1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和十二年二月十九日(金曜日)
午後一時十三分開議
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議事日程 第十號
昭和十二年二月十九日
午後一時開議
第一 臨時租税増徴法案(政府提出) 第一讀會(前會の續)
第二 法人資本税法案(政府提出) 第一讀會(前會の續)
第三 外貨債特別税法案(政府提出) 第一讀會(前會の續)
第四 揮發油税法案(政府提出) 第一讀會(前會の續)
第五 有價證券移轉税法案(政府提出) 第一讀會(前會の續)
第六 明治四十年法律第二十一號中改正法律案(樺太に於ける租税に關する件)(政府提出) 第一讀會(前會の續)
第七 關税定率法中改正法律案(政府提出) 第一讀會
第八 昭和七年法律第四號中改正法律案(輸入税の從量税率に關する件)(政府提出) 第一讀會
第九 大正十四年法律第五十一號中改正法律案(關東州の生産に係る物品の輸入税免除等に關する件)(政府提出) 第一讀會
第十 鐵の輸入税免除に關する法律案(政府提出) 第一讀會
第十一 輸出統制税法案(政府提出) 第一讀會
第十二 軍事救護法中改正法律案(政府提出) 第一讀會
第十三 北海道舊土人保護法中改正法律案(政府提出) 第一讀會
第十四 郵便法中改正法律案(政府提出) 第一讀會
第十五 絲價安定施設法案(政府提出) 第一讀會
第十六 絲價安定施設特別會計法案(政府提出) 第一讀會
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X00919370219&spkNum=0
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001・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 諸般ノ報告ヲ致サ
セマス
〔書記官朗讀〕
一政府ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
「アルコール」專賣法案
農地法案
(以上二月十九日提出)
トナリタリ
一議員ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
水產金庫設立ニ關スル建議案
提出者
鵜澤字八君村上紋四郞君
小西和君
阿賀驛ヨリ西條驛ヲ經テ志和口驛ニ至ル
鐵道敷設ニ關スル建議案
提出者山道襄一君
木曾川下流增補工事促進ニ關スル建議案
提出者
伊藤東一郞君渡邊玉三郞君
片岡恒一君
寶曆治水工事史蹟油島千本松指定保存ニ
關スル建議案
提出者
伊藤東一郞君渡邊玉三郞君
片岡恒一君
(以上二月十八日提出)
一議員ヨリ提出セラレタル質問主意書左ノ
如シ
犯罪捜査ニ關スル質問主意書
提出者靑木雷三郞君
(以上二月十八日提出)
一昨十八日林內閣總理大臣ヨリ左ノ通發令
豫算委員
理事豐田收君(理事岸田正記君
去十七日委員辭任ニ付其ノ補
關
一昨十八日常任委員補關選擧ノ結果左ノ如
シ
第一部選出
豫算委員永山忠則君(岸田正記君
補闕)
第七部選出
豫算委員小山谷藏君(岡崎久次郞
君補闕)
一昨十八日辭任シタル常任委員左ノ如シ
第五部選出豫算委員高田耘平君
一去十六日第六部選出建議委員田村實君ハ
退職者トナリタリ
一昨十八日衆議院規則第十五條但書ニ依リ
議長ニ於テ議席ヲ左ノ通變更セリ
四一〇靑木亮貫君
四一八重松重治君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X00919370219&spkNum=1
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002・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 是ヨリ會議ヲ開キ
やく、御諮リ致シマス、第七部選出決算委
員藏原敏捷君、第七部選出建議委員鈴木正
吾君、右常任委員辭任ノ申出ガアリマス、
之ヲ許可スルニ御異議ハアリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X00919370219&spkNum=2
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003・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 御異議ナシト認メ
そく、仍テ許可スルニ決シマシタ、其部ノ
諸君ハ速ニ補關選擧ヲ行ヒ御屆アランコト
ヲ望ミマス-御諮リ致シマス、豫算委員
長ヨリ本日本會議中委員會ヲ開キ、尙ホ今
後本會議中ト雖モ委員會竝ニ分科會ヲ開キ
タイトノ申出ガアリマス、之ヲ許可スルニ
御異議ハアリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X00919370219&spkNum=3
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004・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 御異議ナシト認メ
マス、仍テ之ヲ許可致シマス-日程ニ入ル
ニ先ダチマシテ林內閣總理大臣ヨリ、昨日ノ
鈴木正吾君ノ質疑ニ對シ發言ヲ求メラレテ
居リマス、之ヲ許可致シマス-內閣總理
大臣林銑十郞君
〔國務大臣林銑十郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X00919370219&spkNum=4
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005・林銑十郎
○國務大臣(林銑十郞君) 昨日私ノ不在中
ニ鈴木君カラ私ニ對シテ四箇條ノ御質疑ガ
アリマスガ、ソレニ付テ御答ヲ致シマス
第一ハ首相ハ如何ニシテ剛健ナル國民精
神ヲ作興スルカト云フ御質疑デアリマス、
是ハ非常ナ重大ナ御質疑デアリマシテ、簡
單ニ一口デ御答スルコトハ困難デアリマス
ガ、先ヅ私ノ考ヘテ居リマスル所デハ、我
ガ國體觀念ト云フモノノ明徵ト云フコトガ、
マダ徹底シテ居ラナイ、其點ヲ十分ニ國民
ガ了解シマシテ、私ノ主張シマシタ敬神尊
皇ト云フヤウナ大義ヲ十分ニ闡明ヲシマシ
テ、總テノ人々ガ今少シク眞面目ニ、所謂
神明ニ對スル心ヲ以テ總テノ政治ニ當ル氣
持ニナルト云フヤウナコトヲ、諸般ノ場合
ニ於テ高調シ、又之ヲ〓育ノ上ニ於テ現ハ
スト云フコトガ最モ必要ナコトト考ヘマス
ルガ、要スルニ今日マデ社會ノ各方面ニ於
テ、諸種ノ宿弊ガアリマスガ、之ヲ芟除シ
マスノニハ、政府トシマシテモ諸般ノ施設
ノ上ニ其實行ヲ促スト同時ニ、政府自ラガ
諸般ノ點ニ於テ、範ヲ示スト云フヤウナ態
度ヲ執ッテ行クコトガ、最モ必要ト考ヘテ居
リマス
次ノ御質疑ハ對支外交ノ立直シノ方針ト
シテ、東亞ノ安定勢力トシテノ國軍ノ內容
ヲ充實シ、整備スルコトガ第一義ナリト信
ズルカドウカト云フ御質疑デアリマス、此
東亞ノ外交ト云フコトニ付キマシテハ、旣
ニ外交ノ方針デ御話ヲ申シマシタ通リニ、
此兩國ノ國交ノ調整ヲ圖リマスコトガ、誠
意ヲ以テ國交ノ調整ヲ圖リマスト共ニ、御
說ノ如ク國防ヲ充實ヲシテ、東亞安定勢力
ノ確固タル形ヲ具ヘルコトハ、最モ必要ト
考ヘテ居リマス
第三ノ質疑ハ、行政機構改革問題ニ對シ
テノ認識如何ト云フ御質疑デアリマス、今
日行政機構改革ト云フコトハ、前內閣デモ
旣ニ其端ヲ起シテ居ルノデアリマシテ、是
ハ最モ重要ナルコトト考ヘテ居リマス、所
謂國政ノ全局ヲ綜合シテ、國策ノ遂行ニ遺
憾ナキヲ期スルト云フコトハ、極メテ必要
ナコトデアリマスカラ、前內閣ノ調査ヲ更
ニ檢討スルト共ニ、現内閣トシテノ獨自ノ
考ヘヲモ加ヘマシテ、此機構改革ノ實現ヲ
致シタイト存ジテ居リマス
次ニ臨時議會ヲ開イテ、此內閣自身ノ政
策ヲ以テ、信ヲ國民ニ問フノ意思アリヤト
云フ御質疑デアリマスガ、此臨時議會ヲ召
集スルカドウカト云フコトニ付テハ、只今
〓究中デアリマシテ、今此處デ明言スル譯
ニハ參リマセヌ、之ヲ以テ御答ト致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X00919370219&spkNum=5
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006・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 是ヨリ日程ニ入リ
マス、議事日程第一乃至第六ノ六案ヲ一括
シテ第一讀會ヲ開キ、前會ノ議事ヲ繼續致
シマス、通〓順ニ依リ質疑ヲ許シマス-
增田義一君
第一臨時租稅增徵法案(政府提出)
第一讀會(前會ノ續)
第二法人資本稅法案(政府提出)
第一讀會(前會ノ續)
第三外貨債特別稅法案(政府提出)
第一讀會(前會ノ續)
第四揮發油稅法案(政府提出)
第一讀會(前會ノ續)
第五有價證劵移轉稅法案(政府提出)
第一讀會(前會ノ續)
第六明治四十年法律第二十一號中改
正法律案(樺太ニ於ケル租稅ニ關ス
ル件)(政府提出)第一讀會(前會ノ續)
〔增田義一君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X00919370219&spkNum=6
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007・増田義一
○增田義一君 近年國費ガ年々增加致シマ
シテ、增稅ノ巳ムベカラザルコトハ、何人
モ之ヲ認メテ居リマス、唯增稅ノ程度ト課
稅ノ方法、ソレガ最モ重大ナ問題デアリマ
ス、租稅ハ國民ノ生活ニ最モ直接ナ關係ヲ
持ッテ居リマスルシ、且又產業上ニモ多大ナ
關係ヲ持ッテ居リマス、隨テ國民トシテ深キ
關心ヲ持ッテ居ルノハ當然ノコトデアリマ
ス、稅制問題ヲ檢討スルニ當リマシテハ、
國民負擔ノ均衡ト、ソレカラ經濟界及ビ產
業上ニ及ボス影響ト、且又國民生活ニ及ボ
ス影響トノ三方面カラ考察シナケレバナラ
ヌノデアリマス、私ハ此觀點カラ考察致シ
マシテ、今囘政府提出ノ增稅案ニ對シテ大
藏大臣ニ質問ヲ致シタイト思ヒマス
第一國民負擔ノ均衡デアリマスルガ、日
本ノ現狀ニ於テ農村ノ負擔ガ重ク、都會ノ
負擔ガ輕イ、言ヒ換レバ農民ニ負擔ガ重ク、
商工業者ノ方ガ割合ニ輕イト云フコトハ、
殆ド議論ノ餘地ノ無イヤウニ一般ニ唱ヘラ
レテ居リマス、其點ハ大藏大臣モハッキリ
ト御認メニナッテ居ラレルカ、ドウカ、地方
財政ノ困難シテ居ル狀況ハ、說明ヲ要スル
迄モナク是ハ明ナ事實デアル、故ニ地方財
政ノ困難カラ地方民ハ、前內閣ノ時ニ發表
サレタ地方財政調整交付金ノ金額マデガ世
間ニ傳ハルヤ、非常ニ之ニ期待ヲ持ッタ、期
待ヲ持ッタバカリデナク、全部ノ町村トハ申
シマセヌガ、大部分ノ全國ノ町村デハ、交
付金ヲ貰フモノト豫定シテ、明年度ノ豫算
ヲ組ンデ居ル所ガ大分多イノデアリマス、
是ハ手ニ入ラナイ內ニサウ云フコトヲ決メ
タノハ、早計ダト言ハレヽバソレ迄デアリ
マスルケレドモ、如何ニ地方財政ガ困難シ
テ居ルカ、モウ貰ヘルモノト前提シテ、旣
ニ町村ノ收入ニ當テニシテ居ルト云フヤウ
ナ譯デアリマスルカラ、是ハ餘程政府トシ
テモ御考願ハナケレバナラヌ、此議場ニ於
テモ、或ハ豫算委員會ニ於テモ、此交付金
ノ問題ハ論議サレテ居ル次第デアリマス、最
近全國ノ町村長大會或ハ全國農會ノ大會、ソ
レニハ隨分多數ノ人ガ各地カラ集ッテ、其
席上ニ於テ地方財政調整交付金ノ徹底ヲ期
スルト云フ決議ヲナシ、頻リニ運動サレテ
居ルコトハ御承知ノ通リデアリマス、ソレ
デ大藏大臣ハ七千万圓マデハ交付金ヲ出ス
ガ、其以上ハ出セナイト云フコトヲ言ハレ
テ居リマスルガ、假ニモウ四千万圓奮發シ
テ貰フト、丁度前內閣デ發表サレタ二億二
千万圓ノ半額、卽チ一億一千万圓ニナリマ
スルカラ、セメテ此議會中ニモウ四千万圓、
奮發スルト云フコトハ、ドウシテモ出來ナ
イカドウカ、此場合ニ確メテ置キタイ、ソ
レカラ此地方財政調整交付金ニ付テハ、根
本的ニ是ガ徹底スルヤウナ案ヲ提出サレル
意思アリヤ否ヤ、同時ニ又地方財政ノ見地
カラ地方稅制ノ整理ヲ根本的ニ行フノ意思
アリヤ否ヤ、此點ヲ御伺致シマス、是非此
機會ニ此議場ヲ通シテ言明サレルコトヲ切
望致シマス(「ヒヤ〓〓」)
第二ニ今囘ノ增稅ハ臨時租稅增徵ト、新
稅ノ二ツニ分レテ居リマスルガ、此臨時租
稅增徵法案ノ中ニハ所得稅、營業收益稅、
資本利子稅、相續稅、鑛產稅、酒稅、砂糖
消費稅、取引所稅、臨時利得稅等ニ對シテ、
從來ノ稅率ヲ引上ゲルト云フノデアルガ、
是ハ大藏大臣ハ就任日ガ淺イノデアリマス
ルカラ、稅制ノ根本的調査ハ間ニ合ハヌ故
ニ、一時ノ便法トシテ暫定的ノ增稅方法デ
アルコトハ吾々モ認メテ居リマス、併シ今
囘ハ已ムヲ得ヌト致シマシテモ、次ノ議會ニ
ハ根本的稅制整理案ヲ提出セラルヽ決心ガ
アルカ否カ、此際明瞭ニ御答ガ願ヒタイ、租
稅ヲ增徵スルニモ自ラ限度ガアリマス、サ
ウ急激ニ流レナイヤウニ、又產業資金ヲ壓
迫シテ、財界ニ惡影響ヲ與ヘルガ如キ急激
ナコトハ、財界ノ事情ニ精通セル結城大藏大
臣ハ御嫌ヒデアルカラ、其點ハ心配ハアリ
マセヌガ、ドウカ十分ナル注意ヲ拂ッテ、租
稅ニハ彈力性ヲ持タシメルヤウナ根本的改
革ヲヤッテ戴キタイ、卽チ此次ノ議會ニ根本
的稅制整理案ヲ出サレルカ否カト云フコト
ヲ明瞭ニ御答願ヒタイ
第三ニ御伺シタイノハ、增稅案ノ內容ニ付
テヾアリマス、先ヅ所得稅ノ方カラ御伺致
シマスガ、所得金額ノ階級別ノ刻ミ方ガ適
當デナイヤウニ思ハレマス、ト申シマスノ
ハ所得金額二千圓カラ一万五千圓迄ノ間
ハ三ツニ刻ンデアリマスルガ、一万五千圓
カラ直チニ十万圓ニ飛ビ、十万圓カラ一足
飛ビニ百万圓、ソレカラ百万圓以上ト、大
層幅ノ廣イ飛ビ方デアリマス、此點ニ付テ
伺ヒタイ、卽チ最初ハ二千圓ノ所得以下、
三千圓以下、七千圓以下、一万五千圓以下
ト刻ンデ、直チニ十万圓ト飛バレタノハド
ウ云フ譯デアルカ、ヤハリ其間ニ五万圓位
ノ階級ヲ設ケタ方ガ宜イノデハナイカ、更
ニ十万圓ノ所得カラ百万圓迄ヲ一律ニサレ
タノハ、如何ナル理由デアルカ、所得九万
九千九百九十圓迄ハ現今ノ率ニ對シテ四割
五分增徵サレルノデアリマスガ、十万圓トナ
ルト直チニ六割、卽チ百分ノ六十ト云フ高率
デアリマス、サウスルト十万圓ノ所得モ百
分ノ六十增徵サレ、百万圓ニナッテモ同
ジ率ト云フノハ、是ハドウモ均衡ヲ保テ
ルモノトハ思ハレマセヌ(拍手)何故十万圓
ノ上ヲ少クトモ三十万圓、五十万圓、七
十万圓、斯ウ云フヤウニ階級ヲ細別シテ、
其率モ最初ノ率ヲモウ少シ低クシテ、順次
增率サレタ方ガ負擔ノ均衡ヲ保ツコトト思
ハレマスガ、大藏大臣ノ御考ヲ承リタイ
次ニ相續稅ニ付テ伺ヒタイ、相續稅ノ納付
期限ヲ緩和シテ延期サレタト云フコトハ、
洵ニ宜シイコトデアルガ、其相續稅ノ實際
ノ納付狀態ニ付テ調ベテ見マスト、地方ニ
於テ、田畑山林等ノ價格ノ評定ニ對シテ、隨
分税務署ハ實際ノ時價ヨリ高クスルコトガ
屢〓アルノデ、是ハ實ニ遺憾ナコトデアリマ
ス、ソレハ第二ト致シマシテモ、相續稅ヲ
年賦デ納メルニ當リ、到底納メラレヌ者ガ
澤山出來テ居ル、ドウ云フ譯デ納メラレナ
イカト云フト、纏ッタ地所ヲ賣ラントシテモ
買手ハナシ、又山林ヲ處分シヨウト思ツテ
モ、買手ハナイノデ、非常ニ困ル、ソコデ
是ハ現物納付ヲ許シテハドウカ、現物納
付、卽チ稅務署デ鑑定シタ價格デ、土地ナ
リ、山林ナリヲ納メルノデアル、土地ナ
リ、山林ナリヲ國有財產トシテ、他日適當
ノ機會ニ處分サレタラ宜イヂヤナイカ、現
物納付ト云フコトニ付テ、之ヲ採用スル意
思アリヤ否ヤ、又之ヲ〓究シテ見ルト云フ
御考ガアルカドウカ、此點ヲ承リタイノデ
アリマス
次ニ新稅ノ中デ、外貨債特別課稅ニ付テ
デアリマスガ、先年外貨公債發行ニ當ッテ、
公債證書ノ本文ニ契約文ノヤウナ文句ガ
載ッテ居リマス、ソレハドウ云フコトカト
云フト、「本公債及ビ附屬利札ハ現在或ハ將來
ニ於テ日本政府或ハ之ニ屬スル其他ノ課稅
權者ニ依リ課セラルヽコトアルベキ如何ナ
ル稅金ヲモ控除スルコトナク支拂フヘシ」ト
書イテアル、裏カラ言ヘバ、此外貨公債ニ
ハ決シテ課稅シナイトナッテ居ルヤウデア
リマス、ソコデ此案ヲ見マスル、ト云フト、
第四條ノ第五號ニ成程課稅シナイトシテ除
去シテアリマスルガ、當然ノコトト思ヒマ
ス、ソコデ私ガ尋ネタイノハ、利率年五分以
下ノ外貨公債ノ利子、利率年五分五厘以下
ノ外貨國債以外ノ外貨債ノ利子、之ヲ免除
セラレルノハドウ云フ譯カ、何故是ダケ免
稅セラルヽカヲ伺ヒタイ、ソレカラ日本公
債ハ資本利子稅ノ中ニ入ッテ居ルノニ、外國
公債デアルト、資本利子稅ノ中ニ包含セシ
メラレナイデ、特ニ外貨債特別稅トシテ之
ヲ設ケラレタ理由ハ如何、ソレヲ承リタイ
其次ニ法人資本稅ニ付テ伺ヒタイ、法人
ニ所得稅ヲ課シテ、更ニ法人資本稅ヲ課セ
ラレルノハ、重複課稅ト認メルガ、大藏大
臣モ左樣ニ認メラレルカドウカ、又此稅ハ
資本ノ外ニ積立金ヲ加へテ、ソレニ向ッテ千
分ノ一ヲ課稅サレルノデアリマスガ、營業
上利益ノアル會社ハ差支アリマセヌガ、缺
損又缺損ト云フヤウナ會社ニ向ッテモ、此資
本稅ヲ課セラレルカ、ドウカ、若シ課セラ
レルトスレバ、是ハ產業上ニ尠カラザル影
響ヲ與ヘマス、今日全國幾多ノ會社中ニハ
必ズシモ利益ガ續イテ居リマセヌ、缺損ヲ
續ケテ居ル會社モアリマス、左樣ナ會社ニ
資本稅ヲ課セラレタナラバ、風邪ニ罹ッテ居
ル者ニ水ヲ浴ビセラレルヤウナモノデ、尠
カラザル影響ヲ受ケルノデアリマス、產業
奬勵、經濟發展ヲ希望シテ居ラルヽ大藏大
臣ハ、左樣ナコトヲモ尙ホ許サレル積リデ
アルカドウカ
次ニ有價證劵移轉稅ニ付テ伺ヒタイ、本
法案ノ第一條ニ、有價證劵ノ賣買、交換、
贈與、遺贈其他ノ原因ニ因ル移轉アリタル
トキ課稅スルコトトナッテ居リマス、贈與、
遺贈、其他ノ原因ニ因ルノ移轉トアリマス
ガ、遺贈等ノ中ニ親ガ亡クナッテ伜ガ相續
スル時ニ有價證劵ヲ親カラ子ニ讓ラレマ
ス、其時ハ尙ホ有價證劵移轉稅トシテ課稅
サレルカドウカ、課稅サレルトスレバ、相
續稅ヲ取ラレ、株劵ノ名義書替デ租稅ヲ取
ラレルカラ、重複課稅ニナリ、甚ダ穩カデ
ナイ、斯ウ云フコトハ法案デ明瞭ニナッテ
居リマセヌカラ、ドウゾ其點ヲ明ニ御答願
ヒタイノデアリマス
私ノ質問ハ大體之ニ止メマスガ、最後ニ
一言致シタイコトハ、租稅ハ成ベク彈力性
ヲ有タシメテ產業資金ヲ壓迫セシメナイヤ
ウニ、以テ國民ノ企業心ト經濟發展ヲ阻碍
シナイヤウニ、深甚ノ注意ト考慮ヲ拂ハレ
ンコトヲ特ニ希望スルノデアリマス
〔國務大臣結城豊太郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X00919370219&spkNum=7
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008・結城豊太郎
○國務大臣(結城豊太郞君) 增田君ノ御質
問ニ御答ヲ致シマス、第一ハ地方財政ノ整
理ノコトニ付テノ御質問デアリマス、租稅
制度ハ直接國民經濟ニ及ボス影響ガ大キイ
ノデアリマスルカラ、國勢全般ノ上カラ愼
重ノ〓究ヲ加フベキモノト認メルノデアリ
マス、隨テ國稅ノ根本的改革モ此際ハ延期ヲ
願ヒマシテ、此次マデニ十分ナ檢討ヲシタイ
ト云フコトニナッテ居リマスソデ、隨テ地方財
政ノ改革ニ付キマシテモ、ソレト伴ッテ〓究ヲ
シタイト思ッテ居ルヤウナ次第デアリマス、併
シ此地方財政ノ整理ハ、一層急務デアリマ
スノデ、昭和十二年度ニ於テ取敢ズ七千万
圓ダケノ地方財政調整交付金ヲ交付スルコ
トニ致シマシテ、地方稅ノ負擔過重ト認メ
ラレマスル地租附加稅、戶數割、雜種稅ト
云フヤウナモノノ輕減ヲ行フヤウニ、關係
當局者トソレ〓〓取計ッテ居ル次第デアリ
マス
根本的稅制改革案ヲ此次ノ議會ニ提出ス
ル意思ガアルカト云フ御質問ニ對シテハ、
出來得ル限リ速ニ調査ヲ遂ゲマシテ、成案
ヲ得テ成ベク次ノ議會ニ提出スルヤウニ努
力致シタイト思ヒマス
其次ニ個人所得稅ノ增徵割合ノ所得金額
ノ十万圓カラ百万圓マデノ間ニ、モウ一ツ
中間割合ヲ置イテハドウカト云フ御說デア
リマスルガ、御尤デアリマス、今囘ハ甚ダ
倉卒ノ際デアリマスノデ、十分ノ取調モ出
來マセヌノデアリマスルガ、私共ノ心持ト
致シマシテハ、此所得金類十万圓以下ノ細
カナモノニ對シテハ、比較的細カニ區別ヲ
致シマシテ、十万圓以上ノ所得者、詰リ高
額ノ所得者ニ對シテハ、サウ大シテ細カニ
割ラヌデモ宜カラウ、斯ウ云フ風ナ氣持デ
案ヲ出シマシタヤウナ次第デアリマシテ、
只今ノ所ハ中間割合ヲ置ク必要ガナカラウ
ト認メル次第デアリマス
ソレカラ相續稅ニ付テ現物納付ノ制度ヲ
採用スル考ヘハナイカ、斯ウ云フ御尋デア
リマス、地方ノ資產家ナドガ相續稅ヲ課セ
ラレマシタ場合ニ、山林、田畑ヲ處分シテ
納メナケレバナラヌヤウナ苦痛ヲ顧ミマス
ルト、其邊ノ所ハ十分ニ考慮スル必要ガア
ラウト思ヒマス、是ハ世間デモ餘程前カラ
サウ云フ議論モアルヤウデアリマシテ、政
府モ十分ニ〓究シテ居リマス、唯之ヲ實行
致シマス上ニ於テ、中々評價其他處分ノ上
ニ於テ困難ガアリマスノデ、其邊ノ所ヲ考ヘ
マスルト、今俄ニ現物納付ノ制度ヲ採用スル
ト云フコトハ、困難デハナイカト思ヒマス
ソレカラ外貨債特別稅ノ賦課ニ付キマシ
テ、免稅約款ニ抵觸シナイカト云フ御懸念
デアリマシタガ、是ハ稅法ヲ立案致シマス
時ニ、法律的ニ十分ニ〓究致シマシタ、サ
ウシテ何等ノ牴觸ガナイ、斯ウ云フコトニ
結論ヲ得タノデアリマスカラ、御承知置キ
ヲ願ヒタイ、尙ホ資本利子稅トハ總テノ立
方ガ餘程違ッテ居リマス爲ニ、是ハ內地ノ公
債ト違ッテ、特別稅トシテ課スルコトヲ適當
ト認メマシタ次第デアリマス
尙ホ資本稅ニ付テノ御尋デアリマスル
ガ、是ハ所得及積立金ノナイモノニハ課稅
致シマセヌ、ソレカラ相續ノ場合ニハ有價
證劵移轉稅ト云フモノヲ賦課致シマセヌ、
