1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
アルコール專賣法案
揮發油及アルコール混用法案
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委員氏名
委員長 子爵 梅小路定行君
副委員長 男爵 沖貞男君
侯爵 中御門經恭君
侯爵 佐竹義春君
伯爵 樺山愛輔君
子爵 西尾忠方君
子爵 土岐章君
眞野文二君
柴田善三郎君
白根竹介君
男爵 北島貴孝君
男爵 長基連君
藤山雷太君
金子元三郎君
田中徳兵衞君
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昭和十二年三月二十五日（木曜日）午後三時十五分開會発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000007X00119370325&spkNum=0
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001・梅小路定行
○委員長(子爵梅小路定行君) ソレデハ只
今ヨリ委員會ヲ開キマス、二案ゴザイマス
ガ、二案トモ御異議ガナケレバ一緒ニ問題
ニシテ御說明ヲ願フコトニ致シマス、ソレ
カラ商工大臣ハ御差支デ御見エニナラヌサ
ウデ政府委員ガ居ラレマスカラ······ドウゾ
是カラ當局ノ御說明ヲ願ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000007X00119370325&spkNum=1
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002・結城豊太郎
○國務大臣(結城豊太郞君) 「アルコール」
專賣法案ニ付テ御說明ヲ申上ゲマス、本法
案ハ「アルコール」分九十度以上ノ「アル
コール」ヲ一括シテ專賣ヲセムトスルモノデ
アリマシテ、之ニ包含セラルヽモノハ揮發
油混入用「アルコール」工業用「アルコール」
等デアリマス、而シテ酒造稅法、又ハ酒精
及ビ酒精含有飮料稅法ニ依ル製造ノ免許ヲ
受ケタルモノガ、酒類又ハ酒精含有飮料ノ
原料トシテ、同一製造場內ニ於テ製造スル
「アルコール」ハ、之ヲ專賣ノ範圍外トシテ
稅法ヲ適用スルモノデアリマス、先ヅ揮發
油混入用「アルコール」ニ付テ申述ベマスル
ニ、燃料國策ニ應ジ、揮發油ノ使用量ヲ減
少スル爲メ之ニ「アルコール」ヲ混用セシム
ルコトノ緊要ナルコトハ申ス迄モナイ所デ
アリマス、然ルニ「アルコール」ヲ揮發油ニ
混用スル爲ニハ多額ノ數量ヲ要シマスノデ、
其ノ一部ハ臺灣等ヨリノ移入ニ俟ツモノノ
外、內地ニ於テモ新タニ生產計畫ヲ樹テネ
バナラヌノデアリマス、而シテ其ノ供給價
格ハ之ヲ低廉ニスル必要ガアリマスノデ、
其ノ製造ヲ民間事業トシテ經營セシムル時
ハ國庫ヨリ多額ノ補助ヲ要シマス、又其ノ製
造原料トシテ甘藷馬鈴薯等ノ農產物ヲ多量
ニ使用致シマス關係上、本工業ハ農村經濟ニ
密接ノ關係ヲ有スルモノデアリマス、斯ク
ノ如ク揮發油混入用「アルコール」製造ハ收
益ノ目的トセザル規則ノ事業デアリ、且ツ
農村ニ至大ノ利害關係ガアリマスカラ、原
則トシテ政府自ラ之ヲ經營スルコトヲ適當
ト認ムルノデアリマス、併ナガラ新規ナル
製造方法ヲ試驗〓究スル爲ニ「アルコール」
ヲ製造セムトスルモノニ對シマシテハ、是ガ
製造ヲ許可シ、又適當ト認ムル場合ニハ「ア
ルコール」ノ製造ヲ民間ニ委託スルノ途ヲ
開キマシタ、サウシテ「アルコール」ヲ揮發
油ニ混用セシムル爲ニハ、其ノ賣渡價格ヲ
均一ナラシムルコトヲ要シマスルノト、取
締ノ關係カラ、政府ニ於テ直接揮發油製造
業者又ハ輸入業者等ニ之ガ賣渡シヲ爲スモ
ノデアリマス、次ニ工業用等ノ「アルコー
ル」ハ揮發油混入用ノ「アルコール」ト殆ド
其ノ品質ヲ同ジウ致シマシテ、從ッテ相互ニ
融通性ガアルノデアリマス、又其ノ供給ハ
主トシテ臺灣、南洋等カラノ移入ニ俟ツモ
ノデアリマシテ、現在ハ臺灣、南洋等ニ於
テ課稅ヲ致シ、工業用ニ供シタル所ノ戾稅
及免稅モ臺灣總督府、南洋廳ニ於テ之ヲ行ッ
テ居リマスルガ、消費地タル內地ニ於テ課
稅ヲ致ス戾稅及ビ免稅モ內地ニ於テ之ヲ行
フコトガ適當ト認ラレルノデアリマス、而
シテ個別ニ課稅ヲ爲スコトハ手續上困難ガア
リマスルカラ、之ヲ專賣ノ範圍ニ包含セシ
メマシテ、政府ニ於テ一括シテ移入致シ、
「アルコール」ニ對スル稅金ニ相當スル金額
ヲ加算シテ賣渡シ、之ヲ工業用ニ供シタル
場合ニハ交付金ヲ交付スルノ制度ヲ取リマ
スレバ、手續ノ簡易ヲ期シ得ルト共ニ、又
價格ノ安定ヲモ圖ルコトガ出來ルト考ヘ
マス、從ッテ之ヲモ一括シテ專賣ト致シタ
次第デアリマス、尙工業用等ノ「アル
コール」ラ現在內地ニ於テ製造スル者ニ對シ
マシテハ、其ノ製造ヲ特許スルモノデア
リマス、以上ガ「アルコール」專賣法案ノ大
綱デアリマスルガ、右ニ對シ衆議院ニ於キ
マシテ製造ノ委託ヲ受ケントスル者ニ對シ
テハ、申請ヲ爲サシムル規定ヲ設ケ、又
アルコール」製造ノ特許又ハ委託ヲ受ケマ
シタ者ニ對スル免稅ノ規定ヲ置クコトニ修
正致シマシタガ、政府ハ之ニ同意ヲ致シタ
ノデアリマス、何卒御審議ヲ御願ヒ致シマ
ス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000007X00119370325&spkNum=2
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003・梅小路定行
○委員長(子爵梅小路定行君) 大藏大臣ハ
隣室デ委員會ガアルノデ、其ノ方へ御出
席ナサルサウデスカラ、左樣ニ御承知ヲ願
ヒタイト思ヒマス、商工省ノ政府委員ガ居
ラレマスカラ、一應御說明ヲ願ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000007X00119370325&spkNum=3
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004・村瀬直養
○政府委員(村瀨直養君) 商工大臣ハ據ロ
ナイ御都合デ、代ッテ私カラ提案ノ理由ヲ說
明申上ゲマス、揮發油及「アルコール」混用
法ノ立案ノ趣旨ノ大要ハ本會議ニ於テ商工
大臣カラ申述ベマシタノデ、此處デハ本法
法律案ノ大綱ニ付キマシテ御說明ヲ申上ゲ
マシテ、本法案ノ提案ノ理由ヲ明ラカニ致
シタイト考ヘマス、本法律案ハ揮發油ト「ア
ルコール」混用ヲ圖ラムトスル趣旨デアリ
マシテ、之ガ施行ニ依リマシテ、「アルコー
ル」ヲ代用燃料トシテ使用スルコトヲ普及致
シ、石油需要ノ主要部分ヲ占メマスル揮發油
ノ消費ヲ節約スルコトトナリマスノデ、我
ガ國ニ於ケル液體燃料ノ自給ヲ促進スル上
ニ資スル所大ナルモノガアルノデアリマス、
申上ゲル迄モナク「アルコール」ハ主要ナル
揮發油代用燃料デアリマスルガ、「アルコー
ル」ヲ其ノ儘自動車其ノ他ノ內燃機關ニ使
