシテ御
認メニナラレルカ、其一々ニ付テノ問題ハ
何レ委員會ニ於テ問質シマスカラ、其細カ
イコトハ要リマセヌガ、大體斯ウ云フ風ナ
硫酸「アムモニヤ」ハ是位ナ消費量ガアルト
思フ、或ハ過燐酸石灰ハ斯ウ云フ風ナ消費
量ガアルト思フ、更ニ石灰窒素ハ是位ナ消
費量ガアルノデアルト云フ、先ヅ商工大臣
ノ御見込ヲ伺ヒタイト考ヘマス
第五番目ニハ、本法ノ施行區域ト云フモ
ノハ日本內地ダケデアリマス、朝鮮及ビ滿
洲ト云フモノハ此中ニ入ッテ居リマセヌ、何
ガ故ニ此朝鮮或ハ滿洲ヲ-滿洲ハ勿論日
本ノ法律ノ施行區域外デハアリマスルガ、
朝鮮ハサウデハナイ、サウスルナラバ、殊
ニ例ヘバ硫酸「アムモニヤ」ノ製造ノ如キ
モ、日本ニ於キマスル全生產能力ハ七十八
万瓲デアリマス、而モ朝鮮ニ於ケル朝鮮窒
素肥料ト云フモノハ年額四十万瓲ノ生產能
力ガアリマス、又關東州ニアリマスル滿洲
化學工業株式會社ハ十八万瓲ノ生產能力ガ
アリマス、斯ウ云フ工合ニ所謂日本ノ生產
高ノ半分モ生產シツヽアルヤウナ朝鮮窒素
株式會社ヲ、何ガ故ニ本法ノ施行區域外ニ
置イタノデアルカ、思フニ本法律ガ施行セ
ラレマスト、必ズ硫酸「アムモニヤ」ノ價格
ハ本法律ニ依ッテ制定セラレルデアリマセ
ウ、時ニ依ッテ多少ノ消長ハアルダラウ、時
ニ依ッテハ多少ノ消長ハアルニシテモ、一々
政府ノ認可事項デアリマスカラ、政府ノ認
可ヲ俟ツニアラズンバ、其價格ノ變化ト云
フコトハ出來マセヌ、ソレデアリマスカラ
其間ニ例ヘバ硫安ガ輸出セラルベキ狀態ニ
アル場合ニ、朝鮮ニ於キマシテハ本法ノ所
謂施行區域外ニ在リマスガ故ニ、容易ニ輸
出ヲ爲シ得ルノデアリマス、隨テ若シ利益
アリトスルナラバ、朝鮮窒素株式會社ハ其
利益ヲ容易ニ把握スルコトガ出來マス、然ル
ニ日本內地ニ於ケル製造工業者ト云フモノ
ハ、是等ノ利益ヲ得ントシテモ、本法ノ制限ヲ
受ケテ得ルコトガ出來マセヌ、ソレデアリマ
スカラ何ガ故ニ朝鮮窒素-日本ノ硫酸「ア
ムモニヤ」製造ノ約半額ニモ達スベキ朝鮮窒
素株式會社ヲ本法ノ施行區域外ニ置イタカ
第六番目ニハ、肥料ノ統制ニ當リマシテハ、
電力ノ統制ト云フモノガ必要デハナカラウ
カ、總テノ肥料ト云フモノハ、皆其重要ナ
ル生產費ト致シマシテ、電力料ガ考ヘラレ
ナケレバナリマセヌ、ソレデアリマスカラ
若シ肥料價格ヲ統制セントスルナラバ、先
ヅ電力ノ統制ガ先決問題デハナイカト考ヘ
ル、或ル會社ニ於キマシテハ一「キロ」一錢
二三厘デ買得ル會社モアルシ、或ル會社ニ
於キマシテハ七八厘デ電力ヲ用ヒテ居ル會
社モアリマス、サウ云フ工合ニ、卽チ本當
ニ公平ニ此法律ヲ適用シヨウトスルナラバ、
肥料ヲ數造スベキ製造會社ノ所謂條件ト云
フモノヲ稍、ミ均霑セシメルヤウニスルコト
ガ、公平ナル處置デハナイカト考ヘル、ソ
レデアリマスカラ商工大臣或ハ政府ハ此電
力ヲ統制スル意思アリヤ否ヤ、勿論是ハ遞
信大臣ノ問題デアリマスルガ、少クモ斯ウ
云フ法律案ヲ提出シタカラニハ、ソレ位ノ
コトハ御考ヘニナッテ提出ニナッタコトデア
ラウト思フ、ソレデアリマスカラ其意思ア
リヤ否ヤ
最後ニ極メテ簡單ナ事デハアリマスルガ、
一寸商工大臣ノ御話ガアリマシタカラ、其
言葉尻ヲ捉ヘル譯デハアリマセヌガ、念ノ
爲ニ御伺シタイト思フ、成程現在ノ同業組
合ニ依ッテ制裁規定ガアル、ソレデアリマス
カラ本法ヲ施行シナクテモ、十分ナル監督
ハ爲シ得ルカモ知レナイ、併ナガラ今迄アッ
タ所ノ其監督權ガ、今迄ニ何時御發動ニナッ
タカ、何囘御發動ニナッタカ、例ヘバ過燐酸
同業組合ノ如キモ「アウトサイダー」ガアリ
マシテ、數囘カ商工省ニ陳情ヲ致シマシテ
「アウトサイダー」ニ對スル所謂組合法ノ發
動ヲ促シタコトハ數囘アッタノデアリマス、
併シ商工當局ハ果シテ爲シタカドウカ私ハ
知ラナイ、ソレデアリマスカラオヤリニナッ
タカドウカ、此問題ヲ御伺シタイト思フ、
要スルニ此法律案ハ商工大臣數次ノ御說明
ガアリマシタケレドモ、私共ヲ納得セシム
ルコトハ出來ナイ、否、アナタノ御說明ヲ
伺ヘバ伺フ程、私共ニハ疑問ガ後カラ後カ
ヲト起ッテ來ルノデアリマス、ソレデアリマ
スカラサウ云フヤウナ問題ハ、是ハ意見ノ
問題ニナル虞ガアリマスカラ、委員會ノ席
上ニ於テ十分御伺致シマス、ソレデアリマ
スカラ今私ノ御質問ニ對シマシテ、農林大
臣竝ニ商工大臣ヨリモ、丁寧ナル御說明ア
ランコトヲ御願申ス次第デアリマス
〔國務大臣島田俊雄君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X00819360512&spkNum=35
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036・島田俊雄
○國務大臣(島田俊雄君) 只今野中君ノ御
質問中、農林大臣ニ質スト申サレタ點ニ付テ
御答致シマス、本案ノ提出ノ理由ハ、發行
商工大臣ヨリ述ベラレタ通リデアリマス、
卽チ本案ハ肥料ノ豐富ナル供給、低廉ナル
價格、之ヲ目標ト致シマシテ立案ヲ致シタ
モノデアリマス、隨テ此提出ニ付キマシテ
ハ、政府全體トシテノ責任ハ固ヨリデアリ
マスガ、主管ノ關係省ト致シマシテ、商工、
農林兩當事者ニ於キマシテ、極メテ親密ニ
協議ヲ遂ゲマシテ、本案ノ立案ヲ致シタ次
第デアリマス、而シテ農林省關係、卽チ消
費者側ノ立場ニ在ルト見ラルベキ農林省ノ
關係カラ致シマスレバ、消費者ノ希望ト致
シマシテ、本案ニ現ハサレテ居リマスヨリ
以上ニ統制サレタル所ノモノ、卽チヨリ以
上ノモノヲ理想トシ、希望スルト云フコト
ハアリマスケレドモ、我國ノ肥料業、製造
業竝ニ消費階級、ソレ等ノ兩者ヲ比較對照
致シマシタ、所謂經濟上ノ事情ニ鑑ミマシ
テ、農林當局ト致シマシテハ、此程度ノ法
案ハ然ルベキモノデアル、而シテ是ハ農民
大衆ニ對シテモ、此法案ノ實施ニ依ッテ利益
ヲ齎スモノデアルト、斯ウ云フ風ナ確信ヲ
持ッテ居ル次第デアリマスカラ、之ヲ附加ヘ
テ申上ゲテ置キマス、他ノ點ニ付テハ商工
大臣ヨリ御答ヲ願フコトニ致シマス
〔國務大臣小川〓太郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X00819360512&spkNum=36
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037・小川郷太郎
○國務大臣(小川〓太郞君) 御答辯致シマ
ス「アウトサイダー」ヲ加入セシムル目的ヲ
以テ、本法ヲ制定シヨウトスルノヂヤナイ
カト云フ御質問デアリマスガ、ソレハサウ
デアリマセヌ、適正ナル統制ノ基礎ヲ確立
センガ爲メデアリマス、次ニ此肥料業ハ專
業ノミカ、ソレトモ外ノ副業デヤッテ居
ルモノモ含ムカト云フコトデアリマスル
ガ、副製會社ノ中デ小規模ノモノハ含ミ
マセヌ、年產約一万瓲以上ノモノヲ含マ
シメヨウト云フ見込デアリマス、次ニ生
產費ナリ需給ノコトニ付テノ御質問デア
リマシタガ、數字ニ亙ッテ居リマスノデ、
委員會ニ讓リタイト思ヒマス、併シ本年
度ノ需要ノ見込ノ〓略ハ、硫安約百二十
万瓲、石灰窒素約二十万瓲、過燐酸百三十
万瓲位ニ見テ居リマス、ソレカラ其次ニ施
行地域ニ付テノ御尋デアリマシタ、本法ハ
勿論內地ニ適用サレルモノデアリマス、併
シ朝鮮等トハ非常ニ深イ關係ヲ持ッテ居リ
マスルノデ、同一方針デ統制ヲ圖ル積リニ
關係官廳ト打合セ濟ミニナッテ居リマス、
ソレカラ最後ニ過燐酸工業組合ニ對シテ、
工業組合法ニ依ッテ監督ヲシテ來タノデア
リマスガ「アウトサイダー」ニ對スル强制命
令ノ申請ガアッタケレドモ、御話ノ通リニ發
動致シマセヌデシタ、併シ本法ガ行ハレル
ニ至リマスレバ、此法律ニ依ッテ適正ニ監
督シ得ラレルモノト信ズルノデアリマス
〔野中徹也君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X00819360512&spkNum=37
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038・野中徹也
○野中徹也君 今ノ農林大臣ノ御答辯ガア
リマシタガ、私ハアノ御答辯ノ中ニ御不滿
デアル其樣子ダケハ伺ッタノデアリマス、併
ナガラ今オ居デニナリマセヌカラ、何レ是
ハ委員會ニ於テ農林大臣ノ本當ノ御意見ヲ
伺フコトニ致シマス、ソレカラ此法律ガ「ア
ウトサイダー」退治デナイト云フノデアリマ
スルナラバ、第三條ノ規定ハ是ハ任意規定
デアリマスカ、强行規定デハナイノデアリ
マスカドウカ、ソレカラ年產一万瓲前後ト
シマスルナラバ、八幡ノ製鐵所ダケノヤウ
ニ私ハ記憶致シテ居リマスルガ、八幡ノ製
鐵所ハヤハリ此會社ノ中ニ加入セシメルノ
デアリマスカドウデスカ、ソレカラ朝鮮ガ
同一步調ト云フヤウナ御答辯デゴザイマシ
タガ、若シ朝鮮ガ同一步調デアリマスナラ
バ、此本法ノ中ニ書込ンデモ差支ナイノデ
ハナイカ、勿論是ハ法ノ所謂取扱ノ問題デ
アリマスルカラ、特ニ其點ハ御質問申上ゲ
マセヌ、最後ニ所謂同業組合法ニ對シテ御
發動ガナカッタト云フ率直ナル御白狀ヲ承
リマシテ、洵ニサウデアラウト思フ、未ダ
曾テ商工省ノ方カラ監督ニ對スル發動ガ
アッタト云フコトヲ聞キマセヌカラ、或ハ不
敏ニシテ聞カナイノデハナイカト思ヒマシテ、
念ノ爲ニ御伺申上ゲマシタ、所ガ是等ノ問
題ニ對シテ何等ノ發動ガナカッタト云フ御
話デアリマスカラ、ソレ以上ハ追究致シマ
セヌ、併シサウ云フ風ナ工合デ、此監督規
定アルニ拘ラズ發動シナイヤウデアリマス
ルト、果シテ本法ガ出來テカラ後デモ發動
出來ルカドウカ、私ハ洵ニ疑問ト思ヒマス
ケレドモ、是ハ又後日ニ商工省ノ態度ヲ見
テカラ意見ハ申上ゲルコトニ致シマス、是
ダケ···
〔國務大臣小川〓太郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X00819360512&spkNum=38
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039・小川郷太郎
○國務大臣(小川〓太郞君) 重ネテ御尋ガ
アリマシタ點ノミヲ御答申シマス、第三條
ノ規定ハ任意規定デアリマスガ、第四條ニ
依ッテ組合ノ强制設立ヲ命ズルノ規定ガア
ルノデアリマス、ソレヲ御諒承願ヒマス、
モウ一ツハ一万瓲以上ハ日本製鐵會社ノミ
デアリマス、御答申シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X00819360512&spkNum=39
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040・野中徹也
○野中徹也君 今ノ御答辯ニ對シマシテモ
マグ質疑ガアリマスガ、何レ委員會ノ席上
ニ讓リマシテ、私ハ此程度ニシテ打切リマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X00819360512&spkNum=40
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041・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 是ニテ質疑ハ終局
致シマシタ、本案ノ審査ヲ付託スベキ委員
ノ選擧ニ付テ御諮リ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X00819360512&spkNum=41
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042・松永東
○松永東君 本案ハ議長指名十八名ノ委員
ニ付託セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X00819360512&spkNum=42
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043・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 松永君ノ動議ニ御
異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X00819360512&spkNum=43
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044・富田幸次郎
○議長(富田幸次郎君) 御異議ナシト認メ
マス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ、日程第
六、航路統制法案ノ第一讀會ヲ開キマス-
遞信大臣賴母本桂吉君
第六航路統制法案(政府提出)
第一讀會
航空統制法案
航路統制法
第一條本法ニ於テ海運業ト稱スルハ一
般ノ需用ニ應ジ船舶ニ依リテ人又ハ物
ヲ運送スル事業ヲ謂フ
第二條本法ハ帝國臣民又ハ帝國法人ガ
遠洋區域、近海區域又ハ勅令ヲ以テ定
ムル沿海區域ニ於テ營ム海運業ニ之ヲ
適用ス
第三條政府ハ海運業ノ健全ナル發達ヲ
圖ル爲必要アリト認ムルトキハ海運業
者ニ對シ不當ナル競業ノ防止ニ關シ勸
告ヲ爲スコトヲ得
前項ノ勸〓其ノ效ヲ奏セザル場合ニ於
テ政府ハ必要アリト認ムルトキハ海運
業者ニ對シ航路ノ經營ニ關スル協定ヲ
爲スベキコトヲ命ジ又ハ航路ノ經營ヲ
禁止若ハ制限スルコトヲ得
前項ノ航路ノ經營ノ禁止又ハ制限ハ實
情ニ依リ巳ムコトヲ得ズト認ムル場合
ヲ除クノ外前項ノ規定ニ依リ命ゼラレ
タル協定成ラザル場合ニ非ザレバ之ヲ
爲スコトヲ得ズ
第四條政府ハ運賃其ノ他ノ航路ノ經營
條件ガ公益ニ反スト認ムルトキハ海運
業者ニ對シ其ノ經營條件ニ關シ必要ナ
ル命令ヲ爲スコトヲ得
第五條海運業者ハ命令ノ定ムル事項ヲ
行政官廳ニ屆出ヅベシ
第六號行政官廳ハ必要アリト認ムルト
キハ海運業者ニ對シ其ノ業務及財產ノ
狀況ニ關シ檢査ヲ爲シ又ハ報〓ヲ爲サ
シムルコトヲ得
第七條帝國臣民又ハ帝國法人ニ非ザル
者ノ營ム海運業ニシテ其ノ資本ノ全部
又ハ一部ガ帝國臣民又ハ帝國法人ニ屬
スルモノニ付テハ勅令ノ定ムル所ニ依
リ本法ヲ準用ス
第八條第三條第二項又ハ第四條ノ規定
ニ依ル命令ヲ爲サントスルトキハ勅令
ニ別段ノ規定アル場合ヲ除クノ外航路
統制委員會ノ議ヲ經ルコトヲ要ス
航路統制委員會ニ關シ必要ナル事項ハ
勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第九條第三條第二項ノ規定ニ依ル航路
ノ經營ノ禁止若ハ制限ニ關スル命令又
ハ第四條ノ規定ニ依ル命令ニ違反シタ
ル者ハ五千圓以下ノ罰金ニ處ス
第十條第六條ノ檢査ヲ拒ミ、妨ゲ若ハ
忌避シ又ハ同條ノ規定ニ依リ命ゼラレ
タル報〓ヲ爲サズ若ハ虚僞ノ報〓ヲ爲
シタル者ハ三百圓以下ノ罰金ニ處ス
第十一條海運業者ハ支配人其ノ他ノ代
理人又ハ船長其ノ他ノ從業者ガ其ノ業
務ニ關シ本法又ハ本法ニ基ク命令ニ違
反シタルトキハ自己ノ指揮ニ出デザル
ノ故ヲ以テ其ノ處罰ヲ免ルルコトヲ得
ズ
第十二條本法又ハ本法ニ基ク命令ニ依
リ海運業者ニ適用スベキ罰則ハ其ノ者
ガ法人ナルトキハ理事、取締役其ノ他
ノ法人ノ業務ヲ執行スル役員ニ、未成
年者又ハ禁治產者ナルトキハ其ノ法定
代理人ニ之ヲ適用ス但シ營業ニ關シ成
年者ト同一ノ能力ヲ有スル未成年者ニ
付テハ此ノ限ニ在ラズ
第十三條第五條ノ規定ニ違反シタル者
ハ五百圓以下ノ過料ニ處ス
非訟事件手續法第二百六條乃至第二百
八條ノ現定ハ前項ノ過料ニ付之ヲ準用
ス
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
〔國務大臣賴母木桂吉君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X00819360512&spkNum=44
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045・頼母木桂吉
○國務大臣(賴母木桂吉君) 只今上程サレ
マシタ航路統制法案ノ提出ノ理由ヲ簡單ニ
說明致シマス、本邦海運ハ明治初期以來政
府及ビ當業者ノ不撓ノ努力ニ依リマシテ、
逐年異常ナル發達ヲ遂ゲマシテ、現在ニ於
キマシテハ三大海運國ノ一トシテ、世界ノ
邊陬ニマデ航路網ヲ擴充スルニ至ッタノデ
アリマス、然ルニ近時本邦海運ノ顯著ナル
發展ニ伴ヒマシテ、動モスレバ邦船相互ノ
間ニ於テ無謀ナル競爭ヲ惹起スルノ傾向ヲ
馴致シツヽアリマスコトハ、我ガ國運ノ伸
張上洵ニ遺憾トスル所デアリマス、四面環
海ノ我國ト致シマシテハ、海運ガ經濟上竝
ニ國防上極メテ重要ナル使命ヲ有スルコト
ハ、更メテ申スマデモナイコトデアリマシ
テ、斯ノ如キ競爭ハ啻ニ我ガ海運資本ヲ空
費シ、海運業ノ健全ナル發達ヲ阻碍スルノ
ミナラズ、我ガ海運政策又ハ通商貿易政策
ニモ背馳スル結果ヲ招來スルノデアリマス、
仍テ速ニ斯ノ如キ弊害ヲ芟除シ、適正ナル
規律統制ノ下ニ航路ノ運營ヲ爲サシメ、斯
業ノ合理的經營ニ依リ、對外競爭力ノ根幹
ヲ培養セシメ、以テ近年益、、激化ノ趨勢ニア
ル國際海運競爭ニ處シ、本邦海運ヲシテ更
ニ一段ノ進出ヲ圖ラシメンガ爲ニ、茲ニ本
案ヲ提出致シマシタ次第デアリマス、何卒
御審議ノ上御協贊アランコトヲ希望致シマ
ス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X00819360512&spkNum=45
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046・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 質疑ノ通〓ガアリ
マス、之ヲ許シマス-三浦虎雄君
〔三浦虎雄君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X00819360512&spkNum=46
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047・三浦虎雄
