1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
昭和十二年度一般會計歳出の財源に充つる爲公債發行に關する法律案
昭和七年法律第一號中改正法律案
昭和七年法律第十二號中改正法律案
日本銀行條例中改正法律案
日本銀行參與會法廢止法律案
東京農業教育專門學校創設に伴ふ帝國大學特別會計及學校及圖書館特別會計の關渉に關する法律案
帝國の滿洲國に於ける治外法權の撤廢及南滿洲鐵道附屬地行政權の調整乃至移讓に伴ひ退官退職したる者等に交付する公債發行に關する法律案
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委員氏名
委員長 侯爵 小村捷治君
副委員長 堀切善次郎君
松浦鎭次郎君
子爵 綾小路護君
男爵 今園國貞君
男爵 大森佳一君
加藤政之助君
仲田傳之しょう君
宇野勇作君
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昭和十二年三月二十五日（木曜日）午後三時二十四分開會発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007001720X00119370325&spkNum=0
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001・小村捷治
○委員長(侯爵小村捷治君) 是ヨリ委員會
ヲ開キマス、先ヅ當局ノ御說明ヲ煩シタイ
ト存ジマスガ、御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007001720X00119370325&spkNum=1
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002・小村捷治
○委員長(侯爵小村捷治君) ソレデハドウ
ゾ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007001720X00119370325&spkNum=2
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003・結城豊太郎
○國務大臣(結城豊太郞君) 當委員會ニ付
託ニ相成ッテ居リマスル七案ノ中、先ヅ昭和
十二年度一般會計歲出ノ財源ニ充ツル爲メ、
公債發行ニ關スル法律案提出ノ理由ハ、本
會議ニ於テモ申上ゲマシタ通リ、昭和十二年
度一般會計ニ於キマシテ、旣ニ成立ツテ居
リマスル公債法ニ依リ發行スル公債金額、竝
ニ滿洲事件ニ關スル經費支辨ノ爲メ發行ス
ル公債金額ノ外、歲入ノ不足ヲ補塡スル爲
メ四億八千七百五十萬圓ヲ別ニ起債スル權
能ヲ得ル必要ガアルノデアリマス、卽チ昭
和十二年度一般會計ノ歲出總額二十八億千
三百九十餘萬圓ニ對シ、普通歲入二十億四
千三百十餘萬圓ヲ充當致ツマシテ、尙不足
スル七億七千八十餘萬圓ハ公債財源ニ依ル
必要ガアルノデアリマスルガ、此ノ中既ニ
成立シマシタル公債法ニ依リ、起債シ得マ
スル震災善後公債七百三十五萬餘圓、及ビ
道路公債千五十九萬餘圓、竝ニ別途昭和七
年法律第一號中改正法律案ニ依リ新ニ起債
シ得ルコトトナリマスル、滿洲事件公債二
億六千五百四十六萬餘圓等ヲ差引キマシテ、
四億八千七百四十萬餘圓ハ別ニ之ヲ起債ス
ルノ必要ガアルノデアリマス、尙昭和十二
年度ノ歲出ニ於キマシテモ、其ノ中若干ノ
金額ハ例年ノ如ク翌年度ニ繰越サレルモノ
ガアラウト存ゼラレルノデアリマスルガ、
其ノ繰越額ノ財源ハ必ズシモ十二年度內ニ
起債スルコトヲ必要ト致シマセヌ爲メ、翌
年度ニ於テ發行シ得ルコトト爲スヲ適當ト
認メマシテ、本法律案ヲ提出致シマシタ次
第デアリマス、第二ニ昭和七年法律第一號
中改正法律案提出ノ理由ハ、是亦本會議ニ
於テモ申上ゲマシタ通リ、滿洲事件ニ關ス
ル經費ニ關シマシテハ、第六十一議會、第
六十二議會、第六十四議會、第六十五議會、
第六十七議會、及ビ第六十九議會ノ協贊ヲ
經昭和十一年度迄ノ當該經費ノ財源トシ
テ、總額九億九千四百五十萬圓ヲ起債シ得
ルコトト相成ッテ居リマスルガ、事件ノ延
長ニ伴ヒマシテ、昭和十二年度ニ於テモ滿
洲事件費トシテ一般會計ニ於テ二億八千五
百四十萬圓、關東局特別會計ニ於テ一一百三
十四萬餘圓ヲ必要トスルノデアリマス、
右ノ中特別會計ノ外ハ全部普通財源ヲ
以テ支辨致シマスルガ、一般會計ノ分ニ付
キマシテハ、此ノ中ヨリ滿洲國國防費分擔
金受入等合計千九百五十一萬餘圓ヲ差引キ
マシタル二億六千五百八十九萬餘圓ヲ從來
ノ如ク公債財源ニ依ルコトト致シマシタル
爲メ、現行ノ滿洲事件ニ關スル經費支辨ノ
爲メ公債發行ニ關スル法律ニ依ル發行限度
ヲ二億六千五百九十萬圓ダケ增加スルノ必
要ガアリマスノデ、本法律案ヲ提出致シマ
