1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
漁船保險法案
漁船再保險特別會計法案
森林火災國營保險法案
森林火災保險特別會計法案
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委員氏名
委員長 伯爵 堀田正恒君
副委員長 男爵 井上清純君
公爵 鷹司信輔君
侯爵 小村捷治君
子爵 野村益三君
子爵 保科正昭君
子爵 戸澤正己君
松井茂君
男爵 紀俊秀君
松村眞一郎君
白根竹介君
男爵 橋元正輝君
西本健次郎君
山本米三君
岩崎清行君
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昭和十二年三月二十二日（月曜日）午前十時十九分開會発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00119370322&spkNum=0
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001・堀田正恒
○委員長(伯爵堀田正恒君) 是ヨリ委員會
ヲ開會致シマス、付託サレマシタ法律案ニ
付テ大臣カラ御說明ガゴザイマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00119370322&spkNum=1
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002・山崎達之輔
○國務大臣(山崎達之輔君) 漁船保險法案
ノ方ヲ先キニ申上ゲタイト思ヒマス、大體
本會議ニ於キマシテ、提案ノ趣旨ヲ簡略ニ
申上ゲテ置イタ譯デアリマスガ、御審議ノ
便宜上、今一應稍、內容ニ亙リマシテ御說
明ヲ申上ゲタイト存ジマス、申ス迄モナク
漁船及漁具ハ、漁業者ニトリマシテハ唯一
ノ財產ト申シテモ差支ナイヤウナ大切ナ物
デアリマシテ、其ノ損害ヲ防止或ハ輕減致
シマシテ、漁業經營ノ合理化ヲ圖リ、又改
良發達ノ基礎ヲ鞏固ニ致シテ參リマスコト
ハ、漁村ニトリマシテ極メテ緊切ナル施設
デアルト存ズルノデアリマス、殊ニ近頃漁
業規模ノ變遷ニ伴ヒマシテ、漁船ノ船體及
機關ニ付キマシテモ漸次改良セラレテ參
リマシテ、其ノ結果漁船ノ價格モ漸次高マッ
テ參ル傾向ヲ迪ッテ居ル次第デゴザイマス
ガ、從ッテ又其ノ遭難ニ依リマシテ被リマス
ル損害モ相當多額ニ上ッテ居ル次第デアリマ
ス、トコロガ從來漁船ノ損害ヲ塡補致シマ
スル保險制度ト云フモノガ甚ダ備ッテ居リ
マセヌ、民間海上保險會社等ニ於キマシテ、
幾分漁船ノ保險ヲ取扱ッテ居ルモノモゴザ
イマスルケレドモ、是等ハ保險料其ノ他ノ
關係カラ致シマシテ、漁業家ノ必要ニ應ズ
ルト云フコトガ、誠ニ困難ナ事情ニアリマ
スルカラ、到底民間ノ海上保險ノ施設ニ委
シテ置キマシテ、サウシテ其ノ發達ヲ圖ッテ
行クト云フコトハ期待シ難イ事情ニゴザイ
マスル、此ノ爲ニ漁船保險ニ付キマシテ特
別ノ制度ヲ立テテ貰ヒタイト云フ要望ガ從
來カラ關係業者其ノ他ノ方面ニ盛ニ起ッテ
居ッタ次第デゴザイマス、デ現在ノ所デハ漁
業者ハ已ムコトヲ得ズ不十分ナ便宜的ナ方
法トシマシテ、各種ノ漁業團體ニ於テ漁業
施設ヲ行ッテ必要ノ幾部分ヲ充シテ居ルト
云フ情況デアリマスケレドモ、此ノ共濟施
設ノ形式ニ依ッテヤッテ居リマスコトデハ、
其ノ組織ト云ヒ、其ノ基礎ト云ヒ、ホンノ
過渡的ノ施設ニ過ギマセヌノデ、ドウシテ
モ茲ニ新タニ一ツノ保險制度ヲ確立スルコ
トガ誠ニ必要デアルト存ズル次第デアリマ
ス、デ此ノ法案ニ於キマシテハ、漁業者ノ
持ッテ居リマスル漁船及漁具ニ付キマシテ、
其ノ滅失或ハ沈沒、損傷其ノ他ノ事故ニ因ッ
テ生ジマシタ損害ヲ塡補スルコトヲ目的ト
シマシテ、適切ナ區域每ニ一ツノ組合卽チ
漁船保險組合ヲ組織致サセルノデアリマス、
此ノ漁船保險組合ニ於キマシテ、相互主義
ノ元受保險ヲ行フコトト致シテ居ルノデア
リマスガ、ソレダケデハ危險ノ分散等ニ付
テ甚ダ範圍ガ狭少デアリマスカラ、更ニ政
府ニ於キマシテ再保險ヲ行フト云フコトニ
スルコトガ必要デアル譯デアリマス、此ノ
仕組ハ御承知ノヤウニ數年前ヨリ行ッテ居
リマスル家畜保險ノ制度ニ同樣ノ方式ヲ採ッ
テ居ルノデアリマシテ、今囘ノ法律モ大體
ハ家畜保險制度ノ例ニ依ッテ立案ヲ致シテ居
ルノデアリマス、此ノ再保險法ヲ行ヒマス
ルニ付テ、必要ノ歲入歲出ハ之ヲ一般會計
ニ計上致シテ參リマスルノデハ、甚ダ適當
ヲ缺ク譯デアリマスルカラ、其ノ爲ニ特別
會計ヲ設置スルト云フコトニ致シマシテ、
保險法ト再保險特別會計法ト、兩樣ノ法律
ヲ必要トスル次第デアリマス、次ハ森林火
災保險ノ關係ニ付テ申上ゲタイト存ジマス
ガ、先般本會議ニ於テモ申上ゲマシタヤウ
ニ、森林ハ國土ノ保安、木材資源ノ保存竝ニ
山村經濟ノ上カラ甚ダ重要デゴザリマスガ
此ノ森林ノ育成ヲ阻碍致シマスル災害ハナカ
ナカ種々多イ譯デアリマス、殊ニ森林火災ガ
其ノ災害中ノ最大ナモノデゴザリマシテ、每
年府縣ノ民有林ニ於キマスル被害面積ハ、
殆ド一萬町步ヲ超エル狀態デアリマシテ、
之ヲ價格ニ致シマシテ二百萬圓ヲ下ラザル
程度ノモノデアリマス、殊ニ二十年以内ノ
幼齡林ハ其ノ性質カラ考ヘマシテ、火災ノ
危險ガ特ニ大キイノデゴザイマスルシ、此
ノ幼齡林ヲ一旦火災ニ遭ハセマスルト、壯
齡林トハ違ヒマシテ、殘存木ヲ利用スルト
云フ途モアリマセヌデ、全ク全損トナル譯
デアリマス、從ッテ其ノ植林ニ要シマシタ多
大ノ投資モ、勞力モ、努力モ、烏有ニ歸ス
ルト云フ情況デアル譯デアリマス、我ガ國
ノ林業者ノ實情ハ遺憾ナガラ此ノ火災ニ遭
ヒマシタ場合ニ、跡地ノ再造林ヲシマスル
ノニ、十分ノ資力ヲ有ッテ居ラヌ者ガ多イ譯
デアリマスカラ、火災ノ跡地ハ多ク其ノ儘
ニ放置サレマシテ、ソレガ延イテハ林地ノ
荒廢ヲ招キ、又木材資源ノ保續ノ上ニモ支
障ヲ來シマシテ、山村經濟上甚ダ障碍ト相
成ル譯デアリマス、右ノヤウナ狀態デゴザ
イマスカラ、特ニ幼齡林ニ付キマシテ火災
保險ノ制度ヲ確立致シマシテ、火災ニ因ル
損害ヲ塡補致シ、跡地ノ再造林ヲ圖ルト云
フコトハ、極メテ緊急ナ施設ト存ズル次第
デアリマス、現ニ森林火災保險事業ヲ行ッテ
居リマスル會社ハ若干アルハアリマスガ、
其ノ普及ノ程度ハ甚ダ微弱ナモノデアリマ
シテ、到底民間ノ保險會社ニ委シテ置クト
云フ譯ニハ參リマセヌノデ、特ニ國營ノ火
災保險ノ制度ヲ確立スル必要ヲ認メル次第
デゴザイマス、今囘ノ法律ニ於キマシテハ、
前ニ申上ゲマシタヤウナ趣意ニ依リマシテ、
二十年生以下ノ幼齡林ニ付テ政府ガ火災保
險ヲ行フ、斯ウ云フ仕組ニ致シテアル譯デ
アリマス、尙此ノ國營火災保險ヲ行フニ付
キマシテハ、矢張リ漁船保險ノ再保險ト同
樣ニ、之ヲ要シマスル歲入歲出ハ一般會計
ト區分致シマシテ、經理スルコトガ適當デ
アリマスカラ、特別會計ヲ設置スルノ必要
ガアル次第デアリマス、以上ノ理由ヲ以チ
マシテ、漁船保險及之ニ伴フ特別會計ト、
森林保險及之ニ伴フ特別會計、此ノ四ツノ
法案ヲ提出致シマノタ次第デアリマス、何
卒御審議ノ上御協贊アラムコトヲ希望致シ
マス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00119370322&spkNum=2
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003・堀田正恒
○委員長(伯爵堀田正恒君) 大臣ハ農地法
案ノ關係デ、ドウシテモ御出デニナラナケ
レバナラヌサウデアリマスカラ、大臣ニ對
スル御質問ハ後日ニ讓ツテ戴キマシテ、委員
會ヲ繼續致シタイト思ヒマス
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00119370322&spkNum=3
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004・松村眞一郎
○松村眞一郞君 大臣ガ御出デニナルヤウ
デアリマスカラ、大臣ニ御尋シタイコトヲ
此ノ際伺ッタラドウデアリマスカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00119370322&spkNum=4
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005・堀田正恒
○委員長(伯爵堀田正恒君) 大臣ハ農地法
ノ關係ガアリマシテ、其ノ方ニ··発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00119370322&spkNum=5
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006・山崎達之輔
○國務大臣(山崎達之輔君) 十時カラ農地
法ガアリマス爲ニ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00119370322&spkNum=6
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007・松村眞一郎
○松村眞一郞君 大臣ニ伺ヒタイ問題ガア
ルノデスケレドモ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00119370322&spkNum=7
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008・堀田正恒
○委員長(伯爵堀田正恒君) 後ニ御讓リ願
ヒタイト思ヒマス、ソレデハ議事ノ進行上、
漁船保險法案ノ方ヲ先キニ議題ニ致シマシ
テ質問ニ入リタイト存ジマス、ソレデ宜シ
ウゴザイマスカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00119370322&spkNum=8
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009・堀田正恒
○委員長(伯爵堀田正恒君) ソレデハ左樣
致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00119370322&spkNum=9
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010・松村眞一郎
○松村眞一郞君 只今大臣ガ御說明ニナリ
マシタ中デ、尙詳シク承リタイト思フノデ
アリマスガ、此ノ漁船保險ニ付テ組合ヲ作
ラセル、サウシテ組合ノ地域ハ適當ナル區
域每ニト云フコトヲ大臣ハ仰セニナリマシ
タガ、ドウ云フ區域ニ配當サレル御計畫ニ
ナッテ居ルノデアリマスカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00119370322&spkNum=10
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011・原辰二
○政府委員(原辰二君) 御答へ致シマス、
漁船保險組合ノ區域ニ付キマシテハ、現在
漁村ニ於ケル漁船ノ碇繫ノ狀態等カラ見マ
スルト云フト、之ヲ例ヘバ府縣ノ區域デア
リマストカ、郡ノ區域デアリマストカ、行
政區域ニ劃一的ニ併セテ地域ヲ極メサセル
ト云フコトハ、ドウモ實情ニ合ヒマセヌノ
デ、ソレデ其ノ地方ノ實情ニ應ジマシテ、
適當ナル地區ヲ極メサセルト云フ建前ヲ取ッ
テ參リタイト思フノデアリマスガ、實際問
題ト致シマシテ、私共ノ見當ヲ付ケテ居リ
マスノハ、例ヘバ一例ヲ申上ゲマスレバ、
神奈川縣ノ三崎ノ如ク相當ニ、漁獲物ノ水
場ノ地點ト致シマシテモ、又漁船ノ常時集
合ヲシテ、碇繫ヲシテ居ルト云フヤウナ點
カラ考ヘマシテモ、サウ云フ地點ヲ中心ト
致シマシテ、サウシテ其ノ三崎ノ附近ニ尙
多少集マッテ居ルト云フ所ガアレバ、其ノ船
モ一〓ニ見ルト云フ趣旨デ以テ、三崎町及
數箇町村ト云フ風ナ程度ニ地區ヲ極メテ參
ルノガ一番實情ニ適スルノデハナカラウカ
ト云フヤウニ考ヘテ居リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00119370322&spkNum=11
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012・松村眞一郎
○松村眞一郞君 サウ致シマスト、其ノ地
域ヲ御定メニナルト云フ理由デスナ、ソレ
ハ水揚ノ關係、漁獲物ガ集マルト云フ、漁
船ガ集マルト云フコトニ理由ガアルノデア
リマスカ、地域設定ノ理由ハ何ヲ標準ニシ
テ地域ヲ御纏メニナルカ、其ノ標準デアリ
マス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00119370322&spkNum=12
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013・原辰二
○政府委員(原辰二君) 碇繫ヲシテ居リマ
ス此ノ船ト云フモノヲ、詰リ言換ヘマスレ
バ保險ノ目的ト云フモノガ常置サレテ居ル
ト云フ、其ノ狀態ヲ標準ニ致シマシテ定メ
タイト思ッテ居リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00119370322&spkNum=13
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014・松村眞一郎
○松村眞一郞君 サウシマスト云フト、船
ノ所在地主義デスカ、詰リ所有主ノ如何ニ
拘ラズ、平生水揚ヲスル所、水揚ヲスルト
云ヒマスカ、或ハ結局サウナルノヂヤナイ
カト思ヒマスガ、漁獲物ノ集マル所、卽チ
漁船ガ活躍シテ居ル狀態ニ於テ、漁業經營
ノ狀態ニ於テ、常時集合スル所ト云フヤウ
ナ意味ニ了解シテ宜シイノデスカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00119370322&spkNum=14
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015・原辰二
○政府委員(原辰二君) 大體御承知ノ通リ
二、漁船ハ船主ノ所在地ト船ノ碇繫ノ場所
トハ必ズシモ一致シナイ場合ガ多イノデア
リマシテ、又大體ノ傾向カラ申シマスト云
フト、例ヘバ德島縣ノ船ナラバ是ガ三崎ヘ
モ漁獲物ヲ水揚スル關係デ、寧ロ三崎ニ碇
泊スルコトガ多イトカ、或ハ長崎縣ノ玉ノ
浦ニ普通碇繋サレルモノガ多イトカ、船主
ノ住居地ト船ノ所在地ト云フモノガ段々相
伴ハナイ狀勢ニナッテ來テ居リマスノデ、船
主ノ所在地ヨリモ寧ロ何ト申シマスカ船
籍港ト申シマスカ、ソレヲ中心ニ考ヘテ參
ル、斯ウ云フ方針デ考ヘテ居リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00119370322&spkNum=15
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016・松村眞一郎
○松村眞一郞君 サウシマスト云フト、ソ
レハハッキリ分ルヤウナ工合ニナサル御積
リデアリマスカ、各船ニ付テ保險組合ヲ作
ル際ニ、或一定ノ碇繫港ト言ヒマスカ、船
籍港ト言ヒマスカ、ソレヲ屆出デル、ソレ
ハ各船ニ付テ一ツデアルコトヲ强制サレル
ト云フコトニナルノデアリマスカ、其ノ點
ヲモウ一度伺ヒタイト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00119370322&spkNum=16
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017・原辰二
○政府委員(原辰二君) 一ツノ船デ數箇所
ニ漁獲物ヲ水揚ヲスル場合モゴザイマシテ、
サウ云フ場合ニハ船繋リヲスル場所ハ數箇
所ニ分レル譯デゴザイマスガ、御承知ノ通
リニ二十噸以上ノ船ニナリマスト云フト、
是ハ船舶關係ノ法規上、船籍港ト云フモノ
ハ一箇所ニ極メナケレバナラヌコトニナッテ
居ルカラ、ソレハ船籍港ハ明瞭ナ譯デアリ
マスガ、二十噸未滿ノ小サナ船ニナリマス
ト云フト、現在ノ制度デハ船籍港ト云フモ
ノヲ必ズシモ極メヌデモ宜イト云フコトニ
ナッテ居リマスガ、ソレハ事實問題ト致シマ
シテハ、ドノ船ハ何處ヲ主タル船籍港ト申
シマスカ、船ニ付テ申セバ、船ノ住所ノ如
キ一定ノ碇泊ノ場所ト云フモノハ自ラ極ッテ
居リマスカラ、ソレヲ極メルノニ、實際問
題トシテハ左程困難ハナイ、從ッテ此ノ制度
ニ關聯シマシテ、二十噸未滿ノ小サナ船ニ
付テモ、船籍港ヲ定ムベシト云フガ如キ法
制上ノ制度マデ相伴ハシメテ行カナクテモ
宜カラウ、斯ウ云フヤウニ考ヘテ居リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00119370322&spkNum=17
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018・松村眞一郎
○松村眞一郞君 ドウモ、組合ヲ組織スル
ノデアリマスカラ、組合員ノ資格ガハッキリ
シテ居ラナイト云フト、組織スルコトニ非
常ニ困難ヲ感ズルノデハナイカト思ヒマス
カラ、私御尋シテ居ルノデス、矢張リ定メ
ナイト云フト、組合ノ作リ方ガナイノヂヤ
ナイカト云フコトヲ私ハ問題ニシテ居リマ
ス、私ガ斯ウ云フコトヲ質問シテ居ルノ
ハ······實ハ大臣ニ伺ハウト思ッテ居ル、後デ
大臣ニ伺フ積リデアリマスガ、漁船保險ト
云フコトヲ玆ニ設定サレルト云フコトハ非
常ニ結構ナコトデアッテ、其ノ目的トシテハ
非常ニ私ハ宜イト思フノデアリマス、併シ
其ノ手段トシテ漁船組合ヲ作ラレルト云フ
コトニ幾多ノ疑問ヲ持ッテ居リマス、其
ノ意味ニ於テノ質問ヲ致シテ居ルノデ
アリマス、私ハ、マダ意見ヲ言フベキ
時期デハアリマセヌカラ、モウ少シ質問
シテ申上ゲタイト思ヒマスガ、全國ヲ
適當ナ地區ニ分ケルト云フコトデアレ
バ、初メカラ大體ノ御計畫ガアルベキ筈デ
ハナイカト思フ、大體十年計畫デ爲サルヤ
ウナコトニ、此ノ參考資料ヲ拜見シマスル
トナッテ居リマスガ、サウスレバ、初メハ此
ノ邊ノ地域、此ノ邊ノ地域ト云フヤウニ、凡
ソノ地域ニ付テハ全國的ノ區分ガ御出來ニ
ナッテ居ルノヂヤナイカト私ハ思ヒマス、ソ
レハ例ヘバ三崎デハト云フヤウナ意味デナ
〃、全國全體ニ付テノ漁船組合地區ト云フ
モノヲ承知シタイ、ソレガ各漁船組合每ニ
於ケル相互保險ノ關係上、或場合ニ於テハ
保險金額ノ全部ヲ與ヘナイト云フヤウナコ
トモアルノデスガ、保險金ヲ削減スルヤウ
ナ規定ガアッタヤウニ思ヒマスガ、左樣ナコ
トガアルノデスカラ、或組合デハ保險金全
部ノ支拂ヲ受ケルケレドモ、他ノ組合デハ
保險金額全部ノ支拂ヲ受ケナイト云フヤウ
ナ意味ノ組合ガ出來ルト云フト、餘程是ハ
漁民全體ニ對シテ均等ナ、利益ヲ均霑セシ
ムルコトガ出來ナイノヂヤナイカト云フコ
トヲ虞レルガ故ニ、私ハ斯ウ云フ制度ヲ確
立サレル以上ハ、保險金ハヤハリ全額ヲ拂
フノデアルト云フ思想デ行ク方ガ宜クハナ
イカト思ヒマス、ソレハ後ニ森林保險トノ
關聯ニ付テ又御質問シタイト思フノデアリ
やっ、サウ云フ意味デ申上ゲテ居ルノデア
リマスカラ凡ソノ御豫定ガアレバ······、御
計畫ヲ御立テニナルニ付テハ、十年計畫ト
云フモノハ旣ニ玆ニ出來テ居ルノデアリマ
スカラ、十年計畫ハ、ドウ云フ地域ニ配當
シテ、ドウ云フ工合ニヤッテ居ルカト云フコ
