1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和十二年三月二十四日(水曜日)午前十一時六分開會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00319370324&spkNum=0
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001・堀田正恒
○委員長(伯爵堀田正恒君) 是ヨリ開會致
シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00319370324&spkNum=1
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002・山本米三
○山本米三君 少シク事務扱ヒノコトニ亙
リマスガ、ハッキリ致シ置キマスル方ガ宜イ
ト考ヘマスルノデ御伺ヒヲ致シマス、參考書
ノ三頁ニ「保險金額ノ一町步當リ」トゴザイ
マスルノハ、定メテ實測反別デアラウカト思
フノデゴザイマスルガ、公簿反別デアルト
致シマスルト、山林ノ公簿反別ハ田畑宅地
ト異ニ致シマシテ、所ニ依リマスト實地ノ
面積ハ公簿ノ數倍モアルモノハ珍シクナイ
ノデアリマス、是ハ何レデゴザイマスルカ、
ハッキリト致シ置キマスル方ガ宜イト思フ
ノデゴザイマス、トコロデ實測反別ト云フ
コトニナリマスルト、又實測ヲシナケレバ
ナラヌト云フ面倒ガ起ルデナイカト思フノ
デゴザイマスガ、此ノ點ハ如何御取扱ヒデ
ゴザイマセウカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00319370324&spkNum=2
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003・村上龍太郎
○政府委員(村上龍太郞君) 山本サンニ御
答へ申上ゲル前ニ、チヨット昨日松村サンカ
ラ、商工省ト打合シテ返事ヲスルヤウニト
ノコトデアッテ、答辯ガ殘ッテ居リマスカラ
ソレヲ致シテ置キマス、商工省トモ打合セ
マシタガ、超過保險ノ場合ニ於ケル保險價
額ニ付テハ、事實上喰違ヒガ起キナイヤウ
ニ、實行ニ付キ適當ナ處置ヲ執ルヤウニ、
商工省ト打合セヲ致シマシテ左樣ニ致シタ
イト考ヘテ居リマス、ソレカラ只今山本サ
ンノ御尋デゴザイマスガ、是ハ見込反別デ
參ラウト思ッテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00319370324&spkNum=3
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004・山本米三
○山本米三君 見込ト申シマストドウ云フ
風ナ··発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00319370324&spkNum=4
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005・村上龍太郎
○政府委員(村上龍太郞君) 只今仰セノヤ
ウニ臺帳反別ハ是ハ實際ノ反別ト違ヒマス
カラ、是ハ採リマセヌ、ソレカラ實測反別
デ一々ソレヲ測量スルト云フコトニナルト、
是亦ナカ〓〓費用ヲ要シマス、大體此ノ山
ハ何町步ト云フ見込デ以テヤッタ反別、ソレ
ヲ基礎ニシテ初メ採ッテ參ラウト思ッテ居リ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00319370324&spkNum=5
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006・山本米三
○山本米三君 ソレハ矢張リ御扱ヒニナル
ノハ、何レデゴザイマセウカ、縣廳ガヤラ
レルノデセウカ、又町村長ニデモ御委セニ
ナルノデゴザイマセウカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00319370324&spkNum=6
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007・村上龍太郎
○政府委員(村上龍太郞君) 是ハ町村ニヤ
ラセタイト思ッテ居リマス、造林地デゴザイ
マスカラ、大體一町步何本植ヱト云フヤウ
ナコトハ大體分ッテ居リマスカラ、サウ誤リ
ハナカラウト思ッテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00319370324&spkNum=7
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008・山本米三
○山本米三君 私ハ前囘ノ委員會ニ於キマ
シテ、政府ガ此ノ國營保險ヲ壯齡林ニマデ
擴張實施サレマスルコトハ、森林經營ヲ圓
滑ナラシムル爲ノ必要デアルコトヲ申述ベ
テ御尋ネヲ致シタノデアリマスルガ、尙附
加ヘマシテ其ノ必要ヲバ申上ゲマスル爲ニ、
森林金融ノ狀況ヲ簡單ニ申述ベタイト思ヒ
やく、現在我ガ國デハ森林ノ金融ハ大體勸
業銀行、農工銀行、普通銀行、產業組合、
個人貸付業ニ依ッテ行ハレテ居リマスルガ、
森林ノ價格ノ評定ガナカ/〓困難デアリマ
ス、評定ニ特殊ノ手數ヲ要シマスルコトヤ、
貸付ノ擔保物ト致シマシテ、多ク不便ノ土
地ニアリマシテ且ツ廣汎ナ地域ニ跨ッテ居
リマスルガ爲ニ監視ガ容易デナイコトヤ、
一旦擔保流レニナッタ場合ニ處分ニ困難ヲ
感ジマスルコトヤ、貸付ガ、事業ヲ性質上
長期固定ノ貸付ニナリマスルコトヤ、最後
ニ種々ノ危害、殊ニ火災ノ多イコト等ノ特
殊ノ事情ヲ持ッテ居リマスルガ爲ニ、他ノ一
般財產ヲ擔保ト致シマスル如クニハ金融ハ
行ハレテ居ナイノデアリマス、卽チ擔保物
タル森林ノ有ツ實際ノ價格ニ比ベマシテ、
貸付ノ金額ハ甚ダ少ク且利率モ調査費用等
ガ要リマスルノデ結局甚ダ高率デアリマス、
斯クシテ、假令銀行ノ手ニ依リマシテ、折
角資金融通ヲ得マシテモ、企業上一向有利
デナイバカリデナク、之ガ融通ハ自然相當ナ
林業家ニ局限サレ勝チデアリマス、小サナ山林
所有者ガ大多數ヲ占メテ居リマス我ガ國ノ狀
態ニ在リマシテハ、是等一般ノ山林所有者ニ
對シマシテ金融ノ途ガ開カレテ居ナイト云
フコトハ事實デアリマス、我ガ國ノ林業ガ今
ニ容易ニ振ハナイノハ、此ノ金融施設ガ甚
ダ不十分デアルコトガ最モ重大ナ原因デア
ルトシテ重視シナケレバナラヌコトデアリ、
林業ノ進展、山村ノ振興上ニハ、恰モ彼ノ
特異ノ事情ヲ有シマスル水產業ニ於ケルト
同樣ニ、林業ニ對シテハ是非共、例ヘバ森
林銀行ヲ設クル等、特殊ノ金融施設ヲ講ズ
ルコトガ根本ノ必要條件デアリマスルガ、
森林火災保險ヲ普及シテ、サウシテ森林金
融阻害ノ原因ヲ解消致シマシテ、其ノ圓滑
ヲ圖ルコトガ緊急ナル要事デアルノデアリ
マス、以上ニ依リマシテ、此ノ際森林火災
保險ノ普及ヲ圖ルコトガ甚ダ必要デアリ、
而モ是ハ國營ニ依ラナケレバ其ノ目的ヲ達
シ難イノデアリマス、今囘政府ハ幼齡林ノ
人工造林地ニ對シマシテ、國營ノ火災保險
ヲ實施シテ、再造林ヲ容易ナラシメムトセ
ラレマスノハ誠ニ欣ビニ堪ヘストコロデア
リマスルガ、政府ハ更ニ一歩ヲ進メテ、此
ノ國營保險ヲ壯齡林、天然林ニ擴張實施シ
テ、森林金融ニ資スルノ必要ノ緊切ナルヲ
認メラレテ、之ガ實行ヲ切望シタイト思ヒ
マスガ、最後ニモウ一ツ繰返シマシテ御所
見ヲ伺ヒタウゴザイマスルノハ、保險料ノ問
題デアリマス、此ノ國營ノ保險料ハ、民間
營業ノ普通保險ニ比ベマシテ其ノ率ガ甚ダ
高率デアリマス、民間ノ營業ノ普通家屋ナ
ドノ保險ニ致シマシテモ、其ノ率ガ二圓五
十錢グラヰデアリマスルニ對シマシテ甚ダ
高率デアルト思ヒマスルノデ、恐ラク此ノ
高率デハ申込者ガアルカドウカト云フコト
ヲバ深ク憂ヘルノデアリマス、前囘ノ御答
辯ハ、危險率ガ高イカラ是ヨリ割出シタモ
ノデアル、今後危險率ガ下レバ下ゲテモ宜
イト云フ御答辯デアリマシタガ、ソレハ何
時到來致シマスルコトヤラ分ラヌノデゴザ
イマシテ、甚ダ滿足シ得ヌ御答辯デアルト
思フノデゴザイマスルガ、此ノ料金ハ勅令
ニ依リマスルモノデ、絕對動カサレヌモノ
トモ思ヒマセヌガ、實施マデニ再檢討ヲセ
ラレマシテ、ズット御下ゲニナルトコロノ御
意思ガアリマスカドウカヲ御尋ネ致シタイ
ノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00319370324&spkNum=8
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009・村上龍太郎
○政府委員(村上龍太郞君) 只今ノ御尋デ
ゴザイマスガ、家屋ノ火災ノ保險料ト森林
ノトヲ比較シテ高イ安イト云フコトハチ
ヨット困リマス、チヨットドウモムヅカシイ
ノデアリマシテ、寧ロ民間ノ森林火災保險
ノ料率ト、國營ノ料率トヲ御比べニナラヌ
ト、チヨット比較スルモノガ違ヒマスカラ困
ルノデアリマス、民間ノ森林火災ノ保險料
率カラ見レバ、國營ノ方ガ大體安クナッテ居
リマス、ソレデ私共ノ考ト致シマシテモ、
此ノ森林業者ノ負擔ヲ成ルベク輕クシタイ
ト云フコトハ、是ハモウ始終念頭ニ置イテ
居ルコトデゴザイマシテ、昨日モ御話ヲ申
上ゲマシタヤウニ、出來ルダケ森林火災ガ起
キナイヤウニ又起キテモ大キナ被害ガナイ
ヤウニ、卽チ森林火災ノ豫防等ニモ力ヲ入
レマシテ、森林ノ危險率ヲ引下ゲルコトニ
努力ヲ致シタイト考ヘテ居リマスルシ、又
此ノ保險ノ實施ノ結果、又經驗カラ出テ來
ル色々ナ材料等ヲ斟酌致シマシテ、出來ル
ダケ料率等ニ付テモ森林業者ノ負擔シ易イ
ヤウニ致シタイ考デゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00319370324&spkNum=9
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010・山本米三
○山本米三君 只今ノ御答辯ハ我々ノ考ト
出發點ガ少シ違フノデアリマス、勿論御說
明ノ如ク、民間ノ森林ニ對スル保險料ニ比較
致シマスレバ、政府ノ案ハ低イノデハゴザ
イマスルガ、是ハ危險ト云フコトヲバ割出
シテ森林ノ保險率ガ高イノデゴザイマスル
ノデ、其ノ危險ト云フコトヲバ先ヅ政府デ
ハ取除ケテ御考ヲ願ヒタイト云フノガコチ
ラノ意思デアリマス、少シク其ノ點ニ對
スル御考ガ違フノデアラウト思フノデアリ
マスガ、兎ニ角何レニ致シマシテモ、是デ
ハ申込ガアルカドウカト云フコトヲ我々ハ
心配ヲ致シマスルコトデゴザイマスノデ、
是ハ絕對的ノ御割出シデゴザイマスルカ、
實施マデニハ之ヲ一ツ下ゲテヤラウカト云
フ御意思ガ御アリニナルノデゴザイマセウ
カ、其ノ邊ヲモウ一應御伺ヒ致シタイノデ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00319370324&spkNum=10
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011・村上龍太郎
○政府委員(村上龍太郞君) 此ノ料率ハ、
實施マデニ變更スルト云フコトハ是ハ出來
マセヌノデス、唯特ニ危險ノ多イ地域ハ、或
ハ危險ノ少イ地域ニ於キマシテ、實行保險
料ト云フモノハ斟酌ヲ加ヘマスケレドモ、
此ノ料率ト云フモノハ之ヲ變ヘル譯ニハ參
リマセヌ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00319370324&spkNum=11
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012・山本米三
○山本米三君 私ノ質問ハ是デオ終ヒニ致
シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00319370324&spkNum=12
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013・小村捷治
○侯爵小村捷治君 昨日水產局長ニ希望ノ
アル點ヲ申上ゲテ置キマシタノデスガ、其
ノ後民間ニ於キマシテ現レテ居ル海難保險
ノ點ニ付テ當局デ御調ベガツイタヤウデゴ
ザイマスカラ、之ニ付テノ正確ナル御說明
ヲ承ッテ置キタイト存ジマス、ト申シマスノ
ハ、先日來各委員ヨリ、漁業日本國トシテ
最モ重大ナ漁民ノ生命ニ關スル保險、其ノ
他ノ施設ノ有無ニ付キマシテ非常ニ御議論
ガアッタヤウデゴザイマスノデ、假令小規模
ナリトハ言ヘ、民間ニ於テ既ニ斯クノ如キ
コトガ行ハレテ居ルト云フコトヲ皆サン御
了承ニナルダケデモ幾分ノ御滿足ト存ジマ
スルカラ、特ニ此ノ點ヲ水產局長ニ御願ヒ
シタイト存ジマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00319370324&spkNum=13
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014・原辰二
○政府委員(原辰二君) 只今小村侯爵ヨリ
御話ノゴザイマシタ民間ニ於キマシテ漁
業者、漁業從事者ニ對スル此ノ保險ノ實施
ノ狀況ニ付テ御話ヲ申上ゲタイト思ヒマス
ガ、此ノ際チヨット私カラ此ノ機會ニ御斷
リヲ申上ゲテ置キタイト思ヒマスコトハ、
先般小村侯爵ノ此ノ民間デ漁業者ニ對スル
保險制度ヲ實施シテ居ルモノハナイカト云
フ御尋ネノアリマシタ際ニ、私民間ノ方デ
ハ全然ゴザイマセヌト云フ實ハ御答ヲ申上
ゲタノデアリマスガ、其ノ際ニ小村侯爵カ