用致シマスルコトハ適當デアリマセヌ、ソ
コデ「アルコール」ヲ揮發油ニ混入シテ使用
セシムルコトニ依リマシテ、其ノ代用燃料
トシテノ效果ヲ擧ゲムトスルノデアリマシ
テ、諸外國ニ於キマシテモ同樣ノ方法ニ依
リマシテ、燃料「アルコール」ノ使用普及ヲ
圖ッテ居ルノデゴザイマス、而シテ「アル
コール」ヲ混入致シマシタ揮發油ノ內燃機燃
料トシテノ性能ニ付キマシテハ、混入ノ割
合ガ一割乃至二割程度デアリマスルト、「ア
ルコール」ノ有スル特性ヲ發揮致シマシテ、
揮發油ノミヲ使用スル場合ニ比較致シマシ
テ、其ノ效率ガ低下シナイノミナラズ、更
ニ操作上ノ手心ニ依リ、或ハ機關ノ簡易ナ
改造ニ依リマシテ、却テ效率ヲ增加スルコ
トモ可能ナノデゴザイマス、今囘我ガ國ニ
於テ「アルコール」混用制度ヲ實施スルニ付
キマシテハ、「アルコール」生產ノ現狀ニ鑑
ミマシテ、昭和十三年度カラ差當リ二·五
「パーセント」程度ノ混用ヲ以テ始メルコトト
致シマシテ、漸次「アルコール」ノ生產增加
ニ伴ヒマシテ、其割合ヲ高メマシテ、昭和
十九年ニ至リマシテ目標ノ二割ニ到達ヲ致
ス見込デゴザイマス、而シテ「アルコール」
ハ過般議會ニ提案致シマシタ「アルコールL
專賣法ノ實施ニ依リマシテ、確實且ツ計畫
的ニ之ヲ供給シ得ルコトトナルノデゴザイ
マス、次ニ本法律案ノ規定ノ〓要ヲ御說明
申上ゲマス、揮發油ト「アルコール」ノ混用ヲ
圖リマスルニ付キマシテハ、揮發油ノ製造、
輸入又ハ移入ヲ業トスル者ガ揮發油ヲ庫出
セムトスル時ニ、其ノ揮發油ニ「アルコー
ル」ヲ混入セシムルコトト致シタノデゴザ
イマス、更ニ是等ノ混入義務者ヲシテ豫メ
混入計畫ヲ立テテ政府ノ認可ヲ受ケシムル
コトトシ、以テ「アルコール」混入ノ實施ヲ
確實ナラシメマスルト共ニ、「アルコール」
ノ生產トノ調和ヲ圖ラムトスル考デゴザイ
やっ、尙混入ノ割合ハ政府ニ於キマシテ大
體每年之ヲ定メテ〓示スルコトニ致シテ居
リマス、而シテ「アルコール」ヲ混入スベキ
揮發油ハ主トシテ自動車等ノ內燃機關ニ供
セラルルモノデゴザイマシテ、化學工業
用、航空機用、醫藥用、〓洗用其ノ他特殊
ノ用途ニ供セラレマスル揮發油ニハpar
コール」ヲ混入セシメナイコトニ致シマス
ル積リデゴザイマス、次ニ本法ハ「アルコー
ル混用制度ノ實施ヲ確保致シマスルガ
爲ニ、監督取締ニ關スル諸規定ヲ設ケテ
居ルノデゴザイマス、卽チ政府ハ揮發油ノ
製造、輸入又ハ移入ヲ業トスル者ノ混入
義務ノ履行ニ付テ、常時監督ヲ致シマシ
テ、確實ニ揮發油ニ「アルコール」ガ混入
セラルルコトヲ期シマストル共ニ、三一
「アルコール」ヲ混入致シマシタ揮發油カ
ラ、「アルコール」ヲ分離スルコトヲ一般ニ
禁止スルコトト致シテ居ルノデゴザイマス、
又他方「アルコール」ヲ混入スルコトヲ要シ
ナイ揮發油ニ付キマシテモ、其ノ使用販賣
其ノ他ノ取締ニ關シマシテ、適宜取締ヲナ
シ得ルコトト致シマシタ、更ニ右ノ中一般
ニ取引セラルヽモノニハ或一定ノ標準ヲ附
セシメマシテ、其ノ用途ニ付テ制限ヲ設ク
ルコトト致シテ居ルノデゴザイマス、以上
ガ本法律案ニ關スル說明ノ大要デゴザイマ
ス、何卒御審議ノ上御同意ヲ與ヘラレムコ
トヲ切ニ希望致シマスル次第デゴザイマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000007X00119370325&spkNum=4
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005・梅小路定行
○委員長(子爵梅小路定行君) ソレデハド
ウゾ御質疑ヲ願ヒマス······ソレデハ大藏省
ノ專賣局長官ノ荒井サンカラ尙御說明ガア
ルサウデゴザイマスカラ··発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000007X00119370325&spkNum=5
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006・荒井誠一郎
○政府委員(荒井誠一郞君) 只今大藏大臣
カラ法律案ヲ提案致シマシタ大體ノ理由ヲ
說明致シタノデアリマスガ、私カラ此ノ法
律案ノ內容ニ亙リマシテ、少シク詳細ニ御
說明申上ゲタイト思ヒマス、此ノ度専賣ト
致シマスル「アルコール」ハ所謂「エチール·
アルコール」デアリマシテ、「メチール·ア
ルコール」ハ之ヲ包含致サナイコトニ致シ
テ居リマス、尙「アルコール」ヲ多分ニ含ンデ
居リマシテモ、香料、化粧料、藥品等ニ付
キマシテハ之ヲ除外致シテ居リマス、又「ウ
イスキー」トカ「ブランデー」等ノ如ク飮料
用ニ供セラルヽモノモ此ノ中ニハ入ラナイ
ノデアリマス、サウシテ專賣法ノ適用ヲ受
ケマスル「アルコール」ハ、「アルコール」分
九十度以上ノ「アルコール」ト云フコトニ致
シテ居リマス、九十度ト致シマシタノハ、
所謂高度「アルコール」度ノ高イ「アル
コール」ヲ專賣ニ致スコトヲ云フノデアリマ
ス、之ニ入リマスモノハ先程說明致シマシ
タ如ク、燃料用、工業用、藥用等ニ供セラ
レル「アルコール」ヲ包含スルモノデアリマ
ス、而シテ飮料用ノ「アルコール」、燒酎等
ハ此ノ専賣法ノ適用ヲ受ケナイコトニナツ
テ居ルノデアリマス、而シテ是等ニ付キマ
シテハ酒造稅法又ハ酒精及酒精含有飮料稅
法ノ適用ガアリマシテ、ソレニ依ッテ相當ノ
稅金ヲ賦課スルト云フコトニナッテ居リマ
ス、尙茲ニ專賣ノ目的トナリマスルテル
コール」ヲ用途ニ從ヒマシテ說明致シマス
ルト、先ヅ第一ガ揮發油混入用ノ「アル
コール」デアリマス、揮發油ニ混入致シマシテ
燃料ニ使用セラルヽ「アルコール」ハ所謂無
水「アルコール」ト申シマシテ、九十度以上
ノ「アルコール」ニ限ラレテ居ルノデアリマ
スガ、現在陸軍、海軍等ニ於キマシテ之ヲ
使用サレテ居ルノデアリマス、今日是ガ生
產ヲ爲シテ居リマスモノハ、昭和酒造株式
會社其他一二ノ極ク少數ノ製造者ガアルノ
デアリマシテ、其ノ需要ハ今日極メテ少額
デハアリマスガ、昭和十三年度カラ「アル
コール」混用法ノ施行サレタ後ニハ多量ノ
需要ヲ生ズルコトニナルノデアリマス、從ッ
テ政府ニ於テ之ヲ製造シ、又民間ニ於テモ
之ヲ委託製造セシムルノ外、臺灣等ヨリ相
當數量ノ移入ヲ仰グ方針ニ致シテ居リマス、
サウシテ此ノ「アルコール」ハ揮發油ノ精製
業者、又ハ揮發油ノ輸入業者等ニ直接賣渡
シテ、是等ノモノガ揮發油ヲ賣渡シク際
ニ、「アルコール」ヲ揮發油ニ混入サセルノ
デアリマシテ、其ノ賣渡價格ハ、現在ノ所
デハ揮發油ノ市價ト同一ノ價格ヲ以テ賣渡
ス計畫デアリマシテ、是ガ爲ニ揮發油卽チ
「ガソリン」ノ市價ヲ高クシナイコトニ致シ
テ居ルノデアリマス、其ノ揮發油ニ混入ノ
爲メ「アルコール」ヲ賣渡ス時期ハ、先程商
工當局カラ御話ガアリマシタ通リ、昭和十
三年度カラ實施スル豫定ニナッテ居ルノデ
アリマス、次ニ工業用ノ「アルコール」デア
リマスガ、是ハ一般ニ九十四五度ノモノガ
使ハレテ居ルノデアリマス、內地ニ於ケル