トヲ、今日デナクテモ宜シウゴザイマス、
サウ云フ表ヲ一ツ御作リ願ッテ御示シ願ヘ
バ、私ノ後ニ致シタイ質問ニ良イ資料ニナ
ルカト思フノデアリマス、其ノ點ヲ特ニ御
願シテ置キタイト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00119370322&spkNum=18
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019・原辰二
○政府委員(原辰二君) 御答へ致シマス、
組合ノ具體的ノ地域マデ書キ現シタモノハ
實ハナイノデアリマスガ、御話ノ如ク大體
組合ガドレクラヰ出來ルカト云フ、最少限
度ノ見込ヲ立テマシテ、其ノ數ヲ二百ト踏
ンデ居ルノデゴザイマスガ、之ヲマア十年
間ニ設置サセル、最初五年間ハ每年三十ヅ
ツ、後ノ五年間ハ、十組合ヅツト云フ風ニ
分ケテ居リマスガ、其ノ計畫ヲ立テマスニ
付キマシテハ、松村サンノ御話ノ如ク、大
體ノ地點ノ見當ガ付カナケレバ、サウ云フ
計畫ヲ立テル譯ニハ參リマセヌノデ、全國
ノサウ云フ、最前申上ゲマシタ船主ノ住所
地ニ船ノアルモノ、サウ云フ地點ヲ選ブ、
又船ト船主ト場所ヲ異ニシテ居ルト云フモ
ノニ付テハ、船ノ船籍港ナリ、事實上ノ船籍、
定繫ノ地點ナリト云フモノヲ調ベマシテ、
何縣ノ大體ドノ邊ニハ組合ガ作レルダラウ
ト云フ見當ヲ付ケタノガ二百アル譯デゴザ
イマシテ、ソレヲ年度計畫ニ從ッテ設置ヲシ
ヤウ、斯樣ニ考ヘテ居リマスガ、此ノ二百
ト申シマスノハ、現在デ凡ソ其ノ地點ナラ
バ大丈夫作レルト云フ見當ノ地點デアッテ、
其ノ實行ノ場合ニハモウ少シ餘計ニ作レル
ノデハナカラウカト、斯樣ニ考ヘテ居リマ
ス、若シ御必要ガゴザイマスレバ、其ノ二
百ト云フ組合ノ、詰リ豫定地ハドウ云フ所
デアルカト云フヤウナコトモ、御覽ニ入レ
テモ宜シウゴザイマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00119370322&spkNum=19
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020・松村眞一郎
○松村眞一郞君 十年先ノコトマデノ御見
込ヲ戴クト云フ程ノ考ハナイノデアリマス、
少クトモ初年度三十ヲ實行サレルニ付テハ、
ドノ位ノ地域ヲ目標ニシテ爲サルノデアル
カ、其ノ地域ノ定メ方ハドウ云フヤウニ爲
サルノデアルカト云フコトヲ承レバ結構ダ
ト思フノデアリマス、「本法施行ノ期日ハ勅
令ヲ以テ定ム」ト云フコトヲ附則ニ書イテア
ルガ、大體ノ御見込ハサウ致シマスト、何
時頃カラ實施サレル見當デ御進ミニナッテ
居ルカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00119370322&spkNum=20
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021・原辰二
○政府委員(原辰二君) 此ノ法律ノ施行期
日デゴザイマスガ、是ハ六月一日カラ實ハ
施行ヲ致シタイ、斯樣ニ考ヘテ居ルノデゴ
ザイマシテ、十二年度ニ於キマシテハ只今
申上ゲマシタヤウニ三十組合ト云フモノヲ
適當ナ地點ヲ選ンデ設ケタイト思ッテ居リ
マスガ、是ハ政府ノ方デ地點ヲ豫メ極メマ
シテ、其ノ地點デハ船主ガ寄ッテ組合ヲ作レ
ト、斯ウ云ッテ無理ニ作ラセルト云フコトハ
成ルベク避ケマシテ、地方ノ要望ノアル地
點カラ先ニ極メテ參リタイト、斯樣ニ考ヘ
テ居リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00119370322&spkNum=21
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022・松村眞一郎
○松村眞一郞君 政府カラ無理ニ指定サレ
ナイト云フコトハ大變結構デアルガ、要望
ト申シマシテモ、漁業者ハ極ク知識ノ程度
ノ幼稚ナモノデアルト私ハ思ヒマスカラ、
政府ノ方デ六月一日カラ施行サレルト云フ
ヤウナ工合ノ問題ニ付テ、コチラカラ初メ
カラ指定サレナイマデモ、向フカラ要望シ
マスレバ、此ノ邊ハ許スノデアルト云フ同
情的ノ意味ノ御見込ガアルト思ヒマス、ソ
レヲ三十組合ダケデ宜シイカラ、一ツソレヲ
承リタイト思ヒマス、ソレカラ此ノ第八條、
第九條ヲ見マスルト云フト、「一定ノ保險
料ヲ醵出セシムルノ外定款ノ定ムル所ニ依
リ追徴金ヲ醵出セシムルコトヲ得」ト云フ
コトガアル、サウシテ又九條ニ於テ「組合
ハ定款ノ定ムル所ニ依リ保險金額ヲ削減ス
ルコトヲ得」ト云フコトガアル譯デアリマ
ス、是ガ先程申上ゲタ所ニ觸レテ居ルノデ
アッテ、一定ノ保險料ヲ拂ッタケレドモ、是
デハ足リナイカラト云フノデ更ニ追徵金ヲ
出サセル、或ハ一旦保險契約ヲ締結シタ
ケレドモ、ドウモソレダケノ金ガナイカ
ラ、後デ削減スルト云フヤウナ不安定ナ保
險ノ經營ハ、漁業者ヲ保護スル上ニ於テ如
何カト私ハ思フノデアリマス、私ハ矢張リ
極メタ以上ハソレハ必ズ拂フ、保險料モ極
メタ以上ハソレデ行クト云フコトニシテ、
小サイ組合ノ範圍內ニ於テノ相互組織デナ
ク、若シ相互組織ヲナサルナラバ、全國的
ニサレタラ宜イノデハナイカト思ヒマスガ、
第八條、第九條ハドウ云フ意味デスカ、私
ガ申シタヤウナ意味デスカ、其ノ意味ヲモ
ウ少シ御說明ヲ願ヒタイ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00119370322&spkNum=22
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023・原辰二
○政府委員(原辰二君) 保險金ノ削減ナリ
保險料ノ追徴、是ハヨク〓〓ノ場合デナケ
レバ、此ノ運用ヲ許スベキモノデハナイト
考ヘテ居ルノデアリマスガ、出來得ル限リ
ハ松村サンノ御話ノ如ク、保險金ト云フモ
ノヲ極メタ以上ハ、是ハ所謂萬難ヲ排シテ、
其ノ豫想サレル事故ガ發生シタ以上ハ拂ッ
テ參ルト云フ風ニシナケレバナラヌト思ヒ
マスガ、唯豫想外ノ非常ニ大キナ事故ガ生ズ
ル、從ッテ其ノ事故ニ對シテ當初ノ契約ノ儘
ノ保險金額ヲ支拂ッテ行クト云フコトニナリ
マスト云フト、玆ニ組合ノ經理ガ破壞サレ
ル、從ッテ此ノ組合ト云フモノモ場合ニ依レ
バ解散モシテシマハナケレバナラヌ、漁船
保險組合ノ保險モ止メテシマハナケレバナ
ラヌト云フコトニ立至ル場合ナキヲ保シマ
セヌノデ、ソレハ此ノ漁船保險ト云フ制度ヲ
存續サセル趣旨カラ考ヘマスト云フト、何
トカ救濟ノ途ガアレバ之ヲ救濟シテ永續サ
セルト云フ風ニ考ヘテ行クノガ適當ヂヤナ
カラウカ、斯樣ニ考ヘマシテ此ノ相互組織
ニ依ル此ノ漁船保險組合ノ組合員ガ、總會ノ
決議ニ依ッテ當初契約ヲシタ保險金額ダケ
貰ハナクテモ我慢ヲシヤウ、或ハ今マデ拂
込ンダ保險料ノ外ニ幾分カヅツ更ニ保險料
ノ追徵ヲ受ケテ、ソレデ保險金ノ支拂ヲ圓
滿ニヤッテ、サウシテ此ノ漁船保險組合ト云
フモノヲ將來續ケテ行カウト云フ、要スル
ニ組合員ノ意嚮ガ定マル場合ニハ、ソレニ
據ラシメタ方ガ宜カラウ、斯樣ニ考ヘテ居
ルノデアリマシテ、御承知ノ通リニ是ハ旣
ニ家畜保險組合ノ家畜保險ノ制度ニモアル
コトデゴザイマシテ、私共ノ方デハ常時之
ヲ濫用スベキモノデハナイト思ヒマスガ、
又同時ニ斯ウ云フ便法ヲ設ケルコトガ、場
合ニ依レバ適當デモアリ、又必要ナ場合モ
アルデアラウ、斯樣ニ考ヘマシテ、實ハ家
畜保險ノ制度ニ依ッテ斯ウ云フ規定ヲ置ィ
タ譯デアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00119370322&spkNum=23
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024・松村眞一郎
○松村眞一郞君 ドウモ私マダ了解シ得ナ
イノデスガ、元來此ノ漁業災害ノ時ニハ、
多クノ船ガ一擧ニシテ多數ニ災害ニ罹ルコ
トガ多イノデハナイカト思フノデアリマス、
其ノ際ニ追徵金ヲ取ルト云フヤウナコトハ、
殆ド不可能ヂヤナイカト思フ、組合員ノ殆
ド全部ガ災害ニ罹ッテ居ッテ、皆金ヲ貰ヒタ
イト云フ時ニ、更ニ追徴金ヲ醵出セシメル
ト云フコトハ出來ナイト思フ、サウスルト
結局保險金ヲ削減スルト云フコトニナルノ
デハナイカト思フ、サウ云フコトニナレバ
政府ガ「バツク」ヲシテ、再保險ヲシテ居ル
意味ガナイト思フ、サウ云フヤウナ時コソ
政府ノ方デ引受ケテ、再保險金額ト云フモ
ノニ付テハ勿論出スガ宜シイ、サウ云フヤ
ウナ削減トカ追徵トカ云フヤウナコトノ
ナイヤウナ工合ニ、政府ガ玆ニ基礎ヲ固メ
テ、サウシテ安心シテ漁業ヲ營ムヤウニス
ルコトガ私ハ大切ヂヤナイカト思フ、其ノ
意味ハ、參考表ヲ拜見致シマスト、特別會計
ノ負擔ヲ重クシナイト云フ風ナ趣旨カラ、昭
和二十一年度ニナルト一般會計ヨリノ繰入
金ヲチットモシナイコトニシテアル、此ノ意
味デアリマスト、總テ自腹デヤラセルト云
フコトニナッテ居ル、只サへ弱者デアル所ノ
漁業ノ關係ニ、政府ガモウ後々ニハ、全然
自治ニ任セテ補助ハシナクテモ宜イノダト
云フヤウニ、十年デ見限ッテシマフト云フ
程、サウ簡單ニ漁業ヲ眺メテ居ラレタノ
デハ、漁業ノ振興ト云フコトヲ期スル上ニ
於テ非常ニ遺憾デアルト思フ、漁業ニ對ス
ル政府ノ態度トシテハ、或金額ヲ定額トシ
テ、始終補給スル位ノ態度ヲ以テ行カナケ
レバ、非常ニ疲弊シテ居ル所ノ今日ノ漁業
ヲ救フコトハ、私ハ到底出來ナイダラウト
思フ、特別會計ノ基礎カラ申シマスト、其
ノ安定ノ爲ニ、漁民相互ニ援助シテ行クト
云フ意味ノ相互保險ノ制度ガアレバ、ソレ
ハ國家ノ財政ハソレデ宜シイデセウ、併シ
ナガラ漁民ノ現狀ハ、其ノ自力ノミニ任セ
ルト云フコトニハ、見ルニ忍ビナイ狀態デ
アルト私ハ思フ、ソンナ際ニ、政府ガ何ガ
故ニモウ少シ進ンデ力强イ保險ニシナイノ
デアルカ、ソレハ再保險ノ制度ニスルカラ
イケナイノデアッテ、私ハ後デ大臣ニ伺ッテ
カラ其ノ點ヲ更ニ質問ヲシタイト思ヒマス
ガ、家畜保險組合ノ例ニ倣ハレタイト云フ
コトガ私ハ抑、〓誤リデハナイカト考ヘル、サ
ウ云フ意味ニ於テ質問致シテ居ルノデアリ
マスカラ、家畜保險組合ニ例ガアルカラ
ヤッタノデアルト云フノデハ······家畜ト云
フモノハ漁船ト云フモノト非常ニ性質ガ違
フト云フコトハ後デ又申述べマス、サウ云
フヤウナコトデアルカラ、唯引寫シタト云
フヤウナ意味デ漁船保險ヲ眺メラレルト云
フコトハ、ドウモ漁業ノ保護ト云フコトニ
付テノ政府ノ態度ガ如何ニモ生溫イノヂヤ
ナイカト云フヤウニ私ハ考ヘル、元來此ノ
漁業ニ付テハ、船ガ沈沒シテシマッテカラ後
ニソレヘ保險金ヲ與ヘルト云フコトヨリ
モ、何人ト雖モソレハ申スノデアリマスガ、
サウ云フ危害ナカラシムルト云フ方ニ努力
スルコトガ必要デアル、ソレハ或ハ船溜ヲ
作ルトカ、小サナ漁港ニ付テノ施設ヲ徹底
スルトカ、或ハ漁業氣象ニ關シテノ通報ヲ
親切ニ行フトカ、先程大臣モ言ハレタノデ
アリマスガ、船體ノ改造トカ、色々ナ方面
ノ安全ニスル方法ガアルダラウト思ヒマス
ガ、サウ云フコトノ方ガ實ハ大切デアル、
ソレガ今日漁業ニ付テハ十分行ハレテ居ラ
ナイ、寧ロ漁船保險ヨリモ、漁業者ソレ自
身ガ非常ナ氣ノ毒ナ狀態ニ在ルト云フコト
カラ出發シテ掛ラナイト云フト、私ハ漁船
保險ダケデ漁業ノ解決ガ足レリトスルガ如
キ態度ヲ政府ガ執ッテ居ルノヂヤナイカト
云フコトヲ思ハレル虞ガアルノヂヤナイカ
ト思フ、ソレハドウ云フ意味カト申シマス
ト、凡ソ此ノ食料品ヲ國民一般ニ供給スル
ガ爲ニ命賭ケデ仕事ヲスルト云フモノハ、漁
業ヨリ以外ニナイデアラウト思ヒマス、人
ニ食料品ヲ與ヘル爲ニ、自分ハ命賭ケデ捕
リニ行クンダト云フモノハ漁業ヲ除イテ私
ハナイト思ヒマス、幾ラ農民ガ窮狀ニアル
ト云ッテモ、米ヲ耕作シニ行ク爲ニ死ヌト云
フコトハ決シテナイ、漁業ダケナノデアリ
マス、人ニ食料品ヲ與ヘル爲ニ自分ガ死ヌ
ト云フノデアリマスカラ、サウ云フ狀態ノ
產業ニ對スル政府ノ態度トシテハ、何物ヲ
差措イテモ漁業者ノ救濟ト云フコトカラ出
發シテ掛ラナケレバイケナイ、先ヅ漁民ガ
安心シテ仕事ガ出來ルヤウニ、漁船保險ダ
ケヤッテ見テモ、漁船ノ保險ノ金ガ取レテ見
テモ、其ノ船ニ乘ッテ行ッタ所ノ人ハ一〓ニ
死ンデシマッテ居ルト云フコトニナッテ居ル、
サウ云フ狀態デ漁船保險ダケヲ論ズルト云
フコトハ私ハ抑〓末デアルト思フ、トコロ
ガ漁船保險ガ今申シタ如ク追徴金ヲ取ルト
カ、保險ヲ削減スルト云フヤウナ態度デ
ヤッテ居ラレルト云フコトニナルト、サウシ
テ漁業者ニ對スル救濟ニ付テ、何等此處ニ
併セテ論ゼラレル所ガナイト云フヤウナ狀
態デハ、私ハ漁業ト云フモノハ振興ヲ到底
期スルコトガ出來ナイト思フノデアリマス、
政府ハ漁業者ノ救濟ト云フコトニ付テ、ド
ウ云フコトヲ考ヘテ居ラレルノデアリマス
カ、餘程此處ニ力ヲ入レテ、其ノ方カラ出
發シテ行カナイト云フト、漁船保險ノ如キ
ハ抑〓私ハ末ダト思ヒマス、ドウ云フヤウ
ナコトニ今御考ニナッテ居リマスカ、ソレヲ
承リタイノデアリマス、併シ是ハ局長ニ伺
フノハ少シ私ハ問題トシテ大キ過ギルト思
ヒマスカラ、是ハ能ク大臣ニ仰シヤッテ戴
イテ、大臣ノ御答辯ヲ得タイト思ヒマス、
ソレハドウ云フ意味カト申シマスト、元來
漁業者ト云フ者ノ危害ヲ除クト云フコト
ハ、先ヅ水難救護ト云フ方面ニ於テ必要デ
アリマセウ、ソレノ外ニ死ンダ場合ニ於テ
ノ遺族ノ扶助ト云フコトモアリマセウガ、
本人自身ノ生命ノ將來ニ對シテト云フコト
ヲ考ヘテヤラナケレバ私ハイケナイト思フ、
ソレニハ普通ノ生命保險デバイケナイト、
保險ノ性質カラ言フト、生命保險デナイノ
デアッテ、是ハ「アクシデント·インシュアラ
ンス」デアッテ、「ライフ·インシュアランス」デ
ハナク、寧ロ日本デハ傷害保險ト言ッテ居リ
マスガ、傷害ト云フヨリ災害保險デアリマス、災
害保險ト云フコトニ付テハ、農民ニ取ッテハサ
ウ云フ必要ハナイ、併シ漁業者ニハドウシ
テモソレガ必要デアリマス、鑛山ニ働イ
テ居ルトコロノ坑夫ハ、是ハ餘程危險ガ
多イノデアリマスカラ、災害保護ノ意味ニ於
テノ危害ノ施設ハ、社會施設トシテヤラナケ
レバナラヌ仕事ハヤラレテ居ル譯デアリマ
ス、併シナガラソレモ非常ニ大切ナコトヲ
ヤッテ居ル坑夫デアリマスケレドモ、其ノ鑛
業勞働者ハ〓料品ト云フ、人ノ生活ノ必需
品ヲ直チニ產出シテ居ルノヂヤナイ、漁夫
ニ至ッテハ今申シタ如ク生活ノ必需品、始終
國民ノ榮養ニ關係シタトコロノモノヲ生產
シテ居ルモノデアッテ、何事ヲ差措イテモ漁
夫ノ現在ノ狀態ニ付テ默ッテ居ルト云フコ
トハ、私ハ忍ビナイコトデアルト思ヒマス、
漁業者ハ非常ニ慘メナ狀態ニアッテ、其ノ板
子ノ一枚下ハ地獄デアルト云フコトヲ言ッ
テ居リマス、ソレヲドウ世間ハ眺メテ居ル
カ、ソレハ決シテ怨嗟ノ聲デナイ、併シナ
ガラ滿足ノ聲ヂヤナイ、諦メノ聲デアル、
ソレヲ平然トシテ聞イテ居ッテ、我々ハ漁業
ノ振興ヲ一方ニ於テ圖ッテ見テモ、ソレハ私
ハ本當ノ親切ヂヤナイト思ヒマス、サウ云
フ危險ナル狀態ニ身ヲ曝シテ產業ニ從事シ
テ居ル者ニ對シテノ施設ヲ、漁船保險ト併
行シテ進ンデ來ラレナイト云フ所ニ、私ハ政
府ガ非常ニ不人情ダト私ハ思フ、此ノ案ヲ提
出サレルナラバ、サウ云フコトヲ御考ニナ
ラナケレバイカヌト思フ、ソレハ今申シマシ
タ如ク普通ノ生命保險デハイカナイ、生命保
險ヨリモ危險ナノデ、災害保險デアルガ、サ
ウ云フコトハ考ヘナイ、大抵ノ災害保險ハ鑛
山デ傷ガ付クトカ、採石、石ヲ採ルノデ傷ガ
付クトカ、工場デ機械ノ爲ニ危害ヲ受クル
トカノ、傷ヲ見テ居ルトコロノ傷害保險デ
ス、其ノ生命ソレ自身ガ危險ニ曝サレテ居ツ
テ、ソレニ普通ノ生命保險デナイト云フコ
トヲ目標ニシテ居ル保險ノ經營ト云フモノ
ハ今ナイノデスカラ、無イト云フモノヲ日
本デ發明シナクチヤイカヌ、凡ソ漁業ト云
フモノハ日本ニ於テ最モ發達シテ居ルノデ
アッテ、日本自身ノ「オリジナリティ」ヲ發揮
シテ、獨創ノ見解デ日本獨特ノ制度ヲ拵ヘナ
ケレバナラヌ、外國ニ求メタッテアルモノデ
ナイ、サウ云フ際ニ、日本デ若シ日本精神
ヲ發揮スルト云フコトデアルナラバ、漁業者
ノ救濟ト云フコトニ於テ初メテ日本ノ本當
ノ特色ガハッキリスルノデナイカト私ハ思
フ、日本ガ一番ノ世界ノ漁業國デアリマ
ス、第一等國トシテ漁業ニ對スル施設ガ最
モ貧弱デアル、他ノ鑛業ノ社會施設トカ、
農業ノ農村ノ救濟ノ問題トカ云フモノト比
較ニナラナイ、全然無頓著ダト云ッテ宜イ政
府ハ······'サウ云フ狀態デ今マデ進ンデ來
テ居ル、何故カト云フト農民ハ政府ノ方デ
相當保護シテ居ラレル、農會ト云フモノニ
シテモ、產業組合ト云フモノニシテモ、其
ノ政府ノ保護ノ程度ハ水產會漁業組合ノ比
ヂヤナイ、サウデアリマスカラ、何カ農業
ニ關スル問題ガアレバ、農業者ハ一團トナッ
テ茲ニ意見ヲ陳述シ得ル所ノ施設モ出來テ
居ル、尙其ノ上ニ農業ノ方ニ於テハ大地
主デアッテモ、小作人デアッテモ、自作農ノ
小地主デアッテモ、米ノ問題ト云フコトニナ
ルト一致シテシマフ、所ガ漁業ニ於テハサ
ウヂヤナイ、資本勞働ト云フモノト、沿岸
漁業ト云フモノハ、全然別個ニナッテシマッ
テ居ル、玆ニ一番差當ッテノ問題ハ、農林省ソ
レ自身ノ從來ノ行政方針トシテ私ハ良クナ
イト思ヒマスガ、機船底曳網ト云フモノガ
アリマスガ、ソレト沿岸漁業トガ始終喧嘩
シテ居ル、其ノ機船底曳ノ漁業家ノ意見
ハ、何處デ聞カレルカト云フト、誰モ聞カ
レナイ、水產會ト云フモノハ何ヲシテ居ル
カト云フト、沿岸漁業ノコトヲヤッテ居ル、
サウシマスト米ノ問題デ、農民ガ、地主ト云
ハイ、小作人ト云ハズ、一致シテ行クト云
フヤウナコトハ、實際漁業ニ於テハドウシ
テモナイ、ソレダカラ一致シタ聲ガ玆ニ世
間ニ現レテ來ナイ、聲ガナイト云フト默ッテ
居ルト云フノガ現在ノ狀態デアリ、日本ノ社
會狀態ガサウダ、ヤカマシク言ヘバ何カ救
濟ヲスル、默ッテ居レバヤラナイ、サウ云フ
狀態デ漁業ノ將來ヲ眺メテ居ラレタナラ
バ、是ハ餘程大キナ問題ヲ却テ惹キ起スゾト
云フコトヲ私ハ申上ゲタイ、ソレハ米騒動ハ
富山縣ノ漁業組合ノ漁夫ノ妻女カラ起ッテ
居ル、漁業ト云フモノヲ斯ウ云フヤウナ狀
態ニ何時マデモ置イテ置イタ場合ニ於テ起
ルト云フコトハ、是ハ農林省ダケノ問題
ヂヤナイ、今申シマシタ如ク保險ト云
フコトヲ考ヘマスト云フト、農林省ノ
所管ヨリ寧ロ私ハ內務省ノ社會局ノ所管
デアルト思ヒマス、或ハ場合ニ依ッテハ
遞信省ニ於テ簡易保險ノ一ツノ施設トシテ、
漁業者ニ對スル別樣ノ考察ヲサレルコトモ
必要ダト思ヒマス、サウ云フヤウナ問題ヲ
何等準備ナシニ、漁船保險ヲ御出シニナル
ト云フコトハ、私ハ政府トシテ非常ニ緩慢
ダト思ヒマス、一方ニ於テサウ云フ準備ヲ
シテ居ナケレバイケナイ、衆議院ニ於テサ
ウ云フ希望決議ヲシタ場合ニ於テ、貴族院
ノ本會議デモソレニ對スル質問ガアッタヤ
ウデアリマスケレドモ、考慮スルト云フコ
トニ止ッテ居ル、考慮ハ誰デモシテ居ル、考
慮シナケレバ大變デアリマス、大臣ヲ俟ツマ
デモナク總テノ國民ハ皆考慮シテ居ル、考
慮ヲ我々ハ求メルノデハナイ、名案ヲ求メ
テ居ルノデアリマスカラ、其ノ點ヲ大臣ニ
能ク仰シヤッテ戴イテ、其ノ意味ノ御答辯ヲ
願ヒタイト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00119370322&spkNum=24
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025・白根竹介
○白根竹介君 實施計畫ノ大體ノ再保險ト、
ソレカラ組合トノ、政府ノ再保險ト組合ト
ノ關係、ソレカラ參考書ニモ今松村君カラ
御話ノアリマシタ參考書ノ漁業再保險特別