ラ、尙、峰友ト云フ小村サンノ御知リ合ヒノ
方デ現ニヤッテ居ル人ガアルヤウデアルカ
ラ、ソレモ調ベテ見ルヤウニト云フ御話モ
ゴザイマシタ譯デゴザイマシタガ、アノ時
ニ私民間ノ方ニハゴザイマセヌト申シマシ
タノハ、其ノ以前ニ松村サンカラモ御尋ネ
ノゴザイマシタ際ニ、漁業者ニ對スル此ノ
保險ノ制度ハ、一般ノ普通ノ生命保險ヤ傷
害保險ノ制度ハイカヌト思フ、特殊ノ制度
ヲ設ケテ行カナケレバナラヌト思フト云フ
御話モゴザイマシタノデ、サウ云フ意味ノ
漁業者ニ對スル特殊ノ保險制度ト云フモノ
ニナリマスト云フト、現在ノトコロ無イヤ
ウニ考ヘマシタノト、ソレカラモウ一ツハ、
小村侯爵ノ御話ノゴザイマシタ峰友ト云フ
方ノ名前ヲ私偶〓存ジ上ゲナカッタモノデ
ゴザイマスカラ、ソレデ承知致シマセヌト
云フコトヲ申上ゲタ譯デゴザイマシタガ、
段々其ノ後局內デ聽イテ見マスト云フト、
小村サンノ御話ノゴザイマシタ峰友ト云フ
方モ、漁業者ノ爲ニ非常ニ御同情ニナッテ
種ノ漁業勞務者ニ對スル海難ノ保險ヲヤッ
テイラッシヤル、マダ其ノ他ニモ或會社デ北
洋漁業ノ從事者ニ對スル傷害ノ保險ヲヤッ
テ居ルモノモアルト云フヤウナコトモ大體
分ッテ居ッタ、ト云フコトガ分リマシタヤウナ
譯デゴザイマシテ、ソレデ現在ノ所謂民間
ノ漁業者、漁業從事者ニ對スル救護施設ヲ
致シテ居リマスル施設ノ極ク〓要ヲ纏メマ
シテ、御手許へ御覽ニ入レルヤウニ致シテ
置キマシタカラ御覽戴ケルト思ヒマスガ、
ソレニ付キマシテ極ク〓要ヲ申上ゲマスレ
バ、先ヅ第一ニ小村サンノ御話ノゴザイマ
シタノハ、峰友ト云フ方ガ主トナッテヤッテ
オイデニナリマスノハ、此ノ共同火災保險
株式會社ト云フ火災保險會社デ、實ハ其ノ
火災保險ノ附帶ノ事業トシテヤッテ居ラレ
ルト云フ事情デゴザイマス、デ其ノヤリ方
ハ、其ノ保險金額モ大體一人ニ付テ二千圓
ト云フ大體均一ノ取扱ヲヤッテ居リマス、二
千圓ニ對シマシテ、又其ノ保險料モ均一ニ
二圓拂ヘバ、千圓ニ付イテ二圓デゴザイマ
スガ、千圓ニ付テ二圓ノ均一料率デ以テ御
扱ヒニナッテ居ラレル、サウシテ漁業又ハ漁
業從事者ガ死亡スル場合、行方不明トナッタ
場合、ト云フヤウナ場合ニハ、此ノ死亡ニ
對シマシテハ保險金額ノ全額ヲ拂フ、ソレ
カラ兩眼ノ視力ヲ失ッタトキ、兩腕ヲナクシ
タトキニハドウ、兩足ヲナクシタトキニハ
ドウ、片腕ヲ失ッタトキニハドウ、又片足ヲ
失ッタトキニハドウ、ト云フ風ニ、サウ云フ
風ナ大體ノ場合ニ保險金額ノ全額ヲ御拂ヒ
ニナル、輕微ナ負傷ノ程度ニ止ル場合ニハ
保險金額ノ半額ヲ拂フ、斯ウ云フ式デヤッテ
居ラレマスノデ、ソレデ是ハ實ハ保險トシ
テヤッテハ居ラレマセヌケレドモ、只今申上
ゲマシタヤウニ保險料モ千圓ニ付イテ二圓
ト云フ均一ノ保險料デ御扱ヒニナッテ居リ
マシテ、嚴格ナル意味ニ於テ傷害率デアリ
マストカ、危險率デアリマストカ云フモノ
カラ割出シタ保險料ト云ッテ御扱ヒニナッテ
居ル譯ヂヤナイ、ト云フ點ニ於キマシテ、
極クヤカマシク申シマスト云フト、嚴格ナ
意味ノ保險ニ當嵌マルカドウカト云フコト
ガ多少疑ハシクナル譯ナンデアリマス、ソ
レデ其ノ峯友ト云フ方ハ、出來得ルナラバ
共同火災保險會社トハ別ノ會社デ、此ノ漁
業者ノ海難保險ヲ獨立ノ會社デヤリタイ、
ト云フ御希望モアッタヤウデゴザイマスガ、
只今申上ゲマシタヤウニサウナリマスト
是ハ保險ナリヤ否ヤト云フ問題モ起リ、商
工省ノ方デモ認可サレルカドウカト云フコ
トガ多少疑ハシイノデ、サウ云フ面倒ナ問
題ヲ避ケテ、成ルベク簡便ニ漁業者ノ爲ニ
サウ云フ一應ノ施設ヲシテヤリタイト云フ
御趣旨カラ、便宜上共同火災保險株式會社
ノ附帶事業トシテヤッテオイデニナル、斯ウ
云フ事情ダサウデアリマス、是ハ昭和九年
カラ仕事ヲ御始メニナッテ居リマシテ、只今
申上ゲマシタヤウナ料率ニ依リ又保險金額
ニ依ッテ御扱ヒニナッテ居ルノデアリマスガ、
此ノ成績ヲ伺ッテ見マスト云フト、昭和九年
ノ最初ノ年ニハ契約シタ人ガ二千人カラアッ
タサウデアリマスガ、此ノ保險料ノ收入ガ
四千圓、ソレニ對シマシテ實際保險金ヲ御
拂ヒニナッタノガ七萬圓カラアリマシテ、差
引六萬六千圓バカリ御損ヲナスッタ、ソレカ
ラ其ノ次ノ昭和十年度ニ於キマシテハ、契
約シタ漁業者ガ三千人ニ殖エマシタガ、其
ノ收入ガ六千圓、其ノ保險料ノ支拂ヲナスッ
タノガ四萬圓デ、此ノ年モ差引三萬四千圓
バカリ御損ヲナスッタ、ソレカラ昭和十一年
ノ成績ハ大分恢復ヲシテ居ラレマシテ、
契約ヲ致シマシタ漁業者ノ數モズット殖エ
マシテ、此ノ施設ガ非常ニ漁業者ニ對シテ
結構ナ施設デアルト云フコトガ段々解ッテ
參ック結果ト思ヒマス、其ノ數ガ四萬人カラ
ニナッテ居リマス、其ノ收入ガ從ッテ八萬圓
モアリ、サウシテ實際保險金ヲ御拂ヒニナッ
タノガ十萬圓デゴザイマスルカラ差引二萬
圓バカリ損ヲナスッタ、斯ウ云フコトニナッ
テ居ルノデアリマス、ソレデ峯友サンノ御
話デハ、元々是ハ儲ケ仕事トシテヤッタ譯
デモナク、又儲ケ仕事トシテ是ハ考ヘテハ
ウマクヤレルカドウカ自分トシテモ疑問ヲ
持ッタクラヰノモノデ、謂ハバ損ハ覺悟ノ前
デ致シタノデアルガ、今マデニ十二三萬圓
ノ「マイナス」ニナッテ居ル、併シ自分トシテ
ハ將來モ一ツ力ノ續ク限リハ、又外ニ良イ制
度ガ立テラレルマデハ是デヤッテ行カウト
思フ、ト云フ大變漁業者ニ對シテ御同情ノ
アル御取扱ヲ爲スッテイラッシヤルコトガ明
瞭致シマシテ、私共モ其ノ意味ニ於キマシ
テ大イニ感謝ヲシテ居ル譯デゴザイマス、
峯友サンノヤッテイラッシヤル御事業ハ大體
サウ云フヤウナ模樣デゴザイマス、ソレカ
ラ其ノ外ニモウ一ツ中央火災傷害保險株式
會社ト云フ會社ガゴザイマシテ、此ノ會社
デモ多少此ノ漁業從事者ノ傷害保險ヲ御扱
ヒニナッテ居リマス、但シ是ハ北洋漁業ノ從
事者ニ限ッテ居ラレマス、北千島、樺太、「カ
ムサッカ」ノ東西沿岸、其ノ邊ヘ出掛ケマス
漁夫、漁雜夫、工船ノ乘務員其ノ他ノ漁業
從事者ニ對シテ契約ヲスルト云フ建前デヤッ
テ居ラレルノデアリマス、此ノ保險モ大體
一漁期每ニ御扱ヒニナルト云フヤリ方デア
リマシテ、一人ニ付テ保險金額ハ大體二百
圓見當カラ始リマシテ、最高五百圓ト云フ
御扱ヒノヤウデアリマス、但シ一時漁場ノ
視察ノ爲ニ乘船ヲスルト云フ風ナ特殊ノ場
合ニハ、事情ニ依ッテハ千圓マデ契約ヲスル
コトモアルト云フ風ニナッテ居ルヤウデゴ
ザイマス、サウシテ保險料モ四箇月以內ニ
契約ノ場合ナラバ、一圓二十錢乃至二圓見
當マデノ間デ決メル、六箇月以內ノ多少長
イ期間ニ亙リマスト云フト、一圓五十錢カ
ラ三圓位マデノ間ノ保險料金デ御扱ヒニナッ
テ居ル、サウシテ此ノ場合デモ矢張リ死亡、
兩眼ノ視力又ハ手足ノ中二肢ヲ失ッタトキ
ニハ保險金ノ全額ヲ拂フ、腕足、眼デア
リマストカ、指デアリマストカト云フ風ナ
モノノ一ヲ失ッタ場合ニハ、保險金額ノ百分
ノ六十乃至百分ノ十見當マデ拂フト云フ風
ニ、色々區分ヲシテ御扱ヒニナッテ居ルヤ
ウデゴザイマス、是モ最前申上ゲマシタヤ
ナウ嚴格ナ意味ニ於キマシテ保險デアルカ
ドウカト云フ疑問ハアルヤウデゴザイマス
ガ、ソレデアリマスカラ、一般ノ火災傷害
保險ノ附帶ノ事業ト致シマシテ、北洋漁業ノ
從事者ニ對スル何ト申シマスカ、附タリノ
仕事トシテヤッテ居ル、斯ウ云フ狀況デゴザ
イマス、此ノ中央火災傷害保險ノ只今申上ゲ
マシタ北洋漁業從事者傷害保險ノ實績ハ、
大體ドレ位每年扱ッテ居ラレルカト云フ點
モ調ベタイト思ヒマシタガ、マダ只今御話
ヲ申上ゲルマデニハチヨット間ニ合ヒマセ
ヌノデ、又後ホド一ツ能ク調ベテ置カウト
思ヒマス、會社ト致シマシテ兎ニ角漁業從事
者ノ爲ニ傷害、死亡等ノ場合ニ保險的ノ施設
ヲヤッテ居リマスノハ、只今申シマシタ二ツ
ノ會社ガアルダケノヤウデゴザイマス、其ノ
外ニハ、先般モチヨット申上ゲタカト思ヒ
マスガ、斯ウ云フ施設ガ非常ニ貧弱デアル
爲ニ、或ハ當業者ガ御互ニ相寄リマシテ、
此ノ共濟的ニ、遭難シタ場合ニ葬儀費用ノ
幾分ヲ補助シ合フトカ、香奠ヲ出シ合フト
カ云フ趣旨デ以テヤッテ居ルモノガ多少ゴ
ザイマシテ、例ヘバ道府縣水產會デヤッテ
居リマスモノガ會ノ數ハ大體二十二三ゴザ
イマスガ、此ノ二十二三デサウ云フ遭難救
恤ノ爲ニドレ位金ヲ使ッテ居ルカト申シマ
スト云フト約七千圓位ノ僅少ナ程度ニ止ッテ
居リマス、ソレカラ此ノ漁業組合、漁業組
合聯合會、ソコデモ遭難救恤ノ事業ヲ多少
ヤッテ居ルモノモゴザイマシテ、其ノ組合ノ
數ハ二百六十七八アルヤウデゴザイマス、
デ其ノ經費ガ四萬四千圓バカリゴザイマス、
漁業者全體ノ數ノ上カラ見マスルト云フト
非常ニ輕少ナモノデアルコトハ申上ゲル迄
モナイト思ヒマスガ、尙此ノ外ニ只今ノ所
デハ一般的ノ公共的ナ、極ク廣イ意味ノ公
共的ノ施設トシテハゴザイマセヌケレドモ
水產組合、例ヘバ露領水產組合デゴザイマ
ストカ、母船式ノ蟹工船ノ水產組合デゴザ
イマストカ、「トロール」ノ水產組合デアリ
マストカ、或ハ機船底曳網ノ水產組合、ソレ
等デモ此ノ組合々々デ多少ヤッテ居リマス、
其ノ中稍〓制度ノ整ッテ居リ又相當積立金モ
有ッテヤッテ居リマスノハ、御承知デモアラ
ウト思ヒマスガ露領水產組合ノ救恤ノ施設
デゴザイマシテ、是ハ御承知ノ通リニ露領
ノ「カムサッカ」ヘ參リマシテ漁業ヲ致シマス
關係上、御承知ノ通リニ「ロシア」ハ勞働者
ノ保護ト云フコトガ非常ニヤカマシイ所デ
ゴザイマスカラ、露領ヘ來テ漁業ヲスル以
上ハ、大體ニ於テ「ロシア」ニ於ケル勞働者保
護ノ施設ニ大體副フヤウナ施設ヲヤルモノ
デナケレバイカヌト云フヤウナコトヲ申ス
關係上、露領水產組合デサウ云フ施設ヲ致
シテ居ル譯デゴザイマスガ、此ノ露領ニ參
リマス漁業從業者ノ數モ大體二萬人カラゴ
ザイマスノデ、是等ノ者ノ爲ニ露領水產組
合ガ救恤ノ爲ニ積立テテ居リマスモノガ、
現在約六十萬圓ホドゴザイマス、之ヲ以テ
每年「ロシア」ノ大體此ノ承認ヲ得ル程度ノ
救恤ノ事業ヲヤッテ居ルト、斯ウ云フコトニ
ナッテ居ル譯デゴザイマス、デ大體只今申上
ゲマシタヤウナ遭難救恤ノ施設ガアルダケ
デゴザイマシテ、此ノ一般的ノ施設ト致シ
マシテハ、甚ダ貧弱極ルト申シマスカ何ト
申シマスカ、率直ニ申上ゲマスレバ僅カニ
此ノ程度ノ施設シカナイト云フ現狀デゴザ
イマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00319370324&spkNum=14
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015・小村捷治
○侯爵小村捷治君 私只今色々ナ御話ヲ承
リマシテ驚キ入ッタノデゴザイマスガ、先日
來民間ニ於テハ斯クノ如キ施設ガナイト云
フ御話デアッタノデ、偶〓、知人デドウモサウ
云フ事業ヲシテ居ルノヂヤナカラウカト、
私ハ個人的ノ知リ合ヒデハアリマスケレド
モ······事業ノコトハ何モ存ジマセヌガ、ド
ウモ腑ニ落チマセヌノデ質問ニ參ッタノデ
アリマス、サウシテ此ノ事情ガ分リマシテ、
其ノ爲ニ當局デモ特ニ斯ウ云フ印刷ヲサレ
且御說明ガアルニ至ッタノデゴザイマスル
ガ、殊ニ此ノ最初ノ「漁業勞務者海難保險
要領」ト書イテアル所ヲ見マシテ、實ニ是ハ
全ク損失ヲ度外視シテヤッテ居ラレマス、是
ハ私ハ知人デアリマスルガ故ニ名前ヲ擧ゲ
ルノデハゴザイマセヌケレドモ、私此ノ間
實ハココノ會ニ出タ後初メテ此ノ事業ノコ
トヲ訊キニ參ッタノデアリマス、サウシテ峯
友氏ハ義俠的ニ又獻身的ニ唯一個ノ財產デ
ヤッテ居ルノデアリマス、今ノ御說明ニ依リ
マスト共同火災ノ事業ト云フコトニナッテ
居リマスケレドモ、ソレハ形ノ問題デ、實
ハ私財ヲ抛ッテヤッテ居ル、ソレガスッカリ
分リマシタ、豫テカラ人格者トハ思ッテ居
リマシタケレドモ、斯ウ云フコトヲヤッテ
居ルノダト云フコトヲ聽イテ私ハ淚ガ零レ
ルホド有難ク思ッタノデス、是ハドウシテモ
申サナケレバナラヌト思ッテ、コチラデ申上
ゲタノデアリマスガ、皆樣モ例ヘバ井上男爵、
松村サン、皆サン非常ニ熱烈ニ此ノ點ニ御
憂慮ノ御意見ノ御發表ガアッタノデアリマス、
私モ議員トシテ是ハ矢張リ御報告シナケレ
バナルマイト思ッタモノデスカラ申上ゲタノ
デゴザイマスガ、斯カル公益事業ト申シマス
カ、モウ殆ド任俠ト言ッテモ宜イ程度ノ
コトヲヤッテ居ル方ニ對シテハ、十分ナル助
長奬勵或ハ適當ナ援助ヲ政府ノ方デナサル
御考ガアルヤ否ヤ、ソレヲ伺ヒタイノデア
リマス、モウ一ツ申上ゲタイコトハ、是ハ
誠ニ詰ラヌコトデハゴザリマスルガ、是ハ
我々ノ心理的ナ問題ト致シマシテ、此ノ刷
リ物ニ「漁業者又ハ漁業從事者救護施設〓
要」トアリマシテ、誰ガヤッテ居ルト云フコ
トヲ書イテゴザイマセヌ、最後ノ道府縣水
產會デ十分ヤッテ居ルト云フコトハ分ッテ居
リマスガ、是ハ矢張リモウ少シ斯ウ云フ篤
志家ニ對シテハ、誰ガ斯ウヤッテ、誰ガドウ
ト、少ナクモ斯ウ云フ會社ガヤッテ居ルト云
フコトハ、今オ刷リ物ヲ戴イテ分ッタノデア
リマスガ、此ノ刷リ物ヲ單ニ貰ヒマシタダ
ケデハ、誰デモ政府ガヤッテ居ルトシカ思ヘ
ナイ、之ヲモウ少シヤッテ戴カヌト、國費多
端ノ折柄デ政府ガ行キ屆カヌカラ巳ムヲ得
マセヌケレドモ、民間ニ斯クノ如キ義人ガ
アリ、中ニハ營利的ニヤッテ居ル人モアルカ
モ知レマセヌガ、少ナクトモ私ガ知ッテ居ル
人ハ左樣ナ考デヤッテ居ラヌコトハ、僅カニ
三年間ニ一個人ノ資財ヲ抛ッテ十何萬圓ト
云フ損害ヲシテ居リナガラ尙拮据經營シテ
居ルト云フ事ダケデモ、少シ御奬勵ニナッテ
モ然ルベキコトデアル、斯ウ云フ事ニ對シ
テハ、少ナクモドノ會社ガドウヤッテ居ル、
誰ガドウヤッテ居ルト云フコトハ、民間ニ於
ケル······ト云フクラヰノ事ハ正直ニ此處ニ
御書キニナッテ然ルベキモノダト思ヒマス、
デ斯ウ云フ政府ノ手ノ屆カヌ所ハ、矢張リ
民間ノ有志家ニ對シテハ保護奬勵サレルト