生產ハ今日極メテ少量デアリマスガ、臺灣
南洋等ノ各製糖會社ガ糖蜜カラ之ヲ作リマ
シテ、年々十五六萬石ノ移入ヲ致シテ居ル
ノデアリマス、專賣制度ガ實施ニナリマス
レバ、是ハ一括致シマシテ政府ガ移入スル
コトニナルノデアリマス、其ノ他ノ「アル
コール」ハ藥用ニ供セラルヽ局方ノ「アル
コール」、、或ハ實驗用、燈火用等ニ使用セラル
ル各種ノ「アルコール」デアリマシテ、是モ
主トシテ臺灣ヨリ移入スルモノデアリマシ
テ、年消費額ガ約二萬石デアリマス、尙臺
灣、南洋カラ移入致シマス「アルコール」ハ、
主トシテ工業用ニ使用致シマシテ、從ッテ戾
免稅ノ取扱ヲ受クルノデアリマスガ、一部
ハ一般用ニ使用セラレテ課稅サレルノデア
リマシテ、從來ノ臺灣總督府、南洋廳ノ收
入トナッテ居リマシタガ、今囘一般會計及特
別會計間ノ調整ノ意味モアリマシテ、之ヲ
內地ニ於テ徵收スルコトト致シタノデアリ
やっ、其ノ金額ハ約三百六十餘萬圓ニ上ル
ノデアリマス、揮發油ニ混入致シマスル「ア
ルコール」ハ、原則トシテ政府ノ直營工場
ニ於テ製造スル計畫ヲ樹ッタノデアリマス
ガ、適當ト認メルモノガアリマスレバ、之
ニ一定數量ノ製造ヲ委託シマシテ、又國內
ノ生產不足ノ分ハ臺灣等ヨリ移入致スコト
ハ前ニ申述ベタ通リデアリマス、「アルコー
ル」ヲ揮發油ニ混入致シマスノニドノ位ノ
數量ガ要ルカト申シマスト、昭和十三年度
カラ始メマシテ、七年後ニ二割混用ヲ目標
ト致シマスト、昭和十九年度ニ於キマシテ
ハ「アルコール」ガ約二百三十餘萬石ヲ要ス
ルノデアリマシテ、內地ニ於キマシテハ大
體百六十萬石ノ製造ヲ行ハムトスルモノデ
アリマシテ、工場ハ十二年度ニ於キマシ
テ、只今ノ所五箇所程ノ工場ヲ建テマシ
テ、其ノ後ニ漸次增加致シマシテ參ル豫定
デアリマス、併シナガラ是ニハ原料關係ヲ
考慮致サナケレバナラナイノデアリマシ
テ、農林當局ニ於キマシテ、一方甘藷、馬
鈴薯ノ增產計畫ヲ樹テルコトニナッテ居ル
ノデアリマス、此ノ揮發油混入用ノ「アル
コール」ヲ作リマスル原料ハ、農村振興ノ
見地カラ成ルベク甘藷、馬鈴薯ニ致シマシ
テ、其ノ買上價格ヲ每年公示致シマシテ、
農會、產業組合等ヲ通ジマシテ買上ノ斡旋
ヲ爲サシムル方針デアリマス、而シテソレ
ガ計畫完成後ニハ多額ノ甘藷又ハ馬鈴薯ヲ
要スルノデアリマス、假ニ甘藷ダケト致シ
マシテ、百六十萬石ノ「アルコール」ヲ製造
致シマスルト、約五億三千萬貫、是ハ計算
方法ニ依ッテ色々變リマスガ、大體其ノ位ノ
數量ヲ要スルノデアリマス、又全部馬鈴薯
デ是ダケノモノモ作ルト致シマスト、約八
億二千萬貫ト云フ多量ノ數量ヲ要スルノデ
アリマス、此ノ兩者ヲ適當ニ使ヒマシテ、
是ガ製造ヲ爲ス計畫デアリマス、而シテ其
ノ增產ハ然ラバ如何ニスルカト申シマスル
ト、甘藷馬鈴薯等ニ付キマシテ、農林省當局
ニ於テ品種ノ改良、或ハ耕作方法ノ改善、或
ハ他ノ作物ヲ一部轉換スル、又未開墾地ヲ
開墾スルト云フコトニ依リマシテ、增產計
畫ヲ樹テマシテ、所要數量ヲ確保スル見込
デアリマス、最初ノ昭和十二年度ニ於キマ
シテハ、貯藏及製造等ノ技術上ノ關係カラ
致シマシテ、甘藷ヲ原料トスルノデアリマ
スガ、十三年度以後ニ於キマシテハ、馬鈴
薯モ原料トシテ製造スルコトニ致シタイト
云フ計畫ヲ有ッテ居ルノデアリマス、是ガ
「アルコール」ノ製造法モ色々方法ガアリマ
スデスガ、是ハ技術的方面ニ亙リマスノ
デ、此處ニハ省略致スコトニ致シマスガ、
何レ御質問ガアリマスレバ、ソレニ應ジマ
シテ專門家カラ說明致サセルコトニ致シマ
ス、政府デ此ノ「アルコール」ヲ製造スルコ
トニ致スノデアリマスルガ、併シ此ノ「ア
ルコール」工業ハ今後ニ於キマシテ進步ノ
途上ニアルノデアリマスカラ、是ガ民間ニ
於キマシテ試驗的ノ製造ヲ致スト云フ場合
三、是ハ其ノ製造ヲ許可スルコトニ致シ
マシテ、民間ニ於ケル〓究ヲ出來ルダケ促
進スルト云フコトニ致シテ居ルノデアリマ
ス、又其ノ新規ノ製造方法ガ成功シマシ
テ、民間ニ於テ有利ニ製造シ得ル場合ハ政
府ニ於テ其ノ「アルコール」ノ製造ヲ民間ニ
致シ得ルコトニ致シテ居ルノデアリマス、
「アルコール」ノ專賣ニ付キマシテ、此ノ無
水「アルコール」等ハ之ヲ「ガソリン」ノ價格
ト同一價格ニ致シテ賣渡ス豫定デアリマス
ルガ、今日「ガソリン」ノ價格ガ五十一錢
程デアリマスルガ、消費稅、關稅等ノ此
ノ度ノ增徵ニ依リマシテ十錢程價格ガ
高クナルコトヲ豫定シテ居ルノデアリ
マく、是ハ小賣價格デアリマスルガ、其
ノ價格デ政府ガ「アルコール」ヲ賣リマスレ
バ、尙當業者ニ於キマシテ損失ヲ生ジマス
ルノデ、大體五十四錢程度デ賣渡シタイト
考ヘテ居ルノデアリマス、是ハ一「ガロンㄴ
ノ價格デアリマスガ、サウ致シマスト此ノ
燃料用「アルコール」ノ賣渡ニ依リマシテ、
「ガロン」十四錢餘ノ損失ヲ生ズルト云フ
コトニナルノデアリマス、サウシテ普通ノ
「アルコール」、工業用「アルコール」ノ戾稅
等ニ依リマシテ收益ガナイノデアリマスル
ガ、一般ノ「アルコール」ニ付キマシテハ、是
ハ稅金ハ同ジ利益ヲ加算シテ賣渡スノデア
リマシテ、一度當リガ今日ノ稅金ガ一圓八
十錢ト云フコトニナッテ居リマスガ、是ガ二
割增徵ニナリマスノデ二圓十五錢ノ益金ヲ
附加シテ賣渡スコトニ相成ルノデアリマ
ス、而シテ此ノ揮發油混入用「アルコールㄴ
ニ付キマシテハ先程述べマシタ通リ原價ヲ
切ッテ賣ルノデアリマシテ、政府ニ於キマシ
テ相當ノ損失ガ生ズル計算ニナッテ居ルノ
デアリマス、是ハ賣渡ス數量ニ依ルノデア
リマスルガ、昭和十三年度ニ於キマシテハ
二百萬圓餘ヲ燃料用「アルコール」ノ賣渡ニ
依ッテ損失ヲスルノデアリマス、尙賣渡數量
ノ增加ニ伴ヒマシテ損失ハ漸次增加スルコ
トニ相成ッテ居リマス、併シナガラ一方ニ於
キマシテ「アルコール」ヲ內地デ生產シマシ
テ之ヲ燃料ニ致シマスレバ、國際貸借ノ改
善ノ上カラ見マシテモ極メテ有利デアリマ
スルシ、又燃料政策ノ見地カラ致シマシテ
モ、燃料ノ自給ト云フコトヲ考ヘマスレ
バ、損失ヲ負擔致シテモ此ノ仕事ヲ完成致
サナケレバナラヌト云フ考ヲ以チマシテ之
ニ著手スル次第デアリマス、尙御質問ガア
リマスレバ御答ヘ致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000007X00119370325&spkNum=6
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007・梅小路定行
○委員長(子爵梅小路定行君) ソレデハ御
質問ノアル方ハ願ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000007X00119370325&spkNum=7
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008・柴田善三郎
○柴田善三郞君 質問ニ先立チマシテ政府
カラ參考ニ更ニ進ンデ御說明願ヘルコトガ
アレバ、一ツ願ッテ戴ケバ結構ダト思ヒマ
