1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案（審査終了のものを除く）
恩給法中改正法律案（政府提出）
恩給金庫法案（政府提出）
會計檢査院法中改正法律案（政府提出）
昭和十二年度一般會計歳出の財源に充つる爲公債發行に關する法律案（政府提出）
昭和七年法律第一號中改正法律案（滿洲事件に關する經費支辨の爲公債發行に關する件）（政府提出）
昭和七年法律第十二號中改正法律案（造幤局資金拂出に關する件）（政府提出）
日本銀行條例中改正法律案（政府提出）
日本銀行參與會法廢止法律案（政府提出）
東京農業教育專門學校創設に伴ふ帝國大學特別會計及學校及圖書館特別會計の關渉に關する法律案（政府提出）
帝國の滿洲國に於ける治外法權の撤廢及南滿洲鐵道附屬地行政權の調整乃至移讓に伴ひ退官退職したる者等に交付する公債發行に關する法律案（政府提出）
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會議
昭和十二年三月十九日（金曜日）午前十時四十三分開議
出席委員左の如し
委員長 木暮武太夫君
理事 渡邊玉三郎君 理事 田村秀吉君
理事 佐藤謙之輔君 理事 小谷節夫君
理事 片山秀太郎君
渡邊銕藏君 服部教一君
牧山耕藏君 氏家清君
松田正一君 尾崎重美君
宮澤胤勇君 鈴木康太郎君
藤井達二君 沖藏君
松山常次郎君 志賀和多利君
綾川武治君 田川大吉郎君
三浦虎雄君
同日委員星島二郎君辭任に付其の補闕として志賀和多利君を議長に於て選定せり
出席政府委員左の如し
外務省歐亞局長 東郷茂徳君
外務書記官 森島守人君
大藏次官 賀屋興宣君
大藏省理財局長 關原忠三君
大藏省銀行局長 和田正彦君
大藏書記官 木内四郎君
本日の會議に上りたる議案左の如し
昭和十二年度一般會計歳出の財源に充つる爲公債發行に關する法律案（政府提出）
昭和七年法律第一號中改正法律案（滿洲事件に關する經費支辨の爲公債發行に關する件）（政府提出）
昭和七年法律第十二號中改正法律案（造幤局資金拂出に關する件）（政府提出）
日本銀行條例中改正法律案（政府提出）
日本銀行參與會法廢止法律案（政府提出）
東京農業教育専門學校創設に伴ふ帝國大學特別會計及學校及圖書館特別會計の關渉に關する法律案（政府提出）
帝國の滿洲國に於ける治外法權の撤廢及南滿洲鐵道附屬地行政權の調整乃至移讓に伴ひ退官退職したる者等に交付する公債發行に關する法律案（政府提出）発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007010060X01219370319&spkNum=0
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001・木暮武太夫
○木暮委員長 是ヨリ會議ヲ開キマス、前
日ニ續キマシテ質問ヲ繼續致シマス、此際
申上ゲテ置キタイコトハ、先日申上ゲマシ
タ時ハ、赤字公債ノ法律案ト、滿洲事件ノ法
律案ト、ソレカラ昭和七年法律第十二號中
改正法律案、ソレカラ東京農業〓育專門學
校創設ニ伴フ特別會計ノ法律案ト、ソレカ
ラ今囘滿洲治外法權撤廢トカ、南滿洲鐵道
附屬地行政權ノ調整及ビ移讓ト云フヤウナ
コトデ、退官スル人ニ交付公債ヲ與ヘル法
律案、是ダケヲ質疑ノ目標ニスルコトニシ
テ居リマシタノデスガ、大臣モ度々來ラル
ルコトヲ希望シテハ居リマスケレドモ、大
臣ノ出ラレルノガ少イ時間デアラウカト思
ヒマス、隨テ大臣ノ來タ時ニ、赤字公債ニ
付テモ、日本銀行條例ノ改正案ニ付テモヤ
ルコトガ宜イト思ヒマスカラ、日本銀行條
例中改正法律案、日本銀行參與會法廢止法
律案、此二ツモヤハリ議題ニ致シマシテ、
質疑ノ目標ニ致シタイト思ヒマス、御異議
ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007010060X01219370319&spkNum=1
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002・木暮武太夫
○木暮委員長 ソレデハ隨テ日本銀行條例
改正ノ問題ニ付キマシテモ、大臣ヲ煩ハサ
ズニ濟ム問題ハ、御質問下スッテ差支ナイコ
トニナリマシタ-ソレデハ松山君発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007010060X01219370319&spkNum=2
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003・松山常次郎
○松山委員 私ノ質問ニハ大臣ノ御答辯ヲ
戴キタイ點ガ餘程アルノデアリマスケレド
モ、大臣ハ御多忙ノ身體デアリマスカラ、
成ベク大臣デナクテ濟ムコトハ、政府委員
ノ御答辯デ濟マシタイト思ヒマス、其意味
ニ於キマシテ御答辯ヲ願ヒタイト思ヒマ
ス,初メニ公債ノコトニ付キマシテ、最近
ノ公債ノ金額、ソレカラ近キ將來ニ於ケル
趨勢、例ヘバ國防費ニ於テ、コヽ四五年ニ
五箇年計畫、六箇年計畫ト云フヤウナコト
ガ新聞ニアッタカト思ヒマスガ、軍部方面カ
ラノ要求、サウ云フヤウナモノヽコヽ五六
年先ノ趨勢、ソレハドレ位ニ殖エル御見込
デアリマスカ、ソレカラ其中デ直接滿洲事
變ノ爲ニ使ッタ公債額、ソレカラ又近キ將
來ニ於テ今發表サレテ居ル計畫、成ベク實
際ニ近イ見込ト云フヤウナモノデ、ドウ云
フヤウナモノデ公債ガ殖エテ行ク見込デア
ルカ、サウ云フ事情ニ付キマシテ分ルダケ
詳細ニ御說明願ヒタイ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007010060X01219370319&spkNum=3
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004・賀屋興宣
○賀屋政府委員 只今ノ御質問ニ關シマシ
テ、先ヅ滿洲事件公債ノ昭和十一年度マデ
ノ發行ノ額ヲ申上ゲマス、昭和十一年度マ
デニ發行致シマシタ總額ハ、十億六千七百五
十八萬六百六十七圓デアリマス、內昭和六
年ニ發行致シマシタ金額ハ、八千五百九十
一萬四千十七圓デアリマス、同七年ニハ三
億一千七十三萬三千六百圓デアリマス、同
八年ニハ一億八千四百五十萬一千二百圓、
同九年ニハ一億六千四百十二萬九千二百五
十圓、同十年ニハ一億七千二百三十萬二千
六百圓、同十一年ハ、是ハ發行濟ト申上ゲ
マシタガ、尙ホ年度末ニ發行致シマス分ガ
未定デアリマス、大體是ハ豫定額ニ近イモ
ノヲ發行致シマス、又豫定額ダケ發行致シ
マセヌデモ、歲出ガ翌年度ニ繰越サレマス
モノハ、殆ド大部分翌年度デ實際ハ發行致
シマスカラ、先ヅ豫定額ノ一億七千三百九
十萬五千四百七十五圓ト御承知下サッテ宜
シイト思ヒマス、發行豫定ノ分モ皆合セマ
シテ十億九千百四十八萬六千百四十二圓デ
アリマス、數字ハ後デ書イテ差上ゲマス、
以上ガ滿洲事件公債ノ只今マデノ發行濟額
デアリマス、ソレカラ所謂赤字公債歲入補
塡額ト申シマスルモノハ、十一年ノ分ヲ入
レマシテ、只今マデノ發行濟額ガ二十二億
九千三百十六萬三千三百圓デアリマス、內
昭和七年度ニ於キマシテ三億三千八百三十
七萬五千九百圓、同八年度ニ於キマシテ五
億三千五百六萬五千三百圓、同九年度ガ五
億七千十萬三千三百圓、同十年度ニ於キマ
シテ四億九千九百六十一萬八千八百圓、十
一年度ハ三億五千萬圓ガ發行濟デアリマ
ス、尙ホ發行ノ豫定額ニ上ッテ居ルモノガア
リマスルガ、是ハ年度末ニ於テ成ベク歲入、
歲出ノ狀況ヲ見マシテ、必要ナ限度ニ止メ
テ發行致ス譯デアリマスカラ、只今申上ゲ
マシタ十一年度マデノ總計二十二億九千三
百餘萬圓ト云フモノニ對シテ、相當十一年度
ニ殖エル豫定デアリマス、ソレカラ滿洲事件
費ニ付キマシテモ-只今私甚ダ誤ッタコ
トヲ申上ゲマシテ恐入リマスガ、訂正致シ
テ置キマスガ、十一年度一億五千萬圓ハ發
行濟ミデアリマス、更ニ二千三百萬圓ノ發
行ノ限度ガ殘ッテ居リマス、是ガ加ハル譯デ
アリマス、其數字ハ書イテ差上ゲルコトニ
致シマス、斯樣ナ狀況デゴザイマス、十二
年度ニ付キマシテハ、只今御協賛ヲ仰イデ
居ル所デアリマシテ、其金額ハ、滿洲事件
費公債ニ於キマシテハ、二億六千五百四十
六萬八千五百七十八圓デアリマス、ソレカ
ラ歲入補塡公債ハ四億八千七百四十萬二千
五百九十五圓デアリマス、但シ此中ノ四千
六百萬圓ハ、陸海軍ニ於テ使用ヲ見合セル
コトニ相成リマスルカラ、事實上ニ於キマ
シテ發行致サヌデ濟ム積リデ居リマス、只
今マデハ大體斯樣ナ狀況デアリマス、每年
七億トカ八億前後ノ公債ガ發行サレテ居リ
やく、今後ドウナルカ、今後ノ趨勢如何、公
債增加ノ趨勢如何ト云フ御話デアリマスル
ガ、是ハ大藏大臣モ本會議、或ハ各種ノ委
員會ニ於キマシテ申上ゲテ居リマス通リ、
今後ノ財政計畫將來ノ歲入、歲出ノ見透シ
ハ、數字的ニハ未ダ斯ウ云フ風ニナルデア
ラウト云フコトヲ申上ゲルマデノ〓究、調
査計畫ガ出來テ居リマセヌノデ、之ヲハッキ
リハ申上ゲ兼ネマスルガ、大體ニ於テ餘リ
現在ヨリモ減ル見込ハ、今後當分アルマイ
ト思ヒマス、併シナガラ此公債ノ發行ハ無
理ヲ致シテヤル譯ニハ參リマセヌ、其時ノ
經濟事情ガ到底發行ヲ許サヌ場合ニアリマ
シテハ、之ヲ發行致シマシテ色々ノ國策的
ノ經費、國家有用ノ施設ニ充テマシタ所デ、
一方經濟界ニ非常ナ害ヲ及ボセバ斯ル施
設ヲスルコトハ、一方ニ間接ニ大イナル害
ヲスルト云フコトニナリマスノデ、ソレハ
利害ノ比較ガ要リマスカラ、經濟界ノ狀況
如何ニ依リマシテハ、之ヲ減ジナケレバナ
