1. 会議録本文
本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。
-
000・会議録情報
昭和十二年二月二十七日（土曜日）
午後一時三十八分開議
━━━━━━━━━━━━━
議事日程 第十四號
昭和十二年二月二十七日
午後一時開議
第一 アルコール專賣法案（政府提出） 第一讀會
第二 一般會計歳出の財源に充つる爲特別會計より爲す繰入金に關する法律案（政府提出） 第一讀會
第三 對支文化事業特別會計法中改正法律案（政府提出） 第一讀會
第四 一般會計歳出の財源に充つる爲大藏省預金部特別會計より爲す繰入金に關する法律案（政府提出） 第一讀會
第五 農地法案（政府提出） 第一讀會
第六 鐵道敷設法中改正法律案（政府提出） 第一讀會
第七 議院法中改正法律案（政府提出） 第一讀會
第八 救護法中改正法律案（政府提出） 第一讀會
第九 母子保護法案（政府提出） 第一讀會
第十 輸出補償法中改正法律案（政府提出） 第一讀會
第十一 漁船保險法案（政府提出） 第一讀會
第十二 漁船再保險特別會計法案（政府提出） 第一讀會
第十三 森林火災國營保險法案（政府提出） 第一讀會
第十四 森林火災保險特別會計法案（政府提出） 第一讀會
第十五 恩給法中改正法律案（政府提出） 第一讀會
第十六 恩給金庫法案（政府提出） 第一讀會
第十七 會計檢査院法中改正法律案（政府提出） 第一讀會
第十八 國民健康保險法案（政府提出） 第一讀會
第十九 樺太市制案（政府提出、貴族院送付） 第一讀會
━━━━━━━━━━━━━発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X01319370227&spkNum=0
-
001・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 諸般ノ報〓ヲ致サ
セマス
〔書記官朗讀〕
一政府ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
保健所法案
結核豫防法中改正法律案
(以上二月二十七日提出)
〔左ノ報告ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノ爲
玆ニ揭載ス)
一議員ノ異動左ノ如シ
北海道第五區選出議員三井德寶君辭職セ
ラレタルニ付其ノ補闕トシテ木下成太郞
君當選セラレタリ
千葉縣第一區選出議員本多貞次郞君死去
セラレタリ
一政府ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
昭和十二年度歲入歲出總豫算案竝昭和十
二年度歲入歲出豫算案修正
豫算外國庫ノ負擔トナルベキ契約ヲ爲ス
ヲ要スル件修正
(以上二月二十六日提出)
恩給法中改正法律案
恩給金庫法案
會計檢査院法中改正法律案
國民健康保險法案
(以上二月二十五日提出)
一議員ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
小作法案
提出者
杉山元治郞君黑田壽男君
由谷義治君平野力三君
狩獵法中改正法律案
提出者鈴木正吾君
司法書士法中改正法律案
提出者
中山福藏君內藤正剛君
競爭入札ノ取締等ニ關スル法律案
提出者福田關次郞君
水上生活者アパート建設ニ關スル建議案
提出者河野密君
守實日田間鐵道敷設ニ關スル建議案
提出者
重松重治君金光庸夫君
一宮房治郞君朝倉每人君
〓瀨規矩雄君綾部健太郞君
小野廉君
名古屋富山間縣道ヲ國道ニ編入ニ關スル
建議案
提出者
日比野民平君加藤鯛一君
服部崎市君
久慈川改修ニ關スル建議案
提出者中井川浩君
電信線電話線建設條例改正ニ關スル建議
案
提出者佐藤與一君
沖繩縣宮古郡ニ飛行場設置ニ關スル建議
案
提出者
盛島明長君花城永渡君
漢那憲和君仲井間宗一君
伊禮肇君
小倉ヨリ後藤寺廿木太刀洗ヲ經テ鳥栖ニ
至ル鐵道建設ニ關スル建議案
提出者
池田秀雄君中村又一君
勝正憲君小林三郞君
中野邦一君
國立劇場建設ニ關スル建議案
提出者
牧野良三君安藤正純君
犬養健君松村光三君
石坂豐一君片山哲君
各戰役殊動者優遇ニ關スル建議案
提出者
小高長三郞君出井兵吉君
田中亮一君
土讃線伊野驛ヨリ本川村ヲ經テ伊豫線ニ
至ル鐵道建設ニ關スル建議案
提出者尾崎重美君
土讚線大杉驛ヨリ別子ヲ經テ新居濱ニ至
ル鐵道建設ニ關スル建議案
提出者
長野長廣君小野寅吉君
北海道帝國大學ニ人文科學ニ關スル學部
及水產學科設置ニ關スル建議案
提出者
東武君岡田伊太郞君
登坂良作君南條德男君
尾崎天風君東條貞君
(以上二月二十五日提出)
一議員ヨリ提出シタル質問主意書左ノ如シ
國體及士風ノ隆汚ニ關スル質問主意書
提出者田川大吉郞君
世界資源再分割ト新國策樹立ニ關スル質
問主意書
提出者福田關次郞君
衆議院議員選擧法中改正法律案提出ニ關
スル質問主意書
提出者靑木亮貫君
(以上二月二十五日提出)
一去二十五日常任委員補闕選擧ノ結果左ノ
如シ
第二部選出
豫算委員宮澤胤勇君(平川松太郞
君補闕)
第八部選出
豫算委員北勝太郞君(北昤吉君補
關
一去二十五日常任委員理事補闕選擧ノ結果
左ノ如シ
豫算委員
理事龜井貫一郞君(理事杉山元治郞
君去二十五日理事辭任ニ付其
ノ補闘)
一去二十五日議長ニ於テ辭任ヲ許可シタル
常任委員左ノ如シ
第四部選出豫算委員芦田均君
第五部選出豫算委員村上國吉君
第五部選出豫算委員若宮貞夫君
第七部選出豫算委員今井健彥君
第七部選出豫算委員川崎克君
第二部選出請願委員小林三郞君
第一部選出建議委員粟山博君
第五部選出建議委員田中万逸君
第八部選出建議委員靑木亮貫君
第九部選出建議委員北勝太郞君
一去二十五日議長ニ於テ選定シタル委員左
ノ如シ
郵便法中改正法律案(政府提出)委員
大島寅吉君多田滿長君
〓寛君古田喜三太君
角源泉君永田良吉君
綾部健太郞君紅露昭君
宮澤〓作君
絲價安定施設法案(政府提出)外一件委員
紫安新九郞君小山邦太郞君
飯田助夫君野田文一郞君
小山倉之助君百瀨渡君
最上政三君粟山博君
橫川重次君篠原義政君
助川啓四郞君森幸太郞君
瀨川嘉助君生田和平君
田中彌助君靑木精一君
山崎釼二君平野力三君
一去二十五日ニ於ケル特別委員ノ異動左ノ
如シ
軍事救護法中改正法律案(政府提出)外一
件委員
辭任坪山德彌君補關石坂豐一君
關稅定率法中改正法律案(政府提出)外四
件委員
辭任柏木〓治君補闕坂下仙一郞君
一昨二十六日衆議院規則第十五條ニ依リ議
長ニ於テ議席ヲ左ノ通指定セリ
一一六木下成太郞君
一昨二十六日常任委員補關選擧ノ結果左ノ
如シ
第一部選出
建議委員仲西三良君(粟山博君補
關
第二部選出
請願委員鏑木忠正君(小林三郞君
補闕)
第四部選出
豫算委員中村嘉壽君(芦田均君補
關
第五部選出
豫算委員高田耘平君(村上國吉君
補關)
第五部選出
豫算委員八角三郞君(若宮貞夫君
補闘)
第五部選出
建議委員大島寅吉君(田中万逸君
補闕)
第七部選出
豫算委員河野一郞君(今井健彥君
補闕)
第七部選出
豫算委員角源泉君(川崎克君補
關
第八部選出
建議委員植村嘉三郞君(靑木亮貫君
補闕)
第九部選出
建議委員田中耕君(北勝太郞君
補闕)
一昨二十六日常任委員理事補關選擧ノ結果
左ノ如シ
豫算委員
理事西村茂生君(理事今井健彥君
去二十五日委員辭任ニ付其ノ
補闕)
理事杉山元治郞君(理事龜井貫一郞
君昨二十六日理事辭任ニ付其
ノ補闕)
一昨二十六日議長ニ於テ辭任ヲ許可シタル
常任委員左ノ如シ
第一部選出豫算委員永山忠則君
第八部選出豫算委員金井正夫君
第三部選出決算委員中野邦一君
一昨二十六日委員長及理事互選ノ結果左ノ
如シ
軍事救護法中改正法律案(政府提出)外一
件委員
委員長川島正次郞君
理事
手代木隆吉君八角三郞君
郵便法中改正法律案(政府提出)委員
委員長永田良吉君
理事
〓寛君紅露昭君
絲價安定施設法案(政府提出)外一件委員
委員長紫安新九郞君
理事
小山邦太郞君飯田助夫君
横川重次君
一昨二十六日ニ於ケル特別委員ノ異動左ノ
如シ
郵便法中改正法律案(政府提出)委員
辭任古田喜三太君補闕眞鍋儀十君発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X01319370227&spkNum=1
-
002・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 是ヨリ會議ヲ開キ
マス、御諮リ致シマス、第一部選出豫算委
員池崎忠孝君、右常任委員辭任ノ申出ガア
リマス、之ヲ許可スルニ御異議アリマセヌ
カ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X01319370227&spkNum=2
-
003・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 御異議ナシト認メ
やっ、仍テ許可スルニ決シマシタ、其部ノ
諸君ハ速ニ補關選擧ヲ行ヒ、御屆アランコ
トヲ望ミマス
諸君、議員本多貞次郞君昨二十六日逝去
セラレマシタコトハ、洵ニ痛惜哀悼ノ至ニ
堪ヘマセヌ、此際多田滿長君ヨリ發言ヲ求
メラレテ居リマス、之ヲ許可致シマス-
多田滿長君
〔多田滿長君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X01319370227&spkNum=3
-
004・多田滿長
○多田滿長君 只今御報〓ニナリマシタ故
本多貞次郞君ニ對シ院議ヲ以テ弔詞ヲ贈呈
致シタク、其弔詞ハ之ヲ議長ニ一任スルノ
動議ヲ提出致シマス、本多君ノ政界竝ニ實
業界ニ於ケル閱歷功績ニ付テハ私ガ申上
ゲルマデモアリマセヌガ、本日君ト永久ノ
訣別ヲ〓ゲネバナラヌ此際、私ハ諸君ノ御
許ヲ得マシテ議員一同ヲ代表シ、故本多貞
次郞君ニ對シ哀悼ノ微意ヲ表シタイト思ヒ
マス
本多貞次郞君ハ安政五年宇都宮ニ於テ生
レラレ、大正六年ヨリ千葉縣會議員ニ當選
セラルヽコト二囘、其間、同參事會員及ビ
同縣會議長ニ擧ゲラレ、地方自治ノ爲ニ貢
獻セラレタルコト誠ニ尠カラザルモノガア
リマス、次デ大正九年五月第十四囘總選擧
ニ際シ、衆望ヲ負ウテ千葉縣第三一區ヨリ選
出セラレテ本院ニ議席ヲ占メラレ、爾來當
選セラルヽコト四囘ニ及ビマシタ、而シテ
其間資源審議會委員、鐵道會議議員紀元二
千六百年祝典評議委員會委員ヲ仰付ケラ
V、全院委員長ニ當選セラルヽ等、君ガ國
家憲政ノ爲ニ盡瘁セラレタルコトハ實ニ多
大ナルモノガアリマス、尙ホ君ハ京成電氣
軌道、渡良瀨水電、葛飾瓦斯、大同電氣、三
共電機工業ノ各株式會社ノ社長トナリ、且
ツ社團法人鐵道同志會、電氣協會、帝國鐵
道協會ノ理事及ビ評議員、日本經濟聯盟會
評議員、東京商工會議所議員トナラレ、實業
界ニ貢獻セラレタル功績モ亦實ニ多大ナル
モノガアリマス、更ニ君ハ昭和二年千葉縣下
ニ於テ國府臺學院ヲ創設セラレ、其總裁ト
シテ〓育ノ爲ニモ大イニ盡瘁セラレツヽアツ
タノデアリマス、然ルニ過般來二豎ノ冒ス
所トナリ、溘焉トシテ逝去セラレマシタルコ
トハ、誠ニ痛惜哀悼ノ至リニ堪ヘマセヌ、茲
ニ謹ンデ弔意ヲ述べテ、微意ヲ表スル次第
デアリマス(拍手)発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X01319370227&spkNum=4
-
005・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 多田君提出ノ動議
ニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X01319370227&spkNum=5
-
006・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 御異議ナシト認メ
マス、仍テ動議ハ可決セラレマシタ、玆ニ
議長ノ手許ニ於テ起草シタル弔詞ヲ朗讀致
シマス
衆議院ハ議員勳四等本多貞次郞君ノ長逝
ヲ哀悼シ恭シク弔詞ヲ呈ス
〔拍手起ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X01319370227&spkNum=6
-
007・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 此弔詞ノ贈呈方ハ
議長ニ於テ取計ヒマス-是レヨリ日程ニ
入リマス、日程第一乃至第四ハ、便宜上一
括議題ト爲スニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X01319370227&spkNum=7
-
008・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 御異議ナシト認メ
やく、仍テ日程第一、「アルコール」專賣法
案、日程第二、一般會計歲出ノ財源ニ充ツ
ル爲特別會計ヨリ爲ス繰入金ニ關スル法律
案日程第三、對支文化事業特別會計法中
改正法律案、日程第四、一般會計歲出ノ財
源ニ充ツル爲大藏省預金部特別會計ヨリ爲
ス繰入金ニ關スル法律案、右四案ヲ一括シ
テ第一讀會ヲ開キマス-大藏大臣結城豊
太郞君
第アルコール專賣法案(政府提出)
第一讀會
第二一般會計歲出ノ財源ニ充ツル爲
特別會計ヨリ爲ス繰入金ニ關スル法
律案(政府提出)第一讀會
第三對支文化事業特別會計法中改正
法律案(政府提出)第一讀會
第四一般會計歲出ノ財源ニ充ツル爲
大藏省預金部特別會計ヨリ爲ス繰入
金ニ關スル法律案(政府提出)第一讀會
アルコール專賣法案
アルコール專賣法
第一條アルコールノ製造ハ政府ニ專屬
ス
第二條本法ニ於テアルコールトハアル
コール分九十度以上ノアルコールヲ謂
フ
アルコール分トハ攝氏十五度ノ時ニ於
テ原容量百分中ニ含有スル〇·七九四
七ノ比重ヲ有スルアルコールノ容量ヲ
謂フ
第三條政府ハ本法施行前一年間引續キ
業トシテアルコールヲ製造シタル者ニ
對シ本法施行ノ際ニ限リ其ノ製造ヲ特
許スルコトヲ得
相續、會社ノ合併又ハ營業ノ讓受ニ因
リアルコールノ製造業ヲ承繼シタル場
合ニ於テハ被相續人、合併ニ因リテ消
滅シタル會社又ハ讓渡人ノ爲シタル製
造ハ前項ノ規定ノ適用ニ付テハ之ヲ相
續人、合併後存續スル會社若ハ合併ニ
因リテ設立シタル會社又ハ讓受人ノ爲
シタル製造ト看做ス
第四條アルコールハ政府又ハ政府ノ命
ヲ受ケタル者ニ非ザレバ之ヲ輸入又ハ
移入スルコトヲ得ズ
第五條アルコール製造者ハ製造場一個
所每ニ每年其ノ年四月一日ヨリ翌年三
月三十一日迄ノ一年度內ニ製造スベキ
アルコールノ數量、製造方法及アル
コール分ノ度數ヲ定メ豫メ政府ノ許可
ヲ受クベシ
政府ハ特ニ必要アル場合ニ於テハアル
コールノ製造原料ヲ指定スルコトヲ得
第六條アルコール製造者ノ製造スベキ
アルコールノ數量ハ製造場一個所每ニ
一年度內五十石ヲ下ルコトヲ得ズ但シ
同一製造場内ニ於テ第十七條ノアル
コールヲ製造スルトキハ其ノ數量ヲ合
算スルモノトス
アルコール製造者前項ノ制限石數以上
ノ製造ヲ爲サザルトキハ災害其ノ他已
ムコトヲ得ザル事由ニ因ルコトヲ證明
スルニ非ザレバ政府ハ其ノ不足石數ニ
對シ其ノ賠償價額ト第十九條ノ規定ニ
依リ算出シタル金額トノ差額ニ相當ス
ル金額ヲ徴收ス
第七條アルコール製造者ハ左ノ場合ニ
於テハ政府ノ許可ヲ受クベシ
-製造場又ハ藏置場ヲ新設、變更又
ハ廢止セントスルトキ
二其ノ他本法ニ依リ政府ノ許可ヲ受
ケタル事項ヲ變更セントスルトキ
第八條アルコール製造者ノ製造ニ係ル
酒母及醪ハ之ヲ讓渡シ、質入シ、飮料
トシテ消費シ又ハ當該官吏ノ承認ヲ受
ケズシテ製造場ヨリ移出スルコトヲ得
ズ
第九條相續人ガ被相續人ノアルコール
ノ製造業ヲ承繼シタルトキハ相續人ハ
其ノ製造ノ特許ヲ受ケタルモノト看做
ス
合併後在續スル會社又ハ合併ニ因リテ
設立シタル會社ガ合併ニ因リテ消滅シ
タル會社ノアルコールノ製造業ヲ承繼
シタルトキハ合併後存績スル會社又ハ
合併ニ因リテ設立シタル會社ハ其ノ製
造ノ特許ヲ受ケタルモノト看做ス
第十條アルコールノ製造業ヲ讓受ケア
ルコールヲ製造セントスル者ハ讓受前
アルコール製造ノ特許ノ承繼ヲ申請ス
ルコトヲ得
前項ノ申請アリタル場合ニ於テ之ヲ相
當ト認ムルトキハ政府ハ特許ノ承繼ヲ
許可スルコトヲ得
第十一條アルコール製造者其ノ製造ヲ
廢止セントスルトキハ特許ノ取消ヲ求
スヘン
第十二條アルコール製造者左ノ各號ノ
一ニ該當スルトキハ政府ハ其ノアル
コール製造ノ特許ヲ取消スコトヲ得
一三年以上引續キ其ノ製造ヲ爲サザ
ルトキ
二第三十三條第三號ノ規定ニ依リ處
罰又ハ處分セラレタルトキ
前項ノ規定ニ依リ特許ヲ取消シタル場
合ニ於テハ命令ノ定ムル所ニ依リ一定
ノ期間內製造其ノ他必要ノ行爲ヲ繼續
セシムルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ仍
本法ヲ適用ス
第十三條アルコール製造者ノ製造シタ
ルアルコールハ政府之ヲ收納ス
第十四條政府ハ收納スルアルコールノ
品質及アルコール分ノ度數ヲ定ムルコ
トヲ得
收納ニ適セザルアルコールニ付テハ政
府ハ適當ナル處理ヲ爲スベキ旨ヲ命ズ
ルコトヲ得
第十五條政府ハ收納シタルアルコール
ニ對シ賠償金ヲ交付ス
賠償價格ハ政府之ヲ定メ豫メ公示ス
第十六條アルコール製造者ノ製造シタ
ルアルコールハ總テ之ヲ政府ニ納付ス
ベシ
政府ハ納付ノ期日及場所ヲ定ムルコト
ヲ得
第十七條酒造稅法又ハ酒精及酒精含有
飮料稅法ニ依リ製造免許ヲ受ケタル者
ガ酒類又ハアルコール含有飮料ノ原料
トシテ其ノ同一製造場內ニ於テ製造ス
ルアルコールニハ本法ヲ適用セズ
第十八條アルコールノ製造方法ヲ試驗
〓究スル爲アルコールヲ製造セントス
ル者ハ政府ノ許可ヲ受クベシ
第七條、第八條、第十一條乃至第十六
條、第三十條、第三十九條及第四十一
條ノ規定ハ前項ノ場合ニ付之ヲ準用ス
但シ其ノ收納及賣渡ニ付テハ命令ヲ以
テ別段ノ定ヲ爲スコトヲ得
第十九條政府ハ其ノ賣渡スアルコール
ノ價格ヲ定メ之ヲ公示スベシ
第二十條左ニ揭グル用途ニ供スル場合
ニ於テハ政府ハ前條ノ價格ニ拘ラズ特
ニ定メタル價格ヲ以テアルコールノ賣
渡ヲ爲スコトヲ得
ー命令ヲ以テ定ムル揮發油混入ノ用
ニ使用スルトキ
二命令ヲ以テ定ムル工業ノ用ニ使用
スルトキ
三輸出又ハ移出ノ用ニ供スルトキ
第二十一條前條ノ價格ヲ以テ賣渡スア
ルコールニ付テハ政府ハ買受人ヲシテ
其ノ賣渡價額ト第十九條ノ規定ニ依リ
算出シタル金額トノ差額ノ全部又ハ一
部ニ相當スル擔保ヲ提供セシムルコト
ヲ得
前項ノ擔保ニ關スル規定ハ命令ヲ以テ
之ヲ定ム
第二十二條第二十二條ノ價格ヲ以テア
ルコールヲ買受ケタル者ハ命令ノ定ム
ル所ニ依リ之ヲ其ノ用途ニ供シタルコ
トヲ證スル書類ヲ政府ニ提出スベシ
正當ノ事由ナクシテ前項ノ書類ヲ提出
セザルトキハ政府ハ其ノ賣渡價額ト第
十九條ノ規定ニ依リ算出シタル金額ト
ノ差額ニ相當スル金額ヲ納付セシム
買受人前項ノ金額ヲ納付セザル場合ニ
於テ前條ノ規定ニ依リ提供セシメタル
擔保アルトキハ之ヲ以テ納付セシムベ
キ金額ニ充ツ但シ金錢以外ノ擔保ハ之
ヲ公賣ニ付シ公賣ノ費用及前項ノ金額
ニ充テ不足アルトキハ之ヲ徵收シ殘金
アルトキハ之ヲ還付ス
第二十三條第二十一條ノ規定ニ依リ擔
保ヲ提供シタル者前條第一項ノ書類ヲ
提出シ又ハ前條第二項ノ金額ヲ納付シ
タルトキハ政府ハ其ノ擔保ヲ還付ス
第二十四條第二十條ノ價格ヲ以テ買受
ケタルアルコールヲ讓渡シ、質入シ又
ハ其ノ用途ヲ變更セントスルトキハ政
府ノ許可ヲ受クベシ
第二十二條及前條ノ規定ハ前項ノアル
コールヲ讓渡シ又ハ其ノ用途ヲ變更シ
タル場合ニ付之ヲ準用ス
第二十五條第二十條ノ價格ヲ以テ買受
ケタルアルコールノ使用數量ガ買受數
量ニ對シ正當ノ事由ナクシテ不足シタ
ルトキハ其ノ不足數量ニ對シ第二十二
條第二項及第三項竝ニ第二十三條ノ規
定ヲ準用ス
第二十六條第二十條第二號ノ用途ニ供
スルアルコールニ付テハ政府ハ命令ノ
定ムル所ニ依リ變性ヲ命ズルコトヲ得
第二十七條第十九條ノ價格ヲ以テ政府
ノ賣渡シタルアルコールヲ命令ノ定ム
ル所ニ依リ第二十條第二號又ハ第三號
ノ用途ニ供シタル者ハ其ノ買受價額ト
第二十條第二號又ハ第三號ノ規定ニ依
リ算出シタル金額トノ差額ニ相當スル
金額ノ交付ヲ政府ニ請求スルコトヲ得
前項ノ請求ハアルコールノ使用、輸出
又ハ移出後一年ヲ經過シタルトキハ之
ヲ爲スコトヲ得ズ
第二十八條アルコールハ政府又ハ政府
ノ指定シタル賣捌人ニ非ザレバ之ヲ販
賣スルコトヲ得ズ
アルコール賣捌人及アルコールノ販賣
ニ關スル規程ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第二十九條アルコールハ政府ノ賣渡シ
タルモノニ非ザレバ之ヲ所有シ、所持
シ、讓渡シ、質入シ又ハ消費スルコト
ヲ得ズ但シ試驗〓究ノ爲政府ノ許可ヲ
得テ製造スル場合又ハアルコール製造
者納付期日前若ハ正當ノ事由ニ因リ納
付ノ遲延シタル場合ニ於テ所有又ハ所
持スルハ此ノ限ニ在ラズ
第三十條當該官吏ハアルコール製造
者アルコール賣捌人又ハ第二十條ノ
規定ニ依リアルコールヲ政府ヨリ買受
ケタル者ニ對シテ質問ヲ爲シ又ハ左ニ
揭グル物件ニ付檢査ヲ爲シ若ハ監督上
必要ノ處分ヲ爲スコトヲ得
一アルコール製造者、アルコール賣
捌人又ハ第二十條ノ規定ニ依リアル
コールヲ政府ヨリ買受ケタル者ノ所
持スルアルコール
二アルコールノ製造、納付又ハ販賣
ニ關スル一切ノ帳簿書類
三アルコールノ製造又ハ販賣上必要
ナル建築物、機械、器具、容器、材
料其ノ他ノ物件
第三十一條本法ニ依リ納付セシムベキ
金額ノ徵收ニ關シテハ國稅徵收法ヲ準
用ス
第三十二條政府ハアルコール製造ノ委
託ヲ爲スコトヲ得
第七條、第八條、第十六條、第二十九條、
第三十條、第三十九條及第四十一條ノ
規定ハ前項ノ場合ニ付之ヲ準用ス
第三十三條左ノ各號ノ一ニ該當スル者
ハ五千圓以下ノ罰金ニ處ス
一政府ノ特許、許可又ハ委託ヲ受ケ
ズシテアルコールヲ製造シタル者
二第四條ノ規定ニ違反シアルコール
ノ輸入又ハ移入ヲ爲シタル者
三政府ニ納付スベキアルコールヲ讓
渡シ、消費シ又ハ隱匿シタル者
第三十四條左ノ各號ノ一ニ該當スル者
ハ千圓以下ノ罰金ニ處ス