シタ次第デアリマス、第三ニ昭和七年法律
第十二號中改正法律案提出ノ理由ハ、本會
議ニ於テモ申上ゲマシタ通リ昭和六年來ノ
滿洲事變ノ影響ニ依リマシテ、事業ノ經
營ガ甚シク困難トナリ、又ハ不能ニ陷リ
マシタル支那在留邦人ニ對シ、事業復興
資金トシテ貸付クル爲ニ造幣局資金ヨリ
拂出シマシタル約五萬貫ノ銀地金ハ、其
ノ拂出ノ日ヨリ五箇年以內ニ一般會計ノ負
擔ニ於テ補塡スルコトト相成ッテ居ルノデ
アリマスルガ、一般會計ニ於キマシテハ歲
入補塡ノ公債ヲ發行致シテ居ルヤウナ次第
デアリマスノデ、此ノ五箇年以內トアルヲ、
貸付金ノ償還期ニナリマスル昭和二十二年
度末迄延期シ得ルナウニ改メヨウト云フノ
ガ本改正法律案ノ趣旨デアリマス、次ニ日
本銀行條例中改正法律案及日本銀行參與會
法廢止法律案ニ付テ御說明ヲ申上ゲマス、
先ヅ日本銀行條例中改正法律案ノ要點ハ日
本銀行ニ新タニ參與理事ヲ置クコト竝ニ理
事及監事ハ大藏大臣ノ許可ヲ受クル時ハ他
ノ銀行會社等ノ役員ヲ兼ヌルコトヲ得ルコ
トト致シマシタ二點デアリマス、先ヅ參與
理事ノ設置ニ付テ申シマスガ、日本銀行ノ
理事ハ現行制度ニ於テハ總裁及副總裁ト共
ニ事務ヲ總理シテ居ルノデアリマスルガ、
同行ノ業務ハ頗ル煩雜多岐ニ互ッテ居リマ
スノデ、其ノ運營ニ付テハ廣ク財界ニ於ケ
ル練達堪能ノ士ノ意見ヲ徵シ、同行ノ機能
ヲ一層發揚セシムルコトガ緊要ト認メラレ
マスルノデ、新タニ參與理事ヲ置クコトト
致シマシタ、參與理事ハ其ノ候補者ヲ株主
總會ニ於テ選擧致シマシテ、大藏大臣ガ任
命スルノデアリマシテ、其ノ任期ハ二箇年
デアリマス、又參與理事ハ金融政策ノ決定
等重要ナル業務ニ付キ參與致シマスノデ、
任期中新タニ他ノ銀行會社等ノ業務ニ從事
セムトスル場合ハ大藏大臣ノ許可ヲ要スル
コトト致シタノデアリマス、ソレカラ理事
及ビ監事ノ兼職ノコトデアリマスルガ、現
行法ニ依レバ日本銀行ノ理事及監事ハ任期
中他銀行又ハ會社等ノ役員ヲ兼ヌルコトハ
絕對ニ許サレナイコトニナッテ居ルノデア
リマス、併シソレデハ實際上ニ於テ不便デ
アリ、同行ト財界トノ連繫ヲ緊密ナラシム
ル爲ニハ他ノ特別銀行等ノ重役ヲ兼ヌルヲ
適當トスル場合モアリマスノデ、大藏大臣
ノ許可ヲ受ケタル場合ハ之ヲ爲シ得ルコト
ト致シマシタ、ソレカラ日本銀行參與會ハ
御承知ノ通リ日本銀行ト財界トノ連繫ヲ緊
密ナラシメン爲メ昭和七年法律第十一號ニ
依リ設ケラレタモノデアリマスルガ、前述ノ
如ク日本銀行條例ニ改正ヲ加ヘマシテ、參
與理事ヲ置クコトト致シマシタ以上ハ、參
與會ヲ存置セシメ置クノ必要モアリマセヌ
ノデ、此ノ際之ヲ廢止致スコトヲ適當ト認
メマシテ、日本銀行參與會法廢止法律案ヲ
提出致シマシタ次第デアリマス、東京農業
〓育專門學校創設ニ伴フ帝國大學特別會計
及學校及圖書館特別會計ノ關涉ニ關スル法
律案提出ノ理由ハ本會議ニ於テモ申上ゲマ
シタ通リ、農業〓育ノ普及及徹底ヲ圖リマ
スル爲ニ現在ノ東京帝國大學農學部附屬農
業〓員養成所ヲ昭和十二年度カラ獨立セシ
メマシテ、東京農學〓育專門學校ヲ創設致
シマスル關係上、昭和十一年度末現在ノ東
京帝國大學資金ノ中右ノ農業〓員養成所
ノ用ニ供シマスルモノ、昭和十一年度東
京帝國大學ノ歲入殘餘ニシテ、同帝國大學
農學部附屬農業〓員養成所ニ關シ生ジマ
シタルモノハ之ヲ學校及圖書館資金ニ編
入スル等ノ規定ヲ設クル必要ガアルノデ
アリマス、之ガ爲メ帝國大學特別會計ト
學校及圖書館特別會計ノ關涉ニ關スル本
法律案ヲ提出致シマシタ次第デアリマス、
帝國ノ滿洲國ニ於ケル治外法權ノ撤廢及
南滿洲鐵道附屬地行政權ノ調整乃至移讓ニ
伴ヒ退官退職シタル者等ニ交付スル公債發
行ニ關スル法律案提出ノ理由ハ帝國ノ滿洲
ニ於ケル治外法權ノ撤廢及南滿洲鐵道附屬
地行政權ノ調整乃至委讓ニ伴ヒマシテ、滿
洲ニ在勤シテ居リマスル所ノ外務省及關東
局關係ノ職員ノ中デ滿洲國ニ引繼ガルヽ者
ガ六千七百人バカリアリマスルガ、是等ノ
者ハ帝國ノ官吏其ノ他ノ職員トシテ忠實ニ
勤務シテ參ッタノデアリマスルカラ、其ノ年
來ノ勤勞ニ酬ユル爲メ之ニ適當ノ待遇ヲ與
フルコトハ此ノ際必要ノコトデアルト考ヘ
マシテ、ソレ〓〓特別ノ資金又ハ手當ヲ支
給スルコトニ計畫致シマシタ次第デアリマ
ス、而シテ此ノ資金又ハ手當ハ公債證書ヲ
以テ交付スルコトト致シマス爲ニ公債ノ發
行ヲ要シマスルノデ、本法律案ヲ提出シタ
ノデアリマス、以上御說明申上ゲマシタ諸
案ニ付キマシテハ、何卒御審議ノ上御贊成
アラムコトヲ希望スル次第デアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007001720X00119370325&spkNum=3
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004・小村捷治