ス、今何カ技術上ノ點トカ云フヤウナ御話
モアッタデスガ、我々素人デハサッパリ分ラ
ナイノデスガ···発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000007X00119370325&spkNum=8
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009・梅小路定行
○委員長(子爵梅小路定行君) 何カ承ッテ
置ク方ガ頗ル便利ナヤウナコトガゴザイマ
シタラ御說明願ッテ置キタイト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000007X00119370325&spkNum=9
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010・荒井誠一郎
○政府委員(荒井誠一郞君) 此ノ液體燃料
ノ自給ノ方法ト致シマシテ、一方デ石炭液
化其ノ他人造石油工業ニ付キマシテ法案
ガ提出ニナッテ居ルノデアリマスガ、此ノ方
ニ付キマシテハ商工省ノ方カラ御話ガアッタ
方ガ御了解シ易イト思フノデアリマス、之
ニ伴ヒマシテ此方ノ「アルコール」ノ混用ト
云フコトヲ計畫致シテ居ルノデアリマスル
ガ、是ハ法律ノ點カラ申シマシテ「ガソリ
ン」ニ對シテ二割程度ノ混用ト云フコトガ
最モ宜シカラウ、ソレ以上ニナリマスルト
色々ノ故障ガアリマスルノデ、今日ハ之ガ
行ハレナイノデアリマス、サウシテ九十九
「パーセント」以上ノ無水「アルコール」ト云
フコトニナッテ居ルノデアリマスルガ、併シ
九十九「パーセント」以下ノモノニ付キマシ
テモ、安定劑ヲ入レマスレバ之ガ「ガソリ
ンニ混ゼラレルト云フコトノ見込モ付イ
テ居ルノデアリマス、是ハ將來石炭液化工
業ガ發達致シマスレバ、ソレニ應ジマシテ
安定劑ノ生產ガ出來ルト思フノデアリマス、
其ノ時ニナリマスレバ或ハ無水「アルコー
ル」ト云フモノマデ造リマセヌデモ、普通出
來マスル九十四五度迄ノ「アルコール」ト云
フモノヲ造リマスレバ、之デ目的ヲ達スル
コトニナルト思ハレマス、今日九十四五
度ノモノニ、更ニ其ノ脫水塔ト云フモノ
ヲ付ケマシテ水分ヲ拔キマシテ、九十九度
以上ノ「アルコール」ヲ造リマシテ、ソレ
ヲ「ガソリン」ニ混ゼル、水分ガ多クナリマ
スルトダク〓〓致シマシテウマク混ザラナ
イノデアリマス、ソレヲ混ゼル爲ニ無水ニ
致ス裝置ヲ致シテ居ルノデアリマス、ソレ
カラ尙其ノ方法等ニ付キマシテハ技術官カ
ラ說明ヲ致シマス、又「アルコール」ヲ製造
致シマスル原料ト致シマシテモ只今甘蔗、
馬鈴薯ト申シマシタガ、是ハ木材カラ造ル
「シヨラー」法ト云フ方法モアリマスルシ、
又普通ノ蒸餾法ニ依リマシテモ甘藷、馬鈴
薯以外ニ菊芋或ハ玉蜀黍等ノ原料モ使用ス
ルコトニ承知致シテ居ルノデアリマス、技
術上ノ事ニ付キマシテ技術官ガ來テ居リマ
スカラ、モウ一應詳細ニ申上ゲテ置キタイ
ト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000007X00119370325&spkNum=10
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011・梅小路定行
○委員長(子爵梅小路定行君) 今關係政府
委員カラ技術上ノ問題ニ付テ說明ヲスルト
云フコトデゴザイマスガ宜シウゴザイマス
カ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000007X00119370325&spkNum=11
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012・梅小路定行
○委員長(子爵梅小路定行君) ソレデハド
ウゾ御願ヒシマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000007X00119370325&spkNum=12
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013・黒野勘六
○說明員(黑野勘六君) 「アルコール」ノ製造
方法ニ付キマシテ、大體〓略此處デ御話申
上ゲマス、「アルコール」ノ製造方法モ色々
ゴザイマスルガ、又原料ニ於キマシテ大體
三ツニ分ツコトガ出來ルノデアリマシテ、
第一ハ砂糖ヲ含ンデ居ルモノヲ原料ニ致シ
マス含糖原料ヲ普通使ヒマスノガ、臺灣ナ
ゾニ使ッテ居リマス甘藷砂糖大根、砂糖ヲ造
リマス原料ヲ、其ノ廢液デアリマストカ云
フモノヲ原料ニ使フノデアリマス、是ハ最
モ簡單デアリマシテ、直グ樣「アルコール」
ノ酵母ニ加ヘマスト、「アルコール」ニ變リ
マスカラ、ソレヲ直グ蒸餾スレバ宜イ譯デ
アリマス、モウ一ツノ方ハ澱粉ヲ含ンデ居
リマスル原料、穀類デアリマストカ、薯類
デアリマストカ、澱粉ヲ含ンデ居レバ、何
デモ宜シウゴザイマス、ソレヲ糖化シマス、
砂糖ニ變ヘマシテ、サウシテ「アルコール」
ヲ醱酵サセマス方法、是ハ砂糖ニ變ヘマス
手段ガ色々アリマスノデ、從來燒酎會社ナ
ドデヤッテ居リマスル麴法ト申シマシテ、丁
度オ酒ヲ造ルトカ、醤油ヲ造ルトカ、從來
ヤッテ居リマスル我ガ國在來ノ麴菌ヲ使ヒ
マシテ、ソレヲ糖化スル、丁度「ヂアス
ターゼ」ヲ變ヘルヤウニヤリマスレバ、ソレ
ヲ起サセマスカラ、丁度二段ニナリマス、
尙一ツノ方法ハ木材ノ纖維質、マア藁ダト
カ稻ダトカ、色々ノ鋸屑ダトカ、澱粉ヲ含
ンデ居リマセヌケレドモ、纖維素ト云フモ
ノヲ含ンデ居リマスルモノハ、元々是ハ砂
糖カラ出來タモノデアリマスカラ、之ヲ分
解シマシテ、砂糖ニ變ヘルコトガ出來ルノ
デアリマス、サウシテ之ヲ更ニ醱酵サセル
ト云フ方法ガアルノデアリマス、其ノ內デ
ドレガ宜イトカ惡イトカト云フヤウナ區別
ハ付カナイノデアリマシテ、要スルニ、其
ノ原料ガ最モ得易イ、地ノ理ヲ得タル所ニ
於キマシテハ、何レモ是ガ適スル譯デアリ
マス、大部分ハ「アルコール」ノ製造ノ主要
ナ原價ヲ占ムルモノハ原料デアリマスカラ、
原料ノ値段ノ廉イ所デアリマスレバ、ドレ
デモ宜イ譯デアリマス、ソレデ只今專賣局
ノ方デ差當リ著手シマスノハ農村ニ薯類ヲ
作ラセマシテ、ソレヲ原料トスル方法ニナッ
テ居リマス、此ノ薯類ハ甘藷デモ馬鈴薯デモ
何デモ宜シウゴザイマス、要スルニ、澱
粉含量ニ對シマシテ値段ガ廉イ程宜イト云
フノデアリマシテ、製造シマスル仕事上テ
ハ難易ハゴザイマセヌ、是モ從來ノ麩デヤ
リマスル方法ハ副原料トシマシテ、麴ヲ造
ルノニ麩デゴザイマストカ、籾穀ト云フヤ
ウナモノヲ使ヒマスノデ、其ノ加工ノ賃金
等ヲ入レマスト、一石ノモノニ對シテ約三
圓五六十錢掛カルノデアリマシテ、今度其
ノ方ヲ止メマシテ、「アミロ」法ト云フ方法
デヤルコトヲ計畫シテ居リマス、「アミロㄴ
法ト云フノハ、「アミロ」菌ト云フ特殊ノ黴
ヲ使ヒマシテ、直接ニ穀類トカ薯ヲ煮タ液
ノ中ニ加ヘテ培殖サセルノデアリマシテ、