御承知置キヲ願ヒマス、是デ大體御答ガ濟
ンダト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X00919370219&spkNum=8
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009・増田義一
○增田義一君 極メテ簡單デアリマスカラ、
此席カラ發言ヲ御許シ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X00919370219&spkNum=9
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010・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 許可致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X00919370219&spkNum=10
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011・増田義一
○增田義一君 只今大藏大臣ノ御答辯ノ中、
私ノ質問ガ徹底シテ居ラヌ點ガアルヤウニ
思ヒマス、最初ノ交付金ノ制度ヲ今議會ニ
增額スルノ意思ガナイカ、ドウカト云フコ
トニ對シテ、此議場ヲ通シテ國民ニ知ラシ
メルヤウ御明答ヲ願ヒタイノデス、其點ニ
關シテ御答辯ヲ願ヒマス
ソレカラ外貨債特別稅ノコトデスガ、
是ハ私ガ申シタコトヲ御聽違ヒカト思ヒ
マスガ、同ジ外貨債ノ中デ所謂契約ノヤ
ウナ文句ガアッテ、如何ナル租稅モ課セ
ズト云フ分ハ、第四條ノ第五項デ、免稅
ノコトハ分ッテ居マスガ、第三項ノ五分
以下ノ外貨國債ノ利子、第四項ノ五分五
厘以下ノ外貨國債以外ノ外貨債ノ利子ヲ
課稅シナイデ、免稅スルノハドウ云フ譯
カ、此點ニ付テ御伺シタイノデアル、ソ
レカラ同ジ公債デ內外ノ區別ノ爲ニ內國
債ハ資本利子稅ニ入ル、ソレカラ外貨債ニ
ハ特別稅ヲ設ケラレタノハドウ云フ譯カ、
ソレヲ伺ッタノデアル、ソレカラ法人資本稅
ニ付テハ、利益ガナイ缺損シテ居ッテモ、尙
ホ課稅サレルノカ、全國幾多ノ會社ノ中ニ
ハ每期缺損スルノモアリマス、以前ニハ景
氣ガ好クテ無論積立金モ持ッテ居ル、併シ其
後不幸ニシテ缺損續キノ會社モアル、ソレ
デ缺損シテモ資本稅ヲ拂フノデアルカト云
フコトヲ伺ッタノデアリマス、今一應御答辯
ヲ願ヒタイト思ヒマス
〔國務大臣結城豊太郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X00919370219&spkNum=11
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012・結城豊太郎
○國務大臣(結城豊太郞君) 地方財政調整
交付金ノ七千万圓ヲ、此際四千万圓殖ヤス
考ガナイカト云フ御尋、出來ルダケ負擔ノ
輕減ハ致シタイト云フ考ハ持ッテ居リマス、
ガ此地方財政ノコトニ付キマシテハ、必シ
モアノ案ガ宜イカドウカモ分リマセヌノデ、
中央ノ稅制整理ト同時ニ、地方ノ稅制整理
ノ全般ニ互ッテ、檢討ヲ致シタイノデアリ
マスケレドモ、此際ハ七千万圓、是ハ空ナ
數字デハアリマセヌデ、色々ナコトカラ割
出シテ七千万圓ト云フ數字ガ出テ居リマス、
ソレデ今囘ハ地方稅ノ負擔ヲ輕減スルコト
ニ致シタイト存ジマシテ、ソレ以上ノコト
ハ更ニ稅制全般ニ亙リ、檢討ノ後ニ致シタイ
ト考ヘテ居ルヤウナ次第デアリマス、ソレ
カラ細カナ點ハ私ニハ分リ兼ネマスノデ、
政府委員ニ御答サセマシテ宜カラウト思ヒ
マスルガ、缺損ニナッテ居ル會社ニ資本稅
ヲ課スルカ、斯ウ云フ御尋デアッタト思ヒ
マス、所得竝ニ積立金ノナイヤウナ會社ニ
ハ課稅致シマセヌ、是ハ御承知置ヲ願ヒマ
ス、其他細カナ點ハ政府委員カラ御答致サ
セマス
〔政府委員石渡莊太郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X00919370219&spkNum=12
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013・石渡莊太郎
○政府委員(石渡莊太郞君) 御答致シマス、
有價證劵移轉稅ハ相續ノ場合ニハ課稅致シ
マセヌ、法人ノ資本稅ハ所得、積立金雙方
ノナイ場合ニ於キマシテハ、課稅致シマセ
又、ガ所得ガゴザイマセヌデモ、積立金ノ
アル分ハ、課稅致シマス、此稅ハ法人ノ有
シテ居リマスル所ノ資本自體ニ、擔稅力ヲ
認メルノデゴザイマスルカラ、假令其期ガ
缺損デゴザイマシテモ、サウ云フ場合ニハ
課稅致シマス、ソレカラ外貨債特別稅ニ付
キマシテハ、五分利以上ノモノニ課稅ヲシ
テ、五分利以下ノモノニハ課稅シナイノハ、
ドウ云フ譯カト云フ御尋デゴザイマスルガ、
高利廻ノモノガ擔稅力ガアルト、斯ウ認メ
マシタ次第デゴザイマシテ、五分利以下ノ
モノニハ課稅致シマセヌ、國債ニ付テハ五
分利、其他ノモノニ付テハ五分五厘、ソレ
以下ノ利子ノ分ニ付テハ課稅致シマセヌ、
御答致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X00919370219&spkNum=13
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014・増田義一
○增田義一君 私ハ是デ質問ヲ打切リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X00919370219&spkNum=14
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015・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 武田德三郞君
〔武田德三郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X00919370219&spkNum=15
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016・武田徳三郎
○武田德三郞君 諸君、昨日本院ニ於キマ
シテ、大藏大臣ヨリ稅制整理ニ關スル御說
明ヲ承リマシタ、顧ミマスルニ昨年ノ秋頃、
前大藏大臣馬場氏ニ依ッテ所謂劃期的ノ稅
制整理案ナルモノガ、世ノ中ニ發表セラレ
マシク時ニ、天下各方面ヨリ此稅制改革案
ニ付テ議論ガ起リマシタ、又各種ノ團體ヨ
リモ、此稅制ノ是正ニ向ッテ希望ガ述ベラ
レマシタ、內閣各省竝ニ吾々ノ方面モ、色
色ナル陳情ヲ承ッタノデアリマス、又吾々
政黨ニ屬スル者モ、各〓〓究ノ結果ヲ適當ノ
機會ニ發表致シテ居ルノデアリマス、隨テ
馬場稅制案ニ付テノ天下ノ歸趨ト云フモノ
ハ、略、察スルニ難クナイノデアリマス、
く然ル所偶〓内閣ガ更迭致シマシテ、新ニ結
城氏ガ此重任ヲ承ケラレマシテ、サウシテ
昨年以來天下ニ起リマシタ所ノ國民ノ歸趨
ヲ察シ、各政黨ノ意見ヲ參酌致サレマシタ、
サウシテ之ニ適當ナル修正ヲ加ヘテ、提案
ニ相成ッタモノト信ズルノデアリマス、隨テ
大體ニ於テ、私共ハ之ニ信ヲ與フルコトニ
吝ナモノデハナイノデアリマス、併ナガラ
此御提案ヲ拜見ヲシ、昨日ノ說明ヲ承ッテ
見マスルト云フト、此稅制案ヲ實行シタ結
果、國民ノ生活竝ニ國民經濟ノ活動ニ及ボ
ス所ノ影響ハ、決シテ少クナイヤウニ思フノ
デアリマス、仍テ吾々ハ玆ニ根本的ナ事柄
ニ付テ二三疑問ヲ提出致シマシテ、結城大藏
大臣ヨリ確タル御意見ヲ承ッタ後ニ、吾々ノ
態度ヲ決シタイト存ジマス、勿論此詳細ノ
點ニ至リマシテハ、大藏大臣ト多少見解ノ
相違シテ居ル點ガアルカモ知レマセヌ、ソ
レハ追テ委員會ニ於テ申述ベルトシテ、根本
的ナ問題ニ付テ二三伺ッテ見タイト存ジマス
只今大藏大臣ハ增田君ノ質問ニ對シテ、
根本的ノ檢討ヲ加ヘテ成ルベク次ノ議會ニ
全般ニ亙ル稅制改革案ヲ提出シタイト、斯
樣ニ仰セラレマシク、是ハ能ク諒承ヲ致シマシ
ク、併ナガラ先程モ申上ゲマシタル如ク、
現在御提案ニナッテ居リマスル所ノ此稅制
案ト云フモノハ、其稅ノ種類、又其金額ニ
察シマシテモ、非常ナ影響ヲ國民生活竝ニ
產業ニ及ボスモノデアリマスルカラ、是程
ノ大キナ稅制案ヲ御出シニナルニ當リマシ
テハ、詳細ノコトハ他日ノ檢討ニ御委セニ
ナルニ致シマシテモ、大體ニ於テ稅制案ノ
主義方針竝ニ增稅ノ範圍ト云フヤウナ、根
本的稅制整理ノ「プラン」ト云フモノダケ
ハ、大藏大臣ノ胸中ニ自ラナケレバナラヌ
筈デアルト思ヒマス、之ヲ他日ニ委シテ、
唯一時ノ急ノ間ニ合ハスガ爲ニ、是ダケノ
三億以上ノ增稅ヲサレルト云フコトニ相成
リマスレバ、私ハ一國ノ大藏大臣トシテ少
シク輕卒ノ議ヲ免レナイモノデハナイカト
存ジマス(「ヒヤ〓〓」)若シ三千万、四千万位
ノ增稅デアリマスルナラバ、私ハ此餘日ノナ
イ今日トシテ、大藏大臣ノ立場ヲ諒ト致シ
マス、併ナガラ今日我國ノ租稅ハ、十億ニ滿
タナイノデアリマス、增稅ヲシナイ場合ニ於
テハ十億ニ滿タナイノデアリマス、增稅ヲシ
ナイ場合ニ於テハ十億ニ滿タナイノデアリ
マス、其租稅ニ對シテ三億以上ノ增稅ヲス
ルト云フ時ニ當リマシテ、稅制全般ノ改革ニ
向ッテノ主義方針ガ決ラズ、「プラン」ガ胸
中ニナイト云フコトデアリマシテハ、吾々
ハ成ベク明年提出スルト言ハレマシタル今
日ノ御約束ニ對シテモ、甚ダ心許ナク思ハ
ザルヲ得ナイノデアリマス、私ハ此結城大
藏大臣ノ提案ヲ見マシテ、先程申上ゲタル
ヤウニ、各方面ノ希望ヲ織込ンデアリマス
ルカラ、大體ニ於テ信用致スニ吝カデナイ
ト申シマシタケレドモ、大體ニ於テ結城大
藏大臣ノ胸中ニハ、來ルベキ改革案御提出
ノ際ニ於ケル主義方針、竝ニ「プラン」ト云
フモノガ定ッテ居ッテ、其一部、片鱗ノ現レ
トシテ本案ガ提出サレタト、斯樣ナ解釋ノ
上ニ申上ゲタノデアリマス、私ハ果シテ結
城大藏大臣ガ如何ナル意圖ヲ藏セラレテ居
ルカト云フコトヲ、先ヅ現在御提案ニナッタ
此稅整案ニ付テ、各方面ノ視角カラ檢討シテ
見タノデアリマスルケレドモ、遂ニ私不學
ニシテ之ヲ發見スルコトハ出來ナイノデア
リマス、寧ロ幾多ノ疑問ガ其處ニ現レルノ
デアリマス、或ハ結城大藏大臣ハ、稅制全
般ニ亙ッテノ「イデオロギー」ト云フモノヲ
御持チニナラズ、唯其場限リノ臨機應變ノ
稅制案ヲ、御出シニナッテ居ルノデハアル
マイカト云フヤウナ感ジヲ致シテ、將來ノ
爲ニ甚ダ憂慮ニ堪ヘナイノデアリマス、私
ハ一二ノ實例ヲ引用致シマシテ私ノ此疑問
ヲ明ニ致シマス
營業收益稅ハ馬場稅制案ニ於キマシテ
ハ、其免稅點ヲ六百圓ニ引上ゲルコトニ
ナッテ居ルノデアリマス、然ルニ結城藏相
ハ之ヲ元通リ四百圓ニ引下ゲル案ヲ御提出
ニナッテ居ル、然ルニ一面ニ於テハ所得稅
ノ免稅點ヲ、馬場案デハ千圓ニ引下ゲルモ
ノヲ、此度ハ千二百圓ノ元通リニ引上ゲル
コトニナッテ居リマス、是ハ根本ノ思想ニ
於テ相違シテ居ル矛盾ノ現レデハアリマス
マイカ、小所得者ヲ擁護スルト云フ上ニ於
テ、所得稅ノ免稅點ヲ引上ゲルノハ吾々ハ
同意致シマス、然ラバソレト同ジ思想ヲ以
テ何故ニ營業稅ノ免稅點ヲ引上ゲニナラナ
カッタノデアルカ、小所得者ハ保護スルノ
必要ガアルガ、小中商工業者ハ保護スルノ
必要ガナイト云フ御意見デアルノデアリマ
セウカ、私ハ今營業收益稅ノコトヲ論ジテ
居ルノデハアリマセヌ、斯樣ナル內容ニ
亙ッタ小サナ問題ハ委員會ニ行ッテ御伺致ス
ノデアリマス、唯稅制ニ關スル結城大藏大
臣ノ思想ガドコニアルカ、之ヲ伺フノデア
リマス、私ハ此所得稅ト營業收益稅ノ免稅
點ニ依ッテ、明ニ玆ニ矛盾ノ思想ガ對立シ
テ居ヤシナイカト云フ風ニ考ヘルノデアリ
マス
又新稅ニ取ッテ一例ヲ擧ゲテ見マス、此度
ノ新稅ノ中ニハ法人資本稅ト云フモノガ新
ニ設ケラレマシタ、是ハ申ス迄モナク、馬
場稅制案ノ財產稅ノ變形デアルコトハ勿論
デアリマス、併シ一體結城大藏大臣ガ財產
稅ト云フモノヲ變形ヲ致シテ、法人資本稅
トサレタ、其根本ノ思想ニ向ッテ、私ハ大藏
大臣ガ果シテ稅制ノ「イデオロギー」ヲ能ク
諒解シテ居ラレルノデアルカドウカ、唯一時
ノ間ニ合セニ斯樣ナル案ヲ出サレタモノデ
ハナイカト云フヤウナ感ジガシテナラヌノ
デアリマス、私ハ今日此場合ニ於テ、權威
アル結城大藏大臣ニ向ッテ財產稅ノ說法ヲ
致サウトハ思ヒマセヌ、千万御承知ノ筈デ
アリマス、併ナガラ私ノ疑ヲ明ニスル爲ニ
ハ、此點ニ向ッテ一言觸レナケレバナリマセ
又、財產稅設定ノ理由ハ何ニアルデアリマ
セウカ、第一ハ所得稅ノ補完デアリマス、
馬場大藏大臣ノ稅制案ノ箇所ヲ私ハ今日玆
ニ述ベルノデハアリマセヌ、又財產稅ニ依ッ
テ私ノ意見ヲ茲ニ申述べルノデモアリマセ
又、併ナガラ若シ財產稅ノ設定ノ必要アリ
ト致シマスルナラバ、其理由ハ第一ニ收益
稅ダケデハ所得稅ノ補完ガ不十分デアルカ
ラト云フコトデナケレバナラヌ、第二ハ勤
勞所得ヨリハ資產所得ニ重課シナケレバナ
ラヌト云フ、最近ノ財政學上ノ趨向ニ依ル
ノ外ハナイノデアリマス、然ルニ法人ノ資
金ナルモノハ、之ヲ個人ノ側カラ申シマス
ナラバ株式デアリマス、株式トシテ箇人ガ
財產ヲ持ッテ居ルノデアリマス、故ニ法人ノ
資本ニノミ課稅スルト云フコトデアリマス
ナラバ、之ヲ箇人ノ側カラ觀察致シマスル
ト云フト、其所有財產ノ一部タル株式ト云フ
財產ニノミ課稅ヲシテ、他ノ財產ハ構ハヌ
デ置クト云フコトニナルノデアリマス、斯
樣ナルコトデハドウシテ補完ノ實ヲ擧ゲル
コトガ出來マセウカ、ドウシテ財產重課ノ
實ヲ擧ゲルコトガ出來マセウカ、結城大藏
大臣ノ法人資本稅ト云フモノハ、形ニ於テ
財產稅ヲ取上ゲタノデアリマスルケレドモ、
實質ニ於テ財產稅ト云フモノヲ滅茶々々ニ
叩キ壞ハシテシマッタノデアリマス、況ヤ根
本的ニ稅制ヲ立直ス、今日ノ我國ノ稅制ヲ
再檢討シテ、全面的ニ立直スト云フコトヲ
シナケレバナラヌ今日ニ於テ、斯樣ナ疑問
ノアル稅、又ハ舊稅ニ向ッテ若干ノ變更ヲ加
ヘルトカ、率ヲ變更スルトカ云フナラバ率
知ラズ、玆ニ新シイ稅種ノ再檢討ヲ前ニシ
テ、斯樣ナ疑問ノアル稅種ヲ新設サレルト
云フコトハ、此根本的ノ稅制整理ヲスルト
云フ御言明ニ對シテ其御趣意ハ相應ズルモ
ノデハナイヤウニ私ハ考ヘマス、仍テ第一
ニ結城大藏大臣ニ御願ヲ致シタイコトハ、
結城大藏大臣ハ明年度ニ御提案ニナラント
スル稅制ノ根本的整理ニ對スル如何ナル「イ
デオロギー」ト、如何ナル方針、如何ナル
理想、如何ナル「プラン」ヲ持ッテオ居デニ
ナルカト云フコトヲ-其詳細ナル具體的
意見ヲ伺ハウトハ申シマセヌ、其輪郭タリ
トモ宜シイノデアリマスカラ、茲ニ其御說
明ヲ願ヒタイト思フノデアリマス
次ニ御尋ヲ申上ゲタイコトハ增稅ノ金額
ノ問題デアリマス、昨日ノ御說明ニ依ッテ拜
聽致シマスルト云フト、此度ノ所謂歲出使
用見合セ減ト云フモノハ、今日問題ニナッテ
居リマス海陸軍ノ四千六百万圓ヲモ加ヘテ
二億六千九百万圓、約二億七千万圓ト云フ
コトニ發表サレテ居ルノデアリマス、而シ
テ馬場前大藏大臣ノ提案ニナッテ居リマスル
所ノ稅制案ヲ見マスルト云フト、昭和十二
年度ニ於テ其豫定サレタル所ノ增稅額ハ五
億六十八万九千餘圓ト云フコトニナッテ居
リマス、約五億デアリマス、若シ馬場氏ノ
案通リヲ實行スルトスレバ、玆ニ五億圓ノ
增稅ヲシナケレバ、收支ノ「バランス」ガ取
レナイト云フコトデアッタノデアリマス、然
ルニ此馬場氏ノ總豫算ヲ原案ト致サレテ、
之ニ若干ノ修正ヲ加ヘルト云フ立前ヲ取ッ
テ居ラレルノデアリマス、シテ見マスルト
云フト、之ニ向ッテ歲出ノ修正ヲ二億七千万
圓減ズルト云フコトデアレバ、此五億万圓ノ
增稅ガ二億三千万圓ダケ增稅スレバ、玆ニ
「バランス」ガ取レルト云フ計算ニナルノデ
アリマス、若シ全然馬場氏ノ編成サレタル
所ノ豫算ヲ御破算ニシテ、新ナル案ヲ御提
出ニナルト云フコトデアレバ、是又別箇ノ
議論デアリマスガ、併ナガラ之ヲ原案トシ
テ修正スルト云フコトヲ玆ニ御言明ニナ
リ、又一昨日ノ豫算總會ニ於テモ御言明ニ
ナッテ居ル、然ラバ歲出ノ-繰返シテ申シ
マスルヤウナ譯デアリマスガ、此歲出ノ減
ズルダケ-豫定サレタル增收案ノ中カ
ラ、減ジタダケノ數ヲ增收シタナラバ、ゾ
レデ宜シイ筈デアリマス、卽チ二億三千万
圓ダケ增稅サレタナラバ、ソレデ「バラン
Zガ合ハナケレバナラヌ筈デアリマス、
然ルニ今御提案ニナック所ノ稅制案ヲ拜見
致シマスト、臨時租稅增徵案ニ依ッテ二億三
千餘万圓、關稅ノ改正ニ依ッテ增收スルモ
ノガ二千二百五十餘万圓、新稅ノ設定ニ依ッ
テ增收スルモノガ三千九百餘万圓、專賣ノ
益金ニ依ッテ增收スルモノガ二千五百餘万
圓合計三億一千何百万圓、斯樣ナ數字ニ
ナッテ居ルノデアリマス、卽チ當然增收シナ
ケレバナラヌト豫想セラルヽ額ニ對シテ八千
万圓乃至九千万圓ダケ餘計ナ增稅ヲサレル
ト云フコトデアリマス、少クトモ馬場豫算
案ヲ修正スルト云フ立場ニ立ッテオ居デ=
ナル現内閣ノ豫算トシテ、玆ニ八九千万圓
ノ無用ナ增稅ヲ國民ニ强ヒルト云フ結果ニ
ナルデアラウト私ハ考ヘル、況ヤ今日ノ稅
制ハ根本的ニ中央ト云ハズ、地方ト云ハズ、
之ニ向ッテ再檢討ヲシテ、新ナル稅制案ヲ
作ラナケレバナラヌト云フコトヲ言ッテオ居
デニナル今日ニ於テ、此無用ノ八九千万圓
ノ餘計ノ增稅案ヲ玆ニ御提出ニナルト云フ
コトハ、私ニハドウシテモ解スルコトガ出
來ナイノデアリマス、此點ニ向ッテ大藏大臣
ノ御所見ヲ承リタイ、或ハ大藏大臣ハ斯樣
ニ考ヘテオ居デニナルカモ知レヌ、成程馬
場豫算カラ見レバ左樣ニモ見エルデアラ
ウ、併ナガラ租稅モ國民ノ負擔デアルト同
時ニ、公債モ亦國民ノ負擔デアル、增稅ニ
於テ八九千万圓ノ餘計ノ增收ヲ計畫シタニ
ハ相違ナイガ、一面ニ於テ公債ノ募集ヲソ
レダケ減額シテ居ルカラ、國民ノ立場カラ
言ヘバ差支ナイ、斯樣ナ御議論デアルカモ
知レマセヌ、併ナガラ是ハ先程モ申ス通
リ、全然馬場財政ト云フモノヲ御破算ニシ
テ出直スト云フ場合ニハ色々ナ立テ方モア
リマセウ、併ナガラ大體ニ於テソレヲ基幹
トシテ一ツノ修正ヲ加へルト云フ立場カラ
へ斯樣ナ議論ハ成立クヌノデハナイカ、
況ヤ今日ノ稅制ハ暫定的デアル、時間ガ間
ニ合ハナイ爲ニ十分ナ檢討モシナイト仰シ
ヤル、俄カ的、火事泥的ノ稅制案デアリマ
ス、然ラバ出來得ルダケ稅額ヲ少クスルト
云フコトガ、國民ニ對シテ政府ノ親切ナル
心構ヘデナケレバナラヌト私ハ考ヘル、然
ルニ却テ馬場財政ノ豫定シテ居ッタモノヨ
リハ餘計ノ負擔ヲ國民ニ課ケルヤウナ稅制
案ヲ御提出ニナルト云フニ至ッテハ、吾々
ハ如何樣ニシテモ了解ニ苦シムノデアリマ
ス、眞ニ結城藏相ニシテ此稅制ノ改革ガ國
民ノ生活及ビ經濟力ニ重大ナル影響アルコ
トヲ重々御認識ニナッテ、眞ニ劃期的稅制
改革ヲシヨウト云フ固キ御決心ガアルノデ
アッタナラバ、二億ヤソコラノコトハ、全然增
稅ヲ取止メテ、公債ヲ以テ之ヲ「カバー」ス
ルノ案ヲ御出シニナリ、サウシテ二箇月ナ
リ三箇月ナリ檢討ノ後ニ臨時議會ヲ御開キ
ニナッテ、適當ナル自ラノ確信ノ下ニ編成サ
レタル稅制改革案ヲ御出シニナルコトガ、
國民ニ對シテ親切ナル所以デハナカラウカ
ト私ハ考ヘル、然ルニ今申シタル如ク八九
千万圓ト云フヤウナ餘計ナ增收案ヲ御出シ
ニナリ、而モ今一例トシテ指摘致シマシタ
ヤウニ、所得稅ト營業收益稅ニ於テ大イナ
ル矛盾ヲ包含シテ居ル、又財產稅ノ根本ヲ
破壞スルヤウナ稅ヲ提出ニナッタ、是ハ併ナ
ガラ私ハ結城大藏大臣ノ爲ニ辯護致シマスル
ナラバ、想フニ法人資本稅ヲ御立テニナッタ
ノハ、深キ御〓究ノ結果ニアラズシテ、所謂
應急的ノ措置デアックラウト思フ、ソレハ最
近各種ノ營利會社ガ合法的ノ脫稅ヲ致サン
ガ爲ニ、無用ノ拂込金竝ニ增資ヲ致シテ居ル
ノデアリマス、之ヲ喰止メル一ツノ手段トシテ、
法人財產稅ヲ御立テニナッタモノデアラウカ
ト想像シマス、併ナガラ是ハ洵ニ應急的ノコ
トデアル、況ヤ千分ノ一ノ法人財產稅ヲ以テ
シテ、此合法的脫稅ヲ喰止メルコトハ、技
術的ニ私ハ困難デアルト思ヒマス、假ニソレガ
多少ノ效果アリト假定致シマシテモ、此財
產稅ノ如キハ天下ノ議論ニナッテ居ル重大
ナル問題ヲ決定スルニ當ッテ、一時的ノ便
宜ニ依ッテ之ヲ決セラルヽト云フヤウナコ
トハ、思ハザルノ甚シキモノデハナイカト
私ハ考ヘマス、現ニ原內閣ノ當時財政經濟
調査會ニ於テモ、財產稅ガ重大ナル問題ト
ナッタ、其報告ヲ見マスルト云フト、財產
稅ヲ設定スルコトニ致シマシテモ、法人ニ
ハ財產稅ヲ課サナイコトニナッテ居ル、財產
稅ノ性質トシテ、先程申上ゲタルヤウニ、
是ガ是非ハ暫ク措イテ、之ヲ個人ニ課シテ
コソ初メテ財產稅ノ趣旨ハ現ハレルノデア
ル、唯一時應急ノ手段トシテ、將來ノコト
ヲ考ヘズ、稅制ノ根本的精神ト云フモノヲ
考ヘズ、租稅論上ノ「イデオロギー」ト云フ
モノヲ顧ミズ、恰モ何等ノ意匠ナク、何等ノ
考ヲ持タズニ、錦ノ布ヲ綴リ合シテ、唯人
目ニ立派ニシタト云フヤウナ形ガアリハシ
ナイカト云フコトヲ私ハ惧ルヽモノデアリ
マス、此點ニ向ッテ大藏大臣ノ御所見ヲ伺ヒ
タイト存ジマス
最後ニ私ハ交付金ノコトニ付テ少シク御
伺ヲ致シタイト存ジマス、先程增田君モ此
交付金ノ問題ニ付テ觸レラレマシタ、之ニ向ツ
テ結城大藏大臣ハ取敢ヘズ七千万圓ヲ交付
スルコトニ決定シタガ、將來ハ之ヲ增加ス
ルカ、或ハ之ヲ認ムルカ、如何ナル方法ヲ執
ルカハ未ダ決定シテ居ナイ、斯樣ニ仰セラ
レルノデアリマス、成程暫定的トアレバ、
ソレモ一箇ノ御考カモ知レヌ、私ハ此場合
ニ稅制ノ根本的改正ニ向ッテノ結城藏相ノ
「イデオロギー」ヲ承ルト共ニ、此交付金ノ
觀念ニ付テ承リタイノデアリマス、交付金
制度ト云フモノハ、多年ノ間天下ニ論議
ヲサレテ居ルモノデアリマス、之ニハ重大
ナル意義ガ含マレテ居ルト私ハ考ヘル、先
ヅ試ニ簡單ニ私ノ考ヲ申上ゲテ結城藏相ノ
御意見ヲ承リタイ、地方財政交付金ノ觀念
ノ中ニ、地方自治團體ニ對シテ政府ノ委任
事務ヲヤラシテ、此費用ト云フモノヲ其自
治團體ニ負擔セシメテ居ルノガ、今日ノ自
治團體ノ窮乏ヲ來シタ主ナル原因デアルト
云フコトハ、天下周知ノ事實デアル、現