○委員長(侯爵小村捷治君) 皆樣ニ御諮リ
致シマスガ、大藏大臣ハ衆議院豫算總會ニ
列セラレル爲ニ御急ギノ模樣デハアリマス
ルガ、尙十分カ二十分ノ餘裕ヲ此ノ本委員
會ニ與ヘラレルト云フコトデゴザイマスル
カラ、只今ノ七案全部一括シテノ御說明ニ
對シマシテ、總括的ナ御質疑ガゴザイマシ
タラバ願ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007001720X00119370325&spkNum=4
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005・松浦鎭次郎
○松浦鎮次郞君 是等ノ諸案ハ大抵趣旨ノ
簡單ナモノデアリマスカラ、別ニ御質問ヲ
スル必要モナイカノヤウウニモ思ハレマス
ルガ、此日本銀行條例改正法律案、日本銀
行參與會法廢止法律案、是ハ關聯シタ案デ
アルト思ヒマスルガ、從來此ノ日本銀行ニ
參與ト云フモノガ是ハ理事デナクシテアリ
マシタノヲ、今囘制度ヲ御變ヘニナリマシ
テ、參與理事トセラレテ、矢張リ理事ノ中
ニ列スルヤウナコトニ御改正ニナラウト云
フノデアリマスルガ、是ハ此ノ銀行ノ事業
又ハ產業等ノ事業ニ付テ特別ノ學識經驗ア
ル人ヲマア諮問機關トシテ設ケラレタト云フ
ノガ從來ノ參與制ノ精神デアルノデアリマ
スルガ、チヨット考ヘマスト、此ノ理事ト云フ
モノデナクシテ矢張リ從來ノ參與ト云フ諮
問機關デ置カレタ方ガ宜イヤウニモ考ヘラ
レマスルガ、是ハ從來ノ參與ヲ廢シテ、參與
理事トスル方ガ其ノ機能ヲ發揮セシムル上
ニ於テ宜シイト云フコトニ付テノモウ少シ
詳シイ御說明ヲ承ルコトガ出來マスレバ結
構ト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007001720X00119370325&spkNum=5
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006・結城豊太郎
○國務大臣(結城豊太郞君) 參與會ハ高橋
大藏大臣ノ時分ニ設ケマシタモノデアリマ
スルガ、諮問機關デアリマス爲ニ、其ノ人
ニモ依ルコトデハアリマスルガ、其ノ後每
月寄ッテハ居リマスルガ、ドウモソレ程ノ效
果ヲ發揮シナイ、日本銀行カラ金融市場ノ
狀況ヤナンカヲ聽キマシテ、サウシテ意見
ヲ述ベルト云ッタ所デ、眞劍ナ意見デナシ
矢張リ思ヒ付ノ意見ヲ述ベテ行ク、サ
ウシテ午餐ヲ共ニシテ歸ルト云フヤウナコ
トデアリマス、之ハマア總裁或ハ參與モ之
ニ依ッテ其ノ邊ノ活用ガ出來ルコトデアラ
ウト思フノデアリマスルガ、英蘭銀行ヲ初
メ、諸國ノ中央銀行ナドニ於キマシテハ、
寧ロ此ノ普通ノ理事ト云フ者ヲ多クシマシ
テ、其ノ中ニハ御承知ノ通リ各種ノ職業ノ
人ヲ網羅致シマシテ、英蘭銀行ナドハ二十
何人ニナッテ居ルト思ヒマス、中ニハ實業家
ナドガ多イヤウデアリマスルガ、サウシテ
寄ッテ可ナリ眞劍ニ英蘭銀行ノ業務ノ執行
ニ付テ、又金融市場ノ統制其ノ他ニ付テ隔
意ノナイ意見ヲ交換シテ居ル實情デアルノ
デアリマス、ソレデ日本銀行デモ普通ノ理
事ハマア主ニ行員カラ上ッテ拔擢サレタ者デ
アリマスルガ、之ハ只今正副總裁ノ外ニ、
四人理事ガアリ、皆練達ノ士デハアリマ
スルガ、何ニセヨ、日本銀行ダケニ育ッテ來
タ連中デアリマスカラ、ドウモ世間ノ空
氣ニ觸レルコトガ少イ、其處ニ此ノ外部
カラ理事トシテ入レルト云フコトニナッテ、日
常ノ業務ニ又一々口ヲ出スト云フコトニナル
ト、之モ少シ煩シイヤウナ氣モスルヤウニ思
ハレル、又外部カラ見エル方ハ、大〓何カ職
業ヲ有ッテ居ラレル方デアリマスカラ、日本
銀行ノ理事ノヤウニ專心其ノ仕事ニ當ルト
云フコトモムツカシイ、ソコデ其ノ邊ノ考
ヲ折衷ト申シマスカ、〓究致シマシテ、サウ
シテ外部カラ入ル人ヲ參與理事トシテ重役
會、一週ニ一囘カ二囘開キマスガ、其ノ際ニ
出テ貰フ、平生每日ノ仕事ハ其ノ理事方ニ依ッ
テ之ヲ執リ行ッテ行ク、サウシテ其ノ參與理
事ナドモ日本銀行ノ業務ニ付テ或程度ノ責
任ヲ持ッテ貰フト云フコトニナレバ、自然此
ノ理事會ト云フモノノ空氣モ緊張シテ參リ
マスシ、今迄ノヤウナ茶話ト云フヤウナ程
度デナシニ眞劍ニ考ヘテ來ルコトニナルト
思フ、斯ウ云フヤウナ積リデ、無論ソレ等
ノ人選ニ付キマシテハ種々ナル點カラ考究
致サナクチヤナラヌノデ、良イ人ヲ見付ケ
ルコトハ大切デアリマスガ、今迄ノヤウナ
參與會ト云フコトヨリハ、一層其ノ邊ノ强
化ニナルダラウ、斯ウ云フ趣意カラ此ノ法
律案ガ出來タノデアリマス、ソレニ御承知
ノ通リ此ノ日本ノ金融界ト致シマシテノ缺
點ト申シマスカ、大切ナコトハ、各種ノ金
融機關其ノ他ノ機關ノ連絡統制ト云フヤウ
ナコトガ最モ必要ナコトデアリマス、此ノ
參與理事ノ中ニ、矢張リ特殊銀行ノ總裁デ
アリマストカ、首腦者ヲ一部分入レマシ
テ、或ハ全ク金融機關ヲ離レタ實業界ノ方