○三浦虎雄君 私ハ此法律案ハ大資本ノ大
會社ヲ擁護シテ、小資本ノ所謂社外船ヲ抑
壓スルモノデアッテ、寧ロ此法律案ノ實現ニ
依リマシテ日本ノ海運業ノ發展ハ阻害セラ
ルヽモノナリト考ヘルノデアリマス、私ハ
遞信大臣ハ此法律ガ却テ日本ノ將來ニ於ケ
ル海運業ノ發展ヲ阻碍スルト考ヘナイカ否
カ、其點ヲ御伺シタイ
更ニ第二點ハ日本ノ海運業ノ特殊地位ト
云フコトニ付テ御考ヲ願ヒタイ、日本ノ世
界ニ於ケル海運業ノ特殊地位ト云フモノハ、
日本ノ國家ガ資源ニ乏シクシテ、海外カラ
豐富ナ原料ヲ持ッテ參リマシテ、ソレヲ再生
產シテ海外へ輸出スルコトニ依ッテ、日本ノ
經濟ヲ幾ラカ豐ニシテ居ルノデアリマス、
然ルニ日本ノ國ト云フモノハ海洋ニ包マシ
テ居リマシテ、〓ネ船舶ニ依ッテ資料ヲ運
ブコトガ出來ルト云フコトガ、他ノ陸ニ圍
マレタ國ニ比シマシテ遙ニ有利ナ點デアリ
マー、卽チ陸上ノ運送費ト云フモノハ、船
舶ニ依ル運搬費ノ約十倍ニ當ルノデアリマ
ス、言葉ヲ換ヘテ申上ゲマスレバ、陸上ノ
運搬費ノ十分ノ一デ、海ヲ以テ繞ラサレタ
國ハ其原料ヲ海外カラ持ッテ來ルコトガ出
來ルト云フ情勢ニ在ルノデアリマス、而モ
亦日本ノ海運業ガ世界ノ海運業ニ對シテ有
利ナ地位ニ在ルノハ、世界ノ資源ト云フモ
ノガ今日デハ舊世界、卽チ歐羅巴各國ノ方
面ニハ資源ガ漸ク乏シクナリマシテ、御承
知ノ通リ世界ノ今日ノ資源ト云フモノハ、
亞弗利加、或ハ南洋方面ニ在ルノデアリマ
ス、而シテ歐羅巴各國カラ斯ウシタ資源ノ
豐富ナル土地へ參リマスノニハ、或ハ「スエ
ズ」運河ヲ通過シ、或ハ「パナマ」運河ヲ通過
シナケレバナラヌノデアリマス、隨テ此運
河ヲ通過スルコトニ依リマシテ、斯ウシタ
船舶ハ莫大ナル費用ヲ負擔シテ居ル、然ル
ニ日本ハ日本ヲ出マシテ、是等ノ運河ヲ通
過スルコトナクシテ、直接ニ是等ノ資源國
へ參リマシテ、サウシタ原料ヲ搭載シテ歸ッ
テ參ルコトガ出來ル、コヽニ日本ノ海運業
ノ獨特ノ地位ガアルト私共ハ考ヘル、サウ云
フヤウナ情勢デアリマスカラ、日本ノ海運
業ト云フモノハマダ今日デハ斯ウシタ統制
法ヲ必要トシナイ、多々益〓辨ズル時代ニ在
ルト私ハ考ヘマスルガ、遞信大臣ハ今日ノ
日本ノ情勢ハ日本ノ經濟的地位ノ上カラ見
マシテモ、斯ウシタ統制法ヲ必要トスルヤ
ウナ窮迫シタ情勢ニ臨ンデ居ルカ否カ、此
點ヲ御伺シタイノデアル、又今日マデノ日
本ノ海運業ノ發展ト云フモノハ郵船、商船
ト云フヤウナ大會社ガ之ヲ開拓シタノデハ
ナクシテ、所謂社外船ト稱スル所ノ船舶、
之ニ勇敢ナル海員ガ乗組ンデ世界ノ隅々マ
デ到ル處ニ參リマシテ、サウシテ殊ニ歐羅
巴大戰爭ヲ機會トシテ、今日ノ日本ノ海運
業ノ發達ヲ來シタ、斯樣ニ考ヘマスルナラ
バ、今日ノ日本ノ海運業ト云フモノハ、所謂
大資本ノ大會社ニ依ッテ開拓セラレタルニア
ラズシテ、ソレハ實ニ斯ウシタ社外船ニ依ッ
テ開拓セラレタト思フノデアリマスルガ、
遞信大臣ハ尙且ツ是等ノ海運業ニ多大ナル
貢獻ヲシタ所ノモノハ、卽チ新航路ヲ開拓
シタ所ノモノハ、依然トシテ大會社デアル
ト御考ヘニナルカ否カ、又斯ノ如キ多大ナ
ル勞力犧牲ヲ拂ヒマシテ漸ク採算ガ取レル
ヤウニナリマスト、是ハ何時デモ大資本ノ
常デアリマスガ、忽チ大キナ船會社ガ割込
ミマシテ、其航路ヲ奪ッテ、ソレヲ定期航路
トシテシマフ、定期航路ト致シマスト、各
種船舶ヲソレニ配船致シマシテ、政府カラ
莫大ナル保護奬勵金ヲ受ケテ居ル、斯クシ
テ多大ナ犠牲ヲ拂ヒ、折角開拓シタ所ノ社
外船ハ、其航路カラ驅逐セラレル現狀デア
リマス、而シテ此保護奬勵金ハ、此窮迫セ
ル財政ニ於テ多大ナル負擔ヲ國民ヲシテ擔
ハシメテ居ルノデアリマス、例ヘバ南米航
路ノ如キ六十万圓ノ保護奬勵金ヲ與ヘテ居
ル、一航海約十万圓デアル、是ハ荷物ガ無
クトモ乘リ手ガナクテモ、尙且ツ何等損失
ガナイノデアリマス、而モ此船舶ハ日本ノ
高イ炭ヲ積ンデ向フヘ參ッテ居ルノデハナ
イ、南阿ノ「ダーバン」ニ寄リマシテ、アノ
勞力ノ安イ、又炭價ノ安イ南阿ノ石炭ヲ腹
一パイ積ンデ南米へ參リ、又歸リニ彼處ノ
石炭ヲ積ンデ日本へ歸ル、サウシテ遞信省
ヘ出ス所ノ報告書ニハヤハリ日本ノ石炭ヲ
積ンデ商賣シテ居ルヤウニ、高イ石炭ノ報
告ヲ出シテ、此保護奬勵金ヲ受取ッテ居ル、
私共ハ如何ニ大資本ヲ擁スル所ノ大會社ガ
國家ノ厚キ思惠ニ浴シテ、小資本ノ所謂社
外船ガ斯ウシタ不利ノ立場ニアルカト云フ
コトヲ、目前ニ見ルノデアリマス、斯ウシ
タ事實ヲ遞信大臣ハ御認メニナルヤ否ヤ
更ニ此法律案ニ依リマスト、成程之ニ依
リマシテ航路ノ統制ハ出來マス、又無理ナ
競爭ヲ杜絕スルコトモ出來マセウ、併ナガ
ラソレハ日本ノ船舶、日本ニ國籍ヲ有スル
船舶ニ對シテハ之ヲ統制スルコトガ出來マ
スガ、外國船ニ對シテハ之ヲドウスルコト
モ出來ナイ、單リ國內航路ノミナラズ、海
外航路ノ上ニ於テモ、斯ウシタ統制法ヲ適
用ナサルノデアリマスカラ、若シモ外國船
ガ斯ウシタ航路ニ入ッテ來タ場合、如何ナル
對策ヲ御持チニナルカ、卽チ私共ハ多々益〓
辨ズル日本ノ海運業ノ前途デアルカラ、斯
ウシタ統制法ヲ必要トシナイガ、假ニ此統
制法ノ適用ノ結果、日本ノ社外船ガ制限セ
ラレタト致シマシテモ、外國船ガ入リ得ル
餘地ガ十分ニアルノデアリマスカラ、若シ
モ外國船ガ其處ニ入リマシテ、日本ノ統制
セラレタル海運業ト競爭スルヤウニナッタ
場合ニハドウナサルカ、此點ニ付テモ御伺
致シタイ、ソレカラ英國ノ如キハ獨リ斯ウ
シタ定期航路ニ對シマシテ保護奬勵金ヲ與
ヘルノミナラズ、又斯ノ如キ社外船ノ特殊
ノ性質、卽チ新ナル航路ヲ開拓スル、或ハ
採算ノ疑ハシキ點ニマデ船ヲ送ッテヤル、斯
ウシタ社外船ノ特殊ナ働キニ對シテ、現ニ
二百万磅ノ保護奬勵金ヲ與ヘテ居リマス、
卽チ斯ウシタ航路ノ統制ヲナサル上ニ於キ
マシテハ、一面ニハ國ガ海運業ノ發展ノ爲
ニ、社外船ヲ保護スル所ノ規定ト相竝ンデ
統制法ヲ實施スルニアラズンバ、私共ハ日
本ノ海運業ノ將來ノ發展統制ト云フモノハ
企圖シ得ラレナイデアラウト考ヘル、此點
ニ對シマシテ遞信大臣ハ將來社外船ニ對シ
テハ、ドウシタ御考ヲ御持チニナルカ、又
私共ハ今囘ノ法律案ガ何ヲ動機トシテ出カ
タト云フコトニ付テハ敢テ惡イ推量ハ致シ
マセヌ、併シ現下ノ情勢ハ必シモ斯ウシタ
統制ヲ必要トセズ、多々益、、辨ズルノ現狀デ
アルト云フコトヲ信ジマスガ故ニ、此法律
案ニ付テハ私共ハ全面的ニ反對デアル、而
シテ此事ガ卽チ角ヲ矯メテ牛ヲ殺スト云フ
ヤウナ結果ニナルト信ズルガ、此點ニ關ス
ル遞信大臣ノ御所見ヲ御伺ヒシタイ
〔國務大臣賴母木桂吉君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X00819360512&spkNum=47
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048・頼母木桂吉
○國務大臣(賴母木桂吉君) 三浦君ノ御質
問ニ對シテ御答ヲ致シマス、日本ノ海運業
ガ自由競爭ニ依ッテ發達シテ今日ニ來タノ
ダ、ソレヲ今統制スルコトハ、海運業ノ發
達ヲ阻碍スルモノデアルト云フヤウナ意味
ノ御質問デアリマシタ、本法ノ第三條ニ揭
ゲテアリマスヤウニ、本法ノ眼目トデモ
申シマス目的ハ、我ガ海運業ノ健全ナル發
達ヲサセヨウト云フコトガ目的デアルノ
デ、本法ニ依ッテ海運ノ發達ヲ助長スル
コトハ、十分ニ私ハ出來ルト考ヘルノデア
リマスガ、決シテ阻碍スルモノデハナイト
信ジマス、ソレカラ日本船ヲ取締ツテ外國船
ヲ取締ラナイノハ、ドウデアルカト云フ御
尋ニ對シテ御答ヲシマス、日本船同志ノ競
爭ヲ取締ルコトハ事實デアリマス、外國船
ヲ取締ラナイノハ、元來我國ハ海運國デア
リマシテ、海外ニ非常ニ發展ヲ致シマシタ
結果、今日デハ世界ノ海運國トシテ、第三
位ニ位スル程ニ發展ヲシテ參ッタノデアリ
マス、海外進出ガ我ガ海運國策デアリマス
カラ、日本デ若シモ外國船ヲ取締ルト云フ
コトニナリマスレバ、海外ニ於テ亦日本船
ガ排斥セラルヽト云フコトハ、是ハ當然ノ
コトデアリマス、ソレ故ニ外國船ヲ日本ニ
於テハ取締ラナイ、其代リ我國ノ船舶ハ世
界ノ有ユル所ニ發展シテ航路網ヲ充實ス
ル、斯ウ云フ立前デ居ルノデアリマス、ソ
レデ統制ヲスレバ發達シナイト云フコトガ
一寸私ニ分ラナイノデアリマスガ、兎ニ角
日本人同志デ競爭シテ、無駄ナ費用ヲ使
ヒ、無駄ナ損失ヲ重ネ、無駄ナ資本ヲ使フ
コトヲ統制シテ、外國ノ船ガ來タラバ、ソ
レトウント競爭ヲシテ、其入ッテ來ルヤツヲ
防遏シテ、外國ノ船舶ヲ日本バカリデナ
ク、日本ノ船舶ガ有シテ居ル航路外ヘ驅逐
スルト云フコトガ目的デアルノデアリマ
ス、決シテ日本船ノ發達ヲ阻碍スルト云フ
考ハ無論ナイシ、サウ云フ結果ニハ斷ジテ
ナラナイト考ヘマス、ソレカラ大會社ヲ助
ケテ小會社ヲ非常ニ困ラセル案デハナイカ
ト云フコトデアリマスガ、御承知ノ通リニ
日本ノ不定期船ガ世界ノ各處ニ新航路ヲ見
出シテ發展ヲ致シテ居リマスコトハ、
驚クベキ努力ヲ致シテ居ルノデアリマス、
日本デハ定期船ニ對シテ航路補助ヲ致シテ
居リマス、ソレハ日ヲ定メテ何處カラ何處
マデノ間ヲ月ニ何囘航行スル、每日或ハ航
行スル、是ニハ郵便物ヲ載セル、其代リニ
之ニ補助ヲ與ヘル、斯ウ云フ立前ニナッテ居
リマスガ、今英國ノ例ヲ引カレテ、英國ノ
不定期船ニ英國政府ガ國費ヲ以テ之ヲ補助
シテ居ル、是ハ私ハ洵ニ海運政策トシテ學
ブベキコトダト思ッテ居リマス、故ニ日本ノ
航路補助ニ對スル再檢討ヲシナケレバナラ
ヌ時期ガ、到達シテ居ルノデハナイカ、又
不定期船ト雖モ、若シモ今日本ノ船デ外國
ニ進出シテ居リマスル中デ、所謂大西洋航
路倫敦、紐育ト云フヤウナ航路ニハ、マ
ダ日本ノ船ガ出テ居リマセヌ、少シハアリ
マスケレドモ、是ハ見ルニ足ラナイモノデ
アリマス、斯ウ云フヤウナ大航路ニ日本ノ
船舶ガ進出スルト云フコトハ、私ハ非常ニ
必要ナコトト考ヘテ居ルノデアリマス、斯
ウ云フヤウナモノハ定期航路デナイトシテ
モ、相當之ニ對シテ補助ヲ與ヘル方法ヲ考
ヘルコトハ、遞信省トシテハシナケレバナ
ラヌコトデハナイカト只今色々調査ヲ致シ
テ居リマス、要スルニ航路補助ニ對シテハ
再檢討ヲスルト云フコトダケハ私玆ニ明言
ヲ致シマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X00819360512&spkNum=48
-
049・三浦虎雄
○三浦虎雄君 簡單デスカラ自席カラノ發
言ヲ御許願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X00819360512&spkNum=49
-
050・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 御許致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X00819360512&spkNum=50
-
051・三浦虎雄
○三浦虎雄君 遞信大臣ノ御答ハ極メテ不
滿足デアリマス、殊ニ私ノ質問ハ、外國船
ガ內地航路ニ入ッテ來ルヤウナ場合ガ出來
タラ、幾ラ統制法ニ依ッテ日本ノ船舶ヲ統制
シテモ、何等ノ效果ガナイヂヤナイカト云
フコトヲ御尋シタノデアリマスルガ、其點
ニ付テハ御聽違ヒノヤウデアリマス、尙ホ
他ノ點ニ付キマシテモ御尋ヲシタイノデア
リマスガ、是ハ委員會ニ讓ルコトニ致シマ
シテ、私ノ質問ハ是デ止メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X00819360512&spkNum=51
-
052・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 岡崎憲君
〔岡崎憲君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X00819360512&spkNum=52
-
053・岡崎憲
○岡崎憲君 私ハ只今誰ヤラガ申上ゲタ所
ノ質問ト、遞信大臣ノ御答ト其二ツヲ聽キ
マシタガ、私ハ其何レデモナイノデアリマ
ス、謂ハヾ此不當ナル競爭ハ海運業ノ發達
ヲ阻碍スル、ソレデ此統制法案ト云フモノ
ガ出來タ、其統制法案ニ依ルナラバ日本ノ
海運業ノ健全ナル發達ヲ阻碍スルト云フノ
デアリマスガ、私ハサウハ思ハナイノデア
リマス、又遞信大臣ノ御答辯ニ依ルト、日
本ノ海運業ノ發達ヲ助長スルト云フノデア
リマスガ、此統制法ニ依ッテハ助長ニナラ
ナイト思フノデアリマス、何故ナラバ此競
爭スルト云フコトソレ自體ガ、今日マデノ
海運業ノ發達ヲ來シタモノデアリマス、謂
ハヾ總テノ產業ガ所謂自由主義經濟ノ下ニ
今日マデ或ル程度ノ發達ヲ遂ゲテ來タナデ
アリマスガ、海運業モ亦同樣デアリマシテ、
此國際性ト云フ特異ナ性質ヲ持ツ關係カラ、
更ニ一層自由主義經濟ノ下ニ發展シテ來タ
モノデアリマス、デアリマスカラ、所謂自
由競爭ソレ自體ガ寧ロ發展ヲ助ケテ來タモ
ノデアリマス、デ今日統制法ト云フモノガ
出來ルナラバ、是ハ謂ハヾ私カラ言フナラ
バ、其發展ヲ阻碍スルモノデアリマシテ、
進ム方向ニ行クノヲ止メテ居ル、所謂足踏
ミ狀態ヲサセルモノデアルト云フコトヲ私
ハ申上ゲルノデアリマス、ソレデ、不當ナ
ル競爭ヲ避ケルガ爲ニ此法案ヲ出シタト云
フノデアリマスルガ、今ノ遞信大臣ノ御答
ニ依ッテ其御考ハ私ニ分ッタノデアリマス、
此點ヲ第一トシテ御伺スル積リデアッタノ
デアリマス
次ニハ此統制法案ガ出來タナラバ、私ハ
其次ニ來ル所ノモノハ補助金政策ニ行クノ
デハナイカ、謂ハヾ此統制ガ出來テ或ル航
路ヲ統制スルナラバ、其次ニハ其航路ニ對
シテ補助金ヲ與ヘルヤウニナルノデハナイ
カ、航路ノ統制ト云フコトハ補助金政策ニ
行ク一ツノ階段デアリ、第一步デアルト私
ハ考ヘルノデアリマス、ソレハ何故ナラバ、
海運ト云フモノガ國際性ト云フ一ツノ特異
性ヲ持ッテ居ル爲ニ、之ニ統制ヲ加ヘマシテ
モ今日所謂盛ニナッテ來マシタ所ノ國家主
義ト云フ立場カラ統制ヲ加ヘル、所謂自國
民ハ自國船ヲ選べ、自國ノ貨物ハ自國船ニ
積メト云フヤウナ方法ガ執ラレルノデアリ
マス、ダガ其結果トシマシテ、其處ニ持ツ
所ノ、其內部ニ持ツ所ノ矛盾ニ依ッテ、其會
社ノ經濟的發展ハ出來ナイノデアリマス、
デアリマスカラ遂ニハ補助金ヲ受ケルノ
デナケレバ、其會社ノ經營ガ成立タナクナ
ルノデアリマス、如何ニ所謂自國船主義、
或ハ自國家主義ト云フモノヲヤリマシテモ、
遂ニハ補助金マデ行カナケレバ其會社ハ立
行カナイ、デアリマスカラ、此統制法案ヲ
出ス時ニ、最後ニハ補助金ヲ出サナケレバ
ナラヌト云フ肚ヲ決メテ御出シニナッタカ
ドウカ、ソレヲ御伺シタイノデアリマス次
ニ御伺シタイコトハ、先程申上ゲマシタ通
リニ、補助金ヲヤラナケレバナラナイ程ノ
經營ノ狀態ニナルノデアリマスカラ、其結
果ト致シマシテハ、其船ニ從事スル所ノ海
員ノ勞働强化ト云フコトニナルノデアリマ
ス、謂ハヾ日本ノ荷主ハ高イ運賃ヲ拂ッテモ、
自分ノ國、日本ノ船ニ積マケレバナラヌト
云フ國家主義ト云フ言葉ノ上カラ來ル所ニ
重壓ヲ感ジテ、嫌々ナガラ積マナケレバナ
ラヌト云フヤウナ狀態ニナルノデアリマス、
一方勞働者ノ方ニ對シマシテハ、多クノ正
當ナル要求ヲ持フテ居リマシテモ、ソレハ
當分ノ間控ヘテ置ケト云フコトニナルノデ
アリマス、デアリマスルカラ、私ハ此統制
法案ヲ出ス時ニ、海員ニ對スル所ノ保護政
策ト云フモノヲ御考ヘニナッタカドウカ、統
制法案ト相竝ンデ海員ノ保護ヲヤラナケレ
バナラヌ、是ハ海員ト云フモノハ限定サレ
タ所ノ特殊ノ勞働デアリマスカラ、是ニハ
特殊ノ保護ガ必要デアルト思フノデアリ
やく、今日英國ニ於キマシテハ、海員ニ對
シマシテ特殊ノ保護ヲヤッテ居ルト云フコ
トハ、是ハ當然デアリマス、例ヘテ申上ゲ
マスルナラバ、海員ニ對シマシテ養老金制
度ト云フヤウナコトガ古クカラ行ハレテ居
ルノデアリマス、サウ云フヤウナコトヲ御
考ヘニナッタカドウカト云フコトヲ御尋致
シマシテ、簡單ナル私ノ質問ヲ終ル次第デ
アリマス(拍手)
〔國務大臣賴母木桂吉君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X00819360512&spkNum=53
-
054・頼母木桂吉
○國務大臣(賴母木桂吉君) 統制ノ結果補
助金ヲ給スルコトヲ覺悟シナケレバナラナ
イノデハナイカ、サウ云フコトヲ考ヘナケ
レバナラナイデハナイカト云フ御尋デアリ
マスルガ、統制ヲ致シマス爲ニ無駄ナ競爭
ヲ內國船、內地船ハ互ニ避ケマシテ、無駄
ナ資本投下モ之ヲ避ケ、又無駄ナ競爭費用
モ之ヲ節約シテ、寧ロ其船會社ヲシテ健全
ニ發達セシムルコトニナルノデアリマスル
カヲ、此統制ニ依ッテ寧ロ非常ニ會社ノ經營
狀態ハ好クナルコトヽ信ズルノデアリマス、
併シ此統制ト、ソレカラ補助トノ問題ハ全
然別箇ノ問題デアリマス左樣御承知ヲ願
ヒマス、ソレカラ統制ノ方針下ニ於ケル勞
働强化ノ問題ニ付キマシテハ、統制ノ結果
ハ海運界ガ健全ニ發達致シマスルカラ、勞
働側ニモ利益ガアルノデアリマス、遞信省
ニ於テハ一方ニ於テ勞働者ノ福利ヲ增進致
シマスル爲ニ、其方法、其手段ニ付キマシ
テハ、十分ニ考慮ヲ致シテ居リマス、何レ
此問題ニ付テモ具體的ノ案ヲ具シテ實行ヲ
致シタイ、斯ウ云フヤウニ考ヘテ居リマス、
左樣御承知ヲ願ヒマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X00819360512&spkNum=54
-
055・岡崎憲
○岡崎憲君 簡單デアリマスカラ自席カ
う.発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X00819360512&spkNum=55
-
056・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 許可致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X00819360512&spkNum=56
