1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案(審査終了のものを除く)
漁船保險法案(政府提出)
漁船再保險特別會計法案(政府提出)
森林火災國營保險法案(政府提出)
森林火災保險特別會計法案(政府提出)
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會議
昭和十二年三月十五日(月曜日)午前十時二十八分開議
出席委員左の如し
委員長 紫安新九郎君
理事 小山邦太郎君 理事 飯田助夫君
理事 横川重次君
野田文一郎君 百瀬渡君
高木粂太郎君 松尾四郎君
小林かなえ君 登坂良作君
東條貞君 今給黎誠吾君
山崎釼二君
三月十三日委員最上政三君、生田和平君及篠原義政君辭任に付き其の補闕として高木粂太郎君、益谷秀次君及登坂良作君を議長に於て選定せり
同月十五日委員瀬川嘉助君辭任に付其の補闕として東條貞君を議長に於て選定せり
出席政府委員左の如し
農林次官 長瀬貞一君
農林省山林局長 村上龍太郎君
農林省水産局長 原辰二君
商工省保險局長 後藤保清君
本日の會議に上りたる議案左の如し
漁船保險法案(政府提出)
漁船再保險特別會計法案(政府提出)
森林火災國營保險法案(政府提出)
森林火災保險特別會計法案(政府提出)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007011331X01019370315&spkNum=0
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001・紫安新九郎
○紫安委員長 開會致シマス-百瀨君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007011331X01019370315&spkNum=1
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002・百瀬渡
○百瀨委員 私ハ森業政策上ヨリ見タル火
災保險ノ經濟的價値竝ニ防火對策ニ關シ
テ、當局ニ少シク質問ヲ試ミタイト思ヒマ
ス、森林火災保險ノ主ナル狙ヒ所ハ、
朝火災ニ遭遇シテ跡地ノ整理ヲ計畫スル場
合ニ、卽チ跡地ノ造林計畫、卽チ再造林ヲ
速ニ實施シテ、其復舊ヲ圖ルコトハ最モ必
要ナルコトデアリマスルガ、之ニ伴フ資金
關係ノ點ヨリ致シマシテ、頗ル困難ナ場合
ガアリマスルノデ、有效適切ナ是ガ對策ト
シテハ、森林火災保險ノ立法ニ俟ツ所ノモ
ノガアリマスコトハ勿論デアリマス、ト同
時ニ私ハ森林防火ノ施設ノ必要ヲ痛感スル
者デアリマス、林業者ガ僅カノ保險料ヲ拂
込サヘ致シマスレバ、一朝不慮ノ火災ニ遭
ヒマシテモ、直チニ保險金ニ依ッテ再造林
費ヲ獲得シテ、造林費ガ出來ルト云フ、唯
單ニ金ヲ目當ニスル自己ノ慾望ヲ達スルト
云フ觀念ニノミ囚ハレテ、林業ノ公益的見
地カラ之ヲ保護スルト云フ觀念ヲ薄クスル
ヤウナコトガアリマシテハ、本法制定ノ折
角ノ趣旨ニ反シマスルカラ、私ハ林野保護
ノ觀念ヲ助長スル上カラ、防火施設ノ必要
ヲ感ズル者デアリマスガ、是ガ對策ニ付テ
ハ政府ハ如何ナル御考ヲ持ッテ居ラレマス
ルカ、防火施設ト申シマシテモ、家屋等ノ
火防施設トハ異ナリマシテ、廣範圍ニ亙ル
林野ニ對スル施設ハ殆ド困難デアリマセウ
ガ、玆ニ實例ヲ擧ゲテ見マスガ、長野縣ノ
如キ山林ノ廣範圍ニ亙ッテ居リマス所ハ、山
村ノ多クハ製炭業ニ從事シテ居ル者ガ多イ
ノデアリマシテ、殊ニ近年製炭業ガ益〓盛ト
ナリ、ソレト同時ニ近年山林ノ火災率ガ甚
ダ多クナッテ居ルノデアリマスガ、其原因ハ
多クハ製炭ニ從事スル所謂炭燒人夫等ノ不
注意カラ、發火ノ原因トナル向キガ決シテ
少クナイノデアリマスル、尤モ是等ニ對シ
マシテハ、各府縣ニ於テソレ〓〓縣令ヲ以
テ、野火ノ取締等ヲ致シテ居リマスルガ、
私共ノ見ル所デハ甚ダ是ガ監督ガ不徹底デ
アルヤウナ感ジガ致スノデアリマス、此點
ニ對シマシテ林道ノ開設デアリマス、林道
ノ開設ハ林材ノ價値ヲ向上シ、林業經營上
極メテ緊要ナコトデアルコトハ勿論デアリ
マスルガ、一面此林道ノ開設ガ火防上ニ資
スル便宜ナ役割ヲ演ズルコトモ亦考ヘナケ
レバナラナイコトデアリマス、併ナガラ此
林道ノ開設ナドニ付キマシテハ、既ニ政府
ニ於カレテハ連年ノ年度割計畫デ、相當ノ
助成費ヲ計上シテ、林業府縣ニ御交付ニ相
成ッテ居リマスルガ、是トテモ廣範圍ニ亙ル
林業、卽チ林業政策ノ見地カラ申シマスレ
バ、洵ニ稀薄ノ感ジガ致スノデアリマス、
林道ノ開設ヲ一層當局ハ奬勵スルト同時
ニ、一面ニハ燒跡ノ造林計畫ニ付キマシテ、
卽チ再造林ニ對スル保險制度ノ制定ハ、是
ハ擴大スベキデアリマスケレドモ、之ニ伴
フ防火施設ニ對スル何等カノ御計畫ガアリ
マスカ、御考ガアリマスカ、念ノ爲メ伺ッテ
置キタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007011331X01019370315&spkNum=2
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003・村上龍太郎
○村上政府委員 只今ノ御尋ハ洵ニ御尤ナ
御尋ト存ジマスルノデ、ソレラノ方面ニ付
キマシテモ色々考ヲ〓ラシテ居リマス、其
考ヘテ居ルコトノ一二ヲ申上ゲテ見タイト
思ヒマス、御話ノヤウニ私共ハ保險ト兩立
シテ行カナケレバナラヌコトハ、サウシテ
又ソレ以上ニ大切ナコトハ、火ノ出ルノヲ
防グコトガ大切ダト考ヘマス、保險ハ火ガ
出タ場合ニ其跡地ガ荒レナイヤウニ造林ヲ
スル、ソレカラ火ガ成ベク出ナイヤウニト
云フコトヲ本體ニ考ヘテ居リマス、御話ノ
ヤウニ取締ハ致シマス、野火ニ付テノ取締
ハ致シマスガ、斯樣ナコトハ取締ダケデヤ
ラウトシタ所デ、中々行クモノデハナイノ
デアリマス、要ハ如何ニシテ實行スルカト
云フコトガ大切ナコトト思ヒマス、御承知
ノヤウニ一度火ガ出マシタ場合ニ消防ニ出
ル道等ガ備ハッテ居リマセヌト、中々消防等
モ困難デアリマスカラ、林道ノ普及發達ト
云フコトハ、是ガ啻ニ材木ヲ出スト云フ關
係ダケデナシニ、防火其他色々ノ點ニ於テ
百般ノ效果ガアルコトハ考ヘテ居リマスノ
デ、林道ニ付テ明年度カラ或ル程度擴充致
シタ施設ヲ致シマスガ、是モ多少役立ツコ
トト思ッテ居リマス、火災警防ニ直接致シマ
スルヤリ方トシマシテハ、色々ゴザイマス
ガ、第一ハ一般ノ人々ニ火ノ恐シイコト、
又火ヲ出サナイヤウニ用心ヲスルコト、又
火ガ出レバ山ガ荒レルト云フコトハ、唯單
ニ經濟問題デナシニ公益上非常ナ關係ノア
ルコトヲ能ク諒解致サセマシテ、謂ハバ何
ト申シマスカ、火災警防思想ヲ普及スルコ
トガ大切ダト考ヘテ居リマス、數年來或ハ
「ポスター」ヲ作リマストカ、或ハ火ノ用心
燐寸ヲ作リマストカ致シマシテ、火災警防
思想ノ普及ニ努メマスルシ、又ココ數年來
神武天皇祭ヲ中心ニ致シマシテ、全國的ニ
是ハ北海道カラ樺太マデ皆一〓ニナリマシ
テ、愛林日ト云フノヲ致シテ居リマス、左
樣ナ機會ニ於テ宣傳ヲ致スナド致シマシ
テ、社會ノ注意ノ喚起ニ努メテ居リマス、
尙ホ實行ノ方法ト致シマシテハ、全國ニ普
遍的ニハヤッテ居リマセヌガ、アッチコッチノ
國有林ヲ中心ニ致シマシテ、先ヅ以テ始メ
マシテ、ソレヲ一般ニ普及致サセタイト云
フ考カラ致シマシテ、斯樣ナコトヲ致シテ
居リマス、大體火災ノ出マスルノハ時期ガ
ゴザイマス、サウシテ空中ノ濕氣ノ關係ガ、
火災ニ大變關係ヲ持チマス、地表ノ濕度、
空中ノ濕度ト云フコトガ大變ニ火災ニ關係
ヲ持チマス、空中ノ濕度ガ五〇%以下ニ下
ガレバ、用心ヲシナケレバナラヌ警戒時期
ダト吾々ハ考ヘテ居リマス、ソレカラ空中
ノ濕度ガ三〇%ニ下ガレバ、火災ガ起キタ
場合ニ、警防ガ非常ニ困難ダト吾々ハ思ッ
テ居リマス、要スルニ乾燥ノ程度如何ニ依ッ
テ、餘程用心ヲシナケレバナラヌ時期ガゴ
ザイマス、ソレデ空中ノ濕度ガ五〇%以下
ニ下ガリマシタ時ニハ、小學校ニ賴ミマシ
タリ、或ハ田舍デゴザイマスト官舍ナドニ
三角形ノ火ノ用心ノ旗ヲ揭ゲサセマシテ、
一般ノ人ニ火災ノ危險ナ時期ニ入ッテ居ル
ト云フコトヲ知ラセルコトニ致シテ居リマ
ス、三十度以下ニ下リマスト-是ハ滅多
ニ三十度以下ニ下ルコトハアリマセヌガ、
國有林ナドデハ炭ヲ燒クコトナドモ成ベク