會計歲入年度別表、ソレ等ノ點ニ付テ一通
リ御說明願ヒタイト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00119370322&spkNum=25
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026・原辰二
○政府委員(原辰二君) 此ノ漁船保險組合
デ扱ヒマスル元受ノ保險ト、政府ノ扱ヒマ
ス再保險トノ關係ハ、大體斯ウ云フ風ニ考
ヘテ居ル譯デアリマス、卽チ農林大臣ノ最
前說明ヲサレタ中ニモチヨット御話ガアリ
マシタヤウニ、此ノ漁船ノ損害保險ハ漁船
保險組合ニ依ル元受ノ保險ダケデハ、ドウ
シテモ危險ノ分散ガ適當ニ參リマセヌノ
デ、ソレハドウシテモ誰カガ再保險ヲシナ
クチヤナラヌヤウナコトニナルノデアリマ
スガ、此ノ再保險ハ政府ガ結局直接營ムノ
ガ最モ適當ト斯樣ニ考ヘテ居ル譯デアリマ
スガ、此ノ民間ノ保險ニ於ケルガ如ク、元
受ノ保險關係ト再保險ノ關係トヲ假ニ切放
シマシテ、再保險ハ付ケテモ付ケナクテモ
宜シイト云フノデハ適當デナイト考ヘマシ
タガ故ニ、ソコデ此ノ法案ノ中ニモ其ノ元
受ノ保險ニ掛ケタ場合ニハ、當然ニ此ノ漁
船保險組合ト政府トノ間デ、其ノ保險ノ目
的ニ付テ再保險ノ關係ガ發成スルモノト云
フ風ニ制度ヲ立テタ譯デアリマスガ、其ノ
實際ノ運用ノ仕方ト致シマツテハ、先ヅ元
受ノ保險ニ付テ極ク簡單ニ申上ゲマスト云
フト、大體此ノ經理ノ目標ヲ付ケマスノニ、
具體的ノ保險ノ目的ニ付テドレ位ナ保險價
額ト云フモノヲ玆ニ助成ヲシタラ宜シイカ、
サウ云フ點ニ付キマシテハ時價ノ大體七割
ト云フモノヲ見當ニ置ケバ、大體ノ平均的
ナ價値トシテ宜シイダラウト斯樣ニ考ヘマ
シテ、此ノ時價ノ七割見當ト云フモノヲ元
受ノ保險金額ニ付スルト云フ風ニ定メタ譯
デアリマス、併シ是ハ全體ヲ通ジテノ標準
デゴザイマシテ、各組合々々デノ組合員ノ
漁船ニ付テ、是ハ時價ノ何割マデ取ルカト
云フコトハ、必ズシモ時價ノ七割ヲ釘付ニ
シテ拵ヘテ、サウ云フ風ニ極メサスト云フ
趣旨デハ勿論ナイノデアリマスガ、全體ノ
標準ト致シマシテハ時價ノ七割、其ノ時價
ト云フモノガ、實ハナカ〓〓數ガ多イ漁船
ニ付キマシテ、一々實地調査ヲシテ極メル
コトモ困難デアリマスカラ、新造費ト云フ
モノハ比較的ハッキリ致シテ居リマスカラ、
動力船ナラバ現在噸當リ幾ラデ出來ル、
無動力ナラバドレ位デ出來ルト云フコトハ、
地方々々デ大體ハッキリ致シテ居リマスノ
デ、其ノ新造費ノ七割ト云フモノヲ其ノ標
準ノ時價ト見マシテ、更ニ其ノ時價ノ七割
ト云フモノヲ保險ノ價額ト算定スルコトガ
一番實情ニ近イ、斯樣ニ考ヘマシテ、左樣
ナ時價ノ七割ト云フモノヲ保險ノ價額ニ見
タ譯デアリマス、サウシテ組合員ト組合ト
ノ間ニ元受ノ保險ガ生ジマスト云フト、其
ノ再保險ハ、元受ノ保險價額ノ其ノ七割ト
云フモノヲ標準ニシテ、再保險ニシテ······
再保險ニ付ケル、サウ云フ風ニ見テ行ッタノ
デアリマス、サウ云フ風ニ大體考ヘマシテ、
此ノ組合ノ豫定數一口當リノ平均加入ノ漁
船ノ數ハ、サウ云フ風ナモノヲ年度割ニ見
當ヲ付ケテ參リマシテ、サウシマスト云フ
ト大體保險ノ契約ノ金額ガ約ソドレ位ニナ
ルカト云フ關係ガ出テ參リマス、ソレカラ
又一面ニ於キマシテ此ノ保險料ノ計算ハ、
元受ノ方デアリマスト云フト此ノ參考書ニ
書イテ置キマシタヤウニ、動力船ナラバ保
險金額百圓ニ對シテ二圓三十九錢ノ割デ取
ル、再保險ノ保險料ハ矢張リ動力ニ付キマ
シテハ再保險金額百圓ニ對シマシテ一圓八
十四錢ノ割デ徵收スル、左樣ニズット計算
ヲシテ參リマスト云フト、只今御覽ヲ戴キ
マシタヤウナ年度別ノ數字ガ出テ參ル譯デ
アリマス、サウシテ此ノ經理關係ヲ更ニ一
言附加ヘテ申上ゲレバ、大體此ノ再保險ノ
關係ハ特別會計ニ依ッテ經理ヲスル建
立ヲトッテ居リマスカラ、特別會計ノ性
質上、是ハ特別會計ノ收支ヲ以テ特
別會計ノ支出ヲ賄フ、所謂獨立經濟ニ依ル
ノガ原則ナ譯デアリマスケレドモ、ソレニ
依リマスト云フト、初年度カラ其ノ「バラ
ンス」ヲ取ッテ參リマスト云フト、結局再保險
料ト云フモノヲ餘程高クシマセヌト云フト
「バランス」ガ取レマセヌノデ、ソレデ此ノ
表デ御覽戴キマシタヤウニ、第十年目カラ
獨立スル、初年度ヨリ九年度マデハ一般會
計カラ繰入ヲ致シマシテ、初年度ガ一番多
イノデアリマスルガ、六萬二千圓バカリデ
アリマスルガ、後漸次減リマシテ九年度マ
デ若干ヅツ繰入ヲ繼續致シマシテ、十年目
カラ獨立ヲスルト云フ風ニ考ヘタ譯デアリ
やっく、從ヒマシテ若シ此ノ九年間一般會計
カラ特別會計ヘノ繰入ガナケレバ、再保險
料收入ト云フモノヲモット多ク見込マナケ
レバナラヌ、ソレヲ見込ムニハ再保險料ト
云フモノヲ此ノ計算ヨリモ更ニ多ク取ラナ
ケレバナラヌ、ソレガ結局元受ノ保險料ヘ
モ響イテ來マシテ、結局此ノ漁船ノ船主、
詰リ漁船保險組合ノ組合員カラ保險料ト云
フモノヲ、此ノ計算ヨリモ更ニ多ク徵收ヲ
シナケレバ經理ガ取レテ參ラナイト云フ、
斯ウ云フ結論ニナルノデアリマシテ、サウ
ナリマスト云フト、松村サンカラ縷々御話
ガアリマシタヤウニ、漁業者ノ負擔力ト云
フモノハ甚ダ貧弱デゴザイマスルカラ、其
ノ負擔力ニ相應シナイヤウナ高イ保險料ヲ
取ルト云フコトニナリマシテハ、結局組合員
ガ負擔ニ堪ヘナイト云フコトニモナリマセ
ウシ、延イテハ此ノ保險制度其ノモノガ成
立タナイト云フ風ナ結論ニモナラヌトモ限
リマセヌノデ、ソレデ此ノ九年間一般會計
カラ繰入ヲ考ヘタ譯デアリマシテ、言ヒ換
ヘマスルト云フト、形式上補助金デハアリ
マセヌガ、一種ノ保險料ノ國庫負擔ト見テ
モ宜シイヤウナ事實關係ニナルノデアリマ
スルガ、大體サウ云フヤウナ關係ニ組立テ
アル譯デゴザイマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00119370322&spkNum=26
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027・白根竹介
○白根竹介君 大變平ッタイ話デスガ、ロハ今
松村君ノ仰セラレタヤウニ、假ニ三崎ヲ中
心トシテ組合ガ一ツ出來ル、所ガ非常ニ大
時化ガアッテ其ノ組合ノ船ノ大部分ハ沈ン
デシマッタト云フヤウナ場合ニハ、全部矢張
リ再保險ヲ政府カラ拂フノデアリマスルカ、
其ノ七割、組合ノ保險料ノ七割ヲ拂フノデ
アリマスルカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00119370322&spkNum=27
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028・原辰二
○政府委員(原辰二君) 左樣デゴザイマス、
ソレデ此ノ元受ノ關係ニ於キマシテハ先程
松村サンノ御尋ニ對シマシテ申上ゲマシタ
ヤウニ、此ノヨク〓〓經理ノ取レナイト云
フヤウナ場合ニハ、其ノ組合デハ決議ヲ致
シマスレバ、保險料ノ追徵ナリ、保險金額
ノ削減ナリハ出來ルヤウナ途ハ開イテ居ル
譯デアリマスルガ、再保險ノ關係ニ於キマ
シテハ、ソレハ影響ナイモノト見マシテ、
矢張リ大體元受ノ七割見當ノモノハ、其ノ
標準ノモノハ拂ッテ「行クト云フ風ニ考ヘテ
居リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00119370322&spkNum=28
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029・白根竹介
○白根竹介君 家畜保險ノ場合トハ大分性
質ガ違フト私モ思ッテ居リマスケレドモ、家
畜保險ノ今マデノ經過ハドンナ風ニナッテ
居リマスカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00119370322&spkNum=29
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030・原辰二
○政府委員(原辰二君) 家畜保險ノ實施ノ
情況ノ詳細ナ點ハ、實ハ私能ク存ジマセヌ
デゴザイマスルカラ、又御尋ガゴザイマス
レバ其ノ係リノ方カラ御說明ヲ致サセヤウ
ト思ヒマスガ、大體家畜保險ノ實蹟ハ此ノ
制度ヲ立テマシタ當初ノ豫定ト比ベマスト
云フト、實施ノ當初ハマア成績ガ豫定サレ
タ程進行致シマセヌデ、マア言ヒ換ヘマス
ト云フト、牛馬ノ加入ガ豫定數ニ充タナカツ
タ、從ヒマシテ經理關係モ非常ニ苦シクアツ
テ、確カ一般會計カラ家畜保險ノ特別會計
ヘノ繰入ナンカ、モウ少シ殖サナケレバナ
ラヌト云フ風ニナッタカノヤウニ聞イテ居
リマスガ、是ハ何デモ施行サレマシタノガ
確カ昭和四年カラカト思ヒマスガ、此ノ一
般ノ經濟界ノ不況ニ原因サレマシテ、當初
乳牛ガ幾ラトカ、馬ガ幾ラトカ云フ風ニ見
込ンダ保險ノ目的ノ價額ト云フモノガ豫想
外ニ、非常ニ安クナッタンダサウデアリマス、
ソレデアリマスカラ此ノ牛馬ノ所有者ノ方
カラ見マスト云フト、ナカ〓〓保險ニ入ル
コトガ困難ニナッタ、サウ云フ實情ニアッタ
サウデアリマスガ、最近ハ大體當初豫定ノ
狀態ヲ見マシテ、此ノ經理ノ關係デモ大體
ニ於テ「バランス」ガ取レマシテ、此ノ加入
ノ情況ナンカモ漸次殖エテ行ク、此ノ狀態
デ參リマスレバ、將來家畜保險ノ經理ナリ、
又保險事業トシテノ發展性ハ相當ニ考ヘ得
ル、斯樣ニ聞イテ居リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00119370322&spkNum=30
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031・小村捷治
○侯爵小村捷治君 私ハ此ノ法案ノ對象ノ
主タルモノデアル漁船ニ付テチヨット伺ヒ
タイノデアリマスガ、漁船ハ抑〓小ナルモノ
ハ一「トン」カラ大ナルモノハ南極へ行ク二
萬「トン」ノモノモゴザイマセウト思ヒマス
ガ、大體ニ於テ此ノ目的トサレル所ハ、ド
ノ邊ニゴザイマスノデスカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00119370322&spkNum=31
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032・原辰二
○政府委員(原辰二君) 保險ノ目的ノ範圍
ニ付テデゴザイマスガ、漁船ノ實情ハ只今
御話ノゴザイマシタヤウニ、最近ノ大キナ
モノハ二萬「トン」ニモ上ルノデゴザイマス
ガ、小サナモノハ非常ニ小サナモノデアリ
マシテ、其ノ數ガ又非常ニ多イト云フ實情
デゴザイマスガ、御手許へ御配リ致シマシ
タ實施計畫表ノオ終ヒニモ、參考表ノ一ト
致シマシテ「トン」數別ノ船ノ數ヲ動力、無
動力ニ分ケマシテゴザイマスガ、ソレニ依ッ
テ御覽ヲ戴キマシテモ御分リニナリマスヤ
ウニ、大體カラ申シマスト云フト百「トンL
未滿ノ小サナモノガ非常ニ多クテ、割合カ
ラ申シマスト云フト、九十「パーセント」ハ
百「トン」未滿ノ小サナモノデアル、斯ウ云
フ風ナ實情デゴザイマス、從ヒマシテ原則
ト致シマシテハ百「トン」未滿ノ小型ノ漁船
ニ付テ適用スル、若シ百「トン」以上デアリ
マシテモ沿岸ノ捕鯨ニ從事致シマス捕鯨船
デゴザイマストカ、或ハ「トロール」ノ如キ
船モゴザイマスノデ、是モ此ノ漁船保險ノ
目的トシテ扱フ方ガ宜シイ、又扱ハザルヲ
得ナイヤウナ何等カ特殊ノ事情ガ出テ來マ
スレバ扱ハザルヲ得ナイヤウナ事情モ場合
ニ依レバアラウカト思ヒマスガ、何レニ致
シマシテモ百「トン」以上ノ比較的大キナモ
ノハ例外的ニ扱フ、併シ其ノ例外的ニ扱フ場
合デモ一千「トン」ヲ超エルヤウナ大キナモ
ノハ是ハ數モ非常ニ少クナリマシテ、モウ
二三十艘位ナモノデゴザイマセウ、デゴザ
イマスカラ大體民間ノ海上保險ニ任シテモ
宜イノデナカラウカ、又其ノ方ガ却テ宜イ
ノデナカラウカト云フ風ニ考ヘテ居リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00119370322&spkNum=32
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033・小村捷治
○侯爵小村捷治君 大體只今ノ御話ニ依リ
マスト、百「トン」未滿ノモノヲ目的トサレ
ルヤウニ承知致シマスガ、先程來ノ色々ノ
御答辯ノ中ニ私チヨット伺ッタヤウニ存ジマ
スガ、二十「トン」トカ或ハ三十「トン」デゴ
ザイマスカ、サウ云フ數字ガ出テ參リマシ
タ、其ノ邊ガ或ハ何等カノ限度ニナッテ居ル
ノデハゴザイマセヌカ、例ヘバ動力ト申シ
マスカ、或ハ無動力ト申シマスカ、其ノ邊
ノ限界ガ存シテ居ルノデナカラウカト思ヒ
マスノデ、チョット一應御〓ヲ願ヒタイト存
ジマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00119370322&spkNum=33
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034・原辰二
○政府委員(原辰二君) 先程二十「トン」ノ
船ト云フコトヲ申上ゲマシタノハ、現在遞
信省ノ關係ノ扱ヒデゴザイマスケレドモ、
二十「トン」以上ノ船ハ何ト申シマスカ、
人前ノ船ラシイ取扱ヲシテ居ルノデゴザイ
マス、ト申マシスノハ例へバ二十トン以上ノ
船ニハ船長ト云フモノヲ乘込マセナケレバ
ナラヌ、商法ノ所謂正式ノ船長デゴザイマス
ナ······ソレカラ其ノ船籍港ヲ定メナケレバ
ナラナイトカ、サウ云フ風ナ色々ノ制度ガ二十
「トン」以上ノ船ニ付テ現在行ハレテ居ルノ
デアリマス、二十「トン」未滿ノ極ク小サナ船ニ
ナリマスルト云フト、是ハ今申シマシタヤウ
ナ正式ノ船長ナドガ無クテモ宜シイ、或ハ船
籍港ト云フ風ナモノヲ極メナクテモ一定ノ碇
繫ノ場所ヲ地方長官ニ屆出デテ置ケバ宜シイ、
サウ云フ風ナ非常ニ簡易ナ取扱ニ任サレテ
居ルノデゴザイマス、此ノ保險デ考ヘテ居
リマスノハ二十「トン」未滿ノ、サウ云フ船
舶關係トシテ簡易ナ扱ヲ受ケ得ルモノハ、
保險ノ目的ニナリ得ナイト云フコトデハ、
是ハドウモ漁村ノ實情ニ副ハナクナリマス
カラ、サウ云フ船舶法デアリマストカ、遞
信省ノ御扱ノ各種船舶法規ガドウナッテ居
リマセウトモ、其ノ點ハ區別ヲ致シマセヌ
デ、原則トシテ百「トン」未滿ノモノヲ出來ル
ダケ多ク此ノ保險デ救ッテ行キタイ、斯樣ニ
考ヘテ居ル次第デゴザイマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00119370322&spkNum=34
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035・小村捷治
○侯爵小村捷治君 此ノ參考表ニ依リマシ
テモ五「トン」未滿ト云フモノガ最大多數ヲ
占メテ居リマス、又是ガ最モ難ニ遭フコト
ガ多ク、從ッテ又損害モ多イノダラウト思ヒ
マスガ、主トシテ斯樣ナモノヲ對象ニナサ
ル御積リナノデゴザイマセウカ、ドウデゴ
ザイマセウカ、一應伺ッテ置キマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00119370322&spkNum=35
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036・原辰二
○政府委員(原辰二君) 大體遭難ノ情況カ
ラ見テ參リマスト云フト、此ノ動力船ノ方
ガ多クテ、無動力船ガ少イ傾向ニナッテ居
リマス、從ヒマシテ五「トン」未滿ノ極ク小
サナ船ノ數ノ全體ヲ見マスト云フト、此ノ
表デ御覽戴キマスヤウエ、無動力船ノ五「ト
ン」未滿ト云フノガ非常ニ多イノデアリマ
ス、ソレカラマア磯舟ト申シマスカ、ヨク
海岸ニゴロ〓〓轉ッテ居リマスアヽ云フノ
ガ事實上ハ非常ニ舟ノ數ハ多イノデゴザイ
マスガ、又一面ニアヽ云フ小サナ濱邊ニア
リマス動力ナシノ舟ガ遭難率ガ非常ニ多イ
カト申シマスト云フト、アレハ案外危險ガ
ナイノデゴザイマシテ、少シ波風ガ荒クナ
リサウダト思ヒマスト、砂濱へ多ク引揚ゲ
テ置ク關係ガアリマシテ、動力ガアリマス
ト云フト動力ニ要スルニ自信ヲ有チ過ギテ、
冒險ヲシテ遠クヘ乘出スト云フ風ナコトガ
アル關係上、自然ト危險ガ多イ、斯ウ云フ
風ニナッテ居ルノデゴザイマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00119370322&spkNum=36
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037・小村捷治
○侯爵小村捷治君 少シ問題ガ變リマスガ、
先程大臣ノ御說明ニモ、從來民間デモ若干
之ニ關係シテ居ルコトガアル、唯ソレガ十
分ナル效果ヲ發揮シテ居ラヌト云フ御話デ
ゴザイマシタガ、凡ソ何年位前カラ此ノ漁
船保險ノ類ハ民間ニ於テ行ハレテ居リマス
カ、チヨット承リタイト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00119370322&spkNum=37
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038・原辰二
○政府委員(原辰二君) 民間ノ海上保險會
社ニ於テ漁船ヲ取扱マシタノハ確カ大正十
二三年頃カラダト記憶シテ居リマス、現在
大體ドレ位扱ッテ居ルカト云フ情況モ序ニ
極ク簡單ニ申上ゲマスト云フト、現在此ノ
漁船ヲ含ンデ海上保險トシテ扱ッテ居リマス
會社ノ數ハ十會社ゴザイマス、デ事實上扱
ヒマセヌデモ、會社ノ定款ニ於キマシテ漁
船モ保險ニ取ルト云フコトヲ書イテ居ルダ
ケノモノガ更ニ三ツバカリゴザイマス、デ
アリマスカラ此ノ定款ニ揭ゲテ會社ノ業務
トシテ漁船保險ヲ扱フト云フコトニナッテ
居ルノハ十三會社アリマス、其ノ中デ實際
扱ッテ居ル會社ガ十ト云フコトデゴザイマ
シテ、此ノ十會社ノ一日ノ取扱高デゴザイ
マストカ、其ノ保險料デゴザイマストカ云
フ其ノ詳細ハ分リマセヌガ、極ク總括致シ
マシタモノハ御手許ニ御廻シ致シマシタ實
施計畫書ノ一番オ終ヒニ、御參考ニ附ケテ
置キマシタモノデ御覽ヲ戴キタイト思ヒマ
スガ、此ノ十會社ガ取扱ヒマシテ昭和九年
度ノ成績ガ只今分ッテ居リマス、一番新シイ
モノデゴザイマスガ、之ニ依リマシテモ件
數ニシマシテ九百九十七件、一千件ニ滿タ
ナイノデゴザイマス、而シテ此ノ契約金額
ハ二千五百七十五萬三千圓、收入保險料ガ
八十六萬五千三百十九圓、サウシテ此ノ損
害高ハ件數ニシマシテ五十四件、金額ガ二
十四萬一千四百十一圓、サウ云フコトニナッ
テ居リマシテ、從ッテ收入保險料ト損害高ト
ノ差引ヲ見マスト云フト六十二萬三千九百
八圓、是ダケハ大雜把ニ申セバ保險會社ノ
儲ケニナッテ居ルト云フ風ニナルノデゴザイ
マシテ、デ保險料モ各會社ノモノハ公表シ
マセヌノデ分リマセヌガ、總括シテ見マス
ト云フト動力附漁船ガ三圓三十五錢、漁船
保險組合ノ豫定ノ標準保險料ガ二圓三十何
錢デゴザイマシタカ、約一圓違フ譯デゴザ
イマス、一圓向ノ方ガ······民間ノ方ガ高
クナッテ居ル譯デゴザイマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00119370322&spkNum=38
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039・小村捷治
○侯爵小村捷治君 御說明中甚ダ失禮デゴ
ザイマスガ何圓何十錢マデ伺ハナクテモ宜
シイノデ、唯今度御實施ニナルベキ料率
