1. 会議録本文
本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。
-
000・会議録情報
付託議案
絲價安定施設法案（政府提出）
絲價安定施設特別會計法案（政府提出）
—————————————————————
會議
昭和十二年三月三日（水曜日）午前十時二十分開議
出席委員左の如し
委員長 紫安新九郎君
理事 小山邦太郎君 理事 横川重次君
百瀬渡君 最上政三君
粟山博君 篠原義政君
森幸太郎君 青木精一君
山崎釼二君 平野力三君
出席國務大臣左の如し
農林大臣 山崎達之輔君
出席政府委員左の如し
農林省蠶絲局長 井野碩哉君
本日の會議に上りたる議案左の如し
絲價安定施設法案（政府提出）
絲價安定施設特別會計法案（政府提出）発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007011331X00419370303&spkNum=0
-
001・紫安新九郎
○紫安委員長 是ヨリ會議ヲ開キマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007011331X00419370303&spkNum=1
-
002・百瀬渡
○百瀨委員 御質問申上ゲルニ先ダッテ御
斷リヲシテ置キマスガ、私近來齒ヲ損傷シ
テ、私ノ申上ゲルコトガ御聽取リ惡イカト
思ヒマス、ドウゾ······先日モ御尋致シマシ
タノデアリマスルガ、本法ノ施設卽チ絲價
安定ノ目的ヲ達成シマスニハ、本法ダケノ
施設デハ、完全ニ其目的ヲ達成スルコトガ
出來ナカラウト考ヘラレルノデアリマス、
結局蠶絲業關係ノ全面ニ亙ッテ生產統制ノ
發展ニマデ及ボサナケレバ、其目的ヲ期ス
ルコトハ難イト思ヒマス、此點ニ於キマシ
テ政府當局ニハ其用意ヲ必要トスルノデア
リマスルガ、現在ニ於テ其用意アリヤ如何
ト云フコトデアリマス、就中是ハ前委員若
クハ本會ノ質問ニモアッタノデアリマスル
ガ、桑園ノ整理、普通蠶種ノ國家管理、此
二ツノ點ハ最モ蠶絲業ノ經營ノ基準トナル
ベキモノデアリマスルカラ、之ニ向フテ生產
統制ヲスルト云フ用意ガ今カラ必要デア
リ、更ニ切實ニ言フナラバ、本法ト竝行シ
テ施設スル必要ガアリハシナイカト存ズル
ノデアリマス、私ハ特ニ普通蠶種ノ國家管
理、此急要ヲ痛切ニ考ヘラレルノデアリマ
スガ、昭和五年度ニ於ケル普通蠶種ノ過剩
〓種ノ割合ハ、三九·八%ト相成ッテ居リマ
スルガ、是ハ統計ノ示ス所デアリマスルガ、
更ニ最近昭和十年度ノ過剩蠶種ハ、四九·一
%ト云フ工合ニ增大シテ居ルノデアリマ
ス、今之ヲ昭和十年ノ蠶種販賣價格一瓦十
五錢ト致シマスル時ニハ、過剩蠶種ノ價格
ダケデモ實ニ七百八十八萬四千六百餘圓、
斯樣ナ莫大ナル金額ガ產出サレル譯デアリ
V-V.此過剩蠶種ノ大部分ハ、全ク掃捨テ
ラレル所ノモノデアリマシテ、何等成繭ト
シテ役立タナイモノデアリマス、中ニ或ハ
此過剩蠶種ノ爲ニ、思惑ノ增掃、卽チ養蠶
家ニ對シテ思惑的ニ增掃ヲサレルト云フヤ
ウナコトモ餘儀ナクセラレマシテ、其結果
繭ノ價格ノ下落ノ原因トナルヤウナコトガ
決シテ少クナイト思ハレルノデアリマス、
此過剩ノ場合ニ於キマシテハ、隨テ國家經
濟ノ上カラ見マシテモ非常ナル損失トナル
譯デアリマス、此過剩ノ蠶種ニ費ス所ノ、
生產費ヲ普通蠶種ノ管理ニ依リマシテ、優
良ナル蠶種製造ニ振向ケルコトガ出來タト
致シマスルナラバ、所謂養蠶家ノ養蠶經營
ノ上ニ於テ安定ノ一助トナリ、農村救濟ノ
一方策ダトモ言フコトガ出來ルノデアリマ
ス,政府ハ斯ル見地ニ基キマシテ、普通蠶
種ノ國家管理ヲ急速ニオヤリニナルト云フ
御用意ガアリマスカ、ソレニ對スル御方針
ヲ率直ニ承リタイト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007011331X00419370303&spkNum=2
-
003・井野碩哉
○井野政府委員 只今百瀨委員ノ御質問ノ
通リ、今後ノ我國ノ蠶絲業ト致シマシテハ、
段々ト生產ノ全面的統制ノ方面ニ向ッテ、色
色ノ施設ヲ進メテ參ラネバナラヌコトハ御
所感ノ通リデアリマス、本法律ダケデ十分
其目的ヲ逹シ得ナイコトモ、吾々當局トシ
テハ認メテ居ルノデアリマス、併シ何分ニ
モ蠶絲業ノ業態ガ非常ニ多岐ニ亙ッテ居リ
マスカラ、全面的統制ト云フ事柄ハ、言葉
ハ簡單デアリマスルケレドモ、實行ノ上ニ
於テハ色々難點ヲ伴ッテ居ルノデアリマス、
隨テ農村當局ト致シマシテモ、蠶絲業ノ更
生刷新ノ爲ニ昭和八年ニ三大目標、卽チ本
會議デ大臣ガ御述ベニナリマシタヤウニ、
優良品ノ廉價生產、繭絲類ノ生產及ビ販賣
ノ統制、繭絲類ノ需要增進、此三ツノ目標
ヲ定メマシテ、ソレ〓〓具體的施設ヲ之ニ
適應シテ今マデ立案シテ參ッタノデアリマ
ス、本案モ其重要ナル一ツノ具體案デアリ
マシテ、是等ノ具體的施設ガ段々ト樹立實
行サレテ參リマスレバ、全面的統制ニ向ヒ
マシテモ、餘程進ンダル施設ガ出來上ッテ來
ルト考ヘマス、併シ尙ホ色々殘サレタ問題
トシマシテ、只今御話ノ普通蠶種國家管理
ト云フ問題モ起ッテ來ルト思ヒマスガ、唯今
御述ベニナリマシタ過剩蠶種ノ問題ハ、普
通蠶種ガ國家管理ニナリマセヌデモ、原蠶
種ノ國家管理ガ施行サレマスト、餘程其點
ハ減ッテ來ルノデアリマス、ト云フノハ原蠶
種ノ種類ガ三百前後アル譯デアリマスガ、
其非常ニ多種ナ原蠶種ガ民間ニアルト云フ
コトガ、過剩蠶種ヲ生ズル大キナ原因ニナツ
テ居リマス、然ルニ原蠶種ノ國家管理ニナ
リマスレバ、原蠶種ヲ十數種ニ限定シテシ
マヒマスカラ、隨テ民間、卽チ養蠶家ノ之
ニ對スル要望スベキ蠶種ノ種類ハ、非常ニ
減ッテ來ル譯デアリマス、其爲ニ豫メ蠶種製
造者トシテ用意ヲ致サナケレバナラヌ蠶種
ノ種類ガ減ッテ參リマスカラ、茲ニ過剩蠶種
ト云フモノハ自然非常ニ減ッテ來ルト云フ
コトハ御諒承願ヘルト思ヒマス、デアリマス
カラ原蠶種ノ國家管理ハ、一般ニハ十五年
度カラ實施サレルコトニナリマスガ、其實
績ヲ見マスレバ、必ズヤ只今御話ノヤウナ
三四十「パーセント」モ過剩蠶種ガ生ズルト
云フコトハ、全然無クナルト私共ハ信ジテ
居リマス、併シソレ以外ニモ普通蠶種ノ國
家管理ト云フモノハ、或ハ蠶種ノ生產統制
ノ方面カラ、又其他ノ方面カラモ必要デア
ラウト思ヒマスカラ、目下色々其具體案ニ
付テノ〓究ヲ重ネテ居リマス、隨テ原蠶種
管理法ノ實施ノ成績ヲ見マシテ、其必要ニ
應ジテ立案シテ參リタイト考ヘテ居ル次第
デアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007011331X00419370303&spkNum=3
-
004・百瀬渡
○百瀨委員 原蠶種ノ國家管理ガ昭和十五
年度カラ完全ニ實施サレルノデアリマスカ
ラ、普通蠶種ノ過剩ヲ生ズル虞ハナイ、斯
樣ニ御說明ニナリマスケレドモ、原蠶種ノ
管理ノ目的ト普通蠶種ノ管理ノ目的トハ、
其目的ガ自ラ異ッテ居ルノデハナイカ、卽チ
只今ノ御說明ノ中ニモアリマシタ通リ、原
蠶種ノ國家管理ハ、雜駁ナル所ノ幾多ノ種
類ヲ整理シテ卽チ優良種ニ統一シテ、蠶絲
業ノ謂ハヾ經營ヲ單純化スル、斯ウ云ッタ方
面ノ役割ヲスルモノデアッテ、普通蠶種ノ國
家管理ハ生產モ或ル程度ニ制限スルコトモ
アリマスガ、大體ノ目的ハ優良ナル蠶種ヲ作ッ
テ養蠶家ノ蠶種ニ對スル不安ノ念ヲ一掃
セシメル、卽チ養蠶家ニ蠶作上ノ安定ヲ與
ヘル、斯ウ云フコトガ目的デアリマスカラ、
ヤハリ原蠶種ノ雜駁ナル種類ヲ整理スルト
共ニ、其原蠶種ヨリ生ジタ所ノ普通〓種ヲ
成ベク優良蠶種ニ限定セシメテ、之ヲ一般
養蠶家ニ供給スルト云フコトニナラナケレ
バナラヌノデアリマスカラ、其點カラ申セ
バ普通蠶種ヲ國家管理ニシテ、或ル程度ニ
於テハ法制上カラ之ヲ生產制限ヲシ、一面
カラハ優良ナル所ノ普通蠶種ヲ供給セシメ
ルト云フ方途ニ出ヅルコトガ宜シイト思フ
者デアリマス、私ハドウシテモ今日ノ如ク、
殊ニ一昨年、卽チ昭和十年度ノ如キ過剩蠶
種ノ出來マス現狀ニ鑑ミルト、國家管理ガ
最モ必要デアルノデハナイカ、否急ヲ要ス
ル施設デアリハシナイカト云フコトヲ痛感