一第七條ノ規定ニ違反シ製造場若ハ
藏置場ヲ新設、變更若ハ廢止シ又ハ
許可ヲ受ケタル事項ヲ變更シタル者
二第二十四條第一項ノ規定ニ違反シ
アルコールヲ讓渡シ、質入シ又ハ其
ノ用途ヲ變更シタル者
三第二十九條ノ規定ニ違反シ政府ノ
賣渡サザルアルコールヲ所有シ、所
持シ、讓渡シ、質入シ又ハ消費シタ
ル者
四アルコール賣捌人ニ非ズシテアル
コールヲ販賣シタル者
第二十二條第二項及第三項竝ニ第二十
三條ノ規定ハ前項第二號ノ場合ニ付之
ヲ準用ス
第三十五條左ノ各號ノ一ニ該當スル者
ハ五百圓以下ノ罰金ニ處ス
-第五條第二項ノ規定ニ依リ政府ノ
指定シタル製造原料ヲ使用セザル者
二第八條ノ規定ニ違反シ酒母又ハ醪
ヲ讓渡シ、質入シ、消費シ又ハ製造
場ヨリ移出シタル者
第三十六條左ノ各號ノ一ニ該當スル者
ハ百圓以下ノ罰金又ハ科料ニ處ス
ー第十四條第二項ノ規定ニ依リ政府
ノ命令シタル處理ヲ爲サザル者
二正當ノ事由ナクシテ政府ノ指定シ
タル納付期日ニアルコールヲ納付セ
ザル者
三第三十條ノ規定ニ依ル當該官吏ノ
質問ニ對シ答辯ヲ爲サズ、虛僞ノ陳
述ヲ爲シ又ハ其ノ職務ノ執行ヲ拒
ミ、妨ゲ若ハ忌避シタル者
第三十七條第三十三條、第三十四條第
三號若ハ第四號又ハ第三十五條第二號
ノ罪ヲ犯シタル者アルトキハ其ノ犯罪
ニ係ルアルコール、酒母、醪及其ノ容
器竝ニアルコール製造用機械器具ハ之
ヲ沒收ス其ノアルコール、酒母又ハ醪
ニシテ沒收スルコト能ハザルニ至リタ
ルトキハ其ノ價額ヲ追徵ス
第三十八條本法又ハ本法ニ基キテ發ス
ル命令ニ違反シタル者ニ付テハ刑法第
三十八條第三項但書、第三十九條第二
項、第四十條、第四十一條、第四十八
條第二項、第六十三條及第六十六條ノ
規定ヲ適用セズ但シ第三十六條第三號
ノ罪ヲ犯シタル者ニ付テハ此ノ限ニ在
ラズ
第三十九條アルコール製造者、アルコー
ル賣捌人又ハアルコールヲ政府ヨリ
買受ケタル者ハ其ノ代理人、戶主、家
族、同居者、雇人、其ノ他ノ從業者ガ
其ノ業務ニ關シ本法又ハ本法ニ基キテ
發スル命令ニ違反シタルトキハ自己ノ
指揮ニ出デザルノ故ヲ以テ處罰ヲ免ル
ルコトヲ得ズ
第四十條間接國稅犯則者處分法及明治
三十三年法律第五十二號ハ本法又ハ本
法ニ基キテ發スル命令ニ依ル犯罪ニ付
之ヲ準用ス
間接國稅犯則者處分法中收稅官吏及稅
務署長ニ屬スル職務ヲ行フベキ官吏ハ
勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第四十一條アルコール製造者其ノ製造
ノ特許ヲ取消サレ又ハ其ノ業務ヲ廢止
スルモ製造場又ハ藏置場ニアルコール、
酒母又ハ醪ノ現存スル間ハ仍本法ヲ通
用ス
附則
第四十二條本法ハ昭和十二年四月一日
ヨリ之ヲ施行ス
第四十三條第三條ノアルコール製造者
又ハ本法施行ノ際現ニアルコールノ製
造方法ヲ試驗〓究スル爲アルコールノ
製造ヲ爲ス者ニシテ本法施行後其ノ製
造ヲ繼續セントスルモノハ本法施行ノ
日ヨリ一月內ニ製造ノ特許又ハ許可ヲ
受クベシ其ノ期間內ハアルコールノ製
造ヲ爲スコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ特許又ハ許可ヲ受ク
ル迄ノ間ニ製造シタルアルコールニ關
シテハ本法ヲ準用ス
第四十四條本法施行ノ際現ニアルコー
ルノ販賣ヲ爲ス者ニシテ本法施行後其ノ
販賣ヲ繼續セントスルモノハ本法施行
ノ日ヨリ二月內ニアルコール賣捌人ノ
指定ヲ受クベシ其ノ期間內ハアルコー
ルノ販賣ヲ爲スコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ指定ヲ受クル迄ノ間
ニ於ケル販賣ニ付テハ本法ヲ準用ス
第四十五條昭和十二年三月三十一日迄
ニ酒精及酒精含有飮料稅法ニ依リ査定
又ハ檢査ヲ受ケタルアルコールニシテ
本法施行ノ際現存スルモノニ付テハ仍
從前ノ例ニ依ル
第四十六條酒精及酒精含有飮料稅法第
四條中「及〓涼飮料」ヲ「〓涼飮料及ア
ルコール專賣法ノ適用ヲ受クル酒精」
ニゾル
第四十七條酒母、醪及麴取締法第一條
中「酒類ノ製造免許」ノ下ニ「又ハアル
コール專賣法ニ依リアルコール製造ノ
特許、許可若ハ委託」ヲ加フ
一般會計歲出ノ財源ニ充ツル爲特別會
計ヨリ爲ス繰入金ニ關スル法律案
政府ハ一般會計歲出ノ財源ニ充ツル爲當
分ノ內每年度豫算ノ定ムル所ニ依リ通信
事業、帝國鐵道、關東局、朝鮮總督府、
臺灣總督府、樺太廳及南洋廳ノ特別會計
ヨリ他ノ法律ニ依ルモノノ外一般會計ニ
繰入金ヲ爲スコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ繰入レタル金額ニ付テ
ハ後日一般會計ヨリ同額ヲ當該特別會計
ニ繰入ルベシ
第一項ノ規定ニ依ル通信事業及帝國鐵道
ノ特別會計ノ繰入金ハ當該特別會計ノ資
本勘定ノ歲出トス
附則
本法ハ昭和十二年度ヨリ之ヲ適用ス
對支文化事業特別會計法中改正法律案
對支文化事業特別會計法中左ノ通改正ス
第九條本會計ノ資金ハ國債ヲ以テ保有
シ、大藏省預金部ニ預入レ又ハ對支文
化事業調査會ニ諮問シ勅令ノ定ムル所
ニ依リ其ノ他ノ有利且確實ナル方法ヲ
以テ之ヲ運用スルコトヲ得
附則
本法ハ昭和十二年四月一日ヨリ之ヲ施行ス
第二條第三號ニ規定スル國庫證劵ニシテ
一般會計ノ保有ニ屬セシメラレタルモノ
ハ本法施行ノ際之ヲ本會計ニ歸屬セシム
前項ノ規定ニ依リ本會計ニ歸屬セシメラ
ルベキ國庫證劵ノ額面金額及其ノ昭和十
二年一月一日ヨリ同年三月三十一日迄ニ
屬スル利子額ニ相當スル金額ハ之ヲ本會
計ノ資金ヨリ一般會計ニ繰入ルベシ
一般會計歲出ノ財源ニ充ツル爲大藏省
預金部特別會計ヨリ爲ス繰入金ニ關ス
ル法律案
政府ハ一般會計歲出ノ財源ニ充ツル爲每
年度他ノ法律ニ依ルモノノ外六百萬圓ヲ
限リ大藏省預金部特別會計ヨリ一般會計
ニ繰入金ヲ爲スコトヲ得
附則
本法ハ昭和十二年度ヨリ之ヲ適用ス
〔國務大臣結城豊太郞君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X01319370227&spkNum=8
-
009・結城豊太郎
○國務大臣(結城豊太郞君) 只今議題トナ
リマシタ諸法案ニ付キマシテ、先ヅ「アル
コール」專賣法案ニ付テ提案ノ理由ヲ說明
致シマス、燃料國策ニ應ジ揮發油ノ使用量
ヲ減ジマスル爲ニ、之ニ「アルコール」ヲ混
用セシムルコトノ緊要デアリマスルコトハ、
申ス迄モナイ所デアリマス、然ルニ「アル
コール」ヲ揮發油ニ混用致シマス爲ニハ多
額ノ數量ヲ要シマスノデ、其供給ニ付テハ
一部ヲ臺灣等ヨリ移入スルノ外、內地ニ於
テモ新ニ生產計畫ヲ樹テネバナラヌノデア
リマス、而シテ其供給價格ハ之ヲ低廉ニス
ル必要ガアリマスノデ、其製造ヲ民間事業
トシテ經營セシメマス時ハ、國庫ヨリ多額
ノ補助ヲ要スル次第デアリマス、又其製造
原料トシテノ甘藷、馬鈴薯等ノ農產物ヲ多
量ニ使用致シマスル關係上、本工業ハ農村
經濟ニ密接ナル關係ヲ有スルモノデアリマ
スノデ、揮發油混入用「アルコール」ノ製造
ハ、收益ヲ目的トセザル新規ノ事業デアリ、
且ツ農村ニ至大ノ利害關係ガアリマスカラ、
原則トシテ政府自ラ之ヲ經營スルコトト致
シマシテ、尙ホ適當ト認メマスル場合ニハ、
民間ニモ其製造ヲ委託スルコトト致シマシ
ク、又「アルコール」ヲ揮發油ニ混用セシメ
マスル爲ニハ、是ガ賣渡價格ヲ均一ニスル
コトヲ要シマスルト、取締ノ關係ヨリ政府
ニ於テ直接其賣渡ヲ行フモノデアリマス、
次ニ工業用等ノ「アルコール」ハ、揮發油混
入用ノ「アルコール」ト殆ド其品質ヲ等シク
シテ居リマシテ、相互ニ融通性ガアリマス、
又其供給ハ主トシテ臺灣、南洋等ヨリノ移
入ニ俟ツモノデアリマシテ、其稅收入ハ現在
ニ於キマシテハ臺灣總督府、南洋廳ノ收入
トナッテ居リマスガ、之ヲ消費地タル內地
ノ收入ニ爲スコトニ改ムルコトト致シマシ
ク、而シテ其實行ニ當リマシテハ、課稅ノ
方法ニ依ルヨリモ、之ヲ專賣ト致シマシテ、
稅金ニ相當スル金額ヲ加算シテ賣渡スヲ適
當ト認ムルノデアリマス、尙ホ現在內地ニ
於テ之ヲ製造スル者ニ對シテハ、其製造ヲ
特許スル次第デアリマス
次ニ一般會計歲出ノ財源ニ充ツル爲メ特
別會計ヨリ致シマス繰入金ニ關スル法律案
外二件ノ提出ノ理由ヲ御說明申上ゲマス、
一般會計歲出ノ財源ニ充ツル爲メ、當分ノ
內每年度豫算ノ定ムル所ニ依ッテ、特別會計
カラ一般會計へ繰入金ヲ致シマス必要ヲ認
メマシテ、昭和十二年度ニ於テハ通信事業
特別會計カラ千二百六十四万圓、帝國鐵道
特別會計カラ三千万圓、關東局特別會計カ
ラ百五十万圓、朝鮮總督府特別會計カラ九
百四十五万圓、臺灣總督府特別會計カラ五
百二十五万圓、樺太廳特別會計カラ百九十
五万圓、南洋廳特別會計カラ百十万圓ヲ、
ソレ〓〓一般會計ニ繰入ルヽコトト致シマ
シタ所、右繰入ニ關シマシテハ法律ノ制定
ヲ必要ト致シマスルノデ、此一般會計歲出
ノ財源ニ充ツル爲メ特別會計ヨリ致シマス
繰入金ニ關スル法律案ヲ、提出致シマシタ
次第デアリマス
次ニ對支文化事業特別會計ノ資金ハ、現
行法ニ於キマシテハ國債ヲ以テ保有シ、又
ハ大藏省預金部ニ預入レ、之ヲ運用シ得ル
コトニ規定セラレテ居ルノデアリマスガ、
此際其運用方法ヲ擴張致シマシテ、支那ニ
於ケル文化ノ助長ニ資スルト共ニ、日支兩
國ノ經濟的緊密ヲ强メル方面ニモ、必要ニ
應ジ其資金ヲ運用シ得ルノ途ヲ開クヲ適當
ト認ムルノデアリマス
又山東懸案解決ニ關スル條約竝ニ山東懸
案鐵道細目協定ニ依ッテ受領致シマシタ膠
濟鐵道國庫證劵ハ、現在一般會計ト本會計
トニ分屬致シテ居リマスルガ、此機會ニ於
テ其全部ヲ本會計ニ一括保有セシムルヲ適
當ト認メマシテ、同國庫證劵ニシテ現ニ一
般會計ノ保有ニ係ルモノヲ、本會計ニ歸屬
セシムルコトト致シマシテ、本會計ノ資金
カラ右證劵ノ額面金額竝ニ其經過利子ニ相
當スル金額ヲ、一般會計ニ繰入ルヽコトト
致シタノデアリマス、右ノ趣旨ニ依リマシ
テ、對支文化事業特別會計法中改正法律案
ヲ提出致シマシタ次第デアリマス
終リニ一般會計歲出ノ財源ニ充ツル爲メ
大藏省預金部特別會計ヨリ致シマス繰入金
ニ關スル法律案提出ノ理由ヲ御說明申上ゲ
マン、昭和十二年四月一日ヨリ郵便貯金利
率ヲ二厘四毛方引下グルコトト致シマシタ
ル結果、將來大藏省預金部特別會計ニ每年
度約八百万圓ノ餘裕金ヲ生ズル見込デアリ
マスルガ、當該餘裕金ハ其性質ニ顧ミマシ
テ、出來得ル限リ之ヲ社會政策的諸施設ノ
財源ニ充ツルヲ適當ト認メマシテ、昭和十
二年度以降每年度他ノ法律ニ依ッテ繰入ヲ
爲スモノノ外、更ニ六百万圓ヲ限リ、大藏
省預金部特別會計ヨリ、一般會計ニ繰入ル
ルコトト致シマシタ、右繰入ニ關シマシテ
ハ法律ノ制定ヲ必要ト致シマスルノデ、本
法律案ヲ提出致シマシタ次第デアリマス、
何卒御審議ノ上速ニ御協贊ヲ與ヘラレンコ
トヲ希望スル次第デアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X01319370227&spkNum=9
-
010・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 質疑ノ通〓ガアリ
やく、順次之ヲ許可致シマス--岩瀨亮君
〔岩瀨亮君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X01319370227&spkNum=10
-
011・岩瀬亮
○岩瀨亮君 只今御提案ニナリマシタ구
ルコール」專賣法案ニ對シマシテ、極ク簡
單ニ數箇ノ質問ヲ致シタイト存ジマス、現
下ノ時局ヨリ致シマシテ、國防ノ充實ヲ圖
ラネバナラヌコトハ申スマデモアリマセヌ
ガ併シ如何ニ飛行機ヲ作リマシテモ、戰車
ヲ作リマシテモ、又軍艦ヲ作リマシテモ
其原動力タル燃料ノ補給ニ缺陷ガアリマシ
テハ、到底國防ノ獨立安全ハ期シ難イノデ
アリマス、隨テ世界何レノ國ヲ見マシテモ、
液體燃料ノ缺乏シテ居ル國ニ於キマシテハ、
ソレ〓〓是ガ補給ノ途ヲ講ジテ居ルノデア
リマス、近時我國ニ於キマシテモ、燃料國
策ガ高唱セラレマシタコトハ、洵ニ當然ナ
コトデアリマシテ、寧ロ遲キニ失スルトサ
ヘ思フ位デアリマス
偖テ先ヅ第一ニ御尋致シタイコトハ、此
間伍堂商工大臣ガ本議場ニ於キマシテノ御
答辯ニ依リマスルト、政府ハ石炭液化等ニ
依リマシテ燃料問題ヲ解決スベク、最近民
間事業會社ヲ設立シテ、其製造ヲ行ハント
スルモノノヤウニ承ッテ居リマス、洵ニ結構
ナコトト思ウテ居ルノデアリマス、併シ同
ジ液體燃料デアリマスル「アルコール」ニ對
シテノミハ、之ヲ民營ニ委ネズシテ、政府
自ラ專賣ヲ强行セントセラレルノハ、如何ナ
ル理由ニ基クモノデアリマスカ、十分ナル
御說明ヲ承リタイノデアリマス、私ハ燃料
國策ノ立前カラ、製造方法ニ於テモ、亦採
算ノ上カラ致シマシテモ、非常ナ困難ヲ伴
フ所ノ石炭液化事業ノ如キモノコソ官營ト
シ、旣ニ相當ノ發達ヲ爲シ、尙ホ十分發達
普及ノ餘地アル所ノ「アルコール」ノ如キ
ハ、之ヲ民營ニ委ネルコトハ何等支障ナキ
ノミナラズ、却テ其方ガ豐富低廉ナル供給
ヲ得ルコトガ出來ルト思フノデアリマス(拍
手)之ニ對スル.政府ノ御所見ヲ伺ヒタイノ
デアリマス、次ニ政府ガ「アルコール」ヲ製
造スルニ當リマシテ、其原料ハ何ニ求メラ
レルカ、木材ヲ以テ「アルコール」ヲ製造ス
ル方法モアリマスルガ、是ハ現在我國ノ主
要產業タル纖維工業ノ資源ヲ、益、涸渴セシ
ムル結果ト相成リマスルノデ、我國ニ於キ
マシテハ是ハ不適當ト思フノデアリマシ
テ、結局政府ニ於キマシテハ甘藷、馬鈴薯
等ノ農產物ヲ以テ其原料トセラレルコトト
思フノデアリマス、飜ッテ農村ノ實情ヲ見マ
スルニ、農村ノ疲弊困憊ノ原因ハ多々アリマ
スルガ、其中農村ノ收入所得ノ少イコトガ、
其最モ大ナル原因ノ一ツデアリマス(拍手)
仍テ農村ノ收入所得ノ增加ヲ圖ルコトガ、
農村救濟ニ最モ肝要ナコトト思フノデアリ
マス、而シテ甘藷及馬鈴薯パ何レモ耐早耐
冷ノ作物デアリマスルガ故ニ「アルコール」
原料ヲ木材ニ依ラズシテ、此甘藷及馬鈴薯
ニ依リマスレバ、全國到ル所ニ生產ヲ增シ、
原料ニ困難ヲ來スコトガナイノミナラズ、
農村ニ對シ數千万圓ノ收入增加ノ途ヲ開ク
コトガ出來テ、正ニ一石二鳥ノ妙案デアラ
ウト考フルノデアリマス、唯現在ノ作付反
別及ビ品種ニ依ッテハ、急速ニ巨大ナル要求
ヲ充タスコトハ困難ト思フノデアリマス、
卽チ「アルコール」製造ニ對シ必然的ニ原料
ノ不足ヲ生ジ、政府ノ專賣工場ニ非常ナル
支障ヲ來ス虞アリト思フノデアリマス、而
モ政府ノ專賣工場ハ、我國ニ於ケルソレ等
農產物ノ主要產地ニ設置サルヽヤウニ承ッ
テ居リマスルガ、現在ニ於ケル此ノ種農產
物ノ主要產地ハ、過去數十年來、澱粉製造
工業及ビ燒酎工業ノ中心地デアリマシテ、
是等ノ工業者ガ陰ニ陽ニ其原料生產ノ爲ニ
竝々ナラヌ努力ト犠牲ヲ拂ッテ、·本日ニ至ツ
タノデアリマス、而モ是等ノ地域ニ於キマ
シテハ、最早增產ハ其多クヲ望ミ得ナイノ
デアリマス(拍手)仍テ政府ガ專賣工場ヲ斯
ル地域ニ設置セラルヽナラバ、ソレ等地域
ノ民間澱粉製造業者及ビ燒酎製造業者ハ、
忽チニシテ原料價格ノ騰貴又ハ原料ノ不足
ヲ生ジ、爲ニ事業ノ經營困難トナリ、遂
其生活權ヲモ奪ハルヽコトトナリ、實ニ由
々シキ社會問題ヲ惹起ス虞アリト考フルノ
デアリマス(拍手)卽チ政府ハ是等ノ澱粉業
者及ビ燒酎業者ニ、何等ノ影響ヲ與フルコ
トナクシテ、「アルコール」原料ニ對スル豐
富低廉ナル供給ヲ、行ハルヽ確信ヲ有セラ
ルヽヤ否ヤ、又政府ハ疲弊困憊ノ甚シキ農
山村地域ニ專賣工場ヲ設置シテ、其開發ヲ
圖ルガ最モ至當ト思フガ、其意思アリヤ否
ヤ、政府ノ明確ナル御答辯ヲ煩シタイノデ
アリマス
第三ニ御伺致シタイノハ「アルコール」專
賣ハ內地ノミトシテ、臺灣朝鮮ニ施行セラ
レザル理由ニ付テデアリマス、特ニ臺灣ニ
於テハ酒類ノ專賣ヲサヘ實施シテ居ルノデ
アリマスルニ拘ラズ、承ル所ニ依リマスレバ、
製糖會社ノミニ其製造ヲ專屬セシムル由デ
アリマスルガ、斯キ如キ新興工業ハ內外地共ニ
民間企業ニ委ネ、其發達普及ヲ指導スルコト
ガ、產業ノ振興擴充ヲ圖ラントスル政府ノ聲
明ニ、合致スル所以ト思フノデアリマスルガ、
內外地、制度ヲ異ニシタル理由ヲ承リタイ
ノデアリマス、第四ニハ政府ハ「アルコー
ル」ノ揮發油混入ヲ、昭和十三年度ヨリ實
施セントセラルヽノデアルガ、現在「アル
コール」ノ時價ト揮發油ノ時價トノ間ニハ、
相當ノ開キガアルノデアリマスルガ、其點
ノ調整ハ如何ニセラルヽノデアルカ、承リ
タイノデアリマス、第五ニ伺ヒタイノハ、政
府ハ揮發油混入用ノ「アルコール」ノ外、
般化學工業用「アルコ〓ル」ニ對シテモ之ヲ
專賣トセラルヽノデアリマスガ、斯クテハ
其取引ニ徒ラニ段階的手數ノミ多クシテ、
却テ民間工業ノ發達ヲ阻碍スルト思フノデ
アリマス、專賣ノ範圍ヲ揮發油混入用「ア
ルコール」ノミト限定セザリシ理由ヲ、承
リタイノデアリマス
最後ニ政府ハ昭和十三年度ヨリ「アルコー
ル」ノ揮發油混入ヲ行ハントスルノデアリ
マスルガ、何故ニ「アルコール」專賣ノミヲ
昭和十二年四月一日ヨリ、施行セントスルノ
デアリマスルカ、而モ其施行期日迄ニハ本
日ヨリ數ヘマシテモ、僅ニ一箇月ヨリナイ
ノデアリマス、政府ハ既ニ專賣ノ準備ガ整
ウテ居ルノデアリマスカ、私ハ是ハ昭和十
三年四月一日ノ誤リデハナイカトサヘ思ハ
ルヽノデアリマスガ、政府ノ御用意ト御意
見ヲ承リタイノデアリマス、以上述ベマシ
タ六ツノ質問ニ對シテ、政府ノ詳細明確ナル
御答辯ヲ承リタイノデアリマス
〔國務大臣結城豊太郞君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X01319370227&spkNum=11
-
012・結城豊太郎
○國務大臣(結城豊太郞君) 只今岩瀨君ノ
御尋ニ對シテ御答申上ゲマス「アルコール」
ヲ專賣ニシタ理由ハドウデアルカト云フコ
トデアリマスガ、提案ノ理由ニ御說明申上
ゲマシタヤウニ、此ハ多額ノ數量ノ「アル
コール」ヲ要シマスルノデ、新ニ生產計畫
ヲ立テネバナラヌト云フコトト、供給價格
ヲ成ベク低廉ニシタイト云フコトカラ、民
間デヤルコトニナリマスト、自然ニ相當ナ
補助金ヲヤラネバナラヌト云フコトニナリ、
此專賣ハ收入ヲ目的トシタノデハアリマセ
ヌノデ、自然ニ國家ガ幾分カ損ヲ致シマシ
テモ、燃料國策ノ上カラヤラネバナラヌト
云フヤウニ考ヘテ、提案スルコトニナッタ
ノデアリマス
其次ニ「アルコール」製造ハ何ヲ原料トシ
テヤルノカト云フコトデアリマシタガ、是
ハ甘諸デアリマストカ、馬鈴薯デアルトカ
云フモノヲ原料ニ致シマスガ、サウナルト、
自然其近邊ニアル澱粉業者ヤ何カノ業務ニ、
影響スルコトガナイカト云フ御尋デアリマ
シタ、其邊ハ十分考慮致シマシタガ、是ハ今
後其原料ヲ得マス爲ニハ、相當ニ生產ノ增加
トカ、或ハ新ニ耕地ノ擴張ト云フヤウナコ
トノ方法ヲ採ラネバナリマセヌノデ、ソレ
等ヲ致シマシテ、自然農村ノ收入增加ノ一
助ニモナラウト思フノデアリマスガ、新ナ
ル生產計畫ヲ立テマス時ニ、澱粉業者其他
ニ、惡影響ノナイヤウナ方法ヲ講ズル考デ
アリマス、ソレカラ何故日本內地ダケデ、
外地デハヤラヌカト云フコトデアリマスガ、
是ハ我國ノ國策ニ順應スルト云フコトニ於
テハ、何レモ異存ノナイコトデアリマスガ、
ソレ〓〓ノ地域ニ於ケル製造方法其他ニ付
キマシテ、特殊ノ事情ガアリマスノデ、是
ハ內地ダケニ致シタヤウナ次第デアリマス、
其他ノ御質問ニ對シテハ、政府委員ノ方カ
ラ御答申上ゲタ方ガ宜カラウト思ヒマス
尙ホ此機會ニ於キマシテ、去ル二月二十
日ニ衆議院本會議ニ於テ私ニ御質問ノアリ
マシタ時ニ、私ガ豫算總會ニ出テ居リマシ
テ不在デアリマシタノデ、御答スルコトガ
出來マセヌデシタ箇條ニ付テ、御答ヲ申上
ゲタ方ガ宜カラウト存ジマス、其一ツハ河
野君カラノ御質問デアリマシテ、此關稅率
ノ一般改正案ヲ出サヌデ、縮小修正シタコ
トニ付テハドウ云フ考デアッタカト云フ
コトデアッダサウデアリマスガ、是ハ一般ノ
改正案ハ、相當ニ厖大デアリマシテ、其全
部ニ付テ十分ニ再檢討ヲ致ス時ガアリマセ
ヌノト、一面關稅ノ改正ガ、直グニ物價ノ
騰貴ニ影響スルヤウナコトナドガアリマス
ノデ、其邊ノコトヲ考慮致シマシテ、全部
提出スルコトハ暫ク見合セマシタヤウナ次
第デアリマス其次ニ複關稅定率法ニ付テ
ノ御質問デアリマシタガ、ソレヲ再ビ提出
致シマセヌデシタ理由モ、ヤハリ再檢討ニ
時日ヲ要スル爲メデアリマシテ、今後愼重ニ
〓究ヲ續ケテ、適當ナル成案ヲ得次第ニ提
案致シタイト考ヘテ居リマス、又貿易伸暢
ヲ唱ヘナガラ、輸出ヲ阻碍スルヤウナ輸出
統制稅ヲ設ケルノハ不都合ヂヤナイカ、矛
盾ヂヤナイカト云フ御質問ガアッタサウデ
アリマスガ、是ハ嘗テ申上ゲマシタヤウニ、
輸出統制稅ハ寧ロ輸出貿易ノ進展ヲ圖ル爲
メノ施設ニ必要ナル經費ノ財源トシテ使フ
考デアリマシテ、貿易仲暢ノ趣旨ニ合致ス
ルモノヂヤナイカト考へテ居ル次第デアリ
マス、其次ニ自由通商主義ニ依ル積リデア
ルカ、經濟鎖國主義ニ依ル積リデアルカ、
斯ウ云フ御質問モアッタサウデアリマスガ、
此點ハ渡邊君カラモ御尋ガアッタヤウニ承ッ
テ居リマス、元來外國貿易ハ自由通商ガ常
道デアリマス、併ナガラ現下ノ各國ノ通商
政策ニ對スル態度ヲ見マスルト、我國ノミ
獨リ自由通商ト云フコトニ參リマセヌノ
デ、ソレ等各國ノ通商政策ニ對應スル爲メ、
又現在ノ本邦產業經濟ニ對應スル爲ニハ、
外國貿易ニ關シテ、相當ナ方策ヲ執ル必要
ガアラウト考ヘルノデアリマス、併ナガラ
元々國際經濟ハ自由通商デアルベキ筈デア
リマスカラ、今ノヤウナ經濟鎖國主義ノ盛
ナコトニ付キマシテハ、甚ダ遺憾ニ感ジテ居
ル次第デアリマス、尙ホ世界經濟會議ノ招
請ガアッタ場合ニ、之ニ應ズルカドウカト云
フ御尋デアリマシタガ、サウ云フ場合ガア
リマシタ時ニハ、之ヲ拒絕スル理由ハ持チ
マセヌ、無論其時ノ外交事情其他ノ狀況ニ
依ッテ、考ヘネバナラヌコトデハアリマス
ガ、十分ニコチラノ方ノ考モ述ベル機會ヲ
持ツコトハ、適當デアラウト思フノデアリマ
ス、ソレカラ上田君カラハ、後日委員會ニ
於テ御質問ガアルト云フコトデアリマシタ
サウデスカラ、其節ニ御答ヲスル方ガ便宜
デアラウト存ズルノデアリマス、又二月二
十五日ニ郵便法中改正法律案ガ上程サレマ
シタ時ニ、眞鍋君カラ御質問ガアリマシタ
ノデ、ソレニ對シ此際御答ヲ致シタ方ガ適
當カト存ジマスガ、ソレハ通信事業特別會