ラヌ場合モアルト思ヒマスガ、併シ政府ハ
サウ云フ風ナ狀況ニナラナイヤウニ、有ユ
ル意味ニ於キマシテ、經濟財政ノ政策ヲ採。ワ
テ行キマシテ、成ベク是レ以上ニ發行シテ
經濟上差支ナイ、金融上差支ナイト云フ風
ナ狀態ニ持フテ行キマシテ、無理ヲシナイ
デ出來レバ、更ニ餘計公債ヲ出シテ必要ナ
ル施設ヲヤリタイ、斯ウ云フ風ニ考ヘテ居
リマス、只今之ヲ數字ヲ以テ申上ゲラレマ
セヌコトハ、甚ダ遺憾デアリマスルガ、ド
ウモ只今ノ現狀ハ、ソコマデノ〓究竝ニ計
畫ガ出來テ居リマセヌ、(「今年度ノ數字ヲ
モウ一遍明ニシテ下サイ」ト呼フ者アリ)今
年度ノ數字ハ、滿洲事件公債ハ、先般本院ヲ
通過致シマシタ豫算ニ伴ヒマスルモノハ、
滿洲事件費公債二億六千五百四十六萬八千
五百七十八圓デアリマス、歲入補塡公債ハ
四億八千七百四十萬二千五百九十五圓デア
リマス、其中カラ四千六百萬圓ハ、實行上
之ヲ發行シナイデ濟ム豫定デアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007010060X01219370319&spkNum=4
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005・松山常次郎
○松山委員 今ノ赤字公債ノ二十二億九千
三百萬圓ト云フ中ニハ、滿洲事件費ノ十億
六千七百萬圓ト云フモノガ、含マッテ居ラナ
イノダラウト思ヒマスルガ、ソレハ重複ニ
ナッテ居ラナイノデアルカ、滿洲事件費ハ別
デ、其外ニ赤字公債ノ二十一一億九千三百萬
圓ト云フモノニナッテ居ルノデアルカ、其事
ヲ明ニシテ戴キタイ、ソレカラ此利率、大
體近頃マデ五分利公債ノモノデアッタノガ、
段々減サレテ三分五厘ノ公債ニ乘替ヘラレ
ツヽアルヤウデアリマスガ、ソレガドノ位
ノ程度マデ濟ンダカ、將來ドレ位ノ間ニ全
部五分利ガ三分五厘ニ乘替ヘラレルノデア
ルカ、其事情ヲ明ニシテ戴キタイ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007010060X01219370319&spkNum=5
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006・賀屋興宣
○賀屋政府委員 只今ノ最初ノ御尋ノ、赤
字公債ノ金額トシテ中上ゲマシタ中ニハ、
滿洲事件費公債ハ入ッテ居リマセヌ、卽チ重
複致シマセヌデ、滿洲事件費公債ノ額ハ初
メ申上ゲマシタ通リ、赤字公債ノ額ハ後ニ
申上ゲマシタ通リ、兩者合計額ガ詰リ發行
サレタ譯デアリマス、ソレカラ後ノ御尋デア
リマスルガ、此滿洲事件公債、赤字公債ハ、
當初四分半時代ガアリマシタ、其後昭和十
年度マデハ四分デ發行シテ居リマシタ、十
一年度ニ至リマシテ三分半ヲ發行致シマシ
タ、デスカラ大部分ハ四分デアリマス、サ
ウ云フ狀況デアリマス、尙ホ五分利ノモノ
ハ、五分利國庫債劵二十億餘ノモノハ、十
一年度ニ於テ既ニ全部三分半公債ニ借換ヲ
濟マセマシタ、尙ホ五分利公債ガ二十何億
ト云フモノガ殘ッテ居リマスルガ、是ハ十二
年度及ビ其以降ニ於キマシテ、金融界ノ狀
態ヲ見マシテ、餘リニ無理ヲシナイデ濟ム
ト云フ狀況ニ於テ、逐次之ヲ借換ヘテ參ル
豫定デアリマス、此五分利公債ハ、滿洲事
件費及ビ歲入補塡公債ノ方ニハ此借換ハア
リマセヌ、尙ホ將來此四分半公債モ、三分半
モ、借換へ得ルト云フ時代ガ參リマスレバ、
滿洲事件費公債、赤字公債モ、當初發行致
シマシタ四分半ノモノガ借換ヘ得ルト云フ
コトニナリマスガ、是ハ五分利債ノ借換ガ
濟ミマシタ後ノコトデアリマス、今年出來
マスカ、來年出來マスカ、或ハ又少シ先ニ
延ビマスカ、只今デハハッキリ時期ハ豫測
出來マセヌ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007010060X01219370319&spkNum=6
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007・松山常次郎
○松山委員 私共ハ年來斯ウ云フコトヲ考
ヘ、又主張致シテ居ルノデアリマス、之ヲ
生產公債ト名付ケテ居リマスルガ、例ヘバ
鐵道ニ使フ所ノ金、電信、電話ニ使フ所ノ
金、煙草專賣ニ使フ所ノ金、或ハ又近キ將
來ニ、或ハ實現スルコトニナルカモ知レマ
セヌガ、電氣事業ノヤウナモノガ國營ト云
フヤウナコトニナリマスレバ、サウ云フヤ
ウナモノハ、他ノ公債トハ性質ガ違フノ
デ、其モノカラ生ンデ來ル利益ヲ以テ、其
利子ノ支拂、元金ノ償還計畫ヲ立テルナラ
バ、ソレモナシ得ルノデアリマシテ、國民
ニハ負擔ヲ掛ケナイ、其信用ハ借リルケレ
ドモ、負擔ハ掛ケナイ、事業ガ根柢カラ失
敗スルト云フヤウナコトガアレバ、或ハソ
レハ幾分ノ負擔ヲ掛ケルト云フヤウナコト
モアルカモ知レナイガ、先ヅ通常ノ場合ニ
於テハ、國民ノ負擔ニハ關係シナイト思ヒ
マス、サウ云フ公債ハ幾ラ殖エテモ差支ナ
イノダ、會社ニ社債ガ澤山アルノト同ジデ
アル、ソレハ幾ラ殖エテモ差支ナイノダ、
斯ウ云フヤウニ私共ハ考ヘテ居ルノデアリ
マスガ、政府當局ハ其事ニ付テハドウ云フ
ヤウニ考ヘテ居ラレマスカ、其御所見ヲ伺
ヒタイ、隨テ私共カラ言ヘバ、寧ロ外ノ公
債ト名前ヲ變ヘテ-外ノ一般ノ公債ノヤ
ウニ國民ノ負擔ニ關係シナイノデアルガ、
ソレガ百億以上ニナルト云フヤウナコトニ
ナレバ、如何ニモ國民ノ頭ノ上へ重イ荷ガ
掛ッテ居ルヤウデ、社會ヲ陰鬱ニスルヤウ
ナ虞ガアルヤウニ思フ、選擧ノ時ニハ、或
ル人々ハ日本國民ガ生レテオギヤット泣イ
タラ、幾ラ借金ヲシテ居ルノデアルト云フ
ヤウナコトヲ、演說シテ廻ッタ人々モ公テ
アリマスルガ、私共ハ此種ノ公債ハ幾ラ殖
エテモ、縱令ソレガ百億ニナッテモ、二百億
ニナッテモ構ハヌ、左樣ニ考ヘテ居ルノデア
リマス、政府當局ハ此コトニ付テドウ云フ
ヤウニ考ヘテ居ラレマスルカ、隨テ私共カ
ラ言ヘバ、寧ロ名前ヲ變ヘテ、此公債ダケ
ハ特別ノ名前ヲ與ヘテ、普通公債ト引離シ
タ方ガ宜シイノヂヤナイカ、斯ウ云フヤウ
ニ考ヘテ居リマスルガ、政府當局ノ御所見
ヲ伺ヒタイト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007010060X01219370319&spkNum=7
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008・賀屋興宣
○賀屋政府委員 只今ノ御尋ハ私ハ非常ニ
御同感ノ所ガ多イノデアリマス、所謂生產
公債ト申シマシテモ、之ヲ嚴密ニ申セバ、
多少區分ガアルト思ヒマスガ、只今松山サ
ンノ御話ノヤウニ、其公債ヲ發行シ、之
ニ依ッテ得タル資金ヲ以テ事業ノ經費ニ
充テヽ其事業カラ生ズル收入ヲ以テ、此
公債ノ元利償還ガ出來ル、斯ウ云フ嚴格
ナル意味ニ於ケル生產公債ハ、御話ノ如
ク其通リニ參リマスレバ、幾ラ發行シテ
モ差支ナイト思フ、唯斯ウ云フコトガ考
ヘラレル、幾ラ發行シテモ差支ナイガ、
ソレデハ每年幾ラ發行シテモ差支ナイカト
云フコトニナリマスルト、是ハ別問題デス、
詰リ狹イ意味ノ財政的ノ眼カラ見レバ一向
差支ナイ、併シ之ヲ經濟金融ト云フ眼カラ
見マスルト、左樣ナモノハ多ク交通、產業、
其他ノ生產的ノ事業ノ資本ニ充テラレルノ
デアリマスガ、一國ノ資本ノ增加ト申シマ
スモノモ、凡ソ限度ガアリマスノデ、其限
度ヲ突破致シマス場合ニハ、結局ハ宜イヤ
ウナモノデアリマスルガ、其時ノ金融界、
經濟界ハ堪ヘラレナイト云フコトガアリマ
スルカラ、年々ノ發行ニ於テハ其事情、所謂
經濟的、金融的ノ制限ヲ受ケルコトハ已ム
ヲ得マセヌ、財政的ニ見マスレバ、毫モ制限
ヲ受ケル理由ガナイノデアリマス、ソレガ
累積シマシテ百億ナリ、一一百億ニナッテモ、
ソレガ正確ナ意味ニ於テ、何等國民經濟ヲ
壓迫セズシテ元利償還ガ出來ルト云フコト
ナラバ、御說ノ如ク差支ノナイト思フノデ
アリマス、隨テ之ヲ普通ノ純粹ノ「マイナ
ス」ノ借金的ノ公債ト區分シテ、別ノ名前ヲ
附ス、別ノ形デ出ルト云フコトハ、洵二一
ツノ良イ思付キデアラウト考ヘマス、然ラ
バ直グソレヲ實行スルカト云フコトニナリ
マスルト、多少考慮ヲ要スル所モアリマス
ルガ、大體ハ結構ダト思ヒマス、ソレカラ又
日本ノ財政ノ現狀カラ申シマシテモ、左樣
ナ公債ハ皆特別會計ニ屬シテ居リマス、內
地ニ於ケル-今ノ松山サンノ御話ノヤウ
ナ意味ノ生產公債ハ、是ハ鐵道ト通信事業
ニ限ラレテ居リマス、兩者何レモ特別會計
ニナッテ居リマシテ、其發行額ハ只今申上ゲ
マシタ赤字歲入補塡公債、滿洲事變公債ノ
中ニハ入ッテ居リマセヌ、發行額トシテハ是
ハ區分サレテ居リマス、又公債ノ額ノ現在
額ニ付キマシテモ、一般會計負擔ノ公債ト
云フコトヲ、主トシテ見テ參リマスレバ宜
シイト云フコトニナルト思ヒマス、御尋ハ
ソレ以外ニ、現實ニ公債ノ名前ヲ何トカ、
三分半ノ國庫債劵ト云フコトデナクシテ、
公債ノ紙ヲ別ノ色ニシ、別ノ名前ヲ與ヘル
ト云フヤウナコトハ、是ハ洵ニ面白イ思付
キデ、場合ニ依ッテハサウ云フコトモ〓究
シテ見テモ宜シイカト思フノデアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007010060X01219370319&spkNum=8
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009・松山常次郎
○松山委員 金ノ問題ニ付テ御尋シタイノ
デスガ、日本カラ英國ノ倫敦マデノ金ノ現
送ニ要スル金-運賃、保險料、諸掛ト云
フヤウナモノハ、一匁ニ付テドレ位ノモノ
ニナッテ居ルノデスカ、ソレヲ一ツ御尋シタ