止メテ、全員非常警備配置ニ就クヤウニト
云フ風ナコトナドヲ致シテ居リマス、此濕
度ヲ計ル爲ニ、或ハ官舍デアルトカ、或ハ
サウ云フ方面ニヨク理解ヲ持ッテ吳レル學
校ナドニ、濕度計ヲ置キマシテ、計ッテ貰ッ
テ一般ニ警戒ヲスル、又所ニ依リマシテハ
サウ云フ危險期ニ入リマスト「ラヂオ」ヲ以
テ危險ニ入ッテ居ルト云フコトヲ知ラセル、
是ハ秋田ト熊本デヤッテ居ルカト思ヒマス、
左樣ナコトナドヲヤッテ、段々施設ヲ擴充シ
テ行キタイト考ヘテ居リマス、現在實行致
シテ居リマスヤウナコトハ左樣ナコトデア
リマス、仰セノ如ク火ヲ防グト云フコトガ
非常ニ大切デアルコトハ、吾々モ十分認識
シ、且ツ其方面ニ努力ヲ致シテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007011331X01019370315&spkNum=3
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004・百瀬渡
○百瀨委員 只今ノ御答ニ依ッテ大要諒解
致シマシタガ、火防施設ニ對スル直接ノ關
係デハアリマセヌガ、林道ノ開設等ハ是ハ
別問題トシテ、直接ニ關係ノアル施設トサ
レテ、例ヘバ濕度計ヲ備ヘテ警戒ヲスルト
カ、或ハ「ラヂオ」ノ放送等ニ依ッテ警告ヲ
發スルトカ云ッタヤウナコト、及ビ一旦火災
ノ起ッタ場合ニ於ケル消防、防火ノコト等ニ
對スル林業方面デ、特ニサウシタ費用ヲ計
上シテアルヤウダガ、サウ云フヤウナモノ
ハ豫算ガアリマスカ、如何デアリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007011331X01019370315&spkNum=4
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005・村上龍太郎
○村上政府委員 火災警防ニ關スル豫算
ハ多年吾々豫算ヲ組ンデ居リマスガ、表
面ニ火災警防費トシテ組マレテ居ルモノハ
未ダゴザイマセヌ、唯森林保護設備ニ關ス
ル費用ノ中デ、ソレヲ支辨シテ參リマスガ、
表面豫算トシテハ未ダゴザイマセヌ、從來
ノ豫算ヲ差繰リマシテモ左樣ナコトヲ致シ
テ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007011331X01019370315&spkNum=5
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006・百瀬渡
○百瀨委員 其表面ハ豫算ニ現レテハ居リ
マセヌデモ、他ノ費目ニ依テ之ヲ流用シテ
居ル其約ソ最近ノ、卽チ昨年度アタリニ御
使ヒニナッタ費用ガ御分リニナリマスルナ
ラバ、參考ニ承ッテ置キタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007011331X01019370315&spkNum=6
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007・村上龍太郎
○村上政府委員 御答ヘ申上ゲマス、此費
用ハ計算致シマスルト洵ニ困難デアリマシ
テ、例ヘバ宣傳ナリ、講演會ナリ、或ハサ
ウ云フコトヲ致ス際ノモ、或ハ木ヲ植ヱル
コトト、ソレカラ火ノ用心ヲスルコト、色
色ノモノヲ一〓ニヤリマスモノデアリマス
カラ、之ヲ分ケテ計算致シマスコトハ非常
ニ困難デアリマス、一寸其經費ガ幾ラ位掛ツ
テ居リマスカ、唯旗ヲ幾ラ立テタカ、濕度
計ヲドノ位置イタカト云フコトハ分ッテ居
リマスガ、全體ノ經費ヲ幾ラ使ッタカハ、色
色ノ仕事ヲ一〓ニヤリマスノデ、一寸計算
ガ困難デアリマス(百瀨委員「大體デ宜シウ
ゴザイマス」ト呼フ)恐ラク數万圓ヲ出ナイ
ダラウト思ッテ居リマス、分ケテ御答ヘ申ス
コトハ甚ダ困難デゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007011331X01019370315&spkNum=7
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008・百瀬渡
○百瀨委員 私ハ先刻モ申上ゲマシタ通
リ、火災保險ノ必要ヲ認メルト共ニ、一面
ニハ防火ノ施設モ必要ダト考ヘマス、更之
適切ニ言ヘバ、發火セザル警戒ガ十分必要
ダト考ヘルノデアリマス、デ發火セザル警
戒、發火シタ場合ノ火防施設、是等ニ對シ
マシテハ、唯單ニ保險施設ダケヲ以テ、滿
足スルコトハ出來ナイノデアリマシテ、保
險施設ハ或ル意味ニ於テ、林業者ニ目前ノ
過渡期造林ノ名ニ依ッテ、金ヲ獲得シヨウト
云フ欲求ヲ盛ニナラシムルダケデアッテ、或
ハ是ガ爲ニ却テ色々ノ弊害ヲ起スヤウナコ
トガアリハシナイカト云フコトヲモ、惧レ
ルモノデアリマスルカラ、幸ヒ當局ニ於カ
レテハ、私ノ考ト所感ヲ一ニセラルルナラ
バ、十分今後ノ施設ノ上ニ、御留意セラレ
ンコトヲ要望致シマシテ、私ハ質問ヲ打切
リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007011331X01019370315&spkNum=8
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009・紫安新九郎
○紫安委員長 橫川君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007011331X01019370315&spkNum=9
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010・横川重次
○橫川委員 私ハ森林火災保險ニ關シマス
ル參考資料ヲ御願致シタイノデアリマス、
ソレハ山林ノ面積ト、而モ其中ノ自然林ト
植林トノ內譯ノ面積、ソレカラ火災ニ罹リ
マスル罹災面積、是モ木ノ種類ト、ソレカ
ラ高齡林ト若齡林トヲ區分ケニシテ數字ヲ
御示シヲ願ヒタイノデアリマス、ソレカラ
罹災面積及ビ罹災ノ囘數デアリマス、之ヲ
モ統計ガゴザイマシタラ一寸知ラセテ戴キ
タイト思ヒマス、ソレカラ現行ノ火災保險
率、民間ニ於キマスル火災保險率ヲ御知ラ
セヲ願ヒタイ、ソレカラ現在マデ民間ニ於
キマシテ保險額トシテ計上サレテ居リマス
ル金額ト、其支拂額、及ビ保險額ノ件數ト
支拂額ノ件數、是等ヲ一ツ御知ラセヲ願ヒ
タイト考ヘマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007011331X01019370315&spkNum=10
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011・紫安新九郎
○紫安委員長 登坂君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007011331X01019370315&spkNum=11
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012・登坂良作
○登坂委員 私ハ此漁船ノ保險法案ニ關聯
シテ一寸御伺致シタイノデアリマス、今囘
御提案ニナリマシタ漁船保險法案、之ニ對
シマシテハ長年當業者ガ要望致シテ居リマ
シタモノノ一端ガ實現サレタコトニナリマ
スノデ、非常ニ御當局ノ政策實施ノ熱意ニ
敬意ヲ表スル次第デアリマス、尙ホ此沿岸
漁業ノ振興ニ關シマシテハ、幾多ノ施設ヲ
民間ニ於テモ、又當局ニ於テモ〓究工夫ヲ
ナサッテ居ルコトト思フノデアリマス、斯樣
ナ方法ガ色々ト考究サレテ居リマスルケレ
ドモ、最近ノ沿岸漁村ノ實際ヲ見マスルト
云フト、最モ漁業ノ根本ヲ成ス所ノ水產資
源ノ衰退涸渴ト云フコトニ頭ヲ惱マシテ居
ルノデアリマス、此點ガ一ツ農林當局ニ於
キマシテ、思切ッテ御持合セノ政策ガアリマ
スナラバ、之ヲ實施シテ戴ク譯ニハ行クマ
イカ、此水產資源〓養增殖ノ問題ガ解決サ
レマスルナラバ、隨テ今日悲痛ナ聲デ叫バ
レテ居リマスル所ノ漁民ノ救濟、漁村ノ金
融ノ圓滑、或ハ漁業家ニ對スル所ノ信用、
其他一切ノ漁業對策ト云フモノノ助成方法
ト云フモノガ、圓滑ニ參ルト思フノデアリ
マスルガ、如何ニモ今日ノ實際ヲ見マスル
ト云フト、沿岸漁村ノ荒廢ト云フモノハ.
