1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和十一年五月十九日(火曜日)
午後一時三十八分開議
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議事日程 第十一號
昭和十一年五月十九日
午後一時開議
質問
一 沿岸漁民生活防衞に關する質問(佐竹晴記君提出)
二 行政裁判所法案行政訴訟法案訴願法案權限裁判法案及行政裁判官懲戒法案に關する質問(宮古啓三郎君提出)
三 皇暦紀元に關する質問(荒川五郎君提出)
四 帝國の人口と移民政策及比律賓の土地問題に關する質問(福田關次郎君提出)
五 燃料國策に關する質問(清瀬一郎君提出)
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第一 農村負債整理組合法中改正法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第二 航空法中改正法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第三 昭和六年法律第四十號中改正法律案(重要産業の統制に關する件)(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第四 自動車製造事業法案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第五 昭和十一年勅令第十八號(一定の地域に戒嚴令中必要の規定を適用するの件)(承諾を求むる件)(貴族院送付)
第六 昭和十一年勅令第二十一號(東京陸軍軍法會議に關する件)(承諾を求むる件)(貴族院送付)
第七 大正九年法律第五十六號中改正法律案)(北海道拓殖鐵道補助に關する件)(手代木隆吉君外八名提出) 第一讀會
第八 大正九年法律第五十六號中改正法律案(北海道拓殖鐵道補助に關する件)(井阪豐光君提出) 第一讀會
第九 大正九年法律第五十六號中改正法律案(北海道拓殖鐵道補助に關する件)(東武君外四名提出) 第一讀會
第十 百貨店法案(枡谷寅吉君外七名提出) 第一讀會
第十一 百貨店法案(伊禮肇君提出) 第一讀會
第十二 小作法案(杉山元治郎君提出) 第一讀會
第十三 辯護士法中改正法律案(宮澤清作君外五名提出) 第一讀會
第十四 勞働組合法案(塚本重藏君提出) 第一讀會
第十五 計理士法中改正法律案(古河和一郎君外二名提出) 第一讀會
第十六 母子扶助法案(片山哲君提出) 第一讀會
第十七 衆議院議員選擧法中改正法律案(杉山元治郎君提出) 第一讀會
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〔左の報告は朗讀を經さるも參照の爲茲に掲載す〕
一議員より提出せられたる議案左の如し
昭和六年法律第四十號中改正法律案(重要産業の統制に關する件)(政府提出)に對する修正案
提出者
片山哲君 笠井重治君
三浦虎雄君 伊禮肇君
國防少年團組織に關する建議案
提出者
鶴惣市君 倉成庄八郎君
沖藏君
耕地政策確立に關する建議案
提出者 紅露昭君
義務教育費全額國庫負擔に關する建議案
提出者
麻生久君 河上丈太郎君
農業損失國家補償に關する建議案
提出者
麻生久君 河上丈太郎君
川俣清音君
兵士家族生活國家補償に關する建議案
提出者
麻生久君 河上丈太郎君
國民健康保險法制定に關する建議案
提出者
麻生久君 河上丈太郎君
三宅正一君
高知中村宇和島間府縣道を國道に編入に關する建議案
提出者
尾崎重美君 本多眞喜雄君
松田喜三郎君
松山高濱間及松山高知間府縣道を國道に編入に關する建議案
提出者
松田喜三郎君 武知勇記君
尾崎重美君
松山宇和島間府縣道を國道に編入に關する建議案
提出者
松田喜三郎君 武知勇記君
本多眞喜雄君
淀川低水工事計畫擴充に關する建議案
提出者
川崎末五郎君 池本甚四郎君
紫安新九郎君 内藤正剛君
古藤増治郎君
京都市に國立工藝指導所設置に關する建議案
提出者
川橋豊治郎君 西村金三郎君
中村三之丞君 福田關次郎君
太田川改修速進に關する建議案
提出者
氏家清君 比佐昌平君
粟山博君 林平馬君
湊季松君 仲西三良君
請戸川改修速進に關する建議案
提出者
氏家清君 粟山博君
比佐昌平君 林平馬君
湊季松君 仲西三良君
農村土地使用者の所有權獲得に關する建議案
提出者
土田莊助君 坂東幸太郎君
渡邊銕藏君
油津港より都城を經て國立霧島公園に至る鐵道敷設に關する建議案
提出者
伊東岩男君 永田良吉君
小貝川増補工事竝維持修繕に關する建議案
提出者
宮古啓三郎君 佐藤洋之助君
山崎猛君
大牟田市に區裁判所設置に關する建議案
提出者 鶴惣市君
敦賀清津羅津又は雄基間聯絡特急航路開始に關する建議案
提出者 熊谷五右衞門君
道府縣雪害防止施設費補助に關する建議案
提出者
山田又司君 佐藤謙之輔君
松木弘君 三宅正一君
高橋熊次郎君 高岡大輔君
八田宗吉君 佐藤與一君
東北地方國營開墾に關する建議案
提出者 三鬼鑑太郎君
(以上五月十八日提出)
一議員より提出せられたる質問主意書左の如し
國體明徴に關する質問主意書
提出者 田川大吉郎君
(以上五月十六日提出)
新聞紙法の改正竝新聞記者の資格に關する質問主意書
提出者 飯村五郎君
(以上五月十八日提出)
一昨十八日廣田内閣總理大臣より左の通發令ありたる旨の通牒を受領せり
内務書記官 兒玉九一
第六十九囘帝國議會内務省所管事務政府委員被仰付
内務事務官 入江誠一郎
第六十九囘帝國議會内務省所管事務政府委員被免
一昨十八日辭任したる常任委員左の如し
第二部選出決算委員 小笠原八十美君
又同日議長に於て辭任を許可したる常任委員左の如し
第六部選出決算委員 池崎忠孝君
一昨十八日特別委員理事補闕選擧の結果左の如し
大正十二年法律第五十二號中改正法律案(司法官試補及辯護士の資格に關する件)(政府提出、貴族院送付)委員
理事 池田清秋君(理事西田郁平君昨日委員辭任に付其の補闕)
一昨十八日に於ける特別委員の異動左の如し
米穀自治管理法案(政府提出)外二件委員
辭任 眞鍋儀十君 補闕 喜多壯一郎君
大正十二年法律第五十二號中改正法律案(政府提出)委員
辭任 黒田寿男君 補闕 加藤勘十君
辭任 砂田重政君 補闕 立川平君
辭任 西田郁平君 補闕 一松定吉君
辭任 一松定吉君 補闕 原夫次郎君
辭任 松井郡治君 補闕 一松定吉君
不穩文書等取締法案(政府提出)委員
辭任 宮澤清作君 補闕 砂田重政君
辭任 田村秀吉君 補闕 淺沼稻次郎君
辭任 牧野賤男君 補闕 木村正義君
辭任 益谷秀次君 補闕 松村光三君
辭任 小柳牧衞君 補闕 小山倉之助君
辭任 村岡吾一君 補闕 松田正一君
土地賃貸價格改訂法案(政府提出)委員
辭任 岡本實太郎君 補闕 淺川浩君
辭任 土田莊助君 補闕 西村金三郎君
航路統制法案(政府提出)委員
辭任 金井正夫君 補闕 春名成章君
辭任 小谷節夫君 補闕 中村嘉壽君
昭和十一年度一般會計歳出の財源に充つる爲公債發行に關する法律案(政府提出)委員
辭任 岡本實太郎君 補闕 林平馬君
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X01219360519&spkNum=0
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001・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 是ヨリ會議ヲ開キ
やっく御諮リ致スコトガアリマス、土地賃
貸價格改訂法案、重要肥料業統制法案、航路
統制法案、臺灣拓殖株式會社法案外一件、
大正十二年法律第五十二號中改正法律案、
及ビ不穩文書等取締法案ノ各委員長ヨリ、
本日本會議中委員會ヲ開キタイトノ申出ガ
アリマシタガ、之ヲ許可スルニ御異議ハア
リマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X01219360519&spkNum=1
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002・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 御異議ナシト認メ
許可スルニ決シマシター-本日ノ日程ニ揭
ゲマシタ質問ノ一乃至五ハ、何レモ政府ヨ
リ答辯書ヲ受領致シマシタ、書記官ヲシテ
此際報告致サセマス
〔書記官朗讀〕
一政府ヨリ受領シタル答辯書左ノ如シ
衆議院議員佐竹晴記君提出沿岸漁民生活
防衞ニ關スル質問ニ對スル答辯書
衆議院議員宮古啓三郞君提出行政裁判所
法案行政訴訟法案訴願法案權限裁判法案
及行政裁判官懲戒法案ニ關スル質問ニ對
スル答辯書
衆議院議員荒川五郞君提出皇曆紀元ニ關
スル質問ニ對スル答辯書
衆議院議員福田關次郞君提出帝國ノ人口
ト移民政策及比律賓ノ土地問題ニ關スル
質問ニ對スル答辯書
衆議院議員〓瀨一郞君提出燃料國策ニ關
スル質問ニ對スル答辯書
(以上五月十九日受領)
沿岸漁民生活防衞ニ關スル質問主意書
右成規ニ據リ提出候也
昭和十一年五月八日
提出者佐竹晴記
沿岸漁民生活防衞ニ關スル質問主意
書
四面環海ノ我ガ國沿岸漁業ハ逐年衰頽ヲ
來シ漁獲總價額ノ如キ大正十二年ノ二億
四千七百萬圓ハ昭和八年ニ於テ一億七千
萬圓ニ減ジ我ガ國百五十萬漁民ノ最大多
數ヲ占メル沿岸漁民ノ生活窮乏ハ言語ニ.
絕スルモノガアル而シテ昨今特ニ沿岸漁
民ヲ刺戟シテ居ルモノニ內地沖合漁業カ
ラ來ル壓迫ト新興化學工業ノ發達竝廢液
流出ニ因ル魚介ノ移動衰滅トガアル斯ル
際ナレバ左記各項ニ關シ特ニ明確ナル政
府ノ答辯ヲ得タシ
一機船底曳網漁業禁壓ニ關スル件
機船底曳網漁業ニ就テハ同漁業取締規
則同漁業禁止區域設定等ニ依リ相當
重イ制限ヲ設ケテアルガ其ノ制限內ノ
操業ニ據ッテハ收益ガ少キ爲監視船ノ
監視ヲ免レテ禁止區域ヲ犯スコトガ常
例トナッテ居ル斯クテ法令ニ依ル機船
底曳網ノ取締属行ニ拘ラズ沿岸小釣漁
場ハ荒サレ漁民ノ疲弊ハ其ノ極ニ達シ
某地方ノ如キハ漁民騒動ヲ起シタル實
例サヘアリ眞ニ沿岸漁民ヲ守ルガ爲ニ
ハ斷乎機船底曳網沖合漁業ヲ禁止シ且
之等機船底曳網漁業者ニ相當ノ轉業資
金ヲ交付シテ遠洋漁業ニ轉ゼシメテ生
活ノ更生ヲ圖ル以外ニ方法ハナイ政府
ニ於テハ斯ル政策ヲ取ル意思アリヤ否
ヤ
二機船底曳網漁業取締ニ關スル件
今日機船底曳網漁業ノ法令違反者ニ對
シテハ嚴重ナ處分ヲ行ヒツツアルガ之
ハ過剩漁業者整理ノ爲ノ一時的方策デ
機船數ガ一定數以下ニ下レバ敢テ此ノ
方策ヲ固執セザルヤニ聞ク例ヘバ高知
縣ニ於テハ其ノ機船數ガ三十隻ヲ割レ
バ違反者ニ對シ許可取消ノ如キ處分ヲ
セズトノ噂ヲ聞ク果シテ之ガ眞相デア
ルカ又政府ニ其ノ底意アリヤ否ヤ
三港灣改築沿岸埋立ニ關スル件
我ガ國沿岸ハ稚魚ノ發生生長ニ適スル
淺海ニ富ンデ居タガ新興產業ノ發達、
海外貿易ノ發展ハ續々港灣ノ改築トナ
リ沿岸埋立工事ノ起工トナリ沿岸漁民
ノ生活本據タル漁場ハ彼等ノ手カラ奪
ヒ去ラレツツアリ海面ハ官有物デアル
トハ云へ魚介採集ノ爲從來漁民ハ幾多
ノ施設ヲ行ツテ居ル其レガ殆ンド言フ
ニ足ル補償サヘナサレズ奪ハレテ居ル
ガ政府ハ斯ル漁民ニ對シ適當ノ求償權
ヲ與ヘル法令ヲ制定スル意思ナキヤ否
ヤ
四工場廢液對策ニ關スル件
工場特ニ人絹工業ノ如キ新興化學工場
ノ廢液ガ沿海ニ流注シ魚介ノ衰滅移動ヲ
生ジ然ラデダニ窮乏セル漁民ノ生活ヲ
脅シ彼等ヲ驅ツテ大衆的抗爭ニ憤起セシ
メタ事例ハ枚擧ニ遑ガナイ之ハ右工場
廢液處分ニ關シ國法上ニ一定シク取締
法規ナキ所ニ起因スルモノト信ゼラレ
ル旣ニ昨年開カレタ道府縣經濟部長會
議ニ於テモ之ガ對策ガ審議サレタト聞
クガ政府ハ有害廢液處置ニ關シ嚴重ナ
法規ヲ制定公布スル意思ナキヤ否ヤ
右及質問候也
昭和十一年五月十九日
內閣總理大臣廣田弘毅
衆議院議長富田幸次郞殿
衆議院議員佐竹晴記君提出沿岸漁民生活
防衞ニ關スル質問ニ對シ別紙答辯書差進
候
〔別紙〕
衆議院議員佐竹晴記君提出沿岸漁民生
活防衞ニ關スル質問ニ對スル答辯書
機船底曳網漁業禁壓ニ關スル件
政府ハ昭和七、八兩年度ニ中央及地方
廳ニ機船底曳網漁業取締船ヲ增設シ以
テ禁止區域侵犯、操業區域外操業等ノ
取締ヲ一層嚴ニスルト共ニ違反者ニ對
シテハ司法處分ノ外漁業停止、許可ノ
取消等嚴重ナル行政處分ヲ爲シ以テ沿
岸漁場ノ保護ニ努メツツアリ
殊ニ東經百三十度以東ノ內地近海ヲ操
業區域トスル本漁業ニ對シテハ銳意漸
減方針ヲ以テ整理ニ努メツツアルモ今
後更ニ速ニ整理ヲ促進スル要アリト認
メラルルヲ以テ目下其ノ方策ニ關シ銳
意考究中ナリ
二、機船底曳網漁業取締ニ關スル件
政府ノ行ヒツツアル機船底曳網漁業ノ
取締ハ法令ノ違反ナカラシメントスル
ニアリテ質問書ノ如キ趣旨ニ基クモノ
ニアラス
三、港灣改築沿岸埋立ニ關スル件
公有水面埋立法及耕地整理法ニ依リ行
フ埋立ニ付テハ漁業權又ハ入漁權ニ對
シテ損害補償ノ規定アリ又土地收用法
ニ依リ漁業權又ハ入漁權ヲ收用スル場
合ニ付テモ同樣ナリ
又港灣改築ノ場合ニ於テハ企業者ニ於
テ相當ノ補償ヲナシ居レル實情ナルモ
之カ求償權ヲ與ヘル法令ノ制定ニ關シ
テハ目下考究中ナリ
其ノ他ノ場合ニ付テモ漁業權又ハ入漁
權ノ制限取消等ノ場合ニ於ケル補償ニ
付テハ目下考究中ナリ
四工場廢液對策ニ關スル件
政府ハ曩ニ漁業法ヲ改正シ行政官廳ハ同
法ニ基キ水產動植物ニ有害ナル物ノ遺
棄又ハ漏泄ニ關スル制限禁止ノ命令ヲ
發シ得ルコトトセリ又河川法、工場法
等ニ於テモ水質汚瀆ノ虞アリト認ムル
行爲又ハ設備ニ對シテ相當ノ措置ヲ命
シ得ルモ尙水產動植物ノ保護公衆衞生
其ノ他公害防止等ノ見地ヨリ水質汚瀆
防止制度ノ樹立ニ付考究中ニ屬ス
右及答辯候也
昭和十一年五月十九日
農林大臣島田俊雄
內務大臣潮惠之輔
行政裁判所法案行政訴訟法案訴願法案
權限裁判法案及行政裁判官懲戒法案ニ
關スル質問主意書
右成規ニ據リ提出候也
昭和十一年五月八日
提出者宮古啓三郞
行政裁判所法案行政訴訟法案訴願法
案權限裁判法案及行政裁判官懲戒法
案ニ關スル質問主意書
行政裁判及訴願ニ關スル現行法規改正ノ
件ニ付テハ政府ハ大正十二年中臨時法制
審議會ニ諮問シ同審議會ハ主査委員ヲ擧
ケテ審査セシメタル後昭和三年中行政裁
判法及訴願法改正綱領ヲ議決シ之ヲ政府
ニ答申シ政府ハ更ニ昭和四年九月中行政
裁判法及訴願法改正委員會ヲ設置シ行政
裁判手續及權限爭議ニ關スル事項ヲ調査
審議セシメ同改正委員會ハ主査委員ヲ擧
ケテ審査セシメタル後昭和七年十月ヲ以
テ行政裁判所法案、行政訴訟法案、訴願
法案、權限裁判法案及行政裁判官懲戒法
案ヲ完成シ之ヲ政府ニ答申シタリ然ルニ
第六十五囘議會ノ當時政府ハ之ヲ帝國議
會ニ提出セサルヲ以テ本員ハ政府ニ對シ
(一)政府ハ昭和七年十月ヲ以テ行政裁判
法及訴願法改正委員會ヨリ行政裁判所法
案、行政訴訟法案、訴願法案、權限裁判
法案及行政裁判官懲戒法案ノ答申ヲ受ケ
ナカラ既ニ一年有餘ヲ經過セルニ拘ラス
何故ニ之ヲ今期帝國議會ニ提出セサルヤ
其ノ理由ノ詳細如何(二)政府ハ今期帝國
議會ニ之ヲ提出セサルヲ以テ政府ノ怠慢
ト認メサルヤ(三)政府ハ次ノ通常帝國議
會ニ之ヲ提出スルノ意思ナリヤノ質問ヲ
爲シタリ之ニ對シ時ノ齋藤内閣總理大臣
ハ行政裁判及訴願ニ關スル現行法規ノ改
正ニ關シテハ行政裁判法及訴願法改正委
員會ノ答申ニ基キ政府ハ銳意關係當局者
間ノ議ヲ進メ案ヲ練リツツアルモ尙未タ議
會ニ提案シ得ルノ程度ニ至ラス從テ今期
議會ニ提案シ得サルコトハ洵ニ遺憾トス
ル所ナレトモ今後猶一層準備ノ進捗ヲ圖
リ成ル可ク速ニ法案ヲ提出セシムルコト
ヲ期シツツアリト答辯シタリ爾來二箇年
ヲ空過シ今日迄未タ提出ニ至ラス仍テ本
員ハ政府ニ對シ左ノ質問ヲ爲サムトス
一政府ハ昭和七年十月中行政裁判法及
訴願法改正委員會ヨリ答申セラレタル
行政裁判所法案、行政訴訟法案、訴願
法案、權限裁判法案及行政裁判官懲戒
法案ヲ何故ニ今日迄帝國議會ニ提出セ
サルヤ
二政府カ右各法案ノ答申ヲ受ケテヨリ
旣ニ三年半以上ノ歲月ヲ經過セルニ拘
ラス之ヲ帝國議會ニ提出セサルハ甚タ
シキ怠慢ト認ム政府ノ所見如何
三政府ハ次ノ通常帝國議會ニ之ヲ提出
スルノ思意ナルヤ
四政府ノ一部ニハ寧ロ其ノ提出ヲ阻止
セムトスル者アルニ非サルヤ如何
右及質問候也
昭和十一年五月十九日
內閣總理大臣廣田弘毅
衆議院議長富田幸次郞殿
衆議院議員宮古啓三郞君提出行政裁判所
法案行政訴訟法案訴願法案權限裁判法案
及行政裁判官懲戒法案ニ關スル質問ニ對
シ別紙答辯書差進候
〔別紙〕
衆議院議員宮古啓三郞君提出行政裁判
所法案行政訴訟法案訴願法案權限裁判
法案及行政裁判官懲戒法案ニ關スル質
問ニ對スル答辯書
行政裁判法及訴願法改正委員會ヨリ
答申セラレタル行政裁判所法案、行政
訴訟法案、訴願法案、權限裁判法案及
行政裁判官懲戒法案ニ付テハ答申後關
係當局者間ニ於テ引續キ議ヲ進メツツ
アルモ其ノ內容ニ付テ尙攻究ヲ要スル
モノアリテ未ダ帝國議會ニ提出シ得ル
ノ程度ニ至ラザルニ由ル
二、行政裁判法及訴願法改正委員會ヨリ
答申アリテヨリ關係當局者間ニ於テ協
議ヲ重ネツツアルモ、未ダ議會ニ提出
シ得ザルハ事情已ムヲ得ザルモノト認
ム
三、次囘ノ通常議會ニ提出スルヤ否ヤハ
今日之ヲ言明スルノ限リニ非ズ
四、政府ノ一部ニ其ノ提出ヲ阻止セムト
スル者アリトハ思料シ居ラズ
右及答辯候
昭和十一年五月十九日
内閣總理大臣廣田弘毅
皇曆紀元ニ關スル質問主意書
右成規ニ據リ提出候也
昭和十一年五月九日
提出者荒川五郞
皇曆紀元ニ關スル質問主意書
我ガ大日本皇國ハ史實上原始國家デアッ
テ人爲的建造國家デハナク實ニ國土ノ修
理固成ト共ニ神ナガラノ自然ニ出來タ國
デアル卽チ國家學上ノ自然國家デアルカ
ノ人ノ土地ヲ征服シテ建テタ征服國家ヤ
又人ノ國カラ背離シテ造ッタ分立國家等
トハ大ニ其ノ根本ヲ異ニスルコトハ申ス
マデモナク天之御中主神以下諸神ヲ經テ
宇內ヲ統宰セサセラレ伊弉諾伊弉册ノ二
尊ニ至リ次第ニ國土經營ノ御神業成リ天
照大御神ノ御時ニ至リ其ノ所謂天壤無窮
ノ御神勅ヲ以テ我ガ國礎ヲ確實ニセサセ
給ヒシモノ卽チ〓育勅語ノ「皇祖皇宗國
ヲ肇ムルコト宏遠ニ」ト宣ハサセ給ヘル
所以ノモノナレバ世界諸國ノ建設國家ト
全ク其ノ大旨ヲ異ニスルコトハ昭々乎ト
シテ明白ナル次第デアル
斯ク我ガ國開闢ノ御太元ハ極メテ遠キ太
古神代ノ御事ニテ我ガ國ハ將來永久ニ無
限ナルト共ニ悠カニ過去ニ溯リテモ同ジ
ク無窮ナレバ皇曆上年數表示ノ爲神代ヲ
擱イテ特ニ人皇初代ノ神武天皇御卽位ノ
日ヲ以テ紀元ト定メサセラレ每年此ノ日
ヲ大祝節トセサセラレ給ヘルモ之ハ決シ
テ我ガ建國ノ紀元デナク神武天皇卽位紀
元デアルコトハ左ノ當時ノ布〓ニ依ルモ
明ラカデアル
一明治五年十一月十五日太政官布〓第
三百四十二號
今般太陽曆御頒行神武天皇御卽位ヲ
以テ紀元ト被定候ニ付其旨ヲ以テ被
爲告候爲メ來ル二十五日御祭典被執
行候事
一同年同月同日太政官布告第三百四十
四號
第一月二十九日神武天皇御卽位日相
當ニ付祝日ト被定例年御祭典被執行
候事
一明治六年三月七日太政官布告第九十
-號
神武天皇御卽位日ヲ紀元節ト被稱候
事
此ノ一月二十九日神武天皇御卽位日ハ日
本書紀ノ神武紀ニ依リ天皇橿原宮ニテ御
位ニ卽キ給フタ辛酉ノ年春正月庚辰朔ニ
當ルノデアルガ之ヲ太陽曆ニ推步シテ二
月十一日トナルノデ爾來二月十一日ヲ以
テ節日トセラレ明治七年ノ曆面ヨリ記載
セラルルコトトナツタノデ又年々ノ曆面
ニハ皇曆年數ヲ揭グルニ單ニ紀元何年ト
セズ必ズ神武天皇卽位紀元何年ト記載シ
建國紀元ニアラザルコトヲ明ラカニセラ
レテアルノデアル
申スマデモナク神武天皇ハ神祖ノ御正系
トシテ御齡十五ノ御時御父鵜葺草葺不合
尊ヨリ皇太子ニ定メサセラレ給ヒシコト
ナレバ假令中州御平定ノ御事ナクトモ當
然天位ニ卽カセ給フベキ御方デ其ノ御東
征ノ御偉業ハ景行天皇仲哀天皇ノ御西征
ナドト其ノ事柄ニ於テハ何等異リハナク均
シク神代ヨリ受繼ギ給ヒシ我ガ國ヲ安ラカ
ニ治メ給ハンガタメノ御行動デアツテ決シ
テカノ忌ハシイ征服掠奪等ノ建國的御創業
デハナイコトハ申スマデモナイノデアル
然ルニ世間或ハ神武建國ト唱ヘ建國記念
ト稱シ又紀元節祝日ヲ特ニ建國祭ト稱シ
テ特別ノ行事ヲ爲ス者アルガ如キハ天皇
ノ國內平定ノ御偉業ヲ以テ恰モ人ノ國ヲ
征服侵奪セラレテ建國行動ヲ執リ給ヒシ
ガ如ク思ヒ謬ラシムル虞ヲ生ズベキコト
ハ我ガ神聖ナル國家ノ成立ニ顧ミテ洵ニ
深ク恐レテ懼レザルヲ得ザル次第デアル
尙甚シキハ天皇橿原奠都ノ御詔ヲ建國ノ
大詔ト稱シ又神武建國號等ノ史書モ行ハ
レテ居ルガ之ガ天皇ノ御旨ニ戾ルコトハ
右奠都ノ御詔ノ中ニモ「上ハ則チ乾靈(あ
まつかみ)國ヲ授クルノ德ニ答ヘ、下ハ
則チ皇孫正シキヲ養フノ心ヲ弘メ」云々
ト天皇御躬ラモ自ラ國ヲ建テ給フタノデ
ナク神祖ヨリ國ヲ授ケラレタコトヲ宣ハセ
ラレテアルニ見テモ明々白々ノ事デアル
明治天皇ノ御製ニモ
神代よりうけし寶をまもりにて治め
きにけり日の本の國
嚴かにまもらさらめや神代よりうけ
繼ききたる浦安の國
ト何レモ神代ヨリ受繼ギ來リ給ヒシ國デ
アル旨ヲ明ラカニ宣ハセラレテアルニモ
拘ラズ恰モ米國ノ獨立祭ヤ滿洲ノ建國祝
ノ如ク紀元節ヲ建國日トシ神代ヨリ天
壤無窮萬世一系ノ我ガ神國ノ史實ヲ無視
シテ神武天皇ガ始メテ國家ヲ創建シ給ヒ
シガ如クナスコトハ恰モ天皇ガ我ガ開國
ノ始祖ニシテ萬世一系ハ天皇ヨリ始ムル
モノノ如ク隨テ神武天皇以前ハ果シテ如
何ノ國ニシテ天祖ノ神勅及神器ハ如何ノ
關係ニ措カルベキヤヲ怪疑セザルヲ得ザ
ルコトトナリ誠ニ我ガ國體上山々シキ重
大事ト謂ハネバナラヌ
内閣總理大臣ハ國體觀念ヲ明徴ニスル上
ニ於テ國家大政ノ變理上之ヲ閑却セラル
ベキデナイト思フガ果シテ如何又內務大
臣ハ近年行ハレ來ツテ居ル建國祭其ノ他
ノ諸行事竝ニ神武建國ナル諸圖書等ヲ取
締ル必要ヲ認メザルヤ文部大臣モ國體觀
念ノ認識徹底ノ上ニ於テ國民ノ〓育指導
上斷ジテ此レヲ等閑ニ付シ去ルベキモノ
ニアラズト思フガ如何
來ル紀元二千六百年ヲ記念スベク今ヤ諸
種ノ記念事業ガ企テラレントシ已ニ建國
記念大博覽會等ノ建國記念ト冠シタル名
稱ノ事業モ行ハレツツアリ此等ノ企畫名
稱等ノ決定セザル以前ニ於テ先ヅ其ノ名
ヲ正シ其ノ實ヲ明カニスルコトノ最緊急
至切ナルヲ認メ之ヲ前議會ニ質問シタル
モ政府ノ答辯ヲ得ルニ至ラズシテ議會ハ
解散トナリタルヲ以テ更ニ玆ニ質問スル
次第デアル三大臣ノ答辯ヲ求ム
右及質問候也
昭和十一年五月十九日
內閣總理大臣廣田弘毅
衆議院議長富川幸次郎殿
衆議院議員荒川五郞君提出皇曆紀元ニ關
スル質問ニ對シ別紙答辯書差進候
〔別紙〕
衆議院議員荒川五郞君提出皇曆紀元ニ
關スル質固ニ對スル答辯書
政府ハ旣ニ屢〓、言明セル如ク國體觀
念ヲ明徵ナラシムル爲ニハ最善ヲ盡ス
所存ナリ
一、建國祭ニ關シテハ我國開闢ノ大精神
ヲ紀元ノ佳節ニ於テ大イニ國民ニ自覺
徹底セシメントスルノ意ニ出デタルモ
ノト解シ居レリ
右及答辯候
昭和十一年五月十九日
內閣總理大臣廣田弘毅
內務大臣潮惠之輔
文部大臣平生釟三郞
帝國ノ人口ト移民政策及比律賓ノ土地
問題ニ關スル質問主意書
右成規ニ據リ提出候也
昭和十一年五月九日
提出者福田關次郞
帝國ノ人口ト移民政策及比律賓ノ土
地問題ニ關スル質問主意書
我カ國ノ人口ハ每年百萬近クノ增加ヲ見
ルニ之ニ對スル政府ノ施設ニ特ニ見ルベ
キモノナシ是等過剩人口ニ正常ナル生存
權ヲ與フルハ刻下ノ急務ナルヲ以テ移民
政策確立ノ必要アリト信ス政府ノ對策如
何尙比律賓在留日本人租借ノ土地問題ニ
關スル政府ノ方針如何
右及質問候也
昭和十一年五月十九日
內閣總理大臣廣田弘毅
衆議院議長富田幸次郞殿
衆議院議員福田關次郞君提出帝國ノ人口
ト移民政策及比律賓ノ土地問題ニ關スル
質問ニ對シ別紙答辯書差進候
〔別紙〕
衆議院議員福田關次郞君提出帝國ノ人
ロト移民政策及比律賓ノ土地問題ニ關
スル質問ニ對スル答辯書
輓近我國人口ハ連年約百萬人ノ自然增加
ヲ來シ之カ解決ハ現下ノ重要問題ナルニ
鑑ミ政府ハ移植民及海外拓殖事業ノ進展
ニ付銳意努力シツツアリ而シテ移植民ニ
就テハ出來得ル限リ多數ノ移民ヲ送出セ
ントスル方針ノ下ニ之ヲ特定ノ地ニ限定
セズ廣ク海外各地ニ對シテ行フコトニ努
メ其ノ實行ニ當リテハ本邦移民ヲ欲セサ
ル國ニ對シ强ヒテ之ヲ送出セス又本邦移
民ニ對シ他國移民ト差別待遇ヲ爲ス國ニ
對シテモ之ヲ送出セサル方針ナルカ政府
ハ出先官憲ヲ督勵シ外國側ノ本邦移民ニ
對スル誤解ヲ一掃シ入國制限ノ緩和又ハ
差別待遇ノ撤廢ニ努力シツツアリ且又共
存共榮ノ精神ニ依リ相互ノ提携ヲ策シ貿
易ノ圓滑、文化ノ交換等親善關係ノ增進
ヲ期シ居レリ特ニ滿洲國ニ對シテハ我國
ト特殊不可分ノ關係ニアルト共ニ過去數
囘ニ亙リ實施セル試驗移民ノ實績大體良
好ナルニ徵シ將來大量移民ヲ送出スル方
針ナリ尙最近ノ國際情勢ニ適應シタル移
民實行方策審議ノ爲海外拓殖委員會ヲ設
立シ重要事項ヲ審議スルト共ニ其ノ喫緊ニ
屬スルモノハ著々之カ實行ニ努メツツアリ
比律賓ニ於ケル邦人關係土地問題ニ關シ
テハ昭和十年七月以來「ダヴァオ」ニ於テ
邦人ノ入耕セル米比人土地ノ中比島政府
ヨリ租借又ハ拂下取消命令ヲ受クルモノ
續出スルニ至リタルヲ以テ帝國政府ハ出
先官憲ヲシテ比島當局ニ對シ本邦人ノ權
益保護方ニ付深甚ナル注意ヲ拂フ樣申入
レシムル等機宜ノ措置ヲ採リタルカ比島
新政府成立後同年十二月ニ至リ比島大統
領ハ土地取消命令ノ實施ヲ差止ムル所ア
リタリ、其後本年四月上旬同大統領ハ農
務司法兩長官ヲ帶同「ダヴアオ」三六三
自ラ現地ノ狀況ヲ視察スルコトトナリタ
ルヲ以テ出先官憲ヲシテ同大統領ト篤ト
意見交換ヲ爲サシメタルカ其後モ引續キ
我方權益擁護方善處セシメツツアリ
右及答辯候也
昭和十一年五月十九日
內閣總理大臣廣田弘毅
拓務大臣永田秀次郞
外務大臣有田八郞
燃料國策ニ關スル質問主意書
右成規ニ據リ提出候也
昭和十一年五月十二日
提出者〓瀨一郞
燃料國策ニ關スル質問主意書
政府カ計畫スル液體燃料自給自足政
策ノ範圍如何
過般內閣總理大臣ハ其ノ施政方針ヲ明
示スル演說ニ於テ液體燃料ノ自給自足
ヲ促進スル旨ノ言明ヲ爲シ今囘議會ニ
提出セラレタル追加豫算案中ニ於テモ
液體燃料ニ關スル費目ヲ計上セリ蓋シ
內燃機動機關ノ躍進的發達ヲ示セル現
代ニ於テ國防海運ヲ始メ各種ノ國策上
液體燃料自給自足ノ緊急ナルコト勿論
ナリ政府カ之ニ著目スルコトノ寧ロ遲
キヲ憾ムノミ唯玆ニハ其ノ範圍ト方針
トニ付テ問ハムトス液體燃料政策ハ獨
リ石油ノ保有及石炭ノ液化ニ止マラス
諸外國ニ於テモ實施スル如ク揮發油ニ
對スル酒精ノ混和ニ付テモ策ヲ樹ツヘ
キニ非サルカ
二揮發油ニ對スル酒精ノ强制混和ハ輸
入ヲ減少スルト同時ニ農村振興政策
タルノ方面ヲ有スト考フ政府ノ所見
如何
世界ニ於テ揮發油ニ對シ酒精ノ强制混
和ヲ實行スルノ邦國ハ旣ニ十一ニ及ヘ
リ其ノ他ニ未タ强制法ヲ布カスト雖之
ヲ實行スルモノ三十國ニ及ヘリ蓋シ揮
發油ニ無水酒精ヲ混和スルコトニ由テ
燃料ノ「オクタン」價ヲ高メ發動機ノ壓
縮比ヲ高率ナラシムルコトニ依リテ出
馬力ヲ增大セシメ之ニ依リテ燃料消費
ノ全般的減少ヲ圖ルカ爲右强制混和カ
廣ク賞用セラルルニ至リタルモノナリ
我カ國ニ於テハ以上ノ外尙此ノ方策ヲ
重視スヘキ理由アリ他ナシ酒精ノ原料
タルヘキ馬鈴薯ハ我カ國土ニ於テハ東
北、山陰、南海ノ別ナク容易ニ之ヲ生
產シ得ヘシ假リニ我カ國現在消費ノ揮
發油ノ量ヲ基準トシ之ニ對シ二〇%ノ
無水酒精ヲ混和セムトセハ其ハ原料タル
馬鈴薯ハ六億四千萬貫ヲ要シ爲ニ十五萬
六千五百町步ノ作付段別ヲ利用シ農村
ニ五千萬圓ノ代價ヲ交付シ得ヘシ固ヨ
リ右ハ一ノ假定的推算ニ過キサレトモ
馬鈴薯ノ如キ荒蕪ノ土地ニモ生產シ得
ル農產物ヲ用ヒテ我カ國液體燃料問題
ヲ解決スルカ如キハ所謂一石ヲ以テ二
鳥ヲ僵スニ似タリ宜シク此ノ方策ヲ採
ルヘキモノト考フ政府ノ所見如何
右及質問候也
昭和十一年五月十九日
內閣總理大臣廣田弘毅
衆議院議長富田幸次郞殿
衆議院議員〓瀨一郞君提出燃料國策ニ關
スル質問ニ對シ別紙答辯書差進候
〔別紙〕
衆議院議員〓瀨一郞君提出燃料國策ニ
關スル質問ニ對スル答辯書
一液體燃料ノ自給自足ヲ促進スル爲政
府ハ石油業法ノ施行內外石油資源ノ開
發確保、代用燃料工業ノ振興等各般ニ
亙ル施設ヲ實施シツツアルガ將來更ニ
其ノ擴充徹底ヲ圖リ液體燃料ノ供給確
保ニ遺憾ナキヲ期セントス
二揮發油ニ對スル酒精ノ强制混用ハ揮
發油ノ需給ノ趨勢ニ鑑ミ液體燃料補給
上我國ニ於テモ考慮スベキ重要ナル方
策ト認メラレ又之ガ原料ノ供給ヲ國內
農產物ニ求ムルハ一面農村振興ノ趣旨
ニモ副フ所以ナリト思料セラルルヲ以
テ目下關係各省ト協力ノ上銳意調査ヲ
進メ具體案ヲ攻究中ナリ
右及答辯候也
昭和十一年五月十九日
商工大臣小川〓太郞発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X01219360519&spkNum=2
-
003・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 只今報告ノ通リ政
府ノ答辯ガアリマシタカラ、質問一乃至五
ハ日程ヨリ之ヲ省キマス、質問ノ答辯ニ對
スル意見陳述ノ申出ガアリマスガ、是ハ適
當ノ機會ニ許可スルコトト致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X01219360519&spkNum=3
-
004・松永東
○松永東君 議事日程變更ノ緊急動議ヲ提
出致シマス、卽チ此際日程第三及ビ第四ヲ
繰上ゲ上程シ、其審議ヲ進メラレンコトヲ
望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X01219360519&spkNum=4
-
005・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 松永君ノ動議ニ御
異議アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X01219360519&spkNum=5
-
006・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 御異議ナシト認メ
やく、仍テ日程ノ順序ハ變更セラレマシタ、
日程第三及ビ第四ハ同一委員ニ付託シタル