内閣審議會ニ於テ其地方財政調整ノ中間報
告書ニモアル通リニ、現在ニ於テ地方ノ自
治團體ニ國家ノ事務ヲ委任シテ、ソレニ要
スル所ノ費用ハ約九億何千万圓デアル、併
ナガラ其中ニ最モ國家事務ノ性質ヲ多分ニ
帶ビテ居ル事務費ダケガ五億アル、斯樣ニ
報告サレテ居リマス、然ルニ此五億ノ地方
自治團體ノ負擔スル國家事務費ノ中、種々
ナル名義ニ依ッテ地方ノ自治團體ニ還元サ
レル所ノ金ガ、約二億アルノデアリマス、
隨テ中央ノ國庫カラ地方ノ自治團體ニ約三
億ノ金ヲ交付致シマスルナラバ、大體ニ於
テ國家ノ事務ヲ地方ノ自治團體ガ代行シ
テ、其費用ヲ自ラ負擔シテ居ルダケノ金ニ
充テルコトガ出來ル、卽チ委任事務ノ費用
ヲ地方自治團體ニ負擔セシメズシテ、國家
ガ負擔スルト云フ意味ニ於テ、交付金ノ意
味ガアルノデアリマス、又他ニ斯樣ナ考ヘ
方ガアルノデアリマス、ソレハ資本主義ノ
進步ノ結果、都市ト農村トノ間、又或ル地
方ト他ノ地方トノ間ニ、地域的ニ負擔力ガ
非常ニ相違ヲ來シテ居ル、一例ヲ以テ言ヒ
マスナラバ、市部ト郡部ノ間ニ、國稅ノ
圓ニ對シテ市部ハ約一圓ノ附加稅ヲ取ッテ
居ル、然ルニ郡部ニ於テハ三圓五十錢ノ附
加稅ヲ取ッテ居ル、是ハ單ニ一例デアリマ
スルガ、斯樣ニ都會ト農村、或ル地方ト或
ル地方トノ間ニ、地域的ニ負擔ノ相違ガア
ルノデアリマス、單ニ負擔ノ相違ノミナラ
ズ、又負擔力ニ於テモ非常ナル相違ノアル
コトハ、是亦極メテ明瞭デアリマス、此全
體主義ノ上カラ申シテ、同ジク一國家ノ中ニ
或ル部分ハ非常ニ貧弱デアリ、或ル部分ハ非
常ニ裕カデアルト云フヤウナコトデハ、到底
國家ノ健全ナ發達ヲ爲スコトハ出來ナイ、
仍テ全體主義ノ上カラ富裕ナル町村、富ン
ダル所ノ都市ノ犠牲ニ於テ、貧弱ナル町村竝
ニ農村ノ疲弊ヲ救ハナケレバナラヌト云フ
意味ニ於テ、交付金ヲ主張シテ居ルノデア
リマス、地方交付金ノ性質ニ此二ツノ意味
ガ含マレテ居ルト思フノデアリマス、結城
大藏大臣ハ果シテ此地方交付金ヲ如何ナル
意味ニ於テ、御採用ニナラントスルノデア
ルカ、或ハ全然此交付金制度ト云フモノヲ、
御考慮ニナラナイト云フ御考デアルノカ、
又御考ニナルト致シマスナラバ、今申上ゲ
タル如ク、國家ノ事務ヲ地方ノ自治團體ガ
代行スル爲ニ、五億圓ノ負擔ヲ致シテ居ル
ノデアリマス、サウシテ二億圓ノ國庫ノ補
助ヲ得テモ、尙ホ三億圓ノ負擔ヲ致シテ居
ルノデアル、故ニ其理由ヲ貫クト致シマス
ナラバ、尙ホ三億ノ交付金ヲ地方ノ自治團
體ニ交付シテモ、漸ク國家ノ事務ヲ地方ノ
自治團體ニ代行セシメテ居ルダケノ金ヲヤ
ルニ過ギナイノデアル、地方ノ自治團體ハ
國家カラ何等ノ恩惠ヲ受ケテ居ラナイノデ
アリマス、之ヲ如何ニ解釋シ、將來此交付
金ト云フモノヲ如何ナル御取扱ヲナサル積
リデアルカ、或ハ三億圓ダケ增額ヲナサレ
ナイトシテモ、今日御提案ニナッタ七千万圓
ニ對シテ、相當ナル增額ヲナサル積リデア
ルカドウカ、之ヲ先ヅ伺ヒタイ
而シテ第二ノ意義ニ於テ申上ゲタ交付金
ノ本旨ヲ、御諒解ニ相成リマスルナラバ、
交付金ハ中央カラ地方ノ自治團體ニ、金ヲ
ヤリサヘスレバ宜イト云フモノデハナイノ
デアリマス、此財源ノ如何ニ依ッテ交付金ノ
效果ガ現ハレルト、現ハレナイノガアルノ
デアリマス、卽チ先程モ申シタ如ク、地方
財政交付金ノ性質上、富裕ナル町村或ハ富
ノ集中シテ居ル都市ノ犧牲ニ於テ、貧弱ナ
ル町村或ハ地方ノ農村ヲ救フト云フコトデ
ナケレバ、交付金ノ制度ノ本旨ガ達シナイ
ノデアリマス、故ニ交付金ト云フモノハ|
地方財政調整交付金ノ性質ハ、單ニ金額ヲ
餘計ヤレバ善イカ惡イカト云フ問題ノ外ニ、
如何ナル財源ヲ以テ此交付金ノ財源ニ充當
スルカト云フコトガ、此案ノ重大ナル重點
デアルノデアリマス、結城大藏大臣ハ此點
ニ向ッテ如何ナル御所見ガアルデアリマセ
ウカ
尙ホ序ナガラ伺ッテ置キマスガ、此歲出實行
見合セ經費調ト云フモノニ、內務省所管ニ
於テ地方財政調整制度ニ要スル經費二億二
千何百万圓ト云フモノヲ、之ヲ削除ニ相成ッ
テ居ル、卽チ交付金ノ全體ヲ削除ニナッテ、
更ニ之ニ代リテ地方財政援助ニ要スル經費
ト云フモノヲ、七千何百万圓御設定ニナッ
テ居ル、サウスルト是ハ從來ノ馬場財政ノ
計畫致シタル所ノ、地方財政交付金ト云フモ
ノノ減額ニ非ズシテ、別種ノ考ヘカラ斯樣ナ
モノヲ御立テニナッタト見ナケレバナラヌ、
又此名モ違ッテ居ル、名ハ實ノ賓ト申シマス、
名義ハ何デモ宜イトハ申サレマセヌ、最初
ノ案ニ依リマスルト云フト、地方財政調整制
度ニ要スル經費トアル、是ハ吾々ノ今日理
解シテ居ル所ノ地方財政調整交付金ト云フ
ベキモノデアリマセウ、然ルニ今度新タニ
御立テニナッタ所ノ目ハ、地方財政援助ニ要
スル經費、救ヒノ經費ト斯ウアル、是ハ交
付金ト根本ニ於テ性質ヲ異ニシテ居ルカノ
ヤウニ、私ハ此項目ノ變更カラ見、此名義
カラ見テ左樣ニ解セラレルノデアリマスガ、
果シテ結城大藏大臣ハ如何ナル理由ニ依ッ
テ、此項目ヲ御變更ニナッタノデアルカ、是
モ併セテ御伺ヒヲ致シタイト思ヒマス(拍手)
〔國務大臣結城豊太郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X00919370219&spkNum=16
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017・結城豊太郎
○國務大臣(結城豊太郞君) 武田君ノ御質
問ニ對シテ御答ヲ致シマス、是ダケノ增稅
ヲシテ國民ニ莫大ナル負擔ヲ課スルコト
ニナルノデアルガ、假令臨時增徵ト云フコ
トニシテモ、餘リニ大キイ額デアルダケニ、
ソコニ何等カノ方針、考へガナケレバナラヌ
デハナイカト云フ御話デアリマス、至極御
尤デアリマス、國民トシテハ此重大ナル時
局ニ納稅ヲシテ、國務ヲ遂行サセタイト云
フ念慮ニ滿チテ居ラレルダラウト思フガ、
政府當局者トシテ徵收スル方ノ側ニ立チマ
スルト、出來ルダケノ負擔ノ輕減ヲ期シタ
イ、斯ウ云フコトハ無論デアリマスルカラ、
是ダケノ大キナ增徵ヲ致シマスニ付テハ、
相當ナル覺悟ヲ持ッテセネバナラヌノデア
リマス、繰返シテ申上ゲマスヤウニ、內外
ノ情勢ハ中々日本ノ國防費ト云フモノヲ、
容易ニ減スコトガ出來ナイヤウナ狀態ニ在
ルノデアリマス、ソレヲ支辨スル爲ニハ、當
分國費ノ膨脹ト云フモノハ、已ムヲ得ヌノ
デハナイカト思ヒマス、之ヲ全部-全部ト
申シマセヌガ、膨脹增加スル所ヲ悉ク公債
ニ依ルト云フ譯ニハ參リマセヌ、殊ニ經濟
界ノ狀況ガ惡イ場合ニハ、公債ヲ募リタクト
モ募レマセヌデ、公債ノ消化ガ不十分デア
ル爲ニ、惡性「インフレ」ノ起ル懸念ガアリマ
スノデ、隨ッテ成ベクナラバ經常ノ歲入ハ、ヤ
ハリ租稅其他ニ依ッテ賄ッテ行ッテ、赤字公債
ヲ少クスル方針ヲ執ッテ行キタイト考ヘテ
居ルノデアリマス、ソレデ十二年度ノ豫算
ニ於キマシテモ、ドウシテモ必要ナ國費ガ
嵩ンデ居リマスノデ、國債ノ消化ノ出來ル
程度ニ於テ、ソレハ赤字公債ニ讓リマシテ、
サウシテ只今ノ臨時增徵案ニ依ッテ、國民カ
ラ租稅ヲ負擔シテ戴クト云フコトニナッタ
ヤウナ次第デアリマシテ、其邊ノ事情ニ付
テハ御諒承ヲ願ヒタイト存ジマス、御質問
ノ中ニ、所得稅ノ免稅點ト營業收益稅ノ免
稅點トニ於テ、主義ガ違ッテ居ルノデハナイ
カト云フ御話デアリマシタガ、是ハ今囘ノ
臨時增徵法ハ、現行稅法ヲ基礎ト致シマシ
テ、稅額ノ增徵ヲ圖リマシタモノデアリマ
シテ、ソコノ免稅點ニ於テハ何等ノ變更
ガナイノデアリマス、是ハ此次ニ稅制全部
ニ互ッテ檢討ヲ致シマス時ニ、免稅點ヲ何處
ニ置クベキカト云フコトハ、モウ一應ノ檢
討ヲ要スルモノデアラウト思フノデアリマ
ス、次ニ財產稅ノ中、法人ノ資本稅ヲ置イ
ク、折角財產稅ヲ廢メテモ、ソレヲ置イテ
ハドウカ、斯ウ云フ御話デアッタト記憶シテ
居リマス、財產稅ハ所得稅ノ補完稅トシテ、
前内閣ニ於テ創設致シマシタヤウナ次第デ
アリマシテ、又一朝事ガ有ッタ場合ニ役立ツ
ヤウニ、只今ハ低イ稅率デ以テ、サウシテ
財產ヲ調査シテ置クト云フヤウナ氣持モ
アッタカノヤウニ承ッテ居リマス、私ハ全ク
稅ナドニ付イテハ素人デアリマスガ、併シド
ウモ財產稅ト云フヤウナモノハ、何トナシ
ニ人心ニ不安ヲ與ヘ、ソレカラ稅務官吏ノ
何千人ト云フ者ガ新タニ採用サレテ、其邊
ノ調ヲスルコトニナッテ居ッタサウデアリマ
スガ、官吏ト國民トノ間ニ摩擦ガ起ルヤウ
ナコトガアッテハ面白クナイ、斯ウ云フヤウ
ナ點カラ、此個人ノ財產稅ト云フモノハ見
合セタ方ガ宜カラウ、併シ法人ノ方ハ、是
ハ法人ノ資本ノ集積ニ對シテ、此際或ル程
度ノ課稅ヲ爲スト云フコトガ適當デアラウ、
斯ウ考ヘマシタノデ、個人ノ財產ト必シ
モ關聯スル必要ナク、法人ノ資本稅ヲ設
ケタヤウナ次第デアリマス
ソレカラ今囘ノ增稅額ハ、前內閣ノ案ニ
比シテ多イヤウニ御話ガアリマシタガ、是
ハ少イノデアリマスカラ、ドウゾ御承知
置ヲ願ヒタイト思ヒマス、ソレカラ地方交
付金ノコトニ付テ御尋ガアリマシタガ、御
話ノ次第ハ私モ御尤ト思ヒマス、單ニ金ダ
ケヲヤルト云フコトダケデハイケマイト私
ハ思フノデアリマシテ、今迄ハ國ト地方ト
ハ、其事務ト之ニ關スル經費ノ財源ニ關シ
テ、ハッキリシタ主義ガナカッタノデアリマ
ス、ソレデ委任事務ノ經費ノ財源ヲ何處ニ
置クカト云フヤウナコトニ付イテモ、是ハ相
當議論ノアルモノダラウト思フノデアリマ
スルガ、私共ノ今囘七千万圓ヲ地方ニ交付
致シマスノ趣旨ハ、ソレニ依ッテ成ベク町
村ノ戶數割トカ、雜種稅トカ、其他ノモノ
ヲ減稅シテ負擔ヲ輕クシタイ、斯ウ云フ意
味ニ過ギナイノデアリマシテ、更ニ繰返シ
テ申シマスヤウニ、十分ナ檢討ヲ致シマシ
テ、中央地方ノ稅制ヲモウ一段整理ヲシタ
イ、斯ウ考ヘテ居ルヤウナ次第デアリマス、
是デ大體御諒承ヲ願ヒタイ
〔武田德三郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X00919370219&spkNum=17
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018・武田徳三郎
○武田德三郞君 只今結城大藏大臣ヨリ御
答辯ヲ戴キマシタガ、洵ニ私ハ遺憶ナガラ
徹頭徹尾不滿足ノ意ヲ表セザルヲ得ナイノ
デアリマス、私ノ演說ガ下手ノ爲メデモア
リマセウガ、私ノ問ハントスル所ニ對シテ
何等御答ガナイノデアリマス、尙ホ私ノ後
ニモ多數ノ質問者ガ、オアリニナルサウデ
アリマスカラ、私ハ多クヲ申シマセヌ、併
ナガラ此重大ナル案件ヲ國民ト共ニ議スル
ニ當ッテ、稅制ニ向ッテハ、素人デアルト云フ
率直ノ御答辯ハ諒ト致シマス、如何ニ金融
界ニ向ッテノ「オーソリチー」デアッテモ、租
稅ノコト萬般ニ付テ御承知アルトハ申サレ
マスマイカラシテ、私ハ難キヲ敢テ結城藏
相ニ求メヨウトハ考ヘマセヌ、併ナガラ一
國ノ大藏大臣トシテ、此重要ナル位置ニ御
就キニナッタ以上ハ、自己ノ責任ヲ以テ國
民ノ生活、產業ニ重大ナル關係ノアル御提
案アル場合ニ於テハ、屬僚トモ篤ト御協議ニ
ナッテ、自己ノ信念ダケハ御定メ下サラヌデ
ハ、吾々國民トシテハ甚ダ不安心デアリマス、
今私ノ第一ノ御尋ヲ致シタコトニ向ッテ、其
稅制改革ノ方針、主義ニ向ッテ何等ノ御說明
ガナイノデアリマス、又財產稅ノコトニ付
テノ御說明ノ如キニ至ッテハ、忌憚ナク申セ
バ、捧腹絕倒ノ外ハナイノデアリマス、併
ナガラ斯樣ナ細カナ問題ニ對シテハ、何レ
委員會ニ於テ、私ノ平生最モ學者トシテ尊
敬シテ居ル石渡主稅局長ト、寧ロ意見ノ交
換ヲ願ッタ方ガ事實上便宜デアルト思ヒマス
カラ、ソレハ差控ヘマス、又私ハ決シテ此
政府ノ提案ガ、馬場氏ノ提案ノ稅制案ヨリ
負擔ガ餘計ニナッタトハ申サナイ、諄イ程私
ハ其點ハ申上ゲテアル、アナタハ馬場豫算
案ヲ原案トシテ之ニ修正ヲ加ヘルノダト云
フコトヲ、此壇上ニ於テモ豫算總會ニ於テ
モ御說明ニナッタデハアリマセヌカ、而シテ
其馬場豫算ノ歲出ノ中カラ二億六千九百万
圓ヲ減ズルノダト仰シヤッタデハアリマセ
ヌカ、歲出ヲ見合セルノデアルト仰シヤッ
タデハアリマセヌカ、併シ其原案タル馬場
氏ノ豫算案ニハ、五億何百万圓ノ稅收入ト
云フモノガ歲入ノ方ニ豫算シテアルノデア
リマス、然ルニ歲出ノ方デ二億六千九百万
圓ガ無用ニナッタトスレバ、此五億ノ中カ
ラ、二億六千九百万圓ヲ引イタ殘リ二億三
千万圓ノ增稅ヲシタラバ宜イト云フ計數ニ
ナルコトハ極メテ明瞭デハアリマセヌカ、
然ラバ二億三千万圓アレバ宜イ所ヘ持ッテ
行ッテ、三億一千万圓ノ增稅ヲナサルカラ、
玆ニ八千万圓、九千万圓ト云フ要ラナイ負
擔ヲ國民ニ何故セシムルカト、斯ウ私ハ聽
イタノデアリマス、或ハ顧ミテ他ヲ言フヤ
ウナ御話デハアッタケレドモ、最初ノ御話ニ
斯ウ云フコトガアル、此非常時ニ對シテ軍
備モ必要デアルカラ、國民カラモ相當負擔
ヲシテ貰ハナケレバナラヌ、是ハ宜シイ、
又赤字公債ヲ成ベク少クシナイデ餘計出ス
ト、惡性「インフレ」ノ虞ガアルト、斯ウ仰シ
ヤッタ、是モ宜シイ、然ルニ昨日此席ニ於テ、
中野正剛君ノ質問ニ對シテ、私ガ任ニ在ル
限リ日本ノ財政經濟ニ於テハ御心配ハ要リ
マセヌト、此處ニ大藏大臣ハ見榮ヲ切ッテ御
言明ニナックデハアリマセヌカ、又本年ノ一
月ノ、未ダ大藏大臣御就任前、日本商工會
議所ノ宴會ノ際ニモ、財界ノ各方面ノ協力
ヲ適當ニ得ルニ於テハ、我國ニ於テ十億乃至
十五六億位ナ公債ヲ募ルコトハ、サシテ困
難デナイト仰シヤッタ、結城豊太郞、大藏
大臣ニ在ル間ハ國民安心シテ可ナリトマデ
仰シヤッテ、吾々ハアナタニ信賴致シテ居
ル、然ルニ何等組織立ッタ案モ立タズ、所謂
火事泥的ノ-火事泥的ト云フ言葉ハ語弊
ガアルカモ知レマセヌガ、詰リ應急的ト云
フ意味デアリマスガ、臨時應急的ノ增稅案
ヲ國民ニ求ムルニ當ッテ、八千万圓位ノ公債
ヲ減ジナケレバ、惡性「インフレ」ニナル虞ガ
アルト言フ程、我國ノ經濟財政ガ窮迫シテ
居ルモノデアリマスルナラバ、是ハ重大ナ
ル事デアルノデアリマス、果シテ結城大藏
大臣ハ此八千万圓ナリ、一億圓ナリヲ公債
ノ中カラ減ジナケレバ、惡性「インフレ」ガ起
ルト云フ危險ヲ御感ジニナッテ居ルノデア
リマセウカ、斯樣ナ考カラ、ドウシテモ公
債ノ募集額ヲ減ジナケレバナラヌト云フコ
トデ、此組織ノ立タナイ所ノ臨機應變ノ增
稅案ヲ以テ、國民ニ三億以上ノ增稅ヲ强ヒ
ラルヽト云フ御考デアルノデアリマスカ、
此點ヲ伺ヒタイ、私ハ結城大藏大臣ノ御話
ヲ承ッテ、斯樣ナ感想ガ起キタノデアリマス、
只今ノ御答辯ハ唯其場限リノ御答辯デアッ
テ、眞實結城サンノ肚ノ中ニハ「デフレー
ション」政策ヲ執ラナケレバナラヌト云フ
御考ガアルノデハナイカト云フ風ニ私ハ考
ノト一體結城サンハ前ノ故人ノ大藏大臣
デアッタ井上サントハ特別ナ御懇意ノ關係
デ「ヂャーナリズム」ハ井上サンノ子分デア
ルトカ、弟分デアルトカ申サレテ居ル、サ
ウシテ又經濟上ノ思想系統ニ於テモ、
稍〓同一ノ御考ニアル方ダト承ッテ居ル
ノデアリマス、斯樣ナ考カラ私ハ推測
シテ見マスルト云フト、今日結城大藏
大臣ガ歲出ニ向ッテ斧鐵ヲ加ヘルト云フ
ノ御趣旨ハ、物價騰貴ヲ抑制シヨウト云フ
御考カラ出テ居ルコトハ御說明ニ依テ明カ
デアリマス、然ラバ私ノ今質問ヲ申上ゲ
タ必要以上ノ增稅ヲナサルト云フノハ眞
意ハ、國民ノ購買力ヲ成ベク多ク取上ゲテ、
之ニ依テ物價ノ急騰ヲ抑ヘヨウト云フ、所
謂「デフレーション」政策ヲ知ラズ識ラズノ
間ニ、國民ノ視聽ヲ刺戟シナイ範圍內ニ於
テ、井上サンノ如キ急激ナル「デフレーショ
ン」政策ヲ執ラズニ、國民ノ視聽ヲ胡麻
化スト言ヘバ語弊ガアルカモ知レマセヌガ、
視聽ニ觸レナイヤウニシテ、徐々ニ「デフ
レーション」政策ヲ執ラウト云フ御考デア
ルヤノヤウニ、私ハ只今ノ答辯ヲ承ッテ感
ズルノデアリマス、若シ果シテ結城大藏大
臣ニシテ我國ノ財政經濟ヲ救フノニ、「デフ
レーション」政策ニアラザレバナラヌト云
フ御考デアリマスルナラバ、遺憾ナガラ吾
吾ハ現內閣ノ財政經濟政策ノ根本ニ於テ、反
對シナケレバナラヌ悲シムベキ立場ニ立ツ
ト思フノデアリマス、仍テ此點ニ取ッテ確カ
ト結城藏相ノ御答辯ヲ承ッテ置キタイト存
ジマス(拍手)
〔國務大臣結城豊太郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X00919370219&spkNum=18
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019・結城豊太郎
○國務大臣(結城豊太郞君) 武田サンノ御
尋ニ對シテ御答ヲ申上ゲマス、歲出ヲ減ジ
タダケニ增稅額ヲ止メテ置イタラ宜イデハ
ナイカ、ソレ以上ノ增稅ヲ國民ニ課スルノ
ハイカヌデハナイカ、斯ウ云フ御尋ノヤウ
デアリマシタ、私ハ出來ルダケ負擔ヲ輕ク
スルト云フコトニ於テハ、異議ハアリマセ
ヌガ、只今ノ經濟界ノ狀況カラ申シマスル
ナラバ、出來ルダケ又借金モ減シタイ、斯
ウ云フ考ヲ持ッテ居リマス、隨テ七千万圓デ
モ八千万圓デモ、此際赤字公債ノ發行ガ控
ヘ得ルナラバ控ヘテ置キタイ、斯ウ思ッテ居
リマスルノデ、ソレダケノ公債ガ消化ガ出
來ナイト云フ狀況デハアリマセヌ、モット消
化ガ出來ルヤウナ狀況ニアラウト思ヒマス
シ、又サウ云フ狀況ニ經濟界ヲシテ行カネ
バナラヌト思フノデアリマスル、只今ノ所
ハ出來ルダケ赤字公債ノ發行モ少クシテ行
キタイ、借金ヲ出來ルダケ少クスルコトニ
努メタイ、斯ウ存ジマシテ、アヽ云フ案ヲ
作リマシタヤウナ次第デアリマス、ソレガ
偶〓「デフレーション」政策デハナイカト云フ
御懸念デアリマシタガ、昨日中野君ノ御質
問ニ對シテ御答致シマシタヤウニ、私ハ消
費ノ節約ト云フコトニ付テハ、國民ニ御願
シテ奬勵ヲ致シタイト思ッテ居リマスルガ、
單純ナ緊縮政策ヲ執ルモノデナイ、斯ウ云
フコトヲ昨日御答シタノデアリマシタガ、
武田君ニ對シマシテモ、私ハ緊縮政策トカ
「デフレーション」トカ云フコトニ付テ、單
ニサウ云フ風ナ考デ政治ヲシテ居ルノデハ
ナイ、斯ウ云フコトダケヲ申上ゲテ置キマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X00919370219&spkNum=19
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020・武田徳三郎
○武田德三郞君 重ネテノ御答辯ニ尙ホ甚
ダ不滿足デアリマスルケレドモ、一應茲デ
私ノ質問ヲ打切リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X00919370219&spkNum=20
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021・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 拜承シマシタ-
篠原陸朗君
〔篠原陸朗君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X00919370219&spkNum=21
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022・篠原陸朗
○篠原陸朗君 今マデ同僚武田君カラ增徵
案ノ意味ノ御尋ガアリマシタ、案自身ガ臨
時租稅ノ增徵案ト申シテ居ルノデアリマス
カラ、暫定的ニ歲入ヲ取リタイ、此事ニ對シ
テ其財政上ノ意味ヲ、又何ヲ目標トシテ增
稅ヲスルカト云フコトヲ御尋スルコトハ、
少シ無理カモ知レマセヌガ、私ハ昭和七年
ニ高橋大藏大臣ガ就任セラレテ以來、我國
ノ財政改善ニ對シマシテ收入增加ヲ圖リマ
シタノハ、物故セラレマシタ大藏大臣藤井
君ノ臨時利得稅約四千万圓、前內閣ガ行ヒ
マシタ公債ノ低利借換ニ依リマス利子ノ支
拂ヲ減少シマシタ數千万圓、五箇年間ノ財
政ノ經過ハ此タッタ二ツノ事件デアリマス、
一方ニ非常ニ急激ニ增加スベキ歲出ノ要求
ガアル場合ニ於キマシテ、五箇年間高橋サ
ンハ增稅ノ時期デナイト云フ一言ヲ以テ、
此財政ヲ持ッテ參リマシタ結果ハ、
段々歲出ノ要求ニ應ジナイヤウナ歲
入狀況ニナリマシタ結果、本年度ノ豫
算ヲ見マスト、洵ニ各國ニモ其實例ヲ見ナ
イ所デアルト存ジマスガ、特別會計カラ一
般會計ニ對シテ財源ヲ援助シテヤラウ、皆
樣ノ御承知ノヤウニ、一般會計ハ非常ニ大
キナ赤字ヲ持ッテ居ル、特別會計ハ之ニ反シ
テ全部黑字ヲ持ッテ居ル、玆ニ私ハ大キナ財
政上ノ矛盾ガアッテ、又豫算計畫ニ非常ニ無
理ヲ包含シテ居ルト存ズルノデアリマス、
第十二款ノ財政援助、六款ノ特別會計ヨリ
ノ繰入、是ハ吾々ガ會計ノ內容ヲ多少知ッ
テ居レバ分リマスケレドモ、六款ハ何故ノ
特別會計ノ繰入デアラウカ、第十二款ハ財
源受入トアルガ、如何ナル意味デアラウカ、
御諒解ニナルノニ御困難デアラウト存ジマ
ス、私ハ凡ソ財政上ノ基礎ヲ確立スル爲ニ
增稅ヲ行ヒマス場合ニハ、其前提トシテ財
政上ノ整理改善ヲスベキ必要ハナイデアラ
ウカ、或ハ尙ホ進ンデ財政改革ヲ斷行シナ
ケレバ、此大キナ政治上ノ國費增加ヲ處分
シ得ナイ、斯ウ信ジマシタ場合ニハ、財政
ノ改革ヲ斷行スルノガ必要デハナイカ、前內
閣ノコトヲ現內閣ニ御尋スルコトハ少シ馬
鹿氣テ居リマセウガ、前內閣ハ中央地方ノ稅
制ヲ改革シテ、租稅ニ彈力性アラシムル、
又濫ニ負擔ヲ後代ニ遺スコトヲ止メテ、經
常收入ヲ取ッテ財政基礎ヲ確立シタイ、御尤
デアリマス、御尤デアリマスガ、稅制ノ彈
力ヲ希望スルト云フコトハ、終局スル所財
政ノ彈力ヲ御希望ニナルノデハナイデセウ
カ、私ハ前內閣ガ非常ニ熱心ニ稅制改革ヲ
主張シ、其ヤリ方ガ中央地方ヲ通ズルマデ
ハ御勉强ニナッタノデアリマスケレドモ、私
ハモウ一遍進ンデ、吾々ハ財政ニ改革ヲ斷
行スル、所謂財政ニ彈力ヲ大キクスル、此
事ガ必要デハナイカト存ズルノデアリマス、
故ニ私ハ暫定案ニ對シテ御尋シテ洵ニ失禮
デアリマスケレドモ、今囘ノ租稅ノ增徵額
ハ將來餘リ是ヨリモ小サクナラヌト昨日仰
シヤック、故ニ財政上如何ナル意義ヲ有シテ
二億六千九百万圓ト云フモノヲ御考ヘニナ
リマスカ、私ハ現在一番大キイ國ノ歲出ガ
國防費デアリマスカラシテ、セメテ國防費