-
057・岡崎憲
○岡崎憲君 最初ノ御答ニ付テハ少シク滿
足シナイ所モアリマスルガ、最後ノ點ニ於
キマシテ、統制ノ結果、段々利益ヲ得テ、
又勞働者側ノ方ニモ大變好クナルヤウニナ
ル、ソレデ其爲ニ勞働者ニ對シマシテ、相
當ナル保護ヲスルコトヲ考慮スルト云フ御
話デアリマシタガ、私ハ其御返答ヲ承リマ
シテ滿足スル者デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X00819360512&spkNum=57
-
058・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 高岡大輔君
〔高岡大輔君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X00819360512&spkNum=58
-
059・高岡大輔
○高岡大輔君 私ハ遞信大臣ニ依ッテ先程
說明サレマシタ航路統制法案ニ對シテ質
欝ヲ致シマス、此法案ハ一見シタ所、無難
ノヤウニ見受ケラレルノデアリマスルガ、
少シク其條文ヲ檢討致シマスルト、ソコニ
ハ恐ルベキモノヲ見出シ得ルノデアリマス、
此法案ヲ檢討致シマスルニ際シ、何レノ法
文モ其通リデアリマスルガ、先ヅ其運用ニ
當リマシテ、中々其條文通リニハ吾々ハ望
ミ得ナイコトガアルノデアリマス、ドウシ
テモ感情ノ動物デアル人間ガ運用スルノデ
アル以上、其法文ニ對シテ唯文字ノ上ノミ
デナクシテ、其文章ノ中ニ含マレテ居ル總
テノ意義ヲ、其表裏カラ考察シナケレバナ
ラナイ、斯樣ニ考ヘルノデアリマス、ソレ
ト同時ニ此法案ハ、其性質上決シテ單獨ニ
考へ得ベキモノデハナイコトガ明白デアリ
せい、卽チ航路統制法案ハ實ニ海外貿易ト
密接不離ナルモノデアリマシテ、其及ボス
所ハ洵ニ廣イモノデアルト申サナケレバナ
リマセヌ、ソレ故私ハ此法案ニ對シテ、是
ガ運用上カラ來ル所ト、此法案ガ關聯スル
所ノ海外貿易ノ此二點カラ論ジ、且ツ質疑
ヲ致シタイト存ジマス
先ヅ航路統制法ノ第三條ヲ見マスルト「政
府ハ海運業ノ健全ナル發達ヲ圖ル爲必要ア
リト認ムルトキハ海運業者ニ對シ不當ナル
競業ノ防止ニ關シ勸〓ヲ爲スコトヲ得」ト
アリマス、卽チ必要アリト認ムル場合ハ、
適當ナル競爭ヲ防止スルコトニ付テ勸〓ス
ルコトガ出來ルトアリマスガ、不當ナル競
爭トハ、然ラバ何ヲ意味スルコトデアルカ、
此點ヲ大臣ニ御聽シタイト思ヒマス、先ヅ
船會社ニ關スル競爭ト言ヒマスレバ、大體
之ヲ大キク分ケマスレバ第一ガ航路デス、
第二ガ船舶ノ改良デアッテ、此中ニハ「ス
ピード」ノ優劣モ入リマス、第三ニハ乘客竝
ニ貨物取扱上ニ於ケル優劣ノ問題デアリマ
ス、第四ガ運賃ノ引下問題、是等ガ船舶會
社ニ於ケル競爭デアルノデハナイカ、斯樣
ニ私ハ考ヘテ居リマス、所デ此第一ノ航路ノ
競爭トハ、然ラバ何ヲ意味スルカ、海ハ卽
チ公海デアリマシテ、茫漢タル大海原デア
リ、船舶ハ何處ヲ通ラウトモ構ハヌヤウナ
モノヽ實際ハ殆ド陸上ニ於ケル鐵道線路
ノ如キ觀ガアルノデアリマス、ソコデ競爭
線トハ何ヲ意味スルカ、積荷スル處ト荷揚
ゲスル港ガ同一ノ場合デアルカ、ソレトモ
更ニ其寄港地マデヲ其中ニ含ムカ、例ヲ擧
ゲマスレバ、大阪商船ノ神戶、門司、大連
ノ此航路ト、近海郵船ノ鹿兒島、長崎、大
連ノ此航路トハ、一見競爭線ニアラザルガ
如キ觀ガアルノデアリマス、卽チ一ツハ神
戶ヲ出發シ、一ツハ鹿兒島ヲ出發シテ居リ
マス、併ナガラ其「ヒンター·ランド」ノ奧
ノ方ヲ考ヘテ行キマスト云フト、卽チ其內
容カラ言ヒマスルト云フト、此二ツノ線ハ
全ク競爭線デアリマス、之ニ反シテ大阪カ
ラ神戶、基隆ニ行ッテ居リマス所ノ、是ハ近
海竝ニ大阪ノ兩社ガヤッテ居リマスルガ、此
航路ト、ソレカラ次ハ大阪商船ガ單獨デヤッ
テ居リマスルガ、大阪、神戶、鹿兒島、沖
繩ノ此航路トハ、同ジ航路ヲ通ッテ居リマス
モノノ、實際ニ於テハ是ハ競爭線デハ
ナイノデアリマス、又郵船會社ガヤッ
テ居リマスル神戶、門司、上海ノ此線
ハ、歐洲航路、「ボンベイ」航路、其他有
ユル航路ト是ハ同一ノモノデアリマスルガ、
世間デハ何等之ヲ競爭線トハ見テ居ナイ、
然ラバ此航路ヲ一體何ヲ以テ競爭航路トス
ルカ、之ヲ判別スルコトガ、先ヅ第一ニ此
航路統制法ニ關スル至難ノ點デアルト私ハ
斯樣ニ考ヘテ居リマス、航路ハ、今日マデ
ノコトヲ考ヘマスルト、我ガ海外貿易ト共
ニ刻々ニ開拓サレテ來タモノデアリマス、
斯ク考ヘテ來マスルト、競爭航路ト云フコ
トハ、實際問題トシテハ實ニ其識別ガ困難
デアルト共ニ、一朝其當局者ガ感情ニ走ル
カ、或ハ利益誘導ニ面喰ッタヤウナ場合ニハ、
此統制法ト云フモノハ、洵ニ寒心ニ堪ヘナ
イ暴虐極マル所ノ惡法デアルト私ハ言ハナ
ケレバナラナイノデアリマス(拍手)
第二ノ船舶ノ改良、「スピード」ノ優劣ト云
フ問題ニ至リマシテ、當局ハ之ヲ如何ニ取締
ルノデアルカ、第三ノ乘客竝ニ貨物取扱上ニ
於ケル優劣モ亦然リデアリマス、第四ニ運賃
率ノ引下デアリマス、運賃ノ引下ト云フモ
ノハ、航路デ既ニ獲得シテ居ル會社ガ、ソ
レト同ジ航路ニ他ノ會社ガ就航スル場合ニ、
其後進會社ヲ壓迫シタ例ハ今日マデ非常ニ
多クアリマス「ボンベイ」航路ニ於テ然リ「カ
ルカッタ」航路ニ於テ然リデアリマス、是ハ
現ニ私ハ印度ニ居リマシテ此内容ヲ知ッテ
居リマス、サウシタ如ク、寧ロ運賃ノ値下
ノ競爭ト云フモノハ、後カラ出テ行ッタ船會
社ガヤルノデナクシテ、先ニヤッテ居ル會社
ガ運賃ヲ下ゲテ、漸ク出テ來タ所ノ船會社
ノ出鼻ヲ挫カウトスルノガ、今日マデノ實
例デアッタノデアリマス、此場合不當競爭ヲ
何レガ爲シタノデアルカ、更ニ運賃ノ割戾
シヲ、暗々裡ニ此船會社ト云フモノハスル
モノデス、斯ウ云フモノヲ政府當局ハ如何
ニシテ取締ルカ、此運賃ノ問題ニ對シテ政
府ガ完全ニ爲シ得ルカドウカト云フコトヲ
大臣ニ御聽シタイト思ヒマス、而モ第三條
第二項ヲ見マスルト、斯ル場合ハ法律ヲ以
テ、「協定ヲ爲スベキコトヲ命ジ又ハ航路ノ
經營ヲ禁止若ハ制限スルコトヲ得」トアリ
マス、勸〓カラ禁止マデハ、法文ヲ見マス
ルト云フト、中々一朝ニシテ之ヲシナイヤ
ウニハ見エテハ居リマスルガ、實際問題ト
シテ、若シ夫レ其當局ガ少シ意地惡ク出ル
ナラバ、間髪ヲ容レズシテヤリ得ル問題デ
アリマス、此第三條ノ但書ハ全部毒ヲ綿デ
包ミ、布切デ掩ウタ所ノ卑怯極マルモノデ
アリマシテ、躍進日本ノ政府ガコンナ下ラ
ナイコトハ、斷ジテヤルベキモノデハナイ
ト私ハ考ヘテ居リマス、(拍手)第三ノ但書
ニ至リマシテハ「實情ニ依リ已ムコトヲ得
ズト認ムル場合」ハ直チニ經營ノ禁止或ハ制
限ヲ爲シ得ルト云フノデアリマス、此條文
ノ中ニ含マレテ居ルノハ其意味デス、尙ホ
第四條ニ「經營條件ガ公益ニ反スト認ムル
トキハ」云々トアリマスルガ、公益ニ反ス
ルト云フノハ何ヲ意味スルカ、此點モ亦大
臣ニ御尋シタイト思ヒマス、此表裏アル法
律ヲ上程スルコトハ、今日果シテ當ヲ得テ
居ルカドウカ、今日ノ海外貿易ハ躍進途上
ニ在ルト云フコトヲ政府ハ御認メニナルカ
ドウカ、若シ貿易ガ飽和狀態ニ在ルナラバ、
私ハ此船舶ヲ或ハ統制スル必要ガアラウト
モ考ヘマスガ、今日ノ場合我ガ貿易、我ガ
海運界ハ躍進途上ニ在ルノデアリマス、之
ヲ政府當局ガ認メナイナラバ、追テ私ハ委
員會ニ於テ詳細ニ亙ッテ、是ガ說明ヲ致シタ
イト思ヒマス
偖テ海外貿易ガ躍進途上ニ在ルトシマシ
タナラバ、此方面カラ海運業ニ對シテノ論
旨ヲ進メマス、海運業ノ過去ヲ顧ミマスル
ト、實ニソコニハ血ミドロナ競爭ヲ爲シテ、
今日ニ至ッタノデアリマス、政府ガ船會社ヲ
補助シ來ッタコトモ亦明白デアリマス、本
邦ノ遠洋航路ノ嚆矢タル「ボンベー」航路
ハ、過去ニ於テ、日本郵船ガ明治二十六
年十一月同航路ヲ開始シテ、當時ノ獨占者
그ピー·オー」會社ト猛烈ナ競爭ヲシタノデ
アリマス、是ハ亡クナラレマシタ澁澤サン
ガ、是モ亡クナラレマシタ大隈サンニ進
言シテ、印度カラ棉ヲ買入レタノニ始ッタモ
ノデアリマス、是ガ今日ノ如キ對印貿易ノ
大ヲ成シ、今日デハ一年間約五億圓ノ輸出
入ガアルニ至ッタノデアリマス、此時「ピー·
オー」會社ハ郵船ノ出鼻ヲ挫クガ爲ニ、棉花
ノ運賃ヲ、一噸十七「ルピー」デアッタモノ
ヲ突然五「ルピー」ニ引下ゲ、數箇月ノ後ニ
ハ更ニ一「ルピー」半ニ迄引下ゲテ來タノデ
アリマス、此惡戰苦圖ヲ續ケルコト二年半、
斯クシテ明治二十九年ノ五月ニ至ッテ、妥
協ガ成立シ、同盟參加ニマデ我ガ日本郵船
會社ガ漕付ケタノデアリマス、大阪商船モ
亦明治十四年ニ割込ヲ試ミテ、二年ノ奮闘
ヲ以テ、大正二年ニ同盟ニ入ッテ居リマス
「カルカッタ」航路ニ對シテモ亦同ジコトガ
アッタノデアリマス、我ガ海運界ハ非常ニ
躍進ヲ續ケテ來タノデアリマスガ、最近ノ
不況時代ニ繫船ノ數ガ增シタ、然ルニソレ
ハ政府ガ、今ヨリ四五年前ノコトデアリマ
スガ、船舶改善助成法ト云フモノヲ立案シ、
之ニ依ッテ古船ヲ解體シ、新船ヲ建造シテ參
リマシタ爲ニ、今日デハ殆ド繫船ガナクナッ
テ全部ガ新裝サレテ、我ガ港灣ニ勢揃ヒシ
テ居ルト云フノガ今日ノ狀態デアリマス、
我國ハ今日外國船ヲ買入レルコトガ許サレ
テ居リマセヌ爲ニ、支那或ハ其他ノ外國ニ
船籍ヲ置クモノヲ、大約五十万噸モ我ガ海
運業者ガ持ッテ居ルノデアリマス、斯ウシタ
日本ノ海運界ニ於テ私ハ不思議ニ思フノ
ハ、政府カラ補助ヲ貰ッテ居ル所ノ近海郵
船ノ天津航路ニ對シテ、一例ヲ申上ゲマス
レバ、大阪商船ハ補助ヲ貰ッテ居ナイノニ
モ拘ラズ、其就航シテ居リマスル船舶ヲ比
較シテ見マスルト、近海郵船ハ南嶺、北嶺
ノ老朽船ヲ使用スルニ反シテ、後者ハ長城
其他ノ優秀船ヲ用ヒテ居ルノデアリマス、
又大阪商船ガ歐洲航路ヲ廢メタノニ、極ク
最近ニナリマシテ、國際汽船ガ歐洲航路ニ
向ッテ船出シタノデアリマス、斯ク致シマス
ト、總テガサウデアリマスガ、此海運業モ
同樣其航路ニ對シテ適不適ガアリ、眞ノ實
力如何ニ在ルト私ハ考ヘルノデアリマス、
全ク海運界ニ於キマシテハ不當競爭ト認ム
ベキモノガ何處ニアリマセウ、政府ハ社外
船ノ進出ヲ不當競爭ナリト仰シヤルカモ知
レマセヌガ、社外船ノ進出ノ跡ヲ數字ニ依ッ
テ見マスレバ、明治二十七年ノ當時ニハ社
外船ガ約四割、郵船ガ五割デ、大阪商船ガ
一割デアックモノガ、大正四年頃ニハ社外船
ガ六割六分ニ躍進シ、郵船ハ二割三分ニ減ッ
テ居ル、更ニ昭和十年ニナリマスルト、此
社外船ト云フモノガ七割一一分ヲ占メテ、郵
船ト大阪商船ハ一割五分ト一割二分ト云フ
貧弱ナル數字ヲ持ッテ居ルニ過ギナイノデ
アリマス、之ヲ以テ社外船ノ不當競爭デア
ルトスルナラバ、補助ヲ與ヘテ居ルト云フ
點ニ政府ガ眩惑シテ、サウシタ議論ヲサレ
ルノデナイカト私ハ斯樣ニ考ヘルノデアリ
マス(拍手)
尙ホ政府ガ日印會商、日蘭會商ニ於テ日
本側ニ有利ナ結果ヲ得ンガ爲デアルト若シ
モナサルナラバ、是亦委員會ニ於テ詳細ニ
亙ッテ其實際ヲ申上ゲテ、政府ガ此際斯ノ如
キ法律ヲ制定シタナラバ、會商ノ前途ハ寧
ロ悲觀シナケレバナラナイ、我ガ製造業者、
我ガ輸出業者、或ハ海外ニ於ケル本邦商
人ノ前途ハ、益〓希望ヲ失フデアラウト斷
ゼザルヲ得ナイ、現ニ瓜哇ニハ吾々ノ
同胞數千人ガ、或ハ輸入制限令、在留
人ノ營業制限令、入國制限令、從業員
制限令、倉庫業制限令ナドノ色々ナル
制限令ノ下ニ、所謂暴戾ノ下ニ泣イテ
居ル、此姿ヲ何ト政府ハ見テオ居デニナル
ノカ、私ハ政府ガ唯單ニ會商ヲ目的トシテ
斯ノ如キ法律案ヲ提出サレタモノデアルト
スルナラバ、私ハ玆ニ心ヲ寄セテ戴キタイ
ト考ヘマス、我國ノ貿易ヲ考ヘテ見マス
ト、英領印度竝ニ蘭領東印度、之ヲ先ヅ考ヘ
テ見マスト云フト、明治四十一年當時、此
時分ハ英領印度ガ六番目デ、蘭領東印度ガ
十四番目デアッタ、ソレガ大正三年カラ七年
ニナルト、英領印度ハ四番目ニ、蘭領東印
度ハ九番目ニナッテ居ル、大正八年カラ十二
年ニハ英領印度ガ三番目ノ、蘭領東印度ガ
六番目、大正十三年カラ今日ト云フモノハ
米國、支那及ビ關東州ニ相次イデ、英領印
度ガ三番目ノ、蘭領東印度ガ四番目ヲ占メ
テ、ズット來テ居ルノデアリマス、此重要ナ
ル貿易ノ相手國デアリマスル英領印度竝ニ
蘭領東印度ニ對シテ、政府ハ愼重ナル態度
ヲ以テ考ヘルベキデアルト同時ニ、航路統
制法ヲ以テ會商ニ臨ムベキモノデナイト云
フコトヲ、私ハ申上ゲテ置キタイノデアリ
マス、航路統制法ガ英領印度、蘭領東印度
ニ對スル航路ニ對シテ適用サレルト先ヅ假
定シマシタナラバ、折角躍進途上ニ在ル我
ガ海外貿易ノ發展ヲ阻止スル所、大ナルモ
ノガアルト斷ゼザルヲ得ナイノデアリマ
ス、貿易ハ今ヨリ五年前ニ比ベマスト、今
日ハ二倍ニマデ進出シテ居リマス、然ルニ
海運界ノ方ヲ見マスレバ五分減ッテ居リマ
ス、コンナ時ニ何處ニ統制スル必要ガアラ
ウカ、私ハ我ガ日本ガ島國デアリ、而モ飛
躍大日本ヲ建設シヨウトスル今日、卽チ現
狀維持派ニ對シテ、現狀打破ノ機運ガ翕然
トシテ起ッテ居ル今日、何故斯ノ如キ外國ノ
御機嫌ヲ取ルヤウナ、而モ其運用ニ方ッテハ
洵ニ危險千萬ナ此法律ヲ、何ヲ血迷ッテカ、
會期モ少イ此特別議會ニ、政府ハ庶政一新
ノ經綸ヲ行フコトヲ知ラズシテ、斯ウ云フ
議案ヲ提出スルカ、私ハ疑ハザルヲ得ナイ
ノデアリマス(拍手)私ガ反對シ、政府當局ニ
反省ヲ促ス所以ハ玆ニアリマス、航路統制
法ノ如キハ全ク船舶會社ノ間ニ於テ自省以
テ一丸ト爲リ、躍進日本ノ建設ニ向ッテ邁
進スベキデアリ、政府ガ無暗ニ法律ヲ以
テ之ヲ束縛スルガ如キハ、考ヘザルヲ得ナ
イモノデハナイカト私ハ考ヘマス、寧ロ積
極的ニ無拘束ニ我ガ海運界ヲ發達セシメ
テ、以テ一朝有事ノ際ニ用意スベキデハナ
イカト私ハ考ヘテ居リマス、遞信大臣ハ私
ノ此反駁ニ對シテ同意スルコトガ御出來ニ
ナラナイデアリマセウガ、眞面目ニ此理
由ヲ一ツ說明シテ戴キタイト思ヒマス、尙
ホ商工大臣カラモ海外貿易カラ考ヘマシ
テ、此統制法ヲ如何ニ考ヘテオイデニナル
カ、又拓務大臣トシテハ近海航路カラシ
テ、北鮮航路ニ付テ、ドウ云フ御考ヲ持ッテ
オイデニナルカ、此際御答ヲ願ヒタイト存
ジマス、之ヲ以テ私ノ質問ハ終リマス拍
手)
〔國務大臣賴母木桂吉君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X00819360512&spkNum=59
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060・頼母木桂吉
○國務大臣(賴母木桂吉君) 色々多岐ニ
亙ッテノ御質問デアリマス、非常ニ御熱心ナ
御意見モアリマシテ、一々此處デ御答ガ致
シ難イモノガアリマスカラ、ソレハ委員會
ニ讓ルコトト致シマシテ、第一ニ本法案ヲ
運用スルニ當ッテ非常ナ弊害ヲ生ズル虞ガ
アルト云フ御心配デアルヤウデアリマス、
斯樣ナ統制ニ關スル法案ハ、之ヲ無法ニ振
週サレマシタナラバ、確ニ左樣ナ虞ハアリ
マス、ガ是ニハ委員會ヲ設ケル制度ニモ
ナッテ居リマスシ、十分ニ左樣ナコトヲ無カ
ラシムルヤウニ法案ハ出來テ居リマスカ
ラ、何レ詳細ナコトハ委員會ニ於テ御答ヲ
致シマス
ソレカラ競爭航路ニ付テノコトデアリマ
ス、寄航地ヲ含ムヤ含マザルヤ、競爭航路
ト云フノハ或ル地點ニ行クマデノ間ニ寄航
スル地點何箇所、斯ウ云フモノヲ含ムカ含
マナイカト云フヤウナコトハ、一〓ニハ是
ハ論ジラレナイノデアリマス、箇々ノ具體
的ノ事實ニ就キマシテ判斷ヲ致シマシテ、
ソシテ之ヲ決シナケレバナラヌト考ヘマ
ス、躍進日本ノ海運國策トシテ、自由競爭
ヲ抑壓スルト云フコトハ、日本ノ海運業ノ
發展ヲ阻止スルモノデアルト云フ御意見ノ
ヤウデアリマスガ、私ハ今日ノ日本ノ海運業
ガ非常ニ發展ヲ致シテ來タノハ、全ク社外船
ガ各地ニ突進致シマシテ、外國船ト競爭ヲ致
シテ、極メテ經濟的ナ經營ノ方法ニ依ッテ今
日ノ大ヲ成シタコトヲ認メルノデアリマ
ス、故ニ不定期船ノ將來ノ發展躍進ニ付キ
マシテ、新航路ヲ見出シテ外國船舶ト輸贏
ヲ決スルト云フヤウナ立前デ躍進シテ參リ
マスモノニ付テハ、相當ニ考慮ヲ致シマス
積リデアリマス、要スルニ私ノ理想ハ只今
日本ノ船舶ハ一千噸以上ノ優秀船四百万
噸其外デ百万噸、五百万噸デアリマス
ガ、少クトモ六百万噸ノ優秀船ヲ目標ニ、將
來日本ハ進ンデ行カナケレバナラナイ、斯
ウ考ヘテ居リマス、決シテ日本ノ海運ノ躍
進、又日本貿易ノ躍進ヲ阻止シ、之ニ不利
ヲ與ヘルト云フヤウナコトハ毛頭考ヘテ居
ラナイ、寧ロソレヲ助長シ一層躍進ノ度ヲ
加ヘシメヨウト云フノガ私共ノ考デアリマ
ス、ソレカラ日蘭會商ト何カ關係ガアル如
ク御話ニナリマシタガ、本案ト日蘭會商ト
ハ何等ノ關係ハゴザイマセヌ、左樣御承知
願ヒマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X00819360512&spkNum=60
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061・高岡大輔
○高岡大輔君 會期モ短イ今日デアリマス
シ、尙ホ大臣ガ委員會デ說明スルト仰シヤッ
テ居マスカラ、不滿ノ點ハ十分アリマスガ、
委員會ノ席ニ讓リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X00819360512&spkNum=61
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062・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 是ニテ質疑ハ終局
致シマシタ、本案ノ審査ヲ付託スベキ委員
ノ選擧ニ付テ御諮ヲ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X00819360512&spkNum=62
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063・松永東
○松永東君 本案ハ議長指名十八名ノ委員
ニ付託セラレンコトヲ望ミマス