ト從來ノ民間漁業ノ料率トノ比例ダケデモ
仰シヤッテ戴ケバ結構デゴザイマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00119370322&spkNum=39
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040・原辰二
○政府委員(原辰二君) 民間ノ海上保險ノ
保險料ト此ノ漁船保險法ニ依ッテ運用致シ
マス場合ノ保險料トハ、極ク大雜把ニ申シ
マシテ民間ノモノヨリモ大體三割乃至五割
安イコトニナッテ居リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00119370322&spkNum=40
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041・小村捷治
○侯爵小村捷治君 先程松村委員カラモ御
話ガゴザイマシタシ、又確カ衆議院デ質問
ガゴザイマシタト存ジマスガ、先程モ御話
ガアッタヤウニ、板子一枚下ハ地獄ト云フ、
此ノ我々ノ食料ヲ供給シテ吳レル冒險的ナ
一種ノ稼業デゴザイマスガ、之ニ對シテハ
漁船ノ船體ニ對スル保險ノミデナク、最モ
大事ナコトハ此ノ生命ノ保險ダラウト思ヒ
マス、其ノ方ガ何ト申シマスカ、海難保險
ト申シマスカ、水難保險ト申シマスカ、サ
ウ云フコトガドノヤウニ、漁民ニ對シテ怖
ルベキモノダト思ヒマスノデスガ、政府ハ
只今ノ所ハ御計畫ハナイヤウニ存ジテ居リ
マスガ、民間ニ於テ是ガ無イノヂヤナカラ
ウト思ヒマスガ、若シサウ云フモノガゴザ
イマシタラバ、如何ナルモノガゴザイマス
カ御〓ヲ願ヒタイノデゴザイマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00119370322&spkNum=41
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042・原辰二
○政府委員(原辰二君) 民間ニ於キマシテ
モ此ノ普通ノ生命保險、傷害保險ノ外ニハ
特別ナモノハマダ考へラレテ居リマセヌ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00119370322&spkNum=42
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043・小村捷治
○侯爵小村捷治君 全然ゴザイマセヌデス
カ、海難保險モ漁民ニ對スル海難ノ保險ハ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00119370322&spkNum=43
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044・原辰二
○政府委員(原辰二君) 先程松村サンモ仰
セノ通リ、サウ云フ制度ハマダ全然無イト
申上ゲル外ナイノデゴザイマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00119370322&spkNum=44
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045・小村捷治
○侯爵小村捷治君 全然ゴザイマセヌカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00119370322&spkNum=45
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046・原辰二
○政府委員(原辰二君) ハア、チヨット附加
ヘテ申上ゲテ置キマスガ、民間デハ全然ゴ
ザイマセヌ、ソレデアリマスカラ只今ノ所、
ソレデハ漁業者ハ實際ドウヤッテ居ルカト
云フコトヲ御參考ニチヨット申上ゲマスト
云フト、是モ餘リ數ハ勿論多クゴザイマセ
ヌガ、漁村デハ多少共濟組合、任意デスナ、
共濟組合ヲ拵ヘマシテ、此ノ共濟組合ト申
シマスノハ全然任意ノ申合セノ組合ガ主デ
ゴザイマス、其ノ外漁業組合アタリデモ多
少附帶的ノ事業トシテヤッテ居ル所モゴザ
イマスシ、又地方ノ水產會アタリデモ多少
扱ッテ居ル所モゴザイマスガ、極ク大體ノコ
トヲ申上ゲマスト、任意ニ此ノ漁業家ガ申
合セヲ致シマシテ、サウシテ此ノ船ガ沈沒
シタ場合ニハ幾ラ、人ガ死ンダ場合ニハ二
十圓トカ三十圓トカ、葬儀費用ノ足シニデ
スネ、御互ガ出シ合ッテ行クト云フヤウナ、
極ク簡易ナ共濟事業ヲヤッテ、漸ク其ノ程度
ノモノデ我慢ヲシテ居ルト云フ誠ニ氣ノ毒
ナ情況ニナッテ居リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00119370322&spkNum=46
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047・小村捷治
○侯爵小村捷治君 左樣ナ狀態デ、將來マ
デ放任ナサル御考ナンデゴザイマセウカ、
或ハ將來ニハ其ノ漁業家ニ對スル海難保險
トカ、水難保險トカ申スヤウナモノヲ御設
ケニナルト云フヤウナ計畫ハ、將來ニハ御
持チデゴザイマセウカ、或時期ニ於テ······発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00119370322&spkNum=47
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048・原辰二
○政府委員(原辰二君) 實ハ此ノ衆議院ニ
於キマシテモ、此ノ問題ハナカ〓〓ヤカマ
シカッタノデゴザイマスガ、御尤モノ點デゴ
ザイマシテ、船ノ保險ヨリモ寧ロ人ノ保險
ナリ救濟ノ問題ガ先決問題デハナイカト云
フ御議論ヲ、色々御注意的ニ伺ッタノデゴ
ザイマスガ、政府ト致シマシテハ勿論將
來······將來ト申シマシテモ出來得ルダケ早
ク是等ノ漁業家、又其ノ家族等ノ保險ナリ保
護ナリ、救濟ノ制度ハ立ッテ參ラナケレバナ
ラヌト斯樣ニ考ヘテハ居リマス、併シナガ
ラ只今大體、ドウ云フ風ナコトヲドウ云フ
仕組デ考ヘテ居ルカト云フ、極ク具體的ノ
御話ニナリマスト云フト、誠ニ殘念ナガラ其
ノ程度ニハマダ考ガ伸ビテ居ラヌノデゴザ
イマス、此ノ漁船保險デモ片付キマスレバ、
次ニハ是非此ノ程度マデ進ンデ、成ルベク早
ク案ヲ練リマシテ、御審議ヲ願フヤウニ運
ンデ參ラナケレバナラヌト、斯樣ニ考ヘテ
居リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00119370322&spkNum=48
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049・小村捷治
○侯爵小村捷治君 ソレハ豫算其ノ他ヲ御
考慮ニナッテノコトデゴザイマスカ、或ハサ
ウ云フ御名案ガ全然ナイト云フノデスカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00119370322&spkNum=49
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050・原辰二
○政府委員(原辰二君) 有ノ儘ニ申上ゲマ
スト云フト、マダ豫算ニ關シタ所マデハ實
ハ參ッテ居ラヌノデゴザイマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00119370322&spkNum=50
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051・松村眞一郎
○松村眞一郞君 私ハ只今ノ御答辯ヲ
何つ、實ニドウモ政府ガ深切ガ足リナイ
ノデハナイカト云フコトヲ私ハ痛感スルノ
デアリマスガ、保險ノ制度ト云フコトガ出
來ナケレバ、共濟ニ對スル施設ニ對シテノ
補助金ヲ相當多額ニ一方ニ於テ計上シナガ
ラ、其ノ色々ナ危險率ノ狀態トカ、損害ノ
發生ノ度合トカ、危險分布ノ狀態デアルト
カ、一方ニ於テ政府ハ災害ノ時ニハ何時モ何ト
カ金ヲ出スノデアリマスカラ、ソンナヤウナ
コトト併セテ、制度ガ出來ナケレバ出來ル
迄ノ間、兎ニ角取敢ズ來年度ノ豫算ニ於テ
ハ共濟ニ關スル奬勵施設ト云フコトノ金額
ヲ、相當計上スル必要ガ私ハアルト思フ、
案ガナケレバ金ヲ出スダケデ足リル、二十
圓三十圓ト云フヤウナ金ハ唯香奠代リ、サ
ウ云フヤウナ施設ノ共濟組合ハ是ハ漁業者
ニ限ッタコトデハナイ、地方ノ農村ニ於テハ
何處デモヤッテ居ルコトデアル、ソンナ·コト
ハ私ハ共濟施設トハ言ヘナイ、何處デモサ
ウ云フコトハヤッテ居ル、地方部落ニハ皆
寄ッテ見舞金ヲ出サウヂヤナイカト云フコ
トハ、生活改善ノ施設トシテモヤッテ居ル
モノデ、サウ云フ風ニ唯其ノ儘ニ見テ居ル
ト云フ狀態ガ、如何ニモ私ハ政府トシテハ
生溫イト云フコトヲ申上ゲル、共濟施設ト
云フ程ノ名稱ヲ付スルコトモ出來ナイト思
フサウ云フヤウナモノデアッテハ······、サウ
云フ譯デアリマスカラ共濟組合ノ施設デヤ
ラセルナラバ、其ノ共濟ニ付テノ何等カソ
コニ定款ナリ、規則ナリト云フモノヲ政府
ガ玆ニ拵ヘテヤッテ、ソレニ對シテ政府ガ或
金額ヲ補助スルト云フヤウナコトニシテ行
カナイト云フト、或ハ鐵道デアルトカ、遞
信事業デアルト云フヤウナコトニナルト、
サウ云フ職員ガ相集ッテ、農林省デモ山林ノ
職員ト云フヤウナモノデアレバ、サウ云フ
者ガ相集ッテ、共濟ノ施設ヲスルト云フコト
ハ行ッテ居ル、サウ云フヤウナコトヲ眺メタ
ナラバ、民間ニ於テサウ云フヤウナコトノ
施設ガ行ハレルヤウニ助長スルト云フコト
ガ、私ハ非常ニ大切ナコトヂヤナイカト思
フ、漁業組合ニヤラセルノモ宜カラウシ、
水產會ニ施設セシメテ、政府ガモウ少シ徹
底シテ深切ニ仕事ヲ導イテ行ク方法ハアル
ト思フ、豫算モ考ヘテ居ナイト云フヤウナ
程度デアッテハ、私ハ非常ニ緩慢ダト思フ、
取敢ズ案ガ出來ナケレバ案ヲ練ルダケノ間、
間ニ合ハセトシテ少クトモ共濟ニ付テノ豫
算ヲ取ルト云フコトハ、漁船保險ト同時ニ
私ハ政府ガ出シテ來ベキダト思フ、保險尊
キカ、人尊キカ」ト云フコトニナルト思フ、
サウ云フコトハ私ハ緩急輕重ノ問題デナイ
ト思フ、サウ云フモノヲ緩急輕重デナイト
云フコトハ、何人モ明瞭ナコトデアルト思
フ、後ニ廻シテ居ラレルト云フコトハ現在
ニ於テ許スベカラザルコトダト私ハ思フカ
ラ、是ハ大臣ガ非常ナ決心ヲサレル必要ガ
アルト思フ、十分ニ考慮スルト云フヤウナ
コトデナイ、必ズ提案スルト云フコトデナ
イト、私ハ人情ガナカラウト思フ、我々ハ
サウ云フヤウナ生溫イ大臣ノ答辯ニ於テ、
本案ヲ進行シテ行クト云フダケノ勇氣ハナ
イ、ソレハヨク仰シヤル必要ガアル、何人
ト雖モサウ云フコトニ異議ノアル筈ハナイ、
是ハ財政問題ヂヤナイ、是ハ直接ノ問題デ
アル、ソレヲマア水產ノ當局トシテ考ヘナ
イト云フ程、其ノ水產ト云フモノノ自體ガ
或意味ニ於テ麻痺シテ居ルト私ハ思フ、唯
漁民ガ唯自己ノ狀態ヲ有リノ儘ニ、極ク淡
白ニ、無邪氣ニ言ッテ居ルコトヲ、唯其ノ儘
輕ク受ケテ居ルト云フコトニナッテシマフ
ノデアリマス、不平ヲ言ハザル所ニ我々ハ
同情ノ淚ヲ濺ガナケレバナラヌ、不平ヲ言
ハナイ、非常ニ惠マレザル境遇ニ付テ何等
憾ム所ガナイ、アヽ云フ狀態ヲ唯見テ居ル
ト云フコトハ私ハ濟マナイト考ヘルノデア
リマスカラ、只今ノ御答辯ヲ伺ッテ、寧ロ私
ハ非常ニ驚カザルヲ得ナイ、ヨク大臣ニ仰
シヤッテ戴キタイ、其ノ答辯ヲ大臣カラ求メ
タイ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00119370322&spkNum=51
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052・堀田正恒
○委員長(伯爵堀田正恒君) 速記ヲ止メ
テ
〔速記中止〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00119370322&spkNum=52
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053・堀田正恒
○委員長(伯爵堀田正恒君) 速記ヲ始メ
テ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00119370322&spkNum=53
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054・松村眞一郎
○松村眞一郞君 チヨット局長ニ伺ヒマス、
漁船ノ方ノ種類ノ動力附、無動力ト云フ意
味デナク、漁業ノ方カラノ區別ノ御見込ハ
アリマセヌカ、ソレハドウ云フコトカト申
スト、矢張リ漁業者ヲ保護スルト云フ目標
デ進ンデ居ッタ方ガ宜イデアルマイカ、先程
小村侯爵ノ言ハレタ如ク、二萬噸ノ船ガ斯
ウ云フ所デ一ツ入ッテ來タノデハ、保險料ハ
大變ナコトニナル、小サイ保險料ヲ集メテ
ハ迚モカナハナイ、漁業組合、保險組合、
ソレ自身ノ根柢ガ非常ニ動搖スル、斯ウ云
フヤウナ意味デ、私ハ漁船保險組合ト云フ
ノハイカナイト云フコトヲ意見トシテ持ツ
テ居ルノデスケレドモ、ソレハ後デ討論ノ
時申シテ宜イノデアリマス、サウ云フヤウ
ナ次第デアリマスカラ、小サイモノヲ目標
トシテ漁業ノ種類デ行ッタ方ガ宜イト私ハ
思フ、局長ハ漁業組合ニ「トロール」ヲ入レ
テ宜イト云フコトヲ言ハレマスガ、例ヘバ
下關デ漁船組合ヲ作ッタ時ニ共同漁業デア
ルトカ、或ハ鳥羽デスカ、サウ云フ所デ漁
業組合ヲ作ッタ時ニ、サウ云フヤウナ大キナ
漁業ガ入ッテ、沿岸漁業ト一〓ニナッテ、大
キナ漁業ト小サナ漁業ガ入ッテ一ツノ「メン
バー」ニナッテ、漁船組合ヲ作ルト云フコト
モヲカシイノデナイカ、サウ云フノハ保險
會社ヘ行カレル方ガ······寧ロ漁業ノ種類
ニ依ッテ極メタ方ガ宜イト私ハ思フ、大キナ
漁業ハ澤山アル、先程鯨漁業ノ如キモノヲ
入レテモ宜イト云フコトデアリマスケレド
モ、一艘入レタダケデモ大變ナコトニナッテ
シマフ、鯨漁業トカ、蟹工船漁業トカ、ソ
レカラ「トロール」漁業ト云フヤウナモノ
ハ、私ハ入レナイデ宜イノヂヤナイカト思フ
ノデス、寧ロソレヨリモ少シ小サイ漁船ヲ
澤山入レルト云フコトノ方ガ宜クハナイカ
ト私ハ思フ、鰹トカ云フヤウナ漁業、鮪漁
業トカ云フヤウナモノニ付テハ、ドウ云フ
分界ニ入ルカ分リマセヌガ、漁業ノ種類カ
ラ見ルノガ一ツノ方法デアル、組合ヲ作ル
ナラバ、私ハ組合ハ不必要ト思フノデスカ
ラ、何デモ彼デモ入レテ、政府ガ直接ニ保
險シテ行クコトモ宜イト思フノデスガ、サ
ウ云フ點デドウ云フ風ニ局長ハ御考エチつ
テ居リマスカ、ソレヲ伺ヒタイノト、今ノ
問題ニ關聯シテ何ガ故ニ國家直接ノ保險ニ
シテハ惡イノカト云フコトヲ承リタイ、惡
イノカト云フ點ニ付テ·····発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00119370322&spkNum=54
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055・原辰二
○政府委員(原辰二君) 先程申上ゲマシタ
此ノ百噸以上ノ船ノ例ニ「トロール」捕鯨船
ト云フコトヲチョツト申上ゲマシタガ爲
ニ、趣旨ガハツキリシナイヤウニ御聽取リ
ニナッタカト思ヒマスガ、御話ノ如ク「ト
ロール」トカ、捕鯨船トカ云フ風ナモノハ、
是ハ私共ノ方デモ大體考ヘテ居ル譯ヂヤナ
イノデアリマス、唯百噸以上ノ漁船トシマシ
テハ、ドウ云フ風ナモノガアルカト云フコ
トヲ一例ニチヨツト御話ヲシタ程度デゴザ
イマシテ、松村サンノ御話ノ如ク、漁業ノ
種類ニ依ッテ、漁船ノ範圍ヲ極メテ行クト云
フ考ヘ方ハ、實際問題トシテハ大體サウ云
フ風ニナラザルヲ得ナイト思ヒマス、デア
リマスガ、具體的ニ漁業ノ種類別ニ之ヲハッ
キリ法律ヤ規則ノ上ニ定メルト云フコト
ハ、チヨット困難カト思ヒマス、デアリマス
ガ、大體ノ狙ヒ所ハ自然トサウ云フ風ニナッ
テ來ルト思ヒマス、ソレハ百噸未滿ノ小型
ノモノヲ主トスルト云フ所カラ、事實上サ
ウナルト思ヒマス、ソレカラ此ノ漁船保險
ヲナゼ直接國營デヤラナイカ、ヤルコトガ
惡イカト云フ點ニ付キマシテハ、是ハ此ノ
國營保險デヤルベカラザルモノデアルト云
フ風ニハマア考ヘラレナイト思ヒマスガ、
此ノ實際上ノ便宜ノ點カラ考ヘマスト云フ
ト、此ノ地方々々ノ船主ヲ以テ漁業保險組
合ト云フモノヲ作リ、ソレニ依ッテ相互保險
ヲ營マセルト云フ立前ノ方ガ、實行上多ク
ノ便宜ガアル、左樣ニ考ヘテ居ルノデゴザ
イマス、何故、ドウ云フ點ニ此ノ便宜ガア
ルカト申シマスルト云フト、御承知ノ通リ
ニ漁船ノ取扱ハ最前カラモ申上ゲマシタヤ
ウニ、二十噸以上ノ船ハ船舶關係ノ諸法規
ニ依リマシテ、取扱上船籍法デアリマスト
カ、色々ナ點ガ明瞭ニ比較的ナッテ居リマ
スガ、此ノ二十噸未滿ノ船ニナリマスルト、
サウ云フ制度モ今日ハ十分備ハッテ居ナイ
ト云フコトモ一ツ、又漁船ノ性質上、保險
ノ目的ガ非常ニ此ノ何ト申シマスカ、移動
性ガ多クッテ、其ノ保險ニ付ケル際ノ價額ノ
算定ト云フモノハ假ニ出來マシテモ、損害
ノ起ッタ場合ノ損害ノ算定ト云フヤウナコ
トハ、是ハ政府ガ直接ニ行フト云フヤウナ
場合ニハ、非常ニ多クノ所謂役人ナリ、又
込入ッタ仕組ヲ考ヘマセヌト云フト、ナカ
ナカ實行ガ出來ナイ、ソレヨリモ寧ロ漁船
ノ船主ト云フモノヲ相互的ニ結合致サセマ
シテ、所謂相互保險ヲ營マセルト云フコト
ニ、サウ云フコトニ致シマスルコトガ、所
謂相互ノ監視モ行屆キ、又組合員相互間ニ
誰某ノ所有ノ何々丸ハ大體何時頃造ッテ、ド
ウ云フ方面ニ出掛ケテ、ドウ云フ漁ヲシ
テ、何處ト何處へ寄港スル、サウシテ現在
ヂヤ大體ドレ位ニ古クナッテ居ルト云フ、要
スルニ保險ノ目的ト云フモノニ付テ、組合
員相互ガ能ク知合ッテ居ル、從ッテ其ノ損害
ノ算定ト云フコトモ比較的容易ニ出來ル、
又只今モ申シマシタ相互ニ監視シ合ッテ損
害ヲ未然ニ防グコトモ出來マセウシ、道德
的ノ危險ト云フ風ナコトモ避ケ得ルト云フ
風ニ、色々ノ便宜ガ此ノ方ガ却テ多イ、斯
樣ニ考ヘテ居ル譯デアリマシテ、國營保險
トシテ其ノ性質上爲スベカラザルモノデア
ル、シチヤイカヌモノデアルト云フ風ニ
ハ、本質的ニハ必ズシモ國營保險ヲ否認ス
ベキデナカラウ、斯樣ニ考ヘテ居リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00119370322&spkNum=55
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056・堀田正恒
○委員長(伯爵堀田正恒君) 午前ハ此ノ程
度デ以テ······大臣モ追加豫算ガ本會議ニ
上程サレ、又委員會ガアルノデ、時間ハシ
カト今御約束ハ出來ナイガ、必ズ出ルト云
フコトデアリマスカラ、午後ハ一時半カラ
開會致シマス、休憩致シマス
午後零時九分休憩
午後一時四十八分開會発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00119370322&spkNum=56
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057・堀田正恒
○委員長(伯爵堀田正恒君) 午前ニ引續キ
マシテ開會致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00119370322&spkNum=57