カラ練達堪能ノ士ニ入ッテ貰フト云フコト
デ、各種ノ方面ノ知識ヲ集メテ、サウシテ
行クト同時ニ各方面ノ連絡協調ヲ圖ッテ行
ク、斯ウ云フ風ナコトガ主デアリマシテ、
單ニオ座ナリノ話合ヲスルヨリハ、眞劍ニ業
務ニ參與シテ貰ッタ方ガ宜カラウト云フヤ
ウナコトカラ、參與理事ト云フ制度ヲ設
ケ、參與會ト云フモノヲ廢止スルコトニナ
リマシタ次第デアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007001720X00119370325&spkNum=6
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007・松浦鎭次郎
○松浦鎭次郞君 只今ノ御說明デ御趣旨ハ
一應了解致シマシタガ、從來ノ參與制デア
ルト兎角餘リ度々寄ラレルコトモナシ、
寄ラレテモ茶話的ノ話デ十分實ノ入ッタコ
トガ出來ナイデ、效果ヲ擧ゲル上ニ遺憾ノ
點ガアル、今囘ハ是ガ理事トシテ矢張リ責
任ヲ分擔スルト云フ地位ニ立ツコトニナレ
バ、其ノ邊ノコトモ今迄ヨリハ締ッテ效果ヲ
擧ゲルコトガ出來ルト云フ位ノコトハ、サ
ウ云フ點モアラウト思ヒマスガ、併シ何レ
參與理事ト致サレマシテモ、他ニ劇務ヲ持ッ
タ人々ガ多イノデアリマセウカラ、サウ度々
寄ラレルコトモアリマスマイシ、從來ノ參
與デアッテモ、是ハヤリ方デ茶話的ニナルト
云フヤウナ習慣ヲ付ケレバサウナリ易イノ
デアリマスケレドモ、之ヲ本當ニ機能ヲ發
揮セシメル積リデヤレバ、參與制デアッテモ
締ッテイケナイコトハナイカト思ハレマス
シ、參與ト云フコトデアレバ、諮詢機關トシ
テ稍〓中ノ行員デアルト云フコトヨリモ獨立
性ヲ保ツト云フヤウナ意味ニ於テ忌憚ナキ
意見ヲ述ベルト云フヤウナコトニ付テハ、
中ノ人ヨリハ却テ外ニ居ッテ諮詢ニ應ズル
ト云フ風ガ或意味ニ於テハ宜イノヂヤナカ
ラウカト思ハレル點モアルヤウデスガ、是
ハ色々利害ヲ御考ニナッタコトデアラウト
思ヒマスケレドモ、矢張リ斯ウ云フ風ニ中
ニ入ッテ責任ヲ分擔セシメル方ガドウシテ
モ效果ヲ擧ゲル上ニ宜イト斯ウ云フ御考ナ
ノデアリマスカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007001720X00119370325&spkNum=7
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008・結城豊太郎
○國務大臣(結城豊太郞君) 中ニ入リマシ
テモ、是ハ使用人トハ無論違ヒマスシ、ソ
レカラ行員カラ上リマシタ理事トモ違ヒマ
シテ、何モ正副總裁ノ言フコトニ從ハナ
ケレバナラヌト云フヤウナ氣持デハ、無論
職制ノ上カラ獨立シテ······何モソンナコト
ニ屈服スル必要ハナイノデアリマスガ、サ
ウ云フ氣持ヲ持ツ必要ガナイノデアリマシ
テ、從ッテ此ノ參與理事モ株主總會ノ選擧
ニ依ッテ選バルヽト云フヤウナコトヲ必要
ト致シマスヤウナ次第デアリマスルカラ、
職制ノ上カラ申シマスト正副總裁ノヤリ方
ニ付テモ是ハドウモ私ハ贊成出來ヌトカ、
甚ダ不服デアルトカ云フヤウナコトハ言ヒ
得ル地位ニアリマス、參與會デアリマスト
諮問機關デアリマスカラ意見ヲ述ベマシテ
モ、ハアサウデスカト言ッテ聽キッ放シニサ
レル虞ガアルノデアリマスルガ、參與理事
ニナルト其ノ邊ハ私ハ强イト思フノデアリ
マス、ソンナコトデ他ニ皆劇務ヲ持ッテ居ラ
レル方デアリマスルカラ一週間ニ一遍ヤソ
コイラシカ寄ルコトハ出來ナイダラウト思
フノデアリマスガ、其ノ間ノ日本銀行ノ業
務ヲ聽キマシテ、サウシテソレノ是非ニ對
シテ意見ヲ述べ、又今後ノ施設ニ付テ意見
ヲ述ベルト云フヤウナコトヲ致シマスコト
ハ、兎角此ノ日本銀行ハ世間カラ遠ザカル
ヤウナコトニ考ヘラレマスルコトヲ避ケル
意味ニ於キマシテモ結構デハナイカト、斯
ウ考ヘテ居リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007001720X00119370325&spkNum=8
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009・松浦鎭次郎
○松浦鎭次郞君 此ノ質問ハモウ是デ宜シ
ウゴザイマスガ、此ノ東京農業〓育專門學
校創設ニ伴フ云々ト云フノデアリマス、是
ハモウ當然ノコトデ別ニ問題ハアリマセヌ
ガ、私ガ伺ヒタイノハ此ノ案其ノモノト云
フヨリハ、是ハ現在ノ農業〓員養成所ト云
フモノガ農業專門學校ト云フモノニ代ルノ
ガアリマシテ、農業〓員養成所ハ三月末日
ヲ以テ廢止サレ、新タニ農業專門學校ガ出
來ル譯デアリマスガ、是ハモウ三月末日、
四月一日トモ拔合セニ直グ一方ガ死ニ、
方ガ生レルト云フ關係ニナルノデスガ、校
長ナリ職員ナリ其ノ他ノ準備ト云フモノハ