〔「贊成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X00819360512&spkNum=63
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064・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 松永君ノ動議ニ御
異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X00819360512&spkNum=64
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065・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 御異議ナシト認メ
マス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ、日程第
七及ビ第八ハ便宜上一括議題ト爲スニ御異
議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X00819360512&spkNum=65
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066・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 御異議ナシト認メ
マス、仍テ日程第七、臺灣拓殖株式會社法
案日程第八、臺灣私設鐵道補助法中改正
法律案、此兩案ヲ一括シテ第一讀會ヲ開キ
マス-拓務大臣永田秀次郞君
第七臺灣拓殖株式會社法案(政府提
出第一讀會
第八臺灣私設鐵道補助法中改正法律
案(政府提出)第一讀會
臺灣拓殖株式會社法案
臺灣拓殖株式會社法
第一條臺灣拓殖株式會社ハ拓殖事業ノ
經營及拓殖資金ノ供給ヲ目的トスル株
式會社トシ其ノ本店ヲ臺北ニ置ク
臺灣拓殖株式會社ハ命令ノ定ムル所ニ
依リ定期預リ金ヲ爲スコトヲ得
第二條臺灣拓殖株式會社ノ資本ハ三千
萬圓トス但シ政府ノ認可ヲ受ケ之ヲ增
加スルコトヲ得
第三條臺灣拓殖株式會社ノ株式ハ記名
式トシ政府、公共團體、帝國臣民又ハ
帝國法人ニシテ社員、株主若ハ業務ヲ
執行スル役員ノ半數以上、資本ノ半額
以上若ハ議決權ノ過半數ガ外國人若ハ
外國法人ニ屬セザルモノニ限リ之ヲ所
有スルコトヲ得
第四條政府ハ臺灣總督ノ管理ニ屬スル
金錢以外ノ財產ヲ以テ出資ノ目的ト爲
スコトヲ得
前項ノ場合ニ於テ臺灣拓殖株式會社ガ
政府ノ出資スル不動產ノ取得ニ付登記
ヲ受クルトキハ其ノ登錄稅ノ額ハ不動
產ノ價格ノ千分ノ三トス
第五號臺灣拓殖株式會社ハ株金全額拂
込前ト雖モ其ノ資本ヲ增加スルコトヲ
得
第六條臺灣拓殖株式會社ニ社長副社長
各一人、理事三人以上及監事二人以上
ヲ置キ其ノ職務、權限、任命選任ノ方
法及任期ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第七條臺灣拓殖株式會社ハ拂込ミタル
株金額ノ三倍ヲ限リ臺灣拓殖債劵ヲ發
行スルコトヲ得
臺灣拓殖債劵ヲ發行スル場合ニ於テハ
商法第二百九條ニ定ムル決議ニ依ルコ
トヲ要セズ
第八條臺灣拓殖債劵ノ所有者ハ臺灣拓
殖株式會社ノ財產ニ付他ノ債權者ニ先
チテ自己ノ債權ノ辨濟ヲ受クル權利ヲ
有ス
第九條臺灣拓殖株式會社ハ每營業年度
ニ準備金トシテ資本ノ缺損ヲ補フ爲利
益金額ノ百分ノ八以上ヲ積立テ且利益
配當ノ平均ヲ得シムル爲利益金額ノ百
分ノ二以上ヲ積立ツベシ
第十條政府ハ臺灣拓殖株式會社ノ業務
ヲ監督ス
第十一條利益金ノ處分、臺灣拓殖債劵
ノ發行竝ニ合併及解散ノ決議ハ政府ノ
認可ヲ受クルニ非ザレバ其ノ效力ヲ生
ゼズ定款ノ變更其ノ他政府ノ認可ヲ受
ケタル事項ノ變更ニ付亦同ジ
第十二條政府ハ臺灣拓殖株式會社ノ決
議又ハ役員ノ行爲ガ法令、法令ニ基キ
テ爲ス處分若ハ定款ニ違反シ又ハ公益
ヲ害スト認ムルトキハ其ノ決議ヲ取消
シ又ハ役員ヲ解任スルコトヲ得
第十三條臺灣拓殖株式會社ハ每營業年
度ニ於ケル配當シ得ベキ利益金額ガ政
府以外ノ者ノ所有スル株式ノ拂込ミタ
ル株金額ニ對シ年六分ノ割合ニ達スル
迄政府ノ所有スル株式ニ對シ利益ノ配
當ヲ爲スコトヲ要セズ
第十四條臺灣拓殖株式會社ノ每營業年
度ニ於ケル配當シ得ベキ利益金額ガ政
府以外ノ者ノ所有スル株式ノ拂込ミタ
ル株金額ニ對シ年六分ノ割合ヲ超過ス
ル場合ニ於テハ其ノ超過額ハ總株式ニ
對スル利益配當ガ拂込ミタル株金額ニ
對シ均一ノ割合ニ達スル迄政府以外ノ
者ノ所有スル株式ノ拂込ミタル株金額
及政府ノ所有スル株式ノ拂込ミタル株
金額ニ對シ一ト四トノ割合ヲ以テ之ヲ
配當スベシ
第十五條臺灣拓殖株式會社ガ本法若ハ
本法ニ基キテ發スル命令又ハ之ニ基キ
テ爲ス處分ニ違反シタルトキハ社長又
ハ社長ノ職務ヲ行ヒ若ハ代理スル者ヲ
百圓以上二千圓以下ノ過料ニ處ス副社
長又ハ理事ノ分掌業務ニ係ルトキハ副
社長又ハ理事ヲ過料ニ處スルコト亦同
ジ
非訟事件手續法第二百六條乃至第二百
八條ノ規定ハ前項ノ過料ニ之ヲ準用ス
第十六條本法ニ定ムルモノノ外臺灣拓
殖株式會社ノ業務ノ監督ニ關シ必要ナ
ル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
附則
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
政府ハ設立委員ヲ命ジ臺灣拓殖株式會社
ノ設立ニ關スル一切ノ事務ヲ處理セシム
設立委員ハ定款ヲ作成シ政府ノ認可ヲ受
クベシ
前二項ニ定ムルモノノ外臺灣拓殖株式會
社ノ設立ニ關シ必要ナル事項ハ勅令ヲ以
テ之ヲ定ム
登錄稅法第六條第一項第十一號中「勸業
債劵」ノ下ニ「、臺灣拓殖債劵」ヲ加フ
臺灣私設鐵道補助法中改正法律案
臺灣私設鐵道補助法中左ノ通改正ス
第一條第二項ヲ左ノ如ク改ム
臺灣總督ハ必要アリト認ムルトキハ更
ニ五年ヲ限リ前項ノ期間ヲ仲長スルコ
トヲ得
第一條ノ二前條ノ補助金ハ左ノ各號ニ
依ル金額ヲ限度トス
一前條第一項ノ期間中ハ每營業年度
ニ於ケル建設費ニ對シ年六分ノ割合
ニ相當スル金額但シ每營業年度ニ於
ケル益金カ建設費ニ對シ年一分ノ割
合ニ相當スル金額ヲ超ユルトキハ其
ノ超過額ハ之ヲ補助金額ヨリ控除ス
二前條第二項ノ期間中ハ每營業年度
ニ於ケル建設費ニ對シ年五分ノ割合
ニ相當スル金額但シ每營業年度ニ於
ケル益金カ建設費ニ對シ年一分五厘
ノ割合ニ相當スル金額ヲ超ユルトキ
ハ其ノ超過額ハ之ヲ補助金額ヨリ控
除ス
第三條中「第一條」ノ下ニ「及第一條ノ二」
ヲ加フ
第四條中「第一條」ヲ「第一條ノ二」ニ改ム
附則
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
〔國務大臣永田秀次郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X00819360512&spkNum=66
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067・永田秀次郎
○國務大臣(永田秀次郞君) 只今議題トナッ
テ居リマス臺灣拓殖株式會社法案ニ付テ、
簡單ニ御說明申上ゲマス、臺灣ハ御承知ノ
通リ始政以來四十年ヲ經過致シマシテ、其
間ニ面目ヲ一新スル程ノ發達ヲ遂ゲテ來タ
ノデアリマス、併ナガラ臺灣ノ自然ニ有
シテ居ル所ノ天惠ト資源ト云フモノハ、尙
ホ今後ニ於テ十分施設經營シテ開發ヲシナ
ケレバナラヌモノガ多々殘ッテ居ルノデア
リマス、尙ホ臺灣ノ重要性ト云フモノハ單
ニ臺灣島內ノ資源開發ニ止マラズ、彼ノ土
地ハ御承知ノ通リ、日本ノ南方ニ位シテ、
日本內地ヨリモ支那ノ方ガ近イ「マニラ」比
律賓ノ方ガ近イト云フヤウナ位置ニ居リマ
スカラシテ、其位置ヲ利用致シマシテ、將
來一層南支那、又南洋ニ對シテ臺灣ノ自然
ノ地理的ニ有スル所ノ使命ヲ全クスル必要
ガアルノデアリマシテ、大イニ今後南方支
那及ビ南洋ニ對シマシテ、互ニ經濟的ノ提
携ヲ緊密ニ致シマスルコトハ、是ハ雙方ノ
利益デアルト確ク信ジテ居ルノデアリマス、
仍テ政府ハ今囘臺灣ニ於ケル官有地ヲ出資
致シマシテ、半官半民ノ拓殖會社ヲ設立シ
テ、此會社ヲシテ一面ニハ臺灣島內ニ於ケ
ル未開墾地ノ開拓トカ、各種ノ栽培事業其
他拓殖事業竝ニ之ニ關聯スル種々ノ施設ヲ
致シマス、サウシテ更ニ又一面ニハ進ンデ
南支、南洋トノ經濟的提携ヲ密接ニシテ、
其活動ヲ促シタイト云フ考デゴザイマシテ、
此案ヲ提出致シマシタヤウナ次第デアリマ
ス、何卒宜シク十分ニ御審議ノ上ニ御協贊
ヲ與ヘラレンコトヲ望ミマス(拍手)
次ニ臺灣私設鐵道補助法中改正法律案ニ
付キマシテ、提出ノ理由ヲ簡單ニ申上ゲマ
ス、臺灣ニ於ケル補助私設鐵道ハ何レモ旨
ク行ッチヤ居ラヌノデス、尙ホ當分ノ間政府
ガ補助シテヤラナクチヤ經營ガ出來ナイ、
所デ此鐵道ハヤハリ臺灣ノ開發上ニモ非常
ニ大切ナ鐵道デゴザイマスカラシテ、此際
之ヲ經營スルコトノ便宜ノ爲ニ、現在ノ補
助期間十五年トナッテ居リマスノヲ、更ニ改
メマシテ、五箇年ヲ限り仲長シ得ルコト
ソレカラ其他ニ尙ホ必要ナ多少ノ改正ヲ加
ヘルコトニ致シタイト思フノデアリマス、
是ハ朝鮮ニ於ケル例モゴザイマスルノデ、
提案致シマシタヤウナ次第デアリマス、此
案ニ付キマシテモ何卒御審議ノ上速ニ御協
贊ヲ希望致シマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X00819360512&spkNum=67
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068・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 質疑ノ通〓ガアリ
マシ、之ヲ許可致シマス-片山秀太郞君
〔片山秀太郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X00819360512&spkNum=68
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069・片山秀太郎
○片山秀太郞君 只今、拓務大臣カラ御說
明ガアリマシタ所ノ臺灣拓殖株式會社法案
ニ付キマシテ、私ハ三ツノ點カラ質問ヲ致
シテ御答辯ヲ願ヒタイト存ズルノデアリマ
ス、其第一ノ點ハ對外關係ニ付テノ問題デ
アリマス、第二ハ會社經營ノ人ニ關スル問
題デアリマス、第三ハ會社ヲ成立セシムル
所ノ財產ニ付テノ問題デアリマス
只今拓務大臣ノ言ハレタ如ク、臺灣ハ其
周圍ニ於キマシテ幾多天然資源ノ豐富ナル
土地ヲ以テ圍マレテ居リマスガ故ニ、此天
然資源ヲ開發スルコトハ、臺灣ノ使命トシ
テ臺灣領有ノ當時カラ我國民ノ期待シタ所
デアリマス、然ルニ國際事情ハ必シモ我ガ
帝國ニ有利ニ發展致シマセヌ、比律賓ニ對
シマシテモ、蘭領東印度ニ對シマシテモ、
乃至佛領印度支那ニ對シマシテモ、最後ニ
又南支那地方ニ對シマシテモ、我ガ國民ノ
理想ガ達成セラレルニハ、餘リニ事情ガ宜
シクナカッタノデアリマス、然ルニ此度急激
ニ此重要ナル意味ヲ持ッテ居ル法案ガ提出
セラレタニ付キマシテハ、此點ヲ一應伺ッテ
置カネバナラヌト私ハ考ヘルノデアリマス、
先ヅ蘭領東印度ノ間題ハ航路ノ案ヲ議スル
時ニ、或ル議員ノ方カラ言ハレマシタ如ク、
色々我國トノ交際ニ於キマシテ憂慮スベキ
事情ガ堆積シテ居ルノデアリマス、故ニ今玆
ニ臺灣拓殖株式會社ヲ設ケマシテモ、直チニ
其力ヲ蘭領東印度ニ用ヒルト云フコトハ、困
難ナリト私ハ考ヘサセラルヽノデアリマス、又
佛領印度支那ニ付キマシテハ、約三十年
來彼我ノ交通ヲ妨ゲル所ノ條約ノ缺陷ガア
リマシテ、今日此會社ヲ作リマシテモ、直チ
ニ其力ヲ用ヒルコトガ十分デナイノデアリ
マス、ト申シマスノハ拓務大臣ハ旣ニ御承
知ノコトデアラウト存ジマスルガ、日佛通
商航海條約ハ之ヲ佛領印度支那ニ適用シテ
居ラヌノデアリマス、故ニ關稅ノ關係ニ於
キマシテ、佛領印度支那ニ於キマシテハ、
高率ノ關稅ガ課セラレル、故ニ我ガ船舶ハ
其積荷ヲ一タビ香港ニ陸揚ヲ致シマシテ、
香港仕立ノ荷物トシテ之ヲ佛領印度支那ニ
送ラネバナラヌト云フ苦痛ヲ持ッテ居リマ
ス、此事情ガ取拂ハレザル限リ、臺灣拓殖
株式會社ノ力ハ十分ニ發揮スルコトガ出來
ナイト云フコトハ、考ヘ得ラレル所デアリ
マス
更ニ又南支那ノ問題デアリマスルガ、是
ガ恐ラク此法案ノ狙ッテ居ル重要ナル使命
ト考ヘラレルノデ、私ハ此點ニ付テ少シク
說明ヲ致シマシテ、御參考ニ供シテ置キタ
イト思ヒマスルガ、此南支那ニ對スル我國
ノ事業關係、此事業關係ニ付キマシテハ、
色々計畫ヲシタ人ガ澤山アルノデアリマ
ス、私ハ不肖ナガラ支那ノ間題ニ付キマシ
テハ、直接間接ニ三十年來關係ヲ致シテ居
リマスルガ、支那ノ政情ガ變化スルノト、
支那ノ人事關係ガ固定セザル爲ニ、常ニ事
業ハ旨ク行カナイノデアリマス、昨年ノ帝
國議會ニ於キマシテ、前内閣ノ外務大臣
ハ、言葉ハ少シ違ヒマスルガ、意味ヲ申上ゲ
マく、吾々ハ蔣介石氏ヲ助ケテ、日支親善
ノ實ヲ擧ゲルコトニ努力スルト云フコトヲ
申サレタノデアリマス、然ルニ其後一年ヲ
經過シテ、昨年ノ十二月ニハ外務大臣ハド
ウ申サレテ居ルカト云フト、日支親善ノ實
未ダ十分ニ擧ラザルハ遺憾トスル所デアル
ト、斯樣ニ中サレテ居リマス、續イテ又今
囘ノ議會ニ於キマシテ、政府ハドウ云フコ
トヲ言ハレルカト云フト、支那ノ政情安
定ヲ見ルハ欣快トスル所ナリト、斯樣ニ申
サレテ居ル、親善關係ニ對スル效果ガ甚ダ
乏シイヤウニ私ハ感ズルノデアリマス、此
際ニ當ッテ臺灣拓殖株式會社ガ、果シテ其力
ヲ南支那ニ加ヘルコトガ出來ルデアリマセ
ウカ、是ガ對外關係ニ對スル私ノ疑問デア
リマス
次ニ會社ヲ經營スル人事ノ問題デアリマ
スルガ、今旣ニ申シマシタ如ク、支那ニ對
スル關係、殊ニ此事業關係ハ甚ダ難カシイ
問題デアリマスルカラ、之ヲ實行スル人ハ
餘程ノ力量ヲ持ッテ居ル人デアリ、所謂練達
堪能ノ士デナケレバナラスノデアリマス、
然ルニ此人物ガ果シテ臺灣總督ノ選定ノ下
ニ、直チニ得ラレルモノト御考ヘニナッテ
居ルノデアリマセウカ、若シ此人ヲ得ルコ
トガ適當デナカッタナラバ、此事業ハ失敗デ
アリマス、此點永田拓務大臣ノ十分ナル御
說明ヲ願ヒタイ
第三ニ會社ノ財產トシテ繰入レラルヽ所
ノ、法文ニ依リマスルト、金錢以外ノ財產
ト云フ文字ガ用ヒラレテ居ッタヤウニ記憶
シテ居リマスルガ、是ハ只今拓務大臣ノ說
明サレタヤウニ、官租地ヲ以テ之ニ充テル
積リデアルサウデアリマス、臺灣ノ官租地
ト申シマスルノハ、御承知ノ通リニ政府ノ
持ッテ居ル土地ヲ小作ニ付シテ居ル土地デ
アリマス、其小作料ガ幾ラ取レルカト、凡
ソ私ガ調ベテ見マスト云フト、百万圓以上
取レルヤウデアリマス、百万圓以上取レル
所ノ此小作料ヲ以テ元本ニ立直シタ時ニ、
是ガ千五百万圓ト算定サレル理由ハ何處ニ
アルカ、先ヅ此三點ニ付テ一應ノ御答辯ヲ
煩ハシタイト思フノデアリマス(拍手)
〔國務大臣永田秀次郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X00819360512&spkNum=69
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070・永田秀次郎
○國務大臣(永田秀次郞君) 只今片山君カ
ラ御質問ニナリマシタ事柄ニ付テ御答ヲ申
上ゲマス、第一對外關係ノコトデアリマス
ガ、是ハ片山君ニハ特ニ南支、南洋ノコト
ニ付テ御精通デアリマスカラシテ、色々御
心配ニナルコトハ洵ニ御尤ト思ヒマス、蘭
領印度ノ形勢必シモ我國ニ有利ヂヤアリマ
セヌ、又南支ノ情勢モ決シテ我國ニ非
常ナ好意ヲ表シテ居ルトモ考ヘテ居リマ
セヌ、併ナガラ南支、南洋、是ハ隨分場
所ガ廣イノデアリマスカラ、吾々ト致シマ
シテハ、成ベク障碍ノ少イ處ニ色々ノ發展
ヲシテ見タイト云フ考ガアリマシテ、例へ
バ「シャム」デアリマストカ、「マレー」半島デ
アリマストカ、其外「ボルネオ」デモ、英領
「ボルネオ」ノ方ガ割合ニ都合ガ宜シイノデ
ス、ソレカラ「サラワック」王國アタリモ工
合ガ宜イノデアリマス、支那ノ方モ南支、支
那ノ方モ表面ハ宜クアリマセヌガ、支那ノ
事情ハ御承知ノ通リ相當裏表ノアルコトデ
スカラ、何カマアヤリ樣モアリヤセヌカト、
斯ウ思ッテ居ルノデアリマスガ、兎ニ角大體
カラ考ヘテ見マシテ、餘所ノ事情ガ是レ〓〓
デアルカラト言ッテ、何時モ尻込ミヲシテ、
消極的ニシテハ居ラレナイト云フ日本ノ現
在デアリマス、ドウシテモ年々百四十ハ万
人ト云ッタヤウニ人ガ殖エテ行ク際ニ、吾々
ハ生命權ノ確保ト云フコトヲ申シテ居リマ
スル此時代ニ於テ、發展シ得ラレル方面ガ
苟モ存在スルナラバ、渾身ノ努力ヲシテ見
ナクチヤ噓ダト思ヒマス、ソレデ對外關係
ニ於テ色々面倒ナ事ノアルコトハ、相當ニ
承知シテ居リマスケレドモ、其又此面倒ナ
處以外ニ相當ニ手ノ仲ビ得ル處ガアルト存
ジマスルシ、ノミナラズ面倒デアッテモ努力
スレバ、又相當ニ行クノヂャナイカ、斯ウ
云フ風ニ考ヘテ居リマスノデ、出來ルダケ
此際ハ努力シナケレバ、待ッテ居レバ好クナ
ルト云フ見込ハアリマセヌ、今カラドシ〓〓
ヤレルダケノコトハヤッテ見ルト云フコト
ガ、吾々ノ使命ダト考ヘテ居ル
ソレカラ第二ノ會社ノ經營ノ事ニ付テ練
達堪能ノ士ガ總督ノ下ニ得ラレルカ、此人
ガ居ラナケレバ、到底此事業ガ興ラヌト云
フ御意見ニ對シテハ、洵ニ御同感デアリマ
ス、是ハ人ニ依ルコトデ、一ニモ一二モ人
ニ依ルコトデアリマシテ、適當ナ人ヲ得ナ
ケレバ此事業ガ出來ナイト云フコトハ、全
ク御意見ト御同様ニ私モ考ヘテ居リマス、
此社長其他ヲ任命シマス時ニハ、ヤハリ臺
灣總督ト又拓務省ト能ク打合セヲシマシテ、
適當ナ人ヲ詮議シタイ、洵ニ得難イ條件デ
アルトハ思ヒマスケレドモ、併シ國家ノ事
業國策遂行ノ事業デアリマスルカラ、又
相當ニ義憤ヲ發シテ、此難事業ニ當ッテ呉レ