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058・井上清純
○男爵井上〓純君 水產問題デ御質問シテ
宜シウゴザイマスカ······先程モ色々御質問
モアッタヤウデアリマスケレドモ、ドウモ我
ガ國ノ水產ト云フモノハ世界ニモ稀ナルコ
トデゴザイマシテ、殆ド各國ト比較ニナラ
ナイヤウナ、大切ナ日本ノ產業デアリマス、
之ニ從事シテ居ル者ハ餘程困難ナ危險ナ事
柄デアリマシテ、而モソレ等ノ人ガ先祖代
代カラヤッテ居ルカラ、或ハ其處ニ住ッテ居
ルカラ、マア當然仕方ガナイト云フヤウナ
工合デ以テ從事シテ居ルノヂヤナイカト思
ヒマス、若シモ公平ニ外ノ業ニ就クコトガ
出來ルト云フノナラバ、直チニ外ノ業ニ轉
業スルヤウナモノデナイカト思ヒマス、デ
斯ウ云フ大切ナ氣性ト言ヒマスカ、精神ヲ
有ッテ居ル人ヲ是カラ養成スルト云フヤウ
ナコトハ、何處ノ國デモ出來ナイ、幸ニシ
テ日本ニ於テハ大和民族ノ特長ト云ヒマス
カ、サウ云フ所ニ波及シテ居リマシテ、今
日見ルヤウナ水產ノ盛況ヲ來シテ居ル、デ
今日ハ日本ノ「トロール」船ハ東ノ方ハ南北
「アメリカ」ノ沿岸マデモ達シテ居ル、南ノ
方ハ濠洲ノ沿岸ノ方マデモ行ッテ居ル、更
ニ西ノ方ハ支那海カラ出發シマシテ南洋群
島、更ニ「アフリカ」ノ東岸マデ行ッテ居リ
マシテ、近頃デハ地中海ヲ超エマシテ北海
ノ方マデモ進出ヲシテ居ルト云フヤウナ有
樣デアルヤウデアリマス、今日ノ此ノ漁船
保險ハサウ云フ「トロール」船マデモ含ンデ
居ルノカ、サウ云フコトモ後カラ承リタイ
ト思ヒマスケレドモ、サウ云フヤウナ發展
ヲシテ居ル其ノ本ト云フモノハ、大體大和
民族ガ海洋國民デアルカラデアリマシテ、
沿岸漁業カラ發達シタモノデアリマス、其
ノ大切ナ沿岸漁業ヲ保護スル上ニ於テ、今
日マデ國家ガ適當ナ處置ヲヤッテ居ッタカト
云フト、殆ドヤッテ居ラナイ、ソレデ今日マ
デノ官廳ノ、政府ノ立案サレル所ノ法制ヲ
見マスルト、ドウモ外國ニ、殊ニ西洋ニ於
テ案畫サレタモノヲ土臺ニサレテ居ルヤウ
ナ氣ガスルノデス、其ノ爲ニ折角立案サレ
タコトガ、ドウモ日本ノ國情ニ副ハヌ、今
日マデ此ノ沿岸漁業ニ對シテモ、外ノ國デ
ハ日本ノヤウニ發達ヲシテ居ラナイカラ、
從ッテ外ノ國ニハ適當ナ法制ガナカッタヤウ
ニ思フ、ソレ故ニ日本モ今日マデ適當ナ法
制モ作ラレナイデ來タノデハナイカト思ヒ
マスガ、サウ云フヤウナコトデアルナラバ、
何時マデ經ッテモ日本特有ノ國情ニ副フタ
所ノ法制ト云フモノハ出來上ガラヌ、日本
ノ政治ハ日本國民ニ對スル特殊性ノアルモ
ノデナケレバナラヌノデアリマスカラ、ド
ウシテモコンナ特別ニ發達シタ漁業ヲ保護
助長スル上ニ於テ、適當ナ法制ガ行ハレナ
ケレバナラヌ、出テ來ナクチヤナラヌト云
フコトハ申スマデモナイコトデアリマス、
先程カラモ色々御議論モアリマシタ通リ、
物ヨリモ人ガ大切ナンデアリマス、船ト云
フモノヲ保險スル前ニ人間ノ生命ヲ保險シ
ナケレバナラヌ、其ノ設備ヲ疎カニシテ、
ドウシテモ今日ノ漁船保險ト云フ問題ヲ議
スルト云フコトハ、ドウモ、私共トシテモ
解セカネル次第デアリマス、此ノ點ハハッキ
リト來議會ニハ立案ヲスルト云フコトヲ、
ドウシテモ大臣ノ口カラデモ承ラヌケレバ、
私共ハ唯漁船保險ダケヲ議シテ、ソレデ宜
カッタト云フコトデハ貴族院トシテハ相勤
ラヌト思フノデアリマス、更ニ申上ゲテ置キ
マスガ、農林省ト云フノデアリマスカラ、ド
ウシテモ農林ニ限ラレルト云フヤウニ心得
ル、ソレデ從ヒマシテ農林省ノ官吏ノ方々
ノ頭ノ上ニ、ドウモ水產ト云フコトガ力强
ク響イテ居ラヌ、國民ニモ響キ得ナイ、全
體カラ云フト漁村ノモノハ非常ニ不平ダラ
ウト思フノデアリマス、名前ト云フモノハ
大切ナモノデアリマシテ、名前ナドハドウ
デモ宜シイ、實ガアレバ宜シイト御考ニナ
ルカモ知レマセヌガ、名ガ實ノ體デアリマ
ス、是ハ非常ニ大切ナモノデアリマス、少
クトモ長クアッテモ構ヒマセヌ、農林水產
省、斯ウ云フヤウナ名前カラモ御直シニナ
ルヤウナ風ノ御考ガナイカ、サウシテ更ニ
今ノ組合ヲ作ルノデモ、全國的ニ大キナ本
部ヲ御作リニナッテ、サウシテ御ヤリニナル
ト云フナラバ話ハ分リマスケレドモ、小サ
ナ部落ヲ作ッテ、サウシテ組合ヲ作ル、ソン
ナ組合デ以テ一體救濟ガ出來ルカ、ソレハ
直チニ破綻シテシマウノデハナイカト云フ
ヤウナ、是ハ素人考デアリマスケレドモ、
ドウモ其處ニ私ニハ前途ガ餘リ期待出來ナ
イ、其ノ邊ノ所ハ局長ハドウ云フ御考ヲ
持ッテ居ラレルカ、承リタイト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00119370322&spkNum=58
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059・原辰二
○政府委員(原辰二君) 御答ヘ申上ゲマス、
此ノ漁船ト云フ船ノ損害補塡法モ結構ダガ、
ソレヨリモ寧ロ漁業者ト云フ人ノ救濟保護
ノ施設ガ大切デハナイカト云フ御話ハ、誠
ニ御尤モデゴザイマス、是ハモウ今日カラ
考ヘラレルノミナラズ、從來カラ正ニサウ
ナクチヤナラヌ譯デゴザイマシテ、現狀ハ
午前中ニモ申上ゲテ置キマシタヤウニ、此
ノ方面ニ未ダ何等ノ見ルベキ施設トシテ申
上ゲルヤウナモノハ、餘リゴザイマセヌト
云フヤウナ狀態デゴザイマシテ、是ハモウ
政府ト致シマシテモ、誠ニ私共申譯ノナイ
ヤウニ實ハ存ジテ居ル點デゴザイマシテ、
衆議院ニ於キマシテモ此ノ法案ノ審議ニ際
シマシテ、サウ云フ御意見ガ多數ノ方カラ
出マシテ、御注意ヲ受ケタヤウナ次第デゴ
ザイマスガ、此ノ古イ沿革ハ別ト致シマシ
テモ、漁業法ト云フ法律ガゴザイマスガ、
明治四十何年カノ制定ノ法律デゴザイマス
ガ、此ノ法律ノ中ニモ漁業者及其ノ遺族ニ
對スル扶助等ノ施設ハ勅令ヲ以テ之ヲ定メ
ルト云フ規定モ現ニアルノデゴザイマス、
今日マデ其ノ勅令ガ出テ居リマセヌ、出テ
居ナイト云フコトハ勅令ニ盛ルベキ內容ト
云フモノガ未ダ立案サレルマデノ運ビニ立
チ至ッテ居ラナイ、斯ウ云フ實ハ實情デゴザ
イマシテ、明治年代カラ只今御話ノ船モ人
モ兩方見テ、要スルニ漁業ノ進展振興ト云
フコトニハ、是ハ忘レテハナラヌト云フ趣
旨ハ當時カラ既ニアッタノデゴザイマス、マ
ア言譯ヲスルヤウニナルカ分リマセヌケレ
ドモ、私ハ考ヘマスノニ、此ノ漁業者ト云
フ者ハ御存知ノ通リ、陸上ニ居ルコトヨリ
モ海上ニ出テ、船ニ乘ッテ漁ヲスルト云フ時
間ノ方ガ寧ロ長イヤウナ人達デアリマシテ、
ソレニ對シテ極ク······例ヘバ保險ノ制度ト云
フ如キ緻密ナ詳細ナ調査材料ト云フモノヲ
拵ヘテカラ施設ヲスルト云フ爲ニハ、ナカナ
カノ困難ガアルノデアリマシテ、サウ云フ
爲ニ今日マデヤラナケレバナラヌト思ヒツ
ツモ、實際問題トシテハ手ガ著カズニ參ッテ居
ルト云フ實情デハナカラウカト思ッテ居リマ
スガ、御話ノ如ク斯ウ云フ漁船ニ付テノ各
種ノ損害ノ實情ヲ調査ヲシ、資料ヲ整ヘテ、
玆ニ御審議ヲ願ッテ居リマスヤウナ法案ヲ
出ス以上、人ノ方面ニ對スル施設ノ······是
ハ本來ナラバ少クトモ、斯ウ云フ法案ト相
伴ッテ御審議ヲ願フモノヲ出スベキノガ本
當ダト思ヒマス、デゴザイマスケレドモ、
只今申上ゲマシタヤウナ、此ノ調査上ノ難
易ト云フ風ナ點カラ致シマシテモ、先ヅ出
來易イ漁船ノ損害善後ノ施設ヲ、調査ノ出
來タ順序ニ從ッテ先キニ制度ヲ立テマシテ、
然ル後ニ今度ハ人ノ方面ニ進ムヨリ外ナイ
ノデハナカラウカ、其ノ方面ノ施設ガ立案
サレル前ニ、漁船ダケノ損害善後ノ處置ハ
講ジテ相成ラヌト云フ風ニ又窮窟ニ考ヘル
コトモ如何ナモノデアラウカ、斯樣ニ考ヘ
マシテ實ハ漁船ノ保險制度ト云フモノヲ、
今囘人ノ施設ト一應切リ放シマシテ、先キ
ニ提案ヲシタ次第デゴザイマシテ、是カラ
段々ノ御注意モゴザイマシタシ、一段ト私
共ガ人ノ保護救濟ノ施設ニ重點ヲ置イテ、
多少年代ハ遲レマシテモ、必ズ其ノ施設ノ
實現ヲスルヤウニ努力ヲシテ參ラナケレバ
ナラヌ、斯樣ニ考ヘテ居リマシテ、大體私
共ノ心持ヲ此ノ際、御酌ミ取リ戴イテ置キタ
イト思ヒマス、ソレカラ此ノ農林省ト云フ
名前デハ、水產ヲ扱フ省デアルニ拘ラズ、
省ノ名前ニスラ水產ト云フ文字ハ見エテ居
ラヌヂヤナイカ、農ニ偏重スルヤウナ考ヘ
方ノ一端ノ現レデハナイカト云フ御趣旨モ、
是モ衆議院デモ實ハサウ云フ御意見ガ出マ
シテ、御尤モト存ジテ居リマス、現內閣ハ
色々庶政一新トカ、行政機構ノ改善トカ云
フヤウナコトヲ標榜シテ居ル關係モゴザイ
マスノデ、私共ト致シマシテモ名實相伴フ
ヤウニ是非考慮ヲ致シテ參リタイト斯樣ニ
考ヘテ居リマス、ソレカラ此ノ漁船保險ヲ
寳施致スニシマシテモ、地方々々ノ狹イ區
域每ニ漁船保險制度ト云フモノヲ作ラセル
ヨリモ、寧ロ全國ヲ一ツニシタ大キナ組合
制度デ考ヘテ行ック方ガ宜クハナイカト云
フ御意見ニ付キマシテハ、是ハ此ノ運用ノ
理想ハサウ云フ風ニ考ヘテ參ラナケレバナ
ラヌト思ヒマスガ、元受ノ關係デハ最初カ
ラ全國一ツノ組合ニシテ保險ヲ扱ッテ行ク
ト云フコトハ、種々實際問題ノ上カラ却テ
困難モアリ、又所謂地方事情ト云フモノヲ
考慮出來ニクイト云フ風ナ點モゴザイマス
ノデ、是ハ矢張リ地方々々ニ地域ヲ分ケマ
シテ、サウシテ其ノ地域每ニ漁船ノ所有者
ヲ以テ相互主義ノ保險ヲ扱ハセルト云フ仕
組ガ、一番適當ダト考ヘテ居ル譯デアリマ
スガ、午前ニモチヨット御說明申上ゲマシタ
通リニ、此ノ缺點ハデス、政府ガ再保險ヲ
致シマシテ、是ハ漁船保險ノ元受ノ關係ガ
生ズルト同時ニ、再保險ノ關係モ當然ニ出
來ルヤウニ致シマシテ、再保險ノ關係ニ於
キマシテハ、恰モ全國一組合ト云フヤウナ
間接的ノ關係ヲ持タシメテ、其ノ間ニ危險
ノ分散ナリ、其ノ他ノ點ニ付キマシテモ、
只今御話ノゴザイマシタヤウナ趣旨ニ取扱ッ
テ參ルコトガ適當デモアリ、サウ致シマス
レバ、地方々々ノ狹イ區域ノ漁船保險組合
ト云フモノヲ數十箇所、數百箇所設ケマシ
テモ、缺點ノ大部分ハ取除カレ、又其ノ方
ガ少クトモ現在及將來ノ實情ニハ却テ副フ
モノデアル、斯樣ニ考ヘテ居ル次第デゴザ
イスマカラ、御諒承願ヒタイト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00119370322&spkNum=59
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060・井上清純
○男爵井上〓純君 外國ノ漁業ト日本ノ漁
業トノ非常ナ差ガアルヤウニ思ヒマスルガ、
日本人グラヰ海ノ色々ノ、各種類ノ魚トカ
貝トカ云フヤウナモノヲ食ベル人間ハ殆ド
無イト思フクラヰニ、豐富ニ海產物ニ於テ
生活ヲ立テテ居ルノヂヤナイカト思ヒマス、
デ從ヒマシテ是ハ主ニ沿岸漁業ノ發達シテ
居ル御蔭デアリマシテ、「フランス」信
テモ英國へ行キマシテモ、日本ノヤウナ工
合ニ魚類ヲ戴クコトハ出來ナイト云フヤウ
ナ有樣デアラウカト思ヒマス、而モ若シモ
日本ガ大陸デアッテ、漁業ニ依ッテ生活ヲシ
ナイト云フヤウナコトヲ假定スルナラバ、
「アメリカ」ニ於テ見ル如ク、非常ニ大キナ
牧場、澤山ノ家畜ヲ之ニ持ッテシナケレバ
ナラヌヤウナ、重要ナル仕事デアラウカト
思ヒマス、若シモ魚肉ニ代ルニ家畜ノ肉ヲ
以テスルナラバ、莫大ナル面積ト莫大ナル
費用ヲ掛ケナケレバ之ニ代ルコトガ出來ナ
イ、我ガ國ハ斯ウ云フ惠マレタル國デアル
ト云フコトヲ、地面ガ少イ割ニ多クノ人間
ヲ養フコトガ出來ルノハ、主トシテ海國デ
アルカラデアルト云フコトヲ、先ヅ我々ハ
考ヘナケレバナラヌト思フノデアリマス、
家畜デ考ヘテ見タナラバ、家畜ヲ養フ上ニ
於テモ、或ハ玉蜀黍ヲ植エナケレバナラヌ、
非常ナ大キナ面積ヲ要スルノデアリマス、
其ノ邊ノ所ガ外國ト餘程趣ヲ異ニシテ居ル
ノデアリマシテ、モット日本トシテハ此ノ漁
業ノ方ニ、水產ノ方ニ力ヲ入レナケレバナ
ラヌト云フコトハ、國策ヲ立テル上ニ於テ
考ヘテ行カナケレバナラヌ、無論サウ云フ
コトハ御考ニナッテ居ルト思ヒマスケレド
モ、考ヘテ戴カナケレバナラヌ、例ヘテ言
ヒマスレバ、「ノールウェイ」ノヤウナ所デ
モ、アノ漁業國ト言ハレル所「ノールウェ
イ」ノヤウナ所デモ、鮫ノ肉ハ食べナイ
或ハ外國ノ人ハ鮫ノ肉ナドハ食ベナイ、
所ガ日本ノ者ハソレヲ食ベルバカリデナ
〃、蒲鉾ニ作ッタリ、或ハ鮫アタリハ其ノ
皮ヲ剝イデ、殆ド牛皮ト同ジヤウナ精巧ナ
ル革ヲ今造リツヽアルサウデアリマス、デ、
海カラ今後ハドノ位ノモノガ上ルカ豫想ガ
出來ナイヤウナ、寶ノ庫デアラウカト思ヒマ
ス、其ノ寶ノ庫ノ太平洋ト云フヤウナ大キ
ナ所ヲ控ヘテ居ル、マア「オホツク」海ニシ
マシテモ、世界ノ三大漁場ノ一ツデアル、或
ハ南洋ノ方ニ於テモ日本ハ漁場ヲ持ッテ居
ル、デ將來ノ日本ノ發展ト云フモノハ、蓋
シ此ノ海ノ方面ニ於テドノ位發展スルカ、
圖ルベカラザルモノガアルカト思ヒマス、
ソレデ此ノ見地ニ立ッテ國策ガ立テラレテ
居ルカト云フト、大體ノ國策ハ海ノ國ト云
フコトヲ忘レテ居ッテ、サウシテ大陸ノヤウ
ナ政策ヲ行ハレテ居ルヤウナ感ガスルノデ
アリマス、是ハ大キナ國策ノ上カラ申スノ
デアリマシテ、今政府委員ニ御尋スルコト
トシテハ適當デナイカモ知レマセヌケレド
モ、サウ云フヤウナ大體見地ヲ持ッテ農林
省ノ方ガ居ラナクチヤナラナイノニ、名前
スラモ水產ノコトハ少シモ謳ッテナイ、サウ
シテ蔭ノ方ノ一小部分ノ局部ニ介在シテ居
ル、偏在シテ居ルト云フヤウナ、サウ云フ
ヤウナ有樣デアッタナラバ、日本ノ將來ハ海
ニアルト云フヤウナコトガ、國民ニモ納得
ガ出來ナケレバ、施設トシテモ見ルベキモ
ノガ出テ來ナイト思フ、是ハ專ラ水產局ノ
管掌サレルコトデアリマスカラ、モウ少シ
一ツ力ヲ御用ヒニナラムコトヲ希望スルノ
デアリマス、尙每年ドノ位ノ人間ガ遭難サ
レテ居ルカ、ソレヲ伺ヒタイト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00119370322&spkNum=60
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061・原辰二
○政府委員(原辰二君) 每年遭難ヲシテ居
ル漁業者ノ數デゴザイマスカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00119370322&spkNum=61
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062・井上清純
○男爵井上〓純君 サウデゴザイマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00119370322&spkNum=62
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063・原辰二
○政府委員(原辰二君) 只今此處ニハ漁業
者ノ遭難數ノ正確ナノハチヨット持合ハセテ
居リマセヌガ、數字ハ、極ク最近ノデモゴ
ザイマセヌケレドモ、マア大體沈沒船ニ乘ツ
テ居ッタ人デアリマストカ、或ハ船ガ破損ヲ
シタリ、坐礁ヲ致シマシタリ、行方不明ニナ
リマシタリ、其ノ船ノ乘組員ノ大體數デゴ
ザイマスガ、農林統計ノ數デゴザイマスガ、
ソレヲ見マスト云フト、年ニ依ッテ勿論多イ
少イハゴザイマスケレドモ、大體ノ見當ト
致シマシテハ每年四五百人ノ數ハ降ッテ居
ラヌヤウデゴザイマス、若シ農林統計ノ每
年ノ遭難者ノ、只今申上ゲマシタヤウナ意
味合ノ、詰リ遭難シマシタ漁船ニ乘ッテ居ツ
タト云フ人ノ數ヲ年別ニ致シマシテ、御希
望ガゴザイマスレバ、後デ御目ニ懸ケタイ
ト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00119370322&spkNum=63
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064・井上清純
○男爵井上〓純君 其ノ五六百人ノ人ガ每
年遭難スルト云フコトニナリマスト、土上
壯丁ガ遭難スルノデアリマスカラ、其ノ漁村
ノ人口ト云フモノハ段々漸減ト云フマデハ
イカナイガ、餘リ殖エナイト云フコトニナ
ルト思ヒマス、ソレデ或ハ離村ヲスル、村
ヲ離レテシマフ、段々轉職スルト云フヤウ
ナコトモ起ッテ來ルノヂヤナイカト云フヤ
ウナ懸念ガアリマスケレドモ、サウ云フ懸
念ハナイモノデスカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00119370322&spkNum=64
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065・原辰二
○政府委員(原辰二君) 沿岸ノ漁村ノ漁業
者ノ移動情況、是モ極ク正確ナ、數字的ナ
モノハチヨット分リマセヌデスガ、大體ノ傾
向ト致シマシテハ、矢張リ只今御心配ニナッ
テ居リマスヤウニ、多少サウ云フ傾向ガ、
所ニ依リマシテハ無イコトモナイヤウニ見
受ケテハ居リマス、但シ是ハ遭難ガ非常ニ
多クテ、現在ソレニ對スル施設ガ、特別ノ
施設ト云フモノガマダナイ、ソレデアルカ
ラ斯ウ云フ危險ナ商賣ハ止メテ、外ノ安全
ナ商賣ニ變ッタ方ガ宜シイト云フ意味デアリ
マスカドウデスカ、ソコハ私ハ多少疑問ノ
餘地ガアルノヂヤナカラウカ、斯樣ニ思ヒ
やく、段々御話ノ如ク、漁業者ト云フモノ
ハ代々漁業ニ從事シテ居リマシテ、一ノノ
何ト申シマスカ、職業意識ト申シマスカ、サ
ウ云フ觀念ガ矢張リ非常ニ强イモノデゴザ
イマシテ、我々普通チヨット考ヘマスト云フ
ト、少サナ船デ出掛ケテ、時折遭難ヲシテ、
マア漸ク死ヌコトヲ免レテ、命カラ〓〓陸ヘ
逃ゲ歸ッタ、サウ云フ危險ナ商賣ハモウ止メ
サウニチヨット思フノデアリマスケレドモ、
事實ハナカ〓〓止メルドコロデハゴザイマ
セヌデ、更ニサウ云フ危險ニ遭遇致シマス
ト、餘計ニ職業意識ヲ强ク働カセマシテ、
神佛ニ祈願ヲ懸ケルト云フヤウナコトハア
ルヤウデアリマスケレドモ、前ニ遭難シタ
場所ヨリモモット遠クノ方マデ行クト云フ
ヤウナ、非常ニ積極進取ノ氣性ニ富ンデ居
ル人達デアリマシテ、多少、漁業ヲ止メテ
或ハ農業ノ方ニ代ハル、或ハ商業ノ方ニ代
ハルト云フ人ガアリマシテモ、ソレハ最近
此ノ沿岸ノ漁業ト云フモノガ、兎モスルト
人口ノ殖エルニ從ッテ、魚ヲ養フコトヨリモ
獲ル方ガドウシテモ多クナル結果、所謂沿
岸漁業ノ衰頽ト申シマスト非常ニ消極過ギ
ルカ分リマセヌガ、以前ホド魚ハ獲レナク
ナッタト云フ風ナ現象ガゴザイマシテ、之ニ
對シテハ色々人工的ナ孵化、放流トカ、其
ノ外增殖ノ施設ハ構ジテハ居リマスガ、ソ
レダケデハナカ〓〓補ヒガ足リナイ、從ッテ
沿岸ノ漁業者ノ所謂收入ト云フモノガ、漸
次減ッテ來ルト云フヤウナ所デ、他ニ農業ニ
轉ジ得ルヤウナ又條件ガアルト云フヤウナ
所デハ、農業ノ方ニ代ハレル人モ多少ハ出來
ル、或ハ都會ノ工場地ニ職エトシテ職業ヲ變
ヘルヤウナ人モ多少出ルコトモ已ムヲ得ナ
イヤウナ事情ニナッテ居ルヤウデゴザイマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00119370322&spkNum=65
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066・井上清純
○男爵井上〓純君 漁船ダケデハナイノデ
セウネ、矢張リ漁具ヲ含ンデ保險ヲヤラレ
ルノデセウネ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00119370322&spkNum=66
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067・原辰二