イ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007010060X01219370319&spkNum=9
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010・賀屋興宣
○賀屋政府委員 一寸金ニ關スル參考書類
ヲ持ッテ參リマセヌカラ、取寄セマシテ直グ
御答致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007010060X01219370319&spkNum=10
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011・松山常次郎
○松山委員 此コトニ付テハ、以前ニハ金
ガ十一圓五十八錢デアッタモノヲ、馬場大藏
大臣ノ時代ニ十三圓十二錢五厘ト云フ値段
ニ引上ゲ、今日モ其値段デアルカ、或ハソ
レヨリモ低下シテ居ルカモ知レマセヌガ、
昨年十月二十日ノ爲替相場ニ依ッテ計算致
シマスト、英國倫敦ニ於ケル金ノ一匁ノ價
ハ、十四圓七十一錢ト云フコトニナッテ居
リマス、ドウ云フ譯デ是ガ日本ニ於テ十三
圓十二錢五厘ト云フヤウナ、ソレヨリ低イ
値段ニナッテ居ルカ、ト云フノハ、私共ハ日
本ノ國ノ現在ノ狀態カラ言ッテ、ドウシテモ
金ヲ集メナケレバナラヌ、集金政策ヲ執ラ
ナケレバナラヌ、斯樣ニ考ヘテ居ルノデア
リマス、是ハ前內閣以來聲明シタコトデア
リマスガ、準戰時狀態、戰爭準備ノ狀態ニ
於テ、國防費モウント殖ス-國防費ト云
フコトニハモット廣イ意味ガアル、或ハ鐵
砲ノ數ヲ殖ストカ、或ハ大砲ヲ殖スト云フ
コトデハナイノデアリマシテ、金ノ準備ト
云フコトガ極メテ必要ナコトヽ思ヒマス、
私共寧ロ前內閣ニ於テ、徹底シタ集金政策
ヲ執ラナイコトガ不思議デアル、アレ位國
防ニ熱心ナ陸軍當局ガ、其コトヲ言ハナイ
コトガ不思議デアル、電氣事業ノ國營モ、
國防上最モ必要ダト云フヤウナコトヲ主張
スル陸軍當局ガ、徹底シタ集金政策ヲ執ラ
ナイコトガ寧ロ不思議デアルト思フ、「ムッ
ソリーニ」ハ伊太利ニ於テ金ヲ買入レルニ、
一匁十三圓五十錢デ買っテ居ッタガ、「エチ
オピア」戰爭ガ起ルヤ、十六圓五十錢ニ引
上ゲタト云フコトガ新聞ニ載ッテ居リマス
ガ、戰爭ニハドウシテモ金ガ要ル、ダカラ
集金政策ヲ執ラナイコトガ、寧ロ私ハ不思
議デアルト考ヘテ居リマス、然ルニ日本ノ
買上値段ガ低イガ爲ニ-伊太利ト違ッテ
日本ハ幸ニシテ金ガ產出スル、朝鮮ニ金ガ產
出スル、方法宜シキヲ得レバマダ〓〓金ノ生
產ヲ殖スコトガ出來ルト思フ、然ルニ金ノ
買上値段ガ低イ爲ニ密輸出ガ盛ニアル、最
近ノ狀態ハドウナッテ居ルカ知リマセヌガ、
朝鮮總督府ノ或ル事情ヲ知ッタ人ニ聞イタ
所ニ依レバ、密輸出ヲ押ヘルダケデ三百萬
圓ノ金ガアルト云フコトヲ言ッテ居ル是一、
金ノ買上値段ヲ引上ゲマシタカラ、段々減ツ
テ居リマセウケレドモ、兎モ角十三圓十二
錢五厘ニ引上ゲタ所ガ-其前ハ十一圓五
十八錢デアル、之ヲ上海マデ運ンデ行ケバ、
運賃、諸掛ヲ引イタダケデ、相當ナ値段デ
上海デ賣レル、ソレガ日本內地ニ於テ、
或ハ朝鮮ニ於テ、金ノ買上値段ガ低イ
ガ爲ニ密輸出ガ行ハレル、マア通常常
識的ニ考ヘテ、警察ガ押ヘタ三百萬圓
ノ其十倍三千萬圓モ、普通ノ統計ニ現レテ
居ル以上ニ散佚シテ居ルダラウト言ハレテ
居ル、今日朝鮮ニ於テ金ノ產額ト云フコト
ハ出テ居リマスルガ、五六千萬圓ニナッテ
居ル、吾々ハソレヨリズット多イモノト思
ウテ居ル、日本ガ金ノ集積ヲ必要トスルノ
ニ、ソレガ逃避ヲスルヤウナ狀態ニアルト
云フコトハドウデアルカ、此問題ニ付テ大
藏當局ガ、他ニ色々事情ガアルノカ、吾々
カラ言ヘバ金ノ買上ヲスルコトモ必要デア
ル、又朝鮮總督府其外商工省ノ鑛山局アタ
リデ、日本內地モ一般デアリマスルガ、モシ
ト此產金ヲ奬勵スル、或ハ探鑛費ヲ補助ス
ルコトモ一ツノ途ダラウ、運賃ヲ低減スル
コトモ必要デアラウト思フ、或ハ殊ニ朝鮮
ナドデハ、國營ノ精鍊所ヲ拵ヘルト云フコ
トガ極メテ必要デアル、ト云フノハ民間ノ
精鍊所ニ任シテ置クト、ドウシテモ鑛石ガ
安ク買取ラレル、少シ前ニナリマスルカ
ラ、今日ハ少シ數字ガ變ヲテ居ルカモ知レ
マセヌガ、一匁八圓五十錢位ノ割合デ買上
ゲラレテ居ルト云フ事實モ私ハ聞イテ居
ル、殊ニ小サイモノ程サウ云フヤウナ壓迫
ヲ受ケテ居ル、寧ロ斯ウ云フヤウナモノハ
國營デヤッテ、實際ノ金ノ値段ト買上ノ値
段トノ差ヲ極ク少クスルト云フコトニシテ
ヤレバ、ドン〓〓金ノ生產モ殖エテ行クモ
ノト思フ、サウシテ金ノ買上値段ヲ引上ゲ
テ、國外ニソレガ逃ゲルコトヲ防グ、斯ウ
云フ風ナコトヲスレバ、日本ノ金ノ集積ガ
今日ヨリズット著シク增加スルノデナイカ
ト思フ、斯ウ云フ點ニ付テ當局ガ御考ニ
ナッテ居ルコトガアルカドウカ、先程私倫
敦ヘノ運賃、諸掛ノコトヲ聞キマシタ
ガ、私共ノ考デハ、日本ガ金ヲ集積スルノダ
カラ、英國カラ買フコトヲ考ヘル、サウス
ルト英國ニ於ケル十四圓七十一錢ト云フモ
ノニ、「プラス」運賃、諸掛、之ヲ原則トス
ルモノデナケレバナラヌ、サウスレバ日本
ニ金ガ集ッテ來ル、ソレヨリ低イト云フコ
トハ、日本ノモノガ向フニ逃避スル、少ク
トモ向フカラコッチヘ來ナイト、斯ウ云フ
コトニナルノデアリマスカラシテ、私共ハ
今日國家非常時ダト云ヒ、準戰時狀態ダト
云フ其狀態ニ對シテ、此金政策ニ於テ大藏
當局ハ全ク大事ナ一ツノ點ヲ怠ッテ居ルノ
ヂヤナイカ、或ハ注意ヲ逸シテ居ルノカ、
或ハ之ヲ爲シ得ナイ事情ガアルノカ、サウ
云フコトニ付テ御考ヲ伺ヒタイト思フノデ
アリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007010060X01219370319&spkNum=11
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012・賀屋興宣
○賀屋政府委員 金政策ニ對シマスル段々
ノ御尋デアリマスルガ、只今ノ買入値段
ハ、御示シノ如ク十三圓十二錢五厘、是尺
昨年ニ於キマシテ引上ゲテ、其價格トナリ
マシテ、今日マデ維持シテ居リマシテ、今
ノ價格ハドウ云フ風デ此買上値段ヲ決メマ
スカト申シマスト、御承知ノ如ク日本ハ金
輸出禁止ノ狀態ニアリマスカラ、世界ノ金
市場ノ價格ト國內ノ金ノ價格ト云フモノ
ハ、全ク商業的ニ絕緣致シテ居リマス、ソ
レデ今日本銀行ニ金ヲ買入レサセマシテ、
其買入價格ハ政府ガ認可致シテ居ルノデア
リマスガ、是ガ金ノ價格ヲ決定スル事情デ
アルノデアリマス、其決定ノ方針ハ、大體
倫敦ノ金塊相場ヲ元ト致シマシテ、ソレヲ
其時ノ日本ノ爲替相場ニ依ッテ、日本ノ貨幣
ニ依ル換算額ヲ出シマシテ、其約九割ヲ以
テ買フ、斯ウ云フコトニ致シテ居リマス、
倫敦ノ金塊相場モ時々變動致シマスシ、日
英爲替相場モ大體ハ安定シテ居リマスガ、
多少變動致シマス、サウ一々細カクソレニ
追隨致シマセヌデ、大體ソレノ九割デ行
ク、斯ウ云フコトニシテ居リマス、何故斯
樣ニ致シタカト申シマスト、此九割ト云フ
値ハ、日本ノ內地ニ於キマシテ非常ニ產金
ノ奬勵ニナリマスノデ、元一匁五圓デアリ
マシタモノガ、十三圓幾ラト云フコトニナ
リマスト、十六割以上ノ元ノ値ノ增加、卽
チ元ノ値ノ二十六割ニナッテ居リマスノデ、
是ハ其他ノ物價ノ騰貴率ニ比ベマシテモ、
遙ニ大キナ騰貴ナンデアリマス、隨テ從來
之ヲ採掘致シマシテモ引合ハナイ貧鑛ガ、
ドシ〓〓之ニ依ッテ事業ヲ始メル朝鮮ノ景
氣ノ宜シイコトモ、一ツハ之ニ原因シテ居
ルト云フ狀態デアリマス、隨テ產金ハ非常
ニ奬勵ヲサレテ居ルノデアリマス、前內閣
ニナリマス迄ハ、先刻申上ゲマシタ倫敦ノ
金塊相場ヲ、日英爲替相場ニ依リマシテ日
本ノ貨幣ニ換算シタモノノ、約八割ト云フ
標準デアリマシタガ、更ニ之ヲ前年九割ニ
引上ゲタノデアリマス、其結果八割時代ニ
相當ニ金ノ密輸出ガ行ハレタ如クデア
リマス、密輸出ノコトデアリマスカラ、正確
ナ數字ヲ申上ゲルコトハ出來ナイノデアリ
マスガ、相當其形跡ガアッタト思フノデア
リマス、殊ニ朝鮮ノ產金ノ如キハ滿洲ニマ
デ行ク、滿洲ハ日本ヨリ大分前カラ八割デ
買フテ居リマシタ、日本デハ八割、滿洲デ
ハ九割デスカラ、ドウモ滿洲へ行クト云フ
形跡ガアッタ、所ガ日本ガ九割ニ致シテカ
ラ、餘程ソレガナクナリマシテ、滿洲自體
デハ色々此金ノ採掘ノ事業ガ起ッテ居リマ
スガ、其割合ニ滿洲中央銀行ニ買ヒマスル
金ノ量ハ殖エナイ、斯ウ云フ事情デアリマ
ス、大體ソレデ見マスト、九割位デアリマ
ストサウ密輸出ハナイ、御話ノ如ク倫敦ヘ
持ッテ行ケバ十割ダト云フコトニナリマス
ガ、其現送費ハ今正確ニハ申上ゲラレマセ
ヌガ、是ガ大キク公然送リマス場合ト、密
輸出ノ場合ニハ相當違フト思ヒマスガ、
匁五十錢位掛ルダラウト思ヒマス、政府ノ
手ニ依リマスト、モウ少シ安イト思ヒマス
ガ、色々ノ爲替ノ危險、其他保險トカ色々
ノモノヲ入レマスト、五十錢近ク個人デ送
レバ掛ルト思ヒマスガ、サウ致シマシテモ、
御話ノヤウニ尙ホ六十錢トカ七十錢ノ「マ
ージン」ガアルノデアリマス、併シソレハ色
色嚴重ナル取締ヲ致シテ居リマス、其爲ニ海
外ニ逃ゲマスモノハ、サウ多クハナイト存
ズルノデアリマス、尙ホ之ニ付キマシテハ、
色々探鑛、精鍊等ニ關シマシテ、相當ナ補助
的施設モ、奬勵的施設モ、朝鮮ニ於テモ内地
ニ於テモ致シテ居リマス、而シテ尙ホ之ヲ
ソレ以上ニ上ゲレバ、ソレダケ今迄引合ハ
ナイモノモ引合ッテ來ルト云フノデ、產金
ガ增加致スコトハ御話ノ通リデアリマス、
併シ何故之ヲソレ以上ニ致シマセヌカト申
シマスト、是ハ將來何レハ日本ノ貨幣法モ