ノ經常費ダケハ取リタイ、或ハ海軍ノ軍艦
製造費ハ臨時費ニアリマスケレドモ、是ハ
經常ノ性質デアルカラ、海軍ノ軍艦製造費
ヲ包含シテ迄ハ、陸軍ノ擴張經常費ヲ一〓
ニ取リタイ、是モ一ツノ見方デアリマス、
モウ一方濫リニ負擔ヲ後代ニ遺サザラント
仰シヤイマシタガ、公債ノ利子ダケハ取リ
タイ、或ハ進ンデ公債ノ發行額ガ大キイカ
ラ、公債ノ元金ヲ償還スル金ダケハ取リタ
イ、是モ一說デアリマス、凡ソ財政ノ整理、
或ハ財政ノ改善ヲ圖リマスコトハ、何カ目
途ヲ置キ、標準ヲ置イテ、之ニ對シテ努力
ヲスルコトガ、玆ニ時ヲ以テ致シマスルナ
ラバ、豫算ハ每年提出スルカラ、每年之ニ
對シテ努力ヲシマスレバ、玆ニ每年改善ガ
アリマス、各地ノ特別會計ハ臺灣ト云ハズ、
朝鮮ト云ハズ、樺太ト云ハズ、小サイ南洋
廳デモ、關東廳デモ、玆ニ黑字ヲ持ッテ居ル
ト云フコトハ、自分自身ノ財政デアリマスカ
ラシテ、此各特別會計ノ當局者ハ、一般會計
ヨリ勉强シテ、今マデ此會計ヲ御持チニナッ
テ居ッタノデハナカラウカ、故ニ增收計畫モ、
歲出ノ增加計畫モ相當ニ立派ナ發達ヲ遂ゲ
テ居ルヤウニ私ハ思ヒマス
玆ニ私ハ我國ノ財政上申上ゲテ見タイコト
ハ、財政ノ改革ト云フコトハドウ云フコトカ
ト言ヘバ、何處カ力ノアル人ノ所ヘ、力ノアル
會計ヘ歲出ヲ持ッテ行クト云フコトデハナイ
デセウカ、金ノナイ人ハ金ガ出セナイト同ジ
ヤウニ、財政上餘力ノナイ所へ歲出ヲ負擔
サセルト云フコトハ困難デアル、稅制改革ト
ハ何デアルカ、擔稅力ノアル所ヘ、擔稅力
ノ少ナイ人カラ負擔ヲ持ッテ行クト云フコ
ト、是ガ稅制ノ改革デアルト存ジマス、財
政ノ改革ハ財政ノ負擔力ノナイ所カラ、財
政ノ負擔力ノアル所ヘ持ッテ行クノガ財政
改革デアル、我國ノ農村デ力ガナイ農村ヲ
救ヒタイ、斯ウ仰シヤイマス、吾々モ農村ヲ
救ヒタイ、此裏面ニハ私ハ第一段ニハ農村ト
云フモノガ如何ナル負擔ヲシテ居ルカヲ考ヘ
テ、農村ニ負擔ヲ課ケナイノガ一番先デハ
ナカラウカ、擔稅力ノナイ所カラ稅ヲ取ル
ノガ惡イ、農村ニ擔稅力ガナカッタナラ
バ、私ハ農村ニ課稅ヲシナイ稅ノ「システ
ム」ヲ採ルコトガ、一番優先問題ダト存ジマ
ス、私ハ其次ニマダ是デ財政ガ助カラナイ
其時分ニハ、其持ッテ居ル歲出ヲ何處カ健全
ナ財政主體ニ移シマシタラ、其財政主體ハ
助カル、警察費ハ現在連帶支辨金ヲ國庫カ
ラ千八百万圓出ス、而シテアト府縣ガ之ニ
金ヲ足シマシテ、八千八百万圓持ッテ居ル、
其八千八百万圓ヲ府縣ノ歲出カラ國ニ移シ
マスナラバ、警察官ノ待遇改善ハ勿論、又
選擧其他ニ於テ、縣會議員ノ選擧デ警察官
トノ衝突ヲ縣會デ聞クヤウナコトハ無ク
ナッテシマヒハシナイカ、私ハ內務大臣ニ之
ヲ御尋シマシタナラバ、府縣ノ歲出ヲ國ニ
移シテ警察ノ革正ヲ圖ルト申シマシタナ
ラバ、內務大臣ハ直チニ御同意デハナイカ
ト私ハ信ジマス、其次ニ來ルモノハ、ソレ
デ尙ホ其財政ガ助カラナイナラ、政府ハ此
財政ヲ助ケル、此事ハ有リ得ルト思ヒマス、
今私ハ一般會計ガ赤字デアッテ、特別會計ガ
黑字ト申シマシタガ、玆ニ前內閣ニ於テ計
畫セラレタ唯一ツノ財政ノ例ハ、此一般會
計ヨリ特別會計ニ援助ヲ求メタ、此財政援
助ノ繰入デアリマスガ、一體財政ノ非常時ト
云フモノハドウ云フモノカト、斯ウ申シマス
レバ、國ノ財政全體ヲ動員シテ、必要ニナッ
テ來タ歲出ニ外ヲ顧ミナイデ之ヲ振向ケマ
スナラバ、玆ニ自由自在ニ、ドンナ事件ガ
起ッテ來テモ、大キナ歲出ガ來テモ、戰爭ガ
起ッテモ、之ヲ賄ヒ得ル力ガ生ジテ來ル、是ガ
所謂非常財政デアリマシテ、其第一ノ手段
ハ收入ノ動員デアリマス、然ルニ我國ノ財
政ニハ澤山ノ特別會計ガアリマシテ、苦シ
ムノハ獨リ一般會計デアリマス、玆ニ此財
政受入援助ノ內容ニ付キマシテ、一二例ヲ
申上ゲテ見マス、通信特別會計ヨリ千二百
六十餘万圓繰入トアリマス、然ルニ前年ハ三
百四十万圓ノ繰入ヲ致シテ居リマスカラシテ、
增加ハ約九百万圓デアリマス、然ルニ通信
特別會計ニ於キマシテハ、事業增收ハ三千六
百万圓、之ニハ少シ不思議ナコトガアリマ
ス、郵便料金ノ値上ノ法律案ガ提出サレ
マスガ、豫算書ニハ此數字ハ一寸モ出テ居ナ
イ、千五百六十万何ガシト云フ通信ノ料金
改正ニナリマス法律案ガ出マス際ニ、此豫
算ニハ其增加數字ハ何處ニモ入レテナイ、
モウ一ハ公債ノ低利借換ニ依リマシテ、二
百數十万圓ノ利子負擔ガ輕減サレテ居ル、
故ニ此通信會計ノ實際ノ懷ロ勘定ヲ見マス
ト云フト、三千六百万圓ハ事業增收、二百
万圓ハ利子負擔ノ輕減、千五百六十餘万圓
ハ郵便料金ノ値上計畫ニ依ル增收デアリマ
スガ、一般會計ニ對シテハ九百四十万圓シカ
援助シテナイ、其次ノ帝國鐵道特別會計ハ
ドウカ、帝國鐵道特別會計ガ現行法ニ相成
リマス時ニハ、明治四十二年デアリマシタ
ガ、凡ソ三十年ヲ一期トシテ其益金ヲ鐵道
ノ建設ト改良ニ使ッテ、尙ホ足ラナイ場合
三、公債發行計畫ガ出來ルト云フコトノ
會計法ニ相成リマシタノハ、明治四十二年
デアリマス、丁度本年ハ明治四十二年ヨリ
考ヘマシテ三十年デアリマス、當時ノ鐵道
院總裁伯爵後藤新平君ハ、日本ニ財政上ノ
是ダケノ難局ガ來ルト云フコトヲ、豫メ御
考ニナッタノデアリマスカドウデスカ存ジ
マセヌガ、三十年ヲ以テ第一期トシテ帝國
鐵道特別會計法ヲ改正スルト仰シヤッタ、而
シテ私ハ帝國鐵道特別、會計法ヲ今玆デ調
ベテ見マスト云フト、事業增收ト云フモノハ
運輸收入、旅客收入、此增加ハ四千二百万圓
デアリマス、而シテ公債ノ低利借換ニ依リマ
シテ利子ヲ儲ケマシタ額ハ約一千万圓デア
リマス、財政ノ餘裕ハ玆ニ五千二百万圓ヲ生ジ
マシタ、併シ一般會計ニ對シテノ援助金ハ
昨年ノ七百万圓ヲ差引キマスト、二千餘万
圓ニシカナラヌ、私ハ現在ノ我國ノ財政狀
態之ヲ脫却スルノニ非常ニ困難デアル、
併シ此場合ニ幸ニ鐵道ノ料金ト云フモノハ、
歐洲戰爭以前ノ料金其儘ヲ以テ尙ホ多少ノ
輕減ヲ加ヘテ居ル、郵便料金ハ世界中ヲ御
步キニナッテモ、何處へ御出デニナッテモ、
錢五厘ト云フ葉書ハナイ、二錢ト云フ葉書
モナイ、此我國ノ「デバリュエート」シタ此
貨幣デ二錢ヲ計算シマスナラバ、幾ラニナ
リマスカ、一圓ハ四十錢ニナリマスカラシ
テ、二錢トシテ八厘ニナリマスガ、私ハ我
國ノ通信料金、非常時ニ當ッテ之ヲ增徵スル
ノ餘地ナキヤ否ヤ、通信特別會計ノ方々ハ
言ヒマス、吾々ノ方ノ待遇ガ惡イ、鐵道ノ
待遇ヨリ吾々ノ待遇ガ惡インダ、斯ウ仰ッシ
ヤル、改善シタラ宜イデハアリマセヌカ、
改善シテ尙ホ餘ッタラ通信ノ發達ニ使ッテモ
勿論宜シイ、併シ時ガ非常時デアルナラバ、
一般會計ヲ援助シテ宜シイヂヤアリマセヌ
カ、幸ニシテ我國ハ租稅ノ增徵ニ入ル以前
ニ於テ、此二大賃金若クハ手數料收入、所
謂憲法上ノ報償ノ性質ヲ有スル收入ト云フ
モノガマダ殘ッテ居ル、而シテ是ガ思フヤウ
ニ一般會計ノ援助ニナラヌノハ、特別會
計ノオ蔭デハナイカト私ハ思ヒマス、尙ホ
モウ一ツ朝鮮ニ付テ例ヲ申上ゲマス、朝鮮
ハ、總督府特別會計ハ今囘九百四十五万圓
ノ一般會計援助ヲ計畫シテ居リマス、然ル
ニ朝鮮ニ對シマシテハ千一一百九十餘圓ノ經
費補充金ヲ支出致シテ居リマス、ソレデア
リマスカラ、私ハ此際吾々ノ通俗ノ觀念デ
言ヒマスナラバ、九百四十五万圓ヲ千二百
九十餘万圓カラ差引イタダケ、國庫ノ移シ
替ヘニ依ッテ問題ハ決リマセウ、併シ朝鮮ノ
統治當局カラ言ヒマスナラバ、朝鮮ニ對シ
テ本國カラ斯ウ云フ金ヲ支出シテ統治スル
必要ガアルト稱シテ、之ヲ御說明ニナリタ
イナラ、又是モ理由ガアリマセウガ、兩方ト
モ-一方ノ補充金モ臨時補充金、コッチヘ
取上ゲル金ハ勿論臨時ノ收入金、吾々ハ說
明ガ付カナイ、世ノ中ニハ金ヲヤッテ喜ブ人
モアリマス、又金ヲヤラナイデ、オ互ニヤ
リモセズ取リモセズシテ樂シム人モ居リマ
ス、又金ヲヤッテ、而シテ又向フカラ金ヲ
買った、オ互ニ情操ヲ和カニシテ樂シム方
モアリマセウ、私ハ此例ハ前大藏大臣及大
藏當局ト云フモノハ、朝鮮ニ對シテ洵ニ情
操圓滿ト稱スル外ハ、財政的ニ之ヲ說明シ
テ了解スルコトハ洵ニ困難デアリマス、然
ラバ此場合ニ如何ナルコトヲ行ヘバ、朝鮮
ニ對シテ經費補充金ヲ出シテ居ルコトノ意
味ガ立チマスカ、玆ニ歲出ノ變更ヲ圖ル必
要ガアルノデハナイデセウカ、陸軍ノ說明
シテ居ル書類ニ依リマスト云フト、陸軍ノ
朝鮮ニ駐屯シテ居リマス部隊ノ經常費ハ二
千六百万圓デアリマス、臨時部ハ部隊改善、
其他ヲ計上致シマスト千八百万圓デアリマ
ス、通計致シマスト四千四百万圓ハ、陸軍
ノ經費ニシテ朝鮮ニ支辨セラレテ居ルモノ
デアリマスガ、私ハ駐屯シテ居リマス三個
師團、其他ノ兵ガ朝鮮ノ治安ニ任ジテ居ル
コトハ勿論、更ニ一步進ンデ浦鹽ニ近イ方面
ハ、私ハ今囘ノ滿洲事件ノ第一線デアルコト
ヲ信ジマスガ、併シ朝鮮ノ國境ニハ約千万圓ヲ
要シマス警察ノ警備部隊ト云フモノガアリ
マス、警察官ニ鐵砲ヲ擔ガセテ、サウシ
テ苦心ヲサセマシテモ、此警備及治安ノ效
果カラ申シマスナラバ、軍隊ヲ駐屯セシム
ルコトガ數倍ノ效果ヲ有ッテ居ルト存ジマ
ス、私ハ朝鮮カラ金ヲ貰フナラ、寧口金
ヲ貰ハナイデ歲出ヲ陸軍ノ經常部ノ一
部デモ宜シイ、臨時部ヲ合セテ持ッテ
行ッテ吳レテモ尙ホ宜シイ、歲出ヲ朝鮮ニ移
シテ、而シテ尙ホ朝鮮ノ統治ニ金ガ足リナ
イナラバ、千二百九十餘万圓ヲ增加シテ、
二千万圓ヲ上ゲテモ結構デハアリマセヌ
カ、玆ニ現內閣ニ吾々ノ要望スル所ハ財政
信用デアリマスガ、財政ノ改善ヲ圖ル爲ニ、
玆ニ特別會計ニ對シテ大ナル改廢ヲ斷行ス
ルノ御考ハアリマセヌカ(拍手)或ハモウ一
步滿洲事件ニ關シマシテモ、今囘ノ國防費
ノ增加ヲ來スベキ一番ノ原因ト云フモノ
ハ、滿洲事件ニ存スルト私共ハ存ジマス、
進ンデ滿洲國政府ガ吾々ニ對シテ如何ナル
國防分擔ヲ致シテ居ルカ、私ハ滿洲國ノ財
政ガ貧弱デアルコトモ存ジテ居リマス、又
滿洲國ノ現在ノ自分ノ經費ガ二億數千万圓
ノ三分ノ一、七千五六百万圓ヲ要シテ居ルコ
トモ存ジテ居リマスガ、凡ソ軍隊デ裝備ノ
足リナイ、訓練ノ足リナイ、斯ウ云フ兵隊
ヲ今ノ滿洲ノ時局デ滿洲國ガ御持チニナッ
テ一體何ニナリマスカ、滿洲事件ノ國境ノ
嫌ナ問題ト云フモノハ、大抵滿兵ガ捕ヘラ
レタ時ニ起ル、寧ロ現在ノ國防分擔金千九
百五十万圓ヲ出來ルダケ我國ニ提供スル方
ガ財政上モ有效デアリ、彼等ノ國防モ完全
ニ近クナルコトヲ期スルコトガ出來ルノデ
ハアリマスマイカ、滿洲國ノ現在ノ兵隊ハ
十三万ヲ整理シテ、九万或ハ八万五千ニナッ
タト稱シマスガ、之ヲ四万、五万ニ縮少ス
ルコトハ出來ナイモノデアリマセウカ、濫
リニ他國ノ兵額ヲ私ハ論ズルコトハ避ケマ
スケレドモ、其整理節約シタ金ニ依ッテ、之
ヲ國防分擔金ノ一部トシテ我國ニ寄越シマ
スナラバ、我國ハ之ニ依ッテ滿洲ノ裝備ヲ完
備スルコトガ出來ルノミナラズ、一ハ以テ
滿洲國ト我國トノ間ノ國際貸借ノ、公ノ歲
入歲出ヲ多カラシムルコトハ、モウ一遍滿
洲ニ吾々ハ金ヲ上ゲル爲ニ-滿洲ノ經濟
ニウモ一遍持ッテ行ク爲ニ、必ズ私ハ役立ツ
ト信ジマス、故ニ私ハ滿洲カラ現在來テ居マ
ス金ハ二千万圓近クデアリマスケレドモ、
尙ホ之ヲ增額シマスナラバ、滿洲事件ハ特
別會計ヲ設置シテ、滿洲國防分擔協約ニ基
イテ、財政上ノ施設ヲ行フモノデアルト云
フコトヲ、中外ニ宣明スルコトガ財政上
其根基ヲ明確ニスルト同時ニ、吾々ハ滿
洲事件ニ對シテノ發行計畫、或ハ財政計畫
ヲ一層明確ニシテ、一般會計ノ禍ニナルコ
トヲ減少スルコトガ出來ルカト存ジマス、
私ハ此際御尋スル一點ハ、所謂租稅政策ニ
依ッテ財政計畫ノ基礎ヲ確立スルコトハ洵
ニ結構デアリマスガ、手數料、賃金、所謂
報償ノ性質ヲ有スル其收入ニ對シテ增徵
ヲ加ヘルコト、卽チ一般大衆ニ對シテ消費
稅ヲ課ケルコト、所謂擔稅力ガナクテモ均
等ニ取ラレル消費稅ノ增徵ト、手數料收入
ニ對シテ增徵ヲ圖ル、其力ハドチラヲ優先
ニ御考ヘニナッテ居リマスカ、重ネテ申上ゲマ
ス、租稅收入中、所謂間接稅ノ增加ヲ圖ル
時ノ苦痛ト云フモノト、報償ノ性質ヲ有ス
ル諸收入ノ增加ヲ圖リマス場合ニハ、其ド
チラヲ優先シテ御實行ニナリマスカ(拍手)
其次ニ私ハ公債政策ト租稅政策トノ關係
ヲ御尋致シマス、現在ハ歲計上收入ハ之ニ
伴ハナイ、此關係上公債政策ガ圓滿ニ行ハ
レマシテ、發行ヲ完了シテ、賣上ガ良好ナ
リト申シマスレバ、皆サンモホットシテ御
安心、又大藏大臣モ之ニ依ッテ相當安心セ
ラレル境遇ニ達スルト存ジマス、併シ茲ニ
殘ッテ居ル問題ハ、租稅政策ト公債政策ト
ノ間ニ、假ニ圓滿ニ發行ヲ了シ、賣行ヲ了
シマシタ際ニ、吾々ノ租稅關係ハ如何ナル
關係ニ立ツカ、現在ノ我國ノ公債ノ借換或
ハ發行ニ付キマシテ、其大體ノ、引受ケマ
シタ情勢ヲ見マスト云フト、特殊銀行ヲ包
含シマシタ銀行ガ凡ソ六割デアリマス、所
謂預金部、其他政府關係ノ資金ヲ以テ引受
ケラルヽモノガ、凡ソ一割近邊デアリマス
ガ、此場合ニ個人ノ引受ガ少クテ、銀行ノ
引受ガ六割ヲ占メテ居ル、或ハ信託會社、
其他ヲ包含シマスレバ七割ニナル、此場合
ニ公債ノ引受ハ所得ノ蓄積ニ依ル預金ノ增
加ニ依ッテ、賄ハレテ居ルカラト云フ說明
ガ、一般ニ吾々ニ知ラサレテ居ル所デアリ
マスガ、然ラバ此預金ノ增加ハ如何ナル階
級ノ人デ、如何ナル所ガサウ云フ預金ノ增
加ヲ伴フカ、我國ニハ貯蓄預金ノ增加ニ付
キマシテハ、如何ナル階級ノ人ガドウ云フ
風ニ、預金ガ殖エテ行クカト云フコトガ統
計ニ現レテ居リマス、又遞信省ガ作リマシ
タ郵便貯金ノ統計ニハ如何ナル職業ノ人、
如何ナル階級ニ於テ其金ガ殖エルト云フコ
トガ、明瞭ニ統計サレテ居リマス、併シ不
幸ニシテ我國ノ普通銀行ニ於テハ、ドウ云
フ預金ガドウ云フ風ニ殖エルカト云フコト
ノ統計ガ、吾々ニ示サレテ居ナイ、已ムヲ
得マセヌカラ、玆ニ亞米利加ノ例ヲ一ツ取
リマス、合衆國ニ於キマシテ一昨年五万弗
ト、五万弗以下ニ預金者ノ種類ヲ分ケマシ
テ、其統計ヲ致シテ見マスト云フト、五万
弗以上ノ口數ハ約七百万ロデアリマシテ、其
五万弗以下ノ數千万ノ口數ノ預金ト云フモ
ノハ、常ニ增加ヲシタコトハナイ、增加ス
ルコトハ五万弗以上ノ預金者ノ增加ダケ
ガ、全體ノ預金ノ增加デアル、我國ノ預金
ハ近來數年間多キハ六億、少クテモ三億五
千万位、普通銀行ハ預金增加ヲ伴ッテ居リ
マス、此預金增加ハ吾々ノ所謂安心スル公
債發行ノ資源デアリマス、亞米利加合衆國
ト同ジヤウニ、五万弗以上ノ人ダケガ預金
ガ殖エル、公債ハ銀行ガ引受ケル、銀行ハ
自分ノ金ハナイカラ預金デ引受ケル、其預
金ハ大預金者ノ預金ニ依ッテ公債ヲ引受ケ
テ、サウシテ其利拂ガモウ一遍此銀行ニ
來ッテ、銀行ノ預金ノ增加ニ相成ルト云フ
ナラバ、私共ハ大預金者ガ公債ヲ引受ケ
テ、而シテ其公債カラ、モウ一遍利子ヲ
貰ッテ、此利子ハ渦卷イテモウ一遍銀行ノ
預金ノ利子ニナッテ、サウシテ年々ノ公債
引受額ヲ構成スルノデハナイデセウカ、租
稅政策カラ言ヒマスナラバ、此階級ガ租稅
ヲ納メルオ方デハナイデセウカ、吾々ハ
體租稅ト云フモノハ、勤勞ニ課ケテハ洵ニ
惡イヤウナ氣ガシマス、吾々ガ働イテ所得
ガアル、是ハ所得ノナイ人ヨリハ宜イ、所
得稅ヲ課ケテ結構デアリマスガ、モウ一遍
進ンデ此働イタ人ノ所得ガ蓄積セラレマシ
テ、財產ニナリ、株ニナリ、公債ニナリ、
社債ニナリ、家屋ニナリ、土地ニナッタナ
ラバ、是カラモウ一遍所得ヲ取ッテ、此所
得ニ對シテ課稅スルコトガ吾々ノ理想境ダ
ト存ジマス、此銀行ニ預金ヲシテ利子ヲ取
リ得ル階級ト云フモノハ-現在ノ所得稅
法ニ於テハ、利子ニ對シテ課稅セラレマセ
ウガ、本當ニ所得者ニ對スル課稅ヲ怠ッ
テ、而シテ更ニ此人ノ金ヲ運用シテ、モウ
一遍此人ノ公債ニ對シテ利子、ヲ支拂ヒマ
スナラバ、其利子ガ不幸ニシテ大衆カラ
來リマシタ課稅ニ依ッテ生ジマシク場合ニ
ハ、有產階級、財產階級ノ懷ロニ、汗ヲ搾ッテ
無產階級ノ納メマシク消費稅ヲ再ビ倍加シ
テ、此人ノ懷ロニ入レル結果ト相成リマス、
故ニ公債政策ハ單ニ其發行ガ圓滿デ完全ニ
賣行キ、サウシテ其年ノ財政ノ收支ニ役
立ッタカラト云フコトヲ以テ、御安心ニナル
コトハ洵ニ淺薄デアルト私ハ存ジマス、故
ニ生產公債ハ多少ノ議論ヲ挾ム餘地ガアリ
マセウガ、赤字公債ヲ慢性的ニ段々公債ダ
ケデ支辨シテ行クト云フコトニ相成リマス
結果ハ、租稅政策ト大ナル矛盾ヲ來シマス
カラ、將來ニ對シテ如何ナル考慮ヲ此兩方
ノ政策ノ交叉ニ對シテ御考ヘニナルカト云
フコトヲ御尋シマス
次ニ私ハ稅制ノ案ノ內容ニ付テ、少シ御
尋ヲ致シマス、一體所得稅ヲ納メル階
級所得稅ヲ納メナイ階級トアル、農
村ニ所得稅ガナイ、農村デハ所得稅附
加稅ガ取レナイ、是ハドチラガ原因デ
アッテ、ドチラガ結果デアリマセウカ、所得
稅法ト云フモノモ、現今ノ農村ニモ適用ガ
アルヤウニ作ルノガ所得稅法デアリマセ
ウ、或ハ農村ノ負擔其他ヲ輕減スル爲ニ、
小サイ所得者ニハ成ベク課ケナイト云フ趣
旨デ、所得稅ヲ成ベク所得ノ上ノ人ノ階級
ニ課ケルト云フコトニ致シテ行クコトガ、
所得稅法ノ面目デアリマセウ、所謂所得稅
中心主義、所得稅ヲ直接稅ノ根幹ト爲ス場
合ニハ、我國デハ農村デモ資產ヲ持ッテ居
ル人モアリマス、田畑ヲ持ッテ居ル人モアリ
マス、自作農デ大キイ所得ノアル人モアリ
やく、此方ニモ所得稅ガ課カルヤウナ所得
稅ヲ布ク方ガ宜シイノデアリマセウカ、言
換ヘレバ資產所得、之ニ對シテハ千圓未滿
デモ、モット小サイ所得デモ、純粹ニ資產所
得ヨリ來タ場合ニハ、所得稅ヲ課稅スルト云
フ法制ヲ布クノガ理想デアリマセウカ、小
サイ所得ハ助ケテヤラウ、大キイ所得ダケ
デヤッテ行カレル、斯ウ云フ立前ニ所得稅法
ヲ考ヘテオ居デヾアリマセウカ、日本ノ國
民ハ農業ニ從事シテ居ル人ガ五割ヨリ六割
ノ間、五七%ハ農民デアリマス、此農民ト云
フモノハ我國ノ中樞ヲ成ス稅ニ關係ガナイ
ノダ、斯ウ云フコトデハ、私ハ少シ所得稅
法ノ出來方ガ惡イノデハナカラウカ、是ニ
於テ私ハ所得稅ト云フモノハ、勤勞所得ニ
ハ輕ク、資產所得ニハ重クト同僚武田君ガ
申サレマシタガ、モウ一步進メテ資產所得
ニハ少額デモ課稅シテ宜シイノデハナイデ
セウカ、最低限ヲ定メル場合ニハ、資產所得
ニ對シテハ千二百圓デモ-一方ハ八百圓
デモ、或ハ農村ニ對シテハ七百圓デモ、資
產所得ニナル場合ニハ課稅シテモ宜シイノ
デハナイデセウカ、斯ウシタラバ農村ニモ
所得稅附加稅ガ生ジマセウ、所得稅ノ第二
ノ疑問ハ、第二種綜合ト累進ノ關係デアリ
マス、一體所得ガ大キクナッタナラバ、稅率
ト云フモノハ輕減シ得ルモノデハナイデセ
ウカ、所得ガ五十億シカナカッタナラ一割課
ケテ五億圓シカ取レマセヌケレドモ、所
得ガ百億トナッタラバ五分課ケレバ五億圓
出テ來ル、此原理ハ第二種ヲ第三種ニ綜合
スル、又株ノ配當金ニ六割シカ課稅シナ
カッタ、之ヲ全部、十割課稅スル、百万圓配當
ガアッタラバ六十万圓ニ課稅シマシタガ、之
ヲ百万圓ニ課稅スル、我國全體ノ所得ノ數
字ヲ大キクスル際デアリマスカラ、此場合
ニハ稅制ノ變革上、累進率ヲウント引上ゲル、
課稅標準モ大キクスル、是ハ少シ殘酷デハ
アリマセヌカ、私ハ納稅觀念ヲ養ヒ、納稅ノ
完璧ヲ期スル爲ニハ、稅法ノ「システム」ノ改
善モ必要デアリマセウガ、納稅觀念ヲ養フ
コトハモット重要デアリマス、進ンデ稅ヲ納
メル、此觀念ヲ養フノニハ、國ノ所得ガ大
キクナッタ、稅率ガ引上ガル、二重ニ一遍ニ
ヤッテハ、此觀念ニ激變ヲ生ジマスルカラ、
所得ガ大キクナックト云フ場合ニハ、稅率ヲ
一遍緩和スル手段ヲ講ズルト云フコトガ、
稅法ノ執行ニ必要デハアリマセヌカ、故ニ
私ハ第二種所得ヲ第三種ニ綜合スル、是八
現內閣ノ方ガ私ハ改惡ダト思ヒマス、併シ
アナタ方ハ暫定的ダト仰シヤイマスカラ、
結構デアリマス、暫定的デアリマスカラ、
源泉デモ宜シウゴザイマスガ、二種ヲ三種ニ
スル、株ノ配當金ヲ十割全部課稅スル、此
時分ニハ如何ナル階級ニ對シテ影響ガ强イ
カ、日本銀行ニハ登錄公債デ四十億アル、
帳面一册デ誰ガ千万圓持ッテ居ル、二千万圓
持ッテ居ル、之ヲ捉マヘラレタラ此人ノ所得
ハ、公債所得ハ五十万、八十万、遁レッコナ
イ、此人ハ今マデ所得稅ガ少シヨリ課カラ
ナカッタ、是ガ大所得ニナッタラ所得稅ガウ
ント課カル、其時分ニ目ノ飛ビ出ル程取ラ
ナクテモ、此人ノ稅率ヲ一遍下ゲテ、朝
事ガ有ッテ、財源ガ必要ニナッタナラバ、其際
ニ一齊ニ引上ゲルコトハ、私ハ國民トシテ
ハ毫モ異存ガナイト存ジマス
一體日本ノ所得稅ノ中樞ヲ成ス階級ト云
フモノハ、二千圓カラ千五百圓、此階級ガ
殆ド納稅者百万ノ中五十万ヲ占メテ居リマ
スカラ、私ハ所得稅ノ收入ノ大キイノヲ希
望スルナラバ、此階級カラ稅ヲ取ル外收入
ガ來ナイト思ヒマス、各國ノ稅率ノ累進ヲ
見マスト最低ガ四分、英吉利ハ例外デアリ
マセウ、四志六片、二割二分五厘、四志九
片、二割三分、是ハ例外ト私ハ思ヒマス
ガ、何處ノ國デモ最低課稅ニ於テ三分トカ、
四分トカノ稅率ヲ課ケナイモノハナイ、ソ
レガ五十乃至六十「サアタックス」ヲ課ケテ
七十ニナル、之ヲ數字ニ現ハシマスト四ヨ
リ七十ニシマシテモ、一カラ十五デアリマ
ス、我國ハ最低〇·八カラ三十六、之ヲ一ニ
直シマスト、一カラ四五ニナリマス、ソレ
程急激ニ我國ノ所得稅法ノ累進率ハ進ンデ
居ッタ、是ハ私ハ適用ガナイ、實際納稅ヲス
ル人ガ居ナイカラ、斯ウ云フ稅法ガ出來テ
我慢シテ居ッタノデハナイカ、タッタ一人シ
カナイ、大阪ニ三割六分ト云フ稅率ガ適用
サレテ居ル人ガ、タッタ一人オ居ダサウデア
リマス、名譽ナコトデアリマスガ、法律的
ニハタッタ一人シカ適用ガナイヤウナ法律
ハ、餘リ良イ法律ト私ハ思ヒマセヌ、ソレ
デアリマスカラ、稅率ハ私ハ累進ヲ、モウ
少シ緩和シタラドウデアラウカ、緩和シテ
而シテ茲ニ我國ノ所得稅ガ中心デアルナラ
バ、大キナ收入ヲ得ルト云フコトヲ御考ヘ
ニナッタラ如何デアリマセウカ
第三ニ超過所得ノコトヲ御尋スル、超過
所得ト云フモノハ、我國デハ資本ニ對シテ
餘計儲カッタ人ハ超過所得ヲ取ラレル、信用
デ仕事ヲスル人、敏腕デ仕事ヲシテ儲ケタ
人、此人達ハ資本ガ少イノデアリマスカラ、
超過所得ガウント出テ來テ、稅金ハウント
取ラレテシマウ、實例ニ依リマスト百万圓
位ノ會社デ四五十万圓、六七十万圓儲
ケマスト稅金ガ半分以上ニナッテ、皆サン
是ハ稅金ノ爲ニ稼イデ居ルト仰シヤイマ
ス、超過所得ト云フモノハ資本ニ對シテ御
考ヘニナルノガ宜イカ、超過所得ト云フ觀