議案デアリマスカラ、一括議題トナスニ御
異議ハアリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X01219360519&spkNum=6
-
007・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 御異議ナシト認メ
やく、仍テ日程第三、昭和六年法律第四十
號中改正法律案、日程第四、自動車製造事
業法案、右兩案ヲ一括シテ第一讀會ノ續ヲ
開キマス、委員長ノ報告ヲ求メマス-野
村嘉六君
第三昭和六年法律第四十號中改正法
律案(重要產業ノ統制ニ關スル件)
(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報告)
第四自動車製造事業法案(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報告)
報〓書
一昭和六年法律第四十號中改正法律案
(重要產業ノ統制ニ關スル件)(政府提
出
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和十一年五月十八日
委員長野村嘉六
衆議院議長富田幸次郞殿
報告書
一自動車製造事業法案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和十一年五月十八日
委員長野村嘉六
衆議院議長富田幸次郞殿
希望條項
一本法ニ於テ助成セントスル製造自動
車ノ種類中ニハ電氣自動車、デーゼル
エンヂン自動車、木炭自動車及薪自動
車モ加ヘラレタキコト
一本法施行ニ當リテ助成指定ノ自動車
製造業者ノ發達ヲ不當ニ促進セシメン
ト圖リ强ヒテ經濟的不利ナル國產自動
車ノ普及ヲ企テ一般自動車業者及民衆
ノ不利ヲ招カザルコト
一本法施行上指定自動車業者ノ助成ニ
急ナル爲不當ニ自動車及部分品ノ輸入
制限ヲ企テ其ノ價格ノ高騰ヲ招徠シ一
般消費者ノ不利不便ヲ釀成セシメザル
コト
一本法ニ於テ助成セントスル自動車製
造業者ノ指定基準ハ昭和十年八月九日
ノ我ガ國自動車ノ實狀ヲ基調トスルモ
ノナレバ本法施行ニ當リ助成會社ノ保
護ニ偏シ其ノ他ノ自動車業者ノ旣得ノ
權益ヲ侵害セザルヤウ最善ノ注意ヲ拂
フコト
〔野村嘉六君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X01219360519&spkNum=7
-
008・野村嘉六
○野村嘉六君 只今議題トナリマシタ昭和
六年法律第四十號中改正法律案ノ、委員會
ニ於ケル審議ノ經過竝ニ結果ニ付キ御報告
申上ゲマス、本委員會ニハ本改正法律案及
ビ自動車製造事業法案ノ二件ヲ併託サレタ
ノデアリマス、先ヅ本案審議ニ付テ申上ゲ
マス、本改正案提案ノ理由ト申シマスノハ、
本法ハ本年八月十日ヲ以テ施行期間ガ滿了
スルノデアリマス、併シ諸般ノ情勢ニ照シ
マシテ、尙ホ五箇年間其施行期間ヲ延長シ、
且ツ過去五箇年間ノ實績、竝ニ其間ノ經濟
情勢ノ變化ニ鑑ミマシテ、二三是ガ內容ニ
重要ナル改正ヲ加ヘントスルノデアリマス、
今其重ナル改正點ヲ申上ゲマスレバ、第一、
現行法第二條ノ統制服從命令ヲ發シマシタ
場合ニ於キマシテ、其效果ヲ的確ナラシラ
ムル爲ニ、必要アル場合ニハ許可制ヲ布キ
得ル途ヲ拓キマシタコトデアリマス、第二、
從來本法ノ適用ヲ遁レテ居リマシタ共同販
賣會社、竝ニ「トラスト」ヲモ取締ル趣旨ニ改
メマシタコト、第三、第三條ノ所謂公益規
定活動ヲ容易ナラシメ、一般消費者其他公
益ノ擁護ニ一層ノ考慮ヲ加フルコトニナシ
タル點、第四、本法ノ外地施行ニ備フル爲
メ用語ヲ改メマシタコト等デアリマス、本
改正案ハ國家ノ產業政策ノ根本ニモ觸ルヽ
極メテ重要ナル問題デアリマスノデ、熱心
ニ質問應答ガアリマシタ、今其主ナル論點
ニ付テ簡單ニ經過ヲ申上ゲマス
委員ヨリ第一根本論トシテ、產業改策ニ
付キ自由主義ヲ原則トスルカ、又ハ統制主
義ヲ原則トスルカトノ點ニ付キ質問ガアリ
マシタ、第二、產業統制ノ强化ハ時運ニ伴
フ途デアラウト思ハレルガ、政府ハ何レノ
產業ニ付キ、ドノ程度ノ强化ヲ圖ル考デア
ルカ、又產業ノ重要性ニ依ッテ、之ヲ國營ニ
マデ進メル考ハアルカトノ質問ガアリマシ
タ、第三、產業統制强化ハ產業其モノニ重
點ヲ置クノカ、或ハ國民生活ノ安定、卽チ
消費者ノ利益擁護ニ重キヲ置クカトノ質問
ガアリマシタ、之ニ對シ廣田首相ハ、現在
ノ經濟又ハ產業ノ基調ト致シテハ自由主義
デアル、尙ホ外國貿易ニ對シテモ同樣デア
ル、只最近各般ニ亙ル利害對立ヲ緩和スル
爲メ、產業統制ハ强化スル必要ガアルト認
ムル、尙ホ產業ノ如何ニ依リテハ、之ヲ國
營ニ移スコトニ付テハ十分考究スルトノ答
辯デアリマシタ、又國民生活ノ安定ニ重點
ヲ置クコトハ勿論デアル、併ナガラ產業ノ
繁榮ナクシテハ、國民生活ノ向上安定ハ期
シ得ラレナイノデアルカラ、產業ノ進展ヲ
阻止スルヤウナ急激ナル手段ハ執リタクナ
イトノ答辯デアリマシタ、更ニ委員ヨリ第
一統制上消費者ノ公正ナル利益ヲ擁護ス
ルニハ、利益配當制限ノ必要ヲ認メナイカ、
第二、統制委員會ノ從來ノ行動ニ徵スレバ、
生產者ニ厚ク消費者ニ薄イ感ガアル、之ヲ
改メ其機能ヲ十分ニ發揮セシムル意思ハナ
イカ、第三、本法ヲ外地ニ施行スルトスレ
バ其時期、產業ノ種類ハ如何ナルモノデア
ルカ、此質問ニ對シ政府ハ、產業統制ニ依
リ需給ノ調節ハスルガ、利益配當制限マデ
ハセナイト答辯致シマシタ、又統制委員會
ハ臨時委員ヲ設クルコトガ出來ルノデ、消
費者竝ニ依存產業者ノ立場ヲ考慮シテ善處
スルトノ答辯デアリマシタ、尙ホ本法ハ外
地ニモ成ベク早ク機會ヲ見テ施行スル考デ
アルガ、外地ハ御承知ノ通リニ特別ノ事情
ガ多イカラ、其時期、產業種類ハ調査ノ上
デスルトノ答辯デアリマシタ、其他色々ノ
質問又ハ希望ガアリマシタ、採決ノ結果多
數ヲ以テ本案ガ可決サレマシタ
更ニ自動車製造事業法案ニ對スル委員會
ノ經過ヲ御報告致シマス、本案ノ要點ハ國
防上、產業經濟上ノ趨勢ニ鑑ミマシテ、大
衆自動車ノ大量生產ヲ目的トスルモノ
デ、是ガ方策ト致シマシテ、政府ノ許
可事業ト爲シテ助成監督ヲスルノデアリマ
ス、委員會ニ於ケル質問應答ノ二三ヲ紹介
致シマス、第一、本法案施行ニ依ッテ、果
シテ「フォード」「シボレー」ノ安イ自動
車ニ對抗出來ルカ、第二、自動車工業ノ
發達ハ、製造工業自體ニ對スル保護助長ノ
ミデハ不十分デアル、需要奬勵ニ努メネバ
ナラヌガ、之ニ對スル準備ハ如何、第三、
本法ニ規定シタル政府ノ命ズル一定ノ數量
トハ、ドレ程ノ數量デアルカ、第四、自動
車ニ要スル燃料政策、竝ニ燃料消費者ニ對ス
ル擁護方法ハドウスルノデアルカ、之ニ對
シマシテ政府ハ、第一、自動車ノ營業收益
稅、所得稅ノ免除、尙ホ地方稅改正ノ際、
自動車ニ賦課セラレル地方稅免除ノ考慮、
資金融通ノ爲メ商法ニ例外規定ヲ設ケ、社
債發行ヲ爲シ得ルコト、許可制ニ依リ無用
ノ競爭ヲ避クルコト、又場合ニ依リマシテ
ハ輸入ニ制限ヲ附スルコトト致シマシテ、
以テ是デ對抗シ得ルト云フ答辯デアッタノ
デアリマス、第二ニ對シマシテハ、先ヅ官
廳用自動車ハ全部國產ヲ使用サセル、其他
道路ノ改良ヲ關係當局ニ善處方ヲ促ス考デ
アル、第三ニ對シマシテハ、先ヅ一箇年五
六千臺位生產ノ見込デアルト云フコトデア
リマス、第四、燃料使用ニ付キマシテハ、
電氣其他ニ付キ〓究シツヽアルガ「ガソリ
ン」消費者擁護ノ爲メ、委員銓衡ニ十分將
來ハ注意スルト云フコトデアリマス、其他
有益ナル色々ノ質問應答ガアリマシタ、尙
ホ堀内委員ヨリノ希望條項トシテ
一本法ニ於テ助成セントスル製造自動
車ノ種類中ニハ電氣自動車、デーゼル
エンヂン自動車、木炭自動車及薪自動
車等モ加ヘラレタキコト
植原委員ヨリノ希望條項トシテ
本法施行ニ當リテ助成指定ノ自動車
製造業者ノ發達ヲ不當ニ促進セシメン
ト圖リ强ヒテ經濟的不利ナル國產自動
車ノ普及ヲ企テ一般自動車業者及民衆
ノ不利ヲ招カザルコト
-本法施行上指定自動車業者ノ助成ニ
急ナル爲不當ニ自動車及部分品ノ輸入
制限ヲ企テ其ノ價格ノ高騰ヲ招來シ一
般消費者ノ不利不便ヲ釀成セシメザル
コト
一本法ニ於テ助成セントスル自動車製
造業者ノ指定基準ハ昭和十年八月九日
ノ我ガ國自動車業ノ實狀ヲ基調トスル
モノナレバ本法施行ニ當リ助成會社ノ
保護ニ偏シ其ノ他ノ自動車業者ノ既得
ノ權益ヲ侵害セザルヤウ最善ノ注意ヲ
拂フコト
兩委員ヨリ斯ル希望條項ガ申出ラレマシタ、
採決ノ結果、本案竝ニ希望條項ハ全會一致
ヲ以テ可決シマシタ、此段御報〓ヲ致シマ
ス、何卒審議ノ上ニ本院ニ於テモ可決サレ
ンコトヲ希望致ス次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X01219360519&spkNum=8
-
009・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 先ヅ昭和六年法律
第四十號中改正法律案ヲ審議シ、次ニ自動
車製造事業法案ノ審議ニ入ルコトト致シマ
ス、是ヨリ昭和六年法律第四十號中改正法
律案ノ審議ニ入リマス、本案ニ對シテハ片
山哲君外三名ヨリ、成規ニ依リ修正案ガ提
出セラレテ居リマス、討論ハ便宜上第二讀
會ニ於テ修正案ノ趣旨辯明ヲ聽キタル上之
ヲ爲スコトト致シマス、本案ノ第二讀會ヲ
開クニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X01219360519&spkNum=9
-
010・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 御異議ナシト認メ
やく、仍テ本案ノ第二讀會ヲ開クニ決シマ
シタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X01219360519&spkNum=10
-
011・松永東
○松永東君 直チニ本案ノ第二讀會ヲ開カ
レンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X01219360519&spkNum=11
-
012・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 松永君ノ動議ニ御
異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X01219360519&spkNum=12
-
013・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 御異議ナシト認メ
せい、仍テ直チニ本案ノ第二讀會ヲ開キ、
議案全部ヲ議題ト致シマス、此際修正案ノ
趣旨辯明ヲ許シマスー-片山哲君
昭和六年法律第四十號中改正法律案
(重要產業ノ統制ニ關スル件)第二讀會
昭和六年法律第四十號中改正法律案ニ
對スル修正案(片山哲外三名提出)
(小字及-ハ修正)
昭和六年法律第四十號中改正法律案中左
ノ通修正ス
第二條中「主務大臣」ヲ「政府」ニ、「加盟者
三分ノ二以上ノ」ヲ「加盟者三分ノ二以上
ニシテ其ノ生產高又ハ販賣高ガ加盟者ノ
生產高又ハ販賣高ノ三分ノ二以上ヲ占ム
メ同條中當該產業ノ公正ナル
ルモノノ」ニ改ム
利益ヲ保護シ」ヲ削ル
第三條政府第一條ノ統制協定又ハ前二
條ノ規定ニ該當スル者ノ生產若ハ販賣
ノ數量、販賣價格若ハ之ニ影響ヲ及ボ
スベキ取引條件ガ商品ノ圓滑ナル供給
ヲ妨ゲ又ハ不當ニ價格ヲ騰貴セシメ若
ハ價格ノ低落ヲ阻止シ其ノ他當該產業
若ハ之ト密接ナル關係ヲ有スル產業又
關係中小事業者、一般消費者若ハ從業勞
ハ般消費者ノ公正ナル利益ヲ害スト
働者
〓國民生活ノ安定及國民經
認ムルトキハ○統制委員會ノ議ヲ經テ
濟ノ健全ナル發達ヲ目標トシテ
其ノ變更又ハ取消其ノ他公益上必要ナ
ル事項ヲ命ズルコトヲ得
第五條中「本法ニ定ムルモノノ外統制委員會
ニ關シ」ヲ「統制委員會ハ生產者、消費者及勞
働者ノ代表者ヲ以テ構成シ本法ニ定ムルモノ
ノ外」ニ改ム
〔片山哲君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X01219360519&spkNum=13
-
014・片山哲
○片山哲君 私ハ重要產業統制法ノ委員長
報告ニ對シマシテ、修正案ヲ提出致シタイ
ノデアリマス、其修正案ハ旣ニ刷物トナッテ
御手許ニ配付サレテ居ルト思フノデアリマ
スガ、第二條、第三條及ビ第五條ノ三箇所
ノ修正デアリマス、此三箇所ノ修正ノ趣旨
ヲ要約シテ先ヅ申上ゲ、次イデ其理由ヲ述
ベテ見タイト思フノデアリマス、此趣旨ハ
本法ノ改正ノ要點デアリマス「トラスト」ノ
取締ヲ更ニ强化スルニアリマシテ、ソレガ
爲ニハ改正案ノヤウナ文句デハ其效果ヲ疑
フノデアル、今少シク之ヲ具體的ニシナケ
レバナラナイ、現行法ノ實蹟ニ鑑ミテ見マ
スル時ニハ、ドウシテモ在來ノ如キ抽象的
規定デハ其效果ヲ疑ハレルノデアル、仍テ
之ヲ具體化シナケレバナラナイ、今少シク
實際上ノ問題ヲ明白ニシテ行カナケレバナ
ラナイト云フノガ第一點デアリマス、又第
二點ハ、統制委員會ノ構成ヲ明記シテ行カ
ナケレバナラナイト云フ點デアリマス、總
テ之ヲ勅令ニ委スト云フ書キ方デハイケナ
イカラ、消費者或ハ從業勞働者等ヲ、其構
成委員ニ入レナクテハナラナイト云フコト
ヲ、法律ノ中ニ明記シナケレバナラナイト
云フ點デアリマス、此二點ニ付キマシテ說
明ヲ申上ゲテ見タイト思ヒマス、委員長ノ
報〓ノ中ニモ、政府ノ答辯ハ「トラスト」ノ
取締ヲ嚴重ニスル趣旨デアッテ、政府ノ言ツ
テ居リマス個人ノ自由ヲ尊重シ、適當ノ國
家統制ヲ加ヘナケレバナラナイト云フ趣旨
ハ、國民生活安定ト、國民經濟ノ健全ナル
發達ノ爲ニ、統制ヲシナケレバナラナイト
云フコトヲ言ッテ居ルノダト言ヒマスガ、改
正案ニ於キマシテハ、其趣旨甚ダ不徹底デ
アリマスカラ、修正案ニ於キマシテ、其政
府答辯ノ趣旨ヲ更ニ具體的ニシ、其徹底ヲ
圖リタイト云フコトヲ考ヘテ居リマス、是
ガ私ノ强ク申上ゲタイ點デアリマス、廣田
首相ノ答辯、小川商相ノ答辯ヲ要約致シマ
スルナラバ、個人ノ自由ヲ尊重シ、產業統
制ノ實ヲ擧ゲタイト云フコトヲ言ッテ居リ
マスケレドモ、唯漠然ト之ヲ言ッテ居ルダ
ケデアリマシテ、偖テソレヲ法律ノ中ニ如
何ニ明記スルカ、法文ノ中ニ如何ニ之ヲ具體
化スルカト云フ點ニ付キマシテハ、常ニ逡巡
サレルノデアリマス、躊躇サレルノデアリ
マス、ソコデ之ヲ明記スル必要ガアル、明記
スルコトハ、ドウ云フ效果ヲ持ツカト申シ
マスルナラバ、事實ノ上ニ於キマシテ、今
日ノ「トラスト」ノ專橫ヲ防グ效果ヲ持ツノ
デアリマス、今マデノヤウニ抽象的ニ漠然
ト、〓括的ニ規定シテ居リマスナラバ、「カ
ルテル」ハ「トラスト」化致シマスルシ、隨
テ個人ノ自由ハ投資資本ノ擁護トナッテ來
ルノデアリマス、投下旣設事業ノ擁護ト云
フコトニナリマスシ、又大企業ノ專橫ト云
フコトニナッテ參ルノデアリマス、大企業ノ
專橫「トラスト」ノ横暴、之ニ對シテ堪ヘル
コトガ出來ナイノデアリマスカラ、之ヲ何
トカ統制シナケレバナラナイト云フコトガ、
卽チ本法改正ノ趣旨デアルト致シマスルナ
ラバ、ドウシテモ此點ハ政府提出案ノ如キ改
正文句デハ、其效果ヲ發揮スルコトガ出來
ナイト考ヘルノデアリマス、ソレデアリマ
スカラ、首相ノ所謂個人ノ自由ナルモノハ、
力ノアル者ノ自由トナリマス、力ヲ持ッテ居
リマスル者ノ自由デアッテ、而シテ既設事業
家ノ專橫自由ト云フコトニ歸著致スノデア
リマス、其結果ハ何處ニ及ンデ居ルカト申
シマスナラバ消費者カ、然ラザレバ中小
事業家ガ、其被害ヲ受ケルコトニナルノデ
アリマス、卽チ價格ハ段々吊上ゲラレテ來
ルノデアル、中小事業家ハ混亂無統制ニ陷
ルノデアル、斯ル結果ヲ事實ノ上ニ來シテ居
ルノデアリマス、此狀態ヲ考ヘテ見マスル
ノニ、ドウシテモ此力アル者ノ自由行動ヲ
制限シナケレバナラナイノデアリマス、
是ガ卽チ產業統制ノ重要ナル點デアル
ト云フコトヲ考ヘル譯デアリマスカ
ラ、吾々ハ此點ニ著眼ヲ致シマシテ、同時
ニ又今日ノ產業ノ振興、所謂生產ノ增大ト
云フコトモ考ヘテ行カナケレバナラヌト思
フノデアリマス、併ナガラ產業ノ增大ハ利
潤ノ增加ニ今日ハ陷ッテ居ルノデアリマス、
利潤ノ增大ヲ制限スル-援助スルト云フ
結果ニ陷ッテ居ルノデアリマスルカラ、同時
ニ分配機構ノ改革ヲモ斷行シナケレバ、統
制經濟ノ實ハ擧ラナイノデアリマス(拍手)
國家ガ產業ノ統制ヲヤラウト致シマスナラ
バ、旣設事業ノ擁護デハナクシテ、分配機
構ノ改革ニマデ及バナケレバ、今日ノ重要
產業ノ統制ハ、斷ジテ效果ヲ現ハスコトガ
出來ナイト云フコトヲ私ハ信ズル者デアリ
マス、ソレデアリマスカラ、玆ニ統制委員
會ノ構成ヲ明記シテ、生產者、消費者及ビ
從業勞働者ノ代表ヲ委員會ニ入レマシテ、
價格ノ統制ヲヤル以外ニ、分配機構ノ改革
ニマデ之ヲ持ッテ行キ、其片鱗ヲ現ハサナ
ケレバナラナイト私ハ考ヘルノデアリマス、
ソコデ政府提出改正案デハ、此重要產業統
制ニ依ル國家ノ威力ヲ發揮致シマシテ、利
潤ノ增大ニ掣肘ヲ加ヘル意思ヲ、國民ハ十
分ニ信ズルコトガ出來ナイト思ハレルコト
ガ一點、第二點ハ、改正案ノ文句デハ、政
府ノ言ッテ居リマス所ノ產業統制ノ實ヲ、
十分ニ國民ハ信用スルコトガ出來ナイト思
フノデアル、其意思ノ那邊ニアルヤ、胡麻
化サレテ居ルト云フヤウナ感ジヲ懷クモノ
デアリマスカラ、其意思ヲ極メテ明確ニシ、
產業ノ眞ノ隆盛、國民生活ノ安定ヲ目標ト
致シマシテ、產業統制ヲ爲サナケレバナラ
ナイト云フコトヲ、具體的ニ文字ノ上ニ、
且ツ法文ノ上ニ現ハジテ行カナケレバナラ
ナイト思ヒマスカラ、サウ云フ點カラ第二
條、第三條、第五條ノ修正ヲ致シタイノデ
アリマス
第二條ハ當該產業ノ公正ナル利益ノ擁護
ト云フコトヲ書イテ居ルノデアリマスケレ
ドモ、今マデノ「カルテル」助成「トラストL
ヘノ進行ハ、斯ウ云フ文句ニ囚ハレテ取締
ルコトガ出來ズ、當然ノ事柄ヲ當然トシテ
之ヲ認メ、更ニ强調サレルト云フ結果ニナッ
タノデアリマスカラ、此文句ハ利用サレタ
傾ガアルノデアリマス、此言葉ガ非常ニ逆
用サレタ、是デ「トラスト」ニナッタト云フコ
トヲ考ヘマスカラ、當然過ギル程當然ナル
事柄ヲ此處ニ書ク必要ガナイト思ヒマス、
却テ其反對ニ農民生活ノ安定、國民經濟ノ
健全ナル進展ト云フコトヲ、此中ニ强ク書
カナケレバナラナイト思ヒマス、斯ウ云フ
趣旨カラ、當該產業ノ利益擁護ト云フ文句
ヲ削ッテ、アベコベニ國民生活ノ安定、國民
經濟ノ發展ト云フコトヲ强調スルト云フコ
トガ、卽チ私ノ第二條ノ改正ノ趣旨デアリ
マス(拍手)
第三條ハ、是モ本案ガ上程サレマシタ時
ニ、大臣ニ對スル質問トシテ述ベタ點デア
リマス、本條ハ今マデ殆ド發動サレナカツ
タノデアリマス、之ヲ有力ニ、活潑ニ發動
セシムル爲ニハ、ドウシテモ發動條件ヲ明
記シナケレバナラナイ、卽チ斯ウ云フ場合
ニハ發動シナケレバナラナイノデアルト
カ、價格ヲ決メル場合ニ於キマシテモ、斯
ウ云フヤウナ場合ニハ、ドウシテモ此價格
ハイケナイノデアルトカ、或ハ又生產制限
ノ場合ニ於テモ、不當ナル制限デアルト云
フヤウナ、各種ノ條件ヲ明記致シマシテ、
活動ヲ活潑ナラシムル事柄ヲ、第三條ノ中
ニ明記シテ行カナケレバナラナイト考ヘマ
スカラ、先ヅ第一ニ於キマシテハ、常ニ「ト
ラスト」ニ依ッテ壓迫サレ、被害ヲ多分ニ受
ケテ居リマス所ノ中小企業ニ對スル擁護、
保護ヲ第三條ノ中ニ書カナケレバナラナイ
ノデアル、一般消費者ハ勿論ノコト、之二
從事シテ居リマスル從業勞働者ガ勞働强化
ニ依ッテ、賃銀ノ引下ニ依ッテ、非常ナル生
活ノ苦痛ヲ受ケテ居リマスル場合ニ於キマ
シテモ、產業統制ノ威力ヲ發揮スル必要ガ
アリト云フコトヲ感ジマスカラ、是亦第三
條ノ修正ヲ致シタイト云フコトヲ考ヘルノ
デアリマス、而シテ目標ハ常ニ利潤ノ增大
デハナクシテ、國民生活ノ安定デアリ、國
民經濟ノ健全ナル發達デアルト云フコト
ヲ、常ニ强ク强調シテ行カナケレバナラナ
イト思ヒマス、此事ヲ第三條ニ現ハシテ修
正ヲ致シタイト考ヘルノデリマス、此點ハ最
モ今後ニ於ケル產業統制ノ上ニ重大ナル事
柄デアッテ、政府若シ國民生活ノ安定ヲ强
調スルナラバ、產業統制ハ利潤ノ增大ヲ擁護
スルノデハナクシテ、卽チ國民經濟、國民產業
ノ進展ヲ考慮シテ居ルト云フナラバ、必ズ
修正案ノ如キ文句ヲ茲ニ明記スル必要ガア
ルト云フコトヲ私ハ確信スル者デアリマス
(拍手)
更ニ又第五條ノ統制委員會ノ構成デアリ
マスガ、之ニ對シマシテハ、政府ハ十分消
費者ノ代表者ヲ入レルコトヲ考慮スルト言
ハレマスケレドモ、考慮スルナラバ國民生
活ガ安定シ、國民ガ本案ニ對シテ信賴ヲス
ル實ヲ擧ゲナケレバナラナイト私ハ考ヘル、
隨テ生產者ニ竝ンデ消費者、消費者ニ竝ン
デ從業勞働者、此三者ガ相竝ンデ眞ニ產業
ノ國民生活安定ノ方向ニ向ハシムル統制
ヲ發揮シナケレバナラナイト思ヒマス、此
趣旨カラ、其法文ヲ明記スルコトガ、重要
產業ニ於ケル「トラスト」ノ强化ヲ防止スル、
最モ必要ナルコトト考ヘルノデアリマス、
斯ウ云フヤウナ趣旨カラ、僅ニ三箇條ノ改
正デアリマスケレドモ、是ハ單ナル文句ノ
改正デハナイ、單ナル法文ノ文字ノ改正デ
ハナクシテ、實ハ「トラスト」取締ニ對スル
國家ノ意思ガ如何ニ現レルカ、如何ニ實行
力ヲ持ツノデアルカ、國民ニ對シテ如何ニ
眞面目ナル熱意ヲ現シテ居ルノデアルカ、
サウ云フ點ニ觸レテ參ルノデアリマス
又先程申シマシタ、今後ニ於ケル重要ナ
ル問題トナッテ居リマスル所ノ分配機構ノ
改革ガ、其片鱗ヲ漸次法文ノ上ニ於テ現ハ
シテ行カナケレバナラナイト云フ問題モア
リマス、斯ル重要ナル觀點アリト云フコト
ヲ私ハ考ヘザルヲ得ナイノデアリマス(拍
手)以上ノ點ニ付テ修正案ヲ提出致シタノ
デアリマスガ、御承知ノ通リ現行重要產業
統制法制定ヲ契機トシマシテ、資本家團體
ハ共同工作ヨリ共同團體ニ進ンデ、色々ノ
產業團體聯合會ガ出來マシタ、此團體ガ價
格ノ吊上、利潤ノ增大ヲ圖ッテ居ル等ハ、皆
樣ノ御承知ノ通リデアリマスガ、其副產物
ト致シマシテ、吾々ノ常ニ考ヘテ居リマス
ル點ハ、國民生活安定ノ問題ニ重要ナル關
係ヲ持ッテ居リマス所ノ、社會立法ニ對シテ
常ニ反對ノ立場ヲ執ッテ居ルト云フコトヲ
考ヘテ行カナケレバナラナイ(拍手)昨日上
程サレマシタ退職手當積立法ヲ巡ル所ノ資
本家〓體ノ色々ナル策動等ヲ考ヘテ見マス
ルナラバ、其策動ノ根源タル團結行動ハ、
本法制定ニ依ッテ其契機ヲ得タト云フコト
ヲ考ヘテ見マスル時ニ、本法ノ副產物ハ色
色ノ意味ニ於テ資本家ニ利益スル所アッタ
ト云フコトヲ考ヘザルヲ得ナイノデアリマ
ス、此點ニ著眼致シマシテ、本法修正ハ洵
ニ重要ナル關係ヲ國民生活ニ持ツモノデア
リマス、今後ニ於ケル我國ノ產業政策ガ、
如何ナル方向ニ進ンデ行クカト云フコトニ
付キマシテ、又重大ナル關係ヲ持ツモノデ
アルト思フノデアリマス、ドウカ其點ヲ十
分ニ御考慮願ヒタイノデアリマス、委員會
ニ於テハ、委員諸君ハ此修正ノ趣旨ニハ十
分ニ諒トスル所アリ、其意味ニ於テハ大イ
ニ考ヘ、且ツ贊成スベキ點ガ多々アルト云
フコトヲ申サレタノデアリマス、贊成サレ、
趣旨ヲ諒承サレルナラバ、更ニ一步ヲ進メ
テ、我國產業ノ健全ナル發達ト、國民生活
安定ノ爲ニ十分御考慮ヲ願フノデアリマス、
何卒此修正案ニ御贊成アランコトヲ切ニ願
ヒマシテ、私ノ說明ヲ終リタイノデアリマ
ス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X01219360519&spkNum=14
-
015・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 討論ノ通告ガアリ
やく、仍テ之ヲ許シマス-笠井重治君
〔笠井重治君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X01219360519&spkNum=15
-
016・笠井重治
○笠井重治君 私ハ昭和六年法律第四十號
改正ニ付テ、片山哲君ノ修正案ニ贊成スル
ト同時ニ、更ニ過去五年間ニ互ッテ、重要產
業統制法ノ實施ニ依ッテ結成セラレタ所ノ
我國ノ「トラスト」取締ノ爲ニ、更ニ法律ヲ
强化スベキコトヲ主張スルモノデアリマス、
現行法ハ過去五年間ニ「トラスト」ノ結成ヲ
助長シテ、代暴ヲ極ムルニ至ラシメマシタ、
而シテ今囘提出サレテ居ル此改正案ハ第二
條ノ二、三、四、第三條、第四條等ヲ以テ
「トラスト」ノ弊害ヲ矯正シ得ルト稱シテ居
リマスガ、或ハ空文ニ終リハシナイカト虞
レテ居ル故ニ政府ハ重要產業ノ統制ヲ圖
ルト共ニ、中小工業者ノ利益ヲ擁護スル政
策ヲ採ラネバナラヌ、今ヤ正ニ澎湃トシテ
起ラントスル中小工業者ノ不滿ヲ抑
ヘ、且ツ其利益ヲ擁護スルニハ、資本
家ノ橫暴ヲ矯メルト共ニ「トラスト」ヲ
取締ル强イ法律ヲ制定セナケレバナラ
又、例ヘバ亞米利加ニ於ケル「シャーマン·
アンチ·トラスト·アクト」トカ、英吉利ノ
「プロフヰチアリング·アクト」ノ如キ法律
ヲ制定スルコトヲ政府ニ要望致ス次第デア
リマス、旣ニ委員會ニ於テ所見ヲ述ベマシ
タガ簡單ニ理由ヲ說明ヲ申上ゲマス、本案
ハ昭和六年ノ法律第四十號トシテ第五十九
議會ヲ通過致シ、同年八月十一日カラ施行
セラレ、本年八月十日ヲ以テ其效力ヲ失フ
ノデアリマス、仍テ政府ハ之ニ改正ヲ加
ヘ、有效期間ヲ五箇年間延長セントシテ、
本案ヲ今議會ニ提出シタノデアリマス、本
案ガ昭和六年初メテ議會ニ提出サレマシタ
時ト、今日ノ我國ノ產業ノ情勢ヲ比較シテ
見マスト、恰モ隔世ノ感ガアルノデアリマ
ス、本案ハ御承知ノヤウニ、我國ノ主要產
業二十四種ヲ指定シテ、其統制ヲ圖ッテ居
リマス、卽チ主要產業ノ生產制限、共同販
賣價格ノ協定等ニ依ッテ統制ヲ實行シテ
居ルノデアリマス、斯クテ昭和六年本法制
定以來ノ我國產業界ノ情勢ヲ觀察スルニ極
メテ顯著ナル發展ヲ致シテ居リマス、當時
本法制定ノ目的タルヤ主トシテ產業界ノ安
定デアリマシタ、一方ニ於テハ世界的不況ニ
因リ、我國ノ產業ハ、非常ニ不況ノ域ニ沈
淪致シマシタ、加フルニ無規律無統制ニシ
テ其結果濫賣ガ行ハレ、隨テ、產業界ハ非
常ナ不安ヲ呈スルニ至リマシタ、飜ッテ昭和
六年本法制定以來ノ成績ヲ見ルニ、我國產
業界ハ顯著ナル發達ヲ致シマシタ、故ニ最
早今日ニ於テハ、此法律ハ當初ノ目的ヲ達
シタルガ故ニ其重要性ヲ失ッタノデアリマ
ス、本法ハ昭和六年八月十日ヲ以テ施行致
サレマシタ、而シテ昭和六年九月ニハ滿洲
事變ガ勃發致シ、我國ノ軍需工業ハ全盛時
代トナリ、我國重工業ハ非常ナル躍進ヲ見
ルニ至リマシタ、下ッテ金解禁ニ伴ヒ、圓價
爲替ノ暴落ヲ來シ、其結果我國ノ製品ガ、
世界ノ市場ニ勇躍シテ參リ、我國產業ハ多
大ナル發展ヲ見ルニ至リマシタ、其結果製
品ノ價格ハ益〓暴騰ヲ來シ、一般消費者ハ此
統制法ノ結果トシテ寧ロ高價ナル製品ヲ買
ハネバナラヌ樣ニナリマシタ、而シテ資本
家ハ利潤ノ增大ニ歡喜シ、國民ハ資本主義
ノ重壓ヲ感ズルニ至リマシタ、卽チ本法ノ
制定ニ依ッテ、資本ノ合同、生產ノ制限、販
賣ノ協定等統制法ノ效果ニ因リ我國重要產
業ハ益〓發展シテ、强力ナル「カルテル」及ビ
「トラスト」ガ出現スルニ至リマシタ、是ヲ
要スルニ今日ニ於テハ本法律ハ制定當初
ノ目的ヲ達成シテ產業界ノ安定ヲ齎スニ至
リマシタ、然ルニ一方ニ於テハ資本主義ノ
弊害トモ稱スベキ「トラスト」ノ橫暴時代ヲ
招來致シマシタ、歐米各國ニ於テハ多年此
弊害ニ苦シンダ經驗ヲ有シテ居リマス、本
法ニ依ッテ「トラスト」ハ强化サレマシタガ、
未ダ之ヲ矯正スベキ法律ガ制定セラレテ居
ラナイ、依ッテ今後ハ此「トラスト」取締法律
ヲ制定スベキコトヲ痛感スル、故ニ本員ハ
片山君ノ本案ニ對スル修正ニ贊成スル次第
デアリマス、併シナガラ我國產業界ノ趨勢
ヲ通觀スレバ、修正案ト雖モ生溫イト謂ッテ
モ宜シイ、故ニ政府ハ更ニ進ンデ「アンチ·
トラスト」法ノ如キ法律ヲ制定シテ「トラ
スト」取締ヲ爲スコトヲ痛感シテ居ル、政
府ハ今囘ノ修正ニ依ッテ、弊害ヲ除去シ得ル
ト主張シテ居ル、卽チ第二條ノ二、三、四、
及ビ第三條四條等ノ改正ニ依ッテ、大資本企
業家ノ橫暴ヲ阻止シ得ルト稱シテ居ル、卽
チ第三條中ニハ、統制委員會ノ議ヲ經テ「當
該產業ニ對シテ公益上必要ナル事項ヲ命ス
ルコトヲ得」トノ條文ガアリマス、此統制
委員ノ數ハ十七名ニシテ、政府ガ是等ノ委
員ヲ任命スルノデアリマス、是等ノ委員ハ
皆學識經驗アル人々デアッテ、國民ノ信賴ヲ
得ル人々ニ相違ナイノデアル、然ルニ其十
七名ノ委員中ニハ、消費者側ノ代表ハ一人モ
入ッテ居ラナイ、而シテ十七名ノ委員ガ如何ニ
學識經驗アル有力者デアラウトモ、政府當局
ガ確乎不拔ノ信念ヲ持ッテ居ラナイナラバ
委員會ガ發動スルコトハ不可能デアル、一例
ヲ以テセバ政府ハ公益事業ヲ統制シ、且ツ
監督セムトシテ、瓦斯事業法、電氣事業法
等ヲ制定シテ居ル、而シテ瓦斯事業法ニセ
ヨ、電氣事業法案ニセヨ結局資本家擁護デ
アーステ、更ニ一般國民及ビ消費者ヲ擁護シ
テ居ラナイ、其一例ヲ申スナラバ此重要
產業統制法ハ昭和六年ニ俵商工大臣ノ時代
ニ議會ヲ通過シテ居ル、然ルニ其當時東京
市民ハ瓦斯料金ノ値下ヲ要求シタ、而シテ
東京市ハ東京瓦斯株式會社トノ間ニ報償契
約ヲ締結シテ居ッタ、所ガ東京瓦斯會社ハ東
京市ノ要求ニ應ジナカッタノデ、遂ニ商工大
臣ノ裁定ヲ仰イダノデアリマス、然ルニ商
工大臣ハ寧ロ之ヲ有耶無耶ニ葬ッテシマツ
ク、商工省ハ東京市民ノ熱烈ナル要望ヲ聽
カナカッタ、斯樣ナ過去ノ經驗ニ鑑ミマシテ
モ、政府當局者ガ常ニ資本家ニ迎合シテ居
ルカヲ知ルコトガ出來マス(拍手)故ニ此十
七名ノ委員ガ如何ニ有力ナル人士デアッテ
モ、政府當局者ガ眞ニ「トラスト」ニ取締ノ
法律ヲ施行スルト云フ、斷乎タル信念ガナ
カッタナラバ、第三條ハ空文化スルコトハ火
ヲ睹ルヨリ明カデアル、本員ハ此點ニ付テ
非常ニ憂慮シテ居ル次第デアリマス、現ニ
本法律施行後五箇年間ニ、統制法下ニ於ケ
ル我國產業ノ狀態ハ如何デアルカ、重要產
業ハ益〓膨脹發展シテ居ル、之ニ反シテ中小
工業者ハ衰頽シ、消費者ハ益〓高價ノ製品ヲ
買ハナケレバナラナイ、農民ハ塗炭ニ苦ミ、
新工業ガ勃興セントシテモ、統制法ガアル
ガ爲ニ、容易ニ發達スルコトガ出來ナイ狀
態デアル、而シテ國民生活ト最モ密接ナル
關係ヲ持ッテ居ル麥酒、製糖、洋紙業、或ハ
統制法下ニ「トラスト」ヲ結成シテ國民生活
ノ發達ヲ阻碍シテ居ル、此法案ガ「トラス
ト」ノ出現ヲ助長シテ居ル、一例ヲ申上ゲ