計カラ、一般會計ヘノ繰越金ニ關スル御質
問デアリマシタガ、我國今日ノ財政狀態ト
致シマシテハ、租稅公債等ニ財源ヲ求メマ
スト共ニ、比較的餘裕ノアル特別會計カラ、
ソレ〓〓相當ノ應援ヲ求メマシテ、ソコニ
一般會計ト特別會計トノ調整ヲ圖リタイト
云フコトデ、關係省ト協議ヲ致シタ次第デア
リマシテ、是ハ已ムヲ得ス處置ト存ズルノ
デアリマス、左樣ニ致シマシテ各特別會計
カラ繰入レマシタ金額等ニ付キマシテハ、
先刻提案ノ御說明ヲ申上ゲタ次第デアリマ
スカラ、ソレニ依ッテ御了承ヲ願ヒタイト存
ジマス
〔政府委員荒井誠一郞君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X01319370227&spkNum=12
-
013・荒井誠一郎
○政府委員(荒井誠一郞君) 只今御質問ノ
アリマシタ最後ノ點ニ付キマシテ、御答辯申
上ゲマス「アルコール」ヲ揮發油ニ混用致シ
マスノハ、十三年度デアルニ拘ラズ、「アル
コール」專賣法ヲ十二年度カラ實施スル、其
理由ハドウ云フ譯デアルカ、斯ウ云フ御趣
旨ニ拜聽致シタノデアリマスガ、成程「ア
ルコール」ヲ揮發油ニ混用致シマスノハ、昭
和十三年度カラノ豫定デアリマス、併シ是
ガ準備ノ爲ニ工場モ建設致シマスシ、又原
料關係ノ準備モアリマスノデ、其點ヨリ本
法ヲ十二年度ヨリ施行スルコトト致シタノ
デアリマス、尙ホ他ノ一點ハ工業用等ノ「ア
ルコール」ニ付キマシテ、只今大臣カラ御
說明ガアリマシタ通リ、從來ハ臺灣、南洋
廳ニ於キマシテ、稅金ノ關係ヲ扱ッテ居ッタ
ノデアリマスルガ、ソレヲ昭和十二年度カ
ヲ、內地ニ於キマシテ專賣收入ト致シマシ
テ、稅金ニ相當スルモノハ之ヲ徵收シ、又
交付金ト致シマシテ、戾稅、免稅等ニ相當
スル分ハ、ヤハリ內地ニ於テ行フト云フコ
トニ致シマシタ爲ニ、十二年度ヨリ施行ト
云フコトニ致シタ次第デアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X01319370227&spkNum=13
-
014・岩瀬亮
○岩瀨亮君 簡單デアリマスカラ自席カラ
御許ヲ願ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X01319370227&spkNum=14
-
015・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 許可致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X01319370227&spkNum=15
-
016・岩瀬亮
○岩瀨亮君 只今大藏大臣及ビ政府委員ノ
御答辯ガゴザイマシタガ、私ハ之ニ依ッテ
滿足ハ出來ナイノデアリマスガ、詳細ノ點
ニ付キマシテハ、委員會ニ讓リマシテ、私
ノ質問ハ是デ打切リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X01319370227&spkNum=16
-
017・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 佐竹晴記君
〔佐竹晴記君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X01319370227&spkNum=17
-
018・佐竹晴記
○佐竹晴記君 私ハ.大藏大臣竝ニ商工大臣
ニ御尋ヲシタイト考へマス、第一本法施行
ニ依ッテ、我國液體燃料ノ〓乏ヲ如何ナル程
度ニ緩和シ得ルノデアルカドウカ、此點ヲ
御尋シタイト思フノデアリマス、本案提出
ノ理由書ニ依レバ燃料國策ニ應ジ揮發油混
入用「アルコール」ノ供給ヲ確實豐富ナラシ
ムル爲メ及ビ工業用「アルコール」ノ專賣ヲ
必要トスルニアリ、ト云フノデアリマス、
文明ノ進步發達ニ伴ヒ、石油ノ消費額ガ著
シク增大シ、而モ此液體燃料ガ如何ニ國防
竝ニ產業上ニ於ケル重要性ヲ有ッテ居ルカ
ト云フコトハ、今更言ヲ俟タナイ所デアリ
マス、林首相ガ此演壇ヨリ、今ヤ東洋ハ一
觸卽發ノ狀態ニ在リト言ハレタコトト思ヒ
合ハセマスル時ニ、此「アルコール」專
賣ニ依ル燃料國策樹立ノ計畫ニ對シマシテ
ハ、深甚ナル關心ヲ有タザルヲ得ナイノデ
アリマス、然ラバ先ヅ我國ニ於ケル揮發油
ノ消費額ハ、如何ナル額ニ達シテ居ルノデ
アルカ、又其消費ガ如何ニ急激ニ增大シツ
ツアルカ、更ニ一旦緩急アル時ニ、何程ノ
「ガソリン」ヲ要スベキカ、之ヲ知ルコトヲ
要スルト同時ニ、進ンデ此必要ニ應ジ、何
程ノ供給ヲ爲シ得ル力ガアルカドウカ、又
何程ノ貯藏ガアルカドウカ、更ニ代用燃料
ヲ幾何生產シ得ル能力ヲ、我國ニ於テ有ッテ
居ルカドウカ、此點ヲ究メナケレバナラナ
イト同時ニ、進ンデ今囘提案サレマシタ「ア
ルコール」專賣計畫ニ依リ、ドノ程度ニ燃
料供給ノ確實豐富ナルコトヲ期シ得ラルヽ
カ、又一旦緩急アル時、其政策實行ニ依リ、
如何ナル效用ヲ發揮シ得ルノデアルカドウ
カト云フコトヲ承リタイノデアリマス、仍
テ當局ニ於カレマシテハ、的確ナル數字ノ
上ニ立ッテ、其實情ヲ審カニシ、且ツ專賣法
實施ニ依リテ、果シテ燃料國策ノ滿足ヲ期
シ得ラルヽカ否カヲ明答サレタイノデアリ
マス
第二點ハ、進ンデ石炭液化事業ニ付テ御
尋ヲシタイノデアリマス、本案提出ノ理
由ハ「アルコール」ヲ專賣ニスルコトニ依ッ
テ、之ヲ「ガソリン」ニ混入シ、燃料ノ確實豐
富ヲ圖ラントスルニ在ルト云フノデアリマ
入り、「ガソリン」ノ莫大ナル消費、殊戰ニ前ニ
比シ約二百四十倍ト云フ消費激增振リヲ示
シテ居リマスル我國ノ狀態ニ於キマシテハ、
此「ガソリン」對策ニ依ッテ、卽チ「アルコー
ル」ヲ一割ヤ二割位强制混入スル程度デハ、
決シテ燃料國策ノ完璧ヲ期シ得ラレルモノ
デハナイト、私共ハ憂ヘルノデアリマス、而
モ石油其モノヽ產出、或ハ輸入ガ意ノ如クナ
ラナイト致シマスルナラバ、必然的ニ代用燃
料ノ工業化ガ焦眉ノ急トナリマスルコトハ、
今更私ヨリ贅言ヲ要シナイ所デアリマス、
其代用燃料工業化ノ第一ニ數ヘラルベキモ
ノハ、何ト申シマシテモ石炭ノ液化事業デナ
ケレバナラヌト考ヘマス、此對策ヲ樹立致シ
マシテコソ、初メテ日本ノ燃料國策ガ確立
セラレルモノト思フノデアリマス、而シテ
「ガソリン」一瓲ヲ生產スルニハ、石炭約五
瓲ヲ要スルト言ハレテ居ル、ソコデ何ト申
シマシテモ、先ヅ石炭鑛業ヲ國營トシ、石
炭ヲ豐富且ツ低廉ニ供給シナケレバナラナ
イコトハ申上ゲル迄モナイ、滿洲炭ヲ含メ
テ一元的統制ヲ樹立致シマシテ、石炭液化
事業ヲ政府自カラ經營致シマシテ、原料供
給ヲ含メタル一貫作業ノ下ニ、利潤ヲ拔キニ
致シマシテ、積極的ニ人造石油ヲ生產スル
コトニ努力致シマスルナラバ「コスト」ヲ
低下セシメテ、採算ヲ取リ得ル確實性ガ十
二分ニアルト私ハ考ヘルノデアリマス、
少クトモ差當リ、政府ニ於カレマシテ
ハ、重要產業統制法ノ公益規定ヲ活用致シマ
シテ、石油鑛業聯合會及ビ其共販機關タル、
昭和石炭會社ノ石炭市價吊上竝ニ維持ノミ
ニ汲々ト致シテ居リマスル態度ヲ是正シ、眞
ニ低廉ナル石炭ヲ豐富ニ供給セシメマシテ、
以テ石炭液化事業ヘ邁進スベキモノデアル
ト私ハ思フノデアリマス(拍手)然ルニ政府
ハ此點ニ付テ何等ノ努力ヲ致シテ居ラヌノ
デアル、石炭鑛業資本家ノ利潤ヲ保護シタ
イコトニ専念ノ餘リカ、將亦石油政策ノ中
ニ石炭液化工業ヲ含メナイト云フ御精神ナ
ノカ、ハッキリシク御答辯ヲ承リタイノデア
ル
第三ニ「アルコール」ヲ「ガソリン」ニ混用
スル必要ニ迫ラレテ居リマスル狀態ノ下ニ
於キマシテハ、各國トモ有ユル代用燃料工
業化ニ腐心ヲ致シテ居リマスルガ、政府ハ
何故ニ「ガソリン」ノ合成、「ベンゾール」ノ
製造、或ハ瓦斯發生爐ノ代用奬勵等ニ付テ、
今少シク積極的强行政策ヲ斷行シナイノ
カ、申上ゲル迄モゴザイマセヌガ、獨逸ニ
於キマシテハ千九百三十五年ニ「ルールヘ
ミー」會社ニ於テ、水性瓦斯「コークス」爐
瓦斯ヲ原料トスル「ガソリン」合成事業ノ企
業化ニ成功致シマシテ、一箇年間約百三十
万瓲ノ輕質代用燃料ノ自給ガ出來ルト言ハ
レテ居リマス、日本ニ於キマシテモ、アノ
臺灣ニ於テ天然瓦斯ガ猛烈ニ噴出ヲ致シテ
居リマス、之ヲ原料ト致シマスナラバ、相
當多量ノ合成「ガソリン」ヲ生產シ得ルコト
ハ、洵ニ明カナコトデアルト思フ、其他代
用燃料工業化ニ付キマシテハ、大イニ計畫
スベキモノガ多々アルト思フ、然ルニ政府ハ
一體何ヲ爲シツヽアッタカ、更ニ將來何ヲ爲
サントスルノデアルカ、少クトモ今日ノ狀
態ヨリ見マスルナラバ、過去ノ政府ノ執リ
タル態度ハ、極メテ消極怠慢デアッタト言
ハナケレバナラヌト思フノデアリマス、今
日米國ハ全世界ノ石油產額ノ六七%ヲ有シ、
英國ガ一七·五%ノ石油資源ヲ有シテ居リマス
ルコトハ、決シテ一朝一夕ニ之ヲ得タモノ
デハナイノデアリマス、過去ノ血ノ滲ムガ
如キ石油爭奪戰ト、政府ノ厚キ保護援助ノ
賜ニ外ナラヌノデアリマス、佛蘭西ガ歐洲
大戰ノ苦盃ヲ嘗メテ以來、大戰後熱心ナル
外交工作ニ依リマシテ、千九百二十年「サン
レモ」協約ヲ英國ト結ブニ至ッテ「イラク」油田
ノ開發ニ參加スルノ機會ヲ得、更ニ千九百
二十四年佛蘭西石油會社設立ニ際シマシテ
ハ、政府ハ多大ノ出資ヲ致シマシテ、著々
トシテ其燃料國策樹立ニ邁進ヲ致シテ居リ
マシテ、其成果ヲ收メツヽアルデハアリマ
セヌカ、伊太利ガ大戰中ノ苦キ經驗ニモ拘
ラズ、認識不足ナリシ爲ニ立遲レトナリ、
最近漸ク其政策樹立ニ進ミツヽアルコト御
承知ノ通リデアリマス、獨逸ノ素晴ラシキ
發展ノ如キハ、最早私ヨリ申上ゲル迄モナ
イ、然ルニ日本ハ此間一體何ヲ爲シタカ、
現在日本ハ其技術ノ上ニ於テ、獨逸ヨリ十
年遲レテ居ルト云フコトヲ、商工省ノ課長
サン自ラガ發表シテ居ルデハナイカ、今頃
「アルコール」專賣デ以テ、國策樹立ノ〓ニ
就キタリト思フナラバ、ソレハ失笑ニ値ス
ル、政府ハ何ガ故ニ今少シク時局ニ鑑ミ、
代用燃料工業化ニ邁進ヲ致シマセヌノカ、
明確ナル御答辯ヲ御願スル次第デアリマス
其次ハ第四、政府ハ何故ニ曩ニ提案致シ
マシタ帝國燃料興業株式會社法案ヲ引込
メ、之ニ關スル液體燃料ノ自給促進ニ關シ
マスル約一千三百万圓ノ經費ヲ削除致シマ
シタカ、政府ハ一面「ガソリン」關稅ノ引上、
同消費稅ノ新設ヲ企テヽ居リマス、此「ガソ
リン」稅引上竝ニ本法案ト液體燃料自給政策
トハ、相表裏ヲ爲シマシテ、不可分ノ關係
ニアルニ拘リマセズ、政府ハ其後者ノ費目
ノミヲ削減致シマシテ、燃料國策ノ重要ナ
ル部分ヲ抛棄シタノデアリマス、其爲ニ加
重スル負擔ノミヲ大衆ニ負ハシメ、一 四.
石油資本家ヲシテ約七十万圓ト云フ莫大ナ
ル利益ヲ增加セシメナガラ、肝腎ナル此燃
料自給策ヲ遷延致シマスノハ、果シテ信念
アル爲政者ノ爲スコトデアリマセウカ、政
府當局ノ所信ヲ承リタイノデアリマス
其次第五、政府ハ燃料國策樹立ニ伴ウテ、
缺クベカラザル勞働政策ノ持合セガアルデ
ゴザイマセウカ、竝ニ立地政策ニ付テ御考
慮セラレテ居ルデゴザイマセウカ、御尋ヲ
申上ゲタイノデアリマス、九州大牟田ニアリ
マス三池窒素ノ工場ヲ滿洲ニ移スヤウニト、
滿洲側ヨリ三井當路者ニ慫慂ガアリマシタ
時ニ、三井ハ熟練エガナイカラトノ理由ニ
依ッテ、之ヲ拒絕シタト云フコトヲ聞イテ居
ルノデアリマス、熟練エガナクシテ斷ジテ
燃料國策ハ樹立ノ出來ナイト云フコトヲ證
シテ餘リガアルト、私ハ思フノデアリマス、
ソレガ爲ニハ勞働條件ヲ引上ゲ、待遇ヲ改
善シ、文化的施設ノ下ニ、平素ヨリ〓養ス
ルト云フコトガ急務中ノ急務デゴザイマス
ルコト、固ヨリ私ヨリ申上ゲル迄モナイ、
一觸卽發ノ危機ニアル、而モ燃料不足ノ悲
鳴ヲ擧ゲテ居リマス今日、若シ一旦緩急ア
リトセバ如何相成リマスルカ、泥棒ヲ押ヘ
テ繩ヲ綯フノ愚ハ、豫メ之ヲ避ケンケレバ
ナラヌト考ヘマスルガ、政府ニ致シマシテ
如何ナル對策ヲ御持合セニナッテ居ラレマ
スルカ、又九州大牟田ヨリ滿洲ニ移シテ吳
レロト云フ懲慂ノアリマシタコトニ鑑ミマ
スルモ、總テ近代産業ガ土地ノ便利ノ上ニ
立タザレバ困難デアルト云フコトヲ物語ッテ
餘リアル、例ヘバ撫順附近ニ於キマシテ、
石炭油化工場ヲ起ストカ、其他、地ニ據ッテ生
產ノ便ヲ得ルト云フヨトガ、卽チ立地政策
ヲ執ルト云フコトガ「コスト」ヲ低廉ナラシ
メル上ニ於テ、極メテ重要ナル關係ニ立ッテ
居ルモノト考ヘマスルガ、政府當局ニ於カ
ルヽ御所見ヲ拜聽致シタイノデアリマス
其次第六「アルコール」ヲ政府專賣トスル
コトニ依リマシテ、其「コスト」ヲ何程ト爲
スコトヲ得ルカ、又何程ヲ以テ之ヲ販賣シ
得ル所ノ見透シガ付カレテ居リマスルカ
「アルコール」ハ現在ノ「ガソリン」ニ比シマ
シテ、其「コスト」ハ高價デアルト政府要路
ノ方々ヨリ發表セラレテ居リマス、專賣ス
ルコトニ依ッテ、ドレダケデ出來ルカモ分
リマセヌガ、其高價ナル「アルコール」ヲ强
制混入スルコトニ依リテ「ガソリン」ノ一般
市價ニ影響スルコトナキヤ、現ニ「ガソリ
ン」値上ノ爲ニ自動車業者ハ悲痛ナル反對
ノ聲ヲ擧ゲテ居ルノデアリマス、世論亦囂
囂タルモノガアル、是等ニ對シテ何等ノ摩
擦ナク、圓滑ニ此計畫ガ遂行サレルト云
フ政府ハ確信ヲ有タレテ居リマスルカドウ
カ
最後ニ第七「アルコール」生產原料ト農村
振興トノ關係ヲ御尋ヲ申上ゲタイノデアリ
マス、本案ガ燃料國策樹立ノ目的ニ在リマス
ルコトハ勿論デアリマスガ、一面農村振興
ノ爲ニ資セントスルニ在ルト云フコトハ
只今ノ大藏大臣ノ御說明ニ依ッテ、之ヲ明
ニサレタノデアリマス、然ラバ其生產原料
ハ如何ナル地方ニ分布サレ、又如何ナル農
村ニ寄與スル所ノ見込デアルカ、其生產原
料ハ政府要望ノ如キ數量ヲ獲得シ得ル自信
ガアルカドウカ、更ニ農村ノ受クベキ利益
竝ニ其效用ノ程度ヲ承リタイト思フノデア
リマス、以上先ヅ七點ニ付テ御尋ヲ申上ゲ
マス(拍手)
〔國務大臣伍堂卓雄君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X01319370227&spkNum=18
-
019・伍堂卓雄
○國務大臣(伍堂卓雄君) 御答致シマス、
第一ニ「アルコール」ヲ混用致シマスコトニ
依ッテ、ドノ位ノ程度ニ「ガソリン」ノ使用
ヲ緩和シ得ルヤト云フ御尋デアッタト思ヒ
マスルガ、今日自動車用ノ爲ニ「ガソリン」
ガドノ位使ハレテ居ルカト申シマスルト、
極ク大約ノ數量デアリマスルガ、昨年ノ如キ
ハ「ガソリン」ガ約百三十万「キロリットル」
使用サレテ居リマシテ、其中ノ九五%ガ自
動車用ニ使ハレテ居ルノデアリマス、斯樣
ナ見地カラ「ガソリン」ノ大部分ハ、今日自
動車用デアリマスルカラ、是ノ節約ト云フ
コトガ、燃料政策トシテ最モ重要ナコトニ
ナルノデゴザイマス、ソコデ混用ノ實施ハ
十三年度カラ致ス積リデアルコトハ、大藏
大臣ガ申サレタ通リデアリマス、混用ノ程
度ハ各國ノ例ニ依リマシテモ、一割乃至二
割迄ニ及ブコトニシテ居リマスルガ、十三
年度カラ直チニ斯樣ナ大キナ割合ヲ以テ混
用スルコトハ「アルコール」ノ生產ノ方面カ
ラ見マシテモ出來マセヌデゴザイマス、ソコ
デ十三年度ハ先ヅ二%半カラ始メテ行キタ
イト思フノデゴザイマス、十三年度ノ自動
車ニ要スル「ガソリン」ノ使用量ヲ、大體百
三十五六万「キロリットル」ト見テ居リマシ
テ、是ガ二%半デアリマスルカラ、約三万五
千「キロリットル」ノ「アルコール」ガ要ル譯
ナノデゴザイマス、斯ノ如キ目的ニ使ヒマ
ス「アルコール」ハ極メテ純粹ナモノガ要
ルノデゴザイマシテ、九九%位ノ純「アル
コール」ガ必要トサレルノデアリマス、此意
味ニ於キマシテ工業用ノ「アルコール」迄モ
含メマシテ、專賣法ヲ適用シヨウト云フノ
デゴザイマスルガ、何故ニ工業用迄モ入レ
ルカト申シマスルト、工業用「アルコール」
ノ優良ナ部分ガ、此自動車ノ「アルコール」
ニ使ハレルト見テモ宜シウゴザイマスカラ、
其區別ガ中々難カシイノト、ソレカラ工業
用「アルコール」ヲ更ニ精製ノ度ヲ高メマシ
テ、純粹ニ近イ「アルコール」ヲ拵ヘルノデ
アリマスカラ、ドウシテモ之ヲ一〓ニ含メ
タ方ガ、效果ガ擧ガルト見テ居ルノデゴザ
イマス
次イデ燃料政策ニ付テノ御尋デゴザイマ
スルガ、御承知ノ通リ日本ノ現狀ハ、燃料
政策ガ遲レテ居リマス、ソレハ只今御話ニ
ナリマシタ通リデアリマスルカラ、吾々ト
致シマシテハ此燃料政策ハ鐵ノ政策ト共ニ、
重要視シナケレバナラヌト覺悟シテ居ルノ
デアリマス、昭和十年ノ統計ニ依リマスル
ト云フト、我國デ使用致シマシタ液體燃料
ハ四百七十万「キロリットル」、其中ノ國產品
ハ僅ニ三十八万「キロリットル」デゴザイマ
スルカラ、八%位ニシカナラナイノデゴザイ
マス、之ヲ自給ニ導イテ行キマスノハ中々
容易ナコトデハナイノデアリマシテ、國內
ノ油田ノ開發ニ努メナケレバナラナイコト
ハ勿論、殊ニ北樺太ノ石油ノ權利ヲ擴張シ、
開發ヲ促進スルコトニモ努メナケレバナリ
マセヌガ、只今仰セノ如ク人造石油ノ事業
ニ對シテハ、十分ナ努力ガ必要ナノデゴザ
イマス、ソレニ付キマシテ今議會ニ於キマ
シテ、只今御話ニナリマシタ事業ヲ行ヒマ
スル帝國燃料株式會社--此法案ハマダ提
出致シマセヌガ、其內容ニ付テ色々〓究調
査ヲ要スル點ガアリマシテ、豫算面カラハ
一度撤囘シテアリマスルガ、他ノ方法ヲ以
テ必ズ今議會中ニ、內容ヲ殆ド變ヘルコト
ナシニ-內容ト申シマスルノハ、其事業
ノ內容デゴザイマス-不日提出スル積リ
デ居リマス、此會社ガ出來マシテ、七年後
ニハ人造石油ノ揮發油百万「キロリットル」
及ビ重油百万「キロリットル」、其生產能力
ヲ備ヘル積リデ居リマス、中々是ダケノコ
トデハ足リナイノデアリマスルガ、色々ノ
事情カラ此程度ノモノヲ是非實現シタイト
考ヘルノデアリマス
ソレカラ「アルコール」ヲ專賣トスレバ、
燃料ノ「コスト」ガ上ガルノデハナイカ、卽チ
ソレガ爲ニ自動車營業者ガ非常ニ困ルノデ
ハナイカ、斯ウ云フ御尋デアリマスルガ、
其價格ノ上ガルコトハ已ムヲ得ナイノデア
リマスガ、併シ上ゲナイヤウニ、ソレヲ政
府ノ負擔ニ於テ行フト云フ目的ガ、卽チ只
今大藏大臣ガ說明サレマシタ「アルコール」
專賣制度實施ノ目的ナノデアリマス、是ハ
決シテ政府ガ儲ケル積リデハナイノデアリ
マシテ、赤字ガ出テモ、此混用ノ爲ニ市價
ヲ騰貴セシメナイト云フ目的ヲ以テ行フ、
卽チ言換ヘレバ公益專賣トデモ申シタラ宜
イカト思ヒマス、此「アルコール」製造ノ爲
ニ、農村ノ產業ニ惡影響ヲ及ボシハシナイ
カト云フ御尋デゴザイマスガ、是ハ十分ニ
注意致シテ、其影響ノナイヤウニ努メタイ
ト思ヒマス
〔政府委員荒井誠一郞君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X01319370227&spkNum=19
-
020・荒井誠一郎
○政府委員(荒井誠一郞君) 甘藷、馬鈴薯
等ヨリ「アルコール」ヲ製造スルニ付キマシ
テ、其原料ニ付テ自信アリヤ否ヤト云フ御
質問デアリマシタガ、是ハ農林當局トモ十分
打合セヲ致シマシタル所、今日甘藷、馬鈴薯
ニ付キマシテハ、其反當リノ生產ノ增加ニ
付テモ、隨分餘裕ガアリマスルシ、亦耕地
ノ擴張ニ付キマシテモ比較的容易デアル、
又品種ノ改良ニ付キマシテモ、今後大ナル
見込ガアルノデアリマス、斯ウ云フ各種ノ
關係カラ、十分自信ヲ以テ製造ヲ始メルコ
トガ出來ルト云フ結論ニ歸著致シタノデア
リマス、又其他ノ工場ヲ如何ナル方面ニ設
置スルヤ、或ハ「ガソリン」ニ混入スル구
ルコール」ノ生產費如何、斯ウ云フ點デア
リマスガ、是ハ詳細ハ委員會ニ於テ御說明
申上ゲルコトト致シタイト考ヘマスルガ、
原則ト致マシテ、工場ハ出來ルダケ產地ニ
近ク設置致シタイ、而シテ農村ノ工場トシ
テ設置致シタイ、斯ウ考ヘテ居リマス、又
是ハ出來ルダケ廣ク設置致シタイト云フコ
トモ考ヘテ居リマスノデ、此點ニ付キマシ
テハ十分農林當局ト協議ノ上デ、農村ノ利
益ニナルヤウニ計畫致シタイト考ヘテ居リ
マス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X01319370227&spkNum=20
-
021・佐竹晴記
○佐竹晴記君 簡單デスカラ自席ヨリ御許
ヲ願ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X01319370227&spkNum=21
-
022・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 御許シ致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X01319370227&spkNum=22
-
023・佐竹晴記
○佐竹晴記君 尙ホ立入ッテ承リタイ點ガ
アルノデアリマスガ、細カクナリマスノデ、
委員會ニ於テ詳細質問ヲ申上ゲルコトニ致
シマシテ、當席ニ於キマシテハ私ノ質問ヲ
是デ打切リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X01319370227&spkNum=23
-
024・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 伊豆富人君
〔伊豆富人君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X01319370227&spkNum=24
-
025・伊豆富人
○伊豆富人君 本案ニ付キマシテ簡單ニ大
藏大臣、商工大臣ニ御質問申上ゲタイト思
ヒマス、第一ニ御伺致シタイコトハ、只今
政府ノ御說明ニ依リマスト「アルコール」專
賣ノ目的ハ燃料國策ニ立脚シテ揮發油混
入用酒精ノ供給ヲ、確實豐富ニスルト云フ
コトデアリマス、ソレニ付キマシテ御伺致
シマスル一點ハ、果シテ然ラバ是ト關聯ア
ル所ノ石炭液化ト、同時ニ御出シニナルコ
トガ出來ナカッタカドウカト云フコトガ一
ツデアリマス、モウ一ツハ、燃料國策ノ維
持バカリデアリマスナラバ、純度九十九度
以上ノ無水「アルコール」ノミニ限定サレル
ガ、至當デアルニ拘ラズ、政府ノ專賣ノ目
的タル酒精ハ、酒精分九十度以上ノモノデ
アリマシテ、飮料ヲ除キ燃料用、工業用、
化學用、藥用、化粧用等、一切ヲ包含シテ
居ルノデアリマス、政府ノ眞意ハ燃料國策
ノ確立バカリヲ目的トサレルモノデアリマ