念ヲ若シ假ニ課稅上用ヒナケレバナラ
ヌノナラバ、藤井君ノ拵ヘマシタ臨時利得
稅ノ方ガ-過去何年間ハ私ノ事業ハ一割
五分儲ケテ居ッタ、二割儲ケテ居ッタ、三割
儲ケテ居ッタ、故ニ今年ハ二割五分儲ケタカ
ラ過去ノ一割五分ヨリ一年餘計儲ケタ、此
主義ノ方ガ遙ニ實情ニ適スルト思ヒマス、
資本ニ對シテ、資本ヲ小サクシテ置イテ、
信用デ事業ヲシタ、社債デ事業ヲシタ人ハ、
ウント所得稅ヲ取ラレル、鐘淵紡績會社ハ
ウント配當シテ居ル、利益配當一割五分ニ
對シテ、第一段ニ一割ドコロデ取ッテ、順々
ニ餘計取ッテ、次ニ三割取ルト云フコトハ、
利益ノ半バ以上ガ稅金トナッテシマフノデ
アリマス
最後ニ財產稅ニ付キマシテハ、武田君モ
御質問ガアリマシタガ、私ハ逆ニ何故ニ
個人財產稅ヲ御廢メニナリマスカト云フコ
トヲ御尋シタイ、法人ノ資本課稅、今囘ノ
改正ニナリマシタ御提案デアリマスケレ
ドモ、私ハ一體法人ノ資本、或ハ中小商
人カラ言ヒマシテ百貨店ヲ見マスト、或
ル百貨店ハ五千万圓資本ヲ持ッテ居ル、或ル
ル小サイ小賣人ハ千圓ノ資本モ持タナイ、
是ハ到底喧嘩ガ出來ナイ、ダカラ資本ニ對
シテ課稅シヨウ、是モ御議論ニナルト思
ヒマスガ、法人ニハ普通所得、超過所得、
色々租稅ノ取リヤウガアル、儲ケタ場合ニ
ハ御取リニナッテ宜イ、僅カバカリ所得ガア
ルカラ、此場合ニ資本ノ稅金ヲ取ルト仰シ
ヤラヌデモ、私ハ個人トノ權衡論デアリマ
スナラバ、會社ノ五万圓、個人ノ五万圓、
是ハ相當大キナ事業者デアル、會社ハ五万
圓或ハ五万圓ノ場合ニハ個人ナラバ二割
ノ稅金ヲ取ラレル、會社ナラバ五分、新稅
法ニ依ッテ一割、マダ法人ノ方ガ輕イ、五万
圓ヲ超エル所得ニ對シテハ、一割デナクテ
モ宜クハアリマセヌカ、一割二分御取リニ
ナッテモ宜クハアリマセヌカ、個人ノ所得ヨ
リモ會社所得ガ大キイ、資本ガ大キイ、競
爭ニナラヌ、此場合ニハ大會社ノ大所得ニ
對シテ五万圓マデハ一割デアルケレドモ、
五万圓ヲ超過シタラ一割二分取ッテモ、是ハ
私ハ租稅法上御非難ノアル御方ハナイト思
ヒマス、然ルニ個人ノ財產稅ニ付キマシテ
ハ、主ナル非難ハ課稅標準ヲ定メルニ當リ
マシテ、大臣ノ言葉ヲ其儘用ヒテモイケマ
セヌガ、不安ヲ感ズルト仰シヤイマシタ、
何故ニ不安ヲ感ジマスカ、財產ヲ持タナイ
人ガ不安ヲ感ジナイコトハ勿論デアリマス
ガ、財產ヲ持ッテ居ル方ガ何故ニ財產ノ評價
ニ付テ不安ヲ御感ジニナリマスカ、不安ヲ
感ズルヨリモ課稅スベキ標準ノ作リ方ニ對
シテ稅法上無理ガアルノヂヤナイデセウ
カ、相續稅ハ、私ハ執行ノ任ニ當ッタコト
ガアリマスガ、オ父サンガ亡クナッテ淚ヲ流
シテ居ル此時ニ當ッテ、アナタノ相續財產幾
ラ、理論ハ正ニ立派デアリマスケレドモ、
執行上ハ非常ニ困難デアリマス、執行上ハ
洵ニ圓滿デナイ、其上ニモウ一ツ圓滿デナ
イコトガアル、一番困難ナモノハ山林ノ評
價、其次ハ田畑、不動產ノ評價、偖テ山林
ハ賣ラウ、買手ハナイ、買ハウ、主觀的價
値ガアリマスカラ高クナケレバナラヌ、賣
ルト安イ、買フト高イ、山林ニ付テハ相手
方ヲ見付ケテ圓滿ニ賣買ヲスルコトハ殆ド
困難デアリマス、勸業銀行ハ貸付ケテ競賣
ニシマスルト、三分ノ一モ、四分ノ一モ取
レナイ、山林ハ一番極端デアリマスケレド
モ、其次ハ農村ノ田地田畑、是モ賣ルト安
イ、買フト高イ、東京市ノ土地ハ賣ッテモ
買ッテモ多少ノ相場ハアリマセウガ、賣ル場
合ハ安イ、買フ場合ハ高イ、此場合ニハ何
ガ問題デアルカ、經濟價格ヲ定メルノニ賣ツ
テ安ク、買ッテ高イモノノ經濟價格ハ何處ニ
アリマスカ、之ヲ稅務官吏ガ高ク評價スル
不安ガアル、賣ッテ安イ、買ッテ髙イモノノ
經濟價格ヲ決メル方法ハ色々アリマセウ、
安ク評價スルモ一方法デアリマセウガ、出
テ來マシタ價格ヲ割引シテ、山林ハ一万圓
ト出タラ三千圓ニ課稅スカ、田畑ハ一万圓
ト出タラ四千圓ニ課稅スルカ、東京ノ地所
ハ一万圓ト出タラ六千圓ニ課稅スルカ、大
阪ノ地所ハ一万圓ト出タラ五千圓ニ課稅ス
ルカ、稅法ニ依ッテ決ムベキ所デアリマス
(拍手)官吏ノ執行ノ手加減ニ俟ツヨリモ、
法律自信ガ之ニ依ッテ安心ヲ與フルヤウニ、
課稅標準ヲ決メタラ宜シイ(拍手)私ハ私ノ
近傍ニ二人ノ最モ生活條件ノ類似シタ有名
ナ議會人ヲ有ッテ居リマス、兩方トモ國務大
臣ニナッテ居ル、兩方トモ貴族院議員ニナッ
テ居ル、兩方トモ恩給ヲ三千圓近ク持ッテ、
議席ヲ持ッテ居ル、一方ハ三百坪ニ住ッテ居
ル、一方ハ六万坪ニ住ッテ居ル、而シテ此人
ハ政黨ニ關係シテ立派ナ生活ヲシク爲ニ懷
ロハ赤字、餘リ申上ゲラレマセヌ、一九八
六万坪ニ住ッテ居ル、此六万坪ハ東京ノ北ノ
隅デアリマスケレドモ、安ク賣ッテモ坪百
圓ニナリマセウ、高ク賣ッタラ百五十圓ニナ
リマセウ、六百万圓乃至七百万圓ノ財產ヲ
持ッテ居ル、片々ハ赤字ヲ持ッテ居ル、此人
ニ於テハ三百坪ハ三百坪ノ地租ヲ拂フ、六
万坪ハ六万坪ノ地租ヲ拂ヒマセウ、所得ガ
ナイ、ソレ以上ニ行カレナイヂヤアリマセヌ
カ、赤字ノ救濟ハ勿論シテヤレナイ、併シ
六万坪ニ居住シテ居ル人ニ對シテ地租ヲ取
ル、ソレ以外ニハ課稅方法ハナイ、私ハ生
活ニ喘イデ居ル人、是ハ社會政策ヲ以テ助
ケナクチヤナラヌ、併シ社會政策ハ、國庫
ガ歲入ヲ取ッテ金ヲ與ヘテ、社會政策ヲ實
行スルコトハ洵ニ困難デアル、成ルベク此
人カラ取ラナイヤウニスル、租稅ノ第
一義ハ社會政策的ニ觀察シマスナラバ取
ラナイデ置ク、其次ニハ吾々ハ財源ヲ得ル
必要ガアリマスカラシテ、擔稅力ノアル人
カラ納稅觀念ヲ養ッテ出スヤウニシテ戴ク、
財產稅ヲ持ッテ居ル者ハ借金ヲ相殺シテ其
餘リガ出ル、其餘リニ課ケル、而モ輕ク課
稅スル、低率ニ累進稅ヲ課ケル、宜イヂヤ
アリマセヌカ、而モ一旦我國ノ財政ニ非常
ノ必要ノアッタ場合ニ、之ニ對シテ增率シテ
課ケル、財政上ノ準備ヲ之ニ依ッテ行フ、昨
日結城大藏大臣ハ公債募集ガ出來ナクナル
ト、財政ノ最後ノ準備ハナクナルト仰シヤ
ル、私モ其通リニ思ヒマス、陸軍ノ諸君ガ
何カ公債デヤレバ宜シイ、庶政一新ノ方ヲ
增稅デヤッテ吳レ、國防ハ公債デヤッテ置ケ
ト仰シヤッタサウデアリマスガ、是ハ私ハ思
ハザルモノノ甚ダシイモノダト思フ、庶政
一新ハ成ベク稅ノ負擔ヲ輕クスルニアル、
是ガ本來ノ面目デアリマス、一旦財政ニ非
常ノ必要ガアッタナラバ、財產稅ヲ個人ニ課
ケル、財產ノアル人ニ課ケル、遠慮ナイヂヤ
アリマセヌカ、併シ普段ハ所得ヲ生ジナイ
モノデアリマスカラ、輕ク課稅シヨウ、之
ニ御異議ガアリマスカ、大藏大臣ガ何故ニ
個人ノ財產稅ヲ御止メニナッテ、法人稅ニシ
テ之ヲ會社ニ課ケルカ、會社ニ課稅シタイ
ナラ何時ダッテ課稅出來マス、資本金ト積立
金ハ收稅官吏一人アッタナラバ何千軒トヤッ
テシマウ、併シ財產ダケハ他人ニ知ラレテ
嫌ナ程匿シテ居ル者モアリマス、評價ノ困
難ナモノモアリマス、課稅標準ノ困難ナモ
ノモアリマス、準備ヲスルニアラザレバ、
之ニ依テ此人ノ財產ト云フモノヲ知ルコト
ハ困難ヂヤアリマセヌカ、一番最後ニ預金
ヲ持ッテ居ル、分ラヌヂヤアリマセヌカ、
無記名證劵ヲ持ッテ居ル、分ラヌヂヤアリマ
セヌカ、登錄公債ガ日本銀行ニアルコトハ、
日本銀行ハ恐ラク〓ヘナイト仰シヤルニ違
ヒナイ、分ラスヂヤアリマセヌカ、之ヲ漸
次分ラセルヤウニ、普段準備ヲシテ拵ヘテ、
サウシテ一朝事有ッタ時分ニ負擔ヲシヨウ、
國民トシテ最モ立派ナル心懸デ稅ノ「システ
ム」トシテ一番立派ヂヤアリマセヌカ、獨逸
ガ巧ク行カナカッタデハナイカ、獨逸ガ巧ク
行カナカッタノハ、ソレハ獨逸ガヤリ方ガ惡
カッタ、評價ノ方法ガ拙イ、私ハ輕ク課スル
ヤウニ評價ヲシテヤッテ、其上ニ稅ノ課稅ヲ
スル時ニ、免除ノ恩典ヲ與ヘテ、サウシテ
普段ハ輕ク養ッテ置クヤウニシタナラバ、此
效果ハ所得稅ノ調査ニ當ッテハ、此人ノ年々
ノ財產、所得ト云フモノヲ調べラレル一番
良イ資料デアルト思フ、此意味ニ於テ平時
ハ財產稅ハ目的デハナイ、所得稅ヲ完成ス
ル爲ニ、所得中心主義ヲ貫ク爲ニ、私ハ財
產稅ヲ作ッテ戴クノガ一番良イ稅ノ最後ノ
補完デアルト存ジマスガ、大藏大臣ハ如何
ニ御考ヘデアリマスカ(拍手)
終リニ私ハ帝國ノ現在ノ各信用、外交上
ノ信用、國防上ノ信用、財政信用、產業信
川、之ヲ私ハ顧ミル必要ガアルト存ジマス、
我國ノ產業、我國ノ工業、躍進日本、此處
マデ日本ハヤッテ來タノダ、其次ニ國防上我
ガ帝國ノ海陸軍ノ將兵ハ必ズ帝國ヲ護ルト
私ハ信ジマス、而シテ一番最後ニ殘ル問題
ハ、私ハ外交ノコトハ申上ゲタクアリマセ
ヌガ、財政信用ハ、ヤハリ我國ヲ中外ニ宣
明シテ、世界第一ノ國ニナルノニ、一番現在
危機ニ瀕シテ居ル方面デアルト私ハ信ジマ
ス、幸ニ大キナ財政上ノ改革、大キナ財政
上ノ改善、次ニ來ルモノハ租稅制度ノ改善、
租稅制度ノ改革、是ガ帝國ノ國威ヲ中外ニ
宣揚スル一番必要ナ點ダト私ハ信ジマス、
私ハ無理ヲ申シマセヌ、時ニ質問ガ法案ト
牴觸シタカモ知レマセヌガ、別ニ他意アル
モノデハアリマセヌ、私ハ暫定案ニ次グニ
立派ナル案ヲ以テ、此次ニ我國ノ財政ノ確
立社會問題ノ解決、此政治ガ我國ノ今一
番必要ナ財政信用ノ局面ヲ完全ニ乘切ッテ、
我國ヲ安全ナ所ニ押出シテ戴クヤウニ、吾
吾ハ決シテ援助ト協贊ヲ吝マヌ者デアリマ
ス(拍手)
〔國務大臣結城豊太郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X00919370219&spkNum=22
-
023・結城豊太郎
○國務大臣(結城豊太郞君) 篠原君ノ御尋
ニ對シテ御答ヲ致シマス、特別會計ト一
般會計ノコトニ付テ御話ガアリマシテ、洵ニ
御尤ト存ジマス、現內閣ト致シマシテハ、前
內閣ノヤリマシタコトヲ踏襲致シマシテ、
特別會計カラ相當ノ援助ヲ求メテ居リマス
ノデスガ、今後此問題ニ付テハ三十ニモ餘
ル特別會計ト云フモノヲ、其儘ニシテ置ク
ベキカ、又特別會計ト一般會計ニ付テドウ
云フ風ニスベキカ、餘程〓究ヲ要スル問題
ト存ジマシテ、其邊ノコトニ付テハ、十分
ニ考慮スル積リデアリマス
ソレカラ第二ニ、租稅以外ニ手數料收入
ニ依ッテ增加ヲ圖ルコトト、消費稅ヲ增徵ス
ルコトト、何レヲ先ニスルカト云フコトノ
御尋ト拜承致シマシタガ、消費稅ハ租稅政
策カラ定メラルベキモノデアリマシテ、手
數料ノ何レヲ先ニスルカト云フコトハ、又
手數料ノソレ〓〓ノ性質ニ依ッテ決メナケ
リヤナリマセヌノデ、一〓ニ何レヲ先ニス
ルト云フヤウナコトハ、申上ゲ兼ヌルト存
ジマス
次ニ公債政策ニ付テノ御尋ガアリマシタ
ヤウデスガ、是ハ今後ノ財政ヲ處理スル上
ニ於テ、最モ大切ナ問題デアラウト思フノデ
アリマス、公債ノ市價ガ常ニ發行價格以上
ニ保ッテ居リマスヤウデアリマスナラバ、其
後ノ消化ニ何等ノ懸念ガナイノデアリマシ
テ、少シモ心配ハナイノデアリマスルガ、
ソレニハヤハリ國ノ財政ニ對スル信用ト云
フコトガ本デアリマス、モウ少シ大キク申
シマスレバ、國ノ安泰ト云フコトガ根本ニ
ナラウト、私ハ思フノデアリマシテ、ド
ウモドッカニ不安ガ橫ハッテ居ルヤウナ場
合デアルト、自然財政上ニ於キマシテモ、
公債ノ市價ノ上ニ於テモ、ソレガ反映致
シマシテ、發行價格ヲ維持スルト云フ
コトガ困難ナ場合ガ起ルノデアリマス、
ソレヲサセナイヤウニ致シマスコトガ、財
政當局者トシテハ一番大切ナ仕事ヂヤナイ
カト考ヘテ居リマスヤウナ次第デ、只今ノ
ヤウニ當分年々國費ガ增大スルト云フヤウ
ナ時ニナリマスルト、尙更此事ハ大切デア
ラウト存ジマスルノデ、其事ニ付キマシテ
ハ萬全ノ方策ヲ講ズル積リデアリマス、場
合ニ依リマスルト減債基金ト云フヤウナ制
度モ、考ヘナケリヤナラヌトモ存ジマス、
種々考究致シマシテ、議會ニ御諮リスルヤ
ウナ時モアルカト存ズル次第デアリマス
次ニ所得稅ニ關シテ御話ノアリマシタ、
必シモ千二百圓ヲ免稅點ニセヌデモ、モット
下ノ者デモ納稅ヲスルト云フコトガ、考ヘ
ラルベキコトヂヤナイカト云フ御話、私ハ
至極御尤ニ存ジマス、コンナ風ニ大切ナ時
期ニ於キマシテハ、豫テモ申シマシタヤウ
ニ、或ハ一般ニハ不人氣デアルカモ知リマ
セヌガ、少イ所得ノ方ニ致シマシテモ、國
民ノ一員トシテ、分ニ應ジタ納稅ヲシテ國
政ヲ處理セシムル、斯ウ云フ誇ヲ持ッテ戴キ
タイト云フヤウナ氣持ヲ持ッテ居リマシテ、
其點ハ篠原君ノ御說ト略、、御同樣デアルヤ
ウニ感ジラレマスルガ、此千二百圓ト云フ
コトニ致シマシタノハ、現行率ヲ其儘-
臨時增徴デアリマスノデ、此際ハ其儘ニ、
動カサズニ持ッテ來マシタヤウナ次第デ、是
ハ稅全般ニ對シテ檢討ヲ加ヘ、改革致シマ
ス時ニ考ヘナケリヤナラヌ問題ダラウト思ッ
テ居リマス次第デアリマス
ソレカラ超過所得ニ付テ資本金ヲ標準ト
スルヨリハ、過去數年間ノ實績ヲ標準トシ
タ方ガ合理的デナイカ、斯ウ云フ御趣旨
デアリマス、是ハ御趣旨ハ至極御尤デアリ
やっく今囘ハ超過所得ノ引上ヲ中止致シマ
シタ、サウシテ臨時利得稅ノ引上ヲ致シマ
シタヤウナ次第デアリマスルガ、是ハ御說
ヲ參考ト致シマシテ、十分ニ今後ノ稅制改
革ノ時ニ考フベキモノダラウト思ッテ居リ
マス、ソレカラ個人ノ財產稅ヲ止メナクテ
モ宜カッタヂヤナイカ、斯ウ云フ御話デアリ
マシタガ、是ハ武田君ニモ一部御答致シマ
シタ點デモアリマスルガ、是ハ此個人財產
ノ調査ト云フコトガ中々困難デアリマス、
ソレヲ十分ニヤラウトスルト、稅務官吏ト
納稅者ノ間ニ摩擦ヲ生ジ、紛議ヲ生ジマス
コトハ、是ハモウ覩易イコトデアリマス、
ソレニ負擔ノ衡平ト云フコトモ中々ムヅカ
シイト思ヒマス、兎モスルト不動產課稅ニ
陷ル虞ガアルト思フノデアリマス、旁〓〓
囘ハ見合セルコトニ致シマシタヤウナ次第
デアリマス、追テ此事モ〓究シナケリヤナ
ラヌノデアリマスルガ、之ヲ一朝事ガ有ッタ
場合ノ課稅ノ爲ニト云フヤウナ說ヲ爲ス方
モアリマスノデアリマスガ、一朝事ガ有リ
マシタ場合ニハ、モウ財產ノ價値ト云フモ
ノハ、物ニ依ッテ非常ニ高クナルモノト、安
クナルモノトガアリマシテ、非常ナ激變ヲ
來スノデアリマスルカラ、平生計ッテ居リマ
シク物差デハ到底計ルコトガ出來ナイノデ
アリマス、同時ニ愈〓國ヲ擧ゲテト云フヤ
ウナ場合ニハ、日本國民ノ愛國心ト云フモ
ノハ、稅金ニ依ッテナント云フヤウナ考デハ
私ハナカラウト思フ、財產ノ一部ヲ割イテ
モト云フヤウナ氣持デ、戰ニ臨ムダラウト
思フノデアリマス、又其位ノ氣持デ國民ガ
擧ッテ起ツニアラズンバ、斷ジテ戰ナドハス
ベキモノヂヤナイト、斯ウ思フノデス(拍
手)御答致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X00919370219&spkNum=23
-
024・篠原陸朗
○篠原陸朗君 モウ少シ御尋シタイト思ヒ
マスケレドモ、意見ニ涉リマスカラ、委員
會デ御尋スルコトニ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X00919370219&spkNum=24
-
025・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 山邊常重君
〔山邊常重君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X00919370219&spkNum=25
-
026・山邊常重
○山邊常重君 諸君、私ハ只今議題トナッ
テ居リマスル此增稅法案ノ中、特ニ有價證
劵移轉稅ノミニ關シテ大藏大臣ニ御伺致シ
タイノデアリマス、凡ソ時代ニ適應セル政
治ガ行ハレマスルト云フト、總テノ有價證
劵ハ高クナリマス、又時代ニ適應シナイ政
治ガ行ハレマスルト云フト、總テノ有價證
劵ハ下落致シマス、林內閣ガ出來マシテ今
一般ノ有價證劵ハ上リモセズ、下リモ致シ
マセヌ、詰リ結城財政ノ前途ニ付テ、或
總テノ人ガ此有價證劵ヲ取得シテモ宜イカ
惡イカト云ッテ、判斷中デアルト思フノデア
リマス、私ハ此有價證劵移轉稅ニハ贊意ヲ
表スルモノデアリマス、今マデハ不動產ハ
賣買スル度ニ登記料ヲ支拂ッタノデアリマ
ス、是ガ卽チ私ハ不動產ノ移轉稅デアルト
思ヒマス、然ルニ今日マデ每年數十億或ハ
數百億ノ賣買ガアルカモ知レマセヌガ、今
日マデ此有價證劵移轉稅ヲ課シナカッタト
云フコトハ、或ハ證劵流通ノ圓滿ヲ圖リ、
其流通ヲシテ益〓一層圓滑ナラシムル趣意
デアッタカト思フノデアリマスガ、併シ今日
非常時局ニ際シテ居リマスルカラ、是等ノ
有價證劵移轉ニ對シテモ適當ノ稅金ヲ課ス
ルコトハ、必要デアルト思フノデアリマス、
併シ課ケルニ致シマシテモ、此第五條ノ中
ニ「有價證劵仲買人ヲ買受人トスル賣買取
引ニ因ル移轉」是ハ國債證劵ハ取得價格萬
分ノ二トナッテ居リマスガ、今度ノ改正法ハ
慥カ萬分ノ一ト思ヒマスガ、其他ノ有價證
劵ハ取得額ノ萬分ノ四、更ニ第二ニ參リマ
シテ取引所ノ實物市場ニ於ケル賣買取引ニ
因ル移轉ハ、國債證劵ハ取得額ノ萬分ノ三·
五、其他ノ有價證劵ハ取得額ノ萬分ノ七、
更ニ是ガ乙ニ區別サレテ「其ノ他」トシテ國
債證劵ハ取得額ノ萬分ノ五、其他ノ有價證
劵ハ取得額ノ萬分ノ十ニナッテ居リマス、ソ
レカラ今囘ノ改正ニ依リマスルト云フト萬
分ノ一乃至八トシテアリマス、多分萬分ノ
一ト云フノハ私ハ國債ニ關スル移轉說ト思
ヒマス
〔議長退席、副議長著席〕
何故ニ此有價證劵仲買人ニ限ッテ賣買スル
モノガ萬分ノ一デアッテ、取引所ノ實物市場
ニ於ケルモノガ萬分ノ二ニナッテ居ルカ、ド
ウ云フ譯デ斯ウ云フ區別ヲ附ケマシタカ、
其理由ガ私發見ニ苦シムノデアリマス、更
ニ其他ノ分ニナリマスルト云フト、國債證劵
ハ取得額ノ萬分ノ四デアリマス、是ハ非常
ニ均衡ヲ失シテ居リハシナイカ、殊ニ增稅
計畫ノ計算ニ依リマスト云フト、此株式移
轉ニ依ッテ今囘增稅セラレル額ハ、六百万圓
ト聞イテ居リマス、此六百万圓ト云フ稅ハ
勿論印紙ヲ貼用シテ納メルノデアリマスル
ガ、何ヲ根據ニシテ此六百万圓ト云フ稅金
ガ上ルノデアルカ、其六百万圓ト云フ增稅
ノ數ヲ出シタ根據ヲ、私ハ承リタイト思フ
ノデアリマス、ソレカラ玆ニ今度新ニ有價
證劵賣買業者ヲ認メルノデアリマスルカ、
是ハ現在ノ取引所ノ取引員以外ニ認メルノ
デアルカドウカ、無論此法律ニ依リマスル
ト認メルコトニナッテ居リマスガ、是ハドウ
云フ條件ノ下ニ許可スルノデアルカ、其點
モ御伺シタイノデアリマス
ソレカラ又此課稅ニ付キマシテハ、取引
所ニ所屬シテ居ル町ノ仲買人ガ賣買スルモ
ノニ付キマシテハ、無論帳簿ガアリマシテ、
ソレニ記入シテ轉々シタ株劵ニ對シテ稅金
ヲ取ラレルノデアリマスカラ、是ハ固ヨリ
當然ノコトデアリマスガ、而モ帳簿ニ載ラ
ナイ店頭賣買-店ノ外デヤル賣買ノ方ガ
今日數倍ノ額ニ上ッテ居ルノデアリマス、是
等ハ如何ニシテ取締リ、如何ニシテ徵稅ス
ルカト云フ點ニ付テ御伺シタイノデアリマ
ス、ソレカラ又現在デハ株式ノ移轉ハ、名
義ノ書換ヲシタ時デナカッタナラバ、此株式
ガ甲カラ乙ニ移轉サレタト云フコトハ判明
致シマセヌ、所ガ例ヘバ東株ノ如キハ、
株劵ガ一日ニ何十人ノ手ニモ轉々シテ行ク
ノデアリマスガ、其賣買ノ都度移轉稅ヲ取
ルト致シマシタナラバ非常ニ煩雜ニナリマ
ス、中々其嚴密ヲ期シテ徵稅スルコトハ不
可能ニナリハシナイカト云フ疑ガアルノデ
アリマス、此點モ御聽キシタイ
ソレカラ今一ツハ、中央市場ニ於テ賣
買サレル株劵ハ、公定相場ガアリマスガ、
地方ノ小サイ會社ノ株劵ガ澤山アリマス、
之ニハ公定相場ガアリマセヌ、或ハ五十圓
拂込ノ株劵ガ百圓シテ居ル會社モアレバ、
或ハ只ノ五圓若クハ十圓位ノ株劵モアルノ
デアリマスガ、併シ之ニハ公定値段ガアリ
マセヌカラ、若シ地方ノ株式ヲ取得シテ書
換ニ行ッテ場合ニ、オ前ハ此株式ヲ取得シ
テ、是ハ五十圓拂込デアルカラ之ニ對シテ
相當ナ移轉稅ヲ拂ヘト言ハレル、其時ニ取
得者ハ、イヤ此株劵ハ五十圓拂込デアルケ
レドモ、其實ヲ言ヘバ實際十圓位シカシテ
居リマセヌ、ソレデハ其公定相場ガアルカ
ト言ハレルト、無論地方ニハ公定相場ガア
リマセヌカラ、是等ノ點ニ付テハ餘程難カ
シイ問題ガ起ルト思フノデアリマス、デア
リマスルカラ地方株ヲ持ッテ居ル人ハ非常
ナ不利ナ立場ニナル、中央ニ於テ幾ラデモ
取引ノ出來ル株ナラバ、別ニ心配ハナイノ
デアリマスガ、結論ハ、地方株ノ移轉ニ對
シテハヤハリ地方民ハ多大ナル、若クハ不
當ナル株式移轉稅ヲ支拂フト云フ結果ニナ
リハシナイカ、此點ニ付テ御聽ヲシタイノ
デアリマス、簡單デハアリマスルガ以上五
點ニ付キマシテ、大藏大臣ヨリ御說明アラ
ンコトヲ御願致シマス(拍手)
〔政府委員石渡莊太郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X00919370219&spkNum=26
-
027・石渡莊太郎
○政府委員(石渡莊太郞君) 法律ノ御疑問
ノ問題デゴザイマスノデ私ヨリ御答致シマ
ス、第一ノ御質問ハ、仲買人ノ稅率ヲ安ク
シタノハドウ云フ理由デアルカ、斯ウ云フ
御諄ト存ジマス、仲買人ハ證劵ノ最後ノ所
有者トナル場合ヨリハ、他ノ人ニ賣ル爲ニ
一時持ツモノデゴザイマスノデ、サウ云フ
點ヲ考ヘマシテ低メマシタ次第デゴザイマ
ス、其次ノ問題ハ、仲買人トシテ免許スル
場合ニ、取引員以外ノ者ニ許スカドウカ、
斯ウ云フ御尋デゴザイマスルガ、免許ノ規
定ハ今度ノ條文デハ削除致シマシテ、免許
ヲ致サナイコトニ致シマシタ、隨ヒマシテ
此問題ハ左樣御諒承ヲ御願シタイト存ジマ
ス、尙ホ申シ落シマシタガ、有價證劵移轉
稅ノ稅率モ少シ變更シテゴザイマスノデ、
約半分程度ニ落シタモノモゴザイマス、ソ
レデゴザイマスノデ、最高ノ稅率ガ萬分ノ
八ト、斯ウ云フコトニ相成ッテ居ル次第デ
ゴザイマス、ソレカラ一日何十遍移轉シテ
モ課稅サレルノデアラウカト云フ御尋デゴ
ザイマスガ、名義變更ノ時期デハゴザイマ
セズ、移轉ノ際ニ課稅致スノデゴザイマス
ルカラ、移轉ノアリマス都度納稅致ス、斯
ウ云フコトニ相成ルト思ッテ居リマス、六
百万圓ヲ見積ック根據ハ如何、斯ウ云フ御
尋デゴザイマスルガ、是ハ稅務署ニ命ジマ
シテ調査致シマシタ、各取引所ニ於ケル有
價證劵ノ移轉數量ヲ本ニ致シマシテ、取引
所以外ニ於キマスル移轉數量ヲ類推致シマ
シテ、見積ヲ致シタ次第デゴザイマス、尙
ホ詳細ノ御說明ハ委員會ニ於テ致シタイト