此ノ四月一日ヲ以テ新タニ農業専門學校ガ
出來ルト云フコトニ付テノ準備萬端ノコト
ハ今モウ御用意ニナッテ居ルノデアリマス
カ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007001720X00119370325&spkNum=9
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010・服部纉
○政府委員(服部續君) 只今御尋ノ點ニ付
キマシテ、此ノ學校ノ創立ノ準備ノコトハ
只今著々進行中デゴザイマシテ、官制ノ公
布、職員ノ任命其ノ他三月一パイニ全部完
了致ス豫定デゴザイマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007001720X00119370325&spkNum=10
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011・加藤政之助
○加藤政之助君 私ハ此ノ機會ニ大藏大臣
ノ御意見ヲ綜合的ニ伺ヒタイト思フコトガ
アルノデスガ、大藏大臣ハ他ニ御忙シイ御
用事ガアルヤウニ伺ヒマスガ、三十分位ハ
宜シウゴザイマスカ、宜シケレバ御尋ネ致
シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007001720X00119370325&spkNum=11
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012・小村捷治
○主査(侯爵小村捷治君) 只今大藏當局ノ
御話ニ依リマスト、マダ當分コチラニ御出
ニナレルサウデゴザイマスカラドウゾ御質
問ヲ願ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007001720X00119370325&spkNum=12
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013・加藤政之助
○加藤政之助君 此ノ御提案ハ公債募集ニ
關係ノアル御提案デアリマスガ、私ハ赤字
公債ノ募集ニ付テハモウ多年心配ヲ致シ來ッ
タ者デアリマス、ソレニ付テ一ツ私ノミナ
ラズ世間ガ安心ノ出來ルヤウナ一ツ御答辯
ヲ伺フコトガ出來レバ甚ダ仕合デアルト思
フノデアリマス、私ガ心配致シマシタノハ
高橋藏相ノ時代ニ先ヅ七八億ノ赤字公債ヲ
ズット募集シテ來タ、其ノ結果十年ナラズシ
テ六十億ノ公債ガ百億ニナルダラウ、斯ウ云
フコトデアリマスカラ、此ノナリデ行ッタナ
ラバ前途ドレダケノ赤字公債ヲ募集シナケ
レバナラヌカト云フコトヲ甚ダ恐レルノデ
アリマスガ、ソレデ好イ加減ノ時代ニ一ツ
借金デ財政ヲヤルト云フバカリデナク、增
稅ヲシテ收支ノ均衡ヲ維持スルト云フ方針
ヲ執ッタラドウカト云フコトデ高橋藏相ト
屢バヤリ合ッタコトガアリマスガ、高橋君ハ寧
ロ增稅ハ一朝事ノ有ック時、有事ノ日ノ用意
ニ取ッテ置カナケレバナラヌ、ソレデ先ヅ赤
字公債デ間ニ合ハシテ行ク積リダ、斯ウ云
フノデアル、私トハ其ノ點ニナルト絕對ニ
意見ガ違ッテ居ル、私ハ寧ロ不斷ハ增稅ヲシ
テモ收支ノ均衡ヲ保ツト云フ方針デ財政ヲ
ヤッテ行ク、ソレデ一朝有事ノ日ニハ公債ヲ
募ル、斯ウ云フコトガ當然デアル、又可能
デアル、「ヨーロッパ」ノ戰爭ヲシタ財政史
ヲ見マシテモ稅ヲ以テ戰爭ヲシタト云フコ
トハ殆ト見エナイ、大抵ガ公債ニ依ッテヤッテ
居ル、僅カニ何デモ「イギリス」ガ此ノ前「ヨー
ロッパ」戰爭ノ時ニ增稅ヲシタト私ハ記憶
シテ居リマス、サウ云フ譯デアリマスカラ
收支ノ均衡ス保ツト云フコトガ財政上重要
ナ事件デアルトスルナラバ、ドウシテモ相
當ノ增稅ハシナクチヤナラヌ、斯ウ云フ考
ヲ私ハ持ッテ居ル、所ガ高橋藏相ハ右ノ意見
デ遂ニ增稅ニ手ヲ觸レズニ來タ、所ガ前ノ
內閣ニナッテ馬場君ガ此處ニ氣付カレテ增
稅計畫ヲ立テラレタ、斯ウ云フコトデアリ
マスガ、併シ今日ノ情勢、財政ノ情勢カラ
言ヘバ、アレダケノ增稅ヲシタダケデハ、
ソレデ前途收支ノ均衡ハ何時保テルカ、餘
程見通シヲ付ケルコトハ困難デアラウト私
ハ推察シテ居ッタノデアリマスガ、然ルニ今
度ハ内閣ガ御迭リニナリマシテカラ日モ淺
イノデスカラ、マダ其處迄御檢討ガ御屆キ
ニナラヌト云フコトハ當然ダト思ヒマス、
無理ナイコトトハ思ヒマセヌガ、唯一年限リ
アノ中ノ增稅案ノ一部分ヲ應用シテ、サウシ
テ更ニ檢討ヲナサルト云フコトノ御方針デ
アルヤウニ伺ヒマシタ、ソレモ致方ナイデ
アラウト思ヒマスガ、ドウシテモ前途財政
ノ收支ノ均衡ヲ保ツコトガ目標デアルトス
レバ、此ノ際ニドレダケノ增稅ヲスル、ソ
レデ財政上ノ「バランス」ヲ保テルカドウカ
ト云フコトハ御考ニナラナケレバナラヌコ
トデアラウト思フ、今ノ軍事上ノ關係モア