○政府委員(原辰二君) 保險ノ目的ハ大體
漁船ヲ主眼ニシテ居リマスガ、漁船ニ積込
ンデ居リマス漁具ハ是ハ漁船ト一體ト見マ
シテ、其ノ範圍ノ漁具ハ保險ノ目的トスル
コトニ致シテ居リマス、簡單ニ申上ゲマス
ト船トハ關係ノナイ定置漁業ニ使ヒマス例
ヘバ大謀網デアリマストカ、大敷網デアリ
マストカ、アヽ云フ風ナ漁具ハ、アレハ保
險ノ目的ニハ致サナイ、斯樣ナ考デアリマ
ス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00119370322&spkNum=67
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068・井上清純
○男爵井上〓純君 段々沿岸デハ魚族ガ獲
レナイヤウニナッテ來ルト云フコトハ事實
ノヤウデアリマス、ソレハ主ニドウ云フ所
ノ原因カラ來ルカ、濫獲カラ來ルノデアリ
マスカ、或ハ何カ海水ニ汚物ガ入ルカラト
云フヤウナコトカラ來ルノデスカ、或ハ「ト
ロール」船アタリノ影響カラ來ルノデスカ、
「トロール」トサウデナイ船トノ漁區ガハッキ
リ分レテ居リマセヌヤウデスカ、同ジ所デ
以テ同ジ魚ヲ矢張リ獲ルノデアリマスカ、
其ノ邊ノ所ヲ能ク分リマセヌカラ御說明ヲ
願ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00119370322&spkNum=68
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069・原辰二
○政府委員(原辰二君) 此ノ沿岸ノ魚介類
ノ減少ノ原因デゴザイマスガ、是ハ極ク大
雜把ニ申上ゲマスト云フト、濫獲ヲスル結
果減ル方ガ多イノヂヤナカラウカト考ヘマ
ス、但シ是ハ魚ノ種類ニ依リマシテ、又ハ
地方ニ依リマシテ、必ズシモサウデナイ所
モアルコトハ勿論デゴザイマス、例ヘバ
例ヲ申上ゲマスト云フト、鰯デアリマスト
カ、鰊デアリマストカ云フ風ナ、アヽ云フ
非常ニ大群ヲナシテ沿岸ニ來ルト云フ魚ニ
付テ見マシテモ、昨年マデハ來テ居ッタガ、
今年ハ餘リ、トント來ナクナッタト云フヤウ
ナコトモアル、モウソレキリ來ナイノカト
思フト、又時折リ來ルト云ッタ風ナコトモア
リマシテ、是等ハ正直ニ申上ゲマスト云フ
ト、マダドウ云フ原因ノ爲ニ來タリ來ナ
カッタリスルノデアルカ、言換ヘマスト云フ
ト、濫獲ナリ其ノ外ノ原因ニ依ッテ、モウ減
少シテシマッタト見テ宜イカドウカト云フ
コトスラガ問題ノモノモ實ハゴザイマスガ、
サウ云フモノハ例外ト致シマシテモ、其ノ
外ノモノハ御話ノヤウニ人絹デアリマスト
カ、色々工業ガ興ルニ從ヒマシテ、所謂汚
濁水ヲ海ニ流シ込ム、サウ云フ爲ニ減ルコ
トモ少クナイト思ヒマスガ、極ク全國ヲ
束ニシテ大雜把ニ內譯ヲシテ見マスト云フ
ト、何ト申シマシテモ濫獲ト云フコトガ最
モ魚族減少ノ、殊ニ沿岸ノ魚族減少ノ原因
ヲナシテ居ルヤウニ思ハレマス、ソレカラ
只今「トロール」ト云フ御話デゴザイマシタ
ガ、是ハ機船底曳網漁業ノ意味デ御尋ダト
思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00119370322&spkNum=69
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070・井上清純
○男爵井上〓純君 サウデス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00119370322&spkNum=70
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071・原辰二
○政府委員(原辰二君) 此ノ底曳ト底曳以
外ノ沿岸漁業トハ、場所ガ違フカ同ジカト
云フ御尋デゴザイマスガ、是ハ大體ニ於キ
マシテ場所ハ同ジ所デゴザイマス、何故カ
ト申シマスト云フト、魚ノ居リマス場所ガ
海ノ深サハ大體百尋前後ガ限度デアルノデ
ゴザイマシテ、百尋カラ更ニ二百尋、三百
尋トナルニ從ヒマシテ、魚ノ種類モ數量モ、
ウント減ル、從ッテ漁業ノ經濟的ノ繰業區域
ト致シマシテハ、百尋以內ノ所ヲ普通繰業
區域トスルノデゴザイマシテ、サウ云フ點
カラ見マシテ此ノ漁業ト云フモノハ、大體
百尋前後ノ同ジ場所デヤルノデゴザイマス
ガ、唯行政上、此ノ底曳ハ此處デハヤッテイ
ケナイトカ云フ、沿岸漁業トノ極端ナ摩擦
ヲ來サナイヤウニ、禁止區域ト云フモノヲ
設ケテ、出來ルダケ此ノ牴觸スルコトヲ避
ケテハ居リマスガ、其ノ禁止區域ハサウ云
フ意味ノ禁止區域デアリマスカラ、其ノ禁
止區域デ底曳ヲヤッテモヤレヌト云フ所デ
ハナイノデアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00119370322&spkNum=71
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072・井上清純
○男爵井上〓純君 其ノ底曳網ト、ソレカ
ラ普通ノ漁船トノドウモ區劃ハ、取締ガ困
難デアルト思ヒマス、ソレハドウ云フヤウ
ナ取締方法ヲ執ッテ居ラレマスカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00119370322&spkNum=72
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073・原辰二
○政府委員(原辰二君) 現在ノ底曳網ノ取
締ニ付キマシテハ、只今申上ゲマシタヤウ
ナ禁止ノ區域ヲ設ケ、又禁止ノ機關ヲ設ケ
マシテ、大體魚類ノ產卵ノ時期、場所ト云
フ風ナ極ク魚族資源ノ維持上、ドウシテモ
其處デハ漁業ヲヤラスコトガ不適當ダト思
フ場所ト、期間ヲ極メテ禁止ノ區域ヲ極メ
テ居ルノデアリマスガ、時折ソレガ守ラレ
ナイデ、所謂禁止ノ區域、期間ノ違反事件
ト云フノガ起ルノデアリマシテ、ソレヲ取
締ル爲ニハ、現在農林省ニ三バイノ監視船
ヲ置キマシテ、隨時沿岸ヲ廻ッテ、違反ヲシ
サウナ場合ニハ注意モシ、又違反ヲシタモ
ノハソレヲ捕ヘマシテ、此ノ調査ヲシテ、
事犯ニ依リマシテハ行政處分ナリ、司法處
分ナリヲスル、斯ウ云フコトニシテ居リマ
ス、只今三バイト申シマシタノハ、是ハ農
林省直屬ノ監視船デゴザイマシテ、此ノ底
曳ノ取締ノ爲ニ地方廳ニモ監視船ガ十八隻
居リマス、ソレト農林省ノ三バイノ監視船
トガ連絡ヲ取ッテ取締ノ任ニ當ッテ居ル、斯
ウ云フ實情デゴザイマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00119370322&spkNum=73
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074・井上清純
○男爵井上〓純君 其ノ取締ニ付テ、密漁
者ト云フモノハナイノデスカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00119370322&spkNum=74
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075・原辰二
○政府委員(原辰二君) 密漁ハ事實アルヤ
ウデゴザイマス、アルヤウデゴザイマスガ、
大體ドレ位居ルカト云フ、極ク正確ナコト
ハチヨット分リカネマスガ、地方へ私共
〓ッテ見マシテモ、ドウモ許可ヲ受ケナイデ
ヤッテ居ル者ガ相當アッテ困ルト云フ話ヲ能
ク聞キマスノデ、マア相當密漁者ト云フモ
ノモ居ルコトハ事實ノヤウニ一應考ヘテ居
リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00119370322&spkNum=75
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076・井上清純
○男爵井上〓純君 此ノ底曳網ハ無論海底
ヲ荒スモノデアリマシテ、之ヲ適當ニ制限
シナケレバ、今ノ漁業ノ振興ト云フコトハ
ドウモムヅカシカラウト思ヒマス、其ノ摩
擦ヲ防グコトモ困難デアルト思ヒマス、
體底曳網ハ是ハ矢張リ外國カラ採ラレタノ
デアラウト思ヒマスガ、是ハ矢張リドノ位
アルノデゴザイマスカ、適當ニ矢張リ制限
サレル御意思ガアルノデゴザイマスカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00119370322&spkNum=76
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077・原辰二
○政府委員(原辰二君) 底曳網漁業ノ整理
ハ是ハ御話ノヤウニ、ドウシテモ整理ヲセ
ザルヲ得ナイト云フ風ニ考ヘテ居リマス、
現在許可ヲ與ヘタ底曳ノ船ノ數ハ約二千六
百アルノデアリマス、是ハ何ト致シマシテ
モ、此ノ數ガ今日ニナッテ見マスト云フト
多過ギルト思ヒマスノデ、只今考ヘテ居リ
マス所デハ、少クトモ千艘ヤソコラハ、大
體二千六百ガ總數デゴザイマスカラ、半分
程度ハ之ヲ整理ヲシテ、何等カ他ノ漁業ニ
轉業ヲサセルコトニ致サナケレバ、マア此
ノ沿岸ノ魚族ノ資源維持ト云フ點カラ考ヘ
マシテモ、亦底曳以外ノ沿岸漁業者トノ利
害ノ衝突ヲ緩和スルト云フコトニハ、ドウ
シテモナリマセヌノデ、此ノ程度ノ整理ハ
是非ヤラナケレバナラヌ、斯樣ニ考ヘマシ
テ、此ノ實行案ヲ目下〓究致シテ居リマシ
テ、此ノ〓究ヲ早クシテ實行ニ移シタイ、
斯樣ニ考ヘテ居ル譯デアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00119370322&spkNum=77
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078・井上清純
○男爵井上〓純君 其ノ底曳網ノ漁業ハ海
外ニ發展スルノモ制限サレルノデスカ、或
ハ此ノ漁船·····モウ一ツハ漁船保險ノ中
ニモ矢張リソレガ含マレテ居ル、底曳網ノ
方モ保險ノ中ニ入レルト云フコトニナッテ
居ルノデスカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00119370322&spkNum=78
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079・原辰二
○政府委員(原辰二君) 此ノ漁船保險ノ關
係ニ於キマシテハ、底曳ノ船モ入レルコト
ニ一應見テ居リマス、將來其ノ半數程度整
理ヲ致スコトハ必要デアルト致シマシテ
モ、之ヲ底曳ナルガ故ニ全部保險ニ取ラナ
イ、斯ウ云ッテ保險制度カラ除外ヲスルコト
モ又行過ギルト思ヒマスノデ、サウ云フ意
味ニ於テ、此ノ保險ノ目的トシテハサウ云
フ底曳漁船デアリマシテモ、一應保險ノ目
的トシテ扱フ、斯ウ云フ風ニ考ヘテ居リマ
ス、ソレカラ底曳ノ整理ニ關聯シテ、外國
ノ方ヘ行ク底曳デモ整理スルノカト云フ御
尋ノ點ハ、其ノ底曳ハデスネ、外國ト申シ
マシテモ、サウ遠イ外國ヘ參ルモノハ實ハ
居リマセヌノデ、唯現在ノトコロ支那ノ附
近、東海、黄海ノ方面ニ出掛ケマスノト、
ソレカラ日本海ノ對岸ノ沿海州ノ附近ニ多
少參ルノガアルダケデゴザイマスガ、ソレ
ニ付キマシテモ此ノ程度ノ整理ハ免レナイ
ノヂヤナカラウカ、斯樣ニ思ッテ居リマス、
デアリマスガ大體ノ整理ノ趣旨ハ、沿岸ノ
關係ヲ考慮ヲシテ居ルノガ趣意デアリマシ
テ、從ッテ沿岸漁業者ト同一漁場ニ於テ漁獲
ヲ競ヒ、沿岸漁業者ニ迷惑ヲ與ヘルト云フ
心配ハナイ、又魚族ノ資源ノ維持上差支ナ
イト云フヤウナ所ハ、强ヒテ整理ヲスル必
要モナイコトニナリマスノデ、東海、黄海
方面ニ出マス底曳ノ如キハ、整理ヲ致スト
致シマシテモ、極ク程度ガ輕クテ濟マウカ
ト、斯樣ニ考ヘテ居リマス、現在此ノ許可
ノ方針ガ徹底シナカッタト申セバ、サウ云フ
氣モ致シマスノデ、例ヘバ支那東海、黃海ニ
出カケテ漁業ヲスルト云フ此ノ底曳モ、實際
サウヤルニハ、船ノ大キサナンカモ相當ナ
大キナ船デナケレバ、事實上困難ナ譯デア
リマスガ、從來ノ此ノ許可ノ扱ヲ見マスル
ト云フト、三十「トン」程度ノ船デモ東海、黃
海へ行ッテ底曳ヲヤルト言ヘバ一應許可ハ
サレタモノモアルヤウデアリマス、所ガサ
ウ云フモノハ實際ハサウ遠クマデ行ケル氣
遣ヒハナイノデアリマスカラ、自然ト東
海、黄海へ行ッタヤウナコトニシテ置イテ、
實ハ九州ノ沿岸デヤッテ居ッタト云フ風ナモ
ノモ中ニハアルヤウデアリマスカラ、サウ
云フノハ航海ノ能力等カラ、一定ノ基準ヲ
定メマシテ、何「トン」以上ノ底曳デナケレバ
許サナイ、ソレ未滿ノモノハ整理スルト云
フヤウナ方針ヲ立テテ行カナケレバナラヌ
ノデアラウト、斯樣ニ考ヘテ居リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00119370322&spkNum=79
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080・井上清純
○男爵井上〓純君 底曳網ヲ持ッテ居ル者
ハ、個人ガ持ッテ居ルノデナクテ、大〓ハ會
社カ組合デ網ヲ持ッテ居ルモノデアル、サウ
云フモノト普通ノ漁船ト一〓ニ漁船保險法
ノ中ニ加ヘラレルト云フ御積リデアリマス
カ、モウ一ツハ海外ニ出ル底曳網ハ母船ガ
アッテ、母船ニ依ッテ行クノデアリマスカ
ラ、小サナ船デモ矢張リ母船ト一〓ニ遠ク
海外ヘ出ルノデハナイカ、或ハ「オホーツク」
海、或ハ「ベーリング」海へ今出テ居ルノハ
サウ云フ風ノ物デハナイカ、此ノ點ニ付テ
御伺ヒ致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00119370322&spkNum=80
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081・原辰二
○政府委員(原辰二君) 御尋ネノ機船底曳
ト申シマスノハ、大キサニ致シマシテモ、
サウ云フ大キナ物ヂヤアリマセヌデ、確カ
一番大キイノデモ百噸ヲ超ユルヤウナモノ
ハ滅多ニアリマセヌ、又サウ云フ船ノ所有
者モ是ハ大抵ハ個人持ノ船デゴザイマス、
個人持ト申シマシテモ、其ノ船ヲ造ル時ノ
資金ノ關係ハ、其ノ土地ノ有力ナ人ノ數人
カラ出シテ貰ッタト云フヤウナ關係ハアル
ニ致シマシテモ、船ノ所有者ハ大抵個人持
ニナッテ居ルノデアリマス、從ヒマシテ會社
ガ持ッテ居ルト云フ物モ或ハ絕無ヂヤナイ
カモ分リマセヌガ、アルト致シマシテモ極
ク例外的ニ少數ナ物ト思ヒマス、只今御話
ニナリマシタ海外ヘ母船ニ附セラレテ出テ
行クト云フ御話デゴザリマシタガ、是ハ工
船ト稱スル船ノ御話ダト思ヒマス、「カム
チヤッカ」方面ニ鮭、鱒ノ漁業ニ參リマス、
例ヘバ日魯漁業會社ノ船デアリマストカ、
或ハ太平洋漁業ノ船デアリマストカ、サウ
云ッタヤウナ船ハ所謂何千噸······五六千噸
ノ船ガ親船ニナリマシテ、所謂母船ニナリ
マシテ、ソレガ普通獨航船ト申シテ居リマ
スガ、小船ガ附イテ參ルノデアリマス、底
曳ニハサウ云フモノハ現在ノトコロ無イノ
デアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00119370322&spkNum=81
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082・井上清純
○男爵井上〓純君 チヨット、今ノ底曳網ト
「トロール」トハ違ヒマスカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00119370322&spkNum=82
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083・原辰二
○政府委員(原辰二君) 底曳ト「トロール」
トハ、大體ニ於テ漁獲方法ノ原則ハ同ジデ
ゴザイマス、要スルニ海底カラソレハ曳キ
浚ヒ得ルヤウナ網ノ構造ナリ、仕掛ヲ持ッテ
居ル點ハ共通デゴザイマスガ、極ク專門的
ナ細カナ區別ニナルト云フト、私ハチヨット
御答ガ出來ヌカモ知レマセヌガ、其ノ原理ハ
同ジデゴザイマスガ、船ノ大キサハ非常ニ違
フノデゴザイマス、底曳ハ今申上ゲマシタヤ
ウニ、極ク、比較的小仕掛デアリマシテ、從ッ
テ船ノ「トン」數ノ如キモ、モウ百「トン」ヲ
超エルト云フ風ナ底曳ハナイヤウナ譯デア
リマスガ、「トロール」トナリマスト云フト、
萬事ガ大仕掛ニナリマシテ、從ッテ船ノ大キ
サモズット大キクナリマシテ、普通ノ「トロー
ル船デモ二三百「トン」、現在此ノ南米方
面へ參リマスノモ多少アリマスガ、サウ云
フノハ確カ六百五十「トン」クラヰアルカト
思ヒマスガ、サウ云フ風ニ原理ハ同ジデゴ
ザイマスガ、仕掛ガ非常ニ大キイノト小サ
イノト違フ譯デゴザイマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00119370322&spkNum=83
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084・井上清純
○男爵井上〓純君 此ノ「トロール」船ナド
ハ漁船保險法ノ中ニハ入ラナイノデスカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00119370322&spkNum=84
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085・原辰二
○政府委員(原辰二君) 漁船ト云フ觀念ニ
ハ勿論「トロール」モ入ル譯デアリマスケレ
ドモ、此ノ漁船保險ノ建前ガ、午前カラモ
色々御話申上ゲマシタヤウニ、全體ノ漁船
ノ趨勢カラ見マシテモ、又實際ノ必要カラ
見マシテモ、大體、百「トン」未滿ノ小サナ
船ヲ原則ニ考ヘテ、ソレ以上ノ船デモ何カ
特殊ノ事情ガアッテ、民間ノ保險會社デハイ
カヌ、ドウシテモ漁船保險デナケレバイケ
ナイト云フ特殊ノ事情ガアリマスレバ、漁
船保險ノ方デ考ヘルコトモ已ムヲ得ナイカ
ト、斯樣ニ考ヘテ居リマスガ、今具體的ニ
ドウ云フ場合ガ考ヘ得ルカト云フコトハ、
チヨット此處デ申上ゲルコトスラモ實ハ困難
ナホド、豫想サレテ居ル事實モナイノデア
リマシテ、「トロール」ノ如キモ大體ハモウ、
民間保險會社ノ方デ間ニ合フノヂヤナカラ
ウカト斯樣ニ考ヘテ居リマスノデ、大體此
ノ漁船保險デハ「トロール」ニヤルノダト云
フ風ニハ考ヘテ居リマセヌ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00119370322&spkNum=85
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086・井上清純
○男爵井上〓純君 海難ノ防止ト云フコト
ガ先ヅ第一ニ必要デアリマスガ、今度ノ保
險法ニ入ルモノハ、矢張リ無線電話ヲ裝置
シナケレバナラヌト云フヤウナ條件ガアル
ノデアリマスカ、又其ノ外ニ海難防止ノ色
色御設備ニ付テ色々御考モアラウト思ヒマ
スガ、此ノ點ヲ御說明ヲ願ヒタイト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00119370322&spkNum=86
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087・原辰二
○政府委員(原辰二君) 其ノ海難防止設備
ト此ノ漁船保險トハ、午前中ニ色々御議論