云フ御氣持ニナッテ戴キタイ、是ハ希望デゴ
ザイマス、尙斯ウ云フ保險ニ付テノ立法ハ或
ハ當分間ニ合ハナイノカモ知レマセヌケレ
ドモ、或ハ是ダケデモドレダケノ人ヲ助ケテ
居ルカト云フコトハ此ノ數字デ分ッテ居リ
マス、一義人ガ斯クノ如ク漁民ヲ助ケテ居
ルノニ、政府ガ斯ウ云フコトヲヤッテ居ルト
云フコトハ恥シイコトデハナイカト思ヒマ
スケレドモ、ソレヲ御咎メスルノデハゴザ
イマセヌガ、斯ウ云フ公益的ノ事業ニ對シ
テハ十分ナル保護奬勵助長ト云フコトヲ當
分ナリトモ、政府ニ於テ御經營ニナル迄ハ、
斯ウ云フコトノ保護奬勵ト云フコトノ御考
ガアリヤ否ヤ、此ノ點御明答ヲ願ヒタイト存
ジマス、ソレカラ私ガ此ノ間伺ヒマシタノハ、
保險ト云フコトニコダワッテ申シタノデハナ
クテ、漁業者ノ海難ニ付テノ何カ保險的ナ
施設ガアルカト云フコトヲ申シタノデゴザ
リマシテ、嚴密ナ意味ニ於テ、是ガ保險デ
アラウトナカラウト、左樣ナコトヲ私ハ今
論ジテ居ルノデハナイ、左樣ナコトヲ此ノ
場合仰セラレル必要ハナイト思ヒマス、漁
民ハ殆ド知識程度ガ低クテ、自己ノ意思ヲ
發表スル能力ガナイ程ノ漁民ヲ、默ッテ捨テ
テ置クト云フコトハ氣ノ毒ニ思ヒマスルノ
デ、已ムヲ得ズ申上ゲタ次第デアリマス、
今後ノ御方針ニ付テ簡單ニ御答辯ヲ願ヒマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00319370324&spkNum=15
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016・原辰二
○政府委員(原辰二君) 漁業者ノ救恤ニ付
キマシテハ、モウ先般來多數ノ方カラ御話
モゴザイマシタガ、只今又小村侯爵カラ御
話ノゴザイマシタ通リ、是ハ漁船ノ保險ヨ
リモ、寧ロ人ニ對スル救恤ノ施設ヲ先ニナ
ケレバナラヌ、順序ガ寧ロアベコベダト云
フ風ナ感ジヲ私自身モ致シテ居ルノデアリ
やく、唯此ノ漁船ノ保險ノ制度ノ方ガ準備
ガ先ニ出來マシタ關係上、玆ニ先ニ提案ヲ
致シタト云フニ過ギマセヌノデ、此ノ漁業
者ノ救護ニ關スル施設ハ是ヨリ一段ト力ヲ
入レマシテ、一日モ早ク適當ナ施設ヲ講ジ
ナケレバナラヌト斯樣ニ考ヘテ居リマス、
御話ノ如ク此ノ保險ト云フヤウナ、何ト申
シマスカ、非常ナガッチリシタ制度バカリヲ
考ヘテ居リマシテハ、ナカ〓〓實施迄ノ準
備時間モ掛ルト云フ關係モゴザイマセウカ
ラ、是モ御意見ノ如ク、斯ウ云フ保險ノ制
度ト云フモノガ究極ニ於テヤラナケレバナ
ラヌト致シテモ、ソレノ出來ル間、便宜ノ
方法ニ依リマシテ足ラザルトコロヲ補ヒ、
必要ニ應ジテ行クヤウニ考ヘテ行カナケレ
バナラヌト、左樣ニ考ヘマシテ、御趣旨ノ
點ハ十分ニ今後トモ氣ヲ附ケテ參リタイト
思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00319370324&spkNum=16
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017・小村捷治
○侯爵小村捷治君 ソレデ私ノ伺ッタ點ハ、
立法マデノ運ビニ到ル前ニ、民間ニ於テ斯
ノ如キ義俠的ナ事業ヲヤッテ居ル人ニ對シ
テ、保護、奬勵助長等ノ御計畫ガ今御アリ
カドウカト云フコトヲ伺ッタノデス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00319370324&spkNum=17
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018・原辰二
○政府委員(原辰二君) 小村サンノ御趣旨
モ、オ名指シノ峯友某ト云フ一個人ノコトヲ
勿論仰シヤル御趣旨デハナイト思ヒマス··発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00319370324&spkNum=18
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019・小村捷治
○侯爵小村捷治君 勿論、サウヂヤゴザイ
マセヌ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00319370324&spkNum=19
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020・原辰二
○政府委員(原辰二君) 斯ウ云フ民間ノ施
設ハ十分ニ助長シテ參ラナケレバナラヌト
斯樣ニ考ヘマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00319370324&spkNum=20
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021・白根竹介
○白根竹介君 森林ノ方ノ問題デスガ、森
林火災保險ニ付テ、北海道ヲ區域カラ除外
シテ居ルト云フコトニ付テ、少シ問題ガ殘
サレテ居ルヤウナ氣ガスル、ソレデアリマ
スカラ、少シ北海道ノ事情ヲ伺ッテ置イタ方
ガ宜イト考ヘマスガ、內務省又ハ北海道廳
ノ政府委員ニ出席シテ戴キマシテ、御話ヲ
承リタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00319370324&spkNum=21
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022・堀田正恒
○委員長(伯爵堀田正恒君) ソレハ晝カラ
デ宜シウゴザイマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00319370324&spkNum=22
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023・白根竹介
○白根竹介君 ドチラデモ宜シウゴザイマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00319370324&spkNum=23
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024・堀田正恒
○員員長(伯爵堀田正恒君) ソレデハ午後
ハ一時カラニ致シマス、休憩致シマス
午後零時一分休憩
午後一時十六分開會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00319370324&spkNum=24
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025・堀田正恒
○委員長(伯爵堀田正恒君) 午前ニ引續キ
マシテ是ヨリ開會致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00319370324&spkNum=25
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026・野村益三
○子爵野村益三君 私ハ漁船保險法案ニ付
テ改メテ御尋ヲシテ見タイト思フノデアリ
マス、漁船保險法ハ業界數年來ノ宿題デアリ
マシテ、漸ク此ノ際ニ提案サレタコトハ業界
ノ等シク感謝措ク能ハザル所デアルノデア
リマス、申スマデモナク本案ハ社會的ノ意味
ヲ持ッテ居ルノミナラズ、經濟的ニモ產業的
ニモ至大ノ影響ヲ及スベキモノデアリマシ
テ、業界ニ取ッテハ極メテ重大ナ法案デア
ルノデアリマス、唯私ドモノ聊カ當局者ノ
御話ヲ承ッテ其ノ意ヲ明カニシテ置キタイ
コトハ、所謂本法ノ受入ルヽ漁船ノ大キサ
ニ關シテデアリマス、勿論小ハ數「トン」ノモ
ノカラト云フコトデアリマスガ、御承知ノ如
ク、段々此ノ業界ノ漁船ノ型竝ニ大キサト
云フモノガ進步シテ來マシテ、其ノ大キサ
モ漸次增大スルト云フ傾向デアル、又サウ
ナクテハナラヌノデアリマス、勿論本法ノ
趣旨ハ中小漁業者ノ爲メ中小漁船ニ向ッテ
主トシテ均霑セシムルト云フノガ主眼デハ
アリマスルケレドモ、只今申上ゲタ業界ノ
趨勢カラ鑑ミテ、多少此ノ大キナモノニ伺ッ
テモ考慮ヲ拂ハナケレバナラヌト思ヒマ
ス、勿論大キイト申シマシテモ數千「トン」
ト云フヤウナコトハ我々モ考ヘテハ居リマ
セヌ、唯問題トナルノハ多少此ノ遠洋漁業
ト云フ方面ニ使ハレテ居ル船ノ種類デアリ
マス、或ハ數「トン」以上數百「トン」ト云フ
範圍デアリマスガ、之ヲ閑却スルト云フコ
トハアルマジキコトト思フ、サッキ申上ゲタ
本法施行ノ主眼ニモ反スルモノト思フノデ
アリマス、勿論此ノ間ノ當局ノ御話モ承リ
マシタガ、其ノ御話ノ一節ニ我々共ノ不滿
ヲ感ズル點ガアルノデアリマス、多分斯ウ
デアッタト思ヒマス、比較的大キイ漁船デ現
ニ保險會社ノ保險ヲ契約シツヽアルモノ、
サウ云フモノノ種類ニ向ッテハ考慮シテナイ
ト云フヤウナ御言葉ガアッタ、サウシマスル
ト只今申上ゲタヤウナ我々ノ不滿ガ起ル
ノデアリマス、其ノ邊ヲモウ少シ明確ニ致
シテ置キタイト云フノガ私ノ御尋ネノ趣旨
デアリマス、ソレデ勿論中小漁船ヲ主眼ト
スル、申セバ百「トン」以上數百「トン」ノモ
ノニ對シテモ特別ノ考慮ヲ要スル、斯ウ云
フコトデアルベキト思ヒマス、其ノ特別ノ
考慮ト云フノハドウ云フコトカト申セバ、
私ハ斯ウ云フ風ニ考ヘタラ宜カラウト思ヒ
ママ、ソレハ現ニ外ノ保險會社デモ取扱フ
ガ、其ノ手續ガ非常ニ面倒ダ、アヽ云フ面
倒ナラバモウイッソ保險ヲ掛ケルコトハ御
免蒙ムルト云フヤウナ事情ガアリ、或ハ保
險料率ガ頗ル高イ、サウドウモ高イ保險料
率ヲ拂フナラバ止メヨウ、ヤリタクテモヤ
レナイヤウナ場合、斯ウ云フノガ特別ノ場
合ト思フノデアリマス、言葉ヲ換ヘテ申ス
ト、保險手續ノ適當デナイ、ソレカラ保險
料率ノ著シク高イ場合、斯ウ云フ場合デア
ルナラバ、此ノ百「トン」以上數百「トン」ノ
漁船デモ本法ニ依ッテ考へテ見ル、斯ウ云フ
コトデアレバ至極業界ノ希望モ達成セラ
レ、法モ餘程滑ラカニ行クト思フ、其ノ點
ニ付テ改メテ當局ノ御話ヲ承ッテ見タイ、斯
ウ思フノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00319370324&spkNum=26
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027・原辰二
○政府委員(原辰二君) 漁船保險ノ保險ヲ
掛ケルモノノ適用範圍ニ付テ、只今野村子
爵ノ御尋ノ點ハ、野村子爵ノ御話ニナリマ
シタヤウニ私共ノ方デモ考ヘテ居ルノデア
リマス、言ヒ換ヘマスト云フト成ルベク、
小漁船ガ數ニ於テ非常ニ大部分ヲ占メテ居
ルト云フ現狀ニモ鑑ミマシテ、サウ云フ小
サイモノヲ原則トシテ扱フ、併シナガラ一
百「トン」以上ノ如キ稍〓大型ノモノデアッテ
モ、野村サンノ御擧ゲニナリマシタヤウニ、
民間ノ保險料デハ非常ニ料率ガ高クテ保險
ニ掛ケタクテモ掛ケラレナイ、或ハ保險ニ
付ケ得ルトシマシテモ容易ナコトデナイ、
又手續其ノ他ガ非常ニ煩雜デアル、漁船保
險デヤレバ此ノ方ガ簡便ニ行クト云フ風ナ
場合ニハ、數百「トン」ノ船デモ例外的ニ扱フト
云フ風ニ考ヘテ居ルノデアリマス、唯千「ト
ン」以上ノ船ニナルト云フト、船ノ數モ非常
ニ少クナリ、又海上保險會社等ノ又立場ヲ
考慮スル上カラ見マシテモ、又此ノ兩法案
ノ漁船保險ノ制度ト致シアシテモ、却ッテ適
當ヂヤナカラウ、斯樣ニ考ヘマスノデ、
千「トン」ヲ超エル極ク大キナモノハ民間ノ
海上保險會社ニ大體委セマシテ、此ノ保險
デハ扱ハナイ、千「トン」以下ノ船デアレバ
全部扱フ、但シ此ノ主眼ヲ成ルベク小サナ
モノヲ主トシテ考ヘル、サウ云フモノヲ原
則ニシテ考ヘテ參ルト云フ風ニ考ヘテ居ル
譯デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00319370324&spkNum=27
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028・松村眞一郎
○松村眞一郞君 私昨日一應質問ハ此ノ程
度ト云フコトヲ申上ゲタノデアリマスガ、新
シイ質問ガ起ッテ參ルト云フト、矢張リ聯關
シテ御尋ネシタイト云フ關係ガ生ジマスカ
ラ、ソレダケ御許シヲ願ヒタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00319370324&spkNum=28
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029・堀田正恒
○委員長(伯爵堀田正恒君) 宜シウゴザイ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00319370324&spkNum=29
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030・松村眞一郎
○松村眞一郞君 只今ノ點ニ關係致シマシ
テ水產局長ニ御尋ネ致シタイノハ、今日御
配布ニナリマシタ漁船保險組合設立豫定地
ト云フモノヲ數ヘルト云フト四十ニナッテ
居ル譯デスネ、サウシテ初メノ計畫ノ二一十
ヲ四十ニ大體改メテ來タト云フノデアリマ
セウカ、ソレガ今野村子爵ノ仰セラレタ點
ニ私ハ關係ヲ持ッテ居ルカラ御尋ネスルノ
デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00319370324&spkNum=30
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031・原辰二