マセウ、ソレハ卽チ既ニ過日ノ本會議ニ於
テ片山君カラ言ハレタ王子製紙會社ノ例デ
アル、昭和十年ニ我國ニ於テハ十六億封度
ノ洋紙ヲ製產シ居ルガ、而モ全額ノ八割五
分ヲ王子製紙會社ガ製造シテ居ル、而シテ
我國製紙業ノ全資本ノ八割ヲ同社ガ占メテ
居ルコトハ驚クベキ事實デアル、政府ハ此
重要產業統制法ニ依ッテ、斯樣ニ厖大ナル
「トラスト」結成ヲ助長シテ居ル、從ッテ國民
ハ高價ナル紙ヲ使用セネバナラナイ、斯樣
ニシテ農村ノ子弟ハ高イ〓科書ヲ買ハネバ
ナラヌ、一般國民ハ高イ新聞紙ヲ讀マナケ
レバナラナイ、斯ノ如ク獨占的產業ノ橫暴
ニ依リ紙價ノ昂騰ヲ來スコトハ、我國文化
ノ進展ヲ害スルコト夥シイ、「トラスト」ノ
橫暴モ是ヨリ甚シイモノハナイ、昭和六年
本法制定以來、昭和十年春ニ至ル王子製紙
會社ハ二割五分ノ値段ノ〓騰ヲ爲サシメ、
輿論ノ反對ヲ受ケタノデアル、然ルニモ拘
ラズ、政府ハ同會社ニ對シ何等ノ警告ヲモ
與ヘナカッタ、昭和八年ニ唯一囘微溫的警告
ヲ與ヘタニ過ギナカッタ、故ニ私ハ片山君ノ
修正案ニ贊成ノ意ヲ表シ、一般消費者ノ利
益擁護ヲ主張スルノデアル、而シテ更ニ進
シデ此際政府ハ獨占事業ノ橫暴ヲ阻止シ、
ㄱトラスト」ヲ取締ルヤウナ法律ヲ制定サレタ
イ、我國現時ノ狀況ヲ見ルニ悉ク歐米ノ模倣ヲ
爲シ我國各般ノ生活ニ於テモ然リデアッテ、
而モ資本主義ノ發達ニ於テ、最モ甚シイノ
デアリマス、而シテ歐米各國ニ於テハ「トラス
ト」ノ專橫ニ付テ苦ンダ故ニ、此ニ對抗スベキ
幾多ノ法律ヲ制定シテ居ル、故ニ我國ニ於テハ
之ヲ他山ノ石トシテ、歐米ノ法案ヲ〓究應
用スベキデアル、加奈陀ニ於テハ千九百十
年ニ「コンバインス·インヴェスティゲーシ
ヨン·アクト」ナル法律ヲ制定シテ、千九百
二十三年六月十三日之ヲ修正シテ居ル、北
米合衆國ニ於テハ千八百九十年ニ「シヤー
マン·アンチ·トラスト·アクト」ト云フ法案
ガ通過シテ居リ、千九百十二年ニ之ヲ改訂
スル爲ニ「クレートン·アクト」ヲ制定シテ
居ル、更ニ千九百十八年ニハ「ウエッフ·ポメ
レーン·アクト」ヲ制定シテ居リマス、英國
ニ於テハ千九百十八年ニ「トラスト」委員會
ヲ設置シ、千九百十九年ニハ「プロフヰテイ
アリング·アクト」卽チ暴利取締法案ヲ制定
シテ居ル、之ニ依ッテ「トラスト」ノ橫暴、獨
占事業ノ弊害ノ矯正ニ努メテ居ル、故ニ現
行統制法ハ、獨リ資本家依存產業ノミヲ擁
護シ、將ニ勃興セムトスル產業ノ發達ヲ阻
止シ、中小工業者ノ發展ヲ害シテ居ル、故
ニ本員ガ政府ニ要望スルコトハ、我國產業
ノ發展ノ爲メニ重要產業ノ統制ヲ圖ルト同
時ニ、重要產業統制ニ依ッテ來レル弊害除
去ニ努メ、且ツ橫暴ヲ極メントスル我國「ト
ラスト」矯正ノ爲ニ努力セラレンコトヲ希
望シテ已マナイ、其ノ手段トシテハ、先ヅ
以テ「シヤーマン·アンチ·トラスト·アク
ト」ノ如キ法律ヲ制定シテ、獨占的「トラス
ト」ノ橫暴ヲ矯メ、以テ我國產業ノ建全ナ
ル進展ヲ圖ルト共ニ、中小工業者ヲ擁護シ、
且ツ一般消費者ノ利益增通ニ努メラレンコ
トヲ要望スル次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X01219360519&spkNum=16
-
017・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 是ヨリ採決ニ入リ
そう、先ヅ本案ニ對スル片山哲君外三名提
出ノ修正案ニ付キマシテ採決致シマス、片
山君外三名提出ノ修正案ニ贊成ノ諸君ノ起
立ヲ求メマス
〔贊成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X01219360519&spkNum=17
-
018・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 起立少數、仍テ修
正案ハ否決セラレマシタ、本案ノ委員長報
告ハ可決デアリマス、本案ニ付キ採決致シ
マス、本案ニ贊成ノ諸君ノ起立ヲ求ヌマス
〔「贊成」「反對」ト呼フ者アリ〕
〔贊成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X01219360519&spkNum=18
-
019・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 起立多數(拍手)本
案ハ原案ノ通リ決シマシタ、是ニテ本案ノ
第二讀會ハ終了致シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X01219360519&spkNum=19
-
020・松永東
○松永東君 直チニ本案ノ第三讀會ヲ開カ
レンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X01219360519&spkNum=20
-
021・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 松永君ノ動議ニ御
異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X01219360519&spkNum=21
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022・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 御異議ナシト認メ
やっ、仍テ直チニ本案ノ第三讀會ヲ開キ、
議案全部ヲ議題ト致シマス
昭和六年法律第四十號中改正法律案
(重要產業ノ統制ニ關スル件)第三讀會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X01219360519&spkNum=22
-
023・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 別ニ御發議モアリ
マセヌ、本案ハ第二讀會議決ノ通リ可決確
定致シマシタ(拍手)次ニ自動車製造事業法
案ノ審議ニ入リマス、本案ノ第二讀會ヲ開
クニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X01219360519&spkNum=23
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024・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 御異議ナシト認メ
やっ、仍テ本案ノ第二讀會ヲ開クニ決シマ
シタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X01219360519&spkNum=24
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025・松永東
○松永東君 直チニ本案ノ第二讀會ヲ開
キ、第三讀會ヲ省略シテ、委員長報告ノ通
リ可決セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X01219360519&spkNum=25
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026・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 松永君ノ動議ニ御
異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X01219360519&spkNum=26
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027・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 御異議ナシト認メ
マス、仍テ直チニ本案ノ第二讀會ヲ開キ、議
案全部ヲ議題ト致シマス
自動車製造事業法案第二讀會(確定議)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X01219360519&spkNum=27
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028・富田幸次郎
○議長(富田幸次郎君) 別ニ御發議モアリ
マセヌ、第三讀會ヲ省略シテ、委員長報告
通リ可決確定致シマシタ(拍手)日程第一、
農村負債整理組合法中改正法律案ノ第一讀
會ヲ開キマス、田邊農林政務次官ノ登壇ヲ
望ミマス
第.農村負債整理組合法中改正法律
案(政府提出、貴族院送付)第一讀會
農村負債整理組合法中改正法律案
農村負債整理組合法中左ノ通改正ス
第八條第二項及第十六條中「三年間」ヲ
「六年間」ニ改ム
第二十七條中「五年間」ヲ「七年間」ニ、「二
十年」ヲ「二十二年」ニ改ム
附則
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
〔政府委員田邊七六君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X01219360519&spkNum=28
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029・田邊七六
○政府委員(田邊七六君) 只今議題トナリ
マシタ農村負債整理組合法中改正法律案ノ
提出ノ理由ヲ說明致シマス、農村負債整理
組合法ハ、農山漁村ニ於ケル負債ヲ整理ス
ルガ爲ニ、昭和八年ニ制定セラレタモノデ
アリマス、政府ハ其施行以來法律ノ趣旨ノ
徹底ヲ圖リ、農山漁村民ヲシテ本制度ニ依
リ、其負債ヲ整理セシムルコトニ努力シ、
次第ニ其成績ガ擧ッテ來タノデアリマス、然
ルニ負債整理組合ノ設立申請期間ハ、現行
法ニ依リマスト、本年七月末日ヲ以テ終了
スルコトトナッテ居リマスガ、今日ノ農山漁
村ノ實情ニ於テハ、尙ホ整理スベキ多額ノ
負債額ガ存在スル狀態デアリマシテ、今後相
當ノ期間ニ互ッテ負債整理組合ヲ設立セシ
メ、以テ負債整理ノ促進ヲ圖ルコトガ、農
山漁村ノ經濟更生上極メテ緊要ト認ムルモ
ノデアリマス、仍テ農村負債整理組合法ニ
依ル負債整理組合ノ設立申請期間ヲ三箇年
延長シ、之ニ伴ヒ資金融通期間及ビ資金融
通ノ期限ヲ、ソレ〓〓二箇年延長スルコト
ト致シタノデアリマス、以上ハ本案提出理
由ノ要旨デアリマス、何卒御審議ノ上速ニ
御協贊ヲ與ヘラレンコトヲ御願シマス(拍
手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X01219360519&spkNum=29
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030・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 質疑ノ通〓ガアリ
マス、順次ヲ許可致シマス-西川貞一君
〔議長退席、副議長著席〕
〔西川貞一君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X01219360519&spkNum=30
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031・西川貞一
○西川貞一君 本案ハ農漁山村ノ經濟更生
ニ極メテ重大ナ關係ヲ有スルモノデアリマ
ス、而シテ現内閣ハ經濟更生ニハ相當深イ
關心ヲ有セラレ、曩ニ本院ヲ通過シマシタ
追加豫算中ニモ、緊急ヲ要スル施設トシテ、
相當多額ノ特別助成金ヲ計上セラレテ居ル
ノデアリマス、此施設タルヤ、現內閣ガ農
漁山村經濟更生運動ノ重大性ニ鑑ミ、過去
四箇年間ノ實蹟ヲ檢討シ、更ニ指導精神ヲ
刷新シテ、我國農漁山村政策上劃期的ノ施
設ヲ行ハレントスルモノデアルト思フノデ
アリマス、而シテ負債ノ整理タルヤ、農漁
山村經濟更生ニ不可缺ノモノデアリマスカ
ラ、玆ニ特別助成金ノ豫算ニ竝行シテ、負
債整理組合法ノ根本改正ヲ試ミ、今議會ニ
提案サレルコトヲ期待シテ居リマシタルニ、
御提案ノ內容ヲ見マスルニ、唯本年七月ヲ
以テ有效期間ガ滿期トナルノヲ更ニ三年間
延長サレルニ止マリ、內容ニハ全然觸レテ
居ラレナイ、是レ私ノ甚ダ不可解トスル所
デアリマス、私ハ過去數年間、自ラ農漁山
村經濟更生ノ指導ニ當ッテ居ル者デゴザイ
マスガ、其體驗カラ申シマスルニ、實ニ負
債整理ハ經濟更生ノ始メデアリ、且ツ終リ
デアルト信ズルノデアリマス、卽チ農漁山
村民ガ如何ニ努力致シマシテモ、先ヅ高利
舊債ノ重壓ヲ除イテヤラナイト、ドウシテ
モ起上ガルコトガ出來マセヌ、而モ此負債
整理組合法ノ運營宜シキヲ得テ、組合ヲ作
リマスル時ニハ、單ナル負債整理ニ止マラ
ズ、先ヅ精神的ニ一家一族ガ一體トナリ、
自力更生ノ希望ト信念ニ燃エテ起上ガリ、
隣保五ニ團結シテ共勵共助、勤儉力行ノ實
ヲ擧ゲマスルノデ、農村ノ思想風紀ガ全面
的ニ革新サレ、更生ノ要義ガ自ラ整ッテ來
ルノデアリマス、斯ル重大意義ヲ有スル
法律デアリマスカラ、此際過去三箇年間ノ
實蹟ニ鑑ミ、法ノ全般ニ亙ッテ根本的檢討ヲ
加ヘ、改ムベキハ之ヲ改メ、補フベキハ之
ヲ補ヒ、完全ナル改正案ヲ提出セラルベキ
デアルニモ拘ラズ、之ヲ行ハレナイノハ何
故デアルカ(「ヒヤ〓〓」)當局ハ過去三箇年
間ニ於ケル本法運用ノ實蹟ニ照シ、何等ノ缺
陷ハナイト思ハレルノデアリマスカ、先ヅ
之ヲ承リタイノデアリマス、又實施後ニ於
ケル成績ニ當局ハ滿足サレテ居ルノデアル
カ、若シ滿足サレテ居ナイトスレバ、次ノ
通常議會ニ根本的ノ改正案ヲ提出セラレル
ノ用意ガアリマスカ、此點ヲ御伺シタイノ
デアリマス
次ニ大藏大臣ニ御伺シタイノデアリマス、
開會以來屢〓爲サレタ御答辯ニ依リマスルト、
農漁山村民ニ對シテモ、低金利ノ恩惠ニ浴
セシムベク、種々御苦心ノ由デアリマスル
ガ、其具體的ノ方策トシテハ、本法ヲ活用
シテ高利ノ舊債ヲ低利ニ借替ヘシムルコト
ガ一番宜イノデアリマス、而シテ現行制度
ニ於テハ、負債整理組合ニ對シ組合員ノ負
債總額ノ三分ノ一ダケハ、低利資金ヲ融通
サレテ居ルノデアリマスガ、低利ト雖モ尙
ホ四分五厘デアリマス、政府ハ國民ノ勤儉
力行ニ依ッテ蓄積シマシタ所ノ零細ナル資
金ヲ、郵便貯金トシテ三分デ預カリ、之ヲ
融通致シマスルノニ、一分五厘ノ利輔ヲ取
リマシテ、實ニ郵便貯金ノ利率ニ對シテ五
〇%ト云フ利鞘ヲ取ッテ、而モ之ヲ低利ト稱
シテ恩ニ著セ、文句ノ百曼陀羅ヲ竝ベテ居
ルノデアリマス(拍手)是ハ負債ノ重壓ニ苦
ンデ居ル農山村民ノ救濟ヲ目的トスル本法
ノ精神ニ照シテ、餘リニ沒義道ナヤリ方デ
ハアリマセヌカ(拍手)元來斯ル重大ナ事業
デアリマスルカラニハ、政府ヨリ多少ノ利
子ノ補給ガアッテモ宜シイト思フノデアリ
マスルケレドモ、利子ノ補給ハ別問題トシ
マシテモ、セメテ此零細ナル貯蓄ヲ預ッテ居ツ
テ、利鞘ヲ取ルコトダケハ止メテ戴キタイ
ノデアリマス、(拍手)隨テ此融通資金ハ郵
便貯金ノ三分カ、ヤマ〓〓ソコニ何ボカ手
數料ヲ御取リニナルノハ耐ヘルト致シマシ
テモ、三分二三厘程度ニマデ.卽時引下ゲ
ル御意思ハナイカ、下ゲラレヌトスレバ、
其理由ヲ承リタイノデアリマス、本法實施
以來ノ融通額ハ、豫算額ノ十分ノ一ニモ達
シナイヤウニモ聞イテ居リマスガ、政府ハ
モット氣前好ク貸出サレテモ宜イノデハナ
イカ、此資金ハ幾ラ政府ガ貸出サレテモ、
債務者ガ債權者ニ償還致シマスルヤ、軈テ
其金ハ公債ノ消化資金トナリ、又ハ郵便貯
金トナリ、大部分ハ政府ノ資金トシテ歸リ
來ルモノデアリマス、決シテ農民ハ此金ヲ
食フノデハアリマセヌ、隨テ五億圓出サレ
マセウトモ、十億圓出サレマセウトモ、經
濟界ニ惡影響ヲ及ボスモノデハナイト信ズ
ルノデアリマスルガ、之ニ對スル大藏大臣
ノ御所見ハ如何デアリマスカ、此際負債總
額ノ三分ノ一ナドト限定セズニ、整理所要
額ノ全部ヲ貸出サレル御意思ハナイカ、ソ
レガ出來ナイト仰シヤルノデアッタナラバ、
其理由ヲ示シテ戴キタイノデアリマス
次ニ私ハ本法ノ指導精神ニ關シテ注意ヲ
喚起致シタイノデアリマス、此法律ヲ運用
致シテ居リマスル所ノ其指導精神ニハ、重
大ナル二ツノ傾向ガアルト思フノデゴザイ
やく、一ハ卽チ我國傳統ノ全體主義的ノ傾
向デアリマス、詰リ隣保共助ノ美風ニ基キ、
一部落一體トナリ、連帶無限ノ責任ヲ負ヒ
マシテ、互ニ力ヲ貸合ヒ、慈悲ト感恩謝德、
義理ト人情トニ依ッテ、吾等ノ農村ヲ昔ナガ
ラノ麗ハシイ住ミ好イ〓土ニシヨウト云フ
行キ方デアリマス、然ルニ一部ニハ社會主
義的ノ階級對立思想ヲ含ミ、債務者ガ〓體
行動ニ依ッテ債權者ニ條件緩和ヲ强要シ、往
年ノ小作爭議ニ於ケル地主小作ノ對立ガ、
今ヤ債權債務者ノ抗爭ニ轉化シ、借金爭議
ノ修羅場ヲ展開シテ居ルヤウニ聞クノデア
リマスガ、農林當局ハ本法ノ指導精神ヲ一
體那邊ニ置カレテ居ルノデアルカ、御伺致
シタイノデアリマス、全體主義ノ行動精神
ト、社會主義ノ對立思想トハ、斷ジテ調和
ガ出來ナイノデアリマス、而モ我國ノ農村
ハ如何ニ借金ガ減リ、小作料ガ安クナルト
テモ、社會主義的ノ對立思想ニ依ッテハ斷ジ
テ救ハレナイ(拍手)對立思想ノアル所ニハ
平和ガナイ、平和ナキ所ニハ幸福ハナイノデ
アル(拍手)而モ負債整理組合運動ノ指導者ノ
社會主義的對立思想ヲ有シ、若クハソレ
ヲ肚ノ中ニ包藏シ、往年ノ借金棒引論ニ似
タヤウナ根本思想ニ基イテ指導ヲ爲シツヽ
アルモノハナイカ、此點ニ對シマスル當局
ノ御答辯ヲ伺ヒタイノデアリマス、私共ノ
地方デ此組合ガ出來ベクシテ而モ作ルコト
ガ困難ナノハ、此法律ニハ少シ赤イ思想ガ
混在シテ居ルノデハナイカト云フ風ニ、誤
解シテ居ル向キガアル爲デアリマスル、サ
ウシテ法其モノニモ左樣ニ解サレ易イ條項
ガアリマス、卽チ條件緩和ト云フコトガ組
合事業ノ要件トナッテ居ルノデアリマスル
ガ、元來負債整理ハ借リタモノハ返スト云
フ精神ニ基カナクテハ出來ルモノデハナイ
ノデアリマス、而シテ返却スル力アル者ハ
返却シナクチヤナラヌ、ソレハ個々ノ場合
ニ依ッテ決スベキモノデアッテ、之ヲ法ノ要
件トシテ十把一束ゲニ强要スルコトニナリマ
スト、返濟ノ能力ガ十分ニアル者ガ其義務
ヲ免レル、免レテ恥ナシト云フ變ナコトニ
ナルノデアリマス、是ハ債權者ノ方ニ苦情
ガアルノミデナク、債務者トシマシテモ、斯
ノ如キ整理ノ仕方ト云フモノハ、子孫ニ禍
ヲ貽スコトデアルカラ、警戒スベキコトデ
アリマス、是ハ法文ノ末節ノ問題デハナ
ク、其根本的指導精神、否日本國民ノ實
際生活ヲ指導スル重大ナル思想問題デア
リ、道義ノ問題デアリマスルカラ、此點ニ
對スル當局ノ所信ヲ御伺シタイノデアリマ
スル
特ニ私ハ本法ノ執行以來暴露サレマシタ
ル所ノ、我ガ國民ノ道義ノ頽廢ト云フコト
ニ付テ、當局ノ所見ヲ承リタイノデアリマ
ス、此法律ヲ實施致シマシテ、負債整理組
合ヲ作ッテ、當局ニ低利資金ヲ申請シマシテ
モ、中々貸シテ吳レナイ、一年モ一年半モ
掛ラナクテハ金ガ來ナイノデアリマス、何
ガ故ニ左樣ニ金ガ遲レルノデアルカ、本年
ノ一月ニ農村更生協會ガ座談會ヲ開催シマ
シタ席上ニ於テ、大藏當局ノ言明ニ依リマ
スルト、此負債整理組合ト云フモノノ中
ニ、非常ニインチキガ多イト云フノデアリ
そう、詰リ政府ノ低利資金ヲ借込ンデ、ソ
レヲ負債整理ノ目的デナイ他ノ方面ニ運用
シテ利益ヲ貪ル爲ニ、虛僞ノ申請ヲシテカ
ラ、低利資金ヲ胡麻化シテ取ッテ居ルト云フ
ガ如キ事例ガ非常ニ多イト云フノデアリマ
ス、東京預金部支部長ノ根津氏ノ其席上ニ
發表サレタ所ニ依リマスルト、左樣ナ事件
ヲ探ッテ見ルト、次カラ次ヘト出テ來テ、百
數十件ニ自分ノ管內ダケデ及ンデ居ル、其
中ノ例ヲ此處デ一々讀上ゲマスルト、非常
ニ面白イ例ガアルノデアリマスルケレド
モ、是ハ時間ノ關係上申上ゲルコトヲ遠慮
致シマスルガ、併シ斯ノ如ク國民ノ道義ガ
頽廢シテ居リマシテハ、如何ナル救濟政策
ヲ講ジマシテモ、效果ガ擧ルモノデハナイ
ノデアリマス、ソレハ燒石ニ水ヲ掛ケルヤ
ウナコトニナッテ來ルノデアリマス、ドウシ
マシテモ救濟政策ヲ行ウテ行キマスル爲ニ
ハ、國民ノ道義ヲ確立シテ行カナカッタナラ
バ、實際ニ其政策ノ效果ヲ確保スルコトガ
出來ナイ、現内閣ハ道義立國ト云フコトヲ
高調サレテ居リマスルガ、是ハ現下ノ日本
ニ於テ極メテ重大ナ問題デアルト思フノデ
アリマス、而モ今日ノ如ク國民ノ道義ノ頽
廢ヲ見マシタノハ、其來タル所以ガアルノ
デアリマシテ、其所以ヲ突クコトコソ、吾
吾ハ極メテ重大ナ事柄ト思ウテ居リマスル
ケレドモ、此問題ハ此席上ニ於キマシテハ
時間ノ關係モアリマスルノデ、私ハ差控ヘ
テ置キマスガ、此救濟政策ニ必然伴フベキ
國民ノ道義ノ問題ニ付テ、當局ハ何ト考ヘ
ラレテ居ラレマスルカ、此點ダケハ所信ヲ
伺ッテ置キタイノデアリマスル
最後ニ私ハ現內閣ノ全般ノ問題ト致シマ
シテ、過般中外ニ聲明サレタ政綱ノ中ニ
陛下ノ赤子ヲシテ悉ク其堵ニ安ンゼシムル
コトヲ要スト宣言サレテ居ラレルノデアリ
マスル、是ハ洵ニ重大ナル宣言デアリマシ
テ、私ハ此一言ニ依ッテ廣田內閣ニ期待シ、
ソレヲ實行サルヽニ於テハ、私ハ廣田內閣
ヲ絕對的ニ支持シナケレバナラヌト思ッタ
ノデアリマス、然ルニ過日來本院ニ於ケル
先輩各位ノ御質問ニ對スル首相ノ御答辯ニ
依ッテ察スルニ、ドウモ聲明ニハ洵ニ嚴
メシイ重大ナ文字ヲ使用サレテ居ルガ、
具體的ノ方策ハ何モノモナイ、何モノモナ
イト云フコトヲ首相自ラガハッキリト、此壇
上デ言ハレタヤウデアリマス、洵ニ此內閣ハ
聲明滿點デアッテ、實行「ゼロ」デアルト言ハ
ザルヲ得ナイノデアリマスル、然ルニ是ハ
具體的方策ハナイデハ濟ミマセヌ、具體的
方策ハアルノデアル、卽チ普ク國民ヲシテ
其家業家產ヲ失フノ憂ナカラシムルコトデ
アリマス、俸給生活者、勞銀生活者ニ對ス
ル失業ノ防止、其退職後ニ於ケル生活ノ保
障ト、農漁村山民、中小商工業者ニ對シテ
ハ、負債ノ重壓ヲ除キ、破產ノ心配ヲナク
シテヤルコトガ、陛下ノ赤子ヲシテ其堵
ニ安ンゼシメルノ具體的方策デアリマス、
今日農民ガ村ヲ離レテ都會ニ集中スルノ傾
向ガ、農村疲弊ノ原因デアルトテ大ニ憂ヘ
ラレテ居リマスルガ、寧ロソレハ疲弊ノ原
因デハナクシテ、其結果デアリマス、多ク
ノ農民ハ懷シイ〓土ヲ好ンデ離レルノデハ
ナイ、彼達ハ借金ニ追ハレテ出テ行クノデ
アリマス、何等生活ノ當途ノナイ、唯饑餓
ノミガ待ツ都會ニ農民ガ無謀ニモ出テ來ル
ノハ、借金ニ追ハレテ農村ニ居ルコトガ出
來ナイカラデアリマス、吾々ノ地方デハ非
常ニ熱心ニ經濟更正ヲヤッタノデアリマス
ガ、過去四年間ノ實行成績ノ跡ヲ點檢シテ
見マスト、多クノ町村ニ於テ一戶當リ百五
十圓位ノ年收入ヲ增加シ、支出ハ四五十圓
ヲ滅ジ、町內千戶ヲ平均シタ數字ヲ出シテ
見マスト、大體黑字ニナッテ來タノデアリ
マス、然ルニ其內容ヲ點檢シテ見マスルト、
初カラ負債ノナイ、寧ロ貸金ノアル者ハ非
常ニ好クナリ、益〓資產ヲ增大シタノデア
リマスルガ、借金ノ多イ者ハ其利子ニ追ハ
レ、働イテモ働イテモヤッパリ赤字デアル、
吾々ハ有ユル方法手段ヲ盡シテ彼達ヲ發奮
セシメ、努力セシメテ、正ニ人爲ノ最善ヲ致
シテ居ルノデアリマスルガ、而シテ今ハ其
中ニハ何トカナルデアラウト、一縷ノ希望
ヲ以テヤッテ居ルノデアリマスルガ、ドウシ
テモヤレナイ、幾ラ働イテモ、幾ラ節約シ
テモ、高利貸ノ懷ロヲ肥ス外何モノモナイ
ト彼等ガ絕望シタ時ニ、如何ニ恐ルベキ結
果ガ現レルカ、實ニ焦慮セザルヲ得ナイノ
デアリマス、之ヲ救フノ途ハ前ニ申シマシ
タル如ク、本法ヲ根本的ニ改正シテ、高利
債ノ重壓ヲ除去スル外ニハナイ、廣田首相
ハ其政綱ノ中樞トモ申スベキ、萬民保生ノ
具體策トシテノ本法ノ重大性ヲ認識サレテ、
內閣ノ主力ヲ注イデ本問題ノ解決ニ當ラル
ルノ意思アリヤ否ヤ、是ダケヲ御尋シテ他
ハ委員會ニ讓リタイト存ジマス(拍手)
〔國務大臣島田俊雄君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X01219360519&spkNum=31
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032・島田俊雄
○國務大臣(島田俊雄君) 只今西川君ノ御
述ベニナリマシタ事柄ニ付テ御答申上ゲマス、
西川君ノ質問中ニ述ベラレマシタ農村ノ事
情、農村疲弊ノ事情、是等ニ付テハ大體御
述ニナリマシタヤウナ事情デアルト云フコ
トニ、吾々モ承知致シテ居リマス、卽チ此
負債整理組合法ノ制定ハ、全ク其趣意カラ
來ッタノデアリマシテ、其規模ハ御承知ノ如
ク甚ダ小デアリマス、併ナガラ之ヲ實施致
シマシタ成績ニ見マスルト、只今御指摘ニ
ナリマシタヤウナ事情モアリマス、卽チ色
色手續ガ困難デアルトカ、或ハ出來タ組合
ニ色々ノ黴サ害ガアルト云フヤウナコトモ、絕
對ニナイト云フコトハ申上ゲ兼ネルヤウナ
事情デアルト考ヘマスルケレドモ、大體本
法ヲ實施シマシタ三年間ノ成績ニ徵シテ見
マスルト、其初ニ於テハ法ニ對スル習熟ノ
程度ガ徹底ヲ致シマセヌ爲ニ、甚ダ其組合
ノ成立等ハ遲々デアリマシタケレドモ、最
近ノ成績ニ之ヲ見マスルト云フト、頗ル良
好デアリマシテ、組合ノ出來タ地方ニ於キ
マシテハ、是ガ農村更生ノ原動力ニナッテ
居ルト認ムベキヤウナ事情ニ進ンデ來テ居
ルノデアリマス、固ヨリ農村ノ振興救濟ト
云フコトニ付テハ、各種ノ點ヨリ觀ナケレ
バナラヌノデアリマスガ、就中農村ノ負債、
農民自身ノ負債ト云フ事柄ニ付テ、深ク考
ヘナケレバナラヌト云フコトガ、只今ノ我
國ノ農村ノ實情ニ於テ、最モ重大視シナケ
レバナラヌ所デアルト思フノデアリマシテ、
左樣ナ考カラ致シマシテ、本法ニ對シテ其
規模及ビ其方法等ニ付キマシテハ、三年間
實施ノ成績ニ鑑ミマシテ、相當改正ヲ要ス
ル點ガアルト考ヘテ居ルノデアリマス、併
ナガラ此改正ハ如何ナル點ニ、如何ナル程
度ニスルカト云フコトニ付キマシテハ、尙
ホ自分共新任ノ者ト致シマシテハ、檢討ヲ
加ヘ、徹底味ヲ加ヘルベク〓究ヲスルノ必
要ガアルト考ヘマシタノデ、取敢ズ玆ニハ
本法ノ實施ノ期間ヲ延長スルノ點ニ付テダ
ケノ御協賛ヲ仰グ次第デアリマシテ、來ル
七月ニハ本法ノ期限ガ切レルノデアリマス
カラシテ、取敢ズ之ヲ三年間延長スルノ點
ニ付テ改正ヲ致シマシテ、法ノ內容ニ付キ
マシテハ、更ニ十分ノ檢討ヲ加ヘ、卽チ只今
西川君ノ御述べニナリマシタヤウナ點ニ付
キマシテハ、十分參考致シマシテ、法ノ改
正ヲ加ヘマシテ、サウシテ次ノ議會ニ於テ、
之ニ對シテ御協贊ヲ仰グヤウニ致シタイト
云フノデ、其〓究準備ヲ致シテ居ルヤウナ
次第デアリマス、何卒左樣ニ御諒承ヲ願ヒ
タイト思ヒマス(拍手)
〔政府委員中島彌團次君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X01219360519&spkNum=32
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033・中島彌團次
○政府委員(中島彌團次君) 西川君ノ御質
問ニ對シマシテ御答申上ゲマス、西川君ハ
負債整理資金ガ四分五厘デアッテ、零細ナ郵
便貯金、卽チ三分ノモノヲ預ッテ居ッテ、五
〇%ノ利鞘ヲ取ルト云フコトハ不都合デア
ル、之ヲ三分若クハ三分二厘ニ下ゲタラド
ウカト云フ所ノ御質問デアリマシタガ、實
ハ本年五月一日四分五厘ノ利子ヲ三分七厘
ニ下ゲテ、現ニ實行シツヽアルノデアリマ
ス、八厘方下ッテ居ルノデアリマスカラ、之
ヲ三分二厘若クハ三分ニ下ゲルト云フコト
ハ、非常ニ困難デアリマス、何故カト申シ
マスルナラバ、郵便貯金ハ三分デ預ッテ居
リマスルガ、其「コスト」卽チ事務費ヲ入レ
マシタナレバ大體三分三厘ニ當リマスル
ノデ、之ヲ三分二厘若クハ三分三厘ニ下ゲ
ルト云フコトハ、政府ニ於テ損失ヲ蒙ルト
云フコトニナリマス、儲ケル意思ハ固ヨリ
アリマセヌガ、損失シナイヤウニスルト云
フコトノ必要ガアルノデアリマシテ、同時
ニ又一方ニ致シマシテハ積立金ヲモ行ッテ
居リマスノデ、大體三分七厘ガ適當デアル
ト考ヘマス、殊ニ負債整理ノ爲ニ使ッテ居
リマシタ其元ノ借錢ハ、ドレダケノ利子デ
アッタカト申上ゲマスナレバ、農家ノ大體ノ
利子ハ一割以上ノモノガ、半分以上ニナッテ
居ルヤウナ狀況デアリマシテ、之ヲ三分七
厘ニ下ゲルト云フコトハ、大體ニ於キマシ
テ半額以上ノ負擔ノ輕減トナッテ居ルノデ
アリマス、御答辯申上ゲタ次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X01219360519&spkNum=33
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034・西川貞一
○西川貞一君 外ニ道義ノ問題ニ對スル答
辯ハナイノデスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X01219360519&spkNum=34
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035・岡田忠彦
○副議長(岡田忠彥君) アリマセヌ
〔西川貞一君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X01219360519&spkNum=35
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036・西川貞一
○西川貞一君 只今ノ農林大臣ノ御答辯ニ
對シマシテハ、農林大臣ガ在野當時カラ、
此問題ニ付テ熱心ニ御主張ニナッタコトデ
アリマシテ、又新任〓々デアリマスルノデ、
農林大臣ノ御計畫トシマシテ本議會ニ現レ
ナカッタ點ニテ付テハ、了承スルコトガ出來
ルノデアリマス、更ニ今後ニ於テ十分ニ御〓
究下サイマシテ、徹底的ナ改正案ヲ次ノ議
會ニ御提出下サルト云フ意味ニ拜承シマシ
タノデ、私ハ敬意ヲ拂ヒマシテ、其御答辯
ヲ了承致スノデアリマス、又利率ノ引下ノ
件ニ於キマシテモ、大體三分七厘ニナレバ、
政府ノ方ニモ損ガ行カナイ程度デアルト云
フノハ、從前カラ承ッテ居リマシタノデ、此
點モ一應了承致スノデアリマスルガ、負債
總額ノ三分ノ一ト限ッテ居リマスルノヲ整
理所要額ヲ全部御出シニナッテモ決シテ差
支ハアルマイ、此點ニ關スル御答辯ヲ更ニ