リマス、非常時關係モアリマスカラ、國費ガ
意外ニ膨脹シツヽアルノデアリマスガ、ソ
レヲ支辨スル爲ニ前途幾年カノ見通シヲ付
ケテ赤字公債デ賄ッテ行クト云フコトハ止
ムヲ得ヌト私ハ思ヒマスガ、ソレガ無限ニ
行ッテハ日本ノ財政ト云フモノガ危機ニ陷
ルノデアリマスカラ、今ハ假令多少苦シク
テモ、前途ハ財政ノ危機ニ、陷ルコトノナ
イヤウニ、此際完全ナル財政計畫ヲ御樹テ
ニナルト云フコトガ必要デアラウト思ヒマ
ス、ソレニハ當局者ガ前途收支ノ「バラン
ス」ヲ保ツト云フコトガ矢張リ重要事項ト
シテ御認メニナッテ、ソレヲ目標トシテ進行
ナサルヤウニ、從ッテ增稅ノ程度モソレヲ目
的ニ決メナケレバナラヌモノデアラウト思
ヒマスガ、次ノ年度ニ於ケル財政計畫ノ今
御持チニナッテ居ルモノハドンナモノデア
リマスカ、其ノ大體ダケデモ伺フコトガ出
來タラ仕合セト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007001720X00119370325&spkNum=13
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014・結城豊太郎
○國務大臣(結城豊太郞君) 寔ニ御尤ナ御
心配デアリマス、私モ此ノ收支ノ均衡ヲ得
ルヤウニ努メタイ、所謂健全財政ト云フコ
トニ出來ルダケ行キタイト、斯ウ考ヘテ居
リマス、斯樣ニ金ノ要ル場合ニ增稅ニ依ル
ベキカ、赤字公債ニ依ルベキカト云フコト
ニ付テハ、私ハ寧ロ加藤サンノ方ニ左袒ヲ
スル方デアリマシテ、是ハ一朝事ガ有ッタ
場合ニハ公債ニ依ラナケレバナリマセヌ
ガ、平常ハモウ出來ルダケ普通ノ歲入デ行
クベキデアラウト思フノデアリマス、唯高
橋サントシテハ、ドウモ日本ノヤウナ幼稚
ナ產業界ニ於テ、今增稅ヲシテ芽ヲ摘ムヤ
ウナコトヲヤッチヤイカヌカラ、モウ少シ育
テヤウト、斯ウ云フ風ナ氣持デアッタラウト
私ハ想像致シマス、是モ決シテ御無理ノナ
イ考デアッタコトト思ヒマス、今囘御審議ヲ
願ヒマスヤウナ豫算案ヲ御覽ニナリマスト、
ドウモ國防費ト云フモノハ非常ニ巨額ヲ占
メテ居リマス、是ハ陸海軍ノ當局者、其ノ
他カラモ御聽キニナリマシタラウト思ヒマ
スガ、只今ノ國際情勢カラ申シマスト、已
ムヲ得ヌ支出デアルト私モ思ヒマス、私野
ニ在ッタ時分ニ、如何ニモドウモ厖大ナ計畫
デアルヤウニ考ヘテ居リマシタガ、段々ニ
認識ヲ深メテ、其ノ邊ノ話ニ理解ヲ進メテ
參リマスト、ドウモ國防ノ充實ト云フコト
ニ暫クノ間ハ重點ヲ置イテ、財政計畫ヲ樹
テネバナラヌト云フヤウナコトハモウ餘儀
ナイ事情ニアルヤウニ思ハレルノデアリマ
ス、ソレヲ緩和スルノ途ハ偏ニ是ハ隣國其
ノ他トノ外交交渉ニ依ッテ圓滿ニ國際關係
ガ行キマスヤウニ骨ヲ折ッテ行クヨリ外是
ハナカラウト思フノデアリマス、丁度其ノ時
ニ「イギリス」デアリマストカ、「アメリカ」デ
アリマストカ、種々ナ事情カラ起ッテ來タノ
デハアラウト思フノデアリマスガ、海軍ニ致
シマシテモ、陸軍ニ致シマシテモ、皆軍擴ヲ
ヤルト云フヤウナ時代ニナリマシテ、ドウモ
其ノ邊ノ情勢カラ申シマシテモ、又現在ノ
日本ノ國際情勢カラ申シマツテモ、當分ノ
間ハ國防ノ充實ト云フコトニ重點ヲ置カナ
ケレバナラヌト云フコトハドウモ致方ナイ
ト思フノデアリマスガ、ソレデ前內閣ノ時
分ニハソコニ重點ヲ置キマシテ增稅案ヲ作
リ、又赤字公債モ十億程度ノモノヲ發行ス
ルヨリ外ガナイト云フコトデ財政計畫ヲ樹
テマシタノデアリマスガ、併シソレガ發表
サレマスト、經濟界ニハ相當ノ「シヨック」ヲ
與ヘマシテ、畢竟是ハ日本ノ生產力カラ考
ヘマシテ、餘リニ急激ナ增加デアッタラウト
思フノデアリマス、ソレデ此ノ邊ノ關係カ
ラ思惑ノ輸入ヤ何カガ一時ハ多クナリマシ
テ、從ッテ國際貸借ナドモ一時ハ餘程惡化ス
ル情勢ヲ來シマシタ、ソンナコトカラ大層
心配致シマシタノデスガ、幸ニ其ノ後ノ情
勢ハ落付イテ參リマシテ、經濟界ニ不安ヲ
來スヤウナコトハ只今ノ所ハ無クナッタノ
デアリマズガ、併シナガラアレダケノ國費
ヲ支辨致シマスル上ニ於テ、又來年度ニ於
テ必ズシモ歲出ガ急ニ減ルト云フヤウナコ
トハドウモ考ヘラレマセヌ、ソレデ已ムヲ
得ズ甚ダ急激ナル增加デハアリマスルガ、
增稅案ヲ作リマシテ、併シ是モ私ハ本當ニ
練ッタ又理窟ノ通ック增稅案ト云フ風ニハ考
ヘラレママセヌノデ、モット檢討スル必要ガ
アル、斯ウ存ジマシタノデ取敢ズ臨時增徵
ト云フコトニシテ、一箇年ダケノ增徵ニマ
ア致シマシタヤウナ次第デアリマスガ、來
年迄ニハモット根本的ニ中央地方ヲ通ジテ
ノ稅制ノ改革、稅制案ヲ立テマシテ、サウ
シテ負擔ノ均衡ヲ圖リタイト考ヘテ居ル次
第デアリマスガ、ドウモ今囘ニ致シマシテ
モ二億七千萬圓ト云フ大キナ增加デアリマ
スカラ、國民ニ對シテソレダケノ負擔ヲシ
テ貰フト云フコトハ非常ニ斯ウ氣ノ毒ノヤ