存ジマス
ソレカラ時價ノ問題デゴザイマスガ、時
價ノアリマスルモノニ付キマシテハ、ハッキ
リ致シテ居リマスモノハ、其時價ニ依ルコ
ト勿論デゴザイマスルガ、時價ノハッキリ
シテ居ラヌモノハ如何致スカト云フ御尋デ
ゴザイマスルガ、ソレハ其當事者ニ於キマ
シテ、其時ノ時價ヲ判斷セラレテ納稅致サ
レル、斯ウ云フコトニ相成ルト思ヒマス、
簡單デゴザイマスルガ御答致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X00919370219&spkNum=27
-
028・岡田忠彦
○副議長(岡田忠彥君) 岸田正記君
〔岸田正記君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X00919370219&spkNum=28
-
029・岸田正記
○岸田正記君 諸君、私ハ此度政府ヨリ提
案セラレマシタ所ノ臨時租稅增徵案竝ニ新
ニ制定ヲ期セラレテ居リマスル法人資本稅
外三件ノ法律案ニ對シマシテ、色々ナ觀點カ
ラ政府ニ御尋シタイコトガアルノデアリマ
スルケレドモ、旣ニ他ノ議員諸君ヨリモ、
色々御尋ニナッテ重複スル點モアリマスル
シ、玆ニハ唯大體論ト致シマシテ、新稅制
案ノ彈力性如何、此點ニ付キマシテ私ハ以
下數項ニ亙ッテ政府當局ノ御所信ヲ御尋シ
タイト思フノデアリマス
旣ニ當議場ニ於キマシテモ、繰返シテ論
議セラレマシテ明白トナッテ居リマスル通
リニ、我國ノ財政ハ直面シテ、或ハ陸海軍
ノ國防充實ノ計畫、或ハ又今囘ハ繰延ニ相
成リマシタケレドモ、幾多ノ豫算ノ繰延ノ
復活ノ要ニ迫ラレテ居ル、更ニ又地方交付
金ノ擴張、又今日ノ物價ノ非常ナ騰貴ノ趨
勢、是等ノ諸情勢ト相俟チマシテ、日本
ノ財政ガ益〓膨脹ノ必然性ニ迫ラレテ居ル
ト云フコトハ、是ハ旣ニモウ今日國民ノ常
識デアリマス、殊ニ非常ニ問題ト相成ッテ
居リマスル地方交付金ノ問題、是ハ今囘ノ
政府ノ臨時租稅增徵案、或ハ四ツノ新增稅
ノ制定、是等ノ內容ニ於キマシテハ、或八
贊成シ得ベキモノ、或ハ多少意見ヲ異ニス
ルモノモアリマスルケレドモ、唯此國稅ノ
或ル程度ノ整理ヲナサッタコトニ付テハ之
ヲ認メルケレドモ、中央地方ヲ通ジテ一貫
シタ所ノ稅制ノ改革ト云フコトハ、是ハ後
〓シニシタ、斯ウシタ結果ハ遂ニ地方ニ於
テ、多年最モ要望サレテ居ッタアノ戶數割
ノ廢止問題、其他ノ地方稅ノ整理輕減、斯
ウ云フヤウナ問題ガ後〓シニ相成リマシテ、
又非常ニ地方民ガ期待シテ居リマシタ中央
カラノ二億二千万圓ト云フ地方交付金、是ガ
今囘ノ稅制改革案ニ於テハ非常ニ期待外レ
ト相成リマシテ、僅ニ三分ノ一、七千万圓シ
カ差當リ交付サレナイト云フヤウナコトニ
相成ック、之ニ付キマシテハ何ト申シマシテ
モ、地方民全體ガ非常ニ不滿ヲ持ッテ居ル、
可及的速ニ此前内閣ヨリ唱ヘラレテ居リマ
スル所ノ、交付金ノ擴張ト云フコトノ實現
ヲ要望スル聲ハ、澎湃トシテ全國ニ漲ッテ居
ルコト、旣ニ諸君御承知ノ通リデアリマシ
テ、政府當局モ此點ニ付テハ十二分ノ御覺
悟アル所デアラウト存ジマスルガ、是非ト
モ是ハ實現シテ貰ヒタイ、是等ノ點カラ鑑
ミマシテ、交付金ノ擴張ト云フコトモ是非
ヤラナクテハナラヌ問題デアル、斯ウ致シ
マルト云フト、我國ノ財政ガ、益ミ是等ノ
點カラ申シテモ膨脹ノ必然性ヲ帶ビテ居ル
ト云フコトハ、是ハモウ否定スル能ハザル
事實デアリマス、然ラバ此巨大歲出-直
面致シテ居リマスル巨大ナ歲出、之ニ對應
致シマシテノ歲入ノ補塡ト云フゴトニ付キ
マシテハ、何ト申シマシテモ先ヅ第一ニ力
ニ餘ル重イ片棒ヲ擔ガサルベキ運命ニアル
モノハ公債ノ增發デアリマセウ、併ナガラ
公債ノ增發ト云フコトニ付キマシテハ、旣
ニ惡性「インフレ」ノ驀進ヲドウシテモ囘避
シヨウ、健全ナル國民經濟ヲ保持シテ行カ
ウト云フ、此見地ヨリ考ヘマスル場合ニ
ハ、公債ノ增發ニハ自ラ限度ガアル、然ル
以上ハ最モ此巨大財政ニ對應シテ歲入ノ點
ニ於テ、期待ヲ掛ケラレルモノハ言フマデ
モナク稅ノ自然增收デアル、卽チ租稅ノ彈
力性ニ基イテノ稅ノ自然增收、是等ハ大キ
ナル期待ヲ掛ケラレテ居ルト云フコトハ、
言フ迄モナイノデアリマスルケレドモ、固
ヨリ之ニ於テモ凡ソ限度ガアル、見透シガ
アル、然ラバ此自然增收ヲ以テシテモ、尙
足ラザル部分ハ、是ニ於テハ政府ト國民ト
ガ、好ムト好マザルトニ拘ラズ增稅ヲスル、
此事ガ必然我國ノ財政、我國ノ稅制ノ將來ニ
迫ッテ居ル問題デアルト云フコトハ、是ハ旣
ニ打消スコトノ出來ナイ事實デアリマス、
然ラバ玆ニ問題ト相成ルノハ、ドノ程度ニ
於テ近ク稅制改革案ノ名ニ於テ增稅ガ行ハ
レルカ、此點ガ國民全體ノ非常ニ疑念ヲ持
チ、疑視シ、憂慮ヲ以テ視テ居ル點デアリ
マシテ、此點ガ卽チ稅制改革案ノ名ニ於テ、
今日ノ租稅ノ中ニ於テノ稅率ガ引上ゲラレ
ル部分、又新シク租稅種目ヲ設ケラレル
分、是等ガドンナ内容ノモノデアルカト云
フコトガ、最モ今日ノ大キナ問題デアル
ト、私ハ信ジテ居ルノデアリマスガ、其稅
制改革ノ內容ヲ決定スル基本條件ト相成ル
モノハ、言フ迄モナク其重點トシテ稅ノ彈
力性ト云フコトガ、大切ナ問題ト相成ッテ來
ルト私ハ信ジテ居リマス、此點ハ獨リ將來
ノ稅制改革ガ、此點ニ於テ重大デアルノミ
ナラズ、今日ノ直面シテ居ル財政ニ於キマ
シテモ、自然增收、之ヲ基本トシテノ問題
ト致シマシテモ、此新稅制ノ價値判斷ノ上
ニ、一ツノ大キナ重點ヲ爲スモノデアルト
私ハ信ジマスルガ故ニ、今囘ノ稅制ノ上ニ
於テノ此彈力性ハ、果シテ如何ナル程度ニ
於テ認メ得ルカ、此點ニ付キマシテノ政府
ノ所信ヲ私ハ御尋シタイト存ズル次第デア
リマス
御承知ノ通リニ我國ニ於キマシテハ、近年
年々六千万圓乃至一億圓程度ノ自然增收
ヲ擧ゲテ居ルコトハ、旣ニ國民周知ノ事實
デアリマス、此事ハ新內閣ノ此財政計畫、
此租稅計畫、是等ノ下ニ於キマシテモ、非
常ナル跛行性ヲ帶ビテ居ルトハ申シナガ
ラ、今後我國ノ經濟界ニ於ケル「インフレー
ション」ト云フモノガ、相當ニ一層增進
シテ行クト云フ、此傾向ニ在ルコトハ事實
デアリマス以上、此趨勢ニ乘ジテノ自然增
收ガ段々加ハッテ行クデアラウト云フ此事
ハ、大體見透ガ付クノデアリマス、併ナガ
ラ此經濟界ノ「インフレーション」ノ增進、
是ガ徹底スル、此情勢ニ便乘シテノ稅ノ增
收今一ツハ新稅制、卽チ今囘提案セラレ
タ法人資本稅以下三ツノ租稅稅目、又臨時
租稅增徵案、此新稅制自體ノ持ッテ居ル所
ノ自然彈力性、人爲的彈力性、此彈力性ニ
依ッテ新ニ生ミ出ス所ノ自然增收、稅ノ增收
ト此二ツノ問題ハ、明ナル認識ノ判別ヲ
以テ之ヲ評價セネバ相成ラヌノデアリマス、
言フ迄モナク稅ノ彈力性ニハ二ツノ意味ガ
アル、卽チ其一ツハ御承知ノ如クニ、租稅
ノ稅率ヲ變更セズニ、而モ經濟界ノ消長、
財政ノ大小、之ニ順應シテ自カラ租稅收入
ガ增減シテ來ル此彈力性デアリマシテ、之
ヲ自然的彈力性ト申シマセウ、更ニ他ノ一ツ
ハ言フ迄モナク經濟界ノ情勢、特ニ財政ノ要
求、之ニ對應シテ國民ニ對シテノ衡平課稅ノ
原則ヲ破壞スルコトナシニ適宜ニ稅率ヲ引上
ゲ或ハ引下ゲ、變更致シマシテ、之ニ依ッテ
稅收入ノ增減ヲ圖リ得ル租稅ノ性能、此彈力
性デアリマシテ、之ヲ假ニ玆ニ人爲的彈力性ト
申シマセウ、此觀念ニ於キマシテ今囘ノ稅制
ヲ觀察致シマスル場合ニハ、果シテ幾何ノ彈
力性ガ含マレテ居ルカ、此點ガ私ハ政府ニ
對シテ御尋シタイ所ノ重點デアリマス、固ヨ
リ前內閣ニ依リマシテ一度提案セラレタア
ノ劃期的ノ稅制改革、此內容ニ於キマシテ
ハ既ニ世間ヨリモ色々ノ批判ガアッタ、卽
チ其内容ニ於テ甚シク行過ギテ居ル點ガア
ル、斯ウ云フ批評、又其稅目ノ中、新シク
設ケントサレタ所ノ稅目ノ中ニハ、產業的
ノ見地、或ハ又社會政策的ノ見地、是等ノ
點カラ申シマシテ、如何ニシテモ國民ガ無
條件ニハ之ヲ承認シ難イ、是等ノ稅目ヲス
ラ含ンデ居ッタト云フコトニ付テハ、私共
ハ之ヲ遺憾トセザルヲ得ナイノデアリマス
ケレドモ、唯租稅ノ彈力性ト云フ一點カラ
之ヲ見マスト云フト、第一ニハ御承知ノヤ
ウニ中央地方ヲ一貫シテノ稅制改革ヲ行ッ
テ、サウシテ特ニ所得稅ヲ中軸トシマス
ル所ノ國稅ノ體系ガ整備サレタ、又新シク
幾多ノ租稅ガ設ケラレント致シマシテ、之
ニ依ッテ非常時財政ニ對應スル所ノ準備ヲ
行フ、是等ノ觀點カラ申シマシテ前內閣ノ
一度提案致シマシタ所ノ稅制改革、此中ニ
ハ非常ニ稅ノ彈力性ト云フ點ニ於テ認ムベ
キモノガアッタト云フコトハ、私共ハ一通
リ之ヲ承認スルノデアリマス
然ルニ此點ニ付キマシテ、現政府ニ依リ
マシテ提案セラレタ今囘ノ臨時租稅增徵法
案又法人資本稅以下三件ノ新シク設ケラレ
ントスル所ノ租稅法、是等ニ付キマシテハ
固ヨリ其內容ニ於キマシテ多少漸進的デア
リ、穩健的デアルト云フ半面ニ於キマシ
テ、稅ノ彈力性ト云フ點カラ申スト聊カ物
足ラナイモノガアルデハナイカ、斯ウ私共
ハ感ゼザルヲ得ナイノヲ遺憾トスルモノデ
アリマス、唯修正增稅案、此中ニ於キマシ
テ私共ガ、其內容ニ於テ稍、、稅ノ彈力性トシ
テ今日稅收入自ラニ引上ッテ來ル、或ハ將
來產業資金ヲ壓迫スルコトナク、國民課稅
ノ衡平ノ原則ヲ破ルコトナクシテ、稅率モ
引上ゲ得ルモノガアルデハナイカ、斯ウ云フ
點ニ期待ヲ掛ケルモノハ、先ヅ此修正增稅
案中ニ於テノ直接稅ヲ中心トシテノ增徵ヲ
四ツ、卽チ第一點ニ於キマシテハ、御承
知ノヤウニ第一種所得稅、第二種所得稅此
增徵ヲ圖ッタ、續イテ又營業收益稅、資本
利子稅、或ハ臨時利得稅ナド、相當果斷的
ニ增徴ヲ圖ッタ、是等ノ點ニ於キマシテ今
囘ノ修正增稅案ニ於テノ彈力性ヲ稍、ヒ認メ
得ルノデアリマスケレドモ、併シ其直接稅
ヲ中心トシテノ臨時增徵ノ內容ヲ更ニ點檢
致シマスルト、是ハ前內閣案ト比較致シマ
マスレバ、先ヅ第二種ノ所得稅ニ於テ源泉
ト綜合、此二ツノ選擇ヲ取止メト致シマシ
テ、源泉一本ニ直シタ、又所得稅ノ免稅點
引上ヲ中心トシテ、現行法ニ於テノ千二百
圓通リニ据置イタコトヽ對蹠的ニ、營業收
益稅ニ於キマシテハ現行法通リニ四百圓ニ
据置イタト云フコト、是等ノ相違ヲ前內閣
ノ提案シタ案ト比較致シマシテ發見スルノ
ミデアリマシテ、其他ニ於テハ大體所謂馬
場案ト其内容ヲ同ジウシテ居ルヤウニ私共ハ
思フ、唯併シ其直接稅中心ノ稅率引上、此
程度ニ於テ稍〓2緩和サレテ居ル、而モ又所
謂所得稅ノ補完作用トシテ大キナル期待ヲ
掛ケラレテ居ッタ所ノ取引稅、或ハ財產稅、
斯ウ云フヤウナモノガ取止メトナッテ居
ル、此點ニ於キマシテ稅ノ彈力性ト云フコ
トニ付イテ甚シク見劣リスルノデハナイカ
ト私共ハ思フノデアリマス
尙ホ特ニ玆ニ見遁スコトノ出來ナイ事實
ハ法人重課ト云フ一點デアリマス、言フマ
デモナク國家ト云フ有機的活動體ニ於キマ
シテ、法人ハ取リモ直サズ其產業經濟ノ活
動機能、此部面ヲ擔當スル所ノ主力細胞デ
アル、隨テ此主力細胞、產業經濟ヲ擔當ス
ル部面ニ對シテ重壓ヲ加へ、課稅-重課
ヲ行フト云フコトハ、取リモ直サズ產業界
ノ壓迫トナッテ來ルコトハ、是ハ免レナイ
所ノ事實デアリマス、然ルニ新稅制ニ於キ
マシテハ、法人重課ノ點ニ於キマシテハ、
曾テ我國ノ產業界カラ全面的ノ反對······ト
云フヨリモ全面的ニ不滿ヲ買ウタト云フガ
適當デアリマセウケレドモ、此不滿ヲ買ウ
タ所ノ前內閣ノ法人重課ノ程度、是ト殆ド
程度ヲ同ジウ致シテ居ルノデアリマス、何
等ノ改修ノ跡ヲ見テ居ラヌト云ウテ差支ナ
イデアリマセウ、卽チ臨時利得稅ニ於キマ
シテハ、個人ハ二割五分ノ引上ニ對シテ法
人ハ五割ノ引上ニナッテ居ル、又營業收益
稅ニ於テモ法人ハ百分ノ三·四ヨリ百分ノ
四ニ引上ゲラレタ、法人ノ普通所得稅ハ
擧ニ十割ノ引上トナッタ、更ニ法人資本稅
ノ新設ト相成ッタ、斯ウ云フヤウナ點ニ於
テ相當ノ法人重課ト云フコトガ强調サレテ
居ルノデアル、是ハ固ヨリ私共ハ擔稅力ノ
關係、或ハ個人ト法人トノ衡平負擔、此點
カラ觀察致シマシテ、暫ク是ハ忍バネバナ
ラヌコトデアル、之ヲ私共ハ認容スルノデ
アリマスルケレドモ、唯產業的ノ見地、此
觀點カラ見マスルト云フト、今日ノ跛行景
氣ノ波ニ乘ッテ居ル所ノ、所謂時局產業ト
申シマセウカ、軍需工業品、是等ノモノハ
此法人重課ト云フモノニ對シテハ、サマデ
ノ苦痛ヲ感ジナイデアラウケレドモ、般
ノ產業界ハ相當ニ此點ニ付テハ脅威ヲ感
ジテ居ルト云フコトハ、旣ニ諸君ガ御承知
ノ通リデアリマス、殊ニ今日ノ企業法人
ノ中ニ於キマシテハ、僅ニ厘毛ノ差ト云フ
モノガ其企業ノ興亡生死ニ關スル、此
境ヲ步ンデ居ルト云フヤウナモノガ、
相當多數アルノデアリマスカラシテ、
之ニ對シテ法人重課ト云フコトハ、餘程其
程度ヲ考ヘナケレバナラヌコトハ言フマデモ
ナイ次第デアリマス、併ナガラ只今言ッタヤ
ウニ個人法人ノ負擔ノ衡平、今日マデノ不
均衡ノ修正、此見地カラ申シテ此程度ノ法
人重課ハ、是ハ一應ハ認容セナケレバナラ
ヌト致シマシテモ、將來ノ稅制改革、將來
ノ增稅案ニ於テ若モ此法人重課ニ付テ尙ホ一
層ノ人爲的ノ彈力性ガアリト過信サレテ、
其稅率ヲ引上ゲルガ如キ心構ガアルトスレ
バ、此點ハ餘程考慮ヲ要スルノデハナイ
カ、卽チ私共ハ此點ニ付キマシテ政府ハ如
何ナル考ヲ持ッテ居ラレルカ、又法人重課
ト產業界ヘノ影響ガ如何ニ認識サレテ居ル
カ、又法人重課ニ對シテ其人爲的彈力性、
卽チ將來ノ稅率引上ヲ可能且ツ適當ト考ヘ
テ居ラレルカドウカ、又適當ト考ヘテ居ラ
レルナラバ、ドノ稅目ニ於テ法人重課ノ點
ニ於テ稅率ヲ引上ゲ得ル餘地ガアルト考ヘ
テ居ラレルカドウカ、此點ニ付テ率直ニ御
意見ヲ承リタイト存ズル次第デアリマス
次ニ修正增稅案ニ於テモ亦大衆課稅デア
ル所ノ、消費稅ガ其稅率ヲ引上ゲラレテ居
ル、或ハ新シイ所ノ消費稅ガ設ケラレテ居
ル、此點ニ付キマシテハ新稅制ハドレダケ
ノ彈力性ヲ加ヘタモノデアルカ、是ガ私ノ
次ニ伺ヒタイ點デアリマス、卽チ此新稅制
案ニ付テ消費稅ノ引上、或ハ新消費稅ノ創
設其內容ヲ見マスルト、先ヅ第一ニハ酒
造稅ニ於テ一割ノ引上、麥酒稅ニ於テ四割、
砂糖消費稅ニ於テ一割五分、酒精竝酒精含
有ノ飮料稅ニ於テ二割ノ稅率ノ引上ヲセラ
レテ居ルノデアリマス、ソレト共ニ更ニ揮
發油稅ノ新設ガ行ハレントシテ居ル、是等
ヲ合計致シマスト、此消費稅ノ增加ト云フ
モノハ四千四十万圓ニ達シテ居リマシテ、
更ニ之ニ對シテ關稅一千八百五十五万圓ヲ
加ヘマスト云フト、今囘ノ增稅案ト申シマ
セウカ、臨時增徵法案或ハ又新租稅法案、
之ニ依リマシテ大衆負擔ノ增加ト云フモノ
ハ五千九百万圓ニ達シテ居ル、固ヨリ之
ヲ前內閣ノ提案シタ所ノ劃期的稅制改革案
ニ比較シマスト、今囘ノ修正增稅案ニ於キ
マシテハ、或ハ織物課稅ノ引上ノ中止、或
ハ其程度ノ緩和サレテ居ルコト、酒造稅ヤ
砂糖消費稅ノ輕減ヲ圖ッテ居ラレルコト、是
等ノ點ニ於キマシテ、稍〓前內閣ト社會政策
的ノ見方ニ於テ、認識ヲ異ニシテ居ラレル
ト云フコトダケハ、私共モ之ヲ確認スルニ
吝ナルモノデハアリマセヌ、斯クシテ修正
增稅案ニ於キマシテハ、前內閣案ニ比較シマ
スト、間接稅全體ニ於キマシテハ、七千六
百万圓程度ノ輕減ガ行ハレテ居ルケレド
モ、併ナガラ一面直接稅ガ輕減サレテ居ル、
此額九千四百万圓ニ達シテ居ル、此九千四
百万圓ノ直接稅ノ輕減ト間接稅ノ七千六百
万圓ノ輕減、之ヲ比較致シマスル場合ニ、
私ハ前內閣案ニ比較致シマスト云フト、大
衆課稅ノ割合デハ、却テ現内閣案ガ增加シ
テ居ルト云フ一事ダケハ、見逃スコトガ出
來ナイ事實デアルト思フノデアリマス、而
モ消費稅ノ增徵ヲ租稅ノ彈力性ノ觀點カラ
見マスルト、果シテ如何デアリマセウカ、
申ス迄モナク大衆課稅ノ增徵ト云フコト
ハ是ハ一般的ニハ中々說明ヲ要シ、意見
モアルコトデアリマスケレドモ、大體ニ於
キマシテ國民生活ノ慰安品ニ屬スル部分ノ
品物、之ニ對シテノ消費稅ノ增稅、稅率ノ
引上、或ハ新稅ヲ設ケルト云フコトハ、其
結果ニ於キマシテ、如何ニシテモ大衆生活
ニ於テノ慰安ヲ殺滅スル、慰安ヲ犠牲ニス
ルト云フ此慘メナ犠牲ニ於テ租稅收入ガ
減ッテ來ル、消費ニ影響ヲ及ボシテ來ルト云
フコトハ、疑モナイ事實デアリマシテ、此點
カラ申シマシテ、大體ニ於テ消費稅ニハ稅ノ
彈力性ハ乏シイモノデアルト云フコトハ、旣
ニ國民ノ通念デアル、之ヲ酒造稅ニ付テ觀
察致シマシテモ明カデアル、今日酒造稅ガ
石四十圓ノ課稅、之ヲ一石六十七圓ノ卸値
ニシマスト云フト、其稅率ノ割合ハ五割七
分カラニナッテ居ル、之ヲ以テ非常ニ勤勞大
衆、農村大衆ハ苦痛ト致シテ居リマス、然ル
ニ更ニ此上ニ一割ノ酒造稅ガ引上ゲラレテ
來ルト云フコトハ、此消費ニ對シテドウ云
フ影響ヲ及ボスデアラウカ、此事ハ過去ノ
事實ニ徵シ、過去ノ歷史ニ徵シテモ大凡其
想像ガ付クノデアリマス、御承知ノヤウ
ニ、大正十五年ニ石四十圓ノ酒造稅ニ改メ
ラレタ、其結果七圓ノ酒造稅ノ增稅ヲ見ル
ニ至ックノデアリマス、此結果ハ立ドコロニ
酒ノ消費ニ對シテ影響ヲ及ボシタ、消費量
ガ減ッテ來タ、酒造家ノ倒產スル者ガ續出
シテ來タト云フコトハ、隱レモナキ事實デ
アリマス、殊ニ今日ノ農村大衆ノ非常ニ生
活ニ苦シイト云フ是等ノ事情ヲ以テシテ、爾
來段々ト消費ノ量ト云フモノハ減ッテ來マ
シテ、卽チ昭和九年ハ大正十五年ニ比較致
シマスルト、酒ノ消費量ト云フモノハ、約
三万石ガ減少シテ居ルト云フコトハ、統計
ニ於テ明カデアル、爾來益〓、此酒ノ消費ト
云フモノハ減退ノ一途ヲ迪ッテ居ル、隨
テ酒造稅ガ段々ト減ッテ來テ、居ル、此事ハ
明ニ統計ガ示シテ居ル所デアリマスガ、
更ニ此上ニ一割ノ酒造稅ガ引上ゲラレ、酒
ノ値ガ上ッテ來ルト云フコトハ、ドウ云フ影
響ヲ及ボスデアラウカ、或ハ又麥酒稅ニ於キ
マシテモ一本五錢四厘ノ引上トナリ、或
又砂糖ニ於テモ一割五分ノ課稅增率ニ依ッ
テ値上リヲ來ス、斯ノ如キ事情ト云フモノ
ハ、斯ノ如ク大衆生活ノ慰安ノ殺減ト云フ慘
メナ犧牲ニ於キマシテ、是等ノ消費量ノ減
退ヲ來シ、隨テ稅收入ノ增加ドコロカ、寧ロ
減少ヲ來スモノデハナイカ、斯ウ云フコトヲ
私共ハ思フノデアリマス、卽チ大衆課稅ノ重
加ト云フコトト、財政ノ膨脹ニ依ッテノ物價
ノ騰貴ト相俟ッテ、非常ニ大衆ニ對シテ苦痛
ヲ與ヘルモノデアッテ、此事ハ取リモ直サズ
賃銀俸給生活大衆ノ實質的ニハ、何ト申シ
テモ收入ノ低減ヲ來スモノデアリ、言
ヒ換ヘレバ、大衆ノ生活ニ對シテノ一ツノ
脅威デアリ、壓迫デアル、此事情ノ下ニ於
テ尙且ツ消費稅-彈力性ニ富ンデ居ル所
ノ租稅增收ヲ期待スルト云フコトハ、取リ
モ直サズ肥料ヲ與ヘズシテ果實ノ豐カナラ
ンコトヲ期待スルト同ジヤウナ結果デハナイ
カ、之ヲ私共ハ憂フルノデアリマス、此點ニ
鑑ミマシテ、消費稅ハ人爲的ニモ自然的ニモ
彈力性ガ乏シイモノデアルト考ヘルガ、政
府ハ如何ニ之ニ對シテ御考ヘニナッテ居ルカ、
玆ニ人爲的彈力性アリト御考ヘニナッテ、尙
ホ將來ノ租稅制度ノ改革案ノ上ニ於テハ、消
費稅ノ引上ヲ可能ナリ、適當ナリト考ヘテ
居ラレルカドウカ、此點ニ付テ明確ナル御
所信ヲ承ッテ置キタイト存ズル次第デアリ
マス
次ニ新ニ創設セラレント致シテ居リマス
租稅ノ中ニ於テ、外貨債特別稅或ハ又揮發
油稅、是等ノ點ニ付キマシテハ、人爲的ニ
モ自然的ニモ、其彈力性ヲ問題トシテ取上
ゲ得ベキモノハ殆ド私ハナイト考ヘテ居リ
マス、唯茲ニ問題ト相成ルノハ、有價證劵
ノ移轉稅、此點デアリマスルガ、之ニ付テ果
シテドレダケノ期待ガ掛ケ得ルデアラウ
カ、此點ヲ私ハ政府ニ御尋シタイノデアリ
やく、言フ迄モナク此有價證劵ノ移轉稅、
之ヲ設ケラレマシタ所ノ眞意ト云フモノハ、
一面ニ於テ今日ノ膨脹財政ニ對應シテノ稅
收入ノ增加、之ヲ期セラレタト共ニ、一面
ニ於キマシテハ、都市ト農村、動產ト不動
產、此負擔ノ不均衡ヲ修正シテ、公平課稅ノ
見地ニ立ッテ、之ヲ設ケラレタト云フコトハ、
私共ハ之ヲ一應認メルノデアリマスルガ、
一面ニ於テ此稅ハ相當豐富ナル自然的ノ彈
力性ヲ持ッテ居ルモノデアルト云フコトモ、
私共ハ之ヲ一通リ認メルノデアリマス、卽チ
經濟界ノ景氣ガ好クナッテ來ル、「インフレ」
現象ガ段々徹底シテ來ル此場合ニ於テハ、
自然ニ證劵界モ活況ヲ呈シ、殷賑ヲ呈シテ
來テ、自ラ此增收ガ期待シ得ルモノデアル
ト云フコトハ、私共モ之ヲ想像致シテ居リ
マス、唯一面ニ於キマシテ此稅ノ人爲的ノ
彈力性、卽チ負擔ノ公平ヲ害スルコトナク、
產業資金ノ壓迫ヲ爲スコトナクシテ、ドノ
程度マデ稅率ガ將來引上ゲラレル期待ガ掛
ケラレルカ、此點ニ付テハ多大ノ疑惑ヲ有ッ
テ居ルノデアリマス、卽チ今囘ノ政府ノ提
案セラレタ內容ニ見マスルト、馬場前藏相
ノ案ニ比較シマスルト、山邊君カラモ曩ニ
申サレタヤウニ、前內閣案ノ國債ノ萬分ノ
五、其他ヲ萬分ノ十ト云フ稅率ニ直サント
サレタ、之ニ比較シマスルト云フト、今囘
ノ案ハ萬分ノ一乃至萬分ノ八ト云フノデア
リマスルカラ、稍〓緩和サレテ居ルト云フ
コトハ、私共ハ之ヲ認メルノデアッテ、ソレ
ダケニ多少ノ裕リガ殘サレテ居ルトハ、私
ハ思フノデアリマスルケレドモ、併ナガラ
言フ迄モナク有價證劵ノ移轉流通ト云フコ
トハ、取リモ直サズ此產業資金ノ疏通ノ血
脈ヲ成スモノデアル、隨テ其取引ガ圓滑デ
アルカドウカト云フコトハ、產業界ニ、經
濟界ニ大キナル影響ヲ有ツ問題デアルト云
フコトハ、諸君御承知ノ通リデアリマス、
此一點ニ鑑ミマシテ、農夫ハ働キツヽアル
所ノ牝牛カラ牛乳ヲ搾取シナイ、是ト同ジ
意味ニ於キマシテ、私共ハ前ノ政府ガ設ケ
ントシタ所ノ取引稅ニ對シテハ、非常ナル
不滿ノ意ヲ有ッタノデアリマスルガ、是ト
同ジ意味合ニ於キマシテ、有價證劵ノ移轉
ト云フコトニ對シテモ、餘リ重キ稅ヲ課ケル
ト云フコトハ、產業的ノ見地、經濟的ノ見地
カラ言ウテ、全面的ニ之ニ贊意ヲ表スルコ
トハ躊躇スルノデアリマス、殊ニ證劵業者
ノ立場ニ付テ考ヘマシテモ、御承知ノヤウ
ニ此取引口錢ト云フモノハ、公社債ニ於テ僅
ニ三錢五厘乃至五錢、其他株式ニ於テハ十
錢ト云フ程度ノ薄イ所ノ口錢率デアリマシ
テ、唯此有價證劵ノ移轉ト云フモノハ、無
限ニ囘轉流通スルト云フ所ノ無限囘轉ニ依ッ
テ、漸ク收益ガ維持サレテ居ルト云フ事實
ニ鑑ミマシテモ、此立場カラ見マシテモ、
餘リ大キナ稅率ノ引上ト云フコトハ期待シ
得ナイノデハナイカ、斯ウ考ヘテ居ル、此
點ニ付キマシテ政府ハ果シテ如何ニ認識サ