スルノデアリマス、成程政府ニ於キマシテ
ハ、此蠶絲業ノ共同施設組合ノ設立ヲ慫慂
致シマシテ、中小業者ノ共同ニ依ッテ蠶種業
者ノ經營上ノ改善ヲ促シ、優良蠶種ノ普及
徹底ヲ圖リ、サウシテ大企業ノ形態ニ對抗
セシメル所ノ策ヲ立テヽ居ラレマスガ、今
日ノ如キ狀態デハ、中々中小業者ノサウシ
タ經營ヲ俟フテ、ソレカラ優良蠶種ノ配付ヲ
期待スルコトハ、洵ニ待遠イヤウナ感ジガ
致スノデアリマス、政府ハ急ニ之ヲスル必
要ガナイト云フ別個ノ御考ガアルナラ、ソ
レヲ伺ヒタイ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007011331X00419370303&spkNum=4
-
005・井野碩哉
○井野政府委員 過剩蠶種ノ問題ニ付キマ
シテハ、先程申上ゲマシタヤウニ原蠶種ノ
國家管理ニナリマスレバ、極メテ優良ナル
蠶種十數種ニ限ラレルノデゴザイマスルカ
ラ、隨テ優良蠶種ニ付テノ統制上、普通蠶
種ノ國家管理ヲ急グト云フ必要ハ餘リ感ジ
テ居ラナイノデス、併シ唯〓種製造者ハ今
御話ノ通リ四五千人居リマシテ、之ニ向ヲテ
共同施設組合ノ奬勵ヲ致シテ居リマスル
ガ、是モ無論短時日ノ中ニ多數ノ成立ヲ見
ルコトハ困難デゴザイマスルカラ、販賣上
ニ於ケル所ノ色々ノ統制施設ノ必要ハ認メ
テ居ルノデアリマス、併シ之ヲ國家管理ノ
形式デ、普通蠶種ノ販賣統制ヲ行フノガ宜
イカ、又或ハ自治的ナ色々ノ手段ニ依リマ
シテ進メテ行クノガ宜イカト云フコトニ付
テハ、色々ノ議論ガアルノデアリマス、マ
ダ何分ニモ原蠶種ノ國家管理ガ實際ノ效果
ヲ發揮シテ居リマセヌカラ、其效果ノ發揮
ヲ見マシテ、尙ホソコニ足ラザル所ガアレ
バ、普通蠶種ノ國家管理マデ進ムノガ宜イ
ノデハナイカ、苟モ國家ガ一ツノ產業ノ統
制ヲ致シマスニハ、濫リニ私共ハ發動シテ
ハイカヌト思ヒマス、能ク事態ヲ究メテ、
其必要ガアリマスレバ國家ノ力ヲ以テ統制
ヲ加ヘテ行クノガ宜カラウ、併シ出來ルダ
ケハ業者ノ自治ヲ以テ進ムコトガ宜イノデ
ハナカラウカ、斯ウ考ヘテ居リマスルカラ、
原蠶種ノ國家管理ノ運用ヲヤリマシテ、普
通蠶種ノ國家管理ノ問題ニ入リタイ、斯ウ
考ヘテ居ル次第デアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007011331X00419370303&spkNum=5
-
006・百瀬渡
○百瀨委員 原蠶種ノ國家管理ノ成績ノ分
ラヌ中ニ、普通蠶種ノ國家管理ヲスルコト
ハ、早計ニ失スルト云フヤウナ御意見デア
リマスルガ、私ノ理想カラ言フナラバ、原
〓種ト同時ニ普通蠶種ノ國家管理ヲスルノ
デナケレバ、決シテ萬全ニ蠶種方面ノ改善
ハ期待スルコトガ出來ナイ、斯樣ニ考ヘテ
居ルノデアリマスガ、併シ政府ニ於テサウ
シタ御用意ノアルモノトシテ、マア此程度
デ此問題ニ付テハ質疑ヲ中止シテ置キマス
モウ一ツ御尋シタイコトハ、昨日モ他ノ
委員カラ御話ガアリマシタガ、產繭ノ生產
費デアリマス、產繭ノ生產費ニ對スル所謂
現金支出、自給費ノ基準ニ付テハ、私モ養
蠶家ノ立場ヲ稍〓無視シタル傾向ニアルヤ
ウニ思ハレルノデアリマスガ、其繭ノ生產
費ニ付キマシテハ、全縣一樣デハナイノデ
アリマシテ、其產繭ノ所謂主要府縣トモ申
サレマスル長野トカ、或ハ山梨トカ、或ハ
群馬トカ、福島トカ、愛知、岐阜ト云フヤ
ウナ主要府縣ハ勿論ノコト、各府縣ニ依ッテ
氣候風土ヤ四圍ノ狀態ガ非常ニ異ッテ居ル
關係上、生產費モ隨テ異ル譯ナノデアリマ
ス、デ獨リ生產費ヲ算定スル基準バカリデ
ナク、軈テ生產統制ノ用意ノ必要上カラ言
ウテモ、異ル各府縣ノ狀態ヲ精細ニ調査致
シテ、サウシテ其府縣ニ適應スルヤウナ組
ミ方ヲセナケレバナラナイモノト考ヘラレ
ルノデアリマス、全國劃一的ノ基準ハ其府
縣ニ依ッテハ意外ナル所ノ憂ヲ貽スヤウナ
結果ニ相成ルト考ヘラレマスルガ、當局ハ
是等ノ生產費ノ基準、或ハ統制上ノ根據ヲ
主要府縣ト主要府縣ニアラザル府縣トノ標
準ヲ、何等カニ依ッテ見極メテ、只今申ス期
待ニ副フヤウニ出來ル御考ヲ持ッテ御居デ
デアルカドウカ、其點ヲ御尋ネ致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007011331X00419370303&spkNum=6
-
007・井野碩哉
○井野政府委員 總テノ蠶絲對策ヲ行フ上
ニ付キマシテ、養蠶ヲ主業トシテ居ル地方
ト、之ヲ主業デナク副業的ニヤッテ居リマス
地方ト、色々其場合々々ニ依リマシテ、當
局トシテノ考モ變ヘテ行カナケレバナラヌ
コトハ、御說ノ通リデアリマス、現ニ昭和
九年ニ蠶絲恐慌ガ起リマシタ時モ、長野、
群馬其他ノ地方ニ對シマシテハ、當局トシ
テハ出來ルダケ厚ク援助ヲ致シ、其他ノ府
縣ニハ比較的、ソレ等ノ養蠶地方ニ較ベテ
薄イ援助ヲ致シテ居ルノデアリマス、本案
ノ施行ニ當リマシテモ、或ハ生產費ノ調査
等ニ當リマシテ、勢ヒ御說ノ通リノ結果ニ
ナルト思フノデアリマス、何故カト申上ゲ
マスナラバ、生產費ヲ調査シマスル養蠶農
家ヲ選ブニ致シマシテモ、其數ノ割合、卽
チ濃度ノ關係カラ長野、群馬方面ニ於テハ、
多クノ養蠶家ヲ取ッテ生產費ヲ調ベルト云
フコトニナリマスルカラ、勢ヒ其方面ノ事
情ヲ十分ニ織込ンダ調査ガ出來ルコト
思ッテ居ルノデアリマス、是等ハ本法ノ運用
ノ際ニ當局トシマシテモ十分ニ考慮ヲ致シ
タイ、斯ウ考ヘテ居リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007011331X00419370303&spkNum=7
-
008・百瀬渡
○百瀨委員 昨日一寸私ハ聽キ漏シマシタ
ガ、產繭ノ生產費ノ基準トナルベキモノ
中ニ、養蠶家ノ勞働賃銀ヲドウ云フ風ニ算
入スルカシナイカト云フ點ニ付テ今一寸承
リタイ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007011331X00419370303&spkNum=8
-
009・井野碩哉
○井野政府委員 從來ノ調査ニ依リマス
ト、農林當局トシマシテ調査シマシタモノ
ハ、養蠶實態調査ト云フモノデ、養蠶農家
ノ經濟ノ經營ノ調査ヲ致シタノデアリマ
ス、隨テ生產費調査ト云フ目的デ致シテ居
リマセィカラ、是ガ直チニ全國ノ生產費デ
アルト云フコトヲ申上ゲラレナイコトモ、
昨日申上ゲタ通リデアリマス、ソレ等ノ調
査等ニ於キマシテ、勞賃ヲドウ見テ居ルカ
ト申シマスト、桑代詰リ桑葉代、桑葉代ノ
中ニハ買桑ヲ致シタモノト、自分デ桑園ヲ
持ッテ桑ヲ採ッタモノトゴザイマス、桑園ヲ
自分デ持ッタ者ノ中デモ、其ノ勞力ヲ自ラ出
シテ居ル者モアリマスレバ、或ハ雇入レテ
出シテ居ル者モアリマス、大體勞賃ハ日雇
ヲ標準トシマシテ計算シテ居リマシテ、御
手許ニ本日差上ゲマシタ表ニ依リマシテ
モ、勞賃ガ繭一貫目ニ付キマシテ一圓四十
三錢六厘ト云フ風ニナッテ居リマス、又全國
養蠶業組合聯合會デ調ベマシタモノデハ一
圓二十二錢、帝國農會デ調ベマシタモノデ
ハ一圓三十三錢ト云フ風ニナッテ居リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007011331X00419370303&spkNum=9
-
010・百瀬渡
○百瀨委員 只今御答ノ生產費ニ付テハ尙
ホ幾多ノ私ハ疑問ヲ持チ、尙ホ御尋シタイ
事ガアルノデスガ、他ノ委員ノ御質問ノ關
係モアリマスカラ、是ハ關聯事項トシテ、
或ハ別ノ機會ヲ得テ御尋ヲスルトシテ、其
點ハ保留シテ置キマス、尙ホ本法ノ各條ニ
亙リ審議ノ上ニ付テ申上ゲタイ事モ多々ア
リマス、ソレモ其機會ニ讓リマシテ一應私
ハ是デ質問ヲ打切リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007011331X00419370303&spkNum=10
-
011・紫安新九郎
○紫安委員長 森君発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007011331X00419370303&spkNum=11
-
012・森幸太郎