御願シタイノデアリマス、又國民道義ノ問
題ニ關シマシテ、本法ノ指導精神等ニ於キ
マシテモ、委員會デ檢討致シタイト思ヒマ
スル、其金額ノ點ニ付テ中島政務次官ハ、
餘程大キナ抱負ヲ持ッテ居ラレマスヤウニ、
昨日來ノ答辯デ承ッテ居リマスノデ、責任ヲ
以テモウ一度其點ヲ明ニシテ戴キタイノデ
アリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X01219360519&spkNum=36
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037・岡田忠彦
○副議長(岡田忠彥君) 政府カラ答辯ハア
リマセヌ、宜シウゴザイマスカ-山崎劔
二君
〔山崎釼二君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X01219360519&spkNum=37
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038・山崎釼二
○山崎釼二君 只今議題ニナッテ居リマス
ル農村負債整理組合法中改正法律案ノ、政
府ノ御提出ニナッタ御趣旨ニ對シマシテ、或
ハソレニ附加致シマシテ、此際御伺シテ見
タイト思ヒマスルガ、先ヅ私達ガ只今ノ當
局ノ御說明中ニ、可ナリ成績ヲ擧ゲタヤウ
ナ點ヲ次官ガ御述ベニナッテ居リマスルガ、
吾々整理者、整理シテ貰フ側ニアル者ト致
シマシテハ、成績ヲ少シモ擧ゲテ居ラヌノ
デアリマス、其成績ヲ擧ゲテ居ラヌト云フ
コトハ、農林大臣モ多少〓究サレテ居リマ
シタシ、只今西川議員カラモ申シテ居ラレ
マシタガ、私達ハ西川議員ト多少其見方ヲ
異ニシテ居ルノデアリマス、其點ハ大體其
原因ヲ四ツニ分ケテ、私達ハ實際上ノ立場
カラ考ヘテ居リマス
第一ハ、大臣モ申サレマシタヤウニ、此
法全體ノ扱ガ非常ニ官僚的デアリ、且ツ手
續ガ煩雜デアリマシテ、農民ノ知識程度ニ
於テハ、全ク合致シナイト云フ點デアリマ
ス、從來ノ農村更生ノ自力的ナ點ニ於キマ
シテハ、御承知ノ如ク無盡其他ニ依ッテ、直
チニ二三ノ有力者ニ賴ミ込メバ、其救濟ガ
爲サレルヤウナ狀態ニナッテ居リマシタガ、
此負債整理組合法ト云フモノハ、有限責任
デアルトカ、保證責任デアルトカ、其他幾
多ノ責任關係モ澤山アリマス、同時ニ扱ガ
非常ニ困難ナ所ヘ持ッテ來テ、之ヲ適當ニ設
立指導スベキ機關ト云フモノガ缺ケテ居ル
ト私ハ考ヘルノデアリマス、ナゼ是ガ缺ケ
テ居ルカト云ヘバ町村單位デ出來ル組織
ニ對シテ、多クハ今マデ町村ノ、町村長ヲ
中心トセル指導者ガ先頭ニ立タナケレバ、
如何ナル組織モ出來ナカッタノデアリマス、
ソレガ此法律ノ含ンデ居ル町村ノ損失補償
ノ負擔四分ノ一ト云フモノガ怖イ爲ニ、ソ
ンナモノニ先立チニナッテ組合ヲ作ッテ、若
シ損害ガ來タ場合ニ於テ、町村長初メ村ノ
有力者階級ガ、多クハ其負擔ヲ脊負ハナケ
レバナラヌ、此最後ニイヤナ點ガアル爲ニ、
町村當局ガ積極的ニ之ニ努力シマセヌ、其
次ニハ縣ノ經濟指導部邊リカラ來ル役人諸
君ハ、机ノ上ニ於テ給料ヲ貰ッテ居ル人達デ
アルカラ、本當ニ百姓ノ肚ノ中ニ入ッテ、借
金デ苦シンデ居ル實情ガ分ラナイ、寧ロ指
導ニ來ル人達ガ農民ニ色々ナ話ヲ聞カサレ
テ、感心シテ歸ッテ行クト云フヤウナ狀態デ
アッテ、到底指導ノ任ガ完ウサレテ居ナイト
云フ點デアリマス、其次ニハ西川議員モ言
ハレマシタガ、設立シテモ其金融ノ額ガ少
イト云フコトト、其金融ノ手ニ入ルト云フ
迄ニ至ル期間ガ非常ニ長イノデアリマス、
早クテ一年、-短クテ一年、長キハ二年
ニ亙ラナケレバ、僅カナガラノ其賴ミニシ
テ居ル融資ガ手ニ入ラヌト云フ狀態ニアッテ
ハ火ノ付イタヤウナ今日ノ農村經濟ノ農
家ノ負債ヲ、眞ニ整理シテヤルト云フ實情
ノ役ニ立タヌノデアリマス
此點ト、モウ一ツハ第四點トシテ、最後ノ
負債整理ノ尻ヲ持ッテ行ク場所デアル所ノ、
金錢債務調停法トノ聯關ニ於テ、農民ノ借
金ガ非常ニ多イ所ノ銀行、或ハ無盡會社、
乃至ハ金融業者、信用組合ト云フ方面、是
等ニ對スル法規ノ强制力ガ全クナイ、ナイ
爲ニ殆ド最後ノドタン場ニ行ッテ、賴リニナ
ラナイト云フ實際上ノ結果ガ、結局負債整
理組合法ガ通リ、其安イ利ノ金ヲ廻シテ貰ッ
テ、高利債ノ借替ヲシテ貰へルト、ホット安
心ガ出來ルト考ヘテ居ッタ、貸シタ者モ借リ
テ居ッタ者モ、可ナリ之ニ希望ヲ繋イデ居ッ
タノデアリマス、農村救濟ノ爲ニ農村匡救
土木事業ト、此負債整理組合法ト、イマ一
ツハ金錢債務調停法ト、此三ツハ農村救濟
ニ對スル當局ノ政策デアッタノデアリマス、
農村救濟土木工事ノ末路ハ御承知ノ通リデ
アリマス、又金錢債務調停法ノ其骨子トス
ベキ、其債務關係ノ相手方デアル大キナ法
人關係ニ殆ド適用サレテ居リマセヌカラ、
無論其結果ハ恩借關係-隣ノ親父サンニ、
ナンボ斯ウ云フ時ニ恩ニナッテ借リタト云
フヤウナ金ヲ、ヤハリマケサセル程度ニ終ツ
テ居ッテ、何等ノ用ヲ爲サナイノデアリマス、
此四ツノ點カラ來ル、此法律ノ殆ド役ニ立
タナイト云フ點ニ對シマシテハ、私ハ此際
寧ロ年限ヲ延長スルダケデナク、當局ノ抱
イテ居リマスル來議會ニ提出サレヨウト云
フ改正ノ四點ニ、斯樣ナ部分ヲ十分ニ御檢
討願ヒタイト思フノデアリマスガ、當局ハ
左樣ナ點ニモ考ガ及ンデ居ルカドウカト云
フ點ヲ、先ヅ第一ニ伺ヒタイノデアリマス
ソレカラ直接此設立及ビ金融關係ニ對ス
ル指導者ト云フモノガ、此組合ニ入ルヤウ
ナ財力ノ乏シイ者デハ、手間暇掛ケテヤッ
テ居ル暇ハアリマセヌ、町村指導者モ今申
上ゲマシタヤウニ、此法ノ適用ニ依ッテ損失
ヲ惧レテ居リマスカラ中々ヤリマセヌ、ド
ウシテモ是ハ縣ニ一人ヤ二人置クト云フヨ
リモ、寧ロ其部落ヲ單位ニシテ組織サレテ
居ル組織デアリマスカラ、ソレニハ當然此
方面ニ明ルイ方面委員的ナ委員ヲ特別ニ設
置シテ、本當ニ農村ノ農家ノ更生ノ爲ニ努
力サレル制度ヲ之ニ加へテ來ナケレバ、實
蹟ヲ擧ゲルコトハ難カシイト思フノデアリ
やく、昔ハ二宮尊德ナリ、或ハ金原明善ト
云フヤウナ、相當農村更生ノ爲ニ努力サレ
タ者ハ、其事業ノ爲ニ自分ノ一身ヲ擧ゲテ、
殆ド獻身的ニ努力シタ結果、一〓ノ幸福モ、
或ハ一國ノ經濟政策ヲモ更生サセル力ガアッ
タノデアリマスガ、今ノヤウニ本當ニ下カ
ラノ、負債者側カラ盛上ッテ行ク要求デモナ
イシ、又政府當局モ之ニ對シテ本腰デナク、
唯斯ウシテヤルカラ助カルノダラウ程度ノ
法律ダケヲ作ッテ、其面倒ヲ見テヤラヌト云
フコトニナリマスルト、丁度腹ノ減ッタ馬
ノ前ニ美味シイ飼料ヲ與ヘテ、厩ニマセヲ
カッテ、殆ド口ノ屆カヌヤウナ狀態ニシテ居
ルノデアリマス、此點ハ天井カラ目藥ヲ差
スト云フコトガアリマスケレドモ、此法律
ノ出來ル政府ノ聲明當時ノ二億圓デアルト
カ、或ハドノ位ノ補償ヲスルト云ッタヤウナ
コトガ、殆ドドノ程度マデ實蹟ヲ擧ゲテ居
ルカト云フコトヲ御伺スル、是デハ二階カ
ラ目藥ドコロデハナイ、二階カラ目藥ノ器
械ダケヲ見セテ、目藥ヲ差シテ吳レナイト
云フ結果ニナッテ居ルト思フノデアリマス
ガ、當局ハ十分ニ所期ノ目的ヲ達シテ居ラ
レルカドウカト云フコトニ付テノ御考ヲ伺
ヒタイノデアリマス、併セマシテ町村ノ負
債ト云フモノヲ、此際思切ッテ免除シテシマ
フ、國庫ノ補償額ヲ增額シテ、町村ニハ殆
ド迷惑ヲ掛ケヌト云フ所マデ踏込ンデ貰ヒ
タイト思フノデアリマスガ、其點ニ對スル
當局ノ御意見ヲ伺ヒタイト思フノデアリマ
ス
ソレカラモウ一ツハ、此法律ノ運用ニ當リ
マシテ、從來政府ガ出サレマシタ所ノ幾多
ノ低利資金關係ガツバニナッテシマッタ、之
ヲ設立シマシテモ、貧弱町村デアルトカ、
或ハ從來低利資金ノ來テ居ル町村ニハ、殆
ド其原因ノ爲ニ恩惠ニ浴セナイ場合ガ、實
際問題トシテアルノデアリマス、殊ニ關東
大震災ノ際ニ、多クノ復興救濟ノ資金ヲ借
リタ地帶ニ於キマシテハ、左樣ナモノノ囘
收關係、或ハ丹後震災ノ復舊資金デアルト
カ、或ハ風害ノ復舊資金デアルトカ云フモ
ノガツバニナッテシマッテ、町村デモ或ハ縣
當局デモ面倒ヲ見テ吳レナイ、此際ニ政府
當局ハ-是ハ大藏當局ニ御伺シタイノデ
アリマスガ、殊ニ關東大震災關係ニ依ッテ出
サレタ所ノ救濟資金ト云フモノハ、思切ッ
テ德政令デモ布イテ棒引ニシテシマフ、斯
樣ナモノハ見舞金トシテ一切片ヲ付ケテシ
P 、其後ノ民間ノ負債整理ノ障碍ニナラ
ヌヤウニシテ貰ヒタイト云フ希望ガ、人民
ノ間ニ勃然トシテアルノデアリマスガ、當
局ハ斯ウ云フ問題ノ扱ヲ如何ニナサルカ、
御伺シテ置キタイト思フ
ソレカラモウ一ツ、是ハ三月二十六日ノ
朝日新聞竝ニ東京日日新聞ノ紙上ニ、政府
當局ノ考トシテ記事ガ掲載サレテアルノデ
アリマスガ、此法規ヲ改正スルニ當ッテ、農
村負債中二十六億圓ヲ占ムル所ノ、土地擔
保ノ負債ヲ中心ニシテ、是ガ整理ヲ爲スト
云フヤウナコトガ新聞ニ載ッテ居ルノデア
リマスガ、土地ヲ持タナイ貧農ノ債務關係
ハ、來議會ニ提出サレヨウト云フ肚ガアル
カモ知レマセヌケレドモ、ソレ等ノ改正要
點ニ於テハ、殆ド貧農ハ見棄テラレル結果
ニナリハセヌカト云フコトヲ、此點デハ非
常ニ憂ヘタノデアリマスガ、左樣ナ御考ガ
アルカナイカ、同時ニ此負債整理ノ指導組
織ノ中心ヲ信用組合、アノ方面ヲ中樞ニシ
テ、是カラ農村ノ負債ヲ整理シテ行カウト
云フ方針ヲ持ッテ居ルノデアリマスカ、ヤハ
リマダバラ〓〓ニソレ等ト切離シテ、負債
整理組合法ト云フモノダケヲ、單ニヤッテ行
カウトスル御考デアリマスカ、其點ヲ指導
精神上カラ見テ一ツ御伺シタイ、今ノ土地
擔保二十六億圓ヲ中心トシテヤルト云フ場
合ニハヤリ方其他ニ依ッテハ宜シウゴザ
イマセウケレドモ、下手ヲスルト地主ノ其
土地ヲ以テ借リテ居ル借金ダケヲ、一
貧農ガ肩替リヲシテ持タセラレル結果ニナ
ル虞ガ多分ニアルノデアリマスルカラ、是
ハ若シ左樣ナコトヲシテモ、ソレヲ團體的
ニ土地管理カ或ハ何カノ方法ヲ以テ、般
ノ貧農ノ負擔トナラナイ、寧ロ救濟ニナル
ヤウナ方面ニ向ケテ行ク積リデアリマスカ、
ドウカ、其點ヲ十分ニ御伺シタイト思ヒマ
ス、若シ足ラザル所ハ他ノ機會ニ讓リマス、
或ハ又第二ノ質問デ御尋シタイト思ヒマス
(國務大臣島田俊雄君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X01219360519&spkNum=38
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039・島田俊雄
○國務大臣(島田俊雄君) 只今山崎君ノ御
述ベニナリマシタ質問ノ點ニ付キマシテハ、
先刻西川君ニ御答致シマシタヤウニ、當局
トシマシテハ、現行負債整理法ガ、其實施
ノ期限ガ旣ニ迫ッテ居リマスノデ、之ヲ取敢
ズ三年間延長致シマシテ、此暮ノ議會マデ
ニ之ニ對スル從來取調ベテ居リマス所ノ改
正ノ點ニ加ヘマシテ、又自分ガ新シクナリ
マシタ當局ト致シマシテ、更ニ自分ノ〓究
モ之ニ加ヘマシテ、サウシテ現行ノ負債整
理ノ事業ノ成績ニ鑑ミテ、之ヲ今少シ徹底
味ノアル、又相當規模ノ廣イモノニシタイ、
斯ウ云フヤウナ考案ヲ持ッテ居リマスノデ、
今囘ノ提案ハ年限ノ延長ト云フコトニ付テ
御諒解ヲ願ヒ、御協贊ヲ得タイノデアリマ
ス、而シテ只今現行ノ負債整理組合ノ成績
ニ於テ、甚ダ其成績ガ擧ラナイ、或ハ手續
ノ煩鎖、指導者ノ無理解、金融ノ額モ少ク、
且ツ其手續ガ非常ニ遲レルト云フヤウナ點
ニ付キマシテハ、御述ベニナリマシタ御意
見等ヲ十分ニ參酌致シマシテ、立案ノ場合
ニ之ヲ考慮致シタイト思フノデアリマス、
尙ホ土地擔保ノコトデアリマスガ、是ハ農
村ノ負債トシマシテ、土地擔保ノ負債ニ付
キマシテハ、無論重大ナ問題デアリマス、
併ナガラ土地擔保ニ依ッテ居ル所ノ負債ノ
問題ト、負債整理組合ニ揭ゲテ救濟セント
シ、整理セントシテ居ル所ノモノトハ、其
間ニハ自ラ區別ヲ置カナケレバナラヌコト
ト考ヘテ居ル次第デアリマス、故ニ土地擔
保ニ關スル問題ヲ考究スルコトニ依ッテ、現
行負債整理法ニ依ッテ救濟サレ、整理サレル
モノニ害ヲ及ボストカ、左樣ナコトハ致シ
タクナイ、又スベキデハナイト考ヘテ居リ
マス、尙ホ此通ス機關ト致シマシテ、信用
組合等ヲ利用シ、若クハ中心トスルカドウ
カト云フ點ニ付キマシテモ、是ハ改正ノ意
味ニ於キマシテハ、ソレ等ノ點ヲ考慮シ、
考究ヲ致シテ居リマス(拍手)是ダケヲ御答
申上ゲテ置キマス
〔政府委員中島彌團次君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X01219360519&spkNum=39
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040・中島彌團次
○政府委員(中島彌團次君) 只今山崎君カ
ラノ御質問ニ對シマシテ御答申上ゲマス、
山崎君ノ御質問ニ依リマスルト云フト、關
東震災ニ關スル所ノ貸付金ニ付テ、德政ヲ
行ッタラ如何デアルカト云フ御話デアリマ
シタガ、大藏當局ト致シマシテモ、此點ニ
付キマシテハ十分ニ心配致シテ居ルノデア
リマス、此貸付金ノ性質ハ大體一一ツニ分レ
テ居ルノデアリマシテ、一ツハ預金部ノ
貸付金デアリマシテ、他ノ一ツハ政府ソレ
自身ノ貸付金デアリマス、預金部カラ貸
付ケテ居ルモノニ付キマシテハ其利率ガ
四分八厘若クハ四分二厘ノモノヲ、三分六
厘ニ非常ナ引下ヲ致シマシテ、更ニ期限ノ
延長ヲ致シマシテ、ソレ〓〓御滿足ノ行ク
ヤウニ心配シテ居ルノデアリマス、モンニ
ツノ政府ノ貸付處理金ニ付キマシテハ
政府貸付金處理委員會ノ議ヲ經マシテ、町
村ニ對スルモノ其他ニ付キマシテモ、年賦
償還ノ期限ノ延長トカ、利率ノ引下トカ、
非常ナル恩典ヲ與ヘテ、特ニ心配シテ居ル
次第デアリマスカラ、之ヲ以テ御答辯ニ代
ヘル次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X01219360519&spkNum=40
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041・山崎釼二
○山崎釼二君 只今ノ農林大臣竝ニ中島氏
カラノ御答辯ノ足リマセヌ所ヲ御伺シタイ
ト思フノデアリマス、是ハ私ハ左樣ナ政府
關係ノ低利資金ト云フモノガ因ニナッテ、殆
ド負債整理關係ノ新シイ低利資金ヲ得ル場
合ニ非常ニ差支ヲ生ジテ來ルシ、同時ニ縣
町村デモ、サウ云フモノガアルト云フト、新
ニ又低利資金ヲ得ル方法ニ付テ耳ヲ藉サナ
イノデアリマス、デアリマスルカラ、其點
ヲドウ扱ハレルノカ、或ハ町村縣等ヲドウ
指導サレルカト云フ點、是ハ私ノ伺ヒ方ガ
惡カッタカモ知レマセヌガ、其點ヲ伺ヒタイ
ノト、モウ一ツハ、是ハ司法當局ガオ居デ
ニナレバ、司法當局カラ御意見ヲ伺ヒタイ
ノデアリマスガ、金錢債務調停法等ノ關係一シテ居リマス、
ニ於キマシテ、從來小作調停法ナドニ於キ
マシテハ、辯護士等ノ代人ヲ殆ド使用サセ
ナイノデアリマスケレドモ、金錢債務調停
法ニ於テハ、辯護士ナドガ介在致シマシテ、
寧ロ貸方ト借方トガ可ナリ圓滿ナル協定ガ
出來ルニモ拘ラズ、其間ニ介在スル辯護
士ガ事件ヲ旨ク解決サセズニ、調停法ノ埒
外ニ引出シテ、訴訟デ片付ケヨウトシテ、
訴訟ヲサセルヤウナコトニナル爲ニ、非常
ニ借方ガ苦勞スル場合ガ多イノデアリマス、
斯樣ナ場合ニ於テハ、絕對ニ辯護士ノ介在
ヲ許サヾル取扱ニシテ戴キタイト思ヒマス
コトト、補償法ガ出來テ居リマス以上、是
ハ銀行或ハ信用組合、無盡業者ナドニ於テ
ハ、此負債整理組合法ノ適用ノ關係ニ對シ
テハ、絕對的ニ適用サセルト云フ、司法的
ナ取扱ヲシテ貰ヒタイト思フノデアリマス
ケレドモ、其點ニ對スル當局ノ御考ハ如何
デアリマスルカ、併セテ伺ッテ置キタイノデ
アリマス
〔國務大臣島田俊雄君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X01219360519&spkNum=41
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042・島田俊雄
○國務大臣(島田俊雄君) 御答致シマス、
私ハ年限ノ延長ノコトニ協贊ヲ得ルコトヲ
重キヲ置キマシク爲ニ、其御答ヲ簡略ニ致シ
タ次第デアリマスガ、只今山崎君ノ御述ベニ
ナリマシタ、現行ノ場合ニ於テ町村經由ヲシ
マスガ爲ニ、御話ノヤウナ弊害、不便ガア
ルト云フコトハ承知シテ居ルノデス、ソレ
故ニ是等ノ點ニ付キマシテ信用組合ヲ利用
シ、若クハ斯ウ云フモノヲ中心トスルカト
云フコトニ對シマシテハ、〓究考慮スルト
云フコトヲ申上ゲタ、デアナタノ御話ニナ
ルヤウナ點ハ皆頭ニ入レテ置キマシテ、私
ハ次ノ改正案ノ時ニハ〓究致シマス、ソレカ
ラ金錢債務調停法等ノ關係ニ付テハ、辯護士
法等ニ亙ル事柄ニ付キマシテハ、是ハ司法
當局ノ御意見モアリマセウガ、只今アナタ
ノ御話ニナルヤウナ點ノアルコトヲ承知政
ソコデ只今自分ガ就任以前
ニ於テ、農林省トシテ當局ガ〓究シテ居リ
マシタ改正案ノ原案ニ付キマシテ、更ニ檢
討ヲ加ヘテ、之ヲモウ少シ徹底スルヤウナ
モノニシタイト云フコトヲ考ヘテ居ルト云
フコトヲ申上ゲタ、其意味ニドウゾ御了承
ヲ願ヒマシテ、只今ノ御意見等ハ皆之ヲ參
考ニ致シテ〓究致シマス、ドウゾ左樣ニ御
諒承ヲ願ヒマス
〔政府委員中島彌團次君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X01219360519&spkNum=42
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043・中島彌團次
○政府委員(中島彌團次君) 山崎君ノ再質
問ノ中デ、大藏省ニ關係スル點ニ付キマシ
テハ、關東震災其他ノ貸付金ヲ拂ハナイ處
ニ對シテハ、低利資金ヲ一切貸サヌト云フ
ヤウナ方法ヲ採ッテ居ルト云フヤウニ仰セ
ラレマシタケレドモ、其方面ニ付キマシテ、
整理ヲシテナイ町村ニ對シマシテハ、低利資
金ノ貸付ヲ一時停止シタコトハアリマシタ
ケレドモ、ソレ〓〓皆整理ノ方法ヲ付ケマ
シテ、利子ノ引下トカ、或ハ期限ノ延長ト
カヲ致サセマシテ、十分整理ガ付キマシテ、
ソレカラ後ハ相當ニ貸スヤウナ方法ヲ執ッ
テ居リマスルカラ、此點ニ付テハ御安心ヲ
ナサッテ戴キタイ次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X01219360519&spkNum=43
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044・岡田忠彦
○副議長(岡田忠彥君) 伊豆富人君
〔伊豆富人君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X01219360519&spkNum=44
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045・伊豆富人
○伊豆富人君 私ハ只今上程サレテ居リマ
スル農村負債整理組合法中改正法律案ニ付
キマシテ、農林大臣竝ニ大藏省政務次官ニ
二三御伺ヲ申上ゲタイト思ヒマス、近來此
農村問題ヲ論ズル者ハ、動モスレバ今日農
山漁村ハ疲弊困憊其極ニ達シテ居ルト云フ
ヤウナコトヲ申スノデアリマス、斯樣ナ形
容詞ガ、農村問題ノ當套語ニナッテ居ルノデ
アリマスルガ、然ラバ農山漁村ノ生活ハ、
果シテ疲弊困憊其極ニアルカト申シマスル
ト、私ハ必シモ總テガ疲弊困憊シテ居ルト
ハ思ハナイノデアリマス(「ノー〓〓」)全國
農村中ニ於キマシテハ、或ハ產業ニ於テ、
或ハ經濟生活ニ於テ、或ハ思想ニ於テ、堅
實ナル農村ガ少クナイノデアリマス、斯ル
堅實ナル農村ハ、疲弊困憊其極ニ達シテ居
ルト云フガ如キ叫ビニ對シテハ、大ナル不
快ヲ感ジテ居ル者ガ少クナイノデアリマス、
無反省ニ誇張シタ形容詞ヲ濫用シテ政治ヲ
論ジ、或ハ農村問題ヲ云々スルコトハ農
村ノ思想、精神ニ好キ影響ハ與ヘナイ、昔
カラ武士ハ食ハネド高楊枝ト云フ諺ガアリ
さく、此諺ハ凡ソ經濟生活ニハ合致シナイ
言葉デアリマスケレドモ、人ト生レテ此位
ノ矜恃ヲ持ッテ居ラナケレバ、經濟生活モ精
神生活モ向上發達スルモノデハナイト思フ
ノデアリマス(拍手)併ナガラ全國多數ノ農
村ガ疲弊シ、沈滯シテ居ルコトハ認メネバ
ナリマセヌ、而シテ農村ノ生活ニ重壓ヲ加
ヘテ居ルモノハ、其一ツガ五十五億ノ巨額
ニ達スル高利ノ負債デアルコトハ申スマデ
モナイ、卽チ農村負債ノ整理ガ農村更生ノ
第一義デアリマス、農村負債整理組合法モ
此時代ノ要求ニ依ッテ生レクノデアリマス
ルガ、昭和八年八月一日實施以來、旣ニ三
年ノ歲月ヲ經過シタニモ拘ラズ、其實蹟ハ
微々トシテ振ハナイ狀態ニアルノデアリマ
ス、是ハ何故デアルカ、農村ノ實情ガ要求
シテ農村負債整理組合法ガ制定サレタ、而
シテ三箇年ノ間實施サレタニモ拘ラズ、未ダ
其實蹟ガ擧ラナイト云フコトニ付キマシテ
ハ、是ハ其法律カ若クハ其法律ノ運用ニ對
シテ、多大ノ缺陷ガアル故デアルト思ハレ
ルノデアリマス(拍手)是ニ於テ私ハ二三ノ
點ニ付キマシテ御尋ヲ申上ゲタイ、今日農
林省ノ調査ニ依リマスルト、農漁山村負債
ノ總額ハ五十四億四千五百万圓ニ達シテ居
リマス、而シテ其利率ハ五分以上一割五分、
中ニハソレ以上ノ高利モアリマスルガ、平
均一割ト見レバ大差ハナイノデアリマス、
之ヲ五百六十万戶ノ農家ニ割當テマスルト、
一戶平均負債ガ九百七十六圓强、利息ハ其
一割ト見テ九十七圓强デアリマス、斯ル多
額ノ負債、高利ノ負債ヲ持ッテ居リマシテハ、
農村ノ更生ハ百年河〓ヲ俟ッテモ其目的ヲ
達スルコトハ來出ナイノデアリマスルカ
ラ、一日モ早ク此農村ノ雙肩ニ負ハサレテ
居ル所ノ負債ヲ除去シテヤルト云フコトガ、
何ヨリモ農林行政ノ急務デアルト思フノデ
アリマス、然ルニ今當初ノ負債整理計畫ト、
今日ノ實蹟トヲ比較致シテ見マスルト、其實
蹟ニハ何等見ルベキモノハナイノデアリマ
ス、當初ノ計畫ハ組合設立豫定市町村ガ六
千デアッタ、而シテ今日實施サレテ居ルモノ
ハ僅ニ一千四百三十ニ過ギナイ、組合豫定
數ハ二万四千デアッタ、而シテ今日實施サレ
テ居ルモノハ三千八百五十五ニ過ギナイノ
デアリマス、又特別融通ノ資金ハ二億圓デ
アリマシタガ、今日實施サレテ居ルノハ三
千五十一万八千三百六圓ニ過ギナイ、卽チ
其成績ハ徵々トシテ振ハナイノデアリマス
ルガ、是ハ先程申上ゲマシタ通リ、法其モ
ノカ、法ノ運用ニ大ナル缺陷ガアルノデア
リマスルカラシテ、ドウシテモ法其モノノ
改正ヲシナケレバ、所謂佛作ッテ魂入レズデ、
成績ハ擧ラナイノデアリマス(拍手)
質問ハ單ニ項目ヲノミ申上ゲマスガ、第一ニ
御尋申シタイコトハ、市町村ガ負債整理組合
ニ對シ特別融通ヲナシタルコトニ依ル損失ハ、
全額國庫ヨリ補償スルコトニシテハ如何ト
云フコトデアリマス、(「贊成」ト呼フ者ア
リ)是ガ質問ノ第一デアリマス(拍手)勿論
只今ノ法律ニ依リマスルト、損失ノ補償ハ
道府縣ガ融通總額ノ十分ノ三以内、而シテ
國ガ其半額、市町村ハ道府縣ノ四分ノ一ニ
ナッテ居リマス、ソレ故ニ此市町村當局者
モ、道府縣當局者モ、損失ヲ負擔シナケレ
バナリマセヌガ故ニ、負債整理組合ノ設立ニ
對シテ積極的ノ熱意ガナイノデアリマス、ソ
レガ此負債整理組合法ガアルニモ拘ラズ、
實蹟ガ振ハナイ所ノ一ツノ原因ヲ成シテ居
リハシナイカト云フコトヲ考ヘルノデアリ
マス、是ガ、市町村及ビ道府縣ニ負擔ヲサ
セナイデ、國家ノミガ總テノ損失ヲ補償ス
ルト云フ英斷ニ出デラルヽ覺悟ガアルカド
ウカト云フコトヲ御尋スル所以デアリマス
第二ハ市町村ガ負債整理組合ニ對シ特別
融通ヲ爲ストキハ、組合役員ノ個人保證ヲ徴
セザルコトニシテハ如何ト云フコトデアリ
マス、其理由ハ市町村ハ特別融通ヲ爲ス場
合ニ於キマシテ、特別ノ必要アル時ハ、負
債整理組合ノ役員ノ個人ノ資格ヲ以テスル
保證書ヲ徵收スルコトヲ得ルコトニナッテ
居ルノデアリマス、實際市町村ガ負債整理
組合ニ特別融通ヲ致シマスルトキハ、其組
合ノ役員ノ保證ヲ要スル、ソレデ其市町村
ノ有力ナル人々ハ、斯ノ如キ保證ヲ爲スコ
トヲ欲シナイ爲ニ、是亦負債整理組合ヲ設
立スルコトニ對シテ、大ナル同情熱意ガナ
イノデアリマスルカラシテ、負債整理組合
ノ役員ガ個人保證ヲスル必要ノナイヤウニ
シテハドウカト云フコトガ、第二ノ御尋デ
アリマス(拍手)
第三ニ御尋致シタイコトハ、負債整理組
合ハ、一定ノ地域內ニ居住スル者ヲ以テ、
之ヲ組織スルコトニナッテ居リマスガ、地域
主義デナク、負債整理ノ必要アル者バカリ
ニ依ッテ組織セシムルコトニシテハドウカ
ト云フコトデアリマス、其第三ノ質問ノ理
由ト致シマシテハ、部落單位ニ負債ノ有ル
者モ無イ者モ、强制的ニ負債整理組合ニ加
入セシメラレルノデアリマス、隨テ負債ヲ
有シナイ者ガ、負債整理組合ニ强制的ニ加
入スルコトハ欲セザル所デアリマス、是ガ
又負債整理組合ガ振ハナイ所ノ一ツノ理由
ニナッテ居リマスルガ、勿論此立法ノ趣旨カ
ラ申シマスルト、所謂隣保共助デアリマシ
テ、負債ヲ有シナイ者モ之ニ加ハッテ、負債
ノ整理ニ協力スルト云フコトガ精神デハア
リマスルケレドモ、併シソレガ爲ニ折角ノ此
負債整理組合ト云フモノガ出來ナイト云フ
コトニナリマスルト、甚ダ遺憾ナル事デア
リマスルカラシテ、此地域主義、一部落ニ
於テ總テノ人々ヲ網羅シテ、强制シテ組合
ヲ組織スルト云フ方針ヲ御改メニナッテ、實
際負債整理ノ必要アル者バカリヲシテ組合
ヲ作ラシムルト云フコトハ、如何デアリマ
スカト云フコトガ第三間ノ理由デアリマス
第四ハ、金利ヲ郵便貯金竝ニ引下ゲラレ
テハ如何ト云フコトデアリマス、現內閣ハ
低金利ノ政策ヲ執ッテ居ラレル、洵ニ結構ナ
ルコトデアリマス、併ナガラ預金部ノ農村
負債整理組合ニ融通セラレル所ノ利率ハ四
分五厘デアル、只今大藏政務次官ハ三分七
厘トカ言ハレタヤウデアリマスルガ、七月
一日カラ三分八厘ニナルヤウニ了解シテ居
リマスルガ、或ハ私ガ間違デアリマスル
カ、御答辯ヲ御願シタイト思フノデアリマ
ス、要スルニ此低金利ノ政策ヲ大衆化スル
爲ニハ、農村ニ對スル負債整理ノ資金ヲ郵
便貯金竝ニ引下ゲラレルコトガ、必要デハ
ナイカト思フノデアリマス
最後ニ私ハ第五ノ質問ト致シマシテ、本
制度ニ依ル特別融通ハ負債金額ノ肩替主義
トシテハドウカト云フコトヲ御尋致シタイ
ノデアリマス、私ハ此第五問デアル此問題
ニ重キヲ置イテ御尋申上ゲルノデアリマ
ス、本法ノ趣旨ヲ讀ミマスルト、特別融通
ノ趣旨ハ負債金額ヲ肩替リスルモノニハ
アラズシテ、負債ノ條件ノ緩和ヲ容易ナラ
シムル爲ニ、其內入金トシテ若干ヲー
千圓以內ヲ融通スルト云フコトニナッテ居
ルノデアリマスルガ、斯ノ如キ姑息ナル手
段デハナクジテ、負債全額ヲ肩替リスルヤ
ウナ、根本的ノ方針ニ出デラレテハ如何ト
云フコトデアリマス、勿論五十五億ニ垂々
トスル所ノ大キナ負債ヲ、國庫ガ肩替リヲ
スルト云フコトニナルト、大ナル資金ヲ要
スルノデアリマスルガ、其中ニハ中產以上
ノ者ハ、其必要ノナイ者ガ澤山アル、自分
自身デ負債整理ノ能力ヲ有スル者ガ澤山ア
リマスルガ、少クトモ中產以下ノ者ノ負債
整理ニ對シマシテハ、全部國家ガ肩替リヲ
スルト云フ、根本的ノ精神ニナラレテハド
ウカト思フノデアリマスルガ、此點ニ對シ
テ農林大臣ノ御所見ヲ御何申上ゲタイト思
フノデアリマス
要スルニ政府ガ損ヲシナイヤウニスル、
損ヲシナイヤウニスルト云フコトハ、此負
債整理組合ガ折角アリナガラ、其機能ヲ發
揮スル能ハザル所以デアル、政府ガ損ヲシ
ナイヤラニスル爲メ、手續ガ先程來申上ゲマ
シタ通リ非常ニ煩瑣デアル、元來行政官ハ
失敗ガナイヤウニ、損失ヲ招カナイヤウニ
スルト云フコトガ行政官ノ長所デアル、併
ナガラ其結果ハ消極的トナリマス、石橋ヲ
叩イテ渡ルト云フ言#禾ガアルガ、石橋ヲ叩
イテ渡ラナイコトガ往々アルノデアリマス、
隨テ行政官ノ爲スコトニ於テハ、消極的ニ
ハ過失ハナイガ、積極的ニハ大ナル功績ヲ
擧ゲルコトガ出來マセヌ、是ハ行政官ノ短
所デアル、幕府時代ノ政治家板倉勝重デア
リマシタカ、或人ガ政治ノ要諦ヲ聽イタ、
勝重ハ政治ノ要諦ハ、重箱ニ詰メタ味噌ヲ
笏子デ掬フヤウニスルコトダト答ヘタサウ
デアル、是ガ政治ノ要諦デアル、然ルニ行
政官ハ斯ルコトハ大禁物トシテ居ル、重箱
ノ隅ヲ楊枝デホジクルヤウニシテ居ルノデ
アリマスガ、是ハ失敗ガ少イ代リニ實蹟ハ
擧ラナイノデアリマス、殊ニ近年ハ法令繁
キコト雨ノ如ク、社會生活モ、經濟生活モ、
政治生活モ非常ニ窮屈ニナッタ、世ノ中ガ複
雜ニナレバ、社會生活ヲ統制スル爲メ、是
ガ基準タル法律ガ必要デアルカラ、法律ノ
統制ノ下ニ社會生活、經濟生活、政治生活
ヲ營ムコトハ、法治國民ノ生活デアリマス、
併ナガラ法律ガ萬能デハ人間生活ハ窮屈デ
アル、所謂天高クシテ鳥ノ飛ブニ任セ、海
濶クシテ魚ノ躍ルニ從フ、デ萬物ヲシテ其
本然ニ從ッテ發達スルニ委セルト云フ理想
〓ニハ行カズトモ、法三章的ニシテ、人間
ノ智能デ作ッタ法律ノミデナク、人間性ノ發
露タル常識ノ働クヤウナ政治ヲ行ッテ戴キ
タイ、庶政一新ヲヤルニハ、古屋ノ修繕デ
ハ一新出來マセヌ、根本的ナ改築ヲヤラナ
クトモ、一部分ヅヽデモ改築シテ行カナケ
レバナラヌ、現內閣ノ指導力タル軍部ノ「イ
デオロギー」ト思ハレマス廣義國防ノ精神
力カラ見テモ、國本培養ノ見地カラ、農村
生活ノ重壓デアル負債ヲ根本的ニ除去スル
ニ付テハ、一大手術ガ必要デアルト思ヒマ
ス、政黨出身デアル農林大臣ハ思切ッテ之
ヲヤッテ戴キタイ、政黨出身ノ政治家モ大臣
ニナレバ、動モスレバ行政官ノ眞似ヲスル、
行政官ニアラズシテ行政事務ニ手ヲ出シ
テ、多少デモ行政ノ運用ヲ妨ゲル-庶政
一新ヲ標榜スル現內閣ノ農林大臣ハ、行政
ニ堕セズ政治ヲヤッテ戴キタイ、二年三年大
臣ヲヤッテモ經綸ヲ行ハナケレバ、徒ニ國運
ノ進步ヲ妨ゲルノミデアリマス、大臣ヲ一
日ヤッテモ大ナル經綸ヲ行ヘバ、其惠澤ハ永
遠ニ殘ルノデアリマス、農林大臣ハ一大英
斷ヲ以テ此農村負債整理ヲ根本的ニ確立サ
レンコトヲ希望スルノデアリマス、要スル
ニ庶政改革ノ大ナル氣魄ヲ以テ、以上私ガ
御尋致シマシタ五箇ノ項目ニ對シテ、一大
英斷ヲヤッテ戴キタイト思フノデアリマス
ガ、之ニ對スル農林大臣ノ御所見ヲ御伺申
上ゲル次第デアリマス
〔國務大臣島田俊雄君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X01219360519&spkNum=45
-
046・島田俊雄
○國務大臣(島田俊雄君) 伊豆君ノ質問ノ
前提トシテ述ベラレマシタ農村更生、農村