ル人モアリサウナモノダト考ヘテ居ルノデ
アリマス
ソレカラ官租地ヲ千五百万圓ニ換算スル
コトハドウカト云フ御話デアリマシタガ、是
ハ評價委員ヲ拵ヘマシテ、サウシテ幾ラニ
見ルノガ適當カト云フヤウナコトニ付テモ
考ヘテ見ヨウト思ヒマスノデ、斯ウ云フ點
ニ付キマシテハ、又委員會ニ於キマシテ根
據等ヲ御說明ヲ申上ゲタイト思ヒマス
〔片山秀太郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X00819360512&spkNum=70
-
071・片山秀太郎
○片山秀太郞君 今一應御尋ヲ致シマス、
積極的ニヤッテ見ル、洵ニ其勇氣ハ敬服ニ値
スルモノアリ、御同感ニ堪ヘナイデアリマ
スルガ、拓務大臣モ御承認ニナッタ如ク、此
經營ニ當ル人物ガ若シ得ラレナカッタ場合
ニハドウ云フ結果ニナルカト云フコトヲ、
此處デ一ツ想像シテ見ル必要ガアリマス、
ソレハ對外關係ヲ打切ッテ、一彈丸ノ小島タ
ル臺灣ニ引籠ルト云フ結果ニ終ルノデアリ
やっ、卽チ外ニ對シテ威力ヲ仲ベルダケノ
人物ガ得ラレザル時ニ於テハ、必ズ臺灣島
內ニ竦ンデシマッテ、島內ノ一事業會社トシ
テノミ働クト云フコトニ結果ガナッテ來ル
ノデアリマス、サウナッテ來マスト云フト、
大人物ハ要ラナイ、總督ノ左右ニ居リマス
ヤウナ人、又拓務省ニ始終出入リシテ居ル
ヤウナ人ノ中カラ、餘リ難癖ノナイヤウナ、
無疵ナ人ヲ連レテ行ッテ此仕事ニ充テル、サ
ウスレバ、事務關係トシテハ成績ハ擧ルデ
セウ、併ナガラ只今玆ニ案トナッテ出テ居ル
所ノ臺灣拓殖株式會社トシテノ使命、卽チ
臺灣島內及ビ南支、南洋ニ力ヲ盡スト云フ、
拓務大臣ガ何デモ構ハナイカラ大ニヤッテ
見ルト云フヤウナ意味ノコトヲ、言葉ハ少
シ違ヒマスケレドモ述べラレマシタガ、其
意氣込ミト甚ダ背馳シタル結果ニ陷ルノデ
ハナイカト云フコトヲ私ハ惧レルノデアリ
マス、是ハ一事業會社ノ盛衰ノ問題デナイ、
我ガ國民ガ南方進展ノ機會ヲ失フト云フコ
トニ想ヒ到ル時ハ、輕々ニ結論ヲ下スコト
ハ出來ヌ問題トナルノデハナイカト私ハ思
フ、唯此處デ議論ヲシマシテモ、人ヲ探シ
タラアリサウナモノダト云フヤウナコトデ
アリマスカラ、是等ノコトハ何レ委員會等
ニ於テ述ベルコトト致シマシテ、此質問ヲ
打切ルコトト致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X00819360512&spkNum=71
-
072・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 御答辯ハゴザイマ
セヌカ-鈴木文治君
〔鈴木文治君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X00819360512&spkNum=72
-
073・鈴木文治
○鈴木文治君 私ハ本問題ニ付キマシテ、
極メテ簡單ニ拓務大臣ニ對シテ御質疑ヲ致
シテ見タイノデアリマス、第一ノ質問ハ、
本案第一條ニ於テ「臺灣拓殖株式會社ハ拓
殖事業ノ經營及拓殖資金ノ供給ヲ日的トス
ル」云々ト書イテゴザイマスガ、謂フ所ノ
拓殖事業トハ如何ナルコトヲ申スノデアル
カト云フ、拓殖事業ノ內容ニ關スル御意見
ヲ伺ヒタイノデアリマス、勿論臺灣總督府
ニ於テ、臺灣拓殖株式會社設立ノ趣旨竝ニ設
立要項ノ第四頁ヲ開イテ見マスルト、六、事業
ト題シマシテ、事業ノ大要ヲ書キ記シテアルノデ
アリマス、ソレガ卽チ「一拓殖ノ爲必要ナル
農業、林業、水產業及水利事業、二拓殖ノ
爲必要ナル土地(土地ニ關スル權利ヲ含ム)
ノ取得、經營及處分、三委託ニ依ル土地ノ
經營及管理、四拓殖ノ爲必要ナル移民事
業、五農業者、漁業者若ハ移民ニ對シ拓殖
上必要ナル物品ノ供給又ハ之ガ生產品ノ買
取加工若ハ販賣、大六殖ノ爲必要ナル資
)
金ノ供給、七前各號ノ外拓殖ノ爲必要ナル
(
事業、(八前各號ノ事業ニ附帶スル事業」ト
斯ウ書イテアルノデアリマスガ、此竝ベラ
レタル所ノ各種ノ事業ノ中ニ於テ、石油事
業ヲ含ムカ含マナイカト云フコトヲ伺ヒタ
イノデアリマス、第一ニ石油事業ニ付テ伺
ヒタイノデアリマス、西臺灣及ビ南臺灣各
處ニ於テ、石油發掘事業ト云フモノガ、今
盛ニ行ハレテ居ルコトハ御承知ノ通リデア
リマス、此石油發掘事業ニ付テハ、何一ツ
玆ニ書イテナイノデゴザイマスルガ、石油
發掘事業ト云フモノヲ含ムカ含マナイカ、
ソレカラ同ジ事業ノ中ニ於テ、移民ノコト
モ書イテゴザイマスルケレドモ「農業者、漁
業者若ハ移民ニ對シ拓殖上必要ナル物品ノ
供給」云々ト書イテゴザイマスルガ、移民
事業ヲ大イニヤル積リカ、ヤラナイ積リカ
ト云フコトヲ伺ヒタイノデアリマス、私ノ
見ル所ニ依リマスルナラバ、臺灣ハ蕞爾タ
ル小島デゴザイマスルケレドモ、土地ノ整
理按排ヲ致シマスルナラバ、尙ホ日本ノ人
口約五十万位ハ移シ植ヱルコトガ出來ルト
信ジマス、然ルニ是ニ於テハ移民ノコトニ
付テ僅ニ一項目ノ其一小部分ニ書キ記サレ
タノミデアリマシテ、移民ノコトハ殆ド外
ニ於テハ觸レテナイノデアリマス、而モ移
民ノ中ニ於テ、是ハ農民移民ヲ謂フノデア
ルカ、商工移民ヲ謂フノデアルカ、甚ダ不
明デアリマス、不明デアルガ故ニ伺フノデ
アリマス、農業移民ノ如キハ屢〓ヤリマシ
タケレドモ、殆ド是ハ言フニ足ラナイ、商
工移民ノコトモ言フニ足ラナイノデアリマ
スケレドモ、商工移民ハ每年々々多少行ッタ
リ又來タリ致シテ居リマス、然ルニ此商工
移民ノ樣子ヲ見マスルト云フト、氣候、風
土、人情、言葉、其他ノ關係カラ致シマシテ、
本島人ト言ウテ居ル所ノ在來ノ臺灣人ニド
ウシテモ負ケル、一例ヲ申上ゲマスルナラ
バ、豆腐屋ヲ開キマシテ、豆腐屋ノ商賣ヲ
ヤラシテ居ル、所ガ段々經ツ內ニ、今度ハ豆
腐屋ノ賣子ノ方ガ主人ニナリマシテ、主人
公ガ反對ニ豆腐ノ賣步キヲシナケレバナラ
ヌト云フヤウナ狀態ニ陷ルコトガ、殆ド悉
クガ皆然リト言ッテモ差支ナイノデアリマ
ス、此商工移民ガ斯ノ如キ狀態デアルノデ
アリマスカラ、臺灣ニ於テ商工移民ヲ植付
ケル爲ニハ、ドウシテモ是ハ保護ノ必要ガ
アルト思フノデアリマス、丁度滿洲ノ農業
移民ニ對シテ、或ル程度ノ保護ヲ與ヘマシ
テ、其保護ニ依リマシテ日本ノ農民ト云フ
モノガ、滿洲ニ於ケル所ノ人民ト云フモノ
ト大體同樣ノ働キヲスルコトガ出來ルト
云フヤウナ意味ニ於テ、私ハ內地ノ商工移
民ニ對シマシテ保護ヲ與ヘル必要ガアルノ
デハナイカト思フノデアリマス、此點ニ對
シマシテ內地移民ガ屢〓不平ヲ言フノデアル、
苦情ヲ言フノデアリマス、卽チ吾々ハ何ノ
保護モナク、何ノ庇護モナクシテ居ルノデ
アルカラシテ、ドウシテモ本島人ニ對シテ
ハ競爭ニ打負ケルノデアル、ドウカ玆ニ吾
吾ト致シマシテハ保護ヲ受ケタイモノデア
ルト云フコトヲ度々申シマスルケレドモ、
保護ハ少シモ與ヘラレナイ、オ前達ハドウ
モ贅澤ダ、我儘ダト云フコトヲ多ク言ハレ
ル、贅澤、我儘ト云フヤウナ點モナイトハ言
ヘナイト思フノデアリマスルケレドモ、是
ハドウシテモ保護ヲ與ヘナケレバナラナイ
ノデアルト私ハ思フノデアリマス、故ニ拓
殖事業ノ內容ニ於テ、石油事業ヲ含ムカ含
マナイカ、是ハ重大問題デアルト思フノデ
アリマスカラ伺フノデアリマス、移民ニ對
シマシテハ、農業移民ヲ謂フノデアルカ、
商工移民ヲ謂フノデアルカ、商工移民ヲ謂
フナラバ、是ハ保護ヲ加ヘナケレバナラナ
イノデハナカト云フコトニ付テ、拓務大臣
ノ御意見ヲ伺ヒタイト思フノデアリマス、
是ガ一ツ第二ノ點ハ本案ノ第六條ニアルノ
デアリマスルガ「臺灣拓殖株式會社ニ社長
副社長各一人、理事三人以上及監事二人以
上ヲ置キ其ノ職務、權限、任命選任ノ方法
及任期ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム」ト書イテ
アリマス、先刻片山君ノ御演說ノ中ニ
於テモ、其人ヲ得ルコトノ如何ニ困難デア
ルカト云フコトヲ御話ニナリマシタガ、
私モ之ニ關聯致シマシテ「勅令ヲ以テ
定ム」ト書イテアリマスケレドモ、勅令ト
云フノハドウモ私ハ曲者デアルト思フノデ
アリマス、例ヘバ滿鐵會社ノ如キ、其總裁
ノ如キハ政治的理由ヲ以テ屢〓。更迭ヲ試ミ
ラレタ例ガアル、東洋拓殖會社ノ如キモ、
其總裁ノ如キハ政治的理由ヲ以テ更迭ヲ試
ミラレタ例ガ澤山アル、私ハ玆ニ心配ニ堪
ヘナイノハ、過去ノ例ヲ以テ推シマスルナ
ラバ、將來モ政治的理由ニ依ッテ任命サル
ルコトガナイカ、又其任命ガ動カサレルコ
トガナイト云フコトニ付テ、御意見ヲ伺ヒ
タイノデアリマス
第三ニハ、本案ノ第十條ニ於キマシテ「政
府ハ臺灣拓殖株式會社ノ業務ヲ監督ス」ト
アリマス、謂フ所ノ政府トハ如何ナルコト
ヲ意味スルノデアルカ、玆ニ政府ト申シマ
スノハ豪灣總督ノ意味デアルカ、總督以外
ノ政府直接ノ意味デアルカト云フコトニ付
テ疑アルコトヲ免レナイノデアリマス、第
一條ニ依リマスルト、本社ハ之ヲ臺北ニ置
クト書イテゴザイマス、第四條ニハ臺灣總
督ノ管理ニ屬スル財產ヲ出資スルコトヽ書
イテ居ルノデアリマシテ、臺灣總督ト云フ
コトガアルノデアリマスルケレドモ、哲
ハ政府ト書イテアル「政府ハ臺灣拓殖株式
會社ノ業務ヲ監督ス」トアリマスルガ、其
政府ト云フノハ臺灣總督ノ意味デアルカ、
或ハ政府直接ノ意味デアルカ、臺灣總督ハ
單ニ「ロボット」デアッテ、政府ガ、日本本來
ノ政府ガ、直接ニ業務ヲ監督スルノデアル
ノデアルカト云フコトノ疑問ガアルノデア
リマスカラ、此點ヲ明快ニサレルコトヲ希
望スルノデアリマス
第四ニハ、東洋拓殖株式會社トノ關係デア
リマス、東洋拓殖株式會社ハ大正六年ニ其
法律ガ改正ヲセラレマシテ、只今ノ所滿蒙、
中華民國及ビ南洋、「マレー」諸島ニ付テノ
事業ヲ致シテ居ルノデアリマスルガ、而モ
其事業ノ中ニ於テ、南洋及ビ「マレー」半島
等ノ如キハ事業ガ不慣レノ爲ニ、中華民國
ハ民心ノ不安動搖ノ爲ニ、二ツトモ思フヤ
ウニハ行ッテ居ラナイノデアリマス、所期ノ
目的ヲ達スルコトガ出來ナイノデアリマス
ルガ、併ナガラ東洋拓殖會社ノ事業ノ範圍
ノ中ニ於テハ、卽チ南洋及ビ南支那方面ヲ
含ンデ居ルノデアリマス、含ンデ居ルノデ
アルガ、此法案モ亦南支、南洋方面ノコト
ヲモ含ムト云フヤウナ風ニ見エルノデアリ
マス、卽チ東洋拓殖會社ト臺灣拓殖會社ト
ハ、ドウ云フヤウナ關係ニ立ッテ居ルノデ
アルカト云フコトニ付テノ御意見ヲ伺ヒタ
イノデアリマス、更ニ本案ニ付キマシテハ
拓殖資金ノ貸出ト云フコトニナッテ居リマス
ガ、東洋拓殖會社ガ旣ニ貸出ヲ開始シテ居
ル、此臺灣拓殖會社モ貸出ヲシヨウトシテ
居ル、此兩會社ノ貸出利率ト云フモノガ同
一デアルガ、或ハ違フノデアルカ、同一デ
アルナラバ、ドウ云フヤウナ方法ニ依ッテ、
是ガ調節ヲ圖ルノデアルカト云フコトニ付
テノ御何ヲ致シタイノデアル、ソレニ關聯
致シマシテ臺灣拓殖會社ノ特異性、卽チ東
洋拓殖會社ガ旣ニ南支、南洋方面ヲモ兼ネ
テ收メテ居ルニモ拘ラズ、尙ホ此會社ガ出
來タト云フコトノ特異性ニ付テ伺ヒタイ、
東洋拓殖會社トノ關係ニ付テノ特異性ヲ伺
ヒタイノデアリマス、更ニ東洋拓殖會社ノ
南洋方面ニ於テ投ジタル所ノ投資額ガ、只
今ドレ位ニナッテ居ルノデアルカ、是モ御分
リナラバ伺ヒタイノデアリマス、ソレカラ
投資額ト同時ニ、臺灣拓殖會社ガ出來マス
ルナラバ、或ハ東洋拓殖會社ノ投資シテ居
ル金額ヲ肩替リスルノデハナイカト云フ疑
ガアル、此點ニ付テ明快ナ御答辯ヲ伺ヒタ
イノデアリマス
第五ハ臺灣總督ノ地位デアリマス、卽チ
武官制カ文官制カノ問題デアル、聞ク所ニ
例ルト云フト、臺灣總督ノ地位ト云フモノ
ハ、將來之ヲ武官制ニスルカノ如ク噂スル
ノデアリマス、噂バカリデハアリマセヌ、
新聞ニ出テ居ッタノデアリマス、卽チ某海軍
大將ヲ連レテ來テ、而モ眞シヤカニ言フ所
ニ依レバ、六月ガ更迭期ト云フコトマデ言
フ人ガアル、六月、七月ノ頃ニ某海軍大將
ヲ連レテ來テ、卽チ總督ノ地位ニ据エルノ
デアルト、斯ウ云フ風ニ申ス人ガアルノデ
アリマスガ、是モ海軍ノ南方進出、南方進出
ノ海軍ノ方策カラ見マスナラバ、或ハ嘘デ
ハナイ所ノ噂デハナカラウカト思フノデア
リマス、此點ニ對スル疑ガアルノデアリマ
シテ、此疑ハ可ナリ廣クアルト思フノデア
リマス、今日モ私ノ所ニ來マシテ、此武官
制文官制ノ問題ヲ質問スルカ、質問スル
ナラバ吾々モ大イニ聽キタイト云フコトヲ
言ウテ居ル人モアリ、又世間ニモ澤山アル
コトヲ知ッテ居ルノデアリマスガ故ニ、此點
ニ付テ明快ナ御答辯ヲ御願致シタイノデア
リマス、以上申上ゲタ所ノ五點ノ質問ニ付
テ、拓務大臣ノ明快ナル御答辯ヲ願ヒタイ、
尙ホ此文官制、武官制ノ問題ニ付テハ、總
理大臣ニ伺ヒタイノデアリマスケレドモ、
總理大臣今日御見エニナラナイノデアリマ
スカラ、先ヅ拓務大臣ニ就テ此御意見ヲ伺
ヒタイノデアリマス(拍手)
〔國務大臣永田秀次郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X00819360512&spkNum=73
-
074・永田秀次郎
○國務大臣(永田秀次郞君) 鈴木君カラノ
御尋ノコトニ付テ箇條ヲ追ッテ御答ヲ致シ
やく、第一ニ移民ハ農民移民デアルカ、或
ハ商工移民デアルカ、是ハ農民移民ノコト
ダケヲ今考ヘテ居リマス、ソレカラ島外ノ
出來事ノコトハ-島內ニ於テハ石油ノコ
トヲ今考ヘテ居リマセヌガ、島外ニ於テ或
ハ石油ノ關係ノコトニ雄飛スルヤウナコト
ガアルカトモ考ヘテ居リマス、ソレカラ次
ニ社長ヲ勅令ヲ以テヤル、ソレハドウ云フ
風ニナルカト云フコトデアリマスルガ、社
長ハ是ハ今ノ考ト致シマシテハ、總督ガ之
ヲ任命スルト云フ風ナ立前デ行キタイ、サ
ウ思ッテ居リマス、是ハ御承知ノ通リ千五百
万圓ト云フ多額ノ出資ヲ臺灣ニ於テ致シマ
ス關係モゴザイマスカラ、社長ノ任命ハ總
督ヲ表面ニ立テヽ置クト云フコトニ致シタ
イト思ヒマス、併ナガラ是ハ役人トシテノ
監督ノ關係上、斯ウ云フ重大ナ事柄ニ付テ
ハ、ソレヲ個人一人ノ考ニ依ラシメルコト
ナク、內部ニ於テ十分間違ノナイダケノ監
督ヲ、拓務省ヨリ致スコトヲ考ヘテ居リマ
ス、ソレカラ第三ニ御尋ニナリマシタ業務
監督、業務監督ハ政府ガ監督スルト云フコ
トニナッテ居リマスガ、是ハ拓務省カ總督カ
ト云フ御話デアリマシタガ、是ハ只今ノ所
斯ウ云フ風ニ思ッテ居ルノデアリマス、臺灣
島內ニ於テ拓殖事業ニ關係シテ色々ナ事柄
ガゴザイマスルカラシテ、大體島內ノ事柄
ニ付キマシテハ、コチラカラ監督スルト云ッ
テモ十分旨ク行キマセヌ、是ハ臺灣當局ニ
監督セシメタイト思ッテ居リマス、ソレカラ
島外ノ事ニ付キマシテハ、總督ノ意見モ聽
キマスケレドモ、併シ總督ダケニ委シテ居ッ
タノデハ、或ハ對外關係モアリマスシ、コ
チラデ外務省ノ關係モアリ、色々ナ關係ガ
生ジテ來マスカラ、島外ニ關係シタ事柄ニ
付テハ、總督ノ意見ヲ聽クコトガアラウト
ハ思ヒマスケレドモ、主トシテ拓務省ガソ
レノ監督ニ當ルヤウニ自然ナラウト考ヘテ
居リマス、次ニ東洋拓殖トノ關係ハドウカ、
御尋ハ御尤デアリマス、東洋拓殖ハ滿蒙以
外ニ中華民國竝ニ南洋ノ方面ニマデモ手ヲ
伸バスト云フコトニナッテ居リマス、其點
ニ付キテハ重複スルヤウナ形ニナリマス
ガ、併シ此會社ハ臺灣ヲ中心トシテ、臺
灣ニ本據ヲ構ヘテ、サウシテ常ニ南支、南
洋ヲ眼目ニシテヤルノデアリマスカラ、今
後ニ於テ南支、南洋ニ主力ヲ注ギ、此會社
ガ多クノ場合ニ於テ南支、南洋ニ仕事ヲス
ルヤウニナラウト思ヒマス、隨テ此會社ノ
發達ト東拓トノ間ニ於テ衝突ヲ起スコトノ
ナイヤウニハ十分注意ヲスルコトガ餘リ難
事デナイト、サウ考ヘテ居リマス、又金ヲ
融通スル時分ニ、其利子ノコトハ競爭ニデ
モナリハセヌカト云フ御心配ノヤウデアリ
マシタガ、是ハヤハリ雙方共拓務省ノ監督
ニ屬シテ居ルモノデアリマスカラ、ソンナ
爭ヲ起サヌヤウニスルコトハ、餘リ面倒ナ
コトハナカラウト思ッテ居リマス、次ハモウ
一ツ何カ東拓ガヤッテ居ルコトヲ肩替リサ
スノカト云フ御尋デアリマシタガ、是ハ肩
替リサス考ハアリマセヌ、ソレカラ臺灣總
督ヲ文官ニスルカ武官ニスルカ、是ハ總理
ニ聽クノダガ、先ヅ拓務大臣ニ聽クト云フ
話デアリマスカラ、私カラ先ヅ御答ヲシテ
置キマス、ソレハ臺灣總督ハ異民族ヲ統治
スルノデアリマシテ、異民族統治ト云フモ
ノハ、非常ニ重大ナル責任モアルシ、又中
中面倒ナモノデアルト云フコトハ御想像ノ
通リデアリマス、隨テ餘程シッカリシタ人間
デナケレバ、此異民族ノ統治ト云フコトハ
行ハレ惡イノデアリマス、其際ニ此異民族
ノ統治ハ文官ガ宜イカ、武官ガ宜イカト云
フコトノ抽象的ノ御尋デアリマスレバ、ソ
レハ武官トシテ異民族ノ統治ニ非常ニ都合
ノ好イ場合モアリマス、併シ民政ヲ行フト
云フコトデアリマスカラシテ、又都合ノ惡
イコトモアリマス、文官ノ方モ都合ノ好イ
點モアルシ、惡イ點モアル、之ヲ一〓ニドッ
チニ限ルト云フコトハ言ハレマセヌカラシ
テ、文武兩方面ニ於テ適材ヲ求メルト言フ
外ニナイト思ッテ居リマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X00819360512&spkNum=74
-
075・鈴木文治
○鈴木文治君 簡單デゴザイマスカラ此席
カラ··発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X00819360512&spkNum=75
-
076・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 許可致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X00819360512&spkNum=76
-
077・鈴木文治
○鈴木文治君 尙ホ色々質疑應答ヲ致シタ
イコトモゴザイマスケレドモ、餘リ多ク時
間モアリマセヌカラ、本問題ハ此點デ打切
リマシテ、尙ホ委員會ニ於テ此質問ヲ繼續
致シタイト思ヒマス、ソレカラ更ニ總理大
臣ニ對スル質問モ是ハ保留致シマシテ、今
日ハ此程度ニ於テ私ノ質問ハ打切リタイト