非常ニ精密ノ仕事ヲヤラナケレバナリマセ
ヌケレドモ、其ノ代リニ副原料ガ入リマセ
ヌカラ、一石ニ對シテ五六十錢位アレバ先
ヅ間ニ合フト云フヤウナ風ニナッテ居リマ
ス、ソレカラ尙此ノ木材ヲ原料トシマス製
造ノコトニ付キマシテ申上ゲマスルト、是
ハ何デモ朝鮮ニ於テ著手スルトカ云フ話デ
アリマスルガ、此ノ木材質ヲ砂糖ニ變ヘマ
ス方法ガ、酸類デ之ヲ處理スルノデアリマ
スガ、酸ヲ加ヘマスト、砂糖ニ變ルト云フ
コトハ、百二三十年前、千八百十九年頃モウ
旣ニ「フランス」ニ於テ發見サレテ居ルノデ
アリマス、唯之ヲ工業化シマスルノニ、機械
設備ガムツカシイノデアリマシテ、酸類ノ
爲ニ腐リマスルカラ、サウ云フ工業的ノ應
用ガ今迄ニウマク行カナカッタ爲ニ、大變後
レテ居ッタノデアリマス、此ノ頃方々デ良イ
機械ガ出來タヤウデアリマスガ、「シヨウ
ラー」法モ其ノ一ツデアリマシテ、「シヨウ
ラー」法ト申シマスノハ、出來ルダケ薄イ
酸デ處理スルト云フヤウナ方法デアリマシ
テ、〇·五「パーセント」位ノ硫酸ヲ使フノ
デアリマス、薄イ酸デアリマスル代リニ溫
度ヲ非常ニ高クシナケレバナラヌ、從ッテ壓
力ヲ高クシナケレバナラヌ、百七十(おもし)
ド」、百八十「ポンド」位ノ壓力デ攝氏百六十
度カラ百七十度ノ高溫デ處理シマスルト、
酸ガ薄クッテモ砂糖ニ變リマス、大變ウマ
ク行キ出シタト云フ話デアリマシテ、是デ
ヤリマスト、百「キロ」ノ乾燥木材カラ二十
三四「リットル」ノ無水「アルコール」ガ取レ
ルヤウニナッタト云フコトデアリマス、是
ハ「ドイツ」ノ專賣局デ盛ンニ〓究シテ居リ
マスルシ、最早實用化シタラシイノデアリ
やく、ソレカラ其ノ次ニ又「ベルギウス」
ノ方法ト云フノガ出來テ居リマスガ、是ハ
其ノ原理ハ古イノデアリマシテ、是ハ濃イ
酸ヲ使フノデアリマス、薄イ酸デヤリマス
ト、溫度ヲ上ゲナケレバナリマセヌノデ、
出來タ砂糖ガ更ニ分解シテシマフノデ、
ソレデ大變收量ガ惡イト云フ爲ニ、濃厚
ナ酸ヲ使ヒマスト、高イ溫度デ熱シナクテ
モ、普通ノ室溫ヨリ少シ高クスル位デ、木
材質ガ砂糖ニ變リマス、現在デハ四十コパ
トセント」ノ濃鹽酸ヲ使フ、是ハ大變砂糖
ガ能ク取レマシテ、殆ド理論數ニ近イダケ
木材質ノ全部ガ砂糖ニ變リマス、トコロガ、
此ノ方法ハ工業化スルノニモウ數十年間モ
手間取ッタ譯デアリマシテ、ナゼカト申シマ
スト、非常ニ濃イ鹽酸ヲ使ッテ行キマスルガ
故ニ、腐ラナイヤウナ機械ガナカ〓〓出來ナ
カック、勿論「タンタラム」ダトカ、白金ダト
カ云フモノハ濃鹽酸デ何ントモアリマセヌ
ケレドモ、ソレハモウ工業機械ヲ造ルト云
フコトハ、到底サウ云フ貴金屬デハ出來マ
セヌ、其ノ内燒物、陶器類、磁器類ハ酸ニ
侵サレマセヌノデ、ソレヲ試ミテ漸ク工業
化シタ譯デアリマス、是デスト、濃厚ナ酸
ヲ囘收シナケレバナリマセヌノデ、ソレガ
問題ニナルノデ、前使ッタ鹽酸ヲ全部囘收シ
テ、又繰返シ〓〓使ッテ行カナケレバ、迚モ
引合ヒマセヌカラ、迚モサウ云フ手段ヲ取
ル爲ニハ、燒物デハ御承知ノ通リ、眞空蒸
餾ナドヲスル時ニ迚モ壓力ニ堪ヘナイ、破
裂スルノデ困ッタノデアリマスガ、最近濃鹽
酸デモ侵サレナイヤウナ鐵ヲ「バルガナイ
ズ」スルトカ、「ゴム」ヲ塗ルトカ云フコト
ガアルヤウデスガ、ソレガ祕密ニナッテ居ル
ヤウナコトデアリマシテ、私共ガ體驗シタ
コトデハアリマセヌ、書物ヤ雜誌ノ報告ヲ
見ルノデアリマス、ドンナ鐵ヲ使ッテ居ル
カ、ハッキリ分リマセヌガ、サウ云フ機械ガ
出來タ爲ニ、「ベルギウス」ノ方法ハ一番良イ
方法ニナッタト云ッテ居リマス、是ハ「シヨ
ウラー」法ヨリマダ十「リットル」モ餘計取
レマス、百「キロ」ノ木材カラ三十三「リット
ル」迄ハ無水「アルコール」ガ取レルト云フ
コトニナッテ居リマス、實際是ハ「ドイツ」
デ今ドウ云フ風ニ使ッテ居リマスカト云フ
ト、非常ニ濃イ砂糖ガ取ラレマスノデ、食用
ノ砂糖ヲ造ルト云フコトニ主ニ使ハレテ居
ルヤウデアリマス、「シヨウラー」法ノ方ハ
「アルコール」專門デ、「ベルギウス」法ハ〓
用ノ砂糖ヲ造リ、其ノ外非常ナ副產物ヲ色
色取ッテ居リマスガ其ノ結晶シテ出マス砂
糖ヲ取ッタ後ノ滓ヲ「アルコール」ニシテ、
政府ニ納メテ居ルト云フヤウナ風ニ報告サ
レテ居リマス、其ノ數量モ比較的多クアリ
マシテ、昨年ノ暮頃マデニハ何デモ十工場
バカリ大キナ工場ガ出來テ、ソレガ政府ノ
所屬ニナルンダト云フ報告ヲ受ケテ居リマ
ス、斯樣ナ風デ、我ガ國デ今ドレガ一番宜
イカト云フヤウナコトハチヨット言ヘマセ
ヌノデ、差當リ最モ農村デ薯ヲ作ラシテヤル
ト云フ方法ガ手取リ早イノデアリマシテ、
ソレカラ著手スル、「シヨウラー」法トカ、
「ベルギウス」法ト云フモノハ皆特許ニナッテ
居リマスシ、體驗者モアリマセヌ、私共ノ
方デハ、日本デ之ヲ體驗シタ人ハ事實一人モ
ナイノデアリマシテ、皆雜誌トカ云フモノ
デ見テ居ル位ノモノデアリマス、ダカラ、
特許ヲ買ハナケレバ、後デ詳シイ圖面ヲ見
セテ吳レナイト云フコトニナッテ居リマス
カラ、段々私共ノ方デモ今調査ハシテ居リ
マス、其ノ原料ノアル所ニ於キマシテハ、
色々ナ方法ヲ調査シタ上ニ行ヒタイト思ヒ
いく、ソレカラ無水酒精ニシマスノハ、普
通ノ「アルコール」ノ製造ノ工程トチヨット
違フダケデアリマシテ、普通ノ「アルコー
ル」製造デハ九十四五「パーセント」ノ「アル
コール」ガ出來マスガ、トコロガ、ソレヲ無
水卽チ九十九·八位マデニ、殆ド無水ノ狀態
ニシマス爲ニ、又之ニ色々ナ方法ガ發見サ
レテ居リマシテ、各國擧ッテ、今矢張リ石油
ノ無イ國デハ一生懸命ニ競爭シテ、新シイ
〓究ヲ續ケツヽアルノデアリマシテ、只今
有名ニナッテ居ル方法トシマスト、「フラン
ス」ノ「メール」法ト云フノガゴザイマス、是
モ段々改良サレマシテ、第一形式カラ第四
形式マデナッテ居リマス、是ハ「ベンゾール」
脫水劑ニ使ハレテ居リマス方法デ、石炭ノ
使用量ハ最モ少イ方法ダト言ハレテ居リマ
ス、ソレカラ續イテ「ドイツ」デ廣ク行ハレ
テ居リマス「ヒヤーグ」法ト云フモノガアリ
マス、是モ大變良イ方法ダト云フコトデア
リマス、大分盛ニ廣ク各處デヤッテ居リマ
ス、「ヒヤーグ」法ト申シマスノハ、其ノ含
水酒精ノ鹽類、醋酸曹達デゴザイマストカ、
或ハ醋酸加里、ソレカラ鹽化石灰ト云フヤ
ウナ「アルコール」及ビ水、兩方ニ溶ケル
ヤウナ、サウシテ水ヲ能ク吸收スルヤウナ
モノノ鹽類ヲ、何デモ宜イデスガ、澤山サ
ウ云フ種類ノモノガアリマスガ、固形
體ヲ使ヒマシテ、脫水スルノデアリ
マス、是モ特許ニハナッテ居リマスガ、是非
將來サウ云フ方法モ試ミテ、比較シタイト
ハ思ッテ居リマス、ソレカラ此ノ頃「ドイツ」
デ盛ニヤッテ居リマス「ドラビノール」法ト
云フモノガゴザイマス、日疋ハ「ベンゾール」ヲ
使ヒマス代リニ、「ドラビノール」ト云フ藥
品ヲ使フノデアリマス、「ドラビノール」ト
申シマスノハ、藥品ノ「コンコーシヤル·
ネーム」デアリマシテ、本名ハ、學名ハ「トリ
クロール·エチレン」ト申シマス藥品デアリ
マス、是ハ「ベンゾール」ヨリモ「アルコー