モアリマシタヤウニ、實質的ニハ是ハ關聯
ヲ持ッテ居ル問題デモゴザイマスシ、又持タ
サナケレバナラヌ問題ト思ヒマスガ、此ノ
漁船保險ノ目的トシテ取リマスル漁船ニ付
テ、海難ノ防止ノ設備ヲ持ッテ居ル船デナケ
レバ保險ノ目的トシテ扱ハナイト云フコト
ハ考ヘテ居リマセヌ、從ヒマシテ只今例ヲ
御擧ゲニナリマシタヤウニ、例ヘバ無線電
信裝置ヲ備ヘテ居ル漁船デナケレバ保險ニ
取ラナイト云フコトハ、ナイ譯デアリマス、
ソレカラ此ノ海難防止ノ施設トシテドウ云
フコトヲ考ヘテ居リマスカト云フコトヲ申
上ゲマスト、是ハ現在ニ於キマシテモ、甚
ダ貧弱デハゴザイマスガ全然考慮サレテ居
ナイ譯ヂヤゴザイマセヌノデ、モウ古イ法
律デゴザイマスガ、明治三十何年カニ制定
サレマシタ遠洋漁業奬勵法ト云フ法律ガゴ
ザイマシテ、其ノ法律ハ、政府ハ每年豫算
ノ範圍內ニ於テ、一定ノ資格ヲ備ヘタ漁船ヲ
造ッテ遠洋ニ出掛ケテ漁業ヲシヤウト云フ
モノニハ、其ノ造船費ニ對シテ一定ノ補助
ヲ爲スベシト云フ、補助ノ法律デゴザイマ
スガ、其ノ法律ニ依リマシテ、遠洋漁業奬
勵費ト云フ經費ガ、農林省ノ豫算ニズット
計上サレテ居ルノデアリマス、現在法律ハ
嚴メシク殘ッテ居リマスケレドモ、豫算ノ金
額ハ甚ダ輕少デゴザイマシテ、百「トン.」以上
ノ船ノ新造費ニ對シマシテ補助ヲスルノガ、
タッタ豫算ノ上デハ二隻分シカ見テ居ラレ
ナイノデアリマス、デサウ云フ新造ヲスル
際ニハ、勿論無線電信ヲ備ヘルトカ、或
方面ヲ探ル方向探知機トカ言ッタ風ナ、海難
防止ニモ非常ニ役ニ立チマス設備ヲ附ケル
ト云フコトヲ條件ニ考ヘテ居リマス、只今
申シマシタ二隻分ノ豫算ノ外ニ、又普通漁
船ノ改良奬勵費トモ申スベキモノガ多少ゴ
ザイマシテ、百「トン」未滿ノ船デアリマシテ
モ、又百「トン」以上ノ、造船奬勵費ヲ貰フダ
ケノ資格ガナイ船デアリマシテモ、今マデ
無線電信裝置ガナカッタカラ今度附ケタイ
ト云フ人ニハ、多少補助ヲ與ヘテ、無線電
信設備デアリマストカ、海難防止ニ役ニ立
ツヤウナ裝置ヲスル途モ多少アルノデアリ
マスガ、現在、サウ云フ多少ノ施設ハ講ジテ
居リマスガ甚ダ貧弱デゴザイマシテ、私共
ハモウ將來ドウシテモ保險ト云フガ如キ、
損害ガ旣ニ生ジタ後ノ後始末ヲスルコトヨ
リモ、寧ロ未然ニ損害ヲ防グ所ノ施設ヲ講
ジテ行クト云フコトガ、モウ不可避的ニ必
要ナコトト考ヘマシテ、十分ニ此ノ點ニ付
テ施設ヲ進メテ參ラナケレバナルマイト斯
樣ニ考ヘテ居リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00119370322&spkNum=87
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088・松村眞一郎
○松村眞一郞君 此ノ船ノ等級ト云フヤウ
ナコトハ御極メニナラナイノデスカ、例
バ漁船ノ檢査ヲシテ、船齡ニ依ッテ保險ノ金
ニ等級ヲ付ケルト云フヤウナ意味ノ施設デ
スネ、ソレガ一ツト、モウ一ツハ成ルベク
小サナ漁業者ノ利益ヲ先ニシタ方ガ宜イト
云フ考カラ、サウ云フ出發點デ以テ御尋ネ
スルノデスガ、ソレハ日本ノ水產業者ヲ見
マスルト云フト、漁主ト被傭者ト云フモノノ
數ガ大抵トン〓〓位ニナッテ居ルヤウデア
リマス、漁撈ニ從事シテ居ル者ノ漁主ト云
フモノガ、昭和十年ノ農林省ノ統計ニ依リ
マスト云フト······昭和十年ノ漁撈ニ從事シ
テ居ル漁主ト云フモノノ總數ガ四十七萬七
千六十一ト云フノデスガ、被傭者ノ數ガ六
十二萬一千九百三十八人、斯ウ云フヤウナ
數ニナッテ居ッテ、相比較シテ見ルト云フト、
一人ニ對シテ一·五位デス、倍ニモナッテ居
ナイヤウデアリマス、本業トスル者、副業ト
スルモノト云フ區分ヲ眺メマシテモ、矢張
リ大體サウ云フヤウナ步合ニナッテ居ルヤ
ウニ思フノデスガ、サウスルト云フト、小
サイ漁撈態狀ハ、自ラ漁主自身ガ船ニ乘ツテ
行クト云フ自己出漁ト申シマスカ、自分ヤ
家族ナドト一緒ニ出漁スルト云フ意味ノモ
ノガ多數デハナイカト思フノデアリマス、
ソレカラ「トロール」デアルトカ、汽船底曳
デアルトカ、サウ云フヤウナ所謂資本漁業
ト云フ方ハ、漁主ノ方ハ陸上ニ居ッテ只被傭
者ダケガ漁業ヲ營ムト云フノガ多イノヂヤ
ナイカト思フ、サウスルト云フト自家出漁
船ト云フモノヲ一ツノ目標ニシテ、ソレヲ成
ルベク主ニシテ、保險ヲ相互的ニ行ハセル、
御趣旨ハ其ノ目的デスガ、サウ云フ趣旨ニ
スルノモ一ツノ方法デハナイカ、ト思フノ
デスガ、サウ云フ點ノ御考ハドウデスカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00119370322&spkNum=88
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089・原辰二
○政府委員(原辰二君) 實施ノ方針又ハ指
導ノ方針ト致シマシテハ、只今御話ノアリ
マシタヤウニ、漁船ニ付キマシテモ船齡デ
アリマストカ、構造デアリマストカ、色々
ナ點カラ等級ヲ、何階級ニ分ケタ方ガ適當
デアリマスカ分リマセヌガ、兎ニ角相當ニ
其ノ等級ヲ分ケマシテ取扱ヲ異ニスルヤウ
ニシテ參ラナケレバナラヌト思ヒマス、又
御話ノ如ク漁船ノ總數ハ現在三十六萬艘カ
ラゴザイマスルケレドモ、大體ニ於テ大部
分ガ船主ガ自ラ船ニ乘ッテ漁ニ出掛ケルト
云フモノガ大多數デゴザイマス、サウ云フ
モノラ主トシテ入レルヤウナ方針デ扱ハナ
ケレバナラヌト左樣ニ考ヘテ居リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00119370322&spkNum=89
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090・松村眞一郎
○松村眞一郞君 漁船檢査ハドウ云フヤウ
ニナサイマスカ、其ノ保險ヲ相互ニ營ムモ
ノ······營ムト云ヒマスカ、相互主義デ保險
ヲナスモノ、其ノ組合員相互間デ檢査スル
ト云フコトヨリモ、他ノ機關デ檢查シタ方
ガ宜イヤウニモ思フノデスガ、ソレハドウ
云フ御計畫ナンデスカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00119370322&spkNum=90
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091・原辰二
○政府委員(原辰二君) 此ノ點ニ付キマシ
テモ、只今考ヘテ居リマスノハ、漁船保險
組合ノ中ニ、此ノ保險ノ目的ニ付テノ審查
委員會ノヤウナモノヲ事實上設ケサセマシ
テ、ソコデ一應調査ヲサセル、其ノ審査委
員ニハ組合員カラモ出スコトハ勿論デアリ
マスガ、其ノ外ニモ、例ヘバ郡市水產會ア
タリニ能ク組合ノ船ノコトヲ知ッタ人ガ居
レバ、サウ云フ人モ加ヘ、或ハ漁業組合ニ
サウ云フ人ガ居レバ、サウ云フ人モ加ヘサ
セマシテ、組合トシテノ審査委員會ノヤウ
ナモノヲ拵ヘサセマシテ、ソコデ審査ヲサ
セルト云フ風ニ第一ニハ考ヘマスガ、又同
時ニ先程モ申上ゲマシタヤウニ、元受保險
ガ取レマスト云フト、ソレガ當然ニ政府ト
組合トノ間デハ再保險ノ關係ガ生ジマシテ、
結局ハ此ノ政府ノ保險關係ニモ非常ニ直接
ニ影響ヲ持ツノデアリマスカラ、此ノ漁船
保險組合ノ相互審査ト云フモノダケニ是ハ
信賴スル譯ニモ參リマセヌノデ、指導ノ傍
ラ十分ニ監督的ナ又見方カラ審査ニモ立會
ハセル必要ガアラウト、斯樣ニ考ヘマシテ、
ソレデ此ノ漁船保險ノ實施ニ付キマシテ
ハ、各府縣ニ指導竝ニ監督ノ職員ヲ相當數
ヅヽ配置ヲスルコトニシテ居リマス、サウ
云フ府縣ノ職員ニ分擔ヲサセ、又直接ニハ
水產局ニモ多少此ノ專門家ヲ殖ス豫定ニシ
テ居リマスカラ、サウ云フコトヲ出來ルダ
ケ致シマシテ、其ノ弊害ノナイヤウニ運用
ヲシテ參ル積リデ居リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00119370322&spkNum=91
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092・松村眞一郎
○松村眞一郞君 ソレデアルト云フト殆ド
國營ト選ブ所ガナイノヂヤナイカト私ハ思
フノデスガ、組合ノ審査ニ信賴スルコトハ
出來ナイ、政府モ矢張リ之ヲ監督スル、府
縣ノ職員モ之ヲ見ルト云フコトニナレバ、
思ヒ切ッテ國營ノ直接保險ニシタ方ガ極ク
簡單明瞭ヂヤナイカト私ハ思フノデアリマス、
ソレデ先程伺ッタンデシタガ、國營ニシテ惡
イト云フ理由ハナイ、斯ウ云フコトナンデ
アッタノデスガ、積極的ニ、ソレデハ小サイ組
合デ相互主義ニシナケレバナラヌト云フ方
ノ、積極的理由ハドウカト云フト其ノ方ハ
餘リ明瞭ヂヤナイ、地方事情ニ依ルトカ、
現在將來ノ事情ニ屬スルモノデアルトカ、
相互主義ダカラト云フコトナンデ、相互主
義ガ何故宜イカト云フコトヲ伺ッテ居ルノ
デアルカラ、相互主義ダカラト云フコトダ
ケデハ困ルノデスガ、元來保險ト云フモノ
ハ、非常ニ大キイ眼デ見ルト皆相互主義ナ
ンデ、同ジ危險ノ地位ニアルモノガ寄ッテ、
一ツノ危險團體ト云フモノヲ作ッテ居ルダ
ケナンデス、經濟上カラ申シテ、危險團體
ノ中カラ御互ニ醵出シタ保險金ヲ集メテ、
ソレヲ保險トシテ拂フ、·保險ノ本質ハ總テ
相互主義ナンデ、其ノ方カラ言ヘバ、ソレ
ヲ營利ヲ方針トシタト云フヤウナモノヲ認
メテ、第三者ガ保險者ノ地位ニ立ッテ行フ、
只相互會社ト云フモノニシテ行フ、マア相
互會社ノ場合デモ會社ガ世話スルノデアリ
マスガ、直接ニ一旦會社ノ方デ引受ケテ、
ソレカラ集メタ金ヲ分ケルカ、自分達ノ
方デ受取ッテ分ケルカト云フダケデ、チッ
トモ事實ハ違ハナイ、營利保險デアラ
ウガ、相互保險デアラウガ、要點ハドコ
ニアルカト云フト、成ルベク危險ヲ分
散シヨウト云フ所ニ要點ガアルノダカラ、
小ッポケナ斯ウ云フモノヲ作ルヨリモ、
大キナ包容力ノ中ニ總テノモノヲ包容シ
テ、サウシテ保險ヲスルト云フノガ、保險
ノ要點ナンデス、出來ルダケ保險加入者ノ
〓體ヲ大キクスルト云フノガ要點ナンデス、
ソレニ拘ラズ小サク取ッテ行クト云フコトニ
ハ特別ノ强イ理由ガナケレバ、相互ニ保險
ノ小サナモノニ分散サセルト云フ方ハ理由
ガ立タナイ理窟ニ私ハナルト思フ、サウ云
フ意味カラ申シマスト云フト、ドウモ漁船
保險ト云フモノニ付テハ、相互保險ト云フ小
サナ組合ヲ作ラナケレバナラヌト云フ方ハ、
ドウモ私ハ明瞭ヂヤナイト思フ、ソレデハ
保險、同ジ相互保險ト云フモノガ、家畜保
險ノ時ハ相互保險デヤッタヂヤナイカト云
フ議論ガアルデセウ、是ハ元來相互ニサセ
ル所ニ要點ノアルコトハ、御互ニ警戒スル
ト云フ所ニ要點ガアル、知ラナイ間ニ色々
ナ損害ガ生ジテ居ルト云フコトハ困ルカラ、
相互ニ監督シナイト行屆カナイト云フヤウ
ナ意味ニ於テ、相互的ノ組織ガアッタ方ガ宜
イト云フコトガ、一ツノ考慮スベキ重要ノ
事項トシテ玆ニ數ヘルコトガ出來ル譯ナン
デス、ソレハ漁船ノ場合ニ於テハ殆ド私ハ
ナイト思フ、何故カト云フト、自分自身ガ
乘ッテ居ルノデスカラ、此ノ保險ハ全船保險
ヲ主トシテ居ル、船舶ノ沈沒、沖ニ出テ船
舶ヲ沈沒サセルト云フコトハ想像出來ナイ、
自分モ一〓ニ海ノ中ニ入ルト云フコトニナ
リマスカラ······、サウ云フヤウナ意味デ相
戒メテ、餘計ナ損害ヲ起サセテ保險金ヲ取
ラウト云フ、能ク火災保險ニアル······火災
保險ガ三崎デアリマシタカ、何處デアリマ
シタカ、私一寸場所ノ記憶アリマセヌガ或
一ツノ島ノ中デ、其處ノ町村長モ何モ一〓
ニナッテシマッテ、火災保險會社カラ保險金
ヲ取リマス爲ニ家ヲ燒イタト云フコトガア
ル、皆寄ッテ一緒ニナッテ燒クンダカラ、警
察ガ手ヲ入レルニ甚ダ困ルト云フ狀態ニア
ノルハ、是ハ火災保險ト云フヤウナ性質上、
危險ヲソコニ生ジ得ルヤウナ誘惑ガアルノ
デス、家ヲ燒イテモ自分ノ生命ニ關係ガナ
イ、ソコデ私ハ今度ハ森林保險ニ關係スル
ノデスガ森林保險コソ相互保險ニシナケレ
バナラヌト思フ、今度ノ提案ガ逆ニナッテ
居ルト云フコトヲ私ハ考ヘル、森林保險ハ
國營デヤッテ置イテ、漁船保險ヲ再保險デ
ヤッテ居ルト云フノハ、是ハ逆ナンデ、森林
保險コソ相互ニシナケレバナラヌ、漁船保險
ハ國營ニシレケバナラヌト思フ、其ノ相互
保險デナケレバナラナイト云フ點ガ、ドウ
モ私ハ明確ヲ缺イテ居ルト思フノデアリマ
スルカラ、火災保險ニ關スル森林ノ分ハ後デ
又私意見ヲ申述ベマス、ドウモ相互主義デ
ケレバナラヌト云フ點ハ、モウ少シ何カ理
由ガナイカ、隣保相戒メテ、保險金ヲ詐取
スルガ如キ虞アリト云フコトハ漁船ニハ想
像スルコトガ出來ナイ、火災保險ナライザ
知ラズ、森林保險ハドウシテモ私ハ相互主義
デナケレバナラヌト思フ、是ハ逆ニナッテ居
マス、ドウ云フ譯デ小サク小切ッテ危險團體
ヲ分散セシメテ、サウシテ場合ニ依ッテハ
保險金ノ一部ヲ拂ハナイデ置クト云フヤウ
ナコトヲスルト云フコトガ、果シテ國家全
局カラ眺メテ見テ良イ制度ナリヤ否ヤ、何
處ノ漁村ニ於テモ保險金ヲ全部取レルノダ
ト云フコトニシテ私ハ宜クハナイカト思フ、
ソレハ國營保險デ、直接保險ニスレバソレデ
宜イノデス、サウスレバ公平ニ行クノデスカ
ヲ、故ラニ小サイモノヲ造ル爲ニサウ云フコト
ガ出來ルノデスカラ、何トカシテサウ云フコ
トノナイヤウナ、詰リ第八條ト九條デシタカ、
サッキノ規定デスネ、八條、九條ノ如キ規定
ヲ無クスルト云フ、寧ロ削ッテシマッテ、斯
ウ云フモノヲ無クシテシマフ、サウシテ七
割ダケハ必ズ政府ガ塡補スルノデアリマス
カラ、サウ云フ場合ニハ七割ダケノ保險ニ
シテシマヘバ宜イ譯デス、何カサウ云フ點
ニ付テモウ少シ明確ナル理由ガナイデセウ
カ、御氣付キノ所ガアリマシタラ御述べ願
ヒタイト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00119370322&spkNum=92
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093・原辰二
○政府委員(原辰二君) 漁船保險ニ付キマ
シテ、元受關係ヲ先ヅ漁船保險組合ト云フ
地方的ノ船主ノ相互組織ノ組合デ扱ハセル
ト云フヤウニ考ヘマシタノハ、御話ノヤウ
ニ漁村ノ實情カラ見テ行キマシテモ所謂隣
保共助ノ精神ヲ採リ入レル、ソレヲ松村サ
ンノ御覽ニナリ方ハ、少シ私共ノ見方ト御
違ヒニナルノカモ分リマセヌガ、隣保共助
ノ精神ト云フモノヲ盛リ込ンデ、サウシテ
其ノ精神ニ立脚シテ、御互ガ助ケ合フト同
時ニ監視シ合フト云フ相互監視ノ點ヲ長所
トシテ見テ參リタイト思フノデアリマス、
御話ノヤウニフンダンニ經費ヲ掛ケテ、政
府ノ直營ノ保險デヤッテヤレナイコトハナ
イト云フ理窟ニハナリマスケレドモ、マア
サウ致シマスニハ餘程此ノ仕組モ複雜ニシナ
ケレバナラズ、又人手モ非常ニ掛ケナケレ
バナラズ、結局政府ノ豫算ト致シマシテモ
隨分多額ノ經費ヲ掛ケナケレバナラナイト
云フコトニナルンヂヤナイカト思ヒマス、
先ヅソレホド迄ニ致サナクテモ、隣保共助
ノ美風ヲ養フト同時ニ、又サウ云フ相互監
視方面ノ長所ヲ捉ヘマシテ、行ッタ方ガ、却
テ比較的簡易ニ實行ガ出來ルノヂヤナカラ
ウカ、御話ノヤウニ隣保共助デ御互ガ知ッタ
同志デアルカラ、何ト申シマスカ談合シテ
事故無キニ拘ラズ事故ガアッタト云フ風ニ
シテ誤魔化シ合フ、或ハ多少ノ事故ニ依ル
損害ガアッタニ拘ラズ、損害額ヲ非常ニ御互
ガ大キク見積リ合フト云フ風ナ危險ヲ心配
スレバ、全然アリマセヌト申上ゲルコトハ
言ヒ過ギルカモ知レマセヌガ、サウ云フ點
ハ出來ルダケ指導監督ニ依ッテ、弊害ヲ無ク
シテ參リマシテ、寧ロ相互監視ト云フコト
ニ依リマシテ、御互ガ是ハ損害防止ノ義務
モ持ツ譯デアリマスカラ、其ノ義務ヲ御互
ガ果シ合ヒ、監視モシ合フト云フコトノ方
ガ、寧ロ損害ヲ防止ヲスルト云フ點ニ於キ
マシテモ、亦損害ガ旣ニ生ジタ場合ニ、其
ノ見積ヲ自分ダケガ多クスル、御互ガ過大
ニ見積ルト云フ風ナコトハ、相互ノ監視ガ
ウマク行ケバ、相互制裁モ能ク行ク、ソコ
ノ長所ヲ私共ハ寧ロ見テ居ル譯デアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00119370322&spkNum=93
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094・松村眞一郎
○松村眞一郞君 サウ致シマスト、損害ガ
生ジタ場合ニ、損害ハ誰ガ證明シテソレヲ
取入レテ保險ヲ支拂フコトニナラレルノデ
アリマスカ、政府トシテデスネ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00119370322&spkNum=94
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095・原辰二
○政府委員(原辰二君) 此ノ場合ニ於キマ
シテモ、先程モ申上ゲマシタヤウニ、組合
ニ此ノ損害ノ評價委員會ト云フヤウナモノ
ヲ拵ヘサセマシテ、ソコデ一應ノ評價ヲサ
セ、サウシテ府縣ノ職員ナリ、出來得ル限
リ又政府ノ官吏ガデスネ、ソレヲ吟味シテ
行クト云フ風ニヤッテ參ル外ナイカト思ッテ
居リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00119370322&spkNum=95
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096・松村眞一郎
○松村眞一郞君 私ハ此ノ部分ダケニ付
テ、何ガ故ニ森林火災ノ方ハ國營ニシテ、
相互デハ惡イノカト云フコトヲ聽キタイト
思フンデスガ、如何デセウ、其ノ點ダケニ
限ッテ問題ガ關聯シテ居リマスカラ、御許シ
ヲ得レバ、其ノ方ノ御答辯ヲ承ッテ見タイ
ノデス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00119370322&spkNum=96
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097・堀田正恒
○員員長(伯爵堀田正恒君) 宜シウゴザイ
マス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00119370322&spkNum=97
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098・村上龍太郎
○政府委員(村上龍太郞君) 御答へ申上ゲ
やく、森林火災保險ニ付キマシテ國營ヲ採
リマシタノハ、成ルホド會社ノ方法、組合
ノ方法ト此ノ三ツノモノガ考ヘ得ルノデア
リマス、組合ニ致シマスト、一ツノ組合ハ
先程御話モゴザイマシタガ、成ルベク危險
ノ分散度ノ多イ方ガ宜イト考ヘマス、森林
關係ニ於キマシテ危險ノ分散ノ度ヲ大ナ
ラシムル爲ニ大地域ニ致シマスルト、相互
監視ト云フ風ナ機能ヲ發揮スル點ガ弱ク
ナッテ參リマスルコトガ一ツ、ソレカラ森
林所有者ガ必ズシモ同一地域ニハ居住致シ
テ居リマセヌ、遠方ノ人ガ山ヲ持ッテ居
ルト云フ風ナ關係モゴザイマスノデ、相
互監視ト云フ意味カラ致シマシテ、組合制
度ヲ採リマシテモ非常ニ機能ノ薄イコトニ
ナリマスノデ、寧ロ簡明直截ニ國營ニ致シ
ク、サウ致シマスト、ソレガ爲ニ生ズル道
德的危險ヲドウスルカト云フ點ガゴザイマ
スガ、是ハ保險金額ノ方デ調節シテ參ル、
卽チ重保險ニ致シマシテ、火災ノ危險ガ生
ズレバ、政府ガ全部ヲ補塡スルノデハナイ、
一部ハ矢張リ火災ノ起ッタ場合ニハ自己ノ
損失ニナルヤウナ制度ヲ設ケマシテ、ソレ
ヲ緩和スルト云フコトニ致シマシテ、國營