思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X00819360512&spkNum=77
-
078・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 是ニテ質疑ハ終局
致シマシタ、各案ノ審査ヲ付託スベキ委員
ノ選擧ニ付テ御諮リ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X00819360512&spkNum=78
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079・松永東
○松永東君 日程第七及ビ第八ノ兩案ヲ一
括シテ議長指名十八名ノ委員ニ付託セラレ
ンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X00819360512&spkNum=79
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080・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 松永君ノ動議ニ御
異議ハアリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X00819360512&spkNum=80
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081・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 御異議ナシト認メ
マス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ、日程第
九、競馬法中改正法律案、同案ノ第一讀會
ヲ開キマス-農林大臣島田俊雄君
第九競馬法中改正法律案(政府提出)
第一讀會
競馬法中改正法律案
競馬法中左ノ通改正ス
第一條本法ニ依ル競馬ハ日本競馬會ニ
限リ之ヲ行フコトヲ得
第二條第一項ヲ左ノ如ク改ム
競馬ノ開催ハ競馬場每ニ年二囘ヲ超ユ
ルコトヲ得ズ但シ命令ヲ以テ定ムル場
合ニ限リ主務大臣ノ許可ヲ受ケ年三囘
開催スルコトヲ得
第四條第一項中「第一條ノ法人」ヲ「日本
競馬會」ニ改ム
第五條第二項中「當該競馬ヲ開催スル第
一條ノ法人」ヲ「日本競馬會」ニ改ム
第六條第一項中「第一條ノ法人」ヲ「日本
競馬會」ニ改ム
第八條第一項中「百分ノ六以內」ヲ「百分
ノ八以內」ニ、同條第二項中「前項」ヲ「前
二項」ニ、同條第三項中「第一項」ヲ「第一
項及第二項」ニ、「三分ノ一一」ヲ「四分ノ三」
ニ改メ同條第一項ノ次ニ左ノ一項ヲ加
フ
政府ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ日本競馬
會ノ保有スル資金ガ其ノ保有スベキ準
備資金ノ最高額ヲ超過スルトキハ其ノ
超過額ヲ政府ニ納付セシムルコトヲ得
第九條日本競馬會ハ勝馬投票劵ノ賣得
金ノ額ニ對シ其ノ定ムル步合ノ金額ヲ
賣得步合金トシテ收得スルコトヲ得但
シ前條第一項ノ規定ニ依リ政府ニ納付
スベキ金額ト賣得步合金額トノ合計ハ
賣得金ノ額ノ百分ノ十五ヲ超ユルコト
ヲ得ズ
第十條日本競馬會ハ法人トシ馬ノ改良
增殖及馬事思想ノ普及ヲ圖ルヲ以テ目
的トス
日本競馬會ハ前項ノ目的ヲ達スル爲本
法ニ依リ競馬ヲ行フノ外業務規則ノ定
ムル所ニ依リ必要ナル事業ヲ行フコト
ヲ得
日本競馬會ハ全國ヲ通ジ一箇トシ主タ
ル事務所ヲ東京市ニ置ク
第十一條主務大臣ハ設立委員ヲ命ジ日
本競馬會ノ設立ニ關スル一切ノ事務ヲ
處理セシム
第十二條設立委員ハ業務規則ヲ作リ主
務大臣ニ日本競馬會設立ノ認可ヲ申請
スベシ
日本競馬會ハ前項ノ認可アリタル時成
立ス
第十三條業務規則ニハ左ニ揭グル事項
ヲ記載スベシ
一目的
二名稱
三事務所
四競馬場
五役員ニ關スル規定
六事業及其ノ執行ニ關スル規定
七資產及會計ニ關スル規定
八業務規則ノ變更ニ關スル規定
業務規則ノ變更ハ主務大臣ノ認可ヲ受
クルニ非ザレバ其ノ效力ヲ生ゼズ
第十四條日本競馬會ハ其ノ成立ノ日ヨ
リ三週間以內ニ各事務所ノ所在地ニ於
テ左ノ事項ヲ登記スルコトヲ要ス
一目的
二名稱
三事務所
四成立ノ年月日
五資產ノ總額
六理事長、副理事長、理事及監事ノ
氏名及住所
前項ニ揭グル事項中ニ變更ヲ生ジタル
トキハ二週間以內ニ其ノ登記ヲ爲スコ
トヲ要ス但シ前項第五號ニ揭グル事項
ニ付テハ每會計年度末日ノ現在ニ依リ
會計年度終了後一月以內ニ登記ヲ爲ス
コトヲ得
前項ノ規定ニ依リ登記スベキ事項ハ登
記ヲ爲スニ非ザレバ之ヲ以テ第三者ニ
對抗スルコトヲ得ズ
本法ニ依リ登記シタル事項ハ裁判所遲
滯ナク之ヲ公〓スベシ
第十五條民法第四十四條、第四十五條
第二項第三項、第四十七條、第四十八
條、第五十條、第五十四條、第五十五
條、第五十七條、第六十八條第一項及
第七十條乃至第八十三條竝ニ非訟事件
手續法第三十五條、第三十六條、第三
十七條ノ二、第百十七條、第百十九條
乃至第百二十二條、第百三十六條乃至
第百三十八條、第百四十二條乃至第百
五十七條及第百七十五條乃至第百七十
七條ノ規定ハ日本競馬會ニ之ヲ準用ス
但シ民法第四十五條第三項、第四十八
條第一項及第七十七條中一週間トアル
ハ之ヲ二週間トス
第十六條日本競馬會ニハ所得稅及營業
益收稅ヲ課セズ
日本競馬會ガ本法ニ基キテ爲ス登記ニ
付テハ登錄稅ヲ課セズ
第十七條日本競馬會ニ左ノ役員ヲ置ク
理事長一人
副理事長一人
理事若干人
監事若干人
評議員二十五人以內
第十八條理事長ハ日本競馬會ヲ代表シ
其ノ事務ヲ總理ス
副理事長ハ理事長事故アルトキ其ノ職
務ヲ代理シ理事長缺員ノトキ其ノ職務
シカ)
副理事長及理事ハ理事長ヲ補助シ業務
規則ノ定ムル所ニ從ヒ日本競馬會ノ業
務ヲ掌理ス
監事ハ日本競馬會ノ業務ヲ監査ス
第十九條理事長及副理事長ハ主務大臣
之ヲ命ズ
理事及監事ハ業務規則ノ定ムル所ニ依
リ評議員ニ於テ其ノ候補者ヲ選擧シ主
務大臣之ヲ命ズ
理事長、副理事長及理事ノ任期ハ五年、
監事ノ任期ハ三年トス
第二十條評議員ハ主務大臣之ヲ命ズ
評議員ハ名譽職トシ前條第二項ノ規定
ニ依ル選擧ヲ爲スノ外業務ノ執行ニ關
スル重要事項ニ付理事長ノ諮問ニ應ズ
ルモノトス
評議員ノ任期ハ三年トス
第二十一條日本競馬會競馬ヲ開催セン
トスルトキハ當該競馬ニ關スル事務ヲ
執行セシムル爲命令ノ定ムル所ニ依リ
開催執務委員ヲ置クコトヲ要ス
第二十二條日本競馬會ハ命令ノ定ムル
所ニ依リ其ノ資金ヲ管理スベシ
第二十三條主務大臣ハ日本競馬會ノ業
務ヲ監督ス
第二十四條日本競馬會ハ左ニ揭グル事
項ニ付主務大臣ノ認可ヲ受クベシ
一借入金
二債務ノ保證
三不動產ノ取得又ハ處分
四收支豫算
第二十五條主務大臣ハ日本競馬會ニ對
シ業務規則又ハ收支豫算ノ變更ヲ命ジ
其ノ他監督上必要ナル命令ヲ發シ又ハ
處分ヲ爲スコトヲ得
第二十六條主務大臣ハ日本競馬會ニ對
シ馬ノ改良增殖及馬事思想ノ普及ノ爲
必要ナル施設ヲ命ズルコトヲ得
第二十七條主務大臣ハ日本競馬會又ハ
其ノ役員若ハ開催執務委員ノ行爲ガ法
令、之ニ基キテ爲ス處分若ハ業務規則
ニ違反シ又ハ公益ヲ害シ若ハ害スル虞
アリト認ムルトキハ左ノ處分ヲ爲スコ
トヲ得
-競馬ノ停止
二勝馬投票劵發賣ノ停止又ハ制限
三役員ノ解任
四開催執務委員ノ職務執行ノ停止
第二十八條日本競馬會ハ命令ノ定ムル
所ニ依リ其ノ業務ニ關スル諸般ノ計算
及狀況ノ報〓書ヲ主務大臣ニ提出スベ
シ
第二十九條主務大臣ハ特ニ日本競馬會
監理官ヲ置キ日本競馬會ノ業務ヲ監視
セシム
第三十條日本競馬會監理官ハ何時ニテ
モ日本競馬會ノ業務及財產ノ狀況ヲ檢
査スルコトヲ得
日本競馬會監理官ハ監視上必要ナリト
認ムルトキハ何時ニテモ日本競馬會ニ
命ジテ業務上諸般ノ計算及狀況ヲ報〓
セシムルコトヲ得
日本競馬會監理官ハ日本競馬會ノ諸般
ノ會議ニ出席シテ意見ヲ開陳スルコト
ヲ得但シ議決ノ數ニ加ハルコトヲ得ズ
第三十一條日本競馬會ニ非ザルモノハ
日本競馬會又ハ之ニ類似ノ名稱ヲ用フ
ルコトヲ得ズ
第三十二條主務大臣ハ本法ニ依ル競馬
ニ關與スル調〓師又ハ騎手ノ取締ニ關
シ必要ナル命令ヲ發スルコトヲ得
第三十三條左ノ各號ノ一ニ該當スル者
ハ三年以下ノ懲役若ハ五千圓以下ノ罰
金ニ處シ又ハ其ノ刑ヲ併科ス
一日本競馬會ニ非ズシテ勝馬投票劵
ヲ發賣シタル者
二第二十七條第二號ノ停止又ハ制限
ニ違反シテ勝馬投票劵ヲ發賣シタル
者
三本法ニ依ル競馬ノ競走ニ關シ業ト
シテ多數ノ者ニ對シ財物ヲ以テ〓事
ヲ爲シタル者
四第五條第二項ニ揭グル者ニシテ前
號ニ規定スル行爲ノ相手方ト爲リタ
ルモノ
第三十四條開催執務委員ノ職務ヲ執行
スルニ當リ之ニ對シテ暴行又ハ脅迫ヲ
加ヘタル者ハ二年以下ノ懲役又ハ二千
圓以下ノ罰金ニ處ス
團體若ハ多衆ノ威力ヲ示シ、國體若ハ
多衆ヲ假裝シテ威力ヲ示シ又ハ兇器ヲ
示シ若ハ數人共同シテ前項ノ罪ヲ犯シ
タル者ハ三年以下ノ懲役又ハ三千圓以
下ノ罰金ニ處ス
第三十五條左ノ各號ノ一ニ該當スル者
ハ二千圓以下ノ罰金ニ處ス
一第四條第一項又ハ第二項ノ規定ニ
依ル制限ニ違反シテ勝馬投票劵ヲ發
賣シタル者
二第五條ノ規定ニ違反シタル者
三第五條第二項ニ揭グル者ニシテ勝
馬投票劵ヲ購買シタルモノ
四第六條ノ規定ニ依ル制限ニ違反シ
テ拂戾金ヲ交付シタル者
五第七條ノ規定ニ依リ認可ヲ受ケタ
ルニ非ザル劵面金額ノ勝馬投票劵ヲ
發賣シタル者
六第三十三條第一號乃至第三號ノ一
ニ規定スル行爲ノ相手方ト爲リタル
者
第三十六條左ノ各號ノ一ニ該當スル者
ハ二百圓以下ノ罰金又ハ科料ニ處ス
一第四條第一項又ハ第二項ノ規定ニ
依ル制限ニ違反シテ勝馬投票劵ヲ購
買シタル者
二第五條第一項ニ揭グル者ニシテ勝
馬投票劵ヲ購買シタルモノ
三勝馬投票劵ヲ讓渡シ又ハ讓受ケタ
ル者
四第六條ノ規定ニ依ル制限ニ違反シ
タル拂戾金ノ交付ヲ受ケタル者
第三十七條日本競馬會ノ役員又ハ開催
執務委員ガ其ノ職務ニ關シ賄賂ヲ收受
シ又ハ之ヲ要求若ハ約束シタルトキハ
二年以下ノ懲役ニ處ス因テ不正ノ行爲
ヲ爲シ又ハ相當ノ行爲ヲ爲サザルトキ
ハ五年以下ノ懲役ニ處ス
前項ノ場合ニ於テ牧受シタル賄賂ハ之
ヲ沒收ス若シ其ノ全部又ハ一部ヲ沒收
スルコト能ハザルトキハ其ノ價格ヲ追
徵ス
第三十八條前條第一項ニ揭グル者ニ對
シ賄賂ヲ交付、提供又ハ約束シタル者
ハ二年以下ノ懲役又ハ三百圓以下ノ罰
金ニ處ス
前項ノ罪ヲ犯シタル者自首シタルトキ
ハ其ノ刑ヲ輕減又ハ免除スルコトヲ得
第三十九條日本競馬會ノ理事長、副理
事長、理事、監事若ハ開催執務委員又
ハ〓算人ハ左ノ場合ニ於テハ千圓以下
ノ過料ニ處ス
一本法ニ於テ主務大臣ノ許可又ハ認
可ヲ受クベキ場合ニ其ノ許可又ハ認
可ヲ受ケザルトキ
二第二十二條ノ規定ニ違反シタルト
キ
三第二十五條、第二十六條又ハ第二
十七條第四號ノ規定ニ依ル主務大臣
ノ命令ニ違反シタルトキ
四本法ニ基キテ爲ス登記ヲ爲スコト
ヲ怠リタルトキ
五民法第八十二條第二項ノ規定ニ依
ル裁判所ノ檢査ヲ妨ゲタルトキ
六第二十八條ノ規定ニ依ル報告ヲ怠
リ又ハ官廳ニ對シ不實ノ申立ヲ爲シ
若ハ事實ヲ隱蔽シタルトキ
七民法第七十條又ハ第八十一條ノ規
定ニ違反シ破產宣告ノ請求ヲ爲スコ
トヲ怠リタルトキ
八民法第七十九條又ハ第八十一條ニ
定メタル公〓ヲ爲スコトヲ怠リ又ハ
不正ノ公〓ヲ爲シタルトキ
第四十條第三十一條ノ規定ニ違反シタ
ル者ハ五百圓以下ノ過料ニ處ス
第四十一條非訟事件手續法第二百六條
乃至第二百八條ノ規定ハ前二條ノ過料
ニ之ヲ準用ス
附則
第四十二條本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以
テ之ヲ定ム
第四十三條從前ノ第一條ノ法人ハ本法
施行後ト雖モ日本競馬會成立ノ日ヨリ
一年以内ハ競馬ヲ行フコトヲ得此ノ場
合ニ於テハ仍從前ノ例ニ依ル但シ命令
ノ定ムル所ニ依リ勝馬投票劵賣得金ノ
額ノ百分ノ八以內ニ相當スル金額ヲ政
府ニ納付スルモノトス
第四十四條本法ニ依リ日本競馬會ノ競
馬ヲ開催スル競馬場ノ數ハ當分ノ內十
一以內トス
第四十五條從前ノ第一條ノ法人及社團
法人帝國競馬協會ハ日本競馬會成立ノ
日ヨリ一年ヲ經過シタルトキ解散ス
第四十六條從前ノ第一條ノ法人及社團
法人帝國競馬協會ノ總會ノ決議ニ依ル
解散ハ主務大臣ノ認可ヲ受クルニ非ザ
レバ其ノ效力ヲ生ゼズ
第四十七條從前ノ第一條ノ法人及社團
法人帝國競馬協會解散シタル場合ニ於
テハ其ノ權利義務ハ日本競馬會之ヲ承
繼ス
前項ノ場合ニ於ケル解散ノ登記ハ解散
シタル法人ノ理事ノ申請ニ依リ之ヲ爲
ス
第四十八條前條第一項ノ場合ニ於テ主
務大臣特別ノ事由アリト認ムル法人ニ
付テハ命令ノ定ムル所ニ依リ其ノ權利
義務ノ一部ヲ保留セシムルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ其ノ權利義務ノ一部
ヲ保留シタル法人ハ其ノ權利義務ニ付
民法ノ規定ニ依リ〓算ヲ爲スコトヲ要
ス
第四十九條日本競馬會第四十七條ノ規
定ニ依リ承繼シタル不動產ニ關スル權
利ノ取得ニ付登記ヲ受クル場合ニ於テ
ハ其ノ登錄稅ノ額ハ不動產ノ價格ノ千
分ノ三トス但シ登錄稅法ノ規定ニ依リ
算出シタル稅額ガ本條ニ依リ算出シタ
ル稅額ヨリ少キトキハ其ノ稅額ニ依ル
北海道府縣及市町村其ノ他之ニ準ズベ
キモノハ日本競馬會ニ對シ第四十七條
ノ規定ニ依リ承繼シタル不動產ニ關ス
ル權利ノ取得ニ關シ地方稅ヲ課スルコ
トヲ得ズ
第五十條日本競馬會第四十七條ノ規定
ニ依リ從前ノ第一條ノ法人又ハ社團法
人帝國競馬協會ノ權利義務ヲ承繼シタ
ルトキハ直ニ其ノ旨ヲ公告シ且從前ノ
第一條ノ法人又ハ社團法人帝國競馬協
會ノ債權者ニシテ知レタルモノニ對シ
各別ニ其ノ旨ヲ通知スルコトヲ要ス
日本競馬會ノ承繼シタル債務中辨濟期
ノ至ラザルモノアルトキハ日本競馬會
ハ其ノ債權者ノ請求ニ因リ相當ノ擔保
ヲ供スルコトヲ要ス
第五十一條日本競馬會設立當時ノ理事
及評議員ノ任期ニ付テハ第十九條第三
項及第二十條第三項ノ規定ニ拘ラズ各
五年以內又ハ三年以內ニ於テ業務規則
ヲ以テ別ニ之ヲ定ムルコトヲ得
〔國務大臣島田俊雄君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X00819360512&spkNum=81
-
082・島田俊雄
○國務大臣(島田俊雄君) 只今議題トナリ
マシタ競馬法中改正法律案提案ノ理由ヲ御
說明申上ゲマス、競馬法ガ實施サレマシテ
以來既ニ十三年ト相成リマス、其間昭和四
年及ビ昭和六年ニ於テ一部ノ改正ヲ見タノ
デアリマスルガ、其後ニ於ケル競馬實施ノ
狀況ニ鑑ミマスニ、同法制定ノ趣旨ヲ徹底
致シマスル爲ニハ、競馬制度ニ付キマシテ、
之ニ適應スル改善刷新ヲ要スル事情ニナツ
タノデアリマス、仍テ昨年馬政調査會ニ對
シテ、競馬ノ統制改善ニ關スル方策ニ付テ
諮問ヲ致シマシタ、同調査會ニ於キマシテ
ハ銳意御〓究ノ結果、本年一月其答申ヲ決
議致サレタノデアリマス、本改正法律案ハ
右ノ答申ニ基キマシテ立案致シタモノデア
リマシテ、競馬施行機關ノ組織、競馬施行
ニ關スル取締及ビ政府納付金等ノ事項ニ付
キマシテ必要ナル改正ヲ加ヘ、以テ馬政上
ニ於ケル競馬ノ使命達成ニ遺憾ナキヲ期セ
ントスルモノデアリマス、詳細ハ委員會ニ
於テ說明申上ゲル積リデアリマスガ、何卒
御審議ノ上速ニ御協贊アランコトヲ希望致
シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X00819360512&spkNum=82
-
083・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 質疑ノ通〓ガアリ
マス、之ヲ許可致シマス-岡本實太郞君
〔岡本實太郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X00819360512&spkNum=83
-
084・岡本實太郎
○岡本實太郞君 私本案ニ付キマシテ第一
ニ政府ニ御尋致シタイコトハ、本案ヲ何故
短期ノ當議會ニ提出シテ、急速ニ之ヲ解決
サレヨウトスル必要ガアルカ、先ヅ是デア
リマス、御承知ノ通リ會期僅ニ三週間、旣
ニ政府カラ提案サレタノガ四十何件、尙ホ
提案ガアッテ五十件餘ニ及ブト云フコトデ
アリマス、而モ提案ノ理由書ヲ見マシテモ
極メテ簡潔デアリマス、又只今農林大臣ノ
提案說明ヲ承リマシテモ、本案ヲ急イデ此
短期議會ニ解決スルト云フ理由ハ遺憾ナガ
ラ看取セラレナイノデアリマス、殊ニ農林
關係ニ於キマシテハ米穀自治管理法案、或
ハ產繭處理統制法案、更に
〔議長退席、副議長著席〕
重要肥料業統制法案、多クノ重要ナル法案
ガ重ネテ出サレテ居ル上ニ、更ニ又此根本
的ノ大改正案ヲ出サレテ居ル、本案ヲ通觀
致シマスルノニ、競馬法ニ對シテ僅ニ部分
的ノ改正ニアラズシテ、寧ロ根本的ノ改正
ニナッタノデアリマス、卽チ現行法ノ社團法
人デアル競馬場十一箇所ヲ以テ、十一ノ社
團法人ヲ總テ解散シテ、之ヲ打ッテ一丸トシ
タル日本競馬會トスルト云フノデアリマス、
何故此短期議會ニ提出シテ先ヲ急ガレルノ
デアルカ、ソレヲ假ニ推量致シテ見マスト、
最近競馬熱ハ頗ル旺盛デアッテ、阪神ノ鳴尾
競馬、或ハ京都ノ淀ノ競馬ノ如キハ、-日
ノ馬劵ノ賣上高ガ百二十萬、三十萬ニ及ブ
ト聞イテ居リマス、或ハ根岸ノ競馬、目黑
カラ最近移リマシタ府中ノ競馬ハ、一日ニ
七十萬圓前後ノ賣上ガアルト聞イテ居リマ
ス、其外十一箇所ノ競馬ノ中、小競馬場ト
雖モ三十萬、四十萬ハ一日ニ賣上ゲ致シテ
居リマス、斯樣ニ競馬熱ガ旺盛ニナッテ來
タ、旺盛ニナッテ來タカラ盛ニヤラナケレバ
ナラヌト言ヒマスガ、私ハ反對ニ考ヘマス、
寧ロ賣上ガ少クシテ到底其競馬場ヲ維持
スルコトガ出來ナイ、收支償ハナイト云フ
ヤウナ際デアルナラバ、本案ノ如キヲ急イ
デ提出シテ、早ク解決シテ、之ヲ一ツニ統
一スル必要ハアルデアリマセウガ、之ヲ次
ノ第七十囘ノ通常議會ニ出サレタ所ガ時遲
シトシナイ、漸ク今年ノ秋ノ競馬ヲスルカ