○森委員 昨日來各委員ヨリ御質問ニナリ
マシタノデ、私ノ聞カントスル所ハ、大體
質疑ガ終ッテ居ルヤウデアリマスガ、尙ホ十
分ニ了解ヲ得ナイ點モアリマスノデ、或ハ
重複スル場合モアルカモ知レマセヌガ、御
尋致シタイト思フノデアリマス、マダ農林
大臣ハ御出席ニナッテ居リマセヌケレドモ、
政府委員トシテ御答辯ヲ願ッテ差支ナイノ
デアリマスルガ、農林省關係ノ三ツノ法案
ガ旣ニ議會ニ提案サレマシテ、ソレヲ吾々
審議致シマス時ニ、斯ウ云フ氣持ガアッタヤ
ウニ思フノデアリマス、是等ノ法案ハ何レ
モ完全シテ居ラナイ、肥料ノ問題ニシマシ
テモ、米ノ問題ニシマシテモ、繭ノ問題
ニ致シマシテモ、完全シテ居ラナイ、併シ此
三ツノ法案ハ、色々ト今日マデ各業者ノ摩
擦ガアッテ、紛糾ニ紛糾ヲ重ネテ來タ此三ツ
ノ法案ガ若シモ行詰ッテシマフヤウナコト
ガアレバ、今後農林政策ト云フモノハ實現
スルコトガ困難デアル、丁度溝川ニ物ガ停
滯致シテ居ル、先以テ此滯ッテ居ル物ヲ除去
シナケレバ、後カラ水ヲ流スコトガ出來得
ナイ、不完全デアル、不十分デアルガ、兎
ニモ角ニモ此三ツノ問題ハ通過シテ、サウ
シテ補强工作ハ後ヨリ、考ヘタラ宜カラウ、
斯ウ云フヤウナ氣持ガアッタヤウニ考ヘラ
レルノデアリマス、ソレデ產繭處理統制法
案ノ如キモ、決シテ當初政府ガ豫期シ、又吾
吾ガ豫期シタ效果ヲ現ハスコトニ付テハ、
其實行ノ上ニ於テ幾多ノ疑問ヲ持ッテ居ル
ノデアリマスガ、幸ニ產繭處理統制法案ガ
實現致シマシ々結果トシテ、茲ニ昨年當時
ノ附帶決議ニ基イタト農林大臣ハ本會議ニ
說明サレマシタガ、絲價ノ法案ガ提出サレ
タコトハ、吾々業者トシテ其目的ヲ達成ス
ルコトガ出來タコトヲ欣ブ者デアリマス
ガ、アノ當時ノ附帶決議ハ、今少シク積極
的ナ意味デアッタヤウニモ思フノデアリマ
ス、先般農林大臣ハアノ附帶決議ノ趣旨ニ
依ッテ、此法案ヲ提出シタト云フコトヲ、篠
原議員ノ質問ニ御答ニナッテ居リマスルガ、
甚ダ私ハ其當時ノ附帶決議ノ意思ト違ッテ
居ルヤウニモ考ヘルノデアリマス、アノ當
時ハ蠶絲業ノ窮極ノ目的トシテ、生絲ノ國
際的商品デアル以上、其生絲ヲ合理的ニ販
賣スルト云フコトデナケレバ、有ユル幾多
ノ施設ヲ行ッテモ駄目デアル、ソレデアルカ
ラ政府ハ速ニ生絲ノ販賣統制ニ對スル法案
ヲ考ヘロ、斯ウ云フ意味デアッタノデアリマ
ス、然ルニ今囘提案サレマシタノハ絲價ノ
安定施設デアリマス、此國內ニ於ケル有ユ
ル施設ニ依ッテ絲價ヲ安定シヨウ、斯ウ云フ
甚ダ消極的ノ施設ト考へルノデアリマス
ガ、此點ハ或ハ見解ノ相違ト言ハレヽバソ
レ迄デアリマスガ、私ハ尙ホ是デハ我ガ日
本ノ國ノ蠶絲業ノ根本策トシテ考ヘルコト
ハ出來得ナイ、斯樣ニ考ヘルノデアリマス
ガ、政府當局トシテ、ドウ云フ御考ヲ持ッテ
居ラレルカ、又此法案ニ依ッテ滿足サレルナ
ラバ、蠶絲業ニ對スル色々ノ施設、或ハ法
案ト云フモノハ、モウ是デ打切ラレルト云
フヤウナ氣持ガシテナラナイ、マア〓〓是
デ蠶絲業ニ對スル有ユル各般ノ施設ガ出來
タカラ、先ヅ當分蠶絲業ノ問題ハ、是デ終
リダト云フヤウナ氣持ヲ政府自身ガ持ッテ
居ラレハシナイカト云フヤウナ氣持モ致ス
ノデアリマスガ、先ヅ色々御尋スル前ニ當
リマシテ、此根本精神ト申シマスカ、此點
ニ付テ政府當局ノ御意見ヲ承リタイト思フ
ノデアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007011331X00419370303&spkNum=12
-
013・井野碩哉
○井野政府委員 只今森委員カラ御質問ニ
ナリマシタ昨年ノ特別議會ニ於ケル產繭處
理統制法御可決ノ際ニ於ケル、附帶決議ノ
御趣旨ノ點デゴザイマスガ、是ハ私共了承
致シテ居リマスルノハ、アノ當時產繭處理
統制施設ト併セマシテ、政府部內ニ輸出生
絲販賣統制調査會ト云フモノヲ設ケマシ
テ、其調査會デ一ツノ販賣統制ニ關スル具
體案ガ出來テ居ッタノデアリマス、ソレヲ其
當時併セテ提案致シマセヌ爲ニ、議會ノ御
議論トシマシテモ、產繭處理統制法ダケデ
ハ車ノ一輪デアッテ、政府ガ目下一ツノ案ヲ
持ッテ居ル販賣統制施設ヲ併セテ實施シナ
ケレバ、車ノ兩輪ヲ得ナイコトニナルカラ、
蠶絲對策トシテ非常ニ變則デアルト云フ御
議論ガ强カッタノデアリマス、其結果產繭處
理統制法ヲ御可決ノ際ニ、附帶決議トシテ
販賣統制ニ關スル具體案ヲ提出シロ、斯ウ
云フ御決議ニナッタモノト私共ハ心得テ
居ルノデアリマス、然ラバ其當時政府部內
ニ設ケマシタ輸出生絲販賣統制調査會デ出
來上ッタ、所謂販賣統制ニ關スル具體案ト云
フモノハ、ドウ云フモノデアッタカト言ヘバ
〔委員長退席、横川委員長代理著席〕
其目標トシマスル所ハ、絲價ノ安定ニアル
ノデアリマスガ、手段トシテ輸出生絲ノ販
賣ヲ、業者ノ自治的組合ニ依ッテ統制スル
コトニ依ッテ目的ヲ達シヨウト云フノガ、其
案ノ内容デアルノデアリマス、言ヒ換ヘテ
見マスレバ、業者自體ガ一ツノ組合ヲ作リ
マシテ、其組合デ最高最低ノ値ヲ決メマシ
テ、高値ニナレバ自ラ自治ノ手段ニ依ッテ之
ヲ抑ヘ、又安値ニナレバ自ラ資金其他ノ調
達ニ依ッテ、之ヲ維持スルト云フ案デアッタ
ノデアリマス、隨テ其手段トシテハ專ラ自
治的ニ致スノデゴザイマスルカラ、其力モ
比較的强クナイモノデアラウト、私共思ッテ
居ッタノデアリマス、併シ其後色々〓究シテ
見マスルト、唯ソレダケデハ完全ナル販
賣統制ハ出來ナイ、ドウシテモ茲ニ國家ノ
相當ニ强イ援助ヲ與ヘナケレバ、十分其施
設ノ達成ヲ期シ難イト云フコトヲ考ヘマシ
テ、今囘ノ案ニ於キマシテハ、其自治的統
制手段ニ加ヘマスルノニ、國家ノ援助ノ手
段ヲ用ヒマシテ、其案ヲ强力化シタ積リデ
アルノデアリマス、卽チ現在政府ノ持ッテ
居リマスル五萬俵ノ生絲ヲ以チマシテ、高
値抑制ノ手段ニ使ヒマスルシ、又米穀統制
法ト同ジヤウニ、短期證劵及ビ借入金ニ依
リマシテ、七千萬圓ノ資金ヲ用意スルコト
ニ依ッテ、安値ノ調節ガ出來ルト云フコトニ
致シマシタノハ、吾々當局トシマシテハ、
アノ當時其調査會デ立案シマシタ案ヨリ
ハ、更ニ强力ナル一ツノ案デアルト、實ハ
自信致シテ居ルノデアリマス、隨テ今囘ノ
案ヲ御協贊ヲ願フコトニナリマシタコト
ハ、アノ當時ノ附帶決議ノ御趣旨ヨリモ、
モット政府トシテハ强力ナルモノヲ作リ得
タト、斯ウ考ヘテ居ルノデアリマス、デゴザ
イマスルカラ決シテ此案ガ、アノ當時ノ附
帶決議ノ御趣旨ニ副ハナイ案デアル、或
モット生溫イ案デアルト云フ風ニハ、當局ト
シテハ考ヘテ居ラナイノデゴザイマスル
ガ、併シ今御話ノ輸出生絲ノ合理的販賣ノ
色々ナ統制ニ付テノ手段トシマシテハ、無
論此案ダケデ十分デアルトモ考ヘテ居リマ
セヌカラ、ソレハ今後出來マスル組合ノ運
用ニ依リマシテ、或ル程度ノ目的ヲ達成シ
得ルト考ヘテ居ルノデアリマス、又此案ヲ
以チマシテ全部ノ蠶絲對策ガ成レリトモ、
當局ハ考ヘテ居リマセヌ、無論將來色々ニ
施設スベキコトガ多々アルノデアリマス
ガ、大體ノ筋道、卽チ昭和八年ニ農林當局
ガ立テマシタ目標ニ向ッテノ具體的施設ノ
大筋ガ、マア大體是デ成立ツト云フコトダ
ケハ申上ゲ得ルト思ヒマス、併シマダ今後
幾多ノ〓究ヲシナケレバナラヌ問題、又ハ
施設ヲ致サナケレバナラヌ問題ガ澤山アル
コトハ、是ハモウ無論當局トシテモ考ヘテ
居リマスノデ、先程百瀨委員ノ仰セニナリ
マシタ普通〓種ノ國家管理ト云フ問題モ、
今後大イニ〓究シテ行カナケレバナラヌ、
斯ウ考ヘテ居ルノデアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007011331X00419370303&spkNum=13
-
014・森幸太郎
○森委員 尙ホモウ少シク了解ヲ得ナイノ
デアリマス、更ニ附帶決議ヨリハ一層强化
シタト仰シヤル、大分吾々ノ考ト違フノデ
アリマスルガ、是ハ議論ニ陷ルト思ヒマス
ルカラ、此程度ニ止メテ置キタイト思ヒマ
ス、次ニ今囘ノ絲價安定施設ノ本法ニ依リ
マスト、此買入レ若クハ賣渡シノ統制サレ
ル生絲ハ、輸出向ノ生絲ノミト考ヘテ宜イ
ノデアリマスルガ、二〇%ニナッテ居ル所
ノ國用向ノ生絲ヲ、ドウ云フ風ニ御考ニナッ
テ居ラレマスカ、又ソレニ關聯シマシテ絲