實ニ言語ニ絕シテ居ルト申シテモ宜シイト
思ヒマス、是等ノ救濟方法ニ對シマシテハ
幾多御苦心ノ存スル所デアリ、永年ノ習慣
ト云フヤウナモノガ、或ハ一朝一夕ニ其改
革ヲ爲シ得ナイノカモ知リマセヌガ、若シ
此際漁船保險法案ヲ御提案ニナルト同樣ノ
一ツノ決意ヲ以チマシテ、其他ニ關スル所
ノ政策、最モ其根幹ヲ成ス所ノ沿岸漁業ニ
對スル資源ノ涵養維持、寧ロ涵養維持ト申
シマスルヨリモ荒廢ヲセシメナイ、所謂繁
殖ノ限度內ニ於ケル所ノ漁獲ト云フ風ナ、
大體ノ方針ヲ農林當局ニ於テ、漁民ニ對シ
テ指導ナサル所ノ方法ヲ、何カ御考デアリ
マスルナラバ承リタイノデアリマス、何シ
ロ漁師ノ漁獲對象物ニナリマスル魚族ガ存
在シナクナリマスレバ、何ヲ申シテモ根本
的ニ失ハレテシマフノデアリマス、今日例
ヲ申シマスルト、北海道ノ噴火灣ニ於ケル
ガ如キモノハ、實ニ悲慘ナル狀態ニナッテ居
リマス、口ニハ水產資源ノ涵養繁殖ト云フ
コトヲ、官民共ニ誰人モ口ニ致サレマスケ
レドモ、其實際ヲ見マスルト云フト、例ヘ
バ機船底曳網ニ對スル所ノ善後處置ニ對
スル方法、或ハ汚水ノ流入シマスコトニ對
スル防止方法ト云フヤウナモノニ付キマシ
テ、如何ニモ漁民ハ擧ゲテ悲痛ナ思ヲ致シ
テ居ルノデアリマス、是等ニ對シマシテ最
近色々ト農林當局ノ御方針モアルヤウデア
リマスルガ、具體的ニ一ツ此處デ其方法、
及ビドウ云フ順序デ實行シタイカト云フ所
ノ御方針ヲ承リタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007011331X01019370315&spkNum=12
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013・原辰二
○原政府委員 只今登坂サンノ御質問ニア
リマシタ沿岸漁業振興ノ爲ノ、資源ノ維持
培養ニ關スル點デゴザイマスガ、洵ニ登坂
サンノ只今御述ニナリマシタヤウナ實情趨
勢デアリマシテ、御意見ノ如ク其資源ノ涸
渴ヲ防ギ、培養ヲ圖ルト云フコトハ、何ト
申シマシテモ水產政策ノ根幹ト申シマス
カ、最モ重キヲ置クベキ點ダト、私共ノ方デ
モ存ジテ居ル次第デゴザイマス、ソレデ從
來カラ政府ト致シマシテモ、サウ云フ點ニ
鑑ミマシテ出來ルダケノ施設ハ講ジテ參ッ
テ居ッタノデゴザイマス、併ナガラ十分ニ其
施設ヲスルト云フ所マデハ、中々參ッテ居ナ
カッタコトモ亦事實デゴザイマス、ソレデ實
ハ昭和十二年度ノ豫算編成ニ對シマシテ、御
承知ノ如ク前內閣ニ於キマシテ、色々重要
國策ト云フモノヲ論議サレマシタ際ニ、水
產當局ト致シマシテハ、其沿岸漁業ノ振興
ト云フ問題ヲ、一ツ水產ニ關スル國策トシ
テ扱ッテ貰ヒタイト云フ考ヲ以チマシテ、具
體的ニハソレヲ豫算ノ上ニ現ハシテ參ルコ
トニ努力ヲ致シタノデアリマス、其考ヘ方
ハ大體ニ於テ登坂サンノ只今御述ニナリマ
シタヤウニ、積極ノ方面ト消極ノ方面ト、
兩方面ニ亙ッテ考ヘナケレバナラヌ、斯樣ニ
考ヘマシテ、先ヅ積極ノ方面デハ所謂沿岸
資源ノ增殖ヲ圖ル、具體的ニ申上ゲマスナ
ラバ、水產增殖ノ爲ニ貝類デアリマストカ、
或ハ海藻類デアリマストカ、サウ云フモノ
ノ造成面ヲ作ル施設ヲ試ミル、或ハ種苗ノ
放養ノ施設ヲ企テル、ソレカラ種苗ヲ採集
スル施設ヲ講ジマス、或ハ苗區ノ設置ヲ圖
リマス、サウ云フ施設ヲ講ジマシテ、所謂
種ヲ餘所カラ持ッテ來、又種ヲ保護シ、サウ
シテ魚貝、海藻類ノ增殖ヲ圖ル、斯ウ云フ
風ナ施設ヲ講ズル、一面ニ於キマシテ消極
的ニハ、御承知ノ通リニ機船底曳網ノ如キ
海ノ底カラ浚ヒマシテ、魚貝類ノ產卵場所
ヲ壞シテシマフ、一網打盡ニ稚魚マデモ抄
ヒ上ゲテシマフト云フ風ナ漁業ハ、相當是
ハ制限ヲシテ產卵場モ保護シ、又稚魚ヲ濫
獲スルト云フコトノナイヤウニ、所謂漁場
ヲ消極的ニ保護スルト云フコトヲ考ヘナケ
レバナラナイ、又大體ニ於キマシテ漁業者
ト云フモノハ、マダ〓〓知識ノ程度ガ幼稚
デアリマシテ、增殖ナリ漁場ノ保護ナリト
云フモノニ付テ、親切ニ指導ヲシテヤラナ
ケレバ、中々漁業者自身ニ任セテ、施設ノ趣
旨ヲ唯話シテ聞カセルト云フコトダケデハ
實行ガ難カシイノデアリマス、サウ云フ點
ニモ鑑ミマシテ、所謂指導者ト云フモノ
ヲ漁業地方ニ置イテ、手ヲ取ッテ漁業者ヲ指
導スルト云フコトモ、今日ノ漁村ノ實情カ
ラ見マシテ最モ大切ナ必要ナコトデアル、
斯樣ニ考ヘマシテ、大體今申上ゲマシタヤ
ウナ積極的ノ增殖ノ施設ノ奬勵、底曳網ノ
整理ト云フガ如キ消極的ノ保護ノ施設、又
消極積極ニ亙ル諸施設ノ指導者ヲ、地方ニ
配置スルト云フ風ナ內容ヲ盛リマシテ、昭
和十二年度ノ豫算ニ於キマシテハ、約四十
二万圓バカリノ經費ガ計上サレタノデアリ
マス、水產當局ト致シマシテ、是ダケノ經
費デ決シテ十分トハ思ヒマセヌガ、又從來
ノ施設ニ比ベマスト、資源ノ保護培養ノ爲
ニ、兎ニ角四十万圓モ經費ガ豫算ニ計上サ
レルト云フコトハ、オ恥カシイ話デアリマ
スカ、非常ニ一大進步ヲシタト云フヤウナ
實情デゴザイマシテ、從來ノ施設ナリ經費
ニ比ベマスト、非常ニ豫算モ取レ、稍〓施設
ガ徹底的ニ行ハレルト云フ風ナコトニハナ
リマスケレドモ、現狀竝ニ將來ノ點ニ鑑ミ
マスト、是位ナ經費デハ實ハマダ〓〓不十
分ダト云フ風ニ考ヘテ居リマス、將來水產
當局ト致シマシテハモット〓〓此方面ニ施
設ヲ擴充スルコトニ努力シテ參ラナケレバ
ナラヌ、斯樣ニ考ヘテ居リマス、登坂サン
ノ御趣旨ハ私共ト全ク同一デゴザイマシ
テ、積極消極兩方面カラ將來ニ於キマシテ
モ考ヘテ行カナケレバナラヌ、斯樣ニ考ヘ
テ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007011331X01019370315&spkNum=13
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014・登坂良作
○登坂委員 能ク御趣意ノ程ハ分ッテ居リ
マスガ、私ノ熱望ニ堪ヘナイノハ、卽チ最
近ヨク庶政一新トカ、或ハ國策ノ樹立トカ、
國民ノ生活安定トカ云フコトヲ非常ニ大キ
ナ文字デ書立テラレ、又叫バレテ居ルノデ
アリマス、併ナガラ唯空ニサウ云フコトノ
ミ申サレテモ、實際ニ例ヘバ今ノ漁民ノ如
キモノニ於キマシテハ、ドウモ上滑リヲ致
シテ居ル感ガアルノデアリマス、幸ニ斯樣
ナ時勢ニナッテ參ッタノデアリマスガ故ニ、私
ハ水產當局ノ如キハ最モ此點ニ力ヲ入レテ
戴キタイト思フノデアリマス、卽チロヲ開
ケバ農漁山村ト申サレマシテ、常ニ漁村ト
云フモノニ重キヲ置カレテ居ル、又申スマ
デモナク我國ノ沿岸線ハ實ニ長イノデアリ
マスガ、若シモ此魚族ト云フモノガ去ッテ
シマヒマシタナラバ、何ト申シマスカ、沿
岸獨リ長クシテ、漁民ハ歎息ヲスルト云フ
形ニナルカト思フノデアリマス、卽チ一例
ヲ見マシテモ、昔北海道ニアノ如ク居リマ
シタ鰊ハ今日殆ド居ラナイ、段々逐年減少
ヲ致シテ參ルノデアリマシテ、水產當局ニ
於キマシテモ非常ナ御〓究ニハナッテ居リ
マセウガ、斯樣ナ一ツノ鰊ト云フヤウナ魚
族ニ對スル〓究ヲ見マシテモ、一體鰊ト云
フモノガ皆滅ビテシマッタノカ、或ハ他ニ