シナイカト云フダケノ境目デアリマス、故ニ本
案ヲ急イデ解決スルガ爲ニ、今此短期議會ニ
提出サレルト云フ理由ハ、私ハドウシテモ發見
シ惡イノデアリマス、是ニ於テカ私ハ大キナ疑問
ヲ懷イテ來タノデアリマス、卽チ是ガ第二ノ私
ガ質問致シマスル點デアリマスルガ、此法案ノ
第四十八條-附則ニナッテ居リマス此條文
ヲ見タ時ニ、私ハ色々ナ疑ヲ懷イタノデアリ
そう、試ニ之ヲ讀ンデ見マス、之ヲ讀ミ
マスニハ先ヅ其前提トシテ前ノ四十七條ヲ
見ル必要ガアルノデアリマス、卽チ四十七
條ニ斯ク書イテアリマス「從前ノ第一條ノ
法人及社團法人帝國競馬協會解散シタル場
合ニ於テハ其ノ權利義務ハ日本競馬會之ヲ
承繼ス」是ハ至極宜イコトデ、尤モト思ヒ
マス、卽チ十一ノ從來ノ社團法人ノ競馬協
會ガ解散シタ時ニハ、其財產ハ擧ゲテ權利
モ義務モ總テ新シク本法ニ依ッテ成立シタ
日本競馬會ニ引繼グト云フノデアリマシ
テ、當然デアルノデアリマス、次ノ二項ハ
必要ガナイカラ今省キマス、次ノ第四十八
條ハ卽チ此除外例的ノ規定デアルノデアリ
やく、第一項ニ規定シテ曰ク「前條第一項
ノ場合ニ於テ主務大臣特別ノ事出アリト認
ムル法人ニ付テハ命令ノ定ムル所ニ依リ其
ノ權利義務ノ一部ヲ保留セシムルコトヲ
得」トナッテ居ルノデアリマス、前ノ時ニ鈴
木君ハ勅令トアルノガ頗ル曲者ヂヤナイカ
ト言ハレマシタガ、私ハ命令トアル所ニ意
義ヲ持ツノデハナイカ、ソコニ疑ヲ一應懷
イタノデアリマス、其第二項ニ曰ク「前項
ノ規定ニ依リ其ノ權利義務ノ一部ヲ保留シ
タル法人ハ其ノ權利義務ニ付民法ノ規定ニ
依リ〓算ヲ爲スコトヲ要ス」斯樣ナ規定ニ
ナッテ居リマス、本案第四十八條ノ第一項ニ
アリマスル特別ノ事由アリト認ムル法人ト
云フノハ全體何ヲ指スカ、除外例ニ認メル
ノハ察スルニ十一競馬ノ中ノ橫濱根岸競馬
ヲ指スノデアラウト思ヒマス、他ノ競馬場
トハ事變リマシテ、歷史ガ古ク、此競馬法
ノ出來ナイズット以前カラアル、此橫濱根岸
競馬場ハ社交倶樂部トシテ外人ガ中心ニナ
リ、之ニ日本人ガ加ハッテ出來タノデアリ
マス、故ニ現行ノ競馬法ノ設立セラレテ居
リマス時ニハ、旣ニ相當ノ資產等モ持ッテ引
繼ガレテ今ノ橫濱根岸競馬場ニナッテ居ル
ト云フコトヲ聞イテ居リマス、最近デハ京
都或ハ阪神ノ鳴尾ノ如キガ頗ル優良ナ成績
デアリマスガ、中ニモ根岸競馬場ト云フノ
ハ最モ好イ地位ヲ占メテ居ッタガ故ニ、數百
万圓ニ上ル今日財產或ハ現金ノ多大ヲ擁シ
テ居ルト聞イテ居リマス、此數百万圓ノ多
大ノ財產ガ兎角目ニ著イタモノカ、或ハ外
人-主トシテ亞米利加人デアリマセウ、
之ヲ分配致シテ早ク歸國致シタイト云フヤ
ウナ希望モ持ッテ居ルト云フコトヲ聞イテ
居リマス、之ガ爲ニ我ガ日本人ノ競馬通ノ
一部ニハ策動ヲシテ、此目的ヲ達成セシメ
ヨウト、可ナリ奔走シ活動シタ者アリト聞
イテ居リマス、併シ此競馬場ハ現行法ニ依
リマシテ公益法人デアリマス、其公益法人
ヲ斯樣ナ私事ノ爲ニ解散スルト云フガ如キ
ハ、假令特別ノ事情ガ橫濱ノ根岸ダケハア
リト致シマシテモ、許スベカラザルコトデ
アル、卽チ公益法人ノ解散ハ民法ニハ明ニ
規定ニナッテ居ル、定款ニ定ムル所ニ依ル、
若シ定款ニ定ムル所ガナカッタナラバ、解散
シタ時ノ如キハ同ジ目的ヲ有スル同種ノ目
的ノ所ヘ之ヲ歸屬セシメル、更ニソレガナ
カッタナラバ、最後ニハ國庫ニ之ヲ歸屬セシ
メル、此處マデ行ッテ居リマス、個人デ之ヲ
分配スルガ如キハ實ニ以テノ外デアルト云
フノデ、政府當局ハ長ク之ヲ監督上許サナ
カッタ、或ハ定款ノ變更ヲシテ之ヲ爲サウト
スルガ如キモ、勿論許スベカラザルコトデ
アルト言ウテ、今日ニ至ッテ居ルガ、尙ホ今
日一部其策動ガアルカト聞イテ居リマス、
私仄聞スル所ニ依リマスト、亞米利加人ノ
コトデハアリマスルケレドモ、亞米利加ノ
大使館或ハ領事館等デハ、斯樣ナ問題ハ取
上ゲナイト聞イテ居リマス、普通カラ考ヘ
タラ取上ゲラルベキモノダガ取上ゲナイ、
ソレハ事公益ニ關スルコトデアリ、日本ノ
競馬法ノ精神ヲ酌ミマシテ、斯樣ナ金ヲ分
配スルト云フコトハ、此亞米利加ノ大使館
領事館ト雖モ、之ヲ快シトセザルヤニ聞イ
テ居リマスニ拘ラズ、一部ノ外人、部
ノ日本人ガ此間ニ策動致シテ居ッタト云フ
コトデアリマス、是ニ於テカ可ナリ多額ノ
所謂成功謝金ト云フモノヲ賭シテ、祕密ノ
間ニ可ナリ運動猛烈ナモノガアリ、奔走ヲ
シテ居ルト聞イテ居ルノデアリマス、斯樣
ナコトヲ思ヒ當リマスト、是ハ私ノ杞憂ニ
過ギナイ、疑ナラバ結構デアリマスガ、疑
ト致シテ、此四十八條ト云フモノハ斯樣ナ
特別ノ事情アル法人トシテ、卽チ命令ノ定
ムル所ニ依ッテ權利義務ノ一部ヲ保留スル、
全部デハナイガ一部ノ財產ヲ保留シテ、ソ
レヲ何等カニセヨト云フヤウナ疑ガ玆ニ出
テ來ルノデアリマス、之ヲ先ヅ第一ニ政府
ニ質シタイノデアリマス
而シテ其第二項ヲ見マスレバ、斯樣ニナッテ
居リマス「前項ノ規定ニ依リ其ノ權利義務
ノ一部ヲ保留シタル法人ハ其ノ權利義務ニ
付民法ノ規定ニ依リ〓算ヲ爲スコトヲ要ス」
トアルノデスガ、一項ダケ見マスト、特殊
ノ法人ニ對シテ、命令デハドンナコトヲ定
メルカモ知レヌト云フヤウナ懸念ノ疑ヲ懷
キマスガ、更ニ二項ヲ見レバ、此保留財產
ハ「民法ノ規定ニ依リ〓算ヲ爲スコトヲ要
ス」斯樣ニナッテ居リマス、民法ハ如何ナル
風ニアルカト見マスト、卽チ殘餘財產ノ分
配方ノ規定ニ付テハ、民法七十二條ガ明ニ
之ヲ規定致シテ居リマス、是ハ言フ迄モア
リマセヌガ、現行ノ競馬法ニ依リマシテ民
法ノ法人デアリマス、七十二條ニハ斯ク書
イテアリマス「解散シタル法人ノ財產ハ定
款又ハ寄附行爲ヲ以テ指定シタル人ニ歸屬
ス」二項ニ「定款又ハ寄附行爲ヲ以テ歸屬
權利者ヲ指定セス又ハ之ヲ指定スル方法ヲ
定メサリシトキハ理事ハ主務官廳ノ許可ヲ
得テ其法人ノ目的ニ類似セル目的ノ爲メニ
其財產ヲ處分スルコトヲ得但社團法人ニ在
リテハ總會ノ決議ヲ經ルコトヲ要ス」第三
項ニ「前二項ノ規定ニ依リテ處分セラレサ
ル財產ハ國庫ニ歸屬ス」斯樣ニナッテ居ル
ノデアリマス、是カラ見マスレバ民法ノ規
定ニ依ッテ〓算ヲスルト云フノナラバ、分配
ト云フコトハ更ニ出來ナイ筈デアリマス、
ナラバ此四十八條ト云フモノハ何ノ必要
アッテ置カレタモノカ、恐ラク私推量致シマ
スガ、斯樣ナ個人ニ分配ヲスルト云フコト
ハ、政府ハ許サヌ趣旨デアラウ、此法案モ
亦ソレガ精神デアラウト思ヒマス、其趣旨
ナラバ第四十八條ト云フモノハナクモ宜シ
イ、況ヤ此法案ノ第十五條ヲ見マスレバ、
明ニ民法ノ第七十條乃至第八十三條ト云フ
モノヲ準用シテ居リマシテ、七十二條ノ殘
餘財產ノ分配方ハ、此處ニモウ決ッテ居ル、
此規定ガナクテモ、民法ノ七十二條デ當然
解釋サレル、更ニ此法案ノ第十五條ニ依ッ
テ、七十二條ヲ準用シテ居ルノニ拘ラズ、
又四十八條ノ第二項ニ行ッテ、民法ノ規定ニ
依リ〓算ヲ爲スコトヲ要ス、何ノ爲ニコン
ナコトヲサレルノカ、是ニ至ッテ益〓私ハ此
四十八條ト云フモノヽ解釋ニ至ッテ甚ダ苦
ミマスカラ、之ヲ政府ニ御尋スル次第デア
リマス、是ニ於テ第三トシテ御尋致シタイ
ノハ、一體根岸ノ競馬ニハ目今如何ナル資
產ガアルカ、數百万ト私ハ聞イテ居リマス
ガ、其額ハ確カト知リマセヌ、ドノ位ノ額
デアルカ、之ヲ御伺ヒ致シタイ
第四點ト致シマシテ、斯樣ナ疑ヲ招クヤ
ウナ四十八條ハ寧ロ削除サレタラドウカ、
削除スルト云フコトニナッタナラバ、政府ハ
御同意ニナルカ、又之ヲ置カナケレバナラ
ヌ理由ハ何處ニ在ルカ、疑ヲ招ク條文ナラ
バ、之ヲ削除スルト云フノナラバ、此法案
ノ全體ノ精神ガ能ク解釋サレマシテ喜ブノ
デアリマス、是ガアルト疑ガアル、命令ニ
依ッテ保留財產ヲ決メル、斯樣ニナッテ居リ
マスカラ疑ガアルノデアリマスガ、若シ政
府ニ於テ疑フト云フナラバ削除スルニ吝カ
デナイト云フ御答辯ガ出マスレバ、玆ニ全
ク法案ノ精神ガ一貫シマヌ、又ドウシテモ
置カナケレバナラヌト云フ御考ガアレバ、
ソレヲ伺ヒタイ、左樣ニ考ヘルノデアリマ
ス
次ニ第四點トシテ御尋致シタイノハ、此
法案ガ成立チマシテ、日本競馬會ガ出來ル、
サウスルト十一ノ現在ノ社團法人ハ解散ス
ル、其ノ解散法人ノ監督ト云フモノハ一體
何處ニアルカ、今ノ主務官廳タル農林大臣
ガ監督スルカドウカト云フコトデアリマス、
是ハ民法ノ規定ニ依レバ解散法人ノ監督ハ
總テ明ニ裁判所デアリマス、卽チ八十二條
デアリマス「法人ノ解散及ビ〓算ハ裁判所
ノ監督ニ屬ス」斯ウアルノデアリマス、裁
判所ノ監督ハ恐ラク形式デアリマス、其本
體ハ分リマスマイカラ、苟モ法規ニ違反セ
ヌ以上ハ、犯罪行爲デモナケレバ、强ヒテ
餘リ之ニ干涉モ致スマイト思フノデアリマ
ス、ドウシテモ本體ヲ辨ヘタ主務官廳ガ絕
對的ニ之ヲ檢査シテ、其內容ノ善惡ヲ見定
メルコトガ必要デアル、ダカラ裁判所ノ監
督ハ、其當事者カラ見タラ甚ダ之ヲ容易ニ
考ヘマセウ、ナゼ解散法人ガ主務官廳ノ監
督下ニ置カレナカッタカ、勿論民法八十三條
ニ依リマシテ「〓算カ結了シタルトキハ〓
算人ハ之ヲ主務官廳ニ屆出ツルコトヲ要ス」
斯ウアリマスカラ、主務官廳ニ屆出ハシナ
ケレバナラヌ、併シ是ハ屆出デス、認可デ
モ許可デモ何デモナイノデス、ダカラ
裁判所デ別ニ法規違反デモ何デモナイ
ト認メテ居ッテ、監督上喧シク言ハナイ
デ登記ヲセヌデ、直グ〓算ヲ結了シタリ、
屆出ハ屆ツ放シデハ、其後主務官廳タル農林
大臣デハ、何トモ言フコトハ出來マイト思
フノデアリマス、不都合ガアッテモ不都合ヲ
咎メルコトハ出來マセヌト云フコトノ結果
ニ終リハシナイカト思ッテ居ル、此解散法人
ノ〓算ニ付テハ色々疑ガ起キマスカラ、ナ
ゼ之ヲ主務大臣ノ監督下ニコヽマデ置カレ
ナカッタカ、法案ニ其明文ヲ置カレナカッタ
カト云フコトガ疑ニナリマスカラ、此點モ
御答辯ヲ御願ヲスルノデアリマス
尙ホ斯樣ナ疑問モ序ニ伺ヒマス、法案ノ
第四十五條第四十六條ヲ見マスト、此法律
ガ出來マシテカラ「一年ヲ經過シタルトキ
解散ス」トアリマス、是ハ恐ラク法定解散デ
アラウト思ヒマス、法定解散ト云フナラバ、
ソレデ私ハ構ヒマセヌガ、若シ之ヲ一年ガ
過ギテカラ、其後ニ於テ任意ニ解散ヲスル
ノダ、決議ニ依ッテ解散スルノダ、斯ウ云フ
コトニナリマスルト、假ニ解散セズニ放任
シテ捨テヽ置タラドウスルカ、玆ニ此疑問
ガ出マスカラ、法定解散ナリヤ否ヤ、年
ヲ經過シタ時ノ解散ト云フコトヲ念ノ爲ニ
御尋致シタイノデアリマス
更ニ此法案ニ付キマシテ今一ツ重要ナ點
ヲ御尋シタイノハ、法案ノ第四十四條ヲ見
マスト、當分ノ內十一箇所ト云フコトニナッ
テ居リマス、卽チ此法案ガ出來上リマシテ、
法律ニナッテ、日本競馬會ガ一ツニナリ、競
馬場ハ十一箇所デアルト云フコトニナッテ
居リマス、是ハ現行法ニ於キマシテモ、附
則ニ依リマシテ同ジヤウナ文字デ、法人ノ
數ハ當分ノ內十一以內トスト斯ウアリマス
ルカラシテ、是ハ現行法通リノコトヲ、同
ジヤウナ文字ヲ持ッテ來ラレタト斯樣ニ思
ヒマス、思ヒマスガ此當分ノ內ト云フ文字
ガアルガ故ニ、頗ル樣々ナ策動ガ行ハレル
ヤウデアリマス、卽チ此當分ガ最早競馬法
ガ制定サレテカラ十二三年ニモナリマセウ
ガ、可ナリ長イ當分ニナッテ居リマス、何レ
是ハ場所ヲ殖スモノダラウト云フ、一般ガ
サウ云フ見込ヲ付ケマシテ、サウシテ彼處
ヘモ殖セ、此處ヘモ殖セト、可ナリ增設ノ
運動ガアルヤウニ聞イテ居リマス、或ハ或
處ノ競馬場ヲ移シテ、又他ノ處へ之ヲ持ッテ
行カウ、卽チ其權利ヲ賣買シヨウト云フヤ
ナ運動ガ、コヽ數年前カラ可ナリ深刻ニ
行ハレテ居ル、是ガ爲ニ地方ノ何モ知ラナ
イ方ハ、一部ノ策動家ニ惑ハサレテ、可ナ
リノ失費ヲ費シ、或ハ田舍ノ物持ナドガ、
是ガ爲ニ財產マデ抛ッテシマッタト云フヤウ
十、洵ニ深刻ナ話ヲ聞イテ居リマス、此運
動ハ今尙ホ私ハアルヤニ承ッテ居リマス、是
ハ畢竟當分ノ內ナドト云フ文字ガアルカラ、
一般ニ斯ウ云フコトヲ言ハレ、又爲サルヽ
虞ガアルノデアリマス、ダカラ此法案ニ依
リマシテ改正サルヽナラバ、須ク當分ノ
內ナドト云フ文字ハ取ラレタラドウカ、取
レバ玆ニ疑ガ取レマシテ、十一箇所ハ動
カヌモノダラウト云フコトヲ一應考ヘマス、
其後ニ假ニ增設スル必要ガアリマスレバ、
ヤハリ增設ノ法律案ヲ出サナケレバナラヌ、
法律案トシテ政府ガ提出シナケレバナラヌ、
デアリマスレバ當分ノ內ト云フ字ハ、アッテ
モナクテモ、何レニシマシテモ增設ヲスル
時ニハ、議會ニカケテ、法律案トシテ提出
サレナケレバナラヌカラ、斯樣ナ疑ノアル
文字ハ-疑ハ別ニアリマセヌガ、色々ナ
運動ヲ誘致致スヤウナ虞ノアル文字ハ、此
際寧ロ削除サレテシマフト云フコトガ宜カ
ラウト思ヒマスガ、此點ニ付テ政府ノ御考
ヲ伺ヒタイノデアリマス、尙ホ昭和四年ノ
時ノ競馬法ノ改正デアリマシタカ、政府ノ
原案トシテ納付金ノ率ヲ殖シ、場所モ十一
ヲ十五カ六ト思ヒマシタガ、增加スルト云
フ法律案ガ出マシテ、衆議院ハ通過致シマ
シタガ、貴族院ニ於キマシテ、納付金ノ率
ヲ殖スコトハ認メル、併シ場所ヲ殖スコト
ハ相成ラヌト言ウテ、折衷的ナ、洵ニ粹ナ裁
キヲセラレタコトガアルト云フ記憶ガアリ
やっ、斯樣ナ沿革ガアリマスカラ、此當分
ノ內ナドト云フコトハ削除サレタラ宜カラ
ウト、斯ウ私ハ考ヘマスルガ、政府ノ御意
見ヲ伺ヒタイ、今一點、極メテ簡單デスガ、
本法ノ施行期日ハ何時ト云フ御見込デアル
カ、勅令ニ依ッテ之ヲ定ムトアリマスダケデ
分リマセヌガ、何レ此短期議會ニ提案サル
ル位デアルカラ、議會ガ濟ミマスト直グ樣
御施行ニナルコトト思ヒマスガ、其御見込
ヲ承リタイ、是ガ私ノ御伺致シタイ點デア
リマス
尙ホ只今御尋シタコトヲ要領ダケ申シテ
置キマス、第一ハ、何故本案ヲ短期ノ本議
會ニ提案シテ、急速ニ解決ヲ期セラルノ
デアルガ、ソレカラ第二ニハ、法文四十八
條ト云フモノヲ設ケラレタ理由ハ何處ニア
ルカ、殊ニ特別ノ事由アリト認ムル法人ト
云フモノハ、ドンナモノト云フコトデアリ
マス、是ハ根岸以外ニ或ハ京都モ、或ハ鳴
尾モ、府中モ、是ハ特別ナモノダト言ハル
ルナラバ、或ハ是ハ言ヒ得ルカト思ヒマス、
詰リ他ヨリ優レタ特別ニ多イ競馬場ダカラ、
特別ト云フヤウナコトニモ解釋出來ル餘地
ガアルト思ヒマスカラ、此點ヲ確メテ置キ
タイ、ソレカラ根岸競馬ノ財產ハ今數百
万アリト聞イテ居リマスガ、ドノ位アリマ
スカ、ソレカラ解散法人ノ財產ヲ留保シタ
モノ、斯ウ云フモノニ付テ、何故ニ政府ハ
主務官廳タル農林大臣ノ監督下ニ置カレナ
カッタカ、又留保サレナイ普通ノ四十七條ニ
依ル一般ノモノモ、解散法人ノ場合ト同ジ
ク、總テ主務官廳ノ監督下ニ置カレタ方ガ
宜イト思フガ、何故裁判所ダケニサレタカ、
次ニ四十四條ニ「當分ノ內」ト云フ文字ガア
ルガ、斯樣ナ文字ハ取ッタ方ガ宜カラウ、最
後ニ本法ノ施行期日ノ御見込ハ何時デアル
カ、之ヲ御伺致シタイノデアリマス
〔國務大臣島田俊雄君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X00819360512&spkNum=84
-
085・島田俊雄
○國務大臣(島田俊雄君) 競馬ノコトニ精
通セラレテ居リマスル岡本君ヨリノ御質問
デアリマスガ、私ヨリノ御答ノ出來ルコト
ダケヲ御答申上ゲタイト思ヒマス、第一ノ
本案ヲ本期議會ニ提出シタ理由デアリマス
ガ、是ハ先ニ提案理由ノ中ニ申上ゲマシタ
ヤウニ、馬政調査會ノ答申ニ基キマシテ、
殊ニ其答申中ニ成ベク速ニ成案トシテ成立
タシメルヤウニセラレタイト云フコトノ意
味ガアリマス、尙ホ本法案ニ御覽ニナリマ
スルヤウニ、納付金ノ率ヲ變ヘルコトニナッ
テ居ルノデアリマシテ、是ハ解散當時ノ議
會ニ提案ヲ致シマシテ成立ヲ見ル前內閣ノ
計畫デアリマシタ、ソレニ依リマシテ歲入
ノ豫算ヲ見積ッテ居ッタ譯デアリマスガ、議
會解散ノ爲ニ提出時期ガ遲レマシテ、ソレ
ガ爲ニ政府ノ收入ニ於テ相當巨額ナ差異ヲ
來シテ居ルヤウナ次第デアリマシテ、此
ツノ重大ナ理由ト致シマシテハ、馬政調査
會ノ答申ノ趣意ヲ採リマシタコトト、今一
ツハ秋競馬ニ關シテ納付金ノ率ノ變更ニ依
ル增收ヲ見込ンダト云フ、收入ノ關係ノ意
味ガ含マレテ居ルノデアリマシテ、此收入
ハソレ〓〓豫算ニ依ッテ馬政ノ行政ノ方ニ
向ッテ使用スルノ使途ガ豫定サレテ居リマ
スルヤウナ關係上、此短期議會ニモ拘リマ
セズ之ヲ提案シタ次第デアリマス、尙ホ根
本的ノ改正ト云フ御話デアリマスガ、成程
左樣ニ見レバ左樣見ラレルノデアリマスガ、
是ハ現在アリマス所ノ各競馬倶樂部、是等
ノ協議ニ基キマシテ、馬政調査會ノ趣意ニ、
是等ノ現存ノ倶樂部ガ悉ク其趣意ヲ諒ト致
シマシテ、第二次馬政計畫ノ進行致シマシ
タ此機會ニ於テ、一ツノ方針ニ統一スルコ
トノ趣意ヲ贊成致シマシテ、協議ガ能ク一
致ヲ致シタヤウナ事情モアリマシタノデ、
此議會ニ於テ提案ヲシタ次第デアリマス
尙ホ第二ノ法案ノ第四十七條カラ四十八
條ニ關係シマスル、特別ノ事情アル法人ト
云フコトニ付テノコトデアリマスルガ、是
ハ岡本君ノ御言葉ノ通リ、卽チ法ノ附則ニ
於テ申シマス特別ノ事情アル法人ト申シマ
スノハ、橫濱ノ所謂日本「レース」倶樂部、
根岸倶樂部ト稱スルモノデアリマス、
之ニ付テ特別ナ事情トシテ政府ガ認メ
テ、斯樣ナ附則ニ於テ規定ヲ設ケマシタ所
以ハ、御承知ノ如ク日本「レース」倶樂部、
卽チ根岸ノ競馬倶樂部ハ、他ノ競馬倶樂部ト
頗ル事情ヲ異ニシテ居ルモノデアリマシテ、
馬劵ヲ禁止シタ時代ニ於テ、旣ニ他ノ倶樂
部ノ如ク設備ニ對スル所ノ補助モ受ケテ居
ラズニ、獨力ヲ以テ競馬ヲ施行シテ來クモ
ノデアリマシテ、大正十二年ノ競馬法實施
當時ニ於キマシテ、旣ニ相當ノ財產ヲ有シ
テ居ッタト云フヤウナ事情ノアルモノデア
リマス、殊ニ是ハ大部分ハ外國人ガ其倶樂
部ヲ組織シテ居ルト云フヤウナ事情モアリ
マスガ、左樣ナ事情デアリマシテ、今囘ノ
改正ニ方リマシテ、他ノ倶樂部ノ如ク總テ
ノ資產ヲ引繼ガシメルト云フコトハ、其沿
革ヨリ見マシテ、卽チ岡本君ノ御述ニナリ
マシタヤウナ事情カラ考ヘマシテ、ドウモ
穩當デナイ、斯樣ナ見地カラ致シマシテ、
此法實施ノ場合ニ於キマシテハ、審査會ノ
議ヲ經テ適當ナリトスル所ノモノヲ留保セ
シムルヤウニシタ、斯ウ云フ事情ガ卽チ此
法文トシテ現レテ居ル次第デアリマス、而