ノ制度ニ致シマシタ次第デゴザイマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00119370322&spkNum=98
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099・松村眞一郎
○松村眞一郞君 只今ノ一部塡補ハ是ハ同
ジナンデアリマシテ、森林保險ニ於テモ一
部塡補デアリマセウガ、漁船保險ニ於テモ
七割シカ塡補ヲシナイ、此ノ點ニ付テハドッ
チデモ同ジデアリマスカラ、是ハ私ハ理由
トシテハ數ヘルト云フコトハ出來ナイト思
フノデアリマス、森林保險ニ付テハ非常ニ
大事ナルコトハ相互監視ニアル、是ハ衆議
院ノ本會議ニ於ケル速記ヲ見マシテモ其ノ
點ハ心配サレテ居ル、若シ此ノ幼齡林ニ付
テ火災保險ヲ行ッタ場合ニ於テハ、幼齡林ハ
元來價値ノ少イモノデアルノダカラ、造林
ノ時ニハ金ヲ掛ケタケレドモ急ニ金ガ要ル
場合ニハ寧ロ燒イテシマッテ保險金ヲ取ッテ
シマッタ方ガ宜イデハナイカト云フ思想ガ
起ル虞ガアル、サウスルト近所ニ壯齡林ヲ
有ッテ居ル山林所有者ガ非常ニ恐レルノデ
アリマス、何トカ此ノ點ヲ防禦スル方法ガ
ナイカト云フコトヲ心配シテ、非常ニ恐レ
テ居ルト云フ意味ノ陳述ガアル、ソレハ私
ハ尤モナコトダト思フ、ソコデソレニ對シ
テノ問題ハ、再造林ヲ條件トスルト云フコ
トヲ法文ニ書イタラドウカ、サウスレバ燒
イタ後直グ再造林ヲシナケレバナラヌカラ、
保險金ヲ取ッテモソレヲ直グニ造林ノ方ニ
向ケルト云フ條件ノ爲ニ、サウ云フコトガ行
ハレナイデアラウト云フノデ、非常ニ其ノ
點ヲ心配シテノ議論デアッテ私ハ其ノ事ハ
尤モダト思ヒマス、トコロガ再造林ヲ條件
トスルト云フヤウナコトハ、保險金ヲ取ッテ
カラノ後ノ話デアリマスガ、ソレヲ法文ニ
書イテ置クト云フコトハドウカト思フ、
大臣モ此ノ點問題デアラウト云フコトノ意
味ノ御答ニナッテ居リマスガ、是ハ相互保險
ニスレバ簡單明瞭デ、相互保險ニスレバ、
隣ヘ燒ケテ來テハ迷惑デアルカラト云フノ
デ壯齡林ヲ有ッテ居ル山林所有者モ亦番人
ガ何カヲ其處ニ附ケルニ相違ナイ、ソレカ
ラ幼齡林ヲ有ッテ居ル隣ノ山林所有者ハ、其
ノ側ニ居ラナイカラト云ッテモ放火ヲサレ
ルカモ知レナイト云フコトニナルトソコニ
非常ニ警戒心ヲ起シテ來ル、況ンヤソレガ
相互保險ニナッテ居レバ、隣ノ方デ燒イタ場
合ニハ自分カラ金ヲ出サナケレバナラヌト
云フコトニナルト云フト、益〓警戒心ヲソ
コニ發揮シテ來ル譯デアリマスカラ、相互
保險ト云フコトノ爲ニ、世間デ心配シテ居
ル點ヲ總テ除却シテシマフコトガ出來ル、
危險ノ分散ハゴザイマセヌ、今山林局長ノ
言ハレタ通リニ多クスルコトガ必要デアリ
マス、併シナガラソレハ國營ノ方ノ再保險
ト云フモノヲ漁船ト同ジヤウニスレバ、全
國的ニ危險ヲ分散スルノデアリマスカラ、
政府御自身ハタッタ一ツデアルカラ、小サク
分散シナイコトニナッテモ元受保險ノ方ノ
缺點ヲ、再保險デ全國的ニ分布シテシマフ
ノデアリマスカラ、其ノ點ハ私ハ心配ハシ
ナイ、心配ノ所ハ相互監視ガ非常ニ大切ナ
ノデアル、山林ノ場合ニ於テハ、漁業ト違ツ
テ山林ダケ燒イテ居ッテ自分ガ逃ゲテ居ル
コトガ出來ルガ、漁業ハソレハ出來ヌ、先
程申上ゲタヤウニ出來ナイ、出來ナイカラ
漁業ニ付テハ相互監視ト云フ必要ハナイ、
併シナガラ山林ニ付テハ必要ガアル、ソコ
デ山林ハドウシテモ火災ノ豫防ト云フ方ノ
施設ト相伴ハナケレバ、保險ヲ造ッテ居ッテ保
險金ヲ拂フ方ノ側ハ大變ナ心配ニナル譯デ
アルガ、其ノ火災豫防ノ施設ヲドウスレバ
一番宜イノカト云フト、山林所有者ガ相互
ニ警戒スルト云フコトガ一番强イノデアリ
マス、各相互ニ警戒スルノハ、下手ヲスル
ト自分ガ他人ノモノマデモ保險金ヲ拂ハナ
ケレバナラヌト云フコトニナルト、尙更ラ
警戒心ガソコニ强クナッテ來ルノデアリマ
シテ、山林保險ノ場合ハドウシテモ相互
保險ニシナケレバナラヌト思フ、サウスレ
バ心配ハ總テ除却シテシマフ、壯齡林ヲモ
其ノ中ニ入レテ一向差支ナイ、サウシテ
相互保險ニスレバ宜シイ、サウスレバ
所謂隣保共助ト云フカ、其ノ問題ハ山林ニ
於テ最モ必要ナコトガソコニ實現サレルコ
トニナルノデアリマスカラ、政府ハ寧ロ火
災保險ノ方ニハ相互組合ヲ作リ、サウシテ
火災豫防組合モ同時ニソレニ機能ヲ發揮サ
セルト云フコトガ宜カラウト思フ、現在ニ
於テ火災豫防ト云フモノハドウ云フヤウナ
方法ヲ以テヤッテ居ラレマスカ、是ハ問題ガ
少シ橫ニ入ッテ行クヤウデアリマスガ、關聯
致シマスカラ、委員長、御尋ネスルコトヲ
御許シ願ヒタイ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00119370322&spkNum=99
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100・村上龍太郎
○政府委員(村上龍太郞君) 御答ヘ申上ゲ
マン、先程中上ゲマシタノヲモウ少シ補充
致シタイト思ヒマス、組合デヤルニ致シマ
シテモ、先程申上ゲマシタヤウニ相當大區
域デナイト分散度ガ低イ、卽チ大規模ニ亙
リマスト、相互監視ト云フ點ガ薄クナル
ト云フコトヲ申上ゲマシタノト、モウ一
ツ申上ゲマシタ點ヲ補足致シタイト思ヒ
マス、山林ハ或郡內或ハ縣內ニアリマシ
テモ、山ヲ持ッテ居ル人ハ必ズシモ近所ニ
住ンデ居ナイト云フヤウナ關係モアリマ
スノデ、例ヘバ東京ノ人ガ群馬縣ニ山ヲ
持ッテ居ル、或ハ栃木縣ノ人ガ群馬縣ニ山
ヲ持ッテ居ルト云フヤウナ關係デ、所有
者ガアッチコッチニ散ラバッテ居ル關係ヲ
考ヘマスト云フト、ドウモ相互組織ノ組合
ニ致シマシテモ、餘程相互組織トシテノ機
能ヲ發揮スルコトガ、家畜保險組合等トハ
趣ガ異ッテ參ルノデハナカラウカ、家畜保險
ナドデアリスマト、大體一ツノ郡ナラバ郡デ家
畜ヲ持ツ人ガ、自分ト一〓ニ住ンデ持ッテ居
ルト云フ風ナ關係デ、家畜ノ居ル所ト、飼ヒ
主ノ居ル所ト先ヅ同ジニ見テモ、宜イ山ノ方
ニナリマスト、山ヲ持ッテ居ル其ノ山ト、山ノ
ノ持主ノ居ル所トハ、大分趣ガ家畜トハ違ッ
テ居ル、ソンナ關係デドウモ組合ガ困難ダト
云フ風ニ見テ居ル、ソレカラ災害豫防ノ方ハ
仰セノ通リ我々モ餘程是ハ注意ヲ致サナケ
レバナラヌト考ヘテ居リマス、現在ニ於キ
マシテハ、政府ノ火災豫防ニ對スル施設ガ
十分ニ行キ亙ッテ居ルトハ考ヘテ居リマセ
ヌ、未ダ〓〓十分力ヲ盡シテ行カナケレバ
ナラヌ、豫防ガ寧ロ大事デアルト云フ風ニ
私ハ考ヘテ居リマス、何ニ致シマシテモ、
火災ノ豫防デ一番大切ナコトハ、唯山ノ持
主ダケノ考デハ豫防等ハ十分ノ效果ヲ擧ゲ
ル譯ニハイカナイ、社會一般ノ人ガ此ノ火
災ニ對シテ十分ニ注意ヲシテクレナケレ
バ、一部少數ノ人々ガ注意ヲ致スダケデハ
十分效果ガ擧ラナイト云フ風ナ考カラ致シ
マシテ、火災警防ニ關スル一般ノ注意ヲ十
分ニ喚起シタイト云フ風ナ考カラ致シマシ
テ、從來カラモ努力ヲ致シテ居ルノデアリ
マスガ、數年來實行致シテ居リマスル全國
的ニ神武天皇祭ヲ中心ニ致シテ、三日間實
行致シマスル全國的ナ愛林日等ニ際シマシ
テモ、左樣ナ方面ノ宣傳ヲ致シ、又國有林ノ
所在地等ニ於キマシテモ、火災警防ノ旗ヲ
火災ノ危險期ニハ出ス、又消防組或ハ警察
等ト連絡ヲ取ッテ火災警防ニ關スル、何ト申
シマスカ、施設ノ徹底ヲ期スル、又所ニ依
リマシテハ火災ノ危險期ニハ空中出動ナド
ヲヤッテ居ルノデアリマス、危險期ニ入リマ
スト、地方ニ依リマシテハ「ラヂオ」ヲ通シテ
社會ノ注意ヲ喚起スルト云フ風ナコトナド
ヲ致シテ居リマス、ケレドモ政府ノ豫算ト
シテ火災警防費ト云フモノハ、是ハ從來カ
ラ欲シイト思ヒマシテ、計畫ハ持ッテ居リマス
ガ、未ダ實現スル程度ニハ至テ居リマセヌ、
此ノ點ニ付キマシテハ將來トモ十分努力シ
タイト考ヘテ居リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00119370322&spkNum=100
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101・松村眞一郎
○松村眞一郞君 私ハ火災警防ト云フコト
ハ、御互ニ警戒シ合フト云フ所ノ單位ガア
ルト思フ、組合ノ單位ト云フモノガ、例ヘバ
「ラヂオ」ヲ以テ放送サレルトシテ見テモ、
大阪ノ放送局トカ、高知トカ、熊本トカデ
ヤッテ居ルト云フコトデアリマスガ、ソレニ
シテモ區域ガアルダラウト思フ、其ノ區域
ノモノガ矢張リ一ツノ單位トナッテ、矢張リ
警防ノ一團ガ出來ルベキ筈ト思フ、全國的
ニ唯愛林日ノ際、全國國民ニサウ云フコト
ヲ唱ヘテ見タトコロガ、都會ノ眞中ニ居ッテ
山ニ登ルト云フコトガ殆ドナイト云フ者
ニ對シテ、サウ云フ〓育ヲスルヨリモ、假
令遠隔ノ地ニ居ッテモ、山主ハ山林ヲ愛護ス
ルト云フ責任ガアルノデアリマスカラ、不
在山主ト云フ人ガ、土地ヲ離レテ居ルカ
ラ監視シナイデ宜イト云フヤウナ態度ハ、
是ハ財產ヲ所有シテ居ル者ノ責任上カラ許
サレナイコトダト私ハ思フ、自己ノ山カラ
火ガ出デ他ノ山ニ移ルト云フヤウナコトガ
アッテ宜シイト云フコトハ決シテナイノデア
リマスカラ、山主ガ土地ヲ離レテ居レバ、
益〓、其處ニ番人ヲ誰カニ賴ムナリ、隣ノ森林
所有者ニ依賴スルナリ、其ノ市町村ニ御願
スルナリ何トカシテ、警防ノ責任ハ盡スベ
キデアル、ソレニ必要ナル經費ハ私ハ出シ
テ宜カラウト思フ、ソレハ其ノ市町村ガ單
位ニナッテ、森林火災豫防組合ト云フモノヲ
拵ヘレバ宜イノデアル、其ノモノガ單位ニ
ナッテ、始終山ヲ注意スルト云フコトニナル
ト、是ガ亦保險ニ對シテノ相互責任ヲ負フ
ト云フコトニナッテコソ、本當ニ徹底シタ豫
防組合ガ出來ルト思フ、全國的ノ今ノ放送
ト云フコトデナク、凡ソ單位ガ私ハオアリ
ダラウト思ヒマス、將來豫算ヲ取ッテ、火災
警防ト云フヤウナコトニ付テ若シ奬勵セラ
レルトシテモ、玆ニ府縣單位デアルトカ、
市町村單位デアルトカ云フ、何等ノ單位ヲ
作ラナイデ、全國的ニ纏マラズシテ、サウ
云フコトヲ行フコトハ出來ナイダラウト思
フ、何カソコニ單位ガアルダラウ、其ノ單
位卽チ保險ヲ經營スベキ單位デアルト云
フヤウナ意味ニ於テ、私ハ質問シテ居ルノ
デアリマスガ、火災警防ヲヤラセルトスレ
バ、矢張リ組織ハ作ラナケレバナラヌダラ
ウト思フ、ソレハドウ云フヤウナモノデア
ルカ、或ハソコニ森林組合ト云フモノモア
リマセウシ、或ハ營林區署ノ管轄區域內ニ
於テ行フトカ、色々ノ問題ガアルダラウガ、
ソコニ想像シテ見レバ何等カ組織ヲ作ラセ
ルナリ、或ハ團體ニ立脚スルナリ、何カソ
コニ形ガアルベキ筈デアリマシテ、其ノ形、
卽チ保險ノ經營スベキ形デアルト云フ意味
ニ於テ私ハ申シテ居ル、ドウ云フ工合ニ組
織ヲサセル積リデアリマスカ、若シ豫算デ
モ取ラシテヤルトスレバデスネ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00119370322&spkNum=101
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102・村上龍太郎
○政府委員(村上龍太郞君) 其ノ點ニ付キ
マシテハ、森林火災ノ警防ニ付キマシテハ、
是ハ山ヲ持ッテ居ル人ト、山ヲ持ッテ居ナイ
人トノ區別ニ依リマセヌデ、森林火災ノ警
防ニ付キマシテハ、寧ロ山ニ接近シタ部落
ナリ、村ナリノ人ガ、自分ノ山ガ燒ケテ居
ル場合ダケデナク、他人ノ山ガ燒ケテ居ル
時デモ、結局地元ノ人ガ行ッテ警防シ、又地
元ノ人ガ注意シ、又地元ノ者ガ火ヲ消シニ行
クノデナケレバ、遠方ノ所有者ハナカ〓〓參
ル譯ニ行カナイ、山ノ手近ノ部落ナリ村ナ
リヲ警防單位ト考ヘテ參リマス、サウ致シ
マスト、寧ロ森林所有者ノ警防團體ト云フ
コトハチヨット考ヘラレマセヌデ、寧ロ山ヲ
持ッテ居ル人ノ理解ヲ待ッテ、ヤッテ行キタイ
ト考ヘテ居リマス、ソレデアリマスカラ自
然假ニ此ノ森林火災保險組合ハ、森林所
有者ノ組合ニナッテ參リマスガ、所有者ノ組
合ニナリマスト、警防ノ單位トハ自ラ異ッタ
團體ニナラザルヲ得ナイト考ヘテ居リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00119370322&spkNum=102
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103・松村眞一郎
○松村眞一郞君 團體ノ異ナルコトハ私ハ
アルダラウト思ヒマス、必ズシモソレヲ同
一ト云フ意味デ申シテ居ルノヂヤナイ、
何等カ連絡ヲ取ルコトガ適當デナイカト云
フ意味デ質問シテ居ルノデアリマスガ、例
ヘバ警防ノ場合、地元ノ人民ニ注意サセテ、
ソレガ消防ノ折ニ奔走スル、是ハ當然デス、
併シナガラ其ノ警防ノ費用ヲ若シ負擔ヲ命
ズルトスレバ、山林ノ持主カラ取ルコトハ
當然ト思ヒマスガ、サウ云フ場合デモ山林
ノ持主ハ一文モ出サヌデモ宜イ、山林ノ所
有ヲシナイ地元ノ者ガ負擔スルノガ適切ト
云フ御考ヘデスカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00119370322&spkNum=103
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104・村上龍太郎
○政府委員(村上龍太郞君) 其ノ點ニ付キ
マシテハ、無論山ヲ持ッテ居ル者モ或ル程度
ノ負擔ヲスベキモノト思フ、又政府ニ於キ
マシテモ、或ハ地方廳ニ於キマシテモ、或
程度ノ助成ヲ致スベキモノデアル、各方面
ノ人ガ其ノ經費ヲ出シ合ッテ、ヤッテ參ルト
云フヤウナ風ニ致サナケレバナラヌト考ヘ
テ居リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00119370322&spkNum=104
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105・松村眞一郎
○松村眞一郞君 ソレデアリマスト云フト、
兎モ角山林ノ所有者ハ警防ニ付テノ責任ハ、
幾分ハ負擔スベ·キモノデアルト云フコトハ
御認メニナッテ居ルヤウデアリマスカラ、其
ノ點ヲ保險ノ責任ト結付ケル工夫ナキヤト
云フ點ガ要點デアリマス、何カソコニ工夫
ガナイデセウカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00119370322&spkNum=105
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106・村上龍太郎
○政府委員(村上龍太郞君) 其ノ點ハドウ
モ適當ナ方法ガ、保險ニ付テハ取ルコトガ
困難ナノデナカラウカト考ヘテ居リマス、
ドウ云フ風ニ致シマシタラ有效ナル連係ガ
保險ニ關スル限リニ於キマシテ取リ得ルカ、
非常ニムツカシイノヂヤナカラウカト考ヘ
テ居リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00119370322&spkNum=106
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107・松村眞一郎
○松村眞一郞君 サウ致シマスト、農林當
局ハ、此ノ森林保險ヲ國營ニスルコトガ機
會トナッテ、却テ火災ヲ惹キ起スヤウナコト
ハ決シテナイト云フヤウナコトデアリマセ
ウカ、或ハ場合ニ依ッテハサウ云フ心配ガア
ルカモ知レナイト云フ不安ノ念ハ幾分御持
チデアリマセウカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00119370322&spkNum=107
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108・村上龍太郎
○政府委員(村上龍太郞君) 其ノ點ニ付キ
マシテハ、先程申上ゲマシタ是ハ漁船トノ
比較、一部保險デアルコトハ同一デアリマ
ス、是ハ一部保險ニ依ル道德的危險ノ防止
ノ方法、又森林火災ガ起リマシタ場合ニハ、
類燒ノ虞レ等モアリマスカラ、無論他ノ方
面カラモ保險ニ加入シテ居ルト否トヲ問ハ
ズ、或程度ノ關心モ行ハレマスシ、色々ノ
點ト相俟ッテ此ノ保險ヲ設ケマスル爲ニ、却
テ森林火災ヲ誘發スルガ如キ虞ハナイト考
ヘテ居リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00119370322&spkNum=108
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109・松村眞一郎
○松村眞一郞君 保險ガ行ハレルカラ却テ
誘發スルト云フ意味ヂヤナイ、ソレガ幾分
サウ云フヤウナ動機ニナル虞ナキヤト云フ
點デアリマス、保險ヲ附ケルガ爲ニ總テガ
詐欺ヲヤルト云フコトヲ考ヘテ居ルノヂヤ
ナイ、サウ云フ心配ガ生ジヤシナイカ、世
間ニ旣ニサウ云フコトヲ心配シテ居ルノデ
アリマスカラ、其ノ心配ヲナクスルコトハ、
此ノ制度ヲ施行スル上ニ於テ、同時ニ考慮
シナケレバナラヌコトヂヤナイカト私ハ思
フノデアリマス、其ノ方ノ心配ヲ除却スル
ニ付テ、ドウ云フヤウナ工合ニ說明サレル
考ヘデアリマスカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00119370322&spkNum=109
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110・村上龍太郎
○政府委員(村上龍太郞君) 此ノ火災保險
ヲ施行致シ、爲ニ保險金欲シサノ放火ト云
フヤウナコトノナイヤウニト云フコトハ、
是ハ保險制度ヲ考ヘル時ノ先ヅ一番先キニ
心配ヲ致サナケレバナラヌ點デアリマス、
此ノ制度ヲ考ヘマス時ニモ十分ソレ等ニ付
テハ虞ノナイヤウニ致シタイト云フ考ヘカ
ラ致シマシテ、色々考へタノデアリマスガ、
保險制度ノ方ニ現レテ參ッテ居リマス主文
ト致シマシテハ、此ノ保險價格全體ヲ取ラ
ナイデ、一種ノ標準金額ヲ極メマシテ、ソ
レヲ以テ此ノ保險金額ノ最高限度ニスル、
其ノ標準金額ハ再造林費ヨリモ少シ下目ニ
持ッテ行クト云フ制度ヲ執リマシテ、其ノ點
ヲ防止スルト云フ工夫ヲマア致シタ譯デゴ
ザイマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00119370322&spkNum=110
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111・堀田正恒
○委員長(伯爵堀田正恒君) 今日ハ此ノ程
度デ止メタイト思ヒマス、明日ハ本會議ガ
アルヤウデアリマスガ、アッテモ早ク濟ムト
思ヒマス、ソレデアリマスカラ無カッタラ
午前十時カラ、アッタラ議事散會後、斯ウ云
フコトニ致シタイト思ヒマス、ソレデハ是
デ散會致シマス
午後三時四十一分散會
出席者左ノ如シ
委員長伯爵堀田正恒君
副委員長男爵井上〓純君
委員
公爵鷹司信輔君
侯爵小村捷治君
子爵野村益三君
子爵保科正昭君
子爵戶澤正己君
松井茂君
松村眞一郞君
白根竹介君
男爵橋元正輝君
山本米三君
岩崎〓行君
國務大臣
農林大臣山崎達之輔君
政府委員
農林次官長瀨貞一君
農林省山林局長村上龍太郞君
農林省水產局長原辰二君
農林省畜產局長細川利壽君発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00119370322&spkNum=111
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