スルカ、或ハ專賣制度ヲ實施スルニ、國庫
ノ收入ヲ目的トスル專賣制度ヲ實施スルニ
アルノデアリマスルカ、其點ヲ御伺申上ゲ
タイト思フノデアリマス
第二ニ御尋申上ゲタイコトハ、酒類ト切離シ
テ酒精ノミノ專賣ハ、其本旨ニ副ハナイト云
フコトデアリヤス、專賣制度ハ現ニ大藏省ノ所
管デアリマシテ、財政ノ目的ノ爲ニ設定セラレ
タモノデアルト信ズルノデアリマス、酒類販賣
ト同時ニ考究スベキモノデハナイカト思フ
ノデアリマスルガ、ソレニ對スル政府ノ御
所見如何デアルカト云フコトデアリマス、
前內閣ノ方針ハ、慥カ酒類ノ販賣モ意圖サ
レテ居ッタヤウニ、承知致シテ居ルノデアリ
マスルガ、今囘ハソレヲ「アルコール」專賣
ノミヲ切離シテ提出サレタコトニ對スル、
御意向ヲ伺ヒタイト思フノデアリマス
又第三ニ御尋申上ゲタイコトハ、國庫ノ
收入ノ伴ハナイ專賣制度ハ、財政上ノ通念
ニ反スルノデハナイカト思フノデアリマ
ス、之ニ對スル政府ノ御所見ヲ御伺申上ゲ
ルノデアリマス、前內閣ノ方針ニ依リマス
ルト、燒酎ヲ酒精ト看做シ、燒酎販賣ノ益
金ニ依リマシテ、揮發油混入用酒精ノ損失
ヲ補塡スル立前ヲ以テ、酒精ノ製造販賣、
完全專賣ヲ實施セントサレタノデアリマ
ス、然ルニ現内閣ハ燒酎ヲ酒精ト看做シ
テ、酒精ノ製造竝ニ販賣專賣ヲ行フコト
ハ稅制ノ根本的改革ヲ行ハナイ現政府ノ
根本政策ニ牴觸スルトノ理由ノ下ニ、燒酎
ヲ專賣制度ヨリ除外シテ、在來ノ所謂酒精
ノミ「アルコール」ノミノ專賣制度ヲ實施サ
レントシテ居ルノデアリマス、其結果ハ國
庫ノ減收トナルノデアリマス、政府ノ酒精
對策ガ揮發油價格ト、混入用酒精トノ價格
ノ調整ヲ目的トスルノナレバソレハ國庫
ノ增收ヲ目的トスル專賣デナク、寧ロ國庫
ノ減收ニ依ル企業ノ助成デアルト、申サネバ
ナラナイト思フノデアリマス、斯ノ如キ專
賣制度ハ、全ク財政理論ト懸離レタル誤レ
ル觀念ニ基クモノト言ハネバナリマセヌ、
是等ニ對スル政府ノ御所見如何ト云フコト
ヲ御伺申上ゲルノデアリマス、又政府ハ「ガ
ソリン」トノ價格ノ開キヲ如何ニシテ調節
サレルカト云フコトモ、御伺申上ゲマス
次ニ御伺申上ゲタイコトハ技術上ノ問題
デアリマス、無水酒精ノ製造ハ我國ニ於キ
マシテモ、未ダ〓究途上ニ在ルモノト信ズ
ルノデアリマス、而モ製造工程竝ニ消費過
程ハ非常ニ複雜多岐ナルモノデアリマスル
カラシテ、官業ニハ寧ロ適シナイ、民間ノ
自由企業ニ依ッテ其發達ヲ期セラルヽコト
ガ、適當デハナイカト思フノデアリマス、
「アルコール」ハ燃料用、工業用、化學用、
藥用、化粧用等、有ユル工業ノ原料デアリ
マスカラ、之ヲ專賣制度ニ依ッテ拘束セラレ
ルヨリモ、免許制度ニ依ッテ民間ニ製造セシ
ムルコトヲ原則トシテ、サウシテ政府モ亦
同時ニ製造サレルト云フ立前ヲ執ルコトハ
出來ナイノデアリマスルカ、其點ヲ御伺申
上ゲマス、私ガ御伺申上ゲタイ點ハ以上ノ
諸點デアリマシテ、之ニ對シテ御答辯ヲ御
願申上ゲマス
〔國務大臣結城豊太郞君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X01319370227&spkNum=25
-
026・結城豊太郎
○國務大臣(結城豊太郞君) 伊豆サンノ御
質問ニ對シテ御答ヲ致シマス「アルコール」
專賣ハ燃料國策カラ出發シテヤルノデアル
ガ、ソレナラバ石炭液化ノ問題ト伴ッテ考ヘ
ルカト云フ御話、是ハ今石炭液化ノコトニ
付キマシテハ、商工省ニ於テ頻リニ立案ヲ
急イデ居リマス、燃料國策ノ樹立ノ上ニ於
テ、急イデヤラネバナラヌノデアリマシ
テ、ソレハ十分ニ此「アルコール」ノ專賣ト
一緒ニ考究スルコトニナッテ居リマス、ソレ
カラ無水「アルコール」ノミヲ專賣トシタナ
ラバ宜イヂヤナイカ、九十度以上ノ「アル
コール」ヲ專賣トスルノハ、ドウ云フ理由
デアルカト云フ御尋ニ拜承致シマシタ、此
「アルコール」專賣法案ハ、燃料國策ニ基イ
テ無水「アルコール」ヲ專賣トスルモノデア
リマスルガ、是ト其融通性ノアル九十度以
上ノ「アルコール」、卽チ工業用、藥用、其
他ノ用途ニ使用セラレルモノニ對シマシテ
ハ、ヤハリ徵稅上ノ關係カラ、是モ便宜專
賣ニシタ方ガ宜カラウト云フコトカラ致シ
マシタヤウナ次第デアリマス、ソレカラ燒
酎ヲ專賣ヲセヌデ除外シタノハ、ドウ云フ
譯デアルカト云フコトデアリマスルガ「ア
ルコール」ノ專賣ハ燃料國策ニ出發致シテ
居リマシタノデ、燒酎ノ方ニナリマスト、
酒類ニ對スル稅法ノ改正ヲ致シマス考デア
リマスノデ、ソレニ伴ッテ致サウト云フコト
カラ、今囘ハ除イタ次第デアリマス、ソレ
カラ燒酎ヲ專賣カラ除イテ、單ニ「アル
コール」ダケノ專賣ニシタナラバ、國庫ニ損
失ヲ來スヤウナコトガナイカト云フ御說デ
アリマスルガ、是ハ御尋ノヤウニ當分損失
ヲ致シマス、併シ將來ノコトヲ考へ、又燃
料國策ノコトヲ考ヘマスルト、餘儀ナイコ
トデアリマシテ、長イ將來ニ於テハ其邊ノ
所ノ償ヒガアルダラウト存ジマス、專賣ハ
必シモ收益主義ニノミ依ルモノデハナイト
存ジマス、公益專賣ト云フコトモ考ヘラレ
マスノデ、今囘ノ「アルコール」ノ專賣ハ、
ドチラカト申シマスルト、公益專賣ト云フ
コトニナラウト思フノデアリマス、其點御
答致シマス
〔國務大臣伍堂卓雄君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X01319370227&spkNum=26
-
027・伍堂卓雄
○國務大臣(伍堂卓雄君) 大體大藏大臣カ
ラ御說明ニナッタト思ヒマスガ、殘ッテ居リ
マスノハ無水「アルコール」ノヤウナモノ
ヘ、非常ニ難カシイモノデアッテ、寧ロ是ハ
役人ガヤルヨリモ、民間ニ委シタ方ガ結果
ガ好クハナイカト云フヤウナ、御質問ノヤ
ウニ承リマシタガ、是ハ私ハ寧ロ斯樣ナ儲
カラナイヤウナモノ初メハ「コスト」ガ非
常ニ掛ルヤウナモノコソ、政府ノ〓究所等
デ行ヒマシタ方ガ宜カラウト考ヘルノデゴ
ザイマス、經濟的ニ參ルヤウニナリマスレ
バ、之ヲ民業ニ移シタ方ガ却テ宜イカトモ
思フノデゴザイマス
ソレカラ佐竹サンノ御質問ニ對シテ、御
答ヲ漏シタ點ガアリマスルカラ、簡單ニ申
上ゲマスルガ、政府ニ於キマシテモ其他ノ
代用燃料ニ付テ〓究シ、尙ホ奬勵モ致シテ
居リマスル、例ヘバ御承知ノ通リ「デイー
ゼル」自動車、又木炭瓦斯ヲ使フ自動車等
ニ付テ奬勵ヲ致シテ居リマスシ、又御話ノ
合成「ガソリン」ニ付テモ、〓究ヲ致シテ
居ルノデゴザイマス、ソレカラ燃料國策ト
關聯シテ、勞働政策ニ付テ考慮シテ居ルカ
ト云フ御話デゴザイマス、勿論斯樣ナ新シ
イ工業ニ對シマシテハ、當初ハ勞働問題ガ
非常ニ大切ナノデゴザイマスルガ、之ニ對
シテハ最善ノ努力ヲ拂ヒタイト思フノデア
リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X01319370227&spkNum=27
-
028・伊豆富人
○伊豆富人君 簡單デアリマスカラ此席カ
ヲ御許ヲ願ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X01319370227&spkNum=28
-
029・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 許可致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X01319370227&spkNum=29
-
030・伊豆富人
○伊豆富人君 只今商工大臣ノ御答辯ヲ承ツ
タノデアリマスルガ、ソレニ依リマスルト
「アルコール」ノ如キ「コスト」ノ高イモノハ
民間ニ委ネルヨリ政府デヤッタ方ガ宜シイ
ト云フヤウナ、御答辯ノヤウニ承ッタノデア
リマスルガ、私ノ御尋致シマシタノハ、其意
味デハナイノデアリマス、「コスト」ノ問題
ト云フヨリモ、斯ノ如キマダ〓究過程ニ在ル
所ノ新シイ工業、而シテ其製造過程消費系
統ガ複雜多岐ナルモノハ、官營デヤルヨリ
モ寧ロ民間ノ自由企業ニ委ネタ方ガ、適當
デハナイカト思ハレルノデアリマス、ソレ
デ免許制度ニシテ民間ニ移シ、政府モ同時
ニ製造サレルヤウナ御方針ニナサッテハ如
何デアルカト、斯樣ニ御尋申シタノデアリ
マス「コスト」ノ問題デハナカッタノデアリ
マスルガ、今一度御答辯ヲ願ヘレバ幸ヒデ
アリマス
〔國務大臣伍堂卓雄君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X01319370227&spkNum=30
-
031・伍堂卓雄
○國務大臣(伍堂卓雄君) 御答致シマス、
能ク分リマシタ、斯樣ナ新シイ工業、殊
高度ノ技術ヲ要スル工業ハ、官民相俟ッテ協
力シテ行ヒタイト思ヒマス、其御趣意ヲ尊
重シテ實施致シタイト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X01319370227&spkNum=31
-
032・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 小谷節夫君
〔小谷節夫君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X01319370227&spkNum=32
-
033・小谷節夫
○小谷節夫君 私ハ只今議題トナッテ居リ
マスル對支文化事業特別會計法中改正法律
案ニ關聯致シマシテ、聊カ政府ノ所見ヲ質
サントスル者デアリマス、私ハ支那ニ在住
スルコトガ今年デ三十三年ニナリマスガ、
私ノ三十三年ノ支那生活中ハ勿論ノコト、
更ニ遡ッテ私共ガモノ心付イテ以來、日支ノ
關係ガ、前內閣ノ末期ノ如ク慘澹タル狀態
ヲ現ハシタコトハナイノデアリマス、アノ
日〓戰爭ノ如ク、日支兩國相戰ック場合ノ如
キデモ、日本コソ擧國一致デアリマシタガ、
支那ハ斷ジテ擧國一致デハゴザイマセヌ
戰爭ガ濟ミマシタ後ニ、日本ニ對スル敵愾
心ガ橫溢シテ居ッタカト申シマスルノニ、斷
ジテ左樣ナコトハナク、アレハ「リーホン
チャン·ターチャン」卽チ李鴻章ノ戰爭デアッタ
ト片付ケテ、日本ノ長ヲ學バントシテ、日
本カラ軍人ヲ傭ヒ、學校ノ〓員ヲ傭ッテ、サ
ウシテ日本ニ對スル非常ナ親善ナ空氣ヲ示
シタコトハ、皆サンモ能ク御承知ノ通リデ
アリマス、日露戰爭ノ當時ノ如キハ、中立
ト申シマセネバ蒙古方面カラ攻メラルヽ虞
ガゴザイマスルノデ、局外中立ヲ標榜シテ
ハ居リマシタケレドモ、日本ニ對シテ非常
ナル援助ヲ致シマシタ、一時親英、親米ノ
巨魁デ、排日ノ巨頭デアルカノ如ク、張作
霖側ノ惡宣傳ニ依ッテ、日本人ノ間ニ誤解セ
ラレテ居リマシタアノ吳佩孚ノ如キモ、袁
世凱カラ派遣セラレテ、日本ノ諜報勤務ヲ
勤メマシテ、屢〓死地ニ出入シテ居ッタ程デ
アリマシテ、日本トノ關係ハ頗ル緊密デアッ
タノデアリマス、之ヲ要スルニ日支兩國ノ
關係ハ、時ニ消長ナキ能ハズデハアリマス
ルガ、〓シテ東亞ノ善隣タル兩國ノ立場ヲ
理解シ合ッテ、徹底的ノ仇敵關係ヲ作ッタコ
トハ斷ジテナイノデアリマス、然ルニ昨年
來兩國ノ關係ハ頗ル緊迫シ來リ、前內閣ノ
末期ニ至ッテハ其最高潮ニ達スルニ至リマシ
タガ、其理由ハ抑〓何デゴザイマセウ、滿洲
國ノ問題デゴザイマセウカ、ソレモ理由ノ
一ツニハ相違ゴザイマセヌガ、是ガ最モ重
大ナル理由デアルトシタナラバ、滿洲問題
ノ其直後ガ、モウ少シ陰鬱デナケレバナラ
ナカッタ筈デアリマス、然ラバ北支那問題デゴ
ザイマセウカ、北支那問題ガ重大ナ理由デア
ルトシタナラバ、其直後ガモウ少シ陰慘ニナ
ラナケレバナラナカッタ筈デアリマス、滿洲問
題、北支那問題、重大ナ理由ニナルベクシテ、
ソレガ重大ナ理由ニナラズシテ、サウシテ
後ニ非常ニ陰慘ナ空氣ヲ呈シテ參リマシタ
其理由ハ抑、〓何デゴザイマセウ、能ク皆サ
ンモ御承知トハ存ジマスルガ、此重大ナル
理由ハ、日本ノ慾望ノ限度ニ更ニ見透シノ
付カヌコトデアッタノデアリマス、日本ハ此調
子デハ支那全土ニ野心ヲ持ッテ居ルノデハ
ナイカト云フ不安ガ、彼等ヲ驅ッテ夷ヲ以テ
夷ヲ制スルノデハナクシテ、溺ルヽ者ハ藁
ヲモ摑ムト云フ心理狀態デ、一層英米ニ親
ンダノデアリマス、一層露西亞ト握手セン
トスルヤウナ傾向ヲ呈シタノデアリマス、
而モ今日飛行機トカ「ラヂオ」トカト云フヤ
ウナモノガ非常ニ發達致シマシテ、支那ハ
統一ノ形ヲ作リ易イ狀態ニナッテ居リマス、
又財政的ニハ幣制改革ガ稍〓、成功致シマシ
テ、不換紙幣ガ澤山出テ居リマスルカラ、
自分達ノ持ッテ居ル紙幣ガ南京政府ガ潰レ
タナラバ、紙屑ニナッテシマフト云フ懸念モ
ゴザイマスルノデ、今日マデ見タコトノナ
イヤウナ、國民的ノ稍、ミ一致シタ形ヲ致シ
マシテ、窮鼠却テ猫ヲ嚙マントシテ、抗日
戰線ヲ擴大强化シ、失地囘復ノ聲ヲ大ナラ
シメタノデアリマシテ、是ハ何トシテモ前
內閣ノ一大失態デアッタト言ハザルヲ得ナ
イノデアリマス
私ハ元々靑島還付ニ憤慨致シマシテ、再
ビカルガ如キ愚擧ヲ繰返スコトナカラシメ
ンガ爲ニ、議會ニ發言權ヲ得ルコトヲ志シ
タ者デアリマス、其故ニ滿洲事件以後ノ帝
國ノ執リマシタ態度ニ付キマシテハ、共鳴
モシ、感謝モシ、非常ナ敬意ヲ拂ッテ居リ
マシタ、隨テ此壇上ニ立ツテ質問ガマシイ
コトヲ述立テル必要モ、要求ガマシイコト
ヲ言フ必要モナカッタノデアリマスガ、最
近ノ支那ノ實情及ビ我國ノ對支政策ニ付テ
ハ一言ナカルベカラザルヲ感ジマシタノ
デ、今議會ニ於テモ是非トモ發言ノ機會ヲ
得タイト思ッテ居ッタノデアリマスルガ、其
矢先ニ突如トシテ前內閣ガ崩壞シ、玆ニ林
內閣ガ成立シタノデアリマス、林內閣ハ其
組閣ノ當初ニ於テ、吾々ノ要求シテ居ッタ
通リ、過去ノ多元外交ヲ〓算シテ一元外交
トシ、祕密外交ノ弊ヲ排除シテ、國民ト共
ニ明朗ナル外交ヲ行ハンコトヲ聲明シ、更
ニ兩國相互ノ立場ヲ理解シ、相携ヘテ東亞
安定ノ推進力タランコト、及ビ中華民國ニ
對シ領土的野心ヲ有スルモノニ非ザルコト
等ヲ表明シマシタノデ、全ク行詰ッテ居ッタ
兩國關係ノ上ニ、一道ノ光明ヲ認メ、私共
ニモ別ニ是等ノ問題ニ對シテ、質問ノ必要
ヲ認メザラシムルニ至リマシタコトハ洵
ニ喜ブベキ事態ト言フベキデアリマス、此
空氣ハ遙ニ南京方面ニモ反映致シマシテ、
三中全會ノ如キモ、兎ニモ角ニモ露骨ナル
抗日的ノ聲明ナドヲ發表シナクテ濟ンダコ
トハ、日支兩國關係ノ爲ニ、洵ニ御同慶ニ
堪ヘナイ次第デアリマス、林內閣ノ對支政
策其箇々ノ方策ニ付テハ本會議ニ於テ、
更ニ豫算委員會ニ於テ稍、、具體的ニ聽クヲ
得マシタ、尙ホ種々ノ機會ニ於テ一層具體
的ニ御尋シテ見タイト存ジテ居リマスル
ガ、其方針方策ガ如何ニ立派デアッテモ、
要ハ實行デアリマシテ、實行ノ伴ハナイ聲
明ヤ演說ハ、百ノ聲明、百ノ演說モ蓋シ畫
ケル餅ト擇ブ所ハナイノデアリマス、早イ
話ガ、多元外交ヲ〓算シテ一元外交トスル
ト言ッテ見タ所デ、組閣當初ノ軍部關係ノ
閣僚ノ銓衡ニ行惱ンダアノ狀態ガ、國ノ內
外ヲ問ハズ新聞紙ヲ通ジテ周知ノ事實デア
ル限リ、愈〓實際ノ御手際ヲ拜見セヌ限リハ、
多少トモ危惧ノ觀念ヲ懷クノハ當然デアリ
マス、併シ是ハ林總理今後ノ努力ニ信賴ス
ルトシテモ、過日來林總理ガ、總理大臣ト
シテ或ハ外務大臣トシテ、色々ノ場合ニ述
ベテ居ラレマスル問題ニ對シ、其實行上ニ
ドレダケノ用意ト信念トヲ持ッテ居ラレル
カハ、頗ル疑ナキ能ハズデアリマス、日支
關係ヲ明朗化スル爲ニ相互ノ立場ヲ理解
シ、國民相互ノ接觸ニ依ル感情ノ融和ニ努
メルトカ、文化的ノ提携ニ努力スルトカ、數
ヘ上ゲテ居ラレマスガ、其具體的ノ方策ト
シテハ、如何ナル手段ニ依ラントシテ居ラ
レルノデアルカ不明デアリマス、今朝ノ新
聞ヲ見マスルト、外務省アタリデモ、頻リ
ニ實行上ノ方法ニ付テ〓究シテ居ラレルヤ
ウデアリマスルガ、其間特ニ經濟的ノ提携
ト云フコトニナレバ、南京政府ノ申出ニ
依ッテハ、今日英吉利ヤ亞米利加ガヤッテ居
リマスヤウニ、經濟借款ヤ或ハ財政借款ニ
モ乘出ス信念ト、用意トガオアリニナルカ
ドウカ、是ガ私ノ第一ニ承ッテ見タイ點デ
アリマス
十万ノ生靈ヲ犠牲トシ、一一十億ノ國帑ヲ費
シ、國運ヲ賭シテ露國ノ東洋侵略ヲ喰止メ、
由テ以テ今日ノ東亞安定ノ基礎ヲ築イタ其
歷史ヲ無視シテ、張學良ノ一派ガ日本ノ權
益ヲ蹂躪シ、日本人ヲ一人殘ラズ滿洲カラ
追拂ッテシマハウト云フヤウナ暴擧ヲ敢テ
シタコトガ、滿洲事變ノ端トナリ、遂ニ今
日滿洲國ノ出現ヲ見ルニ至ッタノデ、此歷然
タル事實ノ前ニハ、張學良一派ガ感情的ニ
失地恢復ヲ叫ブ以外ニハ、事理ノ分ッタ人達
ハ敢テ此問題ニ觸ルヽコトヲ好マナイノハ
事實デアリマス、ソレハ又當然デアリマス、
更ニ山東省ヲ含ム北支那一帶ガ、日滿支三國
ニ最モ密接關係ヲ有スル地域デ、他ノ中部
及ビ南部支那ニ對スルモノニ比シ、政治、
軍事、經濟、有ユル點ニ於テ多少特殊ノ關
係ヲ有セザルベカラザルコトモ、是亦自明
ノ理デアリマシテ、相互ノ理解サヘ完全シ
タナラバ、是等ガ兩國關係ノ障碍タル筈ハ
ナイノデアリマス、然ルニ南京政府ハ、却テ
是等ノ問題ヲ排日〓育ノ活キタル資料トシ
テ、第二ノ國民ヲ盛ニ抗日的ニ〓育シテ居
リマス、曾テ共產黨ヲ道伴レトシテ此伐ニ
成功シタ蔣介石氏ガ、今ヤ嘗テノ道伴レデ
アッタ共產黨ノ爲ニ、非常ニ惱マサレツヽア
ル此〓訓ヲ其儘ニ、今日ノ排日〓育ガ他日如
何ナル結果ヲ招來スベキカト云フコトハ、
中國ノ當局者ヲシテ再思三省セシムベキデ
アリマス、日支交涉ニ於テコソ、未ダ一致
點ヲ見出スコトガ出來ナカッタトハ申シナ
ガラ、過日ノ三中全會ハ、明ニ共產黨防衞
ヲ、其主張ノ一ツニ數ヘテ居リマス、東洋
ノ思想、道德ト相容レザル「コミンテルンㄴ
ノ侵入ニ對シテハ、交涉ノ成立未成立ヲ問
ハイ、日支兩國ノ意思ハ當然合致スベキモ
ノデ、更ニ露國ノ東洋侵略ヲ防止スルガ爲
ニ、日支兩國ガ利害休戚ヲ一ニスルコト
ハ、彼ノ日露戰爭ノ當時ト更ニ擇ブ所ハナ
イノデアリマシテ、支那側ニ於テモ十分得
心ノ行クベキコトデ、沈思默考シタナラバ
對「コミンテルン」バカリデハナク、「ソ」聯ニ
對スル日本ノ軍事ニ付テモ、之ヲ支持スベ
キガ當然デ、我國トシテモ故ラニ中華民國
ヲ驅ッテ、日本ノ軍事行動ノ妨害者タラシム
ル必要ハ斷ジテナイト思フノデアリマス、
故ラニ辭ヲ卑クシテ吾ヨリ求メルノデハア
リマセヌガ、以上ノ事理ヲ明ニシ、平素ノ
場合ニ於テハ經濟提携ノ好キ相手方トシテ、
特ニ北支那方面ハ企業的ニ、中部南部ノ方
面ハ通商貿易的ニ、而シテ一旦緩急アル場
合ニハ、好意的ノ支援者タリ得ルコトガ、
兩國ニ約束付ケラレタ天賦ノ宿命デアルト
存ズルノデアリマス(拍手)兩國關係ノ此事
理ヲ明ニシ、誤解ヲ解キ、眞ノ提携ニ入ル
第一ノ段階トシテ、現內閣ニ於テハ今日ノ
對支文化事業ニ於テ爲シツヽアル事業以外
ニ、更ニ有效適切ナル手段ノ御持合ガアル
ノデアリマセウカ、北平ニ古キ歷史ヲ持ッテ
居リマスル順天時報ヲ潰シテシマッタ外務
省ハ、ソンナ仕事ハ必要ガナイト思ハレル
ノデアリマセウカ、近イ例デハアリマスル
ガ、最近ニ靑島ニ紡績爭議ガアリマシタ、
日本ノ陸戰隊ヲ上陸サセマシタ、此時ノ日
本ノ陸戰隊司令官ノ聲明、斯樣ナモノハ
靑島ニハ今六十万ノ人口ガアリマシテ、支
那人ノ經營スル新聞ガ十三アリマスガ、支
那人ノ經營スル新聞ニハ、斷ジテ陸戰隊司
令官ノ聲明ハ載セテ吳レナイノデアリマス、
斯樣ナ場合ニ順天時報ノ如キ、或ハ上海ニ
於ケル江南正報ノ如キ、日本ノ主張ヲ發表
シテ、支那人ニ理解セシメルヤウナ機關ガ
私ハ必要デアルト思フノデアリマスルガ、
其順天時報ヲ僅バカリノ補助金ノ關係デ潰
シテシマヒ、又僅バカリノ補助金ヲ出シ吝
ンデ、上海ノ江南正報ヲ潰シテシマッタヤウ
ナ外務省ニ、果シテ支那人ニ理解提携ヲ求
メルヤウナ、ドウ云フ立派ナ御仕事ガアルカ
ト云フコトニ付テ聽カシテ貰ヒタイ(拍手)
是ガ私ノ質問ノ第二點デアリマス
私ハ先ニ靑島還付ニ憤慨シテ、議會ニ發言
權ヲ得ントシタト申シマシタガ、私ハ常ニ支
那人ニ向ッテ、長イ間ノ支那生活デ、骨ハ日
本カラ持ッテ來タ骨ダケレドモガ、身ハ中國
デ附イタ身デ、俺ノ身體自身ガ日支合辦デ
出來テ居ルノダ、ダカラ我輩ハ日本ト支那
トノ提携ノ爲ニ、全身ヲ捧ゲレバ、ソレガ私
ノ本望デアルノデアルト始終支那人ニ申シ
テ居リマス、私ハ斷ジテ侵略的ノ意思ヲ以テ、
靑島還付ニ反對シタノデハナイノデアリ
マス、ソレガ日支兩國ノ爲ニ良策ナリト信
ジタカラデアリマスス、其當時靑島ニ在住
シテ居リマスル支那人ノ中ニサヘ、日本ノ
治下ヲ離レテ支那軍閥ノ苛斂誅求ノ下ニ曝
ラサレルコトハ遺憾デアルト云フノデ、支
那人自ラガ靑島還付ニ反對シテ居ッタ者ガ、
澤山アッタノデアリマス、然ルニ其事理ヲ
モ辨ヘズシテ、靑島ヲ還付致シマシテ、今日
靑島ノ土ヲ踏ム人デ、ゾレガ日本人デアル限
リ、私共ガ豫想シテ居ッタ通リニ、惜シイ處ヲ
還シタモノダト言ハヌ人ハ殆ンド一人モナ
イノデアリマス、又アノ儘靑島及ビ山東鐵
道ノ經營ガ、日本ノ治下ニ在ッタナラバ、膠
濟鐵道ハ疾ックノ昔ニ江南省ニ伸ビマシテ
隴海鐵道ト接續シ、靑島港ハ山東省、山西
省河南省、陝西省、廿肅省邊リノ物資ヲ
呑吐シマシテ、揚子江ノ水運ニ竝行シタ陸
運ニ依ッテ、上海並ミノ發展ヲ遂ゲ、數十万
ノ日本人ハ北支那ニ於テ中國民衆ト握手提
携シ、北支那ノ文化ノ發展ト云フモノハ、
迚モ今日想像モ及バヌ程度ノモノデアッタ
ラウト思ハレルノデアリマス、然ルニ其當
時ノ當局者ノ認識不足ノ結果ハ、千餘ノ生
靈ヲ犧牲トシ、二億ノ國帑ヲ費シテ而シテ
得タルモノハ、彼等ノ輕侮心ト排日侮日ノ
ミデアリマシタ、靑島還付以前ニモ排日侮
日ガナイデハアリマセヌデシタ、併ナガラ
ソレハ論ズルガ程ノモノデハゴザイマセヌ
デシタ、今日ノ如ク根强イ侮日抗日ノ其俑
ヲ作ッタモノハ、靑島還付デアルト斷言シテ
憚リマセヌ(拍手)人ニ依ッテハ、アレハ時代
ノ力デ致方ガナカッタト言フ人モアリマス、
ダガ併シ戰亂ノ血未ダ醒イ歐羅巴ニ於テ「ダ
ヌンチオ」ノ力ヲ以テ「フィウメ」ヲ奪囘シ
タト云フ事實ヲ見タナラバ、時代ノ力トノ
ミ言フ譯ニハ行カヌト思フノデアリマス、
併ナガラ私共ハ今玆ニ死兒ノ齡ヲ數ヘント
スル者デハアリマセヌ、唯支那側ヲシテ日
本人ニ斯ル不愉快ナル觀念-靑島ヲ還シ
テ纔ニ侮日排日ト云フ御禮ヲ貰ッタバカリ
デアルト云フヤウナ觀念ヲ與ヘシメルニ至ッ
タコトガ、日支關係ヲ險惡ニ導イタ重大ナ
ル理由デアルト云フヤウナコトヲ、理解サ
セル必要ガアリマス、又支那人ハ能ク不平