ル」ガ僅カデ、分離點ガ溫度ガ比較的高イ
ノデ、サウ冷クシナクトモ、能ク液ガ分離
シマスト云フコトト、「ベンゾール」ハ燃エ
ナイ性質ノモノデアルカラ危險性モ少イ、
ソレカラ御承知ノ通リ、「ベンゾール」ト云
フモノハ瓦斯工業ノ副產物「コールタール」
カラ分離シテ、造ルモノデアリマシテ、マ
ダ合成的ノ「ベンゾール」ヲ造ルト云フコト
ガ工業化シテ居リマセヌノデ、比較的合成
品ト云フモノハ高ク附クノデス、ソレデ生
產ガ少ウゴザイマス、又燃料藥品其ノ他非
常ニ用途ノ多イモノデゴザイマスルカラ、
多量ニ之ヲ使フト云フコトガ出來ナイノデ
アリマス、トコロガ「トリクロール·エチレ
ン」ノ方ハ他ノ用途ガ餘リアリマセヌ、普
通「ガソリン」トカ云フヤウナ油ノ溶劑ニ引
火性ノナイ溶劑ヲ使フ爲ニ、斯ウ云フモノ
ガ發見サレタノデアリマス、其ノ製造方法
モ頗ル簡單デアリマシテ、原料ハ矢張リ
「カルシウム·カーバイト」ニ水ヲ加ヘテ「ア
セチレン」瓦斯ヲ造リマシテ、ソレニ矢張リ
今曹達工業ダトカ云フ所デ鹽素瓦斯ガ排出
シテ出來マシテ、其ノ鹽素瓦斯ヲ「アセチ
レン」ニ化合サセレバ宜イノデアリマスガ、
電氣サヘアリマスレバ、我ガ國ナドデモ比
較的廉ク需要サヘアレバ、幾ラデモ出來ル
ト云フヤウナ狀態ニアルノデアリマス、「ド
イツ」デハ殆ド今ハ「ベンゾール」法ハ無ク
ナリマシテ、皆「ドラビノール」法ニ變ッタ
サウデアリマス、私共ガ企テヽ居リマスノ
モ、成ルベク「ドラビノール」法デヤラウト
思ッテ居リマス、同ジ機械デ「パイプ」ノ繫
ギ方ヲ少シ變ヘマスレバ「ベンゾール」デモ
ドッチデモ行ケルノデアリマスガ、成ルベク
「ドラビノール」法デヤッテ行カウト考ヘテ
居リマス、マア製造方法ノアラマシト云フ
ト、大體其ノ位ノコトデゴザイマス、尙御
質問ガゴザイマシタラ御答ヘ致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000007X00119370325&spkNum=13
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014・土岐章
○子爵土岐章君 幸ヒ技術ノ方ガ居ラレマ
スカラ、伺ヒマスガ、私ハ餘リ詳シイコト
ハ存ジマセヌケレドモ、「アルコール」ノ工
業ニ付テハ基礎ハドウシテモ技術ガ基ニナ
ラナケレバナラヌト考ヘマス、從ヒマシテ、
政府トシテ之ヲ專賣ニサレルト云フコトニ
付テハ、恐ラク詳細ナル御〓究ガアッタコ
トト考ヘルノデアリマス、トコロデ、今ノ
御說明ニ依リマスト云フト、農村ノ問題ト
關聯シテ、工場ヲ御造リニナルト云フコト
デアリマスガ、今日工場ヲ造ラレルニ付テ
ハ、先程モ政府當局カラモ御說明ガアリマシ
タ所ニ依リマスト、先ヅ五箇所ヲ造ラレル
ト云フコトデゴザイマスガ、「フランス」、
「ドイツ」其ノ他デハ精餾ヲスル工場ヲ先ヅ
特別ノ場所ニ造ッテ、普通ノ蒸餾ヲスル工場
ハ、農家ノ比較的便利ナ場所ニ各處ニ造ツ
テ、サウシテソレヲ買集メテ蒸餾スルト云
フコトヲヤッテ居リマスガ、其ノ方法ト今度
日本ノ政府ニ於テ計畫サレル一箇所ニ完全
ナ工場ヲ造ルト云フコトニ付テノ採算上ノ
御計算ハドウ云フコトニナッテ居ルノデア
リマスカ、恐ラク後者ノ方ガ採算ガ良イト云
フコトデ、御始メニナッタコトト考ヘマス
ガ、勿論此ノ專賣法ラ設定サレルニ付テハ
軍事上其ノ他ノ關係カラ御出發ニナッタコ
トト考ヘマスカラ、「ドイツ」等ニ於テハ歐
洲戰爭ノ時ニハ運送ト云フコトガ大キナ問
題ニナッタノデアリマシテ、從ッテ一朝有時
ノ際ニハ、其ノ運送等ノ關係カラニロッテ、貨
車等ノ缺乏ヲ生ジマシタカラ、十分ニ御〓
究ヲナサレルコトガ必要デアルト考ヘマス、
從ッテ工場設置ニ付テモ、是等ノ條件ヲ御考
ヘニナッテヤラレタコトト考ヘマスガ、ソレ
等ニ付テノ御〓究ハドウ云フコトニナッテ
居リマスカ、其ノ點ニ付テノ御說明ヲ願ヒ
マス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000007X00119370325&spkNum=14
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015・黒野勘六
○說明員(黑野勘六君) 私ノ調ベマシタ範
圍內デハ、歐洲大戰ノ時分ニ「フランス」デ
モ「ドイツ」デモ火藥ノ製造原料及毒瓦斯ヲ
造リマス原料デ、「アルコール」ガ非常ニ政
府ニ必要デアッタト云フノデ火藥局デ無暗
ニマア奬勵シマシテ、其ノ頃ハ無水酒精ナ
ント云フモノハ無イ時代デアリマシタノ
デ、普通ノ酒精ヲ廣ク造ラシテ、高ク買上
ゲテ居リマシタトコロガ戰ガ濟ミマシテ、
ピタット「アルコール」ガ不必要ニナッテ來マ
シテ、ソレデ農家トカ方々ニ何處デモ「ア
ルコール」ヲドンドン造ラシテ居リマシタ
「アルコール」ガ暴落シマシテ、立行カナイ
ヤウニナリマシタ、サウシマスト、又政府
ニ嘆願シテ來マシテ、政府デハ其ノテル
コール」ヲ製造シテ居ル業者ヲ救濟スル爲
ニ、何トカ「アルコール」ヲ買上ゲテヤラナ
クチヤナラヌ、ソレニハ已ムヲ得ズ是ハマ
ア「ガソリン」ノ代用ニスルヨリ仕方ガナイ
ト云フヤウナ風ナ出發點カラ、無水酒精ノ
製造ト云フヤウナコトガ起リマシテ、其ノ
無水酒精ノ設備ハ、皆有タヌノデアリマス
カラ、サウ云フ小サイ「アルコール」會社ノ
「アルコール」ヲ損ノ行カヌヤウニ買上ゲマ
シテ、政府ハ其ノ損失ヲ別ノ飮料用ノ구
ルコール」トカ、「ガソリン」ノ輸入稅トカ
ト云フヤウナモノデ「カバー」ヲスルヤウニ
シテ、政府ハ其ノ「アルコール」ヲ買上ゲマ
シテ、サウシテ精製工場ニ集メテ、ソレヲ
無水酒精ニ精製シマシテ、サウシテソレヲ
一割トカ二割ト云フヤウナ風ニ「ガソリン」
ノ代用ニ强制的ニ使ハセルト云フヤウナ風
ニ發達シタヤウニ記載セラレテ居ルノデア
リマシテ、初メカラ計畫的ニ小サイ工場ヲ
各地ニ政府ガ造ッテ薄イ「アルコール」ヲ造
ラシタコトハナイヤウデス、ソレデ私共モ
初メ特ニ是ハ農林省ノ方ノ御希望モアリマ
シタモノデゴザイマスカラ、產業組合トカト
云フヤウナ所ニ小サイ「アルコール」製造ヲ
ヤラセマシテ、サウシテ其ノ薄イ「アルコ
ール」ヲ一箇所ニ買集メテヤルト云フヤウ
ナコトモ行ハレハセヌカトモ思ヒマシテ、
色々計算ヲシテ見マシタトコロガ、ドウモ
新シク造ルモノトシマシタナラバ、ソンナ
ニ小サイ工場ガ幾ツモ出來マシテハ、先ヅ
人件費ガ掛カル、ドウモ矢張リ是ハ或程度
マデハ技術者ガイナイト、農民ノ組合員ア
タリデハ出來マセヌシ、又人件費以外ニ大
變燃料ガ損ヲスルコトニナルノデス、今入
無水酒精ヲ造リマスモノハ一石ニ對シテ石
炭ハ何十「キロ」要ルト云フヤウナ僅カナ所
ヲ爭ッテ競爭スル、サウヤッテ「コスト」ヲ下
ゲヨウト各國競爭ヲシテ居ル次第デゴザイ
マシテ、更ニ始ムルトシマスルト、矢張リ
大規模デヤル程燃料ガ少クテ濟ミマス、又
一旦中央デ下ロシマシタ「アルコール」ガ冷
クナッテ、更ニゴッチデ蒸餾ヲ始メナケレバ
ナリマセヌガ、連續的ニヤリマスト云フ