行ッテシマッタノカ、水產當局ニ於キマシテ
實際ニ之ニ對スル所ノ〓究ガアリマスルナ
ラバ、私共民間ニ在ル者ハ參考ニ聞カシテ
戴キタイト思フノデアリマス、今日色々ノ
魚族ガ豐富ニ居ルト申シマシテモ、軈テ濫
獲ヲ續ケテ參リマシタナラバ、此運命ニ總
テガ到達スルト思フノデアリマス、其時ニ
至ッテロニ或ハ掛聲ヲ掛ケ、如何ニ保險法
ト云フヤウナモノヲヤリマシテモ、私ハ漁
村ノ更生策ト云フモノハ至難ト考ヘテ居ル
ノデアリマス、ドウカ積極ニ致シマシテモ、
消極的ニ致シマシテモ、其方法ニ對シテ水
產當局ノ一段ノ腹構ヘヲ拵ヘテ戴キタイト
思フノデアリマス、私共ヘ最近ドン〓〓參リ
マス所ノ電報ヲ見マスルト、殆ド漁村カラ自
暴的ノ電報ガ澤山參ル、之ヲ唯今ノ御話ノヤ
ウニ段々トヤッテ行ク積リデアルト云フヤ
ウナ一ツノ御計畫ハ聞カサレマシテモ、漁
民ガ、ソレニ依ッテ滿足シ得ルカ、請願書等
ヲ御覽ニナリマシテモ、十分御承知デアリ
マセウト思ヒマスルガ、皆是レ各〓ノ生活
問題ニ關係ガアリマスル爲ニ、例ヘバ本當
ノ水產業者全面ノ資源維持ノ問題ニ致シマ
シテモ容易ニ足並ガ揃ハナイ、ソレハ無理
モナイト思ヒマスルガ、例ヘバ此機船底曳
網ノ如キ一例ヲ採リマシテモ、是ハ曾テハ
水產當局ニ於テ御奬勵ニナリ、或ハ地方廳
ニ於テモ奬勵致サレタノデアリマスルガ、
併シ今日殆ド是ハ水族資源ノ潰滅ヲ來ス憂
ヒガアルト云フコトニ、定論ガ相成ッテ居
リマシテ、水產當局ニ於キマシテモ、是ガ
制限整理ヲ爲サル御意圖デアルコトハ伺ッ
テ、私共モ贊意ヲ表シテ居リマス、併ナガ
ラ最近ニ於キマシテハ、漸次其空氣モ弛緩
ヲ致シテ來テ居ルヤウニ、漁村等モ心配ヲ致
シテ居リマス、實際其機船底曳網ニ依ッテ害
ヲ被ッテ居ル所ノ沿岸漁民ノ聲ヲ聞キマス
ルト、何ト申シマシテ宜イカ、實ニ淚ナキ能
ハズト云フヤウナ感ヲ致ス、此問題ノ如キ
ハ餘程水產局ニ於キマシテ、眞ニ此水產政
策ト云フモノヲ一手ニ管掌シテ戴カナケレ
バ、容易ニ解決シ得ナイ問題カト思フノデ
アリマス、此機船底曳網ノ通ッテ行キマシタ
跡ヲ見ルト、藻屑ト一〓ニ極ク細小ノ水子
ト云フモノガ殆ド一里、二里ノ間浮ブ、是デ
ハ稚魚幼魚ヲ攪亂スルバカリデナクテ、水
子ヲ皆潰滅セシメテ居ル、如何ニ底曳業者
ト雖モ、自分方ガ獲ラナケレバナラヌ所ノ
此水族ノ資源ト云フモノヲ自ラ荒廢スル、
斯ノ如キハ冷靜ニ常識ヲ以テシマシタナラ
バ當然分ルコトデアリマスルガ、最近殊ニ
農林當局カラ、軈テ五年若クハ七年ノ間ニ
整理ヲ致スノデアルト云フコトノ發表ヲサ
レテ以來、機船底曳網業者ト云フモノハ此
際トバカリニ、有ユル手段ヲ以テ濫獲ニ邁
進スルト云フ已ムヲ得ナイヤウナ狀態ニ
ナッテ參ッテ居ルノデアリマス、私ハ思フニ、
是ハドウシテモ日本ノ沿岸漁業ヲ振興シ、
漁村ヲ救濟スルト云フ大キナ見地カラ參リ
マシタナラバ、此機船底曳網ト云フモノノ
轉業資金ト云フヤウナモノモ、十分ニ水產
當局ニ於キマシテ、何等カノ方法ヲ以テ御
工夫ヲ戴キマシテ、是等ノ業者モ立ツヤウ
ニ、而シテ又一面ニ此沿岸漁村ノ眞ニ、實
ニ危險ナル時機ニアルノデアリマスルガ故
ニ、之ヲ玆ニ防グ、サウシテ最モ優秀ナル
水產品ノ獲レマス沿岸漁業ト云フモノヲ、
日本ノ水產國策トシテ助長統制シテ戴ク、
指導シテ戴ク、サウシテ軈テ獲レル所ノ魚
ヲ皆沖ノ方ニ出シマシテ、小サナ中ニ水子
ノ中ニ獲ッテシマフト云フコトハドウ考ヘ
テモ一日一年ト雖モ放置スベカラザルコト
ノヤウニ考ヘルノデアリマス、私共カラサ
ウ云フコトヲ申ス迄モナイ、常ニ十二分ニ
御〓究ノコトト思ヒマスケレドモ、ドウカ
是等ノ點ハ、眞ニ今日日本ノ國策ノ樹立ト
カ、庶政一新トカ、國民ノ生活ノ安定トカ
云フヤウナコトヲ、本當ニ腹ノ底カラ具體
的ノ政策、施設ヲ御取扱ニナッテ居ル所ノ水
產當局ニ於キマシテ、御共鳴ヲ得マスルナ
ラバ一段トモウ少シ「スピード」ニヤッテ戴
ク譯ニハ行クマイカ、何ヲ申スニモ此資源
ノ維持ガ失ハレマシタナラバ、一切空ニ歸
スルコトト思フノデアリマス、ドウカ此問
題ハ相當-從來ノ機船底曳網業者ノ存置
ノ論モアリマスルガ、軈テ底曳網漁業者モ
ヤハリ全面的ニ荒廢ヲ致シマシタナラバ、
同ジ運命ニ到達スルコトト私ハ思フノデア
リマス、是ハ水產業者ガ一致シテ自覺ヲ致
シマシテ、水產資源ノ維持ト云フモノヲ水
產當局ニ於テ眞ニ何カ範ヲ示シテ戴ク譯ニ
ハ行クマイカ、口デ指導シテモ中々ソレハ
知識ノ上ニハ諒解致シマシテモ、何シロ營
利業デアリマスルガ故ニ、又日々ノ生活ノ
樣態デアリマスルガ故ニ、實效ガ其處ニ現
ハレテ來ナケレバ私ハ徹底セヌト思ヒマ
ス、殊ニ此水產業ノ如キモノハ、長ラクノ
間原始的ノ方法ニ慣レテ居ルモノデアリマ
スガ故ニ、又非常ニ淡白ナ性格ノ人達ガ多
ク居ラレルノデアリマスガ故ニ、眼前ニ成
程玆ニ水產試驗ノ一ツノ方法ヲ講ジタラ、
斯樣ナ效果ガアッタト云フコトガ伴ヒマス
レバ、擧ゲテ贊成ヲ致スノデハアルマイカ、
又其實行ニ協力ヲスル、水產當局ノ指導ヲ
モ快ク支持應援ヲスルノデハアルマイカ、
ソコデ例ヘバ時期的ニ何年間此處ノ場所ハ
禁漁ニスルトカ、或ハ區域的ニ此處ヲ絕對
ニ禁漁ニスルトカ、此問題モ或ハ日本全國
一樣ニ見ルコトハ困難デアルカモ知レマセ
又、所ニ依リマシテ色々ノ御調査ニナッテ
居ルカモ知レマセヌガ、思切ッテ一ツ此機
船底曳網ノ害ノ多イ所、之ヲ除イタナラバ
沿岸漁村ト云フモノガ、軈テハ振興シテ來
ル曙光ガ見エルト云フ御調査ノ點ニ對シマ
シテ、具體的ニ年限ヲ切ッテ一ツヤッテ見ル、
サウ云フヤウナ御方策ノ持合セハナイモノ
カ、私カラ亞米利加ヤ外國ノ例ヲ申上ゲル
ノハ遠慮致シマスルガ、旣ニ亞米利加等ニ
於テモ、思ヒ切ッタ政策ヲヤッテ、今日水產
資源ト云フモノノ維持ヲ致シテ居ル、日本
ハ世界第一ノ水產國ト稱サレテ居ッテ、若モ
水產資源ガ枯渴シタト云フヤウナコトニ相
成リマスナラバ、官民共ニ相濟マザルコト
ト思フノデアリマス、御考ハ十二分ニ私共
モ拜承致シテ居リマスガ、何カ更ニ之ヲ實
際的ニ何處カデ效果的ニ指導シテ戴ク方法
ノ御持合ガアリマセヌカ、北海道ノ一例ヲ
申シマスト、噴火灣ノ如キハ實ニ一ツノ適
例ニナルカト思フノデアリマス、其方面ノ
沿岸カラ參リマス電報ノ如キハ悲慘ヲ極メ
テ居ル、思ヒ餘ッテノ言葉デアリマセウガ、
機船底曳網ノ船ニ對シマシテ、海ノ「ギャン
グ」ヲドウカ整理シテ欲シイト云フヤウナ
感ジヲ持ッテ居ル、是ハ旣ニ權利ヲ持ッテ居ッ
テ、而モ最初ハ水產當局カラ奬勵ヲ受ケテ
ヤリマシタ仕事ガ、今日沿岸漁村ノ漁民カ
ラ、海ノ「ギャング」ト云フヤウナ一ツノ稱號ヲ
受ケルヤウナ狀態ニ相成リマスコトヲ、コ
コ又數年間放置ナサルト云フコトニナリマ
スト、實ニ由々シキ事柄ニ相成リハシナイ
カト、實ハ私共心配ヲ致シテ居ルノデアリ
ひぐ、サウシテ其機船底曳ニ乘ッテ居ル者
ハ、已ムヲ得ズ沿岸漁民モ仕事ガナイ爲ニ
ソレニ乘ッテ居ル、サウシテソレガ本職デ
アリマスガ故ニ、皆水子ト云フヤウナモノ
ヲスッカリ海ノ底カラ浚ッテシマフ爲ニ、其
跡へ延繩ヲヤッテ見マスト、海底ハ殆ド海軍
ガ掃海ヲシタヤウニナッタト云フノデ、乘
テ居ッタ漁民モ、ドウシテモ獲レナイ譯ダ