等條約ト云フコトヲ口癖ノヤウニ申シマス、
被壓迫ノ下ニ强ヒラレタ條約ハ履行スルニ
及バヌト申シマス、併シ何レノ國ノ條約モ、
全然平等ノ立場ニ於テ作ラレタ條約ト云フ
モノハ、少イデアラウト思ヒマスルガ、假ニ
百步ヲ讓ッテ、彼等ノ言フ所ヲ是認スルトシ
マシテモ、靑島還付ニ於ケル華府條約ダケ
ハ、英米ノ監視ノ下ニ、却テ日本ガ無理强
ヒニ强ヒラレテ、謂ハヾ日本側カラ不平等
ヲ主張スベキ條約ナノデアリマス、然ルニ
其條約サヘモ履行シナイデ、徒ラニ不平等
呼ハリヲシテ居ルノデアリマス、是等モ支
那側ヲ反省セシメナケレバナラヌ重大ナル
點デアリマス、更ニ日本ガ誠意ヲ以テロハ今
議題ニナッテ居リマスルヤウナ文化事業ト云
フモノ、吾々東洋ノ文化ヲ發揚シテ、サウ
シテ日支兩國ガ東洋ノ安定勢力トナッテ、世
界ノ平和ニ貢獻シタイト云フヤウナ、斯ウ
云フ企モ文化侵略デアルナドト誣ヒマス
眞ニ共存共榮ノ本義ニ則ッテ經濟提携ヲ企
テヽモ、ソレヲ經濟侵略デアルト稱シテ之
ニ反對シ、而モ歐米人ノ經濟侵略ヲバ簞食
壺漿シテ迎ヘルト云フヤウナ態度デアルノ
ハ、洵ニ考フベキ點デアリマス、併シ兎ニ
角第一ノ質問デ申上ゲマシタ經濟工作、第
二ノ質問デ申上ゲマシタ文化工作、サウ云
フヤウナコトヲ行ヒマスルノニ、實際ノ問
題ニ移ッテ最モ大切ナル問題ハ、私ハ人ノ問
題デアルト思フノデアリマス、能ク本國政
府ノ肚ガ据ラズシテ外交ガ多元デアル場合
ニ、如何ナル人ヲ以テシテモト云フコトハ、屢〓、
聞ク言葉デアリマシタケレドモガ、併シサ
ウ云フ場合ニ於テモ、人其宜シキヲ得レバ、
相當ナ仕事ハ私ハ出來ナケレバナラヌト思
フノデアリマス、尙ホ「リースロス」一人ノ
力ヲ以テ英吉利ト支那トノ關係ヲ、如何ナ
ル狀態ニ置イタカト云フコトガ分リマスル
ナラバ人ノ問題ト云フコトガ非常ニ重大
ナ問題デアルト云フコトハ、能ク得心ノ行
クコトデアルト思ヒマス、私ハ曾テ二十一
箇條ノ問題ノ時ニ、大隈侯ガ御苦勞デモ袁
世凱ト膝ヲ交ヘテ、東洋ノ問題ハ君ト僕ノ
ミト云フヤウナ氣持デ以テ、赤心ヲ披瀝シ
合ッテ交渉ヲセラレタナラバ、アノ二十一箇
條デヤッタヤウナコトハ、綺麗ニ出來上ッテ
シマッテ、何時マデモ二十一箇條問題ガ日支
國交ノ害ニナルヤウナコトハナカッタラウト
言ッテ居ッタノデアリマスガ、併シ日置公使
ヲシテ逐條審議的ノ交涉ヲヤラシテ、其結
果今日ニ至ル迄二十一箇條問題ガ、日本ト
支那トノ關係ノ重大ナ癌トナッテ居ルト云
フコトハ、皆樣モ能ク御承知ノ通リデアリ
やっ、今ヤ日支交涉ハ新內閣ニ依ッテ從來
ノ行詰リヲ打開シ、新ニ一步ヲ踏出サント
スル際デアリマス、大所高所ニ立ッテ、東洋
永遠ノ礎ヲ築クベキ絕好ノ機會デアリマス、
外務畑ノミニ拘泥スル必要ハアリマセヌ、
普ク天下ニ求メテ第一人者ト認メタルガ如
キ人物ヲ以テ、日支ノ眞ノ國交ヲ調整スル
ト云フガ如キ御考ガアリマセヌカ(拍手)是
ガ質問ノ第三デアリマス
此質問ニ關係シテ外務省ノ特別任用ノ問
題デアルトカ、在外官憲ヲシテ徒ニ官僚
「フッァシヨ」官僚獨善タラシメテ居ル點、日本
ノ內地デハ新聞モアレバ、色々ナモノガ監
視シテ居リマスカラ、官僚「フアッショ」官
僚獨善主義ト申シマシテモ、マダ〓〓其弊
ハ少イノデアリマス、海外ニ於テハ、私モ
新聞ヲ經營致シテ居リマスガ、其新聞ハ大
別ヲシタ時分ニ持ッテ行ッテ、警察官憲ノ檢
閱ヲ受ケルノデアリマス、盛ニ削ラレマス、
時ニハ領事ノ發表シク問題ヲ警察官憲デ削
ルナドト云フヤウナ、不統一振リヲ示ス場
合モアルノデアリマス、新聞ハサウヤッテ抑
ヘ付ケテ居ル、居留民ニ對シテハ在留禁止
ト云フ處分ガアル、一總領事、一領事ノ考
次第デ、在留ヲ禁止セラレルノデアリマス、
斯ウ云フヤウナ武器ヲ持ッテ居ルノデアリ
マスルカラ、實ニ官僚「フアツシヨ」官僚獨
善ノ權化デアルト言ッテモ宜イヤウナ態度
ヲ、始終示シテ居ルノデアリマス、斯樣ナ
問題ニ關聯シテ在留禁止處分ノ問題デアル
トカ、左樣ナ問題、特ニ又最近ノ靑島ノ紡
績爭議ノ問題、或ハ人事問題等、色々御尋
致シタイコトハ澤山ゴザイマスガ、此際餘
リ煩雜ノ嫌ガアリマスルノデ、是等ハ委員
會ニ讓ルコトニ致シマス
最後ニ本改正法律案ノ内容ニ付テ承ッテ
置キタイコトハ、膠濟鐵道ノ四千万圓ノ
國庫債劵ノ償還期限ハ、既ニ切迫致シテ居
ルノデアリマス、之ニ對シテハ年六分、二
百四十万圓ノ利子ガ入ッテ居ルノデアリマ
ス、二百四十万圓入ル積リデ仕事ヲ經營致
シテ居リマシテ、期限ガ參リマシテ期限通
リニ返セルカ返セヌカ、是ガ今重大ナ問題
ニナッテ居リマスケレドモ、返セナイヤウナ
積リデ二百四十万圓ノ其利息ヲ計上シテ居ッ
テ、若シソレガ返シテ來ルトカ、返ス積リ
デ居ルガ返セナイトカ、サウ云フヤウナ喰
違ヒガアリマス場合ニ、若シ返ヘスト云フ
場合ニハ、年六分ノ利廻ト云フヤウナ利廻
ノ率ハ、今內地ニハ餘リ澤山ナイト思ヒマ
スルガ、六分ノ利廻ヲ計算シテ置イテ、サ
ウシテソレガ現金デ返サレテ、六分ノ利〓
ニ廻ラヌト云フ場合ニ於テ、其喰違ハドウ
スル考デアルカ、或ハ文化事業豫算ハ三百
八十万圓デアリマスルガ、其半ヲ占メテ居
リマス百六十八万圓ノ助成費ト云フノハ、
如何ナル用途ニ用ヒラレルモノデアリマス
ルカ、詳シイコトハ委員會デ宜シイガ、其
大體ガ承リタイノデアリマス
又非常ニ問題ハ小サイヤウデアリマスケ
レドモ、主義トシテ小サクナイ問題ハ、靑
島ニ於ケル中等學校ノ補助費ヲ、何等ノ豫
〓ナクシテ三割削ッタノデアリマス、ソレハ
私ハ靑島カラ參リマシタ新聞デ見タノデア
リマスガ、突如トシテ補助費ヲ三割モ削ッ
テシマッテ、靑島ノ民團ヲシテ學校經營ニ狼
狽ヘサセテ居ルト云フ、斯樣ナ不親切ナヤ
リ方ヲ、ドウ云フ譯デ爲サッタノデアリマス
カ、外務省ト云フ所ハ-何レ委員會デ詳
シク申シマガ、實ニ不誠意、不親切ナル人
ノ集リデアリマスガ、特ニ此點ニ於テ私ハ
何ガ爲ニ斯ウ云フヤウナ、突然ニ民團ニ非
常ナ刺戟ヲ與ヘルヤウナヤリ方ヲ爲サッタ
カ、其點ガ承リタイノデアリマス
以上私ノ質問ニ對シマシテハ、大キイ問
題ニ對シテ、大臣級ノ人ヲ派遣シテ交渉ニ
當ラシメルトカ云フヤウナ問題ニ對シテハ、
私ハ總理大臣兼外務大臣カラ御答辯ヲ承リ
タイノデアリマスガ、今日ハ總理大臣ハ、
御令息ノ御結婚ノ爲ニオオ出デニナッテ居ル
サウデアリマスカラ、態〓總理大臣ニ此答
辯ダケニ出テ戴クト云フコトモ甚ダ不本意
デアリマスノデ、其點ニ對シテハ別ノ機會
ニ御答辯ヲ願ッテモ宜シイノデアリマスガ、政
府委員デ御答辯ノ出來ル限リノ御答辯ヲ願
ヒタイト思ヒマス(拍手)
〔政府委員堀内謙介君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X01319370227&spkNum=33
-
034・堀内謙介
○政府委員(堀内謙介君) 只今小谷サンカ
ラ御尋ノ諸點ニ付キマシテ御答致シマス、
第一點ハ支那ニ對シテ、經濟借款又ハ財政
借款等ニ、政府ガ乘出ス用意ガアルカドウ
カ、斯ウ云フ風ニ伺ッタノデアリマス、申ス
迄モナク、支那ニ對スル借款ハ、經濟借款
或ハ財政借款ト申シマシテモ、多クノ場合
ニハ政治關係ヲ多分ニ含ンデ居リマスノデ、
此借款問題ガ起リマシタ場合ニ、日本ノ政
府ガ如何ナル態度ヲ執ルベキヤト云フコト
ハ、其當時ノ情勢ニ鑑ミテ、愼重考慮ヲ要
スルコトハ申ス迄モナイコトデアリマス、
殊ニ支那側カラ借款ノ要求ガ起リマシタヤ
ウナ場合ニ於テハ、支那ノ經濟財政ノ實情
カラ致シマシテ、其目的ガ何レニ在ルカ、
又其條件ガ何レニ在ルカ、擔保ハ何デアル
カ、其用途ニ付テ如何ナル程度マデ監督ヲ
爲シ得ルカト云フヤウナ點ニ付テ、愼重ニ
考慮ヲ要スルコトハ勿論デアリマス、加之、
又我ガ財政狀態ニ於テ、如何ナル金額マデ
借款ニ應ジ得ルカト云フコトハ、其時ノ色
色ナ財政方針ニモ重大ナル關係ノアルコト
ハ、申ス迄モナイコトデアリマスカラシテ、
只今如何ナル種類ノ借款ニ應ズルカト云フ
コトハ、豫メ申上ゲルコトハ出來マセヌケレ
ドモ、只今申シマシタ如キ諸條件ヲ愼重ニ
考慮シテ、斯ノ如キ申出ヲ十分考慮スル所
ノ用意ノアルコトハ、只今申上ゲテ宜シイ
ト存ズルノデアリマス
第二ノ御尋ハ、政府ハ現在行ッテ居ル對支
文化事業以外ニ於テ、果シテ如何ナル有效
的施設ヲ爲スノ考アリヤ、斯ウ云フコトデ
アッタト了解致シマシク、尙ホソレニ關聯
致シマシテ、往年外務省ハ極メテ有用ナル
新聞デアック順天時報ヲ廢刊シタト云フコ
トニ付テ、一寸言及サレマシタガ、此新聞
ヲ廢シタノハ當時ノ事情ノ上デ已ムヲ得
ナカッタニ出デタノデアリマスルケレド
モ、最近支那ニ於ケル邦字新聞ノ發達ハ著
シイモノガアリマシテ、漢字新聞ヲ自ラ經
營スルノ必要ト云フコトハ、往年ニ比シ
テ餘程變ッテ來タノデアリマス、現ニ小
谷君御自身モ、有力ナ新聞ヲ御經營ニ
ナッテ居ルノデアリマスルガ、是等ノ新聞
ヲ有效ニ利用スルト云フ途ガアルノミナラ
ズ、最近通信機關ノ發達ニ依リマシテ、日
本ノ事情ト云フモノガ、巨細ニ而モ迅速ニ
支那ノ各新聞ニ傳ハルノデ、支那ノ新聞ヲ
通ジテ日本ノ事情ヲ明ニスルト云フ途モ、
餘程進步シテ參ッタノデアリマス、加之、最
近ハ支那ノ中央通信社ニ於テモ、東京ニ有
能ナル通信員ヲ派遣致シテ居リマシテ、是
等ガ每日ノ如ク外務省ノ情報部ノ發表ニ、
人ヲ出シテ居ルヤウナ狀況デアリマス、斯
ノ如キ方法ニ依リマシテ、日本ノ事情ガ支
那ニ詳シク傳ハルコトハ、以前ノ實情トハ
餘程變ッテ參ッタノデアリマス、尙ホ御尋ノ、
果シテ如何ナル有效的施設ヲ爲スヤト云フ
コトニ付キマシテハ、是ハ色々方法モアル
ト存ジマスルガ、差當ッテ外務省ニ於テ實行
致シテ居リマスノハ、從來ノ文化事業ノ外
ニ、更ニ經濟的價値ノアル文化事業ト致シ
マシテ、北支ノ產業〓究所ト云フモノヲ今
設置シテ居リマスルシ、又現在北支ノ棉花
栽培ノ改良奬勵ト云フヤウナ點ニ付テ、支
那側ト協力スル爲ニ必要ナル計畫ヲ立テ、
之ニ付テ必要ナル豫算モ計上サレテ居ルヤ
ウナ次第デアリマス、更ニ民間方面ニ於ケ
ル日支ノ接觸ノ繁クスルト云フコトノ必要
ハ、過日外務大臣ヨリ、演說竝ニ質問ニ對
スル答辯中ニ於テ、屢〓言及サレタ所デア
リマスガ、此點ハ旣ニ具體的ニ現レテ來ツ
ツアルモノモアリマシテ、最近新聞ニ傳ヘ
ラレマシタル如ク、來月中旬ニハ、日支兩
國ノ有力ナル實業家ヲ網羅シテ居リマス、
中日貿易協會ノ總會ヲ催シマスル機會ニ於
テ、我國ノ有力ナル實業家ガ多數出席サレ
ルヤウナコトニモ相成ッテ居リマス、斯ノ如
ク兩國ノ經濟方面ノ有力者、文化方面ノ有
力者、更ニ政治方面ノ有力者ガ、益〓接觸ヲ
圖ラレルト云フヤウナコトハ、政府ト致シ
テモ之ヲ奬勵助成致シタイト考ヘテ居ルノ
デアリマス
第三ニハ廣ク人材ヲ各方面ニ求メテ、日支
關係ノ打開ニ當ラシメル考アリヤ否ヤ、斯
ウ云フ御尋デアッタト拜承致シマシタ、此點
ニ付キマシテハ、實ハ外務省ノ制度ハ極メ
テ廣イ門戶開放デアリマス、大使ト雖モ、
公使ト雖モ、是ハ自由任用デアリマス、人
材ガゴザイマスナラバ、如何ナル方面ヨリ
モ之ヲ採用スルコトガ出來ルノデアリマシ
テ、恐ラク政府ニ於テモ、野ニ遺賢ナカラ
シムルト云フ御考デアルダラウト、私ハ存
ジテ居ルノデアリマス
第四ト致シマシテハ、膠濟鐵道ノ國庫證
劵ヲ償還サルヽモノトシテ、此文化事業法
ノ改正ノ案ガ出來テ居ルヤウデアルガ、若
シ其償還ナキ場合ニハ何カ喰違ヒガ生ズル
コトガナイカ、斯ウ云フ御尋デアッタト思ヒ
マスルガ、此膠濟鐵道國庫證劵ノ償還期限
ハ、本年ノ十二月末日デアリマス、是ハ政
府ト致シマシテハ、勿論期限ノ通リニ償還
サルヽモノト期待シテ居ル次第デアリマス、
尙ホ利息モ六分ヲ支拂フト云フコトニナッテ
居リマスルガ、是ハ今日ニ至リマスマデ其
契約ニ決メテアリマシタ通リ、支拂ヲ受ケ
テ來タ次第デアリマス、尙ホ償還ヲ受ケテ
シマックナラバ、六分ノ利息ト云フモノニ基
イタ計算ガ、狂ヒハシナイカト云フコトデ
アリマシタガ、勿論六分ノ計算デアルナラ
バ結構デアリマスルガ、是ガ假ニモウ少シ
少クナリマシテモ、別ニ事業ニ支障ヲ來ス
ヤウナコトハナイモノト考ヘテ居リマス
尙ホ第五ニ、外務省ハ靑島ノ民團ニ對ス
ル補助額ヲ急ニ減額シタ、是ハドウ云フ譯
デアルカト云フ御尋デゴザイマシタガ、是
ハ政府ノ豫算上ノ都合ニ依リマシテ減額シ
タノデアリマシテ、從來トモ此民團ニ對ス
ル補助金ヲ以テ經營シテ居リマシタ事業ハ、
是ハ實ハ十分ナル補助ヲ受ケテ居ッタ譯デ
アリマシテ、之ヲ減額スルト致シマシテモ、
事業ノ上ニ何等ノ支障ガナイト云フ確信ヲ
持ッテ居ッタ爲ニ、斯ノ如キ取計ヒヲ致シタ
次第デアリマス、以上ヲ以テ御答ト致シマ
ス(拍手)発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X01319370227&spkNum=34
-
035・小谷節夫
○小谷節夫君 簡單デアリマスカラ此席カ
ラ發言ヲ御許シ願ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X01319370227&spkNum=35
-
036・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 許可致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X01319370227&spkNum=36
-
037・小谷節夫
○小谷節夫君 只今ノ御答辯ヲ承リマシタ
ガ、英吉利ヤ亞米利加ハ盛ニ經濟借款、財
政借款ヲヤッテ居ルノニ、日本ノ方デハ事情
ガドウトカ斯ウトカ言ツテ居ラレマスルガ、
サウスルト結局英吉利ヤ亞米利加ハ、盲デ
アルト云フコトニナルノデアラウカ、私ニ
ハ英吉利、亞米利加ノ立場ト、日本ノ立場
トガ違フトハ思ハレナイノデアリマスル
ガ、ドウモ西原借款以來、色々借款ノヤリ
方ノ拙カッタ點デ、羹ニ意リテ膾ヲ吹イテ居
ルヤウナ傾向ガ多分ニアルト思フノデアリ
マス、私ハ餘リ何時マデモ考慮々々ト言ッテ
考ヘテバカリ居ラナイデ、英吉利ヤ亞米利
加ガドン〓〓ヤルノニ對シテハ、日本モモ
ウ少シ何トカ考ヘテ貰ハナケレバ、立遲レ
ニナッテシマフト信ズルノデアリマス、此點
ハ特ニ御考慮ガ願ヒタイノデアリマス、尙
ホ通信機關ガ非常ニ立派ニ出來上ッテ居ル
ノデ、日本ノコトハ何デモ書イテ下サルト
仰シヤイマスケレドモ、今現ニ私ガ實例ヲ
取ッタガ如ク、日本ノ陸戰隊ガ靑島ニ上陸シ
テ、陸戰隊ガ如何ナル聲明ヲ出シテモ、十
三四ノ支那新聞ハ斷ジテ其聲明ヲ出シテ吳
レナイ、一軒々々其聲明書ヲ吳レテ步ク譯
ニハ行カナイ、斯ウ云フヤウナ場合ニ、日
本人經營ノ漢字新聞ト云フモノガ必要ナノ
デ、順天時報、江南正報ト云フモノナドガ
今頃アッタナラバ、如何ニ日支國交ノ爲ニ、
特ニ北支那邊リニハ順天時報ナドハ役ニ
立ッタデアラウト云フコトデ、有識階級ノ人
間ハ、非常ニ殘念ガッテ居ルノデアリマス、
外務省以外ノ人間ハ······(笑聲)此點ヲ特ニ御
注意ヲ願ヒタイト思ヒマス、ソレカラ人ノ
問題、偉イ人ガアレバ幾ラデモ入レルト仰
シヤイマシタガ、私ハ大隈侯ト二十一箇條
ノアノ例ヲ示シマシテ、日支國交調整ノ此
最モ重大ナル時ニ、川越君デナシニ、モウ
少シ確ッカリシタ人ガ行ッテオヤリニナッタ
ラドウカト云フコトヲ申上ゲタノデアリマ
ス、モウ一ツハ、文化事業ノ三百八十万圓
ノ中、此半分ヲ占ムル百六十万圓ノ助成費、
此金ハ如何ニ使ハレルカト云フコトヲ申上
ゲタノデアリマスガ、其御答辯ハアリマセ
ヌデシタ、更ニ靑島ノ學校ニハ、是マデ有
リ餘ルヤウナ補助ヲシテヤッテ居ッタノデ、
四万圓位割ッテモ何デモナイ、三割位削ッテ
モ何デモナイト言フコトハ甚ダ不謹愼デハ
ナイカ、政府ハコンナニ緊縮シテ居ル財政
ノ中ニ、靑島ニハ有リ餘ック程ノ金ヲヤッテ
居ッタノデスカ、ソレナラバ是迄ノヤリ方ハ
非常ニ間違ッテ居ル、ダガ私ノ言フノハ十四
万圓ノ金ヲ四万圓削ッタト云フ一事デハナ
クテ、出シ拔ケニサウ云フコトヲヤッテ經營
ニ迷ハセテ居ル、現ニ靑島カラ來テ居ル新
聞ヲヤッテ居ル人ハ非常ニ困ッテ居ル、十四
万圓ヲ四万圓削ックト云フコトデ、自治體ガ
非常ニ閉口シテ居ルト云フコトヲ言ッテ居
ル、サウ云フスッポカシ、肩スカシヲヤルノ
ガ親切ナヤリ方カドウカト云フコトヲ、聽
イテ居ルノデアリマス、金額ノ問題デハア
リマセヌ、外務省ノヤリ方ニ付テ私ハ聽イ
テ居ルノデアリマスカラ、今一度御答辯ヲ
願ヒタイ
〔政府委員堀內謙介君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X01319370227&spkNum=37
-
038・堀内謙介
○政府委員(堀內謙介君) 只今再質問ノ第
一點ハ英米諸國ガ對支借款ヲ盛ニシテ居
ルノニ、日本ノ方ハ一向之ヲ行ハナイノハ
ドウ云フ譯デアルカ、斯ウ云フ御尋デアッタ
ト思ヒマシタガ、此點ニ付テハ勿論借款ト
申シマスコトハ、支那側ヨリ之ヲ求メルコ
トニ依ッテ初メテ話ガ具體化スル譯デアリ
マシテ、不幸ニシテ最近數年ノ間、日支關
係ガ、先程小谷サン御自身ノ御話ノ如キ緊
張シタル關係ニ在リマシテ、兩國ガ借款ノ
話ヲ具體的ニ持出スト云フヤウナ事態ニナ
カッタ譯デアリマス、隨テ今日マデ此借款ノ
話ト云フモノガ、具體化スル機會ガナカッタ
譯デアリマス、併ナガラ今後兩國ノ關係ガ
政治的ニ見テモ改善サルヽニ及ンデ、必ズ此
借款ノ話ト云フモノモ、日支間ニ起ッテ來ルコ
トヲ私共ハ豫想スルノデアリマス、斯ノ如キ場
合ニ於テ日本ノ方ガ、先程申上ゲマシタ如キ
諸種ノ狀況ヲ考慮シテ、此借款ニ應ジ得ル場
合ニハ、之ニ應ズルト云フコトガ適當デア
ラウト考ヘテ居ルノデアリマス
其次ニ新聞ノコトニ付テ御話ガアリマシ
タガ、是ハ御質問ノヤウデモアリマセヌデ
シタカラ申上ゲマセヌガ、靑島ノ學校補助
ニ付テ再ビ御尋ガゴザイマシタガ、此點ハ
現在支那ニ於ケル日本ノ學校ニ對スル補助
ノ實情ヲ申シマスト云フト、一般ノ學校ニ
對シテ經費ノ約三割ヲ補助シテ居ルノデア
リマス、然ルニ靑島ノ學校ニ對シテハ、約七
割ヲ補助スルコトニナッテ居リマスルカラ、
政府ノ保護ガ靑島ニ極メテ厚イト云フコト
ハ、之ニ依ッテ御諒解ヲ願ヒタイト思ヒマ
ス、尙ホ文化事業ノ點ニ付キマシテハ、他
ノ政府委員ヨリ御答申上ゲマス
〔政府委員岡田兼一君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X01319370227&spkNum=38
-
039・岡田兼一
○政府委員(岡田兼一君) 只今ノ文化事業
關係ノ助成費ニ付テ御答致シマス、總額ハ
百六十八万圓餘ニナッテ居リマシテ、其主ナ
ルモノダケヲ此處デ御返事申上ゲテ、委細ハ
分科會ニ於テ申上ゲタイト存ジマス、上海
自然科學〓究所ニ對シマシテ三十八万六千
圓ヲ補助シテ居リマス、東方文化學院ニ對
シテ十六万圓餘、北平ニ於テヤッテ居リマス
人文科學ノ〓究所ニ對シテ十万圓餘補助シ
テ居リマス、上海及ビ北平ニ設ケマシタ近
代科學圖書館ニ對シテ各、六万圓、合計十二
万圓、華北產業〓究所ニ對シマシテ五十四
万圓、滿蒙ニ於ケル文化施設ニ對シテ九万
圓是等ガ主ナモノデゴザイマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X01319370227&spkNum=39
-
040・小谷節夫
○小谷節夫君 今一應簡單ニ御尋シタイト
思ヒマス、今堀內政府委員ハ支那側カラ何
モ賴ンデ來ヌノニ、コッチカラ貸シテヤル貸
シテヤルト言フコトハ要ラヌヂヤナイカト
云フ御話デアリマシタガ、是ハ非常ニヲカ
シナ話デス、此間マデ南京デ總領事ヲシテ
居リマシタ須磨君ハ、此間私共ニ對スル講
演會ニ於テ、支那人ノ方カラオ前ノ方ニハ
何ヲ話ヲシテモ出來ヌカラ、仕方ガナイカ
ラ英吉利、亞米利加カラ借リルノダト、支
那側ノ當局者ガ言ッタト云フコトヲ、ハッキ
リ私共ニ言ッテ居ル、サウ云フ風ニ南京デ直
接交涉ニ當ッテ居ッタ須磨總領事ガ、支那側
カラ話ヲ受ケタケレドモ、日本デハ受付ケ
ルコトガ出來ナクテ、サウシテ英吉利ヤ亞
米利加ガ盛ニヤッテ居ルト云フコトヲ、講演
ヲ致シテ居ルノニ、サウ云フヤウナ話ガ一
ツモナイト云フコトハ、是ハ何處カニ噓ヲ
吐ク人間ガ居ルノダト云フコトニナリマス、
外交官ニ噓ハ禁物デアリマスカラ、ドウカ
嘘ノナイヤウニシテ貰ヒタイト思フ、ソレ
カラ今靑島ノ方ノ學校ニハ、非常ニ他ノ處
ニ較ベテ立派ニ澤山ヤッテ居ルト云フ御話
ガアリマシタガ、能ク外務省トシテ考ヘテ
貰ハナケレバナラヌコトハ、靑島ニ安心シ
テ資本ヲ下シ、此處ハ支那ニ還スコトハナ
イカラト言ッテ資本家ヲ呼ンデ、ドン〓〓資
本ヲ下サシテ置イテ、サウシテ國策ノ犠牲
ト云フ美名ノ下ニ、靑島ニ居ル在留民ハ野
晒シニナッタノデアリマス、サウシテ學校ナ
ドモ別ニ必要ノナイ程度ノ、箆棒ニ大キナ
建物ノ學校ヲ造ッテ殘サレマシテ、其經營ニ
困ッタノデアリマス、居留民ハ非常ニ酷イ目
ニ遭ッテ居ル、其代償トシテ學校ニ少シ餘計
金ヲ貰ッタカラト云ッテ、ソレガ非常ニ恩惠
ヲ施シテアルト云フヤウナコトハ、外務省
ノヤリ方ノ拙イコトヲ居留民ニ轉嫁サセル
ヤウナモノデアリマシテ、私ハ非常ニ厭ナ
思ヒヲ致スノデアリマス、私ノ質問ハ三囘·
以上ハヤルコトハ出來マセヌカラ、其以外
ノ問題ハ委員會ニ於テ多少突込ンダ承リ方
ヲシタイト思ヒマスカラ、其御用意ヲ願ッテ
置キマス
〔政府委員堀内謙介君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X01319370227&spkNum=40
-
041・堀内謙介
○政府委員(堀內謙介君) 只今借款ノコト
ニ付キマシテ、私ハ借款ハ雙方ノ希望ガ合
致シテ、初メテ具體化スルト云フコトヲ
申シマシタ所ガ、全然借款ノ話ガナカッタ
ト斯ウ私ガ申上ゲタ風ニ御了解ニナッタ
ノデアリマスルガ、須磨總領事ノ講演云々
ト云フ御話デ、何カ私ガ有ッタモノヲ無イ
ト斯ウ言ッテ、嘘ヲ申シタカノ如タ御話ニ
ナリマシタガ、私ガ申シマシタノハ借款ノ
具體的ナ話ハ、今マデ進展シナカッタ、
斯ウ云フコトデアリマシテ、無論色々ナ機
會ニ、此場合日本カラ金ヲ出シテ貰フト結
構ダト云フヤウナ話ハ、隨分色々ナ場合ニア
リマス、併ナガラソレハ如何ナル目的ニ用
ヒルモノデアルカ、又如何ナル責任者ガ
サウ云フコトヲ言フノデアルカ、ソレ等ノ
點ヲ能ク吟味致シマシテ、確實ナル話デア