○政府委員(原辰二君) 今朝ホド御配布致
シマシタ豫定地、組合ノ設立豫定地ノ方ハ、
御話ノ通リ全體四十バカリニナルノデゴザ
イマスガ、是ハ昭和十二年度ニ於テドウ云
フヤウナ所ニ組合ガ出來ル見込デアルカト
云フコトヲ大體書キ現シタモノデアリマシ
テ、此ノ中カラ、此ノ計畫ニ依レバ三十ヲ
取ッテ參リタイ、尙三十以上ニモ取リ得ル場
合ニハ、其ノ程度マデ出來ルモノヂヤナカ
ラウカ、斯ウ云フ意味ノ表デゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00319370324&spkNum=31
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032・松村眞一郎
○松村眞一郞君 此ノ表ノ最後ニ「總噸數
百噸以上ノ業態別組合」ト云フコトガアリ
マスガ、之ガ野村子爵ノ今御質問ニナッタ
點ニ觸レテ居ルノヂヤナイカト思フノデス
ガ、初メノ三十八ハ是ハ百「トン」以下ト云
フコトヲ考ヘ、後ノ二ツハ百「トン」以上ト
云フ勿論例外的ト云フ數ニ現レテ居リマス
ガ、サウ云フ御考ナンデアリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00319370324&spkNum=32
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033・原辰二
○政府委員(原辰二君) 大體サウ云フ風ニ
考ヘテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00319370324&spkNum=33
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034・松村眞一郎
○松村眞一郞君 サウ致シマスト云フト、
此ノ百「トン」以上ハ東京ト三崎シカ出來ナ
イ譯デスネ、此ノ案デ見マスト東京三崎以
外ノ百「トン」以上ノ船ハ、野村子爵ノ御希
望ノ如クハ出來ナイ譯デスネ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00319370324&spkNum=34
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035・原辰二
○政府委員(原辰二君) 是ハ大體此ノ十二
年度ニ出來サウナモノヲ考ヘテ見マスト云
フト、先ヅ此ノ東京三崎ノ邊リデアラウ、
斯ウ思ヒマスノデ、又十三年度以降ノ將來
ニ付キマシテハ、此ノ外ニモ出テ來ヨウカ
ト、斯樣ニ思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00319370324&spkNum=35
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036・松村眞一郎
○松村眞一郞君 サウ致シマスト云フト、
百「トン」以下ノモノト雖モ年ヲ逐ウテ全部
ニ及スノデアリ、百「トン」以上ノ例外的取
扱ノ方モ年ヲ逐ウテ取扱ヲスルンデアル、
サウ云フコトデアルト云フト、或場所ニ於
テ今野村子爵ノ御話ニナッタヤウナ、ドウモ
普通ノ營利會社ニ依ッテ保險ノ目的ヲ達ス
ルコトガ出來ナイケレドモ、組合ガ出來テ
居ラナイガ故ニ、此ノ保險ノ利益ヲ受ケル
コトガ出來ナイト云フ事實ガ生ズルコトハ
御認メニナル譯デアリマスネ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00319370324&spkNum=36
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037・原辰二
○政府委員(原辰二君) 最初カラ此ノ全部
ノ組合ガ出來ナイ以上ハ、松村サンノ御話
ノ如ク組合ガ出來ルマデ當業者ガ不便ヲ忍
ブト云フコトハ、ドウモ已ムヲ得ナイ事實
ト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00319370324&spkNum=37
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038・松村眞一郎
○松村眞一郞君 サウ云フ次第デアリマス
カラ、私ハ玆ニ農林省トシテ御考ニナル必
要ハアルノデナイカ、ドウ云フヤウニ其ノ
點ヲ是カラ改メテ行カウト云フ御考デアル
カト云フコトヲ質問致シタイノデアリマス
ガ、今日直ニ御答辯ハ求メテ居ナイ、其ノ
私ノ意味ハ、漁船保險組合ヲ作ッテ、ソレハ
船ヲ持ッテ居ル者ガ保險ヲ附ケル前ニ先ヅ
組合ヲ作ラナケレバイケナイ、詰リ船ガ、
組合ガ出來テカラ保險ガ附ケラレ、政府ノ
再保險ガ出來ル、斯ウ云フコトニナル、サ
ウシテ保險契約ハ船舶ヲ失フト同時ニ消滅
シテシマフノデアリマスカラ、其ノ漁船組
合ノ船員ガ、大キナ時化ニ遭ッテ總テ沈沒シ
タト云フ事ガアッタ場合ニハ、當然直チニ漁
船組合ト云フモノハ消滅シテシマフ、斯ウ
云フコトニナル譯デス、ソレガボツ〓〓サ
ウ云フ問題ガ起レバ、是ハ船ヲ沈沒サシタ
ラ當然直チニ組合員デナクナッテシマフト
云フヤウナ事態ヲ生ズルコトハ、事實上御
認メニナル譯デアラウト思フ、私ハ非常ニ
是ハヲカシイト思フ、私ハサウ云フコトヨ
リモ、個々ノ漁業者ヲシテ要求ニ應ゼシメ
テ、適當ナリト認メルモノハ直グ保險ニ附
シテシマフ、サウシテ傍ラ此ノ漁船保險ノ
思想ヲ普及セシムルガ爲ニ、今日政府ノ考
ヘラレテ居ルヤウナ組合ヲ各地ニ作ラシテ、
サウシテソレニ平素保險ノ思想ノ滿養ヲス
ルトカ、或ハ積金ヲシテ置イテ、船ノ再建
造ノ費用ニ充テルトカ云フヤウナコトニシ
テ置ケバ、政府ガ考ヘラレテ居ルトコロノ
組合ハ、サウ云フモノニ轉用シテ使用ヲナ
シ得ルダラウト思フ、サウスルト全國ニ直
チニサウ云フ組合ヲ作ッテ一向差支ナイ、農
林省ガ今考ヘテ居ラレル全國ニ二百ト云フ
組合ヲ卽時ニ作ルコトガ出來ル私ノ案ニ依
レバ······、ソレハ必ズシモ船ヲ持ッテ居ラ
ナクテモ宜イ、失ッタカラト云ッテソレガ組
合員ヲ直グニ當然脫退スルト云フサウ云フ
變則的ノモノデハナイ、ソレハ平素農林省
デ世話ヲシテ保險ノコトヲ勉强サセル機關
ニナッテモ宜イデセウ、或ハ積金ト云フコト
モ宜イデセウ、其ノ中ノ或組合員ガ保險ヲ
作ッタ場合ニ於テハ、其ノ保險料ノ世話ヲス
ルトカ周旋ヲスルトカ云フヤウナコトヲサ
シテ一向差支ナイ、ソレ卽チ私ノ謂フ全國
ニ亙ッテノ國營保險ヲ、直營ニ直チニスレ
バ、到ル處ニボツ〓〓要求ニ應ジテ宜イモ
ノカラ保險ニ附ケルコトガ出來ルト思フ、
政府ノ三十組合ヲ助長シヨウト云フ其ノ同
ジ金デ、全國到ル處ニ之ヲ適用シ得ルコト
ニナル、百「トン」以上ノ問題ニ付テモ事情事
情ニ應ジテ最モ急切ナリ感ズルモノカラヤ
レバ宜イ、東京、三崎以外ノモノハサウ云
フ利益ニ均霑セラレナイ、場合ニ依ッテハ、
政府ノ計畫デアレバ十年先デナケレバイケ
ナイト云フ變態的ノ不自由サハナイコトニ
ナルト思フ、ドウ考ヘテモ政府ノ案ノ方ガ
甚ダ不尤モデアッテ、私ノ考ヘテ居ル方ガ宜
イト思フノデアリマスガ、サウ云フコトハ
將來漁船保險ト云フモノヲ、私ノ考ヘテ居
ルヤウナ工合ニ轉用シ得ル途モアルト思ヒ
マスガ、大臣ハ昨日明瞭ニ答辯サレテ居ル、
十年ト云フモノハ生溫イカラ案ヲ改メル、
是ハ當座ノ計畫デアルト言ウテ居ラレル以
上ハ、當座ノモノヲ再檢討スルコトハ、私ハ
卽チ虚心坦懷ニ、捉ハレル所ナク、良イ所
ハ卽時ニ採用スルト云フコトガ必要デアラ
ウト思フ、サウ云フ場合ニハ國營直營ト云
フコトモ御考ニナルベキ必要ガアルト思ヒ
マスガ、サウ云フコトハ全然考ヘナイノデ
スカ、凡ソドンナコトガアッテモ、遮次無二
ニ漁船組合デ行クンダト、强イ確信ヲ持ッテ
居ラレルノデアルカドウカト云フコトヲ御
聽キスル譯デアリマスガ、ソレハ直チニ御
答辯ヲ求メル譯デハアリマセヌ、私ノ意見
ヲ中上ゲテ、尙御再考ヲ煩シタイノデアリマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00319370324&spkNum=38
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039・松井茂
○松井茂君 森林火災保險ニ付テ少シ御尋
ネ致シタイノデス、第一ハ、昨日申上ゲマ
シタガ、森林保險ト云フモノハ今日マダ〓〓
外國デモ發達ガ餘程鈍イノデ、况ンヤ我
ガ國ノ今日ハ此ノ森林火災保險ナドハ大分
距離ガ遠イノデアリマス、ソコデ餘程政府
ガシッカリト此ノ思想ヲ植込ムコトガ官憲ト
シテ先決問題デアラウト思フ、殊ニ此ノ法
案ニ依リマスルト「政府ハ本法ニ依リ森林火
災保險ヲ行フ」トアルカラ、政府ノ責任ハ最
モ重大デアッテ、政府ガ若シモヤリ方宜シキ
ヲ得マセヌト、將來ノ森林ニ關スル火災保
險ノ上ニ於テ、一大障碍ヲ來スト云フコト
ニ付テ、十二分ノ覺悟ヲセネバナラヌト思
フノデアリマス、ソレニハ政府タルモノガ
率先範ヲ示シテ、昨日モ申上ゲタ通リニ、
協調的ノ精神ヲ······此ノ被保險者ハ保險ノ
目的ノ所有者ニ限ラレテ居ルノデアリマス
カラ、卽チ山林經營者デアリマスカラ、山
林經營者對政府デアリマスルカラ、此ノ兩
方ガハッキリト能ク此ノ法案ノ趣旨ヲ徹底
セシメテ、萬ガ一、質實剛健ノ聞エヲ持ッテ
居ルトコロノ山林社會ニ、此ノ剛健ナル氣
風ガ弱クナルト云フコトニナルト、國民精
神作興ノ上ニ於テモ至大ノ關係ガアルノデ
アリマス、例ヘバ此ノ被保險者ハ山林ヲ再
ビ造リ直スガ爲ニ、其ノ金額ヲ標準ニシテ
此ノ保險ハ出來テ居ルノデアリマス、然ル
ニ山林ノ再建造ヲセナイトスルト、サウ云
フ者ガ滔々風ヲ成シタ時ニ於テハ、此ノ法
案ノ精神ト云フモノハマルデナクナッテ、サ
ウシテ山林家ト云フモノニ非常ニ惡イ氣風
ト云フモノガ起ルコトニナル、時代ノ進マ
ナイ時ニハ、國家ノ權力ニ依ッテ强制保險
ナンカモヤッテ宜イノデアリマス、私ノ考デ
ハ斯ウ云フマダ開ケテ居ナイ場合ニハ、再
造林ト云フコトニ對シテハ、ハッキリト必要
條件ニスベキモノデアラウト思フノデアリ
マス、衆議院ニ於テハ、農林大臣ハ其ノ問
題ニ付テハソレハ條件ニハシナイ、是ハ指
導精神ノ方デヤル積リヂヤト云フ御答デアッ
タヤウデアリマスガ、是ハ私ハ今日ノ事情
カラ言ヘバ宜クナイト思ッテ居ル、假ニ必要
條件トセナイマデモ、少クモ餘程サウ云フ、
此ノ立法ノ精神ニ反對スルヤウナコトガ一
ツデモアルト、惡イ方ニ傳染スレバ、法ノ
精神ガナクナル、之ヲ非常ニ憂慮スルノデ
アリマス、元來ガ只今ノ火災保險ノ實況ハ
ドウデアルカト云フト、歐米ニ較ベマスル
ト云フト、廣イ意味ノ火災保險ト云フモノ
ガ、マダ火災豫防ヤ消防ナドトノ連絡ガ非
常ニ乏シイノデアリマス、斯ウ云フ實況デ
アリマス、况ンヤ山林火災保險ナドニ對シ
マスル方面ニ於テハ、非常ニ缺ケテ居ルト
言ハネバナラヌノデアリマス、承レバ「フ
インランド」ニハ森林火災保險ノ相互會社
ガ千九百十六年ニ設定サレテ、大分成績ヲ
擧ゲテ居ルト云フコトヲ耳ニシタノデアリ
マス、所ニ依レバ「ヨーロッパ」デモ大分兎
ニ角經驗ヲ持ッテ居ル、トコロガ今囘ノ我ガ
國ノ此ノ法案ト云フモノハ、人工植栽林ノ
ミニ限ッテ保險ニ加入スルコトガ出來ルト云
フコトニナッテ居ルノデアリマス、デ又人工
植栽ヲシタトコロノ立木ノミニ限ルト云フ
ヤウナ餘程制限ガアルヤウデアルカラ、外
ノ天然林ヤ伐採シタヤウナモノハ保險ノ目
的ノ以外ニナッテ居ル、斯ウ云フヤウニ考ヘ
テ見マスト、私大變心配シマスノハ、將來
政府ガ二十歲以上ノヤウナ森林ノモノモ色
色ノ體驗上ニ於テ國營デヤラナケレバナラ
ヌト云フヤウナ時代ガ來ナイトモ言ヘナイ、
是ハ成ルベク民間ニ委セタイノハ山々デア
リマスガ、ドウモ是ハ將來分ラナイ、ドウ
云フ趨勢ニナルカ、時勢ニ依ッテ國情上······
果シテ然ラバ何レノ點カラ言ッテモ之ヲ實
行スルノニハ今囘ノ之ガ基礎ニナル、之ガ
試驗ニナル、之ヲ政府ガウマクヤルカヤラ
ヌカト云フコトハ重大ナル關係ガアル、ソ
コデ私非常ニ心配スルノハ、只今申スヤウ
ニ一般ノ火災保險會社スラモ、歐米ノヤウナ
一般ノ防火問題トノ連絡〓究ト云フヤウナ
モノガ、「アメリカ」ヤ「ヨーロッパ」ト比ベテ
非常ニ遲レテ居ル、非常ニ遲レテ居ル、况ン
ヤ山林火災保險ニ於テオヤ、ソコデ此ノ私ガ
御尋ネ致シタイト思フノハ、森林保險法ノ第
一條ニ依リマシテ政府ガ本法ニ依リテ森林
火災保險ヲ行フ以上ニハ、マア第一ニ官憲ト
シテハ農林省ガ非常ニ責任ガアル、又保險ノ
申込書ト云フモノト保險料ト云フモノハ府
縣廳ニ之ヲ送ルコトニナッテ居ル、サウスル
ト府縣廳ガ矢張リ府縣ノ是等事務ヲヤルノ
デアル、ソレカラ保險契約ノ申込ハ市町村當
局デ之ヲヤル、官憲ガ斯ウ云フコトヲヤル
ト云フコトハ、サウデナクテモ兎角形式ノ弊
害ニ陷リ易イノデアリマス、玆ニ此ノ法案ヲ
一ツ行ハフト思フ以上ニハ、農林省トシテ又
府縣廳トシテ、市町村當局トシテ餘程ノ御決
心ガナクチヤナラナイ、例ヘバ此ノ法案
ノ趣旨ヲ十二分ニ徹底セシメルヤウニ講習
會ナドヲ行ッテ、サウシテ此ノ係リナンカニ
於テ餘程頭ニ入レテ置クト云フヤウナコト
ガ最モ必要デアラウ、之ガ失敗シタラ大變
デアル、斯ウ云フヤウナコトニ付テ果シテ
政府ハドンナ御心構ヘデアルヤ否ヤト云フ
コトヲ第一ニ承リタイ、其ノ次ニ第二ニ承
リタイコトハ、我ガ國ノ火災統計ノ問題デ
アル、火災統計ハ、每年内務省カラ火災ノ
統計ガ出テ居ルガ、先ヅ一箇年ニ六七千萬
圓ト云フコトニナッテ居リマスガ、是ニハ山
林火災ト原野火災ト云フモノガ入ッテ居ラ
ナイ、假ニ六七千萬圓、五六千萬圓ト致シ
テモ動產ヤ債劵ノヤ、ウナモノガ入ッテ居リ