救濟、農村振興ノ根本ノ重要問題ガ農村負
債ノ整理ニアルト云フコトハ同感デアリマ
ス、而シテ之ニ關聯シテ、只今各條ニ分ッテ御
尋ニナリマシタ點ニ付キマシテハ、先刻山
崎君竝ニ西川君ノ質問ニ御答申上ゲマシ
タ通リニ、只今御述ベニナリマシタ各項目ノ
陳述中ニ述ベラレタル御意見ヲ、其儘參考
ト致シマシテ、次ノ改正案ノ場合ニ〓究致
シマス、而シテ最後ニ述ベラレマシタ、是
等ノ點ニ付テ庶政一新、此氣持ヲ以テ大イ
ニヤレト云フコトノ激勵ノ御言葉ニ對シテ
ハ敬意ヲ表シマス
〔政府委員中島彌團次君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X01219360519&spkNum=46
-
047・中島彌團次
○政府委員(中島彌團次君) 只今伊豆君ガ
御質問ニナリマシタ點ニ付キマシテ答辯致
シマス、政府ノ方デ貸付整理金ノ損失補償
ニ付テ、金額負擔ヲシタラドウカト云フコ
トデアリマシタガ、現在ノ所府縣ガ四分ノ
一、町村四分ノ一、國ガ二分ノ一ニナッテ居
リマスル、之ヲ全部政府ガ負擔スルト云フ
コトニ付キマシテハ、豫算ニ關係ノアルコ
トデアリマスシ、此處ニ於テ直チニ言明ス
ルコトハ出來ナイノデアリマス、第二ノ其
利息ヲ三分ニ下ゲタラドウカト云フ御質問
デアリマシタガ、御承知ノ通リ郵便貯金ノ
預ッタ利子ハ三分デアリマスルケレドモ、其
ㄱコスト」卽チ事務費等ヲ入レマシタナラバ
三分三厘ニナルノデアリマシテ、之ヲ三分
ニ下ゲルト云フコトハ到底難カシイノデア
リマス、是ハ預金部ノ會計ニ對シテ損失ヲ
與ヘル結果ニナリマスノデ、大體政府ト致
シマシテハ、三分八厘見當ガ適當デアルト
思フノデアリマス、曩ニ私ガ三分七厘ト申
シマシタノハ言ヒ誤リデアリマシテ、四分
五厘ヲ七厘方引下ゲテ三分八厘トナルモノ
デアリマス、此程度ヲ以テ適當ナリト認メ
タ次第デアリマス、ソレカラ政府ガ全體ノ
農村ノ負債ヲ肩替リシタラドウカト云フヤ
ウナ御質問ニ承リマシタガ、是モ亦巨大ナ
ル金額ニ上リマスシ、豫算ニモ重大ナル關
係ガアリマスノデ、此處デ私カラ申上ゲ兼
ネマス、之ヲ以テ答辯ト致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X01219360519&spkNum=47
-
048・岡田忠彦
○副議長(岡田忠彥君) 是ニテ質疑ハ終局
致シマシタ、本案ノ審査ヲ付託スベキ委員
ノ選擧ニ付テ御諮リ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X01219360519&spkNum=48
-
049・松永東
○松永東君 本案ハ政府提出、土地賃貸價
格改訂法案委員ニ併セ付託セラレンコトヲ
望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X01219360519&spkNum=49
-
050・岡田忠彦
○副議長(岡田忠彥君) 松永君ノ動議ニ御
異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X01219360519&spkNum=50
-
051・岡田忠彦
○副議長(岡田忠彥君) 御異議ナシト認メ
やく、仍テ動議ノ如ク決シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X01219360519&spkNum=51
-
052・松永東
○松永東君 議事日程變更ノ緊急動議ヲ提
出致シマス、卽チ此際政府提出、土地賃貸
價格改訂法案、土地賃貸價格改訂法案施行
ニ伴フ耕地整理法ノ特例ニ關スル法律案、
及ビ國稅徵收法中改正法律案ノ三案ヲ一括
議題ト爲シ、委員長ノ報〓ヲ求メ、其審議
ヲ進メラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X01219360519&spkNum=52
-
053・岡田忠彦
○副議長(岡田忠彥君) 松永君ノ動議ニ御
異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X01219360519&spkNum=53
-
054・岡田忠彦
○副議長(岡田忠彥君) 御異議ナシト認メ
やっ、仍テ日程ハ變更セラレマシタ、土地
賃貸價格改訂法案、土地賃貸價格改訂法施
行ニ伴フ耕地整理法ノ特例ニ關スル法律
案國稅徵收法中改正法律案、右三案ヲ一
括シテ第一讀會ノ續ヲ開キマス、委員長ノ
報告ヲ求メマス-委員長八田宗吉君
土地賃貸價格改訂法案(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報告)
土地賃貸價格改訂法施行ニ伴フ耕地整理
法ノ特例ニ關スル法律案(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報告)
國稅徴收法中改正法律案(政府提出、
貴族院送付)第一讀會ノ續(委員長報〓)
報告書
一土地賃貸價格改訂法案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和十一年五月十九日
委員長八田宗吉
衆議院議長富田幸次郞殿
報告書
一土地賃貸價格改訂法施行ニ伴フ耕地整
理法ノ特例ニ關スル法律案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和十一年五月十九日
委員長八田宗吉
衆議院議長富田幸次郎殿
報〓書
一國稅徵收法中改正法律案(政府提出、
貴族院送付)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和十一年五月十九日
委員長八田宗吉
衆議院議長富田幸次郞殿
〔八田宗吉君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X01219360519&spkNum=54
-
055・八田宗吉
○八田宗吉君 土地賃貸價格改訂法案ニ付
テ委員會ノ經過及ビ結果ヲ御報告申上ゲマ
ス、當委員會ハ前後三囘ニ亙リ開會致シ、
其間詳細ナル政府ノ說明及ビ質問應答ガ行
ハレタノデアリマス、其詳細ニ付キマシテ
ハ、速記錄ニ就テ御覧ヲ願フコトトシテ省
略致シ、其中重要ナル事項ニ付キ、是ガ要
領ヲ御報告申上ゲタイト思ヒマス、本案ノ
政府提出ノ理由ヲ簡單ニ申上ゲマスレバ
地租法ニハ、其課稅標準タル賃貸價格ハ十
年每ニ改訂シ、其第一囘ノ改訂ヲ昭和十三
年ニ於テ行フコトニ相成ッテ居ルノデ、昭和
十三年ニ現行ノ賃貸價格ヲ改訂スルノ必要
ガアリ、仍テ本案ヲ提出サレタサウデゴザ
イマス、而シテ其骨子トスル改訂賃貸價格
ノ調査ノ方法ハ、大正十五年ニ於ケル賃貸
價格ノ調査ト同一デ、卽チ昭和十一年四月
一日ニ於テ、各地目每ニ土地ノ情況類似ス
ル區域內ニ於ケル標準賃貸價格ニ依リ、而
シテ其賃貸價格ノ算定ハ、田畑及ビ鹽田ニ
付テハ、昭和十年以前五箇年ノ平均、其他
ノ土地ニ付テハ、昭和十一年四月一日ノ現
在ヲ以テ算定シ、小作米等物納ニ係ル賃貸
料ヲ換算スベキ米穀等ノ價格ニ付テハ、前
五箇年ニ於ケル農家ノ底渡價格ノ平均ニ依
ルト云フコトデアリマス、尙ホ標準賃貸價
格及ビ其適用區域ハ、地租納稅者ノ選擧シ
タル調査委員ノ調査ニ依リ之ヲ決定シ、調
査委員ノ選出ハ原則トシテ市部ハ十人、町
村ハ一人トスル、又改訂賃貸價格ニ依ル新
地租額ガ、現在地租額ノ四倍ヲ超ユル土地
ニ付テハ、其超過額ハ賃貸價格改訂後三年
間免除スルト云フコトデアリマス
次ニ委員會ニ於ケル質問應答ノ主要點ヲ
申上ゲマスレバ、第一ハ改訂賃貸價格ハ適
用米價ノ關係上相當程度ノ減少ヲ來スモノ
ト認メラルヽガ、賃貸價格改訂後ニ於ケル
地租ノ稅率ハ、之ヲ如何ニスルヤトノ質問
ガアリマシタ、之ニ對シ大藏大臣ヨリ、賃
貸價格ノ減少ヲ補フ爲ニ、地租ノ稅率ハ之
ヲ引上グル意思ガナイト云フ言明ガアリマ
シタ、第二ハ、現在土地ト營業、又ハ都市ト農
村トノ間ニ於ケル租稅負擔ガ不均衡デアル
ガ之ヲ是正スル考ハナキヤトノ質問ニ對シ
テハ、政府ハ國及ビ地方ヲ通ジタル稅制整理
ヲ斷行スル意圖アルヲ以テ、其際ニ於テ適
當ニ考慮スルト云フ答辯デアリマシタ、第三
ハ賃貸價格改訂ノ爲ニ減少スベキ見込地租
額如何トノ質問ガアリマシタ、之ニ對シテハ
調査ノ結果ニアラザレバ不明ナルモ、適用米價
ノ點ヨリ見レバ、大體一千万圓內外ノ減收
ヲ豫想サレルト云フコトデアリマシタ、第
四ハ、地租ヲ收益課稅ニスルノ意思ナキヤ
トノ質問ニ對シテハ、地租ヲ收益課稅ニス
ルコトハ、納稅人員及ビ其他ノ點ヨリ困難
ナル旨ノ答辯ガアリマシタ、第五ハ、本稅
ノ減收ニ伴フ地租附加稅ノ減收ニ對スル、
地方財政上ノ方策ニ付キ質問ガアリマシタ
ガ、之ニ付テハ國及ビ地方ヲ通ジタル稅制
整理ノ際、考慮スルト云フ政府ノ答辯デア
リマシタ、右ノ外土地賃貸價格訂訂法案第
四條ノ激增負擔緩和規定ヲ撤廢スルノ意思
ナキヤ、又調査委員ノ選擧ニ付キ、不在地
主ノ爲ニ代理投票ヲ認ムルノ要ナキヤ等ニ
付テ質問ガアリマシタガ、政府ヨリハ何レ
モ困難ナル旨ノ答辯ガアリマシタ、以上ハ
當委員會ノ大體ノ經過デアリマスガ、是ガ
採決ニ當リマシテハ、討論ノ結果ハ、全會
一致ヲ以テ政府案ヲ認メ、可決ト相成ッタ次
第デアリマス、何卒本會ニ於キマシテモ、
委員會決定通リ御贊成アランコトヲ希望シ
マシテ、此委員會ノ報〓ト致シマス
次ニ土地賃貸價格改訂法施行ニ伴フ耕地
整理法ノ特例ニ關スル法律案ニ付テ御報〓
申上ゲマス、本法案ハ土地賃貸價格改訂法
案ト關聯スルモノデアリマス、卽チ耕地整
理施行地ノ賃貸價格及ビ地租ニ付テハ、耕
地整理法中ニ特別ノ規定ガアリマスガ、今
囘土地賃貸價格改訂法ニ依ッテ、賃貸價格ガ
一般的ニ改訂セラレルコトニナリマス爲
ニ、之ニ伴ッテ耕地整理施行地ノ賃貸價格及
ビ地租ニ付キ特例ヲ設クルモノデアリマス、
委員會ニ於テハ、本法案ニ關聯シテ開墾助
成用排水幹線改良ノ問題、及ビ土地區劃
整理地ノ賃貸價格等ニ付テ質疑應答ガアリ
マシタ、其詳細ハ速記錄ニ依ッテ御覽ヲ願ヒ
やく、而シテ採決ノ結果、可決スベキモノ
ト議決致シタ次第デアリマス
次ニ國稅徵收法中改正法律案ニ付キ委員
會ノ經過及ビ結果ヲ御報告申上ゲマス、本
法案ニ付キマシテハ委員會ニ於キマシテ
政府ノ詳細ナル說明及ビ質疑應答ガ行ハレ
タノデアリマスガ、其詳細ハ速記錄ニ依リ
マシテ御覽ヲ願フコトト致シマシテ、主ナ
ル事項ニ付キマシテ其要領ヲ御報告申上ゲ
マス
本案ノ政府提出ノ理由ヲ簡單ニ申上ゲマ
スレバ、現行國稅徵收法ハ國稅徵收ノ費用
トシテ市町村ニ對シ、其徵收金額ノ百分ノ
三ニ相當スル金額、及ビ納稅告知書一通ニ
付キ金二錢ノ割合ヲ以テ計算シタル金額ヲ
交付スルコトニナッテ居リマスガ、斯ク支給
標準率ガ一律ニナッテ居リマス爲メ、之ヲ市
町村ニ區分シテ見マスレバ、大都市ニ於キ
マシテハ交付金ガ著シク徵收費ヲ超過シテ
居ルノデアリマスガ、町村ノ如キハ却ッテ
交付金ヲ以テシテハ、徵收費用ヲ償フコト
ガ出來ナイノデアリマス、尠カラザル不足
額ヲ自ラ負擔セネバナラヌ狀態デアリマス、
斯ノ如キハ交付金制度ノ趣旨ニ反スルモノ
デアリマスカラ、交付金ノ支給標準ヲ改正
致シマシテ、市町村ニ對スル配分ヲ調整セ
ントスルモノデアリマス、本法案ニ依リマ
スレバ交付金ノ支給標準ハ、之ヲ勅令ニ讓
ルコトトナッテ居リマスガ、今政府ノ說明致
シマシタル支給標準ノ大要ヲ申述べマスレ
バ、交付金支給ノ標準ハ從前ノ通リ、徵收
金額ト納稅〓知書ヲ目標ト致シマシテ、徵
收金額ニ對スル分ハ市ニ付テハ人口二百万
以上ノ市ハ千分ノ十、人口百万以上ノ市ハ
千分ノ十五、人口五十万以上ノ市ハ千分ノ
二十、人口二十万以上ノ市ハ千分ノ二十
五、人口二十万未滿ノ市及ビ町村ハ千分ノ
三十、從來ノ通リデアリマス、納稅〓知書
ニ對スル分ハ市ハ二錢、從來ノ町村ガ二錢
ヲ六錢トスルノデアリマス
斯ノ如キ內容ヲ持ッテ居リマス本法案ニ對
シマシテ、本法ガ成立後ニ於テ市町村財政
殊ニ大都市竝ニ町村ニ及ボス影響竝ニ改正
後ノ交付金額ノ增減見込其他ニ付テ、質疑
應答ガ重ネラレタノデアリマス、以上ハ當
委員會ノ大體ノ經過デアリマス
顧ミマスレバ本案ハ本員ガ建議案トシテ
大正十五年二月、五十一回帝國議會ニ提案
致シマシタケレドモ審議未了ト相成リ、
翌昭和二年二月、第五十二囘帝國議會ニ建
議案トシテ提出シ、其贊成議員ニハ實ニ高
橋是〓翁ガ衆議院議員トシテ、菅原傳君等
ト連名列記セラレテ居リマシテ、議會ハ滿
場一致此建議案ヲ可決致シマシタガ、爾來
十年、漸ク本議會ニ法律案トシテ提案セラ
v、本員ガ自ラ其委員長トシテ報告スルノ
光榮ヲ擔フ次第デアリマシテ、私ハ茲ニ深
ク故高橋是〓翁ヲ想フノデアリマス、翁ガ
齋藤內閣當時ノ大藏大臣トシテ、本員ガ豫
算委員會ニ於テ此案ニ對スル質問ヲ致シマ
シタ所、大イニ贊意ヲ表サレ、昨年ハ遂ニ
岡田內閣ノ大藏大臣トシテ此案ノ立案ヲ致
サレ、今囘ノ廣田內閣ニ至ッテ遂ニ此提案ト
ナッタ次第デアリマシテ、本員ハ如何ニ故
高橋是〓翁ガ地方自治ノ發達ノ爲メ、財源
涵養ニ力ヲ致サレマシタカヲ追懷シテ、今
更感激繼々ノ情ニ堪ヘナイノデアリマス(拍
手)
是ガ採決ニ當リマシテハ討論ノ結果ハ全
會一致ヲ以テ政府案ヲ認メ、可決ト相成ッタ
次第デアリマス、何卒本會ニ於キマシテモ
委員會決定通リ、御贊成アランコトヲ希望
致シマシテ此委員會ノ報告ト致シマス(拍
手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X01219360519&spkNum=55
-
056・岡田忠彦
○副議長(岡田忠彥君) 三案ノ第二讀會ヲ
開クニ御異議アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X01219360519&spkNum=56
-
057・岡田忠彦
○副議長(岡田忠彥君) 御異議ナイト認メ
やで、仍テ三案ノ第一一讀會ヲ開クコトニ決
シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X01219360519&spkNum=57
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058・松永東
○松永東君 直チニ三案ノ第二讀會ヲ開キ
第三讀會ヲ省略シテ、委員長報告ノ通リ可
決セラレンコトヲ望ミマス
〔「贊成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X01219360519&spkNum=58
-
059・岡田忠彦
○副議長(岡田忠彥君) 松永君ノ動議ニ御
異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X01219360519&spkNum=59
-
060・岡田忠彦
○副議長(岡田忠彥君) 御異議ナシト認メ
マス、仍テ直チニ三案ノ第二讀會ヲ開キ、
議案全部ヲ議題ト致シマス
土地賃貸價格改訂法案
第二讀會(確定議)
土地賃貸價格改訂法施行ニ伴フ耕地整
理法ノ特例ニ關スル法律案
第二讀會(確定議)
國稅徵收法中改正法律案
第二讀會(確定議)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X01219360519&spkNum=60
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061・岡田忠彦
○副議長(岡田忠彥君) 別ニ御發議モアリ
マセヌ、第三讀會ヲ省略シテ三案トモ委員
長報告通リ可決確定致シマシタ(拍手)日程
第二航空法中改正法律案ノ第一讀會ヲ開キ
マス-遞信大臣賴母木桂吉君
第二航空法中改正法律案(政府提出、
貴族院送付)第一讀會
航空法中改正法律案
航空法中左ノ通改正ス
第一條本法ニ於テ航空機トハ人ノ搭乘
シ得ル飛行機、航空船、氣球、滑空機
其ノ他航空ノ用ニ供スル機器ヲ謂フ
本法ニ於テ航空ニハ陸上又ハ水上ノ滑
走ヲ、離陸又ハ著陸ニハ離水又ハ著水
ヲ包含ス
第三條ニ左ノ一項ヲ加フ
勅令ヲ以テ指定スル航空機ニ付テハ第
二章乃至第四章ニ規定スル事項ニ關シ
命令ヲ以テ別段ノ規定ヲ爲スコトヲ得
第十七條中「技倆證明書及」ヲ削ル
第二十三條ノ二行政官廳ハ航空ノ安全
保持ノ爲公共ノ用ニ供スル飛行場又ハ
公示セラレタル飛行場豫定地ノ境界ヨ
リ外方千「メートル」ノ區域內ニ於テ特
別地域ヲ指定スルコトヲ得
前項ノ特別地域內ニ於テ工作物、船舶、
竹木其ノ他ノ物件ヲ設置、定繫又ハ植
栽セムトスル者ハ該物件カ其ノ存スル
地點ヨリ最短距離ニ在ル飛行場ノ境界地
點ヲ基準トスル水平面上左ノ各號ノ高
サヲ超ユル場合ニ於テハ行政官廳ノ許
可ヲ受クヘシ但シ一「メートル」ヲ超エ
サル農作物ニ付テハ此ノ限ニ在ラス
一飛行場ノ境界ヨリ外方五百「メー
トル」ノ區域內ニ在リテハ物件ノ存
スル地點ト其ノ地點ヨリ最短距離ニ
在ル飛行場ノ境界地點トノ水平距離
ノ三十分ノ一ノ高サ
二前號ノ區域ノ外方ノ特別地域内ニ
在リテハ物件ノ存スル地點ト其ノ地
點ヨリ最短距離ニ在ル前號ノ區域ノ
外方境界地點トノ水平距離ノ二十分
ノ一ニ十七「メートル」ヲ加ヘタル高
サ
第二十三條ノ三行政官廳ハ前條ノ規定
ニ違反シテ設置、定繫又ハ植栽シタル
工作物、船舶、竹木其ノ他ノ物件ニ付
其ノ所有者又ハ之ニ代リ其ノ行爲ヲ爲
ス權限ヲ有スル者ニ對シ期限ヲ定メ前
條第二項ニ規定スル高サヲ超ユル部分
ノ除去其ノ他必要ナル措置ヲ命スルコ
トヲ得竹木ニシテ、前條第二項ニ規定ス
ル高サヲ超ユルニ至リタルモノニ付亦
同シ
前條第一項ノ規定ニ依ル特別地域指定
ノ場合ニ於テ現ニ存スル物件カ前條第
二項ニ規定スル高サヲ超ユルトキハ行
政官廳ハ其ノ所有者又ハ之ニ代リ其ノ
行爲ヲ爲ス權限ヲ有スル者ニ對シ期限
ヲ定メ其ノ高サヲ超ユル部分ノ除去其
ノ他必要ナル措置ヲ命スルコトヲ得
第二十五條第一項ヲ左ノ如ク改ム
第二十三條ノ三第二項ノ規定ニ依ル行
政官廳ノ命令ニ基ク措置又ハ前條ノ規
定ニ依ル立入、除去若ハ使用ニ因リ生
シタル損害ハ飛行場ノ經營者之ヲ補償
スヘシ第二十三條ノ二第一項ノ規定ニ
依ル特別地域ノ指定アリタルカ爲既ニ
著手シタル工作物其ノ他ノ設備ヲ廢止
シ又ハ變更スルノ已ムナキニ至リタル
ニ因リ生シタル損害ニ付亦同シ
第二十六條ニ第一項トシテ左ノ一項ヲ加
フ
第二十三條ノ二、第二十三條ノ三、前
條及第五十九條第一號ノ規定ハ軍用ニ
供スル飛行場又ハ公示セラレタル飛行
場豫定地ニ付特別地域ヲ指定スル場合
ニ之ヲ準用ス
第三十五條中「日本各地ノ間」ノ下ニ「又
ハ日本國外ト日本國內トノ間」ヲ加フ
第三十八條ノ二行政官廳ハ命令ノ定ム
ル所ニ依リ航空ノ安全ヲ害スルノ虞ア
ル航空標識類似ノ燈火ヲ制限又ハ禁止
スルコトヲ得
第五十九條第一號中「第一一十四條第一項」
ヲ「第二十三條ノ三又ハ第二十四條第一
項」ニ改ム
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
〔國務大臣賴母木桂吉君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X01219360519&spkNum=61
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062・頼母木桂吉
○國務大臣(賴母木桂吉君) 航空法中改正
法律案ノ提出ノ理由ヲ說明致シマス、航空
事業ハ經濟上竝ニ國防上極メテ重要ナル使
命ヲ有シテ居リマスノデ、內外ノ時局ニ鑑
ミ、是ガ振興ヲ策スルノ急務ナルコトハ、
玆ニ多言ヲ要セザル所デアリマス、然ルニ
近時都市ノ膨脹發展ニ伴ヒマシテ、飛行場
ノ隣接地ニ建物電柱等ノ工作物ノ建造セラ
ルヽモノガ少クナイノデアリマス、又航空
燈臺類似ノ各種廣〓用燈火ガ濫設セラレマ
ス結果、或ハ航空機ノ離著陸ニ支障ヲ來シ
マシテ、或ハ夜間航空ノ進路ヲ誤ラシムル
等、航空ノ安全ヲ阻碍スル虞ヲ有スル施設
ガ、漸次多キヲ加フルニ至ッタノデアリマ
ス、仍テ速ニ斯ノ如キ施設ニ對シ相當ノ取
締ヲ加ヘ、航空ノ安全ヲ確保致シマスルト
共ニ、近時普及ノ機運ニ向ヒタル所謂「グ
ライダー」等ノ簡易飛行機ノ取扱ヲ規定シ、
其他ノ二三ノ部分的改正ヲ加ヘ、以テ航空
事業ノ健全ナル發達ヲ企圖センガ爲ニ、本
案ヲ提出致シマシタ次第デアリマス、何卒
御審議ノ上御協賛アランコトヲ希望致シマ
ス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X01219360519&spkNum=62
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063・岡田忠彦
○副議長(岡田忠彥君) 本案ノ審査ヲ付託
スベキ委員ノ選擧ニ付テ御諮リ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X01219360519&spkNum=63
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064・松永東
○松永東君 本案ハ政府提出、航路統制法
案ノ委員ニ併セ付託セラレンコトヲ望ミマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X01219360519&spkNum=64
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065・岡田忠彦
○副議長(岡田忠彥君) 松永君ノ動議ニ御
異議アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X01219360519&spkNum=65
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066・岡田忠彦
○副議長(岡田忠彥君) 御異議ナシト認メ
そく、仍テ動議ノ如ク決シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X01219360519&spkNum=66
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067・松永東
○松永東君 議事日程變更ノ緊急動議ヲ提
出致シマス、卽チ此際政府提出、航路統制
法案ヲ議題ト爲シ、委員長ノ報告ヲ求メ、
其審議ヲ進メラレンコトヲ望ミマス
〔「贊成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X01219360519&spkNum=67
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068・岡田忠彦
○副議長(岡田忠彥君) 松永君ノ動議ニ御
異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X01219360519&spkNum=68
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069・岡田忠彦
○副議長(岡田忠彥君) 御異議ナシト認メ
マス、仍テ日程ハ變更セラレマシタ、航路
統制法案ノ第一讀會ノ續ヲ開キマス、委員
長ノ報〓ヲ求メマス-委員長戶澤民十郞
君
航路統制法案(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報〓)
報〓書
一航路統制法案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ別紙ノ通修正スヘキモノ
ト議決致候此段及報告候也
昭和十一年五月十九日
委員長戶澤民十郞
衆議院議長富田幸次郞殿
(小字ハ委員會修正)
航路統制案中左ノ通修正ス
〓第三條及第四條ノ規
第六條行政官廳ハ〓必要アリト認ムル
定ニ依ル措置ヲ爲ス爲
トキハ海運業者ニ對シ其ノ業務及財產
ノ狀況ニ關シ檢査ヲ爲シ又ハ報〓ヲ爲
サシムルコトヲ得
附帶決議
一政府ハ本法施行ニ當リ貿易ノ仲張、
海運ノ發展ヲ阻害セザルヤウ留意スベ
二政府ハ航路補助ノ實績ヲ再檢討シ且
不定期遠洋航路ニ付助成ノ途ヲ考慮ス
ベシ
三政府ハ海事行政ノ統一、海事金融ノ
圓滑ヲ計ル爲適當ノ方策ヲ講ズベシ
〔戶澤民十郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X01219360519&spkNum=69
-
070・戸澤民十郎
○戸澤民十郞君 只今議題トナリマシタ航
路統制法ニ付キマシテ、委員會ノ經過竝ニ
結果ヲ極メテ簡單ニ御報告申上ゲマス、去
ル十三日ヨリ本日ニ至リマスルマデ一週間、
委員諸君ハ非常ナ御精勵ヲ以テ熱心ニ質問
應答ガゴザイマシタ、其要點申上ゲマスト、
各委員ヨリ質問サレタ內容ヲ極メテ取約メ
テ申上ゲマスガ、本法案ハ僅ニ十三條ヨリ
成ル簡單ナ規定デハアリマスガ、極メテ重
要ナル法律デアリマシテ、我國國運ノ仲展ニ
影響スル所重大デアリマスルガ、法案ノ內容ニ
付キマシテハ、極メテ愼重ノ態度ヲ執ッテ是
ガ運用ヲシナケレバナラヌ條項ガ含マレテ
居リマス、之ニ關シテ政府ノ所見ハドウデ
アルカ、殊ニ其實現ノ曉ハ從來多大ノ犠牲
ヲ拂ッテ航路ノ開拓ヲシタ船主ニ對シテ、殘
酷ナ結果ヲ惹起スヤウナ虞ハアリハセヌカ、
換言スレバ本法適用ノ結果、大會社ノ利益
ヲ擁護スルト云フ結果ニナル心配ハアリハ
セヌカ、言葉ヲ換ヘテ申セバ、不定期船主
ニ對シテ殘酷ナ結果トナリ、航路補助ヲ受
ケテ居ル大會社、定期航路船主ニ對シテ是
迄ヨリ以上ノ保護ヲ與ヘルヤウナ結果ニ
ナリハセヌカ、又保護サルベキ船主ニ對
シテ保護ガナク、保護ノ必要ノナイ船主、
大會社ニ對シテ補助ヲシテ居ルト云フヤウナ憾
ハアリハセヌカト云フヤウナ重要ナ質問ガア
リマシタガ、政府ハ之ニ對シマシテハ、大
會社、定期航路船主、補助ヲ受ケテ居ル會
社等ノ爲ニ、其有力ナル大會社ノ擁護ニ堕ス
ルヤウナコトハ斷ジテ致サナイ、殊ニ補助ノ
問題ニ付テハ再檢討ヲ遂ゲテ、來ル次ノ議
會マデニハ愼重ノ熊度ヲ以テ、補助費ノ再
檢討ヲシヨウト云フコトヲ聲明サレマシタ
次ニ本法ニ關スル重大ナル問題トシテハ、
委員側カラノ質問ニ、本法ニハ嚴格ナル制
裁規定、卽チ航路ノ制限禁止等ノ規定ガア
リマスガ、之ニ對スル救濟手段ハ規定ガナ
イヤウデアルガ、其點ハドウデアルカト云
フ大切ナ質問ニ對シマシテ、政府ノ答辯ニ
ハ、全ク其通リ、本法ノ適用ニ依ッテ受ケ
タル制裁ニ對シテハ、救濟手段ハナイノデ
アリマス、併ナガラ此法規ニ對シテハ愼重
ナル態度ヲ執ッテ臨ムノミナラズ、統制委員
會ノ組織ヲ以テ、誤ナキヲ期シヨウト云フ
政府ノ衷情ヲ披瀝サレ、委員各位ハ之ヲ諒
トサレタノデアリマス、其統制委員會ノ組
織ト致シマシテハ、官廳側カラ三名、定期
船主カラ三名、不定期船主カラ三名、船舶
ヲ利用スル方ノ側カラ一名、其他學識經驗
アル人々カラ五名ヲ採用シ、十五名ノ有力
ナル統制委員會ヲ組織シテ、是ガ運用ノ妙
ニ當リマセウ、尙ホ政府ノ附加ヘテ申サル
ル所ニ依レバ、此法律案ハ傳家ノ寶刀デア
ル、一旦事アル時ニ當ッテハ何時デモ拔キ得
ルノ用意ハシテ置クガ、滅多ニ此ノ法規ノ
適用ノナキコトヲ望ム、左樣ナ場合ノナキコ
トヲ切ニ希望シテ居ルモノデアルト申サレ、
更ニ委員ノ質問ト致シマシテ、若シ本法適
用ノ曉ニハ、失業者ヲ生ズルコトガアルガ、
サル場合ニハ政府ハ如何ナル態度ヲ執ルカ
ト云フコトニ付キマシテ、政府ノ答辯ト致
シマシテハ、成ベク本法ヲ適用ノナキコト
ヲ望ムコトハ以上ノ通リデアリマスガ、萬
一之ヲ適用スルヤウナ場合ニ遭遇致シマシ
テモ、極力失業防止ニ努力ヲ致サウト云フ
誠意ヲ披瀝サレマシテ、委員諸君ハ之ヲ諒
トサレタノデアリマス
更ニ重要ナル質問ト致シマシテ、本法制
定ノ必要ハ何處ニアルカ、或ハ特殊ノ事情
ニ迫マラレテ此法規提案ニ至ッタノデハナ
イカ、或ハ日蘭會商ノ圓滿ニ進行スルガ爲
ニ、此法規ヲ定メヨウト云フ趣旨デハナイ
カト云フ質問ガアリマシタガ、政府ノ答辯
ハ差迫ッタ特殊ノ事情アルガ爲ニ本法ヲ制
定スルノデハナイ、本邦海運事業ハ近來非
常ニ發達ヲ遂ゲマシテ、動モスレバ我國ノ
船ガ相互ノ間ニ無謀ナル競爭、不當ナル競
爭ヲ惹起スルノ傾向ナシトハシナイ、是等
不當競爭ヲ避ケテ、我國ノ實力ヲ合セテ更
ニ一段ノ發展ヲ圖ル爲ニハ、今ヤ本法ノ制
定ヲ非常ニ必要ニ思ッテ居ル、併シ本法制定
ノ目的デハナイガ、其副作用トシテ日蘭會
商ヲ好轉セシメ、日蘭會商ノ擁護ニナルト
云フナラバ、是ハ勿怪ノ幸デアルガ、本法
制定ハ日蘭會商ヲ有利ニ導カンガ爲ノ制定
デハアリマセヌト云フコトヲ明言サレマシ
ク、其他幾多ノ質問ガ交サレマシタガ、法
文ノ內容、字句ニ亙リマシテモ、色々質問
應答ガゴザイマシタガ、詳細ナルコトハ諸
君ノ御手許ニ配付サレテ居ル速記錄ヲ御覽
ヲ願ヒタイ
本日午後ニ至リマシテ質問ヲ終了シ、討
論ニ入リマシタ、討論ニ入リマシタ際、政友
會ヲ代表サレマシテ、中井一夫君カラ本法
ノ第六條中「行政官廳ハ」ノ下ニ左ノ十九字
ヲ附加ヘルコトノ修正動議ガ出マシタ、卽
チ「第三條及第四條ノ規定ニ依ル措置ヲ爲
ス爲」ト云フ十九字ヲ、第六條ノ「行政官
廳ハ」ト云フ下ニ挿入スルコトノ修正動議
ガ出マシタ、之ヲ委員會ニ諮リマシク結果、
大多數ヲ以テ成立致シ可決致シマシタ、卽
チ原案及ビ中井君提案ノ修正ヲ加ヘマシテ、
全部大多數ヲ以テ可決致シマシタ、更ニ政
友會ヲ代表シテ、中井君ヨリ附帶決議ヲ申
述ベラレマシタ、今其内容ヲ、議長ノ御許
ヲ得テ朗讀致シマス
附帶決議
一政府ハ本法施行ニ當リ貿易ノ仲張、
海運ノ發展ヲ阻害セザル樣留意スベシ
二政府ハ航路補助ノ實績ヲ再檢討シ且
不定期遠洋航路ニ就キ助成ノ途ヲ考慮
スベシ
三政府ハ海事行政ノ統一、海事金融ノ
圓滑ヲ計ル爲適當ノ方策ヲ講ズベシ
右ノ附帶決議ニ付キマシテ中井君ヨリ熱心
ナル御意見ノ發表ガアリマシタ、其事ヲ申
上ゲテ此點ハ打切リマス、次ハ民政黨ヲ代
表シテ最上政三君ヨリ、今中井君ヨリ申サ
レタル點ハ自分等モ初ヨリ其通リ考ヘテ居ッ
タ次第デアルガ、過日來政府ノ聲明セラレ
ル所ト其內容同一デアルカラ、之ニ贊成ヲ
致ストノ御意見ノ發表ガアリマシタ、次ニ
岡崎委員ヨリ本案ニ贊成ノ意見ノ發表ガア
リ、次ニ小山委員ヨリモ贊成ノ御意見ノ發
表ガアリ(「簡單々々」ト呼フ者アリ)國民同