改正サレテ、所謂平價ノ切下ゲト云フコト
モ行ハレル時期ガアルト思ヒマス、左樣ナ
時期ニ餘リ高ク買ッテ居リマスト、又國庫
ハ莫大ノ損失ヲシナケレバナラヌト云フコ
トニナリマス、而シテソレハ金ノ價格ト云
フモノガ、先高デアルト云フコトノ確信ガ
アレバ、ソレハ思切ッテ十割デ買ッテ置イテ
モ宜シイノデアリマスガ、併ナガラ必シモ
サウ言ヘマイト思ヒマス、日本デ金ノ買入
ヲ始メマシタ以後ハ、金塊相場ト云フモノ
ハ下ッテ居リマセヌ、寧ロ最近ハ稍〓增價デゞ
アリマス、併ナガラ現在ノ如ク、此貨幣制
度ニ關スル各國ノ政策方針等ノ變化ノ激シ
イ時ニ於キマシテ、金ガ一番賴リニナル、
斯ウ云フ一方ニ考ガアル、殊ニ國際不安等
ガアリマスト、非常ニ賴リニナルト云フ考
ガアリマスガ、一方カラ言フト、世界ノ有
力ナル國ガ皆金カラ離脫シテ居ル、一體金
ト云フモノハ貨幣ニ使ハレナイ以上ハ、金
ノ價格ト云フモノハ、是ハ遙ニ低クアルベ
キモノデアラウト思フ、隨テ學者ノ說、特
ニ新シイコトヲ唱ヘル學者ナンカニハ、金
ノ將來ト云フモノハ安クナルノダ、斯ウ云
フ說ヲ唱ヘテ居ル人モアリマス、ソレデア
リマスカラ、法ガ金カラ離脫シタ時ニハ、
是ハ金相場ノ爲ニ强氣材料デアルカ、弱氣
材料デアルカト云フコトモ、當時相當考ヘ
ラレタコトデアリマス、一面ニハ强氣ノ材
料一面ニハ弱氣ノ材料ト云フ程度デアリ
マスカラ、之ヲ餘リ一パイニ買ッテ置クト
云フコトハ、相當危險ガアリマス、同時ニ
此値頃ニ於テモ非常ナ產出ノ奬勵ニナルノ
デアリマス、デアリマスカラ、只今ノ所デ
ハ此程度ニ於テ適當デアルト、斯樣ニ考ヘ
テ居ルノデアリマス、尙ホ外國カラ金ヲ集
メタラドウカト云フ御話デアリマスガ、是
ハ只今ノ所其政策ヲ執ル餘地ハアリマセ
又、ト申シマスノハ、現在ニ於キマシテモ
多少金ヲ現送シナケレバ、國際收支ノ「バ
ランス」ハ取リ難イノデアリマス、爲替相場
ヲ下ゲレバ、或ハ取レルカモ知レマセヌ
ガ、只今ノ所ハ爲替相場ヲ下ゲマスト云フ
ト.輸出ニモ輸入ニモ利益ガナイ、寧ロ國
際收支ノ上ニハ惡影響ヲ及ボスカモ知レ
又、普通ノ爲替相場ニ依ッテ、輸出ニ有利ニ
シテ輸入ニ不利デアッテ、國際貸借ヲ有利ニ
導クト云フ、常則的ノ理論ノ寧ロ行ハレナ
イ狀況ト私共ハ考ヘテ居リマス、隨テドウ
モ國際收支ノ上カラハ多少ノ金ヲ送ラナケ
レバナラヌ、ト申シマスノハ、今日本ハ色々
ノ意味デ飛躍的國力增進ノ施設ヲ致シマス
ル爲ニ、色々ノ物資ヲ海外カラ仰イデ、之
ニ依っテサウ云フ施設ノ原料、材料ヲ得ルト
云フ時期デアリマスカラ、無暗ニ輸入ヲ增
加スル譯ニハ參リマセヌガ、或ル程度マデ
ハ多少ノ金ヲ現送シテモ、サウ云フコトヲ
續ケテ行カナケレバナラヌト云フ時デアリ
マスカラ、結局金ヲ買集メマスルダケノ資
力ハナイノデアリマス、之ヲ集メヨウトス
レバ、其資金ヲ調達シナケレバナラヌ、其
資金ガナクテ、寧ロ若干金ヲ送ッテヤルト云
フ時期ニアルノデアリマスカラ、只今ノ狀
況ニ於テハ、國內ノ金ヲ集メルト云フコト
ニ、已ムヲ得ズ止メナケレバナラヌ狀態デ
アルノデアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007010060X01219370319&spkNum=12
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013・松山常次郎
○松山委員 私共ノ考デハ、日本銀行ガ金
ヲ保有シテ居ル、是ハ或ル意味ニ於テ、國
家ノ生命デアル金ガ外國ニ出テ行クナリ、
或ハ入ッテ來ルナリ、其コトハ日本國民ノ非
常ニ重大ナル關心ヲ禁ズルコトガ出來ナイ
問題デアリマスルガ、國家ノ生命トモ言フ
ベキ金ヲ、日本銀行ト云フ一ツノ株式會社
ニ之ヲ保有サセテ置クト云フコトハ、危險
ナコトヂヤナイカ、斯樣ニ考ヘテ居リマ
ス、事實ニ於テ殆ド是ハ非常ナ注意ヲシテ
保護シテ居ルノデアリマセウ、併シ一ツノ
獨立シタ機關トシテアル以上ハ、日本銀行
ノ總裁ノ考へ方ニ依レバ、ドウデモ出來ル
コトデアリマス、是ハ國有ニシテ置ク必要
ハナイノデアリマスカ、實際問題トシテ此
コトニ付テ當局ハ御考ニナッタコトガアル
カ、御尋致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007010060X01219370319&spkNum=13
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014・賀屋興宣
○賀屋政府委員 金ノ國家的ニ重要デアル
ト云フコトニ付テハ、全ク御考ト同ジデア
リマス、唯只今ノ日本銀行ト申シマスモノ
ハ、會社デハアリマスルガ、是ハ特別ノ條
令ヲ以テ設置サレ、其行動モ專ラ金融ノ上
ニ於テ公共的、公益的ニ動クヤウニ、法令
其他ノ仕組ガ全部ナッテ居リマスルノデ、是
ハ普通ノ私設會社ノ如ク考ヘナイデ、國家
的ニ動クモノデアリマス、其意味ニ於テ大
事ナ金ノ護リ手デアル、斯ウ考ヘテ宜シイ
次第デアリマス、尙ホ法令ノ上ニ於キマシ
テモ、金ノ兌換ハ停止サレマシテ、日本銀
行ハ兌換劵ヲ持ッテ參リマシタ者ニ、兌換
ノ請求ニ應ジテ金ヲ拂フト云フコトハ致シ
マセヌ、ソレカラ金ノ買入ニ付キマシテ
モ、金買入法ニ依ッテ政府監督、政府ノ認
可ノ下ニ之ヲ買入レテ居ルノデアリマス、
ソレヲ外國ニ送リマスヤウナ場合ニハ、今
ノ法律ニ依リマスルト、政府ガ之ヲ送ル以
外ニハ、日本銀行ガ之ヲ送リ得ナイコトニ
ナッテ居リマス、尙ホ既ニ議會ニ提案致シ
テ居リマスル改正法律案デハ、國際貸借ノ
決濟ノ必要上、日本銀行自ラ送ルコトヲ認
メルヤウニ改正ヲ致サントシテ居リマスル
ガ、ソレハ全ク政府ノ指圖ニ於テ致スコト
デアリマシテ、全ク金ニ關シマシテハ、政
府ノ認可或ハ命令ニ依ッテノミ金ガ動ク、サ
ウデナケレバ動ケナイ、斯ウ云フ狀態ニ
ナッテ居リマス、日本銀行其モノヽ構成機
能ガ國家的デアリマス上ニ、金ニ對シテハ
特ニ左樣ナ制限ガ附イテ居リマスノデ、只
今ノ所ハ全ク國家ガ持ッテ居リマスルト同
樣ナ狀態デアリマス、サウ云フ狀態デアリ
マスルカラ、隨テ細カイコトニナリマスル
ガ、金ノ貯藏等ノ設備モ、日本銀行ノ方デ
ハ十分ニ出來テ居リマシテ、國家ノ方ハ日
本銀行ニ托シテ居リマスル爲ニ、サウ云フ
設備モアリマセヌ位デ、只今日本銀行ニ持
タシテ置キマシテ、御趣旨ノ通リノコトガ
達成出來ル、斯樣ニ考ヘテ居リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007010060X01219370319&spkNum=14
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015・松山常次郎
○松山委員 是レ以上ノコトハ大藏大臣ガ
來ラレタ時ニ質問ヲ致シタイト思ヒマスル
カラ、私ノ質問ハ其場合ニ保留致シマシ
テ、是デ打切リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007010060X01219370319&spkNum=15
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016・木暮武太夫
○木暮委員長 田川君発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007010060X01219370319&spkNum=16
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017・田川大吉郎
○田川委員 只今問題ガ出マシタカラ、其
方カラ御尋致シマス、今日本銀行ガ所有シ
テ居ル金塊デアリマスガ、金ヲ買入レテ貯
藏シテ居ルノハ、ドノ位アルモノデセウカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007010060X01219370319&spkNum=17
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018・賀屋興宣
○賀屋政府委員 調ベテカラ正確ニ申上ゲ
マスガ、今大體五億餘リ持ッテ居リマスガ、
ソレハ一匁五圓トシテ五億餘リデアリマス
カラ、倫敦又ハ紐育ニ持ッテ行クト一匁十
四圓幾ラデアリマス、現送費ヲ引イテモ十
四圓ハ確實ニアリマスカラ、ソレデ計算シ
マスト、十五億位ニナリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007010060X01219370319&spkNum=18
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019・木暮武太夫
○木暮委員長 正確ナ數字ガ分ッタラ成ベ
クソレヲ···発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007010060X01219370319&spkNum=19
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020・田川大吉郎
○田川委員 現在ノ金貨準備トシテハ幾ラ
デスカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007010060X01219370319&spkNum=20
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021・賀屋興宣
○賀屋政府委員 今一匁五圓ノ計算デハ五