レテ居ルカ、其自然的ノ彈力性、是ハ或ル
程度ニ認メ得ルケレドモ、人爲的ノ彈力性
ニ付テハ、果シテドノ程度ニ期待ヲ有ッテ居
ラレルモノデアルカ、此點ニ付テ明確ナル
御所見ヲ承ッテ置キタイノデアリマス
更ニ私ハ今一ツノ新稅トシテ最モ刮目サ
レテ居リ、只今他ノ議員諸君ヨリモ繰返シ
テ論議サレマシタ所ノ法人資本稅、此稅ノ
彈力性ニ付テ私ハ極ク簡單ニ御尋シタイト思
フノデアリマスルガ、勢ヒ此稅ノ設ケラレ
タコトニ付テノ是非、適否、是等ガ問題ニ
相成リマシタカラ、極ク簡單ニ此點ニ付テ、
私ハ一應-申スマイト思ッテ居リマシタ
ケレドモ、一言申シテ見タイト思フノデア
リマスルケレドモ、言フ迄モナク此法人資
本稅ハ、卽チ前內閣ガ提案サレタアノ財產
稅ノ中ニ於テ、個人ニ對スル、個人財產ニ
對シテノ課稅ヲ取止メテ、法人ノ財產ノミ
ニ課稅シ、サウシテ其程度、其稅率ヲ千分
ノ一一·五カラ千分ノ一ニ引下ゲテ、其名ヲ
法人資本稅ト改メテ出直シタ、其實態ニ過
ギナイ、固ヨリ此修正ニ對シテハ幾多ノ
反對意見モアッタヤウデアリマスケレドモ、
一應此修正ニ對シテ私ガ贊意ヲ表シテ居ル
ト云フコトハ、前ノ內閣ニ於テ敢テ此個人
財產ニマデ課稅ヲ期セラレタト云フ此點ハ、
固ヨリ其意圖ノ在ル所ハ諒トスル、卽チ今
日ノ財政事情ニ適應シテノ、租稅ノ增收ヲ
圖ル必要ハ認メテ居ル、是ハ認メルケレド
モ、一面ニ於キマシテ、此本當ノ財產稅ヲ
設ケラレタ其眞意ト云フモノハ、言フ迄モ
ナク此稅ノ有ッテ居ル所ノ人爲的彈力性、之
ニ非常ニ期待ヲ掛ケテ居ル、所謂一朝有事
ノ場合ニ於テ其稅率ヲ引上ゲテ、以テ非常
財政ニ對應シヨウトスル、此非常心構ヘガ
含マレテ居ルト云フコトハ、言フ迄モナイ
ノデアリマシテ、卽チ此非常財政ニ對應スベ
キ其基礎工作トシテ、平時カラ豫メ此稅ヲ
設ケテ置ク、是ガ本當ノ眞意デアラウト私
共ハ考ヘテ居ル、世評ニ所謂軍國稅、準戰
時稅制ノ非常ニ大キナ點ヲ成シテ居ル軍國
稅ノ、名ニ背カナイモノデアル、是ガ本當
ニ此稅ヲ設ケラレタ所ノ使命デアル、斯ク
私共ハ觀テ居ッタノデアリマシテ、是ハ嘗テ
「プロシャㄴニ於キマシテモ、アノ大戰當時
ニ於キマシテ、千九百十八年ニ於テ所謂財
產稅ニ對シテハ、一朝ニシテ百分ノ八ノ戰時
附加稅ヲ課シテ居ル、是等ノ事實ニ徵シマ
シテモ、稍〓前內閣ノ稅制案ガ、所謂準戰時
稅制ノ名ニ於テ現ハレテ居ル此點ニ顧ミマ
シテ、稍、想像ハ付クノデアリマス、併ナガ
ラ此稅ハ私共ハ何ガ故ニ多クノ國民カラ不
滿ヲ持タレテ、此稅ニ對シテ全面的ニ贊成
スルコトガ出來ナイカト云フコトハ、是ハ旣
ニ只今結城大藏大臣カラモ、御說明相成ッタ
通リデアリマシテ、私共ハ此點ニ付テハ、現
政府ノ其意圖ヲ諒トスルノデアル、何トナ
レバ我國ノ國民精神ノ精華ト云フモノハ、
一旦有事ノ場合ニ於キマシテハ、是ハ言フ
マデモナク公債ノ募集ニ應ズルノハ固ヨリ
ノコト、或ハ徵發ニモ欣ンデ應ズル、斯ウ
云フヤウナ一旦緩急アル場合ニ於テノ、此
國民的ノ犠牲心、愛國心ヲ發露スルト云フ
コトニ於テハ、如何ナル犠牲ニモ欣ンデ耐
べく欣ンデ應ズルト云フ、是ガ我ガ國民
性ノ精華デアル、此點ニ於テ敢テ平素カラ
租稅制度ナドノ中ニ於テ、斯ノ如キ稅ヲ設
ケテ置イテ、サウシテ一旦緩急アル場合ニ
對シテノ用意ヲ持ツト云フヤウナコトハ、
敢テ其必要ハナイノデハナイカ、殊ニ租稅
制度ソレ自體ノ中ニ、所謂私有財產制度ニ
對シテノ觀念ヲ、一步踏越エテ居ルノデ
ハナイカト云フヤウナ、疑念ノ持タレル所
ノ租稅ヲ新ニ設ケテ置イテ、斯ウシタ結果
ガ國民ノ貯蓄心、或ハ又勤勉心ニ對シテ、
鬼面ヲ被ッテ之ヲ脅カスト云フガ如キ心
構ヘヲ示スト云フコトハ、非常ニ是ハ考フ
ベキコトデアル、此點ニ對シテ私共ハ
此禍ヲ除キ、不平ヲ除ク爲ニ、現內閣ハ此
個人財產稅ト云フモノヲ急進ヲ避ケテ、漸
進ヲ採ッテ、暫ク之ヲ取止メラレタ、或ハ將
來ドノ程度マデ取止メヲ續ケラレヨウトス
ルカ、是カラ御尋シマスケレドモ、一先ヅ
之ヲ取止メラレタト云フ心構ヘニ對シテ
ハ、私共ハ一應之ヲ諒トシテ居ル、併ナガ
ラ此個人ニ對シテノ財產稅ヲ取止メラレ
テ、法人ノミニ之ヲ限ラレタト云フ此一點ニ
於テハ、此稅ノ人爲的彈力性、此點カラ申
シマスト、非常ニ殺減サレタト云フコトハ、
打消スコトノ出來ナイ事實デアルト信ズ
ル、其故ハ如何トナレバ個人ノ財產ト法人
ノ財產トハ、其機能、其本質ニ於テ必シモ
同一デナイノミナラズ、全ク其趣ヲ異ニ致
シテ居ルモノガ非常ニ多イノデアリマス、
御承知ノ通リニ玆ニ例ヲ擧ゲテ申上ゲマス
マデモナク、個人財產ノ中ニ於キマシテハ、
或ハ庭園デアルトカ、或ハ又大キナル邸宅
デアルトカ、書畫骨董デアルトカ、斯ウ云
フヤウニ、直接ニ經濟ノ發展、產業ノ振興
ト云フヤウナコトニ對シテハ、脈絡關係ノ
薄イ所ノ財產ガ、相當多數ノ部門ヲ占メテ
居ル、之ニ反シマシテ法人ノ財產、法人ノ
資本ト云フモノハ、擧ゲテ產業經濟ノ活
動ノ血トナリ肉トナル働キヲ爲シテ居ル、
隨テ此活動機能ニ對シテノ非常ナ大キナ役
割ヲ引受ケテ居ル此法人ノ財產ソレ自體ニ
對シテ、餘リ大キイ稅ヲ課ケルト云フコト
ハ、是ハ產業的ノ見地カラ大イニ考ヘネバ
ナラヌ點ガアル、特ニ此程度ガ度ヲ過ギテ
其資金ソレ自體ヲ侵蝕スルガ如キコトニ相
成リマスト云フト、是ハ非常ニ國家經濟ノ
爲ニモ憂フベキ現象デアリマス、然ルニ今
囘改メテ法人資本稅ノミガ存置セラレルコ
トニナッタ、此事ハ今日ノ軍需工業、時局產
業ノ波ニ踊ッテ居ル、好景氣ニ惠マレテ居ル
是等ノ產業方面ニ於テハ、サシタル苦痛ハ
感ジナイデアリマセウケレドモ、一般產業
界、特ニ僅カノ企業利潤ト云フモノガ、其
生死ノ境ニナッテ居ルヤウナ多數ノ企業法
人ト云フモノガ我國ニ存在シテ居ル、是等
ノ立場カラ申シマスト云フト、其程度ハ餘
程愼重ニ考ヘネバナラヌモノデアルト私共
ハ信ジテ居ルノデアリマスルガ、是モ一應
個人ト法人トノ負擔不均衡ノ修正ト云フコ
ト、又今日ノ巨大財政ニ對シテノ收入ノ補
塡ヲ圖ッテ行ク財源ヲ捻出スルト云フ立場
カラ言ヘバ、ソレハ暫ク忍バナケレバナラ
ヌト云フコトヲ私ハ新稅制ニ於テモ認メタ
イノデアリマスケレドモ、唯餘リニ法人資
本稅ノ人爲的ノ彈力ヲ過信シ、多ク强化致
シマシテ、將來ノ稅制改革ニ於テ、ソコニ
稅率ガ引上ッテ行ク、サウシテ以テ非常財政
ニ對應シテ行カウト云フ心持ガアルト云フ
コトニナルト、一部ノ時局產業ハ別トシテ、
我國ノ產業界全體ノ大キナ廣イ立場カラ見
マスト云フト、深キ考慮ヲ要スルモノデハ
ナイカ、是ガ私共ノ考ヘテ居ル點デアリマ
ス、此點ニ於キマシテ、私ハ政府ハ果シテ
此法人資本稅ニ對シテドレダケノ人爲的彈
力性ヲ認メテ居ラレルカ、ドノ程度ノ稅率
ノ引上ガ可能デアリ、適正デアルト御考ニ
ナッテ居ルカ、又續イテハ將來適當ノ時期ニ
於テハ、所謂個人財產稅ヲモ續イテ增設セ
ラレル御意圖デアルカドウカ、是等ノ點ニ
付キマシテ率直ナル御所信ヲ承ッテ置キタ
イノデアリマス
更ニ續イテ私ハ此法人資本稅ノ自然的ノ
彈力性、是ガドンナモノデアルカ、此點ニ
付キマシテ、極ク簡單ニ御所信ヲ承リタイ
ノデアリマス、言フ迄モナク一般ノ財產稅
自體ニ於キマシテモ、此彈力性ハ餘リ豐富
ナモノデハナイ、事實一般ニ豫想サレテ居
ル程ノモノデハナイト云フコトハ、是ハ大
體ニ於テ外國ノ此稅ヲ設ケテ居ル實際ノ事
情カラ申シマシテモ、大體ノ見當ガ付クノ
デアリマス、卽チ御承知ノヤウニ「プロシャㄴ
ノ如キハ千八百九十九年以來、十五年ノ
期間ニ於キマシテ、所得稅ノ增加率ト云フモ
ノハ一·六ノ增加率ヲ示シテ居ルケレドモ、
財產稅ハ僅ニ〇·九三ノ增加率シカ示シテ居
ラナイ、此點カラ鑑ミマシテモ、財產稅ノ租稅
收入ト云フモノガ、個人ノ或ハ又法人ノ所得
ノ增加ト相伴ハザル事實ヲ示シテ居ルト
云フコトハ、想像ガ付クノデアリマス、殊
ニ此財產稅ヲ法人ノミニ課スルニ至ッタ今
囘ノ新稅制ニ於キマシテハ、此新ニ增徵ス
ル案ニアリマスルガ如クニ、法人ノ重課、
殊ニ法人資本稅マデ課セラレルト云フ此新
シイ所ノ稅制下ニ於キマシテハ、勢ヒ法人
ハドウカシテ此法人資本稅ノ重キ負擔ヲ囘
避シヨウ、合法的ノ脫稅ヲ行ハウトスル心
理ガ現レテ來ルト云フコトハ、是ハ已ムヲ
得ヌコトデアル、此結果ハ或ハ同族會社ヲ
解散シテシマフ、或ハ又御承知ノヤウニ法
人自體ノ財產ト云フモノヲ出來得ルダケ程
度ヲ低ク見積ル、此傾向ヲ生ジテ來ル虞レ
ガアルノデアリマス、殊ニ又此稅ノ負擔ヲ
免レヨウトスル手段ト致シマシテ、若シモ
此法人ノ資本ノ拂込ヲ阻格スルト云フガ如
キ現象ヲ呈シテ來マスト云フト、此事ハ我
國ノ產業界ニ取リマシテハ、非常ニ恐ルベ
キコトデアル、產業界ノ基礎ソレ自體ヲ危
クスルコトニナッテ來ル、此事ヲ私共ハ懸念
シ、憂ヘルノデアリマス、是等ノ見地カラ
申シマスト、此法人資本稅ニ對シテ餘リニ
多クノ人爲的ノ彈力性ガアル、自然的ノ彈
力性ガアルト見ラレテ居ルト云フコトハ、
是ハ期待外レデナイカ、此點カラ鑑ミマシ
テモ、今日此法人資本稅ノ客體デアル法人
ノ二百億ノ資產、財產、是ガ將來益〓增加シ
テ、此法人資本稅ニ依ッテ多クノ增收ヲ擧ゲ
得ラレルト云フコトハ、期待外レニ終ルノ
デハナイカ、之ヲ私共ハ憂へ、悲シムノデ
アリマスガ、此點ニ付キマシテハ、如何ニ
政府ハ御考ヘニナッテ居リマスカ、卽チ私共
ハ此法人資本稅ノ人爲的ノ、又自然的ノ彈
力性ニ關シテハ、餘リニ多クノ期待ヲ繫ケ
得ナイモノデアルト信ジテ居リマスガ、大
藏大臣ハ果シテ如何ナル御認識、如何ナル
御所信ヲ之ニ對シテ有ッテ居ラレルカ、此點
モ承リタイト存ズル次第デアリマス
以上私ハ新稅制ノ內容ヲ〓略檢討ヲ致シ
マシテ、遺憾ナガラ今囘ノ新稅制ニ於キマ
シテハ、前內閣ノ案ニ比ベマスト、租稅ノ
彈力性ト云フ點ニ於テハ、稍〓貧弱ナモノガ
アルヤウニ思フ、隨テ新稅制ニ依ッテ新ニ生
ミ出サルベキ自然增收ハ、到底多クヲ期待
出來ナイノデハナイカト思フト共ニ、一面
ニ於キマシテハ、何レノ稅種ヲ點檢致シマ
シテモ、財政膨脹ニ對應致シマシテ、更一
此上ノ稅率ノ引上ガ可能デアル、適當デア
ルト云フコトニ對シテハ、私共ハ遺憾ナガ
ラ十分ナル了解ヲ持ツコトガ出來ナイノデ
アリマス、一面ニ於テ負擔ノ公平均衡ト云
フコトヲ、此稅率ヲ將來引上ゲラレルニ於
テハ破ッテ來ルノミナラズ、社會政策的ノ見
地或ハ又產業政策的ノ見地カラ見テ、到
底好マシカラザル影響ヲ及ボスデアラウト
云フ憂ナキヲ得ナイノデアリマス、而モ新
稅制ノ根本的ノ改革計畫、是ハ直面セラレ
テ居ル問題デアリマス、財政ノ膨脹、此點
カラ鑑ミマシテモ、亦今囘ノ稅制改革ニ於
キマシテモ、漸進的、暫定的ナモノデア
ルト云フ名前ヲ附ケラレテ居ル半面ニ於
テ、地方稅制ノ改革ト云フコトニ付テハ全
然後〓シニサレテ居ル、中央ノ國稅ノ體系
整理ト云フコトモ、殆ド是ハ今囘ノ增徵
案ニ於キマシテモ、新租稅ノ設ケラレテ
居ル內容ニ於キマシテモ、之ヲ見遁サレテ
居ル、斯ウ云フ點カラ致シマシテモ、何レ
ニ致シマシテモ、直面シテ居ル我國ノ稅制
ハ、根本的ノ中央地方ヲ通ジテノ改革ヲ
斷行スベキ必要ニ迫ラレテ居ル、此秋ニ當
リマシテ、大藏大臣ハ此將來ノ稅制改革ノ
基本條件トナルベキ今囘ノ新稅制ニ於テ
ノ、人爲的ノ彈力性、又自然的ノ彈力性、
此點ニ付キマシテ如何ナル認識ヲ有ッテ居
ラレルノデアルカ、新稅制自體ノ自然彈力
性ニ依ル自然增收ノ見透シヲドノ程度ニ付
ケラレテ居ルノデアルカ、又何レノ稅種ニ
於テ、其彈力性ニ於テ、更ニ第二次稅率ノ
引上ガ適當デアリ、可能デアルト考ヘラレ
テ居リマスカ、又將來稅制改革ニ於キマシ
テ、更ニ新租稅ヲ創定セント考ヘテ居ラレ
ルトスルナラバ、如何ナル新租稅ヲ期待シ
テ居ラレルカ、是等ノ點ニ付キマシテハ、
固ヨリ組閣後未ダ日淺イ次第デアリマスカ
ラ、具體的ノ案ヲ直チニ御示シ願ヒタイト
云フコトハ申サナイノデアリマスケレド
モ、大體ノ輪郭、大體ノ御所信ヲ承レバ幸
ト存ズル次第デアリマス(拍手)
〔國務大臣結城豊太郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X00919370219&spkNum=29
-
030・結城豊太郎
○國務大臣(結城豊太郞君) 岸田君ノ御質
問ニ對シテ御答ヲ致シマス、稅制ノ彈力性
ニ付テ御話ガアリマシタガ、今囘ノ增稅ニ
當リマシテハ、此經濟界ノ發展ヲ阻害シナ
イヤウニト云フコトニハ、一番注意ヲ致シ
マシタ點デアリマシテ、將來ニ於テモ相當
ノ自然增收ガアルダラウト存ジマシテ、又
此自然增收ノ多イヤウニ產業界ヲ育テテ行
キタイト考ヘテ居ル次第デアリマシテ、更
ニ稅制ノ改革ヲ致シマス上ニ於テモ、此彈
力性ヲ害スルヤウナコトハ努メテ避クル積
リデ居リマス
又將來法人ノ稅率ヲ引上グル考ガアルカ
ト云フコトデアリマシタガ、是ハ將來考慮
スベキ問題デアラウト思フノデアリマス
ガ、今囘ノ增稅案ノ結果、法人ノ負擔ガ相
當ニ重クナリマシタノデ、更ニ稅制ヲ改革
致シマス時ニ、其邊ノ所ハ十分ニ御趣旨ヲ
參照致シマシテ檢討スル積リデ居リマス
ソレカラ間接稅ノ負擔ガ重キニ失シナイ
カト云フ御注意デアリマシタガ、今囘ハ出
來ルダケ間接稅ノ增稅額ヲ少クスルコトヲ
按排シタ積リデアリマス、將來モサウ云フ
考デ案ヲ練リタイト思ッテ居リマス
ソレカラ有價證劵移轉稅ノ重イ課稅ハ、
面白クナイト云フ御話デアリマシタガ、是
ハ將來增率ヲスルト云フコトハ、期待スル
コトハ難シイト私ハ思ッテ居リマス、徵稅ノ
上ニ於テ相當ノ議論ノアルモノヂヤナカラ
ウカト思ッテ居リマスノデ、是モ一ツ十分ニ
〓究サシテ戴キマス
ソレカラ法人資本稅ニ對スル御話ガアリ
マシタガ、是ハ自然彈力性ガアルカモ知レ
マセヌガ、人爲的ノ彈力性ト云フモノハ期
待シ得ナイサウデアリマシテ、此租稅ノ彈
力性ニ付テハ、十分ニ〓究致シマス積リデ
アリマス、之ヲ以テ御答ニ致シマス(拍
手発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X00919370219&spkNum=30
-
031・岸田正記
○岸田正記君 簡單デアリマスカラ、自席
カラ御許ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X00919370219&spkNum=31
-
032・岡田忠彦
○副議長(岡田忠彥君) 岸田君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X00919370219&spkNum=32
-
033・岸田正記
○岸田正記君 只今ノ大藏大臣ノ御說明ノ
中ニ於キマシテ、私共ハ其御考ニ對シテ諒
トスル所モアリマヌガ、尙ホ多少ノ質問ヲ
致シタイ點モアルノデアリマスカラ、是ハ
何レ委員會ニ於テ、詳細ニ互ッテ質問スルコ
トニ致シマシテ、此程度ニ於テ質問ヲ打切
リタイト思ヒマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X00919370219&spkNum=33
-
034・岡田忠彦
○副議長(岡田忠彥君) 水谷長三郞君
〔水谷長三郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X00919370219&spkNum=34
-
035・水谷長三郎
○水谷長三郞君 私ハ今ヤ漸ク其全貌ヲバ
吾々ノ前ニ明白ニ致シマシタ結城稅制ニ關
シテ、質問セントスル者デアリマスガ、結
城稅制ハ其本質トスル所ハ、前ノ馬場稅制
ガ財政ノ收入ト、負擔ノ衡平ノ二本立デ以
テ進ンダニ對シマシテ、結城稅制ハ單ニ財
政收入本位一本デ進マレヨウトシテ居ル點
デアリマスル、隨テ前ノ馬場稅制ノ負擔ノ
衡平ニ依リマシテ、當然被害ヲ被ムラナク
テハナラナイ者ニシテ、而シテ結城稅制
ニ依ッテ、其被害ヲ免レタ者カラ見マスレ
バ、結城稅制ハ實ニ我等ノ太陽トシテ仰ガ
レタ所以デアリ、又大藏大臣ソレ自身モ、
ソレニ應ジテ頭上ニハ神ヲ戴キ、背中ニハ
國民ヲ戴イテ驀進スルモノダト云フヤウ
ナコトヲ申サレマシタガ、其驀進サレル最
中、否其當初ニ於テ、其大藏大臣ノ背中カ
ラ滑リ落サレ、脚下ニ蹂躙サレタ所ノ、少數
ノ金融「ブルジョアジー」、產業「ブルジョア
ジー」以外ノ國民大衆ニ取ッテハ、實ニ結
城稅制ハ迷惑至極ナモノト言ハナケレバナ
ラヌノデアリマス、隨テ私ハ此結城稅制ノ
驀進ノ當初ニ於テ、旣ニ足下ニ蹂躪サレタ
多クノ國民大衆ノ立場ニ立ッテ、此結城税制
ニ質問ヲ試ミタイト思フ者デアリマスル
第一私ガ大藏大臣ニ御尋シタイ點ハ、物
價騰貴ノ抑制ト、大衆課稅ノ問題ニ付テヾ
アリマス、林內閣ガ親任式ノ當日ニ開カレ
マシタ初會議ニ於キマシテ、眞ツ先ニ取上
ゲタ所ノ問題ハ、此直面シタ所ノ高物價傾
向ニ對シテ、如何ニ善處スベキカト云フコ
トガ、大キナ問題デアッタノデアリマス、卽
チ現在ノ結城大藏大臣ハ、現下ノ此傾向ヲ
以テ國策遂行ト國民生活上ノ重大關心事デ
アルト斷定シ、是ガ對策ニ對シテ積極的ナ
努力ヲスルコトヲ、天下ニ聲明サレタノデ
アル、此點ハ廣田內閣ノ末期ニ於キマシテ、
現實ノ物價高ト政府ノ無策ニ對スル囂々タ
ル非難トニ鑑ミテ、事實上物價對策ヲ攻究
スルコトヲ餘儀ナクサレナガラモ、眞向カ
ラ此物價問題ヲ取上ゲルコトガ出來ズ、物
價高ヲ以テ單ニ思惑ニ依ル一時的現象ナリ
トシテ、故ラ輕ク取扱ハウトシタ所ノ前ノ
大藏大臣馬場氏ニ較ベレバ極メテ反省的デ
アル、其點ハ吾々ハ認ムルニ吝デハナイ、
然ラバ結城大藏大臣ハ、此物價騰貴抑制問
題ノ手段トシテ、如何ナル手段方法ヲ執ラ
レタカト申シマスレバ、第一番ハ前內閣ノ
厖大豫算ノ縮小デアル、第二番目ニ執ラレ
タノハ、赤字公債減ト、其消化難ノ對策デア
ル、第三番目ニ執ラレタノハ生產力ノ擴充
デアリ、第四番目ニ執ラレタノガ、卽チ本
案ノ馬場稅制案ノ根本的修正デアリ、サウ
シテ第五番目ニ執ラレルノガ明日問題トナ
ラウトスル所ノ、緊急必要ナモノダケノ關
稅制度ノ稅率ノ引上、此五ツノ手段ヲ以テ
結城大藏大臣ハ物價騰貴抑制問題ニ直面サ
レタノデアル、然ラバ此本案ニ問題ニナッテ
テ居ル所ノ、所謂馬場稅制案ノ根本的修正、
卽チ物價騰貴抑制ノ手段トシテノ、馬場稅
制ノ根本的修正ト云フモノハ、果シテ結城
大藏大臣ノ手ニ依ッテ完璧ヲ期セラレタカ
ト申セバ、吾々ハ卽座ニ斷ジテ否ト答ヘナ
クテハナラヌノデアル、結城大藏大臣ハ國
民大衆ノ生活ニ直接影響ヲ與ヘル所ノ消費
稅ニ對シテ、可ナリ思切ッタ減額ヲ爲シタ、
可ナリ成績ヲ擧ゲタト云フヤウナコトヲ仰
シヤルノデアリマスルガ、如何ナル言葉ヲ
以テモ胡麻化スコトガ出來ナイ所ノ事實ノ
上カラ申シマスレバ、私ハ寧ロ大衆課稅ノ
割合ハ、馬場案ニ比シテ更ニ擴大シタモノ
ト斷言シナクテハナラヌ(拍手)試ミニ昭和
十一年度ノ經常部租稅收入ハ收入印紙デ徵
收スル租稅ヲ省イテハ其額ガ九億二千三百万
圓ニナル、直接稅ハ其中四億一千九百万圓、
間接稅ハ五億四百万圓デアル、更ニ此間接稅
ニ「プラス」シテ、專賣益金二億二百万圓ト
云フ數字ガ上ッテ居ル、其數字ヲ馬場サンノ
手デ如何ニ擴大サレタカト申シマスレバ、
租稅收入十四億二千万圓、其中直接稅七億
七千三百萬圓、取引稅ヲ加ヘタ所ノ間接稅
ガ、六億四千六百万圓ト減少シテ居リマス
ルガ、煙草ノ値上、新專賣實施等ニ依リマ
シタ益金二億五千二百万圓ヲ加算致シマス
レバ、馬場財政ニ於キマシテモ間接稅ノ方
ガ多イトシナクテハナラヌ、然ラバ此馬場
案ニ對シテ結城サンハドウ云フ工合ニ手ヲ
入レタカト申シマスレバ、間接稅ニ於キマ
シテ七千六百万圓ヲ減ジラレタ、直接稅ニ
於テ九千四百万圓ヲ減ジテ居ルノデアル、
昨日同僚河上議員ノ質問ニ對シテ、結城サ
ンハ寧ロ間接稅ノ方ガ澤山減ラシタト
言ッテ居ラレルノデアリマスルガ、ソレ
ハ恐ラク結城サン自身ガ、結城サン自身
トシテハ目下〓究中ノ交付金ノ財源、
所得稅二割附加七千八百万圓ヲ、偶然カ故
意カ拔カシテ居ラレル所ノ論斷デアルト言
ハナクテハナラヌノデアリマス(拍手)之ヲ
加算致シマスレバ、明ニ何人ガ申シマシテ
モ否認スルコトガ出來ナイ、數字ノ上ニ於
テ結城財政ハ直接稅ヲ間接稅ヨリモ澤山減
ラシテ居ルト云フヤウナ結果ニナッテ居ル、
斯ウ云フ點ガ果シテ物價騰貴ヲ抑制スル手
段トシテノ、稅制ノ根本的修正トシテ妥當
ナリヤ否ヤト云フコトヲ、吾々ハ聽キタイ
モノデアリマス
更ニ此點ニ關聯シテ私ハ特ニ結城大藏大
臣ノ御考ヲ聽キタイノハ、是ハ政友會ノ太
田氏モ論及サレマシタガ、大藏大臣ハソレ
ニ對シテ答ヘラレナカッタカラ、私ハ繰返シ
テ申スノデアリマス、形式上ハ兎モ角トシ
テ、實質上大衆課稅ニ外ナラナイ所ノ煙草
ノ値段ノ引上ヲバ、再ビ元ノヤウニ引戾ス
意志ガナイカドウカト云フコトヲ吾々ハ聽
キタイノデアル(拍手)昭和十一年度ノ我國
ノ煙草ノ賣上高ノ總額ハ、植民地ヲ除イタ
我ガ日本內地ニ於テハ二億九千五百万圓ヲ
突破シテ居ル、而モ其中約四割强ヲ占メテ
居ル所ノ一億三千万圓以上ト云フモノハ、大
衆煙草ト言ハレテ居ル所ノ「ゴールデンバッ
ト」一ツデ引受ケラレテ居ルノデアル、言葉
ヲ換ヘテ申シマスレバ、煙草ノ値段ノ引上
ニ依ッテ、政府ガ企圖スル所ノ初年度二千五
六百万圓、平年度三千万圓ノ大增收ノ殆ド
大部分デアル二千万圓ヲ突破スルト云フ莫
大ナル數ガ、大衆煙草ノ「ゴールデンバッ
と言葉ヲ換ヘテ申シマスレバ、大衆課稅
ニ依ッテ引上ゲラレヨウトシテ居ル點ヲ、
吾々ハ斷ジテ見逃ガス譯ニ行カナイノデア
ル(拍手)而モ此際吾々ガ考ヘナクテハナラ
ヌノハ、斯ウ云フ煙草ノ値段ノ引上ゲト云
フモノハ、一方ニ酒デアルトカ、砂糖デア
ルトカ、其他ノ消費稅ノ些カナル稅率引上
ニ於テサヘモ、全部議會ノ協贊ヲ得テ法律
ノ形ニ於テ行ハレナクテハナラヌニ拘ラズ、
此煙草ノ値段ノ引上ハ專賣事業デアルコト
ヲ奇貨トシテ、極ク少數ノ官僚ノ獨斷專行
ニ依ッテ、國民大衆ノ生活ガ蹂躪サレルト
云フ點ヲ、吾々ハ斷ジテ見逃ガスコトガ出
來ナイ、若シ大藏大臣ガ在野當時聲明サレ
タヤウニ、經濟ニ人爲的ナ手段ヲ加ヘルコ
トヲ避ケタイト云フ、アノ言葉ガ、ヤハリ
野ニ置ケ蓮華草デハナシニ、政府ニ立タレ
タ其曉ニ於テサヘモ、尙ホ且ツ實現シヨウ
トスル政治的良心ノ一片ノ破片サヘアルナ
ラバ、此煙草ノ値上ヲドウサレルカ、就中