價安定ノ融資擔保生絲買收法ト申シマス
カ、此法案ニ依ッテ國家ガ現在手持ニナッテ
居ル數量ハ、ドノ位アルノデアリマスカ、
其中五萬俵ヲ今囘ノ施設ノ財源トシテ計上
スルト云フコトニナッテ居リマスガ、現在ハ
ドレダケノ數量ガアルノデアリマスカ、又
其品質ハ昨日ノ御答辯ニ依リマスルト、相
當ノモノデアル、色コソ惡ケレ相當ノモノ
デアル、斯ウ云フヤウナ御話ニナッタノデ
アリマスルガ、是等ノ絲ハ現在ノ橫濱、神
戶ノ生絲檢査所ノ檢査ヲ受ケテ居ラナイノ
デアリマスガ、アレヲ出庫サレテ、サウシ
テ今檢査ヲ受ケルト、ドノ位ノ格ノモノデ
アルカ、其モノハ輸出ノ可能性ハナイト私
ハ考ヘマスルガ、本法ガ輸出生絲ノ價格ヲ
統制スルコトヲ目的トシタ場合ニ、輸出向
ニ出來ナイ所ノ生絲ヲ市場ニ出シテ、以テ
價格ノ高低ヲ按排スルコトガ出來ルデアラ
ウカト云フ所ニ、疑問ヲ持ッテ居ルノデアリ
マスルガ、此保管シテ居リマスル數量竝ニ
品位、サウシテ國用向ノ生絲ノ價格安定ニ
對シテ、ドウ云フ風ナ御考ヲ御持チ三十ツ
テ居ルカ、此點ヲ御伺致シタイト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007011331X00419370303&spkNum=14
-
015・井野碩哉
○井野政府委員 今囘ノ法案ニ依リマシテ
賣買ヲ致シマスル生絲ハ、必シモ輸出向ト
ハ限ッテ居リマセヌ、併シ橫濱、神戶ノ檢査
所ノ檢査ヲ受ケタモノニ限ラウト思ヒマ
ス、是ハ品質ヲ確定シマス上ニ於テ、アノ
檢査ヲ受ケテ居リマセヌト、政府トシテモ
持ッテ參リマス上ニ於テ、種々支障ガゴザ
イマスカラ、國立檢査所ノ檢査ヲ受ケタ生
絲デアリマスレバ、必シモ輸出向ニ致サナ
クテモ、國內向トシテ使用サレルモノデモ、
取扱數量ノ中ニ入レル積リデアリマス、又
第二段ノ現在ノ政府所有ノ生絲ノ中、ドレ
ダケヲ此施設ニ向ケルカト云フコトデアリ
マスガ、全部ヲ向ケル積リデアリマス、其
數量ハ本年度末ニ於キマシテハ、大體五萬
俵前後デアラウト思ヒマス、是ハ現在マダ
賣ッテ居リマスカラ、數量ハ動キマスケレド
モ、大體五萬俵前後ト御諒承願ヒタイノデ
アリマス、此現在持ッテ居リマス生絲ハ檢
査所ノ檢査ハヤハリ受ケテ居ルノデアリマ
ス、現在ノ規則ニ依ル檢査デハアリマセヌ
ガ、此前ノ改正前ノ標準ニ依ル檢査ヲ受ケ
テ居リマス、隨テ之ヲ輸出シマス場合ニ
モ、一般ノ輸出向ニナルノデアリマスケレ
ドモ、恐ラクハ今之ヲ賣出シタト致シマシ
テモ、直チニ之ヲ亞米利加ニ持ッテ行クカ
ドウカト云フコトハ、私共モ必ズ持ッテ行ク
モノデアルトモ考ヘテ居リマセヌ、若シ假
ニ此生絲ガ五萬俵市場ニ出マスレバ、是尺
國用生絲ノ部分ニモ立派ニ代用サレマス、
隨テ或ハ外國ガ新絲ヲ欲スレバ、國用生絲
ノ中ノ良イモノガ、又輸出向ニナッテ參リマ
スカラ、隨テ此全般的ノ數量ノ中ニ於キマ
シテハ、生絲ガ出マスコトニ依ッテ、ヤハリ
海外ニ對スル輸出量ハ殖エル、斯ウ云フ風
ニ考ヘテ居ルノデアリマス、隨テ此生絲ガ
ドノ位市場操作ニ效果ガアルカト云フコト
ハ、昨日モ一寸例ヲ以テ申上ゲタノデアリ
マスガ、一昨年デアリマシタカ、昨年デア
リマシタカ、政府ガ此生絲ヲ市場ニ賣出ス
ト云フ報道ガ傳ハリマシタ時ニ、市場ハ非
常ナ詰リ脅威ヲ感ジマシテ、市價ノ暴落ヲ
シタト云フ實績カラ見マシテモ、此生絲自
體ニ相當ノ市場操作ノ威力ノアルコトハ、
業者モ認メテ居ル次第デゴザイマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007011331X00419370303&spkNum=15
-
016・森幸太郎
○森委員 次ニ御尋致シタイコトハ、價格
ヲ御決定ニナルノニ付キマシテ、生絲ノ相
場ヲ人絹ノ三倍乃至四倍ト云フコトヲ先ヅ
今日ハ考ヘテ居ル、斯ウ云フ御話デアリマ
シタガ、此人絹ノ相場ト云フモノハ、內地
ニ於ケル人絹相場ヲ御考ニナッテ居ルノデ
アルカ、或ハ又亞米利加ニ於ケル人絹相場
トシテノ御考デアルカ、ドチラヲ御考ニナッ
テ居ルカ御尋致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007011331X00419370303&spkNum=16
-
017・井野碩哉
○井野政府委員 現在生絲ニ對シマシテ人
絹ガ相當ノ影響ヲ齎ラシテ居リマス點ハ、
是ハ國內ニ於ケル市場ト海外ニ於ケル市場
ト、私共ハ常ニ區別シテ考ヘテ居リマス、
國內ニ於ケル市場ノ影響ト云フモノモ、無
論相當考ヘマスケレドモ、併シ是ハ我ガ國
民ガ生絲ニ對スル愛著心ガ强イ爲ニ、海外
ニ於テハヒドイ影響ハ受ケテ居ラナイノデ
アリマス、隨テ此生絲ノ需要擴充、或ハ需
要維持ト云フ見地カラ、人絹ヲ考ヘテ參リ
マスニハ、常ニ海外ニ於ケル人絹ノ影響ト
云フモノヲ考慮ニ入レテ居ルノデアリマ
ス、隨テ先日來申上ゲテ居リマスル賣渡價
格ノ目標ヲ、人絹ノ三倍乃至四倍ノ所ニ置
クト云フコトモ、主トシテ亞米利加ニ於ケ
ル人絹相場ヲ目標ニ致シテ居リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007011331X00419370303&spkNum=17
-
018・森幸太郎
○森委員 次ニ御尋致シタイコトハ、只今
百瀨委員ヨリ御尋ニナリマシタ政府委員ノ
御答辯ニ付テ、私モ少シク了解シ得ナイ、
今囘價格ヲ決定サレルニ當リマシテ、製絲
ノ生產費ト販賣費ヲ合シテ、之ヲ價格ノ中
ニ加算サレテ居ルノデアリマスガ、繭ノ生
產費ニ付テハ、甚ダ昨日來ノ御答辯ガ不親
切デアル、ドウモ絲價ヲ決定スルニ付テ、
繭ノ生產費ト云フモノヲ輕視サレテ居ルト
云フコトヲ、御同樣ニ考ヘラレテ居ルヤウ
ニ思フノデアリマス、是ハ能ク一ツ御考ヲ
願ヒタイコトハ、一體農產物ノ價格ト云フ
モノハ、全ク逆算的ニ決ッテ居ルノデアリ
マス、絲ノ價格ヲ決メルノニ、何處カラ其
價格ヲ決メルカト云フト先ヅ生產費ト云フ
モノヲ見、サウシテ販賣費ヲ見、ソレカラ
其生絲ガナンボ〓〓ノ相場デ賣レテ居ルト
云フ結果ヲ見テ、サウシテ第一ニ原料ト云
フモノヽ價格ヲ推定サレル、是ハ洵ニ不自
然ノヤウニ思フノデアリマス、繭ヲ生產ス
ルノニ是ダケノ桑葉ガ要ル、是ダケノ人件
費ガ要ル、是ダケノ作業保溫費ガ要ル、其
他總テノ經費ガ掛ヲテ來ル、ソレデアルカラ
繭ト云フモノハ是ダケノ價格ヲ持ツコトガ
正當デアル、此一定ノ生產費ヲ見タ繭ニ、
一定ノ加工料ヲ見、一定ノ利潤ヲ加ヘテ、
ソコニ生絲ト云フモノヽ價格ガ出來テ來
ル、斯ウ云フノガ先以テ順當ナル價格ノ算
出方法デナケレバナラヌノデアリマスガ、
農產物ト云フモノハ、米ニシロ繭ニシロ、
ドウモ結果カラ推算サレテ、其價格ヲ見積
ラレルト云フ實ニ不合理ナ立場ニアルヤウ
ニ考ヘラレルノデアリマス、ソレデ今日政
府ノ御考ニナルニ付キマシテモ、ヤハリ繭
ノ加工販賣費ト云フモノヲ、製絲ノ生產費
トシテ御考ニナッテ、サウシテ原料デアル所
ノ繭ニ對シテハ、其生產費ト云フモノヲ、
非常ニ輕視サレテ居ルト云フヤウニ私ハ考
ヘルノデアリマス、ソレデアリマスカラ此
價格ノ決定ニ依ッテ、國內ノ產繭ヲ或ル程度
ニ整理シヨウト云フヤウナコトモ、御考ニ
ナルヤウデアリマスガ、工產物ト違ヒマシ
テ、農產物ト云フモノハ、サウ自由ニ生產
ヲ制限スル、或ハ之ヲ遽ニ殖ヤスト云フヤ
ウナコトハ恐ク出來得ナイ、是ハ農林當局
モ掃立制限ヲオヤリニナッタコトガアルカ
ラ、苦キ經驗ヲ御積ミニナッテ居ルカラ御
承知ノコトヽ思フ、掃立ヲセヨ、桑園整理
シロト言ッテモ、果シテ其桑園ガ整理ガ出
來タデアラウカ、考ヘラレテ居ルコトヽ實
際トハ能ク逆ノ結果ヲ現ハシテ居ルコトガ
アルコトハ、要スルニ此原始產業ト云フモ
ノハ、左樣ニ算盤ヅクデ行カナイト云フコ
トヲ、私ハ物語ルモノデハナイカト思フノ
デアリマス、ソレニハ非常ナ缺陷ガ伴ッテ
居ル、ソレハ今百瀨委員ノ言ハレタ通リ、
普通蠶種ト云フモノヽ國家管理ガ出來テ居
ラナイ、又其原料生產ノ第一位ヲ占メテ居
ル桑ト云フモノヽ整理ガ出來テ居ラナイ、
桑園ノ國家的管理ガ出來テ、是々ノ繭ガ我
國トシテ必要デアル、此原料生產ニハ是ダ
ケノ桑園ガ要ル、サウシテ是ダケノ桑園ニ