マセヌ、火災統計ニ······マアソンナモノ
ナンカヲ加ヘルト先ヅ火災ノ損害ト云フモ
ノハ三倍グラヰト云フ計算ニ致スト云フヤ
ウナ日本デハ慣例ニナッテ居ルノデアリマス
カラ、先ヅ一般トシテ樺太ナンドヲ除ケマシ
テ二億萬圓ノ火災損害ガ一箇年アルト、斯ウ
言ハレテ居ルノデアリマス、其ノ中ニ今申ス
ヤウニ山林、原野ガ入ッテ居ラヌ、斯ウ云フ
點カラ言ッテモ、如何ニ山林火災ト云フモノ
ガ國民ト沒交涉デアルト云フコトガ分ル、
玆ニ又官憲ノ連絡モ將來非常ニ必要デアル、
火災統計ノ上カラ言ッテモ農林省ト內務省
トガ餘程連絡ヲ取ッテ、國民ノ方ノ側カラ言
ヘバ眼中農林省モ内務省モナイノデアル、
全國ノ火災ノ損害ガドレダケアルカト言ヘ
バ、山林火災モ入レナケレバナラナイ、斯
ウ云フヤウニ將來ハモット〓〓內務省ト農
林省モ能ク火災統計ノ上カラモ連絡ヲ御取
リニナッテ、山林火災ノ統計ノヤウナモノデ
モ、火災原因ナンカヲ出來ルダケモット〓〓
具體的ニ將來御取調ニナッテ、是マデハ煙草
ノ吸殼、火入レ、ソレカラ東北方面デハ汽
車ノ煙ト云フヤウナモノガ最モ多キヲ占メ
ルカノ如ク承ッテ居ル、斯ウ云フヤウナ譯デ
アリマスカラ、斯ウ云フ場合ニ於テ國民ニ
餘程能ク了解セシメルト同時ニ、官憲同士
ノ連絡提携ト云フコトニ對シテ特ニ御注意
ニナラナケレバナラヌコトデナカラウカト
思フ、火災ノ上カラ云ウテ私有林デアラウ
ト、村有林デアラウト、國有林デアラウト、
保安林デアラウト、風致林デアラウトソンナ
コトハ構ハナイ、山火事ニナッタナラバソン
ナ内輪ノ區別ナド何ニモナラナイ、要ハ一
般火災統計ノ上カラ見テ山林ト云フ立場ニ
於テ餘程大キナ著眼點カラ山林關係ノコト
ニ付テ御考慮ニナルコトガ最モ必要デハナ
イカト思フ、斯ウ云フ點ニ於テノ御心構ヘ
ハドウ云フ風ニナッテ居ラウカ、是マデハ暫
ク措イテ、將來ハドウ云フ御決心デアルカ
ト云フコトモ根本問題トシテ承ッテ置キタ
イ、其ノ次ニ第三ニ承ルコトハ山林消防ニ
付テノ農林省ノ方針デアルガ、昨日農林大
臣カラ御答ガアッタガ餘リ簡單ニ過ギル、斯
ウ云フ重大問題ニ付テハ定メシ御當局ニ於
テハ具體的ノ御方針ガアルニ相違ナイト思
フ、山火事ハ私ノ是マデ見聞スル所ニ依レ
バ、多クノ場合ニ先ヅ水ヲ使ハナケレバナ
ラヌニモ拘ラズ、水ノ利用ガ少イノヲ原則
トシテ居ル、惡イ原則デアルガ山ダカラ仕
方ガナイ、水ガナケレバ火ハ消エナイノデ
アル、ソコデ防火栓ト云フモノノ完成ヲ期
シテ居ルノガ一般ノ通念デアル、然ラバ山
林火災ノ器具ハドウカト云ヘバ、昔カラノ
慣習デ長イ鎌ヤ鍬ヤ鋸ト云フヤウナ、原始
時代カラ大同小異デアル、其ノ型ノ少シ大
キナ物ハ使ッテ居ルガ大抵大同小異デアル、
實ニ進マザルコト甚シイト思フノデアリマ
ス、外國デハ、能ク詳シイコトハ調ベマセ
ヌガ、「トラクター」ノ牽引器具ナンカモ用ヰ
テ居ルカノ如ク承ッテ居リマス、殊ニ「アメ
リカ」ガ世界第一デアリマスノデ、御承知ノ
ヤウニ山林火災ノ場合ニハ「ラヂオ」ヲ應用
シマス、電話ヲ應用シマス、殊ニ警察デモ、
マダ歐洲ニハ飛行機ト云フモノハ餘リ用ヰ
テナイニ拘ラズ、夙ニ「アメリカ」デハ山林火
災ノ爲ニ飛行機ヲ應用シテ居ルノデアリマス、
又米國ノ山林局デハ是マデ山火事ノ消火法
ニ付テハ度々議論ガアッテ、民間ノ者モ、其
ノ爲ニ餘リニ危害ガ多イノデ種々ノ方策ニ
付テ其ノ筋ヘモ意見ヲ申述べ、又山林當局
モ之ニ付テハ隨分〓究ヲ重ネテ居ル程ニ重
大ナル問題ニナッテ居ルノハ御承知ノ
通リデアル、殊ニ餘程考ヘナケレバナラヌ
コトハ、飛行機カラ化學的ノ消火劑ナドヲ
飛バシテ、サウシテ是デ火ヲ消サナケレバ
ナラヌト云フヤウナ問題ハ、米國ノ山林局
ニ於テハ是マデ度々提案サレタ問題デアル、
サウシテ又飛行機ニ乘セテアル所ノ瓦斯
ノ爆彈ト云フヤウナモノモデス、之ヲ一ト
度投下スレバ隨分效果ガアルト云フ說モ耳
ニシテ居ルノデアリマス、又航空機ノ應用
ニ付テモ火事ノ上ヲ航空機デ偵察隊ヲ出シ
テ、ドノ方ニ火ノ勢ガ盛デアルカラ應援隊
ヲ直グ出セ、丁度漁船ノ方デ魚ガドウ云フ
場所ニ多イカラト言ヘバヒヨット出ルト同
ジヤウニ、航空機デ以テ火勢ヲ見テ應援隊
ヲ出スト云フコトモ御承知ノヤウニ餘程行
ハレテ居ルヤウデアリマスガ、其ノ偵察ヲ
スル飛行機ガ燒ケタラ大變デスカラ、是一
ナカ〓〓ムツカシイ役ダガ、是モ矢張リ或
程度迄ヤリ得ルデセウ、サウシテ又ソレガ
偵察スルノミナラズ、其ノ飛行機カラ地上
ヘ向ッテ或ル程度ノ消火劑ヲ投ズルコトモ
今中上ゲルヤウニ出來マセウ、サウ云フヤ
ウナコトニ對シテモ餘程今カラ考ヘテ置カ
ナケレバナラヌト思フ我ガ國モ······デ斯
クノ如ク斯ウ云フヤウナコトナドモ餘程應
用ノ出來ナイコトデハナイト存ジマスガ、
昨日モ申上ゲタ通リニ望樓ナドト云フモノ
ハ、是ハ一般ノ場合モ同樣デ、マダ遺物デアリ
マシテ是モマダ日本ノ事情トシテハ必要デ
アリマス、殊ニ山ニハ望樓ハ餘程必要デア
リマスガ、獨リ日本バカリデナイガ、ドウ
モ望樓バリニ今日ノ時勢ニ於テ賴ッテ居ル
コトガ出來ナイ、歐米デスラモ御承知ノヤ
ウニ唯濡レタ袋ヤ「シャベル」ナンドヲ持ッ
テ數哩ノ道ヲ逍遙シテヤッテ居ルト云フヤ
ウナ狀況ナンデアッテ、ナカ〓〓此ノ山林火
災ナド面倒ナモノハナイノデアリマス、ソ
コデ御尋ネスル要旨ハ、飛行機ナドノ〓究モ
重ネラレテ居ラウト存ジマスガ、斯ウ云フ
ヤウナ方面ニ對シ殊ニ是ハマア識者ガ言フ
コトデアリマスガ、時代ガ時代ダカラ野戰
砲兵隊ナドノ野砲發射ト云フモノガ非常ナ
大量ノ瓦斯ヲ發スルコトガ出來ルノデ、此
ノ化學的知識ノ上カラ言ッテモ其ノ瓦斯ト
云フモノハ消火上非常ニ效力ガアルト云フ
ノデ、此ノ方ノ道ノ人モ、將來此ノ山林バ
カリデハアリマセヌガ、大砲デ以テポント
ヤッタナラバ一般ノ火事ニモ大イニ效果ガ
アラウト云フヤウナ說ガアル、是ハ想像シ
易イ說デアリマスノデ、山林火災ノ如キハ
最モサウ云フコトハ考ヘラレル問題ヂヤナ
イカト思フ、サウ云フ風ニシテ砲兵隊ノヤ
ウナモノト山火事ナンカト云フモノト結ビ
付ケテ、サウシテ此ノ大々的ノ消火彈ヲ以
テ大砲ノ彈丸ニスルト云フコトモ考ヘ得ル
コトデアル、是ハ「アメリカ」ナンカニモ其
ノ說ガアル、マダ實行迄ニハナッテ居ナイ
ガ、··サウ云フヤウナコトナンカニ付テ
モ十二分ニ御考慮ヲ願ヒタシ、玆ニ餘リニ
昨日ノ農林大臣ノ御答ガ山林火災ニ付テ簡
單デアリマシタカラ、モット詳シイコトニ付
テ廣ク承リタイ、最後ニ保險金ノ問題デア
リマスガ、保險料ハ成ルベク低廉ニ努メル
ト云フ御趣意ノヤウデアリマスガ、又支拂
ノ限定ハ、被保險ガ現實ニ被ック損害額ヲ
超過スルコトヲ得ザル損害塡補ノ原則ニ據
ラレルヤウデアル、是ハ損害保險ト云フモ
ノノ原則デアリマスカラサウアルベキコト
ト信ジマス、昨日モ申上ゲタ、ケレドモ若
シモ之ニ反シテ保險金額ガ高クナリマスル
ト、放火ヤ不正ノ手段ナドガ起リ出シタラ
射倖心ヲ誘發スルモノデ、睹博行爲ニマデ
ナッテ、山林ニ從事スル質實剛健ナ職業者ニ
對シテハ容易ナラヌコトニナル、是ハ此ノ
點ニ於テ再造林ノ實費ヲ目標トサレタ所ノ
立法ハ適當デアラウト思フンダガ、サリト
テ又餘リニ低ウサレテモ困ル、高クサレル
ノハイカナイガ、低ウサレテモ困ル、然ラ
バ之ヲドウスルカト云フコトハ御苦心ノ存
スル所デアラウト思フノデアッテ、是ハ勅令
ノ定ムル所ニ依ッテ此ノ法案ニ依ルヤウデ
アリマスガ、此ノ勅令ニ依ルト云フ色々簡
易保險ノ如キ例モアリマセウ、或ハ統計上
ナンカニ依ッテ色々ヤルトカ云フヨリ外ニ
方法ハアルマイトハ思ヒマス、此ノ點ハ最
モ大事ナ問題ナンデモアリマスノデ段々御
答辯モアッタコトトハ存ジマスガ、此ノコト
ニ付キマシテモ、保險料計上ノ基礎ニ付キ
マシテ何ダカ心配ナヤウナ感ガ何トナクス
ルノデアリマス、安心ノ出來ルヤウニ此ノ
上御說明ヲ願フコトガ出來タラ幸デアリマ
ス、ドウカ此ノ點モ大切ナ問題ト存ジマス
ノデ右四點ニ付テ御尋ネ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00319370324&spkNum=39
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040・村上龍太郎
○政府委員(村上龍太郞君) 第一點ノ此ノ
火災保險ヲヤルニ付テドウ云フ決心ヲシテ
居ルカト云フ御尋デゴザイマスガ、御承知
ノヤウニナカ〓〓農山村ニ於ケル保險思想
ト云フモノハ發達シテ居リマセヌノデ、非
常ナ苦心ヲ致サナケレバナラヌト云フ決心
ヲ致シテ居リマス、又政府ガヤリマスル以
上ハ、是ガ不成績ニ終リマスト云フコトハ
是ハ政府ノ關係バカリデナク、民間ノ保險
ノ成績ニモ及ビマスカラ十分注意ヲ致シテ、
最善ノ努力ヲ盡シタイト思ッテ居リマス、第
二ノ火災統計ニ付キマシテハ御趣旨御尤モ
ト考ヘマスノデ十分努力致シタイト思ヒマ
ス、ソレカラ第三點ノ山林ノ火災ノ豫防、消
防、之ニ付キマシテモ非常ニ大切ナコトデゴ
ザイマスノデ、幾分我々ガヤッテ居ルコトハ
昨日寫眞或ハ圖面等デ御目ニカケタ所デ御
諒承願ヘルト思ヒマスガ、尙工夫ヲ致シタイ
ト思ヒマス、農林省ト致シマシテハ豫算化
ハ致シテ居リマセヌガ、或程度ノ計畫ハ考
ヘテ居リマス、飛行機等ノ利用或ハ大砲等
ヲ利用スルト云フ御話デアリマス、「アメリ
カ」ノ政府ガ十數年前カラ飛行機ヲ用ヒ、又
散彈仕組ミノ防火裝置ナドヤルト云フコト
モ我々承知シテ居リマス、私自身「アメリ
カ」ヘ參ッタ時モ其ノコトヲ能ク伺ヒマシ
タ、唯「アメリカ」ノ形ヲ其ノ儘日本へ持ッテ
參ルノハ地形ガ違ヒマスカラ、日本ハ日本
ノ地形ニ從ッテ日本ノ農山村ノ實例ニ依ル
ヤル方ヲシナケレバナラヌ、又精神狀態ニ
於キマシテモ違フ點モゴザイマセウカラ考
ヘナケレバナリマセヌ、飛行機等ヲ使フノ
ニ困難デハナイカト思ヒマス、併シ他ノ方
面デ利用スベキ點ハアルデハナカラウカ、
私自身モ多少飛行機ニ乘ッテ山林視察ヲシタ
經驗ヲ持ッテ居リマス、直チニ······併シ今
農林省デ考ヘテ居リマス所デハ、警防ニ飛
行機ヲ取入レルト云フコトハ現在デハ考ヘ
テ居リマセヌ、併シ進ンダ方法ニ依リタイ
ト云フ進步的ノ考ハ是ハ何處迄モ採入レテ
行キタイト思ッテ居リマス、ソレカラ保險金
額ノ定メ方デアリマスガ、是ハモウ仰セノ
通リデアリマス、高クスルト弊害ガアリマ
スルシ、低過ギルト再造林スルコトガ困難デ
アリマス、誠ニ大切ナ點デアルガ、同時ニ
ムツカシイ點デアリマシテ、再造林ノ費用
等モ睨ミ合セテ、各地ノ造林ノ實情等モ睨
ミ合セマシテ、適當ダト思フ數字ヲ參考書
ニ書イテ御示シヲ致シタヤウナ次第デアリ
マス、ソレハ最モ苦心ヲ致シマシタ數字デ
アリマス、唯地方ニ依リマシテハアノ數字
ダケデハイケナイ地方モゴザイマス、各地
ニ依ッテ事情ガ違フノデアリマス、ソレ等ニ
付テハ多少斟酌ヲ加ヘテ、御指示ノ點ハ
我々モ心配致シテ、ムツカシイ問題デアレ
バソレヲ調和的ニ考ヘテ實行致シタイト斯
樣ニ考ヘテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00319370324&spkNum=40
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041・堀田正恒
○委員長(伯爵堀田正恒君) 北海道長官ガ
見エテ居リマスガ···発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00319370324&spkNum=41
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042・白根竹介
○白根竹介君 北海道ノ當局ガ見エテ居リ
マスルカラ、一寸御伺ヒ致シマス、森林火
災國營保險法案ト云フモノヲ私ノ手許デ審
査致シテ居リマスルガ、此ノ法律ニハ只今
明示シテアリマセヌケレドモ、段々說明ヲ
伺ヒマスルト、日本全國ノ中、北海道ダケ
ハ施行區域ニ入レナイト云フ御趣旨ノヤウ
デアリマスガ、關係地方トシテドウ云フ風
ナ御考ヲ持ッテ居リマスカ、チヨットソレヲ
伺ヒタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00319370324&spkNum=42
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043・池田清
○政府委員(池田〓君) 昨日デスカ、山林
局長カラ御話ガアッタサウデアリマスガ、北
海道ニ於テハ以前ノ火災統計ガ正確ナモノ
ヲ取ルノガ困難デアリマスルノデス、但シ
大正八年頃以來ノモノハ正確ノモノガアル
ト思ヒマス、尙此ノ際御參考迄ニ御話シテ
置キタイコトハ、北海道ノ此ノ山林ハ六百
八十六萬六千餘町步アルノデアリマスガ、
此ノ內ニ御料林ガ九十餘萬町步、國有林ガ
三百五十一萬餘町步、民有林ガ百六十萬餘
町步其ノ他デアリマスルガ、民有林ハ斯クノ
如ク大キイ面積ガアルノデアリマス、而シ
テ此ノ中ニ施業ノ出來ル面積ガ百二十八萬
町步アリマシテ、此ノ中針葉樹ガ二千七百
四十九萬餘石、濶葉樹ガ一億二千五百十五
萬餘石、斯樣ニ澤山アリマス、此ノ民有林
ニ付テ去ル昭和九年ノ伐採シタ量ヲ擧ゲテ
見マスレバ、針葉樹ガ百九十三萬餘石、濶
葉樹ガ二百五十五萬餘石、薪炭材ガ八百八
十八萬餘石總計一千三百三十七萬餘石アル
譯デアリマシテ、サウシテ此ノ民有林ノ中
ニ付テ、此ノ人工ノ植栽、人エデ木ヲ植エ
テアル面積ガ、此ノ二十年未滿ノ小サイ木
デスネ、之ガ八萬八千餘町步アルノデアリ
マスルノデス、サウシテ此ノ中ニ落葉松ガ
約八割植ハッテ居リマス、落葉松ハ北海道デ
ハ餘程早クカラ植エテアリマス、二十餘年
以上ノモノモ大部アリマスルノデスガ、其
ノ外ニ杉ガ七千町步、此ノ八萬八千餘町步