吾々ノ大キナ問題ニナッテ居ルノハ、所謂物
價騰貴ノ問題デアル、勿論此物價騰貴ノ原
因ハ、厖大ナル豫算ヲ其原因トスルモノデ
アルガ、併ナガラ吾々日本ノ最近ノ物價騰
貴ノ先鞭ヲ著ケタモノハ何デアルカト言ヘ
バ、政府自ラガ去年十一月十一日國民大衆ノ
日常生活ニ直接影響ヲ與ヘル所ノ煙草ヲバ
二割、三割上ゲテカラニ、國民生活ヲ蹂躪
スル範ヲ政府自ラ垂レタノガ、現在ノ物價
騰貴ノ先鞭デアリ、先頭ヲ切ッタモノデア
ルト言ハナクテハナラヌノデアル(拍手)結
城大藏大臣ハ是等ノ點ニ考ヘラレテ、國民
大衆ノ生活安定ノ問題カラ、而モ物價騰貴
ヲ抑制スル立場カラ、日本ノ現在ノ物價騰
貴ノ先頭ヲ切リマシタ此煙草ノ値段ノ引上
ヲバ、元通リ戾ス所ノ意思アリヤ否ヤ、更
ニ又吾々ハ此際考ヘナクテハナラヌノハ、
假令漸進的デハアルガ、庶政一新ヲシヨウ
ト云フ政府ハ、將來斯ウ云フヤウナ國民大
衆ニ直接影響ヲ與ヘル所ノ煙草ノ値段ノ引
上ノ如キハ、宜シク少數ノ官僚ノ獨斷專行
ノ手カラ奪ッテ、吾々議會政治ノ下ニ於テ
ハ吾々ニ相談ヲシテ法律ノ形ニ於テ、初メ
テ斯ウ云フコトガ爲シ得ルト云フ制度ヲ作
ラレル必要ガナイカドウカト云フ點ヲ、吾
吾ハ聽キタイノデアル
更ニ吾々ハ第二點トシテ大藏大臣ニ聽キ
タイノハ、何デアルカト申シマスレバ、大
藏大臣ハ過日ノ同僚河上丈太郞君ノ質問ニ
對シマシテ、結城大藏大臣ハ自分ハ資本主
義ノ擁護者デナイト云フコトヲ斷言サレ、
更ニ言葉ヲ續ケテ、現在ノ非常時局ニ對シ
テハ、國民全體ガ租稅ヲ負擔シテ貰ヒタイト
云フヤウナコトヲ言ハレ、恰モ稅金ヲ納メ
ルノハ、少數ノ結城大藏大臣ノ周圍ノ金持
階級ダケデ、一般ノ國民大衆ハ稅金ヲ納メ
ナイヤウナ、實ニ不埒ナコトヲ言ッテ居ラ
レルノデアル、吾々ハ此點ニ於テ考ヘテ貰
ヒタイト云フノハ、現在日本ノ租稅制度ノ
一番致命的ナ缺陷ハ何デアルカト言ヘバ、
ソレハ箆棒ニ消費稅ガ多イ、更ニ其上ニ篦
棒ニ專賣益金ト云フ、官僚ノ獨斷專行ノ手
ニ依ッテ自由ニサレル所ノ金額ガ多イ、是
ハ現在ノ日本ノ租稅制度、就中國民生活安
定問題ト關聯シタ所ノ租稅制度ノ、致命的
ナ缺陷デアルト言ハナクテハナラヌノデア
ル、卽チ國民大衆ハ色々ノ間接稅、色々ノ
消費稅ノ形ニ於テ、稅金ノ殆ド六割、七割
ヲモ納メテ居リナガラ、尙且ツ一片ノ配賦
ト云フ形式ヲ執ラナイガ故ニ、稅金ヲ納メ
タト云フヤウナ氣持ニナレナイ、卽チ知ラ
ナイ間ニ澤山ノ稅金ヲバ搾取ラレルト云フ
勘定ニナル、隨テ今日國民大衆ノ多クハ、
租稅ニ對シテ無關心ナ狀態ニ突落サレ、延
イテハ政治其モノニ對シテモ、無關心ナ狀
態ニ突落サレテ居ルノデアル、若シ結城大
藏大臣ガ此非常時ヲバ、國民大衆ト共ニ租
稅ノ上ニ於テ協力シタイト云フ考ガアルナ
ラバ、宜シク斯ウ云フヤウナ、インチキ
ナ、知ラズ識ラズニ取ラレルヤウナ斯ウ云
フ消費稅ヲバ、徹底的ニ改正スル意思ガナ
イカドウカト云フ點ヲ、吾々ハ質問スルノ
デアル(拍手)
更ニ私ハ第三ニ大藏大臣ニ御尋シタイノ
ハ、租稅ノ轉嫁問題デアル、言葉ヲ換ヘテ
申シマスレバ、金持階級負擔ノ稅金ガ易々
ト無產大衆ノ肩ニ轉嫁サレルト云フ、其轉
嫁問題ニ關シマシテ、大藏大臣ノ所見ヲ私
ハ聽キタイト思フノデアリマス、今日ノ本
案ノ審議ニ於キマシテモ、更ニ一般質問ノ
時ニ於キマシテモ、吾々ハ之ヲ耳ニシタノ
デゴザイマスガ、旣成政黨ノ人々ハ法人所
得十割引上ゲ、六千二百五十六万一千圓ト
云フ其金額ガ、或ハ資本ノ蓄積ヲ妨害シ、
或ハ公債消化難ニ陷レルモノデアル、更に
甚シキハ產業ヲ破壞スルモノデアルト云フ
ヤウナコトヲ、極力言ハレテ居ルノデア
ル、之ニ對シテ大藏大臣ハ只今モ同僚岸田
君ノ質問ニ對シテ、資本家ニ對スル稅金ハ
重過ギルト思フガ、併ナガラ將來ハ必ズ輕
クスルト云フヤウナコトヲ、御答ニナッテ
居ルノデアル、併ナガラ諸君、現在ノ7
ルジョア」經濟學者ハ、金持階級ガ負擔ス
ル所ノ稅金ハ直接稅デアル、之ニ反シテ貧
乏人階級ガ負擔スル所ノ稅金ハ、間接稅デ
アルト云フ工合ニ、ハッキリ區別シテ居ル
ガ、是ハ大キナ間違デアル、現在ノ資本主
義經濟組織ノ下ニ於テハ、無產大衆ニ課カ
ル所ノ稅金ハ單ニ間接稅、消費稅ダケデハ
ナイ、金持階級ニ課カル所ノ稅金モ色々ナ
形、色々ナ手段方法ニ依ッテ、結局ハ無產
階級ノ肩ニ轉嫁サレルノガ、今日ノ資本主
義經濟組織ノ原則デアル、例ヘバ一例ヲ
取ッテ考ヘマスレバ、アノ若クシテ倒レタ
藤井大藏大臣ノ時ニ、如何ナル現象ヲ吾々ハ
見セ付ケラレタカ、僅カ三千万圓ノ臨時利得
稅、其問題ガ起ック時ニドウ云フ現象ガ起ッ
タカト申シマスレバ、ソレマデ軍需「イ
ンフレ」ノ波ニ依リマシテ、消極的ナ「ス
トライキ」ハ影ヲ潜メテ、寧ロ積極的ナ「ス
トライキ」ガ、グン〓〓ノシテ居ッタニ拘ラ
ズ、一度僅ニ此三千万圓ノ臨時利得稅ガ起
リマスト、勞働界ニ於テハ非常ナル衝擊ヲ
與ヘラレマシテ、忽チ勞働ハ從來ノ攻勢ヨ
リ守勢トナッテ、資本家ノ勞働賃銀ノ引下
ゲ、或ハ又勞働强化ヲ原因トシタ所ノ「ス
トライキ」ガ、雨後ノ筍ノヤウニ發生シタ
ト云フ其事實ニ依ッテ、如何ニ現在ノ租稅
制度ノ下ニ於テ、直接稅ト云フモノガ易々
ト勞働階級、無產階級ノ肩ニ轉嫁サレルモ
ノデアルカト云フコトハ、火ヲ諸ルヨリモ
明ナ事實デアルト吾々ハ言ハナクテハナラ
ヌノデアル(拍手)是ハ單ニ私ガ現ニ此處
デ放言スルダケデハゴザイマセヌ、試ミニ
昭和十一年七月十八日發行ニ係ル社會局勞
働部ノ勞働時報、勞働運動ノ〓況ト云フ此
本ニ、其當時ノ所謂「ストライキ」ノ率、其
原因ト云フモノガハッキリト書カレテ居ル
狀態デアル、而モ私ハ單ニ此法人所得ト云
フモノヲバ、旣成政黨ノ人々ノヤウニ、資
本ノ蓄積ヲ妨害スルトカ、或ハ產業ヲ破壞
スルトカ、サウ云フ點ニ處斷スルコトハ出
來ナイ、吾々ハ試ミニ此處ニ大藏省理財局
ガ昭和十年ニ調ベマシタ、金融事項參考書
ノ切拔ヲ持ッテ居リマスガ、之ニ依リマスレ
バ、所謂昭和六年カラ昭和九年、非常時四
年間ニ於ケル所ノ各會社ノ配當金ガ載ッテ
居リマスルガ、ソレニ依リマスレバ昭和六
年ノ配當金ハ五億四千万圓デアル、ソレガ
昭和九年ニ於テハ八億一千万圓ト云フヤウ
ナ狀態ニナッテ居ル、言葉ヲ換ヘテ申シマス
レバ、非常時四年間ニ約三億圓ト云フ著シ
イ增加ヲ示シテ居ルノデアル、更ニ又積立金
額ハドウ云フ工合ニナッテ居ルカト言ヘバ、
昭和六年ニハ三十三億五千万圓、ソレガ昭
和九年ニハ三十九億五千万圓ト云フ、所謂
六億圓ト云フ增加ヲシテ居ルノデアル、而
モ斯ウ云フヤウナ素晴シイ成績ヲ擧ゲテ居
リナガラ、其間政府ガ所有課稅ノ一ツトシ
テ賦課シタ、國稅ノ中樞稅デアル所得稅ノ
收入ハ、ドウ云フ工合ニナッテ居ルカト申シ
マスレバ、昭和六年ノ決算ニ於テハ一億四
千四百万圓、ソレガ昭和九年ノ現計ニ依ッテ
ハ一億九千六百万圓、僅カニ五千二百万圓
シカ增加シテ居ラナイノデアル、斯ウ云フ
數字ヲ見マシテモ、吾々ハ轉嫁ト云フ其事
實ヲ度外視シテ、此數字ダケヲ見マシテモ、
所謂法人所得十割引上ト云フモノハ、旣成
政黨ノ人ガ言ハレルヤウニ、產業ヲ破壞ス
ルモノデモナク、資本ノ蓄積ヲ妨害スルモ
ノデモナイ、モットウント取レト吾々ハ主張
スルノデアル(拍手)此點ニ關シマシテ大藏
大臣ハ、如何ナル所見ヲ持ッテ居ラレルカ、
之ヲ吾々ハ聽キタイノデゴザイマス、更ニ
又吾々ハ其轉嫁論ヲ申シマシタ其結果ト致
シマシテ、考ヘナクテハナラナイノハ、所
謂大衆轉嫁ノ比較的困難ノモノトシテ、財
產稅ト相續稅ヲ吾々ハ考ヘルコトガ出來ル、
此財產稅ニ關シマシテハ、澤山ノ議論ガアッ
タノデアリマスルガ、寧ロ吾々ハ此馬場稅制
ヲバ修正シテ、結城サンノヤウニスル必要
ハ全然ナイト思フ、結城サンハ之ニ反シマ
シテ、或ハ又不動產重課ニ陷ル弊害ガアルト
カ、或ハ又調査費ニ澤山喰ハレル、調査困
難デアルト云フヤウナコトヲ言ッテ居ラレ
ルガ、此財產稅ト云フヤウナモノハ、單ニ
名目的ノ財產稅デアッテ、一種ノ所得稅ト何
等本質的ニ異ナラナイモノデアルト吾々ハ
思フ、又獨逸ノ例ヲ取リマシテモ、所謂千分
ノ五ノ、法人個人一律ニ課サレマシタ是等
ノ稅ニ付テ見マシテモ、態々之ヲ僅カバカ
リノ法人ダケニ限定スル根柢ハ絕對ニナイ
ノデアル、又相續稅ノ如キモ多少引上ッテハ
居リマスルガ、之ヲ英吉利、亞米利加ノ相
續稅ノ最高率ニ較ベマスレバ、吾々ハ此不
勞所得ニ過ギナイヤウナ相續稅ニ關シマシ
テハ、モットウント稅金ヲ課スベキモノデハ
ナカラウカ、言葉ヲ換ヘテ申シマスレバ、
大衆課稅驀進ニ勇敢ナル所ノ結城稅制ハ、
是等ノ財產稅、相續稅ニモモット驀進ノ馬力
ヲ掛ケナケレバナラナイト思フノデア
ル(拍手)吾々ハ更ニ又第二種所得稅ノ源泉
課稅ノ復歸デアルトカ、或ハ株式所得ノ二
割控除デアルトカ、ソレ等ノ點ニ關シマシ
テ、何故結城サンガ斯ウ云フヤウナ素朴的
ナ租稅原則ヲ犠牲ニシテ迄モ、一部ノ金融
「ブルジョアジー」ニ奉仕シナケレバナラ
ナイカト、ソレ等ノ點ヲ聽キタイノデアリ
マスルガ、時間ノ都合上ソレ等ハ委員會ニ
讓ルコトニ致シマシテ、私ハ最後ニ結城サ
ンニ特ニ御考ヲ願ヒタイノハ、將來ノ增稅
ト云フモノハ、益〓大衆課稅ニ驀進スルヨ
リ外コ途ガナイデハナイカ、此點ヲバ特ニ今
日私ハ考ヘテ戴キタイト思フノデゴザイマス、
卽チ結城大藏大臣ハ先日此本會議ニ於キマシ
テ、民政黨ノ川崎氏ノ質問ニ對シマシテ、將來
財政ノ見透シガ付カナイト云フ所ノ一國ノ大
藏大臣トシテハ考ヘルコトガ出來ナイヤウナ
「ドンキーホーテ」式ナ放言ヲサレテ居ルノ
デアル、是ヲバ昨日ノ議場ニ於キマシテ中
野正剛君ニ突込マレタ時ニ、結城サンハ答
ヘテ曰ク、イヤ財政ノ見透シガ付カヌノデ
ハナイ、計數的ノ見透シガ付カナイノデア
ルト云フヤウナ、三十年前ノ三百代言式ノ
答辯ヲシテ居ル、計數的ノ見透シガ付カナ
イト云フコトハ、結局財政ノ見透シガ付カ
ナイト云フコトニナルノデハナイカ、計數
ナシニ財政ノ見透シガ何處ニアルデセウ、
更ニ又結城大藏大臣ハ、嘗テ廣田總理大臣
ガ外務大臣ノ時ニ、此議會デ言明サレタ故
智ニ做ハレマシテ、今カラデハ既ニ遲イノ
デゴザイマスガ、自分ガ大藏大臣ノ時ニ於
テハ、財政ノ將來ニ關シテハ何等憂フル所
ガナイト云フヤウナ、廣田外務大臣張リノ
放言ヲサレテ居ルノデアリマス、廣田サン
ガ初メテ議會ヲ通ジテ、サウ云フヤウナコ
トヲ放言サレタ時ニハ、極度ノ焦土外交ニ
困ッテ居ッタ日本ノ民衆ハ、拍手喝采シタノ
デゴザイマスルガ、其後サウ云フヤウナ聲
明ニ拘ラズ、前ノ廣田外務大臣或ハ總理大
臣ノ下ニ於テハ、準戰時、或ハ戰爭危機ガ
一步々々前進スル姿ヲ見テ、吾々ハ非常ナ
落膽ヲ感ジタノデアリマス、言葉ヲ換ヘテ
申シマスレバ、現在ノ資本主義經濟組織ノ
事物ノ必然的ナ進行ト云フモノハ、此漂々タ
ル一大臣ノ聲明ニ依ッテ左右サレルモノデ
ナイト云フコトヲ、吾々ハ信ジテ居ル、如
何ニ大藏大臣ガ左樣ナ一片ノ聲明ヲシヨウ
ガ、資本主義經濟組織ノ必然的ナ進行ト云
フモノハ、サウ云フ聲明ヲ乘越エテ、大藏
大臣ノ個人的意思ヲバ超越シテ、必然ニ進
ンデ行クト云フノガ原則デアルト云フコト
ハ申ス迄モナイノデアル
更ニ吾々ハ露骨ニ申シマスレバ、斯ウ云
フヤウナ計數ノ見透シガ立タナイト云フヤ
ウナコトヲ、大藏大臣ハ言ハレタガ、吾々
ノ眼カラ見レバ、計數ノ見透シハ立ツト思
フ、唯計數ノ見透シハ立ッテモ、其通リノ財
政計畫ヲ行ウテ行ク時ニハ、單ニ物價騰貴ト
云フヤウナ生優シイモノデナシニ、生活不安
ヲバ直接ニ反映シタ所ノ、國民大衆生活不安
ヲ動機トシテ、如何ナル不安、如何ナル事變
ガ勃發スルカモ知レナイト云フ社會不安、ソ
レ自體ガ大藏大臣ヲシテ財政ノ見透シガ付カ
ナイト言ハシメタ點デアルト、私ハ確信シテ
憚ラナイノデアル(拍手)私ハ此點ニ關シマ
シテ大藏大臣ノ本議場ヲ通ジテ世界ニ聲明
シタ、サウ云フ財政ノ見透シガ付カナイト云
フコトガ、現在ノ資本主義組織ノ根本的ナ煩
悶ニ外ナラナイト思フノデゴザイマス、今
日我ガ日本ノ資本蓄積ハ、近年軍需(3)
フレ」ノ强行ニ依リマシテ、著シク增大シ
タケレドモ、ヤハリ是モ民政黨ノ川崎氏ガ
指摘サレタヤウニ、大體十四五億程度ヲ出
ナイト吾々ハ考ヘルノデアル、此貧弱ナル
資本蓄積ヲ繞ッテ吾々ガシナクテハナラヌ
ノハ何デアルカト言ヘバ、所謂增稅問題デ
アル、更ニ又公債ノ問題デアル、更ニ又內
地滿洲ヲ包含シタ生產資本ノ問題デアル、
更ニ又海外ヘノ支拂問題デアル、此四ツノ
相矛盾シ、相競合スル所ノ問題ガ、此貧弱
ナル資本蓄積ヲ中心ニ湧キ起ッテ居ルト云
フノガ、現在日本ノ資本主義ガ內藏スル所
ノ矛盾デアリ、煩悶ニ外ナラナイノデアリ
マス、隨テ此矛盾ヲ克服シ、此煩悶ヲ突破
シテ進ムノニハ、結局現在ノ行詰ッタ資本
主義經濟組織ヲ打倒スルヨリ外ニ途ガナイ
ト、吾々ハ思フノデアル(拍手)故ニ前ノ馬場
大藏大臣ハ一方ニ於テハ軍事豫算、一方ニ於テ
ハ庶政一新ノ豫算ヲチョッピリト含メマシテ、サ
ウシテ場合ニ依レバ此目的遂行ヲ妨グル時
ハ、或ル程度資本主義經濟組織ヲバ、是正シ
ナクテハナラヌト云フヤウニ仄カシタノデアル、
之ニ反シマシテ結城大藏大臣ハ金融「ブル
ヂョアジー」ノ太陽「エース」トシテ吾々ノ
前ニ現ハレマシテ、サウ云フヤウナ急激ナ
コトハ御免蒙ル、漸進的ニ庶政一新ヲヤッテ
行キタイト云フコトヲ聲明サレタ、言葉ヲ
換ヘテ申シマスレバ、ソレ等ハ結局ハ少數
ノ金融「ブルジョアジー」少數ノ產業資本家
ノ御用ヲ勤ムル外ニ途ハナイノデアル、論
ヨリ證據、私ハ斯ウ云フコトハ言ヒタクハ
ゴザイマセヌガ、嘗テ吾々國民大衆ノ腦裡
ニ深ク刻ミ込マレテ、忘レヨウトシテ忘レ
ルコトガ出來ナイアノ圓賣、弗買ノ張本人
ノ何トカ云フ人ヲバ、事モアロウニ、圓ノ
王座デアル日本銀行ノ總裁ニ据付ケテ、結
城池田ノ「コンビ」ヲ以テ吾々國民大衆ニ
臨ンデ來タト云フコトハ、今ヤ金融「ファッ
ショ」トナッテ吾々ノ大衆生活ヲ壓迫スル意
圖デアルト云フコトヲ、吾々ハ明々白々ニ
知ルコトガ出來ルノデアル、吾々ハ此人ヲ
バ日銀ノ總裁ニ据エタコトハ、金融資本ノ
全面的ナ勝利ヲ物語ルモノデナクシテ何ゾ
ヤ、更ニ又半面的ニ申シマスレバ、アノ廣
義國防ヲ唱ヘタ軍部ガ、此度ノ所謂池田結
城ノ「コンビ」ニ妥協ト云フヨリモ、寧ロ屈服
シタト云フコトハ、結局軍部ソレ自體ノ金
融資本ヘノ屈服ヲ立證スルモノデアリ、ア
ノヤカマシク叫バレタ廣義國防ト雖モ、結
果論的ニ言ヘバ、軍事費獲得ノ爲ニ、國民
ヲ欺瞞スル所ノ「スローガン」デナカッタカ
ト云フヤウナ感ヲ懷カシメルコトハ、吾々
ノ洵ニ遺憾トスル所デアリマス(拍手)此點
ニ關シテハ大藏大臣ト共ニ、出來ルナラバ
杉山陸軍大臣、更ニ又先ノ資本轉嫁ノ問題
ニ關スル其防衞手段トシテノ勞働組合ノ問
題ニ關シテ、內務大臣ノ所見ヲ吾々ハ伺ヒ
タイト思フノデアリマス
吾々ハ斯ウ云フ工合ニ考ヘテ參リマスト、
結局結城大藏大臣ガ必然的ニ行カナクテハ
ナラヌ途ハ何デアルカ、ソレハ增稅ノ問題、公
債ノ問題、生產資本ノ問題、海外支拂ノ問題、
ソレ等ノ四ツノ矛盾ヲバ解決スルコトガ出
來ナクテ、漸進的ナ庶政一新、少數ノ金融
「ファッショㄴニ屈服シテ行ク、卽チ資本ノ
蓄積力ニ直接影響、被害ヲ與ヘナイ所ノ財
政計畫、言葉ヲ換ヘテ申シマスレバ、大衆
生活ヲ犠牲ニシ、大衆ノ血ヲ啜ル所ノ大衆
課稅ニ驀ラニ驀進スルヨリ外ニ途ハナイト、吾
吾ハ斷言スルノデアル、前ノ特別議會ニ於
テ、我ガ同僚ノ河上丈太郞氏ハ、馬場大藏大
臣ト財政問答ヲシテ、結局馬場財政ハ將來大
衆課稅ニ驀進スルヨリ外ニ途ハナイト言ッタ
ニ對シ、アノ馬場大藏大臣ハ、ナニ大衆課
稅ニ驀進スルノデハナイ、假令大衆課稅ヲシ
テモ、ソレハ、大衆生活ヲ壓迫シナイ大衆課稅
デアル、マルデ天勝ノ手品ノ世界ニデモ行
カナケレバ、見ラレナイヤウナ答辯ヲシクノデ
アル、之ニ對シテ東京ノ某新聞ハ、此河上ト馬
場大藏大臣ノ問答ガドチラガ正シイカハ僅
カ六箇月經タナイ中ニ解決スルダラウト云フ
コトヲ言ッタ、私ハ今日大藏大臣結城氏ニ更
メテ質問スル、果シテアナタノサウ云フヤ
ウナ態度デ行クナラバ、結局ハ此資本蓄積
ニ直接影響ナイ所ノ、大衆課稅ニ驀進スル
ヨリ外ニ途ハナイデハナイカ、此點ニ關シ
テ結城大藏大臣ノ明確ナル答辯ヲ煩シタイ
ト思フノデアリマス(拍手)
〔國務大臣結城豊太郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X00919370219&spkNum=35
-
036・結城豊太郎
○國務大臣(結城豊太郞君) 水谷君ノ御質
問ニ對シテ御答ヲ致シマス、消費稅ノ負擔
ニ付キマシテハ、愼重ニ考究スベキモノト
考ヘテ居リマス、煙草ノ値下ニ付キマシテ
ハ今直チニ元ニ復スルト云フヤウナコト
ハ出來マセヌノデ······(水谷長三郞君「何故
出來ナイ、出來ナイ理由ヲ」ト呼フ)種々ナ
ル理由ガアリマス、是ハサウ御承知置キヲ
願ヒマス、法人所得稅モ是ハ相當ニ重課シ
テ居リマス、今後稅制ヲ整理致シマス時
ニ、其方面ノ負擔ノ衡平ヲ考ヘマシテ、十
分ニ檢討スル積リデアリマス、其邊デ御承
知置キヲ願ヒマス
〔國務大臣河原田稼吉君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X00919370219&spkNum=36
-
037・河原田稼吉
○國務大臣(河原田稼吉君) 物價ノ暴騰ト
云フコトガ、一番人心ヲ脅威スルモノト考
ヘルノデアリマシテ、今日ノ急務ハ物價ノ
暴騰ヲ抑ヘテ、人心ヲ安定セシムルト云フ
コトガ、最モ必要ナコトト思ヒマス(水谷
長三郞君「勞働者ハドウスル」ト呼フ)勞働
者ハ、ヤハリ國民ノ一部トシテ同樣ノ立場
ニ在ルト考ヘルノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X00919370219&spkNum=37
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038・水谷長三郎
○水谷長三郞君 只今總理大臣及內務大臣
カラ答辯ニ成ラナイ答辯ヲ吾々ハ聽カサレ
タノデアリマスルガ、例ヘバ小サイ煙草ノ
問題ニ關シテモ、唯單ニ出來ヌト、其理由
ヲ答ヘルコトガ出來ナイノデアリマス、私
等ハ若シ現內閣ノ諸公ガ假令漸進的デハア
ルガ、庶政一新ト云フヤウナコトヲ口ニス
ル限リ、而モ其上ニ立ッテ煙草ノ値段サヘ
モドウスルコトモ出來ナイト云フヤウナザ
マデアレバ、今後モウ現內閣ハ吾々ノ前ニ
庶政一新トカ、サウ云フヤウナ生意氣ナコ
トハ言ハナイコトヲ要望スル次第デアリマ
ス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X00919370219&spkNum=38
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039・岡田忠彦
○副議長(岡田忠彥君) 日程第一乃至第六
ノ議案ニ對スル殘餘ノ質疑ハ、全部通告ヲ
取消サレマシタ、仍テ是ニテ質疑ハ終了致
シマシタ、玆ニ各案ノ審議ヲ付託スベキ委
員ノ選擧ニ付テ御諮リ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X00919370219&spkNum=39
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040・松永東
○松永東君 日程第一乃至第六ノ六案ヲ一
括シテ、議長指名三十六名ノ委員ニ付託セ
ラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X00919370219&spkNum=40
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041・岡田忠彦
○副議長(岡田忠彥君) 只今ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X00919370219&spkNum=41
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042・岡田忠彦
○副議長(岡田忠彥君) 御異議ナシト認メ
マス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X00919370219&spkNum=42
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043・松永東
○松永東君 殘餘ノ日程ヲ延期シ本日ハ是
ニテ散會セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X00919370219&spkNum=43
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044・岡田忠彦
○副議長(岡田忠彥君) 松永君ノ動議ニ御
異議アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X00919370219&spkNum=44
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045・岡田忠彦
○副議長(岡田忠彥君) 御異議ナシト認メ
マス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ、次會ノ議
事日程ハ公報ヲ以テ通知致シマス、本日ハ
是ニテ散會致シマス
午後五時五十三分散會
衆議院議事速記錄第八號中正誤
頁段行誤正
一二五四二柏車拍車
一二八四一五柏車拍車
一二九。 一柏車拍車
一三二二三〇ダケ具ハ、ヘダケハ具ヘ
一三九一三九素樸素朴
「ボランタ一ボランタ
一三九二三九リーウォーリー·ウォ
〃ーク」
一三九三一四多血ナラ多血ナル発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X00919370219&spkNum=45
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