ル、又政治的情勢ガソレヲ具體化サセルコ
トニ適當ナリヤ否ヤト云フ判斷ヲ致シマシ
タ上デ、初メテ此借款談ト云フモノハ進行
シテ行ク譯デアリマスカラ、斯樣ナ意味ニ
於テ私ハ申上ゲタ次第デアリマス、何カソ
コニ誤解ガオアリニナルノデハナイカト思
ハレルヤウナ節モアリマシタノデ、一言申
上ゲテ置キマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X01319370227&spkNum=41
-
042・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 笠井重治君
〔笠井重治君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X01319370227&spkNum=42
-
043・笠井重治
○笠井重治君 本案ハ對支文化事業特別會
計ヲ改正シテ、我國ノ對支文化事業ヲシテ、
更ニ活潑ナラシメントノ目的ニ依ルモノデ
アルト思フ、卽チ其第九條ハ、本會計ノ資
金ハ國債ヲ以テ保有シ、大藏省預金部ニ預
入レ、對支文化事業調査會ニ諮問シ、勅令
ノ定ムル所ニ依リ、其他ノ有利且ツ確實ナ
ル方法ヲ以テ之ヲ運用スルコトヲ得ルト云
フコトガ書イテアリマス、本法ハ昭和十
二年四月一日カラ實施サレルヤウニナッテ
居リマスガ、是ハ要スルニ我國ノ對支文化
事業關係ヲシテ、今少シク有效ニ活動セシ
ムル目的ニ、基因スルノデハナイカト考ヘ
テ居リマス、ソコデ本日ハ其理由ヲ林外務
大臣ニ御尋シタイノデアリマスガ、其前ニ
少シク此對支文化事業ノ理由ヲ〓究シテ見
タイト思フ、其理由タルヤ對支文化事業特
別會計ノ資金運用方法ヲ擴張シテ、且ツ
一般會計ノ保有スル膠濟鐵道國庫證劵
ヲ、對支文化事業特別會計ニ歸屬セシムル
爲ニ、對支文化事業特別會計法中ノ改正ヲ
要スルモノデアルヤウニ見受ケラレルノデ
アリマス、殊ニ本年ハ膠濟鐵道國庫證劵元
金四千万圓及ビ其利子ノ百五十三万圓、合
計四千百五十三万圓ト云フ新シイ收入ガア
ルノデ、之ヲ新シイ方面ニ使フトセバ、今
少シク對支文化事業ヲシテ活潑ニ運用セシ
ムルコトガ出來ルモノデアルト思フ、此點
ニ付テ外相ニ御伺シタイト思ッテ居リマス
日支兩國ハ東亞ニ於ケル友邦デアッテ、三
千年來相交通シ、而シテ我ガ日本ハ東洋文
明ノ精華ヲ發揮シテ、世界ニ之ヲ宣揚シテ
參リマシタ、故ニ我國ト致シマシテハ支那
ニ對スル文化事業ノ促進ヲセシメルコトハ
必要デアル、然ルニ我國ガ如何ニ支那ト文
化的提携ヲ希望致シマシテモ、支那自身カ
ラ我ガ日本ヲ誤解シ、殊ニ最近ノ如ク日本
ニ反抗的態度ヲ執ルナラバ、折角ノ文化的
提携、或ハ經濟的ノ協力ト云フコトヲ希望
シテモ、我國ノ誠意ガ水泡ニ歸スルノデハ
ナイカト云フコトヲ憂ヘテ居ル、仍テ我ガ
政府當局及ビ我ガ國民ハ、支那國民ガ我ガ
日本ニ對スル誤解ヲ一掃ニ努メルト共ニ、
世界列强ガ、或ハ日本ガ支那ニ對シテ侵略
的態度ヲ執ッテ居ルノデハナイカト云フ誤
解ヲ、一掃シナケレバナラヌト思フ、故ニ
私ハ此點ニ付テ本日ハ總理大臣ニ伺ヒタイ
ト思フガ、御令息ノ結婚ノ爲メトカデ御見
エニナッテ居リマセヌカラ、杉山陸軍大臣ノ
明確ナル御答辯ヲ伺ヒタイト思フ、私ノ質
問ハ啻ニ我ガ國民ヲシテ對支外交ノ、根本
方針ヲ知悉セシムルノミナラズ、支那國民
ノ日本ニ對スル誤解ヲ一掃スルト共ニ、更
ニ列國ヲシテ我ガ日本ガ東亞ニ於ケル眞ノ
安定勢力デアルト云フコトヲ、知悉セシメ
ントスル希望ニ外ナラナイノデアリマス、
隨テ此點ハドウカ陸軍大臣ノ明確ナル御答
辯ヲ御願致シタイト思ッテ居リマス
く抑〓對支文化事業ナルモノハ明治三十四年
卽チ西暦千九百一年九月七日北京ニ於テ調
印セラレタル所謂最終議定書ニ依ッテ、〓國
政府ガ關係各國ニ支拂フベキ團匪賠償金ノ
總額四億五千万海關兩、之ニ四分ノ利子ヲ
附シテ千九百二年一月一日カラ支拂ヲ開始
致シマシタ、左樣ニシテ千九百四十年末ニ
至ル迄三十九箇年間ニ、元利合計九億八千
二百二十三万八千一百五十海關兩ヲ、支那
ガ支拂フコトニナッテ居ルノデアリマス、
而シテ我ガ日本ハ殘念ナガラ世界ノ列强ニ
追隨シテ、對支文化事業ヲ行ッテ居ルト云
フ形ニナッテ居ル、對支文化事業ハ米國ガ各
國ニ率先シテ之ヲ實行シ、支那ノ文化的開
發ニ資セン爲ニ努力致シマシタ、左樣ニシ
テ米支兩國ノ接近ヲ招來シテ、今日ノ親善
ヲ助長致シマシタノハ、要スルニ米國ガ〓
匪賠償金ヲ有效ニ使ッタノデアリマス、其他
英佛露白耳義、伊太利、和蘭、獨逸、
墺地利ノ各國ガ之ニ追隨シテ、支那ニ於ケ
ル〓育、文化ノ開發ノ計畫ヲ致シマシタ、
米國政府ハ千九百八年ニ「ルーズベルト」大
統領ノ英斷ニ依ッテ、兩院ノ決議ヲ以テ團匪
賠償金ノ總額ノ殆ド半額ヲ、卽チ米貨二千
四百四十万七百七十八弗八十一仙ヲ支那ニ
返スコトニ致シマシタ、其結果支那カラシ
テハ千九百九年カラ二十九箇年ニ亙ッテ、政
治及ビ科學ノ進步ヲ〓究セシメル爲ニ、年
年五十人乃至百人ノ支那ノ學生ヲ、亞米利
加ノ大學ニ勉學致サセマシタ、今日ノ米支
ノ間ノ親善關係ノ裏ニ、斯樣ナル文化的事
業ガ行ハレテ居ッタノヲ見マスルト、我國モ
今後ハ更ニ進ンデ今日茲ニ計畫サレテアル
事業ヨリモ、モット確カリシタ事業ヲ爲サナ
ケレバナラヌト思ヒマス、此點ニ付テ外務
大臣ハ如何ナル御考ヲ御持チニナッテ居リ
マスカ、御伺致シタイト思フ
之ニ次イデ英吉利ハ世界大戰ニ際シテ、
支那ガ參加致シマシタノデ、列國ノ承認ヲ得
テ、團匪償金支拂ヲ五年間猶豫制限ヲ附シ、
更ニ千九百二十二年ノ十二月一日ニ支拂再
開後、英吉利ノ受取ルベキ殘額約一千万磅、
卽チ今日ノ邦貨ニ換算スレバ一億八千万
圓ニナッテ居リマシタ、然ルニ英國政府ハ先
ヅ亞米利加ノ政府ノヤッタコトヲ見テ、是ハ
カナハナイ、何トカシテ自分ノ方デモ支那
ニ文化事業ヲヤラナクテハナラヌト云フコ
トニナッテ、之ヲ免除スルコトヲ致シマシ
ク、左樣ニシテ同年ノ十二月二十二日ニ該
金額ノ支拂ヲ免除シテ支那政府ニ返還シ、
英支兩國ノ互惠的事業ニ投資スルヤウニ致
シマシタ、斯樣ナル趣旨ニ基イテ英吉利ニ於
テハ支那賠償處分案、卽「チャイナ·イン
デムニテー·アプリケーション·ビル」ト云
フモノガ英吉利ノ議會ヲ通過致シマシテ法
律トナッテ現レマシタ、斯樣ニシテ英國外務
大臣ノ諮問機關トシテ、同大臣ノ任命スル十
一名ノ委員ノ中デ、一人婦人、少クモ二人
ノ支那人ヲ加ヘタ諮問會ガ出來タノデアリ
マス、之ヲ日支文化事業ニ考ヘテ見マスナラ
バ、當初ハ日支兩國ノ委員ニ依ッテ組織セラ
レテ居リマシタガ、今日ハ殘念ナガラ支那ノ
委員ハ全部脫退致シテシマヒマシタ、ソコデ
英國ノ委員會ハ千九百二十六年十月十八日
ニ、英國外務大臣ヲシテ賠償金評議員ト云
フモノヲ組織セシメ、英人六名、支那人五
名ノ委員ヲ出シマシテ、千九百四十五年マ
デハ此委員ノ割當ヲ以テ、ヤルノデアリマス、
サウシテ千九百四十五年以後ハ、全部支那
人ガ英吉利人ノ委員ニ代ルト云フ立前ニ
ナッテ居リマス、其金ノ半分ハ之ヲ倫敦ニ置
イテ、殘餘ノ半分ハ之ヲ上海ニ置クト云フ
ヤウナ組織ニナッテ居リマス、更ニ進ンデハ
英吉利ハ支那ニ於テハ各種ノ事業ノ投資ヲ
シテ居ル、例ヘバ運河デアルトカ、鐵道デ
アルトカ、或ハ其他種々ナ事業ニ投資シテ
居リマス、粤漢鐵道、或ハ津浦鐵道、或八
膠濟鐵道ノ如キハ其例デアリマス、左樣ニ
シテ英吉利ハ對支文化事業ノ金ヲ、表面ニ
ハ支那ニ返シタヤウニナッテ居リマスガ、英
支ノ合辦ノ事業ニ投資スルトカ、斯樣ナル
コトニ依ッテ支那ニ恩惠ヲ賣ッテ、其上之ニ
使用スル材料ヲ英吉利カラ供給シテ、支那
ノ發展ニ盡シテ居リマス、亦以テ英吉利ノ
對支文化事業ノ裏ニアル支那ニ於ケル英國
ノ發展ノ力ガ、如何ニ偉大ナルカヲ推知ス
ルコトガ出來マス
然ルニ我ガ日本ハ團匪事件ノ後ニ、遠慮
シテ英米ノ如キ多額ノ賠償金ヲ要求シナカッ
タノデアル、隨テ我ガ日本ノ國匪賠償金ノ金
額モ、列强ニ比シテハ少額デアッタノデアリ
マス、併ナガラ今日マデ日本ハ文化事業ノ範圍
モ亦英米ニ比シテハ、幾分カ遜色アルカモ知
レヌガ、全力ヲ傾倒シテ努力シテ來マシタ故
ニ政府ハ英米ニ追隨スルト云フノデハナイケ
レドモ、支那ニ對シテ文化事業ヲオヤリニナ
ルナラバ、モウ少シ徹底的ナ事業ヲシテ貰ヒ
タイ、此點ニ付テ外務大臣ノ明確ナル御答辯
ヲ願ヒタイト思ッテ居リマス、現在ハ團匪
賠償金、山東關係ノ鐵道、靑島ノ公有財產、
製鹽業其他カラ出ル所ノ元利ヲ集メテ、每
年約三百万圓ニ達シテ居ルヤウデアリマ
ス、只今小谷君ノ質問ニ對シテ堀內政府委
員ノ御答辯モ承リマシタガ、堀內サンニモ
ウ少シ突込ンダ本當ノ政府ノ考ヲ披瀝シテ
戴キタイト思ッテ居リマス、帝國政府ハ支那
側トノ連絡ニ依ッテ、大正十四年ノ五月ニ支
那側ト協議ノ結果、團匪賠償金ヲ以テ支那
ニ於テ事業ヲヤルコトヲ始メタノデアリマ
ス其結果只今申サレタ上海ノ自然科學〓
究所、或ハ北京ノ人文科學〓究所ヲ作ラレ
タノデアル、所ガ昭和三年五月ニ濟南事件
ガ勃發スルヤ、支那側ノ委員ハ擧ッテ脫退ヲ
聲明シマシタ、翌四年ノ十二月ニ支那政府
ハ總委員會、上海委員會ノ支那側ノ委員ヲ
一律ニ罷免セシメマシタ、隨テ日本側ノ委
員ハ、我ガ日本政府ノ既定方針ニ基イテ努
力シテ參リマシク、我ガ對支文化事業部ニ
於テハ、各種ノ事業ヲヤッテ居リマスルガ、
其事業タルヤ、今政府委員ガ御說明ニナッタ
ヤウニ、或ハ東亞同文會、或ハ日華學會、
或ハ同仁會、或ハ人材ノ育英ト云フヤウナ
有益ナ事業ヲセラレテ居リマス、私モ此點
ニ付テハ小谷君ト同感デアル、北京ノ順天
時報ヲ廢シタノハ幣原君ガ外務大臣ノ時デ
アル、私ハ昨年ノ十二月初旬ニ我ガ對支外
交〓究ノ爲メ北京ヲ訪問ノ際、偶、蔣介石氏
監禁問題ガ起ッテ、支那ハ物情騒然タルモノ
デアッタ、支那ノ輿論ハ日本ニ反抗シテ居
ル、日本大使館ガ整明ヲ出サウト思ッテモ、
一ツノ英字新聞モ漢字新聞モナイデハアリ
マセヌカ、順天時報ヲ廢シテシマッテ、新シク
新聞ヲ作ラウト思ッテモ、中々容易ニ作レル
モノデハナイ、デアリマスカラ小谷君ノ說
ニハ贊成デアッテ、支那ニ於テ、北平ノミナ
ラズ、各方面ニ於テ漢字新聞ガ必要デアル
ナラバ、是ハ作ッテ貰ヒタイ、此點ニ付テ
私ハ、堀內サンニ御伺シマスガ、政府ハ
上海邊リニ有力ナ英字新聞ヲ起ス御考ハア
リマセヌカ、英米ハ有力ナ言論機關ヲ持ッテ
居ル、「ノース·チャイナー·デイリー·ニュー
ス」ノ如キハ有名ナ英吉利ノ機關新聞ト
シテアル、或ハ「チャイナプレス」其他ヤ有
力ナ英字新聞ガアル、然ルニ我ガ日本ノ對
外的言論機關ト云フモノハ一ツモナイ、上
海ハ楊子江ノ河ロデアッテ、而モ有力ナル處
デアッテ、世界ノ視聽ガ彼處ニ集ッテ參リマ
ス、然ルニ殘念ナガラ我ガ日本ノ對支政策
ハ、全面的ニ失敗シテ、我ガ日本ノ勢力ハ
今ヤ將ニ支那カラ撃退サレントスルコトハ
遺憾デアル、要ハ外務當局ノ失敗ニ基因ス
ルノデアル、然ラバ此際何トカシテ文化事
業デモミッシリヤッテ戴イテ、支那ニ對シテ
ハ善隣ノ誼ヲ盡スノミナラズ、日本ハ東亞
ニ於テ、眞ニ大ナル使命ヲ持ッテ居ル、文化
的使命ヲ持ッテ居ルト云フコトヲ、支那ノミ
ナラズ世界ニ宣揚セネバナラヌ
私ハ陸軍大臣ニ御伺致シタイコトガ一ツ
アルノデアリマ、ス、ソレハ私ハ昨年ノ
七月ニ議會ニ於ケル同僚ノ牧山耕藏君、深
澤豐太郞君、其他ノ二君ト共ニ洪牙利國ノ
「ブタペスト」市ニ開催ノ第三十二囘列國議
會同盟會議ニ參列致シマシタ、其際ニ於テ
世界列强ノ政治家ヤ外交家ニモ會ヒ、黴米
歷訪ノ途ニ於テ、列國ノ政治家ヤ學者ニモ
會ッテ彼等ノ意見ヲ聽取致シマシタ、英吉利
ヘ行ッテ見ルト、當時英國デハ議會開會中デ
アリマシタ、偶〓日本ノ北支進出ト云フコト
ガ議會ノ問題トナッテ參リマシタ、英吉利ノ
議會ニ於テ論議サレタ所ヲ見マスルト云フ
ト「恐ラクハ日本ガ、或ハ關東軍ガ、或ハ
天津軍ト云フモノガ北支ヲ占領スルデアラ
ウ、日本ハ北支五省ヲ獨立セシメルデアラ
ウ、日本ノ軍閥ハ、日本ノ國民ノ意思ヲ無
視シテ徒ニ支那ヲ蹂躪スルノデハナイカ」ト
云フヤウナ疑心暗鬼ヲ持ッテ非常ニ神經過
敏ニナッテ居リマシタ、又一方ニ於テハ「日本
ハ北支ノ關稅網ヲ無視シテ、阿片ノ密輸入
ヲシテ、支那人ヲ道德的ニ滅亡セシメ、以
テ自國ノ勢力ヲ支那ニ發展セシムルノデハ
ナイカ」ト云フヤウナコトヲ誤解シテ居リマ
シタ、各方面ノ人々ニ會ヒ、或ハ政治家ニ
會ッテ見テモ、或ハ倫敦「タイムス」ヤ「デイ
リト·クロニクル」等ノ記者ニ會ッテ見テモ、
皆サウ云フコトヲ言ッテ居ック、固ヨリ私ハ日
本國民ノ一人トシテ、斯ルコトハ絕體ニナ
イ、日本ハ東亞ニ於ケル安定力デアッテ、其使
命ヲ痛感シテ居ル、日本ハ支那ニ對シテハ平和
的ニ行クノデアッテ、文化的經濟的提携ヲ希
望シテ居ルトノ聲明ヲ致シマシタガ、本日
ハ此壇上ニ於テ陸軍大臣ノ御答辯ヲ御伺致
シマス、御承知ノヤウニ北支ニ於テハ、二
三ノ軍事協定ガアル、或ハ塘沽協定ノ如キ
モノモアリマス、梅津、何應欽協定モ一昨
年六月十日ニ締結セラレマシタ、固ヨリ是
ハ侵略的ノモノデナク、北支ニ於ケル治安
維持ノ爲デアッテ、支那側ニ於テモ之ヲ尊重
シテ居ルト思フ、支那側モ之ヲ喜ンデ居ル
コトト思ヒマス、陸軍大臣ニ御伺シタイコ
トハ、我國ノ陸軍ガ如何ナル態度ヲ以テ北
支ニ臨ンデ居ルカ、或ハ支那ヲ分割セント
シテ居ルカ、或ハ侵略セントシテ居ルカト
云フコトニ付テ御伺シタイノデアリマス、
吾々ハ日本國民トシテハ、我陸軍ガ斯ル意
圖ヲ有シテ居ラヌト確信シテ居ルガ、政府
當局ニ居ル杉山陸相ニ、之ニ關スル御考ヲ
御伺シテ見タイト思フ、隨テ陸相ノ御答辯
ハ啻ニ吾々日本國民ヲ安心セシムルノミナ
ラズ、支那人モ心配シテ居リ、又世界列强
モ心配シテ居リマスカラ此點ニ付テハ明確
ナル御答辯ヲ願ヒタイト思フ
其後チ再ビ九月上旬ニ大陸カラ倫敦ヲ訪
問シタ時ニ、偶、≧南京ニ於ケル、我ガ對支
交涉ナルモノガ發表サレマシタ、英吉利
ノ與論ハ次ノ通リデアリマシタ「日本ハ
支那ニ對シテ暴擧ヲヤッテ居ル、今度ハ
日本軍ハ必ズ北支ヲ占領スルデアラウ、
恰モ嘗テ加藤高明伯ガ外務大臣デアッタ時
二、支那ニ對シテ五項二十一箇條ノ要求
ヲ出シタガ左樣ナコトヲスルノデアラ
ウ」ト云ッテ非常ニ心配シテ居リマシタ、
所ガ其結果ドウテアルカ、廣田內閣ハ一方
ニ於テハ「斷ノ一字アルノミデアル」トカ、
或ハ「武力ヲ以テ支那ニ臨ム」トカ言ヒナガ
ラ、最後ニ於テ第八囘目ノ川越大使張群外
交部長トノ會見ノ時ノ日本ノアノ態ハ何デ
アルカ、川越大使提出ノ「メモランダム」ハ張
外交部長カラ突返サレタノデアル、其醜態
ハ何デアルカ、然ラバナゼ初ニ斷ノ一字ア
ルノミト云フガ如キ威嚇ヲ爲シタカ、私ハ
歐羅巴カラ歸ッテ來テ、日本ノ對支外交ノ全
面的失敗ヲ見テ慨歎ニ堪ヘナカッタ、仍テ十
二月四日ニ東京ヲ出發シテ、鮮滿地方ヲ經
テ北平ニ赴キマシタ、偶、〓西西省西安府ニテ
蔣介石氏ノ監禁事件ニ遇ッテ、物情騷然タル
モノガアリマシタ、當時私ノ考トシテハ、
昨年九月以來ノ對支外交ノ失敗、其失敗ノ
原因ガ何處ニ在ルダラウカト云フコトヲ考
ヘテ見タ時ニ、恐ラクハ是ハ軍部ガ背後ニ
アッテ、外交官ヲ操ッテ、或ハ外交官ヲシテ
支那ニ强硬ノ要求ヲサシテ居ルノダラウト
思ッテ居ッタ、然ルニ南京ヲ訪問シテ、·我ガ
軍部ノ代表ノ人々ニ會ッテ見ルト云フト、事
實ハ之ニ反シテ居ルノヲ見出シタノデアル、
外務省ニ於テハ、小谷君ノ今言ハレタヤウ
ニ、須磨總領事ノ如キ支那ノ人々ノ嫌フ、
アノ傲岸不遜ノ人物ヲ使ッテ居ッタコトハ遺
憾デアル、而シテ八時間モ離レテ居ル上海
ニ川越ト云フ者ガ居ルデハアリマセヌカ、
列國ハ最早北平ヨリ大使館ヲ南京ニ移シテ
居ルデハアリマセヌカ、而シテ十二月十二
日ニ陝西省ノ西安ニ於テ、蔣委員長ガ張學
良ニ依ッテ監禁セラレタ報導ガ、十二月十
三日ニ南京ニ到著スルヤ、南京ニ於ケル駐
英大使ハ、支那ノ政府ヲ訪問シテ、洵ニオ
氣ノ毒デアルトテ同情ノ意ヲ表シタ、サウ
シテ宋子文ニ會見シテ、英國政府ハ支那ニ
出來ルダケノ援助ヲスルト云フコトヲ言明
シタト報道サレテ居ッタ、然ルニ日本ノ大
使日本ノ外務省ハ何ヲシテ居ッタカ、而
シテ政府ハ內ニ居ッテ東京ニ於テハ靜觀主
義ヲ採ッテ居ル、川越大使ハ上海ニ居ル、支
那ニ對シテ善隣ノ友誼ガアルナラバ我ガ
出先ノ外務官憲タル川越大使ガ、セメテ東
洋道德ヲ諒解シ、我ガ日本ノ天晴レ武士道
ノ精華ト精神トヲ「アンダースタンド」シテ、
諒解シテ居ルナラバセメテハ南京政府ニ
訪フテ、日本國民ノ名ニ於テ、實ニオ氣ノ
毒デアルト云フコトヲナゼ一遍言ハナカッタ
カ、斯樣ナコトヲ見マスルト、正ニ是ハ出
先ニ居ル川越大使ナルモノガ、木偶ノ坊デ、
而モ彼等ガ日本國民性モ諒解セズ、彼等ガ
我ガ大和魂ト云フノ根幹ニ觸レテ居ラナイ、
デアルカラシテ此點ニ付テハ外務當局ハ今
後愼ンデ戴キタイト云フコトヲ思フ、固ヨ
リソレハ前政府ノ外務當局者デアリマスケ
レドモ、林外相ハ支那ニ對シテハ今囘ハ經
濟提携デ行カウ、文化的協力デ行カウト云
フノデアリマスカラシテ、正ニ斯樣ナル態
度ハ一掃セラレルコトデアラウト云フコト
ヲ信ジテ居リマス、所デ一方英吉利側ヲ見
マスルト、此機會ヲ利用シテ、英支提携ニ
拍車ヲカケタ、日本ハ此際ニ於テハ千載一
遇ノ機會ヲ與ヘラレタ、昨年ノ或ハ綏遠問
題-其他ニ於テ日本政府ガ好マザル所ノ
問題ガ北支綏遠方面ニ於テ勃發シタ、蔣介
石事件ト云フ大事件ガ起ッタナラバ、何故ニ
日本ニハ、外務省ニ「ステーツマン·シップ」
ヲ有シタ外交官ガ居ラナイカ、日本ノ政治
家ノ間ニハ「ステーツマン·シップ」ト云フ
モノガナイカ、斯樣ナ場合ニ於テ支那
ニ對シテモウ少シ徹底的ニ吾々日本國
民ノ意ノ在ル所ヲ示シテ貰ヒタカッタ、偶、〓
日獨防共協定ナルモノガ發表セラレマスル
ト云フト、斯樣ナルコトガ、東亞ニ於テハ
相當ノ問題ニナリ、蔣介石監禁事件モ、其
裏ニ於テハ日獨防共協定ノ發表ト云フコ
トガアル、其問題ヲ英米ハ-英吉利ノ如
キハ之ヲ利用致シマシテ、獨リ日本ノミ
ガ-此ノ機會ニ於テ日本國民ノ精神ノ發露
ヲ示ス機會ヲ捉へ得ナカッタコトハ、政府當
局ノ怠慢デアリハシナイカ、外務當局ハ之
ヲ以テ失敗ト思ヒマセヌカ、私ガ對支外交
ニ付テハ、我ガ國民ノミナラズ、世界ノ總
テノ人々ガ、日本ハ對支外交ニ於テ失敗シ
タト言ッテ居ル、若シ對支外交ガ失敗シタ
トナレバ、林外相、次官、兎ニ角之ヲ國民
ニ陳謝シテ、吾々ハ新シイ外交ヲ以テ支那
ニ臨ムノダト云フコトヲ明確ニ、是ハ今日
壇上ニ於テ御說明ヲ願ヒタイト思フ、英吉
利大使ガ十二月十三日ニ宋子文ニ言ッタト云
フ、心配スルナ、英國ハ君ノ國ニ金ハ幾ラデ
モ貸スカラ確ッカリヤレ」ト言ウタカラ、支
那ノ爲替ノ動亂ヲ防ギマシタ-兎ニ角私
ノ質問ノ要旨ハ是デアル、政府ハ今日マデ
對支外交、文化事業ト云フモノヲ一新スル
ナラバ、如何ナルコトヲ以テスルカ、モウ
少シ具體的ニ案ヲ示シテ貰ヒタイ
第二ニハ、如何ニ我ガ日本ガ支那ニ對シ
テ文化事業ヲヤラウト思ッテモ、今日ノ如ク
日本國民ノ意思ガ支那國民ニ反映ヲシナイ
コトハ遺憾デアル、其原因ハ何處ニアルカ
ト云フナラバ、外交方面ニ於キマシテ無能
ナル外交官ヲ支那ニ送ッテ居ルカラデアル、
故ニ政府ハ速ニ之ヲ一新スル考ガアルカ
第三ニハ、陸軍大臣ニ御伺シタイ、日本ガ北
支ニ於テ侵略主義ヲ執ッテ居ルト云フコト
ヲ、支那及ビ列强カラ疑ヲ受ケテ居リマスル
ガ、杉山陸相ハ我ガ帝國ノ陸軍及ビ我ガ政府
ガ從來如何ナル態度ヲ以テ支那ニ臨ンデ來タ
カ、或ハ今後如何ナル態度ヲ以テ支那ニ臨
ムカト云フコトヲ、此壇上ヨリ我ガ國民及
ビ世界ニ聲明ヲシテ戴キタイ
第四ニハ、林外相ハ廣田外交ノ失敗ヲ認ム
ルカ、若シ御認メニナルナラバ、之ヲ一新
スル御考ガアラウ、然ラバ新シイ方策ヲ以
テ支那ニ臨マナケレバナラヌト思ヒマス、
故ニ新外相ノ下ニ我ガ對支外交ヲ一新セン
トスルナラバ速ニ君命ヲ恥カシメタル我國
ノ使臣ヲ召還シテ、日支外交整調ノ爲ニ努力
シテ頂キタイ、サウシテ新シイ使官ヲ南京
ニ送ッテ、新シイ對支政策ヲ行ハシテ貰ヒタ
イ、故ニ政府ハ川越君ヲ直チニ召還スル考
ガアルカドウカ、以上ハ私ノ質問ノ要旨デ
アル、故ニ斯ル考ノ下ニ、吾々ハ此日支外交
ノ進展及ビ伸張ヲ希望シテ居ルノデアリマス
尙ホ對支文化事業ヲ進行シテ行クノニ
ハ、我ガ當局ハ支那ノ有力ナル人々及ビ
支那ノ政府當局トモ提携ニ意ヲ注イデ戴キ
タイ、一昨年上海ノ〓究所ノ新城所長ガ新
任挨拶ノ爲ニ南京ニ赴キ、外交部文化事業
科長ニ會見ノ時ニ、科長ハ曰ク「洵ニ御老
體ガ日本カラ遙々來テ努力シテ吳レル、有
難イケレドモ、政府トシテハ何等アナタト
提携シ且ツ援助ヲ與ヘルコトガ出來ナイ」
ト云フコトヲ言明シタト聞イテ居リマス、
是ハ洵ニ遺憾デアルガ、果シテソレガ事實
ナリヤ否ヤ、新城所長其他對支文化事業ニ
携ハッテ居ル人々ハ、愛國的精神ヲ以テ日支
兩國ノ文化提携ニ努力セラレテ居ル、故
政府當局ハ、我ガ善隣ノ精神ヲ支那當局及
ビ國民ニ徹底スルヤウニ御盡力ヲ願ヒタイ、
サウシテ外交刷新ノ爲ニ、且ツ日支兩國ノ
文化提携ノ爲ニ御盡力ヲ致シテ、日支共存
共榮ノ實ヲ擧ゲテ戴キタイ、以上ヲ以テ私
ノ質問ヲ終リマス
〔國務大臣杉山元君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X01319370227&spkNum=43
-
044・杉山元
○國務大臣(杉山元君) 只今笠井君カラ陸
軍ハ北支那ヲ占領スル意思アリヤ否ヤ、斯
ウ云フ御尋デゴザイマシタ、陸軍トシテハ
旣ニ御承知ノ如ク政府ニ於テ決定致シマシ
タル所ノ對支三方針ニ依リマシテ、其方針
ヲ確保シテ進ンデ居ルノデアリマス、要約
シテ申シマスレバ最モ速ニ日滿支三國ガ
親善提携致シマシテ、經濟的發展ヲ圖リ、
共存共榮ノ實ヲ擧ゲマシテ、東亞ノ平和ヲ
確定致シタイ、而シテ是ハ極メテ重大ナル
問題デアリマスル、先年熱河作戰ノアリマ
シタ際ニ、我軍ハ熱河及ビ北支那ニ居リマ
スル所ノ支那軍ヲ突破ヲシテ、北平及ビ天
津ニ近ク進ンダノデアリマス、此際若シ我
軍ニシテ北支那ヲ占領スル意圖ガアリマシ
タナラバ、更ニ進ンデ眼ノ前ニ見エル北平、
天津ヲ占領スルコトハ易々タルコトデアッ
タノデアリマス、又占領ノ意圖ガアリマシ
タナラバ、斯ノ如キ土地ヲ占領シナケレバ、
實ハ擧ラヌノデアリマス、併ナガラ其當時
ノ軍ト致シマシテハ、滿洲國ノ熱河省ニ對
シマシテ、排日反滿ノ團體ガ橫行シテ居リ
マシテ、斯ノ如キ者ヲ早ク芟除スルニアラ
ザレバ、滿洲國ノ平和ヲ速ニ囘復スルコト