ノ中ニ七千町步、機松ガ約八千町步クラヰ
植エテアル、ソレカラアトガ落葉松ニナッテ
居リマス、ソレデ每年民有ノ土地ニ三千町
步カラ四千町步位ヅツ每年今植エテ居リマ
ス、斯ウ云フ工合ニ北海道ニ於テハ官有林
ニ付テ之ガ保護ヲ加へ又增植モ致シテ居リ
マスルガ、民有林ニ付テハ更ニ之ガ奬勵ヲ
加ヘテ居リマシテ、今後此ノ民有林ハ相當
ノ繁殖、植樹ガ多クナラウカト考ヘテ居ル
ヤウナ次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00319370324&spkNum=43
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044・白根竹介
○白根竹介君 サウスルト森林火災保險ト
云フヤウナモノハ、制度ガ出來レバ成ルベ
ク均霑ヲシテ全國並ミニ入リタイト云フ御
希望ハ御アリニナルノデアリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00319370324&spkNum=44
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045・池田清
○政府委員(池田〓君) 今ノ統計ガ正確ニ
出來マスレバ、是非北海道ニ付テモ、此ノ
保險法案ヲ施行シテ貰ヒタイト考ヘテ居ル
次第デアリマス、是ハ官民共ニ熱望致シテ
居ルヤウナ次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00319370324&spkNum=45
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046・白根竹介
○白根竹介君 近頃北海道ハ大變林業思想
ガ發達シテ、只今長官ノ御述べニナリマシ
タヤウニ、非常ニ林業ニ目覺メテ來タ、其
ノ反面ニ於テ火災豫防ノ施設等ガ非常ニ完
備シテ、林業ニ對スル危險モ非常ニ除カレ
テ來タト云フヤウナ現況デアリマスカラシ
テ、最近ノ狀況ヲ見比ベテ、又過去ノ統計
ガ正確デナイト云ッタ所ガ、兎ニ角道廳始ッ
テ以來長官ガ居ラレルノデス、ソレ〓〓機
關ガアルノデアルカラシテ、達觀的ニドノ
位ノ災害ガアルカグラヰハ判リサウナモノ
デアルト思ヒマスガ、其ノ達觀的ト言ヒマ
スカ、多少現實ニ卽シタ計數ヲ以テ算盤ヲ
彈イタナラバ相當ノ稍〓正確ニ近イモノガ
出テ來ヤシナイカ、サウ云フヤウナ統計ヲ
基準ニシテ火災保險ノ根柢ヲナス所ノ保險
料保險金額ト云フヤウナモノヲ算定シテ
貰ヘルナラバ、決シテ此ノ保險ヲ施行スル
コトハ不可能デアルト云フヤウナ狀態ハナ
イヤウニ考ヘラレマスルノデスカラ、其ノ
邊ノコトハ農林當局ノ御意見ヲ併セテ伺ッ
テ置キタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00319370324&spkNum=46
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047・村上龍太郎
○政府委員(村上龍太郞君) 北海道ニ施行
致シマスコトハ不可能トハ考ヘテ居リマセ
ヌノデ、ソレハ保險ヲ實施致シマスニ致シ
マシテ、基礎材料ヲ能ク整ヘマシテ、是人
農林省ダケノ考デアリマスカラ關係當局ト
モ能ク相談ヲ致シマシテ、出來ルダケ早ク
北海道ニ施行スルヤウニ致シタイト考ヘテ
居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00319370324&spkNum=47
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048・松村眞一郎
○松村眞一郞君 長官ハ、サウ致シマスト
何ンデスカ、統計ガ出來ル迄ヤラナイト云
フ考デアリマスカ、大正八年以來ノモノガ
アルト云フコトデアルナラバ相當ノモノガ
アルダラウト思ヒマス、サウ云フヤウナ正
確ヲ期サナケレバ出來ナイ程營利的ノモノ
デモ何デモナイト思ヒマス、綜合スレバ國
家ガ引受ケレバ宜イノデスカラ、私ハ內地ニ
於テ斯ウ云フ施設ガアルノヲ、北海道ガ眺
メテ居ッテ、直グニ追從スルクラヰノ熱意ガ
ナケレバ、北海道長官トシテ國有林ナリ私
有林ナリヲ愛スル信念ニ於テ生マ溫イ、答
辯ニ對シテ私ハ不滿足ニ感ズル、サウスレ
バ大正八年以來ノモノガアルト云フガ、サ
ウスルト何時ニナッタラヤルト云フ考デア
リマスカ、ソレヲ一應承リタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00319370324&spkNum=48
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049・池田清
○政府委員(池田〓君) 調ベテ居リマスガ、
正確ナ統計ヲ擧ゲルニハ困難デアリマシテ、
之ヲ出來ルダケ速カニ、正確ニ調査スルヤ
ウニスルコトヲ期シテ居ル次第デアリマス、
是ハサウ長ク掛カラナイデ出來ルカト思フ
ノデアリマス、而シテ北海道ニ於キマシテ
ハ、先程申上ゲマシタ通リ、是ハ時期ハ別
トシマシテ、當然出來得ルト斯樣ナ確信ヲ
持ッテ居ル次第デアリマシテ、決シテ不熱心
ト考ヘテ居ナイ次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00319370324&spkNum=49
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050・松村眞一郎
○松村眞一郞君 私ハ時期ヲ承リタイノデ
ス、今日大正八年以來ノ統計ガ分ッテ居ル
ト云フ程ノ年限ノモノガアレバ、私ハ直グ
ニ施行シテ一向差支ナイダラウト思フ、ソ
レハヤッテ見テ、イケナケレバ保險料ノ率ヲ
變ヘテ一向差支ナイ、ソレ程營利的ニヤル
コトヲ政府ハ要望シテ居ナイノデアッテ、此
ノ特別會計ヲ御覽ニナレバ分リマスガ、十
年間ハ一般會計カラ補給スルコトニナッテ
居ル、足リナケレバ豫備金ヲ支出サレテ
向差支ナイモノデハナイカト思ヒマス、町
步ハ極メテ僅カノモノデアリマス、ソレハ
アナタノ御心配ニナル程ノ町步デハナイ、
ソレハ統計ヲ示シテ申上ゲレバ直グニ明瞭
ニナルダラウト思ヒマス、サウ云フモノヲ
唯調査ガ出來テカラヤルト云フヤウナ緩漫
ナコトデ、一體民人ノ保護ガ出來ルカドウ
カト云フコトヲ私ハ疑ハザルヲ得ナイ、ソ
レカラ昨日松井博士モ北海道ノ消防ノ狀態
ガ近年極メテ良好ニ行ッテ居ルト云フコト
ヲ言ウテ居ラレル、ソレハ統計ニ於テサウ
云フコトヲ明確ニ示シテ居リマス、昭和七
年カラ八年、九年、十年ト云フモノノ計數
ヲ見マスト、北海道ニ於テハ新植ノ總面積ガ
國有林タルト私有林タルト何タルトヲ問ハ
ズ、新植面積ト云フモノノ、先程北海道長
官ガ言ハレタ三千町步クラヰノモノヲ、民
有林トシテ新植サシテ居ルト云フ、其ノ
關係ニ於テノ調ベデスガ、其ノ新植林ノ
總面積ガ北海道ハ全國府縣ト比較シテ、昭
和七年カラ八年、九年、十年ニ至ルマデノ
間、總面積ニ於テハ全國第一位ヲ占メテ居
ル、サウシテ私有林ハ昭和七年、八年、九
年マデハ矢張リ第一位ヲ占メテ居ル、サウ
シテ十年ニ於テ偶、第二位ニナッテ居ル、靜岡
縣ガ第一位デアル、ソレ程澤山ナ新植林ヲ
ヤル程ノ、林業ニ於テハ先ヅ第一ニ考ヘナ
ケレバナラヌ土地デアルト思フ、サウシテ
面積ハ多イ時ハ一割位ノモノヲ示シテ居ル、
全國ニ對シテ······斯クノ如キ施設ガ農林
省ニ於テヤラレテ居ルコトナラバ、ソレニ
先鞭ヲ付ケテ北海道長官トシテハ考ヘルベ
キ筈ヂヤナイカト思フ、消防ニ付テハ非常
ナ勢ヒヲ以テ、ソレハ長官ノ御盡力ノ結果
デアラウト思ヒマスガ、全國的ニ模範的ノ
現象ヲ示シテ居ル、消防ノ關係ハ······、ソ
レガ又統計デ分ル、ソレハドウ云フコトニ
ナリマスカト云フト、立木ノアル所ノ總面
積ノ火災ノ面積ト、ソレカラソレニ對シテ
私有林ガドノ位ナ關係ニナッテ居ルカト云
フコトヲ調ベテ見マスト云フト、昭和七年
ニ於キマシテ、全國全體ノ被害町步ガ七千
四百七十七町一段ト云フモノガアリマスガ、
是ハ此ノ數字ダケ申上ゲテ、餘リ煩雜ニ亙
リマスカラ······卽チ七千町步クラヰノモ
ノガ昭和七年ニアッタト云フコトヲ玆ニ申
上ゲテ置キタイ、其ノ中北海道ハ千八百七
十四町七ト云フモノヲ、矢張リ立木地ノ被
害ヲ火災ニ於テ示シテ居ル、是ハ矢張リ第
一位ナンデアル、火災ニ於テ第一位ナンデ
アル、火災ニ於テ第一位ヲ占メテ居ルコト
ハ、ソレハ昭和七年トソレカラ八年ト九年
トデス、ソレマデハ第一位ヲ占メテ居ル、
十年ニ至ッテ、是ハ私ハ長官ガ非常ニ努力シ
テ居ラレルノダト思ヒマスガ、是ハ十年ニ
至ッテ第十位ニナッテ居ル、是ハ非常ニ消防
ニ力ヲ入レラレタモノデアルト思フ、サウ
シテ是ハ民有ノ關係デ見マスト、此ノ民有
ハ昭和七年ニ於テ北海道ハ第一位デアル、
ソレハ北海道ノ面積ハ九百一町步、僅カノ
モノデス町步トシテハ······、ソンナモノヲ躊
躇シテ居ッテ保險ノ適用ヲ危ブム程ノ問題ヂ
ヤナイ、僅カ九百一町步シカナイ、ソレデモ
全國第一位デアリマス、全國ニ於テハ三千
六百九十六町步三ト云フコトニナッテ居リ
やく、全國ノ私有林ノ中デ立木地ノ被害ノ
面積ガ三千六百九十六町步三段アル內デ、北
海道ハ九百一町步二ト云フモノデアッテ全
國第一位、ソレカラ昭和八年ニ於テ矢張リ
總面積ノ上ニ於ケル火災モ第一位、先程申
シタ如クニ·····トコロガ民間ノ方ハ、私
有林ニ於テハ全國ニ於テ第六位ニナッテ居
ル、總面積ハ第一位デアリマス、併シ私有
林ハ第六位ニナッテ居ル、昭和九年ニ至ッテ
總面積ハ今度第一位、民間ハ其ノ先キハ第
一位ニナッテ居ル、トコロガ昭和十年ニ至ッ
テ總面積ニ於テ先程申シタ如ク第十位、民
有ニ於テ第二十位ニナッテ居ル、其ノ面積ハ
僅カニ九十町步デアル、ソンナ九十町步ク
ラヰノ問題ハ大正八年カラノ計數ガアレバ
直チニ私ハ保險ヲ施行シテ宜カラウト思フ、
九十町步ハドノ位ノ金額デアリマスカ、ソ
レハ長官ガ算盤ヲ彈カレタナラバ、ソンナ
モノハ財政上ノ負擔ニナルコトデモ何デモ
ナイ、ソレデ既ニ第二十位ニナッテ居ル、
第一位デアッタモノガ消防ヲ奬勵シタ結果
第二十位マデノ、非常ナ成績ヲ擧ゲテ居ル
トスレバ、私ハ是ハ直グニ施行シテ宜カラ
ウト思フ、サウシテ消防ノ能率ノ上ッタ所
ノ地域ニ對シテ保險料率ヲ下ゲテ行ク、サ
ウスルト警防ト云フモノト保險ト云フモノ
ハ、ソコニ因果關係ヲ有ッテ人民ハ非常ニ滿
足スル、或土地ニ於テ消防ノ成績ガ擧ガッタ
場合ニハ保險料ヲ下ゲルト云フコトニナル
ト、ソコニ警防ト云フモノガ非常ニ徹底シ
テ行ハレルト思ヒマス、ソレハ北海道ニ於
テ初メテ實行出來ルト云フ、今申上ゲマ
シタ如ク第一位ガ一躍第二十位ニナル
ト云フ斯クノ如キ好成績ヲ擧ゲラレテ居
ル北海道ニ於テ、何ガ故ニ全國ニ對シテ
模範ヲ垂レラレナイカト云フコトヲ疑ハ
ザルヲ得ナイ、今日直チニ施行シテ差
支ナイト私ハ思ヒマス、ソレデ此ノ法律
ヲ見マスト附則ニ斯ウ云フコトガ書イテア
ル、「本法ハ勅令ヲ以テ指定スル地域ニ之ヲ
施行セズ」ト書イテアル、北海道ノ方デ布
イテ貰ハナクテ宜イト言ハナケレバ直ニ施
行出來ル、勅令ヲ以テ指定スル地域ニ之ヲ
施行セズデアリマスカラ、北海道ガ何ヲ求
メテ私ノ方ニハ施行シテ貰ハナクテ宜イト
云フコトヲ言フ必要ガドコニアルカ、ソレ
ダケノ勇氣ヲ御持チニハナラナイノデアリ
マスカ、タッタ九十町步ノモノデアリマス、
多イ時デモ九百町步ノ第一位ノ時デアリマ
ス、其ノ後ヲ見マスト昭和七年ニ於テ今申
シタ如ク私有林デ九百一町步二段デス、ソ
レカラ昭和八年ニ百一町步一、僅カニ百一
町步ノ問題デアリマス、昭和九年ニ於テハ、
是ハ少シ多イ、此ノ時ニハ千八十四町步ニ
ナッテ居リマス、是ガ昭和九年デス、昭和十年
ニ於テ一躍九十町步ニナッテ居ル、斯ウ云フ
狀態デアル、サウ云フヤウナ狀態ニ於テ、
警防ニ付テハ非常ニ盡力ヲナサッテ、玆ニ明
瞭ニ計數ヲ示シテ居ル場合ニ、北海道廳ノ
方カラ進ンデ、私ノ方ニハ適用シテ貰ハナイ
ト云フコトヲ言フコトガ人民ニ對シテ親切
ナヤリ方デアルカドウカ、是ハ私ハ勇氣ヲ
以テ引受ケテ宜イト思ヒマスカラ、北海道
長官トシテハ勅合ヲ以テ指定スル地域ニ御
入レニナル御心配ニハ及ビマセヌト斷言シ
得ルト思ヒマスガ、其御決心ヲ承リタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00319370324&spkNum=50
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051・池田清
○政府委員(池田〓君) 農林當局デ只今折
角攻究努力シツヽアリマススカラ、北海道
廳トシマシテハ、農林當局ニ信賴シマシテ
是ガ速ク實現サレルヤウニ熱望致シテ居ル
ウヤナ次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00319370324&spkNum=51
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052・松村眞一郎
○松村眞一郞君 是ハ甚ダ北海道長官トシ
テ自己ノ職責ヲ御忘レニナッテ居ルデハナ
イカト思フ、北海道ノ森林ハ農林省ノ所管
ヂヤアリマセヌヨ、農林省ニ何ヲ信賴サレ
ルノデスカ、モウ一度御答辯願ヒタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00319370324&spkNum=52
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053・池田清