盟ノ高岡君ハ、委員會ニ於テハ討論ヲ留
保スルトノ御意見ノ發表ガアリマシタ、何
卒委員長報告ノ通リ速ニ可決アランコト
ヲ希望シ、以上ヲ以テ報告ト致シマス(拍
手発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X01219360519&spkNum=70
-
071・岡田忠彦
○副議長(岡田忠彥君) 本案ノ委員長報告
ハ修正デアリマス、仍テ討論ハ便宜上第二
讀會ニ於テ爲スコトト致シマス、本案ノ第
二讀會ヲ開クニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X01219360519&spkNum=71
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072・岡田忠彦
○副議長(岡田忠彥君) 御異議ナシト認メ
マー、仍テ本案ノ第二讀會ヲ開クコトニ決
シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X01219360519&spkNum=72
-
073・松永東
○松永東君 直チニ本案ノ第二讀會ヲ開カ
レンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X01219360519&spkNum=73
-
074・岡田忠彦
○副議長(岡田忠彥君) 松永君ノ只今ノ動
議ニ御異議アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X01219360519&spkNum=74
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075・岡田忠彦
○副議長(岡田忠彥君) 御異議ナシト認メ
やっ、仍テ直チニ本案ノ第二讀會ヲ開キ、
議案全部ヲ議題ト致シマス
航路統制法案第二讀會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X01219360519&spkNum=75
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076・岡田忠彦
○副議長(岡田忠彥君) 討論ニ入リマ
ス-尾崎重美君
〔「贊成カラ先ニヤルノデスカ」「議長、
反對ノ通〓ガアル」其他發言スル者ア
リ
〔尾崎重美君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X01219360519&spkNum=76
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077・尾崎重美
○尾崎重美君 私ハ本案ニ贊成致シマス、
簡單ニ其理由ヲ述ベマス、委員會ニ於キマ
シテハ、非常ニ各委員ガ熱心ニ、三日間ニ
亙リマシテ討議致シマシタガ要スル所、委
員ノ質問ノ重點ハ、現內閣ニ於テ一般海運
政策ニ如何ナル熊度ヲ持タレテ居ルカ、殊
ニ多年一般ノ注目トナリ、社會ノ疑惑ヲ招
イテ居ル所ノ航路補助政策ニ對シテ、現內
閣ハ如何ナル態度ヲ持ッテ居ルカ、此航路補
助政策ハ、本案ニ對シテ如何ナル影響ヲ及
ボスカ、斯ウ云フコトカラ、是ハ社外船ニ
對スル壓迫ノ政策デハナイカ、又多數ノ海
員ニ對シテ此案ガ壓迫ヲ加ヘルノデハナイ
カ、斯ウ云フコトマデ論ゼラレタノデアリ
マス、政府ニ於キマシテハ此航路補助政策
ニ付キマシテハ、再檢討ヲスル必要ガアル
ト云フノデ、遞信大臣ニ於カレテハ、再檢
討ノ必要ヲ言明セラレマシタ、又將來ノ海
運政策ニ付キマシテ、遞信大臣ニ於カレテ
ハ、非常ナル熱意ヲ以テ、發展策ニ付テ大
ナル抱負ヲ有セラレテ居ルト云フコトモ言
明サレマシタ、是等ノ點ニ付テハ吾々ガ問
ハントスル所ヲ既ニ大臣ニ於テ言明サレタ
ノデアリマス、ソレカラ海運ノ金融政策ニ
付キマシテモ、重大ナル問題ノ一ツト致シ
マシテ論議サレマシタガ、之ニ對シマシテ
ハ馬場大藏大臣カラ、此點ニ付テハ豫算ノ
許ス限リ十分ニ〓究ヲシテ、對策ヲ講ズル
ト云フ熱心ナル御答辯ガアリマシタ、ソレ
カラ海軍ト海運トノ關係、是等ニ付キマシ
テモ吾々ノ質問セントスル所ハ、政府當局
ニ於テ十分ニ明確ニ言明サレマシタ、斯ノ
如ク最早吾々ハ此案ガ社外船ヲ壓迫スルト
云フ意圖ニ出デタモノデナイ、又多數ノ海
員ニ壓迫ヲ加ヘル意圖ニ出デタモノデモナ
イ、是ハ現內閣ニ於テ前內閣ノ案ヲ踏襲致
シマシテ、而シテ現下ノ造船界、現下ノ海
運界ニ對シテ必要已ムコトヲ得ナイノデ、
提出サレタト云フコトノ眞意ガ分ッタノデ
アリマス、故ニ吾々ハ無條件ニ贊成スルノ
デハナイ、吾々ノ問ハントスル所、吾々ノ
言ハントスル所ヲ、旣ニ政府ニ於テ言明サ
レマシテ、此點ニ於テ吾々ハ滿足シタノデ
アリマス、簡單ニ贊成ノ理由ヲ申上ゲマ
ス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X01219360519&spkNum=77
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078・岡田忠彦
○副議長(岡田忠彥君) 先程發言者氏名ノ
順序ヲ誤リマシタ、諸君ニ謝シテ置キマ
ス-高岡大輔君
〔高岡大輔君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X01219360519&spkNum=78
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079・高岡大輔
○高岡大輔君 私ハ數箇條ニ亙リ、最モ簡
單ニ反對ノ意思ヲ表示致シマス、抑〓政府
ガヤリ來リマシタ統制ナルモノハ、吾々現
狀打破ノ信條ヲ持ツ人間カラ言ヒマスト
是ハ一ツノ營利統制デアリマシテ、吾等ノ
望ム公益統制デハナイノデアリマス、啓、
テ申シマスナラバ彼ノ「セメント」業ニ於テ
ハ、原價一圓以下ノモノガ市場デハ是ガ數
倍ノ値段ニ賣レテ居ル、卽チ統制ノ名ノ下
ニ大衆ノ搾取ヲ行ッテ居ルト云フノガ、是レ
政府ガ爲シテ居ル統制ノ文字デアルト私
ハ斯樣ニ考ヘマス、此意味カラ申シマシテ
モ、此度ノ航路統制法ハ徒ニ大船舶會社ヲ
益〓惰眠ニ陷ラシムルモノデアリマシテ、決
シテ是ガ海運界ノ隆昌ヲ來スモノデナイト
私ハ考ヘルノデアリマス、海運業ハ未グ飽
和狀態デハアリマセヌ、英國ノ五分ノ一デ
アリ、亞米利加ノ三分ノ一ニシカ過ギナイ
ノデアリマス、斯ウ云フ今日ニ於キマシテ、
益〓我ガ日本帝國ガ海運業ヲ盛ニシナケレ
バナラナイト云フ時ニ、斯ウシタ退嬰主義
ノ統制法案ト云フモノニハ、私ハ反對セザ
ルヲ得ナイノデアリマス
第二ハ、大臣ハ先程ノ本會ニ於キマシテ、
日蘭會商トハ何等關係ナシト仰シヤッテ居
リマスルガ、巷間傳フル所、日蘭會商トハ
關係ガアリマス、併シソレハ姑ク措キマシ
テ、此日蘭會商ノ前ニ於ケル日本船ト蘭領
印度ノ船トノ割合ガ、ドウデアッタカト申シ
マスト、會商前ハ日本船ガ七二%デ、蘭印船
ガ二八%デアリマス、然ルニ會商途中ニ在
リマスル今日デハ、日本ノ船ガ僅ニ二〇%
デ、蘭印船ガ八〇%ニマデ逆轉シテ參ッタ
ノデアリマス、此間隙ガアレバコソ斯ウ
シタ退嬰的ナ考ガアレバコソ、玆ニ進出ス
ル日本ノ船ガ出テ參ルノデアル、之ヲ抑ヘ
ヨウトスル何物ガ玆ニ必要デアラウカト私
ハ疑ハザルヲ得ナイノデアリマス、而モ第
三條ノ第三項ニハ「實情ニ依リ已ムコトヲ
得ズト認ムル場合ヲ除クノ外」トアリマス
ガ、是ハ非常ニ無謀ナモノデアリマシテ、
一囘ノ裁判モ開カズニ、人ノ首ヲチヨン斬ツ
テモ構ハナイト云フ法律ナノデアリマス、
傳家ノ寶刀ハ人ヲ斬ル場合ニハ必ズ鞘ヲ拔
イテ斬ルト申シテハ居ラレマスルガ、此法
文カラ見マスレバ、鞘ノ儘眞向カラ叩キ潰
スモノデアルト私ハ考ヘザルヲ得ナイノデ
アリマス(「ヒヤ〓〓」)
次ニ此統制ニ關シマシテハ航路統制委員
會ニ依ッテ、之ヲ爲シテ行クノデアリマス
ガ、其組織ハ徒ニ社船ト申スカ、政府ガ今
日マデ補助シ來ッタ所ノ所謂大船舶會社ヲ
益〓救ハンガ爲デアル、併ナガラ此委員會ニ
於テ若シ夫レ十四對一ノ否決ニナッタト致
シマシテモ、吾々ハ曾テ滿洲事變ニ依ッテ
國際聯盟ヲ脫退スル時ニ、十三對一デ我等
敗レタリト雖モ、ソレガ卽チ日本ノ現狀カ
ラシテ正シカッタト云フコトヲ、一ツ御記憶
ヲ願ヒタイノデアリマス、蘭印問題ハサウ
シタ意味カラ言ヒマシテ、コンナ統制法ニ
依ッテ處理スベキモノデハナイト思フ
政府ハ今日船舶會社ニ對シテ年額大凡千
五百万圓ノ補助ヲ出シテ居ル、一方ニ於テ
ハ大衆課稅モ取レルト云フ今日ニ於テ、斯
ウシタ船舶會社ニ大金ヲ與ヘテ居ルト云フ
此補助問題ヲ、先ヅ是正シ、再檢討シ再
吟味シ、而モ首相ガ仰セラレル如ク庶政一
新ノ意味ニ於テ、遞相ガ常ニ懷イテ居ラレ
ル大理想ノ下ニ、此意ニ副フベキ大方針ノ
計畫ヲ立テルベキデアル、此計畫ヲ立テル
爲ニハコンナ杜撰ナ法律デナクテ、モウ
一度御考ヘニナリマシテ、次ノ議會ニ堂々
タル我ガ海運業ニ對スル大經綸ヲ含ンダ所
ノ法案ヲ提出サレンコトヲ望ムノデアリマ
ス、私ハ以上簡單ニ述ベマシテ、斯ウシタ
杜撰ナル法案ニ對シテハ贊成出來兼ネル意
思ヲ、玆ニ明白ニスル者デアリマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X01219360519&spkNum=79
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080・岡田忠彦
○副議長(岡田忠彥君) 中井一夫君
〔中井一夫君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X01219360519&spkNum=80
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081・中井一夫
○中井一夫君 私ハ只今委員長ガ御報〓ニ
ナリマシタ通リ、修正ト其決議ヲ附シテ本
案ニ贊成ノ意ヲ表スル者デゴザリマス、我
國ノ現狀ニ於キマシテ、海運ヲ大イニ伸サ
ナケレバナラヌト云フコトハ貿易ノ上カ
ラ言ッテモ、產業ノ上カラ言ッテモ、國防ノ
上カラ言ッテモ、最早論議ノナイ所デアラウ
ト思フノデアリマス、貿易ハ到ル處ニ阻マ
レテハ居リマス、併ナガラ吾々ハ其阻マレ
テ居ル障壁ヲドウシテモ越シテ、一層發展
ヲ期セネバナラヌノデアリマス、海運ノ發
展ガ之ニ伴ハズシテ、ドウシテ貿易ヲ伸ス
コトガ出來ルカ、又國防ノ問題ニ付テ見マ
シテモ、此度ノ議會ニ於テ出サレテ居リマ
スル所ノ國防費ハ、總豫算ノ二分ノ一ニ近
イ、海軍豫算ダケヲ見マシテモ五億ヲ超シ
テ居ルノデアリマス、海軍ガ若シ現役デア
ルトスルナラバ、商船ハ其豫備軍デアリマ
ス、如何ニ現役ノ軍艦ガ威力ガゴザリマシ
テモ、背後ニ之ヲ支フル所ノ海運、商船ト
云フモノノ發達進步ガナケレバ、其國防ハ決
シテ安全タルコトヲ得ヌノデアリマス(拍手)故
ニ吾々ハ統制ドコロデハナク、大イニ海運ハ
仲シテモ伸シテモ尙ホ足ラヌト確信ヲ致シ
テ居ルノデアリマス、現ニ英國ニ於キマシテハ
二千二百万噸ノ商船ヲ持チ、米國ニ於キマ
シテハ一千二百万噸ノ商船ヲ持ッテ居ル、
英國ハ尙ホソレデモ足ラズトシテ、二億圓
ノ大金ヲ投出シテ、或ハ航路ハ補助、或ハ船
質改善ノ補助等、一生懸命ニ海運ノ發展ヲ
企圖致シテ居ルノデアリマス、國防ノ相手
ハ誰デアル、英國デハナイカ、米國デハナ
イカ、其英國ノ現狀ヲ見マシテモ、吾々ハ
今日我ガ政府ガ此仲ビント致シテ居ル所ノ
海運、仲バサネバナラヌ所ノ海運ヲ、其仲
ビントスル勢ヲ抑ヘントスルガ如キ法案ヲ
出サレルト云フコト、洵ニ遺憾千萬ニ存ジ
タノデアリマス、此法案ハ名前ハ統制法ト
申シマス、私共ハ此見地ヨリ致シテ、若シ
眞ニ所謂一般的ノ航路ノ統制ヲ爲サント云
フノデアルナラバ、固ヨリ斷乎トシテ此議
院ヲ通過セシメテハナラヌモノデアッタト
思フノデアリマス、唯併ナガラ此法案ヲ審
議致シマスル場合ニ於テ、政府ハ初メハ何
カト顧ミテ他ヲ言フガ如キ態度ヲ執ッテ居
ラレタノデアリマス、南洋海運ノ問題ニ付
テハ少クトモ之ニ依ッテ年々一億ト云フ大
キナ受取勘定ノ貿易ヲ阻碍セラレルト云フ
コトハ、我國現時ノ貿易ノ上ニ見マシテモ、
容易ナラザル事デアルト云フコトヲ感ジマ
シタルガ故ニ、私共ハ遺憾ナガラ此法案ヲ通
サザルヲ得ヌト考フルニ至ッタモノデアリ
そく、隨ヒマシテ政府ハ此法案ノ通過ニ付
テハ、餘程重大ナル責任ヲ議會竝ニ國民ニ
對シテ有セラレルコトニ相成ッタト云フコ
トヲ自覺セラレナケレバナラヌノデアリマ
ス、卽チ此法案ヲ議會ガ通シマシタ以上ハ、
之ニ依ッテ直チニ南洋海運ニ對シテ一ツノ
方策ヲ講ゼラレルデゴザイマセウ、併ナガ
ラ之ニ依ッテ十分ナル結果ヲ得ルコトガ出
來ナイト云フコトデアルナラバ、洵ニ政府
ハ國家國民ニ對シテ申譯ノナイコトヲセラ
レタト云フ其責ヲ負ハネバナラヌト云フコ
トヲ、御忘レニナッテハナラヌノデアリマス
(拍手)又此法案ニ付キマシテハ、先程來同
僚諸君カラ申サレマシタ通リ、之ヲ若シ濫
用セラレマスルナラバ、洵ニ容易ナラヌ所
ノ事ガ起ル、所謂傳家ノ寶刀ヲ吾々ガ政府
ニ授ケタノデアリマス、之ヲ拔ク場合ト云
フモノニ付テハ、政府ハ萬端ノ注意ヲ拂フ
デナケレバ、拔カレテハナラヌモノデアル
ト云フコトヲ、此際特ニ申述ベテ置カネバ
ナラヌノデアリマス
最後ニ一言此法案ニ基イテ政府ノ中ニ作
ラレル所ノ航路統制委員會ト云フモノニ關
シテ、政府ニ申述ベテ置カナケレバナラヌ
モノガゴザイマス、初ニモ申上ゲマシタ通
リ、海運ト云フモノガ國家國防ノ上ニ重大
ナル關係ノアルコトハ、申述ベル迄モナイ
ノデアリマス、隨テ此法案ヲ運行スルニ付
テ、場合ニ依レバ、船舶ノ運行ヲ停止シテ
其營業ヲ制限スルト云フヤウナ、手嚴シイ
所マデヤリ得ルノデアリマスルガ、ソレニ
ハ航路統制委員會ト云フモノノ決議ヲ經ナ
ケレバナラヌト云フコトニ相成ッテ居ルノ
デアリマス、此委員會ガ其全力ヲ握ッテ居
ル、全權ヲ握ッテ居ル、隨テ此委員會ノ委員
トナリマス者ニハ、必ズヤ軍部、殊ニ海軍省
方面ヨリノ代表者ガ出テ居ルベキモノデア
ルト思フノデアリマス、然ルニ腹案デアル、局長
ノ私案デアルトハ申サレマスルケレドモ、
此吾々ノ委員會ニ於テ政府ヨリ委員ノ組織
權限等ニ付テ御發表ニナリマシタ所ノモノ
ヲ見マスト、官廳側ノ代表トシテハ遞信、
外務、商工各次官之ヲ御出シニナルト云フ
コトデゴザイマスルケレドモ陸軍モ居ナケ
レバ海軍ノ方面カラモ一人モ出テ居ナイ
ト云フヤウナ實情デアッタノデアリマス、吾
吾議員ヨリ是デハ一體海運ト國防トノ關係
ヲ何ト考ヘテ居ルカト政府ニ迫ッタニ依ッテ
初メテ此點ヲ考慮致サウト云フヤウナコト
ヲ、御聲明ニナッタト云フヤウナ實情デゴザ
イマス、私ハ如何ニモ此法案ト云フモノヲ
御出シニナルニ付テ、政府ノ手拔カリト言
フカ、政府ノ國防海運ニ對スル所ノ重要性
ニ關スル認識ノ不足デアルト云フコトニ、
驚カザルヲ得ナカッタヤウナ次第デアリマ
ス、政府ハ此法案通過後ニ於テハ、此委員
ニ付テ是非トモ軍部當局代表者ヲ入レラル
ベキガ當然デアルト信ジマス
更ニ又學識經驗者ト云フ者ノ中ニハ、海
上保險業者、海事金融業者ナドト云フヤウ
ナ金貸、資本家ノ代表者ハ御入レニナッテ
居ルケレドモ、最モ大切ナル海事經驗者、
技術者ナドト云フモノヲ御入レニナッテ居
ナイノデアル、斯ノ如キコトハ洵ニ此海運
ノ會商、此海運問題ヲ審議致シマス上ニ付
テモ甚シキ不都合千萬デアルト私ハ思フノ
デアリマス、政府ハ此委員會ノ構成ニ付キ
マシテハ、此點ニ付テ格別ノ考慮ヲ拂ハナ
ケレバナラヌモノト信ズルノデアリマス
ノミナラズ此委員會ハ多數決ヲ以テ此決
議ヲ決定セラルヽヤニ承ルノデアリマス、
併ナガラ只今申述ベマシタ通リニ、此委員
會ノ決定ニ依ッテハ、一度開イタ其航路ヲ制
限シ、或ハ之ヲ停止ヲ致スト云フヤウナ、
重大ナル事態ヲモ發生ヲ致スノデゴザイマ
スカラ、多數決ナドト云フヤウナ、一人ダ
ケ多ケレバソレデ其決議ガ決マルト云フヤ
ウナコトデハ、本當ノ公平ナル利害ヲ決定
スルコトハ出來ヌト私ハ思フノデアリマス、
假ニモ一旦開イタ航路ヲ制限シ、之ヲ停メ
ルト云フヤウナ、サウ云フコトハ實ニ此海
運界ニ取ッテノ一大事デアリマス、是ガ爲ニ
ハ多クノ船員モ失業ヲ致スヤウナコトニ相
成ルヤウナ結果ヲ見ルノデアリマスカラ、
是ニハ少クトモ三分ノ二以上ノ多數ニ依ラ
ナケレバ、其決定ヲ見ルコトガ出來ナイト
云フヤウナ風ニ、此委員會ノ組織、議事ノ
方法ヲ決定セラルベキモノデアルト信ズル
ノデアリマス
之ヲ要シマスルニ、此法案ハ吾々之ヲ贊
成ハ致シマシタケレドモ、併ナガラ元來ナ
ラバ否決ノ運命ニ遭フベキモノデアッタノ
デアリマス、唯政府ノ言葉ヲ信賴シ、政府
ノ將來ノヤリ方ヲ期待致シマスルガ爲ニ、
之ヲ贊成ヲ致シタト云フヤウナ次第ナノデ
アリマシテ、アノ附帶決議ノ如キモ是ガ爲
ニ之ヲ附シテ、政府將來ノ注意ノ爲ニ置イ
タト云フヤウナ次第ナノデアリマス、願ク
バ政府ニ於カレマシテモ、附帶決議ノ趣旨
ヲ尊重シ、殊ニアノ修正ノ點ノ如キモ特ニ
深ク考慮ヲ拂ハレテ、此法案ヲ施行セラレ
タ後ニ於テ、萬過チナカランコトヲ期セラ
レンコトヲ切望シテ已マヌ次第デアリマス、
之ヲ以テ私ノ贊成ノ意見ノ終リト致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X01219360519&spkNum=81
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082・岡田忠彦
○副議長(岡田忠彥君) 中井君ノ只今ノ御
話ノ中ニ、委員會ニ於ケル祕密會ノ事項ニ
觸レタ點ガアルヤウニ存ゼラレマス、追テ
取調ノ上、若シ是ガアリマシタナラバ速記
錄ヨリ削除致シマス、左樣御承知ヲ願ヒタ
イ-春名成章君
〔春名成章君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X01219360519&spkNum=82
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083・春名成章
○春名成章君 簡單ニ贊成ノ說明ヲ致シタ
イト思ヒマス、本案ノ內容ニ付キマシテハ、
最早明瞭デアリマスルカラ、多クヲ言フノ
必要ハアリマセヌガ、本案ノ眼目トスル所
ハ要スルニ內國ニ於ケル船舶間ノ競爭ニ
費サルヽ力ヲ、外國船トノ競爭ニ振向ケマ
シテ、之ヲ有效適宜ニ使用シテ、我ガ船舶
界ノ隆昌ヲ期シ、之ニ依ッテ以テ產業貿易
ノ伸張ヲ期スルト云フ國策ノ見地ヨリ、是
ハ立案サレタルモノデアリマスルカラ、本
案ニ對シテ反對ヲ爲サル方ハ凡ソアルマ
イト思フ位ナモノデアリマス、唯問題ハ當
局ガ此法ヲ活用スルニ當リマシテ、其用意
ヲ誤ラザランコトヲ要スルノデアリマスル
ガ、此點ニ付キマシテハ、屢、、當局ヨリモ其用
意ノ存スル所ヲ承ッテ居リマスルト同時ニ、
政友會ノ中井君ノ出サレマシタル所ノ附帶
決議モ、此用意ヲ促スモノデアルガ故ニ、
私ハ當局ヲ信賴スルト共ニ、又此用意ニ資
スルガ爲ニ、中井君ノ附帶決議ハ有效ナリ
トシテ、原案竝ニ附帶決議ニ贊成ヲスル者
デアリマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X01219360519&spkNum=83
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084・岡田忠彦
○副議長(岡田忠彥君) 岡崎憲君
〔岡崎憲君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X01219360519&spkNum=84
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085・岡崎憲
○岡崎憲君 私ハ本案ニ贊成スル者デアリ
マスルガ、本案ニ依リマスルト、內國問題
ハ問題ガナイノデアリマスガ、對外的問題
ニ對シマシテハ、大イニ考ヘテ置カナケレ
バナラヌト思フノデアリマス、ソレハ往々
資本家ハ國策ヲ無視シテ、サウシテ自分ノ
利益ニ走ルコトガ多イノデアリマス、此法
案ニ依リマスルト、船主ハ一丸トナッテ外
國ニ當ルト云フ意味デアリマスルカラ、此
點ニ於テ私ハ贊成スル者デアリマス、併シ
如何ナル問題モ勞働問題ト關係ノナイモノ
ハナイノデアリマス、今日世界各國ニ於キ
マシテハ、所謂自由貿易主義カラ保護貿易
主義ニ還ッテ來タノデアリマス、各國ガ國家
主義ヲ加味シマシテ、サウシテ保護政策ニ
得につい所謂補助金政策ニナッテ來タノデア
リマス、サウスルト勞働問題ニ於キマシテ
ハ、益〓保護政策ヲヤルト同時ニ、勞働者
ニ對シマシテモ勞働强化ヲヤルコトニナル
ノデアリマス、ソレハ一例ヲ申上ゲテ見ル
ナラバ、自國船ニハ自國ノ貨物ヲ積メト云
フヤウナコトカラ、如何ニ高クテモ暫クハ
忍ンデヤレ、忍ンデ荷物ヲ積メト云フヤウ
ナコトト同ジヤウニ、ヤハリ勞働者ニ對シ
テハ、正當ナル要求モ暫クハ我慢シテ働ケ
ト云フヤウナコトニナルノデアリマス、又此
法案ガ一旦法律ニナリマシテ、其後ニ適用
サレルコトニナリマスレバ、其航路ガ制限
サレ、或ハ禁止サレルト云フ場合ニ於テハ、
當然ソコニ海員ノ失業者ガ出テ來ルノデア
リマス、併シ當局ニ於キマシテハ、此航路
統制法案ト共ニ、勞働法ノコトモ考ヘテ居
ル、船員法ニ付テノ改正モ今考究中デアル
ト云フコトヲ言ハレテ居リマスルノデ、私
ハ此點ヲ安心ヲ致シテ此案ニ贊成シタ者デ
アリマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X01219360519&spkNum=85
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086・岡田忠彦
○副議長(岡田忠彥君) 是ニテ討論ハ終局
致シマシタ、採決致シマス、本案ノ委員會
修正ニ贊成ノ諸君ノ起立ヲ求メマス
〔贊成者起立〕
(「贊成」「反對」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X01219360519&spkNum=86
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087・岡田忠彦
○副議長(岡田忠彥君) 起立多數、仍テ委
員會ノ修正ハ可決致シマシタ(拍手起ル)其
他ハ原案ニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X01219360519&spkNum=87
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088・岡田忠彦
○副議長(岡田忠彥君) 御異議ナシト認メ
やっ、是ニテ本案ノ第二瀆會ハ終リマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X01219360519&spkNum=88
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089・松永東
○松永東君 直チニ本案ノ第三讀會ヲ開カ
レンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X01219360519&spkNum=89
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090・岡田忠彦
○副議長(岡田忠彥君) 松永君ノ動議ニ御
異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X01219360519&spkNum=90
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091・岡田忠彦
○副議長(岡田忠彥君) 御異議ナシト認メ
マス、仍テ直チニ本案ノ第三讀會ヲ開キ、
議案全部ヲ議題ト致シマス
航路統制法案第三讀會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X01219360519&spkNum=91
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092・岡田忠彦
○副議長(岡田忠彥君) 別ニ御發議モアリ
マセヌ、第二讀會議決ノ通リ確定致シマシ
タ(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X01219360519&spkNum=92
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093・松永東
○松永東君 此際暫時休憩セラレンコトヲ
望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X01219360519&spkNum=93
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094・岡田忠彦
○副議長(岡田忠彥君) 只今ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X01219360519&spkNum=94
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095・岡田忠彦
○副議長(岡田忠彥君) 御異議ナシト認メ
やっ、仍テ暫時休憩致シマス
午後四時五十七分休憩
午後七時八分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X01219360519&spkNum=95
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096・岡田忠彦
○副議長(岡田忠彥君) 休憩前ニ引續キ會
議ヲ開キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X01219360519&spkNum=96
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097・松永東
○松永東君 日程第五及ビ第六ハ後廻シト
セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X01219360519&spkNum=97
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098・岡田忠彦
○副議長(岡田忠彥君) 松永君提出ノ動議
ニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X01219360519&spkNum=98
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099・岡田忠彦
○副議長(岡田忠彥君) 御異議ナシト認メ
やく、仍テ日程第五及ビ第六ハ後廻シト致
シマス、政府ハ之ニ同意シマシタ、日程第
七乃至第九ハ同種議案デアリマスカラ、一
括議題ト爲スニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X01219360519&spkNum=99
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100・岡田忠彦
○副議長(岡田忠彥君) 御異議ナシト認メ
やく、日程第七、大正九年法律第五十六號
中改正法律案、日程第八、大正九年法律第
五十六號中改正法律案、日程第九、大正九
年法律第五十六號中改正法律案、右三案ヲ
一括シテ第一讀會ヲ開キマス、順次提出者
ノ趣旨辯明ヲ許シマス-手代木君
第七大正九年法律第五十六號中改正
法律案(北海道拓殖鐵道補助ニ關ス
ル件)(手代木隆吉君外八名提出)
第一讀會
第八大正九年法律第五十六號中改正
法律案(北海道拓殖鐵道補助ニ關ス
ル件)(井阪豐光君提出)第一讀會
第九大正九年法律第五十六號中改正
法律案(北海道拓殖鐵道補助ニ關ス
ル件)(東武君外四名提出)第一讀會
大正九年法律第五十六號中改正法律案
大正九年法律第五十六號中左ノ通改正ス
同法ニ左ノ一項ヲ加フ
政府ハ必要アリト認ムルトキハ更ニ五年
ヲ限リ前項ノ期間ヲ延長スルコトヲ得但
シ延長期間ニ對スル補助金ハ地方鐵道又
ハ軌道ノ每營業年度ニ於ケル益金カ建設
費ニ對シ年六分ノ割合ニ逹セサルトキ其
ノ不足額ヲ補給スルヲ以テ限度トシ且建
設費ニ對シ年八分ニ相當スル金額ヲ超ユ
ルコトヲ得ス
附則
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス但シ本法
施行前營業開始ノ日ヨリ十五年ヲ經過シ
タルモノニ付テハ營業開始ノ日ヨリ二十
年ニ達スル迄本法施行ノ日ヲ含ム營業年
度分ヨリ之ヲ適用ス
大正九年法律第五十六號中改正法律案
大正九年法律第五十六號中左ノ通改正ス
同法ニ左ノ一項ヲ加フ
政府ハ必要アリト認ムルトキハ更ニ五年
ヲ限リ前項ノ期間ヲ延長スルコトヲ得但
シ延長期間ニ對スル補助金ハ地方鐵道又
ハ軌道ノ每營業年度ニ於ケル益金カ建設
費ニ對シ年六分ノ割合ニ達セサルトキ其
ノ不足額ヲ補給スルヲ以テ限度トシ且建
設費ニ對シ年八分ニ相當スル金額ヲ超ユ
ルコトヲ得ス
附則
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス但シ本法
施行前營業開始ノ日ヨリ十五年ヲ經過シ
タルモノニ付テハ營業開始ノ日ヨリ二十
年ニ達スル迄本法施行ノ日ヲ含ム營業年
度分ヨリ之ヲ適用ス
大正九年法律第五十六號中改正法律案
大正九年法律第五十六號中左ノ通改正
ス
同法ニ左ノ一項ヲ加フ
政府ハ必要アリト認ムルトキハ更ニ五年
ヲ限リ前項ノ期間ヲ延長スルコトヲ得但
シ延長期間ニ對スル補助金ハ地方鐵道又
ハ軌道ノ每營業年度ニ於ケル益金カ建設
費ニ對シ年六分ノ割合ニ達セサルトキ其
ノ不足額ヲ補給スルヲ以テ限度トシ且建
設費ニ對シ年八分ニ相當スル金額ヲ超ユ
ルコトヲ得ス
附則
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス但シ本法