依ヮテ極力奬勵シ、サウシテ一段步當リノ
收葉量ヲ此程度ニマデ殖ヤスト云フコトノ
目的トシテ先以テ桑園ノ整理ヲスル、サウ
シテ掃立テル所ノ普通蠶種ニ於キマシテ
モ、是ハ今百瀨サンノ言ハレタ如クニ、國
家經濟上カラ申シマシテモ、實ニ莫大ナ損
失ヲ年々繰返シテ居ルノデアル、統計ガ百
瀨サンノ御算出ト多少私ハ違フノデアリマ
スガ、昨日配付サレマシタアノ統計表ニ依
リマシテモ、九年度ノ蠶種ノ製造額ガ二億
七千二百五十七萬四千九百九瓦ノ製造デア
リマス、此昭和九年度ニ生產サレマシタ二
億七千萬ノ蠶種ガ、十年度ニドレダケ掃立
テラレテ居ルカト申シマスルト、一億五千
百十七萬六千七百二十六瓦デアリマス、約
四割五分四厘ト云フモノガ、過剩蠶權トシ
テ抛棄サレテ居ルノデアリマス、所ガ蠶種
製造業者ト云フモノハ、若シ今年ハ種ガ餘
ル、サウスレバ隨分無理ナ掃立ヲ强ヒラレ
ルノデアル、養蠶業者ハ十瓦掃ク、或ハ五
十瓦掃クト云フコトヲ豫定シテ、自分ノ桑
園能力ヲ考ヘテ、自家ノ勞力ヲ考ヘテ、豫定
シテ居リマスル掃立瓦ガ、蠶種過剩ト云フ
コトニ禍ヒサレテ殖エルノデアル、或ハ六
十瓦ニナリ或ハ七十瓦ニナッテ掃立テサセ
ラレルガ爲ニ、養蠶家ハ知ラズ識ラズノ間
ニ蠶ヲ澤山置ク、ソレデ掃立當時カラ飼育
ノ基礎ガ間違ッテ居ルカラ蠶作モ不安定デ
3アル、偶〓完全ニ發育致シマシテモ、壯蠶期
ニナッテ飼養ノ考へ違ヲ起シテ來ル、是ハ澤
山アル實例デアリマス、是ハ農林當局モ奬勵
方針上能ク御承知ニナルダラウト思フノデ
アリマスガ、斯ノ如キ普通蠶種ノ製造狀態
ヲ放任シテ置イテ、果シテ吾々ノ考ヘルヤ
ウナ統制ノアル此蠶種業ト云フモノヲ、經
營シ得ラレルダラウカト云フコトニ疑ヲ置
クノデアリマス、蠶種製造業者ガ其四割五
分モ剩ス所ノ蠶種ガ不良蠶種ナラバ宜イノ
デアリマスガ、過剩蠶種必シモ不良蠶種デ
ナイノデアリマス、不良蠶種ガ掃立テラレ
テ優良蠶種ガ過剩ニ殘ッテ居ル事實ガ澤山
アル、農林大臣ハ先般原蠶種ノ國家管理ガ
實現スレバ、品種ノ統制ガ行ハレ、ソレニ
依フテ漸次普通蠶種ノ製造モ制限シテ行ク、
斯ウ云フヤウニ御話ニナリマシタガ、ソレ
ハ多少サウ云フ風ナ傾向ニハナッテ參リマ
セウ、ケレドモ是ハ效果ガナイ、今百瀨委
員ガ言ハレタ如ク、普通蠶種ノ國家管理ト
云フコトヲ吾々ガ要望スル目的ト、原蠶種
ノ國家管理ノ目的トハ、全然違フノデアル、
是ハ政府委員モ言明サレタ如クニ、蠶種ノ
品種ヲ統制シテ行ク、優良品種十何種ニ統
制シテ行クト云フコトガ、原蠶種國家管理
ノ目的デアッテ普通蠶種ノ國家管理ヲ吾々
ガ叫ブコトハ、徒ナル努力ヲナクシテ、本當
ニ是ダケノ力ヲ、五割ノ努力ヲ餘所へ棄テ
テ居ル此努力ヲ、入用ナル蠶種ノ努力ニ使
フ、二千貫ノ種繭ヲ生產シナケレバナラナ
イ努力ヲ、一千貫ニ止メテ、サウシテ完
全ナル蠶種ヲ製造スル、サウシテ蠶作
ノ安定ヲ期スル所ノ、立派ナル普通蠶種
ヲ作リ上ゲルト云フコトガ、ドウシテモ
茲ニ統制アル國家管理ノ下ニ普通蠶種ヲ
置カナケレバナラナイ、斯樣ニ私ハ考ヘ
ルノデアリマスルガ、偶〓政府ハ曩ニ此〓種
製造ニ對シテモ、共同施設組合ヲ御奬勵ニ
ナッテ居ルノデアリマスルガ、共同施設組
合ハ相手方ノ共同的施設ヲ持ッテ居ルコト
ガ條件ト、私ハ考ヘルノデアリマス、蠶種
製造業者ガ共同施設組合ニ依ッテ施設ヲ行
フ、成程生產スル所ノ普通蠶種ハ、其統制
ノ下ニ完全ナル共同生產ガ出來テ、立派ナ
モノガ出來ルデアリマセウガ、其出來マシ
タ蠶種ガ果シテドウ云フ風ニ賣ラレルノデ
アルカ、蠶種製造業者ハ全國ガ得意デアリ
マスルカラ、長野縣ノ蠶種ガ滋賀縣ニ行キ、
滋賀縣ノ蠶種ガ兵庫縣ニ入ルト云フヤウ
ニ、其販賣ハ區々デアリマス、區々デアリ
マスルカラ、折角施設組合ニ依ッテ完全ニ統
制シマシタ蠶種ガ、其效能ヲ現ハシ、消費
サレ、掃立テラレル所ノ養蠶家ガ區々マチ
マチデアル場合ニ於テハ、折角ノ統制モ效
果ヲ現サナイ、斯ウ云フコトニナルノデア
リマシテ、原蠶種國家管理ノ施行、サウシ
テ蠶種ノ共同施設組合ノ設立ニ依ッテドウ
シテモ完全ナル蠶絲業統制ノ基礎ヲ作ッテ
行クコトハ出來ナイ、斯ウ云フコトヲ私ハ
考ヘルノデアリマス、又此桑圍ノ管理デア
リマスガ、徒ナル桑園ヲ持ツト云フコトハ、
第一繭ノ生產費ヲ高メルコトデアリマス、
サウシテ又此普通蠶種ノ今日ノヤウナ過剩
ニ苦シンデ居ルト云フヤウナコトハ、優良
蠶種ノ產出ニ非常ニ妨害ヲ致シテ居ルノデ
アルカラ、速ニ普通蠶種ノ國家管理ト云フ
コトヲ實施シテ、サウシテ各蠶絲業ノ團體
ガ、統制アル下ニ國家ノ蠶絲業ノ對策ニ邁
進スルト云フコトニセナケレバナラヌト私
ハ考ヘルノデアリマスルガ、此普通蠶種國
家管理ニ對スル御意見、又此桑園ノ統制管
理ニ對スル所ノ御意見、サウシテ絲價決定
ニ對シテ、繭ノ生產費ト云フモノヲ考ヘテ
居ラレル其考へ方ガ、根本的ニ間違ッテ居ハ
シナイカト云フ私ノ考へ方ニ對シテノ御答
辯ヲ得タイト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007011331X00419370303&spkNum=18
-
019・井野碩哉
○井野政府委員 先ヅ第一段ノ此價格決定
基準デアリマスル繭ノ生產費ノ考へ方ニ付
テ、當局ガ間違ッテ居ル考ヲ持ッテ居リハセ
ヌカト云フ御話デゴザイマスルガ、是ハ先
日來カラモ度々申上ゲテ居リマスヤウニ、
生絲ノ價格構成ト云フ問題ハ、先程森委員
ツ
ガ御話ノヤウニ、所謂逆算的ノ行キ方ニナ
テ居ル、是ハ原理カラ申シマスレバ、無論
一番初メ出來マスモノヽ生產費ヲ見テ、ソ
レニ利潤ヲ加ヘ、更ニ加工費ヲ加ヘテ販賣
値段ト云フモノガ出テ來テ、ソレニ基イテ
販賣者ガ買ッテ參リマスレバ、是ガ筋デアリ
マス、是ガ若シモ生絲ト云フモノガ必需品
デアリ、而モ競爭品ガゴザイマセヌケレバ、
需要供給ノ關係ニ於テ價格構成ト云フモノ
ガ、サウナッテ行クベキモノデアル、卽チ供
給者ノ方ガ强ク、需要者ノ方ガ多少弱イ立
場ニナリマスルカラ、サウ云フ關係ニナラ
ウト思ヒマス、所ガ生絲ニ付キマシテハ、
御承知ノヤウニ國民ノ必需品デハゴザイマ
セヌ、一種ノマア贅澤品トハ申シマセヌガ、
サウ云ッタヤウナ程度ノモノデアリ、而モ競
爭纎維ノゴザイマスモノデアリマスカラ、
是ハ寧ロ消費者ノ立場ノ方カラ値段ガ決ツ
テ來ル場合ガ多イノデアリマス、其爲ニ生
產過程ニ居リマス者ガ、多少生產費ヲ割ル
ヤウナ場合ニ於キマシテモ、尙ホ之ヲ賣ッテ
行カナケレバナラヌト云フ實情ニアルノ
ガ、今日生絲ノ特異性デアリマス、此特異
性ヲ私共ガ無視シテ、總テノ案ガ出來得ナ
イト云フコトガ、繭生產費ニ付キマシテモ、
一ツノ已ムヲ得ザル考へ方トシテ持ッタ行
キ方デアリマス、卽チナゼ製絲ノ加工費ダ
ケヲ完全ニ保障シテ繭ノ生產費ヲ完全ニ保
障シナイカト申シマスト、今申シマシタヤ
ウニ消費ノ方カラ逆算サレテ來テ、繭ノ釜
入値段ト云フモノガ決ッテ參リマスカラ、若
シモ價格構成ノ場合ニ於テ、繭ノ釜入値段
ト云フモノヲ、完全ナ生產費ヲ保障スル意
味ニ於テ構成シマスト、生絲ノ値段ト云フ
モノガ自然ニ高クナッテ參ルノデアリマス、
卽チ先日申シマシタヤウニ、假ニ四圓ノ生
產費、繭ノ一貫目ノ値段四圓ヲ保障スルト
云フコトニナリマスト、ドウシテモ生絲ノ
値段トシテ現シマス場合ニハ六百圓以上ノ
絲價ニナルノデアリマス、今日ノ情勢カラ
見テ六百圓以上ノ絲價ヲ維持スルト云フコ
トハ、如何ナル法制ヲ以テシテモ非常ニ困
難デアル、又サウ云フコトニナリマスレバ、
結局增產ヲ誘發シ、又生產費低下ノ努力ヲ
鈍ラシマスカラ、寧ロ其點ハモウ少シ低イ
絲價ニナッタ場合ニ、國家ガ或ル程度ノ大キ
ナ保障ヲ與ヘルト云フコトデ、皆業者ハ我
慢シテ貰ハナケレバナラヌト云フコトカラ
出發致シテ居ルノデアリマス、詰リサウナ
リマスト繭ノ生產費全部ヲ「カバー」致シマ
シテ、算出シタ絲價ト云フモノニハナリ得
マセヌカラ、其點ヲ法文ニ明カニスルト共
ニ、生產費ト云フモノヲ十分ニ保障スルト
云フ書キ方ニナッテ參リマスト、養蠶家家必
ズ自ラ作ッタ生產費ヲ償ヒ得ラレルモノト
云フ過信ヲ致シマシテ、色々ノ誤解ガ茲ニ
生ジマスカラ、寧ロ此點ハ然ラザル所以ヲ
明カニシテ、此程度デ一ツ我慢シテ貰ヒタ