ガ出來ナイト云フコトデ、熱河作戰ヲ實施
致シマシテ、同時ニ萬里ノ長城ヲ越シマシ
テ、其國境ノ近所ニアル所ノ斯ノ如キ分子
ヲ擊退致シタノデアリマス、此目的ヲ達シ
マシタル以上ハ、長ク北支那ニ留マル必要
ナクシテ、萬里ノ長城以內ニ下ッタノデアリ
マス、上海ノ事變ニ於キマシテモ同樣デゴ
ザイマス、若シ領土的野心ヲ持ッテ居リマ
シタナラバ、依然上海ヲ占領スベキデアツ
タノデアリマスガ、直チニ兵ヲ引揚ゲタノ
デアリマス、此事實カラ考ヘマシテモ、軍
ガ支那ヲ占領スル意思ヲ持ッテ居ルカドウ
カト云フ事柄ハ、明ニ證明ガ出來ル事柄デ
アリマシテ、若シ夫レ今日ニ於テ尙ホ支那
側ニ於テ斯ノ如キコトヲ申シテ居リマスト
スルナラバ、是ハ國內ニ對スル所ノ反日抗
日ノ氣分ヲ煽リ、又ハ外國ニ對シテ反日抗
日ノ政策ヲ實行スルト云フ、一ツノ支那政
府南京政府ノ誠實ヲ缺イタル行爲デアル
ト私共ハ考ヘテ居ルノデアリマス(拍手)斯
ノ如キコトヲ繰返スコト旣ニ三年餘リ、此
間ニ於テ政府ハ南京政府ニ對シマシテ、
屢〓三方針ノ實行ニ付テ懇談ヲ進メタノデア
リマスガ、今ニシテ尙ホ其實行ノ實ヲ擧ゲ
ルコトノ出來マセヌノハ、洵ニ遺憾ニ存ジ
テ居リマス、併ナガラ今日政府ノ考ヘテ居
リマス所ハ、ドウシテモ是ハ經濟的ニ發展
シテ行カナケレバナラヌ、斯ノ如クシテ始
メテ東洋ノ平和ヲ確保スルコトガ出來ルノ
デアル、此方針ノ下ニ依然三原則ニ從ッテ、
此下ニ平和的ニ經濟ノ發展ヲ進メテ行クト
云フコトヲ考ヘテ居ルノデアリマス、御答
申上ゲマス(拍手)
〔政府委員堀内謙介君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X01319370227&spkNum=44
-
045・堀内謙介
○政府委員(堀内謙介君) 笠井君ノ御質問
ニ對シテ御答致シマス、第一點ハ政府ハ今
日以上ニ、大キナ規模ヲ以テ文化事業ヲス
ル考ハナイカ、斯ウ云フ御尋ト拜承致シマ
シタガ、此點ニ付キマシテハ、政府ハ財政
ノ許ス限リ、出來ルダケ對支文化事業ヲ擴
大强化致シタイト存ジマシテ、現ニ從來三
百万圓ニ過ギナカッタ豫算額ヲ、大正十一度
ニ於キマシテハ、之ヲ四百万圓ニ增額致シ
タヤウナ次第デアリマス、此經費ノ範圍內
ニ於テ出來ルダケ效果ヲ擧ゲタイト苦心致
シテ居ル次第デアリマス、且ツ其事業ノ內
容ニ付キマシテモ、從來ハ御承知ノ如ク、
主トシテ自然科學及ビ人文科學ノ基本的調
査〓究ト云フコトニ重キヲ置イテ居ッタノ
デアリマス、併ナガラ時勢ノ必要ニ應ジマ
シテ、更ニ現代ノ必要ニ直接應ジ得ル如キ
方面ノ事業モ、徐々ニ致シタイト考へテ居
ルノデアリマス、先刻小谷君ノ御尋ニ對シ
マシテ御答致シマシタガ、旣ニ著手ヲ致シ
テ居リマスル北支ノ產業〓究所、又北支棉
花ノ栽培奬勵助成ト云フヤウナ事業ハ之
ニ屬スルモノデアリマス、尙ホ是ハ私自身
ノ腹案デゴザイマスケレドモ、例ヘバ同文
書院ノ如キ從來有益ナル事業トシテ成績ヲ
擧ゲテ居リマスルモノヲ、更ニ擴張致シマ
シテ、例ヘバ經濟〓究室ト云フヤウナモノ
ヲ之ニ設ケテ、現代ノ支那ノ經濟事情ヲ調
査〓究スルト云フ如キハ先程申シマシタ
如キ目的ニ副フ所以デハナイカト考ヘテ居
ルノデアリマス、其他各方面ノ御意見ヲ參
酌致シマシテ、朝野ノ衆智ヲ集メテ、此方
面ニ著々ト事業ヲ擴張致シタイト考ヘテ居
ルノデアリマス
第二ニ支那ノ一般民衆ニ對シテ、政府ハ
モウ少シ日本ノ意向ヲ周知セシメル方法ヲ
講ズル考ハナイカ、例ヘバ支那ニ於ケル外
國ノ英字新聞、或ハ漢字新聞ト云フヤウナ
モノニ做ッテ、日本モ左樣ナ施設ヲシテハド
ウカ、斯ウ云フ御尋ノヤウデアリマシタ
ガ、此點ニ付キマシテモ、政府ト致シマシテ
ハ、色々ノ方法ヲ講ジテ、現ニ支那ノ民衆
ニ對シテ、日本ニ關スル知識ヲ普及セシメ、
日本ニ關スル認識ヲ徹底セシメルコトニ努
力致シテ居ルノデアリマス、併ナガラ勿論
是等ノ事業ハ事機微ニ屬シマスルノデ、此
席ニ於テ具體的ニ例ヲ擧ゲテ申上ゲルコト
ハ差控ヘマス
第三ニハ對支外交ハ過去ニ於テ失敗デ
アッタ、之ヲ改善スル所ノ考ガ現内閣ニアル
カドウカ、斯ウ云フ御尋デゴザイマシタガ、
過去ノ對支外交ガ失敗ナリヤ否ヤト云フコ
トハ、是ハ私ハ先刻笠井サンノ御述ニナッタ
コトハ御意見トシテ伺ッテ置ク外ハナイ
ノデアリマスルガ、勿論現在ノ政府ニ於キ
マシテモ、日本ノ對支根本方針デアリマス
ル日支親善、共存共榮ト云フ趣旨ニ基キマ
シテ、相互國民ノ理解ヲ深メ、且ツ民間ノ
接觸モ益〓≧盛ニ致シマシテ、·兩國ノ國民ノ
間ノ空氣ヲ好轉セシメルト云フコトヲ圖ル
ト共ニ、尙ホ種々ノ具體的ノ問題ニ付テ、
徐々ニ其解決ヲ圖ッテ行クト云フコトヲ考
慮致シテ居ル次第デアリマス
最後ニ支那ニ於ケル外交機關ノ主ナルモ
ノヲ政府ハ取替ヘル考ハナイカドウカ、斯
ウ云フ御尋デアリマシタガ、是ハ私ヨリ答
辯致スコトハ出來マセヌ、唯私ハ同僚ノ爲
ニ一言申上ゲテ置キタイノハ、先刻笠井君
カラ色々御批評ガアリマシタケレドモ、私
ガ常ニ電報、其他ノ報道ニ依ッテ支那ニ於ケ
ル大使、南京ノ總領事、上海ノ總領事、其
他ノ同僚諸君ガ日夜至誠ヲ以テ君國ノ爲ニ
努力シテ居ルト云フコトニ付テハ、一部分
疑ヲ挾マナイノデアリマス、此點ヲ斷言致
シテ置キマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X01319370227&spkNum=45
-
046・笠井重治
○笠井重治君 一寸自席カラ申上ゲマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X01319370227&spkNum=46
-
047・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 許シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X01319370227&spkNum=47
-
048・笠井重治
○笠井重治君 只今ノ杉山陸軍大臣ノ御答
辯ノ中デ、我國ノ陸軍ガ平和的意向ヲ以テ
支那ニ臨ミ、日支ノ經濟的提携ヲセントノ
意思ヲ有スルト云フ御答辯ニ對シテハ、滿
足ノ意ヲ表シマス、只今堀內次官カラ相當
ニ御說明モアリマシタガ、最後ノ點ニ付テ
ハ、私ハ遺憾ナガラ堀內サントハ意見ヲ異
ニ致シテ居ルノデアリマス、固ヨリ我ガ外
務官憲ガ、我國ヲ代表シテ、世界ノ各地ニ
於テ、君國ヲ辱シメザル熊度ヲ執ッテ居ルコ
トニ付テハ、大ニ敬意ト感謝ノ意ヲ表シテ
居ル、併ナガラ昨年ノ五月ノ臨時議會ニ於
テ、私ハ有田外相ニ對シテモ、支那ノ時局
ト云フモノハ重大デアル、日支外交ト云フ
モノハ南京ニ於テ唯日本ノ外交官ガ支那
ニ對シテ外交ヲヤッテ居ルノデハナイ、卽チ
南京ヲ舞臺トシテ、英米露佛獨、其他ノ各
國ノ外交官ト相折衝シナケレバナラナイカ
ラシテ、川越君デハマダ〓〓不十デアル、
其力モナイト云フコトヲ言ヒマシタ、但シ
私ハ川越大使ハ見タコトモナイシ、會ッタコ
トモナイ人デアリマス、何等ノ恩怨モナ
イ、今囘南京ニ行ッテ見ルト、我ガ外交陣ハ
非常ニ弱イ、之ヲ强化スル必要ヲ痛感シタ、
卽チ一言ニシテ言フナラバ、先ヅ成ッテ居ラ
ナイト云フコトヲ見テ參リマシタ、隨テ我
國ノ對支外交ヲ一新セントスルナラバ一
方ニ於テ須磨總領事ノヤウナ、支那人ノ嫌
フ人ヲ戾シタノハ、先ヅ結構デアルガ、新
シク南京ニ於ケル外交陣ヲ立直シテ戴キタ
イト云フコトノ希望ヲ述ベテ置キマス、是
ヲ以テ私ノ質問ヲ打切リマス、又尙ホ委員
會ニ於テ質問ヲ申上ゲマスガ、本日ハ此程
度デ··発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X01319370227&spkNum=48
-
049・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 是ニテ質疑ハ終局
致シマシタ、各案ノ審査ヲ付託スベキ委員
ノ選擧ニ付テ御諮リ致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X01319370227&spkNum=49
-
050・松永東
○松永東君 日程第一ハ議長指名十八名ノ
委員ニ付託シ、日程第二乃至第四ノ三案ハ
一括シテ議長指名二十七名ノ委員ニ付託セ
ラレンコトヲ望ミマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X01319370227&spkNum=50
-
051・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 松永君ノ動議ニ御
異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X01319370227&spkNum=51
-
052・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 御異議ナシト認メ
マス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X01319370227&spkNum=52
-
053・松永東
○松永東君 日程第五ハ後〓シトセラレン
コトヲ望ミマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X01319370227&spkNum=53
-
054・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 松永君提出ノ動議
ニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X01319370227&spkNum=54
-
055・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 御異議ナシト認メ
マイク、仍テ日程第五ハ後〓シト致シマスー
日程第六、鐵道敷設法中改正法律案ノ第一
讀會ヲ開キマス-鐵道大臣伍堂卓雄君
第六鐵道敷設法中改正法律案(政府
提出)第一讀會
鐵道敷設法中改正法律案
鐵道敷設法中左ノ通改正ス
別表第五十二號ノ次ニ左ノ一號ヲ加フ
五十二ノ二神奈川縣櫻木町ヨリ北鎌
倉ニ至ル鐵道
附則
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
〔國務大臣伍堂卓雄君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X01319370227&spkNum=55
-
056・伍堂卓雄
○國務大臣(伍堂卓雄君) 只今上程セラレ
マシタル鐵道敷設法中改正法律案ノ提出ノ
理由ヲ簡單ニ申上ゲマス、今囘ノ改正ハ神
奈川縣櫻木町ヨリ北鎌倉ニ至ル鐵道ヲ新ニ
別表ニ追加セントスルモノデアリマス、本
鐵道ハ地方開發上竝ニ鐵道輸送系絡上必要
デアリ、且ツ鐵道經濟上カラモ有利ト認メ
ラレルモノデアリマシテ、十二年度ヨリエ
事ニ著手致シタイト考ヘテ居リマス、仍テ
本線ヲ豫定鐵道路線トシテ追加スル爲メ、
玆ニ本案ヲ提出致シタ次第デアリマス、何
卒御審議ノ上御協贊ヲ與ヘラレンコトヲ希
望致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X01319370227&spkNum=56
-
057・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 質疑ノ通〓ハアリ
マセヌ、本案ノ審査ヲ付託スベキ委員ノ選
擧ニ付テ御諮リ致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X01319370227&spkNum=57
-
058・松永東
○松永東君 本案ハ議長指名十八名ノ委員
ニ付託セラレンコトヲ望ミマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X01319370227&spkNum=58
-
059・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 松永君ノ動議ニ御
異議ハアリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X01319370227&spkNum=59
-
060・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 御異議ナシト認メ
やく、仍テ動議ノ如ク決シマシタ-日程
第七、議院法中改正法律案ノ第一讀會ヲ開
キマス-法制局長官川越丈雄君
第七議院法中改正法律案(政府提出)
第一讀會
議院法中改正法律案
議院法中左ノ通改正ス
第一條中「四十日」ヲ「二十日」ニ改ム
第四十條第一項及第二項中「二十一日」ヲ
「二十五日」ニ改メ同條ニ左ノ一項ヲ加フ
第三十三條ノ規定ニ依ル停會中ノ日數
及年末年始ニ際シ各議院ガ議決ヲ以テ
爲シタル休會中ノ日數ハ之ヲ前三項ノ
日數ニ算入セズ但シ算入セザル休會中
ノ日數ハ二十日ヲ超ユルコトヲ得ズ
附則
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
〔政府委員川越丈雄君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X01319370227&spkNum=60
-
061・川越丈雄
○政府委員(川越丈雄君) 今囘提出致シマ
シタ議院法中改正法律案ニ付キマシテ、提
案ノ理由ヲ申上ゲタイト思ヒマス、議院制
度ノ改善ニ關シマシテハ、御承知ノ通リ、議
會ニ於キマシテモ屢〓論議セラレタ所デアリ
さく、前議會ニ於キマシテモ、當院各派ノ
共同御提案ニ係リマスル議院制度革正ニ關
スル御決議ガアリマシタヤウナ次第デアリ
マスガ、政府ハ其後議院制度調査會ヲ設ケ
マシテ、議院制度ノ改善ニ關シ、銳意調査
審議ヲ進メテ參ッタ次第デアリマス、同調査
會ニ對スル第一號諮問タル、議院制度ノ運
用ニ關シ改善スベキ事項ニ付キマシテ、爾
後昨年末ニ至ル迄屢、會議ヲ重ネマシテ、
十二月末ニ至リ、其一部ニ付テノ答申ガアッ
タノデアリマス、其答申ノ中、議院法ノ改
正ヲ要スルモノハ二ツアリマシタ、其一ツ
ハ帝國議會召集ノ勅諭ノ發布ト集會期日ト
ノ間ニ存セラルベキ期間ガ、現行法ニ依リ
マスト「四十日」トアリマスノヲ「二十日」ニ
短縮スルト云フコトデアリマス、其二ハ業
議院及ビ貴族院ニ於ケル豫算審査期間ノ「二
十一日」トアルヲ「二十五日」トスルト云フコ
トデアリマス、尙ホ之ニ關聯シマシテ附帶
的ニ、議會停會中ノ期間及及年末年始ニ於
ケル各議院ノ院議ニ依ル休會ノ期間ヲ豫算
期間中ニ算入セザルヲ適當ト認ムト云フコ
トガ答申セラレタノデアリマス、ソコデ政
府モ此答申ニ基キマシテ考慮致シマシタ結
果、今囘提案致シマシタヤウナ議院法
中改正法律案ヲ起案致シマシテ、憲法
附屬ノ法律ノ改正ト致シマシテ、樞密
院ニ御諮詢方ヲ奏請シ、去ル一月二十日ノ
樞密院本會議ニ於テ可決セラレ、玆ニ提案
スルニ至リマシク次第デアリマス、實ハ本
案ハ速ニ御審議ヲ願ッテ、今期議會ヨリ適用
致シタイ希望デアリマシタ所、御承知ノ通
リノ政情ノ爲ニ、今期議會カラ適用スルト
云フコトハ大體ニ於テ不可能ニ相成ッタ
ト申スベキデアリマセウガ、次ノ議會カラ
適用致シマスル爲ニモ、今期議會ニ於テ改
正ヲ爲シテ置クコトガ必要ナノデアリマス、
斯ノ如キ理由デ玆ニ本改正案ヲ提案致シタ
次第デアリマス、何卒御審議ノ上御協賛下
サレンコトヲ御願致シマス(拍手)発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X01319370227&spkNum=61
-
062・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 本案ニハ質疑ノ通
告ガアリマス、許可致シマス、靑木亮貫君
〔靑木亮貫君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X01319370227&spkNum=62
-
063・青木亮貫
○靑木亮貫君 私ハ曩ニ選擧法ノ改正案ヲ
速ニ議場ニ上程サレルコトヲ政府ニ迫ッタ
ノデアリマス、然ルニ本日玆ニ議院法ノ改
正法律案ヲ上程サレマシタニ付キ、幸ニモ
選擧法ノ改正ハ議院法ノ改正ト不離不卽ノ
間ニアリマス、議院法ノ改正法律案ト選擧
法ノ改正法律案ハ、殆ド唇齒輔車ノ間ニア
リマシテ、相離ルベカラザルモノガアリマ
ス、此意味ニ於キマシテ私ハ過日政府ニ選
擧法改正案ヲ、何ガ故ニ荏苒上程セザリシ
カノ質問書ヲ提出致シタノデアリマス、幸
ニ議院法ノ改正案ヲ上程セラルヽ時ニ當ッ
テ、政府當局ニ向ッテ何ガ故ニ選擧法ノ改正
案ヲ今尙ホ上程セザルカヲ敢テ御尋シタイ
ト存ジテ玆ニ登ッタ次第デアリマス(拍手)
御承知ノ通リニ我國ノ立憲政治ヲ確立シ、
或ハ庶政一新、殊ニ現內閣、前內閣ヨリ殆ド
ロヲ酸クスル程叫バレタル庶政一新、立憲
政治恪循ナドハ、申ス迄モナク、其根本ノ
重點ハ選擧ニアラネバナラヌト存ジマス
(拍手)斯樣ナ重要ナ選擧法ノ改正案、而モ
前議會ニ於キマシテ、此選擧法ノ改正案ガ
全ク全員一致ノ形ニ於テ選擧法ノ改正ヲ
叫ンダノデアリマスルガ、政府幸ニ容ルヽ
所トナリ、朝野一致致シマシテ、有ユル學
者、有ユル政治家、斯道ノ權威者ヲ網羅シ
テ、玆ニ選擧法改正調査會ナルモノヲ設ケ
ラレ、而モ其選擧法改正案ハ、旣ニ其成案
ヲ見テ居ルノデアリマス、成案ヲ見テ居ル
ニ拘ラズ、今尙ホ上程セザル理由如何、是
ガ私ノ質疑ノ要點デアリマス、惟フニ我國
ニ於テ選擧肅正ノ聲ヲ叫バレテ、選擧界ノ
肅正ヲ圖ラレルコトハ洵ニ政治界淨化ノ上
ニ喜バシイコトデアルト存ジマスルケレド
モ、選擧肅正ノ聲ノ美シキニ拘ラズ、不法
ナル非常識取締ノ結果ハ、或ハ昭和ノ御代
ニ聞クモ忌ハシキ、昭和ノ御代ニ洵ニ歷史
ヲ傷ツケルカノ如キ拷問、人權蹂躪等ノ簇
出致シマシタルコトハ、洵ニ御同樣寒心ノ
至リニ存ズルノデアリマス(拍手)是レ固ヨ
リ其取締官ノ非常識ノ然ラシムル所トハ言
ヘ、少クトモ選擧法ニ於テ不全、所謂全備
セザル箇所ガアッタ結果デアラネバナラヌ
ト存ジマス、而シテ玆ニ吾々ハ考ヲ及ボシ
マシテ選擧法ノ改正案ヲ案出シ、以テ政府
モ亦是ガ調査會ヲ設ケラレテ、一ノ成案ヲ
得ラレタノデアリマス、政府ハ選擧肅正ノ
聲ニ相應シキ選擧取締ガ行ハレタト思召サ
ルヽカ、私共ハ洵ニ選擧肅正ノ聲ノ美シサ
ニ比ベテ、餘リニモ不法極マル取締デアッ
タト存ジマス、斯樣ナコトニ於テ政治界ノ
淨化、選擧肅正ノ聲ヲ叫ブモ、尙ホ木ニ緣ッ
テ魚ヲ求ムルノ謗ヲ免レナイト存ジマス
(拍手)果シテ內閣ニ於カレマシテハ、急遽
此選擧法改正法律案ヲ上程サルヽノ意思ア
リヤ、アリトセバ直チニ上程サルヽノ手續
ヲ執ラレタシ、又現在ノ選擧法ニ於テ缺ク
ルコトナシト思召サルヽナラバ、缺クルコ
トナキ點ヲ御指摘シテ御示シガ願ヒタイト
存ジマス、私ハ玆ニ上程サルヽヤ否ヤト云
フ政府ノ意思ノアル所ヲ明確ニ御答ヲ願ヒ
タイト存ズルノデアリマス、議院法改正ノ上
程サルヽ時ヲ利シテ、不卽不離ノ間ニアリ
マスル選擧法ノ改正案ノ上程ヲ迫ルベク、
敢テ政府ノ御所見ヲ伺ッタ次第デアリマス
(拍手)
〔國務大臣河原田稼吉君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X01319370227&spkNum=63
-
064・河原田稼吉
○國務大臣(河原田稼吉君) 只今選擧法改
正案ヲ提出スル意思アリヤ否ヤ、斯ウ云フ
御尋デゴザイマシタ、御話ノヤウニ現行ノ
選擧法ニ付キマシテハ其取締、其他ノ點ニ
付キマシテ相當考慮ヲ加ヘ、改正ヲ加ヘル
ノ必要アリト認メマス、サリナガラ御承知
ノ通リ現內閣ハ議會中ノ政變ノ後ヲ承ケマ
シテ、豫算ノ編成審議、其他ニ付テ非常ニ
多忙ヲ極メ、餘日モナイガ爲ニ、而モ此選
擧法ハ御承知ノ通リ可ナリ重要ナル事項ヲ
改正案ノ中ニ於テモ含マレテ居リマスルシ、
且又御存ジノ通リ樞密院ノ議ヲ經ル等、可
ナリ重要ナル手續ヲ經ナケレバナラヌノデ
アリマシテ、ソレト搗テヽ加ヘマシテ餘日
ノナイ爲ニ、本議會ニ提出スルノ運ビニ至
ルヤ否ヤ、餘程面倒ナ點ガアリハセヌカト
思フノデアリマス、サリナガラ現行選擧取
締法、其他ニ付キマシテ種々改正ノ必要モ
アリ、且ツ調査委員會ニ於テモ、ソレノ
適切ナル意見ノ答申ガアリマスノデ、假令
提出改正ノ運ビニ至リマセヌデモ、是等ヲ
參照致シマシテ、將來行ハルベキ選擧ニ付
キマシテハ其實行上相當ノ考慮ヲ拂ヒタイ
ト思ヒマス、且又此改正ニ付キマシテハ出
來ルダケ早ク近キ機會ニ於テ提出致シタイ
ト努力中デアリマス
〔靑木亮貫君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X01319370227&spkNum=64
-
065・青木亮貫
○靑木亮貫君 內務大臣ノ只今ノ御答ハ洵
ニ私共甚ダ遺憾ニ存ズル御答デアルト存ジ
マス、現在私共ノ考カラ申シマスルナラバ、
實ハ昨年ノ此選擧法改正案ヲ私共〓究スベ
ク叫ビマシタ當時ノ考デハ、卽チ本年ノ各
府縣ノ府縣會議員、或ハ市會議員、町村會
議員ノ選擧ニハ直チニ改正サレタル選擧法
ニ於テ、實施サルヽモノト期待シテ居ッタ
ノデアリマス(拍手)又爾ク私共ガ急イデ調
査ヲ强ヒタ所以ノモノモ全クソコニアッタ
ノデアリマス、然ルニ只今ノ御說明ヲ伺ヒ
マスルト、餘日ガナカッタト云フ御言葉ガ何
ヨリノ御答ノ骨子ノヤウニ考ヘラレル、餘
日ガナカッタトハ何事デアリマセウ、凡ソ私
共ハ立憲政治ノ運用云々ヲ致シマスルニハ、
議會ヲ措イテ他ニハナイ、議會ハ選擧ヲ措
イテ他ニ求ムル重點ハ少イト存ジマス、私
共ハ斯樣ナ考カラ、ドウ致シマシテモ至急
ニ選擧法ノ改正ヲ行ハレルコトガ、院議尊
重ノ意味ニ於テモ當然ダト思ヒマス(拍手)
若モ內務大臣ガ立憲政治ヲ恪循スルト云フ
言葉ガ、選擧ガ少クトモ其重點デアルト云
フコトニ御同感デアル限リハ、一日モ速ニ
選擧法ノ改正案ヲ上程サレマシテ審議サレ
ルコトガ當然デアラネバナラナイト存ズル
ノデアリマス、院議尊重ノ意味ニ於テ、敢