億四千餘萬圓アリマス、十一年ノ十二月末
ニ、金貨ガ二億三千四百二十六萬圓アリマ
ス、金地金ガ三億九百七十六萬九千圓、是
ハ金市場價値ノ上カラ國際的ニ見マシテ
モ、全ク同樣デアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007010060X01219370319&spkNum=21
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022・松山常次郎
○松山委員 十二月末デスカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007010060X01219370319&spkNum=22
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023・賀屋興宣
○賀屋政府委員 サウデス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007010060X01219370319&spkNum=23
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024・田川大吉郎
○田川委員 今一匁五圓ト仰シヤル、ソレ
ニ對シテ實際ノ價値ハ十四圓若クハ十三圓
以上ト云フコトデスガ、此現狀ヲ何時マデ
續ケラレルノデアルカ、或ハソレニ對シテ
同ジク一致セシメナサルヤウニ改正ナサル
計畫ガアルカ、ソレヲ豫想シテ居ラレル時
機ガアルノデアリマスカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007010060X01219370319&spkNum=24
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025・賀屋興宣
○賀屋政府委員 今ノ御尋ハ、詰リ貨幣法
改正ノ時ニ形式上決リマス、貨幣法改正ト
云ヘバ、極ク簡單ニ申セバ、所謂平價切下
ヲ致シマス時期デアリマス、併シ此平價
切下ハ、何時ノ時ニ致シマスカト申シマス
レバ、是ハ各國ノ通貨狀態ガ安定致シマシ
テ、略〓此狀態デ確定シテ宜シイト云フ見据
エガ付カヌト、致シマシテモ無益デアリマ
ス、寧ロ有害デアリマス、ソレカラ又必要
モアリマセヌ、今ハ始終動クノデアリマス
カラ、動ク所ニ付テハ、始終經濟人ノ頭デ
ハ、之ヲ今ノナウナ時價ニ換算シテ見マス
レバ、大體實質上ノ見當ガ付クノデアリマ
ス、寧ロ今ハ斯ウヤッテ置キマシテ是ハ世
界的ナモノデアリマスカラ、世界的ニ略、〓
通貨安定ノ見据エガ付イタ時ニ、貨幣法ヲ
改正シテ平價ヲ切下ゲマシテ、名義上ノモ
ノト實質上ノモノト、一致サセル、斯ウ云
フコトデアリマス、詰リ外的ノ事情ガ惡イ
カラ、只今凡ソ期間デアルトカ、年數トカ
ヲ捕捉致シマスコトハ、少シ困難デアリマ
ス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007010060X01219370319&spkNum=25
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026・田川大吉郎
○田川委員 私ハ只今ノト關聯シマスガ、
赤字公債ニ戾リマス、其質問ニ入ル前ニ、
私大藏大臣ノ用ヒラレル言葉ニ斷エズ疑ヲ
持ツノデアリマス、何トカナルダラウ、何
處カニアルダラウ、心配ハナイ、斯ウ仰セニ
ナルコトハ、議會デ承ル言葉トシテハ正確
デナイ、正式デナイ言葉デアリマス、此處
ニ大藏大臣ハオ出デゴザイマセヌケレド
モ、銀行、會社、民間經營ノ會社ノ總會ノ
場合ニハ、サウ云フ言葉ハ使ヒ得ラレルデ
セウ、吾々ガ不案內ナガラモ考ヘテ居リマ
スル豫算制度、會計制度、ソンナモノニ照
シテ考ヘマスト、アンナコトハ議會ニ於テ
ハ聽クベキ言葉デナイヤウニ思フノデアリ
マス、サウナルト、私共ガ大藏大臣ノ言葉
ニ對シテ不審ヲ懷キ、不安ヲ感ズルヨリ
モ、寧ロ現次官ノ如キ大藏省ニ育タレテ居
ル方々ニ取ッテハ、私共ヨリ以上ノ不審ヲ感
ズベキデハナイカト思ッテ居ルノデアリマ
ス、是ハ御迷惑デモアリマセウケレドモ、
ソレヨリ以上ニ議論ヲ進メマセヌ、併シド
ウゾ私共ニ不安、不滿ガアルト云フコトヲ
大臣ニ御傳へ置キヲ願ヒマス、サウシテ其
ハ赤字公債ニ對シテ御說明ナサル場合ニ、
外ノ委員ノ方ニ既ニ御答ニナッタカト思ヒ
マスケレドモ、私ノ居マシタ場合ニハ、正
確ナル御答ヲ承ッテ居ナカッタノデアリマ
ス、公債ヲ發行スルニ對シテノ資源ノ力、
資源ノ所在、斯ウ云フ各方面ニ是ダケノ豫
期セラレル力ガアルカラ安心デアル、心配
ハナイ、斯ウ云フコトヲ〓ヘテ戴ケマセヌ
カ、私共ハ素人デアル、分ラヌ、當局トシ
テ是ダケノモノハ確ニ蒐集シ得ラレルノデ
アル、ソレダケノ資源ハ存シテ居ル、ソレ
ダケノ資力ハ存シテ居ル、ダカラ一々ニハ
細カニ之ヲ列擧スルコトハ出來ナイマデ
モ、安心ヲシテ居ルノダト仰セニナル根據
ヲ御示シ下サイ、ソレヲ凡ソ此方面々々ニ
ソレダケノ資源ノ存在ヲ認メルト〓ヘテ下
サルコトハ出來マセヌカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007010060X01219370319&spkNum=26
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027・賀屋興宣
○賀屋政府委員 只今ノ御尋デアリマスル
ガ、國債ノ應募資源、是ハ廣ク考ヘマシ
テ、社債ノ應募資源、民間ノ株ノ拂込資源、
其外所謂投資的ノ資金ノ需要ニ付キマシテ
ハ、是ハドウモ私共ガサウ云フコトヲ申上
ゲルノハ、少シ生意氣ノヤウデアリマスル
ガ、實際疑問デアリマス、昭和七年頃カラ
十年、十一年頃マデニハ、實ハ資源ハナカッ
タノデアリマスルガ、アノ場合ニハ公債ヲ
出スト資源ガ出來タノデアリマス、ト申シ
マスノハ、結局此金ノ本ハ物ナノデアリマ
ス、アノ際ニハ色々ナ意味ニ於テ、日本ノ
生產力ト云フモノ、生產設備ト云フモノ
ハ、休止シテ居フタモノガ多イノデアリマ
ス、サウ致シマシテ通貨ヲ出シマスト云フ
ト、ソレデ政府ガ日本銀行カラ公債ヲ引受
ケサシテ、ソレデ札ヲ貰ッテ、其札ヲ出シテ
物ヲ買ヒマスト、サウ云フ休止シタ生產設
備ガ、直接ニ又政府カラ其金ヲ受取ッタ
者ガ、又物資ノ需要ヲ起シマシテ、間接ニ
ソレガ動イテ參ル、動イテ參ル場合ニ、其
原料、材料ニハ國內ノ物モ相當使ハレマス
ルガ、更ニ輸入ニ仰イダ物モ相當アリマス、
所ガ一方ハ爲替相場ノ關係、金ノ輸出禁止
以來日本品ノ生產費ノ「コスト」ガ、外國品
ニ比ベテハ非常ニ安イ結果ニナッテ居リマ
ス、色々昭和四五年來生產ノ合理化サレマ
シタコトガ集ッテ、輸出ガ非常ニ旺盛デアリ
マス、隨テ外國カラ輸入スル所ノ物資ニ對
シテ支拂フ手段ヲ持ッテ居リマス、ソレヲ合
セテ設備ト資源ト兩方ヲ活用スルヤウナコ
トニ出來マシタ、一方資源、物資ノ方、原料
ノ方ハ、輸出貿易ガ與ヘタ資源ガ主デアリ
やく、左樣ナ譯デ、無カラ有ヲ生ジタ譯デ
ハアリマセヌガ、其コトヲシナクテモ、
定ノ國債應募資金ト云フモノハ、市場ニ何
億アルト云フ狀態デハナイ、ソレガ出タ爲
ニ、サウ云フ生產活動ガ起リ、國民所得ガ殖
エテ、ソレニ依ッテ日銀ノ公債ガ又買ハレ
タト云フ風ニ、或ル意味デ力ヲ其モノガ增
加シテ參ッタコトニナリマス、ソレガ稍〓飽
和點ニ近クナッタノデアリマセウ、昨年デモ
非常ナ大キナ豫算ガ編成サレタト云フノ
デ、色々ナ物價ノ先高ノ思惑、輸入ノ思惑
ト云フコトガ起リマシタノハ、大體ノ飽和
點ニ達シテ居ルカ居ナイカ分リマセヌガ、
達シタ如ク考ヘラレテ、輸入思惑ナドガ起
ルト云フヤウナコトガ考ヘラレル、サウナ
リマスト、今ノヤウナ流儀デ公債ヲドンド
ン出シテヤルト云フコトハ、資力ノナイ所
ニ唯札ダケ出ルノデアリマスカラ、ソレハ
モウ金ノ形ニ於テハ資源ハアリマセウガ、
物ノ形ニ於テナイト云フヤウナ所ニ、段々
七年、八年カラナッテ來タ、斯ウ云フコトニ
ナリマス、ソコデ所謂生產力ノ涵養ト云フ
コトガ、近來非常ナヤカマシイ議論ニナッ
テ居リマス、サウ云フ狀態デアリマスノ
デ、今マデ程度ノモノハ、七億前後八億位
ノモノハ、サウ困難ナク是ハ行クト思フ、
ソレニハ今申シマシタ通リ、輸出貿易ト云
フモノハ重要デアリマスガ、是モ爲替ノ低
落其他ニ依ル輸出貿易ノ進展力ト云フモノ
ハ、モウ一應材料ガ出盡シテ、是レ以上ノ
遞增的增加ト云フモノハ餘リ期待出來ナク
テモ、今マデ程度位ノモノハ維持出來ル、尙
ホ相當ノモノハ進出スル、其進出力ハ昭和
七年、八年、九年ニ於ケル如キ程度デハナ
イト云フ狀態ダラウト思ヒマス、又或ル一
年ニ於テハ、產業資金ガ餘計要レバ、或人
公債ガ賣レナイト云フコトモアリマセウ
ガ、是ハ大體論トシテ宜イト思フ、私共モ
每年々々出シタ公債ガ全部賣レルト云フ必
要ハナイ、ドウセ數年、十年、モット掛カル
仕事デアリマス、大體ニ於テ行ケレバ宜
イ、多少全體ノ經濟力モ發達シナケレバイ
ケマセヌカラ、通貨ノ需要數量モ殖エマス
ノデ、多少日本銀行ノ公債ノ賣レナイモノ
ガアッテモ、場合ニ依ッテハ寧ロ其方ガ適當
デアル、ドウセ經濟活動ハ伸ビルノデアリ
マスカラ、伸ビルニ應ジテ適當ナ通貨ノ量
ガ要ル譯デアリマス、ソレモ宜イト思ヒマ
ス、結局色々問題ガ起リマスノハ、昭和七
年以後ズン〓〓ヤッテ參リマシタノデ、大體
ニ於テ飽和點ニ近クナッタ、其飽和點ハ、最
モ率直ニ申上ゲレバ、私共モ分リマセヌ
ガ、物資ニ依ッテ違フノデス、例ヘバ鐵ナラ
鐵ハ飽和點ニ來テ居ルガ、外ノ物資ハマダ