イ、ソレデ此施設モ此程度ノ保障ヲスルニ
止マル譯デアリマス、ソレデモ現在何モ保
障ノナイ時代カラ見マスレバ、非常ニ是
ハ强イ保障ト私共ハ考へテ居リマスカラ、
此程度デ我慢シテ貰ヒタイト云フ趣旨カ
ラ、茲ニ斯ウ云フ字句ヲ用ヒタノデアリマ
シテ、此點ハ昨日來篠原委員其他ノ委員カ
ラモ色々御議論ガアリマシテ、私共能ク氣
持ハ分ッテ居ルノデアリマス、分ッテ居ルノ
デアリマスルケレドモ、寧ロ正直ニ此點ハ
養蠶農民ニ愬ヘテ、此施設ヲ實施シテ行ク
方ガ正シイノデハナカラウカト云フコトカ
ラ、斯ウ云フ風ニ致シタノデアリマス
次ニ普通蠶種ノ國家管理ノ問題デアリマ
スガ、是ガ原蠶種ノ國家管理ト自ラ目的ノ
違ヒマスコトモ、能ク私共諒承致シテ居リ
V. .次ニ過剩蠶種ノ統制ノ問題ニ付テ先
程御話ガゴザイマシタガ、過剩蠶種ノ統制
ハ大體原蠶種ガ國家管理ニナリマスレバ、
今日二三百ノ非常ニ多量ナ品種ガ整理サレ
テ數種ニナリマスカラ、隨テ過剩〓種ト云
フ問題モ自ラ解決サレテ來ル、併シ販賣ノ
上ニ於テノ統制ト云フ問題ニナリマスレ
バ、是ハ原蠶種國家管理ダケデハ無論不十
分デアリマスルカラ、普通蠶種ノ國家管理
ト云フ問題ニモ入ルノデアリマスケレド
モ、併シ普通蠶種ヲ販賣シマス上ニ於テノ
統制手段トシテ國家ガ之ヲ管理スルガ宜イ
カ、自治ニ依ッテ進ムガ宜イカト云フコトニ
ナリマスト、成ベク此營業ノ自由ト云フモ
ノハ、自治的ノ統制ニ依ッテ先ヅ進ンデ行
クコトガ筋道デアル、國家統制ニ入リマス
ニハソレデモ不十分デアル、十分ニ統制
ガ付カナイト云フ時ニ、初メテ私共ハ國家
統制ニ入ルベキモノデアル、イキナリ自治
的手段ヲ講ジナイ先カラ、國家統制ヲ無暗
ニ總テノ施設ニ行フテ行クト云フコトハ、進
ミ過ギタ考へ方デアルト云フ氣持ヲ持ッテ
居リマスノデ、原蠶種ノ國家管理ガ實施サ
レマシテ其成績ヲ見マシテ、普通蠶種ノ國
家管理ニ〓究ヲ進メテ行クコトガ筋道デア
ル、斯ウ考ヘテ居ルノデアリマス、併シ蠶
絲業ノ事情ハ始終色々ノ變化モアリマスル
カラ、普通蠶種ノ國家管理ニ付テノ〓究ハ、
今十分致シテ居リマス、必要ガアレバ何時
デモ此制度ヲ立テ得ル用意ハ出來テ居リマ
スケレドモ、今直チニ之ヲ行フ積リハナイ
ト云フコトヲ御諒承ヲ願ヒタイノデアリマ
ス
次ニ桑園ノ管理ノ問題テアリマスガ、是
モ私共ハ非常ニ其必要性ヲ認メテ居ルノデ
アリマス、併シ全國ニ亙リマシテ、五十五
六萬町步ノ桑園ヲ國ガ直接ニ管理スルト云
フ問題ハ、非常ニ困難ガ伴フノデアリマス、
御承知ノヤウニ桑ヲ植ヱタリ、拔イタリシ
マスコトハ中々監督上困難ナ點ガ多數ゴザ
イマスノデ、國家ガ自ラ之ヲ管理スルト云
フコトノ必要ハ認メテ居リマスガ、非常ニ
實施上ニ於テ困難ガアルノデハナカラウ
カ、デアリマスカラ先ヅヤハリコレモ自治
的ノ管理ニ依ッテ、或ル程度ノ目的ヲ達成シ
テ行クコトガ然ルベキデアルト考ヘマシ
テ、昨年桑ニ關スル主任官、所謂採桑主任
官ヲ集メマシテ、桑園ノ自治的管理ノ問題
ヲ色々〓究致シタノデアリマス、サウシテ
養蠶實行組合ニ或ハ桑園臺帳ヲ備付ケサセ
テ置キマシテ、其厲行ニ依リマシテ、自治
的統制ニ資スルヤウニシタラドウカト云フ
議ガ纒マリマシテ、目下其準備ヲ致シテ居
ルヤウナ次第デアリマス、是モ或ル程度自
治的統制ニ依ッテ、私共ハ全國ノ桑園ノ管理
ヲシテ行クコトガ適當デアル、斯ウ云フ風
ニ考ヘテ居ルノデアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007011331X00419370303&spkNum=19
-
020・森幸太郎
○森委員 今ノ御答辯ニ依リマシテ、尙ホ
見解ノ相違ト考ヘルノデアリマスルガ、普
通蠶種ノ管理ニ向ッテ、自治的手段ニ依ッテ
之ヲ統制シテ行ク見込ガアルト、當局ハ御
考ヘニナッテ居ルノデアルガ、製絲業者ノ方
方ノハ、自治的ニ統制モヤッテ居ラレマス、
又ソレガ出來ルノデアリマス、所ガ此蠶種
製造業者ノ現狀ハ、自治的ニ之ヲ統制シテ
行クト云フヤウナコトハ、私ハ絕對不可能
ダト考ヘルノデアリマスガ、是ハ御見込違
ヒダト言ヘバソレ迄デアリマスガ、事實ニ
於テ私ハ出來マイト思フ、是ハ事實ニ於テ
出來ルト政府ハ御考ヘニナッテ居ラレルノ
カ、此點トサウシテ原蠶種國家管理ノ實現
ニ依ッテ、蠶品種ノ數ヲ減ラシテ行ク、サウ
スレバ隨テ過剩蠶種ト云フモノハ出來得ナ
クナル、斯樣ニ御考ヘニナッテ居ルコトハ
甚ダ實際ト違ッテ居リハシナイカ、生產シマ
シタモノガ何等ノ約束モナク、豫約蠶種ト
シテ、豫約製造トシテ蠶種ガ製造サレマス
ナラバ宜イノデアリマスガ、サウデハナイ
ノデアリマス、豫約製造ト云フモノ以外ニ、
何處へ賣レルカ、自分ノ腕デ競爭的ニ賣ッテ
見ヨウ、斯ウ云フ風ナ考デ蠶種ハ製造サレ
ルノガ多イノデアリマス、又自分ハ一萬瓦
ノ〓種ヲ製造シヨウト思フ、併シ一萬瓦ノ
蠶種ハ完全ニ製造スルコトガ出來得ナイカ
ラ。先ヅ一萬五千瓦ノ製造能力ヲ以テ所謂
·種繭ノ製造ヲ考ヘル、サウシテ其中ノ五割
ト云フモノ-三分ノ一ヲ捨テヽシマフ、
サウシテ一萬瓦ノ蠶種ヲ製造シヨウト考ヘ
タ場合ニ、幸ニ殘リノ原蠶種モ非常ニ立派
ナモノガ出來上ッタ、捨テヽシマフノハ惜シ
イ、サウシテ生絲ノ相場ハ相當ニ高イガ爲
ニ捌口增加ノ見込ガアル、斯ウ云フ場合ニ
ハ、蠶種製造業者ハ其完全ナル、無毒ナル
無毒ヲ保證サレル所ノ蠶種ヲ捨テヽシ
マハナイノデアリマス、ソレヲ捨テタッテ製
絲原料トシテハ、殆ド價値ガナイノデアリ
マスカラ、ヤハリ之ヲ蠶種製造ヲスルノデア
リマス、ソレデアルカラ初メカラ一萬瓦ヲ
製造豫定シナガラ、一萬五千瓦ノ蠶種ガソ
コニ製造サレル、斯ウ云フヤウニナッテ來ル
ノデアリマス、ソコデ養蠶家ノ立場ト致シ
マシテモ、蠶種ノ購入ガ長イ慣例ニ依ッテ繰
返サレテ居リマスルカラ、ドウシテモ茲ニ
統制ヲシテ、何處ノ蠶種製造業者ノ蠶種デ
モ宜イ、此品種デ政府ガ保證シ、或ハ縣ガ
保證スル所ノ蠶種デアレバ、誰ノ製造デアッ
テモ構ハナイト云フ專賣式ニナッタ場合ニ
於テハ、養蠶家ハ過去ノ慣例ヲ離レテ、何
レノ蠶種製造業者ノ蠶種デモ、政府ヨリ交
付サレル所ノ蠶種ヲ掃立テマスガ、今日ノ
場合ハ誰ソレノ蠶種デナケレバイケナイ、
何々會社ノ蠶種デナケレバイカヌ、斯ウ云
フ慣例ニ囚ハレテ居リマスルガ故ニ、其目
的トスル蠶種ガ必シモ優良デナイカモ知レ
ナイ、更ニ優良ナル蠶種ガアルカモ知レナ
イケレドモ、ヤハリ過去ノ舊慣ニ囚ハレテ
其蠶種ヲ買取ル、一方ニハ又今申シマシタ
原因ニ依ッテ、豫定以外ノ製造額ガ出來ル、
斯ウ云フコトニ依ッテ今日四割或ハ五割ノ
過剩蠶種ガ出テ來ルノデアリマス、決シテ
政府ノ御考ヘニナッテ居ルヤウニ、原蠶種國
家管理法ニ依ッテ品種ガ限定サレル、之三
依ッテ蠶種ノ製造額ガ漸次限定サレル、過剩
〓種ガナクナルダラウ、斯ウ云フコトハ全
ク見方ガ違フヤウニ考へルノデアリマスル
ガ、此點ニ付テ尙ホ御意見ガアリマシタラ
承リタイト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007011331X00419370303&spkNum=20
-
021・井野碩哉
○井野政府委員 今日此過剩蠶種ガ出來テ
參リマス原因ハ、仰セノヤウニ色々ナ點ニ
アリマスガ、大體此原蠶種ガ三百前後モア
ルト云フコトガ、私共ハ過剩蠶種ヲ生ズル
大キナ原因デアルト思フノデアリマス、ト
申シマスノハ、今御話ノヤウニ蠶種製造業
者ハ豫約製造デゴザイマセヌカラ、需要者
ガドウ云フ〓種ヲ要望シテ來ルカ分ラヌト
云フ所カラ、品種ガ非常ニ多クナルノデ、
其品種每ニ多少餘裕ヲ作ッテ製造シテ置カ
ナケレバナラヌト云フコトカラ、過剩蠶種
ガ相當生ズルヤウニ私共ハ聞イテ居ルノデ
アリマス、殊ニ原蠶種管理法ヲ實施シマス
際ニ、當業者ノ要望サレマシタ一ツノ理由
トシテハ、原蠶種國家管理ニナレバ、過剩
蠶種ト云フモノハ非常ニ減ル、隨テ販賣ノ
利益ガ多クナル、ダカラ原蠶種國家管理ニ
シテ貰ヒタイト云フ御要望ガアッタノデア
リマス、其時ノ理由モ、原蠶種國家管理ト云
フモノガ、一ツノ蠶種製造業者ノ販賣上ノ
利益トシテ主張サレテ居ル點カラ見マシテ
モ、其點ハ原蠶種國家管理ヲ實施シテ見マ