テ御自省ヲ請ヒ、尙ホ再ビ御說明ヲ願ヒマス
〔「答辯ノ要ナシ」ト呼フ者アリ〕
〔國務大臣河原田稼吉君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X01319370227&spkNum=65
-
066・河原田稼吉
○國務大臣(河原田稼吉君) 只今ノ御意見
ハ洵ニ御尤ト存ジマスガ、先程申述ベマシ
タヤウニ、重要法案ニ付テハ相當愼重ナル
考慮ヲ加ヘナケレバナリマセヌ、然ルニ先
程申シマシタヤウニ如何ニモ餘日ガナイノ
ト、且ツ重要ナル法案デアルガ爲ニ、諸種
ノ憲法上ノ手續ヲ經ナケレバナラヌ、斯ウ
云フ風ナ次第デ、或ハ遺憾ナガラ本會議ニ
ハ間ニ合ハヌノデハナイカ、斯ウ云フヤウ
ニ思ヒマス、尙ホ選擧ガ立憲政治ノ上ニ於
テ最モ重要ナル基礎デアルト云フコトニ付
キマシテハ御同感デアリマシテ、此點ニ付
キマシテハ更ニ十分ナル調査〓究ヲ加ヘマ
シテ、現實ニ適應スルヤウニ改正案ヲ成べ
ク早ク得テ、成ベク近イ機會ニ提案ヲ致シ
タイト存ジマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X01319370227&spkNum=66
-
067・青木亮貫
○靑木亮貫君 簡單デアリマスカラ、自席
カラ御許シ願ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X01319370227&spkNum=67
-
068・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 許可致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X01319370227&spkNum=68
-
069・青木亮貫
○靑木亮貫君 內務大臣ハ近キ將來云々ノ
御話モアリマスガ、私共ハ玆ニ選擧制度調
査會ナル名ヲ以テ、選擧制度ノ改正要綱ト
云フ成案ヲ作ッテ居ルノデアリマスガ、尙ホ
現政府ニ於キマシテハ此成案ハ必要ナリ
ト御認メニナッテ居ルノデアルカ、是ナリト
御認メデアルナラバ、是カラ尙ホ愼重考
慮スルナドト云フ御言葉ニ依ッテ、此要綱ヲ
全ク御否定ニナルノデアリマスカ、之ヲ是
ナリト云フ御考デアルナラバ、直チニ御實
施ニナルコトガ當然デアラネバナラヌ、私
共ハ此要綱ニ依リ、直チニ議場ノ日程ニ上
サルヽヤウナ御手運ビガ願ヒタイト存ジマ
ス、以上ヲ以テ私ノ質問ヲ打切リマス拍
手
(「答辯々々」ト呼フ者アリ〕
〔國務大臣河原田稼吉君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X01319370227&spkNum=69
-
070・河原田稼吉
○國務大臣(河原田稼吉君) 答申ノ內容ニ
付キマシテハ、私ハ決シテ非ナリトハ考ヘ
マセヌ、ソレガ爲ニ先程私ガ申述べマシタ
ヤウニ、假令改正ガ出來ナイデモ、選擧ノ
實行ニ當リマシテハ、其答申ノ趣旨ヲ十分
ニ斟酌シテ實行致シタイト思ヒマス、唯如
何ニモ餘日ガナク、中々手續ガ容易デナイ
ト云フコトハ、先程來私ガ申述べマシタコ
トニ依ッテ、ドウソ御諒承ヲ願ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X01319370227&spkNum=70
-
071・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 深澤豐太郞君
〔深澤豐太郞君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X01319370227&spkNum=71
-
072・深澤豐太郎
○深澤豐太郞君 私モ靑木君同樣、政府ニ
速ニ選擧法改正案ヲ提案スベキコトヲ要望
致スノデアリマス、只今內務大臣ノ御意見
ハ拜承致シマシタガ、尙ホ吾々ハ吾々ノ院
ノ意思トシテ、內務大臣ニ之ヲ要求スルノ
機會ガアラウト考ヘマス、其場合ハ院議尊
重ノ意味ヲ以テ、內務大臣ハ本案ヲ提案ス
ベク覺悟セラレンコトヲ要望致シマス、尙
ホ只今ノ内務大臣ノ御答辯中、選擧法ノ改
正ハ間ニ合ハナクトモ、近キ選擧ニ於テハ、
此選擧法ハ改正セラルヽ意思ヲ以テ、取締
ルト云フ御話ガアッタノデアリマス、只今ノ
選擧ニ、現ニ選擧ノ行ハレツヽアル市會議
員選擧等ニ對シマシテモ、煩雜ナル、枝葉
末節ニ互ッタ今日マデノ處罰ノ方法ハ、內部
大臣ノ通牒ヲ以テ、之ヲ改メシムルノ御意
思ガアルカナイカヲ御伺致シマス
本法ノ改正ニ付テ御伺致シマス、卽チ本法
ノ改正案第一條ノ「四十日」ヲ「二十日」ニ改メ
ル、第四十條ノ「二十一日」ヲ「二十五日」ノ豫
算審議期間ニ改メルト云フコト、モウ一ツハ
本案ニ明示サレテ居リマセヌケレドモ、議會ハ
十一月召集セラルヽト云フコトデアリマス、
而シテ尙ホ一月十五日ニ再開スルト云フコ
1月、本案ノ改正ニ含マレテ居ルノデアリ
マス、私ハ此三箇所ノ改正ノ意義ニ付テ政
府ニ御伺ヲ致シマス、第一條ノ「四十日」ヲ
「二十日」ニ改ムルノハ如何ナル意味デアル
カ、四十日トシテ置イタナラバ如何ナル
不便ガアルノデアルカト云フコトニ付テ、
政府當局ノ御意見ヲ伺ヒタイノデアリマス、
交通ガ至便ニナリ、通信機關ガ完備シタル
今日、二十日間デ宜シイト云フ御意見モア
リマスガ、議會召集ノ勅諭ガ四十日以前ニ
發布セラルヽノハ、果シテ通信機關トカ交
通機關トカ云フモノヲ顧慮シテ、四十日以
前ニ發布セラルヽノデアルカ否カ、此四十
日以前ニ發布セラルヽト云フコトハ、四十日
以前ニ議會ノ開會セラルヽコトヲ豫〓シテ、
政府ヲシテ四十日間ニ議會ニ臨ム準備ヲ整
ヘシメ、議員ヲシテ四十日間ニ議會ニ審議ス
ベキ心組ヲ爲サシムルノ意味ハ含マレテ居
ラナイノデアルカドウカ、若シ含マレテ
居ッタモノトスレバ、是ガ二十日間トナッテ
差支ナイカ、現ニ豫算ノ印刷ダケデモ政府
ハ二十一日間ヲ要シタノデアリマス、此召
集ノ勅諭ト、議會開會ノ期間ヲ短縮セシム
ル意味ニ付テ御伺ヲ致シマス
今一箇所ハ「二十一日」ヲ「二十五日」ニ改
メル、豫算審議期間ノ短イコトハ不便デア
リマスルカラ、而シテ豫算ガ尨大トナッタ
今日、二十五日ニ改メルコトハ當然デアリ
マス、是ニハ異議ハアリマセヌ、第三ノ十
一月召集、一月十五日再開ト云フ一一點デア
リマス、一月十五日乃至十日ニ再開スルト
云フ本案ノ改正、卽チ年末年始ノ休會ハ、
二十日ヲ超ユルコトヲ得ズトアルノデアリ
マスルカラ、十二月ノ二十六日ニ終レバ二
十日トシテモ一月十五日ニハ再開ヲシナケ
レバナリマセヌ、尙ホ其後ノ議決ニ依ル休
會ヲ豫想致シマスルナラバ一月十日
ニ議會ハ再開セラルベキ準備ガ、此案
文中ニ含マレテ居リマス、是モ結構デ
アリマス、併シ是ハ私共議員ハ本年各派交
涉會ニ於テ、政府ニ對シテ本年ノ一月十日再
開ヲ要求致シマシタ、政府ハ豫算案ノ印刷
ガ三週間掛ル、一月二十一日デナケレバ出
來ナイト云フ口實ノ下ニ、吾々ノ各派交渉
會ノ要求ヲ斥ケタノデアリマス、此事ハ何
ヲ意味スルカト言ヘバ、十二月末日デナケ
レバ、豫算案ハ印刷ニ〓スコトガ出來ナカッ
タト云フコトヲ意味致シテ居ルノデアリマ
ス、十二月末日デナケレバ豫算案ハ印刷ニ
囘付スルコトガ出來ナカツタ、之ヲ十一月ニ
議會ヲ召集スルトシテ、政府ハ果シテ十月
中ニ豫算ヲ印刷ニ囘付セシムルノ用意アリ
ヤ否ヤ、又斯ノ如キコトガ可能デアルカド
ウカト云フコトヲ大藏大臣ニ御伺ヲ致シマ
ス、又假ニ政府ガ十月中ニ豫算ヲ印刷ニ〓
シ得タト致シマシテ、其豫算案其モノノ內
容ニ付テ政府ハ如何ナル考ヲ有スルカト云
フコトデアリマス、ソレハ只今問題トナッテ
居リマスル豫算審議中ノ陸海軍費二千三百
万圓ヅツノ繰越デアルカ、或ハ不用額デア
ルカ分リマセヌケレドモ、此一事ヲ以テ致
シマシテモ、豫算案ガ議會ニ提案セラレマ
スルノニハ、政府ハ十分ナル確實性ノアル
モノヲ議會ニ提案致サナケレバナリマセ
ヌ、吾々モ亦政府ノ信念ノアル所ヲ基礎ト
シテ、豫算ノ審議ヲ致サナケレバナリマセヌ、
其點カラ觀察致シマスル時ニ、豫算委員會ニ
於テノ說明ニ依レバ、現ニ本年度ノ豫算ニ
於テモ、陸軍省ハ二千万圓ノ繰越ヲシナケ
レバナラヌ、海軍省ハ六百万圓ノ繰越ヲシ
ナケレバナラヌ、內務省モ亦莫大ナル繰越
ヲスル、此繰越額ガ斯ノ如キ莫大ナル數字
ニ上ルト云フコトハ、言換ヘレバ豫算ガ不
正確デアッタト云フコトデハナイカ、豫算ガ
不正確デアッタカ、或ハ其豫算ヲ實行スル上
ニ於テ、民間ノ事情等ニ適合セザル點ガアッ
タノカ、何レカデナケレバナリマセヌ、ソ
レガ十二月末日ニ豫算ヲ印刷ニ廻ス程ノ期
間ヲ以テ、愼重ニ審議シテ豫算ヲ作ラレテ
モ、尙且ツ斯ノ如キ結果ヲ見テ居ル、之ヲ
二箇月以前ニ豫算ヲ印刷ニ廻サナケレバ
ナラナイト云フ狀態ノ下ニ豫算案ヲ組ン
デ、此豫算案ガ十二月末日ニ印刷ニ廻サレ
ル豫算案ト、十月末日-末日デハアリ
マスマイ、十月中ニ印刷ニ廻サナケレバ
ナラナイ豫算案ト、是ガ來年度實施ノ上ニ
於テ、其豫算案ノ確實性ハドウ云フ狀態ニ
ナルデアリマセウカ、吾々ハ今日ノ、只今
ノ豫算案デモ、十二月末日ニ印刷シタル豫
算案デモ、一月ノ物價騰貴ニ對シテハ非常
ナル實行上差支ヲ來スノデハナイカト思
フ、僅カニ十二月ト一月トノ間デスラモ、
來年度豫算實行ノ上ニ支障ヲ來スノデハナ
イカト云フ現實カラ見テ、是ガ尙ホ三箇月
以前ニ印刷ヲシナケレバナラナイト云フコ
トニナッテ、來年度ニ實行ニ移ス場合ニ於テ
ハ、今日以上ニ不確實ナモノトナリ、今日以
上ニ繰越、流用ガ多クナルカ、不足額ガ多
クナルカト云フ缺陷ヲ招來スルノデハナイ
カ、大藏大臣ハ十月中ニ印刷ニ〓シ得ルト
云フ確信ガアリマスルカ、又其十月中ニ印
刷ニ廻シ得ル豫算案ハ、十三月ニ組マルヽ
豫算案ヨリ確實性ガアルカドウカ、此點ニ
付テ御伺ヲ致シマス、卽チ物價騰貴、或ハ
各省ノ豫算ノ見積、繰越額トカ、不用額ト
カ、或ハ不足額トカ云フヤウナモノニ付
テハ、尙ホ不確實ナモノニナルノヂヤナイ
カト云フコトト、一體此改正ヲスルノニハ
豫算ノ會計年度ヲ變更スルノ必要ハ認メナ
イカ、議會ガ二月十日ニ-三箇月ノ會期
ヲ終ヘテ二月十日ニ來年度豫算案ガ成立ヲ
シテモ、尙ホ五十日經タナケレバ此豫算ハ
實行ニ入ラナイ、四十日モ以前ニ豫算案ヲ
作ッテ置カナケレバナラナイ理由ハ何處ニ
アルカ、此點ガ一點デアリマス、一ツハ陸
軍省ノ方ハオ見エニナリマセヌケレドモ、
十一月召集說ニハ、陸軍ハ大演習ノ關係上、
實行不可能デアルト云フコトヲ聞イテ居ル
ノデアリマスルガ、此十一月召集ヲ豫定シ
タル改正ニ對シテ、陸軍ハ十一月中議會召
集ハ差支ナイト御考ニナッテ居ルカドウカ、
此點ハ陸軍當局ヨリ、或ハ總理大臣ガ居リ
マセヌカラ、他ノ大臣ノ國務大臣トシテノ
御答辯ヲ御伺致シタイノデアリマス、而シ
テ若シ十一月召集トシテ、議會ガ不幸ニシ
テ萬一其召集ノ當初ニ於テ、今日マデ慣例
ノ如クニ解散セラルヽ場合アリト致シマス
ナラバ、十二月下旬ニ選擧ヲ行フノ結果ト
ナリマスルガ、此十二月下旬ニ選擧ヲ行フ、
或ハ正月松ノ內ニ選擧ヲ行フト云フヤウナ、
年末年始ノ場合ノ選擧ハ差支ナイト考ヘル
カ、吾々ハ大イニ差支アリト考ヘマス、故
ニ此場合ハ選擧法ニ於テ三十日以內ヲ改メ
ルノ意思ガアルカ、此點ニ付テデアリマス、
以上御伺致シマスルノハ、議院制度調査會
ニ於テ政府ニ答申シタルモノヲ提案セラレ
タルニ對シテ、議員之ヲ御伺スルコトハ如
何カト考ヘマスルガ、不幸ニシテ吾々ハ此
議院制度調査會ノ調査委員ヨリ報〓ヲ受ケ
ズ、或ハ黨議トシテ討議シタルコトガナイ
ノデアリマシテ、况ンヤ院議トシテ之ヲ諮ッ
タコトガナイノデアリマスルカラ、私ハ
議院ノ一員トシテハ、十一月召集ニ對シテ
ハ幾多ノ疑義ガアリマスカラ、之ヲ前提ト
シタル改正ノ趣旨ニ付テ政府當局ノ答辯ヲ
御伺致シタイノデアリマス(拍手)
〔政府委員川越丈雄君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X01319370227&spkNum=72
-
073・川越丈雄
○政府委員(川越丈雄君) 只今ノ御質問ニ
付キマシテ御答ヲ致シタイト思ヒマス、第
一條議會召集ノ詔勅カラ召集期日マデノ間
「四十日」ト云フノヲ「二十日」ト改メタノハド
ウ云フ理由カト云フ御問デアリマスガ、是
ハ普通ノ通常議會デアリマスト四十日ノ期
間ヲ置クト云フコトニ付キマシテ別ニ今日
マデ支障ハナイノデアリマス、又臨時議
會ノ場合ニ於キマシテハ、此規定ハ適
用サレナイト云フコトニ略、と解釋デ一定シ
テ居リマスノデ、是モ餘リ差支ナイノデ
アリマスガ、唯解散後ノ特別議會ニ此規定
ガ適用サルベキモノカ、ドウカト云フ
コトニ付キマシテハ、從來ノ解釋ト致シマ
シテハ特別議會ニモ此規定ヲ適用シマシ
テ、四十日ノ期間ヲ置クト云フコトハ先例
トナッテ居リマスノデ、此場合ニ於キマシテ
ハ、成ベク早ク特別議會ヲ召集シタイト云
フコトカラシマシテ、「四十日」トアリマス
ノヲ「二十日」ト云フコトニ改正ニナッタノ
デアリマスガ、二十日トアリマスノハ二十
日ヲ下ラザル期間ト云フコトデアリマスノ
デ、最小限二十日ノ期間ハ置カナケレバナ
ラヌト云フコトニ改正ニナッタ譯デアリマ
ス
第二ニ豫算委員會ニ於ケル豫算ノ審議期
間ヲ「二十一日」トアリマスモノヲ「二十五
日」ニ改メルト云フ趣旨ハ、是ハ御話ニモ
アリマシタ通リニ、豫算ヲ愼重ニ審議シヨ
ウト云フ趣旨ニ出タノデアリマス
第三ノ停會、休會等ノ期間ヲ豫算ノ審議
期間ノ中ニ算入シナイト云フコトノ規定
ハ、是ハ必シモ所謂議會十一月召集ト云フ
コトト直接關係ガアル譯デハアリマセヌ
ガ、議院制度調査會ニ於キマシテハ、議會
ノ召集期ヲ十一月中旬ニ繰上グベシト云フ
コトノ御議論ガアッタコトハ能ク承知シテ
居リマス、之ニ付キマシテハ色々ノ方面カ
ラ〓究スベキ問題ガ澤山アルノデアリマシ
テ、只今御述ニナリマシタヤウナコトモ、
確ニ〓究スベキ一ツノ項目デアラウト思ヒ
マス、併ナガラ此問題ハ本案ノ規定ト直接
ノ關係ノナイ問題デアリマシテ、政府ニ於
キマシテハ十分考究致シマシテ、此暮ノ議
會ヲ十一月ノ中旬ニ召集シマスカ、或ハ其
他ノ時期ニ召集致シマスカ、是ハ今後十分
ニ其利害得失ヲ〓究スベキ問題デアルト考
ヘテ居リマスノデ、只今此處デ御擧ゲニナ
リマシタヤウナ豫算ノ編成ノ時期ガドウナ
ルトカ、或ハ印刷ノ期間ト云フヤウナコト
ノ細カイ問題ニ付キマシテハ、或ハ委員會
等ニ於テ御說明申上ゲテ宜シイカト思ヒマ
スガ、政府ト致シマシテハ、必ズ十一月中
旬ニ召集スルトカ、或ハシナイトカ云フコ
トハ、マダ決定致シテ居リマセヌ、今後ハ
十分ニ各方面ノ利害得失ヲ愼重考究ノ上決
定致シタイト考ヘテ居リマス
〔國務大臣河原田稼吉君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X01319370227&spkNum=73
-
074・河原田稼吉
○國務大臣(河原田稼吉君) 深澤サンカラ
ノ御尋ハ選擧法調査會ノ答申ヲ將來行ハレ
ル選擧ノ實行ニ當リマシテ、通牒ヲ以テソ
レゾレ取締官憲ニ通達スルカト、斯ウ云
フ御尋ノヤウニ拜聽致シマシタ、法律ノ明
記シテ居リマス所ヲ一片ノ通牒ヲ以テ左右
スルコトノ出來マセヌコトハ、私ガ申上ゲ
ル迄モゴザイマセヌ、又選擧ガ立憲政治ノ
基礎デアッテ、肅正セラレタル正シク立派ナ
選擧ト云フモノガ、憲政發達ノ上ニ於テ最
モ大事デアリマスルコトハ、是亦皆樣ト同
樣ナ考ヲ持ッテ居リマス、唯其取締ノ實行
ニ當リマシテ、先般ノ選擧法調査會ニ於ケ
ル答申、竝ニ其當時論議セラレマシタ色々
ノ議論ニ付キマシテハ、取締ヲ實行スル
上ニ於テソレ〓〓參考ニナル事項ガ多々ア
ルヤウニ思ハレルノデアリマス、隨ヒマシ
テ是等ヲ參考ト致シマシテ、適正ナル取締
ノ實行ニ當リタイ、斯ウ云フ風ニ思フノデ
ゴザイマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X01319370227&spkNum=74
-
075・深澤豐太郎
○深澤豐太郞君 簡單デアリマスカラ此席
カラ御許シ願ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X01319370227&spkNum=75
-
076・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 許可致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X01319370227&spkNum=76
-
077・深澤豐太郎
○深澤豐太郞君 只今ノ內務大臣ノ御話デ
アリマスルガ、私ハ法ヲ曲ゲテ通牒セヨト
云フノデハアリマセヌ、私ノ申上ゲタノハ
些末ナル事項、枝葉末節ニ涉ル所ト申上ゲ
タノデアリマス、是ハ法ノ解釋上實ニ窮屈
ナル解釋ヲ爲ス、其法ノ適用ニ當ッテノ執
行ガ、如何ニモ煩雜ニ過ギテ居リマスルカ
ラ、斯樣ナ點ニ付テノ質疑デアリマス、只
今政府委員ノ答辯ハ、政府委員トシテハ
如何ニモ意ヲ得ナイノデアリマス、總理
大臣ノ答辯ナラ兎ニ角、政府委員トシテ
ハ今少シク丁寧ナ御答辯ガアッテ然ルベキ
モノト思フ、此案ヲ見テ是ガ暮ニ議會ガ
開カレルモノヲ假定シテノ改正ダト云フコ
トハ、ハッキリ致シテ居ルノデハアリマセヌ
カ、必シモ暮ニ議會ヲ開クノデナイト云フ
ノデアルナラバ何故斯樣ナ改正案ヲ出シ
タカ、暮ニ議會ヲ開クト云フコトニ政府ノ
意向ガ決定シタレバコソ、此改正ガ必要ナ
ノデハナイカ、此改正ガ必要トナッタ以上
ハ、豫算ノ編成ニ付テ、其豫算ノ確實性ニ
付テ御伺ヲ爲シ、或ハ四月一日ノ會計年度
ヲ三月一日ヨリノ會計年度ニ改ムルカ、何
レカニシナケレバ此改正ノ意義ガナイノデ
ハアリマセヌカ、故ニ大藏大臣ニ對シテ、
豫算ノ確實性ト豫算編成ノ可能不可能ニ付
テノ意見ヲ御伺ヲシタ、スルト政府委員ノ
答辯ハ、必シモ暮ニ召集スル爲ニ之ヲヤッタ
ノデハナイ、甚シキニ至ッテハ、必シモ二十
日ト改メタカラ、二十日前ニ御勅諭ガ出ル
ノデハナイト云フヤウナコトヲ言ッテ居ル、
左樣ナ三百的ノ言論ガ議會デ用ヒラルベキ
モノデハアリマセヌ、憲法附屬ノ大典ニ對
シテ、四十日ト明記シ、一一十日ト明記セラレ
テ、ソレハ必シモ其以內ト云フコトヲ意味
シテ居ルモノデハナイナドト云フ答辯デ、
憲法附屬ノ大典ガ論議セラレマスカ、片方
デハ暮ニ議會ヲ開クコトヲ前提トシテ此改
正ヲシナガラ、必シモ暮ニ開クノデハナ
イ、二十日ト改正シテ置キナガラ、必シモ二
十日ニ出スノデハナイト言フ、左樣ナ答辯
デハ斷ジテ滿足致スコトハ出來マセヌ、私
ハ大藏大臣ノ答辯ノナイノニ對シテ遺憾ノ
意ヲ表シテ質問ヲ打切リマスガ、答辯ガア
レバ幸ヒデアリマス
〔國務大臣結城豊太郞君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X01319370227&spkNum=77
-
078・結城豊太郎
○國務大臣(結城豊太郞君) 御尋ニ對シテ
先刻政府委員カラ御答ヲ申上ゲマシタヤウ
ニ、此會期ノ變更、會計年度ノ變更ト云フ
コトニ付テハ、未ダ十分ニ〓究シテ居リマ
セヌ、併ナガラ會期ガ變更サレマシテモ、
會計年度ガ變リマシテモ、豫算ノ確實性ト
云フコトニ於テハ、決シテ御心配ハアリマ
セヌ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X01319370227&spkNum=78
-
079・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 是ニテ質議ハ終局
致シマシタ、本案ノ審査ヲ付託スベキ委員
ノ選擧ニ付テ御諮リ致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X01319370227&spkNum=79
-
080・松永東
○松永東君 本案ハ議長指名二十七名ノ委
員ニ付託セラレンコトヲ望ミマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X01319370227&spkNum=80
-
081・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 松永君ノ動議ニ御
異議アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X01319370227&spkNum=81
-
082・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 御異議ナシト認メ
やく、仍テ動議ノ如ク決シマシタ-日程
第八及ビ第九ハ便宜上一括シテ··発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X01319370227&spkNum=82
-
083・松永東
○松永東君 殘餘ノ日程ヲ延期シ、本日ハ
是ニテ散會セラレンコトヲ望ミマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X01319370227&spkNum=83
-
084・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 御異議アリマセヌ
カ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X01319370227&spkNum=84
-
085・富田幸次郎
○議長(富田幸次郞君) 御異議ナシト認メ
マス、仍テ動議ノ如ク決定致シマシタ、次
會ノ議事日程ハ公報ヲ以テ御知ラセ致シマ
ス、本日ハ是ニテ散會致シマス
午後五時三十六分散會
衆議院議事速記錄第十一一號中
正誤
頁段行誤正
二四一二八十時間三十時間
二三三三二八松本高山間松本高山間鐵
鐵道敷設道敷設速成
四二八小川谷藏君小山谷藏君発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007013242X01319370227&spkNum=85
4. 会議録のPDFを表示
この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。