ト溫カイヤツガ直グ脫水シテ行キマスノ
デ、モウソレカラ見マシテモ、石炭ノ燃料
ガ大變ニ得ガ行クノデアリマス、ソレ等カ
ラ考ヘマシテ、技術上トシマシテハ別ニ外
ニ考ヘナカッタノデスガ、サウ云フ考カラ、
人件費、燃料費ノ節約ト云フ點カラ或程度
マデハ大キイ工場ニシテ戴カヌト、何分「コ
スト」ガ高クナッテ、政府ノ損害ガ多クナル
ト云フヤウナ考デ取止メタノデアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000007X00119370325&spkNum=15
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016・土岐章
○子爵土岐章君 次ニ伺ヒマスガ、只今外
國ノ例ヲ色々御說明ニナリマシタガ、日本
デハ今度ハ新シク農村對策ト云フコトノ問
題ガ大ナル重點トシテ計畫サレルト云フコ
トハ、先程モ御說明ガゴザイマシタガ、私
モ元來カラ農村ノ生產デアルトコロノ穀類、
其ノ他馬鈴薯、甘藷等ノ用途ハ我々ノ主要
食物デアリマスノデ、從來米穀ノ問題等ガ
起ッタ場合ニモ、「アルコール」原料ニ使ヒ得
ルモノハ、平時ニ於テ之ヲ「アルコール」原
料ニ使ッテ一朝有事ノ際ニ有無相通ズル、食
料トシテ、又工業原料トシテモ利用シ得ル
ヤウナ、大キナ値幅ノアルヤウナ計畫ヲ立
テルコトガ、農村對策上宜イノデハナイカ
ト云フヤウニ私ハ考ヘテ居ッタノデアリマ
ス、幸ニ此度燃料問題カラ一ツノ我ガ國ノ
食料品ノ太宗デアルトコロノ穀物或ハ薯類
ヲ此ノ方面ニ利用セラレテ行クト云フコト
ハ、非常ニ結構ト考ヘルノデアリマスガ、
之ニ付テ或ハ甘藷或ハ馬鈴薯ト云フモノヲ
原料ニスル、取敢ズ甘藷ヲ原料ニスルト云
フコトデアリマスガ、衆議院ノ速記錄ヲ拜
見致シマスト、其ノ馬鈴薯ニ付テハマダ決
定シテ居ラナイヤウニ載ッテ居リマスガ、又
尙先程モ御說明ニゴザイマシタヤウニ、品種
ノ問題ト云フコトニ付テモ段々〓究スルト云
フコトデゴザイマスガ、此ノ原料ヲ利用サレ
ルニ付テハ、先ヅ大體甘藷デアリマスルガ、其ノ
甘藷ヲ使フニ付テハ今ノ所ドウ云フ品種ヲ
御利用ニナル御見込デアリマスカ、是ハ農
林省ノ方ニ伺ヒタイノデスガ、ドナタカ
ソレデハソレヲ後〓シニ致シマス、ソ
レカラ次ニ機械デアリマスガ、先程「ショ
ウラー」法、「ベルギウス」法ノ御說明ニゴザ
イマシタガ、蒸餾機ニ付テノ機械ハ內地產
ノモノデ總テ間ニ合フノデゴザイマスガ、
或ハ今日明治製糖、臺灣製糖其ノ他ノ從來
ノ「アルコール」工場ガ外國ノ品ヲ使ッテ居
ルモノニ對シテ全ク內地產ノ機械デ間ニ合
フト云フ政府ノ御腹デアリマスカ、其ノ點
ヲ一ツ技術官カラ御願ヒ致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000007X00119370325&spkNum=16
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017・荒井誠一郎
○政府委員(荒井誠一郞君) 只今機械ノ點
ニ付キマシテハ技術ノ方面カラ申シマスル
ト、外國品デ隨分優秀ナモノガアルト云フ
コトデアリマシテ、ソレモ是非使ッテ見タ
イト云フ希望モアルノデアリマス、トコロ
ガ、色々特許權ノ關係等ガアリマス、或ハ其
ノ保證金等ガ非常ニ高價ニ上ルト云フ關係
モアリマスノデ、此ノ方面モ十分ニ〓究致
シマスルガ、當初ハ出來ルダケ國產品ヲ以
テ間ニ合セタイ、少クトモ初年度ニ於キマ
シテハ今日內地デ出來マスル蒸餾機ヲ以テ
間ニ合セタイト云フ考デ進ンデ居ルノデア
リマス、先ノコトニ付キマシテハ尙能ク〓
究ヲ致シタイト云フコトニ致シテ居リマス、
斯ウ申シマスノハ、是ガ初メテノ仕事デア
リマシテ、ナカ〓〓外カラ御覽ニナリマシ
テ、十分デナイト云フ點モアルカト思ハレ
ルノデアリマスガ、其ノ點ハ將來ノ〓究、
又本事業ノ將來ノ發展ノ爲ニ十分御意見モ
承リ、御援助モ得テ仕事ヲ進メタイト、斯
ウ考ヘテ居リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000007X00119370325&spkNum=17
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018・土岐章
○子爵土岐章君 尙先程モ薄イ「アルコー
ル」ヲ造ッテソレヲ原料ニスルト云フコト
デ、色々方法ニ付テノ御說明ガゴザイマシ
タガ、恐ラクハ之ニ付テハ外國ノ特許ヲ利
用サレナケレバナラヌト考ヘルノデアリマ
スガ、ソレ等ニ付テハ政府ハ如何ナル特許
ヲ御利用ニナル御考デアリマスカ、特ニ內
地ニ於テ無水「アルコール」ヲ造ルニハ、日
本獨特ノ製法ガアルト云フ御確信ガアルノ
デアリマスカ、其ノ點ヲ一ツ伺ヒタイト思
ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000007X00119370325&spkNum=18
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019・黒野勘六
○說明員(黑野勘六君) 只今申上ゲタヤウ
ニ、無水ニシマスル方法ハ「ドイツ」デヤッ
テ居リマス、此ノ通常「ドラビノール」法デ
進メタイト思ッテ居ルノデアリマス、此ノ
「ドラビノール」ヲ使ヒマスルト云フコト
ハ、特許ニナッテ居ルヤウナ話デゴザイマ
シテ、取調ベマシタトコロガ、ソレハ「ドラ
ビノール」ト云フ藥品ヲ使フコトガ特許ニ
ナッテ居ルノデ、「トリクロール·エチレン」
ヲ使ヘバ、別ニ特許ノ侵害ニハナラナイト
云フヤウナ話デアリマス、丁度アノ、譬ガ
惡イカモ知レマセヌガ、例ヘバ「アスピリ
ン」ト云フ解熱劑ガアリマス、「アスピリンㄴ
ト云フ特許品ガアリマスガ、日本デ造ッテ
モ「アスピリン」ト名前ヲ附ケズニ、化學名
ノ「アセチールサルチル」酸ト書ケバ、宜シ
イノデゴザイマシテ、「コンマーシヤル·ノ
ーム」ノ一ツニ登錄シタト云フヤウナコト
ニナッテ居リマス、ソレガ又「トリクロール·
エチレン」ヲ分解シナイヤウニ、安定劑ヲ
加ヘマスルノガ、是ガ數十種アリマスルガ、
其ノ安定劑ヲ使フコトニ依ッテ、或會社ガ
「ドラビノール」ト云フノデ、內地デ特許ヲ
取ッテ居ルサウデアリマス、使フ安定劑ガ幾
ラモアリマスルノデ、特許侵害ニハナラナ
イサウデアリマス、ソレデ「トリクロール·
エチレン」ヲ一般ニ「ドラビノール」ト申シ
マスノデアリマスカラ、私ノ方デハ「トリ
クロール·エチレン」ト言フ藥品其ノ物ニハ
確カ特許ハナイノダサウデゴザイマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000007X00119370325&spkNum=19
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020・土岐章
○子爵土岐章君 サウ致シマスト、無水「ア