ト言ッテ、長大息ヲシテ居ルト云フコトヲ常
ニ申シテ居リマス、斯樣ニドチラカル見マ
シテモ、水產全體ノ立前カラ見マシタナラ
バ、一年デモ早ク整理ナサレルコトガ眞ニ
漁村ヲ更生セシメ、漁民ヲ救濟ナサル趣意
カト思フノデアリマス、又同時ニ鑛山等カ
ラ流レテ參リマス汚水、之ニ依ッテモ非常ナ
打撃ヲ受ケテ居ルノデアリマス、アノ長萬
部沿岸ニ靜狩ト云フ處ガアリマスガ、此處
ニハ當局ノ指導ニ依リマシテ、相當ノ金ヲ
掛ケテ魚礁ヲ入レタノデアリマスガ、毫モ
其效果ガナイ、或ハ又他カラ一ツノ水族ヲ
持ッテ來テ、其處ニ扶植ヲ圖ッタケレドモ、數
年ナラズシテ皆居ナクナッテシマッタト云フ
譯デアリマシテ、山ト海トノ關係等モ等閑
ニスベカラザル關聯ニナッテ居リマス、是等
ニ對シマシテ本當ニ其事自體ニ付テノ御指
導ヲ願フコトガ適切デハナイカ、唯抽象的
ニ斯ウ云ウ風ニヤレ、アア云フ風ニヤレト
云フコトヲ言ッテモ、每日ノ業務ニ追ハレテ
居ル漁民デアリマスガ故ニ本當ニ頭ニ來ナ
イ、之ヲ假リニ此樣ニ四五年辛抱シタナレ
バ、非常ニ將來ノ水產ノ繁榮ヲ來シタト云
フヤウナコトガ、日本全國ノ中ノ何處カ二
三箇所デモアリマシタナラバ、非常ナ刺戟
ニナルカト思フノデアリマス、又サウ云フ
コトガアルカモ知レマセヌガ、アリマシタ
ナラバ、斯樣ナ委員會デモアリマスシ、具
體的ナ御考ヲ御聞カセ戴クナラバ仕合セト
存ジマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007011331X01019370315&spkNum=14
-
015・原辰二
○原政府委員 登坂君ノ縷々御述べニナリ
マシタ底曳網ノ弊害ノ方面又水質ノ汚濁防
止ノ點、是ガ資源ノ培養ノ上カラ最モ憂フ
ベキコトデアリ、又隨テ早ク徹底的ニ解決
ノ方法ヲ圖ルト云フコトノ必要ナコト等ハ
モウ御述ベニナリマシタ通リニ存ジテ居ル
ノデアリマス、ソレデアリマスカラ先程申
上ゲマシタヤウニ、底曳ノ整理ノ如キモ
ノモ當局ト致シマシテハ、一日モ速ク沿岸
ノ漁業者ト衝突ヲスルヤウナ點ヲ出來ル
ダケ緩和シ、漁場ノ生產力ヲ一日モ速ク囘
復スルヤウニシテ行キタイト云フ趣旨デ、
色々考ヘテ居ルノデアリマス、唯登坂サン
モ一寸御話ノアリマシタヤウニ、一面底曳
業者ノ側カラ見ルト、過去ニ於テ假ニ積
極的ニ政府トシテ奬勵ハシナカッタニ致シ
マシテモ、兎ニ角正當ニ許可ヲ受ケテヤッテ
來テ居ル商賣ヲ、直チニ止メナケレバナラ
ヌト云フコトニナリマシテハ、又其處ニ
種々困難ナ事情モアルコトハ免レナイノデ
ゴザイマスカラ、成ベク轉業資金ノ如キモ
ノヲ出シテヤリマシテ、失業スルト云フヤ
ウナコトハ避ケテ、調和ヲ執ッタヤリ方ニ
依ッテ解決ヲシテ行カナケレバナラヌ、斯樣
ニ考ヘマスノデ、ソレ等ノ點ニ付テ色々考
ヘテ居ルノデアリマスガ、只今御話ノアッタ
何處カ一定ノ地域ヲ決メテ、其處デ模範的
ニ底曳ヲ止メサセテ、止メレバ斯ノ如ク漁
場ハ囘復シ、生產力ガ增スト云フコトヲ、
目ノアタリ見サセルヤウナコトヲヤッテハ
ドウカト云フ御考モ、大變適切ナ御考ト思
ヒマスノデ、將來此底曳整理ノ具體方針ヲ
決メテ參ル際ニ、十分考慮シテ見タイト思
ヒマス、ソレカラ水質汚濁ノ點デゴザイマ
スガ、是モ實ハ水質汚濁防止ノ相談所ト云
フ風ナモノガ、別ニ只今ノ所アル譯デハゴ
ザイマセヌガ、農林省ニ專任ノ職員ヲ置イ
テ、地方カラノ御要求ニ依ッテ、出來得ル限
リ實際ニ就イテ調査ヲシ、斯ウ云フ水質デ
アレバ、斯ウ云フ風ニ防止ノ施設ヲ講ジタ
ラ宜カラウト云フ風ナコトヲ、實ハ指導シ
テ居ルノデアリマスガ、唯現在ノ所サウ云
フ專任ノ職員ノ數ガ非常ニ少クテ、地方ノ
御要求ノアル際ニ、直チニソレニ應ジテ、適
切ナ御指導ヲスルト云フコトニハ十分デナ
イト考ヘマスノデ、將來サウ云フ點ニ付テ
モ十分考ヘテ參リタイト存ジテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007011331X01019370315&spkNum=15
-
016・東條貞
○東條委員 今ノ機船底曳ノ整理ノコトニ
付テハ、豫算總會、分科會等デ大臣及ビ次官
カラノ御答辯ガアリマシテ、大體ノ方針ハ
承知致シテ居ルノデアリマスガ、私共此沿
岸漁業ト底曳網トノ摩擦ニ付テハ、適當ナ
解決ヲ付ケナケレバナラヌト考ヘテ居リマ
ス、所ガドノ程度ノ摩擦ヲ生ズルカト云フ
コトニ付テノ、ハッキリシタ認識ガ得ラレナ
イノデ苦シンデ居ルノデアリマス、北海道
ノ現狀ヲ調ベテ見タ所ヲ數字ニ表シテ見マ
スト、摩擦面ガ非常ニ少イヤウニ思ハレル
ノデ、非常ニ意外ノ感ヲ持ッタノデアリマ
ス、ソレデ之ニ關スル資料ヲ一ツ提供シテ
戴キタイト思ヒマス、例ヘテ申セバ沿岸漁
業ト機船底曳網トハ、兩方ガ非常ニ聲ヲ大
キクシテ爭ッテ居リマスノデ、此點ニ付テノ
知識ノナイ者カラ考ヘマスト、全面的ニ摩
擦ヲスルヤウナ觀ガアリマス、所ガ內容ニ
付テ調ベテ見マスルト云フト、例ヘバ鰊デ
アリマストカ、鰮デアリマストカ、鮭デア
ル、或ハ鱒ト云フヤウナモノヲ段々魚種別
ニ調ベテ見マスト、果シテ是ガドノ程度ノ
摩擦ヲスルノカト云フ點ガ吾々ニハハッキ
リト分ラナイ、無論今申上ゲタモノデアル
トカ、或ハ鯖デアルトカ、鮪デアルトカ、
烏賊デアリマストカ、底曳網デハ未ダ曾テ
一ツモ獲レタコトノナイ魚族ガ非常ニ多ク
テ、漁獲高ガ非常ニ多イ、ソレカラ魚種ハ
同ジデモ摩擦ヲシナイモノモアルヤウニ思
ヒマスシ、ソレカラ漁獲高ヲ標準ニシテ、
各魚族ノ漁獲高ノ統計カラ算盤ヲ採ッテ見
マスト、底曳網ト沿岸漁業ト摩擦ヲスルカ
ト思ハレマスモノハ、北海道ノ統計表デ調
ベテ見マスルト一割ニモ足リナイ、ホンノ
三分カ五分位シカ摩擦ヲシナイノデハナイ
カト思ハレルノデアリマス、サウナッテ來マ
スト、底曳網ト沿岸漁業トノ摩擦ト云フモ
ノニ付テノ考ヘ方ガ、大變違ッテ來ナケレバ
ナラヌ、是ハ私共專門的ノ知識ヲ持ッテ居リ
マセヌ爲ニハッキリト分ラヌノデアリマス
ガ、例ヘバ沿岸カラ三千間ヤ四千間位ノ網
ヲ立テテ居リマス定置漁業ナント云フモノ
ハ、底曳ト摩擦ヲシナイノデハナイカト、
私共カラ見ルト考ヘラレル、其他漁法ガ違
フトカ、漁場ガ違フトカ、或ハ全然底ニハ
付カナイ中層カ上層ニ居ル魚ト云フヤウナ
モノハ、底曳トハ摩擦ヲシナイヤウニ思ハ
レル、ソレデ大體ドノ程度ニ沿岸漁業ト底
曳網トガ摩擦ヲスルカト云フコトニ付キマ
シテ、具體的ナ資料ノ御提出ヲ願ヒタイト
思ヒマス、尤モ本當ニ正確ナモノハ中々容
易ニ出來マスマイ、例ヘバ產卵場所ノ關係
ダトカ、稚魚ノ關係ダトカ云フヤウナコト
ニナリマスト、ハッキリシタコトハ分リマス
マイガ、分ル限リニ於テドウ云フ風ニ、ド
ノ程度ニ摩擦ヲスルノダト云フコトノ調査
資料ヲ御提出願ヒタイ、ソレカラモウ一ツ
ハ此禁止區域ヲ侵シタ底曳機船ノ取締、是
ハ非常ニ難シイ事柄デアリマシテ、中々取
締船ガ追駈ケテモ、向フモ相當ナ速力ヲ持ッ
テ居リマシテ、廣イ海ノ上デアリマスカラ、
追駈ケテ行ク中ニハ位置ガ變ッテシマヒマス
ノデ、中々困難ナノデアリマスガ、此取締ニ
付テ何等カ適當ナ御考ガアルナラバ、ソレ
ヲ伺ヒタイ、ソレカラ今一ツハ機船底曳網