マダ國內需要ガ增加シテモ一向構ハナイモ
ノモアリマセウ、是ハ物資每ニ論ジナケレ
バナラヌ、生產力ノ個別的ニ付テ論ジナケ
レバナリマセヌ、ソレデスカラ、今マデハ
サウ云フコトヲ考ヘナイデ漠トシテヤッテ
來タガ、是カラハ工夫ヲ廻ラシテ生產力ノ
擴張ヲヤッテ參レバ、相當行ケルト思フ、例
ヘバ燃料ニシマシテモ、色々自給的ノ方法
ヲ講ズレバ、ソレダケ國際貸借ノ支拂モ減
ルトカ、鐵鑛ニ關シマシテモ、ドウセ鑛石
ハ輸入シナケレバナリマセヌガ-滿洲ア
タリデ出レバ又別デアリマスガ、少クトモ
銑鐵、鋼材ノ輸入モ、相當「チエック」出來
ルト云フヤウナ見込ガアリマスカラ、之ヲ
段々ヤッテ行ケバ、今以上ニ公債消化力ト云
ヒマスカ、國家的消費、國家ノ財政的消費
モ漸次增加シ得ル、斯ウ云フコトハ言ヘル
ト思ヒマス、ソレヲ公債デ取ルカ、租稅デ
取ルカノ問題デス、租稅デ取ル方ガ財政的
ニハ一番始末ガ宜イノデアリマスガ、是ハ
又產業其他ノ關係ガアリマスカラ、サウ無
理ハ行カヌ、經濟、金融ノ運行ハ公債デ取ル
方ガ滑カニ行ク、大體サウ云フ風ニ考ヘテ
居リマスガ、ソレハ又數字ノ上カラ申シマ
スト、是ハ色々ナ見方モアリマスガ、普通
能ク言ハレマス銀行預金ノ增加デアルト
カ、郵便貯金ノ增加デアルトカ、金錢信託
ノ增加デアルトカ、保險ノ責任準備金ノ增
加デアルトカ、斯ウ云フヤウナ數字ノ上カ
ラ持ッテ參リマシテモ、色々ナ計算方法ガア
リマスガ、昭和八年ニ於テハ十七八億殖エ
テ居ル、九年ニ於テハ十九億或ハ二十億、十
年ニ於テハ二十億或ハ一一十一億、此數字ノ
取リ方ハ、嚴密ニ申シマスト、銀行預金ノ
中デモ二重ニナッテ居ルモノモアリマスシ、
色々アリマスカラ、正確ナコトハ言ヘマセ
ヌガ、今申上ゲタヤウニ、マア每年遞增的
ニ殖エテ居レバ、十一年アタリハ左樣ナ計
算ヲ致シマスルト、餘程大キナ數字ガ出ル
ト思ヒマス、ソレデアリマスカラ、( 〓〓
餘リ增加スルト云フコトガアリマセヌ限リ
ハ、相當ハ行ケルト思ッテ居リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007010060X01219370319&spkNum=27
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028・宮澤胤勇
○宮澤(胤)委員 今ノ昭和七年カラ八年、
九年頃ニ掛ケテ公債ヲ發行シタモノガ、色
色ナ休遊設備ヲ動カシテ、ソレガ生產擴張
ニナリ、財界ヲ活動サシテ、國民所得ヲ殖
シテ其公債ノ消化ヲシテ來タ、斯ウ云フコ
トハ御話ノ通リデアラウト思フノデアリマ
ス、所ガ今日ハ其ノ休遊資本モ、生產設備
モ、一切ナクナッテ、全部一パイニ働イテ居
ル、隨テ是カラ政府デ出ス色々ナ軍需品ヲ
初メ購買ニ關スル供給ハ、新シイ生產設備
ヲシナケレバナラヌ、生產資金モ要ル、斯
ウナリマスルカラ、今マデノヤウニ是カラ
赤字公債ヲ發行シテ出タ金ガ、今マデノヤ
ウナ工合ニナッテ來ルト云フコトハ、非常ニ
事情ガ違フト思ヒマス、又寧ロ逆ニ赤字公
債ノ資源トナルベキモノヲ、其生產活動資
金ノ方ヘ持ッテ行ク結果ニナルデハナカラ
ウカト思フノデアリマス、隨テ今日ニ於テ
ハ只今御話ニナッタ、銀行ニ餘裕金ヲ增シテ
行クモノトカ、或ハ信託會社トカ、或ハ生
命保險ノ責任準備金トカ、郵便貯金トカ、
サウ云フモノハ數字ノ勘定ノ仕方ハ、只今
御話ノヤウニ、色々重複スルモノモアリマ
セウガ、大體ソレヲ目安ニ見テ行カナケレ
バナラヌ、サウシテソレガ今後更ニドノ位
增シテ行クカト云フコトモ、凡ソノ見當ハ
付キマセウガ、サウ云フヤウナコトニ付
テ、一ツノ目安ガ今日ハ出來ル場合ニ私ハ
ナッテ居ルノデナカラウカ、斯ウ云フヤウ
ニ考ヘルノデアリマスガ、其大體ノ目安カ
ラ、例ヘバ滿洲ニドノ位行クトカ、株式ノ
拂込ガドノ位アルトカ-株式ノ拂込ノコ
トハ別トシマシテモ、社債ハドノ位アル、或
ハ公債ハドノ位、地方債ハドノ位取ルト云
フヤウナ、凡ソノ目安ガナケレバナラヌト
思ヒマス、其點高橋財政ノ時ダケハピタツ
ト其目安ガ合ッテ居ル、丁度餘ッテ來タ金ダ
ケノ七億、八億ヲ公債ニ充テルト云フヤウ
ニ、旨ク合ッテ來テ居ルガ、其後ニ少シ其調
節ガ取レナクナッテ來タヤウニ思フ所ニ、私
共心配ガアルノデスガ、今ノ田川サンノ質
問、モ其點ヲ幾ラカ明確ニ御答辯願ヒタイト
云フコトデアラウト思フノデアリマスガ、
ソレニ付テモウ少シ具體的ニ、今ノ八年、
九年、十年ノ數字ニ付テデモ結構デスガ、
大體十二年度ニ於ケル豫想ヲ一ツ承リタイ
ト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007010060X01219370319&spkNum=28
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029・賀屋興宣
○賀屋政府委員 是ハ御許シヲ願ヘルカド
ウカ知レマセヌガ、數字モ-過去ノコト
ハハッキリ申シマスガ、今後ノ豫想ヲハッキ
リ申上ゲテ、斯ウ見テ居ルノガ違ッタカラ
危イトカ、ソコニ餘裕ガアルトカ、色々デ
アリマスカラ、ドウモ私ハ今後ノコトハ
ハッキリ申上ゲナイ方ガ宜イノヂヤナイカ
ト思フノデス、過去ノ方ハ私共大藏省デ調
ベタ數字ガゴザイマシテ、十一年度ハ二十
六億一千九百萬圓ト云フ數字ガ出テ居リマ
ス、銀行預金ノ增加ハ十一億六千四百萬圓、
郵便貯金ガ二億四千六百萬圓、信用組合資
金ガ一億六千萬圓、信託契約ガ一億三百萬
圓、預金部積立金ガ六千五百萬圓、保險ノ責
任準備積立金ノ增加ガ四億三千四百萬圓、
官業共濟組合剩餘金等ト、斯ウ云フヤウニ
出シテアリマシテ、何處デモ斯ウ云フモノ
ハ推測デスガ、是ハ實際出シマシテモ幾ラ
カ違フノデシテ、民間ノ誰ガ見テモ能ク分
ラヌト思ヒマス、ソレデスカラ私共ハ大體
資本ノ增加ハ、日本ハ三十億「レベル」マデ
ニ來テ居ルト思フ、是ガ今後ドウナルカト
云フコトヲ、ハッキリ申上ゲルコトハ實ハ
必要デアル、又政府トシテ親切ナヤリ方ダ
ト思ヒマスケレドモ、政府ガドウ見テ居
ル、ソレガ違ッタ、ドウト云フコトガ起ルノ
モ如何デスシ、又是ハ違フモノデアリマス
カラ、今年ヲドウ見テ居ルト云フコトヲ申
上ゲルコトハ、一寸御許シヲ願ヒタイ、ソ
レカラ私ノ申上ゲルコトハ、大體宮澤サン
モ御肯定下サッテ居ルノデスガ、今後公債ヲ
出セバ出ス程、ソレガ旨ク廻ルト云フコト
ハ難カシクナッタト云フコトハ、是ハ誰人
モサウ思フ、但シ絕對ニサウカト申シマス
ト、私モ能ク分リマセヌガ、產業ノ方面、
金ノ使ヒ方ノ方面デハ、ヤハリマダ十
一年度位マデト同ジヤウニ廻ル方面モ
アルト思ヒマス、今ノ外國カラ輸入ヲスル
ヤウナ物資-鐵トカ、サウ云フモノニ付
テハ、是ハサウハ行カナイ、其前ニモ油ナ
ンカ輸入シテ居ッタノデスカラ、サウハ參
リマセヌガ、絕對ニ廻ラヌト言フノデハ
ナイ、前ト同ジヤウナ狀態ノモノモアリ
マスシ、物ニ依ッテ廻リニクイモノモア
ル、ソレカラ生產設備ニシマシテモ、到底
擴張シナケレバ追付カヌノデアリマスガ、
今ノ所ハ其程度デ、同ジ設備ニ依ッテノ能
率ヲ增加シテ行ク、サウスレバ其金ハヤ
ハリ今マデノヤウニ廻ルノデアリマスカ
ラ、ドウモ明確ニ申上ゲラレナクテ甚ダ何
デアリマスガ、ドウモ今年アタリハ其位ノ
公債ハ、サウ心配スルコトハナイ、產業資
金ノ方ヘ行ケバ、幾ラカ公債ノ賣レ殘リモ
アリマセウ、寧ロサウシタ方ガ通貨流通ガ
圓滿ナノデス、今年アタリ餘リ引緊メマス
ト、却テ產業資金ニ困ルノデハナイカ、是
ハ私ノ考ダケカモ知レマセヌガ、サウ思ッテ
居ルノデアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007010060X01219370319&spkNum=29
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030・宮澤胤勇
○宮澤(胤)委員 ソレデ結構デアリマス、
サウスルト只今ノ十一年度ノ凡ソ二十六億
圓ト云フモノハ、私共一寸計算シテ、十一
年度ハ二十六億圓旨ク投資ガ行ッテ居ルヤ
ウデアリマスガ、例ヘバ十一年度ノ二十六
億圓ハ、一寸考ヘマスト株式投資ガ十二億
圓社債ガ八千萬圓、赤字公債ガ約九千萬
圓個人ノ事業擴張資金、是ハ分リマセヌ
ガ、金融機關ノ貸付ヲ三〇%、四〇%ト見
マシテ三億圓位、株式會社ガ自己ノ剩餘金
ヲ再投資シタモノ、稅金トカ配當トカ色々
ナモノヲ引イテ見マスト、二億圓位出テ居
ルト考ヘル、丁度二十六億圓、昨年ハ旨ク
行ッテ居ルヤウデアリマス、之ヲ今年ニ當嵌
メルト、私ハドウシテモ旨ク行カナイヤウ
ニ思フ、ドウシテモ是ハ足リナクナル、今
ノ計算デ行キマスト、全體デ七八億圓位足
ラナクナルノデハナイカト云フヤウニ考ヘ
ルノデ、今年ノ所ハ非常ニムヅカシイヤウ
ニ思フノデアリマスガ、十一年度ハドウカ
斯ウカ行ッテ居ルトスルト、今年ハ例ヘバ株
式ノ拂込十二億圓ト云フモノガ、今年ハ滿
洲ニ參リマスカラ、十八億ニナルカ十九億
ニナルカ分ラヌト云フヤウナコトヲ勘定シ
テ行キマスト、今年ハ足リナイノデハナイ
カト思フノデスガ、其點ニ付テドウ云フ御
考デスカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007010060X01219370319&spkNum=30
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031・賀屋興宣
○賀屋政府委員 從來ノ經過カラ見マス
ト、昭和八年ガ十七億圓、ソレガ二十六億
圓デスカラ、十億圓近ク伸ビテ居リマス、