○政府委員(池田〓君) 保險ノ方ハ農林省
デヤッテ居リマスカラ、此ノ點ハ農林省ニ信
賴シタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00319370324&spkNum=53
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054・松村眞一郎
○松村眞一郞君 サウ致シマスト、本案施
行ノ場合ニハ農林省所管デヤラレル積リデ
スカ、ソレヲ承リタイ、農林省所管デ森林
保險ヲ施行スル積リデアリマスカ、ソレハ
容易ニアナタハ答辯出來ナイ、ソレハ私此
處ニ卽座ニ答辯サレタラ後デ困ルト思フ、
ソレハ何故カト申シマスト、林野ニ付テハ
北海道ハ總テ除斥シテアル、主務官廳ハア
ナタデス、ソレヲ農林省ヲ信賴スルト云フ
コトハ、大變ナ間違デアルト云フコトヲ御
考ヘニナラナケレバイケナイ、ソレハ國有
林野法ノ附則ニ本法ハ北海道ニ施行セズト
云フコトガ先ヅ書イテアル、アナタノ方デ
ヤッテ居ラレル森林法、森林法ト云フモノ
ハ、御承知ノ如ク全體ノ行政權ヲ持ッテ居ル
譯デス、ソレノ附則ノ第百六條ニハ「北海道
沖繩縣其ノ他勅令ヲ以テ指定スル島嶼ニ付
テハ本法中保安林ニ關スル規定ニ限リ之ヲ
施行ス」トヨリシカナイ、其ノ外ハ總テ北海
道長官ガヤッテ居ル、火災保險ヲ若シ行フト
スルナラバ、今日ニ於ケル行政形態ト致シ
マシテ、北海道長官ガヤラナケレバイケナ
イ、內務省側デヤラナケレバイカヌ、斯ウ
云フ問題モアリマスカラ、農林省ニ信賴ス
ルト云フコトハ餘程ヲカシイ、何ヲ信賴ス
ルノデスカ、信賴セムトスルコトガ分ラナ
イ、ソレヲ御答辯願ヒタイ、私ハ追窮スル
コトヲ目的トシテ居ルノヂヤナイノデアリ
マシテ、サウ云フヤウナ次第デアリマスカ
ラ、能ク長官ニ於テモ御考ヲ願ッテ、此ノ
際御決心ヲ戴イテ、施行スルト云フコトニ
決心サレタラ宜カラウト私ハ思フ、今申シ
マシタ如ク九千町步ノ問題デアリマス、
サウシテ北海道長官自身ガ自己ノ警察ノ
問題デ、保安林ト保安警察ト云フモノノ方
デ、アナタノ方デ非常ニ警防ヲサレタ、ア
ナタハ、此處ニ居ラレマセヌガ昨日松井君
カラ非常ニ其ノコトニ付テ、北海道ノ治績
ガ擧ッテ居ルコトヲ、アナタニ頌德表ヲ奉ッ
テ居ル、或意味ニ於テサウ云フコトヲ一面
ニヤッテ居ルナラバ、之ニ關聯シテ保險ノ經
營ヲ、北海道長官ガ力ヲ入レテヤルコトハ
當然ヂヤナイカト思ヒマスカラ、私ハ今日
卽座ニ御答辯ハ要リマセヌ、此ノ委員會ノ
繼續中ニ於テ御熟考ニナッテ、引受ケマスト
仰シヤレバ法律ハ此ノ儘出シテモ宜イデセ
ウ、場合ニ依ッテハ法律ハ、私此ノ附則ハ
削ッテシマフガ宜イト思ヒマスガ、「本法ハ
勅令ヲ以テ指定スル地區ニ之ヲ施行セズ」
ト云フガ如キ規定ハ削ッテシマッテモ宜イ、
併シナガラ是ハ修正意見ニナリマスカラ、
是ハ色々ノ兩院ノ關係ガアッタリ色々致シ
マスカラ、法律ノ性質上サウ云フ事柄ノ爲
ニ法律ノ生命ヲ奪フコトハ私ハ喜バナイ、
併シナガラ勅令ヲ出シテ戴カナケレバ宜シ
イ、アナタノ方ニ合議ガ行ク、北海道ニ施
行セズト云フ勅令ヲ內務大臣ガ同意スルト
云フコトニナリマスノハ、自ラ退却スルコ
トニ同意スルコトニナル、ソレヲアナタノ
方ニ合議シテ來ル譯デス、今日ハ長官ノ御
答辯ヲ伺ッテ、長官ガ非常ニ熱心デアルニ拘
ラズ、此ノ案ヲ豫メ相談ヲ受ケテ居ナイト
云フコトヲ自分ヂヤ推察スル、此ノ際ニ突
如トシテアナタノ御出席ヲ求メテ、私ハ斯
クノ如ク非常ニ激シイヤウナコトヲ言ッテ
アナタヲ追窮スルト云フコトガ目的ヂヤナ
イノデアリマス、ソレニ依ッテ事ノ眞相ヲ私
ハ諒解スル、結局此ノ案ト云フモノハ、
アナタ方ニ十分相談シテナイト云フコトヲ
私ハ玆ニ發見シタ、ソレデアリマスカラ能
ク御協議願ッテ······内務大臣トシテノ問題
ダ、是ハ國有林野ト云フモノハ第一次ニ於
テ總テ長官ガ御引受ニナッテ擔任シテ居ラ
と てトコロガ一般的ノ主務官廳ノ職務
ハ、北海道ニ關スル限リ內務省ノ地方局ガ
ヤッテ居ル、內務省ノ官制第一條ニハサウ云
フコトハ書イテナイ······林野ト云フモノハ
ナイ、拓殖ト云フコトハ書イテアルガ林野
ト云フコトハ書イテナイ、地方局ニ於テ、
北海道拓殖及林野ト云フコトガ書イテア
ル、其ノ關係カラ地方局長ガ北海道ニ關ス
ル林野······主務大臣ハ内務大臣ガナッテ居
リマスケレドモ、恐ラクハ內務省ハ總テ長
官ニ御任セシテアルト思フ林野ト云フモノ
ハ······、何トナレバ地方局ニハ林野ノ職員ハ
置イテ居ナイト思フ、全部ヲ擧ゲテ、內務
大臣ノ主務大臣トシテノ職責全部ヲ擧ゲテ
長官ニ玆ニ御任セシテアルトスレバ、北海
道ノ此ノ第一位ヲ占メテ居ル林野デスカ
ラ、ソレニ付テ重大ナル御決心ヲ以テ御進
ミニナルコトガ必要ダト思フ、北海道トシ
テハ林野ノ問題ハ私ハ拓殖費トノ關係ガア
ルト思ヒマス、國有林ハソレデスカラ私ハ
玆ニ端的ニ議論スレバ、本當ノ議論カラ中
シマスト云フト、國有林ノ經營ハ農林省ガ
ヤッテ宜イト思フ、營林局ト云フモノヲ北海
道ニ置イテ······、トコロガ其ノ點ニ付テハ餘
程考ヘナケレバナラヌノハ、北海道拓殖費
ノ財源ト云フモノト、北海道ノ林野ト云フ
モノハ關係ガアル、是ハ長官能ク御承知ノ
通リデ私ガ申ス迄モナイ、其ノ財源トシテ
拓殖費ニ向ケルト云フコトニ付テ閣議決定
ガ取ッテアル、ソレホド重要ナ財源デアルガ
故ニ、是ハドウシテモ北海道長官トシテ國
有林野ハ經營ヲシナケレバナラヌト云フ地
位上ノ立場ニアルト思フ、トコロガ一般林
野ノ行政ニ付テハ、此ノ國有林以外ノモノ
ニ付テハ、ソレ程アナタノ方デ力ヲ入
レルトコロノコトデモナイト思フ、併シ
ナガラ此ノ警察ノコトニナルト大變デ、林
野ガ火災ニナッタ場合ニハ國有林、民有
林ノ問題デナイ、アナタガ非常ニ責任ヲ
持ッテ御預リニナッテ居ルトコロノ國有林ニ
影響ヲ及ス關係ニ於テ、警察ニ付テハ能ク
力ヲ入レナケレバナラヌコトハ當然デアリ
マスガ、ソレヲヤッテ居ル以上ハ此ノ民有
私有林野ニ關スル保險モ併セテヤル方ガ私
ハ便利ダト思ヒマス、サウスルト云フト此
ノ法律ハ農林大臣ダケノ法律ヂヤナクッテ、
內務大臣ト連署デ出サナケレバナラヌ法律
ニナッテ來ル、此ノ法律ソレ自身モ、特別
會計モ亦內務省ト農林省ト相談ノ上デ運用
スベキモノニナルノデス、私共ハ官廳ノ區
區ノ權限ノ繩張ノ爲ニ、其ノ繩張ニ國民ガ
引掛ルト云フコトハ甚ダ迷惑スル、官廳モ
互ニ能ク相談ヲシテ、國民ハ安ンジテ、內
務省ノ所管デアルトカ農林省ノ所管デアル
トカト云フコトヲ〓究シテ居ルモノハナイ、
何ガ故ニ內地ニ於テ森林保險ト云フモノガ
行ハレテ居ルノデアルカ、サウシテ第一位
ヲ占メテ居ルトコロノ北海道ガ何故行ハレ
ナイカト云フコトヲ、日本ノ國民ハ非常ニ
不思議ナ考ヲ以テ眺メルト思ヒマスカラ、
私ハ今日直チニアナタノ御答辯ヲ要求シナ
イ、事頗ル私ハ强ク中シ過ギテ居リマス、
自ラサウ云フコトハ知ッテ居リマスガ、ソレ
ハ北海道長官トシテハ此ノ森林保險ニ關ス
ル限リ、第一位ヲ占メテ居ル此ノ森林ニ付テ
ノ責任上、簡單ニ是ハ眺メルコトハ出來ナイ
ト思フ、其ノ意味ニ於テ十分一ツ內務本省
トモ御相談ノ上ニ、此ノ委員會ノ繼續中ニ
於テ何等カノ御決心ヲ御答辯願ヒタイ、ソ
レニ依ッテ我々ハ態度ヲ決メナケレバナラ
又、法律ソレ自身ガ極メテ曖味ナコトガ書
イテアル、私ハ立法論トシテモ感服シナイ、
勅令ヲ以テ指定スル地區ト云フコトニナル
ト、北海道ニ限ラズ何處デモ書ケルコトニ
ナル、法律ソレ自身ガ非常ニ不都合ナ法律
ダト思フ、本案デハソレハ北海道ヲ考ヘテ
居ル、何故此ノ點ニ付テ北海道ト云フコ
トヲ露骨ニ書カナイカ、露骨ト云フコト
ハ······端的ニ簡明ニ書カナイカ、ソレガ私ハ
宜クナイト思フ、唯默ッテ居ルカラ知ラナ
イ、何處ヲ指定シテ居ルカ、今日民有林ノ
所有者ハ本法ノ適用ヲ要望シテ居ルダラウ
ト思フ、之モ委員會ニ於テ山本君ガ非常ニ
熱心ニ質問サレテ居ル、焉ゾ知ラン其ノ
質問サレテ居ルトコロノ條項ハ北海道ニ適
用ガナイト云フコトデアレバ、是ハ何年後
ニ適用サレルカ質問シテ居ル、ソレハ議員
デアリマスカラ、北海道ノコトバカリ考へ
テ居ル譯デアリマセヌ、併シナガラ北海道
ト云フモノヲ考ヘナケレバナラヌデアラウ
ト思フ、サウ云フヤウナ次第デアリマスカ
ラ十分ニ御熟考願ヒタイ、其ノ上デ御答辯
ヲ煩シタイト思フ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00319370324&spkNum=54
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055・松井茂
○松井茂君 折角北海道長官御出席デアリ
マスカラ一言致シテ置キタイト思ヒマス、
昨日松村委員ヨリ熱心ニ北海道ヲ除外スベ
カラズノ御意見ガアリマシテ、私ハ昨日モ
申上ゲマシタガ、全國中デ北海道ノ消防ト
云フモノハ非常ニ名聲ヲ博シテ能ク實效ヲ
擧ゲテ居ルノデアリマス、例ヘバ火災豫防
組合ガ全國デ道廳令ニ依ッテ夙ニ〓〓サウ
云フ施設モ行ッタルガ如キ、又日本デ率先シ
テ函館ニハ始メテ火災防火地區ト云フモノ
ヲ作ッタノデアリマス、其ノ結果每年大火ガ
アルノガ減リマシテ、大火每ニ善後策ヲ講
ジテ著々防火上ノ設備ノ見ルベキモノガアッ
タノデアリマス、更ニ又先年大火ヲヤリマ
スト、是亦辟易シナイデ非常ニ努力シタ結
果、今日ノ又函館ハ全國ニ於テ始メテ防火
水道ガ出來タノデアリマス、日本デハ專門
ノ防火水道ト云フモノハナイノデアリマス、
三百「ポンド」ノ水壓ヲ以テヤルト云フコト
ニ御承知ノ通リ決定サレタノデアリマス、
而シテ獨リ函館バカリデハナク、札幌ナド
ノ消防モ近年ハ非常ニ見ルベキモノガアル、
其ノ他御承知ノヤウニ到ル處非常ニ注意ヲ
拂ッテ居ル、就中北海道ノ山林ト云フモノハ
全國ニ於テ名高イ、北海道ノ山林火災ト云
フモノハ又全國ニ於テ樺太ト竝ビ立ッテナ
カナカ大脅威ヲ及シテ是マデ居ルノデアリ
やっ、然ルニ近年ハ御盡力ニ依リマシテ山
林火災ノ度數モ積年ヨリハ餘程減ッテ參リ
マシタ、是ハ一ツハオ隣リノ樺太ガ非常ニ
奮鬪ヲシテ居ルコトト相俟ッタ點モアラウ
ト存ジマス、昨年······一昨年デアリマシタ
カ、畏クモ大日本消防協會ノ總裁デアラセ
ラレル、同時ニ山林會ノ總裁デアラセラレ
ル梨本宮殿下ハ樺太ヘ御出デニナリマ
シテ、非常ニ昨日モ申上ゲタノデスガ、
閑院宮殿下モ是ヨリ先ニ非常ニ樺太
ノ山林火災防止ニ付テ御奬勵ガアッタ、
梨本宮殿下ハ山林ノ方ノ總裁ノ宮樣デ居ラッ
シヤッテ又防火ノ宮樣デアラレル、非常ナ御
感激デ、近來山林ノ方面カラ言ッテモ、又火
災ノ方面カラ言ッテモ、非常ニ好成績デアル
ト御喜ニナッテ御歸京ニナッタノデアリマス、
ソコデ昨日モ申上ゲタノデアリマス、右樣
ナ實情デアリマスカラ、北海道ヲ除外スル
ト云フコトハ、全國ノ防火ノ社會ニ於テノ
氣合ニ非常ニ關係スル、斯クマデ北海道ハ
防火上ニ付テハ勉强シテ居ルノデアル、然
ルニ自分ノ方ハ除外セラレルト云フコトハ、
國民思想ノ上ニ於テモ影響スル、況ヤ防火
ノ社會ニ勉强シタモノコソ恩典ニ浴シ、除
外サレナイデ大手ヲ振ッテ此ノ火災保險ノ
方ニ入ラナケレバナラヌノニ、除外サレル
ト云フコトハ、消防氣勢ノ上ニ於テモ重大ナ
ル關係ガアル、私ヲシテ言ハシメレバ、此
ノ法案ハソレヲ必要條件トシテ、原案ハ其
ノ點ハ改正ヲシテ、除外例ヲ解ク位此ノ委
員會ハ主張シテ可ナルモノデアルト思フノ
デアリマス、併シソレモ穩健デアリマセヌ
ノデ、願ハクバ今白根委員カラモ御話ノア
リマシタ通リニ、大體ノ御調ヲ早速御ヤリ
ニナッテ、又御ヤリニナラヌデモ、早速能ク
御相談ニナッテ、速カニ之ヲ御實行ニナルコ
トヲ切ニ希望シテ已マヌノデアリマス、今
松村委員カラモ御話ノアリマシタ通リ、色
色外ノ官憲トノ御都合モアリマセウガ、斯
ウ云フ分リ切ッタ問題ニ對シテハ、殊ニ庶政
一新ノ時代ニ於テ、官憲ガ色々、農林省ハ
農林省、內務省ハ內務省ト云フヤウナコト
ハ誠ニ國民思想ニ於テモ穩デナイト存ジマス、
速カニ御實行ノ程ヲ重ネテ希望致ス次第デ
アリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00319370324&spkNum=55
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056・白根竹介
○白根竹介君 チヨット山林局長ニ申上ゲ
タイト思ヒマスガ、今ノ北海道除外ノ問題
デスガ、過去ノ統計ト云フコトニ非常ニ重
キヲ置イテ居マスノハ、是ハ御尤ナ話デス
ケレドモ、內地ノ山林火災ノ被害價格:
面積ハ凡ソ達觀デ、何レモ是ハ達觀デ行ク
デセウガ、價格ナンカニシマシテモ、實ハ
サウ非常ニ的確ナモノヂヤナイト思フノデ
アリマス、北海道廳ニ於テ過去數年來、最
近ノ統計ガアルトスレバソレヲ土臺ニシテ、
凡ソ將來ヲ見越シテ、一應ノ保險料金ヲ出
ス位ノコトハサウムツカシイコトヂヤナイ、
デ一遍保險料金ヲ決メテツマヘバ、將來永
久ニ變更スルコトガ出來ナイト云フヤウナ
大事ナモノデアレバ、ソレハ別問題デアリ
マスケレドモ、何モ、又時期ニ依ッテ變更シ
テ差支ナイ問題ヂヤナイカト思フノデアリ
マスカラシテ、私共ノ考ト致シマシテハ、
ドウカ一ツ北海道ダケヲ此ノ問題カラ除外
シテ繼子扱シナイヤウニ、斯クノ如キ立派
ナ、林業者ニ取ッテ非常ナ惠福ヲ與ヘル問題
デアリマスカラシテ、全國普ク施行サレル
ヤウニ、一日モ早ク其ノ實現ヲ希望スルノ
デアリマス、決シテ問責スルヤウナ意味ハ
チットモナイノデアリマスカラ、其ノ御積リ
デ御願シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00319370324&spkNum=56