ノ免許ヲ受ケテ公然トヤッテ居ルノデナク
テ、詰リ底曳網ト同ジ漁法デヤッテ居リマ
スル所謂頭カラ反則ノ、何ト言ヒマスカ、
密漁者ノヤウナモノガ非常ニ澤山アル、之
ニ付テノ御調ガドノ程度ニ出來テ居リマス
カ、是ノ取締ト云フモノガドノ程度ニ出來
テ居ルカ、或ハ取締ガ困難デ全然出來ヌト
御考デアリマスカ、是等ノ點ヲ御伺致シタ
イト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007011331X01019370315&spkNum=16
-
017・原辰二
○原政府委員 東條サンノ只今御要求ノ北
海道方面ニ於ケル···発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007011331X01019370315&spkNum=17
-
018・東條貞
○東條委員 北海道ダケデナク、全國的ノ
意味デスヨ、資料ハ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007011331X01019370315&spkNum=18
-
019・原辰二
○原政府委員 御話ノヤウニ、是ハ非常ニ
精密ナ資料ハ中々困難デゴザイマス、デア
リマスガ、私共ノ方デ大體方針ヲ立テル際
ニハ、底曳デハ現在ドウ云フ種類ノ魚ヲ獲ッ
テ居ルカ、又沿岸漁業者トシテドウ云フヤ
ウナモノヲ獲ッテ居ルカ、又獲ルベキ魚類ハ
ドウ云フモノデアルカト云フ風ナコトヲ、
漁獲物ノ種類ニ付キマシテ調ベタノガゴザ
イマスカラ、其大體ノ資料ヲ御目ニ掛ケル
コトニ致シタイト思ヒマス、ソレカラ無許
可ノ底曳ノ數デゴザイマス、是ハ御話ノヤ
ウニ、到底正確ナ船數ト云フモノハ分リマ
セヌガ、分科會デモ申シタヤウニ、唯大體
ノ見當ノ數字デゴザイマスガ、其地方ニ非
常ニ多イト云フ話ハ度々聞イテ居リマスノ
ハ、六千艘カ七千艘位ハアルノデハナカラ
ウカ-大體ソレ位ハドウモ居ルラシク思
ハレルノデアリマス、但シソレガ所謂嚴格
ナ意味ニ於テ底曳バカリデアルカドウカト
云フ點ハ一寸分リマセヌ、ソレカラサウ云
フ無許可船ノ將來ノ取締ニ付テハ、取締ノ
方法ガ果シテ立ツカ立タヌカト云フ點デゴ
ザイマスガ、是ハ私共ハ取締ノ方法ヲモウ
少シ强化シテ參レバ、取締リ得ルモノト考
ヘテ居リマス、モウ少シ具體的ニ申上ゲレ
バ、現在ノ所ハ許可ヲ受ケタモノガ、許可ヲ
受ケタ條件ヲ違反シタ場合、或ハ許可ヲ受
クベカリシモノガ、受ケナイデヤッタト云フ
風ナ場合ニ付テノ取締ガ、大體ニ於キマシ
テハ許可ヲ受ケタモノガ、例ヘバ禁止區域
ヲ侵シタトカ、或ハ禁止期間ヲ守ラナカッ
タト云フヤウナ場合ニハ、ソレハ停船處分
デアリマストカ、可ナリ制裁ノ途ガ詳細ニ
備ッテ居リマスガ、自由漁業デ是ガ許可ヲ受
クベカリシモノデアルカドウカ云フ風ナ點ニ
付テノ對策問題ニ引ッ掛ルヤウナ場合ニハ、
稍〓其制裁ノ規定ガ漏レテ居ルヤウニ、私ハ
一寸感ジテ居リマスノデ、サウ云フ點ヲコ
ソ細カニ規定ヲシテ參レバ、相當此取締ノ
方法ハ立ツモノト、斯樣ニ考ヘテ居リマス、
デアリマスガ、何ト申シマシテモ是ハ現在
底曳ダケノ取締專門ノ所謂監視船、是ナド
ノ數ガ餘リ多クアリマセヌデ、地方ノ取締
船ト協力シテヤッテ居ル譯デアリマスケレ
ドモ、是トテモ、地方ノ取締船モ十八隻デ
アリマシタカ、ソレ位ニ過ギマセヌノデ、
サウ言ッタ點ニモ、モウ少シカヲ加ヘテ參ラ
ナケレバイケナイト思ッテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007011331X01019370315&spkNum=19
-
020・紫安新九郎
○紫安委員長 高木君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007011331X01019370315&spkNum=20
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021・登坂良作
○登坂委員 モウ少シアルノデスガ···発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007011331X01019370315&spkNum=21
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022・紫安新九郎
○紫安委員長 ソレハ保留シテ下サイ、先
程カラアナタノバカリ三囘續ケタカラ-
高木君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007011331X01019370315&spkNum=22
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023・高木粂太郎
○高木委員 本法案ニ付テハ本員ハ多年其
必要ヲ認メマシテ、有ユル機會ニ於テ其實
現ニ努力ヲ拂ッテ參リマシタ關係上、其大體
ノ趣旨ニハ贊意ヲ表スル者デアリマス、併
シ此機會ニ於テ、政府ノ水產政策ニ關スル
御抱負ヲ承リ、併セテ此法案ニ對スル所ノ
質疑ヲ二三試ミタイト存ジマス、本員ハ此
際特ニ政府當局ノ考慮ヲ促シタイコトハ、
海難ノ防止ト救濟ニ關スルコトデアリマ
ス、只今議題トナッテ居リマス漁船保險法
ノ如キハ、確ニ有力ナル施設デハアリマス
ルケレドモ、是ダケデハ決シテ十分デナイ
ト本員ハ考ヘルノデアリマス、例ヘバ漁港
又ハ避難港ノ設備ヲ、十分ニ普及スルコト
ハ其一ツデアリマス、漁船乘組員ノ養成ニ
付テ、徹底的ニ其施設ヲ爲スコトモ其一ツ
デアリマス、更ニ尙ホ漁業從事者ニ關スル
保險ナリ、共濟事業ナリノ發達ヲ圖ルノモ、
最モ重要ナコトデアルト思フノデアリマ
ス、現ニ府縣水產會等ニ於キマシテ、此遭
難救濟事業ヲ實施シテ居ルモノモアリマス
ルケレドモ、是等ニ付キマシテ政府ハ何等
ノ助成モ致シテ居ラナイ現狀デアリマス、
人道上カラ見マシテモ、私ハ默視スルニ忍
ビナイノデアリマスルガ、政府ハ是等ニ付
テ如何ニ御考ニナッテ居ルカ、將來是等ニ對
シテハ、多少ノ補助金デモ與ヘテ、此事業
ヲ助成シテ欲シイト思フノデアリマスガ、
之ニ對スル御所見ヲ承リタイト思フノデア
リマス
第二ハ沿岸漁業ノ振興策デアリマスル
ガ、勿論沿岸漁業ハ我國漁業ノ大宗デアリ
マシテ、最モ重要デアリマスルガ、近年漁
村經濟ノ窮乏ガ深刻ニナッテ來マシタコト
ハ、勿論種々ノ原因ガアルコトトハ存ジマ
スルガ、第一ハ先程カラ登坂君ノ言ハレタ
ガ如ク、魚族ノ減少デアリマス、卽チ漁場
ガ荒廢シツツアルコトデアリマス、其漁場
ノ荒廢ハ濫獲ノ結果ニモ因ルデアリマセウ
ガ、必シモソレノミデハナイノデアリマシ
テ、例ヘバ工業、鑛山、電氣事業等ノ發達
ニ伴ヒマシテ、沿岸ト言ハズ、河川湖沼ノ
水質ガ汚毒致シテ、水產生物ノ產卵棲息ヲ
妨害シテ居ル事實ナドハ、魚族減少ノ主ナ
ル原因ノ一ツデアリマス、ソレガ爲ニ各地
ニ種々ノ紛擾ヲ生ジツツアルコトハ、御當
局ニ於テモ御承知ノコトト思フノデアリマ