シテ、卽チ原蠶種ヲ十數種ニ限定シテ見マ
スレバ、過剩蠶種ガ各〓ソレニ伴ヒマスコ
トハ御說ノ通リデアリマス、併シ現在ノ三
百以上モアル時代ヨリ減リマスコトハ、是
ハ御諒承ヲ願ヘルト思ヒマス、隨テ是等ノ
實績ヲ見テカラ吾々ハ普通蠶種ノ問題ヲ考
ヘテ行クノガ宜イヂヤナカラウカ、殊ニ現在
全國蠶種業組合聯合會ニ於テモ、普通蠶種
國家管理ノ問題ヲ〓究シテ居ルノデアリマ
スガ、是ハ主トシテ販賣促進上ノ國家管理
問題ヲ考ヘラレテ居ルヤウデアリマス、今
御述べノヤウニ普通蠶種ヲ全部國ガ持ッテ
之ニ當ルト云フ譯デハナイヤウデアリマ
ス、サウ致シマスト、非常ニ是モ國ノ經費
ガ嵩ンデ參リマシテ、今日果シテ直グニ普
通蠶種國家管理ニ入レルカ否カ、吾々モ〓
究シテ見ナケレバナリマセヌ問題デアリマ
スカラ、隨テ是等ノ問題ハ能ク一ツ全國蠶
種業組合聯合會トモ協調致シマシテ、サウ
シテ吾々ハ絲價安定施設法案ガ通リマシタ
後ニ於キマシテハ、十分ニ〓究ヲ致シマシ
テ、速ニ其實現ヲ期スル態度デ進ンデ參リ
タイト思フノデアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007011331X00419370303&spkNum=21
-
022・森幸太郎
○森委員 蠶種製造業者ノ團體ト能ク協調
シテ、今後善處スルト云フコトヲ承リマシ
テ、滿足シタ次第デアリマス、ドウゾ一ツ
蠶絲業ノ全般ニ亙ッテノ施設ヲ揃ヘルト云
フコトガ、國家蠶絲業ノ政策遂行ノ上ニ於
テ必要ナコトデアリマスカラ、是非其方針
デ御進ミ願ヒタイト思フノデアリマス、次
ニ御尋致シタイコトハ新販路ノ開拓デアリ
やく、新販路ニ付キマシテハ、色々政府當
局モ御心配ニナッテ居ル譯デアリマスガ、尙
ホ其必要ニ應ジテ、滯貨生絲モ無償交付サ
レマシテ、此目的ニ努力ヲシテ戴イテ居ル
譯デアリマスガ、此生絲販賣施設ノ經費二
百萬內外ノ金ヲ、各種業者ノ團體ガ醵出致
シテ居ルノデアリマス、是ハ養蠶實行組合
マデ負擔ヲ致シテヤッテ居ルノデアリマス
ガ、斯ウ云フ國家的事業ト考ヘマシタ場合
ニ、二百萬ヤ三百萬ノ僅少ナ金ニ依ッテ、果
シテ販路ノ開拓宣傳ト云フコトガ出來得ル
デアラウカ、是ハ前ノ高橋大藏大臣ノ時ニ、
百萬圓位ナシミッタレタ金デ、宣傳ナンカ止
セト云フ風ニ反對サレタヤウニモ聞イテ居
ルノデアリマスガ、此蠶絲業ガ我ガ國家ノ
經濟上重要ナル位置ヲ占メルト云フコト
ヲ考ヘマシタ場合ニ於テ、其新販路ヲ擴
張シ宣傳スル上ニ於キマシテハ、相當政
府ハ金ヲ出シテヤッテ戴イテ宜イト思フ
ノデアリマス、然ルニ僅ノ金、其僅ノ金
モ而モ之ヲ當業者ノ各團體ニ負擔サシテ、
サウシテ團體ガ苦シイ中カラ此資金ヲ醵出
致シテ居ルト云フヤウナ狀態デアルノデア
リマスルガ、斯ノ如キ姑息ナ手段ニ依ッテ、
果シテ此大目的ガ達成シ得ラレルダラウ
カ、私ハ茲ニ非常ナル將來ニ對スル疑問ヲ
存スルノデアリマスルガ、此新販路擴張宣
傳ト云フコトニ付テ御考ノ程ヲ承リタイト
思フノデアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007011331X00419370303&spkNum=22
-
023・井野碩哉
○井野政府委員 吾々蠶絲對策ヲ講ジマス
上ニ於テ、總テノ方面カラ蠶絲業ノ更生刷
新ヲ圖リ、對策ヲ講ジテ行カナケレバナラ
ヌノデアリマスガ、悉ク國家ノ力デヤラナ
ケレバナラヌト云フモノデハナカラウト考
ヘテ居ルノデアリマス、業者自ラガ出來ル
コトハ是ハ業者ニヤラセルシ、業者ノ出來
マセヌコトハ國家ガ出來ルダケ援助シテ行
クト云フコトガ、總テノ施設ヲ完全ニ施行シ
テ行キマス上ニ於テ、最モ有效デアルト信
ジテ居ルノデアリマス、其爲ニ此新販路ノ
開拓ニ付キマシテ、亞米利加ニ對スル舊來
ノ販路維持ノ爲ノ宣傳費ノ問題ハ、是ハ業
者自ラヤルコトノ方ガ適當デアル、國ガ唯
金ヲ出シテ其金ヲ亞米利加ニバラ撒クヨリ
ハ、業者自ラガ金ヲ醵出シテ、サウシテ眞
劍ニ宣傳事業ニ乘出シテ行クコトノ方ガ適
當デアル、斯ウ云フ風ニ考ヘマシテ、當初
ニ於キマシテハ百萬圓ヲ養蠶業者ニモ、製
絲業者ニモ分擔サセマシタガ、今囘ハ養蠶
業者、製絲業者ハ分擔ヲ致シマセヌデ、輸
出業者ダケガ一俵ニ付テ五圓、二百五十萬
圓ノ宣傳費ヲ年々醵出致シマシテ、サウシ
テ亞米利加ニ於テノ宣傳事業ヲヤルコトニ
ナッタノデアリマス、是ハ又今囘製絲業者自
ラガ致シマシタ釜數整理ノ問題モ同ジデ、
是モ初メハ政府ヨリ金ヲ出シテ吳レト云フ
要望ガアッタノデアリマスケレドモ、斯ウ
云フ事柄ハ自治的ニヤルノガ適當デアルト
云フノデ、業者自身モサウ云フ風ニ考ヘラ
レマシテ、一千萬圓ヲ自ラ調達シテ、其施
設ニ當ッテ居ル譯デアリマス、必シモ總テ
ノ蠶絲ノ政策ト云フモノヲ、悉ク國ガヤラ
ナケレバナラヌト云フ考ヘ方ハ是ハ私共ハ
避ケテ行キタイ、ドウシテモ業者ガ出來ナ
イモノハ國ガヤッテ參リマスケレドモ、出
來ルモノハ業者自體ノ自治ノ力ニ依ッテヤ
ラシテ行クコトノ方ガ、寧ロ效果ガ多イモ
ノデアル、斯ウ云フ風ニ考ヘテ居ルノデア
リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007011331X00419370303&spkNum=23
-
024・森幸太郎
○森委員 御意見御尤ト拜察スルノデアリ
マスルガ、特ニ御考ヲ願ヒタイコトハ、今
日製絲業者ト言ヒ、或ハ養蠶業者ト言ヒ、
蠶種製造業者ト言ヒ、殆ド行詰ッテ居ルノ
デアリマス、經營ノ困難ニ陷ッテ居ルノデ
アリマシテ、固ヨリ相當ニ經營ガ出來得ル
ナラバ、斯ノ如キ經費ハ自治的ニ之ヲ醵出
シテ行クコトガ當然アルノデアリマス、併
シ今日ハ製絲家モ、養蠶家モ、蠶種家モ、
又蠶ニ關係スル有ユル業者モ、殆ド經濟上
ニ行詰ッテ居ルノデアリマス、ソレデアリ
マスルカラ色々ナ施設ヲ要求シ、色々ノ助
成ヲモ政府ニ要望シテ、今日問題ガ起ッテ
居ルヤウナ狀態デアルト思フノデアリマ
ス.ソレデアリマスカラ、斯ウ云フ場合デ
アルニ依ッテ、其宣傳費ヲ復活サシテ居ル
ト云フ風ニ御話ニナリマスルガ、ソレガ結
局繭ノ値段ニ關係シテ來ルノデアリマス、
生產費、販賣費ト云フモノニ加算サレテ來
ルノデアリマス、皆結局ハ繭ノ生產費ニ是
ガ加味サレテ來ルト云フコトヲ、一ツ御考
置キヲ願ヒタイト思フノデアリマス、業態
ガ順調ニ運ビ、相當ノ餘力ノアル場合ニ於
テハ、將來積極的ニ進ム上ニ於テ、販路擴
張ニ對シテ、當然自ラ其經費ヲ醵出シテ努
力スベキモノデアルト思フノデアリマスル
ガ、今日ノ狀態ハ總テノ業態ガ行詰ッテ居
ル、斯ウ云フ狀態デアルカラ、政府トシテ
ハ特ニ零細ナル金トハ言ヒナガラ、政府自
ラ其經費ヲ負擔シテ戴クコトガ適當デハナ
イカ、斯樣ニ私ハ考ヘルノデアリマスル
ガ、是モ見方ニ依ッテドウデモ理窟ガ付ク
コトデアリマスルカラ、私ハサウ云フヤウ
ナコトヲ希望シテ居ルト云フヤウナコトニ
於テ、私ノ質問ヲ終リタイト思フノデアリ
マスガ、幸ニ農林大臣ガオ見エニナリマシ
タカラ、此際一ツ御尋致シマシテ、御所見
ヲ伺ッテ置キタイト思フノデアリマス、ソ
レハ農林大臣ガ前々農林大臣トシテ御就任
ニナッタ時ニ、產繭處理統制法案ト云フモ
ノヲ御考下サッタノデアリマスガ、其當時
御考下サレタ產繭處理統制法案ト、現在施
行サレテ居ル產繭處理統制法案トハ、其實
際ノ力ニ於テ相違ガアルノデアリマス、之
ニ付テハ色々議會ニ於テ議論サレタコトハ
御承知ノ通リデアリマスガ、アノ場合已ム
ヲ得ナイ、此儘兎ニモ角ニモ不完全デアル
ガ、補强工作ヲ將來ニ講ズルト云フコトニ
依方、其實現ヲ見タノデアリマスガ、而
モ其當時ノ附帶決議ニ依ッテ、製絲ノ販賣
統制ヲ行ハナケレバナラヌト云フ希望ヲ致
シテ居リマシタ、此希望ノ實現ニ依ッテ、不
完全デアル產繭處理統制法案ノ效果ヲ、
層大ナラシムルト云フコトヲ希望致シテ
居ッタノデアリマス、所ガ今囘ノ絲價安定法
案ハ、其當時考ヘマシタヤウナ生絲ノ販賣
統制ト云フコトガ、價格ノ上ニ依ッテノミ
考ヘラレテ居ッテ、實際ニ是ガ出來得ナイ
ト云フヤウニ考ヘルノデアリマス、先程政
府委員カラノ御說明デハ、更ニ一層强化シ
タモノデアルト云フ御答辯ヲ得タノデアリ