殊ニ最近ノ伸ビ方ハ相當强イノデアリマ
ス、十一年度ヨリ十二年度ハ數字トシテ餘
程多イモノダラウト思ヒマス、ソレカラ是
モ一ツノ傾向デアリマスガ、滿洲ニ投資致
シマシタモノモ、隨分還流致シマスノデ、
再投資モ出來ルト思ッテ居リマス、ドウモ民
間ノ資金需要等ノ趨勢モ、其時デ違ヒマス
カラ、一年經ッテ見テ、ドウモ結果カラ言ウ
テ、資金需要ノ方ガ多カッタノヂヤナイカ
ト云フコトガアルカモ知レマセヌガ、一方
伸ビルモノモアリマスシ、サウ心配シタモ
ノデモナイダラウト云フ風ニ思ッテ居リマ
ス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007010060X01219370319&spkNum=31
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032・田川大吉郎
○田川委員 高橋サンノ時代ニ、總括的或
ハ〓括的ト申シマスカ、凡ソ日本ガ國債ヲ
起シ得ル限度ヲ、百億圓位ニ御考ニナッタ
コトガアッタノヂヤナイデセウカ、吾々ハ
漠然ナガラモ、ソンナヤウナ御言葉ナリ、又
ソンナヤウナ意見ナリヲ、各方面デ讀ンダ
ト記憶致シテ居ルノデアリマス、又サウ云
フ標準ノ下ニ、高橋藏相ハ餘程苦心サレ
タ、或ハ軍部ヲ相手ニ鬪ハレタノデハナイ
カト云フ風ニ思ッテ居ルノデアリマスガ、間
違ヒデアリマセウカ、若シモサウ云フヤウ
十、漠然ナガラモ一ツノ標準ヲ立テソ
レヲ死守スルト云フヤウナ態度ヲ御執リニ
ナッタノダトスレバ其以後ノ當局ニ於テ
モ標準ハ違ヒマセウケレドモ、又何カノ限
度ノ御見込ガナクテハナルマイト思フノデ
アリマス、サウ云フ限度ハ立テラレルモノ
デナイカラ、考ヘナイト云フ風ニ仰セニナ
ルデセウカ、サウ云フコトモ、アノ時ハア
ノ時デアッタ、今日ハ今日トシテ別ニ考ヘツ
ツアルト仰セニナルノデアリマセウカ、其
處ヲ伺ッテ置キタイノデアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007010060X01219370319&spkNum=32
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033・賀屋興宣
○賀屋政府委員 公債ノ限度ニ付キマシテ
ハ、高橋サンモサウダト思ヒマス、私共モ
總額幾ラ以上ハイカヌト云フ風ニハ考ヘマ
セヌ、寧ロ年々ノ發行ヲドノ程度ニシナケ
レバイカヌカト云フコトヲ考ヘテ居ルノデ
アリマス、ト申シマスノハ、每年々々資本
ノ蓄積力ト云フモノガアルノデアリマスカ
ラ、每年ノ發行ガ非常ニ多クナリ過ギテ、
資本ノ蓄積ヲ非常ニ越シテシマフト、惡イ
結果ヲ生ジマスカラ、寧ロ其意味デ高橋サ
ンモ考ヘラレタモノト思ヒマス、日本ノ國
債發行總額ガ幾ラデアルト云フ風ニハ、餘
リ考ヘラレナカッタノデアリマス、此方ハ寧
ロ實ハ財政的ニ考ヘマシテ、總額ガ多クナ
ルト云フト、少クトモ公債ノ利拂ガ-償
還ハ是ハ止メラレルノデアリマスガ、利拂
ガ財政的ニ困ルト云フ場合モ考ヘラレマス
カラ、總額ト云フモノモ相當ニ考ヘナケレ
バナリマセヌガ、併シ是ハ結局經濟力ガ伸
ビテ行キ、財政負擔能力ガ增シテ行ケバ、行
ケルノデアリマスカラ、百億ニ止メルトカ、
百十億ニ止メルト云フコトハ、餘リ考ヘナ
イデ、每年ノ發行額ガ經濟金融界ヲ亂サヌ
ヤウニト云フコトデアッタダラウト思ッテ居
リマス、吾々モサウ云フ風ニ考ヘテ居リマ
ス、此限度ヲ何處ニ置クカト云フコトハ、
是ハ國民財政金融ノ上ノ大問題デアリマス
ルガ、是ハ國家全體ノ動向ノ上ニ大キナ問
題デアリマス、ト申シマスルノハ、經濟、
財政ト云フモノヲ本體ニ於テ、餘リ心配シ
ナイデ行ク爲ニハ、小サイ方ガ宜シイ、併
シ國家ノ內外ノ情勢ヲ考ヘテ、之ヲ飛躍的
ニ行クト云フ時ニハ、多少ハ無理ヲシテ
モ、全體ノ破綻ヲ起サヌケレバ、其限度ヲ
張リ切ッテ置クト云フコトガ必要デアリマ
ス、其見方ニ依ッテ其限度ハ違ッテ來ルト思
ヒマス、而シテ此限度ハ、是モ今申上ゲマ
スヤウニ、具體的ニ數字ヲ以テハッキリ言
フ譯ニハ參リマセヌノデ、國際收支ノ狀況
ガ宜シク、支拂超過モナイト云フヤウナ場
合ニハ、相當大キナモノヲ出シマシテモ、
是ハ金融ノ機構ト金融ノ操作ガ旨ク行ケ
バ、是ハ相當堪へ得ルノデアリマス、ソレ
デアリマスカラ、ドウモ是ハ數字的ニ幾ラ
ト言フヨリモ、成ベク國力ヲ培養シテ、多
キニ堪へ得ルヤウニシテ行ク、斯ウ言フヨ
リ外ナイト思ヒマス、ソレニハ國力ト云フ
モノハ、人間ノ智力、體力ト同ジデアリマ
シテ、一年ニ於テ急ニ倍ニナルトカ云フヤ
ウナコトハ出來マセヌカラ、急激ナル增加
ト云フコトハ、之ヲ避ケナケレバナラヌ
ト、斯ウ云フ風ニ大體考ヘテ居リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007010060X01219370319&spkNum=33
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034・田川大吉郎
○田川委員 只今ノ御答ハ、凡ソ豫想セラ
ル程度ノ御答デアリマシタ、大藏當局ノ近
年ノ聲明セラレテ居ル、若クハ苦心セラレ
テ居ル跡カラ考ヘマスト、私ハ私ノ持出シ
タ百億ト云フヤウナ數字ニ對シテハモソッ
ト進ンダ御說明ヲ與ヘテ下サルノデハナイ
カ、又從來ノ方針カラ考ヘテ、與ヘテ下サ
ル必要ガアルノデハナイカト云フヤウニ、
私ハ思フノデアリマス、ソレ以上ハ進メヨ
ウガアリマセヌカラ差控ヘマス、今年度ノ
問題ト云フコトヲ承リタイ、サウシテ此位
ハ差支ナイト仰セニナリマスト同時ニ、飽
和點ニ達シタヤウナ感ジヲ持ット云フ御說
明デアリマス、デ私共ニ投ゲ與ヘラレテ居
ル問題ハ、今年度限リノ問題デハナイ、今年
度ヲ基點トシテ是ハズット不足スルデアラ
ウ、若クハモット增加スルカモ知レヌト云
フ問題ヲ投ゲ與ヘラレテ居ル、此議會ニ於
テ國民ノ間ニ於ケル理解ハサウダト思フ、
ソレ故ニ今年ニ於テ、更ニ數年ノ後ノ趨
勢ヲ考ヘナケレバナラヌ必要ニ迫ラレテ
居ル、ソコニ五年計畫ハドウダ、六年計
畫ハドウダト云フコトガ起ル所以ダ、若シ
御說明ニナリマシタヤウニ、飽和點ニ逹シ
タト認メテモ、今年ハマア是デ宜カラウ、
此言葉ヲ御言葉通リニ解シマスレバ、明年
ハ氣遣ハシイ、明後年ハ氣遣ハシイ.今傳
ヘラレツヽアルヤウナ五年、六年ニ亙ル大
計畫ニ對スル、確固タル安心スベキ準備ハ
出來ツヽナイヤウダト云フ感ジヲ、私共持
ツコトニナルノデアリマス、御說明ハ私共
ニサウ云フ感ジヲ持タセナイダケノ、安心
ヲ與ヘ得ルダケノ御說明ニナッテ居ルト御
考デアリマセウカ、私共ハ現ニアナタカラ
本年度限リハドウニカヤッテ行ケルト云フ
御說明ヲ聽クノニ、政府ガ私共ノ方ニ與ヘ
ラレテ居ル斯ウ云フ間題ハ、五六年先マデ
ノ大イナル計畫ヲ與ヘラレツヽアル譯デア
ル、ソレハドウナリマスカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007010060X01219370319&spkNum=34
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035・賀屋興宣
○賀屋政府委員 ソレハ私ノ申上ゲヨウガ
大分誤ッテ居ルト思ヒマス、大分考ガ違フノ
デアリマス、飽和點ニ達スルト云フノハ、
私ハ斯ウ思ッテ居ル、昨年三十億四千萬圓近
イ豫算ガ出來タ時ニ、世間ノ人ガ飽和點ニ
逹シタヤウニ考ヘタノダ、今マデハ公債ヲ
出セバ、ソレニ依ッテ國內ノ生產ヲ刺戟シ
テ、益〓富ハ增殖サレル、斯ウ思ッテ居ッタ
ノガ、餘リニ急激ニ膨脹シマシタ爲ニ、日
本ノ今ノ經濟力デハ、此豫算デハ大キ過ギ
ル、斯ウ見ラレタ爲ニ、此世界的ノ原因ニ
基ク以上ニ物價ノ先高思惑ノ見越輸入ガ
起ッタト、私共ハ斯ウ思ッテ居リマス、必
シモ三十億四千萬圓ト云フ豫算ハ、私共ハ
飽和點ニ逹シタモノトハッキリ思ッテ居ル譯
デハナイ、斯ウ考ヘテ居リマス、ソレデ公
債ノ點ニ付キマシテハ、私ハ今年ノ公債計
畫ト云フモノハ、前內閣ヨリハ大分減リマ
シタガ、必シモドチラニ致シマシテモ、
絕對イカヌモノデハナイ、是ハ今ノヤウニ
減リマシタ方ガ適當ダト思ヒマスノハ、餘
リ急激ナ變化ト云フコトハ、極メテ好マシ
クナイノデアリマスカラ、今ノガ適當ト思
フノデアリマスガ、其意味デ飽和點ト云フ
コトヲ申シタノデ、モウ是カラハ、是レ以
上ニハ伸ビラレナイノダト云フコトハ毫モ
ナイ、マダ〓〓ヤリ樣ニ依ッテ伸ビラレルモ
ノダト思ッテ居リマス、同時ニ公債ノ點モ、
其總額トシテ是デ飽和點ニ達シタト云フ意
味デハアリマセヌノデ、年々出セルガ、年
年出セルノガ、十億出セルカ、十四億出セ
ルカ、ソコニ飽和點ト云フモノガアルト思
フ、今年ハ是ダケハ優ニ出セル、來年ハ何
億出セルカト云フト、今年位ハ惡イ事情ガ
ナケレバ出セマスガ、ソレガ十億出シテ宜
イカ、十四億出シテ宜イカ、或ハ八億ニ止メ
ナケレバナラヌカト云フ所ニ、其年々ノ飽
和點ガ考ヘラレル、飽和點ト云フ言葉ヲ使
ヘバサウ思ヒマス、其飽和點ト云フモノハ、
今後經濟力ノ發達如何ニ係ル可動的ノモノ
デアリマス釘付ケデハアリマセヌ、隨テ五
年計畫、六年計畫ニ堪へ得ルカ堪へ得ナイ
カト云フコトハ、今年ノ公債デ消化力ガ一パ
イデアルカラ、モウ出セナイト云フノデハ
アリマセヌカラ、其處ノ點ハ假ニ其意味デ
アリマスレバ、サウ云フ御心配ハ要ラナイ
ト思ヒマス、先ハ五年計畫、六年計畫以上
ニ、場合ニ依リマシテハ軍事費デナイモノ
モ、國內ノ國民生活ノ改善發達ニ使ヒタイ
金ト云フヤウニ、色々使ヒ途ガアルノデア
リマスカラ、更ニ公債ノ發行力ガ付ク、言