ルコール」ヲ造ルト云フコトニ付テハ、十分
政府ハ御自信ガアルト云フコトデアリマス
ノデ、私共ハ非常ニ安心ヲスルノデアリマ
ス、トコロデ、先程ノ御說明ガアリマシタ
ヤウニ、「シヨウラー」法ノ御說明ガアッタ
ノデアリマスガ、是モ仄聞スルト、新義州
ニ於テ新シク工場ガ出來ルト云フコトデア
リマスガ、之ニ付テノ特許ト云フモノハ、
恐ラク政府デ買ッテ、或ハ政府ニ於テソレ等
ノ點ニ付テ御調ベニナッタコトト思ヒマス
ガ、ソレニ付テ何カ御說明ニナル材料デモ
アリマシタナラバチヨット··発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000007X00119370325&spkNum=20
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021・荒井誠一郎
○政府委員(荒井誠一郞君) 「シヨウラーL
法ニ付キマシテハ、東洋拓殖株式會社ニ於
キマシテ其ノ特許權ヲ買ッタノデアリマシ
テ、此ノ新義州ニ於キマシテ一ツノ會社ヲ
造リマシテ、其ノ方法ヲ實施スルト云フコトニナッ
テ居リマス、而シテ內地ノ關係ハドウナルカト
云フコトデアリマスルガ、是ハ內地ニ於キ
マシテモ、矢張リ實施スル權利ヲ東拓ガ持ッ
テ居ルコトニ承知致シテ居ルノデアリマス、
而シテ內地ニ於キマシテ「シヨウラー」法ヲ
實施スルコトニナリマスレバ、東洋拓殖會
社ト相談ヲ致シマシテ、或ハ其ノ分權ヲ得
ルカ、特許料ヲ拂ヒマスルカ、何カノ方法
ヲ講ジマシテ、兩者ノ間ニ協定ヲ致シタイ、
斯ウ考ヘテ居リマス、マダ新義州ニ於キマ
ス關係會社ノ方ガ實蹟ヲ見ルニ至リマセヌ
デ、是ガ實蹟ヲ見マシテ、內地ニ於テモ十
分原料關係モ整ヒ、又方法モ宜イト云フコ
トデアリマスレバ、是モヤラナケレバナラ
ヌト云フコトニ考ヘテ居ルノデアリマス、
殊ニ陸軍當局ニ於キマシテハ、非常ニ熱心
ナ御希望モアリマスノデ、我々ト致シマシ
テモ急速ニ其ノ方法ヲ講ジナケレバナラヌ
ト思ッテ居ル次第デアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000007X00119370325&spkNum=21
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022・土岐章
○子爵土岐章君 只今ノ「シヨウラー」法ニ
關聯致シマシテ、ソレハ一體ドノ位ノ「パテ
ント」料ヲ拂ッテ買ハレタノデアリマスカ、若
シ御分リデアリマシタナラバ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000007X00119370325&spkNum=22
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023・荒井誠一郎
○政府委員(荒井誠一郞君) 是ハ東拓トノ
間ニマダ話ヲ致シテ居リマセヌノデ、申上
ゲルマデニ至ッテ居リマセヌデスガ、能ク今
後ニ於キマシテ相談ヲ致シタイト、斯ウ考
ヘテ居リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000007X00119370325&spkNum=23
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024・土岐章
○子爵土岐章君 ソレカラ是ハ細カイ問題
ニナリマスガ、先程技術上カラ醱酵ニ付テ
ノ御話ガアリマシタガ「ドイツ」デ私ドモガ
聞ク所ニ依ルト、非常ニ釀造ノ濃度ト云フコ
トニ付テナカ〓〓ヤカマシイ問題ガアリ、同
時ニ燃料其ノ他容積···工場ノ容積等カラ
言ッテモ、餘程其ノ間ニ關係ガアルヤウニ考
ヘラレルノデアリマスガ、大藏省ノ釀造試
驗場等ニ於テ、是等ノ點ニ付テノ比較〓究
ヲサレタト思ヒマスガ、ソレニ付テハドノ
位ノ濃度デ製造ヲ御ヤリニナル御見込デア
リマスカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000007X00119370325&spkNum=24
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025・黒野勘六
○說明員(黑野勘六君) 「アミロ」法デヤリ
マスト云フト、此ノ米ノ類ヲ原料トシマス
場合ハ、比較的濃厚デアリマシテモ、諸味ガ
固リマセヌノデ、出來マスケレドモ、藷類
ヲ使ヒマスルト、餘リニ濃厚ニシマスト云
フト、諸味ガ固リマスノデ、大變「アミロ」
法ガ行ヒ惡イノデアリマス、マア普通一石
ノ內ニ六貫八百カラ七貫目位ノ諸ヲ加ヘマ
スル時ノ濃度ガ適スルト云フコトヲ、釀造
試驗場デハマア確メテ居ル次第デアリマシ
テ、ソレデシマスト、「アルコール」ガ五
ㄱパーセント」半位デ、マア非常ニ好イ結果ノ
時ハ六「パーセント」位デアリマスガ、マア
ソレ位ノモノデアリマス、マア其ノ濃度デ
アリマシタナラバ、一般ノ木材糖化ナドノ
濃度ヨリ濃イノデアリマシテ、先ヅ木材糖
化ナドノ場合ハ酸糖化シマスト、「アルコー
ル」ハ三四「パーセント」位シカナイト思ッテ
居リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000007X00119370325&spkNum=25
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026・梅小路定行
○委員長(子爵梅小路定行君) ソレデハチ
ヨット御諮リ致シマスガ、本日ハ私モ實ハ少
シ差支モゴザイマスノデ、此ノ程度デ止メ
タイト思ヒマスガ、如何デゴザイマスカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000007X00119370325&spkNum=26
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027・梅小路定行
○委員長(子爵梅小路定行君) ソレデハ今
日ハ是デ止メテ置キマシテ、明日ハ矢張午
前十時カラ開會致シマス、本日ハ散會ヲ致
シマス
出席者左ノ如シ
委員長子爵梅小路定行君
副委員長男爵沖貞男君
委員
侯爵中御門經恭君
伯爵樺山愛輔君
子爵西尾忠方君
子爵土岐章君
眞野文二君
柴田善三郞君
白根竹介君
男爵北島貴孝君
男爵長基連君
金子元三郞君
田中德兵衞君
國務大臣
大藏大臣兼拓務大臣結城豊太郞君
政府委員
專賣局長官荒井誠一郞君
專賣局部長花田政春君
商工次官村瀨直養君
商工書記官酒井喜四君
說明員
專賣局技師黑野勘六君発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000007X00119370325&spkNum=27
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