ウナ氣ガ致シマスガ、併シ是モ國民トシテ
ハ只今ノ國際情勢ニ理解ヲ持ッテ貰フコト
ニナルト云フヨリ致シ方ナイト云フ風ニ考
ハイ、マア負擔力ノ許ス程度ニ於テ租稅ヲ
出シテ吳レルダラウト思フノデアリマスガ、
ソレニ致シマシテモ尙十億ニ近イ赤字公債
ヲ發行シナケレバナラヌト云フ情勢デアリ
マス、是ハ私ハ多少樂觀ニ過ギルト云フ非
難ヲサレタノデアリマスルガ、經濟界ノ情
勢ヲ好クシテ行キマスコトニナリマスト、
サウ其ノ年々或程度ノ赤字公債ト云フモノ
ヲ發行スルコトハムヅカシクナイト思フノ
デアリマス、併シ經濟界ノ狀況ガ惡クナッテ
來マスト、モウ二億三億ノ公債モ消化ガ出
來ナクナッテ、日本銀行ノ背負込ニナリマス、
ソレダケ通貨ノ膨脹ヲ來スト云フコトデ、色々
ナ惡影響ヲ齎スコトニナリマスカラ、成ルベ
クナラバ公債ノ發行額ヲ少クシタイノデア
リマスガ、ソレガ許シマセヌケレバ、矢張
リサウ云フ風ニ經濟界ヲ育テヽ行クヨリ外
ナカラウト思ヒマス、ソレデマア一面ニハ
矢張リ此ノ國ノ財政ニ對スル信用ト云フコ
トモ根本デアリマスルカラ、其ノ外ニハ國
民ノ貯蓄ヲ奬勵シテ、年々ノ貯蓄力ト云フ
モノヲ增スコトガ大切ナコトダラウト思フ
ト同時ニ、國防ノ充實ニ付キマシテ、自然
ノ生產ノ擴充、軍需品其ノ他ノ註文ガ民間
ニ出ルコトガ多イノデアリマスルカラ、ソ
レ等ノ散布サレマシタ國庫金ヲ工合好ク吸
上ゲルヤウナ工夫ヲシナケレバナルマイト
思フノデアリマス、是モ當分ノ間ハ矢張リ
生產設備ノ擴張デアリマストカ、色々自分
ノ方ノ仕事ニ使フ分量ガ多イダラウト思ヒ
マスガ、ソレガ外部ニ散布サレルコトニナ
ルト自然ニ銀行預金ニナッテ參リマストカ、
或ハ信託、保險ト云フヤウナ方面カラ又貯
蓄力ガ增加致シマシテ、ソコデ赤字公債ヲ
消化シ得ルヤナウ力ヲ養ハレテ參リマス、
同時ニ今迄ノヤウニ、先刻モ松村サンニ御
答へ致シマシタヤウナ工合ニ、日本ノ金融
機關ガ餘リニ連絡協調ト云フコトガ缺ケテ
居リマシテ、ドチラカト申シマスト、テン
デンバラバラニナッテ居リマシタノガ、ソ
コデ連絡協調ガ取レマスルト、金融機關デ
アル銀行、信託、貯蓄銀行ト云フモノトカ、
保險會社デアリマストカ、其ノ他ノ投機關
ト云フヤウナモノナドガ、一ツノ氣持ノ下
ニ動イテ參リマスルコトニナルト、單ニ算
盤ダケニ依ラズニ、現在ノ日本ノ情勢トシ
テ、自分達モ公ノ機關ヲ經營シテ居ル者ト
シテ、斯ウ云フ考ヲ持ッテ奉公ヲシナケレバ
ナラヌト云フヤウナ氣持ヲ持ッテ吳レマス
ト、多少ハ算盤ニ合ハヌヤウナ場合ニ致シ
マシテモ、公債ヲ持タウト云フヤウナ氣持
ニモナリマセウシ、又持チマシタ公債モ單
ニ自分ノ利害ダケ、或ハ將來ヲ悲觀シテ賣
却ヲスルトカ云フヤウナコトモ避ケ得ルヤ
ウニナラウト思フノデアリマシテ、マアサ
ウスルト公債ノ市價ヲ崩スヤウナコトモ自
然ナクナッテ參リマス、公債ノ市價ガ下ラ
ズニ、發行價格ヲ維持シテ居ル、或ハ發行
價格以上ニ行ッテ居リマス場合ニハ、公債ノ
消化ニハサウ不便ナコトハナカラウト思フ
ノデリマシテ、一番恐シイノハ公債ノ市價
ガ段々下ッテ來ルコトデアリマス、其ノ邊ニ
付テハ日本銀行ガ中心ニナッテ、各種ノ機關
ノ統制、連絡ガ取レレバ、サウシテ各方面
ノ首腦者ガ皆同ジヤウナ氣持デ其ノ邊ノ所
ニ同情ヲ持チ、共ニ働イテ吳レマスコトニ
ナリマスト、日本ノ貯蓄力ノ增加其ノ他カ
ラ考ヘマシテモ、マア當分ノ間ハ、年ニ十
億位ノ公債ハサウ消化ハムヅカシクナイト
思フノデアリマス、是モ何時マデ續クカ、
年々ソンナ風ニ出シテ行クコトニナルト、
直グニ二百億三百億ト云フコトニナル虞ガ
ナイカト云フコトニナリマスルノデアリマ
スルガ、是ハマア出來ルダケ歲出ノ膨脹ヲ
喰ヒ止メルト云フコトモ考ヘナケレバナラ
ヌト思フノデアリマスルガ、ソコデ國際情
勢ヲ良クスルト云フコトガ根本デアリマス
ルガ、良クナリマスレバ今急イデ或程度ノ
國防ノ充實ヲシナケレバナラヌト云フモノ
モ、多少ハ延ビマシテモ差支ナイコトニナ
ラウト思ヒマス、サウシテ又同時ニ租稅ノ
方ナドニ致シマシテモ、稅制ヲ變へマシタ
所ガ、國民ニ是レ以上ノ負擔ヲ掛ケルト云
フコトハ、是ハ政府當局者トシテハ避ケナ
ケレバナラヌモノダラウト思フノデアリマ
スルガ、併シ自然增收其ノ他儲ケガ多クナル
ニ從ッテ、斯ウ云フヤウナコトナドモ多少考
ヘラレマスルト思ヒマスルシ、又經濟界ガ力
ガ付イテ來ルニ從ヒマシテ、赤字公債ノ消化
ナドニモ、サウ苦勞ナシニ行ケルヤウニナッ
テ來マスルト、日本トシテハ他ノ諸國ニ比
較致シマシテ、マダ非常ナ公債ノ高ガ、國
力ニ比例シテ非常ニ多イト云フ程度マデハ
行ッテ居リマセヌノデスカラ、マア暫クノ間
ハ消化ガ好ク行ク場合ニハ、此ノ程度ノ公
債ヲ發行シテモ差支ナイト思ハレルノデア
リマスル、其ノ間ニ國債ノ償還ニ付テ何カ
元利ノ償還ニ付キマシテ、減債基金デアル
トカ、其ノ他ノ方法デモ講ジマシテ、公債
ノ信用デモ高メルヤウナコトデモ致シマス