葉ヲ換ヘレバ、國內ニ於テ國家的活動ノ資
源力ニ依レバ、マダヤッテ行カレル、其處
ハ行過ギテハイカヌ、斯ウ云フ意味デアリ
やくろ、モウ是カラハ國債ノ發行力ハ飽和點
ニ達シテ、今後ハ衰ヘテ來ルノダ、斯ウ云
フ風ニハ考ヘテ居リマセヌ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007010060X01219370319&spkNum=35
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036・田川大吉郎
○田川委員 モウ一ツ方向ヲ轉ジテ御伺致
シマスガ、從來赤字公債ヲ以テ一切ノ不足
ヲ補塡シテオヰデニナル、ソレニ對シテ增
稅ト云フ聲ガ起ル、政府部內ニモアッタデ
セウガ、民間ニモアル、サウシテ今囘可ナ
リ巨額ノ增稅ヲ計畫セラレ、實行セラレル
ガ、公債ノ額ハ少シモ減ラナイト、斯ウ申
シテモ宜イデセウ前年、前々年度ト殆ド同
額ノ公債ヲ發行スル、將來ニ於テモ其公債
額ハ減額セラレサウナ見込ハナイ、一面、
增稅シツヽ、尙ホ一面ニ公債ヲ發行シツ
進マレルト云フコトハ、從來ノ公債ノ時分
二、公債發行ノ限度ガ未ダ明カデナイカ
ラ、增稅ニ著手スル譯ニハ行カナイト云フ
如キ意味ヲ、高橋藏相ハ說明シテオヰデ
ニナル、私モ至當ノコトダト考ヘテ居ル、
サウ云フ理解ヲ國民ニ持タセテ居リマシタ
後ニ、此計畫デ增稅ハ行フケレドモ、公債
發行額ハ少シモ減ゼラレヌト云フ事實ヲ示
スコトハ、國民ニ安心ヲ與ヘル所以ノ道デ
ハナイ、斯ウ云フ行キ方デアレバ、政府ノ
聲明セラレル所、計畫セラレル所ノ根據
ガ、何ダカ氣遣ハシイト云フ感ジヲ、却テ
國民ニ與ヘルコトニナル虞ハアリハシマセ
ヌカ、私ハサウ云フ虞ヲ以テ、此成行ヲ見
ツヽアルトモ考ヘテ居ル譯デスガ、ドウデ
セウカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007010060X01219370319&spkNum=36
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037・賀屋興宣
○賀屋政府委員 高橋藏相時代ニ於テ、此
增稅ニ對シマスル藏相ノ考ハ、御話ノ如ク
財政ノ將來ノ見透シハ付キ惡イ狀態デア
ル、本當ノ財政計畫ト云フモノハ立タナイ、
ソレデドレダケ增稅ヲシテ行ク、公債ハド
ノ位每年發行シテ行ク、漸次斯ウ云フ風ニ
ナクナル、斯ウ云フコトニナッテ增稅計畫ヲ
立テタイト云フコトハ、是ハ財政家トシテ
當然ノ要求デアラウト思ヒマス、ソレニ加
フルニ高橋サンハ、當時ノ狀況ニ於テハ、
產業ガ昭和四年、五年、六年頃、疲弊困憊
ニ陷ッテ居ッテ、未ダ此囘復ハ十分デナイ、
所謂囘復ノ方カラ見タ際ニ於テ、其芽ヲ摘
ムヤウナモノデアル、隨テ增稅ハ少シ延シ
タイ、斯ウ云フ兩方ノ考カラ、未ダ增稅ヲ
行ハナカッタデアラウト考ヘルノデアリマ
ス、所デ一面產業ノ方面ハ、是ハマア稅ガ
課カラナイ程宜イニハ違ヒアリマセヌガ、
相當之ニ堪ヘラレルト云フ風ナ狀況ニモ達
シタト思ハレマス、斯ウ云フ點ハ、要スル
ニ狀況ノ相違ト云フコトモアリマス、判斷
ノ相違モアルカモ知レマセヌガ、狀況ノ相
違ト云フコトモアルト思ヒマス、一方財政
計畫ノ點ニ付キマシテハ、前內閣ニ於テハ、
將來ノ見透シヲ付ケラレタコトヽ思ヒマ
ス、私ハ能ク承知致シマセヌガ、將來ノ見
透シヲ付ケラレテ、サウシテ增稅スル、公
債モ凡ソ將來十億以上ハ出サナイ、尙ホ其
先ニ行ッタナラバ、逐次減少シ得ルデアラ
ウ、前內閣ニ於テハ、前藏相ハサウ云フ見
透シノ下ニヤラレタコトヽ存ジマス、併ナ
ガラ今ノ內閣、今ノ藏相ト致シマシテハ、
何サマ就任後僅ニ十餘日ニシテ議會ヲ開
キ、短時日ノ間ニ於テ、兎ニ角豫算編成ト
申シマスルモノハ、半年モ八箇月モ掛ルノ
デアリマシテ、再編成ト云フ程デモアリマ
セヌケレドモ、アレダケノ變更ヲ與フルト
云フコトハ、時間ノ餘裕カラ云ヒマシテ
モ、非常ニ大キナ仕事デアリマス、稅制ニ
付キマシテモ再檢討ヲシテ、確タルモノヲ
立テル暇ガアリマセヌ、アレダケノ臨時增
徴案ヲ作ルダケデモ、時間的ニ言ヘバ、前
內閣ノ立テラレタ財政計畫ハ、是ハ其通リ
デ宜イノカ惡イノカ、事實ガ當ッテ居ルノ
カドウダカト云フ檢討ノ暇ガナイ譯デアリ
やっと、隨テ大藏大臣ノ財政ノ將來ハ分リマ
セヌト云フコトハ、其意味デアルト思ヒマ
ス、ソレハ民間ニ居ラレタ時ハ色々考モア
リマシタデセウガ、ヤハリ內ヘ入ッテ見ナ
イト實際ハ分リマセヌ、ソレヲ檢討シテ見
ル暇ガナイノデアリマス、而モ是ガ普通ノ
時ナラバ、簡單ニ各省ノ歲出ノ後年後ノ見
込ハ幾ラ、租稅其他ノ收入ハ幾ラ、今度ノ
增稅ヲ是ダケヤレバ、差引幾ラノ公債ト云
フコトノ見當ガ付クノデアリマスガ、併シ
ソレガ容易ニ付クノナラバ、數年來高橋サ
ンモ非常ナ苦心モサレズ、又前內閣ノ計畫
ニ付テモ、非常ナ苦心ハ要ラナカッタノデ
アリマスガ、ソコガ苦心ヲ要スル實情デア
リマス、ソレナラバ增稅ヲシナイカト云
フト、ドウシテモ是ハ相當多額ノ歲出ト云
フモノハ繼續スル、兎ニ角減ルト云フコト
ハムヅカシイト云フ風ナ狀況ハ、是ハ一々
數字ヲ申上ゲナクトモ分ルコトデアリマ
ス、サウスレバ三十億ト云フ歲出ノ聲ガ掛
カル時、之ヲ二億七千萬圓減ラシマシテ
モ、二十七億幾ラト云フ時ニ、租稅ノ額ト
云フモノハ十億ニ足ラヌ、斯ウ云フ狀態デ
ハ到底イケヌト云フコトハ分ルノデアリマ
ス、隨テ將來ドウシテモ增稅計畫ヲ立テナ
ケレバナラヌト云フコトダケハ、何トシテ
モ、一々數字ヲ用ヒマセヌデモ決ッタ考デ
アリマス、サウトスレバ一年限リ暫定的ノ
增稅モ、ドウシテモヤラナケレバナラヌ、
ソレデ臨時增徵法案モ出來タコトヽ考ヘル
ノデアリマス、唯將來ハドウシテモ財政ノ
計畫ヲ立テナケレバナラヌ、其計畫ト云フ
モノハ、私ノ數字デ何億圓ノ歲出、何億圓
ノ歲入ト云フ見付ケノモノハ立テラレヌカ
ト思ヒマスガ、但シ是ハ私個人ノ考ヘデア
リマス、併ナガラ或ル一ツノ中心ヲ置イテ
斯ウ動ケバ斯ウナル、斯ウナレバ斯ウナル
ト云フ、其「プラン」ハドウシテモナケレ
バナラヌ、又立テナケレバナラヌ、斯ウ思
フノデアリマス、無計畫ニヤル增稅デナク
シテ、ソレガ一年ノ繫ギニシテモヤラナケ
レバナラヌ、斯ウ云フ判斷デアリマス、仰
セノ如ク國民トシテハ、歷代ノ內閣ノ大方
針ハ、動カナイデ眞直グ參リマスコトガ宜
シイ、其事ハ極メテ御同感デアリマスルガ、
今ノ事態ハ已ムヲ得ズノモノデアリマシ
テ、是ハ十分御察シ戴ケテ居ルト思ヒマ
ス、實情ノ變化デモアリマスノデ、只今ノ
場合國民ニ明確ナル囘答ヲ與フルコトハ出
來ナイト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007010060X01219370319&spkNum=37
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038・木暮武太夫
○木暮委員長 アナタノ區切ノ宜イ所デ本
日ハ終リタイト思ヒマスガ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007010060X01219370319&spkNum=38
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039・田川大吉郎
○田川委員 モウ少シ殘ッテ居リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007010060X01219370319&spkNum=39
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040・木暮武太夫
○木暮委員長 本日ハ是デ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007010060X01219370319&spkNum=40
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041・小谷節夫
○小谷委員 一寸外務省ノ方ガ居ラッシヤ
イマスカラ、資料ヲ一ツ御願シタイト思ヒ
やく、ソレハ陸軍トカ海軍デハ、大佐トカ
少將トカ云フヤウナ所デ、非常ニ有爲有能
ノ人デモ豫備ニナル人ガ澤山アル、外務
〓省ノ關係デハ、愈~功成リ名遂ゲタ人ノ以外
ニ、豫備ニナルヤウナ人ガ餘リナイト思
フ、ソシテ一面ニハ三丁目一番地ト云フヤ
ウナ聲ガ頻リニアルノデスガ、御迷惑デモ
此十年間位ノ間ニ、高等官三等以上位デ宜
シウゴザイマスガ、圓滿ニ退職セラレタ
人、ソレカラ不圓滿ニ退職セラレタ人、尙
ホ此間堀內サンノ言ハレタ自由任用デ、大
使ヤ公使ヲ採ラレタコトガアルカドウカ、
又特別任用デ何人位採ッテ居ラレルカ、サウ
云フ表ヲ一遍作ッテ見テ戴キタイト思ヒマ
ス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007010060X01219370319&spkNum=41
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042・木暮武太夫
○木暮委員長 ソレデハ本日ハ是デ散會致
シュー
午後零時十七分散會発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007010060X01219370319&spkNum=42
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