マスガ、是モ見解ノ相違デアリマスルカ
ラ、强チ之ヲ議論ヲ重ネヤウトハ思ハヌノ
デアリマスガ、此場合ニ農林大臣ニ御伺致
シタイコトハ、此絲價安定法案ノ實施ニ依ツ
テ、先以テ蠶絲業ニ對スル政策ヲ一巡終ル
ト云フ御氣持デアルカ、私ハ先程來政府委
員ノ御意見ヲ承ッテ、桑園ノ問題ナリ、蠶
種ノ問題ナリ、今後殘サレタル問題ガアラ
ウト思フノデアリマスガ、ドウモ政府ハ是
デ大體準備ガ整フト云フヤウナ御氣持ガア
リハシナイカト思フノデアリマスガ、前
農林大臣トシテ產繭處理統制法案ヲ初メテ
御考ナサッタ其法案ト、現在ノ產繭處理統
制法案ハ、餘程力ガ弱イノデアリマス、弱
イノデアリマスカラ、其補强策トシテ、此
絲價ノ安定ト云フコトニ依ッテ、產繭處理統
制法案ガ幾ラカ强化サレタヤウニ考ヘルノ
デアリマスガ、マダ〓〓國家ノ蠶絲業ノ根
本策ヲ樹立スルニ付テ、色々ナモノガ殘ツ
テ居ルヤウニモ考ヘルノデアリマスルガ、
此點ニ付テ農林大臣トシテノ御氣持ヲ伺ヘ
レバ幸ト思フノデアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007011331X00419370303&spkNum=24
-
025・山崎達之輔
○山崎國務大臣 產繭處理統制法案ハ、成
程前々囘ニ提出致シマシタノト法文ニ於テ
若干緩和サレタコトハ、御話ノ通リデアリ
マスガ、併ナガラ實際上ノ效果ニ於テハ、
大シタ差ガアルトハ考へテ居ラヌノデアリ
マス、尙ホ今囘ノ此絲價安定施設法案ハ、
產繭處理統制法立案ノ當時カラ、當然竝行
シテ考ヘテ居ヲタ問題デアリマシテ、幸ニ今
囘此法案ガ成立致シマスレバ、其當時考へ
テ居リマシタ二ツノ施設ハ、確ニ一應ノ段
落ヲ〓ゲルコトヽナル譯デアリマス、併ナ
ガラ只今森君ノ御話ノヤウニ、蠶絲對策ト
シテ是デ濟ンダナドトハ當局ハ考ヘテ居リ
マセヌノデ、一ツノ筋ヲ追ウタ立法ノ方法
トシテハ、一ツノ區切リニハナル譯デアリ
マスケレドモ、併ナガラ蠶絲政策其モノト
シマシテハ、無論此原蠶種ノ問題モ殘ッテ居
リマスルシ、或ハ又實際上ノ行政各般ノ施
設ハ、益〓是ハ力ヲ入レテ行カナケレバナラ
ヌノデアリマシテ、決シテ是デ以テ氣ヲ緩
メルト云フヤウナ氣持ハ、農林當局トシテ
ハ持ッテ居リマセヌ譯デアリマスカラ、其
點ハドウゾ御安心ヲ願ヒ、且ツ又今後ニ於
キマシテモ、各種ノ問題ニ付テ御意見等ハ
御忌憚ナク御示シヲ願ヒ、又御鞭撻ヲ願ヒ
タイト考ヘテ居ル次第デアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007011331X00419370303&spkNum=25
-
026・森幸太郎
○森委員 私ノ質問ハ是デ打切リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007011331X00419370303&spkNum=26
-
027・最上政三
○最上委員 私ノ質疑ハ次會ニ讓ルコトヽ
致シマスガ、只今材料ノ提出ヲ此處デ希望
シテ置キマスカラ、次會マデニ成ベク御提
出ヲ願ヘタラ戴キタイト思ヒマス、ソレハ
本施設法案ノ內容ヲ見マスルト、色々難シ
イ事ガアルノデアリマスガ、之ニ付キ勅令
或ハ命令ノ範圍ガマダ能ク分ッテ居ラナイ
ノデアリマス、只今勅令命令ノ〓要ガ手許
ニ參ッタノデアリマスガ、ソレヲ見テモハッキ
リ致サナイ事ガアリマスカラ、若シ出來得ル
ナラバ次會マデニ其勅令及ビ命令ノ大要デ
モ分ッテ居ッタナラ御示シヲ願ヒタイ、更ニ
定款ニ付テデアリマスガ、定款ニ付テモ〓
究シナケレバナラヌ點ガアリマスカラ、旣
ニ成案ヲ得テ居ッタナラ、其內容ノ一部ヲ御
示シヲ願ヒタイノデアリマス、第二トシテ
ハ融資ノ擔保生絲買收法ニ依リ昭和七年デ
シタカ、十一萬俵買入レタコトガアリマス、
其後ノ經過ニ付テハ當局ヨリ買入生絲處分
年次別數量ガ配付サレタノデアリマスガ、
是デハ能ク內容ガ分リマセンカラ、此表ニ
依ル四萬七千二十餘俵ヲ何處へ賣ッタカ、及
ビ數量及ビ其生絲ノ製造年月別ニ付テ、別
別ニ御示シヲ願ヒタイノデアリマス、又勅
令ニ依ッテ他へ寄附シタト云フヤウナコト
モアリマセウガ、其點ニ付テモ御示シヲ願
ヒタイノデアリマス、第三ハ昭和七年春旭
「シルク」對當業者トノ間ニ於テ、滯貨生絲
ノ處分ニ付テ契約ガ行ハレタサウデアリマ
スガ、其問題ニ付テハ私ハ內容等ヲ能ク知
ラナイノデアリマス、隨テ其大要ヲ御示シ
ヲ願ヒタイト共ニ其後ノ經過、竝ニ先日
-二十六日ノ本會議デアリマシタカ、農
林大臣ガ滯貨生絲處分ニ對シテハ、昨年末
兩者間ニ於テ解決ヲ〓ゲタト云フヤウナコ
トヲ言明シテ居リマスガ、其解決法等ニ付
テモ、詳細デナクテモ宜シウゴザイマスカ
ラ、大要文書ニシテ御提出ヲ願ヒタイノデ
アリマス、以上三點ノ材料ノ要求ヲシテ次
會ニ質問ヲ讓ルコトニ致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007011331X00419370303&spkNum=27
-
028・井野碩哉
○井野政府委員 只今御要求ニナリマシタ
資料ニ付キマシテハ、出來ルダケ御希望ニ
副フヤウニ致シマスガ、命令事項等ニ付キ
マシテハ、目下當局ニ於キマシテ色々〓究
中デアリマス、又關係省トモ色々打合セナ
ケレバナリマセヌノデ、只今御手許ニ差上
ゲテアリマシタ資料デ、尙ホ御質疑ガゴザ
イマシタナラバ御尋ヲ願ヒマシテ、ソレニ
對シテ御答ヲ申上ゲタイ、文書ニ付キマシ
テハ其程度以上ニハ、一寸作リニクイ事情
ガゴザイマスカラ、左樣御諒承願ヒタイト
思ヒマス、ソレカラ定款ハ恐ラク絲價安定
施設組合ノ定款デアラウト思ヒマスガ、是
ハ組合ガ全然出來ルコトニ付テノ目安モ
立ッテ居リマセヌ、隨テ今コチラトシテ定款
ヲ作ッテ置クト云フ程度ニハナッテ居リマセ
ヌ、併シ此定款ハサウ面倒ナモノデナクテ、
普通ノ組合ノ定款ト違ヒナイモノト御諒承
ヲ願ッテ宜イト思ヒマス、是モ差出ス程度
ニハマダ出來テ居リマセヌカラ、御諒承ヲ
願ヒタイト思ヒマス、ソレカラ買收法施行
後ノ生絲ノ處分ノ數量ニ付キマシテハ、是
ハ無論表ニ致シマシテ御手許ニ差上ゲマ
ス、尙ホ旭「シルク」ノ關係ニ付キマシテハ
其後ノ經過等ハ、或ハ御質問ニ依リマシテ
詳シク御答申上ゲタ方ガハッキリスルノヂ
ヤナイカト思ヒマスガ、簡單ニ何カ文書ニ
シタ方ガ宜イト云フ御話デアリマスレバ、
文書ニ出來マスケレドモ、色々事情ガ込入ッ
テ居リマスカラ、詳シク色々申上ゲタ方ガ
宜イノデハナイカト思ッテ居リマス、如何デ
ゴザイマセウカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007011331X00419370303&spkNum=28
-
029・最上政三
○最上委員 勅令及ビ命令ノ點ニ付テハ承
知シマシタ、又定款ニ付テモ時々私ガ質問
致シマスカラ、其時ニソレヲ承ハルコトニ
致シマスガ、唯旭「シルク」對當業者トノ關
係ハ、或ハ此問題ニ依ッテ、當時ノ買收法案
ノ審議ニモ多少關係ガアルコトヽ考ヘラレ
ルノデアリマス故ニ、詳細デナクテモ宜シ
ウゴザイマスカラ、文書ニ大體ヲ記入シテ
御出シ下サランコトヲ願ヒタイノデアリマ
ス、更ニ私ノ質疑ノ第一ハ、大臣ニ質疑ヲ
致シタイコトガアリマスカラ、其點御配慮
ヲ下サイ、長クアリマセヌシ、十分カ二十
分位デアリマスカラ、次會ハ大臣ニ御出席
ヲ願ヒタイ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007011331X00419370303&spkNum=29
-
030・横川重次
○横川委員長代理 本日ハ是ニテ散會、次
會ハ公報ヲ以テ御通知申上ゲマス、併シ大
體明日午前十時開會ノ豫定デアリマス
午前十二時散會発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007011331X00419370303&spkNum=30
4. 会議録のPDFを表示
この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。