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057・堀田正恒
○委員長(伯爵堀田正恒君) 質問ハゴザイ
マセスカ······ソレデハ此ノ際体憩ヲシテ懇
談會ヲ開キタイト思ヒマス、ソレデハ是デ
チヨット休憩シマス
午後二時三十八分休憩
午後四時十八分開會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00319370324&spkNum=57
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058・堀田正恒
○委員長(伯爵堀田正恒君) ソレデハ先程
ニ引續キマシテ開會致シマス、質問ハモウ
終了シタモノト認メテ宜シウゴザイマスカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00319370324&spkNum=58
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059・堀田正恒
○委員長(伯爵堀田正恒君) ソレデハ終了
シタモノト認メマス、討論ニ入リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00319370324&spkNum=59
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060・小村捷治
○侯爵小村捷治君 私ハ四法案ニ贊成ヲ表
スル者デゴザイマス、併シ此ノ際個人トシ
テノ希望ヲ一言簡單ニ申添ヘテ置キタイト
存ジマス、勿論漁業保險、或ハ森林火災國
營保險等ガ從來ノ民間業者ニ頗ル大ナル惡
影響ヲ與ヘルモノトハ考ヘマセヌガ、總テ
斯カル社會政策立法ノ制定ニ當ラレマス際
ニ、立案サレル際ニ、從來十分民間ノ業者
ノ立場モ御諒察ノ上デアラウトハ存ジマス
ガ、更ニ將來ニ於テ之ヲ愼重ニ御實行ナサ
ルコトヲ希望致シマス、其ノ故ハ、餘リニ社
會政策的立法ヲ强行スル結果ハ、ソレ〓〓
多年ニ亙ッテ營業シテ、〓究努力シテ營業シ
テ參ッタ當業者ノ企業心ヲ萎縮サセル虞ガ
アルカラデゴザイマス、此ノ點ハ、此ノ四
法案ノ御運用ノ際ニモ十分ニ御配慮願ヒタ
イノデゴザイマス、私ハ唯個人トシテ以上
ノ希望ヲ述ベテ贊成致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00319370324&spkNum=60
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061・井上清純
○男爵井上〓純君 此ノ際ニ於キマシテ、
森林國營保險ニ付キマシテ贊成ノ考ヲ申述
ベタイト思ヒマス、此ノ森林ガ人類ノ文明
ニ甚大ナル影響ヲ持ッテ居ルト云フコトハ
申ス迄モナイコトナノデアリマス、今度ノ保
險ヲ御附ケニナル上ニ於テ、殊ニ其ノ觀念ヲ
深ク御持チニナラナイト、或ハヒヨットスル
ト、金錢ニ依ッテ森林ナント云フモノハドウ
デモ出來ルト云フヤウニ、物質的ニ考ヘラ
レル憂ガ多分ニアルト思ヒマス、我ガ國ハ
昔カラ瑞穗ノ國、豐葦原ノ瑞穗ノ國ト言ッテ
居リ、是ハ深ク森林ヲ愛サレタ意味合ガ含
ンデ居ルカト思ヒマスルガ、就中神武天皇
ガ東征遊バサレル時ニ、東ニ美キ所アリ、
靑山四方ニ周レリト云フ御言葉ガアリマス、
如何ニ神武天皇樣ガ人文ト森林ノ關係ヲ見
テ居ラレタカト云フコトモ分ルト思ヒマス、
殊ニ橿原ノ宮殿ヲ御作リニナリマス時ニ、
態々紀伊ノ國ノ材木ヲ御用ヒニナッタ、ソコ
ラニ在ル所ノ材木ヲ御用ヒニナッタノデハ
ナクシテ、紀伊ノ國ニ豫テ造林サレテ居ツ
タト云フ話デアリマスガ、其ノ造林カラ常
常ナル莊嚴ナル儀式ヲ以テ伐採ヲサレマシ
テ、サウシテ宮殿ノ御造營ヲ遊バサレタト
云フコトヲ考ヘマシテモ、如何ニ此ノ我ガ
國民ガ、昔カラ森林ト云フコトニ付テハ、
精神的ニ尊敬ヲ拂ヒ、又愛護シテ居ッタカト
云フコトガ分ルノデアリマス、此ノ度政府
ニ於カセラレテハ、國營ノ保險ヲ御ヤリニ
ナルノデアッテ、誠ニ私共ハ宜シイ御施設ダ
ト思ヒマスルガ、ソレニ付ケテモドウカ一ツ、
物質的ニ餘リニ田舍ノ人ヲ考ヘサセタクナ
イ、精神的ニ森林ヲ愛護スル尊敬スルト云
フ觀念ヲ失ハセナイヤウニ、一ツ御注意ヲ
願ヒマシテ、私ハ此ノ兩法案ニ付テ贊成ヲ
致ス者デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00319370324&spkNum=61
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062・松井茂
○松井茂君 漁船ノ方面ニ付キマシテハ今
更申上ゲマセヌ、無論贊成デゴザイマスガ、
尙火災保險ノ方面モ異論ハアリマセヌガ、
殊ニ一言申述べテ置キタイコトハ、衆議院
デモ、農業保險ト森林保險トノ、大分兩方
面ヲ比較サレマシテ、森林保險ヨリモ農業
保險ノ方ガモット困ッテル人モ多イカラ先決
問題デハナイカノ如キ話ガナイデモナカッ
タヤウデアリマス、實ハ此ノ衆議院ノ席上
デモ出マシタ「マイト」博士ガ、農業保險
ヲ、五十年前ニ大藏省ノ雇トシテ農業保險
ノコトニ盡力サレタ、「マイト」先生ハ、實ハ
私共ノ高等學校ニ於ケル時ノ先生デアッタ、
ソレハズット後デアリマスガ、今ハ物故
サレタノデアリマスガ、ソンナコトハ姑ク
措キマシテ、森林保險ト農業保險トガドッチ
ガ先決問題カト云フヤウナ區々タル問題ヲ
言フ必要ハナイノデアッテ、此ノ場合ニ政府
ガ此ノ保險法ヲ御出シニナルト云フコトハ非
常ニ機宜ニ適シタモノト大イニ贊成致ス者
デアリマス、唯吳々モ先刻モ申上ゲマシタ
ノデスガ、心配致シマスノハ、企業者ガ政
府デアリマスカラ、政府自ラガ、精神的ニ
範ヲ御示シ下スッテ、大イニ是等重大ナル關
係ヲ有スルノデアリマスカラ、昨日モ申上
ゲマシタ通リニ、私ハ此ノ森林ノ火災保險
ノモット根本問題ノ先決問題トシテ、第
愛林思想、第二ニ、火災豫防及消防ト
云フヤウナ點ニ於テ政府當局者ハ力ヲ致サ
レー、折角ノ此ノ保險制度ヲシテ有終ノ美
ヲ濟サシムルヤウニ吳々モ御盡力ヲ下サル
コトヲ條件ト致シマシテ、本案ニ贊成スル
次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00319370324&spkNum=62
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063・山本米三
○山本米三君 私モ今囘提出サレテ居リマ
スル漁船保險法案、漁船保險特別會計法案、
竝ニ森林火災國營保險法案、森林火災保險
特別會計法案ノ此ノ四案ニ對シマシテ、多
少ノ希望ヲ附シマシテ、全部原案ニ贊成ス
ル者デゴザイマス、今囘提出ニ係カリマス
ル法案ハ、森林火災ニ於キマシテハ、幼齡
林ノ振興、造林地ニ對シマスル再度造林ヲ
容易ナラシムル目的デアリマシテ、誠ニ時
代ニ適應シタ法案デアリマスルガ、尙之ヲ
一層政府ハ進メラレマシテ、此ノ國營保險
ヲバ壯齡林ニモ擴張實施サレマシテ、森林
金融ノ圓滑ヲ圖ラレルコトガ適當デアラウ
カト思フノデアリマス、尙只今松井委員ノ
御話モゴザイマスル通リ、保險ノ普及ヲ圖
ルト同時ニ、森林ノ火災警防ノ施設ヲ擴充
サレルコトガ最モ緊要ナルコトト思フノデ
アリマス、ドウカ折角ノ法案ヲ十分ニ都合
好ク實施サレルコトニ御努力ヲ願ヒタイノ
デゴザイマス、私ノ原案ニ贊成ノ理由ハ是
デ終リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00319370324&spkNum=63
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064・松村眞一郎
○松村眞一郞君 私ハ此ノ四法律案ニ對シ
マシテ、此ノ委員會ニ於テ、農林大臣及ゼ
各局長、北海道長官ガ此ノ席ニ於テ最モ深
切ニ御說明ヲ下サイマシテ、林業ノ爲メ、
漁業ノ爲メ、國土保安ノ爲メ、社會施設カ
ラノ見地カラモ考ヘラレテ、各方面ニ亙リ
周到ニ御心配下サレテ種々御〓究ノ結果、
此ノ法案トシテ玆ニ提出ヲ見タコトニ對シ
マシテ深ク敬意ヲ表スル次第デアリマス、
政府ノ御趣旨トスル所ハ能ク我々了解致シ
タノデアリマシテ、結局ニ於テ我々ノ要望
スル所ト全ク同一デアルト云フコトニ感ジ
マシテ、大變滿足ニ私トシテハ感ジマシタ
次第デアリマス、各委員ノ御方々カラ種々
御質疑ガアリ、御意見ノ御述ガアリマシタ
ノデ、色々私モ〓ヘラルヽ所ガ多ク、農林
省、北海道長官ニ於テモ種々御考慮下サッタ
コトトモ考ヘル譯デアリマス、玆ニ私ハ此
ノ四ツノ案ニ對シテマシテ希望決議ヲ付シ
テ、四案ヲ可決スルコトニ贊成致シタイト
思フノデアリマス、其ノ希望決議ハ、今玆
ニ朗讀致シマスガ、委員ノ御方々ノ御贊成
ヲ得マシタナラバ此ノ希望決議ヲ付シテ四
案ヲ可決スルト云フコトニ御贊成ヲ得タイ
ト思フノデアリマス、漁船保險法案、漁船
再保險特別會計法案ニ對シマシテハ次ノ如
キ希望決議ヲ付ケタイト思フノデアリマス
海難防止ノ諸施設ヲ整ヘ竝ニ漁撈從
事者遭難救護及遭難者遣族扶助ニ關ス
ル施設ヲ講スヘシ
一、本法ハ速ニ之カ運用ヲ汎ク全國ニ互
ラシメ且中漁船ヲ主トシ普ク漁船ニ及
スヘシ
漁船保險ハ適當ナル時期ニ於テ之ヲ
國營ノ制度ニ改ムヘシ
漁業組合等ニ金融ヲ爲スヘキ中央金
-庫ヲ速ニ特設スヘシ
以上ノ希望決議ヲ付シタイト思フノデアリ
マス、次ニ森林火災國營保險法案、森林火
災保險特別會計法案ニ對シマシテハ、次ノ
如キ希望決議ヲ附スコトニ致シタイト思フ
ノデアリマス
森林愛護ノ思想ヲ涵養シ、火災警防
ノ施設ヲ擴充スヘシ、且ツ之ニ伴ヒ保
險料ノ低下ヲ圖ルヘシ
一、本法ハ適當ナル範圍ニ於テ漸次壯齡
林ニモ之ヲ適用スルニ至ラシムヘシ
一、本法ヲ府縣ニ限定スルコトナク、速
ニ北海道ニモ施行スベシ
以上ノ希望決議ヲ附シテ贊成ヲ致シタイト
思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00319370324&spkNum=64
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065・山崎達之輔
○國務大臣(山崎達之輔君) 連日非常ナル
御精勵ヲ以テ御審議ヲ煩シマシテ、謹ンデ
御禮ヲ申上ゲマス、尙只今松村委員ヨリ御
提議ニ相成ッテ居リマスル希望決議ノ各條
項ニ對シマシテハ、政府ト致シマシテハ、
御趣旨ニ贊成ノ意ヲ表シマシテ、出來得ル
限リ之ヲ尊重致シマシテ、實現ニ努力致ス
考デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00319370324&spkNum=65
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066・堀田正恒
○委員長(伯爵堀田正恒君) 外ニ御發言ノ
方ハゴザイマセヌカ、·ゴザイマセヌヤ
ウデスカラ、是デ討論ヲ終決致シマシタ、
此ノ希望決議ハ後デ採決致シマシテ、漁船
保險法案乃至三件ノ法案自體全部ヲ議題ト
致シマス、全部本案通リデ御異存ゴザイマ
セヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00319370324&spkNum=66
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067・堀田正恒
○員員長(伯爵堀田正恒君) 御異議ナイト
認メマス、引キ續キマシテ松村委員カラ御
述ニナリマシタ希望決議、之ヲ議題ト致シ
マスガ、是モ全部御異議ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00319370324&spkNum=67
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068・堀田正恒
○委員長(伯爵堀田正恒君) 尙字句ノ修正
等ガアッタ場合ニハ、是ハ委員長ニ一任スル
ト云フコトデ宜シウゴザイマスカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00319370324&spkNum=68
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069・堀田正恒
○委員長(伯爵堀田正恒君) 御異議ナイト
認メマス、是デ終了致シマシタ
午後四時三十八分散會
出席者左ノ如シ
委員長伯爵堀田正恒君
副委員長男爵井上〓純君
委員
公爵鷹司信輔君
侯爵小村捷治君
子爵野村益三君
子爵保科正昭君
子爵戶澤正己君
松井茂君
松村眞一郞君
白根竹介君
男爵橋元正輝君
西本健次郞君
山本米三君
岩崎〓行君
國務大臣
農林大臣山崎達之輔君
政府委員
北海道廳長官池田〓君
農林省山林局長村上龍太郞君
農林省水產局長原辰二君
貴族院漁船保險法案特別委員
會議事速記錄第一號正誤
頁段行誤正
一二一七保險漁船
〃三-○共同漁業共同漁業會社
〃〃-一鳥羽戶畑
二〇一二漁主業
〃〃四漁主業
〃〃一七漁主業主主主主
〃〃二七漁主業
三自己自家
〃〃六漁主業主
三三一二、全船全損
貴族院絲價安定施設法案特別
委員會議事速記錄第三號正誤
頁段行誤正
四二二二市價自己発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007000520X00319370324&spkNum=69
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