シテ此留保セシムル所ノ財產ニ付キマシテ
ハ、分配云々ノコトガアリマシタガ、左樣
ナ次第デハナイノデアリマシテ、留保セシ
メタ財產ハ日本競馬會、卽チ新シク出來マ
ス所ノ法人ノ競馬會ノ競馬ノ開催ニ協力援
助スル所ノ團體ノ資金等トシテ、其團體ニ
之ヲ保有セシムルノ方針ヲ以テ處置ヲシタ
イ、斯ウ云フ次第デアリマス、此間ニ何等
ソレ以上ノ事情等ハナイモノト信ジテ居リ
やく、尙ホ附加ヘテ御參考ニ申上ゲテ置キ
マスガ、大正十二年ノ競馬法實施當時ニ於
キマシテ「レース」倶樂部ガ持ッテ居ッタ主ナ
財產ト致シマシテハ、只今調ベマシタ所ニ
依リマスルト、其當時競馬場ノ用地ノ約五
万坪位ノ程度ノモノハ、既ニ其時代ニ於テ
財產トシテ持ッテ居ッタ、是ハ政府ノ補助ナ
クシテ築キ上ゲテ持ッテ居ッタ財產デアルト
云フヤウナ事情モアルノデアリマス、是等
ハ左様ナ事情デアルト云フコトヲ申上ゲテ
置キマス
尙ホ根岸倶樂部ノ財產デアリマスガ、財
產ノ〓要ニ付テハ凡ソ五百數十万圓、土地
トシマシテ百二十万圓程度、建物トシマシ
テ二百八十万圓、其他合計シマシテ五百七
十万圓位、斯ウ云フヤウニ承知ヲ致シテ居
リマス、而シテ此如キ條項ハ或ハ削除シタ
ラドウカト云フヤウナ御意見ガアリマシタ
ヤウデスガ、此事ニ付テハ只今申上ゲタヤ
ウナ特殊ナ事情ガアルモノト考ヘマシテ、
斯樣ナ處置ヲ執ルコトニ致シタ次第デアリ
マシテ、政府トシテハ此附則ノ規定ヲ削除
スルト云フ意思ヲ持ッテ居ラナイト云フコ
トヲ申上ゲテ、御諒承ヲ願ヒクイト思ヒマ
ス、ソレカラ解散法人ニ付テノ監督ノコト
デアリマスガ、是ハドウモ本法案ニ規定シ
テ居ル通リノヤリ方デ行クノガ、事實上ハ
農林大臣、卽チ主務官廳トシテ之ニ關與ス
ルコトガアルデアラウト思ヒマス、又シナ
ケレバナラヌト考ヘマスガ、其手續ニ於テ
ハ此法ニ定メテ居ル通リデ然ルベキデアラ
ウト考ヘテ居リマス、尙ホ法第四十四條、
五條ノ解散ニ付テハ、是ハ御話ノ通リニ法
定ノ解散ノ意味デアリマス、ソレカラ當分
ノ內十一箇所ニスルト云フ、當分ト云フコ
トニ付キマシテハ、是ハ御意見ノヤウナ所
ガアルト思ヒマス、併ナガラ現在アル所ノ
十一ノ場所ヲ動カシ、若クハ增加スルト云
フ意味ヲ、直チニ現ハシテ居ルモノデハア
リマセヌケレドモ、新規ナ法人ニ統一サレ
テ、日本競馬會ト云フモノガ出來ル場合ニ
於キマシテ、之ヲ其競馬會ノ活動、斯ウ云
フコトノ意味ヲ考ヘマシテ、玆ニ當分ト云
フ文字ヲ使ッタ次第デアリマシテ、是ハ私カ
ラ申上ゲルヨリモ、岡本君ハ競馬ノコトニ付
テハ非常ニ御詳シイヤウデアリマスカラ、此
事情ハ左樣ナ意味カラ來テ居ルモノデアッ
テ、運動トカサウ云フ餘地ヲ存スル意味デ
ナイト云フコトヲ御諒承願ヒタイト思ヒマ
ス、ソレカラ最後ニ施行ノ期日デアリマス
ガ、本法提出ノ事情ガ秋競馬ニ之ヲ實施シ
マシテ、變ッタ納付金ノ率ニ依ッテ政府ノ
增收ヲ圖ルト云フコトノ豫定ヲ逹シタ
イト云フコトガ、一ツノ目的デアリマスル
カラシテ、成ベク議會通過後速ニ之ヲ實施
致シマシテ、秋競馬ニ間ニ合ヒマスヤウニ
實施ノ手續ヲ執リタイ、斯樣ナ考デアリマ
スカラ、其事情ニ於テ短期間ニ實施スルモ
ノデアルト云フコトニ御諒承ヲ願ヒタイト
思ヒマス、期日ヲ今豫斷ニ申上ゲルコトハ
出來マセヌケレドモ、成ベク短イ期間ニヤ
ル、斯ウ云フコトニ御諒承ヲ願ヒタイト思
ヒマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X00819360512&spkNum=85
-
086・岡本實太郎
○岡本實太郞君 簡單デスカラ自席デ御許
ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X00819360512&spkNum=86
-
087・岡田忠彦
○副議長(岡田忠彥君) 御許致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X00819360512&spkNum=87
-
088・岡本實太郎
○岡本實太郞君 只今農林大臣ノ御說明デ
根本ノコトハ能ク分リマシタ、卽チ特別ナ
事情ト認メテ財產ヲ保留サスノハ、横濱ノ
根岸競馬ノ如キヲ指スノデアル、而シテ其
保留財產ハ之ヲ分配サスヤウナコトハ致サ
又、卽チ歸國ノ費用等ニハ爲サシメズシ
テ、ヤハリ競馬ト同ジ種類ノ性質ノ別ナ團
體ニ歸屬サス、日本競馬會ガ此後ニ出來テ
更ニソレヲ援助スル、謂ハヾ博覽會、共進
會ノヤウナモノガ出來ルラシイ、其モノニ全
部保留財產ヲ持ッテ行ク、斯樣ナ御話ニ承ッ
テ、幸ニ私ノ根本トスル個人ニ分ケルト云
フヤウナ不都合ヲサセヌト云フコトデアリ
マスカラ、是ハ諒ト致シマス、サウ致シマ
シタナラバ、民法ノ七十二條ニチヤントア
リマス、卽チ但書ニ依リマシテ、社員ノ總
會ノ決議デ主務大臣ガ許可ヲシテ、サウシ
テ類似ノ性質ヲ有スルモノニ歸屬スル、斯
ウ云フ風ニサセレバ七十二條ダケデ十分解
決出來ルト思ヒマス、ソレガ特ニ四十八條
ノ法文ヲ置カレタ、是ガマダ一寸諒解シ惡
イノデアリマス、根本ハ諒解致シマシタ、
併シ四十八條ノ二項ノ民法デヤレト云フ、
ソレガナクトモ民法ノ七十二條デヤルト云
フコトハ當然ダト思ヒマス、ソレマデ丁寧
ニヤルノニ、特ニ此四十二條ノ一項、卽チ
命令デ定メタト云フコトヲ置イタト云フノ
ハ、其點ニ付テ御答辯ヲ御願致シマス
〔國務大臣島田俊雄君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X00819360512&spkNum=88
-
089・島田俊雄
○國務大臣(島田俊雄君) 御答致シマス、
御尤ナコトト考ヘマスガ、第一項ニ於キマ
シテ、特別ノ事由アルモノニ付テ權利ヲ
部留保スルノ規定ヲ置キマシタ爲ニ、其保
管ノ意味デ立法ノ便宜上茲ニ揭ゲタ次第デ
アリマシテ、立法技術ノ上カラ御批評ガア
レバ、是ハ別ナコトデアリマス、何等他意
ハナイノデアリマス、ソレダケヲ申上ゲマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X00819360512&spkNum=89
-
090・岡本實太郎
○岡本實太郞君 機會ガアリマシタラ委員
會等デ細カイコトハ尋ネルコトニ致シマシ
テ、私ノ質問ハ是デ打切ッテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X00819360512&spkNum=90
-
091・岡田忠彦
○副議長(岡田忠彥君) 是ニテ質疑ハ終局
致シマシタ、本案ノ審査ヲ付託スベキ委員
ノ選擧ニ付テ御諮致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X00819360512&spkNum=91
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092・松永東
○松永東君 本案ハ政府提出土地賃貸價格
改訂法案委員ニ併セ付託セラレンコトヲ望
ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X00819360512&spkNum=92
-
093・岡田忠彦
○副議長(岡田忠彥君) 松永君ノ動議ニ御
異議アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X00819360512&spkNum=93
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094・岡田忠彦
○副議長(岡田忠彥君) 御異議ナシト認メ
さい、仍テ動議ノ如ク決シマシタ、日程第
+、土地賃貸價格改訂法施行ニ伴フ耕地整
理法ノ特例ニ關スル法律案ノ第一讀會ヲ開
キマス-農林大臣島田俊雄君
第十土地賃貸價格改訂法施行ニ伴フ
耕地整理法ノ特例ニ關スル法律案(政
府提出)第一讀會
土地賃貸價格改訂法施行ニ伴フ耕地整
理法ノ特例ニ關スル法律案
第一條昭和十一年四月一日以後昭和十
二年十二月三十一日迄ノ間ニ於テ耕地
整理法第十三條第二項ノ規定ニ依リ賃
貸價格ヲ配賦シタル整理施行地區內ノ
土地ノ賃貸價格ハ稅務署長整理施行者
ノ申請ニ依リ其ノ地區內ノ從前ノ土地
ニ付土地賃貸價格改訂法ニ依リ調査シ
タル賃貸價格(以下調査賃貸價格ト稱
ス)ノ合計額ヲ工事完了ノトキノ現況
ニ依リ每筆相當ニ配賦シテ之ヲ定ム
命令ノ定ムル期間內ニ前項ノ申請ナキ
トキハ第三項ノ規定ニ依リ定メタル賃
貸價格ヲ以テ前項ノ土地ノ賃貸價格ト
ス
第一項ノ規定ニ依リ賃貸價格ヲ配賦ス
ル迄ハ其ノ土地ノ賃貸價格ハ調査賃貸
價格ノ合計額ヲ耕地整理法第十三條第
二項ノ規定ニ依リ配賦シタル賃貸價格
ニ按分シテ之ヲ定ム
耕地整理法第十三條第二項但書ノ規定
ハ第一項及前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第二條耕地整理法第十四條、第十四條
ノ二及第十五條ノ規定ハ昭和十一年四
月一日以後昭和十二年十二月三十一日
迄ノ間ニ於テ同法第十三條第二項ノ規
定ニ依リ賃貸價格ヲ配賦シタル整理施
行地區內ノ土地ニシテ同法第十四條、
第十四條ノ二及第十五條ノ規定ニ依リ
賃貸價格ヲ修正シ又ハ設定シタルモノ
ニ付前條ノ調査賃貸價格ヲ算出スル場
合ニ之ヲ準用ス但シ前條第三項ニ規定
スル場合ニ於テハ整理施行者ノ申請ヲ
要セズ
第三條第一條第一項又ハ第三項ノ規定
ニ依リ賃貸價格ヲ配賦シ又ハ按分シタ
ル土地ニシテ現ニ耕地整理減租年期ヲ
有セザルモノアルトキハ其ノ賃貸價格
ハ之ヲ配賦シ又ハ按分セザリシモノト
看做ス此ノ場合ニ於テハ土地賃貸價格
改訂法第三條第一項ノ規定ヲ適用ス
第四條第一條第一項ノ規定ニ依リ賃貸
價格ヲ配賦シタル土地ニ付テハ配賦シ
タル年ノ翌年分ヨリ配賦シタル賃貸價
格ニ依リ、同條第三項ノ規定ニ依リ賃
貸價格ヲ按分シタル土地ニ付テハ昭和
十三年分ヨリ同條第一項ノ規定ニ依リ
賃貸價格ヲ配賦スル年ノ分迄其ノ按分
シタル賃貸價格ニ依リ地租ヲ徴收ス
第五條耕地整理法第十六條、第十六條
ノ三、第十六條ノ四、第十六條ノ六及
第十六條ノ七ノ規定ハ第一條第一項又
ハ第三項ノ規定ニ依リ賃貸價格ヲ配賦
シ又ハ按分シタルトキニ於テ整理施行
地區內ニ同法第十六條ノ三又ハ第十六
條ノ四ノ規定ノ適用ヲ受クル土地アル
場合ニ之ヲ準用ス但シ第一條第三項ニ
規定スル場合ニ於テハ整理施行者ノ申
請ヲ要セズ
第六條前條ノ規定ニ依リ耕地整理法第
十六條ノ三又ハ第十六條ノ四ノ規定ヲ
準用シテ賃貸價格ヲ定メタル土地ニ付
テハ賃貸價格ヲ定メタル年ノ翌年分ヨ
リ其ノ賃貸價格ニ依リ地租ヲ徴收ス但
シ第一條第三項ノ規定ニ依リ賃貸價格
ヲ按分シタル土地ニ付テハ昭和十三年
分ヨリ同法第十六條ノ三又ハ第十六條
ノ四ノ規定ヲ準用シテ定メタル賃貸價
格ニ依リ地租ヲ徵收ス
第七條昭和十一年四月一日以後昭和十
二年十二月三十一日迄ノ間ニ於テ耕地
整理法第十三條第二項ノ規定ニ依リ賃
貸價格ヲ配賦シタル整理施行地區內ニ
從前ノ土地ノ調査賃貸價格ニ依ル地租
額ガ從前ノ賃貸價格ニ依ル地租額ノ四
倍ヲ超ユル土地アルトキハ其ノ四倍ヲ
超ユル金額ニ相當スル地租ハ整理施行
地區內ノ全部又ハ一部ノ土地ニ配分シ
テ昭和十五年分迄之ヲ免除ス
前項ノ規定ニ依リ地租ノ免除ヲ受クベ
キ土地及金額ハ稅務署長整理施行者ノ
申請ニ依リ之ヲ定ム命令ノ定ムル期間
內ニ其ノ申請ナキトキハ稅務署長職權
ヲ以テ之ヲ定ム
第八條昭和十三年一月一日以後耕地整
理法第十三條第二項ノ規定ニ依リ賃貸
價格ヲ配賦スルトキニ於テ整理施行地
區內ニ土地賃貸價格改訂法第四條ノ規
定ニ依リ地租ノ免除ヲ受クベキ土地ア
ル場合ハ其ノ殘期間免除額ニ相當スル
地租ハ整理施行地區內ノ全部又ハ一部
ノ土地ニ配分シテ之ヲ免除ス
前項ノ規定ニ依リ地租ノ免除ヲ受クベ
キ土地及金額ハ稅務署長整理施行者ノ
申請ニ依リ之ヲ定ム命令ノ定ムル期間
內ニ其ノ申請ナキトキハ稅務署長職權
ヲ以テ之ヲ定ム
第九條昭和十一年三月三十一日迄ニ耕
地整理法第十三條第二項竝ニ昭和六年
法律第二十九號附則第三條第一項第三
項第六條第一項、第十七條第一項及
第十九條ノ規定ニ依リ賃貸價格ヲ配賦
シ、按分シ又ハ定メタル土地ニシテ耕
地整理法第十六條ノ三、第十六條ノ四
又ハ昭和六年法律第二十九號附則第十
五條ノ規定ヲ適用シ又ハ準用シタルモ
ノニ對スル土地賃貸價格改訂法第四條
中ノ賃貸價格ハ耕地整理法第十六條ノ
三、第十六條ノ四又ハ昭和六年法律第
二十九號附則第十五條ノ規定ヲ適用シ
又ハ準用セザル額トス
第十條耕地整理法第十三條第三項ノ規
定ハ第一條第一項第三項、第二條、第
五條、第七條第一項及第八條第一項ノ
場合ニ之ヲ準用ス
第十一條昭和十五年十二月三十一日迄
ハ耕地整理法第三十四條第二項、第五
十條第一項及第六十五條第二項ノ規定
中賃貸價格ニ關シ命令ヲ以テ別段ノ定
ヲ爲スコトヲ得
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
〔國務大臣島田俊雄君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X00819360512&spkNum=94
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095・島田俊雄
○國務大臣(島田俊雄君) 只今議題トナリ
マシタ土地賃貸價格改訂法施行ニ伴フ耕地
整理法ノ特例ニ關スル法律案ノ提案理由ヲ
申上ゲマス、本法案ハ別ニ提案ニナッテ居
リマスル土地賃貸價格改訂法案ト關聯スル
モノデアリマス、卽チ耕地整理法中ニハ、
賃貸價格及ビ地租ニ關シマシテ特別ノ規定
ガ設ケラレテ居リマシテ、整理施行地ノ賃
貸價格及ビ地租ニ付キマシテハ、是等ノ規
定ニ依ッテ處理致シテ居リマスノデ、土地賃
貸價格改訂法ガ施行セラルヽコトニ相成リ
マスルト、耕地整理法中賃貸價格及ビ地租
ニ關スル規定ノ特例ヲ設クルノ必要ガアル
ノデアリマス、卽チ本案ヲ提案ヲ提出致シ
タ所以デアリマス、本案ノ骨子ト致シマス
ル所ハ大體三點デアリマス、卽チ第一點
ハ、昭和十一年四月一日以後昭和十二年十
二月三十一日迄ノ間ニ於キマシテ、耕地整
理法ニ依リ賃貸價格ヲ配賦致シマシタ耕地
整理施行地ノ、賃貸價格改訂方法ニ關スル
規定ヲ設ケタコトデアリマス、第二ハ、土
地賃貸價格改訂法中地租負擔ノ激增緩和ニ
關スル規定ヲ、耕地整理施行地ニ適用スル
方法ニ付キマシテ、特ニ規定ヲ設ケマシタ
コトデアリマス、第三點ハ、耕地整理法中
ニハ同意表決等ノ要件ト致シマシテ、賃貸
價格ノ計算ヲ要スル規定ガアリマスガ、是
等ノ規定ノ適用ニ付キマシテハ、當分ノ間
改訂賃貸價格ニ依ルヲ要シナイト云フ規定
ヲ設クルコトニ致シタ點デアリマス、詳細
ハ委員會ニ於テ說明致ス積リデアリマス
ガ、何卒御審議ノ上御協賛アランコトヲ希
望致シマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X00819360512&spkNum=95
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096・岡田忠彦
○副議長(岡田忠彥君) 本案ノ審査ヲ付託
スベキ委員ノ選擧ニ付テ御諮致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X00819360512&spkNum=96
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097・松永東
○松永東君 本案ハ政府提出土地賃貸價格
改訂法案委員ニ併セ付託セラレンコトヲ望
ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X00819360512&spkNum=97
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098・岡田忠彦
○副議長(岡田忠彥君) 松永君ノ動議ニ御
異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X00819360512&spkNum=98
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099・岡田忠彦
○副議長(岡田忠彥君) 御異議ナシト認メ
せく、仍テ動議ノ如ク決シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X00819360512&spkNum=99
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100・松永東
○松永東君 殘餘ノ日程ヲ延期シ、本日ハ
是ニテ散會セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X00819360512&spkNum=100
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101・岡田忠彦
○副議長(岡田忠彥君) 松永君提出ノ動議
ニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X00819360512&spkNum=101
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102・岡田忠彦
○副議長(岡田忠彥君) 御異議ナシト認メ
やっ、仍テ動議ノ如ク決シマシタ、次會ノ
議事日程ハ公報ヲ以テ御通知致シマス、本
日ハ是ニテ散會致シマス
午後五時五十分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X00819360512&spkNum=102
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