ス、是等ニ對シテ之ヲ放任シテ置カズ、何
トカ積極的ノ對策ヲ講ジテ欲シイト思フノ
デアリマスガ、ソレニ對シテドウ云フ御考
ヲ持ッテ居ルカト云フコトヲ伺ヒタイノデ
アリマス、尙ホ更ニ沿岸漁業ノ不況ニ伴ヒ
マシテ、漁業相互間ニ種々ナル紛議ガ益〓
重大化シツツアルコトデアリマスガ、今議
會ニ於キマシテモ、只今登坂君ノ述べラレ
タ如ク、機船底曳ノ漁業ノ整理ニ付キ、贊
否ノ陳情ガ澤山ニ參ッテ居ルヤウナ狀況デ
アリマス、今後此種ノ問題ハ一層面倒ニナッ
テ行クノデハナイカト思フノデアリマスル
ガ、農林當局ハ一般沿岸漁業保護ノ見地カ
ラ、所謂大局的ニ水產國策ノ上カラ見テ、
沿岸漁業ヲ害スル所ノ、先程登坂君ガ熱心
ニ述ベラレタ所ノ、有害漁具タル所ノ機船
底曳網ノ整理ノ方針ヲ一層强化シテ、根本
的ニ沿岸漁業ノ振興ヲ圖ル必要ガアルト思
フノデアリマスルガ、如何デアリマスカ
第三ニハ水產試驗場ハ昭和四年ニ創設サ
レマシタガ、今以テ試驗船スラ持ッテ居ラ
ナイ有樣デアリマス、水產試驗場ニ船ノナ
イト云フコトハ、農事試驗場ニ耕地ノナイ
ノト同ジヤウナモノデアリマシテ、斯ノ如
キ不完全ナル試驗機關ヲ以テ、我國ノ如キ
水產國ノ水產業ノ發展ハ、期シ得ラレナイ
ト信ズルノデアリマス、政府ハ國立水產試
驗場ノ擴充ニ關シテ、何等カノ計畫ヲ持ッテ
居ルノデアリマスルカ、アリマシタナラバ
其計畫ヲ承リタイト思フノデアリマス、尙
ホ全國樞要ノ地ニ、水產試驗場ノ分場ヲ配
置シテ、サウシテ徹底的ニ統制アル指導ヲ
致シテ欲シイ考ヲ、私ハ持ッテ居リマスガ、
ソレ等ノ水產指導方針ニ付テ、御抱負ヲ承
リタイト存ジマス
以下本法案ニ關聯シテ極ク要旨ノミヲ簡
單ニ伺ヒマスガ、本法案第一條ニ依ル漁船
ノ範圍ニ付テハ、勅令ヲ以テ定ムルコトニ
ナッテ居リマスガ、本會議ニ於ケル本員ノ質
問ニ對シ、成ベク小漁船ニ及ボストノ御答
辯ヲ得テ滿足致シテ居リマスガ、併シ其大
ナル方ハ何百噸マデヲ限度トスル御考デア
リマスカ、尙ホ其限度內ノ漁船ノ總數及ビ
保險加入ノ見込數等ヲ、伺ヒタイト思フノ
デアリマス、本法案ノ第五條ニ依ル漁船保
險組合ノ地區ハ、道府縣ノ區域ニ依ラシム
ル方針デアルカ、尙ホ漁業ノ種類ニ依ル保
險組合ヲ認メルト致シマシタナラバ、如何
ナル漁業ニ付テ之ヲ認メルノデアリマスカ、
其邊ヲ伺ヒタイト思フノデアリマス、次ニ
法案第八條ニ依ル所ノ保險ノ料率ハ、保險
組合ノ定款ニ於テ定ムベキモノデアリ、
其制限ニ付テハ命令ヲ以テ規定スルコトニ
ナッテ居リマスルガ、其標準トスル料率ノ外
組合員ヨリ徵收スルコトアルベキ追徵金ハ
幾許デアルカ、其限度ヲ承リタイト思フノ
デアリマス、次ニ保險ノ事故及ビ塡補スベ
キ損害ノ範圍ニ付テハ、命令ヲ以テ定ムル
コトニナッテ居リマスルガ、其標準ハドウデ
アルカト云フコトヲ伺ヒタイノデアリマス、
次ニ法案第十八條ニ依レバ、重大ナル過失
ニ因ル損害ニ付テハ保險組合ハ其責任ヲ
負ハヌコトニナッテ居リマスルガ、其重大ナ
ル過失ノ意義ハ、ドウ云フ風ニ考ヘテ宜シ
イノデアリマスカ、實例ニ付テ御說明ヲ願
ヒタイト存ジマス、次ニ法案第三十一條ノ
再保險ノ保險金額ハ、元受保險金額ノ全額
ニ及ブノデアルカ、又ハ其限度如何ヲ伺ヒ
タイト思フノデアリマス、尙ホ其再保險ノ
保險料率ヲ如何ニ定ムル見込デアルカ、ソ
レヲモ併セテ伺ヒマス、更ニ再保險ニ付テ
ハ審査會ヲ設クルコトニナッテ居ルノデア
リマスガ、組織、權限、審査會ノ會員人選
ノ範圍ニ付テ御伺致シタイト存ジマス、次
ニ本法實施ヲ徹底セシムル爲ニ、系統水產
會等ニ對シマシテ、助成的施設ヲ爲ス必要
ガアルト、本員ハ認メル者デアルガ、何等
カノ御計畫ガアルカ否ヤ、其邊ヲ伺ヒタイ
ト思ヒマス、次ニ漁船ノ現狀ニ鑑ミマシテ、
漁船保險組合ノ設備及維持ニ付テ、國庫補
助ノ必要アルガ如ク思ハレルノデアリマス
ルガ、之ニ關スル御考ガアリマシタナラバ、
其內容ヲ承リタイト存ジマス、最後ニ行政
機構ノコトニ付テ御伺致シマスガ、過日本
會議ノ節ニ、中村君ノ質問ニ對シマシテ農林
大臣ハ、農林省ヲ農林水產省トスルコトニ
考究シテ見ルト言ハレタコトハ、私共滿足
致シテ居リマスルガ、如何ニ其後御考ニナッ
テ居リマスカ、其御抱負ヲ承リタイト存ズ
ルノデアリマス、更ニ水產局ニ本法實施ニ
伴ヒマシテ、保險課ノヤウナモノヲ設置ス
ル考ハナイノデアリマセウカ、以上甚ダ簡
單デアリマスルガ、其點ニ付テ御說明ヲ願
ヒタイト存ジマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007011331X01019370315&spkNum=23
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024・原辰二
○原政府委員 高木サンノ御尋ニナリマシ
タ海難防止施設ニ關スル點ノ、漁港デアリ
マストカ、船溜デアリマストカ、斯ウ云フ
ヤウナ船ノ安全保險ノ施設ヲ擴充スル、ソ
レカラ漁業者ノ素質改善ノ點、ソレカラ漁
業從業者ノ扶助施設等ハ-御話ノ如ク此
保險ハ事故ガ起ッタ後ノ、マア後始末トモ言
フベキモノデアリマシテ、寧ロサウ云フ事
故ヲ未然ニ防止スル爲ニハ、是等ノ施設ハ
何レモ非常ニ必要ナコトト考ヘテ居リマ
ス、詰リ從來カラモ御承知ノ通リニ、出來
ルダケマアヤッテ參ッテ居リマスケレドモ、
將來一層是等ノ施設ハ、擴充ヲシテ行カナ
ケレバナラヌ、斯樣ニ考ヘテ居リマス、ソ
レカラ沿岸漁業ノ振興ニ付テノ御話デゴザ
イマスガ、其點ハ先程登坂サンノ御質問ノ
際ニ申上ゲマシタ通リデゴザイマシテ、ア
ノ際ノ御答デ以テ御諒承ヲ願ヒタイト思ヒ
マス、ソレカラ水產試驗場ノ充實ナリ、分
場施設ノ點ニ付キマシテハ、御尤ナ御趣旨
デゴザイマシテ、マア水產試驗場ニモ御說
ノ通リニ、マダ試驗船ガ一艘モナイト云フ
コトハ、吾々ト致シマシテモ非常ニ不滿足
ニ感ジテ居ル次第デアリマス、此點ハモウ
財政上ノ事情ノ許ス限リ、一日モ速ク實現
ヲ圖ッテ參ラナケレバナラヌ、斯樣ニ考ヘ
テ居リマシテ、將來出來ルダケ努力ヲ致シ
タイト考ヘテ居リマス、分場ノ設置ニ付キ
マシテモ、從來東北ハ東北デ、東北ニ分場
ヲ設ケテ貰ヒタイト云フ御話モアリ、九州
ハ九州デ、アノ方面ニ分場ガ必要ダト云フ
ヤウナ御意見モ、度々御話ニナッテ居リマ
シテ、事情ノ許ス限リハ其設置ヲ圖ッテ參
リタイ、斯様ニ考ヘテ居リマス
ソレカラ直接此保險法案ニ付テノ御尋デ
ゴザイマシタガ、此保險ノ目的ハ、大體原
則ヲ百噸未滿ト云フコトニ置キマシテ、出
來ルダケ、所謂百噸未滿ノ小サナモノヲ本
體ニシテ參リタイ、斯樣ニ考ヘテ居リマス、
唯例外的ニ多少其百噸以上デモ、事情ニ依ッ
テハ扱ハナケレバナラナイモノモアラウ
カト考ヘテ居リマスガ、其場合ト雖モ千
噸以上ノ大キナ船ハ、數ガ非常ニ少ナウゴ
ザイマスシ、又民間ノ海上保險等デモ、大
キナ漁船ハ多少從來モ扱ッテ居リマシテ、
千噸以上ノモノハ大體民間ノ保險ニ委セル
ト云フコトニシテ參リタイト思ヒマス、
ソレカラ漁船保險組合ノ區域ノ點デアリマ
スガ、是ハ府縣ノ區域ニ依ルトカ、或ハ郡
ノ區域ニ依ルトカ云フ風ナ劃一的ナコトハ
廢メマシテ、地方ノ事情々々ニ應ジマシテ、