コトニナリマスルト、一層其ノ邊ノ消化ガ
シ好クナッテ行クダラウト思ヒマス、先ノコ
トヲ考ヘマスト非常ニ斯ウ心配ニナルコト
ガ多イノデアリマスルガ、併シ多額ノ國庫
金ガ市場ニ散布サレマス、ソレノ繰リ〓シ
ト申シマスカ、運轉ノ工合ヤ何カガウマク
行キマシテ、經濟界ヲ良ク育テテ行キマス
コトニナルト、サウ大シタ悲觀ヲセズニ其
ノ邊ノ調整ガ出來ルノデハナイカ、出來ル
ヤウニ一ツ努メテ行キタイ、マア斯ンナ風
ノ心持デアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007001720X00119370325&spkNum=14
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015・加藤政之助
○加藤政之助君 一言私ハ······悲觀論者デ
ハナイノデアリマス、實ハ積極的ニ行ッ
テ、一ツ日本ノ前途ノ方針ヲ圖リタイト云
フ希望ナノデアリマス、ガ併シ今ノ儘デ前
途ノ目標モ付カズニ、足ラナイ金ハ赤字公
債デアル、賄ッテ行クト云フコトデハ國民ガ
前途ヲ心配シマスカラ、先ヅ今日ハ是レデ
アルガ、前途ハドウカナルト云フ光明ヲ持
クセタイト云フ希望ヲ持ッテ居ルノデアリ
マス、ソコデ今大藏大臣ノ御說ヲ聞ケバ、
公債ノ消化モサウムヅカシクハナカラウ
ト、斯ウ云フ御意見ラシウゴザイマスガ、
ソレハヤリ方如何ニ依ッテハ相當ノ消化ハ
出來ルデアラウト思フ、殊ニ今ノ經濟界ノ
力ヲ養フト云フ方ニ心ヲ御用ヒニナリマシ
タナラバ、其ノ財源モ自ラ滑ラカニ出來ル
譯デアリマスガ、但シ只今御話ニナッタヤウ
ニ、外交ノ手腕デ以テ國際間ヲ平穩ニ導ク
コトガ出來レバ是ハ一番結構デス、ケレド
モ之ニハ矢ッ張リ「アームド·ピース」デ、相
當ニ武力ガ尻押ヲシナケレバ到底外交上デ
成功スルコトハムヅカシイダラウト思フ、
サウスレバ軍備充實ノ費用ハ當分當局者モ
國民モ我慢シナケレバナラナイト云フ時期
ヂヤナイカト思ヒマスガ、其ノ邊ヲ一ツ今
大藏大臣ガ心配下スッテ、斟酌按排シテ國民
ニ餘リ痛手ヲ負ハサナイ、前途ノ收支ノ均
衡モ附ケルノダト云フ希望ヲ持タシテ下
スッタナラバ大變結構ナンデス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007001720X00119370325&spkNum=15
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016・小村捷治
○委員長(侯爵小村捷治君) 大臣ガマダ御
多忙ノヤウデゴザイマスカラ、若シ折角今
御居デニナル所デゴザイマスカラ、若シ簡
單ニ御質問ガアリマシタナラバ··発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007001720X00119370325&spkNum=16
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017・大森佳一
○男爵大森佳一君 私ハ法案ヲ今晩勉强シ
タイト思ヒマスガ、ソレデ今日ハ是デ御正
メヲ願ッテ頂キタイト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007001720X00119370325&spkNum=17
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018・小村捷治
○委員長(侯爵小村捷治君) 只今大森男爵
ノ御意見ニ御異議ゴザイマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007001720X00119370325&spkNum=18
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019・小村捷治
○委員長(侯爵小村捷治君) ソレデハ本日
ハ此ノ程度ニ於テ止メマシテ、明日ハ午前
十時ヨリ開會致シマス、本日ハ是ニテ散會
致シマス
午後四時二十二分散會
出席者左ノ如シ
委員長侯爵小村捷治君
副委員長堀切善次郞君
委員
松浦鎭次郞君
子爵綾小路護君
男爵今園國貞君
男爵大森佳一君
加藤政之助君
宇野勇作君
國務大臣
大藏大臣兼拓務大臣結城豊太郞君
政府委員
大藏省理財局長關原忠三君
大藏省銀行局長和田正彥君
大藏書記官谷口恒二君
同木內四郞君
文部書記官服部纉君発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007001720X00119370325&spkNum=19
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