施行前營業開始ノ日ヨリ十五年ヲ經過シ
タルモノニ付テハ營業開始ノ日ヨリ二十
年ニ達スル迄本法施行ノ日ヲ含ム營業年
度分ヨリ之ヲ適用ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X01219360519&spkNum=100
-
101・手代木隆吉
○手代木隆吉君 簡單デアリマスカラ、自席
ヨリ發言スルコトノ御許シヲ得タイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X01219360519&spkNum=101
-
102・岡田忠彦
○副議長(岡田忠彥君) 之ヲ許可致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X01219360519&spkNum=102
-
103・手代木隆吉
○手代木隆吉君 只今上程セラレマシタ法
律案ハ、昨年春ノ議會ニ於テ本院ヲ滿場一
致通過シタ案ト同一案デアリマス、詳細ハ
委員會ニ於テ說明致シマス、何卒速ニ御審
議ノ上ニ御贊成アランコトヲ御願致シマス
(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X01219360519&spkNum=103
-
104・岡田忠彦
○副議長(岡田忠彥君) 井阪豐光君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X01219360519&spkNum=104
-
105・井阪豐光
○井阪豐光君 簡單デアリマスカラ、自席
カラ御許シヲ願ヒマス--本案ハ只今手代
木氏カラ申サレマシタト同一趣旨ノ法案デ
アリマス、ドウカ愼重審議御贊成アランコ
トヲ御願致シマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X01219360519&spkNum=105
-
106・岡田忠彦
○副議長(岡田忠彥君) 登坂良作君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X01219360519&spkNum=106
-
107・東條貞
○東條貞君 議長発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X01219360519&spkNum=107
-
108・岡田忠彦
○副議長(岡田忠彥君) 東條君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X01219360519&spkNum=108
-
109・東條貞
○東條貞君 此席ヨリ發言ヲ御許シヲ願ヒ
マス-今手代木君ノ說明ニアリマシタ通
リ、一度本院ヲ通過シタ案デアリマスカラ、
愼重ニ御審議ノ上、御贊成アランコトヲ希
望致シマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X01219360519&spkNum=109
-
110・岡田忠彦
○副議長(岡田忠彥君) 質疑ノ通〓ハアリ
マセヌ-松永君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X01219360519&spkNum=110
-
111・松永東
○松永東君 日程第七乃至第九ノ三案ヲ一
括シテ、議長指名十八名ノ委員ニ付託セラ
レンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X01219360519&spkNum=111
-
112・岡田忠彦
○副議長(岡田忠彥君) 只今ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X01219360519&spkNum=112
-
113・岡田忠彦
○副議長(岡田忠彥君) 御異議ナシト認メ
さく、仍テ動議ノ如ク決シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X01219360519&spkNum=113
-
114・松永東
○松永東君 議事日程變更ノ緊急動議ヲ提
出致シマス、卽チ此際政府提出、重要肥料業
統制法案ヲ議題トナシ、委員長ノ報〓ヲ求
メ、其審議ヲ進メラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X01219360519&spkNum=114
-
115・岡田忠彦
○副議長(岡田忠彥君) 松永君ノ動議ニ御
異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X01219360519&spkNum=115
-
116・岡田忠彦
○副議長(岡田忠彥君) 御異議ナシト認メ
マイ、仍テ日程ハ變更セラレマシタ、重要
肥料業統制法案ノ第一讀會ノ續ヲ開キマス、
委員長ノ報告ヲ求メマス--委員長西村丹
治郞君
重要肥料業統制法案(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報〓)
報〓書
一重要肥料業統制法案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報告候也
昭和十一年五月十九日
委員長西村丹治郞
衆議院議長富田幸次郞殿
附帶決議
一重要肥料ノ供給ヲ豐富ナラシムル爲
政府ハ速ニ適切ナル方策ヲ樹立スベシ
二政府ハ肥料配給上ノ不圓滑ヲ防止ス
ル爲相當量ヲ常時貯藏シ又ハ外安ノ輸
入ニ關シ損失補償ノ制度ヲ設クル等需
給ノ圓滑ヲ圖リ價格ノ昂騰ヲ抑制スル
ノ方策ヲ講ズベシ
三重要肥料業統制委員會ノ構成ニ關シ
テハ消費者ノ意向ヲ同委員會ニ反映セ
シムルニ遺憾ナキヲ期スベシ
〔西村丹治郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X01219360519&spkNum=116
-
117・西村丹治郎
○西村丹治郞君 委員會ノ經過竝ニ結果ヲ
極メテ簡單ニ御報告申上ゲマス、委員會ハ
前後六囘開キマシタノデアリマス、本問題
ハ申スマデモナク、農村ニ對シテハ非常ナ
ル重大ノ關係ガアルモノデアリマスカラ、
非常ニ愼重審議ヲ遂ゲマシテ、各委員ヨリ
熱心ナル御質問ガアリ、又當局者モ之ニ對
シテ懇切丁寧ナル御答辯ガアッタノデアリ
マス、併シ其總テハ速記錄ニ載ッテ居リマス
カラ、是デ御覽ヲ願フコトニ致シタイト思
フノデアリマス、唯一二御報告申上ゲテ置
キタイト思ヒマスルコトハ、此法案ハ第六
十七議會ニ提案サレタ肥料統制法案ヨリハ、
生產業者ヲ保護スルヤウナ色彩ガ少シ濃厚
デハナイカ、是デ果シテ消費者ノ利益ヲ擁
護スルコトガ出來ルカドウカ、斯ウ云フ風
ナ御質問ガアリマシタニ對シマシテハ、前
囘ノトハ違ック點モアルケレドモ、此法律ヲ
運用スル上ニ於テ、決シテ前ノ法案ニ劣ル
モノデハナイ、前ノ法案ト同一ノ效果、
否以上ノ效果ヲ擧ゲル考デアル、斯ウ云
フ御答辯ガアッタノデアリマス、ソレカラモ
ウ一ツハ量ノ問題、供給ヲ豐富ニスルト云
フコトガ法案ノ目的ニナッテ居ルガ、然ルニ
全文ヲ見渡シテモ、ドウモ供給ヲ豐ニスル
ト云フコトニ付テ、法制上ノ根據ニ乏シイ
所ガアル、斯ウ云フ質問ガアッタノデアリ
マス、ソレニ對シマシテ近時段々此工業ガ
發達シテ、生產能力ハ今ヤ百八十万瓲ニ達
シテ居ル、然ルニ實際生產サレルモノハ、
百二十万瓲程シカナイケレドモ、近キ將來
ニ必ズヤ需給關係ガ圓滑ニナルヤウニナル
モノデアル、諸君ガ仰セニナルヤウニ、此
事業ハ今日ハ非常ニ有利々々ト言ハレルガ、
有利デアレバ資本ガソコニ集ッテ來テ、今日
以上ニ生產能力ガ殖エテ來ルカラ、決シテ
諸君ノ御心配ナサルヤウナコトハアルマイ、
斯ウ云フ御答辯デアッタノデアリマス、ソレ
カラ次ハ價格ノ公正ト云フコトガ、本案ノ
目的トナッテ居ルノデアリマス、公正ナル價
格ハ何ヲ基準トシテ之ヲ捉ヘルノデアルカ、
今生產費ヲ調ベテ見レバ、安キ、能率ノ宜
シイ會社ノ生產費ハ四十四五圓乃至五十圓
デアル、然ルニ高キ、能率ノ惡イ不良會社
ノ生產費ハ八九十圓モ掛ッテ居ル、殆ド倍、
半分ノ差ガアルノデアルガ、公正ナル價格
トハ、何處ヲ捉ヘテ公正ナル價格ト云フノ
デアルカ、斯ウ云フ御質問ニ對シテハ、肥
料ノ公正ナル價格ト云フモノハ、單ニ生產
費ノミニ依ッテ決マルベキモノデハナイノ
デアル、物價其他ノ經濟事情ヲ參酌シテ、
然ル後ニ公正ナル價格ヲ決メルノデアルカ
ラ、左樣ナ生產能率ガ違ッテ居ッテモ、何モ
ソレヲ基準トシテヤルノデハナイ、今申上
ゲタ通リ、物價其他ノ經濟事情ヲ參酌シテ、
ソコニ公正ナル價格ヲ捉ヘルノデアル、斯
ウ云フ御答辯ガアッタノデアリマス、更ニ又
各會社ノ生產費ガ大變違ッテ居ル、政府ニ
於テハ理想的生產費、今硫酸「アムモニヤ」
ヲ製造スルノニ、優良ナル機械デ、進步シ
タル製造方法ニ依ッテヤレバ、ドノ位デ出來
ルコトヲ正當ト認メテ居ルノカ、言葉ヲ換
ヘテ見マスレバ、理想生產費、サウ云フモ
ノガ何カ政府ニ調ガアルノデハナイカト云
フ御尋ガアッタノニ對シテハ、各會社ノ營業
狀態ニ政府ガ立入ッテ調ベルコトガ出來ル
ナラバ、ヨリ的確ナル生產費ヲ調ベラレヨ
ウケレドモ、今日デハ會社ニ立入ッテ左樣ナ
コトヲ爲ス權能ハ行政官ニハナイノデアル、
此法律ガ通過シテ、初メテ各會社ノ內容ニ
立入ッテ、ソレヲ調ベルコトガ出來ルヤウニ
ナルノデアルカラ、此法案通過ノ曉ニハ、
キット的確ナル生產費ヲ捉ヘルコトガ出來
ルデアラウ、斯ウ云フ御答辯ガアッタノデア
リマス、ソレカラモウ一ツハ、委員會ノ構
成ハ從來ノ例ニ依レバ生產者、消費者、之
ヲ旨ク調和シテ代表サスト云フコトヲ、何
時デモ當局者ハ言フノデアルガ、併ナガラ
實際ヲ見レバ、何時デモ眞ニ消費者ヲ代表
スルト云フヤウナ者ハ委員ニ加ヘラレテ居
ラナイ、ソレ故ニ今囘此法案實施ノ曉ニ於
テハ、唯オ顏ダケデハナシニ、眞ニ農村民
ノ利害ヲ代表スル人ヲ委員ニ加ヘテ貰ヒタ
イ、斯ウ云フ質問ガアッタノデアリマス、
之ニ對シテハ、從來ハサウ云フ傾向ガアッタ
カモ知レナイガ、此法案實施ノ曉ニハ、飽
マデモ御質問ノ趣意ニ副フヤウニシタイト
思ッテ居ル、斯ウ云フ御答辯ガアッタノデア
リマス、其他色々ノ質問應答モアリマシタ
ケレドモ、總テアトハ速記錄ニ依ッテ御承知
ヲ願ヒタイト思フノデアリマス、而シテ質
問ガ終了致シマシテ討論ニ入リマシテ、岡
本委員ヨリ致シマシテ、一ツノ附帶決議ヲ
附ケテ本案ニ贊成スルト云フ提議ガアッタ
ノデアリマス、其附帶決議ヲ玆ニ朗讀ヲ致
シマス
附帶決議
一重要肥料ノ供給ヲ豐富ナラシムル爲
政府ハ速ニ適切ナル方策ヲ樹立スベシ
二政府ハ肥料配給上ノ不圓滑ヲ防止ス
ル爲相當量ヲ常時貯藏シ又ハ外安ノ輸
入ニ關シ損失補償ノ制度ヲ設クル等需
給ノ圓滑ヲ圖リ價格ノ昂騰ヲ抑制スル
ノ方策ヲ講ズベシ
三重要肥料業統制委員會ノ構成ニ關シ
テハ消費者ノ意向ヲ同委員會ニ反映セ
シムルニ遺憾ナキヲ期スベシ
斯ウ云フ附帶決議ヲ提議サレタノデアリマ
ス、ソレカラ更ニ平野委員ヨリ、本案ニハ
贊成スルガ、自分ハ一ツノ希望意見ヲ持ッテ
居ルカラト云フコトノ陳述ガアリマシテ、
三ツノ希望條項ヲ述べラレタノデアリマス
希望條項
一政府ハ重要肥料ノ生產費ヲ調査シ速
カニ公表スベシ
一重要肥料業委員會ニ耕作農民ノ代表
ヲ入レルベシ
一政府ハ肥料ノ專賣或ハ國營ノ根本策
ヲ樹立スベシ
斯ウ云フ希望條項ヲ御陳述ニナッタノデア
リマス、之ニ對シマシテ政友會ノ助川君モ
御贊成ノ御演說ガアリ、ソレカラ第一控室
デアリマス三宅君カラハ、反對ノ意見ノ陳
述ガアリマシタ、ソレカラ國民同盟ノ野中
君カラ、反對ノ意見ノ陳述ガアリマシタ、
何レサウ云フコトニ付キマシテハ、茲ニ更
ニ討論ニ入ルコトト思ヒマスカラ一切ヲ申
上ゲマセヌ、之ニ依ッテ私ノ報〓ハ終リマス
(拍手)
〔「決ハ採ラナカッタノデスカ」ト呼フ者
アリ〕
〔西村丹治郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X01219360519&spkNum=117
-
118・西村丹治郎
○西村丹治郞君 洵ニ粗忽ナコトヲ致シマ
シテ相濟ミマセヌ、討論ガ終リマシテ、第
一ニ本案ニ付テ採決ヲ致シマシテ、大多數
デ本案ヲ可決致シマシタ、次ニハ希望決議
ニ付キマシテ採決ヲシマシタ、是モ大多數
ヲ以テ可決シマシタ、此段御報告致シマス
(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X01219360519&spkNum=118
-
119・岡田忠彦
○副議長(岡田忠彥君) 是ヨリ討論ニ入リ
やく、通〓順ニ依リ發言ヲ許シマス-杉
山元治郞君
〔杉山元治郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X01219360519&spkNum=119
-
120・杉山元治郎
○杉山元治郞君 私ハ今議題ニナッテ居リ
マスル重要肥料業統制法案ニ付テ、遺憾ナ
ガラ反對ノ意思ヲ表明スル者デアリマス、農
村ニ利益ガアル、斯ク申サレテ居リマスル
本案ニ反對致シマスルコトハ、委員會ニ於
キマシテ、同僚三宅君ガ申述べマシタヤウ
ナ理由モアルノデゴザイマスルガ、尙ホ其
以外ニモ理由ガアルノデアリマス、其理由
ヲ申述ベマスル前ニ、少シク申上ゲテ見テ
置キタイト思ヒマスル點ハ、農村ノ現狀ト
農業經營ノ上ニ於キマスル肥料ノ位置デゴ
ザイマス、豫算委員會ノ席上ニ於キマシテ、
私ハ農林當局ニ質問致シマシタ、近來農村
ニ景氣ガ來タ、好景氣來ヲ新聞或ハ雜誌ニ
傳ヘラレテ居ルガ、果シテ農村ニ好景氣ガ
來タノデアルカドウカ、斯ウ云フ質問ヲ致
シマシタ時ニ、農林當局モ私ノ質問ニ對シ
マシテ、否、マダ農村ニハ好景氣ガ來テ居
ルト考ヘルコトハ出來ナイト答ヘラレタノ
デアリマス、確ニ齋藤內閣以來、幾多ノ救
農政策ガ行ハレマシタガ、マダ窮乏ノドン
底ニ入ッテ居リマスル農村ヲ救濟スルニ至ツ
テ居ラナイノデアリマス、其證據ハ旣ニ皆
サンモ御承知ノヤウニ、小作爭議ガ年一年
累加致シテ居ル、昭和十年度ノ如キハ五千
五百件以上ヲ突破シタト云フヤウナ、斯ウ
云フ事情ヲ見テ戴イテモ、其一面ヲ物語ル
デアラウト思フノデアリマス(拍手)尙ホ又
私ガ先般豫算委員會ニ於テ要求致シマシタ
參考資料、卽チ小學校〓員俸給支拂延滯狀
況ト云フ、此調査ヲ見マシテモ、昭和八年ノ
六月末現在デハ、〓員俸給未拂ノ町村ガ六
百九箇町村デアッタ、然ルニ昭和十年ノ六
月末現在ニナリマスト、七百九十二町村ニ
ナッテ、正ニ百九十箇町村ヲ增加致シテ居リ
マス、金額ニ於テモ增加致シテ居リマスル
ガ、詳シク申述べマセヌ、斯ウシタ事實ヲ
見マシテモ、マダ農村ガ救濟サレナイ、マ
ダ景氣ガ來テ居ラナイト云フ證據ヲ、私共
ハ見ルコトガ出來ルト思フノデアリマス、
斯ウシタ農村ノ窮乏狀態ガ改善サレマセヌ
ノデ、昨日ノ米穀委員會ニ、東委員長ガ三
宅君ノ話トシテ紹介サレマシタヤウニ、新
潟縣デハ靑田賣ガ珍シクナイ、黑田賣カラ
白田賣ニマデ發展シテ居ルト云フ話ガゴザ
イマシタガ、單ニ是ハ新潟縣ダケノ問題デ
ハナイ、私ハ先日議會ノ暇ヲ見テ仙臺ニ參ツ
テ居リマシタ時ニ、僅カ其一日ノ河北新報
ヲ見マシタ時ニ、二ツノ娘賣ノ記事ガ出テ
居ッタノヲ見タノデアリマス、斯ノ如クニ農
村ガ窮乏シテ居ル、此窮乏ニ喘イデ居リマ
ス農村ニ、最モ經濟的ナ重壓トナッテ居リ
マスモノハ、色々ゴザイマスルガ、其中デ
モ肥料ガ重イ負擔ニナッテ居ルト云フコト
ハ、旣ニ能ク分ッテ居ル所デアリマス、卽チ
昭和五年、六年、七年ノ三箇年平均ノ農業
經營費中、肥料ノ割合ヲ調査シタモノニ
依リマスト、農家一戶當リ農業經營費
ガ五百四十四圓十錢五厘デアリマスル
ガ、其中ノ肥料購入代ハ百一一十七圓四十
錢デアリマス、而シテ農家ノ現金支出ノ
中デ、肥料ノ購入代ガ正ニ二割六分三厘ニ
該當シテ居ル、現金支出ノ首位ヲ占メテ居
ルト云フコトデアリマス、以テ肥料ハ多ク
ノ農家ニ取ッテ、如何ニ重大ナ負擔トナッテ
居ルカト云フコトハ、旣ニ御承知ノ通リデ
アリマス、ソコデ此肥料ヲ最モ安價ニ且ツ
豐富ニ供給致シマスルナラバ、農村ノ振興
ニ寄與スル所ガ大デアルバカリデナク、農
產物ノ生產費ガ低下シテ、一般消費者生活
ノ上ニモ安定ヲ與ヘル一助ニモナルカト考
ヘルノデアリマス、然ラバ本法案ガ其目的
ニ適フヤウニ立案サレテ居ルモノデアリ、
其事ハ明瞭ニ記載サレテ居ルデハナイカ、
然ルニ何故ニ反對スルノデアルカト、或人
反問サレルデアリマセウ、併シ問題ハ法文
ノ上ニ明瞭ニ記載サレテ居ルカ、記載サレ
テ居ラナイカト云フ問題デハゴザイマセ
又、今委員長ノ色々ノ御報告モゴザイマシ
タヤウニ、ソレヨリモ活用ノ問題ナノデア
リマス、政府ガ資本家ヲ能ク統制服從セシ
ムルニ足ルカ否ヤデアリマス、多クノ方々
ガ此法案ヲ見テ、從來ヨリモ多少良クナル、
ダカラ先ヅ之ニ贊成スルヨリ仕方ガナイ、
斯ウ云フヤウナ極ク薄弱ナ意見ヲ御持チノ
ヤウデアリマスガ、私共ハ果シテ此法案ヲ
活用シテ、ドレダケ農民大衆ニ利益ヲ與ヘ
ルカドウカ、斯ウ云フ問題ノ根本ハ、恐ラ
ク現内閣ノ本質ヲ見ナケレバナラナイト思
フノデアリマス(拍手)現內閣ガ組閣ノ初ニ
當ッテ、軍部ノ壓力ガ强クアッテ、資本家ヲ
相當ニ統制服從セシメルカノヤウニ見エテ
居リマシタガ、段々月日ガ經ツニ連レマシ
テ、資本主義ノ經濟機構ノ補强以外ニ、何
物モナイト云フコトガ明ニナッテ來タノデ
アリマス(拍手)本委員會ニ於テ、硫安ノ生
產費ハ何ボデ出來ルカ、斯ク要求致サレマ
シタ時ニ、澁々政府ノ出シタモノハ、皆サ
ンノ御承知ノヤウニ、僅カ五社ノ生產費デ
アッテ、而モ其中ノ最高生產費ガ八十七圓七
十錢、最低ノモノデモ七十三圓九十錢ト云
フ、實ニ不良會社ノ生產費ナノデアリマス、
裸値段ノ生產ノ最低デモ六十四圓、最高ガ
七十八圓ト云フ、相當ニ高イ値段ノモノガ
示サレテ居ルノデアリマス、併シ昭和肥料
ノ如キモノガ一般ニ知ラサレテ居ル、吾々
ノ知ッテ居ル硫安生產費ノ如キモ瓲當リ電
力料ガ十八圓、硫化鑛ガ九圓、人件費ガ八
圓營業費ガ十圓、之ヲ合計シテ四十五圓
六十錢デ生產出來ルト云フコトニナッテ居
ル、然ルニ尙ホ副產物ガアルカラ、其副產
物デアル所ノ酸素ヲ瓲當リ八圓デ出來ルト
致シマスナラバ、正ニ實費ガ三十七圓六十
錢ト云フ安イ生產費デ出來ル筈デアリマ
ス、斯ウシタ優良會社ノ生產費ト云フモノ
ヲ、委員ノ要求ニ對シテ示サナイデ、今申
述べマシタヤウナ、不良會社ノ高イモノヲ
示シテ居リマス所ノ政府ノ意圖、心中ト云
フモノノヲ測ッテ見マスナラバ、正ニ此事ニ
資本家擁護ノ精神ガ現ハレテ居ルト云フコ
トハ明カデアラウト思フノデアリマス(拍
手)先般同僚河上君ガ豫算討議ノ際ニ申述
ベマシタヤウニ、馬場財政ハ軍需工業ト、
低金利ト、增稅トニ依ッテ資本家階級ヲ富マ
セル、併シ其反對ニ國民大衆ニハ增稅ノ重
壓ヲ加ヘルモノデアル、卽チ現內閣ハ金融
ノ資本ノ上ニ踊ッテ居ル、資本政治ノ外ニ何
モノモナイ、例ヘバ表面的ニ法文ガ產業資
本家ヲ統制服從セシムルカノ如ク見エテ居
ルガ、本質ハ恰モ鎧ノ上ニ法衣ヲ著テ居ル
〓盛ノヤウナ欺瞞的ノモノデ、結局ハ大衆ヲ
犠牲ニ供スルモノデアルト考ヘルノデアリ
マス(拍手)斯樣ナ實例ハ、先般來カラ產業
統制ノ場合ニモ、屢〓話ガゴザイマシタヤ
ウニ、卽チ紙ノ「カルテル」ニ依ッテ如何ニ紙
ガ高クナッタカ、鐵ノ「カルテル」ニ依ッテ鐵
ガ如何ニナッタカ、紙ノ問題ニ付テハ、旣
申述ベラレテ居リマスルカラ、私ハ此事ヲ
玆ニ諄々シク申述ベルコトヲ省キマス、ダ
ガ鐵ノ如キモ、御承知ノヤウニ昭和六年ニ
比シテ、昭和九年ニハ其生產額ハ約二倍ノ
三百三十万瓲ト云フ多額ヲ生產致シテ居リ
マスニ拘ラズ、價格ハ却テ昭和六年ノ
約二倍ニナッテ居ルト云フ狀況デアリマ
ス、是ハ勿論救農事業ガ盛ニナッタリ、
風水害ノ後ニ復舊事業ガ盛ニナッタ影響
モアルデアリマセウケレドモ、主ナル點ハ
製鐵合同ノ結果、卽チ「カルテル」ノ强化ノ
結果デアルコトダケハ間違ナイノデアリマ
ス、然ルニ是等ノ產業ノ統制ヲ强化サレマ
スル時ニ、當局ハ決シテ民衆ノ經濟ヲ壓迫
スルヤウナモノデハナイト、度々繰返サレ
タノデアリマスルケレドモ、事實ハ今モ申
述ベマシタヤウニ、紙モ、鐵モ「セメントㄴ
モ、サウ云フヤウニ高クナッテ居ルノデア
リマス、若シ肥料ニ於キマシテ、サウ云フ
ヤウナ結果ニナリマスルナラバ、紙、鐵ノ比
デハナク、多クノ因ッテ居ル農民大衆ニ、
層經濟的ナ壓迫ヲ加ヘマスルモノデアリマ
スルガ故ニ、吾々ハ大イニ考慮ヲ要スルバ
カリデナク、此點ハ深ク注意ヲシナケレバ
ナラナイ、私共ハ單ニ是デ十分ダト申サレ
マシテモ、過去ノ事實ヲ見テ、私共ハ之ヲ
以テ安心スルコトハ出來ナイ、抑〓此法案
ガ、委員長ガ先ニ報〓致シマシタヤウニ、
第六十七議會ニ提案サレマシタ所ノ肥料業
統制法案ニ等シイモノデ、決シテ精神的
ニ、又實力ニ於テ、何モ内容ノ變ッタモノデ
ハナイト云フ御話デゴザイマシタガ、併シ
一番製造業者ヲ統制スル所ノ點、卽チ第十
一條ナリ、第二十七條ナリ、第二十九條ナ
リノ削除ヲ致シテ居リマスルガ、私ハ斯ウ
云フ削除、卽チ製造者ノ多少困ルト云フヤ
ウナ點ヲ削除致シテ居リマスル、此點ヲ見
マシタダケデモ、確ニ本案ハ資本家擁護ニ
墮シテ居ッテ、必然ニ消費者、農民大衆ニ重
壓トナッテ來ルモノデアラウ、斯ウ考ヘザル
ヲ得ナイノデアリマス、或ハ斯ク申シマス
ナラバ言ウデアリマセウ、肥料統制委員會
ガ十分ニ之ヲ監督シ、左樣ナ間違ハ此肥料
法案ニ限ッテ決シテ爲サシメナイ、本法案ノ
趣旨遂行ニ努メルト、斯ウ云フヤウニ御答
ニナルカモ分リマセヌガ、ダガ政府ノ今日
マデノ多クノ委員會ト云フモノヲ見マスル
ト云フト、何レモオ座ナリデアル、官僚ト資
本家ト御用學者ト、斯ウ云フ人達ノ所謂委
員會デアッテ、今ノ要求ニモゴザイマシタヤ
ウニ、眞ノ消費者階級ノ委員ト云フモノハ
一人モ入ッテ居ラナイノデアリマス、此委員
會ノ希望、要求ニ、果シテ政府ハドレ位ノ
消費者側ヲ入レルデアラウカ、今日マデノ
經驗ニ徵シマスルナラバ、恐ラク帝國農會
ノ役員ノ一人位ヲ入レテ、サウシテ是デ消
費者ノ代表者ヲ入レタ、斯ウ云フ位ニスル
ノデアラウト私ハ信ズルノデアリマス、ソ
ンナ今マデノヤウナオ座ナリナ、無能ナ肥
料統制委員デ、此力强イ金融資本家ヲ背景
ト致シマスル肥料資本家ト云フモノヲ統制
スルト云フコトハ、非常ニ困難デアルト考
ヘルノデアリマス、若シ眞ニ政府ガ考ヘテ
居リマスヤウニ、肥料業者ヲ統制シヨウト
スルナラバ、丁度千九百三十一年十二月
二、獨逸ニ於テ丁度「ヒトラー」ノ前ニ「ブ
リューニング」內閣ガ出シマシタ經濟及ビ
財政安定、竝ニ治安維持ニ關スル大統領令
ノヤウナ、アヽ云フ强力ナ、卽チ統制力ヲ
持ッタモノニシナカッタナラバ、恐クハ資本
家ノ爲ニナッテシマフデアラウト考ヘルノ
デアリマス(拍手)假令政府ノ言明通リ、肥
料統制委員會ト云フモノガ權威ガアルモノ
デアッタト致シマシテモ、私ハ資本家ノ方ガ
役者ガ一枚上手デアッテ、生產費ノ如キモ、
卽チ値段ノ取極ニ致シマシテモ、チヤント
帳簿ノ上ニ於テ旨クヤッテ退ケルコトハ、今
日マデノ多クノ會社ノ會計檢査、サウ云フ
狀態ヲ見テモ、私共ハ知ルコトガ出來ルノ
デアリマス、ダカラ前述ノヤウニ、不良ナ
工場ヲ整理スルト云フヤウナ命令ヲ削除シ
タコトカラ、恐ラク一番不良會社ノ生產費
ト云フモノガ、賣出値段ノ基準トナッテ、農
民ニ高イ肥料ヲ與ヘルノデアラウト云フコ
トハ、私ハ火ヲ睹ルヨリモ明カデアラウト
考ヘルノデアリマス(拍手)過燐酸工業ハ旣
ニ多クノ方ガ御存ジノヤウニ、四割ノ生產
制限ヲシテ居ル今日ノ狀態デ、卽チ多クノ
製造會社ガ殆ド其工業組合ニ入ッテ居ル、唯
多木肥料會社一社ダケガ「アウトサィダー」
ニナッテ居ルヤウデアリマスルガ、私ハ此最
早殆ド工業組合ニナッテ居ル燐酸製造ガ、此
統制法ヲ施行スルコトニ依ッテ、今一ツアル
所ノ「アウトサィダー」ノ一ツヲ入レテ、寧
ロ高イ不良會社ノ値段ニ引上ゲヨウトスル
ノデハナイカ、卽チ今日燐酸肥料ガ稍〓割合
ニ安イト云フヤウナ問題ハ多木ノヤウナ、
卽チ「アウトサィダー」ガアリマスル爲ニ、ソレ
ニ牽制サレテ居ルノデハナイカト考ヘルノ
デアリマスルガ、若シ此僅カナ一社ガ入リマ
スルナラバ、恐クハ多木ヨリモ內容ノ惡イ、
卽チ大日本人造肥料ノヤウナ會社ノ生產値
段デ賣出サレルデアラウト云フコトガ考ヘ
ラレルノデアル、石灰窒素ハ餘リ多ク出來
マセヌカラ申スマデモアリマセヌ、唯肥料
ニ於テ最モ重要ナモノハ、又國防上必要ナ
モノハ、卽チ硫安デアリマスルガ、硫安ガ
今日マデ、卽チ高イ値段デ買ハサレテ居リ
マスル時ニハ自由ニ放任シテ置イテ、漸ク
生產高ガ飽和狀態ニナッテ來掛ケタ、新シイ
會社ガ新シイ能率ノアル機械デ段々ト製造
シテ來マセウトシタ時ニ、卽チ古イ會社ガ
壓迫サレサウニナッテ參リマシタ時ニ、此統
制法案ヲ出ス意向ヲ見マシタ時ニ、私共ハ
此裏ニ卽チ古イ會社ノ擁護ガ含マレテ居ル
ノデハナイカト云フコトヲ考ヘルノデアリ
ママ、玆ニ政府當局ニ注意ヲ喚起シタイ點
ハ、三宅君ガ委員會デモ申述ベマシタヤウ
ニ、卽チ硫安工業ガ國防上ニ必要デアリマ
スルガ故ニ、單ニ平時ニ農業上ニ十分使用
セシムルト云フバカリデハナイ、一旦緩急
ノアッタ場合ニ、ソレ等ニ應ジルダケノ準備
ヲ爲サナケレバナラナイ爲ニ、私ハ寧口今
日資本家階級ノ特殊ノ會社ニ任セテ置クト
云フコトヨリモ、是ハ寧ロ國家ガ卽チ國營
ニシテ、其際ニ備ヘテ置クト云フコトノ方
ガ、正ニ必要デアラウト信ズルノデアリマ
ス(拍手)私ハサウ云フ國防ノ見地、或ハ窮乏
シテ居ル所ノ農民ニ安價ナ肥料ヲ與ヘルト
云フ點カラ致シマシテモ、卽チ現在ノヤウ
ナ不徹底ナ統制ヨリモ國營ニシタコトノ方
ガ、正ニヨリ多クノ農民ニ安價ナ肥料ガ與
ヘラジルデアラウト云フコトヲ信ジマスル
ガ故ニ(拍手)遺憾ナガラ之ニ反對致シテ居
ルノデアリマス、私ハ特ニ庶政一新ヲ叫ビ、
農民生活ノ安定ヲ「モットー」ト致シテ居リ
マスル所ノ現內閣ガ、少クトモ是レ位出來
易イ、斷行シ得ル所ノ此法案ヲ、此肥料國
營ヲ爲サナイデ置イテ置クト云フコトハ如
何ナモノデアルカ、此議會デ決メラレタ東
北振興ノ爲ノアノ會社モアリマスルガ、折
角東北振興ノ爲ニ電力會社ガ出來テ、新シ
イ方法デ、卽チ安イ値段デ硫安ガ出來テ、
ソレヲ東北ノ農民ニ安ク充ガフト致シマシ
テモ、若シ此法律ガアッタ爲ニ縛ラレテ、東
北ノ農民ガ其東北振興會社ノ安イ肥料ヲ受
ケルコトガ出來ナカッタナラバ、其處ニモ農民
ノ苦ミガ來ルノデハナイカト云フコトヲ憂
ヘタノデアル(拍手)私ハ斯ウ云フヤウナ意
味合カラ致シマシテ、多少利益ガアルカモ
分ラナイケレドモ、卽チ現內閣ノ本質カラ考
ヘテ見テ、羊頭狗肉ノ資本家擁護ニ堕シテ、
サウシテ消費者大衆ニ對スル所ノ壓迫トナ
ルモノデアラウト云フコトヲ、過去ノ色々
ノ統制ニ鑑ミ、遺憾ナガラ反對ヲ表明スル
者デアリマス(拍手)尙ホ多クノ申述ベタイ
點モアリマスルガ、大變ニ遲クナッテ御迷惑
ト存ジマスルガ故ニ、是ダケヲ申上ゲマシ
テ、簡單ニ反對ノ趣旨ヲ申上ゲテ置キマス
(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X01219360519&spkNum=120
-
121・岡田忠彦
○副議長(岡田忠彥君) 松田喜三郞君
〔松田喜三郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X01219360519&spkNum=121
-
122・松田喜三郎
○松田喜三郞君 私ハ本案ニ對シテ委員長
ヨリノ報告ニ贊成ヲ表スル者デアリマス、
世界ニ躍進セントシマスレバ、國防ノ充實
ヲ圖ラナケレバナリマセヌ、國防充實ヲ圖
ラウトスレバ、國民生活ノ安定ヲ圖ルヨリ
外ニハナイノデアリマス、國民生活ノ安定
ヲ圖ラウトシマスレバ、ドウシテモ食糧ノ
充實ヲ圖ラナケレバナリマセヌ、又食糧ノ
充實ヲ圖ラウトシマスレバ、ドウシテモ肥
料ノ充實ヲ圖ラネバナラヌノデアリマス
〔「肥料ノ充實ヲ圖ルニハ肥料ノ國營ヲ圖ラ
ナケレバナリマセヌ」ト呼フ者アリ〕然ルニ
斯ノ如キ重要ナル所ノ肥料ノ問題ニ付テ、
今日マデ確立シタル所ノ政策ヲ立テ得ナカッ
タト云フコトハ、洵ニ遺憾千萬ニ思フノデ
アリマス、是ガ爲ニ農村ノ疲弊ハ、一層悲
境ノドン底ニ呻吟スル狀態ニナッテ居ルノ
デアリマス、今日農村ノ此購買肥料ニ對ス
ル所ノ支出金額ト云フモノハ、ドレダケ拂
ウテ居ルカト申シマスルト、現金總支出金
額ノ中三割六分五厘ノ三億圓ヲ費消シテ居
ルノデアリマス、其中ノ約七割ト云フモ
ノハ硫安、石灰窒素、過燐酸石灰ニ使ッテ
居ルノデアリマスガ、此硫安ト云フモノガ
今日ノ内地ニ於キマスル所ノ狀態ヲ見マス
ルト云フト、消費額ガ百二十五万瓲デア
ル、石灰窒素ハ二十七万瓲消費シテ居リマ
ス、過燐酸石灰ハ百二十八万瓲消費シテ
居ルノデアリマスガ、一方生產ノ方ヲ見マ
スルト云フト、昨年ハ僅ニ硫安ハ九十六万
瓲デアリマシテ、二十九万瓲ノ不足ヲ生ジ
テ居ルノデアリマス、尤モ過燐酸石灰ハ現
在自給自足ノ域ニ達シテ居リマシテ、今ヤ
過剩ト云フヤウナ狀態ニナッテ居リマスル
ケレドモ、此硫安ダケハ年々二十万瓲ヅヽ
消費ガ累進シテ增加ヲシテ居ルノデアリマ
ス、然ルニ內地、朝鮮、滿洲ヲ加ヘテ見マ
シテモ、生產能力ハ僅ニ百八十八万五千瓲
シカナイノデアリマス、併シ是ハ生產能力
デアリマシテ、此全機能ヲ發揮スル迄ニハ
少クトモ、マダ今後兩三年ヲ要スル狀態デ
アリマス、然ル時ニ此消費ト生產ノ不足二
十五万瓲內外ト云フモノハ、年々海外カラ
輸入ヲ仰ガナケレバナリマセヌ、此海外カ
ラ輸入ヲ仰ガウトシマスルト云フト、今日
ハ玆ニ强力ナル「カルテル」ガアリマシテ、
此爲ニ値段ノ騰貴ガ起ルノデアリマス、其
値段ノ騰貴ト云フモノハ殆ド是レ皆農家ノ
負擔トナッテ居ルノデアリマス、今日ノ農村
ノ不況ハ如何ニナッテ居ルカト云フコトハ、
申上ゲル迄モアリマセヌガ、今ヤ農村ノ負
債ハ四十億圓ニナッテ居ル、公租公課有ユル
モノノ負擔ト云フモノハ、都會ノ三倍ニモ
達スルト云フヤウナ重課、洵ニ不公平ナル
負擔ヲシテ居ルノデアリマス、ソレガ爲ニ
今日ノ四十億圓ノ負債ガ出來タノデアリマ
ス、尙ホ吾々農民ヘ此肥料ノ爲ニ-生キ
ントスルガ故ニ斯ノ如キ高イ肥料ヲ使ッテ
居リマスルガ爲ニ、年々歲々負債ヲ增ス一方
デゴザイマス、然ル時ニ政府ハ此法案ヲ出