漁船ノ大體集ッテ居ル所ヲ中心ニシマシテ、
適當ニ定メテ參ルヤウニ致シタイト思ヒマ
ス、又業種別ノ組合ト云フモノモ出來ルヤ
ウニ考ヘテ居リマスガ、是ハドウ云フ業種
ニ付テ實行サレルカ、ハッキリシタ見當モ
寸付キマセヌケレドモ、例ヘバ捕鯨船デア
リマストカ、或ハ「トロール」ト云フ風ナモ
ノナドハ、若シ最前申上ゲマシタ一千噸未
滿ノ船デ、組合ヲ造リタイト云フ風ナ場合
ニハ、認メテ參ッタラ如何カト、斯樣ニ考ヘ
テ居リマス、ソレカラ保險料率デアリマス
ガ、是ハ組合々々ニ依リマシテ、具體的ニ
ハ各〓違ッテ參ルコトハ勿論デゴザイマス
ガ、全國ノ平均ノ料率ヲ申上ゲマスト、動
力附漁船ト無動力漁船トニ分ケテ申上ゲマ
スレバ、動力附漁船ノ方ハ、保險金額百圓
ニ對シマシテ二圓三十九錢、其內譯ヲ申上
ゲマスト、純保險料ガ一圓六十三錢、附加
保險料ガ七十六錢ト云フ風ニ考ヘテ居リマ
ス、無動力漁船ハ保險金額百圓ニ對シマシ
テ一圓七十一錢、其中デ純保險料ガ一圓一
錢附加保險料ガ七十錢ト云フ風ニ考ヘテ
居リマス、ソレカラ此保險料ノ追徵金ノ限
度デゴザイマスガ、是ハ此限度ノ追徵金ヲ
決メル際ノ個々ノ契約ニ付キマシテ、保險
ヲ掛ケテカラ經過シマシタ詰リ經過期間
ト、ソレカラ支拂保險料トノ關係、卽チ其
年ノ既納ノ保險料ト云フモノヲ標準ニ致シ
マシテ、ソレヲ最高限度ニシテ考ヘテ居リ
マス、卽チモウ一遍言ヒ換ヘマスルト、旣ニ
拂ッタ保險料ノ倍以上ハ追徵ハシナイ、サウ
云フ風ニ考ヘテ居リマス、ソレカラ塡補責
任ハドウ云フ場合ニ生ズルカト云フ點デゴ
ザイマスガ、是ハ沈沒デアリマストカ、坐礁
其他漁船ニ付テ損害ガ生ジタ場合全部ヲ考
ヘルノデアリマシテ、次イデ船ノ行方不明
ト云フヤウナ場合ニモ、勿論責任ガ發生ヲ
スルヤウニ考ヘテ居リマス、商法ノ規定ニ
依リマスト、公海ニ關スル危險トカ云フ風
ニナッテ居リマシテ、例ヘバ極ク小サナ船デ
アリマスト、能ク砂濱へ引揚ゲテアリマス
ガ、アア云フ砂濱へ引揚ゲテアル間ニ、損
害ガ起ッタナラバドウスルカト云フヤウナ
點ガ、從來公海ニ關スル危險デハ塡補ガ出
來ナイ缺點モアリ、又漁船ニ依リマシテハ
河川ヲ航行スルモノモアリマシテ、ソレ等
ノ事項ハ公海ニ關スル事項ト云フヤウナ觀
念デハ、一寸是ハ塡補ガ出來ナイノデアリ
マス、ソレ等ノ場合ヲモ全部含メルヤウニ
損傷ナリ、滅失ナリ、沈沒、行方不明其他
漁船ニ付テ損害ヲ生ジタ場合ハ、斯ウ云フ
風ニ廣ク是ハヤッテ行キタイト云フ風ニ考
ヘテ居リマス、ソレカラ再保險金ノ限度
デゴザイマスガ、是ハ元受保險金額ハ七割
ヲ限度ニ考ヘテ居リマス、ソレカラ再保險
料率ノ點デゴザイマスガ、是ハ動力附、無
動力附ニ分ケテ申上ゲマスト、動力附ノ漁
船ハ再保險金額百圓ニ對シマシテ一圓八十
四錢、其中デ純再保險料ガ一圓六十三錢、
附加再保險料ガ二十一錢、無動力漁船ハ再
保險金額百圓ニ對シマシテ一圓十四錢、其
中デ純再保險料ガ一圓一錢、附加再保險料
ガ十三錢、サウ云フ風ニ見テ居リマス、ソレ
カラ審査會デアリマスガ、此審査會ハ家畜
保險ノ制度ニモアリマシテ、此再保險關係
ニ付テ民事訴訟ヲ提起スル場合ニハ、成べ
ク之ヲ出來ルナラバ簡易ニ、訴訟マデ持ッテ
行カナイデ解決スルヤウニ圖リタイ、斯樣
ナ關係カラ致シマシテ、保險審査會ノ議ニ
掛ケナケレバナラヌト云フ風ニシタ譯デア
リマス、ソレデ其構成ハサウ云フ趣旨デア
リマスカラ、漁船ノコトニ付テ經驗ノアル
人ハ勿論デアリマスガ、例ヘバ其他ニ司法
省ノ民事局長デアリマストカ、商工省ノ保
險局長デアリマストカ、サウ云フ訴訟ニ關
シ、又漁船ニ關シ、保險ト云フコトニ付テ通
曉ヲシテ居ル人、ソレ等ノ人ヲシテ構成ス
ルヤウニ考ヘテ居リマス、ソレカラ此漁船
保險ノ實行ノ爲ニ、水產會ニ補助ヲスル考
ハナイカト云フ御尋デアリマスガ、水產會
等ニ對シマシテハ、勿論色々其御世話ヲシ
テ戴ク必要ガアル、斯樣ニ考ヘテ居ルノデ
アリマスガ、只今ノ所デハ直接ニ水產會ヘ
補助ト云フ形デ、水產會ノ御援助ニ對スル補
助ノ關係ハ考ヘテ居リマセヌ、但シ色々保
險思想ノ宣傳普及トカ、又漁船保險組合ノ
仕事實行ノ全般ニ付テ、水產會ノ所謂指導
ト云フヤウナコトモ、ヤッテ戴カナケレバナ
リマセヌノデ、サウ云フ宣傳指導ノ仕事ヲ、
水產會ニ委託ヲスルト云フ風ニ大體考ヘテ
居リマシテ、委託ト致シマシテ年ニ金額ヲ
申セバ六千圓程度ノモノハ、大體水產會ノ
方へ御〓シヲシテ御願ヲシタイ、斯樣ニ考
ヘテ居リマス、ソレカラ國庫補助ノ點デゴ
ザイマスガ、是ハ漁船保險組合ノ設立ノ費
用、ソレカラ組合ガ出來テカラノ漁船保險
組合ノ事業費、ソレカラ直接ニハ漁船保險
組合ニ對スル補助デハゴザイマセヌガ、只
今此水產業ニ於テ申上ゲマシタガ、保險宣
傳指導ノ委託費、ソレカラ府縣ニ指導ノ職
員ヲ置カネバナラヌカラ、ソレモ考ヘテア
リマスガ、ソレモ間接ニハ國庫ノ補助ト云
フ風ニ、實質的ニ見テ宜イカト思ヒマス、
サウ云フ費用モ見テ居リマス、ソレカラ是
ハ保險事業其モノハ、保險關係ハ特別會計
ヲ設ケテヤルノデアリマスガ、最初カラ特
別會計ガ獨立スルヤウニ考ヘマスト云フ
ト、保險料ト云フモノヲ結局高ク取ラナケ
レバナリマセヌカラ、漁民ノ負擔モ考ヘマ
シテ、十年位ハ一般會計ノ方カラ特別會計
ノ方ヘ、所謂繰入金ヲヤリマシテ、十年後
ニハ特別會計デ繰入レナクテモ、獨立シテ
行ケルヤウニ組立テタ譯デアリマシテ、
般會計カラノ繰入金ハ、是ハ勿論形式ハ補
助金デハアリマセヌガ、若シ此繰入ト云フ
モノガナケレバ、保險料ト云フモノヲウン
ト高ク取ラナケレバナラヌト云フコトニナ
ル點カラ考ヘマスト云フト、一種ノ是ハ保
險料ノ國庫負擔ト云フ風ニ實質的ニ相成リ
マス、ソレ等ノ點モ廣イ意味ノ補助ト申上
ゲレバ、申上ゲテ宜イカト思ヒマスガ、共
程度ノモノハ考ヘテ居リマス、ソレカラ此
水產行政ノ、行政機構ト申シマスカ、水產省
ヲ考ヘテ居ナイカト云フ御話デゴザイマス
ガ、是ハ本會議デ農林大臣ノ御答辯モアリ
マシタヤウニ、水產行政ノ行政機構ハ、色
色考ヘテ行カナケレバナラヌト思ヒマス
ガ、只今水產省ト云フ風ナモノヲ具體的ニ
考ヘテ居ルト云フ程度ニハ參ッテ居リマセ
ヌ、ソレカラ此保險實行ノ場合ニ、保險課
ヲ置ク考ハナイカドウカト云フ御話ハ、保
險課ト單ニサウ云フカドウカ分リマセヌ
ガ、是ガ爲ニ兎ニ角一ツノ課ヲ設ケナケレ
バナルマイ、斯樣ニ考ヘテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007011331X01019370315&spkNum=24
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025・紫安新九郎
○紫安委員長 高木君、御質問ハ次會ニ保
留致シマス、本日ハ是ニテ散會致シマス
午後零時十五分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007011331X01019370315&spkNum=25
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