シタト云フコトハ洵ニ農村ノ爲メ、國家ノ
爲メ當ヲ得タ法案デアルト信ズルノデアリ
マス(拍手)然ルニ此案其モノヲ能ク調ベテ
見マスルト云フト、ドウモ製造業者ニ重ク
シテ消費者側ニ輕イ感ジガスルノデアリマ
ス、是ハ何故カト申シマスレバ、ドウシテモ
自給自足ノ域ニ達スルト云フコトヲ目標ニ
置イテ居ルラシイ、自給自足ノ域ニ達スル
迄ハドウシテモ此方法ヲ執ッテ行カナケレ
バイカヌト云フ考ヘハアルラシイ、爲ニ今
日ノ價格ガ斯ウ云フ狀態ニナッテ製造業者
ノ方ニ重クナッテ、消費者側ニ輕イト云フ
ヤウナ嫌ガアリマスルケレドモ、深ク考ヲ
及ボシタナラバ此案ト云フモノハ、洵ニ私ハ
結構ナ案ト信ズルノデアリマス、併ナガラ
製造業者ニ重クシテ、消費者側ニ輕イト云フ
ヤウナ點ニ付キマシテハ、只今附帶決議ニ
ナッテ現レマシタヤウニ、重要肥料ノ供給ヲ
豐富ニナラシメ、ソレニ付テハ適切ナル方
法方策ヲ講ゼヨ、肥料配給上ノ不圓滑ヲ防
止スル爲ニ、相當量ヲ常ニ貯藏セヨ、又外
國硫安ノ輸入ニ關シテ損失補償ノ制度ヲ設
ケヨト云フノデアリマス、需給ノ圓滑ヲ圖
リ價格ノ騰貴ヲ防止スル爲ノ方法ヲ講ゼ
ヨ、或ハ此肥料業統制委員會ノ構成ニ際シ
テモ、消費者側ノ意向ヲ委員會ニ反映サシ
テ、サウシテ遺憾ナキヲ期セヨト云フノデ
アリマスカラ、是ダケノモノガ此法案ノ中
ニ織込マレマシタナラバ、消費者側ニモ製
造業者側ニモ洵ニ完備セル案デアリマス、
之ニ依ッテ初メテ私ハ肥料ノ政策ガ出來タ
モノデアルト信ズル、今日マデ此案ガナカッ
タコトヲ考ヘテ見マシタナラバ、此案ガ出
來タ後ト云フモノハ、吾々農村側ニ致シマ
シテモ洵ニ私ハ仕合セヲ得ルモノデアルト
信ズルノデアリマス、併ナガラ此案其モノ
ハ運用宜シキヲ得ネバイカヌノデアリマス、
幸ニ此運用スル政府、卽チ小川商工大臣、
島田農林大臣ガ直接ニ此運用ヲスルノデア
リマス、此運用宜シキヲ得タナレバ必ズ
成績ノ大イニ擧ルベキモノト存ジマス、何
卒政府ニ於キマシテモ、此吾々ガ附帶決議
トシテ出シマシタル所ノ案ヲ能ク活用セラ
レテ、萬遺憾ナキヲ期セラレタイモノデア
ルト思ヒマス、若シ此點ニ於テ吾々ノ期待
ニ缺クル所ガアリマシタナレバ、農民ノミ
ナラズ全國民ハ廣田內閣ニ對シテ、如何ナ
ル攻擊ノ論ヲ向ケルデアリマセウ、大イニ
努力セラレンコトヲ祈リマス、以テ私ハ本
案ニ贊成ヲ表スル者デアリマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X01219360519&spkNum=122
-
123・岡田忠彦
○副議長(岡田忠彥君) 野中徹也君
〔野中徹也君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X01219360519&spkNum=123
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124・野中徹也
○野中徹也君 私ハ本案ニ關シマシテ吾々
ノ意見ヲ陳述シヨウト考ヘマス、政府ハ本
法案ニ依リマシテ、肥料ノ需給ノ圓滑、又
價格ノ公正、肥料製造業及ビ農業經營ノ改
善ヲ目標トシテ居ルノデアリマス、併ナガ
ラ私ガ委員會ニ於キマシテ、政府ニ種々質
疑ヲ致シマシテ、其囘答ヲ求メタノデアリ
マスルガ、其囘答ニ依ッテ見マスルナラ
バ、此案ヲ以テ致シマシテハ政府ノ所期
ノ目的ヲ達セラレナイト云フコトガ、明瞭
ニナッタノデアリマス、勿論此法案モ全部惡
イトハ私ハ言ハナイ、例ヘバ新聞其他ニ依
リマシテ、想像ハセラレテ居リマスルガ、
硫安ノ生產費ノヤウナモノモ明瞭ニシ得ナ
イ今日デアル、併ナガラ此本案ガ施行セラ
レマシタナラバ、幾分其生產原價ノ調査ガ
爲シ得ルデアリマセウ、又重要肥料業委員
會ト云フモノガ設定セラレテ居リマスルカ
ラ、此監督ニ發動出來マスルナラバ、或ハ幾
分消費者側ノ意向ト云フモノモ取入レラル
ルデアリマセウ、更ニ現在色々使ッテ居リ
マスル割戾ノ制度モ統一セラルヽデアリ
マセウカラ、今日問題トナッテ居リマスル產
業組合、或ハ肥料商トノ間ノ關係ト云フモ
ノモ、平等ナル條件ニ置カレマスルガ故
ニ、紛爭ヲ齎ラスコトハアリマスマイ、斯
ウ云フ風ナ工合ノ幾多ノ美點ハアリマス、
併ナガラ根本的ニ之ヲ見マスルト云フト、
前ニ申上ゲマシタ通リ、本案ニ依リマシテ
ハ政府ノ所期ノ目的ヲ達スルコトガ出來ナ
イ、斯ウ云フ結論ニナッテ來ルノデアリマ
ス、卽チ需給ノ調節、或ハ價格ノ決定ニ付
キマシテハ、第一ノ發案權ト云フモノヲ同
業組合ガ持チマス、又是ノ監督ハ政府ガシ
マス、更ニ重要ナル問題ノ諮問ニ關シマシ
テハ、肥料業委員會ト云フモノガ出來テ居
リマシテ、是ガ致スコトニナッテ居リマス、
併ナガラ私ハ此政府ノ監督、又肥料業委員
會ノ發動ガ神聖ニ行ハレルカドウカ、私共
ハソコニ深イ疑問ヲ持ッテ居ルノデアリマ
ス、政府ノ監督ガ眞實ニ行ハレナカッタ所ノ
實例ハ澤山アリマス、先日モ本議場ニ於キ
マシテ私ノ質問ニ對シマシテ、政府ガ率直
ニ告白致シマシタ通リ、組合法ノ第八條ノ發
動ト云フモノモ、未ダ一囘モアリマセヌ、
又昭和八年ノ硫安輸出入制限令ト云フモノ
ニ關シマシテ、農林商工兩當局ノ間ニ意見
ノ相違ガアリマシタ爲ニ、遂ニ之ヲ發動ス
ルコトガ出來ズ、僅カ一箇年半ニ於キマシ
テ、改廢致シマシタコトハ御承知ノ事實デ
アル、私共ハ斯ウ云フヤウナ事實ヲ前提ト
スル場合ニ於テ、果シテ政府ノ監督ト云フ
モノガ神聖ナル監督デアルカドウカ、又出
來ルカドウカト云フコトニ對シテ、非常ナ
疑問ヲ持タザルヲ得ナイノデアリマス、更
ニ委員會ノ決定ノ如キハ、今杉山君ガ幾分
其問題ニ關係セラレマシタカラ私ハ深クハ
言ハナイ、委員會ノ諮問ニ對スル所ノ答辯
ノ如キハ洵ニ私共カラ言ハセルナラバ不安
デ堪ラナイ、此委員會ガ如何ナル構成分子
ニ依ッテ組織セラレルカドウカ私ハ知ラナ
イ、政府ハ恐ラク今マデノ聲明ノ如ク消費
者配給者或ハ農村ノ眞實ニ勞働ヲシテ居
リマスル人々ノ間カラ、委員ガ出ルカモ知
レマセヌ、併ナガラ此委員會ガ開カレマス
ルト云フト、ソコニ大資本ノ魔ノ手ガ仲ビ
テ來ル、或ハ不良會社ノ魔ノ手ガ伸ビテ來
ル、サウシテ其委員會ノ活動ト云フモノ
ガ、神聖ナル活動ニナリ得ルカドウカ、過
去ノ委員會ノ實蹟カラ見テモ、私ハ非常ニ
疑問トセザルヲ得ナイノデアリマス、斯ウ
云フヤウナ工合ニ委員會自體ノ活動ト云フ
モノハ疑問デアル、隨テ生產會社ト云フモ
ノガ、今日ノ如ク外國カラ入ッテ參リマスル
所ノ硫安ガ、高價ナ場合ニ於キマシテハ、
其製品ト云フモノガ天候其他ノ自然的情勢
ニ影響セラルヽト云フコトヲ口實ト致シマ
シテ、其價格ヲ吊上ゲル、又爲替ノ關係ニ
於キマシテ、輸入品ノ安イ時ニハ是ト反對
ニ關稅ノ障壁ノ下ニ、利益ヲ貪ルト云フヤ
ウナコトガ過去ニ於テアッタ事實デアル
シ、將來ニ於テモアルンデハナイカト考
ノく又不良會社ガ如何ニ政府ガ轉向命令
ヲ出シマシタ所デ、本法案ノ中ニハ昨年
提出セラレマシタ法律案ト異リマシテ、
何等ノ賠償規定ト云フモノガアリマセ
又、此賠償規定ト云フモノガナクシテ、果
テ政府ノ轉向命令ガ如實ニ實現セラルヽカ
ドウカ、私ハ非常ニ是モ疑問トスルノデア
リマス、恐ラク斯ウ云フヤウナ不良會社ハ、
此賠償規定ナキコトヲ口實ト致シマシテ、
政府ノ命令ニ或ハ反對スルカモ知ラヌシ、
又委員會ニ於キマシテモ、此徹底ト云フコ
トハ出來ナイノデハナイカト考ヘマス、更
ニ化學ノ進步ニ伴ヒマシテ、生產費ノ低廉
ナル會社ノ新設又ハ增設ト云フモノガ實現
セラルヽカドウカ、是モ疑問デアル、化學
ハ日々進步ヲシテ居ル、ソレデアリマスル
カラ、肥料ノ製法、機械ト云フモノガ年々
歲々改善セラルヽト云フコトハ、是ハ今日
ノ實情デアル、併ナガラ斯ウ云フヤウニ化
學ガ進步致シマシテモ、現在ノ此法律ニ於
テ振當テラレル數量ト云フモノハ、委員會
ニ於テ大體決メラレテ居リマス、ソレデア
リマスルカラ、サウ云フヤウナ進步シタ所
ノ機械ヲ取入レ、多量ニ生產シヨウト云フ
ヤウナ計畫ノ下ニ、新設會社或ハ增設ト云フ
ヤウナモノモ出來ルノデアリマスルガ、ソ
レガ出來ルカドウカ、私ハ疑問トセザルヲ
得ナイ、恐ラクハ是ハ委員會ニ於キマシテ、
不可能ナル判定ヲ與ヘラレル虞ガアルノデ
アリマス、更ニ今杉山君ガ指摘セラレマシ
タ通リ、此法律ニ於キマシテハ、肥料ノ生
產量ノ增加ト云フモノハ期待出來マセヌ、
隨テ此肥料ガ今日軍事上ニ於キマシテ、如
何ニ重要ナモノデアルカト云フコトハ御承
知ノ通リデアル、サウ云フヤウナ場合ニ、
サウ云フ必要ナ肥料ガ本法律ヲ以チマシテ
增產ヲ期待出來ナイ、隨テ一朝有事ノ際ニ
ニ於キマシテ、軍部ノ要求スル所ノ硫安、
又農民ノ必要トスル所ノ肥料、サウ云フモ
ノガ十分ニ供給シ得ラルヽカドウカト云フ
コトハ、本法律ヲ以テシテハ如何ニ大臣ガ
答辯致シマシテモ、私ハ疑問トセザルヲ得
ナイノデアル、斯ウ云フヤウナ工合ニ、委
員會ニ於キマスル決定ト云フモノモ、中々
私ハ疑問ダト考ヘル、ソレデアリマスカラ、
本法案ガ施行セラレテ、果シテ眞實ニ政府
ノ所期ノ目的ヲ達スルカドウカ、私ハ非常
ニ疑ハザルヲ得ナイ、恐ラク本法案ガ施行
セラレヽバ、政府ガ答辯シテ居リマスル通
リ、現在ノ需要關係、現在ノ生產關係ヲ基
調トスル關係上、自然ト今日幾ラカ肥料ノ
價格低下ニ影響ヲシテ居ル、少クトモ價格
ノ騰貴ヲ妨ゲテ居ル所ノ「アウト·サイダー」
ヲ消滅シ、又更ニ生產費ノ髙イ所ノ老朽會
社ハ、政府監督ノ下ニ睡眠狀態ヲ續ケ、化
學ノ進步ト云フモノヲ之ニ採入レルコトガ
出來ズシテ、軍需生產上ニ於テ、兩面カラ
不都合ナル結果ヲ生ズル、サウ云フ風ナコ
トニナリマシテ、最後ニ於キマシテハ消費
者ノ過重ナル負擔ニ於テ、結果付ケルノデ
ハナイカト云フコトヲ思フ、此問題ニ關シ
マシテハ杉山君ガ可ナリ論ジマシタカラ、
農民ニ對スル肥料ノ問題ニ付キマシテハ述
ベマセヌ、併ナガラ兎ニ角此本法律ガ施行
セラレヽバ、結局ハ斯ウ云フ風ナ、言ウタ
通リ老廢會社デアルトカ、「アウト·サイ
ダー」ガナクナルデアラウトカ云フヤウナ現
象シカ起ラズニ、本當ノ要求シテ居ル低廉
ナル肥料ト云フモノガ、販賣セラレルカド
ウカト云フコトヲ非常ニ疑ハザルヲ得ナイ
ノデアリマス、殊ニ化學ノ進歩ニ伴ウテ機
械ノ設備ノ改良、是ハ重要ナモノデアリマ
スルガ、本法ガ施行セラルヽト云フコトヲ
豫定致シマシテ、現在ノ旣存ノ會社ノ中ニ
於テスラ增產計畫ヲ變更シタト云フヤウナ
會社ガアルノデアリマス、是ハ新聞紙ノ報
導スル所デアリマスカラ、或ハ其眞僞ハ分
ラナイ、併ナガラ朝鮮窒素、日本窒素、矢
作窒素ト云フモノガ增產計畫ヲ變更又ハ中
止シタト云フ話ガアリマス、併ナガラ是ガ
私共ハ本法案ガ施行セラルヽナラバ一般ノ
生產會社ノ氣持デハナカラウカト考ヘル、
ソレデアリマスカラ、增產、低廉、是ハ私
共ハ決シテ本法ニ於キマシテハ期待スルコ
トガ出來ナイト思フノデアリマス
要スルニ本法律ノ施行ノ曉ニ於キマシテハ、眞
ニ業界ノ進步發展ハ期待ガ出來ナイ、軍事上
非常時ノ設備ガ十分デハナイ、殊ニ價格ノ低
廉、生產量ノ增加ハ圖リ得ナイ、唯旣存會
社ノ利益ノ上ニ誤レル統制經濟ノ美名ノ下
ニ、官僚竝ニ資本家ノ營利絲制ノ典型デア
ル所ノ「トラスト」、之ヲ企畫スルガ爲ニ行
ハレタモノデアッテ、非公益的デアリ、非國
民的ナ法規デハナカラウカト私ハ疑フ、ソ
レデアリマスカラ私共ハ此法律ノミヲ以テ
シテハ、政府ノ所期ノ目的ヲ達スルコトハ
出來ズ、眞ニ所期ノ目的ヲ達スルニハ、法
文ヲ十分改正シナケレバナラズ、ソレニハ
長時間ノ目數ガ掛ルト思ヒマスカラ、私共
ハ此法律案ハサウ云フヤウナ改正ヲスルヨ
リモ、又或ハ政友會、民政黨ノ方々ガ爲サッ
タ通リ附帶條件ト云フヤウナモノヲ附ケマ
シテモ、其附帶條件ハ事實上ニ於キマシテ、
殆ド權威ガナイ、眞面目ナ當局ノ間ニハ多
少附帶條件ガ實行セラレマスガ、大部分ニ
於テ附帶條件ハ單ナル條件ニシテ法律デハ
ナイ、實際ニ行ハレナイト云フノガ今迄ノ
實情デアリマス、ソレデアリマスカラ、私
共ハ斯ウ云フ法律案ヲ今日御廢メニナルナ
ラバ、他日必ズ新シキ見解ノ下ニ、新シキ
指導精神ノ下ニ正シイ所ノ、間違ヒノナイ
所ノ法律案ト云フモノガ本議會ニ提出セラ
ルヽデアラウト云フコトヲ豫定致シマシテ、
此法律案ニ反對ヲスル者デアリマス、勿論
私共ノ同志ノ中ニ於キマシテハ、前ニ述べ
タ通リ幾分此法律ノ美點ヲ考ヘテ見マシテ、
本案ニ贊成ノ意思ヲ表スル人モアルノデア
リマス、併ナガラ大部分ノ人々ハ、根本的
ニ此法律案ヲ審議致シマシテ、其非ナルコ
トヲ知ッテ居リマスガ故ニ、之ニ反對ヲ致シ
テ居ルノデアリマス、隨テ私共ハ、吾々ノ
黨ト致シマシテハ、本案ニ反對デアリマス、
併ナガラ前述ノ多少ノ美點ヲ認メル人ノ爲
ニ除外例ヲ認メマシテ、本案ニハ根本的ニ
ハ反對デアルガ、除外例ヲ認メルト云フ吾
吾ノ實情ヲ披瀝致ス次第デアリマス(拍
手発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X01219360519&spkNum=124
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125・岡田忠彦
○副議長(岡田忠彥君) 服部岩吉君
〔服部岩吉君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X01219360519&spkNum=125
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126・服部岩吉
○服部岩吉君 私ハ只今議題ニナッテ居リ
マスル重要肥料業統制法案ニ對シマシテ、
委員長ノ報告通リニ贊成ノ意ヲ表スル者デ
アリマス、極メテ簡單ニ贊成ノ趣旨ヲ申述
ベタイト思ヒマス
此法案ハ曩ニ六十七議會ニ提案サレマシ
タ法案ニ比較致シマスルト云フト、第一ニ
肥料製造業法ノ許可制ヲ廢サレ、第二ニ主
務大臣ノ統制權ガ微弱化サレテ居ル、第三
ニハ生產工場ノ改善又ハ廢止ノ規定ガ削除
サレテ居リマス、故ニ統制力ガ極メテ低下
サレタモノト斷ゼザルヲ得ナイノデアリマ
ス、併ナガラ從來ノ如ク肥料配給組合ガ獨
占的ニ生產數量ヤ、或ハ價格ヲ決メテ、消
費者側ニ對スル苦痛ヲ少シモ顧ミナカッタ
無統制ヨリ見マスレバ、完全ナルモノトハ
考ヘラレナイガ、此法案ノ成立ニ依ッテ需給
ノ調整、價格其他相當ニ有利ニ展開スベキ
モノト思フ者デアリマス、現在ニ於ケル國
內化學肥料ノ生產能力ハ、硫安ニ付テ見マ
スレバ百二十万瓲內外デアリマスルガ、最
近五箇年間ノ平均年產額ハ僅ニ七十五万瓲
內外デアリマシテ、尙ホ四十五万瓲餘ノ生
產餘力ガアル譯デアリマス
一方需給關係ヲ見マスレバ、年々消費ハ
增加ノ趨勢ヲ保チツヽアリマス、大體ニ於
キマシテ百十万瓲內外デアリマシテ、國內
生產ダケデハ、尙ホ三十万瓲餘不足ヲ〓ゲ
テ居ルヤウナ狀態デアリマス、昭和八年、
九年ノ如キハ二十七八万瓲ノ外安ヲ輸入シ
テ居ル現狀デアリマス、故ニ少クトモ自給
自足ノ程度マデ生產ヲ奬勵スベキモノデア
ルコトハ申上ゲル迄モナイ、然ルニ斯ル統
制機能ノ微力ナル法案デハ、低廉ナル肥料
ヲ豐富ニ供給スルコトハ至難デアラウト思
ハレルノデアリマス、申上ゲマスル迄モナ
〃、農村アッテノ肥料デアリマス、故ニ大資
本主ノミニ利益ヲ貪ラレルト云フコトハ、
公益上、又社會政策上カラモ許シ能ハザル
點デアルト思フノデアリマス、殊ニ農業經營費
ノ現金支出ノ約四割ト云フモノハ金肥デアリマ
スルカラ、肥料價格ノ如何ハ農家經濟ヲ困難ナ
ラシメ、延イテハ農產物ノ生產費ヲ高メマシテ、
國民生活上ニモ至大ノ關係ヲ來スモノデアル
ノデアリマス、農村ノ窮乏ノ甚シク、農村
振興對策ト致シマシテ、廉價ナル肥料ヲ供
給スルコトガ最モ必要デアリマス、私達ハ
此見地カラ肥料國策ノ樹立ヲ力說シテ參ッ
テ來タノデアリマス、又一面化學肥料ガ軍
需工業ト致シマシテ、重要ナル役割ヲ持ッテ
居リマスルコトハ、今更論ズル迄モナイノ
デアリマス、一朝國家有事ノ場合ヲ思ヒマ
スレバ、常時貯藏等ノ必要ヲ痛感セザルヲ
得ナイノデアリマス、彼此レ關聯致シマシ
テ考察致シマスレバ、本法デハ主務大臣ノ
是等ノ點ニ對スル命令權、卽チ統制力ト云
フモノガ微弱化サレテ居リマスルガ故ニ、
本法ノ目的タル肥料ヲ安價ニ豐富ニ供給シ
得ル狀態ヲ速ニ現出スルコトハ至難ト見ル
ノデアリマス、私達ガ本法成立ノ上ハ、農
林商工兩省ハ特ニ協調致サレマシテ、消
費者ノ側ノ爲ニ其運用ヲ誤ラザルヤウニ切
ニ希望致スモノデアリマス、尙ホ私共ハ本
法ガ資本者側、卽チ業者ノ擁護法ナリト疑
ハレテ居ル譯デアリマスカラ、特ニ第十九
條ノ運用ニ意ヲ用ヒラレマシテ、商工大臣
モ河野君ノ質疑ニ對シマシテ、委員會ノ構
成ニ付テハ消費者側ニ最モ重キヲ置クト云
フ言明ヲ致サレテ居リマス、願クハ此言明
ヲ食言サレズ、十分農民ノ消費者側ノ意思
ヲ反映セシメラルヽヤウニ希望致ス次第デ
アリマス
最後ニ一言致シマスルガ、兎ニモ角ニモ
肥料ノ生產及ビ價格ノ統制ニ關スル國家施
設ト致シマシテハ、今日マデ何物モナカッタ
ノデアリマス、唯肥料ガ暴騰スルコトガアッ
テモ、之ヲ抑ヘルコトガ出來ナカックノデ
アリマス、農業經營上ニ非常ナル脅威ヲ與
ヘテ居ッタノデアリマス、本法ノ制定ニ依リ
マシテ、肥料對策ガ軌道ニ乘リ掛ッテ來タノ
デアリマス、此軌道ニ乘リ掛ッテ來マシタコ
トハ、肥料政策史上ノ劃期的意義ヲ有スル
立法ト認メマシテ、其意味合ニ於テ、私共ハ
本案ニ協贊ヲ與ヘルモノデアリマス、以上
私ノ所見ヲ述ベマシタ次第デアリマス拍
手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X01219360519&spkNum=126
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127・岡田忠彦
○副議長(岡田忠彥君) 平野力三君
〔平野力三君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X01219360519&spkNum=127
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128・平野力三
○平野力三君 簡單ニ申上ゲマス、本案ニ
對スル反對ノ御意見ト致シマシテハ社會大
衆黨ノ杉山元治郞氏、國民同盟ノ野中徹也
氏カラ十分ニ申サレタノデゴザイマシテ、
私ハ大體ニ於テ本案ニ對スル所ノ所論ト致
シマシテハ、此反對ノ意見ニ多大ノ眞理ア
リト云フコトヲ見逃シテハナラナイト思フ
ノデアリマス、併ナガラ本案ニ對シマス所
ノ農林大臣竝ニ商工大臣ノ答辯ト云フモノ
ヲ善意ニ之ヲ解釋致シマシテ、將來ニ於ケ
ル我國ノ肥料國策ノ根本ヲ樹立スル上ニ於
テ、或ハ肥料ヲ專賣ニスルト云フコトヲ實
現スル途上ニ於キマシテ、又ハ肥料ノ國營
ト云フコトニ進ミマスコトノ前提ト致シマ
シテ、本案ヲ此議會ニ於テ通過サシテ置クト
云フコトガ、大體宜シイト考ヘマシタガ故
ニ、私ハ贊成ノ意見ヲ表スル者デアリマス
(拍手)隨テ私ト致シマシテ委員長カラ報〓
ガアリマシタヤウニ、大體ニ於テ三箇條ノ
所謂附帶條件ト云フモノヲ提案致シマシタ
ノデゴザイマス〔「希望條項ダ」ト呼フ者ア
リ〕希望條項ヲ附シタノデアリマス、其第
一ハ生產費ニ對シマスル所ノ調査ヲ政府ハ
公表スベシ、第二ハ重要肥料業委員會ニ對
シマシテ耕作農民ノ代表者ヲ參加サスベシ、
第三ハ肥料ノ根本國策ニ向ッテ政府ハ速ニ邁
進スベシ、此三ツノ希望條件ト云フモノヲ附
シタノデアリマスガ、其第一ノ生產費公表
ト云フコトニ對スル所ノ必要ハ、本案ニ對ス
ル特別委員會ニ於ケル商工大臣ノ答辯ハ、
甚ダ此生產費ニ對スル答辯ノ一點ニ對シマ
シテハ、恐ラク全委員ト云フモノガ甚ダ承
服シ得ザルヤウナ次第デアッタノデア
リマス、如何トナラバ、今日肥料ノ問題ヲ
論ズルニ當リマシテ、硫安一瓲ノ生產費如
何ト云フ、此位簡單ナル所ノ質問ハナ
イノデアリマス、政府ガ是ダケノ肥料
問題ニ對スル所ノ案ヲ提唱スルニ當リ
マシテ、硫安一瓲ニ對スル所ノ生產費如何
ト云フコトニ對シテスラ、其簡單ナル答辯
ガ出來ナイト云フコトハ、此案ニ對シテ巷
間傳フル所ノ風說ノ如ク、本案ハ消費者タ
ル所ノ農民ヲ擁護スルモノニアラズシテ、所
謂肥料製造業者ヲ擁護スルモノニアラザル
ヤト云フ疑ヲ持タレマシテモ、何ノ辯解ノ
餘地アランヤト思フノデアリマス、此意味
ニ於キマシテ私ハ是非共商工大臣竝ニ商工
省ノ方々ハ、本案通過ニ對シマシテ重要肥
料ニ對スル所ノ、生產費ノ調査ト云フモノ
ヲ致サレマシテ、而モ速ニ之ヲ公表サレル
ト云フコトヲ、私ハ希望條項トシテ付ケタ
次第デアリマス、第二ノ耕作農民ヲ重要肥
料業委員會ニ入レルト云フコトハ、是ハ固
ヨリ當然デアラウト思ヒマス、從來ノ我國
ノ農業政策ト云フモノヲ見マスルト、農民
ト稱スル所ノ代表ニ對シマシテ、甚ダ吾々
ト見解ヲ異ニスルモノガ多イノデアリマス、
農民トハ何ヲ指スカ、農村ニ在住致シマシ
テ高率ナル所ノ小作料ヲ取リ、何等耕作ニ
從事セザル所ノ者ヲ以テ農民ト爲スト云フ
所ノ見解ニ對シテハ、斷ジテ吾々ハ反對致
シマス、然ルニ從來ノ農業問題ニ付テ見マ
スルナラバ、農民ノ意見ヲ代表スルト稱ス
ル意見ト云フモノハ、是等農村ニ於キマス
ル所ノ、一部ノ特權階級タル地主ノ意見ト
云フモノガ尊重サレマシテ、眞ニ耕作農民
ノ尊重セラレザリシ所ハ、甚ダ吾々ノ遺憾
トスル所デアリマス、此重要肥料業委員會
ノ中ニ於キマシテ、假リニ消費者ヲ代表ス
ベキモノデアルト言ッテ、農民ノ代表ヲ選
ビマシテモ、ソレガ眞實ニ農村ニ於キマス
ル所ノ耕作農民ヲ代表スルモノニアラザレ
バ、斷ジテ吾々ハ農民代表ト信ズル能ハズ
ト云フコトヲ、本日茲ニ私ハ表明致シマス
ト共ニ、商工、農林兩大臣ニ向ヒマシテ、之
ヲ希望條件トシテ附シテ置キタイノデアリ
マス
最後ノ肥料業ニ對スル所ノ根本對策ハ言
フマデモナク、肥料ハ今日我國ニ於ケル國
策上カラ見マスルナラバ、單ニ農民ガ之ヲ
消費スルト云フバカリデハナク、國防上ノ
見地カラ見マシテモ、甚ダ重要問題デアル
ト云フコトハ、敢テ私ガ喋々スルマデモナ
イノデアリマス、然ラバ此重大ナル所ノ肥
料ノ問題ニ付キマシテ、一旦國家總動員ノ
場合ニ於テ、此窒素肥料ト云フモノガ戰
時ニ動員サレ、農民ハ一方ニ於テハ非常
ニ高價ナル所ノ肥料ヲ供給サレ、一方
ニ於テハ戰爭ニ動員サレナケレバナラヌト
云フコトヲ想ヒ起シマス時ニ、此肥料ニ對
スル所ノ根本國策ノ樹立位、私ハ大切ナモ
ノハナイト斷言シテ憚ラナイノデアリマス、
カルガ故ニ私ハ商工、農林大臣ニ向ヒマシテ、
是非共肥料ノ根本國策、例ヘバ專賣デアリ、
或ハ國營デアルト云フコトヲ速ニ樹立サレ
タイ、此三ツノ條項ト云フモノヲ附シタノ
デアリマス、固ヨリ私ハ此三箇條ヲ以テ全
部滿足スルモノデハアリマセヌ、大體以上
ノ三箇條ニ對シマシテ、農林、商工兩大臣
ノ誠意アルモノデアルト云フコトヲ前提ト
致シマシテ、私ハ本案ニ贊成致シタ次第デ
アリマス、何卒私ノ所見ニ御贊成アランコ
トヲ御願致シマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X01219360519&spkNum=128
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129・岡田忠彦
○副議長(岡田忠彥君) 靑木精一君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X01219360519&spkNum=129
-
130・青木精一
○靑木精一君 簡單デスカラ此席ヨリ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X01219360519&spkNum=130
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131・岡田忠彦
○副議長(岡田忠彥君) 許可致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X01219360519&spkNum=131
-
132・青木精一
○靑木精一君 本案ニ對シマシテハ委員長
ノ報告ニ贊成スルノ意思ヲ表明致シマス、
終リ(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X01219360519&spkNum=132
-
133・岡田忠彦
○副議長(岡田忠彥君) 是ニテ討論ハ終局
致シマシタ、本案ノ第二讀會ヲ開クヤ否ヤ
ヲ御諮リ致シマス、本案ノ第二讀會ヲ開ク
ニ贊成ノ諸君ノ起立ヲ求メマス
〔贊成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X01219360519&spkNum=133
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134・岡田忠彦
○副議長(岡田忠彥君) 起立多數、仍テ本
案ノ第二讀會ヲ開クコトニ決定致シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X01219360519&spkNum=134
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135・松永東
○松永東君 直チニ本案ノ第二讀會ヲ開カ
レンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X01219360519&spkNum=135
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136・岡田忠彦
○副議長(岡田忠彥君) 松永君ノ動議ニ御
異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X01219360519&spkNum=136
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137・岡田忠彦
○副議長(岡田忠彥君) 御異議ナシト認メ
やっ、仍テ直チニ本案ノ第二讀會ヲ開キ、
議案全部ヲ議題ト致シマス
重要肥料業統制法案第二讀會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X01219360519&spkNum=137
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138・岡田忠彦
○副議長(岡田忠彥君) 別ニ御發議モアリ
マセヌ、仍テ委員長報告通リ決シマシタ
(拍手)是ニテ本案ノ第二讀會ヲ終リマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X01219360519&spkNum=138
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139・松永東
○松永東君 直チニ本案ノ第三讀會ヲ開カ
レンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X01219360519&spkNum=139
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140・岡田忠彦
○副議長(岡田忠彥君) 只今ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X01219360519&spkNum=140
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141・岡田忠彦
○副議長(岡田忠彥君) 御異議ナシト認メ
マス、仍テ直チニ本案ノ第三讀會ヲ開キ、
議案全部ヲ議題ト致シマス
重要肥料業統制法案第三讀會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X01219360519&spkNum=141
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142・岡田忠彦
○副議長(岡田忠彥君) 別ニ御發議モアリ
マセヌ、仍テ第二讀會議決ノ通リ可決確定
致シマシタ(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X01219360519&spkNum=142
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143・松永東
○松永東君 殘餘ノ日程ヲ延期シ、本日ハ
是ニテ散會セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X01219360519&spkNum=143
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144・岡田忠彦
○副議長(岡田忠彥君) 松永君ノ動議ニ御
異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X01219360519&spkNum=144
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145・岡田忠彦
○副議長(岡田忠彥君) 御異議ナシト認メ
マス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ、次會ノ
議事日程ハ公報ヲ以テ通知致シマス、本日
ハ是ニテ散會致シマス
午後八時四十二分散會
衆議院議事速記錄第九號中正誤
頁段行誤正
一九八一一條件物件
一九八二一〇若、若シ
衆議院議事速記錄第十號中正誤
頁段行誤正
二六〇三Ilma大蠶大衆
衆議院議事速記錄第十一號中
正誤
頁段行誤正
二六八一三六南條德男君ヲ削ル
二六八一三七三井德寳君ヲ削ル
三一二三二四○永山忠則〇三宅正
君(續)君(續)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=006913242X01219360519&spkNum=145
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